別にあんたのためじゃないんだからね (カラスマ)
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別にあんたのためじゃないんだからね

文才ありません。後残酷な描写が多々あります。大丈夫な方だけ見てください。


「やばっ…はやくいかないと。あいつのどこに。」

 

俺は急いで廊下を走っている。理由はあいつの待ってる教室へ行くためだ。やっと目的地に着いた俺はすぐ扉を開けた

ガラガラッ

 

「ごめ、おくれ…」

 

「遅い!私を待たせるなんていい度胸してるわね。ホームルームが終わったらすぐ来なさいって言ったでしょ。」

 

すぐに中にいた緑色のツインテールの女子から罵言をあびせられる。こいつは桜ノ宮亜梨主(ありす)。俺の遠縁にあたる女だ。

 

「なぁに?その顔?」

 

亜梨主からは俺がふてくされたように見えたのかそう言われた。俺はつい最近、この町に転校してきた。そして彼女達に会った。

 

「あんたは私の下僕みたいなものなんだからわきまえて行動しなさい」。

 

「はいはい。」

 

俺は適当に返す。下僕といいつつもそれ冗談と言うことがわかっているからだ。

 

 

「慧理主(えりす)は?」

 

慧理主は亜理主の妹で緑色のポニーテールをしてる女の子だ。

 

「先帰ってるわ。あの子具合悪そうだったし。」

 

明るくて外向的な姉、桜ノ宮亜梨主。大人しくて優しい双子の妹、桜ノ宮慧梨主(えりす)。遠縁の親戚ということもあって俺はよく三人でいるようになった。でもある日…

 

『お兄様…私、お兄様のことが好きです。』

 

俺は慧梨主に告白され付き合うことにした。でも付き合って分かった…俺が見ていたのは慧梨主じゃなかった。俺は亜梨主が…明るくて元気な亜梨主が…好きだ…

 

……………………

………………

……

 

 

「えっ遊びに!?」

 

「ああっ。」

 

「そうね…今週の日曜日なら空いて…」

 

「本当か!?」

そう問いかけると亜梨主は顔を赤らめ早足で歩き始める。

 

「別にあんたのためじゃないんだからね。偶然暇だからつきあってあげてもいいってはなしでしょ…」

 

さいごの方はよく聞こえなかった。ま、とりあえずオーケーということか。

 

「じゃあ、この前のキスは?」

 

その瞬間、振り向き少し怒りぎみで、

 

「この前のキスはただの気まぐれよ!気のまよいなの、早く忘れちゃいなさいよ!」

 

「本当かよ?」

 

ドゴォ

 

いてぇ……おもっいきりカバンを顔面に投げつけられた。

 

「ちょっ…」

 

「あんたなんかうちが近いだけのカバン持ちにすぎないのよ。」

 

そういって亜梨主は早足で行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―亜梨主視点―

 

「今日も疲れちゃたわ。」

 

カバンを部屋に投げ捨てベッドに座り込む。意外とあっけなかったわね…。こんなに簡単におとせちゃうなんて…。慧梨主はあいつにいれこんでたけど現実はこんなものよね。もうあいつはあたしだけを見ているはず……慧梨主はあいつのどこを好きになったのかしら?以前からお兄様なんて言ってなついてたけど…これで慧梨主の恋も終わりね。あとはあたしが………………

 

コンコン

 

「鍵ならあいてるわよ。」

 

「入りますねお姉さま。」

 

あら?慧梨主が私の部屋にくるなんて珍しいわね。

 

「どうしたの、ちょっと顔色が悪いわよ、慧梨主?」

 

「お姉さま……私…………お姉さまに確かめたいことがあるんです。」

 

「確かめたいこと?何かしら?」

 

「三日前の放課後、お兄様と一緒に帰りましたよね。」

 

「え…そうだったかしら?」

 

どうして慧梨主が知ってるの?慧理主は委員会で帰りが遅かったはず…

 

「私が二人を見間違えるはずありません。」

 

まずいわね。なんとか誤魔化さないと…

 

「あ、そうそう。たまたま帰りが一緒だったから。カバンを持たせたのよ。どうせ帰る方向は一緒だしね。」

 

「本当に…?なにもなかったんですか…」

 

「う…」

 

慧梨主の様子がいつもと違う。怒気でもない不気味な雰囲気がでてる。だめ、平常心よ私。

 

「…あるわけないでしょ、そもそもあいつは慧梨主の彼氏だし、私はまったく興味ないわよ。」

 

「お姉さま…嘘を言ってます。」

 

その言葉で私は思わず後ろに後ずさる。 いつもの慧理主じゃない。そう感じた。

 

 

「私…見たんです。お姉さまとお兄様がキスしてるところ。」

 

「そんな…冗談言わないで!」

 

「冗談で私、こんなこと言わないです。ひどい…あんまりですお姉さま!!」

 

「誤解よ…誤解!勝手に決めつけないで!!」

 

私はあなたのためを思って…

 

「じゃあ…何でキスなんかしてたのか説明して、お姉さま!!」

 

どうしよう…なにも言えない。慧理主には言うわけにはいかない。

 

「何も言ってくださらないのですね。私…ようやく変われると思ってた…お兄様とお付き合いすることで…。自分に自信が持てるかもって…。弱い自分を変えることもできるかもしれないって。」

 

「慧梨主………」

 

やめて、そんなに思い詰めないで……私はあなたを思って

 

「だけど…いつもそう。私が好きになった人は友達ですら…奪われてしまう……」

 

「それは誤解だって言ってるでしょ!!私の言うことが信じられないの?」

 

「お姉さま…あんまりです。この後におよんでも……本当のことをいってくれないんですね。それなら…」

 

「え……?」

 

慧梨主はポケットからナイフをとりだし切っ先を自分の方へ向けた。金属部分は部屋の光で妖しく光っていることから本物であることを私に知らしめる。

 

「ちょ…。それおもちゃじゃないでしょ。危ないからしまいなさいよ。」

 

「ひどい…ひどいお姉さま。嘘ばっかりのお姉さま。でも……私お姉さまを嫌いになれないの。私の……私の…たった一つの自慢。私の憧れだから………。」

 

どうして?涙が止まらない。いやな結末しか浮かんでこない。やめて…やめて慧梨主。

 

「やめなさい慧梨主!!死ぬ気なの!?」

 

「ひどい目にあってもお姉さまを憎むことはできません。」

 

慧理主は聞く耳をもたない。だめ………慧梨主………

 

「だけども…お姉さまにもお兄様にも裏切られたこの世界で生きていけません。」

 

「やめて…。馬鹿なことはやめなさい!これは命令よ!」

 

「私初めて…お姉さまの命令に背きます。お姉さま…大好き。ありがとう。……さよなら。」

 

慧理主は笑った。今まで見たことないくらい可憐で…儚げな笑顔で。そしてナイフを持った手を首に当て…

 

「だめぇ!!やめてぇ!!」

 

私は手を伸ばした。止めたかった。だけど遅かった。ナイフは慧梨主の柔肌を簡単に切り裂き血が止まることなく出てくる。

 

「やああああ!!えりすぅぅぅぅ!!」

 

倒れそうになったところを支えるような形で慧梨主を受け止めた。その体からどんどん体温が奪われていく

 

「えりす……しっかりしてえりす。やだ、こんなのだめよ…やだ…えりすの体がどんどん冷たくなる。目を開けてえりす。」

 

そう問いかけても無駄なことは分かっていた。でも、認めたくない。ついに慧梨主の体の体温がなくなってしまった。

 

「やだああぁぁぁぁ!!」

 

あいつのせいで…あいつさえいなければ………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―主人公視点―

時は過ぎやっと日曜日になった。俺は亜梨主の家の前に着きおそるおそるインターホンを押した。

 

「あ、はーい。」

 

待つこと数分。でてきたのは亜梨主だった。

 

「いらっしゃい。あがっていいわよ。」

 

亜梨主の部屋に入る直前で気づく。いつもなら慧梨主もいるはずだ。

 

「慧梨主は?」

 

「部屋で寝てるわよ。まだ調子悪くて…学校休んでるの。てきとーに座って。」

 

亜梨主の部屋は意外といっていいのかやっぱりなのか女の子らしい部屋だった。

 

「なぁ…俺達のこと慧梨主に話しちゃダメかな?」

 

亜理主の顔が一瞬ひきつるがすぐにこちらを向き真面目な顔になる。

 

「でも慧梨主はあんたのこと…」

 

そんなことは分かっている。それでも。

 

「それでも俺は亜梨主のことが好きだ。」

 

「じゃあ…慧梨主とのことは遊びだったの。」

 

「………ごめん」

 

遊びと思われても仕方ない。妹と付き合っといて姉の方を好きになるなんて最低な男なんだから。

 

 

「ふーん、やっぱりそうだったんだ。男って簡単に心変わりしちゃうのね。」

 

「なんか言ったか?」

 

「べっつにー。あたしも遠慮することはないってだけ。」

 

そう言って亜梨主は隅においてあった大きなカバンから何かを取り出した。

 

「これ、パパの昔のゴルフクラブ。キューバンアイアンって言うんだって…」

 

「なにそれ?ゴルフでもするのかよ。」

 

「これはね……こうやって使うの!!」

 

亜梨主は僕に向けて降り下ろしてきた。あまりに突然の出来事に俺は動くことすらできず気づいときには頭に衝撃が走り……

全てが暗くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううん…」

 

頭がまだ痛む。どうやら血が流れているようだ。顔に冷たさが感じる。まるで石床に横なってる感覚がする。

 

「あ……気がついたみたいね。」

 

「ここは……………?」

 

まだボーッとする意識の中すぐそばにいた亜理主に聞いた。

 

「ここは桜ノ宮家にある私しか使ってない地下室。それにしても…頭悪そうな顔…全然状況が呑み込めてない感じね。」

 

そして彼女はクスクス笑う。それは今までの彼女とは違う狂気に満ちたような笑いだ。逃げなきゃ殺される。そう思い立ち上がろうとしたが足に激痛が走り動くことさえできなかった。

 

「あはは、むだむだ。だってゴルフクラブで足潰したもん。逃げられないわよ、もう立てないわよね。」

 

「なっ!?」

 

背筋にゾッした感覚が通り抜ける。まさか彼女がここまでやるとは思いもしなかった。

 

「あんたさえ現れなければ、私と慧梨主はずっと一緒にいられたのに…あんたのせいであたし達姉妹の幸せはズタズタになったのよ!!」

 

ガンっ

 

ゴルフクラブでまた頭を殴られる。何がなんだかまったく分からない。どういうことだよ…

 

「俺達……恋人同士じゃないのかよ?」

 

一瞬彼女の動きは止まったがすぐに顔が歪みだし、

 

「はぁ?寝ぼけるのもいい加減にして。私はね、慧梨主に害虫が近づかないように守っていただけ。」

 

彼女の答えにまた頭が混乱してきた。こんなの俺の知ってる亜理主じゃない。

 

「何で………?」

 

「そんなの決まってるでしょ。慧梨主を愛してるからよ。慧梨主があんたみたいな汚ならしい男どもに騙され苦しむ姿が見たくなかったの。あたしが本気で好きになると思った?あっはっはっは!!ぜーんぶ、えんぎ。」

 

「姉妹で…しかも女同士でそんなのおかしいだろ。」

 

「あんたに何が分かるっていうのよ!!」

 

怒る。狂ったように。そしてまた殴られる。完全なる殺意。今はそれしか伝わってこなかった。

 

「慧梨主を守るためならうじ虫とだってキスできるはわ。あんたとキスした時だってそうよ。吐きそうなくらい気持ち悪かった!実際に後で吐いたけどね!慧梨主のためだと思って必死に我慢したの。」

 

「お、おれのためじゃ……なかっ…………」

 

「フン、うるさいわね。何泣きそうになってんのよ?人の話聞いてなかったの?『別にあんたのためじゃないんだからね』って。何回も言ったけどわかる?私はね、慧梨主に近づいた身の程知らずをこらしめてたの。色目を使ったら簡単になびいてきたわ。」

 

「そいつらは………………どうしたんだよ?」

 

「さんざん後悔させてからこの世から消えてもらったわ。」

 

そんな…いくら妹のためでもここまでするなんて…

 

「今回も上手くいくと思ったのに…。あんたみたいなゴミのせいで、慧梨主は遠いところへ行ってしまった。死んだのよ……………私の手のとどかないところに………」

 

そんな…嘘だろ。俺のせいで。嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ…

 

「あは、あーはっはっはっは!!何だかどうでもよくなっちゃた。あの子がいない世界にいてもしょうがないよね。」

 

笑う。ただ虚しく…悲しく……亜理主は笑った。

 

「でもね、許さない。」

 

再び鋭い目付きで睨み近づいてくる。

 

「慧梨主の心を乱して、私達の未来を奪ったあんただけは…」

 

ドガッ

 

「ぐっ!」

 

亜梨主は足で俺の顔を踏みつけそのまま地面へと叩きつける。

 

「わきまえなさいよ。たかが虫けらごときの分際で、私達の未来を奪ったことを。」

 

今度は亜理主が俺の上に跨がった。手にはゴルフクラブのかわりに血塗られたナイフがあった。

 

「このナイフは慧理主を殺したナイフ。」

 

ピトッ、とナイフを俺の心臓部分に向ける。

 

「ぐぁ…やめっ。」

 

殺される。そう思って抵抗するもまるで力が入らない。薬でも盛られたのだろうか

 

「私は慧梨主を心の底から愛してる。慧梨主の全ては私のもの。私の全ては慧梨主のもの。誰よりも愛してるの。だから、慧理主を殺したあなたは色も音もない世界で永遠にさまよいなさい!!」

 

 

「うわああああああぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ………………うう………えりすぅ……」

 

薄暗い部屋の中、少女は泣いていた。隣には琴切れた男性が横たわっている。少女はそのままナイフを自分の首元まで持ってくる。

 

「慧梨主…えりす。世界の誰よりも愛してる。すぐそっち逝くから。今度は守ってあげるから……ずっと一緒だから…………大好きだよ、慧梨主。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

End




こんな恋の結末。行き過ぎた姉妹愛。この場合悪いのは二股をかけた主人公?それとも騙した亜理主?はてさてどちらなのか……









(書いてから気づいた。主人公に名前がねぇ…)


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