ドラえもん のび太の大魔境 second season 〜もう一つの伝説〜 (田舎者 )
しおりを挟む

プロローグ

この作品、処女作になります。
とりあえず読んでみて下さい。


???

「追えっ!!! 何としても王妃を取り戻すのだ!!」

 

 

霧とジャングルに囲まれたとある王国で、新たな惨劇が始まっていた…。

 

事の始まりは、その王国の王妃の誘拐事件だった。

 

 

深夜、宮廷に一人の侵入者が現れ、警備の兵士をいとも容易く殺害し、王妃を攫っていったのだ。

 

王国の若き王率いる精鋭部隊は馬を用いて王妃の奪還作戦を敢行するが、同じく馬を用いていた敵にあと一歩の所で逃げられてしまう。

 

 

そして侵入者の逃亡の成功と同時に、突如王国の周辺にどこからともなく謎の軍団が現れ、王国に向けて攻撃を開始した。

 

王国の民や兵士達が今まで目にした事も無い様な異形の敵は、炎や雷を自在に操り、あらゆる面で王国の軍勢を圧倒していた。

 

そして王国の精鋭部隊を欠いた王国の防衛線は容易く陥ち、宮廷までもが敵によって占拠されてしまう。

王が率いる精鋭部隊が王国に帰還した時には既に、王国は火の海と化していた。

 

建造物に絶えず火が放たれていく光景。

そして、健闘虚しく殺害されたおびただしい数の兵士の死体が一面に広がっている光景が、王の眼に真っ先に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

???

「くそっっ!! 奴らは一体何なのだ! 仲間は一体どれだけ死んだ!? 私は無力だ…! 王の身でありながら、国の一つも守る事が出来ないとは…!!」

 

 

 

戦火の中、王は愕然として膝を地面に着き、自分の無力さ、そして大勢の仲間の死を悔やんだ。

 

とはいえ王に落ち度はない。

それほどまでに敵の戦力は圧倒的だったのだ。

 

姫の親衛隊をたった一人で赤子の手を捻るように殺し、王妃を攫い、国王率いる精鋭部隊をもあざ笑うかのように容易く逃亡する程の実力者がいる時点で、その強さが窺える。

 

 

???

「陛下!ここも危険です!! 貴方だけでもお逃げ下さい!! 後は我々が!」

 

 

王の腹心が王に駆け寄り、王に逃走を促した。

 

 

???

「何を言う! 仲間を見捨てて逃げるなど私には出来ない! あの日以来、私は何が起こったとしても絶対に逃げないと決めたのだから!! 国の為にここで命が尽き果てようも本望!」

 

 

王は腹心の目を真っ直ぐ見て強く言い放った。

 

 

???

「しかし…! 今貴方を死なせる訳には行かないのです…!」

 

 

腹心がやるせないような顔をして言う。

 

 

???

「ここに戦っている仲間がいる限り、私は何があっても前に進み、立ち向かわなければならないのだ!! 例え私が一人になったとしても……国王として、私は国を守らなければならない!!」

 

 

それでも王は真っ直ぐな瞳で、腹心に訴えかけた。

 

しかし……

 

 

 

???

「陛下………どうかお許しを!!」

 

 

次の瞬間、腹心の拳が王の鳩尾(みぞおち)を直撃した。

 

 

???

「な…に…?」

 

 

相当な手練れであった腹心の一撃は、王の意識を断つには十分であった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

「陛下、必ず生き延びて下さい………どうか、貴方だけは……」

 

 

腹心は再び戦場へ赴いた、王を王国から遠く離れた安全な場所に置いて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

「…………ここは?」

 

 

王が目を覚ますと、そこは王国から遠く離れた川の下流だった。

 

 

???

「ん?」

 

 

起き上がった王がおもむろに自分のポケットを探ると、小さく折り畳まれた紙切れが入っていた。

 

王が紙切れを開くと、達筆な字で「必ず王国を取り戻して下さい」とだけ書かれていた……。

 

 

???

「……あの馬鹿者め……待っていろ…! 必ず取り戻してやる!」

 

 

王は王国を奪還すべく奮起した。

しかし、王は今孤立無援な状態であることを思い出すまでに大した時間はかからなかった……

 

 

???

「くそっ…そうだ…敵の強さは圧倒的だ……取り戻すと言っても私一人でどうやって…?」

 

 

敵の戦力を前に尻込みをして深く考え込んでしまった王であったがその時、王の脳内の片隅に、昔に出会ったある仲間たちが引っかかった。

 

 

???

「……!!! そうだ…! 彼らだ…! 彼らの力を借りれば王国を……"バウワンコ"を…取り戻すことが出来るかも知れない!!」

 

 

 

王にはもう失意の目など無かった。

寧ろ彼の目には、今まで以上に闘志が燃え滾っていた……。

 

 

王はかつての仲間を求めて旅立った。

 

 

 

 

 

極東の島国 日本へ。




はい、短いですが今回はここまでです。
基本的に一話一話の長さは短めです。
かなり文章が怪しい所があるかも知れませんが、こんな感じでやって行きたいと思います。
ツッコミどころ満載のストーリーで御座いますが、そこはどうかご愛嬌を。
それでもこういう所がおかしいぞ、というような所が有りましたら遠慮なさらずにコメントして下さい(笑)
とりあえず"完走"を目指して頑張ります!
それでは次のお話でー。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再開、新たなる始まり

早くも彼が登場します。
それではどうぞ。


野比のび太 15歳

東京都 練馬区在住

特に目立った能力はなく、人並み、もしくはそれ以下のド凡人である。

テストは10回に一度0点を取るなど知性に欠ける。

おまけに運動音痴で融通が利かず、どスケb…

 

 

のび太

「やめろおおおおお!!!」

 

 

のび太は周囲に人がいるにも拘らず何処からか聞こえてくる天の声に向かって叫ぶ。

しかし天の声はのび太しか聞こえておらず周りから見たらただの変人にしか見えない。

まったく恥ずかしい男である。

 

 

のび太

「うるさいよ!!静かにしてろ!」

 

はいはいわかりましたよ。

 

 

ガチャ

 

 

のび太

「ただいま……ドラえも〜ん!!!」

 

 

のび太は玄関の扉を開けると、なんとも無気力な「ただいま」を言い、玄関を上りながらいつもの台詞を口にした。

 

 

ドラえもん

「あ、おかえりのび太君。どうしたのー?」

 

 

のび太が自分の部屋に入ると、畳に寝転がってどら焼きを食べていたドラえもんが、呑気そうにのび太を見た。

 

 

のび太

「またジャイアンに殴られたんだ〜!仕返ししたいから道具出してよ〜!!」

 

 

いつものようにのび太は泣きながらドラえもんに抱きついて道具を強請(せび)った。

 

 

何度も見た事のあるいつもの光景である。

 

 

ドラえもん

「いつもの事じゃないか!男だろ! 素手で闘うぐらいの勇気を持て!」

 

 

ドラえもんは強い口調でのび太を諭す。

しかし、のび太の表情は変わらなかった。

 

 

のび太

「イヤイヤイヤイヤ……ドラえもん、ジャイアンに勝てる訳ないじゃないか…」

 

ドラえもん

「あ、そうだった…….」

 

 

のび太がジャイアンに勝てない理由、それは喧嘩の強さどうこうと言うような問題ではなく、根本的な体格差にあった。

のび太の身長は168cmと平均的であるのに対し、

ジャイアンは15歳にして190cmという驚異的な早さで急成長…いや、突然変異と言った方が正しいのかも知れない。

 

ジャイアンに興味本意で喧嘩を売った不良高校生10人が、返り討ちに遭って全治1ヶ月の怪我を負って病院送りにされていたことはのび太達の記憶にも新しい。

 

しかも彼の身長は未だに伸び続けている。

 

 

のび太

「ね? みんなも分かってくれたでしょ?」

 

ドラえもん

「みんなって誰さ?」

 

のび太

「そりゃあ、読sy‥

 

ナレーター

ゲフンゲフン!

 

のび太

あ、すいません」

 

ドラえもん

「メタ発言はこれくらいにしてさ、ジャイアンの件はもうやめとこ? 道具を使ったらどちらかが怪我をすることにしさ」

 

 

色々メタい事を言うのび太に注意しながらドラえもんはジャイアンの件についてそう提案した。

 

 

のび太

「そうだね、少しくらい我慢できるよ!」

 

ドラえもん

「え? そんなにさらっと流せるものなの?」

 

のび太

「? 仕返しはやめようって言ったのはドラえもんじゃないか」

 

ドラえもん

(……………前ののび太くんならすぐ駄々をこねて何としてでも仕返ししてたのに……)

 

 

のび太の中にはもう立派な人を思う心、そして精神力があった。

白亜紀、宇宙、海底、魔界、そして魔境。

幾度となく仲間と死線を切り抜けてきたのび太の精神力は今までとは比べ物にならないほど成長していた。

 

 

ドラえもん

(セワシ君……少しづつだけど…君のご先祖は立派に育ってるよ…」

 

 

ドラえもんは飄々とした表情をしたのび太を他所に、虚空を眺めながら心の中で思った……。

 

 

 

 

野比 玉子

「のびちゃーん!お遣いに行って来てくれる?」

 

 

階段の下からママこと玉子が呼びかける。

 

 

のび太

「分かった! 行く行く!」

 

 

のび太は階段をドタバタと下りながら玉子の声に応えた。

 

 

玉子

「ニンジンとレタスとベーコン……あと鳥のもも肉をお願いね。分量はこのメモ用紙に書いてあるから。」

 

のび太

「うん! いってきまーす!」

 

 

買い物袋とお金を受け取ったのび太は駆け足で家を出て行った。

 

昔はとても面倒臭そうに家を出ていたのに今はその面影は微塵もない。

 

 

玉子

「……のびちゃんが立派に育ってくれて嬉しいわ…まだ不器用なところもあるけど…」

 

ドラえもん

「それがのび太君なんだと思うんだよ、ママさん」

 

玉子

「え?」

 

ドラえもん

「不器用でも……不器用なりに真っ直ぐ進む。それが野比 のび太という男なんだ。それに…あれほど人を大切にする人はそうはいないと思うよ?」

 

 

ドラえもんはそう笑いながら言った。

 

玉子

「ドラちゃん……そうね、何だって私の息子だもの!」

 

ドラえもん

「ハハハ、そうだね。」

 

 

そしてドラえもんはニッコリと笑った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方のび太は……

 

 

のび太

「よし、お遣い終了っと…。寄り道せずに家に帰らなきゃね。」

 

 

買い物を終え、家に向っていた。

もう時刻は午後6時を回って夕暮れ時である。

眩しいほどの夕焼けが、すすきヶ原の空を照らす。

 

 

のび太

(……そういえば昔は日が暮れるまでジャイアン達と遊んでたなぁ。あの頃が懐かしいや……)

 

 

のび太は腕を頭の後ろで組み、夕焼けを眺めながらふと思った。

 

 

のび太

(もう"あの頃"みたいな冒険なんか出来ないんだろうな……ちょっと淋しいけど……仕方ないよね)

 

 

のび太はそう心の中で自分に言い聞かせ、痩せ我慢のように微笑した…。

 

 

そんな事を思い耽っている内に、のび太は自宅に到着した。

 

 

のび太

「ただいまー!」

 

 

のび太がドアノブに手を掛け、玄関に入ろうとした次の瞬間の事であった。

 

 

 

 

???

「のび太さん!!!」

 

 

 

誰かが後ろから、のび太を呼んだ。

 

力が込もっていて、そしてどこか凛々しいような声だった……

 

 

 

のび太

「ん…?」

 

 

 

 

のび太はその声に反応して、思わず振り返った。

 

 

 

のび太が振り返るとそこには、夕日に照らされた純白の犬が立っていた……

 

 

 

 

 

のび太

「え…? ペコ…なの…?」

 

 

ペコ……本名:クンタック。

 

現バウワンコ王国の国王。

剣術の達人であり、のび太たちと共に王国を救う為に戦った最高の友である。

 

 

最初は困惑した表情を浮かべたのび太であったが、それはすぐにかつての友と再開できたという喜びに変わった。

 

 

のび太

「ペコじゃないか!! どうしたの急に!? 元気だった!?」

 

 

のび太は嬉しさのあまりペコに駆け寄るが、ペコの目は真剣だった……

 

 

 

 

 

ペコ

「お願いがあってここへ参りました……

 

 

 

 

 

 

もう一度……力を貸して下さい」

 

 

 

のび太

「………え?」

 

 

 

死闘が……幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ペコの4年後の設定はどんな感じて行こうかなって悩んでたんですが、「まだ初々しさが残る若き王」という設定に固まりました。
思ったよりも構成を考えるのは難しいですが頑張りたいと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王国での惨劇、そして立ち上がる

少し文字数を増やしてみました。
読みづらい所もあるかも知れませんがご了承下さい。
それではどうぞ!


かつての友であったペコとの再開。

しかし、それはとても和やかと言える物では無かった…

 

 

 

のび太

「力を貸して欲しいって…一体どういうこと?」

 

ペコ

「話すと長いのですが…」

 

 

ペコの言葉に疑問を投げかけるのび太に、ペコは俯いたまま言った。

 

すると突然、玄関から玉子が顔を出した。

 

 

玉子

「あらのびちゃん、おつかいは終わったの…って…あら?

まさか…ペコちゃん!? どうしたの! 大きくなって!」

 

 

玉子はペコを視界に入れた途端、目の色を変えてペコに駆け寄った。

 

 

ペコ

「4年振りですね…御無沙汰してます、ママさん。」

 

 

玉子

「のびちゃんの言った通り…二足歩行で言葉を話してるわ…」

 

 

玉子は4年前、のび太の話を聞き半信半疑だったが

たった今それは確信に変わった。

 

 

玉子

「とにかく上がって上がって。すぐご飯の支度するから、ペコちゃんはのびちゃんの部屋で待っていなさい。」

 

 

ペコ

「すみません、お邪魔します」

 

 

 

 

 

のび太の部屋にて……

 

ペコはドラえもんとも再開を果たし、ドラえもんとのび太はペコがどうして日本を再び訪れたのか尋ねていた。

 

 

のび太&ドラえもん

『さあ、話を聞こうか』

 

2人はペコの正面にあぐらをかいた。

 

 

ペコ

「一体どこから話したら宜しいでしょうか…」

 

 

そう言うとペコは、バウワンコ王国で起こった事件を話し始めた。

 

 

ペコ

「あれは今から3日程前の事です。深夜、バウワンコの宮廷に謎の侵入者が現れたのです。その者は宮廷の警備に就いていた姫の親衛隊30名をいとも容易く殺害し、私の妃、スピアナを攫って行ったのです」

 

 

スピアナ…バウワンコ王国の国王、クンタックの許嫁。

 

 

ドラえもん

「……親衛隊一人一人の実力はどのくらいなの?」

 

 

ペコ

「王国の腕利きをかき集めて編成された部隊です、一人一人の実力は申し分なかったはずです。」

 

 

ドラえもんが重々しく質問するとペコはそう答えた。

 

 

のび太

「スピアナ王妃はどうなったの!?」

 

ペコ

「私と親衛隊を更に鍛え上げた精鋭部隊で姫の奪還作戦を敢行したのですが……あと一歩の所で国境を越えられ、逃げられてしまいました…」

 

のび太

「……そっか…」

 

 

ペコに問い詰めるのび太にペコがそう答えると、のび太は肩を落として消沈した。

 

 

ペコ

「しかしこれは惨劇の序章に過ぎなかったのです…気力を失くした王妃の奪還部隊がバウワンコへ戻ると…そこはすでに火の海でした…突如姿を現した謎の集団によって街はおろか、宮廷までもが敵に占拠されていました…」

 

のび太&ドラえもん

『な……』

 

 

空いた口が塞がらないドラえもん達にペコは構わず話を続けた。

 

 

ペコ

「兵士は健闘虚しく半数以上が殺害され、住民たちは皆国の外へ避難しました…」

 

のび太

「半数…以上だって…?」

 

ドラえもん

「あのバウワンコが…そんな簡単に…」

 

 

 

ペコの話は続いた。

その間ドラえもん達は押し黙って聞いていた。

二人は一時期動揺していたが、すぐに落ち着きを取り戻していた。

 

 

 

ペコ

「……という流れで、私はここへ来た訳です。今ここで私が生きているのも…私を殴って運んでくれたブルススのお陰です」

 

 

ブルスス…バウワンコ随一の闘志を秘めた巨漢。バウワンコで一二を争う強さを持つ男。

 

 

のび太

「その後……ブルススはどうなったの?」

 

 

のび太はブルススの身を案じてペコに訊いた。

 

 

ペコ

「分かりません……しかし、彼ならきっと生き延びていると信じています」

 

ドラえもん

「ブルススならきっと大丈夫さ。さて、話は以上だね?」

 

 

ペコ

「ええ…、あの……本当に申し訳ありません。のび太さん、ドラえもんさん…」

 

 

ペコは突然2人に頭を下げた。

 

 

のび太&ドラえもん

『え?』

 

 

そんなペコの表情に、2人は首を傾げた。

 

 

ペコ

「関係のない貴方たちを…二度も巻き込んでしまって…」

 

 

のび太&ドラえもん

『何言ってるの?』

 

 

のび太達は声を合わせた。

 

 

ペコ

「え?」

 

 

のび太

「関係なくないよ! 友達じゃないか!」

 

 

ドラえもん

「そうさ! 僕らは奴らが何者かも分からないけどとにかく腹が立ってる! 仕返ししないと気が済まない!!」

 

 

のび太

「でも3人だけじゃ死にに行くようなもんだよ?」

 

 

ドラえもん

「ジャイアン達を呼ぼう! きっと力になってくれる!」

 

 

ペコをそっちのけで奮起する二人にペコは涙を流していた。

 

 

ペコ

「うっ…うっ…二人とも…ありがとうございます!! 」

 

 

ペコは涙を流しながら二人に言った。

 

今度はこちらのターンである。

 

 

 

 

 

 

 

 




最近暑くなってきましたねー、
今年も夏がやって来ました。
そういえばのび太の大魔境も夏が舞台でしたねー
というか、大長編ドラえもん自体、夏が舞台の作品が多い気がしますが…気のせいですかね?(笑)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

集う友たち

色々詰め込み過ぎた感はありますが、お気になさらずに…
それではどうぞ!


ペコの話を聞き、奮起するのび太達であったがもう時刻は午後7時を回っていた。

 

玉子

「みんなー!ご飯よー! 下りてらっしゃい!!」

 

 

階段の下から玉子がのび太達に呼びかける。

 

 

のび太

「はーい! よし、ペコも一緒に食べようか。」

 

 

ペコ

「そんな……助けを求めた上にご馳走になるなんて……。」

 

 

ドラえもん

「そんな事言わないでさ、一緒に食べよ? ママだってペコの為にいっぱいご飯作ってるんだからね。」

 

 

ペコ

「……それではお言葉に甘えて。」

 

 

そういうやり取りをしながら3人はキッチンに向かった。

 

 

のび太

「おお!今日は豪華だねー!」

 

 

玉子

「ペコちゃんが居るから張り切っちゃった♪ さあ、召し上がれ!」

 

 

パンッ!

 

 

一同

『頂きまーす!!!』

 

 

一同は合掌をする。

 

 

 

のび太

「んー!やっぱりママのご飯は最高だね!」

 

 

のび太は食卓に出されたハンバーグを口いっぱいに頬張り、口福そうな声を上げた。

 

 

ドラえもん

「確かに! ペコ、お口には合うかな?」

 

 

ドラえもんはペコにママの料理が口に合っているか問いただした。

 

 

ペコ

「とても………美味しいです!! こんな美味しい食べ物……バウワンコでも食したことはありません…!」

 

 

ペコは目を輝かせ、さらに料理を頬張った。

 

 

玉子

「あらそう? 嬉しいわ! 今日パパは飲み会で居ないからたっぷり食べなさい! 所でペコちゃんはどうして戻って来たの?」

 

 

ドラえもん

「実はね………」

 

 

ドラえもんは王国であった事件を一通りママに話した。

 

 

玉子

「そうだったの……ペコちゃん、今日は泊まっていきなさい」

 

 

玉子は真剣な表情でペコの内情を受け止めると、優しげな顔をペコに向けた。

 

 

ペコ

「ええ? 本当にいいのですか?」

 

 

玉子

「困っているんでしょう? なら手を貸さなくちゃ!」

 

 

ペコ

「ママさん…ありがとうございます!」

 

 

ペコは心底嬉しそうな表情をし、精一杯感謝の言葉を伝えた……

 

 

 

 

 

 

そして夕食後、のび太はペコと共に男同士の入浴を始めた。

 

 

 

のび太

「ぷはーっ!! ペコと風呂に入るなんて4年ぶりかー。」

 

 

のび太は湯船に浸かりながら1日の疲れを吹き飛ばすように言った。

 

 

ペコ

「ええ、そうですね〜…。」

 

 

ペコはのぼせたような表情でのび太に相槌を打った。

 

 

のび太

「あ、そういえば気になってたんだけど……ペコって今いくつなの?」

 

 

のび太はペコの実年齢を今まで知らなかったので、思い切ってペコに聞いた。

 

 

ペコ

「えっと………人間の年齢で言うと15歳くらいですね。」

 

のび太

「15歳!? 僕と同い年じゃないか! って事は11歳で国王になっちゃったの!?」

 

 

のび太はペコが自分と同い年だという事実に驚きを隠せなかった。

 

 

ペコ

「ははは、そんなに驚きましたか?」

 

 

そんなのび太をペコは物腰柔らかく笑い、のび太に尋ねた。

 

 

のび太

「いや……なんか15歳とは思えない程しっかりしてるから僕より少なくとも3つくらい上かなーって思ってさ。」

 

ペコ

「あはは、そうだったんですか…。」

 

 

ペコはそう言うと、自分が年相応以上に大人びている訳を話し始めた。

 

 

ペコ

「私は一国の主であった父の一人息子でした。ですから周りの同い年の子供よりも早く大人にならざるを得なかったのです。」

 

 

ペコは王の息子である故、王に何かがあった場合は歳に関係なく王位を継承しなければならない。

そんな理由からペコは、多数の英才教育を受けて育ったのである。

 

 

のび太

「……やっぱり凄いなーペコは。」

 

 

のび太は腕を頭の後ろで組み、微笑しながらペコに言った。

 

 

ペコ

「え?」

 

 

のび太の言動に疑問を呈するペコであったが、のび太は続けた。

 

 

のび太

「僕と同い年なのに一国の主だなんて……僕だったらもー無理! 1日どころか1時間保たずに逃げ出しちゃうよ! それに王様だったら沢山の人を守らなきゃいけないでしょ!? こんな弱っちい僕じゃ無理無理ー!」

 

 

のび太は頭の左右に手を付け、首を左右に振りながら言った。

それを見ていたペコはしばらくの間呆気に取られていたが、そのあとすぐに微笑してこう言った。

 

 

 

ペコ

「"大切な誰か"を守れますよ。……のび太さんなら。」

 

のび太

「………僕にも出来るかな…?」

 

 

自分に自信が無いような表情をしたのび太であったが……

 

 

ペコ

「ええ………必ず。」

 

 

そう言うとペコはニッコリと笑ってみせた……

 

 

 

 

そして入浴後、のび太達が部屋に戻ると既にそこにはのび太とペコの分の布団が丁寧に敷かれてあった。

ドラえもんに聞くと、その布団は玉子が敷いてくれたようである。

 

 

 

のび太

「じゃあ今日はもう休もうか。明日は作戦会議だ!」

 

ペコ

「ええ……そうですね。」

 

ドラえもん

「じゃあ電気消すよ。おやすみー。」

 

 

ドラえもんはそう言うと、蛍光灯にぶら下がっていたスイッチの紐を引き、電気を消した。

 

ドラえもんはいつも通り押入れの中に入り、のび太とペコは共に敷かれた布団に入った

 

 

のび太

「くか〜……くか〜…」

 

 

暗闇の中、早速のび太の寝息が聞こえてきた。

 

 

ペコ

(のび太さん……前々から思っていたが寝るのが早い……)

 

 

布団に入ってから驚異的な早さで眠りに入ったのび太に、ペコは心底驚いていた。

 

 

ペコ

(またこの地に戻ってくるなんて……夢にも思わなかったな。出来ればこんな形でのび太さん達とも再開したくは無かった……。)

 

 

ペコは仰向けに寝て、天井を見上げながら心の中で思った。

 

 

ペコ

(スピアナ………待っていてくれ……すぐにお前とバウワンコを取り戻してみせる……)

 

 

 

そして、ペコは眠りについた………

 

 

 

 

 

翌日……

 

 

 

のび太達は早速ジャイアン達にのび太の携帯電話で電話をかけ、召集を始めた……

 

 

のび太

「もしもし、ジャイアン? 今どこにいる?」

 

ジャイアン

《どこって…俺の家だけど?》

 

のび太

「頼みがあるんだ、すぐに僕の家に来て欲しい」

 

ジャイアン

《マジかよ、店番しなきゃ母ちゃんに怒られちまうよ》

 

のび太

「君たちにしか頼めないんだ!!」

 

ジャイアン

《君たち? スネ夫達の事も言ってんのか?》

 

のび太

「うん、スネ夫達にも同じ事を言って来てもらう事になってる。だから頼むよ!」

 

ジャイアン

《仕方ねえな…何の件か知らねえけど行ってやるよ!》

 

のび太

「ありがとう…!ジャイアン…!」

 

ジャイアン

《友の助けは断れねえからな、じゃあ5分でそっちに行くぜ》

 

のび太

「うん分かった、それじゃあね」

 

 

ガチャッ

 

 

ドラえもん

「ね?力になってくれるって言ったでしょ?」

 

ペコ

「ええ……本当に心の広い方たちだ…」

 

 

ドラえもんが笑いながら言うとペコは目を輝かせながら言った。そして5分後……

 

 

ピンポーン♪

 

 

ドラえもん

「お、来たみたいだね」

 

ジャイアン&静香&スネ夫

「こんにちはー」

 

玉子

「あらいらっしゃい、のび太達は上よ」

 

ジャイアン達

「お邪魔しまーす」

 

 

ジャイアン達は階段を上がり、のび太の部屋のドアを開けた。

 

 

ガチャ

 

 

ジャイアン

「のび太ー、頼みって何だ…?」

 

 

ジャイアンはのび太の部屋のドアを開けながら言った。

そしてジャイアンは、のび太の部屋に普段は居るはずのない者を発見し、疑問の声を漏らした……

 

 

ジャイアン

「って……あれ? その犬……もしかして…?」

 

静香

「まさか……」

 

スネ夫

「そのまさかのようだね、ハハ」

 

 

ペコ

「御無沙汰してますね、武さん、スネ夫さん、静香さん」

 

 

ジャイアン達は急なペコとの再開に激しく感激した。

 

 

ジャイアン

「うおぉぉー!!!ペコじゃねえか!!元気だったか!!!?」

 

 

ジャイアンは感激のあまりペコに抱きついた、まあ実に4年振りの再開で有るのだから仕方ない。

 

 

ペコ

「ハハハ、はい!今も元気ですよ! それより…とても大きくなりましたね…」

 

 

ペコは急成長を遂げたジャイアンの体格を見て言った。

 

 

ジャイアン

「俺の事か?? まあ確かに近頃背がちょっと伸びた気もするな…」

 

 

ジャイアンは頭をボリボリと掻きながら言った。

 

 

一同

『ちょっと所じゃないだろ!!!』

 

 

そんなジャイアンに一同はツッコミをかます。

 

 

スネ夫

「それより、ペコはどうして日本に!?」

 

静香

「遊びに来たの?」

 

 

そうペコに問いただすスネ夫と静香だったが…

 

 

ペコ

「残念ながらそうではありません」

 

のび太

「とりあえず話を聞いて欲しいんだ」

 

 

 

そいう言うとのび太達はバウワンコ王国で起きた事件の一連の流れを話し出した……

 

 

 

 

ジャイアン

「……そんな事があったのか…」

 

スネ夫

「あの立派な国が……」

 

静香

「信じられないわ…」

 

 

3人は動揺を隠しきれない様子である。

しかしそのどんよりした空気はあの男の発言によってかき消された。

 

 

ジャイアン

「よし! 今すぐ敵陣に殴り込みだぜ!!」

 

ジャイアン以外

「 ! ? 」

 

 

お察しの通り、ジャイアンである。

 

 

スネ夫

「イヤイヤイヤイヤ、ジャイアン今の話聞いてた?」

 

静香

「作戦無しで殴り込みなんて危険過ぎるわ!」

 

のび太

「そうだよ!作戦を立てるのが先だよ」

 

ジャイアン

「うるせえ!!友の痛みは俺の痛みだ!仕返ししないと気が済まねえんだよっ!!!」

 

ペコ

「それはとても嬉しい事ですが……まず作戦を立てましょう。お願いです、武さん。」

 

ジャイアン

「ペコがそこまで言うなら…仕方ねえな」

 

 

一時期興奮状態だったジャイアンだったが、ペコの懇願により何とか落ち着きを取り戻した様である。

 

 

一同

『ペコってすげええええ』

 

 

ペコのジャイアンを扱い慣れたような様子に一同は驚いていた。ペコのその姿は、まさに猛獣使いである。

 

 

ドラえもん

「さて、茶番はこれ位にして……作戦会議を始めよう」

 

のび太&スネ夫&ジャイアン

「おう!!」

 

静香&ペコ

「ええ!!」

 

 

 

バウワンコ奪還の為の作戦会議が始まった…

 

 

 

 

 




4年経ったジャイアン達の性格の変化はどうしようかと思ったんですが……
大まかな変更はなし!ということにしました。
そっちの方が書きやすいので(笑)
それではまた次のお話で!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

作戦会議、閉ざされた扉

今回は結構台詞を多めにしました。
やっぱりナレーションより台詞の方が書きやすいですね。
それではどうぞ!


のび太達の作戦会議が始まった…

 

 

ドラえもん

「さて……まず最初の議題は移動手段、どうやってバウワンコ王国があるヘビー・スモーカーズフォレストへ向かうかだね」

 

 

スネ夫

「それはもうどこでもドアで良いんじゃないかな? 前みたいに冒険を楽しむ訳じゃないんだし。」

 

 

ジャイアン

「前は確か王国の100km手前で歩いたよな、あん時は苦労したぜ…」

 

 

ジャイアンは昔を思い返すように腕を組んだ。

 

 

静香

「ええ、でも移動に関してはもう不自由しないわね」

 

 

のび太

「とりあえず移動方法はどこでもドアで大丈夫だね。さて、次はいよいよどうやって国を取り戻すかだね」

 

 

話を着々と進めるドラえもん達であったが……

 

 

ペコ

「ちょっと待って下さい」

 

 

ペコ以外

『ん?』

 

 

ペコは何かが引っかかったように口を挟んだ。

そんなペコに一同の目は集中した。

 

 

ペコ

「ドラえもんさんの道具は向こうの敵にも十分脅威と成り得るでしょう。しかし敵の素性、戦力を知らずに作戦に乗り出すのは余りに無謀だと思うんです。ですから……ある程度の偵察が必要ではないかと…」

 

 

ペコはそうドラえもん達に提案した。

 

 

ドラえもん

「確かにそうだね…。よし、まずは敵情の偵察が先だ。」

 

 

ドラえもんはペコの意見に同意した。

 

 

ジャイアン

「けどどうやって偵察なんてするんだ? バレないように忍び込んで偵察なんてド素人の俺たちには正直キツいぞ」

 

 

ジャイアンは難儀そうな声を漏らした。

 

しかし……

 

 

ドラえもん

「簡単さ、スパイ衛星を使うんだよ」

 

 

スパイ衛星…飛行可能な小型の集音器付きの偵察用カメラ。

 

 

静香

「なるほど、それなら安全に偵察が可能だわ」

 

 

スネ夫

「でもさ、ここから衛星を飛ばしても衛星の電波が届くか分からないだろ?」

 

 

日本からバウワンコとの距離は2000kmを優に越える。

スネ夫はスパイ衛星の電波が日本まで届かないのではないかと懸念した。

 

 

ドラえもん

「ある程度改造が必要だね、こう言う時にはーー」

 

 

のび太

「天才ヘルメットと技術手袋………でしょ?」

 

 

ドラえもんがその言葉を言い終える前にのび太は被せるように口を挟んだ。

 

 

天才ヘルメット…どんな複雑な機械でもヘルメットに内臓されているコンピュータが、どこをどう改造すれば良いか教えてくれる。

 

 

技術手袋…天才ヘルメットから発せられる信号を受信し、ド素人でも極めて技巧的な改造が可能になる。

 

 

ドラえもん

「分かってるじゃないか」

 

 

スネ夫

「ピリカ星の件では世話になったね、あの頃が懐かしいよ…」

 

 

静香

「ええ、パピくんは元気かしら?」

 

 

ジャイアン

「きっと元気さ。さあ、一時作戦会議は中断して、スパイ衛星を使って偵察をしようぜ」

 

 

ドラえもん

「よし……天才ヘルメットと技術手袋ーー!!」

 

 

スネ夫

「改造は僕に任せてよ。この位しか僕は役に立てないからね」

 

 

ドラえもん

「頼んだよ。さて、その間僕たちは何をしようか…?」

 

 

作戦会議が進む中、ペコはある悩みを抱えていた…

 

 

ペコ

「あの……少しよろしいですか?」

 

 

のび太

「どうしたの?ペコ」

 

 

ペコ

「私情を挟んで申し訳ないのですが……敵に攫われたスピアナはどうなるのでしょうか…」

 

 

ペコ以外

『あ……」

 

 

そう、スピアナは王宮とは別の場所に攫われたのである

勿論その生死は分からない。

 

一同は国を取り戻すという概念に囚われ、スピアナの事を忘れてしまっていたのである。

そんな中、一人の男は答えた…

 

 

ジャイアン

「よし、作戦を変更しようぜ。最初にスピアナさんを助け出してからバウワンコを奪還しよう」

 

 

ペコ

「しかし…今は王妃の居場所どころか生死すら分からないんですよ…?」

 

 

静香

「何言ってるのよ? そういう時のドラちゃんでしょ?」

 

 

静香がそう言うと、ドラえもんはすかさずある道具を出した。

 

 

ドラえもん

「どこでもドアーー!」

 

 

のび太

「そうか!どこでもドアで直接スピアナさんの所へ行けばいいのか!」

 

 

ペコ

「そんな事が可能なんですか?」

 

 

ドラえもん

「どこでもドアは場所の名前だけじゃなく人の名前でも動作するんだよ。よーし、スピアナ王妃の所へ!」

 

 

 

 

 

そう言うとドラえもんは勢い良くどこでもドアを開けた。

 

 

 

「そこには王妃がいる」、と誰もが思った。

 

 

 

しかしどこでもドアを開けた瞬間、一同は悟った。

 

 

 

"今度の敵は、今までの敵とは違う"と……

 

 

 

 

スネ夫

「おいおい……何だこれ……」

 

 

静香

「嘘……でしょ?」

 

 

ジャイアン

「何なんだよこれは!!」

 

 

 

 

どこでもドアは確かに動作した、しかしそこにあったのは何の風景も無い。

 

放送が終了したテレビで流れる俗に言う「砂嵐」のような

物がドアを塞いでいた……

 

ドアの向こう側に手を伸ばそうにも、「砂嵐」が行く手を阻む。

 

 

 

ドラえもん

「………故障じゃない…さっきドアのテストをしたけどちゃんと動いていた……」

 

 

静香

「じゃあどうして…!?」

 

 

戸惑う静香にドラえもんはこう答えた。

 

 

ドラえもん

「どこでもドアには………"ある特定の電磁波"が発生している所では動作しないという弱点があるんだ…! 恐らくこれは意図的に仕組まれた物だろう…!」

 

 

のび太

「ということは…!」

 

ドラえもん

「うん………敵はどこでもドアや僕の道具について知っている!! それも妨害電波を出して止めるなんて……22世紀の技術を使わないと不可能だ!!」

 

 

 

ジャイアン

「……ドラえもん、ドラミちゃんを呼べ。22世紀の事に精通してる人材が一人でも多く欲しい」

 

 

 

予想を遥かに上回る敵の技術力。

 

 

のび太達は唇を噛み締めた……

 

 

 

 

 

そんなのび太達を、ある男は窓の外から笑いながら眺めていた…

 

 

???

「もう一度地獄を見せてやろうか…?

 

 

 

野比 のび太。」

 

 

 

そう言うと男は一瞬にして消えた…




絶望感のあるシーンは意外と書くのが楽しいですね。
ここからどうやってこの状況を打開するのか考えるのが面白いです。
それでは次のお話で!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Leader ship

今回はかなりグタグタ気味です、ご了承下さいー

それではどうぞ!


謎の妨害電波によって封じられたどこでもドア…

 

果たして敵の正体とは…?

 

 

ドラミ

「………やっぱりね、敵は私達が来させちゃまずい所だけに妨害電波を張っているのよ」

 

 

ドラえもん達は22世紀に居るドラミに事情を話し、協力を要請した。

そしてドラミはそれを快く引き受け、妨害電波の調査の一任を自ら願い出たのだ。

 

 

のび太

「そうなるとまずいね……スピアナさんの居場所が分からないんじゃどこでもドアは無力だ…」

 

 

 

どこでもドアは場所を知らなくても人物の名前を言うだけでその場にワープが可能だが、スピアナの場所が分からない上に妨害電波が張られているのでは、どこでもドアは無用の長物となる。

 

 

スネ夫

「王妃の居場所が分からない…。ならこうしたらどうだろう?」

 

ジャイアン

「どうするんだ?」

 

スネ夫

「バウワンコ王国に居座っている敵から王妃の情報を直接聞き出すんだよ」

 

ペコ

「しかし…それは王妃の救出を後回しにすると言う事になります…申し訳ないですが…私には耐えかねます…」

 

ジャイアン

「ペコ……お前が一刻も早くスピアナさんを助けたいという気持ちはよく分かる。だけどここでお前が焦ったら国の皆はどうなるんだ? こういう時こそ冷静にやるべきじゃねえのか? 大丈夫だ、スピアナさんは無事だ。俺が保証するする」

 

 

ジャイアンはそう言ったが実際のところ確証はない。

しかしジャイアンは弱みを見せずに強く言った。

それがジャイアン流のやり方である。

 

しかしドラえもんは不安の表情を一切浮かべず、きっぱりと一同に言った。

 

 

ドラえもん

「事実生きてるよ。」

 

一同

「え?」

 

 

ドラえもんの言葉に一同は驚き、一斉に視線はドラえもんの方へ向いた。

 

 

ドラえもん

「どこでもドアは生きている物のみに反応するんだ、僕らは「スピアナ王妃の所へ」と言って、妨害電波に引っかかった。つまり生きている姫の所へ繋がったんだ。もし王妃が既に死んでいるなら、ドアを開いてもどこにも繋がらない筈だからね」

 

 

そう言うとドラえもんは誇らしげにどこでもドアをコンコンと叩いた。

 

 

ジャイアン

「な? 言ったろ? 俺が保証するって」

 

のび太

「でもジャイアンが保証したと言うよりドラえもんが保証してたような…」

 

ジャイアン

「うるせえ! 細けーことはいいんだよ!」

 

 

口調は荒いが、ジャイアンは笑いながら言った。

 

 

「スピアナはまだ生きている」

 

その状況だけが、のび太達の大きな原動力になった。

 

 

ドラミ

「みんな、妨害電波の効果範囲はバウワンコ王国から半径100km程だったわよ。」

 

 

調査を終えたドラミがドラえもん達に告げた。

 

 

ジャイアン

「100kmか……結局前回と同じだな」

 

ドラえもん

「でも今回はどこでもドア、そしてタケコプターがあるから移動はかなり楽になる筈だよ。100km手前まではどこでもドア、そして後はタケコプターを使ってバウワンコへ向かうんだ。」

 

のび太

「移動方法はいいんだけどさ……ドラえもん、どうやって敵から王妃の居場所を聞き出すの?口を割らなかったら面倒な事になりそうだけど…?」

 

 

のび太は不安げな顔をしてドラえもんに訊いた。

 

 

ドラえもん

「その点はご心配なく、僕に考えがある」

 

のび太

「…なら任せるよ、それともう一つ……仮に居場所を聞き出せたとして、いちいちそこから移動して救出に向かうのは効率が悪いと思うんだけど…」

 

 

のび太は更に鋭い疑問を投げかける。

 

 

ドラえもん

「それなんだけどね……みんなに話がある。」

 

ドラえもん以外

『?』

 

 

一斉に全員の視線がドラえもんへ向く。

 

 

 

ドラえもん

「スピアナ王妃の救出は可能な限り迅速に行わなくてはならない。だからこうするんだ……戦力を 2つ に分ける。」

 

 

 

一同はドラえもんの言葉がよく分からなかった。

何故、そんなことをするのかまったく分からなかった。

 

 

静香

「どういう……意味?」

 

 

静香が問いかける。

更にドラえもんは続けた。

 

 

ドラえもん

「バウワンコへ向かう班と、王妃を救出する班に分かれるんだ……スピアナさんが必ずしも王国の近くにいるわけじゃない。だから救出班はどこでもドアが使えるのび太君の部屋で留まって、居場所が判明したら救出へ動くんだ」

 

 

ペコ

「確かにそれだと救出にかかる時間は大幅に短縮されますが……戦力を分けるということは大きなリスクを伴います……本当にそれで宜しいのですか? 皆さん…?」

 

 

ペコは危険を顧みないドラえもんの作戦に反感を覚えるが、のび太は構わずこう言った。

 

 

のび太

「いやペコ……恐らく策はそれしか無いんだ。……だけど……僕たちならやれる。」

 

 

のび太はペコを真っ直ぐ力強い目で見た。

 

 

のび太

「僕たちは4年前もバウワンコの危機を救ってみせた。僕たちなら……この"チーム"なら……できる。」

 

 

ジャイアン

「リスク上等!何でもやってやるぜ!」

 

ペコ

「のび太さん……武さん……」

 

静香

「やるしかないわね!」

 

スネ夫

「正直怖くて嫌だけど……何もしないのはもっと嫌なんだ!!」

 

ドラミ

「私も全力でサポートするわ!」

 

ペコ

「静香さん…スネ夫さん…ドラミさん…」

 

 

奮起する一同にペコは再び感動を覚えていた…

 

 

ドラえもん

「ペコ……僕は本当はこんな危険な作戦はやりたくない。でもこうしないと王妃は二度と助けられないと思ったんだ……僕の直感を信じてくれる…?」

 

 

ドラえもんはペコの目をまっすぐ見て話した。

死線をくぐり抜け抜けて成長したのはのび太だけではない。

ドラえもんは全員のリーダーとして皆をまとめ上げる事が出来るようになっていた。

決断力、リーダーシップ……

昔とは比べ物にならないほど、ドラえもんは成長していた。

 

 

 

 

ペコ

「……信じます。あなたの判断は間違ってない。」

 

 

ペコもドラえもんの目をまっすぐ見てきっぱりと言った。

 

 

ペコ

「やりましょう!!力をあわせて!」

 

ドラえもん

「ありがとう……よし…!!準備にかかるよ!」

 

一同

『おう!!/ええ!!』

 

 

 

作戦開始に向けて……動き出す!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




結構個人的には微妙な出来です(笑)
それでも書き続けます!

それではまた次のお話で!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

移動開始

いよいよ重要な場面に差し掛かって参りました…

それではどうぞ!



ドラえもん達は作戦実行の為、スパイ衛星を使いバウワンコ王国周辺の偵察を行っていた。

 

 

スネ夫

「流石天才ヘルメットと技術手袋だね。ここからスパイ衛星を飛ばしても鮮明な映像が送信されてくる」

 

 

スネ夫は改めてドラえもんの道具の便利さを実感した。

 

 

ドラえもん

「よし、そろそろ衛星がバウワンコ周辺に着くよ」

 

 

ドラえもんの言葉のすぐ後にスパイ衛星のカメラはバウワンコ王国周辺を捉えていた。

 

 

ペコ

「見えましたね……恐らく門の周りには警備が配置されていると思います。警備の容姿から、敵がどんな勢力なのか分かるかも知れません」

 

 

ドラえもん達は全ての元凶。

バウワンコを襲った集団に接触しつつあった…

 

 

ジャイアン

「やっぱりペコの読み通り、警備がいるな…… ドラえもん、映像を拡大出来るか?」

 

 

ペコの読みは当たっていた。

ジャイアンは敵の素性を知る為、ドラえもんに映像の拡大が可能かどうか問いただした。

 

 

ドラえもん

「もちろん出来るさ。よし、拡大するよ…?」

 

 

ドラえもんは全員に向けて言った。

 

 

のび太

「うん…」

 

ペコ

「王国をいとも容易く陥落させた勢力……」

 

静香

「一体…どんな勢力なのかしら…」

 

 

一同は生唾を飲み込むなど、確実に全員の緊張は高まっていた。

 

 

ジャイアン

「……よし、拡大してくれ!」

 

 

ジャイアンがそう指示した瞬間、映像は敵の哨兵一名に拡大された。

 

しかし、その映像だけでは敵の素性を知るには不十分であった……

 

 

ジャイアン

「…くそ! 仮面で顔を隠してやがる! おまけに黒のロングコートなんか羽織りやがって…!」

 

 

ジャイアンは悔しそうに畳を叩いた。

敵は原住民族が被るような不気味な仮面を着け、大きめサイズのロングコートを着用していた。

 

 

ドラミ

「この出で立ちだと…外観から得られる敵のヒントはほぼ0に近いわね…」

 

 

顔立ちや肌の色など、偵察によって得られるヒントは沢山あった筈だ。

しかし、敵が自らを素性を隠しているのでは偵察の意味は殆どない。

唯一分かるのが、敵は人型であるということだけだった。

 

 

ドラえもん

「恐らく殆どの兵士が仮面をしているね……これじゃあ偵察の意味は無いに等しい……それはつまり僕たちは事前の敵の情報無しでバウワンコに向かわなければならない…」

 

 

情報合戦は勝敗を分けると言っても過言ではない。

事前情報無しでバウワンコに向かうのは大きなリスクが伴うことを全員は覚悟した。

 

 

ジャイアン

「……仕方ねえな、やってやろうぜ」

 

スネ夫

「うん……やろう」

 

静香

「立ち止まってなんかいられるものですか!」

 

ペコ

「ハハ、本当に芯の強いお方達だ…」

 

 

奮起する一同をペコは笑って見ていた。

 

 

のび太

「うん…他にやることと言ったら誰がここに残って誰がバウワンコへ向かうかだね」

 

 

皆が皆バウワンコへ乗り込むわけではない。スピアナの救出の為のグループが必要になってくるのである。

 

 

ペコ

「では私がバウワンコへ向かいましょう。私はそこの地形を熟知しています。」

 

ジャイアン

「俺も行くぜ!ペコだけには任せられねえからな」

 

静香

「私も行くわ!少しでもいいから…力になりたいの!」

 

ドラえもん

「僕も……行く!全力でバックアップするよ!」

 

のび太

「じゃあバウワンコへ向かうのはドラえもんと静香ちゃんとジャイアンとペコ…か」

 

ドラミ

「じゃあ私たちは暫くの間留守番ね…… お兄ちゃん!安心して!のび太さん達には私がついてるから!」

 

スネ夫

「皆……頼んだよ…」

 

 

こうしてバウワンコへ向かう班と待機班が決定した。

 

 

ドラえもん

「………よし、準備はいいね? どこでもドアー!! 『バウワンコ王国の100km北』へ!」

 

 

どこでもドアを取り出したドラえもんはそう言うと、ドアを開いた。

ドアの先には、4年前に見たジャングルと何ら変わりない風景が広がっていた…。

 

多くの木々が生い茂り、野鳥が囀りをしながら縦横無尽に飛び回っている様子が、ドアの外側からでも確認できる。

 

 

 

ドラえもん

「あ!その前に………腕ラジオーー!! これを持ってて、居場所が分かり次第連絡するから」

 

 

腕ラジオ…GPS付きのラジオ、通話も可能。

要するに現代のスマホの強化版である

 

 

のび太

「分かったよ、じゃあ……いってらっしゃい」

 

 

その時のび太は、少し哀愁の篭った瞳をしていた。

 

(もしかしたらもう会えなくなるかも知れない…)

 

そんな思いがのび太にはあった。

 

 

 

静香

「みんな……行ってくるわ…」

 

ジャイアン

「行ってくるぜ!!」

 

ペコ

「必ず……姫を助けて下さい!」

 

ドラえもん

「じゃあ……ドアを閉めるよ…」

 

 

ドラえもんがそう言うと、ドラえもんはどこでもドアのノブに手を掛け、徐々にドアを閉め始めた……

 

 

のび太

「……ドラえもん!!」

 

 

僅かに空いていたドアの隙間から、のび太は叫んだ。

 

 

ドラえもん

「え?」

 

 

 

 

 

 

のび太

「………死ぬなよ」

 

 

 

のび太がそう言うとドアは完全に閉まり、どこでもドアは消滅した……

 

 

ドラミ

「のび太さん……」

 

スネ夫

「大丈夫さ、みんな欠けることなく戻ってくる」

 

 

スネ夫はそっとのび太の肩に手を添えた。

 

 

のび太

「………うん」

 

 

のび太達は友との一時的な別れに涙していた。

 

そしてそれはドラえもん達も同じであった……

 

 

 

 

 

 

 

場面はジャングルへ移り変わる…

 

 

ドラえもん

「……のび太君……皆…」

 

ジャイアン

「絶対!生きて帰ってくるぞ!」

 

静香

「正直怖いわ……でもやるしかないの!」

 

ペコ

「皆さん……行きましょう!!」

 

 

ドラえもん達は歩み出した…

 

バウワンコ王国を目指して…

 

 

 




えー実は私、話を書き留めずにその場で考えながら書いています……(笑)
恐らく途中途中に矛盾点が生じると思います、遠慮なさらずに言ってください

では次のお話で!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王妃の居場所

今回は若干というかかなりギャグが多くなってしまいました(笑)
重いシリアスな話を書くのとはまた違った楽しさがありますね。
それではどうぞ!


場面はバウワンコの宮廷。

 

その中で、謎の組織の幹部達の会談が行われていた…

 

 

 

???

「ここまでは計画通りだな。後は奴らがこちら側に出向くのを待つのみだ…。」

 

 

一人のリーダーらしき男が言った。

 

 

???

「待つだと? その必要はない! 私の部下が奴らを始末してくれる!!」

 

 

血の気の多い幹部が若干機械音の入った声で言った。

 

 

???

「そう焦っちゃいけませんぜ?……奴らには最高級の苦しみを与えますよ」

 

 

フェイスマスクを被った男がほくそ笑みながら言う。

 

 

???

「奴らは恐らくここへ来る。そして王妃の居場所を探りに……もっとも、教えるわけがないがな 」

 

 

幹部の中でも異形の姿をした者が笑いながら言う。

 

 

???

「油断をするでないぞ、奴らは不思議な道具を持っている…私はそれにやられたのだ…!」

 

 

初老の男が悔しそうに言う。

 

マスクの男がこう返した。

 

 

???

「そんな事は百も承知です。あんまり舐めんで下さいよ…」

 

???

「そうだ、お前さえ居ればあの忌々しい道具など恐るるにたらんな…」

 

 

リーダーらしき男が言う。

 

 

???

「ではワシは女の下へ行くとするか、もしもの為に警備を就かせておく…」

 

 

異形の者がそう言うと、ある装置を操作し始め、

妙な光と共に消えた。

 

 

???

「さて、私たちも解散としますかね…」

 

???

「……ああ」

 

 

こうして謎の組織の会談は終わり、幹部たちは闇の何処かへ消えて行った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方ペコ達はバウワンコ王国へ向かっていた……

 

 

 

ペコ

「不思議な道具ですね…頭に付けるだけで空を飛べるとは……」

 

 

ペコはドラえもんの定番の道具、「タケコプター」に心底驚いている様子だった。

 

 

ドラえもん

「ハハ、よく言われるよ」

 

 

ドラえもんは笑いながら返した。

ペコ達の移動は専らタケコプターであった…

タケコプターの移動速度は最高で80km/h

つまりバウワンコまでは全力で飛ばせば80分程で着く計算になる。

 

 

ジャイアン

「これなら前回に比べて圧倒的に早くあっちに着けるな」

 

静香

「でもある程度王国へ近づいたら移動は徒歩になるわよ、じゃないと敵の警備に気づかれるから」

 

ドラえもん

「いいかい皆?今回の目的は王国へ乗り込むことじゃない。敵からスピアナさんの情報を入手する事だよ、いいね?」

 

ペコ

「分かっています。そろそろ王国から5kmの地点です。

一旦地上へ降りましょう」

 

 

ペコがそう言うと一同は一斉に降下し始めた。

そしてタケコプターを外し徒歩での移動を開始した。

 

 

ジャイアン

「やっぱこの感じ…懐かしいな…4年前もこうやって歩いてたっけな…」

 

 

ジャイアンは懐かしげに言う。

 

 

静香

「ええ…あの頃は一番はしゃいでた時期よね……日が暮れてるのにも気付かずに遊んでたわ」

 

 

静香は笑いながら返した。

 

 

ジャイアン

「帰ったら……野球するか、久々に…」

 

ドラえもん

「………そうだね」

 

 

ドラえもんは優し気な目をしながら言った。

 

 

 

ペコ

「……皆さん、いよいよ到着です。身を屈めながら行きましょう…」

 

 

ペコの言葉に全員の緊張は高まった。

ここから先は命の保証はない。

それを覚悟し、一同は身を屈めながら進んで行った…

 

 

 

 

ドラえもん

「見えたね……スパイ衛星で見た通り、門番は二人いるね…」

 

 

ドラえもん達は門番に気付かれないように門の手前の茂みに隠れた。

 

 

ジャイアン

「よし、早速ぶちのめそう」

 

ジャイアン以外

「!!??」

 

 

ジャイアンの無鉄砲な言葉に全員は驚いた。

 

まったくどこまで単細胞なのか。この男は……

 

 

ドラえもん

「何言ってんの!? ここはあの二人以外の歩哨に気付かれずに尋問をするのがベストだろ!わざわざ目立つようなことしてどうするの!」

 

 

ドラえもんが小声かつ若干早口で言う。

 

 

ジャイアン

「そ、そうなのか…?」

 

 

ジャイアンはドラえもんの言葉を聞いて、申し訳無さそうに頭を掻いた。

 

 

静香

「うふふ、武さんって本っ当に単細胞ね…」

 

 

静香の口は笑っていたが、明らかに目は笑っていなかった……

 

 

ペコ

「静香さん……すこし怖いです…」

 

 

ペコは静香の豹変振りに恐怖を覚えてしまう…

仕方が無いと言えば仕方が無い。

 

 

ドラえもん

「茶番はこれ位にして……奴らをここへおびき寄せよう…

よーし、カムカムキャットーー!!」

 

 

カムカムキャット…これを使うとこの道具の下に人が集まってくる。要するに招き猫。

 

 

静香

「カムカムキャットセット完了!」

 

カムカムキャット

「ニャム〜〜」

 

門番A

「な、何だ!? 体が…勝手に!」

 

門番B

「お、俺もー!」

 

 

カムカムキャットをセットすると門番の二人は見事に引っかかりこちらに近付いてきた。

何ともマヌケな姿である。

 

 

ジャイアン

「何か……シュールだな」

 

ドラえもん

「そ、そうだね……ププ」

 

静香

「笑っちゃ駄目よ…二人だって好きで近付いて来てる訳じゃ……アハハ」

 

 

ペコを除いた3人は笑いを堪えられない様子であった。

仕方が無いと言えば仕方が無い。

それ程までにその光景が面白かったのだ。

 

 

ペコ

「ドラえもんさん!笑ってないで次の道具を!」

 

ドラえもん

「あー、ごめんごめん。 ショックガンーー!!」

 

 

ショックガン……一撃で相手を気絶させる事の出来る銃。

逆に言えばその程度しか威力がない。

 

 

ドラえもん

「静香ちゃん!これで一人を撃って!」

 

静香

「よーし、えい!」

 

 

静香はショックガンの引き金を引いた。

そして見事門番Bに直撃し、気絶して地面に倒れ込んだ。

 

 

門番B

「うっ……」

 

門番A

「くそー!どうなってるんだ!」

 

 

そうしてるうちに門番Aとの距離は2mに縮まっていた。

そしてようやく門番はドラえもん達の存在に気付いた。

 

 

門番A

「そうか!貴様らだな!あの門は通さないぞ!」

 

ペコ

「………今の状態で言われても説得力が無いですね…」

 

 

それもそうである、門番から門まで30m以上離れて居るのだから。どう見ても守る気がない。

 

 

ジャイアン

「ドラえもん……さっさとやってくれ」

 

ドラえもん

「よし、さとりヘルメットーー!!」

 

 

さとりヘルメット…これを被るだけで相手の心が読める。

 

 

ドラえもん

「スピアナ王妃の居場所は?」

 

門番A

「し、知らねえなっ!」

(い、言わねえぞ!王妃が"バミューダトライアングルの海底鬼岩城"にいるなんて!)

 

 

ドラえもん

「バミューダトライアングルの海底鬼岩城!!?」

 

門番A

「な…貴様!何故それを!」

 

静香

「海底鬼岩城ですって!?」

 

ジャイアン

「馬鹿な!その場所は…!」

 

ペコ

「あの……何なんですか…?鬼岩城とは?」

 

門番A

「おい!答えろ!答えろと言っている!」

 

 

動けない門番は叫び続けている。

 

それを意に介さずドラえもん達は話を続けた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さてさて、驚きの事実が発覚しましたねー、
果たしてバミューダトライアングルとバウワンコはどういった関係があるのか!?

次回もお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

奇襲、迫り来る影

結構話がゴチャゴチャしてくる時期です。
私はあくまでドラえもんをある程度理解している方へ向けて話を書いておりますので、ドラえもんの中では常識的な部分の説明は端折っていくつもりです。

それではどうぞ!


門番から得たスピアナの監禁場所。

 

それは以前ドラえもん達が大冒険を繰り広げた、

バミューダトライアングルの「海底鬼岩城」であった…

 

 

 

ペコ

「一体何なのですか? バミューダトライアングルとは?」

 

 

ヘビー・スモーカーズフォレスト以外の地理にあまり詳しくないペコがドラえもん達に尋ねる。

 

 

ドラえもん

「バミューダトライアングルって言うのはね……」

 

 

ドラえもんはバミューダトライアングルについて詳しく説明した。

 

因みにバミューダトライアングルとは、フロリダ半島の先端と大西洋にあるプエルトリコ、そしてバミューダ諸島を結んだ三角形の海域である。

 

この海域を通り過ぎた飛行機や船が突然消えてしまうと言う伝説があったのであるが……

 

遥か昔に栄えた海底王国、アトランチスの周りを取り囲んでいた防御バリアがその伝説の正体だったのだ。

 

 

 

ドラえもん

「………という訳なんだよ」

 

ペコ

「難解な話ですね……では、海底鬼岩城というのは?」

 

ドラえもん

「………話すと長いから帰る途中に話すよ、それより王妃の居場所をのび太君たちに連絡しなくちゃ!」

 

 

ドラえもんはポケットから腕ラジオを取り出し、のび太へコールする。

 

 

ドラえもん

「のび太君!聞こえるかい?」

 

のび太

《聞こえてるよ! スピアナさんの居場所は分かった!?》

 

ドラえもん

「よく聞くんだよ……バミューダトライアングルの海底鬼岩城だよ!」

 

スネ夫

《海底鬼岩城だって!? ドラえもん! それは確かかい?》

 

 

スネ夫はドラえもんの言葉に驚いた。

当然である、そこは自らが大冒険を繰り広げた場所であるのだから。

 

 

ドラえもん

「さとりヘルメットを使ったから間違いなく本当だよ! 詳しい話は後だ! とにかく急いで! 王妃の救出を頼むよ!」

 

ドラミ

《分かったわ、私達はこれから直ぐにバミューダトライアングルへ向かうわ!》

 

ドラえもん

「こっちも直ぐそっちに応援に行くよ! それじゃ!」

 

 

ドラえもんはそう言うと腕ラジオのスイッチを押し、通話を終えた。

 

 

静香

「で、この人はどうするの?」

 

 

静香が指さした者、それは当然門番である。

 

 

ドラえもん

「えーっと、わすれん棒ーー!!」

 

 

わすれん棒……これで対象者の頭を叩くとその者は最近の記憶を失う。

 

 

ドラえもん

「それ!」 ポンッ

 

門番A

「あれ?俺は一体?」

 

ジャイアン

「ただここに突っ立ってるだけで金が貰える仕事してたんだろ」

 

門番A

「そうだったそうだった」

 

ドラえもん

「これでよしっと」

 

ペコ

「さあ、一旦来た道を引き返しましょう」

 

静香

「ええ、一刻も早く応援に向かわなくちゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

そしてドラえもん達は道を引き返そうと、回れ右をして歩き始めた。

 

このまま上手く帰還できると誰もが思った。

 

 

しかしその直後、その考えは甘かったという現実を、一同は思い知る。

 

 

 

 

 

 

???

「……………!!」

 

 

その時、ドラえもん達の背後の茂みから謎の黒い影が恐ろしいスピードで姿を現した。

 

 

静香

「……!! ペコ!!! 後ろ!!!」

 

 

静香はその影の存在をいち早く察知し、ペコに警笛を鳴らした。

 

 

ペコ

「!!! 何だ!!?」

 

 

黒い影は剣を取り出し、背後からペコに斬りかかる。

 

ペコは静香の言葉に反応して咄嗟に腰に差した剣を抜き、振り返って攻撃を防ごうとするが…

 

 

 

ズバッ!!!

 

 

ペコ

「ぐあああ!!!」

 

 

反応が遅れたペコは、首筋から脇腹を斬られ、鮮血を流しながら地面に膝を着いた。

 

 

ドラえもん

「ペコ!!」

 

静香

「大丈夫!!?」

 

 

ドラえもんと静香は慌てたような形相で、血を流しているペコに駆け寄った。

 

 

???

「………!!」 サッ!

 

 

そして奇襲を仕掛けた黒い影は一目散に何処かへ消えてしまった。

 

 

ジャイアン

「くそ!! 逃がすかよっっ!!」

 

静香

「待って武さん! ペコが先よ!!」

 

 

謎の影を追おうとするジャイアンであったが、静香はそれを制止する。

 

 

ペコ

「うぅ…!!」

(死んでいた……あと一瞬振り向くのが遅かったら…私は間違いなく死んでいた…!!)

 

 

ペコは必死に激痛を抑える。

 

 

ドラえもん

「意識をしっかり持つんだペコ!! お医者さんカバン!!」

 

 

お医者さんカバン……ウイルスを完治させるなどの便利な道具だが、外傷などに対しては応急処置程度しか出来ない。

 

 

ドラえもん

「止血剤と包帯だよ!静香ちゃん!処置をお願い! 僕とジャイアンは周りを警戒するから!!」

 

静香

「任せて!」

 

ジャイアン

「あの野郎…! よくもペコをやりやがったな……!!」

 

ペコ

「私のせいで…私のせいで…」

 

 

ペコ達は敵との本格的な交戦を始め、大きな足止めを食らうことになる。

 

そしてのび太達はまだその事実を知らない。

 




お医者さんカバンの設定は結構色々な設定がありますが、
本作では「ウイルス等の病気には強いが、傷などに対しては応急処置程度しか出来ない」というような設定で行きたいと思います

それでは次のお話で!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ジャイアンの怒り

ドラえもん
「さて、話が広がってまいりましたねー」

のび太
「というか何で前書きで僕ら喋ってるの?」

スネ夫
「何でもただただ単調な前書きを書くのに飽きたんだと、作者が」

静香
「ちょっと迷惑よね…」

ジャイアン
「まあいいじゃねえか、それじゃあ始まるぜ!」

一同
「ドラえもん のび太の大魔境 second season!!!」


突如ドラえもん達に襲いかかった黒い影。

 

その者はペコに重傷を負わせ、何処かへ消えてしまう。

 

ドラえもん達は、重傷のペコを連れて徒歩で移動をしていた……

 

 

 

ジャイアン

「ペコ……!死ぬんじゃねえぞ! 絶対…生きて戻るんだ!」

 

ペコ

「………」

 

 

ペコはジャイアンに肩を貸されながら歩いていた。

ペコの負傷は一同に多大なショックを与えた。

チーム一の剣豪が戦闘不能状態に陥ったのだから仕方が無い事だった。

 

 

ドラえもん

「のび太君!聞こえる!?」

 

のび太

《聞こえるよ!今家を出発したところだよ!何かあったの?》

 

 

のび太、スネ夫、ドラミはスピアナの救出の為にバミューダトライアングルへ赴いているところであった。

 

 

ドラえもん

「ペコが……負傷した。バウワンコから引き返す際に、何者かの攻撃を受けたんだ…!!」

 

スネ夫

《何だって!?》

 

ジャイアン

「後ろから斬りかかられた…! 正体は最後まで分からなかった。相当強えぞ…あいつ!」

 

ドラえもん

「とにかくそっちはスピアナさんの救出が最優先だ!ペコのことは僕たちに任せて!」

 

のび太

《…………分かった、任せたよ》

 

 

ドラえもん達は通話を終え、再び歩き出した。

 

 

静香

「これからどうするの…? ペコに肩を貸しながら進んでいくこの状況じゃ…帰るまで早くても3日以上かかるわよ…」

 

ドラえもん

「だけど……歩くしかない! 必ず生き延びるんだ!」

 

 

ドラえもんは自らを奮い立たせる為に言った。

 

しかし、進めど進めど変わらぬ景色、灼熱のジャングル、そしてペコの負傷による精神的ショック。

 

全員の体力は既に限界に近づいていた…

 

そんな中、ジャイアンはある物を発見する。

 

 

 

 

 

ジャイアン

「おい……何だあれ……? 村…か?」

 

 

ジャイアンはジャングルの奥を指差した。

 

その先には、ボロ屋ではあるが住居の群れが建っており、それらの集落を囲うように、高い塀が敷設してある。

 

住居の3つや4つだけではない。

奥の方に目をやると、多数の住居が建設されていた。

 

 

ジャングルのど真ん中にそのような集落があることに一同は少々訝しんだが、その集落の発見は、"ここで休息を取れるかも知れない"というメリットになると、一同は考えた。

 

 

ドラえもん

「よし、あそこで少しの間休ませてもらおう……今は全員の体力が限界だ…!」

 

 

ドラえもん達は住居へ近づいていった…

 

 

すると住居まであと20m程の所で、唐突に後ろから声が聞こえた。

 

 

 

???

「誰だ!お前たちは!!」

 

 

 

少年の声だった。

ジャイアン達は驚いて振り返った。

 

 

ジャイアン

「怪しい者じゃねえ!こいつを……こいつだけでもここで休ませてやってくれ!」

 

 

ジャイアンはペコに視線を移しながら訴える。

 

 

???

「断る!よそ者は入れない! ……ん? まさか…!!」

 

 

少年は目の色を変えて俯いたペコの顔を凝視した。

 

 

???

「やっぱり……陛下!!! ご無事ですか!? 陛下!! そうか……やっぱり君達は…!」

 

 

少年は怪我をしていたものがペコであるのを認識すると、表情を一変させて心底嬉しそうな顔をした。

 

 

静香

「あなた……もしかしてバウワンコ王国から逃げてきた民間人の一人?」

 

 

静香は少年に問うた。

 

 

???

「………なんだ、忘れちゃったのかい? ドラえもん、しずかちゃん、ジャイアン」

 

ドラえもん

「その目の独特な斑点……まさか君は…チッポなのかい?」

 

チッポ

「正解!おいらがチッポさ!」

 

 

チッポ……バウワンコ王国で暮らしていた少年。体は小さいが、その正義感は本物。

 

 

ジャイアン

「ええ!? チッポつったら……もっとこう…ちっこくてガヤガヤ騒ぐような奴だったと思ったんだが…」

 

 

ジャイアンはチッポの成長振りに驚いているようである。

 

 

静香

「チッポちゃん……久しぶりね…」

 

チッポ

「再開を喜んでいる暇はないよ!とにかく陛下を家の中へ!」

 

 

チッポは大急ぎでペコを自分の家へ連れ、ベットに寝かしつけた。

 

 

そして居間に3人を座らせ、チッポはその正面の椅子に座った。

 

 

チッポ

「皆、久しぶりと言いたい所だけど……まずどういう経緯でこんな状態に陥ったのか詳しく話して欲しいんだ」

 

 

そしてドラえもん達は今まで起こったことを事細かにチッポに話した…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チッポ

「その陛下を襲ったっていう奴………知ってるかも知れないよ」

 

ジャイアン

「本当か!?誰なんだ!?」

 

 

チッポの言葉にジャイアンは驚き、チッポに問い詰める。

 

 

チッポ

「覚えてる…? 四年前のダブランダーのクーデターの際に君達と戦った剣士……サベールだよ」

 

静香

「サベールですって……?彼はのび太さんが倒して死亡した事になってた筈よ…?」

 

 

サベール……バウワンコ王国の超一流の剣士、その剣術は銅像を一振りで真っ二つにするなど非常に優れている。

四年前にのび太らと交戦、僅差でのび太に敗北を喫する。

 

 

チッポ

「彼は生きていたんだ。その証拠に僕は見たんだ! 僕らが避難する時に追っ手を足止めしようとしてくれたサベールの姿を!」

 

 

チッポが言うには、王国の襲撃時に住民が避難する際、後ろから追っ手が迫ってきたが、それをサベールが撃退したというのだ。

 

 

チッポ

「彼はもうヒーローさ!僕らを助けてくれたんだから!」

 

 

盛り上がるチッポだったが、あの男の怒りは大きくなっていた……

 

 

ジャイアン

「ふざけんじゃ…ねえぞ!!!」

 

 

ジャイアンは思わず立ち上がりさってチッポの方を睨みつけた。

 

 

チッポ

「え?」

 

ジャイアン

「ヒーローだあ?ヒーローなら何で……ペコを…俺の友達をあんな目に合わせたんだ!!!四年前だってそうだ! ヒーローならなんでダブランダーの味方になんかなった!? おかしいだろうが!!!」

 

 

ジャイアンの怒りは爆発した。

燃え盛る炎のように彼の心は怒りの炎で満ちていた…

 

 

チッポ

「それは……ただ間違えたんだよ!!本来今のサベールはここら辺一帯をうろついている敵を狩っているんだ!! だから……君たちがその敵の一人に見えたんじゃないかな? 今サベールが敵を倒し続けているのは…きっと四年前の贖罪をしているつもりなんだ!」

 

静香

「武さん!そうよ!サベールは味方かもしれないのよ!」

 

 

ジャイアン

「………!!!畜生っ!!」 ドンッ!!! ドンッ!!!

 

 

ジャイアンは何処に怒りを向ければ良いか分からなくなり

壁を殴り続けた…

 

 

それでもジャイアンの怒りが収まることはなかった………

 

 

 

 




のび太
「結構話が重たくなって来たねー」

書いてる私も「これ…本当にドラえもんか?」
ってとこが何回もありました

スネ夫
「映画だとこんな感じだよ、いつもね」

静香
「鉄人兵団なんか凄かったわ……思い出しただけで涙が……うっ…うっ…」

ドラえもん
「確かにあれはアクション映画顔負けの内容だったねー」

ガヤガヤガヤガヤ……


ペコ
「……あの……次のお話でまたお会いましょう」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

海底へ……

ドラえもん
「初の感想コメント!ありがとうございまーす!」

ジャイアン
「そんなに騒ぐようなことか?」

スネ夫
「これが結構嬉しいんだよ、自分の書いた作品で感想もらうとね」

ジャイアン
「そうか!じゃあ俺の歌を聞いて感想を言ってくれ!
ホゲ〜〜!!!」

静香
「きゃああ! 頭が…痛い…!!」

ドラえもん
「うっ!そんな訳で…始まるよ…!」

ジャイアン
「ホゲ〜〜!!!!!」


負傷したペコを連れたジャイアン達は謎の集落を発見し、四年前の仲間、チッポとの再開を果たしていた……

 

 

一方のび太たちは海底鬼岩城を目指すべく、フロリダ半島の先端、マイアミへと赴いていた。

 

移動は当然どこでもドアである。

 

 

 

 

 

 

 

フロリダ州 マイアミ

 

 

 

 

ドラミ

「ここがマイアミ……暑いわね」

 

 

ドラミは暑そうに顔を手で扇いた。

 

 

マイアミ……北アメリカ大陸南東部に位置するフロリダ州の主要都市。世界有数の観光地として有名。

 

大地を照りつける猛烈な日差しと日本とは比べ物にならない暑さに、3人は思わず圧倒された。

ほんの少し歩くだけで、体中から汗が滲み出てくる。

まさに、灼熱地獄である。

 

 

スネ夫

「43度らしいよ、気温」

 

のび太

「そりゃ暑い訳だ……」

 

ドラミ

「さっさとバミューダトライアングルを目指しましょう!

えーと、こういう時は…テキオー灯ーー!!」

 

 

テキオー灯…この光を浴びるとどんな気候、状態にも適応が可能。しかし効果は24時間しか持たない。

 

 

ドラミ

「あれ? 違うわね、テキオー灯を出したつもりが変なカードを出してしまったわ…これはしまっといて、改めて…テキオー灯ー!!」

 

のび太

「ミスなんて珍しいね」

 

スネ夫

「まあいいじゃないか、さっさと光を浴びて水中下で活動出来るようにしよう」

 

 

3人は気付かなかった。

ドラミがたまたま出したカードが、3人の命運を分けることになるとは…

 

 

ドラミ

「よし、浴びたわね。鬼岩城の周りには妨害電波が一帯に張られているから移動は……水中バギーー!!」

 

 

水中バギー…水中とあるが、山でも水中でも走行可能なバギー。喋るタイプの物も存在する。

 

 

スネ夫

「今回は喋ったりしないんだね………そう言えば"エル"さんはどうしたのかな?」

 

 

エル……海底鬼岩城での戦いで共に戦った海底人の青年。

強い正義感と屈強な肉体を併せ持つ。

 

 

のび太

「うん…バギーちゃん…口は悪かったけどいい奴だったよね…エルさんも……あれ…?」

 

 

のび太がその言葉を言い終える前に、のび太自身がエルという存在の重要性に気づいた。

 

 

のび太

「そうだ…! エルさんだよ! 何で今まで気が付かなかったんだ! 鬼岩城に向かうならエルさんの力を借りればいいじゃないか!」

 

ドラミ

「そうだわ! 海の知識に精通している彼ならきっと何か知っている筈よ!」

 

スネ夫

「確かに……僕ら3人だけじゃ少し戦力に不安が残るね…彼の力を借りよう!」

 

のび太

「そうと決まればまずは海底人の住処…ムー連邦を目指そう!そこまで遠くない筈だよ」

 

ドラミ

「さあ皆乗って! 準備はいい? 発進!!」

 

 

ドラミがバギーのアクセルを踏むとバギーは勢い良く加速し、あっと言う間に深海へと潜っていった。

 

小魚を始め、大型の魚などが絶え間なく水中を行き交い、海上から差し込む太陽の光と相まって、そこはとても幻想的な空間に見えた。

 

 

のび太

「流石時速800kmだね、あっと言う間に深海に来ちゃったよ。それにテキオー灯を浴びてるから周りも明るく見える!」

 

ドラミ

「ムー連邦の方角は……こっちね!」

 

 

ガタッ ブーーーン!!!

 

 

ドラミはムー連邦の位置を確認するとバギーのアクセルを強く踏み、更に加速する。

 

 

スネ夫

「見えた!あれだよ!ムー連邦だ!」

 

 

のび太がそこを指差すと、そこには立派な宮殿が建っていた。

 

ドラミはバギーを停め、それをポケットの中へしまう。

 

 

ドラミ

「でも大丈夫かしら?敵と見られたら…」

 

 

ドラミは万が一の事を考え、一抹の不安を感じた。

 

しかし…

 

 

のび太

「大丈夫、僕に任せて。」

 

 

自信ありげな表情をしてのび太は門番に近づいていった。

 

 

門番

「!!! 何者だ貴様ら!その服…陸上人だな!」

 

 

のび太達の存在に気が付いた門番は腰に携えた剣の柄に手をかけ、警戒態勢に入る。

 

 

のび太

「怪しい者じゃありません。自分は野比 のび太という者です。エルさんはおられますか? 会って話がしたいんです……」

 

 

のび太は丁寧な口調で、門番の癪に触ることのないようにエルとの面会を願い出た。

 

 

門番

「野比 のび太だと……? …そうか、お前たちは4年前の……よし、入れ」

 

のび太

「ありがとうございます。」

 

 

のび太が自らの素性を明かすと、門番はすんなり宮殿へ入れてくれた。

どうやらあの戦いの後、のび太達は彼らに英雄視されていたようである。

 

 

門番

「さっきは失礼した、エル様はこっちだ」

 

スネ夫

「エル様って…エルさん結構偉い人になったのかな?」

 

のび太

「さあね」

 

 

門番はエルの下へ3人をある建物へ案内した。

その建物は日本で言う、国会議事堂のような建物だった。

 

 

スネ夫

「うわー、大きな建物……」

 

 

スネ夫はその建物のスケールに思わず口をポカーンと開けた。

 

 

そして3人はその建物に入り、豪華なエントランスの奥にある階段を上った所にある大きな扉の前に案内された。

 

 

コンコン

 

 

門番

「大統領! 失礼します!」

 

 

門番は大きな扉をノックし、ドアを開けた。

 

 

そしてそこにエルは居た。

その表情や雰囲気は、以前とは見違える程厳格なものであったが、当時の彼らしい面影はまだ残っていた……

 

 

エル

「ああ、どうしたんだ?……! その方達はもしや…」

 

 

エルはハッとしたように目をこすり、再び視線をのび太達へ向けた。

 

 

のび太

「久しぶりだね、エルさん。のび太だよ」

 

スネ夫

「大統領になってたんだね…エルさん!」

 

ドラミ

「初めましてエルさん、ドラえもんは知ってるわね? ドラえもんの妹のドラミです」

 

エル

「やっぱり君たちか!! どうしたんだい!? 遊びに来たのかい?」

 

 

エルはのび太達との再開を喜んでいるがのび太は冷静に言った。

 

 

のび太

「残念ながらそうじゃないんだ。エルさん…もう一度、僕らと一緒にバミューダトライアングルの海底鬼岩城を目指して欲しいんだ!」

 

エル

「え…? 鬼岩城だって……?」

 

スネ夫

「詳しく話すから時間をもらっていいかな?」

 

エル

「……分かった!この後の議会はキャンセルだ!話してくれ」

 

 

 

次々とかつての仲間たちと再開を果たすドラえもん達。

 

決戦に向けての役者は、まだ半分も揃っていない……

 

 




ドラえもん
「はー、死ぬかと思った」

ジャイアン
「?なんて言った?今」

ジャイアン以外
『何でもないです!』


スネ夫
「それよりさ、流石にエルさんが大統領になっているって言うのは無理矢理じゃない?」

静香
「彼ならきっと偉い人になってるって作者の解釈らしいわよ」

えー、本当に御都合主義で申し訳ありません!

それでは次のお話で!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



ドラえもん
「みんなー!ドラえもんのゲストで一番誰が好きだったー!?」

静香
「福山雅秋ね…かっこよくて最高だったわ!」

スネ夫
「緑の巨人伝のナエちゃん…可愛かったよねー」

ジャイアン
「たか子ちゃんだな、俺の歌声をあんなに褒めてくれたのはあの子が初めてだからな」

のび太
「僕はゲストの皆全員が大好きだー!」


さあ!ドラえもん のび太の大魔境 second season!
始まるよー!!


姫の監禁場所がバミューダトライアングルの海底鬼岩城であると知ったドラミ達は海底人、エルの下へ協力を要請するのであった……

 

 

エル

「なるほど、そう言う事か…しかしそうなるといくつか疑問が浮かび上がるね」

 

 

のび太らから一通りの事情を聴いたエルは、腕を組んでそう言った。

 

 

ドラミ

「ええ、まず何故姫の居場所がバウワンコとはまったく関係のない鬼岩城なのか」

 

 

スネ夫

「そしてもう一つ、そもそも鬼岩城は僕らとの戦いで破壊されているんだ、鬼岩城の親玉、"ポセイドン"もね」

 

 

ポセイドン…アトランチスの自動報復システムを司っていたコンピュータ。ドラえもんらに破壊される。

 

 

ドラミ

「鬼岩城はポセイドンによって管轄されていたのよね? 再び鬼岩城が動き出したとなると……」

 

 

そして一同はある結論に辿り着いた。

 

 

のび太

「考えられる可能性は一つ……ポセイドンが復活したと言う事だよ」

 

 

死者が蘇る

 

一同はその事がとても信じられなかった。

 

 

エル

「ありえない!!あの時ポセイドンは完全に消滅したはずだよ!」

 

 

スネ夫

「確かに…あの時僕たちは間違いなくポセイドンを倒した。それは動かぬ事実だね…。」

 

 

スネ夫は腕を組み、神妙な顔をした。

 

 

のび太

「でも情報を吐いた門番が嘘をついているとは思えないんだ。さとりヘルメットは必ず相手の心を読むんだ」

 

スネ夫

「死者の復活………一体どんなマジックを使ったんだろうね…。」

 

ドラミ

「とにかく…考えてる暇はないの。一刻も早く王妃を助け出すのよ!」

 

 

エル

「……分かったよ、兵を引き連れてバミューダトライアングルを目指そう! いくら奴らが敵でも、我が軍の勢力を以ってすれば、勝機は十二分にある!」

 

 

のび太

「ちょっと待って、残念ながら兵を引き連れて行くのは無理だよ」

 

 

奮起するエルであったがのび太はそれを遮る。

 

 

エル

「何故だい?」

 

 

のび太

「忘れたの? バミューダトライアングル…魔の三角海域にはバリアが張られていたでしょ?」

 

 

エル

「あ…そうだったね…」

 

 

そう、バミューダトライアングルのバリアに生身で触れようものなら防衛システムが作動し、一瞬で粉微塵になってしまうのである。

 

 

ドラミ

「幸い地中にはバリアは伸びていないから地中からの潜入は可能だけど…」

 

 

スネ夫

「地中を突破するにはカメレオン帽子が要るんだよね。ドラミちゃんは持ってるの?」

 

 

カメレオン帽子…一見するとただの帽子だが額のエンブレムを回すと巨大化し、中に入ることが出来る。

擬態モードを使うと地中に超空間を作り、周りからは姿が見えなくなると同時に、地中での移動が可能になる。

 

 

ドラミ

「あるわよ、でも…私のは小さいタイプのだから…せいぜい4人ぐらいしか入らないの…」

 

 

エル

「つまり僕たちはたった4人で鬼岩城へ姫の救出に向かわなければならないと言う訳…か」

 

のび太

「だけど……やるしかない。ここで引き下がる訳には行かないからね。」

 

スネ夫

「フッ、のび太なら言うと思ったよ」

 

 

スネ夫はいつもポジティブなのび太を信じていた。

 

 

ドラミ

「……行きましょう!バミューダトライアングルへ!」

 

エル

「……ああ! 作戦開始は明日の早朝、まだ寝静まっている敵を叩くよ!」

 

一同

「うん!/ええ!」

 

 

エル達は奮起し、作戦開始に向けて動き出した……。

 

 

 

 

 

一方ジャイアン達は…

 

 

 

 

 

 

静香

「チッポちゃん。ペコの様子はどう?」

 

 

ジャイアンらはペコの看病のために集落に留まる事を余儀無くされていた。時刻は午後17時、のび太達のいる場所からは、約6時間ほどの時差がある。

 

 

チッポ

「容態は落ち着いてるよ。あとは自然治癒に任せよう」

 

 

ジャイアン

「そう…か」

 

 

ジャイアンは安心した様子で呟いた。

 

 

ドラえもん

「……さっきのび太君たちから連絡があった。向こうは無事にムー連邦に到着したらしい。そして王妃の奪還作戦は明日の早朝に行うってさ…」

 

 

ペコ

「そう…ですか」

 

 

ジャイアン

「……!ペコ!気が付いてたのか!?」

 

 

ペコ

「今ちょうど目覚めた所です……彼らならきっと助け出してくれる…」

 

 

ペコはかすれた声で微笑しながら言う

 

 

静香

「……斬られた相手の事を覚えてる…?」

 

 

静香はペコを襲った張本人について尋ねる。

 

 

ペコ

「ええ…彼は間違いなく…サベールです。あの見慣れた太刀筋は……彼のものです…。」

 

 

ジャイアン

「これではっきりしたな…サベールがペコを襲ったって事実がな」

 

 

ジャイアンは不機嫌そうに言う。

 

しかし……

 

 

ペコ

「待って下さい武さん…私にはどうしてもサベールが悪者には見えないんです…彼の心には「善」がある…」

 

 

ジャイアン

「善だと…?どういうことだ?」

 

 

ペコはサベールの過去について話し始めた。

 

 

何故サベールは4年前、ダブランダーに味方したのか。

 

 

謎が、明るみに出る……

 

 




次回は完全にサベールの過去を捏造していきます(笑)

それでは!また次のお話で!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サベールの過去

ドラえもん
「いよいよ作者にも夏休みが始まったらしいねー」

のび太
「夏休みは「大長編ドラえもん」の代名詞でもあるよね」

静香
「でも「ドラえもん」じゃ同じ夏休みが永久に回ってきてるような…」

ジャイアン
「まともな返しはいらねーぜ、しずかちゃん」

スネ夫
「皆さんもしっかり夏休みを楽しみましょう!
さあ!始まるよー!」


のび太らが鬼岩城を目指している頃…

 

怪我による気絶から目を覚ましたペコはバウワンコの天才剣士、サベールの過去の事について話し始めていた…

 

 

ペコ

「サベールは王国から遠く離れた辺境の地で産まれました。しかしそのサベールの故郷は……被差別部落だったのです…」

 

静香

「………え?」

 

 

ペコの言葉に、静香は思わず聞き返した。

 

 

ドラえもん

「産まれただけで差別を受ける地域か……バウワンコにもそんな物があったなんて…」

 

ペコ

「今では考えが変わり、差別を受ける人は殆どいなくなりましたが……当時は酷い仕打ちを受けていたそうです」

 

 

ペコは話を続けた……

 

 

ペコ

「サベールの両親は、サベールを産んだ直後に離婚し、母子家庭でサベールは育ちました。彼は今や屈強な剣士ですが、幼少期は喧嘩も弱く、とても泣き虫だったそうです」

 

ドラえもん

「あの厳格だったサベールが……」

 

ペコ

「学校では部落出身者と言う事でサベールは陰湿かつ壮絶ないじめを受けたそうですが、彼が泣いて家に帰ると、サベールの母はサベールが泣き止むまでずっと頭を撫でて励ましていたそうです…」

 

ジャイアン

「……………」

 

 

ジャイアンは腕を組み、ひたすら黙ってペコの話を聞いている。

 

 

ペコ

「サベールの心の依り代は…彼の母だけでした。 しかし…ある事件をきっかけに、彼の人生は大きく変わることになります…」

 

ドラえもん

「ある…事件?」

 

ペコ

「彼がまだ13歳の頃です……。ある雨の日、サベールの家に突然強盗が押し入ってきたのです…その強盗はサベールの故郷の村の住居を立て続けに狙い、殺しをも躊躇わない非情な強盗でした」

 

静香

「……悪質ね」

 

ペコ

「サベールの母は強盗からの攻撃からサベールを庇い……そのまま帰らぬ人となりました…」

 

静香

「そんな…」

 

ドラえもん

「……酷い」

 

 

ドラえもんと静香は事の理不尽さに、思わず俯いてしまった。

 

 

ペコ

「母が強盗から攻撃を受けたことに激昂したサベールは、人が変わったように剣を取り、瞬く間に強盗2名を殺害しました…。彼の片目の傷は、その際に付いた様です…。その日から彼は変わりました……ただひたすら、剣士として腕を磨き強くなる…自分の目の前で死んでいった母の為に…」

 

ジャイアン

「…………」

 

 

ジャイアンは目を瞑り、腕を組んだままだった。

 

 

ペコ

「そしてその腕を私の父に見込まれたサベールは、ついに王直属の騎士団のトップに成り上がりました。5年前に起こった王国の内乱の際には、『豪腕のブルスス』と双璧を成す若き猛将、『迅速のサベール』として、国の内乱を見事に治めたとして知られています。」

 

ドラえもん

「そういうことだったのか…」

 

静香

「でも…それじゃあ何故王様を裏切って、ダブランダーの手下なんかになったの…?」

 

 

ペコに疑問を投げかける静香だったが、ペコよりも早くジャイアンは答えた。

 

 

ジャイアン

「奴にとって…正義とは何か分からなかったんだろうな…ただ強い事が正義だと思ってたんだ…」

 

静香

「だから圧倒的な兵力を持っていたダブランダーの下についたのね…」

 

ペコ

「彼の過去は、間違いなく彼を強くしました……しかしそれと同時に、彼の過去は彼自身を苦しめるんです……。」

 

 

サベールは今、底の見えない闇を見ている…

 

ペコは、「どうしてもサベールを助けたい」

 

そう考えていた……

 

 

ペコ

「サベールは…元は私が幼い頃の剣術の師でした…。私はそんな彼を見捨てる訳には行きません。」

 

ペコ

「皆さん……彼を私たちのチームに入れるように説得しましょう、今ならまだ…助けることが出来るかも知れない」

 

 

ドラえもん

「……相当厳しいね…」

 

 

ジャイアン

「大丈夫だ」

 

 

ジャイアンは確信があるような目をして言った。

 

 

ジャイアン

「奴は必ずチームに入る……奴に善の心がある限りな」

 

 

 

サベールのチーム入り…それは大きな力になると考えたペコは何としても彼を仲間に加えようとしていた……

 

 

チッポ

「みんな、今夜はどうする? よかったらうちに泊まっていかないか? おいらの親にも話はつけたよ」

 

 

時刻は既に18時を迎えている。

夕日がジャングルを照りつけている時間だ。

 

 

静香

「でも…のび太さん達はどうするの? すぐに応援にいかなきゃ…」

 

ドラえもん

「かと言ってペコをこのまま置いて行くわけにはいかない…サベールの件もね」

 

ジャイアン

「今は信じるしかねえ……奴らの腕をな」

 

 

 

こうして一日目は終了し、全員は眠りについた。

 

 

 

そんな彼らを、木の上に座った小さな猿の様な生き物は見ていた…

 

 

???

「……ムギー!」 シュッ!

 

 

そしてそれは瞬く間に姿を消した。

 

 

 

 

 

 

場所は宮殿の一室、敵のリーダー格の男は王の椅子に座っている…

 

 

???

「成る程な……逃げ失せた王国の住民共はジャングルに集落をつくっていたか……それにやつらも4人ではあるがそこにいるとはな…」

 

 

猿の様な生き物はジャイアンらの偵察をおこない、それを敵のリーダー格に報告するという役割を担っていた。

 

 

???

「残った住民と小僧らの始末は私の部隊に任せてもらおうか」

 

 

一人の幹部が機会音の入った声で言う。

 

 

???

「よかろう…もうあの部隊は配備してあるのか?」

 

???

「もうすでに済ませてあるわ…奴らを消すためにな…」

 

 

???

「流石、手際が良いな……メカトピア総司令官、『ゼクト』…! あの兵団を率いていただけはある。」

 

 

総司令官

「明日の夜…襲撃を開始する。生け捕りなんぞ甘ったるい物は要らぬ……皆殺しだ…!」

 

 

 

敵の幹部…「ゼクト」 別称:「総司令官」は明日の襲撃に向けて準備を始めた…

 

しかしジャイアン達はその事実を知らない…

 

 

 




今回は、澤野弘之氏の「K2」という曲を流し、それをイメージしながら執筆を行いました。
サベールの過去や彼の心中の闇と良くマッチしている楽曲なので、良ければお聞き下さい(笑)

さて、敵の幹部の一人が発覚しましたねー
何故倒した筈の総司令官が生きているのか、それは後々…
それではまた!!

※ゼクトとは私が命名しました。命名した理由は、総司令官だけでは何かと書くのが不便だからです(笑)
元ネタは、某ライダーシリーズに登場する組織です(笑)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サベールへの接触

のび太
「両サイドの話を書くとなると、やっぱり僕たちの出番が少なくなっちゃうね〜」

スネ夫
「確かに、このハンサムな僕がいないドラえもんなんてドラえもんじゃない!!」

一同
『それはない』

スネ夫
「え〜!!?何だよそれ!」

ドラミ
「ささ、始まるわよー!」

スネ夫
「待ってよ〜!!!」


鳥の囀りが聞こえる……

 

何時もと変わらない朝である。

 

 

サベール

「ん………」

 

 

目を覚ましたサベールは、目をこすりながらベットから起き上がった。

 

サベールは王国から遠く離れた場所に4年前から家を建て、人知れず暮らしていた。

 

 

サベール

「……昨日私が襲った相手……間違いない、クンタックだ……今更謝っても許してはくれないだろう……それに私は何処にも属さないと決めたのだからな」

 

 

サベールは4年前の敗北以来、誰の手も借りず、孤立無援で生きて来た。

彼はのび太との勝負の敗因が、組織に入ったことによる油断と慢心であったからだと考えた。

だからサベールは敢えて孤独になる事で、過去の自分にけじめを付けるつもりだったのだ。

 

 

 

サベールは身支度をし、外へ出た。

ジャングルと言えども早朝だ、それなりに気温は低い。

サベールは少し肌寒さを感じながら歩き始めた。

行き先はサベールの家から少し離れた彼の母の墓。

彼は毎朝、母の墓へ通うことを日課にしていた…

 

 

 

サベール

「……………」

 

 

母の墓に着くとサベールは墓の前に花束を供え、黙祷をした……

 

 

 

サベール

「母上、あなたが亡くなってから今日で丁度10年が経ちます……あなたの最後の言葉を……私はまだ覚えています……」

 

 

サベールの母は死ぬ間際に、サベールへ最後の言葉を遺していた…

 

 

サベールの母

(サベール……今は友達が出来なくて一人でも……きっといつか…あなたを認めてくれる友達が出来るわ…)

 

 

(強くなりなさい、自分のため…そして…"友達"の為に…)

 

 

 

そんな言葉をサベールに遺し、彼女は息を引き取った……

 

 

 

サベール

「母上、私はまだ弱い…友人すら出来ていない……あなたとの約束を私は果たせたのでしょうか…?」

 

 

その時、サベールの目には涙があった……

 

 

サベール

「私は4年前…やってはならない事をした……だから今はその贖罪として……国を襲った集団を立て続けに襲撃しています……しかしその際、クンタック陛下をも傷付けてしまった…」

 

 

サベールのペコへの攻撃。

それはチッポの言う通り、わざとでは無かった…

 

 

サベール

「私は……どうすれば良いのですか…」

 

 

 

途方に暮れ、泣き崩れるサベールに声を掛ける者達がいた…

 

 

 

 

 

???

「やっと見つけたぜ、おい! お前サベールだろ!?」

 

 

サベール

「……! 誰だ!」

 

 

サベールは咄嗟に涙を拭い、腰に差した剣の柄を握りながら後ろを振り返った。

 

 

そこには…ドラえもん、静香、ジャイアンが居た……

 

 

 

静香

「やっぱり間違いなかったわね…サベールは生きていた」

 

 

サベール

「お前達は……!?」

 

 

サベールは目を丸くし、かつての敵との邂逅に戸惑いを隠せなかった。

 

 

ドラえもん

「ペコ…いや、クンタック陛下から頼まれて来たんだ。単刀直入に言うよ…サベール、僕らの仲間に入って欲しい…」

 

 

そう告げるとドラえもんは頭を下げた。

 

 

サベール

「な……」

 

 

サベールはドラえもんの言葉に驚くが、すぐにこう返した。

 

 

サベール

「……断る」

 

 

ジャイアン

「どうしてだよ? 聞いたぜ…お前は王国を襲った連中を倒し続けているってな……俺らの敵もそいつらなんだ!! 『迅速のサベール』って言われてた奴の力を……俺たちに貸してくれ!」

 

 

ジャイアンは深く頭を下げるが、サベールの表情は一つも変わらない。

 

 

サベール

「……失せろ。『迅速のサベール』は、4年前に死んだ。今残っているのは心の無いただの廃人だ。」

 

 

静香

「そんな事言ったって…あなたには分かっていなくてもあなたには善の心があるの…! だからお願い…」

 

 

サベール

「善だと? 私にはそんな物は似合わない。私は悪役で十分だ…」

 

 

ドラえもん

「例え悪役でも……人を助ける事はできる…! それに人を思う心が…君にはまだ残ってる筈だ!」

 

 

サベール

「…これ以上構うのなら…斬るぞ。まだ子供だからと言って容赦はしない。」

 

 

サベールはドラえもん達に鋭い眼差しを向け、腰に下げた剣の柄に手を掛ける。

それがはったりのようには到底思えなかった。

 

 

ドラえもん&静香

「……!!」

 

 

サベールの行動に2人は思わず身構えたが……

 

 

 

ジャイアン

「………分かった」

 

静香

「武さん!?」

 

 

ジャイアン

「考えさせる時間をやる、もし仲間になる気があるなら…

この先の集落に午後5時に来い、場所は知ってんだろ」

 

 

ドラえもん

「ジャイアン…それでいいの…?」

 

 

ドラえもんはジャイアンに小声で問いかけた。

 

 

ジャイアン

「あくまで本人の意思だ。無理矢理チームに入れても意味がねえ」

 

 

静香

「……それもそうね」

 

 

サベール

「分かった……だが期待はしないことだ。」

 

 

 

そう言うとサベールはジャングルの奥へ消えて行った。

 

現時刻は午前7時である。

 

 

ドラえもん

「…一旦ペコの下へ戻ろう。」

 

 

ドラえもん達はペコに途中経過を話す為に集落へ戻って行った…

 

 

 

 

 

一方その頃……宮殿では……

 

 

総司令官

「全体整列!!!!」

 

 

ザッ!!!

 

 

ゼクト総司令官率いる約1000体の兵士達は一斉に編隊を組んで整列する。

 

 

総司令官

「今回の作戦は、死に損ない共を皆殺しにすることだ!

少しでも敵に情けを掛ける者が居れば……その場で処刑する!!!分かったな!!」

 

 

兵士達

「ハッ!!!!」

 

 

総司令官

「作戦開始は今夜12時だ!!!準備を怠るな!!!」

 

 

兵士達

「ハッ!!!」

 

 

 

 

総司令官は集落の襲撃の為の準備を着々と進めていた…

 

激闘が……始まる…

 

 

 

 




スネ夫
「あのさ、今回ジャイアンかっこよすぎないか?」

静香
「確かに台詞が大人びてたわね、作者が言うにはね『キャラクターの台詞などは元ネタがかなりある』らしいから……武さんの台詞もどこからか拾ってきたんでしょう」

のび太
「要するにパクりだね、うん」

ドラえもん
「まあいいじゃない、それでは!またねー!!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

臆病であること

どうも、最近のび太とエルとの関係が希薄だと感じ出したので、このようなエピソードを挿入する事を決めました。

それではどうぞ


スピアナ王妃の奪還作戦の前夜

 

ムー連邦 大統領公邸 宿泊棟

 

時刻は既に23時を指している。

 

ドラミを始めとした一同はエル達海底人が用意したそれぞれの宿泊室にて、既に眠りに就いていた。

 

ある1人を除いては……

 

 

 

 

のび太

「……………」

 

 

 

のび太はベッドに入ってもどうにも眠りに就くことが出来ず、同じ部屋で寝付いていたスネ夫を残して宿泊室を後にし、薄暗い宿泊棟の廊下から外の景色を眺めた。

深夜の海底都市は、地上で見る都市の夜景に劣らぬ程華美な物であった。

海底が都市の灯りによって灯されている幻想的な光景は、のび太にとっては新鮮で、思わずその夜景に心を奪われた。

 

 

 

 

 

 

 

エル

「眠れないのかい?」

 

 

のび太の後ろから、いつの間にかのび太の後ろに立っていたエルが声を掛けた。

 

 

のび太

「うん……」

 

 

のび太は思わず振り返って軽く頷くと、再び視線を外の夜景に移した。

 

そんなのび太の様子を微笑しながら、エルはのび太の横に歩み寄った。

 

 

エル

「どうして…眠れないんだ?」

 

 

エルはのび太の顔を見て問うた。

 

 

のび太

「………心配なんだ、明日の作戦…。……上手く行くのかなって思ってさ……」

 

 

そう言うとのび太はエルから目線を逸らした。

 

 

のび太

「作戦会議の時はまだ精神的には大丈夫だったんだ。だけど……いざ明日が作戦開始の日だって実感した瞬間、明日の事が不安で不安で仕方無くなったんだ…。「もしかしたら僕達の仲間の誰かが死んじゃうかも知れない」って…」

 

エル

「…………」

 

 

エルは真剣な顔つきで、黙々とのび太の話を聞く。

 

 

のび太

「それだけじゃないよ。…もし奪還作戦に失敗したら……僕はペコにどんな顔して向き合えば良いのかって…。そう思ったら……怖くてさ……」

 

 

のび太は内なる心情を吐露すると、俯くように深く目を伏せた。皆の前では平静を装っていたのび太だったが、心中では臆病な気持ちに駆られ、震えていたのだ。

 

しかし心中を打ち明けたのび太に、エルは笑いながら返した。

 

 

 

 

 

エル

「強いんだな……君は。」

 

 

のび太

「……え?」

 

 

思いがけないエルの言葉に、のび太は顔を上げた。

続けてエルは口を開く。

 

 

 

エル

「行き当たりばったりなんかじゃなくて、ちゃんと先を見据える事が出来てる。そういう人材こそが、皆を守るんだよ…。」

 

 

そう言うとエルは夜景を背にし、窓際にもたれかかった。

 

 

のび太

「そんな……僕はただ……恐怖に震えてるだけだよ…。皆を守るなんて……僕には出来ない。」

 

エル

「それは違うよ。"臆病"だからこそ、守れるんだ。」

 

 

エルの言葉に、のび太は目を丸くした。

 

 

エル

「戦いで大切な物は、圧倒的な力でも、聡明な頭脳でも無い。大切なのは……"臆病さ"なんだよ。」

 

のび太

「臆病……さ…?」

 

 

のび太はエルの言葉に疑問を呈する。

そのままエルは続けた。

 

 

エル

「臆病とは、裏を返せば慎重である事。そして慎重である者は、常に最悪の事態を想定しているんだ…。それが君だ。」

 

 

そしてエルはのび太を指差した。

 

 

エル

「君は自分じゃ気付いてないみたいだけど…、思い返せば、今までだってそうやって様々な困難を乗り越えて来たんじゃないかな?」

 

のび太

「ーー!!」

 

 

 

エルの言葉の言葉を聞いたのび太は、今まで繰り広げてきた冒険を思い返した。

 

 

 

 

 

 

エル

「……立派だよ、君は。……自信を持て。」

 

 

そう言うとエルは右手をのび太の肩に置いた。

 

 

のび太

「エルさん……」

 

 

そしてエルの言葉を聞いたのび太の震えは、既に止まっていた……

 

 

 

ドラミ

「………ふふ」

 

 

そんな2人の様子を、柱の陰からこっそりと見ていたドラミは微笑すると、その場を後にした……

 

 

 

 

 

 

 

 

そして2人は廊下のベンチに腰をかけ、談話を始めた……

 

 

 

 

のび太

「ねえ、エルさんは……戦いが怖くないの? こんな状況でも冷静だし…」

 

 

のび太はエルに問うた。

 

 

エル

「怖いさ。誰だって怖いのは当たり前だ。だけどね……怖いからといって逃げても良いって事にはならないだろ? 」

 

エル

「僕は君達に返しきれないほどの恩がある。その借りを少しでも多く返さなきゃならない。だから僕は逃げる訳には行かない………そう思ってるだけさ。」

 

 

そう言うとエルはのび太に笑顔を向けた。

 

 

 

のび太

「……ハハ、やっぱり強いなあ、エルさんは」

 

エル

「君こそ……な」

 

 

 

そして2人は互いに拳を合わせ、深く握手を交わした……




やはり人間ドラマを描くのは楽しいですね(笑)
何故だか心がほっこりします(笑)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

First Card

ドラえもん
「いやー今回は皆がキレまくるよ(笑)」

ジャイアン
「タイトルの意味……わかんねーな」

スネ夫
「細かいことはいいんだよ、それではどうぞ!!」


ドラえもん達は一旦集落に戻り、寝込んでいるペコに事情を説明していた…

 

 

ドラえもん

「ーーという訳なんだ。」

 

ペコ

「やはり…簡単には行きませんね…。」

 

静香

「でもまだサベールが来ないと決まった訳じゃないわ、とにかく5時まで待ちましょう!」

 

ジャイアン

「ああ、今は午前11時か…あと6時間だな。」

 

ドラえもん

「それまで何をしようか…。」

 

 

サベールとの約束の時間まで6時間。

時間に余裕のあるドラえもん達は残った時間をどう過ごすか考えていた…

 

 

ペコ

「そういえば、のび太さん達の方は今どうされているでしょうか…?」

 

 

ペコは何気なく呟いた。

 

 

ドラえもん

「そうだ!もう王妃を救出できていてもおかしくない時間だ!」

 

 

するとその言葉に、ドラえもんは咄嗟に反応した。

 

 

静香

「皆ならきっとやってくれてるわよ!」

 

ペコ

「そうですね……きっと!」

 

 

静香の言葉に、ペコは笑みをこぼした。

 

そしてドラえもんはポケットから腕ラジオを取り出すとのび太にコールする。

 

しかし……

 

 

 

ドラえもん

「……どうしたんだ? ……通じない…!!」

 

ジャイアン

「何だと…!?」

 

静香

「のび太さん……どうしちゃったの…?」

 

 

ジャイアン達は激しく動揺した。

 

 

ドラえもん

「頼む…! 応えてくれ…!!」

 

 

ドラえもんはのび太との通話を試みようと、何度ものび太の腕ラジオにかけ直していた。

 

しかしそれでものび太からの応答は無かった。

 

 

ジャイアン

「ドラえもん、腕ラジオを使った通信が出来ない場所っていうのはあるのか……?」

 

 

ジャイアンはドラえもんに問いただした。

 

 

ドラえもん

「……腕ラジオは世界のどこに居ても通信が出来る道具なんだ…。だからのび太君達が通信の圏外に居る可能性は……ない」

 

 

ドラえもんは肩を落とし、落胆した。

 

 

ペコ

「恐らく……腕ラジオの故障、もしくは腕ラジオを何者かに壊されたのでしょう…。」

 

ジャイアン

「………くそっ!!俺が助けに行く!」

 

ドラえもん

「無駄だよジャイアン!!」

 

 

ジャイアンはのび太らを助けようと、民家から出ようとするが、ドラえもんがそれを制止する。

 

 

ジャイアン

「ドラえもん……くそっ!!」

 

 

咄嗟に我に返ったジャイアンは、もどかしげな表情で家の梁を強く叩いた。

 

 

ドラえもん

「皆……もう一度コールする。それでもしのび太君が出なかったら…一枚目の切り札を切る。」

 

 

ジャイアン

「何だって…?…切り札…?」

 

静香

「何よ……一枚目のって…?」

 

ペコ

「そんな物があるのですか?」

 

 

切り札。

ドラえもんは確かにそう言った。

一同の頭には疑問しか無かった…しかしドラえもんはこう言った…。

 

 

ドラえもん

「…飽くまで出なかったらの話だよ……じゃあ、コールするよ…。」

 

ドラえもんは腕ラジオを操作し、のび太に繋いだ。

 

すると……

 

 

 

ピッ!

 

 

ドラえもんがのび太の腕ラジオにコールしてから数秒程で、向こうから応答があったのだ。

 

 

 

 

ドラえもん

「通じた!! のび太君! 皆! 大丈夫かい!?」

 

ジャイアン

「心配させやがって…バカヤローが。」

 

静香

「のび太さん…。」

 

ペコ

「信じてました…。」

 

 

通信の応答があった事に全員は安堵の表情を浮かべた。

 

しかし…

 

 

 

 

 

 

???

《4人は大丈夫だぞ? 4人仲良く捕まっているがねぇ!!》

 

 

その声の持ち主はのび太では無かった。

当然スネ夫、ドラミ、エルの声でも無い。

 

 

ドラえもん

「な……誰だお前は!!」

 

???

《おっと、忘れたのか? 4年前に一度会ってる筈だが?》

 

ジャイアン

「4年前だと!?」

 

 

通信先の声の主は思わせぶりな発言をし、ジャイアン達の混乱を仰いだ。

 

しかし、ジャイアン達の中でただ一人、この状況下で全く混乱していない者が居た……。

 

 

静香

「それはそうと……のび太さんを…皆をどうしたの……"ポセイドン"っ!!!」

 

一同

『!!??』

 

ポセイドン

《ほう…やはりお前は覚えていたか……源 静香。》

 

静香

「その声…忘れもしないわ…!」

 

 

静香は因縁の相手、ポセイドンとの喜ばしくない再開に、怒りを覚えた。

 

 

ドラえもん

「どういう事!? 何故僕らが倒したポセイドンが生きているんだ!」

 

ペコ

「まさか…死者が蘇るとでも言うのか…?」

 

静香

「何故かは分からないわ……でも海底鬼岩城とこの声……ポセイドンしかあり得ないと思ったの!」

 

ポセイドン

《流石だな小娘が。貴様らの仲間はワシが率いる「鉄騎隊六人衆」が捕らえたぞ…!! どうだ? 仲間の声を聞きたいか?》

 

ジャイアン

「鉄騎隊六人衆だと…?そいつらにのび太達はやられたってのか…? 奴らがそんなタマかよ!!」

 

 

ジャイアンの目には、悔しさがあった。

親友が敵に打ちのめされてしまった事実を認めたく無いという悔しさが。

 

 

 

静香

「……皆の声を…聞かせて。」

 

ポセイドン

《おい、貴様らの仲間が話たがっておるぞ!》

 

 

 

 

のび太

《静香……ちゃん…皆…来ちゃ…駄目だ…。》

 

 

腕ラジオ越しに、のび太の今にも消え入りそうな声が聞こえて来た……

 

 

静香

「のび太さん…!! 残る3人は無事なの…!?」

 

のび太

《皆……ボロボロだけど…辛うじて生きてるよ…。》

 

ドラえもん

「ボロボロ…? ポセイドン……お前!! 皆に何をしたんだ!!」

 

 

ドラえもんはのび太の言葉を聞き、ポセイドンに向けて怒りを露わにした。

 

 

ポセイドン

《正義の鉄槌を下したまでだ!!》

 

 

ドラミ

《この…卑怯者!!》

 

スネ夫

《…許せない!》

 

エル

《汚い手を使ってまで……勝ちたいのか!! お前は!!》

 

ポセイドン

《おっと、まだ制裁が足りんようだな……やれ》

 

 

 

ドラミ

《きゃあああ!!!》

 

スネ夫

《うう!!くそっ!!!》

 

エル

《ぐあああ!!腕……がぁ!》

 

 

ポセイドンは部下に指示を出し、徹底的にドラミ達を痛めつけている様子であった…

 

 

ジャイアン

「止めろ!! 頼むから止めてくれ!!」

 

 

ジャイアンはポセイドンに、攻撃を止めろと懇願した。

 

しかし……

 

 

ポセイドン

《それは出来んなあ! こやつらはワシに二度も逆らった悪だ! だからもっと痛めつけんとなあ! フハハハハ!》

 

 

ポセイドンに対するジャイアンの願いは、残酷なまでに切り捨てられた。

 

そしてポセイドンの声の後ろから聞こえる殴打の音は、より一層激しさを増していった………

 

 

 

ジャイアン

「てめえら……!! こんな事してタダで済むと思うんじゃねえぞ!!」

 

 

ジャイアンはギリギリと歯軋りをしながら、目をギラつかせて拳を深く握り締めた。

 

 

静香

「ポセイドン……何て事を…!!」

 

ペコ

「……許せません!!」

 

 

全員の目は既に激しい怒りに満ちていた…。

 

 

ポセイドン

《フハハハハ!!! 哀れだな!! 王妃を助けようと乗り込んだかと思えば、逆に自分達が捕まるとは!! もう貴様らに仲間は居ない!! 大人しく投降しろ!! フハハハハ!!》

 

 

ポセイドンは腕ラジオ越しにドラえもん達を見下すように高笑いをする。

 

 

ドラえもん

「………皆、僕はもう…怒りを抑えきれない…!! 切り札を…切らせてもらう!!」

 

 

ドラえもんはそう言った後にポケットから謎のカードを取り出した…!!

そしてそのカードは謎の光を発した!

 

 

ポセイドン

《ん? 何だ? 何をしている?》

 

静香

「一体そのカードは…」

 

ジャイアン

「何なんだ…?」

 

ペコ

「それが…切り札…なのですか?」

 

ドラえもん

「タイム電話!!」

 

 

ドラえもんは3人の言葉を無視し、更にポケットから道具を取り出す!

 

 

タイム電話…時空を超えての通話が可能な電話機。

 

 

ドラえもんはタイム電話を操作すると受話器を耳に持って行き、通話を始めた。

 

 

ジャイアン

「一体何をするつもりなんだ…?」

 

 

ドラえもんの行動の意味が全く分からない一同であったが、ドラえもんに何か考えがあると言うのは分かっていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラえもん

「もしもし、久しぶりだね……"皆"、緊急事態だ!! こちらから時間と座標を転送するから至急そこへ向かって欲しい! ドラミ達が……捕まっているんだ…! 必ずテキオー灯を浴びてからそこへ向かって欲しい! 頼んだよ!」

 

 

ドラえもんは電話の奥の相手…いや、数人に向かって簡潔に事情を説明し、電話を切った。

 

 

ドラえもん

「『もうお前達に仲間は居ない』と言ったなポセイドン、だけどそれはお前達の最大の誤算だ!」

 

 

ポセイドン

《何だ? 何をしようとしている…?》

 

 

ポセイドンはこちらの状況が分からずドラえもんに問いかける。

 

 

ドラえもん

「ポセイドン……お前…いや、お前達がどういう目的で僕達の仲間を傷付けているかなんて分からない……だけど僕らはお前達を絶対に許さないぞ……!!!」

 

 

ポセイドン

《貴様が私達をどう憎もうと状況は変わらんぞ?》

 

 

ドラえもん

「確かにそうだ…僕達はそちらには出向けない。だが僕の仲間をそこへ送り込んだ…!! 並大抵の連中じゃない!! 最後に泣きを見て許しを乞うのは……お前たちだ!!」

 

 

ポセイドン

《……何だと?》

 

 

ドラえもん

「必ず彼らは皆を助け出す!そして必ず…必ず!! お前達を潰す!!!」

 

 

 

ドラえもんの怒り……それはすでに頂点に達していた。

 

 

 

 

 

 

仲間とは一体何なのか…それはタイムホールの中を全速力で駆け抜けて、のび太らの下へ向かっていた…。

 

 

 

 

 

 

???

「久しぶりに呼び出しがあったと思ったらこれだもんな!」

 

 

ドラえもんの仲間のリーダー格が言う。

 

 

???

「あんさんの友達はえらい人遣いや馬遣いが荒いやないか!」

 

 

リーダー格の乗っている馬がリーダー格の男に対して関西弁で文句を言う。

 

 

???

「とにかく急ぎましょう! ドラミさん達が人質に取られている今、彼女達がいつ殺されるかも分かりません!」

 

 

比較的穏やかな性格の者が全員に急ぐ様に言う。

 

 

???

「水がないことを願うである…。」

 

 

水が苦手な一人が特徴的な言い草で言う。

 

 

???

「まあ俺様がいれば十分だろうな!」

 

 

自信に満ち溢れた男が声を張り上げる。

 

 

???

「それはないと思うなあ…。」

 

 

フランクな性格をした者がその発言に対して否定をする。

 

 

???

「…………。」

 

 

一人だけ黙り込んでいる無口な者もいた。

 

 

???

「ほら!この子もそう言ってるよ!」

 

 

どうやら一同は無口の男が何を考えているか分かるようである。

 

 

???

「何だとお前ら!」

 

???

「……!! もうすぐ到着です! 各自!テキオー灯を浴びて下さい!」

 

 

 

そして全員はテキオー灯を浴び、海底鬼岩城に降り立った……。

 

 

 

 

 




静香
「ドラちゃんが呼んだ仲間…一体誰なんでしょう?」

ドラえもん
「もうすでにお察しの方も居るかも知れないけど、詳しくは後々…それでは!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

鉄騎隊六人衆

ドラえもん
「いやー、前回は盛大に鉄騎隊の数を6人なのに5人と誤表記しちゃったね」

静香
「ここが違ってると大きな矛盾になるから作者はすぐに直したんですって」

のび太
「それではどうぞ!」


のび太達に一体何があったのか……

 

時は2時間前に遡る……

 

 

 

 

エル

「………見えたね、鬼岩城だ…」

 

 

のび太達はバミューダトライアングルの防御バリアをカメレオン帽子で突破し、無事に鬼岩城まで辿り着いていた…

 

 

のび太

「やっぱり…鬼岩城はあったね…」

 

スネ夫

「でも…前にここらをうろついていた『鉄騎隊』が居ないね…」

 

 

鉄騎隊…ポセイドンが率いていた軍隊。非常に高い耐久力を持ち、圧倒的な戦闘力でドラえもんらを戦闘不能にまで追い詰めた。

 

 

ドラミ

「それもそうだけど…今は好都合だわ、さっさと乗り込みましょう……通り抜けフープー!!」

 

 

通り抜けフープ…このフープを壁もしくは地面に付けると、壁や地面の原子を動かし、物体をすり抜けて進むことが出来る。

 

 

のび太

「成る程、正面突破は危険だから側面からの侵入をするんだね。確か前回もそうしてたな……」

 

ドラミ

「そういうこと。えーと……どこら辺がいいかしら?」

 

スネ夫

「確か……あの扉に通り抜けフープを付けたら真っ先に鉄騎隊に見つかったのを覚えてるよ」

 

 

スネ夫は4年前の記憶を頼りに言った。

 

 

エル

「しかしあそこ以外に潜入しやすい場所と言ったら……難しいね」

 

ドラミ

「………見付かるのを覚悟で…あそこに通り抜けフープを付けて突破するしか無いわね」

 

 

ドラミはヒヤリとした顔をして言った。

 

 

のび太

「短期決戦だね、真っ先にスピアナさんを助け出して脱出するんだ。戦力じゃ恐らく僕らが負けてるからね」

 

ドラミ

「そうね、よーし……この中から好きな武器を選んでちょうだい」

 

 

ドラミはそう言うとポケットから、水圧砲を二丁、ひらりマント、スモールライトを取り出した。

 

水圧砲……水中で使用する道具。水を圧縮して一気に放出する事が出来る。要はおなじみの空気砲を水中下でも使えるようにしたバージョン。

 

ひらりマント…電磁波の力を利用し、一定の攻撃を跳ね返す事が出来るマント。

 

スモールライト…このライトから発する光を対象物に当てると、その物体を小さくする事が出来る。

 

 

エル

「僕はこの剣があるから武器は要らないね、剣術には少しは自信があるんだ」

 

 

エルは自分の剣を掲げて言った。

のび太は水圧砲を2丁、スネ夫はスモールライト、ドラミはひらりマントを選んだ。

 

 

ドラミ

「じゃあ、準備はいいわね? 突撃!!」

 

 

ドラミは合図と同時に扉に通り抜けフープを付けた。

そしてのび太が先陣を切り、のび太達は通り抜けフープによって出来た穴の中へ一斉に飛び込んだ!

 

しかし…

 

 

のび太

「………あれ? 誰もいないぞ? 前は真っ先に見つかったのに…」

 

 

辺りに何故か、敵がまったく居ないのである。

のび太達は辺りを見渡してみるが、一向に敵が現れる気配などはない。

 

 

 

エル

「妙だね……慎重に進もう」

 

 

 

のび太達は敵を警戒しながら慎重に進んだ。

しかしそれでも敵はまったく現れる気配は無かった。

 

 

スネ夫

「……この先が最深部…ポセイドンが居る筈の大広間だよ…」

 

 

意外にものび太達は、一度も敵と遭遇する事無く最深部へ辿り着いてしまった…

 

 

ドラミ

「おかしすぎるわ…一体どうして…」

 

のび太

「考えてる暇は無いよ、今はこの扉を開けるしか無いんだ」

 

 

嫌な予感を察知したドラミだったがのび太は全員を奮い立たせる様に言った。

 

 

エル

「じゃあ…扉を開けるよ…!」

 

 

エルはその言葉を言うと同時に扉を開けた!

するとそこに居たのは…

 

 

 

スピアナ

「……!! あなた方は!?」

 

 

 

大広間の奥の階段の上、そこには作戦の本命、スピアナが居たのである!

 

 

のび太

「助けに来ました…スピアナさん…」

 

スピアナ

「あなたはもしや…4年前の…!」

 

 

スピアナは口を手で覆い、思いがけないのび太達の助けに驚きを隠せなかったわ、

 

 

スネ夫

「今そっちに行くから待ってて下さい!」

 

エル

「………何かがおかしい……」

 

ドラミ

「何…? この嫌な感じは…?」

 

 

ドラミとエルだけは、この大広間に漂う違和感を感じ取っていた。

 

そしてのび太達はスピアナを保護するため、駆け足でスピアナに近寄ろうとした。

 

 

すると……

 

 

スピアナ

「……!! ダメ! 近づいては!」

 

 

スピアナは何かを悟ったような表情で、のび太達に警笛を鳴らした。

 

 

のび太

「え?」

 

 

 

ズバッ!!

 

 

瞬間、謎の斬撃がのび太達を襲った!!

 

 

 

スネ夫

「ぐぅ!!…何だ…これ…!?」

 

のび太

「何も見えなかった…!」

 

エル

「一体どこから攻撃されたんだ…!」

 

ドラミ

「分からないわ!」

 

 

4人は軽く傷を負い、地面に膝を着く!

 

 

???

「フハハハハ!!まんまと引っかかりおって!」

 

 

するとそれは突然姿を現した。

紛れもない、「復讐神 ポセイドン」である。

 

 

エル

「やはりお前か…! ポセイドン!!」

 

ポセイドン

「最初に言っておくが、貴様らを攻撃したのはワシではない! いでよ!『鉄騎隊六人衆』!!!」

 

 

ポセイドンがそう叫ぶと、大広間の周りを囲っていた6本の大柱から、姿を隠していた6人の鉄騎隊が現れた。

しかしどの個体も、通常の鉄騎隊とは似ても似つかない容姿をしている。

 

 

イーグル

「俺の名はイーグル! 我らが鉄騎隊六人衆のリーダーだ! 狙った獲物は逃がさんぞ!!」

 

 

イーグル…六人衆のリーダー格。アメリカの象徴、白頭鷲を模した容姿をしている。

 

 

ドラゴン

「私はドラゴン……悪は粛清しますよ」

 

 

ドラゴン…六人衆のNo.2、比較的落ち着いた性格。中国の象徴、龍を模した容姿をしている。

 

 

ポーラ

「僕はポーラ…皆殺しにしてあげるよ…フフッ」

 

 

ポーラー…六人衆のNo.3。狡猾残忍な性格。北極熊を模した容姿をしている。

 

 

ジャガー

「ワシはジャガーじゃい!!あんたら全員、地獄に送っちゃるけんの!!」

 

 

ジャガー…何故か広島弁と石見弁が混じった独特の言い回しをする。ブラジルの象徴、ジャガーを模した容姿をしている。

 

 

ミノタウロス

「俺様はミノタウロスだぁ!! 猪突猛進!!それが俺様の生き様だぁ!!」

 

 

ミノタウロス…豪快な性格。スペインの象徴、闘牛を模した容姿をしている。

 

 

スネイク

「私…スネイク、どうされたい…? 坊や達?」

 

 

スネイク…六人衆の紅一点。中東の象徴、蛇を模した容姿をしている。

 

 

鉄騎隊六人衆

『我ら! 鉄騎隊六人衆!!!』

 

 

バッ!!

 

 

そして最後に六人衆は、ヒーロー戦隊紛いの決めポーズを決め込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

エル

「………………何なんだ彼らは……?」

 

のび太

「なんか…どこぞの戦隊もの?って感じだね…」

 

ドラミ

「しかも、鷲、龍、熊、ジャガー、牛、蛇って…… 海の要素皆無じゃない…」

 

スネ夫

「しかも台詞が凄くクサイ…」

 

 

 

そんな六人衆に4人は、明らかにドン引きしていた。

 

しかし…

 

 

ポーラ

「ねえ、こいつら僕らを舐めてるよ?」

 

ジャガー

「仕置が必要じゃのう!」

 

イーグル

「……やれ! 殺さない程度にな!」

 

スピアナ

「皆さん! 気を付けて下さい!!」

 

スネ夫

「……分かってますよ…! クサイ台詞を吐くけどこいつら…只者じゃない!」

 

エル

「 それにこいつらから放たれてるプレッシャーは一体…!」

 

ドラミ

「こちらは傷を負ってる上に数じゃこっちが負けてる…状況は不利…!!でもやるしかないわ!」

 

のび太

「来るよ!!」

 

 

こうしてのび太達と鉄騎隊六人衆の交戦が始まった…

 




イーグル
「ついに俺たちの出番だ!!」

ジャイアン
「っておめー誰だよ、ポッと出な上に名前シンプルな癖に出しゃばるのは本編だけにしとけ、ボケ」

イーグル
「す、すんません」

スネ夫
「鉄騎隊六人衆の設定については完全にオリジナルだからねえ、オリジナリティに疎い作者にはキツイところだったんだと」

イーグル
「そ、それではまたねー…」

ジャイアン
「声が小さい!!」

イーグル
「それでは!またねー!!」

ジャイアン
「よし!合格だ!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遅れて参上! ザ・ドラえもんズ!

お待たせしました!ついに彼らの登場です!!

それではどうぞ!


ポセイドンに仕える『鉄騎隊六人衆』

 

のび太達は、六人衆との交戦を開始していた…!

 

 

ポーラ

「死にな!!」

 

 

ポーラは鼻で笑いながらドラミに正拳突きを放つ!

 

 

ドラミ

「ひらりマントーー! えい!」

 

ポーラ

「何コレ? 跳ね返された? まあいっか!!」

 

 

ドラミはポーラの攻撃に合わせひらりマントを振り、ポーラの攻撃を跳ね返した!

 

しかしポーラは構わず打撃攻撃を繰り出し続けた!

 

 

ポーラ

「オラ! オラ! オラァ!」

 

ドラミ

(何こいつ…! 攻撃を跳ね返せば跳ね返す程、マントを振るのが重たくなってくる…! 攻撃をする度に威力が増しているんだわ!)

 

 

ポーラの攻撃は単純だった。ただひたすら殴る、蹴る。

その姿はまるで、腹を空かせた凶暴な北極熊のようであった。

 

 

ポーラ

「守ってるだけじゃあ勝てないよ!!」

 

ドラミ

「確かにそうだわ…でもね…武器は一つとは限らないわよ!!」

 

 

その言葉を言い終えると同時にドラミは、敵の攻撃を跳ね返した瞬間にポケットから水圧砲を取り出した!

 

 

ドラミ

「ドカンッ!!!」

 

ポーラ

「うっ…!!」

 

 

ドラミは攻撃を跳ね返した後の隙を突き、水圧砲をポーラの腹に叩きこんだ!

水圧砲をモロに受けたポーラは数m程吹き飛ばされ、地面に仰向けに倒れ込んだ。

 

 

ドラミ

「やった…」

 

 

ドラミが早速六人衆の一人、ポーラを撃破したと思いきや…

 

 

ポーラ

「痛いなぁ…そんな武器もあったのか…面白い!!」

 

 

なんとポーラは直ぐに立ち上がってしまった!

 

 

ドラミ

(直撃だった筈…タフね…!)

 

 

ポーラ

「さて…このゲーム…どう攻略しようかなぁ!」

 

 

ポーラは舌舐めずりをする。

 

 

ドラミ

「そう簡単にはクリアさせないわよ!」

 

 

両者は再び向かい合った…

 

そして次の瞬間、ドラミに別の者が襲いかかった!

 

 

ジャガー

「うぉぉりゃあ!」

 

ドラミ

「…! 危ないっ!」

 

 

現れたのはジャガーであった。

ジャガーはドラミに牙を剥き、首筋辺りに噛みつこうとするが、ドラミはひらりマントでそれを凌ぐ!

 

 

ジャガー

「おお!? 何じゃあ!? あのマント!」

 

ポーラ

「……うるさいのが来た」

 

ジャガー

「別にいいじゃろ! 不本意じゃが2対1でこっちが有利なんじゃけえの」

 

 

ドラミ

(こっちは4人、対してあっちはポセイドンを含めて7人…!数では圧倒的に不利だわ!)

 

 

ドラミvsジャガー&ポーラ

 

この戦闘は激化していった…

 

一方その頃のび太は…

 

 

のび太

「ドカンッ ドカンッ!」

 

イーグル

「当たらないんだよ! そんな物!」

 

ドラゴン

「傷を負ってるあなたの攻撃など…躱すのは造作もありません」

 

 

のび太は飛行能力を持つ2人に水圧砲を放つが、ベストコンディションとは程遠いのび太は狙いを外してしまう!

 

 

イーグル

「今度はこっちの番だ! 電光石火(ライトニングクロウ)!」

 

ドラゴン

「……灰燼の業火(アッシュ フレイム)!!」

 

 

イーグルは急降下し、鋭い爪でのび太を攻撃しようとし、ドラゴンは何かを溜めるような動作をすると、口から巨大な炎をのび太に向かって吐き出した!

 

 

のび太

「うわっ! 危なっ! てか何だその当て字付きの必殺技!? 正直ダサいし『ドラえもん』は必殺技を出すような漫画じゃないだろ!」

 

 

のび太はそれを紙一重で躱し、メタ発言紛いのツッコミをかました。

 

 

イーグル

「ダサいって言うな!! 昨夜30回も練習したんだぞ!!」

 

ドラゴン

「これでも私の炎は摂氏6000度、当たればただでは済みませんよ…」

 

イーグル

「しかもお前の弾は当たりはしない、どう見てもこっちが有利だ!」

 

のび太

「確かにベストコンディションじゃない…!でも下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる…さ! ドカンッ ドカン!」

 

 

イーグル

「ぐあっ!」

 

ドラゴン

「うぐっ…!」

 

 

のび太の放った弾丸は見事2人に命中した!

 

 

のび太

「ね? 撃ってればその内当たるのさ」

 

 

その頃スネ夫は…

 

 

ミノタウロス

「何だ何だ! そのちっぽけなライトを武器にして俺様に挑もうとは…底が知れるわぁ!!」

 

スネイク

「…期待外れね…坊や♡」

 

スネ夫

「おーおー、ボロクソに言ってくれるねえ」

 

 

ミノタウロスとスネイクはスモールライトの効果を知らずにスネ夫を見下す。そんな2人にスネ夫は苦笑いをした。

 

 

ミノタウロス

「喰らえぃ! 我が必殺のタックルを!」

 

スネイク

「絞め殺してあげるわ…坊や♡」

 

 

ミノタウロスはスネ夫に向ってタックルをし、スネイクはスネ夫に接近して柔軟性のある体を活かして絡み付こうとする。

 

 

スネ夫

「………えい 」

 

 

ポチッ

 

 

スネ夫は呆れた様にスモールライトのボタンを押した。

 

 

ミノタウロス

「何だぁ!? これはぁ!!」

 

スネイク

「体が……ちっさくなってる!?」

 

スネ夫

「ごめん、僕の勝ち。」

 

 

スモールライトの光を浴びたミノタウロスとスネイクは瞬く間に20cm程の大きさになった。

 

 

スネ夫

「まあ確かに初見殺しだね、この道具」

 

 

 

一方エルは…

 

 

ポセイドン

「はぁ…! ふんっ!」

 

エル

「なんの!!」

 

 

ポセイドンは力を込めるような仕草をすると、額辺りから紫色のビームをエルに放つが、エルは持ち前の剣捌きでビームを跳ね返した!

 

 

ポセイドン

「何!? 」

 

エル

「隙ありだ!!」

 

 

ズバッッ!!

 

 

ポセイドン

「ぐああ! 貴様ぁ!!」

 

 

エルはポセイドンに向って剣を振り下ろし、ダメージを与える!

 

 

エル

「舐めるなよ。もう4年前のようにはいかないぞ!!」

 

 

エルの剣撃を受け苦しむポセイドンに、エルは剣を向け挑発をした。

 

 

 

 

 

ドラミ

「ふう、何とか終わりそうね」

 

ポーラ

「この…!」

 

ジャガー

「おお! この黄色い奴! 中々力があるのう! 気に入ったわ!」

 

ドラミ

「黄色い奴って何よ! 私はドラミ!」

 

 

4人は数のハンデをもろともせず、善戦していた…

 

しかしその状況は、敵のある行動によって一変することになる…

 

 

 

 

イーグル

「くそっ!! こうなったら!」

 

のび太

「!! おい! 何処へ行くんだ!」

 

 

イーグルはのび太との戦いから離脱したかと思えば、猛スピードでスピアナの下へ向っていた!

 

 

スピアナ

「きゃああ!」

 

のび太

「な…!? しまった!!」

 

イーグル

「貴様ら! 一歩でも動くと姫の命はないぞ!!」

 

 

イーグルはスピアナを人質に取り、鋭い爪をスピアナの首に当てる!

 

 

イーグル

「武器を捨てて投降しろ!!」

 

 

イーグルはのび太達に向けて投降を呼びかけた。

 

 

 

のび太

「くそっ! なんて汚いやつだ…!!」

 

ドラミ

「のび太さん…あいつだけを撃てない…?」

 

 

ドラミはのび太に小声で問いかけた。

 

 

のび太

「あいつは今王妃に密着している…しかもこの距離だ…拳銃ならまだしも、大弾を発射する水圧砲なんか撃ったら王妃に当たる可能性が大だよ」

 

スネ夫

「……不本意だけど…投降するしかない…」

 

エル

「……しょうがないね…」

 

 

4人は仕方なく武器を捨て、両手を後ろで組んだ。

 

 

 

イーグル

「おっとその前に…ミノタウロスとスネイクを元のサイズに戻して貰おうか。少しでも妙な真似をしたら…この女の首を掻っ切る!!」

 

ドラミ

「……分かったわ」

 

 

ドラミはポケットからビッグライトを取り出し、2人に当てる…

 

 

ミノタウロス

「おお! 元の大きさに戻ったなぁ!!」

 

スネイク

「やってくれたわね……坊や達」

 

イーグル

「よし…そいつらを縛り上げろ」

 

 

のび太

「……ペコ…ごめんっ!!」

 

 

 

のび太は六人衆への投降を余儀なくされた。

 

そしてのび太達は腕を後ろで組まされてから腕を縛られ、地面に膝を着くように全員を並べた。

 

 

 

 

ポーラ

「お前……よくも僕をコケにしてくれたねぇ?」

 

ドラミ

「くっ……!」

 

 

ポーラはニヤリと笑いながらドラミの頬を片手で掴み、自分の方へ引き寄せた。

 

 

ポーラ

「どうしちゃおっかなぁ…?……腕の骨折られるのとかは好き?」

 

ドラミ

「………!!」

 

 

ドラミはポーラの言葉に、思わず恐怖感を抱いた。

 

 

のび太

「止めろ!!」

 

 

のび太はポーラへ向かってそう叫んだ。

 

するとポーラはドラミの頬を掴んでいた手を荒々しく離し、のび太に言った。

 

 

ポーラ

「お前…女庇っていい人気取り? 」

 

 

ポーラの矛先は完全にのび太の方へ向いた…

しかしのび太は臆することなく続けた……

 

 

のび太

「そんな事はどうだっていい……だけど僕の友達には手を出すな!! やるなら…僕をやれ!!」

 

ドラミ

「のび太さん……」

 

 

ドラミはのび太を心配そうに見つめる。

 

 

ポーラ

「お前………痛い目にあいたいみたいだね…!!」

 

 

グチャッ!!

 

 

その瞬間、ポーラはのび太の頭を両手で掴み、勢いよくのび太の顔面に膝蹴りを入れた。

 

それによってのび太の鼻骨は折れ、顔面からは血がポタポタと滴り落ちていた……

 

 

のび太

「うぅっ……!!」

 

 

のび太はあまりの痛みに思わず呻き声を上げた。

 

 

ドラミ

「のび太さん!!」

 

スネ夫

「のび太…!!」

 

エル

「無抵抗の人間を…! 性根が腐っているな…!!」

 

 

ドラミとスネ夫はのび太に向かって叫び、エルはポーラへ怒りの目を向けながら言った。

 

しかしエルのその発言は、ポーラの逆鱗に触れてしまう結果となった……

 

 

ポーラ

「へえ……いい度胸じゃん……おいみんな!! こいつらの相手をしてやれよ!!」

 

 

ポーラは六人衆に「4人を痛めつける」ように促した。

 

 

イーグル

「…分かった。」

 

ドラゴン

「承知しました。」

 

スネイク

「オッケー。」

 

ミノタウロス

「やってやろうではないか…」

 

ジャガー

「…………。」

 

 

そして六人衆はゆっくりとのび太達に近づいて行った……

 

 

のび太達

『……!!!」

 

ポーラ

「覚悟してね? 多分骨1本や2本じゃ済まないから…!」

 

 

ポーラはニヤリと笑った……

 

 

 

ミノタウロス

「おるぁ!!」

 

 

バキッ!!

 

 

スネ夫

「ああ゛!!」

 

 

ミノタウロスの蹴りがスネ夫の脇腹に直撃し、鈍い音を立て、スネ夫は激痛に悶えた。

 

 

ドラミ

「スネ夫さん!!!」

 

エル

「スネ夫くん!!」

 

のび太

「スネ……夫……」

 

 

スネ夫を心配する3人であったが……

 

 

スネイク

「大丈夫よ♡ 彼だけが痛い目にあう訳じゃないんだから…!」

 

 

シュオオオ!!

 

 

するとスネイクの腕であった部分が変化し、しなりの良い鞭のような形状に変わった……

 

 

エル

「……!!」

 

 

エルは思わず目を見開いた。

 

そして……

 

 

スネイク

「えい♡」

 

 

スネイクはその鞭をエルに向かって振り下ろした。

 

 

バシィッ!!

 

 

エル

「うっ!!」

 

 

鞭での攻撃は想像以上の痛みを伴う。

エルはそれに苦悶の表情を浮かべた。

 

 

バシッ! バシッ! バシッ!

 

 

エル

「ぐっ!! あぁ!! クソッ!!」

 

 

そしてスネイクの攻撃は、1度では終わることはなかった。

エルは何度も鞭に打たれ続けた……

 

 

 

 

 

ジャガー

「…………。」

 

 

4人が一方的な暴力を受ける中、ジャガーだけは押し黙って腕を組んで、その様子をジッと見ていた……

 

 

ポーラ

「おいジャガー、何やってるの? お前もやれよ。」

 

 

ポーラはそんな様子のジャガーにのび太達を攻撃するように言った。

 

しかし…

 

 

ジャガー

「無抵抗の相手を嬲るのは趣味じゃないけぇのう。悪いが、ワシは遠慮させてもらうわ。」

 

 

ジャガーは素っ気ない態度でそれを拒んだ。

 

 

ポーラ

「……あっそ、勝手にしろよ……。」

 

 

ポーラは不機嫌そうにジャガーに言った。

 

 

 

 

それから暫く、さっきまでの鬱憤を晴らすかのように一方的な暴力が4人を襲った……

 

 

 

 

 

 

 

実に1時間程は経っただろうか……

 

 

のび太達

『う…う…』

 

 

のび太達は完膚無きまでに叩きのめされていた。

身体中は酷く腫れ上がり、全く身動きが取れないほど、皆は深く傷付いていた……

 

 

ポーラ

「調子に乗るからだよ…フフッ」

 

スネイク

「そう言えばさっきの通話で奴ら、「そっちに仲間を送り込んだ…」って言ってたわね、ポセイドン様」

 

ポセイドン

「ああ、まあどんな奴らが来ようと叩きのめすだけだ。フハハハハ!」

 

 

ご満悦のポセイドンであったが……

 

 

 

 

ドラミ

「どう……かしら…ね?」

 

ポーラ

「ああ?」

 

 

ボロボロのドラミは、今にも消え入りそうな声で言った。

 

 

ドラミ

「『皆』を…舐めない方が…いいわよ…?」

 

 

ドラミの表情は………微かながら笑っていた。

 

 

ミノタウロス

「どうせハッタリだ! 大した敵は来ない! ワハハ!」

 

 

 

それでも六人衆とポセイドンは余裕をかましていた。

しかしその余裕は一瞬で崩れ去った……

 

 

 

 

ドカーーン!!!!

 

 

 

 

ポセイドン

「何だ!? 一体なんの音だ…!?」

 

 

 

ゴオオオオオ!!!

 

 

 

突如鳴り響いた爆音と共に、大広間の壁が崩れ落ちて行く!

 

 

ポセイドン

「壁が………崩れているだと!? まさか……!!!」

 

 

 

その時、ポセイドンはドラえもんの言葉を思い出し、生唾を飲み込んだ。

 

 

(もうお前達に仲間は居ないと言ったなポセイドン、だがそれはお前達の最大の誤算だ!!)

 

 

 

 

 

スネイク

「な……何なのこれは!?」

 

 

ゴオオオオオン!!!

 

 

そして大広間を囲っていた壁は完全に崩れ落ち、凄まじい程の量の土煙が大広間を覆う!

 

 

 

 

タッタッタッタッタッ……

 

 

 

すると崩れた壁の奥から、ドラえもんに似たような姿をした6人の者達が次々と姿を現した!

 

 

 

イーグル

「だ……誰だ貴様らは!!」

 

 

イーグルは激しく動揺した様子で口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王ドラ(ワンドラ)

「ようやく辿り着きましたね……」

 

 

ドラメッドⅢ世

「水があるなんて…ワガハイ聞いてないであるぞ…」

 

 

ドラリーニョ

「テキオー灯浴びてるんだからいいんじゃな〜い?」

 

 

ドラニコフ

「……………」

 

 

エル・マタドーラ

「な? ドラニコフもそう言ってるぜ」

 

 

ドラ・ザ・キッド

「水の事なんざどーでもいいだろ。さて……助けに来たぜ、へちゃむくれ」

 

 

ドラミ

「ハハ…誰が…へちゃむくれよ… 来るのが…ちょっと遅いんじゃない?」

 

 

のび太

「ドラミちゃん…彼らは…?」

 

 

のび太はドラミに問いかける。

 

そしてドラミは満面の笑みで答えた……

 

 

 

ドラミ

「最高の……仲間たちよ…!!」

 

 

 

のび太達のピンチに現れた6人。

それはドラえもんのロボット養成学校時代の仲間たち…

 

 

『ザ・ドラえもんズ』であった!!

 

 

キッド

「さあ、覚悟しろよ。てめえら。」




キッド
「やっと俺達の出番だな」

王ドラ
「最近の『ドラえもん』ではドラえもんズは黒歴史扱いされていましたから、またこうして登場出来るのも嬉しいものですね」

ドラニコフ
「…………」

マタドーラ
「こいつもそう思ってるだとよ」

ドラリーニョ
「でも当然僕たちレギュラーだよね?」

ドラメッド
「寧ろそうでなければ困るである…」

キッド
「別にレギュラーなんていいじゃねーか、次の話から俺たちの戦いが始まるぞ!楽しみにしてくれよな!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ドラえもんズ、ピンチ!?

ジャイアン
「おい、タイトルこれやべえじゃねえか、ドラえもんズの活躍が目的で見てる人も居るんだぜ」

ドラえもん
「大丈夫、いいんだよこのタイトルで」

ドラミ
「ええ… それではどうぞ!!」


狡猾な六人衆に囚われていたのび太達の下へ駆けつけた者たち。

 

 

それはドラえもんのかつての友、『ザ・ドラえもんズ』であった!

 

 

 

ポーラ

「は? ドラえもんズ? だっさい名前だね。フフッ」

 

イーグル

「どんな奴らが来るかと思ったら…虫が6匹か」

 

ミノタウロス

「えらく貧弱そうな連中だなあ! その程度で俺達を倒そうというのかあ!?」

 

六人衆

『アハハハハ!!」

 

 

六人衆はドラえもんズを見下すように大声で笑い飛ばした。

 

しかしキッドはクールに返した…

 

 

 

キッド

「良いのかなー? そんなに 隙 だらけで?」

 

ポーラ

「は?」

 

 

キッドの言葉の意味が分からない六人衆は頭の中にクエスチョンマークを浮かべる。

 

すると、六人衆の後ろの方から誰かの声が聞こえてきた…

 

 

ドラリーニョ

「おーーい! 王妃ってこの人ーー?」

 

 

六人衆は思わず後ろを振り返った。

 

 

ポーラ

「は…?」

 

ジャガー

「何じゃと…?」

 

のび太

「あれ…? いつの間に…?」

 

 

六人衆だけでなくのび太達も目を疑った。

そこにはスピアナのすぐそばでこちらに手を振るドラリーニョの姿があったのだ。

 

 

マタドーラ

「普通に考えてその綺麗なセニョリータしかいないだろ!」

 

王ドラ

「ドラリーニョ。王妃はあなたに任せますよ」

 

ドラリーニョ

「うん! 分かったよー!」

 

 

マタドーラと王ドラは当たり前の様にドラリーニョに返すが、六人衆は一体どうやってドラリーニョがスピアナに簡単に近づけたのか分からなかった。

 

 

イーグル

「な……どういうことだ!? 何をしたんだ貴様ら!」

 

ポーラ

「どうせ何かさっきの奴らみたいに小道具に頼ったんだろ…雑魚のやることさ…!」

 

ドラゴン

「落ち着いて下さい…どんな道具にも攻略法はあります」

 

 

ドラリーニョがどうやって姫に安々と近づけたのか…

六人衆は、ドラミと同じ様に何かしらのひみつ道具を使ったのだと推測した。

 

しかし……

 

 

 

キッド

「ザルにも程があんだろ、お前ら。」

 

王ドラ

「ちょっと何言ってるか分からないですね。」ニヤニヤ

 

ドラメッド

「フォフォフォ、未熟者であるな。お主達。」

 

 

キッドと王ドラとドラメッドは六人衆を小馬鹿にしたような態度を取った。

 

 

ミノタウロス

「何だとぉ! 俺様が未熟者だとぉ!?」

 

イーグル

「馬鹿な! 道具を使わずどうやって俺たちの注意網に引っかからずにあそこに行けたんだ!」

 

スネイク

「……道具じゃないとするなら一体なんなの?」

 

 

ミノタウロスは少しズレたリアクションを取り、イーグルは完全に困惑し、スネイクは不機嫌そうに尋ねる。

 

 

ドラニコフ

「……………ガウ」

 

キッド

「なになに……「僕が脳の足りない君達に教えてあげる」って言ってるぜ」

 

スネイク

(何故わかる…)

 

ミノタウロス

「脳が足りないだとぉー!?」

 

キッド

「……お前一々反応するとこがズレてるよな」

 

ドラゴン

「……茶番は要りません、教えて下さい」

 

 

ミノタウロスの反応に呆れるキッドだったが、ドラゴンが話の腰を折る。

 

 

ドラニコフ

「……………ワウ」

 

キッド

「「君達が大爆笑をしている隙にドラリーニョが王妃の下へ走っていった…それだけだよ」だとさ」

 

 

ポーラ

「は? 走って? 出来るわけないでしょ」

 

キッド

「それが出来るんだな」

 

マタドーラ

「ドラリーニョはドラえもんズ一の「俊足」だ。ある意味仕方ないぜ? お前らが全く反応出来なかったのはな」

 

ドラゴン

「俊足……それだけで…」

 

ジャガー

「ワシらの注意網を掻い潜ったんか?」

 

スネ夫

「……僕らも気付けなかったね…」

 

 

スネ夫は一杯食わされたと言わんばかりの苦笑いをした。

 

 

 

ポーラ

「……やってくれるね、ますます苛立ってきた…… とりあえず……脳が足りないとか言ったお前は死んでもらうよ!」

 

 

そしてポーラは突然、ドラニコフ目がけて突然襲いかかった!

 

 

のび太

「あ! 危ない…!」

 

 

ドラニコフ

「ガウ!?」

 

 

ドンッ!

 

 

ポーラのアッパーカットを食らったドラニコフは大きく後方へ吹き飛ばされた!

 

 

キッド

「ドラニコフ! よくも…やりやがったな!」

 

 

キッドは右手に付けた水圧砲でポーラを狙う。

 

 

ミノタウロス

「させんぞ! 必殺タックル!」

 

 

ドンッ!

 

 

キッド

「ぐああ! 何てパワーだ…! こいつ!」

 

 

ミノタウロスはキッドの攻撃をタックルで封じ、キッドを弾き飛ばした!

 

 

マタドーラ

「くそ! 強えぞこいつら!」

 

スネイク

「焦らない焦らない。それ♡」

 

マタドーラ

「ぐああ! くそっ!」

 

 

スネイクはマタドーラの後ろに回り込み首筋に噛み付いた。

 

 

ミノタウロス

「やはり足が速い奴がいる事だけが取り柄かぁ!ゴミめ!」

 

 

六人衆はドラえもんズの反撃を許す事なく一方的に攻撃を続けた…

 

 

キッド

「くそ! 強過ぎるっ!!」

 

王ドラ

「完全に相手の戦力を見誤っていました…!」

 

ドラメッド

「油断したである…!!」

 

マタドーラ

「ここまでとはな…!」

 

ドラリーニョ

「負けちゃうかも〜…」

 

ドラニコフ

「ガウ……」(こんなところで…!!)

 

 

ドラえもんズの勢いは完全に沈黙し、力尽きた全員は床に倒れ込んでしまった……

 

 

 

イーグル

「唐突な援軍に少しは驚いたが、所詮は大したことはないな! ドラえもんズは!」

 

ドラゴン

「修行が足りないのでは無いですか? 先ほどの彼らの方がまだ歯応えがありましたよ。」

 

ポーラ

「雑魚のクセにしゃしゃり出てくるからこうなるんだよ。さっさとお家に帰りな!」

 

六人衆

『フハハハハ!!』

 

 

ドラえもんズを叩きのめした六人衆は大きく高笑いをした。

 

しかし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キッド

「………なあ? もう動いていいよな? 王ドラ、そろそろ我慢出来ねーぜ。」

 

王ドラ

「ええ、のび太さん達の治療は一通り終わりました。さて、そろそろ"始めますか"」

 

キッド

「そーだな。」

 

 

なんと先ほどまでボコボコにされていた筈のキッドと王ドラが余裕をかまして話しているのだ。

 

 

のび太

「あれ…? いつの間にか…僕らを縛っていた縄が解けてる…?」

 

エル

「しかも新しく巻かれているのは……包帯?」

 

スネ夫

「一体……何が起こっているんだ…!?」

 

 

 

のび太達はいつの間にか、自分たちを縛っていた縄が解かれ、代わりに包帯が巻かれていることに気が付いた。

 

 

イーグル

「どういうことだ? 治療は終わった? さっきまで貴様らは俺たちと戦っていただろう!」

 

キッド

「ドラメッド! お疲れさん!」

 

ドラメッド

「はいさ」

 

 

イーグルの問いかけを他所に、ドラメッドの言葉と同時に地面に突っ伏していたドラえもんズの6人は楽々と立ち上がった!

 

 

マタドーラ

「ふぅ〜、いい昼寝(シエスタ)だったぜ…」

 

王ドラ

「マタドーラ、昼寝は時と場合を考えて下さい。」

 

マタドーラ

「うるせーっての」

 

 

目をこすって大きくあくびをしているマタドーラに、王ドラは軽く注意を促した。

 

 

 

ポーラ

「お前ら……何故立てる…!?」

 

 

余裕綽々のドラえもんズに、 ポーラは困惑した様子で問うた。

 

 

キッド

「お前、ドラニコフに最初パンチを食らわせたろ? でもあれは"食らっていて食らってない"んだ。辛かったぜ……俺たちは"ただ地面に伏せているだけ"なんてよ」

 

ドラゴン

「? 言っている意味が分かりません」

 

キッド

「幻術……さ」

 

 

ドラゴンはとてもキッドの言葉が信じられない様子であった。

 

 

ドラゴン

「まさか……! 私たちが戦っていた相手は全て幻だったと言うのですか?……あり得ません!」

 

ドラニコフ

「ガウ」(固定観念は良くないよ。)

 

ドラメッド

「ワガハイの笛の音色を聞いた者は例外なく幻術にかかってしまうのであーる。まあ尤も、お主らはワガハイが笛を吹いた事すら気付いてなかったようであろうが。」

 

マタドーラ

「ドラメッドは超一流の笛使いだ、幻術なんて朝飯前なんだよ!」

 

 

マタドーラとドラメッドは誇らしげに言った。

 

 

キッド

「つまりお前らは俺たちに踊らされてるとも知らずに見えない相手と闘ってたって訳だ。恥ずかしいな、お前ら。」

 

ポーラ

「は?……ふざけんなよ…!! 笛を使った幻術なんてありえない!! 何かタネがあるんだろ!!」

 

 

ポーラはその事実に納得が出来ず、怒りの声を漏らした。

 

 

マタドーラ

「聞く耳を持ちやがれ。一度言っただけじゃ分からねえのか? てめえは。」

 

 

マタドーラはポーラを小馬鹿にしたような態度を取りながら言った。

 

 

マタドーラ

「俺以上の脳筋ヤローだな、てめえ。」

 

ポーラ

「くそっ!! 馬鹿にしやがって……!!!」

 

 

そんなポーラの怒りは徐々に蓄積されて行った……

 

 

ドラゴン

「彼らの策に我々はまんまと引っかかっていたのか…! やられた…!!」

 

 

ドラリーニョ

「王妃は無事に未来の方に避難させといたよー!!」

 

 

ドラリーニョが壁に開いたタイムホールからひょっこりと顔を出す。

 

 

王ドラ

「お疲れ様ですドラリーニョ」

 

ドラニコフ

「ガウ」(お疲れ)

 

 

ドラメッドの幻術……それは六人衆にあたかもドラえもんズと戦っているように見せる術であったのである。

その隙に王ドラは負傷したのび太達の治療、そしてドラリーニョはスピアナの保護を行っていたのであった。

 

 

イーグル

(待て…! それよりも…! 俺達が幻術にかかっていた時間は約5分……そんな短時間で奴はあの小僧共の応急処置を終わらせたと言うのか…!? 何て奴だ…!!)

 

 

イーグルは冷や汗を流しながら、落ち着いた様子の王ドラを驚愕の目で見た。

 

 

 

 

のび太

「その幻術に僕らもかかってしまっていたのか……」

 

エル

「でも…ドラえもんズは何故幻術にはかからなかったんだ?」

 

ドラミ

「耳バンよ」

 

スネ夫

「耳バン? 付けると特定の音が聞こえなくする事が出来るアレか…ってドラミちゃんは最初から幻術だって分かってたの?」

 

ドラミ

「勿論よ」

 

のび太

「初めから全てドラえもんズの術中だったって事か……凄い」

 

ドラミ

「ウフッ それが……ドラえもんズよ!!」

 

 

ドラえもんの切り札、ザ・ドラえもんズ。

 

 

個性的な面々が多いが、その実力は本物である。

 

 

 

 

 

 

 

『ドラメッドⅢ世』

 

体表…桃色

特技…笛、魔法

活躍地…サウジアラビア

 

別名…「古代アラビア砂漠伝説の魔術師」

 

 

『ドラリーニョ』

 

体表…黄緑色

特技…運動

活躍地…ブラジル

 

別名…「ブラジルの若きスーパーストライカー」

 

 

『ドラニコフ』

 

体表…茶色

特技…コサックダンス、マーシャルアーツ

活躍地…ロシア

 

別名…「ロシアの殺し屋」

 

 

『エル・マタドーラ』

 

体表…赤色

特技…闘牛、怪力

活躍地…スペイン

 

別名…「スペインは赤き情熱の闘牛士」

 

 

『王ドラ』

 

体表…橙色

特技…カンフー、漢方医学(一応医師免許あり)

活躍地…中国

 

別名…「中国四千年究極のカンフー」

 

 

『ドラ・ザ・キッド』

 

体表…黄色

特技…射撃

活躍地…USA

 

別名…「Mr.アメリカン・ドリーム」

 

 

 

キッド

「さて、"戦闘開始"だな」

 




ジャイアン
「す、凄え…」

ドラえもん
「ね? 言ったでしよ?」

キッド
「次回からは俺たちが大暴れだぜ! それじゃあな!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

宣戦布告

ジャイアン
「おい聞いたか? 作者が盛大な矛盾をやらかしてたらしいぜ、何でも読者の感想で気付いたらしい」

のび太
「僕……その場に居なかったのに…」

えー、本当に申し訳ありませんでした!(笑)

今回は短いですが、どうぞ!!


ポーラ

「へえ、戦闘開始ね……今まで自分達は戦ってすらいないって事か………舐めやがって…!!」

 

キッド

「お、怒ったか?」

 

ポーラ

「お前から殺してやるっ!」

 

 

シュッ!

 

 

キッドの言葉に怒りを覚えたポーラはキッドに向かって回し蹴りを放とうとした。

 

しかし……

 

 

ドラニコフ

「ガウ!!」

 

 

バシッ!

 

 

ドラニコフはポーラの足をキャッチし、荒々しくその足を離した。

 

 

キッド

「サンキュー、ドラニコフ」

 

 

キッドはドラニコフにウィンクをする。

 

 

ポーラ

「お前……僕と一対一(サシ)で戦る気か?」

 

ドラニコフ

「……ガウ!」

 

キッド

「「君の相手は僕だ」って言ってるぜ」

 

ポーラ

「へえ、面白い!」

 

ドラニコフ

「ガウッ!!!」

 

 

ポーラとドラニコフは己の闘争本能を爆発させた戦いを始めていた…

 

 

 

 

 

 

 

ミノタウロス

「うおおおおお!!! タックルだぁ!!」

 

マタドーラ

「おっと、危ねえ危ねえ」

 

 

ミノタウロスはマタドーラへ向かって突進をするが、マタドーラは慣れた手つきで突進を躱した。

 

 

ミノタウロス

「おお! やるなお前!!」

 

マタドーラ

「このエル・マタドーラ様に闘牛勝負を挑んで来るとはな! かかってきなっ!」

 

ミノタウロス

「そうでなくてはなぁ!!」

 

 

闘牛士のマタドーラ、牛のミノタウロス。

両者の姿はスペインの闘牛そのものであった!

 

 

 

 

 

 

ジャガー

「お前さん相手はこのワシじゃい! 黄緑色の奴!」

 

ドラリーニョ

「僕……ドラリーニョって名前があるんだけどなあ…」

 

 

ドラリーニョはジャガーの言葉に肩を落とす。

 

 

ジャガー

「ん? そうか、すまんすまん。 では行くけえの! ドラリーニョ!!」

 

ドラリーニョ

「僕はのんびり屋だけど負けるのは嫌いなの! だから勝つよ!」

 

ジャガー

「おう!! 負けず嫌いはワシも同じじゃ!!!」

 

 

負けず嫌い同士、勝つのはどちらだ!

 

 

 

 

 

 

 

ドラメッド

「むむ、お主……蛇か?」

 

スネイク

「そうよ♡ 当たり♡」

 

ドラメッド

「蛇は嫌いであるが……操るのは得意であ〜る」

 

スネイク

「あら? 本当に操れるのかしら…!!」

 

ドラメッド

「古代アラビア砂漠伝説の魔術師と言われたワガハイの実力、侮るでないぞ!」

 

 

 

そしてドラメッドは四次元ランプから笛を取り出した。

 

蛇使いvs蛇の闘いが始まった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラゴン

「あなた……医者ですね?」

 

王ドラ

「ええ、その通りです」

 

ドラゴン

「ではあなたを潰せば大きな戦力ダウンになりますね!」

 

王ドラ

「……ハ!!」

 

 

ブンブンブンブンブンブンブンッ!!

 

 

王ドラは懐からヌンチャクを二丁取り出したかと思えば、ブルース・リー顔負けの完璧なヌンチャク回しを披露した。

 

 

ドラゴン

「ヌンチャクですか…酷く古典的な武器ですね」

 

王ドラ

「ヌンチャクは古い……違います。ヌンチャクを使いこなせるだけの格闘家が居ないだけです」

 

ドラゴン

「ほう、その言葉に見合う実力かどうか…確かめさせて頂きます! 私も少しは中国武術を嗜んでおりましてね!」

 

王ドラ

「……かかって来なさい!」

 

 

中国武術家同士の対決。

負けられない戦いが、そこにある。

 

 

 

 

 

 

キッド

「さて…俺たちも始めるか」

 

イーグル

「貴様がドラえもんズとやらのリーダーか?」

 

キッド

「まあリーダー代理ってとこかな」

 

イーグル

「なら貴様を倒せばこの戦い……勝ったも同然だな」

 

キッド

「言ってくれるじゃねえか。俺は強いぜ?」

 

 

キッドは頭に被った四次元ハットから水圧砲を取り出し、右手に装着する。

 

 

イーグル

「さっきの眼鏡も使っていたな、その道具」

 

キッド

「ああ、やっぱこれしかしっくり来ねえんだ。それよりてめえ……何故あいつらをあんなに傷付けた…何もあそこまですることはねえだろ」

 

 

キッドの目つきが変わった。

 

 

イーグル

「奴らは悪だ、だから叩きのめした。それだけだ」

 

 

イーグルは冷徹に即答した。

 

 

キッド

「そうか…じゃあ悪は悪なりの仕返しをしなきゃな!」

 

 

そしてキッドはイーグルに水圧砲を向けた。

 

 

イーグル

「面白い! かかってこい!」

 

 

ドラえもんズと鉄騎隊六人衆の戦いの火蓋が切って落とされた…!

 

 

 

 

 

 

 




ドラえもん
「両者向かい合って終わりか」

静香
「本格的な戦いは次回からね」

スネ夫
「絶対ストーリー考える為に引き伸ばしてるよね」

そんな事はありません

ドラえもん
「まあいいじゃないか、それでは!皆!さよーなら!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

情熱の拳

マタドーラ
「今回こそ俺様の出番だ!」

王ドラ
「エル・マタドーラだけずるいです〜」

キッド
「すぐに出番が回ってくるさ、それじゃあ始まるぜ!」


ミノタウロス

「タックルだぁ!!!」

 

 

ドドドドドド!!!

 

 

マタドーラ

「確かにすげえ馬力だな……でも甘えーな」

 

 

 

マタドーラは独特な模様が入った特注のひらりマントをポケットから出し、 ミノタウロスの攻撃に合わせて振った。

 

 

ミノタウロス

「うおおお!!? 」

 

 

ドンッ!

 

 

ひらりマントで跳ね返されたミノタウロスはバランスを崩し、壁に激突する!

 

 

ミノタウロス

「いててて… ただのマントじゃないなぁ!?」

 

マタドーラ

「まあな!」

 

 

ミノタウロスの攻撃は単調であった。

ただひたすら突進をする、それだけである。

 

 

ミノタウロス

「もう一度ぉ!!」

 

 

ミノタウロスは再び突進のモーションに入った。

 

しかし…

 

 

マタドーラ

「ちょっと待ちな!」

 

 

マタドーラは手をミノタウロスの方へ突き出し、静止するように求めた。

 

 

ミノタウロス

「どうしたぁ!? 降参か!?」

 

マタドーラ

「いや…そうじゃねえけどよ…」

 

ミノタウロス

「じゃあ何だと言うのだぁ!?」

 

 

マタドーラ

「いや…その…何でお前突進しかして来ないんだ? 普通はある程度のコンビネーションを織り交ぜるだろ…」

 

 

恐らく読者の皆さんも思ったことだろう。

マタドーラはさっきからそれが疑問で仕方なかった。

 

 

ミノタウロスは10秒間ほど沈黙し、ようやく口を開いた。

 

 

 

ミノタウロス

「…………言われてみればそうだなぁ! よぉし! 次からは殴り技も使っていくぞぉ!」

 

 

 

マタドーラ

「気付かんかったんかい!」

 

 

ミノタウロス……マヌケと言うか何というか……ここまで来ると愛嬌がある…

 

 

ミノタウロス

「恩に着る! これで俺様はまた強くなった!」

 

マタドーラ

「………じゃあ続き始めようぜ」

 

ミノタウロス

「おう! 喰らえ! 」

 

 

シュッ!!

 

バキィッ!

 

 

マタドーラ

「何…!? がはっ…!」

 

 

マタドーラはミノタウロスの放ったボディブローをモロに受けてしまい、血を吐いて床に膝を着いてしまった。

 

 

ミノタウロス

「どうだ! これが俺様の力だ!」

 

マタドーラ

(こいつ…突進よりパンチの方が向いてんじゃねえのか…?キレがプロボクサー並だし、油断してたとはいえ全く軌道が見えなかった…やべえな、肋骨にヒビ入りやがった…)

 

 

マタドーラは心底驚いていた……先ほどまで楽々と躱していたミノタウロスの攻撃が突然クリーンヒットしたのだから。

 

 

ミノタウロス

「どうしたぁ!? 早く来い!!」

 

 

ミノタウロスはその鈍重そうな身体からは想像も出来ないほどの軽快なステップを踏み、マタドーラを挑発した。

 

 

マタドーラ

(恐らく奴は気付いてねえ……奴には途轍もない天性の格闘センスがある…! 放っておいたら後々脅威になるかもしれねえ相手だ…! なら……俺がここで奴を止めるしかねえ!!)

 

 

マタドーラ

(ひらりマントは素早い攻撃には向かねえ……だったら!)

 

 

バッ!

 

 

マタドーラは持っていたマントを床に投げ捨てた。

 

 

マタドーラ

「面白れぇ、殴り合いは嫌いじゃねえぞ!!」

 

 

マタドーラは口内に溜まった血を吐き捨てながら立ち上がり、ファイティングポーズをとる。

 

その姿をのび太は疑問に思った。

 

 

のび太

「ねえ、何でマントを捨てたの? わざわざ武器を捨てるなんて…」

 

ドラミ

「マントを振る速度と至近距離からのパンチ、どちらかと言うと至近距離からのパンチの方が速度は速いのよ。ひらりマントはカウンター系統のひみつ道具なのに相手にスピードで上を行かれたら意味が無くなる… だからひらりマントを捨てたの」

 

スネ夫

「でもあの体格差じゃ…」

 

ドラミ

「エル・マタドーラは必ずやってくれるわ…!」

 

 

一方マタドーラから殴りに徹する意向を示されミノタウロスは…

 

 

ミノタウロス

「殴り合いか……いいだろう! 俺様もそうさせてもらうわぁ!」

 

 

そしてミノタウロスもファイティングポーズをとった…

 

 

マタドーラ

「倒れて動けなくなった方が負けでいいな?」

 

ミノタウロス

「いいだろう! 来い!」

 

 

闘いのゴングが再び打ち鳴らされると、両者は互いの拳が届く距離まで接近し、激しいインファイトを開始した!

 

 

ミノタウロス

「ふん! はあっ!!」

 

マタドーラ

「ぐぅっ…! やるな! おらぁ!!」

 

ミノタウロス

「うっ…! そっちこそ…! 小さい体をしているくせにやってくれるではないか!」

 

 

ミノタウロスは左ジャブをマタドーラの顔面に放ち、

怯んだ所へ更に右ストレートを叩き込んだ。

 

攻撃を受けたマタドーラは負けじと顎にアッパーを叩き込み、ミノタウロスの脳を揺さぶる!

 

 

両者に戦略は無い。ただひたすら、殴られたら殴り返す。互いに殴り合いの応酬が超スピードで展開されていた!

 

 

マタドーラ

(こいつ…身体中がメチャクチャ硬え! 殴ってる拳の骨が砕けそうだぜ…! )

 

 

マタドーラの左アッパーからの右フックが入る!

 

 

ミノタウロス

(こいつ……殴っても殴っても殴り返してくる! 面白い!)

 

 

負けじとミノタウロスのボディブローが炸裂する!

 

 

 

 

 

ミノタウロスの身長は約180cm。

対してマタドーラは129cm。

体格差は明らかであったが、マタドーラにはその差を0にするある特技があった…

 

 

マタドーラ

「おらぁ!!」

 

 

身長的に背の届かないマタドーラはジャンプをし、ボディブローを放つ!

鋭い拳がボディに突き刺さる!

 

 

ミノタウロス

「うぐぅ…!!」(何てパワーだ…!! こいつ!!)

 

 

ミノタウロスは思わずうめき声を上げ、地面に膝を着いた。

 

 

ミノタウロス

(こんな小さな体のどこからこんな途轍もないパワーが生み出されていると言うのだ…!?)

 

 

マタドーラの特技…それはドラえもんズ一の怪力である。

その怪力はミノタウロスの馬力をも凌駕していた!

 

 

マタドーラ

「"ケンカ"なら…今まで一度も負けたことがねえんだよ!!」

 

ミノタウロス

「成る程…強敵だ…!!」

 

 

それから暫く、マタドーラが優勢のまま戦いは続いた…

 

そしてついに両者の戦いに終止符が打たれる時が来た…

 

 

 

 

ミノタウロス

(はあ…はあ… 強い…!)

 

マタドーラ

(俺も…そろそろやばそうだぜ…)

 

 

両者の体は既に限界が来ていた…

 

 

ミノタウロス

「恐らく…俺様は次にお前のパンチを食らったら間違いなく倒れる……だから…最後は全力で行くぞお!!」

 

マタドーラ

「ハッ! そうこなくっちゃな!」

 

 

サッ!!!

 

 

両者はお互いに向かって走り出した!

 

 

両者

「うおおおおおお!!!」

 

 

ミノタウロス

(喰らえ…! これが最後なんだ!)

 

 

ミノタウロスは渾身の右ストレートを放つ!!

 

 

マタドーラ

「…………」

 

 

しかしマタドーラはミノタウロスに接近するだけで、パンチのモーションに入っていなかった…!

 

 

ミノタウロス

(どうした…!? まあいい! このまま当てれば勝てるんだぁ!!)

 

 

ミノタウロスの拳がマタドーラに向かって伸びていく!

 

 

マタドーラ

(ここだ……!!)

 

 

ヒュッ!

 

 

何とマタドーラはミノタウロスの放った右ストレートを、直撃まであと10cm足らずの所で上体を左に傾けて躱した!

 

 

そしてパンチのモーションに入る!

 

 

ミノタウロス

(な…に?)

 

マタドーラ

「あばよ…!!」

 

 

バンッッ!!!

 

 

マタドーラは素早くミノタウロスの顔面にジャンプインし、ミノタウロスに接近、全体重を拳にかけ、ミノタウロスの顔面に振りかざした!!

 

 

自分の全体重をかけたカウンター「JOLTカウンター」が炸裂した!

 

 

 

ミノタウロス

「ぐはぁっ!!!」

 

 

バタッ

 

 

ミノタウロスはバタッと地面に倒れ込んだ。

そしてそのまま起きることは無かった……

 

 

マタドーラ

「……楽しかったぜ。たまにはこう言うのも悪くねえな。さて、シエスタシエスタ、お昼寝だ〜い」

 

 

そう言うとマタドーラは四次元ポケットから枕と毛布を取り出し、戦いの場であるのにも関わらずシエスタ(昼寝)を始めた……

 

 

 

ミノタウロス 撃破!!

 

 

 

 

ポーラ

「ちっ、ミノタウロスがやられたか…」

 

ポーラ

「まあいいさ、あんな脳筋が役に立たないことなんて分かってたからね」

 

ドラニコフ

「……ガウ」

 

ポーラ

「かかって来い…って面してるね…じゃあお言葉に甘えて行こうかなっ!」

 

ドラニコフ

「ガウッ!!」

 

 

 

第二ラウンド

 

ドラニコフvsポーラ 開幕!




ドラえもん
「まさかの肉弾戦とは……驚いたよ」

静香
「てっきり闘牛対決をするのかと思ったわ」

ジャイアン
「作者が闘牛対決はけっこう地味な展開になるんじゃないか? って思ったから肉弾戦にしたらしいぜ」

えー、マタドーラとミノタウロスの闘牛対決を期待していた方もおられるかも知れませんが、闘牛対決はなしとさせて頂きました。勝手ながらすみません!

それでは! また次のお話で!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

制御不能の狼

今回は少々グロテスクな描写があります。
閲覧にはご注意下さい。

それではどうぞ!


マタドーラとミノタウロスの戦いが一段落着いた頃…

 

荒くれ者同士の対決が始まっていた…

 

 

ポーラ

「捕まえてごらん! 捕まえれる物ならねぇ!」

 

サッ!

 

 

ポーラはドラニコフを挑発するように、ドラニコフの周りをかなりのスピードで動き回り始めた。

 

 

ドラニコフ

「……………」

 

 

しかしドラニコフはひたすらポーラの様子を観察している……

 

 

 

 

 

 

 

イーグル

「あのドラニコフとやら……ハズレくじを引いたようだな、 ハハハ!」

 

 

イーグルはそんなポーラの様子を見て思わず笑い声を上げた。

 

 

キッド

「ハズレくじ? どーいう意味だい?」

 

 

キッドは飄々な口調でイーグルに尋ねた。

 

 

イーグル

「教えてやろう。ポーラは俺が率いる鉄騎隊六人衆の中で最も格闘戦に長けた戦闘のエキスパートなのだ…! 見ろ、奴は完全にポーラの動きについて行けていない! 俺にはドラニコフとやらが成す術もなくポーラに叩きのめされる姿が目に浮かぶぞ、ハハハ!!」

 

 

イーグルは誇らしそうに高笑いをした。

 

 

キッド

「へえ、そりゃ凄いな。じゃあ聞くけどさ、お前ら、産まれてから何年くらい経つ?」

 

 

キッドはイーグルの言葉をさらっと流した後、イーグルに質問をした。

 

 

イーグル

「1年も経ってはいない。我らが誕生したのはつい数ヶ月前の事だ! その短期間で我々はここまでの戦闘力を獲得したのだ! どうだ分かったか? 我々六人衆の強大さが!」

 

 

イーグルはキッドを圧倒するように大声を上げた。

それを聞いたキッドは……

 

 

キッド

「………分かったよ、よーく分かった。」

 

イーグル

「フッ 分かったようだな。我々の凄さが!!」

 

 

イーグルはキッドが怖気づいた物だと確信し、余裕の表情をしてキッドを見下すように鼻で笑った。

 

しかし……

 

 

 

 

キッド

「お前らがタダの"トンマ"だって事がよーく分かったぜ。」

 

 

キッドはニヤリと笑った。

 

 

イーグル

「何…? 貴様……どういう意味だ?」

 

 

キッドの言葉に、イーグルは意表を突かれたような顔をしてキッドに尋ねた。

 

 

キッド

「たった産まれて数ヶ月のガキが……ドラニコフをボコる? 笑わせんな。 ハズレくじ引いたのは……果たしてどっちかな?」

 

イーグル

「何だと…こいつ…!!」

 

 

キッドの言葉に、イーグルの精心は確実に乱された。

 

 

キッド

「まあ見てな。おめーらが引いたハズレくじは……半端モンのハズレくじじゃないぜ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポーラ

「ついてこれてる? この僕のスピードに!!」

 

 

ポーラはひたすらドラニコフの周りを俊敏に動き回り、挑発を繰り返す。

 

 

ドラニコフ

「……………」

 

 

それでもドラニコフはただ黙って観察を続けた。

 

 

ポーラ

「来ないならこっちから行くよ!!」

 

 

シュッ!!

 

 

その瞬間、ポーラは猛スピードでドラニコフの懐にステップインし、拳を軽く手前に引いた。

ドラニコフの顎へアッパーカットを放つつもりなのである。

 

 

ポーラ

「オラァ!!!」

 

 

ポーラは掛け声と共に、地面を強く踏み込み、ドラニコフの顎へ腕を伸ばした。

 

 

ポーラ

(クリーンヒットいただき…!!)

 

 

拳が顎へヒットする直前、ポーラは余裕の表情でそんな事を考えていた。

 

しかし……

 

 

ドラニコフ

「……!!」

 

 

その瞬間、ドラニコフは動いた。

なんとポーラのアッパーカットを、ギリギリの所でヘッドスリップで回避したのである!

 

 

ポーラ

「何!!?」

 

 

ポーラの拳は空を切り、勢い余ったポーラ自身は大きくよろめいた。

 

ドラニコフは、その瞬間を見逃さなかった。

 

 

ドラニコフ

「ガウッ!!」

 

 

バコンッッ!!

 

 

ポーラ

「うぅっ…!!」

 

 

ドラニコフは右拳を、隙が出来たポーラの顔面に勢い良く打ち下ろし、見事なまでのカウンターが炸裂した!

カウンターをモロに受けたポーラは、顔面を抑えて悶絶しながら膝をついた。見ると、鼻血をポタポタと落としている。

 

 

 

 

イーグル

「あのポーラが肉弾戦で打ち負けた…!? 馬鹿な!!」

 

キッド

「残念だったな。あいつがドラニコフをボコるには、まだまだ"経験不足"らしいな。」

 

 

そう言うとキッドはドラニコフの方を向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラニコフ

「ガウ」

(立ちなよ)

 

 

ポーラ

「クソがッ!! 調子に乗ってんじゃねえ!!」

(畜生っ!! 思ったよりも活きたパンチ打って来やがる…!!)

 

 

するとポーラはドラニコフから距離を取るように走り出した。ダメージ回復に努めるようである。

 

 

 

 

ドラニコフ

「ワウ」

(皆の痛みはこんな物じゃないよ)

 

 

ドラニコフ

「………ワオーー!!」

(ショックガンーー!!)

 

 

カチッ

 

 

ドラニコフはショックガンを四次元マフラーから取り出し

走り回っているポーラを狙うっ!

 

 

ポーラ

「何だよそのオモチャみたいな銃! ハハ!」

 

 

ポーラはショックガンの特性が分からず、舐めた態度で嘲笑する。

 

 

ドラニコフ

「ガウッ!」

 

 

バンッ!

 

 

ドラニコフはショックガンの引き金を引いた!

 

そして放たれた弾丸はポーラの左足に直撃する!

 

 

ポーラ

「なに!?」

 

 

左足を撃たれたことによって足を痺らせたポーラは転倒する。

 

 

ドラニコフ

「……ガウ」

 

 

ドラニコフは何故か悔しそうな目をしていた。

 

 

スネ夫

「何で悔しそうなの?」

 

のび太

「急所を狙ってたんだよ。そうすれば一撃で気絶するんだ、あれ」

 

 

ドラニコフが悔しがっている理由が分からなかったスネ夫が質問すると、ショックガンの扱いに慣れたのび太が解説した。

 

 

スネ夫

「でも当たったものは当たったんだろ?」

 

 

更にスネ夫が質問をすると、のび太はこう答えた。

 

 

のび太

「ドラニコフの別名は殺し屋だったよね? 殺し屋は基本的には一撃で抹殺対象を殺さなきゃいけないんだ。重傷でも駄目、外すなんてもっての他。敵の反撃を受けるからね」

 

スネ夫

「なるほどね」

 

 

スネ夫はのび太の解説に納得した。

 

 

一方、転倒したポーラは……

 

 

ポーラ

(くそっ!! 足の痺れてやがるの…!!)

 

 

ポーラは痙攣する足を抑えていた。

 

 

ドラニコフ

「……ガウ」

 

 

カチッ

 

 

ドラニコフはショックガンの照準をポーラの頭に向ける。

 

 

ポーラ

「…!! クソが!」

 

 

ドンッ!

 

 

ポーラは自分の足を殴り、無理矢理痺れを治した!

 

 

ドラニコフ

「ガウッ!!」

 

 

バンッ!

 

 

ポーラ

「!!!」

 

 

シュッ!

 

 

ドラニコフはショックガンの引き金を引くが、足の痺れを治したポーラはショックガンの弾を間一髪で躱した!

 

 

ドラミ

「ギリギリで躱した!?」

 

エル

「自分の足を殴って痺れを治したというのか…!? そんな芸当が…!?」

 

 

エルとドラミは、ポーラがドラニコフの放った弾丸を回避したことに驚愕した。

そしてスネ夫はポーラが弾丸を回避出来た事を冷静に分析した…

 

 

スネ夫

「奴の並外れた耐久力が躱された原因だろうね…。恐らくショックガンの効果は通常の3分の1程まで減少していただろう。奴にとってはその程度だったら一瞬で痺れを治すなんて訳ないことだろうね。」

 

ドラミ

「……相当厳しい闘いになるわね。」

 

 

ドラミは長期戦を危惧し、ドラニコフを心配そうな目で見つめていた。

 

 

のび太

「………」

 

 

のび太は黙ってジッと2人の闘いを眺めていた。

 

 

ポーラ

「危ない危ない…フフッ」

 

 

ポーラは鼻で笑った。

 

 

ドラニコフ

「…………」

 

ポーラ

「あれ? 悔しくないの? 躱されてさ」

 

 

黙り込んだドラニコフにポーラは挑発的な言動でドラニコフを煽る。

 

 

しかし……

 

 

のび太

「あれ? 気付いてないの? 熊さーん」

 

 

のび太はポーラに向かって笑いながら言った。

 

 

ポーラ

「はぁ? 何がだよ眼鏡」

 

 

ポーラは自分を馬鹿にされたことに苛立ちを隠せなかった

 

 

ドラニコフ

「……フッ」

 

 

そしてドラニコフも笑った。

 

 

ポーラ

「? 何だよ? 何かあるのーー何だよ…? これ…」

 

 

ポーラは気が付いた。

ポーラの足元には謎の小さな"丸い"時計が散らばっていたのである。そしてその時計は謎のカウントダウンを始めていた…

 

 

のび太

「気を付けた方がいいよー、それ」 ニヤニヤ

 

ポーラ

「何だこれ…いつの間に!」

 

のび太

「君が足を痺らせた瞬間にドラニコフが撒いてたんだよ、どうやら君は僕並みのトンマみたいだね」

 

ポーラ

「お前…! トンマだと…!?」

 

 

ポーラの意識がのび太に集中する。

その隙をドラニコフは見逃さなかった!

 

 

ドラニコフ

「ガウッ!」

 

 

バンッ!

 

 

ポーラ

「ハッ! しまった!」

 

 

バタッ

 

 

ポーラは再び足を撃たれ、地面に倒れた!

 

 

ドラニコフ

「ガウッ!!」

 

 

バンッ バンッ バンッ!

 

 

そしてドラニコフは更にポーラの足に弾丸を叩き込んだ!

 

 

ポーラ

「この野郎…!!」

 

 

ドラニコフ

「ガウ」

(流石にこれならいくら君の耐久力でも動けないだろう)

 

のび太

「ほら、トンマじゃないか」

 

ポーラ

「お前!!!」

 

のび太

「それより良いの? そこに倒れたままで…」

 

 

のび太は意味深な表情を浮かべた…

 

 

ポーラ

「このカウントダウン……爆弾か!」

 

 

ポーラの表情が変わった、明らかにポーラは動揺している。

 

 

のび太

「爆弾だけど殺傷能力は無いよ、でもある意味普通の爆弾より強烈かな」

 

ポーラ

「強烈だと…!? まずい! ここから動かなきゃ!」

 

ドラニコフ

「ガウッ!」 (もう遅い、時間だよ!)

 

 

ドカーンッ!!!!

 

 

ドラニコフがそう言うと、辺りに散らばっていた時計一斉に爆発し、紫色の爆風を上げた……

 

 

そしてポーラは……

 

 

 

 

 

ポーラ

「ベロベロバー! オッペケペッポー! アジャラカモクレン!!!」

 

 

そんな奇声を発しながらマヌケな踊りをしていた。

 

その様子を見た一同は……

 

 

一同

「………………プッ」

 

一同

「ぶははははは!!!」

 

 

一ポーラのマヌケな様子に腹を抱えて大笑いを始めた!

 

 

イーグル

「おい…ぶははははは!!! 戦ってる最中に笑わすな!」

 

マタドーラ

「あははは!! おい! 傷が痛むじゃねーかコノヤロー!」

 

のび太

「あひゃひゃひゃ!! 4年前の僕そっくりだ!」

 

 

 

そう、ドラニコフが使った道具…それは「時限バカ弾」である。

 

時限バカ弾…タイマーをセットし、時間になると爆発する爆弾。 この爆発に巻き込まれると、どんな者も一時的にバカになる。

 

 

ポーラ

「……お前! よくも僕に恥をかかせたな…!」

 

 

恥をかいたポーラは怒りを剥き出しにしてドラニコフの方を向いた!

 

しかし……

 

 

 

 

 

ポーラ

「……おい……なんだよ…お前…?」

 

ドラニコフ

「ガウガウガウガウ……」

 

 

ドラニコフの様子が明らかにおかしいのである…

 

 

歯や爪は鋭く尖り、顔も狼のように変化していた…

そして目つきも凶暴なものへと変わっていた。

 

 

スネ夫

「え? ドラニコフに何が起こってるの…?」

 

ドラミ

「まさか……、ドラニコフは産まれた時に月光灯、一時的に狼になる道具ね。それを浴びたせいで丸いものを見ると狼化するのよ」

 

のび太

「丸いもの…時限バカ弾のことか!」

 

ドラミ

「恐らく本人は「時限バカ弾で相手を怒らせて攻撃を単調にし、落ち着いて倒す」という作戦があったのよ。でもドラニコフは狼化する事は想定外だったと思うわ…! こうなったら危険よ! 狼化した彼は…誰も止められない!」

 

ドラニコフ

「ワオーーーーー!!!」

 

 

ドラニコフは高々に遠吠えをする、ポーラはそんなドラニコフに恐怖を覚えていた…

 

 

ポーラ

「なん…なんだよ…?」

 

ドラニコフ

「……………」

 

 

タッ… タッ… タッ…

 

 

ドラニコフはポーラに向かって一歩ずつ歩み出した。

一歩近づく度に…ポーラの恐怖は増していった…

 

 

ポーラ

「く、 来るんじゃねぇ!!!」

 

 

ブンッ!

 

 

ポーラは恐怖のあまりがむしゃらにパンチを振るう。

 

 

ドラニコフ

「……………」

 

 

シュッ

 

 

ドラニコフは狼化すると反射神経、スピード、パワー共に桁違いに上昇する。 ドラニコフは難なくそのパンチを回避した。

 

 

ドラニコフ

「ガウッ!!」

 

 

シュッ!

 

 

ドラニコフは攻撃を回避したと同時に、鋭い爪でポーラの腕を狙った!

 

 

ザクッ!!!

 

 

ポーラ

「ああああ!!!?? 腕がああ!!?」

 

 

プシュゥゥゥ!!!

 

 

ポーラの腕はドラニコフの凄まじいパワーによって切断された!

大量の血液が腕の切断面から吹き出す!!

 

 

スネ夫

「うっ………」

 

 

グロテスクな光景にスネ夫は気分を悪くした様だった…

 

 

ポーラ

「あああああ!!! 痛い痛い痛いぃぃ!!!」

 

 

バタバタバタ!!!

 

 

ポーラは痛みのあまり床をのたうち回った!

 

 

ドラニコフ

「………」

 

 

サッ

 

 

そしてドラニコフは四次元マフラーから、大きな瓶に入ったタバスコを取り出し、

 

 

ポンッ

 

 

瓶の蓋を開けてそのまま……

 

 

ドラニコフ

「……………!」 ゴクゴク…ゴク…!

 

 

全て飲み干したっ!

 

 

ドラニコフ

「ガウゥゥゥゥ!!!」

 

 

ドラニコフはあまりの辛さに悶える。

 

 

のび太

「え? 何やってるの? ドラニコフは」

 

ドラミ

「彼は元々辛いものが苦手なの……狼化した時にわざとあんなのを飲むなんて……"火"でも吹く気かしら…」

 

 

ドラニコフ

「ガウガウガウガウ………ワオーーー!!」

 

 

ブオオオオオ!!!

 

 

高らかな遠吠えと共にドラニコフの口から巨大な炎が吐き出され、ポーラを襲う!!

 

 

ポーラ

「うああぁぁぁぁ!!! 熱い熱い熱い熱い!!!」

 

 

火炎放射を食らったポーラの体が燃え上がって行く…!

 

 

エル

「一体どういうメカニズムで辛い物で火が吹けるんだ…?」

 

 

エルは思わず呟いた。

 

 

ポーラ

「あああああ!!! あああああ!! ! 熱い熱い熱い!!! やめてくれよぉぉ!!」

 

ドラニコフ

「ワオーーー!!!!」

 

 

ブオオオオ!!!

 

 

ポーラは激しい断末魔を上げる! それでもドラニコフは火炎放射を止めない!!

 

 

ポーラ

「う……ポセイドン様…」

 

 

そしてポーラは瞬く間に燃え尽きてしまった。

 

 

ドラニコフ

「…………ガウ」

 

 

ドラニコフは目的を達成したと判断すると、元の姿へと戻って行った…

 

 

エル

「まさか完全に殺すなんて…あそこまでするのか…?」

 

 

エルはあまりの残酷さに少々困惑していた…

 

 

のび太

「戦った相手は必ず殺す。それが彼の流儀だったと思うんだ……狼化による暴走もあっただろうからね…」

 

 

ドラニコフ

「………ガウッ」(抹殺完了)

 

 

ポーラ……完全焼滅…!

 

一方その頃…

 

 

ドラメッド

「おお、ドラニコフがやったようであるな…ワガハイも急ぐである」

 

スネイク

「急ぐ? 私を倒すのは前提って事ね……舐めくさって!」

 

 

スネイクはドラメッドの態度に怒りを覚えた。

 

 

ドラメッド

「魔術師が蛇の上に立つのは当然であ〜る」

 

スネイク

「後悔するわよ!」

 

 

魔術師vs蛇

 

戦闘開始!




ドラメッド
「次回はワガハイの出番であ〜る 期待するである! ドラメッド3世ファンの諸君!」

キッド
「おめーにファンなんていんのか?」

ドラメッド
「いるとも! 多分」

一同
「多分かよ!」

ドラメッド
「それでは またな〜」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

変幻自在の魔術師

ドラメッド
「今回はワガハイの回であるな、それではご覧あれ!」


ドラメッド

「突風よ! 吹き荒れよ!」

 

♪〜 ♪〜

 

 

ドラメッドは笛を吹き鳴らす。

 

 

スネイク

「こんな空間で風なんか来るわけないでしょ? アハハ」

 

 

スネイクは嘲笑した。

そう、ここは水の中である。

スネイクは風など来る筈がないと思ったのだ。

 

しかし……

 

 

ヒュオオオオオオオオ!!!!

 

 

突如水中に、ハリケーン並みの突風が吹き荒れ始めた!

 

 

スネイク

「な…!? ここは水の中なのよ!?」

 

 

スネイクは目の前で起こっている現象を信じれない様子であった。

 

 

ドラメッド

「魔法の力であ〜る」

 

♪〜 ♪〜

 

 

ドラメッドは当たり前のように返す。

そして再び笛を吹いた。

 

 

ヒュオオオオオオオオオ!!

 

 

すると突風はスネイクがいる向きに傾いた!

 

 

スネイク

「な… きゃあああ!!」

 

 

ドンッ!!

 

 

スネイクはあまりの突風の強さに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた!

 

 

スネイク

「痛てて…! ちぃっ! 何て風…!」

 

 

スネイクが壁に激突しても風は吹き続け、スネイクは身動きが取れない状態になった。そんな状況に思わずスネイクは舌打ちをする。

 

 

ドラメッド

「二重演奏! 炎よ! 燃え上がれ!!」

 

 

♪〜 ♫〜

 

 

笛のメロディーが変わった。

 

 

ブオオオオ!!!

 

 

すると今度は水中に炎が現れ、激しく燃え上がる!!

 

 

スネイク

(嘘…!? 炎まで…!?)

 

ドラメッド

「行くであるぞ!!!」

 

 

ブオオオオ!!!!

 

 

炎は吹き荒れている突風に乗り、炎の嵐を起こすっ!

 

 

風に乗った火はスネイクに直撃した!

 

 

スネイク

「ぎゃああああ!!?? 熱い!熱い!」

 

 

 

超高温の風にスネイクは曝され、あまりの熱さに悲鳴を上げる!

 

ヒュォォォォ…-…

 

 

そして数十秒程で風は止み、炎は消えた……

 

 

スネイク

「うっ…うっ…」

 

 

風が止んだ先には何故か"無傷"のスネイクがいた……

 

しかし本人は苦しそうに呻いている……

 

 

ドラメッド

「もう終わりであるか? …では一つ良いことを教えてやろう」

 

 

ドラメッドは倒れているスネイクに近づいてこう言った。

 

 

ドラメッド

「ワガハイの使った術は全て"幻"である。お主の言った水中で風が起きる訳がないというのは正しかったのである」

 

 

ドラメッドの幻術は対象者の神経にまで干渉する。

だから痛みがあるのである。

 

 

ドラメッド

「もっとも、この笛を奪われたり、破壊されたりすると…幻術は解かれるであるが…」

 

 

ドラメッドがその言葉を言い終えた瞬間であった……

 

 

スネイク

「なるほどね……!!」

 

 

ドラメッドの言葉を全て聞いたスネイクは突然起き上がった!

 

 

ドラメッド

「!!! しまった!」

 

 

ドラメッドは慌てて笛を吹こうとする!

しかし……

 

スネイク

形態変化(フォルムチェンジ)!!」

 

 

シュオオオオ!

 

 

スネイクがそう叫ぶと、スネイクの体は変化した!

 

体は細くしなやかな物になりつつも、腕が無くなり。

身体の大きさは3倍以上になった!

 

その姿はまるで、大蛇のそれであった。

 

 

スネイク

「遅い!!」

 

 

シュッ!

 

 

キュウウウウウ!!!

 

 

状態を変化させたスネイクはドラメッドの元へ一直線に向かい、自分の体の特性を活かし、ドラメッドを締め付ける!

 

 

ドラメッド

「しまった…! 動けないである…!!」

 

 

スネイク

「ふふ、これが私の能力にして奥の手…フォルムチェンジ。より蛇に近い体になれる……素敵でしょ?♡」

 

 

スネイクはドラメッドを締め続ける!!

 

そして……

 

 

パキッ!!!

 

 

ドラメッド

「な…!!」

 

 

スネイクがドラメッドを締め付けると、ドラメッドの持っていた笛が折れてしまった!

 

 

スネイク

「これでよし…っと、これであなたは術を使えない…! 後はこのまま締め殺してあげる♡」

 

 

スネイクはドラメッドの笛を折り、勝利を確信した!

 

しかし……

 

 

 

ドラメッド

「よく…も…!」

 

スネイク

「え?」

 

ドラメッド

「よくも……!!!」

 

 

ドラメッドは明らかに激怒していた。

 

その理由とは……

 

 

 

 

ドラメッド

「よくもワガハイの笛をおおおおおお!!」

 

 

ブオオオオン!!!

 

 

スネイク

「な…」

 

 

ドラメッドが笛を折られた事に激昂すると、ドラメッドの大きさが明らかに変化している…

 

 

スネイク

「こいつ…一体何を…!?」

 

 

ドラメッドはどんどん大きくなる!

 

そしてついにその大きさは10m程に達した!

 

 

ドラゴン

「一体あれは…!?」

 

王ドラ

「ドラメッドを怒らせたようですね…お気の毒に…」

 

 

王ドラは苦笑いをした。

 

 

スネイク

「一体……なんなの!?」

 

ドラメッド

「よくもワガハイの笛をおおお!! ゼッタイに許さんであるぞ!!」

 

 

のび太

「一体……何が起こってるんだ!?」

 

ドラミ

「ドラメッドはなぜか怒ると巨大化するのよ…! あの笛……相当大事にしていたから……。 もう勝負は決まったわ」

 

スネ夫

「決まったって……ええ!?」

 

 

スネ夫はドラミの言葉に、思わず目を丸くした。

 

 

 

ドラミ

「彼が巨大化した時は誰も止められないの…!」

 

 

ドラメッド

「うおおおおお!!」

 

 

ドラメッドは片足を上げた!

 

 

ドオオオオオ!!!

 

 

そしてそのまま振り下ろす!!

 

 

スネイク

「そんな…馬鹿な…!」

 

 

ドオオオオオンッ!!!!

 

 

轟音と共にスネイクは潰れた。

ドラメッドの足の下で……

 

 

 

ポセイドン

「ぐぬぬぬぬ! 何たる様だ!」

 

 

ポセイドンは部下の敗北に怒りを露わにした

 

 

ドラメッド

「ふう、終わったであるか…」

 

 

シュウウウウウ……

 

 

怒りが収まったドラメッドは通常のサイズに戻った…

 

 

ドラメッド……スネイクを撃破!!

 

 

ジャガー

「スネイクもやられたんか……呆気ない最期じゃのう」

 

ドラリーニョ

「僕らも決着を付けよーよ」

 

ジャガー

「おう! かかって来んかい!!」

 

 

野生児同士の対決!!




のび太
「なんか最近オリジナル設定が多くない?」

ドラえもん
「しかも必殺技が出始めてる……作者の中二病っぷりが遺憾なく発揮されてるねー」

静香
「私達の出番も少ないし……やんなっちゃう」

ジャイアン
「今は耐えろ……耐えるんだ」

えー、ジャイアン組のファンの方申し訳ありません。
ポセイドンとの戦いが済みましたらジャイアン達の視点で物語を書こうと思ってあります。

それでは!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

KICK OFF!!!

お待たせしました!! ドラリーニョ回です!!

ドラえもん
「だいたい1日に一回以上のペースだったのに……どうしてこんなに遅れたんだろ?」

静香
「ドラリーニョの話を書くのに大苦戦したんですって…」

ジャイアン
「満足出来る話かどうかわかんねえけど……楽しんでみてくれよな!!」


ブラジルの若きスーパーストライカー

 

ドラリーニョ

 

大した戦闘力は無く、賢い頭脳も持っている訳ではない

 

しかし、彼にはある天賦の才能があった…

 

 

ドラリーニョ

「サッカーボールーー!!」

 

 

ドラリーニョは四次元ポケットからサッカーボールを取り出した。

それも、"何の変哲もない"ボールである。

 

 

ジャガー

「なんじゃあ!? 今はサッカーするタイミングと違うじゃろ!?」

 

 

ジャガーはドラリーニョの行動に驚いている様子である。

 

 

ドラリーニョ

「いいの! 君はキーパー、僕はキッカーだよ〜!」

 

ジャガー

「なんじゃそりゃ!?」

 

ドラリーニョ

「いくよー!! シューートォ!!!」

 

 

ドンッ!!

 

 

ドラリーニョはそう言うと、ボールを蹴った!

 

 

シュオオオオ!!

 

 

蹴られたボールは猛スピードで加速し、ジャガーに向けて一直線に飛んで行く!

 

 

ジャガー

「うおおお!? なんちゅう速度じゃ!?」

 

 

ドオオオオオン!!!

 

 

ジャガー

「うっ…! 凄まじい威力じゃ…!! 止め切れん!!」

 

 

ドンッ!!!

 

 

ジャガー

「うおおおおおお!?」

 

 

ジャガーはボールを受け止めようとしたが、ドラリーニョの放った凄まじいボールの威力に弾き飛ばされた!

 

その威力、某香港製サッカー映画で見たボールそのものである。

 

 

ドラリーニョ

「やったーー!! ゴーーーール!!」

 

 

ドラリーニョはその場でカズダンスをし、無垢な仕草で喜んだ。

 

 

ドラリーニョの才能……

 

 

それは「運動」である。

 

 

ジャガー

「中々ええシュートを打つのぉ……」

 

 

弾き飛ばされたジャガーが床から立ち上がって言う。

 

 

ドラリーニョ

「だって〜僕、スーパーストライカーだも〜ん。今のだって5割ぐらいの強さなんだよ〜?」

 

 

ドラリーニョはポケーっとした仕草で言った。

 

 

ジャガー

「……成る程、肩書きは伊達じゃあないっちゅーことじゃのぉ」

 

ドラリーニョ

「そお? ありがとー、えへへ」

 

 

ドラリーニョはジャガーの言葉に照れ、頭を掻いた。

 

しかし……

 

 

ジャガー

「じゃがのぉ……馬鹿たれ!! 5割ぐらいで済ますなら初めから本気で来んかいっ!!!」

 

ドラリーニョ

「………え?? 本気?」

 

ジャガー

「当たり前じゃあ! じゃないと勝負とは言えんろうがや!」

 

 

ドラリーニョの態度に激怒するジャガーであったが…

 

 

 

 

ドラリーニョ

「でも………昔僕が本気で蹴った時に…それを受けようとした子供を死なせちゃったんだ……だからもう何年も本気で蹴って無いんだ…」

 

 

 

ドラリーニョは哀しげな顔をして言った。

ドラリーニョのずば抜けた運動神経から放たれる全力のボールは、人を簡単に傷付ける事が出来るのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ねえドラリーニョ!! ぼくに向かって全力で蹴ってよ!! ぼくキーパーの練習がしたいんだ!)

 

 

(うん、分かったよ〜。じゃあ行くよ!! シュートッ!!!)

 

 

ドンッッ!!!

 

 

(…………!!!!)

 

 

 

バタッ

 

 

 

(………どうしたの〜? ………くん、寝てないで起きてよ〜。 あれ? 聞いてるの〜? ……くん? 本当は起きてるんでしょ……?)

 

 

 

その子は眠ったまま目を覚ます事は無かった。

 

 

 

 

 

(あの子はお前と遊びたかっただけなんだぞ…!!! それを…! 踏みにじるような真似して……!!!)

 

 

 

 

ドラリーニョは過去に縁組の子供とサッカーをしていて、誤ってその子を殺めてしまった……

 

子供が言った言葉の意味をドラリーニョは汲み取れず、全力でその子供にボールを蹴ってしまったのだ。

 

その子は病院に緊急搬送され、緊急オペを行おうとしたが、手の施しようが無くそのまま息を引き取った……

 

 

 

《子守ロボット、縁組を誤って殺害。死因はサッカーボールからの衝撃による心破裂》

 

 

(何だよこの記事…?)

 

(子守ロボットが人殺し? 相当そのロボット、イカれてたんだな)

 

(酷い子守ロボットも居たもんだ)

 

(その子守ロボットは欠陥品だ! 即刻廃棄処分すべきだ!!)

 

 

 

その事件の後、ドラリーニョは多くの人から糾弾された……

 

その中には、彼が殺めた子供の実の父親も含まれていた。

 

しかしドラリーニョは全く反論しなかった……

 

事態は最高裁にまで発展し、世間を大きく揺るがす事件となったが、幸い罪には問われず、ドラリーニョ達の製造元である"マツシバ"が莫大な和解金を支払った事で事態は収拾した。

 

だからドラリーニョは、サッカーをする時には最大で5割程のパワーまでとストッパーをかけていたのである。

 

それがドラリーニョの中の掟であり、過去のトラウマによる呪縛でもあった……

 

 

 

ドラリーニョ

「僕……本気で打てないんだ…例え君が敵でも……」

 

 

ドラリーニョは過去のトラウマから、ジャガーが敵であっても本気でシュートを打てないでいた。

 

それを聞いたジャガーは……

 

 

 

ジャガー

「…………そういうことか、じゃあ本気で打たせちゃる。

さあ! 来んかいっ!!!」

 

 

バッ!

 

 

ジャガーは腕を広げ、足を開き、踏ん張るような体勢をとった。

 

 

ドラリーニョ

「…え?」

 

 

ドラリーニョは困惑した、普通の敵であれば「本気で打てない」と言う弱点を狙うのが常識であるからである。

しかしジャガーは違った…

 

 

ジャガー

「いつまでも過去の事に囚われんなや! ワシに向かって本気で打って来んかいっ! 安心せぇや!必ず止めるけえの!」

 

ドラリーニョ

「どうして……? 君は…僕達の敵でしょ…?」

 

ジャガー

「確かに、立場的にはワシはあんたらの敵じゃ……じゃがワシは…あんたら…いや、誰かを傷付けるのは嫌いなんじゃ」

 

ドラリーニョ

「え? どういうこと…?」

 

 

更に困惑するドラリーニョにジャガーは話を続けた…

 

 

ジャガー

「あんたらの仲間が捕まった時……ワシら六人衆はあんたらの仲間をいたぶっとった…しかしワシだけは何もせんかった……こう見えてワシは口だけ番長、争いが好きじゃないんじゃ…」

 

 

ジャガーは悲しげな目をして言った。

 

そう、ジャガーには…「善」の心があったのである…

 

 

ジャガー

「さあ! 来んかいっ!! ドラリーニョ!! 過去のトラウマなんぞ跳ね返せ!」

 

 

もうどちらが正義か悪など、2人にはどうでも良くなっていた……2人の間には、絆が生まれていた。

 

ドラリーニョはそんなジャガーの姿に、かつて自分が殺めた縁組の子供を重ねた。

その姿は、ドラリーニョの闘志に再び火を点けたのだ。

 

 

ドラリーニョ

「………分かった! 思いっきり打つよ!!!」

 

 

ザッ!

 

 

ジャガーの言葉をドラリーニョは信じ、ドラリーニョはシュートの構えをとった!

 

 

ジャガー

「よしっ! それでいいんじゃ! ワシの心配なんぞいらん!

ただ"思いっきり"打てばええんじゃ!」

 

 

ジャガーはドラリーニョに本気で打つように促す!

 

 

ドラリーニョ

「……行くよっ!!! シューーートォ!!!!!」

 

 

ドオオオオオン!!!!

 

 

ドラリーニョはついに全力でボールを蹴った!!

 

 

ヒュオオオオオオ!!!!

 

 

蹴られたボールは先ほどのボールとは桁違いの速さで加速し、一直線にジャガーの下へ飛んでいく!!

 

 

ジャガー

「うおおおおおおお!!!!」

 

 

バアアアアン!!!!

 

 

ジャガーの下へ飛んできたボールをジャガーは受け止める!!

しかしボールは止まらないっ!!

 

 

ジャガー

「負けてたまるかっっ!! 必ず止めて見せるけんのおおおお!!!」

 

 

ジャガーはボールを持ったまま猛スピードで後ろに押されてしまう!

それでもジャガーはボールを離さなかった!

 

 

ドオオオオオン!!!

 

 

激しく後ろに押され続けたジャガーはついに後ろの壁に激突し、激しく土煙が舞い上がった……

 

 

その土煙の先には………

 

 

 

 

 

 

 

ジャガー

「………どうじゃ? ちゃーんと止めたじゃろ…? お前さんのボールは人を傷付けるもんなんかじゃないんじゃ」

 

 

ジャガーは最後までボールを離さないでいたのである。

壁に大きな亀裂が入っている……相当な衝撃であったのにジャガーはボールを離さなかった…

 

 

ドラリーニョ

「ジャガー………ありがとう!!! うええええん!!」

 

 

ドラリーニョは歓喜の余り泣き出してしまった……

 

 

ジャガー

「泣くなや、みっともないで…ハハ」

 

 

そんな様子にジャガーは笑った……

 

 

ドラリーニョ

「だってぇぇぇぇ! うええええん!!」

 

 

 

ドラリーニョvsジャガー

 

その対決は敵同士の間柄ではなかった……

 

2人には……硬い友情があったのである。

 

 

ドラリーニョが泣き止むと、ドラリーニョは落ちていたサッカーボールを持ち上げ、何かに思い浸るようにサッカーボールを眺めた。

 

 

ドラリーニョ

(……ありがとね、……くん。)

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラゴン

「………ジャガーは何をやっているのですか?」

 

王ドラ

「ドラリーニョには……何かを惹きつける力があります…

それのお陰でしょう」

 

ドラゴン

「戯言を……彼は敵と関わりを持ってしまった………この戦いが終わったら彼は処刑ですね……」

 

王ドラ

「残念ながらそれは叶いません………私はあなたを倒します!!!」

 

ドラゴン

「………いいでしょう、かかって来なさい」

 

 

 

中国拳法家同士……激突!!!

 

 




ドラえもん
「まさかジャガーがいい奴とはね……」

スネ夫
「作者も悩んだんだってさ…でもある意味良かったのかもね」

ドラミ
「じゃあ皆! まったねー!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Master of Kung-fu

王ドラ
「皆さん、おまたせしました」

のび太
「運動出来て勉強も出来るって……王ドラなんなの…」

ドラえもん
「でも代わりに重大な弱点が……」

のび太
「え? ナニソレ?」

ドラえもん
「それは後々……それではどうぞ!」


王ドラ

「ハッ!」

 

 

バッ!

 

 

王ドラはヌンチャク二丁を脇の間に携え、攻撃開始に備える。

 

それに合わせて、ドラゴンもファイティングポーズをとった。

 

 

王ドラ

(あの構え……彼は恐らく八極拳……いや、それをベースに様々な流派を複合させた我流の使い手ですね……)

 

 

王ドラはドラゴンの構えを見て、そう推測した。

 

八極拳……肘等を用いた超接近戦を得意とする型。その破壊力は、数ある中国拳法の中でもトップに躍り出ると言われている。

 

 

ドラゴン

「準備は完了ですか? では…行きますよ…!」

 

 

シュッ!!

 

 

その言葉を言い終えると同時にドラゴンは王ドラへ向かって踏み込んだ! それも相当な速度で。

 

 

王ドラ

(!! 速い!)

 

ドラゴン

「そこだっ!」

 

 

バッ!!!

 

 

ドラゴンは王ドラの顎へ、肘を素早く振りかざした!

 

 

しかし…!

 

 

王ドラ

「フッ! ワタァ!!」

 

 

王ドラはそれをバックステップで回避し、隙が出来たドラゴンの顔面へヌンチャクを一振りする!

 

 

シュッ! バアンッ!!!

 

 

ドラゴン

「な…! ぐはっ!」

 

 

王ドラの攻撃はドラゴンの顔面にヒットし、カウンターが炸裂した!

 

 

ドラゴン

「やりますね…!」

(何という反応速度だ…!)

 

 

ドラゴンは痛めた顔を抑えながら言う。

 

 

王ドラ

「言ったでしょう、「ヌンチャクが古いのでは無く、ヌンチャクを使いこなせる格闘家が居ないだけです」とね」

 

ドラゴン

「……ではあなたはヌンチャクを完璧に使いこなせる格闘家と呼んで良いのですか?」

 

王ドラ

「伊達に私は「中国四千年究極のカンフー」と呼ばわれている訳ではありません」

 

ドラゴン

「なるほど……あなたは相当な使い手のようだ…!」

 

 

バッ!

 

 

ドラゴンは再び攻撃の構えをとる。

 

 

王ドラ

「……無駄です。あなたは強い、ですが私には負けられない理由があります」

 

ドラゴン

「戯言を……!!!」

 

 

シュッ!

 

 

ドラゴン再び攻撃を開始した!

 

 

ドラゴン

「単発が駄目なら複数打ち込む!!」

 

 

バッ! シュッ! シュッ!

 

 

ドラゴンは突き、蹴り等を混ぜ合わせた高速の連撃を王ドラに繰り出した。

 

 

王ドラ

「ハァ! ワタァ! アタァ! 」

 

 

カッ! カッ! カッ!

 

 

しかし王ドラはドラゴンの攻撃を、器用にヌンチャクで全て弾く!

 

 

ドラゴン

「くそっ!!」

 

 

シュッ

 

 

ドラゴンは王ドラの実力に押されながら、苦し紛れに突きを放った! しかし!

 

 

王ドラ

「甘いっ!」

 

 

シュウウウ!!

 

 

ドラゴンの攻撃を見切った王ドラは、ドラゴンの攻撃を躱し、攻撃をした腕に片方のヌンチャクを巻きつけ、強固にホールドした!

 

 

ドラゴン

「な…! 離しなさい!」

 

王ドラ

「お断りしますっ!!」

 

 

シュッ! ドンッ!!

 

 

ヌンチャクを巻き付けられた事によって片手を封じられたドラゴンの腹に、もう片方のヌンチャクを使った突きが入る!

 

一見素人に見えるドラゴンの動きだが、それは高いレベルで洗練された動きである。

しかし、全ての中国拳法を体得している王ドラの動きは、洗練されたというレベルを遥かに超越していた。

 

 

ドラゴン

「うっ…!!! がはっ!!」

(強い…!!)

 

 

ダメージを受けたドラゴンは、血を吐きながら床に膝を付けた。

 

 

王ドラ

「スピードは悪くありません。しかし、基礎的な動き自体がおざなりとなっています。貴方、基礎トレーニングを省いていますね?」

 

ドラゴン

「…!!!」

 

 

王ドラの言葉に、ドラゴンは図星を突かれたような顔をした。

 

 

王ドラ

「……もういいでしょう、これ以上の戦いは無益です。投降を…求めます。」

 

 

王ドラがドラゴンに対し、停戦を呼びかけるが…

 

 

ドラゴン

「…まだです…!! まだ終わってない!」

 

王ドラ

「これ以上かかって来るならもう容赦はしませんよ」

 

 

王ドラはヌンチャクを構える。

 

しかしドラゴンは、怪しげな笑みを浮かべた…

 

 

ドラゴン

「ふふ……まだ…私には…奥の手があるのです!!」

 

王ドラ

「奥の手…?」

 

 

王ドラはドラゴンの言葉に疑問を覚えた。

しかしドラゴンは王ドラにその言葉の意味を教えることは無かった。

 

 

ドラゴン

鋼鉄化(シュターリング)!!」

 

 

シュウウウ!!!!

 

 

ドラゴンがそう叫ぶと、ドラゴンの体に変化が生じた…

元々黒を帯びた色だった皮膚が、鋼色に変化しているのである…

 

 

ドラゴン

「出来ればこれは使いたくなかったのですが…仕方ありませんね…ふふ」

 

 

ドラゴンは再び怪しい笑みを浮かべた。

 

 

王ドラ

「シュターリング…? それに何なのですか…? その姿は…」

 

 

ドラゴン

「まあ実際に体験してみて下さいっ!!」

 

 

シュッ!

 

 

ドラゴンは王ドラにそう言うと、王ドラに急接近した!

 

 

王ドラ

(スピードは先程と同じ………なら迎え討つのみ!)

 

 

王ドラは接近して来るドラゴンに両方のヌンチャクを振るう!

 

しかし…!!

 

 

ドラゴン

「ふふっ…」

 

 

パキッ!!!

 

 

王ドラ

「な…!!?」

 

 

王ドラは驚愕した。なんと先程までドラゴンにダメージを与えていたヌンチャクがいとも容易く折れてしまった。それも両方である。

 

 

ドラゴン

「食らいなさいっ!!」

 

 

バァン!!

 

 

王ドラ

「しまった! ぐは!!」

 

 

バタッ

 

 

ヌンチャクを折られた事に動揺し、怯んでる王ドラに、容赦無いドラゴンの肘撃が入る!!

そして攻撃を受けた王ドラは地面に倒れ込んでしまった!

 

 

ドラゴン

「…どうですか? 私の"鋼の肌"は? この状態の耐久力は六人衆のうちトップです」

 

 

ドラゴンは誇らしげに言った。

 

 

王ドラ

「鋼の…肌…そんな物を隠し持っていたのか…!!」

 

 

地面に倒れた王ドラは、度肝を抜かれたような表情をした。

 

 

ドラゴン

「私はこのように自身の身体を自由自在に硬質化することが可能なのです。この肌はあなたのヌンチャクは勿論のこと、銃弾やビーム等の攻撃すら全く受け付けません、まさに絶対防御。 あなたの負けは確定です」

 

 

ドラゴンは地面に倒れたままの王ドラに、ほくそ笑みながらそう吐き捨てた。

 

しかし……

 

 

 

王ドラ

「………銃弾等の攻撃を受け付けない……ですか…」

 

 

スッ………

 

 

王ドラはゆっくりと立ち上がった……

 

 

ドラゴン

「ええ、受け付けません。それでもまだやる気ですか?」

 

王ドラ

「あまり私を……見くびらないで下さい…!!」

 

 

バッ!!

 

 

折れたヌンチャクを捨てた王ドラは、先程とは全く別の構えをとった。

 

そのファイトスタイルは……太極拳である。

 

 

太極拳……「柔能く剛を制す」の言葉通り、柔軟な動きを取り入れた型。相手の攻撃を受け流し、且つそれを利用して決定打を入れる術に長ける。

 

 

ドラゴン

(何だ…? まだ何かあるのか…? それでも彼の攻撃は私には通用しない…これで決める…!!)

 

 

シュッ!

 

 

ドラゴンは王ドラに向かって再び接近し、とどめの一撃を放とうとする!

 

 

王ドラ

「………………」

 

 

しかし王ドラは構えをとったまま、動かない。

 

 

ドラゴン

「これで終わりです!」

 

 

ドラゴンの拳が王ドラの腹に伸びる!

 

 

ドラゴンの手が王ドラの腹まであと20cm程の距離に達した時……王ドラは動いた!!

 

 

 

 

王ドラ

「そこだ!!」

 

 

パンッ!

 

 

なんと王ドラはドラゴンの攻撃を素手で弾いたのである!

 

 

ドラゴン

(何!? 見切られた上に受け流された…!?)

 

 

王ドラ

「見えた…!」

 

 

王ドラの行動に驚愕するドラゴンに、王ドラの攻撃が差し迫る!!

 

王ドラの手は"グー"の形では無かった……

その形は"パー"の形をしていた!

 

 

パァン!!!

 

 

腰の入った王ドラの掌打が、ドラゴンの胸に炸裂する!!

 

 

ドラゴン

「ぐああああ!!」

 

 

バタッ!!!

 

 

ドラゴンはあまりの激痛に苦しみながら、地面に倒れ込んでのたうち回る!

 

 

ドラゴン

「何故…!? 何故ダメージを受けている…!? この肌は鋼鉄並みの強度を誇っているんだぞ……!?」

 

 

自分の身に起こっている現象に驚きを隠せないドラゴンに、王ドラは答えた……

 

 

王ドラ

「"発勁(はっけい)"です」

 

 

発勁……相手に掌打を打ち込む事で、外部からではなく、相手の内側から破壊する技。

 

 

ドラゴン

「発勁だと…!? そういうことですか…! 体表は硬いと判断し、外部からではなく内側から破壊するとは…!」

 

 

必死に痛みを抑えながらドラゴンは言った。

 

 

王ドラ

「そうです。 あなたの肺等の内臓を少々傷付けさせて頂きました…しばらく動けませんが、死にはしませんからご安心を…」

 

ドラゴン

「私が鋼鉄の肌と化した時から…考えていたのですか…?」

 

王ドラ

「いえ…咄嗟の判断です。」

 

 

王ドラは服に着いた汚れを払いながら答えた。

 

 

王ドラ

「私は現ドラえもんズの副リーダー、そして全ての中国拳法を修得した身です。ですから……あなたには絶対に負けるわけにはいかなかった……。」

 

 

ドラゴン

「……参りました…完敗です」

 

 

ドラゴンは納得したようであり、自身の敗北を認めたようであった。

 

 

王ドラ

「お手合わせ、ありがとうございました」

 

 

王ドラは手を合わせ、ドラゴンに向かって頭を下げた…

 

こうして中国拳法家同士の決着は着いた……

 

 

 

 

 

 

キッド

「……おめーらの仲間、全員やられたみたいだぜ…」

 

イーグル

「くそ…! 貴様ら……許さんぞ!!」

 

キッド

「怒ってんのはこっちも同じなんだよ! てめえが最後だ! 来やがれ!」

 

イーグル

「うおおおお!!!」

 

 

 

 




ジャイアン
「おい、鉄騎隊六人衆弱体化してないか?」

スネ夫
「いやいや、ただドラえもんズが並み外れて強いっていう設定らしいよ」

のび太
「バトル物は必ずと言って良いほどインフレが起こるからねー……尤もこの小説がバトル物と言えるかは謎だけどね」

静香
「まあいいじゃない皆。それでは! また次のお話で♡」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

もう一人の天才ガンファイター

キッド
「やっと俺のターンだ! どうぞご覧あれ!」


イーグルを除く鉄騎隊六人衆は全滅。

 

六人衆の最後の一人、イーグルとの戦闘が始まった……

 

 

 

キッド

「ドカンッ! ドカンッ!」

 

 

キッドはイーグルに向かって水圧砲を連射する。

 

 

イーグル

(あれは当たったらまずい。回避だ!)

 

 

サッ!

 

 

イーグルは背中に付いている翼を広げ空中に飛び立ち、水圧砲を躱した!

 

 

キッド

「へえ、後ろの翼は伊達じゃねえって事か」

 

イーグル

「当然だ。 さあ! 当ててみろ!」

 

 

バッ!!

 

イーグルは翼を広げ、キッドを挑発する様に言った。

 

 

キッド

「言ってくれるじゃねえかっ!」

 

 

キッドはイーグルに向けて水圧砲を放つ!

しかし再び躱されてしまう!

 

 

イーグル

「どうした! 命中率は先程の小僧の方が上だぞ!!」

 

 

イーグルは更にキッドを挑発した。

先程の小僧とは当然のび太の事である。

 

 

キッド

「だろうな、"今の状態"じゃああの子の方が上かな」

 

 

 

しかしキッドは意味深な言葉を返した。

 

 

イーグル

「今の状態だと…? どういう事だ?」

 

 

イーグルはキッドの言葉に疑問を覚えた。

 

 

キッド

「さあ? てめえが全力で来たら教えてやってもいいぜ?」

 

イーグル

「減らず口を! 食らえ!!」

 

 

シュッ!!

 

 

イーグルはキッドの言葉に腹を立て、猛スピードでキッドの下へ滑空する! そして鋭い爪でキッドを狙った!

 

 

キッド

「!! 速えな!」

 

 

サッ!

 

 

キッドは水圧砲を盾にし、身を守った。

 

しかし……

 

 

イーグル

「甘いんだよ!!」

 

 

パキーン!!!

 

 

キッド

「な…!! 痛って…!!」

 

 

キッドは驚愕した。

 

確かにキッドはイーグルの攻撃をモロに食らってしまい、ダメージを受けた。

 

しかしキッドが驚いているのはそこではなかった…

 

 

キッド

「痛てて…てめえ……まさか水圧砲を"真っ二つ"にするなんてな、一体どうやったんだ?」

 

 

水圧砲が完全に破壊されたのだ。

それも綺麗に真っ二つに。

水圧砲を装着していたキッドの右腕も傷を負い、鮮血が床に滴り落ちる……

 

 

イーグル

「俺の爪の硬度はダイヤモンドより上だ。それに俺のスピードが加われば、貴様の武器如きを破壊するのは造作もない事だ!」

 

キッド

「そんな爪隠してたんか……道理でね……」

 

 

キッドは納得した表情を浮かべた……

 

 

イーグル

「さあ! どうする! 貴様の利き腕と武器は使い物にならなくなった!! 大人しく降参しろ!」

 

 

イーグルはキッドに対し投降を求めた……

 

しかし……

 

 

キッド

「フッ……、利き腕ねえ…?」

 

 

キッドは不敵な笑みを浮かべた……

 

 

イーグル

「どうした…? 何を笑っている?」

 

キッド

「さっき俺は言ったよな?「"今の状態"じゃああの子の方が上」だって……それに「てめえが全力で来たら教えてやってもいい」とも言った」

 

イーグル

「……確かに言ったが…それが…?」

 

キッド

「てめえは確かに俺に全力でかかってきて俺に傷を付けた……だからそれに免じて特別に教えてやる」

 

イーグル

「ほう…じゃあ教えてもらおうか。あの言葉の意味を」

 

 

イーグルはキッドの言葉に耳を傾けた。

 

そしてキッドはポケットから再び"水圧砲のような物"を取り出して言った……

 

 

 

 

 

 

 

キッド

「俺は……"左利き"だ」

 

 

カチッ!

 

 

するとキッドはその水圧砲のような物を左手に装着した。

 

 

イーグル

「何!? 今までのはフェイクか…!!」

 

 

キッドは今まで水圧砲を右手に装着して戦っていた……

それは相手に自分を右利きと思わせるフェイクだったのである!

 

 

キッド

「さて…久々にこいつを撃たせてもらうぜ…!」

 

 

キッドは狙いを定めて水圧砲を放つ!

 

 

イーグル

(!! さっきより狙いが正確だ!!しかも何だこの弾は!!さっきの武器と同じ型では無いのか!?)

 

 

サッ!!

 

 

イーグルは辛うじて弾丸を回避する!

 

しかし…

 

 

 

キッド

「まだだぜ」

 

イーグル

「何!?」

 

 

キッドはもう一発イーグル目掛けて弾を放つ。

 

 

イーグル

(これは…!! 避けられない!!)

 

 

ドンッ!

 

 

そしてキッドが放った弾丸は、見事イーグルに命中した!

 

 

イーグル

「ぐああああ!!!!」

 

 

ドオオオオン!!!!!

 

 

直撃を食らったイーグルは遥か後方に吹き飛ばされ、壁に激突する!

 

 

イーグル

「何だ……!? その威力は…!!」

 

 

壁に激突したイーグルが、壁からずり落ちながら言う。

 

 

キッド

「……言い忘れてたな、こいつはただの水圧砲じゃねえ…………"水圧大砲"だ!!」

 

 

水圧大砲…水圧砲を加工したキッド専用の特注品。

似たような物に空気大砲もある。

 

 

イーグル

「うっ…! 水圧大砲だ…と?」

 

キッド

「威力は水圧砲の……"10倍"だ」

 

イーグル

「10倍…!?」

 

キッド

「その代わりこいつは俺にしか扱えねえ、それも左手に装着した時しか制御が出来ねえ代物だ」

 

イーグル

「そういう事か……ぐうっ!!」

 

 

イーグルは痛めた体を抑えながら言う。

 

 

キッド

「立てねえだろ? こいつを食らって立てた奴はいねえ……でも恥じるな、俺にこいつを撃たせたことは……お前の誇りだ」

 

イーグル

「誇り……だと…?………く…そ…!」

 

 

イーグルはそう言い残すと気を失ってしまった。

そしてそのまま動かなくなった……

 

 

イーグル

「……………………」

 

キッド

「……お前の一撃……中々効いたぜ」

 

 

キッドは負傷した右手を抑えながら言った……

 

 

 

六人衆のリーダー………イーグルを撃破!!

 

 

 

 

 

 

ポセイドン

「おのれ…!!! 役立たず共が!!!」

 

 

六人衆が全滅した事により、ポセイドンの怒りは頂点に達した!!

 

 

王ドラ

「彼らの責任ではありませんよ。単にあなたの指導不足です」

 

 

王ドラはポセイドンを挑発する。

 

 

ポセイドン

「なんだと!?」

 

ドラニコフ

「ガウ」

 

ドラリーニョ

「そろそろ決着を付けよう……だってさ」

 

キッド

「そうだな、 よし皆! 親友テレカだ!!」

 

 

王ドラ

「はい!」

 

マタドーラ

「よっしゃ!」

 

ドラリーニョ

「うんっ!」

 

ドラメッド

「うむ!」

 

ドラニコフ

「ガウッ!」

 

 

 

 

キッドがそう言うとドラえもんズはポケットなどから、友情の印……親友テレカを取り出した!!

 

そして親友テレカから発せられる光をポセイドンに向ける!

 

 

ポセイドン

「なんだ……この光は!!」

 

 

ドラえもんズ

『我ら!! ドラえもんズ!!!』

 

 

キッド

「ポセイドン!! てめえを破壊する!! 許しはあの世で乞いな!!」

 

 

キッドがそう言うと、親友テレカの光がキッドの水圧大砲に集約する。

 

そしてそれは、七色に輝く巨大な水圧砲へと変化した。

 

これこそがドラえもんズの切り札、七色の一撃(トラスト・トリガー)である。

 

 

ポセイドン

「ま、待て!! ワシが悪かった!! 命だけは…!!」

 

 

ポセイドンは必死にドラえもんズへ命乞いをするが、ドラえもんズ達に迷いの目は一切無い。

 

 

キッド

「食らいやがれ!!!」

 

 

ドオオオオオオオオン!!!!!

 

 

 

キッドは水圧砲の引き金を引き、水圧砲を発射した!!

 

とてつもない轟音が鳴り響き、強烈な閃光が発せられる!!

 

 

 

のび太

「うっ! なんて威力なんだ!!」

 

ドラミ

「こっちまで吹き飛ばされそうだわ!」

 

 

あまりの水圧砲の威力に、皆は思わずたじろいた。

 

 

そしてその砲弾はポセイドンをピンポイントで直撃した!!

 

 

ポセイドン

「何故だぁ!!?? このワシがぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

そして水圧砲を食らったポセイドンは断末魔を上げ、とてつもない轟音と共に爆散した。

 

爆散の後、ポセイドンの残骸が辺りに降り注ぐ。

 

 

キッドは水圧砲を四次元ハットにしまい、帽子を手にとって帽子に付着した土煙を手で払った。

 

 

 

キッド

「一丁上がりだ、お代はツケにしとくぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幹部の一人……ポセイドンを撃破!!!!

 

 

 




ジャイアン
「長かった……本当に長かった…」

静香
「やっとドラえもんズの戦いが終わったわね」

のび太
「やっぱりキッド…かっこいい…」

ドラえもん
「そうだね、じゃあ皆! まったねー!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

The departure

いよいよ鬼岩城篇の完結です。
それではどうぞ!!


のび太達のピンチに駆け付けたドラえもんズ

 

彼らは無事に敵の幹部の一人、ポセイドンを撃破した…

 

 

キッド

「大丈夫か? へちゃむくれ」

 

 

キッドがドラミに手を差し伸べる。

 

 

ドラミ

「誰がへちゃむくれよ!」

 

 

キッドの言葉にドラミは怒って返すが…

 

 

キッド

「それだけ元気なら大丈夫だな……本当に良かったぜ…」

 

 

キッドは笑みを浮かべた。

 

 

ドラミ

「……うふっ、ありがと」

 

 

バッ…

 

 

ドラミはキッドの手を取って立ち上がった。

 

のび太達も他のドラえもんズの手を借りて立ち上がっていた…

 

 

のび太

「ありがとう……ドラえもんズの皆」

 

スネ夫

「助かったよ……」

 

 

立ち上がったのび太達はドラえもんズに礼を言う。

 

 

王ドラ

「礼には及びません。あえて礼を言うなら…ドラえもんに言って下さい」

 

のび太

「ドラえもんに?」

 

マタドーラ

「あいつが俺たちをこっちに派遣したんだ、まったく人使いが荒れぇ奴だぜ」

 

スネ夫

「そうだったのか…ドラえもんが…」

 

エル

「礼を言わないとね…」

 

キッド

「それよりよ……残ったあいつらはどうする?」

 

 

キッドは残った鉄騎隊…ミノタウロス、ドラゴン、ジャガー、イーグルを指差しながら言った。

全員は少なからず負傷している……

 

 

一同

『あ……』

 

 

そう、残った敵の残党をどのように処分するか、皆はそれを検討しなければならないのだ。

 

 

イーグル

「俺たちを……殺すのか?」

 

ミノタウロス

「戦いの中で死ねるのなら……それも本望だぁ…」

 

ドラゴン

「……私達は敗者です。どうか、好きにして下さい。」

 

 

 

全員が沈黙する中、一人の男が口を開いた。

 

 

 

のび太

「……どうもしないよ。もう十分反省しただろうしね。」

 

一同

『!?』

 

 

のび太の言葉に一同は驚きの声を上げた。

 

 

キッド

「それで良いのか? 奴らはおめーらをあんな目に合わせたんだぜ?」

 

のび太

「あいつらはポセイドン、そして主にポーラの指示に従って動いてただけだよ、それに…僕らは戦えなくなった相手を殺したり嬲ったりする程…酷い集まりじゃないよ。 そうでしょ? エルさん、スネ夫、ドラミちゃん」

 

 

のび太は3人に問いかけた。

 

 

スネ夫

「うん、のび太に一理あり!」

 

ドラミ

「そうね、のび太さんの言ってる事は正しいわ」

 

 

スネ夫とドラミがのび太の意見を肯定する中、エルは……

 

 

エル

「………ちょっと待ってて欲しい」

 

ドラミ

「え?」

 

 

エルはそう言うと倒れている六人衆に近づいて、こう言った…

 

 

エル

「……僕たちは君達を殺す気も無ければ、危害を加えるつもりも無い。でももしまた僕たちの脅威と成り得る行動をしたら……分かるね?」

 

 

エルは六人衆に問いかけた。

 

4人は暫く黙っていたが、ようやく口を開いた…

 

 

 

イーグル

「………分かった、もうお前たちに手出しはしない」

 

ドラゴン

「約束しましょう」

 

ミノタウロス

「……仕方ないな」

 

ジャガー

「…………」

 

 

3人がエルの出した条件に承諾する中、ジャガーだけは黙っていた……

 

エル

「君はどうなんだ?」

 

 

エルがジャガーに問いかける。

 

 

 

ジャガー

「…あんたらに頼みがある」

 

のび太

「頼み? 何を?」

 

ジャガー

「ワシを………あんたらの仲間に加えてくれんかのぉ…?」

 

 

ジャガー以外

『!!??』

 

 

全員は驚愕した。

とても思ってもみない言葉だったからである。

 

 

イーグル

「ジャガー…どうしたんだ?」

 

キッド

「…………どうしてだ?」

 

ジャガー

「……ワシはこの鉄騎隊六人衆という括りが嫌いなんじゃ……だからもうここには居たくないんじゃ…」

 

エル

「括りが嫌い? どういう意味だい?」

 

ジャガー

「ワシらは目的の為なら人殺しも躊躇わない、そういう集団じゃ。じゃがワシは人殺しは大嫌いなんじゃ、だから……ワシは今日を限って鉄騎隊六人衆を脱退し、あんたらの味方に就きたいと思うとるんじゃ……。」

 

キッド

「…………駄目だ。 お前が俺たちを裏切らないと言う保障がどこにある?」

 

 

キッドはきっぱりと断った…当然である。先ほどまで敵であった者から仲間にしてくれと言ってきたのだから…

 

しかし、意外な人物が口を開いた。

 

 

ドラリーニョ

「……僕は賛成だよ」

 

ジャガー

「ドラリーニョ……」

 

 

ドラリーニョはただ一人、ジャガーを仲間に加える事に賛成をした…

 

 

王ドラ

「ドラリーニョ?」

 

エル

「何故だい?」

 

ドラリーニョ

「だってジャガーは僕に全力でシュートを撃たせてくれたんだ。だから僕はジャガーを味方に加えても良いと思うよー」

 

ドラリーニョはポケーっとした表情で言った。

 

 

キッド

「…へえ、あいつが……分かった、俺は賛成に意見を変えるぜ」

 

 

キッドは全てを悟った様に、きっぱりと意見を変えた。

 

 

王ドラ

「……ええ、ドラリーニョの直感はよく当たります、それに彼がドラリーニョの闇を取っ払ってくれるとは……私も賛成です」

 

ドラニコフ

「ガウ」

(僕も賛成)

 

 

次々とドラえもんズが賛成に意見を変える中、のび太達は一体ドラリーニョが何を言っているか分からなかった…

 

 

のび太

「え? どういうこと?」

 

ドラミ

「それは後でね……とにかく、ジャガーは信用できる人だと言う事が分かったわ」

 

スネ夫

「何がなんだか…」

 

 

のび太達はイマイチ状況が飲み込めていない様子である。

 

 

キッド

「皆、もう一度聞く。 ジャガーを俺たちの仲間にするのに賛成か、反対か」

 

のび太

「よくわからないけど……賛成だよ」

 

スネ夫

「……僕も」

 

ドラミ

「私もよ」

 

エル

「……分かったよ、賛成だ」

 

 

のび太達は全員承諾した…

 

 

キッド

「のび太達は賛成だな、おめーらはどうだ?」

 

王ドラ

「私達は全員賛成ですよ」

 

 

王ドラがドラえもんズを代表して言う…

 

 

キッド

「満場一致で間違いないな?」

 

キッド以外

『ああ/ええ』

 

 

キッド

「……ジャガー、お前はこれから多くの戦いを経験するだろう。多くの苦難、挫折がある……だが、俺たちはチームだ、お前の後ろには…仲間がいる。それを忘れんな。」

 

 

キッドは全員の意見を聞くと、ジャガーにそう言った…

 

 

ジャガー

「ありがとう…!! ワシは精一杯戦うことを誓う!」

 

 

ジャガーは感涙のあまり涙を流した…

 

 

キッド

「フッ……よし! その覚悟! 確かに受け取ったぜ!」

 

 

キッドはジャガーの覚悟を改めて確認し、笑顔で言った。

 

 

ドラリーニョ

「よかったね! ジャガー!」

 

ジャガー

「おう…! 今度は敵同士ではないのぉ…!!」

 

 

ドラリーニョとジャガーは互いに喜び合った……

 

また一人、仲間が増えたのである…

 

 

 

マタドーラ

「さて、そろそろここからおさらばしようぜ。未来で俺様のセニョリータが待ってる」

 

 

セニョリータ…それは勿論スピアナの事である。

 

 

ドラミ

「そうね、さっさと行きましょう。それとマタドーラ、スピアナさんはもう結婚してるわよ」

 

マタドーラ

「ええ!? 嘘だろ!? やられたぜ…」

 

ドラミ

「そもそも"王妃"って事は結婚してるに決まってるでしょ…」

 

王ドラ

「残念でしたね、エル・マタドーラ」ニヤニヤ

 

 

マタドーラは肩を落とした。

まったくこの男は……

 

 

ジャガー

「じゃあ……ワシはもう行くけんの…イーグル、ドラゴン、ミノタウロス…」

 

 

ジャガーは残った3人に別れを言った……

 

 

イーグル

「……………」

 

ドラゴン

「……………」

 

ミノタウロス

「……………」

 

 

3人は黙ってジャガーを見つめている……

 

ジャガー

「"六人衆"は嫌いじゃったが……あんたらの事は好きだったけんの…」

 

 

その言葉に3人は思わず心を撃たれた。

 

 

イーグル

「ジャガー………これからもお前の好きなように暴れてやれよ!」

 

ドラゴン

「ジャガー……ありがとう…さようなら…」

 

ミノタウロス

「頑張れよぉ!!」

 

 

3人はジャガーの言葉を聞くと、ジャガーに精一杯エールを送った……

 

 

のび太

「……鉄騎隊六人衆にも友情と言うものがあったんだね……」

 

スネ夫

「うん……なんか…複雑だね…」

 

ドラミ

「………皆! もう行くわよ! タイムホールに入って!」

 

 

 

 

 

全員はタイムホールに入り、22世紀へ向かった……

 

そしてタイムホールは静かに閉じた……

 

 

イーグル

「………さて、これからどうする?」

 

ドラゴン

「…穏便に暮らしましょう、戦うのはもう疲れました」

 

ミノタウロス

「そうだな……」

 

 

 

3人は歩き出した……

明日へ向かって……

 




ジャイアン
「なんか…普通に鉄騎隊いい奴らだったな…」

静香
「当初はボコボコにする予定だったけど、それは流石に無慈悲だから止めたんですって」

ペコ
「次からは私たちですか……久しぶりで緊張します…」

ドラえもん
「のび太君たち! お疲れ様! それじゃあね!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Notice

ジャイアン
「いよいよ俺様の出番だー!」

静香
「私もおめかしおめかし♡」

ドラえもん
「あのさー……まあいいや…」

ペコ
「それでは皆さん! 始まります!」


のび太達がタイムマシンで22世紀へ向かっている頃…

 

 

ドラえもん

「もしもし? のび太君かい!? 怪我は大丈夫なの!?」

 

ドラえもんは戦いを終えたのび太達と通話をしていた…

 

 

のび太

《王ドラに診てもらったけど…全員入院が必要だってさ、それよりドラえもん、ありがとう…君のおかげで助かった》

 

ドラえもん

「礼なんていいよ……でもあえて言っとくよ……どういたしまして」

 

 

ドラえもんは笑いながら言った。

 

 

ドラえもん

「……え? ちょっと待って、入院だって?」

 

 

ドラえもんはさらっと受け流していた言葉に違和感を感じ、のび太に質問する。

 

 

のび太

《僕とスネ夫は内臓を痛めてて、エルさんとドラミちゃんは骨に異常があるらしいから……そっちには行けそうにないんだ…》

 

ジャイアン

「無事だっただけマシだぜ……よく生き残ったな…」

 

のび太

《彼らのおかげさ》

 

ジャイアン

「ドラえもんズか……1度会ってみてえな…」

 

のび太

《ハハ、それより……ペコ? 今話せるかい?》

 

 

のび太は電話の奥にいるペコに呼びかけた。

 

 

ペコ

「はい…代わりました。のび太さん……スピアナ王妃は…?」

 

 

電話を変わるとペコは心配そうにスピアナ姫の安否を尋ねた…

 

するとのび太は……

 

 

のび太

《ペコ………王妃の救出は…成功だよ…! 今はドラえもんズ達が彼女を保護してるから……安心して》

 

 

のび太は心から嬉しそうな声でペコに告げた。

その言葉はペコの心に響き、ペコの心は震えた……

 

 

ペコ

「…………ありがとうございます!!! のび太さん!」

 

のび太

《どういたしまして……それよりペコ…泣いてる?》

 

ペコ

「な、泣いてなんか……うっ…うっ…」

 

 

当然ペコは泣いていた……

なんとも分かりやすい嘘である。

 

 

静香

「ペコ、 泣いてもいいのよ?……いっぱい泣きなさい」

 

 

静香はペコに優しく言葉をかける…

 

 

ペコ

「うっ……うわあああ!!」

 

 

静香の言葉でペコの中の何かが切れたのか……その言葉を機にペコは大泣きを始めた……実に1時間程……ペコは泣いた…

 

そしてその間、のび太達は鬼岩城で起きた事を全て話終えた…

 

 

ドラえもん

「じゃあのび太君、スピアナさんを宜しくね……」

 

のび太

《うん、それじゃあね》

 

 

こうしてドラえもん達はのび太との通信を終えた…

一同はのび太達が無事であることにに安心した…

 

 

ジャイアン

「さて……そろそろ約束の時間か…」

 

 

そう、午後5時に集落に来いと言うサベールとの約束があることを忘れてはいけない。現時刻は4時55分である。

 

 

ペコ

「そうですね……皆さん、申し訳ありませんが、外に出てサベールを待っていてくれませんか?」

 

静香

「ええ、分かったわ」

 

 

ペコがそう指示するとドラえもん、ジャイアン、静香、チッポは外へ出た……

 

現時刻は4時58分である。

 

 

ジャイアン達は暫く待った……

 

 

 

そして5時になった。

サベールはまだ来ない。

 

 

 

5時5分

 

 

チッポ

「…………来ないね」

 

ジャイアン

「少しは時間に誤差があるかと思って5分待ったが……駄目か…」

 

ドラえもん

「……仕方ない」

 

静香

「約束は約束だものね…」

 

 

5分経ってもサベールは来なかった……

 

 

しかし、全員に諦めるムードが漂い始めたその時!

 

 

ジャイアン

「……!!へへ、おい…見ろよ皆」

 

 

ジャイアンは笑ってある者を指差した。

 

 

ドラえもん

「え?」

 

静香

「まさか…」

 

 

全員の視線がその者に集中する。

 

 

 

 

チッポ

「やっぱり……来てくれたんだね! サベール!」

 

 

サベール

「…………………」

 

 

タッ タッ タッ………

 

 

そう、サベールが集落に歩いて来ているのである。

チッポはその事に歓喜する。

 

 

サベール

「………………」

 

 

サベールは4人の前で立ち止まった。

 

しかし彼は固い表情のまま、ずっと黙っている。

 

 

ジャイアン

「仲間になる気になったのか?」

 

 

ジャイアンは黙っているサベールに問いただす。

 

そして暫く黙っていたサベールがようやく口を開いた。

 

 

しかし、その言葉は4人が期待していた物では無かった…

 

 

 

 

 

 

 

サベール

「……仲間になるつもりは毛頭ない。」

 

ドラえもん

「な……」

 

 

サベールはきっぱりと言った……

4人はショックを受け、沈黙してしまう…

 

 

静香

「…………じゃあどうして来たの?」

 

 

仲間にならないのなら来なければいい、そう思った静香はサベールに問いただした。

 

 

サベール

「仲間にならない代わりに、ある情報をやろうと思ってな」

 

チッポ

「何の……情報?」

 

 

チッポが聞く、そしてサベールは答えた。

 

 

サベール

「今夜0時、敵がこの集落を襲撃する。 敵は1000体の兵団らしい。避難するなら今だぞ」

 

ジャイアン

「…………おい、今なんて言った?」

 

 

ジャイアンはサベールの言葉を信じ切れないらしく、耳を疑った……

 

 

 

サベール

「奴らがこの集落を襲撃すると言ったんだ」

 

 

サベールは4人にもう一度言った。

 

 

静香

「そんな……嘘でしょ…?」

 

チッポ

「今この集落にはバウワンコの民が1000名以上いるんだよ……?」

 

ドラえもん

「もう時刻は17時を回ってる…! 今から避難場所を決め、全員に避難勧告を出して避難させるなんて不可能だ!」

 

 

ドラえもんは取り乱した様子で言った。

 

 

サベール

「でも避難するしか無いだろう? 」

 

 

サベールは冷徹に言葉を吐き捨てる。

 

 

ジャイアン

「仮に避難出来ても……この集落の周りには大量の資源があるんだ! 今ここを手放したら集落の住民は生きて行けねえんだ!」

 

サベール

「なら戦うのか? 数はこちらがやや上だが兵力はあちらが上だろうな。言っておくが私はお前たちに味方する気はないし、あちらに味方をする気も無いぞ」

 

 

サベールは更に残酷な言葉を浴びせる…

 

 

チッポ

「本当に……それが君の本心なの? サベール」

 

 

チッポが口を開いた…

 

 

サベール

「どういう意味だ…?」

 

チッポ

「本当は僕らと一緒に戦いたいって……思ってるんじゃないの…?」

 

サベール

「馬鹿馬鹿しい……そんな訳があるか。私はただの傍観者だ」

 

 

チッポの言葉をサベールは全否定する。

 

しかし…

 

 

チッポ

「それでも僕は信じてる……君は僕達の味方だって…」

 

 

チッポは熱い視線でサベールを真っ直ぐ見て言った…

 

 

サベール

「……………勝手に信じていろ……それではな」

 

 

タッ タッ タッ………

 

 

サベールはそう言い残すと、彼は集落を後にした……

 

サベールの姿が段々遠ざかって行く…

そしてサベールの姿が完全に見えなくなると、ジャイアンはこう言った……

 

 

ジャイアン

「ドラえもん、皆……集落の皆を集めてくれ、今から…緊急作戦会議を行う…!」

 

ドラえもん

「うん………」

 

静香

「……分かったわ」

 

 

ジャイアン達は集落の住民を片っ端から集め始めた…

 

 

チッポ

「……………」

 

 

そしてチッポは未だにサベールが消えて行った集落の出口を眺めていた…

 

 

チッポ

「……僕も動かなきゃ……」

 

 

そしてチッポは走り出した……

 

集落を守る為に…




ジャイアン
「おい、俺の出番これだけかよ」

ドラえもん
「文句言わないの! これから嫌というほど仕事が回ってくるから!」

チッポ
「そうそう、それでは! またねー!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

チームの存在意義

のび太
「今回けっこう後付けが多いよね?」

ドラえもん
「シッー!! 大人の事情だよ。 それではどうぞ!」


集落に姿を現したサベール…

 

 

彼はジャイアン達に、敵が今夜0時に集落を襲撃すると告げ、姿を消した……

 

 

そしてジャイアン達は集落の住民を集落の中心に集め、緊急作戦会議を行おうとしていた…

 

 

住民

「どうしたどうした?」

 

「何が始まるの?」

 

「重要な話らしいぞ」

 

「本当に?」

 

 

集められた住民達はガヤガヤと話をしている…

 

 

ジャイアン

「皆集まったな? 静香ちゃん」

 

静香

「ええ、そろそろ始めましょう」

 

ドラえもん

「うん…」

 

 

タッ タッ タッ

 

 

ジャイアン達は全員が集まった事を確認すると、集落の中心にある演台の上に上がった。

 

住民の視線がジャイアン達に集中する。

 

そしてジャイアンは口を開いた……

 

 

ジャイアン

「皆、落ち着いて聞いて欲しい。皆が集められた訳なんだが………以前王国を襲った集団が今度はここを襲撃しようとしてんだ。数は1000体、それも今夜0時に…!」

 

 

住民達

「なんだと…?」

 

「そんな…」

 

「あんまりだろ…」

 

 

住民達はジャイアンの言葉にショックを受けた……

 

それも仕方ない、彼らは王国での惨劇を体験しているのだから……

 

住民の反応を見つつ、慎重にジャイアン達は話を続けた……

 

 

静香

「敵の素性は未だに不明だわ、一体どんな敵が来るか分からない。 でも……」

 

 

静香の後に続くようにドラえもんは口を開いた。

 

 

ドラえもん

「もう時刻は午後7時を回ってるんだ! 考えてる暇は無い! 皆! 奴らと戦う為に協力して欲しいんだ!」

 

 

ドラえもんは住民に深く頭を下げた…

 

しかし……

 

 

住民

「そんなの……断るに決まっているだろう! 勝てる訳が無い!」

 

「その通りだ! 王国の親衛隊が敵わなかった相手に俺ら農民達が敵う訳がねえ!」

 

 

一方の住民はジャイアン達の申し入れに反対した。

 

 

「待って! ここは幸い食料には恵まれているのよ!? ここを離れたら私たちだけじゃなくて子供達まで餓死してしまうわ!」

 

「じゃあ戦うって言うのか!? 俺はごめんだぜ! あんたらだけで勝手にやっとけ!!」

 

「どうしてそんな言い方しか出来ないの…? あなた……それでも良いの!?」

 

 

住民達の激しい口論が飛び交う中、静香は落ち着いた口調で言った……

 

 

静香

「大丈夫、あなた達が中心になって戦う訳ではないわ。あくまで最前線で戦うのは…私達よ」

 

 

ジャイアン

「俺たち3人がジャングルと集落を出入り出来る門、"東門"と"西門"を防衛する。皆は俺たちが取りこぼした兵隊達を倒して欲しいんだ……」

 

 

ジャイアン達の居る集落の周りは高い塀で囲まれている。そして集落の住民はジャングルと集落を出入りする為に、東方面に"東門"、西方面に"西門"を設けているのである。

ジャイアン達は、敵勢力はこの東門と西門のどちらか、もしくは両方を攻めて来ると考えているのである。

 

つまり敵勢力との交戦形態は……防衛戦である。

 

 

住民

「俺たちはあんたらの取りこぼしだけで良いのか……? 良かった……」

 

「しっかり頼むぜ? 俺たちは死ぬのはごめんなんでな」

 

 

住民の2人が嫌味ったらしく抜かす。

 

 

住民

「ちょっと…そんな言い方…」

 

「え? 何が悪い? あっちは満更でもないんだぜ?」

 

 

その者は更に言葉を続けた。

 

しかしその時!

 

 

???

「たわけがっ!!!」

 

 

若者の言葉を聞いたある老犬が、杖をついて歩み寄って来たかと思えば、突然大声で怒鳴った。

 

 

住民

「な、何だよ…? 長老……」

 

 

長老……バウワンコを長年生き抜いた、豊富な知識を持った老犬である。

 

 

他人事のように物を言っていた若者達は、長老の突然の怒号に動揺する。

 

 

長老

「お主ら…満更でもないじゃと? とりこぼしだけだから良かったじゃと? その言葉の意味を……お主自身は分かって言うておるのか!!」

 

 

チッポ

「長老……」

 

 

長老は烈火の如く怒り狂い、若者達への説教を続けた。

 

 

長老

「4年前……我が国の陛下を救ってくれたのは誰じゃ? 赤の他人であるにもかかわらず……儂らの国を救ってくれたのは誰じゃ!! そんな者達に……よくそんな口が利けるのぉ!! 彼らに少しでも恩返しをしようとは思わんのか!? 散々、彼らに儂らの事を散々背負わせて……恥ずかしいとは思わんのか!!」

 

 

長老は魂を込めて叫んだ。

 

そしてその思いは、集落の住民全員にの心に深く染み込んだ……

 

 

 

若者

「……そうだ…俺たちは……まだ何もしてない! やろう! みんな! 戦うんだ! 生きて戻って来た陛下の為に!」

 

 

1人の若者が奮起する。

 

 

若者

「……俺が間違っていた! あんたら! さっきの言葉を詫びよう! 済まねえ…! でもそれじゃあ詫びようにも詫び切れねえから……俺たちも一緒に戦ってやろうじゃねえか!」

 

 

 

「負けるか! 1000体が何だ! 俺たちにかかればそんなの朝飯前だね!」

 

 

 

住民達は次々と立ち上がり、奮起する!

 

そしていつしか……皆の心は一つになっていた……

 

 

住民達

「やってやるわ!」

 

「暴れるぞ!」

 

「家族や皆の為に戦うんだ!」

 

長老

「フン、やっとやる気を出しおったか。やれば出来るんじゃ」

 

 

そんな住民達の様子を見ていたジャイアン達は……

 

 

静香

「うふ、武さん? ドラちゃん?」

 

ジャイアン

「ああ、やっとまとまってきたな」

 

ドラえもん

「そうだね………よし! 皆!! これから大まかな作戦内容を発表する! 僕と静香ちゃん率いる班は、東門を防衛する! そしてもう一方の西門はジャイアン達の班が防衛する! 怖くて逃げたいと思う時もあるかも知れない! でもその度に思い出して欲しいんだ!自分の家族を! それがきっと力になる!」

 

 

静香

「女性や子供達は男性方の補給を担当して欲しいの! 全力でサポートするのよ!!」

 

 

ジャイアン

「いいか! 勝つ秘訣は、「意地と度胸」だ!! 敵を前にしたら絶対に下がんじゃねえ! ひたすら眼前の敵を……ぶっ倒せ!!!」

 

 

住民

『おう!!!!』

 

 

始まる………

 

壮大な闘いが………

 

 

 

ジャイアン

「皆!!! 行動開始だ!!!」

 

 




ジャイアン
「うおー! 燃えて来たぜ!」

静香
「武さん! 落ち着いて!」

ジャイアン
「これが落ち着いていられるか! うおー!」

静香
「この単細胞野郎……」

ジャイアン
「ヒッ! すいませんでしたー! それじゃあ皆! まったなー!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

襲撃開始、謎の少女

お待たせしました!!

異様に書く気が起きなくて放置気味でしたが……(笑)


それではどうぞ!!


23:00

 

 

集落への襲撃開始まで残り1時間を切っていた……

 

 

総司令官

《残り1時間だ、軍は定位置に配備させたか?》

 

 

ゼクト総司令官は通信機越しに"ある少女"と通信をしていた……

 

 

少女

「はい、ゼクト総司令官、配備は完了しました。後は待機した後、襲撃を開始するだけです」

 

 

少女の外見は、人形のように整った顔立ちで桃色の髪を肩より下に伸ばし、身には戦闘用のスーツを着ている。そして濁った"赤色"の瞳をしていた……

 

 

総司令官

《そうか……後は奴らを皆殺しにするだけだ……簡単な作業だ》

 

 

少女

「そうとは限りません」

 

 

総司令官

《ん? 何故だ?》

 

 

総司令官はその言葉に疑問を呈した。

 

 

少女

「私達の兵団は集落から1km程離れており、余程のことが無い限り向こうからは気づかれることはありませんが……どうも彼らは何かを警戒しているように見えます……」

 

 

総司令官

《警戒しているだと? どういうことだ?》

 

 

少女

「ここからの位置からでも分かるのですが、妙に集落が騒々しいのです。それと、東門と西門のどちらにも警備が多数配備されています。いくら敵襲を警戒していると言っても、今は深夜です。それにも関わらずあれほどの騒々しさがあるという事は…」

 

 

少女はデジタル双眼鏡で集落を偵察しながら言う。

 

 

総司令官

《………なるほど、つまり……》

 

 

少女

「ええ、彼らはこちらが集落を襲撃することに気づいています」

 

 

総司令官

《…………予定変更だ。わざわざ奴らの準備が完了するのを待つ必要もない。10分後に襲撃を開始しろ》

 

 

少女

「了解、10分後ですね」

 

 

総司令官

《しかし何故だ? こちらの情報が漏れているとしか思えないぞ》

 

 

少女

「どちらにせよ、やることは変わりません。私は任務を遂行するだけです…」

 

 

総司令官

《…そうだな。兵団の指揮はお前に任せるぞ》

 

 

少女

「はい、それでは……」

 

 

ピッ

 

 

少女は通信を終えると後ろを振り返った……

 

 

少女

「すぐに終わる……この兵団さえ居れば…」

 

 

 

後ろには1000体の兵団が鎮座していた。

 

 

型は4年前の様な堅牢な物では無く、どちらかと言えば細身な体型をしている……

 

 

 

少女

「……そろそろね…」

 

 

ピッ

 

 

 

23:07

 

少女は懐からスイッチの様な物を取り出し、押した……

 

 

兵団

「ーーーーー!!!!」

 

 

ガシャ! ガシャ! ガシャ!

 

 

すると兵団達は目に緋色の光を灯し、一斉に起動した。

 

 

 

 

 

少女

「行きなさい!! 進軍開始!!」

 

 

少女は集落を指差し、力強く言った。

 

 

兵団

「ーーーーー!!!!」

 

 

ダッ ダッ ダッ ダッ ダッ!!!!

 

 

兵団達は一斉に集落を目掛けて走り出し、轟音がジャングルに轟き響く。

 

その速度は凄まじく、闇夜に赤い残像が確認出来る程であった!

 

 

 

少女

「………私は高みの見物ね」

 

少女者はその場に座った…

すると……

 

 

???

「君はいいの? 戦いに参加しなくて」

 

 

突然後ろから声が聞こえた。

少女は振り返った……

 

 

少女

「あら、あなただったの…」

 

 

そこには……鳥類のキヌバネドリ科の一種、「ケツァール」を模した鳥の姿をした鳥型ロボットがいた…

 

 

少女

「いいのよ、私が戦うまでもないわ」

 

 

ロボット

「いざとなったら……僕達の"あれ"も出していいの?」

 

 

少女

「駄目よ、あれは強力過ぎて使うのは禁止されているわ」

 

 

ロボット

「………分かったよ、今回は待とう」

 

 

ロボットはその者の隣に座り、兵団が進軍する様子を見ていた……

 

 

 

 

 

 

一方その頃、集落では………

 

 

偵察

「!!!! 襲撃だ!!! 総員! 門の防衛を開始しろ!」

 

 

カランカラン!! カランカラン!!

 

 

集落の高台に登り、敵情を監視していた者が大声を上げて警鐘を打ち鳴らす!

 

 

住民

「嘘だろ!? 早すぎる!」

 

「とにかく準備はもう出来てるんだ! やることは変わらないよ!」

 

 

ダッ ダッ ダッ ダッ……!!!!

 

 

住民達は慌てた様子で走り出した!

 

 

ジャイアン

「チッ 予定よりも早えじゃねえか!」

 

ジャイアンは舌打ちをした。

 

 

静香

「仕方ないわ! 皆! 作戦はブリーフィング通りよ!! 自分の役目を思い出して!」

 

 

静香が住民全員に向かって大声で言う。

 

 

ドラえもん

「ジャイアン!! 東門は任せたよ! 僕と静香ちゃんは西門を守る!」

 

 

ジャイアン

「おうよ! 俺に任せろ!!」

 

 

カチッ!

 

 

そう言うとジャイアンは腕に空気砲を装着した!

 

 

ジャイアン

「東門へ向かうぞ! 俺の班は俺について来い!」

 

 

住民

『おお!!!!』

 

 

ダッ ダッ ダッ ダッ!!!

 

 

ジャイアン率いる東門防衛班は、東門に向けて走り出した!

 

 

ドラえもん

「来い……!! 必ずここを守り抜いてみせる!」

 

静香

「私達も行きましょう! もうすぐ攻撃が始まるわ!」

 

 

 

そして静香とドラえもんも住民を引き連れてそれぞれの門へ走った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女

「なるほどね、敵は両方の門を防衛するつもりなのね……」

 

 

集落から1km離れた場所で、総司令官と通信をしていた少女が言う。

 

 

ロボット

「どうするの? 相手は相当硬い防衛線を引いてるよ?」

 

 

少女

「両方を同時に攻めるわ。その分相手の戦力はそれぞれ二分されるから、どちらかの門を落とすのは容易よ」

 

 

両方を同時に攻める………それが兵団達の作戦である。

 

いたってシンプルで、最も有効な戦術である。

 

 

ロボット

「何か………僕たち………前もこうして何かと戦ってたような気がするんだ……気のせいかな?」

 

 

少女

「え? 何言ってるの? これが私達の"初陣"よ。気のせいよ」

 

 

ロボット

「……………そうだね、きっと……」

 

 

 

 

 

 

謎の少女と鳥型のロボット………

 

 

その正体とは………?

 




ささ、いよいよ彼女達の登場ですが………

彼女達は何故敵なのか…?

それは後々………


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

降り立った破壊兵器

ジャイアン
「待たせたな!! 作者が夏休みを満喫している内にこんなに更新が遅れちまったぜ!」

ドラえもん
「えー、皆さん。申し訳ありません」

静香
「それではどうぞ♡」


ジャイアン

「皆! これを使ってくれ」

 

バッ

 

ジャイアンはドラえもんから借りていたスペアポケットから大量の空気砲を取り出した。

これはドラえもんが"フエルミラー"を使い、量産した物である。

 

 

フエルミラー…この鏡の前に物体を置くと、その物体が2つに増える。ただし量産した物体は鏡の様に左右逆に出てくるが、空気砲には左右と言う概念が無いので、量産するメリットは大きい。

 

 

住民

「??? 何だこれは?」

 

「こんな物が役に立つのか?」

 

 

住民達はそれぞれ空気砲を手に取り、不思議そうに眺める。

 

 

ジャイアン

「こいつを右手、もしくは左手に装着し、撃つ時は「ドカン」と言うか、中にあるトリガーを引くんだ。大丈夫だ、威力は俺が保証する」

 

 

ジャイアンは自信あり気な表情をして言った。

 

そして……

 

 

偵察

「敵接近!! 距離は500mだ! 予想通り西門と東門に分かれてこちらに接近している!! 」

 

ジャイアン

「時間は一時間ほどズレたがそれ以外は予定通りだな! 準備は万全だぜ!」

 

 

 

高台から兵団の動きを監視していた者が東門を防衛しているジャイアンらに敵の位置、距離を知らせる。

 

 

ジャイアン

「おっしゃ!! 行くぞてめえら!!」

 

 

ジャイアンは高らかに声を張り上げると、防衛班を引き連れ、最前線へと赴いた。

 

 

その様子は西門を防衛していたドラえもん達にも知らされていた…

 

 

ドラえもん

「敵はもうすぐ来るみたいだね…!」

 

静香

「ええ、そのようね!」

 

 

 

 

ダッ ダッ ダッ ダッ!!!

 

 

兵団は恐ろしい速度で集落に接近している!

 

そしてその距離は残り100mを切り、ジャングルの木々を抜け出しジャイアン達の前に姿を現した!

 

 

偵察

「敵の軍勢を確認した! こちらに猛スピードで接近中だ! 」

 

 

偵察兵が声を張り上げて状況を知らせる。

全員の緊張がピークに達した時、一人の男が声を上げた!

 

 

ジャイアン

「出やがったな! 今更どんな敵が来てもビビらねえぜ!! 突撃だゴラア!!!」

 

 

シュッ!!

 

 

ジャイアン

「うおおおおおおおおおお!!!!」

 

 

ジャイアンは目の前の大量の軍勢を前に恐れるどころか、己の闘争本能を爆発させ、単騎で敵に突撃を開始した!

 

 

住民

「!? おい! 戻ってこい! 一人じゃ危ねえぞ!」

 

ジャイアン

「大丈夫だ! 一泡吹かせてやらぁ!!」

 

 

ジャイアンの無謀な行動を住民は制止しようとするが、ジャイアンは止まらなかった!

 

 

 

そしてついにジャイアンと敵の兵団が激突した!

 

 

ジャイアン

「どうやらロボットみてえだな……! だがてめえらポンコツロボットよりドラえもんの野郎の方がよっぽどマシだぜ!来やがれ!!」

 

目の前の軍勢、およそ500体に向かってジャイアンは余裕の表情で挑発をする。

 

 

兵隊

「!!!!」

 

シャキ!! シュッ!!

 

 

兵隊は前腕に装着していた伸縮可能なナイフの様なものを伸ばし、ジャイアンに振りかざす!

 

 

住民

「!! 危ない!!」

 

 

住民はジャイアンの危険を察知し、危険だと叫ぶが、ジャイアンは冷静だった…

 

 

ジャイアン

「"並の"ロボットの思考は単純なんだよ! おらあ!」

 

 

サッ!

 

 

ジャイアンは上体をかがめ、敵の攻撃を躱した!

 

 

ジャイアン

「腹がお留守だぜ!! ドカン!!」

 

 

ドン!!!!

 

 

ジャイアンは相手のガラ空きの腹部へ装着していた空気砲を叩き込む!!

 

 

兵隊

「!!!!!!」

 

 

バタッ!!!

 

 

ジャイアン

「どんなもんよ!」

 

兵隊

「……………」

 

空気砲の直撃を受けた兵隊は数m程吹き飛ばされ、そのまま動かなくなった…

 

 

住民

「この武器………そんなに威力があったのか…」

 

「皆、行こうぜ。奴みてえな坊主ばっかりいい格好させられねえよ!」

 

「ああ! こちとらハラワタ煮えくり返ってんだからな!」

 

 

ジャイアン

「おいお前ら! 張り切るのはいいけど、家族を悲しませるような真似はするなよな! おっと! 危ねえ! ドカン!」

 

 

ジャイアンは迫り来る兵隊をあしらいながら言う。

 

 

住民

「お前もな! 一人でそいつら相手にしてんじゃねえよ! ドカンッ!!」

 

「負けるか! ドカン!!」

 

「ドカン ドカン!!」

 

 

住民は次々と奮起し、空気砲を兵団たちに放ち始めた!

 

 

兵団

『!!!!!ーーーーーー』

 

 

次々と兵団たちは空気砲を食らい、再起不能に陥って行った!

 

 

ジャイアン

「おお! やるじゃねえか! さあ……改めて……行くぜ!!」

 

住民

『おお!!!!』

 

 

ジャイアン達は勇猛果敢に走り出した!

戦況は優勢である!

 

 

 

一方その頃……

 

ドラえもん

「あっちもドンパチやってるみたいだね! ドカン!」

 

静香

「ええ! 私たちも負けてられないわ!」

 

 

ドラえもん達も迫り来る兵団たちを退けて行っている所であった。

 

 

どれほど兵団たちの体表が頑丈でも、空気砲の前には効果は薄い、それに加え兵団たちの装備は近接武器しか持ち合わせておらず、飛び道具を持ったドラえもん達には不利な状況であった……

 

 

 

 

 

少女

「まずいわ、誤算だったわ……相手にこちら側が不利な飛び道具を持っているとは思わなかったから……彼らには近接武器しか持たせていないわ」

 

ロボット

「どうするの? このままじゃ負けちゃうよ?」

 

少女

「………全兵団の機能を停止させ、本部に送り返す。代わりに総司令に連絡をするわ。 "あれ"を出す許可を頂くの」

 

ロボット

「ふふ……そういうと思ったよ。 僕もうずうずしてるんだ…!」

 

少女

「でも気を付けなさい、下手をすればこちら側が壊滅するほどの威力があるのだから……"あれ"は」

 

ロボット

「分かってるよ、任せて……」

 

 

 

ただやられるだけの兵団たちでは無い。

 

 

どんな敵にも……奥の手と言う物はあるのである……

 

 

 

 

 

兵団

『!!!!! ーーーーーーーー』

 

ジャイアン

「ん? どうした!?」

 

ドラえもん

「動きが……止まった?」

 

静香

「一体どうして…?」

 

ジャイアン達は驚いた、突然目の前の敵たちの動きが完全に止まったのである。

赤く光っていた目は光を失い、その場で動かなくなった……

 

 

 

 

 

 

そして場所は戦場から数百m離れたジャングル。

 

生い茂る木々の隙間から、サベールはジャイアン達の様子を遠くから見ていた。

 

 

 

サベール

「………こんな物で終わりか」

 

 

サベールはふと呟いた。

 

 

サベール

「……拍子抜けだな」

 

 

サベールは戦場から背を向け、何処かへ行こうとした。

 

その時………

 

 

 

ジジッ! ジー!!

 

 

突然ジャングルに小さな電磁波の様なものが現れ始めた…

 

 

サベール

「? 何だ…? これは…?」

 

 

ピシュッ!! ジジッ!!!

 

 

サベール

「…………どうやらこのまま奴らが終わる訳ではないようだな……」

 

 

ドオオオオオオオン!!!!!!

 

 

 

電磁波の勢いは次第に激しさを増し、ついにはジャングルの真ん中、丁度少女とロボットが居る場所に、大きな雷の様なものが落ちた…!!

 

 

ドラえもん

「何だ!? 落雷!?」

 

静香

「いえ………ただの雷なんかじゃない…」

 

ジャイアン

「何かが………来やがるな…」

 

 

それは雷では無かった………少女とロボットの前に"それ"は降り立った……

 

 

少女

「許可は下りたようね……これを出したからには負けられないわ」

 

 

それは高さおよそ20m、対空ミサイル、高出力光線等を兼ね備えた……"二足歩行型兵器"である。

 

 

 

少女

「操縦は任せたわわよ………"ジュド"」

 

ジュド

「うん、"リルル"はこれに乗ってるだけでいいから…」

 

 

 

そしてジュドとリルルはその兵器に搭乗した……

 

 

2人の名前はリルルとジュド。

 

 

敵の2人の正体を、ジャイアン達はまだ知らない……




リルルとジュドと言えば、鉄人兵団の彼女たちですね。
何故彼女らは敵なのか? それは後々……

↑前回もこんな感じの後書きだったような……(笑)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

対峙

ジャイアン
「おるあああああ!!!現在ストーリー工事中だあ!!この後の話は矛盾だらけだから宜しく頼むぜええええ!!!」

ドラえもん
「えー、3年ぶりの更新…?でございます。モチベかなり高いです。宜しくお願いします。」

ペコ
「それではどうぞ♪」


兵器

「ーーー!!!!!!」

 

 

キュイーーーン!!!!

 

 

その兵器は目を赤く光らせて起動した。

 

 

ジュド

「じゃあ行くよ、リルル」

 

リルル

「ええ」

 

 

ドオオオン

 

ダッ ダッ ダッ ダッ

 

 

そしてゆっくりと立ち上がり、歩き始めた。

方角は、ジャイアンの守る"東門"の方角である。

 

 

ジャイアン

「この地響き音……でかい奴がこっちに来るな…!」

 

 

 

ダッ ダッ ダッ ドンッ………

 

 

 

ジャイアン

「!!?? あれは!?」

 

 

そしてその兵器はジャイアン達の前に姿を現し、その場で停止した。

 

 

ジャイアン

「…………おい、何でだよ……」

 

 

ジャイアンはその兵器を見て心底驚きを隠せなかった…

しかしそれは兵器自体が強大に見えるからではなかった。

 

 

ジャイアン

「何でこんな所に………ザンダクロスが居るんだ…! もしかして……ピッポやリルルも居るのか!?」

 

 

そう、その兵器はジャイアン達が4年前に目にし、共に地球侵略を目論む、"鉄人兵団"と戦った仲間の操るロボ「ザンダクロス」に酷似しているからである。

 

その仲間とは、桃色の髪に"青い瞳"を持つ少女「リルル」と、鳥型のロボット、ピッポこと「ジュド」

 

しかし2人はその戦いの最中、静香が引き起こしたタイムパラドックスによって消滅した筈なのである。

 

ジャイアンはザンダクロスに向けて大きく叫んだ。

 

しかし……

 

 

ジュド

「??? あの人間………この兵器について知ってるみたいだよ?」

 

リルル

「あら? 何故かしら? こちらの情報は漏れてはいない筈なのだけど……まあどうでもいいわ。 ジュド、さっさとやってしまいなさい」

 

ザンダクロス

「!!!!!」

 

ザッ!!!

 

 

ザンダクロスは右腕をジャイアン達のいる東門に向けた。

 

 

ジャイアン

「何をする気だ……?」

 

住民

「一体何なんだあいつは!?」

 

 

ジャイアンはザンダクロスの行動に警戒し、住民は得体の知れない兵器に驚きを隠せなかった。

 

 

ガッ!!

 

そしてザンダクロスの右腕の側面に付いたミサイルハッチが開いた!

 

 

ジャイアン

「まさか………ここから離れろ!!! おめえら!!」

 

住民

「え?」

 

 

ジャイアンは住民に向けて避難しろと喚起する!

 

 

リルル

「撃ちなさい」

 

ジュド

「了解」

 

 

ジャイアン

「離れろおおおおお!!!!!」

 

 

そしてジュドはあるスイッチを押した……

 

 

シュウウウン!!!

 

 

すると開いた右腕のハッチから大量の小型ミサイルが飛び出し、ジャイアン達の下へ一斉に飛んで行った!!

 

 

住民

「何だあれは!!??」

 

「とにかく伏せろ!死んじまうぞ!」

 

その数、ゆうに20発以上。

 

ジャイアン

「!!!! 危ねえ!!!」

 

ジャイアンは咄嗟にそばにあった岩の物陰に素早く身を隠した。

住民達も咄嗟に身をかがめ、攻撃に備えた。

ミサイルは間一髪でジャイアン達への直撃は免れたが、ミサイルはジャイアン達のさらに後方…東門に直撃した。

凄まじい爆裂音と飛び散った門の破片がジャイアン達を襲う。

 

ジャイアン

「くそっ!なんつー威力だ化け物が!!」

 

ジャイアンは思わず叫んだ。

それもその筈だ。

強固で頑丈である筈の東門がまるでガラスのようにいとも簡単に砕け散っているのだから。

 

 

 

 

 

 

ジャイアン

「………終わった……のか?」

 

 

ミサイルの嵐が止むと、ジャイアンは恐る恐る顔を隠れていた岩から出す。

 

 

ジャイアン

「…………………クソが……」

 

ジャイアンが顔を上げると東門はおろか、東門に面していた外壁も木っ端微塵に吹き飛ばされていた。

その光景は、一同の心を折るには十分だった。

 

 

住民

「門が…破られた…!」

 

「勝てるわけねえよ…あんな怪物!!」

 

住民は恐怖のあまり身が竦んでしまい、今にも逃げ出しそうな様子で戦意を喪失してしまった。

 

さらに…

 

リルル

「兵団を再稼働、東門攻撃隊はそのまま進軍、西門攻撃隊は東門に標的を変更、両大隊は破壊した門より集落に突入、生き残った住民を皆殺しにしなさい」

 

 

兵団

『ーーー!!!』

 

 

何百体という兵団達が、再び動き出し、集落に向けて再び侵攻を開始した。

 

 

 

住民

「奴らがまた来やがる…逃げなきゃ…逃げなきゃ…」

 

中には空気砲を捨て逃げ出す者も出始める。

 

 

 

 

しかし…

 

ジャイアン

「てめえらが退いて…誰がてめえの家族を守るんだ!!!」

 

住民

「!!!!」

 

ジャイアンは住民達に叫ぶ。

 

ジャイアン

「俺たちしかいねえんだ…!ここで俺たちが退いたら───」

 

ジャイアンの脳裏に浮かぶ、バウワンコの未来を担う子ども達の姿。

 

ジャイアン「もう……あいつらの笑顔は見れなくなんだよ!!!俺はそれはそんなの……ぜってえ嫌なんだよ!!!うおおおおお!!!」

 

ジャイアンは恐れを押し殺し、勇猛果敢に鉄人兵団を迎え撃ったのだ。

兵団を恐れる事なく2体3体と空気砲を使って撃ち倒していく…

 

兵団

「ーーー!!!」

 

ジャイアンが撃ち抜いた兵隊が突然、半壊した機体でなおジャイアンの腕にまとわりつき、空気砲の発射を封じてきた。差し違えてでもジャイアンを倒すつもりだ。

 

ジャイアン

「しまった…!!!」

 

兵隊

「ーーー!!!」

 

後方に控えていた2体の兵隊が、ジャイアンに向けて襲いかかった。

 

ジャイアン

「ちくしょう…!!!」

 

ジャイアンは死を覚悟した。

しかしその時であった、同時に発射された2発の空気砲が、ジャイアンの前にいた兵隊に直撃した。空気砲の直撃を食らった兵隊はジャイアンの両脇にガラクタとなって崩れ落ちた。

 

ジャイアンが振り返ると…そこには恐れに満ちて退いていた筈の住民達の姿があった。

 

 

 

住民

「お前さんは1人じゃねえさ!お前さんの言葉、心に刺さったぜ!」

 

「もう逃げねえさ…!俺たちが…村を守るんだ!!!」

 

『うおおおおおおおおおおお!!!』

 

住民の男達は一斉に高らかと叫んだ。

ジャイアンの叫びが、皆の心に届いた瞬間である。

 

 

ジャイアン

「お前ら……おっしゃ!やってやろうじゃねえか!!!」

 

そう言うとジャイアンは腕にまとわりついていた兵隊を思いっきり殴り飛ばした。

そしてさらに後ろから声が聞こえた。

 

 

静香

「武さん!!!」

 

ドラえもん

「西門の方を攻めていた兵団が東門に標的を絞ってきた!!もうじき西門防衛団もこっちに到着するよ!!!」

 

後ろを振り返ると、ドラえもんと静香がタケコプターを使い西門の方からやってきていた。

敵は東門を一点突破する様子だ。

そのため2人と西門の防衛団も東門防衛に加勢に来たのだ。

 

ドラえもん

「ジャイアン!兵団は君に任せる!あいつは……僕たちが止める!!!」

 

 

あいつとはザンダクロスのことだ。

ザンダクロスをたった2人で止めるつもりなのだ。

しかし選択の余地は残されていなかった。

ここでどちらかを無視してしまえば、集落の陥落は免れない。

最早この場にいる全員、退くという選択肢がある者はいない。

 

 

ジャイアン

「頼んだぜ……集落には虫1匹通させねえからよ!!!」

 

 

ジャイアンは2人に背中を託すとともに、自分を奮い立たせ、再び兵団を迎え撃ち始めた……

 

 

 

 

 

 

 

ドラえもん

「まさかあのザンダクロスをまた見るとは思わなかった………でも中にいるのは間違いなくリルル達じゃない筈だ!」

 

静香

「ええ、容赦はしないわ!」

 

 

 

 

 

リルル

「……2人がこちらに向かってくる…まずはあの2人からね」

 

ジュド

「うん」

 

 

リルル達はドラえもん達の事も覚えてなどいなかった……

 

ドラえもん達はザンダクロスの中にいる2人のことを……未だ知らない。

 

 

 

 

 

そして、場所は集落から数百m程離れた高所。

 

 

サベール

「……………」

 

 

 

集落の防衛戦を傍観していたサベールはそのままその場を後にしようとした。

すると……

 

 

チッポ

「サベール!!!」

 

 

後ろからサベールを呼ぶ声が聞こえ、振り向くとそこにはチッポがいた。

息を切らしている、どうやらサベールを探していた様子だ。

 

 

 

サベール

「…………何の用だ?」

 

 

サベールはチッポに問う。

 

 

 

 

 

 

チッポ

「いくらドラえもんの道具を使ってもあの数じゃ僕らに勝ち目は薄い……だから…僕たちに力を貸して欲しいんだ!!」

 

 

サベール

「…………何?」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

白い巨塔&魔の刺客

最近蛇足気味だったので、のび太サイドの話を書き足していこうと思います。

やはり書き分ける方が書いていて楽しいですね。

それではどうぞ!!


のび太達の時代、21世紀から100年後……

 

 

22世紀

 

 

「みらい病院」

 

 

世界随一の医療技術、患者数を誇る世界最大級の病院である。

 

その真っ白な配色や壮大にそびえ立つ様子は正に、「白い巨塔」である。

 

そこで怪我を負ったのび太達は入院をしていた……

 

 

 

 

のび太

「凄い……痛みが引くどころか、もう完治しちゃったよ…」

 

エル

「驚いたな……未来の病院なんて…」

 

 

のび太とエルは真っ白い病室のベットに寝込みながら、みらい病院の卓越した医療技術や未来の病院に驚愕する。

 

 

ドラミ

「そうね、私も入院するのは初めてだわ」

 

スネ夫

「それにしても……どうやってこんな大きな病院を建てたんだろ?」

 

 

のび太達の向かい側のベットにいるスネ夫が言う。

 

 

ドラミ

「この病院はタイムパトロールと業務提携してるそうなの。タイムパトロールは皆が知っている通り巨大な組織でしょ? だからこんな大きな病院が建てられたのよ」

 

のび太

「つまり…この病院はタイムパトロールがスポンサーとして付いていて、タイムパトロールの莫大な財力によってみらい病院が建てられた訳だね」

 

のび太が少し分かりやすく解説する。

 

 

スネ夫

「お、のび太にしては分かりやすい」

 

のび太

「うるさいなあ、もう」

 

 

スネ夫が冗談交じりに茶化すとのび太は笑いながら返す。

 

 

エル

「それにしても……どうして僕達だけ医療費が"タダ"なんだい? 気になってたんだ」

 

 

エルが疑問に思っていた事を口に出した。

当然である、22世紀とはいえ、資本主義国家の日本では医療費がタダと言うのはあり得ないのだ。

 

 

ドラミ

「…………さあ? 何か特別なのよ。 きっと……」

 

 

ドラミは曖昧に言葉を濁し、外の景色に目をやった。

のび太達はドラミの、"これ以上話したくない"と言う雰囲気を察し、ドラミの言葉の意味を詮索しなかった。

 

そしてその時…

 

 

ピロロロロ♩ ピロロロロ♩

 

のび太

「ん? ドラえもん達からだ」

 

 

のび太が腕に着けていた腕ラジオに着信があったのである。

のび太は腕ラジオのスイッチを押し、通話に応じる…

 

 

のび太

「もしもし、ドラえもんかい?」

 

 

のび太は通話の相手に問いかける。

 

しかしその相手はドラえもんでは無かった。

 

 

ペコ

《もしもし…のび太さんですね…》

 

のび太

「ん? ペコじゃないか。 どうしたの?」

 

 

のび太はペコに呑気に問いかける。

そう、のび太達は今ジャイアン達がどの様な状況に晒されているか知らないのである。

 

 

ペコ

《落ち着いて聴いて下さい……敵の軍勢が集落に襲撃をかけて来ました…! ドラえもんさん達が何とか敵の軍勢を撃退したかに見えましたが……敵の新型兵器がその直後に現れ……こちらの防衛班の半数が死亡しました…》

 

 

ペコはジャイアン達の状況をのび太達に大まかに知らせた…

 

 

ドラミ

「何ですって!? お兄ちゃん達は!!?」

 

ペコ

《武さんは味方が眼前でやられたショックで一時離脱中です……そしてドラえもんさんと静香さんは……たった2人でその兵器に挑んでいます…!》

 

スネ夫

「たった……2人で…!?」

 

のび太

「………行かなくちゃ!!」

 

 

ドラえもん達は今窮地に陥っている。

それを聞いたドラミ達は一刻も早く彼らの下へ駆けつけたい……、そう考えていた。

 

 

ドラミ

「直ぐに退院よ!! それとドラえもんズがフロントに居るから直ぐに呼び出して!!」

 

スネ夫

「分かった!」

 

 

のび太達は大急ぎでベットから抜け出し、出発の準備を始めた。

 

 

スネ夫

「あれ? ドラえもんズ達が通信に応えないぞ…?」

 

ドラミ

「仕方ないわ! 直接呼びに行きましょう!」

 

ペコ

《出来るだけ急いで下さい! 彼らもいつまで持つかどうか…》

 

のび太

「大丈夫! ドラえもんなら…静香ちゃんなら……やってくれる!」

 

 

のび太はドラえもん達を必死に信じていた。

というよりも、人が無事であると信じたい様子であった…

 

 

ドラミ

「よし! 行くわよ皆!」

 

ドラミ以外

『うん!!!』

 

 

 

のび太達はダッシュで病室を後にし、廊下を走った……

 

 

そしてその頃、みらい病院のフロントでは……

 

 

 

 

 

キッド

「おいおいマジかよ……」

 

王ドラ

「こんな所まで追ってくるとは……!」

 

 

キッド達は冷や汗をかいていた……

その訳は……

 

 

???

「さて………どいつから始末しようかねえ…!」

 

 

新たな刺客が病院に侵入していた……!!!




さて、今度の相手は一味違います……

果たしてその正体とは……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決意

ジャイアン
「よう! 久し振りじゃねえか! 今日は訳あって俺一人だ!皆! 楽しんでくれよな!」


ドラえもん

「静香ちゃん……これを」

 

 

サッ

 

 

ドラえもんはポケットからタケコプターを取り出し、静香に渡す。

 

 

静香

「なるほど……ザンダクロス相手に地上では圧倒的不利と考えてのタケコプターね」

 

 

静香はドラえもんの意図を読んだ様であった。

ザンダクロスの攻撃は人間の速さでは回避することはまず不可能である。しかし、タケコプターならそのスピードに加え、立体的な動きが可能になり、回避が可能となる訳である。

 

 

ドラえもん

「あの装甲……恐らく空気砲は通じないだろうね…」

 

 

ドラえもんは敵のザンダクロスの強固な装甲を見て呟いた。

ザンダクロスはメカトピア星の技術を結集して作られた兵器である。圧倒的な破壊力は勿論、鉄壁の装甲まで付いており、なおかつ、高速移動が可能になるブースターも併せ持つ、まさに非の打ち所がない兵器であった。

 

 

静香

「じゃあどうするの? 空気砲以外のまともな攻撃方法なんて……」

 

 

困惑する表情を浮かべる静香であったが……

 

 

ドラえもん

「これを使うんだ」

 

サッ

 

ドラえもんはポケットから50cm程の大きさの銃を取り出した。しかし静香にはそれがとてもザンダクロスを傷付けられるような武器には見えなかった。

 

静香

「それは…何なの…?」

 

ドラえもん

「この道具は恐らく全てのひみつ道具の中で最も殺傷能力が高い武器……名前は、"熱線銃"」

 

 

熱線銃…Level5まで威力をチャージして撃つことの出来る銃。フルパワーで撃てば高層ビルを一瞬で灰に出来るほどの威力を持つ。しかしこの道具を持つ為には"特別な権限"が要る。

 

 

ドラえもん

「今考えられる作戦は……僕がこの熱線銃のパワーを出来るだけチャージして、奴の一番脆いと思われる関節部に、チャージした熱線銃の弾を叩き込む……これしかないんだ」

 

 

「大抵のロボットはパーツとパーツの接合部である関節部が一番脆い」

仮にもロボットであるドラえもんはその常識を信じ、この作戦を考案した。

 

 

ザンダクロス

「ーーーー!!!」

 

 

ザンダクロスが機械音を鳴らし、目を赤く光らせる。

 

 

ドラえもん

「敵サンも臨戦態勢に入ってるみたいだね……静香ちゃん! 君は奴の周りを飛び回って陽動を行って欲しいんだ。 頼めるかい?」

 

 

ドラえもんは静香の目を真っ直ぐ見て言った。

 

 

静香

「……………」

 

 

静香は数秒程黙ってドラえもんを見ていた。

そしてドラえもんはその間もずっと静香から目を離さなかった…

 

 

そして静香は言った……

 

 

静香

「………分かったわ、ドラちゃんを信じる」

 

ドラえもん

「………ありがとう」

 

 

カチャ

 

 

ドラえもんは熱線銃を構えた。

 

 

カチッ ピッ

 

 

そして静香はタケコプターを頭に着け、スイッチを入れた。タケコプターのプロペラが回転を始め、静香の周りに風圧が生じる…

 

 

静香

「ねえ……ドラちゃん」

 

 

空へ飛び立つ前に静香はドラえもんの方を笑って振り返った。

 

 

ドラえもん

「え?」

 

静香

「私は信じてるの。のび太さん達と日が暮れるまでいっぱい遊んで…お互い「またね」って言える毎日が来る事を……」

 

 

ドラえもん

「静香ちゃん………」

 

 

ブオオオン!

 

 

そして静香は飛び立った。

 

ザンダクロスの注意を引くべく、静香はザンダクロスに接近を開始した……

 

 

ドラえもん

「……やるよ……僕も……!」

 

 

カチッ! ピイイイン!

 

 

ドラえもんは静香を見送りながら熱線銃を構え、チャージを開始した……

 

 

静香

(ドラちゃん、武さん、スネ夫さん、ペコ、そして……のび太さん………力を貸して!!)

 

 

そして静香とザンダクロスの距離は50mを切った……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決死の作戦

ドラえもん
「みんな! またせたね!」

ジャイアン
「作者サボってんじゃねーぞコノヤロー!」

スネ夫
「まあまあ……更新のペースは遅いけどこれからもやって行きますんで……」

のび太
「それでは、スタート!」


皆の希望を勇気に変え、空へ飛び立った静香、

全身全霊を込める覚悟を決めたドラえもん。

そんな2人による、無謀とも言える作戦が始まった…

 

 

静香

(もう少し行ける……もう少しなら…)

 

 

静香はザンダクロスを出来るだけ引き付ける為、ザンダクロスにギリギリまで接近しようと考えていた…

距離は既に50mを切っていた。

この距離は既にザンダクロスの射程範囲である、無論静香はその事を承知していた。

しかし、皆の希望を背負った静香には恐怖と言う概念は1ミリも存在していなかった……

ただ一つ、希望と言う物に心を突き動かされ、静香は飛んだ…

 

 

リルル

「ジュド、こちらに接近してくる人間が居るわ」

 

ジュド

「分かってる、女の子……みたいだね…」

 

 

リルルとジュドはザンダクロスのコックピットの中で、タケコプターを使ってザンダクロスに接近してくる静香を確認していた…

 

 

リルル

「ええ……女子供を殺すというのは気が引けるけど……今回ばかりは話が違うわ」

 

 

リルルが冷徹な目をしながら吐き捨てる。

 

 

ジュド

「命令は皆殺し……やるしかないね」

 

 

そう言うとジュドは、脳内からザンダクロスに命令を下した。

ジュドの頭脳はザンダクロスの神経と一体化しており、こう動けと念じるだけでザンダクロスを意のままに操る事が可能になるのである。

 

 

ザンダクロス

「ーーーーー!!!!!」

 

 

グオオオオン!

 

 

命令を受けたザンダクロスは、静香の方へ体を向かせる。

 

 

ガシャン!! ガチッ!!

 

 

するとザンダクロスの左脚に装着されていたコンテナが開き、中から巨大なマシンガンのような物を取り出した!

 

 

ドラえもん

「!!! 静香ちゃん!! 高速で逃げ回るんだ!!!」

 

 

ドラえもんは叫んだ。

ドラえもんは相手が何をするつもりなのか分かったからである。そしてそれは静香も理解していた…

 

 

静香

「ええ!!」

 

 

ブオオオオン!

 

 

ドラえもんの声に応えると静香は、タケコプターの回転数を上げ、タケコプターを加速させた…

そして相手も攻撃の準備は既に完了していた……

 

 

リルル

「撃ちなさい」

 

ジュド

「了解」

 

ザンダクロス

「ーーーー!!!」

 

 

グオオオン!!

 

 

銃を構えたザンダクロスの腕が静香の方向へ向く…

 

 

静香

「!!! 来る…!!」

 

 

タケコプターの加速を開始した静香の速度は、既に時速70kmほどに達していた。

 

 

ザンダクロス

「!!!」

 

 

ズダダダダダダ!!!!

 

 

ザンダクロスは四方八方を飛び回る静香目掛けて、構えたマシンガンを連射した。 打ち上げ花火のようなとてつもない射撃音が辺りに響き渡る!

 

 

静香

「くっ!!」

 

 

ブオオン!!

 

 

静香は敵の放つ弾に当たらぬよう、高速でザンダクロスの周りを飛び回る。しかし、この状況は明らかに静香に対して不利であった…

 

 

ズダダダダ!!

 

 

静香

「しつこいわねっ!」

 

 

静香の飛び回ったルートをザンダクロス放つの弾丸が通って行く……そして静香が、ある大きな岩を通り過ぎた時であった…

 

 

ズダダダダ!! ゴオオオオン!!

 

 

静香

「な…!?」

 

 

何と、流れ弾が当たった大岩が、それだけで粉々に粉砕されたのである。

 

 

静香

「なんて威力なの!」

 

ザンダクロスの使用するマシンガンの弾丸は、約120mmの実弾である。生身の人間が食らえば一瞬で肉塊になるほどの威力である。

即ち、静香は一度でもそれを食らえば……命はない。

 

 

ズダダダダ!!…………

 

 

それからザンダクロスの猛攻は実に3分ほど続いた……

日常生活ではたったの3分、しかし、戦場と日常生活との「3分」では体感的には天と地ほどの差がある。3分が圧倒的に長く感じるのである…

 

 

静香

「ハア…ハア…」

 

 

静香は完全に疲弊していた…。身体的な疲労は殆ど無いが、精神的な疲労が静香を苦しめていた。しかし、いつ死ぬかも分からない状況に立たされているので仕方のない事であった…

 

 

ドラえもん

(静香ちゃん……! くそっ! まだチャージが…!)

 

 

ドラえもんはそんな静香を見て心の中で叫んだ。

手元の熱線銃のチャージレベルを見れば、まだLevel3、ザンダクロスを倒すには不十分な状態であった…

 

 

ドラえもん

「まだだ……辛抱するんだ……!」

 

 

今ザンダクロスを撃ってしまったら今までの静香の陽動が無駄となってしまう……ドラえもんは必死に「早く静香を救いたい」という思いを抑えていた……

そして静香に最大の危機が訪れてしまう……

 

 

ズダダダダ!!

 

 

静香

(まだ…なの? ドラちゃん……)

 

 

静香は疲弊した精神のまま、弾丸を避け続ける。

しかし、静香は既に限界を越えていた……

そして静香がザンダクロスの脚付近を飛んでいた時であった……

 

 

ズダダダダ!! パキンッ!!!

 

 

静香

「あっ!! しまった!!!」

 

 

なんとザンダクロスの放った弾丸がタケコプターに被弾したのである。タケコプターは飛行機能を失い、静香は地上5mほどから地面に落下し始めた!!

 

 

静香

「きゃあああ!!!」

 

 

ドラえもん

「静香ちゃん!!!」

 

 

その時ドラえもんは後悔した……なぜ静香にあのような危険な事を任せたのか……心の中で後悔していた……

 

 

ドンッ!! バキ!!

 

 

そして静香は地面に激突した……その瞬間鈍い音がした…

 

 

静香

「うううぅ!!!」

 

 

静香は脚の骨を骨折し、あまりの痛みに悶え苦しむ…!

骨だけではない……内蔵も少なからず痛めている。

 

 

静香

「まずい…!! 立て…ない…!」

 

 

そんな様子の静香を見ていたリルル達は……

 

 

リルル

「終わりね………これ以上苦しめる必要は無いわ……」

 

ジュド

「そうだね……殺そう」

 

 

2人は冷めた表情で言った。

そして……

 

 

ガチャッ

 

 

ザンダクロスは倒れている静香に止めを刺そうと銃を向けた……

 

 

静香

「………!!! みんな……ごめんなさい…」

 

 

静香の瞳からは涙がこぼれていた。

自分の無力さに悔し涙を流していた。

そしてその光景は離れていたドラえもんにも見えていた…

 

 

 

 

ドラえもん

「………やめろ」

 

 

 

その瞬間、ドラえもんは動いた。

 

 

 

ドラえもん

「……手を出すな!!!」

 

 

 

カチッ! バアアアアン!!!

 

 

 

リルル

「何!?」

 

 

ドラえもんは本能的に熱線銃の引き金を引き、ザンダクロスに向けて紅色の巨大な光線を放った!! 光線は一直線にザンダクロスへ向かって行く!

 

 

ドラえもん

「くっ! うおおおおお!」

 

 

ドラえもんは射撃の際の反動のあまり、後ろに10mほど吹き飛ばされた!

 

 

ギュンッ!! ドカアアアン!!

 

 

ザンダクロス

「!!!!」

 

 

光線はザンダクロスが銃を握っていた片腕に命中し、大爆発を起こした!! 片腕を失い、なおかつボロボロになったザンダクロスは満身創痍の状態でドラえもんの方を向いた。

 

 

リルル

「何!? どうやってあんな攻撃を!?」

 

 

リルルは予想外の出来事に完全に動揺した。

 

 

ジュド

「分からない…! でも……奴は危険だ!」

 

 

プシュー! ガシャン!

 

 

そう言うとジュドは、ザンダクロスの右脚に装着されたコンテナを開かせ、中から先ほどのマシンガンとは違うライフルの様なものを取り出した……

 

 

カチッ!

 

 

ザンダクロスはドラえもんへ狙いを定める……

 

 

ドラえもん

(くそ……体が動かない……!!)

 

 

ドラえもんは熱線銃を撃った反動で全身を痺らせ、動けないでいた……

そしてザンダクロスは攻撃の準備を完了させていた…

 

 

ジュド

「射撃準備完了」

 

リルル

「………撃ちなさい」

 

シュド

「了解」

 

 

カチッ バキュゥゥゥン!!!

 

 

ザンダクロスが引き金を引くと、ライフルの銃口から直径20cmほどのライフル弾が発射された。一直線にドラえもんの方へ向かって行く……

 

 

静香

「ドラ……ちゃん」

 

 

地面に仰向けに倒れた静香が掠れた声で言う。

 

 

ドラえもん

「皆……すまない……」

 

 

ザンダクロスが放った弾丸からドラえもんまでの距離は10mを切っていた……誰もが諦めかけていたその時、"それ"は現れた。

 

 

???

「ハァ!!!」

 

スパッ!!

 

 

ドラえもん&静香

「!!??」

 

リルル

「何!!??」

 

ジュド

「なんだあいつは!?」

 

 

4人は驚愕した。

なんと突如ドラえもんの目の前に迫っていた弾丸が真っ二つに切り裂かれたのである!

 

 

ドカアアアン!!

 

 

両断された弾丸は二方向に分かれ、それぞれで爆発した……

 

 

ドラえもん

「どうして……君が……?」

 

 

ドラえもんが問いかける。その者はゆっくりと立ち上がり、ドラえもんに背を向けて言い放った……

 

 

???

「………下がっていろ、奴は……私がやる」

 

 

ドラえもんの前に立った者、それは見覚えのある剣士であった……

 

 

 

 

 

 

 

ドラえもん

「何で僕を助けたんだ…………サベール……!!」

 

 

サベール

「………理由は聞くな。」

 

 

ドラえもんの窮地に駆けつけた男……

それは意外にも、サベールであった。

サベールはそう言うと、腰を落とし、剣を抜いた。

そう、サベールは自身の剣だけで、ザンダクロスと闘うつもりなのだ。

一見無謀とも思える戦い。しかしサベールは、負ける気など毛頭無かった……

 

 

サベール

「切り刻んでくれる…!」

 

 

 

 

 

 

 




さあ、ついにサベールの戦闘が始まりましたねー。
何故サベールは駆けつけたのか? それは後々……
それでは、またお会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Member Change

ザンダクロスを相手に、窮地に立たされた静香とドラえもんを救った者、

それは、決してドラえもんらの仲間にはならないと必死に拒んでいた筈のサベールだった……

 

 

サベール

「……おいお前、奴の情報を詳しく教えて欲しい。奴について知っている事全てだ。」

 

 

サベールはドラえもんにザンダクロスの情報を話すように促す。

 

 

ドラえもん

(さっき黙って見ていろって言ってたのに……勝手だな…)

 

 

ドラえもんは冷めた表情をしながらそんな事を考えていた。

 

 

サベール

「どうした? 早く話して欲しい。」

 

 

サベールはそんな様子のドラえもんを気にも留めず、更に呼びかける。

 

 

ドラえもん

「わ、分かったよ……。奴は右脚、左脚に武器を格納しているコンテナを装着しているんだ。そしてその中から武器を取り出して攻撃してくるよ」

 

 

サベールの呼びかけにドラえもんはもうどうでもよくなり、渋々サベールにザンダクロスの説明を始めた。

 

 

サベール

「どんな武器だ?」

 

 

ドラえもん

「連射が可能な銃、喰らえば君や生身の人間なら一瞬で肉塊になる程の威力を持ってるよ。」

 

 

サベール

「……なるほど、他には?」

 

 

サベールは更に問いただす。

 

 

ドラえもん

「あとは君がさっき真っ二つにしてみせた弾丸を打ち出すライフルだよ。威力は爆発の規模を見る限りとてつもなく高いだろう……奴の武器で確認できているのはこれだけだよ」

 

 

サベール

「……なるほど、分かった。礼を言うぞ。ではな」

 

 

サベールはそう言うとドラえもんに背を向け、今にも走り出すように、グッと地面を踏み込んだ。

 

 

ドラえもん

「待って!!」

 

 

少し慌てた様子でドラえもんは、そんなサベールを呼び止めた。

 

 

サベール

「ん? どうした?」

 

 

サベールは振り返った。ドラえもんは何か言いたそうな目をしていた……

 

 

ドラえもん

「2つ……言いたいことがある。1つ目はあそこに倒れている女の子が見えるよね…? 奴と戦うのならあの子を絶対に傷付けないようにして欲しいんだ…。わがままかもれないけど…」

 

 

そう、ザンダクロスの意識は完全にこちらに向いているが、ザンダクロスから30mほどの所では、脚を折ってしまった静香が横たわっているのである…

 

 

 

静香

「ハア……ハア……うっ…!!」

 

 

静香は折れた右脚を引きずってでも歩こうと足を動かすが、あまりの激痛に悶絶する。

 

 

静香

「だめ……やはり動けないわ……………ドラちゃん……後はお願い……」

 

 

 

動けない状態の静香であったが、ザンダクロスの意識は完全にサベール達へ集中していた。

それが静香にとっては幸運であった……

 

 

 

 

サベール

「……分かった、努力する。もう1つは?」

 

 

ドラえもん

「え…? あ、うん」

 

サベールはドラえもんの頼みを意外にもあっさりと承諾した。ドラえもんは少し驚きつつ、サベールにある忠告をした……

 

 

ドラえもん

「あいつの装甲……いくら君の剣でも切れる保証は……ない。」

 

 

ドラえもんは少し気まずそうに言った。

その理由は、サベールの武器は腰に携えた剣、ただ一つである。

 

サベールは超人的な剣技を習得しているが、その剣術が通用しないとなると、サベールの実戦的な価値はなくなるとドラえもんは悟ったからである。

しかし……

 

 

サベール

「……誰に言ってる? 私にに斬れぬ者は無い。」

 

 

サベールはきっぱりとそう答えた。

 

 

ドラえもん

「え……??」

 

 

ドラえもんは目を丸くし、サベールを見つめた。

サベールの言葉にはある確信がある、ドラえもんは少々の沈黙の後、そう感じた……

 

 

サベール

「……兎に角、あの少女は私に任せろ、そして奴もな」

 

 

サベールはザンダクロスに目をやりながら言った。

 

 

ドラえもん

「………サベール、………ありがとう」

 

 

ドラえもんはサベールに礼を言う。

そしてサベールはぶっきらぼうに返した。

 

 

サベール

「礼ならあの小僧に言え。」

 

 

ドラえもん

「小僧…? まさか……」

 

 

 

そう、その小僧とは紛れもないチッポのことである。

誰の説得にも応じなかったサベールであったが、チッポは一体何を言ったのか、サベールの説得に成功した様である…

 

 

サベール

「奴が焚きつけたのだ。少しの間、ある条件の下にお前たちへの協力を約束した。」

 

 

ドラえもん

(チッポ………)

 

 

サベール

「今はお前たちと共同戦線を張る。まずは奴だ。」

 

 

サベールはザンダクロスに目をやった。

 

ザッ

 

そしてサベールはドラえもんに背を向けた…

 

 

サベール

「………ではな」

 

 

シュッ!

 

 

そしてサベールはドラえもんの下を後にした……

ザンダクロスに向かって一直線に走り出した。

ドラえもんは徐々に遠ざかって行くサベールを見て呟いた……

 

 

ドラえもん

「…………ちょっとだけ……雰囲気が"あいつ"に似てたな…」

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃……

 

 

リルル

「ジュド、右腕はどう?」

 

 

ジュド

「完全に溶解してる……もう使い物にならない。とんでもない威力だ……あの銃」

 

 

先ほどドラえもんから熱線銃による攻撃を受けたザンダクロスの中で、2人は被害状況を確認していた……

すると……

 

 

リルル

「!!! ジュド、こちらに接近して来る奴がいるわ」

 

ジュド

「何だって? 誰だい?」

 

 

リルルの目の先にはザンダクロスに接近してくる走ってサベールの姿が映っていた。リルルはジュドにその事を報告すると、ジュドは更に詳しくリルルに問いただす。

 

 

リルル

「ライフル弾を斬った男よ…!!」

 

ジュド

「……!! あいつか……面白い。リルル、恐らくあいつがバウワンコ近辺にいる僕達の味方を襲撃してた奴だよ。」

 

 

リルル

「腰に剣を差した黒い犬、そして眼帯……間違いないわね。ジュド……ここであの男を始末するわよ。」

 

 

ジュド

「了解」

 

 

 

そしてザンダクロスは再びサベールにライフルで狙いを定めた……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

因縁

おまたせいたしましたー!!!
ゆっくりではありますが、執筆は続けているのでご安心を……
ではどうぞ!!


サベールがザンダクロスとの戦闘を開始した頃、

22世紀にいたのび太達は……

 

 

 

のび太

「キッド達と連絡が取れないってどういう事なの!? ドラミちゃん!」

 

ドラミ

「分からないわ! とにかくフロントへ急ぎましょう!」

 

エル

「嫌な予感がするね……」

 

スネ夫

「うん……」

 

 

ペコからの連絡を受け、病室を後にしたのび太達は、キッド達との連絡が途絶えた事を気にしながら病院の廊下を走っていた……

 

 

ドラミ

「のび太さん! スネ夫さん! 受け取って!」

 

 

ドラミはポケットから空気砲とショックガンを取り出し、空気砲をのび太に、ショックガンをスネ夫に投げ渡した。

 

 

のび太

「ありがとう! エルさんは自分の剣があるから大丈夫だよね?」

 

エル

「ああ! 問題ない!」

 

スネ夫

「!! あの階段を降りればフロントだ! 急ごう!」

 

のび太

「うん!」

 

 

スネ夫はフロントへ降りる為の階段を発見し、のび太達に知らせる。

そして4人は階段を駆け下り、フロント寸前の曲がり角の前まで辿り着いた。

 

 

エル

「!! この角を曲がれば…!」

 

 

そしてのび太達がフロントへ続く曲がり角を曲がろうとした瞬間である、突然それはのび太にぶつかった。

 

 

???

「きゃっ!?」

 

 

ドンッ!

 

 

のび太

「!?」

 

 

のび太は突然曲がり角から現れた誰かにぶつかり、よろめいた。そして相手の方はぶつかった衝撃で地面に倒れてしまった。その人はみらい病院で勤務しているナースのようであった。

 

 

ナース

「…………」ガタガタガタ

 

のび太

「ああ! ごめんなさい! 立てます…か?」

 

 

のび太はぶつかってしまった事を謝り、ナースに手を差し伸べた。しかしナースの様子がおかしい事にのび太達はすぐに気付いた。ナースの体が小刻みに震えているのである。

 

 

ナース

「殺される…!! 早く……逃げないと…!!」

 

 

ナースは酷く錯乱していた。

ナースの看護服をよく見ると、相当な量の血が付着していた……

 

 

スネ夫

「殺されるって……一体何があったんですか!? フロントで一体何が!?」

 

 

スネ夫はナースの肩を掴んで揺らし、必死に問い詰めた。

 

 

ナース

「いやっ! 触らないでぇ!!」

 

バッ!

 

ドラミ

「あ! 待って下さい!!」

 

 

ナースは勢いよくスネ夫の手を振り払うと、恐怖に追われるようにどこかへ走り去って行った……

 

 

のび太

「………キッド達と姫が危ない!! すぐそこはフロントだ! 急ごう!」

 

エル

「ああ!!」

 

 

 

 

 

そして4人は曲がり角を曲がり、フロントへ辿り着いた。

フロントの光景が目に入った瞬間、のび太達は目を疑った。

のび太達の前にはキッド達、スピアナ姫、そしてジャガーが居た。

こちらに"背を向けて"。

そしてその奥のエントランスの前には、身長が2mはあろう大男が立っていた……

黒いコートを身に纏い、筋骨隆々とした体格、茶色の短髪、そして…紅い瞳をしていた。

大男の周りには、病院の受付係やナースの死体、血が散乱していた。血がまだ乾ききっていない所を見ると、ついさっき殺されたばかりの物であった…

 

 

ドラミ

「うっ……酷い…」

 

 

ドラミはその光景に思わず目を背けた。

仕方のないことであった。死体の中には、激しく壁に打ち付けられ、内臓が飛び出ていた死体もあったのだから。

 

 

キッド

「来るなっ! ドラミ!!」

 

 

キッドはドラミに来るなと叫び、警告する。

そして大男は口を開いた。

 

 

???

「お?? そこのお前……そう、お前だ」

 

のび太

「え…?」

 

 

大男はのび太を指差した。

そして続けて言った。

 

 

???

「病院でただ暴れて来いって命令だったんだが……野比 のび太………最重要ターゲットじゃねえかよ……ここに来た甲斐があったってモンだ……フハハハハハ!!!」

 

 

大男は嬉しそうに高笑いをした。大男のその狂気じみた様子に一同は恐怖を覚えた。

 

 

王ドラ

「のび太さんが最重要ターゲット? どういうことですか! そしてあなたは一体何者なのですか!」

 

 

王ドラは大男に向かって鋭い眼差しを向けながら強く問う。

 

 

大男

「あ? 知らないのかい?? 野比のび太が俺たちにやった事をな…」

 

ドラミ

「のび太さんが何をしたって言うの!?」

 

大男

「あん時は随分と世話になったよなあ……なあ、野比のび太ぁ」

 

マタドーラ

「だから何の事だって聞いてんだよ!!」

 

 

思わせぶりな口調で話す大男に、一同はもどかしさを覚えた。

そしてその男は口を開いた。

 

 

 

 

大男

「4年前………野比のび太とその愉快な仲間が俺たち、"鉄人兵団"の地球人捕獲作戦を見事に邪魔してくれたなあ……忘れたとは言わせねえぞ?」

 

 

 

スネ夫

「な……に…?」

 

のび太

「嘘……でしょ…?」

 

 

大男の言葉にのび太達は戦慄した。

あまりにも唐突過ぎる男の言葉に衝撃を受けた。

そんなのび太達を差し置いて、大男はさらに続けた。

 

 

大男

「俺はメカトピアで作られた新型アンドロイド『M-101』機体ネームは『ガイア』だ。4年前はまだ開発途中で戦闘には参加出来なかったがな」

 

 

のび太達が呆然としている間、ガイアは自分の素性をあっさりと晒した。そしてようやくのび太達は口を開いた。

 

 

のび太

「本当にお前は………メカトピアで作られたロボット……なのか?」

 

ガイア

「そう言っただろうが。何回も同じ事を言わせんじゃねえよ」

 

スネ夫

「あり得ない!! 消えた筈の鉄人兵団が何故生き長らえているんだ!! あの恐ろしい鉄人兵団は史実上抹消された筈だ!!」

 

 

スネ夫はとてもガイアの言うことが信じ切れず、錯乱したように言った。

 

 

ガイア

「うるせえ奴だな………じゃあこうすればメカトピアがまだ存在する事を信じてもらえるか?」

 

ドラミ

「……? 何をする気?」

 

 

のび太はガイアに疑問を投げかける。

するとガイアは着ていたコートの内側に右手を突っ込んだ。

 

 

ガイア

「お、あったな……」

 

 

取り出したのは大きめのナイフであった。

そしてガイアは左腕のコートの裾を捲り上げ、取り出したナイフを腕に向けた……

 

 

ガイア

「そら!」

 

 

ザクッ!!

 

 

そしてガイアは勢い良く自分の腕に思いっきりナイフを刺し込んだ。

刺し込んだ傷から人間と同じ赤色の血が滴り落ちる。

しかしガイアは全く痛がる素振りを見せなかった……

 

 

ドラミ

「きゃあっ!!」

 

エル

「奴は一体何をしているんだ…!?」

 

 

その異様な光景にドラミ達は度肝を抜かれ、驚嘆した。

 

 

ガイア

「どうだあ? 普通の人間なら激痛に悶えてるだろうが、俺はアンドロイドだから痛みは感じねえんだよ」

 

 

ガイアは不敵な笑みを浮かべながら言った。

しかし一同が驚愕する中、のび太だけは違った表情をしていた……

 

 

のび太

「………たったそれだけでお前がメカトピアで作られたロボットであり、僕らがやっとの思いで倒した鉄人兵団がまだ存在しているって事を認めろって言うの?」

 

ガイア

「あ?」

 

 

のび太はガイアを睨み付けながら言い放った。

ガイアは不快に感じたのか顔をしかめた。

 

 

のび太

「あの時僕たちは……全身全霊の覚悟で戦った……。鉄人兵団を裏切ってまで戦ってくれた大切な仲間2人を失いながらも………地球を守るために……戦ったんだ……!」

 

 

のび太は落ち着いた口調ではあるが、どこか怒りに満ちたような様子で言った。

 

 

ガイア

「……だから何だあ? 確かに俺たちは"一度は"滅びた……だが再び復活を遂げたんだよ! それだけだ!! フハハハハ!!」

 

 

ガイアは鼻で笑いながらのび太の発言を切り捨てた。

 

 

のび太

「嘘だっ!! 信じられるか! そんな事!」

 

 

のび太はガイアの言葉を信じることができなかった。

構わずガイアは続けた。

 

 

ガイア

「じゃあポセイドンはどう説明すんだぁ!? てめえらがヒーヒー言いながら倒したポセイドンが生きてたんだぜ? それがおかしいとは思わなかったのか?」

 

一同

「……!!!」

 

 

ガイアは核心を突くような発言をし、のび太達はハッとしたように息を呑んだ。

 

 

キッド

「ポセイドンの事まで知っていて……しかもメカトピアで作られた新型だと…? てめえら一体何者だ!! 何が目的でこんな事してる!!」

 

 

キッドはガイアに強く言い放った。

そしてガイアはニヤリと笑う。

 

 

ガイア

「残念だがそこまでは言えねえなあ!! さて!! そろそろ皆殺しタイムと行きますかねぇ! フハハハハ!!」

 

 

ガイアは腕に刺さったままだったナイフを勢い良く抜き、ナイフに付いた血を舐めながら言った。

 

 

ガイア

「ポセイドンの野郎はこんなカスどもにやられやがったのか…! こんな奴ら……俺一人で十分だあ! フハハハハ!!」

 

 

ガイアから放たれる殺気、それは明らかに人間が出せる物では無かった。

しかしキッドは臆することなく冷静に返した。

 

 

キッド

「やろうってのか? 確かにてめえは並の相手じゃねえ……けどそれだけで俺たちを倒そうってのは……心外だな!」

 

 

キッドは空気大砲を四次元ハットから取り出し、右腕に装着した。

 

 

王ドラ

「一対多数と言うのは不本意ですが……仕方ありません!」

 

マタドーラ

「珍しく燃えてんな、王ドラ。 仕方ねえ! 俺もやってやるぜ!」

 

ドラメッド

「行くであるぞ、手は抜かんであーる」

 

ドラニコフ

「ガウッ!!」

 

ドラリーニョ

「僕は……何事にも全力でやるよ…!!」

 

ジャガー

「その意気じゃ! ドラリーニョ! ワシも全力で戦うで!!」

 

エル

「負けるわけには行かない!!」

 

 

ドラえもんズとジャガーとエルはそれぞれ腰を落とし、臨戦態勢に入った。

 

 

キッド

「のび太! スネ夫! ドラミ! 王妃サンを連れて裏口のパーキングエリアに行け! タイムマシンが駐めてある! それに乗れば直接バウワンコ王国へ行ける筈だ!! ここは俺たちが食い止める!」

 

 

キッドはのび太達にパーキングエリアに向かえと促した。

そう、どこでもドアでバウワンコ王国へ行くことは現状不可能ではあるが、タイムマシンの空間移動と時間移動を使う事により、バウワンコへ直接行くことが可能になるのである。タイムホールは常時タイムパトロールが監視しているので、いくら相手の技術力が優れていても、タイムホールまでは妨害出来ないのだ。

 

 

のび太

「タイムマシンか…! わかったよ!」

 

スネ夫

「スピアナさん! こっちへ!!」

 

スピアナ

「は、はい!!」

 

 

スネ夫はスピアナの手を引いて、ガイアから距離を取るように引っ張り、のび太達は裏口へ向かうために後ろを向いた。

 

 

キッド

「のび太!!」

 

のび太

「え?」

 

キッドは背を向けたのび太に呼びかけ、のび太はキッドの方を振り返った。

 

 

キッド

「絶対にあいつを……ドラえもんの野郎を助けてくれ!! 俺たちは……必ず奴をぶっ倒してやるからよ!!」

 

のび太

「キッド……うん!! 約束する!!」

 

 

のび太は力強く返事をし、再び前を向いた。

 

 

ドラミ

「行きましょう!!」

 

のび太&スネ夫

「うん!!」

 

スピアナ

「はい!!」

 

 

そして4人はタイムマシンを目指して走り出した。

二度と振り返る事の無く……。

しかしそれをみすみすと見過ごすガイアでは当然なかった……

 

 

ガイア

「逃がさねえよ!!」

 

パシュッ!!

 

 

ガイアは走っているスピアナに腕を向けると、なんとその腕はロケットパンチの如く勢い良く飛び出した。

ガイアの腕は長距離の伸縮が可能であり、そのスパイク状の手で対象を捕獲し、且つ傷付けることができるのである。

 

 

ガイア

「はっ! 王妃さんよ! 捕まえたぜ!!」

 

 

猛スピードでガイアの腕はスピアナに接近し、腕と彼女との距離が1mを切った所で、ガイアはスピアナの捕獲を確信した。

 

しかし……

 

 

 

エル

「ハアッ!!!」

 

 

ズバッ!!!

 

 

ガイア

「な…!?」

 

 

その男は誰よりも速く反応し、高速で射出されたガイアの腕を叩き切った。

 

ガイアの不意打ちに反応した男、それはエルであった……

 

 

ガイア

「てめえ……地味な面してやってくれるじゃねえか…!!」

 

 

ガイアはエルを恨めしそうに睨めつけ、切断された左腕を抑えながら言った。

 

 

エル

「僕がこの4年間……なんの修行も積んで来ないとでも思ったのかい?」

 

 

エルは以前、ポセイドンとの決戦には勝利したが、鉄騎隊との戦いには敗れてしまった。それからエルは血反吐を吐くほどの猛特訓をし続け4年前とは比べものにならないほどエルの剣術は進化していたのである。

 

 

キッド

「ヒュー、やるじゃねえか」

 

 

キッドは口笛を吹いた。

確かに凡才である。しかし、エルの努力は才能という概念を覆していた……

 

 

ガイア

「現ムー連邦大統領、エル…4年前のデータじゃ大したこと無え奴だと聞いてたが……随分な誤りじゃねえか…!!」

 

エル

「みんな、済まないが下がっててくれ。あいつは……僕がやる」

 

 

エルはガイアに剣を向け、力強く言い放った。

そしてのび太達の姿はもう見えない所へ消えていた……

 

 

 

のび太

(エルさん……みんな……任せたよ!!)

 

 

のび太達は走り続けた……

ドラえもん達を助けるべく………




さて……急にエルが目立ち始めましたねー。
彼は不遇なキャラクターでして、大長編では良い扱いをされたとはなかなか言えないキャラクターでした。
そんな彼についに見せ場が…!
次回をお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Quick Attack

お待たせしましたー!!
それではどうぞ!!


エル

「驚いたな……お前のようなロボットでも、人間と同じように血液が出るとはね」

 

 

エルはガイアの左腕の切断面から滴り落ちる血を見て呟いた。

 

 

ガイア

「人間に近い体なんだよ……スペックは人間なんかと比べ物になんねえけどな…!」

 

エル

「……その割には大した事はないね。僕が出会った仲間達に比べれば……全然」

 

ガイア

「言ってくれるじゃねえかよ……! それにさっきの言葉、『僕がやる』? この俺を一人で倒そうってのか?」

 

エル

「分からなかったか? 僕はそう言ったんだ。」

 

 

ガイアの言葉をあしらうように、エルははっきりと即答した。

 

 

ガイア

「この二流如きが………舐めやがってよォ!!!」

 

 

バッ! ブチブチブチ!!

 

エルの言葉に怒りを覚えたガイアは、切断された腕の肩から下を掴み、勢いよく引き千切った。

 

 

ガイア

「てめえだけは生かして帰らせねえぞ!! このドグサレが!!」

 

 

ガイアは引き千切った腕を投げ捨て、烈火の如く怒り狂う。

 

 

エル

「それはこっちのセリフだ。なんの罪のない病院の関係者を大勢殺したお前を…僕は許さないぞ!!」

 

ガイア

「ああ!? カス共はカス共なりに俺のウォーミングアップの為に役立ってくれたんだぜ!?」

 

エル

「ウォーミングアップだと? ふざけるなよ!! お前には人の命の尊さが分からないのか…!!」

 

ガイア

「分かんねえなあ!! どうせ大した能力もねえカス共だ! それなら俺の為に役立ってくれた方がまだ死に甲斐ってモンがあるだろうがよ!!」

 

 

ガイアの全く悪びれない様子に、エルの怒りはついに頂点に達した。

 

 

エル

「反吐が出るほどの下衆野郎だ…!! お前は……僕が殺す!!」

 

ガイア

「こいよ…! ブチ殺してやる!!」

 

 

 

そう言うとエルは再び剣をガイアに向けて構えた。

それに合わせてガイアもファイティングポーズをとる……

 

 

エル

「…………」

 

ガイア

「…………」

 

 

二人は構えたまま、十数秒間向き合った。

嵐の前の静けさである…

ピリピリとした2人の殺気が、皆の緊張を煽る。

 

 

 

ジャガー

「…………始まるのぉ」

 

 

腕を組みながらその様子を見ていたジャガーは、そう呟い

た。

 

そしてその直後、2人の間の沈黙は破られた!

 

 

ガイア

「おるぁ!!!」

 

 

ダッダッダッダ! シュッ!!

 

 

ガイアは右足を踏み込んで猛スピードでエルに接近し、右ストレートを放つ!

 

 

マタドーラ

「あのデカブツから仕掛けやがった!」

 

キッド

「!!! あの図体のクセしてなんてスピードだ…!」

 

 

キッドは思わず驚嘆した。

ガイアはパワーだけでなく、一瞬でゼロから一気にトップスピードまで加速する程の超人的な瞬発力も兼ね備えていた。

 

 

エル

(確かに速い………だけど!)

 

サッ!

 

 

エルは上体を素早く左に動かし、紙一重で攻撃を躱す!

 

 

エル

「そこだ!」

 

 

シュッ!!

 

 

ガイア

(な…!!)

 

 

攻撃を躱された事で隙が出来たガイアにエルは、ガラ空きの胴体へ剣を突き立てる!

 

 

ガイア

「う…ぐっ!?」

 

 

するとエルの一撃は見事にガイアの胸部を直撃し、剣はガイアの心臓ごと胴体を貫いた!

 

 

ドラメッド

「やったであるか!?」

 

 

ドラメッドはその様子を見て思わず叫んだ。

 

しかし、

 

 

王ドラ

「いえ、まだです!!」

 

 

エルの一撃は間違い無く人間の急所であるはずの心臓を貫いた。しかし、相手はただの人間ではなく、アンドロイドである……

 

 

 

 

ガイア

「………なんてなぁ、この程度でこの俺を殺れると思ったのかぁ?」

 

 

ガイアは剣に貫かれてもなおニヤリと笑い、平然としていた……

 

 

マタドーラ

「!? 野郎…心臓を貫かれてケロっとしてやがる…! いや…奴にそもそも心臓があるかすらも怪しいな…!」

 

キッド

「桁外れの耐久力……奴を倒すのは容易じゃないぞ…!」

 

 

マタドーラ達はガイアの生命力に驚きを隠せない様子であった。ある一名を除いては……

 

 

エル

「いいや、これだけで倒せるとは思ってなかったさ…!」

 

 

バッ!

 

 

するとエルはもう片方の手で、懐に忍ばせていた装飾の施された短剣を取り出した!

 

 

エル

「これならどうだ!!」

 

 

そしてエルは短剣をガイアの頭部に向けて渾身の力を込めて振り下ろした!

 

 

グサッ!!

 

 

ガイア

「!!!」

 

 

短剣はガイアの脳天に突き刺さり、ガイアの顔は慌てふためく様な表情に豹変した。

 

 

エル

「アンドロイドと言えど、不死身な訳じゃない。どこかに必ず弱点があると踏んでいたが……正解だったらしいな!」

 

 

グッ!

 

 

エルはガイアの頭部に刺さったナイフを更に奥へ押し込め、中身を掻き回す!

 

 

エル

「お前の体のどこかに、お前自身を制御する為のコンピュータが組み込まれている事は最初から推測していた。機械仕掛けの相手とは闘い慣れているからね…! しらみ潰しに弱点を探っていくつもりだったが……早い段階で見つけられてホッとしたよ…!」

 

ガイア

「て…めぇ…!!」

 

 

バッ!

 

ガイアは痛みに苦しみながらも、片方しかない一本の手で短剣を掴み、頭部への追撃を止めようとする。

 

 

エル

「諦めろ。もう何をしようが無駄だ!」

 

 

するとエルは短剣から手を放し、胸に刺さっていた剣を勢い良く引き抜いた!

 

 

エル

「はぁぁぁ!!!」

 

ガイア

「なっ!?」

 

 

サクッ!!

 

 

一瞬の出来事であった。

エルは勢い良く引き抜いた剣を斜めに振り下ろし、ガイアの首をギロチンの如く刎ね飛ばした!

 

 

エル

「…………」

 

 

刎ね飛ばされたガイアの首は、床をコロコロと転がった…

エルは黙って剣を収め、ガイアの亡骸から目を背けた。

あまりにも呆気ないガイアの最期に一同は唖然としたが、その後すぐに全員に安堵の表情が戻った……

 

 

 

 

キッド

「…意外と早く決着が付いたな……拍子抜けだがとりあえずホッとしたぜ……」

 

 

キッドは胸を撫で下ろした。

 

 

エル

「ああ、敵が単身でこちらに挑んできたのが幸いだよ。もし多数で攻めてきていたら……負けてたかも知れない…」

 

ドラメッド

「そうであるな…」

 

 

ドラメッドはエルと同じ意見であったようだ。

一同は戦いには勝利したが、決して気持ちの良い勝利とは言えなかったようだ…

 

 

マタドーラ

「ま、所詮は口だけ野郎だったな。俺一人で十分とかほざいてたクセによ」

 

王ドラ

「マタドーラ、貴方こそ口が過ぎますよ。」

 

マタドーラ

「王ドラは黙ってろっての」

 

ドラリーニョ

「まあまあ」

 

 

マタドーラは王ドラに対して少し声を荒げるが、ドラリーニョはいつものようにフランクな口調でマタドーラを制止した……

 

 

 

 

ガイア

「フッ……フフフ…」

 

 

すると突然、首から上だけが残ったガイアが笑い声を上げた……

 

 

エル

「こいつ…! まだ生きているのか…!?」

 

 

エルは思わず振り返り、ガイアの生命力に驚愕していた。

 

 

ガイア

「フハハハ……フハハハハ!!!」

 

 

それを他所にガイアは更に大きな笑い声を上げる。

 

 

マタドーラ

「てめえ……何がそんなに可笑しい!!」

 

 

マタドーラは激しく問い詰める。

そしてガイアはこう言った。

 

 

ガイア

「"負けていたかも知れない"? 自惚れんなよ!? さっきのはほんの小手調べだ!! てめえは"俺と戦った時点"で負けが確定してたんだよ! フハハハハ!!」

 

エル

「な…!? どういう意味だ!」

 

 

エルはガイアの言葉に動揺し、どういうことだとガイアに問い詰める。

 

 

ガイア

「すぐに分かるさ!! てめえ……いや、てめえらは相手が悪かったって事がな!! フハハハハハ!!」

 

 

そしてガイアがその言葉を言い終えた瞬間、ガイアの頭は謎の光を発し始めた……

 

 

ガイア

「フハハハハ!! いいか!? "俺は必ず戻ってくる!!" 楽しみにしてな!! フハハハハ!!」

 

 

ガイアはそう言い残し、ガイアの頭は激しい閃光と共に爆発し、跡形もなく消え去った……

残ったのは、ガイアの胴体だけであった。

エルたちはガイアの残した意味深な発言が心残りでしょうがなかった。

 

 

エル

「俺は必ず戻ってくる…? あれは一体どういう意味なんだ……?」

 

キッド

「分からねえ……だけど、すげえイヤな予感がするぜ…」

 

 

キッドは自分の感じている違和感を隠せないようであった。

 

 

王ドラ

「とにかく、今はドラえもん達の事が先決です。急いでのび太さん達を追いかけましょう!」

 

エル

「………そうだね」

 

 

 

そしてエルたちは走り出した……

ガイアの残した言葉の意味を知らずに……

 

 

 

 

 




あっさりと死んでしまったガイアですが、彼がこんな所で終わる訳ではありません……
それでは、また次のお話で!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大切なモノ

前半は私にしては頑張った方だと思います笑
最近投稿のペースが落ちてはいましたが………

これから本格的に連載を再開したいと思います!!


ドラえもん一同
「それではどうぞ!!」



静香

「あれは……誰…? ドラちゃんでも武さんでもない…?」

 

 

ザンダクロスとの交戦で足を骨折し、内蔵も深く痛めてしまった静香は地面に横たわりながら、こちらへ誰かが走って来ている事に気が付いていた…

今にも意識が途切れそうな程の激痛の中で、静香はその者が誰なのかを確かめるべく、凝視した。

 

 

静香

「サ……サベールなの……?」

 

 

 

 

 

サベール

「………!!!」

 

 

サベールはひたすら走った。目の前の巨大な敵、ザンダクロスへ向かってひたすら走った!

 

 

リルル

「真っ直ぐ向かって来るの…!?………無謀としか思えないわね…!」

 

 

ザンダクロスのコックピットに搭乗していたリルルはサベールの行動に驚き、心底困惑した。当然である、サベールが持ち合わせている武器は見たところ、腰に携えた剣一本なのだから……

加えてザンダクロスの武装はまだ十数個ある。

どう見てもサベールの行動は"無謀"なのであった…

 

 

ジュド

「そうかな? 僕には彼の行動は"ある勝算"に裏打ちされたものだと思うな」

 

 

しかしジュドはリルルとは違う考えをリルルに唱えた。

 

 

リルル

「ある勝算? 確かに彼は私たちが放ったライフルの弾を見事に両断したわ……。あれには空いた口が塞がらなかったけれど……だからって彼には勝算があるとは思えないわ」

 

 

リルルはジュドの考えを否定した。

しかし、ジュドは反論する。

 

 

ジュド

「このライフルの弾丸の強度……実は"僕たちの乗っているこのロボットの装甲の強度"に匹敵するんだ……それを彼は切り裂いた……もう分かるね?」

 

リルル

「まさか……!」

 

 

ジュドは意味深な言葉をリルルに言い、リルルはその言葉の意味に気付き、ありえないというような表情で固まってしまった……

 

 

リルル

「ありえないわ! たかが地球で作られた剣ごときが……メカトピアの技術を結集して作られたこのロボットに敵うわけがないじゃない!」

 

ジュド

「……!! 見て…! 考えてる暇は無いみたいだよ!」

 

 

ジュドは何かに気付いたように、ザンダクロスのメインカメラの映像を映し出したモニターを見ろとリルルに促した。

 

 

リルル

「なっ…!? 予想よりも速い…!」

 

 

リルルはジュドの言うままに、視線をモニターに向け、驚愕した……

モニターに映っていたもの……それは、ザンダクロスとの距離をたった数秒の間で数mまで縮め、ザンダクロスに急接近しているサベールであった。

 

 

サベール

「懐へ入ればその図体が仇になるだろう…!」

 

 

ザンダクロスはその大きさゆえ、足下が死角になる……

そう考えたサベールは持ち前のスピードを活かし、素早くザンダクロスの足下へ飛び込んだ!

 

 

ジュド

「しまった! メインカメラの死角に入られた…!」

 

 

サベールの読みは正しかった。

ザンダクロスの頭部に付いていたメインカメラは、足下に入ったサベールを完全に見失っていた。

 

 

サベール

「脚を奪う…!」

 

 

ブンッ!

 

 

サベールは走りながらザンダクロスの右脚へ剣を振りかざす!

 

 

グオオオン!

 

 

すると剣は弾かれる事なくザンダクロスの、人間で言う「くるぶし」辺りに食い込んだ!

 

 

サベール

「うおおおお!!」

 

 

サベールは脚を完全に切断しようと、渾身の力を込めて剣を振り切ろうとする!

 

 

 

 

ドラえもん

「おいおい嘘だろ…!? 切れ味が良いってレベルじゃないぞ…!?」

 

 

ドラえもんはサベールの超人的な剣技と、ザンダクロスの装甲に食い込むほどの剣の切れ味に驚愕した。

 

 

ドラえもん

(ありえない……!! 一体どんな原理であれ程の切れ味を…!?)

 

 

 

 

 

 

リルル

「まさか…! 彼は右脚を切断する気だわ!」

 

ジュド

「あの剣一体どうなってるんだ…!!…させないよ!!」

 

 

サベールの意図に素早く気付いた2人は、ザンダクロスへ指令を出した。

 

 

ザンダクロス

「ーーー!!!」

 

グォン!

 

 

ジュドが指令を出すと、ザンダクロスの左腕はサベールの方へ向いた。

 

 

サベール

「!! 何か来るな…!」

 

 

サベールは素早く攻撃を止め、その場を離れようと走り出した。

 

 

ババババババ!!

 

 

すると、ザンダクロスの左腕に装備されていた小型のバルカン砲が鬼の様な連射を開始した。

威力は先ほどのライフル程では無いが、サベールが喰らえば即死レベルの威力である。

 

 

ババババババ!

 

 

サベール

「くっ…!」

 

 

バルカンはサベールを執拗に追い回す。

サベールはひたすら走り回ってバルカンを躱すが、その回避法は長くは持たないことなど、サベールには分かっていた……

 

 

サベール

(このまま走り続けていてもいつかは追いつかれるだろう。それだけならまだいい……だかこのままでは横たわっているあの少女にまで被害が及ぶ…!)

 

 

 

そしてサベールは再びザンダクロスの足下へスライディングをし、懐へ潜り込んだ!

 

 

リルル

「また足下に入ったわよ!」

 

ジュド

「分かってる! 何度やったって同じことさ!」

 

 

ババババババ!!

 

 

2人はザンダクロスの足下にバルカンをばら撒き、サベールを(いぶ)り出そうとする!

 

しかし、ただ闇雲に足下に潜り込んだサベールではなかった!

 

 

リルル

「…!? 燻り出そうとしても出て来ない!?」

 

ジュド

「な…!? 奴はどこだ!?」

 

 

2人は困惑した。

なんとザンダクロスの足下を牽制射撃しても、サベールはメインカメラの前に一向に姿を現さないのだ。

ザンダクロスは辺りを見回すが、サベールは何処にも居ない。

 

 

リルル

「一体どこに……!?」

 

ジュド

「……!? リルル! レーダーを!!」

 

 

ジュドはザンダクロスに搭載されていたレーダーを見て驚愕した。

慌ててリルルもレーダーに視線を移す。

 

 

リルル

「な…!? これは…!」

 

 

ジュドに続き、リルルも驚愕した。

レーダーを見る限り、サベールは消えた訳では無かった。

 

ただし、ザンダクロスとサベールとの距離は"0m"を指していた……

そしてジュドは全てを悟ったような表情を浮かべた……

 

 

ジュド

「やられた…! 消えたんじゃない……僕たちは奴がすぐそこに居ることで、逆に気付けなかったんだ……!!」

 

リルル

「すぐそこにって………まさか……!」

 

 

2人は唾を飲み込んだ。

そしてその2人の読みは的中した……

 

 

???

「その通りだ」

 

 

グオン!

 

 

ジュド

「何!?」

 

 

どこからか聞き覚えのある声がしたかと思えば、

"見覚えのある剣"がザンダクロスの装甲、そしてコックピットの内壁を貫通し、コックピットの中に侵入して来た。

 

 

そう、サベールは足下に潜り込んだ際にザンダクロスにしがみつき、コックピットのあるザンダクロスの胸部までよじ登っていたのである。

 

 

更に、サベールは驚異的な耳の良さを兼ね備えており、コックピットに乗っていたリルル達の会話をサベールは聞き取り、コックピットの位置を特定し、剣を突き刺したのである…

 

 

 

ジュド

「くそっ! 装甲だけでなく、コックピットの内壁まで貫通させるなんて……!! リルル! 奴を振り落とーー」

 

 

 

 

ジュドが咄嗟にリルルの方を向いた瞬間、ジュドはその言葉を言い終える前に固まってしまった……

 

 

 

ジュド

「リル……ル……?」

 

 

思わず彼女を呼ぶ声が途切れ途切れになる。

 

 

 

リルル

「ジュド…………ごめんなさい…」

 

 

 

リルルは必死に胸の辺りを抑えていた……

 

 

 

ジュド

「リルル…! そんな……っ!!」

 

 

 

ジュドが見た光景…

それは、コックピットに侵入してきたサベールの刃が、リルルの胸を貫いているところであった……

 

 

リルル

「うっ…!!」

 

 

そしてサベールの刃はゆっくりと引き抜かれ、コックピットの外へと消えていった。

剣を抜く際の痛みで、リルルは苦痛の声を上げ、再び傷口を抑えた。

 

不思議と、サベールからの追撃は来なかった……

 

 

ジュド

「早く手当を……! 君はガイア達と違って、耐久性は人間とまったく同じなんだから…!!」

 

リルル

「駄目よ……ジュド」

 

 

ジュドはリルルに応急処置を施そうとするが、リルルはそれを制止し、傷口に視線を移す。

そしてジュドも視線を傷口に移した。

 

 

ジュド

「…………!」

 

 

ジュドは絶望の表情を浮かべた。

傷口を抑えるリルルの手は、既に傷口から溢れてくる彼女の血液によって、真っ赤に染まっていたのである……

 

 

リルルは確信していた。

"この傷は助かるような傷ではない"、と………

 

 

リルル

「ジュド……私はもう……駄目みたい…。ごめんなさい…。」

 

 

ジュド

「何言ってるんだよ…! 僕たちは…まだ始まったばかりじゃないか……そんなこと……言わないでくれよ!!」

 

 

リルルはジュドを不安にさせまいと、笑顔でジュドに言うが、それがかえってジュドを更に哀しくさせた……

 

 

リルル

「覚えてる…? あなたに初めて会った時の事………、ボロボロだったあなたを……私が直してあげてたわよね…」

 

 

ジュド

「忘れるもんか…! !」

 

 

ジュドの目は既に、涙で潤っていた……

 

 

ジュド

「あの時の君のおかげで…僕はどん底から這い上がれた…! 初めて心から思える友達を見つける事が出来たんだ!!」

 

 

ジュドは更に大粒の涙を流しながら、リルルにしがみついた……

 

 

ジュド

「なのに………どうして!!!」

 

 

リルル

「泣かないでよ……私まで泣きたくなっちゃうじゃない………ほら……」

 

 

ジュド

「…!」

 

 

ジュドが顔を上げると、リルルもまた、泣いていた……

 

 

ジュド

「うっ……うっ……」

 

 

そして再びジュドは俯いた……

必死に涙を止めようとしても、止められなかった……

 

 

リルル

「ジュド………もっと……近くにきて…?」

 

ジュド

「…………え?」

 

リルル

「いい…から…」

 

 

ジュドは更にリルルの方へと顔を近づけた……

 

 

リルルはそっとジュドの顔に優しく手を添える……

 

 

リルル

「やっぱり………綺麗ね……私もあなたのように綺麗に産まれたかった……」

 

 

リルルは涙を流してはいたが、それでも満面の笑みでジュドに言った……

 

 

 

ジュド

「何言ってるんだよ………リルルは……リルルは……」

 

 

 

ジュドは若干恥ずかしそうに、少しだけ俯いた。

 

 

 

ジュド

「綺麗……だよ……」

 

 

 

リルル

「…………え?」

 

 

 

ジュドの言葉に、リルルは困惑した表情を浮かべたが、

ジュドは顔を上げ、リルルを真っ直ぐ見て言った……

 

 

 

 

ジュド

「とっても……綺麗だよ…!……宇宙で……一番…」

 

 

 

 

そしてジュドはまた顔を赤くして俯いた。

 

不器用な言葉であったが、その言葉はリルルの胸に響いた……

 

 

リルル

「ジュド………ありがとう……」

 

 

リルルは痛みを堪えながら、ジュドを優しく腕いっぱいに抱き締めた。そしてジュドも翼を広げ、リルルを覆うように抱き締める。

 

 

2人は抱き合いながら、大粒の涙を流し、泣いた……

 

 

 

2人は抱き合っている間、ずっとこのままで居たい、そう考えていた……

 

 

 

 

彼女の泣き声が段々小さくなっていく

 

 

 

 

肌も段々冷たくなって来た

 

 

 

 

彼女が自分を抱いている腕も、徐々に力が抜けていっている

 

 

 

 

そして気付けば彼女の声は…………まったく聞こえなくなっていた

 

 

 

 

ふと彼女の顔を見ると………目を閉じ、とても幸せそうな顔をしていた。

 

 

ジュドはそんな彼女の顔を見ると、優しく微笑んだ。

 

そしてジュドは再びコックピットの操縦席についた……

 

 

 

 

 

 

ジュド

「…………リルル、待っててね………。すぐに………終わらせるから…………」

 

 

ザンダクロス

「ーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

そして再び、ザンダクロスは動き出した…………

 




のび太
「リルルゥゥゥ!!」

静香
「こんな事って……」

ジャイアン
「作者の野郎………なんつー展開だよ……」



正直私………書いててけっこうキツかったです。

リルルファンの皆さん………


"しばらくの間"ご辛抱を………


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たな障壁

ドラえもん
「皆さん! 夏休みはエンジョイしてますかー!?」

ジャイアン
「夏といえば花火やスイカ! そして海や川だよな!」

スネ夫
「皆さん! 一年に一度の夏休み! しっかりと楽しみましょう!」

リルル
「ちなみに作者は毎日資格試験の補習! 今にも泣きそうって言ってたわ!」

ジャイアン
「ざまあみろだぜ! それじゃあ始まるぜ!」

一同
「ドラえもん のび太の大魔境 second season!」


サベールとザンダクロスの闘いが激化していた頃……

 

ドラえもんらの下へ向かっていたのび太達は、ポセイドン達から救出した王妃、スピアナの話をタイムホールの中で聞いていた……

 

 

 

 

スピアナ

「皆さん、改めてお礼をさせて下さい……ありがとうございました…」

 

 

スピアナはのび太達に深く頭を下げ、のび太達に感謝の言葉を述べた。

 

 

スネ夫

「当然の事をしたまでです…。 それより、僕らから幾つか聞きたいことがあるのですが……宜しいですか?」

 

 

スネ夫は丁寧な口調でスピアナの言葉に笑顔で受け応えた後、真剣な顔でスピアナに質問を投げかけようとする。

 

 

スピアナ

「ええ、私に答えられる事なら何なりと質問して下さい…」

 

 

スピアナは畏まり、毅然とした態度で質問を聞く態勢に入った。

 

 

のび太

「じゃあ僕から……」

 

 

最初に質問をしたのはのび太であった。

 

 

のび太

「あなたを誘拐した者………それは誰だか分かりますか?」

 

 

一同

「…!」

 

 

のび太はいきなり核心を突くような質問をした。

あまりの唐突さに、一同の視線はのび太に集中する。

 

 

スピアナ

「それが………申し訳ありません。私にも……よくわからないのです……」

 

 

のび太

「そうですか………なら、その者の特徴を分かる範囲で教えてくれませんか? ほんの小さな事でもいいんです」

 

 

分からないと答えたスピアナであったが、のび太は更に質問を続ける。

 

 

 

スピアナ

「そうですね……顔までは確認出来ませんでしたが……まず、人間や私達犬人類の肌とは思えない程の"青白い肌"をしておりました……それから……長い黒髪、長身痩躯、そして鋭い爪と牙……このくらいでしょうか…」

 

 

スピアナは相手の一通りの情報を言い終えると、フッと息をついた。

 

 

のび太

「十分な情報です。ありがとうございました…」

 

 

のび太はスピアナに会釈をした。

 

 

スピアナ

「それと………陛下らからの逃亡に成功する直前、その者は陛下にこんな事を言っておりました……」

 

のび太

「?」

 

 

のび太は再び視線をスピアナに戻す。

スネ夫とドラミも彼女に注目した。

 

 

スピアナ

「「なんだ。どんな奴かと思ったら…こんなもん? お前………王様辞めろよ。あははは!」と………。」

 

 

のび太

「……………!」ギリッ!

 

 

のび太は拳を握りしめ、憤慨していた。

何者かもわからない者に、自分の友を侮辱された事に……

 

 

スネ夫

「のび太……」

 

ドラミ

「のび太さん……」

 

 

そんなのび太を2人は心配そうに見つめる。

 

 

のび太

「………大丈夫。話を続けよう…。」

 

 

暫くするとのび太は我を取り戻し、話を再開するように促した。

 

 

スネ夫

「う、うん。…さっきのスピアナさんの言った敵の特徴から察するに…そいつは明らかに"人間じゃない"ね……。」

 

 

ドラミ

「そうね……のび太さん、スネ夫さん、今までそんな感じの者と出会ったり、戦ったりした事とかはない…?」

 

 

ドラミがのび太達に達に問いかけた。

もしかしたらその者はなにかのび太達と接点があるのではないかと考えたからである。

 

 

スネ夫

「いや、記憶にないね……。」

 

 

スネ夫は首を横に振った。

 

しかし……

 

 

のび太

「………心当たりなら………あるよ。」

 

 

のび太は暫く黙り込んだ後、気まずそうに口を開いた。

 

 

スネ夫

「? のび太、僕たちは今まで色んな所を冒険してきたけど……そんな特徴のある奴となんか出会った覚えなんてないよ?」

 

 

スネ夫はのび太の言葉に疑問を呈した。

しかし、のび太は続けた…

 

 

のび太

「知らないのも無理はないよ………だってーー」

 

スネ夫

「…?」

 

 

一同の視線は完全にのび太の方へ向いていた……

 

そしてのび太は口を開いた。

 

 

 

 

のび太

「ドラミちゃんを除いて、僕やドラえもんと一緒に"奴ら"と戦った時のスネ夫達は……"別世界のスネ夫達"だったんだから……。」

 

 

ドラミ

「……なるほどね。」

 

 

スネ夫

「………え?」

 

スピアナ

「それは……どういう事でしょうか?」

 

 

のび太がそう言い終えると、ドラミは納得の表情を浮かべたが、スネ夫とスピアナはのび太の言葉の意味が理解出来ない様子であった……

 

 

そんなスネ夫達に、のび太はその言葉の意味を話し始めた……

 

 

のび太

「別世界のスネ夫達…………それは僕が4年前、ドラえもんの道具である『もしもボックス』を使って生み出した世界のスネ夫達だったんだ……。」

 

 

スネ夫

「もしもボックス? 自分の想像した世界を体験できる道具か………のび太達は一体どんな世界に行ってきたの……?」

 

 

スネ夫が問いかける。

スピアナも真剣そうにのび太を見つめていた。

 

そしてのび太は続けざまに応えた……

 

 

 

のび太

「"魔法の世界"………だよ。」

 

スネ夫

「………え?」

 

 

 

魔法の世界……

 

 

のび太は確かにそう言い、その世界であった出来事をスネ夫とスピアナに話した……

 

 

 

科学ではなく、魔法が日常と化した世界。

 

 

そこで出会った魔法使いの少女、"満月美夜子"とその父親、"満月牧師"。

 

 

地球侵略を目論む巨大な軍勢との死闘。

 

 

そして、少女との別れ……

 

 

 

 

 

 

のび太

「…………というわけなんだよ。」

 

 

のび太は一通り魔法の世界について話した後、疲れたように息を吐いた。

 

 

スネ夫

「………なるほど、つまりのび太はこう言いたいんだね?」

 

 

スネ夫はのび太に向かって言った。

 

 

スネ夫

「スピアナさんを攫った奴は、のび太がさっき話した世界で戦った勢力………"悪魔族"の1人だと…。」

 

 

悪魔族……魔法の世界で存在した星、"魔界星"に居を構えていた種族。

 

個体自体の強さによってそれぞれ階級が分けられており、その階級はそれぞれの個体が被っている帽子等に刻印された"星の数"によって知ることが出来る。

 

人間並みの高い知能に加え、熟練の魔法使いでも使いこなすのが難しい魔法であっても難なく使いこなす魔力を有し、集団戦法で相手を追い詰める戦いを得意とした。

 

4年前にのび太達によって絶滅させられた筈なのだが……

 

 

のび太

「うん………特徴としては長い黒髪以外は完全に一致するんだよ。奴らは僕達が過去に倒した筈……でも現に同じく僕達が倒した筈のポセイドンも、何かしらの方法で復活を遂げていたんだから不思議じゃないと思うんだ。」

 

 

のび太は、スピアナを連れ去った者の正体は魔法の世界でのび太らが戦った勢力、悪魔族だと考えていた。

 

しかしドラミはのび太の発言の矛盾に気が付いた…

 

 

ドラミ

「だけど………魔法の世界は私たちの住んでいる世界とは別の世界、『パラレルワールド』なのよ? それなのに今回の事件に悪魔族が関わっているというのはおかしいと思うわ。」

 

 

のび太らの世界と魔法の世界は別物であり、

悪魔族がのび太らの世界に関与することは実質的には不可能なのである……

 

しかしのび太はこう言った…

 

 

のび太

「一つだけ………奴らがこの世界に関与できる方法があると思うんだ…。」

 

スネ夫

「? どんな方法なんだ…?」

 

ドラミ

「まさか……!」

 

 

ドラミは既にその方法というのを察している様子であった。

 

そしてのび太は口を開いた……

 

 

のび太

「……22世紀の人間の力を借りるんだよ。もしもボックスなんて物が作れるなら、パラレルワールドから悪魔族を連れてくることなんかも可能だと思うんだ。ドラミちゃん、僕のこの考えについてどう思う?」

 

 

のび太はドラミの方を向いてドラミに問いかけた。

 

 

ドラミ

「………十分考えられるわ。だけど……もしそうだとすれば……私たちに新たな障壁が現れる事は間違いないわ…。」

 

スピアナ

「新たな障壁? それは一体……?」

 

 

スピアナは首をかしげる。

そしてドラミはその障壁というものについて説明を始めた……

 

 

ドラミ

「実際、パラレルワールドの世界の人間を私たちの世界に連れてくるという実験には成功しているわ。しかしそれは"極秘裏"に行われた実験だったの…。」

 

ドラミ

「私のいる時代から2年ほど前だったかしら……もしもボックスの技術を更に応用して、パラレルワールドとパラレルワールドの接触を計ろうとするプロジェクトが始動したの。そして数ヶ月前、ついにその実験は成功した……。」

 

のび太

「ちょっと待って。極秘裏だったんでしょ? じゃあドラミちゃんはどうしてそんな事を知っているの?」

 

 

のび太はドラミの言葉が引っかかり、ドラミに問いただした。

 

 

ドラミ

「これでも私、色々と"コネ"があるのよ……詳しくは言えないけど。」

 

 

ドラミはのび太の質問に簡潔に答え、話を元に戻した。

 

 

ドラミ

「そしてその実験を成功させた研究チームのメンバー全員は、実験が成功した直後に謎の死を遂げている……チームの最高責任者を除いて…。」

 

 

のび太

「最高責任者以外が怪死…? ……という事は…!」

 

 

のび太は全てを悟ったかの様な表情を浮かべた。

 

 

ドラミ

「ええ。もしのび太さんの推理が正しいのなら、今回の事件………その実験に携わった人間が黒幕と内通している可能性が非常に高いわ…!!」

 

 

スネ夫

「…………その研究チームの責任者の名前は…?」

 

 

スネ夫は冷や汗をかきながらドラミに問いただした。

 

 

ドラミ

「"黒崎 啓介"という日本人だと聞いているわ…。そして……黒崎は1カ月程前に謎の失踪を遂げているの…!」

 

 

のび太

「そうとなれば合点がいく…! …どうやら敵は僕たちが想像してたよりも遥かに大きな集まりだって事が分かってきたね…。」

 

 

スネ夫

「うん……ポセイドン、鉄人兵団、そして……22世紀の人間。のび太達が魔法の世界で倒した筈の悪魔族の王、"デマオン"も敵に回ってるとしたら……まずいぞ…! とても僕らだけで手に負えるような相手じゃなくなる…!!」

 

 

デマオン……全ての悪魔を束ねる魔界の王。

ドラえもんらを圧倒する戦闘力を誇り、4年前にのび太らを窮地まで追い込むが、最後にはのび太達の反撃により倒された。

 

 

 

のび太

「もし悪魔達が復活したのなら……必ずまた僕達が倒さなくちゃいけない……美夜子さんと満月牧師の為にもね……」

 

 

 

満月 美夜子……魔法の世界で出会った魔法使いの少女。

 

魔法の絨毯の操縦技術は、当時中学生ながらA級ライセンスを取得するなど、非常に優れている。

 

"ある事情"により彼女の実の母、「満月 美咲」を亡くしている…。

 

 

 

満月牧師……本名「満月 夜真斗」。

 

美夜子の父親であり、魔法学の権威である。

 

当時は人間界屈指の魔法使いという呼び声が高かった。

 

 

 

ドラミ

「ええ………敵は私たちに恨みを抱えてる者たちが集まって組織された連合軍……ってところね……。そして黒幕は未だに不明だわ…。」

 

 

死んだ筈のポセイドン、歴史上から消え去った筈の鉄人兵団、そして、のび太らが死闘を演じてようやく倒した悪魔族の王…デマオンとその部下達。

 

それらは何かしらの方法により復活を遂げ、のび太らに復讐をしようと考えている。とのび太らは考えていた……

 

 

 

 

のび太

「……! そろそろ到着だね…!」

 

 

のび太はタイムマシンに搭載されたタイムメーターを見ながら言った。

 

そしてしばらく経つとタイムマシンは停車し、出口のタイムホールが開いた……

 

 

スネ夫

「急いで行こう! ドラえもん達が心配だ!」

 

ドラミ

「ええ!」

 

 

4人は急いでタイムホールを通った。

タイムホールが開いた先は、集落から少し離れた真夜中のジャングルのようであった……

 

 

のび太

「ドラミちゃん! タケコプターを!」

 

 

のび太は慌てた様子でドラミにタケコプターを要求した。

 

 

ドラミ

「分かったわ! はい!」

 

 

ドラミはのび太にタケコプターを手渡した。

そしてその後スネ夫達にもタケコプターを渡し、一同は空中に飛び立った……

 

 

のび太

「ドラえもん達はどこに…!?」

 

 

のび太はキョロキョロと辺りを見回した。

 

 

スピアナ

「!!! あれを見てください!」

 

 

スピアナはある場所を指差した。

慌ててのび太達はその指が差す方向を凝視した。

そしてのび太達から1kmほど離れた所に、それは居た……

 

 

スネ夫

「あれは………ザンダクロス!?」

 

のび太

「まさか…! ペコの言ってた敵の兵器って…!」」

 

 

のび太達は驚愕した。

鉄人兵団が復活したとは言え、自分達の知ってたザンダクロスが再びのび太達の前に姿を現わすなど思ってもなかったのである。

 

 

ドラミ

「!!! 見て! ザンダクロスの前に誰かいる! お兄ちゃんでも静香ちゃんでもないわ!」

 

のび太

「何だって!?」

 

 

のび太は更にザンダクロスの周りを凝視した。

そしてその人物を確認したのび太はハッとしたような顔をした……

 

 

のび太が確認したそれは……

 

ザンダクロスを前にして膝を付いたボロボロの状態のサベールであった……

 

 

 

のび太

「サ、サベール!? どうして彼が!?」

 

スネ夫

「分からない……だけど彼……苦戦してるみたいだ…!」

 

スピアナ

「急いで彼らの下へ行きましょう!!」

 

 

 

 

 

サベールに何があったのか……

 

それを知らないまま4人は全速力で、サベールらの下へ向かって行った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




美夜子さんのお母さんと満月牧師の本名は完全にオリジナルです笑
これでもしっかりと考えたつもりなのでお許しを…


それではまたお会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Anger

一同
「ドラえもん! 誕生日おめでとう!!」

ドラえもん
「みんなありがとう! えへへ……」

ジャイアン
「よし! お祝いに俺の新曲を披露するぜ!!」

一同
「なにぃー!!??」

ジャイアン
「ホゲェ〜!!」



えー、改めましてドラえもん、誕生日おめでとうございます!!

それでは始まります! じゃあ皆さん! タイトルコールを!


一同
「ドラえもん のび太の大魔鏡 second season!!」




サベール

(くそっ…! 今ので左肩がやられた…!! 脳にも少なからずダメージがあるな……)

 

 

サベールはザンダクロスのコックピットへの攻撃に成功し、攻撃の手を緩めていた……しかしその直後、サベールは一瞬で優勢から劣勢に追いやられてしまった……

 

 

一時は沈黙したかと思われたザンダクロスが再び動き出したかと思えば、

ザンダクロスはコックピット周辺にしがみついていたサベールを掴み、地面に勢いよくサベールを投げつけたのである…。

そのザンダクロスの動きは、先程とは比べ物にならない程荒々しくなっていた。

 

 

受け身もままならない程の強烈なザンダクロスの投げは、サベールの左肩を完全に砕き、彼の脳を激しく揺らすまでに至ってしまった……

しかもその際、サベールの握り締めていた剣は、投げられた衝撃によってサベールの手元から十数m程離れてしまったのである……

 

 

サベール

(とにかく……ここに膝を着いたままではまずい…! 直ぐに移動しなくては…)

 

 

グッ!

 

 

サベールは脚に力を入れ、なんとか立ち上がろうとする。

 

しかし……

 

 

サベール

「うっ…!」

 

 

ガクンッ!

 

 

一度は立ち上がれたサベールであったが、その後直ぐにサベールは苦しそうに頭を抑え、再び地面に膝を着いてしまった……

 

 

サベール

(…!! 脚すらも動かんか…!!)

 

 

そサベールは先ほどの攻撃で脳を揺らされてしまった。

脳を揺さぶられると人は平衡感覚を失い、自らでは立とうと思っていても脚が言うことを聞かないのだ。

 

 

何度もサベールは脚に力を入れるが、一向に立ち上がれそうな気配はない。

 

 

 

 

 

 

ジュド

「許さない…! 許さない…!! 絶対にお前だけは許さない!!!」

 

 

リルルがサベールに攻撃を受けた事に激昂したジュドは、サベールに対して強い憎しみを抱いていた。

その表情は醜いまでに歪み、まだ目は少なからず涙で潤っていた……

 

 

ジュド

「これで終わりにしてやる…!!」

 

ザンダクロス

「ーーー!!!」

 

 

グォン!!

 

 

するとジュドはザンダクロスに指令を出した。

そして指令を受けたザンダクロスの左腕はサベールの方へ向いた。

先程のバルカン砲を発射するつもりなのである。

 

 

サベール

(!! 急がねば…! ここで終わる訳にはいかない…!)

 

 

サベールはまだ諦めていない。

 

だが何度も立ち上がろうとしたが、立てない……

 

 

サベール

(動け…! 動け…! 動いてくれ…!!)

 

 

サベールはそう何度も念じた。

それでも、サベールが立ち上がる事は無かった……

 

 

サベール

「…………ここまでか……」

 

 

そしてサベールは自らの敗北を認め、地面に顔を伏せ、ひたすらに死を待った。

 

 

しかし…!

 

 

 

 

 

サベール

「……?」

 

 

不思議と、ザンダクロスの攻撃が始まらないのである。

 

サベールは不思議に思い、伏せていた顔を上げた……

 

 

サベール

「何が………起こっている…!?」

 

 

サベールはとても驚きが隠せないようであった。

その訳とは……

 

 

ザンダクロス

「!!ーー!!ー!」

 

 

グググググ

 

 

ジュド

「くそっ! 何なんだこれは…!!」

 

 

ザンダクロスの挙動が明らかにおかしいのである。

何故かサベールに向けられたザンダクロス左腕が下がりつつあるのだ。

それだけではない。ザンダクロスの体は金縛りにあっているかのように小刻みに震え、まったく身動きが取れていない状態だったのである。

 

 

ジュド

「何でだ…!? 何故言う事を聞かない!!」

 

 

ジュドは必死にザンダクロスに指令を送り出すが、ザンダクロスは動かない。

 

そしてその現象を引き起こした者たちは、その後直ぐに現れた……

 

 

 

 

 

???

「相手ストッパーー!!!」

 

 

相手ストッパー…その機械に声で指令を出すと、特定の物体を無理矢理停止させる事が出来る。

 

 

サベール

「!!!」

 

 

サベールはハッとしたようにその者たちを見た。

 

 

ドラミ

「のび太さん! スネ夫さん! 今のうちに静香ちゃん達を!」

 

のび太&スネ夫

「任せて!!」

 

 

サベールの窮地に現れた者たち。

それは22世紀から駆けつけた、ドラミとのび太、そしてスネ夫であった……

 

 

サベール

「……なるほど……そういう事か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のび太

「静香ちゃん! 静香ちゃん! しっかりして! 意識はある!?」

 

 

のび太は地面に倒れ込んでいた静香に駆け寄り、必死に肩を揺らして彼女の意識の確認をした。

 

 

静香

「のび太……さん……? ……来てくれた…のね……」

 

 

意識が混濁していた静香であったが、自分に駆け寄ってきた相手がのび太だと分かると、彼女は精一杯の笑顔を見せた。

 

 

のび太

「静香ちゃん…! 良かった…! 僕……静香ちゃんの事が心配でしょうがなかったんだ…!」

 

静香

「ふふふ………大丈夫よ…。私は……こんな事で死んだりなんかしないから……。」

 

 

半泣きで静香に接するのび太であったが、静香は笑顔のままのび太に受け答えをした。

するとのび太の顔にも笑顔が戻った。

 

 

のび太

「ははは、やっぱり静香ちゃんは強いなあ。…じゃあ静香ちゃん、とりあえず一緒にあの集落まで行こうか…。」

 

静香

「ええ……。」

 

のび太

「よいしょっと…!」

 

 

そしてのび太は静香をおぶり、ノシノシとゆっくりであるが、集落まで歩き始めた……

 

 

 

 

 

スネ夫

「ドラえもん! 大丈夫かい!?」

 

 

一方スネ夫はドラえもんに駆け寄っていた……

 

 

ドラえもん

「僕は怪我もないし問題ないよ…。僕よりは……ジャイアンを頼むよ…。」

 

スネ夫

「……え?」

 

 

するとドラえもんは、門の近くに座り込み意気消沈としているジャイアンを指差した。

 

スネ夫はそんなジャイアンの様子を見ると、一瞬だけジャイアンを哀れむような表情をしたが、直ぐに毅然とした表情を取り戻した。

 

 

スネ夫

「………分かった、ジャイアンは僕に任せて。ドラえもん、君も休んだ方がいいね。」

 

 

スネ夫はドラえもんとジャイアンの身を案じて言った。

 

 

ドラえもん

「ごめん……ありがとう。」

 

 

そしてドラえもんは顔を伏せながら、スネ夫に礼を言った…

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラミ

「サベールさん……だったわよね?」

 

 

ドラミはザンダクロスを相手ストッパーでホールドしたまま、サベールの下に降り立ち、サベールに声をかけた。

 

 

サベール

「ああ、………見ない顔だな。聞くが、お前は何者だ?」

 

ドラミ

「私はドラミ。あそこにいるドラえもんの妹よ。」

 

 

ドラミはドラえもんを指差した。

 

 

サベール

「そうか……ひとまず礼は言っておこう。」

 

ドラミ

「どういたしまして…。それはともかく……まずは奴をどうにかしないといけないわ。」

 

 

ドラミはザンダクロスの方に目をやった。

 

 

サベール

「……そうだな。…奴が今動けない要因はお前によるものなのか?」

 

ドラミ

「そうよ。とりあえず動きは封じているけど……あと3分が限界ね…。」

 

 

ドラミはそう言うと、自分が握っていた相手ストッパーに視線を移した。

相手ストッパーの効果は絶大ではあるのだが、その強力さゆえ、内蔵バッテリーの消耗が激しく、長持ちしないというのが難点として挙げられているのである。

 

 

サベール

「3分か……考えてる暇はないな。手を貸せ。今の内に早急に奴を叩くぞ。」

 

 

そうサベールはドラミに対して言った。

 

しかし……

 

 

ドラミ

「あなたはいいわ、奴は……私達だけでなんとかする。」

 

 

ドラミはサベールの怪我を見て、彼の気を遣うように言った。

 

 

サベール

「ふざけるな。 奴はお前たちだけでどうにかなる相手ではないんだぞ。」

 

 

サベールはドラミの言葉に憤慨する。

 

 

ドラミ

「だけど…そんな体で戦いを続けたら…あなただって死んでしまうかも知れないのよ…?」

 

 

ドラミはサベールの身を案じたつもりで言った。

 

しかし……

 

 

サベール

「私にも誇りがある。敵を目の前にしてこのまま引き下がるなど……私には出来ん…!」

 

ドラミ

「そんな事言ったって……あなたが死んでしまったら元も子もないじゃない!」

 

サベール

「私が死のうが知った事ではない。問題は奴を止められるかどうかだ!」

 

 

一向に引き下がる気配のないサベールであったが、ついにドラミは痺れを切らし、強行手段に出た……

 

 

ドラミ

「…………ごめんなさい。」

 

 

カチッ バンッ!

 

 

ドラミはそう言うと、ポケットから「ドリームガン」を取り出して弾を装填して撃鉄を起こし、引き金を引いてサベールの頭に命中させた。

 

ドリームガン……実弾の代わりに相手の眠気を誘う弾丸を発射することの出来る回転式拳銃。弾丸の効き目はそれぞれ段階分けされており、一番効果のある弾丸は、食らった相手が丸一日眠り続けるほどである。

 

 

サベール

「な……!!」

 

 

バタッ

 

 

食らえば1時間は眠り続ける弾丸を受けたサベールは、為す術なく地面に倒れ込み、気を失ってしまった……

 

 

ドラミ

「少しの間、眠っててちょうだい……」

 

 

そう言うとドラミはドリームガンをポケットにしまった。

そしてそれと同時に、ドラえもんらを避難させたスネ夫とのび太がドラミの下へ駆け寄ってきた……

 

 

ドラミ

「スネ夫さん! のび太さん! お兄ちゃん達はどうだった?」

 

のび太

「 静香ちゃんは無事に集落まで避難させといたよ。脚の骨が折れてるみたいだから…今は安静にしてるよ。」

 

スネ夫

「ドラえもんとジャイアンは特に怪我も無いようだし何とか大丈夫そうだよ…。……さて、そろそろ奴を片付けないとね…。」

 

 

スネ夫はザンダクロスに目をやった。

 

 

ドラミ

「そうね……そろそろ相手ストッパーの効果が切れる頃だわ、2人とも、簡潔に私の考えた作戦を説明するからよく聞いていて……。」

 

のび太

「分かった。」

 

スネ夫

「オッケー。」

 

 

そしてドラミは自らが考案した作戦の説明を始めた……

 

 

ドラミ

「まずあの装甲……私達の持っている道具では絶対に太刀打ち出来ないわ。だから外からではなく……中から切り崩しに入るわよ。」

 

のび太

「中からだって?」

 

スネ夫

「一体どうやって…?」

 

 

ドラミの発言に疑問を抱くのび太達であったが、ドラミは続けた……

 

 

ドラミ

「…『天才ヘルメット』と『技術手袋』を使って……ザンダクロスの機体の中に張り巡らされている電子回路をシャットアウトし、無理矢理活動を停止させるのよ。」

 

 

ドラミの考えた作戦。

 

それは、まずドラミとのび太が2人がかりでザンダクロスの注意を引く。

そして残ったスネ夫はザンダクロスの死角からザンダクロスの首の辺りまで接近し、天才ヘルメットと技術手袋を使ってザンダクロスの電子回路を切断するという物である。

 

 

ドラミ

「あれほど複雑な動きを可能にするロボットよ、必ず頭と胴体とを繋ぐ中枢回路が存在している筈だわ。」

 

 

一見シンプルな作戦だが、注意を引く2人はザンダクロスの攻撃を受ける可能性もあり、スネ夫に至っては、揺れるザンダクロスの機体にしがみつきながら破壊工作をしなければならないというリスクの大きい作戦だ。

 

 

4年前ののび太達なら尻込みをして「こんな作戦無茶だよ」などと言っていたかも知れない。

 

しかし、今は昔とは違うのである……

 

 

 

スネ夫

「………分かった。やってやろうじゃないか。」

 

 

スネ夫はニヤリと笑いながら言った。

 

 

のび太

「囮なら任せてよ! ジャイアンから逃げまくって鍛えた僕の逃げスキルを見せる時が来たみたいだね…!」

 

 

それは鍛えたと言えるのか……。

 

 

ドラミ

「うふふ、やっぱり頼もしいわね……2人とも。」

 

 

 

そんなのび太達を見て、ドラミは心底楽しそうに笑みを浮かべた……

 

 

ドラミ

「お兄ちゃん達が決死の覚悟で奴から右腕を奪ってくれたの……それを絶対に無駄にしないわよ!!」

 

のび太&スネ夫

『うん!!』

 

 

 

 

 

 

そして場所はザンダクロスのコックピットの中。

ジュドは身動きのとれないザンダクロスの機体をなおも動かそうと命令を出し続けていた。

 

 

ジュド

「動け!! 動け!! 動けよ!!」

 

 

ジュドは ドンッ ドンッ と、自分の座っているコックピットの台を叩かながら言った。

 

 

ジュド

「リルルの……仇を討つんだ!! こんなとこで止まってなんか居られるか!!」

 

 

ジュドはいたすら怒りを剥き出しにしていた。

 

そして……

 

 

ジュド

「あああああああ!!!」

 

ザンダクロス

「ーーー!!!」

 

 

ブォン!!!

 

 

ジュドがそんな叫び声を上げると同時に、ドラミがザンダクロスに対して使用していた道具、相手ストッパーの効果が切れ、ザンダクロスは空を仰ぐように大きく腕を上げた。

 

 

ジュド

「やっと動けるようになったか………さて……。」

 

 

そしてジュドは怪しい笑みを浮かべた。

 

 

ジュド

「……行こうか。」

 

 

収まることを知らないジュドの怒り。

それは既に頂点に達しつつあった……。

 

 

ザンダクロス

「ーーー!!」

 

 

そしてザンダクロスはのび太達へ向かって歩き始めた……

 

 

 

 

 

 

 

 

リルル

「……………」

 

 

 

 

 

 

ジュドはその時気付かなかった。

 

ジュドの後ろで横たわっていたリルルの指が、微かだが動いていた事に……。




リルル
「とんだリサイタルだったわね…」

ジュド
「そうだね…」

スネ夫
「でもやっと終わったよ……これで帰れる…」

ジャイアン
「おいお前ら、どこ行くんだよ?」

静香
「どこって……お家に帰るのよ?」

ジャイアン
「次は俺の新アルバムの発表があるんだぜ!? 特別に全曲歌ってやるぜ!!」

一同
「なにぃーー!!??」

ジャイアン
「ホゲェ〜!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Counter Attack

えー、皆さん、大変お待たせいたしました!!

ジャイアン
「投稿遅すぎんだろ!! ふざけんのも大概にしろ!!」

エル
「でもなんとか作者の夏休み前に投稿出来て良かったね…」

ペコ
「というか前回の投稿から10ヶ月ほど経ってたんですね……」


皆さん、今までサボっていて本当に申し訳ありませんでした!

前回の投稿から今日までの間、各話のセリフや矛盾の修正、また追加エピソードを少しですが設けてありますので、良ければご覧下さい!

さて、それではどうぞ!



ドラミ

「のび太さん! 行くわよ!!」

 

のび太

「うん!!」

 

 

ドラミはのび太にそう言うと、タケコプターを使って空へ飛び立った。そしてドラミに返事をしたのび太もドラミに続いて空へ飛んだ……

 

 

スネ夫

(囮は任せたよ……2人とも!)

 

 

スネ夫はそんな2人を見送り、ドラミから預かったスペアポケットからタケコプターを取り出し、頭に装着し、ザンダクロスの方に目をやった。

 

 

スネ夫

「さて……僕ちゃんもお仕事と行きますかね…」

 

 

そしてスネ夫は腹をくくり、微笑しながら空へ飛び立った……

 

 

 

 

 

 

 

ジュド

「来たか。」

 

 

ジュドはレーダーとメインカメラに映ったドラミ達を見て呟いた。

 

 

ジュド

「リルルを殺った奴じゃない……邪魔だからさっさと片付けよう…!」

 

ザンダクロス

「ーー!!!」

 

 

グォン!!

 

 

すると、ザンダクロスの肩に取り付けられていたミサイルランチャーのハッチが開いた。

 

 

ドラミ

「…!! のび太さん! "散る"わよ!!」

 

のび太

「うん!!!」

 

 

 

ザンダクロスの動きを確認したドラミがのび太にそう伝えるや否や、2人はタケコプターの回転速度を上げてそれぞれ別方向に散開し、ザンダクロスへの接近を試みた……

 

 

 

 

 

 

 

ーー回想ーー

 

 

 

 

 

 

 

ドラミ

「いい? 私とのび太さんの役目は陽動……でもただ奴の攻撃から逃げるだけじゃないわよ。」

 

のび太

「というと?」

 

 

のび太はドラミの言葉の意図が分からず、ドラミに問うた。ドラミはのび太の質問に応えるように口を開いた。

 

 

ドラミ

「私達も……ザンダクロスに応戦するのよ。」

 

 

ドラミはきっぱりと言い切った。

 

 

のび太

「ちょっと待ってよ、ドラミちゃんはザンダクロスにダメージを与えられるような道具は持ち合わせいないってさっき言ったばかりじゃないか。それなのにどうやって奴に応戦するっていうの…?」

 

 

のび太はドラミの言葉が引っかかり、その言葉の意味を質した。

 

 

ドラミ

「確かに…私はあの装甲に直接攻撃を加えてダメージを与えられる道具なんて持ち合わせてないわ。だけど……私達が直接攻撃をしなくても奴にダメージを与えられる道具ならあるわ。」

 

スネ夫

「……なるほどね、"あの道具を使って、あいつの力を逆に利用してやる"ってわけだ」

 

 

ドラミの思わせぶりな言葉に、スネ夫は合点がいったように指をパチンと鳴らした。

 

 

のび太

「…あ!! そういうことか…!」

 

 

少し遅れてドラミの言葉の意図に気付いたのび太は、納得したように頷いた。

 

 

ドラミ

「察したみたいね。…もし奴が拳で私達を攻撃しようものなら、とりあえずそれは避けるだけでいいわ。狙い目は……奴がこちらへ殺傷能力のある武器で攻撃をしようとした時よ…!」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

ジュド

「塵になれ…!!」

 

 

カチッ!

 

 

ジュドは殺意を持ってそう呟くと、手元のスイッチを押した。

 

 

バンッ!! バンッ!! バンッ!!

 

 

その瞬間、ザンダクロスの両肩に装着されていたミサイルランチャーから、それぞれ約20発分のミサイルが次々と発射され始めた!

 

 

ヒュゥゥン!!

 

 

発射されたおびただしい量のミサイルは、風切り音を上げながら暫く空中を飛行した後、何の前触れもなくのび太達の方へ軌道を変えた……

 

 

のび太

(……!! このミサイル…僕たちを狙ってる! しかもなんて量だ!!)

 

ドラミ

(やはり…自動追尾機能付き…!!)

 

 

それぞれのミサイルのロックオン対象……それは当然、のび太とドラミである。

 

のび太はその量に思わず圧倒された。

 

そして発射されたミサイルは、ドラミ達を執拗に追い回し始めた。

 

 

のび太

「こっちに来る…!」

 

 

ドラミ達もミサイルに追いつかれまいと、タケコプターを用いて全速力で逃げ回り始めた。

 

 

ドラミ

(大丈夫、このミサイル……そこまで速くない…!)

 

 

のび太とドラミは普段使い慣れているタケコプターの性能を遺憾なく発揮し、急な減速や猛スピードでの旋回、果ては宙返りなどのアクロバティックな技を用い、ミサイルから逃れようとする。

 

 

しかし、のび太達がいくら逃げても、ミサイルは金魚のフンのようにのび太達から離れようとしない。

 

 

 

ジュド

「フッ 必死に逃げ回ったりして……無駄だっていうのに…」

 

 

ジュドはミサイルから逃げ回るのび太達を見てうすら笑いを浮かべた。

 

 

ジュド

「今は上手いこと逃げ回ってはいるけど、このミサイルは一度ロックオンされたら最後、着弾するまで標的を追い回す…! あいつらは今どんな顔をして逃げ回っているんだろうなぁ…」

 

 

ジュドは最早(もはや)勝負は決まったものだと確信し、余裕をかましていた。そしてジュドはサディスティックな顔で、のび太達の表情を確かめようとカメラの倍率を拡大させた。

 

しかし……

 

 

 

 

ジュド

「……!? こいつら…!!」

 

 

先ほどまで笑みを浮かべていたジュドであったが、メインカメラに映り込んだのび太とドラミの表情を見て、顔色を変えた……。

 

 

ジュド

「笑って…いる……!?」

 

 

その瞬間ジュドは、追い詰められているのは自分であるという事を悟った……。

 

 

ジュド

「まさか……こいつら…!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

のび太&ドラミ

『今だ!!/今よ!!』

 

 

のび太とドラミはそう叫ぶと、素早く後ろを振り返りながらポケットの中に手を突っ込んだ!

 

そして……

 

 

ドラミ

「ひらりマントー!!!」

 

 

2人が取り出した道具、それはひらりマントである!

 

 

 

のび太

「行っけえぇぇぇ!!!!」

 

 

そしてドラミとのび太は後ろ向きに70km/h程の速度で飛行を継続しながら、2人に差し迫るミサイルに次々とマントを振りかざし始めた!

 

 

ヒュゥゥゥン!!!

 

 

ひらりマントによって跳ね返されたミサイルは、次々と軌道を変えた!

 

標的(ターゲット)は……ミサイルを放った元凶、ザンダクロスである!

 

 

ジュド

「何だよあれ…!? ミサイルが跳ね返って……!?」

 

 

ジュドは目の前で起こっている事が信じられず、困惑するが、その直後に自分が今置かれている立場を理解した。

 

 

ジュド

「!! ここにいたらまずい!!」

 

 

ジュドはザンダクロスに信号を出して、次々とこちらへ向かってくるミサイルを後ろに下がって回避しようとする。

 

しかし…

 

 

ドラミ

「今更動いたって…遅いわよ!!」

 

 

ザンダクロスが動き出そうとした時には既に、ミサイルはザンダクロスから10m以内まで差し迫っていた。

 

 

ジュド

「くっ…!!!」

 

 

ババババババ!!!

 

 

ザンダクロスは少しでも自分に着弾するミサイルの数を減らそうと、苦し紛れに腕のバルカン砲でミサイルを撃ち落そうとした。

 

バルカン砲を食らったミサイルは次々と爆散し、途轍もない爆風と轟音が辺りを覆った。

 

しかし……

 

 

ジュド

「この数…!! 墜とし切れない…!!」

 

 

あまりのミサイルの数に、ジュドは全てのミサイルを撃墜する事が出来なかった。

 

 

ドカンッ! ドカンッ! ドカンッ!

 

 

そして、彼が撃ち漏らしたミサイル5発分がザンダクロスの腕、両足、頭部、胸部に着弾した!

 

ミサイルが一発一発と着弾するごとに、ザンダクロスの装甲に大きく損傷が広がっていく。

そして最後のミサイルが着弾すると、自らのミサイルで機体を大きく損傷したザンダクロスは、ついに片腕と膝を地面に着いた。損傷した部分には、ショートした電線等からスパークが生じていた。

 

 

ジュド

「くそっ!! やられた!!」

 

 

ジュドは思わず、怒りに任せてコックピットの内壁を殴った。

 

 

 

のび太

「作戦成功!」

 

 

のび太はガッツポーズをした。

 

ドラミが提案した作戦……それは「ひらりマント」を用い、ザンダクロスへ起死回生のカウンターを放つと言うものだったのである!

 

そしてザンダクロスの動きは…一時的ではあるが完全に止まった。

 

 

ドラミ

「動きが止まった…! 今よ!! スネ夫さん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

スネ夫

「任せてくれ…!」

 

 

すると何処からともなく、タケコプターを装着したスネ夫がザンダクロスの首筋辺りに姿を現した!

 

 

スネ夫

「よっ…と!」

 

 

そしてスネ夫はザンダクロスのうなじ辺りに着地し、スペアポケットから天才ヘルメットと技術手袋を取り出して装着すると、驚異的なスピードで破壊工作を始めた。

 

 

スネ夫

「さてと…!ここをこうしてっと…!」

 

 

ジジジジ! キュイイン!

 

 

装甲を溶断し、無数のケーブルを掻い潜ってザンダクロスの中枢器官に辿り着き、中枢回路を切断する。

 

その作業行程を、スネ夫は道具のお陰もあり、スピーディーに行った。

 

 

スネ夫

「よし、回路(ライン)を確保した…」

 

 

 

スネ夫は瞬く間にザンダクロスの中枢回路に辿り着き、それを手前に手繰り寄せた。

 

 

スネ夫

「これで終わりだね…!!」

 

 

そしてスネ夫は技術手袋の指先からペンチを取り出し、ザンダクロスの回路をパチッと切断した……。

 

 

 

ザンダクロス

「!!!ーーーー」

 

 

すると、ザンダクロスのメインカメラの光がプツンと消え、ザンダクロスが再び動き様子は無くなった…

 

 

スネ夫

「ドラミちゃん、のび太、ザンダクロスのシステムは完全に掌握した。これでこいつも動かなくなるはずさ。」

 

 

その様子を確認したスネ夫はすっかり安堵しきった表情で、腕ラジオを通して作戦の完了を告げた。

 

 

ドラミ

《よくやったわ! スネ夫さん!》

 

のび太

《スネ夫にしては上出来じゃない?》

 

スネ夫

「のび太のクセに言ってくれるね……ハハ」

 

 

腕ラジオ越しに、2人はスネ夫を賞賛し、スネ夫は思わず笑みをこぼした。

 

 

 

 

 

スネ夫

「さて…じゃあお顔を拝見と行こうか。一体誰がザンダクロスを操っていたのかをね……」

 

 

先程まで笑顔だったスネ夫の表情に緊張が戻った。

 

 

ドラミ

《ええ…。スネ夫さん、そこからザンダクロスのコックピットのハッチの開閉は出来る?》

 

スネ夫

「もちろん可能さ。じゃあ2人とも、念のため空気砲を装備して、それぞれコックピットのハッチの脇で待ち構えていてくれ。もしかしたら敵が反撃してくるかも知れない。」

 

のび太

《分かったよ。位置についたらそっちに合図を送る。》

 

 

そしてのび太達はタケコプターを使い、ザンダクロスのコックピットの開閉扉の脇にそれぞれスタンバイした。

 

この時、3人の顔には今までに無く緊張が走っていた。

当然の事だ。中に乗っているのは、バウワンコの農民を大量虐殺した者であるのだから。

 

 

そして覚悟を決め込んだのび太は、フッと息を吹いた。

 

 

のび太

「ーーー位置に着いたよ。スネ夫、ハッチを開けて。」

 

スネ夫

「わかった…。じゃあ開けるよ…!」

 

 

 

そしてコックピットのハッチはゆっくりと開き始めた。

のび太とドラミは、中に乗っている者の反撃を警戒し、ハッチの脇に留まったままだった。

 

嫌な汗が、のび太の頬を伝う。

 

 

そしてハッチは完全に開かれた。

不思議と、コックピットからは物音一つ聞こえない。

 

のび太とドラミはその様子に疑問を呈し、一抹の恐怖を抱いたが、お互い自らを奮い立たせ、コックピットの中をそっと覗き込んだ。

 

 

そして、2人は予想だにしない光景を目にした。

 

 

 

ジュド

「……!!……!!」

 

 

 

 

コックピットに搭乗していたのは…鳥の様な姿をした生き物であった。

それはのび太達を恨めしそうに睨み、涙を流しながら"何か"を必死に守るようにこちらに背を向け、翼を大きく広げていた。

 

 

ドラミ

「鳥……!? どうして…鳥なんかが…!?」

 

のび太

「!!」

 

 

ドラミとのび太はその光景に驚愕するが、のび太は何かを悟ったような表情をし、ハッと息を呑んだ。

 

そしてのび太は鳥に向かい、困惑した様子で問いかけた……

 

 

 

 

 

 

のび太

「ピッ…ポ…?」

 

 

 

 

 

 

2人がコックピットの中で対面した鳥。

 

 

それは、かつてのび太達と共に戦ったロボット、"ピッポ"ことジュドに酷似しているものであった……

 

 

のび太

「ピッポ…!! 僕だよ! のび太だよ! どうして君がこんな所に…!? 君が……バウワンコの人達を殺したの…!?」

 

 

のび太は自分の胸を叩きながら、ジュドに近づいた。

かつての仲間が人を殺めたと信じたくはない。

そう思いながら、のび太はジュドに問いかけた。

 

 

しかし……

 

 

 

 

ジュド

「お前………誰だ?」

 

 

 

 

ジュドの放った言葉は、その場の空気を凍りつかせるに十分だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さて、これからこの物語、怒涛の展開へと発展して行く予定です…(笑)

矛盾等があれば遠慮なさらずコメントをお願いします!

それではまた!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

繋ぐ希望

お待たせしました!
最初にお詫びする事がありまして、
今回のお話は、私の杜撰な文章力のおかげもあり、かなり強引な展開に見える事と思われます。

しかし、私の"どうしても描きたいシーン"の実現の為には避けては通れぬ道と判断致しました。
暫くの間、ご辛抱を……

それではどうぞ!!


4年前に鉄人兵団を裏切り、のび太らと共に戦った仲間、『ジュド』との思いがけない再会。

 

しかしそれは、到底和やかなものと言える物では無かった……

 

 

のび太

「誰って…! のび太だよ!! 4年前、君と一緒に鉄人兵団と戦った…!! 思い出してよ……ピッポッ!!!」

 

 

のび太はジュドに再び訴えかけた。

 

 

ジュド

「何を言ってる……!! 4年前だと? 訳の分からない事を言うな!! お前なんか知らない!!」

 

のび太

「………!!」

 

 

のび太はジュドの言葉に、胸を抉られる様な凄まじい衝撃を受けた。

 

そして悟った…

 

「この『ジュド』は、もう自分が知っている『ピッポ』では無くなってしまっている」という事に……

 

 

のび太

「くそ………なんでだよ……! なんで……こんな…!」

 

 

のび太の頬を、一抹の涙が伝う。

それほどまでに、のび太が受けたショックは計り知れなかったのだ……

 

 

スネ夫

「のび太……」

 

ドラミ

「のび太さん…」

 

 

2人はのび太の肩に手を掛けた。

 

 

のび太

「………平気だよ…心配かけさせてごめん…」

 

 

のび太は涙を拭い、2人に頭を下げると、視線は再びジュドに向いた。

 

 

ジュド

「……?」

(なんだ…? こいつら…?)

 

 

そんなのび太達の様子を目にしたジュドは、思わず目を丸くした。

 

そして困惑と怒りが入り混じったような形容し難い口調でのび太達に問い質した。

 

 

ジュド

「………お前達がやったのか……?」

 

のび太達

『…?』

 

 

のび太達はジュドの言葉に首を傾げるが、構わずジュドは続けた。

 

 

ジュド

「お前達が……この子を……"リルル"を…! 殺したのか…!!」

 

 

そしてジュドは、それまで自身の翼で覆い隠していた少女、リルルをのび太達の前に曝け出した。

リルルの胸部からは夥しい量の血液が流れ出ている。

 

 

のび太

「!!! リルル…!? 一体…どうして…!?」

 

スネ夫

「一体何がどうなってるんだ…!? どうして…消えた筈のピッポやリルルが…!?」

 

 

2人は立て続けに起こる予想を遥かに超える出来事に直面し、酷く困惑し始める。

 

 

ドラミ

「恐らく……リルルを手に掛けたのはサベールね……コックピットのハッチに空いた穴とリルルの傷跡……両方とも一致するわ…。」

 

 

ドラミは現場の状況から冷静に分析をする。

 

 

のび太

「そんな……」

 

スネ夫

「よりにもよってリルルを……」

 

 

のび太達はあまりのショックに愕然とし、生気を失ったように膝から崩れ落ちた。

当然である、相手はかつて自分達と共に戦った"仲間"だったのだから。

 

 

ジュド

「やっぱり……お前達が殺したんだな!! 許せない…!! お前達だけは……お前達だけは!!!」

 

 

そしてジュドは激昂した様子で、のび太達に一歩づつ近づき始めた……

 

 

のび太

「……!! 待ってよピッポ!!」

 

 

のび太は必死にジュドを説得しようとする。

 

 

ジュド

「黙れ!! これは報いだ……!!! リルルを殺したお前達への!!」

 

のび太

「ーーー!!!」

 

 

そしてジュドは目の色を変え、激昂した様子で一番近くに居たのび太に襲いかかった。

のび太は不意なジュドの行動に思わず目を瞑ってたじろいでしまう。

 

 

しかし……

 

 

 

 

ドラミ

「…ごめんなさいね」

 

 

バン!!!

 

 

ジュド

「な……に……?」

 

 

バタッ

 

 

ドラミはジュドの動きに素早く反応し、ドリームガンの引き金を引き、ジュドの眉間に命中させた。

ドリームガンを受けたジュドは糸が切れた操り人形のようにその場で崩れ落ちた。

 

 

のび太

「ドラミちゃん! 一体何を…!?」

 

ドラミ

「大丈夫、ドリームガンよ。少しの間眠ってもらうだけだから…。」

 

のび太

「だからって…!! ピッポは僕達の仲間だったんだよ!? そんなピッポを……撃つなんて…」

 

 

のび太はドラミの半ば強引なやり方に反感を覚えた。

 

 

スネ夫

「いやのび太、こればかりはドラミちゃんが正しいよ。ピッポは明らかな錯乱状態だった。あの時ドラミちゃんがピッポを止めなかったら……僕達かピッポ、どちらかが大怪我をしていたかも知れない。」

 

のび太

「……!!」

 

 

のび太はスネ夫の言葉に核心を突かれたような顔をする。

 

 

スネ夫

「冷静になるんだのび太、ここで焦って誤った判断をする訳には行かない。今僕達がすべき事は、ピッポを落ち着かせて事情を話してもらうことだ、違うかい…?」

 

 

スネ夫はゆっくりとした口調でのび太を諭すように言った。それを聞いたのび太は漸く落ち着きを取り戻すことが出来たようだった。

 

 

のび太

「……わかった、でもその前に……リルルを…弔ってやりたいんだ。いいかな…? 2人とも」

 

ドラミ

「ええ……もちろんいいわよ。」

 

スネ夫

「問題ないよ…」

 

 

そして3人は、倒れ込んでいるリルルにゆっくりと近づいた。しかし実際に3人は落ち着いている訳ではない。

当然である。

相手は自分達の事など覚えていないと言えど、かつての仲間であるのだから……

 

 

のび太

「リルル……どうしてこんな事に……」

 

 

のび太なリルルの"冷えきった"手を握り、一抹の涙を流しながらそう嘆いた。

 

それほどまでに、のび太の精神的ショックは計り知れなかったのだ。

 

 

 

スネ夫

「………」

 

ドラミ

「………」

 

 

スネ夫とドラミは、リルルを哀れむ様子で黙祷をする。

 

 

のび太

「こんな再開って無いよ……ねえ、リルル……」

 

 

そしてのび太がおもむろに、彼女の頬に手を当てた時であった………

 

 

 

 

 

のび太

「ーーえ?」

 

 

 

 

不意にリルルの頬に触れたのび太は、ある"違和感"を感じ取った。

 

そして何かを確認するように、リルルの頬と手を交互に触り始めたのだ。

 

 

ドラミ

「?」

 

スネ夫

「どうしたんだ…? のび太?」

 

 

2人はのび太の謎の行動に疑問を呈した。

 

そしてのび太は不意に呟いた……

 

 

 

 

のび太

「頬の部分……いや、首から上がまだ暖かいんだ……手はこんなに冷えきってるのに……?」

 

 

 

 

不意に呟いたのび太の言葉、のび太にとっては素朴な疑問だった。

 

しかしその言葉の重要性にいち早く気付いた者がいた……

 

 

 

 

 

ドラミ

「何ですって…!!?」

 

 

のび太の言葉を聞いたドラミは、何かに憑かれたように取り乱して言った。

 

 

ドラミ

「スネ夫さん!! 技術手袋のツールにライトがあったわよね? 今すぐ取り出して光をリルルの眼球に当てて! 早く!!!」

 

スネ夫

「!? う、うん! わかった!!」

 

 

スネ夫はドラミの指示通りにライトを取り出し、片手でリルルの瞼をひん剥きながら眼球をライトで照らした。

そしてドラミは、リルルの眼球の反応を目を凝らしてじっと観察した。

 

 

そして暫くしてドラミの口から出た言葉は、皆にとって思いがけない言葉であった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラミ

「…まだ蘇生できるかも知れないわ…!! リルルをみらい病院に緊急搬送するわよ!!!」

 

 

 

 

絶望が…希望へと変わる。




さて……リルルファンの皆さん、今まで申し訳ありませんでした!! 実は彼女……まだ死んでおりません!(笑)

今後の展開としては、もう少しあたふたしますが、その後暫くは人間ドラマを重視して描きたいと考えております。

それではまた!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Lifesaving

お待たせしました!!
ゆっくりではありますが執筆は続けていますよ!

エル
「どんどん物語が壮大になってるけど……収拾つくのかい?」

リルル
「寧ろつけてくれないと困るわ…」

一同
「うんうん」


それではどうぞ!


ドラミ

「スネ夫さん!! タイム電話を使ってキッド達に連絡して私たちの居る場所のすぐ側にタイムホールを開かせるように言ってちょうだい! 時間及び座標はタイム電話が発信しているから伝える必要はないわ!」

 

 

ドラミはスネ夫にタイム電話を手渡す。

 

 

スネ夫

「わかった!!」

 

 

そしてタイム電話を受け取ったスネ夫は、キッド達に連絡をして取り始めた……

 

 

ドラミ

「ーーお医者さんカバン!!」

 

 

ドラミはお医者さんカバンを取り出すと、消毒液とガーゼ、そして固定用のテープを取り出し、リルルの傷口を消毒し、応急処置として傷口を塞いだ。

 

 

ドラミ

「これでよし……のび太さん! この子を運ぶの手伝って!」

 

のび太

「わかった!」

 

 

そして2人ははリルルの上半身側、そして下半身側を分担して持ち上げ、タケコプターを用いてザンダクロスのコックピットからリルルを下ろした。

 

そして丁度リルルを下ろし終えたタイミングで、ザンダクロスのすぐ側にタイムホールが空いた。

 

 

キッド

「駆けつけたぜ!!」

 

ドラメッド

「一体どうしたであるか!?」

 

 

真っ先にタイムホールから顔を出したのはキッドとドラメッドだった。

 

 

ドラミ

「話は後よ! この子をみらい病院に緊急搬送するわよ! 緊急オペが必要なの!!」

 

王ドラ

「ーーわかりました…!! ここからは私達に任せて下さい!」

 

 

続けてタイムホールから出てきた王ドラがそう告げる。

 

 

ドラミ

「お願い!」

 

のび太

「頼んだよ…!」

 

 

そして2人はリルルをドラえもんズに引き渡した。

そしてドラえもんズが全員タイムホールに戻ると、タイムホールは静かに閉じた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キッド

「最速で行く必要があるな…!! おいエド!! おめーの出番だぜ!!」

 

 

エド…キッドの相棒の白馬型ロボット、何故かエセ関西弁で話し、飛行能力を有している。

 

 

エド

「なんやて!? なんであっしやねん!?」

 

キッド

「お前が一番速いからに決まってんだろ!! 良いからこの子を乗せて全速力でぶっとばせ!!」

 

エド

「やっぱりあんさん馬遣い荒いわ〜!!」

 

 

エドはそうぼやくと、リルルとキッドを乗せて全速力でタイムホールを突っ切って行った……

 

 

王ドラ

「私達も急ぎましょう!! 人手は少しでも多い方が良いですから!」

 

 

そう言うと王ドラは、自身のタイムマシンのエンジン出力を上げようとレバーに手を掛けた。

 

その時…

 

 

マタドーラ

「待てよ王ドラ!!」

 

 

マタドーラが王ドラを呼び止める。

 

 

王ドラ

「?」

 

 

王ドラは思わず後ろを振り返る。

そしてマタドーラは口を開いた。

 

 

マタドーラ

「ガイアの野郎が現れる前に、受付のセニョリータが言ってたんだ」

 

マタドーラ

「「心臓外科の先生達は今日は他の病院に多数出払ってるてる」ってな…。仮にもしリルルとかいう子がみらい病院に搬送されたとして……それをオペ出来る医者が今みらい病院にいんのか…?」

 

一同

「ーー!!!」

 

 

マタドーラは万が一を想定し、リルルの手術を出来る医者が居ない事を危惧した。そして一同に衝撃が走る。

 

しかし……

 

 

 

王ドラ

「ーーひとまずそれは後で考えましょう。ですがもし仮に医者が居なかったとしたら……"誰かが"代わりにオペをやるしかありません……」

 

マタドーラ

「お前……まさか……?」

 

 

王ドラの意味深な言葉に、マタドーラは動揺を示した。

 

 

王ドラ

「……飽くまで万が一の話ですよ。…さあ、私達もキッドに続きましょう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてドラえもんズはみらい病院に到着すると、リルルを抱えてフロントに駆け込んだ。

 

 

 

王ドラ

「ストレッチャー用意して下さい!! マタドーラ! ドラリーニョ! ジャガーさん! ストレッチャーを押して患者を救命救急室(ER)に運んで下さい! 私は患者の胸骨圧迫を続けます!!」

 

ドラリーニョ

「わかったよ〜!!」

 

マタドーラ

「おうよ!」

 

ジャガー

「久しぶりの出番じゃのう!」

 

 

 

王ドラは、急いだ様子で周りの者に指示を出す。

 

 

 

ナース

「な、何なんですか!? 貴方達は!?」

 

 

突如としてみらい病院に現れたドラえもんズ達に、みらい病院のナースは驚いた様子で駆け寄り、一同に尋ねた。

 

 

王ドラ

「急患です。勝手ながら、この病院の設備をお借りします。」

 

 

そう言うと王ドラは、四次元袖から医師資格証を取り出し、ナースに提示した。

 

ナース

「わ、分かりました…!! ERに連絡を入れておきます!」

 

王ドラ

「残る皆は敵の急襲に備えておいて下さい! 敵を撃退したとは言えど、敵の襲撃があれで終わるとは限りません!」

 

キッド

「わかった!!」

 

エル

「任せてくれ!!」

 

 

王ドラはそう大声で指示すると、ストレッチャーに寝かされたリルルの上に跨り、胸骨圧迫を開始した。

 

そして2人を乗せたストレッチャーは、ERへと搬送された。ERには、既に数名の医療スタッフがスタンバイしており、ストレッチャーがERに到着するや否や、診察台にリルルを移した。

 

ドラリーニョとマタドーラとジャガーの3人はここまで来ると、後は医師免許を持っている王ドラに事を任せ、ERを後にした…

 

 

 

王ドラ

「バイタルとって下さい! エコーもお願いします!!」

 

 

 

王ドラは医療スタッフに細く指示を出し、救命処置に当たった……

 

 

 

 

 

 

王ドラ

「…やはり緊急オペ適用ですね……。心臓外科に連絡をお願いします!! オペ室もすぐ用意して下さい!!」

 

 

一通りの処置が終わった所で、王ドラはそう一同に呼びかけた。

 

 

 

しかし……

 

 

 

 

 

 

 

スタッフ

「先生……手術は……不可能です。」

 

 

 

1人の男性医療スタッフが、途切れ途切れに口を開いた。

 

 

 

 

王ドラ

「何故ですか?」

 

 

王ドラが尋ねる。

スタッフは声を震わせて答えた。

 

 

スタッフ

「心臓外科の先生は……ほとんどが手術中か、系列病院の当直に出払ってるんです…!! それだけじゃありません! 先ほどの不審人物の侵入によって……手が空いていたはずの先生までもが殺されてしまったんです……! ですから…今手が空いているのは……研修医の若い先生ただ1人だけなんです…」

 

 

不審人物とは、当然ガイアの事である。

ガイアの"肩慣らし"によって、王ドラ達に新たな障壁が生まれてしまったのだ。

 

そう言い終えるとそのスタッフは、消沈したように肩を落とした。それ以外の医療スタッフも同じ様子であった。

 

だが、王ドラの眼の色は少しも変わりはしなかった。

 

 

 

王ドラ

「構いません。その研修医の先生を呼んで下さい。助手はその先生だけで事足ります。」

 

 

王ドラはきっぱりと告げた。

 

 

 

 

 

スタッフ

「助手って………!? じゃあ一体誰がこの患者を執刀するんですか!? 先ほど申し上げた通り心臓外科の先生はもうーー」

 

 

王ドラ

「私がメスを握ります。」

 

 

スタッフ

「ーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

王ドラ

「患者をオペ室へ……大至急です!」

 

 

そう大声で叫ぶと、王ドラは白衣を羽織り、オペ室へと走り出した……




こうしてみると王ドラの万能感って凄いですよね…(笑)
文武両道でとても憧れます(笑)
それではまた!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

目覚め

エル
「最近作者、自動車学校に通いだしたらしいね」

ジャイアン
「ああ、鬼畜インストラクター共に毎日しごかれてるって噂らしいぜ」

静香
「けどそのせいで更新が遅れたって言われても……言い訳にならないわよね」

一同
『うんうん』


えー、皆さん。世の中には理不尽な事が沢山あります。
しかしそれを乗り切る事で、新しい道が拓ける筈だと、
言うことが矛盾だらけのインストラクター達を相手にしながら、私は思います。
皆さんもそれらを乗り切って頑張って行きましょう!!
それではどうぞ!!



(ここは…どこ……?)

 

 

少女が目を覚ますと、そこは辺り一面真っ白に囲まれた病室であった。

 

 

(私は……一体……え…?)

 

 

意識が朦朧としている中、少女は自身の口に人工呼吸器が付けられている事に気がついた。腕にも点滴が繋がれている。

 

 

(まさか……?)

 

 

おもむろに胸に手を当て、そこに目をやる。

 

 

(……塞がってる……一体誰が…?)

 

 

剣士に付けられた筈の刺傷が塞がっている事に少女は気がついた。不思議に思いながら少女は辺りを見渡した。

少女のベッドは窓際に置かれたものであった。

少し開いた窓から心地よい風が吹き込み、軽く閉められたレースカーテンが風に靡いている。

窓から差し込む陽光と相まって、少女は言い知れぬ心地良さを覚えた。

 

 

すると突然、病室のスライド式の戸が開いた。

入って来たのは、純白のナース服に身を包んだこの病院のナースのようだった。替えの点滴等を乗せたワゴンを押しながら、ナースは少女に近づいた。

 

 

ナース

「……!!」

 

 

ナースは少女が目を覚ましている事に気付くと、駆け足で病室を後にして行った。

 

そして数分後、ナースは白衣を着た"猫型ロボット"を連れて病室へ戻って来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王ドラ

「私の手を握ってみて下さい」

 

 

王ドラは少女……リルルに手を差し出した。

 

 

リルル

「…………」

 

 

リルルはゆっくりと王ドラの手を握った。

 

 

王ドラ

「よし、意識は大丈夫ですね。チューブ外しますね。」

 

 

そして王ドラとナースはリルルに付けられていた人工呼吸器を外し、代わりに酸素マスクをリルルに取り付け、ゆっくりとベッドを起こした。

 

 

 

王ドラ

「話す事は出来ますか?」

 

 

王ドラはリルルに問うた。

そしてリルルはゆっくりとマスク越しに口を開いた。

 

 

 

 

リルル

「どうして………私を助けたの?」

 

 

リルルは王ドラに冷たい眼を向けた。

その言葉を聞いた王ドラは、少しの間沈黙した後、口を開いた。

 

 

王ドラ

「貴女は私の仲間の友人だとお聞きしました。何よりも、私は医者です。医者は患者を治す、その事が全てです。患者が誰で、"どのような行い"をしたかは問題では無いんです。」

 

 

 

どのような行い。

リルルの胸にはその言葉が引っかかった。

自身が行なった筈の虐殺が許されるのか。

リルルはそれがわからなかった。

 

 

リルル

「……普通私は捕虜として扱われる筈でしょう? なぜ拘束具を着けないの? 逃げてくれと言っているようなものでしょう。」

 

 

リルルは冷たく問うた。

 

 

王ドラ

「拘束具を着けるのは医者として同意できません。それに、貴女を捕虜として扱おうとしている人は誰一人居ませんよ。」

 

 

王ドラは物腰柔らかく答えた。

リルルはそんな王ドラの穏やかな言動に不快感を覚えた。

 

 

リルル

「そもそも…私の友達はジュドだけよ…。ーージュド?」

 

 

 

何気なく言ったジュドという名前。

リルルなそれがどれほど重要なものか、その時気が付いた。

 

 

リルル

「ジュド…!! ジュドはどこなの…!? 教えなさい…!!」

 

 

リルルは目の色を変えて、王ドラに問い詰めた。

 

 

王ドラ

「彼は別室で安静にしています。同じく彼にも、拘束具等は着けていません。」

 

リルル

「敵である貴方の言葉を……信じろと言うの?」

 

 

リルルは鋭い視線を王ドラに向ける。

 

 

王ドラ

「嘘をつく理由がありません。そんな嘘をつく暇があるなら、とっくに貴女を拘束している筈だ……違いますか?」

 

 

王ドラは鋭く切り返した。

リルルはむっとしたような表情で王ドラを見つめたが、少しして彼女の目は再び冷めたものに変わった。

不本意ながら、王ドラの言葉は理にかなっていると言うことを察したようだった。

 

 

 

リルル

「やはり人間は愚かな生き物ね……」

 

 

 

リルルはそうぼそりと呟き、窓の景色に視線を移した。

王ドラはそんな彼女の様子を真剣な眼差しで見た後、経過を電子カルテに記録し始めた。

 

 

王ドラ

「貴女に会いたがっている人がいます。この後会って頂けますか?」

 

 

電子カルテに経過を打ち込みながら、王ドラは尋ねた。

リルルはこちらを振り返った。

 

 

リルル

「…………いいわ」

 

 

リルルは素っ気なく答え、再び視線を窓に移した。

 

 

王ドラ

「では私はこれで失礼します。お大事に。」

 

 

王ドラはリルルに頭を下げた。

リルルは黙ったままだった。

 

 

そして王ドラとナースが病室を後にした後、再び病室のスライド式のドアが開き、リルルの耳に足音が聞こえてきた。

普通の足音では無く、松葉杖を使っているような足音だった。

 

 

そしてリルルの前に姿を現したのは、脚に怪我を負い、松葉杖をついている少女であった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静香

「リルル……………久しぶりね……」

 

 

静香はどこか乾いたような笑みをリルルに向けた。

 

 

リルル

「久しぶり? 実際にあなたと顔を合わせるのはこれが初めてでしょう?」

 

 

リルルは冷たい目で静香を見た。

その言葉を聞いた静香の表情には一抹の哀しみが見て取れたが、静香は続けた。

 

 

静香

「初めてなんかじゃないわ……私達は…一緒に戦った仲間よ、忘れてしまったの……?」

 

 

静香は自らの胸に手を当てて、リルルに問いかけた。

 

 

リルル

「何を言っているの? いつ私が貴女と共に戦ったというの? 私の初陣はついこの前……そう、貴女の脚をそんな風にさせた時よ。仲間どころか敵として戦っていたのよ?」

 

 

リルルは冷たく返す。

 

 

静香

「やっぱり………何も覚えていないのね……」

 

 

静香は俯いて声を震わせた。

リルルはそんな静香の様子を不思議そうに見た。

 

 

リルル

「……あなたたちは一体何が目的なの? 私はあなた達の仲間を大勢殺した張本人なのよ? そんは私を捕虜にするどころか、逆に傷の手当てをするなんて……到底理解出来ないわ。」

 

 

リルルは俯いている静香に問いかけた。

 

そんなリルルの言葉に、静香はハッと顔を上げた。

 

 

静香

「そんなの……決まってるじゃない…! あなたは私の……友達だから…!!」

 

リルル

「ーー!!」

 

 

その時リルルの中に、身に覚えのない筈の記憶が流れ込んで来た……

 

 

 

 

 

 

 

 

(大丈夫……必ず助けるから……)

 

 

 

 

(静香………ありがとう……)

 

 

 

 

 

 

 

リルル

「ーーッ!!」

 

 

その直後、リルルは激しい耳鳴りを感じ、苦しそうに頭を抑えた。

 

 

静香

「リルル…!?」

 

 

静香はそんなリルルの様子に驚き、心配した様子でリルルに近づこうとするが……

 

 

リルル

「来ないで!!」

 

 

リルルはそれを剣幕で制止した。

 

 

リルル

「これは……何…!? この記憶は……一体……!?」」

 

 

リルルは頭を抱え、苦しそうに狼狽する。

 

 

静香

「リルル…?」

 

 

静香はそんなリルルの様子をひたすら見守るしかなかった。

 

 

 

すると突然、病室の戸が開き、ナースが慌てた形相で入り込んで来た。

リルルのバイタルと精神状態が急激に変化した事が、ナースセンターに伝わったようであった。

 

 

ナース

「………これ以上の面会はご遠慮下さい。」

 

 

ナースはそう静香に告げた。

それを聞いた静香は、「はい」と一言だけ添えて、リルルの病室を後にした。

 

 

 

静香

「………必ずあなたの記憶を取り戻してみせるわ……」

 

 

 

 

そして静香は病室の戸を名残惜しげに見た後、松葉杖をついてその場を去っていった……。

 

 

 

 

 

 

 




ジャガー
「なんか医療ドラマみたいな回じゃったのう」

エド
「せやな、ドラえもんはそがいな作品とちゃうと思うで」

スネ夫
「まあまあ、少しは目を瞑ってもいいじゃないか」


そもそもこんな重っ苦しいシリアスな話を書いてる時点で、既にドラえもんから掛け離れている気がしないでもない、今日のこの頃です…(笑)
それでは、また次の回で!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4部隊

失踪はしておりません!!
皆さまご安心を!!

今回はいつもより少しだけボリュームを多くして書きました!!
それではどうぞ!!


リルルの緊急オペ開始の直前。

鉄人兵団との攻防戦を終えた集落では、言葉では言い表せない程重たく、濁った空気が渦巻いていた……

 

 

 

 

 

 

「あの………私の夫はどちらに…?」

 

 

一人の女性が、ドラえもんに駆け寄って尋ねた。

しかしドラえもんは言葉に詰まり、その言葉に応えることが出来なかった。

 

 

「そんな………!!」

 

 

その女性は顔を手で覆い、大粒の涙を流しながらその場にへたり込んだ。彼女だけではない。

戦死した者の遺族達は、皆気力を失ったように地に顔を伏せ、大粒の涙を流していた……

 

 

ドラえもん達は、自分達の無力さを悔やみ、拳を深く握り締めた………

 

 

 

 

破壊された門を再び復元光線を使って元に戻し、戦死者や負傷者達を安全な場所を移して一段落着くと、一同は一旦チッポの家に戻った。

 

一同が居る部屋の隣では、負傷した静香、そしてサベールが横になっており、二人とも眠りに入っている……。

 

 

 

スネ夫

「何がなんだか分からないよ………一体どうしてこんな事に……」

 

 

スネ夫は悲惨な現状に思わず狼狽した。

 

 

のび太

「分からないよ………何でこんなに人が沢山死なないといけなかったのか……僕達には分からない。リルルの件だってそう……どうしてリルルが居るのか……どうしてリルルが敵なのか……僕には分からない。」

 

 

のび太は力無い声で返した。

 

 

 

 

 

 

ジャイアン

「……畜生ッ!! 守りたかった!! 守らなきゃいけなかったッ!! なのに俺は…!!!」

 

 

のび太の言葉を聞くまでずっと押し黙って消沈していたジャイアンは、改めてその現実を思い知り、今まで溜まりに溜まっていた心中の怒りを曝け出した。

 

 

ドラミ

「武さん……これは貴方の責任じゃーー」

 

ジャイアン

「言葉だけの慰めなんて要らねえんだよっ!!!」

 

 

ジャイアンを励まそうとするドラミだったが、ジャイアンはそれを凄まじい剣幕で制したかと思えば、我に帰ったような虚しげな顔をして壁にすがった。

 

ドラミは、ジャイアンを哀れむような目を彼に向けた。

 

 

ジャイアン

「やっと分かったよ………俺は……誰も守れやしねえってな……」

 

 

ジャイアンはそう言うと、壁を背に膝を抱えて座り込んだ。

 

 

のび太

「ジャイアン……」

 

 

のび太は咄嗟に彼の名を呼んだが、彼に何と声を掛ければ良いのか、のび太には分からなかった……。

 

 

 

ジャイアン

「……すまねえ、少し外に出てくる…。それとドラミちゃん、さっきは怒ったりしてごめんな……」

 

ドラミ

「……ええ、大丈夫よ…」

 

 

そしてジャイアンは力無い背中を一同に向け、チッポの家を後にした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラえもん

「…………いつまでも感傷的になってる訳には行かない。次の手を打たなくちゃ。情報の整理は全員が集まった時にしよう。」

 

 

ジャイアンが家を出てから数分ほど沈黙が続いていたが、それを破るようにドラえもんは口を開いた。

 

 

のび太

「次の…手?」

 

ドラえもん

「うん……敵にこの集落の位置が完全にバレた訳だ。いつここに攻撃が再開されるかも分からない。だから……この集落を放棄して、民間人達を安全な場所へ避難させる必要があるんだ。」

 

 

ドラえもんはそう提案した。

 

 

ドラミ

「でも……あれだけの人数……どうやって避難させるって言うの…? それに避難させる場所って言ったって……当てはあるの…?」

 

 

ドラミはドラえもんに問うた。

 

 

ドラえもん

「大丈夫。僕に考えがある。」

 

ドラミ

「ーー!!」

 

 

その刹那、ドラミが何かを悟ったような表情をしたようにのび太とスネ夫は見えたが、二人は気のせいだと考え特に気には留めなかった。

 

 

ドラミ

「分かったわ。その件はお兄ちゃんに任せるわ。」

 

 

ドラミは神妙な顔でドラえもんに言った。

 

 

ドラえもん

「それと一つだけ頼みがある。……僕が移動手段の手配をする間、皆は残る全ての民間人を一箇所に集めておいて欲しい。頼んだよ。」

 

 

ドラえもんはそう言い残すと、その場を後にして行った……

 

そして残ったのび太、ドラミ、スネ夫、チッポの4人は、ドラえもんの指示通り、民間人に声かけを始め、集落の中心に集まるように促した。

悲しみにうなだれ、涙を流す者、意気消沈と生気を失いかけている者など、様々な様子の民間人の姿が、一同の胸に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペコ

「良くぞ……戻ってきてくれたな……」

 

スピアナ

「ええ………只今戻りました…」

 

 

 

場所はチッポの家の寝室。先ほどまでのび太達が話していた部屋の隣に位置する部屋だ。

そこでペコとスピアナは、束の間の再開を果たしていた……

 

 

スピアナ

「傷の方は……痛みますか?」

 

ペコ

「………問題ない。王たる者、これ以上休んでなどいられぬからな」

 

 

そう言うとペコは、横たわっていたベッドから抜け、地に足を着き、壁に掛けてあった彼の剣を手に取った。

 

 

スピアナ

「ご無理を……なさらぬように……」

 

 

スピアナはそんなペコの様子を心配そうな目で見る。

 

 

ペコ

「ああ……お前こそ…無理をせぬように……。」

 

 

スピアナ

「……はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スネ夫

「よし、恐らくこれで全員だね。」

 

ドラミ

「ええ……後はお兄ちゃんに任せましょう。」

 

 

民間人を集落の中心に集め終えた一同は、フッと息を吐いた。

 

 

すると突然、一同の後ろから声をかける者がいた。

 

 

ペコ

「皆さん………これは一体…?」

 

 

一同が振り返ると、ベッドから抜け出したペコが立っていた。見ると、まだ身体に包帯を巻いたままの状態だ。

 

 

のび太

「ペコ!? もう歩いても大丈夫なの!?」

 

 

のび太は慌てた様子でペコに問うた。

 

 

ペコ

「ーー大丈夫です……これ以上休んでなどいられません。」

 

 

のび太

「ーー!!」

 

 

ペコはその時、深く拳を握り締めていた。

多くの仲間が戦死して、誰よりも悔しく、哀しいのは、紛れもなく、ペコだったのだ。

 

 

ドラミ

「………分かったわ。無茶だけはしないで…」

 

ペコ

「ええ……大丈夫です。」

 

 

ペコはそう返すと、再びチッポの家へ戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペコ

「…………また貴方と会う事になるとは……夢にも思わなかった……。」

 

サベール

「……………」

 

 

ペコはベッドに横たわって眠りに入っているサベールに向かって呟いた。

サベールはドラミの撃ち込んだドリームガンにより、24時間は眠りに入っている筈だと、ペコはドラミから聞かされていた。

 

 

ペコ

「………あれほどまでに仲間入りを拒んでいた貴方が……よくぞ戻って来てくれました……。」

 

 

ペコはサベールの騎士団時代を思い返しながらしみじみと呟く。

かつて迅速のサベールと呼ばれた猛将は、一度その輝きを失いながらも、再び仲間の為に返り咲いてくれた。

その時ペコはそう考えながら、その場を後にした。

 

 

 

しかし、その考えの甘さを彼は後々思い知る事となる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラえもん

「よし皆、これで、全員だね?」

 

 

ドラえもんは辺りに集められた民間人を見渡しながら言った。

 

 

のび太

「うん………ドラえもん。一体何をするつもりなの…?」

 

 

のび太はドラえもんの言葉に返事をした後、ドラえもんに問うた。

 

 

 

 

ドラえもん

「……………さっき救援を要請した。あとは彼らに任せよう。」

 

 

ドラえもんは、少し言葉を選ぶような素振りを見せた後、簡潔にそう答えた。

 

 

のび太

「救援?……一体誰に…?」

 

 

のび太は続けてドラえもんに問いただす。

ドラえもんはまたもや言葉を選ぶような素振りを見せた。

 

 

ドラミ

「…………」

 

 

その時ドラミはドラえもんを、何かを悟ったような表情で見つめた。

 

そして漸く、ドラえもんは口を開いた。

 

 

 

 

 

 

ドラえもん

「……タイムパトロールだよ。」

 

 

 

 

 

 

そしてドラえもんがその言葉を言い終えた直後であった。

 

 

集落の中心から、巨大なタイムホールが複数出現し、何隻ものタイムパトロールの輸送艇が姿を現した。

 

 

 

スネ夫

「タイム……パトロール……!?」

 

 

スネ夫は余りの唐突さに驚きの声を上げた。

驚いているのはスネ夫ばかりではなかった。

のび太もまた、その事態に驚きを隠せなかった。

 

 

のび太

「ちょっと待ってよ! タイムパトロールは普段時空犯罪を取り締まる組織なんでしょ? それがどうしてこんな所に…?」

 

 

のび太はドラえもんに問いただした。

 

 

ドラえもん

「ーー今回の一件に時空犯罪が関与している可能性をタイムパトロールに訴えかけたんだ…。状況証拠から捜査したところ……タイムパトロールは今回の一件が時空犯罪が関与している可能性が高いと判断したんだ。」

 

 

ドラえもんは硬い表情のままそう応えた。

 

 

スネ夫

「だから僕たちを被害者として保護することになった……って事なのかい?」

 

ドラえもん

「……そういうことになるね」

 

 

そう言うとドラえもんは後ろに着陸したタイムパトロールの輸送艇に目をやった。

 

 

ドラえもん

「………詳しい話は後にするね。」

 

 

ドラえもんがそう言い終えると同時に、一隻のタイムパトロールの輸送艇のハッチが開き、中からタイムパトロール隊員が姿を現した。

 

中から出てきた何人ものタイムパトロール隊員を率いていたのは、意外にも若い女性だった。

 

長い赤髪を後ろで束ね、目を覆い隠すようにアイウェアをかけていたが、その端正な顔立ちはアイウェア越しに見てとれた。

 

 

のび太

「あの人……どこかで……」

 

 

のび太はその女性に見覚えがある様子であった。

 

するとその女性はドラえもん達に近づくと、一同に向かって敬礼をした。

 

 

 

 

 

 

 

リーム・ストリーム

「救援要請を請け、ここへ参りました。タイムパトロール"第4部隊隊長"、リーム・ストリームです。」

 

 

そう言うとリームは掛けていたアイウェアを外し、凛々しいような笑みを一同に向けた。

 

 

 

 

リーム

「お久しぶりね。4年ぶりかしら?」

 

 

 

 

その時、のび太は彼女の事を思い出した。

 

 

 

のび太

「あ…!! …あの時の…!!」

 

 

 

 

4年前、のび太達は7万年前の日本に行った事がある。それは"史上最大の家出"だった。

 

 

ヒカリ族の少年との出会い。

 

のび太が作ったペット、ペガ、グリ、そしてドラコ。

 

時空犯罪者、ギガゾンビとの闘い。

 

そして、ペガ達との別れ。

 

 

その時ペガ達を引き取ったタイムパトロールの女性。

それが今、目の前にいる女性だとのび太はようやく思い出したのだ。

4年ぶりという言葉、端正な顔立ち、そして優しげな瞳。

間違いなく"彼女"だと、のび太は確信を持った。

 

のび太だけでは無い。スネ夫、ドラミ、そしてドラえもんも共にリームの事を覚えていた。

 

 

のび太

「お久しぶりです…! あの……ペガ達は…元気ですか?」

 

 

4年間どうしても聞きたかった事を、のび太は真っ先に問いかけた。

 

するとリームはサムズアップをしながら満面の笑みで応えた。

 

 

リーム

「ええ、バッチリ元気にやってるわよ。あの3匹は今じゃ空想サファリパークの人気者なのよ?」

 

 

それを聞いた一同は心底嬉しそうな顔をした。

 

 

スネ夫

「良かったな、のび太。」

 

 

スネ夫がのび太の肩をポンと叩く。

 

 

のび太

「うん…!! そっか……元気にやってるみたいで本当に良かった……」

 

 

スネ夫に対してのび太は笑って返すと、ペガ達の事を思い耽りながらのび太は目を輝かせた。

 

 

 

 

 

 

ドラえもん

「………リーム、そろそろ始めてもいいかな?」

 

 

突然、ドラえもんがリームに対して呼びかけた。

 

 

リーム

「はい、了解しました。」

 

 

そう応えるとリームは再びアイウェアをかけ直し、タイムパトロール第4部隊を召集して指示を出し始めた。

 

 

リーム

「この集落の方達を全員輸送艇に乗せて避難させる! 怪我人を最優先かつ迅速に避難を完了させること!! 異論は無いな!?」

 

 

隊員

『了解!!!』

 

 

リーム

「では避難にかかれ!!!」

 

 

隊員

『了解!!!』

 

 

 

リームは強烈なリーダーシップを発揮して隊員達に指示を出すと、隊員達は迅速な動きで集落の市民達の避難にかかった。

 

 

隊員

「皆さん落ち着いて順番に乗り込んで下さい!!! 皆さんの人数分は必ず乗れる様になっておりますので慌てなくても問題はありません!!!」

 

 

隊員が輸送艇のハッチに市民を誘導する。

それに従って市民は落ち着いた様子で避難をしている。

 

 

 

スネ夫

「すごい手際だ……あともう少しで完全に避難が完了しそうじゃないか…」

 

ドラえもん

「当然だよ。なんせタイムパトロール第4部隊だからね。」

 

のび太

「あ、気になってたんだけど、そのタイムパトロール○○部隊ってなんなの? 普通のタイムパトロールとは何が違うの?」

 

 

のび太は先程から抱いていた疑問をぶつけた。

 

 

ドラえもん

「タイムパトロールはそれぞれの担当する分野ごとに部隊を振り分けているんだ。例えばここにいる第4部隊は人質救出、保護のスペシャリスト達。手際が良いのはそれが理由さ。」

 

 

スネ夫

「へえ〜、なるほどね。 それにしても"部隊"って…なんか軍隊みたいだね。」

 

 

 

ドラえもん

「事実そうだよ。」

 

 

スネ夫

「え?」

 

 

スネ夫がタイムパトロールの事を「軍隊」と比喩すると、思いがけないことに、ドラえもんはそれを肯定した。

 

 

ドラえもん

「そもそも、タイムパトロールは現代の日本の警察みたいな組織では無いんだ。その組織の作りは軍隊そのもの。時には犯罪者に対しては武力をもって制圧する。それがタイムパトロールのもう一つの顔なんだよ。」

 

 

のび太

「ちょっと待ってよ! 社会の授業で習ったんだけど、日本は憲法で軍隊は持っちゃいけないんでしょ? だったらおかしいじゃないか。」

 

 

のび太は鋭い疑問をドラえもんに投げかけるが……

 

 

ドラえもん

「その憲法は当の昔に破棄されたんだよ。」

 

 

スネ夫

「破棄? どういうことだい?」

 

 

スネ夫がそうドラえもんに問いかけると、ドラえもんはその問いかけに応え始めた……

 

 

そしてのび太達は知る。

 

 

22世紀で一体何が起こり、今のようなタイムパトロールが組織されたのかを……

 

 

 

 




リーム
「ここでまさかの登場よ!! みんなよろしくね!!」

エル
「もとは『T・Pぼん』のキャラだったんだけど、今回は日本誕生に登場したリームをイメージしたキャラ設定になってるらしいね」

もともとタイムパトロール側の人物も書きたいという衝動がありまして、登場させるに至った次第です。
性格の違い等の違和感があるかも知れませんが、そこはどうかご愛嬌を。

それではまた次回でお会いしましょう!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

惨劇

お久しぶりです!

それではどうぞ!!


タイムパトロールの謎。

 

それが今、ドラえもんの口から語られようとしていた……

 

 

ドラミ

「…お兄ちゃん、私はタイムパトロールを手伝って来るわ。」

 

 

ドラえもん

「わかったよ。」

 

 

タイムパトロールの事情を既に知っているような素振りを見せたドラミは、一言ドラえもんにそう告げると、3人の下を去っていった。

 

そしてドラえもんの口が開く。

 

 

ドラえもん

「…タイムパトロールが組織されたのは2100年のことだった。その頃のタイムパトロールは武力に頼るような取り締まりはしないという方針があった。」

 

 

ドラえもんはスネ夫とのび太に向かって話を始めた。

 

 

ドラえもん

「そしてタイムパトロールが組織されると同時に、時空法も制定された。だけど当時としてはまだタイムマシンは世の中にとってはあまり一般的では無かったからね。時空法を犯すような者は全く居なかったんだ。」

 

 

ドラえもんは話を続けた。

 

 

ドラえもん

「だけどその10年後、とんでもない事件が起こった。」

 

 

スネ夫

「? 事件?」

 

 

ドラえもんの言葉にスネ夫は首をかしげる。

 

 

 

 

 

ドラえもん

「テロだよ。謎のテロ組織による東京への超大規模テロ。信じられないほどの死者数をもたらした日本史上最悪のテロ事件だよ。」

 

 

 

 

スネ夫

「な……!?」

 

 

のび太

「うそ…でしょ…?」

 

 

のび太達はあまりの事の衝撃に言葉を失った。

まさか未来でそのような事が起こっていたなど、とても想像がつかなかったのだ。

 

 

ドラえもん

「当然警察と自衛隊が駆り出され、テロリスト達の鎮圧に国は全力で乗り出した。だけど……警察達はまったくテロリストの勢いを止める事が出来ず、戦いは1年にも及んだ。」

 

 

スネ夫

「どうしてだい? いくらテロリストといっても、数は日本の警察や自衛隊の方が上なんじゃないのかい?」

 

 

スネ夫が疑問を投げかける。間髪入れずにドラえもんは応えた。

 

 

ドラえもん

「こちらの動きが全てテロリストに読まれていたんだ。テロリストの潜伏場所を割り出して突入をかけても返り討ち。ここまでは良くある話かも知れない。だけどそれが5回以上も続いたんだ。それだけじゃない。国が全力を注いで開発した暴徒鎮圧用の新兵器も初回であっさりと完封された。"まるでその新兵器の事を知っている"みたいに。」

 

 

のび太

「……!! まさか!」

 

 

ドラえもん

「そう、テロリストはタイムマシンを使って未来の敵の情報を探ってたんだ。未来と過去を自由に行き来して仲間に敵の情報を伝えた。だから警察達は大苦戦を強いられたんだ。」

 

 

スネ夫

「なるほど……タイムマシンもまだそこまで普及していなかった時代。まさかテロリストの手にタイムマシンが渡っているとは考えもしなかったわけだね…」

 

 

ドラえもん

「その通り。時空犯罪の前例が無かったタイムパトロールは平和ボケしていた訳だ。」

 

 

ドラえもんは当時のタイムパトロールの事を皮肉ると、話を続けた。

 

 

ドラえもん

「そして遂に国は本格的にテロリスト鎮圧に乗り出した。米国軍に協力を要請したんだ。」

 

 

のび太

「米国……か」

 

 

 

ドラえもん

「テロリスト鎮圧はタイムパトロールとの共同作戦で行われた。タイムパトロールが、不自然に過去と未来と行き来する人物の現在位置と座標を割り出し、そこへ米軍が奇襲をかける。それが米軍とタイムパトロールが考えた作戦だよ。」

 

 

ドラえもん

「結果、初の共同作戦は成功。それからはトントン拍子にテロリストの鎮圧は進み、全てのテロリストの鎮圧は完了した。1年に渡る日本とテロリストの死闘は幕を閉じたんだ。」

 

 

スネ夫

「そうだったのか……」

 

 

スネ夫は腕を組んでそう呟いた。

 

 

ドラえもん

「この事件を機に、タイムパトロール…いや、日本に軍隊を配備する事が正式に可決された。理由は簡単、時空犯罪がもたらす甚大な被害を国は恐れたからだ。当然、過去の日本国憲法第9条は完全に無いものとされた。」

 

 

のび太

「そうだったのか……」

 

 

スネ夫

「タイムマシンを完全に廃棄するのではなく、武力を時空犯罪に対する抑止力にするなんて……なんて強引な対策なんだ…」

 

 

スネ夫は国が取り決めた時空犯罪に対する措置に反感を覚えた。

 

 

ドラえもん

「一部の人間から強大な圧力がかかっていたのも理由の一つだよ。タイムマシンがもたらす利益は凄まじいものがあるからね……それが世の中の闇だよ…。」

 

 

スネ夫&のび太

「…………」

 

 

そのドラえもんの言葉を聞いた2人は、話の重さにしばらく黙り込んでしまった。

 

 

 

ドラえもん

「……そして多数の米軍将校がタイムパトロール日本本部に出向し、実戦のノウハウをタイムパトロール隊員全員に叩き込み、暴徒鎮圧、情報戦、人質救出など、彼らをそれぞれの分野のエキスパートに育て上げたんだ。その戦闘のエキスパート達が集まって組織されたのが『タイムパトロール実戦投入部隊』。リーム率いるタイムパトロール第4部隊がその一つだよ。」

 

 

のび太

「なるほどね…。」

 

 

のび太はドラえもんの話を頷きながら聞く。

ドラえもんは続けた。

 

 

ドラえもん

「そして今、タイムパトロール日本本部を一任されているのが"ロイス=ハンニバル大佐"。今やタイムパトロール実戦投入部隊は全世界に存在している。そのタイムパトロールの中で"最強の男"だよ。」

 

 

スネ夫

「最…強……?」

 

 

スネ夫は最強という言葉にあまり実感が湧いていない様子であった。

 

 

ドラえもん

「あのテロ事件を終わらせた男とも呼ばれている。共同作戦と銘打ったけど、それは全てハンニバルの発案だ。それだけじゃない。作戦の指揮は全てハンニバルが執り、最後のテロリストのアジトへの襲撃は彼の命令により"彼一人"で行われた。150人が潜伏するアジトに突入し"無傷"でテロリストを壊滅させて帰ってきた。しかも中で囚われていた人質を連れてね……。」

 

 

のび太

「な……!?」

 

スネ夫

「無傷で生還だって…? 流石に誇張してないかい…?」

 

 

2人はドラえもんの話に驚きを隠しせない様子だ。

 

 

ドラえもん

「誇張でも何でもないよ。本当に彼は無傷で戻ってきたんだ。正直言って人間の領域を遥かに超えてる。」

 

 

ドラえもんの言葉を聞いた2人は、思わずその話に圧倒され、しばらくの間に押し黙ってしまった。

 

ドラえもん「ここまででタイムパトロールの成り立ちとその組織の規模や実力について長々と話したね?そしてここからが僕が言いたい事───」

 

ドラえもん「国家権力を有する大部隊が本気でこの事件解決に乗り出しているんだよ。正直言ってこれはもう僕たちみたいな子ども達が関わって良い案件じゃない。他のみんなにも聞くつもりだけどのび太くん、スネ夫、君達はそれでもペコを助けたいんだね?」

 

 

 

【編集中】

 

 

すると、リームが一同の下へ戻って来た。

 

 

リーム

「住民とあなた達のお友達は全て輸送艇に乗り込んだわ。あとはあなた達だけよ。」

 

 

のび太とスネ夫はハッとした様子で周囲を見回した。

確かに自分たち以外に集落に人影は一切なかった。

2人はドラえもんの話に夢中でいつのまにか住民の移動が完了していたことに気づかなかったのだ。

 

 

ドラえもん

「わかった。じゃあ2人とも行こうか。」

 

 

ドラえもんはそう言いながらスネ夫とのび太を見た。

 

 

のび太

「うん……」

 

スネ夫

「わかったよ。」

 

 

2人はそう返事をすると、集落に名残惜しさを感じながら輸送艇へ乗り込んだ。

すると輸送艇のゲートは完全に閉じ、離陸して、開いたタイムホールをくぐった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてタイムホールが閉じた後、取り残された集落に突如として人影が現れた。

 

 

 

???

「………一足遅かったみたいだねぇ。行き先は……"22世紀…東京"か」

 

 

その者はもぬけの殻の集落を見回して呟くと、腕に付けていたデバイスでのび太らの行き先を辿った。

どうやらそのデバイスは時間移動の足跡を辿ることが出来る様である。

 

 

 

 

???

「逃げられないよ? 俺たちからはな……」

 

 

男は不敵に微笑むと、その場から姿を消した。

 

 

 

 

そして物語の舞台は 22世紀 東京へ。

 

 

 




さて、いよいよ舞台は22世紀ということで、ワタクシもワクワクしております!
何気に映画ドラえもんで22世紀での話ってあんまり無かったと思うので、精一杯頑張りたいと思います!
それではまた次のお話で!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 10~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。