天を照らす銀河 (浮雲のソル)
しおりを挟む

第1章
第1話 奇妙な出会い


「さてと、買うものも買ったしアスピオへ帰るか」

 

花の街ハルルで必要な物を買った茶髪でゴーグルを着けた少女リタ・モルディオはハルルを出発した。

 

 

 

 

しかし、リタはアスピオへ帰る途中の森で迷ってしまった。

 

 

「あ~もう、早く帰って研究したいのに、どうなってんのよこの森は」

 

 

イライラを隠しきれずに声を上げたリタ。

 

 

「この道もなんか通った気がするし・・・ん?」

 

 

リタは森の中で何かを発見した。

 

 

「何これ?魔導器?」

 

 

それはカプセルの様な形をした大きな魔導器の様な物だった。

 

 

「こんな子見たことがないわ、そもそもこの子は魔導器なの?」

 

 

リタは魔導器の中心となるもの、つまり魔核(コア)を探してみることにした。

 

 

「魔核をはめる所はあるけど、肝心の魔核はな無い・・・か」

 

 

そう結論しようと思った時。少し先の地面に何か光る物が目に入った。

 

 

「あれは・・・まさか」

 

 

リタはすぐその場所に行った。

 

 

「やっぱり。魔核ね」

 

 

リタが見つけた光る物は魔核だった。しかし、なぜかその魔核は半分地中に埋まっていた。

 

 

「あ~もう。誰よ貴重な魔核を埋めたのは」

 

 

そう文句を言いながら手で魔核を掘り出す。そして。

 

 

「やっと出てきた。きっとこの子の魔核ね」

 

 

掘り出した魔核をカプセル型の魔導器にはめた。

 

 

「いったい何が起こるのかしら?」

 

 

ガチャッ

 

 

プシュー

 

 

音と共にカプセル型の魔導器の扉が開いた。

 

 

「え?」

 

 

リタは驚愕した。なんとその魔導器の中には、銀髪の17、8ぐらいの少年が入っていたのだ。

 

 

ドサッ

 

 

銀髪の少年はそのまま地面に倒れた。

 

 

「な…なんで、ブ…魔導器の中に人間が…」

 

 

リタの声は震えていた。

 

 

「そ…そもそも、い…生きてるの?こいつ?『う…ん』ひっ!」

 

 

少年が目を覚ました。どうやら生きてるようだ。

 

 

『あれ…ここは?』

 

 

少年が辺りを見回す。そしてリタを見て

 

 

『あんた…誰?』

 

 

「それはこっちのセリフよ!!魔導器の中にあんたが入ってて!!」

 

 

リタは大声で(と、いうよりキレて)少年に問う。

 

 

『俺が魔導器の中に?』

 

 

「そうよ!!どういうことか説明しなさいよ!!」

 

 

少年は考え込む。そして

 

『俺の名前はリョウ・ゲキショウ。俺がこの魔導器に?思い出せない…』

 

 

「へ?それって…記憶喪失ってこと?」

 

 

『ああ…』

 

 

「なんなのよもう!!訳がわかんない…」

 

 

『俺もだよ。いきなり知らない奴にキレられて』

 

 

「あたしがいつキレたっていうのよ」

 

 

『ついさっきだよ。説明しろとかなんとか言って』

 

 

「キレてない!!」

 

 

『キレてた!!』

 

 

「キレてない!!」

 

 

『絶対キレてた!!』

 

 

「だから、キレてないって…「グルルル…」

 

 

「『へ?』」

 

 

二人は気付いていなかった。魔物・ウルフの群れに囲まれていることに。

 

 

「いつのまに…」

 

 

『言い争ってる場合じゃねえみたいだな』

 

 

「あんた。戦えるの?」

 

 

と、リタが問う。リョウは背中に背負っていた太刀に気付く。

 

 

『こいつが多分俺の武器だ』

 

 

「多分って…バカってぽい。まあ、ないよりかはマシか」

 

 

「グルルル…ガウッ」

 

 

ウルフの群れが二人に襲いかかる。

 

 

リョウは鞘から太刀を抜く。その太刀は刀身が白く雪の様だ。

 

 

リョウの身の丈程ある太刀を軽々と使いウルフを切っていく。

 

 

『魔神剣!!』

 

 

太刀から出た衝撃波を飛ばし、遠くのウルフに当てる。

 

 

リタはある違和感を感じた。

 

 

(武醒魔導器をつかってない…どういうこと…)

 

 

普通、技や術を使うには武醒魔導器を装備してなければ使えない。

 

 

しかし、リョウにはそれが無かった。

 

 

リタがそのことに気を取られて、後ろにウルフが近づいていることに気付いていない。

 

 

そして、ウルフはリタに飛び掛かった。

 

「!しまった」

 

 

リタはそのことに気付いたが、ウルフの爪が目の前に迫っていた。

 

 

『魔神剣!!』

 

 

リタにウルフの爪が当たる前に、リョウの放った魔神剣がウルフに当たり、飛んでいった。

 

 

『何、ボーっとしてんだ。あぶねぇぞ』

 

 

「う、うっさいわね。あ~もうファイアボール」

 

 

飛んでいったウルフに火の玉をぶつけ、トドメをさす。

 

 

何匹か倒していく内に敵わないと思ったのか、ウルフの群れは去って行った。

 

 

 

 

 

『ふ~やっと終わったか』

 

 

リョウはその場に座り込む。

 

 

すると、リタが近付いてきた。

 

 

「あんた、何で武醒魔導器使ってないのに技が使えるわけ?」

 

 

リタの問いにリョウは

 

 

『う~ん…さあ?分かんねぇ。』

 

 

「はあ!?」

 

 

『だって、自分のことは思い出せないんだ。でも、武醒魔導器のことは分かるけど、何で使わずに技が使えたのかはさっぱりだ』

 

 

「う~ん。興味深いわね…」

 

 

(さっきの戦闘を見た限り結構強いし、魔導器のことも知ってるかもしれないし、助手としても護衛としても申し分ないわ…よしっ)

 

 

「ねえ、あんたこれからどうするの?」

 

 

『どうするも何も自分のことが分からないからな困ってるんだよ』

 

 

リタの問いにそう答えるリョウ。

 

 

「じゃあ、あたしの所で働かない?」

 

 

『え?お前、店でも営業してんの?』

 

 

「違うわよ。あたしはアスピオの魔導器研究員よ。あんたは助手兼護衛として働いてみない?それに…」

 

 

『それに?』

 

 

「あんたのその不思議な力に興味があるし、働く内に記憶が戻るかしれないわよ」

 

 

『それはいいな。よし、分かった』

 

 

「これで契約成立ね。」

 

 

『じゃあ、これからよろしくな。えっと…』

 

 

「リタよ、リタ・モルディオ」

 

 

『リタか…改めて俺はリョウ・ゲキショウだ。よろしくな』

 

 

リョウは右手を前に出す。握手をするために

 

 

「よ、よろしく」

 

 

リタは人と接するのは慣れていないため戸惑いながらも握手をした。

 

 

これが2人の奇妙な出会い。

 

 

To be continued

 




オリ主設定

名前 リョウ・ゲキショウ

性別 男

年齢 18ぐらい

身長 170cm

武器 太刀

容姿 銀髪で瞳の色は赤

その他の設定

リタが森で見つけた謎の魔導器(ブラスティア)の中に入っていた少年。
記憶喪失のため、第一発見者(?)であるリタの助手兼護衛として働くことになる.
武醒魔導器(ボーディブラスティア)を使わずに技を使うことができる。


スキット お礼


リタ「そういえば…さっきは、あ、ありがと」


リョウ『へ?何の話?』


リタ「あたしが魔物の攻撃を受けそうになった時、助けてくれたでしょ」


リョウ『あ~あれね。どういたしまして。でも、これから護衛するからといってボーっとすんなよ』


リタ「うっさいわね。分かっているわよ言われなくても」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 シャイコス遺跡へ

リョウがリタの元で働くことになって半年が経った。

 

 

助手兼護衛として働いているのだが、護衛の仕事はまだしも助手としての仕事は家事や買い出しなどほぼ生活のための仕事である。

 

 

今日も食料の買い出しを頼まれてアスピオへ帰ったところである。

 

 

『ホイッ通行証』

 

 

「通ってよし」

 

 

リョウはアスピオの玄関口の騎士に通行証を見せ通してもらう。

 

 

『ったく、いちいち通行証見せるの面倒なんだよな』

 

 

リョウはそう文句を言いながらリタの小屋を目指す。

 

 

『そもそも、家事とか買い出しとか助手のする仕事なのか?まあ、リタのおかげで住む場は困ってないし…』

 

 

ブツブツ言ってると、リタの小屋の方からリタと長い黒髪の青年とピンク色の髪をした少女と

鞄を肩に掛けた少年と犬がこっちに向かって歩いてきた。

 

 

『あれ?リタ、どっか行くのか?えっと…あんたらは?』

 

 

リョウが問うと青年が

 

 

「お前こそ誰だよ?モルディオの知り合いか?」

 

 

『俺はリョウ・ゲキショウ。リタの護衛兼助手をしている者だ』

 

 

「なるほどな…お前が盗んだ可能性もある訳だな…」

 

 

『へ?盗む?何のこと?』

 

 

「とぼけんな。お前がモルディオと名乗って下町の魔核を盗んだんじゃねぇのか?」

 

 

青年はリョウに問い詰める。リョウはすぐに言い返そうとしたが、その前にリタが

 

 

「それはないわ。だってそいつ、帝都の行き方しらないわよ。」

 

 

『そうだ。帝都なんて行ったこともない』

 

 

「そういうことにしとくか」

 

 

そういうと青年はアスピオの出口の方へ向かっていった。

 

 

「あ、待ってよユーリ」

 

 

「ワン」

 

 

少年と犬はユーリと呼ばれた青年を追いかける。

 

 

『全く…何だよ、感じワリー奴』

 

 

「ごめんなさい!ユーリが失礼なことを言って」

 

 

今度はユーリと一緒にいた少女が謝ってきた。

 

 

『あんたが謝ることじゃねぇよ。それよりリタ、どういうことか説明してくれ』

 

 

「しょうがないわね…」

 

 

リタの説明によるとユーリの住む帝都の下町の水道魔導器(アクエブラスティア)の魔核が盗まれたらしい。その魔核ドロボウの名前がモルディオだと言う。

 

 

『なるほど。俺やリタを疑ってアスピオまで来たわけか』

 

 

「そういうこと。だから今からシャイコス遺跡へ行くわけ」

 

 

『ああ…盗賊団が現れた遺跡か』

 

 

「きっと、そいつらが絡んでいるわ。だから、買ったものを家に置いてきたらシャイコス遺跡へ来るのよ。あたし先に行ってるから」

 

 

と言いリタもアスピオの出口へ行った。

 

 

「何を買ったんです?」

 

 

『食料だよ。人使いが荒いんだから』

 

 

「助手の仕事も大変ですね」

 

 

『助手の仕事なのかな?これって…』

 

 

「申し遅れました。私エステリーゼって言います。エステルって呼んでください」

 

 

『じゃあエステルも先に行っててくれ。後で追いつくからさ』

 

 

「分かりました」

 

 

エステルもアスピオの出口へ行った。

 

 

リョウはリタの小屋へ買った物を収めてシャイコス遺跡へ向かった。

 

 

 

シャイコス遺跡

 

 

 

 

「ここがシャイコス遺跡よ」

 

 

「騎士団の方々、いませんね」

 

 

エステルが辺りを見回す。

 

 

「ワンッ」

 

 

「どうした?ラピード?」

 

 

ラピードと呼ばれた犬が何かを見つけたようだ。少年がそれを見て。

 

 

「これ足跡だよ。まだ新しいね数もたくさんあるよ」

 

 

「騎士団か、盗賊団か、その両方かってことだろ」

 

 

「きっとフレンの足跡もこの中にあるんでしょうね」

 

 

エステルはソワソワしている。リョウは〖フレンって誰?〗と内心思っていた。

 

 

「ほら、こっち。早く来て」

 

 

リタがユーリ達を誘導するが。

 

 

「モルディオさんは暗がりに連れ込んで、俺らを始末する気だな」

 

 

「…始末ね。その方があたしの好みだったかも」

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

リタとユーリは無言のままだ。

 

 

〖なんだこのピリピリした空気は…〗

 

 

「な、仲良くしましょうよ」

 

 

エステルが助け船を出した。リョウ達はひととおり遺跡を探索をすることにした。しかし、騎士団も盗賊団もいなかった。

 

 

『なあ、リタ』

 

 

「何?」

 

 

『もしかして、地下ってことは考えられねぇか?』

 

 

「まさか、地下の情報が外にもれて…」

 

 

「地下?」

 

 

「最近、地下の入り口が発見されたのよ。まだ一部の魔導士にしか、知られてないはずなのに」

 

 

「それを俺らに教えていいのかよ」

 

 

「しょうがないでしょ。身の潔白を証明するためだから」

 

 

「身の潔白ねぇ…」

 

 

ユーリはまだリタとリョウを疑っているようだ。リタは石像の地面を見つめる。すると、こすれた跡があった。そして少年が石像を動かそうとするが、びくともしない。それに見兼ねたリョウが

 

 

『しゃあないな。手伝ってやるよ。えっと…』

 

 

「カロル。僕はカロル・カペル」

 

 

『カロルか。ほら、もう少しだ』

 

 

石像が動き、下から階段が姿を現す。

 

 

「はぁはぁ…」

 

 

『大丈夫か?カロル?』

 

 

「このくらい余裕だよ…はぁはぁ…」

 

 

『大丈夫なら、行くとしますか』

 

 

リョウ達は階段を降りて行った。その先には遺跡が広がっていた。

 

 

「遺跡に入るのはじめてです…」

 

 

エステルはキラキラした目で先へ進もうとする。するとリタが

 

 

「そこ、足元滑るから気をつけて」

 

 

と注意を促す。その様子をユーリが見ている。

 

 

「なに見てんのよ」

 

 

「モルディオさんは意外とおやさしいなぁと思ってね」

 

 

「はあ…やっぱり面倒を引き連れてきた気がする。別にリョウと二人でも問題なかったのよね…」

 

 

「リタとリョウは二人でこの遺跡の調査に来るんです?」

 

 

「そうよ。」

 

 

「罠とか魔物とか危険なんじゃありません?」

 

 

「何かを得るためにリスクがあるなんて当たり前じゃない。その結果何かを傷つけてもあたしはそれを受け入れる」

 

 

「傷つくのがリタ自身でも?」

 

 

「そうよ」

 

 

「悩むことはないんです?ためらうとか…」

 

 

「何も傷付けずに望みを叶えようなんて悩み心が贅沢だからできるのよ」

 

 

「心が贅沢…」

 

 

「それに、魔導器はあたしを裏切らないから

…。面倒がなくて楽なの」

 

 

そう言ってリタは先へ進んでいった。

 

 

「……」

 

 

ユーリはリョウを見ていた。

 

 

『ん?どうした?』

 

 

「いや、お前、信用されてないんだな…って」

 

 

『まあ、まだ働いて半年ぐらいしか経ってないからな。これから少しずつでも信頼関係を築いていけばいいさ』

 

 

「まだ半年しか働いてないのか?」

 

 

『そう。半年前に森で…「リョウ。早く行くわよ。」

 

 

少し先からリョウを呼ぶリタの声が聞こえた。

 

 

『話してる暇はないみたいだな』

 

 

リョウ達は先へ進むことにした。

 

 

リタはユーリにソーサラーリングという魔導器を渡し、仕掛けを解いていき、遺跡の最深部に着いた。するとそこには巨大な石像…人型魔導器(ゴーレム)があった。

 

 

To be continued

 




スキット リョウとラピード


リョウ『この犬はたしか…』


ユーリ「ラピードっていうんだ」


ラピード「ワンッ(リョウにすり寄る)」


ユーリ「珍しいな…ラピードが他人に気を許すなんて」


リョウ『へぇ~そうなのか?よしよし(ラピードの頭を撫でる)』


ラピード「クゥ~ン」


ユーリ「気持ち良さそうにしてるな」


エステル「ズルいです…リョウ」


リョウ『なんか、視線を感じるんだけど…』


ユーリ「気にすんな」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 VSゴライアース

遺跡の最深部に着くと、巨大な人型魔導器を発見したリョウ達。リタはその人型魔導器に駆け寄る。

 

 

「あっおい!」

 

 

「うわ、なにこれ!?これも魔導器?」

 

 

カロルは人型魔導器の大きさに驚いてるようだ。

 

 

「こんな人形じゃなくて、おれは水道魔導器がほしいな」

 

 

ユーリは人型魔導器に触ろうとする。

 

 

「ちょっと、不用意に触んないで!この子を調べれば、念願の自立術式を…あれ!うそ!この子も、魔核がないなんて!」

 

 

「ウウウ…」

 

 

『どうした?ラピード?』

 

 

ラピードが人の気配に気付き唸る。すると、ローブをまとった人物が階段にいた。

 

 

「リタ、リョウ、お前のお友達がいるぜ」

 

 

「ちょっと!あんた誰?」

 

 

「わ、私はアスピオの魔導器研究員だ!」

 

 

「…だとさ」

 

 

「お前達こそ何者だ!ここは立ち入り禁止だぞ!!」

 

 

「はあ?あんた救いようのないバカねあたしはあんたを知らないけど、あんたがアスピオの人間なら、あたしとリョウを知らないわけないでしょ」

 

 

『〖無茶苦茶言ってるけど〗リタの言うとおりだ。この偽物野郎』

 

 

「くっ!邪魔の多い仕事だ。騎士といい、こいつらといい!!」

 

 

ローブの男が魔核を人型魔導器にはめ込む。すると人型魔導器は動き出した。

 

 

「うっわーっ、動いた!」

 

 

動き出した人型魔導器魔導器はリタに攻撃しようと大きな腕で払おうとする。

 

 

『!!危ない、リタ!!』

 

 

リョウはリタを突き飛ばし代わりに攻撃を受け、壁に叩きつけられた。

 

 

『ぐあっ!!』

 

 

「「リョウ!!」」

 

 

リタとエステルが同時にリョウのところへ駆け寄る。

 

 

「リョウ!今、傷を…!」

 

 

エステルはリョウに治癒術をかける。

 

 

『ありがとう。エステル…!!』

 

 

リョウとリタはあることに気付いた。エステルが魔導器を使わずに治癒術を使っていることに。

 

 

「あんた、これって…」

 

 

『エステル…お前も俺と同じ…』

 

 

「え、え?ただケガを治そうと…」

 

 

「ちょっとサボってないで手伝って!」

 

 

声のした方へ向くと、ユーリとカロルとラピードがすでに人型魔導器…ゴライアースと戦っていた。

 

 

「あ~、もうしょうがないわね!あたし、あのバカを追うから!ここはリョウ達に任せた!」

 

 

「任せたって、いけねぇぞ!?」

 

 

「ああ…!あのバカのせいで!!」

 

 

『ここは戦うしかねぇみたいだな』

 

 

「速攻ぶっ倒して、あのバカを追うわよ!」

 

 

ゴライアースとの戦いがはじまった。

 

 

 

 

 

『鬼炎斬!!』

 

 

リョウは、炎をまとった太刀でゴライアースに斬りつける…が。

 

 

ガキンッ

 

 

ゴライアースの体は堅く、はじかれてしまう。

 

 

『クソッ!!』

 

 

「蒼破刃!!」

 

 

「臥龍アッパー!!」

 

 

「ガウッ!!(魔神犬)」

 

 

ユーリとカロルとラピードも技をだすが、あまりきいていないようだ。

 

 

ゴライアースは巨大な腕を振り回す。みんな逃げるのが精一杯でなかなか攻撃ができない。

 

 

〖一斉に攻撃すれば、倒せるかもしれないけど…隙がないな…まてよ…こいつ上半身と下半身のバランスが悪いな…足を攻撃すれば倒れてチャンスかも〗

 

 

ゴライアースが光りはじめ前方に光線を撃ってきた。リョウは間一髪かわした。

 

 

『あ、あぶねぇ…〖ん?待てよ…今の光線を撃ってる時に足を攻撃すれば…〗』

 

 

『もう一発撃ってこい!!』

 

 

ゴライアースに挑発をする。

 

 

「ちょっおまっ!!」

 

 

「また撃ってきたらどうするの!!」

 

 

「危険です!!」

 

 

「そうよ!!何考えてんのよ!!」

 

 

「ワンッワンッ!!」

 

 

みんなから警告を受けたが、リョウには作戦があった。ゴライアースはまた光りはじめて光線を撃つ準備をしている。

 

 

『今だ!!』

 

 

リョウはその隙にゴライアースの後ろへ回った。そして、ゴライアースが光線を撃った瞬間に

 

 

『烈・魔神剣!!』

 

 

太刀を大きくなぎ払い、半円状の衝撃波を発生させ、ゴライアースのアキレス腱に当てた。すると、ゴライアースはバランスを崩し倒れた。

 

 

『みんな、今だ!!』

 

 

「なるほどな、そういうことか。爆砕陣!!」

 

 

「爆砕ロック!!」

 

 

「ガウッ!!(裂旋牙)」

 

 

「ゆらめく焔、猛追!ファイアボール!!」

 

 

「煌いて、魂揺の力。フォトン!!」

 

 

ユーリ達の一斉攻撃が当たり、ゴライアースの動きが止まった。

 

 

「あとは動力を完全に絶てば…ゴメンね…」

 

 

リタがゴライアースを操作すると完全に動かなくなった。そのことを確認すると、ユーリはローブの男を追う。

 

 

『俺らも追う…「ねぇ、リョウ」

 

 

カロルがリョウに話しかけてきた。

 

 

『どうした?カロル?』

 

 

「何で?リョウは武醒魔導器…「何やってんだ。逃げられちまうぞ」

 

 

『分かったすぐ行く。カロル、また後で聞いてくれ。リタ、エステルも行くぞ』

 

 

「分かってるわよ!もう、あの子を調べたら自立術式が解析できたのに!」

 

 

走り出したリタは、戸惑っているエステルをみて。

 

 

「あんたも早く」

 

 

「でも、フレンは…」

 

 

「あんなバカがウロウロしているところに、騎士団なんていないわよ」

 

 

「そう、ですね」

 

 

エステルも走り出した。そして、ユーリと合流し、魔核ドロボウを追いかける。

 

 

To be continued




スキット 気付いた?


カロル「ねぇ、ユーリ」


ユーリ「何だ?カロル?」


カロル「ユーリは気付いた?リョウが武醒魔導器を装備してないこと」


ユーリ「ああ、気付いた。少し気にはなるが、今は魔核ドロボウを追うのが先だ」


カロル「それもそうだね」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 旅立ち

魔核ドロボウを追いかけるリョウ達。すると、遺跡内部の入口に魔物が取り囲む人影――魔核ドロボウを見つけた。

 

 

「蒼破!!」

 

 

『魔神剣!!』

 

 

ユーリとリョウが魔物を追い払い、一行は魔核ドロボウを取り囲む。

 

 

「魔核を盗んで歩くなんてどうしてやろうかしら…」

 

 

「ひぃぃ!やめてくれ!俺は頼まれただけだ…。魔核を持ってくれば、それなりの報酬をやるって」

 

 

「おまえ、帝都でも魔核盗んだよな?」

 

 

「帝都?お、俺じゃねえ!」

 

 

「おまえじゃねぇってことは、他に帝都に行った仲間がいるんだな?」

 

 

「あ、ああ!デ、デデッキの野郎だ!」

 

 

「そいつはどこ行った?」

 

 

「今頃、依頼人に金をもらいにいってるはずだ」

 

 

「依頼人だと…。どこのどいつだ?」

 

 

「ト、トリム港にいるってだけで、詳しいことは知らねぇよ。顔の右に傷のある、隻眼でバカに体格のいい男だ」

 

 

「そいつが魔核を集めてるってことかよ…」

 

 

『なんか、その男、ただ者じゃなさそうだな』

 

 

「ただのコソ泥集団でもなさそうだ」

 

 

「騎士も魔物もやり過ごして行ったのに!ついけねぇ、ついてねぇよ!」

 

 

「騎士?やはりフレンが来てたんですね」

 

 

「ああ、そんな名前のやつだ!くそー!あの騎士の若造め!」

 

 

『「うっ(さい)〖せぇ〗」』

 

 

バギッ ドゴッ

 

 

「ぐふっ」

 

 

バタッ

 

 

リタのパンチとリョウの蹴りをくらい魔核ドロボウは気絶した。

 

 

「ちょ、リタ、リョウ、気絶しちゃったよ…どうすんの?」

 

 

「後で街の警備に頼んで、拾わせるわよ」

 

 

『俺達はコイツのせいでドロボウ扱いされたんだ。このぐらいしてもバチは当たんねぇだろ』

 

 

「それじゃあ、アスピオに戻るか」

 

 

 

 

シャイコス遺跡からアスピオへ帰る途中リョウはあることを思い出した。

 

 

『そういえばカロル、さっき俺に質問しかけなかったか?』

 

 

「あ!そうそう。なんでリョウは武醒魔導器使ってないのに技が使えるの?」

 

 

「俺も少し気になってた。なんでだ?」

 

 

「え?そうなんです?リョウ?」

 

 

『そのことか…まあ、気になるよな…でも、自分でも分からないんだ』

 

 

リョウは半年前のことを話した。自分が魔導器から出てきたこと、自分のことを憶えていないことを。

 

 

「そうだったんだ…」

 

 

「記憶喪失ってわけか…」

 

 

「わたし、人が入れる魔導器なんて初めて聞きました」

 

 

「記憶は戻ってきてるの?」

 

 

『いや、さっぱりだ…』

 

 

「あたしもその魔導器やリョウの力を調べてみたけど、分からないの。」

 

 

『まあ、そのうち思い出すだろ、なんかのキッカケで。』

 

 

そんな話をしている間に一行はアスピオへ着いた。

 

 

 

アスピオ入口

 

 

 

「…肝心のフレンはいませんでしたね」

 

 

『思ったんだけど…そのフレンって騎士は何者?』

 

 

「ユーリの友達です」

 

 

「ふ~ん、あんたの友達ね。それは苦労するわ。」

 

 

「なんだよ?」

 

 

また、ユーリとリタの間にピリピリした空気が流れる。

 

 

『そ、そういえば、そのフレンって人はなんでアスピオにいるんだ?』

 

 

リョウはこの空気をなんとかしようと話題を変え、エステルに聞いた。

 

 

「ハルルの結界魔導器を直せる魔導士を探して…」

 

 

「ああ…あの青臭いのね…あたしのとこにも来たわ。」

 

 

『へ?いつ?俺、憶えてないけど?』

 

 

「あんたが買い出しに行ってる間に来たのよ。まあ、断ったけど。」

 

 

『じゃあ、他の魔導士が動いただろうから、ハルルに戻ったんじゃないのか?』

 

 

「…そんな…」

 

 

「で?疑いは晴れた?」

 

 

「リタは、ドロボウをするような人じゃないと思います」

 

 

『そうだ、リタは魔導器バカだけど、ドロボウはしないやつだ』

 

 

「言っとくけど、あんたも疑われてんのよ。」

 

 

『あ…そうだった』

 

 

「ま、おまえらはドロボウよりも研究の方がお似合いだもんな」

 

 

「ユーリは素直じゃないんです」

 

 

「…変なやつ」

 

 

『疑いが晴れたならそれでいいや』

 

 

「あたし達、警備に連絡してくるから、先にあたしの研究所へ戻ってて」

 

 

「って言われても、あのこわいおじさんたちが通してくれるかどうか」

 

 

ユーリは門番のいる方を見る。

 

 

「そうね、リョウ、これ渡して」

 

 

『あいよ、ホイッ通行証、これを見せれば通れるようになるよ』

 

 

ユーリに通行証を渡す。

 

 

「サンキュ」

 

 

「いい?あたしの許可なく街出たらひどい目にあわすわよ。リョウ行くわよ」

 

 

『了解~』

 

 

リョウとリタは警備を呼びにアスピオへ入って行った。その途中

 

 

「ねぇ、リョウ、あのエステリーゼって子…」

 

 

『ああ…魔導器を使わずに治癒術が使えるとはな…俺と似ている』

 

 

「あんたの力と関係あるんじゃないの?」

 

 

『そうかもな…』

 

 

 

 

リタの研究所

 

 

リョウとリタは研究所へ戻った。リタは部屋の中でくつろいでるユーリ達を見て

 

 

「待ってろとは言ったけど…どんだけくつろいでんのよ」

 

 

「あ、おかえりなさい。ドロボウの方はどうなりました?」

 

 

「さあ、今頃、牢屋のなかでひーひー泣いてんじゃない?」

 

 

するとユーリがリタに

 

 

「疑って悪かった」

 

 

と謝罪してきた。

 

 

「軽い謝罪ね。ま、いいけどね、こっちも収穫あったから」

 

 

「んじゃ、世話かけたな」

 

 

『なんだ?もう行くのか?もうちょっとゆっくりしていけばいいのに』

 

 

「急ぎの用があるんだよ」

 

 

「リタ、リョウ、会えてよかったです。急ぎますのでこれで失礼します。お礼はまた後日」

 

 

「…分かったわ」

 

 

『リタ、俺、見送りに行ってくるわ』

 

 

リョウはそう言い、ユーリ達についていった。

 

 

そして街の広場で

 

 

「見送りならここでいいぜ」

 

 

『そうか?じゃあ、気をつけてな…あ、そうそう』

 

 

「なんだ?」

 

 

『事件が一段落したら、いつでも遊びに来てくれ歓迎するよ』

 

 

「はい!ぜひ!」

 

 

「まあ、暇だったらな」

 

 

「僕も行くよ」

 

 

「ワンッ」

 

 

『ありがとな。リタもきっと喜ぶ…「あたしがどうかした?」

 

 

後ろからリタが急に現れ驚くリョウ

 

 

『うおっ!びっくりさせるなよ』

 

 

「おまえも見送りか?」

 

 

「そうじゃないわ、あたし達も一緒に行く」

 

 

「え、な、なに言ってんの?」

 

 

『ちょっとこっち来いリタ』

 

 

リョウはリタをユーリ達から少し離れた所へ連れていく。

 

 

『おまえ、何考えてんだ?』

 

 

「別に…ただハルルに用があるだけよ。それに、あんただってエステリーゼに聞きたいことがあるんじゃないの?」

 

 

『そりゃ、そうだけど…』

 

 

「じゃあ、決まりね。」

 

 

リョウとリタはユーリ達の所に戻り

 

 

「あたし達はハルルの結界魔導器を見ておきたいのよ。壊れたままじゃまずいでしょ」

 

 

「それなら、僕たちで直したよ」

 

 

「はぁ?直したってあんたらが?素人がどうやって?」

 

 

カロルの言葉にリタは驚いた。

 

 

「よみがえらせたんだよバ~ンっと、エステ…「素人も侮れないもんだぜ」

 

 

ユーリがカロルの言葉を遮った。

 

 

「ふ~ん、ますます心配。本当に直ってるか確かめにいかないと」

 

 

「じゃ、勝手にしてくれ」

 

 

すると、エステルがリタに近づき

 

 

「な、なに!?」

 

 

「わたし、同年代の友達、はじめてなんです!」

 

 

「あ、あんた、友達って…」

 

 

「よろしくお願いします」

 

 

『よかったなリタ…「うっさい!!」

 

 

バシッ

 

 

『いてっ』

 

 

リョウはリタの持っていた本で叩かれた。

 

 

そして一行はハルルへ向かうことに

 

 

 

 

花の街 ハルル

 

 

 

ハルルに着いたリョウ達。街には花びらが舞っている。するとリタが

 

 

「げっなにこれ、もう満開の季節だっけ?」

 

 

『キレイだな~』

 

 

リタは街の奥へ走って行った。

 

 

『あっおいっ…まあいっか…ハルル来たの初めてだし、ちょっとぶらぶらしようかな?』

 

 

リョウは一人でハルルを見て回ることに。

 

 

『にしても、キレイなところだな~アスピオとは大違いだ』

 

 

しばらくして、リョウがハルルの入口の方に目をやると、エステルが騎士数人に取り囲まれていた。

 

 

『エステル!!どうした?』

 

 

「あっリョウ、実は…「なんだ貴様は?ユーリ・ローウェルの仲間か?」

 

 

隊長格と思われる騎士に質問される。

 

 

『仲間?仲間っちゃあ、仲間のようなそうでもないような…』

 

 

「ならば、貴様も捕まえるまでだ!!」

 

 

『え?なんで?そうなるの?』

 

 

状況が分からないまま部下であろう細い騎士と丸っこい騎士が襲いかかってきた。

 

 

「瞬迅剣であ~る!」

 

 

『おっと』

 

 

細い騎士の突きを避ける。

 

 

「避けるなであ~る!」

 

 

『無理言うな!〖こいつら、あんまり強くなさそうだけど…2対1はきついかな…〗』

 

 

「蒼破!!」

 

 

「ぐぇっ」

 

 

後ろから衝撃波が飛んできて、丸っこい騎士に当たる。

 

 

「ボコは俺に任せろ。デコはおまえに任せる」

 

 

「ボコじゃなのだ」

 

 

「デコじゃないのであ~る」

 

 

『助かるぜユーリ!さあ、かかってこいデコ!』

 

 

「だから、デコじゃないのであ~る。瞬迅剣であ~る」

 

 

『当たるかっつーの。獅子戦孔!!』

 

 

デコの瞬迅剣を避けて、獅子の形をした闘気をぶつけた。

 

 

「やられたのであ~る」

 

 

バタッ

 

 

デコは倒れた。ほぼ同時にユーリの方も終わったようだ。

 

 

『弱っ!!太刀(こいつ)を使うまでもなかったな』

 

 

「ええいっ!情けない!」

 

 

今度は隊長格の騎士が近付いてくる。すると、ユーリと一緒に来たリタが詠唱を始める。

 

 

「ちょっリタ…」

 

 

カロルが止めようとするが遅かった。

 

 

「あんたらしつこい!」

 

 

リタが放ったファイアボールが隊長格の騎士とデコとボコに当たり吹き飛ばした。

 

 

エステルが高台にいる黒装束の男達に気付く

 

 

「ユーリ!あの人達!」

 

 

『今度はなんだっ!』

 

 

「やっぱり、俺らも狙われてんだな」

 

 

「ど、どういうこと?」

 

 

また状況が分からなくなるリョウとカロル

 

 

「話はあとだ!カロル、ノール港ってのはどっちだっけ?」

 

 

「え、あ、西だよ!エフミドの丘を越えた先にカプワ・ノールはあるんだ」

 

 

「ほら、さっさと行く」

 

 

『エステル。おまえはどうしたいんだ?旅を続けるのか、帰るのか』

 

 

「…今は旅を続けます」

 

 

『よしっ決まったんなら行くぞ!』

 

 

「はいっ!」

 

 

「待て、おまえ達…「騎士団心得ひと~つ!!その剣で市民を護る。そうだったよな?」

 

 

隊長格の騎士がユーリ達を止めようとしたが、向かってくる黒装束の男達に気付く。

 

 

「その通り!!いくぞ騎士の意地をみせよ!!」

 

 

騎士団が追ってくる黒装束の男達にに立ち向かう。

 

 

そして、一行は今度はエフミドの丘を目指す。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 丘を越えて

一行はエフミドの丘へ着いた。

 

 

「ここがエフミドの丘?」

 

 

「そう…だけど…結界がなくなってる」

 

 

『こんなとこに結界があったのか?』

 

 

「うん、来る時はあったよ。最近設置されたってナンが言ってたし」

 

 

「ナンって誰ですか?」

 

 

「えっとギ、ギルドの仲間だよ。ちょっと情報集めてくる!」

 

 

そう言い、カロルは先へ進んで行った。

 

 

「どうしたの?あのガキんちょ」

 

 

『さぁ?分かんねぇ』

 

 

少し先に進むと、壊れた魔導器が道をふさいでいた。それを見たリタはすぐにその魔導器に走って行った。

 

 

『あっ!ちょっと待てって、リタ』

 

 

すぐにリョウがリタを追いかける。

 

 

「あいつも大変だな…」

 

 

「でも、リョウ、楽しそうですよ」

 

 

「そうは見えねぇんだが…」

 

 

ユーリとエステルが話していると、カロルが帰ってきた。

 

 

「ふたりとも聞いて!それが一瞬だったらしいよ!ガツン!ドカン!って」

 

 

「何がどうだって?」

 

 

詳しく説明すると、竜に乗った者が槍で魔導器を壊したらしい。カロルがそう説明していると、リタとリョウが騒ぎを起こしているのに気付く。

 

 

「こんな変な術式の使い方して、魔導器が可哀想でしょ!」

 

 

『リタ、とりあえず落ち着けって』

 

 

リョウがリタに落ち着くように言うが。リタは聞く耳を持たない。すると、ぞろぞろと騎士がこっちに向かってくる。

 

 

『〖こうなったら…〗逃げるぞ!リタ!』

 

 

リタの腕をつかみ、ユーリ達の方へ走る。

 

 

「ちょっと、放しなさいよ!リョウ!」

 

 

『捕まったら、元も子もねぇだろ!』

 

 

「ふたりとも、こっちだ。」

 

 

ユーリ達と合流し、草むらに逃げ込む。

 

 

『あれ?そういえばカロルは?』

 

 

リョウはカロルがいないことに気付く。

 

 

「カロルなら囮になったぜ」

 

 

『そうか…カロル…おまえの死は無駄にしないよ…』

 

 

「勝手に殺さないでよ!」

 

 

そんなツッコミと共にカロルが草むらから出てきた。

 

 

『ははっ冗談冗談』

 

 

「バカっぽい…」

 

 

リタが呆れていると、入口の方から

 

 

「ユーリ・ローウェル!どこに逃げよったあ!」

 

 

「エステリーゼ様~!出てきてくださいのであ~る!」

 

 

「ユーリ、出てこ~い!」

 

 

ハルルで戦った騎士達の声がしてきた。

 

 

『有名人だな、ユーリは、というより何者なんだあんたら』

 

 

「えと、わたしは…」

 

 

「そんな話はあとあと」

 

 

なにか事情がありそうなので、リョウはこれ以上聞かないことにした。

 

 

『で?これからどこいくんだ?俺達』

 

 

「ノール港だ」

 

 

「えと、どちらに向かえばいいんでしょうか?」

 

 

「方角的には…」

 

 

いちおう道らしきものの先を指さすカロル。

 

 

「これって獣道よね?進めるの?」

 

 

「行けるところまで行くぞ。捕まるのはたくさんだ」

 

 

「魔物にも注意が必要ですね。」

 

 

そして一行は魔物を倒しながら進んで行った。

 

 

 

 

 

『散沙雨!!』

 

 

魔物を倒したリョウにユーリが近づいてきた。

 

 

「なあ、リョウ?」

 

 

『ん?なんだユーリ?』

 

 

「おまえって、結構力あるのか?」

 

 

『う~ん…まあ、普通かな。なんでそんなこと聞くんだ?』

 

 

「おまえの持ってる白い太刀、重そうな割には軽々と使ってんなと思って」

 

 

『実際、軽いからなこの太刀。自分の腕だと思うくらいな』

 

 

「そんなに軽いのか!?」

 

 

『ああ、持ってみるか?』

 

 

リョウはユーリに白い太刀を渡す…が

 

 

「ちょ、おまっ…これ重っ」

 

 

ユーリはあまりの重さに驚き、太刀を地面に降ろす。もう一度、持とうとしたがまったく持ち上がらない。

 

 

『…なにやってんだ?ユーリ?』

 

 

「おまえ!!無茶苦茶重いじゃねぇか!!おまえ馬鹿力にも程があるぞ!!」

 

 

『ユーリが力ないんじゃねぇの?』

 

 

リョウは地面に置かれた太刀をヒョイッと持ち上げる。

 

 

「ウソだろ!!」

 

 

『こんなに軽いのに…情けない…』

 

 

「おまえの力がすげぇんだって…」

 

 

『だったら、カロルに持たせてみるか?あいつも重い武器使ってるし』

 

 

「そうだな…おーいカロルー」

 

 

「なに~ユーリ、リョウ?」

 

 

カロルがやってきた。

 

 

『ちょっとこの太刀持ってみて』

 

 

「なにかと思えば、そんなこと?僕はギルドのエースだよ。太刀ぐらい…って重っ!!」

 

 

結果はユーリと同じくまったく持ち上げられなかった。

 

 

「いったい、どんな素材でできてるんだその太刀?」

 

 

『さあ?』

 

 

「さあ?って…」

 

 

『気付いたら、持ってたからなこの太刀。』

 

 

「その太刀のことも覚えてないのか?」

 

 

『ああ…まったくな…太刀(こいつ)の名前も分かんねぇんだ。まあ、その内思い出すだろ。さきへ行こうぜ』

 

 

「ああ、そうだな」

 

 

 

 

しばらく進んで行くと、大きな赤い花を見つける。リタが近づいてみるが…

 

 

「リタ!触っちゃだめ!ビリバリハの花粉を吸いこむと目眩と激しい脱力感に襲われる、です」

 

 

と、エステルが注意する。

 

 

「ふーん…」

 

 

リタはカロルの背後に回り、花の方にドンッと背中を押す。

 

 

「ちょ、なにを…」

 

 

「あ、ゴメン!」

 

 

〖絶対、わざとだな…〗

 

 

「カロル、大丈夫です!?」

 

 

ピヨピヨ状態のカロルにエステルは治癒術を使う。その様子を見ていたリタにユーリが

 

 

「治癒術に興味あんのか?」

 

 

「別に…」

 

 

「…だめですね。治癒術では治りません。自然に回復するのを待つしかなさそうです」

 

 

しばらくして、カロルが回復し、さらに先へ進む。すると少し開けた場所に出る。

 

 

『狭い道通ってきたからやけに広く感じるな』

 

 

その時、獣の咆哮が響き渡る。声のする方へ目をやると、巨大な魔物が崖の上からこちらを見下ろしている。

 

 

「わあああっ!あ、あれ、ハルルを襲ったガットゥーゾっていう魔物だよ!」

 

 

「へぇ、こいつがね。生き残りってわけか」

 

 

「ほっといたらまたハルルを荒らしに行くわね。たぶん」

 

 

『今は結界があるけど近所にこんなのがいたらな…来るぞ!』

 

 

ガットゥーゾは崖から降り、こっちに向かって突進してくるが、誰にも当たらなかった。

 

 

『散沙雨!!』

 

 

リョウは太刀の連続突きを放つが、ガットゥーゾの爪でガードされてしまう。技の隙を狙ってガットゥーゾが爪で攻撃してきた。リョウは避けることができず、少しくらってしまう。

 

 

『ぐっ!』

 

 

「リョウ!大丈夫です!?」

 

 

『傷は浅いけど、毒くらっちまった』

 

 

「今、治します。卑しき病みよ、退け。リカバー」

 

 

リョウの毒が消えた。

 

 

『ありがとう、エステル』

 

 

「ゆらめく焔、猛追!ファイアボール!」

 

 

リタのファイアボールがガットゥーゾに当たる。ダメージが大きいようだ。

 

 

「もしかして火に弱いのかな?」

 

 

「そうかもな…おっと。」

 

 

ユーリとカロルとラピードに小型の魔物…ガットゥーゾ・ピコが襲いかかる。

 

 

「俺らはこいつの相手か…」

 

 

〖火に弱いならあの技を使えば…〗

 

 

ガットゥーゾはリョウに向かって突進してくる。リョウは自分の後ろにビリバリハの花があることに気付いた。そして、リョウは高くジャンプすると、ガットゥーゾはビリバリハの花に当たり花粉が拡散し、吸い込んだ。ガットゥーゾはその場から動けなくなった。

 

 

『もらったぁぁぁ!火炎裂空!!』

 

 

リョウは、炎をまとって急降下し、さらに回転をしながらガットゥーゾを何度も切った。ガットゥーゾは炎に包まれ、そのまま絶命した。

 

 

「こっちも、おわったぜ」

 

 

「ふう…小さいけど強かったなぁ…」

 

 

「ワンッ」

 

 

ユーリとカロルとラピードもガットゥーゾ・ピコを倒したようだ。

 

 

「すごいですリョウ!ビリバリハの花を利用して倒すなんて!」

 

 

『とっさに思いついた割にはうまくいったよ』

 

 

「それでも、すごいです。カッコよかったです!」

 

 

『よせよ、照れるだろ』

 

 

リョウは少し顔を赤くする。

 

 

「…」

 

 

リョウとエステルのやりとりをリタは不機嫌そうに見ている。

 

 

「どうしたの?リタ?」

 

 

カロルが尋ねるがリタは「別に…」と答えるだけ。するとユーリが

 

 

「ふーん、なるほどねぇ…」

 

 

「な、なによ…」

 

 

「なんでもねぇよ。さ、行くぞみんな」

 

 

 

さらに獣道を進んで行くと、視界が急に開ける。そこには一面に広がる青い海。

 

 

「うわあ…」

 

 

「これ…って…」

 

 

『きれいだな…』

 

 

海に感激する一行。ふと、リョウは2つの不自然な形の石が目にはいる。

 

 

〖なんだ?これ?墓…のようなそうじゃないないような…1つはなんか懐かしいような…もう1つは…〗

 

 

「おーいリョウ、先に行くぞー」

 

 

『分かった。今、行く』

 

 

ユーリに呼ばれ、再び獣道へ戻る一行。

 

 

 

 

 

一行が海の見える丘から去ったあと、刀を持った黒髪の男が現れる。

 

 

「なぜ…奴が生きている?奴は私が…まあいい、奴はあの方にとっては邪魔にしかならない…また斬滅するのみ…」

 

 

男はリョウ達を追う。ただならぬ殺気を持ったまま…

 

 

To be continued




スキット 違和感


カロル「海、きれいだったね」


エステル「はい!とても!」


リョウ『……』


カロル「リョウ?難しい顔してどうしたの?海、きれいじゃなかった?」


リョウ『いや、そんなことはないぞ。海はきれいだったけど…』


カロル「けど?」


リョウ『いや、なんでもねえ。早く先へ行こうぜ』


カロル「分かった」


リョウ〖あの石…いや…墓なのか?なんか…とても懐かしいような…でもなんでそう思うんだ?〗


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話 襲撃

エフミドの丘を越え、ノール港へ続く道へ出たリョウ達。日も傾きはじめたので、キャンプを張り、泊まることになった。

 

 

夜になり、リョウはテントの外で考え事をしていた。すると、テントからユーリが出てきて

 

 

「リョウ、まだ寝ないのか?」

 

 

『ん?ああ、ユーリか…ちょっと考え事してた。』

 

 

「自分のことか?」

 

 

『まあ、そんなところかな。自分は何者なのか?親はいるのだろうか?…言い出すときりがない』

 

 

「そうか…」

 

 

『でも、結局は、その内思い出すだろ、で終わっちゃうんだけど』

 

 

リョウは少し笑いながら言う。

 

 

「まあ、ほどほどにしとけよ。俺はもう寝るわ。おやすみ」

 

 

『おやすみ。俺も寝ようかな…』

 

 

ガサガサ

 

 

『ん?』

 

 

突然、近くの草むらから音が聞こえた。

 

 

〖おかしいな…カロルはテントに塗られた魔物が嫌う匂いを出す薬品があるって聞いたんだけど…〗

 

 

不審に思いながらも念のため確認しに行くリョウ。音がした草むらを通って行くと、小さな森へ繋がっていた。しばらく歩いていると、少し開けた場所に着いたが、なにもなかった。

 

『気のせいか…』

 

そう思い、来た道へ戻ろうと振り向くと、突然

リョウの首に刃が迫っていた。

 

 

『なっ!!』

 

 

とっさに、後ろへ下がり回避したが、のどを少し斬られた。あと数秒遅れていたら今頃、首から上は地面に落ちていただろう。

 

 

「外した…か」

 

 

そこには目つきが鋭く、刀を持った黒髪の男が立っていた。

 

 

『何者だ…』

 

 

「私はダフィエル・ハーヴェスト、リョウ・ゲキショウ、貴様を殺す者の名だ!」

 

 

『!!なんで…俺の名を…おまえは俺を知っているのか?』

 

 

「記憶がないのか?そんなことはどうでもいい!貴様はここで死ぬのだからな!」

 

 

ダフィエルと名乗った男は、その場から姿を消した。

 

 

〖消えた!〗

 

 

そう思った瞬間、ダフィエルはリョウの後ろへ移動していた。

 

 

「刹那…」

 

 

その瞬間、リョウの右肩辺りから大量の血液が吹き出した。

 

 

『え…?』

 

 

リョウは、状況が理解できなかった。ダフィエルが消えたほんの一瞬で右肩を斬られたのだから。

 

 

『ぐ、あああ…』

 

 

あまりの激痛に右肩をおさえて膝をつくリョウに今度は刀を首につきつけるダフィエル。少しでも力を入れれば、首は斬り落とされるであろう。

 

 

「あの時の私は詰めが甘かったようだ…今度は確実に殺す」

 

 

〖ごめん…みんな…少しの間だったけど楽しかった…〗

 

 

リョウが覚悟を決めたその時

 

 

「ファイアボール!!」

 

 

「なに!?」

 

 

どこからか現れた火の玉がダフィエルに直撃し、後退する。

 

 

「リョウ!」

 

 

『リ、リタ…』

 

 

リョウを助けたのはリタだった。そしてその後ろから

 

 

「リョウ大丈夫か!」

 

 

「た、助けに来たよ!」

 

 

「!?ひどいケガ!」

 

 

「ワンッ!」

 

 

ユーリ、カロル、エステル、ラピードが現れた。

 

 

『みんな…』

 

 

すると、ダフィエルはユーリ達をみて

 

 

「ここは一旦退くとする…私の目的はリョウ・ゲキショウの斬滅…だが!!私の邪魔をするのなら誰であろうと容赦はしない!!」

 

 

そう言い残しダフィエルは森の奥へ消えていった。

 

 

「まちやが…『追うな!ユーリ!』

 

 

ユーリは追いかけようとしたが、それを止める

リョウ。

 

 

『あの男はやばい…追いついたとしても殺されるだけだ』

 

 

「…分かった。」

 

 

「とりあえず。ケガの手当てを」

 

 

エステルはリョウに治癒術をかける。

 

 

「リョウ、あんたねぇ…」

 

 

「リタ、言いたいことは分かるがそれは後だ」

 

 

「分かったわ…」

 

 

リタが何か言いたそうだったがユーリが止める。

 

 

「ねぇ、あの人はいったい…」

 

 

カロルが尋ねる。

 

 

『ダフィエル・ハーヴェストって言ってたな…あいつ、俺のことを知っていた…しかも、過去にも俺を殺そうとしたかもしれない…』

 

 

「「「「えっ!!」」」」

 

 

『でも、今は何も思い出せないんだ』

 

 

「とりあえず、今日はもう寝ろ。じゃないと傷も癒えねぇぞ」

 

 

『ああ、分かった』

 

 

「リョウ、明日覚悟しときなさい」

 

 

『へ?』

 

 

次の日、勝手にキャンプから離れたことをみんな(特にリタ)から叱られた。

 

 

To be continued

 

 




オリキャラ設定


名前 ダフィエル・ハーヴェスト


性別 男


年齢 28


武器 刀


リョウの命を狙う謎の男。
過去にもリョウを殺そうとしたようで、リョウのことも知っているようだが…





スキット 説教


リタ「だいだいあんたは…勝手にキャンプから離れて…」


リョウ『リ、リタそろそろ勘弁してくれないか?さすがに2時間正座はきつい…』


カロル「いつまで続くんだろ…あれ」


ユーリ「さあな、リタの気が済むまでだろ」


エステル「でも、一番リタがリョウのことを思ってるってことですよね?」


カロル「そ、そうなのかな…」


リョウ『見てないで助けてくれぇぇぇ。あ、足が限界だぁぁぁ』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話 ノール港に到着

謎の男、ダフィエルの襲撃から一夜明け、ノール港へ着いたリョウ達。ノール港へ近づいた頃から雨が降り始め、ノール港へ着いても止む気配はない。

 

 

『ノール港に着いたみたいだけど、いつまでふるんだこの雨…』

 

 

「びしょびしょになる前に宿を探そうよ」

 

 

カロルがそう提案してきたので宿を探そうとするが、エステルが立ち止ったままいるので、ユーリが

 

 

「どうした?エステル」

 

 

「あ、その、港町というのはもっと活気のある場所だと思っていました」

 

 

『それもそうだな…なんというか生気がないというか…』

 

 

「ノール港は厄介な場所なんだ」

 

 

「どういうことよ?ガキんちょ」

 

 

「ノール港はさあ、帝国の圧力が…「金の用意ができないときは、おまえらのガキがどうなるかよくわかってるいるよな?」

 

 

リタの問いにカロルが答えようとするが、男の声によって遮られる。声がする方へ見ると、傷だらけの男性が役人らしき男に土下座している。

 

 

「お役人様!!どうか、それだけは!息子だけは返してください。税金を払える状況でないことはお役人様もご存じでしょう?」

 

 

「ならば、早くリブガロって魔物を捕まえてこい」

 

 

「そうそう、あいつのツノを売れば一生分の税金納められるぜ。前もそう言ったろう?」

 

 

そう言うと、男達は去って行った。

 

 

「なに、あの野蛮人」

 

 

「カロル、今のがノール港の厄介の種か?」

 

 

「うん、このカプワ・ノールは帝国の威光がものすごく強いんだ。特に最近来た執政官は帝国でも結構な地位らしくて、やりたい放題だって聞いたよ」

 

 

『部下の役人もやりたい放題ってことか』

 

 

「そんな…」

 

 

エステルがそう言っていると、傷だらけの男性が立ち上がり、街の出口へ走り出すが、ユーリが突き出した足に引っかかって転んだ。

 

 

「痛っ…あんた何すんだ!!」

 

 

「あ、悪いひっかかっちまった」

 

 

「もう!ユーリ!…ごめんなさい。今、治しますから」

 

 

エステルは男性に治癒術をかけるが、傍にいた女性が申し訳なさそうに

 

 

「あ、あの…私たち、払える治療費が…」

 

 

「その前に言うことあんだろ」

 

 

「え…?」

 

 

「まったく、金と一緒に常識までしぼりとられてんのか」

 

 

「ご、ごめんなさい、ありがとうございます」

 

 

〖ユーリらしいっちゃユーリらしいのかな〗

 

 

リョウがそう思っているとユーリがいつもまにかいなくなっていたことにカロルが気付いて

 

 

「あれ…?ユーリは?」

 

 

『どこいったんだ?しゃーない捜してくるか…』

 

 

リョウはユーリを捜すことになった。

 

 

〖ユーリのやつどこいったんだ?〗

 

 

リョウがユーリを捜していると、路地に見覚えのある長い黒髪が目にはいった。

 

 

『おっいたいた。おーいユーリ…!?』

 

 

声をかけながら路地へ入って行くリョウ。しかし、リョウが見た光景は三人の黒装束の男に襲われているユーリだった。

 

 

『今、助ける…ぐっ!?』

 

 

太刀を鞘から抜こうとしたが、右肩に激痛が走り、その場で膝をついてしまう。ダフィエルに斬られた右肩はまだ完治してなかった。

 

 

〖くそ!!こんな時に…〗

 

 

「ユーリ!!」

 

 

突如現れた金髪で騎士の鎧をまとった男がユーリに助太刀にはいり、三人の黒装束の男を蹴散らす。そして、騎士の男とユーリがリョウに駆け寄る。

 

 

「君、大丈夫かい?」

 

 

騎士の男はリョウに手を差し出す。

 

 

『ああ、ありがとう。ちょっと傷が開きかけたみたいだ。ところであんたは?』

 

 

「フレン、フレン・シーフォだ」

 

 

『フレン…ってユーリの友達の!?』

 

 

リョウは驚き、ユーリの方を見る。

 

 

「なんだよ?」

 

 

『いや、思ってた人とだいぶ違うなって』

 

 

「どういう意味だ!」

 

 

「まあまあ、二人とも…さて、ユーリ」

 

 

フレンはいきなりユーリに向けて剣を振り下ろす。ユーリはすんでのところで受け止める。

 

 

「ちょ、おまえ、なにしやがる!」

 

 

「ユーリが結界の外へ旅立ってくれたのは嬉しく思っている」

 

 

「なら、もっと喜べよ。剣なんか振り回さないで」

 

 

「これを見て、素直に喜ぶ気がうせた」

 

 

フレンは剣である紙を指した。

 

 

『ユーリの手配書!?ユーリ、おまえ犯罪者だったのか?』

 

 

「色々事情があったんだよ」

 

 

「事情があったとしても罪は罪だ」

 

 

「ったく、相変わらず、頭の固いやつだな…あっ」

 

 

ユーリが文句を言っていると、エステルがやってきたことに気付いたユーリ

 

 

「ユーリ、さっきそこで何か事件があったようですけど…フレン!」

 

 

エステルがフレンに抱きつく。

 

 

「よかった、フレン。無事だったんですね?」

 

 

「は、はい大丈夫ですから…その、エステリーゼ様…こちらに」

 

 

やや強引にエステルを宿屋に連れていく。取り残されたリョウとユーリ。すると、リョウが

 

 

『ユーリ、さっきは悪かったな助けに行けなくて』

 

 

「きにすんな。それより、後でエステルに治癒術かけてもらえよ」

 

 

『ああ、そうする。これからどうする?』

 

 

「カロルとリタに合流するか」

 

 

二人も宿屋に向かうことになった。

 

 

宿屋の軒下でカロルとリタに合流したリョウとユーリ。エステルとフレンは宿屋の中で話をしていて立て込んでるらしく。ユーリは街を見て回ることに、リョウはカロルとリタと一緒に待つことになった。

 

 

『いててて…また痛くなってきた』

 

 

リョウは右肩を押さえる。するとリタが心配そうに

 

 

「…ケガ、まだ治ってないの?」

 

 

『ああ、後でエステルに治癒術をかけてもらうけど…少しの間は安静にしとかないといけないかもな』

 

 

「そう…」

 

 

『心配してくれんのか?』

 

 

「な!?誰が!?し、心配なんて!?」

 

 

リタが大声を出しリョウの右肩を叩く

 

 

『痛っ!?やめろ!?傷が開くから!!』

 

 

(ボクってもしかしてジャマ?)

 

 

二人のやりとりを見て、そう思うカロルであった。

しばらく待っていると、フレンとエステルの話が終わったらしく、宿屋の一室に入る三人。その部屋でユーリを待っていると、ユーリが部屋に入ってきた。

 

 

「用事は済んだのか?」

 

 

ユーリの問いにうなずくエステル。フレンはエステルから事情は聴いたようだが、どんな事情があれど、下町の魔核を取り戻した後、処罰をうけることになったユーリ。そのとき、騎士の格好をした女性と魔導士風の少年が入って来た。

 

 

「フレン様、情報が…なぜ、リタとリョウがいるんですか!!あなた達、帝国の協力要請を断ったそうじゃないですか?」

 

 

「誰?」

 

 

「『…だれだっけ?』」

 

 

ユーリの問いにリョウとリタが同時に答える。

 

 

「…ふん、いいですけどね。僕もあなた達に興味ありませんし」

 

 

「紹介する。アスピオで同行を頼んだウィチルと私の部下のソディアだ」

 

 

フレンは女性の騎士のソディアとアスピオの魔導士のウィチルを紹介した。

 

 

「こいつ…!賞金首のっ!!」

 

 

ソディアはユーリの顔を見ると、すかさず抜刀する。

 

 

「ソディア!待て彼は私の友人だ」

 

 

「なっ!賞金首ですよ!」

 

 

「事情は今、確認した。確かに軽い罪は犯したが、ほとんど濡れ衣だ。後日、受けるべき罰は受けてもらう」

 

 

「し…失礼しました。ウィチル、報告を」

 

 

ウィチルによると、雨や暴風の原因は、魔導器のせいだと思われ、ラゴウという執政官の屋敷内にそれらしき魔導器が運び込まれたとの証言があることを話した。

 

 

「執政官様が魔導器使って、天候を自由にしてるってわけか」

 

 

「ええ、あくまで可能性ですが。その悪天候を理由に港を封鎖し出航する船があれば、法令違反で攻撃を受けたとか」

 

 

「それじゃ、トリム港に渡れねえな…」

 

 

「執政官の悪いうわさはそれだけではない。リブガロという魔物を野に放って、税金を払えない住人たちと戦わせて遊んでいるんだ。リブガロを捕まえてくれば、税金を免除すると言ってね」

 

 

「そんな、ひどい…」

 

 

『入り口で会った夫婦のケガはそういうことか…』

 

 

「そういえば、子どもが…」

 

 

「子どもがどうかしたのかい?」

 

 

「なんでもねえよ。色々ありすぎて疲れたし、オレらこのまま宿屋で休ませてもらうわ」

 

 

そう言って部屋を出て行った。

 

 

宿屋を出て、これからのことを話し合い、とりあえずラゴウの屋敷に向かうことになったが、傭兵に引き止められ門前払いをくらってしまった。

次に献上品を持って行くことになり、リブガロを捕まえに行こうとしたが、カロル曰く「雨が降るとリブガロは出てくるけど、どこにいるかは分からない」らしいので、手分けして街の人に居場所を聞くことになった。

 

 

〖さて、誰に聞こうかな…〗

 

 

リョウが街を歩いていると、うさんくさそうな男を見つけた。

 

 

〖あのおっさんに聞いてみるか…『あのーすいません』

 

 

「ん?おっさんになにか用…!!」

 

 

うさんくさそうな男が振り向きリョウを見た瞬間驚き、少しの間固まっていた。

 

 

『あのーどうかしましたか?』

 

 

リョウの言葉で男は我に返り

 

 

「あっゴメンゴメンちょっとボーッとしててね…えっとおっさんになんの用?」

 

 

『リブガロっていう魔物を探しているんですけど、どこにいるか知りませんか?』

 

 

「うーん、ちょっと分かんないね。ゴメンね」

 

 

『そうですか…分かりました。すいません時間をとってしまって』

 

 

「いいのいいの気にしないで」

 

 

「おーい、リョウ、リブガロの居場所分かったよ」

 

 

少し離れたところでカロルの声がした。

 

 

『分かった。すぐ行く…「ちょ、ちょっと少年」

 

 

リョウは仲間のところへ行こうとしたが男に呼び止められた。

 

 

『どうしました?』

 

 

「少年の名前は?」

 

 

『リョウ・ゲキショウですけど…』

 

 

「リョウ・ゲキショウ…」

 

 

男は深く考え込んでいた。

 

 

『あのー…「え!?いい名前だと思ってね」

 

 

『そうですか…じゃあ、俺は急ぐんで』

 

 

リョウは仲間のところまで走って行った。

 

 

「偶然よね…」

 

 

男はリョウの背中を見てそうつぶやいた。

 

 

To be continued

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話 ラゴウ邸へ

リブガロの居場所が分かったリョウ達は街を出ようとしたところフレンに会った。

 

 

「相変わらずじっとしているのは苦手みたいだな」

 

 

「人をガキみたいに言うな」

 

 

「ユーリ、無茶はもう…」

 

 

「オレは生まれてこのかた、無茶なんてしたことないぜ。今も魔核ドロボウ追ってるだけだ」

 

 

そう言ってユーリ達は街を出た。

 

 

 

街の人の情報によれば南の森にいるらしく捜索していると、黄金の毛に身を包んだ魔物を見つけた。

 

 

「これがリブガロだよ!」

 

 

『よーし。さっさとはじめるか…「あんたは休んどきなさい」

 

 

リョウが戦闘態勢にはいろうとしたらリタに止められた。

 

 

『へ?なんで?』

 

 

「なんでって、傷が開いたらどうすんのよ」

 

 

『あ、そうか…』

 

 

「じゃあ、リョウはグミとかでサポート頼む」

 

 

『了解。まかせろ!』

 

 

ユーリの提案に従い、リョウはアイテムでのサポートととして、リブガロとの戦闘が始まった。

 

 

 

 

リブガロを気絶させることに成功したリョウ達。

 

 

『ボロボロだな…こいつ』

 

 

「街の連中に何度も襲われたんだろうな」

 

 

ユーリはリブガロのまえでかがみ込み、そのツノを折る。

 

 

「ユーリ…?」

 

 

「高価なのはツノだろ?金の亡者どもにゃこれで十分だ」

 

 

「あんたが魔物に情けなんてかなり意外なんだけど」

 

 

「のんきなこと言ってたら、ほら、起きるよ!」

 

 

目を覚ましたリブガロ。しかし、そのまま去っていった。

 

 

「あ、あれ?なんで?」

 

 

「わたしたちの意図を理解してくれたんですよ」

 

 

「魔物が?まさか?」

 

 

『まあ、いいじゃん。ツノが手に入ったし』

 

 

リョウ達は街へ戻ることに。

 

 

 

 

街に戻ると、最初に出会った夫婦にまた会った。

 

 

「待って!ティグル。せっかくケガを治してもらったのに!」

 

 

「止めるなケラス!リブガロを捕まえなくては…」

 

 

「そんな物騒なもん持ってどこに行こうってんだ?」

 

 

包帯だらけのティグルにユーリが尋ねる。

 

 

「あなた方には関係ない。好奇心で首を突っ込まれても迷惑だ」

 

 

ユーリはティグルの足下に、リブガロのツノを投げる。

 

 

「こ、これは…っ!?」

 

 

「あんたの活躍の場奪って悪かったなそれは、お詫びだ」

 

 

「「あ、ありがとうございます」」

 

 

「ちょ、ちょっと!あげちゃっていいの?」

 

 

「あれでガキが助かるなら安いもんだろ」

 

 

『ユーリ、最初からこうするつもりだったんだろ』

 

 

「思いつき思いつき」

 

 

『そういうことにしとくか。でも献上品がなくなったな…』

 

 

その後、エステルの提案でフレンの様子を見に行くことになった。

 

 

『あっ!』

 

 

「ん?どうしたリョウ」

 

 

『さっきのリブガロとの戦闘でグミとか少なくなっちまったから、買出しに行ってくるわ』

 

 

「そうか、じゃあオレらは宿屋へ行っとくわ」

 

 

『じゃあ、また後で…「待ってくださいリョウ」

 

 

エステルがリョウの右肩に治癒術をかける。

 

 

「右肩のケガが治ってないと聞いていたので。これで大丈夫だと思いますがあまり無理しないでください」

 

 

『ありがとう。エステル』

 

 

リョウはユーリ達と別れ買出しに行った。

 

 

『アップルグミとオレンジグミ…まあ、こんなもんかな』

 

 

買出しが終わり宿屋へ戻ろうとしたが、ラゴウの屋敷に向かう見覚えのある男を見つけた。

 

 

〖あのおっさんは確か…俺がリブガロの居場所を聞いたおっさんだよな…ラゴウの知り合いか?あやしいな…〗

 

 

リョウは男の後をつけて行った。

 

 

ラゴウの屋敷の前までやってきたリョウは男が物陰に隠れているのを見て

 

 

〖隠れてるってことは、知り合いじゃないってことか…屋敷の方も変わった様子はないから騎士団もだめだったか…〗

 

 

「おっリョウ君久しぶり」

 

 

リョウに気付いた男が声をかけてきた。

 

 

『なにしてるんですか?こんなところで』

 

 

「ちょっとあの屋敷に用があってね」

 

 

リョウは二人の門番を見て

 

 

『あの様子じゃ無理でしょうね』

 

 

「そうなのよーおっさん困っちゃってさあ…そこでさあリョウ君おっさんと協力しない?」

 

 

『断ります。なんで会って間もないうさんくさいおっさんに協力しなくちゃならないんですか』

 

 

つい、本音が出たリョウ

 

 

「うわーおっさん傷つくわーそんな風に思われていたなんて…じゃあ、おっさんの名前はレイヴン。敬語は不要。これでどう?」

 

 

『これでどう?って言われても…』

 

 

リョウが困っていると、ユーリ達がやって来た。

 

 

「買出しにしては長いと思ったら、こんなところにいたのね」

 

 

「ボク達捜したんだよ」

 

 

『ゴメンゴメンちょっと寄り道してた』

 

 

リタとカロルに謝るリョウ

 

 

「さて、どうやって入るかな…」

 

 

考え込むユーリにリョウが

 

 

『やっぱ、騎士団はダメだったかのか?』

 

 

「ああ、だから屋敷の中で騒ぎを起こして、騎士団に介入させるって作戦なんだが…」

 

 

「裏口を探すのはどうです?」

 

 

「残念、外壁に囲まれてて、あそこ通らにゃ入れんのよね」

 

 

いつの間にかエステルの後ろへ移動していたレイヴン

 

 

「えっと、どちら様です?」

 

 

「な~に、リョウ君と、かっこいい兄ちゃんとちょっとした仲なのよ。な?」

 

 

『俺はまだ会ったばかりだけど…ていうかユーリの知り合いだったのか?』

 

 

「いやっ違うから、ほっとけ」

 

 

「おいおい、ひどいじゃないの。ユーリ・ローウェル君よぉ」

 

 

「…おじさんの名前は?」

 

 

カロルが尋ねる。

 

 

「俺様の名前はレイヴン。ところで、屋敷に入れなくて困っているみたいだけど、俺様とリョウ君の力があればなんとかなるよ」

 

 

「え!?本当!?リョウ」

 

 

『おいおい、なに勝手なことを言ってんだよレイヴン』

 

 

カロルは期待しているが、リョウは困っている。

 

 

「でも、このままじゃ埒が明かないでしょ?」

 

 

『まあ、確かにそうだけど…分かったよ協力するよ』

 

 

「よしっ決まり。じゃあちょっとリョウ君借りるね」

 

 

そう言うとリョウを引きずって門番のところにむかうレイヴン。

 

 

『お、おいレイヴン!作戦とかはないのかよ!』

 

 

「そのうち分かるって」

 

 

「なんだてめぇは」

 

 

門番の二人が武器を構える。

 

 

「いやーあそこでたむろしている若い連中が何やら屋敷に忍びこむとか相談しているのを聞いちゃいましてね」

 

 

「なにー」

 

 

『お、おいレイヴン何言って!』

 

 

門番の二人はユーリ達の方へ向かっていった。その間に屋敷に入って行くリョウとレイヴン

 

 

『まさかレイヴンの作戦って…』

 

 

「そゆこと」

 

 

後ろの方でなにやら爆発音らしき音が聞こえた。おそらくリタの魔術であろう。

 

 

『そろそろ放せよレイヴン』

 

 

「もうちょっと協力してよ」

 

 

屋敷の側面へ回るとユーリ達が追いついてきた。

 

 

「よう、また会ったね。無事でなによりだ、んじゃ」

 

 

そう言い残しリョウとレイヴンはリフトに乗って上へ向かった。

 

 

ユーリ達も隣のリフトにのったが下に向かって行ったようだ。

 

 

 

 

 

 

ユーリ達と離ればなれになってしまったリョウはレイヴンと一緒にラゴウ邸のある一室にいた。

 

 

『まったく…どうしてくれんだよレイヴン。みんなと離れちまったじゃねえか』

 

 

「まあまあ、そう言いなさんなって一応屋敷の中に入れたでしょ」

 

 

『そうだけど…さっきからなに探してんだレイヴン?』

 

 

ラゴウ邸に入ってからレイヴンはいろんな部屋を物色している。

 

 

「んーそれはね…ヒ・ミ・ツ」

 

 

ガシャァァァァン

 

 

リョウはその辺にあった高そうな壺をレイヴンに向かって投げ、レイヴンは間一髪避けた。

 

 

「ちょ!?なにすんのリョウ君!?」

 

 

『いや、ちょっとイラッときたから』

 

 

そう言いもう一つ壺を投げようと構えるリョウ

 

 

「もう投げないで!!ほんとに秘密なんだって!!」

 

 

『分かった分かった冗談だよ…ところでもうみんなを捜しにいってもいいか?』

 

 

「ちょっと待って、リョウ君に聞きたいことが…」

 

 

ドォォォォォン

 

 

屋敷中に謎の爆発音が響いた。

 

 

『なんだ?今の音…あっちの方か』

 

 

リョウは部屋を出て音のした方を見る。

 

 

「ちょ、ちょっとリョウ君」

 

 

『話ならまた今度な。じゃあなレイヴン』

 

 

そう言ってレイヴンの元から去って行った。

 

 

音のした方へ向かうと、ひときわ大きな広間に出た。そこには巨大な魔導器があった。そこではユーリ達が傭兵数人と戦っていた。すぐさま

リョウは助太刀に入る。

 

 

「ちょっと、リョウ今までどこにいたのよ」

 

 

『リタ、その話は後だ。今はこいつらを片付けるぞ』

 

 

「ちっ次から次へと…あの男も捕えなさい」

 

 

声のする方へ目をやると初老の男がいた。おそらく奴がラゴウであろう。傭兵がリョウに襲いかかってくるが、ケガが治っているリョウの敵ではなかった。しばらくしてユーリが

 

 

「十分だ、退くぞ」

 

 

『もういいのか?』

 

 

「早く逃げねぇとフレンとご対面だ」

 

 

『それは勘弁だな…「執政官、何事かはぞんじませんが、事態の対処に協力致します」

 

 

ユーリと話してるうちにいつの間にかフレン達がやって来た。

 

 

「ちっ、仕事熱心な騎士ですね…」

 

 

ラゴウがそう言ってると突然

 

 

ガシャァァァァン

 

 

竜に乗った人間が窓を破って入って来た。

 

 

「うわぁ…!!あ、あれって竜使い!?」

 

 

カロルが驚いている間に竜使いは巨大な魔導器を破壊した。

 

 

「ちょっと!!何してくれてんのよ!魔導器を壊すなんて!」

 

 

リタが魔術で攻撃するが、かすりもしない。竜は火を吐き出し、今度はフレン達の足を止める。

 

 

「くっこれでは!」

 

 

「船の用意を!」

 

 

フレンが足を止めをくらっているうちに逃げようとするラゴウ。ラゴウを追って、リョウ達は屋敷の外へ出る。そこでリョウは同行者増えていることに気付く。海賊のような格好をした少女と男の子がいることに

 

 

『この二人は屋敷の中にいたのか?』

 

 

「ああ、二人とも捕まっていたんだ」

 

 

「うちはパティなのじゃ」

 

 

「ぼ、ぼくはポリー」

 

 

『俺はリョウだ』

 

 

軽く自己紹介をし、ユーリはパティとポリーに帰るように促し、二人は街へ帰って行った。そしてラゴウを再び追うことに

 

 

『にしてもあの竜使いはいったい…』

 

 

「あんなのバカドラで十分よ!竜使いなんて勿体ない!」

 

 

『…好きに呼べよ』

 

 

リタの言葉に少し呆れるリョウであった。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話 船上での戦い

リョウ達はラゴウを追い、屋敷の裏へ向かうが、ラゴウが用意していた船は出航しはじめていた。

 

 

「行くぞ…!」

 

 

「ちょっ待って!心の準備が~~~~!!」

 

 

そう叫ぶカロルにお構いなくユーリはカロルを抱え船に飛び乗る。

 

 

『リタ、ちょっといいか?』

 

 

「なに…って、きゃっ」

 

 

リョウはリタをお姫様抱っこして船に飛び乗った。

 

 

『ふう…間に合った』

 

 

「ちょっとリョウ!早くおろして!」

 

 

『ああ、わりいわりい』

 

 

飛び乗れて安心したのも束の間リタが暴れていたのですぐにおろした。リタは少しの間顔が真っ赤になっていた。

 

 

そして船の甲板でリョウ達は意外なものを見つける

 

 

「これ、魔導器の魔核じゃない!」

 

 

リタが驚く。

 

 

『すげえ数だな…』

 

 

「まさか、これって魔核ドロボウと関係が?」

 

 

「かもな」

 

 

「けど、黒幕は隻眼の大男でしょ?ラゴウとは一致しないよ」

 

 

エステルとユーリの会話に疑問に思うカロル。

 

 

「だとすると、他にも黒幕がいるってことだな。ここに下町の魔核は混ざってねえか?」

 

 

『残念だか、それほどの大型の魔核はないな』

 

 

ユーリとリョウが話していると傭兵達が現れリョウ達を取り囲む。すると、カロルが

 

 

「こいつら、やっぱり五大ギルドのひとつ、『紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)』だ」

 

 

傭兵達が襲いかかってきたがそれほど強くなくあっさり蹴散らし、ユーリとカロルは船室の入口に近づく。すると

 

 

「どきやがれぇっ!」

 

 

「うわっ」

 

 

勢いよく船室の扉が開き、カロルが少し後ろへとばされ中から隻眼の大男が現れる。ユーリは大男の背後に回っていて剣を向けていた。

 

 

「隻眼の大男…あんたか。人を使って魔核盗ませているのは」

 

 

「そうかもしれなえなあ…」

 

 

そう言って隻眼の大男は背後のユーリに斬りかかる。ユーリはすばやくかわし、距離をとる。

 

 

「いい動きだ、その肝っ玉もいい。ワシの腕も疼くねえ…うちのギルドにもほしいところだ」

 

 

「そりゃ光栄だね」

 

 

「だが、野心の強い目はいけねえ。ギルドの調和を崩しやがる惜しいな…」

 

 

「バルボス、さっさとこいつらを始末しなさい!」

 

 

「金の分は働いた。それにすぐ騎士が来る。追いつかれては面倒だ」

 

 

奥から現れたラゴウに、バルボスと呼ばれた隻眼の大男が応える。

 

 

「小僧ども次に会えば容赦はせん」

 

 

そう言い残し、バルボスは船に積まれた小舟に乗り込む。

 

 

「待て、まだ中に、ちっ…!ザギ!後は任せますよ!」

 

 

ラゴウも小舟に飛び乗り、2人は逃げて行った。すると船の奥から赤髪の男が現れる。

 

 

「誰を殺らせてくれるんだ…?」

 

 

「あなたはお城で!!」

 

 

「どうも縁があるみたいだな」

 

 

『エステル、ユーリ、知っているのか?』

 

 

「帝都でちょっとな…」

 

 

「フレンの命を狙っていた人です。たしか名前は…ザギ!」

 

 

「そうだオレの名はザギ…刃がうずく…」

 

 

『なんかヤバそうな奴だな…「死ねぇ!」

 

 

ザギがいきなりリョウに斬りかかってきたがリョウはそれを避ける。

 

 

『やるしかねぇか…』

 

 

リョウは白い太刀を抜いた。

 

 

「死ねぇ!」

 

 

ザギはもう一度リョウに斬りかかる。

 

 

『同じ手が通用するか!烈・魔神剣!』

 

 

リョウはザギの攻撃を避け、半円状の衝撃波を当てた。

 

 

「チィッ」

 

 

ザギは後ろにとばされ体制を立て直しリョウのいた場所見るが、リョウはいなかった。

 

 

「どこだ…『瞬迅脚!』がぁ…」

 

 

ザギの背中に衝撃が走る。リョウはいつの間にかザギの背後に回っていて強烈な蹴りをいれた。ザギはまたとばされ、その先にはユーリがいた。

 

 

『ユーリ!』

 

 

「まかせろリョウ!牙狼撃!」

 

 

ドゴォ

 

 

「ガ八ッ…」

 

 

ユーリの拳がザギの鳩尾に入り、ザギはその場でひざをついた。そして、リョウの太刀とユーリの剣がザギに向けられた。

 

 

『「勝負あったな」』

 

 

「…オ、オレが退いた…ふ、ふふふアハハは!おまえら、強い!強いな!覚えた覚えたぞリョウ!ユーリ!いずれ切り刻んでやるからな…アハハハハ」

 

 

そう言い残してザギは海へ飛び込んだ。

 

 

ドォォォォォン

 

 

いきなり爆発音が響き船上は一瞬で火の海になった。

 

 

「なに?なにがおきたの?」

 

 

カロルが少しパニックになる中火はどんどん広がっていく。

 

 

『最初からこの船ごと俺達を沈めるつもりだったのか』

 

 

「海へ逃げろ…「げほっげほっ…。誰かいるんですか?」

 

 

突然船室から声が聞こえた。ユーリはすぐにそこへ向かった。

 

 

「ユーリ!」

 

 

「エステリーゼ!ダメ!」

 

 

エステルがユーリの後を追いかけようとしたが、リタが止める。

 

 

「でも…でも…!」

 

 

『今はユーリを信じろ!』

 

 

そしてリョウ、リタ、エステル、カロル、ラピードは海へ飛び込んだ。

 

 

「みんな、大丈夫?」

 

 

「わたしは…でもユーリが…」

 

 

するとユーリが、金髪の少年をかかえて浮かんできた。

 

 

「ユーリ…!よかった…!…ヨーデル!」

 

 

エステルは金髪の少年を見て驚いた。

 

 

「知り合いなのかエステル?」

 

 

「え、えっとですね…」

 

 

ユーリの問いに答えを濁すエステル。

 

 

『ん?船が来たな、おーいこっちだ』

 

 

遠くから巨大な船が向かってくる。甲板にはフレンがいてすぐに全員救出された。そして、カプワ・ノールの対岸、カプワ・トリムに着いたリョウ達は、ユーリが助けた少年についての詳しい話は宿で聞くことになった。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話 裁かれぬ悪

カプワ・トリムの宿で話を聞くことになったリョウ達。宿の一室にはフレンとユーリが助けた少年、そしてラゴウの姿があった。

 

 

『おまえ…』

 

 

「おや、どこかでお会いしましたかね?」

 

 

「船のことで、都合のいい記憶喪失か?」

 

 

初対面を偽るラゴウにユーリが問うが、ラゴウは

 

 

「はて?記憶喪失も何もあなたと会うのはこれが初めてですよ?」

 

 

とぼけるラゴウにカロルが

 

 

「何、言ってんだよ!」

 

 

「執政官、あなたの罪は明白です。彼らがその一部始終を見ているのですから」

 

 

「何度も申し上げた通り、名前を騙った何者かが私を陥れようとしたのですよ」

 

 

フレンの追及にもひるまずにとぼけるラゴウ。

 

 

「ウソ言うな!魔物のエサにされた人たちを、あたしはこの目で見たのよ!」

 

 

〖魔物のエサにされた人…どういうことだ?〗

 

 

リタの言葉に疑問を抱くリョウ。それでもラゴウは

 

 

「さあ、フレン殿、貴公はこのならず者と評議会の私とどちらを信じるのです?」

 

 

「……」

 

 

フレンはうつむき何も言わない。

 

 

「決まりましたな。では失礼しますよ」

 

 

ラゴウは部屋から出ていく。

 

 

「なんなのよ、あいつは!」

 

 

『ちょっと落ち着けリタ、いったい俺のいない間になにがあったんだ?』

 

 

リタによるとラゴウ邸でリョウと別れた後、地下では大量の魔物が飼われており、エサにされた人の骨が無残にも転がっていたという。ポリーという少年もそこにいたのである。

 

 

『そんなことが…なんて野郎だ…』

 

 

「…で、リョウ、あんたはいったいあのおっさんとなにしてたのよ?」

 

 

『なんか探し物しているのをただ見てただけなんだ。何を探してるのかは教えてくれなかったけど』

 

 

「はあ?なにそれ…まあいいわ…んで、こいつは何者?」

 

 

リタはユーリが助けた少年に指をさす。

 

 

フレンによると、少年は次期皇帝候補のヨーデル殿下であり。先代皇帝の甥御にあたるという。なぜラゴウに捕まっていたのかは言えないようである。そのことでユーリとフレンは口論になりユーリは部屋を出て行った。

 

 

『おい、ユーリ!』

 

 

リョウもユーリを追って部屋を出た。

 

 

宿屋の外に出るとリョウはユーリを見つけた。ユーリは黙って考え込んでいた。

 

 

『おーい。ユーリ』

 

 

「ん?ああ、リョウか…わるいなみっともねえとこ見せて」

 

 

『ユーリの気持ちもわかるさ…でも、これが現実なんだな…』

 

 

「ああ、なにも変わっちゃいねえんだ…オレも帝国も…」

 

 

『これからどうすんだ?』

 

 

「魔核の手掛かりを探すか」

 

 

『じゃあ、街で聞き込みだな』

 

 

ユーリとリョウは手分けして街で聞き込みを開始した。

 

 

するとリョウは、見たことのあるうさんくさいおっさんを見つけた。

 

 

『あれは…レイヴン?おーい』

 

 

するとうさんくさいおっさんことレイヴンは声に気付いた。

 

 

「ん?おーリョウ君じゃないの、久しぶり」

 

 

『久しぶりーじゃなくて、探し物は見つかったのか?』

 

 

「残念ながらなかったのよね。聖核(アパティア)…」

 

 

『聖核?』

 

 

「あっ」

 

 

うっかり口が滑ったレイヴン。

 

 

(まあいいか隠さなくて)

 

 

「魔核のすごい版らしくてね。あそこにあるって聞いたんだけど違ったみたい」

 

 

『ふーん…あっ!そういえば、なんか俺に聞きたいことがあるんじゃないのか?』

 

 

「あっ!そうそう思い出した。リョウ君って歳いくつ?」

 

 

『18から20ぐらいだと思うんだけど…』

 

 

「思うって…分かんないんの?」

 

 

『俺、記憶喪失なんだ』

 

 

「え!?そうだったのごめんね…」

 

 

『いいっていいって気にすんな。それよりさ「紅の絆傭兵団」ってギルド追ってるんだけど知らないか?』

 

 

「そのギルドかどうかは分かんないけど、物騒なギルドが北西へ移動しているのは見かけたよ」

 

 

『おおっ!ナイス情報ありがとうレイヴン…「あっ!リョウ!」

 

 

遠くからカロルの声が聞こえた。

 

 

「あんの…オヤジ…」

 

 

殺気のこもったリタの声も聞こえた。

 

 

「逃げた方がいいかねえ、リョウ君?」

 

 

『逃げないとたぶん、こんがり肉にされると思うぞ』

 

 

「それは勘弁…じゃあね」

 

 

「待て、こら!」

 

 

逃げるレイヴンをリタは追っていく。するとユーリとカロルとラピードがリョウに近づいてきた。

 

 

「なんで逃がしちゃうんだよ!」

 

 

カロルの問いにリョウは

 

 

『まあ、悪いヤツじゃないって…たぶん』

 

 

「たぶんって…」

 

 

呆れるカロル。するとユーリが

 

 

「なんか情報はあったか?」

 

 

『さっきのおっさんがいうには、物騒なギルドが北西へ行ったらしい』

 

 

「それ信用できるの…?」

 

 

「オレはなにも情報を掴めなかったからな…行ってみるか」

 

 

カロルの心配をよそにそう決めたユーリ。そのあとリタが戻ってきて、エステルが遅れてやってきた。カロルによると北西には地震で滅んだ街があるらしい。リョウ達はその街へ行ってみることになった。

 

 

 

 

 

 

 

あんたも面白い武器使ってるんだな

 

 

も?ってことはおまえ…ナ…と知り合いか?

 

 

ああ、まあな。知り合いなら…の中に何人かいるぜ。あんたの名前は?

 

 

…ミュ…ンだ。

 

 

いい名前だ…俺は…

 

 

 

 

 

 

パチッ

 

 

野宿をしていた男…レイヴンは目を覚ます。

 

 

「夢か…にしても懐かしいねえ…」

 

 

レイヴンはもう一度眠りにつく

 

 

(あいつはもういない……死んだんだ……あれはただの偶然……)

 

 

そう言い聞かせながら深い眠りに落ちた。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話 滅んだ街

レイヴンの情報を頼りに、トリム港北西の街までやってきたリョウ達。

 

 

「こりゃ、完璧に廃墟だな」

 

 

「こんなところに誰が来るっていうのよ」

 

 

周りを見わたすユーリとリタ。

 

 

『おかしいな~。なんかのギルドがこっちへ行ったって聞いたんだけど』

 

 

リョウが先へ進もうとしたその時。

 

 

「そこで止まれ!当地区は我ら『魔狩りの剣(マガリのツルギ)』により現在、完全封鎖中にある」

 

 

声のした高台に目をやるとブーメランの様な武器を携えた少女が立っていた。

 

 

「ナン!」

 

 

カロルが声を上げる。

 

 

『カロル、知り合いか?』

 

 

「うん。ちょっとね…ボクがいなくて大丈夫だった?」

 

 

「なれなれしく話し掛けてこないで」

 

 

ナンと呼ばれた少女はカロルを冷たい眼で見る。

 

 

「冷たいな。少しはぐれただけなのに」

 

 

「よくそんなウソが言える!逃げ出したくせに」

 

 

「逃げ出してなんかないよ!」

 

 

「せっかく魔狩りの剣に誘ってあげたのに…もう、あんたクビよ!」

 

 

「え!そ、そんな待ってよ!」

 

 

「魔狩りの剣より忠告する!速やかに当地区より立ち去れ!」

 

 

そう言い残して、ナンは去って行った。

 

 

『ああ言ってたけど、どうする?』

 

 

「先に進むに決まってるでしょ」

 

 

「リタ、待ってください。忠告忘れたんですか?」

 

 

先に進もうとするリタにエステルは注意する。

 

 

「入っちゃだめとは言ってなかったでしょ?」

 

 

『そうそう。まあ、なんかあってもリタは俺が守るから』

 

 

「あ、あたりまえよそれがあんたの仕事なんだから…」

 

 

「なんだ?照れてんのか?」

 

 

「うっさい!さっさと行くわよ!」

 

 

ユーリがリタを茶化すと、リタはスタスタと奥へ進んで行った。

 

 

「ま、とにかく行ってみようぜ」

 

 

「分かりました」

 

 

「クビ…クビ…」

 

 

ユーリの呼びかけについていくエステルと俯いたままのカロルであった。

 

 

 

 

 

街のある建物の階段を下りると、リョウ達は巨大なスペースに行き当たる。らせん階段でさらに下り、最下層にたどり着くとカロルが体の異変を感じた。

 

 

「な、なんだろう。さっきから気持ち悪い」

 

 

するとリタが

 

 

「鈍感なあんたでも感じるの?」

 

 

「鈍感はよけい…!っていうかリタも?」

 

 

「こりゃ、なんかあんな」

 

 

『ああ、体が重い…』

 

 

「ユーリも…リョウも…エステルも?」

 

 

「………」

 

 

エステルはその場に座り込んでしまった。

 

 

『大丈夫か?エステル』

 

 

「は、はい、ありがとう。まだ大丈夫です」

 

 

エステルはリョウの手を借り立ち上がる。よく見ると周囲には光のカタマリが漂っている。するとリタが

 

 

「…これ、エアルだ」

 

 

「え?エアルって目み見えるの?」

 

 

カロルが尋ねる。

 

 

『濃度が上がると目に見えるようになるんだ。んで、濃いエアルは人体に悪影響を及ぼすんだ』

 

 

「こりゃ、引き返すかな」

 

 

「でも、傭兵団がいるかまだ確かめていませんよ」

 

 

ユーリの提案にエステルが反対する。

 

 

「いや、まあそうなんだけど…」

 

 

「行きましょう」

 

 

先に進むと、魔導器がありリタが調べると

 

 

「この魔導器がドアと連動しているみたいね」

 

 

『どうやって開けるんだ?』

 

 

「ご丁寧にパスワードを入力しなきゃダメみたい」

 

 

「パスワードって言われても…」

 

 

カロルが考えているとリョウがあることを思い出した。

 

 

『そういえば、さっき変な紙拾ったんだけど…』

 

 

「見せて見せて」

 

 

リョウはカロルに3枚の紙を渡す。

 

 

「空…光…球…分かった!太陽だ!」

 

 

カロルが魔導器にパスワードを入力すると、重そうな扉が開く。

 

 

『やったな!カロル』

 

 

リョウはカロルとハイタッチをする。

 

 

そして、リョウ達は部屋の中に入る。

 

 

部屋の中では、宙に浮いた魔導器が稼働していた。

 

 

『なんだあの魔導器?水が浮いてるし』

 

 

「あれは逆結界ね…きっとエアルの異常な量はあの子が原因ね…」

 

 

「逆…結界?」

 

 

カロルがリタに尋ねる。

 

 

「魔物を閉じ込めるための強力な結界よ」

 

 

「でも魔物なんて…「グォォォォォ」

 

 

カロルがしゃべっていると突然の咆哮が部屋に響き渡る魔導器を見ると内側に巨大な魔物が動いていた。

 

 

『でっけえ魔物だな…』

 

 

「ちょっとリョウ感心してないでこの子直すのを手伝って」

 

 

『わかった』

 

 

リタとリョウが魔導器に近づくと

 

 

「ワンッ!!」

 

 

ラピードがほかの気配に気付く。すると、男の声が聞こえてきた。

 

 

「俺様達の優しい忠告を無視したのはどこのどいつだ?」

 

 

結界を挟んで反対側に入口で出会ったナンとフードを被った男と巨大な剣を持った大柄な男がいた。

 

 

『あいつらは?』

 

 

「魔狩りの剣のメンバーだよ。フードを被っているのがティソンで、巨大な剣を持っているのが首領(ボス)のクリント」

 

 

リョウの問いに答えるカロル。するとティソンとクリントが

 

 

「誰かと思えばクビになったカロル君じゃないか。エアルに酔っているのか。そっちはかなり濃いようだね」

 

 

「ちょうどいい。そのまま大人しくしていろ。こちらの用事はこのケダモノだけだ」

 

 

突然、魔物とは違う雄叫びがこだまする。

 

 

「何っ!?」

 

 

エステルが見た先に竜使いが現れ、魔導器に一撃を加える。

 

 

「またあいつ!」

 

 

リタが竜使いを睨むが、結界が破れ、魔物が出てきた。クリントはその魔物と戦おうとするが、竜使いが魔物の援護に入る。ティソンとナンは竜使いに狙いを定め、攻撃を開始する。すると魔物は暴れだし、あたりの地面が隆起する。リョウはみんなと離ればなれになってしまい、リョウの目の前には巨大な魔物がいた。

 

 

『俺一人じゃ荷が重すぎんだろ…』

 

 

と言いつつも太刀を構える。

 

 

巨大な魔物はリョウに向かって前足を振り下ろす。

 

 

『おっとあぶねえ』

 

 

リョウは避けて魔物の前足をつたい背中までジャンプした。

 

 

『鬼炎斬!!』

 

 

魔物の背中に炎の刃を斬りつける。

 

 

「グォォォォォ」

 

 

すると、魔物は雄叫びを上げ、その衝撃でリョウは吹き飛ばされる。

 

 

『いててて…』

 

 

「大丈夫か!?リョウ」

 

 

体を起こすと、ユーリ、エステル、リタ、ラピードがいた。どうやら合流できたようだ。

 

 

『ああ、なんとかな…』

 

 

「結局ペットの面倒を見んのは保護者に回ってくるのな」

 

 

「あたし達が相手よ」

 

 

「ワンッ!!」

 

 

ユーリ、リタ、ラピードが戦闘体制をとる。しかし、魔物は奥の部屋へと去って行った。

 

 

『あれ?なんで?』

 

 

「とりあえず助かりました。」

 

 

キョトンとするリョウとホッとするエステル。すると、リョウはあることに気付く。

 

 

『カロルは?』

 

 

カロルがいないのである。部屋の中では逆結界が壊されたせいで水が漏れてきていて、魔狩りの剣も竜使いもいつの間にかいなくなっていた。

 

 

「オレ達も退くぞ」

 

 

そうユーリが言いリョウ達は外へ出る。

 

 

 

 

 

外へ出るとカロルとナンの声が聞こえる。

 

 

「あたしに説明しなくてもいい。する相手は別にいるでしょ」

 

 

「え…?」

 

 

カロルはリョウ達の方へ振り向く

 

 

『カロル、無事だったか』

 

 

「どこ行ってたんだか」

 

 

「ケガもないみたいだな」

 

 

リョウ、リタ、ユーリが声をかけるとナンが

 

 

「もう、行くから。自分が何をしたのか考えるのね。じゃないともう知らないから」

 

 

ナンは去って行った。ユーリはカロルの頭をなでる

 

 

「わっ、ちょっと!や~め~て~よ~!」

 

 

「行こうぜカロル。もう疲れた」

 

 

「ユーリ」

 

 

「しかしとんだ大ハズレね。紅の絆傭兵団なんていないし…あのおっさん次は顔を見た瞬間に焼いてやるっ!」

 

 

リタが殺気を出しているのを見てリョウは

 

 

〖レイヴン…ドンマイ…〗

 

 

To be continued

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話 逮捕のち・・・・

廃墟の出口を目指すリョウ達。

 

 

「グルルルル」

 

 

ラピードが唸り声を上げる。出口には身分の高そうな騎士とその部下らしき騎士が待ち受けていた。

 

 

「ようやく見つけたよ、愚民ども。そこで止まりな」

 

 

「わざわざ海まで渡って、暇なんだなキュモール」

 

 

「うるさいよ!まあいい。とりあえず姫様こちらへ」

 

 

キュモールと呼ばれた騎士はユーリの言葉を無視し、エステルの方へ目を向ける。

 

 

「姫様って誰…?」

 

 

カロルの疑問にユーリが

 

 

「姫様は姫様だろ、そこの目の前のな」

 

 

「え…ユ、ユーリどうしてそれを…?」

 

 

「え…エステルが…姫様?」

 

 

ばれていたことに驚くエステル。姫であることに驚くカロル。しかし、リタとリョウは

 

 

「やっぱりね。そうじゃないかと思ってた」

 

 

『俺も俺も』

 

 

あまり驚いていないのであった。エステルはキュモールの前に出て

 

 

「彼らをどうするのですか?」

 

 

「決まってます。姫様誘拐の罪で八つ裂きです」

 

 

「待ってくださいわたしは誘拐されたのではなくて…」

 

 

「あ~、うるさい姫様だね!こっちに来てくださいよ!」

 

 

キュモールは剣を振りかざした。すると、今度はリョウがキュモールの前に出る。

 

 

『姫様の前でそんな物騒なもん振りかざすんじゃねえよ』

 

 

「なんだいキミは?ジャマなハエはそこで死んじゃえ」

 

 

「ユーリ・ローウェルとその一味を罪人として捕縛せよ!」

 

 

その時、キュモールの背後からルブランの声が聞こえ、アデコールとボッコスも現れた。

 

 

「貴様らシュヴァーン隊…!ちっ命拾いしたね…」

 

 

そう言い残してキュモールとその部下は去って行き、そのあと、リョウ達はシュヴァーン隊に連行されていった。

 

 

 

 

 

新興都市 ヘリオード

 

 

 

ルブラン達にヘリオードまで連行されたリョウ達は騎士団本部の一室で尋問されている。

 

 

「もう飽きてきたんだけど」

 

 

「ええ~い!まだまだ罪はあるのであ~る」

 

 

ユーリとアデコールが言い争っている中リョウはルブランに

 

 

『ちょっとひとつ聞いていいか?』

 

 

「答えられることなら聞いてやろう」

 

 

『あんたのところの隊長のシュヴァーンってさっきの廃墟の高台にいた人?』

 

 

「そうだ」

 

 

『ふ~ん…』

 

 

「ちょっとリョウどうしたのよ?深く考え込んで」

 

 

『いや、べつに…』

 

 

リタにはそう答えたが、リョウは何かが引っかかっていた。

 

 

〖シュヴァーン…どこかで見たような気が…〗

 

 

ガチャッ

 

 

部屋の扉が開き、白髪の男とその補佐らしき女性が入ってきた。

 

 

「ア、アレクセイ騎士団長閣下!どうしてこんなところに!?」

 

 

「アレクセイ…なんで」

 

 

ルブランとユーリは驚きを隠せない様子である。白髪の男…アレクセイが

 

 

「エステリーゼ様、ヨーデル様のお計らいで君の罪はすべて赦免された」

 

 

「な、なんですとぉっ!こいつは帝都の平和を乱す凶悪な犯罪者で…!」

 

 

ルブランはまたも驚く、アレクセイは話を続ける。

 

 

「ヨーデル様の救出並びに、エステリーゼ様の護衛、騎士団として礼を言おう」

 

 

「こちらを…」

 

 

女性がユーリに金の入った袋を差し出す。

 

 

「いらねえよ。騎士団のためにやったんじゃない。それよりアレクセイ、エステルだが…」

 

 

「先ほど、帝都に戻る旨、ご了承いただいた。今、姫様は宿でお待ちいただいている。顔を見せてあげてほしい」

 

 

「エステル…帰っちゃうんだね…」

 

 

寂しそうに言うカロルであった。

 

 

 

 

騎士団本部を出て、宿屋に向かったリョウ達だったが、エステルはもう休んでいて会うことができなかったので、とりあえず一泊することにした。翌日、宿屋のロビーに集まったリョウ達。すると、大きな地響きが街中に響いた。

外に出ると、街の結界魔導器が大量のエアルを放出しており光っていた。一目散にリタは結界魔導器に駆け寄る。

 

 

『リタ!待て!』

 

 

リョウもリタを追いかけて結界魔導器の近くに行く。

 

 

「リョウ!?あんたは避難しなさい!」

 

 

『バカ言うな!俺はおまえの助手であることを忘れたのか!おまえを置いて避難なんてできるか!』

 

 

「リョウ…分かったわ」

 

 

リタとリョウは操作盤で作業をする。その間にフレンとアレクセイは市民を街の外へ誘導させている。

 

 

『尋常じゃないくらいのエアルが流れ込んでいやがる…最悪爆発も…』

 

 

「リタ!リョウ!」

 

 

エステルがふたりのそばまで駆け寄って来た。身体からは光が放たれている。

 

 

『…エステル…』

 

 

「よしっ、できた…」

 

 

『…!リタ!エステル!あぶねえ!』

 

 

結界魔導器が治ったと思ったその時、結界魔導器は大きな音を立て、あたりは閃光に包まれる。リタとエステルが目を開けると目の前に傷だらけのリョウが倒れていた。

 

 

「…!リョウ!!しっかりしてぇ!!」

 

 

「あたし達を庇って…」

 

 

リョウはすぐに宿屋の一室へ連れていかれた。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13話 気づいた想い

リョウがケガをし、宿屋の一室に運ばれた。エステルはベッドに寝かされているリョウに治癒術を使っているとリタが部屋に入ってきた。

 

 

「エステル、あんたはもう休みなさい」

 

 

「え、でも…」

 

 

「リョウはもう落ち着いてるし、あんたが倒れたら元も子もないでしょ」

 

 

「わかりました…」

 

 

「大丈夫よ、リョウはそんなケガで死ぬような奴じゃないわ。あたしが言うんだから間違いないわ、あとはあたしが看とくから」

 

 

「そう…ですね…じゃあ、おやすみなさい」

 

 

エステルは隣のベッドに入り、リタはリョウのベッドの隣に座る。

 

 

「リョウ…」

 

 

小さくリョウの名前をつぶやくリタはリョウのある言葉を思い出していた。

 

 

バカ言うな!俺はおまえの助手であることを忘れたのか!おまえを置いて避難なんてできるか!

 

 

「あの言葉、とてもうれしかったわ、ありがとうリョウ…」

 

 

しかし、リョウからの返事はない。リタは不安になってきた。

 

 

(もし、このままリョウが目覚めなかったら…あたし…あたし…)

 

 

リタの目から涙がこぼれてきた。それと同時にリタはあることに気づく

 

 

(あたし…リョウのこと…好きなんだ…だからこんなに涙が…)

 

 

それはリタがはじめて異性を好きになった瞬間であった。

 

 

(胸もドキドキするし…これが…人を好きになることなの?)

 

 

はじめての感覚に戸惑うリタ。すると

 

 

『う、う~ん…あれ?リタ…』

 

 

リョウが目を覚まし、上半身を起こす。

 

 

「リョウ…」

 

 

リョウの目の前には涙を流しているリタの姿があった。

 

 

『リタ!どうした…「リョウ!!」

 

 

いきなりリタはリョウに抱き付いた。

 

 

「よかった!目が覚めたのね!このまま目が覚めないのかと思ったらあたし…あたし…」

 

 

リタがリョウの胸の中で泣きはじめる。

 

 

『リタ…ごめん…心配かけて…』

 

 

リョウもリタを抱きしめる。しばらくしてリタの泣く声が小さくなった。

 

 

『落ち着いたか?』

 

 

「うん……ハッ!?」

 

 

リタは我に返りリョウから離れる。

 

 

「ご、ごめん…いきなり抱き付いて…」

 

 

『い、いや、べつに気にしてないから…むしろ…いや!何でもない!』

 

 

ふたりの顔がリンゴのように真っ赤になっていると、扉をノックする音が聞こえてきた。

 

 

『は、はいっていいぞ~』

 

 

扉の奥からユーリが部屋に入って来た。

 

 

「目が覚めたか、よかったな…どうした?ふたりとも顔が真っ赤だぞ」

 

 

「な、なんでもないわよ」

 

 

「ふむぅ…あれ?リョウ!目が覚めたんですね!あ、でも油断したらだめですよ!治ったと思った頃が危ないんです」

 

 

エステルも目が覚めて、リョウにもう一度、治癒術を使う。

 

 

『エステル、もう大丈夫だ。それと、もう魔導器を使うフリ、もうやめていいぞ』

 

 

「な、何のことです?」

 

 

「魔導器がなくても、治癒術使えるなんてすげえよな」

 

 

「ユーリ…どうしてそれを…」

 

 

『聞きそびれてたんだけど、どうして使えるんだ…「グオオオオオ」

 

 

突然、咆哮とともに竜使いが部屋の外に現れ、炎を吐き出すがユーリが剣で受け止めた。

 

 

「すごい音がしたけどどうしたの…って、うわあっ!?」

 

 

カロルが部屋に入ってきたところで、竜使いは去って行った。

 

 

「なに、なんだったの、あれ?」

 

 

カロルが呆然としているとリタが

 

 

「あのバカドラ…大事な話の途中だったのに」

 

 

「エステルの治癒術に関しては、とりあえず、ここまでな」

 

 

『そうだなユーリ。今日はもう疲れた…おやすみ~……グーグー』

 

 

「「「寝るのはやっ!?」」」

 

 

「わたし達も、もう寝ましょう」

 

 

 

 

 

翌日、宿屋の外でリョウ達はエステルに別れを告げる。

 

 

「帝都までの道中は気をつけてな」

 

 

「はい。ユーリ達はこのあとどうするんです?」

 

 

「そうだな紅の絆傭兵団の足取りも途絶えちまったし…」

 

 

すると、カロルが

 

 

「だったら、この先にあるダングレ…スト…はだめだ。今、戻ったら、みんなにバカに…」

 

 

「ダングレストっていうと、確かギルドの街だったよな?」

 

 

「う、うん。だから、紅の絆傭兵団の情報もみつかるかもな~って」

 

 

「なら、行くか。ギルド作るにしても、色々と参考になるだろうし」

 

 

「え?ギルドのために?なら、行こう!」

 

 

『カロル、ユーリ、ギルド作るのか?』

 

 

「うん!そうなんだ。リョウもどう?」

 

 

『俺はリタの助手兼護衛のほうが合ってるからな』

 

 

「それもそうだね」

 

 

エステルを送るため、街の中央までやってきたリョウ達はフレンがいないことに気づくとアレクセイがやってきた。

 

 

「フレンは別の用件があり、すでに旅立った。さて、リタ・モルディオ、君には昨日の魔導器の暴走の調査を依頼したい」

 

 

「あれ調べるのはもう無理。あの子、今朝少しみたけど結局何も分からなかったわ」

 

 

「いや、ケーブ・モック大森林に行ってもらいたい。最近、森の木々に異常や魔物の大量発生、凶暴化が報告されている」

 

 

「あたしの専門は魔導器。植物は管轄外なんだけど?」

 

 

「エアル関連と考えれば、管轄外でもないはずだ」

 

 

リタが少し考えていると、エステルが自分も一緒に森へ行くと言い出した。アレクセイは最初反対したが、ユーリ達と一緒に行くという条件で承諾した。ユーリ達が去った後、アレクセイはとある男に声をかける。

 

 

「君にやってもらう仕事ができた」

 

 

To be continued

 




スキット いつのまに


リョウ『なあ、リタ』


リタ「なに?」


リョウ「おまえ、いつのまにエステリーゼからエステルってよぶようになったんだ?」


リタ「ま、前からよんでたわよ…」


リョウ『ふ~ん。そういうことにしとくか…』


リタ「うっさい!」


バキッ


リョウ『いてっ!?』



スキット2 見られた?


リョウ『な、なあ、リタ…』


リタ「なに?」


リョウ『み、見られてないよな?エステルに、あれ』


リタ「あれって?」


リョウ『俺とおまえが抱き合って、おまえが泣いていたところ』


リタ「…!み、見られてないわよ…エステルは寝てたはずなんだから…」


リョウ『そ、そうだよな』


リタ「あ、あれはふたりだけの秘密よ!誰にも言っちゃだめよ!」


リョウ『わ、分かってるって…誰にも言わない…っていうか言えない…』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14話 ダングレストにて

ギルドの巣窟 ダングレスト

 

 

ギルドの街、ダングレストに着いたリョウ達

 

 

「ここがダングレスト、ボクのふるさとだよ」

 

 

『にぎやかだな~』

 

 

「そりゃ、帝都に次ぐ第二の都市で、ギルドが統治する街だからね」

 

 

カロルが誇らしげに話しているとユーリが

 

 

「さてと、バルボスの情報を集めなきゃな」

 

 

「ユニオンに顔を出すのが早くて確実だと思うよ」

 

 

『ユニオンってなんだ?カロル』

 

 

「ユニオンとはギルドを束ねる集合組織で、5大ギルドによって運営されている、ですよね?カロル」

 

 

カロルの代わりにエステルが答えた。

 

 

「うん、それと、この街の自治も、ユニオンが取り仕切ってるんだ」

 

 

「でも、いいわけ?バルボスの紅の絆傭兵団って5大ギルドのひとつでしょ?」

 

 

『ってことはバルボスに手出したら、ユニオンも敵に?』

 

 

リタとリョウの質問にカロルは少し考えて

 

 

「…それは、ドンに聞いてみないとなんとも」

 

 

『「「「ドン?」」」』

 

 

「5大ギルドの元首『天を射る矢(アルトクス)』を束ねるドン・ホワイトホースだよ」

 

 

「んじゃ、そのドンに会うか。カロル、案内頼む」

 

 

「ちょっとそんな簡単に会うって…。ボクはあんまり…」

 

 

『ダングレストはふるさとなんだろ?場所ぐらいはわかるんじゃ…』

 

 

「……ユニオンの本部は街の北側にあるよ」

 

 

しぶしぶと歩きはじめるカロル。

 

 

〖どうしたんだ?カロルのやつ〗

 

 

ユニオン本部を目指して歩いていると、なにかしらのギルドの男二人組が現れ、カロルを見て

 

 

「ん?そこにいるのはカロルじゃねえか」

 

 

「どの面下げてこの街に戻ってきてんだ?」

 

 

「な、なんだよ、いきなり」

 

 

「おや、ナンの姿が見えないな?ついに見放されちゃったか、あはははっ!」

 

 

「ち、違う!いつもしつこいから、ボクがあいつから逃げてるの!」

 

 

「これがあるから、ダングレスト行きを最初嫌がったんだな」

 

 

ユーリが納得をしていると、ギルドの男二人組が

 

 

「あんたらがこいつ拾った新しいギルドの人?相手は選んだ方がいいぜ」

 

 

「自慢できるのは、所属したギルドの数だけだし。あ、それ自慢にならねえか」

 

 

「カロルの友達か?相手は選んだ方がいいぜ?」

 

 

「な、なんだと!」

 

 

「あなた方の品位を疑います」

 

 

「ふざけやがって!」

 

 

「あんた、言うわね。ま、でも同感」

 

 

「言わせておけば…」

 

 

『やるってんなら相手になるぜ、ダチを悪く言うやつには容赦しないからな』

 

 

ユーリ、エステル、リタ、リョウが言い返していると

 

 

カンカンカン…ゴゴゴゴゴ…

 

 

街に鐘が鳴り響き、地鳴りのようなものが聞こえてきた。

 

 

『ん?何の音だ?』

 

 

「やべ…また、来やがった…」

 

 

「行くぞ!」

 

 

ギルドの男二人組は去って行き、カロルが

 

 

「警鐘…魔物が来たんだ」

 

 

『魔物か…かなりの数かもな』

 

 

「ま、でも心配いらないよ。最近やけに多いけど。ここの結界は丈夫で、破られたこともないしね。外の魔物だって、ギルドが撃退…」

 

 

そう言い、カロルが街の結界を見ていると、結界がまたたき、消えてしまった。

 

 

「…って、ええっ!!」

 

 

「結界が、消えた…?」

 

 

「一体どうなってんの!魔物が来てるのに!」

 

 

『みんな、とりあえず魔物を止めに行くぞ』

 

 

来た道を戻って行くと、すでに大量の魔物が街に入り込んでいる。

 

 

「ちょっと異常だよ…!」

 

 

「魔物の様子も普段と違いませんか?」

 

 

『みんな構えろ、来るぞ!』

 

 

獣型の魔物…サイノッサスがリョウに向かって突進してきた。

 

 

『幻龍斬!!獅子戦孔!!』

 

 

サイノッサスを斬りながら前進し、後ろで回ったところでさらに二回斬りつけ、そこから獅子戦孔を放ちサイノッサスは倒れた。

 

 

その後、リョウ達は魔物を倒していくが、減る気配はない。

 

 

『くそっキリがねえ…ん?』

 

 

リョウの目に次々と魔物を蹴散らす老人が目にはいる。

 

 

「さあ、クソ野郎ども、いくらでも来い。この老いぼれが胸を貸してやる!」

 

 

『すげえじいさんだな…』

 

 

リョウが感心していると、カロルが

 

 

「ドンだ!ドン・ホワイトホースだよ!」

 

 

「ドンだ!ドンがきたぞ!」

 

 

「一気に蹴散らせ!俺たちの街を守るんだ!」

 

 

街のギルド員の士気が一気に高まった。

 

 

『すげえな…』

 

 

「ちょっとリョウ!結界魔導器直しに行くわよ」

 

 

『ああ、分かった』

 

 

カロルの案内により結界魔導器の近くまでやって来たリョウ達、リタとリョウが魔導器を操作しようとすると、黒装束の男達が現れる。

 

 

「結界は直させんぞ」

 

 

『ジャマだ!獅子戦孔!!』

 

 

「ぐわああああ」

 

 

黒装束の男ひとり吹き飛ばすが、まだ数人いる。

 

 

「爪龍連牙斬!!」

 

 

「撃槌フロウアッパー!!」

 

 

「ホーリィランス!!」

 

 

黒装束の男達を蹴散らし、リタとリョウが魔導器を操作していると、フレンが騎士を連れてユーリ達に駆け寄って来たことにエステルが気づき

 

 

「フレン!来てたんです?」

 

 

「はい。魔物の討伐を協力しようとしたのですが…」

 

 

「断られたってところか?」

 

 

「ああ。だから、結界魔導器の様子を見に来たんだが…」

 

 

「天才魔導士とその助手しだいってやつだ。フレン、おまえが来たってことは、これも帝国のごたごたと関係ありってわけか」

 

 

「わからない、だから確かめに来た」

 

 

フレンとユーリが話しているうちに結界が復活した。

 

 

「さすが、リタとリョウ」

 

 

「よし、外の魔物を一掃する!外ならギルドも文句を言うまい」

 

 

フレンは去って行った。

 

 

魔物の方はフレンに任して、ギルドユニオン本部へ行くリョウ達だったが、ドンは魔物の巣を一網打尽にすると言って不在だったので、先にケーブ・モック大森林に行くことになった。その話を男が屋根の上で盗み聞きをしていた。

 

 

「ケーブ・モック大森林とは。偶然ってあるもんだねえ」

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話 大森林の調査

ケーブ・モック大森林

 

 

『ここがケーブ・モック大森林か…にしてもでけえ木だな~』

 

 

リタが木々を見て

 

 

「ヘリオードで魔導器が暴走したときのかんじになんとなく似てるわね」

 

 

『じゃあ、さっそく調査を…誰だ!?』

 

 

リョウがなにかの気配に気づき、振り返るとレイヴンがいた。

 

 

「よっ、偶然!」

 

 

『レ、レイヴン?なにしてんだこんなとこで?』

 

 

「自然観察と森林浴って感じだな」

 

 

「うさん臭い…」

 

 

カロルがつぶやく。

 

 

「あれ?歓迎されてない?」

 

 

「本気で歓迎されるなんて思ってたんじゃないでしょうね」

 

 

リタはいろいろと根に持っているようだ。

 

 

「そんなこと言うなよ。俺、役に立つぜ。んで、一人じゃ寂しいから一緒に行きたいんだけど?」

 

 

『俺はいいけど…みんな、どうする?』

 

 

「背後には気をつけてね。変なことしたら殺すから」

 

 

「余計な真似したら、オレもなにするかわかんないんで、そこんとこはよろしくな」

 

 

リタとユーリに釘をさされながらも一応同行の許可はもらえた。先へ進んでいるとレイヴンが

 

 

「リョウ君、俺ってそんなにうさん臭い?」

 

 

『俺も最初はうさん臭そうなおっさんだな~と思ったけど、今はそんなことないぜ』

 

 

「そう言ってくれるのはリョウ君だけだよ~」

 

 

『おい!レイヴン離れろ、暑苦しいし、気持ちわりい』

 

 

レイヴンがリョウに抱きついてきて、すぐに振り払おうとするがその前に

 

 

「ちょっと!おっさん!リョウから離れなさいよ!」

 

 

リタの手がレイヴンを掴み、リョウから引き離す。

 

 

『ふう、助かったよリタ』

 

 

「べ、べつにいいわよ」

 

 

「あれ~もしかして」

 

 

レイヴンはニヤニヤしながらリタを見る。

 

 

「な、なによ…」

 

 

「リョウ君とおっさんが仲良くしてるのを見て、妬いちゃったの?」

 

 

「なっ!?そ、そんなんじゃないわよ!」

 

 

「顔真っ赤にしちゃって、説得力ないわよ~」

 

 

『え!?リ、リタ…』

 

 

リョウの顔も真っ赤になっていた。

 

 

「もしかして、おふたりさんはもう、そういう関係…『獅子戦孔!!』「ファイアボール!!」

 

 

ドォォォォォン

 

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ……」

 

 

レイヴンの断末魔の叫びが森中に響いた。一連のやり取りを見ていたカロル、ユーリ、エステルは

 

 

「いつのまにリョウとリタってそういう関係に?」

 

 

「さあな、気になるんだったら聞けばいい」

 

 

「やだよ!ボクまだ死にたくない」

 

 

「そういう関係ってどんな関係です?」

 

 

「恋人…『魔神剣!!』「ストーンブラスト!!」

 

 

「うわぁぁぁぁ……」

 

 

新たな犠牲者カロルの断末魔の叫びも響いた。

 

 

「触らぬ神に祟りなし、だな。行こうぜエステル」

 

 

「そ、そうですね…」

 

 

「見捨てないでちょうだい……ぎゃぁぁぁぁぁ……」

 

 

「ボクもいるのに……うわぁぁぁぁぁ……」

 

 

後日、ケーブ・モック大森林には魔物に殺された男ふたりの断末魔の叫びが夜な夜な響き、心霊スポットになったとかならなかったとか。

 

 

 

 

リョウ達が森を進んでいると

 

 

「うちをどこへ連れてってくれるのかのー」

 

 

『ん?誰の声だ?』

 

 

声がする方を見ると、昆虫につかまれた海賊の格好をしている少女が宙を舞っていた。

 

 

『あいつはたしか…「パティだよ!早くたすけなきゃ…」

 

 

カロルが武器を構えるが、レイヴンが昆虫めがけて矢を放ち命中し、落下するパティをユーリが受け止めた。

 

 

「ナイスキャッチなのじゃ」

 

 

すぐユーリはパティを捨てる。

 

 

『おいおいユーリ、なにしてんだよ、立てるか?』

 

 

パティに手を差し伸べるリョウ。

 

 

「ありがとなのじゃ…えっと…」

 

 

『ラゴウの屋敷の時はドタバタしてたからな、リョウだ。リョウ・ゲキショウ』

 

 

「パティなのじゃ。リョウもなかなか…」

 

 

リョウの顔を見るパティ

 

 

『俺の顔になんかついてるのか?』

 

 

「なんでもないのじゃ」

 

 

ユーリはパティに

 

 

「あいかわらず、アイフリードのお宝って奴を探しているのか?」

 

 

「のじゃ」

 

 

今度はリタが

 

 

「嘘くさ。本当にこんなところに宝が?誰に聞いてきたのよ」

 

 

「測量ギルド、天地のあなぐらが色々と教えてくれたのじゃ。連中は世界を回っとるからの」

 

 

『それでラゴウの屋敷にいたのか?』

 

 

「のじゃ。とりあえず、うちは宝探しを続行するのじゃ」

 

 

「一人でウロウロしたら、さっきみたいに魔物に…パティ!後ろ!」

 

 

エステルが叫んだ理由はパティの背後に昆虫が現れたからである。しかし、パティはすぐさま銃弾をたたき込み、撃退した。

 

 

「つまり、ひとりでも大丈夫ってことか」

 

 

「一緒に行くかの?」

 

 

「せっかくだけど、お宝探しはまたの機会にしとくわ」

 

 

パティの誘いを断るユーリ

 

 

「それは残念至極なのじゃ。でもうちはそれでもいくのじゃ。サラバなのじゃ」

 

 

パティはリョウ達から去って行った。

 

 

『んじゃ、俺達も行きますか』

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16話 謎の男と太刀の名

パティと別れ、森の奥まで来たリョウ達は大量のエアルが立ち上る場を所発見した。

 

 

「これ、ヘリオードの街で見たのと同じ現象ね。あの時よりエアルが弱いけど間違いないわ…」

 

 

リタがエアルを見ていると、背後から巨大な昆虫型の魔物が次々と姿を現し、リョウ達を取り囲む。

 

 

『なんて数だ…それに様子もおかしい』

 

 

「ダングレストを襲ったのと様子が似てます!」

 

 

「ああ、ここで死んじまうのか。さよなら。世界中の俺のファン」

 

 

「世界一の軽薄男、ここに眠るって墓に彫っといてやるからな」

 

 

『レイヴン、ユーリ、俺はまだ死ぬつもりはないからな』

 

 

リョウが戦闘体勢をとろうとしたその時、周囲に光が立ち上がり、魔物の大群が消え去り、銀髪の男が現れた。

 

 

『誰だ…?』

 

 

「デューク…」

 

 

『レイヴン、知り合いか?』

 

 

「まあ、ちょっとね…」

 

 

エアルの暴走が収まり、デュークは何も言わず去ろうとしたが、リタが

 

 

「ちょっと、待って!」

 

 

「……」

 

 

「その剣は何っ!?見せて!今、いったい何をしたの?エアルを斬るっていうか…」

 

 

「知ってどうする?」

 

 

「そりゃもちろん…いや…それがあれば、魔導器の暴走を止められるかと思って…。前にも魔導器が暴走を見たの。エアルが暴れて、どうすることもできなくて…」

 

 

「それはひずみ、当然の現象だ」

 

 

「ひず…み…?」

 

 

「あ、あの、危ないところをありがとうございました」

 

 

エステルが礼を言うと、デュークは

 

 

「エアルクレーネには近付くな」

 

 

「エアルクレーネって何?ここのこと?」

 

 

リタが質問する。

 

 

「世界に点在するエアルの源泉、それがエアルクレーネ」

 

 

『エアルの源泉ねえ…ま、とりあえずありがとう』

 

 

「礼にはおよば……!?」

 

 

デュークがリョウの顔を見た瞬間、一瞬デュークは凍りついたようにかたまった。

 

 

「おま…え…は…」

 

 

『俺?俺はリョウだ。リョウ・ゲキショウ』

 

 

「リョウだと……」

 

 

「あんた!もしかしてリョウのこと知ってんの!?」

 

 

「い、いや、そうではない…」

 

 

リタがデュークに問い詰めるが、デュークは何も答えず去っていった。

 

 

「あいつ…明らかに動揺してたわ」

 

 

『そうだな…でも、何も思い出せないな…今は調査しようぜ』

 

 

「わかったわ…でもここだけ調べてもわからないわ。他のも見てみないと」

 

 

『ってことはここで調べることはもうないのか?』

 

 

「そういうことね」

 

 

『じゃあ、調査終了だな』

 

 

「んじゃ、ダングレストに戻ってドンに会おうぜ」

 

 

ユーリがそう言い、リョウ達は来た道を引き返す。

 

 

 

ケーブ・モック大森林の入口付近まで戻って来たリョウ達。

 

 

「エアルの異常で魔導器が暴走、そのせいで魔物が凶暴化…。それがあいつの言うひずみと関係あるなら、この場所だけじゃすまないのかも」

 

 

『どうしたリタ?さっきからぶつぶつと…』

 

 

突然、地鳴りが響く。

 

 

「うわ、何!?また魔物の襲撃?」

 

 

『カロル、とりあえず、隠れるぞ』

 

 

リョウ達が隠れていると、魔物の大群が、森の奥へ向かって行った。大群が過ぎ去ると、エステルとカロルは人の姿に気づく

 

 

「あ…あの人たち…」

 

 

「ドンだ…!」

 

 

「…てめえらが何かしたのか?」

 

 

「何かって何だ?」

 

 

「暴れまくってた魔物が突然、おとなしくなって逃げやがった。何ぃやった?」

 

 

「ボクたちが、エアルの暴走を止めたから、魔物もおとなしくなったんです」

 

 

「エアルの暴走?ほぉ…」

 

 

『じいさん、なんか知ってんのか?』

 

 

「いやな、ベリウスって俺の古い友達がそんな話をしてたことがあってな」

 

 

「…ドンが南のベリウスと友達って本当だったんだ…」

 

 

『カロル、誰なんだ?ベリウスって?』

 

 

「ノードポリカで闘技場の首領をしている人だよ」

 

 

『ふ~ん』

 

 

「で?エアルの暴走がどうしたって?」

 

 

「本当大変だったんです!すごくたくさん、魔物が次から次へと、でも…!」

 

 

「坊主、そういうことはな、ひっそり胸に秘めておくもんだ」

 

 

「へ…?」

 

 

「誰かに認めてもらうためにやってんじゃねえ、街や部下を守るためにやってるんだからな」

 

 

「ご、ごめんなさい…」

 

 

「ちょっと、すみません。見せてくださいますか?」

 

 

エステルが負傷しているドンの部下に治癒術を使う。

 

 

「すまねえな…ん?そこにいるのはレイヴンじゃねえか。何隠れてんだ!」

 

 

「ちっ」

 

 

「うちのもんが、他人様のとこで迷惑かけてんじゃあるめえな」

 

 

「え!?レイヴンって、天を射る矢の一員なの!?」

 

 

カロルが驚き、ドンは刀の柄でレイヴンを突く

 

 

「いてっじいさん、それ反則…!反則だから…!」

 

 

「うるせぃっ!」

 

 

「ドン・ホワイトホース」

 

 

ユーリが突然口を開く

 

 

「何だ?」

 

 

「会ったばっかで失礼だけど、あんたに折り入って話がある」

 

 

「若えの、名前は?」

 

 

「ユーリだ。ユーリ・ローウェル」

 

 

「ユーリか、分かった話を聞こう…「ドン、お話中、すみません」

 

 

ドンの部下がやってきて、ドンに耳打ちをしている。

 

 

「ん、わかった。野郎ども、引き上げだ。すまねえなユーリ、急用でダングレストに戻らにゃならねえ。ユニオンを訪ねてくれりゃあ優先して話を聞くから、それで勘弁してくれ」

 

 

「いや、約束してもらえるならそれで構わねえよ」

 

 

「ふん、俺相手に物怖じなしか。てめぇら、いいギルドになれるぜ」

 

 

ドンが去ろうとしたその時、空から魔物が飛んできてドンの背後から襲いかかろうとしてきた。

 

 

「ちぃっ」

 

 

『あぶねえじいさん、魔神剣!!』

 

 

リョウの魔神剣が魔物に当たり、撃退した。

 

 

「助かったぜ、若えの……ん?その太刀……」

 

 

ドンはリョウの白い太刀を見て驚いている。

 

 

『太刀(こいつ)を知ってんのか?じいさん?』

 

 

「ああ、でも、まさかな……ちょっと持たしてくれねえかその太刀」

 

 

『あ、ああ』

 

 

リョウはドンに白い太刀を渡すが…

 

 

「!?…こいつは…」

 

 

ドンが白い太刀を持った瞬間、突然重力がかかったように持った手が地面に叩きつけられて、持ち上げられない。

 

 

「あのドンでも持ち上げられないの!?」

 

 

「ちょっとなによ、あの太刀…」

 

 

「リョウはあんな重いものをいつも背中に?」

 

 

カロルとレイヴンとエステルが驚いているとドンが

 

 

「白い刀身……刃こぼれが一切ない……間違いねえ……こいつは……銀河刀・銀雪花(ぎんせつか)だ」

 

 

『ぎん……せつ……か……?』

 

 

ドンは白い太刀…銀雪花を持っていた手を離し、続ける。

 

 

「銀河刀・銀雪花は存在自体してたのかも怪しい幻の名刀だ。その特徴は、刀身が雪のように白い、刃こぼれがしない、そして……」

 

 

『そして……?』

 

 

「特別な力を持った者にしか持つことができない」

 

 

『特別な力……ってなんなんだ?』

 

 

「すまねぇな。そこまでは分からねえんだ。どこで手に入れた?」

 

 

『俺は記憶喪失で、気付いたら持ってたんだ銀雪花(こいつ)を』

 

 

「そうか…でもそいつは銀雪花に間違いねえ!まさか生きてるうちに出会えるとはな!長生きもしてみるもんだ!」

 

 

ドンは去って行った。

 

 

『特別な力…俺が武醒魔導器を使ってないのと関係あるのか…?』

 

 

「一番可能性が高いのはそれでしょうね…で、なんか思い出した?」

 

 

リタがリョウに尋ねるが

 

 

『いや、それがなにも…』

 

 

「そう…」

 

 

「ふたりとも、置いてくよー」

 

 

リョウとリタが話していると、遠くからカロルの声が聞こえる

 

 

『わかった。すぐ行く』

 

 

To be continued

 




スキット ぶつぶつ…


リョウ『銀雪花…銀雪花…銀雪花…ダメか…』


ユーリ「さっきからぶつぶつと…なに言ってんだ?」


リョウ『いや…太刀(こいつ)の名前言ってたら、なんか思い出すかなって思ったんだけど、ダメだな…』


ユーリ「その辺にしとけよ、いつ魔物が襲って来るか分かんねえから」


リョウ『そうだな。太刀(こいつ)の名前が分かっただけでも十分だ』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話 罠

ダングレストに戻り、リョウ達はギルドユニオン本部へ訪れると、フレンとドンが話をしていた。

 

 

「フレンじゃねえか」

 

 

「ユーリ…」

 

 

「てめぇら、帰ってきたか。すまねぇな、優先して話を聞くって言ったんだが、この騎士団の若えのも急いでるみてぇでな」

 

 

「オレらの話はフレンの後でもいいぜ」

 

 

「いいのかい?ユーリ」

 

 

「ああ」

 

 

「では改めてドン、バルボスについてですが…」

 

 

「おまえもバルボス絡みなのか?」

 

 

「ということは、ユーリも?」

 

 

「どうやらバルボスがいろんなところに迷惑かけてるみてぇだな。ギルドとして、けじめはつけにゃあならねえ」

 

 

「では……」

 

 

「ああ、ここは手を結んで、打倒、紅の絆傭兵団といこうじゃねぇか。ベリウスにも連絡しておけ」

 

 

「ドン、こちらにヨーデル殿下より書状を預かって参りました」

 

 

フレンはドンに書状を差し出す。

 

 

「ほぉ、次期皇帝候補の密書か。レイヴン、読んで聞かせてやれ」

 

 

「ドン・ホワイトホースの首を差し出せば、バルボスの件に関しユニオンの責任は不問とす」

 

 

「何ですって…!?」

 

 

「うわはっはっは!これは笑える話だ。おい、お客人を特別室にご案内しろ!」

 

 

「ドン・ホワイトホース、聞いてください!これは何者かの罠です」

 

 

フレンはドンの部下達に連れ去られていく。エステルが追いかけようとしたがユーリに止められた。

 

 

「帝国との全面戦争だ!総力を挙げて、帝都に攻めのぼる!客人は見せしめに、奴らの目の前で八つ裂きだ!二度となめた口きかせるな!!」

 

 

ドンは立ち上がり、部屋を出て行った。

 

 

『話どころじゃなくなったな』

 

 

「わたし、帝都に戻って、本当のことを確かめます!」

 

 

『エステル、もうちょっと様子をみようぜ。早まらない方がいい』

 

 

「わ…わかりました」

 

 

リョウ達はとりあえず、ユニオン本部を出た。

 

 

 

街を歩いていると、ユーリが突然立ち止り

 

 

「あれ…?おかしいな」

 

 

『どうした?ユーリ』

 

 

「…財布落としたみたいだ」

 

 

「こんなときに何やってんの!」

 

 

呆れるカロル

 

 

「ドンのとこで落としたかな?ちょっと探してくる。そのあたりで待っててくれ」

 

 

ユーリはユニオン本部へ戻っていった。

 

 

〖ありゃ、フレンを見に行ったな…〗

 

 

しばらく待っていると、街にはどんどんギルド員が集まってきている。

 

 

「グルルルル…」

 

 

突然、ラピードが唸り声を上げる。

 

 

『どうした?ラピード…あのギルドは…おい!みんな』

 

 

「どうしたのよ?リョウ」

 

 

「なにかあったんです?」

 

 

「どうしたの?」

 

 

『紅の絆傭兵団を見つけた』

 

 

「本当に!?バルボスもいた?」

 

 

『いや、いなかった…そこでだ、あとをつけようと思う』

 

 

「でも、ユーリがまだ…」

 

 

『そうか…じゃあ、俺とリタとラピードで追う』

 

 

「分かったわ」

 

 

「ワンッ」

 

 

リョウとリタとラピードは、カロルとエステルと別れ、紅の絆傭兵団のギルド員のあとを追いかけた。そして、ギルド員は見張りのいる酒場に入って行った。

 

 

「厳重な警備ね。いかにも怪しい」

 

 

『あんなに厳重だと、ここにいますよ~って言ってるもんだな』

 

 

しばらく酒場を見張っていると、ユーリ達がやって来た。

 

 

「リョウ、リタ…!」

 

 

『静かに…声がでかいぞカロル。それにユーリも遅いぞ』

 

 

「わりいな、色々あってな……(ユーリが酒場の入口を見て)ありゃ、ちょっと無理矢理押し入るってわけにゃいかなそうだな」

 

 

『あの酒場にバルボスがいたとして、少しでも騒ぎをおこしたらすぐ逃げられちまう』

 

 

「どうしよっか…」

 

 

カロルが考えていると

 

 

「いーこと教えてあげよう」

 

 

振り返ると、レイヴンがいた。

 

 

「おいおい、いいのか、あっち行かなくて」

 

 

「よかないけど、青年達が下手打たないように、ちゃんとみとけってドンがさ。ゆっくり酒場にでも行って俺様のお話聞かない?」

 

 

「わたし達にそんなゆっくりしている暇は…」

 

 

『…ただの酒場じゃないんだろ?レイヴン』

 

 

「おお、よくわかってるじゃないリョウ君」

 

 

「ど、どういうこと?」

 

 

「行ってみるしかねえみたいだな」

 

 

「もしなんもなかったら覚悟しときなさい」

 

 

「わかってますって。ほらほら、こっちこっち」

 

 

レイヴンの案内で、もうひとつの酒場に向かったリョウ達。

 

 

「ちょいと通してもらうよ」

 

 

リョウ達とレイヴンは、酒場の奥の部屋に入って行く。

 

 

「なんだ、ここは」

 

 

「ドンが偉い客迎えて、お酒を飲みながら秘密のお話をするところよ」

 

 

「ここでおとなしく飲んでろってのか?」

 

 

『違うぞユーリ、レイヴンがここに連れてきた理由はこれだろ?』

 

 

リョウが近づいた壁には隠し扉があった。

 

 

「ほお~。よくわかったわねリョウ君」

 

 

『わずかだが、隙間風が吹いてるのが分かったからな。んで、さっきの酒場までの道があるんだろ?』

 

 

「そういうこと」

 

 

「ちゃちゃっと忍び込んで奴らふん捕まえる。回り道だが、それが確実ってことか。いくぜみんな」

 

 

扉の先は地下水道になっており、真っ暗だったがラピードが証明のように光る光照魔導器(ルクスブラスティア)を見つけて辺りを照らしながら地下道を進んで行くと、ユーリが壁面に何かを見つけた。

 

 

「ん、なんかここに刻んであるな。…文字か。なんだ?」

 

 

「ねえ…これって『ユニオン誓約』じゃない?」

 

 

『知ってんのか?カロル』

 

 

「ドンがユニオンを結成した時に作られた、ユニオンの標語みたいなもんだよ。でも、なんでこんなところに?」

 

 

「ユニオンってのは帝国がこの街を占領した時に抵抗したギルド勢力が元になってんのよ。それまでギルドはバラバラで、問題が生じた時だけ団結してた。でも帝国に占領されて、ようやくそれじゃまずいって悟った訳ね」

 

 

「そのギルド勢力を率いたのがドン・ホワイトホースなんだ!?」

 

 

「そういうこと」

 

 

カロルとレイヴンの話を聞いていたエステルは何かに気づき、壁の下の方を注視する。

 

 

「ここ…アイフリードって書いてあります」

 

 

「ああ、あの大悪党って噂の海賊王か」

 

 

「ドンが言うには一応、盟友だったそうよ。でも、頭の回る食えない人物で、あのドンすら相手すんのに苦労したってさ」

 

 

『やっぱすげえじいさんなんだな…ドンって』

 

 

「面白いもんがみれたが、今はバルボスだ。そろそろ行こうぜ」

 

 

地下道を進んでいくと、酒場らしき場所に出た。

 

 

「ここは…」

 

 

「バルボスがアジトに使ってる街の東の酒場」

 

 

『やっぱりここにバルボスが…?』

 

 

「上があるみたいだな…上がってみるか」

 

 

リョウ達が二階へ上がるとバルボスとラゴウがいた。

一方、外では騎士とギルドの大軍が、今にも戦いを始めそうな勢いでにらみあっている。

 

 

「悪党が揃って特等席を独占か?いいご身分だな」

 

 

「その、とっておきの舞台を邪魔するバカはどこのどいつだ?」

 

 

バルボスがユーリを見る

 

 

「ほう、船で会った小僧どもか」

 

 

「この一連の騒動は、あなた方の仕業だったんですね」

 

 

「それがどうした。所詮貴様らにワシを捕えることはできまい」

 

 

ドォォォォォン

 

 

遠くから大砲のような音が聞こえてきた。

 

 

「バカどもめ、動いたか!これで邪魔なドンも騎士団もぼろぼろに成り果てるぞ!」

 

 

「まさか、ユニオンを壊して、ドンを消すために…!」

 

 

「騎士団がぼろぼろになったら、誰が帝国を守るんです?ラゴウ、どうして…あっ」

 

 

「なるほど、騎士団の弱体化に乗じて、評議会が帝国を支配するってカラクリね」

 

 

「で、紅の絆傭兵団が天を射る矢を抑えてユニオンに君臨する、と」

 

 

『騎士団とユニオンの共倒れか…ない知恵出した割にはよくできてるな』

 

 

「そして、おまえらの命もここで終わりだ」

 

 

「それはどうかな…ったく、遅刻だぜ」

 

 

「なにっ!?」

 

 

バルボスが外を見ると、ギルドと騎士の間に立ち、書状を掲げているフレンの姿があった。

 

 

「ヨーデル殿下の記した書状をここに預かり参上した!帝国に伝えられた書状も逆臣の手によりものである!即刻、軍を退け!」

 

 

「ユーリ!あの人、フレンを狙っています!」

 

 

バルボスの部下が、ライフルでフレンを狙っている。それを見たカロルは、すかさず金槌を投げつける。

 

 

「当たった!」

 

 

「ナイスだ、カロル!!」

 

 

「ガキども!邪魔はゆるさんぞ!」

 

 

バルボスが巨大な銃を取り出す。

 

 

『何だ!?あのバカでかい銃は!』

 

 

バルボスが巨大な銃で撃とうとした時、突然現れた竜がバルボスを吹き飛ばした。

 

 

「なっ…なんだぁっ…!?」

 

 

「また出たわね!バカドラ!」

 

 

「リタ、間違えるな、敵はあっちだ…!」

 

 

「あたしの敵はバカドラよ!」

 

 

『今はそれどころじゃねえだろ!』

 

 

「ちっ。ワシの邪魔をしたこと、必ず後悔させてやるからな!」

 

 

バルボスが機械仕掛けの剣を振りかざすと、竜巻が起こり、バルボスの身体が宙に浮き、どこかへ飛んで行った。

 

 

『逃げる気か!』

 

 

竜使いもバルボスを追おうとすると、ユーリが

 

 

「やつを追うなら一緒に頼む!羽のはえたのがいないんでね」

 

 

「あんた、なに言ってんの!こいつは敵よ!」

 

 

「オレはなんとしても、やつを捕まえなきゃなんねぇ…頼む!」

 

 

竜使いが、ゆっくりユーリのところまで下りてきた。

 

 

「助かる!」

 

 

「待って!ボク達も…!」

 

 

「定員オーバーだ。おまえらは留守番してろ!」

 

 

ユーリは竜使いと共にバルボスを追って行った。

 

 

「ユーリのバカぁっ!」

 

 

『カロル、俺達は俺達のできることをやろう』

 

 

「え?」

 

 

『まずは…オラァ!』

 

 

リョウはさっきカロルが投げた金槌を投げた。すると

 

 

ガンッ

 

 

「ぐあ!」

 

 

どさくさに紛れて逃げようとしたラゴウに直撃した。

 

 

『なに逃げようとしてんだラゴウさんよ』

 

 

ラゴウは気絶している。

 

 

『こいつを騎士団に引き渡して、ユーリを助けにいこうぜ』

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18話 歯車の楼閣へ

ラゴウを騎士団に引き渡したリョウ達はユーリを助けに行くことについて話している。

 

 

『ユーリと竜使いが飛んで行った方角になんかあったけ?カロル』

 

 

「たしか…大きな塔があったよ!」

 

 

『ユーリも竜使いもバルボスもそこにいる可能性が高いな』

 

 

「じゃあ、早くユーリを助けに行きましょう!」

 

 

「あたしも行くわ。言っとくけど、あたしはあのバカドラを殴りに行くんだからね!」

 

 

『よし!じゃあ、出発…「ちょっと待ってー」

 

 

リョウ達がダングレストから出発しようとした時、後ろからレイヴンが走って来た。

 

 

『どうしたレイヴン、なんか用か?』

 

 

「俺もついていくわ」

 

 

『なんでだ?』

 

 

「ドンが、バルボスなんぞになめられちゃいけねえとか言い出して…」

 

 

『そりゃ、断れねえな…じゃあ、改めて出発だ!』

 

 

リョウ達はダングレストを出て、巨大な塔を目指し出発した。

 

 

 

 

 

歯車の楼閣 ガスファロスト

 

 

巨大な塔…ガスファロストへ着いたリョウ達はまず、見張りをしているバルボスの部下と戦っていた。

 

 

『幻龍斬!!』

 

 

「臥龍アッパー!!」

 

 

「フォトン!!」

 

 

「罪と罰・罪!!」

 

 

「これで最後!!ファイアボール!!」

 

 

『片付いたか…』

 

 

部下をすべて倒すと塔の扉が開き、ユーリが出てきた。

 

 

「おっ…今終わったところか?」

 

 

「ユーリ!」

 

 

エステルがユーリの身体を触る。

 

 

「ちょっと、離れろって…」

 

 

「だいじょうぶですか!?ケガはしてません?」

 

 

「なんともないって。心配しすぎ。おまえらも…おとなしくしてろって言ったのに」

 

 

「だってユーリのことが心配で!」

 

 

『カロルの言う通りだ。おまえだけいい格好させられっか!』

 

 

「ボクは心配しただけなんだけど…」

 

 

ユーリの無事を安心していると、ユーリの後ろからクリティア族の女性が塔の中から出てきた。

 

 

「…だ、誰だ、そのクリティアッ娘は?どこの姫様だ?」

 

 

レイヴンが食いつく。

すると、ユーリが

 

 

「オレと一緒に捕まってたジュディス」

 

 

「こんにちは」

 

 

「ボク、カロル!」

 

 

「エステリーゼって言います。エステルって呼んでください」

 

 

「リタ・モルディオ」

 

 

『その助手兼護衛のリョウだ』

 

 

「そして俺様はレイヴン。よろしくジュディスちゃん」

 

 

自己紹介を終えるとエステルが

 

 

「ジュディス、あなたはここへ何しに来てたんですか?」

 

 

「私は魔導器を見に来たのよ」

 

 

『こんなところに?物好きだな』

 

 

「ふ~ん、研究熱心なクリティア人らしいわ」

 

 

『そういえばユーリ。水道魔導器の魔核は?取り返せたのか?』

 

 

「残念ながらな」

 

 

「じゃあ、この塔のどこかにあるのかなあ…」

 

 

カロルが上を見上げたその時、バルボスの部下が上空から襲いかかってきた。

 

 

「うわあ!!」

 

 

「ちっ」

 

 

ユーリは構えるが、部下は別の男…フレンに倒された。

 

 

「大丈夫か!」

 

 

「フレン!?おまえ、仮にも小隊長がなにやってんだ、ひとりで」

 

 

「人手が足りなくてね。それにどんな危険があるかも分からなかったし」

 

 

「衝突はもう大丈夫なんです?」

 

 

「ドンが真相を伝えたので、みな落ち着きを取り戻しました。あとはバルボスだけです」

 

 

『じゃあ、フレンもバルボスを?じゃあ、一緒に行こうぜ』

 

 

「分かった。時間もないし、急ごう」

 

 

リョウ達は歩き出すが、レイヴンはその場から動かずにいた。

 

 

『レイヴン?』

 

 

「ちょっと弓の調子が悪いから、調整するわ。先に行っててちょうだい」

 

 

『分かった。そういえばレイヴンの弓って面白い仕掛けしてんだな』

 

 

「これのこと?」

 

 

レイヴンは弓を変形させて剣のようにさせる。

 

 

『それそれ。レイヴンって面白い武器使うんだな』

 

 

「……」

 

 

レイヴンは急に黙り込む。

 

 

『どうした?』

 

 

「え、あ、いや、そういえば古い友達が同じようなこと言ってたなって」

 

 

『ふ~ん、まあ、ちゃんと調整して早く来てくれよ』

 

 

リョウは先へ行った。するとレイヴンは物陰にいる人物に語りかける。

 

 

「いい歳して、かくれんぼ?デューク」

 

 

その人物はデュークだった。さらにレイヴンは

 

 

「リョウ君を見たとき、珍しく動揺してたじゃない?知ってんの?リョウ君のこと」

 

 

「……」

 

 

デュークは何も言わない

 

 

「だんまりね……」

 

 

「これだけは言える……リョウ・ゲキショウはもうこの世にはいない…」

 

 

そう言い残してデュークは去って行った。

 

 

「この世にはいないか……」

 

 

あんたも面白い武器使ってるんだな

 

 

レイヴンって面白い武器使うんだな

 

 

レイヴンは前に見た夢に出てきた人物の言葉とさっきリョウが言った言葉を重ねていた。

 

 

(分かっちゃいるんだけど、あんなに似てるとねえ……)

 

 

 

 

塔の頂上までたどり着いたリョウ達。それに気づいたバルボス

 

 

「性懲りもなく、また来たか」

 

 

「待たせて悪ぃな」

 

 

リタがバルボスの剣を見てあることに気づく

 

 

「あの剣にはまっている魔核、水道魔導器の…!」

 

 

「ああ、間違いない……」

 

 

「分をわきまえぬバカどもが。カプワ・ノール、ダングレスト、ついにガスファロストまで!忌々しい小僧どもめ!十年の歳月を費やしたこの大楼閣ガスファロストとあの男と帝国を利用して作り上げたこの魔導器があれば、世界はワシのものになるのだ!」

 

 

『あの男…?』

 

 

「手始めに失せろ!ハエども!」

 

 

バルボスは剣から衝撃波を放つ。リョウ達はそれをかわし、一段低い場所へ避難したが、バルボスが追ってくる。

 

 

「大丈夫か、みんな!!」

 

 

「あの剣はちっとやばいぜ」

 

 

「やばいっていうか…こりゃ反則でしょ」

 

 

「圧倒的ね」

 

 

フレンの呼びかけに応えるユーリ、レイヴン、ジュディスだったが、バルボスの剣の力に圧倒されている。

すると、いつの間にか塔の上にデュークが現れ

 

 

「伏せろ」

 

 

デュークが剣を掲げると光が放射され、バルボスの剣が大破して、デュークは去って行った。

 

 

「なにっ」

 

 

『あいつは…デューク…』

 

 

「今はよそ見すんな!」

 

 

バルボスは大破した剣を見て

 

 

「…くっ、貧弱な!」

 

 

『形勢逆転だな』

 

 

「所詮、最後に頼れるのは、己の力のみだったな。来い!ワシの力とワシの作り上げた紅の絆傭兵団の力。とくと味わうがよい!」

 

 

バルボスと紅の絆傭兵団との戦闘が始まった。

 

 

「まずは、貴様からだ小僧!」

 

 

バルボスはリョウに大剣で斬りかかって来た。

 

 

ガキィン

 

 

すぐさまリョウは銀雪花で受け止め、弾き返しバルボスと距離をとる。

 

 

『魔神剣!!』

 

 

「甘いわ!」

 

 

バルボスは義眼から光線を放ち、魔神剣を相殺させた。

 

 

『マジかっ!?』

 

 

「ユーリ、リョウ、一斉に遠距離攻撃をしよう」

 

 

とフレンが提案してきた。

 

 

『了解!』

 

 

「分かった!」

 

 

『「「せーの」」』

 

 

『「魔神剣!!」』「蒼破刃!!」

 

 

三人の放った斬撃が重なりバルボスに向かう。

 

 

「無駄だ!」

 

 

バルボスはまた義眼から光線を放ち相殺を試みるが、光線の方は消滅した。

 

 

「なんだと!?ぐあっ!?」

 

 

三人の斬撃が直撃し、バルボスは後ろへ吹き飛ばされた。

 

 

「一気にたたみかけるぞ!」

 

 

『おう!』

 

 

「ああ」

 

 

ユーリの合図でリョウ、フレンがバルボスに接近する。

 

 

「爪竜連牙斬!」

 

 

「魔皇刃!」

 

 

『鬼炎連舞斬!!』

 

 

ユーリ、フレン、リョウの奥義が決まった。

 

 

「こっちは片付いたわ」

 

 

「いやーしんどかったわー」

 

 

ジュディスとレイヴンがバルボスの部下を倒したことを知らせに来た。

 

 

ユーリはバルボスに

 

 

「…もう部下もいない。器が知れたな。分をわきまえないバカはあんたってことだ」

 

 

「ぐっ…ハハハっ。な、なるほど、どうやらその様だ」

 

 

『じゃあ、おとなしく…』

 

 

「これ以上、無様をさらすつもりはない。ユーリ、とか言ったな?おまえは若い頃のドン・ホワイトホースに似ている…そっくりだ」

 

 

「オレがあんなじいさんになるってか。ぞっとしない話だな」

 

 

「ああ、貴様はいずれ世界に大きな敵を作る。あのドンのように。…そして世界に食い潰される。悔やみ、嘆き、絶望した貴様がやってくるのを先に地獄で待つとしよう」

 

 

その言葉を最後に、バルボスは塔から身を投げ出した。

 

 

To be continued

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第19話 一件落着

バルボスとの決着をつけたリョウ達は塔を出て、ジュディスとレイヴンと別れた(レイヴンは勝手にいなくなっていた)

 

 

ダングレスト

 

 

ダングレストに戻ってきたリョウ達は騎士団に拘束されているラゴウを見つけた。

ラゴウはまだ自分は無実だと訴えていた。すろと、フレンがやってきて

 

 

「帝国とユニオンの間に友好協定が結ばれることになりました」

 

 

「な!そんな、バカな…」

 

 

「今ドン・ホワイトホースとヨーデル様の間で、話し合いがもたれてます。正式な調印も時間の問題でしょう」

 

 

「どうして…アレクセイめは今、別事で身動きが取れぬはず…まさか…フレン・シーフォあなたが…こんな若造に我が計画を潰されるとは…」

 

 

ラゴウは騎士団に連行されていった。

 

 

『これで一件落着か…』

 

 

「ちょっとリョウ、今から時間ある?」

 

 

『あるけど…どうした?リタ』

 

 

「買い出しと、これからのことについてあんたと話したいの」

 

 

『分かった』

 

 

 

 

 

リョウとリタは街の店を回っている。

 

 

「あれと…これと…よし!これで買い出しは終わりね」

 

 

『もういいのか?じゃあ、これからのことについては宿屋で話そうぜ』

 

 

「そうね」

 

 

ふたりが宿屋の入口に近づくと、中からユーリが出てきた。

 

 

『ユーリ、どこかいくのか?』

 

 

「ラゴウのことでフレンのとこにな」

 

 

「あのじいさんがどうかしたの?」

 

 

「…ラゴウの野郎、評議会の立場を利用して、罪を軽くしやがったってカロルがな…」

 

 

「『!?』」

 

 

「それだけじゃねえ、少し地位が低くなるだけで済むらしい」

 

 

『あそこまでやっておいて罪に問えないのか…』

 

 

「どうなってんのよ…」

 

 

「だから、オレはフレンと話をしてくる」

 

 

そう言ってユーリは去って行った。

 

 

『とりあえず、ラゴウのことはユーリとフレンに任せて、俺達は中で話そうぜ』

 

 

「そうね…」

 

 

ふたりは宿屋に入る。

 

 

『んで、これからのことって?』

 

 

「エアルクレーネってのを調べて回ろうとおもうの」

 

 

『デュークの言ってたやつか…』

 

 

「それと…」

 

 

『それと?』

 

 

「あんたの記憶探し」

 

 

『俺の記憶…なんで?』

 

 

「なんでって…あんた知りたくないの?自分が何者なのか、親がいるかもしれないとか」

 

 

『まあ、そうだな…』

 

 

「これからはいろんな場所に行くんだから、記憶の手掛かりがあってもおかしくないでしょ」

 

 

『分かった。じゃあ、明日からはエアルクレーネの調査と俺の記憶探し開始だな』

 

 

「決まりね。じゃあ、もう寝ましょ」

 

 

『リタ、その、ありがとな…俺のことも考えてくれて』

 

 

「ど、どういたしまして……おやすみ」

 

 

『おやすみ』

 

 

リョウとリタはそれぞれのベッドに入り、リョウはしばらく天井を見ていた。

 

 

〖明日になればユーリ、エステル、カロル、ラピードともお別れか…いろいろあったけど、なんだかんだで楽しかったな…〗

 

 

 

 

 

次の日、リョウ、カロル、リタが城へ帰るエステルに別れを告げている。

 

 

「ここでお別れなんてちょっと残念だな」

 

 

「今度、お城に遊びに来てください」

 

 

「うん!友好協定が結ばれたら、ギルドの人間も帝都に入りやすくなるでしょ」

 

 

「そうですね。あと、ラゴウの件はわたしからもお願いしてみます。正当な処罰を下せるように」

 

 

「姫様、そのことなんですが…ラゴウ様は昨夜から行方不明なのです」

 

 

カロルとエステルが話していると、近くにいた評議会員がラゴウが行方不明だということを話した。

 

 

「どういうことなの…」

 

 

エステルが考えているとリタが

 

 

「びびって逃げたかな。さて、あたし達も行こうかな。エアルクレーネってのを色々調べて回りたいし、リョウの記憶探しもあるし、全部済んだら、あたしも、帝都に、い、行くから」

 

 

「はい、その時はリョウも一緒に来てください」

 

 

『もちろんだ。エステル』

 

 

「じゃあ、行くわよリョウ」

 

 

『ああ。じゃあなみんな』

 

 

こうして、リョウとリタの新たな旅が始まった。

 

 

Next chapter



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2章
第20話 狂気再び


ユーリ達と別れ、ダングレストから出たリョウとリタは森の中をあるいていた。

 

 

『エアルクレーネを調査するっていうけど、まずはどこに行くんだ?リタ』

 

 

「そうね…でもその前に、ヘリオードへ行きたいわ」

 

 

『ヘリオード?』

 

 

「あそこの魔導器が気になるのよ」

 

 

『ああ、前に暴走したやつか…分かった』

 

 

「決まりね」

 

 

まずはヘリオードへ向かうことになり、森を歩いているとリョウがある異変に気付き、突然、足を止める。

 

 

「どうしたの?置いていくわよ」

 

 

『なあリタ。さっきからなんか妙じゃないか?』

 

 

「なにがよ?」

 

 

『魔物をまったく見かけないんだ』

 

 

ふたりはダングレストから出て、一度も魔物に遭遇していない。そのことにリョウは違和感を感じた。

 

 

「それもそうね…いいじゃない、面倒くさくなくて」

 

 

『まあ、そうだけど…でも、逆に不気味だ……ん?』

 

 

「今度はなに?」

 

 

『向こうの方で声が聞こえたような…』

 

 

ふたりが声のした方へ行ってみると、そこには驚愕の光景が広がっていた。

大量の魔物の死骸が転がっており、異臭が漂っていた。

 

 

「な、何よこれ…」

 

 

『一体誰が……「魔物ごときが!私の邪魔をするな!」

 

 

突然、ふたりとは違う男の声がし、声のした方へ目をやると、目つきが悪い黒髪の男…ダフィエルが魔物を斬っていた。

 

 

「あいつ…エフミドの丘でリョウを襲ったやつ…」

 

 

『ああ、名前はダフィエル…』

 

 

すると、ダフィエルがふたりの存在に気付いた。

 

 

「リョウ・ゲキショウ……貴様から殺されに来るとはな」

 

 

『笑えねえ冗談だな…この魔物はおまえが?』

 

 

「そうだ。私の邪魔をするものには容赦はしない、たとえそれが魔物でもな…そして、次は貴様だリョウ・ゲキショウ!」

 

 

「あんた何でリョウの命を狙っているの?」

 

 

リタがダフィエルに問いかけるが、ダフィエルは

 

 

「小娘、貴様には関係ないことだ…だが!前のように邪魔をするのであれば貴様も殺す…」

 

 

「そんな脅しにビビると思ってんの?リョウ、一緒に戦うわよ!」

 

 

戦闘体勢をとるリタだがリョウは

 

 

『リタ、おまえは逃げろ』

 

 

「何言ってんのよ!?あんたひとりで戦うって言うの!?」

 

 

『こいつの狙いはあくまでも俺の命だ。リタを危険にさらすわけにはいかない』

 

 

「あたしは黙って見てろって言うの!?そんなことできるわけないでしょ!」

 

 

『じゃあ、リタは助けを呼びに行ってくれ』

 

 

「助け…?」

 

 

『ダングレストでもどこでもいい、騎士団かギルドの人間を何人か呼んで来てくれ、やつが不利になればこっちのもんだ』

 

 

ふたりでは倒せないと考えたリョウはリタに騎士団かギルドの人間を連れて来てもらい、数で勝負しようという作戦を伝えた。

 

 

「分かったわ…死んだら承知しないわよ!」

 

 

『俺は死なない。約束だ!』

 

 

リョウの言葉を聞き、リタは助けを呼びに走って行った。

 

 

「その約束は果たされることはない…貴様はここで死ぬのだからな!」

 

 

ダフィエルの姿が消える。

 

 

〖あの時の技か!落ち着け俺……〗

 

 

リョウは落ち着いてダフィエルのいた場所を見ている。すると、前方から刃が迫って来るのが見えた。

 

 

『そこだっ!』

 

 

ガキィィン

 

 

「なんだと!?」

 

 

銀雪花でダフィエルの刃を防いだ。

 

 

『あの時の俺だと思うなよダフィエル!』

 

 

ダフィエルはすぐさま離れ、リョウと距離をとる。

 

 

「刹那を防いだことはほめてやる…だか!これはどうだ!冥王剣!!」

 

 

ダフィエルは刀を振り上げ前方に黒い斬撃を発生させる。斬撃はリョウに速い速度で向かって行く。

 

 

『魔神剣!!』

 

 

リョウは魔神剣で相殺させようとしたが、魔神剣は黒い斬撃に真っ二つにされた。

 

 

『なに!?ぐあぁぁぁぁ!』

 

 

驚いたのも束の間、黒い斬撃はリョウに直撃し、後ろへ吹き飛ばされた。

リョウは受け身をとり体勢を整えるが、ダフィエルの姿が見えなかった。

 

 

『どこだ!?』

 

 

ダフィエルはいつの間にかリョウの後ろへ移動していた。

 

 

「刹那・凶刃…」

 

 

次の瞬間、無数のカマイタチがリョウを襲う。

 

 

『うわぁぁぁぁ!』

 

 

リョウの身体は切り刻まれ、そのまま仰向けに倒れる。

 

 

「手こずったが、貴様はこれで終わりだ」

 

 

ダフィエルは刀の尖端をリョウの喉に当てる。

 

 

〖ごめん…リタ…約束守れそうにない…おまえだけでも生きてくれ…早く新しい助手見つけろよ…〗

 

 

「死ねぇ!リョウ・ゲキショウ!」

 

 

ダフィエルがリョウの喉を突き刺そうと刀を上げたその時

 

 

「スパイラルフレア!!」

 

 

「ぐあ!?」

 

 

回転する炎がダフィエルに直撃し、吹き飛ばされる。

スパイラルフレアを放ったのはリタだった。

 

 

『リ、リタ…もう助けを呼んだのか…?』

 

 

「いるのはあたしひとりよ」

 

 

『バカ…野郎…なにしてんだ…』

 

 

「走ってる途中であんたの叫び声がして…助けを呼ぶどころじゃなくなって…、引き返してきたの」

 

 

「小娘ぇぇぇぇ!邪魔をするなと言ったはずだぁぁぁぁ!」

 

 

ダフィエルは起き上がり、リタに向かって走って行く

 

 

(なんて速さなの!詠唱が間に合わない!)

 

 

『やめろぉぉぉぉ!ダフィエル!リタは関係ない!』

 

 

ダフィエルはリタの後ろへ回り、リタを捕まえて首に刀を突きつける。

リョウは傷だらけでありながら立ち上がる。

 

 

「動くな!動けばこの小娘を殺す!」

 

 

「リョウ…」

 

 

『リタは関係ない…おまえの目的は俺の命のはずだ…』

 

 

しばらくの間沈黙が流れる。

 

 

「武器を捨てろ」

 

 

『え?』

 

 

沈黙を破ったのはダフィエルだった。

 

 

「武器を捨てて、私に殺されろ。そうすればこの小娘の命は助けてやる」

 

 

『……分かった』

 

 

リョウは銀雪花を後ろへ投げ捨てた。

 

 

「リョウ!ダメよ!キャッ!」

 

 

ダフィエルはリタを突き飛ばし、リョウの方に向かって行く。

 

 

「小娘、貴様はここで見ていろ。この男が殺される瞬間を」

 

 

ダフィエルはリョウに向かって刀を振り上げる。

 

 

『じゃあな、リタ…』

 

 

リョウは目をつむる。

 

 

「リョウ――――――」

 

 

リタの叫びが森の中を木霊した。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第21話 覚醒

「今度こそ終わりだ!リョウ・ゲキショウ!」

 

 

リョウにダフィエルの刀が振り下ろされるその瞬間

 

 

ガキィィン

 

 

何かが刃を防いだ。リョウがまぶたを開ける。すると

 

 

『銀雪花…なんで…』

 

 

リョウの目の前には先ほど後ろに投げ捨てた銀雪花が宙に浮いてリョウを守るように刃を防いでいた。

 

 

「バカな!?太刀が勝手に移動して来ただと!?」

 

 

ダフィエルは驚愕し、一旦リョウから離れる。

すると、銀雪花は地面に落ちた。

 

 

『よく分かんねえけど、戦えってことか…』

 

 

リョウは銀雪花を拾い上げ、ダフィエルを睨む。

 

 

『リタに物騒なもん向けやがって…俺はてめえを許さねえ!』

 

 

リョウがそう言った途端リョウの身体が光はじめる。オーバーリミッツである。

さらに、銀雪花の刀身が炎をまとった。

 

 

『ぶっ飛べ!!炎王爆炎斬!!』

 

 

リョウはダフィエルに直進し背後へ移動した瞬間、ダフィエルの周囲が大爆発を起こした

 

 

「ガハッ!?バカな!?」

 

 

ダフィエルは上空へ吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

 

 

リョウはすぐさまリタに駆け寄る。

 

 

『リタ!大丈夫か!?』

 

 

「あたしは大丈夫よ。それより、あんたのほうがボロボロじゃない!」

 

 

『そうだな…でも、ダフィエルは…「この私が深手を負わされるとはな…」

 

 

「『え!?』」

 

 

ふたりがダフィエルのいた方を見ると、ダフィエルが傷だらけでありながらも立っていた。

 

 

「今回は私の負けだ…リョウ・ゲキショウ!次こそは必ず貴様を殺す!必ずだ!」

 

 

そう言い残し、ダフィエルは去って行った。

 

 

『待て!ダフィエル!……ぐあっ』

 

 

ドサッ

 

 

リョウはダフィエルを追おうとしたが、その場で倒れてしまった。

 

 

「リョウ!しっかりして!リョウ!」

 

 

リタはリョウに何度も呼びかけるが、反応はない。

 

 

「なにか大きな声がしなかったか?」

 

 

「誰かの声!?誰かいるの?こっちに来て!」

 

 

「なんだ?どうした?」

 

 

リタの声を聞いた3人の騎士が現れた。

騎士のひとりがリョウを見て

 

 

「どうしたんだ!?ひどい怪我じゃないか!」

 

 

「一体何があったんだ?」

 

 

「説明は後よ!早く医者に」

 

 

「わ、分かった。とりあえずダングレストまで運ぼう」

 

 

リョウは騎士に抱えられダングレストまで運ばれた。

 

 

 

 

ダングレストの宿の一室

 

 

 

「・・・・」

 

 

宿のベッドに寝かされたリョウは一向に目を覚ます気配がない。

 

 

「リョウは・・・・リョウは大丈夫なの?」

 

 

「最善は尽くした。だが、目が覚めるかは本人の体力次第だ」

 

 

そう言って医者は部屋から出て行った。

 

 

「リョウ・・・・死なないで、お願いだから。リョウがいなくなったらあたし・・・・」

 

 

そう祈ることしかできないリタだった。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第22話 告白

『う、う……ん…ここは……?』

 

 

リョウが目を覚ますと、見慣れない天井が目にはいった。

 

 

〖そういえば……俺、ダフィエルと戦ってそれで……〗

 

 

自分がベッドの上で寝ていることに気づいたリョウはとりあえず、身体を起こす。

 

 

『ぐあっ!!』

 

 

身体中に痛みが走った。

横をみると、リタがリョウのベッドに伏せたまま眠っていた。

すると、リタが顔を上げてリョウを見て

 

 

「リョウ!気がついたのね!」

 

 

『ああ……ここはどこだリタ?ダフィエルと戦ってから……それで……』

 

 

「ここはダングレストの宿よ。ダフィエルが逃げたあと、あんたが倒れて……でも、偶然通りかかった騎士団にここまで運んでもらったの……手当てはしてもらったんだけど、あんた2日も目を覚まさなくて……」

 

 

『2日も寝ていたのか!?』

 

 

「そうよ、でも良かった目が覚めて。もし、このまま意識が戻らなかったら……あたし……」

 

 

リタが涙目になる。

 

 

『ごめん心配かけて。もしかしてずっと看ててくれたのか?』

 

 

すると泣きそうだったリタは急に顔を赤くし

 

 

「う、うん……あっ!医者呼ばなきゃ!」

 

 

リタはそそくさと医者を呼びに部屋から出て行った。

そのあと医者からしばらく安静にするように言われた。

 

 

 

 

 

リョウが目を覚まして安心したのかリタは自分の部屋に戻った。

リョウは宿屋の天井を見ながらあることを考えていた。

 

 

〖おそらく、ダフィエルはまた俺の命を狙ってくるだろう。リタと一緒にいたらリタも危険だ……俺は……俺は……〗

 

 

リョウはある結論にたどり着く

 

 

〖俺はリタと一緒にいるべきじゃない〗

 

 

リョウはリタに黙って出ていくことを決心した。

その日の深夜、リョウは身支度をし、自分の部屋を出た。

 

 

〖まだ身体中がいてえけど決心が揺るがないうちに〗

 

 

傷が残っている身体に無理をして宿屋の出入り口に向かい外へ出た。

 

 

〖ごめんなリタ……でもこれがおまえのためなんだ……〗

 

 

リョウはダングレストから出ようとするが

 

 

「こんな時間に散歩?じゃなさそうね」

 

 

『リ、リタ!?』

 

 

声がする方に振り向くとそこには今一番会いたくない人…リタがいた。

 

 

「あんたの部屋から物音がして見に行ったら姿と荷物もないから捜しに行こうとしたら、こんなところにいたのね。ていうかどこに行こうとしてんのよ。まだ安静にしときなさいって言われたでしょ」

 

 

リョウは黙って出て行こうとしたのだが、正直に話すことを決めた。

 

 

『リタ、聞いてくれ。俺はおまえの助手兼護衛をやめる』

 

 

「ちょっと!?それどういうことよ」

 

 

『おまえのためだ』

 

 

「こたえになってないわ!」

 

 

『俺といたら、またダフィエルが俺の命を狙ってくる。そしたらリタも危険だ。分かってくれ……』

 

 

「……」

 

 

リタはうつむいて黙ってしまった。

 

 

『俺の代わりなんかいくらでもいる。俺より強いやつだって……「バカッ!!」

 

 

うつむいていたリタが顔を上げリョウに詰め寄りリョウの胸を叩きはじめる。その目は涙で溢れていた。

 

 

「バカバカバカバカバカバカバカ……リョウのバカ!!」

 

 

『リ、リタ?』

 

 

戸惑うリョウ。

 

 

「今度言ったら許さないから!代わりはいくらでもいるなんて言ったら!それに、あたしのためだって言ってるけど、あんたがいなくなったら、あたしがどんな気持ちになるか考えたの?」

 

 

『そ、それは……』

 

 

何も言い返せないリョウ。

リタは泣きながらリョウの胸に顔を埋める。

 

 

「あたしはあんたが助手兼護衛じゃなくても傍にいてほしいの!だってあたしは……あたしは……あんた……リョウのことが……好きだから!」

 

 

『!?リタ……』

 

 

ギュッ

 

 

リタの突然の告白に戸惑いながらもリョウはリタを抱きしめる。

 

 

『ごめん……リタ。目が覚めたよ、俺、全然おまえのこと考えてなかった。逃げてたんだおまえのことから。でももう逃げない!どんなやつが来ようとも俺はおまえを守るし支える!俺も……その……好きだから……リタのこと』

 

 

「リョウ……」

 

 

『リタ……』

 

 

しばらくの間ふたりは見つめ合いそして、唇を重ねた。

数秒の触れるだけのキスだったが、ふたりにはとても長く感じた。

 

 

『リタ……愛してる』

 

 

「あたしも大好き……リョウ」

 

 

再びふたりは唇を重ねた。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第23話 告白の後

リタがリョウに告白して一夜が明けた。リタは目を覚まし、ボーっとしていた。

 

 

(昨日のことは夢じゃないわよね…リョウもあたしのことが好きって言ったこと…)

 

 

しばらくの間リタは考えていたが、居ても立っても居られなくなりリョウの部屋へ行く。

 

 

「リョウ!」

 

 

勢いよく部屋の扉を開けると、起きてストレッチをしているリョウがいた。リョウはリタに気付き

 

 

『どうした?リタ?』

 

 

「ねえ、あ、あたしのことす、好き?」

 

 

顔を赤らめながらリタは言う。

 

 

『ど、どうしたんだよ急に?あたりまえだろ』

 

 

リョウも顔を赤くして言う。

 

 

「よ、よかった。夢じゃなかったのね」

 

 

リタはホッとした。

 

 

〖夢?ああ、なるほど…そうだ!〗

 

 

リョウはあることを思いつきリタに近づく

 

 

「え、なに?」

 

 

『リタ、好きだ』

 

 

「え……んんっ」

 

 

リョウはリタにキスをする。少しして唇をはなすと

 

 

『夢じゃなかっただろ?』

 

 

「いきなりびっくりするじゃない……」

 

 

リタは顔をさらに赤くして小さな声で言った。

 

 

『嫌だったか?』

 

 

「……うれしかった」

 

 

リタはリョウに抱きつく。

 

 

「もう身体は大丈夫なの?」

 

 

『ああ、ほとんど傷も治ったし、痛みもない。明日にも出発できそうだ』

 

 

「そう、じゃあ、今日は安静ね」

 

 

『そうだな』

 

 

会話が終わると、リョウはベッドに戻る。するとリタが

 

 

「なんか食べる?」

 

 

『そうだな…果物が食べたいかな』

 

 

「じゃあ、リンゴ持ってくるわ。ちょっと待ってて」

 

 

しばらくして、リタはリンゴを買ってきてナイフで皮を剥きはじめるが動きがぎこちない。

 

 

『だ、大丈夫か?リタ?なんだったら自分で…「いいから、あんたは安静にしてなさい」

 

 

『はい…』

 

 

そして

 

 

「ふう、やっとできたわ」

 

 

リタはリンゴの皮を剥き終えたが、何度も指を切りそうになった。

 

 

『見ているこっちがひやひやしたぞ』

 

 

「しょうがないでしょ。こういうの初めてだったんだから」

 

 

『でも、ありがとうリタ』

 

 

「ど、どういたしまして。早く食べなさい」

 

 

リョウはリンゴを食べた。

するとリタが顔を赤らめながら

 

 

「ねえ、リョウ」

 

 

『ん?』

 

 

「今夜一緒に寝てもいい?」

 

 

『ど、どうしたんだいきなり?』

 

 

「いいでしょ別に、もう恋人同士なんだから」

 

 

『そ、そりゃそうだけど』

 

 

「それに、片時もリョウと離れたくないの」

 

 

『リタ・・・・(前のリタと違いすぎる・・・・)わかった』

 

 

リョウは戸惑いながらも了承した。

 

 

 

 

その日の夜

 

 

「リョウ・・・・」

 

 

『リタ・・・・』

 

 

ふたりはベッドの中で抱き合っている。

 

 

「あたし幸せよリョウ・・・・」

 

 

『俺もだよリタ・・・・』

 

 

幸せを噛みしめながらそのまま眠りについた。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第24話 不穏な動き

新興都市 ヘリオード

 

 

 

リョウとリタはヘリオードへ到着し、この前暴走した魔導器の点検をしている。

 

 

「特に問題はなさそうね」

 

 

『そうだな』

 

 

点検が終わりリョウが。

 

 

『今日はここの宿で一泊するか?』

 

 

「そうね……あれ?」

 

 

リタはなにかを見つけたようだ。

 

 

『どうした?』

 

 

「ちょっとリョウ、隠れて」

 

 

ふたりは物影へ隠れる

 

しばらくして何人かの騎士が魔導器をどこかに運んでいく様子が見えた。

 

 

【一体何をして……「おい!そこのふたり」

 

 

突然、後ろから騎士に声をかけられた。

 

 

「何をコソコソしている?」

 

 

『俺たちは怪しい者では……「ちょっと!あの魔導器をどうするつもり?」

 

 

リタは騎士に詰め寄る。

 

リョウはその時、なんとかごまかせそうだったのに……。と思ったが時すでに遅し

 

 

「お前たちあの魔導器を見たのか!?少し騎士団本部まで来てもらおうか」

 

 

そう言って騎士はリタの腕を掴む。

 

 

「ちょっと!はなし……『オラァッ!!』

 

 

バキッ

 

 

「ぐふっ」

 

 

騎士がリタの腕を掴んだ瞬間、リョウの鉄拳が騎士の兜に叩き込まれた。

リョウはドスの利いた声で

 

 

『きたねぇ手でリタに触んじゃねえよ……』

 

 

「ひ、ひぃぃ」

 

 

殴られた騎士は逃げて行った。

 

 

『大丈夫かリタ?』

 

 

「う、うん。ありがと//////」

 

 

『あ……結局魔導器のこと……』

 

 

「こっちから騎士団本部へ直接聞き出しにいきましょう」

 

 

『そうするか』

 

 

ふたりは騎士団本部へ向かう。

 

 

 

 

騎士団本部

 

 

 

ドカッ

 

 

『じゃまするよ~』

 

 

扉を蹴り開けるリョウ。

中には十数人の騎士がいた。

さっき殴った騎士が

 

 

「あ、あいつらです。魔導器を見られたのは」

 

 

「とりあえず、捕まえろ!!」

 

 

騎士たちがリョウとリタに向かって来る。

 

 

『どうするリタ?話なんて聞いてくれそうにもないけど?』

 

 

「しょうがないわね……ぶっ飛ばすわよ!!」

 

 

『了解~』

 

 

 

 

『烈・魔神剣!!』

 

 

ドォォォォン

 

 

「ファイアボール!!」

 

 

ドカァァァァン

 

 

リョウとリタは騎士を倒していく。すると扉の方から

 

 

「おいおい……メチャクチャだな」

 

 

『新手か?』

 

 

声のする方を見ると、見覚えのある黒い長髪の青年……ユーリが騎士の格好をして立っていた。

 

 

『ユーリ?どうしたんだその格好?』

 

 

「まあ、いろいろあってな……おまえらこんなとこで何やってんだ?」

 

 

「こっちもいろいろあったのよ」

 

 

リタが喋っていると、ユーリの後からエステル、カロル、ジュディスがやってきて、とりあえず騎士団本部から出ることにした。

 

 

「で?なんでふたりはここで暴れてたんだ?」

 

 

ユーリの問いにリタは、騎士が魔導器を運んでいるのを見て何に使うのか聞き出そうとして騎士団本部へ乗り込んだ。

と説明した。

 

ユーリたちはというとノール港で助けたポリーとその母親ケラスに会い、夫のティグルが行方不明になっていることを聞き、探している途中だった。

キュモールが関わっているらしい。

 

 

『でも、なんでユーリが騎士の格好に?』

 

 

「動きやすいようにな」

 

 

『似合ってないぞ~』

 

 

「うるせ」

 

 

リョウがユーリをからかっていると、カロルが

 

 

「それよりも、さっき見つけた怪しい場所へ行こうよ」

 

 

リョウたちはその怪しい場所に行くための昇降機へ向かった。

 

 

 

 

 

 

昇降機に向かおうとしたが、その前にキュモールと変わった髪型の男が話していた。

 

 

『隠れて様子を見よう……』

 

 

リョウたちは魔導器の影に隠れる。

キュモールと男の会話が聞こえてきた。

 

 

「この金と武器を使って、僕はすべてを手に入れる」

 

 

「その時がきたら、ミーが率いる海凶の爪(リヴァイアサンのツメ)の仕事、誉めてほしいですよ」

 

 

「分かっているよイエガー」

 

 

「ミーが売ったウェポン使って、ユニオンにアタックね!……!!??」

 

 

【やべっ】

 

 

変わった髪型の男……イエガーが少し振り向き、リョウの目が合ってしまった。

しかし、イエガーはただ呆然としていた。

 

 

「…………」

 

 

「イエガー?どうかしたのかい?」

 

 

「い、いえ。何でもありまセーン……ノープロブレムね」

 

 

「それならいいんだけど」

 

 

ふたりは昇降機を使って下りて行った。

するとリタが

 

 

「あのトロロヘアー気付いていたわね……」

 

 

「あのイエガーという人、リョウを見てすごく驚いていたような」

 

 

「そうね……なにかとんでもないものを見たような顔だったわ」

 

 

エステルとジュディスもイエガーの表情の変化を見逃さなかった。

 

 

『あいつは俺のことを知っているのか……とりあえず行ってみよう』

 

 

リョウたちも昇降機に乗って下へ降りる。

 

 

俺は……俺は……

 

 

何者なんだ……

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第25話 解放

昇降機を使って下に降りると、そこは労働者キャンプで労働者がキュモール隊の騎士に無理矢理働かされていた。

何人かの騎士を蹴散らし労働者を解放していく。

騒ぎを聞き、キュモールとイエガーがリョウ達の前に現れた。

 

 

「ユーリ・ローウェル!どうしてここに!?ひ、姫様も……!」

 

 

「今すぐここの人々を解放しなさい!」

 

 

エステルがそう言うが、キュモールは聞く耳を持たない。それどころか

 

 

「世間知らずの姫様にはここで消えてもらったほうが楽かもね。イエガー!やっちゃいなよ!」

 

 

「イエス、マイロード」

 

 

イエガーと黒装束の男が数人構える。

 

 

『黒装束の方は任せた。俺はイエガーって奴に話がある』

 

 

リョウはひとりでイエガーに向かって行く

 

 

「お、おい!しゃあねえな……」

 

 

ユーリは黒装束の男を相手することにした。

 

 

 

 

 

対峙するリョウとイエガー

 

 

『あんたは俺を知っているのか?』

 

 

「奇妙なクエスチョンですね……」

 

 

『俺は記憶喪失でね。さっきあんたと目が合った時、動揺しただろ?

だから、俺のことを知っているのかと思ったんだ』

 

 

「リョウ・ゲキショウ……」

 

 

『なんで名前を!?』

 

 

「やはりそうですか……全く同じですね」

 

 

『どういうことだ?』

 

 

「ミーのフレンドと同じということです。ネームも容姿も……」

 

 

『俺とお前が友人……だと?』

 

 

「それはありえまセーン。ビコーズ、リョウは10年前に……死んだのですから!!」

 

 

イエガーはそう言い終わると、武器の鎌を持って向かって来る。

 

 

キィィン

 

 

とっさに銀雪花でイエガーの攻撃を防ぐ

 

 

『待て!訳が分からない!俺は10年前に死んでいるだと?』

 

 

「もう話すことはありまセーン。ユーはミーの敵なのですから!」

 

 

『くそっ』

 

 

銀雪花を振るが、イエガーの姿はなかった。

 

いつに間にかイエガーはリョウの背後に回っており

鎌から変形した銃を構えていた。

 

 

〖しまった!〗

 

 

撃たれると思ったが、イエガーは撃ってこない。

それどころか武器を収めた。

 

 

「ミーにはできません……」

 

 

『イエガー……』

 

 

「キュモール様!フレン隊です!」

 

 

突然、キュモール隊の騎士が報告に現れた。

 

 

『フレンが?』

 

 

「ここはエスケープするのがベターですね。ゴーシュ、ドロワット」

 

 

「はい。イエガー様」

 

 

「やっと出番ですよ~」

 

 

ふたりの少女が現れ、煙幕が周りに立ち込める。

 

 

『待て!イエガーまだ話は……全然見えねえ』

 

 

「リョウ!大丈夫か?」

 

 

煙の中からユーリが話しかけてきた。

 

 

『大丈夫だ。俺はイエガーを追う』

 

 

「オレ達もキュモールの野郎を追う」

 

 

『じゃあ、後はフレンに任せて行くぞ!』

 

 

リョウ達はイエガーとキュモールを追ってヘリオードを出た。

 

 

 

 

 

リョウは10年前に……死んだのですから!!

 

俺が10年前に死んだ?どういうことだ?

 

訳が分からない……わけがわからない……ワケガワカラナイ……

 

……リョウ?……リョウ!

 

 

「リョウ!!」

 

 

『うお!!なんだ?』

 

 

気が付くと目の前にはリタがいた。

 

 

『どうした?リタ?』

 

 

「それはこっちの台詞よ。さっきからボーっとして。早く行くわよ」

 

 

『え?どこに?』

 

 

「フェローっていう魔物と、凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)のことを話してもらうためにトリム港に行くんでしょ。あと、俺様の用事も」

 

 

『そうだったなレイヴン……あれ?なんでレイヴンがいるんだ?』

 

 

「ちょ!?気付いてなかったの?すごいショックなんだけど」

 

 

『わりい……ちょっと考え事してた……』

 

 

「リョウ君どうしたの?」

 

 

『ちょっとな……俺もトリム港で話すよ』

 

 

とりあえずトリム港へ向かうリョウ達であった。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第26話 不安な夜

トリム港に着いたリョウ達は宿屋に向かい一息をつく。

 

 

『まずはフェローってなんだ?』

 

 

リョウが質問をする。

 

エステルによると、ダングレストでリョウ、リタと別れたあとすぐに巨大な鳥の魔物にエステルが襲われそうになった。

 

その魔物はエステルに、世界の毒は消す。と言った。

 

その言葉の真意を知るために、カロルが作った凛々の明星というギルドに魔物の捜索を依頼した。そしてその魔物はフェローと言い、砂漠にいるらしい。

 

 

『なるほど。次はレイヴンだな』

 

 

「おっさんは、次の皇帝候補のエステルを見ておけってドンに言われたからね。

あと、お使い頼まれちゃってさ」

 

 

『お使い?』

 

 

「ノードポリカのベリウスに手紙を持ってけって」

 

 

『ベリウスってたしか、闘技場の首領だっけ?』

 

 

「正確には統領(ドゥーチェ)っていうんだけどね」

 

 

カロルがそう付け足す。

 

 

「手紙の内容知っているのかしら?」

 

 

ジュディスがレイヴンに問う。

 

 

「フェローってやつのことについてだ。ベリウスならあの魔物について知ってるって事だ」

 

 

「こりゃ、オレたちもベリウスに会う価値が出てきたな」

 

 

ユーリが言う

 

 

「っつーわけで、おっさんも一緒に連れてってね。んで、最後はリョウ君ね」

 

 

『俺?』

 

 

レイヴンの言葉にキョトンとするリョウ

 

 

「さっきなんか説明するって言わなかった?」

 

 

『ああ……さっきイエガーに言われたことについてだ』

 

 

「あのトロロヘアーになにか言われたの?」

 

 

リタがリョウに聞く。

 

 

『あいつはリョウ・ゲキショウという名前も容姿も俺と同じ友人がいたと言った』

 

 

!!!

 

 

その場にいた全員が驚愕した。リョウは続ける

 

 

『でもその友人は10年前に死んだ。と言われた』

 

 

「でもそれってどういうことです?」

 

 

エステルが問う。

 

 

『俺にも分からない。それ以上は聞けなかった……それから頭の中が混乱しているんだ』

 

 

次にリタが

 

 

「でも、なにか思い出したんじゃないの?」

 

 

『いや、全くなにも思い出せない。俺はいったい何者なんだ……』

 

 

リョウは頭を抱える。

 

 

「とりあえず、あなたは休んだ方がいいと思うわ」

 

 

『ああ、そうする』

 

 

ジュディスの提案にのるリョウ。そのまま自分の泊まる部屋へ行く。

 

 

「話が終わったんなら、あたしも休むわ」

 

 

そう言いながらリョウの部屋に向かうリタ。すると、カロルが

 

 

「ちょ、ちょっとリタ、そこリョウの部屋だよ!」

 

 

「知ってるわよ」

 

 

平然と言うリタにエステルが

 

 

「い、いくら助手でも異性とふたりきりの部屋に一緒にいるのは/////」

 

 

「あっ……/////」

 

 

リタは今気づいた。誰にもリョウと付き合っていることを言っていないことを

 

 

「あ、あたしとリョウは、その……付き合うことにしたの/////」

 

 

ええ!?

 

 

また全員が驚愕した。

 

 

「だ、だから。あたしとリョウが一緒の部屋でもいいでしょ!/////」

 

 

そう言い残しリョウの部屋へ入って行った。

 

しばらく、静寂が流れたあと

 

 

「いつかはそうなると思っていたが、こんなに早いとはな」

 

 

「リタっちも隅に置けないね~」

 

 

「あのリタが……信じられない」

 

 

「ふふ、お似合いのカップルね」

 

 

「リタ!お幸せに!」

 

 

ユーリ、レイヴン、カロル、ジュディス、エステルがそれぞれ言った。

 

 

 

 

 

 

リタがリョウの部屋へ入ると、リョウはベッドの上に座っていた。

 

 

『リタ、全部聞こえたぞ/////』

 

 

おそらくさっきの話だろう。

 

 

「ご、ごめん。勝手に話して/////」

 

 

『いいって。いつか言わないといけないことだし……でも/////』

 

 

「?」

 

 

『この部屋ベッドひとつしかないぞ。しかもシングル/////』

 

 

「い、一緒に寝ればいいでしょ/////」

 

 

『いいのか?////』

 

 

「いやなの?」

 

 

リョウを睨むリタ

 

 

『いやなわけ………「じゃあ、いいでしょ」『はい……』

 

 

 

 

 

今ふたりは、同じベッドの上で向かい合っている。突然、リタが

 

 

「不安なの?」

 

 

『え?』

 

 

「自分が何者なのか?」

 

 

『……ああ、俺がもし、リタやみんなにとって敵だったり、この世界にとって邪魔な存在だったりすると思うと不安でいっぱいになる』

 

 

「絶対にそうではないとはあたしの口からは言い切れないわ……でも」

 

 

『でも?』

 

 

ギュッ

 

 

リタはリョウに抱きつく

 

 

『り、リタ?/////』

 

 

「これだけは言い切れるわ、リョウが何者でもあたしはリョウの味方で恋人なんだから//////」

 

 

『リタ……/////』

 

 

ギュッ

 

 

リョウもリタを抱きしめる。

 

 

『ありがとう。なんか元気出た/////』

 

 

「ど、どういたし……ん/////」

 

 

リタは唇を塞がれた。リョウの唇によって。

 

 

『最近してなかったからな/////』

 

 

「ば、バカ……//////」

 

 

そう言いながらもリタはリョウの胸に顔を埋める。

このままふたりは眠りについた。

ふたりの顔はとても幸せそうだった。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第27話 魚人退治

「リョウ!起きて!起きなさい!」

 

 

朝がきてリタはリョウを起こす。

 

 

『ん……?リタ、おはよう……』

 

 

まだ寝ぼけているリョウ。

 

 

「さっさと準備して、ユーリ達についていくわよ」

 

 

『一緒に行くのか?』

 

 

「ふたりでエアルクレーネの調査とあんたの記憶探しをするのもいいけど、みんなといた方が安全でしょ」

 

 

『そうだな……またダフィエルが襲ってくるかもしれないし』

 

 

「じゃあ、決まりね!」

 

 

こうしてふたりはユーリ達と一緒にまた旅をすることになった。

 

 

 

 

 

砂漠とノードポリカがあるデズエール大陸へ向かうには船に乗らないといけないため港に向かうリョウ達。

 

 

「うーん。困ったわね……」

 

 

波止場に着くと、なにやら考え事をしている女性がいた。エステルとユーリが

 

 

「あれ?あの人は」

 

 

「たしか……カウフマンだっけ?」

 

 

すると、カロルが

 

 

「し、知り合いなの?」

 

 

「いや、前に一度だけ。おまえこそ知り合い?」

 

 

「知り合いって……5大ギルドのひとつ、幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)の社長(ボス)だよ」

 

 

「つまり、ユニオンの重鎮よ」

 

 

レイヴンが付け足す。

 

 

「あの人なら海を渡る船を出してくれるかも」

 

 

カロルがそう言うと、カウフマンに話を聞きに行く。

 

カウフマンはユーリに気付き

 

 

「あら、あなたはユーリ・ローウェル君。いいところで会ったわ」

 

 

『手配書の効果ってすげえな。すっかり有名人じゃねえかユーリ』

 

 

「うるせえ」

 

 

「あなたにピッタリの仕事があるんだけど」

 

 

「ってことは荒仕事か?」

 

 

「察しがいいわね。この季節、魚人の群れが船の積荷を襲うから大変なの」

 

 

「オレ達もギルド作ってな。今、仕事の最中で他の仕事は請けられねえ」

 

 

ユーリが断るが、カロルは

 

 

「ユーリ!船はどうするの?」

 

 

「船?なるほどなるほど……」

 

 

カウフマンは少し考える。そして

 

 

「じゃあ、ギルド同士の協力でどう?それに今なら魚人を退治して、私達の目的が済んだら、この船を進呈するわ」

 

 

『破格の条件だなそれは。受けた方がいいんじゃねえかユーリ?』

 

 

「しょうがねえな」

 

 

「契約成立ね。じゃあ、さっそく出航するわよ」

 

 

こうしてリョウ達の船旅が始まった。

 

 

 

 

 

 

後に進呈される船、フィエルティア号で海を渡る。その甲板の上

 

 

『船旅ってのもいいな~』

 

 

リョウは潮風にあたりながらのんびり座っていた。

 

 

「リョウ、隣いい?」

 

 

『いいぜ』

 

 

リタがやってきてリョウの隣に座る。

 

 

『リタは船酔いしないのか?』

 

 

「あたしはしないわね。リョウは?」

 

 

『今のところ大丈夫だな。もし気分が悪くなったら介抱してくれよ』

 

 

「分かったわ。でもどうやればいいの?」

 

 

『キスでもしてくれたら一発で治るかな』

 

 

「な、何言って//////……「おふたりさん、なにイチャついてるの?」

 

 

突然、レイヴンが話に入ってきた。

 

 

『おいレイヴン、俺とリタの時間を邪魔するなよ』

 

 

「ごめんごめん。おっさん暇でさあ」

 

 

『じゃあ、海に飛び込んで魚人をおびき寄せるエサになるのはどうだ?』

 

 

「それいいわね」

 

 

「ちょ!?リョウ君もリタっちもひどい……」

 

 

ドォォォォン

 

 

突然、船が大きく揺れた。

 

 

『どうやらお客さんみてえだな』

 

 

数匹の魚人が甲板に上がってくる。そのうちの1匹から

 

 

「ちょっと、船酔いをしたのじゃ……」

 

 

「魔物が喋った!?」

 

 

リタが驚く

 

 

喋った魚人はリョウ、リタ、レイヴンの方に向かって来る。

 

 

『(あの魚人もしかして……)俺にまかせろ!』

 

 

リョウは魚人の懐に近づき

 

 

『オラァッ』

 

 

腹部に鉄拳を入れる。すると、魚人はなにかを吐き出し、倒れた。

魚人が吐き出したものそれは、海賊服を着た見覚えのある少女パティだった。

 

 

「「ぱ、パティ?」」

 

 

リタとレイヴンが驚く

 

 

『人を飲み込んでいるとは思ったけど、まさかパティだったとはな』

 

 

「おーい。こっちの魚人は片付いた……ってパティ?」

 

 

向こうからユーリがやってきて同じく驚く。パティは目を覚まして

 

 

「ユーリ!久しぶりなのじゃ」

 

 

「なんでおまえがここに……「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

向こうの方から操船士の叫び声が聞こえた。魚人に襲われていた。

 

 

『まだ1匹いたか!魔神剣!!』

 

 

魔神剣が命中し、最後の魚人を倒す。

 

 

『エステル!手当を!』

 

 

「分かりました」

 

 

エステルはすぐに操船士の治療をする。

 

 

「治癒術はかけましたが、当分安静した方がいいです」

 

 

「困ったわね……あなた達の中で操船できるひとは……「うちがやれるのじゃ」

 

 

カウフマンが困っていると、パティが手を上げた。

 

 

『パティが?できるのか?』

 

 

「世界を旅する者、船の操縦ぐらいできないと笑われるのじゃ」

 

 

『そ、そうか……じゃあ、まかせた!!』

 

 

操縦をパティにまかせることにより船旅を続けることができたのであった

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第28話 幽霊船

魚人を倒し、船旅を続けているリョウ達だったが、突如、あたりに濃い霧が立ちこめる。ジュディスが

 

 

「霧が深くなってきたわよ」

 

 

『そうだな。気をつけて進まないと』

 

 

「なにかよくないことの前触れだったりして」

 

 

『そうかもな……ってなんか楽しそうだなジュディス』

 

 

「そうかしら?……あら」

 

 

『どうした?』

 

 

ドォォォォン

 

 

『な、なんだ?』

 

 

フィエルティア号が巨大な船と衝突した。

ぶつかった船はボロボロで、人気がない。

船室から出てきたカウフマンが船を見て

 

 

「古い船ね。見たことない型だわ」

 

 

ジュディスも船を見て

 

 

「アーセルム号って読むのかしら」

 

 

ドンッ

 

 

「ひゃっ!」

 

 

「人影は見当たらないのに」

 

 

突然、アーセルム号からフィエルティア号へタラップが落とされ、その音に驚くリタとカロル

 

 

「は、早くフィエルティア号出して」

 

 

リタがパティにそう言うが

 

 

「むーダメじゃの。なぜか駆動魔導器(セロスブラスティア)が動かないのじゃ」

 

 

「うそでしょ!ちょっと調べるわよリョウ!」

 

 

『分かった』

 

 

リタとリョウは駆動魔導器を調べるがまったく動く気配がない

 

 

「いったいどうなってるのよ」

 

 

『原因がまったくわからねえな……』

 

 

ユーリがアーセルム号を見ながら

 

 

「こいつかもな……」

 

 

『乗り込むか?』

 

 

「そうだな。行くしかないだろ」

 

 

ユーリは乗り込むことを決めるが、カウフマンが

 

 

「ちょっと、フィエルティア号をほっていくつもり!?」

 

 

「んじゃ、4人が探索に出て残りは見張りでどうだ?」

 

 

『それなら、大丈夫だろ』

 

 

「オレとラピードと後は……」

 

 

『俺とリタが行こう』

 

 

「ちょ、ちょっと!?なに勝手に決めてんのよ!?」

 

 

リョウの発言に怒るリタ

 

 

『俺がいても不安か?』

 

 

「不安とかっていう問題じゃなくて……だから……その」

 

 

リョウはリタに近づき耳元でこうささやいた

 

 

『大丈夫だ。なにがあってもリタは俺が守るから。だから行こうぜ』

 

 

「……わ、分かったわよ//////」

 

 

渋々ながらリタも行くことになった。

 

 

(あいつ、リタに何言ったんだ?)

 

 

そう思うユーリであった。

 

 

 

 

 

 

 

アーセルム号内部

 

 

船内を進むリョウ達

 

 

『人も魔物もいないな……どうなってんだ?』

 

 

「これじゃ原因が分からねえな」

 

 

(早く帰りたい……)

 

 

ドォォォォン

 

 

「な、なに?」

 

 

突然、大きな音と振動が響く。その振動で目の前に鉄格子が降りた。

リョウは鉄格子を調べるが

 

 

『ダメだ、ビクともしないな』

 

 

「違う道探すか……」

 

 

(本当に早く帰りたい……)

 

 

『リタ』

 

 

リョウはリタに手を差し伸べる。

 

 

「な、なに?」

 

 

『手をつなげば怖くないだろ』

 

 

「べ、べつにあたしは怖くなんて……でもリョウがどうしてもって言うんなら……/////」

 

 

ギュッ

 

 

手をつなぐふたり

 

 

『もう少しここにいてもいいかもな//////』

 

 

「ば、バカ/////」

 

 

ふたりだけの世界に入っているリョウとリタを見てユーリは

 

 

「あいつら完全にオレ達のこと忘れてるよな」

 

 

「ワフゥ……」

 

 

リョウ達が他の道を探していると、向こうの方からカロル、エステル、レイヴン、ジュディス、パティがやってきた。

 

 

「よかった……無事だったんですね」

 

 

『結局、みんな来ちまったな』

 

 

「こんなところ早く出ようよ」

 

 

ガシャン

 

 

カロルがそう言うと同時にカロル達が来た道の扉が閉まった。

 

 

「うそだろ」

 

 

「これじゃ出られないわね」

 

 

レイヴンとジュディスが驚く

 

 

『違う出口を探すか……』

 

 

To be continued




スキット いつまで?


リタ「リョウ、いつまで手をつなげばいいの?/////」


リョウ『俺の気が済むまで♪それとも嫌になったか?』


リタ「そ、そうじゃなくて……恥かしいの。みんなが見ているから/////」


リョウ『い~じゃん♪見せつけてやろうぜ』


リタ「も、もう……バカ//////」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第29話 謎の箱

この話から台本形式になります。

ご了承ください。


出口を探すリョウ達は船長室らしき場所に入った。

 

 

カロル「ひぃ……!」

 

 

カロルが何かを見つけて驚いている。

 

 

リョウ『どうした?カロル?これは……』

 

 

白骨が椅子に座っているのを見つけた。

 

 

リョウ『レイヴン……こんなところで寝ていたら風邪引くぞ』

 

 

レイヴン「俺様ここ!!勝手に殺さないでちょうだい!!」

 

 

リョウ『冗談だって』

 

 

ユーリ「バカやってないで、この辺りを調べるぞ」

 

 

エステル「ユーリ、これ日誌でしょうか?」

 

 

ユーリ「なになに……アスール暦232年、ブルエールの月13?」

 

 

エステル「アスール暦もブルエールの月も帝国ができる前の暦ですね」

 

 

リタ「千年以上も昔、か……」

 

 

リョウ『えらい古い船なんだな……』

 

 

エステル「読んでみますね。船が漂流して40日と5日、水も食糧もとうに尽きた。船員も次々と飢えに倒れる。

しかし私は逝けない。ヨームゲンの街に、澄明の刻晶(クリアシエル)を届けなくては。魔物を退ける力を持つ澄明の刻晶があれば、街は助かる。

澄明の刻晶を例の紅の箱に収めた。ユイファンにもらった大切な箱だ。彼女にももう少しで会える。みんなも救える。……でも結局、この人は街に帰れず、ここで亡くなってしまわれたんですね……」

 

 

パティ「千年もの間、この船は広い海をさまよっておったのじゃな」

 

 

カロル「ボク、ヨームゲンなんて街、聞いたことないなあ……」

 

 

リョウ『そもそも、千年以上前のことだ。その街があるかどうか……』

 

 

ユーリ「そうだよな。澄明の刻晶ってなんだ?」

 

 

リタ リョウ「『知らない』」

 

 

レイヴン「……魔物を退ける力ねえ」

 

 

ジュディス「結界みたいなものじゃないかしら」

 

 

リョウ『たぶん、これだろ』

 

 

リョウは白骨が赤い箱を抱えているのにきづく、そして

 

 

リョウ『えいっ』

 

 

バキッ

 

 

リョウはためらいもなく白骨の腕を折り、赤い箱をとる。

 

 

リョウ『レイヴン、パス』

 

 

リョウはレイヴンに赤い箱(白骨の腕がついたまま)を渡す

 

 

レイヴン「ちょ、ちょっと腕はいらないって」

 

 

レイヴンは腕を取って、赤い箱を開けようとするが

 

 

レイヴン「あれ、開かないぞ……」

 

 

カロル「か、か、鏡……」

 

 

突然、カロルが鏡に指をさす

 

 

リョウ『どうしたカロル?鏡にとんでもないものが映って……るな、おい』

 

 

鏡に髑髏の騎士が映っていた。

 

 

リョウ『出てくるぞ!!』

 

 

髑髏の騎士は鏡から出てきた。

 

 

 

 

 

ブンッ

 

 

ユーリ「おっと」

 

 

髑髏の騎士は巨大な剣を振り回す。

 

 

リョウ『あんな巨大な剣振り回されたら近づけねえな』

 

 

カロル「ど、どうするの?」

 

 

リョウ『遠距離から攻撃するしか……』

 

 

ドンドンッ

 

 

リョウ『なに!!』

 

 

髑髏の騎士は持っていたリボルバーでリョウ目がけて撃って来た。

 

 

ジュディス「あっちは遠距離攻撃もあるみたいよ」

 

 

リョウ『困ったな……うかつに近づけねえし、近づかなかったらリボルバーで攻撃か……リボルバー?もしかしたら……』

 

 

髑髏の騎士はリボルバーの銃弾を装填し始めた。

 

 

リョウ〖やっぱり装填したな。隙だらけだ〗

 

 

リョウは髑髏の騎士に一気に近づき

 

 

リョウ『烈火!!』

 

 

炎を纏った銀雪花の連続突きを叩き込む。

 

 

すると、髑髏の騎士は突然赤い光を放ち始めた。

 

 

リョウ『な、なんだ?』

 

 

パティ「……!?」

 

 

しかし、髑髏の騎士はなにもせずに鏡の中へ帰って行った。

 

 

リョウ『逃げたか……』

 

 

カロル「ねえ、あの騎士この箱を取り返そうとしたのかな?」

 

 

レイヴン「返した方がいいんじゃないの?」

 

 

エステル「待ってください!わたし、その澄明の刻晶をヨームゲンに届けてあげたいです。澄明の刻晶届けをギルドの仕事に加えてもらえないでしょうか?」

 

 

カロル「ダメだよ、エステル。基本的にボク達みたいなちっちゃなギルドは、ひとつも仕事を完了するまで次の仕事は受けないんだ」

 

 

レイヴン「ひとつひとつの仕事をしていくのがギルドの信用に繋がるからなぁ」

 

 

ジュディス「その娘の宛てもない話でギルドが右往左往するの?」

 

 

エステル「ごめんなさいジュディス。でも、この人の思いを届けてあげたいんです」

 

 

ユーリ「でも、千年も前の話なんだよなあ」

 

 

リョウ『ここは俺とリタの出番だな』

 

 

エステル「どういうことです?」

 

 

リタ「あたしとリョウが探すってこと。あんたたちはあんたたちの仕事をやればいいでしょ。あたしとリョウが勝手にやるから」

 

 

カロル「じゃ、ボクも付き合うよ!」

 

 

ユーリ「暇なら、オレも付き合っていいぜ。ついてくるんだろ?だったら、仕事外として少し手伝う分にゃ問題ない」

 

 

エステル「ありがとうございます」

 

 

リョウ『結局はみんなで探すんだな。そうなると思ったけど』

 

 

レイヴン「ん?外に煙みたいなのが……」

 

 

リョウ『発煙筒か?そういえば駆動魔導器が直ったら、合図出すって言ってたな』

 

 

ジュディス「じゃあ、戻りましょう」

 

 

リョウ達は無事フィエルティア号に戻ることができ、再び出発した。

ノードポリカまでもう少し

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第30話 闘技場都市

フィエルティア号は無事にノードポリカへ到着した。

 

 

カウフマン「ご苦労様。どうもね」

 

 

カロル「こちらこそ。大助かりだよ」

 

 

カウフマン「じゃ、もう行くわね。フィエルティア号、大事に使ってあげて」

 

 

カウフマンは立ち去った。

 

 

パティ「んじゃ、うちは行くのじゃ」

 

 

リョウ『宝探しの続きか?』

 

 

パティ「じゃの。いろいろと世話になったな」

 

 

リョウ『船の操縦ありがとな。気をつけろよ』

 

 

パティも去っていった。

 

 

レイヴン「んじゃ、こっちはこっちの仕事してきますかね」

 

 

ジュディス「手紙、届けるのよね?ベリウスに」

 

 

カロル「ボク達も行ってみようよ」

 

 

ユーリ「そうだな。フェローのこと知ってそうだしな」

 

 

エステル「ベリウスさんはどこにいるのです?」

 

 

カロル「騎士の殿堂(パレストラーレ)の首領(ボス)だから、闘技場に行けば、会えるんじゃないかな?」

 

リョウ達は闘技場へ向かった。

 

 

 

 

 

闘技場内部

 

 

リョウ達はベリウスに会うため、奥の部屋へ行こうとしたが、ひとりの男が扉の前にいた。

 

 

?「この先は我が主、ベリウスの私室だ。約束のない者とは会わない」

 

 

レイヴン「ドン・ホワイトホースの使いの者でも?」

 

 

?「ドン……こ、これは失礼。我が名はナッツ。この街の総統代理を務めている。

我が主への用向きなら私が承けたまろう」

 

 

レイヴンは手紙を見せ

 

 

レイヴン「すまないねぇ、一応ベリウスさんに直接渡せってドンから言われてんだ」

 

 

ナッツ「そうか…しかしながら、ベリウス様は新月の晩にしか人に会われない。

できれば、次の新月の晩に来てもらいたいのだが……」

 

 

レイヴン「そうかい。じゃあ、出直しますか」

 

 

ナッツ「わざわざ、悪かったな。ドンの使いの者が訪れたことは連絡しておこう」

 

 

リョウ『満月はつい最近だったよな。新月までまだまだ先だな』

 

 

ジュディス「じゃあ、今のうちにフェローと砂漠の情報を集めてはどう?」

 

 

リタ「あたしとリョウはエアルクレーネの情報探したいんだけど」

 

 

レイヴン「おっさんは先に宿に行っててもいい?ドンに経過報告の手紙出しとくわ」

 

 

リョウ『じゃあ、行こうぜ』

 

 

 

 

 

闘技場を出ると、パティが街の人と会話をしていた。

 

 

リョウ『パティのやつ。何してんだ?』

 

 

エステル「買い物みたいですね」

 

 

女性「あ、あの……もううちにはあまり、来ないでいただけますか、ね……」

 

 

その言葉を聞いたリョウは

 

 

リョウ『おいおい、お客様にそんなこと言っていいのか?』

 

 

女性「あなたは知らないんですか?この娘が大悪党アイフリードの孫だってこと」

 

 

リョウはドスの利いた声で

 

 

リョウ『だから?こいつはパティだ。アイフリードじゃないぐらい見て分かんねえのかよ』

 

 

パティ「リョウ。いいのじゃうちはすぐにこの街を出ていくのじゃ」

 

 

パティは走り去っていった。

 

 

リョウ『リタ、俺は宿に戻るわ。なんか胸くそ悪くなったからな』

 

 

リタ「じゃあ、あたしも戻るわ」

 

 

リョウとリタは宿に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

次の日、リョウ達は宿を出て、闘技場から出ようとすると、ひとりの男が近づいてきた。

 

 

?「あ、あの」

 

 

カロル「あなたは……遺構の門(ルーインズゲート)の首領ラーギィさん?」

 

 

リョウ『カロル。なんだその、るーいんずげーとって?』

 

 

カロル「魔導器発掘を専門としているギルドだよ。でもその首領がなんの用?」

 

 

ラーギィ「じ、実はお願いしたいことが」

 

 

カロル「遺構の門のお願いなら断れないね……て言いたいとこだけど今はボク達の仕事があるから……」

 

 

エステル「話を聞くだけでもいいのでは?」

 

 

カロル「そうだね」

 

 

ラーギィ「この戦士の殿堂を乗っ取ろうとしている男……闘技場のチャンピオンを倒していただきたいのです」

 

 

ジュディス「いきなり物騒な話ね」

 

 

ラーギィ「し、しかもその男の背後には海凶の爪がいるんです!海凶の爪はこの騎士の殿堂を乗っ取って、と、闘技場を資金源にして、ギ、ギルドの制圧を……!」

 

 

ユーリ「キュモールの野郎のあたりが考えてそうな話だな…」

 

 

リョウ『どうすんだ?引き受けるのか?』

 

 

カロル「う、うん。ギルドとしても放っておけない話、かもしれないし…」

 

 

レイヴン「んじゃ、闘技場に誰が出るわけ?」

 

 

リョウ『俺が出ようか?』

 

 

カロル「これは遺構の門に対して凛々の明星が受ける話だもん。リョウには頼めないよ」

 

 

ユーリ「じゃあ、オレでいいだろ?」

 

 

カロル「うん、じゃあお願いユーリ」

 

 

こうしてラーギィの依頼を受けることになった。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第31話 闘技場の罠

ラーギィの依頼を受けたユーリは闘技大会の受付へ行き。

リョウ達は観客席へ向かった。

 

 

リョウ『モグモグ……がんふぁれ~ゆーりひぃ~(がんばれ~ユーリ~)』

 

 

ポップコーンを食べながらリョウは声援を送る。

 

 

カロル「リョウ……いつの間にポップコーンを買ったの?」

 

 

リョウ『少し時間があったからな。食べる?』

 

 

カロル「あ、うん。ありがと……」

 

 

カロルは呆れながらも少しポップコーンを貰う。

 

 

レイヴン「おっさんにもちょうだい」

 

 

リョウ『おう!』

 

 

リタ「緊張感ないわね……」

 

 

ジュディス「みんなユーリを信じてるのよ」

 

 

エステル「はい!」

 

 

 

 

闘技大会が始まり、ユーリは1回戦、2回戦を難なく突破する。

 

 

リョウ『モグモグ……ふぎかへばふぁんふぃおんふぉふぁいけふか(次勝てばチャンピオンと対決か)』

 

 

カロル「まだ食べてる……」

 

 

レイヴン「おっさんにもちょうだい」

 

 

リョウ『おう!』

 

 

カロル「さっきも見たよ!このやりとり!」

 

 

そしてユーリは3回戦も突破し、予選を勝ち抜いた。

 

 

カロル「ついにチャンピオンか……どんな人だろ?」

 

 

リョウ『モグモグ……ひんひくむひむひじぇはすくるひいおほほがろ(筋肉ムキムキで暑苦しい男だろ)』

 

 

カロル「ずっと食べてるよねリョウ……」

 

 

リングアナ「さあ、ここでチャンピオンの登場だ。フレン・シーフォ!」

 

 

現れたチャンピオンは、騎士の鎧をまとった金髪の青年。フレンだった。

 

 

リョウ『ブフウウウーーーーーーー』

 

 

リョウは驚きのあまり口に含んでいたポップコーン(だったもの)を吹き出し、カロルの顔にかけてしまった。

 

 

カロル「ひどいよ……リョウ……」

 

 

リョウ『ゴホッゴホッ、どういうことだこりゃ?』

 

 

カロル「ねえ、無視?無視なのリョウ?」

 

 

エステル「ど、どうしてフレンが?」

 

 

レイヴン「どうやら、はめられたっぽい?」

 

 

ジュディス「そう考えるのが普通ね」

 

 

リタ「どうすんのよ?」

 

 

カロル「え……みんな無視?ボクのこと見えてる?」

 

 

みんなカロルになるべく関わらないようにしている。

 

 

?「ユーリ……ローウェル!!」

 

 

突然、上空から叫び声が聞こえて、何者かが舞台に乱入してきた。

以前、船の上で戦ったザギである。

ザギが左腕を上げると、異様なものがついていた。

 

 

リョウ『あれは……魔導器!あんな使い方しやがって』

 

 

ジュディス「あの魔導器……」

 

 

ジュディスは舞台へ駆けていく。

 

 

エステル「あ、ジュディス!」

 

 

リョウ達もあとを追う。

 

 

カロル「ちょ、ちょっと待ってよ」

 

 

カロルも顔をタオルで拭き、遅れて追う。

 

 

 

 

 

リョウがユーリの元へ駆け寄ると、ザギが気付き

 

 

ザギ「リョウ・ゲキショウ!お前もいたのか?まずはお前からだ!」

 

 

ザギがリョウに向かって来る。

 

 

リョウ『てめえなんてこれで十分だ。ほらよっ』

 

 

ポイッ

 

 

リョウはザギに向けて大きな紙のカップを投げる。

 

 

ザギ「なんだそりゃ?」

 

 

ズバッ

 

 

ザギはすぐさま剣で紙のカップを切り裂く。すると

 

 

ザギ「こ、これは、チィッ」

 

 

大量のポップコーンがザギ目がけて降って来た。

 

 

ザギ「はっ!どこにいった?」

 

 

ポップコーンに気を取られてリョウを見失ったザギ。

 

 

リョウ『ここだ!鬼炎連斬!!』

 

 

ザギ「ぐぁぁぁぁ」

 

 

リョウは背後に回り、炎を纏った銀雪花の連続斬りが炸裂した。

ザギは膝をついた。

 

 

リョウ『食べ物を粗末にしやがってこの野郎』

 

 

リョウ以外の全員【それはお前だ!!】

 

 

心の中でツッコミを入れた。

 

 

ザギ「むっ……!」

 

 

ザギの左腕が怪しい光を帯び始めた。

 

 

ザギ「魔導器風情がオレに逆らう気か!」

 

 

ザギの左腕の魔導器から光の玉が放たれ、爆発した。

すると、舞台に魔物がなだれ込んできた。

 

 

リョウ『魔物かよ……』

 

 

フレン「見世物のために捕まえてあった魔物だ!たぶん、今ので閉じ込めていた結界魔導器が壊れたんだ」

 

 

ザギ「くそっ……」

 

 

腕を押さえながらザギは去っていった。

 

 

カロル「た、倒さないと」

 

 

リョウ達は魔物を倒していくが、一向に数が減らない。

 

 

リタ「きりがないわね……」

 

 

ドンッ

 

 

リタが魔術を詠唱すると、突然、光が溢れ、魔術が暴発した。

 

 

リョウ『なんだ?』

 

 

エステル「この箱のせい……?」

 

 

エステルが箱を手に乗せて見ていると、ラーギィが俊足で奪い去った。

 

 

リタ「あいつ!

 

 

ユーリ「ここはフレンに任せて、オレ達はいくぞ!」

 

 

闘技場の出口に着くと、先に追いかけていったジュディスが戻ってきた。

 

 

ジュディス「街の外へ逃げられたわ。でもラピードが追ってるわ」

 

 

カロル「それにしても、どうなってるの?なんでラーギィさんが」

 

 

リョウ『フレンの任務を妨害するために依頼したんだろうな』

 

 

ラピードがラーギィの服の切れ端をくわえて戻ってきた。

 

 

ユーリ「これがあれば匂いで追えるな」

 

 

リョウ『あの箱を取り返すぞ!』

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第32話 エアル噴く洞窟

ラーギィを追ってノードポリカを出て、西の洞窟にやってきたリョウ達。

 

 

リョウ『ここを進んだのか?』

 

 

カロル「ここはカドスの喉笛って言われる洞窟で、プテロプスって強い魔物がいる危険なとこなんだよ」

 

 

ジュディス「それを知らなくて進んで行ったのかしら」

 

 

ラピード「ワン!」

 

 

ラピードが物陰に潜んでいたラーギィを見つけ出す。

 

 

ラーギィ「あわわわ……は、はなしてください」

 

 

リョウ『隠れてやり過ごすつもりだったんだな。とりあえず箱を返しな』

 

 

ラーギィ「ししし、仕方ないですね」

 

 

ラーギィがそう言うと、赤眼の男達が現れる。

 

 

エステル「海凶の爪!?」

 

 

リョウ『な、なんでだ?』

 

 

リョウ達は赤眼を撃退したが、すでにラーギィの姿はなかった。

 

 

ユーリ「遺構の門と海凶の爪はつながってたってところか」

 

 

リョウ〖じゃあ、ラーギィはもしかして……〗

 

 

リョウはラーギィを追いかけようとする。

 

 

カロル「待って、リョウ!危ないってば」

 

 

リョウ『追わないと逃げられちまう。箱も取り返さなきゃいけないし、あとラーギィに聞きたいことができた』

 

 

カロル「わ、わかったよ、ボク達も行くよ」

 

 

 

 

 

 

 

ラーギィを追いかけ洞窟を進んで行くと、崖から人影が登ってきた。

 

 

リョウ『敵か?……ってパティ?』

 

 

パティ「また会ったの」

 

 

ユーリ「アイフリードのお宝をさがしているのか?」

 

 

パティ「うむうむ」

 

 

カロル「ねえ……パティがアイフリードの孫って……本当?そんな話聞いたことないよ」

 

 

パティ「本当なのじゃ!たぶん……」

 

 

リョウ『たぶん?』

 

 

パティ「うちは記憶喪失じゃからのう。だから推測なのじゃ」

 

 

リョウ『パティも記憶喪失なのか?』

 

 

パティ「そういうことじゃ。ん?も?」

 

 

リョウ『パティには言ってなかったっけ?俺も記憶喪失なんだ』

 

 

パティ「そうなのか?」

 

 

リョウ『ああ。でも詳しいことは今度な。今、急いでいるから』

 

 

リョウ達は駆け出す。

 

 

パティ「うちもいくのじゃ!」

 

 

パティもついていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

洞窟をさらに進むと再びラーギィを発見する。

 

 

ラピード「バウッ!!」

 

 

ラピードが追いかけようとすると、ラーギィが転ぶ。しかし、ラピードとラーギィの間を不思議な光が隔てる。

 

 

ラーギィ「おおお、お助けを!」

 

 

パティ「何なのじゃ?」

 

 

エステル「エアル?」

 

 

リタ「ケープ・モックのと同じだわ!ここもエアルクレーネなの?」

 

 

ユーリ「こうなりゃ、強行突破……」

 

 

リョウ『無茶言うな!この量のエアルに触れるのは危険すぎる』

 

 

ラーギィ「た、助かった」

 

 

ラーギィが逃げようとすると、そこからもエアルが噴出する。

 

 

ジュディス「さすがに離れた方がよさそうね」

 

 

地面が揺れ始め、目の前に巨大な竜が現れた。

 

 

カロル「なに?この魔物?」

 

 

竜は周囲のエアルを吸い込み始めた。

 

 

リタ「エアルを食べた?」

 

 

エアルの噴出は治まった。

ラーギィはすぐさま逃げ出した。

 

 

リョウ『エアルクレーネなら後で調べられる。今はラーギィを追うぞ!』

 

 

リョウは先に行ってしまった。

 

 

リタ「ちょっと、リョウ!」

 

 

レイヴン「リョウ君どうしたの?」

 

 

カロル「ここにきてからすごく慌てているような」

 

 

ユーリ「あいつの言う通り今は追いかけるぞ」

 

 

 

 

 

 

洞窟のさらに奥で、コウモリの大群に足止めされているラーギィを見つけ、ラピードがラーギィに突進し、紅の小箱を奪い返す。

 

 

ユーリ「よくやった、ラピード」

 

 

ラーギィ「こ、ここは……ミーのリアルなパワーを……!」

 

 

ラーギィが光に包まれる。するとイエガーの姿になっていた。

 

 

リョウ『やっぱりお前だったんだなイエガー。話してもらうぞ!この前の言葉の意味を!』

 

 

イエガー「おーコワイで~す。ミーはラゴウみたいになりたくないですヨ」

 

 

リョウ『ラゴウ?あのじいさんがどうかしたのか?』

 

 

イエガー「ちょっとビフォアに、ラゴウの死体がダングレストの川下でファインドされたんですよ」

 

 

エステル「ラゴウが死んだ?どうして?」

 

 

イエガー「それはミーの口からはキャンノットスピークよ」

 

 

ユーリ「……」

 

 

コウモリの群れの方へ進んで行くイエガー

 

 

リョウ『待てイエガー!まだ話は終わっていない!』

 

 

イエガー「ゴーシュ、ドロワット、後は任せましたヨー」

 

 

どこからともなく、ゴーシュ、ドロワットが現れた。

 

 

ゴーシュ「了解」

 

 

ドロワット「アイアイサー♪」

 

 

ゴーシュとドロワットはコウモリに斬りかかり、その間をイエガーがぬけていく

 

 

リョウ『待てイエガー!』

 

 

イエガー「……」

 

 

イエガーは逃げてしまった。コウモリの群れは1つの塊になって、リョウの前に立ちふさがる。

 

 

カロル「コイツがプテロプスだよ!」

 

 

リョウ『邪魔だ!鬼炎斬!!』

 

 

鬼炎斬は避けられて、プテロプスはリョウに向かって体当りをしようとしている。

 

 

リョウ〖しまった……〗

 

 

プテロプスはリョウに向かって来る。そこにふたつの影が現れる。ゴーシュとドロワットだ。

ゴーシュとドロワットはプテロプスの攻撃を防いだ。

 

 

リョウ『おまえら……なんで?』

 

 

ゴーシュ「イエガー様の命令だ」

 

 

ドロワット「リョウ・ゲキショウを守れって言われたのよん」

 

 

リョウ「イエガーが?」

 

 

ゴーシュ「ここは私達にまかせろ。いくぞドロワット!」

 

 

ドロワット「アイアイサー♪」

 

 

ゴーシュ ドロワット「「瞬間、響き合い、心交わる 衝破十文字!」」

 

 

ゴーシュとドロワットの秘奥技が炸裂し、プテロプスを撃退した。

 

 

ゴーシュ「任務完了。撤退する」

 

 

ドロワット「ばいばいだよぉ」

 

 

煙幕を張ってふたりは消えた。

 

 

ユーリ「くさっ……なんだこの煙」

 

 

ラピード「ク~ン」

 

 

レイヴン「これじゃワンコも匂い追えないってか……」

 

 

煙が晴れて、洞窟の出口に差し掛かると、強烈な日光が照らす。

 

 

リタ「な、なにこの熱気……」

 

 

リョウ『砂漠か……』

 

 

リタ「フェローってのに会いに本当に行くの?」

 

 

ジュディス「この先にオアシスの街があるわ。とりあえずそこで話しましょう」

 

 

リョウ達はとりあえずオアシスの街に向かうことになった。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第33話 砂漠の街

水と黄砂の街 マンタイク

 

 

 

 

オアシスの街、マンタイクに着いたリョウ達

 

 

ユーリ「静かな街だな」

 

 

リョウ『でも暑いし、なんか騎士もいるんだけど』

 

 

ジュディス「私が前来た時はいなかったわね」

 

 

パティ「うちは宝の手がかりを探すから、ここでバイバイなのじゃ」

 

 

リョウ『そうか、気をつけてな』

 

 

パティは走って行った。

 

 

ユーリ「とりあえず、自由行動にしないか?」

 

 

リタ「賛成~ちょっと休憩したい」

 

 

ユーリ「日が落ちたら宿屋の前で落ち合おうぜ」

 

 

リョウ〖俺はリタといるか〗

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿屋

 

 

 

 

リョウとリタは宿屋へ行き、紅の箱を調べていた。

 

 

リョウ『うーん。やっぱり鍵がないと開かないか』

 

 

リョウは何度か力づくで開けようとしたが、まったく開く気配がない。

 

 

リタ「ヨームゲンを探すしかないわね」

 

 

リョウ『そうだな。あ……俺、リタに謝らなくちゃ…』

 

 

リタ「なんでよ?」

 

 

リョウ『カドスの喉笛で、調査するべきエアルクレーネがあったのに俺、自分の記憶のことで頭がいっぱいになってないがしろにしちまったから。本当にゴメン……』

 

 

リョウは頭を下げる。

 

 

リタ「べつに気にしてないわよ。あそこのエアルクレーネはまたあとで調べればいいんだから。それにあんたの記憶探しも旅の目的のひとつでしょ」

 

 

リョウ『リタ……ありがとう』

 

 

リタ「ど、どういたしまして/////」

 

 

リョウ『でも、肝心のイエガーから話は聞けなかったな……』

 

 

リタ「そうね。リョウは10年前に死んだ……か」

 

 

リョウ『でも、現に俺は生きてるし、同姓同名の別人のことか?』

 

 

リタ「でもそれだと護衛にあんたを守るように命令するかしら?」

 

 

リョウ『そうだよな……ますます分からん』

 

 

リタ「でも、妙よね」

 

 

リョウ『なにがだ?』

 

 

リタ「リョウに関する情報がいくつか出てるのに、なにも思い出せないんでしょ?」

 

 

リョウ『そうだな……銀雪花のこと、イエガーの10年前に死んだ友人にリョウ・ゲキショウがいたこと……』

 

 

リタ「なにか小さなことでも思い出してもいいと思うんだけど」

 

 

リョウ『うーん……もしかして俺の記憶はこの箱みたいな状態なのか?』

 

 

リタ「どういうこと?」

 

 

リョウ『例えばこの箱の中に俺の記憶が入っているとしよう、鍵が見つからない限り開くことはないだろ?しかも鍵はひとつだけで他の似たような鍵では絶対に開かない。

つまり、今手に入れている情報では絶対に思い出せないようになっているとか』

 

 

リタ「じゃあ、記憶を思い出せる情報はひとつしかないってこと?」

 

 

リョウ『まあ、推測だけどな。可能性はゼロじゃない』

 

 

リタ「でも、そうであってもやることは変わらないわね」

 

 

リョウ『そういうことだな。少しずつ情報を手に入れるしかないな。そろそろ日が落ちるな……みんなと落ち合うか』

 

 

 

 

 

 

宿屋の前

 

 

 

 

リタ「本当に砂漠にいくの?」

 

 

エステル「はい。どうしてもフェローに会いたいです」

 

 

リタ「分かったわ。でも、あたしとリョウも行く」

 

 

リョウ『そういうわけで、この街でちゃんと準備して行こう』

 

 

ジュディス「そう言うと思って準備をお願いしておいたわ。宿屋でいろいろ貸してくれるそうよ」

 

 

ユーリ「じゃあ、今日は準備で明日出発だ」

 

 

今日は宿屋で泊まることになった。次の日宿屋の主人から全員に水筒が配られ、水を汲んだ。

これで準備完了

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第34話 砂漠横断

コゴール砂漠

 

 

 

 

エステル「影ひとつないですね」

 

 

リョウ『想像以上の暑さだな……なのにレイヴンは』

 

 

元気満タンなのか、レイヴンは宙返りしている。

 

 

ユーリ「おっさん……暑くないのか?」

 

 

レイヴン「いや暑いぞ、めちゃ暑い、まったく暑いぞ」

 

 

リョウ『そんな風には見えねえけど……』

 

 

突然、鳥のような鳴き声が砂漠に響き渡る。

 

 

リョウ『なんだ?今の?』

 

 

エステル「フェロー?」

 

 

カロル「やっぱりフェローはこの砂漠にいたんだ!」

 

 

ユーリ「急かすなって。こまめに水分補給しながら進むぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

水分を含んだサボテンで水分補給しながら砂漠を進んで行くリョウ達。

 

 

リョウ『ん?なんだあれ?』

 

 

リョウが砂の中でうごめく物体を見つける。

その物体はこちらに向かってきた。

 

 

リョウ『こっちに来るぞ』

 

 

ガシッ

 

 

うごめく物体から手が出てきてリョウの足をつかみ、顔を上げた。

 

 

パティ「リョウなのじゃ!!」

 

 

リョウ『ぱ、パティ?砂の中で何してんだ?』

 

 

パティ「もちろん!宝探しなのじゃ!でも、見つからんのじゃ」

 

 

リタ「こんな熱い砂の中に潜っていたら、命がいくつあっても足りないわよ」

 

 

エステル「パティも一緒に行きましょう。その方が安全ですし」

 

 

パティ「ありがとなのじゃ」

 

 

砂漠を進んでいると、パティがリョウに

 

 

パティ「そういえばリョウも記憶喪失と言っておったのう」

 

 

リョウ『ああそうだ。自分の名前以外はまったく覚えてなくてな……』

 

 

パティ「やっぱり不安なのかの?」

 

 

リョウ『そうだな……でも』

 

 

パティ「でも?」

 

 

リョウ『リタがな、たとえリョウが何者でもあたしはリョウの味方で恋人なんだからって励ましてくれてな。その言葉に救われたよ』

 

 

パティ「そうか……ん?恋人?」

 

 

リョウ『俺とリタは付き合ってるんだ』

 

 

パティ「そうじゃったのか!ひゅーひゅーなのじゃ」

 

 

リョウ『茶化すなよ。ただでさえ暑いのにもっと暑くなるだろ/////』

 

 

パティ「うちもいずれはリョウとリタ姐にも負けないくらいのカップルにユーリとなってみせるのじゃ!」

 

 

リョウ『そ、そうか。がんばれ』

 

 

 

 

 

 

 

 

鳴き声がする近くまで来たリョウ達。

リョウは不穏な空気を感じた。

 

 

リョウ『なんか変だな……』

 

 

カロル「あ、あれ……!」

 

 

突然、不気味な半透明の生物が現れた。

 

 

エステル「フェローじゃない……」

 

 

ラピード「ワン!ワン!」

 

 

ユーリ「ラピードがビビるなんて……ヤバそうだな……」

 

 

リョウ『来るぞ!!』

 

 

謎の生物はリョウ目がけて体当りをしてきた。

 

 

リョウ『当たるかよ!オラァッ』

 

 

リョウは謎の生物を斬った……はずだった

 

 

リョウ『なんだこいつ……斬った感触が無い……!』

 

 

謎の生物にはまったく効いていなかった。

 

 

ユーリ「円閃牙!!」

 

 

カロル「臥龍アッパー!!」

 

 

仲間たちも攻撃をするが、まったく効いていない。

 

 

リョウ〖時間かかりすぎだ。こいつにやられる前に、暑さにやられちまう〗

 

 

全員体力が限界までに近づいてきた。

すると突然、謎の生物は消えてしまった。

 

 

リョウ『消えた?なんで…だ?』

 

 

バタッ

 

 

ユーリ「リョウ……しっかりし……ろ」

 

 

エステル「リョウ……ユーリ……」

 

 

次々と倒れる仲間達。そして、全員倒れてしまった。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第35話 ヨームゲン

リョウ『ん……ここは?』

 

 

リョウが目を覚ますと、見たことのない部屋だった。

 

 

リョウ『宿屋かここ?でも俺は砂漠でぶっ倒れて……』

 

 

とりあえずリョウは部屋を出ると、リタとカロルを見つけた。

 

 

リタ「リョウ!」

 

 

カロル「リョウも目が覚めたんだね!」

 

 

リョウ『おう。ここはどこだ?さっきまで砂漠にいたはずなのに……』

 

 

リタ「あたしも分からないわ」

 

 

カロル「とりあえず、ユーリ達を探そうよ」

 

 

3人は宿屋を出る。外にはユーリ、エステル、ジュディス、パティがいた。

 

 

リョウ『みんな!無事だったのか!あれ?レイヴンとラピードは?』

 

 

ジュディス「ここがどこか調べてくれているわ」

 

 

リタ「結界がない。変な街ね……」

 

 

カロル「砂漠の巨山部は無人地帯だって聞いたことがあるんだけどな」

 

 

レイヴンとラピードが戻ってきた。

 

 

リョウ『レイヴン、なにか分かったか?』

 

 

レイヴン「どうやらここがヨームゲンって街らしいぜ」

 

 

ユーリ「ヨームゲンってあの幽霊船の日記にあった街か?」

 

 

エステル「え、ここが?」

 

 

カロル「澄明の刻晶が必要っていう街?」

 

 

リョウ『結界がないからなこの街』

 

 

パティ「だから魔物を退ける方法を探しておったのじゃな」

 

 

レイヴン「でも、あれは千年も前の話でしょ」

 

 

ユーリ「ああ。それに結界なしで暮らしてるなんて妙だ」

 

 

ジュディス「街の人に澄明の刻晶の箱を見せて、話を聞いてみてはどう?」

 

 

エステル「そうですね。フェローについても何か聞けるかも知れません」

 

 

 

 

 

 

 

 

エステルが箱を持って歩いていると、ひとりの女性が

 

 

女性「その箱……」

 

 

エステル「この箱について何かご存じなんですか!?」

 

 

女性「その箱は……ロンチーの持っていた……それをどこで?」

 

 

リョウ『アーセルム号って船なんだが……』

 

 

女性「あなた方、アーセルム号をご存知なんですか!?」

 

 

リョウ『偶然、海で見つけたんだ』

 

 

女性「私の恋人ロンチーに会いませんでしたか?」

 

 

リョウ『俺達が見たのは船の方だけだ』

 

 

女性「そうですか……」

 

 

ジュディス「あなたの名前を聞いていいかしら?」

 

 

女性「私はユイファンといいます」

 

 

エステル「アーセルム号にあった日記あった名前ですね」

 

 

カロル「同じ名前の子孫かな?」

 

 

ユーリ「あんた、澄明の刻晶って知ってるか?」

 

 

ユイファン「結界を作るために必要なものだと賢人(さかびと)様がおっしゃっていました。ま、まさか、その箱の中に?」

 

 

エステル「はい。わたし達届けにきたんです」

 

 

ユイファン「そう、だったんですか」

 

 

ユイファンは小さな鍵を取り出した。

 

 

リタ「その鍵、まさか……」

 

 

ユイファン「箱を貸してもらえますか?」

 

 

ガチャッ

 

 

箱が開き、大きな宝石のようなものが入っていた。

 

 

リョウ『これが澄明の刻晶?』

 

 

リタ「みたいね……」

 

 

パティ「きれいなのじゃ」

 

 

レイヴン「で、賢人様って誰のことよ?」

 

 

ユイファン「賢人様は、砂漠の向こうからいらしたクリティア族の偉いお方です。

結界を作るために澄明の刻晶が必要だって賢人様がおっしゃって。

それを探すためにロンチーは旅に出てもう3年にもなります」

 

 

ユーリ「……3年ね。そりゃ心配するわな」

 

 

リョウ達はひそひそと

 

 

カロル「なんか色々話がおかしくない?」

 

 

エステル「なんだか、話がかみ合ってませんね」

 

 

レイヴン「千年の間違いじゃないん?」

 

 

リョウ『じゃあ、彼女は何歳だ?』

 

 

ジュディス「とりあえずその賢人様に話を聞いた方が早いと思うけれど」

 

 

リョウ『そうだな……賢人様ってのはどこにいるんだ?』

 

 

ユイファン「街の一番奥の家にいます。澄明の刻晶を賢人様のところに持って行っていただげますか?」

 

 

リョウ『分かった』

 

 

 

 

 

 

 

 

賢人の屋敷に入るリョウ達

 

 

リョウ『邪魔するよ』

 

 

声を聞き、振り返る男、それはデュークだった。

 

 

リョウ『あんた……ケーブ・モックにいた……』

 

 

デューク「リョウ……なぜおまえがここに?」

 

 

リョウ『砂漠を越えて来たんだ。んで、これを届けに』

 

 

リョウは澄明の刻晶を渡す。

 

 

デューク「わざわざ、悪いことをした」

 

 

リタ「あんた、結界を作るつまり、結界魔導器を作るって言ってるそうじゃない。賢人気取ってそんな魔核じゃない怪しいものを使って結界魔導器を作るなんて……」

 

 

デューク「魔核ではないが、魔核と同じエアルの塊だ。術式が刻まれてないだけのこと」

 

 

リタ「どういうこと?」

 

 

デューク「一般的には聖核と呼ばれている。澄明の刻晶はそのひとつだ」

 

 

リョウ『聖核ってたしかレイヴンが探してるものじゃなかったっけ?』

 

 

レイヴン「これが聖核か……」

 

 

デューク「それに賢人は私ではない。かの者はもう死んだ」

 

 

リョウ『そうなのか?じゃあ、それ(澄明の刻晶)どうしよう』

 

 

デューク「これは人の世には必要ないものだ」

 

 

デュークは聖核を床に置き、剣を突き立てる。

すると、デュークの周囲から光が放たれ、聖核は消えた。

 

 

レイヴン「あっちゃ~。せっかくの聖核を」

 

 

デューク「聖核は人の世に混乱をもたらす。エアルに還した方がいい」

 

 

リタ「エアルに還す?今の本当にそれだけ?」

 

 

エステル「聖核はこの街を魔物から救うために必要だったんじゃないんです?」

 

 

デューク「この街に、結界も救いも不要だ。ここは悠久の平穏が約束されているのだから」

 

 

エステル「でも、フェローのような魔物も近くにいるんですよ」

 

 

デューク「なぜ、フェローのことを知っている」

 

 

ユーリ「あんたも知ってんのか?」

 

 

エステル「知っていること教えてくれませんか?わたし、フェローに忌まわしき毒だと言われました」

 

 

デューク「なるほど……この世界には始祖の隷長(エンテレケイア)が忌み嫌う力の使い手がいる」

 

 

リョウ『始祖の隷長?』

 

 

デューク「古い一族の名だ。そしてその力の使い手を満月の子という」

 

 

エステル「それが、わたし……?もしかして始祖の隷長っていうのはフェローのことですか?」

 

 

デューク「その通りだ」

 

 

エステル「どうして始祖の隷長は満月の子を嫌うんです?満月の子の力っていったい……」

 

 

デューク「真意は始祖の隷長本人の心のうち。直接聞くしか方法はない」

 

 

エステル「やっぱりフェローに会うしか……」

 

 

デューク「会ったところで、消されるだけ。おろかなことはやめるがいい」

 

 

エステル「でも……!」

 

 

リタ「エステル、もうやめとこう」

 

 

デューク「立ち去れ。もはやここには用はなかろう」

 

 

リョウ『待て!あんたは俺のことを知っているのか?』

 

 

デューク「どういう意味だ?」

 

 

リョウ『ケーブ・モックで会った時、あんたは俺を見て動揺した。俺は記憶喪失だ。だから、俺は自分が何者なのか知りたい!知っていることがあれば教えてくれ!』

 

 

デューク「ひとつだけ教えよう」

 

 

リョウ『なんだ?』

 

 

デューク「リョウ・ゲキショウはもうこの世にはいない」

 

 

リョウ『どういう意味だ?』

 

 

デューク「そのままの意味だ。もう話すことはない」

 

 

デュークは去っていった。

 

 

リタ「ちょっと待ちなさい!」

 

 

リョウ『リタ、もういい。あの様子じゃこれ以上なにも答えないだろうな……』

 

 

カロル「前にイエガーが言ったことと似てるね……」

 

 

レイヴン「10年前に死んだ。もうこの世にはいない……ね」

 

 

ユーリ「とりあえず、屋敷から出ようぜ」

 

 

リョウ達は賢人の屋敷から出た。

 

 

 

 

 

 

カロル「これからどうする?」

 

 

リタ「あたしとリョウはカドスの喉笛のエアルクレーネに行きたいわ」

 

 

レイヴン「俺様はベリウスに手紙渡さないとなぁ」

 

 

ジュディス「みんなでノードポリカに向かうのはどう?ベリウスに会えば、いろいろ分かると思うわ」

 

 

エステル「そうなんです?」

 

 

リョウ『カドスの喉笛を通らないといけないからちょうどいいな』

 

 

ユーリ「じゃあ、決定だな」

 

 

リョウ達はヨームゲンを後にした。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第36話 暴政

砂漠を超えて、マンタイクに戻ってきたリョウ達

 

 

リタ「やっと帰ってきた。砂漠はもうこりごりだわ……」

 

 

リョウ『そうだな……ん?』

 

 

リョウは馬車を見つける。その近くには住人がおり、騎士団が取り囲んでいた。そのなかには

 

 

リタ「キュモール……!」

 

 

レイヴン「急いてはことを仕損じるよ」

 

 

パティ「ここは慎重に様子見なのじゃ」

 

 

キュモール「ほらほら、早く乗りな」

 

 

街人「私達ががいないと子供達は…!」

 

 

キュモール「翼のある巨大な魔物を殺して死骸を持ってくれば、お金はやるよ。

そうしたら、子供共々楽な生活が送れるんだよ」

 

 

カロル「翼のある巨大な魔物ってフェローのことだよね」

 

 

リョウ『捕まえてどうするつもりなんだ?』

 

 

エステル「わたしがなんとかしないと…」

 

 

パティ「今は行かない方がいいと思うのじゃ」

 

 

ユーリ「あのバカ、お姫様の言うことも聞きゃしねえしな

 

 

エステル「じゃあ、どうするんです?」

 

 

ユーリ「カロル、耳貸せ」

 

 

カロルはユーリの話を聞く。

 

 

カロル「ええっ?できるけど……分かった。危なかったら助けてよ?」

 

 

カロルは片手にレンチを持ち、騎士団の方に向かう。

しばらくすると、騎士団の馬車の車輪が外れた。

 

 

キュモール「馬車を準備したのは誰!?早く馬車を直せ!」

 

 

リョウ『なるほどそういうことか』

 

 

カロルがリョウ達のもとへ戻ってきた。

 

 

ユーリ「お疲れさん」

 

 

カロル「ふーっ…ドキドキもんだったよ」

 

 

リタ「でも、これって、ただの時間稼ぎじゃない」

 

 

ジュディス「これが限度ね。私達には」

 

 

リョウ『とりあえず、宿屋に隠れた方がいいな』

 

 

リョウ達は宿屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、宿屋にて

 

 

パティ「どうして、世の中、こんなにどうしようもないヤツが多いのじゃ」

 

 

リョウ『ありゃもう病気だよ。バカっていう』

 

 

エステル「わたしが皇族の者として話をしたら……」

 

 

リョウ『あのバカが話を聞くとは思わないんだが。ヘリオードでエステルに剣を向けたバカだし』

 

 

リタ「とりあえず、自分のことか人のことか、どっちかにしたら?」

 

 

ジュディス「知りたいんでしょ?始祖の隷長の思惑を」

 

 

パティ「出来ることからした方がいいと思うのじゃ」

 

 

レイヴン「俺達じゃなにもできないからねぇ」

 

 

エステル「フレンなら…!」

 

 

カロル「フレンは……どこにいるの?」

 

 

エステル「それは……」

 

 

リョウ『ふたつのことをいっぺんにしようとするのは難しいと思うぜ』

 

 

リタ「ごめん、エステル……みんな、責めてるわけじゃない。あたしだってムカつくわ。でも……」

 

 

エステル「リタ……わかっています」

 

 

ジュディス「ああいう人はまた同じことを繰り返すわね」

 

 

リョウ『バカは死ななきゃ、治らないって言うからな』

 

 

ユーリ「死ななきゃ治らない……か」

 

 

その後すぐに、マンタイクにフレン隊が来てキュモール隊を抑え、街は解放された。しかし、キュモールは見つからず、逃走したらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リョウは賑わいを取り戻した街で、ひとり寝転がり星空を見ていた。

 

 

リョウ『綺麗だな~』

 

 

すると、リタがやって来た。

 

 

リタ「なにやってんのリョウ?」

 

 

リョウ『星空見てる。リタも一緒に見ないか?』

 

 

リタ「そうね」

 

 

リタはリョウの隣に座る。

 

 

リョウ『まさかフレンが来てくれるなんてな』

 

 

リタ「そうね。いいタイミングに来てくれたわ」

 

 

リョウ『キュモールは逃げたみたいだけど、まあ捕まるのも時間の問題だろ』

 

 

リタ「そうね。今は、あのバカのことは忘れましょ」

 

 

リョウ『そうだな。にしても今夜は満天の星空だな』

 

 

リタ「綺麗ね……こういうのを銀河って言うのよね」

 

 

リョウ『銀河か……』

 

 

ズキッ

 

 

リョウ『いてっ』

 

 

リタ「どうしたの?」

 

 

リョウ『いや、今一瞬頭痛が……』

 

 

リタ「大丈夫?もう休んだ方がいいんじゃない?あたしも帰るから」

 

 

リョウ『そうする』

 

 

リョウとリタは宿屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日リョウ達はノードポリカに向かうために、マンタイクを出て、カドスの喉笛へ向かっていた。その途中ひとりの商人とすれ違う

 

商人「あんた方、カドスの喉笛へ?」

 

ユーリ「そうだけど」

 

商人「カドスは騎士団が封鎖していますよ」

 

リョウ『封鎖?なんで?』

 

商人「事情は知りません。でも、ノードポリカは危険なんだとか」

 

ユーリ「そうか……まあでも行ってみようぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カドスの喉笛

 

 

 

 

洞窟に入ると、大勢の騎士と魔物の姿が見える。

 

 

エステル「フレン隊です」

 

 

ジュディス「封鎖っていうのはあれ?」

 

 

ユーリ「なんか、フレンに似合わねえ部隊になってんな」

 

 

カロル「この検問どうしようか?」

 

 

リョウ『う~ん……お!いいこと思いついた』

 

 

リョウはひとりで検問に向かって行く。

 

 

レイヴン「リョウ君ちょっと……」

 

 

リタ「今はリョウを信じましょ」

 

 

リョウに気づいたふたりの騎士が

 

 

騎士A「おい貴様!そこで止まれ!」

 

 

騎士B「ここはただいま封鎖中だ」

 

 

リョウ『いやいや俺はここを通りたいんじゃなくて、落し物を届けに来たんです』

 

 

騎士A「落し物?」

 

 

リョウ『この太刀なんですけど……』

 

 

ユーリ「まさか……リョウのやつ」

 

 

カロル「ボクもユーリと同じ予想だよ……」

 

 

パティ、ジュディス「「?」」

 

 

騎士A「分かった。とりあえず、預かろう……」

 

 

リョウは騎士に銀雪花を渡す。すると

 

 

騎士A「な、なんだこの太刀!お、重すぎる……」

 

 

騎士B「て、手伝おう……お、重い!」

 

 

グキッ

 

 

騎士A、B「「こ、腰が……」」

 

 

ふたりの騎士は腰を押さえて倒れる。

 

 

リョウ『よし。今のうちに行くぞ!』

 

 

ユーリ、カロル「「やっぱり……」」

 

 

リタ「バカっぽい……」

 

 

レイヴン「いい作戦じゃない」

 

 

パティ「なんなのじゃ、あの太刀?」

 

 

ジュディス「あとで聞いてみましょう」

 

 

エステル「すごいです。リョウ!」

 

 

リョウ達は走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

以前、エアルが噴出した場所までやって来たリョウ達

 

 

ユーリ「調査は手短にな。追手がくると厄介だからな」

 

 

リタ「分かってる。リョウ、はじめましょ」

 

 

リョウ『了解』

 

 

リタとリョウは調査を始める。

 

 

リタ「今は完全におさまってる……。一時はあんなに溢れていたのに。

あれでエアルを制御したって事?何で魔物にそんなことが……」

 

 

エステル「そのエアルクレーネはもう安全なんです?」

 

 

リョウ『そうだな。前みたいにエアルが噴出したりすることはないと思う』

 

 

ユーリ「じゃあ、なんであの時はエアルが噴出したんだ?」

 

 

リョウ『それが問題なんだ』

 

 

エステル「自然現象ではないんです?」

 

 

リタ「その可能性は低いわね。だとすると……」

 

 

ラピード「グルルルル」

 

 

ラピードが警戒する。追手が近くまで来たようだ

 

 

リョウ『このぐらいにして先を急ごう』

 

 

リタ「そうね」

 

 

 

 

 

 

ノードポリカ側の出口付近で、アデコール、ボッコス、ルブランが見張りをしている。

 

 

レイヴン「まあ、当然ここも押さえているわな」

 

 

リョウ『またあの作戦で……』

 

 

騎士「いたぞ、捕えろ!」

 

 

リョウ『そんな時間はなさそうだな』

 

 

アデコール「む、何事であ~る」

 

 

騎士「お前達、そいつらを逃がすな!」

 

 

ルブラン「お前は、ユーリ・ローウェル!」

 

 

ユーリ「よう、久しぶりだな」

 

 

前後から騎士達に挟まれる。

 

 

リョウ『どうする……』

 

 

レイヴン「しゃ~ない」

 

 

レイヴンが出口の方へ走り出す。

 

 

レイヴン「全員気を付け!」

 

 

ルブラン「は、はっ!」

 

 

レイヴンがそう言うと、ルブラン達が敬礼する。

 

 

ユーリ「何か知らんが、今のうちだ!」

 

 

その隙に洞窟を出ることができたリョウ達であった。

 

 

To be continued




スキット 銀雪花について



パティ「リョウはすごいのじゃ。あんな重い太刀を背負っておるのじゃから」


ジュディス「そうよね。肩とか凝らないのかしら?」


リョウ『どういうわけか、俺以外が持つと重たいらしい』


ジュディス「あら、ほんとね。全然持ち上がらないわ」


パティ「ほんとなのじゃ。なんでかのう?」


リョウ『ドンが言うには特別な力を持った者しか使えないらしい』


パティ「そうなのか?世界は不思議なことでいっぱいじゃ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第37話 統領との面会

ノードポリカ

 

 

 

ノードポリカに着いたリョウ達は宿屋に泊まり、新月の夜がやってきた。

ベリウスに会うべく、ナッツのもとを訪れる。

 

 

ユーリ「ベリウスに会いに来た」

 

 

ナッツ「あんた達は……ドン・ホワイトホースの使いだったかな」

 

 

レイヴン「そゆワケだから通してもらいたいんだけど」

 

 

ナッツ「そちらは通ってもよいが……。他のものは控えてもらいたい」

 

 

エステル「そんな…」

 

 

???「よい。皆通せ」

 

 

奥の方から何者かの声が聞こえた。

 

 

ナッツ「統領!しかし……」

 

 

???「良いというておる」

 

 

ナッツ「分かりました。くれぐれも中で見たことは、他言無用で願いたい」

 

 

リョウ『分かった。約束する』

 

 

ナッツ「この先に我が主ベリウスはいる」

 

 

 

 

 

 

統領の私室に入ると、そこは暗闇だった。

 

 

リョウ『真っ暗じゃねえか……どこにいるんだ?』

 

 

部屋に炎が灯ると、そこには巨大な狐のような姿が浮かび上がった。

 

 

カロル「ま、魔物……!」

 

 

ユーリ「ったく、罠とはな」

 

 

ジュディス「罠ではないわ。彼女が…」

 

 

エステル「ベリウス?」

 

 

???「いかにも。わらわがノードポリカの統領、騎士の殿堂を束ねるベリウスじゃ」

 

 

エステル「あなたも、人の言葉を話せるのですね」

 

 

ベリウス「先刻そなたらは、フェローに会うておろう。なれば、さほど珍しくもあるまいて」

 

 

ユーリ「あんた始祖の隷長だな?」

 

 

ベリウス「左様じゃ」

 

 

レイヴン「…ドンのじいさん、知ってて隠してやがったな」

 

 

ベリウス「そなたは?」

 

 

レイヴン「ドン・ホワイトホース部下のレイヴン。書状を持って来たぜ。あのじいさんとはどういう関係なのよ?」

 

 

ベリウス「人魔戦争の折に、色々と世話になったのじゃ」

 

 

リョウ『人魔戦争?』

 

 

ベリウス「そなたは知らぬのか?」

 

 

リョウ『ああ……』

 

 

ベリウス「10年前、人間と始祖の隷長の間で起きた戦いよ」

 

 

リョウ『10年前……』

 

 

10年前に死んだのですから

 

 

イエガーの言葉が頭の中で蘇る。

 

 

リョウ〖10年前、俺は人魔戦争に参加していた?でもそれはおかしい。10年前だったら俺はまだ小さいはずだ……〗

 

 

ベリウス「いずれにせよ、ドンとはその頃からの付き合い。あれは人間にしておくのは惜しい男よな」

 

 

レイヴン「じいさんが人魔戦争とかかわってたなんて話、初めて聞いたぜ」

 

 

ベリウス「やつとて話したくないことぐらいあろう。さて、ドンはフェローとの仲立ちをわらわに求めている。

ドンの願いを無碍にはできぬ。一応承知しておこうかの」

 

 

レイヴン「ふぃ~。いい人で助かったわ」

 

 

ユーリ「ギルドの長をやってんのもいる。始祖の隷長ってのは妙な連中だな」

 

 

ベリウス「そなたら人も同じであろう。さて、用向きは書状だけではあるまい。のう。満月の子よ」

 

 

リタ「わかるの?エステルが満月の子だって……」

 

 

ベリウス「我ら始祖の隷長は満月の子を感じることができるのじゃ」

 

 

エステル「満月の子とは、いったい何なのですか?わたし、フェローに忌まわしき毒と言われました。あれはどういう意味なんですか?」

 

 

ベリウス「ふむ。それを知ったところでそなたの運命が変わるかわからぬが……」

 

 

ジュディス「ベリウス。その事なのだけれど……」

 

 

ベリウス「ふむ。何かあるというのか?」

 

 

ジュディス「フェローは……」

 

 

???「遂に見つけたぞ、始祖の隷長!魔物を率いる悪の根源め!」

 

 

突然、扉が開かれ、男ふたりが入ってきた。

 

 

カロル「ティソン!首領!」

 

 

ティソン「これはカロル君御一行。化け物と仲良くお話しするとは変わった趣味だな」

 

 

カロル「な、ナンは……?」

 

 

ティソン「気になるか?今頃、闘技場で魔物狩りを指揮している頃だろうよ。

邪魔するやつは人間だって容赦しねえぜ」

 

 

クリント「我が刃の錆になれ!化け物!」

 

 

クリントはベリウスに斬りかかるが、ベリウスは片手で剣を受け止める。

 

 

ベリウス「そなたらはナッツの加勢にいってもらえぬか」

 

 

ユーリ「わかった。行くぞ!」

 

 

 

 

 

闘技場に入るリョウ達、そこには

 

 

ナン「闘技場は現在、魔狩りの剣が制圧した!速やかに退去せよ!」

 

 

カロル「ナン!」

 

 

ナン「カロル?なんでここに……」

 

 

カロル「ギルド同士の抗争はユニオンじゃ厳禁でしょ!」

 

 

ナン「何言ってんの!これはユニオンから直々に依頼された仕事なんだから!」

 

 

レイヴン「何だと?」

 

 

ナンの後ろから、金髪の男が現れる。

 

 

レイヴン「おまえ……ハリー!?」

 

 

リョウ『誰だ?』

 

 

レイヴン「ドンの孫のハリーだ」

 

 

リョウ『ドンの孫?』

 

 

レイヴン「ちょっと何がどうなっているのよ?」

 

 

ハリー「おまえもドンに命令されたろ?聖核を探せって」

 

 

レイヴン「ああ、でも聖核とこの騒ぎ、何の関係があるってんだ?」

 

 

レイヴンの話をよそに、駆け出していくジュディス

 

 

リョウ『ジュディス!どうした!』

 

 

エステル「ナッツさん!」

 

 

レイヴン「ええい!こっちの話、終わってねえのに……!」

 

 

リョウ達はナッツを取り囲む魔狩りの剣の一員を蹴散らす。

エステルはナッツに治癒術をかける。

 

 

ナッツ「あんた治癒術師だったんだな。おかげで命拾いしたよ」

 

 

パリィィィン

 

 

突然ガラスの割れる音がして、ベリウスとクリント、ティソンが落ちてきた。

 

 

ナッツ「ベリウス様!」

 

 

ベリウス「ナッツ。無事のようだの。まだやるか、人間ども!」

 

 

クリント「この…悪の根源め…」

 

 

ティソン「この……魔物風情が……」

 

 

ティソンはベリウスに襲いかかろうとするが、ジュディスが食い止める。

 

 

パティ「ジュディ姐…!」

 

 

エステル「すぐに治します!」

 

 

エステルはベリウスに治癒術をかけようとする

 

 

ベリウス「ならぬ、そなたの力は……」

 

 

ジュディス「だめ!」

 

 

エステルが治癒術を使うと、ベリウスの全身が光りはじめる。

 

 

リョウ『な、なんだ?』

 

 

リタ「エステルの術式に反応した?でもこれは……」

 

 

ベリウス「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

ジュディス「遅かった……」

 

 

エステル「わたしのせい……?」

 

 

ベリウスは暴れ狂い、やがてその場で倒れ,青く光り始めた。

 

 

ジュディス「こんな結果になるなんて……」

 

 

エステル「ごめんなさい……わたし……」

 

 

ベリウス「気に……病むでない……。そなたはわらわを救おうとしてくれたのであろう…」

 

 

エステル「……でも」

 

 

ベリウス「力は己を傲慢にする……だが、そなたは違うようじゃな。

他者を慈しむ優しき心を……大切にするのじゃ……。フェローに会うがよい……己の運命を確かめたいのであれば……」

 

 

エステル「フェローに?」

 

 

ベリウス「ナッツ、世話になったのう。この者達を恨むでないぞ……」

 

 

ナッツ「ベリウス様!!」

 

 

ジュディス「ベリウス……さようなら……」

 

 

あたりが光に包まれる。ベリウスがいた場所には、光り輝く石があった。

 

 

リョウ『これは……聖核……』

 

 

ベリウス「わらわの魂、蒼穹の水玉(キュアノシエル)を我が友、ドン・ホワイトホースに」

 

 

レイヴン「ハリーが言ってたのはこういうわけか」

 

 

クリント「人間……その石を渡せ」

 

 

ソディア「そこまでだ!全員、武器を置け!」

 

 

闘技場に騎士団が乱入してきた。

 

 

リョウ『次から次へと……』

 

 

ソディア「闘技場にいる者を、すべて捕らえろ!」

 

 

パティ「逃げ道を確保したのじゃ!急ぐのじゃ!」

 

 

パティが煙幕を張り。辺りは煙だらけになった。

 

 

リョウ『ナイスだパティ!』

 

 

リョウ達は闘技場から出ていった。

 

 

 

 

 

 

リョウ達が港から脱出しようと港に向かっていると。フレンが立っていた。

 

 

エステル「フレン……」

 

 

フレン「エステリーゼ様と、手に入れた石を渡してくれ」

 

 

エステル「どうして、聖核のことを……」

 

 

ユーリ「騎士団の狙いも、この聖核ってわけか」

 

 

カロル「魔狩りの剣も欲しがってた……」

 

 

リョウ『聖核は人の世に混乱をもたらす……か』

 

 

フレン「渡してくれ」

 

 

フレンは剣に手をかける。

 

 

リョウ『力ずくかよ……』

 

 

ユーリ「任務かなんか知らねえけど、力で全部抑えつけやがって。ラゴウやキュモールにでもなるつもりか!」

 

 

フレン「なら、僕も消すか?ラゴウやキュモールのように……」

 

 

カロル「え……それって……?」

 

 

ユーリ「お前が悪党になるならな」

 

 

立ち尽くすフレンの横を抜けて、リョウ達は港に着き、船に乗り込む。

 

 

レイヴン「こいつも一緒に乗せてやってくれ」

 

 

リョウ『レイヴン!いつのまに……あんたは』

 

 

レイヴンがいつの間にか船に乗っており、ハリーも連れていた。

船はノードポリカの港を離れ、高速で進んで行く。

 

 

リョウ『いくらなんでも速すぎねえか?』

 

 

ドォォォォン

 

 

リョウ『な、なんだ?』

 

 

爆発音がし、その音の場所へ向かうと、ジュディスが駆動魔導器を破壊していた。

 

 

リタ「どうして?」

 

 

ジュディス「私の道だから……さようなら」

 

 

ユーリ「ジュディ!待て!」

 

 

咆哮が聞こえ、ラゴウ邸で見た竜がやって来て、ジュディスは竜に乗ってどこかへと去っていった。

 

 

リョウ『ジュディスが竜使いだったのか……』

 

 

リタ「なんで、どうしてよ!?」

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第38話 漂流のち

フィエルティア号の駆動魔導器がジュディスに壊され漂流を余儀なくされたリョウ達。

リョウはレイヴンとハリーのもとに向かう。

 

 

レイヴン「あれ?リョウ君。リタっちのお手伝いしなくていいの?」

 

 

リョウ『あいつ今機嫌が悪くてさ、ひとりで駆動魔導器の調整するって』

 

 

レイヴン「そりゃそうよね」

 

 

リョウ『にしても、ドンの孫だっけ?一体どうなってるんだ?』

 

 

レイヴン「このバカが、海凶の爪に偽情報掴まされて先走っちまったのよ」

 

 

リョウ『海凶の爪に?』

 

 

ハリー「ドンの盟友が魔物に捕まってるって聞けば、助けなきゃって思うだろ。

しかも、その魔物が聖核を持っていると言われたら……」

 

 

リョウ『捕まってるってベリウスが?』

 

 

レイヴン「海凶の爪がそう言ったそうよ。で、魔狩りの剣の手を借りて、魔物を退治しに来たってこと」

 

 

リョウ『実際はその魔物がベリウスで、聖核は手に入ったけど、助けなきゃいけない相手は死んだ』

 

 

ハリー「だってよぉ……」

 

 

レイヴン「とにかくハリーはドンのところに連れて行くわ」

 

 

リョウ『わかった』

 

 

翌日、リョウ達が甲板で話し合った結果、全員ダングレストへ行くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダングレストに到着したリョウ達。

 

 

レイヴン「俺はハリー連れて、ドンのところに顔を出してくるわ。長くなりそうだから宿屋で待っててよ」

 

 

カロル「待って!ボクも……行っていい?」

 

 

レイヴン「うん?こりゃユニオンの問題だ。話には混ざれないと思うぜ」

 

 

カロル「その話とは別に聞きたいことがあって……」

 

 

レイヴン「ま、ダメもとでいいんなら」

 

 

カロル「ありがとう!」

 

 

レイヴン、カロル、ハリーはユニオン本部に向かって行った。

 

 

パティ「うちもアイフリードのことについて周りに聞いてくるのじゃ」

 

 

ユーリ「先に宿屋に入ってるからな」

 

 

リョウ『俺達も宿屋で待っていようぜ』

 

 

 

 

 

 

宿屋でしばらく休んでいるとレイヴンが帰ってきた。

 

 

リョウ『お帰りレイヴン……あれ?カロルは?』

 

 

レイヴン「ユニオン本部で別れたきりなんだけどな。戻ってないのね」

 

 

エステル「どうしたんでしょう?」

 

 

リタ「ドンに会ってるんじゃない?」

 

 

レイヴン「ハリーとノードポリカの一件聞いたら、ドン、ひとりで出てっちまった」

 

 

ユーリ「どこに行ったんだ?」

 

 

レイヴン「カンなんだが、おそらく背徳の館っつー海凶の爪の根城に向かったんじゃないかな」

 

 

リョウ『なんだと!』

 

 

レイヴン「悪いけど今ドンはこの街にいない」

 

 

ユーリ「海凶の爪の根城とやらに行くか」

 

 

リタ「おっさんのカンを信じるの?」

 

 

ユーリ「放ってもおけねえし、海凶の爪が手を出さないとは限らねえ」

 

 

リョウ『俺も行く。今度こそイエガーから聞き出す』

 

 

リタ「リョウも行くならあたしも」

 

 

エステル「わたしも行きます」

 

 

リタ「エステル無理しちゃダメ」

 

 

エステル「大丈夫ですから」

 

 

ユーリ「決まりだな。じゃあカロルを拾って……」

 

 

その時、宿の外から大勢の声が聞こえる。

 

 

ユーリ「なんだ!?」

 

 

宿の外へ出てみると、橋の上に大勢の男がいて、カロルもそこにいた。

 

 

レイヴン「こりゃなんの騒ぎよ?」

 

 

ユニオンの男「騎士の殿堂の連中が、ヘリオードの辺りまで乗り込んできたらしい」

 

 

レイヴン「こっちの非で向こうの頭が殺られたんだ。話をつけに来るのは当然よ」

 

 

カロル「ユーリ!みんな!どうしよう!?ギルド同士の戦争になっちゃう!

ドンがいたらこんなことには……」

 

 

ユーリ「ドンは背徳の館って海凶の爪の根城に行ったかもしれないってさ」

 

 

リョウ『レイヴンのカンなんだけど……一緒に来るか?』

 

 

カロル「もしいなかったら……ドンを探してる間に戦いになったら……」

 

 

ユーリ「背徳の館はオレ達だけで大丈夫だろ。カロルの思うようにやるといい」

 

 

カロル「じゃあボク、みんなと話してくる!」

 

 

カロルと別れたリョウ達。

 

 

リョウ『じゃあ、俺達も行こう』

 

 

パティ「うちを置いてどこに行くのじゃ?」

 

 

突然パティが現れた。

 

 

リョウ『うお!びっくりした。ドンに会いに行くんだけど』

 

 

パティ「うちも行くのじゃ」

 

 

リョウ『じゃあ、一緒に行くぞ』

 

 

リョウ達は背徳の館を目指して、ダングレストを出た。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第39話 背徳の館

リョウ達は背徳の館に辿り着いた。

 

 

リョウ『着いたのはいいけど、すごい警備だな』

 

 

ユーリ「何かもめてるぜ」

 

 

館の前で、ゴーシュとドロワットが門番と話している。

 

 

ドロワット「通してっていってるでしょ~」

 

 

ゴーシュ「あのドンが来ているんだ。お前達と話してる暇はない」

 

 

海凶の爪A「あんた達は魔狩りの剣が竜使いを狙ってるってネタを探りに行ったはずだろ?」

 

 

ゴーシュ「テムザ山へ向かう前にドンがここに向かったという情報を得た」

 

 

ドロワット「そんなの知ったらほっとけないでしょ」

 

 

ユーリ「魔狩りの剣がジュディを狙ってるだと?」

 

 

ゴーシュとドロワット、何人かのギルド員が館に入り、警備が少なくなった。

 

 

レイヴン「ラッキー♪警備が減ったぜ」

 

 

リョウ『俺らも行こう……ん?』

 

 

リタ「どうしたのよリョウ?」

 

 

リョウ『この殺気……まさか……』

 

 

近くの草むらから目つきの悪い男が現れた。

 

 

リョウ『ダフィエル……』

 

 

リタ「こんなところで出くわすなんて……」

 

 

パティ「誰なのじゃ?」

 

 

レイヴン「誰?」

 

 

ユーリ「リョウの命を狙ってる野郎だ」

 

 

ダフィエル「リョウ・ゲキショウ……こんなところにいるとはな。

私もあの館に用があるのだが、その前に貴様を殺そう」

 

 

ダフィエルは刀を抜く

 

 

リョウ『なんだと……ここは俺がこいつを食い止める!みんなは早くドンのところへ行ってくれ!』

 

 

リタ「あんたまた……そんなことできるわけないでしょ!」

 

 

エステル「そうです。危険です!」

 

 

リョウ『今は時間が惜しい、分かってくれ!』

 

 

レイヴン「確かにリョウ君の言う通りね」

 

 

ユーリ「みんな行くぞ」

 

 

リタ「ちょっとユーリ!ああもう……」

 

 

エステル「リョウ。すぐに戻ってきますから!」

 

 

パティ「死んだら承知しないのじゃ」

 

 

ユーリ達は館へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

ダフィエル「この前は不覚を取ったが、今度は必ず貴様を殺す!」

 

 

ダフィエルがリョウに向かって来る。

 

 

リョウ『魔神剣!』

 

 

ダフィエル「冥王剣!」

 

 

衝撃波と黒い衝撃波がぶつかり相殺する。

 

 

ダフィエル「斬滅刃!!」

 

 

リョウ『鬼炎斬!!』

 

 

ガキィン

 

 

黒いオーラを纏ったダフィエルの刀と炎を纏った銀雪花が交わる。

 

 

ダフィエルは一旦離れ

 

 

ダフィエル「少しはやるようだな」

 

 

リョウ『なぜ俺の命を狙っている?』

 

 

ダフィエル「貴様の存在はあのお方の障害になる。ただそれだけだ」

 

 

リョウ『あのお方?』

 

 

ダフィエル「……時間切れか。まあいいすべては順調に進んでいる」

 

 

ダフィエルは刀を収め、走り去った。

次に館の方からドンが走ってきた。

 

 

ドン「おめえは……銀雪花の坊主じゃねえか」

 

 

リョウ『ドン、ユーリ達に会わなかったか?』

 

 

ドン「ユーリなら、時間稼ぎしてもらっている」

 

 

リョウ『時間稼ぎ?』

 

 

ドン「わるいな。話してる暇はねえんだ。ダングレストへ戻らなきゃならねえ」

 

 

リョウ『分かった。俺達も後で追いかける』

 

 

ドンが去ったあとしばらくして、ユーリ達がやって来た。

 

 

リタ「リョウ!大丈夫?」

 

 

リョウ『ああ、大丈夫だ。ダフィエルの野郎、時間切れって言ってあっさり去っていったからな』

 

 

ユーリ「大丈夫なら俺達もダングレストへ戻ろう。いやな予感がする」

 

 

こうしてリョウ達は背徳の館を後にした。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第40話 ドンの最後

リョウ達がダングレストに戻ると、カロルが駆け寄ってきた。

 

 

カロル「みんな!大変だよ!ユニオンと騎士の殿堂がにらみ合って!ドンも戻ってきたんだけど、なんか様子がおかしいんだ」

 

 

レイヴン「ドンは間に合ったようね。けど、やっぱりか……」

 

 

エステル「やっぱりって、どういうことです?」

 

 

レイヴン「じいさん、最初から死ぬつもりだったのよ」

 

 

リタ「なんでよ!わけわかんないだけど」

 

 

パティ「ケジメ……かの?」

 

 

レイヴン「ハリーが先走って、結果、ベリウスが死んだ。ノードポリカの統領の命だ。

偽情報掴まされて間違えましたで済まされるわけない。ベリウスの命に釣り合う代償が必要ってことだ」

 

 

リョウ『その代償がドンの命ってわけか……』

 

 

カロル「そんな!そんなのって!」

 

 

カロルは広場へ走って行った。

 

 

エステル「きっと他に方法があるはずです!」

 

 

レイヴン「だがこれ以上どっちも辛抱できない。一触即発ってやつ。

このままだとギルド同士の全面戦争になっちまう」

 

 

リョウ達も広場に向かう。

広場ではドンが正座をしておりカロルと話していた。

 

 

ドン「しっかりな、坊主、首領なんだろ?」

 

 

カロル「でも、ボクなんてひとりじゃ何も出来ない……」

 

 

ドン「だったら助けてもらえばいい。そのために仲間がいんだろ?

仲間を守ってみな。そうすりゃ応えてくれるさ」

 

 

カロル「ドン……!」

 

 

ハリー「ドン!オレも一緒に……!」

 

 

レイヴン「バカ野郎が!」

 

 

ハリーを殴り倒すレイヴン

 

 

レイヴン「じいさん。あばよ」

 

 

ドン「レイヴン、イエガーの始末頼んだぜ」

 

 

レイヴン「俺にゃ、荷が重すぎるって」

 

 

ドン「おめえにしか頼めねえんだ」

 

 

レイヴン「……ドン」

 

 

騎士の殿堂のメンバー「おたくの可愛い孫にゃずいぶん世話になった」

 

 

ドン「すまねえことをした。あのバカ孫もれっきとしたユニオンの一員だ。

部下が犯した失態は頭が取る。それがギルドの掟だ。ベリウスの仇。俺の首で許してくれや」

 

 

エステル「ドン……」

 

 

リタ「バカよギルドなんて……どいつもこいつもバカばっか……」

 

 

ドン「すまんが誰か介錯頼む」

 

 

小刀を抜くドン。静まり返るなかリョウが

 

 

リョウ『俺がやろう』

 

 

リタ「リョウ!なんで!?」

 

 

リョウ『……』

 

 

リョウは黙ってドンのところへ行く。

 

 

ドン「銀雪花の坊主か」

 

 

リョウ『俺は銀雪花の坊主じゃねえ、リョウ・ゲキショウだ』

 

 

ドン「リョウ。おめえとは一度闘ってみたかったもんだ」

 

 

リョウ『俺もだドン。まあ、先に向こうで俺に負けないように鍛練でもしててくれ』

 

 

ドン「言ってくれるじゃねえか。楽しみに待ってるぜ」

 

 

リョウは銀雪花を構える。

 

 

ドン「てめぇら、これからはてめぇの足で歩け!てめぇらの時代を拓くんだ!いいな!」

 

 

ドンは小刀を腹に当て、銀雪花がドンの首へ振り落とされた。

 

 

 

 

 

 

ユニオン本部

 

 

 

 

エステル「街のみんなも落ち着いてきたようです」

 

 

リタ「この世の終わりみたく沈み込んでいるけど」

 

 

リョウ『カロルは落ち込んでどこかに行ったし、レイヴンは色々連れまわされてるし、パティは地下水道に行ってくるって行ったきりだな』

 

 

リタ「オトシマエをつけるためなら自分の命をも差し出す、か。ギルドにとって掟はそこまでのもんなのね」

 

 

ユーリ「ギルドの掟に生きる事への誇り……負うべき責任……。選んだ道の覚悟……。ドンは見せつけていきやがった」

 

 

リョウ『文字通り命をかけて、ね』

 

 

ユーリ「オレも……けじめをつけなきゃな。まずはオレ達のギルド凛々の明星か」

 

 

リョウ『どこいくんだ?』

 

 

ユーリ「散歩だよ」

 

 

ユーリは部屋を出ていった。

 

 

リョウ『ありゃ、カロルのとこかな?』

 

 

エステル「カロル……わたしも行ってきます。リョウ達は街の出口で待っていてください」

 

 

リョウ『わかった』

 

 

 

 

 

 

ダングレストの出口

 

 

 

リョウ達が待っていると、ユーリとエステルがやって来た。

 

 

リタ「カロルとパティは?」

 

 

ユーリ「よけいな心配するなって。それより三人はこれからどうするんだ?」

 

 

リタ「あたしとリョウは一緒に行くわよ。エアルクレーネの調査はあんた達とするって決めたの」

 

 

エステル「わたしもユーリと行きたいです。ジュディスが魔狩りの剣に狙われているかもしれないのに、放っておけない……」

 

 

リタ「あの女を助ける義理なんてないでしょうに」

 

 

エステル「ジュディスは仲間です……」

 

 

リタ「でも、船の駆動魔導器を壊した」

 

 

リョウ『壊したのは紛れもない事実だ。でも、なんの理由もなく壊すとは思えねえな』

 

 

ユーリ「そのことを含めて、全部話してもらう。ギルドとしてケジメをつけるために」

 

 

リョウ『でも肝心のカロルが来ないんだが?』

 

 

ユーリ「アイツは必ず来る」

 

 

エステル「あ、パティが来ました」

 

 

パティ「うちも一緒に行っていいかの?」

 

 

ユーリ「構わねえぜ。じゃ、行くか」

 

 

リョウ『レイヴンとはここでお別れか?』

 

 

ユーリ「そうだな。おっさんにはおっさんのやることがある」

 

 

エステル「寂しくなりますね……」

 

 

リョウ『テムザ山だっけ?どこにあるんだ?』

 

 

ユーリ「コゴール砂漠の北の方じゃないかと思う」

 

 

エステル「確かにデズエール大陸の北西部には山脈が広がっています」

 

 

ユーリ「じゃあ、行こうぜ」

 

 

 

 

 

船に乗り込んだリョウ達は何かを待っている。

 

 

カロル「まって~!!」

 

 

リョウ『やっと来たか』

 

 

カロルは船に飛び乗る。

 

 

カロル「ボクも一緒に行く。ドンの伝えたかったこと、ちゃんとわかってないかもしれないけど……。凛々の明星はボク達のギルドだから!」

 

 

エステル「じゃあ、デズエール大陸へ行きましょう」

 

 

カロル「え?なんでデズエールなの?」

 

 

レイヴン「テムザ山はコゴール砂漠の北にあるのよ」

 

 

リョウ『うお!?レイヴンいつのまに』

 

 

ユーリ「おっさん、何してんだよ」

 

 

リョウ『ダングレストの方はいいのか?』

 

 

レイヴン「んー。色々と面倒だから逃げてきちゃった」

 

 

リョウ『おいおい……』

 

 

パティ「とりあえず、フィエルティア号、出発進行なのじゃ」

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第41話 テムザ山へ

テムザ山に着いたリョウ達

 

 

レイヴン「到着~。ここがテムザ山よ」

 

 

カロル「これ、人の足跡だよね?ずいぶんたくさんあるな」

 

 

エステル「魔狩りの剣でしょうか?」

 

 

ユーリ「騎士団かもな」

 

 

エステル「え?どうして騎士団が?」

 

 

ユーリ「フレンも聖核を探してた。魔狩りの剣が聖核を狙ってここに来てるんなら、騎士団も聖核を狙って来てるかもしれない」

 

 

エステル「なぜみんな聖核を手に入れようとするんでしょう?」

 

 

ユーリ「ジュディが全部話してくれたら、何かわかるかもしれないな」

 

 

カロル「ねえ!ちょっと来てよ!ここ、なんかすごいよ!」

 

 

先に行ったカロルに呼ばれた場所まで行くと、巨大なへこみがいくつも見える。

 

 

リタ「なによこれ、山が削れてる……」

 

 

リョウ達は巨大なへこみのそばに行く。

 

 

ユーリ「近くで見ると、よりひどいな」

 

 

エステル「何かが爆発したあとみたい……」

 

 

カロル「爆発って……こんなことできる魔物なんているの?」

 

 

レイヴン「ああ。その魔物なら、とっくに退治されたから」

 

 

パティ「退治されたって、どういうことなのじゃ?」

 

 

リョウ『ここが人魔戦争の戦場だったからな』

 

 

カロル「え!そうなの?」

 

 

レイヴン「リョウ君、なんでそのことを?」

 

 

リョウ『なんか思い出したんだ……』

 

 

レイヴン「ここが戦場だったことは、当事者ぐらいしか知らないはずよ」

 

 

リョウ『じゃあレイヴンも?』

 

 

その時、空に咆哮が響き渡る。

 

 

リタ「あの声……バカドラ!?」

 

 

ユーリ「今はとりあえず急ぐぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

山頂に向かう道中ユーリが立ち止まり。

 

 

ユーリ「なあ、リョウとレイヴン以外のみんなはここが戦場だったことは知っていたのか?」

 

 

カロル「ううん。初めて聞いた」

 

 

エステル「初めてです。人魔戦争自体謎に包まれていますから」

 

 

パティ「うちもじゃ」

 

 

リタ「あたしも」

 

 

ユーリ「レイヴンは人魔戦争に参加してたんだろ?ここが戦場だったことを知ってるからな」

 

 

レイヴン「まあ、そうなんだけど……」

 

 

カロル「じゃあなんでリョウも知ってるの?」

 

 

エステル「まさかリョウも人魔戦争に……?」

 

 

リョウ『それはないな。だって10年前だぜ、さすがに小さな子供が戦争に参加しないだろ』

 

 

リタ「もしかしてここがリョウの故郷?参加はしてなくても巻き込まれたなら」

 

 

レイヴン「それもありえんでしょ」

 

 

リタ「なんでよ?」

 

 

レイヴン「ここに10年前、街はあったけどクリティア族の街だったからね」

 

 

リョウ『俺はクリティア族じゃないからな』

 

 

リタ「他に思い出したことはないの?」

 

 

リョウ『それが……ここが戦場だったこと以外はさっぱりだ』

 

 

カロル「イエガーが言ったんだよね?リョウは10年前に死んだって……。10年前はちょうど人魔戦争と重なる時期だよ」

 

 

パティ「デュークもリョウはこの世にはいないって言ったのじゃ」

 

 

リョウ『俺は人魔戦争で何らかの形で関わって死んだのか?でも俺は生きてる……。う~ん考えれば考える程訳が分からん』

 

 

ユーリ「先に進めば何か思い出すんじゃないのか?」

 

 

リョウ『そうかもな』

 

 

リョウ達はとりあえず先に進むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山を登っていくと、廃墟が立ち並ぶ場所に着いた。

 

 

エステル「ここがクリティア族の街……?」

 

 

リョウ『廃墟しかないな』

 

 

カロル「ジュディスはここに何しに来たんだろう……?」

 

 

ラピード「グルルルル」

 

 

ラピードが警戒した場所から、男達が吹き飛ばされてきた。

 

 

カロル「魔狩りの剣!」

 

 

男達を吹き飛ばしたのはジュディスだった。

 

 

リョウ『ジュディス!』

 

 

ジュディス「あなた達……」

 

 

男A「くそっ!」

 

 

男B「ティソンさんとナンに知らせろ!」

 

 

ユーリ「うちのモンに手ぇ出すんじゃねぇよ。掟に反しているならケジメはオレらせつける。引っ込んでな!」

 

 

男B「我々は奥に行って魔物を狩りたいだけだ」

 

 

男A「邪魔をするな!」

 

 

リタ「もう、面倒くさいなぁ、ぶっ飛ばしちゃおうか」

 

 

パティ「話の邪魔をする奴は永久にそこに倒れておけなのじゃ」

 

 

リョウ『失せろ。さもないと……』

 

 

男達は黙って去っていった。

 

 

ジュディス「追ってきたのね。私を」

 

 

ユーリ「ああ。ギルドのケジメをつけるためにな」

 

 

カロル「ジュディス。全部話して欲しいんだよ」

 

 

ユーリ「事と次第によっちゃ、ジュディでも許すわけにはいかない」

 

 

ジュディス「不義には罰を……だったかしらね。そうね。それがいいことなのか正直分からないけど。あなた達はここまで来てしまったのだから。来て」

 

 

リョウ達はジュディスについていく

 

 

カロル「ユーリ……ジュディスでも許さないって……」

 

 

ユーリ「ドンの覚悟見てまだまだ甘かったことを思い知らされた。討たなきゃいけないヤツは討つ。例えそれが仲間でも、始祖の隷長でも、友でも」

 

 

カロル「フレンやフェローでもってこと?」

 

 

ユーリ「ああ。それが俺の選んだ道だ」

 

 

 

 

 

 

 

山を登っていくリョウ達

 

 

ジュディス「ここが……人魔戦争の戦場だったことはもう知ってる?」

 

 

ユーリ「ああ」

 

 

ジュディス「人魔戦争……あの戦争の発端はある魔導器だったの」

 

 

リョウ『なんだと!』

 

 

ジュディス「その魔導器は発掘されたものじゃなく、テムザの街で開発された新しい技術で作られたもの。ヘルメス式魔導器」

 

 

リタ「初めて聞いたわ……。それに新しく作られたって……」

 

 

リョウ『魔導器を作るなんて……』

 

 

ジュディス「ヘルメス式魔導器は、従来のものよりエアルを効率よく活動に変換して、魔導器技術の革命になる……はずだった」

 

 

ユーリ「何か問題があったんだな」

 

 

ジュディス「ヘルメス式魔導器はエアルを大量に消費するの。消費されたエアルを補うために各地のエアルクレーネは活動を強め、異常にエアルを放出し始めた」

 

 

リタ「そんなことが起きたらすべての生物が生きていけなくなるわ!」

 

 

レイヴン「ケーブ・モックやカドスの喉笛で見たアレか。そりゃやばいわな」

 

 

ジュディス「人よりも先にヘルメス式魔導器の危険性に気付いた始祖の隷長は、ヘルメス式魔導器を破壊し始めた」

 

 

リョウ『それが人魔戦争に発展したんだな』

 

 

カロル「じゃあ、始祖の隷長は世界のために人と戦ったの!?」

 

 

パティ「でも……この話がジュディ姐に何の関係があるのじゃ?」

 

 

ジュディス「テムザの街が滅んで、ヘルメス式魔導器の技術は失われたはずだった……」

 

 

リョウ『まだ稼働しているんだな?ヘルメス式が』

 

 

ジュディス「そう。私の壊した魔導器はすべてヘルメス式よ」

 

 

エステル「それじゃあ、ジュディスは始祖の隷長に替わって魔導器を壊して……」

 

 

リタ「なら!言えばよかったじゃない!どうして話さなかったのよ!ひとりで世界を救ってるつもり?バカじゃないの!?」

 

 

リョウ『リタの言う通りだ。話してくれれば……ん?』

 

 

山の奥地が光を放った。

 

 

ジュディス「バウル!」

 

 

ジュディスが光の方へ行こうとすると、ふたつの影が飛び込んできた。

ナンとティソンだった。

 

 

ティソン「どうやら魔物はそこにいるようだな」

 

 

ジュディス「行かせないわ」

 

 

ナン「人でありながら魔物を守るなんて理解できない!」

 

 

リタ「まだ話の途中なのよ!邪魔すんな!」

 

 

パティ「まったく、無粋な連中なのじゃ」

 

 

レイヴン「アツイのは専門外なんだがなぁ」

 

 

リョウ『失せろ。何回も言わせんな』

 

 

ジュディス「あなた達……」

 

 

ティソン「邪魔だてするのなら……」

 

 

ナン「仕方ありませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

リョウ『おい、フード野郎』

 

ティソン「あん?」

 

リョウ『おまえ弱そうだから、俺ひとりで相手してやるよ』

 

ティソン「なんだと……?いい度胸じゃねえか!!」

 

挑発を受けたティソンはリョウに向かって突進して体術を繰り出すが、リョウはすべて避ける。

 

リョウ『どうした?フード野郎。攻撃ってのは当たらないと意味ないぞ~』

 

ティソン「なめやがって、ガキが」

 

ティソンは一旦リョウから距離を取る。

 

リョウ『そんな距離からどう攻撃するんだ?』

 

ティソン「ほざいてろ!!」

 

ティソンが右手を地面に埋める。すると、リョウの足元から蛇状の闘気が出てきてリョウを打ち上げた。

 

リョウ『しまった……なんてな!』

 

リョウは空中で回転しながら炎を纏う。

 

ティソン「野郎、まさか……」

 

ティソンはその場から離れようとしたが、右手を地面に埋めておりなかなか抜けない

 

ティソン「クソがっ!」

 

リョウ『くらいな!火炎流星斬!!』

 

ティソンに向かって急降下し、大爆発を起こした。

 

ティソン「ぐああああああ」

 

ティソンは吹き飛び地面に叩きつけられた。

 

ナン「師匠!!」

 

リョウ『命まではとってねえ。だからそいつを連れてとっとと失せろ』

 

ナン「くっ……」

 

ナンはティソンを連れて去っていった。

 

 

 

 

 

山の奥に入ると、横たわった竜……バウルが光を放っていた。

 

 

リョウ『一体何が?』

 

 

ジュディス「バウルは成長しようとしているの……始祖の隷長としてね」

 

 

カロル「苦しそう……」

 

 

パティ「がんばるのじゃぞ」

 

 

エステルが駆け寄るが

 

 

ジュディス「だめ!」

 

 

エステル「治してあげたくても、あなたにとってわたしの力は毒なんですよね……」

 

 

ユーリ「傷を癒せるのがエステルの力じゃないぜ」

 

 

エステル「え?」

 

 

リョウ『ベリウスの言葉、覚えてないのか?』

 

 

エステル「慈しむ心……」

 

 

ジュディス「バウルにも伝わっているわ。きっと……。あなたの気持ち」

 

 

光が強くなり、あたりを包む。光が消えるとそこには巨大な姿に成長したバウルがいた。

 

 

レイヴン「おほー」

 

 

リョウ『すげえな……』

 

 

バウルはエステルの方を見て吠える

 

 

ジュディス「言ったでしょう?ちゃんと伝わってるって」

 

 

エステル「ふふ」

 

 

ジュディス「フェローにも伝わるかもしれない。会う?フェローに」

 

 

エステル「会います。それがわたしの旅の目的だから」

 

 

リタ「いいの?殺されちゃうかもしれないのよ」

 

 

エステル「はい。わたしも覚悟を決めなきゃ……」

 

 

レイヴン「そろそろ魔狩りの剣の援軍が来そうよ」

 

 

カロル「でも下りる道ひとつしかないよ。鉢合わせちゃう」

 

 

リョウ『下が駄目なら上だな』

 

 

ジュディス「そうね。とりあえず乗って。フィエルティア号まで飛ぶわ。話の続きはそこで、ね」

 

 

リョウ達はバウルに乗り、テムザ山を脱出した。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第42話 満月の子の真相

バウルがフィエルティア号を掲げることによって空の移動が可能になったリョウ達はそのままフェローのいるコゴール砂漠の中央の岩場までやって来た。

 

 

フェローの岩場

 

 

 

 

ジュディス「フェローいるんでしょう?」

 

 

鳥のような鳴き声と同時に始祖の隷長、フェローが現れた。

 

 

フェロー「忌まわしき毒よ、なぜ我に会いに来た?」

 

 

エステル「わたしは自分の運命を知りたいんです。満月の子とはなんなんです?」

 

 

フェロー「満月の子の力はどの魔導器にも増してエアルクレーネを刺激する。ここもかつてエアルクレーネがあったのだ。だが、エアルの暴走と枯渇がこのような結果をもたらした」

 

 

リタ「魔導器を使わず治癒術が使えるエステルはその身にもつ特殊な術式で、大量のエアルを消費する。そしてエアルクレーネは活動を強め、エアルが大量に放出される。あたしの仮設……間違って欲しかった……」

 

 

フェロー「その者の言う通りだ。満月の子は力を使うたび、魔導器などとは比べものにならぬ程、エアルを消費し、世界のエアルを乱す。その原因を座視するわけには行かぬ」

 

 

ユーリ「じゃあ、エステルが死んだからって何もかも解決するのかよ?」

 

 

フェロー「少なくともひとつは問題を取り除くことができる」

 

 

リョウ『その言い方だと、まだまだ問題は山積みだってことだよな。すぐにエステルを殺す必要はないはずだ。エアルの暴走を抑える方法があればいいんだろ?』

 

 

ジュディス「彼の言う通りよ。それを探す時間ならまだあるはずよ」

 

 

フェロー「……よかろう。だが忘れるな、時は尽きつつあるということを!」

 

 

そう言いフェローは飛び立つ

 

 

リタ「待って!術式がエアルの暴走だっていうのなら、昔にも同じように暴走したことがあるはずでしょ」

 

 

フェロー「罪を受け継ぐ者達がいる。そやつらを探すがよい」

 

 

フェローは飛び去った。

 

 

 

 

 

フィエルティア号の船室

 

 

 

 

カロル「これからどうするの?」

 

 

リョウ『とりあえず、フェローの言った罪を受け継ぐ者のところに行けばいいんじゃねえの?』

 

 

ジュディス「ミョルゾね」

 

 

リョウ『ミョルゾ?』

 

 

ジュディス「クリティアの故郷。そして魔導器発祥の地」

 

 

レイヴン「そのミョルゾってのどこにあるの?」

 

 

ジュディス「さあ?」

 

 

リタ「その名前に覚えがある。アスピオに来てたクリティア族の人が言ってたような」

 

 

ユーリ「じゃあ、アスピオに行くとするか」

 

 

リョウ『アスピオか……なんか久しぶりに戻るような気がするな』

 

 

 

 

 

 

 

 

アスピオ

 

 

 

 

ミョルゾの情報を求めて、アスピオにやって来たリョウ達。

 

 

リタ「さすがに疲れたわね。とりあえず人探しは明日にしましょ」

 

 

レイヴン「賛成~。久しぶりにまともなベッドで寝られるわ~」

 

 

リタ「じゃあ、あたしの家に……」

 

 

カロル「待って。先に話しておきたいことがあるんだ」

 

 

ジュディス「私の事ね」

 

 

カロル「ギルドは掟を守ることが一番大事。掟を破ると厳しい処罰を受ける。それが例え友達でも、兄弟でも。それがギルドの誇りなんだって」

 

 

ジュディス「ええ」

 

 

カロル「だから……みんなで罰を受けよう」

 

 

ジュディス「え?」

 

 

カロル「ボク、ジュディスが世界のために頑張っているの知らなかった。でも仲間を手伝ってあげなかったのは事実でしょ。だからボクも罰を受けなきゃ。

ユーリも自分の道だからって秘密にしてることがあった。それって仲間のためにならないでしょ」

 

 

ユーリ「ま、まぁな……」

 

 

カロル「だから、罰を受けないとね。みんなで罰を受けて、全部やり直そう」

 

 

リョウ『その肝心の罰はどうするんだ?』

 

 

カロル「あ!そっか。えっと……」

 

 

リタ「休まずに人探しってとこかな。あたしはウチで待ってる」

 

 

カロル「ちょっと!勝手に決めないで……」

 

 

リタ「何よ。文句ある?」

 

 

ユーリ「はっはっは。ねぇよ」

 

 

ジュディス「ええ」

 

 

カロル「了解~……」

 

 

パティ「うちはお宝の手掛かりがないか、散策するのじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リタの小屋

 

 

 

 

リョウ、リタ、エステル、レイヴンはリタの小屋に入る。

 

 

リョウ『久しぶりに帰ってきたな~』

 

 

リタ「そうね」

 

 

レイヴン「にしても、本ばっかり」

 

 

エステル「ここでリタとリョウに出会ったんですよね」

 

 

リョウ『腹減ってないか?なんか飯でも作ろうか?』

 

 

エステル「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 

レイヴン「俺様、腹ペコペコ~」

 

 

リョウ『じゃあ、適当に作るから待っててくれ』

 

 

リョウがその場から離れるとレイヴンが

 

 

レイヴン「にしても、リタっちは幸せ者よの~」

 

 

リタ「なにがよ?」

 

 

レイヴン「将来の旦那がこんなに家庭的で♪」

 

 

リタ「なっ//////」

 

 

エステル「リョウの料理が毎日食べられるなんて羨ましいです♪」

 

 

リタ「ちょ、ちょっと。だ、旦那なんて……//////」

 

 

レイヴン「あと3年もすればリタっちもお嫁に行くのか……寂しいわ俺様」

 

 

リタ「け、け、結婚なんてまだ/////」

 

 

エステル「リョウと結婚したくないんです?」

 

 

リタ「そ、そりゃ、いつかはしたいわよ//////」

 

 

エステル「結婚式には呼んでくださいね♪」

 

 

リタ「も、もちろん呼ぶに決まってるでしょ/////」

 

 

リョウが料理を持って来た。

 

 

リョウ『みんなお待たせ……ってリタ?どうした?顔が真っ赤だぞ』

 

 

リタ「な、なんでもないわよ//////」

 

 

 

 

 

料理を食べ終えしばらく待っていると、ユーリ達が帰ってきた。

 

 

リョウ『どうだったんだ?』

 

 

ユーリ「エゴゾーの森ってところに手がかりがあるみたいだぜ」

 

 

レイヴン「その森にミョルゾってのがあるの?」

 

 

ジュディス「扉があるのよ」

 

 

リタ「なにそれ?」

 

 

カロル「その扉を開ける鈴が、ヒピオニア大陸の赤い花が咲く岸辺の洞窟に隠されているんだって」

 

 

ユーリ「とりあえず、行ってみようぜ」

 

 

パティ「その前に腹が減ったのじゃ」

 

 

カロル「ボクも……」

 

 

リョウ『じゃあ、俺がユーリ達の飯作るから、その後にしようぜ』

 

 

リョウが料理を作っている間、ユーリとジュディスがレイヴンと同じようなことでリタをからかったとか。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第43話 洞穴の奥の墓所

全員が食事を終えた後、アスピオから出ようと広場まで行ったリョウ達

 

 

リョウ『そういやパティ、お宝について何か情報は掴めたのか?』

 

 

パティ「うーむ。本は多いが、アイフリードの話はどこにもないのじゃ」

 

 

リタ「当たり前でしょ、この街は魔導器関連の類しか置いてないのよ」

 

 

男「……今、アイフリードって言ったか?」

 

 

遺構の門のギルド員らしき男が近づいて来た。

 

 

男「あんた最近、噂のアイフリードの孫なのか?」

 

 

パティ「……」

 

 

男「否定も肯定もしないってことはそうなんだな。なるほどね、あんたがギルドの面汚しの孫か」

 

 

パティ「……」

 

 

男「なんとか言ったらどうだ?じいさんを弁護する言葉とかはないのか?そうか、庇えるような事実でもないわな。あれだけのことやっていればな」

 

 

エステル「あなた、どうして、そんなヒドイことが言えるんですか!?」

 

 

男「どうしてって、事実だしな。で?あんたらが新しい海精の牙のギルド員なんだな?」

 

 

カロル「ボクらは凛々の明星だ!」

 

 

男「凛々の明星?うさんくさいな。何をするギルドなんだ?」

 

 

ユーリ「言えば、何かいい仕事紹介してくれるのか?」

 

 

男「お、おまえらみたいにアイフリードの関係者とつるむ怪しい連中にやる仕事はないよ。……凛々の明星ね。またギルドの品位を下げるろくでもないギルドが増えたわけだ」

 

 

リタ「品位を下げてるのおはどっちだか」

 

 

男「お、おまえ……リタ・モルディオとリョウ・ゲキショウ!?」

 

 

リタ「また、あたしがいない間に、この街もずいぶん下卑た連中が増えてんのね」

 

 

リョウ『同類と思われたら、いい迷惑だな。とっとと行こうぜ』

 

 

リョウ達は歩き出す。

 

 

男「ちょっ、まっ……」

 

 

ジュディス「まだ、何か言い足りないかしら?」

 

 

男「い、いえ」

 

 

パティ「……」

 

 

カロル「でも、どうしよう……あの人、たぶん、言いふらすよ」

 

 

ユーリ「構わねぇよ、言いたいヤツには言わせておけ」

 

 

リョウ『あんなヤツほっといて行こうぜ』

 

 

パティ「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

リョウ達はヒピオニア大陸の赤い花が咲く海岸にやってきた。

 

 

カロル「ここだ……!よね……?」

 

 

ユーリ「トートに聞いた話には合致してるが……」

 

 

エステル「なにもありませんね」

 

 

リタ「嘘教えられたんじゃないの?」

 

 

ジュディス「待って……。ここから空気が流れ込んでるわ……」

 

 

レイヴン「この壁の中が空洞になってんのね」

 

 

リョウ『ちょっとどいてくれ。魔神剣!』

 

 

リョウがジュディスの示した場所に魔神剣を当てると、洞窟の入口がでてきた。

 

 

パティ「……!」

 

 

リョウ『どうしたパティ?』

 

 

パティ「なんでもないのじゃ……ちょっと……暗いのが怖かったのじゃ……」

 

 

ユーリ「怖かったら、ここで待っててもいいぞ」

 

 

パティ「行くのじゃ」

 

 

洞窟に入り奥に進むと、光が差し込む場所があった。そこにはたくさんの石が立ててある。

 

 

カロル「これってまさか……お……墓……!?」

 

 

リョウ『すごい数だな……』

 

 

パティ「……」

 

 

エステル「何か書いてあります。ブラックホープ号事件の被害者ここに眠る。

その死を悼み、その死者をここに葬るものなり」

 

 

カロル「これ全部、あのブラックホープ号事件の犠牲者!?」

 

 

リタ「つまり、アイフリードが殺した人の……お墓……」

 

 

エステル「たしかに……でもこんなにとは」

 

 

リョウ〖アイフリードが大悪党と言われる語源か……〗

 

 

パティはその場で膝をついた。

 

 

パティ「でも……うち……まさか……、こんな……」

 

 

リョウ『パティ……』

 

 

レイヴン「いくらなんでも、無理ないわ。この歳で、この現実を受け止めろって方が無茶だ」

 

 

ジュディス「私はミョルゾの鍵を探すわ。あなた達はここにいて」

 

 

カロル「え、ひとりで?」

 

 

ジュディス「こんなパティを連れまわす訳にはいかないでしょう?」

 

 

ユーリ「魔物の気配もねえ。オレ達も行こう。ラピード、パティを見ててやってくれ」

 

 

ラピード「ワン!」

 

 

パティ、ラピードと別れ、リョウ達は先に進む。

 

 

リョウ『行き止まりだな』

 

 

ジュディス「ちょっといいかしら?」

 

 

ジュディスが何かをつぶやくと、壁から扉が現れた。

 

 

カロル「な、なにしたの?」

 

 

ジュディス「クリティア族には物に込められた情報を読み取るナギーグという古い力があるの。その力で、この扉を隠していた岩壁の幻惑を取り除く秘文を読みとったの」

 

 

ユーリ「なるほどな。トートの奴が言ってたクリティアにしか開けられない扉ってこれのことか」

 

 

扉の先で、小さな鐘を見つける。

 

 

リョウ『これがミョルゾへの扉の鍵?』

 

 

ジュディス「鐘って言ってたから、きっとこれよね」

 

 

ユーリ「目的の鐘も手に入ったし、とりあえず、パティのところへ戻ろう」

 

 

パティと合流し、洞窟を出てフィエルティア号に乗り込んだリョウ達。

 

 

ユーリ「この鐘をエゴゾーの森ってとこで鳴らせばいいだけだな」

 

 

ジュディス「そうね」

 

 

パティ「ユーリ。話があるのじゃ」

 

 

ユーリ「なんだ?」

 

 

パティ「うちは……この辺りでみんなとバイバイしたいのじゃ」

 

 

リョウ『どうしたんだ?急に?』

 

 

パティ「これ以上迷惑をかけるのは嫌なのじゃ」

 

 

リタ「どいつもこいつも、迷惑な奴ばっかじゃない。あんたひとりいたくらいで、この集団でなにが変わるのよ」

 

 

パティ「リタ姐……」

 

 

リョウ『もうちょっと頭冷やして考えたらどうだ?とりあえず今は一緒に行こうぜ』

 

 

パティ「リョウ……。分かったのじゃ」

 

 

カロル「じゃ、エゴゾーの森だね」

 

 

リタ「不審者を排除して、あの鐘を鳴らせばいいのよね?」

 

 

ジュディス「ええ」

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第44話 謎の集団

エゴソーの森に着いたリョウ達

 

 

ジュディス「ここがエゴソーの森、クリティア族の聖地よ」

 

 

リョウ『のどかでいいところだな~』

 

 

エステル「……何もない時に来てみたかったです」

 

 

ユーリ「あれだな、謎の集団が持ち込んだ魔導器ってのは」

 

 

山の方には、巨大な魔導器があった。

 

 

リタ「兵装魔導器(ホブローブラスティア)じゃない……」

 

 

リョウ『問題の謎の集団って何なんだ?』

 

 

カロル「くわしく聞けなかったけど……。とにかく、ミョルゾへの行き方教える代わりにそいつらなんとかしろって」

 

 

リョウ『あの魔導器を処理すればいいんだな?よし!行こうぜ!』

 

 

少し進むと

 

 

騎士「止まれ!ここは現在、帝国騎士団が作戦行動中である」

 

 

レイヴン「親衛隊……ありゃ騎士団長直属のエリート部隊だよ」

 

 

ユーリ「その騎士団長様の部隊がこんな森でなにしてんだ?」

 

 

騎士「答える必要はない。それに法令により民間人の行動は制限されている」

 

 

ユーリ「ふーん、それはいいとしてもその刃、そうしてオレ達に向いてるんだ?」

 

 

騎士「かかれ!」

 

 

騎士団が襲いかかってきたが、軽く蹴散らす。

 

 

リョウ『謎の集団って騎士団だったんだな』

 

 

カロル「でも、なんでボク達を襲ってきたのかな?」

 

 

ジュディス「知られたら困ることをここでやっているからでしょ」

 

 

リョウ『それがあの魔導器か……』

 

 

ユーリ「だろうな」

 

 

リョウ『あの魔導器に狙われないように慎重に行こうぜ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山頂にある魔導器を目指して、慎重に進むリョウ達。

 

 

リョウ『できるだけ騎士とも戦わないようにしないとな』

 

 

パティ「……」

 

 

リョウ『パティ?さっきから様子がおかしいぞ』

 

 

パティ「なんでもないのじゃ……」

 

 

リョウ『そうか、なんかあったらすぐに言えよ。俺達仲間なんだから』

 

 

パティ「仲間?」

 

 

リョウ『そうだ。俺達はもう仲間だろ?』

 

 

パティ「仲間……そうじゃの……だから、一緒に行くのじゃ!」

 

 

リョウ『んじゃ、行こうぜ』

 

 

山頂にある魔導器のところへ着いたリョウ達だが、大勢の騎士に守りを固められていた。

 

 

騎士「騎士団の任務を邪魔すると、罪に問われるぞ!」

 

 

ユーリ「そりゃありがたいね!」

 

 

リョウ『戦闘は避けられねえか』

 

 

騎士達を倒し、リタとリョウが魔導器を見る。

 

 

リタ「ちょっと細工をすれば止まるわ。あたしとリョウならすぐに終わる」

 

 

リョウ『いっちょ、やりますか』

 

 

リタとリョウは魔導器を少し細工し、止めた。

 

 

リタ「止まったわ」

 

 

カロル「騎士団が引き上げていくよ!」

 

 

ユーリ「これでトートとの約束は果たした。ジュディ、頼む」

 

 

ジュディス「ええ」

 

 

ジュディスが鐘を鳴らすと、上空に巨大な生物が現れた。

 

 

リョウ『こ、これがミョルゾなのか?』

 

 

ジュディス「そうよ。あれがクリティア族の故郷。バウルに乗って行きましょう」

 

 

バウルに乗って、ミョルゾに近づく

 

 

レイヴン「まさか飛んでる街とはね」

 

 

リタ「それ以前に、あのばかでかいのなに!?生物みたいだけど……」

 

 

パティ「フワフワクラゲさんじゃ……」

 

 

ジュディス「あれも始祖の隷長だそうよ。話をしたことはないけど」

 

 

リョウ『なんで街を丸ごと飲み込んでんだ?』

 

 

ジュディス「そこまでは知らないわ。とりあえず、入りましょう」

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第45話 罪を受け継ぐ者

リョウ達はミョルゾに降り立つと、何人かのクリティア族が、やって来た。

 

 

男性「こりゃ驚いた。外からひとがやって来たぞ!」

 

 

クリティア族の女性がバウルを見て

 

 

女性「この魔物ひょっとして、始祖の隷長かい?」

 

 

ジュディス「バウルよ。忘れてしまったの?」

 

 

女性「あなたジュディス?」

 

 

ジュディス「そうよ。長老さまに会いたいのだけれど」

 

 

女性「長老さまなら散歩しているかもしれないわ」

 

 

ジュディス「そう、分かったわ。とりあえず、街の広場まで行きましょう」

 

 

街の広場までやって来たリョウ達はあるものを見つける。

 

 

リタ「あたしの知らない魔導器がたくさんある……」

 

 

リョウ『魔導器を作った民ってことは本当みたいだな』

 

 

カロルは地面に置いてある魔導器を見て

 

 

カロル「動いてないね……」

 

 

リョウ『魔核がないからな』

 

 

ジュディス「この街は魔導器を捨てたの。ここにあるのはみんな大昔のガラクタよ」

 

 

カロル「どういうこと?」

 

 

???「それがワシらの選んだ生き方だからじゃよ」

 

 

年老いたクリティア族の男性が、近づいてきて言う。

 

 

ジュディス「お久しぶりね。長老さま」

 

 

長老「外が騒がしいと思えば、おぬしだったのか。戻ったんじゃの」

 

 

ジュディス「この子達は、私と一緒に旅をしている人達」

 

 

長老「ふむ。これは……魔導器ですな。もしや使ってなさる?」

 

 

ユーリ「ああ。武醒魔導器を使ってる」

 

 

長老「ふむ。ワシらと同様、地上の者ももう魔導器は使うのをやめたのかと思うていたが……」

 

 

エステル「ここの魔導器も、特別な術式だから使ってないんです?」

 

 

長老「魔導器に特別も何もないじゃろ。そもそも魔導器とは聖核を砕き、その欠片に術式を施して魔核とし、エアルを取り込むことにより……」

 

 

リタ「ちょ!魔核が聖核を砕いたものって!?」

 

 

長老「左様、そう言われておる。聖核の力はそのままでは強すぎたそうな。それでなくても、いかなる宝石よりも貴重な石じゃ。だから砕き術式を刻むことで力を抑え、

同時に数を増やしたんじゃな。魔核とはそうして作られたものと伝われておる」

 

 

ユーリ「……皮肉な話だな」

 

 

カロル「魔導器を嫌う始祖の隷長の生み出す聖核が、魔導器を作り出すのに必要だなんて」

 

 

レイヴン「フェローが聖核の話をしなかったのは、触れたくなかったから…かもねぇ」

 

 

ジュディス「長老さま。もっと色々聞かせてもらいたいの」

 

 

ユーリ「オレ達は魔導器が大昔にどんな役割を演じたか調べているんだ。もしそれが災いを呼んだのなら、どうやってそれを収めたのかも。ミョルゾには伝承が残ってるんだろ?それを教えてくれないか?」

 

 

長老「ふむ。いいじゃろ。ここよりワシの家にうってつけのものがある。ついてきなされ」

 

 

リョウ『聖核、魔導器、エアルの乱れ、始祖の隷長……いろいろ繋がってきたな』

 

 

リタ「伝承ってのを聞いたら、もっといろいろ繋がってくるかも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長老の案内で屋敷に入るリョウ達は奥の壁の前に集められた。

 

 

長老「これこそがミョルゾに伝わる伝承を表すものなのじゃよ」

 

 

パティ「ただの壁なのじゃ」

 

 

長老「ジュディスよ、ナギーグで壁に触れながら、こう唱えるのじゃ。

……霧のまにまに浮かぶ夢の都、それが現実の続き」

 

 

ジュディス「霧のまにまに浮かぶ夢の都、それが現実の続き……?」

 

 

ジュディスがそう唱えると、壁一面に絵が現れた。

 

 

リタ「これは……」

 

 

カロル「なんか不気味な絵だね……」

 

 

ジュディス「クリティアこそ知恵の民なり。大いなるゲライオスの礎、古の世の賢人なり。されど賢明ならざる知恵は禍なるかな。我らが手になる魔導器、天地に恵みをもたらすも星の血なりしエアル穢したり」

 

 

エステル「エアルの乱れは過去にも起きていたんですね」

 

 

ジュディス「エアルの穢れ、嵩じて大いなる災いと災いを操る者を生み出す。我ら怖れもて災いを星喰(ほしは)み、それを操る者を魔王ディエドと名付けたり……」

 

 

エステル「星喰み……」

 

 

リョウ『魔王ディエド……』

 

 

ジュディス「ここに世のことごとく一丸となりて星喰み、魔王ディエドに挑み、忌まわしき力を消さんとす」

 

 

長老「結果、古代ゲライオス文明は滅んでしまったが、星喰みと魔王ディエドは鎮められたようじゃの。その点はワシらがこうして生きているからも明らかじゃな」

 

 

リタ「ようするにこの絵は、星喰みと魔王ディエドを鎮めてる図ってこと?」

 

 

カロル「ジュディス、続きは?」

 

 

ジュディスはしばらく黙り込む。

 

 

ユーリ「ジュディ?」

 

 

ジュディス「……世の祈りを受け満月の子らは命燃え果つ。星喰み虚空へと消え去れり」

 

 

ユーリ「なんだと?」

 

 

エステル「世の祈り受け……満月の子らは命燃え果つ……」

 

 

エステルは、走って部屋を出て行ってしまった。

 

 

カロル「エステル!」

 

 

ユーリ「ほっといてやれ」

 

 

ジュディス「まだ続きがあるわ。……銀河刀・銀雪花を用い魔王ディエドを鎮めた者を銀河の皇(おう)と名付けたり。かくて世は永らえたり。されど我ら罪を忘れず、ここに世々語り継がん。……アスール、240」

 

 

リタ「え?銀雪花?」

 

 

カロル「それって……リョウの持ってる太刀?」

 

 

リョウ『魔王ディエド……銀雪花……銀河の皇……』

 

 

ズキッ

 

 

リョウ『ぐっ!』

 

 

リョウは突然の頭痛に頭を押さえる。

 

 

リタ「リョウ!?どうしたの?」

 

 

リョウ『頭が……頭が割れそうだ……ぐぁ!!』

 

 

レイヴン「リョウ君!?しっかり!」

 

 

パティ「しっかりするのじゃ!」

 

 

リョウ『俺は……俺は……ぐ、ぐわぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 

リョウはそのまま倒れ、意識を失った。

 

 

Next chapter



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3章
第46話 正体と黒幕


リョウ『う……ここは……?』

 

 

リョウが目を覚ます。周りにはユーリ達がいた。

 

 

リタ「リョウ!目が覚めたのね!」

 

 

リョウ『そうか俺……いきなり頭痛に襲われて……』

 

 

カロル「倒れたんだからびっくりしたよ」

 

 

リョウ『そうだ!思い出したんだ。少しだけど記憶が!』

 

 

リタ「本当!」

 

 

ユーリ「聞きたいとこだが、すぐにヨームゲンへ向かわなきゃならねえ」

 

 

リョウ『あの砂漠の街か?なんでだ?』

 

 

ユーリ「エステルとおっさんがいなくなった」

 

 

リョウ『なんだって!』

 

 

ジュディス「ヨームゲンにいる可能性があるの」

 

 

リョウ『分かった。すぐに出発しよう。俺のことは移動中に話す』

 

 

リョウ達はミョルゾを出て、ヨームゲンへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィエルティア号

 

 

 

ヨームゲンへ移動中リョウはユーリ達を集めた。

 

 

リョウ『思い出したのは俺の正体のことだ』

 

 

カロル「正体?」

 

 

リョウ『俺は銀河の皇の末裔だ』

 

 

パティ「銀河の皇は魔王ディエドを鎮めた人間だったのう?」

 

 

リョウ『それだけじゃない、武醒魔導器を使わなくても技を使えて銀雪花を唯一扱える人間だ』

 

 

ユーリ「だからリョウ以外は銀雪花が重く感じて持てなかった訳か」

 

 

リタ「武醒魔導器を最初から装備してなかったのも納得だわ」

 

 

リョウ『そういうことだ。あと、銀雪花は魔王ディエドを斬れる唯一の武器……とまあ思い出したのはこれくらいだ。

まだ自分の過去とかは思い出してないけど、そのうち思い出すはずだ……たぶん』

 

 

ジュディス「そろそろヨームゲンへ着くわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨームゲン

 

 

 

ヨームゲンに着いたリョウ達。しかし、その場所は廃墟となっていた。

 

 

リョウ『これは……』

 

 

カロル「どうなってんの?完全に廃墟だよ……?」

 

 

リタ「もう何百年も経ってる痛み方よ」

 

 

パティ「大火事があって灰になった……ってわけでもなさそうじゃな」

 

 

ジュディス「静かに。誰かいるわ」

 

 

遠くに、デュークと竜のような魔物が見えたが、すぐに去っていった。

 

 

???「逃がしたか……」

 

 

振り返ると、騎士を連れた騎士団長のアレクセイがいた。

 

 

パティ「……!」

 

 

アレクセイ「時間がない。残念だが、こうなればもはや止むおえんな」

 

 

ユーリ「アレクセイ。何でこんなとこに……」

 

 

アレクセイ「ほう、姫を追ってきたか。よくここが分かったな」

 

 

リタ「エステルがどこにいるか知ってるの!?」

 

 

近づくリタを騎士が牽制する。

 

 

リョウ『てめえ、なにしやがる!』

 

 

アレクセイ「ふん」

 

 

ユーリ「何の冗談だ?騎士団長さんよ」

 

 

アレクセイ「君達には感謝の言葉もない。君達のくだらない正義感のおかげで、私は静かに事を運べた。

古くは海賊アイフリード、そして今またバルボス、ラゴウ。みなそれなりに役に立ったが、諸君はそれを上回る、素晴らしい働きだった。まったく見事な道化ぶりだったよ」

 

 

カロル「……え?え?」

 

 

アレクセイ「だが道化の出番は終わりだ。そろそろ舞台から降りてもらいたい」

 

 

ユーリ「そういうことかよ。……何もかもてめぇが黒幕……?笑えねぇぜ!アレクセイ!」

 

 

フレン「騎士団長!」

 

 

フレン隊がアレクセイの後ろからやってくる。

 

 

アレクセイ「もう一人の道化も来たか……」

 

 

ユーリ「フレン……」

 

 

フレン「騎士団長!何故です!何故謀反など……」

 

 

アレクセイ「謀反ではない。真の支配者たるものの歩むべき覇道だ」

 

 

フレン「ヨーデル様の信頼を裏切るのですか!」

 

 

アレクセイ「殿下にもご退場願わないとな」

 

 

フレン「ばかな……」

 

 

???「アレクセイ様。準備が整ったようです」

 

 

丘の上からダフィエルが現れ、ダフィエルがアレクセイに声をかけた。

 

 

リョウ『ダフィエル!アレクセイの手下だったのか!?』

 

 

ダフィエル「その通りだリョウ・ゲキショウ。もう隠す必要はないから言うが、私はアレクセイ様の忠実なる僕。ダフィエル・ハーヴェストだ!」

 

 

アレクセイ「ご苦労。では予定通りバクティオンへ行く。君は君の仕事をしてくれ」

 

 

ダフィエル「この者達の始末は?」

 

 

アレクセイ「イエガーにでも任せておけ」

 

 

ダフィエル「そういうことだイエガー」

 

 

ダフィエルの後ろからイエガーが現れた。

 

 

イエガー「……」

 

 

ダフィエル「命令に背けば……分かっているな?」

 

 

イエガー「イエス……」

 

 

アレクセイ「では、行くとしよう」

 

 

フレン「まて!アレクセイ!」

 

 

ユーリ「逃がすかよ!」

 

 

ダフィエル「邪魔をするな!」

 

 

フレン「ぐっ」

 

 

ユーリ「ぐあっ」

 

 

ダフィエルが追いかけようとしたフレンとユーリを一掃する。

 

 

ダフィエル「こんな雑魚、イエガーで十分だな」

 

 

アレクセイとダフィエルは去っていった。

 

 

リョウ『くそっ逃げられた……』

 

 

イエガー「……」

 

 

リョウ達の前にイエガーが立ちふさがる。

 

 

リョウ『イエガー……』

 

 

イエガー「ユーたちのプリンセスもバクティオン神殿でーす」

 

 

リョウ『なんだって!』

 

 

イエガー「手遅れになる前にハリーアップでーす」

 

 

リョウ『イエガー……なんで?』

 

 

そう言い残し、イエガーは去っていった。

その後、責任を感じたフレンがリョウ達についていくことになりバクティオン神殿へ向かう。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第47話 アレクセイを追って

バウルに乗り、アレクセイを追うリョウ達。

バクティオン神殿に近づいた時、巨大な要塞が大空を飛び回る魔物を攻撃しているのが目にはいった。

 

 

リョウ『なんだあのばかでかいのは?』

 

 

フレン「移動要塞ヘラクレス……!」

 

 

ユーリ「アレクセイが呼び寄せたのか」

 

 

攻撃されていた魔物は山に開いた穴に逃げ込む。

 

 

ジュディス「あれは始祖の隷長アスタル……アレクセイはまだ聖核を狙っているのね」

 

 

リョウ『あそこにエステルとアレクセイが……急ごう!』

 

 

リョウ達はバウルから降りてバクティオン神殿へ向かう。

神殿の入口で見たものはアレクセイと騎士団そして、球体に閉じ込められたエステルだった。

 

 

ユーリ「アレクセイ!」

 

 

アレクセイ「イエガーめ。雑魚の始末も出来ぬほど腑抜けたか」

 

 

リョウ『エステルを返しやがれ!』

 

 

リタ「エステル、目を覚まして!」

 

 

アレクセイ「よかろう」

 

 

アレクセイが手にした石を掲げると、球体内に電撃が走る。

 

 

エステル「うあ!あ……あああ!!」

 

 

エステルから衝撃波が放たれ、リョウ達が吹き飛ばされる。

 

 

エステル「ユーリ!みんな!う……あ……」

 

 

アレクセイ「このとおり、何の補助なしに力をつかえば姫の生命力が削られる。

諸君も姫のことを思うならこれ以上邪魔をしないことだ。くくく……」

 

 

リョウ『くそ……野郎が……』

 

 

リョウの意識はそこで途切れた。

 

 

リタ「……リョウ!しっかりして!」

 

 

リョウ『ん?リタ……?俺達、生きてる?』

 

 

リョウが目を覚ますとソディアとウィチルそしてフレン隊がいた。

 

 

リョウ『助けられたってことか』

 

 

カロル「フレンとパティは神殿の中に入って行っちゃった。ボク達も急ごう」

 

 

リョウ『ああ、エステルを助けるぞ!』

 

 

リョウ達も神殿の中に入る。

 

 

 

 

 

 

 

神殿内をしばらく進んで行くと封印が施されている扉を見つける。

 

 

パティ「なんなのじゃこれは?」

 

 

リタ「暗号化した術式を鍵として使った封印結界……?」

 

 

リョウ『厄介だな……俺とリタで解析しようとしても何時間かかるか……』

 

 

ひとりの男が近づく

 

 

リョウ『誰だ!ってデューク!?』

 

 

デューク「お前達か……満月の子はどうした?」

 

 

カロル「アレクセイがこの奥に連れ去られたんだ!」

 

 

デューク「そういうことか……」

 

 

デュークはそう言って封印されている扉に近づく

 

 

リタ「あんたなにするつもりよ」

 

 

デューク「この扉の先にいる満月の子を殺し、エアルクレーネを鎮める」

 

 

フレン「なんだって!?」

 

 

ユーリ「てめえ本気で言ってんのか!?エステルはオレ達の仲間だそんなことはさせねえ!!」

 

 

ユーリはデュークを睨み付ける。

 

 

デューク「……いいだろう。ならばフェローが認めたその覚悟のほど、見せてもらおう」

 

 

デュークはユーリの足元に剣を投げる。

 

 

デューク「宙の戒典(デインノモス)だ。エアルを鎮めることができるのはその剣だけだ。掲げて念じろ。そうすれば後は剣がやる」

 

 

そう言いデュークは去っていった。

 

 

ユーリは剣を掲げ、気合いを入れると光が立ちこめ、入口の封印が解かれる。

 

 

カロル「開いた……」

 

 

封印の先に進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

神殿の最深部に進むとアレクセイとエステルそしてアスタルであったであろう聖核をアレクセイが持っていた。

 

 

ユーリ「エステル!」

 

 

エステル「ユーリ!みんな!」

 

 

アレクセイ「また君たちか。どこまでも分をわきまえない連中だな」

 

 

突然、エステルから赤い光が放出される。

 

 

リョウ『ユーリ!』

 

 

ユーリ「分かってる!」

 

 

ユーリの宙の戒典が光を放ち、赤い光が消える。

 

 

アレクセイ「なんだと?なぜ貴様がその剣を持っている?デュークはどうした?」

 

 

リョウ『デュークならユーリに宙の戒典渡してどっか行っちまったぞ』

 

 

アレクセイ「だが、満月の子と聖核、それに我が知識があればもはや宙の戒典など不要」

 

 

ユーリ「つべこべ言わずエステルを返しな」

 

 

アレクセイ「姫がそれを望まれるかな?」

 

 

リョウ『どういうことだ?』

 

 

エステル「……」

 

 

ジュディス「エステル!?」

 

 

フレン「エステリーゼ様!?」

 

 

リタ「どうしたのよ、エステル!」

 

 

エステル「……わからない」

 

 

カロル「なに言ってんだよ!」

 

 

エステル「一緒にいたらわたし、みんなを傷つけてしまう。でも……一緒にいたい!わたし、どうしたらいいのか分からない!」

 

 

パティ「エステル!しっかりするのじゃ!」

 

 

ユーリ「四の五の言うな!わかんねえ事はみんなで考えりゃいいんだ!」

 

 

エステル「ユーリ……!」

 

 

近づこうとする一行を、エステルの力が吹き飛ばす。

 

 

エステル「もう……イヤ……」

 

 

アレクセイ「今となってはその剣は邪魔以外の何物でもない。ここで消えてもらう」

 

 

アレクセイとエステルが去り、騎士たちが行く手を阻む。

 

 

リョウ『てめえら邪魔だ!』

 

 

騎士たちの後ろから、白銀の鎧を纏った男がやってくる。騎士たちは男に敬礼し、去っていく。

 

 

フレン「シュヴァーン隊長……!」

 

 

ユーリ「いつも部下にまかせきりで顔見せなかったクセに、どういう風の吹き回しだ?」

 

 

ラピード「ワンワンワン!」

 

 

ユーリ「どうした?ラピード?」

 

 

シュヴァーン「……やはり犬の鼻はごまかせんか」

 

 

リョウ『この声……まさか……レイヴン?』

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第48話 哀しき戦い

リョウ『嘘だろレイヴン……嘘だと言ってくれよ!!』

 

 

フレン「騎士団長だけでなくあなたまで……なぜです!」

 

 

シュヴァーン「俺の任務はおまえたちとおしゃべりすることではない」

 

 

シュヴァーンは剣を抜く

 

 

ユーリ「ばっかやろうが!」

 

 

シュヴァーン「帝国騎士団隊長首席シュヴァーン・オルトレイン、……参る」

 

 

キイィン

 

 

シュヴァーンはリョウに斬りかかる。リョウは銀雪花で防ぐ

 

 

リョウ『なんで……なんでだよ!!レイヴン!!』

 

 

リョウは涙を流していた。

 

 

シュヴァーン「俺はレイヴンなどではない……」

 

 

リョウはシュヴァーンの剣を弾き、距離をとる。

 

 

ユーリ フレン「「うおおおおおおお!!」」

 

 

ユーリとフレンがシュヴァーンに突っ込むが

 

 

シュヴァーン「はあ!」

 

 

ユーリ フレン「「ぐわあ!」」

 

 

シュヴァーンの一撃で弾き飛ばされる。

 

 

シュヴァーン「これで終わりだ!!ブラストハート!!」

 

 

シュヴァーンの心臓から巨大なエネルギーが放出され、リョウ達は吹き飛ばされた。

 

 

シュヴァーン「これで……終わった……」

 

 

土煙が充満する中シュヴァーンはそう呟いた。

 

 

リョウ『うおおおおおおお!!』

 

 

シュヴァーン「なに!?」

 

 

突然、土煙の中からリョウが現れシュヴァーンに斬りかかる。

突然のことで防御することができなかったシュヴァーンは強力な一太刀をくらった。

 

 

シュヴァーン「ぐう」

 

 

リョウ『!?』

 

 

リョウの一太刀で、シュヴァーンの胸部の鎧が剥がれ落ちた。

そこには魔導器が姿をのぞかせていた。

 

 

シュヴァーン「今の一撃でもまだ死なないとは……因果な体だ……」

 

 

ユーリ「リョウ!大丈夫か?」

 

 

倒れていた仲間達が集まる。

 

 

リタ「魔導器……胸に埋め込んであるの!?」

 

 

ジュディス「……心臓ね。魔導器が代わりを果たしている」

 

 

シュヴァーン「……自前のは10年前になくした」

 

 

カロル「10年前って……人魔戦争?」

 

 

シュヴァーン「あの戦争でオレは死んだはずだった。だが、アレクセイがこれで生き返らせた」

 

 

パティ「あの男、そんなことまでしとったのか……」

 

 

ジュディス「それもヘルメス式ということ?なぜバウルは気づかなかったの……?」

 

 

シュヴァーン「多分、こいつがエアルの代わりに、俺の生命力で動いているからだろう」

 

 

リョウ『生命力で動く魔導器……』

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

神殿が大きく揺れた。

 

 

カロル「何!?」

 

 

リョウ『入口が塞がれた!!』

 

 

シュヴァーン「……アレクセイだな。生き埋めにするつもりだ」

 

 

フレン「馬鹿な、あなたがいるのに」

 

 

シュヴァーン「今や不要になったその剣さえ始末できればいい、そういうことだろう」

 

 

リョウ『それでエステルを使ってデュークを誘き寄せたのか……クソッ』

 

 

リタ「ちょっと、おっさん!なんでそんなに落ち着いてんのよ!」

 

 

シュヴァーン「俺にとってはようやく訪れた終わりだ」

 

 

リョウ『まさか……初めから生きて出るつもりがなかったのかよ……』

 

 

フレン「シュヴァーン隊長……」

 

 

リョウ『なんて面してんだよ……』

 

 

リョウはシュヴァーンの胸ぐらを掴む

 

 

リョウ『てめえ!!そんな面でこのまま死んでいくつもりか?そんな腑抜けた面で精一杯生きたってあいつら……キャナリ達に自信をもって言えるのか?ふざけんじゃねえ!!ぶん殴られるぞ!!』

 

 

シュヴァーン「……なんで?キャナリのことを?」

 

 

リョウ『戦ってる最中に思い出したんだ。少しだけ10年前のことを……俺はおまえの知っているリョウ・ゲキショウだ』

 

 

シュヴァーン「なんでおまえは変わってないんだ?」

 

 

リョウ『その辺はまだわからねえ。とりあえず今はここを出よう』

 

 

シュヴァーン「ああ……」

 

 

シュヴァーンは埋もれた入口を弓矢で爆破する。

 

 

パティ「危ない!!」

 

 

神殿内の天井が崩れはじめている。

 

 

ユーリ「間に合わねえ」

 

 

天井が崩れ落ちてきたが、シュヴァーンが支えていた。

 

 

カロル「レイヴン!?」

 

 

リタ「ちょっと!生命力の落ちているあんたがいま魔導器でそんなことしたら!」

 

 

シュヴァーン「長くは保たない……早く脱出しろ」

 

 

ユーリ「おっさん!」

 

 

シュヴァーン「アレクセイは帝都に向かった。そこで計画を最終段階に、進めるつもりだ。あとは……おまえたち次第だ」

 

 

カロル「レイヴン!レイヴン!」

 

 

リョウ『……行くぞ、カロル』

 

 

カロル「でも!」

 

 

リョウ『行くんだ!』

 

 

カロル「……」

 

 

リョウ以外が部屋を脱出した。

 

 

リョウ『すまねえ……ダミュロン』

 

 

リョウも部屋を脱出した。

 

 

シュヴァーン「ダミュロン……まだその名前で呼んでくれる奴がいたとはな……」

 

 

 

 

 

あんたも面白い武器使ってるんだな

 

 

も?ってことはおまえキャナリと知り合いか?

 

 

ああ、まあな。知り合いならキャナリ隊の中に何人かいるぜ。あんたの名前は?

 

 

ダミュロンだ。

 

 

いい名前だな俺はリョウ。リョウ・ゲキショウだ。

 

 

 

 

シュヴァーン「走馬燈ってやつか……あいつ全然変わってなかったな……」

 

 

そして部屋は崩壊した。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第49話 帰還

神殿の外に出たリョウ達はヘラクレスがいない事に気づく

 

 

リタ「ヘラクレスがいない!?」

 

 

リョウ『ダミュ……レイヴンの言った通り、ザーフィアスに向かったんだろう』

 

 

???「ユ、ユーリ・ローウェル!?なぜここにいる!?それにフレン殿も!?」

 

 

ユーリ「ルブラン!?それにデコとボコもか」

 

 

アデコール「デコと言うなであ~る!」

 

 

ボッコス「ボコじゃないのだ!」

 

 

ルブラン「ばかも~ん!そんなこと言ってる場合か!ちょうどよかった、フレン殿、我らがシュヴァーン隊長を見ませんでしたかな?

単身、騎士団長閣下と共に行動されたきり、まるで連絡がつかんのです」

 

 

フレン「……」

 

 

ユーリ「アレクセイは帝都に向かった。ヘラクレスでな」

 

 

ルブラン「なんと、入れ違いか!?それでシュヴァーン隊長は……」

 

 

カロル「レ……シュヴァーンはボク達を助けてくれたんだ」

 

 

ルブラン「おお、そうか!で、今はヘラクレスか?」

 

 

ジュディス「……神殿の中よ。一番奥」

 

 

ドオオオオン

 

 

神殿内から轟音が響く

 

 

アデコール「え……?」

 

 

ボッコス「ちょ……お……」

 

 

ルブラン「……まさか、おい、そうなのか、そんな!どういうことなんです。フレン殿答えてください、フレン殿!!」

 

 

リタ「アレクセイのせいであたしたち死にそうになったのよ!それを助けてくれたのが、あんたらのシュヴァーンよ!」

 

 

フレン「あの人は……本当の騎士だった」

 

 

ユーリ「アレクセイは帝国にも内緒でなんかヤバいことをしようとしているらしい。俺達はそれを止めに行く。だから、あんたらは邪魔しないでくれ」

 

 

ルブラン「……そんな……なにが……どうして……」

 

 

パティ「早くしないとヘラクレスに逃げられるのじゃ」

 

 

ジュディス「急ぎましょう。バウルを呼ぶわ」

 

 

リョウ〖アレクセイ……てめぇだけは……俺がぶった斬る!!〗

 

 

リョウは声にこそ出さなかったが、心の中は怒りで燃えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

バウルに乗り込んだリョウ達はヘラクレスを探す。そして

 

 

パティ「見えた!ヘラクレスじゃ!!」

 

 

ユーリ「追いついたぜ!!」

 

 

カロル「でもどうやって乗り込めば……」

 

 

リョウ『このまま上からしかねえだろ?』

 

 

ジュディス「そうね。バウル!」

 

 

カロル「えー!もうちょっと考えた方が……うわぁ!」

 

 

リョウ達を乗せたバウルが上空から一気に近づく。

ヘラクレスはバウルに向かって砲撃をしてきた。

 

 

カロル「ほ、砲撃されてるよ!」

 

 

リョウ『いや、ヘラクレスの左後方だけ砲撃してきてない。あそこにつっこめば』

 

 

ジュディス「バウル!お願い!みんな振り落とされないように掴まっててね」

 

 

カロル「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

ユーリ「行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘラクレスの砲火をくぐり抜け、リョウ達はヘラクレスに上陸することができた。

 

 

カロル「死ぬかと思ったよ……」

 

 

フレン「衛兵が倒されている……」

 

 

ユーリ「だからここだけ弾幕が薄かったのか」

 

 

リョウ『誰だ?』

 

 

シュヴァーン隊の面々が、リョウ達に近づいて来た。

 

 

ルブラン「まったく無計画な連中だな。強行突破しか策がないのか」

 

 

アデコール「その通りであーる」

 

 

ボッコス「ここで会ったが100年目なのだ!」

 

 

リタ「また出たの?あんたらしつこすぎ!」

 

 

リョウ『あんな事があったってのにまだアレクセイの野郎につくのか?』

 

 

ルブラン「我らは騎士の誇り従って行動するのみ!」

 

 

リョウ『邪魔しないでくれるか?たとえ、あいつの部下でも俺は容赦しねえぞ……』

 

 

リョウは銀雪花を構え殺気を出す。

 

 

???「そんな怖い顔してたらリタっちがビビっちゃうわよ」

 

 

ルブランたちの後ろには、見慣れた顔の男。

 

 

リョウ『おまえは……!?』

 

 

ユーリ「レイヴン……!」

 

 

フレン「!!」

 

 

リタ「おっさん!」

 

 

カロル「レイヴン!」

 

 

ジュディス「あなた……!」

 

 

パティ「驚いたのじゃ……」

 

 

レイヴン「おう。レイヴン様参上よ。なになに?感動の再会に心いっぱい胸がどきどき?」

 

 

ユーリ「おっさん何しに来た?」

 

 

レイヴン「冷たいお言葉ね……」

 

 

レイヴンの後ろから騎士が現れる。

 

 

レイヴン「おう、おまえら!ここは任せるぜ」

 

 

ルブラン「はっ!」

 

 

アデコール ボッコス「「了解であります!」」

 

 

指示を受けたルブラン達は現れた騎士を相手に去っていった。

 

 

レイヴン「ま、こういうワケ」

 

 

カロル「レイヴン……」

 

 

レイヴン「そういうことで、よろしく頼むわ」

 

 

リタ「何言ってんのよ!信用できるわけ……ないでしょ!」

 

 

ユーリ「おっさん、自分が何やったか忘れたとは言わせねぇぜ」

 

 

レイヴン「そっか。なら、サクッと殺っちゃってくれや」

 

 

レイヴンは小刀をユーリに投げ渡す。

 

 

リタ「ばっ!なんのつもりよ!」

 

 

レイヴン「命が惜しかったわけじゃないはずなのに、なんでかこうなっちまった。

ここでおまえらに殺られちまうなら、それはそれ」

 

 

ジュディス「アレクセイに刃向かった今、いずれ魔導器を止められてしまって命はない。

だからここで死んでも同じ……そう言うこと?」

 

 

レイヴン「俺はもう死んだ身なんよ」

 

 

ユーリ「その死んじまったヤツがなんでここに来たんだ?レイヴン。あんた、ケジメをつけにきたんだろ。

じゃあ凛々の明星の掟に従って、ケジメをつけさせてもらうぜ」

 

 

ユーリはレイヴンをぶん殴る。

 

 

レイヴン「って~」

 

 

小刀を投げ捨てるユーリ。

 

 

ユーリ「あんたの命、凛々の明星がもらった。生きるのも死ぬもオレたち次第。こんなところでどうだ?カロル先生」

 

 

カロル「えへへ。さすがユーリ。ばっちりだよ」

 

 

カロルもレイヴンをぶん殴る。

 

 

レイヴン「あだ!」

 

 

カロル「とりあえずこれが罰ね」

 

 

その後もジュディス、リタ、パティもレイヴンをぶん殴った(パティはヒップアタック)

 

 

ユーリ「レイヴン。アレクセイのヤツがどこにいるかわかるか?」

 

 

レイヴン「せ、制御室だと思う……」

 

 

ジュディス「じゃ、行きましょ」

 

 

ユーリ「ああ」

 

 

カロル「勝手に死んじゃダメだからね。レイヴン!」

 

 

ユーリ達は満面の笑みを見せると、先へ歩き出した。

 

 

リョウ『無事だったんだなダミュロン』

 

 

レイヴン「まあ、ルブラン達のお陰でどうにかね。みっともない話さ」

 

 

リョウ『いいじゃねぇか生きてるんだから』

 

 

レイヴン「ああ。あのまま死んだらリョウ君の言うようにキャナリ達にぶん殴られるとこだったわ」

 

 

リョウ『でもよかったよ。生きててくれて』

 

 

レイヴン「10年ぶり、俺の親友リョウ」

 

 

リョウ『ああ』

 

 

お互い握手をする。

 

 

レイヴン「ちょっと、お願いがあるんだけど」

 

 

リョウ『なんだ?ダミュロン?』

 

 

レイヴン「そのダミュロンって呼ぶのはやめてくれない?俺はもうレイヴンだから」

 

 

リョウ『そうだな。分かったレイヴン』

 

 

レイヴン「やっぱりそれがしっくりくるわ。みんなを待たせると悪いから行こうや」

 

 

リョウとレイヴンはユーリ達の元へ行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘラクレスに潜入し、進んでいると騎士団が厳重に警備している扉が見えた。

 

 

レイヴン「あそこは動力室だな」

 

 

カロル「すごい警備だよ」

 

 

リョウ『強行突破は無理そうか』

 

 

フレン「ヘラクレスの足を止めることができれば、ソディアたちも乗り込んでこれると思うんだが」

 

 

パティ「制御室を探してそこを叩けばいいのじゃ」

 

 

リョウ『そうするか』

 

 

リョウたちは制御室を探すことにした。

 

 

しばらく探していると、「制御室」と書かれている扉を見つける。

 

 

リタ「警備がひとりもいないわ」

 

 

リョウ『気を付けろ。罠かもしれねえ』

 

 

リョウは警戒しながら扉を開け制御室に入る。

 

 

そこには警備の騎士たちが倒されていた。

 

 

レイヴン「なんじゃこりゃ?」

 

 

ジュディス「全員倒されているわ……いったい誰が?」

 

 

リョウ『アレクセイもいねえぞ』

 

 

「アレクセイはザーフィアスでーす」

 

 

リョウ『誰だ!?ってイエガー?』

 

 

声がした方をみると意外な人物……イエガーがいた。

 

 

ユーリ「なんでてめえがここにいるんだ?」

 

 

イエガー「ミーはただマイフレンドのためにワークしただけでーす」

 

 

カロル「マイフレンドってリョウのこと?」

 

 

イエガー「イエス」

 

 

リョウ『この騎士たちはイエガーが倒したということか……わりいイエガーまだおまえのことは思い出してないんだ』

 

 

イエガー「ノープロブレム。それではシーユー」

 

 

イエガーは制御室から出ていった。

 

 

リョウ〖そういえば……ゴーシュとドロワットがいなかったな……「リョウ制御盤を操作するの手伝って」『ん?ああ』

 

 

リョウとリタが制御盤を操作し、ヘラクレスの動きは止まった。

 

 

フレン「これでソディアたちも乗り込んでこれるだろう」

 

 

この後、フレン隊と合流し、フレンは指揮をとるため離脱した。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第50話 悲痛な叫び

ヘラクレスを停止させたリョウたちはバウルに乗ってザーフィアスに向かっている。

しばらくしてザーフィアスが見えてきた。

 

 

カロル「見えた!帝都だ!……あれ?」

 

 

レイヴン「おいおい!結界がないぜ」

 

 

リョウ『アレクセイの野郎の仕業か』

 

 

ジュディス「このまま行くわよ?」

 

 

ユーリ「頼む」

 

 

リタ「エステル、どこにいるの?」

 

 

しばし空を漂っていると城の頂上部にいるアレクセイとエステルを見つけた。

 

 

リョウ『あそこだ!』

 

 

リタ「エステル!」

 

 

レイヴン「アレクセイもいやがる」

 

 

ユーリ「ジュディ、近づけてくれ!」

 

 

エステルに近づきユーリはフィエルティア号から身を乗り出す。

 

 

ユーリ「エステル!!」

 

 

エステル「ユーリ……みんな……きゃあぁぁぁぁ」

 

 

力を行使され、叫び声を上げるエステル

 

 

リタ「エステル!!」

 

 

リョウ『アレクセイ!!』

 

 

エステル「いや!力が抑えられない!怖い!」

 

 

ユーリ「弱気になるな!エステル!今助けてやる!」

 

 

ユーリはエステル目がけて船から飛び降り、エステルは手を伸ばすがアレクセイによって力を発動され、ユーリは船へ吹き飛ばされてしまう。

 

 

リョウ『ユーリ!!』

 

 

ユーリ「エステル……」

 

 

エステル「これ以上……誰かを傷つける前に……お願い……」

 

 

エステルは泣きながら

 

 

エステル「殺して」

 

 

アレクセイが再びエステルの力を行使する。猛烈な風が巻き起こり、リョウたちはバウルごと吹き飛ばされた。

 

 

ユーリ「エステル!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リョウ『いててて……生きてる……のか?』

 

 

リョウは見知らぬ場所で目を覚ます。

 

 

リョウ『みんな大丈夫か?』

 

 

ジュディス「私はなんとか」

 

 

ラピード「クゥ―……ン」

 

 

レイヴン「生きてるっちゃ生きてる……」

 

 

パティ「船がメチャクチャじゃ……いてて」

 

 

ユーリ「アレクセイの野郎……」

 

 

カロル「ユーリ…痛いよ……」

 

 

リタ「エステルのあれ……宙の戒典と似てた……多分幾つも聖核集めて同じことをやろうと……」

 

 

リョウ『リタ、無理にしゃべるな。とりあえず医者を見つけないと』

 

 

ジュディス「バウル。よく頑張ってくれたわね」

 

 

ジュディスは倒れているバウルに声をかける。

 

 

リョウ『バウルもひどいケガだ。しばらくは運んでもらうのは無理だな』

 

 

ジュディス「傷が癒えるまで、どこかで休んでもらうわ」

 

 

ユーリ「無理させちまったな。ゆっくり休んでくれ」

 

 

バウルはゆっくりと飛び去っていく。

 

 

リョウ『エステルを助けに行く前に医者を探そう』

 

 

ジュディス「ここはカプワ・ノールの近くのようね。とりあえずノール港にいきましょう。きっとお医者さんもいるはず」

 

 

ユーリ「そうだな」

 

 

リョウは赤く暗くなった帝都の方の空を見て

 

 

リョウ『いやな空だな……』

 

 

 

 

 

 

 

 

カプワ・ノール

 

 

 

リョウたちがカプワ・ノールに着くと、住人たちが帝都の方の空を見てパニックに陥っていた。

 

 

「一体何がどうなったんだ」

 

 

「なにか天変地異の前触れじゃないのかね」

 

 

リョウ『大騒ぎだな、まああんな空を見たら無理もないか』

 

 

ユーリ「帝都の方も大騒ぎだろうな」

 

 

リョウ『とりあえずみんなは宿屋へ行っててくれ。俺は医者を呼んでくるから』

 

 

レイヴン「できるだけ早くお願いねリョウ君」

 

 

宿屋

 

 

 

 

医者に診てもらい少し休憩しているリョウたち

 

 

ユーリ「オレとジュディとおっさんで情報収集してくる」

 

 

リョウはベッドで寝ているリタを見て

 

 

リョウ『分かった。俺はリタの傍にいる』

 

 

しばらくしてユーリたちが宿屋へ戻ってきた。

 

 

リョウ『なんか情報は掴めたか?』

 

 

ユーリ「一応な。でも悪い情報だ」

 

 

リョウ『なんだ?』

 

 

ジュディス「黒髪で目つきの悪い男が親衛隊を引き連れてエフミドの丘を封鎖しているの」

 

 

リョウ『ダフィエルか……』

 

 

レイヴン「そうだろうね。だから今ノール港は孤立してるわけ」

 

 

リョウ『ダフィエルはひとりならまだしも、親衛隊までいるとなると強行突破は危険すぎる』

 

 

リョウたちが話していると、ベッドに寝ていたカロルとリタが起き上がる。

 

 

ユーリ「もういいのか、ふたりとも」

 

 

カロル「まだあちこち痛いけど。エステルが危ないんだ。のんびり寝てられないよ」

 

 

リタ「そゆこと」

 

 

レイヴン「しかしどうするよ、実際」

 

 

リョウ『エフミドの丘は封鎖、フィエルティア号はボロボロだから今は使えない。くそっ一体どうすればいいんだ!』

 

 

パティ「そうじゃ!あそこを通れば!」

 

 

ユーリ「なんか抜け道でもあるのか?」

 

 

パティ「遠回りじゃが、ゾフェル氷刃海という海岸があるのじゃ。あそこは流氷が今の季節たくさん流れ着くのじゃ。運が良ければつらなって道ができるかもなのじゃ」

 

 

カロル「ゾフェル氷刃海か……あのあたりは気味悪い噂が色々あって、漁師も近づかないって話だよ」

 

 

リョウ『でもそれしか方法がないな』

 

 

ユーリ「よし行こう。今は一刻を争うからな」

 

 

リョウたちはゾフェル氷刃海を目指すことになった。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第51話 氷の下の脅威

徒歩で帝都を目指すことになったリョウたちは、ゾフェル氷刃海へ着いた。

 

 

レイヴン「さ、寒い寒い寒い」

 

 

リョウ『寒いなら俺の鬼炎斬であっためてやろうか?』

 

 

レイヴン「いやいや。あったまるどころか消し炭になるわよ!」

 

 

ユーリ「無駄口叩いてないで行くぞ」

 

 

ラピード「ウウウワンワン!!」

 

 

ユーリ「どうした?ラピード?……!!」

 

 

足下の海を巨大な魔物が横切った。

 

 

パティ「バイトジョーという魔物なのじゃ。背骨がピカピカのガチガチで、とっても丈夫な体の魔物なのじゃ」

 

 

ユーリ「ほっときゃいいだろ。相手にすんなって。いくぞ」

 

 

リョウたちは先に進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく進んでいると氷刃海のど真ん中に着いた。そこで巨大な緑色の結晶を見つける。

 

 

リョウ『これエアルクレーネだな』

 

 

ジュディス「でもエアルが出てないわね。涸れた跡なのかしら?」

 

 

リタ「その割にこの辺は荒廃していないみたいだけど」

 

 

リョウ『ん?みんな気を付けろ!』

 

 

振り向くと、すぐ後ろの海にバイトジョーがいた。

 

 

カロル「うわ、また出た!」

 

 

レイヴン「大丈夫っしょ。ここ岩の上よ」

 

 

しかしバイトジョーは海からあがり、宙を舞った。そしてバイトジョーが吠える。

すると突然エアルクレーネが活性化し、リョウたちは身動きがとれなくなった。

 

 

リタ「エアルクレーネが!?」

 

 

ユーリ「やべえ!」

 

 

ユーリはとっさにカロルを突き飛ばして逃がす。

 

 

カロル「うわ、ユ、ユーリ!?」

 

 

ユーリ「くっ……!」

 

 

ジュディス「まさか、エアルクレーネを狩りに使う魔物がいるなんて」

 

 

パティ「うちとしたことが……知らんかったのじゃ」

 

 

ユーリ「カロル、逃げろ!」

 

 

カロル「そ、そんな!みんな食べられちゃうよ!」

 

 

ユーリ「ひとりで勝てる相手じゃねぇだろうが!」

 

 

カロル「でも!!」

 

 

バイトジョーはカロルを睨む。

 

 

カロル「ひっ!!」

 

 

バイトジョーはリョウたちをじっと狙う。

 

 

カロル「ボクがやらなきゃ……今やらなきゃ……」

 

 

リョウ『カロル!』

 

 

カロル「今やらなくていつやるんだぁ!!」

 

 

バイトジョーに向かって行くカロル。しかしバイトジョーの攻撃で簡単に吹き飛ばされる。

 

 

カロル「うわああ!」

 

 

カロルはすぐに立ち上がり立ち向かう。

しかしまた吹き飛ばされる。

 

 

カロル「まだまだ……み、みんなを守るんだ。逃げるもんか!」

 

 

何度も立ち向かうが、ついに武器を吹き飛ばされてしまう。

 

 

ジュディス「カロル!もう無茶はやめなさい!」

 

 

パティ「それ以上やったら、死んでしまうのじゃ」

 

 

カロル「だ、大丈夫だから……だってみんながいるもん」

 

 

ユーリ「カロル……おまえ……」

 

 

カロル「ボクの後ろにはみんながいるから、ボクがどんだけやられてもボクに負けはないんだ」

 

 

リョウ『くそ!このままじゃカロルが!』

 

 

カロルは流氷に刺さった剣めがけて走り出す。剣を取ると同時に、バイトジョーの体当たりが直撃し、カロルは宙を舞った。

 

 

ユーリ「カロル!」

 

 

リョウ『あいつもしかして……』

 

 

カロル「ボクの勝ちだ!!」

 

 

吹き飛んだカロルはバイトジョーの頭上をとり、剣で一撃を加える。

するとエアルの放出が収まり、リョウたちに自由が戻った。

 

 

レイヴン「まったくとんでもないことする少年だねえ。生きてるかぁ?」

 

 

カロル「みんな!」

 

 

ユーリ「悪ぃ。ちょっと道が混んでてな。いけるか?」

 

 

カロル「も、もちろんだよ!」

 

 

リョウ『よし!百倍……いや、千倍返しといくぜ!!』

 

 

今度は全員でバイトジョーに挑み、打ち倒した。

その後すぐにカロルが倒れた。

 

 

リョウ『カロル!しっかりしろ!』

 

 

ジュディス「大丈夫。安心して気がゆるんだのね。気を失ってるだけ。早くここを抜けましょ」

 

 

リョウ『ああ。カロルありがとな。格好良かったぜ』

 

 

ようやく氷刃海を抜けたリョウたち。

その頃にはカロルは意識を取り戻していた。

 

 

カロル「……」

 

 

リョウ『どうしたカロル?まだ無理しない方がいいんじゃねえのか?』

 

 

カロル「ううん。ドンの言葉を思い出してたんだよ」

 

 

リョウ『仲間を守ってみろ、そうすれば応えてくれる。か?』

 

 

カロル「うん。あれってこういうことだったのかなって」

 

 

ユーリ「それがおまえの見つけた答えってことか。ならきっと正解だよ」

 

 

カロル「そうだといいな。ここから出たらどっかの街で帝都がどうなってるか聞いてみようよ」

 

 

リョウ『ここからだとハルルが一番近いかな?』

 

 

リョウたちはハルルを目指すことに

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第52話 帝都を受け入れる街

流氷を渡り、リョウたちはハルルに着いた。

 

 

ユーリ「……えらくごった返してんな」

 

 

レイヴン「帝都から逃げてきた連中よ。キレイな身なりしてんでしょ?」

 

 

リタ「今んとこ、ここの結界は異常なさそう」

 

 

カロル「……はあ……はあ」

 

 

リョウ『カロル、大丈夫か?』

 

 

ジュディスがカロルの額に手を当てると

 

 

ジュディス「すごい熱。無理してたのね」

 

 

リョウ『宿屋でカロルを休ませようぜ』

 

 

 

宿屋

 

 

 

帝国の計らいでタダで部屋を借りることができた。

カロルを休ませ、リョウたちは話し合うことにした。

 

 

ジュディス「あの避難民……帝都は大変な状況のようね」

 

 

リョウ『アレクセイの野郎いったいなにをするつもりだ?』

 

 

パティ「アレクセイは絶対、許せんのじゃ……」

 

 

リタ「アレクセイなんてどうでもいい。……エステルよ。あたしはエステルを助けたい」

 

 

ジュディス「そうね。でもそのためにはアレクセイを何とかしないと。それにこのままじゃ無策すぎるわ」

 

 

レイヴン「どのみちカロルが回復するまでは動けないんだし、今のうちに情報集めてくるといいんでない?

おっさんとリョウ君で面倒見るから行っといで」

 

 

リョウ『……そうだな。カロルのことは任せろ』

 

 

ユーリ「分かった。頼む」

 

 

ユーリたちは部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユーリたちが出て、しばらくして

 

 

リョウ『レイヴン。俺になんか話があるんだろ?』

 

 

レイヴン「ありゃ、バレてた?」

 

 

リョウ『バレバレだよ。で、内容は記憶のことだろ?』

 

 

レイヴン「そうそう。どこまで戻ったのか気になってね」

 

 

リョウ『そうだな……全部は戻ってないな。断片的に思い出している感じかな』

 

 

レイヴン「オレやキャナリのことはどう?」

 

 

リョウ『その辺のことなら思い出しているな。10年前に出会って友だちになったな』

 

 

レイヴン「……イエガーのことは?」

 

 

リョウ『イエガー……あいつのことはまだだな。どこで出会ったのかも思い出してない。

でもあいつは俺を助けてくれた。カドスの喉笛やヘラクレスの時に、だから俺とイエガーは友だちなんだと思う』

 

 

レイヴン「そう……。でもオレはイエガーを許すことはできそうにないわ」

 

 

リョウ『……ドンのことだな?』

 

 

無言で頷くレイヴン。

 

 

リョウ『レイヴンがイエガーを斬るというのなら……』

 

 

レイヴン「いうのなら?」

 

 

リョウ『俺がイエガーを斬る』

 

 

レイヴン「!?」

 

 

リョウ『それが今の俺にできることだと思うから』

 

 

ふたりの間にしばらく沈黙が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

カロルが目を覚まし、ユーリたちが戻ってきて話を聞いた。

帝都ザーフィアスは今エアルの暴走により人の住めない街になっているらしい。

 

 

リョウ『そんなことが……』

 

 

カロル「帝都に行かないと……」

 

 

リョウ『エステルを助けられないからな。でも今はもう少し寝とけカロル』

 

 

ユーリ「……ちょっと外の空気吸ってくる。カロルを見ててやってくれ」

 

 

ユーリとラピードが部屋から出た。

 

 

 

 

しばらくしてラピードだけが部屋に戻ってきた。

 

 

リョウ『ラピード、ユーリはどうした?』

 

 

ラピード「ワン!」

 

 

ラピードはまた部屋を出ていった。

 

 

ジュディス「ついてこいってことかしら?」

 

 

リョウ『……ユーリの野郎ひとりで行ったな』

 

 

カロル「ええ!?」

 

 

リョウ『みんな出発だ!アレクセイの前にユーリの野郎をぶん殴りにいくぞ!』

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第53話 帝都へ

クオイの森

 

 

 

 

 

ラピードに案内されクオイの森にやって来たリョウたち。

そこでさっそく寝ているユーリを発見した。

 

 

リョウ『ターゲット発見だな』

 

 

カロル「ボク行ってくる!」

 

 

リタ「あたしも!」

 

 

カロルは寝ているユーリに近づき

 

 

カロル「ユーリの……」

 

 

ユーリ「……?」

 

 

カロル「バカーーーーーッ!!」

 

 

ブンッ

 

 

寝ているユーリの頭スレスレに、カロルの武器が振り下ろされる。

 

 

ユーリ「おわ!?」

 

 

ユーリは飛び起きた。

 

 

ユーリ「なっ?え、あ?カロル!?」

 

 

カロル「バカ!アホ!」

 

 

ユーリ「ちょ、まて、おい!」

 

 

カロルは構わず武器を振り回す。

 

 

カロル「トーヘンボク!スットコドッコイ!」

 

 

ユーリ「スットコって……待てって!」

 

 

リタ「言い訳はあとで聞いてあげる」

 

 

ユーリ「へ!?」

 

 

リタ「一回死んどけ!!」

 

 

ドーーン

 

 

ユーリ「ごわ!!」

 

 

リタの魔術で、ユーリは派手に吹っ飛ばされた。

その先には

 

 

リョウ『このバカ野郎が』

 

 

ゴス

 

 

ユーリ「いて!!」

 

 

リョウがユーリの頭に重めのチョップをかます。

 

 

レイヴン「はぁい。生きてる?」

 

 

ユーリ「……多分」

 

 

リョウ『目が覚めたか?』

 

 

ユーリ「ったくラピード、てめえ見張りはどうしたんだよ」

 

 

ジュディス「この子が私たちを案内してくれたよ。賢い子ね」

 

 

リタ「そこ行くと、どっかの馬鹿とは大違い」

 

 

ユーリ「おまえら分かってんのか?これから、なにしようとしてっか、本当に分かってんのかよ?」

 

 

カロル「分かってないのはユーリだよ!」

 

 

ユーリ「カロル……」

 

 

カロル「ユーリだけで……ユーリだけでなんて駄目だよ!」

 

 

リタ「あんたひとりでなにするってのよ。あたしら差し置いてなにができるっていうのよ!」

 

 

パティ「うちらのことが不必要で、ユーリがうちらを置いていったとしても、うちらは世界中どこまでもユーリを捜してついて回るのじゃ」

 

 

レイヴン「ま、ようするに、だ。ひとりで格好つけんなってことよ」

 

 

ジュディス「もう少し信じてみてもいいんじゃないかしら?」

 

 

リョウ『仲間だと思っていたのは俺たちだけだったのか?』

 

 

ユーリ「……分かったよ、みんなで行こう、最後までな」

 

 

 

 

 

 

 

 

クオイの森を抜け、帝都の手前の平原まで来たリョウたち。

そこでは大勢の騎士が慌ただしく動いていた。

 

 

ユーリ「騎士団じゃねえか。帝都に攻め込むとこか」

 

 

リョウ『でもなんか様子がおかしいな』

 

 

フレン「ユーリ!みんな!」

 

 

気づいたフレンが近づいてきた。

 

 

フレン「良かった、無事だったんだな。エステリーゼ様は……まだザーフィアスなんだな」

 

 

ユーリ「ああ。今のところはまだ、な。そっちはなにやってんだ、こんなとこで」

 

 

フレン「親衛隊がこの先に布陣している。出方を見るために送った偵察隊が戻ってくるのを待っているんだ」

 

 

リョウ『なるほどな……ん?なんだあれ?』

 

 

リョウの目の先に数え切れないほどの戦闘機械が向かってくる。

 

 

パティ「すごい数なのじゃ……」

 

 

ジュディス「あれを突破するのは少々骨が折れそうね」

 

 

フレン「まだあれだけの戦力を隠していたのか」

 

 

リタ「帝都はすぐそこなのに……」

 

 

フレン「ユーリ。ここは僕らに任せてくれ」

 

 

ユーリ「おまえ……」

 

 

フレンは騎士を鼓舞し、士気が上がった騎士たちを連れて戦闘機械の集団に前進していった。

 

 

リョウ『いよいよ帝都だな……』

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第54話 変わり果てた帝都

帝都の市民街に突入したリョウたち。あらゆる建物が、巨大な植物のツタに覆われていた。

 

 

ユーリ「なんてこった。これがあの帝都なのか」

 

 

パティ「ひどいのじゃ……」

 

 

カロル「植物が巨大化してる……エアルの暴走のせいだね」

 

 

リタ「すごい濃度……まともに食らったら一巻の終わりよ」

 

 

リョウ『俺たちが生きてるのは宙の戒典のおかげか』

 

 

ユーリ「ああ、みんな離れるなよ。……」

 

 

ユーリはそう言いながらじっと一点を見つめている。

 

 

リョウ『ユーリ、どうした?』

 

 

ユーリ「ん?いやなんでもねえよ。行こうぜ。エステルが待ってる」

 

 

ユーリは歩き出した。

 

 

リタ「?」

 

 

レイヴン「あの坂の先は下町があった。やっこさんの住んでた、ね」

 

 

リョウ『植物で覆いつくされてるな……』

 

 

リタ「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザーフィアス城

 

 

 

 

ザーフィアス城の城門をカロルが開け、城に潜入したリョウたち。

城内は不気味なほど静まり返っていた。

 

 

カロル「あれ?エアルがないよ?」

 

 

リタ「エステルの力を使ってこんなことまでやってのけたんだわ」

 

 

レイヴン「きっとお出迎えがあるぞ」

 

 

リョウ『そうだな。気を引き締めて行こうぜ』

 

 

城内を進んで食堂の前までくると、ジュディスが人の気配に気づく。

 

 

ジュディス「まって。誰かいるわ」

 

 

扉の両脇で構えるリョウたち。すると扉が勢いよく開かれた。

 

 

「だあああああ!!!」

 

 

リョウ『ん?』

 

 

食堂からシュヴァーン隊の面々が飛び出し、そのまま壁に激突した。

 

 

シュヴァーン隊「あだだだだだだ!」

 

 

リョウ『あんたら……大丈夫か?』

 

 

「ユーリ!?ユーリか!」

 

 

ユーリ「!?ハンクスじいさん!?それにみんなも!?」

 

 

食堂には大勢の人がいた。

 

 

リョウ『ユーリ、知り合いか?』

 

 

ユーリ「全員下町の住人だ。無事だったのか!」

 

 

ハンクス「そりゃこっちのセリフじゃ」

 

 

ユーリ「なんで城の中に居んだよ!?」

 

 

レイヴン「ほんと、それにおまえらまで」

 

 

ルブラン「それがその、フレン殿の命令で市民の避難を誘導していたのでありますが、その……ふと下町の住民の姿が見えないことに気がつきまして……」

 

 

ハンクス「出口は崩れるわ、おかしな霧は迫るは、危ないとこじゃった。

なんとか騎士殿の助けで霧のないここに逃げ込めた。命の恩人じゃよ」

 

 

レイヴン「おまえら……よくやったな」

 

 

ルブラン「こっ光栄であります!シュヴァ……レイヴン隊長殿!」

 

 

レイヴン「隊長ゆーな。俺様はただのレイヴンよ」

 

 

ルブラン「はっ!失礼しました。ただのレイヴン隊長!」

 

 

あきれるレイヴン。

 

 

ジュディス「尊敬されてるのね」

 

 

リタ「ほんと、想像つかないわ」

 

 

パティ「見かけによらないもんじゃの」

 

 

カロル「よかったね、ユーリ」

 

 

ユーリ「しぶとい奴らだっての忘れてた。心配するだけ無駄だったわ」

 

 

リョウ『の割には、えらく嬉しそうじゃねえか』

 

 

ユーリ「うるせ」

 

 

レイヴン「おまえら、元団長閣下を見なかったか?」

 

 

ルブラン「はっ、いえ我々は見ておりません。ただ外で親衛隊の話し声で、なにやら御剣の階梯(みつるぎのきざはし)のことを」

 

 

リタ「御剣の階梯?」

 

 

レイヴン「うちらが吹っ飛ばされた、あの高―い高いアレよ」

 

 

ジュディス「まだそこにいるってことね」

 

 

パティ「煙と極悪人は高いところに昇りたがるんじゃな」

 

 

ユーリ「だな。じいさん、あんたらはこのままここで隠れてくれ。行くぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

御剣の階梯を目指し謁見の間に入ったリョウたち。すると、背後から

 

 

「ようやく来ましたね」

 

 

そこにはひとりの女性が

 

 

ジュディス「クリティア族!?いえ、あなたは確か……」

 

 

レイヴン「クローム……アレクセイの秘書か」

 

 

パティ「アレクセイの……ってことは!?」

 

 

リョウ『敵か?』

 

 

クローム「いいえ違います。……少なくとも今は」

 

 

ユーリ「引っかかる言い方だな。悪ぃが、こっちは急いでんだ。戦うか、でなきゃ後にしてくんねえかな」

 

 

クローム「誰がためにあなたたちは戦うのですか?」

 

 

カロル「え?」

 

 

クローム「あの哀れな娘のためですか」

 

 

リタ「哀れだとかあんたに言われる筋合いなんかない!」

 

 

リョウ『まったくだ。何が言いたい?』

 

 

クローム「あの人があなたたちに何を見たのか分かりませんが……。

あなたたちがあの人を止めてくれるのを願っています」

 

 

そう言い残してクロームは去っていった。

 

 

リタ「意味不明。ワケわかんないんだけど……」

 

 

カロル「アレクセイを止めて欲しいってこと?」

 

 

リョウ『それはできねえ話だな。ぶっ倒さないと気が済まねえ』

 

 

ユーリ「そう言うこった。行くぜ!」

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第55話 階梯の果てに

リョウたちは御剣の階梯を駆けのぼり、アレクセイのもとへたどり着いた。

 

 

リョウ『アレクセイ!!』

 

 

アレクセイ「……呆れたものだ。あの衝撃でも死なないとは」

 

 

リョウ『あいにく、俺たちはしぶといんでね』

 

 

アレクセイ「しぶといか……リョウ・ゲキショウ。君は特に」

 

 

リタ「どういうこと?」

 

 

アレクセイ「10年前、ダフィエルは君を殺したと言っていたが、ヘリオードで君を見た時は流石に驚いたよ。生きていたことと姿が全く変わっていないことに」

 

 

リョウ『なぜ俺の命を狙っていた?』

 

 

アレクセイ「10年前、君は私のある計画を知り阻止しようとして邪魔だったからだ。だからダフィエルを使い、君を殺すように命令した。

だが、君が記憶喪失で生きていると知ってから記憶を取り戻す前にダフィエルにまた殺すように命令した」

 

 

リョウ『計画?エステルの力を使って帝都を支配することか?』

 

 

アレクセイ「その様子だとまだその当時の記憶は取り戻していないようだな。

まあいい、もう君のことなどどうでもいい。私の目的は達成した」

 

 

ユーリ「だったら、エステルを返してもらおうか」

 

 

アレクセイ「いいとも」

 

 

エステルは解放されたが、剣を構えてユーリに斬りかかってきた。

 

 

ユーリ「うおっ!!」

 

 

カロル「エステル!どうしたんだよ!!」

 

 

ジュディス「待って。操られているようよ」

 

 

パティ「卑怯なのじゃ、アレクセイ!」

 

 

アレクセイ「取り戻してどうする?姫の力はもう本人の意思ではどうにもならん。我がシステムによってようやく制御している状態なのだ。

暴走した魔導器を止めるには破壊するしかない。諸君ならよく知ってるはずだな」

 

 

リタ「エステルを物呼ばわりしないで!!」

 

 

アレクセイ「ああ、まさしくかけがえのない道具だったよ、姫は」

 

 

アレクセイが剣を抜く、するとその柄に収まった魔核が光を放つ。

 

 

ユーリ「やめろ!!よせ、エステル!くっそおぉ!!」

 

 

ユーリはエステルの剣を弾き返した。

 

 

アレクセイ「ふむ、パワーが足りなかったか?」

 

 

エステル「きゃあぁぁぁぁ!!」

 

 

エステルから衝撃波が放たれ、宙の戒典を持つユーリ以外の仲間が動けなくなる。

 

 

アレクセイ「諸君のおかげでこうして宙の戒典にかわる新しい『鍵』も完成した。

礼といってはなんだが、我が計画の仕上げを見届けていただこう。……真の満月の子の目覚めをな」

 

 

ザーフィアス上空に、紋章が浮かび上がった。そこから放たれた光は海上で炸裂し、海底から巨大な指輪のような建造物がせり上がった。

 

 

レイヴン「く……なんだ、ありゃ……」

 

 

リョウ『あれは……ミョルゾで見た……』

 

 

パティ「あの壁画の輪っかなのか……!?」

 

 

アレクセイ「くくく……ははは……成功だ!やったぞ、ついにやった!!あれこそ、古代文明が生み出した究極の遺産!ザウデ不落宮!かつて世界を覆った災厄をも打ち砕いたという究極の魔導器!」

 

 

リョウ『あれが……魔導器だと……』

 

 

アレクセイ「ショーは終わりだ。幕引きをするとしよう。姫、ひとりずつお仲間の首を落として差し上げるがいい」

 

 

ユーリ「てめえ……!」

 

 

アレクセイ「姫も君たちがわざわざここに来たりしなければ、こんなことをせずにすんだものを、我に返った時の姫のことを思うと心が痛むよ。では、ごきげんよう」

 

 

アレクセイは風とともに姿を消した。

 

 

ユーリ「アレクセイ!!」

 

 

リョウ『ユーリ!後ろだ!』

 

 

背後からエステルがユーリに斬りかかってきた。ユーリはかわし、次の剣撃を受け止める。

 

 

エステル「これ以上……誰かを傷つける前に……お願い………殺して」

 

 

ユーリ「今……楽にしてやる」

 

 

リョウ『ユーリ……』

 

 

エステルと剣を交わすユーリ。

 

 

ユーリ「帰ってこい。エステル!おまえはそのまま、道具として死ぬつもりか!?」

 

 

エステルの手から剣が滑り落ちた。

 

 

エステル「わた……わたしは……」

 

 

エステルの目から涙があふれる。

 

 

エステル「わたしはまだ人として生きていたい!!」

 

 

エステルの身体から光が放たれ、帝都の空が晴れた。

 

 

カロル「やった、エステル、目が覚めたんだね!」

 

 

リタ「待って、システムが!?」

 

 

エステルは赤い球体に取り込まれる。

 

 

ジュディス「アレクセイの剣が要だったんだわ。このままでは……!」

 

 

リタ「あいつのシステムが使えるかも……リョウ!手伝って!」

 

 

リョウ『まかせろ!!』

 

 

リタとリョウはアレクセイの作り出したシステムをチェックする。

 

 

リタ「すごい……。ほとんどそろってる……これなら」

 

 

リョウ『でも、聖核がない……どうすりゃいいんだ』

 

 

ユーリ「この剣を使ったらどうだ!?アレクセイが使ってたやつの本物だろ!?」

 

 

リョウ『宙の戒典……やってみよう!』

 

 

ジュディス「手伝うわ。流れを読み取るから」

 

 

カロル「ボクも!」

 

 

パティ「手伝うのじゃ」

 

 

レイヴン「くう。融通の利かない体だぜ……」

 

 

エステル「みんな、もう……」

 

 

ユーリ「信じろって。凛々の明星はやるときゃやる。そんな顔するなって」

 

 

エステル「……はい!」

 

 

リョウたちは球体の周りに集まる。

 

 

リタ「ユーリ!剣を!」

 

 

ユーリ「っしゃあ!」

 

 

あたりを強烈な光が包み、球体が破壊され、エステルはユーリの胸に飛び込んでいた。

 

 

ユーリ「……おかえり」

 

 

エステル「……ただいま」

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第56話 ひとり想う

ザーフィアス城ホール

 

 

 

 

リョウ『……』

 

 

リョウはひとりホールの天井を見ている。

 

 

ユーリ「なにしてんだ?」

 

 

リョウ『ん?ユーリか』

 

 

ユーリ「エステルのことでリタを手伝わなくていいのか?」

 

 

リョウ『ああ。俺には難しいことでね。リタに任せる。それに、久しぶりにエステルに会って話したいこともあるだろうし』

 

 

ユーリ「それが本音か?」

 

 

リョウ『……正直言うと、ひとりで考え事をしたいからだ』

 

 

ユーリ「なんかあったのか?」

 

 

リョウ『アレクセイの野郎が言ってたことがどうも引っかかるんだ』

 

 

ユーリ「どのことだ?」

 

 

リョウ『10年前に俺がアレクセイの計画を知って阻止しようとしたことについてだ。でも何の計画だったのか思い出せないんだ』

 

 

ユーリ「エステルを使ってザウデを復活させることじゃねえのか?」

 

 

リョウ『いや、それとはまた違う……なにかもっと大切なことのような……』

 

 

ユーリ「記憶は戻ってきてるんだろ?」

 

 

リョウ『ああ。少しずつだけどな』

 

 

ユーリ「ならそのうち思い出すさ。今日はもう休みな」

 

 

リョウ『そうするか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、エステル以外の仲間が市民街の出口に集まった。

 

 

ユーリ「みんな集まった……ってエステルがまだだな。リタ、見てないのか?」

 

 

リタ「エステルは来ないわ」

 

 

リョウ『どういうことだ?』

 

 

リタ「あの子、もう戦えないから。今のエステルは術技を使うだけでも生命力を削ることになる。無理したら命が危ないわ」

 

 

パティ「そんな……」

 

 

ユーリ「……だからこれ以上、一緒に行くのは無理ってことか」

 

 

レイヴン「それで当人は納得したのかね?」

 

 

「……いいえ」

 

 

声がした方を向くとエステルが立っていた。

 

 

カロル「エステル!」

 

 

リタ「ちょっ、あんた、見送り……よね?」

 

 

エステル「ごめんなさい、リタ。やっぱり……連れて行ってください」

 

 

リタ「話したでしょ!術技さえ使わなければ、何の問題もなく生きられるのに」

 

 

エステル「最初は思いました。これでやっと普通に生きられるんだなって」

 

 

リタ「そうよ。エステルはもう十分ひどいめにあってきた。もう休んでも良いのよ」

 

 

エステル「ありがとう。でも……みんな命がけで戦おうとしている。世界の命運をかけて……。それを知って私だけ戦わないなんてできない。お願いです、わたしも連れ

て行ってください」

 

 

ユーリ「駄目だ……と言いたいとこだが、自分で考えて決めたんだ。オレは反対しないぜ」

 

 

ジュディス「そうね。一度言い出したら聞かない子だし」

 

 

レイヴン「連れてってやろうや。仲間に置いてけぼりにされるのは、ちっと切ないぜ?」

 

 

カロル「うん。エステルがつらくないように、みんなで助け合おうよ」

 

 

パティ「一緒にあの大悪人、ぶっ飛ばすのじゃ」

 

 

リタ「……ひとつだけ約束して。絶対にひとりで無理しないこと、いい?や、破ったらぜぜ絶交だからね!」

 

 

リョウ『俺からも、無理しないでくれよ。リタの悲しむ顔は見たくないからな』

 

 

エステル「はい!」

 

 

ユーリ「よし!行く……「おーい。待ってくれ」

 

 

遠くから声がきこえた。

 

 

リョウ『あの姿は……フレン?』

 

 

フレン「よかった、間に合った」

 

 

リョウ『見送りか?』

 

 

フレン「いや、僕も連れていってくれないか?」

 

 

ユーリ「おまえ、騎士団はどうすんだ?」

 

 

フレン「それが、ヨーデル殿下直々に凛々の明星と力を合わせてアレクセイを止めるように命じられて」

 

 

ユーリ「あの殿下がねえ」

 

 

フレン「そういう訳だ。よろしく頼むよ、みんな」

 

 

突然、帝都にバウルの咆哮が響いた。

 

 

リョウ『バウル?もう大丈夫なのか?』

 

 

ジュディス「強い子だもの。大丈夫よ」

 

 

ユーリ「準備万端だな。行こうぜ、決戦だ!」

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第57話 友との戦い

バウルに乗り、ザウデ不落宮に近づいてきたリョウたち

 

 

ユーリ「あれがザウデか。でかいな」

 

 

カロル「なんか指輪みたいな形だね」

 

 

リョウ『おい!あれフェローじゃねえのか?』

 

 

フェローがザウデの魔核から発射される光線を避けつつ、魔核に近づくが、巨大な魔法陣が展開されてフェローは吹き飛ばされ退散した。

 

 

ユーリ「低空で侵入しよう。フェローにゃ悪いが、今ならアレクセイの目は上向いてる」

 

 

ジュディス「フェロー……ありがとう」

 

 

そしてザウデ不落宮に上陸したリョウたち。

 

 

ユーリ「しっかし近くで見ると、いよいよでけえな」

 

 

リョウ『これが魔導器だなんて未だに信じられねえな』

 

 

パティ「きっと世界のみんなを脅すための兵装魔導器なのじゃ」

 

 

ジュディス「きっと想像を絶する力でしょうね」

 

 

カロル「ねえ、あれ!船だよ」

 

 

エステル「騎士団でしょうか?」

 

 

フレン「いえ、そんなにはやく来れるとは思えません。親衛隊でしょう」

 

 

レイヴン「ってことは、だ」

 

 

レイヴンとパティはザウデ不落宮の入口を偵察する。

 

 

レイヴン「やっぱ入口固められているわ」

 

 

パティ「フナムシみたいにぞろぞろいるのじゃ」

 

 

リタ「あれくらいなら、まとめて吹っ飛ばせそうよ?」

 

 

ユーリ「慌てんなって。そう言う派手なのはオレたちの役目じゃねえ。他に入れそうなとこがないか探そうぜ」

 

 

リョウ『あれなんかどうだ?通風孔だけど』

 

 

リョウが指をさした先に通風孔がありそこへ向かう。

 

 

ユーリ「ここからなら入れそうだな」

 

 

カロル「それならボクの出番だね!」

 

 

フレン「ここから入るつもりかい?」

 

 

ユーリ「騎士様にはちょっと相応しくないかもしれねえけどな」

 

 

カロルが通風孔を開け、リョウたちはザウデ不落宮に侵入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

侵入して先へ進んで行くと、大広間に到着した。

 

 

エステル「きれい……」

 

 

カロル「ほんと、武器の中とは思えないよね」

 

 

ジュディス「カロル、待って」

 

 

カロル「え?」

 

 

先へ行こうとしたカロルを、ジュディスが止めた。

 

 

ラピード「グルルルル」

 

 

ユーリ「出てこいよ。かくれんぼって歳でもねえだろ」

 

 

「ブラボー、ブラボー」

 

 

イエガーが拍手をしながら現れた。

 

 

リョウ『イエガー!?』

 

 

イエガー「久しぶりデース、マイフレンドリョウ。ミーのことは思い出しましたか?」

 

 

リョウ『いや、まだだ』

 

 

イエガー「そうですか。そのほうがいいでしょう。ビコーズ戦わなければならない相手がフレンドなら斬りづらいでしょうから!」

 

 

そう言って武器を取り出したイエガー。

 

 

リョウ『(この時がきたか……)イエガー……』

 

 

リョウも銀雪花を引き抜く。

 

 

リョウ『みんなは手を出さないでくれ。たとえ俺がボロボロになっても』

 

 

リタ「な、何言ってんのよあんた!!」

 

 

リョウ『俺は決めていたんだ。イエガーが敵として現れた時は俺が斬るって、それが今できることだからだ……イエガーの友として』

 

 

レイヴン「あの時に言ったことがもう来るとはね。分かった」

 

 

カロル「ちょっと!レイヴン!ユーリも何とか言ってよ」

 

 

ユーリ「あれがあいつの覚悟なら止めれねえな」

 

 

エステル「そんな……」

 

 

ジュディス「今は信じましょうリョウを」

 

 

リョウ『いくぜ!イエガー!』

 

 

イエガー「カモン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

リョウはイエガーに向かって行く

 

 

リョウ『散沙雨!』

 

 

銀雪花の連続突きをイエガーは鎌を回転させて防御した。

イエガーはそのまま鎌でなぎ払う。リョウはそれを後退して避ける。

鎌を銃に変形させ、弾丸を数発放つ

 

 

リョウ『鬼炎斬!!』

 

 

弾丸を焼き払う。

 

 

イエガー「なかなかやりますね」

 

 

リョウ『おまえもな』

 

 

イエガー「ならこれならどうですか?」

 

 

イエガーの胸部から、紫色の光が放出された。それは魔導器だった。

 

 

リョウ『それはレイヴンと同じ魔導器!』

 

 

イエガー「イエス。ミーのハートはもうありません。これが代わりなのです」

 

 

リョウ『10年前……レイヴンと同じ……人魔戦争……そうか!おまえはキャナリ隊の!』

 

 

イエガー「思い出したようですね。バット、ユーとミーが戦うことは変わりないです!」

 

 

イエガーは鎌で斬りかかってきた。

リョウは銀雪花で受け止めるが

 

 

リョウ〖なんて力だ。あの魔導器のせいか?〗

 

 

ガキィィン!

 

 

リョウ『しまった!?』

 

 

銀雪花がはじかれ、手から離れた。

 

 

イエガー「これでエンドで……」

 

 

銃に変形し、銃口がリョウに向けられる……がイエガーはそこで止まった。

 

 

リョウ『銀雪花!』

 

 

リョウが叫ぶと銀雪花は手に戻り、イエガーに一太刀入れた。

 

 

イエガー「ぐっ……」

 

 

イエガーはその場に倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リョウ『イエガー!』

 

 

イエガー「ナ、ナイスファイト……」

 

 

リョウ『なんでだ?なんであの時、俺を撃たなかった?』

 

 

イエガー「ミーにはできません……フレンドを討つことなど……」

 

 

リョウ『でも、俺はおまえを……』

 

 

イエガー「ユーの覚悟がミーの覚悟を上回っただけです」

 

 

リョウ『それでも!それでも……』

 

 

リョウの目には涙が流れていた。

 

 

イエガー「ドントクライ……まだ戦いは終わっていません。ユーに斬られるのなら本望です……」

 

 

リョウはイエガーに銀雪花を向ける。

 

 

イエガー「それでオーケー……グッバイ。マイフレンド……「「イエガー様を殺さないで!!」」

 

 

突然声が響いた。

 

 

フレン「君たちは……?」

 

 

声のした方を向くとそこには傷だらけのゴーシュとドロワットがいた。

 

 

エステル「どうしたんです!?ボロボロじゃないですか?」

 

 

イエガー「ゴーシュ、ドロワット、なぜユーたちがここに?ダフィエルに捕まっていたのでは……?」

 

 

リョウ『なんだと!?』

 

 

ゴーシュ「命からがら逃げてきたんです!」

 

 

ドロワット「お願い!イエガー様を許して!全部あたしたちのせいなの!」

 

 

レイヴン「どういうこと?」

 

 

ゴーシュ「イエガー様は脅されていたんです。ハリーに偽情報を渡してベリウス、ドンを始末しろ。さもなくば部下たちの命はない」

 

 

ドロワット「ってダフィエルが。あたしたちを人質にして」

 

 

リョウ『じゃあ、いままでお前たちがいなかったのは』

 

 

イエガー「ダフィエルの命令に従うようにゴーシュとドロワットはダフィエルに連れ去られたのです。

そして、解放する条件はユーたちを殺すか、ミーが死ぬかのどちらかでした」

 

 

ジュディス「それであなたはここに?」

 

 

イエガー「イエス……」

 

 

カロル「そんな……そんなことって」

 

 

「いたぞ!こっちだ!」

 

 

「捕まえろ!」

 

 

ゴーシュとドロワットの後ろの方から親衛隊の声がした。

 

 

ゴーシュ「もう追ってが!」

 

 

リョウ『ふたりともこっちに来い!!』

 

 

ゴーシュとドロワットはユーリたちのところへ避難する。

そして追ってきた親衛隊ふたりがやってきた。

 

 

親衛隊A「くそ!人質が……」

 

 

親衛隊B「どうするんだ……?このままじゃダフィエルに……「私がどうかしたのか?」「ひぃっ」

 

 

更に奥の方からダフィエルが現れた。

 

 

ダフィエル「どいつもこいつも使えないゴミだ……」

 

 

親衛隊A「お、お許しを……」

 

 

ダフィエル「死ね」

 

 

ザシュッ

 

 

親衛隊A「ぎゃあっ」

 

 

ダフィエル「貴様のようなゴミは親衛隊に必要ない」

 

 

ザシュッ

 

 

親衛隊B「ぐわぁっ」

 

 

ダフィエルは親衛隊のふたりを切り捨てた。

 

 

エステル「ひどい……」

 

 

リョウ『エステル……ゴーシュとドロワット、イエガーの傷を治してくれねえか?』

 

 

エステル「え?」

 

 

リョウ『頼む……』

 

 

リョウは頭を下げる。

 

 

エステル「分かりました」

 

 

エステルはゴーシュとドロワット、イエガーに治癒術をかける。

 

 

リョウ『俺は斬る相手を間違えた。本当に斬るべきなのはてめぇだダフィエル!!』

 

 

ダフィエル「いいだろう。アレクセイ様が手を下すまでもない。貴様らはここで全員斬滅する!!」

 

 

リョウ『みんなは手を出すな。こいつだけは……俺が斬る!!』

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第58話 激昂の戦い

リョウ『きやがれダフィエル!俺はてめえを許さねえ!』

 

 

ダフィエル「斬滅してくれる!」

 

 

リョウの銀雪花とダフィエルの刀がぶつかり合う。

ダフィエルがリョウから距離を取り、姿が消えた。

 

 

リョウ『同じ手が何度も通用すると思うな!』

 

 

突然現れた刃を受け止める。

そしてダフィエルの腹部に蹴りを入れた。

 

 

ダフィエル「ぐっ」

 

 

リョウ『鬼炎連斬!!』

 

 

ダフィエルがひるんだ隙に炎の連続斬りを叩き込む。

 

 

リョウ『まだまだ!』

 

 

ダフィエル「調子に乗るな!!」

 

 

追撃をしようとしたリョウをダフィエルはオーバーリミッツで吹き飛ばす。

 

 

ダフィエル「これで終わりだ……」

 

 

ダフィエルの刀に黒いオーラが纏う。

リョウに接近し

 

 

ダフィエル「私の前から消え去れ!凶王斬滅刃!!」

 

 

黒い斬撃とかまいたちがリョウを切り刻む。

 

 

リョウ『ぐああああああああ!!』

 

 

リョウはその場に倒れる。

 

 

ダフィエル「終わったか……『まだだ……』「なに!?」

 

 

ボロボロになりながらもリョウは立ち上がった。

 

 

リョウ『そんな攻撃で俺が死ぬと思ったか?』

 

 

ダフィエル「ならばとどめをさすまでだ!」

 

 

ダフィエルの刀がリョウの腹部を貫いた……はずだった。

 

 

ダフィエル(なんだ?貫いた感触がない!?)

 

 

刀を引き抜くと、リョウの体が光はじめた。

そしてみるみるうちに体中の傷が塞がっていく。

 

 

ダフィエル「なんだそれは!?」

 

 

リョウ『光子化(フォトンか)、銀河の皇の能力だ』

 

 

ダフィエル「それがどうした!?」

 

 

ダフィエルは何度もリョウを斬るが、リョウには傷ひとつつかない。

 

 

リョウ『今の俺は光そのものだ。光を斬ることなどできない!』

 

 

ダフィエル「ぐっ」

 

 

リョウ『銀河刃・斬光!!』

 

 

リョウは銀雪花を振り下ろす。

ダフィエルは刀で受け止めるが……

 

 

バキィィン

 

 

刀は折れ、銀雪花はダフィエルを切り裂いた。

 

 

ダフィエル「バカな……この私が……アレクセイ様……申し訳……ありま……」

 

 

ダフィエルは倒れ、息絶えた。

 

 

リョウ『勝った……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仲間たちがリョウに駆け寄る。

 

 

リタ「リョウ!大丈夫なの?」

 

 

リョウ『ああ。傷ひとつないぜ』

 

 

ユーリ「ったく。ひやひやさせやがって」

 

 

リョウ『そうだ!イエガーとゴーシュとドロワットは?』

 

 

エステル「もう大丈夫です」

 

 

リョウ『そうか……よかった……』

 

 

ゴーシュ「ありがとうリョウさん」

 

 

ドロワット「あたしたちを信じてくれて」

 

 

イエガー「ゴーシュ、ドロワット、無事でよかったです」

 

 

リョウ『ダフィエルはもういない。だからもう大丈夫だ。あとは俺たちに任せろ』

 

 

イエガー「分かりました。グットラックですリョウ」

 

 

イエガーとゴーシュとドロワットは去っていった。

 

 

レイヴン「イエガーの後始末はこれで終わりってことにしとくか」

 

 

カロル「うん。ドンも分かってくれるよ。きっと」

 

 

ジュディス「黒幕はまだ残っているわ」

 

 

フレン「あとはアレクセイだけだ」

 

 

リョウ『アレクセイの野郎をぶっ飛ばしにいくぞ!!』

 

 

パティ「おおっなのじゃ」

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第59話 黒幕に引導を

アレクセイのもとへ急ぐリョウたち。途中でパティが何かを見つける。

 

 

パティ「これは……」

 

 

リョウ『なんだそれ?』

 

 

パティ「これは……うちが探していたお宝、麗しの星(マリス・ステラ)なのじゃ」

 

 

リョウ『よかったじゃねえか』

 

 

パティ「うむ。感動するのは後でもできる。まずはアレクセイが先なのじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな扉の前まで来たリョウたち。その時、後方から声が聞こえてきた。

 

 

ソディア「隊長、無事ですか!」

 

 

フレン「ソディア!ウィチル!ザウデの攻撃は大丈夫だったのか」

 

 

ソディア「船は離れた位置に泊めました。我々は先発隊です。後続は少数に分かれて上陸を進めています」

 

 

カロル「用心してるんだね」

 

 

レイヴン「賢明よ。下手に大勢で近づいて、気付かれたら一巻の終わりってね」

 

 

ソディア「ここからは我々の務めだ。お前たちは下がっていろ」

 

 

リョウ『それは無理な話だ。アレクセイの野郎をぶっ飛ばさないと俺の腹の虫が収まらねえからな』

 

 

リタ「ここは協力した方がいいに決まってると思うんだけど」

 

 

パティ「そうじゃ、アレクセイやっつけにきたのは、みんな同じなのじゃ」

 

 

フレン「彼女の言うとおりだ。我々のすべきはアレクセイの打倒だ」

 

 

ユーリ「それと世界を救うこと、だろ」

 

 

フレン「ああ」

 

 

ユーリ「よし、それじゃ仲良く殴りこむとすっか!」

 

 

 

 

 

 

扉を開けるとアレクセイの姿があった。

 

 

アレクセイ「揃い踏みだな。はるばるこんな海の底へようこそ」

 

 

エステル「そこまでです、アレクセイ。これ以上、罪を重ねないで」

 

 

アレクセイ「これはエステりーぜ姫ご機嫌麗しゅう。その分ではイエガーは役に立たなかったようだな」

 

 

リョウ『イエガーなら人質にされていた部下と一緒に避難したぜ』

 

 

アレクセイ「なるほど。役に立たなかったのはダフィエルの方か」

 

 

リョウ『あいつは俺が殺した。あまりにも許せなかったからな』

 

 

アレクセイ「そうか」

 

 

エステル「そうか……って、彼はあなたの大事な部下じゃなかったんですか?」

 

 

アレクセイ「私に大切な部下などいない、ダフィエルも私の道具にすぎないのだよ」

 

 

リョウ『レイヴンもイエガーも道具みたいに扱いやがって……俺はてめぇを許さねぇ!!』

 

 

アレクセイ「悪いがこれで失礼する。なにぶん忙しいものでね」

 

 

アレクセイのいる場所が上昇しはじめた。

 

 

リョウ『逃がすか!』

 

 

リョウたちは上昇する巨大エレベーターでアレクセイと対峙する。

 

 

アレクセイ「まだ邪魔をするか銀河の皇よ」

 

 

リョウ『俺はてめぇを許さねぇだけだ!!』

 

 

アレクセイ「新世界の生贄にしてくれる。……来い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユーリ「蒼破刃!」

 

 

フレン「魔神剣!」

 

 

リョウ『魔神剣・双牙!』

 

 

三人の衝撃波がアレクセイに向かう。

 

 

アレクセイ「ぬうん!!」

 

 

アレクセイの剣から出た衝撃破で三人の衝撃波はかき消され、リョウたちは吹き飛ばされてしまう。

 

 

ジュディス「なんて威力なの……」

 

 

パティ「これじゃ近づけないのじゃ」

 

 

アレクセイ「どうした?もう終わりか?」

 

 

リョウ『みんな防御しててくれ。うおおおおお!!』

 

 

リョウがアレクセイに突っ込んでいく。

 

 

アレクセイ「私には近づけん!!ぬうん!!」

 

 

また衝撃波を飛ばすアレクセイ。しかし、リョウは吹き飛ばなかった。

 

 

アレクセイ「なに!?」

 

 

リョウ『光子化した俺には無駄だ!閃光拳!!』

 

 

高速のボディーブローをアレクセイの腹部にいれる。

 

 

アレクセイ「がはぁっ」

 

 

リョウ『友だちの運命を弄びやがって』

 

 

バキィ

 

 

アレクセイ「ぐふっ」

 

 

リョウはアレクセイの右頬に

 

 

リョウ『これはレイヴンの分!』

 

 

バキィ

 

 

次は左頬に

 

 

リョウ『そしてこれが……イエガーの分だぁぁぁぁ!!』

 

 

ドコォ

 

 

最後に顔面に正拳を入れた。

 

 

アレクセイ「ぐあっ」

 

 

アレクセイは膝をつく。その頃にはエレベーターはすでに頂上に到着していた。

 

 

アレクセイ「ぬ……う……おの……れ」

 

 

リョウ『これで終わりだ。アレクセイ』

 

 

エステル「ここは……ザウデの頂上?」

 

 

リョウたちの頭上にはとてつもない大きさの結晶が浮かんでいる。

 

 

ジュディス「あれは魔核?なんて大きい」

 

 

不意に、アレクセイのそばにモニターが出現する。

 

 

アレクセイ「く、くく……」

 

 

リョウ『てめぇ、なにを!?』

 

 

アレクセイ「ザウデの威力……共に見届けようではないか」

 

 

ユーリ「やめろ!!」

 

 

剣を構え不敵に笑うアレクセイに、ユーリは駆けていく。

 

 

アレクセイ「馬鹿め」

 

 

アレクセイの剣からユーリに向かって光線が放たれた。

 

 

フレン「危ない、ユーリ!!」

 

 

フレンはユーリを突き飛ばし、光線をその身に受けた。

 

 

フレン「うがぁ!!」

 

 

ユーリ「フレン!」

 

 

ソディア「隊長!!」

 

 

剣から光を放つアレクセイにユーリは宙の戒典の力で対抗し、斬りかかる。

アレクセイはそれを受け止めるが、負荷に耐えきれなくなったのか、アレクセイの剣は爆発し、両者が吹き飛ばされた。

 

 

アレクセイ「やはり、その剣……最後の最後で仇になったか……だが、見るがいい」

 

 

ザウデの魔核から光が立ち上がり、空に結界らしきものが見えたかと思うと、それは破れはじめ、空の裂け目から黒く禍々しいものが這い出てきた。

さらにその上には黒い球体に覆われた巨大な黒い城らしき建物が浮いていた。

 

 

アレクセイ「!?」

 

 

カロル「な、な、な……」

 

 

リタ「な、なによ、あれ!?」

 

 

パティ「どこかで……見たことあるのじゃ」

 

 

ジュディス「あれは……壁画の……」

 

 

エステル「災厄!?」

 

 

ユーリ「星喰みか!!」

 

 

リョウ『あの城の中の禍々しい気配は……魔王ディエド!!』

 

 

アレクセイ「あれがザウデの力だと!?……そんなはずは……まさか……」

 

 

レイヴン「どうなってんだ!?星喰みって、今のでそんなにエアルを使ったのかよ?」

 

 

アレクセイ「……違う。災厄と魔王はずっといたのだ、すぐそこに」

 

 

カロル「ど、どういうこと?」

 

 

ジュディス「星喰みと魔王も打ち砕かれてなどいなかったんだわ……。ただ封じられていた、遠ざけられていたにすぎなかった」

 

 

リタ「今までザウデが封じてたっていうの!?」

 

 

エステル「危ない!!」

 

 

ザウデの魔核が雷を帯びはじめ、爆発が起こる。そして魔核が落下してきた。

 

 

リョウ『みんな離れろ……リタ!!』

 

 

リタ「え?」

 

 

魔核の巨大な破片がリタに直撃しようとしていた。それを見たリョウはリタに向かって走り出し

 

 

リョウ『あぶねぇ!!』

 

 

ドンッ

 

 

リタ「きゃっ」

 

 

ガンッ

 

 

リョウ『ぐあっ……』

 

 

リタを突き飛ばし、代わりにリョウの頭部へ魔核の欠片が直撃した。

そしてそのままリョウはザウデの頂上から落下した。

 

 

リタ「リョウ?噓でしょ……リョウ――――――!!」

 

 

Next chapter



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

最終章
第60話 帰ってきた皇


リョウ『うーん……ここは?』

 

 

リョウが目を覚ますと見慣れない天井が目に入った。

 

 

リョウ〖たしか俺、ザウデから落ちて……〗

 

 

エステル「リョウ!目が覚めたんですね!」

 

 

突然エステルの声が隣から聞こえた。

 

 

リョウ『エ、エステル?なんで?ていうかここは?』

 

 

ユーリ「ここは下町のオレの部屋だ」

 

 

リョウ『ユーリの部屋?』

 

 

ユーリ「実はオレもザウデから落ちてな」

 

 

リョウ『そうなのか?』

 

 

ユーリ「でもデュークがオレとリョウを助けてくれたんだ」

 

 

リョウ『デュークが!?』

 

 

ユーリ「んで、ラピードがエステルを連れてきておまえを治療してたんだ」

 

 

リョウ『なるほど。ありがとうエステル』

 

 

エステル「どういたしまして」

 

 

リョウはベッドから起き上がろうとするが、頭部に痛みが走った。

 

 

エステル「まだ安静にしてください」

 

 

リョウ『いてて……そうだな……あれ?』

 

 

ユーリ「どうした?」

 

 

リョウ『デューク……デュークはどこにいるんだ!?』

 

 

ユーリ「デュークならもうどっか行っちまった」

 

 

リョウ『思い出した……デュークは……』

 

 

エステル「なにを思い出したんです?」

 

 

リョウ『デュークは俺の友だちだ……』

 

 

!?

 

 

ユーリとエステルは驚愕した。

 

 

リョウ『それだけじゃない……思い出した!全部!全部思い出した!!』

 

 

ユーリ「おまえ、記憶が戻ったのか?」

 

 

リョウ『ああ!』

 

 

エステル「聞きたいですけど、みんなが集まった時にしましょう」

 

 

リョウ『そうだな。話すと長いし』

 

 

エステル「でもよかったです。ユーリもリョウも無事で、みんなに伝えてあげたい。特にリタには」

 

 

リョウ『リタがどうかしたのか?』

 

 

エステル「リタはリョウのことをとても心配していました」

 

 

リョウ『そうか……早く安心させないとな』

 

 

ユーリ「今日はもう遅いから明日出発しよう」

 

 

エステル「そうですね。しっかり休んでください」

 

 

リョウ『分かった』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。三人は外を出て空を見上げる。

 

 

エステル「星喰み……なんなんでしょう、あれ」

 

 

ユーリ「さあな。けど災厄ってくらいだ。ロクなもんじゃねえのは確かだろう」

 

 

リョウ『でもそれ以上に厄介なのは魔王ディエドの方だ』

 

 

エステル「星喰みを操る……」

 

 

リョウ『そうだ。災厄を操るなんて厄介にも程があるぜ』

 

 

ユーリ「でもなんとかしねえと普通の生活は送れそうにねえな」

 

 

エステル「そうですね」

 

 

「ユーリ~~~~!」

 

 

突然ユーリを呼ぶ声が聞こえてきた。

 

 

ユーリ「ん?あれはパティとジュディス?」

 

 

パティとジュディスが近づいてきた。

 

 

パティ「ユーリもリョウも生きとったのじゃ!よかったのじゃ!」

 

 

ジュディス「エステル。迎えに来たわ」

 

 

エステル「リタは一緒じゃないのです?」

 

 

ジュディス「リタはアスピオで調べたことをまとめているわ。リョウ、早くリタに顔を見せてあげて」

 

 

リョウ『ああ。じゃあ、行こうぜ』

 

 

リョウたちはバウルに乗ってアスピオに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスピオ リタの小屋の前

 

 

 

リョウ『……』

 

 

ユーリ「中に入らないのか?」

 

 

リョウ『どんな顔して会えばいいのか……』

 

 

ジュディス「普通でいいと思うわ」

 

 

パティ「細かいことは考えなくていいのじゃ」

 

 

エステル「早く顔を見せてあげてください」

 

 

リョウ『わ、わかった』

 

 

リタの小屋に入るリョウたち。リタは本棚の前で考え込んでいた。

 

 

リョウ『リ、リタ』

 

 

リタ「……え?」

 

 

リタはリョウの方を見る。

 

 

リョウ『そ、その……ただいま』

 

 

リタ「……リョウなの?」

 

 

リョウ『ああ』

 

 

リタの目には涙が流れていた。リタはリョウに抱きついてきた。

 

 

リタ「リョウ!本当にリョウなの?」

 

 

リョウ『本当のホントだ』

 

 

リョウもリタを抱きしめる。

 

 

リョウ『心配かけたな』

 

 

リタ「心配したんだから……もしこのまま帰ってこなかったらって思ったら……」

 

 

リョウの胸の中で泣きじゃくるリタ。お互いの存在を確かめ合うように強く抱きしめる。

しばらくして

 

 

リョウ『なあリタそろそろ……//////』

 

 

リタ「もうちょっとこのままでいさせなさいよ////」

 

 

リョウ『そうしたいのはやまやまだけど……/////』

 

 

リタ「なによ/////」

 

 

リョウ『みんなが見てるから/////』

 

 

リタ「え?」

 

 

今になってユーリたちの存在に気づいたリタ。

素早くリョウから離れて

 

 

リタ「あ、あんたたちいつからそこに?////」

 

 

ユーリ「最初からいたんだけど」

 

 

エステル「よかったですねリタ」

 

 

ジュディス「本当に大好きなのねリョウのこと」

 

 

パティ「アツアツなのじゃ」

 

 

リタ「な、なんで早く言わないのよバカリョウ!!////」

 

 

本でリョウの頭を叩くリタ

 

 

リョウ『いて!いて!やめてくれ!まだ頭が痛いんだ!』

 

 

リタ「うるさい!バカバカ!」

 

 

エステル「ど、どうします?」

 

 

ユーリ「とりあえず、リタが落ち着くまで待とう」

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第61話 これからのこと

リタ「このバカバカ!」

 

 

リョウ『痛い!痛いって!』

 

 

まだ本でリョウを叩いているリタ

 

 

エステル「あの~リタ?そろそろ……」

 

 

リタ「はっ!」

 

 

エステルの声で我に返ったリタ

 

 

リタ「ご、ごめんエステル。実はエアルを抑制する方法が見つかったかもしれないの」

 

 

エステル「本当!?すごいです、リタ!」

 

 

リタ「それはとても危険な方法なの、でもあたしを信じて力を貸して」

 

 

エステル「わかりました。わたしに出来ることなら何でもいってください」

 

 

ジュディス「具体的になにをするの?」

 

 

リタ「まだ完全な方法までできあがってないの。もうちょっと時間をちょうだい」

 

 

ユーリ「んじゃあ、リタが考えている間にオレたちはカロルたち迎えにいくか」

 

 

エステル「はい!」

 

 

リタ「あたしも行く。資料なら全部頭に入ってるし、考えまとまったら説明するわ」

 

 

リョウ『リタも行くのか、残念だな……』

 

 

リタ「どういうことよ?」

 

 

リョウはリタの耳元で小さく

 

 

リョウ『俺はリタとふたりきりでイチャイチャしたかったんだけど』

 

 

とささやいた。

 

 

リタ「な、何言ってんのよこのバカ!/////」

 

 

また本でリョウを叩きはじめたリタ

 

 

リョウ『痛いってリタ!俺が悪かった!』

 

 

ユーリ「なに言ったんだあいつ?」

 

 

パティ「と、とりあえず出発なのじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ダングレストに到着し、ギルドユニオン本部を目指していると

 

 

ハリー「どうせオレなんか!」

 

 

リョウたちの目の前を、ハリーが叫びながら通り過ぎた。

 

 

リョウ『あれは……ドンの孫のハリーか?』

 

 

「あーっ!!」

 

 

大きな声がしたので振り向くとカロルとレイヴンがいた。

 

 

カロル「ユーリ!!リョウ!!」

 

 

カロルがリョウたちに駆け寄る。

 

 

カロル「……ひどいよ。無事だったらひと言ぐらい……」

 

 

リョウ『悪いな心配かけたみたいで』

 

 

レイヴン「無事でよかったぜふたりとも」

 

 

ユーリ「そういえば今、ハリー見かけたけど、なにかあったのか?」

 

 

レイヴン「それがちょっとばかしうまくなくてねえ。いまユニオンは船頭不在だからねぇ」

 

 

ジュディス「中核のなるものがいないとまとまらない……というワケ?」

 

 

リタ「中核……!そうか!」

 

 

カロル「な、なになに?」

 

 

リタ「分かったわ。聖核よ。あれ使えばうまくいくわ!」

 

 

レイヴン「何の話?リタっち?」

 

 

エステル「リタがエアルを抑制する方法を見つけたんです」

 

 

カロル「ほんとに!?すごい!」

 

 

リタ「ドンに渡した聖核があれば……」

 

 

ジュディス「……ベリウスの聖核、蒼穹の水玉(キュアノシエル)ね」

 

 

リョウ『蒼穹の水玉はどうなったんだ?』

 

 

レイヴン「さあなぁ……」

 

 

パティ「ハリーなら知っとるんじゃないのか?」

 

 

レイヴン「ちょうどいいわ。やっこさん連れ戻すとこだったんだ。ユニオンの本部行っててよ」

 

 

ユーリ「分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニオン本部

 

 

 

リョウ『なんか騒がしいな』

 

 

カロル「うん……ユニオンは今、バラバラだから……」

 

 

レイヴン「誰もドンの後釜に座りたくないのよ」

 

 

レイヴンがハリーを連れて戻ってきた。

 

 

レイヴン「なんせあのドンの後だからねえ。ほれ、しゃんとしなって」

 

 

ハリーが前に姿を現す。

 

 

ハリー「オレはじいさんを死に追いやった張本人だ。そんなやつがドンみたいになれ

る訳がねえだろ」

 

 

レイヴン「誰もあのじいさんみたくなれなんていってないでしょうが。跡目会議くらいちゃんと出とけって言ってんの」

 

 

リタ「ねえあんた、ドンの聖核を譲ってほしいんだけど」

 

 

リョウ『いきなりだな……』

 

 

ハリー「あれはドンの跡目継いだやつのもんだ。よそ者にはやれねえよ」

 

 

リタ「なによそれ。それじゃいつその跡目が決まるのよ」

 

 

ハリー「知らねえよ。オレに聞かないでくれ」

 

 

パティ「なら誰に聞けば、教えてくれるかの?」

 

 

ユーリ「ったくしょうがねえな。ユニオンがしっかりしなきゃ誰がこの街を守るってんだよ」

 

 

ユーリの言葉に、ユニオン幹部のひとりが名乗り出たが、他の幹部が突っかかってきて言い争いを始めた。それを見たリョウは

 

 

リョウ『仲間内で争ってどうすんだ?自滅する前にドンの木彫り作ってその椅子に座らせた方がましだな』

 

 

ユーリ「同感だな」

 

 

幹部A「なんだと……」

 

 

リョウたちに緊張感が走る。するとカロルが間に割って入り

 

 

カロル「仲間に助けてもらえばいい。仲間を守れば応えてくれる。ドンが最後にボクに言ったんだ」

 

 

ユーリ「カロル……」

 

 

幹部A「なんだぁ?このガキ」

 

 

リョウ『いいから黙って聞いてろ』

 

 

カロル「ボクはひとりじゃなんにもできないけど仲間がいてくれる。仲間が支えてくれるからなんだってできる。今だってちゃんと支えてくれてる。

なんでユニオンがそれじゃ駄目なのさ!?」

 

 

レイヴン「少年の言うとおり、ギルドってのはお互いに助け合うのが身上だったよなあ。無理に偉大な頭を載かなくても、やりようはあるんでないの?」

 

 

ユーリ「これからはてめぇらの足で歩けとドンは言った。歩き方くらいわかんだろ?それこそガキじゃねぇんだ」

 

 

幹部A「……」

 

 

幹部B「簡単に言うが、しかし……」

 

 

ユーリ「行こうぜ。これ以上、ここにいてもなにもねえ」

 

 

リョウ『時間を無駄にするだけだしな』

 

 

リタ「え、ちょっと!」

 

 

リョウたちはユニオン本部を後にした。

 

 

リタ「……どうすんのよ、聖核は!」

 

 

ユーリ「あんな連中に付き合っている暇あったら他の手考えた方がマシだ」

 

 

リタ「他にって、そんな簡単なもんじゃないでしょうに……」

 

 

リョウ『大丈夫だってリタ。俺とおまえが力を合わせればなんか思いつく……たぶん』

 

 

リタ「たぶんって……」

 

 

「おい」

 

 

声がした方を向くとハリーが立っていた。

 

 

リョウ『ハリーじゃねえか。何か用か?』

 

 

ハリー「……ほらよ」

 

 

ハリーは蒼穹の水玉をユーリに投げ渡す。

 

 

ユーリ「こいつは……くれんのか?」

 

 

ハリー「馬鹿言え、こいつは盗まれるんだ」

 

 

カロル「え?」

 

 

ユーリ「……恩に着るぜ」

 

 

ハリー「他の連中に気取られる前に、さっさと行っちまいな」

 

 

レイヴン「どういう風の吹き回しよ?」

 

 

ハリー「さあな。けど、子どもに説教されっぱなしってのも、なんかシャクだからな」

 

 

そう言うとハリーはユニオン本部へ帰って行った。

 

 

レイヴン「あいつも少しは変わったかね」

 

 

ジュディス「これで聖核も手に入った訳だけど、次はどうするのかしら?」

 

 

リタ「うん、ゾフェル氷刃海に行くわ。活性化していないエアルクレーネを使うの」

 

 

リョウ『氷刃海へ行く前に寄って欲しいところがあるんだけど』

 

 

ユーリ「どこに行くんだ?」

 

 

リョウ『俺とリタが初めて会った森、あそこで俺の過去を話すよ』

 

 

パティ「ということは記憶が戻ったのか?」

 

 

カロル「そうなの!?」

 

 

リョウ『ああ、みんなが集まってから話そうと思ってたんだ』

 

 

遂に明かされるリョウの過去

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第62話 過去を語る皇

アスピオの近くの森

 

 

 

リョウ『えっと……たしかこの辺だったよな』

 

 

リョウとリタが初めて出会った森を歩くリョウたち。

 

 

リョウ『お!あったあった』

 

 

リョウが見つけたのはカプセル型の魔導器の様なもの。

 

 

レイヴン「なにこれ?」

 

 

ジュディス「魔導器……なの?」

 

 

リタ「この魔導器の中にリョウが入っていたの」

 

 

パティ「人間を入れる魔導器なのか!?」

 

 

リョウ『そうだ。この魔導器のことは後々話すとして。まずは出生から話すか。俺が生まれたのは今から28年前のとある小さな村で生まれたんだ』

 

 

ユーリ「おまえ28歳なのか!?」

 

 

リョウ『いや、年齢は18歳だ』

 

 

カロル「で、でもそれじゃおかしくない?」

 

 

リョウ『確かに言っていることがおかしいと思うが、それも後々分かる。俺は小さい頃から村の住人たちから気味悪がられていたんだ』

 

 

エステル「どうしてです?」

 

 

リョウ『武醒魔導器を使わずに技などを使っていたからだろうな。銀河の皇のことは両親だけ知っていて、他の住人には全く教えていなかった』

 

 

エステル「辛そうです……」

 

 

リョウ『いや、そうでもなかったんだ。唯一の理解者である両親がいてくれただけで俺はよかった。それで幸せだった。でも、俺が15歳の頃、大きな災害が起きたんだ……両親も住人もみんな死んじまった。俺だけが生き残った』

 

 

リタ「……」

 

 

リョウ『居場所を無くした俺は当てもなく旅に出た。今思えば死に場所を探してたのかもな……でも、そんなある日、俺はある始祖の隷長とある人と出会ったんだ』

 

 

カロル「だ、誰なの?」

 

 

リョウ『始祖の隷長の長エルシフル、みんなも知っているデュークだ』

 

 

!?

 

 

リョウ『俺はそのふたりに出会って、すぐに友だちになったんだ。そして三人で世界中を旅して回った。俺は生きる力を取り戻した。

その3年後、つまり今から10年前、人魔戦争が起きた。結果は人間の勝利で終わった。でもそれには理由があったんだ』

 

 

レイヴン「理由?」

 

 

リョウ『人間との共存を求めていたエルシフルは人間と協力したんだ。そして、俺とデュークも一緒に戦って勝利した』

 

 

レイヴン「マジかよ……そんな話知らなかったぜ、デュークが人魔戦争の英雄ってことは知ってたけど」

 

 

リョウ『俺は戦争が終わった直後、ある情報を耳にしたんだ。帝国……いや、正確にはアレクセイがエルシフルの命を狙っていると』

 

 

ユーリ「アレクセイが?」

 

 

リョウ『その頃からもうすでにアレクセイの計画は始まっていたんだろう。いずれ邪魔になる始祖の隷長を排除したかったんだろな。

俺はそれを阻止するために急いでエルシフルの元へ向かおうとした……でもその前にアレクセイの部下ダフィエルに足止めされて俺は戦った……でも俺は致命傷を負わされた。それでも俺は何としてもエルシフルの元へ行くため傷だらけになりながらも必死に向かった。この森に着いた頃には俺の命は尽きかけていた。でもやっとこの森でエルシフルに会えたんだ。

エルシフルは傷だらけの俺を見て偶然ここにあったカプセル型の魔導器……封印魔導器(シアルブラスティア)に俺を入れて治療しようとした』

 

 

リタ「封印魔導器……?」

 

 

リョウ『封印魔導器は入れた人間の傷を治療し、老化を止めることができるんだ。でも長時間入っていると脳に悪影響を及ぼす。エルシフルはそれで俺を匿い、脳に悪影響が起きる前に俺を封印魔導器から出すことを約束したんだ。

でも気がついた時にはリタに出してもらって、10年の月日が経っていて、記憶を失っていた……』

 

 

エステル「じゃあ、エルシフルは……」

 

 

リョウ『殺されたんだろう……』

 

 

カロル「そんな……」

 

 

リョウ『とまあこれで俺の話は終わり。氷刃海へ行こうぜ』

 

 

リタ「それは明日にして今日はもうアスピオで休みましょ」

 

 

リョウ『え?でも』

 

 

リタ「リョウも話して疲れただろうし、これはもう決定だから!」

 

 

リョウ『わ、分かった』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスピオ リタの小屋

 

 

 

氷刃海へ行くのを明日にしたリョウたちはアスピオで休むことにした。

ユーリたちは宿で、リョウとリタはリタの小屋で休んでいる。

 

 

リョウ『そろそろなんか作って食べるか』

 

 

リョウが立ち上がり台所へ向かおうとした時

 

 

リタ「ちょっとあたしの隣に来て座って」

 

 

リョウ『?……ああ』

 

 

リタにそう呼び止められたので、リタの隣に座る。

 

 

リョウ『どうしたんだ?』

 

 

リタ「無理、しなくていいのよ」

 

 

リョウ『なんのことだ?』

 

 

リタ「泣きたいんでしょ?」

 

 

リョウ『そ、そんなこと』

 

 

そう言うがリョウの目からは涙が流れていた。

 

 

リョウ『あれ?な、なんで……』

 

 

リタ「友だちが自分を匿って死んだら、泣きたくなるわよ」

 

 

リョウ『エルシフル……うう……ぐす』

 

 

ギュッ

 

 

リタはリョウを抱きしめる。

 

 

リタ「泣きたい時は思いっきり泣けばいいのよ。あんたの悲しみをあたしにぶつけて」

 

 

リョウ『リタ……う、う、うわぁぁぁぁぁぁぁ』

 

 

しばらくの間リョウはリタの胸の中で泣き続けた。

 

 

リョウ『ありがとうリタ、スッキリした』

 

 

リタ「それならよかった」

 

 

リョウ『よし!明日に備えて、飯食って寝るか!』

 

 

リタ「そうしましょ」

 

 

リョウ『寝る時、今度は俺がリタを抱きしめて寝るからな。お礼の意味も込めて/////』

 

 

リタ「ば、バカ……別にいいけど/////」

 

 

その夜、予告通りリョウはリタを抱きしめながら一緒に寝た。

 

 

To be continued




オリジナル用語集


銀河の皇(おう) 銀河刀・銀雪花を使うことができる人間。また武醒魔導器を使わずとも技を使うことができる。


光子化(フォトンか) 銀河の皇が使うことができる能力。術以外の攻撃を受けなくなる。また光を吸収して傷を癒すこともできる。


魔王ディエド 星喰みを操ることができる唯一の存在であり邪悪の化身。約1000年前に銀河の皇によって封印された。


銀河刀・銀雪花(ぎんせつか) 銀河の皇の血を引く者にのみ使うことができる白い太刀。魔王ディエドを斬ることができる唯一の武器。


封印魔導器(シアルブラスティア) 人間を入れることができる特殊な魔導器。入れた人間の傷を治癒し、老化を止めることができるが、長時間入っていると、脳に悪影響を及ぼす。いかなることをしても壊すことはできず、魔核がなければ人間を入れることも出すことも不可能。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第63話 ウンディーネ

ゾフェル氷刃海 エアルクレーネ

 

 

 

ふたたびゾフェル氷刃海へ訪れたリョウたち。

 

 

レイヴン「寒い寒い」

 

 

ユーリ「んで、エアルクレーネでどうしようってんだ?」

 

 

リタ「エステルの力と聖核を使って、エアルでも物質でもないマナっていうのを作るの」

 

 

エステル「マナ……」

 

 

リタ「でもその方法は危険なの……」

 

 

エステル「それでもわたしはやります!」

 

 

リョウ『俺たちに何か手伝えることはあるか?』

 

 

リタ「あるけど……危険なのよ?」

 

 

カロル「ボクたちだけ見てるなんてできないよ!」

 

 

パティ「水臭いのじゃリタ姐!」

 

 

リタ「わかった……じゃあみんなあたしの言う通りにして」

 

 

リタは聖核をエアルクレーネの近くに設置し、魔法陣を展開する。

 

 

リタ「あたしの術式に同調して。そう……いいわよ」

 

 

リョウ『思ってたよりきついなこれは……』

 

 

リタ「もう少しよ……がんばって」

 

 

不意に聖核が閃光を放ち、エステルの身体が光りはじめる。

 

 

エステル「きゃあ!?」

 

 

ユーリ「なんだ!?」

 

 

リタ「聖核を形作る術式!?勝手に組み上がって再構成してる……?」

 

 

聖核の周囲に水流が発生し、その場に何者かが現れる。

 

 

「わらわは……」

 

 

ジュディス「その声……ベリウス!?」

 

 

「ジュディスか。ベリウス、そうわらわ……いや違う。かつてベリウスであった。しかしもはや違う」

 

 

リタ「まさか、聖核に宿っていたベリウスの意思が……?すごい……」

 

 

「すべての水がわらわに従うのが分かる。わらわは見ずを統べる者」

 

 

レイヴン「なんかわからんけど、これ成功なの?」

 

 

リタ「せ、成功っていうかそれ以上の結果……まさか意思を宿すなんて」

 

 

「人間よ、わらわは何であろう?もはや始祖の隷長でもなければベリウスでもないわらわは。そなたらがわらわを生み出した。どうか名前を与えて欲しい」

 

 

ユーリ「物質の精髄を司る存在……精霊なんてどうだ?」

 

 

「して我が名は」

 

 

カロル「ざぶざぶ水色クイー……」

 

 

…………

 

 

カロルはリョウたちの反応を見てうつむく。

 

 

エステル「古代の言葉で水を統べる者……ウンディーネ、なんてどうです?」

 

 

ウンディーネ「ウンディーネ……ではわらわは今より精霊ウンディーネ」

 

 

リョウ『ウンディーネ!俺たちは世界のエアルを抑えたい。力を貸してほしい』

 

 

ウンディーネ「承知しよう、だがわらわだけでは足りぬ。他の属性を統べる者もそろわねば十分とはいえぬ」

 

 

リタ「物質の基本元素、地水火風……最低でもあと三体か……」

 

 

レイヴン「それってやっぱり始祖の隷長をなんとかするしかないってこと?」

 

 

パティ「素直に精霊になってくれるといいんじゃがの」

 

 

ジュディス「もう存在している始祖の隷長も数少ないわ」

 

 

ユーリ「ウンディーネ心当たりはないのか?」

 

 

ウンディーネ「輝ける森エレアルーミン、世界の根たるレレウィーゼ。場所はそなたの友バウルが知っておろう」

 

 

ユーリの問いに答えると、ウンディーネは姿を消した。

 

 

カロル「消えちゃった!」

 

 

エステル「いえ、……います。感じます」

 

 

リタ「ウンディーネがエステルの力を制御してくれてる……」

 

 

リョウ『エステルは自由になったんだな』

 

 

リタ「ええ……ええ!」

 

 

ユーリ「エステル。よかったな」

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第64話 襲い来る星喰み

リョウたちが氷刃海を抜けるあたりで

 

 

ゾクッ

 

 

リョウは突然悪寒を感じ、立ち止まった。

 

 

リタ「どうしたの?」

 

 

リョウ『なんか今寒気が……』

 

 

レイヴン「そりゃあここは氷刃海、寒いのなんて当たり前。ああ寒い」

 

 

リョウ『そういう寒さじゃなくて、なんか嫌な寒さなんだ……』

 

 

ジュディス「風邪でもひいたのかしら?」

 

 

ドォォォォォン

 

 

突然轟音が鳴り響いた。

 

 

カロル「な、なに、今の!?」

 

 

パティ「あの方角は……」

 

 

ユーリ「ザウデの方だな」

 

 

空は瞬く間に黒い禍々しい物体が覆い、無数の星喰みの分体が現れた。

 

 

リタ「星喰みから守る結界……ザウデになにがあったの!?」

 

 

リョウ『ディエドだ……』

 

 

リタ「え?」

 

 

リョウ『ディエドがザウデを破壊したんだ……』

 

 

エステル「分かるんです?」

 

 

リョウ『俺が銀河の皇だからか分かるんだ。さっきの寒気はディエドのものだったんだ』

 

 

ジュディス「星喰みを操る魔王……」

 

 

カロル「星喰みを操ってなにをするつもりなの?」

 

 

リョウ『俺が小さい頃両親から聞いた話じゃ、奴はこの世界を支配しようとしたらしい』

 

 

パティ「その最初の一歩が始まったのか?」

 

 

リョウ『そうかもな。まずは星喰みをなんとかしないと』

 

 

ユーリ「なあリタ、星喰みはエアルから生まれたってデュークが言ってたんだが」

 

 

リタ「え?」

 

 

ユーリ「精霊はエアルを物質に変えるってんなら。もし十分な精霊がいたら星喰みをなんとかできないか?」

 

 

リタ「分からない。でもやってみる価値はあると思う」

 

 

エステル「やりましょう、ユーリ!」

 

 

ユーリ「決まりだな」

 

 

突然、ジュディスがバウルの声を聞きつける。

 

 

ジュディス「星喰みの眷属が街を襲っているらしいわ。場所はノードポリカ」

 

 

リョウ『みんな急ごう!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノードポリカに近づくと星喰みの分体を発見した。

 

 

カロル「見て!街に取り付いてる!」

 

 

リョウ『前にコゴール砂漠で見たやつだな』

 

 

ジュディス「前のはフェローの幻だったけど今度のは本物よ。気をつけて」

 

 

エステル「結界のエアルを食べようとしてるみたいです!」

 

 

リタ「星喰みはエアルに引き寄せられる……?」

 

 

闘技場の前でナッツが戦士の殿堂を率いて、分体の進功を食い止めている。

 

 

ナッツ「退くな!ここで食い止めるんだ!」

 

 

リョウたちが駆けつけ、星喰みの分体を撃退した。

 

 

街を守り、ナッツと話し込む。

 

 

ナッツ「またあんたたちに助けられたな」

 

 

カロル「さっそくディエドが操ってノードポリカを襲わせたのかな?」

 

 

リョウ『いや、それは違うな』

 

 

別行動していたリタとリョウが戻ってきた。

 

 

エステル「リタ、リョウ、どこに行ってたんです?」

 

 

リタ「ここの結界魔導器を見てきたの。出力が上げられてたわ。だからあの化け物が引き寄せられたみたいね。通常の出力に戻させてもらったわよ」

 

 

リョウ『つまり、あれは操られて来たわけじゃないってことだ』

 

 

カロル「そうなんだ」

 

 

 

 

 

 

 

ノードポリカを去ろうとすると

 

 

レイヴン「にしても、あの化け物……。戦士の殿堂の手練れ太刀打ちできてなかったな。どうにも解せないねぇ」

 

 

カロル「ボクらは倒せたのにね」

 

 

リョウ『精霊の力なのか?』

 

 

リタ「星喰みがエアルに近いってんなら精霊の力が影響した可能性はあるわね」

 

 

ユーリ「あと三体そろえばもっと対抗できるってことか?」

 

 

リタ「エアルを抑えるだけなら、属性そろえば十分だろうけど、星喰みにはなんとも言えないわ」

 

 

レイヴン「聖核もそこら辺に転がってるもんじゃないしなあ」

 

 

エステル「始祖の隷長も、もう数少ないみたいですし……」

 

 

ユーリ「……なあ、世界に存在する魔導器って相当な数だよな」

 

 

エステル「そうですね。魔導器はわたしたちの生活に欠かせないものですから」

 

 

ユーリ「魔核って聖核のカケラでできてるってことだよな。だったら、もし精霊四体で足りないんなら、世界中の魔核を精霊に変えたらいいんじゃないか?」

 

 

リョウ『それはいい方法……と言いたいところだけど』

 

 

カロル「……もしユーリの言った方法が実現したとして……そしたら魔導器は全部使えなくなっちゃわない?」

 

 

レイヴン「魔核がなくなるわけだからそうなるわな」

 

 

エステル「どんな世の中になってしまうんでしょう?」

 

 

リョウ『結界による安全はなくなり、生活も不便になる。嫌がる奴は大勢いるだろうな』

 

 

ユーリ「それでもやらなきゃ……たとえ仲間以外の誰にも理解されなかったとしても」

 

 

リョウ『まずは四属性の精霊を生み出すことからしようぜ』

 

 

パティ「じゃの。先のことはそれからでも考えられるのじゃ」

 

 

カロル「バウルが始祖の隷長のいる場所を知ってるんだよね」

 

 

ユーリ「ああ、船に戻って聞いてみよう」

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第65話 フェローの決意

バウルに乗ったリョウたちは始祖の隷長を探し始める。

 

 

エステル「輝ける森エレアルーミン、世界の根たるレレウィーゼ……」

 

 

リョウ『どれも聞いたことがないな』

 

 

ジュディス「バウルは知ってるそうよ。ただ……」

 

 

ユーリ「?」

 

 

ジュディス「教えるのをためらってる。聖核は始祖の隷長の死を引き換えに得られるものだから」

 

 

リョウ『精霊に生まれ変わるとは言え、死は免れないからな……』

 

 

ユーリ「バウル、聞いてくれ。オレたちは世界を護りたい。けど、そのために誰かを犠牲にしていいなんて思っていない。一方的に始祖の隷長から聖核を奪う真似はしない」

 

 

エステル「お願いします。バウル」

 

 

ユーリ「頼む。教えてくれ始祖の隷長の居るところを」

 

 

ジュディス「……エレアルーミンはトルビキア大陸の北東部。レレウィーゼはウェケア大陸……だそうよ」

 

 

エステル「ありがとう。バウル」

 

 

リョウ『行く順番はどうする?』

 

 

ユーリ「まずはフェローのいるコゴール砂漠へ行こう」

 

 

パティ「……いつまでも先送りにしとく訳にもいかんの」

 

 

リョウ『ん?なんか言ったかパティ?』

 

 

パティ「な、なんでもないのじゃ」

 

 

リョウ『?』

 

 

 

 

 

 

 

コゴール砂漠

 

 

 

 

コゴール砂漠の上空では、フェローが飛び回っていた。

 

 

ジュディス「フェロー!」

 

 

リタ「傷ついているのになんで飛び回ってるの?」

 

 

ユーリ「あんな状態で馬鹿なヤツに襲われたらひとたまりもねぇだろうからな」

 

 

レイヴン「人間に聖核を渡さないためか」

 

 

リョウ『ん?フェローが降りていくぞ』

 

 

エステル「なんだか……呼んでいるようです」

 

 

 

フェローの岩場

 

 

 

 

ジュディス「フェローしっかりして。ごめんなさい、私たちのために……」

 

 

横たわるフェローに声をかけるジュディス

 

 

リョウ『ひどい傷だ……ザウデでオトリになったときのだな』

 

 

フェロー「世界の命運は決し、我らはその務めを果たせず終わる。無念だ……」

 

 

ユーリ「悪いけど、まだ終わっちゃいないぜ」

 

 

フェロー「ザウデが失われ、星喰みと魔王は帰還した。これ以上、なにができよう」

 

 

エステル「まだ望みはあります!まだ新しい力があるんです!」

 

 

リタ「あんたを精霊に……エアルをもっと制御できる存在に転生してほしいの」

 

 

ユーリ「そのためには……あんたの聖核が必要なんだ」

 

 

フェロー「我が命を寄越せというか……心では救えぬが世界を救いたいという心を持たねば、また救うことはかなわぬか……そなたらの心のままにするが良い」

 

 

フェローの身体から光が発せられたあと、聖核が出現する。

 

 

レイヴン「精霊になっても協力してくれなかったりしてね……」

 

 

ジュディス「フェローは世界を愛しているもの。きっと大丈夫よ」

 

 

精霊化の術式が成功し、聖核から炎が噴き出した。

 

 

リタ「やった」

 

 

リョウ『炎の精霊か?』

 

 

「おお……無尽蔵の活力を感じる」

 

 

ウンディーネが出現し

 

 

ウンディーネ「お久しゅう、盟主どの。転生、お祝い申し上げます」

 

 

「その気配は……ベリウス?そうか、そなたも……」

 

 

ウンディーネ「水を統べるようになった今はウンディーネと呼ばれております」

 

 

「在りようを返し今、我もまた新たな名を求めねばな。我を転生せしめたそなた我が名を名付けよ」

 

 

カロル「めらめら火の玉キン……『せいッ』

 

 

バキッ

 

 

カロル「あうっ」

 

 

そう言いかけたカロルを、リョウがチョップで止める。

 

 

エステル「力強く猛々しい炎……灼熱の君イフリート」

 

 

イフリート「世界と深く結びついた今、すべてが新しく視える。この死に絶えた荒野さえ力に満ち溢れている。ははは、愉快だ」

 

 

そう言いイフリートは飛び去った。

 

 

リョウ『飛んでったぞ』

 

 

パティ「どこに行くのじゃあ」

 

 

ウンディーネ「案ずるな。我らそなたと結びついておる。どこであろうと共に在るのじゃ」

 

 

ウンディーネも姿を消した。

 

 

リョウ『なんかフェローとは違うノリだったな』

 

 

リタ「きっと価値観がまるっきり変わるのよ」

 

 

ユーリ「次はエレアルーミンへ行こう」

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第66話 救うべき魂

結晶の森、エレアルーミンの内部に入り込んだリョウたち。

 

 

リョウ『綺麗だな……ハルルとは違った美しさだ』

 

 

カロル「ここに始祖の隷長が?」

 

 

ラピード「ワン!」

 

 

ユーリ「どうしたラピード?」

 

 

ラピードが踏み荒らされた結晶の跡を見つける。

 

 

パティ「こんなところに来るなんてどこの物好きなのじゃ」

 

 

リョウ『先客がいるみたいだな。みんな、気をつけろよ』

 

 

 

森を進んでいると、突如ブーメランが飛んできた。

 

 

リョウ『おっと!』

 

 

リョウはそれを弾く

 

 

ジュディス「この武器……!」

 

 

カロル「ナン!」

 

 

リョウたちの目の前に、傷を負ったナンが現れた。

 

 

ナン「……警告する。ここは魔狩りの剣が活動中だ。すぐに立ち去り……」

 

 

言葉の途中でナンは倒れた。

 

 

カロル「ナン!」

 

 

カロルはナンに駆け寄った。

 

 

エステル「ひどいケガ……」

 

 

エステルはナンに治癒術をかける。

 

 

カロル「しっかり!ナン!」

 

 

ナン「カロル……」

 

 

カロル「一人でどうしたんだよ!首領やティソンたちは?」

 

 

ナン「……師匠たちは奥に」

 

 

カロル「え!?ナンをおいて!?なにがあったのさ!」

 

 

ナン「不意に標的とここで戦いになって。あたし、いつもみたいに出来なくて……師匠が、迷いがあるからだって」

 

 

カロル「迷い?」

 

 

ナン「魔物は憎い。許せない。その気持ちは変わらない。でも今はしなきゃいけないことがあるんじゃないかって……それを話したら……」

 

 

レイヴン「置いて行かれたってか」

 

 

ジュディス「愚かね。この期に及んで生き方を見つめ直せないなんて」

 

 

カロル「ひどいよ!ナンは間違ってないのに!」

 

 

リョウ『落ち着けカロル。魔狩りの剣の狙いは始祖の隷長だな。急ごう』

 

 

カロル「一緒に行こう、ナン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リョウたちが最深部に到着するとクリントとティソンが始祖の隷長と相対していた。

 

 

ジュディス「グシオス!」

 

 

リョウ『あいつは確かカルボクラムにいた……』

 

 

ユーリ「なるほど。魔狩りの剣にとっちゃ因縁の相手ってとこか」

 

 

エステル「何か様子がおかしいです」

 

 

クリント「なぜ攻撃が効かない……!?」

 

 

グシオスは咆哮をあげ。口からたくさんのエアルを吸収している。

 

 

リタ「エアルを食べてる。でもこれって……?」

 

 

ナンが魔狩りの剣のメンバーに駆け寄る。

 

 

クリント「ナン……なぜ来た!」

 

 

ティソン「迷いをもったままじゃ足手まといだと言ったろうが!」

 

 

クリント「逃げろ!おまえではどうにもならん」

 

 

ナン「いやです、あたしにとってギルドは家族。見捨てるなんてできない!」

 

 

グシオスがふたたび咆哮をあげる。

 

 

ジュディス「落ち着いて、グシオス!どうしたというの!」

 

 

ウンディーネが姿を現した。

 

 

エステル「ウンディーネ!」

 

 

クリント「な、なんだ……こいつは……」

 

 

リョウ『精霊だ』

 

 

ナン「精霊……」

 

 

ウンディーネ「……グシオス。そなた……」

 

 

リョウ『ウンディーネ、どうしたんだあいつは?』

 

 

レイヴン「なんか話できる状態じゃないみたいよ!?」

 

 

ウンディーネ「始祖の隷長といえども、無制限にエアルを取り込める訳ではない。その能力を超えたエアルを体内に取り込んだものは耐え切れず変異を起こす。そして……」

 

 

リタ「まさか!」

 

 

ウンディーネ「……星喰みとなる」

 

 

ユーリ「なんだと!?それじゃ、こいつは世界を守ろうとして、あんなんなっちまってたのか」

 

 

ジュディス「グシオス……」

 

 

イフリート「……救ってやってくれ。まだ、グシオスという存在でいる間に……」

 

 

リョウ『分かった……』

 

 

 

 

 

 

 

 

リョウたちはグシオスを倒し、グシオスは聖核になった。

 

 

ジュディス「グシオス……ごめんなさい……」

 

 

クリントは憎しみを込めた目で聖核を見つめている。

 

 

リョウ『よくまだそんな目ができるな』

 

 

クリント「……そいつはあの化け物の魂だ。砕かずにはすまさん」

 

 

エステル「化け物じゃないです!彼らは世界を守ってくれたんですよ?」

 

 

クリント「始祖の隷長の役目など知ったことではない!!」

 

 

ユーリ「……てめえ知ってるな?始祖の隷長がどんな存在か」

 

 

カロル「知っててまだ狙ってたの?世界がこんなになっているのに!」

 

 

クリント「俺の家族は十年前に始祖の隷長どもに殺された。奴らを憎む気持ちは世界がどうなろうと変わるものではない!」

 

 

カロル「……それでも間違っているよ」

 

 

クリント「なに?」

 

 

カロル「そんなこと続けたって、なにも帰ってこないのに」

 

 

レイヴン「あの戦争で身内失ったのは、あんたらだけじゃないでしょ」

 

 

リョウ『それでも前を向いて一生懸命生きようとする人もいるんだ』

 

 

ユーリ「世界がどうにかなりそうなって時だ。意地になってんじゃねえよ」

 

 

クリント「今更……生き方を変えられん」

 

 

リョウ『生き方を変えろとまでは言わねえよ。ただ、俺たちの邪魔だけはしないでくれ』

 

 

ナン「首領……」

 

 

クリント「……撤収するぞ」

 

 

クリントとティソンは森を去っていった。

 

 

ナン「……ありがとう」

 

 

カロルに礼を言うとナンも去った。

 

 

ジュディス「精霊化を済ませましょ」

 

 

聖核から新たな精霊が誕生した。だが、瞳は閉じられており、動く気配がない。

 

 

リタ「成功……?」

 

 

パティ「ピクリとも動かんのじゃ」

 

 

イフリート「意識すら飲まれかけていたのだ。しばらくは目覚めまい。さあ、名付けてやるがよい」

 

 

エステル「属性はなんです?」

 

 

ウンディーネ「大地深く根ざした力……すなわち地」

 

 

エステル「……大地なら……根を張る者ノーム」

 

 

カロル「地の精霊ノーム……」

 

 

ウンディーネ「目覚めたら、伝えておこう」

 

 

精霊たちは姿を消した。

 

 

リタ「……星喰みがエアルを調整しようとした始祖の隷長の成れの果てなんて」

 

 

ユーリ「まったく人間ってやつは本当に自分の目で見えることしか分からないもんだな」

 

 

リョウ『結局一番悪いのは人間か……なおさら頑張らないとな』

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第67話 親友の娘

レレウィーゼ古仙洞

 

 

 

始祖の隷長を探してレレウィーゼ古仙洞へやって来たリョウたちは神秘的な輝きを放つ泉に到着した。

 

 

リョウ『ここもまた綺麗なところだな~』

 

 

エステル「とても静か……空気も澄んでて、なんだか神聖な雰囲気です」

 

 

「来ましたね」

 

 

突然何者かが姿を現した。

 

 

カロル「え?この人……!?」

 

 

リョウ『……クローム』

 

 

クローム「久しぶりですねリョウ」

 

 

リョウ『10年以上前に数回しか会わなかったけど俺は覚えているぜ』

 

 

クローム「やっぱり……あなたはあのリョウなのですね……」

 

 

レイヴン「ちょっとリョウ君、話が見えないんだけど」

 

 

リョウ『クロームは俺の親友エルシフルの……娘だ』

 

 

!?

 

 

ユーリ「じゃあ、あんたが」

 

 

クローム「はい。私は始祖の隷長です」

 

 

クロームの身体から光が発し、本来の姿を現した。

 

 

ジュディス「その姿は……」

 

 

クローム「あなたたちにデュークを止める力があるか試させてもらいます!」

 

 

リョウ『デューク?あいつがなにかしようとしているのか?』

 

 

クローム「私に勝つことができたら教えましょう」

 

 

リョウ『分かった。いくぞ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リョウたちはクロームを倒した。

 

 

クローム「……見事です……あなたたちなら……救えるかもしれない」

 

 

ジュディス「クローム……」

 

 

クローム「あなたたちの……望むように……」

 

 

強い光とともに、クロームは聖核となった。

 

 

リタ「エステル……やりましょ」

 

 

エステル「……はい」

 

 

精霊化の術式が成功し、聖核から新たな精霊が現れた。

 

 

カロル「やった!」

 

 

リタ「眠ってる……」

 

 

エステル「ノームの時と同じですね」

 

 

精霊たちが姿を現し

 

 

ウンディーネ「また新たな同志が生まれたのじゃな」

 

 

イフリート「……時に凪ぎ、時に荒ぶ風を統べるものか」

 

 

ウンディーネ「ノームの時のようにエアルに侵されている訳ではない。程なく目覚めよう」

 

 

エステル「ありがとう、ウンディーネ」

 

 

精霊たちは姿を消した。

 

 

リョウ『デュークを止めてほしいってどういうことなんだ?』

 

 

パティ「目が覚めたら聞いてみるのじゃ」

 

 

リョウ『そうだな。じゃあ戻るか』

 

 

 

 

 

 

 

 

来た道を引き返していると、精霊化したクロームが姿を現した。

 

 

「知覚が……これが精霊になるということ……」

 

 

パティ「おはようさんなのじゃ」

 

 

ユーリ「目覚めたんだな。えっと……」

 

 

ジュディス「あなたは……クロームと呼ばれる方がいいかしら?」

 

 

「いえ……私は始祖の隷長のクロームではありません。新たな名を受けるべきでしょう」

 

 

エステル「なら……シルフって名前はどうです?風を紡ぐ者、って意味です」

 

 

「シルフ……ではそれを我が名としましょう」

 

 

カロル「それじゃあ改めてよろしく、風の精霊シルフ」

 

 

シルフ「ええ」

 

 

リョウ『さっそく聞きたいことがあるんだけど、その前にシルフも俺について聞きたいことがあるんだろ?』

 

 

シルフ「はい。なぜあなたが10年前と変わらない姿で生きているのかを」

 

 

リョウ『俺はエルシフルに命を救われた』

 

 

シルフ「どういうことですか?」

 

 

リョウは10年前のことをシルフに話した。

 

 

シルフ「そうだったのですか、父はあなたを助けて……」

 

 

リョウ『すまねぇ……俺がエルシフルを助けるはずが逆に助けられて……俺はエルシフルを助けられなかった』

 

 

シルフ「謝らないでください。父はあなたが生きていることを喜んでいるはずです」

 

 

リョウ『ありがとうシルフ』

 

 

ユーリ「教えてくんねえか。デュークを止めてほしいっていう意味を」

 

 

シルフ「デュークは世界のために、すべての人間の命を引き換えにしようとしています」

 

 

リタ「なんですって!?」

 

 

エステル「どうしてデュークはそんなことを!?」

 

 

シルフ「あの人は人間を信じていないのです」

 

 

リョウ『なんでなんだ?まさか!俺とエルシフルのことか!?』

 

 

シルフ「そうです。友であった私の父とリョウの命を奪った人間を信じられなくなったのです」

 

 

カロル「でもリョウは生きてるよ。そのことを伝えれば考え直すかもしれないんじゃ」

 

 

シルフ「あの人は10年ぶりにリョウに会った後もその存在を認めようとはしませんでした」

 

 

リタ「なんでよ!?」

 

 

リョウ『俺の存在を認めてしまえば、人間を許してしまうかもしれないからか?あいつ頑固なとこあるからな……』

 

 

レイヴン「だからリョウ・ゲキショウはもうこの世にはいないって言ってたのか……」

 

 

パティ「デューク……哀れなのじゃ……」

 

 

シルフ「デュークより先に星喰みと魔王を滅ぼさなければ、結局人間は滅びることになるでしょう。急ぎなさい。そしてリョウ」

 

 

リョウ『なんだ?』

 

 

シルフ「星喰みを滅ぼせたとしても、魔王ディエドは銀河の皇であるあなたしか倒すことはできない。分かっていますね?」

 

 

リョウ『ああ、もちろんだ。覚悟ならもう出来てるぜ』

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第68話 少女の正体

リョウ『ついに四属性の精霊がそろったな』

 

 

ユーリ「ああ。あとは……」

 

 

エステル「世界中の魔導器の魔核を精霊に転生させる、ですね」

 

 

ジュディス「精霊を生み出すというだけでもテルカ・リュミレースのあり方を変えてしまっている。世界のためとはいえ、ね」

 

 

エステル「確かにわたしたちの判断だけで、世界の人々の生活すら変えてしまうのは問題だと思います」

 

 

カロル「そうかもだね……」

 

 

ユーリ「オレたちがやろうとしていることを理解してもらわなきゃ、やってることはアレクセイと変わらないのかもしれねぇ。けど、理解を求めてる時間もねぇ」

 

 

カロル「でも帝国騎士団やギルドのみんなにちゃんと話しておくことはできるんじゃないかな」

 

 

ジュディス「それで私たちのやり方を否定されてしまったら、私たちはホントに人々に仇なす大悪党よ?」

 

 

ユーリ「オレはこのまま世界が破滅しちまうのは我慢できねぇ。デュークがやろうとしていることで世界が救われても、普通に暮らしてる奴らが消えちまっちゃいみがねぇ。

だからオレは大悪党と言われても魔導器を捨てて星喰みを倒したい。みんな、どうする?降りるなら今だぜ」

 

 

レイヴン「俺様はついてくぜ。なんせ、俺の命は凛々の明星のもんだしな」

 

 

リョウ『俺も最後まで付き合うぜ。星喰みを倒してもディエドを倒せるのは俺だけだからな』

 

 

ジュディス「私も。フェローやベリウスが託してくれた気持ちがあるもの。それに……中途半端は好きじゃないわ」

 

 

リタ「やらないと後悔するってのを知っちゃったし。ここでやめても後悔するし」

 

 

カロル「うん。ボクも後悔したくない」

 

 

エステル「はい。自分で選択したことならどんな結果にもなっても受け入れられる……この旅で学んだことです」

 

 

カロル「それに……世界のみんなもわかってくれる。変わっていく世界を受け入れられないほど弱くないよ!」

 

 

ユーリ「そうだな。明日笑って暮らすためのことだ。そう信じたい」

 

 

ラピード「ワンワン!ワォン!」

 

 

パティ「……」

 

 

リョウ『パティ、どうした?ボーっとして』

 

 

パティ「も、もちろんついていくのじゃ!」

 

 

ユーリ「わかった。みんな、最後まで一緒に行こう」

 

 

カロル「じゃあ準備が全部できたら、ヨーデル殿下やユニオンの人たちに話をしに行こう」

 

 

レイヴン「んで、あと準備しなきゃいけないものってなんなのよ?」

 

 

リタ「あたしとリョウに任せて。ちょっと色々要るからどっか適当な街に寄りたいだけど」

 

 

カロル「じゃ、ノール港はどう?」

 

 

ユーリ「そうしよう」

 

 

パティ「……」

 

 

リョウ『……パティ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

カプワ・ノール

 

 

 

カプワ・ノールに到着したリョウたち。しかし、街は閑散としていて人の姿は見あたらない。

 

 

ユーリ「えらく閑散としているな」

 

 

リョウ『みんな避難したのかもな』

 

 

レイヴン「こんな空の下じゃ逃げ出したくもなるわな」

 

 

リタ「んじゃ、あたしとリョウは買い物してくる」

 

 

ユーリ「せっかくのデートだ。楽しめよ」

 

 

ユーリがからかってきた。

 

 

リタ「なっ!?デートじゃないわよ!//////」

 

 

リョウ『え……デートじゃないのか……』

 

 

少しガッカリするリョウ。

 

 

リタ「デートじゃないこともないけど……と、とりあえず行くわよ!///////」

 

 

ユーリ「オレたちは宿屋で待っておこうぜ」

 

 

 

宿屋

 

 

 

買い物を終えて、大荷物を抱えたリタとリョウが帰ってきた。

 

 

ユーリ「すごい荷物だな。なに買ってきたんだ?」

 

 

リョウ『術式紋章ひと揃えと筐体パーツだな』

 

 

レイヴン「何しようってのよ」

 

 

リタ「精霊の力を収束するための装置を作ってるの。即席の宙の戒典をね」

 

 

カロル「宙の戒典かぁ……デューク、今頃なにしてんだろうね」

 

 

リョウ『さぁな……ヤバいことしなければいいんだけど……』

 

 

パティ「……」

 

 

何か考え事をしているパティ

 

 

ユーリ「パティ、どうした?」

 

 

パティ「……む?なんでもないのじゃ。もううちは寝るのじゃ」

 

 

ユーリ「オレたちも休むか」

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、ひとり宿屋を抜け出す影があった。

 

 

リョウ『パティ?』

 

 

そのことに気づいたリョウは宿屋の外に出る。

するとパティ以外の仲間が集まっていた。

 

 

リョウ『みんなも起きてたのか』

 

 

ユーリ「今からパティの様子を見に行くけど、リョウも行くか?」

 

 

リョウ『ああ』

 

 

 

波止場

 

 

 

波止場にパティがぽつんと立っている。

 

 

パティ「……」

 

 

パティが麗しの星を掲げた。すると巨大な船が現れた。

 

 

リタ「あ、あれって……!」

 

 

ユーリ「行くぞ!」

 

 

パティのもとに駆け寄るリョウたち。

 

 

エステル「パティ、待ってください!」

 

 

パティ「みんな……どうして……」

 

 

レイヴン「それはこっちの台詞よ。一人で何してんのよ」

 

 

パティ「精霊もそろった……この先は命を賭けた大仕事なのじゃ。でも、その大仕事の前に、自分の中の決着をつけようとおもったのじゃ」

 

 

リョウ『アイフリードのことか?』

 

 

パティ「これはうちの問題なのじゃ。誰にも任せられない、うちの……」

 

 

カロル「だからって、一人で行かなくても」

 

 

パティ「……」

 

 

リタ「あれ……アーセルム号、よね……?」

 

 

エステル「どうしてここに……?」

 

 

リョウ『麗しの星でパティが呼び出したのか?』

 

 

ユーリ「麗しの星は、あいつを呼び出す道具だったってことか」

 

 

パティ「こいつの片割れと引き合っておるのじゃ」

 

 

ジュディス「つまり、その片割れがあの船にあるってことね」

 

 

リタ「そ、それはあんたの言う問題ってのと何か関係あんの?」

 

 

パティ「のじゃ」

 

 

ユーリ「じゃ、行こうぜ」

 

 

パティ「え……?」

 

 

ユーリ「行かないのか?」

 

 

パティ「ついてきてくれるのか……?」

 

 

ユーリ「オレたちと一緒にいて、一人で行かせてもらえないのはわかっているだろ?」

 

 

パティ「……ありがとうなのじゃ。だが、最後の決着だけはうちがつけるのじゃ」

 

 

ユーリ「ああ、わかってるさ」

 

 

リョウ『お!あそこにボートがあるぜ、これに乗って行こう』

 

 

 

 

 

 

 

幽霊船 アーセルム号

 

 

 

 

幽霊船に乗り込んだリョウたち。

 

 

カロル「パティはアイフリードが隠した宝物を探してたんだよね。アイフリードに会って記憶を取り戻すために」

 

 

パティ「んじゃ」

 

 

カロル「で、見つけたのがその麗しの星……なんだよね?」

 

 

パティ「そうなんじゃが……ちょっと違うのじゃ。麗しの星はアイフリードが探してたお宝なのじゃ」

 

 

リタ「は?あんたが探してたものとじいさんが探してたものが同じってこと?それでじいさんに会えるの?」

 

 

パティ「麗しの星を使えば会える……それは間違いではないのじゃ」

 

 

突然、どこからか咆哮が聞こえてきた。

 

 

リョウ『な、なんだ?』

 

 

ユーリ「上だ!」

 

 

船長室の上に髑髏の騎士が立っていた。

 

 

リョウ『あの魔物は前に……』

 

 

パティは急に走り出した。

 

 

エステル「パティ!」

 

 

リョウ『俺たちも行こう!』

 

 

甲板に出たリョウたちの前に髑髏の騎士が現れた。

 

 

リタ「で、出たっ……!」

 

 

パティ「サイファー、うちじゃ!わかるか……!」

 

 

カロル「サイファーって……アイフリードじゃなくて?」

 

 

レイヴン「サイファーはそのアイフリードの参謀の名前だわね、確か」

 

 

髑髏の騎士は浮き上がって上空に移動した。

パティは髑髏の騎士を追いかけてマストへ登る。

 

 

パティ「サイファー、長いこと待たせてすまなかった。記憶を失って時間がかかったが、ようやく、辿り着いたのじゃ」

 

 

リョウ『記憶が戻っていたのか……』

 

 

髑髏の騎士「アイフリード……」

 

 

パティ「……!」

 

 

髑髏の騎士の身体から男性の幻が姿を現した。

 

 

サイファー「アイフリード、か……久しいな……」

 

 

カロル「アイフリードって、え?まさか……?」

 

 

パティ「アイフリードは……。うちのことじゃ!」

 

 

リョウ『どういうことだ……?』

 

 

パティ「サイファー、うちが分かるのか!?」

 

 

サイファー「ああ……だが、再び自我を失い、おまえに刃を向ける前にここを去れ」

 

 

パティ「……そういうわけにはいかないのじゃ。うちはおまえを解放しにきたのじゃ。その魔物の姿とブラックホープ号の因縁から」

 

 

サイファー「俺はあの事件で多くの人を手にかけ、罪を犯した……」

 

 

レイヴン「じゃあ、ブラックホープ号事件ってのは……」

 

 

パティは首を横に振る。

 

 

パティ「ああしなければ、彼らは苦しみ続けたのじゃ。今のおまえのように。あの事故で魔物化した人たちをサイファーは救ったのじゃ」

 

 

サイファー「だが、彼らを手に掛けた俺はこんな姿で今ものうのうと生きている……」

 

 

パティ「おまえはうちを助け逃がしてくれた。だから……今度はうちがおまえを助ける番なのじゃ、サイファー」

 

 

サイファー「アイフリード……俺をこの苦しみから解放してくれるというのか」

 

 

パティ「おまえにはずいぶん世話になった。荒くれ者の集まりだった海精の牙(セイレーンのキバ)をよく見守ってくれた。そして……うちをよく支えてくれたのじゃ。でも……ここで……終わりなのじゃ」

 

 

銃をサイファーに向けるパティ。

 

 

パティ「……くっ……」

 

 

リョウ『……パティ』

 

 

パティは悲しげな表情で、銃を撃てないでいる。

 

 

パティ「サイファーだけは……うちが……」

 

 

サイファー「つらい思いをさせて、すまぬな、アイフリード」

 

 

パティ「つらいのはうちだけではない。サイファーはうちよりずっとつらい想いをしてきたのじゃ。うちらは仲間じゃ。だから、うちはおまえのつらさの分を背負うのじゃ。おまえを苦しみから解放するため、おまえを……殺す」

 

 

サイファー「その決意を支えているのはそこにいる者たちか?そうか……記憶もなくし、一人で頼りない想いをしていないか、それだけが気がかりだったが。いい仲間に巡り会えたのだな。アイフリード。受け取れ、これを……」

 

 

パティの前に光り輝く紋章が現れる。

 

 

パティ「これは……マリス・ゲンマ……」

 

 

サイファー「これで、安心して死にゆける。さあ……やれ」

 

 

銃声があたりに響く。

 

 

パティ「バイバイ……」

 

 

 

 

 

海までもどってきたリョウたち。パティは幽霊船を見ながら、涙声で

 

 

パティ「サイファー……」

 

 

リタ「泣きたい時は泣けばいいのよ」

 

 

パティ「つらくても泣かないのじゃ。それがうちのモットーなのじゃ……!」

 

 

リョウ『パティ……』

 

 

パティ「うちは泣かないのじゃ、涙を見せたら、死んでいった大切な仲間に申し訳ないのじゃ。うちは海精の牙の首領、アイフリードなのじゃ。だから……泣かない……。……絶対、泣かない、泣きたく、ない……」

 

 

リタがそっとパティを抱き寄せる。リタの胸の中でパティは泣き崩れた。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第69話 残された時間

宿屋に戻ったリョウたち。ほどなくして、眠っていたパティが目を覚ました。

 

 

リョウ『起きたかパティ』

 

 

ユーリ「どうだ。ひとしきり泣いたら楽になったか」

 

 

パティ「……。全然、大丈夫なのじゃ」

 

 

ユーリ「これからパティはどうするんだ」

 

 

レイヴン「そうね、記憶も戻ったようだし会いたい相手にも会えたわけだしね」

 

 

パティ「もちろん、ユーリたちと一緒に行くのじゃ」

 

 

エステル「いいんです、それで?」

 

 

パティ「ここまできたのじゃ。最後まで付いていかせろ」

 

 

リョウ『それじゃ、改めてよろしくな、パティ』

 

 

パティ「うむ。よろしくするのじゃ」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴッ

 

 

カロル「な、なに!?」

 

 

突然、地鳴りが聞こえてきた。

 

 

リョウたちは外に向かった。

 

 

リョウ『なんだいったい!?』

 

 

リタ「ちょっと!あっちってアスピオの方じゃない!」

 

 

カロル「な、なにが始まるの!?」

 

 

アスピオの地下から、巨大な塔が現れ、そのまま宙へと浮かび上がった。

 

 

リタ「あれじゃ、アスピオは……」

 

 

レイヴン「あの馬鹿でかいのはなによ!?」

 

 

エステル「タル……カロン……」

 

 

カロル「え?」

 

 

エステル「あれはタルカロンの塔、精霊たちがそう言うんです」

 

 

リョウ『デュークだな……それしか考えられない。あれで星喰みを……』

 

 

タルカロンの塔を見つけるリョウたちのもとに、役人がやって来た。

 

 

役人「黒くて長い髪のあんた、ちょっといいか!?」

 

 

ユーリ「なんだよ」

 

 

役人「あんたみたいな風貌の人を見かけたら教えて欲しいって騎士団の人に言われててな。なんでも新しい騎士団長のフレン殿について話したいことがあるとか」

 

 

ユーリ「なんだと?」

 

 

役人「人違いじゃなさそうか?」

 

 

ユーリ「ああ。宿屋で待ってりゃいいか?」

 

 

役人「それでいい。呼んでくる」

 

 

 

 

 

 

 

宿屋で待っているリョウたちのもとに、ウィチルとソディアがやってきた。

 

 

ウィチル「ようやくつかまえましたよ!どこほっつき歩いてたんですか」

 

 

ソディア「ユーリ……ローウェル……」

 

 

ウィチル「……ソディア?」

 

 

ユーリ「んで、フレンがどうしたってんだよ」

 

 

ウィチル「あ……はい、あの怪物が空を覆ってから、大勢この大陸から避難すんです。でもギルドの船団で帝国の護衛を拒否するのがいて、隊長はそれを放っておけなくて。

魔物に襲われた船団はヒピオニアに漂着、僕たちは戦ったけど段々、追い詰められて……」

 

 

ソディア「私たちだけが救助を求めるため、脱出させられた……。でも騎士団は各地に散っていて……」

 

 

ウィチル「もう皆さんにお願いするしか方法はないんです」

 

 

ソディア「しかし……時が経ちすぎた……隊長はもう……」

 

 

ユーリ「相変わらずつまんねぇ事しか言えないヤツだな」

 

 

ソディア「な、なに!」

 

 

ユーリ「諦めちまったのか?おまえ、今まで何のためにやってきたんだよ?」

 

 

ソディア「私は!あの方……フレン隊長のために!あの時だって……」

 

 

ユーリ「ふん。めそめそしててめえの覚悟忘れて諦めちまうやつに、フレンのためとか言わせねぇ」

 

 

ソディア「覚悟……」

 

 

ユーリ「リンゴ頭!ヒピオニアだったな」

 

 

ウィチル「え、ええ」

 

 

ユーリ「そういうわけだ。ちょっと行ってくるわ。みんなはタルカロンに行く準備を……」

 

 

ユーリは部屋から出ようとするが

 

 

エステル「え?わたしたちも行きますよ?」

 

 

カロル「そうだよ、悪いクセだよ、ユーリ」

 

 

ユーリ「そういうけどな、割とヤバそうな感じだぜ?」

 

 

ジュディス「なら、なおさらあなたひとりで行かせる訳にはいかないわね。それにバウルが言うことを聞かないと思うけど?」

 

 

リタ「ひとりはギルドのために、ギルドはひとりのために、なんでしょ」

 

 

リョウ『またそんなことすると、前みたいに重めのチョップをくらわせるぞ』

 

 

レイヴン「時間がないならちゃっちゃと行って片づけようじゃないの」

 

 

パティ「うちは噛みついたウツボ以上の勢いで、死ぬまでユーリについて回るぞ」

 

 

ユーリ「ったく付き合いいいな。そんじゃ行くか!」

 

 

カロル「おー!凛々の明星出撃ぃ!」

 

 

ラピード「ワン!」

 

 

リョウたちはヒピオニア大陸へ向かった。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第70話 団結する心

フレンがいるという、ヒピオニア大陸までやって来たリョウたち。

大きな土煙が発生している場所を見つける。

 

 

ユーリ「あれか!?」

 

 

カロル「すごい土煙だよ。あれ全部魔物!?」

 

 

ジュディス「アスタルが死んでから統制を失った反動らしいわ。大陸中の魔物が殺到しているみたい」

 

 

エステル「本当にあのどこかにフレンがいるんです?」

 

 

ユーリ「多分な」

 

 

レイヴン「どうすんのよ?まさか全部倒してくつもり?」

 

 

リョウ『倒せないこともないが、時間がかかりすぎるだろうな』

 

 

ユーリ「リタ、例のリタ製宙の戒典、使えないか?」

 

 

レイヴン「星喰みぶっ飛ばすみたいに魔物蹴散らすってか?」

 

 

リタ「そうね……。精霊の力に指向性を持たせて結界状のフィールドを展開し、魔物だけを排除、か……。出来るはずよ」

 

 

ジュディス「でも、それは星喰みに対するためのものでしょう?」

 

 

ユーリ「使わせてくれないか。頼む」

 

 

エステル「わたしからもお願いします。宙の戒典は……人を救えるものって信じたいから……」

 

 

リタは自作の宙の戒典を持ってきた。

 

 

リタ「そうね。これぐらいバーンと出来ちゃわないと星喰みになんて通用しないわ」

 

 

ジュディス「そう。ならそうしましょうか」

 

 

リョウ『ユーリがわがまま言うのも珍しいしな』

 

 

カロル「たまには聞いてあげないとね!」

 

 

ユーリ「ったく。茶化すんじゃねぇっての」

 

 

ジュディス「具体的にはどうするの?」

 

 

リタ「魔物が一番集まってるところで起動、これだけ。簡単でしょ?」

 

 

ユーリ「簡単だな」

 

 

カロル「せっかくだからその装置、名前付けようよ。リタ製宙の戒典じゃあんまりだし」

 

 

リタ「好きにすれば」

 

 

カロル「うん!明星壱号!どう!?」

 

 

リタ「……やめればよかった」

 

 

ユーリ「まあいいんじゃないか?シンプルで」

 

 

リョウ『カロルにしてはいい名前だな』

 

 

カロル「しては、は余計だよ」

 

 

ユーリ「よし。いっちょいくか」

 

 

 

 

 

 

 

 

地上に降りたリョウたち。あたりは魔物と騎士、逃げ惑う人々が入り乱れている。

 

 

リタ「すごい状況……」

 

 

カロル「あの中に突っ込むんだ……」

 

 

エステル「見て、あそこ!」

 

 

魔物と戦うフレンの姿が見えた。

 

 

ユーリ「フレン!」

 

 

リョウ『相当追い込まれてるぞ。急いだ方がいいな』

 

 

ユーリ「行くぞ!はぐれるなよ!」

 

 

リョウたちは走り始めた。

魔物を倒しながら進んで行くと、フレンの姿が見えた。

 

 

リョウ『フレン!大丈夫か!?』

 

 

ユーリ「間に合ったみてぇだな」

 

 

フレン「ユーリ!リョウ!どうしてここに!?」

 

 

ユーリ「上官想いの副官に感謝しろよ」

 

 

フレン「ソディアが!?だが、こんな状況だ。このままではいつかやられてしまう」

 

 

レイヴン「切り札は我にありってね」

 

 

フレン「なんだって?」

 

 

明星壱号を取り出し

 

 

ユーリ「こいつを、敵の中心でスイッチポン。するとボン!ってわけだ」

 

 

フレン「敵の中心で、か。この数だ、簡単じゃないよ」

 

 

ユーリ「簡単さ、オレとおまえとリョウがやるんだぜ?」

 

 

ラピード「ワォン!」

 

 

フレン「フッ。分かった、やってみよう」

 

 

リョウ『そうこなっくちゃな!』

 

 

ユーリ「みんな、こいつの起動はオレたちがやる。ここは頼んだぜ!」

 

 

リタ「あんたらだけで行く気!?無茶でしょ!」

 

 

フレン「ここの守りを手薄にするわけにはいかない。ここを守り抜かねば僕たちが魔物を退ける意味すらなくなるんだ」

 

 

エステル「わかりました。ここは任せてください!」

 

 

パティ「うちらは適当にがんばるのじゃ」

 

 

フレン「ありがたい」

 

 

ジュディス「がんばってね。三人とも」

 

 

ユーリ「いくぜ!」

 

 

リョウ『おう!』

 

 

フレン「ああ!」

 

 

ラピード「ワン!」

 

 

リョウたちは群れの中心部へ向かって走り出す。

 

 

フレン「そろそろ群れの中心だ!」

 

 

ユーリ「まだ戦いたりねぇけどな!」

 

 

フレン「こんな時だというのに君は楽しそうだな」

 

 

ユーリ「ヘッ、おまえこそ」

 

 

フレン「でも、一番楽しそうなのは……」

 

 

リョウ『オラオラオラオラオラオラッ道を開けろー!!』

 

 

フレンはどんどん魔物を切り捨てていくリョウを見る。

 

 

ユーリ「ハハッ、ちがいねぇ」

 

 

リョウたちは群れの中心にたどり着く。

 

 

リョウ『いけぇ!ユーリ!』

 

 

ユーリ「おう!くらいな!」

 

 

ユーリが明星壱号を地面に突き立てると、魔法陣が展開し、次々と魔物を消し去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔物たちが消え、夜が明けた。

 

 

ユーリ「明星壱号、壊れちまったか。悪いことしたな」

 

 

リョウ『筐体に使ってた素材が脆すぎたみたいだな』

 

 

フレン「すまない、僕らのために」

 

 

リタ「大丈夫、魔核も無事だし、修理はできるわ。ただ……」

 

 

ジュディスとパティがやってきて

 

 

パティ「思った以上にけが人が多いのじゃ」

 

 

ジュディス「エステルのおかげで、みんな命は取り留めたけど、すぐには動かさない方がいいわね」

 

 

フレン「しばらくここで守り抜くしかないか」

 

 

「それならここを砦にしてしまえばいいんじゃない?」

 

 

カロル、レイヴンと一緒にカウフマンが現れた。

 

 

カウフマン「お久しぶりねユーリ君。凛々の明星の噂、聞いているわよ。手配してた傭兵では十分じゃなかったようね。こちらの不手際で迷惑かけたわ」

 

 

フレン「いえ、ギルドも今混乱しているでしょう。ご助力感謝します」

 

 

カウフマン「お詫びと言ってはなんだけど、ここの防衛に協力するわ」

 

 

リョウ『あんたが戦うのか?』

 

 

カウフマン「まさか。私は商人よ。まあ見てらっしゃいな」

 

 

カウフマンは去って行き。入れ替わるように、ウィチルとソディアがやってきた。

 

 

ウィチル「フレン隊長、無事でよかった!」

 

 

フレン「ウィチル!……なにかあったのか」

 

 

ウィチル「はい、例のアスピオの側に出現した塔ですが、妙な術式を周囲に展開し始めました。紋章から推測するに、何か力を吸収しているようです。それにあわせてイリキア全土で住民が体調に異変を感じています」

 

 

リタ「吸引……体調……それって人間の生命力を吸収してるってことじゃあ……」

 

 

リョウ『……デューク』

 

 

リタ「生命は純度の高いマナ。……それを攻撃に使うつもり?」

 

 

レイヴン「人間すべての命と引き換えに星喰みを倒すってのはこういうことだったのね」

 

 

ウィチル「術式は段階的に拡大しています。このままいくといずれ全世界に効力が及ぶ可能性が……」

 

 

エステル「そんな……!」

 

 

リョウ『もう時間がないってことか』

 

 

リタ「でも、思った通りこのままだと精霊の力が足りないわ。明星壱号を修理してもそれだけじゃ駄目ね」

 

 

カロル「ええ?あんなすごい威力なのに!?」

 

 

リョウ『あれの何百倍もの力が必要だな』

 

 

ユーリ「……やっぱ魔核を精霊に変えるしかないか」

 

 

フレン「待ってくれ、僕らにも分かるように説明してくれないか」

 

 

ユーリ「そうだな。フレン、ヨーデル殿下やギルドの人間にも聞いてもらいたいんだ。ここに呼べねぇか?」

 

 

フレン「フフ、ハハハハ」

 

 

カロル「も~、ユーリ。皇帝をこんなところに呼びつけようって言うの?」

 

 

リョウ『ユーリらしいな』

 

 

フレン「フフ。わかった。なんとかしてみるよ。その代わり、ユニオンや戦士の殿堂の人たちには君が話をつけてくれ」

 

 

ユーリ「わかった」

 

 

リョウ『じゃあ、ダングレストとノードポリカへ急ごうぜ』

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第71話 希望に燃える街

ユニオンからハリー、戦士の殿堂からはナッツが来ることで話がついた。

フレンたちのもとに戻ると、野原だった場所に建物がいくつも建っていた。

 

 

ユーリ「……すげえな、もうこんなに……」

 

 

エステル「短期間で街がここまで……信じられません」

 

 

リョウ『改めて、人の力ってすげえな』

 

 

カロル「みんなで力を合わせたらこんなことさえできちゃうんだね」

 

 

フレンとカウフマンがリョウたちの前にやってきた。

 

 

カウフマン「どう?お気に召して?」

 

 

ユーリ「正直、脱帽だ」

 

 

フレン「ユーリ、どうだい?そっちの方は」

 

 

ユーリ「ああ。話つけてきた。あとは殿下の都合がついたら迎えに行くと伝えてある」

 

 

フレン「わかった。殿下にも連絡がついたよ。来ていただける事になった。船でこちらに向かわれている」

 

 

ジュディス「まぁ、のんびり屋さんね。バウルにお願いして連れてくるわ。ハリーもナッツも、ね」

 

 

ユーリ「いいのか?バウル怒るんじゃないか?」

 

 

ジュディス「一刻を争うんでしょう?バウルもわかってくれるわ」

 

 

フレン「そうしてもらえると助かる」

 

 

ジュディスはバウルのもとへ向かった。

 

 

リョウ『もう時間は残されてない……』

 

 

エステル「ついに世界の首脳陣が集まるのですね」

 

 

カロル「あとはわかってもらえるかどうかだね」

 

 

パティ「とことん話し合ってそれでもダメなら、殴り合いなのじゃ」

 

 

リョウ『大丈夫、分かってくれるさ』

 

 

ユーリ「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

騎士団総本部では首脳陣が一堂に会し、今後の対策を話し合っている。

 

 

ナッツ「精霊……星喰み……デューク……魔王……」

 

 

カウフマン「世界中の魔核を精霊に変える……」

 

 

ヨーデル「……途方もない話ですね……」

 

 

ユーリ「信じがたいだろうがな。これが今のオレたちのぶつかってる現実だ」

 

 

フレン「魔導器がこの世からなくなる……結界もなくなる。大混乱になるな」

 

 

リョウ『このままだとデュークか星喰みか魔王にやられて一巻の終わりだ』

 

 

ハリー「選択の余地はないが……果たして受け入れられるか?」

 

 

エステル「誰も破滅の未来を望んでいないと思います。つらくても生きていれば前に進めます」

 

 

カロル「うん。だからボクたちはやるんだ」

 

 

首脳陣が本格的に話し始めると、リョウたちは部屋をあとにする。

 

 

フレン「最後まで立ち会わないのか?」

 

 

ユーリ「ああいうのはオレらの仕事じゃねぇだろ」

 

 

リタ「そうそう。お偉いさんがまとめれば良いんじゃない?」

 

 

ジュディス「彼らが思うよりも人々は今の生活から離れないと思うけれど。彼らはそれを整えるのが仕事。私たちの仕事は……」

 

 

リョウ『星喰みと魔王をぶっ潰してデュークを止める事だ』

 

 

フレン「そうか……。そういえばひとつ気になることが」

 

 

リョウ『ん?』

 

 

フレン「魔王ディエドは星喰みを操る存在なんだろう?」

 

 

リョウ『ああ』

 

 

フレン「でも星喰みの分体が街を襲ったのはノードポリカだけで原因は魔導器だった」

 

 

ユーリ「なにが言いたいんだ?」

 

 

フレン「なぜ魔王はなにもしないんだ?そもそも魔王の目的は何なのか気になってね」

 

 

リョウ『昔俺の両親から聞いた話だと、魔王ディエドは星喰みを操ってこの世界を支配しようとしたらしい』

 

 

カロル「もう星喰みは覚醒しているのに全然行動に起こそうとしてないよね?」

 

 

レイヴン「まだ力が完全に戻ってないとか?」

 

 

リョウ『いや、それはないな。ザウデを破壊したのは間違いなくディエドだ。あれほどの力でまだ戻ってないとは考えにくい』

 

 

フレン「じゃあなぜ?」

 

 

リョウ『そこんとこは本人に会った時、聞いてみるわ』

 

 

リタ「聞いてみるって……」

 

 

リョウ『ディエドのもとへ行けるのも倒せるのも俺だけだからな』

 

 

ジュディス「その前に星喰みとデュークをなんとかしないとね」

 

 

リョウ『そういうこと』

 

 

カロル「ボクらもがんばらなくっちゃ!」

 

 

リタ「でも世界中の魔核にアクセスする方法が……」

 

 

ウィチル「それなんですけど……。アレクセイやバルボスの残した研究成果の中に、魔導器間のネットワークを構築するみたいな記述が……」

 

 

リタ「本当!?それ今どこにあるの!?」

 

 

ウィチル「これですが……」

 

 

リタはウィチルから渡された本を読む。

 

 

リタ「いけるわ!!これなら魔核を精霊に変えることができるわ!!」

 

 

リョウ『やったなリタ!』

 

 

リタ「問題は時間がないことね。ネットワーク作るのと、収束する用意は同時にやらないと」

 

 

ウィチル「ネットワークの構築は僕がします。アスピオからの避難者もいるし」

 

 

レイヴン「学者だけじゃ護衛が必要だろ」

 

 

フレン「そこは騎士団がやりましょう」

 

 

ソディア「命に換えても守り抜きます」

 

 

リタ「あとは精霊の力が確実に星喰みに届くようにできるだけ近づいて、明星壱号を起動させるだけよ」

 

 

ユーリ「つまり、あそこだな」

 

 

全員がタルカロンの塔を見上げる。

 

 

ジュディス「……タルカロンの塔、ね」

 

 

レイヴン「デュークの根城か」

 

 

リョウ『必ず止めてみせる……』

 

 

ユーリ「そうだな。タルカロンをぶっ放させる訳にもいかない」

 

 

カロル「避けては通れないんだね。あそこに行くのは」

 

 

リタ「それじゃ、あたしとリョウは明星壱号の修理に取り掛かるわね」

 

 

リョウ『そういえば壊れてたっけ?明星壱号』

 

 

ユーリ「頼むぜ。できれば明日には出発したいからな」

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第72話 決戦前

深夜、リョウとリタは宿屋の一室で明星壱号を修理していた。

 

 

リョウ『あとはここをこうして……』

 

 

リタ「できたわ!!」

 

 

明星壱号の修理が終わった。

 

 

リョウ『もうこんな時間か……お疲れリタ』

 

 

リタ「リョウもありがと」

 

 

ふたりはベッドに座る。

 

 

リョウ『いよいよ明日だな……』

 

 

リタ「そうね……」

 

 

リタはリョウのある変化に気づく。

 

 

リタ「リョウ、どうしたの?震えてるけど」

 

 

リョウ『え!?ああ、急に不安になってな……』

 

 

リタ「なにが不安なのよ?」

 

 

リョウ『ディエドのことでな……。星喰みを倒したとしても、ディエドは俺にしか倒せない。もし俺がディエドに負けてしまうことがあったらすべてが水の泡だ。そう考

えたら不安になってな……』

 

 

リタ「リョウ……」

 

 

リョウ『だからリタ、俺に少し勇気をくれないか?//////』

 

 

リョウはリタの頬に触れて見つめ合う。

 

 

リタ「リョウ……わかったわ/////」

 

 

チュ

 

 

リタ「ん……/////」

 

 

お互い目をつぶり、ふたりはキスをした。

唇を離したあとも見つめ合う。

自然にふたりはまた唇を重ねる。

 

 

チュウ

 

 

リタ「ん……んん……ちゅ……/////」

 

 

リョウ『ちゅ……ちゅ……ん……ん/////』

 

 

先ほどのキスとは違い、互いの舌を絡め合う深いキス

 

 

リョウ『リタ……ん……ちゅ……/////』

 

 

リタ「リョウ……んん……ちゅ……ん/////」

 

 

ディープキスはその後何度も続いた。

そしてふたりは今ベッドで抱き合って寝ている。

 

 

リョウ『ありがとうリタ、勇気出た/////』

 

 

リタ「どういたしまして//////」

 

 

リョウ『リタ/////』

 

 

リタ「なに?/////」

 

 

リョウ『愛してる/////』

 

 

リタ「あたしも愛してるわ/////」

 

 

そしてふたりは眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜が明け、リョウたちは街の中心部に集まった。

 

 

ユーリ「よく眠れたようだな」

 

 

エステル「はい」

 

 

カロル「もうぐっすり」

 

 

レイヴン「最初に来たときとはダンチで快適なベッドだったわ」

 

 

ジュディス「もうここは立派な街なのだから名前をつけないとね」

 

 

リタ「それならうちの名付け係の出番ね」

 

 

カロル「はいはいはい、手作り丸太の……」

 

 

リョウ『そのまんまじゃねぇか!』

 

 

リョウがカロルにツッコミをいれる。

 

 

エステル「ええと……雪解けの光って意味の……オルニオン、なんてどうです?」

 

 

そこにヨーデルとフレンが現れ

 

 

ヨーデル「オルニオン……いい名前ですね」

 

 

ユーリ「殿下のお墨付きだ。決まりだな」

 

 

リョウ『そうえば、これもできたぞ』

 

 

リョウはユーリに青い刀身の剣を渡す。

 

 

パティ「明星壱号じゃな?」

 

 

リタ「あたしとリョウが徹夜で作ったのよ」

 

 

ユーリ「剣としても悪くないな」

 

 

レイヴン「さしずめ、リタっちとリョウ君の愛の結晶ね♪」

 

 

リタ「ファイアボール!/////」

 

 

リョウ『魔神剣!////』

 

 

レイヴン「ぎゃぁぁぁぁぁ」

 

 

吹き飛ぶレイヴン

 

 

ジュディス「バカね……」

 

 

パティ「バカじゃの……」

 

 

カロル「そ、それじゃ、明星壱号改め、明星弐号だね♪」

 

 

リタ「もう、なんでもいいわよ……」

 

 

フレン「魔導器ネットワークの構築は我々に任せてくれ」

 

 

ソディア「……いえ、隊長も彼らと共に行ってください」

 

 

フレン「ソディア!?」

 

 

ソディア「何があるか分かりません。彼らには隊長の助けがいるはずです」

 

 

フレン「騎士団は魔導器のことで人々を説得する任務もあるんだぞ」

 

 

ソディア「分かっています。人々の協力なくして成功しない。肝に銘じています」

 

 

ウィチル「大丈夫です。僕だっているんですから」

 

 

フレン「……分かった。ただしソディア、ウィチル。たとえ別々に行動していても僕たちは仲間だ。それだけは忘れないでくれ」

 

 

ソディア「……はい!」

 

 

ウィチル「はい!」

 

 

ヨーデル「エステリーゼ、それにみなさんも気をつけて」

 

 

リョウたちは街の出口で一旦立ち止まり。

 

 

リョウ『俺たちは俺たちの仕事をするぞ!カロル、締めの一言』

 

 

カロル「うん。みんな!絶対成功させるよ!凛々の明星、出発!」

 

 

そして、タルカロンへ向かった。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第73話 暗殺者の最後

古代都市 タルカロン

 

 

 

 

タルカロンに進入したリョウたち。周囲には巨大な術式が展開されている。

 

 

パティ「はえ~」

 

 

ユーリ「すげえ、でかさだな」

 

 

カロル「まさに天まで届けって感じだね」

 

 

リョウ『こんなでかいのがアスピオの側に眠ってたとは衝撃だな』

 

 

フレン「あの周りに展開しているのが、生命力を吸収する術式だろうか」

 

 

リタ「……そうみたいね。まずいわ、結構早く組み上がってきてる」

 

 

レイヴン「あまり時間は残されてないってか」

 

 

パティ「いいことなのじゃ。時間が差し迫った方が人はやる気になるもんじゃ」

 

 

カロル「それはそうかもしれないけど、ボクらもやばいんじゃないの?」

 

 

ジュディス「確かに全ての人間ということなら影響があってもおかしくないけれど」

 

 

突如、エステルの身体が青い光を放つ。

 

 

ユーリ「エステル?」

 

 

エステル「精霊の力が……わたしたちを包んでくれています」

 

 

リタ「あの術式の力より精霊の力が勝っている間は大丈夫なようね」

 

 

リョウ『その間に頂上まで行こうぜ』

 

 

リョウたちは先に進む。

 

 

 

 

 

 

 

広間に入ったリョウたち。そこにはひとりの男が待ち受けていた。

 

 

「待ちかねたぞ……ユーリ、リョウ。どこに行こうってんだ?」

 

 

フレン「あいつは……!」

 

 

リョウ『ザギ……またおまえか』

 

 

パティ「こんな高いところまで疲れたじゃろう。わざわざご苦労さんじゃの」

 

 

ユーリ「ホントにしつこい野郎だな。てめえに用はねえんだよ」

 

 

ザギ「世界を救うため、か?くっくっく。急がないと世の中ぐちゃぐちゃだからか?」

 

 

カロル「わかってんなら邪魔しないでよ!」

 

 

ザギ「おいおいおい!だからこそ意味があるんだろうが!」

 

 

リタ「こいつ……何言ってんの?」

 

 

ザギは左腕に付けた魔導器を見せる。

 

 

ザギ「こいつを見な。この先の封印式の構成式よ。つまり、この腕をぶっ壊さない限りこの先には進めねぇな」

 

 

フレン「なんてことを……」

 

 

リョウ『てめぇ……!』

 

 

ザギ「クハハハ!ユーリ、リョウ!世界を救いたければ、オレとのぼりつめるしかないみたいだぜぇ?」

 

 

エステル「なぜこんな無意味なことを!」

 

 

ザギ「無意味?意味ならあるだろうが!この方が本気(マジ)で戦(や)れるだろう?」

 

 

ユーリ「ザギ……ここまでイカれたやろうだったとはな」

 

 

リョウ『てめえの望み通りケリつけてやる』

 

 

ザギ「本気でいくぜぇ!」

 

 

ザギはユーリに斬りかかってきた。

 

 

ユーリ「ちっ」

 

 

ユーリはザギの攻撃を弾き返す。

 

 

ユーリ「蒼破刃!」

 

 

リョウ『魔神剣!』

 

 

ザギ「おせぇよ」

 

 

ふたりの攻撃をザギは簡単に避ける。

 

 

ザギ「クハハハ!!」

 

 

ザギは次にリョウに斬りかかる。

しかし、リョウは避けなかった。

ザギの刃がリョウの身体をすり抜けた。

 

 

ザギ「なに!?」

 

 

リョウ『光子化だ。説明はしねえ時間の無駄だからな』

 

 

バキィィ

 

 

ザギ「ぐふっ」

 

 

隙を見せたザギにリョウはボディーブローをくらわす。

 

 

ユーリ「爪竜連牙斬!」

 

 

ふらつくザギにたたみかけるようにユーリの奥義が炸裂する。

ザギは膝をついた。

 

 

ザギ「体が動かねえな。なんてヤワな体なんだ。次は体も魔導器に変えてこよう。そうすりゃ、もっと楽しめる、そうだろ、ユーリ、リョウ?ひっひっひ」

 

 

ザギにゆっくりと近づくユーリとリョウ。

 

 

フレン「ユーリ!リョウ!」

 

 

ザシュッ

 

 

ユーリとリョウはザギを斬りつけた。

 

 

ザギ「ぐっ」

 

 

リョウ ユーリ『「地獄でやってろ」』

 

 

よろめいたザギは、そのまま奈落へ落ちた。フレンは表情を曇らせる。

 

 

フレン「……」

 

 

リョウ『時間を無駄にしたな……行こうぜ』

 

 

ユーリ「ああ」

 

 

これがザギの最後であった。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第74話 立ちはだかる友

リョウたちが先に進むと、長い階段を目にする。

 

 

エステル「あの階段は……」

 

 

フレン「どうやら、この上が頂上みたいですね」

 

 

ユーリ「ここが正念場だな。みんな、覚悟はいいか?」

 

 

リョウ『ああ、デュークを止めて星喰みを倒しディエドも倒す』

 

 

エステル「わたしたちを信じて待っている人たちのためにも」

 

 

ジュディス「フェローやベリウス……始祖の隷長たちの想いのためにも、ね」

 

 

ラピード「ワン!」

 

 

リョウ『行こう!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

塔の頂上にはデュークの姿があった。周りには魔法陣が展開されている。

 

 

リョウ『デューク!』

 

 

リョウたちはデュークに近づく

 

 

デューク「おまえたち……」

 

 

リョウ『もう人の命を使って星喰みを倒す必要はない!エルシフルだってそんなこと望んじゃいねえ!』

 

 

デューク「エルシフル……」

 

 

リョウ『俺の知ってるエルシフルは……「黙れ!!」『デューク?』

 

 

デューク「おまえが知っているはずがないエルシフルのことなど」

 

 

リョウ『知ってるに決まってるだろ!俺はおまえの知っているリョウだ!』

 

 

デューク「リョウ・ゲキショウもエルシフルもこの世にはいない」

 

 

リョウ『たしかにエルシフルはもういない。でも、俺は……「黙れ偽者!」

 

 

デューク「それ以上私の友の名を口にするな……」

 

 

デュークは宙の戒典を手にしてリョウに向ける。

 

 

レイヴン「デュークのやつ頭に血がのぼっていやがる」

 

 

パティ「よっぽどリョウのことを認められないのか?」

 

 

リタ「そんな……」

 

 

デュークはリョウに向かって斬りかかる。

リョウは銀雪花を引き抜き受け止める。

 

 

リョウ『よく見ろデュークこれは銀雪花だ……俺にしか持てない太刀だ。お前も知っているだろ?』

 

 

デューク「……」

 

 

しかしデュークにリョウの声は届いていない。

デュークは一旦距離をとり再びリョウに向かって宙の戒典を突き出してきた。

 

 

リョウ〖いったいどうすれば……こうなったらいちかばちかだ〗

 

 

迫りくる宙の戒典、リョウはそれを……避けなかった。

 

 

ドスッ

 

 

リョウ『ぐあ……』

 

 

リョウは光子化をしなかったために宙の戒典が腹部に刺さり貫通した。腹部からは血が滴り落ちている。

 

 

エステル「リョウ!?」

 

 

エステルが治癒術をかけようとリョウのもとへ行こうとしたが、ユーリがそれを止める。

リョウはデュークの手を握る。

 

 

リョウ『辛かった……よな?この10年間……ごめんな……デューク』

 

 

デューク「リョウ……」

 

 

リョウ『でも……もうおまえが……辛い思いをする必要はない……あとは……俺たちに……任せてくれ……ないか?』

 

 

デュークは宙の戒典を引き抜いた。すぐさまリョウは光を吸収し傷を癒した。

 

 

デューク「その力は……銀河の皇の力……おまえはリョウなのか?」

 

 

リョウ『さっきから言ってるだろ?俺はおまえの知っているリョウだって』

 

 

デューク「私はなんてことを……」

 

 

リョウ『気にすんな。わかってくれればいいんだよ』

 

 

星喰みが鳴動し始めた。

 

 

リョウ『やべえ急がないと!』

 

 

ユーリ「ああ、やるぞ」

 

 

リタ「いくわよ……エステル、同調して。ジュディス、サポートお願い」

 

 

リタが術式を展開し、リョウたちの足下に魔法陣が現れる。

 

 

リタ「ユーリ!いくわよ!」

 

 

ユーリ「ああ!」

 

 

ユーリは天に向かって剣を掲げる。周囲に4体の精霊が現れ、世界中の魔導器が淡い光を放ちはじめ、その光がユーリの剣に集まっていく。

その光が星喰みに直撃するが、星喰みは消えない。

 

 

パティ「と、止まった!?」

 

 

カロル「まさか効いてないの!?」

 

 

リタ「そんなことない!あと少し足りない!」

 

 

フレン「まだ終わっちゃいない……!」

 

 

ユーリ「だめか……」

 

 

デュークはユーリに近づき、魔法陣を展開すると強い光が放たれた。その光はユーリの光と融合し、ユーリの剣はまるで巨大な羽のような光となる。そして一気に剣を振り下ろす。

 

 

いっけえ!!!!

 

 

光の剣は、星喰みを真っ二つにし、小さな光へと変わっていく。

 

 

エステル「精霊……」

 

 

カロル「あれ全部が!?すごい……」

 

 

リタ「星喰みになってた始祖の隷長がみんな精霊に変わったんだ……」

 

 

レイヴン「星喰みも世界の一部だった……そういう事ね」

 

 

ジュディス「綺麗……とても……」

 

 

パティ「じゃの!」

 

 

フレン「……やったな」

 

 

リョウ『ああ。でもまだ終わっちゃいない』

 

 

リョウは上空を見上げる。その先には黒い球体に包まれている城がある。

 

 

エステル「あの城に魔王ディエドが……」

 

 

リョウ『よし!あとは俺の仕事だな!』

 

 

カロル「でもどうやって行くの?」

 

 

突然リョウの身体が光り始め、光の球体に包まれる。そして宙に浮き始めた。

 

 

リョウ『なるほど。これで行くのか。じゃあちょっくら魔王倒してくるわ』

 

 

ユーリ「軽いなおい」

 

 

エステル「気をつけてくださいね」

 

 

カロル「リョウなら大丈夫だよ!」

 

 

パティ「頼んだのじゃリョウ!」

 

 

レイヴン「ちゃんと帰ってきてよ。もうこれ以上友だちを失うのはゴメンだからね」

 

 

ジュディス「あなたならできるわリョウ」

 

 

フレン「信じているよリョウ」

 

 

デューク「魔王はおまえしか倒せない。無力な私を許してくれ」

 

 

リタ「リョウ!!絶対に帰ってくるのよ!じゃないと承知しないから!」

 

 

リョウ『みんな……ありがとう。行ってくる!』

 

 

光の球体は速度をあげてディエド城へ向かって行った。

最後の戦いが始まる。

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第75話 最終決戦

ディエド城

 

 

 

ディエド城に潜入したリョウは長い廊下を進んでいた。

 

 

リョウ『この先にディエドが……』

 

 

しばらく進んでいると、広間に出た。奥には玉座があり黒衣をまとった黒髪の男が頬杖をついて座っていた。

 

 

「来たか……銀河の皇よ」

 

 

リョウ『魔王ディエド……』

 

 

ディエド「いかにも。我が魔王ディエドだ。ようこそ我が城へ、歓迎しよう」

 

 

リョウ『そりゃあどうも。歓迎してもらって悪いけどあんたにはさっさと退場してもらうぜ。下で待ってる仲間がいるからな』

 

 

そう言いリョウは銀雪花を抜く。

 

 

ディエド「いいだろう……」

 

 

ディエドは玉座から立ち上がり右手から黒い大剣を出現させた。

 

 

リョウ『そういえばひとつだけ聞きたいことがある』

 

 

ディエド「なんだ?」

 

 

リョウ『なぜ星喰みを操って地上を襲わなかったんだ?そうすれば俺が来る前にあんたの目的は果たせたはずだ』

 

 

ディエド「簡単なことだ。星喰みを操るまでもなかったと思ったからだ」

 

 

リョウ『?』

 

 

ディエド「我は長い年月の間星喰みと共に封印されてきた。だが、人間共が何をしていたのかは大体感じることができた。始祖の隷長との戦い、魔導器の独占などを、な。

そして我は思ったのだ、人間はそのうち自滅すると。ならばわざわざ星喰みを使わずともこの世界は我のものになるとそう思ったからだ」

 

 

リョウ『残念だったな。星喰みは精霊に変わり、人間はこの先も生きていく』

 

 

ディエド「だが銀河の皇、貴様を消せばもう我を倒せる者はいなくなる。結果は同じだ」

 

 

リョウ『それはありえないことだな。俺が必ずあんたを倒すからだ!』

 

 

ディエド「面白い……光と闇は互いを消し合う存在。残るのはどちらかひとつ!」

 

 

リョウ『いくぞ!!』

 

 

ディエド「来い!!」

 

 

 

 

 

 

 

キンッガキィン

 

 

刃の交わる金属音が広間に響く。お互いダメージを与えることなく時間だけが過ぎる。

 

 

リョウ〖魔王と言われるだけあって一筋縄ではいかないか……〗

 

 

リョウは一旦ディエドから距離をとる。

リョウは息切れをしているがディエドは顔色ひとつ変えていない。

 

 

ディエド「どうした?皇よ、この程度か?」

 

 

リョウ『まだだ!鬼炎斬!』

 

 

炎をまとった刃で斬りかかるが

 

 

ディエド「ぬるいわ!」

 

 

バキィィ

 

 

リョウ『ぐっ』

 

 

簡単に弾き返される。

ディエドはその隙を使い詠唱を始める。

 

 

リョウ〖何かくる!〗

 

 

ディエド「デモンズランス!」

 

 

闇の槍がリョウに襲い掛かる。リョウは避けきれず右脇腹辺りを深くえぐられた。

 

 

リョウ『ぐぁぁぁぁ!?』

 

 

あまりの激痛に倒れたまま起き上がれないリョウ。

 

 

リョウ〖光子化して傷を塞がねえと……〗

 

 

すぐさま光子化して傷を癒そうとしたが、光を吸収できなかった。

 

 

リョウ『光子化ができない!?』

 

 

ディエド「残念だったな。我の前では銀河の皇の力は使えない。光を吸収などできぬ。あるのは闇だけだ……」

 

 

リョウ『くそ……どうすれば……』

 

 

ディエド「貴様はただ自分の無力さを感じながら死んでいくのだ」

 

 

ディエドが大剣を地面に突き刺すとリョウの周りが黒く染まり、身体が少しずつ沈んでいく。

 

 

ディエド「永劫奈落……貴様が今から行く空間は、少しずつ闇が身体を蝕み、そして最後は闇と同化する。痛みはない。せめてもの情けだ」

 

 

リョウ〖わりぃ……。みんな……リタ……約束守れそうにない……〗

 

 

リョウの身体は完全に沈んだ。

 

 

ディエド「さらばだ……銀河の皇よ……」

 

 

To be continued



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

最終話 輝く未来へ

タルカロン

 

 

 

リョウがディエドと戦っている間、ユーリたちはタルカロンでリョウの帰りを待っていた。

 

 

ユーリ「リョウのやつ、おせえな……」

 

 

カロル「リョウ……大丈夫かな」

 

 

リタ「さっさと倒して帰って来なさいよ……」

 

 

レイヴン「ホントよね。リタっちも心配してるのに」

 

 

デューク「リョウ……」

 

 

ラピード「クウーン……」

 

 

フレン「僕たちはリョウの帰りを待つことしかできないのか……」

 

 

エステル「いいえ、わたしたちにもできることがあります!」

 

 

パティ「なんなのじゃエステル?」

 

 

エステル「祈ることです!」

 

 

ジュディス「そうね。それなら私たちにもできるわ」

 

 

エステル「みんなでリョウを想って祈りましょう!」

 

 

エステルがそう言うとユーリたちは目を閉じて祈りはじめる。

すると、リタの身体が光りはじめた。

 

 

リタ「え?なに?」

 

 

カロル「リタ!光ってるよ!あれ?ボクもだ」

 

 

デューク「これはいったい……?」

 

 

その場にいた全員の身体が光りはじめた。

やがて光は上空のディエド城へ向かって一直線に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

リョウ『ここは……?』

 

 

リョウが目を覚ますと真っ暗な空間にいた。

 

 

リョウ『なにも感じない……俺は死んだのか?』

 

 

とりあえずリョウは歩いてみるが、景色は変わらない。

 

 

リョウ『約束守れなかったな……最低だな俺は……』

 

 

リョウの身体はだんだんと暗闇に消えていく。

 

 

リョウ『このまま消えるのか……』

 

 

リョウが諦めかけたその時、背後から大きな光が照らしてきた。

 

 

リョウ『あの光は?』

 

 

リョウは一目散に光の方向へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

ディエド城

 

 

 

ディエド「終わったか……」

 

 

リョウが先程までいた場所を見て、玉座へ戻ろうと足を進めるディエド。

 

 

ピシッ

 

 

ディエド「なんだ?」

 

 

何かにひびが入る音が聞こえて振り返るとそこには空間に亀裂が入っており、間からは光が漏れていた。そして

 

 

パリィン

 

 

空間が割れてそこからリョウが現れた。

 

 

ディエド「バカな!?永劫奈落を脱出しただと!?」

 

 

リョウ『それだけじゃない。俺の傷もこの通り』

 

 

リョウの傷は完全に塞がっていた。

 

 

ディエド「永劫奈落に光はないはずだ!?」

 

 

リョウ『光なら届けてくれた。仲間、友だち、そして愛する人からの想いと一緒にな!!』

 

 

リョウは銀雪花を構える。

 

 

リョウ『そして俺はその人たちの生きる世界を守る!!』

 

 

銀雪花が大きく光はじめる。

 

 

ディエド「ならばその世界を我がものにしてくれるわ!!」

 

 

リョウとディエドは互いに向かって走り出す。

 

 

ディエド「これで終わりだ銀河の皇!!」

 

 

リョウ『うおおおおおおお!!銀河刃・零!!!!』

 

 

リョウの一刀はディエドの大剣、身体を切り裂いた。

 

 

ディエド「バカな……我が消える……だが……暖かい……これが光」

 

 

ディエドは光に包まれ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タルカロン

 

 

 

カロル「見て!ディエド城が!」

 

 

ディエド城が突然光に包まれて消えた。

 

 

デューク「勝ったのか……魔王に」

 

 

リタ「リョウは?リョウはどこなの?」

 

 

エステル「あれを見てください!」

 

 

エステルの指さす先に光の球体が見える。その球体はこちらに向かって来ている。

 

 

パティ「リョウなのじゃ!」

 

 

光の球体が着地すると球体は消え、リョウが現れた。

ユーリたちはリョウに駆け寄る。

 

 

ユーリ「遅かったじゃねぇか」

 

 

リョウ『わりぃ。思ったより手こずった』

 

 

カロル「心配したんだからね」

 

 

レイヴン「まあ結果が良ければすべてよしってとこかね」

 

 

デューク「よく戻ってきてくれた」

 

 

パティ「今日はお祝いのおでんなのじゃ」

 

 

フレン「リョウ。君はすごいよ!」

 

 

ジュディス「すごいわ。リョウ」

 

 

ラピード「ワン!」

 

 

エステル「わたしたちの祈りと想いはちゃんと届きました?」

 

 

リョウ『ああ。それは光となって俺にちゃんと届いたぜ。あれがなかったら俺は負けていた。みんなありがとう!』

 

 

リタ「リョウ……」

 

 

リョウ『リタ……ただいま!!』

 

 

リタ「おかえり!!」

 

 

リョウとリタはそのまま抱き合った。

あらたな世界が、今始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、3年の月日が経った。リョウとリタは結婚し一軒家で暮らしている。

 

リタとリョウの家

 

 

 

今、ふたりは夕食をとっている。正確には……3人でもある。

 

 

リョウ『なあリタ。研究もほどほどにしとけよ』

 

 

リタ「でも、いまいいところなの」

 

 

リョウ『もうリタだけの身体じゃないんだからな』

 

 

リタ「うっ……分かってるわよ//////」

 

 

そう言いリタは大きく膨らんだお腹をさする。

太っている訳ではなく新しい命が宿っているのである。

 

 

リタ「じゃあ、この子の為にもご飯おかわり/////」

 

 

リョウ『おう!いっぱい食べろよ!』

 

 

リタにご飯を渡す。

 

 

リタ「ねえ、リョウ」

 

 

リョウ『ん?』

 

 

リタ「愛してるわ/////」

 

 

リョウ『俺も愛してる//////』

 

 

これから先、輝く未来が待っている。そう、あの天を照らす銀河のように!

 

 

End



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 赤ちゃん狂想曲

ヘリオード

 

 

 

リョウたちが夜中にヘリオードの結界魔導器前を通りかかると、何かの声がした。

 

 

ジュディス「……何の声かしら?」

 

 

レイヴン「赤ん坊の声ね」

 

 

リョウが結界魔導器の裏側で泣いている赤ん坊を見つけた。

 

 

リョウ『こんなところに……お~よしよし』

 

 

リョウは赤ん坊を抱きかかえるが、赤ん坊は泣き止まない。

 

 

リタ「ちょっと、貸しなさいよ」

 

 

リタに赤ん坊を渡す。

 

 

リタ「泣き止みなさいって」

 

 

カロル「そんなんで泣き止むわけ……」

 

 

カロルのツッコミに反して、赤ん坊は泣き止んだ。

 

 

エステル「スゴイです……リタ、お母さんの才能あります」

 

 

リタ「何よ、それ……」

 

 

カロル「ねぇ、これって捨て子かな?」

 

 

ユーリ「だとしたら、騎士に預けんのが妥当だな」

 

 

エステル「でも、こんな夜中に訪ねていくのはちょっと……」

 

 

リタ「……どうせ朝まででしょ。あたしたちで面倒見るわよ」

 

 

エステル「そうですね……「リタとリョウ以外集合」

 

 

ユーリがリタとリョウ以外の仲間を集めてひそひそ話を始めた。

 

 

ユーリ「赤ん坊の世話はリョウとリタに任せようぜ」

 

 

エステル「どうしてです?」

 

 

ユーリ「あいつら付き合ってるだろ?将来、結婚して子どもが産まれた時のために今のうちに練習させた方がいいんじゃねえかなって」

 

 

エステル「それはいい考えですね!」

 

 

レイヴン「気が利くじゃない」

 

 

ジュディス「おもしろそうね」

 

 

カロル「だ、大丈夫かな?」

 

 

パティ「大丈夫なのじゃ!……たぶん」

 

 

リョウ『急にどうしたんだ?みんなでひそひそと……』

 

 

ユーリ「ちょっと急用を思い出してな、子どもの世話はふたりに任せた」

 

 

リタ「え、ちょ、ちょっと」

 

 

レイヴン「あとはよろしく~」

 

 

エステル「頑張ってくださいね」

 

 

ジュディス「じゃあね」

 

 

カロル「が、頑張ってね」

 

 

パティ「リタ姐とリョウの将来の為なのじゃ」

 

 

取り残された三人

 

 

リタ「丸投げにされた……」

 

 

リョウ『しゃあねぇ。俺たちで世話するか……』

 

 

 

 

 

宿屋の一室で赤ん坊の世話するリョウとリタ。

リタの腕の中でも赤ん坊が泣き始めてしまい

 

 

リタ「どうしよう……泣き止まないわ」

 

 

リョウ『腹が減ったのかもな。ミルク作るから待っててくれ』

 

 

リョウはミルクを作りリタに渡す。赤ん坊はミルクを飲み始めた。

 

 

リョウ『やっぱり腹が減ってたんだな』

 

 

ミルクを飲んでいる赤ん坊を見てリタが

 

 

リタ「かわいい……」

 

 

リョウ『そうだな……』

 

 

満腹になったからか赤ん坊はベッドで寝ている。

その赤ん坊の寝顔のぞき込むリョウとリタ

 

 

リョウ『よく寝てるな』

 

 

リタ「そうね」

 

 

リョウ『なあリタ』

 

 

リタ「なに?」

 

 

リョウ『子ども何人欲しい?』

 

 

リタ「ぶっ!?な、なによいきなり/////」

 

 

リョウ『い、いや。将来、結婚したら何人欲しいのかなって////』

 

 

リタ「ふ、ふたりは最低欲しいわ//////」

 

 

リョウ『じゃ、じゃあ結構頑張らないとな/////』

 

 

リタ「も、もう。あたしたちも寝ましょう/////」

 

 

リョウ『そ、そうだな。……一緒に寝るか?/////』

 

 

リタ「う、うん/////」

 

 

赤ん坊の隣ベッドの中に入るふたり

 

 

リョウ『リタ……/////』

 

 

リタ「な、なに……ん!?/////」

 

 

リョウがキスをしてきた。

 

 

リョウ『少し早い誓いだ//////』

 

 

リタ「ば、バカ//////」

 

 

そう言いながらリョウに抱きつくリタ。そのままふたりも眠りについた。

次の日、赤ん坊は無事に母親の元に戻った。

 

 

End



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 バレンタイン

時期外れですが


リョウとリタの家

 

リョウの部屋

 

 

リョウがひとり部屋で本を読んでいると

 

 

コンコン

 

 

リョウの部屋の扉がノックされる。

 

 

リタ「あたしだけど、入っていい?」

 

 

リョウ「いいぞ。開いてるぞ」

 

 

リタがリョウの部屋に入る。

 

 

リタ「リョウ、今いい?/////」

 

 

リョウ『どうした?リタ?』

 

 

顔を赤らめながら背中に何かを隠しているリタ

 

 

リタ「こ、これ////」

 

 

リタは赤い紙でラッピングされた小さな箱を渡す。

 

 

リョウ『これは?』

 

 

リタ「きょ、今日はバレンタインだから、その、チョコレートあげる/////」

 

 

リョウ『そういえばそうだったな・・・・ありがとな//////』

 

 

リタ「あんまりうまくできなかったけど・・・・・」

 

 

リョウ『手作りなのか?』

 

 

リタ「う、うん//////」

 

 

リョウ『今食べてもいいか?』

 

 

リタ「う、うん。あんまり期待しないで/////」

 

 

リョウは箱を開ける。すると中には少しいびつなハート型のチョコレートが入っていた。

 

 

パク

 

 

リョウはそのチョコレートを少し割って食べる。

 

 

リョウ『甘くておいしい。最高だぞリタ!』

 

 

リタ「ホント!よかった・・・・」

 

 

一安心するリタ

 

 

リョウ『リタも食べてみるか?』

 

 

リタ「いいの?じゃあ、ちょっとだけ」

 

 

リョウ『目つぶって口開けて』

 

 

リタ「分かったわ」

 

 

リタが目を閉じ口を開けて待っていると

 

 

チュウ

 

 

リタ「!?」

 

 

リタの口が塞がれた・・・・リョウの唇によって

 

 

リタ「んん・・・・ちゅ・・・・ん/////」

 

 

リョウ『ん・・・ちゅ・・・・れろ/////』

 

 

リョウはリタの口内にチョコレートを口移ししてそのままリタの舌と自分の舌を絡める。

そして、そのままリタをリョウのベッドに押し倒した。

少し経って唇が離れる。

 

 

リタ「い、いきなりびっくりするじゃない/////」

 

 

リョウ『わりい、つい』

 

 

リタ「で、でも、甘くておいしかったわ/////」

 

 

リョウ『それはキス?チョコレート?どっちのことだ?』

 

 

リタ「・・・・どっちも/////」

 

 

リョウ『そうか。なあ、リタ////』

 

 

リタ「なに?」

 

 

リョウ『このまま・・・・その、続けていいか?我慢できそうにない////』

 

 

リタ「う、うん//////」

 

 

再びふたりは唇を重ねる。

 

 

リョウ『ん・・・・んむ・・・・ちゅ・・・・れろ////』

 

 

リタ「んん・・・・れろ・・・・ん・・・・ちゅう////」

 

 

しばらくして唇が離れ

 

 

リョウ『リタ・・・・愛してる/////』

 

 

リタ「あたしも・・・・大好きリョウ/////」

 

 

その後ふたりはさらに甘い時間を過ごした。

 

 

End



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。