光速の走り屋オオサキショウコ第2部スピンオフ 肥後の走り屋たち (まとら魔術)
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登場人物

◎加藤虎美のプロフィール

 

【名前】 加藤虎美

【読み】 かとう・とらみ

【声のイメージ】 Lynn

【年齢】 17歳

【スリーサイズ】 B93 W55 H98

【血液型】 A型

【身長】 168cm

【体重】 54kg

【生年月日】 1998年7月25日

【性格】 お調子者

【一人称】 うち 

【キャラの特徴】

・熊本の麻生北高校の2年生。

・麻生北高校自動車部の部長。

・九州最速の五島ヨタツに憧れて走り屋になった。彼女みたいな走り屋を目指している。

・副部長がうるさくなるほどのお調子者。

・愛車のGTOは誕生日に父親から貰ったもの。

・趣味はレースゲームで、クルマに詳しい。

・技を使用する時は「虎虎虎虎虎虎虎ー!」と叫ぶ。

・走行時は4WDドリフトを主体とした走りをする

・新体操をしていたものの、骨折のため止めている。

・新体操をしていたため、体力がある

・市民プールでバイトしている

 

◎庄林かなのプロフィール

 

【名前】 庄林かな

【読み】 しょうばやし・-

【声のイメージ】 大西沙織

【年齢】 22歳

【スリーサイズ】 B88 W54 H94

【血液型】 B型

【身長】 159cm

【体重】 46kg

【生年月日】 1993年6月13日

【性格】 能天気で空気が読めず、毒舌家

【一人称】自分 

【キャラの特徴】

・写真家志望の大学生。

・日本人だが、ハワイ生まれでハワイ育ち。ただ高校は鹿児島にある学校をそつぎょうしている。・アロハシャツをジャケット代わりに着ている。

・地方の景色を撮影するために写真家を目指している。

・アイドルの写真も撮影している。

・毒舌家で虎美のことを「ノロマ」と呼んでいる。一方の覚のことを気に入っている。

・「ノロマ」扱いしている虎美には走りのイロハを叩き込む。

・レースゲーム好き・剣道が特技。

・好きな食べ物はロコモコ。

・技を使うときは「チェストチェストチェストチェストチェストチェスト、チェストォォォォォォ!」と叫ぶ。

 

◎飯田覚のプロフィール

【名前】 飯田覚

【読み】 いいだ・さとり

【声のイメージ】 田中美海

【年齢】 16歳

【スリーサイズ】 B85 W51 H94

【血液型】 AB型

【身長】 148cm

【体重】 39kg

【生年月日】 1998年10月31日

【性格】 真面目で優等生

【一人称】私 

【キャラの特徴】

・熊本の麻生北高校2年生。

・麻生北自動車部の副部長。

・前年度ミス麻生北で優勝するほどの美少女。

・父は元警察の交通課で定年した今は熊本県議を努めている

・出身は東京だが、10歳のときに父の仕事の都合で引っ越した。

・標準語で話すのは、東京出身のため。

・アイドルドライバーを目指している。

・空手や柔道を習っていたため、小さな体に似合わず体力がある。力も強い。

・椎茸が嫌いで、それを食べさせようとすると怒る。

・テストの成績は優秀で、学校一と言われているほど。ただし数学が苦手。

・走行スタイルはグリップ走行・虎美と共に市民プールでバイトしている。

・可愛らしい見た目に似合わず、負けず嫌い。虎美に負けたくない

◎大竹のプロフィール

【読み】 おおたけ

【声のイメージ】未定

【身長】186cm

【体重】72kg

【誕生日】1981年4月24日生まれ

【年齢】35歳

【一人称】俺

【キャラの特徴】

・虎美と突如出会った走り屋。

・虎美のような下手な走り屋を見ると潰したくなる性格

・口癖は「面白いねー」

 



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覚醒技一覧

◎加藤虎美の覚醒技

 

【覚醒技】

 肥後虎ノ矛流

 

【属性】 

 無(オーラの色:透明)

 

【苦手属性】

(1.5倍)

 なし

 

(2倍)

 なし

 

【平気属性】

(3分の2)

 なし

 

(2分の1)

 なし

 

【タイプ】追い抜き型

 

【性能】

 立ち上がり:A 

 突っ込み:S

 ブロック:D

 追い抜き:S

 精神アタック:A

 精神回復:C

 ハザードランク:C

 覚醒力:S

(※能力ランクはS(得意)>A(やや得意)>B(標準)>C(う~ん)>D(これは苦手)>E(すごく苦手)となっている)

 

能力:使用した技の属性で覚醒技の属性が変化する。

 

主な技

・コンパクト・メテオ

消費気力:とても少

速度:160km/h以上

属性:無

初歩的な技。

ドリフトしながら攻める。

 

・コンパクト・メテオ2

消費気力:とても少

速度:160km/h以上

属性:無

コンパクト・メテオの突っ込み重視版。

 

・コンパクト・メテオ3

消費気力:とても少

速度:160km/h以上

属性:無

コンパクト・メテオの立ち上がり重視版

 

・真空裂速

消費気力:中

速度:220km/h以上

属性:風

【解説】 

かまいたちのようなコーナリングで攻める技。

 

・キャノン・ドリフター

消費気力:やや少

速度:200km/h

属性:土

【解説】

 慣性ドリフトを使用した後に使用可能。 慣性ドリフトによる勢いを利用して、ドリフトするクルマを飛ばしていく。

 

・落ちてくる虎(メテオタイガー)

消費気力:少

速度:160km/h以上

属性:岩

【解説】

 振り上げるようなドリフトをしながら、加速していくスローイン・ファーストアウトで攻める。

 

・片鎌槍

消費気力:極大

速度:475km/h

属性:鉄

使用者:加藤虎美

【解説】

 時速475km/hで左コーナーを片鎌槍を振るようにドリフトしながら攻めていく。

 

・クリスタル・ブレイク

属性:氷

消費気力:中

使用不可能な時間:15秒

相手を押し付けながら走行する。

 

・バッテン・スライダー

属性:水

消費気力:やや大

使用不可能な時間:25秒

アウトに見せかけて、イン側に攻める。

精神ダメージが高い

 

◎庄林貴利依の覚醒技

 

【覚醒技】

 天地爆走流

 

【属性】

 草・氷(オーラの色:緑・水色)

 

【苦手属性】

(1.5倍)

 氷、金

(2倍)

 炎、鉄、毒

 

【平気属性】

(3分の2)

 水土雷草

(2分の1)

 岩

 

【タイプ】

 直線型

 

【性能】

立ち上がり:S 

突っ込み:D

ブロック:D

追い抜き:A

精神アタック:S

精神回復:C

覚醒力:B

(※能力ランクはS(得意)>A(やや得意)>B(標準)>C(う~ん)>D(これは苦手)>E(すごく苦手)となっている)

 

能力:バトル開始して1分間の間、車の全性能を2倍に上げる。

 

主な技

 

・コンパクト・メテオ

・コンパクト・メテオ2

・コンパクト・メテオ3

 

・ローリングレーザー

属性:光

消費気力:多

速度:300km/h以上 

 白いオーラを纏い、レーザーの如く攻めていく技。

 

・隼人一心の朱槍

属性:炎

消費気力:極多

速度:440km/h

 貴利依の思い描く「庄林一心」のイメージを具現化したもの。 赤いオーラを纏い、朱槍のごとく攻めていく。

◎大竹の覚醒技

 

【覚醒技】

 名称不明

 

【属性】

 毒/金

(オーラの色:紫/金)

 

【苦手属性】

 

(1.5倍)

 岩金

 

(2倍)

 火鉄

【平気属性】

 

(3分の2)

 氷

 

(2分の1)

 草土光闇

 

【タイプ】

 直線型

 

【性能】

 立ち上がり:A

 突っ込み:D

 ブロック:C

 追い抜き:B

 精神アタック:C

 気力回復:C

 覚醒力:E

(※能力ランクは

S(得意)>A(やや得意)>B(標準)>C(う~ん)>D(これは苦手)>E(すごく苦手)

となっている

 

能力:不明

 

【覚醒技の説明】

 直線重視の能力になっているものの、詳細は不明

 

 

ゴールドラッシュ

消費気力:少

速度:180km/h

属性:金

 金属性の初歩技。

 金のオーラを纏って走行する

 

ポイズンラッシュ

消費気力:少

速度:180km/h

属性:毒

 毒属性の初歩技。

 紫のオーラを纏って走行する

 

 

 



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登場車種

◎虎美のクルマ

 

 

三菱 GTO 3.0 ツインターボ Z16A 1992年製

460馬力 60.5kg・m 1400kg(6G72時代)

510馬力 67.8kg・m 1310kg(4G63換装後)

 

【エンジン】

 三菱 6G72ツインターボ(3.0リッターV型6気筒DOHCツインターボ)

 三菱 4G63 MIVECターボ改2.4Lツインチャージャー仕様(2.4リッター直列4気筒DOHCシングルターボ&スーパーチャージャー)(エンジンブロー後)

 

【駆動方式】 

 4WD(トルク配分20:80)

 

【性能】

0-100km/h加速:3.3→2.7秒

0-400m:11.2→10.6秒

最高速度:291→304km/h

低速:S

中速:A→S

高速:B→A

安定:A

旋回:C→B

制動:B→S

空力:S

トラク:S

 

【色】

 ピレネーブラック

 

【パーツ】

 エアロクラフトKAZE製フロントバンパー

 エアロクラフトKAZE製リアバンパー

 エアロクラフトKAZE製サイドステップ

 社外ボンネット

 社外ホディキット

 社外GTウイング

 社外固定ライト 

RAYS製グラムライツ57S(色:ゴールド)

 

【車の解説】

 クルマの回頭性を向上させるためにV6の6G72から直4の4G63に置き換え、失ったトルクを補うために2.4Lへスープアップさせている。

(当初は6G72を載せていたものの、エンジンブローで4G63に載せ替えた) 

 過給機はツインチャージャーになっている。

 ドアはシザースドアに改造されている。

 虎美のドライビングに合わせ、ドリフト重視のセッティングになっている

 

◎かなの車

 トヨタ カローラレビン 1.6 GT-Z 1991年製

 300馬力 39.0kg・m 910kg

 

【エンジン】

 トヨタ 4A-GZE改ツインチャージャー仕様(1.6リッター直列4気筒DOHCシングルターボ&スーパーチャージャー)

 

【駆動方式】

 FF

 

【性能】

0-100km/h加速:4.8秒

0-400m:12.7秒

最高速度:271km/h

低速:C

中速:S

高速:S

安定:B

旋回:A

制動:B

空力:B

トラク:E

 

【色】

 アイスブルー

 

【外装パーツ】

 ロケットダンサー製フロントバンパー

 ロケットダンサー製リアスポイラー

 メーカー不明タービンカーボンボンネット

 5ZIGEN製FN01-R(色は白)

 

【車の解説】

 スーパーチャージャー付きの4A-GZEにドッカンターボを搭載させてツインチャージャー化させ、かなりのパワーを得る。

 足回りはFF車ながらドリフト重視のセッティングされている。

 

◎大竹の車

  2004年製

 485馬力 60・5kg・m 1420kg

 

【色】

 クリスタルホワイトパール

 

【エンジン】

 FJ25ターボ

 

【駆動方式】

 4WD

 

【性能】

0-100km/h加速:3.5秒

0-400m:12.5秒

最高速度:291km/h

低速:B

中速:S

高速:A

安定:B

旋回:D

制動:D

空力:E

トラク:S

 

【車の解説】

 大竹が主に取材に使う車。

 虎美のGTOを上回る加速力を持つ。

 

【外装パーツ】

 RAYS製ボルクTE37



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加藤虎美のクルマ解説

三菱 GTO Z16A

 

(スペックは91年式3.0 ツインターボを参考にしている)

【製造期間】1990年10月~2001年8月

【生産国】日本国·愛知県岡崎市

【先代車】A187A型スタリオン

【後継車】なし

【名前の由来】「グランツーリスモ·オモロガート」の略

【当時の新車価格】398万円

【別名】三菱·3000GT(海外向けモデル)

【全長】4,555mm

【全幅】1,840mm

【全高】1,285mm

【定員】4名

【ボディタイプ】3ドアクーペ

【車重】1700kg

【駆動方式】4WD

【クラス】スポーツカー・グランドツアラー

【エンジン】三菱・6G72ターボ(3.0リッターV型6気筒DOHCツインターボ)

【最高出力】280馬力

【最大トルク】42.5kg・m

【サスペンション】F/ストラット、R/ダブルウィッシュボーン

【変速機】5速

【パワーウエイトレシオ】5.07kg/ps

【トルクウェイトレシオ】40.0kg/kg・m

【0-100km/h加速】6.2秒

【0-400m】13.3秒

【最高速度】256km/h

【作中の搭乗者】加藤虎美(麻生北高校自動車部・18歳) 通称「GTO」

 

 GTOは1990年に発売されたスポーツカーばい。

 うちの愛車や。

 名前の由来は「グランツーリスモ・オモロガート」であり、先代の名前ば取って「スタリオンGTO」ちゅう名前で販売する案もあった。

 

 キャッチコピーは『スポーツは、ライバルがいるから、面白い。』ばい。

 

 1989年に第28回東京モーターショーで「三菱・HSX」ちゅう名で参考出品され、そん後1990年10月から市販されたばい。

 日本国内においては、全グレード駆動方式は4WDとなっとるばってん、北米向けはFFもラインナップされた。

 

 北米市場を意識したGTカーとして企画されとり、直線道路を余裕を持って走れるトルクを備えた性格付けがしとる。

 エンジンと基本シャーシのベースはディアマンテと同一の物が使われとり、そればGTO用にアレンジして搭載しとる。

 

 スタイリングは、三菱らしか個性の強かもんで、コークボトルラインのボディに絞り込まれたサイドへ描かれる美しいZラインの綾線はデザイン上のハイライトとなっとり、Cd値は0.33を記録した。

 

 全幅は1,840mmと当時のライバル達の中で随一の全幅を持っとる。

 

 デザイン上の特徴として良く取り上げとるサイドエアダムのエアインテークは、モーターショー出展時のHSXではブレーキ冷却ダクトだったばってん、そんクルマは2シーターであったため、市販化にあたり後部座席ば設置せんようにならなくなり、周りの設計上の都合によりダミーとなってしまったという経緯があるばい

 

 また、前期型ボンネット上のバルジはもともとディアマンテ用のシャシー+マクファーソン・ストラット式サスペンションのボンネット出っ張りをカバーするためのもんばい。

 マイナーチェンジにより、ダミーやったエアインテークにはタイヤハウスに空気が抜ける孔が設けられとるばってん、積極的なブレーキ冷却機能は与えられとらん。また、GTOは時流を反映して意欲的な装備が多数盛り込まれたんも特徴ばい。

 

 エンジンは2種用意され、いずれも排気量3リッターのV型6気筒DOHC24バルブで、自然吸気型とインタークーラー付きターボチャージャーば2基備える高性能型が選べた。

 前者は同じ三菱のディアマンテなどにも使われとるユニットばってん、後者はGTO専用たい。

 ツインターボ仕様の最高出力は280馬力、最大トルクは42.5kg・mと発表され、当時の国産車ではダントツばい。

 

 日本車としてはアルミ製4ポット異径対向ピストンブレーキキャリパーとドイツ・ゲトラグ社製の5速MT(中期型から6速化)、高張力鋼製のドライブシャフトとスイッチで排気音を変えられるアクティブエグゾーストシステム(ツインターボ車)、可変リアスポイラーおよびアクティブエアロシステム(ツインターボ車)が初採用されとった。

 

 日本国外へは「3000GT」という名称で輸出され、こちらにはSLおよびRTちゅうNAエンジンのFFモデルもあった。

 北米仕様のトップグレード、VR-4は320馬力を発生させとった。

 

ダッジにOEM配給されとり、ステルスという名前を与えられとる。

 

 高速隊のパトカーとして、国費で導入された。

 基本的にフェンダーミラー仕様が導入されたばってん、MRのみドアミラー仕様となっとる。

 ほとんどが廃車となったばってん、一部県警に中期型・後期型MRが現存し、今は主にイベント展示用として使用されております。

 

 アメリカでは日本車離れしたスタイリングから、エアロパーツによるドレスアップが盛んであったり、3リッターV6ツインターボと強力なエンジンで4WDという点からドラッグレースのベース車両に使われることが多か。

 一方で日本ではマイナー車に分類され、アフターパーツが少なかちゅう逆転減少が発生しとる。 そんでも、エアロやチューニングパーツが用意されてとるばってん……。

 

 モータースポーツでは、1991年から1996年までN1耐久(現・スーパー耐久)に参戦した。

 レースでは最高峰であるクラス1で当時最強ば誇っていた日産自動車のスカイラインGT-Rの対抗馬的存在として活躍した。

 重い車重にも関わらず、互角の勝負を演じ、コーナーのGT-R・直線のGTOという一般的なイメージとは違うレース内容やった。

 TIサーキット英田(現・岡山国際サーキット)で記録した2位がベストリザルトたい。

 

 ネット上では、神のGTOと呼ばれる話が存在しとる。

 NAモデルに乗った人が140km/hでR34型GT-Rばぶっちぎったとばってん、本当ばい?

 

トヨタ・カローラレビン AE101

(スペックは91年式1.6GT-Zを参考)

【製造期間】1991年~1995年

【生産国】日本国・愛知県田原市

【先代車】AE92型カローラレビン

【後継車】AE111型カローラレビン

【名前の由来】カローラは英語で「花冠」、レビンは「稲妻」

【当時の新車価格】220万円(91年製の1.6GT-Z)

【別名】カローラクーペ(欧州)

【全長】4275.mm

【全幅】1,695mm

【全高】1,305mm

【定員】4名

【ボディタイプ】2ドア

【車重】1150kg

【駆動方式】FF

【クラス】コンパクトカー

【エンジン】トヨタ・4A-GZE (1.6リッター直列4気筒DOHCスーパーチャージャー)【最高出力】170馬力

【最大トルク】21.0kg・m

【パワーウエイトレシオ】6.76kg/馬力

【トルクウエイトレシオ】54.7kg/kg・m

【サスペンション】F/ストラット、R/ストラット

【変速機】5速

【0-100km加速】7.4秒

【0-400mタイム】15.3秒

【最高速度】210km/h

【作中の搭乗者】庄林かな(22歳・無所属)

 

【虎美の解説】

 通称「AE101」

 

 カローラレビンは元々カローラクーペの上級モデルの名称やったばってん、4代目のAE86型から単独モデルとなったばい。

 無類のラリー好きやった久保地理介(後のトヨタ自動車副社長)が「セリカの2T-Gエンジンをカローラに積みたい」と言うたこつが始まりたい。

 

 中でも4代目のAE86は名車とされとる。

 元々はFRばってん、5代目のAE92からFFとなった。

 

 6代目となるAE101は、「新時代を見据えた次世代基準の創出」、「新しいクオリティをもつグローバルジャストサイズカー」ちゅうコンセプトで開発された。    

 

 かなさんの愛車ばい。

 

 フルモデルチェンジした時期がバブル景気やったこつもあってボディは大型化と同時に車重は増加し、コンパクトスポーツモデルとして魅力を削ぐこつになった。

 

 搭載エンジンは先代に引き続き、NAだけやなくスーパーチャージャーも用意された。

 4A-GはVVTを吸気側カムシャフトに装備し、1気筒あたり5バルブ化されて20バルブ化され、リッター100馬力となる160馬力となった。

 スーパーチャージャー仕様の4A-GZEは先代同様の16バルブばってん、細部の見直しば行い、170馬力に向上しとる。

 

 このスペックは歴代最強クラスたい。

 

 足回りは新開発のスーパーストラットサスペンションをGT-Zに採用(GT-APEXはオプション)され、そんGT-ZにはビスカスLSDが標準装備されとる。

 なお、そんサスペンションば採用しとらんGT-APEXには、電子制御のTEMSがオプション設定された。

 

 当時の新車価格は220万円とこんクラスにしては高額やった。

 

 当初は先代のヒットの流れば引き継いだ事やクーペ人気が続いていたこともあり、販売は好調やった。

 ばってんバブル崩壊やクーペ人気の低迷により販売は低迷し、先々代・先代のようなヒットにはならんかった。

 

 モータースポーツではJTCに参戦し、EG6型シビックと争った。 現在でも、ジムカーナやダートトライアルでも活躍しとる。



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序章
ACT.プロローグ 加藤虎美


肥後の走り屋たち ACT.プロローグ 加藤虎美

 

 読んでいただくための注意事項

 

 本作品はフィクションです。

 作品の出来事や登場人物は存在しません。

 公道での自動車レースを取り扱っていますが、実際にはその行為は違法なので絶対に真似しないでください。

 実際に運転される際は、シートベルトを締めて交通ルールを守り、安全運転でお願いします。

 

 

 2000年に時の政府によって、交通網の発達で必要のなくなった全国の峠が廃道になった我々の国。

 

 3年後に若者のクルマ離れ対策のためにさらなる改革を行われた。

 

 自動車免許の取得できる年齢を18歳から16歳への引き下げ、車検に払う税金の大きく減らし、制度や改造規制の大幅な緩和を行われた。

 

 これらは功を奏し、若者のクルマ離れを解消することに成功したのだった。

 

 老若男女問わずクルマを愛する世の中になった現在は「自動車天国時代」と呼ばれている。

 

 2015年夏の群馬県の某ホテル。

 うちら自動車部の応援についてきた高校の生徒会長・菊池鯛乃(きくち・たいの)が大きく口を開く。

 

「待ちに待った閻魔大王杯の日がやってきたばい。警戒すべき走り屋の名前ば挙げる」

 

(標準語訳:待ちに待った閻魔大王杯の日がやってきた。警戒すべき走り屋の名前を挙げる)

 

 最初の名前を言う。

 

「まずは赤・白・黒の派手なカラーの180SXに乗る大崎翔子ばい。年齢はあんたらと変わらんばってん、赤城最速であると同時に榛名最速と妙義最速まで破った事実上の群馬最速や」

 

(標準語訳:まずは赤・白・黒の派手なカラーの180SXに乗る大崎翔子だ。年齢はあんたらと変わらないけど、赤城最速であると同時に榛名最速と妙義最速まで破った事実上の群馬最速だ)

 

 次の名前を言う。

 

「次は青緑・黒・赤の派手なS15型シルビアに乗る広島の谷輝。今大会の優勝候補で、大崎翔子ば破ったこつばあるし、先代の赤城最速の雨原芽来夜のライバルと言われとる。説明できんほどの速さば持つ。愛知出身で特急みたかなカラーリングのNA8C型ロードスターに乗る祭里透子にも警戒して欲しか。クルマは非力ばってん、コーナリングは東海一と言われとる。それだけやなく、ドリフト(※)技をコピーする技ば持っとる。特に加藤、警戒して欲しか」

 

(標準語:次は青緑・黒・赤の派手なS15型シルビアに乗る広島の谷輝。今大会の優勝候補で、大崎翔子を破ったことをあるし、先代の赤城最速の雨原芽来夜のライバルと言われている。説明できないほどの速さを持つ。愛知出身で特急みたいなカラーリングのNA8C型ロードスターに乗る祭里透子にも警戒して欲しい。クルマは非力だけど、コーナリングは東海一と言われている。それだけではなく、ドリフト技をコピーする技を持っている。特に加藤、警戒して欲しい)

 

 ※ドリフト……タイヤを横滑りさせて走行させること

 

 最後の名前を言う。

 

「最後は弱か自分たい。それに負けたら調子が出んようになる。相手以上に自分に勝って欲しか」

 

(標準語訳:最後は弱い自分だ。それに負けたら調子が出ないようになる。相手以上に自分に勝って欲しい)

 

「よし、どぎゃん奴もかかって欲しか!」

 

(標準語訳:よし、どんな奴もかかって欲しい!)

 

 うちは張り切った。

 

「相手は全国から来ているから甘くないわよ」

 

 うちの友人で自動車部の飯田覚(いいだ・さとり)、通称・飯田ちゃんが言う。

 

「わしら優勝できるんやろうか……」

 

(標準語訳:わしら優勝できるのだろうか……)

 

 うちのもう1人の友人で自動車部の森本ひさ子(もりもと・-こ)、通称・ひさちゃんが結果に不安視していた。

 

「大丈夫たい。うちがおるから」

 

(標準語訳:大丈夫だよ、うちがいるから)

 

 そんなひさちゃんを安心させようとする。

 

 この話はうちが閻魔大王杯と呼ばれるレースに参加するまでのお話だ。

 

 話は1年前の2014年8月1日にさかのぼる。

 パソコンで自動車の草レースの動画を見ていた。

 改造された赤いKP510型ダットサン・ブルーバードの走行する姿が写っていた。

 そのクルマがゴールする。

 

「ヨタツさん、むしゃんよか!」

 

(標準語訳:ヨタツさん、かっこいい!)

 

 ヨタツさんこと五島ヨタツ(いつしま・-)はうちの憧れの女性だ。

 いつかは彼女みたいなドライバーになり、クルマを運転したいと思っている。

 

 うちの部屋にお母ちゃんの声が聞こえてくる。

 

「虎美、ご飯たーい」

 

(標準語訳:虎美、ご飯よー!)

 

「今行くばーい」

 

(標準語訳:今行くよー!)

 

 リビングへ向かうと、テーブルには今日はいつもより豪華なご馳走が並んでいた。

 肥後名物赤牛に、熊本ラーメンだ。

 

 うちをはじめとする家族5人が席に着く。

 構成は両親・妹・弟だ。

 

 お母ちゃんは糸(いと)と言い、うちに似て美人な人であり、2人で並ぶと姉妹に間違えられるほどだ。

 お父ちゃんは信忠(のぶただ)と言い、熊本のローカルタレントをやっている。肩まで伸びる髪に顔立ちの整ったイケメンで、うちとは恋人同士と間違えられたことがある。

 

 妹は虎代(とらうお)と言い、弟は虎太郎(こたろう)と言う。

 どちらも中学生だ。

 前者の方は三つ編みにメガネを掛けている。

 

 お母ちゃんが口を開く。

 

「遅くなったばってん、今日のご飯は虎美の誕生日と運転免許取得記念やけん、豪華にしてみました」

 

(標準語訳:遅くなったけど、今日のご飯は虎美の誕生日と運転免許取得記念だから、豪華にしてみました)

 

 実は先週7月25日に16回目の誕生日を迎え、さらには運転免許まで取得した。

 冒頭でも言っているが、この世界ではその年から取ることができる。

 

 ちなみに仮免のほうは15歳9ヶ月から取ることができる。

 自動車学校へ行き続け、苦労の末にようやく手に入れることができた。

 

「お母ちゃんだんだん」

 

(標準語訳:お母ちゃんありがとう)

 

「これが誕生日プレゼントたい。夏でも履くほどカラータイツが好きやから、沢山買ってきたばい」

 

(標準語訳:これが誕生日プレゼントよ。夏でも履くほどカラータイツが好きだから、沢山買ってきたよ)

 

「お父ちゃんからも用意しとる。すごかもんたい」

 

(標準語訳:お父ちゃんからも用意している。すごい物だよ)

 

「気になるばい」

 

(標準語訳:気になるよ)

 

「ご飯食べ終わったあとのお楽しみたい。外に用意しとる」

 

(標準語訳:ご飯食べ終わったあとのお楽しみだよ。外に用意している)

 

 どんな物がプレゼントだろうか。

 そのことで心を踊らせながら、赤牛と熊本ラーメンを食べた。

 

 約束通り家族全員で外へ出ると、カバーを掛けられた大きな物体があった。

 父ちゃんがめくる。

 正体を見た途端、うちの心が高鳴った。

 

 スーパーカーを彷彿させるデザインの黒いクーペだった。

 

「お父ちゃんからプレゼントはクルマばい。虎美が好きそうなスポーツカーば買ってきたばい」

 

(標準語訳:お父ちゃんからプレゼントはクルマだよ。虎美が好きそうなスポーツカーを買ってきた)

 

「これって三菱のGTOの前期型ばい……。レースゲームで何度か操縦したこつのあるクルマばい、むしゃんよか」

 

(標準語訳:これって三菱のGTOの前期型だよ……。レースゲームで何度か操縦したことのあるクルマだ、かっこいい)

 

 GTOは三菱自動車のスポーツカーで、名前の由来は「グラン・ツーリスモ・オモロガート」だ。

「グレート・ティーチャー・オニヅカ」ではない。

 

 しかもそのGTO、ヘッドライトは固定化され、エアロクラフトKAZE製のボディキットとGTウイングを着けており、両サイドには黄色いストライブバイナルが貼ってあった。

 前のオーナーによってチューンされたと思われる。

 

「お父ちゃん、だんだん。16年生きてきた中で、最高のプレゼントばい」

 

(標準語訳:お父ちゃん、ありがとう。16年生きてきた中、最高のプレゼントだよ」

 

「お姉ちゃんよかな……おるにもクルマ欲しか」

 

(標準語訳:お姉ちゃんいいな……俺にもクルマ欲しい)

 

「まだ中学生やから早か」

 

(標準語訳:まだ中学生やから早い)

 

 虎太郎よ、あと3年経ったらクルマを運転できる。

 

「今日はもう夜やけん、虎美の運転は明日にすっばい。運転にはお父ちゃんがつくばい」

 

(標準語訳:今日はもう夜だから、虎美の運転は明日にするばい。運転にはお父ちゃんがつくよ)

 

 夜だと暗くて他のクルマが見えづらい。

 初心者のうちには危険だ。

 

 GTOのオーナーとなったうちにお母ちゃんからある約束をされる。

 

「虎美、事故にはきーつけち行かにゃんばぃた事故ったらせっかくの16年の人生が台無しになるけん」

 

(標準語訳:虎美、事故には気を付けてね。事故ったらせっかくの16年の人生が台無しになるから)

 

「気いば付けるばい」

 

(標準語訳:気を付けるよ)

 

 そして翌朝の8月2日の9時。

 今日はお父ちゃんとGTOで初めてドライブに向かう。

 

 うちの服装は、上は緑のTシャツに灰色のジャケットを羽織り、下には同色のホットパンツにマスタードのカラータイツを履いている。

 

 クルマの前後には若葉マーク(免許を取って1年経っていない人が付けるマーク)を付けた。

 これならドライブは安心だ。

 

「行くばぁい、GTO!!」

 

(標準語訳:行くよ、GTO!!))

 

 ボンネットの中にある6G72ターボのV6エンジンを穏やかに起動させる。

 家を出て、クルマを走らせていく。

 

 うちら親子は阿蘇神社や熊本城を巡った。

 それらを終えて11時になると、オケラ山の下のミルクロードを通って家に帰ることにした。

 

 途中、1台のクルマがGTOの後ろを走ってくる。

 色は水色、車種はトヨタのAE101型カローラレビンだ。

 ボンネットはカーボンとなっており、ロケットダンサー製のエアロも身につけていた。

 

 その存在にお父ちゃんは気づいた。

 

「虎美、後ろからクルマが来とる。道ば譲ればよか」

 

(標準語訳:虎美、後ろからクルマが来ている。道を譲った方がいい)

 

 後ろのAE101はパッシングをしてくる。

 うちはそれを眺めた。

 

「お父ちゃん、相手はパッシングしとるばい。バトルを申し込んどる合図たい」

 

(標準語訳:お父ちゃん、相手はパッシングしているよ。バトルを申し込んどる合図だ」)

 

「ばってん、こんクルマは若葉マークば貼っとるクルマじゃあ……」

 

(標準語訳:けど、このクルマは若葉マークを貼っとるクルマじゃあ……)

 

「こんGTOが走り屋みたかなクルマやけん、パッシングされたんばい。売られるんなら、買わないかんばい!」

 

(標準語訳:このGTOが走り屋みたいなクルマだから、パッシングされたんだよ。売られるなら、買わなといけない!)

 

 こうして謎のAE101とのバトルが始まった。

 

 そのクルマにはオーラを出している。

 色は水色と緑だった。

 この意味は後で知るのだった。

 

加藤虎美(Z16A)

 

VS

 

謎の走り屋(AE101)

 

コース:オケラ山ミルクロード

 

 うちはカラータイツに包まれた黄色い脚で、アクセルを床まで踏みこむ。

 6G72ターボは大きく唸りをあげ、400馬力を越えるパワーでAE101を離していく。

 

「うわああああああああああ」

 

 GTOが加速しだすと、お父ちゃんは怯え始めた。

 

「パワーはあるようだね、前のGTO」

 

 AE101のドライバーはうちのGTOを見て、そう呟いた。

 その人は女性だった。

 

 2つのヘアピンがやってくる。

 1つ目は左だ。

 それが迫ると、黄色い左足でフットブレーキを踏み、左手でサイドブレーキを引く。

 

「レースゲームで良く使っとったドリフト、行くばい!」

 

(標準語訳:レースゲームで良く使っとったドリフト、行くばい!)

 

 GTOはスライドしだす。

 しかし、うちの運転が未熟だったのか、クルマは外側にゆっくり膨らんでいく。

 

 一方のAE101はFF(※)でありながら、ヘアピンの内側を華麗なドリフトでクリアする。

 

 ※フロントエンジン・フロントドライブの略。前輪駆動ともいう。

 

「うわあああああああ! 怖か、怖かあああああああ!!」

 

(標準語訳:うわあああああああ! 怖い、怖いいいいいいいい!!」)

 

「くそ、失敗したか……」

 

 AE101との差が縮まる。

 

 2つ目のヘアピンが迫ってくる。

 右だ。

 ここも同じ走りで攻めるも、外側に膨らんで、ガードレールに接触しそうになる。

 

「事故る事故る! 事故るばい!」

 

(標準語訳:事故る事故る! 事故るよ!)

 

「また失敗したか……」

 

 うちとは対照的にAE101はここもFドリ(※)で内側を攻めていく。

 コーナーが速い相手は距離を縮め、GTOとの差はテール・トゥ・ノーズ(※)となった。

 

 ※Fドリ……FF車でドリフトすること

 

 ※テール・トゥ・ノーズ……前のクルマと後ろのクルマの差が接触寸前になること。

 

 しかしこの後は緩いS字区間があるとはいえ、高速区間だ。

 パワー差で相手を少しづつ引き離していく。

 

 ここを終えると、曲線が来る。

 左中速ヘアピンだ。

 

「またドリフトで攻めるばい!」

 

(標準語訳:またドリフトで攻めるよ!)

 

「もうドリフトはこりごりばい!」

 

(標準語訳:もうドリフトはこりごりだよ!)

 

 うちのドリフトを体験したお父ちゃんは泣きそうな顔をしていた。

 残念ながら、この走りで攻める。

 しかし、ここもコースの外に出そうな程ガードレール内側へ膨らむ。

 

 後ろのAE101はその光景を見ながら。

 

「さーて、下手くそには速いドリフトをどういう物なのか、見せてやろうか」

 

 と言い放ち、透明なオーラを大きく纏った。

 タキオン粒子で出来たそれをクルマ全体に身につける。

 

 AE101の速度は上がり、スライドの体制に入っていく。

 

 この後、後ろからとんでもない光景を見る。

 

「<コンパクト・メテオ>!」

 

 オーラの力で物凄く速いドリフトでヘアピンで攻める!

 限界を超えた速度だった。

 

「チェストチェストチェストチェストチェストチェストチェストチェストチェストチェスト、チェストォォォォォォォォォォォォォォォ!!」

 

 見たことのない速さの走りでGTOに接近していく。

 

「速か、さっきのAE101の走り!」

 

(標準語訳:速い、さっきのAE101の走り!)

 

 ヨタツさんの走りでも見たことあるものの、何度かとんでもない速さの走りをするクルマは何度か見たことある。

 免許を取ってすぐ、肉眼でそれに遭遇してしまうとはありえない。

 オーラはその目でしか見えなかった。

 

 左中速ヘアピンを抜けてすぐ、S字が来る。

 そこでAE101はGTOを追い抜く。

 

「お先に失礼」

 

 AE101のドライバーは後ろのうちのGTOを眺め、そう呟いた。

 

「ノロマ……」

 

 さらにうちのある部分を見る。

 彼女はGTOから湧き出る透明のオーラを眺めていた。

 

「オーラが出ているのにそれを使いこなせなかったのかな。本当にノロマだよ」

 

 うちから出るオーラとは一体!?

 この真相を知るのは、後の話だ。

 

 しばらく走ると、AE101の姿が見えなくなる。

 全開で踏んでいたアクセルを緩めた。

 

結果:AE101の走り屋の勝ち

 

「怖かったとよ……虎美」

 

(標準語訳:怖かったよ……虎美)

 

 うちの全開走行を間近で見たお父ちゃんは失神寸前だった。

 

「あんAE101、うちの走りでは追い付けんかった。そもそも、さっき披露した速かドリフト、気になるばい……」

 

(標準語訳:あのAE101、うちの走りでは追い付けんかった。そもそも、さっき披露した速いドリフト、気になるよ……)

 

 とても速く、追いつけなかった。

 あのAE101との戦いは、後のうちの運命を大きく変えることになる。

 

The NextLap

 

 



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ACT.1 覚醒技(テイク)

肥後の走り屋たち ACT.1 覚醒技(テイク)

 

あらすじ

 16歳の誕生日を迎え、免許を取ったばかりの少女・加藤虎美。

 父親からのプレゼントとして、三菱・GTO(前期型)を貰うのだった。

 翌日そのクルマでドライブへ向かう。

 帰りにAE101型トヨタ・カローラレビンと遭遇し、バトルをするも圧倒されてしまう。

 

 あの出来事から2週間が経過した、8月16日の土曜日。

 時間は16時、天気はさっきまで曇っていたものの、今は晴れている。

 

 熊本の道路をうちのGTOは走っていく。

 速度は40km/hと遅めだ。

 

 今日も前後には若葉マークを入っていて、助手席には誰か乗せている。

 お父ちゃんではない。

 

「虎美の運転遅くない?」

 

 乗っているのは、飯田覚(いいだ・さとり)といううちの親友だ。

 飯田ちゃんと呼んでいる。

 

 見た目は、長い桃色の髪をツインテールに結び、猫のような吊り目をしていて、身体はうちより小さめだ。

 服装は、灰色のパーカーに髪色と同じカラータイツを履いている。

 

「安全運転のため、これぐらいの速度で走っとる」

 

 うちだって、初心者だ。

 これぐらいの運転しないと、事故る。

 

 後ろから、白いSG9型スバル・フォレスターがGTOを煽る。

 

「煽られているわよ、虎美! あなたが遅いからよ」

 

「スピード上げるたい」

 

 猛加速したGTOはフォレスターを離していく。

 そのクルマのドライバーは何か呟いた。

 

「潰したくなるような走り屋を見つけたぜ……面白いね」

 

 後に、このフォレスターとは大きく関わることとなる。

 

 うちらが向かった場所はバイト先の市民プールだ。

 そこで監視や清掃といった仕事をしている。

 ユニフォームは水着だ

 

 夏はお客が多くなるので忙しい。

 

 18時にバイトを終え、再び飯田ちゃんと共にGTOに乗り込む。

 ここから帰路につく。

 

「さぁ、帰るたい」

 

(さぁ、帰るよ)

 

 ボンネットに潜む6G72を起動させ、駐車場を出発した。

 

 日が沈みかけた19時、うちらは箱石峠を走る。

 ここでは飯田ちゃんと共にクルマの運転を練習している。

 彼女にもそれのハンドルを握らせることがある。

 この道は走り屋だけの場所になっているため、「仮免許練習中」という張り紙は必要ない。

 

 復路区間を走っていると、後ろから、2週間前に見かけた水色のAE101型レビンが迫ってくる。

 助手席の飯田ちゃんは、それを目撃する。

 

「虎美、後ろから何か来ているわ。さっきみたいに煽られたくないなら道を譲って!」

 

「はい」

 

 T字路後の路肩にGTOを停止させると、AE101も続く。

 そのクルマからドライバーの女性が降りてくる。

 

 見た目はハワイアンだった。

 赤紫色のロングヘアーを水色のシュシュで2つに纏め、赤いサングラスをカチューシャ代わりにしている。

 顔は欧米人のような青い瞳に、目の形は垂れ目だ。

 上の服装はアロハシャツをジャケット代わりにしていて、中には黒いTシャツを着用している。

 下の服装は赤いホットパンツに、黒いトレンカ、同色のドライビングサンダルを履いてある。

 

 彼女はGTOの運転席の窓を軽く叩く。

 

「AE101乗りの女性が何か用よ、窓を開けて」

 

 飯田ちゃんに言われて窓を開けると、女性は飛んでもない一言を浴びせる。

 

「先週のGTO乗りのノロマはあんたか」

 

「の、ノロマって失礼な言い方ですばい!」

 

 この前、負けたのは事実だ。

 けど、人を見下すような言い方はやめて欲しい。

 その後、女性は飯田ちゃんを見つめる。

 

「隣にいる子は……べっぴんさんだね」

 

 手に持ったカメラで、飯田ちゃんを撮影する。

 

「やめてください! 私がべっぴんさんだからって……」

 

 飯田ちゃんは可愛い女の子だ。

 見た目は学校一の美人と言われ、今年度ミス麻生北の優勝候補でもある。

 その美貌はうちが初めて見た時、一目惚れしたほどだ。

 

 撮影の邪魔をすまないけど、女性に名前を訪ねる。

 

「あなたは一体誰ですか?」

 

「自分は庄林かな(しょうばやし・-)、21歳。鹿児島の大学生だ」

 

「加藤虎美です。麻生北高校の1年生で16歳です。このクルマは誕生日プレゼントで貰いました」

 

「同じく飯田覚、15歳です。この年齢だからまだ仮免許ですけど」

 

「ノロマが加藤虎美で、べっぴんさんが飯田覚か……覚えとくよ」

 

 互いの自己紹介を終えると、昨日見たアレについて訪ねる。

 

「こん前、透明なオーラば纏って速かドリフトしていましたばってん、あれは何でしょうか?」

 

(こん前、透明なオーラを纏って速いドリフトしていましたけど、あれは何でしょうか?)

 

 かなさんはそれに答えた。

 

「これは<コンパクト・メテオ>、覚醒技(テイク)の技の一種だ」

 

 覚醒技!?

 初めて聞いた存在だ。

 

「覚醒技ちゅうもんは何ですか?」

 

(覚醒技というものは何ですか?)

 

「覚醒技を知らないのか、ノロマ! あんたの身体にはそれのオーラが流れているというのに!」

 

「本当ばい」

 

(本当だ)

 

 今すぐうちの手を見ると、透明のオーラが発生していた。

 

「覚醒技とは、走り屋がよく使っている特殊能力だ。覚醒の技と書いて、「自分を高く越えていく」という意味から、「テイク」と読む。使える者は「覚醒技超人(テイク・ハイヤー)」と呼ばれる。その者の証拠はオーラを持っているか持ってないかだ」

 

 うちも覚醒技超人の1人か。

 

「<コンパクト・メテオ>という技だってあんたでも使えるかもしれないぜ」

 

「こん技、どうやって使うとですか?」

 

「それは、後で教えてやる」

 

「いつからうちは覚醒技超人ちゅう存在になったとですか?」

 

 なぜうちが覚醒技超人になったのかも教えていだいた。

 

「あんたが覚醒技超人になったのは、先月阿蘇に落ちた隕石の落下が原因だ」

 

「隕石!?」

 

「ロジャース彗星の隕石だ。日本にはこの彗星が降ることがあるらしく、それがキッカケで覚醒技超人が生まれることがある。助手席のべっぴんさんの身体にも、オーラがある」

 

「ホンマたい、飯田ちゃんの身体からもオーラが見えるばい」

 

(本当だ、飯田ちゃんの身体からもオーラが見えるよ)

 

「私にも覚醒技という力を持っているのね」

 

 飯田ちゃんの身体からオーラが出てくる。

 色は青とオレンジだ。

 もし彼女が走り屋になったら、強力な存在になりそう。

 

「ロジャース彗星って飯田ちゃんも覚醒技超人にしたと……かなさんだってそん彗星から覚醒技を貰ったとですか?」

 

(ロジャース彗星って飯田ちゃんも覚醒技超人にしたのか……かなさんだってその彗星から覚醒技を貰ったんですか?)

 

「それは……」

 

 かなさんの覚醒技の秘密を聞こうとしたとき、バイトへ行く途中にうちのGTOを煽った白いフォレスターが停まる。

 そのクルマから屈強な男が降りてきた。

 彼は運転席の窓を叩く。

 

「見つけたぜ。ヘタクソなGTO乗り。ここで会うとは面白いね~」

 

「もしかして煽ってきたフォレスター乗りばい!?」

 

「そうだ。俺の名は大竹。お前みたいなヘタクソな走り屋を見ると潰したくなるんだよね」

 

 フォレスター乗りの大竹はうちの顔を見る。

 彼の身体からオーラが出てきた。

 覚醒技超人かもしれない。

 色は紫と金色。

 

 こんな宣言をしてきた。

 

「ヘタクソなお前のことを潰す。バトルをしようぜ。ルールはここから復路区間全て使う。先にゴールした者が勝ちだ。」

 

 バトルを仕掛けてきた。

 未熟なうちに対して、飯田ちゃんから反対の声が響く。

 

「ダメよ、虎美! あんたは運転が遅いから太刀打ちできないわ」

 

 けど、うちの決心は固かった。

 

「バトル、受け入れるばい」

 

「虎美、平気なの? 勝ち目はないわ」

 

「売られた喧嘩を買うんはうちの主義たい」

 

「いいぜ。ヘタクソ相手には絶対引き離してやる!」

 

 こうして、大竹とのバトルが決まった。

 かなさんはこんな提案をする。

 

「べっぴんさんを降ろして」

 

「なーしてですか」

 

(何故ですか?)

 

「自分を助手席に乗せて欲しい。ノロマにはサポートをするからさ。ラリーでいうコ・ドライバーみたいな役割をするぜ」

 

 飯田ちゃんとかなさんが交代する。

 助手席の人間が交代したGTOはフォレスターと共にスタートラインに並ぶ。

 2台のエンジンが勇ましく吠える!

 

 飯田ちゃんはスタート地点に立つ。

 

「スタートの合図は私がするわ」

 

 飯田ちゃんの両腕が上がると、カウントが始まる。

 

「カウント5秒前、4、3、2……1」

 

 残り1秒になると、フォレスターが先に出発をする!

 ボクサーエンジンの音と共に、GTOにケツを見せていく。

 

「ちょ、先にスタートとは反則でしょ!? 虎美、追いかけて!」

 

「先にスタートされるとは……仕方なか。追いかけてやるばい」

 

 1秒遅れて、うちとGTOは出発する。

 6G72のサウンドと共に加速していく。

 

TheNextLap



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ACT.2 片鎌槍

 あらすじ
 あの出来事から2週間が経過した。
 友達の飯田覚を乗せて箱石峠で練習していた虎美はAE101乗りの女子大生・庄林かなと遭遇した。
 彼女は虎美を追い抜いた走りのことを「覚醒技(テイク)」だと教えた。
 そんな最中に大竹というフォレスター乗りが乱入し、バトルを申し込まれる。


 

 スタート地点にいる私は、バトルを始めた虎美のことが気になった。

 

 

「虎美、どうかしら? かなさんという方が助手席にいるとはいえ、ヘタクソなのにバトルを挑んじゃって……負けるか事故を起こしそうで心配だわ」

 

 

 大竹のことも考える。

 

 

「虎美とバトルしている相手、大したことなさそうだわ……雰囲気からそう感じられないし……」

 

 

 あいつは小物臭そうな雰囲気してたわ。

 ヘタクソ狩りをしている時点で。

 

 

 加藤虎美(Z16A)

 

 

 VS

 

 

 大竹(SG9)

 

 

 コース:箱石峠復路

 

 

 フォレスターの大竹より大きく遅れてスタートした、うちとかなさんの乗るGTOは最初の高速区間を走る。

 

 

「ノロマのトラミンよ、バトルは後攻の方が有利だ。後ろからだと相手の様子を見ながら走ることができ、時には相手の走りをコピーできるからな」

 

 

 逆に前を走ると、後ろの相手を気にしてしまい、走りに集中しづらくなるから不利になりやすい。

 速い走り屋はそのポジションを選ぶことを少ないという。

 

 

 高速区間を抜けると、左中速ヘアピンに入る。

 ここでかなさんが指示をする。

 

 

「ここをインに入り、ハンドルをあまり切らずにサイドブレーキドリフトで攻め、ガードレールへの接触する恐怖心を捨てろ!」

 

 

 この後、具体的な速度を言ってきた。

 コ・ドライバーの指示により、GTOはいつも以上に速くドリフトしていく。

 

 

 そこを抜けると右中速ヘアピンが迫る。

 かなさんがうちに対して、また口を開く。

 "あれ"を使えと言い出す。

 

 

「ここで<コンパクト・メテオ>を使え! あんたにも使えるだろ!?」

 

 

「どぎゃんすれば、使えるとですか?」

 

 

(標準語訳:どうやって、使うんですか?)

 

 

 その使い方を教えてもらう。

 

 

「さっきの約束通り教えてやる。今運転しているクルマと精神力やオーラでリンクして、技の名前を叫べ! <コンパクト・メテオ>はやや速いドリフトで攻める技だから、その走りをするんだ!」

 

 

「分かりました」

 

 

 かなさんに言われた通りに、クルマと心を一つにして、技名を叫ぶ。

 

 

「<コンパクト・メテオ>!」

 

 

 すると、うちの身体とGTOの車体が透明のオーラを纏う。

 クルマは速度を上げながら、ドリフトしていく!

 

 

「虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」

 

 

 速いドリフトで曲線を抜けると、フォレスターの姿が見えてくる。

 いよいよ追いついた。

 大竹の目にも、GTOが写っている。

 

 

「技を使って距離を縮めてくるとは、面白いねー! けど、俺だって覚醒技超人だからこっちも技を使えるぜ」

 

 

 大竹は左中速ヘアピンに入ると、金色のオーラを纏う。

 金属性の技が来る。

 

 

「<ゴールド・ラッシュ>」

 

 

 フォレスターは速度を上げながら、攻めていく。

 

 

「じゃあな」

 

 

「また離されたばい!」

 

 

 やはり大竹は覚醒技超人だったか。

 そのオーラは本物だった。

 フォレスターとの距離が大きく広がる。

 

 うちも左中速ヘアピンを抜け、その後の左シケインも攻める。

 

 

 かなさんが横からアドバイスをしてくる。

 

 

「<コンパクト・メテオ>より強力な技を使えるか?」

 

 

「強力な技ってあるんですか?」

 

 

「その技は初歩的な技だ。覚醒技超人は皆固有の技を持っている。今からそれを使えば逆転できる」

 

 左シケインを抜けると、直線が来る。

 そこを抜けると3連続中速ヘアピンが迫る。

 3つ目で発動させる!

 

 

「肥後虎ノ矛流<真空烈速>!」

 

 

 技を発動させると、クルマとうちは萌黄色のオーラを纏い、かまいたちのようなドリフトで攻めていく。

 

 

「虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」

 

 

 その速さは凄まじく、フォレスターとの距離を縮めていく!

 隣のかなさんはうちのオーラを見た。

 

 

「オーラの色、属性が変化している……覚醒技の能力か?」

 

 

 覚醒技には能力があるようだ。

 それは後で説明しよう。

 

 

 窓に映る前のクルマが大きくなっていく。

 

 

 3連中速ヘアピンを抜けて直線に入ると、フォレスターに再び離されてしまうも、そこを過ぎると右高速シケインに入る。

 

 

「ドリフトはせず、グリップ走行で走って!」

 

 

 かなさんのアドバイス通りに攻めていく。

 シケインを抜けると、再びフォレスターが大きく見えていく。

 

 

「後ろからクルマが来る気配はないな。俺がヘタクソを1人潰すとは、面白いねー!」

 

 

 勝利への確信は一瞬だけだった。

 後ろを見るとGTOがいた。

 

 

「いつの間にかGTOがいる!? 面白くないね!」

 

 

 2連ヘアピンに入ると、距離を広げたい大竹は紫のオーラを纏い、技を使う。

 

 

「<ポイズン・アタック>!」

 

 

「毒属性の技だ」

 

 

 毒のように禍々しいオーラを纏うフォレスターは速度を上げながら曲線走っていく。

 しかし、距離はほとんど開かなかった。

 

 

「くそ、なぜ離れないんだ! 面白くないね!」

 

 

「あんた、属性が変わったな?」

 

 

「属性って?」

 

 

「覚醒技には属性がある。属性の相性が良いと速度と相手に与える精神ダメージが増える。逆に悪いと減ってしまう。覚醒技の属性と技の属性が一致すると、技の威力が少し増える。属性は全部で14種類あり、2種類の属性を持つ覚醒技が多数存在する。属性は地球の元素から取っている」

 

 

 まるでRPGやモンスターのバトルをするゲームみたいだ。

 ちなみに属性が変わる前のうちは無属性だった。

 

 

「あんたは風属性に変化した。属性を変化させる能力を持っているな」

 

 

「能力って?」

 

 

「覚醒技には1つ固有の能力が存在する。あんたの能力は使用する技と同じ属性となる。風属性の<真空烈速>を使ったあんたはその属性になったんだ。毒属性の攻撃は風属性と相性が悪い。だから大竹はあんたを離せなかった」

 

 

 言わば特性だ。

 他にも全ての技を威力が上がった状態で出すことが出来るとは、うちの能力は強力だ。

 

 フォレスターとGTOは2連ヘアピンの2つ目、左ヘアピンへ入る。

 前のクルマを仕留める気全開のかなさんからこんな指示が来る。

 

 

「<真空烈速>より強力な技でやっちゃって」

 

 

「うちにそぎゃん技はあるとですか?」

 

 

(標準語訳:うちにそういう技はあるんですか?)

 

 

「あんたなら、使えるかもな」

 

 

 うちは精神力を一杯注入して銀色のオーラを発生させる。

 GTOもそれを纏う。

 清正の槍をイメージし、ヘアピンに突入する。

 

 

「肥後ノ矛流<片鎌槍>!」

 

 

 槍で斬り付けるかのような鋭いドリフトで攻めていく!

 

 

「虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」

 

 

 ヘアピンの立ち上がりでフォレスターを追い抜く!

 

 

「俺が抜かれるとは……面白くないね!」

 

 

 技で抜かれたのか、相手のクルマはふらつき……スピンして壁に接触した!

 

 

「挙げ句に負けるとは……面白くない!」

 

 

「あんたの技が鉄属性だから、相手をスピンさせるほどの精神ダメージを与えたからな。相手の覚醒技の属性は毒と金で、どちらも鉄が苦手だ」

 

 

「そうなんですばい……」

 

 

 うちは相手をスピンさせた。

 つまり、バトルに勝利した。

 

 

 そこを誰かが見ていた。

 黒髪ロングで、和風アイドルを思わせる灰色の着物風ワンピースを着用した大和撫子っぽい女性だ。

 彼女の愛車と思われるスポーツカーの形をした白いクルマもある。

 ボディキットと固定化されたヘッドライトで分かりづらいものの、車種は三菱のスタリオンだ。

 

 

「凄そうな走り屋が現れましたね……」

 

 彼女とは一体!?

 

 

勝利:加藤虎美

 

 

 うちのGTOは、飯田ちゃんのいるスタート地点に戻ってくる。

 かなさんと共にクルマから降りて、顔を合わせる。

 

 

「ただいま、べっぴんさん」

 

 

「勝ってきたばい、飯田ちゃん」

 

 

「良かったわ……事故るか負けるかで心配していたんだから。虎美はまだ運転が上手くないから」

 

 

 大竹のフォレスターも戻ってくる。

 彼もクルマから降りてきた。

 

 

「お前も来たんか!?」

 

 

「くそ、お前たちも狩れなかったとは……面白くないね」

 

 

 そう言い残すと、フォレスターに乗って去っていく。

 

 

「2度と現れんようにしてほしか」

 

 

 彼に煽られたことのあるうちはそう願った。

 ヘタクソ狩りはもう御免被りたい。

 

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ACT.3 蛍食堂

 あらすじ
 大竹のフォレスターから遅れて、虎美のGTOがスタートした。
 差を縮めるために覚醒技の技を使用して距離を縮めていく。
 前のクルマに近づくと、<片鎌槍>を使って追い抜き、相手がスピンしたこともあって勝利を手にした。


 

 大竹が去った後、かなさんと会話をする。

 

 

「指示していただき、だんだんです。お陰で勝てました」

 

 

 うちは彼女にお礼を言う。

 

 

「中々の走りだったぜ、まだノロマだけど」

 

 

「かなさんに指示されたとはいえ、勝ってしまうとはすごいわ、虎美」

 

 

「いや、それほどでもなか」

 

 

 その時、かなさんの腹の虫が鳴る。

 

 

「お腹空いたなあ」

 

 

「知っている店ありますよ」

 

 

「どこなの?」

 

 

 それをかなさんに教える。

 

 

「蛍食堂という所です」

 

 

「そこに連れていってくれよ」

 

 

 うちと飯田ちゃんはGTO、かなさんはAE101に乗り込んで、出発していく。

 

 

 2台は豊後街道57号線にある、蛍食堂に到着した。

 ここにはよく食事に来る。

 

 

「着きましたよ」

 

 

「どんな店だ? 不味かったら承知しないぜ、ノロマ」

 

 

 店に入ると、年配の女性と少女、少年がいた。

 

 少女は小学生並みに小さな身長であり、髪型は長い茶髪をポニーテールに纏めている。

 眼は垂れ目で、瞳の色は緑だ。

 上半身の服装は、緑のパーカージャケットに下には白のTシャツを着ている。

 下半身は灰色のホットパンツに、白いニーソックスを履いている。

 

 

「ひさちゃん、こんばんは」

 

 

「こんばんは、虎ちゃん」

 

 

 ひさちゃんという彼女のフルネーム森本ひさ子という。

 飯田ちゃんより付き合いは長く、それは幼い頃からだ。

 

 自動車免許を持っているのだが、筆記試験と実技試験に落ちつづけ、昨日ようやく手に入れた。

 

 

「森本さん、こんばんは」

 

 

「こんばんは、飯田さん。見たこつのなかな人がおるばってん……」

 

 

「こん人は庄林かなさんちゅう人ばい。とっても速かな走り屋ばい」

 

 

 ひさちゃんは初対面のかなさんの顔を見る。

 

 

「初めまして、森本ひさ子と申します。よろしくお願い……うわああああああ」

 

 

 近づこうとすると、転倒してしまう。

 かなさんの胸にぶつかった。

 

 

「うわッ!」

 

 

 衝撃で、かなさんは腰を床に降ろしてしまう。

 

 

「すんません、わしゃ運が悪かな者で」

 

 

(標準語訳:すみません、わしは運が悪い者で)

 

 

「ったく、気を付けてよ……」

 

 

 初対面の人に対してまた毒を吐くとは……。

 やれやれ。

 ひさちゃんの運の悪さはギネス級と言われているほどだ。

 

 

「すんません、すんません。わしの運が悪かもんで」

 

 

 ひさちゃんはかなさんに対して何度も土下座をする。

 

 

「分かった、分かったから、もういいから」

 

 

 1つの事故で場の空気が悪くなりそうな時に、年配の女性が口を開く。

 

 

「いらっしゃいませ。あら虎美ちゃん、飯田さん、見知らぬお客さんを連れてきたとね」

 

 

 その人はひさちゃんの祖母・トメさんで、蛍食堂の店長を務めている。

 年齢は60歳だ。

 ちなみにひさちゃんの両親は年に数回しか会えないほど忙しく、彼らに代わって育ててきた。

 

 

「庄林かなさんと言います」

 

 

「初めましてかな。当店のお勧めは?」

 

 

「赤牛牛丼がお勧めばい」

 

 

「じゃあ、それを注文するよ」

 

 

「かしこまり」

 

 

 7分後、注文した料理が1人の少年によって運ばれる。

 

 

「お待ちどさま」

 

 この人はひさちゃんの兄・力也さんだ。

 年齢は18歳、妹を大切にする優しいお兄さんだ。

 

 

「お待たせしました。赤牛牛丼です」

 

 

「いただきます」

 

 

 ご飯を牛肉に挟んで、口に入れる。

 

 

「美味しい! さすが熊本の郷土料理だ」

 

 

 トメさんは何か訪ねてくる。

 

 

「あなたはどこから来たと?」

 

 

 うちもかなさんのことを知らない。

 

 

「鹿児島から来たよ。そこで大学生をやっている。夏休みだけど」

 

 

「そうたい。お隣から来たとね」

 

 

 かなさんは熊本県民ではなかった。

 

 

「うちもいただきます。赤牛牛丼をお願いします」

 

 

「私も赤牛牛丼で」

 

 

 うちらも注文する。

 14分後、その料理が来る。

 

 

 それを食べながら、会話をする。

 

 

「虎ちゃんとかなさんはどうやって出会ったと……」

 

 

「それは……」

 

 

 かなさんと出会った経緯について、ひさちゃんに話す。

 

 

「へぇ、かなさんってすごか走り屋ばい」

 

 

「そりゃ速かよ、運転のアドバイスも上手かったし」

 

 

「それで煽ってきた輩を倒したのよ」

 

 

 突如、かなさんがひさちゃんのある部分を見る。

 

 

「ヒサコン、あんた覚醒技超人か?」

 

 

「て、覚醒技超人!?」

 

 

 確かにうちの目にもひさちゃんの身体から出るオーラが見える。

 色は赤と黄色だ。

 

 

 かなさんは彼女に覚醒技について話した。

 

 

「隕石の影響でこんオーラを手に入れたとか……」

 

 

「とこで、免許は持っているのか?」

 

 

「昨日取りました」

 

 

「クルマは持っているのか?」

 

 

「持っとらんです」

 

 

「買う予定は?」

 

 

「あります」

 

 

「そうか。クルマはスポーツタイプのクルマか?」

 

 

「そうですばい。ホットハッチのクルマを買います」

 

 

「ホットハッチといえば、峠に向いているからな。中々の走り屋になるぜ」

 

 

 ひさちゃんは果たしてどんなホットハッチを買うのだろうか?

 楽しみだ。

 

 

 かなさんはうちらに何か訪ねてくる。

 

 

「ノロマのトラミン、べっぴんさんのサトリンに、運の悪いヒサコン、自分の弟子にならないか?」

 

 

 弟子入りを誘ってきた。

 

 

「断る理由はありません」

 

 

「私も」

 

 

「わしも」

 

 

 かなさんのような走り屋の弟子になれば、速くなれるかもしれない。

 

 

「けど、自分はそんなに甘くないぜ。本当にいいのか?」

 

 

「覚悟は出来とります」

 

 

「じゃあ決まり、ごちそうさま。今度会ったらビシビシ鍛えてやるからな」

 

 

 こうしてうちら3人はかなさんの弟子となった。

 

 

 その出来事から8ヶ月の歳月が過ぎ、日時は2015年4月19日午後11時となる。

 闇に包まれた箱石峠にて、2台の光が走る。

 

 

 前がエアロパーツを身に付けた緑のV35型スカイライン、後ろが黒のGTOが走っていた。

 

 

 後者の運転席には、青髪ロングで青い瞳の少女が運転している。

 それはうちだ。

 

 

 加藤虎美(Z16A)

 

 

 VS

 

 

 名称不明(V35)

 

 

 コース:箱石峠

 

 

 

 うちはV35の横に並び、水色のオーラを纏う!

 

 

「肥後虎ノ矛流<クリスタル・ブレイク>!」

 

 

 横のクルマをガードレールに押さえつけながら、GTOは走っていく!

 

 

「うわあああああああああ!!」

 

 

 クルマを押さえつけられたV35のドライバーは悲鳴を上げる!

 相手は失速し、GTOは前に出た。

 

 

 勝利:加藤虎美

 

 

 バトルを負えると、2台のドライバーがそれぞれのクルマが降りてくる。

 V35乗りの男性と会話する。

 

 

「参ったよ……押さえつけられる走りをしてくるとは」

 

 

「こん走りば……特別な力によるもんです」

 

 

 勝ったうちの所に飯田ちゃんとひさちゃんが来る。

 

 

「虎美、また勝ったのね」

 

 

「虎ちゃん、やるばい!」

 

 

 2人はうちの勝利を祝う。

 

 

 かなさんの弟子になったうちらは箱石峠のバトルで順調に勝利を重ねていた。

 

 

 仮免許だった飯田ちゃんも本免許を取り、ひさちゃんもクルマを購入し、どちらも走り屋デビューを果たした。

 

 

「けど、クルマを押さえつけながら走ったから傷ついちゃったよ。弁償はしてほしいな」

 

 

「ちょ、虎美!」

 

 

「それはいかんたい!」

 

 

 <クリスタル・ブレイク>は相手のクルマにダメージを与える技だ。

 うちは勝ちたいあまり、その技を使ってしまった。

 こんな展開になるとは、やれやれ。

 

 

 そんなことは置いといて、うちの物語はここから始まるのだった。

 

 

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部長決定戦編
ACT.4 部長決定戦



 あらすじ
 大竹との戦いを終えると、かなの腹の虫が鳴る。
 虎美は彼女に、友人・森本ひさ子の家でもある蛍食堂を紹介した。
 ここでご飯を食べると、虎美たちはかなの弟子となる。
 そして8ヶ月の歳月が過ぎた。




 

 4月20日の月曜日。時間は8時丁度。

 阿蘇市にある麻生北高校の駐車場に1台の黒いGTOが停車する。

 そのクルマの運転席から、赤帯に白いセーラー服に黒タイツを履いた青髪ロングの美少女が降りてくる。

 

 

 それはうちだ。

 

 

「着いたばい」

 

 

 降りたうちは鞄を持つ。

 校舎へ向かう途中、道に入るとワインレッドのクーペに跳ねられそうになる。

 うちはそれを避けた。

 体操で鍛えた身体能力を舐めてはいけない。

 

 

 そのクルマからうちと同じく赤帯のセーラー服に黒タイツを履いた桃髪ツインテールの生徒が降りてくる。

 

 

 飯田ちゃんこと飯田覚だ。

 

 

 彼女は顔を赤くしながら降りてくる。

 

 

「危ないわよ、虎美!」

 

 

「すまん飯田ちゃん。学校へ急ぎたかったばい」

 

 

「本当に気をつけてよね」

 

 

 飯田ちゃんが乗ってきたクルマはスバルのアルシオーネSVXというクルマだ。

 生産台数が6000台という少ないレア車だ。

 

 

 このクルマには、見知らぬメーカーのエアロパーツが前後左右に装着されており、リアウイングはWRCで見たことのある本棚を思わせる6枚羽根となっている。

 ボンネットはカーボン素材両サイドには白いフレイムバイナルが貼られている。

 

 

 再び学校へ向かおうとすると、今度は緑のハッチバックに跳ねられそうになる。

 これも自慢の身体能力で避けていく。

 

 

「ったく、気をつけてよねって言ったのに……」

 

 

 また跳ねられそうになったうちを見て、飯田ちゃんは呆れる。

 

 

 緑のハッチバックから、赤帯セーラー服に白いニーソックスを履いた茶髪ポニーテールの生徒が怯えながら降りてくる。

 

 

 ひさちゃんこと森本ひさ子だ。

 

 

「やばか……今日のわしも運悪か」

 

 

「ひさちゃん、おはよう」

 

 

「朝、クルマば脱輪させた挙げ句に……前の窓に看板が降ってきたりして前が見えようになったりした……」

 

 

「ウェヒヒ……そぎゃんこつがあったとか」

 

 

(標準語訳:ウェヒヒ……そんなことがあったのか)

 

 

 相変わらずの運の悪さだった。

 

 

 ちなみにひさちゃんの乗ってきたのはマツダのファミリアGT-Rだ。

 ラリーへ参戦するために作られたクルマだ。

 予告通りホットハッチを買ってきた。

 

 

 そのクルマはラリーカーを思わせるボディキットを装着され、前後左右に赤い帯が巻かれている。

 

 

 学校のチャイムが鳴った。

 

 

「急いで、教室へ行かんと」

 

 

「遅刻するわ」

 

 

「虎ちゃん、飯田さん、待って! はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

 走るうちら3人。

 体力のないひさちゃんは置いていかれる。

 彼女は体育が苦手で、倒れることが多いほどだ

 

 

 2年A組の教室へ着くと、先生が来るまで実習をする。

 担任の小日向佐助先生が入ってくると、席を立って挨拶をする。

 

 

「おはようございます」

 

 

 今日は月曜日なので全校集会がある。

 クラス全員で列を組ながら体育館へ向かう。

 

 

 それを終えて教室に戻り、1時間目の授業が始まったのは9時からだ。

 内容は歴史で、担当は小日向先生だ。

 うちは運動は得意だが、勉強に関しては人並みだ。

 ただし歴史だけは得意であり、特に戦国が好きだ。

 

 

 昼12時、お昼休憩に入る。

 うちと飯田ちゃん、ひさちゃんは昼ご飯を食べていた。

 

 

 弁当のあるものを飯田ちゃんに渡そうとした。

 

 

「飯田ちゃん、椎茸ばい」

 

 

「嫌よ、椎茸は嫌いだわ!」

 

 

 やはり嫌がる表情をしてきた。

 彼女は椎茸が嫌いだ。

 見るだけでも嫌がるほどだ。

 

 

「克服して欲しか。最高のレディになれんよ、ミス麻生北」

 

 

 実は飯田ちゃん、昨年の文化祭で行われたミス麻生北のグランプリとなった。

 彼女の見た目は女のうちでも惚れるほどだ。

 

 

「嫌よ、嫌嫌!」

 

 

 こんな状況を見て、ひさちゃんが提案する。

 

 

「わしが食う」

 

 

 しかし。

 

 

「やっぱ、うちが食う」

 

 

 ひさちゃんの提案を却下し、椎茸をうちの口の中に入れる。

 

 

「結局、なんだったのよ」

 

 

 椎茸はうちの胃袋の中へ入った。

 この件は飯田ちゃんをからかうためにやってしまった。

 

 

 その後もうちらは昼ご飯を食べ、弁当箱を空にした。

 

 

 午後1時10分から5時間目が始まる。

 

 

 そんな校舎の開いた窓に、空から1枚のチラシが降ってくる。

 紙には、クルマのレースと思われる内容が描かれていた。

 

 

 5時間目、6時間目の授業も終えて、3時にはホームルームの時間を迎える。

 3時40分頃に放課後に入ると、生徒たちはそれぞれの部活へ向かう。

 

 

 うちら3人も空いている教室で部活をする。

 

 

「さぁ、部活ば始めるばい」

 

 

 部活と言っても、まだ生徒会に申請していない非公式な物で、名前は自動車部だ。

 ちなみに1年前は体操部に所属していたものの、練習中の怪我を理由にわずか1ヶ月半で辞めた。

 

 

 ひさちゃんが股を押さえながら、口を開く。

 

 

「わしゃ……トイレに行くばい」

 

 

「よかよ」

 

 

 部室を出てトイレへ行く途中の廊下。

 ひさちゃんは何かを踏んでしまう。

 それで転倒してしまった。

 

 

「痛か……」

 

 

 踏んだものはチラシだった。

 その内容を見ると、驚くものだった。

 

 

 ひさちゃんがそれを手に持ちながら、戻ってくる。

 

 

「ただいま、ひさちゃん」

 

 

「虎ちゃん、飯田さん……行く途中でこれば拾ったばい」

 

 

 うちと飯田ちゃんはチラシを読んだ。

 

 

 肥後スプリントレース。

 2015年7月26日に竜門ダムにて開催予定の公道レース。

 熊本県内のみならず、全国からも強豪が集まる予定。

 

 

 その紙に写った人を見て、心が高鳴った。

 赤髪ツインテールに、ジャケットを羽織った白い全身タイツ姿の女性だ。

 

 

「チラシの人物……それはヨタツさんとその愛車である510ブルばい!」

 

 

「この人知っているの?」

 

 

「うちの憧れの人ばい。彼女の活躍を動画で見とった」

 

 

 興奮のあまり、うちはこんな宣言をする。

 

 

「こんレースに参加すっばい!」

 

 

 ただし反対の声が出る。

 

 

「ダメよ、まだ未熟な私たちでは太刀打ちできないわ! このレースは全国から強豪が参加するのよ!」

 

 

「わしら優勝できるんか分からん……」

 

 

 ただしのうちは腹を括っている。

 

 

「開催までは時間はあるけん、それまでに強敵と太刀打ちできるテクニックば作らんと」

 

 

 うちはさらに続く。

 

 

「あんレースへの参加は部活動の1つになる。部として思い出残さんと」

 

 

「参加する際、腕が上がっていなかったら承知しないわよ」

 

 

 こうしてうちら自動車部はスプリントレースへの参加を決めた。

 

 

 午後18時55分には下校の時間に入る。

 

 

 部活に部長がいないのを見て、うちはこんな提案をする。

 

 

「今夜、部長決めるレースせん? 今、こん部活に部長おらんし、一番速かな人がこんん部の部長になるってどう?」

 

 

「いいわ、負けられないわね」

 

 

「わし、勝てるかどうか不安たい。下手くそやし」

 

 

「下手くそなのはうちらも一緒たい。時間は午後8時ばい、その時間に蛍食堂に集合ばい。コースは箱石峠たい」

 

 

 バトルを開催することが決まった。

 

 

 午後8時の蛍食堂。

 うちはいつも着ている、灰色のジャケットに緑のTシャツ、ホットパンツに黄色いカラータイツという服装になっていた。

 

 

「飯田ちゃんが来たばい」

 

 

 ワインカラーのSVXが来る。

 飯田ちゃんが降りてきた。

 彼女は、灰色のパーカーワンピースにピンクのカラータイツという服装だ。

 

 

「来たわよ、虎美」

 

 

 ひさちゃんも蛍食堂から出てくる。

 彼女は、緑のパーカージャケットに灰色のTシャツ、ホットパンツに白いニーソックスという服装となっていた。

 

 

「用意できたばい、虎ちゃん」

 

 

「じゃあ晩御飯を食べるばい」

 

 

 うちらは蛍食堂に入る。

 30分後にはそこを出て、それぞれのクルマの元へ移動しようとすると、1つの光がやってくる。

 

 

「かなさん!?」

 

 

 光の正体はクルマで、車種は水色のAE101型カローラレビンだ。

 ドライバー、かなさんが降りてくる。

 

 

「よぉ、ノロマたち!」

 

 

「かなさんも来たとですね。実は今から部の部長ば決めるために箱石峠に向かうとです」

 

 

「自分も連れて行ってくれないか?」

 

 

「かなさんもですか!?」

 

 

「そうだ。スタートのカウントを数えたりと協力するから」

 

 

「分かりもした」

 

 

 何と、かなさんまで連れていくことが決定した。

 

 

「さぁ、行くばい」

 

 

 4人はそれぞれの愛車に乗り込み、目的地へ出発する。

 

 

 265号箱石峠の中間地点である、217号線と結ぶT字路へ到着した。

 クルマから降り、まずはルール説明を始める。

 

 

「こぎゃんルールにしたか。リーグ方式で行い、一番点数の多か部員が部長となるばい。勝利で2ポイント、引き分けで1ポイント、負けで0ポイントたい。コースはこっかから往路全て使って走行すっばい。以上!」

 

 

(標準語訳:こんなルールにしたい。リーグ方式で行い、一番点数の多い部員が部長となる。勝利で2ポイント、引き分けで1ポイント、負けで0ポイントだよ。コースはここかから往路全て使って走行するよ。以上!)

 

 

「バトルのカウントは自分が行うぜ」

 

 

 ルール説明を終えて、バトルの準備を始める。

 まずはうちvsひさちゃんだ。

 それぞれのドライバーが乗った黒いGTOと緑のファミリアがスタートラインに並ぶ。

 

 

「さぁ、バトル前はドキドキすっばい。勝ってうちが部活ば引っ張ってやらぁ!」

 

 

(標準語訳:さぁ、バトル前はドキドキするよ。勝ってうちが部活ば引っ張ってやるか!)

 

 

 うちはヤル気満々だ。

 

 

「わしゃ、虎ちゃんに勝てるとやろうか?」

 

 

 うちとは対象的にひさちゃんの顔は不安そうだった。

 

 

 カウントを待つ2台はエンジンを吹かす。

 

 

「カウント始めるぞー!」

 

 

 かなさんのカウントが今始まる。

 両手を挙げて、指を広げる。

 

 

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ACT.5 森本ひさ子

 
 あらすじ
 虎美、覚、ひさ子は麻生北高校に登校する。
 放課後、部活を始めると、ひさ子がチラシを拾ってくる。
 その内容は自動車のスプリントレースであり、3人は参加すると決めた。
 下校後、この部に部長がいないのを見て、箱石峠で部長決定戦を開催することとなった。
 まずは虎美とひさ子が勝負する。



 

 加藤虎美(Z16A)

 

 

 vs

 

 

 森本ひさ子(BG8Z)

 

 

 コース:箱石峠往路

 

 

 最初のロングストレートを抜けて、緩い左からのS字に入る。

 ここで両者ともにオーラを纏う。

 ファミリアが赤色で、GTOが茶色だ。

 

 

「<ファイヤー・ボール>!」

 

 

「肥後虎ノ矛流<落ちてくる虎(メテオ・タイガー)>!」

 

 

 ファミリアは火の玉のようなドリフトで、GTOはケツ侵入のドリフトで攻めていく!

 ひさちゃんも中々だったが、ここでの勝負はうちが制し、2台の距離は接触寸前になる。

 

 

「くッ……!」

 

 

 その技で縮められたひさちゃんは、肉食獣に狙われる小動物のような弱々しい顔になっていき、一瞬だけファミリアを失速させる。

 

 

<落ちてくる虎(メテオ・タイガー)>は岩属性の技であり、火/雷属性の彼女には有利な技だ。

 そのため、速度は速くなっていると同時に彼女が受けた精神ダメージも大きくなっている。

 

 

 これはバトルにすごく影響が出そうだ。

 

 

「相手はパワーのあるGTOばってん、こんまま離してやらんと」

 

 

「なんか、大竹より弱そうやと感じるばい……」

 

 

 接触寸前まで縮めたことでそう感じた。

 8ヶ月前に遭遇した彼よりオーラが弱く見える。

 

 

 スタート地点。

 私はかなさんと会話していた。

 

 

「ヒサコンはどんな走り屋なんだ?」

 

 

「悪くない走り屋ですよ、ただ……」

 

 

「何だ?」

 

 

「問題点があります……肝心な所で力を発揮できないことです」

 

 

 それが起きなければ負けないかもしれないけど。

 

 

 視点をバトルに戻そう。

 S字後の直線を通って、緩い左ヘアピンに入る。

 うちはファミリアを狙う。

 

 

「ひさちゃんは大した奴ではなか。追い抜いてやるばい!」

 

 

 銀のオーラを纏い、技を発動させる。

 

 

「肥後虎ノ矛流<片鎌槍>!」

 

 

 槍を振り回すようなドリフトで攻めていく!

 

 

 しかし!

 

 

「いつもより遅か……」

 

 

 速度が乗らなかった。

 原因はうちとひさちゃんの属性にある。

<片鎌槍>は鉄属性の技であり、彼女の雷/火属性とは相性が良くなく、いつもより遅くなっている。

 

 

 一方のファミリアは黄色のオーラを纏う。

 

 

「虎ちゃんば離したる! 儀の蛍流<スライディング・ハンマー>!」

 

 

 ハンマーを振るうかのようなドリフトで攻めていき、うちとGTOを離していく。

 

 

「うわぁ! やるな……ひさちゃん。簡単には抜かさんちゅうこつか……」

 

 

 うちには電気のハンマーで叩かれたような痛みを感じる。

 さらに、今のうちは鉄属性なので、雷属性であるこの技の威力が上がっている。

 

 

 この後は緩いS字を通る。

 引き離された距離はパワーで縮めた。

 

 

 クルマ半分の差となった2台は右ヘアピンに突入する。

 

 

「さっき大技ば使ったから、しばらくは使えんばってん。それば使わず抜いたる」

 

 

 先に攻めるファミリアよりも内側をつき、その前へ出ようとした。

 

 

「行かさんと! 儀の蛍流<儀太夫の装甲>!」

 

 

 だが、銀のオーラを纏ったファミリアがうちのGTOに負けないほど、コーナーの内側を猛スピードで走っていく!

 

 

「次こそで仕掛けるばい」

 

 

 ここを抜けると、直線を通った後に左ヘアピンに遭遇する。

 入った途端、相性で不利だけど<片鎌槍>を使おうとした。

 

 

「何、使えん?」

 

 

 銀のオーラが発生しなかった。

 なぜだ?

 

 

「わしの技、<儀太夫の装甲>は近くにおる後ろの相手に対して、技ば封印する効果ば持つばい!」

 

 

 その技の影響だったのか!

 

 

「わしをいじめから守ってくれた虎ちゃんに勝ったかも……」

 

 

 うちの追い抜きを防いだひさちゃんは勝利を確信する。

 しかし、それが命取りになるだろう。

 

 

 <片鎌槍>は封印されているから、別の技で攻めることにする。

 

 

「ひさちゃんに有利な技で勝負すっばい」

 

 

 <落ちてくる虎(メテオ・タイガー)>を喰らってファミリアが失速する姿と<片鎌槍>の速度が乗らなかったころを思い出した。

 

 

 オレンジのオーラを纏い、コーナーに入る直前にサイドブレーキを使った右ドリフトを披露し、それを維持したまま突入する。

 クルマの向きをコーナーと同じ左へ変える。

 

 

「肥後虎ノ矛流<キャノン・ドリフター>!」

 

 

 慣性ドリフトを発生させた。

 

 

「虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」

 

 

「何、直ドリからの慣性ドリフト!?」

 

 

 ひさちゃんは今のドリフトに驚いているようだ。

 

 

 土属性であるその技はひさちゃんの覚醒技には有利だったため、速度は速くなっていく。

 異次元の走りをするGTOはファミリアのリードを奪う。

 

 

「先行を許してもた!」

 

 

 同時に技を喰らったファミリアは失速する。

 前へ出たGTOとの差はどんどん広がっていく。 

 

 

 その後にある右高速コーナーに入った辺りからひさちゃんの目に写る前のクルマはどんどん小さくなっていく。

 

 

「わしゃ、もう無理たい」

 

 

 ゴールまで追いつくことはなかった。

 

 

勝利:加藤虎美

 

 

 バトルが終わり、虎美のGTOと森本さんのファミリアがスタート時点に戻ってきた。

 2台からそれぞれのドライバーが降りてくる。

 

 

「2人ともお疲れさま……」

 

 

「ひさちゃんに勝ったばい」

 

 

「おめでとう、虎美。あなたが一歩リードよ」

 

 

 私は親友の勝利を祝う。

 

 

「参ったばい……やっぱ虎ちゃんには勝てんかった」

 

 

「何を言っているの、森本さん。次は私との勝負よ」

 

 

 勝って兜の緒締めよと言われているが、今の森本さんには負けてもそれを締めなければ行けない。

 

 

 次の勝負はすぐ始まる。

 私のSVXと森本さんのファミリアが並ぶ。

 

 

 引き続き、かなさんがスターターを務める。

 

 

 

 道の側に3人の少女がギャラリーしていた。

 それぞれ長い黒髪を1つに束ねた少女、青紫の長い髪をツーサイドアップに束ねた少女、胸まで伸びた金髪を三つ編みのお下げに眼鏡をかけた少女だ。

 

 

「バトルの気配がすっばい」

 

 

「ルリ子、面白そうばい!」

 

 

「けど、クルマはまだ来とらんよ」

 

 

 3人の身体からオーラが出る。

 並みの人物ではなさそうだ。

 

 

 覚醒技超人なのか?

 

 

 彼女たちは一体?

 

 

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ACT.6 飯田覚

 あらすじ
 部長決定戦最初の戦い、虎美とひさ子の勝負が始まった。
 前者が勝利し、部長の座へ一歩進んだ。
 次の戦い、覚とひさ子の勝負が始まる。


 

 飯田ちゃんのSVXとひさちゃんのファミリアが戻ってくる。

 2台からそれぞれのドライバーが降りてきた。

 

 

「勝ったのは私よ。前半まで森本さんがリードし、途中までバトルに変化しなかったわ。しかし、中盤で追い抜くと彼女を引き離して勝利したわ」

 

 

 ってことは、うちと同点となったのか。

 

 

「やっぱ、わしゃアカンな……速くなりたか」

 

 

 最下位になったひさちゃんは悔しがっていた。

 他人の耳に聞こえないほど小さな声で呟く。

 

 

「あとは……虎美と私だけね。始めましょ、部長決める決戦を」

 

 

 うちのGTOと飯田ちゃんのSVXが並ぶ。

 既に1勝している者同士だ。

 

 

「最初に言っておくわ、あんたが友達であっても手加減しないわ」

 

 

 飯田ちゃんが窓を開けて啖呵を切る。

 

 

「こちらこそ!」

 

 

 そのままうちも返す。

 

 

 加藤虎美(Z16A)

 

 

 vs

 

 

 飯田覚(CXD)

 

 

 コース:箱石峠往路

 

 

 このレースもかなさんがスターターを務める。

 

 

「それじゃあ始めっぞ!」

 

 

 GTOの6G72と、ツインスーパーチャージャー化されたSVXのEG33が吠える。

 

 

「5秒前! 4、3、2、1、GO!!」

 

 

 2台が一斉にスタートする。

 前に出たのうちの方だった。

 

 

「後から見せて貰うわ」

 

 

 ひさちゃんは大したことはなかった。

 大竹の方が手応えがあったと感じたほどだ。

 

 

 けど、飯田ちゃんは強いかもしれない。

 バトルは後攻を取った方が有利だから。

 

 

「虎美も既に1勝している、けど負けられないわ」

 

 

 後ろを走るSVXに警戒しながら攻めるも、バトルに変化はなかった。

 最初のロングストレートを抜け、緩い左からの右ヘアピンに突入する。

 GTOはドリフト、SVXはグリップ走行で攻めていく。

 

 

 直線からの3つの緩いS字ヘアピンを抜けて、右低速ヘアピンに入る。

 ここもさっきと同じ走りで抜けていく。

 

 

 後ろの飯田ちゃんはうちの癖を見抜いた。

 

 

「虎美の運転って乱暴ね。勢いだけでコーナーを攻めているわ。ブレーキを踏むタイミングが速いし、コーナーの侵入が速すぎるし、外側に出ている走りをしているわ」

 

 

 後攻だとそういうこともできる。

 相手のクルマを見ながら走っているからだ

 

 

 うちにはその癖があったとは感じていない。

 

 

 ここを抜けると直線を通り、左中速ヘアピンに突入する。

 そこに入る直前にフェイントモーションを発生させ、オレンジ色のオーラを纏う。

 

 

「肥後虎ノ矛流<キャノン・ドリフター>! 虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」

 

 

 タキオン粒子で出来たオーラを纏い、速度を上げながらドリフトで攻めていく!

 と、思いきや……タイミングが遅かったのか、GTOは外側へ膨らむ。

 

 

「技ば外したばい!」

 

 

「森本さんの時はマグレだわ。あんたの運転が乱暴だから失敗したのよ」

 

 

 外側のガードレールに接触して技は失敗する。

 タイムロスの影響で、距離は縮まる。

 

 

 さらには……。

 

 

「覚悟はいいわね? <直景の槍>!」

 

 

 銀のオーラを纏ったSVXは槍で刺すように速度を大きく上げていき、前へ出る。

 

 

「飯田ちゃん……速か」

 

 

 技を喰らったうちは槍で刺された気分であり、その苦しさから言葉は出なかった。

 

 

 ここを抜けると直線に入る。

 GTOの方がパワーが上であり、距離が縮まる。

 

 

 途中、左高速ヘアピンに入る。

 そこではVTD-AWDにより4WDとは思えないコーナリング性能が高いSVXに離されるも、後は直線だったため、再び差を小さくしていく。

 

 

 右ヘアピンに入ると、うちらと年齢が近い3人の少女がギャラリーしていた。

 

 

 彼女たちの耳に2つのエンジン音が聞こえてくる。

 

 

「来るばい」

 

 

 光が大きく現れ、その正体である2台のクルマが彼女たちの目に現れる。

 それを見た時、閃光が走る!

 

 

「こんクルマは……2年の加藤のGTOと飯田のアルシオーネSVXばい……」

 

 

 なぜ、それらのクルマを見て、黒髪の少女は表情を変えたのだろうか?

 

 

「バトルしとるとやろうか?」

 

 黒髪の少女が口を開く。

 

 

「そうたいね」

 

 

 続いて、青髪の少女も口を開いた。

 

 

 3人がギャラリーをしている所をうちらは通りすぎると、うちらは左高速ヘアピンへ入る。

 

 

「離れんとよ、飯田ちゃん!」

 

 

「このまま虎美とGTOを離してやるわよ!」

 

 

 果たして部長の座はどの手に!?

 

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ACT.7 部長の座は

 あらすじ
 ひさ子と覚の勝負は後者の勝利に終わり、前者は部長争いから脱落した。
 そして勝てば部長が決まる、虎美と覚の勝負が始まる。
 先行はGTOだったが、途中でSVXに追い抜かれてしまった。
 


 

 虎美と覚のクルマが過ぎていった後も、ギャラリーをしている3人の少女の会話は続いていた。

 

 

「なーして、加藤と飯田はバトルばしとるんやろうか?」

 

 

 黒髪の少女が腕組みしながら、考える。

 

 

「今は公道レースが違法やなかやから、問題視するこつはなかと」

 

 

 青髪の少女ことルリ子が言う。

 

 

「そぎゃん問題やなか。私が考えとるんは、なーして加藤と飯田がここでバトルしとるちゅうこつたい」

 

 

 これには金髪の少女が答えた。

 

 

「趣味でやっとるとちゃう? バトルしたくてやっとるとちゃうんかな?」

 

 

「趣味か……私には趣味に見えんとよ。2人は魂を削っとる走りばしとった。本気のバトルたい」

 

 

 しかも、3人組にはある物が見えていた。

 

 

「ルリ子、GTOとSVXの両方からオーラが出とるの見えたばい」

 

 

「これって覚醒技ちゅうもんばい?」

 

 

 その3人組も覚醒技超人かもしれない。

 彼女たちの身体からもオーラが発生していた。

 

 

 うちらの視点に戻そう。

 

 

 左ヘアピンと右ヘアピンを抜けていく。

 これらの区間でSVXに引き離されるも、飯田ちゃんのある癖を見抜く。

 

 

「飯田ちゃん、一生懸命タイムば縮めようとグリップ走行で攻めとるばってん、これはタイムアタックではなか、バトルたい。曲線の速さはあっちの方が上ばってん、それば速く走ろうとするあまり……立ち上がり加速力が犠牲になっとる」

 

 

(標準語訳:飯田ちゃん、一生懸命タイムを縮めようとグリップ走行で攻めているけどお、これはタイムアタックじゃあない、バトルたい。曲線の速さはあっちの方が上だけど、それを速く走ろうとするあまり……立ち上がり加速力が犠牲になっている)

 

 

 その癖を攻略すれば、バトルに勝てる。

 

 

 高速S字区間に入る。

 ここでGTOの方が有利であり、SVXとの差はテール・トゥ・ノーズとなった。

 

 

「私の底力を見せる時ね」

 

 

 左ヘアピンが来る。

 SVXは青いオーラを纏い、飯田ちゃんは技を発動させる。

 その色は水属性を表している

 

 

「行くわよ! <ウォーター・アタック>!」

 

 

 発射される水の玉のごとく、速度を上げながらコーナーを攻めていく!

 

 

 次の右ヘアピンでも青いオーラを纏い、技を発動させる。

 普段、覚醒技の技は1度使うとすぐには使えないはずだが………

 

 

「私の覚醒技は水属性の技を2回連続で使えるのよ! 山崎ノ槍柱流<アクア・ダイブ>!」

 

 

 これが飯田ちゃんの能力だ。

 水属性限定とはいえ、ややチートに感じる。

 

 

 青いオーラを纏ったSVXは、荒ぶる波のごとく、高速のグリップ走行で攻めていく!

 

 

 2つの曲線で技を使ったSVXはGTOを引き離す。

 

 

 うちも負けずに、右ヘアピンの出口でクルマのリアを振り上げるドリフトをしながら、技を発動させる!

 

 

「追いかけたる! 肥後虎ノ矛流<落ちてくる虎(メテオ・タイガー)>!」

 

 

 スローイン・ファーストアウトのラインを描きながら加速していき、SVXを追いかけていく!

 

 

「虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」

 

 

 この後はGTOに有利な直線だ。

 立ち上がり重視のラインを取ったから、それが下手な飯田ちゃんとの差を大きく縮める。

 

 

「いけー、GTO!」

 

 

 途中でシケインと遭遇し、SVXとの距離を一瞬広げてしまう。

 しかし、そこを抜けると再び直線に入り、差を縮めていく。

 

 

 クルマ1つ分の差となった2台は、左ヘアピンに差し掛かる。

 

 

「残るロングストレートは残り少ないわ! さぁ、追い越せるかしら?」

 

 

 SVXは青いオーラを纏う!

 

 

「<ウォーター・アタック>!」

 

 

 流れる水の玉の如く、高速グリップ走行で抜けていく!

 

 

 うちも突入し、萌葱色のオーラを纏う!

 

 

「こっちやって……肥後虎ノ矛流<真空列速>!」

 

 

 GTOリアを大きく振り上げながら、かまいたちのように攻めていく!

 

 

 ここでの勝負は互角だった。

 

 

「やるわねェ、けど私の能力で水属性の技をもう1回使えるのよ!」

 

 

 短い直線を抜けて、S字ヘアピンに入る。

 そこの終わりでもSVXは青いオーラを纏う。

 使ったのは別の技だった。

 

 

「山崎ノ槍柱流<アクア・ダイブ>!」

 

 

 波の如く、そこを攻めていく!

 距離をクルマ2台分に引き離す!

 

 

「これで、この後の直線でも離せないわ。向こうのコーナーを抜ければ、曲線が続くから私の勝ちは近いわ」

 

 

 うちらのホームコースだから、ここの特徴をよく捉えている。

 ただしこの後、彼女の弱点と<アクア・ダイブ>の使った代償をうちは突くのだった!

 

 

 直線が終わると、左側に135号線への道がある右ヘアピンへ入る。

 

 

「曲線ではこっちが上よ!」

 

 

 ここでSVXはGTOを引き離すはずだった。

 しかし!

 

 

「相手は既に水属性の技ば使ったから、ここでは技ば発動できん。追い抜くチャンスばい」

 

 

 さっき技を使ったことが裏目に出たな、飯田ちゃん。

 うちはGTOに萌葱色のオーラを纏わせる。

 

 

「肥後虎ノ矛流<真空烈速>!」

 

 

 かまいたちを纏ったケツ進入のドリフトでヘアピンを攻めていき、立ち上がりでアウト側からSVXを追い越していく!

 

 

「虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」

 

 

「前に出られた!?」

 

 

 相手は土・水属性だから、それと相性の良い風属性のその技の速度は上がっていた。

 

 

 ここからは長い直線。

 パワーと軽さで上回るGTOはSVXをそのまま引き離していく!

 

 

「抜かれても諦めないわ! ここを抜ければは私に有利な曲線ばかりなのよ」

 

 

 クルマ1.5台分の差となった2台は右ヘアピンに突入する。

 そこ抜けると、次は2連ヘアピンが来る。

 1つ目の右ヘアピンにて、再びトップを狙うSVXは青いオーラを纏った。

 

 

「抜き返してやるわ! 山崎ノ槍柱流<アクア・ダイブ>!」

 

 

 流れる濁流のような速さで、ヘアピンを攻めていく。

 2つ目の左も同じ技を使った。

 しかし今のうちは水と相性の悪い風属性だから、その技の速度は落ちていた。

 

 

 前を走るGTOは萌葱色のオーラを纏う。

 

 

「肥後虎ノ矛流<真空烈速>!」

 

 

 かまいたちのようなケツ進入でSVXを大きく引き離す!

 土・水属性相手に使っているため、速度はさらに上がっている。

 

 

 クルマの2台分の差となり、その後もGTOはゴールまでずっと相手の前を走っていた。

 

 

勝者:加藤虎美

 

 

 バトルを終えた2台がスタート地点へ戻ってくる。

 ひさちゃんとかなさんが迎えてくれた。

 

 

「おかえり、虎ちゃん、飯田さん。どっちが勝ったと」

 

 

「虎美が勝ったわ」

 

 

「と、いうことはトラミンが部長だな」

 

 

「うちが部長か……」

 

 

 こうして麻生北自動車部(仮)の部長が決まったのだった。

 

 

「皆、麻生北高校の部長となったうちばよろしくな」

 

 

 負けた飯田ちゃんは、頬を赤くしながら……。

 

 

「か、勘違いしないでよね! 今回だけあなたに勝利を譲ってあげたから! つ、次は私が絶対勝つんだから!」

 

 

 と言い放った。

 

 

「出たばい、典型的なツンデレ台詞。飯田ちゃんには副部長ばやってもらおうかな?」

 

 

「べ、別に……あなたに任命されたら、やってもいいわよ」

 

 

「これで副部長決定ばい」

 

 

 麻生北高校自動車部副部長も決まった。

 

 

「よろしくな、部長のトラミン、副部長のサトリン」

 

 

「はい」

 

 

 一方、最下位に終わったひさちゃんは

 

 

「わしはもうちょっと速うならんと……」

 

 

 と小さく呟きながら落ち込んでいた。

 

 

 箱石峠の途中にある、214号線と結ぶ場所。

 3台の旧車が並んでいた。

 色と車種はそれぞれ、銀色のケンメリことKPGC110型スカイライン、水色のSA22C型RX-7、銀色のギャランGTOだ。

 

 

 それらの近くに3人の少女がいた。

 さっき虎美と覚の戦いをギャラリーしていた者たちだ。

 3台のクルマは彼女たちの愛車だと思われる

 

 

「後日、2年の加藤ば生徒会室に呼ぶ。この峠でなーしてバトルしとったんか」

 

 

「ルリ子、聞きたか!」

 

 

「本気で聞いたるばい」

 

 

 この3人組と虎美たち自動車部とは後に関わることになる。

 

 

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ACT.8 生徒会からの挑戦状


 あらすじ
 バトルは後半戦に入る。
 覚の弱点を見抜いた虎美はそれを突く。
 麻生北高校自動車部の部長が決まったのだった。


 

 部長決定戦から一夜が明けた4月21日の火曜日。

 時間は朝8時5分だ。

 

 

 セーラー服姿の私は、愛車のSVXと共に友達を待っていた。

 まだ来ないことに苛立ちながら。

 

 

「遅いわね……!」

 

 

 黒いタイツに包まれた右足を地面に叩きながら待つと、見覚えのあるGTOが来る。

 自動車部部長となった虎美だ。

 

 

「虎美、遅刻よ! 何時だと思っているのよ!」

 

 

「すまん、飯田ちゃん」

 

 

 遅刻した理由を聞く。

 

 

「何で、遅刻したのよ?」

 

 

「それは……寝坊したけん」

 

 

「ね、寝坊!?」

 

 

 な、情けないわね!

 

 

「せっかく麻生北自動車部部長になったっていうのに、なぜ寝坊するのよ!」

 

 

 これじゃあ部長になった意味なんかないわ!

 失格よ!

 

 

 緑のファミリアGT-Rが来る。

 森本さんのクルマだ。

 彼女も遅れてきたみたい。

 

 

「おはよう……虎ちゃん、飯田さん……」

 

 

 朝にも関わらず、降りてくると体力を使いきったのか四つ這いになりながら私たちのところへ来る。

 

 

「森本さんも遅刻よ。なぜ遅れたの?」

 

 

「実は朝から箱石峠で走りの練習して……それで疲れたこつが原因で脱輪してしもたばい……遅れたんはそれが原因ばい……」

 

 

「体力と運のなさは相変わらずね」

 

 

 立てるほどの体力のない森本さんは、腕と脚を地面に着ける。

 それらのなさはギネス級だから。

 

 

 後で聞いたけど、朝早く練習したのは私と虎美に負けたのがショックだったからだ。

 

 

 学校のチャイムの音が鳴る。

 

 

「もう席に着かないと行けないわ」

 

 

「そうたい」

 

 

「虎ちゃん、飯田さん、待って……わしゃ歩けん」

 

 

 体力のなくなった森本さんはナマケモノのような歩行をして、2人に置いていかれる。

 

 

 午後4時頃。

 放課後を迎え、うちらは部室に集まった。

 

 

 今何をしているかというと……近所のコンビニで買ったお菓子を平らげていた。

 うちと飯田ちゃんはクレープ、ひさちゃんはパフェだ。

 

 

「むしゃむしゃ……(部活の内容がお菓子を食べるだけでいいの……)」

 

 

 クレープを食べながら、飯田ちゃんはそんなことを考えていた。

 

 

「むしゃむしゃ……(部活らしかこつはやらんとやろうか)」

 

 

 ひさちゃんの場合はこんなことを考えていた。

 

 

 その時、校内放送が流れる。

 

 

「2年生の加藤虎美さん、生徒会室に来てください」

 

 

「呼ばれたばい」

 

 

「何があったの!? 悪いことでもしたのかしら?」

 

 

「わしら……勝手に部活作ったこつば責められるばい」

 

 

 食べていたクレープを部室のテーブルに置き、生徒会室へ向かう。

 

 

 そこに入ると、3人の女子生徒がいた。

 1人は長い黒髪を1つに束ね、えんじ色のカーディガンを着用し、脚は黒いタイツを履いている。

 もう1人はヘアバンドした長い青髪をツーサイドアップに纏め、黒髪の生徒同様に黒いタイツを履いている。

 さらにもう1人は金色の長い髪を三つ編みのおさげに纏め、白いニーハイソックスを履いていた。

 

 

 彼女たちは昨日の部長決定戦をギャラリーしていた少女たちと同一人物だ。

 

 

 彼女たちの名前は知っている。

 黒髪が生徒会長の菊池鯛乃、青髪が副会長の山中ルリ子、金髪が書記の大内胤子だ。

 

 

 うちの顔を見て、生徒会長は口を開く。

 

 

「よく来たな、加藤」

 

 

「校内放送に呼ばれて来ました」

 

 

 話は本題に入る。

 それを聞くと、うちは重い気分となった。

 

 

「加藤……私らん許可なく部活ば作ったらしかな」

 

 

「え!?」

 

 

「申請ば出しとらん、出して欲しか」

 

 

 ひさちゃんがつぶやいた不安が的中した。

 

 

「申請書、持ってきます」

 

 

「後でよか、と言いたかところやばってん、ある条件ば満たさんと部活しては認めんばい」

 

 

 さらに昨日のあれの事も知っていた。

 

 

「あんた……昨日、箱石峠でアルシオーネSVXに乗る飯田とバトルしとったな?」

 

 

「なーして、知っとるんですか?」

 

 

「そこでギャラリーしとった」

 

 

 彼女がギャラリーしていたことにうちは気づいていなかった。

 

 

 バトルしていた理由を尋ねてくる。

 

 

「なーして、バトルしたん?」

 

 

「部活の部長ばバトルで決めていました」

 

 

「なるほど。今ん時代は公道レースするんは悪かこつではなか。そぎゃんこつは問題視せん。新たに建てた部活はどぎゃんもんか?」

 

 

 部活の名を教える。

 

 

「自動車部です。」

 

 

 会長は問題視している部分を挙げる。

 

 

「自動車部か。だが、私がさっきのこつば聞いて問題視しとる点がある。本当に実績ば残せるんか?」

 

 

「残せます」

 

 

 うちは自信を持って答えた。

 

 

 さらにこんな問題点を挙げる。

 

 

「あと、人数が少なか。こん学校では最低でも5人おらんと部活としては認められんたい」

 

 

「5人ですか……」

 

 

 自動車部を部活として認める条件のことで、生徒会長はある提案を持ちかける。

 

 

「我ら生徒会と勝負して欲しか。自動車部全員でな」

 

 

「私の走りから逃げられると?」

 

 

 大内書記が言う。

 

 

「ルリ子たち、速かよ。前に出さんよ」

 

 

 副会長が口を開く。

 

 

 生徒会長がルールを話す。

 

 

「日程は今度の土曜日、コースは午後6時の箱石峠、服装は制服で運転してもらう。勝利すれば、自動車部ば特別に部として認めるばってん」

 

 

「もし負けたら……?」

 

 

「負けたら、同好会扱いや。断っても同じたい。どや、そんルールでよかか」

 

 

 ルールを聞いたうちは。

 

 

「そん話、部員に伝えときます」

 

 

 と言って、生徒会室を去る。

 

 

「勝てるとかな? ルリ子たちにやられると思うとよ」

 

 

「私の覚醒技は強力ばい、会長」

 

 

「そいつらは私たち生徒会の速さば知らんやろう。私はおじいちゃんから教えてもらったテクニックば持っとるからな」

 

 

 3人の身体からオーラが出ていた。

 走り屋としてではなく、覚醒技超人としてのオーラだ。

 

 

 いきなり強敵との遭遇を予感させる。

 

 

 うちは部室に戻ってくる。

 

 

 生徒会から挑戦状を叩きつけられたことを伝える。

 

 

「大変ばい! 生徒会からバトルすっことになったばい!」

 

 

「おかえり虎美、それって本当なの!?」

 

 

「本当たい」

 

 

「その勝負、勝てるの!?」

 

 

 生徒会長の情報を飯田ちゃんは伝えてくる。

 

 

「生徒会長は元レーサーを祖父に持ち、さらには彼からテクニックを教わっているわ。愛車は40年前のケンメリ(※)だけど、そのクルマはスーパーチャージャーを後付けしたVK45(※)に換装し、アテーサET-S(※)を取り付けて4WD化しているのよ。かなり古いからって油断は出来ないわ」

 

 

※ケンメリ……KPGC110型スカイラインの愛称。ケンとメリーの愛のスカイラインろいうCMから

 

 

※VK45……日産が開発したV型8気筒エンジン。フーガやシーマなどに搭載された。スーパーGTやル・マンを優勝した実績がある。

 

 

※アテーサET-S……日産の開発した4WDシステム。普段はFRで走行するも、ある条件下で4WDとなる。

 

 

 確かに相手が強敵だと分かる。

 けど、うちはこのバトルの大事な所を伝える。

 

 

「こんバトルに負けたら、部ではなく、同好会扱いをされるらしか。戦うしかなか」

 

 

「なら、挑むしかないわね。負けたら承知しないわよ」

 

 

「100回ぐらい走らんと、わしら勝てんばい」

 

 

 こうして、自動車部を守るために生徒会に挑むことが決まった。

 

 

 夜9時の箱石峠。

 うちらはここで練習していた。

 

 

 峠を走ってきたひさちゃんとファミリアが往路のスタート地点に戻ってくる。

 ここを30周してきたクルマからひさちゃんが降りてくると、すぐ倒れてしまった。

 

 

 彼女にうちは話しかけようとする。

 

 

「もーしもし!」

 

 

 動かない。ただの屍のようだ。

 本当に体力がないな。

 

 

 走りに積極的なのは分かるけど。

 

 

「そっとしといてあげてよ、虎美!」

 

 

「はいはい」

 

 

 水色のAE101が来る。

 かなさんのクルマだ。

 彼女が降りてくる。

 

 

 同時に残り少ない体力でひさちゃんが立ち上がる。

 

 

「聞いたよ。あんたたち、生徒会と勝負を挑むって?」

 

 

「なーして知っとるんですか?」

 

 

「風の噂だよ」

 

 

 どこで聞いたんだろうか?

 

 

「かなさんはどうして速かなんですか?」

 

 

「走りは師匠から教えてもらったんだ」

 

 

 かなさんの師匠はどんな人だろうか。

 

 

「生徒会に挑むあんたたちに特別メニューを用意した」

 

 

 どんなメニューなんだろうか?

 

 

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ACT.9 大内胤子

あらすじ
虎美は生徒会に突如呼ばれた。
彼女たちは虎美たち自動車部にバトルを申し込んだ。
勝てば部活を認めるという条件付きだった。



 

 

 4月25日の土曜日。

 生徒会とのバトル当日となった。

 

 

 ある豪邸でもそのことで話題となった。

 3人の男女が夕食を食べていた。

 リーダー格と思われる大人びた青年、その仲間と思われる10代後半の少年、紅一点となる少女だ。

 

 

 仲間と思われる屈強な男が知らせに来る。

 

 

「愛羅、麻生北の生徒会がバトルをするらしいぞ!」

 

 

「誰とするんだ?」

 

 

 愛羅と名乗る大人びた男が言う。

 

 

「自動車部と名乗る、麻生北2年の生徒だ。どっちが勝つんだ?」

 

 

「そりゃ生徒会でありんすよ」

 

 

 今度は少女が答えた。

 

 

「あいつらに勝てそうな気配はないっすよ」

 

 

 少年も続く。

 

 

 愛羅はフォークを持って呟く。

 

 

「麻生北の自動車部、復活したのか……」

 

 

 過去にその学校の自動車部は存在していたようだ。

 

 

 バトルの時間。

 箱石峠往路スタート地点よりずっと前にある、妻子ヶ鼻パークヒル前にうちら自動車部(仮)の3台のクルマが停車する。

 今日は学校行事の1つなので、全員制服を着てきた。

 

 

 後から生徒会が乗る3台も停車した。

 車種は、幻のレーシングカーのカラーリングをした灰色のケンメリことKPGC110型日産・スカイライン2000GT-R、青と水色のSA22C型マツダ・サバンナRX-7、銀色のA53C型三菱・ギャランGTOだ。

 3台にはそれぞれ、両サイドには生徒会での順位を表す数字、ASOというステッカーが貼られていた。

 彼女たちも制服姿だった。

 

 

「よく来たばい。バトルは星取り方式の団体で行く。前に言ったばってん、3戦中2勝した方が勝ちとすっばい。まずは誰が行くと?」

 

 

「私が行きます」

 

 

「私が行くばい」

 

 

 トップバッターが両方とも決まった。

 自動車部が副部長の飯田ちゃん、生徒会は書記でギャランGTO乗りの大内胤子で行くこととなった。

 

 

 飯田覚(CXD)

 

 

 vs

 

 

 大内胤子(A53C)

 

 

 コース:箱石峠往路

 

 

 先鋒を努める私はSVX、相手の大内書記もギャランGTOに乗り込み、スタートラインに立つ。

 バトルを待つかのように、2台のエンジンが吠える。

 

 

 スターターは菊池生徒会長が務める。

 

 

「スタートいっくばい! 5、4、3、2、1、GO!!」

 

 

 両者共に勢い良くスタートする。

 

 

「飯田ちゃんが後攻っばい!」

 

 

「パワー的に考えたら、飯田さんが有利やのに、ばってんなーして後攻を取ったばい?」

 

 

 455馬力と4WDのトラクションを使えば、相手をすぐに引き離せるかもしれない。

 だが、バトルというものは油断できないから、後攻を取って様子をうかがいながら走ることにした。

 

 

 スタートラインを出ていく2台の後ろを生徒会の2人も眺める。

 

 

「先行を取ったとか」

 

 

「胤子ちゃんの走り、エグかよ! プレッシャーを与えまくるとよ!」

 

 

 人面岩前の連続S字区間を抜けていく。

 道路の両側が草原となっている自然豊かな地を切り裂くように2台は走っている。

 

 

 しばらくはその区間が続き、ギャランGTOの後ろを煽るようについていく。

 

 

「やっぱパワーはこっちが上ね。けどすぐに抜くわけには行かないわ」

 

 

「中々ついてきとるばい。ばってん、アレば発動するとよ!」

 

 

 緩い左からの右ヘアピン。

 ギャランGTOは軽いドリフト、SVXはグリップ走行で攻めていく。

 

 

 そこを抜けて直線に入ると、先頭を走るクルマは左から右へと、無色透明のオーラを纏いながら蛇行運転を始めた。

 

 

「行くとよ! 悪戯なる精神流<威張りの蛇行運転>!」

 

 

 やや遅めの速度で走行しているギャランGTOを見ると、私の感情は高ぶっていく。

 両手で掴んでいるハンドルを叩きたくなり、苦虫を噛み潰したように歯が痛くなる。

 なんなんだ、あれ?

 

 

 私は前のクルマをすぐに追い抜きたくなる。

 

 

「なんなのよ、アレ!」

 

 

 今ハンドルを握っている手の力が強くなる。

 いらつきのあまりだ。

 

 

 私は悟った。

 あいつはまた使ってくるかもしれない。

 技は1度使うと、すぐにはもう1度使うことができないけど。

 

 

 彼女には特別な何かでまた使えるかもしれない。

 その力で……。

 

 

 左中速ヘアピンを抜けると、ギャランGTOは<威張りの蛇行運転>を再び使ってくる。

 それを見た私のイラつきはエスカレートする。

 

 

「くそゥ!」

 

 

 私は虎美や森本さん以上に気が短い。

 その性格から、こういう技には弱い。

 

 

 イライラが貯まった私は、次の右ヘアピンでブレーキが遅れてしまい、距離が広がってしまう。

 

 

「どう、私の技? 恐ろしかよ!」

 

 

 えげつない戦法だ。

 私は先行を取るべきだと思った。

 それだったら相手を離せたかもしれない。

 

 

 

 

 S字を抜け、左コーナーに入る。

 私とギャランGTOとの差は変わっていない。

 

 

「中々しぶといわね……」

 

 

 S字を通って2連ヘアピンを通過し、シケインを通過する。

 差は少し縮まった。

 

 

「どこで抜こうかしら……」

 

 

 私は5日前に行った、かなさんの特訓を思い出す。

 

 

「さとりん、あんたの走りは面白くねーんだよな……」

 

 

 かなさんはそんな私に対してぴったりなメニューを用意した。

 

 

「さとりん、あんたには常に同じタイムで走ってもらう」

 

 

「同じタイムで走るなんて無理難題ですよ!?」

 

 

 そんな走りはできるのだろうか?

 

 

「無理って言わねーの。あんたには変則的な走りが必要だ。それを身に付けるためにやってもらう。遅すぎても、速すぎてもダメだ。タイムが同じじゃあなかったら、なぜ悪いのか自分で考えこい」

 

 

 こうして、バトル当日までその練習した。

 速すぎたり、遅すぎたりすることもあったものの、同じタイムじゃあなかったことを自分で考えた上で何度も走ることで変則的な走りを身に付けていった。

 

 

 バトルは連続コーナーに突入する。

 それらの区間では距離が変わらなかった。

 

 

 右高速コーナーに入る。

 私はここでギャランGTOを捉えた。

 

 

「今、仕掛けるわ!」

 

 

「なんか来っばい!?」

 

 

 SVXは無色透明のオーラを纏い、光と音、気配を消しながら、獣の如く外側からギャランGTOを狙う!

 消えるラインを描く!

 

 

「山崎ノ槍柱流<スピニング・ラビット>」

 

 

 一瞬で前に出た。

 その追い抜きにギャランGTOは手も足も出なかった。

 

 

「防げんかった……」

 

 

 この後は直線。

 私はSVXのパワーとトラクションを使って、ギャランGTOを引き離した。

 相手はゴールまで抜き返すことはなかった。

 

 

 結果:飯田覚の勝利

 

 

 2台が戻ってきて、それぞれのドライバーが降りてくる。

 勝った飯田さんを労った。

 

 

「おつかれ、飯田ちゃん」

 

 

「序盤で相手は私をイラつかせてきたから、負けると思ったわ……中々の強敵だわ」

 

 

 次は2回戦だ。

 1度勝ったとはいえ、油断はできない。

 

 

「今回の勝利であんたら自動車部に白星が1つ付いたたい。今度は誰がいくと?」

 

 

「ひさちゃん、行くと?」

 

 

「不安ばってん、わしゃ……行くばい!」

 

 

「こっちはルリ子が行くと!」

 

 

 2回戦の主走メンバーがそれぞれ決まった。

 わしはファミリア、副会長はSA22Cに乗り込み、スタートラインに立つ。

 

 

 

 大戸ノ口コーナー。

 あの4人がギャラリーに来ていた。

 車種はそれぞれ、赤いZC32S型スイフトスポーツ、黄色いJZS161型アリスト、青緑のZN6型86、藍色のレクサスRCFの4台が停車していた。

 

 

「自動車部のSVXと麻生北生徒会書記の乗るギャランGTOが通ったらしいけど、どうありんす?」

 

 

 アリストの女が口を開く。

 

 

「両者中々の走りだった。けど何か物足りないな……」

 

 

 返したのは、スイスポ乗りの愛羅だった。

 

 

「次も来るらしいッスよ。あと2回やるらしいッス」

 

 

 ZN6乗りの少年も口を開く。

 

 

「バトルはそれだけじゃあないからな……」

 

 

 RCF乗りの屈強な男も続く。

 

 

「見せてもらうぞ……今の麻生北の走りをな。俺たち麻生南のサウス4に……」

 

 

 彼らはなぜ麻生北の走りを見に来たのか?

 その4人組とは一体!?

 

 

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ACT.10「山中ルリ子」


 あらすじ
 生徒会との戦いの日がやってきた。
 トップバッターは自動車部が副部長の覚で、生徒会が書記の大内胤子だ。
 当初、覚は大内の精神攻撃に苦悩するも、前半の終わり辺りで彼女を追い抜いて勝利を手にした。
 次は部員のひさ子と副部長の山中ルリ子の対決だ。



 

 

 森本ひさ子(BG8Z)

 

 

 VS

 

 

 山中ルリ子(SA22C)

 

 

 コース:箱石峠往路

 

 

 前回同様、生徒会長がスターターを務める。

 

 

「カウント行っくばーい! 5、4,、3、2、1、GO!!」

 

 

 2台が一斉にスタートする。

 4WDのトラクションと390馬力のパワーを生かして、わしのファミリアは先行する。

 

 

「ひさちゃんが前を取ったたい。2台とも同じマツダばってん、それぞれレシプロ(※)とロータリー(※)を積んどるばい」

 

 

 ※レシプロ……ピストンの往復運動を回転運動に変換することでエネルギーを得るエンジン。 現在の自動車においての主流となるエンジン。

 

 

 ※ロータリー……ピストンを必要としない回転動機構による容積変化を利用するエンジン。現時点でマツダ車しか量産されていない

 

 

「油断できないわ。バトルは後攻が有利よ。私みたいに途中で仕掛ける可能性はありよ」

 

 

 2台がスタート時点を去ると、生徒会の2人は天(そら)の月を見上げる。

 

 

「ルリ子は月に強かドライバーたい。それから力ば得ると無敵ばい」

 

 

「そしてSA22Cは1tば切っとるけん、後半の下りまで持ちこたえてほしか」

 

 

 人面岩前のS字を抜け、しばらく上り坂の高速区間が続く。

 4WDでパワーのあるわしのファミリアがSA22Cを引き離していく。

 

 

 S字からの右ヘアピン。

 どちらもドリフトしながら通過し、この後の直線で相手を引き離していく。

 

 

「中々腕とクルマたい。マツダのレシプロ車もやると!」

 

 

「かなさんから言われたこつ、できとったら……」

 

 

 5日前、わしはかなさんからこんな課題が出された。

 

 

「ひさこんは体力がないあァ。そこで自分はメニューを用意した」

 

 

「どんなんですか?」

 

 

「筋トレをやってもらう。まずはスクワット50回、腕立て伏せ50回だ。クリアする度に数を増やしてもらう」

 

 

「わしにできるとですか?」

 

 

「レーサーなら皆やっている。鍛えないと速くなれない」

 

 

 クルマは速度が乗ると、Gがかかる。

 それに耐えるため、プロのレーサーは筋トレをしている。

 筋力を鍛えれば、ハンドルを軽々と曲げたり、アクセルやブレーキを強く踏むこともできる。

 

 

 わしはかなさんが考えたメニューをこなした。

 やる度に回数を増やしていく。

 運動が苦手なこともあり、何度か筋肉痛になった。

 

 

 バトルは左高速コーナーから右中速ヘアピンとS字区間に入る。

 ファミリアは低速トルクが細いドッカンターボなため、ヘアピンが苦手だ。

 軽量なSA22Cとの距離が縮まる。

 

 

「コーナーでルリ子の方が上たい」

 

 

 スピードをほとんど落とさず走る左中速ヘアピンではドッカンターボによるターボラグ(※)を弱らせることが出来たものの、それでもSA22Cが少しずつ接近してくる。

 

 

※ターボラグ……ターボが動くまでの時間の遅れ

 

 

 連続する緩いS字。

 そこでは相手を引き離すも、後の2連続ヘアピンで差は元通りになる。

 

 

「とつけむにゃ、次ヘアピン来たら技ば発動させったい」

 

 

 高速左コーナーからのシケインに突入する。

 SA22Cを離しながら、ファミリアに黄色いオーラを発生させる!

 

 

「儀の蛍流<スライディング・ハンマー>!」

 

 

 ハンマーを振り回すようなドリフトで攻め、距離を引き離していく。

 差はクルマ3台分に離れた。

 

 

「SA22Cが小さく見えとる」

 

 

 後ろのクルマを引き離しているという安心感がある一方で、わしは怖かった。

 縮められるかもしれない、さらには抜かれるかもしれないという恐怖が襲いかかった。

 負けたら皆に迷惑をかける。

 

 

 次はドッカンターボのファミリアが苦手な連続コーナーだ。

 ここで技を使って引き離した差は、みるみる縮まっていく。

 

 

 そこを終えると直線区間に入る。

 わしの方が有利な区間だ。

 しかし、後ろの副会長は天(そら)を見上げていた。

 

 

「中々やるばい。ばってん、ルリ子、こっから本気ば出させてもらうたい」

 

 

 SA22Cのボディは黒いオーラを纏った。

 

 

「月よ、ルリ子に七難八苦ば与えたまえ! 瑠璃色の流星流<七難八苦>!」

 

 

 忠臣・山中鹿之助幸盛(※)の如く、月に願い事をした。

 

 

 ※山中鹿之助幸盛……戦国武将。尼子家臣。主家を守るために月に願い事をした創作が存在するほどの忠臣。

 

 

 右高速コーナーを凄まじいコーナリング速度で抜けていき、ファミリアの差を一瞬とはいえ、大きく縮める。

 

 

「なんなん、そんオーラ!?」

 

 

 わしには驚きを隠せなかった。

 覚醒技にはそんな力があるとは。

 すごい技だ。

 

 

 この後もファミリアが得意な直線だが、それらを抜けると、緩いシケイン、左高速からのS字区間に入る。

 

 

 後ろのクルマとの距離を離せず、右ヘアピンで大きく縮められ、左中速コーナーでテールトゥノーズになる。

 さらには、後半から下りになっており、軽量なSA22Cの車速が上がっていた。

 

 

「追い付かれた!?」

 

 

 この後はファミリアが得意な右高速コーナーを交えたとはいえ直線区間だが、ほとんど離せず、左中速コーナーで再びテールトゥノーズになる。

 短い直線を抜けて、左高速コーナーに入るとSA22Cがファミリアのリアフェンダーに割り込む。

 S字の前半に入ると、ラインがクロスするかのように、相手のクルマが内側に入っていき、ついに前へ出てしまった。

 

 

「お先に失礼!」

 

 区間の後半では距離が開き、緩いS字からのヘアピンに入るとさらに差がついてしまった。

 

 

 完全にわしの負けだ。

 その後は副会長のSA22Cに追い付くことはなかった。

 

 

 結果:山中ルリ子の勝利。

 

 

 バトルした2台がスタート地点に戻ってくる。

 ファミリアから降りたわしは、倒れ込む。

 激しいバトルしたことや、朝筋トレをしたためにすごい体力を使ってしまったからだ。

 

「ごめん……虎ちゃん、飯田さん」

 

 

「ドンマイ、森本さん。あなたにしては頑張ったわ」

 

 

「次がうちの番やな……泣いても笑っても自動車部の運命がかかっとる。運命に勝ってみせたる!」

 

 

 これで五分と五分となった。

 負けたら認めてくれないだろう。

 

 

「1対1たいね……」

 

 

「私が最後の砦ばい。勝負は最初から分かっとる。こっちが勝ちや。あいつには私に勝てん」

 

 

 部長と会長の対決となった。

 

 

 うちの乗るGTOと会長の乗るケンメリがスタートラインに並ぶ。

 自動車部の運命がかかる最後の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 大戸ノ口コーナー。

 4人が不満げな顔をしていた。

 

 

「SA22Cの方は悪くなかったが、ファミリアGT-Rは最悪の走りだった。余裕がない人の走りだった。ラインが乱れている」

 

 

 愛羅はひさ子の走りにがっかりしていたようだ。

 

 

「そうっスね。見ている僕も退屈だったッス」

 

 

 ZN6乗りも同じ意見だ。

 

 

「いよいよ最終戦らしいでありんす。どっちが勝つでありんすか?」

 

 

 アリスト乗りの女が最後の戦いに興味津々だ。

 

 

「俺的には会長の方が勝ちそうだな」

 

 

 RCF乗りの男はこう予想した。

 

 

(何か、この後はすごいバトルになる可能性がする。GTO乗りの部長はすごい雰囲気がするからだろうか?)

 

 

 愛羅はこう考えていた。

 彼の身体は震え始めていた。

 

 

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ACT.11 菊池鯛乃

 あらすじ
 第2戦はファミリアGT-Rに乗る森本ひさ子とSA22C型RX-7に乗る副会長の山中ルリ子が戦った。
 <七難八苦>を発動させたルリ子はひさ子を後半で追い抜き、そのまま引き離して勝利した。
 これで1対1、残るは部長と会長の対決だけとなった。



 

 加藤虎美(Z16A)

 

 vs

 

 

 菊池鯛乃(KPGC110)

 

 

 コース:箱石峠往路

 

 

 トップ同士の戦いが始まろうとする時、誰かがスターターをするのか決める。

 今までは会長が務めてきた。

 

 

「誰がスタートの合図を努めると?」

 

 

「誰やろう……」

 

 

「私が努めます!」

 

 

「飯田さん!?」

 

 

 飯田ちゃんが手を上げた。

 スターターを努める彼女は2台の前へ出る。

 

 

 カウントを数え始めるのを待つGTOとケンメリは、吼えるかのようにエンジン音を響かせる!

 

 

「カウント行きまーす! 10秒前!」

 

 

 2台はスタートを吼えながら待つ。

 

 

「5、4、3、2、1、GO!!」

 

 

 2台は勢いよく飛び出す。

 加速は互角だ。

 

 

「さすがアテーサET-SにVK45とスーパーチャージャーで武装したケンメリね。460馬力ある虎美のGTOと肩を並べているわ」

 

 

「虎ちゃん、負けんといて。負けたら終わりたい」

 

 

 車重は1400kgのGTOより1150kgのケンメリの方が軽かったものの、前者の方が前に出た。

 

 

「虎美が前に出たわ!」

 

 

「ばってん……ヤバかこつが起きそうばい」

 

 バトルは後攻の方が有利。

 部員2人の顔は不安を過るものだった。

 2台はハイスピードでV6とV8のサウンドを流しながら、4人の前を去っていく。

 

 

「あんGTOは会長に斬られる覚悟できとる?」

 

 

「ルリ子、斬られると思とるばい!」

 

 

 左高速コーナーを抜け、ロングストレートを駆け抜ける。

 車重の軽いケンメリが接近する。

 人面岩前の3連続S字に入る。

 そこではGTOが引き離した。

 

 

 短い直線を通ってS字からの右ヘアピン。

 サイドブレーキを引き、ここで方向とは逆に進むドリフト、フェイントモーションを発生させる。

 

 

「これでも食らえ! フェイントモーション!」

 

 

 後ろのケンメリも続いてドリフトをする。

 生徒会長はGTOの動きを見る。

 

 

「あんGTOのトルク配分はフロントが20、リアが80か。ドリフト重視にセッティングされとる」

 

 

 GTOのトルク配分をリア寄りにすることでFR並みの旋回性能を得ている。

 通常よりドリフトすることがたやすいものになっている。

 

 

 直線を駆け抜ける。

 ケンメリが接近してくる。

 左高速コーナーを2台ともグリップ走行で通過し、右中速コーナーはドリフトで通過する。

 セッティングの影響か、うちは生徒会長を曲線で引き離している。

 

 

「やるのう。中々のコーナリングたい」

 

 

 生徒会長はうちのドリフトを認めたようだ。

 だが、油断はできない。

 彼女は仕掛けてくるかもしれない。

 

 

 S字を抜け、左ヘアピンをドリフトを通過する。

 さらに来る2つのS字をグリップを抜け、後に来る2連ヘアピンをドリフトで抜け、シケインはグリップ走行で通過する。

 

 

 グリップ走行を使った所では離せなかったものの、ドリフト走行を使った所では離せなかった

 

 

「やるのう。ばってん、今ん私の走りは切れ味ば押さえとる」

 

 

 生徒会長の力がもうすぐ発揮されるかもしれない……。

 うちの警戒は強くなる。

 後半で下手すれば……。

 

 

 9連続コーナーに入る。

 全てをドリフトで抜けていき、トルク配分を後輪に寄せたコーナリングでケンメリを引き離していく。

 

 

 距離はクルマ1.5台分だ。

 ここを抜けると直線に入り、相手が距離を縮めてくる。

 

 

「中々ん走りばってん、ここから本当の切れ味ば見せたる! 私の剣ば見てみぃ!」

 

 

 スタート地点。

 1台のAE101が来て、ドライバーが降りてくる。

 かなさんだ

 

 

「見守り来たけど、バトル中か。現在の戦績は?」

 

 

「五分五分です」

 

 

「あと1回で運命が決まるな」

 

 

 かなさんは5日前の特訓について思い出す。

 虎美にしたことを言う。

 

 

「トラミンには特にアドバイスをしていない。あんたら2人に比べると大した問題点が思いつかないと感じたからだ。ドリフトが得意だから、全てのコーナーをそれで抜けろって言ったのかな?」

 

 

「それだけで大丈夫ですか?」

 

 

「たくさんやったから大丈夫だろうか?」

 

 

 この練習は私と交互にした。

 それだけすれば生徒会長に勝てるのだろうか?

 先行した虎美だが、今は抜かれてないだろうか?

 

 

 私には良くない予感がした

 

 

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ACT.12 自動車部の運命

あらすじ
 部長と生徒会長の戦いが始まった。
 虎美はフェイントモーションといったドリフト技を駆使して菊池から逃げていく。
 しかし、相手は序盤のバトルでは走りの切れ味を押さえていた。


 

 私には、虎美の練習には疑問が残った。

 なぜドリフトだけをするのか?

 

 

「どうして虎美の練習はドリフトだけなんですか? ドリフトを極めて速くなれないはず……」

 

 

 タイムを削るにはグリップ走行が有利だ。

 ドリフトはギャラリーを魅せるただのパフォーマンスにすぎない。

 それだから、私の走りはグリップ主体としている。

 けど、かなさんはそれに答えた。

 

 

「得意分野を伸ばしたかったからだ。バトルで部長に決まった彼女はあんたたち3人の中では一番速い。得意な部分を伸ばしてさらに走りを磨いてほしかったからだ」

 

 

「それが理由だったんですか」

 

 

 けど、得意分野をさらに伸ばしただけで勝てるのだろうか……。

 相手は遅くないかもしれない。

 この学校の生徒会長で、実力は学校で一番かもしれない。

 走り屋としてのオーラがものすごかった。

 かなりのプレッシャーを感じた。

 

 

 虎美……私を倒したあなたが負けたら許さないんだから!

 

 

 2台はロングストレートを突っ走る。

 緩い右コーナーを抜けると、またロングストレート。

 

 

 ケンメリが接近してきて、差はクルマ1台分になっていく。

 

 

 せっかく連続コーナーで縮めた距離が水の泡に消えていく。

 コーナーで離しても、直線では縮められる!

 

 

 こっから下り坂になり、軽いケンメリの車速が上がっていく。

 かーなーりの苦戦が予想される。

 自動車部はうちが守る!

 

 

 2台はシケインへ突入する。

 どちらもグリップ走行で通過した。

 

 

 直線からの連続S字セクションに突入する。

 それらを抜けながら、生徒会長は次のことを考えてくる。

 

 

「次のヘアピンで仕掛けっばい。あれば発動させっと」

 

 

 いよいよ来るか!

 前にいるうちには相手の気持ちが読み取れなかった。

 

 

 S字からの右ヘアピン。

 うちはGTOにフェイントモーションをさせて、進入させていく。

 生徒会長のケンメリの方は、刀のように鋭いオーラを発生させていく!

 

 

「いくばい……タイの刃流<袈裟一刀両断>!」

 

 

 アウト側からうちのGTOを切り裂くようにドリフトしていき、立ち上がりで前に出る!

 

 

「ちっ……リードば取られてもた」

 

 

 抜かれたショックで舌打ちをした。

 生徒会長を前に出したら、負けるかもしれない

 うちにはそう感じた。

 

 

 その後、直線でケンメリに離され、差は0.5台分になった。

 左中速コーナーでのドリフトで縮めるも、その後の右高速コーナーを交えた直線でまた離され、クルマ1台分の差になった。

 

 

「技ば使うか……ばってん」

 

 

 覚醒技にはこんなデメリットがある。

 それは体力を激しく消耗することだ。

 いくらうちに体力があるとはいえ、使いすぎると後で身体が故障しやすい身体になる。

 しかもうちは成長途中の10代だ。

 この年齢で使いすぎると、故障を起こす。

 

 

 これはかなさんから教えてもらった。

 彼女は「覚醒技をたくさん使用するな」と言ってきた際、「バトルが不利になる」と反発したが、説明されたときはやむを得ず、従うことにした。

 

 

 そういえば、相手は技をこのバトルで1回しか使用していない。

 体力を温存しているのだろうか?

 

 

 右中速コーナーを通り、緩い左からのSクランクを通り抜ける。

 差は広がっていく。

 1.3台分の差になった。

 

 

「ちっ……!」

 

 

 うちは焦り出す。

 このまま離されるなら、どうすればいい?

 

 

「どぎゃんすれば逆転できると!? 追い付けると?」

 

 

 逆転できる方法が思い付かない。

 絶体絶命だ……。

 あ、今思い付いた!

 

 

「かなさんとやったあれば使えば……」

 

 

 全てのコーナーをドリフトで抜ける練習をしたのだった。

 その走りはうちの得意技だ。

 自分を信じる走りをしよう。

 

 

「うちはうちば信じる!」

 

 

 それで追いかけてみるか。

 

 

 軽いS字からの左ヘアピンに入る。

 

 

 フェイントモーションからのサイドブレーキドリフト、次の右ヘアピンは体勢を変えたドリフトで突っ込んでいき、ケンメリに接近していく。

 

 

 この後は直線で、距離は離されるものの、2連続シケインでフェイントモーションを使ったドリフトを披露することで差は0.5台分差に追い詰めた。

 

 

「なるほど、ドリフトすっこつで差ば縮めてきたと。ばってん、前には出さんつもりや」

 

 

 右に緩く曲がった高速セクションで差は広がるも、左直角コーナーのドリフトでケンメリに接近し、リアフェンダーの左側に食い込む。

 

 

「問題は相手のアテーサET-Sとスーパーチャージャーやな……」

 

 

 それらをどうにかしなければ……。

 この2つの対策をすれば勝てるかもしれない。

 いよいよあれを使うか……。l

 

 

 大戸ノ口の右コーナー。

 4人組と4台のクルマがあった。

 

 

 彼らの耳に2台のエンジン音が聞こえてくる。

 

 

「来たぞ!」

 

 

 リーダーである愛羅が迫ってくる2台の光に注目する。

 

 

「ケンメリが先ッス!」

 

 

「どう攻めるでありんす!?」

 

 

 突如、ラインをクロスするかにようにGTOがアウト側からイン側へ移る!

 そのクルマは氷のように冷たい水色のオーラを纏った!

 

 

「氷属性の覚醒技だ!」

 

 

 RC Fの男が注目する。

 コーナーの立ち上がりでケンメリのフロントフェンダーに軽く突っ込む!

 

 

「肥後虎ノ矛流<クリスタル・ブレイク>!」

 

 

 ぶつけられたケンメリは挙動がふらつき、サイド・バイ・サイドで2台は並んだ。

 

 

「やるのう、追い詰められた気分たい」

 

 

 いつも冷静な生徒会長の表情に焦りが見え始めた。

 

 

「スーパーチャージャーの音がせん!? それにトラクションが落ちた感じがすっばい!?」

 

 

 なんと、<クリスタル・ブレイク>の効果でスーパーチャージャーとアテーサET-Sが停止したようだ!

 この技は覚醒技の力で相手のクルマのパーツを冷凍させ、機能を停止させる効果を持っているのだ。

 2つを停止させられたケンメリは戦闘力が落ちてしまう!

 

 

 そして、左中速コーナーでGTOを前に出してしまう!

 

 

「先をとられてもた……これぐらい追い詰められたんははじめてばい!」

 

 

 ようやく逆転できた。

 あの生徒会長の前へ出た!

 ここに来るまで何度骨を折ったのだろうか……。

 後はこの体勢を維持すれば……。

 

 

「この勝負、勝てるばい!」

 

 

 しかし、凍っていたスーパーチャージャーとアテーサET-Sが動き出す。

 効果は一時的だった。

 失った力が戻ってきた。

 

 

「あん音は……スーパーチャージャー!? 動き出したと!?」

 

 

「私は負けんけん。GTOば刃で切り裂く!」

 

 

 再び逆転してくる可能性があるかもしれない。

 

 

 2連続ヘアピンを通過してドリフトで引き離し、S字からの左コーナーと右コーナーをフェイントモーションで抜けていく。

 差は広がるも、直線が来たらどうしよう。

 

 

 幸い、曲線は続く。

 連続左コーナーと3連続S字区間、左高速ヘアピンを抜けていく。

 

 

「コーナーが続くならここで勝てるばい!」

 

 

 ここでうちの有利が終わった。

 S字高速セクションに入る。

 ケンメリはスリップストリーム(クルマの後ろに入ることで空気抵抗を減らして急加速する)を使っていき、GTOを追い抜いていく。

 

 

「直線で追い抜くとは不本意ばってん、残り少ないけん前へ行かせてもらう」

 

 

 最後の最後で逆転された。

 自動車部が同好会になる……。

 

 

 衝撃的な抜かれ方をした。

 大柄なGTOのボディを使ってブロックすれば良かった。

 

 

 後攻のまま右コーナーを抜けると、うちの負けは確定した。

 バトルは1対2、生徒会の勝利に終わった。

 自動車部の活動は認められなかった

 

 

 結果:菊池鯛乃の勝利。

 

 

 うちら2台はスタート時点に戻ってくる。

 ドアの前に飯田ちゃんが険しい顔で立っている。

 GTOから降りると、お腹をめがけて涙目でグーパンしてきた。

 

 

「どうして負けたのよ! これで自動車部の活動を認められないじゃあない!」

 

 

「ごめん飯田ちゃん……うち、負けたもた。ぐは……」

 

 

「なに笑っているのよ! 自動車部が死んだのよ! 同好会になるのよ、規模が縮小されるのよ!」

 

 

 飯田ちゃんは元空手部だから、パンチは痛かった。

 もうちょっと手加減してよ。

 後ろから生徒会長がやってきた。

 

 

「いや、死んでなか」

 

 

「え?」

 

 

 衝撃の一言を発してきた。

 

 

「部長の走りは中々やった。私は追い詰められたばい。やけん、部ば認める」

 

 

「そうなんですか!? だんだんです!」

 

 

「良かったじゃあない、虎美! 部が同好会にならなくて済むわ!」

 

 

「わしら安泰ばい……うわ!」

 

 

「ひさちゃん、相変わらず運が悪かね」

 

 

「虎美……!」

 

 

 こうして自動車部は部として特別に存続することになった。

 ひさちゃんは喜びのあまり転んでしまった。

 

 

 部は認められたが、勝てば良かったと考えている。

 もっと腕を上げないと……!

 複雑な気分だ。

 どうしたらいいやら。

 

 

「加藤」

 

 

「なんですか!?」

 

 

「プレゼントを用意したる。明後日学校が終わったらな」

 

 

 その正体は例の時間になってからだ。

 

 

 三戸ノ口コーナー。

 4人がさっきのバトルについて語っていた。

 

 

「いいものが見れた。あのGTOを追い抜きを見られるとはな。バトルをするのが楽しみになった」

 

 

「勝負したくなったッスね」

 

 

「久しぶりに闘争心が沸いたでありんす」

 

 

「俺ら麻生南自動車部の実力を見せつけないとな」

 

 

 4人のオーラがわき出る。

 特に愛羅の光るオーラは4人の中では強力だった。

 

 

「来いよ麻生北の連中! 特にGTO乗りは俺がぶっ潰す。そのクルマを見ると叩き潰したくなるんだ!」

 

 

 愛羅がGTOに対するそんな感情を持つとは一体!?

 

 

 4月27日の月曜日、午後4時40分。

 学校の授業を終えたうちは生徒会長に呼ばれた。

 

 

「こん建物が自動車部の部室ばい。ここはクルマ屋だったばい。これからはこれば使ってもらう」

 

 

「むしゃん豪華な部室たい」

 

 

 ここがうちらの根城か。

 部活動するのが楽しみになった。

 これからどんなことをするのだろうか?

 

 

 生徒会長の脳裏にはこんなことを考えていた

 

 

「加藤にある仕事をやってもらわんとな……」

 

 

 その内容とは一体!?

 

TheNextlap



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