パラレルワールド・ヒーロー (zaq2)
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プロローグ・ヒーロー
Parallel Hero…


 地上とも地下とも宇宙ともいえない空が周囲を覆う中、二つの人影が対峙する形で向かいあっていた。

 

 

「ドン・ガバメン!貴様の野望もここまでだ!!」

「ふっ……はぁはあはははははっはは!!」

 

 

 その体に大きな穴を開けている相手、ドン・ガバメンと呼称された相手は、不敵な笑いを広げていた。

 

 

「何がおかしい!!」

「何がおかしいだと?オカシイに決まっているだろうトライヴ、いや、本堂よ。貴様のその目出度い頭にだ」

「何を!?」

 

 

 ドン・ガバメンと呼ばれた存在は、対峙する本堂と呼ぶ相手に対して、まるで小馬鹿にするかの様にそう言葉を発していた。

 

 

「我々の組織が、ココだけと思っているのがな!」

「何!?」

「世界は広いのだよ!我の意思を継ぐものなど、いくらでもいるという事だ……ガフッ」

「!!」

 

 

 その口からは、青色ともいえる液体を噴き出しながら、そのオカシイという内容を語りだす。

 

 

「そして貴様は、我のいるこの亜空時空間から逃れられん……つまり……邪魔者の貴様が戻らない限り、我々の勝利というものなのだよ……」

 

 

 その語られた内容は、自らの命は失われるモノの、その犠牲によってこの(いくさ)には勝利したといわんばかりの自信の表れでもあった。

 

 

「ならば、戻る方法を聞き出すまで!!」

「教える訳がなかろう?さぁ、永遠という亜空時空に閉じこまれ続けるがよいわ!!はぁlはははははははは!!……・・・・ハァハ・・・ハ・・・」

「貴様!!元から道連れとするためだったのか!」

 

 

 そう本堂は思ったが、それは時すでに遅かった。

 

 ドン・ガバメンはその笑い声を残し、その体形を爆散させその姿を消していったのだった。

 

 

「しまった!」

 

 

 本堂はそう叫んでしまった。

 

 今までの戦いから、ようやくザ・リークという組織の首領ドン・ガバメンを倒したという感情よりも、まだ戦いは続くという事に、そして、その自身がその使命を果たせないという事、さらに罠にはめられた自分自身に対して、怒りと悔しさが入り混じった感情を抱いていた。

 

 

 そう、彼こと本堂は、ドン・ガバメンが作り出した亜空時空といわれる世界に閉じ込められる形となってしまっていたのである。

 

 

 しかし、戦いが続くのならば、この閉じられた世界から脱出しなければならない。

 ならばと本堂は気持ちを切り替え、脱出する手がかりを求めて亜空時空の中を彷徨いはじめた。

 

 

 

 亜空時空間

 

 それは、悪の秘密組織ザ・リークが作り上げた異空間発生装置によって作られた空間である。

 ここではない、そこでもない、まったく地球上とはまったく別のフィールドを作り上げ、時には囚人とした人物を閉じ込めるための場所として、時には秘密基地としての機能を、時には今回の様に戦闘を行う空間として、多種多様な運用目的で作られたものであった。

 

 この中では、普通の時間経過も場所に関しても、一般のソレとは異なる流れを進んでおり、場合によっては、保管倉庫としても利用されているものでもあった。

 

 

 その亜空時空の中を、一人の人物が歩き続けていた。

 

 上空には、ただただどこまでも続く紫色の様な、水でボケた様な灰色が混じる空とも呼べるのかどうか解らない存在と、永遠に続くのではないかと思われる地平とも地面ともいいがたい中を歩き続けていた。

 

 しかし、その歩み続ける中、何かしらのモノがあれば立ち止まっては調べてみたりするモノの、それらはものの見事に関係のないオブジェクトでしかなかった。

 

 

「(ここまで、何も手がかりが無いとなると……いや、あきらめるのは早い、戻る手立てをみつけなければ……)」

 

 

 焦りという感情と、ふがいない自分へ対する怒りという感情が、本堂の中であふれだし、さらに、悔しさもまじることにより、自分が不甲斐ない存在であるという感情の念が強くなってもきていた。

 

 

「(私は……、一体何をしていたというのだ……友の忠告を聞かずに……)」

 

 

 共に戦っていた友からは「お前は先走りすぎる」という忠告を再三出されていた。

 

 自分にとっては、すべての決着をつけるべくと勇んでいるだけなのだが、友に言わせれば死に急ぎすぎだと言われてもいた。

 

 そんな友の言葉が、今まさに本堂の脳裏によぎる

 

 

「その通りだったのかも、しれない、な……」

 

 

 今まで、その言葉には何ら興味も示さなかった本堂であったが、ことここに至って初めてその言葉の意味を理解しようとしていた。

 

 

「私も、大バカ野郎だったんだな……」

 

 

 そんな自分に対する卑下な感情をもとに歩みは続いていたが、とうとうその場に膝をついてしまう。

 そう、この亜空時空においての自身の活動エネルギーがすでに枯渇しようとしていたのだった。

 

 

「すまん……友よ……お前の忠告をちゃんと聞くべきだったな……」

 

 

 それは、あまりにも遅すぎる謝罪であった。

 

 ことここに至って、本堂はようやくその意味を理解したのだが、それは遅すぎたものであった。

 

 その大地へと倒れこんだ本堂の姿は、すでに戦闘モードから通常モードへとなっており、その活動がとうにつきかけようとしていた。

 

 そうして、意識が朦朧とする中、最後に友から貰った遺品のブレスレットへ、懺悔の言葉を紡ぎその意識を手放していった……

 

 

 

 

 その時、不可思議な事が起こった!!

 

 

 

 本堂が身に着けていたブレスレットから、まばゆい光が放たれたかと思えば、本堂を包み込みその光が消え去った後には、本堂が倒れていた跡だけが残されていた。

 

 

 

 




Next Story:
 緑の肌の怪人


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ストレンジャー・ヒーロー
緑の肌の怪人1


 意識を取り戻した本堂の目に入った光景は、先ほどまで自身が存在していた場所とは異なる内容であるというものであった。

 

 そして、意識を失う前には枯渇していたはずの活動エネルギーが、何故か満たされているという事を感じながら、ゆっくりと体を起こして立ち上がり、

 

 

「ここ……は?」

 

 

 あたりを一瞥した本堂から漏れた第一声は、誰かに問いただしたいという意思が含まれていた。

 なぜならば、それは先ほどまで自身が体験し記憶していた場所とは全くかけ離れたものであったからだ。

 

 

 先ほどまであたり一面にあったのと言えば、無機質なモノともいえるのか定かでないものばかりで、空も青くはなく、灰色とも黒色とも白色とも混じった物という物であり、一般的な空と言われる物とはまったく違うものであった。

 

 だが、今現在本堂の視界に入ってくるものは、背の高い木々がまばらにならんでおり、その隙間からは青い空とそこに流れる白い雲の存在が見えていたからだった。

 

 

「外に、出られたのか?」

 

 

 本堂は、その空に流れる雲を眺めてからまるで自問するかの様につぶやく。

 

 どうやってかは解らないが、あの空間から脱出できたのだろうと思ったのだが、「お前はいつも短絡的だ。少しは冷静になれ」という友の言葉を思い出し、外ではない別の何かである可能性も考慮する。

 

 

 しかし、起き上がってから周囲の木々を触れた時の手の感触は、本堂が記憶している感触となんら変わりなく、落ちている葉や土などの香りも、本堂が知っているソレと全く同じモノでもあった。

 

 

 辺りの状況を冷静に観察し続け、最終的に"亜空時空からはどうやってかは解らないが、とにかく脱出できたもの"と判断した。

 

 

「(しかし、一体どうやって脱出できたのか……?)」

 

 

 本堂は思考してはみるが、結局答えなどでるものもなかったのだが、すぐに気持ちを切り替え、

 

 

「仕方がない、今はこの場所がどこかを知る事が先決だ」

 

 

 まずはこの森ともいえる場所を出る事。そしてこの場所がどこであるかを確認することが先決であろうと考え、その場を後に歩き出した。

 

 しばらく木々の間を歩いていると、ふと、気になる事があった。

 

 木々の内容が日本のそれと異なっているという事に気づいたからであった。

 

 

 針葉樹なのだろうが、それらがまるで巨大な大木の森とでもいうのか、一本一本がその大きさ日本の山間部とはまったく異なる太さが、かなりの数存在する事に気づいたからであった。

 

 これらは、どうみても植林で行われたものではなく、自然と育った場所であるという印象をうけるのだが、日本という土地の中でその様な場所に思い当たる知識がなかったため、本堂としては日本であってほしいという願いが膨れ上がってきていた。

 

 

 疑問や懸念を抱きながらも、森を抜けようと移動してしばらく進んでいた頃に、本堂の耳に人の叫び声の様なモノが入ってきた。

 

 人の声、というにはいささか聞きなれない音でもあったのだが、その音は獣が吠える雄叫びといえるソレとは異なる事ぐらいは判別できていた。

 

 そして、そのそれらしい人の声が聞こえたという事は、少なくともこの近辺には人が住むという地域であるという事なのだろうとも感じていた。

 

 

 だが、叫び声に交じるかの様に、怒声や悲鳴らしき声が入ってきた事で、本堂はその声の主に何らかの事態が発生したのではないか?と思案していた。

 

 もし、野生の熊かイノシシか獰猛な獣が存在し、それに偶発的に発生でもしたのだろうか?と思いつつも、その悲鳴が聞こえてきた場所へと急ぎ移動を開始する。

 

 

 

 しかし、その声の主だと思われる人物が視界に入った際、本堂が予想した獣という予想は見事にハズれることになった。

 

 

 

 その声を荒げた人物の先に視線を向けた時、本堂の目に入ったのは声を上げた人物たちに向かって刃物を持った子供ぐらいの大きさの緑の肌色をした複数の人型の存在だったからだ。

 

 

 

「まさか、ザ・リークの怪人か!!」

 

 

 

 襲われている人物をひとめみた感じでいえば、どうみても日本人ではない。

 

 欧州人とでもいう顔のつくりをし、さらにブロンドの髪をなびかせていた女性と、同様に傷をおってはいるがブロンドに青眼という白人男性がいたからであった。

 

 

 本堂は、一瞬ここは日本ではないと思った。

 

 そして、ドン・ガバメンが世界中に組織がある様なことを言っていたことを思い出し、ドン・ガバメン亡き今、他の支部ともいえる組織が存在し活動し続けていたとしたら……

 

 

 いや、"今はこの怪人を倒し、彼らを助けるのが先決だ"と思考を切替え行動にでる。

 

 

変身(イグニッション)!」

 

 

 本堂があるポーズをし、キーとなる言葉を叫ぶことにより、戦闘モードへとその体が瞬時に変わる。

 

 変身したその姿は、紅色の全身鎧をまとった兵士のごとくであったが、その重厚そうな見た目とは裏腹に、まるで軽業師の如くの動きで、その怪人と白人の人との間に割り入る。

 

 

 

「ザ・リークの怪人ども!無抵抗な人間に対してのこの非道、このトライヴが許さん!!」

 

 

 

 本堂はそう叫び、緑の肌色をした怪人へと目がけ、さらに走り出した。

 

 

 

 

 

 

 




緑の肌の怪人
・異世界在住の定番といえるゴブリンさんです。


○説明しよう!
 トライヴは、とあるポージングと変身(イグニッション)というキーワードを口にすることにより、その体内に存在する未知エネルギー(名称は現在未定)変換炉を活性化させ戦闘モードへと移行する。

 その際、生み出された過剰エネルギーを利用し、体内に存在するナノマシンの自己増殖が促され、さらに戦闘モード(フルドライヴ)状態へと形状変化を起こしその身を包み込むのである。

 その変身プロセスはコンマゼロハチ秒
 では、その変身のプロセスをもう一度みてみy(略


(※ナレーション、政宗〇成さんの声で脳内再生しましたよね?)
(あと、変身時にポージングは必要である。いいね?)


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緑の肌の怪人2

 本堂の視界に入っている怪人は3体

 まずはその先端となる怪人にめがけて走り出す。

 

 しかし、本堂はその走り出した行為に対し、思うように体が動かせれないという違和感に気づく。

 

 

「な、どうなっている!?」

 

 

 先端となる緑色の怪人は、その持ち得る武器をこちらへと、まさに斬りかからんとしていたが、本堂はその両腕を駆使してその一撃を受け止める。

 

 受け止めた先は火花が飛び交うほどの威力であったが、そのままその武器を受け流す形として、ついで追撃を避けるべく後ろへ飛び去った。

 

 

「ちぃ……(やはり、亜空時空の影響が続いているか)」

 

 

 先ほどまでいた亜空時空という空間において、本堂自身が持っているエネルギーが消費され続けた結果、いままさにその力を発揮できずにいるのだと、本堂はそう判断した。

 

 そうなってしまうと、このままでは不味い。

 

 戦闘力としては、エネルギーの充填が十分である時であるならばいざ知らず、現状の状況でドン・ガバメンとの戦闘で負った傷が治り切れていない、いうなれば五体満足ではない状態で怪人を相手どるのは聊か不利であったからだ。

 

 しかも、目に見える範囲において、構成される戦闘員の存在が確認できていない為、どこかに隠れている可能性があるのではないか?と本堂は警戒を強める。

 

 

「ギギギギ……」

「ギャギャ!!」

 

 

 警戒を強めた本堂だったが、緑の肌の怪人たちは先ほどのこちらの戦いを見て警戒をしたのか、今度は二人組がこちらに襲ってくる形となった。

 

 

「くっ!!」

 

 

 同時、というにはいささか異なるが、本堂としては迫りくる相手の武器を火花を散らしながらその腕で受け流して直撃を避けるのが精いっぱいであった。が、その受け流しの際に相手の横腹へと蹴り技を入れる事には成功する。

 

 相手腹部へといれた蹴りにより、緑の肌の怪人はもう一体の方へとその身を飛ばし、その勢いをぶつかる事によって相殺する形となったが、それがもう一体の持っていた武器がその体に埋もれていくには十分であった。

 

 

「グギャァァァァァァ」

 

 

 断末魔の様な叫び声が聞こえたと思うと、緑の肌の怪人の一体はぐったりとしていった。

 そんな怪人を、もう一体の怪人はまるで物でも扱う様に振りほどき、ドサリとその倒れこんだ怪人はそのまま緑色の液体を垂れ流し続け、痙攣をしたかと思えば動かなくなっていった。

 

 

 これで残り2体。

 うまく相手の力を利用する事が偶然にも叶った事に、ようやく本堂は少し戦闘の感を取り戻し初めていた。

 

 

「ギャギャ」

「ギャ……ギ……」

 

 

 緑の肌の怪人の二体は、お互いに何かを示し合わすかの様に会話をしており、意思疎通がとれるという状況をみて、本堂はより一層の警戒を深めたのだが、その警戒とは裏腹にその怪人2体はゆっくりと後ろへ下がると、その体を生い茂る藪の中へと消していった。

 

 

「ま、まてっ!!」

 

 

 本堂は逃がすまいと後を追ったが、追った藪の先にはもう怪人の姿を望めることはなかった。

 

 

「逃げられた……か、深追いは……すまい。今は負傷者の事が先決だ」

 

 

 本堂はそう判断を切り替え、先ほどから怪我を患っている白人の二人の元へと赴く。

 二人の白人からは、警戒をあらわにする姿勢をとっていたため、言葉が通じるかどうか迷いはしたが、出血による朦朧なのか、男性の方は女性に支えられながらこちらを警戒しているという恰好であった。

 

 

「大丈夫だ。今から治療を施すから、安心してほしい」

 

 

 そういって、片方の手をその白人男性が負っている傷に対して手を当てていく、そうするとその当たった手のひらからは、赤い光とともにその傷が少しづつ消えていき、苦痛に歪んでいた白人男性の表情が幾分か和らいでいった。

 

 

 トライブの機能の一つに、ナノマシンによる治療能力が備わっている。その能力を使用することにより、トライヴ自身の傷に関しては処置が施せる形となる。

 

 

 これは自身のメンテナンスを一手に引き受ける能力でもあり、また他者に対してもトライヴが直接触れている間において行う事ができる代物である。

 

 しかし、いま行っている内容が、いつもよりも治療速度がはやまっていることに本堂は疑問を抱きはしたものの、彼の生命を救助できるという事が先決であるとし、その疑問に対して考えることをやめた。

 

 

 おおまかな応急処置が終了したとき、本堂はその手を放し、その姿を確認する。

 

 見た目的には、先ほどの外傷があったというのがウソの様に治っており、また刃物傷により痛んでいた衣類ももとに戻っていた事に、機能的には問題が発生していないという安堵感がもたらされたが、他に傷が無いかと思い

 

 

「どうだ?これで傷は治ったと思うが……ほかに負傷している場所はないか?」

 

 

 そう聞き返す。

 しかし、その問いに対して、本堂はおどろくべき回答をもらう。

 

 

 

「Vi...Vi estas, iu ajn...?」

 

 先ほどまで白人男性を支えていた女性は、今度はその男性をかばうかの様に前に出でてきて、その口からその様な言葉が紡がれた。

 

 紡がれた言葉に対して、本堂はというと

 

 

「まいったな……言葉がわからない」

 

 

 本堂の耳に聞こえたのは、本堂自身が聞いた事もない言葉であった。

 

 

「やはり、ここは日本ではなかったか……」

 

 

 疑問が確信に変わった事に、本堂にとっては信じたくない状況であるには十二分であった。

 

 

 




○説明しよう!
 トライヴの能力の一つに、治癒能力がある。

 これはトライヴ自身が持っている自己修復ナノマシンを利用した能力であり、トライヴが持っている未知エネルギー変換炉のエネルギー供給により、トライヴが触れている間、自身の治癒・修復が行える。

 ただし、他者や他の物に対して行われる場合は、トライヴがもつ未知エネルギー変換炉が戦闘モード(フルドライヴ)状態でなければならない。


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モリに住まう民1

 トライヴこと本堂には、サイボーグ化されるにあたり、主だった言語の習熟が容易になる機能が付加されていた。

 

 これは世界征服をもくろむ「ザ・リーク」の技術陣が追加していたものであり、それを使用する事によって言語理解は容易となる機能なのだが、その能力に関しては、本堂自身が知る前、つまり洗脳改造を受ける前に組織から脱出に成功したために、本堂がトライヴとしての機能が如何ほどの物かを理解できない部分があったのも災いしていた。

 

 

 ただ、先ほど述べた能力が使用出来る出来ないにしろ、本堂にとってみれば、いま、この状況の情報は彼らから得るしかないのである。

 

 

 特に先ほどの怪人たちが現れた状況など、この白人の二人を襲ったのも自分の様に改造を行うための素体にしようと企んだ可能性が高いのではないか?と、自身の体験からそういう考えに至るのも仕方ないことでもあった。

 

 そして、自分と同様にその組織から脱出を図ったのではないのか?という考えにも至る。

 それならば、撤退した先ほどの怪人たちがトライヴとしての情報をザ・リークに報告したという恐れがあり、対策をとらた状況で追撃に来るという可能性が浮上してくる。

 

 

「しまったな……」

 

 

 そうなってくると、この近くにザ・リークの拠点が存在している事にもなる。

 

 

 

 襲われていた彼らがどういう状況であったのかは容易にわかるものではないが、怪人に襲われた以上なんらかの関与が起きている事はまず間違いないであろうと本堂は考えた。

 そうなれば、まずはこの場を離れるのが賢明であろうと思うのだが・・・

 

 

 彼らからは先ほどからこちらを警戒するかのように訝しげな視線を向けられ続けている。

 

 

 それもそうであろうか、いまこの本堂の恰好といえば、どちらかといえばザ・リークの怪人と等しい物であり、そうなれば追手と思われても仕方がない。

 

 それならば、こちらが危害を加える意思が無い事を伝えなければ、この警戒心を解

かなければ、話が先に進まないのではなかろうか?と

 

 

 そう本堂が判断すると戦闘モードを解除し、いつもの姿へと本堂は戻り相手に対して両手を挙げて何かしらを行う事をしないという意思を表現し、対話を行おうと試みる

 

 

「君たちに危害を加える気はない、私は本堂(ホンドウ)という。本堂だ……」

 

 

 そう自身を指さしながら言葉にするが……

 

 

「……」

「……」

 

 

 彼らからの反応の変化は見受けられない。

 

 先ほど耳にした言語は、本堂がもっている知識の中の物とは異なりすぎているので、通じないのは当たり前の事であろう。

 

 いや、反応は一応あった。変身を解除した際に初めて見たとでもいう驚きに近い変化はあったが、すぐに元にもどっただけでもあった。

 

 だが、それでも本堂は、彼らに対しては危害を加えるつもりもないことをなんとか伝え、そしてこの場を離れることが重要である点を伝えねばと、身振り手振りで何とかしようと思った矢先、本堂の思考に何かしらのノイズが走る

 

 

「ぐっ……な、なにが起こっている……」

 

 

 痛みという物が起きている訳ではないが、めまいの様な平衡感覚が狂うとでもいう様なそんな感覚にさいなまれた、

 以前、この様な能力をもった怪人と戦った記憶がよみがえる。

 

 

「ま、まさか……精神感応(テレパシスト)の怪人か!?」

 

 

 過去、トライヴが戦った怪人に精神感応(テレパシスト)を扱う怪人というのがいた。

 こちらの脳に直接意思志向をたたきつけ、こちらの判断を鈍らせるというマインドコントロールに近い能力をもった怪人であったが、戦闘能力はさほど強い物でもなかった、だが、戦闘を主とする怪人との共闘となると、その能力はトライヴとしての機能を著しく削ぐのには十分な能力だったのである。

 

 その時と似た現象が自分に起きている。それはつまり、その能力を持った怪人がこの近くに来ているという事に他ならない。

 

 あの時は、一緒に戦ってくれた友がいたのだが、いまはその存在はいない。

 

 

「まずい……援軍をつれて戻ってきたか……?」

 

 

 本堂は、その場を離れるという事を断念し、迎撃をするべく周囲に注意を払う事にした。

 

 先ほどから頭の中に響くひどい違和感がさらに強った時

 

 

『あなたは、何者ですか?』

 

 

 そういう言葉の様なものが聞こえた様な気がした。

 いや、それは言葉というにはいささか変なのである。

 

 本堂の改造された聴覚に入ってきた訳ではなく、直接頭の中にそういう認識が発生したとでもいうのか

 

 

「誰だ!!どこにいる!!出てこい!!!」

 

 

 その言葉で出てくる可能背はほぼないだろうが、相手に対しては「気づいている」という意思表明にはなるだろう。

 

 警戒する構えをとりながら、正面、側面、背面、そして上空と、順次に目くばせをしながら辺りを伺い続けるが、視認できるのは遺体のままの怪人と、先ほど治療を施した二人の白人がいるだけである。

 

 だが、先ほど頭の中に響いた言葉は、それ以外の存在をこの林の中にいる事を示している。

 

 ならば擬態している可能性はゼロではない。過去にもそういう怪人がいた事があったのだ。「警戒しても、警戒しすぎる事は別に悪い事ではないぞ」とは友の言葉である。

 その言葉を思い出しながらも、本堂はそばにいる二人を護らなければと、焦りが出てくる。

 

 そんな時、再び頭の中に響くものがあった

 

 

『近くにいます。』

 

 

 そう認識した方向、否、認識させられた方向へと視線を向けると、先ほどの白人の女性が自身に手を当てて、本堂を睨んだままそう何かを口にしていた。

 

 が、耳に聞こえる言葉とは裏腹に、頭の中に響く言葉は、先ほどと同じ認識に陥る。

 

 

『あなたは、何者ですか?』

 

 

 その言葉を発する元を知った時

 

 

「君は、改造されてしまった…‥‥人間だったのか……」

 

 

 本堂の目には、怒りとも悲しみともいえる感情が現れ、無意識に拳を強く握りしめていた。

 

 

 彼らがザ・リークから逃げ出してきた者たちであると、本堂は確信した。

 

 



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モリに住まう民2

 頭の中に意思を飛ばしてきていたのが目の前にいる彼女という事実に、本堂は彼女たちもまた自分と同じ境遇であったのだろうと推測していた。

 

 

「そうか……君たちもそう……なのか」

 

 

 ザ・リークの所業に対しての怒り、それを阻止できなかった自身への怒り、彼女たちが体験した過去への哀しみ、そのそれぞれが本堂の感情を昂らせ、無意識にその手を強く握りしめていた事にさえ気づかないでいた。

 そんな中

 

 

『あなたは 何者ですか?』

 

 

 という問いといえる内容が、頭の中に響き続けていた。

 本堂は、先ほどまで昂った感情すぐさま落ち着かせ、まずはその問いに対しての返答を出すべきだろうと行動に移す

 

 

「本堂」

 

 

 下手に言葉を混ぜる事をせず、単的に回答するのが良しと判断し、問われた事に対する内容だけにを返す。

 その返事に対して、彼女ら二人で何か相談をしている風に見えるのだが、二人が口にしている内容に関しては本堂が知る由もできないでいた。が、再び頭に響く内容には

 

 

『あなたは ホンドウ ?』

 

 

 という、先ほど本堂が口にした言葉が含まれている事がわかり、多少なりとも通じてはいた事に良かったという思いが続いた。

 そうして、さらにもう一度、自身に対して指をさす恰好で

 

 

「本堂」

 

 

 と、意思表示を行う。

 その内容をみて、再び二人が会話をしたのちに意思が飛んでくる

 

 

『あなたは 危害加える 私たち?』

「いや、それは無い」

 

 

 その問いに対して、反射的に首を横に振りながら返事を返すのだが、彼女らからの何かしらの反応は帰ってこなかった。

 お互いが、何言う事もなく再び沈黙がなされたが、次に入っきた意思の内容で、本堂はある程度納得はした。

 

 

『正しい 手の平 むける』

『間違い 手の甲 むける』

『あなたは 危害加える 私たち?』

 

 

 どうやら彼らには首を横に振るというジェスチャーで意味は通じないのだろうと、本堂は理解し再び先ほどと同じ質問に対し、今度は胸元で手の甲を相手に対して向けつつ

 

 

「危害を加えるつもりはない」

 

 

 その言葉と、先ほどの指示を受けた内容から、ようやく訝しげな視線が多少なりとも緩和された気がした。

 

 ジェスチャーともハンドサインとも呼ばれる内容が、本堂の知る内容と異なるという認識になったのが、ふと「お前は短絡的な思考が勝手に走りすぎる傾向がある。もう少し観察する目を養うべきだ。それと知識も必要だがな」という苦笑しながら、自身に対し注意を投げかけてくる懐かしい言葉が記憶からよみがえる。

 

 そういう文化的な差異があるとは聞いた事はあったのだが、いざ自身が首肯での意思表明動作が通じない文化圏だとは思いもよらなかったことに、本堂は再び海外であることを痛感していた。

 

 そんな本堂の思いとは異なり、彼らから送られてきたものは

 

 

『助け ありがとう』

 

 

 という、礼ともいえる意思と、手の平をこちらに向けきている行動と内容であった。

 

 

「いや、気にする必要はない。他に怪我をしている様であるならば・・・と言っても通じないか」

 

 

 本堂としては、彼らの命に別状がないのであれば、それでいいという認識であり、その事を伝えようと思ったのだが、相手に対してその意思が伝わらない事に対し、多少のジレンマを感じていた。

 

 

『私たち 行く』

 

 

 本堂のそんな考えとは裏腹に、彼らはこの場を去ろうという意思を伝えられた。

 

 その意思を伝えられた本堂としては、同じ境遇の相手に対して放っておくという心境にはなれないでもいた。

 そのため、彼らに同行しようという事を伝えたいのだが、どうやって伝えたら良いのかと思案もしていたが、その方法を思いつかないでいた。

 

 

 そうこうしていると、彼ら二人は起き上がると先ほどの怪人が逃げ去った方向とは真逆の方向へ向かって移動し始める。

 

 

 本堂としては先ほどの意思を伝える方法を結局は思いつかないままでいたが、とりあえずはほおってはおけまいという考えと、二人の後を付いていけば何かしら現状の情報が得るものがあるのでは?という、妥協にも似た考えを思いつき、多少心証が良くないと思われるかもしれないが、この際、致し方ないという事で、そういう行動をとる事にした。

 

 

**********

 

 先行する二人に対し、一定の距離、相手を視界にとらえれる距離を開け、本堂は彼ら二人を気に留めつつも周囲を警戒しながら後を付いて歩いていた。

 

 歩いている二人を見ていると、まるで無防備ともいえるぐらいの様相にも見えてしまい、ザ・リークの怪人の追撃が来てしまえば、まず間違いなく後手をとってしまうのではなかろうか?という印象さえ受けてもいた。

 

 そんな折、本堂の頭に再び意思が飛んでくる

 

 

『なぜ ついてくる くるな』

 

 

 その伝わってきた意思は、拒絶という感情を抱くほどの内容であった。 

 説明をしようにも、説明をする術を持たない本堂にとっては、どうやって弁明をするべきかと悩んでしまったが、そんな時、本堂の研ぎ澄まされた臭覚が、微かに焦げた臭いが風上から漂ってきている事に気付いた。

 

 

 焦げた臭い、怪人に襲われた二人が向かう先、そしてザ・リークという存在

 

 

 本堂は、二人が向かうこの先に何かしらの場所があり、「まさか!?」という嫌な予感という物を携え、その焦げた臭いが漂ってきている方に向かって走り出す。

 

 

 

『そちらに いくな!』

 

 

 

 二人がいる方向から、そんな拒絶ともいえる強い意思を置き去りにしながら・・・

 

 

 

 

 




○ちょろっと世界設定コーナー
 ハンドサイン例
  手の甲を相手にみせる:いいえ、拒絶などの意味
  手の平を相手にみせる:はい、受諾などの意味


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