C.E転生〜流浪の技巧ノマド〜 (rOOd)
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PROLOGUE

どこにでもいるアラフォーニートの終生は誰もが
どこかで聞いたことがある最後

終わった人生に襲いかかる不幸とは・・・無能天然
駄神さまの勘違いによる職権乱用

キャンセル不可の転生行き、仕方が無いので転生
直前に強引な取引での転生特典を取得

アラフォーニートの新たなる人生は異世界・・C.E
いや、機動戦士ガンダムSEEDの世界を生き抜く。



        【西暦21世紀】

          [日本]

 

 オレはニートだ。アニメ、マンガ、ラベルなど

の二次元作品が大好きで、日本のどこにでも生息

する30代後半のニートだ。

       【PROFILE】

 

[氏名]   ????

[職種]   自宅警備員

[生年月日] 6月26日

[血液型]  B型

 

・・・パソコンのカレンダーを見てふと気づいた。

 

「・・・あぁ・・・今日、オレの誕生日だった?・・・」

 

 確か・・・今年で40歳になるはずだが・・・?

 引きこもりの無職には・・・実感も湧かない。

 そんなことよりも猛烈に腹減ったから、住み家

に食い物がないかと探した。

 だが、ゴミ家のどこを探しても食い物がなく・・・

仕様がないので、コンビニで飯、ついでにケーキ

も買おうと外出した。

 生憎、外は豪雨でさっさと用事をすまして帰ろ

うした際、どこぞの物語によくある最悪の場面に

鉢合わせた!?

 青信号が変わった横断歩道を渡る両手を繋いて

歩いていく母親と子供たちに信号を無視してきた

速度オーバーのスポーツカーが突っ込んでいた。

 オレは咄嗟に体が動き、手荷物を捨て、親子を

突き飛ばし、そのまま車が衝突した。そこから

1m以上先まで吹きとび、地面に擦られながら止

まった。

 

「・・・・・があ・・・ハア、ハ…ァ……」

 

 最初は何も分からなかったが、次第に感覚が戻

ってきて感じたのは・・・

 血を吐いた?!

 息ができない?!

 やがて視界がぼやけ・・・。

 段々意識が薄えていき、全身の感覚が・・・・。

 

 ・・・・・これが瀕死状態か?・・・・・。

 

「なに? どうしたの!?」

「アンタ、大丈夫ですか!?」

「今、救急車を呼びます!」

「おい、あんた、聞こえるか!?」

「気をしっかり持て!? お~い!!」

 

 事故直後は辺りが騒然となり歩道にいた通行人

たちが集まってきて・・・

 オレを心配しながら、助けようとするのは聞こ

えた・・・。

 けど、救命処置される前に呼吸も脈も弱くなっ

ていき、オレは目の前が見えなくなった・・・・・・・。

・・・・・そんな感じでオレは天命を全うした・・・・・。

ハァ〜、我ながら・・・呆気ない人生だった・・・?!

 

 まぁ・・・・・アニメやマンガのような最後・・・・・。

・・・ただアニオタの陰キャラであるオレにとって

・・・なんとなく悪くない死に様かな・・・・・。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

         【????】

         [????]

 

・・・気がついたら、オレは白いモヤが見える空間?

みたいな所に立っていて、なんとなく察した・・・。

 

(・・・ああ、ここが死後の世界ってやつ?・・・)

 

 ハ〇レンか? もしくはコ〇ドギ〇ス?で見た

ことがある神様の聖域の場面かと最初に思ってし

まい、あ然としていた。

 この時、思わず口走ってしまった言葉で・・・

オレは激しく後悔した。

 

『一番好みはC.E ・・・・・コズミック・イラだな』

 

 最初は頭の中で何が感じ、それが段々と聞こえ

てきて、声?だと気づいた。

 

(もしもし?)

 

 何だ?この頭の中で響く感じは?

 

(もしもし?)

 

 どこの誰だか知らんけど、うっるさいな?

 ヒトが最後の余韻に浸っているのによ?

 

(お~い、もしもし?返事してください?)

 

 声をかけてくる方に体を向け、返事を返す。 

 

『なんだよ?』

 

 そこにはメガネをかけたキャリアウーマンらし

き女性?が宙に浮いていた。

 

(あなたが望む転生先は機動戦士ガンダムSEEDの

 世界でよろしいでしょうか?)

 

 突然なことでオレは思わず、“は?”と間抜けな

声を出して、キャリアウーマンらしき女が再度

尋ねてきた。

 

(あなたが望む転生先は機動戦士ガンダムSEEDの

 世界でよろしいでしょうか?)

 

 話している内容が分からず、しばらく思考停止

に陥った後、目の前の女?に質問した。

 

『・・・あんた、だれ?・・・もしかして神さま!?』

(そうです。人の世界では神という存在です)

 

 困惑したオレはキチっとした正装した自称神?

だと言うOL風な女へ尋ねる。

 

『なんで、その神さまが現代のキャリアウーマン

 みたいなカッコをしてるの?』

(胸まで伸ばしたアゴヒゲしてシワシワ顔で)

(ヨボヨボなおじいちゃんコスプレに変更し

 ますか?)

『いやいや、そうゆうことではなくて?!』

 

 女神(仮)?なぜ、オレの目の前に突然現れた

ことについて簡単に説明した。

 オレの転生の手続きにするため、あなたに一番

受け入れやすい姿に見えるように調整したと言わ

れ、オレは思わず、呟いた。

     

『アバターの設定みたいなやつ?』

 

 女神(仮)がそのようなものだと思えばいいと

言い、オレはなんとなく理解した。

 この後の女神(仮)の爆弾にオレは驚いた。

 

(それでは、転生に移ります)

 

 次の瞬間、オレは“ちょっと待った”と仕事に取

り掛かる女神(仮)にストップをかける。

 

(どうしましたか?)

 

 オレは女神(仮)に”「どうしましたか?」じゃ

あねえ“と言い返した際、“なぜ、いきなり転生なんだ?!”のクレームを大音量で叫んだ。

 

(それはあなたが転生を選択したからです)

『選択〜?いつ、オレが転生を選んだ!?』

(先程、声に出して選択されました)

 

 女神(仮)が“声に出して選択していた?”と言

われた瞬間に堪忍袋の緒が切れた。

 さっきはボケ〜っとなって呟いていただけだと

叫び、目の前の天然でアホ女神に罵詈雑言を浴び

せながら、掴みかかろうとした。

 女神(仮)は、なにも選択してないと叫ぶオレ

に目線を泳がせながら口を開いた。

 

(・・・えぇ?!し、しかし・・・もう・・・転生のゲート

 は開けてしまいました・・・)

 

 そう言われて周囲を見渡すとアニメか、ゲーム

などに出てくるような?ワームホールような渦状

の穴があった。

 咄嗟に女神(仮)の胸ぐらを右手で掴み取り

オレはこう叫んだ。

 

『キャンセル』

(・・・・・え・・・・・?!)

『だから、キャンセルをお願いします!!』

 

 オレの叫びに怯み、冷や汗をたらしながら恐る

恐るキャンセルする理由を尋ねる駄神。

 何も説明もなしに強行しているのがキャンセル

する理由だと言い返し、さらに女神(仮)に請求

した。

 

『まずは、転生か、天国か選ばせろ!」

(申し訳ありません)

 

 女神さま?、いや駄神サマ?はオレに体を向け

深々と頭を下げながら、謝罪してきた。

 

(そちらのご要望は不可能です)

 

 オレは駄神の言葉に激昂した。

 

『はぁ?いくらなんでも横暴だ!選択のやり直

 すことぐらいの融通はできるだろ!!』

 

 この駄神サマは転生のキャンセルが不可能の

理由を語り出す。

 

(法により一度受理されてしまったら、取り消し

 ことはできないのです)

 

 そう答えて来たので、オレは再び激昂する。

 

『ハア~~~!!ふざけるな!!!あんた!!!!

 オレには選択のやり取りなんてしてこなかった

 ろうが〜!!?』

(いえ、選択の質問をする前に答えられたので

 てっきり、次の人生の覚悟を決意していると

 思ってしまいした)

 

 駄神は、両手の人差し指同士をツンツンとし

ながら顔を横していて答えた。

 

『唐突に死んだから、無心になっていて思わず

 呟いてただけだ!覚悟も決意も何も定めない』

(だから、キャンセルは不可能です)

 

 そう言いながら、オレに目線を合わせた駄神

さまは人差し指の先に光を集め、オレに標準を

定めていた。

 

(すぐに転生してもらいます)

 

 強制転生させる駄神を見た時、オレはとっさ

に最後の賭けに出た。

 

『待った!?』

(あの〜先程から説明しているように・・・・・

 キャンセルは不可能です)

『違う、アフターサービスだ』

(・・・へ?・・・)

『アフターサービスを要求する』

 

 顎に指先を置き、う~んと声を出し、首を傾け

悩んだのちに“どのようなものを望むのですか”と

オレに尋ねてきた。

 それを聞いた際、オレは心の中でヨッシャーと

思い、要求を口に出す。

 

『まず、ライトラベルなどでよくある転生する際

 神からもらえる特典を要望する』

(特典?)

『人の世界の駄神さまなら、現代のオタク知識を

 知っているだろ!?』

 

 女神(仮)は自分自身を駄神さまと言われた際

額にアオスジを浮かべ、必死に怒りを我慢してい

る顔で謝罪した。 

 

(すいません。勉強不足でした。私は・・・)

『何だよ、その顔は?!本当のことだろうが!!

 説明したアバターの設定みたいなのでいい!』

(す、スル〜〜ってやつですか?)

 

 ジト目で呆れながら、ため息を混じりに了承を

してきた。

 

(・・・・・ハア〜、わかりました・・・・・)

 

 タブレットみたいなものを空中に表した。

 

(こちらにも不備があることは認めます)

(特典をあなたに差し上げます)

 

 言質取ったとオレはガッツポーズし、条件を

言い出す。

 

『そんなすごい能力を求めていないよ』

『転生先の特典は、2つだ』

 

 タブレット?で操作している駄神さまは確認

のため、聞き返した。

 

(2つの特典だけでよろしいのでしょうか?)

『アンタみたいな天然ドジ神に・・・・

 チートを望むと・・・こわいからな?!』

 

 的を射た言葉を言われ、右手の拳を力いっぱ

い握りながら、怒りを抑える駄神。

 

(え、遠慮なく申し上げますね?!)

『うるさいドジ女神?!』

 

 駄神の機嫌を無視して特典を叫ぶ。

 

『オレがアンタに望む特典・・・・・

 人種がコーディネーターで生まれること。

 SEEDと呼ばれる才能を生まれ持つこと』

 

 ブス〜とする駄神は再確認をした。

 

(転生特典が人種と才能ですか?)

(転生後は差別の対象になりますが?)

『その時は自分でなんとかするよ。』

 

 オレはそう答え、自分の考えを述べた。

 

『差別意識の強い時代の設定の世界だからな。

 それぐらいのものがないと困る』

 

 駄神はこちらの意見を理解した。

 

(転生先の設定は2つの特典で完了です)

 

 全ての準備ができたので、オレはあの転生

ゲートに歩き出す。

 

『なら、オレは行くぞ』

(お待ち下さい)

 

 すると駄神に呼び止められ、モジモジとし

ながら言い出す。

 

『なんだ。オレはあんたにもう用はないぞ』

(いえ、そのテンプレってやつです)

(神の言葉がありまして)

 

 よくあるライトノベルの神様の別れ場面の

やつか?

 

(そんなに難しい言葉ではありません)

 

 駄神はゴホンと咳払いし、真剣な顔で話す。

 

(人は独りで生きてはいけない)

(それは全て世界に優れた者はいない)

(ゆえにつながりこそ人の存在を知る枷)

(道を歩めば間違えた時が必ずある)

(間違えたのならば今からやるべきこと定めろ)

(それまで生きるために培ってきた知恵)

(心にあるほんの少し勇気を持て踏み出せ)

(恐れるな。怖がらず・・・前へ進め)

 

・・・・・オレはしばらく沈黙した後に・・・・・。

 

『ありがとう』

 

オレはお礼を言い、ゲートに入った。

 

ーto be continuedー




次回 転生者 ラッキー・ルゥ


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第一章  転生者 
FOREWORDー1 転生者 ラッキー・ルゥ


『機動戦士ガンダムSEED』の世界へと
強制転生した被害者 ラッキー・ルゥ。

新たな人生はジャンク屋。職人たちが
創り出した人工島『ギガフロート』で
見習いとして賑やかと騒がしい日々。

そして、ラッキー・ルゥが転生後の
初イベントからくる不安と懸念に
よる知恵熱と頭痛と胃痛。


       【C.E62 7月15日】

 

        [ギガフロート]

 

 オレは駄神の被害者であり、転生者である。

 今のオレの名はとりあえずラッキー・ルゥ。

 転生後の容姿は赤みがかった茶色短髪で青と

緑のオッドアイの特徴を持つなろう系小説に採

用される美形の顔立ちの健康男児だ。

 

       【PROFILE】

[氏名]   ラッキー・ルゥ(仮名)

[人種]   ハーフコーディネーター

[生年月日] C.E55 3月30日

[血液型]  AB型

 

 あのキャリアウーマン風の駄神により強制転

生して早7年、天然ドジ神の仕事の酷さに呆れ

ながら、ジャンク屋見習いとして生きている。

 

 呆れた理由は要望した転生特典と微妙に違う

設定内容の転生だ・・・。

 まず望んだ人種は“コーディネーター”と頼ん

だはずが・・・・“ハーフコーディネーター”として

誕生したのだよ。・・・・・今のオレは・・・・・。

 その原因についても後で知ったが・・・。

 やはり、天然ドジ神は信頼も信用も持っては

いけないと確信した。

 次に求めた才能であるが・・・・・SEEDは生まれ

持っているらしいが・・・。

 これから訪れる激動の時代のウネリに任せて

開花させる予定だ。

 早とちり女神の職務怠慢をオレの人生の終わ

った時に神の上層部?へと直訴するのがオレの

終生の目標にしている。

 

 そんなオレは転生後に訪れた初イベントによ

り朝から頭をフル回転させたので知恵熱と頭痛

と胃痛の三位一体の痛みに悩まされていた。

 

「どうして、こうなった?!」

 

 先日オーブ訪問団がジャンク屋組合の所有す

る拠点に来るのだと言われた。

 どうにかオーブの関係を持つフラグを回避す

る手立てはないかと考えていたため、心身とも

に疲れきったので港の近くにある倉庫内の隅で 

転がっていた廃棄タイヤに腰を下ろし・・・・・

 

「関わりたくねえ〜」

 

 視線を下に向け、鬱憤を吐き出すように大声

の独り言が倉庫内に響いた。

 

 今回オーブの代表を筆頭に訪問団が訪れる場

所は地球の海上に建築されたジャンク屋組合の

保有する拠点の一つ。

 

 

ーーー巨大な人工島『ギガフロート』ーーー

 

 

 C.Eの本来の歴史ではジャンク屋組合の始まり

マルキオ導師と数名の有識者で個人事業主が主

だったジャンク屋たちをまとめ上げたんだよな。

 けど、オレの知る大雑把な歴史では……

      

      「HISTORY」

 

『第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦』→終戦

 

『ユニウス条約』→締結

 

といった流れで設立される組合なんだよな?

 組合設立の目的として効率良く世界の兵器等

の大型廃棄物を撤去や再利用。

 戦争による環境の悪影響を防ぐために有害物

質除去や改善だったかな?

 

 この人工島にはジャンク屋たちが各々の技量

を活かして建造したものであり、各国の政府と

世界の大企業にも運営の関与が難しく、ギルド

の直轄管理する巨大な活動施設、いや、ギルド

が誇る“浮遊巨大都市”だ。

 

 ジャンク屋の生業の一つである廃棄材回収と

解体業務から手に入れた多国の技術を民間用に

改造し、商品を造るための製造工場、および

技術の発展のための研究施設がある。 

 

 さらに宇宙船の道・『マスドライバー』その他

宇宙港、海上貿易の海港など各国の軍事、および

政府機関が喉から手が出るほどの設備が保有し

運営管理をするジャンク屋ギルドの拠点の一つだ。

 

 各国の政府と大企業により何度も強引な奪取し

ようと隠密行動や営業妨害、破壊工作などの被害

は年に数件発生している。

 

 いろんな小説サイトの二次元創作の展開でよく

ある転生者?・・・いや・・・イレギュラーか?・・・

歴史の改ざんがすでに始まっていた。

・・・つまり、原作前から変化がある現在・・・。 

 今何が起きているのか分からないだが・・・。

 コズミック・イラを生き残るため、一人前いや

一流のジャンク屋になるべく騒がしく、忙しい日

々を送っていた。

 

 『ギカフロート』には浮体構造物として移動能力

を有しているため、幾度となくイザコザの火種を

受けないように海域を運航して身を隠すことが

できるから今まで安心していたのだが……。

 

「逃げられないよな?これはフラグは・・・不幸の

 ……いやバットエンドフラグか?」

 

 どうしたものかと顔を上に向け、ボケ~っと天

井を見ながらふと自分の人生を思い返した。

 

「しかし、オレもすっかりこちらの世界の住人と

して馴染んでしまったな~」

 

と呟き、視線を真っ直ぐしてシャッターの枠内か

ら見える水平線を眺めながら、独り言を始めた。

 

「あれから随分経ったな〜」

 

としみじみと語りたくもない記憶を思い出し・・・

 

「おそらく、『メンデル』はブルーコスモスの引き

 起こしたカ○トテロで壊滅したのだろうな・・・」

 

過去の悪夢と現在の不安から現実逃避していた。

 

 そんな風にオレが水平線にある太陽を見ていて

ブツクサ呟いていると・・・・・ 

 

 いきなり、反対側のシャッターから

 

「ユキサダ!!」

 

倉庫内に怒鳴り声が響いた!

 

「いつまでもボケ~としてないで」

 

 振り向くと、そこにはビジネススーツを着た男

が仁王立ちして

 

「さっさと身支度をしてこい!!!」

 

と再度体が震えるほどの怒鳴り声でドヤされた。

 オレは背後で怒鳴り散らす緑の髪のロングヘア

ーでボディビルダー並の体格な伯父に叫び返す。

 

「だぁ~、うるせえーわ!この短気オヤジ!

 ほんのちょっと考えた事をしてただけだ!!」

 

 筋骨隆々した男の名はサトル・サナダ。

 転生者であるオレの母親の兄で育ての親だ。

 誕生直後に新生児のオレを残して両親は他界。

 産ませたばかりで天涯孤独になったオレは伯父

に引き取られた。

 今日の客人の訪問する予定からか、あの伯父貴

は珍しく神経質になっていた。

 

「な〜にが、ほんのちょっとだぁ~!!」

 

 緊張感のないオレに呆れ顔で怒鳴り散らす。

 

「客人が来るって話しておいただろうが!?

 さっさと着替えてこい!!」

「わか~たよ!?それとオレの呼び名は

 ラッキーだって言っているだろうが〜!!」

「お前な〜俺がつけた名前はユキサダだ!?」

「ラッキーだっつ〜の!」

「なんでアダ名で呼べていうんだよ?お前?」

「別にいいだろ?」

「そんなに俺がネームセンスがねえと言いたい

 のか?」

「オレな、ラッキーの方が好きなの。それに

 他のジャンク屋の連中もラッキーの方が

 呼びやすいって言ってるぞ!!」

 

 そんな風な口喧嘩が日常茶飯事のオレたち

だったが、親子関係はまぁまぁ良好である。

 

「まったく、オマエは〜、まあいい・・・・

 とにかく身支度しろよ」

「へ〜い」

「そんな薄汚い作業着じゃなくて、自分の

 部屋で少し小綺麗な服を着てこい?!」

 

 普段は見せないオヤジの気遣いと格好は

 

「オヤジがそんな風に言うなんて珍しいな? 

 どんなお偉いさんに一歩も引くことがない。」 

 

 ラッキーからすれば正に珍百景だ。

 

 「年がら年中ツナギが身体の一部の鈍感力が

 MAXの脳筋男。そんなオヤジが相手に対し

 少しは心配りが頭の片隅に存在してあるか

 見直しぞ」 

 

 息子の悪態に堪忍袋の緒が切れたサトルは

鬼の形相で怒鳴り散らす。

 

「ユキサダ!!いい加減にしろよ!!!」

「ドヤすな、親父!!」

「自分の親を馬鹿にするんじゃねえ!!」

「・・・悪かったよ」

「これ以上くだらない事をしゃべるな!!」

「へ〜い」

「後でどうなるかわかってるよな!!!」

「へ〜い、へ〜い」

「いいから、さっさと着替えてこい!!!!」

「イエッサー」

 

 散々ドヤサれた後でオレは自分の部屋の方

向に歩いた。

 

「へ〜い。着替えてきますよー」

「たく、あのマセガキが?!反抗期には

 少し早いだろうが?」

「まぁまぁ・・・・・落ち着いて下さいよ。親方」

 

 サトルは頭を掻きながら、ブツくさとドヤし

疲れた顔で倉庫の外に出ようとすると声を掛け

られ、慌てて声の先に振り向くと

 

「オマエ・・・・・リーアム・ガーフィールドか?」

 

 年の離れた友人兼同業者がそこにいた。

 

「お久しぶりですね。親方」

 

ーto be continuedー




次回 産声


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FOREWORDー2 ユキサダの産声

ジャンク屋の人工島「ギガフロート」の街中を
駆け抜けるラッキー。

生まれた赤児が聞いた狂喜のエゴを叫ぶ毒親と
悪魔の所業を用いるマッドサイエンティスト。

ラッキー・ルゥの波乱万丈の始まりが原作とは
違う驚異のテクノロジーと狂気のバイオレンス。


       【C.E62 7月15日】

        [ギガフロート]

 港の倉庫でオヤジにドヤサれ、小走りで自分の

アパートに向かいながら文句を言うラッキー。

 

「ほんのちょっと本音を口に出しただけでなー」

 

 ”まったく···。図体が怪物のくせに頭の中は姑か?”と思いながらジャンク屋たちが創り出した街

中を駆け抜けるラッキーであった・・・・。

 伯父ことサトルの生き様は何ものにも縛れずに

気の向くままな暮らしをする風来坊だ。

 しかし、甥であるオレを引き取る際、住み家を

「ギガフロート」にして育ててくれたので一応感

謝はしていんだよな。

 ジャンク屋たちの島である「ギガフロート」は

主に大きく4つのエリアに分かれている。

 ジャンク屋たちの仕事場である工業エリア。

 島の住人たちの生活空間、及び世界中から訪れ

る来客たちを迎える宿泊施設がある住居エリア。

 千客万来を乗せる飛行機とあらゆる物資の搬入

出の貨物船などを迎える輸送エリア。

 そして、島の運営と管理をする統括エリア。

 さらに「ギガフロート」の街並みついては例え

るならば・・・・巨大空母に街を創ったと表現したら

解りやすいはずだ。

 だから、万一オレのことが某カルトや某同盟に

知られても身を隠す際、最適なのだと伯父の考え

この島で暮らして来た。

 

 そう・・・。あのマッドサイエンティストたちの

巣窟である『メンデル』の研究施設から逃げる

ことができたのはオヤジのおかげだ・・・・・。

 オレは自分が生まれた日の悪夢を思い出した。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

       【C.E55 3月30日】

         [????]

 

・・・・・暖かい・・・・・

 

・・・最初に感じたのは、暖かさだ・・・

 

・・・心も体も芯まで・・・

 

・・・じんわり・・・暖まる・・・

 

・・・そんな感じだ・・・

 

 

・・・自分がどこにいるか気づいた・・・水の中だと

・・・そして・・・今・・・・なぜか・・・そこから・・・

・・・出なければいけない・・・

 

 

ー直感的に必死に体を動かすことで出ていくー。

 頭のあたりに穴?のような所があると気付き

体を動かし、頭から外に出ていく瞬間、頭を何か

に掴まれた!

 

 

 無理矢理引っ張る!!

 

 抵抗したかった!!

 

 だが流れに乗る方がいい、感じ

 

 どんどんと先に進むことにした・・・・・

 

・・・・・明るくなった。外に出られたのだ。

 

それと同時に、呼吸をする。大声泣き叫んだ。

 

「オギャ〜、オギャ〜」

 

 それから、どれくらい泣き叫んだか分からない

が泣き止んだ時、オレは看護師?に両手で抱えら

れることが分かり、生まれたばかりなので、全て

ボヤケて見えていたが段々と目が慣れてきた。

 

 数分後、完全に目が見えた際、周囲の様子を見

渡していると会話が聞こえる方向に視線を向けた。

 そこには二人の男女と医者らしき人がいた。

 汗だらけの憔悴したショートヘアの青い髪の女

と七三の茶髪の男が抱き締めていて喜び合う。

 転生したオレの両親だとなんとなく理解した。

 しかし、オレが気になったのは両親のとなりに

いる医者の方だった。

 手術衣を着てよくわからないが、あの医者?の

目元だけなんとなく見覚えがあった。

 目の前の担当医?はオレへ視線を向けジロジロ

と観察しているうち、オレの親たちに歓喜な大声

を上げ、報告してきた。

 

「お二人とも、この子は素晴らしい」 

 

 興奮しながらオレの両親に自分の推測みたいな

ことを語り始めた。

 

「ご子息は、現状を把握しようとしている!!」

 

 あの医者がそう叫んだので父親が慌てて聞き返

した。

 

「博士、それでは例の新薬による効果が?」

「そうです。以前に説明した新薬の影響が現れて

 おります」

 

 それを聞いた父親も興奮するとさらなる説明を

求めていた。

 

「博士?!大凡でいい。息子の現状は?」

「ご子息は詳しく検査してみないとわかりません 

 が、恐らく私の見立ては投与した新薬の適合率

 60%、いや、70%以上です!

 コーディネーターとしてのあらゆる能力を上位

 まで発現するかもしれない?!」

 

 父親は医者の説明に驚愕した。

 

「そこまで高い適合率で生まれたのですか?

 この子は?!」

 

 担当医は興奮が冷めてきたのか淡々と推測を語

り始めた。

 

「これはまだ、私の推測の域です。様々な検査を

 しなければなりません。

 これから生後の観察する必要もあります 」

 

 さっきから何やらものすごく鬼畜みたいな会話

が聞こえてくる・・・。

 

「以前にもお取引した際、ご子息を5年間は私共

 が保有する特別施設での育成プランのご了承を

 お願いたします 」

 

 分娩室の真ん中で秘密の会話をするサイコパス

みたい話し合いをする医者と頷く父親。

 

「わかりました。すべてお願いします」 

 

 この会話から“オレはモルモットか、なにか?”

とツッコミを入れなくて仕方なかったが・・・。

 生憎、生まれ立ての赤ん坊であるオレには何も

できない・・・。

 あの二人のやり取りに呆れながら、ふと母親の

方をみるとハァハァと苦しそうに過呼吸してオレ

を抱くことすらできない。

 

「奥様の容態については芳しくありません。

 やはり、今回の実験による影響が・・・・・」

「そうですか。だから代理母出産にしろと言った

んだ・・・。何がなんでも自分の身体でこの子を生む

と聞かなかった」

 

 代理母出産だ・・・?オイオイ一体どんな危険な薬

を使ったんだ?

 

「ご安心をすでに適切な処置を行っております。

 奥様の治療の期間ですが、通常より長くとも 

 3週間以上か、一月以内あれば回復するかと」

 

 担当医がゆっくりと呼吸を整えて忠告した。

 

「そして、このことは内密にお願いします。

 ご家族に危険が訪れるかもしれないので」

 

 その担当医の忠告に父親も頷いて了承した。

 

「わかりました。この後に私は仕事があるので

 あなた方におまかせします」

 

 オレと産後の妻を残して仕事かとオレはその

父の非常識を呆れてながら見ていた。

 

「ご予定では、重要な会議とお聞きしてます。

 当院から機密の場所に移動でしたね」

 

 会話から判明するのは、あの父親らしき男は

・・・・・どこかのお偉いさんなのか・・・・・?

 

「ええ・・・。家内が産後で体調が良くなく・・・・・

 息子が生まれたばかりで心苦しいのです」

「我々が責任を持ってご家族の安全は保証します」

「そう言っていただけると助かります。それでは

 家内が回復するを願ってます」

 

 父親はスマホみたいなものを取り出して今後の

スケジュールを確認後。

 

「おそらく2~3週間後に戻れるとお約束します」

「わかりました。ご無事を祈っております」

 

 担当医と会話が終わったら父親?は分娩室を

去り・・・・・オレは睡魔に襲われ眠りについた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

       【C.E55 4月1日】

         [新生児室]

 

・・・目が覚ましたら、周囲がうるさかった・・・。

 

・・・・・ここは、新生児室という所か・・・・・?

 

 まずは、第一声に叫びたいことがある。

 

    『異世界転生したぞ!!!』

 

 赤ん坊のオレが叫んでも・・・大泣きだが・・・

オレが泣いた際、近くにいた看護師が両手で

抱き上げ、オレをあやし、泣き止ます。

 そしてオレの泣き声で他の赤ん坊が泣き出す。

 そんな流れを作ってしまったのでオレは罪悪

感を感じてしまった。

 けれども、こればかりは仕方ないし、泣いて

ばかりもいられない。

 オレには絶対確認しなければならないことが

あるんだよ。

 

 転生者のオレの現状で把握したこと、とりあ

えずコーディネーターであることはわかった。

 しかも新薬やらを使って高性能?にしただと

博士らしき人物と父親?の会話で判明した。

 折角転生したのだから細かいことには拘わっ

てはいけないと思う。

 多少鈍感力を持たないとやっていけないな。

 

 それとオレにSEEDという才能を持っているか

どうかだな?

 はっきり言うとあのポンコツで天然の駄神は・・

信用度が最低と評価していた。

 ともかく転生後の現状把握だけが最優先だ。

 無能神は盛大なミスをしている可能性 大 だ

から信じないほうがいいと考えてしまうな。

 いろんな考察をしているうち・・・なんだか、頭

いや脳内から声が響いてくるのを感じた?!

 

(失礼ですね?転生はあなたのご要望の通りに

 設定ました)

 

 いきなり、脳内に直接声が響いてきたので驚き

再び大泣きをしてしまった。

 姿が見えない駄神がさっきの失態に謝罪。 

 

(そんなに驚くとは思わず、失礼しました)

 

 多分深々と頭を下げ、オレに視線を向けるよう

な動作をしている?

 

(ご要望の通りに転生させ、特典も施しました)

 

 そう報告してきたからオレは怒りの言葉を心の

声で叫ぶ。

 

『この駄神?!いきなり念話で話しかけるな?!

 びっくりするだろうが!』 

(申し訳ありません。ただ訂正を!)

 

 アホの無能神から何やら不快だと言う雰囲気が

伝わってくる?!

 

(私は駄神ではなく、セラと名前があります。

 今後はそのようにお呼び下さい)

 

 今さら、自己紹介してきたのでオレはジト目の

呆れ顔になり(見えないのだが)念みたいなもの

が感じる方向に目線を向け、思った。

 

(・・・遅いわ、自己紹介するタイミングが!!) 

 

 それにだ。こいつの正体よりも知らなせればな

らないことがオレにはあった。

 

『セラ!? あっそ・・・。そんなことはどうでも

 いいわ、それよりもだ。確認する?!この世界

 は本当にコズミック・イラで間違いないよな?』  

 

 “何もかも遅いよ”と言われたような感じをした

のか?セラはブス〜とした拗ねた雰囲気。

 

(・・・私はゾンザイの扱いですね・・

 ・・ハイ、そうです・・・

 機動戦士ガンダムSEEDの世界です)

 

 セラの説明に多少の疑心暗鬼を持つオレ。

 

『とりあえず、お前の言葉を信じる』

 

 嫌味ったらしい返答だったのでセラは

 

(何やら引っかかる言い草ですがね?)

 

 ブツブツと言った後、オホンと咳払いして

説明を始めた。

 

(アフターサービスの一環で現状を報告します)

 

 そのように言われのでオレはひとまず感謝した。

 

『それは非常にありがたい。まずは人種について

 だがコーディネーターしとて誕生したことは

 すでに知っている。

 それとオレはSEEDを持っているんだろうな?」

(ハイ、そうです。あなたはSEEDをお持ちです)

 

 ヨシっと少し安心したのち、次に自分の現在地

を尋ねた。

 

『ここはどこだ?地球か?コロニーか?』

(少々お待ち下さい)

 

 セラは静かになったので、最初に会った時のよ

うにiPadで検索しているのか・・・?

 数分後に報告してきた。

 

(お待たせしました。現在地はコロニーです)

『コロニー?マジか?具体的にどこなんだ?』

(そうですね。宇宙座標でわかりますか?)

『わかりわけねえだろ!!』

(それではコロニーの名称で?)

『前世の原作知識はあるが、細かい所まで覚え

 てねえよ!?コロニーで知っている名称は

 プラントか、もしくは連合の基地ぐらいしか

 分からねえ・・・』

(・・・人を駄神とか言って、自分もポンコツ・・・)

『うるさい。原作特徴とかないのか?

 これはだれもがわかるようなやつ?』

(少々お待ち下さい)

 

 iPadで再び検索を始めた。 数分後・・・・・。

 

(ア、ありました。絶対にわかる原作特徴です)

『なに、なんだそれは?』

(ここは、キラ・ヤマトの生まれた場所です)

 

ーto be continuedー




次回 杞憂


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FOREWORDー3 過去からの杞憂

ラッキーことユキサダが抱えている危機感と心の
スミにある杞憂。

日々、腕を競い合う最強、いや最狂の幼馴染と
の痴話?又は夫婦?喧嘩。

転生者のテンプレである突如として襲いかかる
悪夢と決めなければならない覚悟。


       【C.E62 7月15日】

        [ギガフロート]

 

 悪夢を思い出しているうちにオレの区画に着き

部屋へ向かう。

 オレは現在オヤジの住居から少し離れた場所で

一人暮らしをしている。

 なぜ、親元を離れ、一人暮らししているかと言

うとオヤジと喧嘩して家を出ていったとか、義親

と折り合いが悪いとかではなく、オレが頼み込ん

だからだ。

 

 自分自身の出生を知っているオレには近いうち

に狙われるかも知れないと危機感を持っている。

 杞憂かも知れないが、オレに使用された技術を

ほしがる者は多分世界中にいる。

 

 投薬によりハーフコーディネーターで誕生する

者が高性能コーディネーターへと生まれ変わる。

 恐らくオレに使用された新薬はそんなものだと

考察している・・・・・多分?。

 もしもだ。そのようなシロモノが世界中にバラ

撒かれると結果は火を見るよりも明らかだ。

 

 なので、オレは自分自身の情報の管理を徹底す

る必要があるために一人暮らしをしている。

 もし、誰かに嗅ぎ付けられた際はどこぞの漫画

や小説のように今あるの生活や家を捨て、誰にも

行き先を言わず、逃げなければいけないからだ・・

・・夜逃げだよ・・・・・。

 

 これは考え過ぎかもしれない。

 けど、捕獲されてどこかの秘密研究施設で実験

動物になるのはごめんだわな。

 

 そんな杞憂をブツクサっと言いながら、自分の

部屋の前に着き、ドアを開け、部屋に入ると・・・

目の前には・・・・・下着姿の般若がいた。

 忽ち、燃え上がる憤怒のオーラを放った般若が

・・・側にあるバズーカを撃ってきた・・・。

 オレは走馬灯を見ながら吹っ飛んだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

        【C.E55 4月1日】

         [新生児室]

 

 “こいつは何を言った”と聞き間違いをしたい。

 そんな風に思いながらオレは聞き返した。

 

『すまん、よく聞こえなかった?もう一度?』

 

 セラはオレの問いにもう一度答えた。

 

(原作主人公・・・キラ・ヤマトが生まれる場所・・・

 コロニー ”メンデル”)

 

・・・セラがそう報告するとオレは沈黙したのち・・・

 

(あの〜どうされました?)

『今、コズミック・イラの年号ではいつだ?』

(えっと、C.E55の4月1日です)

 

 そう報告してくると、オレは取り乱した。

 

『エイプリルフールか?』

(ハイ、そうです)

『ウソか?ウソなんだな?』

 

 オレはアリエナイと現実逃避したかった。

 だが、無情にもオレの微かな期待が駄神の無慈悲

 

(何度も申し上げます。

 C.E55 4月1日 

 コロニー “メンデル“です)

 

 セラの無慈悲な報告で打ち消された・・・・・。

 

『・・・キラ・ヤマト・・・?』

(ハイ・・・・・?)

『キラ・ヤマトは、どこだ?』

(えぇーと? どうしましたか?)

 

 オレは錯乱しそうな心を抑えながら

 

『キラ・ヤマトは、すでに生まれたか?』

(どうどう、落ち着いて下さい)

『落ち着けるか!!』 

 

 能天気のアホ神に憤りない怒りをぶつけた。

 

『あいつのせいでブルーコスモスが動く?!

 あのカルト団体がテロを必ず起こすはず?!』

 

 怒鳴り散らし、来たる最悪の未来を恐れた。

 

『こんな所にいたら死んでしまう!』

(あなたは現在新生児です)

 

 能天気なアホ神にオレは命令する。

 

『お前の力でオレの親に警告しろ?!

 予知夢で危機感を煽ればいいだろ!?』

 

 セラは困惑しながら否定した。

 

(私はこちらの世界には手を出せないのです)

『オレと念話ができているだろうが?』

(意思通達のためです)

 

 オレはセラの発言に心の中でため息を出し

 

『わかった・・・・・

 ・・・もうお前に何かを頼るのは辞める・・・』

(わかっていただければ幸いです)

 

 転生時の自分自身を呪うようにボヤいた。

 

『あんなくだらないことを・・呟かないで・・・

 ・・・天国に行けばよかった・・・・」

(ものすごく悲観的ですよ)

 

 “オマエのせいだろ”と叫びたかったが・・・・

なんだか凄く疲れた・・・・・叫ぶ気力もない・・・

 このお陰で、オレは心に余裕ができた。

 

 オレは冷静さを取り戻すと、自分の現状把握

から考察することにした。

 これからどんな未来が来るのかを分析する。

 

 訳の分からない新薬の効果?で多分転生先の

人種はコーディネーターで最高能力SEEDを持っ

て生まれてきた。

 

 現在、原作の主人公の誕生する同じコロニーで

出産された。

ブルーコスモスの信者が“メンデル“かどうかは

知らないが、大規模なカ○トテロを起こす可能性

が高い現状にいる。

 

 オレは生後数日の新生児で身動きができない。

 これからわけの分からない実験?施設?で最長

2歳までそこに飼育?になる。 

 

 駄神セラの説明に信じると時代はC.E55 4月1日。

オレの両親の近未来の行動は母親は少なくとも

〜3週間ぐらいで退院でき?そして、父親の方も

同じくその日数でこの病院に戻って来れるはず?

 両親はオレだけを担当医の薦めた飼育施設?を

残し、ここから離れる。

 

 状況分析の結果・・・オレの両親だけカ○ト団体

ブルーコスモスの破壊テロは回避できる?

 

・・オレだけはカ○トテロで天寿を全うする?・・

 

(・・・・・0歳児ですが・・・・・)

 

 つまり、バッドエンドか・・・・・?親については

もはや運だな・・・運?!

 原作の主人公の生い立ちルートから両親だけは

巻き込まれることなく、カ○トテロ?からなんと

か回避できるかもしれない。

 

・・・・・この時・・・オレはサトってしまった・・・・・。

 

・・・仕方ないこれもまた運命・・・いや・・・悲運・・・・。

 

 駄神セラ様がオレのいた天道から地獄に落とさ

れたのが、決められた運命・・・または・・・天害・・・。

 

 転生者のオレは享年0歳児で天国に行く・・・。

 

(あの〜、私のセイーにしないで下さい?)

 

 “私は仕事をこなしただけ”と言いたげそうな

セラの顔面があるように感じた。

 

『お前以外この最悪のシナリオの責任を押し付

 けるやつが他にいるのか?』

 

 セラは多分ジト目でオレを見ていて呟く。

 

(それなら、私はもう必要ありませんね)

 

『そうだな。もう来るな駄神・・・セラさま』

『今度はあなた以外の有能な女神さまの降臨を

 希望します』

 

(・・・・・ハイ、そうですか・・・・・)

 

『アァ・・・。ついでに、次の優秀の女神に言伝を』

『天国を要望します。転生なんて結構です』

 

(承知いたしました)

(次の担当神にそう伝えておきます)

 

セラがフウっと軽く息を吹いて報告する。

 

(あなたが錯乱していた際・・・・・)

(・・・・・大変なことが起こりました・・・・・)

 

 オレはセラの深刻そうな言い方からオレの心

がザワついた。

 

『・・・?・・・これ以上の不幸って何だよ・・・??」

 

(・・・・・ご両親が亡くなりました・・・・・)

 

『・・・・・今のはマジか?』

 

 また、聞き間違いだと思ったがセラは再度

報告してくる。

 

(・・・・・もう一度ご報告します・・・・・)

(あなたのご両親が二人とも亡くなりました)

 

 ここからオレは新たな人生を生き抜く覚悟と

荒れ狂う運命を抗う信念を持ち、原作とは違う

コズミック・イラの道のりを歩き始める。

ーto be continuedー




次回  出会い


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FOREWORDー4 サトルとの出会い

年の離れた同業者リーアムと突然の再会に喜ぶ
親方ことサトル・サナダ。

輝かしい実績(自称)を持つ親方が引き受けた
オーブの依頼 危険度は特Aランク??

ラッキーことユキサダ・サナダを守るために
叔父サトルの理論武装による強行転院。



       【C.E62 7月15日】

        [ギガフロート]

 

 サトル・サナダを親方と呼び、近づいて来る15

歳ほどの長髪の細見の少年。

 

「やっぱしリーアムか?!久しぶりだな!!」

 

 突然の再会、笑顔で久しき同業者に右手で握手

を交わしながら口を開く。

 

「いつ、地上に来たんだ?元気だったか?!」

 

 リーアムも嬉しそうに言葉を返す。

 

「えぇ、親方も相変わらず力強い職人気質は

 ご顕在ですね」

「ガハハハー、それが取り柄だからな!」

 

 年の離れた友人の他愛もない会話によりさっ

きまで不機嫌だった親方の顔が笑顔に変わる。

 

「しかし、本当に久しぶりだな!!」 

「えぇ・・・、会えて嬉しいです」

「お前もよ、あれかオーブの獅子の姿を見に来

たのか?」

「いえ。今回は仕事でこちらに伺ったですが・・・

 それよりも、あのウズミ・ナラ・アスハ様が

 本日この島にお越しになるウワサは本当なの

 ですか?」

 

 リーアムは道中小耳に挟んだオーブの訪問団

の噂を訪ねた。

 

「アァ〜、その通りだ。オーブ連合首長国の代表

 ・・・ウズミ・ナラ・アスハの訪問だ・・・」

 

 素朴な疑問を親方に再び尋ねる。

 

「なぜ、あの方がこの『ギカフロート』に?」 

 

 現在世界の動向は激しい。そんな最中であの

オーブの代表であるウズミ氏がわざわざ組合の

拠点に来るのかと?・・・その矛盾がある行動に

苦い顔でサトルは言いにくい仕草で答えた。

 

「簡単に言えば、オーブの保有するコロニーの

 領域内にある宇宙ゴミ掃除の依頼だ」

 

 ジャンク屋ギルドへの依頼内容を聞かされた

リーアムが不思議そうに聞き返す。

 

「スペースデブリ?」

 

 ジャンク屋の生業でジャンク屋の拠点の一つで

ある『ギカフロート』にわざわざオーブの代表が

直々に顔を見せるほどの事かとリーアムは困惑な

顔でサトルを見る。

 

「アァ、そうだな。普通はそんな面倒な事をする

 わけねえ。あれほど忙しい人が来るのだから

 用件はそれだけ”深刻“なのさ~」

 

 リーアムは親方の只ならぬ雰囲気に感じ、首を

傾げて引っ掛けるキーワードを声に出す。

 

「“深刻”?」 

 

 親方は獲物を捕らえた眼で空を見上げ、深呼吸

をして語りだす。

 

「スペースデブリは間違いねえ〜。タダシな・・・・・

 そのゴミがスクラップならばな・・・・・?」

 

 親方の何やら意味深な言葉に呟き、リーアムは

ピクっと反応してしまった。

 

「スクラップなら?」

 

 額に冷や汗をたらしながら推察を質問する。

 

「まさか・・・デブリに偽装された兵器がオーブの

 保有するコロニー領域内にあるデブリベルト

 エリアで極秘裏の取引が行われると?」

 

 親方が普段見せたことがない冴えない表情で首

を左右に大きく振り

 

「すまんがな、そこまでは分からねえ・・・・・」

 

 と言われ、リーアムが“ありえない“とした顔で

 

「親方でもたどり着けない情報なのですか?」

 

 親方は視線を下に向け、ため息混じりに愚痴を

こぼす。

 

「・・・その辺のことについてあらゆる手を使っても

 探れなかったがよ・・・

 しかし、世界の均衡を根本的に揺るがすものは

 間違いないと感じる・・・・・」

 

 と親方は自身の予測を口に出し、リーアムが

物珍しい素振りで尋ねる。

 

「親方が曖昧な発言も珍しいですね?」

 

 やり手のジャンク屋サトルがお手上げなことに

驚きを隠せなかった。

 

 親方ことサトル・サナダはジャンク屋ギルド

に置いて上位の能力を持つ凄腕ジャンク屋だ。

 この男が畏怖される所は誰よりも飛び抜けて

いる情報取集および調査能力である。

 世界各国の情報機関や世界の大企業も一目を

置く人望により各国の要人や名を馳せる大富豪

等のコネクションと質実剛健の仕事で築いてき

た信頼を持ち、その実績で最新にして神妙性の

高い情報は得られる。

 

 あらゆるスペースデブリエリアの難航コース

を幾度なく潜り抜ける勇猛果敢。

 

 屈強のジャンク屋たちが逃げ出す困難な仕事

を期限通りにやり抜く質実剛健。

 

 どんな客の場所に居ても届ける出前迅速。

 

 通算5年連続ジャンク屋の三冠王とあらゆる

ジャンク屋たちから揶揄される男。

 

・・・・・・・・サトル・サナダだ・・・・・・・・。

 

・・・・・ちなみに・・・・・全部自称だそうだ・・・・・。

 

「自称じゃねえ〜、実績だ!!」

 

 親方の訳の分からない叫びにリーアムは

 

「どうしたんですか?いきなり自分の証明を

 誇示するような荒々しい声を上げて??」

 

 と聞き、サトルは不思議そうに

 

「いや?・・なんとなく叫ばないといけねえと

 感じで・・・・・?」

 

 リーアムは少し息を飲み込んで質問をする。

 

「しかし、そんな依頼をだれか引き受ける

 のですか?いくらなんでも、危険過ぎて

 拒否されると思いますが?」

「だから、俺がその依頼を引き受けたんだよ!」

「え?親方が引き受けた??」

「もともと、俺が個人で依頼された案件だった

 んだが、事の大きさが国家レベルのものだ。

 だから、組合に通してからの仕事をすること

 が組合の上層部で決定になった」

「まさか、そのための訪問する演出ですか?」

「アァ、ジャンク屋一個人でなく組合関係から

 やることにしたほうが、後々揉め事になって

 も物事をゴリ押しする際、組織の方で筋道を

 作っていた方が融通が効くようにする・・・。

 今回の茶番劇はそういうシナリオだ」

「・・・・・ソウナンですか・・・・・。」

 

 リーアムは、呆れ顔でサトルを見て!ふとあ

ることに気付き、周囲を見渡すと

 

「そういえば、息子さん、遅いですね?」

「たく、あいつはいつまで着替えてんだよ。

 ジャンク屋がちんたら油売ってどうする?

 ゴミをさっさとリサイクル品に直す家業だ!

 だからこそ迅速作業第一だ!?」

「まぁまぁ、しかし、彼は、もう7歳でした。

 時が経つのも早い・・・・・あなたに引き取られ

 て、元気に育ち、今やジャンク屋の仕事を

 任せられますよね」

「生意気なドラ息子だ」

「生意気はともかく・・・・・ドラ息子とは・・・・・」

「あのガキャは俺のつけた名前をより自分で

 考えたあだ名のほうがいいってんだ。

 ドラ息子の要素は十分ある!!」

「あの子の年齢ならそれぐらい当然では?」

「フン!将来あいつはドラ息子だ、これは

 決定次項なんだよ」

「相変わらず独断的決定ですね」

 

 他愛もない会話をしてると、ふとサトルは

ユキサダと初めて会った日を思い出していた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

       【C.E55 4月1日】

      [コロニー『メンデル』]

 

 俺は甥を引き取るために『メンデル』にある

黒い噂の絶えない大企業が経営している病院で

言い争いをしていた。

 

「だから、この子は俺が引き取る!!」

 

 当時、妹夫婦が両方とも同時期亡くなってしま

ったと情報を掴んだ俺は急遽生まれたばかりの甥

がいる病院の産婦人科に出向き、当直の医局スタ

ッフ数人と掛け合っていた。

 

「お待ち下さい。ご指名された新生児は生後数日

 しかたっていない。今すぐに退院、いや転院す

 るのは不可能です」

 

 俺はゴリ押しで甥をこの病院、いや研究施設か

ら連れ出すために理論武装で立ち向かっていた。

 

「こんなヤバイ所によ。俺の甥をほったらかす

 わけにはいかねぇ!?知ってるぞ?!」

 

 甥を連れ出すのが何よりも最優先事項だと考え

た俺は相手の正論の防衛壁を独自論のガトリング

砲で蜂の巣にする勢いで集中砲火の暴論。

 

「この病院のドス黒いウワサをよ?!。

 そんな所に甥をいつまでもここに置いておける

 わけねえだろうが!!」

「生後数日の新生児を現在退院させるなど危険過 

 ぎます。」

 

 横暴を止めにくるスタッフが説明する論理は間

違っていなかったが、それでも甥の身の安全こそ

重要だった。

 

「せめて、生後二週間以上は経過を観なければ

 いけないのです」

 

 この返答を力強さ気迫でスタッフに

 

「アァ〜、あの義愚弟は自分の息子を出産後

 あんたらが経営している?怪しげな施設で

 実験動物みたいな育成する研究に利用する

 ことは調査がついてんだよ」

 

 喧噪の中で怒声を出す俺は新生児室内で目を

覚ましている甥に気づき、顔を向けた。

 

「おお〜、目を覚ましたのか。まだ生後間も 

 ないのによ、もう目が見えるのか」

               

 新生児室の廊下側のガラスに両手を押し付け

“将来が楽しみだな”と期待の眼差しを送る。

 

「お前は俺が、いやさ俺達が面倒を見るからな。

 お前の親は死んじまったが安心しろよ。

 今日から、俺がお前のオヤジだ、よろしくな」

 

ふとある事に気づき、スタッフの一人に尋ねる。

 

「そういえば、この子の名前は?」

「我々には『状況が落ち着いてから命名する』と

 ご説明をしていたので・・・無名です」

「あいつらは、生まれたばかりの我が子に名前も

 与えず、天国に旅ったのか?」

 

 俺は それならばとオホンと咳払いし。

 

「まぁー仕方ねえな、俺様が直々にあいつの名前

 をつけてやる」

「いや・・・・・勝手にそのような横暴なことをされま 

 しても・・・・・」

 

 その正論にオレは怒鳴りつけた。

 

「黙れ!俺はあいつのオジキだ。そうだな・・・・・

 ・・・・・ユキ・・・・・サダ・・・・・ヨシ!!

 ユキサダだー、今日から!こいつの名は・・・・・

 ユキサダ・サナダだ〜!! 」

 

 室内に響き渡る大声で甥の命名した際に周りの

新生児たちが連鎖反応如く大泣きをしている。

 これぞ赤ん坊のオーケストラだ。

 新生児室に響き渡り、横暴な行動に看護師が

注意した。

「困ります。病院内、しかも新生児室でそんなに 

 大声を出さないで下さい」

「ガハハハ〜、赤ん坊は大泣きが仕事だろが〜。」

 

 俺は声高く大笑いで言い切った。

 

「あ〜も〜。とにかく、お静かにして下さい。」

「安心しろ。すでにある国の属するコロニーの

 産婦人科医院をコネで話は通してある。

 こいつは、オレの宇宙船でその病院へ送る。

 ジャンク屋はどんな荒波でもたどり着く。

 安心して転院させることができる」

「新生児の転院は簡単に許可などできません!

 もしも、転院させるには当院での治療困難のみ

 と判断された際に特例として許可されます」

 

 医者の正論でも甥がいるこの病院を一刻も早く

連れ出すにはいかなる手段も違法もやらなきゃと

事前に用意したカードをきる。

 

「国の最高責任者にお願いし、特別な待遇で

 転院の手続きをゴリ押しをやった。だから

 こいつを今、連れて行く。文句あるか!!」

「無茶苦茶な独善であなたの甥の身を危険に

 さらけ出す方が頼りにした責任者の顔に泥を

 塗ります。万一、最悪の事態を招くことにな

 ったら、どうするつもりですか?」

「だから〜、全て責任は俺が持つとさっきから

 言ってるだろうが!!」

「これは私一人の判断で決定ができません。

 せめて、当院の担当医と医師数名で話し合いを

 していただけないと医師としてはご許可をおろ

 すことはできません」

「おいおい、この病院、いや研究施設か・・・・・?

 そこによ、まとも医者がいるのか・・・・・?」

 

 まさに正当論と独自論との争いだ・・・・・。

 

「みなさん!落ち着きなさい」

 

 その論争の最中、騒ぎを聞きつけ、どこからか

一人の医師が現れ、注意してきた。

 

「病院内では、静かにお願います・・・・・」

 

 双方の論争を止めに入り、サトルはその医師の

顔を見て苦い表情で呟く。

 

「アンタは・・・ユーレン・・・ユーレン・ヒビキ」

 

ーto be continuedーー




次回 日常


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FOREWORDー5 偶発的で色欲な日常

白煙の中から現れる憤怒の般若
ドジっ子にして覇○色の覇気を纏う幼馴染

その少女の名はエリザベス·スミス。
ラッキーと同じジャンク屋見習い。

ラッキーの修行の日々は常に訪れる
ラッキースケベ&バイオレンスアクション。


       【C.E62 7月15日】

 

        [ギガフロート]

 

 サトルとリーアムが他愛もない会話をしている

と爆発のような轟音が聞こえた。

 

「な、なんですか?これは?」

 

「爆弾?いや、これは爆発音だ?!」

 

 サトルが辺りを見渡すと白煙が立ち昇る場所が

見えた。

 

「あの辺りは、ユキサダの部屋だな・・・・・」

 

 頭を掻きながら、大きくため息をするサトルは

 

「あいつら、また・・・やらかしやがった?」

 

 その発言にリーアムは察しがついたのか苦笑い

をしながら

 

「もしかして、また・・・リズさんの?」

「痴話喧嘩はいいがよー、もう少し静かにやって

 くれ・・・・・」

「もはや・・・この島の日常茶飯事ですね・・・」

 

 サトルは呆れてながらユキサダのマンションへ

と歩き出す。

 

「リーアム、俺はあいつらを説教してくる」

「そうですか。残念です。もっとお話をしたいん

 ですが・・・・・」

 

 リーアムの残念そうな顔でサトルに別れの言葉

を言おうとすると

 

「何だ?この島をもう出発するのか?」

「次の仕事があるので」

「そうか、また、どこかで会おう」

「そうですね。また、どこかで再会しましょう」

 

 2人は再会を約束したのち握手をした。サトル

は速足で現場に向かう。

 

「さてと、あいつら、毎度毎度・・・・・」

 

 遠ざかるサトルを見てリーアムは

 

「ユキサダ君は、いい親と共に生きている」

 

 と言い、『ギガフロート』を出発する。

 

 息子のマンションに向かうサトルはイライラ

と独り言をボヤく。

 

「たく、あいつらは!今日は大事な日だと何度

 も言ってあるだろうが!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

        【30分前】

       [ラッキーの部屋]

 

 オレは身支度のために自分の部屋へ入った際

先客がいた・・・・・。

 

「リ・・・・・リズ」

「ラッキー・・・・・」

 

 目を合わせた瞬間、上着を脱いで、ズボンの

ボタンを外す金髪の少女がいた。

 女の子は床に置いてあったバズーカ?を右肩

に抱え、ラッキーに標準を合わせ、引き金を引

き、ラッキーをぶっ放した。

 

 少し意識が飛びかけたが、すぐさま立ち上が

ろうとしたら、巨大なオーラを感じた。 

 それは白煙が部屋に充満している際、白煙を

手で払い除けながらラッキーに近づいて来る。

 その時の聞こえてきた足音は怪獣のような足

踏みでそのものだ。

 

 ラッキーの前で、仁王立ちするロングヘアの

金髪で真紅の眼を持つ少女が憤怒の鬼の形相で

睨みつけていた・・・・・・・。         

 そして、リズから放たれる覇○色の覇気によ

りオレは気絶した。その時、またオレは走馬灯

を見る。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

       【C.E55 4月1日】

 

         [メンデル]

 

 セラから慰めの言葉を言われた。

 

(お悔やみ申し上げます・・・・・)

 

 オレは冷静だった。親が死んでしまったのに

・・・オレは両親の亡くなった経緯を尋ねようと

するとセラが先に言葉を出す。

 

(お二人の死因をご説明しますか?)

『・・・・・話してくれ・・・・・』

 

 セラは父親の亡くなった経緯を報告する。

 

(お父様は仕事先のコロニーに向かう途中)

(ご乗船する宇宙船爆発事件に巻き込まれ死亡)

 

 セラの報告の内容が最初は訳が分からず・・・・

オレは混乱した。

 

(宇宙船の爆発事件?事故ではなく??)

 

 続いてセラは母親の死因を教える。

 

(お母様は病室内で夫の訃報を知らされた際)

(例の新薬の影響と精神の負担の原因により)

(急激な体調が悪化し、医師たちによる・・・・・)

 

 セラは静かな雰囲気の沈黙をして報告した。

 

(懸命な救命処置を施したのですが・・・・・死亡)

 (・・・2つの原因で体調が急激に悪化・・・?)

『『・・・・・・・・・・・・・・・』』

 

 転生して生まれたばかりのオレに両親に対し 

て『情』なんてない。・・・・・無情だが・・・・・

 

 それに前世でも『両親』という存在は希薄な

・・・いや・・・縁がない関係だ・・・・・。

 

 笑えるな。なぜかオレはどちららの人生でも

家族がいなくなる。・・・・・笑いたくなる・・・・・。

 赤ん坊のオレは、大笑いが・・・・・大泣きに・・・

なっていた・・・・・当然か・・・・・。

 

 セラは心配そうに尋ねる。

 

(大丈夫ですか?)

 

オレはセラの言葉の真意を尋ねる。

 

『父親の方が“事件“と言ってたが・・・・・なぜだ?』

(・・・今回の宇宙船の爆発については・・・・・)

(・・・・・テロです・・・)

 

 オレは父親の事件の状況を聞いて、一つの答え

にたどり着く。

 

『それはブルーコスモスのテロなのか・・・?』

(お察しの通りです)

 

 オレは状況の中で噛み合わない事実を見つけ

少し考え込み、セラに聞く。

 

『主な動機はなんだ・・・・・?』

(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 ブルーコスモスはカ○トの集まりだ!だから

明確な理由をセラに質問する。

 

『奴らは無利益なことはしない』

『利益の権化が頂点にいる組織だ』

『絶対的理由がなければ動かない』

『父親は・・・・・テロに巻き込まれたのか?』

 

 セラは少し沈黙してから声に出す。

 

(・・・・・テロの動機はあなたのお父様です・・・・・)

 

 オレの父親がテロの原因?・・・矛盾が頭の中を

過ぎる。

 

『それは・・・・・どうゆうことだ?』

『病院内にはキラ・ヤマトもその両親もいる』

『狙われるのがあの家族ならばわかる』

 

 オレの父親はヒビキ家族のセイで死んだ?

 

『オレの父親はあのテロリストどもに標的なる』 

『それほどの重要人物だとでも言いたいのか?』

 

 セラから返ってきた言葉は意外な答えだった。

 

(いえ、根本たる原因はあなたです)

 

 オレは困惑し、説明を求めた。

 

『オレがテロの原因?』

 

 曖昧な情報が多すぎる!頭の中で整理が追い

つかない?!

 

『新生児のオレがテロリストの動機になる?』 

 

 オレが原因ならば考えられることはアレか?

 

『訳のわからない薬の効果により』 

『無理やり能力のみを上げられたからか?』

 

 セラに質問をぶつけた。

 

(ハイ、それも動機の一つです)

 

 そこから気まずそうな雰囲気で説明していく。

 

(転生したあなたの・・・・・)

(“製造方法”とでもいいましょうか?)

(・・・・・それが原因です・・・・・)

 

 オレはセラの説明でさらに混乱する。

 

『“製造方法”?』 

 

 ここにも大きな矛盾がある?

 

『まるで人造人間みたいな言いぐさだな?』

『そもそも遺伝子操作技術で生まれる存在』

『それが“コーディネーター”だろ?』

 

セラは“申し訳ない”ような雰囲気で説明を

する。

 

(大変失礼なんですが・・・・・)

(転生したあなたは完全なるコーディネーター)

(なれないものなのです)

 

 セラが言い放った言葉にオレは激昂した!?

 

『完全なるコーディネーターになれないだ?』

『お前はオレをコーディネーターとして』

『設定からコノ世界に転生させたんだろが??』 

『あれはウソをだったのか!?』

 

 セラは、すぐに否定した。

 

(それは違います)

(あなたが転生先の人種選択をした際)

(細かな設定条件もなく、転生ゲートに入った)

(それが主な原因です・・・・・ )

 

 オレの選択に原因があるのだとセラが話す。

 

『細かな設定??』

(あなた求めたアフターサービス・・・特典)

(人種と才能でした)

 

 セラは事の経緯を説明する。

 

(SEEDと言う才能ついてはあなたの概念)

(無意識のうちに条件を設定していました)

(故に比較的簡単に獲得ができました)

 

 オレはその説明で聞いて考察を立てた。

 

『原作知識でイメージが固まっていた?』

(その通りです)

 

 セラはさらに人種について説明をする。

 

(人種については様々なタイプがあります)

(細かく設定をしないと転生先では)

(求めている存在になれると限らないのです)

 

オレはオタク知識をフルに使い

 

『人種、つまり種族の設定が大雑把だった』

(例えば魔法世界ラベルに出て来る耳長族)

 

(純血のエルフ)

 

(ダークエルフ)

 

(混血のハーフエルフ)

 

(とさまざまな分類されます)

 

オレはコズミック・イラの知識から考察する。

 

『コーディネーターの分類か』

 

『ファーストコーディネーター』

 

『ジョージ・グレン』

 

『初期の極秘裏の誕生した第一世代』

 

『第一世代同士から生まれる第二世代』

 

『第二世代同士から生まれる第三世代』

 

『ナチュラルと交わった混血』

 

『ハーフコーディネーター』

 

 かなりタイプが分かれので設定が曖昧だと

 

(あなたは完全なるコーディネーターとして)

(誕生することができず、少し違う存在になり)

(転生してしまったのです)

 

 オレは経緯を理解した際、セラに問う!

 

『オレはどのタイプなんだ?!』

(あなたはハーフコーディネーターです)

 

 オレは自身の人種に疑問を持つ!

 

『ハァー、混血で雑種?』

『新生児のオレはドラッグジャンキーだろ?』

『だから実験施設行きのはず?』

『そんな中途半端な存在を標的に??』

『どうしてブルーコスモスが暗躍する???』

 

セラは長い沈黙の後

 

(・・・それはお答えできません・・・)

 

 その返答にオレは激昂する。

 

『ハ?なんだと?』

 

(この先はあなた自身)

 

(あなたの手で探さなければならないのです)

『・・・・・アフターサービスはここまでか・・・・・』

(ここまでが私の仕事の範囲の限界です)

『そういえば、さっき言ったな・・・・・』

『この先は自分でなんとかすると・・・・・』

 

 オレは先程自分の人生を自分で決めると言っ

たことを思い出し、なんだか落ち着いた。

 

ーto be continuedー




次回 強運


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FOREWORDー6 生まれ持ったモノとは

夫婦喧嘩を止め、若造どもに説教するため
マンションに向かうサトル

サトルが眼にしたのは般若のオーラを放つ
見習いのリズの静かでドス黒い鬼の目。

転生者 ラッキーの命日に振り返る自分自身
が生まれ持ったモノとは?!


        【C.E62 7月15日】

         [ギガフロート]

 

 俺はあの夫婦のような見習いどもに説教をする

ため、速足で息子の住居エリアに向かう最中だ。

 ユキサダの部屋の辺りはコノ島の空港に近いの

でリズは恐らくその利点であいつの部屋を使った

のだろう。

 リズは少しドジな所があるので大方連絡を間違

えてユキサダに伝わってないとこだろうな。

 

「あいつらー?!今日みたいな大事な日まで夫婦

 喧嘩するな!」

 

 段々息が上がってきた。俺も何だかんだ言って

も年には勝てねえのか?

 

「ハァハァ!」 

 

 少しずつ呼吸が早くなってきた。それでも急い

で目的地に向かう。ようやくユキサダの部屋に着

いて入ると般若が立っていた・・・・・。

 

「ハァハァ、お前ら!!いい加減しろ!」

「オヤジ!助けてくれ!」

 

 ラッキーは天からお助けときたと安堵した。

 けれど、静かな重いオーラを纏ったリズは・・・

 

「親方・・・丁度良かった・・・今日の予定変更を・・・

 あなたの息子さんの葬式をお願いします」

 

 リズはそう言って殺意を親方に向けて予定の

変更を言い放つと・・・親方は動じることなく・・・

 

「・・・・・・・駄目だ。客人が最優先だ・・・・・・・」

「どうしても?」

 

 再度、殺意・・・いや、覇気・・・・違う怨念に近い

気迫で親方に問い正す。

 

「・・・・・・・わかった。ユキサダの葬式は・・・・・・・

 全てが終わったらに行う。ともかくだ!お前

 たちはさっさと身支度をしろ!!」

 

 そう言って軍隊の回れ右で方向転換して後ろ

姿を見せるサトル。

 

「後一時間ぐらいで客人が空港にくる。本当に

 時間がねえぞ!!」

 

 親方はそう言い、後ろ姿でパンっと両手を打

ち合わせその場を締める。

 

「お〜や〜じ?!」

「オマエが悪い。運命だったと思え・・・・・・・」

 

・・・・・その場を立ち去ろうとするサトル・・・・・・・。

 だがラッキーは見た。父親の足元がガタガタ

と震えているのを・・・・・幼い部下?の覇気に怖れ

逃げ出す情けない親方あった・・・・・。

 

 そして、この時オレは悟った・・・・・。今日は

オレの命日がだと・・・・・そんな日はあのコロニー

でなくなったと思ったのに・・・・・。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

       【C.E55 4月1 日】

         [メンデル]

 

 セラは別れの間際に神様らしい言葉を言う!

 

(本当に申し訳ありません)

(私があなたにただ一つ、警告です)

『警告?』

(この世界の禁断の聖域)

(あなたはその身が禁忌にあるのです)

『ほ〜、随分神さまらしいこと言うだな~』

(真剣にお聞き下さい)

『茶化して悪かった』

『だがな、その禁断の聖域とはどんな意味だ?』

(自分の心で捉えればいいだけのことです)

 

(・・・この世界の深い場所・・・禁断の聖域にいる)

 

(その認識はいかなる時でも忘れないで下さい)

 

そう言って・・・・・セラの声・・・いや、意思か?・・・

頭の中に届かなくなった・・・・・。

 誕生数日でいろんな出来事があったから心底

疲れたので、オレは眠ることにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

       【C.E55 4月2 日】

        [メンデル]

 

 何やらヤカマしくて、オレは目を覚ました。

 新生児室のガラス越しから屈強の身体をした男

と多分?この病院スタッフ数名が言い争いをして

いるのが分かった。

 なんかだか聞こえる会話からして・・・・あのプロ

レスラーはオレの伯父?らしい。

 伯父はオレを強引に他のコロニーにある病院へ

と転院されるために口論をしている。

 横暴な駆け引きでオレを引き取ると大声で怒鳴

っているのが保育器の中でも分かった。

 

 そんな傲慢な伯父に一人の医者?が過熱してい

く口論を止めに入った。顔をよく見ると鋭い眼光

をした医者はオレの父親と一緒に出産に立ち会っ

ていた担当医だったよな。

 

「あなたは、以前からお伺っていたトクガワの

 奥様の親類ですか?」

「アァ〜、そうだよ。イズミ・トクガワの実兄

 サトル・サナダだ」

「甥をお引き取りにきたと先程からの言い争い

 で聞き取れたのですが?」

「おおー、そうだ!?問題ねえだろ?」

 

 相手の素性を確認する医者は冷静に対処しよ

うとする。

 次に試すかのようにこんな説明を話す。

 

「確かにあなたが甥を引き取るのに対して我々は

 引き止める権限がありません」

「ほう?聞き分けがいいな?」

「しかしながら、あなたの要求は許可できません」

「それは・・・医者しての判断か・・・?

 それとも・・・マッドサイエンティストしての判断

 か・・・?」

「科学と医学に携わるものの判断です」

 

 担当医?は当然のように答えた。

 

「普通なら、確かによー、あんたらの言い分が

 正しいが、こっちも引き下げるわけには行か

 ねえんだよ・・・・・」

「我々には甥をお預けられないと・・・・・?」

「アァー、そうだよ!」

「判断材料を教えていただきたいのですが?」

「あんたらの現在の研究の内容だ!!」

 

 伯父の言葉にマッドサイエンティストが眉間に

シワを寄せ、渋い顔をしたのが見えた。

 

「俺がいろんなツテで集めた情報をもとにたどり

 着いた考察だ」

 

 伯父は深呼吸してから言い放った。

「この病院、および、あのヤバ過ぎる大企業が

 あんたらの研究に多いに評価し、期待してる」

 

 伯父は病院スタッフ全員を睨みつけながら

 

「神様のお怒りを爆買いするような愚行だと・・・

 それこそ禁断の領域へと爆走することを・・・

 ヒトを機械仕掛けの子宮で創りだそうなんて

 フザケた人外な研究が現在進行中だったな?」

 

 と叫び、少し沈黙した後に担当医が口を開く。

 

「随分と我々の極秘裏の情報をお持ちですね?」

「俺はジャンク屋だ。こうゆう家業にはな!?

 多種多様のコネと質実剛健で繋いだツテが

 持つことができねえと明日、いや今日には

 餓死するんだよ!!」

 

 伯父は所謂、凄腕のジャンク屋と言うやつか?

 しかし周りが関心するほどの情報収集能力だ。

 その担当医は、再度沈黙した後、伯父の要求を

承諾した。

 

「・・・・・わかりました・・・・・。あなたの甥を転院

 する許可をします」

「へぇ〜、やっと許可したか!」

「ドクターヒビキ!!」

「我々にとっても、これ以上騒動に起こすのは・・

 ・・・得策ではない・・・・・」

「損得判断で俺とモメるのがそっちにとって

 今の研究に支障を起こすのが恐れているな!」

「そうです。それにあなたの甥は私たちの研究と

 並行して行われているもう一つの件なのです」

 

 担当医はそう言い切った・・・・・。?・・・今・・・? 

 ドクターヒビキってスタッフが呼んだなあ・・?

 まさか?あのマッドサイエンティストは・・・・?

 

「あのユーレン・ヒビキが自慢げに話すのならば

 ・・・・・こりゃ相当ヤバイな?!」

「それは違うます。ミスターサナダ・・・・・」

「進歩こそが全人類の幸福である」

「これこそ人の進化の理想だと私は考えているの 

 です」

 

 やっぱりな、あの医者、いや、あの研究者・・・・

キラ・ヤマトの実父・・・・・ユーレン・ヒビキ。

 

「あぁ〜、そうかよ。その理想はな、ある意味で

 正論の極み、もしくはだ、善行の狂気だよ?!」

「人の価値観とは人それぞれが異なるものですよ」

「何を信じるかはその時代の流れで生まれた産物

 こそ定められるのです」

 

 対立する価値観のぶつかり合いだ。どっちらが 

善か悪かが、もはや、どうでもいいほどに火花を

散らす。

 

「まぁいいさ!とにかく甥をここから連れ出す。

 言質は、今、あんたからの証言で取ったぞ!」 

「二言はありません。先程の情報は我々にとって

 はトップシークレットなのです。

 サナダさん、外部には情報を漏らさないように

 お願いします」

「あぁー、わかったよ。 しかし、あんたは随分と

 潔く事を運ぶな?」

 

 博士を軽蔑する目で見るサトルは推測を言った。

 

「おそらく、研究が最終段階までの近づく所まで

 きているな?」

「そのような検索をするのは野暮です」

「そうだな。甥に何かしらの研究の副産物が出た

 としても、こっちで対処できるように手配はし

 てある。もうここに用はねえ」 

 

 そう言って新生児室に入り、オレの保育器ごと

を右肩に乗せ、伯父はその場を立ち去ろうとした

際、ドクターヒビキが声をかけてきた。

 

「サナダさん、甥の育児経過を転院先の病院から

 のカルテデータをこちらに送信することはでき

 るでしょうか?」

「それをこの一件の取引条件にする気か?」

「いえ、あくまで担当医の個人的お願いです」

 

 伯父は少し考えた後にドクターヒビキに厳しい

目線を向けて、こう言い出す。

 

「甥が短い間世話になった。だからその恩の分

 ぐらいのあんたの頼みを聞いてやる。

 甥のカルテデータを送れるかどうかは話をつけ

 てみる」

「それはよかった。サナダさん、本当にありがと

 うございます」

「もう用はねえな?あばよ!」 

 

 伯父はそう言い残し歩き出す。これまた怒涛の

顛末だか、オレは保育器が揺れながら、ある事を

実感できた。

・・・・・オレ様は『強運』を持って生まれたな・・・・・。

 

 この『強運』で、あの青き清浄なる宗教テロに

巻き込まれなくなる!

 親が死んで、最悪の研究のモルモット育成され 

なくなる!

 

 オレは望んでいた人種や才能よりも生まれ持っ 

た『強運』で生き抜くことができる。

 この先、原作から来るどんな困難でも必ず生き

残れる。

 

・・・・・だから、オレは生きる・・・・・新しい人生・・・・

・・・・・ユキサタ・サナダとして・・・・・。

・・・・・いや・・・・・オレの呼び名はラッキー。

そうさ、ジャンク屋・・・・・ラッキー・ルウだ。

ーto be continuedー




次回 幼馴染


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FOREWORDー7 鉄火肌の幼馴染

沸点の低い般若に迂闊な禁句を言い放つ
命知らずなラッキー。

静かで火傷をする熱風の覇気を纏うは
鉄火肌の幼馴染

『ギガフロート』のギルドマスターの
身内の騒動と後始末に苦悩する日々。


        【C.E62 7月15日】

 

         [ラッキーの部屋]

 

 ラッキー、及びユキサダ・サナダは強運なので

ある。しかし、運勢とは因果応報であり、幸運が

訪れるならば、必然的に不運へ巻き込まれるのが

世の「さだめ」なのだ。

 

 ラッキーは強運な分、普段から不運に巻き込ま

れていく体質である。

 トラブル、いや・・・色欲としてのT〇 L〇VEるで

あり・・・ラッキースケベな日常茶飯事だ。

 そして、今もラッキーの不運による誰もが羨む

テンプレ。

 

 金髪の少女はラッキーに近づいてきた。

 

「ラ〜ッキー〜!!」

 

 憤怒の紅い眼を睨みつけた。

 

「あんたって奴は?!毎度?!毎度?!」

 

 般若がラッキーの前に立つ。

 

「待て!?リズ?!」

 

 怒り狂う少女の名前は、エリザベス・スミス。

 愛称はリズ。金髪のロングヘアで紅い瞳をした

容姿が特徴で、ラッキーがこの『ギガフロート』

に住み始めた際、伯父と同じジャンク屋の仲間の

会合で顔を合わせた時に出会った。今までは一つ

年上の幼馴染兼同業者である。

 

         【DETE】

 

[氏名]   エリザベス・スミス

[人種]   ナチュラル

[生年月日] C.E54 10 月24日

[血液型]  B型

 

 その性格はジャンク屋の娘として生まれ育った

故に・・・・・活発で男勝りな機械オタクの姉御肌だ。

 この気性の激しい性格だからか・・・・・・怒らすと

般若の化身・・・オーガの姿でなる・・・。

 

「だれがオーガですって?!」

「なんのことだ?」

「いや、誰かがそんな風に認識してたのよ?」

「誰かって誰だよ?」

「うるさい。あんたね〜、覗きが趣味なんとかし

 なさい!!」

 

 乱れたシャツとスカートだけの少女はツッコミ

を入れながら、ラッキーはリズにツッコミ返し

 

「いつから、オレには覗きの趣味ができた!!」

 

 勝手に設定された趣味を否定するラッキーは

取り乱れた呼吸を整えて叫ぶ。

 

「そして、ここはオレの部屋だ!!」

「なに言ってんの?今日は大切なお客さんが訪問

 がある」

「その身支度するため、空港近くのあんたの部屋

 を借りるって言ってあったわー!?」

「初耳だ??」

「ハァー、メールを送ったわよ!」

「メール?」

「3日ぐらい前に送ったはずでしょうが?」

 

 ラッキーは自分のポケットからケータイを取り

出し、リズのメールを探す?

 

「3日前のリズのメールなんてねえぞ?」

「え?ちゃんと送っているはずよ?」

 

 ラッキーはケータイの画面を見せる。

 

「本当に見当たらないんだが?」

「ちょっと待って?」

 

リズが自分のケータイでメール確認すると

 

「アチャ〜、いけない」

「?」

 

 リズはケータイ画面を見たまま

 

「間違えて、パ〜パに送ってた・・・・・?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

 二人ともしばらく沈黙した後・・・・・

 

「「・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 下を向いてたリズが顔を上げた瞬間

 

「てペロッペ〜」

 

「可愛いらしく誤魔化すな!!似合わね〜!」

 

 リズのいい加減さに腹が立ったオレは叫ぶと

 

「何よ!?ほんのちょっとミスしただけ?

 これぐらいでギャーギャーと騒ぎ立てるん

 じゃないの!」

 

 さらにディスってくるのでオレは怒鳴る。

 

「なにがちょっとだ!なにがこのぐらいだ!!

 ふざけんな~」

「ラッキー、あんたはさー!!

 本当に肝がナットぐらい小さい男ね〜」

 

 この発言に堪忍袋の緒が切れたオレ。

 

「連絡ミスした挙げ句、覗きの冤罪でヒトの部屋

 の中でバズーカ砲ぶっ放す」

 

「ゴリラ男女だけには言われたくね〜!!!」

 

 それを聞いたリズは反論してきた。

 

「そこまで言わなくてもいいでしょう〜!!」

 それにいくら私でも住居エリアのど真ん中で

 バズーカ砲なんて使うわけないでしょう!!」

 

 持っていたバズーカをオレの前に抱え、よく

見ろと言う目で説明してきた。

 

「今、使ったのはバズーカ型の煙と爆発音のみの

 お手製の特大クラッカーよ!!」

 

 リズは銃火器を使っていないと否定する。

 

「なんでそんなもの準備してるんだ?」

「あんたの覗き対策よ!」

「オレは覗き屋じゃねえよ~ジャンク屋だ!!」 

「なに〜うまいこと言ってんの?」

「とにかくね?!か弱い乙女の裸を覗きするのは

 ・・・・・重罪よ!!」

 

 オレは憐れみ目で苦笑いの顔になる。

 

「か・・・か弱い・・・お・・・乙女・・・・・???」

「その目線は何なの?!!」

「オレの目の前にいるのは、大昔のアニメに出て

 くる機械仕掛けのゴリラ総司令官・・・・・」

 

・・・・・その瞬間に金髪姉御様は・・・・・撲殺天使様の

ように・・・・バズーカを両手で持ち・・・・誰もが凍り

付く感情の・・・・ない笑顔で殺戮モードチェンジし

 

「ラッキー・・・・・・・人生の終着駅に送ってあげる」

「え・・・・・エリザベスさん・・・・・・・?」

「安心しなさい・・・・・・・痛くしないから・・・・・」

 

 ラッキーはリズの覇〇色の覇気を正面から受け

恐ろしさから全身の力が抜け、その場で尻もちを

ついて気絶した・・・・・。

 

 再度、リズの殺気で強制覚醒させられ、命乞い

を口にするラッキー。

 

「待て、エリザベスさん」

 

 必死に言い訳を考え

 

「ほんの少し本音言ってしまっただけだ」 

 

 そう言って殺意満々の眼で、バズーカを持っ

た両腕がラッキーの正面に立ち

 

「カラカイや冗談じゃないんだ・・・・・・・」

 

 絶体絶命のラッキーに救いの手が現れる。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

         【同時刻】

 

     [『ギガフロート』理事長室]

 

 巨大な人工島『ギガフロート』の運営を行う

ジャンク屋組合の理事室のドアが勢いよく開く。

 組合の理事の秘書が慌てて入室するなり息を

切らせながら

 

「スミス理事?!た、大変です?!」

 

 スミス理事が自分の秘書の慌てぶりに驚き

 

「?どうしたんだ?一体?!」

 

 と問い、秘書を落ち着かせる。

 

「それと落ち着け、ロバート」

「お見苦しい所を・・・・・申し訳ありません」

 

 謝罪の後“何があった”と質問する。

 

「空港近くで爆発が?!」

 

 とロバートがそう答えたので、事態を聞いた

スミス理事は

 

「それは本当か?事故か?、事件か?」

「今、手の空いた者をそちらに回し、情報収集

 されています」

 

 と報告を受けた瞬間、スミス理事のケータイに

一通のメールが届き、内容を確認すると頭に手を

置き、項垂れるスミス理事。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「?・・・・・どうされました?スミス理事?」

 

 秘書の目線を合わせたスミス理事は謝罪をする。

 

「すまん」

「はい?」

 

 スミス理事は深呼吸して、事の経緯を話す。

 

「うちのお転婆の仕業だ・・・・・」

「お嬢さんの?」

 

 頭を右腕で支え、ため息を出す。

 

「全くー!あのイノシシ娘めー!」

「また・・・やらかしやがって~・・・」

 

 何かを察したのか・・・ロバートはこう切り出す。

 

「もしかして、ラッキー君との?」

「・・・・今、サトルが現地に向かっている」

 

 それを聞いたロバートは苦笑して呟く。

 

「そうなんですか・・・・・」

 

 スミス理事は迅速な対応が必要だと考え、秘書

に的確な命令をする。

 

「ロバート」

「はい」

「皆には、“オーブの訪問団の歓迎の準備を再開

 しろ”と伝えてくれ」

「承知致しました」

 

 ロバートはスミス理事の命令を実行するために

直ぐ様、理事室を退室して仕事にかかる。

 そして、自分の娘がやらかした行動に頭を悩ま

せるアルフォンスは

 

「あのバカ娘・・・・・今日ぐらいは大人しくしてろ」

 

 と呟き、深くため息をする。そこから考えるの

はいつも側にいる娘の幼馴染の気苦労だ。

 

「ユキサダ君にも気苦労かけるな・・・・・」

 

 そして、理事室の固定電話の受話器を右手に持ち

ある部署に電話する。

 

「私だ。先に到着している客人には先程の爆発に

 ついて私が直々に事の経緯を話す」

 

 私は電話を終えた後、これからの事を考えると

今から疲れが両肩にのしかかる。

 

「ハァ~、これから忙しいのに、あのイノシシは」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

         【同時刻】

 

   [『ギガフロート』空港国賓室]

 

 オーブから先に到着していた国賓たちが驚い

ていた。

 

「何だ?今の爆発みたいな音は?」

「“みたい”でなくて本物だよ!カガリ!!」

 

 オーブの国賓たちにはオーブの後継者の顔ぶれ

もいるのだ。怯えている男の子に活発な女の子?

が活を入れる。

 

「ユウナ、お前な。この『ギガフロート』はよく

 様々な破壊工作等が起きるで有名だろ?」

「何でそんなに冷静なの?」

「お父様に我がままを言って早めの訪問をして

 いるのだ」

「我々は怖気付いてはいけない」

「“我々“を付けないで!“我々”を」

 

ーto be continuedー




次回 準備


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FOREWORDー8 獅子の姫の咆哮

空港の近くで響く爆音に動揺するオーブの
国賓たちに謝罪するロバート秘書

世界の風評とは異なるウズミ代表の思想に
懸念するラッキー

偶然にも親の信念を侮辱するものと遭遇し
許さないカガリ


       【C.E62 7月15日】

 

      [ギガフロート空港国賓室]

 

 勇敢な発言した国賓はカガリ・ユラ・アスハ。

 ウズミ・ナラ・アスハの後継者にしてトラブル

メーカーの気質を持つ。

 因みに、カガリの隣で裾を掴んで怯えているの

はカガリの幼馴染兼許嫁ユウナ・ロマ・セイラン

は情けない声で呟く。

 

「ともかく、ジャンク屋組合に何が起きているの

 かを聞いてみようよ?」

 

 その意見に同意したカガリは

 

「うむ、そうだな?!」

 

 すぐに周囲を見ながら行動する。

 

「どこかに固定電話が・・・・・」

 

 目当てのものを探していると

 

「カガリ様?!ユウナ様?!」

 

 自分たちの名を呼ばれたので振り向くと

 

「あなたは確かスミス理事の?」

 

 カガリがコノ島に到着した際、出迎えた組合の

理事の秘書が現れた。

 

「筆頭秘書のロバートと申します」

 

自己紹介する秘書に質問するカガリ。

 

「先程の爆発みたいなのは?」

 

 ロバートは目線を斜め下に向け、冷や汗を流し

謝罪する。

 

「その件に・・・・・付きまして・・・・・大変申し訳あり

 ません」

 

 ロバートの謝罪に混乱する2人。

 

「「え?」」

 

 オホンと咳払いして、2人に目線を合わせ

 

「簡単にご説明いたしますと・・・・・身内が引き起こ

 した・・・・日常茶飯事と申しますか・・・・」

 

 と説明するロバートにカガリが疑問を持つ?

 

「?説明がよくわからないのだが?」

 

 “確かに”と顔に出るロバートは弁明した。

 

「ともかく、テロ行為などではありません」

 

 テロ事件ではないと説明され、報告を受けた

2人はとりあえず安堵した。

 

 しかし、カガリは再度質問する。

 

「そうか!ならば、先程の説明は一体?」

 

 ここで直ぐ様、カガリを止めるユウナ。

 

「質問するのは止めようよ!カガリ」

 

 止めに入ったユウナを不思議がるカガリ。

 

「なぜだ?ユウナ?」

 

 ユウナの表情はなんとなく状況を察したのか

どこか苦笑いになっていた。

 目の前のロバートが自分と同じ立場にどことな

く近いと感じてしまい、余計な事への干渉しない

方がいいと悟った。

 そして、ユウナはカガリを見てこう言い出す。

 

「・・・あまり他所の揉め事にはさ・・・首を突っ込ま

 ない方がいいよ!!」

 

 ロバートは自身に対しての気遣いに感謝し、自

分の上司の言付けを報告する。

 

「お気遣いに感謝いたします。ユウナ様」

 

「いや・・・まあね・・・・」

 

 感謝しながら、頭を下げたロバートが直ぐ様に

上半身を上げ、2人の目線に合わせた。

 

「何か?」

「実は、スミス理事からお二人に今回の騒動の原

 因を自身の口で伝えたいと言付けをお預かりし

 ております」

 

 このような報告されたカガリは

 

「スミス理事から直々に?」

「今、カガリ様のお休みになさっている国賓室に

 向かわれております」

 

と報告してきた。カガリが心配そうな顔で呟く。

 

「随分と泡立たしいな?」

 

 その問いに対してロバートは言いにくそうで

目線を泳がせていた。

 

「言いにくいのなら無理に口にしなくてもいい」

 

 カガリがそう申し出る。そして、 ロバートに

このように言い放った。

 

「スミス理事を私たちで探して原因を聞く」

「ちょっと待って、カガリ」

「行くぞ!ユウナ」

 

 そう言って、カガリは国賓室を飛び出してしま

ったので、すぐにその後を追うユウナと呆然する

ロバートであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

        【同時刻】

 

       [ラッキーの部屋]

 

 親方ことサトルが過ぎ去った後にリズが

 

「ユキサダくん」

 

 振り返り、冷たい目線で威圧しながら

 

「はひ!!」

「ともかく、あんたの部屋で身支度するから

 少し間外にいて、すぐに済ますから」

 

 リズの感情のない笑顔で壊れた人形の如く上下

に首を大きく振るうラッキー・・・・・・・

 

「ご・・・・・・・ごゆっくり・・・・・」

「あたしが終わったら、素早く身支度を」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 そうして、オレは部屋の外で待機していた。

 生きた心地がないオレは心の中で“逃げるか?”

と思い浮かべた時

 

「ユキサダ・・・・・」

「ほい」

「空いたからどうぞ」

「し……失礼します」

 

・・・・・すれ違う際に耳元でリズが・・・・・・・

 

「・・・・・盛大な葬式にしてあげるから・・・・・・・」

 

 そう言い放った途端、全身から血の気が引く。

 そんな音を身体の芯から頭の中に聞こえてくる

ような気がした・・・・・・・。

 

(・・・・・出迎えに向かわず逃げるか・・・・・?)

「ユキサダ?・・・・・早く・・・・・」

 

 この瞬間・・・・・全身から寒気が纏わりつく。

 

「ふひ?!」

 

 リズがドアのあたりから静かな感情のない声

を呼びかけた。

 ラッキーはすぐさま身支度を整え、ドアの前

で待つリズに近づくた。

 

 ・・・・・お互いに馬子には衣装のような正装だ。

 

 ラッキーの正装は白色の半袖のワイシャツと

茶色ボトムス。

 リズの正装もラッキーと同じく白色の半袖の

ワイシャツと膝までの薄い黄色のスカートだ。

 ちなみに2人の正装のコーディネイトをした

のはサトルだ。

 以外にも服装のセンスは抜群なのであった・・。

 

「そんじゃ、親方たちが先に着いている空港に

 向かおうか?」

「は、はい」

 

 不機嫌な幼馴染の憤怒の気迫に押され、居心地

の悪い中・・・・・空港に向かうため、2人はジャンク

屋が開発した複数乗りのセグウェイ?に乗る。

 運転手のラッキーの操縦で2人は現地へ赴く。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

        【20分後】

 

    [空港内オーブ訪問団歓迎会場]

 

 

 空港の歓迎会場に2人が到着した際、大人たち

はオーブ訪問団の歓迎の準備で慌ただしく動き回

っていた。

 空港内の歓迎会場の状況を見ていたリズがこう

言い出してきた。

 

「さて、あたしらも手伝うとしますか!」

「・・・・はい」

 

 静かなオーラを纏い続けるリズがラッキーを

こき使う始めた。ラッキーは、どうにか逃げ出す

ことができないかと思考を巡らせる・・・・。

 

「ユキサダ・・・逃げてはダメだからね?」

「・・・お〜い、エリザベス様・・・」

「無駄口たたく暇があったら手を動かす。これ

 ジャンク屋の習性」

 

 ・・・・・悲しい習性・・・・・。

 

「頼むからさ~、いい加減機嫌を直してくれよ。

 オレが悪かったよ」

 

 リズに先程の悪ノリを謝罪するラッキー・・・。

 だが、冷たい目線をした呆れ顔のリズは

 

「あたしはサイボーグゴリラのはずよ?」

 

 と言われ、ラッキーは頭を掻き、苦笑いして

 

「だから、悪ノリし過ぎたって、

 訪問団歓迎の件が終わったらさ、リズが好き

 なものを奢るからさ?」

 

 ふ~んと言いながら、リズは小悪魔な笑顔で

 

「なら、あんたが破産するまであたしの好きな

 ものを奢り続けるということで」

 

 などと言われたので、必死に頭を垂れて

 

「おいおい、勘弁してくれ。リズもジャンク屋の

 見習いならわかるだろ?オレらの給料はいろい

 ろ引かれて雀の涙しか手元に残らねえ・・・・・」

 

 ラッキーは“破産なんて勘弁”と懇願するが

 

「フン、やっぱり、サイフもキモもナットよりも

 小さいは・・・・・あんた・・・・・」

「あのな〜」

 

 ジト目の無愛想な表情になったリズから

 

「・・・だいたい、あんたさ?今回の訪問の一件さ

 ・・・随分といやそうな感じだったわね?」

 

 オーブに怪訝する仕草をするラッキーに疑問を

持つリズはそう言い出した。

 

 「あれはなんで・・・・・??」

 

 ラッキーはいきなりの質問に慌てて聞き返す。

 

「え?オレ、そんなにいやそうだったのか?」

「長い付き合いのあたしでなくても解りやすか

 ったわよ?」

「ラッキーがどこかおかしいって!!」

 

 人差し指をオレの鼻先に押し付けながら指摘

をした。

 

「ジャンク屋のみんなが言ってたわ?!」

 

 そこまでわかりやすく振る舞いをしていたか?

 自分の軽率な仕草や行動に焦りを感じてしまっ

た・・・。

 

「いや〜、今回の依頼、もともとはオヤジが個人

 で受け持つ予定だったろ?」

「そういえばそうね?」

「あのオヤジが持ってくる仕事は一流の案件だ」

「そんなのは、あったり前でしょうが!」

「アンタの親は凄腕のジャンク屋たんだから!」

 

 ラッキーは深呼吸し、ため息まじりに・・・・・。

 

「つまり、すんげー危険な仕事だっていうことだ」

 

 ハァ~?とため息の呆れ顔のリズ。

 

「それがジャンク屋の生業でしょう?」

「オヤジの場合、その『危険』が特A級なんだ!」

「何よ?今さらそんなんでビビっての?」

「やっぱさ、キモがワッシャーより小さ〜!!」

 

 ラッキーは “違う違う”と否定しながら言う。

 

「オーブの理想がヤバイの!」

「オーブの?」

「ウズミ代表の行動理念だよ」

「なんでそれがヤバイの?どの国も裏側は腹黒な

 ものでしょう?」

 

 ラッキーは、フゥ~と息を吐きながら心を落ち

着けてから、深呼吸をする。そして語り出す。

 

「ウズミ代表の思想はな〜、いつか・・・・

 全世界を動乱と破壊に巻き込むんだ!!」

「は?どうゆう意味?分からない?」

「オーブの立場の考え方は中立だろ?」

「そうね、オーブの理念はそんなもんね?」

「でもさ、あの国は強国だ」

「まぁね?いろんな事業を成功させてるものね」

「どちらも狙える存在だ」

「つまり、あんたさ、オーブの善意が今の世界

 のパワーバランスを崩壊させる可能性がある

 とか言いたいの?」

「そうだよ!オーブが世界のどちらにも付くこと

 ないから、保有する力により世界の天秤を壊す

 キッカケになるかもしれない」

 

 リズと他愛もない会話をしている際

 

「おい、そこのお前!さっきから聞いていれば

 オーブの思想が危険とはどうゆう意味だ!?

 代表のウズミ・ナラ・アスハの善意が世界に

 動乱と破壊を招くとは聞き捨てならんな!!」

「カ、カガリ、落ち着いてよ・・・・・」

 

 いきなり怒鳴られて振り向くと・・・・・そこには

オーブの姫君とその自称幼馴染兼許嫁の悲惨軟弱

王子がオレたちの目の前にいた・・・・・。

 

ーto be continuedー

 




次回 語り合い


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FOREWORDー9 次の世代の遭遇と交友

オーブの姫君ことカガリに遭遇し
激しい怒りを買う懲りないラッキー

その隣で必死に静止させようとする
軟弱王子ことユウナ


リズの姉御・・・女将の覇○色の
オーラの凄みにより、その場を治める。


     【オーブ訪問団到着30分前】

 

       [オーブ訪問団歓迎会場]

 

 空港に到着したラッキーたちは大人たちと一緒

に会場の準備に取り掛かった。

 子供のラッキーたちは、掃除機で訪問団のため

に引いてある赤の絨毯を掃除していた。

 掃除中にオーブの対しての他愛もない会話をし

ている際に自分たちの会話に突然割り込みをされ

たので振り向くと軍服を着る少年と少女が立って

いたのでリズが質問をした。

 

「あんたら、誰よ?」

 

 その問いに金髪のショートカットヘアでオレら

と同い年ぐらいの女の子が叫ぶ。

 

「オーブの住人だ。先程からオーブの代表の理念

 を悪く語っている茶髪の男子の暴言には耐えら 

 れん、忠告がある」

 

 隣の青色の癖毛のショートヘアの少年は右手で

金髪の少女の右肩を掴み、“これは問題になる”と

口論を止めにかかる。

 

「ちょっと、“『ギガフロート』では揉め事を起こ

 すな”と親にキツく言われただろ!」

 

 オレたちよりも3〜4歳ほどの年上の少年の顔と

容姿にオレはどこか見覚えがあった。

 ラッキーはこいつの詳細を曖昧な原作知識から

分析する。

 

         【DETE】

 

[氏名]   ユウナ・ロマ・セイラン

[出身国]  オーブ連合首長国

[人種]   ナチュラル

[生年月日] C.E51 ?月?日

[血液型]  ?型

[親類]   ウナト・エマ・セイラン(父親)

[家柄]   セイラン(のちの五大氏族に昇格?)

 

 ということは・・・・・この金髪のショートカット

ヘアの少女は・・・・・あのヒロインの一人・・・・・?

 

         【DETE】

[氏名]   カガリ・ユラ・アスハ

[出身国]  オーブ連合首長国

[人種]   ナチュラル

[生年月日] C.E55 5月18日

[血液型]  A型

[親類]   ウズミ・ナラ・アスハ(父親)

[家柄]   アスハ(オーブの氏族の頂点) 

 

 ・・・なんで?・・・オーブ氏族の跡継ぎたちが・・・

何で・・・今・・・ここにいるの?

 オーブの訪問団が到着する時間はサバ読んで

30分ぐらいはあると思うのだが?

 そんな疑問を思い浮かぶ間、口論の静止をする

ユウナをカガリの強く口調で叫ぶ。

 

「お前な、オーブに暮らす住人として自国に

 対する聞き捨てならない暴言を見逃すのか?」

 

 カガリを落ち着かせようとユウナも叫び返す!

 

「あのさ、カガリ!よく考えてよ?!」

 

 必死に彼女の右腕を掴みながら静止させよう

とするユウナ。

 

「今回のジャンク屋ギルドとの会合については

 ぼくらは依頼内容は知らされてないよけどさ

 確か、オーブにとっても重要な案件だよ?」

 

 ユウナの発言に少し苦い顔になるカガリ。

 

「それがどうした?」

「例え、相手が僕らと同い年ぐらいの彼らでも

 ここでケンカを売る行為はマズイよ!」

 

 無駄にして、余計な口ケンカを止めされるため

に必死の説得でカガリを冷静にさせようと試みる

ユウナ。それを見ていたリズが口を出す。

 

「確かにさ、ラッキーはオーブに対して批判と

 罵倒みたいなことをしゃべっていたよ?」

 

 隣にいるユウナを見て彼の言葉を肯定した。

 

「けれどさ、そこのモジャモジャが言う通りよ」

 

 ユウナは“モジャモジャ”の所に不満気な顔にな

ったが、無視して言い続けているリズ。

 

「あんたがさ?オーブの訪問団が来る前にここで

 騒ぎを起こしてしまうといろいろとマズイわよ」

 

 今度はカガリを見て忠告してきた。

 

「現地の連中と揉め事を起こすってことは親の顔

 に泥を塗るんじゃないの?」

 

 リズはカガリにユウナが親から言いつけられた

注意と同様の正論を言われたのでカガリが反論を

するように叫ぶ。

 

「だが、もし、もしだよ、我々の立場が逆ならば

 お前も反論はするだろう?」

「まあ、確かに反論ぐらいはするわ?」

「自分の住む国や島に対しての暴言を言われて・・

 ・・・何も言わない方が親の顔に泥を塗ると私は

 思うのだが!」

「その通り」 

 

 なぜか?この二人は意気投合していた・・・・・。

 

 なんだか大昔の番長2人がケンカしてお互いを

認め合うシーンに見えたラッキーはため息した後

リズに呟いた・・・・・。

 

「・・・リズさん・・・アナタ・・・どっちの味方です

 かい?」

 

 ラッキーのツッコミで慌てるリズ。

 

「いや、それはそうとラッキー?!あんたは

 オーブに無礼な言動をしたのは事実よ」

 

 リズはラッキーを目線を合わせ、

 

「コイツラに謝罪しなさいよ」

 

 冷や汗を掻きながら謝罪をしろと言い出す。

 

「お〜い、適当に誤魔化すな~」

「いいから謝りなさい」

「ハア、ハイハイ、わかりましたよ。オカン」

「誰がオカンよ!!」

 

 くだらないおふざけのセリフで落雷ような垂直

軌道のリズのゲンコツがラッキーの頭上に急降下

した。

 

「イッて〜、軽いジョークなのによ!

 ここまですることはないだろう?リズ!!」

「ラッキー〜」

 

 次の瞬間、リズが感情のない笑顔で呼ぶ。

 

「はい」

「この二人は一応お客さんらしいじゃないの・・・

 これ以上さ、コイツラの前でくだらないことを

 やらかしたら、この後には・・・・・」

 

「・・・・・アンタの身がどうなるか分からせてあげる

 わよ~」

 

 リズは、またしても、周囲を気絶?させるよう

な静かな重い覇○色の覇気を纏い・・・・・・目の前に

いるラッキーを優しく脅した・・・。

 

「わ・・・わかった!オ・・オレが・・・悪かったよ」

「悪かった?」

 

 ラッキーは命の危機感がMAXになり、必死な

謝罪する際、その場で瞬時に土下座した。

 

「ボクが全て悪いんです。みな様、ボクの不躾

 の言動で気分を悪くしてしまい、大変申し訳

 ありませんでした。今後は、自分自身の言動

 に気をつけます」

 

 ラッキーの謝罪にリズがカガリたちに尋ねる。

 

「わかればよろしい。あんたもこいつの謝罪を

 受け入れてくれない?」 

 

 リズは姉御、いや、女将さんの如く・・・その場

を修めた。一方、カガリは

 

「アァ、私も言い過ぎた面がある。こちらから

 騒ぎ出してすまなかった・・・・・」

 

と自分にも否を認め、リズが仲裁し始めた。

 

「アンタの言う通りな面もあるわ!こいつが

 アンタラの国に失礼なことを言い出した。

 それで怒るのも当然」

「・・・・リズさん・・・再びお尋ねしますが・・・?

 あなた・・・・・どちらの味方?」

 

ラッキーの土下座&謝罪からのツッコミで、その

場の雰囲気が少し和やかなものになっていた?

 ちなみに、ユウナはリズの覇気?でカガリの

背後で床に倒れ、気絶していた・・・・・。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

         【同時刻】

 

        [歓迎会場裏側]

 

 スミス理事は焦っていた・・・・・。国賓の最重要

人の2人がどこかに行かれたからだ・・・・・。

 

「一体・・・・・どこに居られるのだ?」

 

 組合の人間を総動員して捜索したかったが・・・

それは悪手だと判断した理事は自身の秘書たちに

2人を探させていた。

 

「スマナイ、ロバート」

 

 そこにサトルが現れた。会場裏側で項垂れてい

たのをたまたま発見したので声をかけた。

 

「どうした?アルフォンス?」

 

 声をかけられた理事は、サトルの顔を見て少し

安心してサトルの両肩に両手で掴むと。

 

「サトル!丁度良かった」

 

 尋常ない焦り方にサトルは困惑気味に尋ねる。

 

「?!・・・・・どうした?」

 

 事の経緯をサトルに話す理事。

 

「実は・・・・・」

 

 それを聞いたサトルは呆れてながら呟く。

 

「・・・・・噂通りの姫様だな~」

 

 ため息をしながら同意するスミス理事。

 

「まあね・・・・・。サトル、頼むよ。捜索を」

 

 今度はサトルの右手が理事の右肩を掴む。

 

「分かった。うちの繋ぎ手どもも気になるが・・

 ・・・・・オーブの跡継ぎたちを探してくるわ」

 

と言いながら、捜索を了解した。

 

「スマン」

 

 ニカッと笑顔で任せろと言うサトル。

 

「良いってことよ。しかし理事職も大変だな」

 

 ジロ目でサトルを見るスミス理事は恨めしそ

うに尋ねる。

 

「なら・・・君に譲ろうか?」

 

 口笛を吹きながら・・・そそくさとその場を遠ざ

かるサトル。

 

「俺には性に合わないわ!じゃあ、探してくる」

 

と断り、手を振りながら、空港内に走り出す。

 

ーto be continuedー




次回 素性


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FOREWORDー10 転生者ラッキーの素性と転機

リズの男気?で和やかな雰囲気になり
語り合う技巧の継ぎ手と政の跡継ぎ

今まで話さなかった自分の悪夢
ラッキーことユキサダの過去

訪問するウズミ代表の獅子の如く気迫に
飲み込まれるラッキー・ルウ


 ラッキーは原作知識で相手の素性を知ってるが

知らぬふりをしてカガリたちと情報交換をするこ

とを提案した。

 

「改めて尋ねたいんだけど、アンタら何者?」

 

 カガリは軍隊の休めの姿勢で自己紹介した。

 

「私の名はカガリ・ユラ・アスハ。先程お前が

 罵詈雑言したウズミ・ナラ・アスハの子だ」

 

 リズはカガリの素性を知った際、思わず呟く。

 

「アンタがオーブの代表の息子?」

 

 リズをジロ目で見て、ほんの少し不機嫌な顔に

なったカガリは訂正してきた。

 

「・・・・・私は女だ・・・・・」

「え? あ、いや・・・・・ごめんね、なんて言うか

 こう・・・男らしい・・・あ、えっと・・・猛々しい・・

 ・・・その凛々しい言葉遣いだったからさ」

「・・・いいよ別に・・・いつも口調と容姿と雰囲気で

 男だと判断されているから・・・慣れている・・・」 

 

 リズがカガリに話題を逸らそうとユウナの方へ

目を向ける。

 

「そうなの?あのさ?じゃあさ、アンタの背後で 

 気絶しているやつは?」

「こいつはオーブの有力氏族のセイラン家の嫡男

 ユウナ・ロマ・セイラン」

「ソイツもオーブの有力氏族の息子?こんなこと

 言うのは失礼だけど、あの程度で気絶するとは 

 本当にオーブの有力氏族出なの?」

 

 リズがユウナにヘタレ宣言した際、ラッキーは

リズの方を向いて呟く。

 

「気絶させた本人が言うセリフではない」

「ラッキー?なんか言いたい事がある?」

「なんにもございません・・・・・」

 

 リズから放たれた覇○色の覇気をそれとなく

躱したラッキー。そこから、カガリが自分たち

の自己紹介を終えたので質問してきた。

 

「さて、次はお前たちの素性を教えてくれ」

 

 最初にリズから言い出した。

 

「あたしはエリザベス・スミス。リズってのは

 仲間が付けた愛称。ジャンク屋見習いなの」

 

 カガリはファミリーネームが気にかかった。

 

「スミス?もしかして、この『ギガフロート』

 を創ったアルフォンス・スミス理事の縁者?」

「そうよ。スミス理事があたしの父親」

 

 リズの父親アルフォンス・スミスはジャンク屋

組合の理事の一人である。

 ジャンク屋組合の経営陣は、ギルド会長と数名

の理事により組織を構成されているので、スミス

理事は、この『ギガフロート』の総責任者である。

 

         【DETE】

 

[氏名]   アルフォンス・スミス

[生年月日] C.E25 4月18日

[血液型]  B型

[役職]   ジャンク屋組合理事

 

 カガリがこんな質問をリズにかけた。

 

「ジャンク屋ギルドの理事の一人娘が見習いを

 しているのか?」

 

 カガリの疑問にリズは自慢げに答える。

 

「あたしは親のレールに乗って生きているわけ

 じゃない。自分で選択してジャンク屋になる

 生き方を選んだ。ただ、それだけよ!」

 

 リズの清々しい答えにカガリは息を飲んだ。

 

「そうか、つまらん質問をして悪かった」

「別にいいわよ。それとさ、あたしの父親も元々

 ジャンク屋。今ではさ、だれもが知られている

 重要な肩書や立場にいる。けどね、うちの父親

 の『恩人』に頼まれて、仕方なく組合の理事を

 務めているだけ!」

「恩人?」

「マルキオ導師だよ」

「あの方が?あの方の頼みでこの島の最高責任者

 を務めていると」

「そ、うちの父親もあの人の頼みだけは断れない

 から、肌に合わない管理職をやってるだけ」

「そうなのか?」

 

 コズミック・イラの本来の歴史はジャンク屋

ギルドの始まり、マルキオ導師と数名の有識

者で、個人事業主が主だったジャンク屋たちを

まとめ上げたんだよな。

 効率良く世界の兵器等の大型廃棄物を撤去や

再利用すること、戦争による環境の悪影響を防ぐ

ために有害物質除去や改善が目的だったよな?

 オレの知る歴史では、確か『SEED』の最終戦争

後に始まるだよな?

 ラッキーは自分の曖昧な原作知識からの考察を 

しているうちにリズがラッキーにバトンタッチし

てきた!

 

「えぇ、はい、あたしの自己紹介は終わったから

 次はさ、ラッキー、アンタの番」

 

 オレは頭を掻きながら自己紹介する。

 

「ハイハイ、えぇ~と、オレのアダ名はラッキー

 改めて、アンタの父親の悪口を言っていたこと

 については、すいませんでした・・・・・」

「アダ名?本名は?」

 

 オレはなんとかハブらかしたかったので適当に

言い出す。

 

「そんなのどうでもいいだろ。ジャンク屋になん

 てなる輩には、スネにキズを持つモンがしかい

 ないんだからさ。余計な詮索はナシ、ナシ」

「スネにキズを持つだと?お前、私と同い年のよ

 うに見えるが?何故、そんな回しくどい言い草

 で自身の素性をはぐらかす?」

 

 カガリはオレが自分の素性を必死に隠す仕草を

気持ち悪く思ったようだ。

 先が進まない現状を見兼ねたリズはラッキーに

代わりに素性を話す。

 

「そいつの名前はユキサダ。アンタの父親の依頼

 を個人で受けたサトル・サナダの甥よ」

 

 ラッキーの本名を知ったカガリは驚愕する。

 

「あのサトル・サナダの甥?!」

 

 ラッキーの経歴をリズがカガリに話す。

 

「そ、こいつはね・・・生まれたての赤ん坊の頃にさ

 自分の両親が亡くなってサトルさんの養子とし

 て引き取られたの」

 

 リズにそんな話を聞かされたカガリは暗い顔に

なり、謝罪する。

 

「スマナイ・・・・・とても聞きづらい事を尋ねてしま

 った・・・・・」

「カガリは気にしなくてもいいよ。これはみんな

 が知っている事だし」

 

 リズのフォローのちカガリは疑問を口に出す。

 

「あぁ、そうなのか?しかし、何故だ?何故

 お前は自身の素性を隠す?」

 

 その問いに、オレは少しだけ沈黙の後、ため息

混じりに語り出す。

 

「オレの出生は、少しやっかいだから、自分から

 素性をあまり他人に言いたくないの!」

 

 リズたちは意味深なセリフに疑問を持った。

 

「お前の出生がやっかい?」

「え?アンタ?それってどうゆうこと?」

「?・・・リズ?オマエはオレの出生知らないの?」

 

 リズも、“初耳だわよ?”と表情に出し、二人の 

反応を見て、ラッキーは少し考え、二人に目線を

合わせて話し出す。

 

「リズ」

「何よ?」

「もう一度聞くけどよ、オレの出生は本当に知ら

 ないの?」

「だから、初耳よ?」

「オジさんから何も教えてもらってないのか?」

「パパに?聞いたこともないわよ」

 

 オレは、“そうか・・・”と呟き、先に進まない事で

カガリは苛立って叫ぶ。

 

「お前、さっきからウジウジとなんなんだ!

 話したくないのならそれでいいぞ!」 

 

ラッキーは仕方ないと思い、二人に真実を話す。

 

「・・・いや、教えるよ。全部ではないけど、ある

 程度なら教えてやるから・・・・・」

「アンタの出生の秘密って何なのよ?アンタが

 コーディネーターだから?」

 

 リズがオレの人種を教えると少し苦い顔になっ

たカガリはオレたちを見る。

 

「ラッキーはコーディネーターなのか?」

「まあね。正確にはハーフだけど・・・`」

 

 リズが少し驚いて尋ねた。

 

「え?アンタってハーフコーディネーター?」

「エリザベス?知らなかったのか?」

「それも初耳よ。後さ、カガリ、あたしを呼ぶ時

 リズでいいから」

「え? アァ、 わかった」

 

 リズは矛盾しているオレの特徴を言い出す。

 

「けどさ、ラッキーの性能ってハーフを超えて

 いるわよ?!」

「そうなのか?リズ」 

 

 カガリが聞き返すと自慢げに答える。

 

「誰もが見ても、高性能なコーディネーターと

 確信するものよ」

「それならば、何故・・・秘密にするのだ?理解

 できない」

 

 二人から質問攻めになるラッキーはため息混

じりに自身の秘密を暴露した。

 

「オレはハーフコーディネーターだけどな・・・・

 強制的に引き上げられた知能や感覚器官のみ

 は、所謂、第2世代、第3世代の奴らと同等

 なんだよ!」

「え?強制的に引き上げられた?」

 

 この事実を聞かされた二人は困惑した顔にな

り・・・・・カガリが質問してきた。

 

「それはどういうことだ?」

「オレも詳しくは知らないけれどよ、オレは生ま

 れてくる前に、ある研究者の訳の分からない

 新薬を与えられて、知能とか感覚器官のみを

 引き上げたらしい」

 

 目線を上に向けたラッキーは自身の能力の真意

を話す。

 

「ハーフコーディネーターとして生まれながら

 コーディネーターと同じぐらいの知能とか

 感覚器官を持って生まれてきた」

 

 二人は、驚愕の顔でオレを見ていた・・・・・。

 この反応をするのは当然か。

 そして・・・先に口を開いたのはリズだった。

 

「それは本当なの?」

「赤ん坊の頃にオレの目の前で話していただけ

 の情報だからな?!・・・よくわからない・・・」

「あんたって新生児の頃の記憶があるの?!」

「アァ、多分・・・・新薬の影響かもしれない・・・。

 生まれたばかりで目も見えたし、言葉も理解

 できた・・・・・」

 

 ほとんどウソなのだが、その説明で、二人は

また、固まってしまった。

この反応も当然だな。オレはこう語り出す。

 

「だから、オレの出生は明かりたくない」

 

 リズが思ったことを口に出す。

 

「・・あんたが実験体みたいされるから・・?」

「そうだよ。後は、オレの製造方法とでも

 言うべきか?世間に知られるとヤバイんだ」

 

 カガリは気になった所を聞き返す。

 

「製造方法?」

 

 オレは最悪の近未来を話す。

 

「オレは、ハーフコーディネーターだ。本来なら

 完全なるコーディネーターには遠く及ばない」

「そうね、その通りだわ・・・」

 

 オレは目を閉じ最悪の筋書きを言った。

 

「けどな、イカれた特効薬により生まれてきた

 ハーフコーディネーターがいる・・・・・」

 

「遺伝子検査ではハーフコーディネーターに

 すぎなくてもな・・・・・」

 

「完全なるコーディネーターに近い知能を持つ。

 そんな夢のような技術を世間が知ったら・・・・

 世の中はどう動くと思うよ・・・・・?」

 

 二人は考え始める。考えをまとまると目を合わ

せてきたのは、カガリだった。

 

「確かに・・・世界中の研究者がほしがる技術だな」

「特に今コーディネーターの国を創ろうと活動を

 している連中がいるだろ?」

 

 カガリがピンときたのか、すぐさまに答える。

 

「黄道同盟か?」

「アァ、そいつらに嗅ぎつけられるとヤバイ」

 

 オレは自身の杞憂を口に出す。

 

「それに、反コーディネーターのカルト集団

 にも目をつけられる」

 

 リズがアッと呟き、静かに言う。

 

「ブルーコスモス?」

「そう、現にオレが生まれたコロニーは奴らの

 カルトテロで崩壊した」

 

 その事実に二人は驚き、オレは他の事実も話

すとリズが驚愕していた。

 

「「ええ!?」」

「それにオレの実の両親もブルーコスモスの手

 によって殺されている」

「え?ラッキー、それって、全部本当?」

「オレがオヤジの目を盗んでアチコチから仕入

 れた情報から推測したものだ」

 

 これもウソだな。あの駄神さまの情報とオレの

曖昧な原作知識によるものだ。

 全てを話す終わるとオレたちは静かで重い空気

に包まれた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

      【訪問団到着10分前】

 

       [歓迎会場前渡り廊下]

 

 ハアハアと息を切らせながら、サトルはアチコ

チを歩き回り、ワルガキどもを探している。

 どこにいるのかと辺りを見渡すと何やら子供の

声が聞こえるのでその方向にいくと目的の奴らが

おしゃべりをしていた。そしてサトルは怒鳴る。

 

「お前ら、こんな所にいたのか!?」

 

 親方の怒涛の大声が廊下に響く

 

「お客さんがもうじき来る。さっきと準備しろ」

 

 サトルにどやされオレたちは、急いで歓迎会場

に向かう。そして、十数分後にオーブの代表専用

機で到着したウズミ代表をこの目にする。

 

「あれがオーブの獅子か・・・・・」

 

 この1件は死亡フラグだった・・・・。ここから

オレの人生は流転と流浪になる。

 

 ーto be continuedー




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第二章 戦争
PHASEー1 偽りの平和


新たな舞台は約10年後・・・C.E71 1月25日
原作の始まりである資源衛星コロニー
『ヘリオポリス』へ

ある鉄火肌のジャンク屋のお嬢は故郷を離れ
宇宙で自分の腕をさらに磨く日々

迫りくる無慈悲な戦火の火種・・・・偽りの平穏を
焼き尽くす



       【C.E71 1月25日】

 

    [資源衛星コロニー『ヘリオポリス』]

 

 ジリリージリリージリリー〜〜〜〜

 

(う、うるさい)

 

 ジリリージリリージリリー〜〜〜〜

 

(う、うるさいってば)

 

 ジリリージリリージリリー〜〜〜〜ガチャーン

 

「うるせーわよ~」

 

 両手で両目を擦りながら、片手が入るほど口を

大きく開けて欠伸をした。

 サイズが自分より一回り大きいパジャマを着た

ボサボサに乱れた金髪のロングヘアーの女子大生

はそのまま大きく背伸びをした。

 

「うーん、よく寝た~」

 

 段々と目が覚めてきたのか、辺りを見渡すと。

 

「ん?・・・・・あ〜?!また、やっちゃった・・・・・」

 

 目覚まし時計が壊れた。いや・・・壊したのだ。

 またしても時計を掴んで壁に投げつけた・・・。

 

「今回で18個目だわ」

 

 その金髪の女子大生は、右手で目元を押さえて

自分の悪習に後悔していた。

 また、目覚まし時計を買わないといけないので

朝から億劫になった。

 ほんの少し気持ちが沈んだがベッドから降りて

立ち上がると。

 

「壊れたのは仕方ないしー、まぁ~いいか」

 

 すぐさま、“自分は何にも悪くない”と現実を

逃避することに専念する。

 その時、昔の何気ない記憶が蘇ってきた。

 

『リズ?!ヒトの置き時計を盗むな?!』

『盗むとは失礼ね。少し借りるだけよ?!』

『そう言って、オレの時計を壊したろ!』

『壊したとは言いがかりよ。壊れたのよ』

『原型が留まらないアレが、“壊れた”だー』 

『うるさいわね?サイフが薬ケースよりも

 小さいものしかない男ね』

『バカにする例えが意味わからんわー』

 

 金髪の女子大生は昔のことを思い出して下を向

き、またしても気分が重くなる。

 そんな風に固まっていると朝日が顔に当たった

のでふと今何時かとスマホを見ると・・・9時過ぎ

だった。

 

「ウソ、どうして?」

 

 確か、置き時計は7時にセットしていたはずだ

と床に転がっている壊れた時計を持ち、確認した。 

 すると・・・9時にアラーム針が合わせていた。

 また・・・やらかしたとパニックになっていた。

 アタフタしているうちに右足に激痛が走る。

 思わず、しゃがみ込み、右足を押さえ藻掻く。

 どうやら、動き回るうちにベッドの柱の一つ

へ小指をぶつけた。

 ある意味でピンポイントな所に怪我をした。

 

「〜〜あーもー、朝から」

 

 そのまま、しばらく動けなかった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

         【同時刻】

 

         [????]

 

 家族を見送り、掃除機をかけていたら、突然

壁からぶつける音が聞こえた。

 ガチャーンと響いたので手を止め、リビング

から音のする方に歩き出す。

 現場辺りで止まるとそこは隣の住人の寝室の

辺りだと察した。

 

「また・・・リズちゃんね・・・」

 

 しばらくすると今度は隣の寝室からバタバタ

と騒がしい音が聞こえてくる。

 そう言えば息子はガレッジへ登校したのに

何故?お隣はまだ行かないのだろうと疑問に思

っていたが、これもなんとなく察してしまった。

 

「あの子、目覚ましの時間を間違えたわね・・・」

 

 お隣同士で息子と同じガレッジに通っている

リズは所謂ドジっ子で少々乱暴な所である。

 けれど、根は素直で思いやりがある女の子だ。

 

「キラも苦手はわかるけど。リズちゃんの事を

 少し気を使ってもいいのに・・・・・」

 

 お隣のお母さんはこの時まで少しにぎやかで

平穏な日々が続くと思っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

       【C.E71 1月24日】

 

       [ナスカ級高速戦艦内]

 

 あるザフト兵は任務の待機時間になんとなく

艦内の自室で椅子に腰を掛け、タブレットに保

存してあるアルバムを見ていた。

 写真には幼い頃の自分や兄貴と友だちばかり

であり、家族の関しての写真は兄貴の誕生日・・

多忙な両親が奇跡的に揃った時の一枚だけだ。

 だから幼馴染たちのものがほとんどである。

 そんな風に昔の思い出にふけていると兄貴が

俺の部屋を訪ねてきた。

 

 「ナハシュ、今いいか?」

 

 あの兄貴が自分の所へ来るとは珍しいな?と

思い、部屋のドアを開けた。

 

「どうぞ」

「お邪魔するよ」

 

 部屋に入ってきた後立ち止まり、黙り込む兄。

 大体何を話したいか察しがつくが、まずは会話

をするためにこちらから話しかけた。

 

「・・・何だよ?黙り込んで?」

「あぁ、すまない」

 

 兄のアスランは謹厳実直な性格なので普段から

口数は少なく、人付き合いが少し不得手で弟の俺

にも話しかけることがほとんどない。

 その真面目が取り柄の兄は今後の任務について

俺に意見を求めた。

 

「お前・・・今回の任務はどう思う?」

「簡単に言えば、特Aクラスの大仕事だな」

「アァ・・・その通りだ」

「・・・兄貴は任務中止したいと言いたいのか?」

 

 アスランは俺の図星な発言にすぐさま“違う”と

言いそうなので・・・俺はすぐに言い返した。

 

「オーブは裏切りものだ」

「ー〜っ?!」

「まぁー、そこまで言えば言い過ぎだが、手を

 打たないと・・・ザフトにとっては悪手となるよ」

 

 また黙り込むアスランが何を言いたいかを代弁

するナハシュ。

 

「あのコロニーにはリズとキラがいる」

「〜〜〜っ?!」

「アスラン」

「ナハシュ」

 

 仕方ないので俺は兄のアスランに俺たちの立場

を思い出させる。

 

「今の俺たちはパトリック・ザラの息子ではなく

 ・・・ザフトの軍人だ!」

 

 そして、軍人として、これから・・・何をすべきか

を教えた。

 

「軍人の役割は一般人を虐殺する兵器でないと

 は言えない」

「それは・・・」

「だが、軍服を着て、武器を持つのは・・・自国を

 守るためのものだよ」

 

 今の俺たちには・・・善意はないが大義はある。

 弟がそう割り切れと言いたいのを理解した兄

の表情は歯を食いしばっていた。

 

「・・・・・」

 

 弟がこのように言い切った。

 

「ただ・・・・・それだけだ」

「・・・・・」

 

 黙り込んだ兄は部屋をそそくさと出て行った。

 

「たくっ、お父様と同じで頭が固いな」

 

 そんな親子の特徴を当てはめていると幼馴染

で亡くなってしまった奴のことを思い出した。

 

「ラッキーが生きていたら・・・・・」

 

 あいつは、どちらに付くのかと考えてみた。

 多分キラを守るために戦うだろうな?と考察

し、俺たち兄弟とキラがラッキーとの出会った

日を思い出す。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

       【C.E62 7月21日】

 

     [月面基地『コペルニクス』]

 

 月面基地『コペルニクス』に到着したサトル

たちは基地内の事情で足止めになり、しばらく

基地内で休暇を取ることになる。

 その際、サトルはこの基地で働いている友人

に会いに行く予定が入っていた。

 その時に簡素な自宅パーティを行うことにな

ったおり、サトルは義息子のラッキーも同席さ

せるため、友人宅へ向かう。

 

「さて、行くか」

 

 ラッキーと同じく身支度を済ませたサトルが

フロントで待っていた。

 2人はホテルの出入り口に予め待機していた

タクシーに乗り、サトルの友人宅に向かう際に

ラッキーはふと質問する。

 

「けどさ、急にお邪魔して大丈夫なのか?」

「前から友人には連絡してある」 

 

 サトルがそう答えるとラッキーは納得した。

 

「そうか」

 

 サトルは友人の息子について話す。

 

「まぁ、あれだな!あいつらの息子さんはお前

 と気が合うかも知れないぞ?」

 

 ラッキーはその説明に疑問を持つ。

 

「なんでだよ?」

「その子もコーディネーターだ」

 

 ラッキーに驚きしながら聞き返す。

 

「・・・?コーディネーター?それなら、オヤジの

 友人夫婦もそうなのか?」

「イヤ、友人たちはどちらもナチュラルだ」

「え?じゃー、そいつは第一世代なのか?」

 

 サトルは、うーんと苦笑して言いにくそうに

語り出す。

 

「正確にはな、その子は友人夫婦の本当の子供

 ではないんだよ」

 

 ラッキーはサトルの説明が引っ掛かった。

 

「・・・・・?それはどういうことだよ??」

 

 サトルはラッキーを温かい目で見つめ、頭を

撫でながら話す。

 

「お前と同じような境遇だとしか言えねえ」

「・・・そうか」

 

 そこから深入りするのは止したほうがいいと

ラッキーは感じて沈黙し、オヤジの友人宅に到

着した。そこはかなりでかいマンションだ。

 マンションの出入り口に設置されている呼び

鈴を押すとオヤジの友人が目の前のモニターに

映り、オレたち親子を出迎えたオヤジの友人と

再会のあいさつを交わす。

 

「久しぶりだな。ハルマ」

『本当に久しぶりだね。懐かしいよ・・・元気だっ

 たかい?サトル』

 

 ラッキーは文字通り、心臓がドキドキとして

きた。どこかで見たことがあるのだから・・・。

 

 マンションのガラス扉が開くとオレたちは中

に入り、友人の部屋に到着した。玄関の横にあ

るファミリーネームのプレートをオレはチラッ

と見ると・・・・・“YAMATO”と表示されていた。

 

 玄関ドアが開くとオヤジの友人が満面の笑み

で歓迎する。

 

「サトル。上がってくれ。みんなで再会の食

 事といこう」 

「サトルさん、本当に久しぶり」

「カリダか。久しぶりだな。元気だったか?」

「ええ、そちらも変わらずにお元気で」

 

 サトルは、カリダの後ろをチラッと見ると

数人の子どもがいる。

 

「カリダ・・・その子が?」

「ええ、息子のキラよ」

「ほう、人見知りなのか?」

「そういう訳ではないの。キラ、あいさつ」

「こんばんは キラ・ヤマトです」

「オウ、こんばんは サトル・サナダだ」

 

 そして、他の二人も気にかけた。

 

「で?そちらの二人は?」

 

「キラの友だちなの。大勢で食事した方が

 楽しいでしょう?」

「まぁ・・・確かにな」

 

 カリダが手招きをして、二人に自己紹介の

あいさつをさせる。二人は軽くお辞儀をして

からサトルにあいさつをする。

 

「はじめまして・・・アスランと申します」

「はじめまして・・・ナハシュと言います」

 

 礼儀正しいあいさつにサトルは頭を掻き

ながら、あいさつを返す。

 

「礼儀正しい子たちだ。サトル・サナダだ。

 よろしく」

 

 そう言うと息子のユキサダを見て呟く。

 

「ユキサダ、お前もあいさつ」

 「・・・・・こんばんは、ユキサダ・サナダです」

 

 神のいたずらによる運命の出会いだった。

 

 ーto be continuedー




次回 毒蛇


 ※第二章からはオリジナルキャラを追加します。


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PHASEー2 ザフトの毒蛇

ザフトの暴君となるパトリック・ザラの
子息であり、アスランの双子の弟である
異色の雰囲気を持つ男 ナハシュ・ザラ。

荒野を駆け抜ける獅子奮迅の生き様をする
家族に対して大密林の毒蛇如く何ものにも
縛られない生き方。

前世の真っ当な人生の最悪死と今の最凶の
血縁者の業による地極道。



       【C.E71 1月25日】

  [資源衛星コロニー『ヘリオポリス』宙域]

 

 現在、クルーゼ隊は奪取奇襲任務のために戦闘

宇宙服を着て艦内で待機中だ。

 ほんの数分前は意気揚々とやり遂げると語り合

っていたのに・・・。

 今は静かに張り詰めた表情でクルーゼ隊長の指

令を待っているな。

 

 (当然と言えば当然だな?)

 

 アスランに目を向けると違う方向で何やら思い

込んでいるな?

 俺が自分たちの幼馴染の情報を教えたからだけ

ど・・・後で混乱されても困るよな?

 そんな緊迫の中で俺自身は失礼ながら現状を楽

しんでいるよ。

 戦乱の世に身を投じるの生き方をしている自分

に陶酔しているのだ。

 

    ・・・俺は本音を話すと・・・

 

 

・・・血の繋がった聡明な母親が・・・

・・・人間の狂気や快楽により・・・

・・・酷く非業の死に方をしても・・・。

 

 

・・・自分の厳格な父親が・・・

・・・人の世界の理不尽な善意により・・・

・・・大切なものを失い後・・・

・・・荒れ狂った果て、世界の歴史の1頁に・・・

・・・名を刻む暴君になっても・・・。

 

 

・・・俺の双子の誠実な兄が私利私欲により・・・

・・・自分が所属する組織を裏切り・・・

・・・敵になったとしても・・・。

 

     ・・・・・どうでもいい・・・・・。

 

・・・自分自身が思うがままに行動している・・・。

 

 

  それが俺の行動理念だ。

 

 

・・・我がままで結構・・・。

・・・自己中で結構・・・。

・・・それが俺なのだから・・・。

 

 ここまで身勝手な言い方をできるのは・・・俺が

アニメという幻想の中で生きている。

 SNSとかでそんなことを書き込めば、ネットの

住民には絶対叩かれまくるよなー。

 ネット中毒の末期症状の言葉を言い出す自分に 

混乱してしまうのだが、これが俺の現実だ・・・。

 

 俺は転生者だ。しかもアニメの世界に転生して

しまった。あのセラと名乗った女神様のせいだ。

 

 新たな人生。今の俺の名前はナハシュ・ザラ。

 

 あのアニメ・・・『機動戦士ガンダムSEED』

 最終戦争でザフトの荒れ狂う暴君なる男  

 パトリック・ザラの息子。

 

 アスラン・ザラの生き別れた双子の弟なのだ。

 

        【DETE】

[氏名]   ナハシュ・ザラ

[人種]   コーディネーター?

[生年月日] C.E55  10月29日

[血液型]  O型

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

        【西暦21世紀】

          [日本]

 

 雨が、いや集中豪雨が俺の体温を奪う。神様に

頼む・・これ以上・・俺から何も奪わないでくれ・・・。

 

 俺の転生前はサラリーマン・・・いや違うか・・・

社畜だった。

 高校卒業してなんとか就職したのが労働基準法

がまるでない超ブラック会社。

 高校卒業直前に両親が事故で他界して進学の選

択ができず、就職するしかなかった。

 

 俺の前世は最悪だった・・・。

 俺の両親は俺が中学生の時、信頼していた友人

に騙されて借金を押し付けられ、莫大な借金を背

負うことになる。

 俺も進学せず働こうとすると両親が大学は卒業

しろと言われ、公立高校で勉学に励み、国立大学

を目指していた。

 だが、親たちは限界キリギリまで働いたせいな

のか二人とも鬱病になり、父親が運転する車で崖

の上から飛び降りた。無理心中だ。

 当時の俺はクラスメイトと一緒に卒業パーティ

を参加していて、家族の無理心中には巻き込まれ

なかった。

 けれど・・・天涯孤独の身になり、親の残りの借金

は親の保険や持ち家の売却金などで完済したが・・・

絵に描いたような最悪な生い立ちにより全てを失

った後に待ち受けていたのは最低のブラック会社

で超労働している日々。

 社畜生活5年目あたりには体調と精神が鬱病の

一歩手前だった。

 

 そんな前世の俺の最後は・・・確か取引先から会

社に帰る途中だ。

 その日は当日中に今回の取引後の書類をさっさ

と作らければいけなかった。

 まだ残っている仕事も終わらせなければいけな

いので集中豪雨をずぶ濡れになりながら走ってい

ると包丁を持っている不衛生な男が俺に向かって

突進してきた。

 俺は日頃の激務と鬱の一歩手前の精神状態のた

めか数分間思考停止してしまい、気がついた時に

は腹部を刺されていた。 

 

 その後自分が倒れたのだけは分かった。どれく

らいの時間が経ってのかも曖昧だが意識は段々に

薄れていき、息絶えたと思う。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

         【????】

 

         [????]

 

 気がついたら、白い世界?にいた。

 これは小説やアニメなどの光景なのか?

 

(死後の世界?)

 

 しばらくボーっとしてたら、冷静さを取り戻し

ため息混じりに。

 

 真面目にコツコツ生きて、あの結末か?

 人生の結末がコ○サれるならば。

 

(アウトローや半グレの生き方がまだマシだよ)

 

 もしも、人として生き方ができるならば。

 

 (縛られない生き方だな)

 

 ふと、自分のIFの生き方を考察していると

 そういえば、好きなアニメで真面目キャラ

 

(アスラン・ザラか・・・・・)

 

 あのキャラと俺は人生が似ているな〜。

 そして、とんでもない言葉を言ってしまった。

 

『あのアスラン・ザラと俺・・・・・兄弟みたいだ』

 

 そんな風に呟くと声が聞こえる。

 

(それでは、アスラン・ザラのご兄弟で設定い

 たします)

 

 慌てて周囲を見渡すと受付嬢のような格好を

した女が空中に浮いていた。

 

『え?』

 

 その受付嬢?は、テキパキとタブレット?で

事務作業をする。

 

(承りました。それでは、転生を)

『待った~』

 

 首を傾げ、こちらを見る受付嬢に俺は怒鳴り

出した。

 

『フザケンナ〜!?』

 

 オドオドとしている受付嬢に質問攻めする。

 

『アンタだれ?転生ってナニ?何が起きてる?』

 

 叫び疲れて、ふ~ふ~と荒息をたて、興奮しな

がら、ギロ目で受付嬢を睨み付ける。

 そしたら、目の前の受付嬢がオドオドと怯えな

がら、自己紹介を始めた。

 

(私は神です)

『神?』

(ハイ、女神 セラです)

『あっそ?いろいろと聞きたいが・・・今はいい』

(神をゾンザイですか?)

『やかましい、転生って何だ?!』

(転生をご希望ではないのですか?)

『いつだ?一体、俺が転生をいつ望んだ?選択

 した覚えがねえー?!』

 

 セラ様は声をかけようとした際、望みを口に

出したと思い、直ぐ様、俺の転生の手続きの事

務作業を行ったと。

 それを聞いた俺は転生、いや選択のやり直し

を求めた。

 しかし、セラ殿によると法で転生を選んだ際

キャンセルは不可能だと・・・俺は両手で頭を抱え

ていると・・・アホ神が声をかける。

 

(お悩みな所を申し訳ありません)

『てめえのせいだ~?!』

(お時間がないので転生を)

 

 そう言われて、周囲を見渡すと隣に穴がある。

 直径2M以上の渦状の穴はアニメやゲームで 

よく見るワープゲート?みたいだった。

 全てがどうでもよくなった俺は頭を掻きなが

ら、ジロ目の呆れ顔でアホ神に冷たい視線を向

け、静かに呟く。

 

『・・・・・分かった。転生する』

 

 そう言って、ゲートに歩く。アホ神セラの叫

びらしき声が聞こえてきたが、気にせずゲート

に入った。転生直前で捨て台詞を出す。

 

『神が俺の不幸の元かよ』

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 

       【C.E62 7月21日】

      [月面基地『コペルニクス』]

 

 最初は”夢だ“と思った・・・。

 まさかこんなに早くも原作の主人公たちに出会

うとは・・・。

(・・・ヒロインの一人に出会っているが・・・)

 だが、アスラン・ザラにそっくりなアイツは一

体だれなんだろう?

 オレが現状に戸惑っているとヤマト夫妻は

みんなに声をかける。

 

「さあ、サトルも来たことだし、再会のパーティ

 を始めようか」

「そうね!今日の料理は腕によりをかけて作っ

 たのよ」

「カリダの料理も久しいな。今日はごちそうに

 なるよ」

 

 招かれたオレたちはリビングに案内された。

 大きなテーブルにはキラのお母さんが丹精込め

て作ったいろんな料理があり、オヤジは昔の仲間

の手料理を見ると懐かしさを感じた。

 

「カリダの作っためしは相変わらずどれもこれも

 美味そうだ」

「そんなに豪勢なものは揃えてないわよ」

 

 カリダは照れながらサトルに言うとハルマは

青春の思い出を語りだした。

 

「でも、確かに昔は良くカリダの料理でパーティ

 をしていたね」

 

 目を閉じながら思い出に浸っている夫に顔を

赤くするカリダ。

 

「もう、お父さんも止めてよ」

「いや、本当に懐かしいと思ってな」

 

 ヤマト夫婦の仲睦まじいやり取りにニヤニヤ

とするサトルは少しからかう。

 

「お前ら、ニャンニャンでイチャラブか?」

「言い草が古すぎだよ、ジジイ」

 

  “ゲンコツ”

 

「イッて〜?!」

「誰がジジイだ!ユキサダ!!」

「うるせー、幼児暴行ジジイ!!」

 

 慌ててハルマが止めに入り、カリダはゲンコ

ツで悶絶するラッキー駆け寄る。

 

「まあまあ、サトル」

「そうよ。サトルさん」

 

 拳を上げながら鼻息荒くして怒鳴るサトル。

 

「とんでもねえマセガキだよ、コイツは」

「うるせー」

「サトル、マセガキって・・・・・」

「このガキャー、俺が付けた名前よりも自分で

 考えたアダ名で呼べって言ってくるんだよ」

 

 ラッキーの生意気さを説明をするサトルに

ハルマは落ち着かせようとなだめる。

 

「年頃の男の子はそんなものだよ。サトル」

「俺の頭をフル回転させて考えた名前だぞ」

「それを誇張って言うんだよ。ヤクザオヤジ」

 

   “ゲンコツ”

 

「イッて〜な?何済んだよ?!クソオヤジ!!」

「誰がヤクザだ。ジジイ臭マセガキ」

「そういう所がヤクザなんだよ!他人の家で

 幼児虐待するな!!訴えるぞ!勝つぞ!!」

 

 ラッキーの裁判宣言に鼻で笑うサトル。

 

「幼児だぁ~?お前はカップ酒を持ってスルメを

 噛じりながらギャンブルするアラフォー労働者

 にしか見えねえよ!!」

「アァー、宇宙海賊の船長が世界一似合う極惡な

 プロレスラーに言われたかぁねぇよ!!」

「言わせとけば、この年齢詐称ガキャ!」

「ヤンのか!幼児暴行オヤジ!!」

 

 他人の家で親子ゲンカを始めたサナダ親子を止

めながら、ヤマト夫妻と子どもたちは苦笑した。

 

ーto be continuedー




次回 策略

※ナハシュはヘブライ語で“蛇”です。


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PHASEー3 業火の策略

原作の流れにイレギュラーが交じる時
転生者はそこに存在する。

未確認のモビルスーツが戦場となる
『ヘリオポリス』の運命を変える。

クルーゼ隊の毒蛇であるナハシュは
己の信念に従い、業火の策略を示す。


      【C.E71 1月24日】

 

      [ナスカ級高速戦艦内]

 

 ブリーフィングルームに集められたクルーゼ隊

による作戦会議が開かれた。

 今回の作戦は、地球連合軍が秘密裏にオーブへ

開発を依頼した最新鋭のMSの奪取と奇襲である。

 連合のMSの機体については『ヘリオポリス』

に潜伏している諜報部隊の調査で5機を確認した

と報告があった。

 しかし、隊員のナハシュが別のルートから調査

を行う必要があると進言。

 作戦前日になって入手した連合の兵器の資材の

資料を照合すると数機が足りないのが判明した。

 クルーゼ隊長は予想外の出来事にため息をつき

ながら、ナハシュに目線を向けて呟く。

 

「君の言う通りになったな。ナハシュ」

「はい!自分も半信半疑でありました」

 

 部下に言われ、この1件を速やかに確認した際

予想以上に結果となった。

 

「資料の上では・・・未確認MS・・・・7機」

 

 この戦艦の艦長であるアデスは。

 

「どう対処いたしますか?」

 

 アデス艦長の質問にクルーゼは「放置だ」

と言い切る

 アデス艦長はクルーゼの返答に思わず「ハ?」

と口に出してしまい、理解が追い付かないよう

であった。

 クルーゼは、なぜ、そのような指示を出した

のは探す時間がないからだ。

 部下の突然思いつきに自分の直観が働き、早急

に対応した結果であり、これ以上のは作戦に支障

になると判断した。

 クルーゼは続いて、このような指令を出す。

 

「我々の隊は予定通り確認済みのMSを強奪!」

 

「最新鋭の宇宙戦艦の破壊作戦を実行する!!」

 

「以上」

 

「く、クルーゼ隊長」 

 

 アデス艦長は、一人で勝手に作戦を進めている

クルーゼ隊長に呆れていた。

 するとナハシュが発言の許可を求めてきた。

 

「今回判明した案件は放置でありますか?」

「先程から、そのように指令をしているだろ?」

 

 残りの隊員は自分たちの隊長に物怖じしない

同僚に冷や汗を垂らす。ナハシュは進言した。

 

「事前に確認しておきたい事項があります」

 

 クルーゼは直感的ナハシュが重要な話をする

とわかったので部下の発言を許可した。

 

「は、未確認のMSを発見した場合の対応であり

 ます」

「未確認MSの対応か?・・・・・要するに君は奪取

 か、破壊かの命令がほしいと?」

「その通りであります」

 

 クルーゼは、しばらく考えたのち、その場に

居合わせた際、独自の判断に任せると各隊員へ

命令を下す。

 MS奪取による件は片が付いたので、オーブの

保有する資源衛生コロニーの対策を議論した。

 クルーゼは強襲策に打って出ると判断したが

アデス艦長がその作戦を止めた。

 リスクもあるが、自軍の人数が少数であるこ

と、プラントの面子に泥を塗る行動に異義を唱

えてきたクルーゼは周囲を見渡す中でナハシュ

を指名してきた。

 

「ナハシュ、他に策はあるかね?」

 

 いきなり指名され、アタフタとなるが、先程

物怖じしない態度が隊長に好印象を与えてしま

ったようだ。少し下を向き、考えていると意見

を述べ始める。

 クルーゼ隊長が君は自分に声と表情を強ばせ

る所がある。なので少し柔らかくなってほしい

と、ため息混じりに言われた。

 

「は!申し訳ありません」

「いや、私にも問題があると思う」

 

 ナハシュは“今後は気をつけます”と頭を下げ

クルーゼは気を取り直して再び質問をする。

 ナハシュは隊長の作戦をこう評価する。

 

「隊長の作戦は最善です」

 

 クルーゼは、その評価に口角を上げる。続いて

ナハシュは解説した。

 

「少数精鋭である我が隊が勝利するには隊長の

 策こそ・・・当たり前です」

 

 アデス艦長は、部下の言葉に苦い顔になる。

 ナハシュは咳払いし、話を続ける。

 

「しかし、現状で隊長の作戦は逆転する可能性

 があります」

 

 クルーゼは顔を強ばせる。そして、ナハシュ

に根拠の説明を求める。

 

「未確認MSが原因です」

 

 その説明に、その場にいた全員が困惑する。

 兄のアスラン・ザラが未確認MSの件で作戦

が逆転するのかと質問するとナハシュは身体を

アスランの方に向け、解説する。

 

「簡単だよ。アスラン、このままだと敵が増

 えてしまう」

 

 その解説に他の同僚も質問攻めしてくる。

最初に口を開いたのはイザーク・ジュールだ!

 

「敵が増える?」

 

 ディアッカ・エルスマンが続いて叫ぶ。

 

「訳がわかんねぇぞ?!ナハシュ」

 

 ニコル・アマルフィは興奮する二人を静止

させ、説明を求めてくる。

 

「二人とも?!落ち着いて?!ナハシュ

 説明をお願いします」

 

 ナハシュはみんなが原因の説明を求めてきて

目を閉じながら最悪の結末を語り出す。

 

「・・・・・宇宙海賊だよ」

 

 ハッと全員が顔を見合わせて先に口を開い

たのはクルーゼ隊長だった。

 

「ハートフィリアか」

「ハイ・・・キングが動きます」

 

 少しの間沈黙になった後、アスランが静かに

呟く。

 

「我々と同じく奴らがMSを奪取すると」

「それだけではないよ、アスラン」

 

 問題は他にもあるとナハシュが言う。頭を掻

きながらラスティ・マッケンジーが奴らの行動

理念を口に出す。

 

「あいつらは確か・・・カタギからは奪わないか」

 

 ラスティの発言に腕組をするイザークの睨み

がナハシュに向き、大声で怒鳴り出す。

 

「あの義賊の真似事をする輩に我々が負ける?

 そう言いたいのか?!ナハシュ」

 

 イザークがナハシュにキレているとニコルが

疑問を言い出す。

 

「で、でも、あの海賊が我々に攻撃する可能性

 は低いと思います?」

 

 ニコルの疑問にクルーゼは理由を求めてきた。

 

「ニコル?そう言い切れる理由は?」

「え?はい、今回は奇襲、強襲でも襲撃地はMS

 の関係した施設のみを攻撃するからです」

「つまり、一般人を狙わなければ奴らは攻撃を

 してこないと?」

 

 ナハシュはニコルの意見を一蹴する。

 

「その考え方は甘いよ。ニコル」

 

 全員がナハシュを見て、ニコルの考えを否定

する理由を目線で訴える。

 

「戦闘になれば必ず市街で行われるからです」

 

 市街の戦闘では必ず一般人に被害が出る。

 この虐殺行為を大義名分として奴らは武力介

入すると聞かされた隊員たちは冷や汗を垂らす。

 確かに戦闘の状況だとナハシュの言う通りに

なってしまう。クルーゼはナハシュに解決策を

出せと命令する。

 

「ニコルの意見が使えないと言うならばだ?

 ナハシュ、策はあるのか?」

「あります」

 

 簡単に言い切ったナハシュを見る同僚たちは

それぞれ質問をする。

 

「簡単に言うな?!ナハシュ、どうするよ?」

「フン!ハッタリだ?!ナハシュ、そうだろ」

「ナハシュ、それで策とは?!」

 

 ナハシュはあのコロニーの住民たちをこちら

の情報操作で扇動し、コロニーの政府関係の施

設に暴動を起こさせるという作戦を進言した。

 クルーゼ、及び、その場にいる全員がドン引

きした。

 クルーゼはナハシュを見て、皮肉を言う。

 

「君は本当にパトリック・ザラの息子かね?」

 

 そう聞かれたナハシュは隊長にこのように返

答してきた。

 

「今の自分はクルーゼ隊長の部下です」

 

 クルーゼは部下に皮肉を返された。 

 その時、俺はふと幼馴染たちとの出会いを思い

出した。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 

       【C.E62 7月21日】

 

      [月面基地『コペルニクス』]

 

 俺の名はナハシュ・ザラ。パトリック・ザラの

実子として生まれ、アスラン・ザラの双子の弟。

 容姿はアスランと双子なので同じだから区別を

付けるため、髪型はスポーツヘアにサングラスを

している。

 天然女神のおかげで人生を強制やり直しになり

ザラ家の次男として転生して早7歳。

 兄のアスランと俺は原作通り『コペルニクス』

の学校に通い、キラ・ヤマトと友達になった。

 俺はこれからの筋書きを知るが、当面の間は

子供らしく楽しく遊んで暮らそうと思う。

 そんなある日、俺とアスランはキラのお母さん

に疎遠だった友人と再会するので簡素なパーティ

を開くから出席してほしいとお願いされた。

 

「あの、せっかくの再会なのに部外者の俺たち

 が出席するのは・・・」

「そうですよ。なんか水を差すように感じます」

「そんなことはないわ。あの人はにぎやかの方

 が好きだし、それに子どもが遠慮しないで!」

 

 オレたちはカリダさんにそのようなお願いされ

たため、断ることができなくなり、再会パーティ

に参加し、再会パーティが始まった。

 

「いざこざがあったが再会の乾杯をしようか」

「そうね」

 

 全員が席に座り、グラスに掲げ、パーティの開

始を持っていた。

 

「それでは、ぼくとカリダ、そしてサトルとの

 再会に乾杯」

「「「「「乾杯?!」」」」」

 

 その掛け声でグラスを掲げ、お隣同士でグラス

を軽く当てながら、それぞれ飲み干した。

 

「プッハー、ウメー」

「サトル、一気・・・」

「そうゆう所は相変わらずね」

「酒は一気に飲まなきゃうまくねえだろ?」

「きみは昔から豪快だったな」

「そうゆうハマタは酒が弱えな」

「いや、僕は普通だよ」

「そうよ。サトルさんが異常なのよ」

「何だよ。二人とも 俺をいじめんなよ」

「何でそうなるんだい?」

 

 大人たちは高級の酒を飲みながら昔のことに

懐かしんでいるに対し、子どもたちは

 

「アスラン、酒をこっそり飲んでみるか?」

「ナハシュ?!何を言っているだ、お前は」

「そうだよ、ナハシュ。子どもがお酒を飲んでは

 いけないよ」

「少しだよ。無礼講ってことさ?お二人さん」

「バカ?!やり過ぎだ」

「そうだよ」

「はぁ~、二人とも硬派だね~」

 

 オレは客観的にアスランとキラが見て原作通り

だと感じた。

 けど、ナハシュってやつはどこか違う雰囲気が

あるなと思っていたらオヤジが声をかけてきた。

 

「なんだ?ユキサダ、ぼ〜っとしてよ?」

 

 オレはオヤジになんでもないと言い、キラに

目線を合わせて尋ねた。

 

「確かキラだっけ?」

「どうしたの?ユキサダ君」

「オヤジから聞いたけどさ!コーディネーター

 なんだろ?お前?」

 

 次の瞬間、にぎやかだったパーティの雰囲気

が静まり返った。

 

ーto be continuedー




次回 リズ


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PHASEー4 ジャンク屋リズの飛躍と

迷惑の権化のようなジャンク屋リズの
トラブルメーカーとしての日々

『ヘリオポリス』の人々の巻き添え苦悩と
ささやかな願望

耐えられない真実を知り、見極めようと
行動する獅子の姫君 カガリ


       【C.E71 1月25日】

 

   [資源衛星コロニー『ヘリオポリス』]

 

 エリザベス・スミスことリズは全速力で走行し

ていた。生来のドジっ子体質を呪いながら、自身

のガレッジに向かい、街の中を駆け抜く。

 市街の道を走り、壁を駆け登り、ビルの間を飛

び超えていく。その動きは正にNINJYAだ。

 

 このような様々な法を無視しているリズが捕ま

らないのは主に2つの理由がある。

 一つの理由は、彼女がオーブのアスハ家の客人

としての立場である。

 リズはアスハの後継者のカガリと幼馴染兼親友

であり、オーブの氏族たちとは顔なじみのように

親しい人が多い。

 このためにリズが騒動を起こしても、アスハ家

及び他のオーブの氏族の援助によりリズが巻き起

こしてきた事件をもみ消してきた。

 

 しかし、リズの巻き起こす出来事は所謂、悪徳

政治家が出来の悪い息子の悪事を揉み消すとかの

類ではなく、人助けをするためにリズ自身が開発

した秘密道具のようなもので自ら事件に立ち向か

う小説探偵のマネゴトをする。

 

 だが、リズのドジっ子体質と探偵?道具によっ

て善意でやったつもりが、常に悪党以上の多大な

被害を周囲へ及ぼすので・・・・・非常にタチが悪い。

 

 毎回の騒動に『ヘリオポリス』の警備関係者た

ちには頭痛の元、苦悩の種、いや・・本音で言えば

一早く、このコロニーを出て行ってほしいと流れ

星に願う日々だ。

 

 もう一つの理由はリズが開発する画期的発明品

である。一例として、この超人を思われる動きに

関しては、リズ本人の運動能力ではなく、リズが

履いている靴に関係している。

 リズが開発したローラースケートと浮遊により

走行するホバークラフトの原理を組み込んだ最小

の乗り物・・・・・通称 

 

    『ギア・フォース』

 

と呼ばれいるものだ。

 

 この靴の特許は宇宙開発の関係の様々な大企業

が文字通り血眼になって取引する為にリズと交渉

しようとしている。

 宇宙空間の移動手段では、これ程の画期的道具

は存在しないからだ。

 他にもリズは画期的発明をしており、特許によ

る莫大な資産を持ち、学生をしなくても、人生の

終焉まで遊んで暮らせるほどのものだ。

 しかし、発明を製作したのはリズであるが・・・

設計を行なったのは今亡き友人が遺したものだ。

 

友人が遺した研究ノート

 

『フォーチュン・サイクロペディア』

 

 とリズが読んでいるものは近未来に実現可能な

シロモノばかりでリズだけが秘密に隠し持ってい

る形見だ。

 そんな誰もが羨ましい現状にリズは自身の生き

様をこう語る。

 

「あたしはジャンク屋よ。技術で食っていく生き

 方が好きなの!」

 

 ジャンク屋として信念を突き通す。自分の不得

意分野を克服するためにオーブの工業カレッジに

通っている。

 リズの不得意分野は情報処理工学である。自身

の技術を向上させるために、その道の権威の教授

の元で勉学に励んでいる。

 

 そんな騒がしい毎日を送るリズがようやく通っ

ているガレッジに到着した。

 

「やっと着いたー」

 

 息を切らせながら、自身の学科へと急ぐリズは

ふとカガリのことを思い出す。

 

「そういえば・・・カガリとウズミオジさんの出会い

 もこんな感じだったっけ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

       【C.E62 7月15日】

 

        [歓迎会場前廊下]

 

 互いの自己紹介をしているとドヤされた。

 オヤジに言われ、ケータイの時刻表示を見る

とオーブ訪問団の到着まで5分もなかった。

 

「ヤベ、もう時間か?リズ、カガリ、行くぞ」

「うん」

「わかった」

 

 カガリが気絶しているユウナの胸ぐらを左手で

掴み、右頬に特大のビンタで叩き起こし、空港の

ターミナルに急いだ。

 

「か、カガリ、ひ・・・・・ひどい〜?!」

「お前が揺さぶられても起きないのが悪い」

「そうよ、カガリの言う通りよ」

「加害者の言葉ではない」

 

 リズが殺気を向け、“なんか言った”と目で訴え

てきたが、オレは口笛を吹きながら目を反らして

オレたちは目的地まで走った。

 ターミナルに到着したのち、カガリとユウナは 

オーブ側、オレとリズはジャンク屋ギルド側に分

かれる。大人の背後に整列して代表たちが空港に

到着するのを待つ。

 オレは立ち位置が近いカガリへものすごく気に

なっていた疑問を小声で聞いてみた。

 

「オマエらさ?なんで、親たちと一緒に訪問をし

 なかったの?」

「親たちと訪問するはずだったさ。だが、代表で

 ある父が急な仕事が入ったので予定がズレた」

「それなら、なんで先にオマエらが来てるの?」

「私が先に目的地へ向かうことを頼んだ!」

「・・・・・はい?」

 

 カガリは毎回父親と一緒に各国を訪問している

が、父親の小言を隣で目的地に到着するまで聞か

されている。

 今回は、いつもの小言を回避できるチャンスだ

と思い、駄々をゴネて、この島に先に来たと。

 それを聞いたラッキーは呆れていたが、すぐに

カガリが反論してきた。

 

「駄々っ子みたいに見るな?!お前も私と同い年

 ぐらいだから、その気持ちはわかるだろう?」

「確かに・・・親の小言はあまり気持ちの良いもん

 じゃないわな!?」

「そうだろう?だから、今回の好機を使い護衛の

 目を欺き、姿を暗まし、現地の散策して羽を伸

 ばし、日頃の鬱憤晴らしをしたかった」

 

 ラッキーは後先考えないカガリを見て思った。

 いかにも・・このお転婆姫様らしい考え方と。

 そして、オレにケンカを売ったのはいけないと

呟いた。

 

「お前・・・ヤバイと思うぞ?」

「? なぜだ??」

 

 カガリは自身の置かれている立場が分からない

ようなのでラッキーが優しく説明してあげた。

 訪問先で自分の護衛の前から姿を消し、現地の

誰かと揉め事を起こす。

 次の訪問からは、駄々ゴネようが何をしようが

がっちりと整った護衛の監視下の元で身動きしづ

らい対応されると。

 

 “それはマズイ”と顔に出ているカガリは当事者

のラッキーに誤魔化すように頼む。

 

「・・・ラッキー・・・今日のことは内密で・・・」

「あなたって人は・・・本当後先考えないで行動する

 タイプですね」

 

 ラッキーはカガリの隣にいるユウナを憐れみな

目で見ると。

 

「・・・ユウナさんがかわいそう・・・」

「なぜ、そこでユウナが出てくる?」

「・・・ユウナさんはあなたのお父様に報告する義務

 があるから・・・・・」

 

 カガリは右の握り拳をユウナに向け、数発ぶん

殴り、自分に従がわせてすればいいと言ってきた

ので、ラッキーは心の中で彼女の前世を考察した。

 

 (スケバンか?アンタ?)

 

 (それとも、レディースの総長?)

 

 (もしくは、極道のアネさん?)

 

 それを聞いたユウナはガタガタと怯えている。

 ハァ~とため息混じりにラッキーはカガリを落

ち着いて、その手段は使えないと宣言する。

 

「あのね〜、あなた達が自分の護衛から遠ざかっ

 てしまったら・・・・・その後どうなりますか?」

 

 カガリはラッキーの話した内容がいまいち理解

できないようだった。

 ラッキーはそんなカガリを優しく悟らせる。

 

「当然、護衛のみなさんが探し回るでしょう?」

「それはどうした?・・・あ・・!!」

「気づきましたか?護衛の方々があなたのお父様

 に報告するのは当たり前です」

 

 カガリがう~と唸って下を向く。そして、思い

ついたと顔を上げ、思いつきを言い出す。

 

「・・・そうだ!ユウナがトイレとかに行った際

 迷子になったと言えば・・・」

「それは通用しない言い訳です」

「なぜ?」

「あなたの性格をよく知る聡明な代表に・・そんな

 見え透いた戯言を信じると思いますか?」

「う!」

「・・・・・覚悟を決めなさい・・・・・」

 

 ラッキーはカガリに自分の行動の愚かさを教え

た際、“ざまあみろ”と心の中で思い、ニヤニヤの

笑顔を見せるラッキー。

 それを見ているリズからこう言われた。

 

「ラッキー、あんたさ、カガリのみを助けて 

 あげなさいよ」

「リズさん、何度も聞くけど。あなた、どちら

 の味方?」

 

 ラッキーは苦笑しながら、右側に立っている

リズに聞き返す。

 

「女はね、窮地の同性を味方する生き物なの!」

「あなたは ヘッブ〜」

 

 言いかけた瞬間、リズの閃光の右ストレートが 

オレの頬に直撃し、オレは倒れた。

 倒れたオレに静かで感情のない笑顔のリズが冷

たい目をしながら、命令を出す。

 

「な、ひするの?」

「あたしは女、か弱い乙女なの。だ・か・ら・ね

 か弱い乙女の代表として、もう一度!あなたに

 命令してあげる・・・・・。

 カガリのみを た・す・け・な・さ・い」

 

 オレの顔面の右側が大きく腫れていて、右隣に

は覇○色の覇気を纏うリズが握り拳を向ける。

 ラッキーは、リズの右の握り拳を上げている姿

に戦律を感じ、リズの前世が分かってしまった。

 

(こいつは滅び行く世紀末に出てくる荒れ狂う

 覇王の生まれ変わりだったのか?)

 

「ラッキー、た・の・む・わ・よ」

「カ、カガひ よふても ユう、ナはムひか?」

「ユウナ?だれそれ?」

「お、おまへな・・・・」

 リズの命令に嬉しそうなカガリとこの世の終

わりな顔になるユウナ。そんな雑談をしていた

ら、親方ことサトルがガキどもを怒鳴る。

 

「お前ら、何回同じこと言わせるんだ!?」

「お、親方」

「本当に、お前らは!今、オーブの代表専用機

 が到着すると連絡が入った」

 

 サトルはコレ以上クダらない痴話喧嘩するな

と説教すると、隣にいたスミス理事が止めに入

ってきた。

 

「まあまあ、子供は元気が一番だ」

「アル、理事なんだから、俺よりも先に叱れよ」

 

 サトルは呆れてながら、この人工島の責任者

の立場にあるアルフォンスに呆れた声で文句を

言い出す。当の本人はジロ目で言い返す。

 

「ガチガチになっても困るだろ?」

「は〜、お前はな!本当にこの島の代表か?」

「好きで理事職をやっている訳じゃないよ!

 文句を言うなら、君が変われ!!」

「やなこった!俺には似合わねえよ!そんな

 ことより、そろそろだな」

 

 サトルはアルフォンスの要求を拒否しながら

腕時計で時間を気にしていると水平線から影が

見えてきて、よく見ると飛行機がこちらに向か

ってくる。オレはオヤジに見て口を開いた。

 

「オ、オはジ、アヘが?」

「おうよ、オーブの訪問団だ!」

 

 オーブの専用機は空港に着陸し、専用機の扉

が開くと同時に会場内をとてつもない緊張感。

 オヤジは、みんなに叫び出す。

 

「さあ、出迎えようや!オーブの獅子様を」

 

 訪問会場に響き渡るような力強い声で激を入れ

リズは元気よく叫び返した。

 

「わかりました。親方」

 

 ユキサダ、いや、ラッキーが転生し、数年・・。

 この世界で生きていく中、決して会いたくない

と思っていた重要人物にお目にかかるのだと。

 代表専用機からあの男がこの『ギガフロート』

に降り立つ・・・・・。

 

 (とうとう拝めるのか!あの名君を)

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

        【C.E71 1月23日】

 

       [オーブ宇宙旅行機内]

 

 金髪のショートヘアーの女の子が目を覚ました。

 

 「うーん?!」

 

 座席は一番安い料金のものなので寝返りもでき

ない。

 

「バレないためだとは言え、やはりキツいな・・・」

 

 スマホの時刻表示を見たら、目的地到着時間

まで後数時間。

 

「この目で真実を見極める」

 

 女の子の眼には窓から見える『ヘリオポリス』

を写り、決意を固める。

 そして、ふと親友の顔を思い浮かべる。

 

「リズは・・・いつも報告を受けるが相変わらずか」

 

 

ーto be continuedー




次回 太陽の都


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PHASEー5 太陽の都の落城 上編

技術士官マリューの報われるかわからない激務
の疲労と直面する課題と現場の苦悩

主人公 キラ・ヤマトの何気ない学生生活と
突然訪れる原作突入

ラッキーと主人公たちの現代と繋がる喧騒と
理念の対立


       【C.E71 1月25日】

   [モルゲンレーテ社 大型製造工場]

 

 モルゲンレーテ社の工業区域内の大型製造工場

の休憩所で女性の技術者が目まぐるしい数月間の

働き詰めの日々での束の間の休息を取っていた。

 心労が負担し続けるの中、一人で休憩室の一角

にある備え付けの椅子に座り、コーヒーカップを

右手で持ち、目頭を左手で押さえながら、ため息

混じりに呟く。

 

 「・・・ようやく、ここまでたどり着けた」

 

 今世紀の戦争は、敵勢力との兵器の性能の差が

有り過ぎ、戦争の長期化になれば地球連合軍の方

に分が悪い。

 敵対するザフトの最新兵器である大型機動兵器

『モビルスーツ』と匹敵する戦力を開発するため

中立国のオーブの所有する資源衛生コロニーの一

『ヘリオポリス』の大型製造工場で極秘裏に製造

されたモビルスーツ・・・GATーXシリーズ。

 連合軍の間では通称G兵器と呼ばれている。

 オーブの国営企業であるモルゲンレーテ社保有

する工場でG兵器を収容する最新鋭戦艦を造船す

る極秘任務も同時に完遂するため、着任から限界

ギリギリのラインで肉体を酷使して働いていた。

 彼女は地球連合軍に所属する士官であり、国営

企業モルゲンレーテ社の従業員に成りすますため

身分を偽り、潜伏しながら最新兵器の開発を従事

したため、精神的な負担も大きい。

 

「でも、どう見てもOSがお粗末ね」

 

 身をすり減らす激務の日々の成果がやっと形と

してなりかけていた。

 だが、士官たちと話し合いをしなければいけな

い重大な課題に直面している。

 連合軍のモビルスーツはどうしても時間が足り

ず、未完成な部分がある。

 一般の電子機器に例えると機器自体は出来上が

っているが、制御部・・・即ちOSである。

 モビルスーツ本体は完成したが、肝心のOSに

関してはどんな技術屋が見ても使えたものではな

いと答えるシロモノだ。

 コーディネーター専用OSでは、優秀な人材が

豊富な地球連合軍のナチュラルの軍人でも使いこ

なすことができず、機体よりもOSを優先すべき

なのは、十中八九分かり切っていた。

 しかし、軍の上層部は今回の最新鋭機動兵器の

製造への捉え方は冷ややかな態度である。

 そのため、MSを上層部の目の前に出さなければ

いけないと言う自分の上官は考えた。

 その意志を託された女性士官は、機体の開発に

全身全霊で取り組み、予想通り、直面する問題が

表し、これからの対応に考察する。

 

「機体性能だけなら敵を上回るのに・・・」

 

 彼女の開発した技術である「フェイスシフト」

と呼ばれる装甲は簡単に言えば衝撃や銃撃などの

物理攻撃を無効する強化システムだ。

 さらに強硬な装甲により今までのMSの性能では

耐えられない強力な兵器を使用可能。

 PS装甲の理論を応用した宇宙戦闘での隠密活動

ができる「ミラージュコロイド」。

 しかし操縦に関しては自軍のテストパイロット

が使えるものかと聞かれたら、二足歩行するのが

精一杯、及び機体自体の衝撃で乗り手に負荷がか

かるなどの問題もあるので頭が痛い。

 

「これから正念場ね・・・」

 

 女性士官がそう呟くと同じく潜入している軍の

部下が休憩室に飛び込んできた。

 

「チーフ、大変です?!」

 

 非常な慌てぶりに驚き、部下を宥めて落ち着か

せたのち尋ねた。

 

「落ち着いて、どうしたの?」

「これを見て下さい」

 

 そう言いながら、パソコンのモニターを見せて

慌てる理由を確認してもらう。

 

「こ、これは・・・」

 

 技術士官マリュー・ラミアス大尉は見せられた

動画により顔面蒼白となった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

      【C.E71 1月25日】

 [資源衛星『ヘリオポリス』とあるガレッジ]

 

 カタカタ、カタカタとリズミカルなタイピング

でプログラムを修正する少年 キラ・ヤマト。

 

「キラ?終わった?」

 

 キラと一緒にロボット工学を学んでいるチーム

の紅一点であるミリアリア・ハウが話しかけると

ごめん、あと少しと言い、タイピングを早くする

キラにカズイ・バスカークはこう聞いてきた。

 

「でも、キラが間違えるなんて珍しいね?」

「うん、カトウ教授の頼まれ事と重なってさ」

 

 それを聞いたチームメイトたちはまたかと思い

キラに同情の目を向けた。

 

「さっき俺が渡したやつとは別件なのか?」

「カトウ教授はキラを頼りすぎだよな~」

 

 トール・ケーニヒとサイ・アーガイルは自分の

担当教諭であるカトウ教授に呆れながら、課題の

ロボットを組み立ている。

 

「キラ、いい加減、断る選択肢を持て。

 そうしないと社会人になったら過労死だな!」

 

 チームのリーダー格のロイ・アンヘルカイドの

酷いジョークに反論するキラ。

 

「僕もそこまでお人好しじゃないよ」

 

 キラたちは工学分野のカトウ教授の元で勉学に

励んでいて、取り組んでいる研究課題は工業用の

現場工事などに使われる簡易ロボットアーマーの

製作である。

 

 カトウ教授の研究における助手的作業の手伝い

をキラに頼むことが多く、優柔不断でお人好し故

にキラは断れ無い。

 誰かが休憩時間にしようと言い出し、作業を止

め、一服している中、ロイは憐れみの目でキラに

助言してきた。

 

「今は学校のみだけどよ?キラ。このままいくと

 ・・・お前さ〜、さっきも言ったけどよ、働きだ

 したら、過労死するぞ?!」

 

 今度はあまりにも酷い未来予想図。

 

「さっきから酷いよ。ロイ。

 僕も流石にそこまで馬鹿じゃないよ」

 

 キラの反論の中、悪魔の表情になったロイが他

のチームメイトに多数決を求める。

 

「皆さんに質問です?俺の予想とキラの反論?

 どちらが可能性が高いでしょうか?」

 

 そんな感じに聞かれて他の仲間は笑いを堪えな

がらそれぞれの考察を始めたのでキラは不機嫌な

表情で静かに呟く。

 

「みんなが面白がってる・・・」

 

 キラは自分はそんなにお人好しなのと悲しい目

で訴えてくるが、皆からすれば、それも笑いの種

になり、キラは顔を壁に向けて不貞腐れる。

 やり過ぎたと感じたトールは話題の方向転換し

ようとキラに尋ねる。

 

「そう言えば、キラ?リズさんは?」

 

 まだ、不貞腐れているキラは壁側から答えた。

 

「・・・多分まだ部屋で寝てると思うよ?」

 

 キラの言葉にミリアリアは呆れて、"どうして

起こしてあげないの"と言われた。

 キラは振り向き、“どうして、僕が”と目で訴え

てくるので、ミリアリアはハァ~とため息をつき

ながら頭を抱えて指摘する。

 

「キラとリズさんって幼馴染でしょ?」

「え?そうなのか、キラ?」

「サイ〜、幼馴染って言っても・・リズとは

 そこまで長い付き合いじゃないよ」

 

 サイはニヤニヤとした笑顔で聞き返した。

 

「け・ど・よ、幼馴染なんだろ?」 

 

 キラはリズの性分が“どうにも苦手”だと言うと 

カズイがキラの言い分に同意する。

 

「まあ、キラの気持ちは分かるな」

 

 リズの性格は押しが強いって言うか、自己評価

が高いって言うか、兎も角、崖の先にいる人を押

すポジティブが苦手だと言うキラ。

 

 チームメイト全員がリズの性分にウンウンと頷

いている中、ロイだけがアゴに右手を置いてキラ

に質問する。

 

「それじゃ、キラ?あの人・・・今日は遅刻か?」

「・・・そうなるね?」

 

 ロイは自分の置かれている立場を理解していな

い能天気なキラの右肩に右手を置いて悟らせた。

 

「お前、今日はあの人にシバかれるぞ・・・」

 

 キラは驚き、“どうして”と目線を他のチームメ

イトを送ると、“確かに”と確信した視線で自分を

見てくるので、困惑気味になる。

 

「遅刻した原因をお前のセイにされるから」

 

 ロイの横暴な意見に、オドオドとしてきたキラ

は、“起きなかったリズが悪い”のだと反論する。

 首を左右に大きく振りながら、考え方が甘いと

キラに認識の誤りを言い出すロイ。

 

「あの理不尽女王が・・・そんな言い分を聞くと思う

 のか?」

 

 ロイの的を射た言葉で、キラはウっと現状を理

解してきた。

 額から滝のように流れ出す冷や汗のキラはリズ

の部屋の恐ろしさを語り出す。

 リズの部屋に入って起こすことはどんな結末に

なるのかと考えると・・・

 今度は段々と青ざめていくキラの顔。

 ミリアリアは知り合いの部屋に入るのが怖がっ

ているキラに疑問を持つ。

 

「幼馴染なんだから、別にいいでしょ?」

「リズの部屋に入ると死んじゃうよ?!」

 

 同じ草食男子のカズイもキラの怯えようにドン

引き、大げさだと言う。

 他のチームメイトもカズイの意見に同意する。

 キラは過去何度もリズの部屋の仕掛けにより酷

い目にあっている。

 今までリズから受けたトラウマからリズの部屋

だけには絶対に入りたくないと。

 チームメイトもキラの言葉になんとなく想像が

ついたのか・・・苦笑いでキラに同情した。

 

 そんな他愛もない会話していると突然だった。

 研究室内の全てのパソコンが制御不能になる。

 キラは異変に一早く気づき、自身のパソコンを

確認すると乗っ取られかけている。

 サイが事態の異変についていけず、キラに声を

かける。

 

「どうした?キラ」

 

 キラも現状を把握できないが自分のパソコンの

制御を回復しようと素早く手を動かす。

 しかし、時すでに遅し、キラのパソコンも制御

が効かず、キラは目を丸くして呟いた。

 

「パソコンを乗っ取られた!?」

 

 キラも現状で確認できる範囲は研究室内にある

パソコンが全てハッキングにされた。

 何が起こっているか分からず、チームメイトの

大半が混乱し、うろたえながら騒ぎ出した。

 そんな中でロイはチームメイト全員に深呼吸し

て腹から最大の声で号令する。

 

「ATTENTION!!」

 

 チームメイト全員は、その号令で一瞬動きが止

まり、ロイを見る。ロイは全員に命令する。

 

「これより現状を確認する?!」

 

 トールとサイは、研究室の出入口の開閉可能を

確認すること。

 ミリアリアとカズイは研究室の機器を緊急停止

させ、電源を全てOFFにすること。

 ロイ自身とキラはパソコンをハッキングを解除

作業を行うこと。

 

「命令は以上だ。取りかかれ?!」

 

 ロイの命令の返事を返す。

 

「「「「「イエッサー」」」」」

 

 掛け声同時に各々の作業へ取りかかり、ロイと

キラはハッキングを解除に試みる。

 キラは解除作業の中でロイにお礼を言う。

 

「ありがとう、ロイ」

「気にするな。誰が統一しないと混乱のままだ」

 

 喧噪の中で、パソコンに動画が送られてきた。

 ロイがみんなに作業を一時中断させ、モニター

を見るように指示した。

 みんながモニターに釘付けになり、送られてき

た動画の内容に驚愕した。

 みんなが沈黙する中、ミリアリアが最初に口を

開いた。

 

「な、なにこれ?」

 

それからみんなも呟き始めた。

 

「嘘だろ?」

「こんな事ある?」

「一体、どうなってる?」

 

 状況が混乱する中、キラはふとリズと縁がつな

がるキッカケとなった幼馴染ラッキーとコメディ

カルなパーティを思い出した。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

       【C.E62 7月21日】

     [月面基地『コペルニクス』]

 

 オレはいつもなにかをやらかす。

 不謹慎な発言によりにぎやかなパーティの雰囲

気を嵐の静けさのように沈黙させた後、アスラン

が激昂した。次にオヤジからも怒鳴られた。

 

「キラがコーディネーターだからなんだ?!

 お前に危害を加えると言いたいのか?」

「ユキサダ、てめぇは?!」

 

 瞬く間に周囲から非難の声が浴びるラッキーは

弁解する。

 

「わ、わり〜、嫌味で言ったんじゃないんだよ!

 それにだ!オレはお前らと”同類“だよ?!」 

 

 ”同類”を誇張するのに疑問を持ったキラは君も

コーディネーターなのと尋ねた。

 

「そうだよ。と言ってもオレはハーフだけど」

 

 アスランは直感が冴えわたったのか、会話から

違和感を覚え、尋問を始めた。

 

「待て、キラのみならず俺とナハシュが

 コーディネーターだと知っている?」

 

 その問いにオレは原作知識で対応した。

 

「お前はアスランだっだな?そっちのサングラス

 はナハシュだっけ?」

「「そうだ」」

 

 息ぴったりな所を見るとやっぱり双子なのか?

と思いながら、爆弾を投げる。

 

「お前らの父親はパトリック・ザラだよな?」

「「「「「?!」」」」」

 

 キラの家族、ナハシュとアスランは驚愕の表情

しながら、オレを見てきた。

 騒動の発端であるオレは乾いた喉をジュースで

潤し、こう呟く。

 

「その反応は図星か?」

 

 アスランが“なぜ、知っている?!”と鬼の形相

で睨んできたから口角を上げ、こう答えた。

 

「オレはジャンク屋だからな」

 

 キラは同い年の彼に少し不気味さを感じながら

どうゆう意味だと聞いていた。

 ラッキーは自信満々に語りだす。

 

「ジャンク屋は世間一般の表と裏を誰よりも知っ

 て置かないと明日には餓死してしまう・・・

 それが生き様さ」

 

 ”ゲンコツ“

 

「いって〜」

「なに、カッコつけてやがる?!お前は!」

「オヤジの決めゼリフだろ?」

 

 親子喧嘩を再発する中、アスランは呆れていた

視線で注意した。

 

「・・・ユキサダだったな?・・・情報通と言いたいの

 はわかったが・・・軽率に極秘を口に出すな?!」

「・・・それはお前らの父親がオレを捉える口実に

 なると言いたいのか?」

 

 ナハシュはラッキーが自分たちの父親を警戒し

ていることを不振に思い、お前は何者だと聞いて

きた。

 

「パトリック・ザラが目指す狂信の御神体さ」

 

ーto be continuedー




次回 中編


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PHASEー6  太陽の都の落城 中編

平穏が崩壊した太陽の都で生き残るため
動き出す主人公たち。

全てを曝露され、窮地に立つ女性軍人は
任務達成のため、過酷な選択肢を選ぶ。

転生者が語り出すコーディネーターの
未来と自身の運命。


      【C.E71 1月25日】

 

  [『ヘリオポリス』工業カレッジ 校内]

 

 キラ達が例の動画により危険が近づいていると

判断し、研究棟から外に出るとガレッジの生徒や

教師が困惑気味だった。

 ロイのおかげで冷静さを取り戻したキラたちは

校内の混乱にサイが喉を鳴らす。

 

「や、ヤバイな、これは?!」

 

 カズイは冷や汗をたらし、困惑した顔で右手に

持ってるスマホの画面へ釘付けだ。

 

「そ、それだけじゃないよ?!」

 

 コロニーが運営するネットワークには様々な情

報が飛び交って動画がどんどん更新されていた。

 動画の内容は地球連合軍の軍服を着た人たちが

巨大な人型のロボットを視察している画像。

 または、巨大兵器を収容する宇宙戦艦が造られ

ている画像と潜伏している地球連合軍の写真付き

軍人リストが写し出されていた。

 

 数分の間、カキコミもどんどん増えていく。

 その内容を簡単にまとめると・・・・

→地球連合軍はザフトの戦闘を回避するために

オーブへ全ての責任の押し付け。

→『ヘリオポリス』の宙域にいるザフトを中に招

き入れ、コロニーごと爆発し、地球連合軍の連中

はそのスキにトンズラ。

→地球連合軍はザフトがコロニー内で戦闘をでき

ないようにするため、全ての住民を盾にする。

 

・・・などと地球連合軍がわが身可愛さに様々な卑

劣の手段を用いて責任転嫁の愚行を始めたとカキ

コミが濁流のように更新された。

 トールはネットのカキコミを読んでいると苦い

顔になり、悲痛の言葉を言い出す。

 

「コロニーのネットが利用されるなんて?!」

 

 『ヘリオポリス』のネットワークに出回っている

カキコミの内容は、本来ならば誰もが分かる狂言

の類いである。

 だが、ハッキングによって制御不能となり個人

所有と民間企業保有の情報端末のみへ送りつけれ

た地球連合軍がオーブと極秘裏に取引し、コロニ

ーが保有する大型製造工場内で開発された巨大兵

器の動画。

 モルゲンレーテ社の潜伏している軍人リスト。

 これらの証拠が真実が曖昧のカキコミの神妙性

が高くし、連合軍に疑惑の感情を植え付けた。

 ミリアリアは市街地に視線を向け、自分の家族

の安否を心配し、両手を握り締めた。

 

「パパとママは大丈夫よね?」

 

 キラたちはどこまで今回の混乱が広まっている

のか分からないが、自分の家族と合流することは

難しいと感じ、これからどうするかを考えた。

 恐らくほとんどの住民たちは送りつけられた動

画の内容を鵜呑みにしてしまい、住民たちはうろ

たえ、冷静ではいられない。

 緊急事態マニュアルではコロニー各地区の脱出

用シェルターに避難する。

 しかし、市街地を通るのは冷静さを失い、暴動

を起こすかもしれない人たちがいる。

 このまま市街地を通って避難すると理性を失っ

た住民たちの暴動などに巻きこまれてしまうこと

を予想したキラたち。

 それならば、なるべく街の外れからシェルター

へ避難するばいいとロイが言い出した。

キラたちはロイの意見を採用し、自分たちの避難

経路が決まった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

         【同時刻】

 

   [モルゲンレーテ社 事務所内]

 

 モルゲンレーテ社に潜伏していた地球連合軍の

全ての軍人たちは顔面が蒼白していた。

 敵によりハッキングさせた民間企業などの情報

端末へ送りつけられた動画やリストは自分たちの

身に危険が及ぶ爆弾だ。

 早急に行動しなければいけないが、連合軍の関

係者は誰もが放心状態で陥ってしまった。

 マリューは敵の情報の扱いのうまさに感心して

思わず、呟いた。

 

「・・・やられたわ、敵の策略にね」

「どういたしますか?チーフ?!」

 

 マリューは地球連合軍の大西洋連邦宇宙軍に所

属する女性技術士官。

   

         【DETE】

 

[氏名]   マリュー・ラミアス

[人種]   ナチュラル

[生年月日] C.E45年10月12日

[血液型]  O型

[所属先]  第8艦隊

[階級]   大尉

[肩書]   最新鋭艦 副艦長

 

 

 大西洋連邦のヘブンアイランド技術研究所では

女性技術士官として配属された際、地球連合軍の

GATーXシリーズの特徴であるPS装甲の開発に

携わっていた経歴も持つ現場叩き上げの軍人だ。

 そんな彼女が頭を右手で支え、窮地の打開策は

ないかと思考を巡らせる。

 敵対するザフトがGATーXシリーズのモビル

スーツの奪取、奇襲を仕掛けてくるのは連合軍も

想定内であった。

 無謀な作戦を強行するか否かについて、正直な

所、五分五分と連合軍は判断していた。

 しかし、敵の一手で『ヘリオポリス』の住民た

ちを敵にまわすとは想定外だ。

 コロニー内にいる連合軍の関係者全員が四面楚

歌に陥った。

 マリューは混乱の渦中で自分に活を入れるため

両手で両頬を力いっぱい叩く。

 連絡のつく同僚たちに命令を出し、自分自身が

統率して、現状を打破するのが最善だという答え

をたどり着いた。

 

「みんな、聞いて!」

「チーフ?」

「今、やるべきことを伝えるわ」

 

 マリューが我々に課せられた任務を遂行するこ

とに決断した。

 まず、モビルスーツの奪取の阻止と機体を収容

する最新鋭艦へ輸送を最優先事項とする。

 艦長及びその他の上官たちと交信を試みて繋が

れば、互いの現状を伝え合う。

 

 マリューは、物事を効率よく行うため、隣にい

る同僚と別行動すると伝える。

 部下は上官、及び軍関係者たちの交信、さらに

繋がり次第、情報交換。

 自身はG兵器の奪取の阻止と輸送を指揮する。

 

「命令は以上よ、わかった?」

「ハ?!」

 

 敵に先手を取られたことは痛いが、過ぎたこと

を忘れ、今すべきことを行う。

 守らなければならない・・・・・・連合軍の起死回生

の切り札であるG兵器を・・・・。

 乗り込まなければいけない・・・強襲機動特装艦・・

・・アークエンジェルに・・・・。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

         【同時刻】

 

 [モルゲンレーテ社 大型製造工場周辺区域]

 

 クルーゼ隊に所属する新兵で構成された小隊は

GATーXシリーズのモビルスーツを奪取と奇襲

の任務のため、『ヘリオポリス』の内部へと潜入し

隠密にモルゲンレーテ社の大型倉庫まで向かって

いると移動中のニコルが市街地の様子をふと見て

思わず呟いた。

 

「ナハシュの作戦・・・成功しましたね」

 

 ナハシュの提案した作戦の効果が一般住民たち

に影響し、パニック状態で騒ぎ立てる。

 そして、今回の動画の真意に対して、政府機関

へ抗議と回答を求め、冷静さを失った人たちが蟻

の大行進となり政府所有の建物へ向かっている。

 自分より先に手柄を得たナハシュを気に入らな

いのか、イザークがインカムで皮肉なセリフを仲

間に言う。

 

「流石だな、ナハシュ。奴は蛇だけに悪運だけが

 最強だな!」

 

 イザークに合わせるようとディアッカはヒュー

っと口笛を鳴らしながら、言い出した。

 

「まさに、運も実力のウチってかぁ?」

 

 戦場なのに隊全体から緊張感が抜けているので

真面目なアスランは、みんなに怒鳴る。

 

「お前ら、任務に集中しろ?!」

 

 苛立つアスランにラスティは落ち着かせようと

同僚の右肩に右手を置いて宥める。

 

「落ち着けよ、アスラン」

 

 みんなが悪かったと謝ると目的地まで再び移動

するクルーゼ小隊はアスランの変化に不思議さを

感じていた。

 作戦開始のアスランの目には凄まじい気迫を宿

すことがわかった。

 アスランが変わったのは、ナハシュがアスラン

に語ったザフト、いやプラントという組織の大義

・・・・存在意義。

 それにより、アスランは迷いをなくし、滅私奉

公の心意気で作戦に従事すると決断した。

 

「大義か・・・昔、ラッキーが言っていたな」

 

 アスランは今際なき友が言い残した言葉。

 コーディネーターの未来を思い出した。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

       【C.E62 7月21日】

 

    [月面基地『コペルニクス』]

 

 アスランたちはユキサダの言葉に唖然とした。

 

「・・・・・・わけのわからない?なぜ、父上がお前

 を捉えると言い出すか」

「オレはある意味でコーディネーターの理想の

 未来の形だからだ」

 

 その場の皆が“何言ってんだ。こいつ”と冷たい

視線で見ているが、当然の反応なのでオレは説明

を始めた。

 

「オレはむりやり能力を上げられた・・・・・・

 ハーフコーディネーターだ」

 

 そう言うと今度は全員が驚愕の表情でオレを見

たが、無視して説明を続けた。

 

「簡単に説明するとコーディネーターの遺伝子を

 持つ胎児のみに知覚と感覚などの器官の発達を

 強制的促進する投薬らしい・・・」

 

 オレの説明の途中でナハシュが質問してきた。

 

「・・・らしいって?詳しく知らないのか?」

「新生児のオレの目の前で担当医師がオレの両親

 に説明したのをもとに仮説したものだから正確

 な理論までわからない」

 

 カリダさんがオレに悲しそうな目でこう聞く。

 

「ユキサダくんは赤ちゃんだった頃の記憶を覚え

 ているの?」

「まあね、カリダさん。言葉もある程度の理解が

 できたし、死んだ親の顔も覚えている。新薬の

 影響さ」

 

 カガリやリズに対しても同じ嘘ついたが・・・・・・

まぁ、転生者ですと言ったほうが胡散臭い。

 カリダさんに続き、ハルマさんまで心配そうに

オレを見てくるのでこう答えた。

 

「まぁー、安心してよ。ハルマさん。

 オレのモットーは道草を食ってもだらけきって

 歩き切る生涯だから」

「・・・つまり、自分がちゃらんぽらんと言いたい

 のかい?」

「そんな感じ」

 

 大人に心配かけないようにふざけたジョークを

言うオレに呆れ目線を送るアスランは出生の説明

が終わると自分の父親が狙う理由を尋ねると。

 

「それはコーディネーターの未来のため、オレに

 施された技術が必要だからだ。」

「?・・・なぜ?」

「・・・アスランとナハシュのどちらの婚約者は

 ラクス・クラインになるだろ?」

「「・・・・・・?!」」

「ラクス・クライン?」

「黄道同盟の実質上盟主シーゲル・クラインの

 愛娘でコーディネーターたちの歌姫だよ」

 

 メインヒロインの一人であり、次の世界の指導

者ラクスをキラに簡潔な説明をするとアスランが

先に口を開く。

 

「正式に公表されていないが・・・おそらくそうな

 る可能性が高いな?それがどうした?」

「わかんね〜か?結婚したら、まずやっちまうだ

 ろ?繁殖よ?は・ん・し・ょ・く」

 

"げんこつ"

 

「イッテ〜?!!」 

「マセガキが?!初夜と言え、初夜と」

「意味は同じだろ!」

「ニヤニヤとしたヅラで気色わるいわ?!てめぇ

 アラフォーを超えて色欲ジジイだろ?!」

「うるせぇ?!極悪ヅラが?!色欲でジジイは

 てめぇだろ?!」

「〜〜ッ?!親に向かって、てめぇーはもう許さ

 ねえ?!表に出ろ、色欲の権化が?!」

「おおーよ!積年の決着つけたるわ」

 

 この時、アスランは思った。

 

『まるで東アジア共和国が建国する前に存在した

 アジアの島国のいがみ合う例えにあるマブシと

 マングースのような親子だな・・・』

 

 キラもアワアワしながら思った。

 

『すごいな〜!これって戦争の時、食べ物一つで

 奪い合いしそう』 

 

ナハシュは埒が明かないのでむりやり話を進めよ

うと両手をバンバンと鳴らし、軌道を戻した。

 

「ドックファイトは後でいいからよ。ユキサダ

 話を進めろよ?!コーディネーターの未来を

 教えろよ?」

 

 ハァハァと息を切らせながら、説明を再開する

ラッキー。

 

「・・・まず、将来必ず訪れることのは・・・・・・

 純血なコーディネーターの人口は減少し・・・

 ・・・絶滅する・・・」

 

ーto be continuedー




次回 下編


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PHASEー7 太陽の都の落城 下編

任務遂行中のマニューの目の前に立ちふさがる
敵の圧倒的武力と緻密な策略

アスランが実弟ナハシュの逸脱した思慮深さと
先の先を見極める洞察力にてコーディネーター
存在を思い知る

ラッキーのコーディネーターが絶滅する未来を
暗示し、自分の存在が世界の歯車を加速させる
と断言


       【C.E71 1月25日】

 

  [モルゲンレーテ社 大型格納庫方向通路]

 

 マニューは事務所内の数名の部下へ指令した後

G兵器の保守と輸送のため、保管と整備してある

モルゲンレーテ社の大型格納庫方向の通路を走っ

ていた時、複数の銃声と爆発音が聞こえた。

 

「ここにもザフトが?」

 

 マリューが警戒をしながら、銃撃戦の方向まで

走り、たどり着いた先は無惨な現場だった。

 自分と同じくモルゲンレーテ社に潜伏していた

連合の軍人たちが大型格納庫の出入り口あたりで

見たこともない大型兵器が高速移動しながら銃弾

の雨を浴びせる一方的な蹂躙。

 すぐさま壁の死角に隠れ、持参していた手鏡で

見えたのは昆虫のような見た目をした異質な体形

の機動兵器。

 四角柱の機体に高速走行のための駆動車輪付き

の6本の脚部。

 見た限り、ガトリング砲と大型マシンガン、及

びロケットランチャーなどを装備。

 連合の同僚たちが大型兵器を破壊しようと交戦

するが・・・圧倒的火力の差により大量の血が壁に

張り付き、肉片がアチコチ通路の床に飛び散る。

 よく見回すと・・・・原型が分からなくなるほどに

殺された人たちの死骸が散乱している状況を目の

当たりしたマリューは思考停止した。

 

「あんなモノまで使うなんて?!」

 

 たが、マリューは使命を全うするため、この戦

場を回避して目的地にたどり着けないかと考察し

再度観察を行う。

 大型兵器の周囲を見るとザフトの操縦者が近く

にいないのが確認でき、おそらく無人型でAIの

自動操縦と判断したのち、このように考察した。

 予測では通行者の排除のため、交戦するプログ

ラムを組みこまれているはずと考えたマリュー。

 今、交戦している同僚たちには悪いが、自分だ

け別ルートで目的地へ向かう。

 

「みんな、ごめんなさい」

 

 マリューは現状から最善、しかし苦渋の選択し

ザフトと連合の軍人たちがドンパチしているスキ

にMSを守るため、先に進む。

 彼女がその場を走り去ろうとした際、大型兵器

が壁の死角にいる彼女に気づき、機関銃の標準を

すぐさま彼女へ合わせ、発泡した。

 いきなり、自分の場所に銃撃を仕掛けてきた際

慌てながら壁から離れ、攻撃をなんとか回避した

が、命令外エリアにいたはずなのに攻撃してきた

ので、自分の推察との違いに驚き、戸惑いを隠し

着せなかった。

 

「どうして?オートでなくマニュアル?」

 

 その時、モルゲンレーテ社の屋上に登り、作戦

遂行するナハシュは手元のパソコンから送られて

くる偵察ドローンの画像の一つに困惑する顔にな

るマリューが写っていたので少し微笑んだ。

 

「あらら、困惑してるな?当然か・・・」

 

 ナハシュはアスランたちMS奪取チームの戦闘回

避のため、尖兵として単独任務に携わっていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

        

         【同時刻】

 

  [モルゲンレーテ社 大型格納庫内部]

 

 クルーゼ隊所属の新兵小隊は、モビルスーツが

保管されている大型格納庫へ潜入した。

 ザフトが事前に入手した情報だと開発された5

体のGATーXの機体は、製造工場から格納庫へ

一時的に保管と整備。

 のちに最新鋭艦へ輸送する手筈ということだ。

 奪取する可能なのは、そのタイミングしかない

と上官たちの判断だった。

 新兵たちは目的地まで向かっているが、潜伏し

ている連合の軍人たちと交戦をせず、スムーズに

先に進む。

 これは、連合の関係者の足止めをする尖兵の任

につくとナハシュが進言した際、クルーゼ隊長に

時間稼ぎの陽動作戦を提出し、承認を得て、作戦

を実行しているからだ。

 ナハシュの作戦内容は、自身が製作した対人用

自動戦闘兵器(マリオネットバグ)と偵察ドロー

ンを使用による足止めと戦闘。

 数機の偵察ドローンによる連合の軍人たちの現

場把握と数体のオートマダーで本社から格納庫へ

行く通路でのドンパチ。

 それとオーブの関係者から攻撃を受けた場合は

反撃してもいいと、クルーゼ隊長に事前の許可を

得ている。

 

 アスランたちはナハシュの作戦のおかげで奪取

任務に集中し、格納庫へと移動していた。

 ディアッカは一番激務の戦場にいるナハシュへ

感謝の意をこめて、こう言い出した。

 

「軍師ナハシュ様のご利益だな」

 

 イザークはナハシュに対して嫌味なのか、非難

なのか、微妙な言い回しで口を開いた。

 

「あれを軍師と思えるか?ディアッカ」

「なら、何に見えるんだ?イザーク」

「あれはサマエルだ?!」

 

 イザークの宗教じみた言葉にニコルが思わず

質問した。

 

「サマエル?旧約聖書に出てくる天使ですか?」

「違う?!最初の人間たちを騙す蛇の方だ!」

 

 隊員たちは一番危険な任務をしているナハシュ

に対してイザークがあまりにも酷い言い方をする

のでドン引きをした。

 ラスティが苦い顔で注意をした。

 

「イザーク、例えが酷すぎないか?」

「アスランの前で悪いが、俺にはそう見える」

 

 イザークが断言するとアスランは少し沈黙した

後、呟いた。

 

「・・・・イザークの言う通りだな」

 

 アスランが仲間の辛辣な言葉を肯定してきた。

 兄として血の繋がったの弟の人物像は、優しい

ウソにより他人を幸せにする偽善者ではない。

 ヒトを巧みに騙し、洗脳状態にした後自在に操

り、常に安全な場所で指示を出す悪人、いや・・・

あれは王様を、国を裏で支配する神官に見える。

 アスランの以外な答えを口に出したので、仲間

たちの間に重い空気が流れた。

 そんな中で、ニコルが隊の雰囲気を柔らげるた

め、アスランに言葉をかける。

 

「それでもアスランの弟です。理由なくして行動

 はしませんよ」

 

 アスランはニコルが気持ちを落ち着かせるため

に話しかけてきたのがわかり、礼を言う。

 

「ニコル、ありがとう」

 

 気持ちが落ちついたアスランたちは任務の遂行

を専念するべく、ひたすら目的地まで走り続ける

アスランは弟から言われたコーディネーターの

存在意義を思い出す。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

       【任務30分前】

 

      [ナスカ級高速戦艦内]

 

 ナハシュは作戦前にロッカールームで宇宙戦闘

服に着替えているアスランに声をかける。

 

「ナハシュ、何だ?」

 

 弟は実直な兄に目線を合わせ、質問してきた。

 

「この戦争の目標・・・俺たちの大義については分か

 っているな?」

 

 アスランは弟が何を言っているか分からないの

で首を傾げた。

 

「プラントの独立、自治権の獲得だろ?」

 

 アスランがそう答えると弟は兄の右肩に右手を

置き、聞き返した。

 

「本当にそう認識しているのか?」

「それ以外・・・何がある?」

 

 ナハシュは首を左右に振り、アスランに俺たち

コーディネーターの存在意義の認識の修正のため

このように答えた。

 

「宇宙圏に人類の支配権を移すことだ」

「 ・・・?どういいことだ?意味がわからない?」

 

 ナハシュは、それこそが遺伝子を組み替えられ

人類の理想像として生まれたコーディネーターの

存在意義と力説する。

 アスランは弟の力説に戸惑い、その内容を理解

することができなかった。

 

「なぜ、支配権を宇宙に移す必要がある?」

「そうしなければ・・・人類は滅ぶ?!」

 

 アスランはナハシュの言葉に驚き、聞き返した。

 

「どうして、そんな結論になる?」

 

 弟は人類の支配権が宇宙でなく地球に定着して

いるのは、連合軍を影で操る存在・・・軍産複合体。

 こいつらは、宇宙圏を地球圏から支配できると

思っているが、それは錯覚だと。

 実際は、宇宙圏の活動範囲が時間を重ねていく

ごとに広がっていき、次第に支配、即ち全人類の

制御ができなくなっていく。

 結果として、人類が昔から抱えている様々な問

題から軋轢が生まれ、全人類は互いに憎しみ合っ

て、殺し合う。

 アスランは、冷や汗をたらしながら、ナハシュ

に反論した。

 

「流石に・・・そんな未来はありえないだろ?!」

 

 アスランの言葉にナハシュがこう言い返す。

 

「・・・ありえないことがありえない」

 

 ナハシュは、コーディネーターが存在する前の

世界は先程話した未来の一歩手前だった。

 コーディネーターが絶滅する前に宇宙圏へ人類

の支配権を移すことが・・・俺たち・・・造られた者の

存在意義だと語り、最後はこう締める。

 

「母の死を無下にしたくないなら・・・

 こんなイカれた考えでも・・・兄貴の心の隅に

 閉まっておけ」

 

 そう言ってナハシュはロッカールームを出た。

 アスランはナハシュの母の死に対しての言葉に

より呆然し、目を閉じ、まぶたの裏で母の笑顔を

思い出していた。

 そして、友が語ったコーディネーターの行く末

と父の異常性をふと思い浮かぶ。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

       【C.E62 7月21日】

 

    [月面基地『コペルニクス』]

 

 アスランはコーディネーター同士の間で産まれ

た子孫のことを純血なのかと聞いてきた。

 オレは頷き、コーディネーターの未来が純血の

減少による絶滅・・・なぜ、そのような結論を出す

かと問われ、こう答えた。

 

「コーディネーターの子孫たちは子孫を残すため

 にナチュラルと交わり続け・・・

 最終的にはナチュラルと同じ資質になる・・・」

 

 目を丸くなるアスランたちの中でナハシュが

第二世代同士の婚姻関係について聞いてたのは

なぜだと言われたのでオレはとんでもない爆弾を

投下した。

 

「・・・ナハシュ。そしてアスラン・・・・・・黄道同盟は

 地球圏に建造中の十数基のコロニーを乗っ取り

 コーディネーターの国を創る裏工作を始めてい

 るだろ?」

 

 爆弾によりみんなが青ざめた顔になると真っ先

にアスランがどうして知っていると激昂した。

 

「極秘の中の極秘だぞ?!」

「何度も言っているだろ。オレはジャンク屋だ」

 

 アスランは何度も言うが極秘を軽々しく口にす

るなと忠告した。

 

「そう興奮するなよ、アスラン。黄道同盟が国を

 創るならば遺伝子の相性で婚姻する法律にする

 はずだ。その制度によりどんな問題が起きるか

 想像できるだろ?」

 

 アスランが少し考え込んで答えを導き出した。

 

「そうか・・・世代を重ねるごとに出産率も低下する

 可能性が高い」

「ああ、そうだよ。みんな、聞いたことないか?

 楽園実験って言う都市伝説?」

 

 ナハシュは恐ろしい都市伝説を思い出した。

 実験内容は数万匹の小動物を使い、病原菌がな

い隔離した場所に区分けして飢えないように定期

的に餌を与えながら観察するってヤツと。

 

「その都市伝説の結末を知ってるか?」

「確か、楽園の中で絶滅したんだっけ?」 

 

 キラはナハシュの言葉に困惑気味だ。

 

「え?どうして?」

「簡単だよ、キラ」

 

 危険を取り除いた隔離な場所による争うことも

ない管理した世界での生物はせいぜい第5世代ま

でしか生き残れないと証明されたのだとナハシュ

は説明した。

 オレは付け足しに種の生存の条件を語った。

 

「つまり、人間であろうと動物であろうと他者と

 交わり、過酷でも争い、疫病とかの苦難と立ち

 向かうことを無くすと種の存続ができなくなる

 って言う結論だ」

 

 キラは一通り聞き終わるとそれが君とどうゆう

繋がりがあるかと質問され、オレはこう答えた。

 

「それは第1世代のコーディネーターの大人たちが

 子孫繁栄のためだとしてもナチュラルと同じに

 なるハーフコーディネーターの存在を許さない」

 

 キラたちはその言葉に無言で頷き、今後の黄道

同盟によるコーディネーターの国は遺伝子を崇拝

する法律が制定する。

 コロニーは居食住するため、疫病などの対策を

地上よりも厳しい管理体制が必要になる。

 故に楽園実験の結果になる可能性が高い。

 そして、コーディネーターの子孫たちも結果を

体験すればやむを得ず地球に降り、ナチュラルと

交わることに躊躇なく行い、オレの予測通りの未

来が待っていると。

 

「ユキサダ、その考えは安直すぎないか?」

「アスラン、お前の父親を悪く言うつもりはない

 が・・・パトリック・ザラはコーディネーターこ

 そが新人類だと主張するタカ派の筆頭だろ」

 

 アスランは父親のことに対して黙り込むと尽か

さず、オレは話を続ける。

 

「最初にも言ったが、オレはパトリック・ザラ

 の崇拝している絵空事の御神体さ・・・」

「ハーフコーディネーターの能力値を従来の

 コーディネーターに同じにする技術か?」

 

 アスランがオレにそう尋ねたので”そうだよ”

と頷き、パトリック・ザラが突き進む滅亡の

道を語る。

 

「その技術を手に入れたパトリック・ザラは

 ・・・全てのコーディネーターを差別するだろ」

 

ーto be continuedー




次回 違う光景


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