ダンジョンにモニカがいるのは間違っているだろうか (刺身の盛り合わせ)
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【ステイタス】モニカ・ヴァイスヴィント(2023年9月5日更新)

どうも、刺身の盛り合わせです。

本作もかなりお話が進んできましたので、モニカ周りの設定を公開することにしました。
基本的に、【ステイタス】・【魔法】・【スキル】・【装備】・【必殺技】の説明と裏設定などを書いて行こうと思います。

今後本文中でステイタスの更新が行われたら、その都度更新していく予定です。
また、更新した際はサブタイトルの更新日時を変更していきます。
更新した部分には『New!』とつけてます。

それでは、どうぞ。

2023/9/5 『二つ名』及び『モニカの装備』に新たな項目を追加しました



ステイタス(内容は第69話時点でのもの)

身長:138C(ここ重要)

New!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

モニカ・ヴァイスヴィント

LV.2

力:F308 耐久:F347 器用:F336 敏捷:F316 魔力:H139

狩人:I

 

魔法

【ウェスタ・エール】

●鼓舞魔法。

●発動対象は自身と自身が仲間と認識している者達の全能力を限界まで引き上げる。

●対象者が多ければ多いほど消費精神力(マインド)が増加。

●詠唱式【共に戦いし同胞よ。我が呼び声に応え、起立せよ】

 

スキル

上官命令(オフィサー・オーダー)

●威圧行為を行うことで、対象に強制停止(リストレイト)を行う。

●自身より格上の相手に行う場合、差が大きいほど成功率・効果時間が共に低下。

対して、自身より格下の相手に行う場合、差が大きいほど成功率・効果時間が共に上昇。

●対象が何らかの状態異常に陥っている場合、相手との差に関係なく成功率・効果時間が共に上昇。

●対象へ向ける威圧の大きさによって効果上昇。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

New!

二つ名:【炎輝(フルゴル)

 ●戦争遊戯(ウォーゲーム)のための神会(デナトゥス)で決められた二つ名。

 ●『合法ロリ(偽)』に決まりかけたが、ヘスティアを中心とした良識ある神々が断固抗議し論争になり、全員が疲弊したところで「金髪で炎に関する魔法を使うなら、こういう名前なんてどうだい?」みたいな感じでヘルメスが提案し採用された………という設定。

 ●カタカナの部分は『輝く』をラテン語訳したもの(fulgor)。

名前はヴェルフの『不冷(イグニス)』を参考に、『輝く炎』と名付けた。

 

 

モニカの装備

【ヘスティア・サーベル】

●ヘスティアがヘファイストスに頼み込んで作ってもらった武器で、ヘスティア・ナイフと同様に、35年ローン42回払いのヘスティア渾身の買物その2。

●お値段は二億ヴァリス。

●ミスリルとヘスティアの髪、『神血(イコル)』、ヘスティアの【神聖文字(ヒエログリフ)】を編み込み作成された不壊属性(デュランダル)を持つ特殊武器(スペリオルズ)

●ベルの持つ【ヘスティア・ナイフ】と同様に『鍛冶屋の手を離れて成長する邪道な武器』。

 

―――なのだが、ヘスティア・ナイフとは異なる部分が一つある。

それは、『魔法の伝導率』である。

原作三巻でベルがミノタウロスの体内にヘスティア・ナイフを経由してファイアボルトを打ち込んだように、本来ミスリルで作られた武器は魔法伝導率が非常に高くなっている。

しかし、ヘスティア・サーベルは魔法伝導率が異常に低い。

通常のミスリル武器なら魔法を経由・拡散させるはずが、ヘスティア・サーベルの場合魔法を無効化・反射させるまでに能力が変容しており、『魔法伝導率が低い』というより『魔法を無効化する』と言った方が近い。

このような武器になった理由としては、ヘスティアの神血(イコル)とヘスティアのモニカへの思いが武器に作用したのではと考えられている。

 

 

【フリューゲル・コート】

 ●製作者であるツムギからの好意により、タダで手に入れた。

●【ヘルメス・ファミリア】所属のツムギが本人の持ちうるすべての力を使い、死力を尽くして1週間で作り上げた一級品装備。

●階層主ゴライアスのドロップアイテムである『ゴライアスの硬皮』を発展スキルの『裁縫』で仕立てた一品。

●性能としては、中層までのモンスターの物理・魔法含めた全ての攻撃、および発生する衝撃を全て防ぐほどの耐久力を持っている。

  また下層のモンスターの攻撃も防ぐことも出来るが、衝撃までは防げないため、一撃が大きければ負傷も大きくなる。

●コート自体が少し大きめに作られているため、ベルなどある程度の身長の人まで装備が可能。

  また、リリやモニカなど装備する人によっては全身を包み隠すことも可能。

 

※本来の『ゴライアスの硬皮』を使った装備はこれよりも低い性能の装備なのだが、ツムギの発展スキルである『裁縫』の力を用いて作られたことで性能が大きく上昇している。

 

 

New!

【ナイフ】

 ●晶達との特訓でタマキから『投擲技術』を教えてもらったので、自分専用にと戦争遊戯(ウォーゲーム)三日前にヴェルフに作ってもらった武器。

 ●通常時は新たに腰に装備したホルスターに入れており、使用時にはホルスターバックの蓋を開け中からナイフを取り出し投げつける。

 ●ナイフの大きさとしてはモニカが持ちやすく投げやすいよう、形状はステーキナイフに似た……というよりもろステーキナイフの形をしている。(ちなみにタマキは通常サイズのナイフを使用)

 

※今後もステーキナイフを投げ続ける予定。

理由は作者の趣味です。食事用ナイフ投げて敵倒すのいいよね…

 

 

New!

【ドレス】

 ●【アポロン・ファミリア】が主催した『神の宴』に参加する際にツムギに作ってもらったドレス。

 ●スカート丈はミニで、ノースリーブのボートネックドレス、色は黒。

 ●「このドレスが一番モニカさんに似合っています!」(ツムギ談)

 

 

 

魔法・スキル・必殺技についての説明

《魔法》

【ウェスタ・エール】

●自身も含めた対象者の全ての基礎アビリティを10分間だけ強制的に限界(ここでの限界値はS999)まで引き上げる魔法。

●対象者は『自身』と『自身が仲間と認識している者』。ここでの『自身が仲間と認識している者』は同じファミリアの仲間は勿論、『共に戦う他ファミリアの冒険者』にも作用する。

●魔法は効果が終了してから5分のインターバルが必要になるが、連続して使用することも可能。

 

…と、一見強力な魔法に見えるが、『対象者が多いとその分消費する精神力(マインド)の量が増える』、『既に限界突破した対象に重ねがけすることは出来ない』、『インターバルを置かず連続して使用した場合、S999→A899→B799→…と引き上げられる限界が徐々に減少していく』などの弱点も存在する。

また、あくまでも現在のレベルの限界まで引き上げるだけなので、春姫が使う魔法『ウチデノコヅチ』のように【ランクアップ】する訳ではない。

 

この魔法の詠唱中はモニカが炎に包まれ、発動した際にはその炎が周囲に広がり、発動対象に炎に当たることで効果が発現する。

 

※モチーフはプリコネでモニカが使う『フリューゲルエール』。『ウェスタ』には『永遠に燃え続ける聖火』という意味がある。

この魔法を漢字に変換すると、『聖火の鼓舞』という名前になる。

 

 

《スキル》

上官命令(オフィサー・オーダー)

 ●モニカがラキア王国で軍人として訓練を行っている間に習得した『威圧』、これがスキルとなったもの。

 ●ここでの『状態異常』には、毒や麻痺だけでなく風邪や酩酊なども状態異常に含まれる。

 ●このスキルは、『【ロキ・ファミリア】の第一級冒険者達を新入り冒険者が威圧させた』。という『偉業』から発現した。

 

…と、スキル内容だけを見ればダンジョン戦闘内でも活用できそうだが実はそうではない。

このスキルには決定的な欠点がある。

それは、『人語を理解できない相手には成功率が大幅に減少する』ということである。

表情だけでも発動することにはするが、言葉ありの場合よりも成功率は低下している。

なので、モンスターなどの言葉を理解できない相手には威圧が効かないことの方が多く、対人戦向けのスキルとなっている。

……ちなみに、表情だけでの威圧の成功率が通常よりも低いのは、オッタルやリューのように表情に威圧感がないため。

なので、威圧相手の身長が高い場合、威圧相手からは不機嫌そうな少女にしか見えない。

 

 

《必殺技》

【紫電一閃】(出典:神バハ・グラブル・プリコネより)

●モニカがラキア王国で自分のものにした必殺技。

●サーベルを胸前で縦に構え直し、右手を引きながらサーベルの切っ先を対象に向け、剣先に左手を添えて平突きの体勢を取り、踏み出すのと同時に一気に対象との距離を詰め、突撃する。

●相手に突撃した際は、状況によって切り抜けと突きを使い分ける。

 

※攻撃の際の動きはプリコネの『紫電一閃』。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
また、何か追加してほしい内容や補足説明があれば、是非とも感想お願いします。


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プロローグ

刺身の盛り合わせです。

「ダンまちにプリコネキャラって結構合うよね…」って思いついたら今書いてる作品よりも創作意欲がバンバン湧いてきたので浮気しちゃいました。
もう一つの投稿作品もちゃんと書いている最中なので、もう少し待っていてください!

戦闘描写は初めて書くのでかなり拙いかもしれないですが、頑張って書いていきます!

それでは、始まります。

10/19 サブタイトルの変更を行いました。
11/1 本編の誤字修正を行いました


数多の階層に分かれつつ、地下奥深くまで続いている迷宮である≪ダンジョン≫。

そして、そんなダンジョンを抱えている世界でも有数の一大都市≪オラリオ≫。

富と名声を求め、命知らずの冒険者達が毎日訪れるこのダンジョンにて、今日も勇敢な冒険者達の戦の音が―――。

 

「うわああああああああああっ!?」

 

「逃げるんじゃない、ベル・クラネル! 戦わなければ経験値を積むことは出来んぞっ!」

 

―――どちらかと言うと、悲鳴と叱咤が響き渡っていた。

 

「ムリムリムリ! 少しは闘い慣れてきたとはいえ、コボルト五体は流石にキツイですからー!?」

 

そのように言いながら必死にコボルトから逃げ回っているのは白髪に深紅の瞳のヒューマン。

その姿はまるで白うさぎを連想させるような見た目をしている《ベル・クラネル》という少年。

【ヘスティア・ファミリア】に所属している二人の団員の内の一人である。

 

「なっ!? こちらにコボルト達を連れてくるんじゃない、ベル!! くッ、仕方ないッ!!」

 

ベルの連れてきたコボルト達からの攻撃を受け流しかわしているのは、金色の長髪を二つ結びにし、くすんだ金色の瞳をしたヒューマン。

彼女の名前は、《モニカ・ヴァイスヴィント》。

彼女こそが、【ヘスティア・ファミリア】所属のもう一人の団員である。

 

「セイヤッ!!」

 

コボルト達からの攻撃をかわし続けていたモニカだが、腰に下げていたサーベルを抜き、掛け声と共に左から右に横一線に切り払いを行ったことで、自身に襲い掛かろうとしていた三体のコボルトを諸共撃破することに成功した。

 

『『『ギィィィィィッ!!』』』

 

モニカの放った切り払い攻撃は、コボルト達にとって致命的な一撃となり、断末魔を上げながら両断され、その場には魔石が転がり落ちた。

 

「モニカさん、大丈夫ですか!?」

 

「私なら無事だ、ベル。 それよりコボルトは残り二体…倒せるな?」

 

「…二体ずつなら大丈夫です、やれます!!」

 

少し離れた場所からモニカとベルを警戒しながら見ているコボルト二体。

ベルがコボルトに突撃しようとすると、背後から大量の気配と共に足音が聞こえてきた。

二人が振り向くと、ゴブリンが群れを成してモニカ達に近づいていた。

モニカはそんなゴブリン達に振り向くと、ベルに背中を合わせた。

 

「ベル、私はゴブリン達を抑えておく。 その間にコボルト達を倒してみろ」

 

「!…分かりました。 コボルトを倒したら加勢します! それまで気を付けてください、モニカさん!」

 

「分かっているとも! …ヘスティア・ファミリア所属、モニカ・ヴァイスヴィント!! いざ行かん!!」

 

少女は、とある使命を果たすためにダンジョンに訪れた。

その使命は、彼女の夢を叶えるために課せられたもの。

しかし、迷宮都市での多くの出会いや事件によって、彼女の夢が、そして思いが大きく変わっていくことになる。

これは、使命に燃える少女が、新たな未来に向けて仲間達と共に歩んでゆく『眷属の物語(ファミリア・ミィス)』――。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
今回は戦闘描写は少なめでしたが、書くの結構大変なんですね…。

次回は、オラリオへ訪れることになったモニカの使命の内容について詳しく書いていこうと思います!

…ちなみにプリコネで好きなキャラは沢山いますが、一番はモニカです。


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第一章
第1話 『使命』


刺身の盛り合わせです。
第一話を見てくださり、本当にありがとうございます!

今回は元々ストックがあったので、すぐ投稿が出来ました。
今回はオラリオへ向かうまでの説明回になっているので、キャラ会話がそこまでないので注意を。

そして、評価・感想・お気に入り登録をしてくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、始まります。

10/22 サブタイトルの変更を行いました。


モニカ・ヴァイスヴィント。

彼女はとある使命の為にオラリオへと訪れた。

そんな彼女は、一体どこで指名を受けどこからオラリオに訪れたのだろうか?

そう、≪ラキア王国≫である。

ラキア王国、それはオラリオから見て西部にある君主制国家。

被治者の数は六十万を超すと言われており、王都には巨大な王城と城下町が存在している。

緑豊かで肥沃な大地を有しているこの国は、一方では『軍事国家』という野蛮な一面を持っていた。

何故ラキア王国が『軍事国家』などという一面を有しているのか?

それは、君主であるの王の上に君臨している一柱の神の神意によるものが原因となっている。

その神の名は『軍神アレス』。

オリンポス十二神の一柱である彼は、事実上の一国の頂点であり、国を統べる男神である。

つまり、ラキア王国の正体とは数ある派閥の属性の中でも最大の規模と繁雑さを持つ、国家系【ファミリア】となっているのである。

兵士や軍人は全て『神の恩恵(ファルナ)』を授かった眷属、すなわち戦闘員である一方で、産業を営み国を支える民は非戦闘員となっており、唯一無二の主神アレスの王権神授により、歴代の王――派閥の団長も兼ねる――も選ばれてきたのである。

始めはアレスとわずかな団員で構成された小さな【ファミリア】だったものの、長い時間と苦労を経た結果、建国するまでに至り歴史ある王国として存続することが出来たのである。

そんなラキア王国の玉座にて、とある話し合いが行われていた。

 

「オラリオに密偵を送るぞ、マリウス!」

 

このように発言したのが件の神である《アレス》。

常に真っ赤な鎧を身に纏っており、獅子を想起させるような光り輝く金髪に、精悍で逞しい美丈夫の容貌を持つイケメンである一方、性格は極めて好戦的で自分勝手、自信過剰、傲岸不遜そのもので、まさにオレ様系男神となっている。

 

「はぁ、密偵ですか…。」

 

神アレスの密偵発言に返答を行った者は《マリウス》、フルネームはマリウス・ウィクトリクス・ラキア。

ラキア王国の第一王子で、左肩だけに肩章を付けた黒の軍服に黒のマントを身に纏っており、右目の下に泣きボクロを付けている。

アレス・ファミリアでは副団長を担当しているものの、主神であるアレスに振り回されておりとても苦労しているのである。

 

「筋肉頭で学ぶことをしないあんたがそんな案を出すなんて…明日は槍でも降りますかね」

 

「おい、それどういう意味だマリウス!?」

 

「まぁまぁ、それは一旦置いておきましょう。それよりも密偵なんて言葉、どこで教えてもらってきたんですか?」

 

「お前ホント腹立つなマリウス!?…まあいい!それよりも密偵だ!密偵をオラリオに送ってオラリオの内情を探るぞ!!」

 

「まぁそれはいい考えだとは思うんですけど…。で、一体だれを送るんですか?」

 

「それはお前に任せるぞ、マリウス!!私はマルティヌスと話をしてくるのでな!」

 

案を出すだけ出した後は、マリウスに全てを丸投げしてマルティヌスの元に行くアレス。

いつも通り過ぎてため息すら出ないマリウス。

何はともあれ、今回アレスの出した案はなかなか良いものと考えたため、考えていくことにした。

 

『内偵を出すとして、あちらでファミリアに所属することを考えると、神の恩恵(ファルナ)を授かっている戦闘員が行くとなると、ファミリア所属が困難になる。かといって、非戦闘員だとあちらの情報を集めるのが困難になる。戦闘が出来るけど恩恵をもらっていない人物などいないはず。一体どうしたものか…』

 

「…ん?……なるほど、ちょうどいいか。すまんがこの人物を呼んできてくれ、あとついでにアレス様」

 

手元の資料から密偵を送ることが出来る人物に当たりが付いたマリウス。

側にいる部下に対象の人物を呼びつけるように指示を行うと同時に、父の下に向かった神アレスを呼び寄せるように指示を出した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「よく来てくれたな、モニカ・ヴァイスヴィント」

 

「…それで、一体私に何の御用でしょうか、アレス様、マリウス殿下」

 

マリウスに呼ばれて玉座にやってきたのは、《モニカ・ヴァイスヴィント》。

この作品の主人公ともいえる存在である。

玉座のある部屋には玉座に座ったアレス、そのアレスの側に立っているマリウスとその部下たち、そしてアレスとマリウスに跪いているモニカのみがいる。

 

「本日呼んだのは他でもない。君にh…」

 

「お前には本日より、オラリオに行ってもらう!!」

 

「…え゛?」

 

アレスによる突然の『オラリオ行き宣言』により、思考回路がフリーズしてしまうモニカ。

 

「あ〜もう何やってんだこの筋肉頭!固まっちゃったじゃないですか!?」

 

「誰が筋肉頭だ、マリウス!?」

 

「……えっと、アレス様?なぜ私がオラリオに向かわなければならないのですか?」

 

「理由については今から説明する、マリウスが!」

 

それぐらい自分でしろよ…。今回、軍部会議でオラリオに密偵を送ることが決まったのだが、ここで一つの問題が発生した。」

 

「問題…ですか?それは一体…」

 

「人選だ。オラリオで活動するにはどこかのファミリアに所属しなければならないが。闘えるもののほとんどがアレス様からの神の恩恵(ファルナ)を受け取っているため、その時点でファミリアに所属するのが困難。だからと言って非戦闘員だと我らが戦うファミリアの情報を手に入れることが難しいと考えた。そこで白羽の矢が立ったのが君だ、モニカ・ヴァイスヴィント」

 

「わ、私ですか?」

 

「そうだ。君は我が軍に志願をした一般人、かつ神の恩恵(ファルナ)をもらっていない、更に最終試験に残るほどの実力を持っているなどの点から、君が選出された」

 

実際のところ、現在のモニカは神の恩恵(ファルナ)なしでラキアのLV.2戦闘員と同等の力を持っているため、今回の任務で選ばれるのは時間の問題だったのである。

 

「今回君をオラリオに送るのには、この任務に『最終試験』という意味があるからだ」

 

「…最終試験ならば、以前受けたと思うのですが」

 

「確かに、以前君には最終試験を受けてもらっている。だからこれは『実地試験』と思ってくれて構わない。オラリオでどこかのファミリアに所属して、こちらにオラリオの情報を送ってもらいたい。もちろん、この任務が終わり次第、我が軍に配属させる。…何か質問や異議はあるか?」

 

「いえ、特にありません」

 

「ならば、お前には今日にでもオラリオに向かってもらう!良いな!」

 

「了解しました!このモニカ・ヴァイスヴィント、我らがラキア王国の主神・アレス様の名に懸けて、必ずやオラリオでの使命を果たしてまいります!」

 

「ならばよし!行けぇい、モニカ・ヴァイスヴィントォ!!」

 

「はい、失礼いたしました!」

 

アレスの発した掛け声の勢いのまま玉座のある間から去っていくモニカ。

全速力で城から出て向かう先は自分が現在住んでいる宿舎。

すぐにオラリオへ向かうために、自分の道具を一つにまとめていた。

 

「……見ていてください、お父様、お母様。この任務を成功させて、私は必ず軍人になって見せます」

 

こうしてこの物語の主人公、モニカ・ヴァイスヴィントはオラリオへ行くこととなった。

 

「すまない、オラリオ方面に向かう馬車などはあるだろうか?……えっ、ない?歩きだけ?」

 

徒歩で。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「…そういえばアレス様。彼女がオラリオに行くのに、馬車などの手配はしましたか?」

 

「あっ…いやそういうのはお前の仕事だろマリウス!」

 

「いやいや、そこはこの案を出したアレス様がやるべきでしょう」

 

「いやいやいやいや!?」

 

「いやいやいやいや」

 

…この後主神と副団長の罪の擦り付け合いは10分ほど続いた。

がんばれ、モニカ・ヴァイスヴィント!

まずはオラリオへ向かうための馬車を探すところからだ!

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
アレスはともかくマリウスなかなか書きにくい…間違ってないか心配だぁ…


次回はオラリオ到着からファミリア所属まで書けたらいいなぁ…
また、ストック尽きたので、少し遅れると思います。


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第2話 『オラリオ』

刺身の盛り合わせです。
前回を見ていただき、ありがとうございます!

今回は早く書くことが出来たので、少し早めに投稿しました!
今回は食事シーンがありますが、初挑戦なのでかなり拙いものになっているかと思います。
なので、改善点があれば教えていただければ幸いです。

何回でも書きますが、評価・感想・お気に入り登録をしてくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、始まります。

10/22 サブタイトルの変更を行いました。
1/21 ラキアからオラリオに着くまでの期間を大幅に変更しました。


まさかのラキア王国からオラリオに向けての馬車が一本もないという事態に陥ったモニカだったが、歩きと馬車、時には荷馬車をモンスターから守る傭兵もどきを行いながら約一週間。

モニカはようやく迷宮都市オラリオにたどり着くことが出来た。

 

「よ、ようやくたどり着いたぞ、オラリオ…!!」

 

モニカはオラリオの入口にある検問所への長い行列に並び、自分の番が来るまで今後の予定を考えていた。

 

『オラリオへ入ったら何よりもまずすることはファミリアの所属。使命のことも考えるとやはり商業系や製作系、医療系ファミリアより戦闘を多く行う探索系ファミリアか…。それに、戦闘系ならまだ他のファミリアよりも経験がある分入団しやすい可能性が高い…。決めた、探索系ファミリアを中心に回ってみるとしよう!…それにしてもなぜ周りの連中はジロジロと私を見てくるのだ?謎だ…』

 

並びながら考え事をしていると、何故か周りから多くの視線を感じたモニカ。

理由が全く分からなかったものの行列はどんどん進んでいき、ようやくモニカの番になった。

 

「よし、次のものは前に出ろ!」

 

門番の指示に従い、モニカは門番の前に立った。

 

な、なんで子供が列に…!?あー、お嬢ちゃん。お父さんやお母さんはどこだい?」

 

「なっ!?こ、子供扱いするな!?私は17歳だ!!」

 

じゅ、17歳!?ウソだろ…す、すまなかった。それより、オラリオに来た理由は?」

 

「冒険者になりに来た!」

 

「これは…。あー、一応あっちにある部屋で背中に神の恩恵(ファルナ)があるかどうかの確認をしてくれ」

 

「了解した!」

 

モニカは門番に指定された部屋へと入り、そこに待機していたガネーシャ・ファミリアの女性団員に神の恩恵(ファルナ)があるかどうか確認してもらい、オラリオに入ることとなった。

余談だが、この際にも女性団員から子供扱いされた。

 

「子供扱いなど…バカにしているのか、まったく!…とにかく、何とかオラリオに入ることが出来たな。ならば、探索系ファミリアを中心に入団出来るか聞いていくぞー!」

 

そうしてオラリオにある様々なファミリアを訪れることにしたモニカ。

しかし…

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「悪いけど、子供をダンジョンに連れていくのは危ないからな。探索系以外のファミリアをオススメするぞ」

 

「ごめんなさいね。ウチのファミリア、子供の募集はしてないの~。申し訳ないのだけど、他のファミリアを探してほしいわ~。個人的には、【デメテル・ファミリア】とかオススメよ~」

 

「ウチはお前みたいなチビなガキが入れるような弱小【ファミリア】じゃないんだよ!かえってママのオッパイでも飲んでな!」

 

「ここはこのオラリオの最大派閥が一つ、ロキファミリアだ!お前のような子供など、入れるわけがないだろう!」

 

「貴様のようなガキがこのアポロン・ファミリアにだとぉ?寝言は寝たから言え!このファミリアは私の様にアポロン様のお気に入りしか入れないのだよ!!即刻立ち去れ!!」

 

「あんたその丈で本当にヒューマンかい?…いやいや、別にバカにしてるわけじゃないさ。あんたみたいな体型を好む客が稀に来ることがあってねぇ…。見たところ、ファミリア探してるみたいだね?なら、イシュタル・ファミリアはどうだい?あんたならよく稼げると…って、逃げられちまったかい」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「何なのだ、この街はッ!!」

 

モニカは約三十ものファミリアの門を叩いた。

しかし、どこにも入団することが出来なかったのである。

その理由のほとんどが『子供だから』というものだから、モニカはより一層怒った。

 

「しかも何なのだ最後に声をかけてきた者は!?まるでち、痴女のような恰好ではないか!?」

 

最終的には冒険者側から声をかけられたものの、声をかけてきたのが【イシュタル・ファミリア】の人間で、尚且つ歓楽街へのお誘いというのもあり、恐怖を感じて全力で逃げたのであった。

 

「くそぅ、私を入れてくれるファミリアは一体どこに……なんだこの匂いは?」

 

自分を入団させてくれるファミリアについて考えていたモニカだったが、不意にどこからか嗅いだことのない出来立ての揚げ物の匂いがしてきた。

空腹だったことも合わさり、モニカは匂いのする方向へ向かっていった。

 

Side Out…

 

 

●●●●●

 

 

ヘスティア Side

 

【ヘスティア・ファミリア】が発足してから約一週間。

ヘスティアが街中でベルと出会い、自らの派閥に勧誘(スカウト)してからというもの、様々なことがあった。

ゴブリンを一匹だけ倒してホームにとんぼ返り、戦果をヘスティアに指摘され耳を真っ赤にしてダンジョンに戻って行ったり、初めての眷属(ファミリア)から初めての贈物(プレゼント)をもらったなど、それ以外にも多くの出来事があった。

そんな日々を過ごしつつ、ヘスティアはファミリアの生計を少しでも支えようと、今日もバイトに精を出していた。

 

「いらっしゃいませ~!ご注文は…はい、ジャガ丸くん三つ!お代は90ヴァリスです!…ありがとうございましたー!」

 

もちろん頭も撫でてもらいつつである。

 

「いやぁ~、やっぱりバイトは疲れるな~」

 

「あの、少しよろしいだろうか?」

 

「おっと、いらっしゃいませ~!ご注文は何だい?」

 

ここでヘスティアに話しかけたのはモニカ。

先ほど匂いにつられていた彼女は、匂いの元を探るためにふらふらとオラリオの街を歩いた結果、ヘスティアが働いているジャガ丸くんの屋台までたどり着いたのである。

 

「いや、このジャガ丸くん?という食べ物は一体どのようなものなのか教えてほしいのだ」

 

「ジャガ丸くんを知らない?…ってことは、キミはオラリオの外から来たのかい?」

 

「あぁ、冒険者になるためにだ。それでなのだが…」

 

「ああ、ごめんね。…ジャガ丸くんっていうのは、じゃがいもを潰してカラッと揚げた食べ物で、このオラリオ名物の一品さ!」

 

「名物、か…すまない、一ついただけないか?」

 

「一つだね。ちなみに、味はプレーン味と小豆クリーム味、抹茶クリーム味の三つがあるけど、何にする?」

 

「う~む…、ならばプレーン味で」

 

「了解!…はい、ジャガ丸くんプレーン味、いっちょお待ち!30ヴァリスだよ!」

 

まだミスをすることはあるものの、一週間もバイトを続けたことによって、手際よくプレーン味のジャガ丸くんを揚げてモニカに渡すヘスティア。

 

「これで頼む。それではいただきます…アムッムグムグ…おいしい!」

 

ヘスティアからもらったジャガ丸くんプレーン味を食べるモニカ。

受け取ってよく見てみると、揚げたてほやほやということもあり、綺麗な黄金色で手に温かみを感じることが出来る。

さっそく食べようと口に含むと、まずはサクサクとした衣が、そして衣に包まれていたジャガイモが素材本来の味を口の中に広げていくのをモニカは感じるのと同時に、どこか懐かしさを感じるような味であった。

 

「それは良かったよ!…ところでさっきの話に戻るんだけど、まだどこかのファミリアには所属してないのかい?」

 

「んむ?…ゴクン。ああ。…実は訪れたファミリアのほとんどから門前払いを受けていてな…」

 

この話を聞いたヘスティアは、それならば猶更自分のファミリアに彼女を誘いたいと考えた。

 

「そうなのかい?…それなら、ボクのファミリアなんてどうだい?」

 

「ボクの…ファミリア…?……ッええぇ!?神だったのですか!?さ、先ほどは失礼な態度をとってしまい、申し訳ございません!」

 

「いやいや、みんなボクのことをただの子供と間違えるからね、次から気を付けてくれたらいいよ。…それより!ボクのファミリアに入ってくれるのかな?」

 

「私などで良ければ、是非とも入れていただきたい!」

 

「了解だよ!えーっと、名前聞いてもいいかな?」

 

「モニカ・ヴァイスヴィントと言います!」

 

「モニカ君か!これからよろしく頼むぜ、モニカ君!」

 

「よろしくお願いしますッ、ヘスティア様!」

 

「よぉし!それならさっそく【ファミリア】入団の儀式を…と言いたいところなんだが、いかんせんまだボクのバイトが終わるまで時間がかかるからね…、五時頃に改めてここに来てもらってもいいかい?」

 

「了解です!それでは五時まではこのオラリオを探索させていただきます、ヘスティア様!」

 

「うん、行ってらっしゃい、モニカ君!…ボクのファミリアに新人君がもう一人…今度ヘファイストスに教えなくちゃな~!」

 

自分のファミリアに新たな眷属が入る。

今回の出来事によって気分を良くしたヘスティアは気が散ってしまい、結果として調理用の発火装置の扱いを間違えてしまい、また露店ごと大爆発させてしまった。

怪我人は丸コゲになったヘスティアのみである。

その日のバイト代は壊れた屋台の修繕費に全て回されたため、勿論0円となった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
戦闘描写も食事描写もどっちも大変だぁ…学んできます。
それにしても、ヘスティア様はセリフ書きやすいですね。

次回は初顔合わせと入団の儀式です。
明日に投稿できない可能性があるので、ゆっくり待っていてください
次回をお楽しみに!


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第3話 『はじまり』

刺身の盛り合わせです。
何とか今日中に書けました第三話!(実際は四話)

今回はあとがきの方に現在の時間軸がどうなっているのかをものすごく簡単に書いているので、もしも暇があったら見てみてください。

評価とお気に入り登録をしてくださった方々、本当にありがとうございます!
励みになります!

それでは、始まります。

10/22 サブタイトルの変更を行いました


ヘスティアと、『仕事の終わる時間に屋台の場所へ改めて訪れてほしい』という約束を交わしたモニカ。

約束の時間が近づいてきたので、ヘスティアの働いていた屋台に向けて進んでいると、何故か屋台の方面に人混みが出来ていた。

進むことが出来なかったため、周りにいる人達に何があったのか聞いてみることにしたのであった。

 

「すまない、ここで一体何があったんだ?」

 

「あぁ、なんでも話によるとな、ここにあった屋台が爆発したらしい」

 

「…爆発、だと?」

 

「うん、爆発」

 

「…爆発!?あの、この屋台で働いているヘスティアという神がどこにいるか分かるか!?」

 

「ヘスティアちゃん?それならその爆発した屋台の側にいるよ」

 

「情報感謝する!…すまない、どいてもらえないか!」

 

側にいた男性から何があったのか教えてもらったモニカ。

自分をファミリアに誘ってくれた神が爆発に巻き込まれたともなれば、軍人として日々鍛錬を積んでいたモニカでも動揺を隠すことが出来ず、人混みを押しのけ前に進んでいった。

 

「ヘスティア様!?無事か!?」

 

「ん?あぁモニカ君!ボクなら無事だ、安心するんだ!」

 

人混みから抜けて前に出ると、そこには丸コゲになったヘスティアとボロボロになったと思われる屋台の残骸があった。

 

「ヘスティア様よ、一体何が…」

 

「えーっと…実は調理用の発火装置で屋台が爆発しちゃってね…」

 

「…とりあえず、ヘスティア様が無事でよかった」

 

「それじゃあおばちゃん、ボクは新しい団員の儀式を行わないとだから、帰るね!」

 

「それはいいけど、今日とこれからのバイト代は全部屋台の修繕費に回すからね、ヘスティアちゃん!」

 

「…何も言わないでくれ、モニカ君」

 

もしかして、入るファミリアを間違えたのではないのか?

モニカはそんなことを考えながら、ヘスティアと共にヘスティア・ファミリアのホームへと向かっていった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ヘスティアについて回ること数分。

メインストリートから外れて、細い裏道を通りながら何度も角を曲がり、街の人の喧噪が聞こえなくなったあたりで、袋小路にたどり着いた。

二人の目の前にはところどころ石材が剥がれ落ちた外観をした、崩れかけている教会があった。

 

「まさか、この廃墟がホームなのですか!?」

 

流石に自分がこれから所属するファミリアのホームがほとんど廃墟だと思っていなかったモニカ。

 

「いやいやいや、流石にそれは違うからね!?この教会の地下に部屋があってね。そこがホームなんだよ」

 

「そ、そうだったのですね…」

 

「あからさまにほっとしてるね…。とにかく!道を覚えてもらわないといけないからね、ちゃんとついてきてくれよ?」

 

正面玄関から教会内に入ると、床のタイルは割れて雑草が大量に生えていたり、天井には大きな穴が開いているなど、外見に負けず劣らずの荒廃具合であった。

奥にある祭壇に向けて進んでいくと、書物の収まっていない本棚が多くある小部屋の入口があり、一番奥の本棚の裏にある地下階段を降りると、生活臭溢れる地下室へ出た。

 

「ここがボク達【ヘスティア・ファミリア】のホームだよ!さっ、そこのソファーに座ってくれよ!」

 

「ありがとうございます、ヘスティア様」

 

「さて、さっそく神の恩恵(ファルナ)を刻もうかと思ったんだけど…そろそろだね」

 

「?そろそろとは一体…」

 

ヘスティアに促され、部屋に入ってすぐの場所に置いてある紫色のソファーに座ったモニカ。

ヘスティアの発言の意図を聞き返そうとした瞬間、階段を降りてくる誰かの足音が聞こえた。

足音の主は声を張り上げつつ、地下室の扉を開け放った

 

「神様ー!帰りまし…た…?」

 

「やぁやぁお帰りー」

 

モニカの目の前に現れたのは、白髪で深紅の瞳をしたヒューマン。

どうやら自身の主神以外の人間がいるという事態に遭遇した結果、思考が停止したようである。

 

「……ッは!?か、神様ッ!?もしかしてその人は!?」

 

「あぁ!ボク達のファミリアの新しい入団者、モニカ君だ!」

 

「本日よりヘスティア・ファミリアに入団することになった、モニカ・ヴァイスヴィントだ。これからよろしく頼む。」

 

「僕、ベル・クラネルって言いますッ!これからよろしくお願いします、ヴァイスヴィントさん!」

 

「そちらでは名前が長くて呼びにくいだろう?モニカと呼んでくれ」

 

「分かったよ、モニカ!」

 

「それと、大事なことなので二人に言っておきたいことがある」

 

「「?」」

 

「私の年齢は十七歳で、子供という年齢ではない。そこのところを間違えないように!」

 

「「……えええええええええええええッ!!??」」

 

「………私は子供ではなぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」

 

モニカのことを10歳の子供だと考えていたベルとヘスティア。

二人の発した驚きの声で、自分がどのように思われていたのか気づいたモニカはとても激しく怒った。

ここで出した怒り声によって、元々崩れかけていた教会の一部が追加で崩れることとなった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「そ、それじゃあ気を取り直して、入団の儀式を始めようか、モニカ君!」

 

「そ、そうですね!さっそく始めましょう、モニカさん!」

 

モニカが怒ってから約数分後。

ベルとヘスティアの二人はなるべくモニカを怒らせないようにするために、神の恩恵を刻むための準備をしていた。

 

「というわけでベル君?君はいったん外に出ておいてくれ」

 

「え?なんで外に出ないといけないんですか、神様?」

 

「ベル君?君が恩恵を刻んだときはどういう状況だったか覚えてるかい?」

 

「……ぼ、ぼぼぼぼ僕!外で待ってるので終わったら呼んでくださいーー!!!?」

 

ヘスティアから言われたことによりこれからモニカがどのような格好をするのか思い出したベル。

顔を真っ赤にして地下室から出て大急ぎで階段を駆け上がっていった。

 

「…なんだったのだ、一体?」

 

「あー…、気にしないで大丈夫だよ?それより、今から儀式を行うから、服を脱いでこちらに背を向けて座ってくれ」

 

「な!?ふ、服を脱ぐのか!?」

 

「うん、恩恵を刻む場所が背中だから、服を脱ぐ必要があるんだよね?」

 

「な、なんだ…そう言うことは前もって言ってほしい、ヘスティア様」

 

「…モニカくぅん、今君は一体なぁにを想像したんだぁい?」

 

「い、今のは忘れろー!?」

 

一通りいじられたところで、ヘスティアに背を見せる形でソファーに座るモニカ。

二度目というのもあり、慣れた手つきで神の恩恵(ファルナ)を刻み始めるヘスティア。

恩恵を刻む間少し時間が出来るので、ヘスティアはモニカが冒険者になる理由は何なのか聞くことにした。

 

「ところでモニカ君。君はどうして冒険者になりたいと思ったんだい?」

 

「…使命の為だ」

 

「使命、かい?」

 

「ああ、私にはある使命がある。それはこのオラリオでなければ達成することが出来ないのだ」

 

『嘘をついているわけではない…となると、本当に使命の為だけにこのオラリオに冒険者になりに来たのか、彼女は…』

 

神は下界にいる子供達がつく嘘を見抜くことが出来る。

先程のモニカの発言が嘘ではないと知ることが出来たヘスティアは、彼女に質問を投げかけた。

 

「…なあ、モニカ君。君のその使命は、ベル君を傷つけるものかい?それに、キミはその使命が終わったらどうするつもりなんだい?」

 

ヘスティアにとって大事なこと。

それは、彼女の眷属であるベルに危害が及ぶのかどうか。

そして、その使命が終わりを迎えた時、モニカが一体どうするのかについてである。

もしも、モニカの言う使命とやらがベルや今後いるかもしれない眷属達に危害を加えるものであったら…そんなこと、想像もしたくない。

ヘスティアはモニカの答えを待ち続けた。

 

「…きっと、ベルに危害は及ばないはずです。それに、使命が達成されたら、私は故郷に帰るつもりです」

 

「……そっか」

 

先程のモニカの返答に、嘘は一つもなかった。

彼女には彼女の人生があり、使命が終わり自分の故郷に帰ることは仕方のないこと。

自分の我儘で彼女の人生を狂わせてはいけない。

いつか、彼女がこのファミリアを、このオラリオから離れることになったら、その時は笑顔で見送ってあげよう。

ヘスティアが考えていると、いつの間にか神の恩恵(ファルナ)の刻印は終わっていた。

 

「…刻印終わったよ、モニカ君」

 

「ありがとうございます、ヘスティア様」

 

「改めてようこそ、【ヘスティア・ファミリア】へ!」

 

これから、彼女はどのような道のりを歩んでゆくのか。

彼女がこのオラリオを去っていくその日までは、自分が主神として、彼女の物語を書き綴っていくのだ。

ふとヘスティアの脳内にとある光景が浮かんだ。

それは、彼女がオラリオから去らず、ベルと共に冒険へ向かうのを見送る自分という光景。

そんな光景がこれから先もずっと続いてほしい。

ヘスティアはモニカの背に刻まれた物語を見つめながら、そんなことを考えていた。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
モニカのステータスは始まりというのもあって数値がオール0なので、今回は書かないことにしました。申し訳ありません。
また、話の都合上、ベルの神様への贈物の日数が少し前倒しになりました。

とりあえず今回で原作が始まる前のお話は終了です。
次回からは原作ストーリーにモニカがスルリと入り込んでいきます。
違和感を消せるように頑張っていきます!

次回もゆっくり待っていてください。


おまけ:現在の時系列
原作開始一か月前:モニカ、神アレスから使命を受けラキア王国を出発
              ↓
原作開始二週間前:ベル、ヘスティアと出会いファミリア入団
              ↓
原作開始一週間と二日前:ベル、ヘスティアに髪飾りを贈る
              ↓
原作開始一週間前:モニカオラリオに到着、そしてヘスティア・ファミリアに入団 ←今ここ
              ↓
             原作開始


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第4話 『出会い』

刺身の盛り合わせです。
今回は早く書き終わったので、先に投稿しておきます!
前回の最後に書いた通り、今回から本編に入っていきます。
というわけで、アイズとの出会いからスタートです!

評価とお気に入り登録をしてくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、始まります。

10/23 文章の内容を一部変更


モニカ・ヴァイスヴィントがヘスティア・ファミリアに所属することになってから約一週間。

この週は彼女にとって怒濤の連続であった。

担当アドバイザー、《エイナ・チュール》との出会い。

もちろんダンジョンについての勉強会や確認テストも行われたが、モニカは元々軍人を目指していたこともあり、全て一日で終わらせた。

それからはベルとダンジョンに共に入り、次第にダンジョンの攻略を進めていった。

初日は1階層で止まっていたダンジョン攻略だったが、お互いの連携もとれるようになった結果、ダンジョンの攻略もどんどん進んでゆき、パーティーとしての一体感も次第に高まっていった。

 

「「ほぁあああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」」

 

『ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

……息ピッタリで、モンスターから逃げ出すほどにである。

 

「な、何でこんなところにミノタウロスがいるんですかーっ!?」

 

「そんなこと、私が聞きたいわ!?うー、くそ!だから言ったのだ、私達に5階層はまだ早いと!!」

 

「でも、モニカさんだって賛成してくれたじゃないですか、5階層に行くの!?」

 

「現在の我々の力がどの程度通じるのかを確認するためだ!それに、すぐに5階層から出ていくつもりだったのだぞ!!」

 

『ヴモォオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

「うわぁあああああああああああああ!!」

 

「いかん、走れベル!追いつかれるぞ!!」

 

ベルとモニカ、二人を追いかけているのは牛頭人体のモンスター、ミノタウロス。

LV.2にカテゴライズされるモンスターで、本来であれば中層の15階層に出現する魔物となっている。

 

「!モニカさん、この先行き止まりです!?」

 

「何ッ!?…くそっ、道を間違えたか…!?」

 

ミノタウロスから全力で逃走してきたものの、地図を見ずに行き当たりばったりで走ってきたのもあり、行き止まりに追い詰められてしまった二人。

壁に両手をつき、恐怖で身を固くするベル。

対して、ベルの少し斜め前に立ち、サーベルの柄に手をかけミノタウロスをにらみ続けているモニカ。

 

『ヴォオオオオオ――…』

 

「…ベル。私がどうにかして奴の注意を引き付ける。その時に一気に脇を駆け抜けて、ギルドにこのことを報告しに行ってくれ」

 

「だ、ダメだよそんなの!?モニカさんを置いて逃げるなんて!?それに、僕、足がすくんでてーー」

 

「たとえ無理でもやらなければならん。それに、ここでこいつを放置したらこいつは間違いなく地上に進んでいく。ここより上層にいる冒険者だけじゃなく、神ヘスティアや地上にいる人々を守るためにも、誰かがこいつをこの場に留めねばならんのだ。だから、敏捷値の高い貴公が行く必要があるんだ、ベル・クラネル」

 

軍人になるために鍛えてきたこれまでの経験と自身の直感が、目の前の相手にはダメージを与えられないと判断している。

例えそうだったとしても、何の罪もない人々を傷つける可能性のある存在を放置することは一軍人として、そしてモニカ個人としても無視することは出来ない。

その為にも、この場からベルを逃がし、増援を呼んできてもらう必要があるのだ。

そこで自分が出来ることは、増援が来るまでこの場でミノタウロスを引き付けておく必要がある。

それに、自分には使命があるので、こんなところで死ぬつもりはないのだ。

いざとなれば切札(・・)を切ることも考えつつ、モニカはベルに声をかける。

 

「準備はいいか、行くぞッ!」

 

そうしてベルに合図を出し、サーベルを抜きつつ走り始めようとしたその瞬間。

 

『ヴォ?』

 

目の前にいたミノタウロスが、一瞬のうちにバラバラの肉塊になった。

 

「へっ………………!?」

 

「なッ………………!?」

 

二人分の息を飲む声が聞こえる中、牛の怪物に代わって一人の少女が現れた。

蒼色の軽装に身を包み、黄金財宝に負けないほどの輝きを持つ金の長髪、輝くように美しい金色の瞳、そして手に握られている細身のサーベル。

彼女の名は、『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタイン。

≪ロキ・ファミリア≫に所属する、オラリオが誇るトップクラスの冒険者のうちの一人。

この迷宮都市では知らない人がいないほどの有名人である。

 

「あの……大丈夫、ですか?」

 

ほんの数秒呆けていたものの、不意に聞こえてきた言葉に、はっと我に返るモニカ。

後ろを振り向くと、腰が抜けたのか、ミノタウロスの血を浴びて真っ赤になったベルが尻餅をついており、『剣姫』はそんなベルに手を貸そうとしていた。

その姿は、先ほどミノタウロスを瞬殺した剣士には全く見えなかった。

そして、手を差し出されたベルは、目の前の『剣姫』の顔を見つめていると、だんだんと顔を紅潮させると……。

 

「ほぁああああああああああああああああああああああああっ!?」

 

奇声を上げながら、どこかへ走り去っていった。

 

「…………………」

 

「んなぁ!?」

 

手を貸そうとするも逃げられてしまい、呆然とする少女と、助けてもらったのに対して、何も言わず立ち去っていく仲間に対し先ほどよりも驚く少女。

とにかく、助けてもらったのだから、お礼を言おうと思った瞬間、彼女は一つのことを思い出した。

ヘスティアから聞いた、ベルがゴブリン一匹倒しただけですぐにホームへ戻って来たという話を。

先程ベルはミノタウロスの血で真っ赤な状態だったが、どこかへ走り去っていった。

ベルがダンジョン内に留まってくれていれば特に問題はない。

もしも、そのままの状態でダンジョンを出ていったら?

…間違いなく阿鼻叫喚になる。

 

「助けてもらって大変申し訳ないのだが、私の仲間が血まみれのままダンジョンから出る必要があるので追いかけなければならない!後日改めてそちらのファミリアにお礼を言うために貴公のファミリアにお邪魔させてもらいたいのだがいいか!?」

 

「……えっと、気にしないでいい。元々、原因は私達」

 

「……それがどういうことなのか詳しく聞きたいが、今は急を要する!また改めて後日聞かせてくれ!」

 

「……分かった。それと、あなたも血まみれ」

 

「忠告感謝する!それではまた後日どこかで会おう!」

 

早口で話し終わると、急いでダンジョンの出口に向かって走り始めるモニカ。

途中ですれ違う多くの冒険者達がギョッとした目でこちらを見てくるが、今はそれよりもベルの、いや街の方が大事なので気にせずダンジョンの出口に向かって走っていく。

そして何とかダンジョンから地上へ向かうための階段の元へたどり着くと、階段にも血の跡がついており、地上からはよく聞くアドバイザーの叫び声が聞こえた。

 

「何をしているのだあやつは…………。とにかく、一度血を落としに行かなければな」

 

ベルに続いて自身までもが血まみれの状態で地上、それもギルドに突撃してはさらに混乱を広めてしまう。

そのように考えたモニカは、バベルにあるシャワールームに行き、体についた血を洗い流してからギルドに向かうことにした。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ここだけの設定ですが、モニカは気持ちが昂ったり危機的状況に陥ると、ラキア王国にいた頃の性格や口調が出てきます。
化けの皮が剥がれるってやつですね。
例)ベル→ベル・クラネル
  ヘスティア様→神ヘスティア

次回も早く出せればいいなと考えています!


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第5話 『アドバイザー』

刺身の盛り合わせです。

今回は2話連続投稿です!
1話目はギルドでのお話です。
そしてベルとモニカの担当アドバイザー《エイナ・チュール》登場です!

評価とお気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、始まります。


『剣姫』と分かれて血まみれのベルを追いかけ地上に戻った後、バベルにあるシャワールームにたどり着いたモニカは、全身にこびりついた血を落としていた。

一通りシャワーを浴びて身体をきれいにしたモニカは、同じくきれいになった服を着直して、ギルドへ向かっていった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「何をしているのだ、貴公は!?」

 

「ご、ゴメンナサイ…」

 

「謝るのなら私ではなく、ギルドの者や他の冒険者達にであろうが!」

 

「あははは…まあ、今回はモニカちゃんの言ってることが正しいからね。次からはこんなことしちゃ駄目だよ、ベル君?」

 

先程聞こえた悲鳴で正しかったようで、ベルは全身ミノタウロスの血まみれのままギルドに向かっていた。

今回のことについて、ベルとモニカの担当アドバイザーであるエイナも簡単な注意を行っていた。

 

「とにかく!貴公はその全身の血を落としてこい!その間に私が今日の換金を済ませておくからな!わかったら返事!!」

 

「は、はいぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

 

モニカの軍人仕込みの号令をベルに行いシャワールームに行かせた。

そうして自分は換金を行おうと思ったが、今回何が起こったのか情報共有をしておくべきと考え、エイナに話しかけた。

 

「エイナ殿、今回のことについてだが…」

 

「うん、アイズ・ヴァレンシュタイン氏が関わってたんだよね?」

 

「その通りなのだが少し違うらしい。私もベルを追いかけなければならなかったので詳しい話を聞けなかったのだが、今回のミノタウロスの件、『剣姫』が原因は自分達にあると言っていたんだ。」

 

「――そっか。ということは、今回のことは≪ロキ・ファミリア≫が起こした完全な事故ってことになるんだね」

 

「そうなるな。ところで、ベルについてだが…」

 

「あ~、あれはヴァレンシュタイン氏のこと好きになってると思うよ?」

 

ダンジョン内で見たベルの『剣姫』に対する態度から、もしかすると…、と考えていたモニカであったが、大正解であった。

自分の主神になんと説明しようかと考えていると、エイナに声を掛けられた。

振り向いてみると、厳しい顔をしているエイナを見ることが出来た。

何事かと構えていると、先ほどの自分のダンジョン内での行動についてであった。

 

「さっきベル君から聞いたんだけどね?…モニカちゃん、ミノタウロスと戦おうとしたんだよね?」

 

「……ああ。ベルが救援を呼びに行くための隙を作るには、私がミノタウロスの気を引く必要があった。それに、あそこでミノタウロスを放置したら地上へ行く可能性もあったからな」

 

「…モニカちゃんのやろうとしたことは、凄い立派だと思う。今回はアイズ・ヴァレンシュタインさんがすぐに来てくれたから何とかなったけれど、下手したら死んじゃうかもしれないんだよ?」

 

エイナによる叱責。

モニカのやろうとしたことの大事さについてはエイナも理解している。

『人々を守る』という観点から見ると、とても立派であるが。

 

「モニカちゃんはまだ駆け出しの冒険者なんだから、まず最初は自分達のことを大事にしてほしい。きっと、神ヘスティアもおんなじ気持ちだと思うよ?」

 

『冒険者は冒険しちゃいけない』。

エイナがいつも二人に口酸っぱく言ってるように、今回も出来ることなら自分を犠牲にするのではなく、もっと他の可能性を探してほしかった。

例えば、隙を作って二人で一緒に逃げる、など。

 

「それは…分かっている…」

 

「…次からは、ちゃんと気を付けてね。次も同じ事したら、お説教だからね?」

 

「エイナ殿のお説教は長いからな。了解した、善処しよう。…それでは、換金に行ってそのまま帰ることにする。もしもこちらにベルが来たら、『先に帰っておく』と伝えておいてくれないだろうか」

 

「うん、伝えておくね。…換金、ついて行った方がいいかな?」

 

「いや、エイナ殿にも仕事があるだろう?そちらに回ってくれ」

 

「心配してくれてありがとう。それじゃあ、また明日ね」

 

「ああ、それではまた明日」

 

換金所で本日集めた『魔石の欠片』を渡し、本日の収穫を受け取った。

5階層に向かうまであまり戦闘をしなかった+アイズ・ヴァレンシュタインから逃げたベルを追いかけたことにより、換金できる品をあまり獲得できなかったこともあり、一二○○ヴァリスとなった。

換金を終え特にやることもなくなったため、エイナに簡単な別れの挨拶を行いモニカは≪ヘスティア・ファミリア≫のホームへ帰ることにした。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

今回はエイナさんとモニカの会話で結構苦戦しました。
エイナさんしゃべらせるの難しい…

次は2話目です!


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第6話 『ステイタス』

どうも、刺身の盛り合わせです。

というわけで2話連続投稿の2話目です!
今回はステイタス更新です!
というわけで、モニカの現時点でのステイタス大公開です!
それとプロローグぶりの戦闘描写もあります。

それでは、始まります。

10/30 ステイタスの項目にミスがあったので修正


ホームのある廃教会内の地下室入口についたモニカ。

目の前のドアを開けつつ、声を張り上げて自分が帰ってきたことを高らかに宣言する。

 

「ただいま帰宅しました、ヘスティア様」

 

「やぁやぁお帰りー…ってあれ?ベル君はどうしたんだい、モニカ君?」

 

「ベルなら現在バベルのシャワールームでミノタウロスの血を落としているところかと」

 

「えっどういうことだい、それ?というかベル君がそういうことしてるってことは君も血まみれになるような事態に遭遇したってことだろ?怪我はしてないかい?」

 

そう言うとヘスティアはモニカに近づき、両手でモニカの身体のいろんなところに触れて怪我がないかの確認をしてきた。

 

「ご安心を、ヘスティア様。私達はヘスティア様を残して死ぬようなことは絶対にしません」

 

「おっ、中々言うようになったじゃないか、モニカ君!」

 

「それよりもヘスティア様、今のうちにお願いしたいのですが」

 

「分かってる、【ステイタス】の更新だろ?早速やろっか!」

 

「はい!」

 

「それじゃあ、いつもみたいに服を脱いで寝っ転がって~」

 

「了解です」

 

地下室の奥にあるベットに向かいつつ、冒険者用のライトアーマーを外しその下に来ていた白シャツ、そしてシャツの下に来ていたキャミソールを脱ぐ。

すぐ背後の壁に取り付けられている姿見で、自身の背にびっしりと刻まれた『神の恩恵(ファルナ)』を尻目に見つつ、ヘスティアが言ったようにベットにうつ伏せで転がる。

するとすぐにヘスティアはモニカの上にぴょんっと飛び乗り、モニカのお尻の当たりに座った。

 

「そういえばミノタウロスの血まみれって言っていたけど、一体何があったんだい?」

 

「まぁ色々ありまして……」

 

モニカが説明を行っていると、ヘスティアは彼女の背中の同じ場所を何度も往復して撫で始めた。

ある程度撫でると、ヘスティアが針を取り出し自分の指先に刺した。

刺したところからにじみ出てきた血を、そっとモニカの背へと垂らすと、波紋を広げて背中背中(なか)へと染み込んでいった。

 

「腕試しで5階層に降りたらミノタウロスに遭遇って……またえらく大変なことをしてるねぇ…。そういうことを聞かされると、ボクすごく心配になるからさ、次からダンジョンに行くときはなるべく気を付けておくれよ?」

 

「わ、分かっています。ただ、流石に3階層のモンスター達だと簡単に倒せてしまうようになったので、現在の自分達の実力を確認するためにも必要でして…」

 

「うーん…、モニカ君の言いたいことも分かる。だけど、ちょっと急ぎすぎじゃないかな?ちょっと立ち止まってみたらどうだい?」

 

「ですが、私には…」

 

「うん、まぁ、君にも大事な使命があるのは分かっている。だからこそだよ、モニカ君。話を聞く限り、使命を達成するために急いでやいないかい?一度立ち止まって周りを見ると、新たな発見があるものだよ?」

 

「………」

 

ヘスティアの発言を聞いて考え込んだモニカに対して、ヘスティアはモニカの背の血を落とした場所を中心に指でなぞり始めつつ、左端からゆっくりと刻印を施していた。

 

「この一週間モニカ君はずっと頑張ってきたからね。明日はモニカ君はダンジョン攻略お休み!主神命令だからね!…はい更新終わりっ!」

 

「…『健全な精神は健全な肉体に宿る』、といいますからね…。明日はベルに任せて、お菓子屋巡りをしてみようと思います」

 

「あっそれボクも行きたーい!」

 

モニカが明日の休息日についてあれこれ考えてながら服を着ている間に、ヘスティアは前もって準備していた用紙に先ほど更新した【ステイタス】を書き写し終えていた。

 

「はい、君の新しい【ステイタス】だよ」

 

「ありがとうございます、ヘスティア様」

 

ヘスティアから差し出された用紙を受け取り、視線を落とした。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

モニカ・ヴァイスヴィント

LV.1

力:H105→H112 耐久:I21 器用:I82→I87 敏捷:H101→H115 魔力:I0

 

《魔法》

【 】

 

《スキル》

【 】

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

『…今回のダンジョン探索では、『力』と『器用』、それに『敏捷』が上がっている。ミノタウロスから逃げベルを追いかけたからだろうな…』

 

自分の更新された【ステイタス】を見ていると、階段を駆け下りてくる足音が聞こえた。

間違いなく、ギルドに置いて行かれたベルが帰ってきたのだろう。

 

「神様、モニカさん!帰ってきました!ただいまー!」

 

「「お帰り、ベル君/ベル」」

 

声を張り上げて地下室に入ってきたベルと、そんなベルに返事を返すヘスティアとモニカ。

そしてすぐにモニカの方に顔を向けたベルは、先にホームに帰ったことについての不満を言い始めた。

 

「モニカさんっ!?なんで先に帰っちゃうんですかっ!?」

 

「ベルが血を落としてエイナ殿と話すのを考えたら、だいぶ長くなると考えたのでな。それと先に【ステイタス】の更新をしていたかったからというのもある」

 

「まあまあ、今回はベル君とモニカ君二人共悪いってことで、はい喧嘩おしまい!それより、せっかくだからベル君も【ステイタス】の更新するかい?」

 

「それじゃあお願いします、神様!」

 

「ならば、私は上で待っているから、終わったら呼びに来てくれ」

 

「分かりました、モニカさん!」

 

ベルとヘスティアに屋外にいることを伝え、サーベルを腰に携え教会の外に出る。

サーベルを抜き、目の前に仮想敵を作る。

思い浮かべるのは、今日出会ったミノタウロス。

ミノタウロスの戦闘スタイルは最初に遭遇した際に、ゴブリンやコボルト達を確認している。

サーベルを構え、斜め前方に走り出す。

空想のミノタウロスが石で出来た大戦斧のような天然武器(ネイチャーウェポン)を自身の頭上からモニカの進行方向に一気に振り下ろしてくるのを、咄嗟に後ろに飛びつつ回避。

着地後に再び走り出し、ミノタウロスのすぐ側を通り抜けつつサーベルを右から左に振りぬき、ミノタウロスの脇腹を切り裂く。

振りぬいた勢いで反転しつつ距離を取り、サーベルを構え直す。

振り向きこちらに突撃してくるミノタウロスを冷静に右に横跳びして回避し、切札を切るために構えつつ一気に近づく。

しかし、ミノタウロスが振り返り大戦斧を横一線に勢いよく振り回してくる。

避けることも構えを解いて受け流すことも出来ず、頭に直撃。

…そこで仮想戦闘を終了する。

ここからは先ほどの自信の戦い方についての反省会。

他に出来た攻撃や避け方があったのではないか?

考えれば考えるほど、まだまだ自分にはすべてが足りないことが分かる。

 

「もっと強くならねばな…」

 

そこからベルが呼びに来るまで、モニカは仮想戦闘を行い続けた。

それはひとえに、使命を果たすために。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

モニカのステータスについてはいかがだったでしょうか?
プリコネのモニカのステータスを参考に作ってみたんですが、「こっちの数値を高くした方がいい」「ステイタス見にくい!」などの意見は優しい言葉でどんどんお願いします!

…実は今回と前回を合わせて一つの話だったんですが、流石に長くなっちゃうから二つに分けました。
だから2話連続投稿なんてことが出来たんですよ。

あとモニカは子供用の子供用のキャミソールか子供用の下着絶対着てると思う。(小並感)

というわけで明日はオリジナル話、『モニカの休日inオラリオ』です!
次回も楽しみに待っていてください。


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第7話 『モニカの休日 ~猫人少女の絶品たいやき~』

刺身の盛り合わせです。
というわけで、今回と次回はオリジナル回です!
オラリオの街でのぶらりモニカの食べ歩き。
そしてプリコネからあるキャラが登場!
一体誰か分かるかな?

それと今回は原作との相違点が少し出てきます。
詳しくはあとがき下部にて。

評価とお気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、始まります。

11/1 誤字修正を行いました
12/16 たいやき屋の語尾に修正を入れました。


ベルに呼ばれてホームに戻り、ヘスティアが貰ってきた大量のジャガ丸くんとベルとモニカの作った簡単な料理を食べ就寝。

前日にヘスティアから休みを言い渡されたものの、いつもの習慣でベルと共に五時頃に目が覚めてしまう。

ベルの胸に顔を埋めるようにして眠りこけている自分達の主神であるヘスティアをベルから引きはがし、簡単な朝食(余ったジャガ丸くん数個)をベルに渡し、ダンジョンに向かうのを見送る。

追加の朝食を作っていると、朝食の匂いにつられてヘスティアが起きてきた。

 

「ふぁあ~。おはよう、モニカ君。いい匂いだね」

 

「おはようございます、ヘスティア様。今日は昨日ヘスティア様が貰ってきてくださったジャガ丸くんとスープが朝食ですよ」

 

「う~ん、おいしそう!それじゃあ食べようか!」

 

「「せーの、いただきます」」

 

二人で席につき一緒に朝食を食べ始める。

そこまで量が多くなかったことも相まって、すぐに食べ終わった。

 

「「ごちそうさまでした!」」

 

「いやー食べた食べた!…ところでモニカ君は今日何をするんだい」

 

「今日はせっかくの休みなので、オラリオのお菓子屋さんなんかを見て回ろうかと思います」

 

「おお、良いねそれ!ボクもついて行きたいよ~」

 

「でも、今日もバイトじゃありませんでしたか、ヘスティア様?」

 

「ウグゥ!?そういえばそうだったな…。仕方ない、今日はモニカ君が一人で楽しんでおいで!」

 

「了解しました、ヘスティア様。それでは行ってまいります!」

 

「気をつけていってらっしゃ~い」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ホームから出て、大通りへと歩みを進めるモニカ。

せっかくなので何かスイーツを販売しているお店に行ってみようと思い歩いていると、何かの焼ける匂いがしたため、その匂いのする方向へ歩いて行った。

歩みを進めていった先にあったのは、猫人(キャットピープル)の少女が開いているたいやき屋であった。

 

「いらっしゃいにゃ~!たいやきはいらないかにゃ~?うちのは他の店とは一味も二味も違うにゃ~!」

 

「たいやきか…。すまない、たいやきを一ついただけないだろうか?」

 

「たいやき一つね、毎度ありだにゃ~。…それにしても、一人でお使いなんて立派な子だにゃ~」

 

「なぁ!?私は子供ではない!!17歳だ!!」

 

「にゃにゃ、17歳!?全ッ然そんなには見えないにゃ!?見えて12歳ぐらいだにゃ!」

 

「失礼だな貴公は!?」

 

「いやーごめんにゃ。でも、ほんとに身長ちっちゃいにゃ。ちゃんと年齢知ってから見ても、10歳ぐらいにしか見えないにゃ」

 

「さっきから失礼だな貴公は!?というか更に年齢が低くなっているではないか!?」

 

たいやき屋の店員と共に漫才のようなやりとりを繰り広げるモニカ。

年齢と見た目イジリを続けられた結果。

 

「だからっ!!私のっ!!年齢はっ!!17歳でっ!!両親のっ!!遺伝でっ!!この背丈だとっ!!何度言えばっ!!分かるのだっ!!?」

 

顔を真っ赤にしながら大声をあげつつ、大通りの中心で盛大な地団太を踏んでいた。

瞳には涙も浮かんできており、ガチ泣き一歩手前の状態であった。

 

イカンやりすぎたにゃ…ゴ、ゴメンにゃ?あんまりにもお客さんがいい反応をするから止まんなくなっちゃったにゃ?お詫びでおまけするから許してほしいにゃ?」

 

「グスッ……別に私は気にしてないが、そのお詫びは喜んで受け取ろう…」

 

「気にしてないとか絶対うそにゃ…。とりあえず、おまけ付きで二つあげるにゃ!出来立てのうちに食べるにゃよ!」

 

「いただきます…あむっ………うまい…!」

 

猫人の少女の作ったたいやきは、外側の鯛の部分はサクサクとしているものの、一口食べてみると中の生地がモチモチで、中に入っている優しい甘さの粒あんとの相性がバツグンで、モニカがこれまで食べたたいやきの中でも、上位に入るレベルのたいやきであった。

 

「すまない、もう一ついただけないだろうか!」

 

「おっ、うちのたいやきのおいしさに気付いたにゃ?…はい、もう一つにゃ!お代は二つで120ヴァリス!」

 

「しかもなかなか安い!…また買いに来させてもらうぞ、店主よ!」

 

「またどうぞにゃ~!」

 

色々あったものの、モニカは猫人の少女のたいやき屋を気に入り、次はヘスティアやベルと共に屋台に訪れよう。

そんなことを考えた。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

今回出てきたたいやき売りの猫人少女…一体何キなんだ…
ちなみに今後登場させるのかは一切未定です。

次回は明日、内容は今回の続きになってます!
次回もお楽しみに!


以下、興味ない人は飛ばしてください

今回と原作の相違点について(長文注意!!)

本来ならベル君は朝ご飯を食べずにホームを出てきたことで、シルさんと遭遇→ベルのお腹が鳴る→お弁当をもらう→お礼に豊穣の女主人への来店というフラグが立ちます。
しかし、今作ではモニカから簡単な朝食(余ったジャガ丸くん数個)をもらったので、食べながらダンジョンに行っています。
なので、シルさんに会ってもお腹が鳴らず、『お弁当をもらう』行動が無くなりフラグは消えますが、ベル君の来店フラグはちゃんと立ちます。
理由としては『成長期ベル君、ジャガ丸くん数個じゃお腹いっぱいにならなかった』ということで、結局ベル君はお腹を鳴らしてシルさんからお弁当をもらってます。
ここからのイベントはベルの成長に関して大幅にかかわる部分なので、避けては通れない道なのです。


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第8話 『モニカの休日 ~赤髪ヒューマンの普通のクレープ~』

刺身の盛り合わせです。
というわけで、オリジナル回第2弾!
前回に引き続き、オラリオの街でのモニカのぶらり食べ歩きです!
そして、プリコネからあのキャラが登場!
…前回もそうだったけど、題名で気づかれそう。

評価とお気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、始まります。



たいやき屋を後にしたモニカは、先ほど買ったたいやきを食べつつ市街をふらふらとしていた。

バベルに武具などを見に行こうかと考えたものの、そうすると最終的にダンジョンに潜りたくなってしまうので、ダンジョン関連の建物には訪れないことにした。

昼食をサンドイッチで簡単に済ませて、街の散策を再開する。

お菓子屋だけでなく、雑貨屋や肉屋、八百屋など様々な店を巡っていると、不意に屋台の人物から声をかけられた。

 

「やぁ、そこのお嬢さん。ちょっといい?」

 

「私か?…一体何様だ?」

 

モニカが声のした方向に振り向くと、そこにいたのは真っ赤な髪で透き通るような青い瞳に赤い眼鏡をかけ、赤いエプロンを着た全身赤ずくめのヒューマンの女性が屋台がいた。

どうやら、彼女がモニカに声をかけてきたようだ。

 

「いやね、実はこれから用事があるから、今日はそろそろ店じまいしようと思ったんだけどさ、材料が余っちゃってね。いやー、君は運がいい!どう、クレープ食べていかない?」

 

「クレープか…。では、一ついただいてもいいだろうか?」

 

「はいはーい。それじゃあ少々お待ちを—」

 

手際よくクレープを作っていく店主。

五分もせずにクレープは完成した。

 

「はい、イチゴクレープ完成!どうぞ?」

 

「うむ、いただこう…はむっ」

 

渡されたのはイチゴクレープで、たくさんのイチゴとチョコソースにホイップクリームがのっており、ザ・王道なものとなっている。

一口食べてみると、何とも言えない味が口内に広がっていった。

別にひどくまずいというわけではないのだ。

しかし、格別においしいと言えるわけではない。

そう、そこまでおいしいというわけでもなく、まずいというわけでもない。

何というか、その…。

 

「どう?」

 

「…まあまあ、か?」

 

「うんうん!それで、本当のところは?」

 

「…普通、だな」

 

「そっかー…、まだまだ最高の味には程遠いか…」

 

モニカがストレートに感想を伝えると、屋台の店主は少し悲しい表情をした。

そうして改めてモニカに振り向くと、一つの提案をしてきた。

 

「ちょっと頼みごとがあるんだけど…、あたしが世界最高のクレープを作るのに、協力してくれない?」

 

「なぜに私なのだ?もっと他の人物がいるのではないか?」

 

「ん~…、何というか、ティンときた!…って感じ?それに協力って言っても、味見役をしてもらおうと思ってね」

 

「ふむ…ならば協力しよう。…べ、別に、手伝えば味見でいっぱいクレープが食べれるんじゃないかなどと考えたわけではないぞ!…本当だからな!?」

 

「もちろん、分かってるよ。あたしは毎週この時間、この場所にいるからさ、もしもこれたら来てよ。オマケしちゃうよ~?」

 

「了解した。改めてだが、私の名前はモニカ。よろしく頼む、店主よ」

 

「これからよろしくね、モニカちゃん」

 

握手を交わすモニカとクレープ屋の店主。

また次の週に会う約束を取り付けると、改めてオラリオ市街を回ろうとした。

しかし、そこでモニカは大事なことを忘れていた。

そう、ラキア王国にいるマリウス王子への定期報告である。

オラリオに訪れてから一回も手紙を送っていないことに気付いたモニカは、近くにあった雑貨屋で便箋と封筒を購入し、急いでホームに戻り手紙を書き始める。

主にオラリオの情勢や主要ファミリアについて現時点で分かったこと、冒険者について大体六枚ほど書いていると、ヘスティアがバイトから帰ってきた。

 

「ただいまーって、手紙書いてるのかい、モニカ君?」

 

「お帰りなさい、ヘスティア様。ええ、故郷に向けた手紙を書いてます。オラリオに来てからそろそろ一週間たちますからね」

 

「うんうん、近況報告は大事だからね。…今見た感じ七枚目を書いてる途中みたいだけど、あとどのくらい書くつもりだい?」

 

「そうですね…あと三枚は書くつもりです」

 

「なかなか書くことが多いんだね…」

 

「まぁ、オラリオのことなどをいっぱい書いてますからね。それと、話は変わるのですが…」

 

手紙の内容や今日訪れた店、食べ歩きについて話しながら手紙を残り一枚まで進めていると、階段を勢いよく駆け下りてくる足音が聞こえた。

もちろん、ベルである。

機嫌よく帰ってきたので挨拶を返しておき、ベルが【ステイタス】更新を行うというので教会の外に出て、残りの便箋に何を書こうか考えをまとめていると、とても怒ったヘスティアがホームの協会から出てきた。

 

「ボクはバイト先の打ち上げに行ってくるから!夕食はベル君と二人で食べてくれ!…何、僕が怒っている理由?ベル君が悪いんだよっ!」

 

理由を教えてもらえなかったので、ベルに経緯を聞いてみるも特に悪い部分はなかったように思えた。

それから、ベルに夕食を一緒に食べないかと誘われたモニカ。

話を聞くと、朝食が足りなかったベルがとある少女からお弁当を譲り受けたらしい。

そして、そのお礼に少女の働いている酒場『豊穣の女主人』にご飯を食べに来てほしいと言われたという。

先ほどヘスティアから夕食について言われたこともあり、一緒に食べに行こうとするものの、手紙がまだ書き終わってなかったので、書き終わって手紙を投函したら酒場に向かうことを約束した。

ベルが酒場へ出発し約数分後、ラキア王国に送る定期報告の手紙が書き終わったため、手紙を出しに行く。

直接ラキア王国に送るわけにもいかないので、ラキア王国の近くにある村宛のものとして投函。

ベルとの約束を果たすために豊穣の女主人へ向かおうとするモニカであったが、場所が分からなかったので近くの人々に店への行き方を確認。

道中ひたすら子供扱いされ続けたものの、何とか豊穣の女主人へたどり着いたモニカ。

しかし、店のドアを蹴り開けるように見覚えのある人物が飛び出していくのが見えた。

 

「………ベル?」

 

ほんの数分前に約束を交わしたばかりの、ベルであった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!」

今回出てきた新キャラ、一体何リスタさんなんだ…ちなみに彼女も今後の登場は不明です。
また、前回と今回は『食べ歩き』をテーマにしてたので、アニメ版プリコネをイメージした題名にしてみました!

そして、今回でオリジナル回は終わりです。
次回からはまた原作沿いに戻っていくので、ご安心ください!

次回の投稿についてなのですが、明日私の方に用事があり、必ず投稿を出来るかがとても怪しいので、明日はお休み。
明後日には投稿できればと思います。
なので、明後日を楽しみにしておいてください。


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第9話 『再びの出会い』

刺身の盛り合わせです。
お待たせしました!
その分何とか頑張って二話分書きました!
みなさんが満足するような内容になっていればいいなと思います!

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、始まります。

11/1 本編の誤字修正を行いました



夕食の約束をしていた『豊穣の女主人』から飛び出したベル。

しかも、目には涙を浮かべているようだった。

一体店内で何が起こったのかを確認するために店の中に入ろうとすると、店から新たに人が出てきた。

 

「……あなたは、昨日の。」

 

「む、貴公は…『剣姫』か」

 

その人物とは、『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタイン。

昨日、ちょうどミノタウロスに襲われていたのを助けてもらったばかりであった。

ベルと同じ店から出てきたのであれば、ベルに何かあったのか知っている可能性は高い。

そう考え、モニカは話しかけることにした。

 

「すまない、今この店から白髪の少年が出ていくのを見たか?私の連れなのだが」

 

「………ごめんなさい」

 

「うむ?いきなり謝られても困るのだが…何があったのだ?」

 

そこから一体店内で何があったのかを聞いてみると、酒を飲みすぎて酔っぱらったという『灰狼(フェンリス)』ベート・ローガが、昨日のベルとモニカの醜態を酒の肴として出し、笑いの種にしたという。その話が出た後にベルが酒場を飛び出していき、『剣姫』はそこで初めて本人のいる目の前で笑いものにしてしまったと気づき、謝ろうと慌てて追いかけようとしたという。

 

「…そうか、教えてくれて感謝する」

 

「……ううん、悪いのは私達」

 

「気にしないでくれ、ベルにはいい刺激になったはずだ。それにそこまで気にするのならば、店主と話がしたいので、店主が誰か教えてくれないか?」

 

「……うん、分かった」

 

酒場に入ろうとするモニカ。

しかし、外に出ていつまでも戻ってこないアイズを呼びに行こうとある人物がドアを開けて出てきた。

 

「ほいほい、アーイズ!何やって…ん、誰やアンタ?」

 

オラリオ二代派閥のうちの一つ、≪ロキ・ファミリア≫の主神《ロキ》であった。

 

「なんや、もしかしてアイズたんの知り合いか?それにしても、こんな時間に子供が外に出とったらアカンで。はよ家帰りや?」

 

「ロキ……この子は…」

 

「すまないが、私は子供という年齢でない。それに、私はこの酒場の店主に用があるのでな、通らせてはいただけないだろうか、神ロキ」

 

「おぉ?す、すまんな…」

 

モニカの態度の少しの違和感を覚えるロキ。

アイズと共に酒場に入るモニカ。

店内の客はドアの方向を振り向き、『剣姫』が子供と入ってきたことの理由を理解できず多くの者が首を傾げていた。

もちろん、【ロキ・ファミリア】の一部を除くメンバーもその中に含まれている。

アイズから店主について教えてもらったモニカは、店主のいるカウンター席に向け歩き出し、店主と相対した。

 

「貴公がこの酒場の店主のミア殿か?」

 

「…なんだい、アンタ」

 

酒場にいた冒険者達が一斉にざわつく。

それも当然だ。

いきなり酒場に入ってきた子供が声をかけたのは、この『豊穣の女主人』の店長で、現在ベルに食い逃げをされてとても苛立っている《ミア・グランド》だったのだから。

『流石にミア母さんでも子供に手は出さないだろう』、『でもあのミア母さんだぞ?』

そんなことを小声で話していた。

 

「私の名はモニカ・ヴァイスヴィント。先ほど無銭飲食を働いたバカ者と同じファミリアの者だ。明日、あのバカ者をここに連れてきて、正式な謝罪に食事代と慰謝料を払わせるので、どうか猶予をいただけないだろうか」

 

そのようにモニカは言いながら、ミアに向けて頭を下げた。

回りはミアに謝っている子供がファミリアに所属、しかも先ほど無銭飲食をした少年と同じファミリアというのを聞きとても驚いていた。

対して、モニカからの謝罪を聞いたミアは。

 

「そうかい。でも、そういうのはあの坊主に自主的にやらせな。無理矢理やらせたんじゃ意味がないからね。それより、早いとこ坊主を追いな。あのままじゃ死んじまうよ」

 

「…寛大なるご配慮、ありがとうございます」

 

そうしてモニカとミアのやり取りが終わり、酒場を出ようとするモニカ。

出ていこうとした直前、何かを思い出したような顔をして、ロキ・ファミリアの団員らが集合しているテーブル、その中でもアイズのいる席に近づいた。

 

「『剣姫』、改めて礼をさせてほしい。昨日に続き今日も私を助けていただいて感謝する」

 

「……ううん、助けるのは当然。それに、私にも非がある」

 

「…それでも言わせてくれ。貴公のおかげで私は今この場所にいることが出来るのだ」

 

そんな会話をしていると、ロキ・ファミリアの団員達がいるテーブルから、モニカに向けて声を荒げる人物が現れた。

 

「あ゛ぁ!?テメェは、トマト野郎と一緒にいた『ガキトマト』じゃねぇか!」

 

「ちょっ、ベート!?」

 

ベルが酒場から逃げ出す原因を作った『灰狼(フェンリス)』ベート・ローガである。

彼は酒を飲み続けていて、酒場にモニカが入ってきたことすら気付いていなかったのである。

 

「おいお前ら、このガキもさっき話してたトマト野郎と一緒にいてよぉ、先に逃げたトマト野郎を追いかけて自分も牛の血を全身に浴びたまま逃げていったんだぜ!傑作だよなぁ!」

 

「いい加減に口を閉じろ、ベート!!」

 

完全に酒に酔ったのか、周りの見えていない発言をするベート。

そんなベートを叱責するリヴェリア。

 

「…私は、このオラリオに来てまだ一週間しかたっていない新参の冒険者だ」

 

突如話し始めたモニカ。

 

「なので、このオラリオについて知らないことは多い。それでも、知っていることがある。それがオラリオの二代派閥の一つ、≪ロキ・ファミリア≫についてだ」

 

その内容も、最初は自身についてのものだったが、話題はロキ・ファミリアについての内容に変わっていった。

 

「ロキ・ファミリアはオラリオでも有数の強さを持つ、オラリオを代表するファミリアだと聞いていた。そのファミリアに所属している者、しかも幹部クラスと思われる者が酒に飲まれ自制心を失い、自身の不始末を棚に上げ、そこから起こった出来事と巻き込まれた被害者を笑い話にするとはな……」

 

そして、モニカははっきりと宣言した。

 

「オラリオを代表する冒険者がこのようなことでは、このオラリオの冒険者の質も高が知れるというものだ」

 

オラリオの冒険者達全員を敵に回す言葉を。

回りで話を聞いていたロキ・ファミリアのメンバーはもちろん、それ以外の酒場の客である冒険者も盛大に反応した。

そして、酔っていたとしても自身を用いて自身のファミリアを貶められたことに気付くことが出来た『灰狼(フェンリス)』は。

 

「……あ゛ぁ?」

 

盛大にキレた。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

今回は読んでいただいたら分かる通り、ベルが豊穣の女主人から出ていった後の話その1となっています。
なので次回も今回の続きの内容です。

大事なことなので言わせていただきます。筆者はベートが嫌いというわけではありません。むしろ大好きなキャラです。

それでは、二話目をどうぞ!





ここから蛇足の内容。読まなくても何の問題もありません。

上記したとおり筆者はベートさん大好きです。
はじめてダンまち読んだときは『自分より弱い人を馬鹿にする嫌な奴』って思ってたんですけども、3巻のミノタウロス戦でのベートさんの反応やソード・オラトリアを呼んだことでベートの過去になぜ暴言を吐くのかの理由を知れたんですけど、それを知った時は「このツンデレが!好き!」ってなりました。というか声も含めて存在がヒロアカのかっちゃんみたいだなって思ってました。ベートって要するに他人に素直な気持ちを出せないってことじゃないですか。もうそれは『月刊少女野崎くん』に出てくる御子柴みたいだなって思いました。アニメ版の声優さん同じですしね。筆者はキャラのギャップに死ぬほど弱いし、確固たる信念を持って行動している敵キャラとか、嫌いまたはそこまで好きじゃないキャラの感動する話を呼んだりしたら一発で好きになるぐらいクッソチョロいオタクです。(オタク特有の早口)


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第10話 『吃驚』

どうも、刺身の盛り合わせです。

というわけで2話連続投稿の2話目です!
今回は豊穣の女主人でのいざこざ解決編です。
前回のあとがきで書いた通り筆者はベート好きというのもあるし、今作が原作通りに進むということもあるので、ベートに反省を促すような文章は書きません。
…たぶん、貶すような内容ではないと思います、ハイ。

それよりも書きたいことがあるんで、サクッと終わらせます。

それでは、どうぞ。

11/23 本編の一部のセリフの文字サイズを変更しました。


モニカの『高が知れる』発言に対して盛大にキレたベート。

そこからの動きは早く、下手人であるモニカの胸ぐらを掴み上げていた。

 

「テメェ…雑魚が調子に乗ってんじゃねえぞ」

 

「…手を放してもらえないだろうか」

 

「あ゛ぁ?」

 

モニカは冷淡な目でベートを見ながら、話をつづけた。

 

「私はダンジョンに向かったベルの下に向かわなければならない。時は一刻を争うのだ。早くこの手を放してもらえないだろうか、『灰狼(フェンリス)』」

 

「テメェ…何ふざけたこと言って―――」

 

「手を放せと言っているのだ、『灰狼(フェンリス)』」

 

「「「「「「「「「「………!!!?」」」」」」」」」」

 

モニカがベートに発した『圧』は、目の前で直接その圧を食らったベートはもちろん、周りにいるロキ・ファミリアや他の冒険者達にも圧は及んだ。

LV.5であるはずのベートは、自身よりも格下から感じる重圧に焦りを感じてしまい、その結果モニカの胸ぐらを掴んでいた手を放し後退りを行った。

いきなり手を放され、ふらつきつつも何とか着地することが出来たモニカは、ロキ・ファミリアのメンバーに謝罪の声をかけた。

 

「ロキ・ファミリアの団員の方々。このような酒の席で貴公らを貶めるような発言をしてしまい、申し訳ない。なので、後日改めて正式な謝罪をさせてもらいたいのだが、いつそちらのファミリアに訪れたらよろしいだろうか?」

 

モニカの発したセリフに、困惑の表情を浮かべるロキ・ファミリアの団員達。

 

「少し待ってくれないか」

そんなモニカの発言に対して、≪ロキ・ファミリア≫の団長『勇者(ブレイバー)』フィン・ディムナが待ったをかけた。

 

「貴公は『勇者(ブレイバー)』か…。一体何様か?」

 

「今回のことについて、君からの謝罪はいらないよ。」

 

「なッ、フィン!?何言うとるんや!?」

 

「少し黙っていてくれ、ロキ。…今日のベートの発言は流石に見過ごせないレベルだった。僕等がベートの発言を積極的に止めてさえいれば、こんなことは起きなかったはずだ。だから、今日のことは互いになかったことにしないかい?」

 

「……いいのか?大派閥の団長自らがそのようなことを言って」

 

「今回のことはこちらにとっての勉強代ということにするさ。それに、彼を追いかけていった方がいいと思うよ?」

 

「…心遣い感謝する。それでは、失礼した」

 

フィンとの会話を終え、改めてダンジョンに向かったと思われるベルの下に向かおうおすると、次はロキに声をかけられた。

 

「ちょい待ちや!アンタ、名前なんて言うん?良かったらウチのファミリアに改宗(コンバージョン)せえへん?」

 

ロキはモニカに改宗を持ちかけた。

周りで聞いていた眷属達は驚いていたが、モニカは冷静に答えを返した。

 

「とても光栄なことだが、やめておこう。私は先ほど、そちらのファミリアに喧嘩を売ってしまった。そんな私が貴殿のファミリアに加われば納得できないものが多くいるだろう」

 

モニカはベートの方向に目を向けながらそう言った。

 

「それに、私は以前そちらのファミリアに伺った際に、『私のような子供が入れるわけがない』と言われ追い返されている。申し訳ないのだが、貴公らのファミリアにあまりいい印象を持っていないからというのもある」

 

「……入団希望者は通しておけと言っておいたのだがな…。今日は帰ったらあの門番は説教だな」

 

モニカの追い返された発言が出たことで、リヴェリアはホームに帰り次第、門番への説教と再教育を行うことを決めた。

 

「…一番の理由としては、今所属しているファミリアにはこのオラリオに来てから何度も助けてもらっている。そんな恩を仇で返す様な真似はしたくないのだ」

 

モニカの改宗をしない理由を聞いたロキは、少し考えはしたものの、すぐにあきらめた顔をした。

 

「…うん、そう言う理由ならしゃーない、諦めたるわ!子供にこんな風に思われとるなんて、えらい幸せもんやな、モニカたんとこのやつは!…ちなみになんやけど、誰のファミリアに所属しとるん?」

 

「モニカたんと言うのはやめてほしいのだが…、まぁいい。それより、私の所属ファミリアであったな」

 

モニカの所属ファミリアについて聞くロキ。

しかし、モニカの口から出た神の名前は、ロキに今日一番の混乱を巻き起こすものだった。

 

「私の所属ファミリアは、≪ヘスティア・ファミリア≫だ。」

 

「…………………は?」

 

自身が敵視している神である《ヘスティア》の名前が出てきたことに思考回路がフリーズしてしまうロキ。

 

「…ん?どうしたのだ、神ロキ?」

 

「あ~…、君は気にしないで大丈夫だ。それより、君は行くべき場所があるんだろう?早く行った方がいい」

 

「そうであった!それでは失礼する!」

 

豊穣の女主人を飛び出していくモニカ。

ベルはダンジョンに向かったのではと考え、バベルへ向かおうとするものの、武装なしでダンジョンに向かうのは危険なため、武器を取りに急いでホームへ戻ることにした。

モニカが酒場を飛び出して数分後、復活したロキの驚くような声が、オラリオ中に響き渡ることとなった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

はい、本来であれば、モニカは酒場に寄らずすぐにダンジョンに向かうことになってました。
でも、モニカに前回の発言を言わせたいな~、とこの作品を書く前から考えていたこともあったので書いちゃいました。
それと、今回の題名の読み方は『びっくり』、です。
誰のことか分かるかな?

ちなみに今回モニカの発した『圧』についてですが、あれはモニカが『上に立つ人間になるならば、舐められないようにする必要があるな』と考えて自分で学んだ技能になってます。
どちらに当てはめるのかと考えたら、これはスキルかなと思います。
…モニカのステータスに加えた方がいいかについてはアンケートやるので、ぜひ答えていただければと。

次回は明日を予定しています。
それでは、次回もお楽しみに!


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第11話 『覚醒前夜』

どうも、刺身の盛り合わせです。

皆様、アンケートにお答えいただきありがとうございました!
思っていたよりもアンケートが集まったこともあり、たくさんの人が読んでくれているのだなぁと改めて実感しました!
『加える』が多数の票を獲得したということで、一度アンケートを終了します。
そして『圧』をモニカのスキルに加えることにします!
詳しい内容についてはあとがきにて。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。



酒場から飛び出し街の中を突っ切って、一振りのナイフだけの装備でダンジョンに飛び込んだ。

ただひたすらにモンスターを追い求め、手の中にあるたった一つの武器をモンスター達にひたすらに振るい続けた。

弱くてみじめな自分の力を認め、絶えることなく湧き出てくる悔しさを糧に迷宮内を走り続けた。

高みにいるあの人との距離を少しでも埋めたいと、どれだけ険しく困難なのかさえも分かっていない高みへ辿り着こうと、ただ必死に。

馬鹿みたいに熱を灯す胸の奥の意思に全身を委ねながら、モンスターを狩りダンジョンを駆け抜けていった。

その結果、いまだ到達したことのない6階層への到達。

ボロボロになりながらのウォーシャドウの討伐。

ドロップアイテム、『ウォーシャドウの指刃』を左手に装備し、迫りくる新たなモンスター達に二振りの武器を携え突撃していく。

モンスターとの連戦を繰り返し続けたベルは、ボロボロの身体を引きずりながらも6階層を回り続けていた。

モンスターとの激しい戦闘の末、傷の無い個所を探すのが難しいほど全身を損傷しており、血を多く流しすぎたことでかなり思考がおぼろげとなり、周囲への警戒や注意力が散漫としていた。

 

『―――!!』

 

「ッ!?」

 

…背後からのウォーシャドウの襲撃に直前になって気づくほどである。

 

『ウォーシャドウに気付かないなんて、気を抜いていたのか!?…違う、血を流しすぎて思考が鈍くなってる!横に回転してかわす…時間が足りない!最初に戦った時みたいにカウンターが決まるとは思わない…反転して切り抜ける。これしかない!』

 

すぐさま反転し鉤爪状に折り曲げられた三枚の黒刃(ゆび)を振り下ろそうとするウォーシャドウに向かい合い、ナイフを構え走り始めようとするベル。

しかし、目の前のウォーシャドウに集中しすぎた結果、足元に跳んできたニードルラビットへの対処が遅れ、左足を刺され膝をついてしまう。

突然の左足への攻撃に体勢を崩したことで切り抜けることが不可能となったベルは、ウォーシャドウの指刃で足に刺さっているニードルラビットの魔石を一瞬で砕いたものの、横に回転して逃げることも出来なかったため、眼前に振り下ろされたウォーシャドウの黒刃(ゆび)に対して武器で受け止めるしかなかった。

 

「ぐっ!?…っがぁぁぁあ!!」

 

何とか攻撃を受け止められたものの、体力がほぼ無くボロボロの身体のベルに対し、無傷のウォーシャドウ。

ベルに振り下ろした黒刃(ゆび)に少しずつ力を入れてきており、少しずつだがベルの顔に近づいていた。

 

『ぐっ…、ダメだ。左足を攻撃されたのもあって、踏ん張りがきかない!このままだと押し切られる…!』

 

眼前の光景によって時間の流れがどうしようもないほどに緩慢になっていく。

頭の中に今まで目にしてきた情景が走馬灯としてすべて再生されていく。

その中でも、ひときわ鮮明な光を放つ憧憬(あの人)との出会い、そして今も恩恵(ちから)を与えてくれている大切な女神様(ヘスティア)の笑顔と、最近仲間になった少女(モニカ)の顔が浮かんだ。

 

『…そうだ、僕はあの人との距離を埋めなきゃいけない!それに、帰りを待っている人も一緒に進む仲間もいるんだ!こんなところで止まってなんかいられない!!』

 

時間の流れが元に戻るのと同時に力を入れるベル。

 

「止まるわけには、いかないんだ―――ッ!!」

 

先ほどまでウォーシャドウに押されていたものの、勢いを取り戻し左手を押し返そうとするベル。

しかし、ウォーシャドウも負けじと左手の黒刃(ゆび)に力を入れつつ、右手の黒刃(ゆび)も振り下ろしてくる。

何とか左手ウォーシャドウの指刃で右手の黒刃(ゆび)も受け止めれたものの、攻撃の腕が二本になるということは相手の力も二倍になったということ。

さっきは武器二本で腕一本を抑えて何とか拮抗していたのに対し、武器一本で腕一本ずつの現状は先ほどよりもかなり厳しいものとなっていた。

気合で何とか受け止めているものの、ベルの体力と気力は共に限界が近づいていた。

 

「僕は、こんなところで、負けるわけには…、いけないんだーーっ!!」

 

気合を振り絞り、何とかウォーシャドウを押し返そうとする。

それでもウォーシャドウの両手の黒刃(ゆび)がベルの顔に次第と近づいてきていた。

 

「よくぞ耐えた、ベル・クラネル」

 

『――――!!』

 

突如声が聞こえたと思ったら、声にならない断末魔を上げながら、ウォーシャドウが灰となった。

目の前のモンスターが消えたことで、先ほどまで入れていた力が行き場所を失い、前に倒れ這うような体勢になるベル。

 

「モニカさん…。どうして…ここに…」

 

ベルが顔を上げた先にいたのはモニカであった。

モニカはベルに近づきながら話し始めた。

 

「貴公が豊穣の女主人から出ていくのが見えたのでな、事情を簡単に聞いて追いかけてきた次第だ。…それよりも、貴公が無事でよかった。一度ホームに戻るぞ」

 

「でも、僕は…」

 

「そんな傷だらけの身体では、先ほどの戦闘の様に集中力が持たずモンスター相手に隙を作ることになる。それに、貴公が死ねば神ヘスティアは悲しむぞ?」

 

「…ホームに、帰ります」

 

「うむ、賢明な判断だな。立てるか?」

 

「は、い……」

 

何とか立ち上がってモニカと共にホームへ戻ろうとするベル。

しかし、直前まで極限状態でモンスターとの激戦を繰り広げたことと、血を多く流しすぎたこともあり、限界が訪れたのであろうか。

糸が切れたかのように地面に倒れ、そのまま気を失ってしまった。

 

「……これは、私が運んでやらなければならないか…どう運んだものか」

 

結局、モニカはファイヤーマンズキャリーでベルを運びつつ、モンスターへの警戒も同時に行いながら、ダンジョンの出口に向かって進んでいった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

モニカの新たに加えるスキルについてですが、名前と効果については簡単にですが思いついてます。
しかし、スキル内容の文章がなかなか思いつかないので、現在模索中です。
ちなみにスキル内容としてはミノタウロスの咆哮の下位互換みたいなイメージ。

あと最後に書いたファイヤーマンズキャリーですが、調べてもらうと分かりますが、要するに肩に人を担ぐ持ち方です。
モニカ(138C)とベル(165C)の間には身長差(大体27C程度)があるから…仕方ないね。

あと、今週末はまた予定があるので、あと一本だせるかな?って感じです。
次回をお楽しみに。


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第12話 『スキル』

どうも、刺身の盛り合わせです。

お待たせしました、最新話です!
今回はアンケートで募集した『圧』をスキルとして登場させます!

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。


ベルの成長速度にアイズへの恋慕がこれでもかと影響した【ステイタス】を見せつけられ、ちっとも面白くなかったヘスティア。

へそを曲げてバイトの飲み会に向かい帰宅すると、モニカもベルもどちらも隠し部屋にはおらず、がらんとした静けさがヘスティアを迎えた。

二人でご飯を食べて来いと自ら言っておきながら、出迎えが一切ないことに一層不機嫌になり、ふて寝を決め込んでいた。

しかし、深夜を超えても二人が帰ってこないことに危機感を覚え、隠し部屋を飛び出し一睡もせず夜の街を探し回ったが、二人の姿を見ることは出来なかった。

その結果、ふて寝時にあった冷静沈着の体など砂の城のように崩れ去り、最悪な可能性が脳裏に浮かんだことでぶわっと嫌な汗を噴き出すことになった。

居ても立ってもいられなくなったヘスティアは、再びベルとモニカを捜索しようとドアの下に駆け寄ろうとすると、ゆっくりと階段を降りてくる足音が聞こえた。

 

「遅いじゃないか!心配したんだよ、二人と…も…!!」

 

二人が帰ってきた。

そのことにうれしくなったヘスティアがドアに駆け寄り扉を開けると、そこにいたのは…。

 

「ただいま帰りました、神ヘスティア」

 

全身ズタボロで意識のないベルと、そんなベルを担いでいるモニカであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「……なるほど、事情は理解した。ありがとうね、モニカ君。ベルを助けに行ってくれて」

 

「いえ、ベルはこのファミリアの仲間ですから、助けるのは当然です」

 

慌てるヘスティアをなだめ、ベッドにベルを寝かせたモニカ。

どうしてこんな時間に帰ってきたのかと、ベルがボロボロになった理由を聞いたヘスティアは、モニカに感謝の言葉を述べた。

 

「それにしてもキミ達の行った酒場でそんなことがあったなんてね…おのれロキのとこの眷属(子供)め…!」

 

「落ち着いてください、神ヘスティア。昨日のベルは少し調子に乗っていた。今回のことはベルにもいい薬にもなったはずです」

 

「それならいいんだけど…。とにかく、夜も遅いから寝ようじゃないか!モニカ君はソファを使って寝るんだよ!」

 

「…ヘスティア様はどうやって寝るつもりなのですか?」

 

「そりゃもちろんベル君の隣で…あっ」

 

「…今日は一緒にソファで寝ましょう、ヘスティア様」

 

「い、嫌だ!ボクはベル君と一緒に寝るんだー!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

何とかヘスティアと共にソファで寝たモニカ。

翌朝、まだ目覚めないベルを尻目に朝食(もちろんジャガ丸くん)を食べる。

歯を磨き、装備を身に付け未だ目覚めないベルの代わりに日銭を稼ぐためダンジョンに潜る。

二日連続でヘスティアに心配させるわけにもいかないため、5階層まで潜ったところでダンジョンから撤退した。

ギルドに行き換金をする際に担当アドバイザーのエイナからベルのことを聞かれたので、現在怪我を負ったので休んでいることを伝えると、体が治ったら一度顔を出すようにと伝えた後に、今日は5階層まで下りたことをエイナに伝えると、「冒険者は冒険しちゃいけない」と公衆の面前で怒られてしまった。

ホームに帰宅すると、目を覚ましてないベルに添い寝をしようとしていたヘスティア。

そんなヘスティアを引き剥がし、今日の成果をヘスティアに見せ、夕食(またもやジャガ丸くん+スープとサラダ)を食べた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

モニカ・ヴァイスヴィント

LV.1

力:H112→H127 耐久:I21→I28 器用:I87→H105 敏捷:H115→H125 魔力:I0

 

《魔法》

【 】

 

《スキル》

【上官命令(オフィサー・オーダー)】

●威圧行為を行うことによる、対象への強制停止(リストレイト)の発動。

●自身より格上の相手に行う場合、差が大きいほど成功率・効果時間が共に低下。

対して、自身より格下の相手に行う場合、差が大きいほど成功率・効果時間が共に上昇。

●対象が何らかの状態異常に陥っている場合、相手との差に関係なく成功率・効果時間が共に上昇。

●対象へ向ける威圧の大きさによって効果上昇。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「――ッ」

 

ぴたっ、とヘスティアは手の動きを止めた。

いつものようにモニカの恥骨あたりに腰掛け、いつものように神血を用いて【神聖文字(ヒエログリフ)】を刻んでいくいつも通りの作業だった。

しかし、『スキル』の項目に差し掛かったところで予定が変わった。

モニカの【ステイタス】にスキルが表れた。

それも未確認と思われる内容のスキルであった。

 

『というかなんだ、強制停止って。意味が分からん!なんでモンスターみたいなことが出来るようになってるんだこの子は!?…というより、どうしてうちの子達はこうもレアスキルを出すんだ!?』

 

『レアスキルを持っている』、このことがバレでもしたら、他の神々が全力で興味を持ち、ニヤニヤしながら全力でちょっかいをかけてくるだろう。

それだけは何としても絶対に避けたい。

だが、モニカはベルとは違い嘘が下手というわけではない。

それどころか逆に勘のいい部分もある。

下手に隠すと彼女からの信頼をなくす恐れがある、そう考えたヘスティアは、モニカに発現したスキルについて説明を行うことにした。

 

「………今の私にはこのようなスキルが出たのですか。しかも、レアスキル…ですか…」

 

「うん。だからこのスキルについては、なるべく口外しないようにしてほしいんだ」

 

「それは…ベルにもですか?」

 

「あ~…、そこなんだよね~…。もしもベル君に教えるんなら、口外しないように言わなきゃダメだよ?」

 

「分かっていますよ、ヘスティア様」

 

スキルについてヘスティアと話を進めるモニカ。

明日もダンジョンに潜るため、またしてもベルの寝ているベットに潜ろうとするヘスティアにチョークスリーパーをきめつつ、昨日と同じようにソファーで寝ることにした。

もちろん、ヘスティアと共に。

 

「放すんだモニカ君!今日こそボクはベル君と添い寝するんだい!」

 

「ええい、何を言うのですか神ヘスティア!?まだベルが寝ているでしょうが!?」

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

はい、というわけで新スキルのお披露目会でした!
名前とか内容とかかなり苦戦しました。
オリジナルスキル作ってる他の作者さんは凄いなって改めて感じましたね…。
まぁ、あと何個かスキルと魔法はあるんですけどね()

それと、自分で調べた限りだと、原作に似たようなスキルはなかったはずなんですよね。
もしも似たようなスキルが原作にあったら教えてください。
あと、スキルについて気になることや追加したいことがあればどんどん聞いてくださいね?

次回をお楽しみに。


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第13話 『神の宴』

どうも、刺身の盛り合わせです。

最新話です!
感想でスキルについて案を送っていただきありがとうございます!
今後のスキルや魔法についてはご期待ください!
それと、モニカは今後必殺技を出していくことにしました。
詳しいことはまた後にということで…

今回は題名で分かる通り『神の宴』についてです。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。

11/14 誤字を訂正しました


ベルがモニカに連れられてホームに帰ってきたその翌日、ようやく目を覚ました。

三人とも朝早い時間に起きたということもあり、とりあえずステイタスの更新を行うこととなった。

ベルのステイタス更新が終わるまで教会の外で日課の素振りを行う。

ヘスティアに呼ばれたのでホームに戻ると、ヘスティアが何日かホームを留守にすること、それとダンジョンに潜る際は怪我人であるベルのことを考えながら潜るようにと釘を刺されつつ、どこかに出かけるヘスティアを二人で見送った。

それから朝食を食べたりなどしつつある程度時間が立ち、正午前の時間帯。

ダンジョンへ行こうとするベルに、先日の豊穣の女主人での無銭飲食について謝罪に行くように言ったモニカは、共に人通りで込み合っているメインストリートを小走りで進み、豊穣の女主人へ向かい、店の前に辿り着いた。

 

「今回のことは貴公が起こした不祥事だからな、終わるまで私は店の外で待っている。ちゃんとお金は持ってきているか?」

 

「はい、大丈夫です。ちゃんと持ってきてますから!…それじゃあ、謝ってきます!」

 

『Close』と札のかかっているドアを押して店内に足を踏み入れるベルを見守るモニカ。

数分程待っていると、ベルが薄鈍色の髪のヒューマンの少女と共に店の外に出てきた。

 

「えっと、あなたがモニカさんですか?私は先日ベルさんをここにお誘いしたシル・フローヴァと言います!ベルさんが無茶しないように見張っていてあげてください!」

 

「モニカ・ヴァイスヴィントだ。ベルに弁当を渡していただいて感謝する。それとベルについてだが、神ヘスティアからもそのように言われているのでな、私に任せてくれ」

 

笑顔で握手を交わしつつ、ベルについての話を始めるモニカとシル。

横で聞いているベルは顔を真っ赤にし、早く豊穣の女主人の前から立ち去りたい気持ちでいっぱいであった。

 

「モ、モニカさん!早くダンジョンに行きましょう!時間は有限なんですから!」

 

「それもそうだな。それではシル殿、また後日会おう」

 

「はい!ぜひ次は二人一緒にウチへ食べに来てくださいねー!」

 

シルに見送られ、ダンジョンのあるバベルへ向かうベルとモニカ。

本日はどの階層まで進むかを話しながらメインストリートを二人並びながら歩いていくのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

夜、オラリオにある【ガネーシャ・ファミリア】の本拠地、『アイアム・ガネーシャ』には多くの神々が集合していた。

神々がガネーシャ・ファミリアに集まった理由、それは本日ガネーシャ主催で『神の宴』が開かれるからである。

この『神の宴』、下界に降り立った神達が顔を合わせるために設けられた会合で、決まりが一切ないものとなっており、宴をしたい神が行い、宴に行きたい神が足を運ぶ。

神達の気まぐれと奔放さの一面が示された催しとなっているのである。

また、『神の宴』の招待状は、開催する【ファミリア】の動員力の可能な範囲で配られるものとなっており、今回『神の宴』を開いた【ガネーシャ・ファミリア】はオラリオ内でも指折りの【ファミリア】なのもあり、市内で居を構えている神達には全員お呼びの声が掛かっていたのである。

もちろんヘスティアも呼ばれており、『神の宴』に参加している。

 

「(さっ!さっ!さっ!…まぐっ!)」

 

口の中に料理を放り込みながら、持参したタッパーに日持ちのよさそうな料理を詰め込みまくっていた。

 

「何やってんのよ、あんた……」

 

「むぐぅ?むっ!ヘファイストス!やっぱり来てたんだね!」

 

そんなヘスティアに脱力したような声をかけるのは《ヘファイストス》、燃えるような紅い髪と深紅のドレスを纏い、右眼に大きな眼帯をした鍛冶神である。

 

「ええ、久しぶりヘスティア。元気そうで何よりよ。…もっとマシな姿を見せてくれたら、私はもっと嬉しかったんだけど。…言っておくけどお金はもう一ヴァリスも貸さないからね?」

 

「し、失敬な!ボクがそんな神友の懐を食い漁る真似なんかするもんか!そりゃあヘファイストスには何度も手を貸してもらったけども…今はおかげで何とかやっていけてるさ!」

 

「たった今、目の前でただ飯を食い漁って挙句持ち帰ろうとしてるじゃない」

 

「うっ…、いや、これは、どうせ残るんだし…、持って帰って食べさせてあげようかと…」

 

「ほーほー、立派ねそのケチ臭い精神。わたしゃあ、アンタのそんな姿に感動して涙が止まらないわよ」

 

「ぐぬぅ………」

 

「ふふ………相変わらず仲がいいのね」

 

「え…フ、フレイヤ?」

 

ヘスティアとヘファイストスに話しかけてきたのは《フレイヤ》、容姿の優れた神達の中でも群を抜いており、もはや超越していると形容していいほどの比類ない美貌を持った、まさに美に魅入られた神である。

 

「あら、お邪魔だったかしら、ヘスティア?」

 

「ボク、君のこと苦手なんだ」

 

「うふふ、貴方のそういうところ、私は好きよ?」

 

「まあ、君なんかよりずっっと大っ嫌いなやつが、ボクにはいるんだけどねっ」

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

今回は神の宴の前半で終わりました。
ヘスティアの大っ嫌いなやつ…一体何キなんだ…
次回は後半戦。
怪物祭の説明まで行けたらいいなぁ…

次回もお楽しみに。


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第14話 『依頼』

どうも、刺身の盛り合わせです。

今日は筆がのったので、2話連続投稿です!

まず一本目は前回の神の宴の続きと怪物祭についてです。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。


「おーい!ファーイたーん、フレイヤー、ドチビー!!」

 

ヘファイストスとフレイヤ、ヘスティアが話しているに訪れたのは《ロキ》、朱色の髪と糸目ながらもその下にある朱色の瞳の女神なのだが、フレイヤの後に出てきたので、二番煎じ感が否めないものとなっていた。

 

「あらロキ」

 

「ねえロキ、ちょうどよかった。君の【ファミリア】に所属しているヴァレン何某(なにがし)について聞きたいことがあるんだけど?」

 

「ハァ?ドチビがウチにぃ?」

 

「君のファミリアの『剣姫』、ヴァレン何某(なにがし)には付き合っているような男や伴侶はいないのかい?」

 

「あほぅ、アイズはウチのお気に入りや。嫁には絶対出さんし、誰にもくれてやらん。ちょっかい出すやつは八つ裂きにしたる」

 

「ちッ!」

 

ロキが顔を顰めながら言うと、それを聞いたヘスティアは舌打ちをする。

次の話に移ろうとすると、今度は逆にロキから質問が来た

 

「それより、ドチビんとこのモニカたん、ウチのベートを威圧しとったんやけど、一体何者や?」

 

「何者もなにも、彼女は一週間前頃にこのオラリオを訪れた冒険者で、今はボクのファミリアの眷属さ。それに何か問題でも?」

 

「…『凶狼(ヴァナルガンド)』ってLV.5でしょ?ちょっとどういうことよ、ヘスティア」

 

「だから彼女はつい一週間前にこのオラリオに来た子だから、何か変な力持ってるとかじゃないって!それに、ロキのとこが酔って過剰に反応したとかかもしれないだろ?」

 

「……まあ、今はそういうことにしといたる。それに今日は目的があってここに来たんやからな!」

 

そこから、ヘスティアにドレスでマウントを取ったロキであったものの、自身の悲しいまでに平原のような胸板を指摘されたロキがキレ、ヘスティアの両頬を掴み上下左右に引っ張りまくる。

ヘスティアが応戦しようと短い四肢でもがくものの届かなかったのだが、ロキが縦横無尽に動いたことにより、ヘスティアの胸に実った巨峰がたゆんたゆんと揺れに揺れまくったのを眼前で見た結果、涙をまき散らしつつ小物臭溢れるセリフを吐き捨てながらロキは会場を出ていった。

 

「ロキがあんな風になったのも、やっぱり子供達を大好きになったからなのかしらね?」

 

「…スッゴイ嫌だけど、子供達が好ましいってのはボクも同意だね」

 

「あら、あんたがそんなふうに言うなんて、あんたの【ファミリア】に入った子達のおかげかしら?」

 

「うん、まぁね。ベル君とモニカ君って言ってね…、僕にはもったいないくらいのいい子達だよ」

 

「確か、白髪で赤い目をしたヒューマンがベルだっけ?もう一人のモニカって子はまだ知らないけど、【ファミリア】が出来たってあんたが報告しに来たときは驚いたなぁ…」

 

ヘスティアとヘファイストスが話していると、フレイヤが立ち上がり話し始めた。

 

「じゃあ、私もそろそろ失礼させてもらうわ」

 

「え、もうかい?」

 

「えぇ、確かめたいことがあったのだけれど、それも済んだし…」

 

「?」

 

「それに、ここにいる男はみんな食べ飽きちゃったもの。じゃあね、ヘファイストス、ヘスティア」

 

そんな言葉を残して、フレイヤはその場から去っていった。

 

「やっぱりフレイヤも『美の女神』だ…、だらしないなぁ」

 

「…そういえば、あんたはこれからどうするの?あたしはもう少しみんなの顔を見に回ろうかと思うけど、帰る?」

 

「…ヘファイストスに頼みたいことがあるんだけど…」

 

「……一応聞いておいてあげるわ。な・に・を、私に頼みたいですって?」

 

「実は…ボクの【ファミリア】の子達に、武器を作ってほしいんだ!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「一日経っても帰ってこないなんて…神様、一体どこに行っちゃったんでしょうね…」

 

「私達がそのことを気にしても仕方ないだろう。今私達が出来ることは、ヘスティア様が帰ってくるまでに沢山の経験を積むことだ!」

 

「そうですね。頑張りましょう、モニカさん!」

 

ヘスティアが神の宴に出かけてから早くも二日。

ベルとモニカは、今日の探索を終え、ダンジョンから地上に戻っている最中であった。

二人が現在いるのは、ダンジョンの直上に建造された白亜の巨塔『バベル』、その地下一階。

ダンジョンへの入口になっている円形の空間で、冒険者たちにとってはモンスターの来ない完璧な安全地帯となっており、多くの冒険者とバックパックを背負うサポーターがひしめき合う場所になっていた。

今日の探索を終えた二人は、後から来る人達の邪魔にならないよう壁際を移動しながら話をしている最中であった。

ある程度進んでいくと、二人の視界に見慣れない光景が飛び込んできた。

 

「あれは…物資運搬用の収納ボックス?なんでこんなところに…」

 

「あれは…明後日に行われる怪物祭(モンスターフィリア)の物か。」

 

「怪物祭?モニカさん、それって一体何ですか?」

 

「私もエイナ殿に簡単な説明しか受けていないのだが…、年に一回行われる【ガネーシャ・ファミリア】主催の催しで、ダンジョンから連れてきたモンスターをする見世物(ショー)のようなものらしい」

 

「ちょ、調教、ですか?それに催し…」

 

「…よし!せっかく祭りが行われるのだ、ダンジョン探索は休みにして祭りを回ろうではないか!」

 

「えぇ!?そ、そんなことしてていいんですか!?それに、さっき『沢山の経験を積む』って言ったじゃないですか!?」

 

「それも大事ではあるが…。ベル、貴公はまだ病み上がりだ。また無理をして体を壊せば、ヘスティア様に心配をかけてしまうからな。そうならないように、一日は休息日を入れた方がいい。…それに、祭りならおいしいものも食べられそうだからな

 

「何か言いましたか、モニカさん?」

 

「い、いや何も言っていないぞ!?…とにかく、明後日のダンジョン探索はベルの身体のことも考え休みにする!ベルはそれでいいか?」

 

「…僕も神様に心配はかけたくないですから…。分かりました、当日は休みにしましょう!」

 

そうしてを回ることに決めたベルとモニカ。

ホームに帰る途中で【ミアハ・ファミリア】の主神《ミアハ》に会い、モニカを紹介して祝いのポーションをもらってから、ホームへと戻っていった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

今回のあとがきについて一言でまとめると、『ヘスティアとロキの喧嘩のパート好き』。
この一言に尽きます。

なので続きをどうぞ。


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第15話 『懇請』

どうも、刺身の盛り合わせです。

連続投稿の2話目です

今回はヘファイストスへのお願いとシルへのお使いが内容です。

それでは、どうぞ。

11/3 内容の一部修正を行いました


ベルとモニカがダンジョン探索を休み、怪物祭(モンスターフィリア)を回り休息をとることにした同時刻。

 

「……あんた、いつまでそうやってるつもりよ?私、これでも忙しいんだけど。そこにいられると、気が削がれて仕事の効率が落ちるの、分かる?」

 

ベルとモニカの主神であるヘスティアは、神友であるヘファイストスに対して土下座を絶賛敢行中であった。

 

 

「自慢する訳じゃないけど、ウチのオーダーメイドなんてどれくらい値段がかかるか分かってるの?」

 

「値が張るのは知ってる。でも、今じゃないとダメなんだ!お願いだヘファイストス、この通り!」

 

「この通りって…。そもそもあんた昨日から何やってるの?というか何なのその格好?」

 

「土下座。これをすれば何をしたって許されて、何を頼んでも頷いてもらえる最終奥義って、タケに聞いた」

 

「アイツは余計なことを…!」

 

とりあえず今度タケミカヅチに会ったら一発殴ろう。

そんなことを考えついたヘファイストスは、ヘスティアをじっと見据えながらヘスティアになぜこんなことをしているのかを訊くことにした。

 

「…ヘスティア、教えてちょうだい。どうしてあんたがそうまでするのか」

 

「今ベル君は変わろうとしてる。一つの目標を見つけて、高く険しい道のりを走りだそうとしてる!モニカ君も助けてくれてるけど、危険な道だ。だからほしい、あの子を手助けしてやれる力が!あの子の道を切り開ける武器が!」

 

「…………」

 

ヘスティアの言葉を真剣に聞き続けるヘファイストス。

 

「ボクはあの子達に助けられてばっかり、それどころかひたすら養ってもらってるだけだ!ボクはあの子達の主神なのに、神らしいことは何一つだってしてやれない!あの子達に何もしてやれないのは、嫌なんだよ…」

 

「…わかったわ。武器、私が作ってあげるわ、あんたの子にね」

 

「……本当かい、ヘファイストス!ありがとう!それに、君が武器を打ってくれるなんて一番嬉しいよ!」

 

「…言っとくけど、ちゃんと代価は払うのよ!例え何十年、何百年かかっても、絶対にこのツケは返済なさい」

 

「分かってるさ、ヘファイストス!」

 

「はいはい、楽しみに期待してるわ」

 

目を閉じ胸を張るヘスティアの言葉を話半分に聞きつつ、紅緋(べにひ)色の鎚を手に取るヘファイストス。

 

「それで、あんたの子達が使う得物は何?」

 

「えっと…ベル君がナイフで、モニカ君がサーベルだね」

 

「そう、分かったわ。…これからやる作業、あんたも手伝いなさい。今からしっかり働いてもらうから、いいわね?」

 

「ああ、任せてくれよ!」

 

こうして、ヘスティアとヘファイストスによるベルとモニカ専用の武器の製作が始まったのである。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

あっという間に時間は過ぎ、怪物祭(モンスターフィリア)当日。

ベルとモニカは会場である闘技場に向かっていた。

すると突然、二人の後ろから声をかけられた。

 

「おーいっ、待つニャ白髪頭!お前に頼みがあるニャー!」

 

「え?僕ですか?」

 

「そうニャ。お前にちょっと面倒ニャこと頼みたいニャ。この財布をおっちょこちょいのシルに渡してほしいのニャ」

 

「アーニャ、それでは説明不足です。クラネルさんも困っています」

 

アーニャと呼ばれたキャットピープルの店員の言いたいことを理解できなかったベルだったが、今度はエルフの店員が現れた。

 

「リューはアホニャ。店番サボって祭り見に行ったシルに忘れた財布を届けて欲しいニャんて、いちいち言わなくても分かる事ニャ」

 

「という訳です。それと、シルはサボった訳ではなく、休暇を取っての祭り見物です。今頃財布がなくて困っていると思います。どうかお願いします」

 

「僕達もちょうど祭りを見回ろうと思ってたので、大丈夫ですよ。モニカさんも良いですか?」

 

「ああ、冒険者としても人としても、困っている人を見過ごすわけにはいかないからな」

 

「はー…、お前は出来た子供ニャ。メッチャえらいニャ」

 

「なっ!?私は子供ではないっ!?17歳だっ!バカにするなーっ!」

 

「はー、そうは見えないニャ。10歳ぐらいかと思ったニャ」

 

「な、何を――ッ!?」

 

アーニャに年齢のことをいじられ、キレているモニカ。

アーニャに説教を始めそうな雰囲気を纏わせ始めたあたりで、ベルがモニカを羽交い絞めにし、闘技場に向けて進み始めた。

 

「も、モニカさん!今はシルさんを探しに行きましょう!ね!?」

 

「ええい放せベル!私はあの店員に説教をしなきゃいけないんだ!放せったら放せ――っ!!!」

 

周りの人々になんだなんだと見られながら闘技場方面へと進んでいくベルとモニカ。

そんな二人を見ながら、リューはアーニャに注意をしていた。

 

「今度彼女に会ったらちゃんと謝るべきですよ、アーニャ」

 

「フーン、別にミャーは悪いことしてないニャ。謝る必要ないニャ」

 

「…あの方達はシルの友人だ。後日謝ってください」

 

「わ、分かったニャ。ちゃんと謝るニャ!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「…それじゃあどうしましょうか、モニカさん」

 

ベルに引きずられながら闘技場前についたモニカ。

これからシルを探すということでどうやって探していくのかを話し合うことにした。

 

「…では、二手に分かれないか?私は闘技場と西のメインストリートの探索を行うので、ベルは東のメインストリートの捜索を行ってほしい。一度確認し終わったら、もう一度この場所に集合してシル殿がいたかどうか確認することにしないか?」

 

「なるほど、分かりました!それじゃあ僕あっちの方見てきますね!」

 

「それでは後でまた合流するぞ、ベル!」

 

こうして二人はそれぞれ分かれてシルを探すこととなった。

この選択が、これから起こる戦いに僅かながらも変動を起こすことになるのであった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

という訳で、何とか原作一巻の山場まで何とか書ききることが出来ました!
ここから先は、外伝『ソード・オラトリア』の方に少し片足突っ込んでいきます!
また、本文最後に書いた通り、モニカが戦線に加わることで本来の歴史から少し内容が変わることになります。
どうなるかはお楽しみ、ということで!

それでは、また次回。


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第16話 『怪物祭~開幕~』

どうも、刺身の盛り合わせです。

という訳で、戦闘回です!
今回から数話はソード・オラトリアの内容に絡んでいきます。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!
うれしくてニヤニヤが止まらない毎日です!

それでは、どうぞ。

11/5 題名の変更を行いました


「一体全体、シル殿はどこを回っているのだ?…この綿あめというもの、なかなか美味しいな!」

 

ベルと分かれ、祭りを楽しみつつシルを探すモニカ。

そんな彼女の右手には綿あめ、左手にはりんご飴のような何かを持っていた。

道に沿って並んでいる出店に寄っては買い食いしながら西のメインストリートを一通り探し終わったモニカは、ベルとの集合場所でもある闘技場前に向かうことにした。

闘技場前に到着すると、ギルド職員が何やら慌ただしく動いているのを発見し、モニカは職員の一人に近づき声をかけた。

 

「すまない、何かあったのか?」

 

「キミ、もしかして迷子の子供!?さっき親御さんが探してたよ!?」

 

「私は迷子の子供ではない!冒険者だ!」

 

「え゛っ!?…ま、間違えてしまい誠に申し訳ございません!?」

 

「いや、そこまで謝らなくて大丈夫だ。こちらが申し訳なくなる…。ではなく!一体何があったのだ?」

 

「実は、闘技場の地下からモンスターが逃げ出してしまい…現在周囲の冒険者の皆様に協力を呼び掛けておりまして…」

 

「了解した。そのモンスター達がどこへ行ったか教えてもらえないか?」

 

「はい、あちらの方向にモンスターが何匹か向かったそうです」

 

「了解した、直ちに向かう!」

 

「ありがとうございます!」

 

以前のようなことが起きた場合のために、と持ってきていたサーベルの柄に手を置き、いつでも抜刀できる体勢をとりつつ、ギルド職員に教えてもらった方角に進んでゆくモニカ。

やがて入り組んだ街の中に入っていくと、住民を襲おうとしているゴブリンを見つけることが出来た。

 

「貴公、頭を下げるのだ!」

 

襲われそうになっている住民に声をかけながらモンスターに突っ込むモニカ。

サーベルを抜きながら左から右に横一線に切り払いを行ったことで、ゴブリンの胴は真っ二つになり、ゴブリンはモニカを視界に入れたその瞬間に灰へとその姿を変えた。

 

「貴公無事か?今この地域にいると、モンスターに襲われる可能性がある。幸い、ここに来るまでモンスターは見なかったので、後ろの道を通って大通りに逃げるといい」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

住人が逃げるのを確認したモニカ。

奥へと足を踏み出そうとすると、よろめくほどではないものの、ぐらりと振動を感じとった。

地震というにはあまりにもお粗末なものであったのだが、ラキア王国で軍人になるため積み重ねてきた経験とダンジョンで培われた感覚が、振動に対して警鐘を鳴らしている。

この警鐘が勘違いであることを祈りつつ、街の奥へ進んでいくモニカであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

モニカが振動を感じ取ったのと同時刻。

主神であるロキの『アイズがモンスターを討ち漏らした場合、そのモンスターを倒してほしい』という頼みを聞き、家屋の屋根伝いに移動していたティオナ・ティオネ・レフィーヤも振動を感じ取っていた。

そして、自然に身構えていた彼女たちのもとに、何かが爆発したような轟音が届いた。

引き寄せられるように轟音のもとに視線を飛ばすと、通りの一角から膨大な土煙が立ち込めていた。

 

「き―――きゃああああああああああああああああああああっ!?」

 

次いで女性の金切り声が響き渡った。

揺らめきを作りながら煙の奥から現れたのは、石畳を押しのけながら地中から出現した、蛇に酷似する長大なモンスターであった。

ぞっっ、と首筋に嫌な寒気を感じ取ったティオナとティオネは同時に、一足遅れてレフィーヤが駆け出し、屋根の上を跳びながら一直線に突き進み、悲鳴を上げて市民が一斉に逃げ惑う際中、三人は通りの真ん中へ勢いよく着地を決め、臨戦態勢に入った。

 

「こんなモンスター、ガネーシャのところはどこから引っ張ってきたのよ…」

 

「新種かな、これ……?」

 

煙が完全に晴れ渡ったことで、モンスターの全体像が見えた。

簡単に説明をするのならば、『顔のない蛇』と形容するのが最も相応しい見た目となっていた。

 

「ティオナ、あいつを叩くわよ。レフィーヤは様子を見て詠唱を始めてちょうだい」

 

「「分かった/は、はいっ」」

 

目つきを鋭くするティオネの指示に、ティオナ達だけでなくモンスターも反応した。

地面から生える体を蠢動させ、全身を鞭のようにしてティオナとティオネに力任せの体当たりを仕掛けるものの、二人は見事に回避する。

体当たりした先で嫌な音を立てて細い体をくねらせるモンスターに対して、二人はすかさず死角から拳と蹴りを叩きこむものの、凄まじい硬度を誇る滑らかな体皮に渾身の一撃が阻まれるどころか、逆に二人の手足にダメージを与えてきた。

二人の攻撃に悶え苦しむ素振りを見せたモンスターは、氾濫した川の激流のような勢いで体を蛇行させることで怒りを表し、より苛烈に攻め立ててきた。

二人は一撃でもくらえば一溜りもない敵の攻撃をことごとく避けながら、モンスターに見打を見舞う。

 

「打撃じゃ埒が明かない!」

 

「あ~、武器用意しておけばよかったー!?」

 

互いに決め手を見いだせないまま、状況が停滞する中。

レフィーヤは自身が歯牙にもかけられていないことやティオナ達が時間を稼いだことで、余裕をもって詠唱を行い狙い撃つことが出来るため、レフィーヤは山吹色のを展開しつつ速やかに魔法を構築した。

 

「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!」

 

そして最後の韻を終え、解放を前に魔力が収束した直後、モンスターがそれまでの姿勢を覆しレフィーヤの方向に振り向いた。

 

「―――ぇ」

 

その異常な反応速度に、レフィーヤの心臓は悪寒と共に打ち震える。

ティオナ達がすでに退避を始めているのを視界に入れた瞬間にレフィーヤは気づく、―――このモンスターは自身の『魔力』に反応した、と。

レフィーヤがそのように直感した、次の瞬間。

 

 

「紫電、一閃ッ!」

 

 

叫ぶ声と弾かれるような音が通りに響く。

レフィーヤが振り向くと、そこには地面から黄緑の突起物が生えており、自身に攻撃する直前であったことが見て取れた。

そして、以前豊穣の女主人に訪れた際、ベートに凄まじい威圧を放った少女が自身の側に立っていた。

 

「無事であったか、貴公」

 

その少女こそが、モニカである。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

はい、という訳でモニカの介入でレフィーヤが吹き飛ばされませんでした!
ですが、内容が一部変わりましたが、全体的な流れはあまり変わりません。
レフィーヤの決意のシーンはソード・オラトリア一巻の山場のシーンですからね。
その代わり、誰とは言いませんがレフィーヤの代わりにズタボロになる人がいます。
イッタイダレナンダロウナー()

次回は明日には投稿できないかもしれないです。
なので、気ままに待っていてください。

それでは、次回。


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第17話 『怪物祭~佳境~』

どうも、刺身の盛り合わせです。

かなり難産でしたが、何とか投稿出来ました!
今回は前回の裏側と食人花との最初の戦闘まで。

今回も原作から内容が少し変わったりしてます。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。


遡ること数分前。

モニカは、感じ取った振動に嫌な予感を感じたモニカは、街の奥へ進んでいた。

すると、何かが爆発したような轟音と女性の金切り声が聞こえ、緊急事態と考え走って街の奥へ進むと、そこには蛇に酷似した長大なモンスターとそのモンスターと戦っている冒険者達がいた。

アドバイザーからの講習で聞いたことも見たこともない初めてのモンスター。

中層、もしくはそれ以上下の階層に出現する自分では太刀打ちできないモンスターだと判断したモニカは、近くにいた市民に避難を促した。

 

「皆の者!こちらの道を通って避難するのだ!」

 

何とか市民の一部を避難させることが出来たので、モンスターを観察する。

よく観察すると、あまり打撃が聞いていないようで、互いに決め手がなく膠着状態になっていたものの、エルフの冒険者が魔法を構築していた最中であった。

これまでエルフの冒険者を歯牙にもかけていない様子だったモンスターであったが、最後の韻を終え、解放を前に魔力が収束した直後、モンスターがエルフの冒険者へと突然振り向いた。

 

『まさか、魔力に反応するモンスターか!……マズいッ!?』

 

背後から見ていたこともあり、エルフの冒険者の背後の地面が隆起し始めているのに気づくことが出来た。

地面の隆起や見た目から、触手による攻撃ではないかと予想し、標的は魔法を使おうとしたエルフの冒険者。

そう考えたモニカは今の自分が持てる限りの全力で冒険者のいる方向に向けて走り出した。

 

『急ぐのだ私!彼女は明らかに何も防具を付けていない!あの状態で一撃でもくらえば重傷は免れん!』

 

走り出しつつ対処方法を考える。

 

『あのモンスターはLV.5の冒険者が苦戦するレベル。私では攻撃を受け止めることは不可能!ならば…!』

 

走りながら、あらかじめ右手で持っていたサーベルを胸前で縦に構え直し、右手を引きながらサーベルの切っ先を地面から出てきた突起物に向け、剣先に左手を添えて平突きの体勢をとる。

 

「これで、決める…っ!【紫電一閃】ッ!!」

 

右足で踏み出すのと同時に一気に距離を詰め、地面から完全に姿を現した触手に対して切札の名を叫びながら突きを繰り広げる。

触手自体の撃破には至らなかったものの、何とか弾き返すことに成功したモニカ。

こうして、モニカはレフィーヤに迫っていた触手の攻撃を退けたのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

目の前のモンスターに気をとられた結果、背後からの攻撃気づくことが出来なかったレフィーヤ。

しかし、何者かによる触手への攻撃により攻撃を受けずに済んだ。

振り向くと、以前遠征の打ち上げで訪れた酒場に突如現れ、酒に酔っていた【凶狼】やその場にいた全員を圧のみで退けた少女が背後に立っていた。

 

「あなたは、『豊穣の女主人』にいた…」

 

「うむ、名をモニカという。戦闘を見ていたのが、貴公がこの戦いでの決め手になるだろう?微力ではあるが、私にも協力させていただきたい。貴公らもよろしいだろうか!」

 

「レフィーヤのこと、任せるわッ!」

 

「隙を見て魔法で攻撃してね、レフィーヤッ!」

 

モンスターと戦っているティオナ、ティオネに向けて声をかけ承諾を得たモニカ。

すると、突如蛇型のモンスターは頭部に幾筋もの線を走らせ、極彩色の花を咲かせた。

 

「ウソ、蛇じゃなくて花だったの!?」

 

開花しその醜悪な相貌を晒した食人花のモンスターは、自身を倒す可能性のあるレフィーヤに狙いを定めた。

何本もの触手を周囲の地面より次々と突きだし攻撃を行いつつも、本体は蛇のように得物であるレフィーヤの下へ這い寄って行こうとする。

更に触手で蠢く林を形成し、ティオナ達が駆け付けれないように行く手を阻んだ。

 

「あーもうっ、邪魔ぁっ!!」

 

「そっちはアンタらに任せるわよっ!!」

 

「了解した!…私があのモンスターの攻撃を止める。その間にレフィーヤ殿は先ほどのように魔法の構築を!」

 

「…わ、分かりました!」

 

レフィーヤの前に立ちサーベルを構えるモニカ。

しかし相手はLV.5のアマゾネスの冒険者二名から攻撃をくらってもビクともしないモンスターで。

先ほど触手を弾いた際は不意打ち同然の一撃であったのに関わらず、ほとんどダメージを与えられなかった。

背後にレフィーヤがいることを頭に入れつつ、モニカは攻撃を極力避けないようにし、レフィーヤに攻撃が向かわないよう往なし続けた。

剣身でレフィーヤのいない場所に全身を使って攻撃をずらしつつも、時には護拳で触手を殴りつけ、また時には剣身で触手を地面に叩きつけて、触手からの攻撃に何とか耐え続けていた。

 

「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!」

 

時間としては数分程度であったものの、何度も触手の攻撃を往なし続けたあたりで、最後の韻を終え魔力を収束させたレフィーヤ。

それと同時に、魔力を集めたレフィーヤを攻撃するため大量の触手による攻撃を行おうとする食人花。

しかし。

 

「【アルクス・レイ】!」

 

先ほどの戦闘での反省を生かし即座に魔法を放つレフィーヤ。

レフィーヤより放たれた魔法は、光の矢へと姿を変え圧倒的な速度のまま食人花へと向かい進む。

攻撃を諦め触手で壁を作り耐えようとするものの、彼女の持つスキルと発展アビリティによって強化された光の矢は、壁となった触手をいとも簡単に飲み込み、食人花すらもあっけなく光に飲まれ灰となった。

レフィーヤを攻撃しようとしていた他の触手も、力を失ったように地面に落下した。

モンスターを倒しひと段落ついたので、改めてレフィーヤ達に挨拶をしようとするモニカ。

しかし、微細な地面の揺れが起きたかと思うと、瞬時に大きな鳴動に代わり、辺りの地面が隆起した。

 

「ちょ、ちょっと、嘘でしょ…!?」

 

「まだ来るの!?」

 

「気を抜くな、レフィーヤ殿!」

 

「は、はいっ!」

 

モニカ達を囲むように地中から食人花が四匹、閉じた蕾を一斉に開花させつつ、見下ろす格好で巨大な口を四人に向けてきた。

戦いはまだ、終わらない。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

という訳で、最初に遭遇した食人花をアイズなしで撃破しました。
今回杖なし【アルクス・レイ】で食人花を倒せた理由としては、『生まれたてだったから』というのでどうか一つお願いします…
それに戦闘が書きにくい…文章分かりにくかったら優しく指摘をお願いします…

次回で怪物祭は終わる予定です。
でもストックが尽きてるので、ちょっと時間がかかると思います。

それでは、次回。


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第18話 『怪物祭~閉幕~』

どうも、刺身の盛り合わせです。

待っていてくださったみなさん、お待たせしました!
最新話です!

今回はレフィーヤの回です!
あとこれまでの話より少し長めの内容になってます。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。


モニカ達を囲むように地中から現れた食人花達四匹。

閉じていた蕾を一斉に開花させ、見下ろす格好でその巨大な口を四人に向けたかと思うと、蠢きながら一斉にレフィーヤへ襲い掛かった。

 

「避けなさい、レフィーヤッ!」

 

「は、はいっ!」

 

「あーもうっ、しつこいってのっ!」

 

食尽花の攻撃に対して、レフィーヤは攻撃を躱し、ティオナとティオネはそれぞれ打撃で軌道を逸らし、モニカは先ほどのように剣身を用いて軌道を逸らそうとした。

しかし。

 

「攻撃などさせn…なっ!?」

 

食人花との戦闘で『剣身で受けて流す』などの無茶な使い方をしたことのツケが回ってきたのであろう。

右から左へ振り抜くような触手の攻撃を上空へ受け流そうとサーベルの剣身で受け止めた瞬間、受け止めた場所からサーベルに罅が入っていき、砕け散ってしまった。

剣が砕け散ったことにより、触手の攻撃を受け流せなくなったモニカ。

瞬間的に両手をクロスさせ守りの構えをとったため直撃は免れたものの、身長の低さなどにより顔近辺に触手の攻撃を受けてしまった。

防具も何も纏っていない両腕からは、グシャグシャと不細工な音が鳴り響くのが聞こえ、気づけば顔に強い衝撃を受けながら宙を舞っていた。

 

「モニカさん!?」

 

攻撃の反動で近くにある家屋へ吹き飛ばされたモニカ。

四人の中で唯一LV.1であったモニカは、致命傷もしくはそれ以上のダメージによって、立ち上がるどころか気を失いかけていた。

 

「レフィーヤ、後ろぉーっ!!」

 

吹き飛ばされたモニカを心配し足を止めてしまったレフィーヤに対して、醜い大口を開きながら一気に近づく食人花。

ティオナに声を掛けられ振り向いて、大口が迫っていることに気付いたレフィーヤは、体を動かしどうにか避けるため脳を最大限まで働かせていた。

 

『動いて腕動いて足動いて体!どこでもいいから動いてあの口から逃げて!!』

 

しかしながら、どんなに自身の体に命令しても全く動くことなく、食人花はレフィーヤに近づいていた。

 

『嫌だ、嫌だ、もう嫌だ。同じ。また同じだ。きっと。きっとまた、自分はーーーー』

 

「――――ァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」

 

視界に走り抜ける金と銀の光。

敵の首を切り飛ばした壮烈な剣の閃きと、美しい金の髪の輝きが、悔し涙を流すレフィーヤの瞳を焼いた。

 

『――――あの憧憬の彼女に守られる』

 

絶叫を轟かせながら、レフィーヤに襲い掛かろうとしたモンスターの首をギリギリのところで切断するアイズ。

首を切断されたモンスターの体は勢いよく仰け反り、ぐにゃりと折れ曲がりながらその場に崩れ落ちた。

 

「アイズ!モニカって子が大怪我負ってる!こいつら急いで倒して怪我治さないとヤバいかも!」

 

「!……分かった」

 

以前助けたモニカが重傷の怪我を負っているという話をティオナから聞き、目の前のモンスター達をすぐに倒そうとするとーーー前触れもなく。

ビキッ、という亀裂音の後にアイズがゴブニュ・ファミリアから借りた代剣が見事に破砕した。

 

「―――」

 

「なっーーー」

 

「ちょっーーー」

 

剣が折れたことに動揺する三人を、食人花達は見逃さなかった。

体に風の魔法を纏ったアイズを一斉に襲いかかるものの、アイズは跳躍して回避。

右手に持つ刃を失いつつも風を纏った細剣の柄頭をモンスターの体に振り下ろすものの、へこむだけで傷の付かない敵の体皮を見て、攻撃を諦めレフィーヤから遠ざけるように後退していった。

 

 

○○○○〇

 

 

自身から遠ざかっていく彼女達とモンスターを、その場で見ることしかできなかったレフィーヤ。

咄嗟の事態に動くこともできず、以前のキャンプでの戦闘と同様に、また彼女によって遠ざけられてしまった。

また、あの憧憬の彼女に、守られてしまった。

 

『―――わかってる、わかってるよ!』

 

レフィーヤだって、とっくの昔に理解していた。

 

『私じゃあ、あの人達の足手纏いにしかなれない!どんなに強がっても、私はあの人達に相応しくない!』

 

彼女達を助けようと死力を尽くしても、最後にはきっと優しく胸を押され遠ざけられる。

大丈夫と言われ、側にいることさえ許されない。

追いかけても、追いつかず、追い縋っても、差はなお開き続ける。

劣等感に苛まれるほど、卑屈に陥ってしまうほど、あの憧憬はとても遠く、心が折れてしまうほど、彼女達はーーー金色の彼女は強く、自分は弱い。

 

『それでも……、追いつきたい。助けたい。力になりたい。できることならば、一緒にいたい!自分を受け入れてくれた彼女たちの、自分を何度も救い出してくれた彼女たちの隣にいることを、許される存在になりたいっ!!』

 

レフィーヤは彼女達の元へ走り出す。

窮地に陥る三人の力になるため、妖精は今一度戦場へと舞い戻る。

 

 

○○○○〇

 

 

「アイズ、魔法を解きなさい!追いかけまわされるわよ!」

 

「でも…」

 

「一人一匹くらい何とかするって!」

 

殺到するモンスター達に防戦を強いられる中、アイズは何度も交錯するティオナ達から呼びかけられ、止むを得ず魔法を解除しようとした、その時。

 

「アイズさん、ティオネさん、ティオナさん!モンスターの動きは私が必ず止めます!なので、時間稼ぎをお願いします!」

 

届くレフィーヤの声。

三人は考え込むこともなく。

 

「そこまで言うなら任せるわよ、レフィーヤ!」

 

「お願い、レフィーヤ…」

 

「じゃあお願いね、レフィーヤ!」

 

それぞれレフィーヤに一言残し、食人花の足止めに向かっていった。

 

「―――私はっ、私はレフィーヤ・ウィリディス!ウィーシェの森のエルフ!神ロキと契りを交わした、このオラリオで最も強く、誇り高い、偉大な眷属の一員!逃げ出すわけにはいかない!」

 

自信の固めた決意を声に上げ、改めて自身を奮い立たせることで力の本流を取り戻したレフィーヤ。

十分な距離まで近づき、自身の射程圏内に目標を捉える。

三人に群がるモンスター達を見据え、詠唱を始める。

 

「【ウィーシェの名のもとに願う】!」

 

憧憬に追いつくためには、結局のところ、追い縋るしかないのだ。

 

「【森の先人よ、誇り高き同胞よ。我が声に応じ草原へと来れ】」

 

血反吐をいくら吐いたとしても、何度地に足をついたとしても、溢れ出る涙で頬が枯れることはなかったとしても、追い縋る者には、追いかけることしか許されないのだ。

 

「【繫ぐ絆、楽園の契り。円環を回し舞い踊れ】」

 

意思は折れる、何度でも折れる。

折れない誓いなど決してありはしない。

ただ、その折れた意思を何度でも直す者が、諦めの悪い者がいるだけ。

いくら無様に転ぼうとも、何度でも立ち上がる、不屈を叫ぶ者がいるだけだ。

 

「【至れ、妖精の輪】」

 

守られるだけの自分から脱却するため、―――そして憧憬に追いつくため、レフィーヤは奏でる。

 

「【どうかーーー力を貸し与えて欲しい】」

 

歌を届けよう。

歩みの遅い自分が、遥か先にいる彼女にも聞こえるような、そんな歌を。

例え振り返ってもらえずとも、彼女の耳に届き、癒やし、守り、彼女を脅かす敵を打ち払ってみせよう。

森を踊る妖精や、愛するものを救ってきた精霊のように。

自分だけに許された歌を…いや、を、届けよう。

 

「【エルフ・リング】」

 

魔法名が紡がれるとともに、山吹色の魔法円が翡翠色に変化する。

それと同時に、アイズ達が抑えていたモンスター達も、レフィーヤの方向へ振り返り、一気に詰め寄ろうとする。

しかし。

 

「そうは、させないっ!」

 

「おとなしくしてろってのッ!!」

 

「邪魔は、させない……ッ!」

 

一瞬でモンスター達の前に立ちふさがり、殴り蹴り弾いて突撃を防ぐ。

彼女達に守られるレフィーヤは、体を守るように前屈するように身を丸める。

 

「【―――終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に風を巻け】」

 

アイズ達がモンスターの前に立ち壁となってくれている間にもう一つの魔法の詠唱を行う。

 

「【閉ざされる光、凍てつく大地】」

 

レフィーヤが最後に習得した、同胞(エルフ)の魔法のみであるが、詠唱と効果を完全把握したものを己の魔法として行使する前代未聞の反則技(レアマジック)、【召喚魔法(サモン・バースト)】。

それを用いて召喚するのは、エルフの女王であるリヴェリア・リヨス・アールヴの攻撃魔法。

極寒の吹雪を呼び起こし、敵の動きどころか解きさえも凍てつかせる無慈悲な雪波。

 

「【吹雪け、三度の厳冬―――我が名はアールヴ】」

 

地面から槍衾のごとくモンスターの触手が突き出し、足や肩、耳朶に衝撃が掠め、流血する。しかし、致命傷を避けながらも詠唱を終えたレフィーヤの足元には魔法円が拡大していく。

そして、唇がその魔法を紡いだ。

 

「【ウィン・フィンブルヴェドル】!!」

 

射線上からアイズ達が離脱する中、大気をも凍てつかせる純白の細氷がモンスター達に直撃し、余すことなく霜と氷に覆われた三輪の食人花は完全に動きを停止した。

 

「ナイス、レフィーヤ!」

 

「散々手を焼かせてくれたわね、この糞花っ」

 

「じゃ、頼むで、アイズ―」

 

「……」

 

歓呼するティオナに若干鶏冠(とさか)に来ているティオネ、いつの間にかこちらに来ていたロキから折れた剣の代わりを受け取ったアイズ。

三人とも一匹ずつモンスターの前に着地すると、ティオナ達は渾身の回し蹴りを、アイズは無数の斬線を個別で食人花で出来た氷塊に叩きこんだ結果、見事に砕け散った。

食人花との戦いが終了した瞬間であった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

という訳で怪物祭編はここで終了です!
今回一番悩んだ部分は、モニカの立ち振る舞いでした。
シルバーバック戦でベルと一緒に戦う?→ベルの成長が阻害される!
なら食人花倒しちゃう?→LV.1が勝てるわけないだろ!
…じゃあレフィーヤのサポートさせるしかねぇ!
でもここも原作通りだとモニカいる意味ないな…せや!レフィーヤ庇わせてモニカに致命傷負わせたろ!
という感じで考えてました。

ベル君はこの戦いの裏でシルバーバック倒してますが、もちろんカットです。

という訳で、次回は今回の後始末と新たな武器、ステイタス更新まで行けたらいいなぁ…って考えてます。

評価や感想お待ちしてます。

それでは、次回。


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第19話 『黄昏の館』

どうも、刺身の盛り合わせです。

最新話です!
今回は食人花戦の後の話。
モニカのロキ・ファミリア訪問です!

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。


「ありがとレフィーヤ!ほんと助かったよー!」

 

「ティ、ティオナさん!?」

 

魔法で食人花を何とか凍らせることができたレフィーヤ。

一息ついていると、自身の怪我などお構いなしにティオナが抱き着いてきた。

顔を真っ赤にするレフィーヤは、体が痛むようで左目を眇める一方で、まんざらでもなさそうに頬を緩めていた。

 

「すごい魔法だったわよ、レフィーヤ」

 

「リヴェリアみたいだった…ありがとう、レフィーヤ」

 

目を軽く見開いたレフィーヤは、感極まったような照れたような複雑な表情を作り、うつむいたかと思うと、何かを思い出したかのように顔を上げた。

 

「…そうだ、モニカさん。みなさん、モニカさんを早く助けないと!」

 

「…ヤバッ、完全に忘れてたー!?」

 

「はっ?モニカたんが危ないってどういうことや!?」

 

事の経緯をロキに話しながらモニカの吹き飛ばされた場所に急いで向かうレフィーヤ達。

目的地に到着すると、全身ボロボロで壁に埋もれた状態のモニカを見つけることができた。

 

「モ、モニカさん!大丈夫ですか!?」

 

「…このケガ、急いでホームに連れ帰って治療せんとちょいとヤバいな。ティオネ・ティオナは悪いけど地下水路の確認を、アイズはウチと残ってるモンスターのとこ行くから、レフィーヤはモニカたんのことよろしく!」

 

「分かった!/了解」

 

「はい」

 

「は、はい!」

 

それぞれの課せられた役割をこなすため、ティオナとティオネは地下水路へ、アイズはロキと周囲のモンスターの捜索、レフィーヤは重傷のモニカを背負いホームへと向かっていった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「…………ん、んん……?」

 

謎のモンスターとの戦闘で、攻撃をくらったことで意識を失っていたモニカ。

彼女が目を覚ますと、視界に映ったのは知らない天井であった。

 

「ここは一体……」

 

モニカが上体を起こそうとすると、横から声がかけられる。

起き上がる前に横を見ると、そこには椅子に座りこちらを眺めている神ロキがいた。

 

「おっ、目が覚めたんか、モニカたん」

 

「神ロキ…まさか、ここはロキ・ファミリアのホームなのか?」

 

「そうやで。それより、腕の具合はどうや?」

 

「…先ほどの戦いで折れたはずの両腕が動く!?これは一体…」

 

「ウチんとこの治療師(ヒーラー)に治させたんや。それに、動かせるんやったら大丈夫やな!」

 

「…感謝する、神ロキ。…私が気絶した後、戦いはどうなったのか、教えてはもらえないだろうか?」

 

「あの食人花達はウチの子達が撃破したで。犯人は不明やけど、この騒動はとりあえず一件落着や。モニカたん、ウチの子を助けてくれてありがとうな」

 

「いや、冒険者として当然のことをしたまでだ。感謝されるようなことではない」

 

「いや真面目かっ!ええからお礼の一つや二つくらい受け取っときぃや!それより、怪我が大丈夫なんやったら今からどないするん?」

 

「…ヘスティア様と仲間が心配しているだろうから、ホームに帰ろうかと思う。それで、私の剣と服は一体どこにあるのだ?」

 

現在、モニカはいつも着ている白シャツと青のミニスカではなく、上下薄い緑色のパジャマのような服を着ている。

実はこの服、少女時代のアイズが来ていた服で、血まみれだったモニカの服を洗うために脱がせた後、モニカの体に合う服がこれぐらいしかなかったため着せたのだが、思いのほかフィットしたというのは、モニカには内緒の話である。

 

「血まみれやったし、今ウチの子に洗わせとる。…それよりモニカたん!」

 

「な、何だ…?」

 

先ほどまでの真面目な顔はどこに行ったのかという速さでにやけ顔に変え、顔を勢いよく近づけてくるロキに対して、顔がいきなり近づいてきたことで少し下がりながら受け答えをするモニカ。

 

「もう外も暗いし、晩飯はウチで食ってきや!」

 

「いや、流石にそこまで世話になるべきでは…」

 

「これはウチが決めたんや!拒否権はなし!さっ、行くでー!」

 

そう言うとロキはモニカを食堂へと引っ張っていき、食堂の椅子に座らせたかと思うと、いつの間にかモニカの目の前に食事を出されていた。

 

「ほ、本当にこれを食べてもいいのか?」

 

「ええってええって!ウチの子を助けてくれたお礼と思ってや!」

 

「だが、私は助けるどころか足を引っ張ってしまったような…」

 

「まぁまぁ、そないことは気にせず一口!」

 

モニカは戸惑いながらも目の前の食事を口にする。

 

「美味い…!」

 

「せやろせやろ!」

 

「…あ、あの子もう起きたんだ!みんな、行こ行こ!」

 

「ちょっと、待ちなさいティオネ!」

 

「モニカさん、ケガはもう大丈夫なんですか!?」

 

「良かった…」

 

「おっ、みんな来たなー!モニカたん、何人か知っとるやろうけど、花のモンスターの時に一緒に戦った子達や!左からティオナ、ティオネ、レフィーヤ、アイズや。仲良くしたってや」

 

「改めまして、モニカ・ヴァイスヴィントだ。よろしく頼む。…それと、ケガならもう回復しているから大丈夫だ、レフィーヤ殿」

 

「それなら良かったです!改めて、こちらこそよろしくお願いしますね、モニカさん!」

 

「ねぇねぇ、食人花の攻撃ずっと受け流してたんだよね?スッゴイじゃん!どうやってたの!?」

 

「えっと、それなら…」

 

モニカは四人と楽しく会話をしながら食事を堪能しまくったのであった…

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「治療だけでなく、食事まで頂けるとは…。申し訳ない、助かった」

 

「ええってさっきから言うとるやん?気にせんといてや!…じゃあ、また会ったらそん時はよろしくな」

 

「ああ、それでは世話になった。四人も、今度会った時はよろしく頼む。」

 

ロキ・ファミリアのホーム『黄昏の館』の入口で、ロキ、アイズ、レフィーヤ、ティオナ、ティオネに見送られながら、モニカは自分のホームへと帰るのであった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

書きたいこと書いてたら、武器の話までいかなかった…。
安心してください、次は武器とステイタスの話をする予定です!

本編には文字数の関係で入れることができなかった小ネタがこの下にありますので、そちらもぜひ読んでください。

それでは、次回。


◆◆◆◆◆

それは、アイズ達が食事をしているモニカに合流し、食事を堪能しつつ会話をしていた最中のことであった…

「あ…その服…」

「この服か?私の服は今洗濯しているらしくてな。寝ている間に着させられたのだが、中々着心地が「私が子供の頃に着てた服…」い、い………」

「……どうしたの?」

「いや、何でもない…………」

「……???」


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第20話 『新たな武器』

どうも、刺身の盛り合わせです。

という訳で最新話です!
今回はステイタスと武器の話です!

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。

2022/11/13 題名のミスを修正しました。
2023/2/19 後書きで書いた『ヘスティア・サーベル』についての説明を大幅に変更しました。


ロキ・ファミリアのホーム『黄昏の館』を出て、ヘスティア・ファミリアのホームである廃教会の前まで帰ってきたモニカ。

教会の中に入ろうとすると、入口からヘスティアが現れた。

 

「ただいま帰りました、ヘスティア様」

 

「モニカ君!無事だったんだね!ベル君もそろそろ帰ってくる頃だと思うし、中で待っておこうか!」

 

「ベルはどこかに行っているのですか?」

 

「うん、君が中々帰ってこなかったから探しに行ってもらったんだ。ボクはモニカ君がいつホームに帰ってきてもいいように待機してたんだ」

 

「そう、だったのですか…」

 

思わず顔が赤くなり、帽子で顔を隠すモニカ。

もちろんすぐにヘスティアにばれていじられることになった。

 

「あれ~、もしかして照れてるのかい、モニカく~ん?」

 

「そ、そんなわけないだろう!?先に、ホームに入っているからな!」

 

「ゴメンゴメン!もうしないから許しておくれよ、モニカくーん!」

 

二人でホームのある地下室へと入っていく。

少し待つもののベルが帰ってくる気配がなかったので、【ステイタス】更新を行うこととなった。

地下室の入口にモニカが自作した『ステイタス更新中』のドアプレートを掛け、【ステイタス】の更新を始める。

 

————————————————————————————————————————

モニカ・ヴァイスヴィント

LV.1

力: H127→H189 耐久:I28→G218 器用:H105→H165 敏捷:H125→H178 魔力:I0

 

魔法

【】

 

スキル

【上官命令(オフィサー・オーダー)】

●威圧行為を行うことで、対象に強制停止(リストレイト)を行う。

●自身より格上の相手に行う場合、差が大きいほど成功率・効果時間が共に低下。

 対して、自身より格下の相手に行う場合、差が大きいほど成功率・効果時間が共に上昇。

●対象が何らかの状態異常に陥っている場合、相手との差に関係なく成功率・効果時間が共に上昇。

●対象へ向ける威圧の大きさによって効果上昇。

————————————————————————————————————————

 

「んなぁ!?」

 

モニカの背に映し出された【ステイタス】を確認し、驚愕とするヘスティア。

 

『全アビリティ熟練度、上昇値トータル300オーバー!?しかも半分以上耐久が占めてる!?ベル君の半分程度とはいえ、彼女はこのオラリオに来てまだ三週間しか経ってないんだぞ!?ベル君はスキルの効果で上昇値に拍車が掛かっている状態だけど、彼女には何もない、ハズだ!…問いただす必要があるね…』

 

「…はい、モニカ君。キミの新しい【ステイタス】だよ」

 

「ありがとうございます、ヘスティア様。…何ですか、この上昇値は?」

 

「それはボクが聞きたいところだよ。…モニカ君、今日キミに何があったんだい?」

 

「実は…」

 

ベルと共に怪物祭に向かおうとした際に『豊穣の女主人』の店員であるシルの財布を届けるように頼まれたこと。

シルを探すため二手に分かれた後、モンスターが街に逃げたため、シル探しを中断し対処に当たったこと。

モンスターを追う最中に新種のモンスターと遭遇し、ロキ・ファミリアのメンバーと協力しそれを何とか撃退。

しかし、新たに現れた同類のモンスターの攻撃を受け、武器を破壊され瀕死の重傷を負ったこと。

ロキ・ファミリアにて治療をしてもらい、食事も頂いてきたこと。

モニカの今日起きた出来事を聞いたヘスティアは、急激なステイタスの上昇の理由を理解することができた。

 

「…ベル君が戦っている間にそんなことをしていたのかい…」

 

「ベルも戦っていたのですか?」

 

「ああ、そうさ。ボクに襲い掛かってきたシルバーバックを一人で倒したんだよ!いやー、あの時のベル君は凄かったよー。モニカ君にも見せたかったね!」

 

「ベルがそんなことを…」

 

にやけ顔でベルの活躍をモニカに話していたヘスティアであったが、真面目な表情でモニカの目を見ながら話しを続けた。

 

「…今回キミのやったことは凄いことだ、ボクも誇らしいよ。でもね、モニカ君。ボクはキミが死んでしまったらとても悲しいんだ。だから、どうか無茶だけはしないでくれ」

 

「……分かりました」

 

「…湿っぽい話は終わり!それより本題はこっちさ!」

 

そういってヘスティアが目の前に出したのは一本のサーベル。

柄の部分はモニカがこれまで使っていた物と似ているのだが、刀身が漆黒に包まれており、通常の武器とは一線を画した雰囲気を纏っていた。

 

「ヘスティア様、この武器は一体…」

 

「キミ専用の武器だよ、モニカ君」

 

「私、専用の、武器…」

 

「その通り!この武器実は、ヘファイストスが作ってくれた武器でね!素材はミスリルで、モニカ君専用に作った、いわゆるオーダーメイドってやつさ!」

 

「神ヘファイストスが!?しかもオーダーメイド!?」

 

「うん、そうだよ。ベル君にキミの戦い方は聞いていたからね。それに合うように丈夫で尚且つ振り回しやすい重さになっているはずさ!持ってごらん?」

 

「あっ、持ちやすくてすごくしっくりくる…ではなく!神ヘファイストスがこの武器を作ったのですか!?」

 

「何度も言ってるじゃないか、その通りだって」

 

「ヘファイストス・ファミリアの武器は凄く高価なのですが…。ちなみにこの武器の値段とかは…」

 

「それは気にしないでくれよ、ちゃんと話はつけてるからさ!」

 

「わ、分かりました…。ありがとうございます、ヘスティア様。この武器、大事に使わせていただきます」

 

「うんうん、そうしておくれ!」

 

「あのー…、そろそろ中に入ってもいいですかー?」

 

実はステイタスの更新が終えた頃にはホームへと戻ってきていたベル。

ドアの入口に『ステイタス更新中』と書いてあったので中に入れず、ドアの外から二人の会話をひたすら聞き続けていたのであった。

 

「もう入っても大丈夫だよ、ベル君!」

 

「はい…、モニカさん、やっぱり帰ってたんですね、良かったです!」

 

「すまない、迷惑をかけたな、ベル」

 

「いえ、気にしないでください!モニカさんが無事でよかったです!…あっ、財布はちゃんとシルさんに渡せましたよ!」

 

「そうか、それなら安心だな」

 

「よし、みんな帰ってきたことだし!今日はもう寝ようじゃないか!」

 

「じゃあ僕は今日ソファーで寝ますので、ベッドはぜひ二人で使ってください」

 

「いいのか、ベル?」

 

「まぁ、モニカ君今日かなり疲れてるだろう?体を休めるためにも、ベッドで寝た方がいいと思うぜ?…だ・か・らぁ、ボクはベル君と一緒にソファーで…」

 

「二人でソファー使って寝るなんて無理ですから、ヘスティア様は私と寝ますよ」

 

「い、イヤだい!今日こそボクはベル君と一緒に寝るんだー!!」

 

「あ、あははは…」

 

駄々をこねたものの検討空しく、ヘスティアはモニカにベッドへと引きずられていったのであった。

ベルは自分の主神が駄々をこねている姿を見て、苦笑いを浮かべるのであった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

という訳で、第一章終了です!
いやー、怪物祭が山場でした…。
あれも書くこれも書くってやってたら、いつの間にか想定よりも話数が増えて驚きました。
次ぐらいからはもう少し削ってサクサク進めれたらなって思います。

そしてモニカの新たな武器が登場です!
名前は『ヘスティア・サーベル』…まんまですね。
ヘスティア・ナイフと同様に「邪道な武器」となっている一方で、『ヘスティア・ナイフ』とは異なる効果があります。
その効果については今後明らかになるので、それまでお楽しみください。

この武器が今後どのようにかかわってくるのか、お楽しみにということで…。

現時点でのステイタスが更新されましたが、今回はかなり数値が高くなりました。
その事についてちゃんと理由を凄く簡単にまとめてるので、興味がある場合は下部に書いたので是非読んでみてください。

そして、次回からは第二章!
みんな大好きサポーターの登場です!
また、話の構成を考えるので、明日の投稿は(多分)お休みします。

それでは、次回





各ステイタスの上昇値が高い理由
●力:触手の攻撃を受け流すには一度攻撃を受ける必要があり、そこが理由。
●耐久:触手からの攻撃+両腕と頭への触手のダイレクトアタックで生き延びたから。
●器用:攻撃を受け流しまくったから。
●敏捷:次々に現れる触手に対処するために素早く移動+紫電一閃での突撃もちょっとした要因


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第二章
第21話 『防具』


どうも、刺身の盛り合わせです。

という訳で最新話、そして新章スタートです!
今回の話は全体を通して原作二巻の内容になっています。
また、この章は外伝への寄り道はしないと思います。

そして、本作の評価に色がつきました!
これもいつも読んでくださった皆様のおかげです!
これからも皆様が楽しめるような作品を作って行ければと思います!

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。

11/14 本文の内容の一部を変更しました。


怪物祭の翌日。

互いに急激な成長を遂げたベルとモニカは、ダンジョンの7階層まで一気に潜り、そのことを知った担当アドバイザーから説教+7階層進出許可のための二人のステイタス確認を終えると、装備品を買いに行く約束を取り付けられることとなった。

そして、翌日。

ベルとモニカは、オラリオ北部の大通りと面するように設けられた半円形の広場で、エイナが来るのを待っていた。

 

「新しい装備品かー…。楽しみですね、モニカさん!」

 

「あ、あぁ…そうだな…」

 

元気のないモニカ。

まだの疲労が残っているのではないのか?と考えたベル。

モニカに声を掛けようとすると。

 

「おーい、ベルくーん!モニカちゃーん!…おはよう、来るの早かったんだね。なぁに、そんなに新しい防具を買うのが楽しみだったの?」

 

小走りでやってきたエイナ。

普段はギルドの制服を着ていて大人びた雰囲気だったものの、本日はレースをあしらった白のブラウスと丈の短いスカートという、ちょっとお洒落で軽く感じるような姿をしており、ベルはエイナお得意の懸隔の術中に見事にはまっていた。

そんなベルを尻目にモニカは普通に話を続けていた。

 

「まあそれもあるが…、待ち合わせには遅れるより早く着いている方がいいだろう?…それと、その服中々似合っていると思うぞ、エイナ殿」

 

「褒めてくれてありがとう、モニカちゃん!…それで、ベル君は私の私服姿を見て、何か言うことはないのかな?」

 

「へっ!?………そ、その、すっごく……いつもより、若々しく見えます」

 

「こら!私はまだ十九だぞぉー!」

 

「あいたたたたたたたたたたたたたたっ!?」

 

「ほら、謝れー!」

 

「や、やめっ、許してくださあああああああああああああいっ!?」

 

「公衆の面前で何をやっているのだ、貴公らは!ええいそこに座れ、説教してやる!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

モニカからのお説教も終わり、目的地であるバベルへと向かう三人。

バベルに到着し、内部にあるという目当ての店に行く前に、寄り道として4階の武具屋に向かう三人。

側に合った【ヘファイストス・ファミリア】の店舗の陳列窓(ショーウィンドウ)奥に鎮座する紅の剣の価格を見てベルとモニカが愕然としていると、店の中から出てきた店員に声を掛けられた。

声のした方に二人が振り向くと、そこには何故かエプロンを着た自分達の主神・ヘスティアがいた。

 

「何やってるんですか、神様!?というかなんでこんなところにいるんですか!?もしやバイトのかけ持ち!?到達階層が増えてお金にちょっと余裕が出来るようになったって、僕行ったばっかりじゃないですか!?」

 

「いいかいベル君モニカ君、今あったことは全部忘れて、目と耳を塞いで大人しく帰るんだっ……!ここはキミ達が来るにはまだ早い!」

 

「神様だって早すぎですよ!?いいから、ほら、帰りましょう!?神様は神様なんですから恥も外聞も捨てちゃダメです!これ以上笑い種になっちゃったらどうするんですか!?」

 

「ええい、離せ、離せベル君!神にはやらなくちゃいけない時があるんだ!」

 

「神様がやらなくちゃいけない時ってどんな時ですか!?お願いですから言うことを聞いてください!」

 

ベルとヘスティアのやり取りを、エイナは目を丸くしながら見ていた。

 

「……あ、相変わらず、変わった神様だね?それに、モニカちゃんはあんまり驚いてないみたいだけど、知ってたの?」

 

「…いや、今初めて知った。だが、ようやく合点がいった。…話を付けたとはこういうことだったのか

 

「何か言った?」

 

「いや、こちらの話だ。気にしないでくれ、エイナ殿」

 

そんな話をしていると、店長らしき人物に呼ばれヘスティアが店の奥に逃げていった。

そんなヘスティアを見たベルは情けない声を出して落ち込んでいたものの、すぐに立ち直った。

 

「お見苦しいところを見せてすいません…」

 

「大丈夫だよ。じゃあ、上に行こうか、二人共?」

 

改めて魔石昇降機(エレベーター)に乗り込み、目的地にたどり着く。

ベルとモニカよりも張り切っているエイナに先導され、先ほどと同様に【ヘファイストス・ファミリア】の店舗に着いたが、新人冒険者でも買えるように新米の鍛冶師(スミス)が作成した作品が置いてある鎧と盾の看板が貼ってある店に訪れた三人は、それぞれで広く探したほうがいいものも見つかる、という気乗りしているエイナの言葉に促され、店の中に入り一旦別れることとなった。

圧巻されながらも防具を見て回るベルに対し、浮かない顔をしながら防具を見るモニカ。

 

『やはり、私の体に合う装備はないか…』

 

モニカの身長は138Cとヒューマンにしてはかなり背の低い部類で、ヒューマン用の装備はサイズが大きすぎて動くのに邪魔になり、小人族(パルゥム)用の装備だと、小さすぎて体が圧迫され戦闘に支障が出るため、現在ギルドの軽装を使っているのである。

 

「モニカちゃん、どう?いいのは見つかった?ベル君はもう買っちゃったけど…」

 

「いや、全然見つからない。…どちらかというと、私の体に合うものがない、と言い直した方がいいレベルだ」

 

「……じゃ、じゃあこれはどうかな!?」

 

そんなモニカの発言に何も言うことができなかったエイナ。

場の空気を変えようとエイナはモニカに一本の鞘を手渡した。

ヘスティアがモニカに渡した『ヘスティア・サーベル』がちょうど入るぐらいの大きさで、鯉口の部分には大きな持ち手がついている一方、反対側と鞘尻の少し上あたりには青と金の装飾がなされた紐がついており、肩に掛けたりカバンのように持って移動できるようになっていた。

 

「昨日ギルドに来た時、モニカちゃん剣に布をグルグルに巻いてたでしょ?あれじゃ危ないから、良い鞘を見つけてみたんだ」

 

そう、ヘスティアはヘファイストスから武器を作ってもらった際、剣が完成したらすぐに持っていったため、二振りとも刀身剥き出しの状態だったのである。

ベルはナイフだったためこれまでの鞘に入れれたものの、モニカのサーベルは以前使っていた物より少し刀身が長くなっており、鞘に入らなかったため昨日のダンジョン攻略の際は布にくるんでいたのだ。

 

「剣が入るか試してみてくれないかな?」

 

「う、うむ…おおっ、綺麗に入ったぞ!」

 

「ホント?ならよかった。…それは、私からのプレゼントだから、ちゃんと使ってね?」

 

「いいのか?この鞘、中々値段が高いようだが…」

 

「気にしないで?頑張っているモニカちゃんの力にちょっとでもなれたらなって思って私が渡してあげたかったの。ね、受け取ってくれる?」

 

「…分かった、受け取ろう。感謝する、エイナ殿!」

 

その手に掴んだ鞘は、温盛に満ちていたような気がした。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

という訳で、今回モニカは防具を買わずヘスティア・サーベルの鞘を買いました。
防具については後の話で購入するのでそこまでお待ちください。

それでは、次回。


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第22話 『サポーター』

どうも、刺身の盛り合わせです。

という訳で最新話です。
今回はサポーター登場回です!
どういうふうに会うのかお楽しみください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!
それと、誤字報告ありがとうございました。

それでは、どうぞ。


「ちょっと遅くなっちゃいましたね、モニカさん」

 

「そうだな、早く帰らなくてはな」

 

買い物を終えた二人はエイナを家まで送り、自分達のホームへ帰るために詩のストリートをはずれ幾つもの小径が入り組んだ路地裏を走っていた。

すると、ベルとモニカ以外の小さいものと大きいものが走っている音が聞こえた。

 

「あうっ!」

 

「あいったぁ!?」

 

何事かと普段曲がる道を二人で覗き込んだところ、曲がり角から身を乗り出したベルの足に走ってきた影が引っかかり、ベルよりも体を出していたモニカに正面から激突してしまったようであった。

 

「だ、大丈夫ですか、二人共!?」

 

「ぅ……」

 

「きゅぅ~…」

 

モニカは頭の打ちどころが悪かったのか、気絶してしまったが、影はモニカがクッションになり気絶はしなかった。

そんな影の正体はパルゥムの少女で、幼い容姿で栗色のまとまりのない髪、そして大きく円らな瞳がベルに強い印象を与えた。

 

「追いついたぞ、この糞パルゥムがっ!!もう逃がさねえからな…ッ!」

 

少女に手を貸そうとしたその時、道の奥から目をギラギラと光らせた一人の男性ヒューマンが現れた。

息を切らす青年は悪鬼のごとき表情をしながらパルゥムの少女に視線を向けており、ベルはパルゥムの少女の体を隠すように青年の進路に立ち塞がった。

 

「…あぁ?ガキ、邪魔だ、そこをどきやがれ」

 

「あ、あの…今からこの子に、何をするんですか…?」

 

「うるせえぞガキッ!!今すぐ消え失せねえと、後ろのそいつごと叩っ切るぞ!」

 

ベルは眼前の男が少女に酷いことをすると確信し、涙目になりながらも、背負っているバックパックを下して路地の隅に寄せた。

 

「ガキ…!マジで殺されてえのか…!?」

 

「そ、その、い、一回落ち着いた方がっ…!?」

 

「黙れっ、何なんだよテメエは!?そのチビの仲間かっ!?」

 

「しょ、初対面ですっ」

 

「じゃあ何でそいつを庇ってんだ!?」

 

「…ぉ、女の子だからっ?」

 

「なに言ってんだよテメエッ…!もういい、まずはテメエからブッ殺す…!」

 

少女を庇い続けていると、男が手を後ろにやり剣を抜いた。

後ろにモニカと少女がいるため避けることができないベルは、ありったけの力を振り絞り瞳を釣り上げた。

 

「止めなさい」

 

しかし、芯のこもった鋭い声が場に入ってきたことによって、男の剣は僕に振り下ろされることはなかった。

振り向いた先にいたのは大きな紙袋を片手に抱えた『豊穣の女主人』で働いているエルフの少女、リューであった。

 

「次から次へと…!?今度は何だァ!?」

 

「あなたが危害を加えようとしている彼は、私のかけがえのない同僚の伴侶となる方です。手を出すのは許しません」

 

「どいつもこいつも、わけのわからねえことをっ…!ブッ殺されてえのかあッ、ああ!?」

 

「吠えるな」

 

目を細めたリューは途轍もない威圧感を放っており、大声を散らしていた男だけでなくベルも言葉を飲み込んでいた。

 

「手荒なことはしたくありません。私はいつもやり過ぎてしまう」

 

男が口をパクパクと動かしていると、最終通告を告げるかのように空いている手に鋭い音を立てて小太刀を装備するリュー。

それを見た男は顔色を青く染め退散していった。

 

「大丈夫でしたか?」

 

「あ、ありがとうございます、助かりました!」

 

「いえ、こちらこそ差し出がましい真似を。貴方ならきっと何とかしてしまったでしょう」

 

「いや、そんなことはぁ…。そ、それよりリューさんはどうしてここに?」

 

「夜の営業に向けて買い出しを行っていました。それよりも、貴方はここで何を?」

 

「あっ、そうだ、あの子…あれ?」

 

周囲を見渡すものの、先ほどまでいたパルゥムの少女は忽然と姿を消しており、気絶したモニカがいるだけであった。

 

「誰かいたのですか?」

 

「え、ええ。その筈なんですけど…」

 

「では、私はここで。それと、気絶した彼女を運ぶ場合、肩の上に担ぎ上げるのが良いですよ」

 

「はい。教えてくれて本当にありがとうございます!」

 

リューと別れた後、気絶したモニカを肩に担いでホームへと帰宅するベルであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

装備を新調したベルとモニカ。

疲労からベッドに沈んでいるヘスティアから送り出され、バベルへとやって来た。

「今日も頑張りましょう」と横にいるモニカに話しかけようとしたベルだったが。

 

「お二人さん、お二人さん。そこ行く白い髪と金の髪のお二人さん」

 

「「えっ?/むっ?」」

 

声のした方に振り向く二人。

そこにいたのは、身長はおよそ100C、クリーム色のゆったりとしたローブを身に付けフードを深くかぶっている少女。

フードからは栗色の前髪がはみ出ており、背には思わずギョッとするようなバックパックを背負っていた。

 

「初めまして、お二人さん。突然ですが、サポーターなんか探していたりしませんか?」

 

「え…ええっ?」

 

「うむ?…確かにサポーターがいればと考えていたが…」

 

「混乱しているんですか?でも今の状況は簡単ですよ?冒険者さんのおこぼれにあずかりたい貧乏なサポーターが、自分を売り込みに来ているんです」

 

「そ、そうじゃなくて…キミ、昨日の…」

 

「何?ベル、この者と会っていたのか?」

 

「…?お兄さん、リリとお会いしたことがありましたか?リリは覚えていないのですが」

 

「だそうだが、ベル?」

 

「あれぇ?」

 

「それでお二人さん、どうですか、サポーターはいりませんか?」

 

「それでは、お願いしてもいいだろうか?」

 

「ぼ、僕からも…できるなら、お願いしたいかな…?」

 

「本当ですか!?それではこれからよろしくお願いします、お二人共!」

 

少女は無邪気にはしゃいだことで、フードと前髪の奥に隠れている円らな瞳があらわになったものの、その目はベルの腰に差さっているナイフに釘付けになっていた。

 

「改めまして、リリの名前はリリルカ・アーデです。お二人の名前は何と言うんですか?」

 

ベルとモニカのことを見上げる少女の瞳は、少し怪しく輝いていた。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

最近前書きと後書きに書く内容があんまり浮かびません。
せっかくなので、次回からは裏話や小ネタとか色々書いていきますね。

余談ですが、モニカとリリは大体30Cぐらいの身長差があります。
なので、二人は決して同じ身長ではありません!!

それでは、次回。


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第23話 『お試し』

どうも、BOX周回もしてる刺身の盛り合わせです。

という訳で最新話です。
今回はサポーターと一緒に初ダンジョン!
一体どうなるのか、お楽しみください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。


リリルカ・アーデから、サポーターとして迷宮探索に同行したいという交渉を受けたベルとモニカは、彼女の持ちかけてきた話を吟味するため、場所を中央広場からバベル二階の簡易食堂、そこにあるテーブルを挟んで言葉を交わしていた。

 

「…という訳で、リリは【ファミリア】に帰りたくないのですが、今の宿に泊まり込むのも手持ちのお金が心もとなくなってきました。ですから、ぜひっぜひっぜひっ!リリはお二人とダンジョンに潜りたいのです!それと、リリの主神のソーマ様は他の神様達のことに未来永劫無関心なので、そちらの神様がソーマ様を目の敵にしていない限り、【ファミリア】間で争いが勃発することはまずないと思います」

 

「え、ええっと、リリルカさんの事情は分かったけど…最後に一つ、確認させてもらっていいかな?…僕達、本当に会ったことない?」

 

「リリはお二人とは初対面の筈なんですが…見間違えだったりしません?」

 

「リリルカ殿もこう言っている、貴公の間違いではないのか、ベル?」

 

「…もしよければ、そのフードを取ってくれないかな?」

 

「こ、これで良いですか?」

 

ベルからの要求に目に見えて動揺したリリルカ・アーデ。

頼りなく体を左右に揺らした後にフードを脱ぐと、そこにあったのは可愛らしい獣の耳で会った。

 

「…じゅ、獣人?」

 

「は、はい、リリは犬人(シアンスロープ)です」

 

数秒ほど呆然としたベルであったが、少女の耳をもっと近くで確認するため勢いよく立ち上がるとテーブルに身を乗り出し顔を近づけた。

顔を近づけた瞬間、横にいたモニカに頭を思いっきり叩かれることとなった。

 

「あいたぁ!?」

 

「何をしているのだ貴公は!?女子の耳をジロジロと見るなど…!」

 

「リ、リリルカさん、ごめんなさい!」

 

「い、いえ、リリは大丈夫です!…それより、お二人共、どうでしょうか?リリを雇ってもらえませんか?」

 

「…それじゃあひとまず、今日一日だけ、サポーターをお願いします」

 

「私としてもお願いしたい、リリルカ殿」

 

「ありがとうございます!それと、リリのことはリリとお呼びください」

 

「そうだ、貴公への契約金などはどのぐらい払えばいいのだ?」

 

「そうですね…今日はお試しという形なので、探索での収入を分ける形で良いですよ?リリは三割も恵んでもらえると飛び上がってしまうほど嬉しいです」

 

「ええっ、それだけですか?いいですよ、もっとちゃんと…」

 

それからしばらく、三人で顔を近づけ合い話し込んだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ベルとモニカ、リリが訪れたのは7階層。

本来であればパーティの連携がより求められる階層なのだが、ベルはモニカにリリの護衛を任せ、モンスターの群れに一人で立ち回っていた。

上空から降下してきたパープル・モスを往なして羽を断ち短刀を打ち込み倒す。

側にいたキラーアントの一匹をヘスティア・ナイフで串刺しにし、振り下ろされた鉤爪をエイナからもらった緑玉色(エメラルド)のプロテクターで弾き、甲殻の間を縫って短刀で一閃。

キラーアントにしっかり止めを刺し、残存しているモンスターの群れへ休むことなく駆け出していった。

 

「ベル様お強い~!」

 

「あまり深追いはするな、ベル!」

 

ベルがモンスターを蹴散らす光景を脇に、リリはベルが屠った死骸を一か所にまとめ、モニカはそんなリリの護衛と周辺の警戒を行っていた。

 

「ベ、ベル様-っ、新しいのが産まれました!」

 

「ベル、上だ!」

 

「せぇー、のッッ!!」

 

ベルより高い壁から生まれたキラー・アントに対して、助走からの飛び蹴りを叩き込み、首をへし折って見事に退治した。

 

「あ~ぁ…どうするんですか、ベル様?コレ、壁に埋まっちゃってますよ?」

 

「あ、あはははは…ゴメンネ?」

 

「全く…、ベルが取るしかないであろうな。あんな高いところ、ベルならともかく私やリリでは届かないからな」

 

敵の涌出(ポップ)が一段落し、壁に埋まったまま息絶えたキラー・アントを解体する機会が来た。

キラー・アントの細い胴体を切ることができるのは、背丈が十分にあるベルだけであった。

ベルが腰に差しているヘスティア・ナイフを奪うため、自分の解体用ナイフを渡そうと―――

 

「ベル。解体にはヘスティア・ナイフを使って早く終わらせるのだ。解体の途中でキラー・アントがまた涌出(ポップ)したら危険だからな」

 

―――そう思っていたら、側にいたモニカに邪魔をされてしまった。

 

「それとベル。解体が終わり次第、一度地上へ戻るぞ。あと戻りながらでいいから、この解毒回復薬を飲んでおくのだぞ」

 

「え?まだ時間ありますよね?モニカさん今日戦ってないですし…。それと解毒って何ですか?」

 

「…貴公は先ほどパープル・モスを盛大に切り裂いていただろう?あのモンスターは毒鱗粉を持っているため、遠距離攻撃もしくは槍などで倒すのが基本だぞ?」

 

「えっ!?モ、モニカさん、何で黙ってたんですか!?」

 

「以前エイナ殿の勉強会で出た内容だったからな、覚えているものと思い黙っていたのだ。…今日のことはエイナ殿に報告するからな、みっちりとしごかれるといい」

 

「うぅ…、分かりました…」

 

もしもベル一人であったならば、あのナイフを取るのは簡単だったであろう。

しかし、モニカの目があるということもあり、ナイフを取る絶好の機会を逃してしまったリリは、どうやってベルのナイフを取ろうかと計画を立てていた。

 

「とりあえず、今日の冒険は、このまま帰ってベルに念のための治療を受けさせて終了しようと思うのだが…取り分は私達が5割、リリが4割、ベルの治療費と明日使う道具代で1割というので大丈夫か?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「…………え?」

 

どうせ彼らも他の大嫌いな冒険者と同じで、自分に報酬を渡すことはないだろう。

そんなことを考えていたリリであったが、突然報酬の話が聞こえてきた。

 

「あ、あの、リリの取り分間違っていませんか?4割なんて…」

 

「いや、間違っていないが。…そうか、ベルの意見も聞かずに言ってしまった。ベルはどうだ?」

 

「僕もそれでいいと思います。それより、明日使う道具って…」

 

「そうじゃなくて!サポーターにこんなに報酬を出すなんておかしいです!前代未聞ですよ!?」

 

そのように言うと、ベルとモニカは驚いたような表情をしていた。

 

「いや、でもリリがおかげで戦いやすかったし…」

 

「ベルの言う通りだ。受け取ってくれ」

 

「で、ですがっ…!」

 

「…とりあえず、いったん外に出ませんか?ここだとモンスターがいつ出てくるか分かりませんし…」

 

「「そうだな/…はい」」

 

それから三人でダンジョンから出て換金を済ませた後、ごねるリリに報酬を渡してリリと別れ、ベルは今日の話を聞いたエイナの補習を受けることになったため、モニカは一人ホームへと帰って行った。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

という訳でヘスティア・ナイフは盗まれませんでした。
まぁモニカがいますし、当たり前っちゃ当たり前ですよね。
なのでリューに脅されるリリはこの世界にはいません。

質問なんですが、モニカのステイタスって単品でまとめた方がいいですかね?
本編で更新されると内容も更新されるシステムにする予定です。
アンケート作っておくので、ぜひ投票をお願いします。

それでは、次回。


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第24話 『山分け』

ついにモンハンライズを買えました。
どうも、刺身の盛り合わせです。

という訳で最新話です!
今回は報酬で喜び合うシーンまで。

それと謝らないといけない事なのですが、アンケートの仕方を間違ってて、アンケートが解けないという状態になっているのに気づいていませんでした。
すみません、今後はこんなことが起きないように気を付けるので、ぜひアンケートお願いします。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。

11/17 本編の内容を一部変更しました。


翌日、ベルとモニカ、リリは朝早くからダンジョンに赴いていた。

リリと別れた後にアドバイザーのエイナと話し合い、ヘスティアから許しを頂いたことで、二人はリリをサポーターとして雇うことに決めたのであった。

二人とリリは特に期限を設けずにパーティメンバーとしての契約を交わして、今に至る。

 

「…ベル様、モニカ様。改めて、リリを雇って頂いてありがとうございます。お二人に見捨てられないよう、リリは鋭意頑張りますよ!」

 

「見捨てるって、そんなことしないよ。僕達はリリ以外にサポーターの当てなんてないし」

 

「その通りだぞ、リリ。私達から契約を持ちかけたのだ、そんな不義理なことする訳ないだろう?」

 

「それはいいことをお聞きしました。…なぁんて、リリもお二方がそんなことをするとは思っていませんよ。お二方はびっくりするくらいお優しいですから」

 

自身を著しく下にするへりくだった言い方にベルはむず痒さ、モニカは違和感を覚えながらも話を続けていく。

その後今日の予定を話し合った結果、時間いっぱいまで7階層で粘ってみないかという提案がベルから出た。

 

「私は別に構わんが、モンスターの湧出(ポップ)が少なかったら、8階層まで行くことも考えておいた方がいいと思うが…」

 

「えっ、新階層!?でも、8階層まで行ったらリリの荷物がすごいことになりませんか?」

 

「む、そうか…。倒すだけで魔石を残していくのは褒められたことではないか…」

 

「心配はご無用ですよ、ベル様、モニカ様。リリにはスキルの補助があるので、万が一にも運搬作業で足手纏いになることはありえません」

 

「えっ、リリもスキルが出てるの!?持ってないの僕だけかぁ~…」

 

「…もしかして、モニカ様もスキルを?」

 

「あぁ。戦いに関するスキルだがな。今日機会があれば見せることにしよう」

 

「あ、リリは魔法も発現してるの?」

 

「…残念ながらリリも魔法は発現していません。一生自分の魔法を拝めない人は多々いると―――」

 

「ベル。スキルや魔法の詮索はご法度だ。聞いていいのは、同じファミリア内のメンバーだけだぞ」

 

「あっ、そうなんですか。知らなかった…」

 

そして、他愛もない話をしながら、ダンジョンへと向かっていった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

リリというサポーターの存在は、劇的だった。

バックパックをリリが受け持ってくれたため、戦利品を一々地上へ換金しに行かなくていいため、普段より長くダンジョンへ潜れるようになった。

さらに、ベルとモニカはバックパックを装備する必要がなくなったため、身軽になり7階層で暴れまくった。

その勢いのまま8階層まで突撃し、夕方までダンジョンに潜り続けていた。

その結果、ギルドの換金所から受け取ったお金は―――

 

「「「………」」」

 

数えきれない大小の金貨が、狭苦しいといわんばかりに口が開いた亜麻色の袋の中でひしめき合うのを、三人全員が頭頂部をくっつけながら覗き込む。

 

「「「36000ヴァリス……」」」

 

明らかに二人でダンジョンへ潜っていた頃よりも、桁が一つも違う。

 

「「「やあぁーーーーーーーーーーっ!!」」」

 

全員歓喜の表情で飛び上がりハイタッチ。

 

「す、すごいです、ベル様、モニカ様!LV.1の五人組パーティが一日かけて25000ヴァリスなんですが、それよりもはるかに稼いでますっ!」

 

「いやあ、ほら、兎もおだてりゃ木に登るっていうじゃない!それだよ、それ!」

 

「そんな諺はないと思うが、私も便乗しよう!これはスゴイな!」

 

「では、リリも便乗します!スゴイです!まだ上を目指せますよ!」

 

バベルの簡易食堂で一通り騒いで喜びまくった後、その場で分配を行う事となった。

 

「……では、お二方、そろそろ分け前を―――」

 

「うん、はい!」

 

ベルがリリの前に、14000ヴァリス入った袋を差し出す。

ベルとモニカの前には22000ヴァリス入った袋が置かれた

 

「……へ?」

 

「あぁ、これなら普通に神様へ美味しいものを食べさせてあげられるかも…!」

 

「これぐらいのお金があれば、オーダーメイドの防具を作れるか…?」

 

「ベ、ベル様、モニカ様。これは…?」

 

「分け前だよ、決まってるじゃん!あ、そうだ!せっかくだしリリ、良かったらこれから一緒に酒場に行かない?」

 

「ベルにしては中々いい考えだな。構わないだろうか、リリ?」

 

「え?は、はい、大丈夫です…ってそうではなくて!」

 

目の前に置かれた袋の中の金額に驚きを隠せなかったリリ。

早く打ち上げに行くために荷物をまとめ出しているベルとモニカを呼び止めた。

 

「…お、お二人は、今回の収入を…ど、独占しようとは、思わないんですか?」

 

「「え、どうして?/む、どうしてだ?」」

 

リリからの質問に心底不思議そうな表情をしながら問い返し、逆に質問したリリは言葉を詰まらせていた。

 

「僕達だけじゃこんなに稼げるはずなかったよ。リリがいてくれたから、でしょ?だから、ありがとう、リリ」

 

「ベルの言う通り、貴公がいたからこんなに稼げたのだ。気にせず受け取ってくれ。それと、これからもよろしく頼むぞ」

 

「それじゃあ行きましょう、二人共!」

 

「ああ、そうだな」

 

バベルの簡易食堂から出ていこうとする二人をジッと見続けるリリ。

 

「…変なの」

 

そのちっちゃな呟きを、二人は見事に聞き流していた。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

という訳で、アンケートで募集しているステイタス云々についての説明を。
ステイタスで書く内容としては、現時点でのステイタスをそのまま+モニカが本作で使うスキルや魔法、必殺技のようなものの解説とかを書いていこうかなぁって思ってます。
ぜひ参考にして投票をお願いしますね。

次回はデート回+二人とリリとの間の溝の描写まで書く予定ですが…もしかしたらデートで一話使うかもです。
それと、次々回かその次辺りでオリジナル回をしようと思います!
内容としてはモニカの防具にまつわるアレコレ。
そしてあるキャラが登場します!

それでは、次回。


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第25話 『檻天国』

モンハンライズ楽しくて、執筆があんま進みません。
どうも、刺身の盛り合わせです。

という訳で最新話です!
今回は前回書いた通りデート回?です。
それと今回のタイトルは原作でのとある描写から取ってみました。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。

11/18 今後の展開のため、本文の内容を一部変更しました。


ベルとモニカ、リリの三人で打ち上げを行っている裏で、ヘスティアはミアハと飲みに行っており、その結果完璧な二日酔いに陥っていた。

 

「ぬぁぁぁぁぁぁっ…!?」

 

「だ、大丈夫ですか、神様?」

 

「全く…羽目を外しすぎるからこうなるのだぞ」

 

「す、すまない、ベル君、モニカ君。こんな見苦しいところを…。それより、ダンジョンに行かなくていいのかい?」

 

「今の神様を放っておけませんから、今日は休むことにしました。このことはちゃんと雇ったサポーターの人にも伝えてます」

 

リリに今日は休むと伝えに行くと、リリも【ファミリア】のホームに帰る用事があるそうで、逆に休ませてほしいと言われたのであった。

 

「ヘスティア様、林檎のすり下ろしを作ったが、食べれるか?」

 

「…ちょ、ちょっと辛いなぁ。ベル君が食べさせてくれれば食べれそうだなぁ…」

 

「あ、はい、分か…」

 

「そんなこと言う気力があるなら、体の方も大丈夫だな、神ヘスティア?」

 

「いやー自力で食べれるかもなー!モニカ君、林檎いただくぜ!」

 

自身の体が弱っているのをいいことに、ベルに何とか甘えようとするヘスティアであったが、すぐにモニカに妨害されることとなった。

それから時間があっという間に流れ昼下がり。

ベッドに寝転がりながら昨日のベルの話を聞くヘスティア。

モニカはこの時間にと手紙を書いて出すついでに買い物を行っていた。

モニカ君という監視の目がないこの状況…、ベル君に甘えるなら今しかない!

そう意気込んでベルに甘えようとした瞬間。

 

「神様がよければ何ですが…、豪華な夕食でも食べに行きませんか?」

 

ヘスティアは自分の耳に聞こえてきたものが信じられなかった。

 

「実は、昨日の探索で沢山のお金が手に入って…!神様に何か恩返しがしたいって二人で考えて……!」

 

最初のベルの一言から後の話は何も聞いていなかった。

先ほどベルから告げられたお誘いの文句が、ヘスティアの頭の中で何度も再生される。

 

『これはまさかっ、デデデデデデートのお誘い!?まさかベル君自ら!?しかも夕食(ディナー)に!?』

 

ヘスティアは驚愕とし、すぐに有頂天になった。

 

「神様が元気になったら、今度にでも…」

 

「今日行こうっ!!」

 

「え」

 

「今日行くんだ!」

 

「で、でも神様、体調は…」

 

「治った!じゃあさっそ…ッ!」

 

ぴたりと動きを止め胸元の襟の匂いを確認し、ぐわっと目を見開くヘスティア

 

「ベル君、六時に南西のメインストリート、アモールの広場に集合だ!良いね!?」

 

「あ、はい!」

 

「それじゃあ!」

 

汗を流すベルに見送られながら、ヘスティアは僅かな荷物を持ってホームを飛び出していった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

変わって時刻は六時前。

ヘスティアが出ていった後に帰ってきたモニカに説明をしたベルは、二人そろってアモールの広場にある女神の銅像の前でヘスティアが来るのを待っていた。

 

「ベルくーん!…ってあれ、モニカ君?」

 

「あっ、神さ、ま……」

 

呼ばれた方向を振り向くと、いつもと違い全力でおめかしをしたヘスティアがそこにはおり、そんな姿にベルは見惚れていた。

 

「どうしてモニカ君がここに…」

 

「どうしてって…一緒に夕食を食べに行くのだから、いるのは当たり前だろう?」

 

「……ま、まぁそれは置いといてだ!どうだい二人共、似合うかい?いつもと装いを変えてみたんだけど…」

 

「中々に似合っていると思うぞ、ヘスティア様。…おい、ベル

 

「…あ、はいっ!似合ってます、とっても似合ってます!えっと、なんていうか、普段の神様より凛々しいっていうか…その、き、綺麗です!」

 

二人からの言葉に心の中でガッツポーズをとるヘスティア。

 

「ホントはもっと早く来るつもりだったんだけどね…。それじゃあ、豪華な夕食、食べに行こうか!」

 

「「は、はいっ!/うむ!」」

 

「あ、いたーっ!?」「ヘスティアがおったぞ!」「ということが…隣にいる二人がそうねっ!」

 

突然アモールの広場の一角が騒がしくなったと思うと―――

 

「ゲットーーー!!」「やーん、どっちも結構可愛い!?」「ヘスティアってば、こういう子が好みなのね!」

 

「「む、むぶうっ!?」」

 

女神の波によって飲み込まれたベルとモニカ。

沢山の腕が二人の体を引っ張り回し、代わる代わる己の胸の中で抱きしめていく。

 

「なっ、なっ、なぁ…!?」

 

「ごめんなさいね、ヘスティア。私たちどうしてもあなたの子が気になっちゃって、後をつけてきちゃったの。…あらやだ、本当に兎みたい」

 

「ん――っ、ん―――――っっ!?」

 

「ベ、ベルく――――――んっ!?」

 

「こっちの子はお人形さんみたい!」

 

「モ、モニカく――――――んっ!?」

 

神のの矛先を向けられてしまった己の眷属を、ただ見ていることだけしかできないヘスティア。

そんなヘスティアの精神が崩壊しようとしたその時、いまだに女神たちに半分取り込まれた格好で、ボロボロなベルとモニカが隙間から姿を現した。

 

「かみ、さま…」

 

「ヘス、ティア、様…」

 

「ぶ、無事か、二人共!?」

 

「…僕、もう、死んじゃってもいいかもしれません…っ!?」

 

「…世界とは、残酷なのですね…」

 

バカなことを言っているベルの向こう脛につま先を叩き込みつつ、死んだ目をしているモニカを女神達から引きずり出す。

 

「すみませんでしたっ…!!」

 

「よし、逃げるぞ!モニカ君、ちゃんと走って!」

 

片足を引きずるベルと未だに放心状態のモニカを無理やり引っ張り逃亡を開始するヘスティア。

獲物を取り返すべく追ってくる女神達を振り払うべく、三人はと始終を遁走するのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

度重なる追跡に対して三人は、西のメインストリートのはずれにある古ぼけた鐘楼に隠れて何とかやり過ごした。

その後、鐘楼から見渡す美しい都市の夜の姿に、全員で目を奪われていた。

 

「あの、神様…いつか、また行きましょう。今度こそ、絶対に」

 

「ベル君…」

 

「その時まで、僕達、今よりもっとお金貯められるよう頑張りますから。それで美味しいものを食べて、美味しいものを飲んで…それで、またここに来ましょう。今日見つけることのできた、この綺麗な景色を…また三人で、見に来ましょう」

 

「…楽しみにしてるぜ、二人共」

 

「「はいっ/あぁ」」

 

そうして誰が言うまでもなく、もう一度鐘楼の外に広がる景色を眺め、静かにその三人だけの時間に身を委ねた。

自身の側にいる二人のぬくもりを感じながら、笑みと一緒に瞼を閉じる。

涼やかな夜風に撫でられ、手首にまかれた髪飾りが、その小さな鐘を仄かに揺らしていた。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

と、いう訳でデート…というより逃亡回でした。
おかしいなぁ…本当だったらリリとの溝辺りまで書く予定だったのになぁ…
という訳で次回こそリリとの間に微妙な空気が流れる回です。
それが終わり次第、オリジナル回です。

…そういえばみなさん知ってます?
11/18日からアマゾンプライムで『シン・ウルトラマン』が見れるようになるんですよ!
見たことない人は勿論、もう見たって人もあと3回は見よう!

それと、今後投稿頻度が遅くなるかもしれません。
理由としましては、卒論執筆をしなきゃいけないからです。
投稿出来る時はしますが、若干不定期になるかもしれないので、気長に待っていてください。

それでは、次回。


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第26話 『溝』

ウマ娘シンデレラグレイの一気読みが出来たので読んで大興奮してます。
どうも、刺身の盛り合わせです。

という訳で最新話です!
今回はダンジョン内でのお話。
ソーマ・ファミリアについての説明って感じですね。

今回の話を書くにあたって、前話の内容を一部分だけ変更。
リリにはベルとモニカがヘスティアの看病をしている間に、【ファミリア】のホームへ行ってもらうことになりましたので、そういう前提で話が進んでます。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。


 

「だから、ダンジョンの中では警戒を怠らず、慢心してはならないと何度言えば分かるのだ、貴公は!」

 

「モニカ様の言う通りです!今のは不用意でした!確かに意地悪な状況でしたけど、ベル様にも非がありますっ!」

 

ベルとモニカがリリと契約を交わしてから早くも数日たっており、現在ベルとモニカ、リリは7階層にいた。

もはや7階層は己の庭、と自惚れていたベルは状況の把握を怠った結果、踏み込んだ左足をニードルラビットに狙われ、そこから畳みかけるようにキラー・アントの追い打ち。

モニカもキラー・アントを対処していたため、助けに入ることができず、あわや命の危機だったのだが、リリが隠し持っていた『魔剣』のおかげで何とか助かり、ベルはモニカとリリから説教を受けている真っ最中であった。

 

「「聞いているのか、貴公!/聞いているんですか、ベル様!」」

 

「あぁ、うん、ごめん…反省してるよ。もう絶対あんな真似しない…」

 

「…確かに反省しているようですね。それだったら、リリはもう何も言いません。これで学ぶことがなかったら、それはベル様の責任です」

 

「今回は何とかなったが、次はどうなるか分からないからな。警戒を怠ってはならんぞ、貴公!」

 

「うん、もうこんなことは起きないようにするよ。…それより、リリ。さっき『魔剣』で僕を助けてくれたの?…本当にありがとう、なんだかすごく嬉しかったよ」

 

「…っっ!ベ、別にベル様を助けようとしたわけじゃないんですからねっ!ベル様がいなくなったらリリの収入が減るからこうしたまでです!か、勘違いしないでくださいね!」

 

「落ち着け、リリ。いきなり何を言っているのだ」

 

突然のめちゃくちゃ対応に困る発言に冷静なツッコミを入れるモニカに対して、顔を赤らめながら両手で頭を抱え始めるリリ。

フォローすることができなかったベルは、とにかく場の空気を変えるため、リリの持つ魔剣について詳しく話を聞くことにした。

 

「えーと…リリって『魔剣』を持ってたんだ?」

 

「は、ははははっ。ちょ、ちょっと色々ありまして、リリの下に転がり込んできて…」

 

「ほぅ。だが魔剣は使いすぎると壊れると聞いたのだが…それは本当なのか?」

 

「そうですね、リリはここぞという時しか使わないようにしています。でも、ベル様とモニカ様のためならリリは出し惜しみなんかしませんよ!」

 

モンスターの群れがひと段落したことや空腹感を感じたこともあり、昼食をとることにした。

モニカが自ら周囲の警戒を買って出たため、簡素な食料品を食べながら歓談に興じるベルとリリ、少し離れた場所からその話を聞いているモニカ。

 

「そういえばリリ、昨日【ファミリア】に戻るって言ってたけど、何かあったの?」

 

昨日のことが気になったベルからの問いに対して、一瞬顔を硬くさせるもののすぐに取り繕い笑顔に戻るリリ。

しかし、その笑顔はどこかぎこちないものであった。

 

「どうしてそんなことを聞くんですか、ベル様?」

 

「…リリと身内(ファミリア)の人達の関係が悪そうだったから、その、気になっちゃって…ゴメン」

 

「お心づかいありがとうございます、ベル様。でも大丈夫です、ベル様が心配しているようなことは一切起きていませんから。昨日は一カ月に一度の、【ソーマ・ファミリア】の集会があったので、ホームに戻ったんですよ」

 

「集会って…?」

 

「…話が長くなるので省きますが、要はこれだけのお金を来月に稼いで来いっていう、布告みたいなものですね。それぞれの構成員に見合った額を定められるので、みんなちゃんと集まらないといけないんです」

 

「それって…、凄い厳しいよね、個人にノルマを決めてるなんて。稼ぎが少ない人は大変じゃ…」

 

「そうですね、リリもそう思います。サポーターや、芽のない冒険者は、特に…」

 

そこでベルと遠くから聞いていたモニカは、以前からのリリの皮肉めいた発言の意図を理解することができた。

居たたまれない空気が流れだし、ベルは強引に話題の方向転換を図ることにした。

 

「あ、あのさ。僕聞いたんだけど、【ソーマ・ファミリア】ってお酒も販売してるんだよね?」

 

「ああ、あれは…失敗作です」

 

「…しっぱい?…え、ええっ?」

 

「そうです。本来作る予定だったお酒の製造工程で漏れたものを、適当に市場に回しているんです。捨てるのももったいないので。失敗作ですら(・・・・・・)、それほどまでの美酒、ということです」

 

翳りのある笑みを浮かべながらベルを見るリリ。

 

「あ、あはははっ…そ、そんな美味しいお酒なら、僕も飲んでみたいかな…?」

 

それまでの話に乗るように冗談を口にするベルであったが、リリはそんなベルを見て、消え入りそうな顔をしながら小さく笑うのであった。

 

「止めておいた方がいいと思います…」

 

「………」

 

ぽつりと呟かれた言葉を最後に途切れる会話。

その直後にモニカから掛けられたモンスターが来たという言葉からすぐに戦闘の準備をしなければいけなかったため、話をすることができなかった。

未だ二人とリリの間の溝は深く、埋まるかどうかも分からない。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

今回モニカには聞き役に徹してもらいました。
理由としては、今回ばかりはモニカを組み込みにくかったからです。
個人的にモニカは基本的に真正面から聞くようなタイプじゃないかなって思ってます。

それとアンケートに答えてくださったみなさん、本当にありがとうございました!
みなさんの意見だと、6:16で『もう少し後でいい』が多かったので、ステイタス開示は後…具体的には原作3,4巻あたりで投稿しようと思います!

次はオリジナル回です!
明日は投稿出来るかちょっと謎なので、気長に待っていただければ幸いです。

全然関係ない話なんですが、12/2まで『ウマ娘シンデレラグレイ』が全話読み放題です!
王道のスポーツ漫画で熱くなれること間違いなしの名作なので、読んでない人は是非読んでみてください!
あの作品内だとメジロアルダンとイナリワンが大好きです(隙自語)

それでは、次回。


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第27話 『モニカの休日 ~新たな装いはテーラーと共に~』

みなさんポケモンSVやってますか?最初のポケモンは何を選びましたか?
どうも、スカーレットでクワッスを選んだ刺身の盛り合わせです。

お待たせしました、最新話です!
そしてオリジナル回です!
予定してたより投稿が遅れちゃいました。
筆者の22歳の誕生日と本話の内容の書き方で悩んでたんですが、何とか書けました。

今回も新たにプリコネキャラからゲストが参戦!
分かる人は題名で分かるかも…?

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。

2023/03/20 ツムギのレベル3から2に変更しました。


リリと最後にダンジョンに潜ってから二日経った。

一昨日に用事があるためダンジョンに行けないと申し訳なく言ってきたリリから聞いた二人は、ベルの気が進まないなどの理由から、先日はダンジョンへ足を運ばず、ホームや教会、周辺の掃除や溜まっていた家事などを二人で行っていた。

その翌日、モニカは一人街をぶらついていた。

 

『今日はどうしたものか…。クレープやたいやきもいいが、新しい店を探すのもありか…?いや、バベルに行って私に合った防具を探すか…?』

 

これからすることを考えながらメインストリートを歩くモニカ。

 

「…よし、決めた!まずはクレープだ!」

 

意気揚々と目的の場所へ行こうとするモニカ。

 

「…すいません、少しよろしいでしょうか?」

 

突然声をかけられたモニカ。

振り向いた先にいたのは、一人のヒューマン。

髪はピンクのツインテールで、服は主にピンクと白で構成されているのだが、何故か胸元にハートの形をした穴が空いているおり、道行く男性の視線を釘づけにしていた。

そんな彼女はモニカをジロジロと見つめていたかと思うと―――

 

「…あの、今から私の店に来てもらえませんか!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

突然話しかけてきた少女に連れていかれたのは仕立て屋。

店内にある純白のトルソーがオシャレな服やドレスなどを纏っているのだが、どれも見た感じモニカの体に合うサイズがないことに内心しょんぼりとしていた。

 

「…遅ればせながら、自己紹介を!私の名前はマユミヤ・ツムギ。【ヘルメス・ファミリア】所属の冒険者です!…まぁ、最近は店に籠りっきりで、ダンジョンには言ってないんですけどね?」

 

「私は【ヘスティア・ファミリア】所属の冒険者、モニカ・ヴァイスヴィントだ。それで、私に一体何のようなのだ?」

 

「…どうか、私の衣装のモデルになっていただけないでしょうか!」

 

「も、モデル…?私にできることなのか、それは?自分で言いたくはないが、私は…その、他の冒険者に比べると、かなり小さいぞ?」

 

「その体型だからこそです!今、このオラリオで女性の装備は、ほとんどが鉄などの鉱物製の鎧や布製の装備ですが、どれも機能性重視なもので全然オシャレじゃありません!偶にバトルドレスなどの装備もありますが、胸当や籠手なんかの装備のおかげでオシャレ度が下がっているんです!だからこそ私は決めたんです、このオラリオで女性の冒険者向けのオシャレで機能性も抜群な装備を作るって!」

 

ツムギのまくし立てるような話に対して、何も答えられず狼狽するモニカ。

そんなモニカに構うことなく、ツムギは話を進めていく。

 

「それから努力を重ねてLv.2になった時に、『裁縫』っていう発展アビリティが出てきたのでそれを取得して、同じ【ファミリア】の団員達に協力してもらいながら、ようやく装備を作ることができたんです!今のところ私も含めた四人、しかも後方からの支援だったり一撃離脱型のメンバーの方々しか着てくれないので、前線で実際に戦闘を行う方に着てもらってちゃんと装備としては成り立っているのかを証明したいんです!モニカさん専用の装備として作りますし、防具としてまともに使用できるものにしてみせますから!どうかモデルになっていただけないでしょうか!?」

 

「…分かった、私で良ければ協力させてくれ。ただし、私の注文も少しは聞いてもらうぞ、良いな!」

 

ツムギの熱い思いが伝わった結果、モニカはツムギに協力することとなった。

 

「もちろんですとも!…それじゃあ、早速採寸をさせてください!実は私、一目見ただけで相手のスリーサイズが分かるっていう特技を持っているんですが、流石に身長なんかまでは分かりませんからね!」

 

「ツ、ツムギ殿?その、スリーサイズというのは、私のも…?」

 

「はい、分かりますよ!モニカさんは上から―――」

 

「だぁぁぁああ!?言わなくていい!早く採寸を終わらせるぞ!」

 

「了解です!それじゃあ両手を横に開いてその場に立っていただければ―――」

 

それからというもの、ツムギによるモニカの採寸と装備のデザインについての話し合いは長時間続いた。

途中で二人の間で意見の違いが出た際には言い争いになったものの、何とか解決して話し合いは順調に進んでいき――――

 

「やっと、やっと設計図が完成しました…!それでは、これから装備の作成に映りますので、一週間後にもう一度ここに来てくだされば、装備をお渡しします!」

 

「分かった。それでは失礼するぞ、ツムギ殿」

 

「はい、お待ちしてまーす!」

 

店の外に出るモニカ。

思っていたよりも白熱していたようで、すでに西日が差しこんでくる時間になっていた。

モニカが速足でホームへと帰宅すると、机の上で突っ伏して寝ているベルだけがいたので、ベルを起こしヘスティアのために料理を作ることにしたのであった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

というわけでプリコネよりツムギ、ヘルメス・ファミリアに所属しての参戦です!
ツムギが参戦した理由としては『ヴェルフはモニカの服じゃなくて防具作るだろうなぁ…。せや、作れる人参戦させたろ!』という感じです。
そしてヘルメス・ファミリア所属の理由としては、『動かしやすいから』です。
ヘルメス・ファミリアは商業系ファミリアとしての一面もありますから、仕立て屋をやっててもあんまり違和感がないんです。

次回からは本編に戻ります。
ゆっくりお待ちください。

それでは、次回。



~本編に一ミリも関係ない話~
今日の午後3時にデレステ総選挙のグループBの結果発表がありまして、しゅがはが1位通過でしたね。
そしてライラさんが3位通過&松尾千鶴、今井加奈プレイオフ決定!!
ライラさんとライラPのみなさん、本選出場&ボイス確定本当におめでとう!!


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第28話 『炎雷』

モンハンライズ楽しいですね、最近双剣かハンマーしか使ってないです。
どうも、刺身の盛り合わせです。

というわけで最新話です!
今回はベルの魔法発現回です!

それと、先ほど間違えて投稿しちゃいました…
こちらが本編なので気を付けてください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。


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モニカ・ヴァイスヴィント

LV.1

力: H189→G245 耐久:G218→G263 器用:H165→G215 敏捷:H178→G231 魔力:I0

 

魔法

【】

 

スキル

【上官命令(オフィサー・オーダー)】

 ●威圧行為を行うことで、対象に強制停止(リストレイト)を行う。

 ●自身より格上の相手に行う場合、差が大きいほど成功率・効果時間が共に低下。

  対して、自身より格下の相手に行う場合、差が大きいほど成功率・効果時間が共に上昇。

 ●対象が何らかの状態異常に陥っている場合、相手との差に関係なく成功率・効果時間が共に上昇。

 ●対象へ向ける威圧の大きさによって効果上昇。

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帰ってきたヘスティアと夕食を取った後、【ステイタス】更新を行ったモニカは、ヘスティアと二人で【ステイタス】を見ていた。

 

「上昇値トータル200弱…なかなかの数値だね、モニカ君」

 

「はい。ですが、まだまだベルの半分以下ですから。努力あるのみ!」

 

「あはは…。ま、まぁ、ベル君はスキルの力もあるからね。適度に努力してくれよ?…それじゃあ、ベル君と変わってくれ」

 

「了解しました」

 

隠し部屋の外にいるベルと交代し、自身は廃教会の外で目の前に仮想敵を想像し、剣を振り続ける。

ベルに呼ばれて隠し部屋に戻ると、ベルが魔法を発現させたことと、明日ダンジョンで試し撃ちを行い、魔法の正体を確認するように言われたのであった。

 

「今日は絶対ダンジョンに行っちゃダメだぜ、ベル君!慌てなくても君の魔法は逃げたりなんかしないからさ?」

 

「あ、はい…そうですね」

 

「話は纏まったか?もう夜も遅いのだから、早く寝ようではないか」

 

歯磨きを済ませ、ヘスティアとモニカはベッドに、ベルはソファーに寝転がり消灯。

モニカは明かりが消えるとすぐに夢の中へ入って行った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「うぐぅ~……っ!」

 

「…何をやっているのだ、貴公は」

 

翌朝モニカが目を覚ますと、ベルがソファーにうつ伏せの体勢でクッションを頭部に押しつけながら奇声を上げていた。

 

「ん~…、アレかい?おねしょでもしちゃったとか?」

 

「え゛っ。……いい年してそれはどうかと思うぞ、ベル」

 

「違いますよ神様ぁ!あとモニカさんも引かないでくださいよぉ~!」

 

「はぁ。何があったのか知らないけど、君もほんとに多感な子だよなぁ…。あっ、そうだ。ベル君、昨日のあの本を見せておくれよ。今日は昼まで暇なんだ」

 

「あ、はい。いいですよ…これです」

 

「なかなか分厚い本を読んでいたのだな、ベル」

 

「ふぅん、見れば見るほど変わった本だ、な……ぁ?」

 

表紙を見て何ページか無造作に目を通していたヘスティアは、不意に動きを止め、目尻をひくひくと痙攣させ始めた。

何事かと思っているとヘスティアが口を開き説明を始めた。

ベルが先日読んでいた本、実は『魔導書(グリモア)』と呼ばれるもので、『発展アビリティ』の『魔道』と『神秘』という希少なスキルを両方備えた者にしか作成できない著述書でありながらも、値段は【ヘファイストス・ファミリア】の一級装備品と同等、まだはそれ以上の品で、魔法の強制発現を促すものの、一度読んだら効能は消失し奇天烈書(ガラクタ)に成り下がる代物であったのである。

しかも最悪なことに、ベルの読んだ魔導書(グリモア)は知り合いに借りた誰かの落とし物で、結果的にベルがネコババした上に使い捨ててしまったのである。

 

「なぁにをしておるのだ貴公はぁ!?知り合いに借りた品、しかも誰かの落とし物を勝手に使用するなど…!?ホントにどうするつもりなのだベル・クラネルゥ!?」

 

「ご、ごめんなさいぃ!?僕もこれが魔導書(グリモア)だとは知らなかったんですぅ!?」

 

「知らないで許される次元じゃないぞコレは!!あああぁぁ…、云千万の借金など、零細ファミリアであるここが払えるわけがないぃ……!!」

 

ベルの胸元を両手で掴み揺すりながらキレたかと思ったら、手を放して両手を頭にやりながら絶望していた。

ベルも絶望一色になっていた。

そんな中、ヘスティアは感情を殺した能面のような顔でうつむきがちになりながら、椅子をもってベルの前に来ると、上に乗り両手をそれぞれベルとモニカの肩に置き、高い目線から誤魔化しの言葉を語りかけてきた。

 

「いいかい二人共?君は本の持ち主に偶然(・・)出会った。そして本を読む前に(・・・・・・)本を読む前にその持ち主に直接返した。だから本は手元にない、間違っても使用済みの魔導書(グリモア)なんて最初から(・・・・)なかった……そういうことにするんだ」

 

「「黒いですよ神様!?/何を言っているのだ神ヘスティア!?」」

 

「二人とも、下界は綺麗事じゃまかり通らないことが沢山あるんだ。ボクはそれをこの目で見てきた。住む場所を追い出されたり、ジャガ丸くんを買えないほど紐爺思いをしたり、廃墟の地下室に閉じ込められたり……とんでもない額の負債を背負わされたり。世界は理不尽で満ち溢れているんだ」

 

「それはひとえに神様のせいですっ!?」

 

「ちょっと待て、聞き覚えの無い出来事が多すぎるし、最後の不吉すぎる言葉は何だ!?」

 

「と、とにかくっ、この本を貸してくれちゃった人に、僕、事情を話してきます!」

 

「ベル君、止せっ、君は潔癖すぎるっ!世界は神より気まぐれなんだぞ!」

 

「こんな時に名言を生むんじゃないっ!?隠したっていつかはバレルに決まっているだろうが!…ベル、私がヘスティア様を押さえておく!貴公は謝りに行けぇ!」

 

「は、はいっ!」

 

モニカにヘスティアを押さえてもらい、貸してくれた人物に謝りに行くベル。

結果として、ミアの一声で許されたベルであった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

というわけでヘスティアが何とか誤魔化そうとする回でした。
今回モニカがベルにキレている場面はプリコネアニメ2期6話でのモニカの顔芸を参考にしていただければと思います。
あの回は個人的に大好きな回です。
詳しく知りたい人はYouTubeかニコニコで調べてみてください、ギルドリーダーとしてのモニカの苦労が色々と分かりますので。

次回からはそろそろ終盤に差し掛かると思います。

それでは、次回。


~本編に一ミリも関係ないお話~
みなさん今週のドンブラザーズ見ましたか?
…雉野怖いなぁ。


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第29話 『薬師、そして悪意』

ポケモンSVで自由にストーリーを進めることができるようになった結果、何から進めるか悩んでます。
どうも、あまりの自由度に困り気味(勿論いい意味で)の刺身の盛り合わせです。

ということで最新話です!
今回はナァーザさん初登場&原作2巻での敵?登場です。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。


魔導書(グリモア)問題も解決したため、ダンジョンへ向かうことにしたベルとモニカ。

その前に、回復薬(ポーション)を補充するために、まず【ミアハ・ファミリア】へ向かうことにした。

 

「すいませーん、おはようございますーす…」

 

「おはよう、ベル、モニカ。久しぶり……」

 

「朝早くから申し訳ない、ナァーザ殿。今は大丈夫か?」

 

「大丈夫、二人が帰ったらお客なんて来ないから…。それで、今日は何を買ってくれる?この高等回復薬(ハイ・ポーション))なんか使ってみない…?」

 

「うむぅ、我々にはまだ早いと思うのだが…」

 

「……それよりも二人共、この頃私達のお店に顔を出さなくなったよね…」

 

「「うぐっ……!?」」

 

「ミアハ様、寂しがってたな。お腹も鳴らしてた。……ひもじいから」

 

ナァーザからのセリフに

 

「モ、モニカさんはポーションを見ていてください!…その、ナァーザさん。昨日ダンジョンに潜っていた時におかしなことがあってですね―――」

 

咄嗟に話題を変え、昨日こっそりダンジョンに潜って魔法を使った際に気絶したことを話すと、ナァーザはすぐにベルの身に何が起きたのかを答えた。

 

「それは精神疲弊(マインドダウン)。魔法を覚えたばかりの人が調子に乗ってると、よくやる…」

 

精神疲弊(マインドダウン))…?」

 

「魔法を使えば精神力(マインド)っていうエネルギーを消費するから、消費が激しいとぱたりといく。だから精神力(マインド)を回復させるこのポーションを飲んで、未然に防ぐ。最近作ったばっかりだよ…」

 

そのように言いながらカウンター下の棚から一本の試験管を出すナァーザ。

 

「え、で、でもそれって、お高いんじゃあ…」

 

「大丈夫、ベルはお得意さんだから負けてあげる。…7800ヴァリス」

 

瞬時に一歩間合いを取ったベルに対して、ナァーザは頭の犬耳を垂らし、さらに二本の試験管を取り出した。

 

「分かった…これを8700ヴァリスで引き取ってくれたら、この二つの回復薬(ポーション)も合わせて9000ヴァリスで売ってあげる…どう?」

 

悩むベルに、ナァーザは止めの一言を放つことにした。

 

「ダンジョンでは、何が起きるかわからない。備えはちゃんとしておいた方がいいよ…」

 

「分かりました。それ、買います」

 

「ありがとう、ベル。愛してるよ……」

 

瞼を半分下げたまま笑いかけ、臆面もなく言ってくるナァーザに赤面したベルは、品物を受け取り代金を渡すと、モニカを待たずに店を出ていった。

 

「おいベル、なぜ出ていった!?くっ、すまないナァーザ殿、この回復薬(ポーション)を頼む!ピッタリ分の代金を置いておくから支払いはこれで頼む!それでは失礼する!!」

 

「毎度あり。…それにしても、ちょろいな、ベル……」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

追いついたモニカによって説教を受けたベル。

集合場所である中央広場(セントラルパーク)に辿り着いたものの、周囲にリリの姿が見えなかったため探しにバベルまで行こうとすると、その途中で中央広場(セントラルパーク)の一角にリリと冒険者らしき男達がいるのを発見することができた。

リリ達のもとから言い争っている声が聞こえたため、その場に行こうとすると、動きを邪魔するかのようにベルとモニカは男の冒険者に肩を掴まれた。

 

「おいテメェら。あのチビとつるんでるのか?」

 

ベルは姿や声、口調から以前路地裏で出くわした冒険者であることを理解した。

 

「オイ、さっさと答えやがれ。お前、あのサポーターを雇ってんのか?」

 

「……あの子は、貴方が追いかけていたパルゥムのことは違う子ですよ」

 

「…例え貴公の言っているサポーターを雇っていたとしても、それを貴公に言う義理はないであろう?」

 

「バァカ……といってやりてえが、思うのはテメエらの勝手だな。せいぜい間抜けを演じてろ。それよりお前ら、俺に協力しろ。…あのチビをはめるんだ」

 

「「なっ……/……」」

 

「タダとは言わねえよ。報酬は払ってやるからアレから金を巻き上げたら分け前もくれてやる。テメエらはいつもを装ってあのチビとダンジョンにもぐればいい。あとは適当に別れて、あいつを孤立させろ。あとは俺がやる。どうってことはねえ、簡単だろ?」

 

口の端を裂いた嫌な笑い方に、ベルは体中に寒気と嫌悪が駆け巡ったものの拳をいっぱいに握りしめながら男に反論した。

 

「何で、そんなことを言うんですかっ…?」

 

「ああ?うるせえよ、テメエは素直にハイって頷けばいいんだよ。たったこれだけで金が手に入るんだ、美味しい話じゃねえか。それによぉく考えろ。アレはただの荷物持ち(サポーター)だぜ?大した役にも立ちはしねえ能無しが居なくなったって、痛くも痒くもねえだろ?搾れるだけ搾って、あとは捨てちまえばいい」

 

男の発言に対して、決定的な怒りがベルの体を支配した。

男に拒絶の言葉を吐こうとしたベルであったが―――

 

「―――先ほどから話を聞いていれば、貴様は何様のつもりだ?」

 

ベルの横にいるモニカから声が聞こえた。

その聞こえてきた声は、普段のモニカからは想像もできないほどの冷徹さを放っており、目の前の男だけでなく横にいたベルまでもが、あまりの重圧に言葉を発するどころか指の一本まで動かすことすらできなかった。

 

「『サポーターがいるからこそ冒険が容易に進められる』、そんなこと簡単なことも分からん冒険者がいるとはな。…ここで貴様の無駄話を呑気に聞いている時間があったのならば、ダンジョンでモンスターを倒していた方が有意義に時間を使えたであろうな」

 

男に軽蔑の目線を送りながら淡々と言葉を発するモニカ。

 

「こ、このクソガキ―――」

 

「失せろ、二度と我等に関わるな」

 

男は何とか声を絞り出し反論しようとしたものの、モニカの一言により体が固まったかのように動くことができなくなっていた。

目の前にいる自身より小さいはずの存在に恐怖感を覚えた男は、動けるようになると舌打ちをして踵を返してその場から立ち去って行った。

 

「…ベル様、モニカ様?」

 

「リ、リリっ?いつからそこに?」

 

「ちょうど今ですけど…あの冒険者様と、何をお話していらっしゃったんですか?」

 

「…少しいちゃもんをつけられただけだ。気にするな、リリ。それよりも、貴公も絡まれていたようだが、無事か?」

 

「見ていらっしゃったんですか…。安心してください、リリはこの通り無事ですから」

 

「リリ、あの人達は…」

 

「リリもお二人と一緒でいちゃもんをつけられてしまいました。リリもベル様もモニカ様も、やはり弱っちく見えてしまうんでしょうか?…それよりも、行きましょうベル様、モニカ様。リリは二日も探索をサボってしまったので、今日はお二人のご活躍を期待させてもらいますよ?」

 

二人の脇をすり抜けて、バベルへと足を向けるリリ。

そんなリリに何も言わず、黙って後をついて行くベルとモニカ。

 

「……もう、潮時かぁ」

 

リリの言葉は、二人には届かない。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

というわけでモニカのスキルが発動しました。
今回はモニカが元から持ってる圧迫からのスキル発動というコンボになってます。
モニカのスキルは『相手を強制停止させる』ものなので、中々使いどころに困りますが、今後はもうちょっと書いて行ければなぁと思います。

次回はそろそろ原作二巻の終盤!
そろそろリリが動き始めます。

それでは、次回



~本編に一ミリも関係ないお話~
ナァーザさん良いですよね。
おかげでダウナー系キャラがすごい好きになって、一時期pixiv漁ってました。
…チョロいなオタク!(夢見りあむ風に)


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第30話 『裏切り』

キングダムを単行本で22巻まで読みました。
どうも、王騎将軍の死に様に惚れた刺身の盛り合わせです。

お待たせしました、最新話です!
題名から分かりますが、今回は裏切りの回です。
イッタイダレガウラギルンダー()

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。

11/26 二回目の『◆◆◆◆◆』の前に第31話に繋がる文章を追加しました。


「ベル君。そのサポーター君は、本当に信用に足る人物かい?」

 

ダンジョンから教会の隠し部屋に帰還した後、事情を聴いてもらった上で、危険がないと判断できるまでリリをホームに匿えないか相談するため、ベルはリリのことをヘスティアに話していた。

その話を聞いたヘスティアは、ゆっくりとベルに問い返した。

ヘスティア曰く、唐突な出会いや不可解な身の上にリリをつけ狙う冒険者達の存在から、リリはどこかきな臭く感じることをベルに伝えた。

 

「ごめんね、こんなことを言って。でも僕はその娘のことを知らないから、どうしても客観的な口振りになってしまう。直接その娘のことを見てきた君の判断が、やっぱり正しいのかもしれない。…でもボクは、あえて嫌なやつになるよ。サポーター君は後ろめたい何かを隠し持っているんじゃないかい?君も分かっているんだろう?」

 

静かに神威を纏いながら再びベルに問いただすヘスティア。

 

「神様、僕は…それでも、あの子が今困っているなら、助けてあげたいです。寂しかった僕を救ってくれた神様のように、あの子を助けたいんです」

 

ヘスティアの目をしっかりと見ながら答えるベル。

その答えが出ると最初から分かっていたかのような顔をすると、次はモニカの考えを聞くためにベルにした質問と同じものを行った。

 

「…ベル君の答えはこんな感じだけど、君はどう考えているんだい、モニカ君?」

 

「―――…」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

翌日、まだホームにいる時間帯にベルとモニカは既にバベルの門の前にリリと共にいた。

いつ昨日の冒険者達が襲撃してくるかを考えていると、リリから今日は10階層までいかないかという提案が出た。

 

「どうして、いきなり10階層なんて…」

 

「ベル様、リリがお気づきにならないと思っていたのですか?ベル様お一人ならば、とうに10階層を踏破できる()()をお持ちになっているのでしょう?」

 

「……でも、僕、この前7階層で死にかけたばかりだよ?そんな僕が10階層に行っても…」

 

「ですが、あの慢心が招いた失敗を経験したからこそ、今のベル様には驕りはありえない、リリはそう感じています。それにベル様は強力な『魔法』を手に入れていますので、今のベル様には死角はありません。…他の冒険者様のパーティに随伴して、11階層まで降りたことのあるリリが太鼓判を押しましょう。ベル様は10階層を楽に攻略出来ます。絶対(・・)です」

 

「で、でも、モニカさんの考えも聞かないと―――」

 

「私なら構わん。ベルを中心に連携をしっかり取れれば、10階層も脅威ではないと考えている。…それよりもリリ、ベルに言いたいことがあるのだろう?」

 

「っ!……じ、実は、リリは近日中に、大金と言えるお金を用意しなければいけないのです」

 

「もしかして、それって…!」

 

「事情は言えません。ただ、リリの【ファミリア】に関係することなので……。どうか、リリの我儘を聞いてくれませんか、ベル様?」

 

「………わかったよ。行こう、10階層」

 

ベルがそう言うと、「ありがとうございます!」という言葉と共に、顔に笑みを浮かべながら何度も頭を下げた。

 

「それでは出発するか?それとも一度バベルの中でアイテムの補充を行うか?」

 

「アイテムの方はリリが昨日揃えておきましたのでご安心ください、モニカ様。それとベル様にはこちらの武器を準備させてもらいました」

 

そうして地面に下したバックパックからリリが取り出したのは、刃渡り20Cで黒色の柄の両刃短剣(バゼラード))であった。

 

「大型のモンスターと戦うことになると、モニカ様は大丈夫ですが今のベル様の武器ではリーチが少々短すぎますので。そうでなくても、リリはもう少し射程があった方がいいと前々から思っていました」

 

「ええっと、くれるんだよね?タダで頂くっていうのはちょっと…」

 

「リリの我儘を聞いてもらうんですから、いわば恩返しです。もらってあげてください」

 

「…そういうことなら」

 

そうしてリリから貰った両刃短剣をプロテクターに直し、プロテクターに収まっていたヘスティア・ナイフをレッグホルスターへしまい込むと、ダンジョンに行こうと―――

 

「……む?すまない、ホームに忘れ物をしてしまったようだ。少し待っていてもらえないか?」

 

「モニカさんが忘れ物なんて珍しいですね?何を忘れたんですか?」

 

「何、ちょっとしたお守りのようなものだ。すぐに取ってくるから待っていてくれ」

 

―――行こうとしたのだが、モニカが忘れ物を取りにホームへ戻ったので、ベルとリリはモニカが戻ってくるまで何とも言えない時間を過ごすこととなった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

場所は変わり10階層。

8,9階層の形態を引き継いだ作りである一方、視界を妨げる程の白い靄がダンジョン中に立ち込めており、光源は霧と合わさり朝霧を連想させるような光度となっている。

10階層にある正方形の広間に辿り着いた三人は、『迷宮の武器庫(ランドフォーム)』で完全武装したオーク二体と戦った。

結果、ベルは難なく撃破、モニカは少し苦戦したものの、魔石に直接ダメージを与えることでそれぞれ一体ずつ撃破することができた。

しかし、背後にいたはずのリリがその場から姿を消しており、最悪の予想をしたベルはモニカと共に広間を探し回った。

不意に異臭を感じた二人が周囲を探ると、リリによってモンスターを誘き寄せるトラップアイテムが仕掛けてあり、その臭いに釣られた六体のオークに囲まれた。

さらに、ベルのレッグホルスターの一部を矢で弾き飛ばされてしまい、リリにヘスティア・ナイフを取られてしまうのであった。

 

「ごめんなさい、ベル様、モニカ様。もうここまでです」

 

「リリ、何を言ってるの!?」

 

「…やはり裏切るか、リリルカ・アーデ」

 

「…やっぱり、モニカ様には気づかれていましたか。というより、ベル様はもう少し人を疑うことを覚えた方がいいと思います」

 

「確かにリリの言うとおりだ。貴公の善良さは長所だが、少しは人を疑うことを覚えた方がいいぞ、ベル」

 

「ちょっ、モニカさんまで!?」

 

リリの寂しそうな笑顔と共に出た発言にしっかりと同意をするモニカ、そしてツッコミを入れるベル。

 

「どうにか折を見て逃げ出してくださいね。…さようなら、ベル様、モニカ様。もう会うことはないでしょう」

 

「リリ、リリィ!?―――っっ、あーもうっ、邪魔ぁッ!?」

 

「冷静になれベル!一度体勢を立て直すぞ!」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

二人は去っていくリリを追うことができなかった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

ハイ、というわけでリリの裏切りです。
後ついでに10階層での初戦闘は大幅カット。
文字数多くなっちゃいますからね、仕方ないね。

という事で、次回は半分オリジナルの戦闘回です。
ゆっくりお待ちください。

それでは、次回。



~本編に一ミリも関係ないお話~
FGOで弓のモリアーティの復刻が来たので今あるだけの石(10連分)でガチャ引きました。まだ限凸してない星4&星5礼装が計7枚+茨木童子(10人目)が来ました。
何とも言えない気持ちになりました。
そんな私は茨木童子が最推しです(聖杯不足により現在Lv.104、スキルマ、フォウマ済、現在絆Lv.12)


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第31話 『援軍』

一から書き直してた+ストックを作ってたので投稿遅れました。
どうも、刺身の盛り合わせです。

というわけで最新話。
原作と違った内容にするために書いてたらほとんどオリジナルになりましたね。

今話についてなのですが、急遽前話で文章を追加しています。
そこを読んでいなくても一応は大丈夫ですが、今回に繋がっている部分になっています。
追加場所は二個目の◆◆◆◆◆の前です。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます!

それでは、どうぞ。

12/14 モニカが相手の名前を呼ぶ際に『殿』を追加しました。


ベルとモニカはリリの策略によって、六体のオークに囲まれ戦闘を行っていた。

 

「早くリリを助けに行かないと……ッ邪魔だ、どけぇッ!」

 

「ベル、少し落ち着け!それでは倒せる相手も倒せん!」

 

「それはそう…ですけどっ!」

 

『ブギョオ!?』

 

ベルの両刃短剣(バゼラード)による一撃により地に倒れ伏すオーク。

しかし、オークは五体も残っており、二人は互いに背中を合わせ、背後を取られないように周りを警戒していた。

 

「ベル!今から私が正面にいるオークを倒しこの包囲網を崩す!貴公は包囲網が緩んだ瞬間にそこを突破してリリの元に行け、いいな!」

 

「ッ!で、でもっ、そうしたらモニカさんが一人で戦うことに……!」

 

「リリを助けたいのだろう?ならば私に構わず行け、ベル!…それに、私にもちょっとした秘策がある」

 

「秘策って一体…!」

 

秘策について問いただそうとするベルを無視し、サーベルを持った右手を引き、一体のオークに狙いを定めるモニカ。

 

「【紫電、一閃】ッ!!」

 

狙いをつけたオークへ一気に近づきつつ飛び上がり、サーベルをオークに突き刺そうとする。

不用意に近づいてきたモニカに対して、天然武器(ネイチャーウェポン)を振り下ろして叩き潰そうとしたオークであったが、拘束されたかのように固まってしまい、動きを止めてしまった。

それはモニカを攻撃しようとしていたオークだけでなく、残り四体のオークも同様に固まっていた。

その隙に体内の魔石をサーベルで貫かれ真っ二つにされたことで、一瞬でその姿を塵に変えた。

包囲網から抜け出したベルは、一人のヒューマンの少女とすれ違った。

髪はピンクのツインテールで、全体的にピンクが多めで胸元にハート穴が開いている服を着たヒューマンの少女。

そう、モニカの装備を製作しているツムギである。

ツムギがこの場にいる理由、それはダンジョン突入前までさかのぼる……

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「やはり居たか、ツムギ殿!」

 

「あれ、モニカさん?こんな朝早くからどうしたんですか、装備はまだできてませんよ?」

 

モニカが「忘れ物を取りにホームへ戻る」と言ってベルとリリから別れた時、実はホームに戻ったのではなくツムギの仕立て屋に訪れていたのである。

 

「少し頼みたいことがあってな。…これからダンジョンへ行くのにあたって、付いて来てほしいのだ」

 

「……どういうことか説明していただいてもいいですか?」

 

モニカはツムギに雇っているサポーターが何かしらを隠していること、そのサポーターが冒険者達に追われていること、そのサポーターをはめて金を巻き上げるため襲おうとしていること、そんなサポーターを仲間は助けようとしていることを説明した。

 

「……話は分かりました。ですが、どうして私なのですか?同じ【ファミリア】の人間や他の知り合いには頼まないのですか?」

 

「私の【ファミリア】は零細ファミリアで、私ともう一人の助けたいといっている者しかいないのでな。…それに、こういうことを手伝ってくれる知り合いが、貴公以外にいないのだ…」

 

「…仕方ありません、このツムギが手伝いましょう!その場合、私はどうしたらいいですか?」

 

「そうだな…できれば仲間達に見つからないように後ろから付いて来てほしい。それと何かしらの罠を仕掛けられる可能性があるので、背後から奇襲をしてくれないか?」

 

「なるほど…私に任せてください!ストーk…後ろから密かについて回るのは得意ですから!」

 

「おい待て今ストーキングと言おうとしていなかったか?」

 

「言ってませんよ?」

 

「いや言っt「言 っ て ま せ ん よ ?」…。分かった、よろしく頼む」

 

「了解です!張り切っていきますよ~!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ツムギはベルとモニカ、リリの三名の後ろを気付かれないほどの距離からストーk…尾行を10階層まで行っていたのである。

また、オークが近寄ってきた際もオークに気付かれない距離まで一度退避し、戻って来た際にモニカの宣言をきいたので、確実性を上げるためにベルとモニカを囲んでいたオーク達を自身の武器である糸で縛り上げ拘束したのであった。

結果は大成功、もう一人の仲間が包囲網から出てくるのを見たツムギは、出てきた人物とは逆に自ら包囲網の中に入ったのであった。

 

「無事でしたか、モニカさん!」

 

「先ほどオーク達の動きを止めたのはやはり貴公だったか、助かった!」

 

「気にしないでください!それより…先ほど走り抜けていったのが、サポーターを助けたいといっていた方ですか…。大丈夫なんですか?一人で行かせて」

 

「心配には及ばんさ。ベルの【ステイタス】は10階層を一人で踏破できるものとなっているからな」

 

「あの兎みたいな子がですか!?人は見かけによらないとは言いますが、彼はまさしくその通りですねぇ…。それよりも、そろそろ糸の拘束も解けてしまいますので、戦闘準備をお願いしますね」

 

「了解した!」

 

糸で拘束されていたオーク達からブチブチッという何かがちぎれる音が聞こえてきた。

ツムギの言っていたようにオーク達は無理矢理拘束を解いているようで、モニカとツムギは先程ベルとしていたように背中を合わせ、死角を作らない体勢を取っていた。

 

「来ますよモニカさん!」

 

「あぁ、分かっている!」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

モニカとツムギの急造コンビとオーク達との戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
というわけでツムギが戦いに参戦しました!
本来はモニカが一人でオーク達と戦う予定でしたが、原作とは違った内容にするにはどうしたらいいか?と考えた結果こうなりました。
ツムギの戦い方は、プリコネと同じで糸による拘束+徒手空拳になってます。

次の投稿は明日を予定。
第二章の最後までストックがあるので、土曜まで毎日投稿します。

それでは、次回。



~本編に一ミリも関係ないお話~
.hackシリーズいいよね。
作者は『プロジェクトクロスゾーン2』で知って某動画サイトで色々見てたんですけど、キャラもストーリーも何もかもがいい。
ただ持ってる現行機で出来なかったんですけど、スイッチで販売されたので早く買ってプレイしたい。
サイバーコネクトツーさん、新作いつまでも待ってます。
ちなみにみなさんは誰が好きですか?
作者はカイトと朔望、ボルドー、アトリ、ミミル、トキオなどのキャラが好きです。


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第32話 『決着』

お気に入りの数が100件超えてました。
いつも読んでくれてありがとうございます。
どうも、刺身の盛り合わせです。

というわけで最新話、戦闘回です。
今回書きまくってたら、3000字超えてビックリ。
説明文マシマシでお送りしていきます。
分かりにくかったらコメントください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。

12/14 モニカが相手の名前を呼ぶ際に『殿』の追加、細かな部分に修正を入れました。


「ぜぇい!!」

 

『ブギャアァ!?』

 

モニカとツムギの即興コンビとオーク達の戦いは即興コンビが優勢になっていた。

モニカは攻撃を回避、もしくはサーベルによる受け流しからの斬撃や刺突による攻撃を、ツムギは糸を用いてオーク達を翻弄しつつ、徒手空拳による打撃によってオーク達に攻撃を行い、順調にオークの数を減らしていた。

そして、ツムギが糸でオークの動きを止めたところにモニカの魔石を狙った突きの一撃を決めたことで、最後の一体が地面に倒れ魔石を残してその姿を塵に変えたのであった。

 

「何とか倒せましたね、モニカさん!」

 

「あぁ。流石10階層のモンスターだ、中々手強かったな。それよりも、早くベル達の下へ向かわなければ…」

 

「そうですね。それに思っていたよりダメージを受けちゃいましたし、回復薬(ポーション)を飲みながら行きましょうか」

 

回復薬(ポーション)を飲みつつ上層に向けて足を進ませようとする二人。

しかし、二人は忘れていた。

自分達が今いる場所がダンジョンで、リリが罠として仕掛けたアイテムがモンスターをおびき寄せるトラップアイテムだったことを。

 

『『『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』』』』』

 

「「ッ!?」」

 

響く無数のモンスターの鳴き声。

その鳴き声は10階層のあらゆる場所からモニカ達が現在いる広間にまで響いていた。

それと同時に広間へと向かってくる無数の足音が聞こえてきていた。

二人が急いで回復薬(ポーション)を飲んで武器を構えると、9階層に繋がる道や他の広場への道からオークやゴブリン、ウォーシャドウにキラー・アントなど様々なモンスター達が大群をなして向かってきていた。

しかもそれだけに留まらず、二人のいる広場の壁から新たに大量のモンスター達が生まれてきたのである。

 

「まさか、怪物の宴(モンスター・パーティー)!?」

 

「リリの設置したトラップアイテムに引き寄せられる形で発生したのか!?」

 

「モニカさん、怪物の宴(モンスター・パーティー)に少人数パーティーで出会った際は、モンスター達の隙をついて逃げるのが普通です。ですが、今回は通路だけでなくこの広間の四方八方からモンスター達が産まれてきている」

 

「つまり、逃げることは…」

 

「ほぼ不可能、と言ったところでしょう。なのでここでモンスター達を迎え撃ちます」

 

「!了解した。ならば、先ほどと同じ隊形で戦うか?」

 

「えぇ、その通りです。…モニカさん、私も出来る限りのサポートは行います。絶対に死なないでくださいね」

 

「…私はこのオラリオで使命がある。その為にも、こんな場所では死んではいられん!……ヘスティア・ファミリア所属、モニカ・ヴァイスヴィント!いざ行かん!!」

 

『『『『『グォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』』』』』

 

こうして、戦いの火蓋は再び切って落とされた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

10階層の正方形の広間で起きた怪物の宴(モンスター・パーティー)は激しさを増していた。

広間にいるモンスター達は10階層までに出てくるモンスター達で構成され、その数は百を超えており、広間の中心にまるで引き寄せられるかのように進んでいた。

そして広場の中心では二人の冒険者、モニカとツムギが迫りくるモンスター相手に戦い続けていた。

それぞれ背中を近づけ、互いに背後を取られず、死角からの攻撃に対してそれぞれがカバーできるように戦っていた。

ツムギはこれまでのように糸と徒手空拳だけでなく、Lv.3としての力を全力で使いながらモニカでは対処に時間のかかるオークを中心に、モニカは先程よりもモンスターを倒すスピードを速めつつそれぞれモンスターを倒していた。

 

「ふっ、はぁッ!」

 

『『グギャァ!?』』

 

モニカを倒そうと突撃してきたゴブリンに対して、上体を右にずらして攻撃を躱し即座に左上へ斬り上げ、そして返す刀で斬り下し近くにいたコボルトへ攻撃。

 

「ふんッ、どぉりゃぁあ!!」

 

『『『ギィヤァアア!!??』』』

 

右前方から迫ってきていたキラー・アントの口にサーベルを突っ込んで串刺しにし、自身に近づいてくるモンスター達に向けて右から左へキラー・アントが刺さった状態のサーベルを振り回し、一気に薙ぎ倒しいく。

サーベルに突き刺さっていたキラー・アントは、他のモンスターに激突した際に内側から魔石ごと身体を斬られその姿を塵に変え、刀身はそのままモンスターを斬り進み、地面にたどり着くまでに多くのモンスターを斬っていた。

目の前に鉤爪を振りかざすウォーシャドウを確認したモニカはすぐさま右手を引き、サーベルを頭上に掲げ鍔迫り合いを行う事で、鉤爪の攻撃から身を守った。

モンスター達がその瞬間を見逃すわけがなく、鍔迫り合いをしているモニカの命を奪うために多くのモンスターが波状攻撃を仕掛けてきた。

モンスターの突撃に気付いたモニカはウォーシャドウを払い除けたものの、右足にニードル・ラビットの攻撃を受けた。

すぐに蹴飛ばしたが、モンスター達の攻撃を避け切れない距離にまで近づかれてしまった。

最初に近づいてきたゴブリンにサーベルを振りかざそうとした瞬間、目の前のモンスター達の動きが止まったかと思うと、頭や腕、脚などあらゆる体の部位があらぬ方向に曲がり魔石を残して塵となった。

 

「助かった、ツムギ殿!」

 

「気にしないでください!次が来ます、早く回復を!」

 

「了解した!」

 

回復薬(ポーション)による回復を行いながら戦闘を続ける二人。

結果、広間のモンスター達は半分以下となり、二人の周囲には絶命したモンスターの骸や魔石などが転がっていた。

しかし、半分以下に減っていたとしてもモンスター達の脅威は依然変わっておらず、モニカとツムギは体力的にも精神的にもボロボロであった。

 

「大丈夫ですか…モニカさん?」

 

「あぁ、かなりキツイが、何とか無事だ」

 

「…ここを耐えきれば私達の勝ちです。最後のもうひと踏ん張りです、来ますよ!」

 

それぞれ体勢を立て直し、武器を構え直すモニカとツムギ。

ボロボロのモニカとツムギの命を刈り取るため、二人にと突撃しようと―――

 

「風よ目覚めよ、【リル・ラファーガ】!」

 

突撃しようとした瞬間、何者かの詠唱と共に風が吹き荒れ、同時に二人に向かっていたモンスターの多くが切り刻まれていった。

中には風によって上空に吹き飛ばされたモンスターもいたが、地面に落ちる前に斬られ、立った数分で広場にはモニカとツムギ、モンスターを倒した人物と死骸だけが残った。

モンスターを倒した人物をよく見ると、金の長髪をたなびかせており、少し前に顔を合わせたオラリオの有名人、『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインであった。

 

「……大丈夫?」

 

「ア、アイズ・ヴァレンシュタイン!?何であなたがここにいるんですか!?」

 

「……『白髪と金髪の冒険者を探してほしい』って依頼を受けた。……片方はモニカだった。……もう一人の子は?」

 

「その者ならきっと上層にいるはずだ。私達も向かうとこ、ろ……」

 

アイズにベルの情報を教えようとしたモニカだったが、話している途中で白目を剥きながら地面へ倒れた。

 

「モニカさん、大丈夫ですか!?」

 

「……大丈夫、血を流しすぎて気絶してるだけ。…治療したら、すぐ復活する」

 

「私はこれから彼女をバベルの医務室に連れていきます!なので、アイズ・ヴァレンシュタインさんにはもう一人の捜索をお願いします!」

 

「……分かった」

 

「ありがとうございます!それではよろしくお願いします!」

 

ツムギはモニカを背負い10階層を後にした。

自身も上層に向かおうとしたアイズであったが、霧の奥で何かが光る物を見つけた。

光源に近づくと、そこには緑玉色(エメラルド)色のプロテクターが落ちていた。

しかし、表面は傷だらけで血まみれと、如何に闘いが激しかったのかを物語っていた。

 

「……これ、もしかして……?」

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
というわけでモニカとツムギ、大乱闘の巻でした!
本編ならアイズがオーク達を倒して終わりのシーンでしたが、本作ではオーク+怪物の宴も追加してみました!
モンスタートラップでおびき寄せられるのがオークだけな訳がないと考えてこのような内容になりました。
また、アイズが【リル・ラファーガ】を使った理由としては、モンスターの数がめちゃくちゃ多かったからです。
そして怪物祭に引き続き。今回も気絶するモニカ。
気絶しなかった場合、原作のリリを助けたシーンにアイズと共に駆けつけた結果、ベル君逃げちゃうからね、仕方ないね。
最後のプロテクターの説明で『傷だらけ』とありますが、これはモニカがつけた傷ではなく、これまでの積み重ねで出来た傷です、

今回もニードル・ラビット君が活躍しました。
前回はベル、今回はモニカの足に攻撃と、本作では乱戦中に襲い来る厄介な存在になりました。

というわけで、次回は第二章最後のお話。

それでは、次回。



~本編とは一ミリも関係ないお話~
FGOACのモルガン実装映像見てたら、妹(モルガンが最推し)が大興奮。
モルガンが欲しい妹が作者についてきた際に、一瞬で1000円札が消し飛ぶ光景を目にし、深く絶望してました。
そんな作者は横で愉悦を感じて笑ってたら、横腹を殴られました。


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第33話 『リリルカ・アーデ』

ようやく遊戯王で神牌デッキが完成しました。
そろそろ一人回しから卒業したい、刺身の盛り合わせです。

というわけで最新話、そして第二章最後の話です。
今回の文字数は少なくなっています。
それとモニカの【ステイタス】もあります。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


空は快晴で、いつか誰かに突然声をかけられたあの日と同じように、雲一つなく晴れ渡っていた。

白髪と軍帽、そして軍帽からはみ出た金髪に太陽の光をいっぱい浴びながら、ベルとモニカはバベルへと足を進めていた。

リリの裏切りから二日。

リリを助け別れた後、ホームに帰ってきたベルを待っていたのは、全身傷だらけの血まみれでヘスティアから説教を受けていたモニカであった。

それぞれ情報交換を行った後、モニカの傷もあったのですぐに就寝。

翌日念のためモニカをホームで休ませて、ベルは一日中リリを探していた。

それまで利用していた宿屋や【ソーマ・ファミリア】に足を運んでみたものの、完璧な音信不通状態となっていた。

ベルは心配と不安を感じつつも、それと同時に近いうちにきっと合えると思っていた。

なので、自分達を見つけてもらえるように、いつもの自分達のサイクルをなぞる真似をしていた。

 

「「!」」

 

二人は足を止め、西の方角を向いているバベルの門へ向けて歩き出した。

二人の向かう先にいるのは、クリーム色のローブを着て、俯きつつその場にたたずんでいるパルゥムの少女であった。

驚かさないように、刺激しないように、足早になる歩みを押さえて少女のもとへ向かっていく二人。

やがてパルゥムの少女もこちらの存在に気付き、かわいそうなほど肩を上下させ、小さく身じろぎを繰り返した。

 

「「「………」」」

 

互いに手を伸ばせば届く距離まで近づいた。

リリは顔を上げ何度も口を開けようとして、すぐにうつむいた。

最初の一言が掴めないようで、彼女らしくない姿に二人は苦笑し、リリが喋れるようになるまで辛抱強く待っていたが、目配せを行い二人から口を開いた。

 

「「サポーターさん、サポーターさん。冒険者を探していませんか?」」

 

「えっ?」

 

二人の口から出た言葉にリリは顔を上げた。

目を丸くしているその栗色の瞳に、ベルとモニカは笑いかけた。

 

「混乱していますか?でも、今の状況は簡単ですよ?」

 

「サポーターさんの手を借りたい半人前の冒険者達が、自分達を売り込みに来ているんです」

 

リリも気づいたようで、その頬が温もりに染まっていき、ぐっと潤み出していく瞳がリリの喜び具合を表していた。

ベルは照れ臭そうに右手を、モニカは堂々と左手をリリに伸ばした。

 

「「僕達/私達と一緒に、ダンジョンにもぐってくれないか(な)?」」

 

「―――はいっ、リリを連れて行ってください!」

 

向日葵のような笑顔を浮かべて、リリは差し出された手に自分の両手をそれぞれ重ねた。

三人の関係はリセットされ、再び始まったのである。

 

 

 

————————————————————————————————————————

モニカ・ヴァイスヴィント

LV.1

力: H189→E406 耐久:G218→E434 器用:H165→F381 敏捷:H178→F399 魔力:I0

 

魔法

【】

 

スキル

【上官命令(オフィサー・オーダー)】(出典:オリジナル)

 ●威圧行為を行うことで、対象に強制停止(リストレイト)を行う。

 ●自身より格上の相手に行う場合、差が大きいほど成功率・効果時間が共に低下。

  対して、自身より格下の相手に行う場合、差が大きいほど成功率・効果時間が共に上昇。

 ●対象が何らかの状態異常に陥っている場合、相手との差に関係なく成功率・効果時間が共に上昇。

 ●対象へ向ける威圧の大きさによって効果上昇。

————————————————————————————————————————

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

というわけで見事第二章、完結です!
今回新たに【ステイタス】が出ましたが、トータル800越えになってました。
あげすぎた気がする…でもそんなに上がるぐらいの死闘だったということで!

大事なお話があります。
以前書いたのですが、現在作者は卒論製作中でして、本腰を入れるためあまり投稿できなくなりました。
投稿出来たとしても息抜き程度に投稿すると思うので、大体一週間に一回程度になると思います、

話は変わって次回からの話。
次回からは原作三巻のお話…と考えていたのですが、途中から大幅に変えてオリジナルストーリーに入ります!
それに合わせてストーリーも大幅にショートカット!
具体的にいうと、原作三巻の中盤から原作五巻の中盤までです。
原作者一押しの猛牛(ヒロイン)であるミノタウロスとどのように戦うか楽しみにしていた方はすいません。
その代わり、モニカにはベルとは別に冒険をして成長をしてもらいます!
このようにした理由は下の方に書いてるので、気になる方がいれば流し見程度でいいので見てください。
なので、モニカがどんな冒険をするのか、楽しみに待っていて下さい!

それでは、次回。



~モニカをミノタウロス戦から遠ざけた理由~
最初はベルとミノタウロスが戦っている際に、モニカも強敵と戦わせようと思ったのですが、それでランクアップした場合、ベルの二つ名である『世界最速兎(レコードホルダー)』がモニカの物になるので×。
じゃあミノタウロスと戦うものの瀕死の重傷を負う…とするとここまでの章と同じ終わり方でマンネリ化してしまうので×。
どうしよう…と考えていた際にモニカのランクアップのためのオリジナルストーリーを射れればいいことに気付く。
そうしたらミノタウロスとも戦わないですむし、何より大幅なショートカットにもなる!
→モニカはオラリオから出て冒険することに決定!!


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第三章
第34話 『女の戦い』


ちょっと落ち着いたのと休憩中に何とか書けました。
どうも、刺身の盛り合わせです。

というわけで最新話、そして第三章です。
この章は途中までは原作三巻の内容になっています。
『今章でオリジナル展開を入れる」という話を前回しましたが、オリジナル展開が入るのは途中からになっています。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


「リリはじきに亡くなった扱いをされると思います」

 

ベルとモニカ、リリが改めてパーティを結成した翌日、ベルとモニカは北のメインストリートにあるオープンカフェで今のリリの状況を確認していた。

 

「死人という扱いになれば【ソーマ・ファミリア】に関わる必要はないですし、付け狙われることはないでしょう。なので、ベル様とモニカ様にご迷惑はかけません」

 

「僕達のことはどうでもいいんだけど…死人だなんて、リリはいいの?」

 

「お心づかいありがとうございます、ベル様。ですが割り切った方がいいかと。リリには身寄りはいませんし、お二人がリリのことをご存じであるなら、リリはそれだけで満足です」

 

「…貴公にとっては死人として扱われる方がちょうどいいという事か。ならば、貴公の生存が【ソーマ・ファミリア】の者達にバレる可能性はどの程度だ?」

 

「今のリリに繋がりそうな足跡はこの二日で消しておきましたので、そこまで心配しないで大丈夫かと思います。…それに、リリには変身魔法(シンダー・エラ)がありますので、ベル様とモニカ様の手を煩わせることはさせません」

 

ベルとモニカは共に苦笑しつつ、自身達とリリの間にぽっかりと隔たっていた距離が縮まったことをしっかりと感じていた。

ここから再出発と、ベルとモニカが顔に笑みを滲ませていると、反対に表情を暗くしたリリが二人に問いかけてきた。

 

「…お二人は、本当にこのままでいいんですか?」

 

「「え?/む?」」

 

「リリはお二人を騙していたんですよ?お二人の行為に付け込んで、あまつさえ裏切りまでしました。その結果モニカ様は重傷を負わせてしまったとお聞きしました。しかも、くすねてきたお金も返せません。このまま許されてしまったら、リリは……」

 

「…私は今回の件で成長することができた。逆に感謝しているくらいだ」

 

「ほら!モニカさんもこう言ってるし、リリも――「だが」」

 

モニカはベルの言葉を遮り、リリに厳しい目を向けながら釘を刺した。

 

「もしも次裏切ったのなら、その時は一切容赦しない。…それだけは覚えておいてくれ」

 

「……分かって、います」

 

モニカの発言とそれに対するリリの反応によって場の空気は最悪の状態であった。

どうにか場の雰囲気を和ませようとしたベルであったが、空気は重くなっていく一方。

ベルがどうにか上手い解決方法を探していると―――。

 

「おーい、ベル君、モニカ君…って、なんだかここの雰囲気暗くないかい?」

 

「か、神様ぁ!」

 

ベルにとっての援軍がやって来た。

そう、ヘスティアである。

 

「お待たせ。すまない、待ったかい?」

 

「そんなことないです、むしろちょうど良かったです!…それよりもすいません、バイトに都合をつけてもらって」

 

「僕の方は平気さ。それより…そこの彼女がそうかい?」

 

「あ、はい。この子が前に話した…」

 

「リ、リリルカ・アーデです。は、初めましてっ」

 

ヘスティアから向けられる視線に、慌てて椅子を降りて一礼するリリ。

これからこのカフェテラスにて、サポーターを確かめるための面談のようなものが行われるのだが、ヘスティアが座るための椅子がないことにベルが気付いた。

 

「神様、ちょっと待っていてください。店の人に頼んで神様の椅子を持ってきます」

 

「……!なぁにっ、気にすることはないさ!この客の数だ、代わりの椅子もないだろうね!よし、ベル君座るんだっ、ボクはキミの膝の上に座らせてもらうよ!」

 

「何を言っているのだ神ヘスティア…。ベル、貴公はとにかく椅子を取りに行け。私はヘスティア様のために何か飲み物を注文してくる」

 

「はい、分かりました!」

 

笑いながら去っていくベルを見ながら動きを止め、ツインテールをしおらせるヘスティア。

哀愁を漂わせる後ろ姿にリリは戸惑いを隠せなかったが、そんなのお構いなしにとモニカはヘスティアに何が飲みたいのか聞くのであった。

 

「飲み物は何でもいいか、ヘスティア様?」

 

「…じゃあ、ココアで。」

 

「了解した。少し待っていてくれ」

 

「うん。……すまないね、モニカ君」

 

店内に入り椅子を持っていこうとするベルを尻目に、店主のもとへ行きココアを注文する。

少し待つと出来立てのココアと共にサービスでクッキーをオマケしてもらったのであった。

店主に感謝の言葉を述べつつ、ココアとクッキーを手に持ってカフェテラスへ向かうと―――。

 

「くっ、さすが神様…!その胸だけは伊達ではないということですね……!」

 

「何が言いたいのかな、サポーター君っ……?」

 

ベルのそれぞれの手を両手で握り自身の体に引き寄せる自身の主神(ヘスティア)サポーター(リリルカ・アーデ)と、

 

「…………ッ!?!?!?」

 

腕に二人分の双丘を押しつけられた結果、どうしたらいいのか分からずパニックに陥ったベルの姿であった。

話し合いをしていると思っていたら痴話喧嘩、しかもカフェのテラスという多くの人から見られる場所でそんなことを行っていることに、モニカの中の何かが切れたのであった。

 

「…なぁにをやっておるのだお前達はぁ!!!!!」

 

「「「!!?」」」

 

三人を盛大に怒鳴った後、手に持ったココアとクッキーを机に置き、一度深呼吸をする。

 

「改めて言うぞ、何をしておるのだお前達は!ここはメインストリートに面したカフェでかつ外、多くの人達に見られるのだぞ!?それをお前達は…何を恥ずかしいことをしているのだ!?ええい、全員そこになおれ!今すぐ説教してやる!」

 

「「「だがモニカ君!/ですがモニカ様!/えっ、僕もですか!?」」」

 

「言い訳無用!全員そこになおれ!」

 

モニカによる説教は30分も続いた。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

というわけでヘスティアとリリの初顔合わせ+女の戦い(最後の部分のみ)でした。
今回の章で入れるお話はどちらかというとダンまちよりプリコネ寄りのお話になっています。
どういうストーリーになるのか、楽しみに待っていてください。

次回は来週を予定してますが、もしかしたら今週中にまた一本出せるかもしれません。
全ては未定なので、気長にお待ちください。

それでは、次回。



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第35話 『遭遇』

プリコネでレイドイベントが公開されましたね。
どうも、第2章14話までしかストーリーを見てない刺身の盛り合わせです。

というわけで最新話です。
今回はアイズとの修行に行くためのつなぎの回です。

それとちょっとした小話が後書きの最初にあるので、ぜひ読んでください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


モニカの公開説教が終わり、リリが今後どこに寝泊まりするのか問題も解決したところで、【ソーマ・ファミリア】の件をエイナに報告するため、ヘスティア達と一旦別れてギルドに向かった。

到着した時間が正午を過ぎた中途半端な時間帯なのもあり、ギルド内にはそこまで人がおらず、二人はすぐにエイナを見つけることができたものの、先客がいた。

その先客に軽い既視感を覚えるベルと誰なのか察しがついたモニカが受付に近づいていくと、エイナが二人の存在に気付き瞳を見開くと、その反応を追うように二人へ背を向けていた人物がゆっくりと振り返った。

そこにいた人物はアイズ・ヴァレンシュタインであった。

 

「……」

 

「やはりアイズ殿であったか、数日ぶりだな。あの時は助けていただいて感謝する」

 

「……モニカ、数日ぶり。それと、どういたしまして」

 

「……」

 

アイズを見ながら呆然とするベルとアイズに数日前の件についての感謝の言葉を述べるモニカ、それを受け取るアイズ、三人の顔を交互に見るエイナと各々様々な反応をしていた。

そのまま話を進めていくモニカとアイズを尻目に、ベルは出口へ向かって全力疾走を開始した。

 

「ベ、ベル君!?待ちなさい!」

 

本能に促されるまま加速し、ギルドからの離脱を試みたベルであったが、アイズが一瞬でベルを追い抜きその進路に立ちはだかったのであった。

全力疾走なのもあり止まることができなかったベルはアイズに突撃する。

ぶつかると思い瞳を強く閉じていると、痛みどころか衝撃すらなかったので目を開くと、横に抱えられるようにアイズに支えられていた。

 

「……ごめんね、大丈夫?」

 

「っっ――す、すいませんっ!?」

 

「何やってるの、キミは!いきなり走り去るなんて失礼でしょ!?」

 

「す、すいません、エイナさん……。そ、それで、こ、これは、一体どーいう状況で……!?」

 

「はぁ……ヴァレンシュタイン氏が、ベル君に用があるそうなの」

 

「えっ!?」

 

反射的に振り向くと、アイズが手にしていた荷物の布を解き、中から緑玉色(エメラルド)のプロテクターを出してきた。

 

「ダンジョンでこれを拾って、キミに直接返したいからって。ヴァレンシュタイン氏は私に相談しに来てくれたんだよ?…それと、ベル君。あとは二人で話をつけるんだよ?」

 

エイナが事の顛末を語るのを聞きながら、ベルは再び呆然としていたものの、エイナから衝撃の言葉が告げられた。

 

「…へっ!?ま、待ってくださいエイナさん!?お願いですからっ、お願いですからまだここにいてくださいっ…!ボク、死んじゃいます…っ!?せめて、せめてモニカさんを…!?」

 

「何言ってるの、男の子でしょうっ。言わなきゃいけないことが沢山あるんだから、しっかり一人で伝えるっ。いい?それにモニカちゃんはもう伝えたって言ってたから、一人で頑張るんだよ?」

 

顔をぐっと寄せて小さな声でベルに言うと、ギルド本部のモニカが待つ自分の受付まで戻って行った。

 

「ただいまモニカちゃん、待たせちゃったかな?」

 

「いや、大丈夫だ。それより【ソーマ・ファミリア】の件なのだが―――」

 

そこでモニカは、リリにダンジョンで裏切られオークに囲まれたこと、モニカの策でベルがリリの救助・モニカがモンスターの足止めを担ったこと、事前に呼んでおいた援軍とオーク達を難なく倒したこと、しかしその後に怪物の宴(モンスター・パーティー)に遭遇しやむなく戦ったこと、危機をアイズに助けてもらったこと、ベルはリリを助けることができたこと、そしてリリと改めて契約を結び直したことを簡単に話したのであった。

 

「毎回言ってるけど、冒険者は冒険しちゃダメなんだからね!?もう……。それで、援軍っていったい誰だったの?」

 

「【ヘルメス・ファミリア】のツムギだ」

 

「えっ、ツムギ氏!?あの『仕立て人』の!?」

 

「あ、あぁ、そうだが…知っているのか?」

 

「それはもちろん!ツムギ氏はレベル3の冒険者なんだけど、その中でも一番すごいのは発展アビリティ!彼女はこのオラリオで唯一『裁縫』っていう発展アビリティを発現させていて、その『裁縫』で作られる洋服はものすごく質が良くて、凄い人気の品物なんだよ!どうやってそんな人と知り合ったの!?」

 

「街中を歩いている際に声をかけられたのだ。新たに装備を作るから、そのモデルになってほしいと言われてな」

 

「ということは…モニカちゃん専用の装備を作ってもらってるの!?凄いじゃない!」

 

「あぁ、ようやくこの胸当からも卒業だ。」

 

「おめでとう、モニカちゃん!…あ、でも防具が出来たからって無茶はダメだからね」

 

「それは分かっているとも」

 

エイナとそんな他愛もない話をしていると、アイズとベルが二人に近づいてきた。

 

「……モニカも、一緒に修行、する?」

 

「しゅ、修行…?」

 

「はい!実はアイズさんが戦い方を教えてくれるらしいんです!それで、せっかくだから、モニカさんも一緒にアイズさんから戦い方を教わりませんか!」

 

「…それは私も参加しても大丈夫なのか、アイズ殿?」

 

「……うん、大丈夫」

 

「ならば、今より強くなるために参加させてもらってもよいか、アイズ殿?」

 

「……うん、よろしく」

 

こうして、ベルとモニカはアイズに戦い方を教えてもらうことになったのである。

 

 




~ツムギの二つ名命名式の様子~

「ツムギたんもついにLv.3かぁ~」

「ツムギたんハアハア(*´Д`)」

「なんでもツムギたん、レアスキル出たらしいな。どういうことだよヘルメス!」

「『裁縫』…ツムギたんにピッタリだな!」

「ツムギたんの店入りたいけど、出禁になってんだよなぁ~」

「何したんだよお前。まぁそういう俺もだけど」

「それよりよぉ、二つ名どうするよ?」

「そういや極東には『シゴトニン』っていうのがいるって聞いたけど、どうなんだよタタケミカヅチ?」

「噂程度でしか聞いたことないが、弱者を食い物にする悪人を倒す、正義の味方みたいな子供達で、身の回りにある道具を武器にしてるらしいぞ。」

「…いいこと思いついたんだけどさ、ツムギたん仕立て屋だろ?シゴトニンと合わせて『仕立て人』なんてどうよ?」

「「「「「「「「「「それ採用!」」」」」」」」」」

「…まぁ、とんちきな名前よりはマシかな!」

◆◆◆◆◆
ここまで読んでいただきありがとうございました!

今回さりげなくツムギの二つ名が判明しましたね。
実はこの二つ名思い付いたのが就寝前で、我ながら中々いい考えなんじゃない?と自画自賛してました。
確認したら必殺シリーズに『仕立て屋の匳』っていう仕立て屋で糸を使う殺し屋が居ました。
仕事人シリーズいっぱい武器があってビックリです。
…というか神の話し方これであってますかね?
あの感じを出せてたらいいなぁ…

あともう一話分ストックが出来たので、次の話は明日投稿します。

それでは、次回。



~本編に一ミリも関係ないお話~
先週と今週放送されたウルトラマンデッカーのお話が二つとも神回でした。
ていうかデッカー全話神回しかないな?
というわけで、作者おススメのウルトラマンデッカー第20話「らごんさま」はニコニコで12月16日の21時29分まで無料配信してるので、ぜひ視聴してみてください。
21話はYouTubeの公式チャンネルで配信されてるので見てみよう!


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第36話 『修行』

卒論書いてるのもあるけど、ポケモンが全く進みません。
どうも、寄り道ばかりしてジム・ぬし・スター団チャレンジが全く進まない刺身の盛り合わせです。

というわけで最新話です。
今回はアイズとの修行…つまり戦闘回にもなってます。
これまではモンスター相手の戦闘でしたが、初の対人戦。
モニカがどんな風に戦うかお楽しみください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。

12/14 モニカが相手の名前を呼ぶ際に『殿』を追加しました。


時刻は夜明け前。

オラリオの北西寄りの外縁部にベルとモニカはいた。

今日からアイズによる戦い方の訓練が始まるため、二人は普段ならありえないほどの早起きをして、迷宮都市(オラリオ)を囲む市壁の上に訪れていた。

 

「え、えっと、ヴァレンシュタインさん、それで、僕達は何を…」

 

「……アイズ」

 

「はっ?」

 

「アイズ、でいいよ。みんな私のことをそう呼ぶから。……もしかして、嫌、だった?」

 

「え、ええっとっ!?………嫌、じゃないです」

 

「それでは…アイズ殿、これから数日間、よろしく頼む」

 

「……ア、アイズ、さん。僕達は、これから何をすればいいですか?」

 

「……何を、しようか」

 

「「えっ」」

 

アイズの発言に、ベルは素の反応を見せ、モニカは固まってしまう。

 

「昨日から、ずっと考えて……いたんだけど。……とりあえず、二人共、素振りを、してみようか」

 

「「あ…は、はい/りょ、了解した…」」

 

二人はアイズの指示に従い、それぞれの武器を手に持ち二、三度素振りを行った。

二人の素振りをじーっと観察したアイズは、ベルに質問を行った。

 

「ベルは、ナイフだけしか使わないの?」

 

「え……?」

 

「私が知ってるナイフを使う人は、蹴りや、体術も使うから。…貸して?」

 

ベルからナイフを借りたアイズは、体術の手本を見せるためにナイフを振るうものの、いまいちコツを掴めていないようだった。

そんな光景を二人で動揺しつつ、同時に剣姫は天然なのではと考えながら眺めていると、何かを掴んだような鋭さで、アイズの体がぶれた。

瞬間、超速の回し蹴りがベルの胸を捉え、撃ち抜き、ベルを市壁の彼方へと吹き飛ばすのであった。

反応も防御も、それどころか悲鳴すら上げられなかったベルは、石畳をすさまじい勢いで削り、最後には大の字になって地面に転がった。

 

『『アイズさん、天然なんだ…/アイズ殿、天然だったのか…』』

 

ぷるぷると首を上げアイズを見たベルと、呆然と立ち尽くしているアイズを見ているモニカの、心が通じ合った瞬間であった。

この後すぐにベルは気を失ったのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

時間をかけずに目を覚ましたベルに謝るアイズ。

その後試行錯誤を繰り返したものの中々上手くいかず、必死に考えこんだ結果、戦いを通じて教えるということになった。

最初はベルから行うことになったが、そこでアイズが『ベルが何かに恐怖している』ことを指摘、それからは鞘を使ってベルに攻撃を加え続けた。

ベルにある程度攻撃し終えたところで、次はモニカの番になった。

アイズは引き続き鞘を、モニカはヘスティア・サーベルを引き抜き、それぞれ武器を構えた。

 

「……それじゃあ、行くよ」

 

目の前のアイズが消え、モニカの横腹に向けて鞘を振るう。

鮮烈な風切り音と共に物同士がぶつかる音が市壁に響いた。

 

「……!」

 

モニカは、自身の右前方から来た鞘の一撃を、サーベルで受け止めたのであった。

一度下がって体勢を立て直すアイズは、すぐさま攻撃を再開。

恐ろしい速度の刺突にはサイドステップで躱しつつ横っ腹を使い自身の元居た場所へと受け流し、返す刀で右から左へ一閃。

バックステップでモニカの反撃を躱し、斬り上げからの横薙ぎを行うアイズ。

斬り上げでサーベルをかち上げられ横薙ぎを胴体に喰らったものの、何とか上体をねじることで攻撃を受ける部分を最小限に抑えつつ、吹き飛ばされた先で受け身を取ったモニカ。

モニカが受け身を取った瞬間に一気に詰め寄り無数の斬閃を縦横無尽に走り抜けさせるアイズ。

回避を封じられたため、迫りくるアイズの斬閃を受け流し弾き返す。

それでも弾き返すことができず攻撃を受けることもあるが、最低限のダメージで押さえていることもあり、不利であるもののベルよりも少し長く斬り合うことができた。

アイズとモニカが斬り合い始めて約10分。

モニカの体力とダメージが共に限界を迎え、吹き飛ばされて立ち上がることができず膝をついた辺りで、アイズがモニカへ質問を行った。

 

「……モニカは、技とか、駆け引きとかが、技術がとっても上手。……どうして?」

 

「私が住んでいた場所には、剣の先生がいてな。あの方の訓練のおかげで戦い方に関する技術はかなり磨かれたのだ」

 

「……どんな修行、してたの?」

 

「あぁ……―――」

 

 

○○○○〇

 

『今日の訓練はワタシの攻撃を受け止める、もしくは受け流す訓練だ。…何だ、乱数聖域(ナンバーズ・アヴァロン)は使うのでしょうか、だと?安心しろ、乱数聖域(ナンバーズ・アヴァロン)は使わん。私本来の力でやるとも…さぁ、楽しませてくれよ?』

 

『ホラホラ!誰か私に一撃でも当ててみろ!いつまでたっても終わらんぞぉ!…何、乱数聖域(ナンバーズ・アヴァロン)を使っていないか、だと?もちろん使っているぞ?…それでは攻撃が当たらない?何を言う、ワタシに一度でも攻撃を当てるのが今日の訓練だぞ?…仕方ない、ヒントを一つ教えてやろう。“乱数聖域(ナンバーズ・アヴァロン)はワタシの頭で処理できないほどの情報が来た場合、機能不全になる”……ヒントをあげたからな、今からは反撃も加えるぞ♪…さぁ、全員でかかってこい!』

 

『宴の始まりだ!』

 

 

○○○○〇

 

 

「―――今アイズ殿とやっていたことがほとんどだな」

 

「……やっぱり、これが正しかった」

 

「まぁ、そうとも言うな……」

 

「……それじゃあ、続き、行くよ…!」

 

この後、日が完全に昇るまで、ベルとモニカは交代しつつボコボコにされながらもアイズの剣を受け続けた。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

というわけで、新たなキャラが登場!イッタイダレナンダロウナー
これ以上のキャラ追加はないと思います。…状況に応じて追加するかもしれません。

また、無茶苦茶な稽古をつけられていたこともあり、モニカはベルの反対で技術が高く痛みにもなれているという設定になっています。
今回は防戦一方でしたが、モニカはモンスターとの戦いより対人戦の方が得意だったりします。
『攻撃を受け止め流しかわす、カウンターか体の小ささを生かして相手の懐に潜り込み攻撃を加える』がモニカの戦い方です。

次の話は、来週のどこかで投稿すると思うので、気長にお待ちください。

それでは、次回。



~本編に一ミリも関係ない話~
この後書き、実はドンブラザーズを見た後に書いているんですが、ずっと大爆笑してました。
犬の逃亡と自動車教習があんな風につながるとは思うわけないじゃん?
来週も楽しみだなぁ…


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第37話 『冒険者依頼』

作者「お前は中盤で投稿すると約束したな」アシツカミー
                      「そ、そうだ作者。助けてくれ…!」プロット

作者「あれは嘘だ」テヲハナスー
                        「ウワァァァァァァァァァ…!」プロット

…というわけでどうも、刺身の盛り合わせです。

今話からオリジナル展開のスタートです。
なので今回は導入回になっています。
これからのスケジュールについては、後書きに書くのでそこを読んでください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。

2023/03/20 ツムギのLv.を変更しました。



アイズのしごき…過酷な訓練を乞うようになって早くも二日。

合流した時点で満身創痍になっているベル達に対して、腑に落ちない顔をしているリリ。

リリを説得しダンジョンに向かおうとすると、ツムギにダンジョンに向かうのを止められた。

どうやらモニカに用事があるらしく、すぐに終わるので先にダンジョンに潜っていてほしいとベルとリリに言おうとしたが、ベル達もツムギに誘われたため、ツムギの店に行き話を聞くことになった。

その話というのが―――

 

「「「冒険者依頼(クエスト)?」」」

 

「はい、私達が明後日オラリオの外で行う仕事を、モニカさんに手伝ってもらいたくてですね…」

 

“モニカ”を指名した冒険者依頼(クエスト)であった。

 

「…なぜ私なのだ?自分で言うのも何だが、レベル1のひよっこ冒険者だぞ?私以外のもっと強い冒険者の方がいいのではないか?」

 

「私もそう思うんですけど、あk…リーダーが貴方じゃないとダメっていうので…」

 

「だが私にも仲間達と共にダンジョンに―――」

 

「ご安心ください、モニカ様」

 

ツムギの話を断るための言い訳を言おうとした瞬間、店についてきたたリリに言葉を遮られた。

 

「話を聞く限り、今回のご依頼はツムギ様の上司の方からと思われますし、これはモニカ様にとっていい機会かと思われます」

 

「私にとって、か?」

 

「ええ。レベル3のツムギ様の上司なら確実に上級冒険者の一人と思われます。そんな方々の戦い方を間近で学ぶ事も出来ますし、オラリオ外での新たな経験によって、新たな力を手にする可能性もあります」

 

リリから説明を受けつつも、悩んだ表情を崩さないモニカ。

 

「ベル様についてであれば、ご安心ください。このリリが無茶をしないように注意してますから!日頃の稼ぎについてもモニカさんがいない分少なくなるとは思いますが、こういう時はリリの節約術が火を噴きますよ!…まぁ、リリが何と言おうと、最後に決めるのはモニカ様達ですが」

 

リリの説明を聞いたモニカは、少し離れた場所で販売されている装備の値段を見て驚いているベルに声をかけた。

 

「ベル、私がツムギ達の冒険者依頼(クエスト)に協力することについてだが……貴公はどうだ?」

 

「へっ!?……ぼ、僕はいいと思います。モニカさんを指名してるってことは、モニカさんの力が必要なんですよね?だったら行った方がいいと思います!」

 

「……二人の考えは分かった。あとはヘスティア様に確認を取ることにしよう。明日のこの時間にどうするのか言いに来たいのだが、良いか?」

 

「了解しました、お待ちしてます!…じゃあ、その時に装備もお渡ししますね!」

 

「了解した。ベル、リリ、用事は済んだ。ダンジョンへ向かおうではないか」

 

「「はい!/それでは行きましょうか!」」

 

モニカ達はツムギの店を出て、再びダンジョンへ向かうのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ダンジョンでの探索を終え、報酬を分配しホームへと帰宅した二人。

三人で夕食を食べ、【ステイタス】の更新を終えたところで、ヘスティアに冒険者依頼(クエスト)について話すことにした。

 

「モニカ君が冒険者依頼(クエスト)に、ねぇ…。いいんじゃないかい?」

 

「よ、よろしいのですか、ヘスティア様!?」

 

「もちろん!サポーター君の言うとおり、このオラリオの外での冒険も、きっとキミの使命の為になると思うよ?…もしも僕達のことを心配しているのなら、気にしなくて大丈夫。ボク達はボク達でしっかりするからさ、キミはキミ自身の冒険を楽しんでくるんだ!」

 

「ヘ、ヘスティア様…!」

 

ヘスティアからの後押しに感動するモニカ。

しかし、そんな発言の背後では―――

 

『モニカ君が居ない…と、いうことは!いつもモニカ君に止められる添い寝が出来る!それどころかあんな事やこんな事まで…!ウへヘヘヘ…』

 

割と最低なことを考えていたヘスティアであった。

 

「そ、それで、モニカ君はいつ出発するんだい?」

 

「確か…明後日だったはずです」

 

「明後日かい!…なら、モニカ君は明日ダンジョンに潜っちゃダメだよ!どこに行くかは知らないけども、体調は万全にしないとね!」

 

「分かりました、明日のダンジョン探索は休むことにします。……ベル、少しいいか?」

 

「はい、どうしたんですか、モニカさん?」

 

とりあえず、私はアイズに事情の説明をしなきゃいけないから、明日の訓練までは行くことにする」コソコソ

 

了解しました!」コソコソ

 

「……二人で何をコソコソと話しているんだい?」

 

「「いや/いえ何とも」」

 

「…まぁいい。とりあえず今日はもう寝ようじゃないか、二人共!」

 

「「はい!」」

 

ベルはソファー、ヘスティアとモニカはベッドで眠ることとなった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

これからの予定ですが、オリジナル展開になるにあたって、モニカにはオラリオから一度出ていってもらうことにします、
出ていった先で、レベルアップの冒険をしてもらうことになります。
このストーリーではベル達と共に戦えないですが、その代わり他の冒険者達と冒険をしてもらいます。
そして、冒険の舞台はダンまち世界の場所ではありません!
誰と、どこを冒険するのか…ぜひ楽しみに待っていてください!

次の更新は今週中にもう一回投稿出来たらなと考えています。

それでは、次回。



~本編には一ミリも関係ないお話~
これまで録画してたデジモンゴーストゲームを視聴後にこの部分を書いていますが、「メイクラックモン」…あのデジモン……初めて見た時……なんていうか……その…これ以上は下品なのでやめておきますね…フフ……
というかゴーストゲームは日曜朝9時に放送する内容じゃないですよね、パブリモンとかシャンブルモンとか。
凄い面白いので、内容が気になった人は日曜朝9時をチェックだ!


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第38話 『お披露目』

ようやく卒論がひと段落しましたので投稿再開します。
どうも、刺身の盛り合わせです。

というわけで最新話。
今回はアイズとツムギへの報告+αです。
それと、後書きに色々とあるので、そちらも読んでみてください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


ヘスティアから許可をもらったモニカは、アイズに事情の説明をするためにベルといつもの市壁の上に訪れていた。

 

「―――というわけで、私は明日から冒険者依頼(クエスト)でオラリオの外に出ることになってな。なので明日からの修行には参加できないのだ」

 

「……そっか。……じゃあ、早速、始めようか。構えて?」

 

「えっ」

 

「……どう、したの?」

 

「いや、明日から冒険者依頼(クエスト)だから今日は身体を休めるようにとヘスt…私の主神様から今日は休みにするように言われて―――」

 

「……大丈夫、寝たら治るから。じゃあ、行くよ……!」

 

「ちょっ、まぁっ!?」

 

それから約10分後、市壁にはボロボロの姿で地面にうずくまり倒れたモニカの姿があった。

 

「……やりすぎちゃった」

 

「モッ、モニカさーん!!?」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「…何か昨日会った時よりもボロボロじゃありませんか、二人共?」

 

場所は変わってツムギの仕立て屋。

ダンジョン前でリリと合流し、冒険者依頼(クエスト)に協力することをツムギに伝えるために指定された時間に仕立て屋に訪れたのであった。

 

「あ―…、そんなことはないだろう?きっと気のせいだ」

 

「いやそんなわけないと思うんですけど…まぁいいです。それで、冒険者依頼(クエスト)についてですが……」

 

「私の主神様からも許可をもらった。私なんかの力で良ければ、是非とも協力させてくれ」

 

「分かりました。モニカさんが参加すること、リーダーに伝えておきますね。それでは、冒険者依頼(クエスト)の内容についてですが、期間は大体2週間弱、目的地は明日教えるとリーダーが言っていました。また、明日の集合場所は検問所前に十時集合。荷物についてですが、モニカさんはいつも使っている装備や武器のみで大丈夫です。回復薬(ポーション)などの消耗品は私達の方で準備します」

 

「私は装備一式だけで大丈夫なのか?」

 

「はい、大丈夫です。…あ、そういえば、モニカさんには大事な仕事を任せるって言ってましたよ」

 

「すごいじゃないですか、モニカさん!」

 

「う、うむ…」

 

「…明日のことについてはこんなところですかね。それと、モニカさんには渡したいものがあるので、少しここで待っていてくれませんか?すぐに戻りますので!」

 

そう言いながら店の奥へ入って行くツムギ。

ツムギの後ろ姿を見ながら、先ほどツムギの言っていた『大事な仕事』が何なのかを考えていると、リリに声をかけられた。

 

「どうした、リリ?」

 

「モニカ様が冒険者依頼(クエスト)でオラリオの外に出ている間についてです。我々はモニカ様抜きでダンジョンに潜ろうかと考えていますが、それで構いませんか?」

 

「うむ、全然構わんぞ」

 

「ええっ!?い、いいんですかモニカさん!?」

 

「私はオラリオの外で冒険しているからな、気にすることはない。それと私がいない間、貴公がどれほど強くなるのか…期待しているぞ?」

 

「分かりました。モニカさん、お互い頑張りましょう!」

 

「うむ。それとリリ、私がいない間はベルのことを任せてもいいか?」

 

「はい、このリリにお任せください!」

 

ベルとモニカが互いに激励を送り、リリにベルのことを任せるために合っていると、ツムギが店の中から戻ってきて、カウンターの上に袋を置いた。

 

「こちらの袋の中に入っているものが、ようやく完成したモニカさん専用の装備です。最終調整を行いたいので、着てもらってもいいですか?」

 

「了解した……おいベル、貴公が出ていかないと私が着替えられないのだが…」

 

「…あっ!?す、すいません!?着替え終わったら呼んでください~!」

 

モニカ達女性陣からのジト目にようやく自分の置かれた立場に気付いたベルは、急いで店から出ていくのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ベルはツムギの店の前でモニカが着替え終わるのを待ちつつ、これからのこと、具体的には明日からのアイズとの特訓についてである。

これまではモニカと共にいたので、アイズと接する時間はそこまでなかったのだが、明日からは数日はアイズと二人っきり。

…明日からの特訓、果たして自分は耐えられるのだろうか、そんなことを考えていると、店内にいたリリから声をかけられたので店内に入ると―――。

 

「おっ、来たか、ベル」

 

目の前にいたモニカは、白のシャツと青いミニスカ、黒の軍帽のようなものはこれまで通りであるものの、白のシャツの上に新たに黒のナポレオンジャケット、そして手には白のフィンガーレスグローブ装備していた。

そのジャケットは袖口や襟元など、いたるところに金での装飾がなされているが、一番の特徴はその大きさである。

本来上着というものは、自身の体に合ったものを着るのが普通である。

しかし、現在モニカが着ているジャケットは、とても大きいのである。

どの程度の大きさなのかというと、モニカの全身を覆い隠すほどの大きさになっている。

明らかなオーバーサイズであるものの、不思議とモニカには似合ったものになっていた。

 

「どうだベル、私のこの格好は?私はとても気に入っているのだが―――」

 

「へっ!?……そ、その、似合ってる、と思います……ハイ」

 

「だろう!いやー私も似合っていると思っていたのだ!そうかそうか、貴公もそう思うか!」

 

「あの―…モニカさん?装備の説明をしたいのですが…」

 

「むっすまない、つい我を忘れてしまった。それで…説明だったか?詳しく聞かせてくれ」

 

「はい!今モニカさんが来ているジャケット、素材にゴライアスのドロップアイテムである『ゴライアスの硬皮』を使用した一品になっていまして、耐衝撃性能はもちろん、耐火耐性も十分な一品に仕上がりました!」

 

ツムギの説明を聞いたベルとモニカは大興奮、リリは何かが気になっているようであった。

 

「そしてこの装備、『フリューゲル・コート』という名前がついています」

 

「『フリューゲル・コート』……」

 

装備の名前を聞いたモニカは、改めて自身の纏っている装備の凄さをかみしめていた。

 

「ひよっこの私にはもったいないほどのスゴイ装備だな、これは。…それより、代金はどのくらいだ?」

 

「あっ、代金は払わなくて大丈夫です!その代わりに装備を使った感想を教えてくださいね!あとは…明日からの冒険者依頼(クエスト)で沢山活躍していただければと!」

 

「そうか…分かった。明日からの冒険者依頼(クエスト)、最善を尽くそう!」

 

「自分専用の装備、かぁ……モニカさんが羨ましいです!」

 

「貴公も専用の装備と出会えたらいいな。…そういえば、ベルとリリはこれからダンジョンに潜るのだろう?」

 

「はい、そのつもりです」

 

「私のいない分大変だと思うが、気を付けてダンジョンに潜ってくれ。私はこれからエイナ殿の所に行って、冒険者依頼(クエスト)について報告をしてくる。一旦ここでお別れだな」

 

「はい!それじゃあ行ってきます、モニカさん!」

 

モニカは何故か気絶していたリリを起こしてダンジョンに向かったベルを見送り、ツムギと明日の最後の確認を行うと、エイナに冒険者依頼(クエスト)についての説明を行うためにギルドへ行くと―――

 

「もうっ、なんでそういうこと相談しないの!?」

 

なぜ何も相談しないのかとエイナに怒られたモニカであった。

 

 




~オマケ リリが気絶した理由~

モニカの新たな装備の素材についての説明を聞き、あることが気になったリリはツムギに質問をするのであった。

「ツムギ様、少し聞きたいことがあるのですが…」

「?いいですよ、何でも聞いてください。」

「モニカ様の装備についてなのですが…、代金を払う場合のお値段はどのくらいなのかぁと思いまして……」

「そうですね…階層主のドロップアイテムの確保、加工に人件費などを考えると………、大体これぐらいですかね」

「こ、こんなに!?……きゅうぅ」

「リリさん、どうされm……き、気絶してる…」

ツムギに提示された金額を見た瞬間、無言で思考を停止したリリであった。


◆◆◆◆◆


ここまで読んでいただきありがとうございました。
ということでついにモニカの新たな装備が出ました!
その名も『フリューゲル・コート』。
装備の見た目は神バハ・グラブル・プリコネの3作品出ているモニカが装備している黒のコート、名前についてはプリコネRのモニカの専用装備からです。
後書きの最後に『フリューゲル・コート』についての詳細を書いているので、ぜひ見てみてください。
また、本文中と下部のサラマンダーウールについての項目で『黒く染められた』と書いてありますが、オリジナル設定になっています。

次回はまだ一文字も書いていないので、ゆっくりお待ちください。
それでは、次回。



~装備説明~
『フリューゲル・コート』
●製作者であるツムギからの好意により、タダで手に入れた。
●【ヘルメス・ファミリア】所属のツムギが本人の持ちうるすべての力を使い、死力を尽くして1週間で作り上げた一級品装備。
●階層主ゴライアスのドロップアイテムである『ゴライアスの硬皮』を発展スキルの『裁縫』で仕立てた一品。
●性能としては、中層までのモンスターの物理・魔法含めた全ての攻撃、および発生する衝撃を全て防ぐほどの耐久力を持っている。
 また下層のモンスターの攻撃も防ぐことも出来るが、衝撃までは防げないため、一撃が大きければ負傷も大きくなる。
●コート自体が少し大きめに作られているため、ベルなどある程度の身長の人まで装備が可能。
 また、リリやモニカなど装備する人によっては全身を包み隠すことも可能。

※本来の『ゴライアスの硬皮』を使った装備はこれよりも低い性能の装備なのだが、ツムギの発展スキルである『裁縫』の力を用いて作られたことで性能が大きく上昇している。


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第39話 『顔合わせ』

メリークリスマス、みなさんは何してましたか?
どうも、卒論書きつつ同時進行で本作を書いてました刺身の盛り合わせです。

というわけで、多分年内最後の更新です。
今回は題名通り、クエストに参加するメンバーとの顔合わせです。
一体だれが出るんでしょうか?
その正体は…本編で!

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そして何よりも、今この作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。

2023/03/20 後書きに書いている晶とタマキのLv.を変更しました。
2023/06/10 後書きに書いている晶の二つ名を変更しました。


エイナに怒られたモニカは、その後クレープを食べて帰り、ホームへ帰宅した。

ヘスティアがバイト先から大量に貰ってきたジャガ丸くんで激励会が開かれ、(主にヘスティアが)大騒ぎした翌日。

ベルとモニカはホームを出て、中央広場で話をしていた。

 

「ここまでしか送れなくてすいません…」

 

「気にするなベル。今から丸一日アイズ殿との訓練なのだろう?早く行った方がいい。…それと、私に遠慮せずどんどんダンジョンに潜って大丈夫だ。必ず貴公に追いつくからな」

 

「!……はい、モニカさんも冒険者依頼(クエスト)、頑張ってくださいね!」

 

握手をして別れたベルとモニカ。

空がまだ闇に包まれている時間帯、モニカは検問所手前の広場に辿り着いた。

 

「あっ、モニカさん。こちらですよ~」

 

ツムギに声をかけられ広場にある噴水に向かうと、ツムギの側、噴水の(ふち)に誰かが座っていた。

 

「よーやく来たにゃ。思ってたよりも遅かったにゃ」

 

そこにいたのはモニカもよく知る猫人(キャットピープル)の少女であった。

 

「き、貴公はたいやき屋の店主!?どうしてここに!?」

 

「そりゃあたしもこの冒険者依頼(クエスト)に参加するからだにゃ。……あれ、あたし自己紹介してなかったかにゃ?」

 

そう言うと猫人(キャットピープル)の少女は噴水の縁(ふち)から立ち上がると、

 

「あたしの名前はタマキ、タマキ・ミャーサカ。【ヘルメス・ファミリア】所属のLv.3の冒険者、そしてたいやき屋店主にゃ!これからよろしくにゃ」

 

「ヘ、【ヘスティア・ファミリア】所属のモニカ・ヴァイスヴィントだ。よろしく頼む」

 

それぞれ挨拶をし握手をするモニカとタマキ、それを見て笑顔を浮かべるツムギ。

 

「やっほー、二人共。待たせちゃったかな?」

 

握手をしている二人、正確にはモニカの背後から新たに一人の赤毛の女性が近づいてきた。

 

「「晶さん、遅いですよ/遅いにゃ、晶」」

 

「いやーゴメンゴメン。ちょっと準備に手間取っちゃってさ。…それと、昨日もウチでクレープ買ってくれてありがとうね、モニカちゃん」

 

「クレー、プ……ま、まさか、貴公は……!?」

 

「それじゃあ自己紹介しよっか。あたしの名前はモサクジ・(あきら)。そこの二人と同じで【ヘルメス・ファミリア】所属の冒険者。そして、普段はクレープ屋さんをやってる。…まぁ、モニカちゃんはウチのお得意さんだから知ってるよね?」

 

自己紹介をしながらモニカの横を通り過ぎていき、タマキとツムギの間まで行くとモニカの方向へ振り向く晶。

 

「―――というわけでモニカちゃん、これから2週間弱、よろしくね?」

 

「あ、あぁ…、よろしく頼む……」

 

晶から差し出された手を、困惑しながら握り返すモニカであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「このような偶然、あるものなのだな…」

 

場所は変わってオラリオの外。

あの後、すぐに検問所を通りオラリオの外に出た晶一行は、手配していた馬車に乗っていた。

()()()御者がいなかったので、ツムギが馬をコントロールし、モニカとタマキ、晶の三人が馬車の中で対面していた。

 

「まさか、日頃よく訪れる店の店主が今回の冒険者依頼(クエスト)の依頼人だったとはな……」

 

「正に『世間は狭い』ってやつにゃ。それにモニカの驚いた顔は中々面白かったにゃ」

 

呆けつつ現状を振り返る発言をするモニカに対して、けらけらと笑うタマキ。

タマキから目線を逸らしつつ、自身の目の前にいる晶に声をかけた。

 

「晶殿、少し聞きたいことがあるのだが…」

 

「ん?それってもしかして、モニカちゃんがこの冒険者依頼(クエスト)に参加する理由、かな?」

 

「あぁ。ツムギ殿に一度説明したのだが、私はまだレベル1のひよっこ冒険者だ。私では間違いなく貴公らの足手纏いになるはずだ。それならば私ではなく、同じファミリアの人間か他の高レベルの冒険者に依頼したほうがいいと考えていたのだが…ぜひ聞かせてもらえないだろうか?」

 

「そうだねぇ…今回のクエストが普通のクエストなら、モニカちゃんの言う通り同じファミリアの人間かモニカちゃんより上位の冒険者に依頼したと思うよ。でも今回のクエストは場所が特殊でね、モニカちゃんじゃなきゃダメなんだよね~。」

 

「晶殿の言いたいことは分かった。…それで、場所が特殊と言っていたが、この馬車は一体どこへ向かっているのだ?」

 

そんなモニカからの質問に答えるべく、ラビリスタは進行方向に一瞬だけ目を向けると―――

 

「この馬車はね、実はラキア王国の方向に行ってるんだよね~」

 

ニヤニヤとモニカの反応を楽しむかのように答えた。

 

「………そうなのか?だが、ラキア王国の方面で行われるクエストなのだろう?私はいらないのではないか?」

 

晶の口から出た『ラキア王国』という言葉に対して、少し間が開いたものの会話を続けたモニカ。

ここで反応してしまえば、自分とラキア王国の間に何か関係があることをこの場にいる全員に知られてしまう。

使命の為にも、それだけは絶対に避けなくてはならない。

そう考えながら会話を続けるために、晶に質問を返す。

 

「もぉ~、何で自分じゃないといけないのか、ホントは分かってるでしょ―――

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

というわけで、これまで謎に包まれていたたいやき屋とクレープ屋の正体は、『プリンセスコネクト!Re:Dive』に登場するタマキとラビリスタでした!
二人の名前や設定については、ダンまち世界に馴染むように変更してます。
もしも何か気になることや変更したほうがいい点があれば、ぜひコメントしていただければと思います。
また、二人の二つ名と簡単な設定については下部に書いてますので、ぜひ読んでください。
詳しい設定についてはこの章が終わった頃に投稿出来たらいいなと思います。

そして、卒論製作と発表などで来年の1月末まで更新ペースがかなり遅くなるので、次回は遅れると思います。
それでは、良いお年を。


◆◆◆◆◆
簡単なキャラクター紹介

モサクジ・晶
●【ヘルメス・ファミリア】所属の冒険者。Lv.2?で、二つ名は『迷宮女王(クイーン・ラビリンス)』。
●オラリオではクレープ屋(味は普通)を営んでいる。
●オラリオ外での活動をメインとしており、よくツムギとタマキを連れ回している。
●ツムギとタマキとの関係は、プリコネでのシズル・リノとの関係と似たようなものとなっている。

タマキ・ミャーサカ
●【ヘルメス・ファミリア】所属の冒険者。Lv.2?で、二つ名は『影猫(ファントム・キャッツ)』。
●オラリオではたいやき屋(絶品)を営んでいる。
●よく晶に(無理矢理)連れ回されている。


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第40話 『危急』

一日遅れですが、明けましておめでとうございます。
本年度も本作をよろしくお願いします。
刺身の盛り合わせです。

というわけで新年一回目の投稿です。
今回はオラリオにいるベル視点からスタートです。
今回なんでモニカがラキア出身なのかを晶が知っているのかもわかります。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そして何よりも、今この作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


「モニカさん、どうしてるかなぁ…」

 

アイズとの昼寝の訓練の際中、ベルは勝手に体が動き出し寝込みを襲おうとしていた。

天使(ヘスティア)VS悪魔(祖父)の戦争が脳内で勃発し、天使が敗北。

襲う一歩手前まで行くものの、アイズの寝言で何とか襲うことを回避。

仰向けの体勢になり頬を引っ張ることで現実であることを確認したベルは、青い空を見上げながらこの場にはいないモニカのことを考えていた。

 

「今は馬車に乗ってクエスト先に向かってる頃かな…僕もアイズさんとの特訓、頑張らなきゃ」

 

そのためにも昼寝をしなきゃ、と考えながらゆっくりと瞼を下し、まどろみに落ちていくベルであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「……………は?」

 

場所は変わってオラリオ外にある街道上の馬車内部。

そこでモニカは人生で最大の危機を迎えていた。

 

『どういうことだ!?私とラキア王国の関係性については誰も気が付かないはずだ!なぜ晶殿はワタシがラキア王国出身だと気づいたのだ!?』

 

自分の出身地がラキア王国だと知られている。

今目の前にいるモサクジ・晶から出た情報はたったそれだけである。

しかし、もしも目の前の人物がそれ以上のこと、すなわちオラリオで課せられた使命までも知っていれば?

 

「…いきなり何を言うのだ晶殿。私がラキア出身など―――」

 

「そういう下手な芝居は打たないで大丈夫だよ、ラキア王国近辺に手紙を送っているモニカちゃん?」

 

誤魔化しのために嘘を言おうとした瞬間、被せてくるように目の前の人物は新たな発言を行った。

なぜ手紙を送っていることを知っているのか、晶へ詰め寄るべく立ち上がろうと―――

 

「大人しく座っとくにゃ」

 

気付いた時には近寄られたタマキによって喉元にナイフを突き付けられていた。

 

『いつの間にナイフを…!?』

 

「ほらタマキ!そういうことしないでいいから!まだ話すことがいっぱいあるから、二人共ちゃんと座った座った!」

 

「「分かったにゃ/す、すまない…」」

 

元の席に座り直すモニカとタマキ。

二人が座ったことを確認した晶は、モニカの方を向くと話し始めた。

 

「まずモニカちゃんの手紙の宛先をあたしが知ってる理由についてだけど…、あたしには特別な情報網があってね、オラリオの色んな情報が手元に集まってくるんだ。例えば、『今月の【デメテル・ファミリア】はニンジンが大豊作だった』だったり、『どこかの神様が莫大な借金をこさえた』とか、『最近ラキア王国付近の村への手紙の配達がある』だったりね」

 

「……ッ」

 

「ちょっと気になって色々調べたら投函してるのは少し前にオラリオに来た冒険者、しかも顔見知りだってことが分かった。その情報が事実か確認のために試しに鎌をかけてみたらビンゴだった…ってわけ」

 

「……確かに私はラキア王国出身の人間だ。それで、貴公は私をどうするつもりなのだ?」

 

「ん、特に何もしないけど?」

 

「………は?」

 

「…あれ、モニカちゃんは何でそんなに驚いてんのさ?」

 

「あー……多分、尋問と化されると思ったんじゃないかにゃ?一応敵対してるラキア出身だし」

 

まさかの回答に思考停止状態になるモニカだったが、なぜ何もしないのか晶に質問をした。

 

「ん?だってモニカちゃんはただこのオラリオに来ただけだし、それなら誰かに伝える必要なんてないでしょ?それに、モニカちゃんはスパイじゃないだろうしね」

 

「…なぜ私がスパイじゃないと言えるのだ?」

 

「もしもオラリオでスパイをするんだったら、あたし達の所みたいな商業系のファミリアか【ロキ・ファミリア】みたいな大手の探索系ファミリアに入るべきだ。なのに君が所属したのは明らかにスパイ活動には向いてない出来立てホヤホヤの探索系ファミリア。だからモニカちゃんはスパイじゃないだろうなって考えてね」

 

『……言えない、ほとんどのファミリアから門前払いを受けたなど……』

 

「まっ、三人全員がモニカちゃんに絆されたから、っていうのも理由の一つだけどね」

 

「そ、そうか……」

 

晶の口から出た発言に照れて顔を赤くするモニカ。

 

「…というわけで、モニカちゃんが何でラキアからこのオラリオに訪れたのかの理由は知らないけど、ここにいるあたし達三人は君がラキア出身だってことを誰にも話すつもりはないからさ、安心してね」

 

「……なぜ何もしないのだ?私はラキア出身、貴公らと敵対している者達と同郷の者なのだぞ?」

 

「いやいや、実際に戦場で戦ったラキアの兵士ならともかく、ここにいるモニカちゃんを敵視する意味なんてないでしょ?それにラキアとの戦いはあたし達商人にとっては稼ぎ時。ラキアの兵士はあたし達商人にとって大事なカm…お客様だからね、大切にもするさ」

 

「今カモと聞こえたのだが?」

 

「モニカちゃんの気のせいだよ」

 

ハッキリと晶に断言されたため、先ほど聞こえた『カモ』という言葉は聞き間違い、ということにするモニカ。

 

「それで、クエストに協力はしてくれるのかな、モニカちゃん?」

 

「そんなことを今更聞くのか?…ツムギ殿にも伝えたと思うが、私なんかの力で良ければ是非とも協力させてくれ」

 

「そっかそっか!いやーほんと助かるよ、モニカちゃん!…それじゃ、これから2週間弱、改めてよろしくね」

 

「あぁ、こちらこそよろしく頼む!」

 

晶から差し出された手を、オラリオを出る前とは違いしっかりと握り返すモニカ。

その光景をツムギとタマキはをそれぞれ笑顔を浮かべながら握手を交わす二人を眺めていた。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

というわけで晶が何故知っていたのかの理由が明らかになりました。
ちょっと無理矢理だったかもしれませんが、そこはご愛敬ということで。

次は今月中にもう一回投稿することができればいいなと考えています。
ということで、ゆっくりお待ちください。
それでは、次回。



~本編には一ミリも関係ないお話(ネタばれ注意!)~
ついにダンまち4期がスタートです。
とりあえず作者はBS11で見るつもりです。
個人的に一番楽しみなシーンは『ヴェルフの始高シリーズ作成』。
本当にあの場面が楽しみです。


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第41話 『クエスト内容』

お久しぶりです。
諸々が終わったのでようやく投稿出来ました、刺身の盛り合わせです。

今回はラキア周りの説明回となっています。
ラキア王国、というよりオラリオ外の地域についての描写がほとんどないのもあって、原作で描写されてないラキア周りの環境はほとんどが独自設定となっています。
更に今回プリコネからとある場所を丸々持ってきました。
一体どこなのかはぜひ本編を読んでみてください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そして何よりも、今この作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。

2023/2/14 晶のセリフを一部変更しました。(モニカに『密林の大樹』について聞くセリフや語尾など細かな部分)


改めて晶と握手を交わしたモニカは、まだ聞いていなかった今回のクエストの目的について晶に聞くことにした。

 

「あれ、教えてなかったっけ?」

 

「あぁ。今回のクエストの目的はおろか、目的地も何も知らないぞ」

 

「ちょっとタマキ~、なんでモニカちゃんにクエストのこと教えてないのさ~」

 

「晶が自分でモニカに教えるって言ってたにゃ。あたしらは関係ないにゃ」

 

「あれ、そんなこと言ったっけ?……まあいいや。モニカちゃん、今回のクエストの目的地『密林の大樹』ってところなんだけど、道案内よろしくね?」

 

「そうか、密林の大樹………密林の大樹ゥ!?」

 

予想もしていなかった目的地に大声をあげるモニカ。

その大声は御者をしていたツムギにまで聞こえていた。

 

「何かあったんですか晶さん、モニカさん!?」

 

「いやいや、ちょっとモニカちゃんが驚いただけだから、こっちは大丈夫だよ~。それよりツムギは馬の制御の方に集中して。……それで、なんでそんなに驚いてるのさ、モニカちゃん?」

 

「『密林の大樹』はラキア王国の民でもめったに近づかない場所だぞ!?なぜそんな場所に向かうのだ!?」

 

「……あたし、今回のクエストの目的地、名前しか知らないんだけどそんなにヤバいのかにゃ、晶?」

 

「実はあたし、『密林の大樹』について()()()()情報が無くてどんなところか知らないんだよね。だから『密林の大樹』について教えてくれないかな?」

 

「それはいいが…ツムギ殿はそこから聞けるのか?」

 

「大丈夫ですよ、御者台からちゃんと聞いてますから!」

 

「なら話していくが…、貴公らはラキア王国については知っているな?」

 

「そりゃ勿論。軍神アレスが統べている緑豊かで肥沃な大地を有している君主制国家でしょ?」

 

「その通り。このオラリオを出て『アルブ山脈』を超えて北西に進んだ先に『ラキア大森林』と呼ばれる広大な森がある。森林の広さは大体オラリオの約3倍程度、周囲を山脈に囲まれているのだ」

 

「オラリオの3倍!?それはちょっとデカすぎないかにゃ?」

 

「過去のラキアの人々の資料とギルドで聞いたオラリオの全景を私が勝手に比較しただけだから、確証はないがそのぐらいはあるとは思う。…そんな大森林だが、奥の方はセオロの密林と同様に密林となっていて、その最奥にクエストの目的地である『密林の大樹』があるのだ」

 

「なるほどね…それでどうしてラキアの人達は大樹に近寄らないの?遠いからとか?」

 

「ラキアの都市からは少し遠いが、それだけが原因ではない。おそらく『アレ』が原因だろう」

 

「『アレ』って何にゃ?」

 

「……『シャドウ』だ」

 

「「『シャドウ』?」」

 

「遥か昔、大森林を調べるために王国が調査団を出して大森林を調査していた時のことだ。最奥にある大樹の元に辿り着いた調査団は、大樹を調べるために近づくと目の前に影の大群が現れたらしい」

 

「影の大群って…それが『シャドウ』かにゃ?安直すぎるにゃ」

 

「まぁ私も最初はそう思ったが。…とにかく、影の大群に襲われた調査団は犠牲を出しながらも何とかラキア王都に戻りこのことを王に伝えると、影の大群を倒すために大規模討伐隊を結成したそうだ」

 

「それで影の大群を倒せた、ってわけじゃあないよね」

 

「うむ。大樹で再び影の大群に出会ったそうだが、突如影が形を変えて自分達とそっくりな姿に変わり、討伐隊と同じ数にまで分裂したらしい」

 

「それで、討伐隊はどうなったんですか?」

 

「敵と味方の区別がつけられなくなり、戦場は大混乱。結局討伐隊は壊滅し、大樹の攻略は大失敗に終わった。この報告を聞いた当時の王は、大樹の元に現れる影のことを『シャドウ』という名前にした後、神アレスを説得し大樹に向かうことを全体的に禁止したことがあったらしい」

 

「ふぅ~ん………あれ、それだとあたし達大樹に行けないんじゃないかにゃ?」

 

「いや、禁止令を出した王が無くなった後に神アレスが次の王に禁止を解除させたから、今は誰でも近づくことが出来るぞ。ただ何が起きても自己責任という形になっているがな」

 

「なるほど、そういうことね。教えてくれてありがとう、モニカちゃん」

 

「いや、これくらいは当たり前のことだ。それより何か聞きたいことはないか?」

 

モニカがそう尋ねると、晶が手を挙げた。

 

「『密林の大樹』ってかなりデカいって聞いたけど、実際どれくらいデカいの?」

 

「森林の入口からでも見えるから…バベルほどではないがかなり大きいはずだ。頂上付近には雲がかかっているらしいぞ」

 

「そ、そんなにデカいんですか!?…そういえば、調査団とか討伐隊が出たのが“昔”って言ってましたけど、どれくらい昔なんですか?」

 

「確かラキア王国が建国されてからの話だったから…大体500年ぐらい前だったはずだ。」

 

「じゃあ、大樹のとこまで簡単に行く方法ってないのかにゃ?」

 

「あの密林は背後に斜面が急な山があるから、回り込むのは不可能だ。作りは荒いが大樹へ向かうための道も一応ある。それに橋代わりになっている大樹の根以外の場所からは大樹に近づけないから、正面から向かうのが一番楽だと思うぞ」

 

「…聞きたいことはあらかた聞けたし、早速『密林の大樹』に行こうか!」

 

「ちょっと待て晶殿。目的地は聞いたがクエスト内容は何も聞いていないぞ」

 

「クエストの目的は【密林の大樹にあるアイテムの確保】、アイテムについては見つけてからのお楽しみってことで。タマキは周囲の警戒、ツムギは御者、モニカちゃんは二人の手伝いってことで。それじゃあ出発!」

 

「「「了解です晶さん。ハイよー!/了解にゃ晶。それじゃあモニカは見張り手伝うにゃ/了解した!」」」

 

◆◆◆◆◆

 

「これは想像以上にデカいね!」

 

「何もかもがでっかいにゃあ…」

 

「頂上が雲で見えませんよこれ…」

 

「初めて訪れたが、こんなに大きかったとは…」

 

道中黒龍の鱗が奉られている村で休息を取りつつ、セオロの密林とアルブ山脈を超え、一行はラキア大森林の最奥にある『密林の大樹』へとたどり着いたのであった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということでプリコネRから『密林の大樹』が登場です。
このダンジョンを選んだ理由としては、『自然豊かなラキアに入れてもあまり違和感がなさそう』と『クリア報酬の内容』の二つがあります。
ぶっちゃけ後者の理由の方が大きいです。
それとシャドウを出すことにした理由としては、『モニカの経験値稼ぎ』が主な理由です。
プリコネ世界でもないのに何でシャドウが出るのか?その理由はこの章の終わりにでも。

今話を書くにあたって原作を読み直していたんですが、『クエスト×クエスト(原作4巻番外編)』を入れるの忘れてました。
どうしようか悩んだ結果、モニカがいない間にしてもらうことになりました。
流れとしては『お昼寝特訓+フレイヤ・ファミリア襲撃→クエスト×クエスト→vsミノタウロス』という感じになります。
ナァーザさんとの交流については今章が終わった後になります。

次話はゆっくりお待ちください。
それでは、次回。



~本編には一ミリも関係ないお話~
ドンブラザーズ見た後の勢いでここを書いてます。
一言だけ言うのなら、怒濤の展開だし何よりジロウがお辛い…


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第42話 『密林の大樹~突入~』

やっと大学のもろもろが終わりました。
どうも、大学生活も残り卒業式だけとなった刺身の盛り合わせです。

ということで最新話です。
かなり難産でしたが、ようやく書けました。
今回は密林の大樹の麓の説明と突入直前のいざこざが中心です。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そして何よりも、今この作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。

2023/2/10 本編での描写を一部変更しました(団体 ⇒ 冒険者の一団)


『密林の大樹』に辿り着いたモニカ達。

その規格外な大きさに驚愕しつつ、大樹へと向かっていた。

 

「18階層の中央樹をイメージしてたんですが、この大樹はそれ以上に大きいですね~」

 

「ダンジョンにはここと似たような場所があるのか?」

 

「はい。ダンジョンの18階層は安全階層(セーフティポイント)と呼ばれる地下空間になっていて、19階層に降りるための階段が入っている大樹が中央にあるんですよ」

 

「それよりも、大樹の麓が『リヴィラ』みたいになってるのにも驚いたにゃ」

 

「まぁあっちとは違って馬車預けられて、武具屋と道具屋、宿に食堂が揃ってるみたいだし、ちょっとした町だね、これは。」

 

大樹の麓には、ダンジョンの18階層にある『リヴィラ』には劣るものの、ちょっとした町があり、多くの人で賑わっていた。

武器屋や道具屋などの『密林の大樹』攻略に来た人々に向けた店だけでなく、大樹まで来るのに使った馬車を預かる店や換金施設、酒場に宿など様々な店舗があるものの、リヴィラほどではないが全ての店舗がぼったくり料金となっていた。

馬車を預けたモニカ達は大樹に―――

 

「おいアンタら、これから大樹の方に行くんだろう?あそこはかなり危険だから、そこの嬢ちゃんはここで留守番した方がいいぜ」

 

向かおうとした瞬間、馬車預け屋の店主が四人、というよりモニカに一声かけてきた。

 

「………それは、私に言っているのか?」

 

「?嬢ちゃん以外に、誰かいるか?」

 

預け屋店主の(善意から来る)言葉に対し、青筋を立てるモニカ。

 

「私は子供ではない、17歳だ!!」

 

「そんな分かりやすい嘘に引っかかるわけがないだろう、嬢ちゃん?」

 

「私を子供扱いするなぁ!やめろ、頭を撫でるなぁ!」

 

怒り心頭なモニカに対して未だに嘘をつかれていると思っている店主。

そんな二人のやりとりをタマキは爆笑、ツムギは困惑しながら見ていたが、晶からの指示を受けてタマキは暴走を止めるためモニカの背後、ツムギは説得のため店主に近づいた。

 

「いい加減にしろ貴公!私は子供では――フギャ!?」

 

「いい加減にするにゃ。ホントはもうちょい見てたかったけど、あたしらは大樹に用があるからここで暇をつぶす時間はないにゃ」

 

「彼女こんな見た目をしているんですが、本当に17歳なんです。それに実力も十分にありますので、安心してください」

 

「…まぁ、アンタが言うなら大丈夫なのか?とりあえず、悪かったな嬢ちゃん。大樹の方は実際にかなりヤバいからな、気をつけろよ?」

 

「私も怒鳴ってすまなかった。それと、忠告感謝する」

 

モニカと店主が和解している光景を見ていたタマキとツムギだったが、二人に指示を出した晶は大樹に向けてどんどん先へと進んでいた。

 

「おーい三人共―、早く来ないと置いてくよ~?」

 

「ちょ、晶!なんであたし達を置いていくにゃ!?」

 

「い、急ぎましょう!?」

 

「あぁ!それでは、馬車のことよろしく頼むぞ!」

 

「気をつけなよ、あんたら~!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「てっきりラキアの兵士しかいないのかと思ったんですが、かなり冒険者みたいな見た目の人もいるんですね」

 

場所は変わって大樹の根の上。

橋の代わりになるほど頑丈な根の上には、モニカ達以外にも様々な人達がいた。

ラキアの兵士のような者から、冒険者のような恰好をした一団など様々な人達がいてダンジョンを連想させたが、一つ違った部分があった。

 

「でもエルフがオラリオほどいないのはなんでにゃ?」

 

「それは過去のラキア王国の過去のやらかしが原因だろうね」

 

「過去のやらかし…もしかして、『クロッゾの魔剣』ですか?」

 

「うむ。神アレスに憎悪を向けられない分をラキア王国の人々に向けているエルフ達もいるからな。ラキア近辺にはエルフがあまり来ないのだ」

 

「なるほど、そーいうことだったのかにゃ」

 

そんな話をしながら大樹へ向かっていると、背後からヒューマンの男だけで構成された冒険者の一団に声をかけられた。

 

「おいおい、もしかして女だけで大樹に行くつもりか?やめとけやめとけ、大樹はやばいぞぉ?俺達は何回も挑戦してるんだが、女だけだとかなりキツイぜ?」

 

「ふーん…、で?」

 

「だからどうだい、俺達と協力しねぇか?報酬は…アンタらと仲良くさせてくれたらいいからよぉ!」

 

話しかけてきた男達は、晶達に下卑た視線を送っていた。

その視線に対しモニカは自身にも視線が向いていることへの驚きを、ツムギは自身の身体に向けられた視線に嫌悪の表情を浮かべ、タマキはモニカへの視線を見て世界の広さを感じていた。

中心に立っていた晶は…

 

「悪いけどお断りさせてもらうよ、その話は」

 

いつもの表情できっぱりと断りを入れていた。

 

「………ハァ?」

 

「話を聞く限り、君達何回も大樹から逃げかえってるんでしょ?そんな人達の力は別に借りなくてもいいかなぁ。足手纏いになりそうだしね」

 

明らかに目の前の相手を挑発するような発言をする晶。

そんな発言を受けた相手がキレないわけがなく。

 

「このアマ、ふざけてんじゃ……ッ!?」

 

先頭に立っていた男が晶に殴りかかろうとした瞬間、ツムギによって背後にいた集団ごと糸でひとまとめにされ、晶は背に背負っていた大剣を男の首元に突きたてていた。

 

「これくらい避けられないと、足手纏いになるんだよね。だからお断りさせてもらうよ」

 

そのように言いながら晶が指を鳴らすと、タマキがナイフを引っ込め、ツムギが拘束を解いたことで自由の身となった男達は、捨て台詞を吐きながらその場を後にしたのであった。

 

「さっきの攻撃は私も避け切れないと思うのだが、ついて行っても大丈夫なのか?」

 

「さっきのは追い払うための口実だから気にしないでよ。モニカちゃんは私達がここに連れてきたんだから、君の意志は最大限尊重するつもりだよ。それに、同じファミリアの彼に追いつくためにここに来たんでしょ?」

 

「!その通りだ、私は、ベルに追いつくためにここへ来たのだ。貴公らが何と言おうとついて行くぞ!」

 

「モニカちゃんの確認も改めて取れたことだし!早速大樹の攻略、始めよっか!」

 

「「「お~!」」」

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

次回は戦闘回、自分達の影との戦いです。
描写は頑張るので、待っていてください。

それでは、次回。



~本編とは一ミリも関係ないお話~
やっとポケモンスカーレットのエンディング見ました。
まさしく『ひと夏の大冒険』で、すごいスタンド・バイ・ミーみたいだなって思いました。


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第43話 『密林の大樹~影との対峙~』

どうも、オリジナル回は中々筆が進まない刺身の盛り合わてせです。

ということで今回は戦闘回です。
モニカ達にはシャドウと戦ってもらいます。
シャドウがどんな力を持っていて、どうやってモニカが戦うのか、是非とも本編をご覧ください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そして何よりも、今この作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


密林の大樹へと踏み込んだモニカ・晶・ツムギ・タマキの4人。

大樹から生えた樹木で出来た天然の階段を上がると、同じく樹木で出来た大きな広場である『第1階層』に出た。

そこでは多くの冒険者や兵士達が自分と同じ姿をした影のような存在と戦っていた。

 

「これがシャドウ…本当にそっくりな姿をしているのだな」

 

「ていうことはあたし達そっくりのシャドウも出るってことかにゃ?」

 

「まっ、状況的に考えたらそうだろうねぇ」

 

「どうやってあの影達は出てくるんですかね?もしかして…、私達の目の前にいきなり表れたりして!」

 

ツムギの言葉に反応するかのように、4人の目の前に影の塊が現れたかと思った次の瞬間、影はその姿をモニカ達と同じ姿形に変容すると同時にそれぞれの武器を構え戦闘態勢を取った。

 

「ツムギがフラグなんか立てたせいで出てきたにゃ!どーしてくれるにゃ!」

 

「えぇ!?これ私が悪いんですか!?」

 

「ここに来た時点で想像ついてたでしょ?とりあえそれぞれ自分の影を倒すこと、いいね!」

 

「「「了解(にゃ)!」」」

 

晶の指示によって目の前にいる自分の影と対峙することとなったモニカは、一気に距離を詰めつつサーベルを鞘から抜きながら斬り払いを行った。

しかし、モニカの攻撃に反応するようにシャドウモニカもサーベルで攻撃を受け止めた。

体勢を立て直すため後方に退いたモニカであったが、今度は反対にシャドウモニカが距離を一気に詰め刺突を行ってきた。

体勢を整え即座に左後方に飛び攻撃を回避したモニカは、刺突のために飛び込んできたシャドウモニカの胴体を左から右に斬り払い、そのままの勢いで左胸付近に刺突を行った。

すると体力が無くなったのか、シャドウモニカは最初に現れた時と同じ影の塊となると地面に溶けるように消えていった。

サーベルを鞘に納めながら晶達の方向を剥くと、すでに戦闘を終わらせてモニカの戦いを観察しているようだった。

 

「粗削りな部分もあるけど、レベル1にしては中々やるにゃ。何か特訓してたのかにゃ?」

 

「あぁ。少しの間だが、他の冒険者に戦い方を教えてもらっていた。それに、相手は私自身だ。どこが弱点かはある程度分かるし、ここで止まっている暇など私には無いからな」

 

「モニカさんの強さは一緒に戦った私がちゃんと分かってますから!……それにしても、何か“倒した”って感じがしませんでしたね」

 

「魔石が無いみたいだから、確実に“倒した”とは言いにくいね。まあそれは置いといて、次の階層に行こっか」

 

「「「了解(にゃ)!」」」

 

そんな話をしながら次の階層に向かう階段に向かっていると、他の冒険者達も戦いを終え階段を登り始めていた。

しかし、反対に上の階層から降りてきている冒険者達も多くおり、そのほとんどが重傷を負っていた。

第1階層はあくまで小手調べ、第2階層からが本番だと考えた一行は、気を引き締めながら階段を登った。

そうして辿り着いた第2階層では第1階層と同様に多くの冒険者達が戦っており、少し進むとモニカ達の前に再びシャドウが現れた。

 

「それじゃあ全員少し離れて自分の影と戦うこと、いい?」

 

「「「了解(にゃ)!」」」

 

晶の指示で再び自らのシャドウと戦うことになったモニカは、第1階層の時とは異なり距離を取りながらシャドウの出方を窺うことにした。

するとシャドウモニカがサーベルを構えながら突撃してきたため、第1階層と同様に左後方に飛ぶことで攻撃を躱し、斬り払いでカウンター攻撃を行おうとしたが、シャドウによって防がれてしまった。

そこから何度かシャドウに攻撃を行ったモニカであったが、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()全ての攻撃が受け止められた。

 

『私の思考を読んでいる……いや違う、私の戦い方だけじゃなく戦闘経験も模倣しているのか!』

 

シャドウの持つ特性を理解したモニカであったが、攻略法を見いだせず鍔迫り合いを繰り広げていた。

一度体勢を立て直すべくバックステップを行った瞬間、シャドウは一気に距離を詰めモニカに刺突を行ってきた。

瞬時にサーベルで刺突の軌道を左にずらし攻撃自体は避けれたものの、勢いを殺しきれなかったため右方向に転がり改めて体勢を立て直し、シャドウモニカの方向を向いた。

 

『私の戦い方と戦闘経験を模倣しているのなら、やったことのない戦い方ならば…!』

 

更にバックステップでシャドウから距離を取ったモニカは、サーベルを鞘に納めながら右半身を前にし、シャドウの攻撃を誘うことにした。

シャドウは刺突の構えを取りながらモニカとの距離を一気に詰め、モニカの頭部を狙い攻撃を行った。

サーベルによる一撃がモニカに迫った瞬間、モニカは上半身を大きく前に倒すことで刺突を避け、サーベルを素早く鞘から引き抜きシャドウの胴体を分断、自分の姿をしたシャドウを再び撃破したのであった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、シャドウの特性は対面した相手の姿と戦い方、戦いの経験を『コピー』することでした。
まぁ元々のネタがプリコネRに出てくる『シャドウ』だったので、分かる人には分かったかもしれないですね。
そして2階層でモニカが行ったカウンターは『居合斬り』です。
モニカの動きについては『「鬼滅の刃」で出てくる「雷の呼吸 一の型 霹靂一閃」の構え』⇒『「ルパン三世 カリオストロの城」で五ェ門がルパンの服を斬った後の姿』をイメージして書きました。

次の話は現在製作中なので、ゆっくりとお待ちください。
それでは、次回。


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第44話 『密林の大樹~大樹の主~』

流れは完成しているけど、肉付けで苦戦して中々筆が進まない。
どうも、『ヘスティア・サーベル』の設定を完全に間違えていた刺身の盛り合わせです。

今回の前半は前回の戦闘後のお話、後半はダンジョンボスとの戦闘となっています。
また、今回の話を書くにあたって第20話と第41話の一部を変更しました。
簡単に変更内容をここに書いておきます。
 第20話 後書きで書いた『ヘスティア・サーベル』の設定を丸ごと変更
 第41話 晶の密林の大樹についての知識を変更

そしてプリコネからゲストモンスターが登場です。
場所とか題名とか調べたりプレイしたことがある人なら一発で分かると思いますが、その正体は是非本編で。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そして何よりも、今この作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。

2023/03/04 サブタイトルを『大樹の主』に変更しました。
2023/03/06 杖の描写を変更しました。


再び自分のシャドウを倒したモニカは、すでにシャドウを倒し終わっていた晶達のもとへ向かった。

 

「無事にシャドウを倒したみたいだね。お疲れ様、モニカちゃん」

 

「あたしほどじゃないけど、中々早い居合斬りだったにゃ。でも所々動きにムラがあったにゃ」

 

「ぶっつけ本番だったからな、そこは今後の課題点だな」

 

「それなら、今回の依頼のお礼として私が修行のお手伝いをしますよ?」

 

「それならオラリオに帰ったらよろしく頼むぞ、ツムギ殿」

 

先ほどまでの戦闘の評価からオラリオへ帰った後の話をしていると、晶から緊張感を持つようにと注意を受けた三人は、気持ちを新たに次の階層への階段へ向かおうとした。

そんな時、叫び声が聞こえた。

叫び声の方向を向くと、大樹の入口で絡んできた冒険者の一団が自分達のシャドウに追い詰められていた。

それを見た晶は、呆れたように肩をすくめるとツムギとタマキに冒険者の一団を助けるように指示を出した。

ツムギとタマキはものすごく嫌な顔をしていたが、晶の指示に従い冒険者達を助けに行くのであった。

モニカは晶の指示に怪訝そうな表情を浮かべていた。

 

「……何かすごい意外そうな顔してるね。もしかして、あたしってばモニカちゃんから目の前の人も助けない冷酷な女だって思われてた?」

 

「いや、そういうわけではないのだ!ただ、『自身と仲間が第一』という考え方なのではと思ったのでな」

 

「あぁ、そういうこと。そりゃあたしもモニカちゃんの言った通りの考えだけどね、目の前で死にそうなのを見捨てるなんてあたしも目覚めが悪いからね、助けるぐらいはするさ。…それに、ここから先の階層では何が起きるか分からない。なら動ける人数は多いに越したことはないでしょ?」

 

「……本音が漏れているぞ?」

 

「まぁまぁ、実際に助ける訳だから、大した問題ないでしょ?ということで、モニカちゃんも苦戦してる冒険者達の救援に向かってあげてくれないかな?」

 

「…私はまだレベル1のひよっこ冒険者だが、救援に向かっても大丈夫なのか?」

 

「大丈夫、シャドウを倒せるようにサポートしたり情報を教えるだけで大丈夫だからさ。それに、強くなるためにここに来たんでしょ?」

 

「!…では、他の冒険者達の救援に行ってくる!」

 

「終わったら次の階層の階段前に集合ね~!……三人が帰ってくるまで、あたしも計画を練り直そうかな」

 

危機に陥っていた集団のサポートをそれぞれ終え、集合場所で集まったモニカ達は、第3階層、第4階層…と日数をかけながらも攻略階層の数を重ねていた。

強くなるための手段として自身のシャドウだけでなくツムギやタマキ、晶などの自信よりも格上のシャドウと戦うことを晶から提案されたモニカは、それぞれの戦い方を模倣したシャドウにかなり苦戦しながらも何とかシャドウを倒すことが出来た。

他の冒険者達もツムギやタマキ、モニカのサポートや晶の指揮によって誰も欠けることなく階層を次々攻略していき………

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

~第9階層と第10階層の間の階段にて~

『次が最後の階層なら、このダンジョンの主がいる可能性が高い』と考えた晶によって、第10階層突入前に作戦会議が行われた。

その結果、ツムギ率いるタンク部隊とタマキ率いる前衛部隊、指揮を執る晶が中心となった弓などの武器を持った後衛部隊、シャドウの出現を想定したモニカを含む足止め部隊に分かれて、第10階層を挑むこととなった。

隊列を取りながら階段を登っていき、第10階層へとたどり着いた。

第10階層は外から見た限りだと、これまでの階層よりも広場が少し広くなった程度でこれといって特に変わった様子はなかった。

しかし、列の最後尾にいたモニカが足を踏み入れた瞬間、階層全体が紫色の結界のようなものによって包まれたのである。

これまでと色が違う結界が気になったモニカが結界に近づき触れてみると、これまでの階層で貼られていた結界とは異なり、外に出ることが出来なくなっていた。

 

「晶殿、これまでの結界と違って外に出ることが出来ない。どうやら閉じ込められたようだ!」

 

「みんな落ち着いて!この血界はこれまでの階層と同じ、ここで現れるモンスターを倒せばすぐ外には出られる!だから―――」

 

周囲を警戒するように、と言おうとした瞬間、周囲の木々がざわめき始めた。

何事かと周囲を見渡していると、大樹から生えている比較的大きな樹木が生きているかのように動き出し、どこからか巨大な梟をモニカ達の前に連れてきた。

その梟は顔と体の前半分が白の羽毛、頭と体の後ろ半分は緑の羽毛で覆われており、紅い目の中に白の瞳孔、口は黒い(くちばし)、首元からまるでフェザーコートのように生えている茶色の羽毛、翼は緑の羽と紫の風切羽、光すらも飲み込むほどの漆黒の宝玉が付いた木製の杖を翼の先の鉤爪で掴んでいた。

モニカ達の目の前に現れた梟の名は『ワイズオウル』。

この密林の大樹の主にして、魔法で樹木を操ることが出来る、まさに『森の賢者』と呼ぶべき存在である。

 

『ギャァァァァァァァァァァァァァァァアア!!!』

 

自分を運んできた樹木から降りたワイズオウルはモニカ達のいる方向を向くと、通常の梟と同様に威嚇の咆哮を上げた。

耳を塞いで咆哮を耐えたモニカ達は、戦うため武器に手を伸ばそうとした瞬間、何かが砕けるような音が聞こえたかと思うと、()()()()()武器が粉々に砕け散ったのである。

 

「んにゃ!?あたしのナイフが砕け散ってるにゃ!?」

 

「私のガントレットが粉々に!?」

 

「俺の10万ヴァリスの剣がー!?」

 

「嘘、なんで私の杖が壊れるの!?」

 

「ワシの槍が~!」

 

「弓どころか矢まで粉々になったぞ、どうなってんだ!?」

 

『武器破壊のおかげであたしの大剣も砕けちゃったし、かなりヤバいかも?』

 

ワイズオウルの持つ杖から放たれた魔法は、一瞬で竜巻を形作り、樹木で出来た広場を削りながら晶達との距離を詰めてきた。

ほとんどの冒険者は攻撃が来る前に避けることが出来たが、一部の冒険者は武器が壊れたことによる混乱で避け損ねてしまい、魔法が―――

 

「そうは、させん!」

 

冒険者達に当たるかと思われたその瞬間、モニカは魔法と冒険者との間に割り込み、魔法で出来た竜巻を()()()()()()()()()()()()()()のである。

斬られた竜巻はその場で霧散、モニカとその背後にいる冒険者達には傷一つ無く、晶やツムギ、タマキ達一行はもちろん、目の前で魔法を斬られたワイズオウルすらも目の前の光景に驚きを隠すことが出来なかった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

第三章のボスである『ワイズオウル』の出現です。
このモンスターはプリコネRのダンジョン『密林の大樹』のボスとして戦うモンスターで、作中の描写や名前に『プリコネ ワイズオウル』で検索していただければ分かると思いますが、賢者みたいな見た目をした梟になっています。
ワイズオウルの詳しい説明については次話のネタバレとなるので、次話の最後に書く予定です。
また、第3階層から第9階層までの戦闘シーンは同じことの繰り返しだったのでカットしました。

それと、今話のためにダンまちを1巻から読み直していたのですが、ヘスティア・ナイフの説明を読んだ際に、ヘスティア・サーベルが明らかに矛盾した存在となっていることに気付いたので、設定を一から変更しました。
詳しい性能についてはこちらも次話で書いていきたいと思います。

次話はワイズオウルとモニカの戦いです。
そしてダンジョン編はあと1,2話で終わる予定です。
それでは、次回。


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第45話 『密林の大樹~賢梟~』

まだ書いてる途中ですが、思ったよりも長くなったので分割して投稿することにしました。どうも、刺身の盛り合わせです。

ホントは一話でまとめてたんですが、いつもより長くなったので分割しての投稿です。
今回はワイズオウルとの戦闘が中心となっています。
戦闘描写が分かりずらかったら教えてください。

また、44話の題名を45話の題名として使用することになったので、44話の題名を変更しました。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


ワイズオウルの魔法から冒険者達を守ったモニカは、次の攻撃が来ないうちに逃げ遅れた冒険者達と共に、晶達のもとへ向かった。

 

「「モニカ(さん)、今の一体……!?」」

 

タマキとツムギがモニカになぜ魔法が斬れたのかを聞こうとした瞬間、階層突入前に晶が想定したように大量のシャドウが一行を囲うように現れた。

武器が無い状態でシャドウに囲まれ絶体絶命と思われたが、目の前に現れたシャドウ達はほとんどが武器を持たず、素手であった。

 

「どうして武器が壊れなかったのかとか魔法を斬った理由とかは後で聞かせてもらうとして……今、この場でモンスターを倒せるのは、武器を壊されてないモニカちゃんだけだ。どうか、あのモンスターを倒してほしい」

 

「…私よりもツムギ殿やタマキ殿が戦った方がいいのではないか?」

 

「本当はそうかもだけど、今武器を持ってるのがモニカちゃんだけだし、何より魔法を対処できるのが理由だね。あたし達も魔法を使っての援護はする、だからお願いしてもいいかな」

 

「……私以外に戦う相手はおらず、あのモンスターを倒さなければこの階層から出ることも出来ない。そしてこの場で倒すことが出来るのは私だけ。ならば、私がやるしかあるまい!」

 

「ありがとう、モニカちゃん。……じゃあみんなにこれからの指示を出す!まずこの階層前に説明した通り、前衛部隊は武器を持ってないシャドウの撃破、後衛部隊で魔法を使える冒険者はシャドウと戦っている冒険者の援護と支援、それ以外はシャドウの動きと周囲の警戒!モニカちゃんはあの梟のモンスターの撃破、タマキはシャドウを倒してモニカちゃんがモンスターの所に行くための道の作成と自分のシャドウの撃破、ツムギはモニカちゃんのシャドウと自分のシャドウの撃破!……全員、死力を尽くすんだ!」

 

「「「「「「「「了解(にゃ)!!」」」」」」」」

 

晶の指示が終わるのと同時に、それぞれ行動に出た。

モニカは晶に言われた通り、ワイズオウルに向けて走り出した。

ワイズオウルの下に進ませないように妨害しようとモニカにシャドウが近づこうとしたが、モニカより先にシャドウとの距離を詰めたタマキの一撃により影に戻ったことで、シャドウの包囲網の一部に穴が開き、そこから抜け出すことが出来たモニカはワイズオウルの下へ向かうのであった。

 

「そっちはお願いね、モニカちゃん。……全員、モニカちゃんがあのモンスター倒せるように、ここでシャドウの足止めをするよ!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

タマキの力を借りてシャドウの包囲網を抜け出したモニカは、サーベルを引き抜きながらワイズオウルの下に向かっていた。

モニカを近づかせまいと魔法を放つワイズオウルだったが、次々とモニカの持つサーベルに斬られすべて無力化されていた。

このままではモニカを止めれないと考えたのか、ワイズオウルは魔法を放つのを止めて地面に杖を突き付けると、モニカの足元に緑色の魔法陣が出現した。

出現した魔法陣に嫌な予感を感じたモニカは、即座に右方向に飛び魔法陣の外に出た。

モニカが魔法陣の外に出た後に、魔法陣から天を衝くかのように大量の樹木が生えてきた。

モニカが躱すことしか出来ないことに気づいたワイズオウルは、モニカを自分から遠ざけるべくモニカの足元へ魔法陣を大量に出現させた。

ワイズオウルによって距離を離されたモニカは詰め直そうとしたが、その行動を読んだワイズオウルの生み出した右・左・前の三方向から来る竜巻によって、その場での防御を一時余儀なくされた。

 

『近づけば樹木を生成、遠ざかれば小型の竜巻を発生させる魔法か。中々厄介だが、一気に懐まで近づけば魔法を使うことは難しいはずだ。ならどうやって近づくかだが……、シャドウとの戦いで支援は絶望的、私一人で戦わなければならない。……それならば、正面突破しかない!』

 

攻撃をさばきながらそう考えたモニカは、早速行動に移すことにした。

正面から来た竜巻を斬りながら再びワイズオウルとの距離を詰め始めた。

一直線に近づいてくるモニカを見たワイズオウルは、先ほどと同じように地面に杖を突き付け、樹木を生成する魔法陣をモニカの足元に出現させた。

出現した魔法陣に対して、モニカは避けることなく魔法陣の上を突き進んだ。

 

『さっき魔法を回避した時もそうだったが、魔法陣が出現してから樹木が生成されるまでに少し隙がある。これなら私の敏捷値でも攻撃が来る前に抜けられる!』

 

魔法陣から次々と出現する樹木をかわしながらワイズオウルとの距離を詰めるべく進んでいった。

モニカの足元ではなく進行方向に魔法陣を出現させる作戦に変更したワイズオウルだったが、すべての魔法陣をかわされ一気に距離を縮められてしまった。

ワイズオウルの胴体まで近づいたモニカは、ヘスティア・サーベルで胴体を何度も斬りつけて攻撃を行った。

 

『少しずつだが、ダメージを与えられている。このまま攻撃し続ければ倒せるはずだ!』

 

攻撃を続けようとサーベルを振りかざしたモニカは、頭上から杖の先端が迫ってきたため後方へ跳び攻撃を回避した。

再び攻撃するために一歩踏み出そうとしたモニカだったが―――

 

「—————ガハッ!?」

 

気付いた時には右から来た衝撃に吹き飛ばされていた。

フリューゲル・コートによって物理的なダメージはほとんどなかったが、衝撃は殺されなかったためかなりの距離を飛ばされていた。

吹き飛ばされた先で立ち上がろうとしたものの、糸のようなもので体を拘束されうつ伏せの体勢で地面に縛り付けられていた。

顔を動かしてワイズオウルの方向を見ると、タマキとツムギのシャドウがワイズオウルの側に出現していた。

 

『二人のシャドウ!?まさかこのモンスターがシャドウを召喚していたのか!?追撃が来る前に逃げなければ…!』

 

拘束から脱出しようとしたモニカだったが、シャドウの背後にいたワイズオウルが地面に突き刺した杖を掴まず地面に両手をついた次の瞬間、階層のいたるところに魔法陣が出現した。

それはモニカが拘束されている場所だけでなく、離れた場所でシャドウと戦っている晶達の足元にも出現していた。

 

「全員足元の魔法陣から出ろォ―――ッ!!」

 

『ギャオォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!』

 

ワイズオウルのやろうとしたことに気づいたモニカは、晶達に大声で魔法陣から出るように警告を行った。

直後にワイズオウルの叫び声が階層中に響き渡るのと同時に、階層のいたるところから天を衝くように大量の樹木が生え、階層を埋め尽くした。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ワイズオウルの戦闘シーン、前半戦を書くことが出来ました。
次は後半戦、この後がどうなったのかは次回をお楽しみに。
それと、ヘスティア・サーベルとワイズオウルの設定については、まだ本編が終わってないので次回かその次に回します。
楽しみにしていた方は申し訳ありませんが、少々お待ちください。

それでは、次回。


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第46話 『密林の大樹~決着~』

前話を書いている時にプリコネでモニカとタマキのイベントが始まることを知って驚きました。
どうも、刺身の盛り合わせです。

今回は後半戦、前回の最後からの続きです。
今回の文章量はいつもの倍で、4800文字になりました。
前回の終わりで階層中が樹木で埋め尽くされ、モニカや晶達がどうなったのか…ぜひ読んでお確かめください。
それと、今回は後書きの最後に本作でのワイズオウルの設定を書いているので、興味があったら読んでください。
また、今後のために第44話での杖の描写を変更しました。(色が紅→漆黒へ変更)

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。

2023/05/25 ワイズオウルの設定に少し変更を加えました。


「……モニカさんの警告のおかげで、かなりの人数が軽傷でした、晶さん」

 

モニカが直前で放った警告のおかげで、シャドウと戦っていたほとんどの冒険者は軽傷で済んでいた。

 

「それでも数人はかなりの重症者がいるにゃ」

 

「でもそれは片手で数えられる程度で十分治療範囲だったでしょ?それと樹木に巻き込まれてシャドウも消えた、っていうのがラッキーだったかな。おかげでこの間に安心して治療が行えるでしょ?」

 

周りを樹木に囲まれ身動きが取れない状態となった晶達だったが、戦っていたシャドウが巻き込まれて消えた後に追撃が無かったため、この間に回復魔法を使える者は怪我人の治療を、それ以外の者は周囲の警戒と自分達を囲んでいる樹木の排除を行っていた。

 

『今ならあたし達を一網打尽にできるはずなのに、なんであのモンスターは何のアクションも起こさない?外にいるモニカちゃんのことも心配だし、早くここから脱出……』

 

樹木を取り除きながら晶がそんなことを考えていると、突如周囲を囲んでいた樹木が全て枯れたのである。

周囲の光景が見えるようになった晶達が目にしたのは―――

 

「————かはっ」

 

―――樹木に突き刺されていたモニカの姿であった。

 

「モニカさん!!」

 

ツムギが名前を呼んだ瞬間、モニカを突き刺していた樹木がまるで生き物のように動きだし、モニカを晶達の方向へ投げ飛ばした。

 

「―――ツムギッ!!」

 

「分かって、ますッ!!」

 

自分達のいる方向へ投げ飛ばされたモニカを糸で包み込むように受け止めたツムギは、即座にモニカの状態を確認した。

先ほど見た際は胴体を貫かれたように見えていたが、確認すると胴体ではなく左脇腹を貫通しており、かろうじて息をしている状態だった。

治療するためにツムギがモニカを運ぼうとした瞬間、ツムギとタマキの姿を模した大量のシャドウが晶達を囲うように出現し、一斉にモニカを抱えたツムギへと襲いかかった。

 

「【権能解放、世界の全ては我が手の思うがままに変容する。オブジェクト・クリエイション】ッ!!」

 

「そうは、させるかにゃ!!」

 

しかし、晶の魔法によって生み出された石柱とタマキの全力の一撃により、ツムギに近寄ろうとしていたシャドウ達は吹き飛ばされ、ツムギは無事に回復魔法を使える冒険者の下にモニカを連れていくことが出来た。

 

「な、なぁ。こいつの武器があれば俺達でもあのモンスターと戦えるんじゃねぇのか?」

 

「そ、そうか!嬢ちゃん、聞こえてねーかもしれねーがとりあえずサーベル借りるぜ……って何だ()()()()()()()()()()()()()()()()()()こんなガラクタで戦えるわけねーだろーが!」

 

唯一壊れていないモニカのサーベルを使い、モンスターと戦おうとした冒険者達もいたが、サーベルを手にした瞬間、()()()ガラクタのようになり、戦いに使うことすら不可能となった。

 

『モニカちゃんのサーベルがガラクタ?そんな筈はない、戦ってた時も相手にダメージを与えられていたし、何よりそんなにボロボロじゃなかった……まさか、専用武器?それが本当だとしたら、モニカちゃん以外にあのサーベルは使えないってこと!?』

 

冒険者達の話し声と自身の知識からモニカの武器の正体を推測した晶は、ワイズオウルを倒すにはモニカの力が必要不可欠と考え、背後で絶望や悲観の表情を浮かべている冒険者達に向けて指示を出した。

 

「全員聞いて。あたしはモンスターを、タマキとツムギはシャドウの相手をする。だから回復魔法を使える冒険者はモニカちゃんの治療、それ以外の冒険者は治療中のモニカちゃん達を命がけで守って。…今この場であのモンスターを倒せるのは彼女だけ。だから彼女が目を覚ますまで死ぬ気で守っていてほしい。……任せたよ」

 

晶は指示を出しながら背後にいる冒険者達を一瞥し、一人ワイズオウルの下に向けて走り出した。

 

 

○○○○○

 

 

なんだか、疲れた。全身が痛い。指一本動かす気力すらない。それに、なんだか眠い……

 

『おい寝るな、私!』

 

!?…なぜ私が二人いるんだ?

 

『そこは気にするな。だがあえて理由を言うなら、ここが心の中だからだ』

 

心の、中?……それで、一体何の用なのだ、私?

 

『何、警告に来ただけだ。ここで眠ったら晶殿と交わした約束を破るだけじゃない、ベルやヘスティア様達に会えなくなるし、軍人になるという夢も叶えられないぞ?』

 

!……それは、眠るわけにはいかなくなったな。

 

『その通りだ、私。それじゃあ目覚める前に一つだけ』

 

何かあるのか?

 

『何、ほとんどの冒険者達が戦意を喪失しているからな。ここで一発、気合を入れ直してやってはどうかと思ってな』

 

だが、どうやればいいか私にはさっぱり…

 

『モニカ・ヴァイスヴィントここにあり!みたいな内容を言えば大丈夫だ。…と、そろそろ目覚めの時間だ。盛大に決めてこい、私!』

 

 

○○○○○

 

 

「血も出てないし、呼吸も落ち着いてる。あとは目を覚ますだけ…」

 

「クソったれが、俺達ここで死んじまうんだ!」

 

周囲から聞こえてくる絶望や悲観、安堵の声で徐々に目を覚まし始めたモニカ。

 

「……すまないが、私のサーベルを取ってくれないか?」

 

「お、起きたんですが!?…ってダメです!応急処置で穴が塞がったとはいえ、さっきまで重傷だったんですよ!?もしも戦ったらまた穴が開いたら―――」

 

「―――頼む」

 

「―――ッッ!!……分かりました、サーベルです。…それと、気を付けてください」

 

戦いに行くのを止めようと冒険者に、頼み込むモニカ。

それに押し負けた冒険者は、側に置いてあったサーベルをモニカに渡した。

仰向けの状態から立ち上がったモニカは、周囲を見渡した。

 

『晶殿はふくろうのモンスター、タマキ殿とツムギ殿は自分のシャドウと戦闘中、それ以外の冒険者は私の周囲に全員、そのほとんどが絶望か悲観の表情で戦意を喪失している……全員の気合を入れ直さなければな』

 

モニカは息を大きく吸い込むと、階層中に響き渡るほどの大声を出した。

 

「この階層にいる冒険者達よ、全員聞けぇ!」

 

その声は自分達のシャドウと戦っていたタマキとツムギは勿論、ワイズオウルと戦っている晶の下にまで届いていた。

 

「私があのモンスターを必ず倒す!だから、私が戦っている間どうかシャドウの足止めをしてほしい!先ほどからの連戦で厳しい戦いになるかもしれないが、頼む!」

 

「………俺達よりも年下のガキが諦めてねぇんだ。俺達が諦めちまってどうするよ?」

 

「そうよね、まだ私だってやり残したこといっぱいあるもの。こんな所じゃ死ねないわ!」

 

「よっしゃぁ!気合入れろ、テメー等ァ!!」

 

「「「「「オオォォォォォォ!!」」」」」

 

そんなモニカの懇願に対して周囲にいた冒険者たちは、再び気合を入れ直し前衛部隊はシャドウの下に、後衛部隊は司令官がいない分を全員で補いつつ前衛部隊の支援を行い始めた。

冒険者達の脇をすり抜けながらワイズオウルの下へと向かうモニカ。

ワイズオウルの下へ行かせまいとシャドウがモニカの下へ向かってきたが、攻撃が来る前に他の冒険者達が抑えてくれたため、シャドウと戦わずに進むことが出来た。

 

「晶殿、私を上空に吹き飛ばしてくれ!」

 

「何か考えがあるみたいだね……。それじゃあ、【権能解放、世界の全ては我が手の思うがままに変容する。オブジェクト・クリエイション】!」

 

一気にワイズオウルに近づいたモニカは、ワイズオウルと戦っていた晶に呼びかけ、自身の足元に石柱を出現させ、自身を上空へ吹き飛ばさせた。

ワイズオウルよりも高いところに跳んだモニカは、サーベルを両手で逆手持ちにし―――

 

「ここだぁ!」

 

落下するスピードを乗せた一撃を、上に跳んだモニカを見るために顔をあげたワイズオウルの右眼に突き刺した。

 

『ギャオアァァァ!?』

 

目を刺された痛みで叫び声をあげるワイズオウルの目からサーベルを即座に引き抜き、地面へと降り立ったモニカは、返す刀で逆袈裟斬りからの斬り下ろし、斬り払いの連撃を行った。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…理由は分からないが、今が好機。ここで一気に攻める!』

 

ワイズオウルの受けるダメージが増えていることに気付いたモニカは、ワイズオウルへの攻撃を続けた。

ワイズオウルもモニカへの反撃とシャドウの召喚を行うために、モニカに向けて杖を突き刺そうと振り下ろした。

 

「先ほどと同じ轍は踏まん!」

 

「その杖は、折らせてもらうよっ!」

 

『ギギャア!?』

 

しかし、モニカがサーベルの刀身で杖の軌道をずらし、晶の魔法により出現した石の柱によって、杖は真っ二つに叩き折られた。

モニカは杖を折られたことで呆然としたワイズオウルの隙をついて飛び上がり、首元から股下までをサーベルで縦に切り裂いた。

 

『……ギャァァァァァァ!!!』

 

痛みで正気に戻ったワイズオウルは、自身の目の前に着地したモニカに向けて強制停止(リストレイト)を引き起こす咆哮(ハウル)を放ち、右翼に付いた鉤爪でモニカを殴り飛ばした。

強制停止(リストレイト)により動くことのできなかったモニカは、ワイズオウルの攻撃を受け右方向へ吹き飛んだが、モニカより先に強制停止(リストレイト)から解放された晶によって受け止められた。

フリューゲル・コートによって負うダメージは少し減ったものの、衝撃は殺されなかったため、直撃した左腕は歪な形になり、殴られた衝撃で塞いでいた脇腹の穴が再び開くなど満身創痍、いつ気絶してもおかしくない状態だった。

しかし、大量に分泌されたアドレナリンと『ワイズオウルを倒す』という使命感のおかげでギリギリ気を失わなかったモニカは、体力を回復するために晶から渡された高等回復薬(ハイ・ポーション)を飲み始めた。

自身の杖を折られたことで魔法による攻撃が出来なくなったワイズオウルは、自身を倒す可能性のあるモニカが重傷で動けない間に体勢を立て直すべく、自分の巣へ向かうために翼を羽ばたかせ空を飛ぼうとした―――

 

「タマキッ!!」

 

「お前はここで、死んどけにゃ!!」

 

が、晶の指示により全速力でワイズオウルとの距離を詰めたタマキによる踵落としを脳天に食らい、地面に落とされた。

 

『全員が作ってくれたこのチャンス、絶対無駄にはしない……!!』

 

高等回復薬(ハイ・ポーション)を飲み干し、少し動く分の体力を回復させたモニカは、起き上がろうとするワイズオウルを倒すべく、満身創痍の体に鞭打ち距離を詰めるために走り始めた。

 

「「「「「「「「「今だ、モニカちゃん!/今にゃ、モニカ!/今です、モニカさん!/今だ、やっちまえ!/今だ、行けえぇぇ!」」」」」」」」」

 

「これで…、終わりだぁ!!」

 

全員の声を背中に受けながら地面から跳び上がったモニカは、起き上がろうとしたワイズオウルの頭をサーベルで一気に斬り下し、ワイズオウルの頭を真っ二つに分断した。

 

『ギャァァァ……』

 

頭を半分に分断されたワイズオウルは、断末魔を上げながら塵となり、それと同時に階層を覆っていた紫色の結界が消え去った。

 

「……やった「倒した?「倒したんだ!「俺達帰れるんだ!「ここから出られるぞぉ!「やった、やった!「俺達の、勝ちだぁぁぁ!!」

 

ワイズオウルが倒され、階層から出られるようになったことに気付いた冒険者達は、それぞれ喜びの声を上げた。

 

『これで少しは貴公に追いついただろうか、ベル……』

 

「お疲れにゃモニカ…って危なっ!いきなり倒れるなにゃ!」

 

「モニカさん!?…大変です晶さん、モニカさんの血が止まりません!」

 

「…このままだとモニカちゃんが危ない。二人共、この場から脱出するよ!ツムギはモニカちゃんの傷がこれ以上酷くならないように拘束して!モニカちゃんはあたしが抱えていく!」

 

オラリオ出発前にベルと交わした約束について考えていたモニカは、血の流しすぎやアドレナリン切れの結果、近寄ってくる晶達の声を聞きながら気を失い地面へと倒れた。

ラキア大森林にある迷宮『密林の大樹』、今ここに完全攻略。

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

というわけでワイズオウル戦決着&密林の大樹、攻略完了です。
今回はこれまでで一番モニカがぼろ雑巾になった戦闘回となりました。
これまでの戦いでは誰かとの協力戦が主でしたが、今回はモニカが中心の戦いとなりました。
なぜ章ボスとしてワイズオウルを選んだのかについては、次回書ければなと思います。
ちなみにこの裏では既にベル君がミノタウロスを倒してレベル2になり、そろそろヴェルフに合うところです。

後書きの最後には前書きで書いた通り、本作でのワイズオウルの設定を書いています。
プリコネでのワイズオウルをベースにかなりオリジナルな設定になっています。
モニカの持つヘスティア・サーベルの設定については次回をお待ちください。

次話はエピローグ、それが終わったら第三章は終了です。
それでは、次回。



~ワイズオウル~
 ラキア大森林の奥深くにある迷宮『密林の大樹』の最上階にいる階層主。
 名前に『ワイズ』とついていることから分かるがとても聡明で豊富な知恵を持っており、自作した杖を用いて台風を作りだしたり、樹木を生成させる魔法が使える。
 更にミノタウロスと同様強制停止の咆哮を放つことが出来る他、武器破壊の咆哮も放つことが可能。
 シャドウを召喚する魔法も使えるが、これは杖に付いた宝玉によって行われている。
 なんだか宝玉から邪悪なオーラが出ているが果たして…?
 通常の梟とは違い草食。
 また、近接戦になるとめっぽう弱い(魔法と比べるとの話。実際は豊富な知恵を用いた相手の嫌がる戦い方や、鉤爪による引き裂きなどを行う)ため、戦い方としては前衛としてシャドウを召喚し、自身は背後から魔法で攻撃を行う完全後衛型となっている。

 ワイズオウルは、ダンジョンの19階層から24階層の間で現れる希少種レアモンスター『スリーピィオウル』が古代の時代に地上へ進出後、大森林にて独自に進化した姿。
 今回戦ったワイズオウルは沢山いるワイズオウルの中でも長命かつ体躯が一番大きい、魔法の威力が一番強い個体で、いわば群れのボスポジションでもあった。
 今回の戦闘では一切出てこなかったが他にもたくさんのワイズオウルがいる。
 戦ったワイズオウルと同様に聡明だが、体が小さくそこまで強くない(魔法含めてウォーシャドウ、魔法を除くとダンジョン・リザードレベル)なため、今回戦いが始まった時は傍観に徹していた。

 また、オラリオ外にいる他のモンスター同様、体内に魔石がほとんどないが、強さとしては魔法を含めてゴライアスには劣るものの、ミノタウロス以上の強さ(魔法なしだとミノタウロスと同程度)となっている。
 もしもこの個体がダンジョンにいた場合は、魔石を食べることを覚えた結果、強化版モス・ヒュージ以上の狡猾さ(中層モンスターを操り上層で怪物進呈を行うなど)を持つ可能性が高く、また魔法の威力も大幅に上昇するためかなりの強敵となることが予想される。


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第47話 『勝利の宴』

カフェモニカが実装されましたね。プリコネをプレイしているみなさんガチャはどうでしたか?
どうも、いつも通り天井した刺身の盛り合わせです。

今回は三章のエピローグになります。
今回の文章は大体3000文字ぐらいで、色々詰め込んだ結果かなり長くなりました。
それと今回はヘスティア・サーベルについての説明を後書きに書いてます。
ぜひ読んでください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。

2023/05/25 ヘスティア・サーベルの設定に少しだけ文章を加えました。


「……ここは…」

 

「……目が覚めたんですねモニカさん!体の方は大丈夫ですか?」

 

ワイズオウルを倒したものの、アドレナリン切れに血の流しすぎで気を失ったモニカ。

目を覚ましたモニカが最初に目にしたのは、見たことのない天井と心配そうにモニカを見ていたツムギの顔であった。

 

「…左腕は自由に動かせるし、脇腹の痛みもそれほど感じない。少し眩暈はするが今のところ特に問題はないな」

 

「それなら良かったです!モニカさん、ダンジョンで気を失ってから丸一日眠ったままで起きなかったんで、私だけじゃなくて晶さんにタマキ、一緒に戦った他の冒険者達も心配してたんですよ~?」

 

「丸一日?……ちょっと待ってくれ、私は二日も寝ていたのか?」

 

「はい。ダンジョンを攻略した時にモニカさんが気絶したので、治療のために急いでダンジョンから脱出したんです。治療師(ヒーラー)の人が言うには『目覚めないのは疲労が溜まってるから、疲労が回復したらすぐ起きる』とは言われたんですが、一日中眠ってるから心配で……ですけど、無事に目覚めてよかったです!」

 

「…側で見ていてくれたのだろう?感謝する、ツムギ殿。…そういえば、クエストはどうなったんだ?」

 

「それでしたら―――」

 

眠り続けていたモニカの側で見守り続けていたツムギに感謝の言葉を伝えたモニカは、本来の目的であるクエストの結果について聞こうとすると、部屋の中に晶とタマキが入ってきた。

 

「ツムギ、モニカは起きた……ってもう起きてたかにゃ」

 

「やっほー。二日ぶりだね、モニカちゃん。体の方は大丈夫?」

 

「晶殿にタマキ殿、二日ぶりだな。それと体なら少し眩暈はするが大丈夫だ。……それで、クエストはどうなったのか聞いてもいいだろうか?」

 

「そういえばモニカちゃんには教えてなかったっけ?クエストなら成功したよ、ほらこれ」

 

そう言って晶が取り出したのは、リンゴやブドウ、パイナップルなど光り輝く沢山の果物が入った器であった。

 

「………これは、果物?」

 

「これはね、密林の大樹に生息されると噂されてた果物。オラリオにいる神様達から『この果物が食べたいから取ってきて』、っていうのが今回の依頼だったんだ。…まさかこんな目に遭うとは思わなくてね、いやー参った参った」

 

「…………まさか果物のためのクエストだったとは…」

 

「まぁまぁ、とりあえずモニカも食ってみるにゃ」

 

晶から今回のクエストの目的を告げられたモニカは呆れの表情を浮かべていたが、タマキに光り輝くリンゴを口の中に無理やり詰め込まれた。

 

「モガァ!?………美味い」

 

「今モニカちゃんが食べたのは密林で取れたリンゴ。中々美味しいよね、これ」

 

「ブドウにパイナップル、ミカンもあるけど食べるかにゃ?」

 

「では、ブドウを―――」

 

「起きたんだな、ガキンチョ!」

 

タマキからブドウを貰おうとしたモニカだったが、突然部屋の中に冒険者達が入ってきた。

よく見ると、大樹でワイズオウルと戦った冒険者達で、全員何故か興奮していた。

 

「全員揃ったってアイツらに伝えろ!」

 

「モニカさんは私が担いでいくから、あなた達は私について来て頂戴!」

 

部屋に入ってきた女性の冒険者に何の説明もないまま突然お姫様抱っこをされたモニカ。

 

「待て待て待て!いきなり何をするのだ!?」

 

「ツムギさんから聞いてないの?…まぁいいわ、それじゃあ、目的地にしゅっぱーつ!」

 

「ちょっと待て!私は病み上がりでぇぇぇぇぇ……!?」

 

「……ツムギ、モニカに伝えるの―――その顔だと忘れてた見たいだにゃ?」

 

「それじゃあ、あたし達も行こっか?」

 

「………はい」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「遥か昔、この大森林の奥に大樹が発見されてから早数百年!」

 

場所は変わって大樹の麓の町、中央にある広場。

 

「その間、多くの冒険者や探検家達がこの大樹を攻略しようとした!しかし、シャドウに行く手を阻まれ、先に進むことすら出来なかった!

 

広場の中心にはステージのようなものがあり、そのステージを囲むように多くの人々が集まっていた。

 

「運よく最上階に迎えたとしても、この大樹の主である梟型のモンスター…ワイズオウルが作りだす結界に閉じ込められ、戻ってくることはなかった!」

 

ステージの中央には人が五人ほどおり、一人は冒険者の男性、それ以外の四人は女性の冒険者であった。

 

「だが、これまで誰も攻略することが出来なかった密林の大樹が、先日ついに攻略された!大樹の攻略、その中心となったのはこの場にいる四名!」

 

司会を行っている冒険者は壇上にいる冒険者達について、ステージの周囲を囲う冒険者達に紹介し始めた。

 

「魔法と類稀なる戦術眼を用いて、攻略に参加した冒険者達に的確な指示を出した『モサクジ・晶』!他に類を見ない敏捷値で階層中を自由に駆け巡り、多くのシャドウを倒した『タマキ・ミャーサカ』!糸による拘束で冒険者達を襲おうとするシャドウを縛り上げ、数々の冒険者達の危機を救った『ツムギ・ココン』!」

 

それぞれの紹介に晶は当たり前の表情を、タマキは上機嫌に、ツムギは顔を赤らめ恥ずかしがっていた。

 

「そして!全員が武器を破壊され戦えない中、大樹の主であるワイズオウルへと一人で果敢に挑み、文字通り骨身を削りながらもワイズオウルを見事に討伐せしめた『モニカ・ヴァイスヴィント』!」

 

満を持して最後に紹介されるも、なぜ自分がステージの上にいるのか分からず困惑するモニカ。

 

「以上の四名の力により密林の大樹は攻略、大樹の秘宝とされていた『密林の果実』も発見された!この広場に集まった者達よ、彼女達こそが大樹攻略の功労者達だ!」

 

「「「「「「「ウォォォォォォ!!!」」」」」」」

 

「………なぁツムギ殿、これは一体何なのだ?」

 

「何でも、密林の大樹攻略の立役者を町の人達に紹介したかったらしいですよ?それが終わったら―――」

 

「それではこれより、密林の大樹攻略記念の宴を行う!全員コップは持ったか!?カンパーイ!」

 

「「「「「「「カンパーイ!!」」」」」」」

 

「―――宴会を始めるらしいです」

 

「……みたいだな。というより、別に宴会をする必要はないのでは…?」

 

密林の大樹を攻略した記念として宴会が開かれたが、何も聞かされていなかったモニカは呆れの表情を浮かべていた。

 

「まぁまぁ。せっかく祝ってくれるんだし、祝ってもらおうよ。甘いもの含めて料理もいっぱい用意してくれたみたいだしさ?」

 

「せっかくの宴会を開いてくれたのだ、我々も参加しなくてはな!」

 

「モニカさん……」

 

「いっそすがすがしいほどの手のひら返しにゃ」

 

「モニカちゃんの手のひら返しは置いておくとして……とりあえず、あたし達も宴会を楽しもう!」

 

「「「おぉー!」」

 

こうして、モニカ達は宴をそれぞれ楽しみ始めた。

 

「このケーキはうまいな!やはり体が疲れた時は甘いものに限る…」

 

「密林の果実を使ったクレープ…きっとおいしいはず!というわけで作ってみたんだけど、味の方は……普通?だよねー」

 

「この鳥の蒸し焼き、とっても美味しいです!しかもコラーゲンたっぷりなんですか!?……これをいつも食べられるのは少し羨ましいですね」

 

「にゃーっはっはっはっはー!あたしはまだまだ食べれるにゃ!じゃんじゃん持ってこいにゃー!」

 

それぞれ宴を楽しみながら、夜は更けてゆき―――

 

「グゥオォォォ…。あ、頭が割れるように痛いにゃぁ……!」

 

「調子に乗ってお酒まで飲むからですよ、タマキさん」

 

「これで、この大樹ともお別れか。…私は、強くなれたのだろうか」

 

「大丈夫、モニカちゃんは強くなってるよ。あたしが保証するからさ。……それじゃあ、オラリオに向けて、しゅっぱーつ!」

 

「「「おぉ~!/ちょ、大きな声出さないで。頭に響くにゃ…」」」

 

モニカ達は大樹に来るのに使った馬車に、依頼品の密林の果実と二日酔いで役に立たないタマキを(ほろ)のかかった荷台に乗せ、大樹を後にしオラリオに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~モニカが目覚める半刻前、密林の大樹・第10階層最奥~

 

「……全く、武器破壊の咆哮(ハウル)をしてくるなんて、ヘルメスのヤツ言ってなかったにゃ。オラリオに帰ったら文句言ってやるにゃ」

 

「でもさぁ、ヘルメスも知らなかった可能性ない?まぁ、それはそれとして帰ったら文句言うけどね。それに武器も壊れたし、少し冒険者家業は休憩かな?」

 

「うーん……あっ、ありましたよ晶さん!」

 

「ホント?ちょっと見せてみて………『大樹がどうやって成長したのか』か…これはこれで気になるけど、違うみたい。他にはあった?」

 

「えぇー、もうくまなく探しましたよ?…ここには無いんじゃないですか?」

 

「かもねぇ……。まっ、これについてはヘルメスも確証がないみたいだし、地道にいろんな所を巡るしかないね」

 

「って言ったって、ホントにあるのかにゃ?―――

 

 

 

()()()()()()()()()()が記された石板なんて」

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

というわけで三章、無事完結です。
今回オリジナルストーリーを混ぜたのは、モニカをランクアップさせるためです。
元々、ベルがランクアップするのと同じ時期にモニカもランクアップさせようと思っていたのですが、ミノタウロス戦で一緒に強敵と戦ってランクアップさせるのはちょっと違うなと考えていました。
結果として、「プリコネから参戦したキャラ達を活躍させつつ、モニカに強敵を倒してもらおう!」ということになりました。
どこで何と戦わせたよう?と考えた時に思いついたのが、プリコネのダンジョン。
プリコネのダンジョンの一つで今回の舞台である密林の大樹は、初回報酬で『密林の果実』という家具を取得可能、ボスが魔法タイプの敵でサーベルの力を紹介可能、ダンまち世界に入れてそこまで違和感が無い、そしてラキア王国側の土地情報が探しても出なかったため、オリジナル設定としてダンジョンを置くことが出来るなどの理由で選ばれました。
また舞台をラキア王国側にしたらモニカを道案内役としてオラリオ外に出せることも出来るので、そこから色々設定を追加したら今章の内容になりました。
晶やタマキ、ツムギは今後もちょこちょこ出てくるので、お楽しみに。
また、晶やタマキ、ツムギの設定については今後まとめてどこかで上げます。
それまでお待ちください。

そして本編の最後に今後の伏線のようなものを入れてみました。
書くつもりはありますが、多分本編が全部終わった後になるかもしれません。
その時は人数や物語の筋道がかなり改変するかもしれません。
かなり先の話になるので、ゆっくりお待ちください。

次からは第四章に突入します。
時系列は原作五巻、ベル達が中層へ向かうところです。
オラリオに帰還したモニカの次の冒険をお楽しみください。
誤字脱字があれば教えてください。
それでは、次回。



~ヘスティア・サーベル~
ヘスティア・ナイフと同様に、35年ローン42回払いのヘスティア渾身の買物その2。
ベルの持つヘスティア・ナイフと同様にミスリルとヘスティアの頭髪、神血(イコル)を用いて製作された、装備者の成長と共に強化される『邪道の武器』。


―――なのだが、ヘスティア・ナイフとは異なる部分が一つある。
それは、『魔法の伝導率』である。
原作三巻でベルがミノタウロスの体内にヘスティア・ナイフを経由してファイアボルトを打ち込んだように、本来ミスリルで作られた武器は魔法伝導率が非常に高くなっている。
しかし、ヘスティア・サーベルは魔法伝導率が異常に低い。
通常のミスリル武器なら魔法を経由・拡散させるはずが、ヘスティア・サーベルの場合魔法を無効化・反射させるまでに能力が変容しており、『魔法伝導率が低い』というより『魔法を無効化する』と言った方が近い。
このような武器になった理由としては、ヘスティアの神血とヘスティアのモニカへの思いが武器に作用したのではと考えられている。


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第四章
第48話 『器の昇華』


スマホを買い替えたおかげでプリコネがサクサク動くようになりました。
どうも、刺身の盛り合わせです。

今回から新章開幕です。
今章は原作5巻の内容が中心となっています。
原作5巻も見所が沢山あるので、そこでモニカを沢山活躍させつつオリジナルの要素を出して行ければと思います。

今話はモニカがオラリオに帰還後の話、時系列としてはベル達がちょうど中層へ向かうためダンジョンに潜ったところからです。
そしてモニカがランクアップしました。
一体どのようなランクアップとなったのか、是非とも本編を読んでください。
後書きの最後にオマケもあります。
お楽しみに。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。

2023/05/04 モニカの使用する魔法について、詠唱内容を変更しました。


モニカを除いた全員が武器を破壊されたため、モンスターに襲われないよう遠回りで時間をかけた結果、無事にオラリオに到着したモニカ達。

オラリオに着いた時はまだ日が登っていなかったが、人数が多く手続きに時間がかかった結果、オラリオに入れた時は太陽が完全に頭上に上っていた。

最初に集合した広場で晶達と別れたモニカが向かったのは、ヘスティアのバイト先であるジャガ丸くんの屋台であった。

 

「ただいま戻りました、ヘスティア様」

 

「モニカ君!2週間ぶりだね、体の方は大丈夫かい?」

 

「色々ありましたが大丈夫です。…本当は色々話したいことがあったのですが、ホームに帰ってからにします」

 

「どうしてだい!?久しぶりの再会なんだからさ、もう少し話そうじゃないか!」

 

「そうしたいのは山々なのですが………」

 

モニカは何とも言えない表情をしながらヘスティアの背後を指差した。

ヘスティアが振り向くと、そこにいたのは笑顔を浮かべたジャガ丸くんを販売しているおばちゃんであった。

 

「げぇっ、おばちゃん!?」

 

「ヘスティアちゃん!今はバイト中なんだから、ちゃんと働いて頂戴!」

 

「で、でも久しぶりに会えたんだから、ちょっとぐらいお話したって……」

 

「無駄口叩いてる暇があったらバイトに戻りなさい!でなきゃ今日のバイト代は無しだよ!」

 

「そんなの横暴だよ!そう思うだろう、モニカ君!?」

 

「ヘスティア様が任された仕事なのですから、ちゃんとやるべきだと思います。…これからギルドの方に行かなければならないので、私はここで失礼します」

 

モニカはエイナに帰還を知らせるために話を切り上げ、屋台から離れギルドに向けて歩いて行った。

 

「ほら、あの子もこう言ってるんだから、バイトに戻って頂戴!」

 

「うわーん、モニカ君の薄情者~!」

 

―――背後から聞こえるヘスティアの恨み言を聞きながら。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

場所は変わってギルド本部・ロビー内にある個室。

 

「…というわけで、ただいま戻ったぞ、エイナ殿」

 

「モニカちゃんお帰りなさい!…それで、冒険者依頼(クエスト)はどうだった?体は大丈夫?ケガはない?」

 

「…まぁ、大丈夫だ!」

 

「今ちょっと間がなかった?こら、よそ見しない。ちゃんとこっち見る!…それで、ケガしたの?」

 

「………樹木に貫かれて左のわき腹に穴が開いたのと、殴られた時に直撃した左腕が歪な形に折れ曲がったのと、後は目が覚めた時に聞いたのだが、衝撃で肋骨が数本折れていた、らしい……」

 

「………んもー!!『冒険者は冒険しちゃいけない』って何回も言ったでしょー!!そこになおりなさい、今からお説教だから!」

 

「い、今からか!?」

 

「今からです!モニカちゃん、死んじゃったら、何も意味が無いんだよ!分かってる!?」

 

「いや、分かっているぞ?ただ、今回は私以外が戦えなかったから私が戦う必要があったわけで―――」

 

「言い訳は後で聞きます!良いからそこに座りなさい!」

 

―――こうして、夕方になるまでエイナからの説教を受けたモニカは、ケガの内容を聞いたエイナによって一週間のダンジョン禁止令を言い渡されたのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「……ということがありまして、一週間ダンジョンに潜るのを禁止されました」

 

「まさか冒険者依頼(クエスト)で行った先でそんなことが起きていたとは…、今回はアドバイザー君の意見に賛成だ。一週間はダンジョンに行っちゃダメだからね?」

 

エイナからのお説教が終わり、夕食の買い出しをしたモニカは、ホームに帰ってきたヘスティアと夕食を食べ終えてから、久しぶりの【ステイタス】更新を行っていた。

 

「それは分かっています、ヘスティア様。…だが悔しいな、私が冒険者依頼(クエスト)でオラリオ外に出ている間にベルはミノタウロスを倒してレベル2になるとは…。早くベルに追いつくためには、もっと鍛錬が必要だな」

 

「………モニカ君。【ステイタス】更新、終わったよ」

 

「ありがとうございます、ヘスティア様…これは」

 

モニカの背から降り、【ステイタス】を書き写した用紙をモニカに渡すヘスティア。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

モニカ・ヴァイスヴィント

LV.1

力: G245→A869 耐久:G263→S916 器用:H165→B729 敏捷:G231→B771 魔力:I0

 

魔法

【】

 

スキル

上官命令(オフィサー・オーダー)

●威圧行為を行うことで、対象に強制停止(リストレイト)を行う。

●自身より格上の相手に行う場合、差が大きいほど成功率・効果時間が共に低下。

対して、自身より格下の相手に行う場合、差が大きいほど成功率・効果時間が共に上昇。

●対象が何らかの状態異常に陥っている場合、相手との差に関係なく成功率・効果時間が共に上昇。

●対象へ向ける威圧の大きさによって効果上昇。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ヘスティアから受け取った自分の新たな【ステイタス】を見たモニカは、基本アビリティの熟練度の数値の高さに驚愕したが、ヘスティアが告げた言葉に更に驚愕した。

 

「そしておめでとう、モニカ君。【ランクアップ】可能だよ」

 

「ほ、本当ですか、ヘスティア様!」

 

「本当さ、ボクが嘘をつくわけないだろう?……まぁ確かに、ベル君にはスキルのことで嘘ついてるけどさ。それよりも【ランクアップ】する前にすることが一つ…『発展アビリティ』だ」

 

モニカの目を見ながらヘスティアは人差し指をピンッ、と上げながら告げた。

 

「今のモニカ君には選択可能のアビリティが二つ出ていてね。一つは『毒』を始めとした症状を防ぐ『耐異常』。もう一つはLv.2の【ランクアップ】時にしか発現しない、一度倒したことのあるモンスター戦に限り、能力値(アビリティ)が強化される『狩人』。…全部ベル君からの受け売りだけど、とりあえずモニカ君に発現した『発展アビリティ』はこんなところかな?どっちの『発展アビリティ』にする?」

 

「……それでは、『狩人』でお願いしてもいいだろうか」

 

「任せてくれたまえモニカ君!それじゃあ、早速君の【ランクアップ】を始めよっか。もう一回ベッドに転がって!」

 

もう一度ベッドの上に転がったモニカの上にまたがったヘスティアは、【ランクアップ】のための【ステイタス】の更新を始めた。

 

「それにしてもモニカ君もLv.2かぁ…何というか、キミ達は本当にボクを驚かせるね」

 

「そんなに驚かせることをしただろうか?」

 

「もちろん。ベル君は一カ月半、モニカ君は二カ月でLV.2になったんだ。【ランクアップ】って本当は何年もかかるんだぜ?それなのに二人共一年未満で【ランクアップ】するんだから、驚くに決まってるだろう?……はい、終わったよ」

 

「…そこまで体に変化はないのですね」

 

腰からヘスティアが降りるのに合わせて上半身を起き上がらせ、自身の両手を握り締めるモニカ。

 

「体の構造が作り替わるわけじゃないからね。それでも【ステイタス】の昇華は本物さ。今はモニカ君が意識できていないだけで、スイッチが入ればこれまでとは比べ物にならない動きができる筈……だけど、今のモニカ君は一週間ダンジョン禁止だから、確認は少し待っていてくれよ?」

 

「分かっているとも。今は朝の素振りで簡単に確認を行うつもりだ」

 

そのように言いながらヘスティアはモニカの【ステイタス】を用紙に記し始めた。

シャツに腕を通して着替え終わったところで、ヘスティアから自身の【ステイタス】が書かれた用紙を渡された。

 

「そして朗報だよ、モニカ君―――」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

モニカ・ヴァイスヴィント

LV.2

力:I0 耐久:I0 器用:I0 敏捷:I0 魔力:I0

狩人:I

 

魔法

【ウェスタ・エール】

●鼓舞魔法。

●発動対象は自身と自身が仲間と認識している者達の全能力の限界を突破させる。

●対象者が多ければ多いほど消費精神力(マインド)が増加。

●同一対象への重複は不可能。

●詠唱式【共に戦いし同胞よ。我が呼び声に応え、起立せよ】

 

スキル

上官命令(オフィサー・オーダー)

●威圧行為を行うことで、対象に強制停止(リストレイト)を行う。

●自身より格上の相手に行う場合、差が大きいほど成功率・効果時間が共に低下。

対して、自身より格下の相手に行う場合、差が大きいほど成功率・効果時間が共に上昇。

●対象が何らかの状態異常に陥っている場合、相手との差に関係なく成功率・効果時間が共に上昇。

●対象へ向ける威圧の大きさによって効果上昇。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「―――魔法の発現、おめでとう!」

 

「……何というか、驚きが一周回って落ち着いてきたな」

 

【ランクアップ】に引き続き魔法も発現したが、一度に沢山驚きが来たことでそこまで驚かなかったモニカ。

魔法の説明を読んだモニカは、気になった部分をヘスティアに質問を行った。

 

「ヘスティア様。この魔法の『全能力の限界を突破させる』という文だが…」

 

「うーん、ちょっとボクにもよく分かんないけど…、多分基礎アビリティが一定時間上昇するってことなんじゃないかな?とりあえず、ベル君と一緒にいる時に使って効果を確認した方がいいかも。……それにしても、ベル君はいつになったら帰ってくるんだか」

 

「確かに、普通だったらもう帰ってきてもいいはずですが…何かあったのでしょうか?」

 

「分からない。…とりあえず、もう少し待ってみようか」

 

ベルが帰ってくるまで待ち続けたモニカとヘスティアだったが、いくら待ち続けてもベルがホームに帰ってくることはなかった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

というわけで、モニカがレベル2にランクアップ&魔法を習得しました。
モニカの発現した魔法は『ウェスタ・エール』という魔法です。
本編でも説明はありましたが、詳しい内容については後書きの最後にまとめているので、是非とも読んでください。
それにしてもダンジョンに行って帰ってこないベル達…一体何があったのか?
詳しい内容は、次回をお楽しみください。

誤字脱字があれば報告をお願いします。
それでは、次回。



~オマケ~
『ウェスタ・エール』
 ●自身も含めた対象者の全ての基礎アビリティを、10分間だけ強制的に限界(SSS)まで引き上げる魔法。
 ●対象者は『自身』と『自身が仲間と認識している者』。ここでの『自身が仲間と認識している者』は同じファミリアの仲間は勿論、『共に戦う他ファミリアの冒険者』にも作用する。
 ●魔法は効果が終了してから5分のインターバルが必要になるが、連続して使用することも可能。

…と、一見強力な魔法に見えるが、『魔法の対象者が多いとその分消費する精神力(マインド)の量が増える』、『既に限界突破している対象者に重ねがけすることは出来ない』、『インターバルを置かず連続で使用した場合、SSS→SS→S→…と引き上げられる限界が徐々に減少していく』などの弱点も存在する。
また、あくまでも現在のレベルの限界まで引き上げるだけなので、春姫が使う魔法『ウチデノコヅチ』のように【ランクアップ】する訳ではない。

この魔法の詠唱中はモニカが炎に包まれ、発動した際にはその炎が周囲に広がり、発動対象に炎が当たることで効果が発動する。

モチーフはプリコネでモニカが使う『フリューゲルエール』。『ウェスタ』には『永遠に燃え続ける聖火』という意味がある。
ちなみに、この魔法を漢字に変換すると、『聖火の鼓舞』という名前になる。


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第49話 『嘆願』

新しいメインクエストが解放されたのでプレイしようとしたら、クレジッタのお供2号としてモニカが登場してビックリしました。
どうも、カフェモニカのホームボイスで汚い声が聞けて嬉しい刺身の盛り合わせです。

今回は前回の続き、ベル君行方不明が発覚する回です。
序盤は原作通りで、中盤からはオリジナルな展開となっています。
何をするのかは是非読んでみてください。
また今回も4000文字超えの長文となっております。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


【ステイタス】更新から一夜明けた次の日。

未だにベルが帰ってきていないことから、ダンジョンで何かに巻き込まれたのではと考えたヘスティアとモニカは、エイナに話を聞くためにギルド本部の彼女の下へ訪れた。

 

「アドバイザー君はいるかい!」

 

「か、神ヘスティア?それにモニカちゃん?一体どうされたのですか?」

 

「昨日、ベル君はここに来たかい!?」

 

「さ、昨日は探索(ダンジョン)出発前の朝に訪れたのみで、以後私は彼とお会いしていませんが………」

 

エイナの返事を聞いたヘスティアの顔が、苦痛を耐えるかのように歪んだ。

戸惑いを隠せないエイナに、ヘスティアの代わりにモニカは訳を説明した。

 

「昨日から、ベルがホームに帰ってきていないのだ」

 

「!」

 

「私とヘスティア様でベルとパーティを組んでいるリリ達の拠点へそれぞれ別れて確認に向かったのだが、ダンジョンにもぐってから帰ってきてないそうなのだ」

 

「!少しお待ちください…………換金所に連絡を取りました。ベル君達と思しき冒険者は、一度も来ていないそうです」

 

一度窓口から離れ換金所に確認を取ってきたエイナの情報にヘスティアは固まり、モニカは苦々しい表情を浮かべた。

 

「………アドバイザー君、頼む、ベル君達の目撃情報を集めてくれないかい?それと、『ベル君達の捜索』を依頼内容に冒険者依頼(クエスト)も発注してくれ」

 

「報酬はどうしますか?」

 

「四〇万ヴァリス。【ファミリア】の全財産だ」

 

エイナと共に冒険者依頼(クエスト)の詳細を詰めるヘスティアの横で、何か考え事をしているモニカ。

最後に自身のサインを殴り書きして依頼書を完成させると、エイナがそれを受け取りこれからの流れを説明した。

 

上層部(うえ)の許可をもらってきます。掲示板に張り出されるには恐らく一時間前後掛かりますので、ご了承ください」

 

「わかった、頼んだよ」

 

では、と言い急いで行動するために立ち上がったエイナ。

それに続くようにヘスティアとモニカも背を向け駆け出し、ギルド本部の前庭、中央付近にある記念碑(モニュメント)の側で二人を待っているミアハとナァーザの下へ向かった

 

「どうであった、ヘスティア」

 

「ダメだ、やっぱりベル君達はダンジョンから帰ってきてない。…でも、ボクの『恩恵』は消えてない、ベル君はまだ生きてる!」

 

「それでは、ヘスティア様。もう、冒険者依頼(クエスト)は発注した……?」

 

「ああ、ナァーザ君達に勧められた通り、しっかり依頼してきたよ」

 

「ならば、ヘファイストスやタケミカヅチ達のもとへ向かおう。可能な限り、多くの者に助けを仰ぐべきだ」

「うん!それじゃあ「ヘスティア様、少しお話があります」……どうしたんだい、モニカ君」

 

他の神友達に助けを求めるためにギルド本部を後にしようとしたヘスティアだったが、モニカに呼び止められ足を止めた。

 

「エイナ殿に今回のことで話しておきたいことがある。それが終わり次第、今回のことについて何か情報を持っているかもしれない人物のもと向かうつもりだ。…だから、別行動をとってもいいだろうか?」

 

「…分かったよ、モニカ君。招集場所はミアハのホーム『青の薬舗(やくほ)』だから、何か良い情報を手に入れたら教えてくれよ!」

 

「了解した!」

 

こうして、モニカはギルド本部を後にするヘスティア達と別れ、再びギルド本部に入って行くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

モニカは、上層部(うえ)冒険者依頼(クエスト)の許可を取り、掲示板にヘスティアの冒険者依頼(クエスト)を貼り終えたエイナに声をかけ、ギルド本部ロビーにある面談用ボックスにいた。

 

「それで、モニカちゃんが私に話したいことって一体何かな?」

 

「まずは私がLv.2になったことについてだ」

 

「………え?ええぇぇぇぇぇ!!?」

 

モニカの口から出た『Lv.2』という言葉の意味を飲み込めなかったのか最初は固まっていたが、意味を理解したエイナは大声を出して驚いた。

 

「モ、モニカちゃんもLv.2になったの!?……と、とりあえず今日までの冒険者の活動記録を教えて欲しいんだけど、良いかな?」

 

「活動記録…何を言えば良い?」

 

「大雑把にこんなモンスターと戦ったとか、こんな冒険者依頼(クエスト)をこなしてみたとか」

 

「了解した。まず―――」

 

モニカの口から語られる冒険の記録を手元に用意した羊皮紙に書き記していくエイナ。

怪物祭(モンスターフィリア)で巨大な花のようなモンスターとの戦闘、10階層で怪物の宴(モンスターパーティー)に巻き込まれ、他ファミリアの冒険者と二人で対処したなど、これまで報告を受けた内容であっても慎重にモニカの軌跡を聞き出していった。

そして、モニカの話が二週間前までさかのぼった時、頭痛がエイナを襲った。

 

「……単独で、撃破って」

 

――二週間前、冒険者依頼(クエスト)にてラキア大森林の最奥にある『密林の大樹』に訪れた際、自分を含む大量の冒険者の影(戦闘力そのまま)と対峙。また、影を生み出した元凶で大樹の主と思われるモンスターと遭遇(エンカウント)したものの、策略によりモニカ以外の冒険者は武器を破壊され戦闘不可能、よって単独で撃破。

 

モニカから発せられた言葉に、エイナは卒倒しそうになった。

セオロの密林を超えた先にあるラキア大森林、そして最奥にある『密林の大樹』については資料や文献を読み、そこに何があるかは知っていた。

姿を真似る影に恐ろしい梟、そして莫大な宝があることを。

そんなダンジョンにも引けを取らない場所にモニカは冒険者依頼(クエスト)で行き、挙句の果てには大樹の主を単独で撃破したというではないか。

それと同時に前日聞いたモニカが何故怪我を負ったのかの理由を理解した。

エイナはモニカの報告に軽い眩暈を覚えつつ、何をどうしたら問い詰めたくなりつつも聞いた内容を羊皮紙に書き記し終えた。

 

「……モニカちゃんが私の言いつけを、ち~っとも守ってくれる気がないってことは大体分かったよ」

 

「それについては本当に申し訳ない。だが、私がやらなければあそこで全員死んでいたかもしれないのだ。だから……」

 

「分かってる。モニカちゃんが取った判断は最善で、その場にいなかった私には何も言う資格はないのかもしれないけど………でもね?これだけはどんな時でも忘れないで。……死んじゃったら、何も意味がないんだよ?……だから、無茶は絶対ダメ。わかった?」

 

「誓おう、無茶は絶対しない。」

 

「改めて…モニカちゃん、Lv.2到達おめでとう。頑張ったね」

 

「ありがとう、エイナ殿」

 

微笑みを浮かべながら祝いの言葉を贈るエイナにつられ、同じく笑みを浮かべるモニカ。

 

「…じゃあ、これで話したいことって終わりかな?」

 

「いや、本題はここからだ」

 

浮かべていた笑みを消し、ギルドを訪れた際にしていた真剣な表情に戻ったモニカ。

 

「エイナ殿が昨日私に課した『一週間ダンジョン禁止』を解いてほしい」

 

「……やっぱり、ベル君を助けるために?」

 

「あぁ。ベルはヘスティア・ファミリアの大事な仲間、だから絶対に助けに行きたい!だから、私のダンジョン禁止を解いてほしい!どうかお願いだ、エイナ殿!」

 

座っていた椅子から立ち上がり、エイナに向けて深く頭を下げるモニカ。

そのモニカを見たジッと見つめたエイナは、説得を諦めたのか一度ため息をつき、モニカに条件を出した。

 

「……モニカちゃんの気持ちは分かりました。ダンジョン禁止は無効にします。…でも、一つだけ約束。絶対に無茶しないこと、いい?」

 

「…ッああ、了解した!必ずベルを見つける、だから待っていてくれ!」

 

それでは行く場所があるので失礼する、と言ってモニカは椅子から立ち上がり、面談用ボックスから出ていった。

 

「………気を付けてね、モニカちゃん」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ギルド本部から出たモニカは、ヘスティアと別れる前に約束した通り、情報を持っているかもしれない人物が経営している屋台がある区画へ向かっていた。

 

「やはりここに居たか、晶殿!少し聞きたいことがある!」

 

「やっほーモニカちゃん、昨日ぶり。…それで、あたしに聞きたいことって何かな?…あ、クレープいる?」

 

モニカがたどり着いたのは、晶の経営しているクレープ店。

冒険者依頼(クエスト)の際に晶が『特別な情報網がある』と言っていたことを覚えていたモニカは、晶なら何かベルの情報を持っているのではないかと考えクレープ店まで赴いたのであった。

昨日オラリオに帰還したため、もしかしたら店が開いてないかもしれないと考えていたモニカだったが、杞憂だったようでお客の来ないクレープ屋台の中で暇そうにしていた。

是非いただこう、と答えたモニカは晶がクレープを作っている間にベルが中層に向かったきり帰ってきていないことについて話をした。

 

「―――なるほど、そんなことがあったとは知らなかったねぇ。それであたしのところに話を聞きに来たってことかな?…それとこれ。密林の果実を使ったクレープの試作品、食べて?」

 

「ああ。以前の冒険者依頼(クエスト)の際に晶殿が特別な情報網を持っていると言っていたのを思い出してな。ベル達についての情報を何か持っていないか聞きに来たのだ。あむっ…………いつも通り、普通の味だな」

 

美味しいクレープへの道は遠いかぁ、とモニカの正直なクレープの感想を受け、笑顔を浮かべながら言う晶だったが、その次に申し訳なさそうな顔を浮かべた。

 

「……モニカちゃん。あたし達昨日ここに帰ってきたわけじゃない?だからまだ情報がそこまで集まってなくてね。集まった情報で関連性がありそうなのは……『13階層の一部区画の天井が崩落した』ぐらいかな?」

 

「天井の崩落、か……情報感謝する、晶殿。私は行く場所があるので、ここで失礼する」

 

「いやいや、あたしこそあんまり手伝えなくてごめんね?それじゃあね~……あたしの方でも少し情報を集めておこうかな?」

 

モニカは晶の屋台を離れ、招集場所である『青の薬舗(やくほ)』へ足を進めた。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということでベル君一行の行方不明が発覚しました。
そしてエイナがモニカに貸した『一週間ダンジョン禁止』は真摯に頼み込んだので解除されました。
エイナとの約束をちゃんと守れるのか、是非とも次をお楽しみに。

それと、アンケートを実施します。
内容は『モニカ達の設定集について投稿しても大丈夫か』です。
投稿する場合の内容は現時点で分かっている各個人のステイタス+性格など。
今後のネタバレになる内容は控えるつもりです。
是非アンケートの回答をお願いします。

誤字脱字があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第50話 『いざダンジョン』

今話で50話突破したのですが、プロローグ含めたら前話で50回突破してました。
どうも、刺身の盛り合わせです。

今回はダンジョン突入準備のための話し合いとダンジョン突入のお話です。
そして今回はあの胡散臭い神が登場です。イッタイダレナンダロウナー
また、少しだけ原作と違う部分もあります。
一体何が違うのかは読んでからのお楽しみで…

今回も書いていたらいつの間にか5000文字超えで、かなりの長文になっています。
また、アンケートはまだまだ募集中です。
今のところは『今の章(第四章)が終わってからで・・・』が優勢です。
投票していない人はぜひ投票してください。

それと、原作を読んでいたらヘルメス・ファミリアの団員達はLv.2とギルドに報告していたので、これまで本作で書いてきたプリコネ組のLv.を一つ程下げました。
Lv.を下げはしましたが、実際は隠しているだけで晶はLv.4、タマキとツムギはLv.3になっています。
その事については今後設定集出す時とかに書いておきます。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


晶との会話を終えたモニカは独自に情報収集を行いながら、集合場所となっていた【ミアハ・ファミリア】のホーム、『青の薬舗(やくほ)』に向かっていた。

日が傾き始めたあたりで青の薬舗(やくほ)に着いたモニカは、ヘスティアとミアハにナァーザ、ベルとパーティを組んでいるもう一人の冒険者の主神であるヘファイストス、そして頭髪を角髪(みずら)にした男神タケミカズチとその団員である(ミコト)達と合流し、ベル達の捜索のための会議を行い始めた。

 

「すまん、ヘスティア。お前の子が帰ってきてないのは、俺達に原因があるかもしれん」

 

「………」

 

タケミカヅチの謝罪を聞きながらヘスティアは腕を組んで目をつむっており、そんなタケミカヅチの背後では(ミコト)達【タケミカヅチ・ファミリア】の団員が懺悔するように俯いていた。

ヘスティアがタケミカズチのホームへ助けを求めに訪れ事情を説明した際に、(ミコト)達が13階層でベル達に『怪物進呈(パス・パレード)』を仕掛けたことを主神であるタケミカヅチとヘスティアに打ち明けたのであった。

ベル達がダンジョンから帰還してこない原因のひとつを担っているだろうことから、ヘスティアはしばらく沈黙を貫いていた。

ミアハ達が見守る側で、ヘスティアはその青みのかかった瞳を開け、(ミコト)達の顔を見渡した。

 

「ベル君達が戻ってこなかったら、君達のことを死ぬほど恨む、けれど憎みはしない。約束する」

 

ヘスティアの口から出た言葉に、(ミコト)達は目を見開いた。

慈悲深くすらある女神の寛容さと、その毅然(きぜん)とした眼差しに、彼女達は初めて主神以外の(もの)に心を打たれた。

 

「今は、どうかボクに力を貸してくれないかい?」

 

『―――仰せのままに』

 

自分達のやったことを許した上でのヘスティアからの懇願に、【タケミカヅチ・ファミリア】の六名は一糸乱れない動きで膝を床に付き、(こうべ)を垂れた。

団長の桜花(オウカ)を始め、女神の恩情に(こた)えようと忠誠を誓う団員達の姿を見て、タケミカズチだけでなくミアハ達も目を細めた。

その中でもヘファイストスは子供達の行いを清算して見せた神友(しんゆう)に笑みを送り、モニカは流石ヘスティア様、と誇らしげな顔を浮かべていた。

 

「モニカは、何か言わないでよかったの……?」

 

モニカの側にナァーザが近づき、なぜ何も言わないのかを尋ねる。

その質問に対し、モニカはナァーザの方を向き答えた。

 

「ここで彼らを責めてもベル達が帰還する訳ではないし、何よりヘスティア様がベルは無事だと言ったんだ。それなら責め立てるよりもベル達の捜索に時間を当てるべきだ。…まぁ、確かにいくつか言いたいことはあるのだが…」

 

少し悩んだ素振りを見せたモニカだったが、【タケミカヅチ・ファミリア】の面々から忠誠を誓われているヘスティアのいる方向を見直し答えた。

 

「ヘスティア様が彼らを責めないと言ったのだ。それなら眷属である私が責めるのは見当違いというものだろう?」

 

モニカのその答えを聞いたナァーザは、モニカの頭に手を伸ばし―――

 

「モニカ、いい子………」

 

優しく頭を撫で始めた。

 

「!こ、子ども扱いはやめてくれ、ナァーザ殿!恥ずかしいし、何より私はこういうことをされる年ではない!」

 

「大丈夫大丈夫……。私、モニカより年上……、だからお姉さん………」

 

「意味が分からん!あっ、ちょっ!乱暴に頭を撫でるのはやめろ!子ども扱いするなぁ!」

 

「……時間も惜しい。そろそろ話を先に進めたいのだが良いか、ナァーザにモニカよ?」

 

「「あっ………」」

 

両手を使いモニカの髪をくしゃくしゃにするように撫でまくっていたナァーザと、頭を撫でて子供扱いしてくるナァーザの手をどかそうとするモニカ達二人は、ミアハからの一言で顔を真っ赤にし、すぐにベル達捜索の会議に参加した。

そこから話し合いを進めた結果、『中層へ向かうには人数不足』という点で悩んでいると、ホームのドアが勢いよく開き、優男の神が現れた。

 

「ヘルメス!?何しに来た!?」

 

「ご挨拶だなぁ、タケミカズチ。神友のピンチに駆け付けたに決まっているじゃないか。ヘスティア、久しぶり。…そして君がモニカだね?晶達から話は聞いてるよ、よろしく頼むね」

 

「…ということは、貴殿が晶殿達の主神殿か。彼女達にはとてもお世話になった、よろしく頼む」

 

「モニカ君、そんな胡散臭い奴に挨拶なんてしなくていいよ!それよりヘルメス……どうしてここに?」

 

ヘルメスに律儀に挨拶を返すモニカを止めつつ、周囲の神達と同様に懐疑的な表情を浮かべるヘスティアに、目の前まで来たヘルメスはにっと口を上げ、懐から冒険者依頼(クエスト)の依頼書を取り出した。

 

「困っているんだろう?」

 

ひらひらとヘスティアの眼前でベル捜索の依頼書を揺らすヘルメルに、ぐっと言葉を詰まらせ何も言い返せないヘスティア。

 

「何でベル・クラネルを助けようとするんだ、ヘルメス。言え」

 

「おいおいタケミカヅチ、オレはヘルメスだぜ!?心友(マブダチ)のヘスティアが困ってるなら、いくらでも手を貸すさ!」

 

「貴方、下界に来てからは碌にヘスティアと関わりを持っていなかったじゃない」

 

「随分といい加減な友であるな」

 

「ははっ、こいつは手厳しいな、ヘファイストス、ミアハ!」

 

タケミカヅチはヘルメスを警戒し、ヘファイストスとミアハは呆れた声を上げた。

芝居がかった振る舞いをするヘルメスと主神達のそんなやり取りに、モニカやナァーザ、(ミコト)達は置いてけぼりを食らっていた。

 

「でも、ヘスティアに協力したいというのは本当さ。―――オレもベル君を助けたいんだよ。……どうかな、ヘスティア?」

 

それまでの騒がしい立ち振る舞いを止め、一転して真面目な声音を醸し出したヘルメス。

笑みを浮かべたまま軽く両手を開き、場にいる者達の顔を順々に見回し、最後にヘスティアで視線を止めたヘルメスは、弓なりにしている目を開いて笑いかけた。

そんなヘルメスの橙光色(とうこうしょく)の瞳を数秒直視したヘスティアは、ふぅと吐息した。

 

「分かった……お願いするよ、ヘルメス」

 

「ああ、任されたよ!」

 

「…いいのか、ヘスティア?」

 

「今はベル君達の救助を最優先にする。人手が欲しいのは事実だからね」

 

「……お前がそう言うなら、わかった。これでヘルメスの団員が加わるわけだが……これならいけるか?」

 

「でもヘルメスの派閥って、確かLv.2の構成員がほとんどじゃなかったかしら?」

 

「それについてはどうなのだ、ヘルメス」

 

「ああ、ヘファイストスの言うとおりだ。生憎他の団員は()()()()出払っているけど、今回はこのアスフィを連れていく!うちのエース()()()だ、安心してくれ!」

 

その言葉を信じたミアハ達は(ミコト)達を含めた捜索隊を送り出すことと決めた。

その一方で、主神によって捜索に加わることになったアスフィは一人重いため息をつきつつ、ヘルメスに近づき声を潜めて気になったことを尋ねた。

 

「ヘルメス様…先程、私を『連れていく』とおっしゃっていましたが、まさか……」

 

「ああ、オレも同行する」

 

ヘルメスのその言葉に眼鏡が下がり落ちかけたが、何とか指で押さえたアスフィ。

 

「神がダンジョンに潜るのは、禁止事項ではないのですかっ」

 

「迂闊な真似をするのが不味い、っていうだけさ。なぁに、ギルドに気付かれない内に行って、さっさと帰ってくればいい。言っただろう?俺もベル君を助けたい、って」

 

「ヘルメス様、まさか最初からそのつもりで私を……!」

 

「ははは、オレの護衛(おもり)を頼んだぞ、アスフィ?」

 

ヘルメスの言葉に眉を逆立てた上に頬を引きつらせるアスフィに対し、ニヤニヤ笑いながらアスフィに囁いていたヘルメスだったが―――

 

「ぐおっ!?」

 

耳聡(みみざと)く二人の密談を聞きつけたヘスティアが首をヘルメス達のもとへ反転させ、ツインテールの一房をぐにゃあと(うごめ)かしてヘルメスの首へヒュッっと巻き付けた。

 

「―――ボクも連れてけ、ヘルメス。ボクもベル君を助けに行く。自分は何もしないまま、あの子のことを誰かに任せるなんてできない」

 

「ま、待ってくれ、ヘスティア!?落ち着け!」

 

背後から首を取られ仰け反るヘルメスの顔へぬおっと迫ったヘスティアは、有無を言わせない迫力でヘルメスに言いつける。

その光景を見たアスフィとヘスティアの発言を聞いたモニカはぎょっとし、慌てふためくヘルメスは漆黒の髪を何とか解ほどいてヘスティアと向き合い、目を合わせて説得するように語りかけた。

 

「ダンジョンは危険だ。『力』が使えないオレ達なんて、モンスターに襲われれば一溜まりもない。何より――()()()()()()()

 

「わかっているさ。それでもヘルメスが行くなら、あと神の一柱(ひとり)二柱(ふたり)増えたって問題ないだろう?―――だから、モニカ君にはボクの護衛をお願いしたい」

 

「「「「「「「はぁッ!?」」」」」」」

 

ヘスティアの発言にその場にいた全員が驚愕の声を上げた。

どうにかヘスティアをダンジョンに行かせないように説得しようとするミアハ達だったが、当事者であるモニカはヘスティアの真剣な表情を見て決意を固めた。

 

「……分かりました。このモニカ、必ずヘスティア様を守ってみせます!」

 

「……よろしく頼むぜっ、モニカ君!」

 

「はいっ!」

 

「あんた達はねぇ…」

 

「無理はするなよ、二人共?」

 

ヘルメスと同様にヘスティア、そしてモニカの決意が固いことを悟ったヘファイストスとタケミカヅチは、呆れと苦笑をそれぞれ浮かべた。

そんな心配を他所に、ヘスティアとモニカはベル救出への闘志を燃やしていると、「モニカよ」とナァーザを伴ったミアハが、「ヘスティア」とヘファイストスがそれぞれ個別に呼びかけた。

 

「どうしたのですか、ミアハ様?それにナァーザ殿も」

 

「モニカ、これ……」

ナァーザから渡されたのは、大量の回復薬(ポーション)の詰まった小鞄(ポーチ)で、赤、青、緑…と何種類もの色彩が宿る飲み薬に、モニカは目を見張った。

 

「私はこれくらいのことしか出来ないから……付いて行けなくてごめん、モニカ……」

 

「いや、こんなに貰って申し訳ないぐらいだ。ありがとう、ナァーザ殿……だから頭をなでるなぁ!」

 

顔を曇らせながら謝るナァーザに笑顔で感謝を伝えたモニカは、再び頭をくしゃくしゃになでられ、その背後ではヘスティアがヘファイストスからヴェルフの作品を受け取っていた。

そんな仲間達の好意にヘスティア達はあらためて感謝を告げ、その場はいったん解散。

日没後にバベルの西門前で集合することとなった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして時間は経ち日没後。

バベルの西門前にある中央広場(セントラルパーク)には、サポーターのような恰好をしたヘスティアにモニカ、(ミコト)達【タケミカヅチ・ファミリア】のヘルメス達を除くベル達捜索のメンバー、そして―――

 

「モニカさん、昨日ぶりですね!」

 

「ツ、ツムギ殿!?どうしてここに!」

 

どういうわけかツムギが居た。

話を聞くと、晶からベル達捜索の話を聞き、先日のお礼に力を貸そうと考えヘルメスには無承諾でやって来たとのこと。

大樹での戦いで武器が壊れていたのを覚えていたモニカは、武器はどうするのかと聞いたところ、手の甲の部分を金の武具で覆われたピンクのミトン型の籠手を見せてきた。

 

「御覧の通り、武器ならちゃんとありますからご安心を!……それで、そちらの方がモニカさんの主神の方ですかね?初めまして、【ヘルメス・ファミリア】所属のツムギ・ココンと申します。前回の冒険者依頼(クエスト)ではモニカさんに大変お世話になりました。今回はその恩返しとしてこの捜索隊に参加させていただきます」

 

「キミの想像通り、ボクはモニカ君の主神のヘスティアだ。探索に参加してくれて感謝するよ」

 

そう言って挨拶を交わすと、ツムギは他の捜索隊の下へ挨拶に行った。

それからいつまでもやってこないヘルメスにヘスティアが痺れを切らしお冠になったあたりで、ヘルメスがアスフィと共にバベルの中から現れた。

 

「遅いよ、ヘルメス!」

 

「いやぁ、野暮用というか手続というか……色々あってね。遅れて悪かった」

 

「ツムギ!?アナタ何故ここにいるのですか!」

 

「晶さんから話を聞いてぜひともモニカさんとアスフィ様の力になれればと思いまして!」

 

少し疲れた顔でバベルの最上階を仰いだ後、素直に謝ったとしたヘルメス。

対してアスフィは目の前に呼んだはずのないツムギが居たことに驚き問い詰め、ツムギは自分が参加した経緯を説明した。

逸る気持ちを抑えきれないヘスティアは、早く出発しようと号令をかけようとしたその瞬間、突如モニカがサーベルの(つか)に手をかけた状態でヘスティアの目の前に出てきた。

何事かと思っていると、身を寄せてきた(ミコト)に耳打ちされたことで、謎の人物が歩み寄ってきていることに気付いた。

ヘスティア達の正面で足を止めた覆面を被った女性の冒険者の登場に身構えたモニカ達に、ヘルメスは笑いかけた。

 

「彼女は超強い助っ人だよ、心配しなくても大丈夫だ」

 

ヘルメスの言葉を信じ覆面の冒険者を加えた捜索隊はバベルの門前を出発し、ベル達救出のため広大な地下迷宮へと進入した。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

無事にベル達捜索隊にヘルメス&アスフィと謎の覆面冒険者、そしてオリジナルとしてツムギが参戦です。
前章ではあまりツムギを活躍させれなかったので、今章ではツムギがどれだけ戦えるのかを次話で書ければなと思います。
ナァーザの年齢が分からなかったのですが、絶対モニカよりも年上だろうなって考えたので頭をなでさせました。
ちなみに今のモニカは休暇中なので前話から帽子とコートを着ていません。
グラブルのリミテッドモニカの格好をイメージしていただければと思います。
一体ダンジョンをどういう風に進んでいくのか、是非とも次回をお楽しみください。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第51話 『実力』

ポケモン最終回、タイプ・ワイルド流れたところで涙が止まりませんでした。
どうも、刺身の盛り合わせです。

今回はダンジョン突入後、第17階層でのお話です。
本当は道中ヘルメスとヘスティアの会話などいくつかイベントがありましたが、今回はカットします。
17階層で現れる敵と言えばゴライアス、そんな大物相手にツムギが大活躍する回になっています。
どんな内容になっているか、お楽しみください。

それとアンケート終了しました。
結果は「今の章(第四章)が終わってからで・・・」が多かったので、設定集は第四章が終わったら投稿することにします。
また、今回後書きにオマケがありますので、ぜひ読んでください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


覆面の冒険者ことリュー・リオン、そしてアスフィの活躍により、(ミコト)達が13階層でベル達に怪物進呈(パス・パレード)を仕掛けた場所へ辿り着いた一行は、現場の状況から正規の道筋を通り安全階層(セーフティポイント)である18階層へ向かったとの予測を立て、途中で鉢合わせする可能性を考慮し正規ルートで18階層を目指していた。

しかし、17階層にて迷宮の孤王(モンスターレックス)であるゴライアスが、18階層に繋がる洞窟の前に陣取っていたため進むことが出来ず、足止めを食らっていた。

 

「……つまり、これまで倒してきたモンスター達みたいに倒すことは不可能、ってことかい?」

 

「はい。ゴライアスの推定能力はLv.4、中堅ファミリアでも犠牲を覚悟で挑まなければならない程凶悪です。そんな相手にこの少数パーティで挑むのは自殺行為と言っても過言ではありません」

 

「でも、それだと18階層にいると思われる彼の下へ行けないのでは?」

 

「えぇ。ですから、倒すのではなく、『足止め』を行います。……ツムギ」

 

リューからの疑問点に『足止め』と答えたアスフィは側にいたツムギに声をかけた。

 

「貴方には、ゴライアスの『足止め』をお願いします。方法についてはあなたに一任します」

 

先程アスフィ自らが少数パーティで挑むのは自殺行為と言ったはずなのに、ツムギ一人でゴライアスの足止めを任せようとしていることに、捜索隊の一行(ヘルメス除く)は驚きを隠せなかった。

 

「ちょっと待てアスフィ殿。貴公は何を言っているのか分かっているのか!?」

 

「そうですアスフィ殿、あまりにも危険です!」

 

「まぁまぁ、安心してください皆さん。これぐらい何ともありませんから!それでは私がゴライアスの動きを止めてきますので、アスフィ様は皆さんの誘導をお願いしますね!」

 

一人で足止めを辞めさせるべくアスフィを説得しようとした一行だったが、指示を受けたツムギが説得を止めさせ、これからの流れを簡単に伝えるとゴライアスの下に向けて駆け出していった。

 

「おいヘルメス、なんでキミは止めないでいるんだ!?」

 

「何で止めないかって…止める必要がないからだよ、ヘスティア?」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ゴライアスの下に向けて一人駆け抜けていくツムギ。

浮かべる表情は真剣そのものだったが、その裏側では所属ファミリアの団長で、かつ憧れの存在である『アスフィ・アル・アンドロメダ』への想いを募らせていた。

 

『アスフィ様が私にお願い!この期待に絶対応えてみせる!』

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

そんな自分に向かってくるツムギを見つけたゴライアスは、けたたましい咆哮を上げると、ツムギを叩き潰すべく、右の拳を握り締め一気に頭上までに振り上げようとした。

 

「そこ、ですッッ!!」

 

ゴライアスが右腕を振り上げきったところで、両手に装備した籠手をゴライアスの右腕に向けて勢いよく振り上げた。

すると、手の甲を覆う金の武具に開いた穴の部分から糸が出てきたかと思うと、ゴライアスの右腕めがけて飛んで行き、右腕を縛り上げた。

自分の右腕に巻き付いた糸など気にせず右腕をツムギに向けて勢いよく振り下ろそうとするゴライアスだったが―――

 

「そうは、させませんッッ!!ぬおりゃァァァァァァア!!」

 

力強い掛け声と共に一本背負いの要領で、全身を使ってゴライアスの右腕と繋がっている糸を右方向に全力で引っ張るツムギ。

ゴライアスがツムギへ振り下ろそうとしていた右腕は、ツムギが全力で糸を引っ張ったことで直撃せず、ゴライアスの左前方向に大きく軌道を逸らされた。

更に、右腕を無理やり前に引っ張られたことで前にバランスを崩したゴライアスは、足がつんのめった結果バランスを取ることが出来なくなり―――

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!?』

 

―――凄まじい音を上げながら右半身を下にする形で地面に倒れ伏したのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「「「「「………………」」」」」

 

【ヘスティア・ファミリア】と【タケミカヅチ・ファミリア】の一行は、目の前で起こった出来事に言葉を失っていた。

その出来事を引き起こした張本人であるツムギは、立ち上がろうとしたゴライアスを糸で地面に縛り付けていた

その光景を見ていたアスフィは主神であるヘルメスとモニカ達の居る方向へ振り向いた。

 

「ツムギがゴライアスを地面に縛り付けたことで時間は稼げましたので、長時間の足止めは出来ません。なので、今の内に18階層に繋がる洞窟へ向かいます。皆さん走って付いて来てください!」

 

そうして先頭をアスフィにヘルメスとヘスティア、モニカ、【タケミカヅチ・ファミリア】の面々、殿(しんがり)にリューの並びで地面に倒れているゴライアスの横を走り抜けていくこととなった。

 

「……ヘルメス。改めて聞くけど、君の団員は軒並みLv.2じゃなかったのかい?」

 

「はははっ、そういえば【ランクアップ】を申請するのを忘れてたねぇ!」

 

ヘスティアからの疑惑の目にいけしゃあしゃあと答えるヘルメス。

そうして倒れたゴライアスの側を走っていると、どこからか『ブチッ』っという音が響いた。

 

「ご、ごめんなさいアスフィ様!そろそろ押さえるのも限界です~!!」

 

ツムギが言った通り、ゴライアスを地面に縛り付けていた糸は一本、二本…と次第に切れ始めていた。

 

「ツムギ、貴女も急いで合流しなさい!他の皆さんももっと走って!」

 

「分かりました、アスフィ様!」

 

アスフィの指示に従い、18階層へ向かうモニカ達の列の最後尾に合流したツムギ。

その間にも糸はどんどんと千切れていき―――

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

モニカ達が18階層への洞窟にあと一歩で到着というところで、縛り付けていた糸が完全に千切れたゴライアスが、立ち上がり咆哮を上げた。

 

「ヤバいヤバいヤバい、走るんだみんなぁ!!」

 

「「「「ウオオオオオオオオオ!!?」」」」

 

自分の右足の側に侵入者達を見つけたゴライアスは、拳よりも足で踏みつぶした方が早いと考えたのか、右足を上げるとモニカ達のいる場所へ動かし、全員を一気に踏みつぶそうとした。

 

「そうは、させない……ッ!!」

 

しかし、最後尾にいリューが跳び上がり、長い木刀を振り抜くことでゴライアスの右足の下腿部を勢いよく殴り飛ばした。

勢いよく殴り飛ばされたゴライアスの右足は左咆哮へと吹き飛ばされたことによってバランスを崩し、再び地面に倒れることとなった。

ゴライアスが倒れてくる前に何とか洞窟内に入ることが出来た一行

しかし、ゴライアスが倒れた時に発生した風に背中を押され、下り坂を全力で駆け下りることとなった。

 

「ぐぬあぁっ!?」

 

「ヘスティア様、ご無事ですか!?」

 

下り坂を駆け抜け出口と思われる穴から何とか外に出ることが出来た一行。

ヘスティアは生い茂った草に足を取られ顔から地面にダイブしており、モニカはそんなヘスティアを心配して近づき、ヘルメスは地面に座り込んで大笑い、それ以外の冒険者達はリューを除いて盛大に肩で息をしており、その中でもアスフィは何故か一番疲弊していた。

 

「おおおおお、顔がぁぁぁぁ……顔が焼けるように熱いぃぃぃぃぃ!?モニカ君、ボクの顔何ともなってないよね!?」

 

「……大丈夫です。特に怪我もないみたいなので安心してください、ヘスティア様」

 

「あっはははははっ!?死ぬかと思ったー!」

 

それぞれ落ち着いてきたことで自分達が人だかりに囲まれていることに気付いた一行は、顔を上げ自分達を囲んでいる人だかりを見渡した。

人だかりの中からこちらを見ているベルを見つけたヘスティアは、青みがかった双眸(そうぼう)をまん丸にすると、ベルに向けて転がるように走り出してベルの腹に突撃した。

そのままの勢いでベルを押し倒すと、人前にもかかわらず体中をぺたぺたと触れ、両の頬をぐにぐにと引っ張っていたが、ベルによって頬を触っていた手を止められた。

なぜダンジョンの中にヘスティアがいるのか聞くために上体を起こそうとしたベルだったが、言葉を遮られるように首に両手を回され、一杯に抱き着かれた。

 

「……良かったぁ」

 

突然の抱擁に口をパクパクさせて言葉をなくしたベルだったが、ヘスティアのかき消えそうな声を聞いた瞬間に力が抜け冷静になったことで、ヘスティアがダンジョン内にいる理由に気付いたベルは、ヘスティアに抱き返そうとした瞬間に現在の自分の状況に気付き、上げた手の行き場をなくしていた。

 

「いい加減にしてください、ヘスティア様」

 

「あ、コラッ、感動の再開に水を差すんじゃない!?は、離せーっ!?」

 

リリに襟首を捕まれベルから離されるヘスティア。

必死に抵抗するものの、『恩恵(ステイタス)』があるリリに勝てるわけがなく、離れた所へ引きずられていった。

 

「ベル、やはり貴公は無事だったか」

 

「え……モ、モニカさん!?帰ってきてたんですか!?お帰りなさい、モニカさん!」

 

「…ただいま、ベル」

 

返事と共に穏やかな笑みを浮かべるモニカ。

初めて見るモニカのアルカイックスマイルに普段とのギャップを感じたベルは、顔を赤らめたのであった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

というわけでツムギ大活躍でした。
これまではあまり描写していませんでしたが、ツムギはゴライアスは倒せないけど足止めは出来るぐらい強いです。
そんなことが出来る理由は、ツムギの持つ『縦横操糸(読み方は今後発表予定)』という『レアスキル』が大きく影響しています。
このスキルは簡単に説明すると、糸を自分の好きな強度に変更し、自分の好きな場所へ向かわせることが出来るという内容になっていて、ツムギはこのスキルのおかげで糸を使って戦うことが出来る……という設定になっています。

そして、ようやくベルと再会したモニカ。
ちなみに背後では空気を読んで黙って二人の会話を見ているリューと、この二人に突撃しようとしてアスフィに止められているヘルメスが居たりします。
最後のベルがドキッとした部分は作者が入れたかった部分です。
こういう描写は今後どこかでふらっと入れることが出来たらなぁと思います。
このことについては今後のお楽しみ、ということで…

前書きにも書いた通り、後書きの最後におまけがあります。
内容としては前回の最後と17階層の間のお話で、モニカとリューのお話になっています。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。



おまけ

バベル内部にあるダンジョンへ向かうための螺旋階段を下る際中、モニカはヘスティアの護衛を【タケミカヅチ・ファミリア】の面々に任せると、一行の一番後ろを歩いていた覆面の冒険者の下へ向かった。

「…もしかしてなのだが、貴公は『豊穣の女主人』で働くリュー殿なのか?」

「……その通りです。よく分かりましたね、ヴァイスヴィントさん」

「まぁ、先ほど地上で向かい合った際に気付いたのだがな……改めてだが、ベルの捜索に参加してくれて感謝する、リュー殿」

「……シルから『ベルさんを助けて』と頼まれましたから」

「たとえそうだったとしても、ここまで助けに来てくれたのだ。それだけで感謝に値する、というものだ。……それと、下の名前で呼ぶのは長いだろうし、モニカと呼んでくれ」

「……分かりました。それでは、今回私がここにいることは他の方には内緒にしてください、モニカさん」

「了解した、リュー殿」

話を終えたモニカは、再びヘスティアの護衛に戻るのであった。


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第52話 『顔合わせ』

ギリギリエイプリルフールに間に合いました。
メモリア・フレーゼのエイプリルフールイベント、ベートがアイドルやってて笑いました。
どうも、ギリギリ4月1日終わる前に投稿出来た刺身の盛り合わせです。

今回は中々機会のなかったヴェルフとの顔合わせ回です。
また、今回は前回よりも文章量が少なめになっています。
そして、今日はエイプリルフールなので、特別エピソード付き。
後書きの最後にあるので、ぜひ読んでみてください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。

2023/06/27 誤字修正を行いました。



ベルと再会したモニカは、一旦ヘルメスとアスフィ、ツムギ、リューと別れ、ベルが【ロキ・ファミリア】から貸し与えられているテントへ向かい、【タケミカヅチ・ファミリア】の仕掛けた『怪物進呈(パス・パレード)』について話し合いを行った。

中々話し合いは進まなかったものの、怪物進呈(パス・パレード)についてはそれぞれのファミリアで落としどころを作り、今後の予定としては【ロキ・ファミリア】に階層主(ゴライアス)を倒してもらい、その後に18階層を出発することとなった。

また、【ロキ・ファミリア】が移動を再開するのが二日後とのことなので、明日は『リヴィラの街』へ向かうこととなった。

話し合いがひと段落ついたところで、初めて会うモニカとヴェルフの顔合わせがベル主催で行われた。

 

「ヴェルフ、僕と同じファミリアの人で、ヴェルフがパーティに入る前から一緒に組んでいるモニカさん。そして、モニカさんが冒険者依頼(クエスト)で不在の間にパーティに加わったヴェルフです!」

 

「ただいま紹介に預かった、【ヘスティア・ファミリア】所属の冒険者、モニカ・ヴァイスヴィントだ。私不在の間、ベル達と共にダンジョンに潜ってくれて感謝する」

 

「俺はヴェルフ、ヴェルフ・クロッゾだ。【ヘファイストス・ファミリア】所属の鍛冶師で、ベルと専属契約を結んでる。頼りになる人、ってベルから聞いてるぜ「ちょっ、ヴェルフ!?」……一つ、聞いておきたいことがあるんだが、お前は『魔剣』が欲しいか?」

 

真剣な表情をしたヴェルフのその言葉により、和やかだった雰囲気が一変、水を打ったようにテント内が静かになった。

ヴェルフが魔剣を作りたがらない理由を知っているベルとヘスティア、リリは緊迫した表情になり、アスフィやツムギ、リューに(ミコト)達はベル達と場の雰囲気から真剣な表情を、ヘルメスはにやけた表情で事の成り行きを見ていた。

 

「『魔剣』…もしや『クロッゾの魔剣』か?私としては、そこまで欲しいとは思わんな」

 

「……何でそう思ったか、聞いてもいいか?」

 

「実際に使用したことがないから分からないが、『クロッゾの魔剣』は通常の魔剣よりも強力だと聞いた。ここぞという時の切り札としては持っておいて損はないが、魔剣に頼りすぎてはきっと私は強くなれない。だから私は『魔剣』をそこまで欲しいとは思わない。……どうだ、貴公の納得のいく答えだったか?」

 

「……あぁ、十分だ。もしも武器や防具が欲しかったら言ってくれ。専用の作品を作ってやるよ、モニカ!」

 

「よろしく頼む、ヴェルフ!」

 

モニカの考えを聞き、笑顔を浮かべて右手を差し出すヴェルフ。

それに応えたモニカは右手を差し出し、ヴェルフと握手を交わした。

 

「しかし、意外だったな」

 

一体何が意外だったのか気になったモニカは、ヴェルフに「何が意外だったのだ?」と問いただした。

 

「いや何、ベルが頼りになる人っていうからな。どんな奴なのかと思ってたが、まさか子供だったとはな!」

 

ヴェルフの発言を受けて笑顔のまま固まるモニカ。

モニカの年齢を知っているベルとヘスティア、リリとツムギは苦笑いを浮かべ、モニカの年齢を知らない他のメンバーは。疑問の表情でモニカとヴェルフを見ていた。

 

「―――ヴェルフ君、言っておくがモニカ君の年齢は17歳だ。このことについては神であるこのボクが保証するよ?」

 

「いやいや流石に冗談が過ぎますよ、ヘスティア様……え、マジなんですか?リリ助と少ししか身長が変わらないモニカが?俺と同い年の17歳?………ご冗談ですよね、ヘスティア様?」

 

「先ほどから黙って聞いていれば……!私はれっきとした17歳だ、子供ではない!いいな、ヴェルフ!」

 

「いやいやいや、その身長で17歳は無理があるだろ!?……もしかしてだが、モニカお前、ハーフドワーフか?」

 

「言うに事欠いてそういうことを言うのか貴様!?えぇいそこに直れ、私のサーベルの錆にしてくれる!」

 

「ちょっ、ダメですってモニカさん!ここ借りてるテントだから、暴れたらダメですってばぁ!」

 

固まってピクリとも動かないモニカの代わりに真剣な表情で真実を告げるヘスティア。

それでも信じないヴェルフへ額に青筋を浮かべながら自分の年齢を告げたモニカだったが、信じてもらえなかった上にハーフドワーフと言われ限界を迎えたモニカは、サーベルを引き抜くとヴェルフに剣先を向け、斬りかかろうとした。

しかし、【ロキ・ファミリア】からの借り物のテントで暴れてはマズいと考えたベルによって、羽交い絞めにされたのであった。

その後、ヴェルフがモニカに謝罪を行い、女性陣はテント内、男性陣は見張り兼野宿という形で就寝することとなったのであった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、ヴェルフとの顔合わせでした。
モニカの魔剣についての考えは、本作でのモニカならこう言うかもと考えて書いたので、原作のモニカとはちょっと離れてるかもです。
また、ヴェルフとモニカは同い年なので、モニカの年齢を聞いたヴェルフなら面白い感じに返答してもらおうと考えたらこうなりました。

前書きに書いた通り、最後にエイプリルフールのオマケがあります。
即興で書いたため完成度はかなり低いですし、ネタモリモリで本編とかなりかけ離れた内容となっています。
読む際は温かい目でお願いします。

次回は今章で一番書きたかった内容なので、頑張って書いていこうと思います。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。



~エイプリルフールのオマケ~

――オラリオにて

『そこの白髪の少年、俺と良いことしないかい?』

『いやあの、僕心に決めた人がいるので……って何でいきなりお尻揉むんですか!?』

『まぁまぁ、良いではないか良いではないか。痛いのは一瞬、後は最高…「待てぇ!」むっ、この声は!』

『ラブリー!キュアリー!ブレイブリー!マジカルレベル・インフィニット!魔法提督ラブリー★モニカ!空に代わって…指揮を執る!』ビシーン!

『ラブリー★モニカ!助けに来てくれたんですか!』

『ラブリー★モニカだとぉ……許せる!せっかくだからキミも俺と一緒に良いことしようや?』

『オラリオの少年少女の悪影響となる神は、私がお仕置きをする!行くぞぉぉぉぉ!』

「ぉぉぉ……ハッ!…何だったのだ、今の夢は」

「おはようございますモニカさん。…顔色悪いですが、どうしたんですかモニカさん?何か変な夢でも見たんですか?」

「………ベル、貴公最近尻を揉まれたりしていないか?」

「いきなりどういうことですかモニカさん!?」

「何ぃ!ベル君がお尻を揉まれただってぇ!?」

「違いますよ神様!?」

この後30分かけて誤解を解いたモニカであった。


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第53話 『乙女の楽園』

今年の春から就職した結果、これまで以上に執筆時間が取れなくなり、毎日投稿している人の凄さを身にしみて感じることが出来ました。
どうも、初めての本格的な仕事にかなり疲労困憊な刺身の盛り合わせです。

ということで最新話です。
今回は水浴び回。
原作ではベル君がTo LOVEる回ですが、本作でももちろんTO LOVEってもらいます。
どんな内容なのかは読んでからのお楽しみということで。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。



18階層の『夜』が明け、地上でいう『朝』が訪れた。

ロキ・ファミリアから貰った朝食を食べたモニカ達は、アイズに『リヴィラの街』を案内してもらう約束をしていたとのことで、全員でリヴィラの街を回っていた。

街中にある商店のぼったくり値段に驚愕したり、ベルが冒険者に絡まれたりなど色々とあった後、リヴィラの街から野営地に戻ると18階層は『昼』の時間になっていた。

野営地の方々に散らばろうとしたところで、ティオナが『水浴び』の提案をしてきた。

体を洗いたい衝動にかられた女性陣は、野営地に男性組を残して18階層内の森の奥へ向かうと、十M(メドル)ほどの段差から水流が落下する大きな滝、その下にある大きな泉に辿り着いた。

ここまでの交流で物怖じも遠慮もなくなった女性陣は、言葉を交わしながら身に付けている服を次々と脱いでいった。

ヘスティアとリリなどの一部喧騒が絶えない中、見張りの者達に囲まれながら女性陣の水浴びは始まったのである。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ヘスティアとリリ、ツムギやアスフィ、アイズにティオネ・ティオナが水浴びを行う中、モニカも水浴びに参加していた。

 

「うひゃ~、これは気持ちいいねぇ、モニカ君!」

 

「えぇ、本当ですね………」

 

そのように返答したモニカだったが、その目線はヘスティアの顔より下…具体的にはヘスティアの胸部に目が行っていた。

 

「?……ボクの胸に何か付いていたかい、モニカ君?」バルンバルン

 

「いえ、何というか…、大きいと思いまして……」

 

「確かに大きいですよね……やっぱり神だからなのでしょうか、ヘスティア様?」

 

いつの間にか側に近づいて来ていたリリもモニカの言葉に同意の言葉を発しながら、ヘスティアの特大メロンをジッと見つめていた。

 

「ボクは神達の中でもトップクラスの大きさだからね。それに、不変の存在であるボク達神と違って、君達は成長することが出来るんだぜ?今から10年後にはボクと同じ…それ以上にデカくなってるかもしれないぜ?それにしても………ふんっっ!ボクの圧勝だな!」

 

二人の目線がどこに向かっているのかを理解したヘスティアは、二人に慰めの言葉をかけた。

その後周囲を見渡したかと思うと、近くでティオネと水浴びをしていたアイズーーー具体的にはアイズの形の良い双丘を凝視したかと思うと、自分の持つ巨峰を見せつけるかのように豪快に勢いよく胸を張り、アイズに勝ち誇った。

 

「何と張り合っているんですか、ヘスティア様……」

 

「ヘスティア様、あまりそういうことは…「―――いいいいいいいいいいいいいっ!?」…は?」

 

ヘスティアの行動にげんなりした視線を送るリリ。

リリに続いてヘスティアの行動に苦言を言おうとしたモニカだったが、聞きなれた声がモニカ達の下に落ちてきた。

 

「げほっ、ごほっ、ごふっ!?」

 

水深の深かった落下地点から勢いよく顔を出したベルは、前へ転ぶように慌てて浅瀬へ避難すると水面に手足をついて四つん這いとなり、盛大に咳き込むと荒い息を繰り返した。

 

「…アルゴノゥト君!?なになにっ、君も水浴びしに来たの?」

 

「大人しそうな顔をして……やるわねぇ、あんたも」

 

頭上から降ってきた声にベルがおそるおそる視線を上げると、ティオナはベルの顔を覗き込むように前屈みで、ティオネは長い髪の一房をすくいながら落下してきたベルを見つめていた。

 

「な、ななななっ……!?」

 

「え、えぇぇぇぇっ……!?」

 

「まさか……ヘルメス様?」

 

「あのアホ神、後で絶対縛り上げる……!」

 

ベルの視界右には、真っ赤になりその場に立ち尽くす(ミコト)とその場で勢いよく水中に浸かる千草(チグサ)、眼鏡を外しているアスフィはベルが落ちてきた辺りの枝葉を恐ろしい眼光で睨みつけ、ツムギは両手で胸元を隠しながらアスフィと同じ場所を軽蔑の視線で睨みつけていた。

 

「ベル君、君ってやつは…………!」

 

「な、何をなさっているんですかベル様ぁ!?」

 

「ベル。貴公、何をやったのか分かっているのだろうな……!」

 

ベルの視界左には、水底にかろうじて足が届いているのか、大きな胸の上半分を水面に浮かせた状態のヘスティアが顔を赤くしながら呻き、ヘスティアと同じ体勢でリリは甲高い悲鳴を散らし、モニカは額に青筋を浮かべていた。

 

「……ぁ」

 

そして、ベルの視界の奥、後継の中心には滝を背に、頬を紅色に染めながら体を抱くようにして胸を隠すアイズがいた。

 

「ご―――ごめんなさぁあああああああああああああああああああああああああいっ!?」

 

そんな姿を目に焼き付けてしまったベルは、一瞬で顔を真っ赤に染め上げると、襲い掛かってきた見張りの人達(主に怒り心頭のレフィーヤ)を瞬く間に置き去りにして、泉から決河の勢いで飛び出し、生涯最高速度で森の奥へ逃げ出したのであった。

森の奥へ逃げ出して以降、行方不明になっていたベルだったが、夕餉の直前に野営地へ帰ってきてすぐ、裸体を見てしまった面々に自身が地面に埋まるほどの土下座を繰り返した。

(ヘルメス)に唆されたということもあり、手厳しく注意されるだけとなったが―――

 

「……そろそろ下ろしてくれてもいいんじゃないかい、ヘスティア?」

 

「下ろすわけがないだろうが!ツムギ君、もっと縛り上げるんだ!」

 

「了解です、神ヘスティア!私達だけでなく、アスフィ様の裸まで見るなんて万死に値する!……大人しく反省しろ、このアホ神がぁぁぁあ!!」

 

「痛い痛い痛い痛い!出てくる!俺の中から何かが出てくるから!ストップ、ストップ!」

 

水浴びの覗き+ベルを唆した元凶として、女性陣全員からの制裁に加えてツムギの糸で縛られ吊るされたヘルメスなのであった。

 

「ベル。今回は注意だけで許されたが、次はきっとああなるぞ。そうならないためにも貴公は断ることを覚えろ、いいな?」

 

「はい、肝に銘じておきます……」

 

 

 

 

 

~夜、リヴィラの街にある酒場にて~

 

「これが【万能者(ペルセウス)】が作った魔道具(マジックアイテム)さ。効果のほどは保証しよう」

 

「……本当に2()()()借りていいんですかい、神の旦那?」

 

「あぁ。ただし、条件としてだが……オレを楽しませてくれる、面白い見世物(ショー)にしてくれよ?」

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということでベル君のTo LOVEる回でした。
一部のヘスティアやリリのセリフが原作とは違う場面で発していますが、今話は原作ではなくアニメ版をベースに執筆しています。
また、本来のプロットでは『周囲の胸の大きさに嫉妬したモニカとティオナが無い胸同盟を組んでピシガシグッグッする』という内容になっていて、途中まで書いたところで違和感が凄かったので全部ボツにして新たに書き直したのもあって、かなり投稿が遅くなっちゃいました。

そして本文の最後のモルドとヘルメスの会話で出た『2つ』という言葉。
これが何を意味するのかは、ぜひ次回をお楽しみに。

今後の投稿速度についてですが、一週間に一本のペースで投稿出来ればなぁと思います。
かなり投稿頻度が遅くなるので、ゆっくり待っていてください。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


~本編に少し関わってくるかもなお話~
最近スマホを変えたので、ダンメモをやり始めました。
ストーリーの見直しが楽々です。
今後はどこかでキャラクエやストーリー、過去イベなどを使った小ネタ集なんかを投稿出来たらなぁ…とか考えてます。


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第54話 『誘拐』

仕事を始めたおかげで休みの大切さを知ることが出来ました。
どうも、結局休みの一日をだらだら無為に過ごした刺身の盛り合わせです。

ということで最新話です。
今回はヘスティアとモニカがモルド達に誘拐される回です。
今回の視点主としてはヘスティア&モニカなので、ベルとモルドの決闘はバッサリカットです。

またモニカを巻き込むために少しだけ原作に出てこなかった魔道具が出てきています。
それが一体何なのか、分かる人はいるかなぁ。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。



「ヘスティア様、このポーションを忘れています」

 

「ありがとうモニカ君。……よし、荷物はこれで完成っと」

 

ベルとヘルメスの覗き騒動から一夜明けた翌朝。

18階層を発つ【ロキ・ファミリア】に置いて行かれないようにそれぞれが帰還準備を行っていた。

そんな中でモニカは、ヘスティアと共にナァーザから譲り受けた回復薬(ポーション)入りの小鞄(ポーチ)に道具の詰め込み作業を行い、【ロキ・ファミリア】から借りたテントを返却のために二人でたたもうとしていた。

 

「……!何者だ!」

 

がさり、という音を聞いて瞬時にヘスティアの背後へ立ち、サーベルの柄に手を添えいつでも抜刀が可能な状態を取り、周囲を警戒するモニカ。

少し待ってみるものの、何も起きないことから葉擦れの音かも、とヘスティアから言われ警戒を解き柄から手を放したモニカだったが―――

 

「――――がッッ!!?」

 

「!?も、モニk―――むぐぅつ!?」

 

まるで何かに感電したかのような声を上げたかと思うと、白目を剥きその場に倒れたのである。

突然倒れたモニカを心配し、名前を呼ぼうとしたヘスティアであったが、突然口を塞がれたかと思うと、まるで太い腕を体に回されたかのように身動きが取れなくなってしまった。

やがてひょい、と自分の小柄な体が地面から浮くのと同時に、側で倒れていたモニカも体が浮き上がり、その場から移動し始めた。

 

(ま、まさか……透明人間!?)

 

ヘスティアの動揺を肯定するように、何もなかった虚空から羊皮紙の巻物が草地へと転がった。

拘束から逃げ出すべく足をばたばたと暴れさせるが空しく空中を泳ぎ、弾みで蓋が開いた小鞄(ポーチ)から回復薬(ポーション)などの道具がこぼれていく。

結局、くぐもった悲鳴を上げながら、ヘスティアは気絶したモニカと共に森の奥へ連行されていった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「うぅ…、ここは……」

 

「―――おい、コラッ、(ボク)を無視するんじゃ――ってモニカ君!?目が覚めたのかい!?体の方は何ともないかい!?」

 

森中に盛大に響き渡る剣戟(けんげき)の音と大勢の叫喚、そして何者かに体を揺らされたことで気絶から目を覚ましたモニカ。

モニカが目を覚ましたことに気付いたヘスティアによって、モルドという冒険者にベルへの『指導』のための餌として自分達が囚われの身であることを聞いたモニカは、怒りをあらわにしていた。

 

「それが冒険者のやることなのか……ッ!貴公ら、モルドという冒険者と話をさせろ!」

 

「ハァ?何でテメェをモルドに合わせなきゃいけねぇんだよ。大人しくそこで縛られてろよ、ガキ」

 

「ガキ扱いするな、私は17歳だ!…クソッ、私達を解放しろ!」

 

「そうだそうだ、縄を解いてボク達を解放しろぉー!」

 

ヘスティアとモニカが身体を必死に揺り動かしながら縄を解くよう、見張りの冒険者に訴えかけた。

するとヘスティア達の目線の先で、がさがさ、と緑葉の茂みが揺れ動いていた。

見張りの冒険者達は茂みを警戒しつつ剣を抜き放とうとすると、ひょこりっ、と長く白い耳を生やした兎―――アルミラージが顔を出した。

 

「ベ、ベルくん!?助けに来てくれたのかい!?」

 

「違ぇーよ!」

 

「『アルミラージ』か……脅かしやがって」

 

「確かに、見れば見る程ベルに似ているな……」

 

くりくりとした赤い瞳をきょろきょろと左右に振りながら茂みから抜け出したアルミラージ。

両手にはたっぷりの雲菓子(ハニークラウド)を持ち、まだ果物(フルーツ)を探し求めているのか、ヘスティア達の視界をぴょんぴょん飛び跳ねて横断していった。

冒険者の一人は溜息をつこうとしたところで、本来13,14階層にいる筈のアルミラージが18階層にいることに違和感を覚えた

視界から消えたモンスターの姿を反射的に追おうとすると、べちゃっ、と体に蜂蜜色の液体がべっとりと付着した。

隣の仲間も同じく果汁まみれなことから、アルミラージに果物(フルーツ)を投擲されたとことに気付くのと同時に、自分達の後方から木が叩き折れる破砕音が聞こえた。

ゆっくり振り返ると、そこには三体の『バクベアー』が大粒の涎を垂らしながら、果汁まみれの冒険者二人を見つめていた。

 

「「―――うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」」

 

『『『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』』』

 

三体同時に飛びつかれた冒険者達は動転し、雲菓子(ハニークラウド)を求め襲い掛かるバグベアーから森の彼方へ逃げ出していった。

それに追走するバグベアーという光景に、ヘスティアとモニカが目を点にしていると、先程果物を投げたアルミラージが、ぴょんぴょん、と二人に近づいてきた。

 

「おおおおお!?ボ、ボクは食べても美味しくないぞぉッ!?」

 

「ヘスティア様には指一本触れさせんぞ!」

 

「―――【響く十二時のお告げ】」

 

モンスターからヘスティアを庇おうとしたモニカだったが、アルミラージの体の内側から響いてきた『魔法』の()()()に、二人は目を見開いた。

 

「ヘスティア様なんかを食べてしまったら、モンスターもお腹を壊してしまいます」

 

「「サポーター君!/リリ!」」

 

灰色の光膜がアルミラージの体を包み込んで溶けるように消えると、そこにいるのはモンスターではなくリリだった。

 

「君一人だけかい!?いや、それよりもどうやってここに!?」

 

「ヴェルフ様達とは、ベル様のもとに到着する直前で分かれました。この場所がわかったのは……ヘスティア様が今朝もしっかり香水をつけていてくれたおかげです。リリの変身魔法は模倣(もほう)に限り、相手の身体能力まで『模写(コピー)』できます。リリの能力値(アビリティ)以上の能力(ステイタス)は不可能ですが、獣人の恩恵未授(もともと)の嗅覚や聴力は反映可能なんです。なので、獣人に変身して嗅覚を『模写(コピー)』し、香水のにおいを追いかけてきました」

 

「便利なのだな、変身魔法というものは……」

 

「今ベル様達はあの一本水晶の辺りで戦っています。急いで合流しましょう!」

 

「ああ!」

 

「……その前に、武器を回収してからでいいか?」

 

ナイフで縄を断ち切られたヘスティアとモニカは、ヘスティア・サーベルを回収しつつ、救出してくれたリリと共にベル達の居る一本水晶のもとへ走り出したのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「や―――――め―――――ろ――――――――――っ!!」

 

一本水晶の先にある、ベルとモルドが決闘を行っていた小さな広場。

捉えられていた場所からモンスターに襲われつつも、モニカがモンスターを追い払い、広場に辿り着いたヘスティア。

モニカとリリを側に従えたヘスティアは、乱闘しているベル達冒険者に向けて乱闘を止めるように大声で呼び止めた。

 

「ベル君達、ボクもモニカ君もこの通り無事だ!無駄な喧嘩は止せ!君達も、これ以上いがみ合うんじゃない!」

 

大喝一声するヘスティアに、ベルは心底安堵し、腕をゆっくりと下げた。

ヴェルフ達も武器を下ろし、無言で女神の神意に従った。

 

「神の指図なんざに構う必要はねぇ!やれ、やっちまえ!」

 

だが、怒りの形相を浮かべるモルドは、大唾を散らしながら固まっている仲間に吠え立てた。

既に覆面の冒険者―――リューによって満身創痍になっていた上級冒険者達だったが、モルドの激励を聞きここまで来たら引けぬとばかりに武器を構え直し、モルドも眼前のベルへ飛びかかろうとした。

しかし。

 

「――――止めるんだ」

 

ヘスティアのその静かな一言が、周囲の音を呑み込み、空間を打った。

金縛りにあったように、モルド達の体が一斉に停止した。

愕然、そして青ざめた顔を再びヘスティアに向けたモルド達は喉を震わせていた。

ベル達もモルド達同様、表情を消したヘスティアの威圧に言葉を失っていた。

(こうべ)を垂れざるをえない超越存在(デウスデア)としての一端、下界の者を平伏させる神の威光である神威(しんい)

それを自らのためではなく、争い傷つけ合おうとする子供達を止めるために、ヘスティアは神威(しんい)を解放したのである。

 

「剣を引きなさい」

 

ベル達の聞いたことのない口調と顔で、ヘスティアはモルドを諭すように告げる。

モルド達は呻き声を上げ、神秘的な青みがかかったその瞳に押されるように後退った。

そうして、一人の冒険者が背を向けて逃亡すると、彼を追うように一人二人と次々と逃げ出していき、最後にはモルドも逃げ出した結果、森には嵐が過ぎ去ったような静けさだけが残った。

一歩も動けずにいたベル達は、ヘスティアの体当たりをベルが貰ったことで時を取り戻した。

胸に抱き着きながら泣きべそをかくヘスティアに、ベルも困り果てながらも幼子を慰めるように淡く抱き返した。

普段ならば犯さない抱擁(こうい)を行った理由、それは先程神威を解放した姿ではなくなったヘスティアに、戸惑いを覚えていたからである。

しかし、私利私欲のためには力を振るわず、自分達と同じ人の身であろうとしている神々を、自身の胸の中で涙ぐみながら見上げてくる小さな少女を……ベルはこの時、確かに愛しく思ってしまった。

それからは、ヴェルフに苦笑され、リリには怒られ、モニカには感謝されつつも小言を言われ、そんなパーティの光景を、(ミコト)達も微笑みながら見守っていた。

一戦の後の静けさが森に訪れ、笑みを交わし合うベル達を包み込む。

ともかくこれで、とヘスティアがそう言いかけようとした―――まさにその時。

 

「じ、地震っ?」

 

「いえ、これは……」

 

「ダンジョンが、震えてるのか?」

 

階層全体の揺らめきに千草(チグサ)(ミコト)桜花(オウカ)が足元を見降ろしながらうろたえた。

この間にも揺れは大きくなっていき、周囲の木々を左右に振りざぁっざぁっと葉々を斉唱させる。

 

「これは…()()()()()

 

リューがそう口にすると同時に、異常事態(イレギュラー)が起きる前触れであるとベル達もまた悟った。

そこから階層の揺れは続いたまま、次の瞬間―――ふっ、と頭上から注ぐ光に影が混ざったかと思うと、周囲が薄暗くなった。

 

「…おい。なんだ、あれ」

 

空を見上げたヴェルフが呆然と呟いた言葉に全員が空を見る。

天井一面に生え渡り、18階層を照らしている数多の水晶。

その内の太陽の役割を果たす、中央部の白水晶の中で。

巨大な何かが、蠢いていた。

その巨大な何かは18階層を照らす光を塞ぎ、周囲へ影を落としていた。

天井を見ながら固まっていたベル達だったが、18階層全体を震わす振動が発生したかと思うと、未だに巨大な何かが蠢く白水晶に深く歪な線が走った。

亀裂は更に広がり青水晶のもとまで及び、黒い何かは水晶の内部をかきわけるようにその体を徐々に大きくしていく。

 

「おいおい……まさか、ボクのせいだって言うのかよ」

 

ベル達の視線を一身に浴びながら、ヘスティアは愕然と水晶の部分を見上げ続けた。

 

「たったあれっぽっちの神威(しんい)で……冗談だろ?」

 

中央部の白水晶から巨大な亀裂音が放たれた瞬間、ヘスティアはその青みがかった双眸を見開いた。

 

()()()……!?」

 

水晶を突き破り、新たに一体のモンスターが18階層(安全階層)に生まれ落ちた。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、『ヘスティア&モニカの誘拐』と『ヘスティアの神威解放』の回でした。
本当はここまで長くするつもりはなかったんですけど、書き足して行ったらいつの間にか文字数が4000字超えてました。
そして今章での『モニカ気絶ノルマ』達成です。
何かモニカは毎回気絶してますね、何でだろうなぁ?

今話でモニカに使われた魔道具ですが、名前は『サンダーソード』。
原作13巻に付属しているドラマCD『ダンジョンにRPGを求めるのは間違っているだろうか』にて登場している魔道具となっています。
魔剣とは違い文字通り雷の剣で、剣から出る雷の威力は10万ボルトになっています。
この魔道具がどのように使われたのかは、YouTubeやダンメモでぜひお確かめください。

次回は遂に漆黒のゴライアスとの戦いがスタートです。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第55話 『漆黒のゴライアス~生誕~』

スーパーマリオブラザーズムービー見てきました。
一言で表すなら、『ゲーム好きなら見に行くべき作品』だと思います。
どうも、今年の映画は個人的に豊作揃いだと思っている刺身の盛り合わせです。

ということで、最新話です。
今回からついに漆黒のゴライアスとの戦闘がスタートです。
大体3、4話あれば終わるかなぁと思います。
また、今回はちょっと地の文が多めになっているかもです。
それと今回後書きの最後におまけがあります。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。



水晶を突き破ったモンスターは、まずは18階層の天井から生首が生えたように頭部を晒すと、すぐに肩と腕も出現させて上半身を剥き出しにすると、階層全土をわななかせる凄烈な産声を上げた。

本来ならば17階層に迷宮の孤王(モンスターレックス)として出現するモンスターのゴライアスが、通常とは異なる全身が黒くなった姿で安全階層(セーフティポイント)に生まれ落ちた。

ゴライアスは水晶を割りながら腰まで姿を現すと、大量の水晶の破片と共に重力に従い天井から落下し、直下にあった中央樹を二本の大足で踏みつぶし着地すると、ゆっくりと顔を上げて大樹から飛び降りた。

そんなゴライアスが最初に狙いをつけたのは、ベル達から逃げるために中央樹付近を横断する際中で、ゴライアスの一番近くにいたモルド一派であった。

 

『―――オオオオオオオオオオオオオアアアッ!!』

 

「は、はひゃあああああああああああああああああああっ!?」

 

モルドとの決闘を行っていた東の森の出口に辿り着いたベル達も、眼前の光景に目を見開いていた。

出口へ向かう間、ヘスティアから『神の存在を感じ取ったダンジョンが、彼女達を滅ぼすために18階層にモンスターを直接産んだ』という説明を簡単にされたベル達だったが、目の前の黒いゴライアスを見て震慄(しんりつ)していたが、ベルはモルド達の阿鼻叫喚を聞き、助け出すべく飛び出そうとしたところで、リューに手を掴まれた。

 

「本当に、彼等を助けに行くつもりですか?」

 

「助けましょう」

 

「……あなたはパーティのリーダー失格だ。だが、間違っていない」

 

リューからの質問に間髪入れずに決断したベル。

そんなベルに微笑を向けたリューは、ケープを翻し森から飛び出していった。

それにぐっと胸を詰まらせたベルは、背後へ振り返った。

モニカが、リリが、ヴェルフが、(ミコト)が、桜花(オウカ)が、千草(チグサ)が、そしてヘスティアが。

誰もが異を唱えず笑みを浮かべ、頷いた。

ベルの声に合わせ、八つの影が森を抜け、ゴライアスの暴れる階層中央へ向かうのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「スコット、ガイル、どこだ!?助けろっ、助けてくれええええっ!?」

 

モンスターの鳴き声と冒険者達の交錯する中、モルドは半狂乱に陥りながら仲間の名前を呼んでいた。

あらゆる種類の中層のモンスターが四方八方から途切れることなくモルドに襲い掛かってきており、両手に持つ長兼で反撃を行っていたものの、モルドの理性は限界を迎えつつあった。

バグベアーの薙ぎ払いを肩に喰らい地面に叩きつけられたモルドは、叩きつけられた勢いで長剣を落としてしまい、気づいた時には目と鼻の先に三頭のバグベアーがおり、今にも覆い被される直前であった。

 

「や、止めろおおおおおおおおおお!?」

 

モルドの絶叫が断末魔に変わるよりも早く、鋭い斬閃がモルドの視界に入り込んだ。

モルドの長剣を使いバグベアーの首を切り裂くベル。

地面に倒れているモルドを庇いながら、ベルは間髪入れず二体目のバグベアーの胸部に刺突を行い、魔石を打ち抜かれ灰となり崩れ落ちた。

最後の一体が腕を横に振り被りベルに攻撃しようとしたが、背後に回っていたモニカから刺突を受けて魔石を砕かれ灰になった。

 

「……なんで、てめぇら……」

 

バグベアー達を倒してもすぐに別のモンスターが距離を詰めてきており、息つく暇もなく新手の敵と戦い続けるベルとモニカ。

そんな二人の背中に掠れた呟きを漏らしたモルドだったが、がしっ、と襟首をリリに捕まれたかと思うと、倒れた姿勢のまま割れた水晶の散らばっている草原を引きずられていった。

 

「いっ、ででででででででででででででえぇっ!?だ、誰だっ、(ケツ)がぁ!?」

 

「ベル様とモニカ様のお邪魔になるので運んじゃいますよ!」

 

戦っているベル達とモンスターの位置関係を正確に見抜き、自分達に被害が及ばないように引きずっているモルドの体を左右に振って転進を繰り返し、たちまち乱戦地帯から抜け出したのであった。

 

「戦えないのなら身を隠すなり逃げるなりしてください。ベル様とモニカ様が助けてくださったお命を無駄にしないように」

 

「お、おいっ!?なんで、俺達を……助けるんだ?」

 

リリから開放されたモルドは、慌てて身を起こし、他の冒険者達を助けるために戦い続けているベルとモニカを見つめながらリリに尋ねた。

モルドからの質問に、リリは振り向きながら答えた。

 

「底抜けにお人好しなベル様に、感謝してくださいねっ」

 

両目を瞑り、べっ、と舌を出したリリは、再びベル達のもとへ向かっていった。

草原に一人取り残されたモルドは、打ちひしがれたような表情で、呆然と呟くのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「…それにしても、モニカさんの魔法、凄いですね!」

 

「魔法…もしや、【ウェスタ・エール】のことか?」

 

リヴィラの街から援軍としてやって来た冒険者達にモルド一派ともども助けられたベルとモニカは、ヴェルフ達が戦っている激戦地に向かっている最中、ベルがモニカの魔法について話をしてきた。

モルド一派の救出に向かう直前、モニカは魔法を使用していたのである。

そのおかげで、ベル達はモルド一派の救援に通常よりも早く向かうことが出来たのであった。

 

「詠唱を始めたらモニカさんが炎に包まれてびっくりして、その後モニカさんを包んでた炎に僕達も包まれて凄いびっくりしました!炎も熱いのかと思ったら全然熱くなかったですし…それに、炎に包まれた時、【ステイタス】更新を行った後みたいに体に力がみなぎったんですよね」

 

「今回が初めての使用で、手探り状態だったが……、おかげでいくつか分かったことがある。先程の戦闘で私が連続で魔法を使用したが、何か違和感はなかったか?」

 

「えぇと……そういえば、最初と比べると動きが鈍くなってたような…」

 

「そう、最初よりも動きが鈍くなっていたのだ。使用時のデメリットの全容が掴めていない今は、慎重にならなくてはいけないな。……そろそろ激戦地だ。気を引き締めろ、ベル!」

 

「はいッ!」

 

そうして、ベルとモニカは話を切り上げると、漆黒のゴライアスの包囲網へと向かっていった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

今回のモルドのくだりは、モニカが活躍出来る部分なので入れました。
それと、モニカは自分の魔法である【ウェスタ・エール】について、どのようなものかちゃんと理解していません。
なので今話と次話で【ウェスタ・エール】のデメリットについて理解してもらおうと思います。

前書きで書いた通り、最後におまけがあります。
内容としては、今話と前話の裏でツムギが何をしていたのかをざっくりと説明したものになっています。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。



おまけ~今回と前回のツムギ~

「ぬぁんで、モニカさんが捕まってるんですかぁ!!」

「これについてはッ、流石の俺もッ、想定外だったんだってばッ!!?」

ベルとモルドが戦っている広場の近くには、アスフィから頼まれ、使用後のサンダーソードをヘスティアにバレないようにモルドから回収した後、モニカが捕まっているのを知りヘルメスを問い詰めているツムギと、木の上に立ちながら、ツムギに問い詰められているヘルメス、非難と嫌悪感の視線をヘルメスに送るアスフィがいた。

「モルド!アスフィ様を囮にしたこと、この戦いが終わったら責任取らせますからね!覚悟しておきなさい!!」

しかし、突如18階層の天井から出現した漆黒のゴライアスの対処を任されたため、ツムギと共にリヴィラの街へ救援要請に向かったアスフィだったが、モルドによって強制的にゴライアスへの囮にされたのである。
アスフィを囮にしたモルドにキレながら、周囲のモンスター達を糸で締め上げながら倒していくツムギなのであった。


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第56話 『漆黒のゴライアス~窮地~』

ダンメモで【シアン】ナァーザと【湯煙狐娘】春姫が当たりました。
どうも、ケモ耳っ娘の、そしてダウナー系お姉さんの素晴らしさを再確認した刺身の盛り合わせです。

ということで最新話。
今回は魔法の理解とゴライアスとの戦いが含まれているため、ちょっと長めになっています。
また、後半はかなり地の文大目にもなっています。

それと、今話を書くにあたって色々見直していると、基礎アビリティの限界値や魔法の効果について色々と間違っていたので、内容の一部に修正を行いました。
(引き上げるアビリティの上限をSSSからSへなど•••)

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


「ベル、モニカ。二人共無事か!?」

 

「ヴェルフ!」

 

激戦地に辿り着いたベルとモニカ。

多くの詠唱とかけ声が飛び交う目の前の光景に圧倒されるベル、その隣ではモニカが真剣な眼差しで戦場を見渡していた。

そんな二人の側に、ヴェルフが走り寄ってきた。

 

「【タケミカヅチ・ファミリア】の面々は無事か?」

 

「安心しろ、あいつ等は他のモンスターの相手をしてるところだ。それで、お前達はどうする?俺達と一緒に周りのモンスターを叩くか?」

 

「僕は……「おいっ、兎ぃ!突っ立てるならこっちに来い、それとも怖えかぁ!?」

 

ヴェルフからの問いに一瞬悩んだ素振りを見せたベルだったが、前衛攻役(アタッカー)のとある小隊から、冒険者流の挑発を行われた。

 

「……行ってこいよ。階層主を張り倒した相棒(アイツ)は俺が契約した冒険者だって、威張らせてくれ」

 

「……今呼ばれているのは私ではなくベルだ。活躍して、ヘスティア・ファミリアのベル・クラネルここにあり、と知らしめてこい」

 

「―――うん!」

 

笑みを浮かべ背中を押してくるヴェルフとモニカに頷き返し、二人の健闘を祈り、小隊の居る方向へ走り出すベル。

そんなベルを見送ったヴェルフは、側に立っているモニカの方を向き、問いを投げかけた。

 

「……それで、モニカは行かなくて良かったのか?」

 

「先ほども言ったが、呼ばれたのは私ではなくベルだ。…それに、ベル達前衛が戦いやすいよう、周囲のモンスターを減らすのも大事だろう?」

 

「…違いねぇ。それじゃあ、早速行くか」

 

「まぁ待て。先に魔法で強化してからの方が動きやすくなるはずだ。【共に戦いし同胞よ。我が呼び声に応え、起立せよ―――】」

 

周囲にいるモンスターの下に向かおうとするヴェルフを呼び止め、自身の魔法である【ウェスタ・エール】の詠唱を始めるモニカ。

詠唱を始めると、モニカの足元に小さな火が現れた。

その火は、詠唱を進めていくと次第に大きくなり、詠唱を言い終えると火は温かな熱を発する竈火にも似た炎へと姿を変え、モニカを優しく包み込んだ。

 

「【ウェスタ・エール】!………ッ!?」

 

右手を前方に振り払い魔法を発動させると、モニカを包んでいた炎が周囲に広がってゆき、それと同時にモニカも顔から地面に倒れた。

 

「なっ!?おい無事か、モニカ!?」

 

周囲に広がった炎は、倒れたモニカに駆け寄るヴェルフに当たるとすぐに体を包み込み、背中にある【ステイタス】、その中でも基礎アビリティの項目付近に集まり【S999】へと形を変えると、【ステイタス】の上に上書きするように重なり、強制的に神聖文字(ヒエログリフ)を書き換えた。

【ステイタス】の神聖文字(ヒエログリフ)を強制的に書き換えられたことで、【ステイタス】更新を行われた時のように、体に力が迸っていた。

 

「……視界が、グルグルしている。それに、気分が悪いし、体に力が入らん……」

 

精神疲弊(マインドダウン)の症状じゃねぇか…。ほら、二属性回復薬(デュアル・ポーション)だ、ついでに体力も回復しとけ」

 

「すまん、助かる…………だいぶ楽になった」

 

「…にしても、何回魔法を使ったんだ?「3回だった筈だ」…3回で精神疲弊(マインドダウン)になりかけ、か………モニカの精神力(マインド)の底が低いのか、魔法の消費精神力(マインド)が高いのか―――」

 

「うおぉぉぉ、何かいきなり動きが良くなったぞ!」

 

「どこのどいつかは知らねぇが、支援魔法をかけてくれたみてぇだな!テメェら、この機会にモンスター達をブッ殺せぇぇぇえ!」

 

「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」」」」」

 

体力回復の意味も含めて二属性回復薬(デュアル・ポーション)を飲ませつつ、モニカの魔法についてヴェルフが考えていると、前方で戦っている冒険者達から雄叫びが上がった。

声を聞くと、モニカの発動させた魔法はヴェルフだけでなく、前方で漆黒のゴライアスやモンスターと戦っていた冒険者達の全員に魔法が適用されているようだった。

 

「おいモニカ、あいつ等にも魔法を使ったのか?」

 

「いや、そんな筈は…いや待て?」

 

ヴェルフからの問いに否定を行おうとしたモニカだったが、自身の【ステイタス】の魔法の欄に書いてあった内容を思い出していた。

 

「そういえば魔法の欄に『仲間と認識している者達』と書いてあったが…モンスターと戦っている他の冒険者も対象になるのか!?」

 

「何十人もいる冒険者全員に魔法の効果が発動したっていうなら、精神疲弊(マインドダウン)の症状が出るのも納得だな」

 

「使い時を誤らないよう、使う際はしっかり状況把握をしておく必要があるか。…それよりも、今は魔法の効果がきれない間に私達も戦いに加わろうではないか」

 

「それもそうだな。…うっし!行くぞ、モニカ!」

 

「あぁ!」

 

自身の魔法について理解を深めたモニカは、魔法の効果が失われる前に、ヴェルフと共に周囲のモンスターを倒すため、戦場に向けて走り出すのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

モニカ達が戦闘に加わってからある程度たったところで、前線に退避の号令が出たのと同時に、魔導士達による一斉射撃が漆黒のゴライアスへ火蓋を切った。

連続で見舞われる他属性の攻撃魔法だけでなく魔剣の攻撃も加わっており、攻撃の勢いは階層主の巨軀が見えなくなるほどであった。

魔導士達の一斉射撃が止み、砲撃の中心地の立ち込めた煙が薄れると、そこには黒い体皮が傷つき、紅い血肉を晒すほどに顔が抉られたゴライアスが片膝をつくところだった。

(こうべ)を垂らすゴライアスの息の根を止めるべく、四方八方から冒険者達が殺到した。

しかし、紅い粒子を体から出すことで自己再生を行い、傷を完全になかったものにしたゴライアスは、迂闊に近づいてきた前衛攻役(アタッカー)だけでなく、呆然と立ち尽くしている魔導士達(こうえい)に攻撃するべく、両腕を頭上高く振り上げると、拳を握り締めて足元へ一気に振り下ろした。

その一撃は凄まじい爆発を起こし、生じた衝撃波は放射状に広がり前衛壁役(ウォール)を含めた全ての前衛攻役(アタッカー)だけでなく、魔法行使直後の魔導士達(こうえい)にまで及び、包囲網が一瞬で壊滅したのであった。

幸いなことに離れていた場所で戦っていたため、被害を受けなかったモニカとヴェルフだったが、ゴライアスが二度目の召喚の声を上げたことで、階層中のモンスター達が押し寄せてきたため、倒れ伏した冒険者達を庇うためにモンスター達と戦っていた。

しかし、倒しても倒しても増え続けるモンスターに、体力も精神力(マインド)も気力も限界を迎えつつあった。

 

「オラァ!…って、ヤベぇ!?」

 

「そうは、させんッ!」

 

大刀による横薙ぎでバグベアーの首を切り落とそうとしたヴェルフ。

しかし、刃が首の途中で止まり完全に斬り落とすことが出来ず、首に突き刺さったまま抜けなくなってしまった。

瀕死状態のバグベアーは、自分の首から大刀を抜こうとするヴェルフを爪で切り裂くべく腕を振り下ろそうとしたが、バグベアーの懐に一気に潜り込んだモニカに魔石をサーベルで打ち抜かれたことで、その姿を灰に変えたのであった

 

「悪ぃ、助かった!」

 

「気を抜くな、ヴェルフ!……とはいえ、この状況はマズいな」

 

壊れ果て散乱する数々の武器や倒れ伏している冒険者達、冒険者達を庇いながら襲い来るモンスターと応戦する自分達含めた冒険者達、そして各地から巻き起こる悲鳴。

戦っている冒険者達も、度重なる連戦で心身共にズタボロとなっており、動きに精細が欠けていた。

 

「何か…何か戦況をひっくり返すような一手があれば……ッ!?」

 

そのように考えながら戦いを続けていると、ゴライアスが強烈な『咆哮(ハウル)』を込めた魔力の塊を放ち、その反対側からは大炎雷が撃ち出されるのが見えた。

 

「まさか、今のはベルの【ファイアボルト】!?」

 

白い稲光とともに凄まじい轟音をまき散らしながら、大炎雷はぶつかり合った魔力塊を粉砕し、ゴライアスに向かっていく。

胸部を狙ったその一撃は、甚だしい出力に弾道が定まらず、狙いがそれて敵の頭部に命中し、右眼を含めた僅かな部分を残して巨人の顔面は八割方(ごっそり)消失した。

頭を失い活動を続けられる生物はいない。

勝った―――そう冒険者達が信じ込もうとした直後、()()()()()()()が巨人の首元から火山の噴火のごとく発生すると、おぞましい勢いで失われた巨人の顔が修復されていった。

尋常ではない生命力をもって、蓄力(チャージ)された【ファイアボルト】を耐え凌ぎ、驚異的な治癒能力で再生を遂げた漆黒のゴライアスは、愕然と立ち尽くすベルに明確な殺意を向けると、ベルに『咆哮(ハウル)』を放った。

英雄願望(アルゴノゥト)】の反動で回避行動が遅れたベルは、魔力塊にぶつかり吹き飛ばされた。

ズタボロになるベルが次に見たのは、殺意に溢れた咆哮を上げながら、大砲弾のように突き進みながら、勢いよく極腕を振り抜こうとしていた漆黒のゴライアスであった。

回避不可能かつ疑いようのない一撃必殺の拳にベルが動けないでいると、ベルとゴライアスの間に大盾を構えた桜花(オウカ)が飛び出し、ベルへの攻撃を防ごうとした。

しかし、本来のゴライアス以上の強力な一撃を、大盾を挟んで食らったベルと桜花(オウカ)は、互いに限界まで目を見開きながら二人は殴り飛ばされ、宙を舞ったのであった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

今回はゴライアスにベルと桜花が吹き飛ばされるところまででした。
そして、今回ついに【ウェスタ・エール】が発動したときの状態を書けました。
モニカの魔法は本文で書いた通り、ヒエログリフの書き換えを行っています。
なので、魔法の効果中に【ステイタス】を更新すると基礎アビリティが全部S999になってます。
また、【ウェスタ・エール】の効果範囲について補足を入れると、『自身が視認し、認識した範囲内でモンスターと戦っている全ての冒険者』が対象になっています。
…完全な余談ですが、この魔法の効果が神々に知られた場合、『神しか変えられないヒエログリフを(上書きするとはいえ)書き換えることが出来る』モニカは、ベル以上に神達に興味を持たれ、オモチャにされます。
というかさせます(断言)

次回はモニカに大活躍してもらおうと思います。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第57話 『漆黒のゴライアス~打破~』

ダンメモで迷宮偶像歌合戦の復刻が始まりました。
一番印象に残ってるのはガリバー四兄弟です。
どうも、原作じゃ見られないガリバー四兄弟の姿に死ぬほど笑った刺身の盛り合わせです。

ということで最新話。
そして、今話で第四章終了です。
今話で一気にゴライアスとの決着まで持っていきました。
なので、5000文字と中々のビックボリュームになってます。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


 

「ベルーーー」

 

ベルと桜花(オウカ)が漆黒のゴライアスに殴り飛ばされる瞬間を間近で見ていたモニカ。

呆然とした表情でベルの名前を呼んだモニカだったが、即座に覚悟を決めた表情を浮かべると、側で同じ光景を見ていたヴェルフの方を向いた。

 

「ヴェルフ。私はゴライアスがベル達の下へ向かわないように足止めへ行く。…だから、ベルのことを頼む」

 

「は?……っておい、ちょっと待て!?」

 

簡潔に用件を伝え終えて、ゴライアスの下に向かおうとしたモニカに、ヴェルフは声をかけた。

 

「お前、あんなモンスター相手に足止めって…どうするつもりだよ!?それに、ベルが心配じゃないのかよ!?」

 

「…確かに、足止めがちゃんとできるかどうかも分からない……が、ベルは必ず立ち上がり、あのゴライアスを倒す。ほんの少ししか稼げないとしても、私はベルが立ち上がるまでの時間を絶対に稼ぐ。それが、今の自分に出来ることだからな」

 

そう言うと、モニカはゴライアスの下へ向かっていった。

 

「今の自分に、出来ること………くそっっ!!」

 

泣きそうな表情でモニカの言葉、そして主神(かみ)からの忠告を噛みしめるヴェルフを残して。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

猛り狂う漆黒のゴライアスのいる中央地帯の主戦場に辿り着いたモニカ。

モンスターと戦う冒険者達の間をすり抜けながらゴライアスの下へ向かっていると、ゴライアスがモニカへ向けて『咆哮(ハウル)』を放った。

 

「テメェら、死にたくなかったら射線上から離れろ……って何やってんだテメェ!?死んじまうぞ!?」

 

放たれた咆哮(ハウル)に巻き込まれないよう、射線上から退避するように叫ぶボールス。

ふとゴライアスのいる方向を見ると、咆哮(ハウル)に向かって突き進むモニカの姿があった。

声をかけられたものの、無視してゴライアスの下へ突き進むモニカ。

誰もが、先程のベルのように魔力塊に吹き飛ばされる未来を想定した。

 

「……貴様の放つ咆哮(ハウル)は、魔力の塊だそうだな。それなら、私の敵ではないッ!」

 

勢いよく跳び上がると、サーベルを引き抜いて魔力塊を縦に一刀両断するモニカ。

縦に一刀両断された魔力塊は、二つに分かれるとその場ですぐに霧散したのであった。

咆哮(ハウル)を真正面から一刀両断したモニカは、着地すると右手にはヘスティア・サーベルを持ったまま、左手でコートから精神力回復薬(マインドポーション)を取りながら、漆黒のゴライアスの左側に回り込むように弧を描きながら走り始めた。

 

「【共に戦いし同胞よ。我が呼び声に応え、起立せよ―――】」

 

魔法の詠唱と並行しながら、即座に精神力(マインド)回復を行えるように左手で精神力回復薬(マインドポーション)の蓋を開けながら、ゴライアスの下へ向かうモニカ。

 

【ウェスタ・エール】!……んぐっ!」

 

魔法を発動させるのと同時に精神力回復薬(マインドポーション)を飲むことで精神疲弊(マインドダウン)を防いだモニカ。

【ステイタス】を限界まで引き上げると、飲み干した試験管を投げ捨てながら一気に距離を詰めるべく加速するモニカ。

放った咆哮(ハウル)を一刀両断したモニカを倒すために、拳を握り締めながら両腕を勢い良く振り上げたゴライアスは、モニカに向けて拳を―――

 

『ゴォン、ゴォォン、ゴォォォンーーー』

 

振り下ろそうとしたその瞬間、戦場に大鐘楼(グランドベル)が響き渡った。

 

「立ち上がると信じていたぞ、ベル!」

 

18階層に響く大鐘楼(グランドベル)に気を取られたゴライアスの隙を突いて、一気に近づいたモニカ。

 

「―――そして、お前がベルに狙いを定めることもな!」

 

平突きの体勢から【紫電一閃】を放ち、ゴライアスの左足のアキレス腱を切断するモニカ。

アキレス腱を切断されたことで立ち上がることが出来ず、膝をついたゴライアスだったが、赤い粒子を発生させてすぐに傷を治すと、ベルの居る南の草原に向けて走り出し始めた。

 

「私程度の力では、数秒の足止めが手一杯か……!」

 

「―――そうでもありませんよ、モニカさん」

 

ゴライアスを数秒しか足止め出来なかったことに悔し気な表情を浮かべたモニカに、声がかけられた。

声が聞こえたのと同時に、ベルの居る方向へ地響きを起こしながら大草原を駆けようとしたゴライアスが、突然大草原に倒れ、両手両足を地についたのであった。

ゴライアスの足の近くを見てみると、そこには木刀を手に持ったリューがいつの間にか立っていた。

 

「貴女が命がけで作った数秒のおかげで、私も足止めに間に合うことが出来ました。それに、ここに足止めに来たのは私だけではありませんよ」

 

「――今ですよ、ツムギ!」

 

「―――ぅおんどりゃぁ!!」

 

モニカに近づきながら会話を続けるリューは、先ほど四つん這いにしたゴライアスの方を指差した。

そこには、アスフィの出す指示に従って、ゴライアスを地面に縛り付けているツムギがいた。

 

「リュー殿…ツムギ殿…」

 

「新人冒険者のモニカさんが、命がけで足止めしようとしてるんです。それなら、先輩冒険者である私達がお手本を見せないとですからッ!」

 

「――ということです。もしも足止めに参加するというのならば、命の保証はありませんが。【―――今は遠き空の星。無窮(むきゅう)の―――】」

 

「【掛けまくも(かしこ)き―――】」

 

モニカにそう言ったリューは、地面に縛られている一気に近づき攻撃を加えながら、魔法の詠唱を始めた。

離れた場所では、ツムギが全力でゴライアスを地面に縛り付け続け、アスフィがゴライアスのあらゆる部位を出たらめに斬り刻み始めた。

そして、瀕死の桜花(オウカ)千草(チグサ)に任せて戦場へ戻ってきた(ミコト)は、リューの『並行詠唱』に気付くと、負けじとばかりに全精神力(マインド)を込めた詠唱を始めていた。

 

「うわわわっ!?アスフィ様、もう限界ですぅ!?」

 

「ツムギ、急いで避難しなさい!」

 

少し遅れてゴライアスに攻撃を加えていると、ツムギの限界という声とともに、ブチブチッ、という糸が千切れる音が周囲に響いた。

自身を縛っていた糸を全て引きちぎったゴライアスは、立ち上がるとベルの下へ進撃を開始しようとした。

 

「衆目の前で使いたくなかったのですが……!【タラリア】!」

 

リューの魔法が完成していないのを見たアスフィは、【万能者(ペルセウス)】の至上魔道具(とっておき)である『飛翔靴(タラリア)』を発動させると、快速をもってゴライアスの顔面へと肉薄し、ゴライアスの赤眼に斬撃を加えた。

 

「【―――(きた)れ、さすらう風、流浪(るろう)旅人(ともがら)。空を渡り荒野を駆け、|何物(なにもの)よりも()く走れ。星屑の光を宿し敵を討て】!」

 

仰け反りながら片目を手で押さえるゴライアスに、間髪入れず詠唱を終わらせたリューは、動きを止める相手に己の魔法を行使した。

 

【ルミノス・ウィンド】!

 

緑風を纏った無数の大光玉がリューの周囲から生まれると、ゴライアスに向けて一斉放火された。

星屑の魔法を次々と叩き込まれるゴライアスは、あまりの高威力に次第と後退していたが、巻き上がる膨大な赤粒とともに損傷と治療を繰り返しながら、リューの魔法を強引に突破するゴライアス。

体を削りながら驀進(ばくしん)する巨人の不意打ちに、正面にいたリューとアスフィ、モニカは逃げ遅れ、巨人の伸ばされた腕がアスフィを撃墜し、体当たりがリューとモニカを弾き飛ばそうとしたその瞬間。

 

「【天より(いた)り、地を()べよ――――――神武闘征(しんぶとうせい)】!!」

 

(ミコト)が、魔法を完成させた。

 

【フツノミタマ】!!

 

ゴライアスの直上に一振りの深紫の光剣が出現と同時に、足元に魔法円(マジックサークル)にも似た複数の同心円が発生した。

光剣が直下し巨人の体を通り抜け、円中心に突き刺さった瞬間、()()()()が発生した。

リューとアスフィ、モニカの鼻先に展開された、半径10M(メドル)に及ぶ巨大なドーム状の力場(りきば)はゴライアスを閉じ込め、伸ばした腕や膝を地に叩き落とした。

主神(タケミカヅチ)から閉鎖空間内(ダンジョン)では使うなと言明されていた(ミコト)の切り札である、一定領域を押し潰す超重圧魔法。

深紫に染まる重力の牢獄がゴライアスを上から押し潰していた。

一度は地面に縫い付けられたゴライアスだったが、上からの強力な重圧を押しのけながらゆっくりと持ち上げていく。

未だベルの蓄力(チャージ)が終わっていないものの、純粋な力負けによってゴライアスが結界を破ろうとしていた。

 

「破られますっ……!?」

 

(ミコト)の宣告通り、ゴライアスが結界の壁に両手を突き入れ強引にこじ開けた。

咆哮を上げて結界から解放された巨人にリューとアスフィ、モニカが武器を構えると、右手で赤く輝く長剣を背後へ溜めながら、ヴェルフが側を通り抜けて先頭に進み出た。

たった一撃のためだけに名付けられた『魔剣』の真名(まな)を、長剣を振り下ろしながらヴェルフは叫んだ。

 

火月(かづき)ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!

 

大上段から振り下ろされた細身から放たれた深紅の轟炎は一直線に進み、ゴライアスの巨躯をあまさず覆い、燃焼の猛り声とともに蹂躙した。

燃え盛るゴライアスの体からは自己再生のために夥しいほどの赤粒が立ち昇るものの、立ち昇る先から炎の(あぎと)が喰らい燃やしていき、底をつかす勢いでゴライアスの膨大な魔力を焼き尽くしていた。

ここまでの長い戦闘の中で、初の致命傷がゴライアスに烙印(らくいん)された。

 

「あれが、『クロッゾの魔剣』……!」

 

「何てすさまじい威力なんだ……」

 

「超える!?正式魔法(オリジナル)を!?」

 

「―――みんな、道を開けろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

『海を焼き払った』とまで言われる伝説の魔剣の一撃を間近で見ていた三人は、恐ろしいまでの一撃に戦慄していると、ヘスティアの号令と共に大鐘楼(グランドベル)の音色が18階層に響き渡った。

号令がかかった瞬間、冒険者達は一斉にベルの進路から離脱した直後、英雄願望(アルゴノゥト)による三分の蓄力(チャージ)を終えたベルが、ゴライアスに向けて疾駆した。

多くの者の視線を一身に背負ったベルは、速度を上げてゴライアスへ突貫する。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!?』

 

接近するベルを見たゴライアスは、未だに燃え続ける右腕を背後に引き、あらゆるものを粉砕する渾身の薙ぎ払いをベルに向けた。

その攻撃に対し、疾走の速度を緩めず距離を詰めるベル。

女神(ヘスティア)から告げられた『英雄の一撃』という言葉を胸に、白い光を帯びた黒大剣を右肩へ振り上げる。

押しつぶすように迫る巨人の一撃。

自身の両手に満ちる力の奔流

収束する光剣に己の全てを賭し、ベルはその一撃を放った。

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

 

ベルによる一撃がゴライアスに炸裂した瞬間、純白の極光がモニカ達の視界を埋め尽くし、誰もが目を腕で覆った。

ゴライアスの雄叫びをかき消すほどのベルの方向と凄まじい轟音により、聴覚の機能が数瞬奪われた後、最後に残ったのは決着の静けさであった。

視界が回復した者からおそるおそる目を開けると、そこには右腕と上半身を失った巨人の体と、地面に落ちた巨人の左腕と下半身、消失した細身の断面から白煙を上げる黒大剣と、それを振り抜いた体勢で固まっているベルがいた。

 

「……消し飛ばし、やがった」

 

眼前の光景に、誰も何も言わずしばし立ち尽くしていたが、呆然とこぼれ落ちたヴェルフの呟きが契機だったかのように、全てが動き出した。

固まっていたベルは崩れ落ち、剣身のない体験を杖のように草原に突き刺しながら片膝を地につき、その目の前でゴライアスの下半身と左腕が灰になり、上半身ごと魔石を失った体は時間をかけてゆっくりと溶けるように姿を消した。

死骸が大量の灰に変わると同時に、その上にドロップアイテムである『ゴライアスの硬皮』が残された。

 

「―――うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

次の瞬間、18階層に大歓声が巻き起こった。

ある冒険者は諸手を突き上げ、ある冒険者は隣の者と肩を組み、涙さえ浮かべながら喉が張り裂けんばかりに声を上げた。

言葉になっていない音の津波が轟き渡り、大草原を震わせた。

 

「ベル君!」

 

涙ぐむヘスティアが最初に駆け出し、ヴェルフ、モニカ、リリ、リュー、(ミコト)と続々と力尽きたベルのもとへ走り出し、一部の冒険者達もベルのもとへ殺到した。

周囲から途切れることのない喜びの声々が、ベル達を、18階層全体を包み込んだのであった。

ここに、第18階層で起きた異変は完全解決したのである。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、第四章は今話で完結です。
書き始めた当初はモニカもベル達と一緒にダンジョンに行ってもらおうと思っていたんですが、そうすると原作と同じ流れになるので、モニカには後発組としてダンジョンに潜ってもらうことにした、という裏話があります。
そして、今回初の試みとして、魔法の部分に色を付けてみました。
もしも見にくい場合は、指摘をお願いします。

今章はエピローグとかは無しで、次話は一気に第五章『僕等のウォーゲーム』編がスタートです。
モニカがどのように活躍するのか、ぜひお楽しみください。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第五章
第58話 『焰蜂亭』


さりげなくアンケートやってます、ぜひ答えてください。
どうも、刺身の盛り合わせです。

ということで最新話。
そして第五章に突入です。
今章は原作第6巻のお話が中心になっています。
モニカがどのようにアポロン・ファミリアと戦うのか、ぜひお楽しみください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


18階層に現れた漆黒のゴライアスを見事に倒し、ベル達が地上に戻ってから三日後。

地上に帰還してから二日は休息に費やしたベル達は、知り合いの人達に無事に帰還したことを伝えに回っていた。

そして日没後、ヴェルフとモニカのランクアップ記念の祝賀会のために、ヴェルフ行きつけの『焰蜂亭(ひばちてい)』に訪れていた―――

 

「手紙を書き終えるのに、だいぶ時間をかけてしまった……」

 

のだが、冒険者依頼(クエスト)でオラリオを2週間弱放れていた+帰ってきてすぐベル達の救援に向かったため、ラキア王国宛ての手紙を書く時間を取れなかったモニカ。

ベル達と一緒に休息を取りながら手紙を書いていたものの、書く内容が多かったため思っていたよりも時間がかかり、書き終わって投函を終えた頃には既に夜で、もう祝賀会が始まっている時間だったのである。

 

「ここが『焰蜂亭(ひばちてい)』か。早速入ろう……へぶぅ!?」

 

ヴェルフお手製の地図のおかげで『焰蜂亭(ひばちてい)』に到着したモニカ。

店の中に入るために手でドアを押そうとしたところ、ちょうど中からドアが開いて顔にドアが直撃したのであった。

 

「は、鼻が…!?すまないが、ドアを開ける前に一度確認を………『凶狼(ヴァナルカント)』!?」

 

ぶつかったことで真っ赤になった鼻を手で押さえながら、ドアを開けてきた人物に注意をするために顔を上げると、そこにいたのはいかにも不機嫌な表情をした【ロキ・ファミリア】の『凶狼(ヴァナルカント)』ベート・ローガであった。

 

「………ッチ」

 

入り口前に立っていたことや先日の18階層でキャンプにいたことについて何か言われるのかと身構えたモニカだったが、ベートは何も言わずに舌打ちをすると、モニカの側を通りホームへと向かっていった。

その後すぐに同じファミリアの仲間と思われる冒険者達がベートを追いかけるため、モニカの側を通り抜けていった。

 

「何だったのだ、一体?…っと、それよりもベル達を待たせているのであったな。すまない、遅れて……ってベル!?」

 

ベートの不機嫌そうな姿に少し疑問を覚えつつも、ベル達を待たせていることを思い出したモニカは、急いで店内へと入った。

そこで最初に目にしたのは、鼻血を出して床にへたり込んでいるベルと、ベルを囲んでいるリリとヴェルフであった。

ベルに近づきケガの状態を見ると、顔を殴られたのか鼻血を出しているのに加えて、顔や腕などところどころに擦り傷が出来ていた。

それはベルだけでなく、ヴェルフもところどころに擦り傷があり、状況から乱闘に巻き込まれたのは想像がついた。

 

「詳しいことは後で聞こう。今はホームに戻って治療をするぞ。…貴公らも共に来て何が起こったのかヘスティア様に説明してくれないか?」

 

「「はい!/おう」」

 

怪我が思ったよりもひどかったため、一旦祝賀会をお開きにし、治療のためホームへの帰還と状況説明をリリとヴェルフにお願いするモニカ。

リリとヴェルフは快く快諾すると、ヴェルフにベルを背負ってもらい四人は焰蜂亭(ひばちてい)を後にするのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ふ~ん、なるほどね、喧嘩かー。ベル君が思ったよりやんちゃで、ボクは嬉しいような、悲しいような……」

 

「なるほど、だからあんなに店が荒れていたのか…」

 

ベルとヴェルフの怪我の治療のためにホームに戻ってきたモニカ達は、治療を行いながら焰蜂亭(ひばちてい)で起こった出来事を聞いていた。

ベッドに座り、ヘスティアに安上がりの膏薬(こうやく)を優しく塗られるベル、その隣では「ヴェルフの影響でベルが冒険者気質(らんぼう)になった」、と言いながら乱暴に膏薬(こうやく)を塗りたくるリリと言い争いをしているヴェルフ、そんな四人を見ながらモニカはドアにぶつけた鼻に膏薬(こうやく)を塗っていた。

 

「にしても驚いたよ、君が喧嘩をするなんて。ベル君も男の子だったんだねぇ。…でも、やっぱり喧嘩はよくないぜ?サポーター君の言う通り、しっかり怪我までしているじゃないか」

 

「だって、あの人達っ、モニカさんに神様を馬鹿にしたんですよ!?」

 

ベルの初めてと思われる神様(ヘスティア)への反抗に、驚いた表情をするモニカ。

ベルとヘスティアは少しの間黙って見つめ合っていると、ヘスティアがふっと微笑んだ。

 

「君がボクのために怒ってくれるのはとても嬉しいよ。でも、それで君が危険な目に遭ってしまう方が、ボクはずっと悲しいな」

 

「……!」

 

「ベル君の気持ちはわかる、逆の立場だったら、ボクも火を吐くほど怒る。でもそれで相手と喧嘩したボクが、ボコボコになって帰ってきたら、ベル君はどう思う?」

 

「……泣きたくなります」

 

「だろ?ボクも同じさ。少し不公平かもしれないけど、主神(ボク)を馬鹿にされたって腹を立てないでくれよ。神ってやつは、子が息災であることが一番嬉しいんだ。だから、今度は笑い飛ばしてやってくれよ。ボクの神様はそんなことで一々怒るセコイやつじゃない、(ふところ)が広いんだ、ってさ!」

 

ヘスティアの慈愛ある微笑に、ベルの熱くなっていた頭が急速に冷えていった。

ベルがそれまで感じていた怒りや悔しさは、ヘスティアが全て優しく抱き寄せ包み込んだことで、全て溶けていったのであった。

 

「今度は、我慢します……ごめんなさい」

 

俯きながらヘスティアに謝り、今後はもうこのようなことはしないと約束したベルに対し、温かな暖炉の火のような笑顔をベルに向けると、ベッドに座っている自分の隣を手で叩いた。

素直に従いヘスティアの横に座ると、ヘスティアは手を伸ばしてベルの髪を撫で始めた。

髪を撫でるヘスティアと顔を赤くするものの逃げずにヘスティアからの撫でを甘んじて受け入れるベル、そんな二人を心なしか微笑ましそうに見守っているリリとヴェルフ、モニカであった。

 

「……ところで、何でモニカ君も怪我をしていたんだい?乱闘には参加してなかったって聞いたんだけど…?」

 

「……その、ドアにぶつかりまして」

 

「ド、ドア?何で?」

 

「………色々ありまして」

 

話せば【ロキ・ファミリア】の主神ロキとの仲がさらに悪くなると考えたモニカは、凶狼(ヴァナルカント)との一件はヘスティアに話さないことにしたのであった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで第五章スタートです。
今話でのモニカには焰蜂亭に後から合流してもらうことにしました。
元々の設定では、一緒に祝賀会に参加してもらって、『ルアンがモニカをチビと罵倒 → キレて乱闘 or 暴走したモニカをベルとヴェルフが二人で羽交い絞めにして店を出る』のどちらかになる予定でした。
ですが、何か違うような気がしたので没にして、祝賀会に後から合流してもらうということにしました。

次回はダフネ&カサンドラが登場です。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第59話 『招待状』

ダンメモ、6周年イベントで新規イベント終了らしいですね。
もっと本編じゃ見れないギャグイベントとか色々やってほしいけど、難しいのかなって。
どうも、刺身の盛り合わせです。

ということで最新話です。
今回は『神の宴』開催直前までです。
話の進行上、原作から一部展開が変わってます。

また、皆さんアンケートに回答していただきありがとうございます。
結果としては『相棒』が『♡』に4票差ということになりました。
なので、今後は『相棒』ルートで進んでいくことになります。
『♡』ルートは番外編などで書けたらなと思います。
…まぁ、ルート分岐のタイミングは最終章の予定なんですけどね。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


「―――それじゃあ、もう体は大丈夫なの?」

 

「はい、すっかり良くなりました」

 

焰蜂亭(ひばちてい)』での一件から一夜明けた翌日、ベルとモニカはギルド本部のエイナのもとに訪れ、面談用ボックス内で現状報告や今後の予定の打ち合わせを行っていた。

机を挟んで何となく見つめ合うベルとエイナ。

少し照れ臭い空気が互いの間に流れたところで、コホン、とモニカが咳払いを行ったことで話を再開させた。

 

「それでね、二人共…私は立場上、余計な詮索をしちゃいけないんだけど……危なかったんだよね?」

 

「……はい/あぁ」

 

今回起きた異常事態(イレギュラー)階層主(ゴライアス)の出現などについて、ギルド職員は無闇に蒸し返すことを禁じられているため、エイナは深く言及はせずにどれほど危機的な状況だったのかをベルとモニカに尋ねた。

その質問に対し深く頷いたベルとモニカを見たエイナは、「わかった」と頷き返すと、眼鏡をかけ直し―――きりっ、と緑玉色(エメラルド)双眸(そうぼう)を真っ直ぐ二人に向けてきた。

 

「私も、これから少しでも力になれるよう頑張るよ。とりあえず―――二人のダンジョンの予習(べんきょう)の量も、範囲も、増やしていこう」

 

「「えっ」」

 

エイナからの酷烈(スパルタ)指導の勉強会をこれまでよりも増加させようという提案を受けたベルとモニカは、顔を引きつらせてどうにか断ろうかした。

しかし、自分達の身を心から案じてくれているエイナの優しさから断ることが出来ず、乾いた笑みを浮かべて了承するのであった。

それから、当面の目標である『13階層の完全踏破』、エイナからギルドに集められた冒険者依頼(クエスト)の内、モンスターの『ドロップアイテム』収集と迷宮内の特殊な鉱石の発見・採掘の二つを受諾し、昨夜の一件についてちょっとした注意を受けたのであった。

 

「ベル・クラネルとモニカ・ヴァイスヴィントで間違いない?」

 

「は、はい」

 

「…間違いないが、何か用か?」

 

「あの、これを……」

 

それはボックスから出てロビーに向かい、窓口前でエイナと別れようとした時のことである。

視線を感じたベルとモニカが視線のした方向を振り向くと、広いロビーの隅にいた女性冒険者と目が合った。

二人はベルとモニカの髪や瞳を確かめるようにじっと見つめると、人込みを避けながら距離を詰め、気の強そうな短髪(ショートヘアー)の少女が確認を取ってきた。

ベルはうろたえながら、モニカは少し懐疑的な表情を浮かべながら答えると、次は後ろにいた長髪の少女がおどおどしながら歩み出てくると、()()()()()()()()()()()徽章(きしょう)された招待状を渡してきた。

 

「ウチはダフネ。この()はカサンドラ。察しの通り【アポロン・ファミリア】よ」

 

「あの、それ、案内状です。アポロン様が『宴』を開くので、も、もし良かったら…べ、別に来なくても結構なんですけどっ……あぅ」

 

自己紹介から、目の前の女性冒険者達も昨日酒場で一悶着起こした冒険者との仲間と知ったベルはどう反応したらいいのか分からず困惑していると、カサンドラが「来なくても大丈夫」と言おうとしたが、ダフネが後頭部を(はた)いて止めた。

 

「必ずあなた達の主神に伝えて。いい、渡したからね?」

 

「「……分かりました/……了解した」」

 

カサンドラの後頭部を(はた)いたダフネは、身を乗り出すと招待状とベルとモニカを交互に指を向けながら念を押してきた。

了承すると身を引き、カサンドラを呼びかけるとモニカ達の方に向けて「ご愁傷様」と呟くと、カサンドラを連れて立ち去っていったのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「『神の宴』の招待状か……ガネーシャの開いた『宴』から一カ月半ぐらい……そろそろ誰かがやるとは思っていたけど…」

 

招待状を渡された日の夜。

ベルとモニカはホームに戻り、夕食を済ませてバイト終わりのヘスティアの代わりに後片付けをしながら、昼間の出来事をヘスティアに伝えた。

 

「どうなさいますか、神様?」

 

「揉め事があったばかりだし、無視はできないなぁ…」

 

「すいません、神様……」

 

「ああ、大丈夫だよ、変な責任は感じないでくれ。……というか、実はボクもアポロンが苦手なんだ」

 

「そうなのですか?」

 

「あぁ……展開で色々あってね……まぁ、それは置いといて!今回の宴は普通の宴と違って、趣向が凝らされてるみたいだ」

 

アポロンとの関係に言葉を濁したヘスティアは、話を変えるため二人に招待状の内容を話した。

 

「ほら、『()()()()()()()()()()』だって。ミアハの所にも届いてるだろうから、今回の『宴』は皆で行けるね。ちなみに二人は礼服を持ってるかい?」

 

「いえ、持ってないです」

 

「私も持っていませんが……、当てはあるのでそちらに向かおうと思います」

 

 

「「当て?」」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「―――というわけで、『神の宴』でここにいる五人が着るための礼服の制作を「お任せください!!」」

 

翌日、ヘスティアとベル、ミアハとナァーザを連れてモニカが訪れたのは、ツムギの仕立て屋であった。

 

「依頼が直前になってすまない。それと、五人分も任せて大丈夫か?」

 

「ご安心ください、モニカさんが私に服の依頼をしてくれたんです!必ず、完璧なものを作りますし、明日までに間に合わせてみせますよ!」

 

「私達の服、作ってくれて、ありがとう…」

 

「いえいえ。私もナァーザさんのような素敵な方の服を作れるなんて、職人冥利に尽きるってものです!」

 

「それにしても、代金はそちらで持ってもらって本当に良かったのか、ヘスティア?」

 

「いつもベル君達がお世話になってるんだ。代金のことはボク達が持つから気にしないでくれ。『持ちつ持たれつ』ってやつだよ、ミアハ?」

 

日頃から数万ヴァリスもする高等回復薬(ハイ・ポーション)二属性回復薬(デュアル・ポーション)を格安で譲ってもらっているため、普段のお礼としてミアハ達の衣装代を肩代わりすることにしたヘスティア。

どうせなら購入ではなく一緒に作ってもらおうということで、ミアハとナァーザも連れてツムギのもとに訪れたのであった。

 

「それじゃあ採寸を行いますので、一人ずつ順番に奥に来てくださいね!まずはモニカさんから―――」

 

こうして、それぞれの採寸を終えたツムギ達は、礼服が完成するまでの間、『神の宴』に必要な準備を行うのであった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、アポロン主催の『神の宴』が、眷属2名までの参加になりました。
モニカを絡ませるとなると、こうするしかないんですけどね。
なので、『神の宴』でも参加する眷属の数が増えます。
誰が参加するのか、次回をお楽しみに。

そして次回はモニカのドレスお披露目回になります。
ドレスは個人的にモニカに似合うと思ったものになります。
なので想像と違っても許してください。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第60話 『宴での会合』

どうも、久しぶりに連続投稿しました。
内容はモニカの設定回りについてです。
プリコネのクロスオーバー物が増えないかなと考えている刺身の盛り合わせです。

ということで今回からアポロン主催の『神の宴』、その最初の各ファミリアで集合するところからです。
また、原作と違い『眷属2名』を連れていけるため、【ミアハ・ファミリア】以外は登場人物が少し増えてます。
誰が登場するのかはお楽しみください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


ツムギのもとに訪れ礼服の依頼をした翌日、【アポロン・ファミリア】の『神の宴』の開催日。

モニカ達は商人から借りた馬車で『神の宴』の会場に訪れていた。

 

「何というか…僕達、場違いな感じがしますね」

 

「こういうドレスは普段着ることがないから、なんだか落ち着かんな…」

 

「いやいや。似合っているぜ、二人共。恥ずかしがらなくて大丈夫さ」

 

周囲の神々や派手に着飾った冒険者や職人達を見て場違いと感じるベル、普段ミニ丈以上のスカートを履かないためドレスの丈の長さに困惑するモニカ、そんな二人を慰めるヘスティア

沢山のレースとフリルをあしらい、しっかり谷間が強調された蒼海色(マリンブルー)のドレスを着たヘスティアに対し、フリルもレースもついてないシンプルな黒のドレスを着たモニカ、ベルは黒の燕尾服を着ていた。

 

「すまぬな、ヘスティア、ベル、モニカ。服から何まで、色々なものを世話になって」

 

「誘ってくれて、ありがとう、ベル…。それと、ドレスありがとう、モニカ…。……似合う?」

 

「ナ、ナァーザさん」

 

「とても似合っているぞ、ナァーザ殿」

 

二人を褒めているヘスティアに話しかけたのは、団員であるナァーザの手を引いて馬車から出てきたミアハ。

ミアハは燕尾服、ナァーザは赤の生地で右手の義手が隠れるよう長袖のドレスを着ていた。

スカートの部分を両手でつまみながら聞いてくるナァーザに、大きく頷くベルと言葉で返すモニカ、

その答えを聞いたナァーザは、心なしか嬉しそうな表情を浮かべながら尻尾を左右にぱたぱたと振っていた。

 

「でっは、そろそろ行くとするか」

 

「ああ。それじゃあベル君、しっかりエスコートしてくれよ?」

 

「ま、任せるぞ、ベル……」

 

「は、はいっ」

 

ミアハに促され、元気いっぱいのヘスティアと少し照れているモニカの手をおそるおそる取ったベルは、周囲に倣ってヘスティアとモニカ、ナァーザの三人の女性をミアハと一緒にエスコートしながら、会場へ入って行くのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「あら、来たわね」

 

「ミアハもいるとは意外だな」

 

「よっ、ベル、モニカ」

 

「ヘファイストス、タケ!」

 

「「ヴェルフ!」」

 

会場に入り、側にいるナァーザに色々な情報を教えてもらいながら周囲を見回していたモニカ達は、隅の方に足を運んだところでヘファイストスとタケミカヅチに声を掛けられた。

 

「タケの同伴は(ミコト)君と千草(チグサ)君か。この間はありがとう」

 

「い、いえっ、はっ、はい…!」

 

「あっ、ありがとう、ございます…!」

 

「ところで、ヘファイストスの所は一人だけなのか?」

 

「いや、一緒に来てるんだけど、少し変わり者でね、主神(わたし)を置いて、辺りを一人で散策してるわ」

 

「まぁ、俺としちゃあいつとこれ以上一緒に居なくて済むならいいんだがな」

 

「…一体誰と来たのだ、貴公は?」

 

「やぁやぁ、集まっているようだね!オレも混ぜてくれよ!」

 

「あ、ヘルメス」

 

それぞれ互いに話をしていると、大声を出しながら弾んだ様子でヘルメスが歩み寄ってきていた。

側には「ヘルメス様、もっと声を下げてください…」と諫言(かんげん)しながら溜息を堪えるアスフィと、そんな光景を笑いながら見ている(アキラ)が付き添っていた。

 

「何でお前がこっちに来るんだ。今まで大した付き合いもなかったろうに」

 

「おいおいタケミカヅチ、共に団結してことに当たったばかりじゃないか!オレだけ仲間外れにしないでくれよ!」

 

嫌そうな顔をしながら言うタケミカヅチの脇をするりと通り抜けたヘルメスは、モニカ達の前に出ると人当たりのいい笑みを浮かべながら話しかけてきた。

 

「やぁ、ベル君!その服、決まっているじゃないか!モニカちゃんもナァーザちゃんも綺麗だぜ!」

 

「あ、ありがとうございます」「そ、そうか…?」「どうも…」

 

「そうだぜ、モニカちゃん!…っておや(ミコト)ちゃんに千草(チグサ)ちゃん、緊張しているのかい?せっかくの可愛い顔がもったいないぜ!」

 

「「か、可愛っ……!?」」

 

「だがぁ……ウチのアスフィと(アキラ)も負けていないとも!見たまえ、二人のドレスを!」

 

「や、やめてください、ヘルメス様。本気で殴りますよ……」

 

「照れてるアスフィも、可愛いぜ」

 

ベルやミアハとは違い衣装を軽く着崩しているヘルメスは、その場にいた全員を片っ端から誉めそやすと、最後にアスフィと(アキラ)を褒め始めた。

(アキラ)は苦笑い、アスフィは恥ずかしいようで止めるようにヘルメスに忠言したものの、止めなかったためアスフィから肘鉄を食らい、壁まで吹き飛ばされていった。

 

『―――諸君、今日はよく足を運んでくれた!』

 

崩れ落ち悶絶しているヘルメスの声を聞き流しながら話をしていると、会場に高らかな声が響き渡らせながら、金髪の男神――アポロンが姿を現した。

 

『今回は私の一存で趣向を変えてみたが、気に入ってもらえただろうか?日々可愛がっている者達を着飾り、こうして我々の宴に連れ出すのもまた一興だろう!多くの同族、そして愛する子供達の顔を見れて、私自身喜ばしい限りだ。―――今宵は新しき出会いに恵まれる、そんな予感すらする』

 

口上に耳を貸していたモニカだったが、不意にアポロンの視線が自分と隣にいたベルを射抜いたような錯覚を感じた。

隣のベルは怪訝そうな顔をしながら背後を振り返っていたが、モニカはアポロンの視線が自分達に向けられていることに気が付いていた。

 

『今日の夜は長い。上質な酒も、食も振る舞おう。ぜひ楽しんでいってくれ!』

 

先日の騒ぎから眼をつけられたのではと考えたモニカは、アポロンの言葉を聞きながら少し気を引き締めるのであった。

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、『神の宴』がスタートです。
そして、【ヘファイストス・ファミリア】からはヴェルフ、【タケミカヅチ・ファミリア】からは千草、【ヘルメス・ファミリア】からは晶が『神の宴』に参加です。
また、今話では出ていませんが、【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】も一人人数が増えています。
誰が参加するのか、次回をお楽しみください。

それと、モニカのドレスが今回公開されました。
種類としてはノースリーブのボートネックドレスで、スカート丈はミニ、色は黒になっています。
ちょうどドレスについて探していた時に見つけて「これだ!」、と思いました。
絵については…誰か書いてくれてもいいんですよ?

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第61話 『美神と悪戯神』

ようやく仕事に慣れ始めてきました。
どうも、刺身の盛り合わせです。

ということで、最新話です。
今回は神の会中編。
今話は題名の元になった神達が登場。
もちろんこの二柱が連れてくるメンバーも原作から増えています。
誰が登場するか、お楽しみに。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


アポロンの開幕の言葉から始まった『神の宴』。

酒場の一件でアポロンと話をしようとしたモニカ達だったが、多くの神達に囲まれ忙しそうだったため、後回しにしてミアハ達の輪の中に加わり歓談を始めた。

 

「それにしても、あの白髪の子が世界最速兎(レコードホルダー)の『未完の少年(リトル・ルーキー)』かぁ。いつ見ても『猛牛殺し(オックス・スレイヤー)』、って感じはあんまりないよねぇ」

 

「んむ……ベルのことを知っていたのか、(アキラ)殿。というか『猛牛殺し(オックス・スレイヤー)』とは一体何のことだ?…むっ、このケーキ美味しいな」

 

輪の中に加わる前にあらかじめ皿に大量のスイーツを盛っておいたモニカは、他の者達の話を聞きながらも目を輝かせながら皿の上のケーキを食べていた。

一所懸命ケーキを食べていると、(アキラ)が近づき話しかけてきた。

 

「そりゃあ、冒険者依頼(クエスト)の時にちょっとね…。それと『猛牛殺し(オックス・スレイヤー)』っていうのはさ、彼がランクアップの時にミノタウロスを単独撃破したから付いてるんだよ」

 

「ミノタウロスを単独撃破!?またベルとの差が開いてしまったか……ッ!」

 

「いやいや、ワイズオウルを実質一人で撃破したモニカちゃんも相当だよ?」

 

ケーキを食べながらベルとの差が広がったことに悔しがるモニカであった。

 

「そういえば、モニカちゃんが今着てるそのドレスって、ツムギに作ってもらったやつでしょ?似合ってるよ」

 

「そういう(アキラ)殿も、素敵なドレスだ。髪形も合わさって何倍も素敵に見えるぞ」

 

いつもの服装と同じ色の少し黒みがかった赤のロングドレスを着た(アキラ)

更に髪型をひとつ結びから三つ編みにしたことで、普段とは違う雰囲気を醸し出していた。

 

「いやぁ、せっかく参加するならオシャレしろ、ってツムギに言われてさぁ。やっぱりドレスは慣れないねぇ」

 

「まぁそれはそうだが―――っと、何だ?」

 

「えっと……あぁ、フレイヤ様だね」

 

(アキラ)と話をしていると、広間の入口から大きなどよめきが起こった。

音の出どころに視線を飛ばすと、そこには巨人の獣人と右目を隠すほどのロングヘアのヒューマンを従えた銀髪の女神――フレイヤがいた。

 

「あの方が、女神フレイヤ………「はい、そこまで」うみゅっ!?」

 

フレイヤの一つ一つの動作に見惚れていると、(アキラ)に両頬を押さえられ視線をフレイヤから逸らされた。

 

「フレイヤ様は『美の神』だからね。私達が見つめ続けると、たちまち(とりこ)になって『魅了』されちゃうからね、気を付けてよ?」

 

(アキラ)の言葉を受け周囲を見ると、両手で頬を叩いているヴェルフに、顔を赤くして呻く(ミコト)千草(チグサ)、いかんいかん、と首を振るナァーザ、そもそも最初から視線を明後日の方向に視線を飛ばしている(アキラ)とアスフィ、そして―――

 

「フレイヤを見るんじゃない、ベル君!魅了されるぞ!?」

 

隣ではフレイヤを見ないよう、ヘスティアの放漫な胸に顔を押しつけられながら地面に押し倒されているベルがいた。

呆れた表情でベルを見ていると、獣人と女性の従者を引き連れた女神が近づいてきて、モニカ達の前で足を止めた。

 

「来ていたのね、ヘスティア。それにヘファイストスも。神会(ディナトゥス)以来かしら?」

 

「っ……やぁフレイヤ、何しに来たんだい?」「元気そうで何よりよ」

 

「別に、挨拶をしに来ただけよ?珍しい顔ぶれが揃っているものだから、足を向けてしまったの」

 

そう言いながら男神達に流し目を送るフレイヤ。

蠱惑的な視線を受けたヘルメスはデレデレ、タケミカヅチは赤面しつつ咳払い、ミアハは普通に褒めていたが、その直後に眷属達に足を踏まれ抓られ打撃されていた。

そしてベルで視線を止めると、自然な動作でスッと手を差し伸べて頬を撫でた。

 

「――今夜、私に夢を見させてくれないかs「見せるかァ!!」

 

フレイヤからの質問を遮りながら、ベルの頬に添えられた手を叩き落とし、真っ赤に激昂するヘスティア。

 

「いいかい、この女神は男を見れば手当たり次第ペロリと食べてしまう怪物(ドラゴン)みたいなやつなんだ!!(きみ)みたいな子がぼーっとしていると一瞬で取って食われるぞ!?」

 

如何にフレイヤが危険かをベルの眼前で力説するヘスティアと、ヘスティアの形相に仰け反りまくるベル。

一方でフレイヤはヘスティアの反応を見ておかしそうに微笑み、隣にいたモニカに視線を一瞬だけ向けると、あっさりと身を引いた。

 

「ヘスティアの機嫌を損ねてしまったようだし、もう行くわ。それじゃあ」

 

「オッタル、ヘルン」と側にいた従者たちに声をかけ、歩き出すフレイヤ。

オッタルはベルとモニカ、ヘルンは()()()()()嫌悪の表情で一瞥すると、フレイヤの後ろについて行った。

 

「―――早速、あの色ボケにちょっかい出されたなぁ」

 

「ロキ!?」

 

「よぉードチビー、ドレス着れるようになったんやなー。めっちゃ背伸びしとるようで笑えるわー」

 

嵐が過ぎ去ったような間を置いて、その場にいた全員が口を開かないでいると、別方向から声がかかった。

驚きながら振り向くと、そこには男性用の正装をしたロキと、薄い緑色を基調にしたドレスを着たアイズ、少し黒めの赤を基調にしたドレスを着たリヴェリアがいた。

 

「お前がこういう催し物に来るのは珍しいな、『迷宮女王(クイーン・ラビリンス)』?」

 

「そういうそっちこそ、てっきり他の子が来ると思ってたよ、『九魔姫(ナイン・ヘル)』?」

 

「ロキのお目付け役を頼まれてな……っと。お前は確か、18階層の……」

 

「【ヘスティア・ファミリア】所属のモニカ・ヴァイスヴィントだ。あの時はベル達を助けてくれて感謝する」

 

「いや、気にすることはない。目の前に死にかけの者がいたら助けるのは当然のことだ。それに、彼らが18階層まで自力で辿り着いたからこそ助けることが出来たのだ」

 

「それでも言わせてくれ、本当にありが「そもそもそっちのヴァレン何某(なにがし)よりボクのベル君の方がよっぽど可愛いね!(うさぎ)みたいで愛嬌がある!!」と…う?」

 

「笑わすなボケェ!!うちのアイズたんの方が実力もかっこよさも百万倍上や!?」

 

18階層でベル達を助けてくれたことについて、モニカがリヴェリアに感謝の言葉を贈っていると、側でヘスティアとロキが喧嘩を始めた。

ギャーギャーッ、と騒ぎ立てるヘスティア達にヘファイストスはげんなりとし、ミアハ達は空笑い、ナァーザ達は口を半開きにしていた。

 

「……すまない、少しロキの奴を止めてくる」

 

「私もヘスティア様を止めなくてはな…」

 

「二人共いってらっしゃーい」

 

周囲の神達がわらわらと集まってきて注目を集め始めたため、モニカとリヴェリアは(アキラ)に見送られながら自分達の主神を止めに行った。

ヘスティアとロキの側にいたベルとアイズ、途中で近づいてきたヘルメス達の仲介を経てようやく喧嘩を止めることが出来た。 

 

「……ケッ、ドチビが側にいるとせっかくの気分が台無しや!行くでアイズたん、リヴェリアママ!」

 

「それはこっちのセリフだ!!ボク達も行くぞ、ベル君、モニカ君!」

 

ベルの手を掴み、ロキとは反対方向へ進むヘスティアに呼ばれたモニカは、先ほどまで話していたリヴェリアや(アキラ)達と二、三言ほど言葉を交わすと、急いでヘスティアのもとへ行き共に会場を移動するであった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、ロキ・ファミリアからはリヴェリア・リヨス・アールヴ、フレイヤ・ファミリアからはヘルンが登場しました。
リヴェリアを登場させた理由は、ここらへんじゃないと晶との交遊関係を出せないなぁと思ったからです。
フレイヤ・ファミリアからはエルフのヘディン・セルランドを参加させようかと思いましたが、『団長のオッタル以外でフレイヤの傍に立つ事が許されている』、『名のなき女神の遣い(ネームレス)と呼ばれている』など、調べれば調べる程適任だったため、ヘルンを登場させました。

また、今話でモニカが初めてフレイヤと会いました。
本作でのフレイヤ→モニカの評価としては『他の有象無象と同じ魂のため、そこまで興味はない。また、今の所良い影響を与えているためベルの側にいることを見逃している』という感じです。
なので、フレイヤ様大好きヘルンはそこまでモニカのことを目の敵にしておらず、どちらかというと無関心です。
対してフレイヤのお気に入りであるベルのことは死ぬほど嫌悪しています。

オッタルはベルほどではないもののモニカにも少しだけ目をかけています。
理由としては、フレイヤからモニカが(都市外のダンジョンにいる)階層主を単独で撃破したという話を聞いたためです。

今作でリヴェリアが来ているドレスは、ダンメモの【『絢爛深紅』リヴェリア・リヨス・アールヴ】が元になってます。
本当はバレンタイン衣装なんですが、凄い似合ってたので礼服として採用しました。

次回はほとんどオリジナルになりそうなダンス回。
モニカが誰と踊るのか、お楽しみください。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第62話 『Shall We Dance?』

ダンメモ6周年イベント始まりましたね。
どうも、ピックアップキャラは全員当てた刺身の盛り合わせです。

ということで最新話です。
今回はダンス回、そして神の宴はこの話で終了です。
前回オリジナル、とか言っておきながら半分ぐらい原作通りになってます。
かなり難産で、思ったより書くのに時間がかかりました。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


「むっ、このケーキも中々ですよ、ヘスティア様」

 

「モニカ君、こっちのチキンも絶品だぜ?……どうにか持って帰れないかなぁ」

 

ヘスティアに連れられ、知人だという神様達に挨拶をして回ったベルとモニカ。

パーティーが始まり二時間ほど経ち、小休止をもらったモニカはヘスティアと共に料理のあるテーブルに戻り料理を味わっていた。

 

「アンタ達、二人そろって何やってるのよ…。というかヘスティア、アンタまた持って帰ろうとしてるの?」

 

「いやいや、そんなわけないじゃないか、ヘファイストス~」

 

「なぁモニカ、ベルがどこにいるか知らないか?」

 

「確かバルコニーの方へ向かったはずだが…何か用でもあったのか?」

 

「いや、ちょっと話でもしようと思ったんだが「楽しんでおるか、ヴェル吉!」――うおっ!?」

 

途中で近づいてきたヴェルフと共に料理を食べていると、突然一人の女性がヴェルフと肩を組むように背後から飛びかかってきた。

その女性は黒目と褐色の肌で、左目に眼帯を付けており、黒の生地に椿の絵が描かれた着物を着ていた。

 

「いきなり何の用だ、椿!」

 

「何だ、用が無ければ話しかけてはならんのか……っと、お主がヴェルフとパーティを組んでおる者か?手前(てまえ)は椿・コルブランド。【ヘファイストス・ファミリア】のLv.5の鍛冶師兼、団長も務めている」

 

「私はモニカ・ヴァイスヴィント。【ヘスティア・ファミリア】のLv.2の冒険者だ。ヴェルフとはパーティを組ませてもらっている本当はもう一人仲間がいるのだが…すまない、今は席を外していてな」

 

「モニカ……あぁ!主神様が武器を作った一人か!どうだ、主神殿が直々に打った武器の使い心地は!」

 

「「……ハァァァ!?」」

 

椿のその一言に、話を聞いていたモニカとヴェルフはまるで時間が止まったかのように固まったかと思うと、会場中に響き渡るほどの大声を上げた。

 

「ど、どうしたんだいモニカ君!?そんなに大声を上げて!?」

 

「ヘスティア様、私のサーベルはヘファイストス様が直々に製作した、というのは本当ですか!?」

 

「え゛っ。モ、モニカ君?い、一体どこでその話を……!」

 

「先ほど椿殿が教えてくれました」

 

ヘスティアがモニカの指差した方向を向くと、やっちゃった、というような表情をした椿と借金について何とか誤魔化すようにとアイコンタクトを送るヘファイストス、何かに納得がいったような表情をしたヴェルフの姿を見つけた。

 

椿君め……!モ、モニカ君、少し考えるんだ。ヘファイストスの作る武器っていうのは一振り何億ヴァリスもするんだぜ?零細ファミリアの主神である僕が、そんな借金作るわけないだろう?」

 

「確かに、それはそうですが……」

 

「そうだろうそうだろう!…おっ、何か始まったみたいだよ、モニカ君!せっかくだから見に行こうぜ!」

 

「えっちょ、ヘスティア様!?手を引っ張らないでください、自分で歩けますからぁ!?」

 

武器の件を勢いだけで誤魔化すことにしたヘスティアは、モニカの手を引いて会場の中心へと向かっていった。

ヘスティアがモニカの手を引いて向かった先では舞踏が行われており、各ファミリアの主神達が自分の眷属達と共に楽しく踊っていた。

 

「ムッ、中々楽しそうなことが始まっているじゃないか!ボクも踊りたいなぁ…チラッチラッ」

 

「!……ではヘスティア様、私と踊っていただけますか?」

 

「あぁ、もちろん!」

 

ヘスティアの真意を読み取り、笑顔を浮かべながら右手を差し出し、ヘスティアをダンスに誘うモニカ。

ヘスティアはほほ笑みを浮かべながら差し出されたモニカの手を取ると、二人で手を繋ぎながらダンスホールとなっている広間の中心へ向かうのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ヘスティア様、次は右に動きますっ」

 

「…っとと。ようやくステップを踏むのにも慣れてきたね、モニカ君」

 

ダンスホールに向かったモニカ達は、モニカが先導(リード)する形でダンスを行っていた。

最初は二人共ダンスに慣れずぎこちなくステップを踏んでは頭をぶつけていたが、コツをつかんだモニカの先導(リード)によって、ようやく揃ってステップを踏み始めていた。

 

「よーし、このまま流れに乗って踊ろうじゃないか…ってぁあああああああああああああ!?ベルくーんっ!!」

 

「!?な、何ですかヘスティア様!?いきなり叫んで……って、あぁ…」

 

踊っている最中に突如大声を上げたヘスティアに驚いたモニカ。

ヘスティアの目線を追った先にいたのは、一緒にダンスを踊っているベルとアイズであった。

 

「手を放してくれモニカ君!ボクはヴァレン何某からベル君を引き離さないといけないんだ!」

 

「今は私と踊っている最中ですし、今ベルの元へ行くのは周囲の邪魔になります!せめて終わってからにしてください!」

 

「ぬぅうううううううううう!手を放してくれモニカ君――!!」

 

『ぬぐぅぉおおおおおおおお!手をはなしてぇやリヴェリアママ!ウチはあんのドチビんとこの眷属からアイズたんを引き離さんといかんのや!!』

 

『ええい、周りの邪魔になるから大人しくしていろ!』

 

『………』

 

『…オッタル、ここにミノタウロスの群れを連れてこれないかしら?』

 

『不可能です、フレイヤ様…』

 

ベル達の元へ向かおうとするヘスティアを止めるべく、手を放さないモニカ。

モニカ達の反対側からは、ヘスティアと同様にアイズ達の元に突撃しようとするロキとそれを止めるリヴェリア。

更に離れた場所ではフレイヤがオッタルに無茶ぶりをしたり、ヘルンがベルに憎しみを込めた目線を送っていた。

モニカとリヴェリアによってヘスティアとロキの邪魔が入らず最後まで踊ることが出来たベルとアイズだったが―――

 

「ベル君っっ、今度はボクと踊ろうぜ!!」

 

「アイズたんもうちと踊ろー!!拒否権はなしやァ!」

 

踊り終わるのと同時にその場にモニカを置いてきたヘスティアが矢のように飛んできてアイズを突き飛ばし、鬼気迫る表情でベルの両手を掴んでいた。

突き飛ばされたアイズはヘスティアと同様にリヴェリアを置いてきたロキがこれまたヘスティアと同様にアイズの両手を掴んでいた。

ヘスティアが光の速さで身だしなみを整えていると、離れた場所に置いて行かれていたモニカとリヴェリアが近づいてきて、それぞれの主神に小言を言っていた。

 

「―――諸君、宴は楽しんでいるかな?」

 

それを見ながら苦笑していたベルだったが、いつの間にか従者とともにアポロンがすぐ側に立っており、気づけばアポロン中心に円が出来上がっていた。

笑みを浮かべながら挨拶をするアポロンに対し、怪訝な表情をしながら返事をするヘスティア。

ことを荒立てないようヘスティアが話しを付けようとしたものの――

 

「私の子は君の子に重傷を負わされた。代償をもらい受けたい」

 

ヘスティアの発言に被せるように要求を出してきた。

この発言に固まったヘスティア・ファミリアの一行だったが、すぐに復活したヘスティアはアポロンに激怒した。

それに対しアポロンはまるで演劇かのように大袈裟に動いて如何に自分が悲しんだのか表現すると、ベル達の側に全身を包帯でぐっるぐる巻きにした木乃伊(ミイラ)状態の小人族(パルゥム)の団員、ルアンが歩み寄ってきた。

 

「ま、まさか、ベル君……本当にここまでボッコボコに……?」

 

「ベル…兎みたいな顔しておいて、そんな恐ろしいことを……」

 

「してませんしてませんしてませんしてませんっ!?」

 

震えて見上げてくるヘスティアとドン引きの表情を浮かべたモニカに対し、顔を真っ赤にして否定するベル。

更にアポロンは先にベルが仕掛けたのを見た証人が多くいる、と言い指を弾くと、モニカ達を取り囲む円から喧嘩の時に火蜂亭(ひばちてい)で見た客たちが出てきた。

あまりにも出来すぎな状況に嫌な予感を感じたモニカ。

 

「罪を認めない、というのならば仕方ない。ヘスティア――君に『戦争遊戯(ウォーゲーム)』を申し込む!」

 

アポロンの言い分をヘスティアがはねのけた瞬間、アポロンは嫌らしい笑みを深めて甲殻を吊り上げると、ヘスティアに『戦争遊戯(ウォーゲーム)』を申し込んだ。

モニカ達は驚愕する一方、アポロンの宣言を受けて周囲の神々はざわついていた。

 

「我々が買ったら……君の眷属、ベル・クラネルとモニカ・ヴァイスヴィントをもらう」

 

愕然としているヘスティアにさらに要求を重ねるアポロン。

その言葉にベルは思わず目を剥き、モニカは何かに気付いたような表情、ヘスティアは盛大な歯ぎしりをした。

 

「最初からそれが狙いかっ……!」

 

ヘスティア達が何を言っているのか分からず混乱して顔を左右に振るベルに、側にいたモニカがアポロンを睨みつけながら説明を―――

 

「要するにだ。ベル、貴公がいちゃもんをつけられた酒場の一件から何まで、神アポロンの計略だ…!我々を自らのファミリアに入れるための………ッ!?

 

―――行っている最中に、突如言葉を詰まらせたモニカ。

一体何があったのか、モニカの視線の先を向くと、アポロンが欲望だけを一途に煮詰めたようなおぞましい笑みを浮かべながらベルとモニカを見ていた。

 

「――駄目じゃないかぁ、ヘスティア~?こんな可愛い子達を独り占めしちゃあ~」

 

アポロンからの熱い視線を受け取り、ベルは肌を泡立たせ顔の色をなくし、モニカはあまりの気持ち悪さにベルの背中に隠れてしまった。

返答を求めるアポロンに対し、断固拒否するヘスティア。

にやつくアポロンに怒声を飛ばしたヘスティアは、ベルとモニカの手を掴むと、周囲の人混みを強引に割って進み、小さな全身を怒らせながら大広間を後にした。

会場の出口を通過する間際に扉に寄りかかっていたヒュアキントスの冷笑を見たモニカは、この騒ぎがこれで終わりとは考えられなかった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、どうだったでしょうかダンス回。
せっかく二人参加できるようにしたんですし、モニカにはヘスティアと、リヴェリアはロキと踊ってもらいました。
また本文中には書いてないですが、離れた場所では椿にせっつかれてヴェルフとヘファイストスが踊っています。
好きな人と踊れてよかったね、ヴェルフ!

そしてモニカにヘスティア・サーベルが誰が作ったのかがバレました。
まぁ結局丸め込まれたのでモニカはすぐ忘れてしまいます。
そしてヴェルフが納得した表情を浮かべていた理由ですが、ヴェルフはベルとモニカ、二人の武器の整備を行ったことがあるため、その時に神聖文字を見て誰が書いたのか疑問に思っていましたが、それが今回解明された、という裏設定があります。

気持ち悪い神No.1、アポロンが本領発揮しました。
ついでにモニカの女の子部分も少し出してみました。
ロックオンされたベルとモニカがどうなるのか、ぜひ次回をお待ちください。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第63話 『襲撃』

本作を書きながらプリコネにログインしたら、ツムギの星6が発表されてました。
実装後は本作でのツムギ周りの設定が変わると思うので、どのように変わるかはお楽しみください。
どうも、刺身の盛り合わせです。

ということで、最新話です。
今回は題名通りアポロン・ファミリアからの襲撃回。
途中からオリジナルの展開も挟んでいます。
そして、今話プリコネから新たにキャラを登場させます。
一体誰が参戦したのか、是非とも本編を読んでみてください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


 

「ベル君、モニカ君、何かあったらすぐ逃げるんだぞ。移動する時も一人にならないように、人が大勢いるところを行くんだ」

 

「「分かりました/了解です」」

 

「ダンジョンへ潜るときも、しばらく(ミコト)君達と行動をともにしたほうがいいかもしれない。タケも事情を分かってくれている筈だから、パーティの申請も受け入れてくれるだろうしね」

 

『神の宴』から一夜が明け、翌朝。

【ステイタス】更新を終えたベルとモニカ、ヘスティアは 今後の予定を話し合っていた。

ダンジョン内でのアポロン・ファミリアからの襲撃の可能性を考慮したヘスティアは、ベルとモニカになるべく一人にならず、ダンジョンでもタケミカヅチ・ファミリアのメンバーとパーティを組むようにと言う話をしていた。

 

「二人共、出るのが一緒なんだし、どうせだから摩天楼施設(バベル)まで三人で行こうぜ?」

 

「はい、いいですよ」

 

「せっかくですしね、行きましょうか」

 

隠し部屋から出て教会内を突っ切ろうとした瞬間、魔力を感じたため足を止め周囲を見渡すベル。

 

「……ヘスティア様、念のため礼拝堂の奥に入っていてもらえませんか?」

 

「?わ、分かったよ……」

 

足を止め周囲を見回すベルに怪訝な表情を向けたが、最悪の可能性を考え背後にいるヘスティアに礼拝堂の奥へ入っておくように言うモニカ。

礼拝堂の奥に入って行くヘスティアを見送ったモニカは、協会から出たベルに近寄ろうとすると、ベルが突然反転して部屋の中に戻ってきた。

ベルの行動に一瞬だけ驚き固まったものの、考えていた最悪の可能性が当たったことに気付いたモニカは、すぐに反転しヘスティアの元へ向かい、一気に近づいてきたベルと共に礼拝堂の奥へ飛び込んでいった。

その直後、魔法と爆薬が結わえられた矢が着弾したことで大爆発が発生し、教会が跡形もなく破壊された。

その裏で、教会の裏口からギリギリ脱出したモニカ達は、ヘスティアを胸の中に抱え込んだベルとモニカはごろごろと地面を転がるとすぐさま体制を立て直した。

 

「――シャアッ!」

 

「気を抜くな、ベルっ!」

 

あらかじめ裏手で待ち構えていたのか、短剣をもって頭上からモニカ達を強襲する複数の獣人達。

半壊した教会(ホーム)に気を取られ行動が遅れたベルを庇うようにサーベルで敵の斬撃を打ち返すモニカ。

受け流し、躱し、ベルの魔法(ファイアボルト)で襲撃者達の隙を作ったモニカ達は、あえて立ち込める砂煙の中に飛び込んでいった。

 

「手短に言う。ベルはヘスティア様を連れて最短距離でギルドに向かえ。私は襲撃者達を引き付ける!…ヘスティア様のことを頼むぞ、ベル」

 

「!?……分かりました、気を付けて!」

 

砂煙の中で一瞬言葉を交わし、それぞれ別方向――ベルはヘスティアを連れギルドの方向の裏道、モニカは襲撃者達の多くいる教会(ホーム)入口――へ向かった。

 

『おい、正面から一人来たぞ!』

 

『金髪のチビだ!【リトル・ルーキー】はどこ行った!?』

 

『クソッ、反対側だ!俺達はチビを追う、お前達は【リトル・ルーキー】を追え!』

 

背後の怒号を聞きながらベル達がギルドに辿り着けるよう、襲撃者達の多いメインストリート方面へ向かうのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

【アポロン・ファミリア】の襲撃から数刻後、モニカはメインストリートから離れた裏路地で、冒険者達から逃げ回りながら戦い続けていた。

前方からモニカに襲い掛かろうと剣を振り被る冒険者に対し、サーベルで攻撃を受け流しつつ一気に近づいて護拳(ガード)で顎を殴るモニカ。

脳震盪を起こしその場に倒れる冒険者を尻目に更に裏路地を駆け抜けていく。

屋根の上から放たれた魔法と矢を避けつつ、襲い掛かってくる格上の上級冒険者達の攻撃を受け流し躱しながら、最小限の動きで顎や(すね)など的確に攻撃を加え、冒険者の動きを止めるモニカ。

しかし、冒険者達の数は減るどころか増えてきたため対処出来なくなり、次第に向かう路地の先に行き止まりが多くなってきていた。

 

『いかん、移動方向を誘導されている!このままでは、追い詰められる…!』

 

脳内に描いた地図を頼りに裏路地を走り回るモニカ。

屋根の上から放たれた矢を確認するため上を向いた時、モニカの瞳に一人の冒険者のエンブレムが目に入った。

 

『【三日月】に【杯】?……まさか、【アポロン・ファミリア】以外のファミリアが襲ってきているのか!?どうにかしてベルとヘスティア様に知らせなくては…!』

 

【アポロン・ファミリア】を示す太陽のエンブレムとは違う、他派閥のエンブレムを付けた冒険者。

矢を躱しながら敵は【アポロン・ファミリア】だけでないことに気付いたモニカ。

どうにかしてこの事実をベルとヘスティアに伝えようと考えていたモニカだったが―――

 

「――ッ!?」

 

「―――どぉぉりゃぁぁああああ!!!」

 

これまでの襲撃とは違い、大声を上げながら上空からの奇襲。

襲撃者の攻撃を前方に飛び込み躱すモニカ。

ごろごろと地面を転がり体勢を立て直したモニカが顔を上げると、そこには一人の虎人(ワータイガー)の冒険者がいた。

腕には紅い目の宝石と金色の装飾が施された黒の籠手、腰には籠手と同じ紅い目の宝石が装飾された金のベルト、首元にも紅い目の宝石の付いた装飾品を装備していたが、何故か上半身が裸であった。

 

「まさかオレ様の攻撃を避けるとはなぁ!中々やるじゃねぇかてめぇ!」

 

「いやいや、あんな大声を出していたら簡単に分かるだろ…。それより――」

 

そう言いながらモニカが見たのは虎人(ワータイガー)の冒険者の足元。

モニカに攻撃をしようとして空振りした右腕は路地の地面を粉々に砕いており、虎人(ワータイガー)の放った一撃の強さを物語っていた。

 

「――受け流さず、避けて正解だったな」

 

「本当は正面切って戦うのが一番好きなんだが…、アポロンの旦那の頼みだ。わりぃがここでやられてくれやっ!」

 

言い切ると同時に右拳を振り抜いてくる虎人(ワータイガー)の冒険者。

虎人(ワータイガー)の冒険者の懐に飛び込み攻撃を回避したモニカは、再びごろごろと転がり体勢を立て直そうとしたが、モニカが回避し背後に回ったのに気づいた虎人(ワータイガー)の冒険者は、即座に体を反転させつつ左拳で裏拳、更に右拳による全力のストレートを放ってきた。

立ち上がった直後だったため回避行動をとることが出来ず、何とかヘスティア・サーベルで攻撃を受け流そうとしたモニカだったが、裏拳の一撃の重さに耐えきれずサーベルを放し後ろに飛んで回避を行う。

しかし、後ろに飛んだモニカを追うように迫ってきた右拳に対して武器がないモニカは、少しでも攻撃から自身を守るため両腕を顔の前で交差させた。

 

「オラァ!!」

 

虎人(ワータイガー)の冒険者の路地を粉砕する右拳の直撃を食らったモニカ。

両腕を自身と右拳の間に挟んだとはいえ、その一撃の威力はすさまじく、モニカは路地の壁にまで吹き飛ばされた。

 

「…オレ様の全力の一撃を耐えきるなんて、中々やるじゃねぇか、金髪チビ!」

 

「それでも、気を失うギリギリ、だったがな。ツムギ殿の作った装備のおかげだ。…あと私のことをチビと言うな!」

 

虎人(ワータイガー)の冒険者の全力の一撃を食らったモニカだったが、ツムギの制作したフリューゲル・コートのおかげで致命傷と言えるほどのダメージを負ってはいなかった。

しかし、致命傷にならなかっただけで、殴られたダメージはそこまでなかったものの殴られた衝撃はモニカの身体に未だに残っており、その中でも特に両腕は痺れが激しく、握りこぶしを作ることすら不可能なほど痺れが残っていた。

 

『この手の状態だと最低でも庇えて一回…いや、それすらも不可能。ベル達の元へ向かわなければならないのに…!』

 

「本当は正面切って戦いたかったが、アポロンの旦那の頼みだ。ここら辺で眠っとけやぁあああああああああ!?」

 

「―――無事だったみたいだね、モニカちゃん」

 

「あ、(アキラ)殿…?」

 

惜しむようなことを言いながらモニカに近づいていた虎人(ワータイガー)の冒険者だったが、突如足元に大きな穴が開き、足の踏み場が無くなった虎人(ワータイガー)の冒険者は綺麗に穴に落ちていった。

驚いた表情で虎人(ワータイガー)の冒険者が落ちていった穴を見ていると、エプロンを着て髪型をポニーテールにした(アキラ)が路地の奥からやって来た。

エプロンのポケットから回復薬(ポーション)を取り出し、手を動かせないモニカの代わりに口元に運び飲ませる(アキラ)

身体の傷を回復させたモニカは立ち上がると、両手が動くかどうか確認を行うと(アキラ)へお礼を行った。

 

「助けてくれて感謝する、(アキラ)殿。それにしても、よく私の場所が分かったな」

 

「二つの場所でファミリア同士の抗争が起きてて、片方はリトル・ルーキーが屋根の上を走ってると来たら、もう片方はモニカちゃんだろうと思ってね。それよりも、仲間達の元に向かわなくていいのかい?」

 

「そうだったな!助けてくれて感謝する!」

 

「いいよ、気にしないでー。……さて、ツムギの店にでも行きますか」

 

ベル達の元へ向かうモニカを見送った(アキラ)は、虎人(ワータイガー)の冒険者を落とした穴を消すと、ツムギの仕立て屋に向かうのであった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、襲撃回でした。
新キャラは上半身裸でバカでかい黒の籠手を装備した虎の獣人でした。
本来プリコネではヒューマンでしたが、本作に登場させるにあたって獣人に変更させました。
一体何ゴさんなのか…皆さん分かりましたか?
ちなみに私は最初このキャラのことを獣人だと思ってました。

今話を投稿後、活動報告を更新します。
内容は『モニカの二つ名』について。
どのような内容かは活動報告を読んでください。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第64話 『決戦準備』

やっぱり二つ名考えるのってすごく難しいですね。
どうも、モニカは何とか浮かびましたが、虎人の冒険者の二つ名が全く浮かばない刺身の盛り合わせです。

ということで最新話。
今回は戦争遊戯前の下準備回+神会。
久しぶりに神達の会話を書きましたが、毎度のことながら神の会話がこれで正しいのか悩むところです。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。

2023/07/11 本文中の一部【】を『』に変更しました



(アキラ)と別れたモニカは、吹き飛ばされたサーベルを回収すると、ベル達の元に向かうため路地を駆け抜けていた。

騒がしい場所に向けて走っていくと、【アポロン・ファミリア】の本拠(ホーム)の前に辿り着いた。

馬鹿騒ぎしている神々の間を縫って前庭の中央を突っ切っていくと、玄関の前にベルとヘスティア、ヴェルフがいた。

 

「ベル、ヘスティア様、ヴェルフ!」

 

「「モニカさん(君)!無事だったんですね!/無事だったんだね!」」

 

「ベルもヘスティア様も無事でよかったです。…それで一体、この騒ぎは何事なのです?」

 

「えっとですね―――」

 

そこからモニカはベルとヴェルフに何が起こったのか、それぞれ情報交換を行った。

ベルからはモニカと別れた後、【アポロン・ファミリア】団長のヒュアキントスに襲撃され、叩きのめされたこと、【アポロン・ファミリア】本拠(ホーム)に訪れ、アポロンの顔面に手袋を投げつけて挑戦を受けたこと、【ヘスティア・ファミリア】と【アポロン・ファミリア】で、戦争遊戯(ウォ―ゲーム)を行うことになったこと。

ヴェルフからはリリが【ソーマ・ファミリア】に連れていかれたこと。

モニカはベルと別れた後、虎人(ワータイガー)の冒険者に襲われたこと、【アポロン・ファミリア】とは違うファミリアが襲撃してきたこと。

 

「―――それじゃあ、改めて説明するよ?戦争遊戯(ウォ―ゲーム)が開催されるまで、一週間、ボクが何としてでも時間を稼ぐ。その間にベル君は出来る限り強くなってもらう、ヴェルフ君にはサポーター君の救出に力を貸してもらうことになった。…本当だったらモニカ君にもサポーター君救出に参加してもらうつもりだったけど、予定変更だ。モニカ君、君も今から一週間の間に出来る限り強くなってくるんだ、いいね?」

 

「――っっはい!」

 

これからの動きを説明し、モニカにもリリの救出に参加してもらおうかと考えていたヘスティア。

しかし、モニカの悔しそうな表情を見たヘスティアはモニカにベルと同じように修行をしてくるように伝えた。

 

「後のことはボクに全部任せるんだ。さぁ、行ってくれ」

 

「「はい!」」

 

武器をヘスティアに預け、ヘスティアの言葉に送り出されたベルとモニカは、騒然となっているアポロンのホームから全力で駆け出していった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

戦争遊戯(ウォ―ゲーム)が開催されるという知らせにより街中の至る場所がいつにない喧騒に包まれる中、【アポロン・ファミリア】ホームを出発し、途中でベルと別れたモニカは、ツムギの仕立て屋を訪れていた。

 

「――さっきぶりだね、モニカちゃん」

 

「そんな慌てた表情でどうかしたのかにゃ?」

 

(アキラ)殿にタマキ殿!?どうしてここに…いや、ちょうどいいか」

 

ドアを開け中に入り、ツムギだけでなく(アキラ)とタマキがいることに驚くモニカ。

しかし、何か納得のいった表情を浮かべると、ツムギ達に向き直った。

 

「頼む、どうか私に修行を付けてくれ!」

 

「うん、いいよ。……どうしたの、そんな驚いたような表情して」

 

「いや、そんなすぐに承諾されるとは思わなくてな…。だが、頼んでおいて何なのだが大丈夫なのか?」

 

「ん?大丈夫大丈夫。私達が戦うわけじゃない。あくまでも私達で『戦い方を教えるだけ』、だからさ。さっ、時間もないし、ダンジョンに行こうか。今日から一週間、私達三人でみっちり鍛えてあげるよ」

 

「モニカを鍛えれば戦争遊戯(ウォ―ゲーム)も盛り上がるし、そうすりゃ(ヘルメス)達も喜ぶにゃ。……そうすりゃあたしの賭けも…にゃふふ」

 

「タマキさん、心の声が漏れてますよ。…それじゃあダンジョンに行きましょうか、モニカさん!」

 

「…あぁ!」

 

あまりにもあっさりと承諾され、拍子抜けしてしまったモニカ。

しかし、了承されたのなら良いか、と考えたモニカは、仕立て屋から出ていく(アキラ)達についてダンジョンへ向かうのであった。

同時刻、モニカと同様にアイズ達から修行を付けてもらうことになったベル。

それぞれ離れた場所で、第一冒険者達による命懸けの修行が始まったのである。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ベルとモニカの修行が始まってから三日。

オラリオ中央、摩天楼施設(バベル)三十階で行われている神会(デナトゥス)にて、戦争遊戯(ウォ―ゲーム)規則(ルール)や形式の打ち合わせが行われていた。

 

「―――ちゅー訳で、戦争遊戯(ウォ―ゲーム)の形式は『攻城戦』。攻めは【ヘスティア・ファミリア】、守りは【アポロン・ファミリア】。【ヘスティア・ファミリア】は都市外の【ファミリア】の助っ人を一人まで参加させることが出来る。【アポロン・ファミリア】が勝った場合、ベル・クラネルとモニカ・ヴァイスヴィントの二名を改宗(コンバージョン)させる。【ヘスティア・ファミリア】が勝った場合、【アポロン・ファミリア】側は何でも要求を呑む…、っちゅーことで決定や。異論は認めんで?」

 

神聖かつ公平なくじによって決まられた方法なため、口出し出来ず歯痒い表情を浮かべるヘスティアと、対照的に笑顔を浮かべるアポロン。

 

「適当な城を見繕わんといかんし、戦争遊戯(ウォ―ゲーム)の開催日はギルドとの相談をかねてやな。じゃあ、解散…する前に、緊急命名式!開始やー!」

 

「「「「「「「「「「イヤッホォゥゥゥゥゥ!!!」」」」」」」」」」

 

司会のロキが戦争遊戯(ウォ―ゲーム)について情報を周知させたところで、ロキが解散を宣言するのかと思いきや、椅子から立ち上がり右手を突き上げ、命名式の宣言を開始した。

同時に周囲の神達も雄叫びを上げ立ち上がった。

 

「命名式!?…誰のをやるんだい?」

 

「決まっとるやろ、ドチビんとこのモニカたんや!……全員資料は行き渡ったな~?」

 

「おいロキ、そんな話聞いてないぞ!?」

 

「当たり前や!ドチビが来とらんかったこの三日間の神会(デナトゥス)で決まったんやからな!…えっと、モニカ・ヴァイスヴィント。出身地はラキアの近く…ほぉ、わざわざラキアから冒険者になりに来たんか」

 

ヘスティアからの文句を無視して、羊皮紙に書かれたモニカの情報を読み上げていくロキ。

周囲の神達もぱらぱらと羊皮紙の束を読んでいると、一人の神がある情報を読んで動きを止めた。

 

「………おいヘスティア。お前、身長何Cだ?」

 

「へ?140Cだけど……」

 

「おいおいおいおい!お前達見たか!?モニカたんの身長、138Cだってよ!」

 

「ということは…?」

 

「ロリ巨乳のファミリアにロリがいる…ってコト!?」

 

「だが待て!この羊皮紙によると…、モニカたんの年齢は17歳だそうだぞ!」

 

「それってつまり…合法ロリ……ってコト!?」

 

「わァ……ァ………」

 

「(感動のあまり)泣いちゃった!!」

 

「ウチのモニカ君について好き勝手言うんじゃない!あの子のコンプレックスなんだぞ!?」

 

モニカの年齢について好き勝手言い合う神達と、そんな神達に怒りをあらわにするヘスティア。

 

「時間が無いんやから、さっさと次行くでー。『リトル・ルーキー』の時とは違って、情報は十分あるなぁ。何々…【10階層で罠に嵌り大規模な怪物の宴(モンスターパーティー)と遭遇。それを他ファミリアの冒険者と二人で全て撃退。】…あーなんかそんな情報あったな。ちゅーかあの事件、モニカたんが関わっとったんか」

 

「【冒険者依頼(クエスト)で『ラキア大森林』最奥にある『密林の大樹』へ向かい、そこの主と思われる『ワイズオウル』を単独撃破】…この『ワイズオウル』って何?」

 

「知らね。でも主って言われてるぐらいだから、ゴライアスぐらいじゃね?」

 

「それでモニカたんも『リトル・ルーキー』と同じで大体一ヵ月半ぐらいでランクアップだろ?どうなってんだよヘスティアのとこ?」

 

「やっぱ『神の力(アルカナム)』使ってんだろ!」

 

「そんなわけあるかい!これは全部彼女達の努力のおかげだ!いい加減な文句はやめてもらおうか!」

 

「まっ、そこはウチも気になるけど、さっさと二つ名決めて解散するで。…それで、何か案あるやつはおるか~?」

 

「はいはいはーい!ズバリ、【合法ロリ(偽(ry「そんなの認めるわけないだろうが!却下だ却下!」

 

「では、『太陽の(アポロ・)(ry「まだお前が眷属にするって決まった訳じゃないだろうが!?それも却下じゃい!」

 

それから約30分程、あーでもないこーでもないと論じ合った結果、ようやくモニカの二つ名が決まったため、神会(デナトゥス)は解散したのであった。

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、下準備+神会でした。

最初にヘスティア達と合流した時、モニカもヘスティアにサーベルを預ける予定でしたが、今後の話の展開から今回はそのまま持っててもらうことになりました。
『モニカがベル達の下を訪れる前に既にベルはヘスティアにナイフを渡している』と思ってください。

そして神会(デナトゥス)。
ちいかわ構文は本文書いてたら脳内神達が勝手に言い始めたので加えてみました。
そして今回モニカの年齢と身長が神達に知られました。
戦争遊戯後はランクアップ後のベル君みたいな扱いになる予定です。

次回からは戦争遊戯開幕かなぁ…と思ってます。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第65話 『私達のウォーゲーム~開戦~』

FGOで単発引きまくってギリギリカーマを当てました。
どうも、筆がのったので一週間に二回連続投稿する刺身の盛り合わせです。

ということで最新話。
題名からも分かる通り。今回からウォーゲーム開幕です。
最初の流れは同じなので、サクッと進めていこうと思います。

今回後書きの最後にちょっとしたおまけがありますので、ぜひ読んでください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。


「遅かったな、二人共」

 

「すまん。二人共ギリギリまで修行を付けてもらっていてな」

 

シュリーム古城跡地付近、ギルド臨時支部内にある【ヘスティア・ファミリア】の待機所。

オラリオから一日かけてやって来たベルとモニカを出迎えたのは、ヴェルフと(ミコト)、そして助っ人として訪れたリューであった。

 

「お二方、準備の方は大丈夫ですか?」

 

「はい。二人共神様に【ステイタス】をみてもらいました」

 

「そうか。まずベル、約束していた短刀(ナイフ)だ。一代目より切れ味は抜群だ、保障する」

 

「ありがとう、ヴェルフ」

 

「おう。それとモニカ、お前の言ってたナイフだが、こんな感じでよかったか?」

 

「ああ。それにしてもすまないな、急遽作ってもらって」

 

「気にするな……それと改めて言っとくが、それは急造の品だ、威力も強度も保証できない。使いどころを間違えるな」

 

「分かりました」

 

「……その、ヴェルフ、良かったの?」

 

「ああ。……維持と仲間を秤にかけるのは、もう止めた」

 

「?」

 

「それでは…ヘスティア様達の手筈通りに」

 

「明日中に城を落とし、私達が必ず勝つ」

 

「うん……勝とう」

 

暗闇の中、手を重ね円陣を組むベル達。

ついに、【アポロン・ファミリア】との戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まろうとしていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ベル達がシュリーム古城跡地に向かって一夜明けた戦争遊戯(ウォーゲーム)当日。

オラリオに刃尋常ではない熱気と興奮により賑わいを見せており、朝早くから全ての酒場が店を開き、街のいたるところで出店が路上に展開されている。

今日ばかりはほとんどの冒険者達が休業し、酒場に詰め寄せ観戦準備を整えていた。

更に冒険者達だけでなく、休暇を申し込んだ労働者達や一般市民も大通りや中央広場(セントラルパーク)に出て、今か今かと開幕を待っていた。

ギルド本部の前庭では仰々しい舞台(ステージ)が勝手に設置され、【ガネーシャ・ファミリア】主神ガネーシャと、【ガネーシャ・ファミリア】冒険者イブリが勝手に実況を始めていた。

 

「おー、盛り上がっとる盛り上がっとる」

 

そんな眼下の光景を、べたー、と窓に顔を押しつけて見るロキ。

彼女が居るのは『バベル』三十階、戦争遊戯(ウォーゲーム)を誰よりも楽しみにしていた神々は、酒場へ趣き冒険者達に混じる者とホームで眷属達と見守る者以外はほとんどが『バベル』に赴いていた。

 

「やぁ、ヘスティア!ベル・クラネルとモニカ・ヴァイスヴィントとの別れは済ませてきたかい?この戦争遊戯(ウォーゲーム)に勝利し、彼等が私のものになったら……君にはオラリオから、いーや下界から去ってもらうからね」

 

「フンッ」

 

そこにはもちろんヘスティアとアポロンもおり、ニヤニヤしながらヘスティアに話しかけていた。

 

「それじゃあ、ウラノス、『力』の行使の許可を」

 

【―――許可する】

 

懐中時計を取り出し正午が目前に控えていることを確認したヘルメスは、宙に向けて話しかけると、ギルド本部の方角から神威が重々しく響き渡った。

それを聞き届けたオラリオ中の神々が一斉に指を弾き鳴らした。

瞬間、酒場や街角、虚空に一斉に『鏡』が出現した。

都市の至る場所で無数に現れた『神の力(アルカナム)』の一つ、『神の鏡』に人々は色めき立った。

 

『それでは、間もなく正午となります!』

 

実況者の声が跳ね上がり、ギルド本部の前庭にざわめきが波のように広がっていく。

冒険者が、酒場の店員達が、神々が、全ての者の視線がこの時『鏡』に集まった。

そして、

 

戦争遊戯(ウォーゲーム)、開幕です!』

 

号令のもと、大鐘の音と歓声とともに、戦いの幕は開けた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

同時刻、開始を告げる銅鑼の音が、遠方の丘から古城跡地に響き渡る。

 

「それでは、私が先行します。あとはお任せします」

 

「では、その次は私が行きます」

 

「なら、俺達はその後だな。行くか、ベル、モニカ」

 

「「うん/ああ」」

 

リューと(ミコト)が古城に向かうのを見送ってから出発するベルとモニカ、ヴェルフ。

古城へ向かう際中、爆撃と共に城壁の北壁、そして東壁が破壊された。

その後、城壁内部の上空に深紫の光剣が現れると、古城内部に突き刺さった。

 

「おーおー、また激しくやってんな」

 

「ここまではヘスティア様達の計画通りだな。あとは…」

 

「リリなら大丈夫。早く行こう、二人共!」

 

先に古城の北壁へ向かったリューと(ミコト)とは違い、無傷である西城壁の大扉前へ向かうモニカ達。

大扉の前に着くと、まるでモニカ達を待っていたかのように大扉が開かれた。

開いた大扉から城壁内に侵入したモニカ達は、不意に遭遇し声を張り上げようとした敵団員をベルとモニカが一瞬で切り伏せた。

 

「上手く化けたな、リリ助?」

 

「18階層で見た時も思ったが、その変身能力は素晴らしいな」

 

「リリにはこれくらいしか取り柄がありませんから」

 

城内を走りながら、魔法(シンダー・エラ)でルアンに変身したリリに話しかけるヴェルフとモニカ。

走りながら古城内部の確認を行ったモニカ達は、空中(わたり)廊下の直前でルアン(リリ)と別れると、新調された軽装を纏うベルとサーベルを鞘から引き抜いたモニカ、大刀を肩に担ぐヴェルフは敵大将(ヒュアキントス)の待つ玉座に向けて走って行った。

 

「――弓矢は前に!逃げ場はないわ、狙い放題よ!ウチの合図で魔導士達も斉射!」

 

空中(わたり)廊下に出たところで、先の方で迎撃隊が展開されており、弓を引き絞り魔法の詠唱を終えているのに気づいたモニカ達。

 

「――行け!」

 

それと同時にヴェルフが吠えると、ベルとモニカは前傾姿勢になり並走するヴェルフの隣から疾走した。

 

「放て!」

 

「【燃えつきろ、外法(げほう)(わざ)】」

 

ダフネの号令により矢が発射され、続いて魔法が発動しようとした瞬間、ヴェルフは左手を突き出し、超短文詠唱を行った。

瞬く間にヴェルフの手から放たれた陽炎が音もなく鉄砲水のごとく突進し、先行したベルとモニカの身体を背後から包み込み、そのままダフネ達のもとに到達した。

陽炎が魔導士達のもとに吸い込まれると、次の瞬間、魔導士達の体が内側から炎の色に輝いたかと思うと、突如魔力暴発(イグニス・ファトゥス)を起こした。

咄嗟に身をかがめ衝撃に耐えたダフネの眼前で獰猛な爆風がうねりを上げており、息を飲み戦慄していると、間髪入れずベルとモニカが白煙の中から飛び出し、ダフネの真横を通り抜けると、ダフネの妨害をヴェルフに任せて敵大将(ヒュアキントス)の待つ塔に入って行くのであった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということでウォーゲーム開幕編でした。
原作では『僕等のウォーゲーム』という題名でしたが、本作はモニカが主人公なので『私達』に変えてみました。
また、モニカがそれほど活躍しないリューと命のシーンは大幅にカットさせてもらいました。

次回は完全オリジナル回。
モニカvs虎人の冒険者です。

前書きで書いた通り、この下におまけがあります、ぜひ読んでください。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。



以下おまけ
~戦争遊戯開始前、とある酒場にて~

「全員【アポロン・ファミリア】に賭けたら賭けが成立しねぇ!誰か、【ヘスティア・ファミリア】に賭ける奴はいねぇのか!」

「【ヘスティア・ファミリア】に10万にゃ!」

「【ファントム・キャッツ】が【ヘスティア・ファミリア】に大賭けしたぞー!」「やりやがったよあいつ!」

「タマキさん…」

「まぁまぁ、【アポロン・ファミリア】に賭けてないし、許してあげたら?それにこの戦争遊戯、モニカちゃん達が勝つだろうしね?」

「まぁ、それはそうですけども……」


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第66話 『私達のウォーゲーム~会敵~』

オリジナル戦闘は文章にするのが中々難しいですね。
どうも、やっぱり文章を書くのは楽しい刺身の盛り合わせです。

ということで今回は完全オリジナル、モニカの戦闘回です。
そして、ついにワータイガーの冒険者の正体が明らかになります。イッタイダレナンダロウナー
後書きの最後にはおまけもついてます、ぜひ読んでくださいね。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。



「――待ってたぜ、金髪チビに【リトル・ルーキー】!」

 

空中(わたり)廊下を抜け敵大将(ヒュアキントス)のいる玉座の塔内部に侵入し、あらかじめルアン(リリ)に教えてもらっていた経路(じょうほう)通りに進んでいくベルとモニカ。

塔内を進むと目の前に広場があり、その中央には以前襲撃の際にモニカに襲い掛かってきた虎人(ワータイガー)の冒険者が立ち塞がっていた。

 

「出やがれっ、オレ様のスーパーウルトラ結界ッ!!」

 

虎人(ワータイガー)の冒険者が勢いよく両拳を打ち付け、右拳を地面に叩きつけると、虎人(ワータイガー)の冒険者を中心に黒い円が広場を囲うように出現したかと思うと、燃え盛る炎のように紅い結界が広場を包み込んだ。

まだ広場に入らず通路にいたベルとモニカは結界が壁となり、先に進むことはおろか広場内に入ることすら出来なくなっていた。

 

「この結界はどんな物理攻撃も魔法も通じねぇ!こっから先には誰も「走れ、ベル!」……は?」

 

目の前に出現した結界を魔法と見破ったモニカは、ベルに先に行くように言うと即座にサーベルで横に一閃し、結界を破壊した。

自身の出現させた結界について語っていた虎人(ワータイガー)の冒険者だったが、目の前で起きた光景に言葉を失った。

虎人(ワータイガー)の冒険者が呆然としている隙を突いて横を通り抜けるベル。

自身の右脇側を通り抜けようとするベルをこれ以上先に進ませないために、右拳でベルを殴り飛ばそうとしたが―――

 

「貴公の相手は私だ、よそ見はしないでもらおうかッ!」

 

注意がベルに向けられた隙に一気に距離を詰めベルと右拳の間に飛び込んだモニカにより、攻撃の軌道を誰もいない背後へ逸らされた。

前傾姿勢で一気に加速し虎人(ワータイガー)の冒険者の脇を抜け出たベルは、そのまま広場を抜け敵大将(ヒュアキントス)のいる玉座の間へ向かっていくのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「モニカたんが喧虎(けんこ)とバトルだー!」

 

「ていうかあの半裸誰だ?あんな奴アポロンのとこに居たか?」

 

「あ~…、ちょっと前に『私の好みではないが中々強い眷属()が仲間になった』ってアポロンの奴が自慢してたぞ?」

 

「確か…ダイゴ・ウェーベン、だったか?」

 

「……18階層での時も思ったけど、やっぱりモニカちゃん魔法を無効化してないかい?何、そういうスキルでも持ってるのかい?」

 

モニカとダイゴの戦いを見ながらふと気になったことが出来たヘルメスは、ヘスティアに近づいて尋ねた。

 

「いや、あれはモニカ君の使ってる武器の力だ。スキルとは全く関係ないよ」

 

「へぇ…。魔法を無効化する武器なんてアスフィも作ってないぞ。一体どこでどうやって手に入れたんだい、ヘスティア?」

 

「君に教えるわけないだろう、ヘルメス」

 

そう言うと顔を鏡の方に向き直しつつ、心の中でモニカの勝利を祈るのであった。

 

『頑張るんだよ、モニカ君……!』

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ベルを先へ進めさせることに成功したモニカは、ダイゴがベルを追いかけないよう、足止めのため戦っていた。

ダイゴの繰り出す大振りの一撃を、身をねじることで躱し、サーベルで背後に受け流しつつ、反撃を行っていくモニカ。

 

「前戦った時より強くなったじゃねぇか、金髪チビ!それに、オレ様のスーパーウルトラ結界をどうやって破ったんだ、テメェ!」

 

「これは戦いだぞ、自分の手を相手に晒すわけないだろう?」

 

「そりゃそうだ!テメェをここでぶっ飛ばしてヒュアキントスの旦那の所に行けば問題はねぇ訳だ!つー訳でさっさとブッ倒れろや!」

 

モニカを倒すため、一気に距離を詰め拳を振り抜くダイゴ。

その場にしゃがむことで回避したモニカは、サーベルで左から右へ斬り払いを行ったものの、危険を察知しバックステップで回避するダイゴ。

 

「隙だらけだぜ、オイ!」

 

ダイゴが攻撃し、それにモニカがカウンターを決める、という流れを何回も繰り返し、モニカが一瞬の隙を晒した瞬間に、地面を(えぐ)るような軌道を描きながら右拳によるアッパーを繰り出したダイゴ。

回避不能と即座に判断しサーベルで受け止め、ギリギリで軌道を逸らすことに成功させたものの、アッパーの衝撃で体が伸びて不安定な姿勢になり、かつサーベルを弾き飛ばされ無防備となったモニカ。

勝負を決めるべく、モニカの無防備な胴体を殴り飛ばそうと一歩踏み出そうとするダイゴ。

目の前の光景がスローに見える中、モニカはダンジョン内で行った(アキラ)達との修行での一幕を思い出していた。

 

 

◯◯◯◯◯

 

 

「……以前モニカさんの戦いを見ていて思ったんですが、格闘術はある程度修めていますよね?」

 

「」まぁ、ここ(オラリオ)に来る前に少し教えてもらった程度だがな」

 

「でしたら!私からモニカさんに教えることはズバリ、『急所の位置』…簡単に言うと、人体の弱点です!」

 

「人体の弱点…?」

 

「極東の技術の一つでして…はッ!「うニャ!?」…急所と呼ばれる部位を的確に攻撃するとこのように悶絶するんです。まぁ有名なところですと、男性の下半身などがありますね。他には水落(みぞおち)三ヶ月(みかづき)人中(じんちゅう)などもありますが、それでなくてもモニカさんにも簡単に出来ること急所攻撃が一つあるんですよ!」

 

「……今あたし攻撃する必要あったかにゃ?」

 

 

◯◯◯◯◯

 

 

『狙うなら、今!』

 

その場で飛び上がり右足を伸ばしたモニカは、攻撃が来るより前にダイゴの顎(あご)にサマーソルトキックを決めたのである。

 

「ガッ……!?」

 

(あご)に的確なサマーソルトキックをくらったダイゴは、脳を揺らされたことで攻撃を中断し、背後に下がることとなった。

対してモニカは即座に着地しバックステップでダイゴと距離を取りつつ、弾き飛ばされたサーベルを回収した。

 

「さぁ、仕切りなおしといこうじゃないか、喧虎(けんこ)!」

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで2話も引っ張ってきたワータイガーの冒険者の正体はダイゴでした。
元ネタは名前からも分かる通りプリコネのプリンセスナイトの一人『ダイゴ』です。
参戦理由については今章の終わりに書こうと思います。

次回は今回に引き続きモニカの戦闘回。
ここからどのようにモニカが戦うのか、お楽しみに。
また、後書きの最後にダイゴについての簡単な解説があるので、ぜひ読んでください。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。



おまけ『ダイゴについて』
本名 ダイゴ・ウェーベン
出身はラキア王国。
王国を出てオラリオに着き、紆余曲折の結果【アポロン・ファミリア】に加入。
現時点でのレベルは3。
アポロンからの寵愛については全力で拒否している。
ヒュアキントスに何かの恩義があるらしい…
あと、下に二人の妹がいるらしい。


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第67話 『私達のウォーゲーム~喧虎~』

お待たせしました。
どうも、文章の書き直しを何回も行っていたりしていたらいつの間にか約1ヵ月も投稿してなくてびっくりした刺身の盛り合わせです。
しかもモニカの誕生日にも間に合いませんでした。
とりあえず誕生日おめでとう、モニカ!

今回はダイゴとのバトル、決着です。
とりあえず書きたかったことは書けたと思います。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。



 

「もう少しテメェとの戦いを楽しみたかったが、ヒュアキントスの旦那の所に早く行かなきゃなんねぇんだ。……少し本気出させてもらうぜ、金髪チビ!」

 

顎にサマーソルトキックを喰らい脳を揺らされたダイゴは、体勢を立て直すとモニカのいる方向を向き直した。

これまでの戦いとは違った雰囲気を纏ったダイゴに対し、サーベルを構えいつでも動けるよう体勢を整えつつ、ダイゴの一挙手一投足に警戒し目を離さなかったモニカ。

しかし、気づいた時には目の前にダイゴの拳が迫っていた。

ダイゴの放った一撃はモニカの顔面に直撃し、モニカは広場の壁まで殴り飛ばされたのであった。

 

 

●●●●●

 

 

「何やってるにゃ、モニカ!?あたしは【ヘスティア・ファミリア】に10万賭けてるにゃよ、さっさと立ち上がって【喧虎(けんこ)】なんてブッ倒せにゃー!」

 

「そうですよ!そんな『オシャレ』の『オ』の字も理解してないようなクソダサ半裸なんか、早くぶっ飛ばしちゃってください!」

 

オラリオ市街にあるとある酒場にて、『神の鏡』で戦争遊戯(ウォーゲーム)を見ていたタマキとツムギは、ダイゴによってモニカが吹き飛ばされた光景を見て、大声を上げていた。

 

「ほーら二人共、落ち着いて。周りの迷惑になるよ?それに、私達が鍛え上げたんだよ?あんな相手に負けるわけないって」

 

興奮し続けるタマキとツムギを宥めた(アキラ)は、煙に隠れ『神の鏡』に未だに映らないモニカのことを思いながら、そんなことを口にしたのであった。

 

 

●●●●●

 

 

「オイオイ、さっきまでの威勢はどうしたよ、金髪チビ!もしかして、今のオレ様の一撃でもう戦えなくなったか、あぁ!?」

 

「……何、貴様の本気を、確かめようと思っただけだ。まだ戦えるとも」

 

『タマキ殿との修行のおかげで、何とか致命傷を負わずに済んだが、衝撃で頭がフラフラする。それに両腕…特に左手に力が入らん。折れてはないと思うが、あまり動かさないほうがいいだろうな…いかん、視界がグラつく…』

 

ダイゴの挑発に対し、強気な発言を行うモニカ。

対して心の中では、現状に対する冷静な分析を行っていた。

攻撃をくらう直前で、自身と拳の間に両腕を挟み込んだことでダメージを最小限に抑えたモニカ。

しかし、衝撃を殺すことは出来なかったため、攻撃を防いだ両腕ーー特に拳が直接ぶつかった左腕は完全に麻痺しており、さらに衝撃で脳が揺らされたこともあり、目の前の光景が歪んで見えていた。

 

「へっ、ならもっと俺様の本気を見せてやるよ!」

 

モニカを戦闘不能にするべく、一気に距離を詰め右拳を顔めがけて振り抜こうとするダイゴ。

殺気を感じたものの、脳のグラつきで回避行動が一瞬遅れたモニカに拳が迫った瞬間。

 

「うぉぉっ!?な、何だァ!?」

 

「ッッ…今だ!」

 

上階から巨大な爆発音が鳴り響いたのと同時に、モニカ達の居る広場が大きく揺れた。

モニカに殴りかかろうとしたダイゴはその振動に動揺し、動きを止めて周囲を見渡した。

その隙を見逃さず、ふらつきながらもダイゴの脇を通り抜け、距離を取りつつ脳のグラつきからも回復したモニカ。

 

「ヒュアキントスの旦那は大丈夫だろうが、早く向かった方がよさそうだな…。つー訳で!さっさと倒れろや、金髪チビ!」

 

音と揺れに気を取られて脇を抜けられていったダイゴは、上階の玉座がある方向をちらりと見ると、モニカに向き直り攻撃を再開させた。

胴体や顔めがけて行われる攻撃に対し、サーベルで攻撃を受け流すのではなく体全体を動かして攻撃を回避し続けるモニカ。

そのモニカの脳内では、修行での一幕が思い出されていた。

 

 

○○○○○

 

 

「モニカちゃんが戦った相手は喧虎喧虎(けんこ)。Lv.3の中でもトップクラスの実力者で、攻めて攻めて攻めまくる近接格闘の前衛職(アタッカー)だから、モニカちゃんのカウンターを狙った戦い方とは相性がいいんだけど…Lv.3の実力それぞれのステイタス―ーー特に力のステイタスは並外れた高さだから、一撃でもくらえば致命傷は免れないだろうね」

 

「そこであたしとの修行にゃ!ということで、これからモニカにはあたしの攻撃をひたすら避けて、Lv.3の敏捷に目を慣らしてもらうにゃ。時間は有限、サッサと始めるにゃ!」

 

 

○○○○○

 

 

『タマキ殿との修行のおかげで、何とか攻撃を躱せてはいるが、反撃する隙が無い!』

 

「どうしたどうした!反撃してこねぇのか…って、何詠唱してやがんだ金髪チビ!?」

 

「共にッ、戦いし同胞よッ!我がッ、呼び声に応えッ、起立せよッ……【ウェスタ・エール】!!」

 

ダイゴの繰り出す連続攻撃に手も足も出ず、ただ躱し続けることしか出来ないモニカ。

ダイゴからの煽りを聞き流しつつギリギリのところで攻撃を躱し続けながら、詠唱を行っていくモニカ。

攻撃を回避しながらも詠唱を終え【ウェスタ・エール】を発動させることに成功したモニカ。

【ウェスタ・エール】による強化のおかげか、先ほどよりも少し余裕をもって攻撃を回避することが出来ていた。

しかし、強化を施したもののLv.2とLv.3の差は大きく、魔法による強化で一時的に拮抗することは出来たものの、ダイゴが攻撃速度を上げたことで再び追い詰められ始めたモニカ。

攻撃を躱すのが間に合わず、ダイゴの一撃をサーベルで受け止めたモニカは、広間の壁に叩きつけられた。

 

「今度こそ終わりにしてやらぁ、金髪チビィ!!」

 

 

○○○○○

 

 

「モニカちゃんは体が小さい分リーチが短い、だから跳び上がって上から攻撃する戦法を身に付けるといいよ。近くに壁とかがあれば壁を使って、近くに何もないならその場で跳び上がる必要がある…んだけど、跳び上がる場合は相手から攻撃される可能性があるから…」

 

「そこで再びあたしの出番にゃ!今からモニカにはナイフの投擲をマスターしてもらうにゃ。投擲が出来るようになれば相手の行動の妨害に牽制と何でも出来るようになるにゃ。とりあえず今はあたしのナイフを使って練習にゃ!」

 

 

○○○○○

 

 

『壁まで吹き飛ばされたおかげで距離は取れた……決めるなら今!』

 

ダイゴに壁まで吹き飛ばされたことで、大きな隙を晒したものの距離を取ることが出来たモニカ。

修行での一幕を思い出したモニカは、止めを刺すべくこちらに近づいてきているダイゴの方を向くと、左手をコートの内側…正確には腰のホルスターに手を伸ばした。

戦争遊戯(ウォーゲーム)開始前にヴェルフから受け取っていたナイフを指で挟みながら三本ほど取り出すと、こちらに向かってくるダイゴに向けて一本ずつ、顔付近へ等間隔にナイフを放ち、ダイゴのいる方向へと走り出すモニカ。

 

『目くらましのナイフは投擲した。ならば次は――』

 

ナイフがダイゴに近づくのを確認したモニカは、走りながら前方へ飛び込みつつ地面にサーベルを突きたてると、両手の腕力で空中――直前の飛び込みやダイゴよりも高い位置に飛び上がった。

目下ではダイゴが向かってきたナイフを避けずに殴って弾き飛ばしており、完全に隙を晒していた。

 

『――頭上から勢いよく落下しながら攻撃を加える!』

 

重力に従いながら勢いよくダイゴの元に落下するモニカ。

上を向き頭上にモニカがいることに気付き、迎撃でモニカに殴りかかろうとしたダイゴだったが時すでに遅く。

 

「――はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ダイゴが拳を振り被るよりも早く、サーベルを両手で持ちダイゴの脳天を柄頭(つかがしら)で勢いよく殴るモニカ。

【ウェスタ・エール】で強化した身体能力に加え、高所からの自由落下による勢いが追加された一撃を脳天に食らい上下に大きく脳を揺らされたダイゴ。

ここまでの戦闘で大きく脳を揺らされていたところに特大の一撃を食らったことで、モニカに拳が届く直前で完全に意識を手放し、地面に倒れたのであった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、見事vsダイゴ戦、決着でございます。
本当は撃破させる予定でしたが、そうするとベルより成長速度が速まってしまいますので、今回は気絶という形での決着となりました。
まだ格上の相手を一人で倒すには経験値が足りない…ということでひとつ。

そしてオリジナル設定として、モニカがナイフ投擲を行えるようになりました。
これはタマキを出すと決めた時にやりたいと思っていたことの一つですので、ようやく書くことが出来ました。
この設定については今後も出てくると思いますので、お楽しみに。

次回で戦争遊戯に決着がつく…ハズです。
ついでにモニカの二つ名も紹介出来たらなぁと思います。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第68話 『私達のウォーゲーム~終戦~』

どうも、刺身の盛り合わせです。

ということで最新話、題名からも分かる通り今回で『戦争遊戯』決着です。
それと、モニカの二つ名も登場します、お楽しみに。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。



 

喧虎(けんこ)の足止めも出来たことだし、急いで、ベルの、もと………zzz」

 

何とかダイゴを無力化することに成功し、ベルが敵大将(ヒュアキントス)と戦っている王座の間へ向かおうとしたモニカ。

しかし、ダイゴとの戦いで体力を使い果たした結果、急激な眠気に襲われ地面に倒れてしまった。

足を一歩踏み出そうとしたところで目が閉じ始めたモニカは体を左右にフラフラさせたかと思うと、眠気に抗うことが出来なかったようで背中から地面に倒れたのであった。

その結果、広場には地面へ大の字になって倒れたモニカの規則正しい寝息が響き渡っていた。

 

 

○○○○○

 

 

「……ベル様達が戦っておられるというのに、何故こんなところで寝ておられるのですかモニカ様ァ!」

 

モニカが倒れて数分後。

アポロン・ファミリアへの攪乱を終え変身魔法(シンダー・エラ)を解除したリリ。

ヴェルフとダフネの戦闘に巻き込まれないように空中(わたり)廊下を通り抜け玉座の塔内部の広場に辿り着いたリリは、広場の中心で大の字になって倒れているモニカとその側でうつ伏せになっているダイゴを見つけた。

最悪の可能性を考えたリリは確認のため急いでモニカに近づくと、気持ちよさそうな表情で眠っているだけであった。

他の仲間達が戦っている中一人だけ眠っていることに怒ったリリによって、上半身を起こされ前後左右に揺らされていると。

 

「―――やめてやれ、そいつぁオレ様の足止めで疲れ果ててるみてぇだからな」

 

ふと自分の背後から声をかけられたリリ。

振り向くと、そこには先ほどまでうつ伏せで倒れていたはずのダイゴが起き上がっていた。

 

「『喧虎(けんこ)』ダイゴ・ウェーベン!?眠っていたはずでは!?」

 

「テメェの声がデカすぎて目が覚めたんだよ、チビ…それと言っとくが、テメェ等を攻撃するつもりはねぇ、安心しろ。……信用できねぇって顔だな。まっ、違いねぇか」

 

ダイゴの言葉を信用できず、戦えないモニカを守るようにダイゴと向かい合うリリ。

 

「『気絶』っつー形でだが、一応そこの金髪チビには負けたからな、テメェ等には手は出さねぇ。それに、散々脳揺らされてには頭がいてぇんだ、動くつもりはねぇよ。…それに、そいつらはどうせウチのファミリアに入るだろ?その時に戦い直せばいいわけだ」

 

「……残念ですが、ベル様達が【アポロン・ファミリア】に入るようなことはおきませんよ」

 

ダイゴの発言を否定したリリは、ダイゴの顔を見て不敵な笑みを浮かべた。

 

「この戦争遊戯(ウォーゲーム)、勝つのは私達【ヘスティア・ファミリア】ですから」

 

「―――ハッ、面白れぇこと言うじゃねぇかよ!おい、テメェとそこの金髪チビの名前を教えろ」

 

「私はリリルカ・アーデ。こちらで寝ているのはモニカ・ヴァイスヴィント、Lv.2で二つ名は【炎輝(フルゴル)】です。…それでは、私はこれからベル様のもとへ行かなければならないので、失礼します」

 

「zzzzzz……あうっ、ガッ、グエッ!?ちょっ、待て、誰だウっ、足を引っ張って痛っ!?ってリリか!?止まれ、もう起きた、起きたからアダダダダダダッ!?頼むから止まってくブガッ!?」

 

ダイゴに自身とモニカの名前を伝えたリリは、ベルの下にから向かうためモニカの左足を持つと、地面に引きずりながら広場を抜けていった。

地面の溝に頭をぶつけ目を覚ましたモニカ、止まるように声をかけたが先を急ぐリリには聞き入れてもらえず、頭をぶつけながら広場を後にしていった。

 

「……暇になったし、もう一回寝直すか」

 

 

○○○○○

 

 

「―――念のため言っておくが、私はベルの戦いに加勢する気は一切ないからな、リリ」

 

場所は変わって玉座の間へ向かう階段にて。

なんとかリリに引きずるのをやめてもらったモニカは、階段を駆け上がりながら隣りにいるリリに決意表明を行っていた。

 

「これは【ファミリア】の問題でもありますが、ベル様が決着をつけなければならない戦いですから、もちろん分かっています。ですが———」

 

階段を登り終えて半壊した玉座の間にたどり着いたモニカとリリ。

そこにいたのは、カサンドラに足にしがみつかれて動けないベルと魔法の詠唱を行っているヒュアキントス、少し離れた場所でベルに向けて剣を投げようと振りかぶっている冒険者の姿があった。

 

「———ベル様への妨害の妨害ならば、問題はありませんね!」

 

「そういうことだ!リリはベルのところへ行け、私はあちらの冒険者を無力化する!」

 

「了解です!」

 

それぞれ別れ、ベルの下へまっすぐ駆け抜けていくリリと剣を投げようとしている冒険者の元へ走るモニカ。

走りながら右手で腰のホルスターからナイフを二本取り出すと、それぞれ冒険者と瞬時に予測した剣の軌道に向けて投擲を行った。

ナイフの内の一本は投げられた剣の先端に当たり力が加わったことで軌道がずれ、ベルから離れた場所に飛んでいき、もう一本のナイフは冒険者の左肩に突き刺さった。

肩にナイフが刺さったことで冒険者が動きを止めた隙を見計らい、一気に距離を詰めると――

 

「――どりゃあ!」

 

「ぶげらぁ!!?」

 

――両足で跳び上がり、冒険者の顔面に向けてドロップキックを決めた。

モニカの全力の一撃が顔面に直撃した冒険者は、短い断末魔を上げるとそのまま壁の方向まで吹っ飛んでいき、気絶した。

 

「………全く、一対一の戦いを邪魔するものではないぞ」

 

落下の衝撃で体の所々を瓦礫にぶつけながらも、ベルの妨害を行おうとした冒険者の無力化に成功したモニカ。

ベルから少し離れた場所でリリとカサンドラが取っ組み合いをしているのを確認したモニカは、側にある瓦礫の山に座ってベルとヒュアキントスの戦いを見守ることにした。

 

「うああああああああああああああああああああああああッッ!!」

 

「がぁっっっ!?」

 

途中でベルが危機に陥る場面もあったものの、ヒュアキントスを殴り飛ばし気絶させたベル。

決着を告げる銅鑼(どら)の音が、古城跡地に響き渡った。

 

 

戦争遊戯(ウォーゲーム)勝者:ヘスティア・ファミリア―

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、『戦争遊戯』に決着が付き、見事【ヘスティア・ファミリア】が勝利しました。
今回の戦争遊戯ではナイフの投擲やドロップキックなど、モニカの新たな戦い方を書くことが出来たので良かったなと思います。

そして今回ついにモニカの二つ名が登場しました。
炎輝と書いて『フルゴル』と読みます。
名前の由来としては金髪+炎に関連した魔法を使うことから、ヘルメスの提案でこの二つ名になった………という設定です。
『フルゴル』はラテン語で『輝く』という意味で、ヴェルフの『不冷(イグニス)』を参考に考えてみました。

次回は戦争遊戯の後日談を予定してます。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第69話 『勝利の対価』

デレステ8周年ですよ、めで鯛!
どうも、刺身の盛り合わせです。

ということで、最新話です。
題名にもある対価、これがどういう意味なのかはぜひ本編を読んで確かめてください。

それと、現時点でのモニカのステイタスを後書きの最後にのせておきます。
そしてアンケートやってるので、ぜひ回答をお願いします。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。



 

「―――と、いうことで!ボク達【ヘスティア・ファミリア】の戦争遊戯(ウォーゲーム)勝利とサポーター君の正式移籍、新たな本拠(ホーム)の改築祝い……そして!ベル君のLv.3昇格(ランクアップ)を祝して!かんぱーい!!」

 

「「「「「かんぱーい!!」」」」」

 

【アポロン・ファミリア】との戦争遊戯(ウォーゲーム)での勝利から数日は、色々なことが起こった。

まず戦争遊戯(ウォーゲーム)の終了直後、『勝った暁には、要求を何でも呑む』と約束したアポロンに『ホームを含む全財産の没収』と『【アポロン・ファミリア】の解散』、『アポロンのオラリオからの永久追放』の合計三つの罰則を言い渡したヘスティア。

要求通り【アポロン・ファミリア】は即時解散、アポロンは眷属達との別れと退団の儀を済ませるとオラリオから一人追われるように出ていった。

無所属(フリー)となった元団員達は気長にこれからの道を模索する者や他派閥からの勧誘(スカウト)を受け入団する者、落ちぶれる者とそれぞれの道を進んでいった。

中にはヒュアキントスのようにアポロンに心酔し、ギルドの戦力流出禁止令(せいし)を振り切ってまで、己の生涯の主神を追う者達もいた。

その後、戦争遊戯(ウォーゲーム)の勝者の権利で【アポロン・ファミリア】のホームである豪邸を手に入れたヘスティア達は、賠償金としてヘスティア達のもとに転がり込んできたアポロン・ファミリアの資産を使い、趣味の悪い彫像(アポロン像)の撤去も含めた屋敷全体の改装を【ゴブニュ・ファミリア】に依頼。

彫像撤去の際に一悶着あったものの、最終的には三階建てで奥行きがある、質素ながらも品も良い新築同然の邸宅が完成したのであった。

また、脱退金を持ってソーマとのけじめを一人で付けに行ったリリは、晴れやかな顔をして【ソーマ・ファミリア】から担保として預けていた『ヘスティア・ナイフ』と共に出てきた。

こうして、戦争遊戯(ウォーゲーム)終了後に色々と会ったヘスティア達。

新たな本拠(ホーム)である『竈火の館』が完成したところでヘスティアが祝勝会をしようと言い始めた。

まだ引っ越し作業も終わっていなかったものの、「こういうことは早めにやるべきだ!」というヘスティアの説得…もとい押し切られ開かれた祝勝会。

鳥肉(チキン)の簡単な網焼きステーキに何匹もの豪快な魚の丸焼き、極東料理という米を使った御握り、ジャガ丸くん、ちょっとのお酒を準備し、ヘスティアの音頭に合わせ乾杯するモニカ達。

 

「……しかし、よくまともになったもんだな」

 

「ですが、流石はゴブニュ様の【ファミリア】ですね」

 

「元々建築を司る神だからね。それに、こちらが依頼した通りの完璧な仕事をしてくれたよ…」

 

「え……?それでは!?」

 

「俺達が頼んだことも!?」

 

「……ふっ」

 

「「「「「!/お?/お!/おおっ!/ほぉ…」」」」」

 

 

○○○○○

 

 

「……よっと。後もう少しで入口付近の荷物は終わりだな」

 

(ミコト)が極東式の檜風呂(ひのきぶろ)の浴室、ヴェルフが館裏庭の一角に建てられた石造りの鍛冶場、ヘスティアとリリが地図を片手に屋敷内の内装や特筆事項をメモして回っている最中、ベルとモニカはまだ終わっていない引っ越し作業を行っていた

 

「ある程度片付いたことだし、少し休憩……何だ?」

 

正面玄関の引っ越し作業を終えたところで、外で言い争いをしている声を聞いたモニカ。

ドアを開けて外に出ると、ホームの敷地の外の沿道で言い争い――というより駄々をこねる子供のように半分泣き散らしながらホームを囲む鉄柵に抱き着く少女と、苛立ちを隠せないように怒りながら少女の服を引っ張り引き剥がそうとしている、どこかで見たことのある二人組の少女がいた。

 

「……一体全体何をやっているのだ、ダフネ殿、カサンドラ殿?」

 

「あっ……【フルゴル】。………えっとね、この子が今まで使っていた枕をなくしたらしいの」

 

一体何をしているのかと問いかけると、ダフネは短髪(ショートヘアー)を揺らしながら溜息をつきながら、鉄柵に抱き着いているカサンドラを見下ろしながら話し始めた。

 

「枕?」

 

「そう。新しいものを買えばいいって言ってるのに……」

 

「あ、あの枕じゃないと駄目なのぉ~。あれがないと、私、寝付けなくて……」

 

「なるほど。つまりカサンドラ殿は、館に枕を置き忘れた、ということだな?」

 

モニカがそうカサンドラに尋ねると、カサンドラは鉄柵越しに顔を赤らめ、おずおずと口を開いた。

 

「その、覚えてはいないんですけど……『予知夢(ゆめ)』でここにあるって、お告げを……」

 

予知夢(ゆめ)?」

 

「だからぁ!そんな馬鹿(ばか)げた話を言うの、止めなさいってば!!」

 

「お願いだから信じてよぉ~~~~っ!」

 

「―――カサンドラさんと、ダフネさん?モニカさん、何かあったんですか?」

 

「あぁ、ベルか。実は―――」

 

枕がここにあるという『予知夢(ゆめ)』――見えにくい柱の隙間に枕が挟まっている内容の夢とのこと――を見た、という突拍子なことを言い他派閥のホームを尋ねようとしているカサンドラを、恥ずかしい真似は止せと叱りつけていたダフネ。

ダフネとカサンドラの言い合いを聞き入口までやって来たベルは、事のあらましをモニカに尋ねた。

 

「……えっと、じゃあ、僕が探してきますよ?」

 

「「え?」」

 

「いや待てベル。私だけで行っても場所が分からん……カサンドラ殿、夢で見た場所に案内――「ちょ、ちょっと待ちなさい!」――どうした、ダフネ殿?」

 

 

さらに、モニカの口から『本拠(ホーム)に入って探さないか』という言葉が出かけたところで、ダフネがストップをかけた。

 

「自分達の本拠(ホーム)に他派閥の冒険者入れるなんて正気!?……それに、夢よ、夢っ、この子の妄想なのよっ?それを信じるのっ?」

 

「も、妄想……」

 

「だが、カサンドラ殿は『ここに枕がある』と夢で見たのだろう?」

 

「は、はい!……あ、あの、信じてくれるんですか………?」

 

うろたえるダフネを宥め、カサンドラに視線を移し改めて確認を取るモニカ。

まさか信じてもらえるとは思えず固まっていたカサンドラは、はっとなって頷くと、恐る恐る尋ねた。

 

「あぁ、信じるとも。それでは早速行こうではないか」

 

そう言って二人を先導する形で本拠(ホーム)の中に入るモニカと、瞳を潤ませながらモニカに続くカサンドラと呆れたような表情を浮かべながら付いて行くダフネ。

それから数分後。

 

「あ、あったっ!!」

 

「嘘、本当にあった……」

 

夢の中で見た枕が挟まっているという柱の元へカサンドラ主導のもと向かったモニカ達。

そして辿り着いた場所で柱を一本ずつ確認していくと、見えにくい柱の隙間に挟まっている枕を見つけたのであった。

 

「あのっ、本当にありがとうございました!私を信じてくれて、本当に、本当に……!!」

 

「お、落ち着けカサンドラ殿。困っている人を助けるのは当たり前のことだ、そこまで感謝することではないぞ」

 

「そ、そうですよっ。そこまで感謝されることじゃないような……?」

 

枕を抱きしめながら頭を下げるカサンドラに、そこまでしなくていいと伝えるモニカ。

枕回収後、ホームの外でカサンドラからの感謝の言葉を受け取ること数分。

胸に抱いた枕に顔の半分を(うず)めると、チラチラとモニカを見つめると、未だ疑わしい目付きをしているダフネに身を寄せ、枕を抱きしめたまま、こそっ、と耳打ちをした。

 

「えっ……本気?それでいいの?」

 

「うんうんっ……!」

 

驚きながら確認するダフネと顔を赤くしながらこくこくと頷くカサンドラ。

 

「【フルゴル】に【リトル・ルーキー】、一度出直すわ。それと、この()の探し物を見つけてくれてありがとう……またね」

 

嘆息しながらモニカ達に向き直りお礼を言うと、背を向け歩いて行った。

モニカ達にはにかみながら微笑みかけると、ぺこりともう一度お辞儀をしてダフネの後を追っていった。

 

「また……ってどういうことでしょうか?」

 

「私も分からん……が、とりあえず引っ越し作業を終わらせようではないか」

 

ダフネの言葉に疑問を覚えつつも、ひとまず引っ越し作業を終わらせるべくホームに戻るモニカ達。

中に入り荷物を二階に運んでいると、部屋の中にいたヘスティアに呼び止められた。

部屋に入りヘスティアのいる広間の窓辺へ向かうと、一枚の紙を見せつけられた。

 

「なになに…『【ヘスティア・ファミリア】、入団希望者募集!(きた)れ、子供達!!』」

 

「神様、これって……!」

 

「その紙に書いている通りさ、二人共!紙に書いてある時間まであとちょっと…入団希望の子供達がそろそろ集まってくる頃だぜ!」

 

そう言いながら窓の外に視線を飛ばすヘスティアに続くように、窓辺に駆け寄りヘスティアの視線を追うベルとモニカ。

窓から見た屋敷の正面、鉄柵で作られた巨大な正門の前には、様々な種族の亜人(デミ・ヒューマン)が人垣となって集まり出していた。

 

 

○○○○○

 

 

「まさか、こんなに集まるとは……」

 

紙に書かれていた時間になったことで正門が開かれ、屋敷前の庭に五十人は超す入団希望者が入ってきた。

それに合わせて(ミコト)を除いた全員で玄関前に移動し人だかりを眺めていくと、ヒューマンは勿論、エルフやドワーフ、獣人にアマゾネス、小人族(パルゥム)半亜人(ハーフ)と様々な種族、いかにも冒険者希望のたくましい男性から、オラリオに来たばかりの旅装姿の女性など沢山の格好の人達が談笑しながら、こちらをチラチラと窺っていた。

その中には少し前まで話を交わしていたダフネとカサンドラもおり、先ほどの『出直す』の言葉をベルとモニカは理解したのであった。

 

「それはそうです。この前の戦争遊戯(ウォーゲーム)に勝って一躍有名になりましたから。今一番勢いがある派閥(ファミリア)、ということで新人には魅力的に映っているのだと思われます」

 

「むっ、リリか。…だが、人が多いのは少し心配なところだな」

 

「確かに、人が増えるとしがらみなどは増えますからね」

 

「なに、みんな安心してくれ。これからこのボクが一人一人面接して、適性を見るから!」

 

「まぁ、こんなに大量に入団させるわけにもいかないですからね。頑張ってください、ヘスティア様」

 

「任せてくれ!それじゃあ、そろそろ面接w「ヘ、ヘスティア様ぁー!?」ど、どうしたんだい、(ミコト)君?」

 

リリとモニカ、ベルとヴェルフの話を聞き、横から自身が入団試験を行うと宣言するヘスティア。

そろそろ時間となるため、ヘスティアが満を持して入団式の刻限を告げようとしたその瞬間、屋敷の玄関扉を勢いよく開けて(ミコト)が大慌てで走ってきた。

血相を変えた(ミコト)の様子に小首を(かし)げるヘスティア。

全身を震わせる(ミコト)は、冷静さを失った表情でモニカ達と入団希望者の前に、右手で持っていた用紙を突き出した。

 

「に、に、荷物の中からっ、借金()()()()()()の契約書がぁ――――――――!?」

 

「「「ぶっふぅ!?/は?/よん、おく?」」」

 

(ミコト)の言葉にヘスティアは噴き出し、リリは固まり、ヴェルフはその場で立ちつくし、大勢の入団希望者は例外なく目を点にした。

そしてモニカは、側にいるベルと共に――凍結した。

震える瞳でゼロの数や血の色で記された事項の数々を目で追い、本物の『借金契約書』と確認したモニカ

現実逃避しようにも、共通語(コイネー)と【神聖文字(ヒエログリフ)】の両方で書かれたヘスティアの署名(サイン)がそれを許さなかった。

そして止めとばかりに、用紙の片隅に書き記された【ヘファイストス・ファミリア】の署名を見つけたところで、脳内で全てが繋がった。

 

『まさか、この借金は私達二人の武器の――』

 

「「ふ、ぁ―――/ほぇ―――」」

 

そこまで考えたところで、モニカは隣にいたベルと同時に意識を手放したのであった。

 

「ベ、ベル様、モニカ様ぁ――!?」

 

「おい、嘘だろう……?」

 

天を仰いで地面に崩れ落ちたベルと、膝をつき顔を地面にぶつけるように倒れたモニカの側で、リリが悲鳴を上げ、更にヴェルフが引きつった声を、ヘスティアはその場に石像のように固まった。

そしてそれが契機だったかのように、前庭は瞬く間に阿鼻叫喚の絶叫に包まれた結果。

白日の下に晒された【ファミリア】の借金額(ばくだん)に、入団希望者達全員がモニカ達の前から姿を消した。

結果として、ホームはそれまでの賑わいが嘘だったかのように静まり返り、ホームには呆然自失とした【ヘスティア・ファミリア】の面々だけが残されたのであった。

 

~ヘスティア・ファミリアの借金:四○○○○○○○○―――四億ヴァリス~

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

今話の題名は『勝利の対価』でしたが、ここでの対価というのは【アポロン・ファミリアからの賠償金】と【アポロン・ファミリアのホーム】、【ベルのLv.3昇格】、そして【借金四億ヴァリス】のことでした。
借金の額が原作よりも多いのは、『ヘスティア・ナイフ』に加えて『ヘスティア・サーベル』の分の借金が追加されてるからです。

今回新たにプリコネからダイゴが参戦しましたが、本来であれば『忍びの頭領ハンゾウ』というプリコネのボスキャラを今章限りのキャラとして登場させる予定でした。
ですが、今後のストーリーの大まかな流れを考えた結果、ダイゴを登場させることにしました。

それと現在、簡単なアンケートやってます。
皆さんの考えを聞きたいだけなので、特に深く考えずに投票をお願いします。
この最後にモニカの現時点での【ステイタス】の数値を載せておきます。
詳しい内容は【ステイタス】を更新するので、そちらで確認を。

次回からは原作七巻の内容です。
どうやってモニカを絡ませるか、なかなか難しいところですが、お楽しみください。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。



【ステイタス】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
モニカ・ヴァイスヴィント
LV.2
力:F308 耐久:F347 器用:F336 敏捷:F316 魔力:H139
狩人:I
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
魔法、スキルは特に変更なしのため割愛。
それぞれの数値の上昇理由としては、一週間の晶達との特訓+格上(ダイゴ)との戦いが主な理由。
その中でも耐久と器用の数値が高いのは、晶達との特訓でひたすらボコボコにされた+ナイフ投げや格闘による弱点の付き方をひたすら練習し続けたから。


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第70話 『尾行』

ウルトラマンブレーザー第9話『オトノホシ』、演出500点満点なので皆さんYouTubeで見逃し配信を見てください。
そして、BLEACH千年血戦篇の最新話でついにあのシーンが出ました。
『偉大な相手というのは輝いて見えるもの』…らしいですよ。
どうも、設定は出来ているのでいつかBLEACHクロスオーバーも書いてみたい刺身の盛り合わせです。

ということで最新話、原作7巻の内容となります。
本当はいつも通りモニカをかっつり絡ませる予定でしたが、今章はモニカをあまり絡ませない内容で行きます。
その代わり、次章はモニカが主役となってますので、そこまでお待ちください。
また、モニカは本編に絡まないので、今章はどちらかというと本編の裏側をオリジナル展開も混ぜて書いて行こうと思います。
今話は導入回のようなものなので、少し短めです。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。
そして、前話投稿後に大量の誤字報告をしてくださった 『白羽』さん、遅れましたが誤字報告ありがとうございます。

それでは、どうぞ。



 

「きょ、今日は早めに就寝させてもらいまーす」

 

借金四億ヴァリス返済のため、冒険者依頼(クエスト)と魔石・怪物の宝(ドロップアイテム)稼ぎを行いダンジョンから帰還したモニカ達。

本拠(ホーム)を尋ねてきた焦った様子の千草(チグサ)から話を聞いた(ミコト)は、どこか落ち着かない様子で食事(借金返済のためヘスティアはバイトの残業中)を終え、棒読みで自室に戻ることを伝えると居室(リビング)の扉をしっかり閉め、三階の自室に向かっていく―――

 

「――よし」

 

―――かと思いきや、突如進路を変更。

音もなく二階の廊下を駆け抜けると、窓から飛び降り裏庭の隅に着地し、居室(リビング)に明かりがついているのを確認すると、コソコソと裏門から外へ出て行ったのであった。

 

「……よし、追うぞ」

 

「尾行は盗賊業以来(ひさびさ)ですねー」

 

「私の尾行技術を見せる時が来たな!」

 

「い、いいのかなぁ……」

 

街へ向かう(ミコト)の姿を、ヴェルフ、リリ、ベル、そしてモニカははっきりと補足していた。

あらかじめホームの戸締りを行い、居室(リビング)の灯りを付けたまま素早く屋敷の外に待機していた一同は、潜んでいた暗がりの中から抜け出すと、あからさまに何か隠し事をしている(ミコト)の追跡を始めた。

 

「街の様子が気になっているようでしたが……案の定、でしたね」

 

「まぁ、あれだけ窓の外を眺められたら普通は気づくがな」

 

「それにしても、あいつもお前とそっくりだな」

 

「えっ?」

 

「嘘をつくのが下手、ということですよ。ベル様」

 

ベルと同様、嘘がつけない生真面目な少女は、焦って注意が散漫になっているようでモニカ達の尾行に気付かず、賑やかな街並みを歩いて行く。

そんな(ミコト)を付かず離れずの距離で追うモニカ達。

本拠がある都市の南西からどんどん南へ向かっていき、繁華街のある南のメインストリートに辿り着いた。

周囲の喧騒は最高潮に達してきており、大劇場(シアター)賭博場(カジノ)、高級酒場など巨大勝つ派手な建物が並ぶ大通りには、身なりのいい商人や冒険者、神々でごった返している。

しかし、(ミコト)はそんな大通りには目をくれず、大通りから道を折れ、とある路地裏の店頭にたたずんでいた千草(チグサ)と合流した。

神妙な表情で頷き合った(ミコト)千草(チグサ)はその場から離れると、路地の奥へとどんどん突き進んでいく。

 

「……おい。この方向は、まさか」

 

「?この先に何かあるのか、ヴェルフ?」

 

(ミコト)たちが向かう都市南東部の方角を見据え、硬い声を出すヴェルフ。

その言葉を聞き、はっ、と体を揺らすリリと何もわかっていない表情を浮かべるベル、何があるのかヴェルフに聞くモニカ。

 

「ベルッ、モニカッ、お前達はここで帰れっ」

 

「ベル様っ、モニカ様っ、帰ってくださいっ!」

 

「えっ、えっ?なんで、なんでっ?」

 

「ちょっ、待て待て。何で帰らないといけないのだ!?」

 

「いいから聞けっ。お前達にはまだ早いんだよ」

 

「むしろお二人…特にベル様が来ていい場所ではありません!」

 

「いきなり帰れとはどういうことだ二人共!?」

 

「そうですよ、今更なんで……あっ、(ミコト)達が行っちゃうよ!?」

 

「詳しい話はあとだ。今は二人を追うぞ、三人共!」

 

「あー、くそ。リリスケ諦めろ、追うぞ」

 

「う~~~~っ!?(ミコト)様、よりにもよってどうしてあんな場所にぃ……!」

 

除け者扱いされることにごねていたベルとモニカだったが、先に進む(ミコト)千草(チグサ)を見失わないよう追いかけ始めた。

二人を諭すことが出来なかったヴェルフとリリは、走って行くモニカとベルを追いかけるように飛び出した。

特にリリは苦虫を噛み潰したような表情で恨み言を口にしながら追いかけ始めた。

 

 

○○○○○

 

 

「こ、ここは……」

 

そして。

酔いつぶれた冒険者達を横目に(ミコト)達を追いかけた先に現れた目の前の光景に、ベルとモニカは顔を引きつらせた。

都市の第四区画、その南東のメインストリート寄り。

そこには様々な快楽が混ざり合う嬌声(きょうせい)が漏れていた。

時に激しく、時にひそやかに交わされる、享楽(きょうらく)(むさぼ)り合う男と女の声。

建物の壁や柱に設置された桃色の魔石灯でぼんやりと照らされるのは、艶かしい赤い唇や瑞々しい果実を象った看板、そして背中や腰を丸出しにしたドレスで着飾る――蠱惑的な女性達。

アマゾネスを中心に、ヒューマンや獣人、小人族(パルゥム)まで揃っている彼女達は、道を行く男性を呼び止めては蠱惑的に、もしくは挑発的に微笑むと、鼻をだらしなく伸ばす男性と一言二言言葉を交わすと手を取り、もしくは腰を抱き寄せられながら店の中へ姿を消していった。

 

「あ、あ、あの人達って……」

 

「ま、まさかここは……」

 

震える指を向けながら口をパクパクと開閉させ、情けない声をこぼすベルと、何かを察したのか顔を真っ赤にするモニカ。

先ほどこちらに来ないよう必死に止めていたヴェルフとリリの方向を震えながら振り向くと、リリは諦めたような表情で二人に告げた。

 

「えぇ、『歓楽街』です」

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで歓楽街篇導入回でした。
今回導入ということであまり話は進みませんでしたが、次回は原作キャラが登場……するはずです。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。



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第71話 『快楽の街』

ダンメモ6周年記念ベル君、当たりませんでした…
どうも、刺身の盛り合わせです。

ということで最新話。
今話は説明とかが多くなってます。
そして、今話は前回言った通り、原作キャラが登場です。
一体だれが出るのか、お楽しみに。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。
そして『眠り猫』さん、誤字報告ありがとうございます。

それでは、どうぞ。


 

「だからベル様には来てほしくなかったんです……!!」

 

「ここの匂いは、どうも慣れないな……」

 

「ヴェ、ヴェルフは、ここに来たことが……」

 

「まさか、あの時の勧誘はそういうことだったのか……!?」

 

挙動不審な(ミコト)を尾行し、歓楽街へとたどり着いたモニカ達。

今自分のいる場所がどのような場所か察し顔を真っ赤にしているベルは、側で顔を顰めながら腕で鼻を塞ぐヴェルフに質問をした。

その隣ではリリが顔を真っ赤にしながら憤り、モニカは顔を青ざめさせていた。

 

女神(ヘファイストス)様のもとにいた時、同僚連中に連れられたことはあったが、肌に合わなくて利用はしなかったな」

 

「リリも幸いここには堕ちませんでした。……というより、顔色が真っ青ですが大丈夫ですか、モニカ様?」

 

「………【ヘスティア・ファミリア】の加入前に勧誘を受けたことがあったんだが、その時の勧誘文句が『需要がある』や『稼げる』でな。……私はあの時、『娼婦にならないか』と言われていたのかと考えていたのだ」

 

「「「…………」」」

 

モニカの口から出たまさかの内容に何も言えなくなるベル達。

周囲の喧騒とは対照的に、ベル達の周りはある意味静寂に包まれていた。

 

「………え、えっと!(ミコト)さん達は、こんなところに何をしに来たんだろうね!?」

 

「た、確かにそうですね!?う~ん……こんな場所にうら若き乙女(おとめ)が足を運ぶ理由……まさか、お金のために体を?」

 

「!?」

 

「いや、それは違うだろう」

 

「確かに。あいつらはそんな玉じゃないだろ」

 

無言の空気に耐えられなくなったベルの疑問に対するリリの答えを即座に否定したモニカとヴェルフ。

そんな二人の視線の先には、ベルに負けず劣らず顔を真っ赤にしながら、二人寄り添い両手を胸の高さで握り合い、ビクビクしながら二人寄り添い合いながら周囲を見回している(ミコト)千草(チグサ)の姿があった。

下卑(げび)た男性や娼婦にからかいの声をかけられるたびに肩を大きく跳ね上げており、千草(チグサ)に至っては既に半泣きになっていた。

まるで迷子になった双子の子鹿のような二人の様子に、リリは瞳を細め、ベルは汗をかき

つつ、達観にも似た納得の表情を見せた。

 

「確かに、うぶすぎる(ミコト)様達が娼婦の真似事などできる筈ありませんね……しかし、それならどうしてこの歓楽街に?」

 

「……もしや、人を探しているのではないか?」

 

「確かに、そっちの可能性の方が高いか?…っと、あれは不味いな。行くぞ」

 

「う、うん!」

 

リリの疑問に対するモニカの考えに納得していると、(ミコト)千草(チグサ)大通り(メインストリート)を横断して今モニカ達の居る場所とは反対の区画に姿を消していった。

間合いを有して追跡していたモニカ達は見失うまいと、ヴェルフ、リリ、ベルとモニカの順で並んで追いかけ始めた。

しかし、大通り(メインストリート)を横断中、どこからか聞こえてきた『今からサービスタイムー!』と宣伝する娼婦の人達と男性冒険者達の波にベルと共に呑み込まれた結果――

 

「い、いかん、はぐれてしまった……」

 

――ヴェルフ達と離れ離れになってしまった。

どうにか人波を突破したものの、すぐに新たな人波に呑まれてしまい、再び抜け出したものの気づいた時にはどことも知れない娼館の入口前に立っていた。

急いで見覚えのある道に戻り、ヴェルフ達の後を追いかけようとしたものの、どの通りに移動したか分からず、ぽつん、と道の中央に立ちつくしていた。

 

「と、とにかくベル達と合流しなくては……!」

 

恩恵(ステイタス)によって強化された聴覚が、建物や路上の隅など四方から聞こえてくる甘ったるい嬌声を次々と拾っていく。

周囲の妖艶な雰囲気によってベルに負けず劣らず顔を真っ赤にするモニカ。

急いでその場から離れようと足を踏み出そうとしたその瞬間。

 

「あーっ、モニカたんだーー!!」

 

「えっ嘘マジ!?ホントだモニカちゃん…いや、【フルゴル】たんに会えるなんて!」

 

「モニカたんがこんな場所にいるなんて……もしかして、そういうことをしに来た…!?」

 

「うーん、どう見ても17歳には見えない…合法ロリサイコー!」

 

「あ、あの、男神(おがみ)様方、私には大事な用があるので、どいていただけると……」

 

突然名前を呼ばれたモニカが振り向くと、そこには多くの男神(おがみ)達がおり、気づいた時には周囲を囲まれていた。

神々の表情からふざけ半分でちょっかいを出していることを理解したモニカだった。

どうにか包囲網を脱出しようにも、超越存在(デウスデア)である神相手に強く出られず、実力行使で突破する訳にもいかず手詰まり状態なモニカ。

 

「ねぇねぇ神様達。夜は短いんだから、早くお店に行った方がいいんじゃないかな?」

 

「おっと、そうだった!急がないとジェシカちゃんのお店のサービスタイムが終わっちまう!行くぞお前等ぁ!」

 

「「「「「おぉー!!」」」」」

 

嵐のように去っていく男神達を、何とも言えない表情で見送ったモニカ。

神様達を追い払ってくれた人物に礼を言おうと声のした方向を向くと、そこには一人のアマゾネスがいた。

 

「すまない、からかわれているのは分かっていたのだが、神相手には強く出られなくてな…」

 

「ううん、気にしないでー。私はレナ、よろしくねー。それで、見た感じ娼婦には見えないけど、どうしてこんなところにいるのー?」

 

「モニカだ、よろしく頼む。…実は仲間が何も言わずホームを出たので尾行していたらここを訪れたのだが、人波に巻き込まれて一緒に来た仲間ともはぐれてしまったのだ。仲間達がどこに行ったのかも分からないし、困っていたところでな」

 

「そっかー。でも、ここって入り組んでるから、合流は難しいと思うよ?」

 

「むっ…、ならばここで合流するよりホームで帰りを待つ方が良いか…」

 

助けてくれたアマゾネスのレナに、歓楽街に来た事情と合流するつもりでいることを伝えたモニカ。

しかし、レナから入り組んだ歓楽街での合流は不可能と言われたため、一度ホームに戻りベル達の帰りを待つことにしたのであった。

 

「――バベルの方向を教えてもらって感謝する、レナ殿。今度会った時、何か手伝わせてくれないか?」

 

「えっ、ホント!?じゃあ、今度私の運命の人を探すの手伝って!」

 

「運命の人?」

 

「うん!実は前その人と会った時にね、鋭い目に睨まれた瞬間に、じゅわ、って体が熱くなってね!それで、お腹を殴られた時に『あ、運命だ…』って感じたの……」

 

「お、お腹を殴られ……?」

 

「それで思ったの……、子どもを作りたいって!」

 

「子どっ!?」

 

何か恩返しがしたいと考えレナに何か出来ることはないか聞いた結果、運命の人の捜索を手伝ってほしいと言われたモニカ。

そこまでならばただの恋する乙女だったのだが、『腹を殴られた際に運命を感じた』と言ったところで困惑した表情に変わり、『その人の子供を産みたい』とはっきり言われたことでベルと同様に顔をトマトのように真っ赤にするモニカ。

 

「そ、そうか…。なら、今度時間のある時に手伝う、ということでいいか?」

 

「うんうん、ありがとう!それじゃあ、気を付けてね~」

 

しどろもどろになりながらも、後日手伝う約束を取り付けたモニカ。

レナと別れると、あらかじめ教えてもらっていたバベルのある方向を向くと、バベル経由でホームに戻るため歓楽街の中を突っ切って行くのであった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、『ソード・オラトリア』から「レナ・タリー」の登場です。
原作小説では登場すらしておらず、アニメ2期ですこーしだけ出番のあったレナですが、知らない人のために簡単に説明すると、『ベートに腹パンされて運命を感じたベート専用ドMアマゾネス』…です。
時系列としては、ベル達が18階層でゴライアスと戦っている(原作5巻)のと、港町メルンでレナがベートから腹パンされている(ソード・オラトリア6巻)のは、同じ時系列となっています。
なので、オラリオにいるレナはベートにベタ惚れ状態なのです。
本作でレナを出演させたのは『本編で読んだ時に面白いキャラだと思ったから』と、『ダンメモで声を聞いた時に、CV.M・A・Oの暴力でぶん殴られたから』です。
今話の最後にちょっとしたフラグも立てたので、本編後に書けたらなぁ…と思います。

モニカはベルよりマシだけど叡智なことに耐性ない方がいいなぁ…と思って今話を書きました。
もしもモニカのそういう描写があった場合は教えてください。

アンケートを回答してくれた皆さんありがとうございます。
投票の結果、『モニカちゃん…』の方が票が多い結果となりました。
ということで、番外編でガールズでラブな話を書くことにいたしました!
みんな百合の花が好きなんですね~、そんな私も大好きです。
……まぁ、書くのは本編後だし、初めてそういうものを書くのでかなり時間がかかります。
なので気長にお待ちください。

次回は展開巻き巻きで行こうと思います。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第72話 『戦闘娼婦』

職場環境ががらりと変わってここ2週間執筆する気力が尽きてました。
どうも、ようやく書き終えた刺身の盛り合わせです。

ということで最新話。
今話は題名通り、戦闘娼婦が襲来するお話です。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。
そして『白羽』さん、誤字報告ありがとうございます。

それでは、どうぞ。


バベルを経由しホームへ帰ったモニカ。

一人でベル達を待っているとバイトを終えたヘスティアが帰宅。

なぜホームに一人でいるのかモニカを問い詰めていると、歓楽街から慌てた様子でヴェルフ達が帰ってきた。

しかしそこにはベルが居なかったため、胸が張り裂けるほどヘスティアが心配していると、甘ったるい香りを体中からプンプンと匂わせながら朝帰りしたベル。

これにはヘスティアは怒髪天を衝き、リリは般若(おに)の表情を浮かべていた。

少し離れたところではヴェルフが嘆息し、(ミコト)はあわわわっとあたふたし、その横ではモニカがシュン…とした表情で、『私は歓楽街でみんなと逸れた後、合流せずに一人でホームへ帰還しみんなを心配させました』という紙を持って正座させられているモニカがいた。

「変なことはしていない」というベルの言葉に嘘がないことを見抜いたヘスティアに、罰として一日の社会貢献を命じられたベル達。

 

「―――なるほど、そういう事情があったのか…」

 

その翌日、社会貢献の後再び春姫に会いに行き拒絶された(ミコト)を連れギルドに向かったベルを見送ったモニカとヘスティアは、ヴェルフから(ミコト)(ミコト)の探し人――春姫(ハルヒメ)の話を聞いていた。

 

「だが、(ミコト)が探してる春姫(ハルヒメ)がいる場所は第三区画……、あそこは【イシュタル・ファミリア】の勢力圏だ。下手に探りを入れるとこの前の戦争遊戯(ウォーゲーム)の二の舞…、いや、あれより酷いことになるのは間違いないな」

 

(ミコト)様には申し訳ないですが、【イシュタル・ファミリア】の関係者…しかも娼婦だなんて、ベル様に悪影響です!」

 

「……だがベルのことだ。困った仲間のことを見捨てることはしないだろう。ですよね、ヘスティア様?」

 

「確かに、ベル君が見ないふりする訳ないもんね……、ってお客さんかな?」

 

「私が出てきます、ヘスティア様」

 

話を聞いていると、ホームの正門の外から呼びかける声を聞いたモニカ達。

モニカがドアを開けると、そこには豪華な作りをした箱馬車が一台あり、男が一人立っていた。

 

「【ヘスティア・ファミリア】の方ですね。私こういうものでして……」

 

「【アルベラ商会】?」

 

「モニカくーん、一体誰が来たんだい?」

 

外に出てモニカが名刺を受け取ったところで、中から出てきたヘスティア達。

それに合わせて男は一枚の羊皮紙を渡すと、箱馬車に乗り込み正門前から離れていった。

 

「ヴェルフ、リリ、モニカさん、神様!」

 

「あ、ベル君。(ミコト)君も。帰ってきたんだね」

 

「今の馬車は何だったのですか?」

 

「商会からの冒険者依頼(クエスト)です」

 

「「商会?」」

 

ヘスティアにもらった羊皮紙を渡していると、馬車と入れ違いになる形で帰ってきたベルと(ミコト)に声をかけられ振り向くモニカ達。

ミコトからの質問に対し、ヘスティアの持つ羊皮紙を見ながら答えるリリ。

 

戦争遊戯(ウォーゲーム)の影響だな、これも。金にがめつい連中が接触してきた、ってわけだ。投資、とはまた違うが……オラリオではよくあることだな」

 

おうむ返しをするベルと(ミコト)に対し、頷き説明をするヴェルフ。

 

「ギルドを通さず直接指名してきたので、公式と呼べる冒険者依頼(クエスト)ではありませんが、相手ははっきりしています。しかも依頼人(クライアント)は商会。非公式の冒険者依頼(クエスト)より信用は遥かにあります」

 

「えっと、依頼の内容は?」

 

「14階層の食料庫(パントリー)での石英(クォーツ)採掘、だそうだ。……依頼内容に対して報酬が釣り合ってないがな」

 

「これから御贔屓してください、という真意が見え見えですね」

 

ベルの冒険者依頼(クエスト)内容についての質問に答えつつ、冒険者依頼(クエスト)の報酬を見て呆れた表情を浮かべるモニカとリリ。

依頼書を持つヘスティアに向かって、前のめりになりながら報酬額を聞くベルと(ミコト)

 

「「ほ、報酬は!?」」

 

「一〇〇万ヴァリス」

 

「「ひゃ、一〇〇万……!!」」

 

「この冒険者依頼(クエスト)はどうしましょうか、ヘスティア様?」

 

「んー…、あまり商人や商会とは繋がりを持ちたくないなぁ…。よし、先方には悪いけど、この依頼は断って――「「やりましょう!!」」――どわぁ!?」

 

冒険者依頼(クエスト)を断ろうとしたヘスティアだったが、ベルと(ミコト)による身振り手振りを交えた必死の同時懇願。

春姫(ハルヒメ)の『身請け』の話や春姫(ハルヒメ)が娼婦ということを聞き、最初は渋―い顔をしたヘスティアだったが、(ミコト)の想いを聞きこれまたしぶしぶ許可を出したことで、正式にアルベラ商会の冒険者依頼(クエスト)を受諾することとなったのである。

 

 

○○○○○

 

 

ダンジョン14階層。

話し合いから二日後、探索の準備や冒険者依頼(クエスト)受諾の連絡確認に一日使い、14階層の食料庫(パントリー)に向かっていた。

食料庫(パントリー)に辿り着く直前、食料庫(パントリー)方向から外套(フーデッドローブ)を被った冒険者達がモンスター達と共に姿を現した。

全員で別れ道まで引き返し広い十字路に逃げ込んだ次の瞬間、モニカ達を挟む形で左右の道から別の冒険者と怪物の集団が雪崩込(なだれこ)んできた

 

「モンスターの雪崩に巻き込まれないよう、全員身を寄せ合うんだ!」

 

「んなこと言ったって……うおおおおおおおおおおおおおっ!?」

 

「み、みなさんっ!?」

 

衝突中心地にいたモニカ達を起点に大混戦が巻き起こる。

一塊になるようモニカが声を荒げたものの、恐ろしいほどのモンスターの数によってベルとリリ、モニカとヴェルフと(ミコト)に一瞬分断されかけた。

全員離れ離れになるまいとその場に踏みとどまろうとするが、止めとばかりに最初に遭遇した『怪物進呈(パス・パレード)』が合流した。

四方八方をモンスターによって作られた檻に完璧に閉じ込められる中、『怪物進呈(パス・パレード)』を敢行した三つの冒険者達(パーティー)は、すれちがった側から反転するとモニカ達に襲い掛かってきた。

 

「なんだ、こいつ等!?」

 

大刀を振り回すヴェルフに曲刀(シミター)が、刀を振るう(ミコト)には棍棒、サーベルを振り回していたモニカには大剣が。

色違いの外套(フーデッドローブ)の集団は同士討ちを行うモンスター達を飛び越え舞うように攻撃を仕掛けてきた。

それぞれ襲いかかってきた冒険者達の対処を行っていると、突如ベルがモンスターの檻の中から吹き飛ばされ、モニカ達と分断された。

 

(ミコト)様、ベル様を追ってください!?」

 

「しかし!?」

 

「こちらは私達だけで大丈夫だ、ベルのことを頼む!」

 

「俺達で道を開けるッ、急げ!!」

 

「――はいッ!!」

 

リリからの助言、そしてヴェルフとモニカの連撃によって空いたモンスターの隙間を縫うように抜け出し、ベルが吹き飛ばされた方向へ走って行く(ミコト)

それから数分後。

 

「くそっっ!?」

 

最後まで残っていたに大刀を叩き込み、灰へと変えたヴェルフ。

周囲にはモンスターの数えきれない死骸と大量の灰がうずたかく積もっていた、

大刀を地面に突き刺し杖のようにして体を支えるヴェルフの側には、同じようにその身をボロボロにして、四つん這いになっているリリと片膝を立てて地面に座るモニカがいた。

 

「何だったんだ、あいつ等は!?」

 

「わかりません!?ベル様も、(ミコト)様も戻ってこない………!」

 

「嘆いている、時間はない…!早く、ベル達を探すぞ……!」

 

ヴェルフの苛立ちの叫声とリリの取り乱した悲鳴に、自身を鼓舞する意味も込めて声を出すモニカ。

モニカ達を好きなだけいたぶり、刃向かうモンスター達を虐殺していった外套(フーデッドローブ)の集団は、ベルと(ミコト)を道連れに嵐のように姿を消した。

混乱しながらも体に鞭を打ってモニカとヴェルフ、リリはベル達の捜索をしようとした。

しかし、ボロボロの状態をたまたま通りかかった上級冒険者が発見したことで、ベル達の捜索は一時中断、地上へ帰還することとなった。

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということでサクッと?襲撃まで終わらせれることが出来ました。
今回自分で書いててお気に入りの部分はモニカが紙を持って正座させられているシーンです。

次回はイシュタル・ファミリアへのカチコミ。
大体2~3話を予定してます。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第73話 『突撃、歓楽街』

一週間ぐらい前ですが、人生初の4DXに行ってきました。
4DXで見るマリオは凄い面白かったですが、シートベルトが欲しいなって思いました。
どうも、FGOの星4交換は水着茨木を交換した刺身の盛り合わせです。

ということで最新話です。
仕事が忙しくて執筆時間が取れてませんが、少しづつ話が進んでます。

また、二つほどお知らせがあるので、ぜひ後書きも読んでください。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。
そして『白羽』さん、誤字報告ありがとうございます。

それでは、どうぞ。


 

「ここにベル君達がいる筈だ、通してくれ!」

 

「女神様ぁ、証拠はあるんですかぁ?」

 

「変な言いがかりをつけるんなら、こっちも相応の処置ってものを取らせてもらいますよぉ」

 

ダンジョン内での襲撃から数時間後。

ダンジョンから帰還したモニカ達は、(ミコト)が攫われたと聞いて本拠(ホーム)にやって来た【タケミカヅチ・ファミリア】の面々に事のあらまし、そして殺生石の話をした【ヘスティア・ファミリア】の面々は、ベルと(ミコト)を助けるべく娼婦街の第三区画前、すなわち【イシュタル・ファミリア】の領域(テリトリー)の境界線上を訪れていた。

しかし、娼館街の入口はアマゾネス達が封鎖しており、ヘスティアは褐色肌の二名の女戦士(アマゾネス)とにらみ合っていた。

 

「ふてぶてしいほどに、しらばっくれてますねぇ……」

 

「まぁ、ここまでは予想通りだな」

 

「問題はどうやって入るかだが……」

 

戦斧や双剣をちらつかせながらニヤニヤ笑い見下ろしてくる女戦士(アマゾネス)に、「うがーっ!?」と両手を振り上げ激怒するヘスティア。

そんな主神(ヘスティア)を見ながら嘆息するリリと腕を組みながら見守るヴェルフ、体を左右に動かし女戦士(アマゾネス)の後ろを見ようとするモニカ。

その背後ではタケミカヅチが多方面からの偵察から戻ってきた眷属達を出迎え、周囲の状況についての報告を聞いていた。

それから数分程。

足止めされていたモニカ達の視線の先にある第三区画の中心地で、突如爆炎の華が咲いた。

ヘスティアは周囲に集まってきていた市民ともども体を飛び上がらせ仰天した。

にわかに騒然となる周囲を他所に、ヴェルフとリリははここぞとアマゾネス達に食ってかかっていた。

 

「もう言い逃れは出来ません!!あれはベル様の魔法(ファイアボルト)です!」

 

「そこを通せ!!」

 

「だったらどうした、抗争をおっ始める気か!?」

 

「私達は【イシュタル・ファミリア】だぞ!」

 

啖呵を切る相手にリリ達が一瞬勢いを失うと、巨漢と少女―――桜花(オウカ)とモニカが前に歩み出た。

桜花(オウカ)は一人の敵団員の胸ぐらを片手で掴むとそのまま投げ飛ばし、モニカは更に一歩前に踏み込み敵団員の懐に入ると、左手で鳩尾(みぞおち)、次に右手で顎に掌底を食らわせた。

後方の石畳まで投げ飛ばされたアマゾネスは、モニカによって気絶させられた仲間を見ながら愕然とする中、桜花(オウカ)とモニカは一言のみを叩きつけた。

 

「「どけ/邪魔だ」」

 

ベルと(ミコト)、そして春姫(ハルヒメ)の危機にためらいなどを捨てた二人の姿に、千草(チグサ)や【タケミカヅチ・ファミリア】の面々も続々と武器を抜いていく。

 

「お前等ァ!?」

 

「はははっ、やるじゃねぇかモニカぁ!そぉら行くぞォ!!」

 

自分を投げ飛ばし、仲間を気絶させた二人に率いられた極東出身のヒューマン達に対して、顔を真っ赤にしながら斬りかかってくるアマゾネス。

桜花(オウカ)とモニカの行動に大笑いしながら二人とともに敵との戦端を開いていく。

リリもハンドボウガンを取り出す中、第三区画の入口で戦闘が始まった。

 

「結局こうなるのか……!」

 

「時間もない、しょうがないな。……というよりヘスティア、お前のとこの眷属もかなり血の気が多いんだな」

 

「いや、モニカ君はそこまで血の気は多くなかった気がするんだけどなぁ……」

 

Lv.2のモニカとヴェルフと桜花(オウカ)、そして数の利をもって敵を撃退する眷属達を見ながら思わず嘆く女神(ヘスティア)

走り出す男神(タケミカヅチ)に続いて、モニカ達が強行突破した街路へと進入したのであった。

 

 

○○○○○

 

「モニカ様、ヴェルフ様、先ほどの爆発は………!?」

 

第三区画の街路を進み、【イシュタル・ファミリア】の本拠(ホーム)女主の神娼殿(ベーレト・バビリ)へと足を進めるモニカ達。

道中女戦士(アマゾネス)達の阻害が入りながらも次第に宮殿の方向へ足を進めていたモニカ達は、空中庭園で咲いた大爆炎の轟華を視認した。

その場にいた誰もを驚愕させる爆発音を振りまいた紅蓮の大輪に、リリは左右を走る仲間の顔をそれぞれ見た。

 

魔力暴発(イグニス・ファトゥス)……!」

 

「間違いない、あそこにベル達がいる筈だ、急ぐぞ!」

 

見覚えのある魔力光の炸裂。

『魔力』が暴走するほどの何かが、あれほどの規模の魔力暴発(イグニス・ファトゥス)が発生するほどの戦闘(なにか)が、あの巨大な宮殿で起きている。

間違いなくあそこにベル達がいる、と確信したモニカ達は、本拠地に突き進んだ。

 

「止まれぇ、お前等ぁ!」

 

「ちっ、またか……!?」

 

「ですが、相手は手に負えない程強くありません!」

 

「うん、きっと戦う人たちが足りてない……!」

 

次々と入る女戦士(アマゾネス)達の阻害によって碌に前へ進めていない状況に、悪態をつきながら交戦に移る桜花(オウカ)

ハンドボウガンで援護するリリの声に対し、中衛位置で槍を突き出しながら頷き返す千草(チグサ)

『殺生石』とベル達の捕獲に戦力の大半が宮殿内にいるため、モニカ達の戦う団員達は軒並み能力(ステイタス)が低く、高くてLv.2の戦闘娼婦(バーベラ)に獣人を始めとしたLv.1の戦闘員相手に、桜花(オウカ)とヴェルフが矢面に進むことで道を切り開いていく。

ヴェルフの奇抜な対魔力魔法(アンチ・マジック・ファイア)やモニカの【ヘスティア・サーベル】による魔法の無効化、武神(タケミカヅチ)の眷属達による優秀な連携により、数だけは突き抜けて多い敵勢を何とか突破していた。

路を遮るアマゾネス達と再び交戦に移った、モニカ達だったが――ドンッ、と。

突如として夜空に発生した爆発の炎と黒煙に、モニカ達だけでなく敵団員達さえも唖然と見上げていた。

まさかの爆発に立ちつくしていると、すかさず、ドンッ、ドンッ、ドンッ、と。

第三区画のあらゆる場所から、悲鳴と共に爆音が鳴り響き始めた。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということでモニカ達のイシュタル・ファミリア突入&フレイヤ・ファミリア襲撃まででした。
多分あと2話で第六章が終わるんですが……あまりにも短いので、本話の投稿後に五章と六章はひとまとめにすることにしました。

そしてお知らせです。
まず一つ目は、『モニカの設定変更』について。
次章を書くにあたって、これまで勢いで書いてきたツケで進行や設定に矛盾が生じてしまいました。
なので、モニカの出自を変えることにしました。
変える個所はモニカが軍人になる理由などで、ここまでのお話を全部書き換える必要はないので、次回あたりで簡単に説明できればと思います。

そして二つ目は、『長編』について。
だいぶ先の話になるとは思いますが、長編をいくつか書きたいと思ってます。
内容としては……

①本編よりも戦力増強!/おや!?アンタレスのようすが・・・!な劇場版『オリオンの矢』編
②モニカ、そして本編以上にキャラ多数参戦(予定)!なダンメモ『アエデス・ウェスタ』編
③それは遥か遠い昔、まだ神が地上に降りる前、始まりの英雄と仲間達の紡ぐ喜劇―――否、冒険譚。『アルゴノゥト』編
④プリコネとのクロスオーバーはこのため!完全オリジナル長編『オネイロスの涙』(題名は変更する可能性あり)

……の四つを書くつもりです。
大まかな流れは作っていますが、実際に書き始めるのはまだまだ先になるので、のんびり待っておいてください。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第74話 『サンジョウノ・春姫』

前話投稿後に気付いたのですが、本作品を投稿し始めてから一年たってました。
本作品をここまで続けることが出来たのは読んでくれる皆様のおかげです。
本当にありがとうございます。
どうも、これからも執筆頑張る刺身の盛り合わせです。

ということで最新話、そして第五章の最終話です。
今話では一気に話を加速させて、春姫加入のシーンまで行っちゃいます。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。



 

「――おい、大男!?この道で合ってるのか!?」

 

「知らん!全て階段が壊されていただろうが!?」

 

「ええい、こんな時まで言い争いをするんじゃない、二人共!?」

 

女主の神娼殿(ベーレト・バビリ)内の中層階にて、それぞれ大刀と斧、サーベルを担ぎながらヴェルフと桜花(オウカ)、モニカは通路を疾走していた。

襲撃される歓楽街と宮殿。

その惨状を目の当たりにし、ベル達の身を危ぶんだ三人は、ヘスティア達とは別行動する形で先行していた。

謎の襲撃者達はモニカ達を見向きもしないことが幸いし、三人は周囲の混乱に乗じて娼館街から一気に宮殿内まで走破していた。

 

「っ!?」

 

戦闘娼婦(バーベラ)!?」

 

「うっ、うぁあああああああああああああああああああああああっ!?」

 

敵と遭遇することなく宮殿までやって来たモニカ達の前に、悍婦(かんぷ)が現れた。

血と裂傷まみれの彼女は呼吸を乱しながら左手で棍棒を持ち、右手で脇腹を押さえていた。

そんな彼女は血走った目で、まるで恐怖を来したようにモニカ達に襲い掛かってきた。

振り回される棍棒を咄嗟に防いだ桜花(オウカ)だったが、一撃の重さにその巨体が揺らぎ、大きく後退させられた。

 

「大男!?」

 

「こいつっ、Lv.3だ!?」

 

痺れた両手から斧を取り落としかけた桜花(オウカ)とともに、相手に圧倒されるヴェルフ。

戦争遊戯(ウォーゲーム)直後で鍛冶場の環境が整わなかったため『魔剣』を一振りも所持していない現状。

手負いの敵であるものの押されている有り様と、相手とのLv.の差に対して盛大な悪態をぶちまけようとしたヴェルフだったが―――

 

「――二人共!一瞬でいい、相手の動きを止めてくれ!」

 

―――モニカのその言葉を聞き、戦闘娼婦(バーベラ)の攻撃を同時に受け止めたヴェルフと桜花(オウカ)

モニカはヴェルフの背中を踏み台にして飛び上がり、二人の必死の防御によって動きを止めた戦闘娼婦(バーベラ)の頭上まで来ると、サーベルの柄頭を勢いよく振り下ろし後頭部を殴った。

後頭部への一撃に加え、ここまで負ってきたダメージの積み重ねの結果、戦闘娼婦(バーベラ)は意識を失い、地面に倒れたのであった。

 

「おっとと……、二人共、無事だったか!?」

 

「無事だし何とか倒せたからいいが……、背中踏むなら一回声かけてくれよ、モニカ」

 

「まぁ倒せたのだからいいではないか、ヴェルフ?」

 

「お前達、今は先に――ッ!?」

 

襲い掛かってきた戦闘娼婦(バーベラ)を気絶させたモニカに対し、何も言わず背中を踏まれたことにヴェルフが文句を言っていると―――突如、通路の壁が粉砕した。

ヴェルフと桜花(オウカ)とともに驚愕するモニカの眼前に大穴が空いた。

無数の瓦礫と一緒に大穴から出てきて通路に転がったのは、ボロボロになった一人のアマゾネスだった。

 

「手間をかけさせんじゃねぇ、娼婦が」

 

瀕死とかした彼女に続いて、一人の猫人(キャットピープル)の青年が砕いた大穴から現れた。

血に濡れた長槍を持つ小柄な冒険者は、手負いの戦闘娼婦(バーベラ)に冷酷な眼差しを向けていると、自分を見てくるモニカ達に気付いたのか、一瞥を投げてきた。

 

「なんだ、てめぇらは」

 

鋭い視線の切っ先に対し口を開けない中、青年はヴェルフの纏う空気が職人の者であることを見抜いたのか、ヴェルフを唾棄した。

 

鍛冶師(スミス)ごときが……大人しく鉄遊びでもしてろ、三下」

 

「なっ………て、てめぇっ!?」

 

「押さえろ、ヴェルフ!彼は――」

 

鍛冶師(スミス)矜持(きょうじ)を傷つけられ吠えるヴェルフとそれを止めようとするモニカだったが、青年はもう見向きもせず移動していた。

軽い足音とともに大穴の奥へ消えたその姿に、慄然(りつぜん)としていた桜花(オウカ)が呟いた。

 

「【フレイヤ・ファミリア】のLv.6、【女神の戦車(ヴァナ・フレイア)】……アレン・フローメル」

 

息を飲む桜花(オウカ)の側で、屈辱と無力感を叩きつけられたヴェルフは、ドンッと壁を殴った。

 

「―――後悔の時間は後だ。今はベル達の救援に向かうぞ、お前達!」

 

「ッッ!……そうだったな。急いでいくぞ、大男!」

 

「言われなくとも!」

 

意気消沈していたヴェルフ達だったが、モニカに発破をかけられたことで立ち直り、ベル達の救援に向けて先に進み始めた。

そして、空中庭園に辿り着いたモニカ達は、月明かりに照らされながら春姫(ハルヒメ)を抱えたベルの救出に、別動隊として動いていたヘスティア達が(ミコト)の救出に成功したのであった。

 

 

○○○○○

 

 

【イシュタル・ファミリア】との抗争から二日後。

主神(イシュタル)の強制送還による歓楽街を支配していた大派閥(イシュタル・ファミリア)の完全消滅は、冒険者や神々などあらゆる者に多大なる影響を及ぼしていた。

そして、主神を失った【イシュタル・ファミリア】の団員達はそれぞれの道を歩み始めていた。

 

「わ、(わたくし)、サンジョウノ・春姫(ハルヒメ)と申します。こっ、この度はヘスティア様の【ファミリア】に入団させて頂いてっ……」

 

ベルに助けてもらった春姫(ハルヒメ)も、タケミカヅチから提案された故郷への帰還を断り、新たに【ヘスティア・ファミリア】へ所属することとなった。

 

「あー、堅苦しいことはいい。俺もまだ入団して日が浅いが、よろしく頼む。ヴェルフ・クロッゾだ。下の家名では呼ばないでくれ」

 

「こちらこそよろしくお願いします、春姫(ハルヒメ)様。リリルカ・アーデです」

 

「モニカ・ヴァイスヴィントだ、これからよろしく頼む。何か困ったことがあったら頼ってくれ」

 

「おっほん……じゃあ最後にボクが。昨日いろいろあったし知っていると思うけど、ボクがヘスティアさ。キミを家族として歓迎するよ、よろしくね」

 

ヴェルフとリリ、モニカに続いて春姫(ハルヒメ)に自己紹介を行うヘスティア。

春姫(ハルヒメ)より小さい身長ながらも大きな胸を張って、言葉通り【ファミリア】の一員として迎え入れた。

よろしくお願いします、とぺこぺこ頭を下げていると、ヘスティアは春姫(ハルヒメ)にずずいと寄ってきた。

 

「―――それで、春姫(ハルヒメ)君。君はどうやらベル君に()()()()()を抱いているようだが……ベル君はボクが育てた、決して血迷った行為はしてはダメだぜっ!」

 

「は、はえ?」

 

「馬鹿なこと言わないでくださいっ、誰がベル様を育てたんですか!?ヘスティア様なんて借金だらけでベル様に養ってもらっていただけじゃないですか!!」

 

「こ、こらーっ!?新入団員の前で神の威厳を損なうことを言うんじゃなーい!」

 

「いつものことだからな、気にしないで大丈夫だぞ」

 

「だな、もう聞き流していいぞ」

 

ヘスティアとリリのやり取りを呆れた表情で見ているモニカとヴェルフ、ぎょっとして汗を流すベル達を見て、上手くやっていけそうと春姫(ハルヒメ)が考えていると、玄関の扉が開き、中から精神疲弊(マインドダウン)特有の倦怠感に襲われている(ミコト)が現れた。

 

「み、(ミコト)さん!?」

 

「おいおい、動いて大丈夫なのか?」

 

「だ、大丈夫ですっ、もう精神疲弊(マインドダウン)の反動しか残っていないので……じ、自分も春姫(ハルヒメ)殿の新たな門出を祝って……ふわっ!?……申し訳ありませんっ、春姫(ハルヒメ)殿」

 

全員が唖然としている中、向かってくる途中玄関の階段で転び倒れ込む(ミコト)を自分の体で受け止める春姫(ハルヒメ)

驚くモニカ達に見守られながら抱き合う姿勢を取る(ミコト)春姫(ハルヒメ)

 

「申し訳ありません、(ミコト)様……私(わたくし)のせいで、たくさんのご迷惑と、たくさんのお怪我を……」

 

「は、春姫(ハルヒメ)殿……」

 

「助けてくれて……ありがとう、(ミコト)ちゃん」

 

しばらく目の前で見つめ合っていた二人の沈黙は、春姫(ハルヒメ)が口を開くことで破かれた。

目を伏せていた春姫(ハルヒメ)は、ぐっと勇気を出すと、尻尾を緊張させながら(ミコト)の顔を見つめると、瞳を潤ませながらか細い声で感謝を告げた。

体を春姫(ハルヒメ)から放した(ミコト)は、謝罪の言葉におろおろと右往左往していたが、春姫(ハルヒメ)の言葉を聞き、唇を綻(ほころ)ばせた。

 

春姫(ハルヒメ)殿、笑ってください。自分は……昔の頃のように、貴方と心の底から笑い合いたい」

 

(ミコト)の言葉と滲みかけようとしている青紫の瞳と笑顔を見て、(みどり)双眸(そうぼう)から涙をこぼしながら笑顔を浮かべた。

 

「……ベル様、本当にありがとうございます」

 

「今日から、僕たちは家族(ファミリア)です。よろしくお願いします」

 

春姫(ハルヒメ)からのお礼に照れたように頬をかきながら屈託のない笑顔を浮かべるベル。

 

「こちらこそ……ベル様、どうか末永くよろしくお願いいたします」

 

ベルの言葉を聞き、瞼を閉じて涙を流すと、深々と頭を下げると、桜のように笑みを咲かせるのだった。

 

「ちょっと待つんだ春姫(ハルヒメ)君っ、いま変な言い回しをしなかったか!?」

 

「そうです、今何かおかしかったです!!」

 

「そ、そうでございますか?」

 

「ま、まぁまぁ。ヘスティア様、リリ様」

 

「そんなことよりも……新しい入団者だ、今日は羽目を外していいんじゃないか?」

 

「おっ!話が分かるじゃないかヴェルフ君、よしっ、今日は春姫(ハルヒメ)君の歓迎パーティーだ!」

 

「や・め・て・く・だ・さ・い!?これ以上の散財癖がついたら派閥(ファミリア)は……!」

 

「だから硬いこと言うなって!ベル君もモニカ君もパーティーを開くべきだと思うだろ!?」

 

「そう、ですね。春姫(ハルヒメ)さんのために、やっぱり」

 

「新たな家族が加わったのだ、今日ぐらいはいいのではないか、リリ?」

 

「ベル様ぁ!?モニカ様ぁ!?」

 

「よ、よろしいのでしょうか?」

 

「いいのです、春姫(ハルヒメ)殿!こうなったらタケミカヅチ様達もお呼びしましょう!」

 

狐人(ルナール)の少女を中心に喧騒(けんそう)と笑い声が広がっていく。

空は快晴。

澄んだ蒼穹(そうきゅう)に神と眷属達は見守られる。

新しい仲間を歓迎するかのように、館に飾られたエンブレムが、日差しを浴びて輝いていた。

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、歓楽街篇無事終了です。
本来この章ではモニカもベル達と行動するつもりで、フリュネの足止めを行うものの力の差で瀕死の重傷を負うものの、ミアハ・ファミリアメンバーに助けてもらう……という流れで進めるつもりでした。
しかし、7巻はベルと命、春姫が主役のお話なので、今回の活躍は控えめになりました。

アンケートを答えてくれた皆さん、ありがとうございました。
結果として、『作者、君に任せた!』が一番多かったので、順番はこちらで決めることにしました。
個人的にはオリジナル長編に2つも票が入ってて少しうれしかったです。
投稿の順番がどれからになるのかは、ゆっくりとお待ちください。

次回からは原作第八巻、そしてダンモニを書き始めるにあたって作者が一番書きたかった章です。
ここを書くためにこれまで書いてきたと言っても過言ではありません。
原作では色々な話が混ざった内容になっていますが、本作ではラキア関連のお話は書かず、全てオリジナルになります。
いい出来になるよう頑張って執筆していきます。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第六章
第75話 『帰郷』


なんか気づいたら11月も半ばでびっくり。
どうも、仕事で書く時間を取れなかった刺身の盛り合わせです。

ということで、最新話。
第六章にして、この作品の締めくくりの章です!
今章は原作第8巻の内容を中心に、オリジナルな内容を書いていきます。
原作ではベル達のオラリオでの日常+ラキア侵攻の短編集のような内容でしたが、本作ではラキア侵攻を中心に、モニカが主役の話となります。
2巻のリリや7巻の春姫と似たような感じです。
また、今章はモニカ・ベル・三人称視点の三つで書いて行ければと思います。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。



 

「どうして………!?」

 

ベオル山地奥部。

視界の片側に谷間が広がる険しい山道の一つ。

【アレス・ファミリア】の主神、アレスに連れ去られたヘスティアを取り返すため、アスフィの先導の元にアイズと共にラキア軍を追いかけていたベル。

アレス達を狙って放たれたアイズの一撃は、【ヘスティア・ファミリア】の仲間である―――

 

「どうしてこんなところにいるんですか、()()()()()ッ!?」

 

「………」

 

―――モニカ・ヴァイスヴィントによって止められたのであった。

 

 

○○○○○

 

 

なぜこのような事態になったのか。

話は数週間ほど前までさかのぼる。

 

「モニカさーん、モニカさん宛てに手紙が届いてますー」

 

「むっ、そうか。すまんな、ベル」

 

その日は【イシュタル・ファミリア】から脱退した春姫(ハルヒメ)が【ヘスティア・ファミリア】へ入団してから数日後のことである。

春姫(ハルヒメ)を加えたパーティーでの初めてのダンジョン探索を終え、休日を取ることにしたベル達は、バイトに向かうヘスティアを送るとそれぞれ思い思いに過ごしていた。

(ミコト)春姫(ハルヒメ)は一緒に【タケミカヅチ・ファミリア】へ、リリは以前お世話になっていた人物の手伝いへ、ヴェルフは鍛冶場に籠り整備を行っており、ベルとモニカはホームの掃除や鍛錬、読書などを行っていた。

 

「ッ!これは……そう、か」

 

モニカ宛の手紙が届いているのを見つけ、モニカに渡したベル。

手紙を受け取ったモニカは、宛名しか書かれていないことに違和感を感じながら、封筒を開ける。

手紙に書かれた内容を読み進めていくにつれ、表情を険しくしていくモニカ。

最後まで読み終えたところで諦めたような、悟ったような表情を浮かべると、ベルの方を向き話を始めた。

 

「…ベル、急なのだが、故郷に帰らなくては行けなくなった」

 

「えっ!?きゅ、急ですね、それは…。ちなみにいつオラリオを発つんですか?」

 

「そうだな……早い方がいいからな、明日にでも出ようと思っている。申し訳ないがベル、私の帰郷をヘスティア様達に伝えてきてくれないか?」

 

「あ、明日ですか!?分かりました、ヘスティア様達に伝えてきます!」

 

「………もう、ここでの生活も終わりか」

 

モニカからの頼みごとを聞き、ヘスティア達の元へ向かうため居室(リビング)を出ていくベル。

モニカの呟きは、居室(リビング)から出ようとしていたベルの耳には届くことはなかった。

 

 

○○○○○

 

 

「―――それにしても随分急な帰省ですね、モニカ殿」

 

(わたくし)、もっとモニカ様とお話したかったです……」

 

「すまないな、あちらから急に帰ってくるように言われたのでな」

 

モニカの帰省が決まった翌日。

ベル達はモニカを送るため、ホームの門の外に集まっていた。

 

「……あの、見送りはここまででよかったんですか、モニカさん?」

 

「ああ。お世話になった人達に挨拶をしながら検問所に行く予定だからな。それにお前達にも予定があるだろう、気にするな。……そうだ、私がいない間も迷宮(ダンジョン)攻略は進めておいてくれ」

 

「となると、また編成を考え直さないといけませんね」

 

「それは別に後ででいいだろ、リリ助。今はモニカの見送り優先だぞ」

 

「分かってます、それぐらいっ!」

 

リリとヴェルフの言い合いをベルと一緒に止め、ひとまず【青の薬舗】へ向かおうとするモニカ。

何かベル達の背後で一番後ろで腕を組み目を瞑っていたヘスティアが、モニカに声をかけた。

 

「モニカ君、大体どのくらいでオラリオに帰ってくる、とか分かるかい?」

 

「……そうですね、ある程度したらこっちに帰ってくる、と思います」

 

「ッ!―――――そう、か。………モニカ君ッ!」

 

「?はい。どうしましたか、ヘスティア様」

 

ボク達(ファミリア)は家族だ、いつでもキミの帰りを待ってるぜッ!」

 

「―――はいッ!」

 

モニカの言葉を聞き、何かに気付いた表情を一瞬浮かべたものの、モニカに笑顔を向けるヘスティア。

ベル達に笑顔で送られたモニカは、【竈火の館】を出て【青の薬舗】へ足を進めた。

 

「………嘘を、つかれていましたね」

 

【竈火の館】から出ていくモニカを見送ったベル達。

モニカの姿が見えなくなったところで、(ミコト)がポツリとつぶやいた。

ベル達と話していた最中にモニカが浮かべていた笑顔は、以前春姫(ハルヒメ)が【イシュタル・ファミリア】で浮かべていた表情と瓜二つであった。

 

「付き合いの浅い(わたくし)でも分かりました。あれは、嘘をついておられる顔です。ですよね、クラネル様」

 

「はい、春姫(ハルヒメ)さん。だけど…」

 

「どこで嘘をついているのか分からない、ってところが問題なんだよなぁ…」

 

「……そうですヘスティア様です!神々は私達の嘘を見抜けると聞きます!それなら、モニカ様がどこで嘘をついたのか分かるんじゃないんですか!?」

 

神々は下界の子供達の嘘を見抜くことが出来る。

モニカがどこで嘘をついているのか、それを見抜いたのではと考えたベル達は、ヘスティアに尋ねた。

 

「―――確かに、モニカ君は嘘をついてたよ。『オラリオに帰ってくる時期』についてね」

 

「―――それ、は……」

 

ヘスティアの言葉を聞き、動きを止めるリリ達。

ヘスティアはモニカが『オラリオに帰ってくる時期』について嘘をついていると言っていた。

それはつまり―――

 

「まさか…モニカの奴、オラリオに帰ってこないつもりか!?」

 

「そっ、そんな!?」

 

「どうして止められなかったのですか、ヘスティア様ッ!?」

 

モニカが二度とオラリオに帰ってこないかもしれない。

その考えに辿り着いたベル達は、なぜ嘘をついたことに気付いていたヘスティアに止めなかったのか問い詰める。

リリに問い詰められたヘスティアは、自信満々な笑顔を浮かべた。

 

「確かに、モニカ君は嘘をついていたさ。でも大丈夫、きっと帰ってくる。ボクの勘がそう言ってるんだ!それに―――」

 

ヘスティアは自信満々な笑顔から優し気な笑顔に表情を変えると、右手を自分の胸元に当てながら答えた。

 

「――モニカ君の背中の象徴(シンボル)はまだボク(ヘスティア)のままなんだ。もしもオラリオに二度と戻らないのなら退団の儀式は行うはずだろ?でもモニカ君は退団の儀式を行っていないし、まだボクはモニカ君とのつながりを感じるんだ……だからモニカ君は必ずオラリオに戻ってくる、ボクはそう信じてるよ」

 

「神様の言う通りです。モニカさんは絶対帰ってきます」

 

「……モニカ様と一番付き合いの長いお二人がそう言うのです。でしたら――」

 

「私達はモニカ殿の帰りを信じて待つだけ、ですね!」

 

「まぁ…確かに、こちらに帰ってくるのが早くなる、という可能性がありますからね」

 

「まっ、ここで俺達が何言っても意味ないけどな」

 

「とにかく!モニカ君が帰ってくるまでは、いつも通り過ごそうじゃないか!」

 

「「「「「はいっ!」」」」」

 

ヘスティアの『モニカは必ず帰ってくる』という言葉に賛同するベル。

二人の言葉を聞き他のメンバー達も納得したところで、いつも通りの日常を過ごし始めるベル達。。

そうして、モニカがオラリオを出てから二日後。

ラキア王国軍出兵の(しら)せが、オラリオに届いた。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

ということで今話は導入回でした。
ベルと敵対しているモニカ、一体何があったのか……?
今後をお待ちください。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第76話 『ラキア侵攻』

前回投稿から気づけば一ヵ月経ってるなんて…
どうも、気づいたら一年終わりそうでゾッとしてる刺身の盛り合わせです。

ということで最新話。
今回はラキア侵攻についてのお話。
ということなので、モニカやベル、ヘスティアは出ませんのであしからず。
そして新キャラが一気に四人も登場です。
一体誰が出るのか、お楽しみに。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。



 

―――ラキア王国軍、出兵。

大陸西部に位置する君主制国家でありながら、『軍神アレス』の神意(しんい)によって軍事国家としての側面を持つ国家系【ファミリア】であるラキア王国。

交戦的な神の意志によって王国(ラキア)は、遥か昔日より幾度となく戦争を繰り返してきた。

とある『魔剣』の恩恵により、かつて不敗神話さえ誇っていたラキア王国の軍隊。

そんな軍隊の向かう先は、大陸西部から更に西へ進んだ大陸の片隅。

世界に一つしか存在しない壮大なダンジョンを保有し、今日(こんにち)では『世界の中心』とまで言われ発展した迷宮都市、オラリオである。

巨大な市壁と天を()く白亜の巨塔を目指して行軍する三万もの兵士の軍靴(ぐんか)の音。

西進を続け押し寄せてくる大軍はオラリオ周辺地域でもとうとう観測された。

突然のラキア王国侵攻に対し、迷宮都市オラリオは通常通り、何も変わらなかった。

遥か西方の曇天とは無縁な晴れた青空が広がっており、うららかな日差しを浴びる都市の住民達は、動じる素振りを欠片も見せない。

普段通り賑やかな生活を送っている住人達は、『あぁ、またか』と心の声を一つにした。

終始平和そうな光景が広がる都市の彼方、市壁外部の遠方からは、開戦を知らせる悲鳴のような声々が木霊(こだま)していた。

しかし、その市壁外部の遠方での戦場では、通常とは異なる光景が見られた。

 

 

○○○○○

 

 

「―――どぉぉぉりゃぁぁぁぁああ!!」

 

軍旗をはためかせる無数の騎兵隊を、手に持った大戦斧(だいせんぷ)を真一文字に大薙(フルスイング)して吹き飛ばす【ロキ・ファミリア】所属ガレス・ランドロック。

懲りずに突撃してくる別動隊、第二、第三騎兵隊にもはや溜息も出てこない中、(まなじり)を吊り上げ大戦斧を構え直し、大薙(フルスイング)しようとしたところで、大声を上げながら上空から虎人(ワータイガー)の少女が襲いかかってきた。

そのことに気付いたガレスは、先ほどと同様に大戦斧を真一文字に大薙(フルスイング)すると、その勢いのまま上空に軌道をずらし迎撃を行った。

 

「ぅおわあぁぁっ!?危ないっスぅぅぅう!!?」

 

攻撃されると思っていなかったのか、虎人(ワータイガー)の少女は驚いた声を上げたものの、即座に左手に付けた盾で防御を行った。

騎兵隊と同様に吹き飛ばされはしたものの、盾を斜めにして振り抜かれた斧の軌道から滑るようにずれたことで、結果的にはそこまでのダメージを負うことはなかった。

 

「くぅぅ~、上手くいったと思ったんスけどなぁ~!」

 

「ふっ、お主のようなひよっこに負けるわけがないじゃろう?―――それと、こっそり儂に近づいて来とるようじゃが、バレバレじゃぞッ!」

 

「うわっとと!?」

 

吹き飛ばされたものの、スーパーヒーロー着地で地面に降り立った虎人(ワータイガー)の少女に、肩に大戦斧を担ぎながら話しかけるガレス。

そして、虎人(ワータイガー)の少女に話しかけながらも、自身の背後に足音を立てずに近づいてきていた黒髪のヒューマンに裏拳を放った。

 

「だ、大丈夫っスか、智(トモ)ねーちゃん!?」

 

「大丈夫だよ、マツリちゃん。それにしても…流石Lv.6。近づくのも難しいね」

 

放たれた裏拳をバックステップで躱した黒髪のヒューマン――(トモ)・ミクマに、心配そうな表情で近づく虎人(ワータイガー)の少女――マツリ・ウェーベン。

簡単に自身の周囲を見渡し、自分達とガレスを囲むように騎兵隊が居るのを確認すると、周囲の騎兵隊に指示を出した。

 

「騎兵隊は一度本陣まで撤退、その後体勢を立て直してここ以外の戦場に向かって!撤退時間は私達で稼ぐから!」

 

「で、ですが(トモ)様、マツリ様……!?」

 

「大丈夫、後は自分達に任せるっス!さぁ、早く行くっスよ!」

 

「―――ご武運をっ!」

 

「儂がお主らを逃がすわけが――「悪いけど、見逃してもらうよ!【ミクマ流剣術・燕返し】!」――ぬおぅ!?」

 

「ついでにこれも喰らうっス、【タイガーショック】!」

 

「ぐぅぅぅ、耳がキンキンするわ!?」

 

トモの指示に従い撤退を始めるラキアの騎兵隊。

背中を見せながら逃走する騎兵隊に追撃を行おうとしたガレス。

その攻撃を(トモ)が見逃すはずもなく、一気にガレスの懐まで近づくと剣を振り下ろし、即座に刃を反転させ斬り上げを行った。

想像以上の剣速に背後に飛び攻撃を回避するガレス。

更に畳みかけるように、マツリが右手に持った剣で左腕に装備した盾を叩き、騒音を出してガレスの動きを制限。

その結果、ラキアの騎兵隊は本陣まで戻ることに成功したのであった。

 

「さぁ、出来る限りの時間を稼ぐよ、マツリちゃん!」

 

「りょ、了解っス、(トモ)ねーちゃん!」

 

「お主ら二人で儂の足止めじゃと?笑わせてくれるわ、やれるものならやってみよ!」

 

 

○○○○○

 

 

「―――ゥォォォオオオッラァ!!!」

 

「―――フンンンッッッ!!」

 

ガレスがトモとマツリの二人に足止めを食らっている一方、本来であればリヴェリアとアイズの三人で北の森へ向かう予定だったベート。

しかし、フィンに命じられ一人東方へ向かったところで、ガレスと同様に足止めを食らっていた。

 

「ハッ!雑魚ばかりと思ってたが……ちったぁマシなやつ奴がいるじゃねぇか!」

 

「あの有名なッ、凶狼(ヴァナルガンド)にッ、そう言ってもらえるとはッ、光栄だなッッ!!」

 

そう言いながらベートの蹴りを剣で受け止めるのは全身に漆黒のフルフェイス兜とフルアーマーを身に纏った騎士――ジュン・アルジェント。

声の高さからかろうじて女性と分かるが、その見た目と威圧感からはどう見ても男にしか見えなかった。

 

「それにッ、ここでのッ、わた、しの役目はッ!………時間稼ぎだ。付き合ってくれるか、凶狼(ヴァナルガンド)?」

 

ベートによって繰り広げられる蹴りの一発一発を、全て大剣で弾き返すジュン。

全ての攻撃を弾き返したことで鎧には傷一つ付いていないものの、最後の一撃はこれまで以上に重かったのか、最後の一撃を弾くのに合わせて後方に飛び、距離を取ったジュン。

ベートを挑発するかのように話しながら剣を構え直すと、バロールのようにフルフェイス兜の奥の瞳を赤く光らせた。

 

 

○○○○○

 

 

『……北の森にリヴェリアとアイズ、東側からの増援にベート。これで王国(ラキア)軍は確実に撃破可能。…だが、親指の疼きが止まらない。まだ何かあるのか?』

 

ガレス達やジュン達が戦う大平原から離れた広野(ひろの)にて。

長槍を携える【ロキ・ファミリア】団長、小人族(パルゥム)のフィン・ディムナは線状の動きを見ながら、顎に右手を添えながら考え事をしていた。

先ほどガレスが戦っている付近からラキアの騎兵隊が撤退、それを友軍が追撃していくのを見ていたため放置することにしていたフィン。

しかし、女性団員から友軍が騎兵隊を倒し損ねたことを聞き、広野から戦場に近い場所に騎兵隊の強襲対策として、ラウルを中心に第二級冒険者達を待機させたものの、未だに右手の親指の疼きが止まらないフィンだったが―――

 

「―――なるほど。親指の疼きが止まらないのはそういうことか」

 

―――戦場を抜け、自分達の下へ一直線に向かってくる騎兵隊、その一番前にいる人物を見て、親指の疼きが止まらない理由を悟ったフィンは、側で待機していたティオネにすぐさま指示を出した。

 

「ティオネ、銅鑼を鳴らしてラウル達に敵襲を伝えろ!ここにいる者は全員戦闘態勢、敵襲だ!」

 

「はい!」

 

「えっ、ちょっと待ってフィン!?今敵襲って言った!?ラウル達いるんだよ、あっち!?」

 

「あぁ、敵襲だ。彼女なら間違いなくここにやってくるはずだからね」

 

「か、彼女?それって…「て、敵襲―!敵襲―!」ほ、ホントに来たぁ!?」

 

本陣への敵襲、というフィンの言葉に驚きを隠せないティオナ達(ティオネ除く)。

驚きはしたもののフィンの指示に従い戦闘態勢を取りつつ、敵襲の人数を聞くティオナ。

尋ねられた男性団員は、しどろもどろになりながら答え――

 

「―――見つけたぞぅ、勇者(ブレイバー)ァァァァァァァァアアア!!!」

 

――ようとしたその瞬間、何者かが上空からフィンに襲いかかってきた。

そんな突然の襲撃者に対して、携えていた長槍を振るい攻撃を受け止めるフィン。

少しの間鍔迫り合いを行うと、斬りかかってきた敵は剣に体を近づけると、もう一度飛び上がりフィンから距離を取った。

 

「私の攻撃を受け止めるとは、流石フィン・ディムナ……いや、勇者(ブレイバー)と言ったところだな!」

 

飛び上がりフィンから離れた敵は、地面に着地すると先程までフィンに振るっていた大剣を地面に突きたて、高圧的な笑みを浮かべながらフィンに話しかけ始めた。

周囲の団員達は突如上空から現れた敵に対して、いつ戦いが始まっても大丈夫なように、武器を構えて相手の出方を見守っていた。

 

「なぁ~に団長に攻撃してんだテメェはぁぁぁ!死ぃぃぃねぇぇぇぇぇっ!!」

 

「よせっ、ティオネッ!?」

 

しかし、愛しの団長に攻撃を行った相手に対して怒りを止められず、背後から敵に殴りかかるティオネ。

フィンの制止の声が届く前に振り抜かれたティオネの拳は―――

 

「――――はっ?」

 

―――敵に当たることなく躱されたのであった。

 

「おいおい、胴体がガラ空き、だぞッ!!」

 

背後から来るティオネの攻撃を()()()()()()()()()()()()横に避け、ティオネのガラ空きの胴体を剣の腹で殴り飛ばす敵。

攻撃をモロに喰らったティオネは、広野から後方の主神達のいる場所まで吹き飛ばされた。

 

「アンタ、よくもティオネを―――「やめろ、ティオナ」――なんでさ、フィンッ!?」

 

ティオネを吹き飛ばした敵に敵意を向けるティオナだったが、フィンによって止められた。

 

「おいおい、私を倒さなくてもいいのか、勇者(ブレイバー)?」

 

「倒したいのは山々だけど、君にスキルを使われると倒すのに手間がかかるからね。……それで、何をしにここへ来たんだい、クリスティーナ・モーガン?」

 

「何をしに、だと?…決まっているだろう、宣戦布告さ♪」

 

そう言いながら剣先をフィンに向け、不敵な笑みを浮かべる敵。

 

「今回の侵攻には私()も参戦している、というのをフィンに伝えておこうと思ってな。……さて、言いたいことも言ったし、私は帰らせてもらうよ」

 

「敵陣に突っ込んできた敵を、そう簡単に逃がすと――「全員手を出すな、帰してやれ」――ッ団長!?どういうつもりですか!?」

 

「流石はフィンだな。では、失礼させてもらおうか♪」

 

満面の笑みを浮かべながら、【ロキ・ファミリア】の包囲網から抜けていくクリスティーナ。

何故敵を逃がしたのか、そう聞いてくる男性団員に向けて、フィンは冷静に説明を行った。

 

「クリスティーナの持つスキルは厄介だ。実際にこの場で彼女と有意に戦えるのは僕とティオナ、ティオネぐらいだ。だが、ここで戦った場合、後方にいるロキ達に被害が及ぶ可能性がある。それは絶対に避けないといけないからね」

 

「……ねぇフィン。さっきのクリスティーナ?っていうの誰なの?」

 

「あぁ…。そういえば、ティオナ達がファミリアに入った時、彼女はもうオラリオにいなかったんだったね。――彼女は【狂刃(きょうじん)】クリスティーナ・モーガン。元々オラリオのLv.4の冒険者で、今は無き【アストレア・ファミリア】の一員だったんだ」

 

後に『第六次オラリオ侵攻』と呼ばれる王国(ラキア)の軍事行動。

これまでとは違った戦いにより長引くこととなる戦争。

そんな中で、神と眷属(ヘスティア・ファミリア)は次第に戦争の渦中に巻き込まれていくのであった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。
ということで、ラキア侵攻でした。
ベートがアイズ達と別行動など、原作とは少しだけ違う部分もあったりしました。

そして新キャラ登場です。
プリコネから『王宮騎士団(NIGHTMARE)』の面々が参戦です。
クリスティーナやマツリは以前から伏線的なものを立てていましたが、ジュンとトモも参戦しました。
彼女達の簡単な設定については活動報告に後日公開する予定です。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。



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第77話 『邂逅』

だいぶ過ぎましたが、新年あけましておめでとうございます。
本年度もダンモニをよろしくお願いします。
どうも、刺身の盛り合わせです。

ということで最新話。
今回はラキア侵攻が始まる前日のお話。
そしてモニカの両親として、オリジナルキャラを二人登場させます。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。



 

 

「確か、ここだったはずだが…」

 

時はラキア侵攻が始まる前日まで遡る。

挨拶を終えオラリオを出たモニカは、睡眠をとらず丸一日ほどかけて『セオロの密林』近くにやってきていた。

 

「使者が待っていると言っていたが、一体ど――「―――ぅぅぅううううおおおおおおッスぅぅぅぅぅッ!!」――おわぁ!?」

 

手紙に書かれていた指定の場所にたどり着いたモニカが周囲を見渡していると、側に生えていた木の上から虎人(ワータイガー)の少女がヒーロー着地で現れた。

 

「アンタがアレス様の言ってたモニカ、って人ッスね!自分はマツリ!マツリ・ウェーベンッス!」

 

「も、モニカ・ヴァイスヴィントだ…。その、君がマリウス殿下の言っていた使者――「いや、もう一人いるよっ!」――のわぁ!?」

 

突如頭上から現れたマツリに驚いていたモニカ。

使者は一人だけかと聞こうとしたところで、更に頭上からヒューマンが現れた。

 

「やっ、話は木の上で聞いてたよ。私はトモ、(トモ)・ミクマ。マリウス様からの使者っていうのは、私達二人のことだよ。…時間もないですし、アレス様のところに行きましょうか」

 

先を進む(トモ)とマツリについて行くモニカ。

二人について森の中を進むこと数分。

開けた場所に出たモニカが見たのは、沢山の天幕や武装をした軍馬、大量の資材や武器を運んでオラリオ侵攻の準備をしている兵士達の姿であった。

兵士たちを横目に奥へ進むと、周囲と比べてひと際大きく豪華な天幕に辿り着いた。

 

「ここがアレス様のいる天幕っス!早く入るっスよ!」

 

マツリに促されて天幕の中へ入るモニカ。

中に入ると奥の玉座にはアレスが座っており、その側に控える形でマリウスが立っていた。

 

「神アレス、マリウス殿下。モニカ・ヴァイスヴィント、オラリオでの任務を終え、帰還しました」

 

「よく帰ってきたモニカ!お前が送ってきたオラリオの情報のおかげで、我等はオラリオへの侵攻を行うこととなった!さぁ、さっさと進行の準備だマリウス!」

 

「了解ですよ。……さて、お前の仕入れた情報のおかげで、今回の侵攻を行うに至ったわけだ。今後の処置について色々と話したいのだが、今から明日の侵攻準備をしなければならん。だから詳しい話は明日以降、ということでお前専用の天幕を用意している。そこで休んでくれ。……それと、お前に会いたいという人物が天幕にいるからな」

 

「会いたい人物……了解しました、急いで天幕に向かいます」

 

 

○○○○○

 

 

『私に会いたい人。一体誰なんだ…?』

 

アレス達との会話を終え、天幕から出て外で待機していた(トモ)達に再び案内してもらい、自分の天幕に辿り着いたモニカは、天幕の前で悩んだ表情を浮かべていた。

 

「えぇい、ここで悩んでいても埒があかん…失礼する、モニカ・ヴァイスヴィントだ」

 

考えるのを止めて天幕の入口を開けたモニカ。

天幕の中には簡易的な寝袋が三つほどあり、その内の一つに女性のヒューマンが座っていた。

モニカと同じ金色のくせっけな長髪とくすんだ金色の瞳。

モニカと違って、腰までの長さがある髪を結ばずにダウンスタイルにしており、モニカがキリッとした目付きなのに対し女性はタレ目。

そして何よりの違いはその体型。

モニカと比較すると約三十M(ミドル)も身長差があり、体つきも幼児体型のモニカに対して、豊満な胸にキュッと絞られた腰回りは、神々には及ばないものの多くの人が振り向くような抜群のプロポーション。

そんな彼女の名前は『ティモロ・ヴァイスヴィント』―――

 

「お、お母様!?」

 

「久しぶり、モニカちゃん」

 

―――モニカの母親である。

 

「こ、ここは戦場に近い場所ですよ!何故このような場所におられるのですか!?」

 

「モニカちゃんに会いたかったから、あの人にお願いして付いて来たの。それにいざとなったら外の二人が護衛として守ってくれるから大丈夫。…それより、オラリオでの生活はどう?ちゃんとご飯は食べれてる?とりあえずお茶でも飲みましょうか」

 

「ご飯も食べてますし、お茶するよりももっと他に話すこt「モニカが帰ってきたって本当かっ!?」

 

天幕に入りティモロに話しかけるモニカ。

寝袋から立ち上がると、どこからかティーカップとティーポットを取り出すと、早速紅茶を注ぎ始めるティモロ。

母親に改めて戦場の危険さを伝えようとしたモニカだったが、それを遮るように突如天幕の入口が開けられた。

モニカが入口の方向に振り向くと、そこには一人の男性が立っていた。

モニカやティモロと同様に金色の長髪とくすんだ金色の瞳。

二人と違いストレートヘアーで長い髪を三つ編みに、頭頂部には一房だけアホ毛が飛び出しており、モニカと同じでキリっとした目付き。

そしてこの男性もモニカよりも身長が高く、その差は約四十M(ミドル)

そんな彼の名前は『エルドア・ヴァイスヴィント』、モニカの父親である。

 

「モニカッ―ー!!ひっさしぶりだなぁ!!元気だったかぁ!オラリオではどうだった、怪我はしてないか!?」

 

「お、お父様近いですっ!?揺らさないでくださいぃぃ?!」

 

「あなたストップ。それ以上やっちゃうと、モニカちゃん倒れちゃうわ」

 

天幕の中に入りモニカに勢いよく抱き着くと、肩に手を当て前後に揺らしまくるエルドア。

激しく揺らされていたモニカだったが、ティモロが止めたことで目を回すだけで済んだのであった。

 

「悪い悪い!久しぶりに会ったから、つい力が入っちまった!ごめんなモニカちゃん!」

 

「い、いえ…気にしないでください、お父様…それよりも、何故お母様を戦場まで連れてきたのですか!?」

 

「ティモロがモニカに合いたいって言うからな、仕方なくだ!俺が守るのは勿論のことだが、俺が守れない時は護衛もつけてあるから、安心しろ!」

 

「そういう話ではないでしょう!大体お父様は……!」

 

「そんなに怒らないであげて、モニカちゃん。元をたどればお母さんが悪いんだから。それより、せっかく親子そろったのだから、久しぶりにお茶を飲みましょう?」

 

「そりゃあいい!ティモロの紅茶は絶品だからな!せっかくだからオラリオでの話を聞きながら飲もうじゃないか!」

 

「それならお菓子の準備もしなくちゃ。少し待っててね、お菓子の準備をするから~」

 

「なら俺達は机の準備だな!モニカ、手伝ってくれ!」

 

「いやそれよりも……分かりました。とりあえず今はお茶にしましょう」

 

お茶会の準備を始めるティモロとエルドアに対し、やれやれと言った表情を浮かべながらエルドアの手伝いを始めたモニカ。

外で護衛として待機していた(トモ)とマツリにも紅茶を渡すと、天幕の中にて三人でお茶を飲むと、エルドアの提案で三人横並びになって眠るのであった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

ということでオリジナルキャラとして、モニカの両親「ティモロ・ヴァイスヴィント」と「エルドア・ヴァイスヴィント」が登場です。
二人はそれぞれ元となったキャラが居まして、ティモロは『魔法少女まどか☆マギカ』の「巴マミ」、エルドアは『鋼の錬金術師』の「エドワード・エルリック」となっています。
ガワは二人の姿を借りていますが、性格は元キャラと全く同じというわけではなく、少し違ったものにする予定です。
ちなみにこの二人を選んだ理由は作者が金髪金眼でパッと浮かんだキャラがマミさんとエドだったからです。
あとエドは「モニカと近い年まで身長が低いキャラ」というのと、最終回の写真見る感じ子煩悩なパパになりそうだなって思ったのも理由だったり。

また、「マミさんの姿原作と違くない?」と思った読者の方々、ご安心ください。
髪を下ろしたマミさんは叛逆の物語で登場してます。
お風呂上がりのシーンでとってもセクシーなので、みんなも叛逆の物語を見て確認してみよう!

両親の設定についてはその内出します。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第78話 『惨状』

プリコネ6周年おめでとう!
周年記念で全キャラ分のアクスタが販売されるみたいですね。
皆さんは誰を買いますか?
どうも、モニカのアクスタは絶対購入の刺身の盛り合わせです。

ということで最新話。
今回はラキア侵攻の裏側、モニカが何をしていたかや本陣での一幕のお話。
そして今回も新たにオリジナルキャラを一人、登場させます。
一体誰なのかはお楽しみに。
また、後書き最後におまけもあります。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。



 

 

久しぶりに両親とともに眠った翌日―――すなわち、ラキア侵攻の日。

戦場に向かう父『エルドア』を送ったモニカは、戦場に向かった(トモ)とマツリに代わって母『ティモロ』の護衛を行っていた。

 

「――――こうして、色々な人から力を借りたことで、ワイズオウルを倒し、そしてLV.2となったのです!」

 

「ワイズオウルが討伐された、っていうのはラキアでも話題になってたけど……まさかモニカちゃんが倒したなんて、びっくりね♪…でも、カップを持ったまま動くのは危ないからやめましょうね?」

 

「ごめんなさい、お母様。つい熱が……」

 

護衛をしつつ、ティモロにオラリオでの活躍を話していくモニカ。

しかし、話に次第に熱が入り始めたのか、椅子から立ち上がり手に持っていたティーカップを振り回し始めたところで、ティモロから落ち着くように言われたのであった。

 

「モニカちゃん、オラリオでの生活は楽しかった?それに……もう少し、オラリオで過ごしたかったんじゃない?」

 

「大変なこともありましたが、ファミリアのみんなと過ごした日々は、とても素晴らしかったです。……ですが、私がオラリオにいたのは軍人になるためです。オラリオを離れたことに後悔はありません」

 

ファミリアの仲間と離れ離れになって悲しくないのか。

そんなティモロからの問いかけに「後悔はない」と笑顔で答えたモニカ。

しかし、モニカの浮かべた笑顔からは力を感じられず、無理して作ったような、そんな印象を受けた。

 

「―――モニカちゃんがそう言うなら、私からは何も言わないわ。……さっ、紅茶が冷めないうちに飲んじゃいましょ?マドレーヌもあるわよ?」

 

「お母様の作ったマドレーヌですか!?いただきます!……ん~、おいしい!」

 

「それならよかったわ。…本当はもっとモニカちゃんのお話を聞きたかったけど、そうも言ってられないみたいね。本陣に行くわ。モニカちゃん、ついて来て」

 

「ほ、本陣にですか?ちょっと待ってください、お母様!?」

 

モニカの表情から何かを感じ取ったのか、それ以上の追及はしなかったティモロ。

しかし、突如立ち上がると、天幕から本陣へ足を進めた。

何故本陣へ行くのか理由は分からないものの、護衛のため母の後ろからついて行くモニカ。

本陣に辿り着いたモニカが目にしたのは―――――

 

「さぁさぁ軍人さーんっ、今ならオラリオ製の回復薬(ポーション)が一○○○ヴァリスだよー!痛いだろう、苦しいだろう?その傷、早く治したいだろう?それならこいつだ、効き目は保証するぞー!……よしっ、商談成立!」

 

次々と運び込まれてくる負傷したラキアの兵士達と、見張りのラキアの兵士達の制止を振り切り、あるいは隙を突いて本陣に侵入しては負傷者や武器がない者達相手に商売を行うオラリオ所属の商業系【ファミリア】の者達や神々、

 

「ちっ、碌な雄がいないね…」

 

そして負傷して動くことのできない兵士達を貪り食う無所属(フリー)の娼婦達がいた。

 

「こ、これは酷い……」

 

「まぁ、私もこれに参加したことあるから、あんまり悪く言えないのよねぇ。……とりあえず、怪我人の看護に行きましょっか、モニカちゃん」

 

「はい、分かりま―――今参加したことあるって言ってませんでした?ちょっ、お母様!?」

 

兵士達が何もできないのをいいことに好き放題振る舞うオラリオの住人達によって、一種のお祭り騒ぎと化している王国(ラキア)軍の陣営。

それを見て絶句するモニカと、右手を頬に当てながら過去にオラリオ側で参加していたことを明かしたティモロ。

母の口から出たまさかの発言について追及しながら、母と共に負傷者の下へ向かうのであった。

 

 

○○○○○

 

 

「オラリオォ―――――ッ!?(から)()とは卑怯なぁ~~~~~~~~っ!?」

 

場所は変わって王国(ラキア)陣営最奥の最も大きな幕舎の中。

そこでは、今回の抗争勃発の張本人である、ラキア王国――【ファミリア】の主神アレスと何人かの将校達が兵からの報告を聞き終えたところであった。

獅子(しし)彷彿(ほうふつ)させる光り輝く金髪に真っ赤な鎧を身に付けた精悍(せいかん)かつたくましい容貌をしているアレスだったが、その相貌は盛大に歪んでおり、装着している鎧と同じく顔を真っ赤に染めていた。

 

「報告します!(トモ)・ミクマとマツリ・ウェーベンが殿として【重傑(エルガルム)】と戦闘!両名共満身創痍ではありますが、結果として騎兵隊の三分の一が本陣へ帰還!また、【凶狼(ヴァナルガンド)】の足止めを行っていたジュン・アルジェントは、オラリオ本陣への宣戦布告を終え帰還途中だったクリスティーン・モーガンとの挟撃により退却させたとのことです!」

 

既に敗戦濃厚な空気に将校達は一様に口を閉ざし、男神の怒声のみが響き渡る幕舎内。

しかし、一人の兵士の報告により、幕舎内の将校達は息を吹き返したのであった。

 

「クリスティーナにジュン、(トモ)、マツリ…なんで俺の眷属じゃなくてお前の眷属しか活躍していないんだ!?納得がいかんぞぉ!!」

 

しかし、そんな中で納得していない人―――否、神が一柱。

アレスは憤慨しながら玉座から立ち上がると、幕舎の奥で椅子にもたれかかり目を(つぶ)っている一人の女性―――女神を指差した。

アレスと同じく獅子(しし)彷彿(ほうふつ)させる光り輝く金の長髪、燃えるような真紅のロングドレスの上に光すら飲み込むほどの漆黒の軽装を身に着けた彼女―――不和の女神エリスは、目を開くとアレスを冷ややかな眼差しで見つめた。

 

「―――何を言うかと思えば『納得がいかない』とはな……()()よ。私の眷属達はオラリオの者達には劣るものの、誰もが屈強な戦士だ。それに対して兄上の眷属は一部は磨けば光る者もいるが、ほとんどが烏合の衆。そんな雑兵共だけでオラリオの冒険者達に勝てるわけがないだろう?……兄上、これは戦争だ。これを機に馬鹿の一つ覚えのように突撃するのは止めて、次からは少しぐらい策を練ってみたらどうだ?」

 

「ぐぅぅぅ……俺はお前の兄だぞ!?少しは敬ったら――っておい待てエリス、どこへ行くつもりだ!?」

 

「眷属達の顔を見に行くついでに新たに眷属となるモニカの下だ。―――それと、敬ってほしいのだったら、もう少し敬意のある態度を取れ。そうすればほんの少しぐらいは態度を改めてやらんこともない」

 

そう言い放つと椅子から立ち上がり、幕舎を出ていくエリス。

幕舎には先程とは別の理由で一様に口を閉ざした将校達と、先程よりも激しい男神の怒声のみが響いていた。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

ということで、オリジナルキャラとして「女神エリス」が登場です。
この女神様については完全新規のオリジナルとなっています。
……ギリシア神話に登場した【争いと不和の女神】エリスが元ネタなので、別にダーク草野さんや胸パッド女神様は特に何も関係ありません。
簡単な設定については最後にありますので、そちらを読んでみてください。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。



おまけ【争いと不和の女神】エリスについて
ラキア王国の従属神の一柱で、クリスティーナやマツリ、モニカの両親の主神。
身長は約170C、容姿は本文中に記載した通り金の長髪で深紅のロングドレスの上に胸当や肩当、手甲など主に軽装備を装備している。
見た目はアレスを女体化したみたいな感じ。
性格はアレスと同様に極めて好戦的で戦いが好き、普段は冷静沈着だが戦場に出ると狂暴になる。
敵に対しては一切の慈悲無く戦うが、自身が認めた相手には敵味方関係なく公平に接する。
また、アレスがあまりにもアホの脳筋なため、兄ではあるものの欠片も尊敬しておらず、下に見ているし雑に対応している。

そんな彼女がアレスの従属神になった理由は、モニカの両親を自身のファミリアに入れたかったため。
最初は前線指揮官の一人であるエルドアと貴重な回復魔法を使えるティモロを手放すまいと拒否していたアレス。
しかし、エリスがLv.4の冒険者を2人眷属にしていることに気付いたアレスの出した『従属神になるなら二人の改宗をしてもいい』という条件を飲んだため、従属神となった―――のだが、例え兄であったとしても格下に従う気などさらさらないため、『従属神』というより同盟の形に落ち着いている。



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第79話 『ドキドキ!?神質大作戦!』

2月の終わり頃に福岡で行われたユニコーンのライブ(前から二列目の席)に行ってきました。
親の影響で好きになりましたが、最高ですね。
どうも、ユニコーンの曲はどれも好きで甲乙つけがたいですが、中でも特に好きな曲は「ペケペケ」と「風と太陽」、「Feel So Moon」「素晴らしい日々」、「フーガ」、「チラーリズム」、「ZERO」、「クロスロード」な刺身の盛り合わせです。
皆さんはどの曲が好きですか?

ということで最新話。
今回は題名からも分かる通りヘスティアが人質ならぬ神質になるところまでです。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。

2024.03.18 作中の改宗の描写について大幅に変更




 

 

「―――ほぅ。懐かしい姿が見えると思っていたが…オラリオから帰っていたのだな、モニカよ」

 

戦場から帰還した(トモ)とマツリの治療を行うティモロと、その護衛を行っていたモニカ。

背後から聞こえた懐かしい声に振り向くと、そこには両親の所属するファミリアの主神のエリスがいた。

 

「え、エリス様!?……疑問なのですが、お母様含めて何故前線に来られるのですか……?」

 

「ティモロは回復、私は【ステイタス】更新のためだ………満身創痍と聞いていたが、マツリと違って随分余裕がありそうだな、(トモ)?」

 

「あはは……、マツリちゃんが盾で【重傑(エルガルム)】の攻撃の間に入ってくれましたから、私はまだ大丈夫なんですけど―――」

 

エリスからの問いかけに上体を起こしながら答えていく(トモ)

その横にはマツリが横になっているが、と(トモ)を守るためガレスの攻撃の間に入り込み受け流そうとした結果、バックラーは粉々に砕け散り、治療のため身に纏っていたライトアーマーは全体的に大きく(ひび)が入り今にも砕け散る寸前、下に着ていた服も所々破けて素肌が見えていた。

 

「今は怪我もだいぶ治っていますが、こちらに戻ってきた時はとても負傷していて……全身ズタボロの傷まみれ、左腕なんて曲がっちゃいけない方向に曲がり切っていたんです。治療するの、とっても大変だったんですからね!」

 

「格上の一撃をまともに受け止めればそうなるだろうな。……そこまで元気なら大丈夫だな。(トモ)はティモロとマツリの護衛、モニカは私についてこい」

 

「「「了解!/了解でーす/へっ?あっ、ちょっ、ちょっと待ってくださいエリス様!?」」」

 

マツリの治療中のティモロ達と別れ、先を進むエリスについていくモニカ。

そしてたどり着いたのは本陣最奥にある、他より少し豪華な幕舎であった。

 

「時間が惜しい。ほら、恩恵を刻むからさっさと上着を脱げ」

 

「ちょっ、ちょっと待ってください!?自分で脱げますから、無理矢理脱がそうとしないでください!?それよりも、私は【アレス・ファミリア】に入るんじゃないんですか!?」

 

「その予定だったのだがな、お前がオラリオに向かった後に愚兄が考えなしに眷属を増やしたのが原因で【アレス・ファミリア】は許容限界―――」

 

幕舎に入ったところでエリスから早く服を脱ぐよう催促――というより脱がされそうになったものの、何とか止めて自分で服を脱ぎ、幕舎内にある少し豪華なベッドに横になるモニカ。

その上にまたがりモニカの背中に自分の血を垂らそうとしたところで、モニカの背中を見て動きを止めた。

 

「―――おいモニカ。貴様オラリオで所属していたファミリアの神の恩恵(ファルナ)を消していないな?」

 

「確かに消していませんが……もしかして、何か問題でしたか?」

 

神の恩恵(ファルナ)は刻んだ神にしか消すことが出来ない。そうでなければオラリオでは誘拐騒ぎが多発しているだろうな。というより、改宗自体一年ファミリアに在籍しないと出来ないのであったな。……ならばモニカ、改宗が出来るようになり次第一度オラリオに戻って恩恵を消してこい。それまでは私のファミリアで活動しろ、いいな?」

 

 

○○○○○

 

 

オラリオとの抗争が始まって数日。

ヴェルフ・クロッゾ捕獲作戦も失敗に終わり、三万いた兵士の内、八千もの兵士がオラリオに捕まったラキアは、主神アレス主導の下に最終作戦【神質(ひとじち)作戦】を実行。

ヴェルフ・クロッゾの主神であるヘスティアを神質(ひとじち)として攫うため、旅装のフードを深く被りオラリオへの入門待ちの長蛇の列にバラバラで並んでいた。

 

「おいおいモニカ、せっかくオラリオに戻ってきたんだ、もっとやる気を出して行こうじゃないか?」

 

「自分のファミリアの主神を攫うための手伝いをするんだぞ。やる気なんて出すわけないだろうが」

 

「あはは…それはそうですよね。私だって、エリス様攫って来いって言われてもやる気なんて出ませんし。―――というかエリス様攫うとか無理そうですし」

 

「お前は【ヘスティア・ファミリア】の一員だからな、お前が女神ヘスティアを私達の下へ誘導すればすぐ終わるのだからやる気を出せ、やる気を!」

 

そんな長蛇の列の最後尾。

そこにはモニカとクリスティーナ、(トモ)が列に並んでいた。

列に並んでいる他の【アレス・ファミリア】の兵士達と同じようにモニカ達も旅装のフードを被っているが、モニカとクリスティーナの二人はアイマスク状の仮面を被っていた。

 

「それにしてもお二人共、その仮面よく似合ってますね。それって―――」

 

「私達はオラリオでは顔が知られているからな、団長からパクってきた♪…ちなみに、お前の分はないからな、(トモ)?」

 

「えぇ~、私の分は無いんですか~!?」

 

ジュンから借りた予備の仮面を羨ましがる(トモ)と、そんな(トモ)に自慢気に仮面を見せるクリスティーナ。

そんな二人の後ろでモニカは、大きなため息を吐いていた。

 

「そんなに溜息ばっかりついてると幸せが逃げるぞ、モニカ?そんなにオラリオに入りたくないのか?」

 

「オラリオには知り合いが多くいますから、顔を合わせたくない、と言うか何と言うか……、とりあえず入りたくないんです」

 

「う~ん……、ヘスティア様がオラリオの外まで出てきてくれれば、モニカさんも私達もオラリオに入らなくてすむんですけどねぇ」

 

「いやいや、ほとんど大きな戦いが無いとはいえ一応今はラキアと抗争中だぞ?何より神が護衛も無しに一人でオラリオの外に出るなんて絶対あり得『捕獲(ゲット)ォ―――ッ!!』な、い………いくらヘスティア様といえど戦時中にしかも一人でオラリオ外に出るなんてありえない、これはきっと他の神々を捕まえたということだな、うん!」

 

「モニカさん、現実逃避してないで早く馬に乗ってください!マリウス殿下から撤退指示が出てますから!」

 

(トモ)の言葉を否定しようとしたが、前方から聞こえてきたアレスの捕獲(ゲット)という言葉に動きを止め、現実逃避を始めたモニカ。

そんなモニカを(トモ)は叱責しながら手を引きながら隠していた馬の側に向かうと、モニカを自分の前方に乗せて、他の兵士達と共に本陣へと帰還するのであった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

ということで題名通りヘスティア誘拐、そしてモニカの【エリス・ファミリア】改宗失敗が今回の内容でした。

次回は捕まったヘスティアとの会話から。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。


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第80話 『剣姫襲撃』

祝!ダンまちアニメ第5期&最新19巻発売!
5期は内容的に派閥大戦なんだろうけど、まだ読んでないなぁ…
そして19巻はあらすじの感じだと学区編。
プリコネで学区と言えば聖テレサ女学院、聖テレサ女学院と言えばそう、なかよし部!
…なのですが、正直キャラエミュが鬼ムズだし、何より本作での出番は間違いなくかなり先になりそうですな。
どうも、刺身の盛り合わせです。

ということで最新話。
今話はアイズの襲撃まで。
どのようにモニカ達がアイズの襲撃を切り抜けるのか、それは本編をお楽しみに。
また、前話では作者の知識不足で間違った内容を書いてしまいました。
ご指摘ありがとうございました。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。




 

 

「―――どんな理由があろうとも、神が護衛も無しにオラリオ外に出ないでください。もしもオラリオ外に用事があるなら、私やベル、ヴェルフや(ミコト)に声をかけてください、いいですね!?」

 

ベオル山地奥部。

視界の片側に谷間が広がる険しい山道の一つで、ヘスティアの誘拐に成功したアレスの哄笑(こうしょう)(とどろ)き渡っていた。

一人馬に(またが)った自分を守っている兵士達を脇目に上機嫌となったアレス。

その後方、最後尾にはクリスティーナと(トモ)、モニカ、そしてアレスによって捕獲(ゲット)されたヘスティアがいた。

捕獲(ゲット)されたヘスティアを運ぶ役目に志願したモニカだったが、自分の主神だから逃がす可能性があるのと、何よりヘスティアより身長が小さく背負うことが出来なかったため、最終的にクリスティーナが小脇に抱えて移動することとなった。

 

「はい、これからは気をつけます………じゃなくて!!どうしてアレスなんかと一緒にいるんだい、モニカ君っ!?故郷に帰るって言っていたじゃないか!?」

 

「そ、それは…「そんなこと決まっているだろう!コイツは私達ラキア王国がオラリオに派遣したスパイだからなぁ!!」

 

小脇に抱えられモニカから説教を受けていたヘスティアだったが、故郷に帰ると言っていたモニカが目の前にいることに気付いたのか、反省もそこそこにモニカへ追及を始める。

言い淀んでいたモニカだったが、前方からモニカ達の方を向いたアレスによってあっけなくばらされたのであった。

 

「ラキアのスパイ……?ど、どうせアレスの嘘なんだろう、そうなんだろうモニカ君っ!?」

 

「………すみませんヘスティア様」

 

「――――ッッ!じゃあ何だ…、ボクのファミリアに入ったのはスパイ活動のためだったってのかい!?」

 

「いえ、決してそんなことは――「痴話喧嘩はそろそろおしまいにしろモニカ。(トモ)は女神様が逃げないように捕まえておけ」

 

ヘスティアに弁明を試みようとしたモニカだったが、クリスティーナによって中断された。

先程まではモニカとヘスティアの言い争っている様子を面白そうに見ていたが、上空に目をやると獰猛な笑みを浮かべ、側にいた(トモ)にヘスティアを投げ渡すと背中に背負った『聖域剣アヴァロン』を抜くと、片手でモニカの背後の坂に剣先を向けた。

ヘスティアを受け取った(トモ)は、クリスティーナから言われた通りヘスティアを逃がさないよう、いわゆる『お姫様抱っこ』の形でヘスティアを抱き上げた。

 

「敵襲――いや、オラリオからの追手、ですか?」

 

「あぁ。私達の真上、鳥が飛んでいるのが見えるな?気づかれないように見ろ――あれは【万能者(ペルセウス)】だな」

 

「冒険者!?何で空を飛んでるんですか!?」

 

「んん~~?あれは…アスフィ君!おーい、アスf「はーい、バレちゃうから少し黙ってましょうね、ヘスティア様」んむむぅ~!?」

 

クリスティーナに言われ空を見たモニカ達。

そこには翼を広げ旋回する白い影がおり、よく目を凝らして観察すると、純白のマントや人の四肢に水色(アクアブルー)の髪の美女―――【万能者(ペルセウス)】アスフィ・アル・アンドロメダが、魔道具(マジックアイテム)飛翔靴(タラリア)』で飛び回っている姿が見えた。

その姿を見て大声を上げて助けを求めようとしたヘスティアだったが、(トモ)が口を塞いだため、アレス達は上空のアスフィに気付くことはなかった。

 

「おいマリウス、オラリオからの追手だ!神アレスを連れて今すぐ本陣まで撤退しろ!殿(しんがり)は私達【エリス・ファミリア】が務める!」

 

「もうオラリオの連中に気付かれただとぉう!?お前達、戦闘の準備「何言ってんだこの阿呆が!?全員、アレス様を守りながら本陣まで撤退だ、急げ急げェ!」

 

オラリオからの敵襲を迎え撃とうとしたアレスを無理やり引きずり本陣へと向かっていくマリウス。

ヘスティアを逃がさないように、と言いながら本陣へと向かうマリウス達を見送ると、下り坂へと向き直り剣を構え直した。

 

(トモ)神質(ひとじち)が相手に見えるように立っていろ。モニカは私と共に追手の相手だ。どう動くは貴様に任せるぞ♪」

 

 

○○○○○

 

 

『あの旋回しているところが、神様がいるところ……』

 

モニカ達のいる場所から後方。

アレスによって連れ去られたヘスティアの救助のため、アスフィ先導の下、アイズとベルは【ラキア・ファミリア】を追いかけていた。

ベルの一歩先を行く形で坂を駆け上がるアイズは、上空を旋回するアスフィを確認すると、走る速度を上げた。

 

『……あれは、神様?もしかして、人質……?』

 

坂の先に人影が見えたため、目を凝らして確認すると四人ほど人がおり、その内の抱きかかえられた人物は今回の救出対象であるヘスティアのように見えた。

 

『……あんなに近いなら、少し手加減―――炎と、ナイフ?』

 

ヘスティアを視認したアイズは、ヘスティアに被害が行かないよう力を緩めようと思ったところで、前の坂から炎、そして道を塞ぐようにナイフが数本迫ってきていた。

迫る炎とナイフにサーベルを振るい、進行方向の障害を排除しようとするアイズ。

サーベルによる斬り上げでナイフは全て弾き飛ばしたものの、炎は消えずアイズに近づいてきていた。

 

『……炎が、消えない?』

 

「―――おいおい、敵の目の前で気を抜いていいのか、アイズ?」

 

自分の一閃でも消えない足元の炎にほんの一瞬気を取られたアイズ。

殺気を感じ反射的にサーベルを斬り下ろし、自身に迫っていた大剣と鍔迫り合いを行う。

最初は隙を取られたことで鍔迫り合いに押し負けていたが、Lvの差で次第に押し返し始めていたが、左前方から新たに攻撃が迫っていたため、バックステップで距離をとるアイズ。

 

「ナイフと消えない炎で目眩ましか…、及第点をくれてやろう♪ーーーそれと久しぶりだな、アイズ?」

 

「クリスティーナ……?それに、モニカ……?」

 

顔を上げ、襲いかかってきた者達の顔を見たアイズ。

そこにいたのは、少し前の遠征直前にオラリオの市壁で少しの間修行をつけたモニカと、七年前にオラリオで起きた大抗争『死の七日間』にて共に闇派閥と戦った一人、クリスティーナ・モーガンであった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

今話の最後で、ようやく第75話の冒頭に追いつきました。
え、少し内容が違うって?
75話ではモニカがアイズの攻撃を止めて、今話ではモニカの攻撃でアイズが後ろに下がった!
そこになんの違いもありゃしねぇだろうが!

ちなみに対アイズの際のモニカ達の動きとしては――
①モニカが魔法発動と同時に手持ちのナイフを全て投擲
②即座にクリスティーナがアイズに接近、そして攻撃
③クリスティーナとアイズが鍔迫り合いをしている間に谷の反対から回り込んで強襲
――という感じになっております。

今話は後半からアイズ視点でしたが、次回はベル君視点からスタートの予定です。
誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。



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