プリンセスコネクト!Re:Black 【未完】 (BRだんちょ)
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第一章 漆黒の亡者編
私は孫悟空だ。


文章ガタガタの初投稿。
見るに堪えないかもしれませんが暖かい目で見てもらえれば…


「…また貴様かトランクスゥゥ!!!!」

 

「自分以外を信じないお前に…俺たちは負けない!!」

 

未来での激闘…孫悟空達に追い詰められたザマスとゴクウブラックはポタラを使い合体ザマスとなりこの世界に君臨した。しかし、この地球に生きる人間の気、悟空とベジータの気がトランクスの剣に宿り、遂に合体ザマスの肉体を貫いた。

 

「グワァアアア!!!何だこれは…たくさんの気が混ざり合い…我を抉る…!!人間が…神に……正義に仇なすのかぁ!!!」

 

「貴様の正義など知ったことかぁぁぁ!!!!!」

 

トランクスは貫いた剣をそのまま頭に向かって切り上げる。

 

「馬鹿な……!!こんなぁ…!!うわああああああッッ!!!!」

 

トランクスの剣により完全に真っ二つになった合体ザマス…遂に全人間0計画の野望は潰えた。

 

 

しかしこの瞬間…ザマスとブラックの意識と肉体も二つに切り離された。

 

「…!?」

 

 

ゴクウブラックは不思議なことに真っ二つになった合体ザマスを上から見下ろしていた。

 

 

「…こんな形で、私の野望が……嘘だあああああああぁぁぁ……!!!!」

 

 

ゴクウブラックは誰にも届かない断末魔を上げながら意識を手放した。

 

 

 

 

 

「……主さま。」

 

1人の少年はある少女の声で目を覚ました。

 

「うぅ…ん…。」

 

「おはようございます。ご無事で何よりです。私は主様のガイド役のコッコロと申します。以後お見知りおきを。」

 

コッコロと名乗った少女は倒れている少年に笑いかける。

 

 

「無理もございません。主様は記憶喪失でございますよね。ご自分のお名前は分かりますでしょうか?」

 

倒れている騎士のような格好をした少年は記憶喪失だった。

 

「ユウキ、、、僕の名前はユウキ。」

 

「よかった!それで…主様の隣で寝ていらっしゃるお方はお知り合いでしょうか?」

 

ユウキの隣にはもう1人、謎の男が寝ていた。

 

見たことがない黒い服装に左耳には緑色のイヤリングの様な物、右手には謎の指輪を身につけている。

 

「知らないよ。」

 

「ふむ…。」

 

ユウキとコッコロが悩んでいると…

 

「ん?ここは…。」

 

「「!!!」」

 

ユウキの隣で寝ている全身黒の衣装の男が目を覚ます。この男こそ未来のトランクスの世界を襲った『ゴクウブラック』だった。

 

「よかった!お目覚めになられたのですね!」

 

事情を知らないコッコロはブラックが目を覚ましたことに喜ぶ。

 

「生きている…?馬鹿な…!」

 

トランクスに真っ二つにされたブラックが驚くのも無理は無い。

 

「私はトランクスの一撃によって…ザマスは…!!いや、あの時ザマスは真っ二つになったか…。」

 

「あの〜…」

 

すると何やら独り言を大量に喋っているブラックにコッコロが声を掛ける。

 

「…人間?こんな所に生き残りがいたか。しかしここは何処だ…?」

 

「私はコッコロと申します。えっと、ここはアストライア大陸でございます。失礼ですがお名前をお聞きしても宜しいでしょうか。」

 

「アストライア大陸?聞いたことがない…!ここは第7宇宙の地球ではないのか?」

 

「ダイナナウチュウ…?あの…お名前をお聞きしても宜しいでしょうか。」

 

「…馴れ馴れしく口をきくな、人間は滅ぼす…。」

 

この世界でも人間0計画を遂行することに躊躇のないブラックは殺気をたてた。

 

「コッコロ、守る!」

 

「主様!?」

 

コッコロの身が危ないと判断したユウキはブラックからコッコロを守るように立ち塞がった。

 

「ふん、人間風情が神に楯突くとは…身の程を知…」グゥゥ……

 

ブラックが何かを言おうとした時、何故かお腹が鳴った。

 

「………は?」

 

腹が減るなど体験したことがなかったブラックはその場に座り込む。

 

「えーっ…と、おにぎりでも如何でしょう。」

 

コッコロは腹を空かせたブラックに手づくりのおにぎりを渡した。

 

「…人間の作ったものなど、絶対に…」

 

「コッコロのおにぎり、サイコー。」

 

ユウキは既にコッコロが握ったおにぎりを食べている。

 

「………。」

 

「沢山ありますからよかったら如何ですか?腹が減っては戦ができぬと言うくらいですので。」

 

「…貴様らの寿命が少し伸びただけにすぎない。これを食べ終えたら人間0計画を直ちに実行する。」

 

(このお方、さっきから何を言っているのでしょうか…。)

 

「あむ…。」

 

「!!!(バカな!こんな美味いものなど食べたことがない!おにぎりと言ったか?人間はこんな素晴らしい食べ物を生み出せると言うのか…!!)」

 

コッコロの作ったおにぎりは凄い勢いで減って行った。

 

「ふぅ…。」

 

「凄い食べっぷりでございました。主様も満腹になったようです。」

 

「悟空だ。」

 

「え?」

 

「私の名は孫悟空だ。フフフ…神の遣いとしてならいいかもしれないな。」

 

ブラックは自分を『悟空』とわざと偽って教えた。

 

「ゴクウ様、ですね。これから宜しくお願いします!!」

 

「ゴクウ、よろしく!」

 

「…。」

 

「あの…ゴクウ様?」

 

ブラックは立ち上がると空を見上げた。

 

「…私は一度人間に破れた身だ。トランクス、お前が守りたかった世界というのはどういう物なのか…今一度見定めてやろう。そして、私が人間を生かす価値がないと決めた時それが人間共の最期だ…。」

 

その言葉は自分を打ち負かしたトランクス達への最大限の敬意だった。

 

「?」

 

「コッコロ、案内しろ。」

 

「…かしこまりました。」

 

こうしてブラックは行動を共にすることになった。

 

 

 

 

「ここがランドソルの街です。」

 

「わあ…!」

 

「なるほど。確かに人間が多いが尻尾が生えてて耳が長い奴もいるな。」

 

都市の中心というだけあり様々な種族もおり賑わっている。

 

「あのしっぽが生えているお方はビースト族という種族でございます。そして耳の長いのがエルフ族で私もエルフ族でございます。」

 

「そうか、人間にも様々な種族が共存しているのだな。(それに私の身体はサイヤ人の身体、つまりこの世界においてはこの私もビースト族と言うわけか。獣風情と一括りにされるのは癪だかな。)」

 

「そうでございますね…って主さま?」

 

「アイツならそこだ。」

 

「…ん?」

 

ユウキは甘い匂いのする屋台の方向へ釣られて行った。

 

「この匂いは…」

 

「あのクレープ屋でございますね。」

 

「いらっしゃい!そこの可愛らしい兄妹に、奇抜なファッションのお兄さん、何にする?」

 

全身が赤い服の変わった格好をしている女性がクレープを売っていた。

 

「そ、そんな、私は妹ではありません…。」

 

「じゃあ恋人だったり??」

 

「…ちちち、違います!」

 

「あっはは!初々しいね!それでどのクレープがいい?」

 

「ふん、所詮は人間風情。神の気高いファッションセンスなど理解出来るはずもないのだ。」

 

「え?あ、うん。ごめん、分かんないや。」

 

「これと、これと、これ。」

 

ユウキはクレープを適当に選ぶ。

 

「お決まりになりましたね。それではお二人にはこれを。」

 

「「??」」

 

コッコロは財布からコインを取り出し、ユウキとブラックに手渡す。しかし二人ともこのコインの意味を分かっていなかった。

 

「…これはなんだ?」

 

「お金でございます。このコインでクレープを買うのでございます。」

 

「物の取引にはこのコインが必要と言うわけか。人間はなんとも不便だな。」

 

「……あむっ」ガリッ

 

「(・×・)!??」

 

「…。」

 

ユウキはお金の使い方など知らない。

 

「あぁあ!主様、口に咥えてはなりません!それは食べ物ではございません!ペッてしてください!ペッ!って!」

 

「ペッ☆」

 

ブラック「なんと醜い姿だ…。」

 

これにはブラックも呆れていた。

 

「ふぅ、主様は記憶を失っておいででしたね。これはお金です。これを引き換えとしてお店などで商品を買ったりする事が出来ます。決して食べ物ではございません。お分かりいただけたでしょうか?」

 

「うん!」

 

どうやら理解したようだ。

 

「おまたせ~!」

 

店主は3人分のクレープを持ってくるが3人は取り込み中のようだ。

 

「素晴らしいです!これで買い物は完璧でございますね!」

 

「恥をかかせるんじゃないぞ?」

 

「うん、お金、大切、覚えた!」

 

「うん?」

 

店主は首を傾げながらクレープを渡した。

 

「ん??」

 

ブラックはこのクレープを持ってきた女性の気に反応する。

 

(この女から、ほんの少しだが神の気配を感じる…何者だ…?だが、今は確かめる時ではないか…。)

 

これ以上の詮索はしなかった。

 

 

買ったクレープを夕焼けの下でベンチに座りながら食べる。

 

 

「はむっ…美味しい…!私、このような食べ物初めて食しました!はむっ…とても甘くて、それにこのイチゴのようなソー…。」

 

「…」ニコッ

 

「どうかしたか?」

 

「い、いえ…今日はお疲れ様でした。宿を取りますのでお体をお休めくださいませ。」

 

「…頬にクリームがついているぞ。」

 

「あ、あわわわ、も、申し訳ありません!」

 

「謝る必要はない。(…人間と言うのはこんな風に笑うのか…。)」

 

ブラックは今まで人間の悪い部分しか見てこなかったが今のコッコロ達がクレープを食べている顔を見てそんなことを少し考えた。

 

「あの、まだ私の顔に何かついてますか?」

 

「何でもない。行くぞ。」

 

「分かりました、でしたら向かいましょう。」

 

こうして3人は宿屋へと向かった。

 

「ごめんな〜お嬢ちゃん。ウチも商売だからねぇ。お金貯まったら、是非泊まりに来てよ!」グッ!

 

あいにく持ち合わせのお金が足りなかった為泊まることが出来なかった。

 

「え?」

 

「…無礼者が、この建物を破壊…って何をしている!」

 

「…かくなるうえは父から譲り受けたこの杖を…!」

 

ブラックは建物を破壊しようとしたがコッコロが何やら杖を売ろうとしていた為必死に止めた

 

 

 

パシッ

コッコロの両肩には二人の手がのっていた。

 

 

「…」ニコッ

 

「気にする事はない。」

 

こうして3人はランドソルから離れた森にて野宿をすることにした。

 

「…」

 

「…」スヤァ

 

「…。」

 

ユウキは疲れたのかぐっすりねむっている。

ブラックは木に寄りかかり目を閉じて改めて自分に起きた不可解な現象を頭の中で整理をしていた。

 

『…私はトランクス達に敗れこの世界に転生した…ふっ、我ながら無様なものだ。やはり人間は危険な存在だった。あの時私が油断をしなければ…と言っても仕方がない。ん?なんだ…これは…!』

 

ブラックが目を瞑りそんなことを考えていると頭の中に1つの映像が浮かんできた。

それは孫悟空が銀髪になり、謎の赤いオーラを纏っている人物と互角以上の戦いをしている映像だった。

 

『あの銀色の輝き…まさかあの力は!』

 

ブラックは過去にゴワスから神ですら容易に使うことができない『身勝手の極意』という技の存在を教えてもらったことを思い出した。

 

『ゴワスから聞いたことがある…。神ですら容易に辿り着けぬ境地。人間であるお前が、その力を使いこなしているとでも言うのか?』

 

『…お前が強くなるのなら、私ももっと進化できる…何故なら私も孫悟空なのだからな。』

 

ブラックは一晩中そんなことを考えていると…

 

 

「ねぇ…目を覚まして!!」

 

「ん?ここは…。」

 

ブラックが再び目を覚ますとそこには見慣れない光景が広がっていた。

 

「やっと気づいた…アンタが今見ているのは夢みたいなものよ。」

 

目の前には妖精のような…緑と紫の色が入り交じった綺麗な長髪の少女が立っていた。

 

「何者だ。」

 

「私は『アメス』よ。」

 

「…ほう、、、この『気』は…貴様は神だな?」

 

「…よく分かったわね!?」

 

「先程私が今見ているのは夢と言っていたがどういう事だ。」

 

「そのままの意味よ。貴方の意識を私が呼んだのよ。起きたら多分全部忘れちゃうわ。」

 

「…私に何の用だ。」

 

「…まずは何から言うべきかしら?こんな事が起こるなんて初めてだから困惑しちゃうわね…。」

 

(なんだコイツは…神ではあるが、何か違和感がある。純粋な神の気ではない。何者かによって作られたような気だ…。)

 

「まずアンタが今いる世界は作り物なの。アンタが元々住んでいた世界とは違うわ。」

 

「この世界を人間が作ったとでも?」

 

「そういうことよ。」

 

「…やはり人間は危険な存在だ。」

 

「私にとっては貴方の方が危険な存在よ。でもこの作られた世界も今は重大なバグが起きててある条件が満たしてしまうとループしてしまうの。」

 

「ループ?その条件とはなんだ?」

 

「世界がループしてしまう条件…それはユウキが死んでしまうことよ。」

 

「なんだと?」

 

「ユウキが死んでしまうと何度も世界が作り直される。今まで紡いだ絆や冒険も全て最初から。」

 

「つまり、ユウキが今まで死んで再構築された世界が今私達のいる世界ということか。」

 

「…そうよ。だからアンタにお願いがあるの。」

 

「そこまで言えば分かっている。この私がユウキを死なせなければ良いだけだろ。」

 

「うん、絶対に死なせないで欲しいの。もうユウキは何百、何千回と死んで世界がループしている。このループから抜け出すためにはアンタの力が必要なの。」

 

「それだけじゃないだろ?」

 

「?」

 

「ユウキを死なせないだけではないだろ?このループから、この世界から開放されるためにするべき事はなんだ。」

 

「…この世界を創った黒幕を倒すこと…。」

 

「黒幕を倒すか…。」

 

「…とは言っても目が覚めたら今までアンタに話したことは忘れちゃうと思うけど。」

 

「たくさん冒険してユウキたちと絆を紡げば…。」

 

「…私は元の世界に戻れるのか?」

 

「…どうかしら、でも可能性としては十分ありえるわ。」

 

「フフフ…私はこの世界でもっと強くなれる。待っていろ、サイヤ人よ!」

 

「…因みに無意味な殺しはこの世界のループにも影響があるから殺さないでね?頼んだわよ!」

 

「ッ!!」

 

次の瞬間、ブラックは目を覚ますが先程のアメスという神はいなかった。ユウキはとっくに眠りについていたがコッコロはまだ起きているようだ。

 

「偽りの世界…ユウキだけは死なせない…か。それに殺してはいけないだと……?ふっ、アメスよ……私は全て覚えているぞ。殺してはいけなのが面倒だが孫悟空との決着の為にもこの世界を浄化してやろう。」

 

不思議な夢を見たブラックはアメスから言われた事を忘れずにそのまま再び眠りについた。

 

 

──────────────────────────

ブラックが眠りについた後、コッコロは一人で考えていた。

 

(ガイド役として不甲斐ない私を攻める事なく受け止めてくれるなんて…主様もゴクウ様もお優しい方…。)

 

コッコロも眠りにつこうとした。

 

(明日こそは…お二方のために…)

 

 

 

ガサ…ガサ…

 

 

 

「…?」

 

眠りにつこうとしたコッコロが目を開けると…

 

「「ガル…ガル…グルルゥ…」」ズリズリ

 

狼っぽい魔物がユウキを引きずっていた。

 

「(・×・)!?」

 

「…。」

 

そして、2匹の狼と目が合う。

 

「…」

 

「「…」」

 

「…ん?」

 

ブラックも目を覚ます。

 

次の瞬間…

 

「「ガウ!!」」トコトコトコ

 

「!?主様ぁぁぁーーーー!!!!」トコトコトコ

 

「やかましい連中だ…。」

 

 

 

次の日

 

 

 

「も、申し訳ございません!野宿には最深の注意を払うべきでした!」

 

昨夜ユウキは狼に引きずり回されていた。

 

「このままだといつか主様が狼に食べられてしまうかもしれません。」

 

「なので私、働きに出ようかと存じます。」

 

「主様はお心のままにそのへんで遊ぶなり、美味しい物を食べるなりしてくださいまし。…これを。」チャリン

 

コッコロは懐から袋を出しユウキに渡す。

 

その中身はお金である。

 

「ゴクウ様にも、どうぞ。」

 

「私にもか?」

 

「はい、本日のお小遣いでございます。どうぞ。」

 

「いゃ、これは…」

 

流石のブラックもこれにはドン引きである。

 

「…」

 

「…。」

 

「夕刻には戻りますのでここで待ちあわせいたしましょう。」

 

「「……」」ダラダラ

 

 

ユウキとブラックは困ったような顔をし額に汗をかく。

 

「おや?慣れない環境で、体調を崩されたのでしょうか。それともお小遣いが足りませんでしたか?すみません、先程のお金が全てなのです。装飾品等を売ってお金に換えてきま…!」バッ

 

そうすると二人に止められる。

 

「ま、待てコッコロ…私たちも一緒に行く。」

 

「お金大切…!お金大切…!覚えた!」

 

そして3人は仕事を見つけるべく大きな建物へ向かった。

 

「ここですかね?でも、よろしいのですか?働かれるという事で?」

 

「うん。」

 

「…界王神の私が副業だと…!!」

 

「どうしました?」

 

3人は声の聞こえた方に振りかえる。

 

「私はギルド管理協会の職員『カリン』と申します!分からない事があったら遠慮なく聞いてくださいね!」

 

 

「こちらにお仕事募集の掲示板があると聞いたのですが…」

 

「はい!ご案内しますね!」

 

3人はカリンの元についていく。

 

「えっと…討伐クエストに護衛クエスト…ダンジョン探索…どれも初心者の方にはオススメし辛いですね…。」

 

コッコロは一枚の紙をとる。

 

「ランドソル周辺にドラゴンの目撃情報有り…財宝等に誘われたドラゴンは人的被害を及ぼすため討伐隊を求む。」

 

「なんだそのトカゲは。」

 

「トカゲ!?ゴクウ様、これはドラゴンといいまして私たちで討伐しに行っても歯が立たないほど強力な魔物なのです。」

 

「ドラゴンか…。この世界に『超ドラゴンボール』は存在しているのだろうか…。」

 

「すーぱードラゴン…ボール…?」

 

「超ドラゴンボールは第6宇宙と第7宇宙に合わせて7つ散らばる願い玉だ。7つ揃えるとどんな願いも叶えてくれるのだ。」

 

「そのような物が…第6宇宙と第7宇宙…?と言うのはよく分かりませんがとても興味深いですね…!」

 

「…まあ、そんなことよりも今はクエストだ。」

 

『ドラゴン』と言う単語に引っかかったが今は超ドラゴンボールで叶えたい願いも特にはないため考えるのをやめた。

 

「あ、でしたらこのクエストなんてどうでしょうか!採取クエストなんですが、ガド遺跡に群生するキノコを集めて欲しいそうです。危険も少なそうですし、オススメですよ!」

 

「…!」パァ

 

「…!」パァ

 

「採取か、まあこれが妥当だろう。」

 

「よろしくおねがいします!」

 

「よろしくおねがいします!」

 

「ふん…。」

 

こうしてクエストを探し出すことが出来た。

 

 

 

 

三人はクエストに向かいガド遺跡へと到着した。

 

「こちらです主様、ゴクウ様。」

 

コッコロは木の枝を使い、落ち葉の下を見せた。

 

「ご覧ください、このような場所に注意して探してくださいませ。」

 

色々な種類のキノコが出てきた。

 

「うん。」

 

「なるほど。」

 

「この森はキノコが豊富なのですね。きっと穴場なのでしょう。おや?」

 

「プププ…プチ、プチ〜!」

 

コッコロが見つけたのは可愛らしい見た目をした茶色の小さいキノコだった。

 

「変わったキノコですね。」

 

「プチプッチ!プチッ!」

 

「…ぷちぷちの、ぷち子。」

 

コッコロは謎のキノコに『ぷち子』という名前を付けた。

 

「プッチ!」

 

「報酬のためとは言え、このような小さな命をいただくのは…」

 

「何故だ。」

 

「いえ、弱肉強食の世界とはいえ小さな命を刈り取るには少々ためらいが…」

 

「…そうか。お前は……私が唯一認めたかった人間なのかもしれないな。」

 

本来ブラックの口から出るはずもない言葉がでた。

 

「?」

 

カァーカァー…

 

 

森の中にはぷち子を狙うカラスが沢山おり、それにぷち子も怯えていた。

 

「ぷち子、ここに隠れて…」

 

そうするとぷち子はコッコロの所持していたポーチの中に隠れた。

 

 

ブラックが採取をしていると

   

 

「この私がこんな物の為に働くとは…こんな姿はもう1人の私にはとてもみせられんな……………何者だ!」

 

「…」グー

 

ブラックが振り返るとオレンジ色の髪をした少女が倒れ伏していた。

 

「お腹ペコペコ…」グー

 

「おい人間。そこで何をしている。」

 

どうやらお腹が減って動けないようだ。

 

「ちっ…。」

 

ブラックは渋々倒れていた少女を担ぎコッコロ達の元へ向かった。

 

「ハム…ハム…うむ」ガツガツガツガツ

 

「あむ、うむうむ…」ガツガツガツガツ

 

三人は採取したキノコを大量に余っているため食糧として使った。そしてブラックが見つけた少女も、その昼食に誘ったが、コッコロとユウキはその食べる量に驚いていた。

 

「うんまーい!」

 

「なかなかの味だな。」

 

 

採ったキノコは大分無くなり、ブラックと少女が殆ど平らげ、それと同時にコッコロの作ったおにぎりも秒で無くなっていた。

 

「いやー助かっちゃいました。見ず知らずの私に美味しいご飯を恵んでくれるなんて。一生恩にきます。」

 

「あの〜…このような所でどうしたのです?」

 

「実は…」

 

コッコロが話を聞いてみると旅が終わりランドソルに帰ろうとしていたらお腹が空いて行き倒れてしまったようだ。

 

「それで倒れていたのか?」

 

「はい、ヤバいですね!」

 

「なんと無様な…」

 

「あなた達はどうしてここに?」

 

「私達はキノコを取りに…」

 

「おー!だからこんなにも沢山恵んでくれたんですね!」

 

「良ければもっとどうぞ。」

 

「貴女方は神様ですね!」

 

「そうだ…!私は神だ!」

 

「…どうしたんですいきなり?」

 

しかし、背後に怪しい気配が…。

 

「…この『気』は…。」

 

ブラックは目を閉じ気の正体を探った。

 

「…」

 

木の影から1人の少女が杖を持ち、先の方に着いている本が紫色に光だした。

 

「女か…。」

 

次の瞬間…

 

ガサゴソ…ガサゴソ…

 

キノコみたいな物が地面から生えた。

 

「へぇー、ユウキ君にコッコロちゃん、ゴクウさんって言うんですかぁ。」

 

ガタンッ!

 

「ん?」

 

「あ。」

 

「あ。」

 

「ん?」

 

 

四人の後ろには

 

「ぎぃやぁぁぁぁぁ!」

 

沢山の巨大なキノコの魔物がいた。

 

「ぐっへへ。」ブンッ

 

すると巨大なキノコは少女へと殴りかかった。

 

ドォォォン!

 

少女は難なく回避する。

その魔物は何者かに強化されているのだろうか、殴った地面には大きな穴が出来るほどの威力。

 

「…多分私を狙ってきたんです。巻き込んじゃいましたね、ごめんなさい。」

 

「神に逆らう痴れ者が。」ザッ

 

ブラックは久しぶりの戦闘のためリハビリを兼ねて戦おうとしている。

 

「…」シャキン

 

ユウキも構えた。

 

ユウキは剣を抜き、ブラックは棒立ちだが一切の隙がない。

 

「あの…ユウキ君にゴクウさん?」

 

「えっと…お腹ペコペコの『ペコリーヌ』様と仮にお呼びしますね。」

 

「…!!」

 

「乗り掛かった船です。共に窮地を脱っしましょう。」

 

「おや!?ペコリーヌって私ですか?かわいいあだ名をつけられちゃいました!ヤバいですね!でも、貴方達の気持ち…嬉しいです!」

 

「うぉおおおお!!!」ダダダッ

 

巨大なキノコ達は一斉に走り4人に攻撃を繰り出した。

 

「…ふっ!…はっ!」パシッ 

 

巨大なキノコの攻撃を上手く受け流しカウンターまでもいれている。

そしてキノコ達の上を駆け、そのまま前に進んでいく。

 

「…なるほどな。」

 

ブラックは少しペコリーヌの戦いを観察していたがやはりブラックが前にいた世界…悟空やベジータ、そしてトランクスに比べれば戦闘力はかなり劣る。

 

「…」

 

「うぉぉぉぉ…」

 

ペコリーヌは魔物の上へ高く飛ぶ。

 

「…」キュイイイン

 

「…ほう。」

 

ペコリーヌが身につけているティアラが輝き、気が上昇した。

 

「はああぁ!!!」

 

落ちると同時に右の拳を叩き込む…

 

 

 

ドォン!!!

 

キノコ達はその威力で吹き飛ばされる。

 

「さて、そろそろ私もやるか…。」シュピン

 

「ぐぉ!?」ドォォン!!

 

ブラックの攻撃がキノコ達の急所を的確に襲う。

 

「この身体こそ最強だ…。」

 

「野蛮な種族め…神に触れようとする卑しい心根…それが罪なのが分からぬか!」

 

「うぉぁぁぁぁぁ!」ダダダダ

 

「神の偉大な贈り物である知恵を…私利私欲のために利用する愚かで野蛮な生命体が…」シュンッ

 

ブラックは空気を殴ることで発生する拳圧で巨大なキノコ達を次々と倒す。

 

「ぐおおおおぉぉ!!」

 

「…この身体に刻まれている孫悟空の戦闘の記憶が、私を更なる高みへと昇らせる。」

 

「…す、すごい!この一瞬であんなに沢山の魔物を!」

 

ペコリーヌはブラックの戦いを見て自分とは格が違うという事をひと目で理解した。

 

 

「光のご加護を…」

 

コッコロがそう唱えるとユウキの体がひかり、ユウキを包んでいく。

 

「主様の素早さを上げました!これならば!」

 

「うん!やあー!」

 

「…。」ドン!

 

一瞬でユウキは倒された。

 

「…。」

 

「うあぁ…」パシッ

 

「マイ…タケ…」

 

ユウキがやられている間にコッコロが囚われてしまった。

 

「主様!」

 

「コッコロちゃん!?」

 

「無駄なことを…」シュイイイン

 

ブラックがキノコの魔物を攻撃しようとした瞬間ユウキに異変が起こった。

 

「…は!!」

 

「ん?」

 

ユウキの記憶が浮かび上がってくる。なにかトラウマの様な嫌な記憶が…!

 

魔物がコッコロに斬りかかろうとすると…

 

カキンッッ

 

ユウキは魔物の攻撃に割り込みコッコロへの攻撃を防いだ。

 

「主様!」

 

「ぐっ…ぐぐぐぐ…!!」

 

なんとかキノコの攻撃を防いではいるが長くは持ちそうにない。

 

 

 

しかし…

 

 

「はぁぁぁあああ!!!」

 

ユウキに隠された力、それは…!

 

「これは…!ふん!!」ドカッ

 

ペコリーヌ達の動きが見違えるように良くなった。

 

シュンッ

 

「はぁっ!」ドンッ

 

「ぐわぁぁぁ!!」

 

 

そのままコッコロを救い出し、魔物を蹴りあげ、ペコリーヌは魔物の落とした武器を拾う。

 

「先程までの動きとは違う…。アイツの能力で強化されたのか?」

 

「アメス様のご信託どおり…なんと神々しい…!これが主様の力…『プリンセスナイト』の証!」

 

「力がどんどん湧いてきます!ユウキ君のおかげでしょうか?」

 

「はい!いざ参りましょう!」

 

コッコロも戦闘態勢をとる。

 

「風の精霊よ…!」

 

コッコロは妖精のようなものを出し敵の方へと向かわせる。

ヘイトは妖精の方に向き、ユウキは力で魔物を押し倒した。

 

ペコリーヌは魔物の錆びた剣を持ち思い切り振った。

 

「いきますよ!」

 

 

「プリンセスストライク!!」

 

 

ドォォォォン!!

 

最後はペコリーヌの一撃によって魔物は倒された。

 

「…やるではないか。」

 

「あ、ありがとうございます!ゴクウさんも凄く強いんですね!」

 

「当然だ。」

 

「皆様、お疲れ様でした!」

 

「勝った!」

 

「…これでクエストは終わりか?」

 

「はい!クエスト達成でございます!」

 

 

 

 

夕暮れ

 

 

 

 

「大量〜!!」

 

「こんなにもキノコが収穫出来るとは…後ほどカリン様に相談しましょう。」

 

「うん!」

 

「…。」

 

 

コッコロ達は倒したキノコ達を集めようとすると背後には…

 

(ちくしょう!あと少しであいつを養分にできたのに!)

 

ぷち子が元凶だったらしい

 

(こうなったら直接寄生してやる!)

 

ぷち子はコッコロに噛み付こうと飛びついた。

 

(いただきだぜぇー!!)

 

コッコロに寄生しようとしたが…

 

パシッ

 

「こんなところにキノコが!」

 

「あ、その子は!」

 

パクッ…

 

「(・×・)!?」

 

「あむ、あむ…」

 

ゴクンッ…

 

普通に喰われた

 

「このキノコ生でもイケますよ!ヤバいですね!」

 

しかし…

 

「…ん!?」ボフン!

 

ペコリーヌの顔が真っ赤になりそのまま倒れる。

 

「きゅぅぅ…」

 

「ぺ、ペコリーヌ様ー!!」

 

「ん?」

 

「何をやっているのだ…。」

 

ペコリーヌがこの状態なのでブラックがペコリーヌを背負い、街に戻る。

 

「ぺっこぺこ〜ぺっこぺこ〜わたしはぺこり、ぺこり〜ぬ〜」

 

「ちっ、騒がしいやつだ。」

 

「ご機嫌でございますね。毒で無くて良かったです。」

 

「うん。」

 

「あの子はペコリーヌ様の血となり肉となったのですね。」

 

「ぷちペコリーヌ様…」

 

「コッコロ…ゴクウ…」

 

「はい。」

 

「なんだ。」

 

「これからもよろしく。」

 

ユウキは改めてそんなことをブラック達に言った。

 

「…勿論です…主様。」

 

「…ふん。」

 

ブラックも始めて人間の仲間が出来て嬉しかったのか嫌そうではなかった。

 

 

 

 

 

 




何か意見があれば教えてください!
あるお方の小説を読んだら無性に描きたくなってしまいました…。
どうやったら文章が良くなるのかオシエテ…。


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暫しの別れ

2話目!



「にゃー…。」

 

 

「あんたは行かないの?…そうよね、仲間なんて。一人の方が気楽よね。……………行かなくちゃ。私のやるべき事を成すために…。」

 

そう言って子猫に話しかけるのは黒い長髪の猫耳の少女。この少女こそが以前キノコの魔物達を操りブラック達を襲わせた張本人であった。

 

 

──────────────────────────

 

 

「主様、ゴクウ様、朝食のご用意ができました。…おや?ゴクウ様、主様は一体どちらに?」

 

コッコロが部屋に入るとユウキの姿はなくブラックが一人で窓の外を見ていた。

 

「…外を見てみろ。」

 

カンッ コンッ

 

「!」

 

コッコロが窓から外を見下ろすとユウキは一人で剣を振り特訓していた。

 

「アイツは早朝から一人で特訓している。はっきり言って弱いが強くなりたい気持ちは本物のようだな。」

 

「主様…!」

 

コンッ!

 

「あがっ!!」

 

ユウキが剣で叩いた小さい丸太が跳ね返ってユウキの額にぶつかった。

 

コッコロ「主様!?」

 

「…。」

 

ユウキは痛みでしゃがみ込むが、直ぐに立ち上がり特訓を再開する。

 

「あ、ふふ。」

 

コッコロはユウキが成長しているのが嬉しいのか、優しい顔で見守っていた。

 

「おいコッコロ。」

 

「はい?」

 

「ユウキが昨日見せた能力…アレはなんだ。」

 

「あの力はプリンセスナイトの力でございます。 味方全員の能力が格段に上がる主様だけの特権でございます。」

 

「そうか…()()()()()()……。」

 

「?」

 

「……やはり人間の割には存外マシな動きをする…。」

 

「?」

 

ブラックはユウキの素振りを見て何かを感じ取っていた。

 

 

 

 

カチャ カチャ

 

 

宿の朝、三人は並べられた朝食を食べていた。

ユウキとコッコロの食べる量は普通なのだが、ブラックは…

 

「!」

 

「…ゴクウ様、よ、よい食べっぷりですね。」

 

「お前たちの食べる量が少ないだけだ。」

 

ブラックはコッコロやユウキの何倍もの量を食べていた。

昨日出会ったペコリーヌという少女もよく食べる方だが、ブラックはその上をいっていた。

 

「キノコの報酬が多くて助かりました。」

 

「キノコ、さいこう。」

 

ユウキも報酬のキノコをほうばる。

 

「ですが、ペコリーヌ様は大丈夫だったのでしょうか。」

 

「ペコリーヌとは昨日のオレンジ髪の騒がしいやつか。」

 

「はい。ランドソルに帰るとおっしゃってましたのでまた会えますかね?」

 

「どうだろうな。」

 

「うん。」 

 

「ともあれ、手持ちのお金が尽きる前に、身を寄せる場所を何とかせねば…」

 

「なんだい?お嬢ちゃん。金無いのか?」

 

すると見知らぬ中年の男性がコッコロ達に話しかけてきた。

 

「なんだ貴様…失せろ。」

 

「そ、そういうなよ…。」

 

「お金、大切!」 

 

「お、そうだな(適当)」 

 

「嬢ちゃん達見たところ、この街に慣れてないようだが【ギルド】を組むと管理協会から活動拠点になる家とか貸し出してもらえるんだぜ。」

 

「なんと!そのような素敵なことが。」

 

「この街にいるならギルドを組むのも視野に入れておくといい。」

 

「おい!ウチのお客に余計なこと吹き込むなよ。」

 

「お…悪ぃ悪ぃ。」

 

「ふん。」

 

少しして…

 

「ふぅ〜…」

 

「さて、腹八分目って所か。」

 

「「え゙?」」

 

体はサイヤ人なのだから仕方がない。

 

「あ、あの主様…!」

 

するとコッコロはもじもじしながらユウキを呼び止めた。

 

「ん?」

 

「一生懸命、剣の修行をする主様を見て私、応援したく…このような物を作ってみました。」

 

どうやらユウキの応援のためスタンプラリーのようなものをつくっていたらしい。ハンコはコッコロの顔の可愛らしいデザインとなっている。

 

「何があるという訳では無いのですが。」

 

「……ありがとう!」

 

ユウキは嬉しそうに笑った。

 

「…!」

 

「頑張る!」

 

「…は、はい!」

 

コッコロもユウキの顔をみて嬉しそうに笑った。

 

「精々私の役にたってみせるんだな。」

 

「うん!」

 

場面は変わり…

 

一人の少女が馬小屋で寝ていた。…いや、馬の寝る場所を奪っていた。寝ていた少女の名はペコリーヌ。

 

「ふぁ〜。…おはようございます…」

 

ペコリーヌは馬に顔を舐められ起こされた。

その後ペコリーヌは川で顔を洗い自身の剣を探すが…

 

「お腹ぺこぺこ…」

 

剣よりもご飯が優先。

そしてペコリーヌの剣を奪った二人組は街をうろつきその剣を売ろうとしていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「良い仕事が見つかれば良いのですが…」

 

「この匂いは…。」

 

「…あちらからでしょうか」

 

「…」スンスン

 

三人は掲示板で仕事を探していたが良い仕事が見つから無いようだ。すると…

 

「みろよすげーぞ!!」

 

大きな声が聞こえた方向に向かった。

そこに居たのは…

 

「おかわりくださーい!」

 

ガド遺跡で出会ったペコリーヌだった。

 

「ペコリーヌ様!」

 

「お前か…。」

 

「お!コッコロちゃんにユウキ君、それにゴクウさん!オイっス!」

 

「…。」 

 

「オイッスー。」

 

「!」

 

「昨日は街まで送ってくれてありがとうございます。おかげで起きたらスッキリでご飯も最高!ヤバいですね!」

 

「朝からやかましい奴だ…。」

 

「ご無事で何よりです。ところでこれは…」

 

「あー…これは大食い大会という名の朝ごはんを頂いてました!」

 

「ほう…。」

 

「流石は…お腹ペコペコのペコリーヌ様。」

 

「ん?何だ〜、あ……」

 

民衆から二人組の男が出てくる。

ペコリーヌと目が合うと…

 

「あっ!昨日の脚気の人!」

 

「「見つかったーーーーーーー!!!」」

 

すごい速さで逃げていった。

 

「あ!お薬ありますよ〜!」

 

するとペコリーヌも後を追いかけていってしまった。

コッコロ達もペコリーヌの後を追いかけた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「見失ってしまいました。」

 

「あのお二人はペコリーヌ様とお知り合いなのですか?」

 

「はい!あの人は脚気という病気で、私はそのお薬を預かっているんです!」

 

「あの方病人にはみえませんでしたが…ゴクウ様?」

 

「何かがくるぞ。」

 

ブラックがそう言った瞬間、民衆が再び騒ぎ始めた。

 

 

 

キャァァァァーーーーーーー!!!!

 

 

 

「!!」

 

すると目の前に豚のような見た目の魔物がいた。

 

「プギャャャャャャャャャャ!!!」

 

「こんな人里近くに…どうして!」

 

「街の皆に被害がでちゃいますね。ここは私が…!」

 

ペコリーヌが魔物を退治しようとしたその時だった。

 

「消えろ…。」

 

 

 

 

ドォォォォォォォォン!!

 

 

 

 

ブラックはペコリーヌが攻撃する前に一瞬にして魔物を消し飛ばした。

 

「…えぇっと……。」

 

「一体何が…。」

 

「あれ?魔物は?」

 

「お前たち、何をしている。」

 

「「「……。」」」

 

唐突なブラックの攻撃に3人は腰が抜けて動けない…というよりブラックが攻撃したことに気づいていない。

 

「…あっ、あそこに誰か倒れていますよ!さっきの爆発に巻き込まれてしまったんでしょうか…。」

 

「今すぐ手当を!」

 

「ん?こいつは…。」

 

駆け寄る3人の後ろをブラックは後ろからついていく。

そこにいたのは…

 

「…。」

 

「「「?……!」」」

 

謎の少女が魔物と一緒に倒れていた。

 

「これは……。」

 

 

───────────────────────

 

「…始めチョロチョロ、中ぱっぱ。赤子泣いても…。」

 

コッコロがご飯を作っていると倒れていた少女は目を覚ました。

 

「あ!目を覚ましました!」

 

「…!」

 

「何処か痛くないですか?気持ち悪いとかないですか?」

 

ペコリーヌは心配そうに少女の顔を覗き込む。

 

「そのご様子だとお怪我は無いようですね。」

 

「大丈夫?」

 

「…。」

 

「何よあんた達…」

 

「私はコッコロと申します。こちらはユウキ様、そしてゴクウ様。その方はペコリーヌ様です。」

 

「えへ。」

 

「ペコリーヌ?」

 

「魔物が暴れていたと思うのですが近くに貴女様が倒れていらしたので。」

 

「魔物が暴れていた?」

 

「はい…暴れていたのですが唐突に消えてしまいまして。」

 

「いやいやいや!急に消えるとか有り得ないわよ!それにあの魔物は私が…っ!」

 

「…あの魔物が、どうかしたのか?」

 

ブラックは鋭い眼光を猫耳の少女へ向ける

 

「…な、なんでもないわ。」

 

「はい!炊きたてですよ!美味しいですよ!」

 

口を滑らせかけた猫耳少女にご飯が運ばれた。

 

ジュゥゥゥ… 

 

「アッツゥゥゥ!!!ちょっと!?突然人の口に熱々のご飯押し込むなんてどういう事よ!」

 

「あ、ごめんなさい!ふぅー…、ふぅー…はい!」

 

ジュゥゥゥ…

 

「やっぱりアッツゥい!!!いらんわ!!!」

 

「あたしは猫舌なの!余計なことしないで!」

 

「…おい。」ペシッ

 

ブラックは少女に手を差し伸べたが軽く弾かれた。

 

「一人で歩けるわ。…礼なんか言わないわよ…あんた達が勝手にやったことなんだから…。」

 

「「「「……。」」」」

 

少女はそのまま何処かへ行ってしまった。

 

─────────────────────────

 

???「何でこうなるのよ!大失敗だわ!?というか『ペコリーヌ』ってどういう事よ!あいつの名前は………この事があの方に知れたら…」

 

 

 

 

次こそは必ず仕留める…あの方の為に!

 

 

 

─────────────────────────

 

「ペコリーヌだっけ…?やっぱり剣を失ってるわね。あいつにとって特別な剣のはずなのに…。昨日襲った時も持って無かったしさっきの戦いで確信したわ。今がチャンス…!」

 

少女は離れた場所からペコリーヌ達を見張っていた。

 

「ちくしょー!」

 

「…?」

 

彼女は木の真下をみるとそこにはペコリーヌの剣を奪った二人組の男を見つけた。

 

「まさかあの姉ちゃんがランドソルに居たとは。」

 

「はぁ〜ホントっすよ…」

 

「あれは…」

 

彼女が見た物は男の肩に担がれたペコリーヌの剣っぽい物。

 

「見つかる前にずらかるぞ!」

 

「へい兄貴。」

 

そして二人の男の上空にはなにやら怪しい影が…

 

「なあ、『チャーリー』よ。」

 

ひょろ男の方はチャーリーというようだ。

 

「おっす、チャーリーっす。」

 

「なんか暗くないか?…急に雨でも降んのかな…」

 

影は段々と大きくなっていき、二人は見上げると…

 

「「ぎゃあああああああ!!!」」」

 

でかいドラゴンが居た。

 

「…ドラゴン!?こんな王都の近くで!」

 

「「助けてえぇぇえええええ!!!」」

 

男たちはそのままドラゴンに掴まってしまい。

空の彼方へと消えていった。

 

「…こいつは使えるかもしれないわね。」

 

少女はなにやら思いついたようだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「居ないですねー、何処行っちゃったんでしょうか。」

 

「何か手がかりがあると良いのですが…」

 

「ん…あいつは…」

 

「「「ん?あ…!」」」

 

全員がその気配に気づいた。

 

そこに…

 

「なにか探し物〜?」

 

あの時の少女がいた。

 

 

「貴女は…」

 

「あ、猫舌の人!」

 

「うっさい!あたしには『キャル』っていう名前があるの!変な呼び方しないで!」

 

「キャル…キャルちゃん!!かわいい名前です!ヤバいですね!!」

 

「ヤバくないわ!」

 

「まあまあだな。」

 

「まあまあってどういう事よ!」

 

「……ところであんた達、なんか困ってるの?さっきは親切にしてもらったし、あたしに出来る事あれば手伝ってあげるわ。」

 

「実はこのお薬を脚気の人に渡したいんです…!」

 

「何処におられるのか全くわからず…」

 

「これだけ多くの人間がいると探すのが一苦労だ。」

 

 

「ふーん…なんか、特徴とかないの?見た目とか持ち物とかさ。」

 

「アフロのおじさんと、細いお兄さんなんですけど。あと、大きな剣を持っていると思うんですよね…。」

 

「大きな剣?…あたし、そいつら知ってるかも。」

 

「本当ですか!?一体何処ですか…」

 

「あそこら辺でドラゴンに剣ごと連れ去られてたわよ。」

 

「ドラゴン!?」

 

「そういえばギルド管理協会の掲示板に…財宝を集める習性があり最近ランドソル近辺にあらわれていたとか。」

 

「なるほどね…。つまりあいつらの持ってた剣に興味があったって訳ね。」

 

「大変です!私の剣を預かってもらってたばっかりに〜!!」

 

「あの剣はお前の剣だったのか。」

 

「…お父様から授かった剣なんです!」

 

「……何か違うような…?」

 

「あんた達運が良かったわね。あたし、あいつらの居場所分かるわよ。」

 

「…そうだろうな。」

 

キャル「え?」

 

キャルが得意げに案内を仕様とするが既にブラックは怪しいと感ずいていた。

 

「ただの独り言だ。さっさと案内しろ。」

 

「キャルちゃん大好きです!ありがとう!!」

 

「ちょ…引っ付くなー!!」

 

そうして五人でドラゴンの麓に行く事にした。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

「ここよ…」

 

こうして5人はドラゴンの元へたどり着いた。

 

「デカイのは図体だけだな。」

 

「ちょっと!声が大きいわよ!バレるじゃない!」

 

「あんなトカゲが襲ってきたところでなんだと言うのだ。」

 

「いいから静かにしてなさい!」

 

ブラックは興味がなさそうにため息をつく。

 

「あたしはここまでよ。流石にあんなの、相手にしてらんないわ。」

 

「うんうん。キャルちゃん、ここまで案内してくれてありがとうございます!」

 

「…別に…いいわよ。」

 

しかし問題は剣を取り戻しつつどうやってドラゴンに気づかれずあの二人を助けるかだ。

ユウキ、コッコロ、ペコリーヌご必死に考えた結果…

 

「あ!」ポンッ

 

ここでユウキが作戦を思いついた…

 

 

───────────────────────

「ママー!!」

 

「パパ〜!!」

 

「グルルゥゥッ…」

 

二人が大声で泣き叫んでいたせいかドラゴンは目を覚ました。そしてドラゴンが顔を上げて目に映った人物は男二人組では無く…

 

「ふん…!ふん…!」バサバサ

 

真剣にマントを振り回すユウキだった。

ユウキの考えた作戦は、自分が囮になり注意を引きその隙に救出、剣を取り戻す事。

危険な作戦だが至ってユウキが強気に出たため、却下は出来なかった。

 

「なんだあいつ…?」

 

「おお…」

 

シーッ

 

「「!?」」

 

「もう少し辛抱して下さいね。」

 

「た、助けてくれるのか!?」

 

「えへ♪」

 

ペコリーヌはドラゴンに気づかれておらず作戦は順調に進んでいく。

 

「……」

 

「…」

 

ユウキとドラゴンは睨み合うが…

 

 

バクッ

 

 

「「喰われたぁぁぁぁぁ!?!?!?」」

 

ユウキは食べられたというより咥えられた。

 

が…

 

「神のご加護を…なんと無茶な作戦…ですが、主様が私を信じて建ててくれた作戦…!全力で主様をサポート致します…!」キィィィン

 

コッコロの魔法でユウキは齧られても平気なようだ。

 

「えい!」

 

ペコリーヌは暴れるドラゴンの背に乗り頭部の方へと駆ける。

 

「ありがとうユウキ君、今助けます!」

 

ペコリーヌとユウキの距離はあと少しだ。

 

「…掛かったわねペコリーヌ。あたしのプリンセスナイトの力であんたを潰すわ!」キュィィィン

 

キャルの魔導書が輝きだす。

その光はキノコの魔物と戦った時と同じ色…。

 

「魔物を支配する力でね!さあ、やっちゃいなさい!」

 

「グワァァァァァァァァァァ!!!!」

 

ドラゴンは正気を失い更に暴れ出すした。

 

「うわわわわわわわわ!」

 

ドラゴンは頭を振り回しペコリーヌ達を岩にぶつけた。

 

「ペコリーヌ様!!!」

 

「やはりか…最初からそうだろうとは思っていたが…。」

 

ブラックは最初から確信していた。ガド遺跡でのキノコの魔物の暴走からこのドラゴンの暴走まで…全てキャルの仕業だと。

 

「良いわよ!ガンガンいっちゃいなさい!」

 

「グァァ!」

 

ドラゴンは翼を広げ上空へと昇りそのまま飛び去る。

 

「主様!ペコリーヌ様!!」

 

コッコロはユウキ達を追いかける。

 

ペコリーヌ達がピンチになっている中、何故助けに行かないのか…ブラックは後ろで見守りながら予想外の行動をとった。それは…

 

「…このドラゴンはお前たちだけでも大丈夫だろう。それに、キャルとかいう奴に私がとやかくいう資格などない。お前たちに任せよう。」

 

意外にもブラックはユウキ達とは別行動することを選んだ。ブラックがユウキ達と共にいると成長の機会を奪ってしまうからだろうか…ブラックなりの気づかいなのか、真相は不明である。

 

「暫しの別れだ…人間共よ。」

 

そしてブラックはその場を後にした。

 

その後なんやかんやあってペコリーヌの剣は戻ってきたらしい。

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

「ありがてえ!ありがてえ!」

 

「ほんと、マジ感謝!!」

 

「さあ!これをどうぞ!」

 

救出に成功しドラゴンを倒す事もできた。

 

「主様、あまり無茶をしないでくださいませ。」

 

「うん。」

 

「ユウキ君のおかげで助かっちゃいました!キャルちゃん、キャルちゃんもありがとう!ってあれ?ゴクウさんはどこですか?」

 

「そう言えば見ておりませんね。」

 

既にブラックの姿はなかった。

 

「僕がドラゴンに連れ去られる前まではいたよ。」

 

「そうでございますね。」

 

「ええ!?ゴクウさん居なくなっちゃったんですか!??」

 

ペコリーヌはブラックがいなくなり少し落ち込んだ。

 

「……。」

 

「もっと沢山、ゴクウ様と冒険をしたかったです。また…会えるでしょうか…。」

 

「…絶対会えますよ!」

 

「どうだかね…それじゃあ私はもう行くわ。」

 

キャルが帰ろうとした時だった。

 

「…待ってください!」

 

「?」

 

「…私達でギルドを結成しませんか?」

 

「ギルドでございますか?」

 

「はい!本当はゴクウさんも一緒にギルドに入って欲しかったですけど…。」

 

「それは願ってもない申し出です!私達もギルドを結成したいと思っていたので。」

 

「うん!」

 

「キャルちゃん!キャルちゃんも入りましょう!」

 

ペコリーヌはキャルをギルドへと誘った。

 

「はぁ!?入るわけ無いでしょう!?いつあたしがあんた達の仲間になったのよ!」

 

しかしキャルはギルドの入会を断り、独りで歩きはじめる。

 

 

「「「……。」」」

 

3人はキャルの後ろ姿を見送った。

 

「ばかばかばかばか!何をやってんのよあたしは!こんなんじゃあたしは……」

 

 「………仲間なんて………ハム………」

 

キャルはコッコロから貰ったおにぎりを一口食べる。

 

 

 

おいしい…

 

 

 

きっと、次にブラックと再開する時には仲のいいギルド になっているはずだろう。

 




ブラックが美食殿に入ったら物語がすぐ終わっちゃうから仕方がない()


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ゴクウブラックのお勉強

文字数少なくなった…


ペコリーヌ達と別れたブラックは一人でランドソルの街を眺めていた。

 

「…これからどうするべきか。この際人間について深く学ぶのも悪くないな。確か、人間の学び舎は『学校』とかいったか。何処にあるか分からんが聞いて回ればいいだろう。」

 

と、丁度目の前を通りかかった赤い長髪の女性に聞くことにした。

 

「おい女、聞きたいことがある。」

 

「あ、はい!どうしましたか?」

 

呼び止められた女性はなんとも説明しがたい際どい服を着た女性だった。

 

「…勉強に興味があるんだが、勉強を教えてくれる場所はわかるか?」

 

「勉強を教えて貰いたいの?それなら丁度良かった!この先にルーセント学院って学校があるんだけど私はそこの教師なの!よかったら一緒に来る?」

 

「ほう…案内してもらおう。」

 

「私の名前はイオ!気軽にイオちゃんって呼んでね!」

 

「…私の名は孫悟空だ。」

 

「ゴクウ君ね!それじゃあ行きましょうか!」

 

そうしてブラックはイオの勧めでルーセント学院へ通うこととなった。

 

 

 

ルーセント学院

 

 

朝礼のチャイムが教室に鳴り響く。

 

「はーい皆席に座って!今日から皆と一緒にお勉強をするお友達を紹介します!それじゃあ、ゴクウくん、入ってきて!」

 

「……孫悟空だ。」

 

紹介と共に全身黒に包まれた男が教室に入ってくる。なんともシュールな光景だがこの世界では珍しくないみたいだ。

 

「「「よろしくー!!」」」

 

「それじゃあ早速算数の勉強からしましょうか。ゴクウ君はそこの空いている席に座ってね。」

 

ブラックは1つ空いている席に座った。すると隣の人が話しかけてきた。

 

「よろしくね!!」

 

「ん?」

 

「私はスズナだよ!あと私の隣の娘がミサキっちだよ!」

 

「ミサキっち?」

 

ブラックは突然話しかけられ困惑する。

 

「ちょっと!私の名前はミサキよ!変なあだなつけないで!!」

 

「…。」

 

「あ、ねぇねぇゴクウ!ゴクウって掛け算できる?」

 

「当たり前だ。基礎中の基礎だろう。」

 

「えぇ!?あんたできるの!?七の段とか難しくない??」

 

「ゴクウって天才なんだね!!ヒデサイって感じ!!」

 

「…なんだコイツらは…!」

 

 

 

後に分かったことだがこの二人はルーセント学院の2大『バカ』だった。

 

 

 

一方その頃〜

 

 

ペコリーヌ達はお昼ご飯を食べにとあるレストランで食事をしていたのだが…

 

 

「ここかぁ!?不味い虫料理を出してる店ってのはあ。」

 

そういってレストランのドアを蹴り飛ばして入ってくる輩がいた。

 

 

「てめぇ!!マスターの料理にケチつけるっていうのか!!うげえええ!!」ドゴン!

 

「兄貴イイイイィ!!!」

 

男は殴り飛ばされその勢いのままテーブルに直撃した。その反動でコッコロが持ってきたギルド申請書は床に落ち踏みつけられてしまった。

 

「っ…!」

 

「おい!客に水も出さねえのかこの店は!!」

 

「うちの店がなんだって?」

 

マスターはそういってチンピラに近づいた。

 

「不味いかどうかはその舌で」グギイ!

 

「ぐわぁ!!!」

 

反論する暇もなく手首を捻られてしまった。

 

「おっとすまねえ!」

 

好き放題する男にペコリーヌは怒る

 

「……お腹が空いてイライラしてるんですか??」

 

「なんだ姉ちゃん。そこに転がってる男のかわりに飯を作るのか?不味かったらこの店畳んで貰うぜえ!」

 

「どんな人でも等しく美味しくご飯を食べることができる国。それがこのランドソルです。オーダー入ります!!」

 

ペコリーヌは物凄い手際の良さで料理を仕上げていく。ギャラリーも感心している。

 

「旅の間色々な食材を調理してきましたから。」

 

「この店の味付け分かってんの?」

 

「マスターが作った料理のレシピは脳内に刻まれています。」

 

 

そして、、、

 

 

 

「完成です!!」

 

「へっ、待たせやがってこう見えて俺は美食家だからな。半端な物じゃ納得しねえぜ!さあ、どれから頂くとしようか。」

 

「不味そうな虫だぜ!」

 

「待って。」

 

「キャルちゃん?」

 

「まだこの料理は完成してないわ。」

 

そう言ってキャルは黄色い果実を搾る。

 

「あんたは天使の歌声を聞くことになるのよ。」

 

すると虫料理が光だした。

 

「ま、不味そうな料理だぜ。」

それを口に運んだ次の瞬間

 

「こいつ、馬鹿なあああ!!!」

食べる手が止まらない。

 

「嘘だろ?虫だぞこれ!」

 

「うがああああ!!!」

 

チンピラは葛藤している。

 

「歌声が聞こえてきやがる!」

 

「美味くな、美味くな、美味くな美味くな…、(不味い飯だって言うんだあ!!)」

 

「美味い〜!!」

 

天使の歌声が聞こえた。

 

「やりましたねキャルちゃん!」

 

「ふん!」

 

しかし、次の瞬間。

 

「ふざけんなあ!!!こんな虫料理が美味いわけねえだろうが!!」

 

虫料理を皿ごと床に叩きつけた。

 

「…!!」

 

「不味い飯だす店なんてぶっ潰してやる!!」パシッ

 

チンピラが店を叩き壊そうとしたその時だった。

 

「ん?」

 

「食べ物を粗末にしちゃう悪い子にはお仕置です!」

 

チンピラは外に吹き飛ばされた。

 

ペコリーヌ「めっ!ですよ!」

 

「やったぜぺこ姉さん!!!」

 

「ふっ…!」( -`ω-)b

 

「えへ!」

 

ペコリーヌもグッドを返した。

 

 

 

そして、、、

 

「主様、、、あっ!」

 

「キャルちゃん?」

 

キャルは床に落ちていたギルド申請書を拾った。

 

「しょうがないわね。あんた達だけでは頼りないから私も入ってあげる。感謝しなさいよね!」

 

心変わりしたのかギルドの加入を承諾した。

 

「ありがとうキャルちゃん!!」

 

「抱きつくな!!」

 

「後はゴクウさんだけです!」

 

「まだ諦めてなかったの!?」

 

「私も賛成でございます…!」

 

「うん!」

 

そして3人はブラックを加入することも視野に入れていた。

 

「…と言ってもゴクウさんがいつ現れるのか分かりませんので先に私たちだけで申請しちゃいましょう!後からでもギルドには加入できるので!」

 

こうして無事にギルドを設立できた。

 

その名も『美食殿』!!!

 

「さあ、始めましょう!ここから!」

 

新たな旅の始まりを迎えた。

 




恐らくゴクウブラックは頭がいいはず


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混ぜるな危険

戦闘狂同士の闘いはいつだってワクワクするなぁ…


ブラックが学校に通い始めて1週間が経った。

 

「ふむ、算数とかいう授業はくだらなすぎて受ける気にならないが歴史と言うものは実に興味深い…。」

 

「あ、いたいた!ゴクウ君!」

 

「うん?なんだ。」

 

「実はね?聖テレサ女学院っていう女子校があるんだけど、今後男女共学化に向けて、模範となる男子生徒を募集しているの!ゴクウ君は成績優秀で紳士だし是非推薦したいんだけどどうかな?」

 

「聖テレサ女学院?なぜ私が…勉強ならこの学校で間に合っている。」

 

「聖テレサ女学院はこの学校よりずっとレベルが高いの!ここに行けば今よりもっと多くのことを学べるわよ!」

 

「…気が向いたら行ってやるさ、色々とやる事があるからな。しばらくの間は学校を休むつもりだ。」

 

「そう?でも強制はしないわ。取り敢えず今は保留って事にしておくわね。」

 

そういってイオは去っていった。

 

「もっと多くのことを学べるか…。それより、アイツらは上手くやっているだろうか。」

 

ふとペコリーヌ達を思い出す。

 

「さて、息抜きを兼ねて人間の街でも見に行くか…。」

 

そうしてブラックが一人街を歩いていると変な噂が聞こえてきた。

 

「なあ、知ってるか?一人で森を歩いてるともう1人の自分が現れるって…。」

 

「何だよそれ、そんな迷信信じてんのかよ。」

 

「もう1人の自分?山道で?ふっ、くだらん話だな。」

 

ブラックはそんな事があるはずないと半分冗談に思いながら街をあるいていった。

 

 

 

 

 

一方その頃〜美食殿

 

 

 

 

「さあ、おやつは持ちましたか?いざ出発!!」

 

「「「おー。」」」

4人はギルドを結成してから初の依頼をしにタルグム村に向かった。

 

 

────────────────────────

 

 

山道にて…。

 

「やだなぁ、変だなぁ、怖いなぁ。」

 

一人の男が不気味な道を歩いていた。

 

「へっ?」

 

すると目の前には自分と全く同じ姿をした人物が立っていた。

 

「やだなぁ、変だなぁ、怖いなぁ。」

 

そして全く同じ言葉を喋っていた。

 

「ひぃ!」

 

男は叫んだがそのまま消えてしまった。

 

 

 

────────────────────────

 

 

「おはようございます。キャル様。」

 

 

コッコロ達はタルグム村に行く為に昨晩は野営して過ごしたようだ。

 

「どうぞ。顔を洗うとスッキリしますよ。」

 

コッコロはキャルにタオルを手渡した。

 

「そうね…。」

 

「主様も丁度池の畔で顔を…ん?」

 

「…。」

 

ユウキは巨大な狼の魔物に無抵抗で咥えられていた。

 

「……!!」ザッ…

 

そして魔物はそのまま逃走した。

 

「「「ええええええ!???」」」

 

 

 

 

魔物が逃げ続けていると突如魔物の眉間に矢が突き刺さった。

その攻撃によってユウキは口から離されそのまま木に激突した。

 

 

「頭から突っ込んじゃってましたよ!」

 

「だから言ったじゃないか!もう少し引き付けてからだって!」

 

 

ユウキがゆっくり目を開けると目の前に謎の丸太が置いてあった。

 

「お、お怪我はありませんか?」

 

「……?」

 

何やら丸太みたいなのが喋っているように聞こえる。

 

「よ、余計なことかと思いましたが、魔物に襲われてたご様子だったので…。」

 

ユウキはゆっくり起き上がると丸太を手に持ち、思い切り上下に揺さぶった。

 

「ああ!!優しく!優しく扱ってください!!」

 

すると草の影から出てきた少女と目が合った。

 

「あ。」

 

「ん…、、」

 

緑色の服を着たエルフの少女はユウキを見ないように目を逸らしていた。恐らくコミュ障である。

 

「ありがとう。」

 

お礼を言われると思わなかったのか少女はあたふたしている。

 

「どどどどどどういたしまして!!」

 

アオイは体がかくつくほど緊張していた。

 

「私アオイと言います!」

 

そしてそのまま自己紹介をした。

 

「僕はユウキ。」

 

「私、怪しいものでは…。ただ人形と話すというだけで…。この子は友達が出来た時の練習用人形、だいじょぶマイフレンド君1号です。」

 

「フレンド?」

 

ユウキは意味を分かっていないようだ。

 

「私、動物や植物とはお話出来るんですけど…人間の友達が1人もいなくて…。」

 

 

 

 

割愛

 

 

 

 

なんやかんやあって無事にペコリーヌ達と合流したユウキはアオイに道案内をして貰えることになり、目的の村に到着した。

 

 

 

「ようこそ、タルグム村へ。あなた達のギルド名は?」

 

「私達、美食殿って言うんです!」

 

「私はフォレスティエのミサトです。この子の他にもハツネという子がこの村に来てるんですが、今は何処かでお昼寝中みたいです。」

 

フォレスティエのミサトという人物がペコリーヌを出迎えてくれた。

 

「豊作で人手が足りなかったから助かるわあ…この他にもエリザベスパークが来てくれる予定なの。」

 

「エリザベスパーク?」

 

コッコロは以前エリザベスパークのリマに助けて貰ったことがあった。

 

 

 

一方、エリザベスパークは……

 

 

「リンマリンマリンマリンマ…」

 

エリザベスパークのリマは歌を歌いながらご機嫌に歩いている。

 

「はぁはぁ…」

 

「シオシオ、姉ちゃんに会えるからって無理は禁物だべ。病気が悪化したら大変だ。ここらで休憩すっか。」

 

「賛成ー!!」

 

エリザベスパークに所属しているリマ、マヒル、リン、シオリだ。

 

エリザベスパークが休憩していると、目の前に自分たちの姿をした黒い何かがいる事に気づいた。その黒いやつはずっと同じ言葉しか喋らない。

 

「歩くのはや、い。」

 

「無理は、禁物」

 

自分達とそっくりの物がゾロゾロとちかづいてくる。

 

「え!?何!?」

 

「鏡でも見ているみたい!怖い!こっち来ないでえ!!」

 

リマは剣を振り回す。

 

「もふもふストライク!」

 

「もふもふストライク…」

 

自分と同じ姿の謎の黒いやつも同じ技を使ってきた。

 

「同じ技を!?」

 

 

 

 

一方、美食殿〜

 

「穏やかでいい村ですね!」

 

「はい!」

 

「そう?都会育ちの私にはちょっと退屈だわ。もっとこう刺激的…」

 

上を見上げると謎の少女が寝ながら浮かんでいた。

 

「何あれ…」

 

「女の子が宙に浮かんでますね!」

 

「楽しそうに言ってる場合じゃないでしょ!?」

 

浮かんでる少女はそのままゆっくりと右に進んでいき…

 

「あ、」

 

カーン…と鐘にぶつかった。

 

ドサッ

 

 

「「「「うわあああ!!!」」」」

 

ペコリーヌ達は急いで地面に落下した少女を介抱した。

 

「あれ?なんでこんな所に?」

 

そしてしばらくすると寝ていた少女は眠たい目を擦りながら目を開ける。

 

「大丈夫ですか?あなた、あそこから落ちてきたんですよ?」

 

ペコリーヌは上の鐘を指さしながら問いかけた。

 

「ええ!?また私空を!?」

 

「また?」

 

「ああ〜、気にしないで!私はハツネ!寝ぼけてただけの普通の女の子だから!」

 

「ハツネ…フォレスティエのメンバーの!?」

 

そう。この少女こそフォレスティエのメンバーのハツネだった。

 

 

その頃、エリザベスパークは謎の自分の姿をしている黒いやつと死闘を繰り広げていた。

 

 

 

 

「「ダブルヒップアタック!!」」

 

リマとリンの合体技でリマに似ている黒いやつを吹き飛ばした。

 

「前衛を崩せばこっちのもんだべ!」

 

「同じ言葉しか喋らないし、動きもぎこちない。この調子なら…」

 

皆がら安心しきったその時だった。

 

「「「「!?」」」」

 

謎の攻撃が彼女たちを襲った。その威力は黒いやつを消し飛ばしエリザベスパークの全員が吹き飛ばされた。

 

「「「「きゃあああ!!!」」」」

 

「楽しそうな催しが行われてるでは無いか。あながち、私の勘も的外れでは無かったみたいだ。」

 

一人の派手な女性が歩いてくる。

 

「はじめまして、可愛いビースト達。私はクリスティーナ。さあ、立ち上がるがいい。まだ踊れるだろう?私をガッカリさせないでくれ…?」

 

意気揚々と登場したクリスティーナだったが、そこには誰の姿も見当たらなかった。

 

「どういう事だ?何故ビースト達が消えたんだ…。」

 

パチパチパチ

 

するとクリスティーナの背後からゆっくりと拍手をしながら、ある男が歩いてきた。

 

「……実に素晴らしい剣技だな。もっとも、トランクスには遠く及ばないが様子を見に来た甲斐があった。」

 

「!?」

 

クリスティーナが振り向くとそこには長袖の黒いインナーの上に灰色の武道着、白いブーツを履いている男が立っていた。

 

「…貴様があのビースト族を?どうやって避難させた?話さなければ痛い目をみるぞ?」

 

クリスティーナは警戒しながら剣を構えた。

 

「ふっ……。私とやるつもりか?」

 

ブラックは不敵な笑みを浮かべている。

 

(なんだコイツは…見た事がない服装に、この私を前にしても全く怯まない…)

 

ブラックはクリスティーナでさえも震える圧倒的なプレッシャーを放っていた。

 

「…勝てぬと知りながら無駄な抵抗を止めぬとは、人間というのは本当に面白い……。」ブォン!!

 

するとブラックの右手に紫色の気を纏った刃が出来た。

 

「剣が…!?」

 

「丁度退屈していたところだ…少しばかり付き合って貰うぞ?」

 

「…乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)!」

 

 

 

 

ドゴォォォォォォォン!!!

 

 

 

 

絶対に会ってはいけない二人が衝突してしまった。

 




一体どっちが勝つのか予想もつかないですね(白目)


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七冠をも凌ぐ力

なんだこのおばさん!?


ブラックとクリスティーナが衝突している頃、タルグム村では…

 

「た、大変だあ!!!」

 

その声に反応した美食殿とフォレスティエは様子を見にいった。

 

すると

 

「リマ様!?」

 

そこにはボロボロになったエリザベスパークの姿があった。

 

「コッコロちゃん!?」

 

「いったい何があったの?」

 

「村に来る途中…オラ達と同じ姿をした奴に襲われたと思ったら、黒ずくめの女剣士が現れて…」

 

「!!」

 

キャルは黒ずくめの女剣士を知っていた。

 

「し、しおりん!!」

 

「お姉ちゃん…!大丈夫だよ。私達が襲われた時に黒い服装をした男の人が助けてくれたの。」

 

「「「「!?」」」」

 

美食殿の4人はエリザベスパークの言う黒い人の正体が何となく分かっていた。

 

「黒い人でございますか!?何か他に特徴は御座いませんでしたか?」

 

「そうだべなぁ、あとは左耳に緑色のアクセサリーを付けてたぞ。」

 

リン「悪そうな顔してたけど私たちをここまで運んでくれたんだ!運んで、くれた…?あれ?運んでもらった記憶がない…。気づいたらここにいたし…。」

 

「…それってやっぱり!!」

 

その話を聞いて美食殿のみんなの顔が明るくなった。

 

「はい!ゴクウ様に間違いありませんね!」

 

「ゴクウ凄い…!」

 

「ゴクウさんって不機嫌そうに見えて実はとっても優しいんですよね!」

 

「アイツか…でもあんた達をここまで逃がしたってことは今頃そいつはクリスティ…黒ずくめの女剣士と戦ってるってことじゃない!?」

 

キャルもブラックがクリスティーナと鉢合わせている事を想定し助けに行こうとした。

 

「それは大変でございます!急ぎましょう!」

 

その時だった。

 

「グォオオオオオオオオオオ!!」

 

「!?」

 

なんと村には大量のシャドウが溢れかえっていた。村の人々は急いで逃げていく。

 

しかし、

 

「うえーん!!!助けてえ!!」

 

逃げる途中で転んでしまった女の子にシャドウが近づく。

 

「お待たせえ!!!」シャキン

 

ペコリーヌはシャドウを切り裂いた。

 

「ありがとうお姉ちゃん!」

 

無事に女の子はペコリーヌのおかげで逃げることが出来た。

 

「皆さんこっちです!」

 

フォレスティエとエリザベスパークの人達は村の人を必死に逃がしている。

 

ペコリーヌ達は必死に食い止めているがシャドウが多すぎるためスタミナの消費が激しい。

 

「はぁはぁ、お腹ペコペコ…。」

 

すると、シャドウの足元に紫色の魔法陣が浮かびシャドウを消し飛ばした。

 

「……何やってんのよペコリーヌ。とっととコイツら片付けてスパイス収穫するんでしょ!」

 

ペコリーヌ「…はい!」

 

キャルもペコリーヌを助けシャドウの迎撃態勢に入った。

 

「参りましょう!主様!」

 

「うん!」

 

ユウキとコッコロもかなりの数のシャドウを倒している。

 

「くらいなさい……グリムバースト!」

 

「グォォォォォォォ……!!」

 

やがて倒したシャドウは霧状となり一つの大きな塊となった。

 

「グオオオオオオ!!」

 

「キャルちゃん!」

 

「分かってるわよ!上手くやりなさいよね!ダークボルテックス!!」

 

ペコリーヌが合図をするとキャルは魔法でシャドウの動きを拘束した。

 

そして、

 

「全力全開!プリンセスストライク!!」

 

シャドウはペコリーヌの強力な一撃によって消え去った。

 

ペコリーヌは力を使い果たし、、倒れ…

 

「だらしないわね。ご飯足りてないんじゃない?」

 

キャルがペコリーヌを優しく受け止めた。

 

「えっへへ。お腹ぺこぺこ…。」

 

「皆さま素晴らしいご活躍でした。」

 

「みんな強い!」

 

「当たり前でしょ!」

 

シャドウを撃退し一息ついた次の瞬間。

 

 

ドゴォォォォォォォン!!!

 

 

「「「「!?」」」」

 

まるでなにかが爆発したかのような巨大な音が鳴り響く。

 

「何!?今の爆発!」

 

「私達がここにくる途中に通った所から砂埃が舞っています!」

 

「行ってみましょう!」

 

「うん!」

 

美食殿達は爆発のあった場所に急いで駆けつけた。

 

そこにいたのは…

 

 

「…貴様、何者だ…。」

 

「…フフフ、こうして戦っていると色々と思い出すな…そうだな、私は元の世界では『ゴクウブラック』と呼ばれていたか…。」

 

「ゴクウブラック……?」

 

ボロボロになったクリスティーナとそれを見下ろすブラックがいた。

 

「ん?」

 

するとブラックの見下ろす先にはペコリーヌ達がいた。

 

「ゴクウさん!おーい!!覚えてますか?また会いましたね!」

 

「ゴクウ様!ご無事ですか!?」

 

「ゴクウ…それにクリスティーナまで…!?」

 

「ゴクウ!僕も手伝う!」

 

美食殿はブラックの元に向かおうとした。

 

「くっ…ギャラリーが増えてきたか!」

 

クリスティーナもこの状況はまずいと踏んでいた。

 

「お前たちは下がっていろ。この前座は私のものだ。」

 

「ええ!?」

 

しかしブラックはこちらに向かう美食殿の助けを拒否した。

するとクリスティーナがゆっくりと立ち上がる。

 

「……貴様の目的はなんだ!これ程の力を持ちながら今まで何処に隠れていたのだ…!!」

 

「さあな、私はこの世界にはまだ疎いのだ。色々と私に教えて貰えると助かるのだがな?」

 

「…!!」

 

「…ふざけるなあ!!」

 

クリスティーナは激昂し剣を振るうがブラックにはまるで効いていない。

 

「お前が死に物狂いで攻撃しようとも、この無限に強さを高める私の前には無意味だ。」

 

「なんだと…!!」

 

「ふふふ、神の授けた肉体を…力を…我がものの如くに奢る人間風情が…。」

 

「…お前は危険な存在だ…七冠の私をも凌ぐ程の貴様を野放しにはできん…この私が倒す…!!」

 

「…貴様が俺を倒すだと?フフフ…見せてみよ!愚かな人間よ…!」

 

クリスティーナは力を振り絞りブラックに攻撃する。

 

「ナンバーズアヴァロン!!」

 

「受けるがいい!我が刃!」

 

そう叫ぶとブラックの手刀から無数の気がクリスティーナ目掛けて飛んでいき身体のあちこちに突き刺さった。

 

「なにっ!?」

 

「終わりだ…はあっ!」

 

ブラックが合図をすると突き刺さった気が爆発し辺り一帯に巨大な爆発音が鳴り響いた。

 

「ぐわぁあああ!!!」

 

「…悪あがきには、戒めの罰を与えよう…。」

 

そう言うとブラックは刃を引っ込めクリスティーナに近づく。

 

「…っ殺るならさっさと殺れ!」

 

「………だが私は寛大だ。今日は見逃してやる。」

 

「なんだと!?」

 

「…そういえば無闇に殺してはいけないんだったな…。」

 

ブラックはアメスに言われた事を思い出し少し反省する。

 

「この私に情けをかけるな!」

 

しかしクリスティーナは納得がいかないのかブラックに対し抗議する、

 

「しつこい奴だ…また今度相手してやる…さっさと失せろ。」

 

「………何故だ…!」

 

「…考えてみればまだ貴様が敵と決まった訳では無い。それに無意味な殺生はNGだからな。」

 

「訳の分からないことを……!」

 

「ならばいずれまた挑みに来るといい。」

 

「!!」

 

「……今度は本気のお前と戦ってみたいものだ。」

 

ブラックはまだクリスティーナに成長の余地があることを察知していた。

するとクリスティーナは諦めたのか剣をしまった。

 

「……確かに貴様を殺れと命じられた訳ではない。……いいだろう。この仮はいずれ返させてもらおう。」

 

そう言い残しクリスティーナは去っていった。

 

「…クリスティーナか、面白い…。」

 

久しぶりにまともな闘いが出来て嬉しかったのか、ブラックは少し笑っていた。

するとずっと観戦していたペコリーヌ達が駆け寄ってきた。

 

「ゴクウさーん!」

 

「…貴様らか。」

 

「ご無事で何よりでございます!」

 

「ゴクウ、強かった!」

 

「それにしても…あんた本当に何者なの?クリスティーナを退けるなんて…。」

 

「…お前こそ何者だ?まるでクリスティーナの事を知っているかのような口ぶりだが……?」

 

ブラックは口を滑らしたキャルを指摘する。

 

「わ、私は何にも知らないわよ…!」

 

「ふん、まあいい…。」

 

「あ、そうだ!ゴクウさん!」

 

「…なんだ?」

 

「私達、ギルドを作ったんです!その名も美食殿!ゴクウさんも入ってくれませんか?前に急にいなくなってとても寂しかったんですよ?」

 

「私からも是非お願いします。」

 

「ゴクウともっと一緒にいたい。」

 

「ま、そういうことよ。大人しく入っておきなさい。」

 

ペコリーヌ達はこの地にまでギルド申請の紙を持ってきていた。

 

「……調子に乗るな人間。私に人間と連む趣味などない。」

 

「そんなこと言わずに…お、お願いします…!」ウルウル…

 

ペコリーヌは涙目になっている

 

「……私は貴様らと違い忙しいのだ…。1度だけだ。1度だけお前たちの活動に付き合ってやる。」

 

「1度だけですか!?そこをなんとか!お願いしますよゴクウさん!」

 

「…1度だけだ。これは譲らん。」

 

「まあ、1回手伝ってもらえるだけでも有難いわよ。その代わりとびっきり面倒な仕事の時に手伝ってもらうわ!」

 

「気が変わりましたらいつでも入ってくださいね、ゴクウ様。」

 

「いつでも来てね!」

 

「…ちっ。」

 

「よーし!新生美食殿(仮)の誕生ですね!それじゃあスパイスの収穫頑張りましょう!」

 

「「「おー!!!」」」

 

「……ふん。」

 

こうして美食殿は新たなスタートを切った。

 

 




投稿頻度だけは早いよ。クオリティはあまり期待しないでもろて…


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リトルリリカルはランドソルの平和を守りたい

3日後には話のストック消えそう…


『長老様お元気でございますか?私は敬愛する主様、そしてペコリーヌ様、キャル様、ゴクウ様と共にギルド活動に励んでおります。タルグム村では、シャドウという不思議な魔物の事件が起きましたが、無事に初めてのクエストを達成する事ができました。その後も、ギルド美食殿は様々なクエストをこなし、ギルド管理協会のカリン様からもお褒めの言葉を頂いております。このような尊い日々を過ごせて、私は幸せ者です。』

 

コッコロは村の長老へこれまでの冒険の事を手紙に書いた。

 

「こらそこ!苗曲がってる!一列植えたら確認する!」

 

キャルが注意をする。

美食殿は田植えの依頼を受けこの地でこのような作業をしていた。

 

「頼りになりますね〜。」

 

「几帳面なキャル様、素敵です。」

 

「何故私がこんな事を…!」

 

ブラックも渋々田植えの手伝いをさせられていた。

 

「ゴクウ!ごちゃごちゃ言わないで手を動かしなさい!同じギルドに入ったからには協力してもらうわよ!」

 

「この私に指図をするな…!」

 

ブラックもごちゃごちゃ言いながら作業をしていると丁度お昼の時間になった。

 

「おーい!お昼にしませんかー?」

 

「もうそんな時間なのね。ほら行くわよゴクウ、ユウキ。」

 

「やっとか…。」

 

5人は横に並んで座り昼食をとった。

 

「あむ!ウンウン…うまーい!ランドソルのお米の大半はここで収穫されているんですよ!」

 

「風光明媚でございますね。あむ…」

 

「お米が大好きなランドソルのお姫様が1年発起して稲作を始めたみたいなんです。」

 

「なるほど。プリンセスのお米でプリ米、なのですね。」

 

「はい!」

 

「なるほど。米というのは何にでも合うな。確かに美味い。」

 

ブラックも人間の作る作物は気に入っている。

 

「お米、サイコー!」

 

みんなで座って弁当を食べていると、キャルはブラックについて気になることを聞いた。

 

「ねえ、ゴクウ。」

 

「ん?なんだ。」

 

「前から思ってたんだけど、あんたの着けているその緑色のアクセサリーってなに?」

 

「……。」

 

「……確かにわたくしも以前から気になっておりました。」

 

「あれ、キャルちゃん達も気になってたんですか?私もです!」

 

「僕も!!」

 

全員がブラックの片耳だけに着けてあるアクセサリーが気になっていた。

 

「…………これは『ポタラ』という界王神だけが着けることを許された物だ。」

 

「「「「ポタラ?」」」」

 

「このポタラというのは1つ着けるだけでは効果は無いが、パートナーの片耳にももうひとつのポタラをつけることで合体できる。」

 

「「「「合体!?」」」」

 

ブラックの着けていたアクセサリーの正体が明らかになりキャル達は驚く。

 

「……だが、一度合体してしまったら……二度と戻ることはできない。その代わりに絶大な力を得るのだ。」

 

「二度と元に戻れないって……。」

 

「安心しろ。人間同士が合体を維持していられるのは1時間だけだ。まあ、こんなもの今更使う必要などないがな。」

 

その言葉を聞いてペコリーヌ達はホッとした。

 

「この話は終わりだ。別の話題にしろ。」

 

「え、あ、あ〜そういえば、聞きましたか?最近この田んぼを野生動物が荒らして困っているみたいなんですよ。」

 

「ああ、イノシシや鳥なんかでしょ。作物を食べちゃうとか?」

 

「そうなんです!農家さんが退治しようとしても上手くいかないらしいんですよ!」

 

「そこで、私たちで農家さんをお手伝いしようと言うのが、今回のクエストです!報酬はこの田んぼで採れたプリ米ですよ!」

 

「あんたが選ぶクエスト…食べ物のやつばっかりじゃない!ちゃんとした報酬が貰えるのにして!」

 

「害獣が…!この私が絶滅させてくれようか…!」

 

ブラックが殺気をたてる、

 

「あんたは直ぐに行動に移そうとするんじゃないわよ!このバカ!」

 

「こ、この私に向かってバカだと!?口の聞き方に気をつけるのだ人間!!」

 

「やかましいわ!あんただって人間でしょうが!」

 

ブラックとキャルがギャーギャー言い合っている間にユウキはお弁当を平らげた。

 

「ですが、このお手伝いというクエストも素敵ですね。主様も楽しそうですし。」ゴソゴソ

 

ユウキは何かを取り出す。

 

「アメス様のカカシ、アメス様です!私と主様で作りました。」

 

なんとも言い難い格好をしているカカシを見せてきた。

 

「アメス様って…」

 

「こんな感じなの?」

 

(私の方が美しいな…。)

 

「結局、コロ助はユウキが楽しそうならなんでも言い訳ね。とにかく次のクエストは儲かるやつに…」

 

「えい!」モグ

 

ペコリーヌは卵焼きをキャルの口に突っ込んだ。

 

「……おいしい!ホント、あんたって料理は上手よね。」

 

「お褒めに預かり光栄です!」

 

「……。」

 

するとキャルはふと陛下に報告をしに行った日のことを思い出した。

 

 

「タルグム村の報告は以上です。」

 

「キャル。」

 

「は、はい!」

 

「ふふ、緊張しているの?」

 

「はぁ……はぁ……。」

周りには大量のシャドウがキャルを囲んでいる。

 

「シャドウの事、あなたには伝えていなかったわね。」

 

陛下は階段を降り、キャルに近づきながら話を続けた。

 

「ところで、あなたがやってるギルドごっこの男の子なんだけど。」

 

「ユウ…キ……?」

 

「彼の監視も同時に進めて頂戴。また何かあったらこうして私に伝えてくれればいいわ。」

 

「それと、もう1人男が居るわよね?」

 

「…はい。」

 

「なんていう名前?」

 

「えっと、ゴクウです。」

 

「そう。彼の監視も頼むわ。」

 

陛下は尻尾でキャルの顎を上げながら問いかけた。

 

「できるわね?私の可愛いキャル。」

 

「…はい、陛下。」

 

 

────────────────────────

 

キャルには何か複雑な事情があるようだった。

 

「……。」

 

「主さまーそちらに行きましたよー!」

 

「ゲコッ」

 

ユウキの顔面にカエルが飛びついた。

 

「うわっ!」バシャーン

 

「主さまー!」

 

「ユウキくん!それ今晩のおかずにしましょう!」

 

「なんと無様な姿だ。」

 

「…ホントにコイツら監視する意味あるのかしら…。」

 

キャルはこの無害そうな連中を監視する必要があるのか疑問に思った。

 

 

そうして依頼を達成した美食殿は次のクエストを受けにギルド管理協会まで足を運んでいた。

 

 

「キャルちゃんキャルちゃん!これにしましょうよ!漁師さんのお手伝いで報酬はお魚食べ放題!」

 

「却下!」

 

「うー…」

 

「主様は?」

 

「うーん…」

 

「ん?なんだその紙は。」

 

ブラックが見た依頼の紙は字がグチャグチャでまるで子供が書いたかのようなものだった。

 

「「「「「師匠募集中?」」」」」

 

5人は首を傾げる。依頼の内容はこのようなものだった。

 

「ギルド活動のことを教えてくれる優しい先生を探しています。」

 

「お礼は凄く沢山だよ。すごいよ。何これ?」

 

キャルは最後まで内容を読むがよく分からなかった。

 

「その張り紙また貼ってあったんですか…。すみません、今剥がしますね。」

 

するとカリンが呆れた様子で紙を剥がそうとやってきた。

 

「カリン様。」

 

「これは正式認可したクエストではないんです。何度剥がしてもいつの間にか新しいのが貼られてしまって。」

 

カリンも苦笑いをしている。

 

「見た感じ子供のイタズラだろう。」

 

「そうね。このクエストは却下ね。」

 

「…。」

 

ブラックとキャルは乗り気ではなかったがユウキは一人でその紙をじっと見ていた。

 

目当てのクエストが見つからなかった為、一旦戻る美食殿だがユウキだけは貼り紙を見ながら歩いていた。

すると後ろから…

 

「おーいおいおいおーいおーいおいおいおーい…」

 

「「「「「?????」」」」」

 

振り返ってみるとそこには3人の幼女が泣いている光景が。

 

「泣かないでーミソギー」

 

「諦めちゃ駄目だよー」

 

胡散臭い泣き真似をしながらペコリーヌ達をじっと見ていた。

 

「どうしたんでしょうね?」

 

「学芸会の練習でしょ?行くわよー」

 

「そうだな。」

 

キャルとブラックが帰ろうとしたその時、いつの間にか泣いていた女の子たちはキャル達の前に回り込んで…

 

「おいおいおいおいおいー…」

 

「ミソギー!」

 

「ミソギちゃーん!」

 

また泣き始めた。

 

「え?何!?」

 

「なんだコイツら…」

 

「延長上映ですか?」

 

「フー!」ズバーン!

ミソギは吹き矢をユウキの持っている紙目掛けて貼り付けた。

 

「「「「「…うん?」」」」」

 

「もしかしてそのクエストにご興味が?」

 

そして美食殿は3人の話を聞くべくレストランへ言った。

 

 

「……師匠にですか?」

 

話を聞くとこの3人はペコリーヌ達に師匠になってもらいたかったらしい。

 

「はい!本当のギルドがどんな事をしているのか分からなくて…」

 

「教えてくれる人を探してたんだ!」

 

「ミミたちリトルリリカルの師匠になってください!」

 

「師匠?」

 

「お子様のギルドごっこか…」

 

「ごっこじゃないもん!」

 

「あっそ」

 

「むー…」

 

キャルは興味なさげに話を聞く。

 

「でもどうしてそんなにギルド活動したい訳?」

 

そしてキャルがなんとなく聞いたその質問で帰ってきた答えは……

 

「ランドソルの平和を守るためです」

 

「「「「「!?」」」」」

 

その言葉は美食殿のメンバーに深く突き刺さった。

 

「……。」『とにかく、次のクエストは儲かるやつに…!』

 

金にしか目がなかったキャル。

 

「……。」『報酬はお魚食べ放題!』

 

食べ物にしか目がなかったペコリーヌ。

 

「……。」『私と主様で作りました!』

 

ユウキのことしか見てなかったコッコロ。

 

3人とも唖然としていた。

 

「…こいつら。」

 

「…」

 

すると自分達が恥ずかしくなったのかキャル達は急にキョウカ達の話に賛同し始めた。

 

「わ、分かるわあ!私達も同じなの!」

 

「ほんとぉ?」

 

「ランドソルの平和、大事で御座いますよね!」

 

「でしょ!」

 

「3人とも偉いですね!」

 

「そ、そんな…」

 

「…いい心がけだ。」

 

「お願い!ミソギ達のギルドの師匠になって!」

 

「うん!」

 

ユウキがアッサリと引き受けた。

 

「「「やったあ!!」」」

 

そうして日は沈み夜になり、美食殿のメンバーはクエストの準備をしていた。

 

「あーー、程よく安全で、程よく危なくて、程よく苦労しそうな場所…遠足の行き先を考えてる学校の先生になった気分ね…。」

 

キャルはリトルリリカルに危険がないように安全なルートを探す。

 

「キャル様は良い先生になれそうです!」

 

「口うるさい所もピッタリだな。」

 

「なんか言った…?」

 

「どうだろうな…?」

 

ブラックは紅茶を飲みながらそんな他愛もない会話をする。

 

「はあ……それで?あんたは何を作ってるわけ?」

 

「えへへ…明日のお楽しみです!」

 

ペコリーヌも何かを作っていた。

 

「なんだか、私達までワクワクいたしますね」

 

「ユウキは?」

 

「主様は、クエストのお宝を作っておいでです。素敵な絵でございますよ。」

 

「…」カキカキ

 

「へーお宝ねぇ………って!」

 

「……ん?」

 

「!?」

 

ユウキが描いた絵はなんともおぞましい化け物だった。

 

「いやあああ!!!」

 

しょうがねーだろ赤ちゃんなんだから。

 

 

 

 

次の日

 

 

 

「整列!番号!」

 

ペコリーヌはキョウカ達を横に並ばせ点呼をとる。

 

「いち!」

 

「に!」

 

「さん!」

 

「よーし!今日は諸君にこのクエストを担当してもらう!」

 

そう言ってペコリーヌは昨日準備した地図を見せた。

 

「「「おぉ!!!」」」

 

「と、言うわけでお宝は地図のこの地点にありますよ。ちゃんと持って帰ってきてくださいね!」

 

「昨日お伝えしたキャンプ道具は持ってきましたか?」

 

「はい!」

 

「お弁当と!」

 

「水筒と!」

 

「おやつも持ってきたよ!」

 

「ユウキくん!3人のことよろしくお願いしますね!」

 

「うん!」

 

「「「よろしくお願いします!師匠!」」」

 

リトルリリカルとユウキの冒険が始まった。

 

「あいつ1人に任せて大丈夫か?」

 

「地図の通り進めば危険な魔物はいませんから!」

 

「そうですね!主様も一緒ですし!」

 

「心配だわ…。」

 

ペコリーヌとコッコロは大丈夫だと言っていたがブラックとキャルは少し心配しながらユウキを見送った。

 

 

 

「うーん…右かな?」

 

「こっちだよこっち!」

 

「でも地図だと右っぽいけど…」

 

「ほら!コンパスが左を指してるし!」

 

リトルリリカルとユウキは早速迷っていた。

 

「違う違う!コンパスはいつも北を指すんだってば!」

 

キャル達はこっそりユウキたちを木の影から見ていた。

 

「師匠、どっちが正しいのか教えて?」

 

「うーん…ん!」

 

ユウキは左を指さした。

 

「こっち?」

 

「やっぱり!」

 

ユウキ達は間違った方向へと進んで行った。

 

「違います!あわわ…」

 

「主様…」

 

「……一体何をしているのだ!」

 

「アイツ……帰ったらお仕置よ!」

 

 

 

 

間違った道を進むリトルリリカルとユウキは鼻歌を歌いながら楽しげに歩いていた。すると、ミミの頭に蜘蛛が落ちてきた。

 

「ふぁあああああ!!!!」

 

「どうしたのミミ?そんな大声出して…」

 

するとキョウカの肩にも蜘蛛が落ちてきた。

 

「いやああああああ!!!」

 

どうやらこの辺りは蜘蛛が大量発生しているらしい。

 

 

「「いやあああああああ!!」」

 

「2人とも落ち着いて!こんな魔物!ミソギがやっつけてやる!とりゃあ!!!」

 

ミソギも蜘蛛の巣に引っかかった。

 

 

もはやクエスト所じゃない。

 

キャル達も影から見守ってはいるがどうにもできない。

 

「魔、物…?」

 

「ああもう…大パニックじゃない!」

 

「なんて無様な姿だ。」

 

「「師匠ー!」」

 

ミミとキョウカはユウキに助けを求めるが

ユウキは2人の頭を撫でている

 

「こんにゃろー!!この!この!!」

ミソギは引っかかった蜘蛛の巣を解こうとしている。

 

「ガンバ!」

 

ユウキはあくまで手を出さずにキョウカ達に戦わせる。

 

「ミミたちも一緒に戦おう!」

 

「う、うん!」

 

「とりゃあああ!!」

 

3人が蜘蛛を退治していると後ろから声がした。

 

「ユウキくんユウキくん!」

 

「ん?」

 

ユウキが振り向くとペコリーヌ達が影からユウキにジェスチャーを送っていた。

 

「道、違う!」

 

「逆、逆でございます!」

 

「戻ってください!」

 

「こっちではない!」

 

ペコリーヌ達はユウキに分かってもらおうとジェスチャーをする。

 

「おお!」ポンッ!

 

恐らく理解してくれたようだ。

 

「ほっ……やっと伝わったわね。」

 

「あれだけ伝えれば大丈夫だろう。」

 

キャルとブラックが安心していると蜘蛛を退治した3人がユウキに駆け寄る。

 

「「「ししょー!!」」」

 

「魔物をやっつけたよ!」

 

「ナイス!」

 

「師匠、次はこっちでいい?」

 

「うーん……………ん!」

 

ユウキは右を指さした。

 

「おっけー!しゅっぱーつ!」

 

「「おおー!」」

 

キャル達のジェスチャーは全く伝わっていなかった。

 

「違うわよ!!」

 

「あ、主様……!」

 

「……ユウキくん……。」

 

「えぇい……!いつになったら理解できるというのだ!」

 

ここで一旦作戦会議をする。

 

「ど、どうしましょう。」

 

「私の完璧なルートセッティングが…」

 

「やはりアイツに任せるべきではなかったのだ…。」

 

「こうなったらやむを得ません!これを使います。」

 

ペコリーヌは前日に用意していた何やら大きいものを使うと言った。それは魔物の着ぐるみだった。

 

 

 

 

 

リトルリリカルとユウキはまた鼻歌を歌いながら間違った道を進んでいた。

すると……目の前に白い魔物?が。

 

「「「「????」」」」

 

「悪い子はいねーかー!」

 

それは魔物の着ぐるみを着たペコリーヌだった。

 

「ひゃあああ!!」

 

「こっちの道は危ねーぞー!」

 

ペコリーヌの作戦は言葉を喋る魔物を演じて間違っ道に行かないように伝えることだった。

 

「魔物?」

 

「大っきいよお…」

 

「引き返さないと食べちゃうぞー!」

 

キャル達はその様子を遠くから見ていた。

 

「アイツが言うと冗談に聞こえないわ…」

 

「子供だましの作戦だが果たして……。」

 

「昨夜作っていたのは魔物の着ぐるみだったのですね……。」

 

これで上手くいくと思ったのがどうも3人は魔物を前にして引く気配がない。

 

 

「怖がってちゃダメだよ!」

 

「さっきみたいに頑張れば!」

 

「うん!」

 

3人は覚悟を決めていた。

 

「……あれ?」

 

予想と違う展開にペコリーヌも困惑する。

 

「くらえ!コショウ爆弾!」

 

「ケホッケホッ目が…目があー!!!」

 

ミソギは大量のコショウをペコリーヌに向けて投げる。

 

「ミミ、キョウカ!今だよ!」

 

「「ええええい!!」」

 

2人でペコリーヌの頭を杖と剣で叩いた。

 

「あ痛ぁ!!」

 

着ぐるみが二人の攻撃で凹む。

 

「先程よりも連携が取れているような気が…」

 

「…子供の成長は早いわね。」

 

「…そうだな。」

 

ブラック達は半ば諦めながらその戦いをみていた。

 

「ふぇえええええ…目がぁ、ま、前がぁ…」ガッ

 

ペコリーヌは攻撃を受けフラフラしながら歩いていると

 

「あぁ!!」

 

躓いて崖の下に落ちた。

 

「目がぁぁああああ!!!」

 

「「「やったあ!!」」」

 

ペコリーヌは子供たちに退治されてしまった。

 

「チビ共にやられてどうすんのよ…」

 

「……。」

 

「……まったく……。」

 

ブラック達は冷ややかな視線を転げ落ちるペコリーヌへ送った。

 

 

 

その後

 

 

 

「まずいわ…どんどん想定外の道に進んじゃってる!」

 

リトルリリカルとユウキは結局間違った道を進み続けた。

 

「あのまま進むとどうなるのですか?」

 

「怖い魔物が沢山いるのよ……。」

 

「へ……!?」

 

すると、早速魔物がユウキ達の前に現れた。

 

「「「「うわぁぁぁ!!」」」」

 

「ん…!」

 

ユウキはリトルリリカルを庇うようにして前に出る。

 

「「「ししょー!!」」」

 

しかし、

 

魔物「ガゥ!」ガブッ

 

またもやユウキは頭からくわえられた。

 

「「「ししょー!?」」」

 

「皆で師匠を助けよう!」

 

「「「うん!」」」

 

「「「やああああ!!」」」

 

「ちっ……!」ビュン

 

「ガゥ!?」ドサッ

 

ブラックは咄嗟に小さい気弾をだして魔物を倒す。

 

「「「やっつけちゃった?」」」

 

「ん!」

 

ユウキは頭を咥えられながら誇らしげにガッツポーズをする。

 

「「「ししょースゴーイ!!」」」

 

後ろにはキャル達が4人に被害が及ばないように待機している。

 

「とりあえず魔物がでたら今のようにバレずに私たちで処理をするぞ。」

 

「分かったわ…!」

 

「了解でございます!」

 

その後も魔物が出る度にブラック達が先に魔物を倒して行った。

そしてユウキ達はお昼になったので呑気にお弁当を食べている。

 

 

「「「いただきます!」」」

 

「あむ!美味しい!!」

 

「お外で食べると美味しいね!」

 

「ミミのお弁当可愛いね!」

 

 

 

一方、キャル達は

 

 

 

「はぁはぁ……なんで私たちが魔物退治をすることに…」

 

流石に魔物を倒しすぎてバテていた。

 

「お腹、空きましたね……。」

 

「……アイツらに戦わせる訳には行かないだろう?」

 

「キャルちゃん、コッコロちゃん、ゴクウさん!」ザッ

 

「うわあ!!」

 

すると木の影からペコリーヌが出てきた。

 

「ビックリさせるんじゃないわよアホリーヌ!」

 

「すみません!この着ぐるみが脱げなくなっちゃって…そんなことより!このままだと巨大な怪鳥の巣に行っちゃいます!ヤバいです!」

 

「怪鳥の巣?」

 

「私、時々ここに取りに来るので!怪鳥の卵美味しいんですよ?キャルちゃんも昨日気に入ってたじゃないですか!」

 

「あれ魔物の卵だったの!?なんてもん食わせるのよ!!」

 

「どうするべきか…」

 

「クエストを中断した方が…」

 

その時だった。

 

「「「ししょー!!」」」

 

「「「「ん?」」」」

 

空を見上げるとユウキが怪鳥にくわえられ連れ去られていた。

 

「主さまー!!」

 

「何やってんのよアイツ!」

 

「全くだ……!」

 

リトルリリカルはユウキを追いかけて怪鳥の巣に向かった。

 

「「「ししょー!!」」」

 

 

「ぐわっぐわっぐわっ!」

 

「「「うわあ!!」」」

 

怪鳥はどうやらリトルリリカルを餌だと思っているようだ。

 

「怖いよー…」

 

「3人の力を合わせてアイツをやっつけよう!」

 

「「うん!」」

 

「トリックボムー!」

 

「ウサギさんスラッシュ!」

 

「コスモブルーフラッシュ!」

 

3人の一斉攻撃が怪鳥に向かって飛んでいく。

 

「グワァ!」ペチッ

 

怪鳥はいとも簡単に3人の攻撃をはじき飛ばした。

 

「「「うわあああ!!!」」」

 

一方でブラック達は4人を助けるべく急いでいた。

 

「あそこです!」

 

「あの子たち無事でしょうね!」

 

「……お前たち!私に捕まれ!」

 

するとブラックは3人に手を差し伸べる。

 

「はあ?」

 

「早くしろ!間に合わなくなっても知らんぞ!」

 

「わ、分かったわよ!」

 

コッコロとキャルとペコリーヌはブラックの手を掴むとブラックは自分の額に人差し指と中指を置いた。

 

シュピン

 

「「「!?」」」

 

「どうやら間に合ったようだな。」

 

「一瞬で怪鳥の巣に!?」

 

「不思議でございます…!」

 

「どういう事なの!?」

 

ブラックは瞬間移動で怪鳥の巣へ移動した。

 

「瞬間移動だ。あの子供達は気絶しているようだな。お前達はそいつらを救出しろ!」

 

「分かりました!」

 

「はい!」

 

「後で説明してもらうわよ!」

 

コッコロ、ペコリーヌ、キャルはリトルリリカルとユウキを助けに巣の中に入っていく。

 

ユウキは卵の横で気絶していた。

 

「主様!…とアメス様?」

 

何故かカカシのアメスも置いてあった。

 

「もしかして、田んぼを荒らしてたのってこのデカい鳥!?」

 

「農家さんが太刀打ちできない訳ですね。」

 

「ユウキくんはいましたか?」

 

「はい!ご無事でございます!」

 

「あ、ゴクウは!?」

 

ブラックは既に怪鳥と闘っていた。

 

「何処を見ている…害鳥。」

 

「グワァグワァ!!」

 

怪鳥はブラック目掛けてクチバシを突き刺した。

 

ドコーン!!

 

「「「ゴクウ(様)(さん)!!!」」」

 

しかし…

 

「こんな物か……。」

 

ブラックはクチバシを片手で受け止めていた。

 

「アイツあんなひょろっちい身体でなんであんな事が出来るのよ!」

 

「流石でございますね…!」

 

「やっぱり凄いですね!ゴクウさんは!」

 

「終わりだ。」

 

ブラックは片手に巨大な黒いエネルギーを作り出した。

 

「な、何あの強大な魔力…?この力はもしかして……陛下よりも!?」

 

キャルはブラックの作りだした膨大なエネルギーを見て驚いた。

 

「消えるがいい……。」

 

ドガーン…!!!

 

 

間もなくしてリトルリリカルが目を覚ますとそこには気絶している怪鳥がいた。

ブラックは一応空気を読んで殺さなかったらしい。

 

「…これって!」

 

「私たちが?」

 

「やっつけたんだよ!」

 

「「「やったあああ!!!!」」」

 

すると、ずっと見守っていたキャル達がキョウカ達の元へとくる。

 

「やるじゃないあんた達!」

 

「ん……!」

 

「「「ししょー!」」」

 

「ミミ達クエスト達成したよ?」

 

「素晴らしいです!もう教えることは何もございません。」

 

「ああ。見事だったぞ。」

 

「「「うーん…お宝は?」」」

 

「コロ助!お宝は?」

 

「元々のゴール地点に…」

 

「お宝は…この卵です!」

 

「「「やったあ!!!」」」

 

「皆で美味しい卵焼きを食べましょうね!」パキパキ…

 

すると、卵にヒビがはいり、怪鳥の赤ん坊が産まれた。

 

「おや?」

 

「ピヨ?」

 

怪鳥の雛はリトルリリカルを見ると勢いよく飛びついた。

 

「ピピー!」

 

「うわぁ…!」

 

「かわいい!」

 

「モコモコだぁ!!」

 

お宝については何とかなったようだ。

 

 

「あんた、これ食べる気?」

 

「流石に無理ですねー。」

 

「ふっ…。」

 

「あの…。」

 

するとキョウカがブラック達の元へと歩み寄ってきた。

 

「「「「ん?」」」」

 

「このクエスト、皆さんがお芝居してたんですよね。」

 

キョウカだけがこのクエストのことを気づいていた。

 

「…まぁな。」

 

「バレちゃいましたかー…」

 

「ありがとうございます!2人には内緒にしておきますね!師匠、ユウキさんもありがとうございます!あの鳥に捕まるお芝居までしてくれて…。」

 

「あれは、芝居っていうか…」

 

「うん!」

 

「「「ええ!?」」」

 

「あああ!!!」

 

キャルは思い出したように大声をあげる。

 

「そういえばあんたさっきの移動方法は何よ!」

 

「あれか?瞬間移動だ。」

 

「瞬間移動!?それが出来るならなんでもっとはやくやらないのよ!!」

 

「この瞬間移動が使えるのは誰かの気がなければ行けないのだ。怪鳥の巣にユウキの気とアイツらの気があったからこの場所にこれた。それだけだ。」

 

「なら…今までの遠出の冒険だってあんたがいればあんなに歩かなくてすんだじゃない!」

 

「さっきも言っただろ?気が分からなければ移動は出来ない。私が知っている者の気があればその場所に移動できるのだ。タルグム村にもその方法で来たのだ。」

 

「はぁ…あんたが規格外なのはもう分かったわ…」

 

「そうか。」

 

「…キャル様、あまり詮索はしない方が宜しいかと…。」

 

「そうですよキャルちゃん!」

 

「ぐぬ…!」

 

「さて、私はもう帰る。」

 

ブラックは巣の外へと歩いていく。

 

「はぁ!?あんたまた居なくなる気!?」

 

「えぇ!?」

 

「また居なくなってしまうのですね…」

 

「言ったはずだ。1度だけお前たちの活動を手伝うとな。私はお前たちと違って暇ではないからな。色々やる事があるのだ。」

 

「ちょ、まさか今日の出来事で1カウント!?」

 

「そういうことだ。」

 

「ふざけんなぁああ!!!今日はアンタが勝手に手伝ったんでしょうがあ!ノーカンよ!ノーカン!」

 

「それではごきげんよう。」シュピン

 

「逃げんなあぁぁぁぁあ!!!」

 

 

そして後日…

 

「…なんでまた田植え!?次は報酬の高いクエストにしようって言ったわよね!?」

 

「いやー農家さんに頼まれちゃって!」

 

「この苗がお米になったら1番に食べてやるわ!」

 

わーーーい!!!

 

「?」

 

 

「ピピピー!!」

 

リトルリリカルと雛が田んぼで遊んでいた。

 

「合鴨農法でございますね。」

 

「無農薬で美味しいお米ができますよ!」

 

「あ!こらそこ!苗を踏まなあああい!!!」

 

今日も平和な日々を過ごした。

 




原作の話めっちゃ端折ってるけどよし!(よくない)


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魂を求めて

もう1期の終盤まで書いたか…(端折っただけ)


ブラックが姿を消してからどれぐらい経っただろうか。

今日もブラックが帰ってこないまま1日が終わろうとしている。

 

 

「遅かったじゃない!今日はどんな寄り道してきたのー?」

 

キャルがユウキ、コッコロ、ペコリーヌを迎え入れる。

 

「ただいま帰りました。キャル様。」

 

「キャルちゃん!ただいまです!」

 

「ただいま!」

 

「うん!おかえり!」

 

いつもの様に4人で食卓を囲む。

 

「「「「いただきます!!!!」」」」

 

「それにしても…ゴクウ様は何処に行ったのでしょうか。」

 

「あの人の事です!きっと今頃美味しいものを食べてますよ!」

 

「だといいわね…まあ、アイツの事だし何も心配いらないと思うけど。」

 

「うん!」

 

 

現在ブラックはどうしているのかというと…

 

 

「…ここの所シャドウの動きが活発だ。なにか起きる予兆だとでもいうのか?」

 

ブラックは一人でランドソルの街を舞空術で飛びながらシャドウが現れては倒し、様子を見ていた。

 

「アイツらの仲も悪くはないようだな。」

 

実の所ブラックはこれまで起きたことを全て知っている。影からこっそり美食殿の様子を見ていたのだ。

海に行った時もブラックは上空から彼女達の様子を見ていた。

皆が変な幽霊にプリンにされた時も実はこっそり見ていた。傍から見たら完全に不審者だが別にブラックにそういう趣味はない。

 

「やはり黒幕の正体は掴めないか……。ん?あれは……何かの工場か?」

 

ブラックは怪しげな廃工場のようなものを見つけた。

 

「……なんだこのマーク。【RR】?」

 

ブラックは謎のマークを確認するととりあえず工場の中へと入っていった。

 

 

一方美食殿では夕食を食べ終わり各自部屋で就寝している。

 

 

だがペコリーヌはうなされていた。

 

「はぁはぁ……。」

 

ペコリーヌは夢を見ていた。

薄暗く何も無い場所をペコリーヌは一人走っていた。その走った先にはペコリーヌの両親と思われる人物が。

 

「待って!待ってください!」

 

必死に走りその人影に追いつくペコリーヌ

 

「お父様、お母様…。」

 

「そなたは…」

 

「どなた?」

 

次の瞬間ペコリーヌの両親は影に包まれ、ペコリーヌも影に飲み込まれた。

 

「!!」

 

目が覚めると既に朝を迎えており、ペコリーヌの目には何故か涙が。

 

「お腹…ペコペコ…」

 

 

 

 

カンカンカンカン

 

「みんなー朝取れ卵の目玉焼きですよー!」フライパンで音を鳴らし皆を呼ぶ。

 

「おおー!」

 

「半熟にしてくれたー?」

 

「勿論です!」

 

「朝出かけられたのは市場だったのですね。」

 

「…。」

 

と、ここでキャルが何かが足りないことに気づく。

 

「キャル様?」

 

「ちょっと待って。」

 

「ん?」

 

「無いじゃない!この美味しそうな半熟目玉焼きを挟むパンが!」

 

「そうなんです!よく気づきましたねキャルちゃん!そこで、皆に相談がありまして!」

 

いつものパンがなかった。

 

「市場に出かけたら商品が少なくてですね…聞いたら街道を繋ぐ橋に魔物が出ちゃったみたいで小麦とか商品の流通が出来なくて皆困ってるみたいなんです。」

 

「それは難儀な……。」

 

「国が、ランドソルがなんとかしてくれればいいのですが…何故か王宮は動いてくれず…ギルド管理協会に行ったらクエストの募集もかかっていたので是非受けたいのですが……。」

 

ペコリーヌはとある依頼の紙を持ちながら説明する。

 

「クエストランクちょっと見せて。」

 

「……ん?」

キャルは怪しいと思いペコリーヌにクエストランクを聞くが何故かペコリーヌが見せるのを渋る。

 

「…見せて!」

 

「あわわ……!」

 

キャルがペコリーヌから紙を引き剥がしそっとランクを見ると…

見たことがないおぞましいマークが書かれていた

 

「怖ぁ!!ちょっと何よこれ!朝からとんでもないクエスト持ってこないで!」

 

「キャルちゃん!そんなこと言わずに!みんな困ってるんですよ!受けてくれたら毎日ハグして起こしてあげますから!」

 

「いらんわぁ!!」

 

 

Quest Start!!

 

 

キャルが魔物の囮として引き付けている。

 

「いやあああああ!!」

 

 

 

 

数分前。

 

 

 

「魔物を倒しても、橋が壊れては意味がありません!ですから、おびき寄せてから倒しましょう!」

 

「具体的には?」

 

「私の肩当ては防御力が飛躍的に上がるので囮役の人が魔物を橋からおびき出してください!少々のことでは怪我しませんから!」

 

 

 

そして今に至る

 

 

 

「もう!アホリーヌ!こんな役トロいユウキやコロ助に出来るわけないじゃない!!早く帰って来なさいよゴクウーーー!!!」

 

「なんだかんだで囮役をかってでてくれるキャルちゃん、大好きです!」

 

「来ましたよ。」

 

「あの速さですから、足を封じて確実に仕留めましょう!」

 

ペコリーヌ達は魔物を仕留めるためのトラップを事前に作っていた。

 

「アホリーヌ!あんたのわがままに付き合うの、これが最後なんだからあ!!」

 

キャルは紐を飛び越え魔物をトラップにおびき寄せた。

 

「グオオオオオ!!」

 

見事に魔物はトラップに引っかかった。

 

「ありがとうキャルちゃん!確実に仕留めます!プリンセスストライク!」

 

その威力は強力で謎の廃工場の場所にいたブラックも気づくほどだった。

 

「……あれはペコリーヌか。ふっ……。さて、ゴミ共を始末したし帰るか。」

 

ブラックの周りには多数の研究員が倒れている。

 

「き……貴様!何者だ……!どうやって『レッドリボン軍』を知った!」

 

生き残ったボロボロの研究員がブラックに向かって叫ぶ。

 

「……レッドリボン軍?よく分からないが……貴様らがくだらん『人造人間』等を使ってこの世界を侵略しようとしているのが悪い。それになんだこの設計図は……!こんなものが作り出されでもしたらお前たちの征服したい世界までも滅ぶかもしれないのだぞ?すまないがこの建物ごと焼き払う。」

 

「そ、そんな……!!」

 

「……安心しろ。貴様らが逃げる時間くらいはある。頑張って生き延びてみるのだな……。」

 

「あ……あ……!」

 

そしてブラックはこの建物を焼き払った。

 

 

 

一方、ペコリーヌ達は……

 

 

 

「「やったあああ!」」

 

無事に魔物を討伐することができ喜んでいた。

 

「これでランドソルの人たちもお腹いっぱいにご飯を食べられるようになりますね!キャルちゃん、ユウキくん、コッコロちゃん!」

 

「「「???」」」

 

「本当にありがとうございます!ゴクウさんもいて欲しかったですけど…。」

 

そう言って皆を抱きしめた。

 

「えっへへ…。」

 

「…ペコリーヌさま……。」ニコ

 

「うん…。」

 

「ちょ…抱きつくなあ!!離せええ!」

 

 

すると面倒事を片付けたブラックはしばらくペコリーヌ達の様子を見守っていたが突如奇妙な気を感じた。

 

「…?あれは……シャドウか!」

 

ブラックが遠くから感じたシャドウの気はおぞましいものだった。

 

「間違いない、たった今シャドウによって人間が一人消えた…行ってみるか。」

 

ブラックはシャドウの気を辿り調査に向かった。

 

そしてペコリーヌ達はギルド管理協会へ討伐の報告をしていた。

 

「確認しました!エルダーホーン討伐クエスト完了ですね!では、この書類をお願いします!」

 

「ん。」

 

「コロ助が根気強く教えたかいがあったわね!」

 

「いえ、主様の努力の賜物です!」

 

「頑張りましたね!ユウキくん!」

 

「美食殿の活動報告をユウキさんがしてるなんて、感慨深いですね!おや?ごめんなさい、ここの部分間違ってますね。」

 

「やれやれ、惜しいわね!分からないんだったらカッコつけずに聞きなさいよ。適当な字を書いちゃダメじゃない。」

 

「?」

 

ユウキ無意識に書いた文字はこの世界にはない文字だった。でも何か見覚えのあるような文字だった。

 

無事に書類を書き終わったユウキ達は外に出た。

 

「うーん!今日もいい天気!」

 

「ペコ姉さん!」

 

「ん?イカッチさんにチャーリーさん!」

 

「聞きましたよ!魔物退治したらしいじゃないですか!流石ですね!」

 

「え?どうして知っているんですか?」

 

「だってそりゃあ…」

 

「いたいたあ!!」

 

するとヤスコさんに続いて続々とペコリーヌの元へ集まっていく。

 

「ヤスコさん?」

 

「探したよ!ペコちゃんが魔物退治してくれたんだって?お陰で仕入れができるようになったよ!」

 

嬉しそうにペコリーヌに感謝を伝える。

 

「市場に品物入らなくて、どうなる事かと思ったが…」

 

「ホント、ありがとね!」

 

沢山の人に感謝されているペコリーヌは嬉しそうだった。

 

「よかった!これで皆美味しいご飯が食べられますね!」

 

 

 

帰り道

 

 

「皆喜んでたね。」

 

「はい!やっぱりランドソルは皆の笑顔で溢れていないと!ですから!」

 

「キャル様も感謝されておりましたね。」

 

「あたしはそんな柄じゃないわー。」グゥー

 

「お腹空いちゃいましたか?午後の軽いデザートでも食べに行きましょう!」

 

「「軽い?」」

 

そうして立ち寄ったのは前にコッコロ、ユウキ、ブラックで来たクレープ屋だった。

 

「着きましたよ!」

 

「ここ…」

 

「ランドソルに来た日に…」

 

「おや?2人とも食べたことあります?チャーリーさんに教えてもらったんですけど、ここのクレープ美味しいのに何故か繁盛してないらしくて、穴場らしいんですよ!」

 

「あーはいはいいらっしゃいませー!って、ぅぇああああああああぁぁぁ!!!」

 

「「あ……。」」

 

「なーに?リノちゃん。お客さんに迷惑だぞ…って、うぇああああああああぁぁぁ!!!」

 

そう。この2人は不審…ではなく、自称ユウキの姉のシズルと妹のリノだ。ユウキ達は前に二人とは会っている

 

するともう1人の声が聞こえた。

 

「どうしたの?2人とも。鶏が締められたような声出して…おや?久しぶり。もう金貨齧ってないかい?」

 

この赤い服を着た女性はユウキとコッコロが最初にクレープを食べに来たときにいた店員だ。

 

「お金、大切。」

 

「そ、安心したよ。」

 

「以前頂いたクレープ、とても美味しかったです!」

 

「ありがとう!ん?そういえば1人足りないね。なんか黒い人いたよね?」

 

「ああ、ゴクウ様は今は私たちと同じギルドの仲間なのですが最近会っていないのでございます。」

 

「え゛…?あの人が同じギルドに…?ま、まあいいや、そちらの2人は…。」

 

赤い女性はペコリーヌとキャルを見る。

 

「仲間!」

 

ユウキがそういうと女性は手でフレームを作りユウキたちを形の中に収める。

 

「いい絵だ…。」

 

「ん?」

 

「さて、私はちょっと用事があるからあとはヨロシク!」

 

そういって赤い女性は去っていった。

 

「了解!さあさあ、弟君のギルドなんだもん!サービスしちゃうぞ!どんどん食べてね!」

 

「ホントですか?」キラキラ

 

「「うん?」」

 

何か嫌な予感がした。

 

そして…

 

 

 

「はっはっ…は…お姉ちゃん!生地の焼きが間に合いません!!」

 

「こっちはトッピング用のフルーツがなくなりそうだよ!でも泣き言なんて言ってられない!サービスするって言ったんだから!」

 

ペコリーヌは獣のようにクレープを片っ端から食べていった。

 

「「「おりゃああ!!」」」

 

「あの店、大丈夫かしら。」

 

「はむ…美味しい!」

 

 

そして、

 

 

「皆ー!今日は贅沢させてもらっちゃいました!ユウキくんに感謝ですね。」

 

「「「おー???」」」

 

ペコリーヌ以外の3人がリノとシズルの方をみると力尽きて倒れていた。

 

「またヨロシク。」

 

「や、やりましたよお姉ちゃん…喜んでくれてますよ…」

 

「弟くんの笑顔…最、高…。」バタン

 

二人は満足そうな顔をして倒れた。

 

 

そして日は沈み。

 

クレープ屋の店主である赤い女性はシャドウに襲撃された村に訪れていた。

 

「…。」

 

シャドウに襲われてしまった少女の体を持ち上げるがボロボロに崩れ塵となってしまう。

 

そこに一人の男が話しかけた。

 

「…会った時からお前は普通ではないと思っていたが……。」

 

「…キミは…あの時の…!!」

 

赤い女性に話しかけた男はブラックだった。

 

「…お前はこのシャドウについて何か知っているのか?」

 

「……一つだけ言えるのは『シャドウ』は人の魂を求めて襲ってくるってことかな。それも、強い魂にね。」

 

「ほう…。人間の魂か。」

 

「私も君に聞きたいことがあるんだ。」

 

「なんだ。」

 

「キミは、少年たちの味方?それとも敵?」

 

「さあな。私はアイツらを利用しているだけだ。私が必要ないと判断した時はいつでも敵になりうる。」

 

「…私はね、人間が大好きなんだ。」

 

「…。」

 

「だけどそれ以上に少年のことを想ってる。」

 

「…。」

 

「…もし、少年たちに危機が迫ったらその時は助けてあげて欲しい。私も協力するよ。」

 

「……今は目的は同じと言ったところか?」

 

「そうみたいだね。」

 

ブラックと女性は互いに少し笑った。

 

「あー、後一つだけ聞いていいかな?」

 

「なんだ。」

 

「君はこの世界について結構知ってる感じ?」

 

「…この世界は偽りの世界だ。諸々はアメスとかいう奴に聞いたが…。」

 

「…そっか、もうアメスとは会ってるんだ……そ、君の言う通り、この世界は本当の世界では無い。私たちはこの世界に囚われている。」

 

「……。」

 

「…因みにこの世界を創ったのは、私を含めた7人の七冠なんだ。」

 

「お前たちがこの世界を創った?」

 

「そうだね…簡単に説明すると『ゲームの中の世界』ってやつかな。」

 

「…実にくだらない。」

 

「…それじゃあ私は行くよ。君にはまだ味方でいて欲しいな。」

 

「…さっさと失せろ。」

 

「はいはい…。」

 

謎の赤い女性はそう言って消えた。

 

「やはり人間はただの虫けらではないな…。」

 

 

その頃…村を襲撃していたシャドウは更におぞましい姿になりランドソルに向かって進行していた。




ブラックってストーk…


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悪夢

ここからシリアスな展開が多くなってきますねー。


夜中

 

 

「うぅっ………!」

 

ユウキはベッドの上でうなされていた。

 

夢を見ている。

何か、トラウマの様な、これから起こる出来事の様な…!

 

黄色い髪のビースト族の女の子、ピンク髪の女の子、青い長髪の女の子がボロボロになって倒れている。彼女達とは接点は無いはずだが何だろうか、この胸が締め付けられる感じは……。

 

そして、ペコリーヌ、キャル、コッコロまでも

謎の人物によって…

これは恐らく何度も繰り返してきた悲劇…だが一体誰がこんなことをしたのか…。

 

よく見ると、影の中に一人の男がいた。

こいつが真の黒幕なのだろうか…。

ゆっくりと影の中から出てきた男の姿はまるで……

 

 

まるで……!!

 

 

「見ろ…この夜空に広がる輝き全てが、下賎な命のエネルギーだ。全てが俺の手によって消え去る。そして、『全人間0計画』が遂に達成されるのだ…。」

 

顔が影で隠れていてよく見えない…仮面でも被っているのだろうか。いや、顔が見えなくても声は聞こえる。だがこの声の正体はユウキがよく知っている人物のものとそっくりだった…。

 

「無知ゆえに神を冒涜し続ける人間どもに、神の真の力を見せるときだ。」

 

 

「うわあああああ!!!!」

 

「ユウキ!ユウキ!しっかりして!」

 

「はっ……!」

気がつくと目の前にはアメスがいた。

 

「…今のは!」

 

「夢……忘れられるわけが無いわよね。沢山の人達と絆を深めてきたからこそあんたの、より深い記憶が呼び覚まされたのね…。いい?さっきのは夢でもあり現実。何度も何度も繰り返されてきた過去であり、未来かもしれない。時が迫っているの。何度も背中を押してごめん。でもそうするしかなくて……そして、『ゴクウ』は…今はあなた達の味方のはずよ。なんでこの世界に来たのかは分からないけど……もしものときは躊躇せずに彼を頼りなさい……。あたしはあんたを、ユウキを信じてる。」

 

最後にアメスはブラックに関する意味深な事を告げた。

するとユウキの体は光で包まれ、

そして、目が覚めた。

 

「…はぁ、はぁ…!!」

 

 

朝食前

 

 

「剣の修行ですか?」

 

「…。」コクッ

 

ユウキはペコリーヌに剣の修行を付けてくれるようにお願いしていた。

 

「あら、ようやく剣士としての自覚が芽生えたの?」

 

「うん。」

 

「え…。」

 

ユウキの真剣な表情にキャルも困惑する。

 

「…分かりました。私で良ければ。」

 

こうしてペコリーヌとの特訓が始まった。

 

「ふん!ふん!」ブンッ

 

「力みすぎないで剣の重さを感じてください!」

 

「気合い入ってるわねー。ん?それって…。」

 

キャルはコッコロの持っているスタンプカードに目が行く。

 

「主様が積み重ねてきた努力はきっと実を結びます。こうして、弛まぬ日々を送ってらっしゃるのですから。」

 

かれこれユウキのスタンプカードは何十枚にも積み重なっている。

 

「ユウキくん!ガンバガンバ!」

 

 

 

レストランにて

 

 

 

「腹が減っては戦ができぬ!食事は全ての基本ですから、しっかり食べましょうね!」

 

「おっけームグムグ」

 

ユウキは口いっぱいに食べ物を頬張る。

 

「頼もしいです!主様!」

 

「そういえばキャルちゃん遅いですね!」

 

「用事を済ませてからいらっしゃると。」

 

「料理が無くなっちゃいますね…キャルちゃんがきたらまた同じメニューを注文しましょう!」

 

「ブーーー!!」

 

ユウキは食べすぎて吐いた。

 

すると、

 

「ほんとかよ!ユースティアナ様見たことあんの?」

 

「ランドソルといえば代々お姫様が君子だろ?どうだった?」

 

「あーチラッとだけどよ?ああ、やっぱ王族の方はなんつうの?気品みたいな?にじみ出るものあるねー。」

 

「ゾクッとするような美しさだったぜ。」

 

「あれで、俺たち下々のようなのにも優しければなー。」

 

「はは、興味もねえよ!だったら治安悪くなってるこの街、ほっとく訳ねえだろ!」

 

そんな会話が聞こえてきた。

 

ペコリーヌは少し悲しそうな表情をしている。

 

「ランドソルに来て随分経ちますが、お姫様を見る機会がございませんね。田舎育ちの私にはおとぎ話に出てくる登場人物のようです。一体、どんなお方なのでしょう!」

 

「…はむ。」

 

 

 

その頃キャルは…

 

 

 

「はい、仲良く食べなさいよー。」

 

子猫たちに餌を上げていた。

 

「さて、あたしもご飯に行きますかー!」

 

「キャル姉さん!」

 

「ん?」

 

「おいっすー!」

 

「飯ですかい?丁度良かった!俺たちも今から飲みに行くんですわ!」

 

「ご一緒しますよキャル姉さん!」

 

「あんたたちいつも飲んでるわね…ちゃんと働いてんの?」

 

「「ギクッ!!」」

 

キャルの指摘に二人は身体を震わせる。

 

「ももももちろん!」

 

「あんな事とかこんな事とか!」

 

すると突如3人を覆う黒い影が…その正体は巨大なシャドウだった。

 

「…アイツは!」

 

キャルは仮面を付けてあるシャドウに見覚えがある。前に陛下に花を届けに行った際にいたシャドウだった。

 

ドゴォン!!

 

シャドウの存在はペコリーヌ達もすぐに分かった。

 

「今の音は!」

 

「行ってみましょう!」

 

「ペコリーヌ様!」

 

シャドウの出現により街は大パニックになっている。

ペコリーヌは逃げている女の子が挫けそうになった所を助けた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ペコ姉さん!!この街の中に魔物が現れやがった!」

 

「キャル姉さんも一緒にだったんだけど見失っちまって!」

 

「王宮騎士団は何やってんだ!」

 

するとペコリーヌは助けた少女を2人に預けた。

 

「すみません。」

 

「「ん?」」

 

「この子を頼みます。私はこの街を皆を守ります。」

 

ペコリーヌはこの二人を信用して飛び出した。

 

「「ガッテン承知!!」」

 

シャドウは街中で大暴れしており、一人の男がシャドウに捕まってしまった。

 

「うわあああああ!もうダメだあ!!」

 

「バカタレ!簡単に諦めるんじゃないよ!」ブォン

 

ヤスコはフライパンをシャドウに投げつけるが当然ダメージは無かった。

 

「やっぱりもうダメだあ!!!」

 

「王宮騎士団はまだか!」

 

「陛下は!ユースティアナ様は何やってんだよ!」

 

街の人はパニックになっている。

 

「……。」

 

キャルは影から様子を見ていた。

 

「うわあああああ!!!!」

 

するとそこへペコリーヌが助けにやってきた。

 

「はああああ!!」シャキン

 

男を掴んでいたシャドウの腕を切り離した。

 

「トム!無事かい!」

 

ヤスコはトムに駆け寄った。

 

「ヤスコさん!逃げてください!ここは私が!」

 

「何言ってんだい!あんな化け物相手に!」

 

「大丈夫!任せてください!」

 

「グオオオオオ!!」

 

シャドウはペコリーヌに殴りかかったがペコリーヌはそれを辛うじて抑える。

 

「さあ、早く!」

 

「無茶するんじゃないよ!」

 

ペコリーヌは皆を逃がすことに成功したが……

 

「グワアアアア!!」

 

切り落とした腕が復活し、ペコリーヌを襲う。

 

「ペコリーヌ!」

 

するとキャルもペコリーヌの元にやってきた。

 

「キャルちゃん!無事だったんですね!皆を守るために力を貸してください!」

 

「…!っ………。」

 

しかしキャルは協力をしなかった。

 

「キャルちゃん?」

 

するとシャドウはキャル目掛けて突進してきた。

 

「…!全力全開!プリンセスストライク!」

 

ペコリーヌの一撃によりシャドウは真っ二つになった。

 

このタイミングでコッコロとユウキも駆けつける。

 

「流石ペコリーヌ様!」

 

シャドウは徐々に光を無くし…はしなかった。光は赤くなり、更に凶暴化した。

 

「グオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

「プリンセスストライクが…?」

 

「効かない!?」

 

「グオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

するとシャドウは両手に雷のような物を纏い地面に向かって力をぶつけた。

その衝撃でペコリーヌとキャルのいる足場が崩れ落下した。

 

「キャル様!ペコリーヌ様!」

 

「うっ…!」

 

キャルが目を開けるとペコリーヌがキャルを瓦礫から庇っていた。

 

「大丈夫ですか?キャルちゃん。」

 

「…!」

 

しかし、シャドウの攻撃は止まらない。

キャルを庇っているペコリーヌ目掛けて何回も殴っていた。

 

「っ…!!」

 

「…!ペコリーヌ!」

 

キャルはペコリーヌを助けようとするが瓦礫が足に挟まり動けない。

やがてシャドウは殴るのを止め、強大なエネルギーを溜め始めた。

 

するとペコリーヌは黙ってキャルに肩当てを渡した。

 

「!ちょっとこれ…!」

 

「その肩当てがキャルちゃんを守ってくれますから。」

 

「ちょっとやめてよ!なに勝手なことしてんのよ!あたしはこんなの!!」

 

「…。」ニコッ

 

ペコリーヌはキャルに笑いかけた。

 

 

 

 

 

 

なんで

 

 

 

 

 

なんであんたは

 

 

 

 

 

他人の為に

 

 

 

シャドウが溜めた強大なエネルギーはペコリーヌに向けて放たれた。

 

 

「ペコリーヌーーー!!!!!」

 

 

大爆発が起きた。しかし、シャドウの体に巨大な風穴が出来ていた。

それはペコリーヌの最後の一撃を振り絞ったプリンセスストライクだった。

 

キャルはふらつきながらペコリーヌに近寄った。

 

「はぁはぁ…」

 

「バカ…バカ…バカ…バカ…バカ…ほっときなさいよ弱いやつなんか!置いていけばいいじゃない!なんで庇うのよ!」

 

 

 

 

 

あたしはあんたを見捨てようとしたのに

 

 

 

 

 

「あんたなんか…あんたなんか!!」

 

 

「グオオオオオオオオオオオ…」

 

シャドウの風穴が徐々に塞がっていく。

 

「もう無理…付き合いきれない…。」

 

「…え?」

 

キャルのはそう言って言葉を投げ捨てた。

 

 

 

「ペコリーヌ様ー!キャル様ー!!」

 

コッコロとユウキも遅れて到着する。

 

「…!」

 

「直ぐに回復魔法を!」

 

「はあああああああ!!!」

 

ユウキもプリンセスナイトの力を使う。

だが、

 

「うおおおおおお!っぐ!!」

 

この前に見た夢がフラッシュバックする。

 

「うっ…ぐぅ…!!」

 

ユウキはそのまま倒れてしまった。

 

「主様!!」

 

「グオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

その時だった。突如巨大な壁がユウキたちを囲むようにして現れた。

 

シャドウは壁を壊しユウキに攻撃するがユウキはどこかに消えてしまった。

 

「主様!!!」

 

そしてコッコロ達も地面に溶けるようにして消えてしまった。

 

そしてシャドウは謎の空間に捕らわれた。

 

 

「…!ペコリーヌ?キャル?コッコロ?」

 

ユウキは一人目を覚ましたが他には誰もいない。

 

「安心して。皆は安全な場所に隔離したから。」

 

そういって前から歩いてきた女性は…。

 

「クレープ屋の?」

 

「そ!クレープ屋の店主、でもそれは、世を忍ぶ仮の姿。私の名前は『ラビリスタ』だ。」

 

 

 

 

コッコロ視点

 

「ここは…!お城の中なのでしょうか…。」

 

コッコロが扉を開けると巨大な壁画があった。

その壁画に描かれている人物は

 

「ペコリーヌ様…?」

 

ペコリーヌの家族写真のようなものだった。

 

 

 




プリコネ1期の後半の盛り上がり凄かった!


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忘れ去られたランドソルの王女

いよいよ1期の終盤…!


コッコロがペコリーヌの壁画を見ているとペコリーヌが扉を開けて入ってきた。

 

「ペコリーヌ様!ご無事で!ここは…。」

 

「…ここは、ランドソル城です。」

 

「ランドソル城?」

 

「多分…ですけど。ただ、誰もいないので何とも言えませんが…。」

 

「この肖像画…。」

 

「ごめんなさい。コッコロちゃん達に隠してて…。私の名は、『ユースティアナ・フォン・アストライア』。ランドソルのプリンセスです。」

 

ペコリーヌの正体はこのランドソルの王女だった。

 

「…!ですが…。」

 

「はい。陛下と呼ばれるあの人もユースティアナと呼ばれていますね。私は、皆から忘れ去られた人間なんです。父や母からも。」

 

「…!」

 

ペコリーヌはそういって自分の過去をコッコロに明かした。

 

 

 

 

 

「ユースティアナ。」

 

「お母様!お父様!」

 

「いよいよだな。」

 

「世界は広い。この国の民人の声をその耳で、この国の有り様をその目で、自らの足で見てくるといい。この旅を終えた時、ソナタはきっとこの国を収めるのに相応しい者へと、成長しているだろう。」

 

「はい!」

 

「ユースティアナ、これを。」

 

「?」

 

そうして両親はペコリーヌに王家の装備を渡した。

 

「このティアラはランドソルに伝わる王家の装備の一つ。」

 

「きっと、お前を守ってくれるだろう。」

 

「うふっ、使用するととってもお腹が空くのが玉に瑕ですが!」

 

「私、ご飯食べるの大好きですから、楽しみです!」

 

 

「ぷっ…うふふふふ…」

 

「はっはっはっは!!!」

 

両親との関係は良好だった。

 

すると母はペコリーヌの頭にティアラを着ける。

 

「行ってまいります!!」

 

「無事な旅を。」

 

 

 

 

 

「こうして私は、アストライア大陸を旅しながら色んな経験を積むことができました。そして旅を終え、ランドソルに帰ってきたのですが…」

 

 

 

 

 

 

「ユースティアナ、ただいま戻りました!父と母にお目通しを!」

 

「何を言っている!」

 

「ユースティアナ様の名を語る不届き者め!」

 

騎士たちはペコリーヌを王城へ通さなかった。

 

「!?え?皆さんどうしちゃったんですか?私ですよ!?私です!わからないんですか?」

 

騎士たちはペコリーヌのことを忘れていたのだ。そして侵入者と間違えられ攻撃を浴びせられる。

 

しかしペコリーヌは攻撃を避け、無理やり城の中に入った。

 

「はっはっ…」

 

ペコリーヌが城の中を走っていると…

 

ドン!

 

「きゃああ!!」

 

メイドの人とぶつかってしまった。

 

「ごめんなさい!あっ、お母様のお給仕の!お久しぶりです!私です!ユースティアナ…」

 

しかしメイドの人はペコリーヌを見て震えている。

 

ペコリーヌは何も言わずにその場を後にした。

 

「誰か、誰か覚えていませんか?私です!ユースティアナです!私を覚えている人は!!」

 

 

 

「誰かあーーー!!!!!」

 

ペコリーヌは叫んだ。だがペコリーヌを知るものは誰一人いなかった。

 

そして、ようやく父と母の居る場所へ辿り着いた。

 

「ただいま戻りました。この国を人々の声をこの耳で…ランドソルをこの目で見てまいりました。」

 

ペコリーヌは涙目になって問いかけた。

 

「まだ、修行が足りなかったでしょうか…お父様、お母様…。」

 

 

「そなたは…」

 

「どなた?」

 

両親でさえもペコリーヌのことを忘れていた。

 

「んふふ…ネズミが入り込んだ様ですね、お父様、お母様。」

 

「おお、ユースティアナ!」

 

なんとユースティアナと名乗る謎の女性が出てきた。

 

「ご安心を。ネズミは私がこの手で排除します故。」

 

そういってペコリーヌの排除を計った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の名を語るあの人から、何とか逃れ私は再び旅に出ました。終わりのない旅に。そんな時、コッコロちゃんやユウキくん、キャルちゃんやゴクウさんに出会ったんです。」

 

 

「嬉しかった。幸せだった。皆に出会えて。一緒に温かいご飯を食べられて。でも、不安だったんです。また皆が私を忘れてしまうんじゃないかって…幸せになればなるほど皆がいつか離れて行ってしまうんじゃないかって。ホントの私を、ユースティアナである事を伝えたら、また…。」

 

そういうとペコリーヌは膝から崩れ落ちた。

 

コッコロは静かに今までの話を聞いていた。

 

「だから…だからペコリーヌ様は、大切な人たちを抱きしめていたんですね。繋がりが離れていかないように。」

 

「ホントの事を伝えず、私のわがままばかりで、こんな私だから…身勝手な私だから…キャルちゃんも離れていっちゃいました…。」

 

コッコロはそんなペコリーヌを優しく抱きしめた。

 

「私は離れませんよ。あなたがユースティアナ様であっても、ペコリーヌ様であっても、共に過した美食殿の日々は、私にとっても宝物のような、大切な絆なのです。それはきっと、主様も、キャル様も、ゴクウ様も同じ気持ちの筈です。」

 

「…。グスッ」

 

ペコリーヌは静かにコッコロの胸の中で泣いた。

 

「もう少しだけ、もう少しだけこうしてていいですか?」

 

コッコロはペコリーヌの頭を優しく撫でた。

 

その様子をキャルは扉の隙間から見ていた。

 

キャルは覚悟を決めた顔でその場を離れ、

 

 

「グオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

たった一人でシャドウに立ち向かった。

 

 

 

 

 

ユウキは…

 

「今頃は彼女たちも1つの真実にたどり着いた頃かな。」

 

「っ…!」

 

「信じてほしい。あたしは君の敵じゃない。味方と言うには私は君を巻き込み過ぎてしまっているね。本当に…」

 

ラビリスタは一つの真実をユウキに伝えた。

 

「この空間は、あたしが構築したものなんだ。見覚えはあるかな?」

 

この空間をユウキは確かに見た覚えがあった。

 

「アメス…。」

 

「そう……今も君をサポートしようとしているんだろう。優しい子だ。君の記憶を少しずつ、丁寧に戻そうとしている痕跡がある。」

 

ラビリスタはユウキの顔を見つめる。

 

「いいかい?この力は君の仲間を救うものではあるが、同時に君自身を壊してしまうかもしれない力なんだ。今の君は記憶を失ってしまっているようだ。それがリダイブの影響なのかどうかはまだ分からないがそんな状態でこの力を解放したら君の存在自体にどんな影響を及ぼすか分からない。先程の戦いで、上手く行かなかったのもその為だろう。シャドウは人の魂を求め襲ってくる。既に壊滅した村も出ている。そして恐らく。より強力な魂を求め君たちの前に現れる。」

 

「!!」

 

「あれは偶発的に現れたものでは無い。ある意思によって存在している。この世界に囚われている限りその意思から逃れることはできない。この世界が生まれたきっかけは君とその意思が戦ったことによるから。」

 

「…!まさか…!!この記憶は!!」

 

ユウキの記憶が蘇ってくる…夢で見た光景と記憶が、ついに一致した。あるひとつの夢を除いては…。

 

 

 

 

 

一方街では…

 

「…これはどういう事だ…ペコリーヌ達の気が感じられん…。」

 

ブラックが駆けつけた時にはもう既にペコリーヌ達の姿はなかった。

 

「ん?」

 

するとブラックの他にもペコリーヌを探している連中がいた。

 

「ペコ姉さん!!」

 

「ダメだ!見当たらねえ!」

 

「泣き言言ってんじゃないよ!ペコちゃんは必ず無事だ!急いで探すんだよ!」

 

「でも一体何処に!!」

 

チャーリー達もペコリーヌを泣きながら探していると、ある組織が駆けつけた。

 

「下がって!ここはまだ危険だ!一般市民は離れて!」

 

「ナイトメア……!?」

 

ナイトメアとは王宮騎士団という街の治安を維持するための組織だ。

 

「……騒ぎにも気づかずにノコノコと何をしにやってきたのだ?」

 

ブラックの怒りは自然とナイトメアに向く。

 

「そんな言い方ないっス!自分達も一生懸命…」

 

「待ってマツリちゃん…守るべき人達と揉め事を起こしてどうする。」

 

「トモ姉ちゃん、でも…」

 

「その通りだ。我々の本懐を忘れては行けない。」

 

「ジュンさん!」

 

全身黒の鎧に包まれた『ジュン』という女性が歩いてくる。

 

「まさか、王宮騎士団団長!」

 

「……何者だ?」

 

ブラックはジュンという全身鎧を纏っている人物から凄まじい気を感じた。

 

「待て待て、そいつとは話がある。」

 

するとジュンの後ろから歩いてきたのは以前ブラックと戦ったクリスティーナだった。

 

「クリスちゃん?」

 

「ん?お前は…」

 

「久しいな、また会えて嬉しいよ。」

 

「クリスティーナか…リベンジでもしに来たのか?」

 

「…おっと、今日は残念ながら戦う気は無い。」

 

「…ほう。」

 

クリスティーナはブラックにある事を伝えに来た。

 

「おかしいと思ってな。」

 

「おかしい?」

 

「王都であるランドソルにこのような被害を出す魔物が侵入したにも関わらず我々に情報がきたのは事がすんでからだ。」

 

「…。」

 

「あの城の奥で『我らが王』は何をお考えなのだろうな。」

 

「…。」

 

「ま、ただの独り言だ。あと、独り言ついでにもう一個、この国は人間、ヒューマンの国なのに、いつから獣人が玉座に座るようになったのかな?」

 

クリスティーナは遠回しにブラックにヒントを教えていた。

 

「……。」

 

「…仮は返したぞ?ゴクウブラック。」

 

クリスティーナは前に戦った時にブラックに生かして貰った仮を返した。

 

「…人間にしては律儀だな。その情報、覚えておこう。」シュピン

 

「消えた…か。」

 

「クリスちゃん、あの男は一体何者だ?」

 

「さあな…一つ言えるのは、私よりも強い男ってことさ。」

 

「クリスちゃんより強い……?」

 

ブラックはその場を離れ瓦礫の下に手を当てた。

 

「微かに気が残っている…。これは、シャドウの気か…?なんと醜い…。」

 

「だが、何処に行こうと無駄だ。私を誰だと思っている。」シュピン

 

ブラックは微かに残る気を辿り瞬間移動した。

 

 

 

 




うちのゴクウブラックは冷酷じゃない…。
これはキャラ崩壊と捉えた方がいいのかな?


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悪を砕く金色の戦士

1期の最終回は熱くて感動しました!


「ライジングテンペスト!!」

 

「グオオオオオオオオオオオ!!」

 

キャルはシャドウにありったけの力を込め魔法を放つ。

 

「また私、陛下の邪魔をしている…。でも…仕方ないじゃない!選べないじゃない!今の私は…いつから私はこんなになっちゃったのかな?あたしの全ては陛下の物だった筈なのに…バカだな、私。」

 

シャドウは何事も無かったかのように魔法を突き進み、とうとうキャルの正面にまで来てしまった。

 

「ホント、バカ…。」

 

シュイン!!

 

キャルが諦めかけたその瞬間、一筋の光がシャドウを突き飛ばした。

 

「ごめんなさい。私やっぱり、キャルちゃんの言うとうり身勝手でわがままなんです。だから、私と一緒にあの魔物倒すの手伝ってください!」

 

「バカ…。」

 

「…共に窮地を脱しましょう…!」

 

キャルのピンチにコッコロとペコリーヌが駆けつけた。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

ユウキは未だにラビリスタと話していた。

 

 

「…。」

 

「ごめん。一度に沢山話しすぎた。でも大丈夫。君たちのことは私たちラビリンスが守るから…。」

 

「守るよ。」

 

「え?」

 

「仲間は僕が守る。」

 

ラビリスタはユウキがそういうと嬉しそうに頭を抱えた。

 

「君の状態を直接確かめたくてこんな遠回りをしてしまったけど…そのかいはあった様だね。」

 

 

 

『マスター!流石にこれ以上は!』

 

『お兄ちゃんの仲間ピンチですよ!』

 

シズルとリノも裏で活躍してくれていた。

 

『どうする?敵にバレちゃうけどやっぱり私たちも加勢しようか。』

 

「いや、準備は出来てる見たいだ。」

 

「…。」

 

ユウキも覚悟を決めた。

 

「では……行こう!」

 

そういうと辺りの地形が変わり始めた。

 

「私の力はこのオブジェクト変更だ。」

 

ユウキの立っていた地面に穴が空く。

 

「君が前に進むために、今は少しだけ力を貸そう。君が紡いだ力が、必ずこの世界を救うと信じているよ!」

 

ユウキが出た場所はシャドウの頭上だった。

 

「はあああああああ!!!!」

 

「!?」

 

ユウキの予想外の攻撃でシャドウは怯む。

 

「ユウキくん!?」

 

「ユウキ!?」

 

「主様!!」

 

ユウキは剣を構える

 

「行こう!皆!はあああああああ!」

 

「力が…!」

 

「魔力が…!」

 

「主様の想いが…!」

 

ユウキのプリンセスナイトの力が覚醒する。

 

4人は構えた。

 

「光のご加護を!」

 

コッコロがそう言うとユウキ達の体が緑色の光に包まれる。

 

「プリンセスストライク!」

 

威力は先程までとは比べ物にならない程上昇していた。

 

「覚悟はいいかしら!グリムバースト!!」

 

グリムバーストはシャドウを丸々飲み込み巨大な爆発を起こす。

 

あまりの威力にシャドウは崩れるがまたすぐに再生される。

その瞬間…!

 

「主様に鋼の体を、ハヤブサのごとき素早さを、いざ参りましょう!我らが勝利の為に!」

 

「はああああああああああ!!!」

 

コッコロのかけた魔法により強化されたユウキが大きく振りかぶった剣はシャドウを真っ二つに切り裂いた。

 

「グオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

シャドウは切り裂かれた後に青い光に飲み込まれるように消えた…

 

ユウキに皆が駆け寄る。

 

その様子をシズル達は静かに見守っていたのだが…

 

「いい太刀筋だ…私のプリンセスナイト。」

 

これで終わりではなかった。

 

「…!?」

 

「そ、そんな…!!」

 

「嘘でしょ!?」

 

「どうして、、、」

 

「ね、ねえ、マスター、あれ!」

 

「嘘、ですよね…。」

 

「馬鹿な…!」

 

これにはラビリスタも予想だにしていなかった。

何とユウキが真っ二つに切り裂いたシャドウは何かおぞましい執念があるのか、さらにパワーアップして再生した。

 

「グオオオオオオオオオオオ!!!」ブォン

 

シャドウは辺りをなぎ払いその風圧でペコリーヌ、キャル、コッコロは壁に打ち付けられた。

 

「きゃあ!!」

 

「うわああ!!」

 

「うっ!!」

 

「…皆!!!」

 

「グガァァァァァァア!!」ブォン!

 

「ユウキ!避けなさい!」

 

「ユウキくん!!!」

 

「主様!!」

 

シャドウの攻撃は止まらずもう一度ユウキに襲いかかる。

 

「…あ、、、」

 

ドガァァァァァン!!!

 

「そ、そんな…主様!!」

 

「…嘘、よね…!?」

 

「ユウキくんが、そんな…!」

 

攻撃されたその場所にはユウキの姿はなかった。

 

なぜなら…

 

「……人間にしては上出来だ。」

 

「…ゴクウ…?」

 

ブラックがユウキを抱え、空中に浮かんでいたからだ。

 

「「「ゴクウ(様)(さん)!?」」」

 

「ユウキは預けるぞ。」ポイッ

 

ブラックはユウキをペコリーヌに向かって投げた

 

「おっととと…ユウキくん、大丈夫ですか?」

 

「うん!」

 

「アンタ、なんで来たの…?」

 

「ん?」

 

「アンタが幾ら強くても…あんなシャドウを倒すなんて不可能よ…。」

 

「…この私に不可能などあるものか。」

 

「ゴクウ様…!!」

 

「お前達は離れていろ。」

 

「…分かりました!」

 

「…死ぬんじゃないわよ!」

 

「ご武運を…!」

 

キャル達はブラックに全てを託した。

 

「さて…。」

 

「グォオオオオオオオオオオ!!!」シュン

 

シャドウはブラックに向かって走り出し鋭い攻撃を繰り出した。

 

「っ!!」ガッ

 

ブラックは咄嗟に防御をするがスピードが乗ったパンチはとても重たく、そのまま壁に吹き飛ばされた。

 

「ゴクウ!?」

 

「あの攻撃をまともにくらってはいけません!」

 

「ゴクウ様!」

 

「ゴクウ…!」

 

ガラ…ガララ

 

ブラックは瓦礫をどかしながら再び立ち上がる。

 

「フフフ…力が溢れるぞ。…この力、貴様に試してみるか…。」ザッ

 

ブラックは積み重なった瓦礫の上に立った。

 

「ハァァァァァァ…!!!」ゴゴゴゴ…

 

ブラックが気を溜めると、周りの空気がピリ付き辺りを巨大な地震が起こったかのように大きく揺れる。

 

「な、何よこれ!一体どうなってんの!?」

 

「あわわわ…とても立ってはいられません!」

 

「凄まじい力でございます…!」

 

「スゴい…!」

 

ブラックのその力はこの場に留まらずランドソル全体に伝わっていた。

 

「じ、地震だ!皆隠れろ!」

 

外で事件の調査をしている王宮騎士団もパニックになっている。

 

「なんだこの揺れは!」

 

「落ち着いて!全員この場から離れるんだ!」

 

「ヤバイっすよこれ〜!トモ姉ちゃんも早く逃げるっス!!」

 

「スゴい揺れだ…。それに空気がピリピリする…!」

 

「地震…?いや、このピリピリした空気、以前感じたことがあるような…。」

 

───────────────────────

 

「ハァァァァァァァァア!!!」

 

するとブラックの姿に変化が表れる。

 

「あんた……その姿…!」

 

「ゴクウさんの髪が…!」

 

「ゴクウ様の色が……!」

 

「うわぁ…!」

 

なんと黒髪だった髪は金髪になり逆立ち、黄金のオーラを身にまとっている。

 

「……シャドウはより強い魂に惹かれると言っていたが、これならどうだ?」

 

「なんてプレッシャー…!」

 

「…ゴクウなの…!?」

 

「これがゴクウ様の力…!」

 

「カッコイイ…!」

 

「グォオオオオオオオオオオ!?」ブォン!

 

ドゴオオオオオオン!!

 

「…シャドウの分際で怒りを感じるのか?面白い…!」

 

「!?」

 

「「「「!?」」」」

 

シャドウは勢いよく殴るがブラックはその攻撃を気にも留めずにそのまま受けた。

 

「あの攻撃をノーガード!?」

 

「どうなっているんでしょうか…」

 

「恐るべき強さでございます…!」

 

「強い…!」

 

「グガガァァァァァァァァァア!!」

 

シャドウは何度も攻撃するがブラックには通用しなかった。

 

「ハァァァァァア!!!」

 

するとブラックはシャドウの攻撃を見切って腕を掴み、そのまま思い切り投げ飛ばした。

 

「グォオオオオオオオオオオ!??」

 

ズドオオオオン!!

 

「あの巨大なシャドウを投げ飛ばすなんて…!」

 

「衝撃的過ぎて言葉を失ってしまいます…。」

 

「す、凄いです!」

 

「うわぁ…!」

 

ズゥゥゥゥン…

 

「ふん…!お前の怒りが心地よいぞ?」

 

「…グゥゥゥ!!」

 

シャドウはゆっくりと立ち上がりそのままブラックを掴もうとした。

 

ブゥゥゥゥゥン!!

 

 

「…。」シュピン

 

しかし、シャドウはブラックを掴むことはできず逆に腕を切り落とされていた。

 

「!?」

 

「……。」

 

ドゴォ!!

 

「グガガァァァァァァァァァア!!」

 

ブラックは間合いを一瞬で詰め、シャドウの顔面を蹴り飛ばした。

するとブラックは気を一点に集中し始める。

 

「か…め…は…め…」ザッ

 

ブラックは姿勢を少し低くし、両手を右の腰辺りに構えエネルギーを溜める。

 

 

 

波ァ───────ッ!!!!!

 

 

 

 

ブラックが叫ぶと同時に紫色のエネルギーがシャドウを呑み込み仮面にヒビが入る。

 

「グォアアアアアア!!!」

 

シャドウは再生を試みたがブラックはその隙を見逃さなかった。

 

「だりゃあぁあああ!!!」

 

 

パキィィィィィィィンッッッッ!!

 

 

ブラックは渾身の一撃をシャドウのヒビの入った仮面に叩き込んだ。亀裂は仮面だけでなくシャドウの全身に行き渡る。

 

パキ…パキ…パキ…

 

「グガガァァァァァァァァァア!!!!!」

 

 

 

 

 

 

ドォォォォォォォォォォォンッッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

シャドウは一頻り叫んだ後仮面と共に粉々に砕け、やがて巨大な爆発を起こし塵となった。

 

 

 

 

 

「……。」

 

ブラックは静かに変身を解いた。

 

「や、やったんですね…!」

 

「どうやらそうみたいだな…っ!?」

 

ガバッ

 

「な…!?」

 

「!?」

 

「!!」

 

ペコリーヌは4人に勢いよく抱きついた。

 

「何をしている…!離せ人間!!」

 

「…もう、駄目かと思いました…。」

 

「…ペコリーヌ…。」

 

「ペコリーヌ様…!」

 

「…皆はずっと一緒!」

 

「……。」

 

「皆戻ってきてくれて…よがっだでず…!!」

 

ペコリーヌはボロボロと涙を流す。4人はペコリーヌが泣き止むまでその場を動かなかった。

 

 

 

「…もう大丈夫です!泣きすぎてなんかスッキリしちゃいました!ヤバいですね!」

 

「…今回ばかりは死ぬかと思ったわよ…!だから、まあ、なんというか、?あんたには感謝してるわ、ゴクウ…その、ありがとう…。」

 

「……偶然通りかかっただけだ。礼をいわれる程ではない。」

 

「……でもなんかよく見たらゴクウさんの服、沢山土がついてますね…?」

 

「…っなに!?」

 

よくみるとブラックの服には細かな土の汚れが付いていた。恐らくペコリーヌ達を全力で探し回ってついた汚れだろう。

 

「へぇ〜!そんなにアタシ達のことが心配だったのね〜!」

 

「ゴクウ様はお優しいです…!」

 

「ち、違う!!これは…!」

 

「ゴクウ、ツンデレ?」

 

「ぐぬっ…!!」

 

(……人間とこのような会話をするなど、過去の私は思いもしなかった。私は、、、私が思っているよりも…人間に心を許してしまっているのだな……。)

 

ブラックは自分の甘さを認めた。

 

「…それよりお前たち、なんだその姿は、ボロボロではないか。」

 

「あんたが来るのが遅いからよ!」

 

「ふん、無様だな。」

 

「何よ!そういえばあんたには瞬間移動っていうチート技があったわよね!その気になればもっと早く来れたじゃない!」

 

「…そんなこと知るか。」

 

「ゴクウ…強い…!」

 

「…ユウキ。」

 

「なに?」

 

するとブラックはユウキと向かい合った。

 

「お前が己の使命を果たすために必要なものがある……。」

 

「…それって!?」

 

「それは『力』……そう!理想郷の為に必要なるは万物を裁く絶対なる力!」

 

「力…!!」

 

「お前がこの世界を救うためにはもっと力をつけなければな……。」

 

「僕、ゴクウのように強くなる…!!」

 

「ふん…。」

 

その様子を見ていたシズル達は…

 

「弟くんもこんな立派に成長して…ゴクウくんも悪い人では無さそうだねマスター…!」

 

「…お兄ちゃんカッコよかったです!けどあのゴクウさんも凄いです!お兄ちゃんとはどんな関係なんですかね…。」

 

「あの黒い服の人、いや、ゴクウ。ありがとう、少年を助けてくれて。少年達もよく頑張ったね…。」

 

ラビリスタ達は離れた場所でブラック達を見守っていた。

 

「何はともあれこれで解決しましたね!ゴクウさんは正義のスーパーヒーローですね!」

 

ブラックはその言葉を聞き顔を曇らせる。

 

「正義?…勘違いするな。私の正義は人間を…」

 

「?それって…」

 

 

ブラックが言い終わる前にユウキ達の足元に魔法陣が浮かびあがり周りを壁が囲った。

 

ブラックが柱の方に目を向けるとラビリスタがいた。

 

「ん?あの女全て見ていたのか。全く抜け目のない奴だ。」

 

少しニヤつきながらブラックは額に人差し指と中指を置き瞬間移動をした。

 

シュピン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とあるレストランにて。

 

「うわああああん!!」

 

「うわあああああんん!!!」

 

「泣くんじゃない!このバカタレ共が!」

 

「だって!だってよー!!」

 

「このままペコ姉さんたちいなくなったらあ…!!」

 

「縁起でもないこと言ってんじゃないよ!」

 

「でもママ!!」

 

「ピーピー泣く暇あんなら働きな!あとあんた母ちゃんって呼びな!!」

 

チャーリー達はペコリーヌ達が見つから無いため泣き叫んでいた。

 

ドゴォン!!

 

「「「「!??」」」」

 

音がした方に目を向けるとそこには…

 

「え?」

 

「え?」

 

「ペコ姉さん!!」

 

「無事だったんですねえ!!!」

 

「「「うおおおおおお!!!」」」

 

ペコリーヌ達は無事にラビリスタの能力により帰ってきた。

 

皆がペコリーヌ達の近くに駆け寄る。

 

「…キャルちゃん、私のわがまま聞いてくれてありがとう!」

 

「…もうこれっきりよ。」

 

「はい!大好きです!キャルちゃん!」

 

ペコリーヌはキャルに抱きついたがキャルは拒絶しなかった。

 

「…。」

 

そしてキャルもペコリーヌを抱きしめた。

 

イカッチはコッコロとユウキを肩に乗せ嬉し泣きしている。

 

「…ゴクウ様は!」

 

「ゴクウ?」

 

無事に戻ってこれたことに安堵して気づかなかったが、周りをよく見るとブラックの姿はどこにも無い。

 

「…本当に、颯爽と現れて事が終われば直ぐに居なくなる。まるで嵐のような人でございますね…。ありがとうございました…ゴクウ様!」

 

「ゴクウ、ありがとう…。」

 

「あらら、ゴクウさんはまたいなくなっちゃいましたか。ちゃんとお礼を言いいたかったのですが…。」

 

「まあアイツはこういうワイワイしてる場所苦手そうだもんね…そうだとしても、もう少し居ればいいじゃない…。」

 

「…そういえば闘ってた時のゴクウさんのあの姿は何だったんですかね?」

 

「確かに…金髪になっていたけど聞きそびれたわね…。」

 

「そうなんですよ…!後一つ気になることがあって、ゴクウさんに『正義のスーパーヒーロー』って言ったらなんかゴクウさんらしくないような顔をしてたんです!」

 

「うーん…まあアイツにも色々あるんじゃない?結構苦労してそうだし。」

 

「……それもそうですね、また今度ゴクウさんに聞いてみましょう!今は気を取り直して美味しいご飯でも食べましょう!」

 

 

 

 

こうしてシャドウを倒し少しの間ランドソルに平和が戻った。

 

 

 

 

 



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第二章 激闘ランドソル編
緑の守り人事件


ここから2期の内容となっています!


シャドウとの戦いが終わり、いつもの様にギルドハウスで眠るコッコロ、ペコリーヌ、キャル、ユウキ。

 

ペコリーヌは不思議な夢を見た。

 

 

 

「こ、ここは…」

 

 

見たことがない倒壊した建物、全てを焼かれ太陽の光すら届かない世界。

 

ペコリーヌの目の前には倒れている女性をだき抱える青髪の青年がいた。

 

「これは、一体…!」

 

すると青髪の青年は倒れている女性を直接始末したのであろう人物を睨みつけている。

燃え盛る炎の中、影から現れたその姿はペコリーヌがよく知っている男だった。

 

「…ゴクウ、さん…?」

 

「いよいよだ…今日こそお前の息の根が止まる日だ。トランクス…。」

 

青髪の青年の名前は「トランクス」と言うようだ。

 

「…え、?」

 

そういって不敵な笑みを浮かべているブラックはペコリーヌの知っている人物とはまるで別人

のようだった。

 

「…マイ!」

 

倒れている女性の名はマイと言うらしい。

 

ペコリーヌはいてもたってもいられず走り出した。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「君は…!?ッまずい!逃げるんだ!」

 

「ふっ…お別れは済んだか?サイヤ人。次はお前がそうなる…ん?」

 

ゴクウらしき男はペコリーヌを見る。

 

「ゴクウさんですよね!?何故こんなことをしているのですか!」

 

「まだ生き残りがいたか。」

 

「君、あいつはゴクウさんではない!『ゴクウブラック』だ!」

 

「ゴクウ、ブラック…?」

 

「ふっ…愚かな人間には…。死こそが恵み…。」

 

「貴様ァァァ!!」

 

「安心しろ。あの娘と同じ所へ直ぐにお前も送ってやる。」

 

ドゴオオオオオオン!

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

チュンチュン…

日差しが差す

 

「はぁ、はぁ…。」

 

ペコリーヌは目を覚ました。

 

「一体何だったのでしょうか…あの夢は…。」

 

いつもペコリーヌ達を助けてくれるブラックとは全く違う。

 

「ゴクウさんではなく、ゴクウ、ブラック…?」

 

グゥゥゥ……

 

「…お腹、ペコペコです…。」

 

 

 

 

 

 

今日は天気が良いのでコッコロとペコリーヌは洗濯をしている。

 

「チャプ、チャプ…チャプ、チャプ…。」

 

コッコロはシーツなどを洗濯している

 

「いいー天気!最高の洗濯日和ですね!」

 

「はい!」

 

「そういえば、ユウキくんは?」

 

「先に、依頼主の所へ…。」

 

「気に入ってくれると良いですね。」

 

「キャル様も後で合流なさる様です!」

 

 

ペコリーヌとコッコロが洗濯している間、キャルはランドソル城で先日のシャドウの事件について報告をしていた。

 

「…報告は以上です。引き続き、ユウキ、ペコリーヌ、ゴクウの監視を続けます。」

 

「キャル。」

 

「はい。」

 

「まだ、何か報告し忘れてることがあるんじゃないかしら?」

 

キャル「ッ!?なん、で…。」

 

その言葉にキャルは体を震わせる。

ゆっくりと陛下の方に視線を向けるとあの時撃破したシャドウが付けていた仮面がバラバラになって浮かんでいた。

 

「このペルソナ…見覚えあるわよね?」

 

(見られていた!?陛下はあの仮面を通して私たちの戦いを!だとしたら私が陛下の邪魔したことも…。)

 

「まだ、まだ足りない。」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい陛下ごめんなさい!」

 

「でも許すわ。」

 

「え?」

 

「あなたと私はこの嘘で塗り固まれた世界で唯一の血縁なのだから。」

 

「陛下…!」

 

「ただ、1つ教えなさい。」

 

「え…?」

 

「ゴクウと言っていたかしら?あの男の正体が何者なのか?何故あれ程の力を持っているのか。」

 

「…その、正体とかは分かりません。ですがあの技は『かめはめ波』というものらしいです。」

 

「…そう。また何かあったら報告して。あの男は危険だわ。」

 

「…はい、陛下。」

 

「もう行っていいわよ。」

 

「はい、失礼します…。」

 

その後キャルは城からでてユウキと合流した。

 

 

 

 

 

「…ゴクウねぇ…。もっと…まだ足りないわね……!?」

 

キャルがユウキのいる場所に向かった後、陛下は奇妙な気配を感じ取った。

 

「……なるほどな。」

 

「!?」バァン!!

 

陛下は瞬時に振り向き後ろにいた男に拳を突き出したが男もそれに合わせて拳をぶつけ相殺した。その男こそシャドウを倒したブラックだった。

 

 

「シャドウから生命力を吸収するために…アイツらと戦わせてエネルギーを集めていたか。」

 

「その通りよ…!」ブォン!!

 

「…!」

 

ブラックは空気を裂く僅かな気配を読み取り身を躱しながら距離をとった。

 

「あなた、一体何をしにきたの?」

 

「お前が私を呼んだのだろう?殺して欲しいと…。」

 

「…貴方が今まで生きていられたのは私が貴方を泳がせていたからよ?貴方のことなんてやろうと思えばいつでも…ッ!?」

 

「…実に素晴らしい肉体だな。鍛え抜かれている…。だが所詮は人間だ。」

 

ブラックは陛下が言い終わる前に目の前に移動し人差し指と中指を陛下の顎の下にのせてそう言った。

 

「やろうと思えば…なんだ?」

 

「っ…!!」

 

陛下は迂闊に動くことができない。

 

(いつの間に懐に入られた…!?)

 

「ふふふ…。どうした人間。足がすくんで動けぬか?それとも本能が動けば首が吹き飛ぶと悟ったのか?」

 

「…離れろ!!」チャキ…

 

次の瞬間ブラックの周りに無数のナイフが浮かび一斉にブラック目掛けて飛んでくる。

 

「ふっ…」シュンシュンシュン

 

ブラックは最低限の動きだけでナイフを全て避けきった。

 

「なっ…!?」

 

「そんなオモチャでこの私を倒せるとでも思ったのか?」

 

「…馬鹿な…!」

 

「……気が変わった。今日の所は生かしてやろう。それに、貴様が黒幕だと言うのならいつでも始末出来ることが分かったわけだしな…。」

 

「ぐっ……!」

 

「ふん、精々短い余生を謳歌すればいいさ。」

 

シュピン

 

そう言い残しブラックは消えた

 

「……おのれ!!」

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

次の日。

ペコリーヌとキャルはギルドハウスの掃除をした後、天気がいいため屋根の上で気持ちよさそうに寝ていた。

 

 

「気持ちいいですねー。お掃除も終わったし、後はユウキくん達が来るのを待つだけです!」

 

「寝るーー!」

 

キャルも気持ちよさそうに体を伸ばす。

 

一方ユウキはおつかいのためコッコロと街にキノコを買いに来ていた。

 

「キーノーコー、キーノーコ、キ…」

 

ユウキがキノコを探して店を見ていると商品の棚に見た事があるような目がイッちゃってる丸太を見つけた。

 

『BBダーン…。』

 

ユウキは何事も無かったように立ち去ろうとしたがエルフの少女に肩を掴まれた。

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!BB団!BB団をお忘れですかぁぁぁ!!!」

 

エルフの森で出会ったボッチのアオイだった。

 

話を聞いてみると聖テレサ女学院という学校に転入したが友達が1人もできずユウキに助けを求めたそうだ。

 

ユウキはその話を聞きコッコロと共に聖テレサ女学院の様子を見に行った。

 

「ここが聖テレサ女学院でございますか…。」

 

「おー。」

 

「なんで私まで…?」

 

「まぁまぁキャルちゃん!どうせ暇だったんですしいいじゃないですか!」

 

ユウキは暇そうにしてたキャルとペコリーヌも連れてきた。

 

「それにしてもお嬢様ばっかりねー。さすがは名門学校ってわけ?」

 

「皆さんとても言葉使いが上品ですね。ヤバイですね!」

 

道行く人は上品な人ばかりだ。

 

 

 

 

「ごきげんよう…。」

 

「あらごきげんよう…。」

 

女子生徒同士が挨拶を交わす。

 

「ごきげんよう。」

 

「あらゴクウさんごきげんよう。いい朝ですね。」

 

女子生徒と黒い道着を着た人物が挨拶を交わす。

 

 

流石お嬢様学校なだけあって丁寧な挨拶が飛び交う。

 

「…ん?」ゴシゴシ

 

キャルは幻覚でも見ているのかと思い込み何度も目を掠った。

 

「なんと上品な挨拶…!」

 

「なんか、すごい!」

 

「ヤバイですね!」

 

「『ヤバイですね!』じゃないわよ!今明らかにおかしな奴いたわよね!」

 

「ま、眩しい!アオハル!!あれこそ若者が謳歌するアオハルと言うもの!!」

 

「話を聞きなさいよ!」

 

アオイ達はは茂みの中から学院の様子を覗いていた。するとそこに、

 

 

「そこで何をしているのだお前達。」

 

ペコリーヌ達に気づいたブラックが茂みまで歩いてきた。

 

「ゴクウ様!?どうしてこちらに…?」

 

「ゴクウ!?」

 

「ゴクウさんもいたんですね!」

 

「あ、あばばば……!」

 

「急に出てくんなあ!!あんたこそこんな所でなにやってんのよ!ここはお嬢様学校よ!?アンタみたいな奴が入ったら通報されるわよ!!」

 

「ん?私はこの学校に通っているのだ。見て分からぬか?」

 

「分かるわけないでしょ!!ヤバイわよ!?」

 

「…やかましい女だ。」

 

「ゴクウ様は何故この学校に通っているのですか?確か女性の方のみが通える学校でございますが…。」

 

「まあ、色々あってな。最初はルーセント学院で勉強していたんだが『イオ』とか言うやつにこの学校に行くように推薦されたのだ。」

 

「そういえば…男女共学化に向けて模範となる男子学生を募集していた気がします…」

 

「そう、それが私だ。それで?お前達はここで何をやっている。」

 

「こちらにいらっしゃるアオイ様の付き添いでございます。」

 

「付き添い?」

 

「はい…。実は今日はこの学院の優秀な先輩に呼び出されておりまして…ユウキさん達も着いてきてくれませんか?」

 

「はぁ…一人で行けないわけ?」

 

「キャルちゃん!人助けですよ!」

 

「…分かったわよ。」

 

「あまり騒ぎは起こすなよ?」

 

「あんたにだけは言われたくないわよ!」

 

「BB団は困った人を見捨てない!」

 

「ユウキさん…!流石BB団、団長!」

 

アオイは目を輝かせてユウキを称えた。

 

「違うよ?」

 

ユウキはばっさりと否定した。

 

 

 

大図書館

 

 

 

コンコン

 

「失礼します…」ガチャ

 

広い図書館にノックの音が響き渡る

 

「あ、あれ?来るの早かったですかね?」

 

中に入ると膨大な数の本が並べられた光景が広がっている。

 

「すごい書庫…」

 

「…これ程の書物があるとはな。」

 

「広いですね!」

 

「結構な数の本があるわね…」

 

「ここは象牙の塔と呼ばれる図書館棟でして…歴史や科学、魔法や哲学などありとあらゆる本が所蔵されてる場所なんです。」

 

「ん?何故こんな所に本の山が…。」

 

ブラックは本の山を片付けようと一冊の本をとった。すると…

 

「…。」

 

ブラックが本を一冊どけると本に埋もれていたのか小さな少女の顔がこちらを見ていた。

 

「…。」ソッ…

 

ブラックは静かに本を元の場所に戻した。

 

「少年、戸惑うのは分かるが現実から目を逸らすものじゃあないよ。」

 

「誰が少年だ。貴様こそこんな本に埋もれて何をしている。」

 

「このまま書に埋もれ、儚く消えゆく運命かと思ったが…僕は『ユニ』。聖テレサ女学院象牙の塔に学ぶ者だ。」

 

「あの…何処かお怪我を?」

 

「いや?探し物をしている内に本が雪崩てね、一晩中閉じ込められていた。端的に言うと、ビックリして腰が抜けた。」

 

「えぇ…(困惑)」

 

「ヤバイですね!」

 

「無様だな。」

 

「君たちは?」

 

「アオイ様の付き添いに…私コッコロと申します。」

 

「…孫悟空だ。」

 

「キャルよ」

 

「私はペコリーヌです!」

 

「ユウキ!」

 

ユウキは自己紹介をしながら倒れているユニにおにぎりを渡した。

 

「これは!穀物の塩化ナトリウム漬けじゃあないか!」

 

「…ハム…アムアム…」

 

ユニはユウキに渡されたおにぎりを寝ながら頬張る。

 

「なんと!穀物の塩化ナトリウム漬けの中から塩化ナトリウム漬けの梅か!」アムアム…

 

「メモメモ…ん?」

 

「「「「「「??????」」」」」」

 

ブラック達はユニのことを不思議そうにみていた。

 

「僕は所謂メモ魔でね、日常の中で得た学びや築きを書き留めている。」

 

「ユニ先輩は論文も書かれているすごい方なんです!」

 

「どんな?」

 

「なんとも気恥しい紹介のされ方だが僕の研究テーマは…あれ?ド忘れした…そうだメモに…」ペラ…

 

「改めまして、はいドーン。世界に蟠る根源的な虚構…まさにこれなのだよ。忌まわしい忘却現象…。」

 

「…。」

 

「ぼかぁね、この世界には何か大いなる欺瞞がある…と過程しているのだ。発表した暁には学会が震撼すること請け合いだ。」

 

「欺瞞…。」ガチャ

 

その時図書館棟の扉が開いた。

 

「ん?」

 

すると入ってきたのはピンク髪の少女と金髪のツインテールの少女だった。

 

「あれぇ?ヘルプに呼んだのアオイちゃんだけじゃなかったんですぅ?私、テレ女1年世界の美少女『チエル』んです!ちぇるーん…」

 

チエルがそんな挨拶をしながらアオイ達を見ると

 

「…」イラァ…

 

一人だけチエルの挨拶をよく思わない男が1人いた。その男は無言でチエルに対し殺気を飛ばす。恐らく前までのブラックだったら有無を言わず殺していただろうが随分と丸くなったものだ。

 

「え、あ、ごめんなさい調子乗りました。」

 

「チエル、初手にそのクソ寒いノリぶっ込むのやめてくんない?てか急に大人しくなってどしたん?」

 

「いえ、なんでもないです…。」

 

チエルは下手をしたら殺されると悟り大人しくなった。

 

「…はあ、ども、はじめまー、テレ女2年の『クロエ』っす。」

 

「あ、そうだ、先生から許可証ちぇるっと貰ってきたましたよー!」

 

「これで奨学金も勝ち確じゃね?」

 

「奨学金?」

 

「あー、ここお嬢様学校だけど…ウチらそういうのじゃないから。」

 

「ユニ先輩なんていつもサプリでお腹満たしてますもんねー!」

 

「我々は奨学金獲得のために集った同士…その名も高き『ユニちゃんズ』だ!」

 

「…それ秒でボツったやつじゃん…。」

 

「正しくは、その名も高き『なかよし部』ですよn」

 

「アオイくん!」

 

「(・×・)キュ…」

 

ユニはチエルの言葉を遮る。

 

「フォレスティエで森の培土を担っていた君の英智を貸してほしい。」

 

「私の!?」

 

「最近噂になってる怪異についてだ。」

 

「もしかして緑の守り人事件!?」

 

「然り…。」

 

「緑の守り人事件?」

 

「うむ…学院の裏に広がる森は、学生が下校の際に使用してるのだが、そこに奇妙な声がするという噂があってだね…。」

 

「被害が出る前に、この事件の謎を解き散らかし、皆が安心して通学出来るようにしようではないか!」

 

「君たちにも協力してもらいたい。」

 

「くだらん噂だな…。」

 

「そうよ、ただの噂に決まってるわ!」

 

ブラックとキャルは全く信じていなかった。

 

「そうですか?私は気になりますけど…。」

 

「主様、如何なされましょう。」

 

「…行こう!」

 

「協力感謝する…それでは出発しよう!」

 

そうして学院の裏の森に行くことになった。




ストックがなくなったため次回の更新日は未定です…。


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歪んだ正義感

森に入ります。


学院裏の森

 

 

 

 

「…ご、ごごご、ご協力ありがとうございます!!」

 

アオイは緊張して何度も頭をさげる。

 

「BB団の団結力も大したものだ。」

 

「いつからBB団になったのよ……。」

 

「まあまあ…。」

 

「何故私まで……!」

 

「ゴクウ様が傍にいると…とても頼もしいです!」

 

「ゴクウよろしく!」

 

「ふん……。」

 

しかし日が落ちてからの森の中は不気味だ。

 

「改めて見るとやばやばの暗黒大森林って感じですね…!」

 

「これアレじゃん?恐ろしめのバイブスガン決まって、風の音とかが人の声に聞こえちゃった系の…。」

 

「推論の検証こそ学びだよ。真実はこの森の中だ。」

 

「では、参りましょう!」

 

「いざ!」

 

 

「「しゅっぱーーーーつ!!!!!」」

 

「……。」

 

こうして深い森の中に入っていくのだった。

 

 

道中

 

 

「…予備?」

 

「そう、予備だ。オリジナルのメモは行方不明、私的の情報もあるのでユニちゃんちょっと不安…。」

 

そのような会話をしながら進んでいると

 

「グワァァァォァァァァ…………」

 

「!?」

 

突如何かの叫び声のようなのものが聞こえてきた。

 

「ちぇる!?」

 

「び、ビックリした……!」

 

「ワクワクしますね!謎に迫ってる感じが!」

 

「然り、緑の守り人が何者であろうと未知への介入は心躍る学びだ。その結果が徒労に終わったとしても。」

 

「え?徒労って無駄ってことでしょ?」

 

「ぼかぁね、知的探求において真意や真理は二の次だと考えている、学びにおいて寛容なるは正しく知ること、そのものであって答えなど副産物に過ぎないのだよ。」

 

「なるほど…。」

 

(学びにおいて寛容なるは正しく知ること、か……。)

 

ユニの発言した言葉がブラックの心に刻まれる。ブラックは過去に人間を悪と決めつけ排除しようとしていた。だが今はどうだろうか、憎むべき人間と共に長い時間を過ごしたブラックは今の人間をどう思っているのか……。

 

すると突然。

 

「あれ?こんな所に墓地なんかあったっけ?」

 

クロエ達が歩いていると急に墓地があったのだ。

 

「は、初めて見ました…!」

 

アオイも初めて見たようだ。

 

「…ふむ、少々調べてみようか。」

 

ユニ達は手分けして墓地を調べる。

 

「クレレノスの王、ここに眠る…。」

 

ペコリーヌ達は一つのお墓を調べていた。

 

「クレレノス?」

 

「聞いたことない国ですね…。」

 

「ふむ…。」カキカキ

 

ユニはメモをとった。

 

やがて調査も終わりユニたちは先へ進む。

 

「凄い霧…迷いそう…。」

 

「心配ご無用。」

 

するとユニはポケットから何やら石ころのようなものを取り出す。

 

「現在位置を。」

 

『ポーン、北緯35度44分、経度139……』

 

ユニが喋りかけるとその石ころが反応して座標を言った。

 

「石が喋った?」

 

「どういう事だ!?」

 

「ぼくの愛玩鉱物、『ロゼッタ』だ。」

 

「ただの小石でしょ!?」

 

「時として孤独は人を狂気に誘う、長きに渡る引きこもり生活中話し相手の必要性を感じた僕が道端の石ころに仮想自我を付与したものだ。」

 

「そのような事ができるとは…。」

 

「見た目通りお硬いやつだが仲良くしてやってほしい。」

 

『初めてだから優しくしてね。』

 

「ロゼッタさえ居れば迷うことはないよ。」

 

すると、

 

「あれれ?」

 

「ん?」

 

ユニ達が先に進むと目の前にはまた墓地があった。

 

「またお墓が…?」

 

「この森、墓地三昧だったんですね。」

 

「いや、どうやらそうではないらしいな。」

 

ブラックは異変に気がつく。

 

「「「「「!?」」」」」

 

「ど、どういう事ですか?」

 

「この墓はさっき来た場所と同じだ。」

 

「はわわわわ……。」

 

「は?なんそれウケる。」

 

「だって…真っ直ぐ歩いてきたのに?」

 

ユニは不審に思いポケットからロゼッタを取り出す。

 

「オーケーロゼッタ、現在位置を。」

 

しかし、

 

『……。』

 

ロゼッタは反応しない。

 

「ロゼッタ、現在位置を。」

 

もう一度問いかけると、

 

『ほ、北緯、、35ぉおおぉぉぉどおおおおおおぉぉぉ!!!』

 

「「「「「いやああああっ!!!」」」」」

 

「……。」

 

ロゼッタらしからぬ不気味な音声が流れた。

ユニ達は驚愕し調査をしていたペコリーヌとブラックを置き去りにして全力で逃げ出した。

 

「ま、待ってください!!」

 

「くだらん……。」

 

ユニ達は全力で森を駆ける。

 

「イヤア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァァァァァァァァァ!!」

 

「ユニ先輩!!いい加減その石捨ててください!!」

 

ユニはロゼッタを両手で持ちながら全力で走る。

 

『ぉぉおおおお……。』

 

「こ、こわ!何これ興味深ああーー!!」

 

逆にユニは興奮しているようだ。

 

そうしてユニ達が行き着いた場所には……

 

「オオオオオオオ…………。」

 

謎の巨大な影に包まれた魔物らしきものがユニ達を囲むようにしていたのだ。

 

「み、緑の守り人……!」

 

「……は?」

 

アオイは何言ってんだこいつみたいな顔でチエルを見た。

 

「ガチじゃん、ウケる…。」

 

「え?は?」

 

アオイはチエルの時と同じような顔でクロエも見た。

全員が恐怖する中、何故かアオイだけが平然としている。

 

ユニ達は恐怖のあまり再び走り出す。アオイを除いて。

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

「アオイちゃんがいません!」

 

「はぐれちゃった!?」

 

「探そう!」

 

ユニ達は逃げることに集中しアオイが居なくなってることに気づかなかった。

 

「…単独行動は危険だ、二手に別れよう…!」

 

こうして二手に別れてアオイを捜索する事になった。

 

「…アオイ様ー!」

 

「アオイちゃーーん!!」

 

「アオイー……。」

 

「一体何処に……。」

 

「こ、こんな時こそ元気ちぇる盛りで上げてこ上げてこ!ちぇるーん!!さあ!一緒に!!」

 

「「ちぇ、ちぇるー…ん。」」

 

コッコロとキャルは一応チエルのキャラに合わせる。

 

「ちぇるーん!ちぇるるるるーん!ちぇるるるーるるーん!」

 

チエルが一人で進んでいく。すると、

 

「ヂェェェェェェェェ!!!!!!!」

 

「「「「!?」」」」

 

チエルが突如叫んで姿を消した。

 

声のした方に向かうとチエルが髪に付けていた星の様なアクセサリーが落ちていた。

 

「どういう事よ!どういう事よ!」

 

「お、落ち着いてくださいまし、キャル様……?」

 

コッコロとキャルが後ろを振り返るとクロエも姿を消していた。

 

「クロエ……様?」

 

「……コロ助、気を抜いちゃダメッ…!?」

 

キャルがもう一度振り向くと次はコッコロが居なくなっていた。

 

「いやぁああああ!!!」

 

次々と人が居なくなる謎の現象…遂にキャルは悲鳴をあげて逃げ出した。

 

「はぁ、はぁ……!!」

 

キャルが必死に走っていると目の前にはユウキの姿が……!しかし、

 

「うわぁっ!!」

 

ユウキの元に辿りつく前に木の根に足をとられ転んでしまった。

 

キャルは起き上がり何かに気づく。

 

「これって……!?」

 

その時だった。

 

ゴキッ

 

謎の人物によってキャルの首が曲がっちゃ行けない方向に曲がる。

 

キャルは気を失った。

 

キャルを気絶させた人物は……

 

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

倒れているキャルに落ち葉を大量に被せるアオイだった。

 

「びびびビックリシタヨネ、マサカボクタチノ会話聞かれてたなんて。」

 

「緑の守り人ナンテナマエツイチャッテル。」

 

アオイの一人芝居劇場がはじまる。

 

どうやらチエル、クロエ、コッコロが突然居なくなったのもアオイの仕業だったらしい。

 

「ただでさえぼっちなのに正体が私だってバレたらもう、ぼっちオブザぼっち確定ですぅ!都会で出てきて寂しかったからマイフレンドくんを作っておしゃべりしてただけなのにぃ!!!」

 

「ミ、皆ガ気ヲ失ッテル間ニ僕タチヲ片付ケナイト!」

 

「そ、そうだね!!」

 

カチ…

 

アオイがせっせと落ち葉を被せてると後ろから何やら音がする。

 

「ん?」

 

「……。」

 

「……。」

 

「……。」

 

ペコリーヌ、ユウキ、ユニだった。3人とも死んだような目をしながらアオイを見ていた。

 

「んんんんんんんん?????」

 

「ち、ち、違うんですぅ!これはあのぅ、その!深い訳がぁぁぁぁ!!!」ポンッ

 

アオイの肩に謎の硬い物が置かれる。それは、

 

「カタカタカタ……。」

 

なんと動いている骸骨だった。

 

「おっふ……。」

 

アオイは泡をふきながら気絶した。

 

パシッ

 

「お前達の跡をつけて来てみれば…これはどういう事だ。」

 

遅れてきたブラックが倒れるアオイを受け止める。

 

「ゴクウさん!」

 

すると突然周りの景色が変わり始めた。

 

「!!」

 

「「「!!!」」」

 

突如静かな森から建物が炎に包まれ、大量の骸骨のいる景色へと変わったのだ。

 

「オオオオオオオ……!」

 

「これは、空間自体が変化したのか!興味深あああ!!」

 

ユニは目を輝かせながら興奮する。

 

「……大量の屍か。」

 

「ユウキくん!」

 

「うん!はぁぁぁぁ…!!」

 

ユウキはペコリーヌとユニをプリンセスナイトの力で強化する。

 

「おい、魔法かこれ!?何かが…何か僕の知らない力が!ほわああああ!なんかきたあああ!!!」

 

ユニの力が昂る。

 

「学びだこの野郎!!」

 

ユニは骸骨を殴る。

 

ユニの予想外の戦闘スタイルに骸骨も若干引いている。

 

「……まるで手応えがない。コイツらは本物なのか?」

 

「オオ、オオオオオオオ……!」

 

よく見ると骸骨の中に王冠を付けている骸骨が混じっている。

 

「待ってください!」

 

「ん?」

 

「ん?」

 

ペコリーヌは攻撃をするユニとブラックを引き止める。

 

「ォォォォォ…………!!」

 

その王冠を着けた骸骨は何かを訴えているように感じた。

 

そしてその骸骨は強烈な光を放つ。

 

「!?」

 

「この光、謎!はぁ、ぎゃあああ!興味深深あああ!!!!」

 

 

骸骨から放たれた光はブラック達に謎の光景を見せた。

 

 

これは1つの国の物語なのだろうか、王が小さな子供を抱っこしてとても幸せそうな光景だった。

 

しかし、直後に映し出された光景は幸せとは程遠い光景だった。街を焼かれ、人を焼かれ、何者かに襲撃されたのだろうか、大きな戦争が起こっていた。

 

王が一人佇みながら絶望しているのがよく分かる。

 

絶望と怒りに染まった王はこの国を襲った人間を1人残らず皆殺しにしていた。最後に生き残り、抱っこしていた子供までも殺されてしまった。

 

哀しみと絶望に染まった王は泣き叫んだ。

 

「……………………。」

 

ブラックはその光景をみて何かを思ったのか動きが止まった。

 

「!?これは……!あの骸骨の記憶!?」

 

「……。」

 

骸骨の記憶を見たペコリーヌは骸骨に歩み寄る。

 

「……ペコ?」

 

「貴方の想い…皆にも届いているはず。」

 

そういってペコリーヌは骸骨を優しく抱きしめた。

 

「ペコ…!」

 

「……。」

 

「きっと…あの子もこうして伝えたかったんだと思います。」

 

「『ありがとう』って…。」

 

「ァァァァァァ…………。」

 

ペコリーヌがそういうと骸骨は静かに光となって消えていき森も元の状態に戻った。

 

これでこの事件は解決した。しかし、

 

「……人間には、正義も秩序もない…神よりもたらされた知恵が……何の役にも立っていない…。」

 

「ゴクウ…?」

 

ブラックは先程の光景を見て人間の愚かさを再認識してしまった。

 

「……人間は不要だ。滅びるべきなのだ…。」

 

「ゴクウさん!!」

 

「!?」

 

するとペコリーヌはブラックに声をかけて意識をずらす。

 

「大丈夫ですか?具合でもわるいんですか?」

 

「…いや、問題ない。」

 

「たまには私も頼って下さいね!」

 

「…!!」

 

人間には悪ばかりではなくペコリーヌのような心優しい者もいる。

 

「…そう、だな…人間にはお前のような存在もいたな……。」

 

「ゴクウ、帰ろう!」

 

「然り、調査は終わった退散するとしよう。」

 

こうしてブラックは気絶していたキャルたちを連れてペコリーヌ達と共に森を抜けた。

 

ブラックの人間への考え方も少しは成長したようだ。

 




案外書くの疲れるけどたのちい


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ゴクウさんじゃない

ヒーローズ要素を入れるのはどうかと思ったがネタが思いつかなかった



ある日、ブラックはアメスに呼び出されていた。

 

「久しぶり、最近調子はどう?」

 

「…問題ない。」

 

ブラックはアメスと向かい合わせに座り紅茶を啜りながらそう答える。

 

「それはよかったわ…ユウキ達は上手くやっているかしら。」

 

「…確かにアイツらは人間にしては利口だが、はっきり言ってあのままでは黒幕というのは倒せないだろうな。」

 

「ええ、確かに難しいのかもしれないわね。」

 

「そういえば…この前『陛下』と呼ばれているやつと接触した。」

 

「それってまさか『覇瞳皇帝(カイザーインサイト)』…!?」

 

「ほう、カイザーインサイトというのか。」

 

「それで…どうだったの?」

 

「奴はやはり何かを企んでいるな…無論私の敵ではないのだが何か不自然だ。それに、キャルの身が危険かもな。」

 

「ゴクウ……アンタはカイザーインサイトを甘く見ているわ…。本気を出したカイザーインサイトはユウキ達が束になっても、ラビリスタ達が手を貸しても勝てなかった。それは(まさ)しく『神の力』よ。」

 

「神の力?笑わせるな。人間が神に力を語るなど許されることでは無いぞ…。」

 

「…とにかく、ユウキ達はこのままではまたやり直す羽目になってしまうわ。アンタもそろそろ本気になりなさい?」

 

「…決着をつけるのはアイツらだ。私はそれに少し手を貸すだけだ。」

 

「なら少しだけでもいいからユウキ達に修行でもつけてくれない?」

 

「修行だと?」

 

「ユウキ達に手を貸すんでしょ?」

 

「…ふん、確かに私はアイツらには柄にもなく甘かったからな…。そろそろ身を引いた方がいいかもな。」

 

「…身を引く!?」

 

「ああ、私はアイツらとは馴れ合いすぎた、そろそろ頃合だろう。私が敵になれば奴らは死ぬ気で強くなるだろう?」

 

「……それは、どうなのかしら…。まあやり方はアンタに任せるわ。」

 

「簡単な話だ…アイツらの怒りを引き出してやればいい。」

 

そうしてブラックはその場から姿を消した。

 

「……夢の中なのに紅茶を飲むなんて斬新ね。」

 

 

その後アメスに修行をつけてあげて欲しいと言われたブラックは……

 

 

「グオオオオオオ!!!」

 

「いやああああああ!!!!」

 

「こんなの聞いてないですよおお!!!!」

 

「あわわわわ……」

 

「……。」

 

危険な魔物が多数生息していると言われる『怪獣島』にユウキ達を放置していた。

 

 

「ちょっとゴクウーー!!いきなりこんな島に連れてきてどういう事よ!!」

 

「ゴクウさんって結構鬼畜なんですか!?」

 

キャル達は魔物から逃げながら必死にブラックに問いかける。

 

「……。」

 

そんなキャル達をブラックは上空から見ていた。

 

「さあ、闘うがいい。お前達の成長が、私の計画の力となる。」

 

「ぶっ殺すぞーーー!!!!!」

 

「……ん?」

 

ブラックが上空から見ていると、キャル達は魔物から逃れるために洞窟に身を隠していた。ペコリーヌは既に体力を使い果たしてうつ伏せになって倒れている。

 

「闘いから逃げるとは…臆病者め。」

 

「グオオオオオオオオオ……。」

 

魔物が洞窟の側に近寄る。

 

「……頼むから気づかないで…!」

 

「…非常にマズイ状況でございますね…。ゴクウ様はなぜ急に私たちをこのような島に連れてきたのでしょうか…。」

 

「なんでだろう。」

 

「確かにそれも気になるけど…今はそういう状況じゃないでしょ…!このままじゃ私たちはあの化け物に美味しく食べられちゃうわよ!」

 

「怪獣さんが私を美味しく食べてくれるなら本望です…!」

 

「怖いこと言ってないで静かにして!」

 

「グガァァァァァ!!」

 

「え!?」

 

巨大な魔物はキャルたちを見つけると大きな爪を洞窟に入れてキャル達を捕らえようとしていた。

 

「いやああああああ!!!帰る!!もうお家に帰るぅぅ!!!!!」

 

その時だった。

 

「ウルフェンバイトォォ!!!!」

 

「……なにっ!?」

 

突如空から降ってきた謎の人物が崖を剣で真っ二つにし、巨大な魔物を岩の下敷きにした。

 

「グワァァァァォ…!!」

 

魔物は絶命したようだ。

 

「仕方がない、作戦は変更か…。」

 

ブラックは地上に降りていく。

 

「…私たち助かったのね…えーっと…」

 

「私は『マコト』だ。」

 

どうやらマコトという獣人族の女の子が助けてくれたらしい。

 

すると…

 

 

「「「おーい!!!」」」

 

マコトの他にも3人の仲間がいた。

 

それぞれ『マホ』『カスミ』『カオリ』と言うらしい。

 

「無事でよかったさ〜!」

 

「無事でよかったわ〜。」

 

「怪我がなくて何よりだよ。」

 

「…皆様、危ないところを助けて頂きありがとうございました。」

 

「ありがとう!!」

 

「本当にありがとうございます!」

 

「別にそんなのいいって、てか何であんな化け物に追われてたんだ?」

 

「それは…。」

 

コッコロが言う前にその元凶が上空から降りてくる。

 

ストン…

 

「今飛んでたさー?」

 

「何者だ!?」

 

「一体どういう事だい?君が仕組んだのか?」

 

「不思議なお方やわ…。」

 

「……。」

 

ブラックは無言でペコリーヌ達に凄まじいプレッシャーを放つ。

 

「アンタがやったのか?」

 

マコトがブラックに問い詰めようとした瞬間、ブラックの空気が変わった。

 

「……余計なことをするな。」

 

ブラックは突如超サイヤ人に変身した。

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「…お前達の相手はこの俺だ。」

 

ブラックは金色のオーラを放ちながら低い姿勢の構えをとった。

 

「色が変わった…!?姫さんは隠れててくれ!」

 

「マコトはん…!」

 

「くっ、マズイようだね…!」

 

「闘うさー!?」

 

当然マコト達もブラックを迎え撃つべく戦闘態勢に入った。

 

「ゴクウさん……?」

 

「何で…?」

 

「ゴクウさま…。」

 

「…アンタ、どういうことよ!」

 

当然の疑問だ。先日までブラックと協力して平和な日を過ごしていた筈なのに、何故今この場にいるブラックは優しさの欠けらも無い冷徹な男なのか?

 

「……本当に愚かだな、人間というのは。」

 

次の瞬間、ブラックは目に見えないほどの速さで移動し、マホを人質にとった。

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「え……?」

 

「ふふふ……。」

 

ブラックは不敵な笑みを浮かべている。

 

「あんた……!!」

 

「マホ様!!ゴクウ様…どういう事でございますか…!」

 

「マホさん!!」

 

「何するさー!!」

 

「姫さん!?てめぇ!姫さんを離しやがれ!!正々堂々闘え!!!」

 

マコト達のブラックへの怒りはどんどんあがっていく。

 

「戦うとも…。守るべきものを守れなかったお前達が怒りの力で更に強くなったらな。」

 

ブラックはペコリーヌ達を見下しながら挑発した。

 

「……!!!」

 

するとブラックのその姿を見たペコリーヌは戦慄した。

 

「…ゴクウさん、ではなく……『ゴクウブラック』……??」

 

ペコリーヌはこの前見た夢の内容をしっかりと脳裏に刻んでいたのだ。人間を根絶やしにし、街を焼き尽くしたブラックの姿を。

 

「何!?」

 

ブラックは驚きのあまり、マホを解放する。

 

「姫さん……!!大丈夫か?」

 

「ええ、何ともありまへん…。あの人、ウチが苦しくないように腕を緩めててくれてたわぁ。」

 

「…ペコリーヌ?あんた、急に震えだしてどうしたの!?」

 

「ペコリーヌ様!!」

 

「ペコ!!」

 

「ゴクウ、ブラック……。」

 

ペコリーヌは震え、最早闘う所では無い。

しかしブラックはペコリーヌに問いかける。

 

「……貴様、その名を何処で知った…!!」

 

「ゆ、夢…夢に……!!」

 

「どういう事よ……『ゴクウブラック』って何なのよ……!!」

 

「…確か、『トランクス』さんって人が……!」

 

トランクスという名前の青年の事も覚えていた。

 

「…トランクスだと!?何故貴様がトランクスを知っている!!」

 

「……きっと、何かの間違いです…ゴクウさんは、あんな酷いことをする人とは思えません……。私が見た悪夢だったんです………。」

 

「貴様……ここは一旦引くか……。」

 

シュピン

 

「ゴクウ様!!」

 

「ゴクウ!!」

 

「ゴクウ!?」

 

 

 

ブラックは一旦島の外れに瞬間移動する。

 

 

 

「……どういう事だ、何故私の正体を知っているのだ…。」

 

「それはボクが教えたんだよ。」

 

「…ッ!?誰だ!!」

 

突如ブラックの背後から声が聞こえる。

 

「ボクは『フュー』アメスの友達さ。」

 

その男は『フュー』と名乗り、肌は紫色、ポニーテールに丸メガネをかけた青年だった。

 

「アメスの友達だと?嘘をつくな。ペコリーヌに何をした。」

 

「あっはは!!別に大したことはしてないよ!彼女には夢を見てもらっただけさ。君の前の世界でしていた事のね。」

 

「貴様!!」

 

ブラックは気弾をフューに放つが、フューは片手でそれを弾く。

 

「!?」

 

「それにしてもびっくりしたよ!君がこの世界でこんなに改心していたなんてね。」

 

「改心だと…?ふざけるな!私は人間を絶滅させる。」

 

「そうかな?それなら彼女達と戯れてないでさっさと絶滅させればいいじゃん。」

 

「黙れ、私に何の用だ。」

 

「全くせっかちだな…ま、こうやって来たのは大事なことを君に教えようと思ってね。」

 

「大事なこと……?」

 

「…君の『身体』には限界がくる。」

 

フューはブラックの身体に限界がくるという衝撃の言葉を口にした。

 

「なんだと…?」

 

「今のままだと黒幕を倒す前に力尽きてしまうだろねー。」

 

「馬鹿な…そんなはずはない、この身体は最強だ…。」

 

「だから君の限界を超える『アイテム』を持ってきたんだ。」

 

「アイテム?」

 

「そう…これさ。」

 

フューがそう言って見せた物は紅いラインの入った仮面だった。

 

「仮面だと…?」

 

「君はどうやら彼女達を強くしたいんだよね。でも今のまま会っても彼女達は君を受け入れてくれるのかな?」

 

「…貴様が余計なことをしなければよかった話だ!」

 

「その仮面を付ければ正体がバレずに彼女達に敵として堂々と姿を現せるでしょ?それにちょっとしたオマケもしておいたからさ。」

 

「……。」

 

「ふう、この世界にくるの本当に苦労したんだよ?エネルギーも使いすぎちゃったしもうこの世界には二度とこれない…君の事も見納めだ。」

 

「貴様が私のことを一方的に知っているような口ぶりだな。」

 

「君の色々な()()を見てきたからね。」

 

「……そんな話に興味はない。」

 

「この世界では幸せそうでよかったよ。もう会うことはないだろうけど元気でね〜!」

 

フューはそう言って次元の狭間に消えて行った。

 

「……私の()()か…。」

 

ブラックは一人そう呟く。

 

「……私はこの世界を生き抜いてみせる。」

 

ブラックはフューに貰った仮面を服の中にしまった。

 

「私の限界は私が決める…この仮面は今の私には必要ない。」

 

「それより、ペコリーヌ達の誤解を解かねばな…。」

 

ブラックは再びペコリーヌ達の下に向かった。




※フューは二度と登場しません。と思ったけどやっぱり出てくるかもしれません。


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ブラックジョーク

キャ虐はしてはいけない(戒め)


フューという男と話した後、ブラックはペコリーヌ達の様子を伺いにまた戻ってきた。

 

 

シュピン

 

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「やはりか…。」

 

ペコリーヌは先程のショックがかなり大きかったのか、うなされていた。

 

「…あんた、何しにきたわけ?」

 

キャルの言葉の節々から怒りが伝わってくる。

 

「お前たちの誤解を解きにきた。」

 

「誤解…でございますか…。」

 

「わた、し…は、名、探偵…。」

 

「…!?シャドウ…?」

 

ブラックは牢の中にいるカスミに似ているシャドウに気づき取り乱した。

 

「…なんだそいつは…!お前に似ている様だが…。」

 

「その子の名前は『キーリ』。と言ってもその単語を何度も繰り返し喋るからつけた仮の名前だが…。」

 

「先…輩…。」

 

キーリはまたしても謎の単語を喋る。

 

「…襲ってはこないのか?」

 

「今のところその様子はないね。」

 

「おいお前!そんな事より姫さんを人質にとった理由を話してもらうぜ。」

 

「マコトはん…うちのことは気にせんでも…。」

 

「そうはいかないよマホさん、しっかりと説明してもらわなければ。」

 

「なんであんなことしたさー?」

 

「ゴクウ…。」

 

全員がブラックに不信感を抱いている。

 

「何から話すべきか…まずはお前たちをこの島に連れてきた理由だ。」

 

「確かに…気になってはいましたが。」

 

「なんで?」

 

「…お前たちを鍛えるためだ。」

 

「なんですって?」

 

「…お前たちははっきり言って私の足手まといだ。その程度の力でシャドウと闘っていくなど出来るはずがない。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「…そんな下らない理由で私達は死にかけたの?」

 

キャルは理由を聞き更に怒りが膨らんだ。

 

「…確かにあの程度の魔物を殺せないようなお前たちに期待した私が愚かだった様だな。」

 

そしてブラックもまた挑発をしたその時だった。

 

「…!!」

 

バチンッ!!

 

「キャル様!?」

 

「キャル!?」

 

「「「!?」」」

 

キャルはブラックの頬を思い切り叩いた。

 

「……。」

 

当然ブラックにダメージはない。

 

「……信じられない、私達が足手まといなら関わらなきゃいいじゃない…私達のことなんて放っておきなさいよ!!」

 

キャルは涙を浮かべながらブラックにそう返した。

 

「…どうやら余計なお世話だった様だな。」

 

ブラックは扉の方に向かって歩いていく。

 

「お、おい!」

 

「ん?」

 

「姫さんを人質にした理由は…。」

 

「無論アイツらを鍛えるためだ。人間は怒りを力に変えることで強くなる。」

 

「やっぱり演技だったんやね…。」

 

「……すまなかったな。」

 

ブラックはマホに謝ると外へ出た。

 

「ゴクウ様!!」

 

「ゴクウ!!」

 

コッコロとユウキはブラックを追いかけたが既に見失ってしまった。

 

 

 

 

その日の夜

 

 

 

 

「あんた何してるのよ!!!」

 

「…嫌われてきただけだが?」

 

ブラックはアメスに説教されていた。

 

「あれは流石に言い過ぎよ!!」

 

「思ったことをそのまま言っただけだ。」

 

「折角絆を紡いだのに好感度を下げてどうすんのよ!!」

 

「そんなこと知るか、過程がどうであろうと私が元の世界に戻れればどうでもいいのだ。現に、キャルは怒りで力を高めていただろう?」

 

「あんたってドM?」

 

「なんの話だ。」

 

「なんでもないわ…。」

 

「一先ず、暫くはこれで行く。」

 

「…もうなんでもいいわ。」

 

アメスは呆れるとブラックを夢の世界から戻した。

 

「…ふう、ん?」

 

ブラックが目を覚ますと何やら素振りのような音が聞こえてきた。

 

「ふん!ふん!」

 

ユウキだった。一人でこんな夜遅くまで特訓していた。

 

「…ユウキの素振りを見るのは久しいな、私には前と変わらないように見えるが。」

 

ブラックはユウキの前まで移動する。

 

「ゴクウ!?」

 

「特訓か。」

 

「うん!」

 

 

ユウキとブラックが話していると…

 

 

「…お昼辺りから寝すぎちゃって夜は眠れませんね…。ん?あれはユウキ君と…ゴクウさん…!?」

 

ペコリーヌは二人に見つからないように、影からこっそりユウキとブラックの会話を聞くことにした。

 

「…あれからペコリーヌ達の様子はどうだ。」

 

「…キャルは怒って寝てた。ペコはうなされてた。」

 

「…そうか、アイツらには悪いことをしたな。」

 

「ゴクウさん…。」

 

ペコリーヌは離れた場所からブラックの本音を聞いていた。

 

「…お前は怒らないのか?」

 

「僕は、皆を守れるように強くなりたい。だから……ゴクウがこの島に連れてきてくれて、嬉しい。」

 

「…変わった奴だなお前は。」

 

「?」

 

「ユウキ、ペコリーヌに伝えて欲しいことがある。」

 

「なに?」

 

「盗み聞きとは趣味が悪いとな。」

 

「えぇ!?」

 

ブラックはペコリーヌがいることを最初から気づいていた。

 

「ペコ!?」

 

「あ、あはは…いつから気づいてました?」

 

「お前が外に出てきた時からだ。」

 

「最初から!?」

 

「…お前、もう平気なのか?」

 

ブラックは一応ペコリーヌのことは本気で心配していた。

 

「はい…沢山寝たら頭がスッキリしました。」

 

「おかしな夢は見ていないのか?」

 

「…ゴクウさん!」

 

「…………なんだ。」

 

「『ゴクウブラック』とはなんなのか…教えてください!」

 

ペコリーヌは何か決心したような真剣な顔でブラックに問いかけた。

 

「……『ゴクウブラック』とは…私の前の世界での呼び名だ。」

 

「前の、世界?」

 

「いずれはお前たちにも話そう、今はまだ私の正体は明かせない。」

 

「…分かりました!」

 

「…すまなかったなペコリーヌ、勝手にこんな島に連れてきてしまった。」

 

「…いえ、ゴクウさんが私達の為を思って連れてきてくれたんです…!私、もっと頑張ります!いつか、ゴクウさんみたく強くなれるように!」

 

「僕もゴクウみたいに強くなる!」

 

「…そいつは楽しみだな。」

 

「えっへへ…!」

 

珍しく3人は話で盛り上がった。

 

「そういえば…この島に異常はなかったのか?」

 

「ああ……そう言えばマコトさん達が何やら巨大なゴーレムに群がるシャドウを見たと言っていました。」

 

「巨大なゴーレムだと…?」

 

「はい。先程、ゴクウさんは居なかったんですが…『変貌大妃(メタモルレグナント)』という方の分身が私たちを訪ねてきたんです。」

 

「分身…?どういう事だ。」

 

「その…分身の本体はゴーレムのコアに変化していて、それを大量のシャドウが狙っているみたいなんです。」

 

「…なるほど、お前たちは明日、そのシャドウと巨大なゴーレムを討伐しに行くということか。」

 

「はい…ですがシャドウはもうゴーレムを呑み込んでしまったみたいなんです。」

 

「なんだと?」

 

「そして次は…魂を刈り取る為にこの島の住人を襲うみたいなんです。」

 

「そうか…この島に連れてきたのは私の責任だ…手を貸してやろう。」

 

ブラックは今回のことで責任を感じ手を貸すことにした。

 

「本当ですか!?ゴクウさんがいれば心強いです!」

 

「…さて、私はもう行く。お前たちも体を休めろ。」

 

「うん!」

 

「おやすみなさい!」

 

ブラックは空に向かって飛び去った。

 

 

 

次の日

 

 

 

ユウキ達は砦の上でゴーレムとシャドウを討伐すべく集まった。

 

ゴーレムの大きさは人間の数倍はあり、シャドウは蟻の大群のような数だった。

 

「…本当に来やがった!」

 

「武者震いしてくるさ!」

 

「シャドウの群れも脅威だが、村を守る壁をゴーレムに破壊されてはお終いだ…!まずはゴーレムを破壊、もしくは解放する事を最優先だ。」

 

「解放?」

 

「気になることがある。昨日現れた『変貌大妃』と名乗る少女だが、この世界を創った女神『ミネルヴァ』を生み出したという七賢者、『七冠』の一人が関する名だ。彼女がこの状況を打破する鍵になるかもしれない!」

 

カスミは的確に指示を出し、解放することを優先した。

 

「あんた、私の邪魔しないでよね。」

 

「こっちのセリフだ。あまり無様な闘いをするんじゃないぞ?」

 

ブラックとキャルは昨日の出来事がありなんかギスギスしている。

 

「まぁまぁ、キャル様にゴクウ様も…程々に…。」

 

「それでペコリーヌ、作戦は?」

 

「作戦は…闘って闘って皆を守るです!」

 

「はあ、だと思ったわ…。」

 

 

そして次の瞬間…!

 

 

「プリンセスストライク!!!」

 

ペコリーヌがゴーレムとシャドウ目掛けて豪快に攻め込んで行った。

 

今の一撃で大量のシャドウが宙を舞う。

 

ペコリーヌの攻撃と同時にユウキ達もゴーレムに向かい走り出した。

 

 

「行っけえーー!!!!」

 

全員でシャドウの大群を攻撃する。

 

マホは魔法でシャドウを拘束し、カオリはそのシャドウを軽やかな動きで蹴散らす。

 

カスミとキャルは魔法の連射でゴーレムを攻撃する。

 

ゴーレムは指先に禍々しいエネルギーを宿し、キャルに向かって放った。

 

「あ、やばっ!?」

 

キャルは身構えるが…

 

シュピン

 

ドォォォォォォン…!!

 

「え?」

 

「…無様な闘いをするなと言っただろう。」

 

間一髪でブラックが助けに入った。

 

「…誰も助けて欲しいなんて言ってないわよ!!」

 

「…お前の本当の力を見せてみろ。」

 

「…言われなくても分かってるわよ!グリムバースト!」

 

キャルが叫ぶと巨大な紫色のエネルギーがシャドウの大群の真ん中に放たれた。

 

ブラックに対してイライラしていたのか、威力は以前よりも格段にあがっていた。

 

「…ふん、やれば出来るじゃないか。」

 

「こうなったらとことんやってやるわよ!」

 

ペコリーヌ、コッコロ、マコトはシャドウを倒しながらゴーレムに接近していたが…。

 

「うおお!?」

 

ゴーレムはその巨体に似合わぬ速さで地面を抉りながら攻撃する。

 

「マジかーー!!!!」

 

マコトはギリギリ攻撃を回避し滑り込みながら距離をとる。

 

「ちくしょう…迂闊に近付けねえ!」

 

その時、ユウキがプリンセスナイトの力でマコト達を強化する。

 

「これは…!」

 

「…力が湧いてくる!!」

 

「ナイスです!ユウキくん!」

 

「燃えてきたぜぇ!!」

 

ユウキの能力によって強化されたマコトは高く飛び跳ねた。

 

「ぶっ飛べ!!ウルフェンバイト!!」

 

その威力は凄まじく人間の数倍もの大きさがあろうゴーレムが体勢を崩す程だった。

 

ペコリーヌ達は体勢が崩れたゴーレムに登っていく。

 

「光の精よ…!」

 

コッコロは光の精霊を出し、ペコリーヌ、マコト、カオリの3人をゴーレムの内部のコアまで運んで行った。

 

ゴーレムの内部はシャドウだらけで正直言ってめちゃくちゃキモい。

 

「あそこ!!」

 

カオリが指を指した方向には、確かにコアの中に囚われているピンク色の少女がいた。

 

「今助けるさー!!!」

 

カオリの強力な一撃で、一時的にシャドウはいなくなりペコリーヌとマコトが救出に向かう。

 

「…!!」

 

変貌王妃の意識が戻った。

 

しかしゴーレムの内部はぬかるんでて中々コアに手が届かない。

 

「もう、少し…!!」

 

「手を…伸ばせええ!!!!」

 

「…!」

 

変貌王妃は手を伸ばすが…あと少しの所でゴーレムに追い出された。

 

「ちくしょう!!」

 

マコトとカオリは精霊に連れられコッコロの下に戻ってくる。

 

「ペコリーヌ様は…!?」

 

ペコリーヌはまだゴーレムの上空にいた。

 

「諦めちゃダメです!!」

 

「プリンセスストライク!!」

 

ペコリーヌはゴーレムから放たれる黒い光線をプリンセスストライクでかき消しながら何度も放つ。

 

「プリンセスストライク!!」

 

 

「プリンセス…ストライク!!!」

 

そしてついにゴーレムの片腕を破壊した。

 

「凄い…!」

 

「これなら…!」

 

「……。」

 

ペコリーヌがもう一度叫ぶ。

 

「プリンセスストラーーイク!!!」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「何っ!?」

 

突如ペコリーヌは姿を消した。

 

「ペコリーヌ様!?」

 

ペコリーヌが何処に行ったかというと…

 

 

「!?」

 

「ようこそ…私の『ランドソル城』へ…『プリンセス・ユースティアナ』。」

 

どういう訳か覇瞳皇帝のいるランドソル城へ瞬間移動していた。

 

 

 

 




ここら辺の話の作画が凄かったことは覚えてる


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共同戦線

この話場面変わりが多すぎて書くのが大変…!


「……。」

 

「……。」

 

「……ペコリーヌの気が完全に無くなった…。」

 

ゴーレムへプリンセスストライクを叩き込んだペコリーヌは突如消えた。

 

 

「どうなってるんだ!」

 

「ペコリーヌはんは…一体何処に…?」

 

ゴーレムとシャドウは進行を続けている。

 

 

 

一方ペコリーヌは…

 

 

 

「…久しぶりね、お姫様。この城を逃げ出してからの旅はどうだったかしら?寂しかった?それとも辛かった?」

 

嫌味のような質問をペコリーヌに問う。

 

「…私をここに空間転移させる力を持つあなたなんですから私のことは把握してるんじゃないですか…!」

 

ペコリーヌは剣を構える。

 

「物怖じしないわね、今日は貴女を見定めるために呼んだの。その魂が…どれだけ甘美な果実に実ったのか、ね…。」

 

「…ッ!!」

 

 

 

 

その頃、カスミ達と一緒にゴーレムの所へ行くのは危険と判断されたキーリは牢の中で一人で何かを口ずさんでいた。

 

「探偵さん…探偵さん…私は名探偵になりたい。」

 

キーリは楽しそうに歌っていた。

 

しかし、誰もいない筈の部屋からガサゴソと物音がしていた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

ゴーレムとシャドウは相変わらず進行を止めずに進み続けている。

 

「ちくしょう…!」

 

「シャドウの群れもやけど…やっぱりあのゴーレムを止めんと…!」

 

「…あのゴーレムは私が食い止める。お前たちはここの住民たちを避難させろ。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

ブラックは自分が囮役を買って出た。

 

「ゴクウ様!?」

 

「あんた…!」

 

「……それに、キーリを置いてきたのだろう?早く行け!シャドウに襲われてるかもしれないのだぞ!」

 

「そうだったさー!キーリが大変さー!」

 

「確かに、キーリを安全な場所へ連れていかなければ…!」

 

「…あの堅物を止められるのは私だけだ…但し、長くは持たないぞ。」

 

「…ゴクウ…!」

 

「お前…!!アタシ達は住民を避難させてくる!」

 

「……死ぬんじゃないわよ……!」

 

「ふん、大きなお世話だ……よし、行くか!!」

 

ユウキ、カスミ、コッコロはキーリの下へ…

 

カオリ、マホ、マコト、キャルは住民たちの避難へ…

 

ブラックは超サイヤ人になりゴーレムとシャドウの大群へ一人で向かって行った。

 

「シャドウは滅する…!」

 

ブラックは次々に現れる大量のシャドウを倒していく。

 

「ォォォォォォォォォォォ…!!」

 

「…流石に数が多い…くぁっ!?」

 

ブラックはシャドウに集中していた為、ゴーレムからの攻撃の反応に遅れた。

 

「ぐはぁっ…!!」

 

ゴーレムよ攻撃によって数メートル殴り飛ばされた。

 

「……。」

 

「……掠めただけでこの威力とは……案外長く持ちそうにないな。」

 

「グォォォォォォォォ…!!」ブンッ

 

シャドウは一斉に体勢を崩したブラックに襲いかかる。

 

「…失せろ!!」

 

ブラックに覆い被さるように集まったシャドウ達はブラックの目力で全て吹き飛ぶ。

 

「はぁ…はぁ…!!」

 

「グォォォォォォォォ……!!」

 

シャドウの数は一向に減らない…寧ろ増えていっているように感じていた。

 

「……ふ、ふふふ…素晴らしい…!この痛みがまた私を強くする…!」

 

「…オオオオオオ…!」

 

「……。」

 

突如ゴーレム達の進行方向が変わった。

 

「…どういう事だ?」

 

ゴーレム達の進行方向が変わった原因はキーリだった。ユウキ達は無事にキーリを連れてくることが出来たようだ。

 

キャル達も住民の避難が終わり、崖の上で様子を伺っている。

 

「お、おい!アイツボロボロじゃねえか…助けにいかねえと死んじまう!!」

 

「……あのバカ…!私たちも加勢するわよ!」

 

「カオリはん、うちらも行きまひょ!」

 

「あの人を助けるさー!!」

 

ブラックがボロボロになっていた所、キャル達が駆けつける。

 

「…ゴクウ!あんた無事!?」

 

「…この私を、誰だと思って、いるのだ……!」

 

「息が絶え絶えじゃない!」

 

ブラックの体力はかなり限界に近かった。

 

「あんたは、休んでろよ!そのまんまじゃ死んじまうぞ!」

 

「いっぱい闘ったんだから休むさー!」

 

「…ゴクウはん、回復しないと危険やわ…!ウチの回復魔法で回復しとって?」

 

「回復魔法…?」

 

マホが呪文を唱えるとブラックの傷が少し治った。

 

「…助かったぞ、これでまだ闘うことが出来る…!」

 

「まだ闘う気なん!?」

 

「…ああ。」

 

ブラックは再び前線に復帰した。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ランドソル城

 

「……!!」

 

ペコリーヌの周りには小さな赤く輝く点々がペコリーヌを囲むようにして回っている。

 

その赤い点々の攻撃なのか…ペコリーヌに一瞬で頬とお腹に切り傷ができる。

 

「この城も…この国も、貴女の名前も全て、神たる私の供物にすぎない。その流れる血さえも…。」

 

「貴女の…貴女の目的はなんなのですか?王としてランドソルを納めたいなら、民の声をもっと聞いてください!皆が笑顔でご飯が食べられるように…!」

 

「少し、話をしましょうか…。」

 

「…!」

 

「貴女の名前や立場…ユースティアナという存在を奪ったのは、単なる偶然ではないわ。必然なのよ。この間違いだらけの世界ではね。」

 

「っ!!」

 

ペコリーヌの周りに浮かぶ赤い点々が再びペコリーヌの体に傷をつける。

 

「貴女のその決意に満ちた瞳…覚えているわ。そして、貴女の絶望の顔もまた、覚えているのよ。怖いのでしょう?忘れられるのが。」

 

「…!!」

 

ペコリーヌの顔が不安に歪む。

 

「ふっ…そう、その顔。」

 

「この城から逃げ出してから沢山の人達と出会ったようね。それにギルドなんか組んだりして。」

 

ペコリーヌは剣を構えたまま震える。

 

「ギルド…ああ、思い出したわ。貴女の仲間に『ソンゴクウ』っていう男がいたわね。」

 

「!!」

 

「気に入らないわ…あの全てを見下したかのような目…思わず殺したくなるわ!」

 

「……ゴクウさん…!!」

 

「おっと、話が逸れたわね。それで…幸せだった?楽しかった?」

 

「……!!」

 

「馬鹿な子…仲間なんて作ったりして…。また、忘れ去られるのよ。」

 

「…ひっ!」

 

ペコリーヌの顔が絶望に染まる。

 

「ああ…いい表情になった…私の果実はそうでなくてはね…。」

 

「グォォォォォォォォ…。」

 

ペコリーヌの背後に沢山のシャドウが現れる。

 

「おいしそう…。」

 

ペコリーヌはシャドウに覆われてしまったが…

 

「…!」

 

ペコリーヌは再び剣を握りシャドウを吹き飛ばした。

 

「貴女は私から全てを奪いました…。貴女を許せませんし、肯定もできません…。でも、互いを憎みあい、否定するだけじゃ悲しいですから…だから…。」

 

ペコリーヌは剣を降ろす。

 

「一緒にご飯を食べましょう…!」

 

それは決してふざけている訳ではなく、ペコリーヌなりの解決の仕方だった。

 

「……。」

 

「一緒にご飯を食べて、もっと話すことが出来れば…貴女のこと、少しでも分かるかもしれません。」

 

「…無駄よ、貴女の全ては私の物なのだから…ユースティアナ。」

 

「いいえ。」

 

「ん…?」

 

ペコリーヌは否定した。

 

「今の私の名前は『ペコリーヌ』です…!でも、必ず取り戻します!貴女に奪われた私の名も、この国も!」

 

ペコリーヌは力強く覇瞳皇帝に向かって宣言した。

 

「…そう、まだ実は熟してないのね。いいわ…貴女のその顔、もっと絆を深めなさい。それが、より深い絶望となる。」

 

ペコリーヌの周りが光り始める。

 

「…!!」

 

「そして、貴女の奪い尽くす!」

 

覇瞳皇帝はペコリーヌを転移魔法で再びゴーレムの下へ送り返した。

 

「…ここは!!」

 

ペコリーヌはゴーレムとシャドウを真上から見下ろせる程の高度へ転移されていた。

 

「…ペコリーヌ!?」

 

「ペコリーヌ様!?」

 

「…やっと戻ってきたか…。」

 

コッコロ達もやるべき事が終わったのか闘いに戻ってきていた。

 

「…やってみせます!どんな苦難だって乗り越えてみせます!!もう、何も奪われないために!」

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

シャドウ達はペコリーヌに気づき、散らばっていたシャドウが結合しあい、崩れたゴーレムの腕に寄生した。

 

そのシャドウの結合によって創造された腕は禍々しい紫色のオーラを纏っている。

 

「ペコーーー!!!!」

 

ユウキはプリンセスナイトの力を発動しペコリーヌを強化する。

 

ペコリーヌはまるで流れ星の様な輝きを放ちながらゴーレムの頭上へ一直線に落ちていく。

 

 

「プリンセスストライク!!!」

 

ゴーレムの巨大な腕とペコリーヌのプリンセスストライクがぶつかり合う。

 

「行っけえー!!!」

 

「…嘘でしょ…押されてる…!?」

 

なんとゴーレムの力がペコリーヌの全力のプリンセスストライクよりも上だった。

 

徐々にペコリーヌは押されていく。

 

「ぐっ…!!」

 

その刹那…

 

「波────ッ!!!」

 

ブラックがゴーレムの背後にかめはめ波を撃ち込んでいた。

 

「…ゴクウさん!!」

 

「ゴクウ様!?」

 

「ゴクウ…!!」

 

「……終わりだ……潰されてしまえ!!」

 

「「「行けえええええ!!!!」」」

 

「ハァァァァァ!!!!!」

 

ペコリーヌは遂に強大な壁を貫いた。

 

その威力は島全体が震える程のとてつもない威力だった。

 

やがてゴーレムを砕いた轟音は鳴りやみ、ゴーレムは永久に動くことはなかった。

 

「…止まったのか?」

 

 

「ペコーー!!ゴクウーー!!」

 

「ペコリーヌ様ー!!ゴクウ様ー!!」

 

「ペコリーヌ…ゴクウ…!!」

 

キャルが涙を流しそうになったその時…。

 

ガラララ…

 

「!?」

 

瓦礫の崩れる音のした方へ全員が振り向く。

 

そこには仰向けに横たわったペコリーヌがいた。

 

「ペコ!!」

 

「ペコリーヌ様!!」

 

「えへへ…お腹ペコペコ〜!」

 

「全く…心配かけるんじゃないわよアホリーヌ…キャア!!」

 

するとキャルの足場が突然崩れ、ペコリーヌの上に落下した。

 

ペコリーヌは優しくキャルを受け止めた。キャルの横顔には涙か零れていた。本気でペコリーヌの事を心配してたんだろう。

 

「ただいま…。」

 

ペコリーヌは後ろからそっと抱きしめた。

 

「バカ……おかえり…。」

 

そんな二人をユウキとコッコロは優しく見守っていた。

 

 

「…!そういえばゴクウ様の姿が見当たりません!」

 

「ゴクウー!!」

 

ペコリーヌとキャルもハッとしたような顔でブラックを探し出す。

 

「そうよ、見つけるならアイツが最優先よ…!!」

 

「ゴクウさんに何かあったんですか!?」

 

「アイツはここの住民達を逃がすためにゴーレムを食い止めるって言って一人で闘っていたのよ…!」

 

「そんな…!ゴクウさん!!」

 

ガラガラ…

 

「!?」

 

「…ここだ。」

 

ブラックは腕を抑えながらボロボロの状態で出てきた。上半身の服は破けて肌が露出している状態だった、

 

「ゴクウさん!?大丈夫ですか!?」

 

「あんた…!」

 

「酷い怪我でございます…!今治しますね!」

 

ブラックの傷がみるみる治っていった。

 

「…助かったぞ、コッコロ。」

 

「ゴクウさん…!ちょっと身体を見せてもらっていいですか?」

 

「身体?」

 

するとペコリーヌはブラックの上半身をじっくりと見始めた。

 

「ゴクウさんの身体って普段は中にインナーみたいなの着ててあまり見たこと無かったので…!」

 

「確かに…あんたヒョロっちいと思ったら凄い身体してるのね……!」

 

「はい…このような筋肉は見たことございません…!」

 

「かっこいい…!!」

 

ユウキは目を輝かせながらブラックの身体を見ていた。

 

「……ちっ、実にくだらん…!」

 

シュピン

 

ブラックは瞬間移動で逃げた。

 

「「「「あ、逃げた…。」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「人間共め…だが、アイツらの特訓にはなっただろう。それに、この受けたダメージ…これは私の強さをより完璧にするだろう…!」

 

 

「カイザーインサイトよ、裁きの時を待つがよい…!」

 




ペコキャルはいいゾ〜


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幸せの味

ペココロもいいゾ〜


「あんた…毎回私の所に来るけど暇なの?」

 

「…この場所が落ち着くのだ。」

 

ブラックは事ある毎にアメスの所へ訪れていた。

 

「別にいつ来てもいいけどさ…最近あんた、ユウキ達に会っているの?」

 

「…最後にアイツらと会ったのはゴーレムの時だったか…。」

 

ブラックはあの時以来ユウキ達とは一切会っていない。

 

「いい加減姿を見せなさいよ…。」

 

「…アイツらは私がいない方が成長する筈だ。これも神の務め。」

 

「でもあんた…」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

美食殿のメンバーは各々で過ごしていた。

コッコロはギルドハウスで沢山の手紙を書き、ペコリーヌは一人で稲刈り、キャルはランドソル城へ。

 

手紙を書き終わったコッコロはそれを送り届けてもらうためにポストへ投函しに役所にきた。

 

「おや?」

 

すると何やらポストの前で二人の少女が揉めていた。

 

「ねえーミサキっち、早くだしなよー。」

 

「スズナこそ、何迷ってんの!」

 

彼女達はルーセント学院の生徒でありコッコロは知らないが、前までブラックと一緒に勉強をしていた。

 

どうやら手紙を出そうか出さないか迷っているようだ。

 

「あ。」

 

スズナ達は後ろに並んでいるコッコロに気がついた。

 

「…。」

 

「あ、ほらほら遊んでないで、後ろ詰まってるわよ!」

 

「あ、ごめんね…はいどうぞー!」

 

二人はコッコロに気がつくと覚悟を決めたのか手紙をポストへ投函する。

 

「…ありがとうございます。」

 

コッコロは大量の手紙を一枚ずつ丁寧に入れる。すると後ろから先程の二人の会話が聞こえてきた。

 

「これでよかったんだよね…。」

 

「いやー、もうやる事やったし…これ以上は…ね。」

 

何やら二人は落ち込んでいる。

 

その時だった。

 

ドォン!

 

「フリーーズ!!両手を上げろ!!」

 

「・×・」

 

「ひっ!」

 

「えっ!?」

 

突然集団強盗が役所を襲ったのだ。

金目の物や金庫に入った金貨等は全て一瞬にして持ち去られてしまった。

更に一人の強盗がポストの中身を無理やりこじ開け中の手紙を全て奪っていった。

 

「…あっ!!」

 

「「それは!!」」

 

「邪魔したな、へっへっへっ…!」

 

強盗は盗んだものを荷車に詰め、そそくさと逃走してしまった。

 

「超鬼やば…私たちの推薦状が!!」

 

「やっと手に入れたのに!!」

 

「どどどどうしよう!追いかける?」

 

「そうね…私たちの進路がかかってるし、で、でもどうやって!?」

 

二人が奪われたのは推薦状だった。どうやら取り返しに行くつもりらしいがそれにコッコロも呼びかけた。

 

「あの…!」

 

「「ん??」」

 

「私も、大切な手紙を取り戻したく…宜しければご一緒に…!」

 

こうしてコッコロとミサキ、スズナは協力して強盗から奪われた手紙を取り返しに行った。

 

「強盗団の荷物の中に私の妖精を忍ばせておきました。今はまだ移動中のようですね。」

 

コッコロ達は走りながら妖精を追跡し強盗団を追いかける。

 

「はえ〜コロッち優秀!!」

 

「これなら見失わずに済むわね!」

 

「はい!必ず取り戻しましょう、ところでお二人は何を奪われたのですか?」

 

「「あ〜えっと…」」

 

「「推薦状…。」」

 

二人は走るのを止める。

 

「…推薦状?」

 

「ウチら、ルーセント学院の生徒なんだけど…。」

 

「実は廃校になりそうなんだ。」

 

「なんと…何故そのような…!」

 

「「ウチらが成績悪すぎるせいでね…。」」

 

二人は途端に落ち込む。

 

「・×・」

 

「何でも、びっくりするくらい偏差値低いらしくて…ランドソルにこの学校いらねーんじゃね?てきな?」

 

「私たちの事を見捨てず面倒を見てくれる先生がいるんたけど…何故か成績はだだ下がりで…。」

 

「だって七の段が鬼むずだし!!九九の中でラスボスみたいなもんだから!」

 

「あら?私は7の段は完璧よ!ゴクウに教えて貰ったし!!本当に難しいのは八の段よ!!」

 

「ウチだって八の段はゴクウっちに教えてもらったし!!」

 

「ゴクウっち??」

 

コッコロに衝撃が走る。

 

「…あのお二人はゴクウ様とお知り合いで…?」

 

「コロッちはゴクウっちのこと知ってるの?九九がわかんないって言ってたら教えてくれたんだよ!!」

 

「ゴクウってホント天才よね…あの後、聖テレサ女学院って所に編入して最近は学校来てないけど…。」

 

「…なんと、ゴクウ様のお知り合いだったのですね!私も最近…というよりここ数ヶ月はお見かけしてませんね…。」

 

「そっか…まあ、ウチらがこのままルーセント残ってると、マジで廃校になっちゃうかなーって…。」

 

「先生にバレないように他の学校の推薦状を手に入れたんだけど…まさか強盗に会うなんて…。」

 

「な、なるほど…。」

 

「「うぇ!??」」

 

スズナとミサキが何故かびっくりしたような声を上げる。

 

「ん?」

 

コッコロが後ろを振り向くと遠くに赤い長髪の女性が…

 

ガシッ

 

「・×・」

 

スズナとミサキはコッコロの両腕をガッシリと掴む。

 

「ちゃんコロ!こっち近道かも知れないよ??」

 

二人でコッコロを挟み狭い道を通り抜けて行った。

 

そしてようやく強盗団のアジトを掴んだ。

 

「ここのようですね…!」

 

「如何にもって感じで鬼やば!!」

 

「どうやって中に…」

 

「あたしの出番のようね!」

 

ミサキが自信満々に謎のポーズをとる。

 

「「ん??」」

 

「見て分からない?そこら中に出ちゃってるでしょ?」

 

「あの、何のことでしょうか…。」

 

「フェロモンよ!フェロモン!大人の魅力から溢れ出す、み・りょ・く!!」

 

「は、はぁ。」

 

「いい?あたしが大人の魅力で引き付けてる間に取り返してきて頂戴。」

 

と意気込んでいたミサキであったが。

 

「お頭〜頭のおかしい餓鬼がー!!」

 

あっさりと捕らえられた。

 

「・×・」

 

「えええー!!!」

 

ミサキは縄でグルグル巻にされ小屋の中に入れられた。

 

「うぅ……作戦通りだわ…。」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ランドソル城

 

キャルが城の中を歩いていると、テラスに覇瞳皇帝がいるのを見つけた。

 

「…!」

 

キャルは覇瞳皇帝を見つけると走ってテラスに向かう。

 

「…あれ?」

 

場所に着いたが覇瞳皇帝はいなかった。

 

キャルが振り向くと覇瞳皇帝は既に別の所に移動していた。

 

キャルが覇瞳皇帝の跡を追う。

 

ザパン…

 

キャルが歩いていると水しぶきの音が聞こえてきた。

 

「陛下…?」

 

キャルが様子を見に行くと覇瞳皇帝は赤くなっている水に浸かっていた。

 

「流石は変貌王妃、深みが違う…。」

 

キャルは影から覇瞳皇帝の入浴を覗いていた。

 

「……!!」

 

「…悪い子ね。」

 

「…っ!!」

 

だがキャルが覗いているのを覇瞳皇帝は気づいていた。

 

「…すいません、テラスで陛下をお見かけして…。」

 

「……気をつけなさい。」

 

「は、はい…!」

 

この時、キャルは気づいていなかったが柱の影にもう一人の覇瞳皇帝がキャルを見ていた…。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ユウキは一人で外で考えていた。

 

「…。」

 

過去の記憶だ。小さなガイド妖精、黄色髪の獣人族の女の子、青い長髪で剣を持った女の子、そして、ピンク色の髪をして、優しい表情を浮かべる女の子…。

 

「……。」

 

「何か、あったかい?」

 

ラビリスタが通りかかった。

 

「やあ…。」

 

ユウキはラビリスタに記憶の事を打ち明ける。

 

「…そっか。」

 

「仲間がいたんだ…僕には。」

 

ユウキには仲間がいた。この世界が再構築される前の仲間が。

 

「なんで忘れてたんだろう…美食殿みたいに、沢山冒険したはずなのに…。」

 

ユウキは悲しく呟いた。

 

「守れなかった…。」

 

「…そうだね……そうかもしれない…。」

 

ラビリスタもユウキの過去を知っている。

 

「でも君は…生きている、そこに必ず意味があるはずだ。いるだろ?今の君にも。」

 

ユウキは美食殿と過ごした日々を思い出す。

ペコリーヌがいて、キャルがいて、コッコロがいて、そして…ゴクウがいる。

 

ユウキは静かに立ち上がる。

 

「皆は…必ず僕が守る。」

 

「…うん。」

 

ユウキは力強く決意を固めた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ペコリーヌは田んぼの近くの木の下で寝ていた。

 

「ふわぁ…っ!?」

 

ペコリーヌが起きると田んぼの真ん中に自分と同じ姿をした幻影が見えた。

 

「…消えちゃう。」

 

「…!!」

 

「きっと、私が本当のプリンセス…ユースティアナである事を伝えたら…キャルちゃんも、ユウキくんも、ゴクウさんも…私から離れて行っちゃう…!!」

 

ペコリーヌの幻影は悲しい顔で叫ぶ。

 

「皆の中から…私が、私の存在が忘れられちゃう…出会った皆が…私を…!!」

 

「……。」

 

「もう、忘れられるのは…一人になるのは…嫌!!」

 

「!!」

 

ペコリーヌが目を覚ます。

 

今までの幻影は全てペコリーヌが見ていた夢だった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「うぅ……なんでここの奴らあたしの魅力に気づかないのかしら!!馬鹿なんじゃないの!!」

 

「あはははは!!!わろー!!」

 

「ん?」

 

ミサキが上を見ると窓らしき所からスズナがこちらを見て笑っている。

 

「どうやってここに!?」

 

「ちょっと煙を焚きまして…。」

 

コッコロが謎の紫色の煙を撒いてる間に助けにきたようだ。

 

コッコロがミサキの縄を解く。

 

「ありがとうね!」

 

「あったあった!!」

 

スズナもどうやら奪われた手紙を見つけたようだ。

 

「さあ、今のうちに脱出しましょう!」

 

コッコロ達が外へ出ると…

 

「げほっ!げほっ!なんであんな煙がでるんだよ!」

 

「さっき変なガキ捕まえたんだが、そいつの仲間かもしんねえ!」

 

「やっべえー!倉庫のお宝なくなってんじゃん!やっべえ!!」

 

「まだ遠くに行ってないはずだ!捕まえろ!」

 

強盗達は一斉にコッコロ達を探し始めた。

 

「…どうしよう!!」

 

「あちらでやり過ごしましょう!」

 

コッコロ達は森の奥へ逃げる。

 

「はあ…はあ…イオちゃんにも心配かけちゃうし…あたし達何やってんだろ…。」

 

「先程の方…もしや。」

 

「うん…。」

 

「ちゃんイオ、成績の悪いウチらをずっとサポートしてくれてたんだ。他の先生たちが諦めてるのに一緒に頑張ろうって…。」

 

「ウチらのこと、信じてくれてたんだよね…。」

 

「あんなに頑張ってくれたイオちゃんに、これ以上迷惑をかけたくなくて…転校することにしたんだ…。」

 

「……。」

 

すると、

 

「いたぞー!!」

 

強盗がコッコロ達を追ってきた。

 

「みつかった!鬼やばー!!」

 

急いでコッコロ達は逃げる。

 

「待ちやがれー!!」

 

必死に逃げては居るがミサキはバテバテで追いつかれそうになっていた。

 

「はあ…はあ…。」

 

するとスズナは足を止め弓を出す。

 

「もう怒プンだよ!!これでもくらえーー!!」

 

スズナが矢を引くとそれは強盗達に一直線に飛んでいき爆発した。

 

「うわあああ!!」

 

「やったわ!!」

 

「素晴らしいです!」

 

三人でハイタッチをするが…

 

「「「何してくれとんじゃわれー!!!」」」

 

「・×・」

 

「「ひぃぃぃぃ!!!」」

 

「「「もう駄目ーーー!!!」」」

 

その時だった。

 

「ぐわああー!!」

 

王宮騎士団のトモが駆けつけ強盗をはじき飛ばした。

 

「怪我はないかい?」

 

「…助かりました…!」

 

すると後ろの方から声が聞こえてきた。

 

「皆さん!こちらです!!」

 

イオが王宮騎士団と共にミサキ達を探しにきていたのだ。

 

「イオちゃん!?」

 

「ちゃんイオ!?」

 

こうして強盗団は全員捕縛された。

 

「街の平和を脅かす不届き者め。牢屋でじっくり反省するんだな。」

 

「大きな煙が目印になったの。」

 

コッコロが焚いた紫色の煙が役にたったようだ。

 

「強盗に巻き込まれたって郵便局の人に言われたからびっくりしちゃった。」

 

「「さ、探しに来てくれてありがとう…。」」

 

イオは二人の頭を撫でる。

 

「私の生徒だもん。当たり前じゃない!」

 

コッコロは仲睦まじい三人の光景を静かに優しい顔で見ていた。

 

すっかり夕暮れになってしまったが無事に手紙を取り戻したコッコロ達は郵便局へと戻った。

 

コッコロはポストに手紙を投函する。

 

スズナ達は…

 

「…。」

 

ビリビリ

 

推薦状を破った。

 

「あ、推薦状!!」

 

「ウチ、もう一度頑張ってみる!」

 

「…。」

 

「ウチらを信じてくれたちゃんイオの為にも頑張るよ!!」

 

「…うん、先ずは掛け算の攻略だね!」

 

「…ふふっ。」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

後日、ペコリーヌは一人で稲刈りをしていた。

 

「…ふう。」

 

すると、

 

「お疲れ。」

 

「ん?」

 

ユウキがペコリーヌの手伝いに来た。

 

「遅くなってごめん。」

 

ユウキとペコリーヌは稲刈りを続ける。

 

すると、

 

「ありゃあ…まだまだ稲刈り残ってるわねー。」

 

キャルもペコリーヌ達の手伝いにきた。

 

「キャルちゃん…!」

 

「キャル…!」

 

「さ、皆でチャキチャキっと終わらせるわよ!」

 

「……はい!!」

 

ペコリーヌは鼻歌を歌いながら作業をする。

 

「ふんふんふん…♪」

 

「なによ、ご機嫌じゃない。」

 

「えっへへ。」

 

「あんたがご機嫌なのは何時ものことねー。」

 

「うん!」

 

「しかしまあ、いつまでかかることやら…。」

 

稲はまだまだ残っている。

 

「気長にいきましょう!」

 

「そうね…!」

 

「ペコリーヌ様〜!!」

 

コッコロの声が聞こえた方にペコリーヌ達が振り向くと…

 

 

「「「「「おーーーーーい!!!」」」」」

 

今までペコリーヌ達が会ってきた人達が全員集まっていた。人数は40人を超えているだろうか…全員稲刈りの手伝いをしに来たようだ。

 

「…一体どうして…?」

 

「…プリ米を是非皆さんと一緒に収穫したいと思いまして…。」

 

「…コッコロさんからお手紙を。」

 

「ミヤコにも届いたの〜。」

 

コッコロが先日大量の手紙を書いていたのは、全てこの日の為だったのだ。

 

「「「ナイス!!!」」」

 

ユウキ達はコッコロにグッジョブをした。

 

「……ふふっ!」

 

コッコロは笑ってユウキ達に親指を立てた。

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「あんたは行かなくていいの?コッコロたんから『()()』来たんでしょ…?」

 

「……。」

 

ブラックにも確かにコッコロからの手紙が届いていた。

 

ブラックは服の中から手紙を取り出す。

 

「…私の柄ではないのだがな…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

多すぎていつ終わるか分からなかった稲刈りは…あっという間に片付けていった。皆が皆、協力しあい、楽しみながらプリ米を収穫していった。

 

そして、皆でご飯を食べた。

炊きたてのプリ米を…皆と一緒に。

 

こんなに素敵な食事はいつぶりだろう。

 

ペコリーヌとコッコロは笑っていた。

 

すると突然ペコリーヌ達の後ろに風が吹く。

 

ペコリーヌとコッコロが振り向くがソコには誰もいない。

 

「……ゴクウ様にも、手紙を送ったのですが…結局来なかったようですね…。」

 

「…ゴクウさん…。」

 

「なるほど……美味いな。」

 

「「!!」」

 

ペコリーヌとコッコロが声のした方向に振り向くと、ブラックは皆と一緒にご飯を食べていた。

 

「あんた今まで何処に行ってたのよ!数ヶ月よ!?数ヶ月!!」

 

「ゴクウ、久しぶり!!」

 

「聞いてよゴクウっち!私やっと九九を覚えてきたのよ!」

 

「ウチも今鬼やばって感じ!!」

 

「ゴクウくん、聖テレサ女学院には馴染めた?」

 

「ゴクウ!ゴーレムの時以来だな!元気してたか?」

 

「先輩!最近テレ女来てませんけど何してるんですか!なかよし部の活動行き詰まってるんですけど!」

 

「その通りだ。我々ユニちゃんズの活動に参加しない理由は何かね?」

 

「ユニパイセン……秒でボツったギルド名を当たり前のように使うのやめてくんない?てかまじであんたウチら放っておいてなにしてるん?」

 

「あ!シャドウの時はありがとね!助かったよ!」

 

なんだかんだ言ってブラックも皆と絆を紡いできた。ブラックは沢山の仲間に囲まれていた。

 

「ゴクウさん…!!」

 

「ゴクウ様…!!」

 

ペコリーヌはこの光景を目に焼き付ける。

 

「コッコロちゃん。」

 

「…?」

 

「全てを失った私が、また沢山の仲間たちとご飯を食べられる日が来るなんて…。」

 

「…!」

 

ペコリーヌは泣いていた。

 

悲しくて泣いているわけではない。嬉しくて泣いていた。

 

「…ありがとう、幸せです…!あんなに…こんなに幸せな味があったんですね…!」

 

ペコリーヌは泣きながらおにぎりを食べる。

 

「…はい、とっても美味しいです…!」

 

コッコロも涙を流しながらおにぎりを食べた。

 

「私…ちゃんと伝えます。キャルちゃん、ユウキくん、ゴクウさんに…『ユースティアナ』であることを…。」

 




ブラック愛されすぎだろ


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平和を託す迷宮女王

キャ虐してはいけない(戒め)


「ふんふふんふん…♪」

 

ギルド美食殿の朝、キャルは機嫌がよいのか自分の部屋で鼻歌を歌いながら髪を櫛で整える。

 

ペコリーヌはキャルに自分が『ユースティアナ』である事を伝えようと部屋の前に立った。

 

ペコリーヌがキャルの扉をノックしようとしたその時…ドアがガチャリと開く。

 

「あ…。」

 

「ん?何やってんの?」

 

「あ、あ…朝ごはんですよー!!」

 

結局ペコリーヌは言い出すことが出来ずに誤魔化してキャルに抱きついた。

 

「朝から抱きつくなー!!」

 

 

その後…

 

 

「……。」

 

珍しくギルドハウスに来ているブラックは朝から紅茶を嗜む。

 

「ふんふんふん♪」

 

キャルは鼻歌を歌いながらおにぎりを握っている。

 

ペコリーヌが伝えるタイミングを見計らおうとしているとコッコロが声をかける。

 

「キャル様とゴクウ様、ご機嫌でございますね。」

 

「コッコロちゃん…!」

 

「緊張なさっておいでですね…。」

 

「えへへ…。」

 

「できたー!!」

 

「ん?」

 

キャルがおにぎりをお弁当に詰める。

 

「…外出か?」

 

「ちょっとねー、昼過ぎには帰ってくるからー!」

 

キャルはそそくさと出かけていってしまった。

 

「あ…行ってらっしゃーい!」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ランドソル城

 

 

キャルは作ったお弁当を持って玉座へ向かった。

 

 

「陛下!今日は是非これを…。」

 

玉座に陛下の姿はなかった。

 

陛下は寝室で苦しそうに唸っていた。

 

「はあ…うっ…!」

 

うなされている陛下をキャルは優しく手を握った。

 

「はあ…っ。」

 

キャルに手を握られた陛下は落ち着いていった。

 

そして、陛下が目を覚ます。

 

キャルは陛下を必死に看病していたのだろう。

直ぐにキャルも目を覚ました。

 

「はっ…!すすすすみません!陛下!寝苦しそうでしたので…その…!」

 

「…まあいいわ…。」

 

陛下は咎めることもなくキャルを許した。

 

「……あの、陛下!おにぎり作ったんですけど…すいません余計なことを!」

 

キャルはお弁当を食べて貰えないだろうと分かってはいたのだが…。

 

「キャル。」

 

「はい…。」

 

「気が変わったわ。」

 

陛下は珍しくキャルのおにぎりを食べると言った。

 

陛下とキャルは城の庭に行く。

 

「どどどどどどうぞ陛下!!」

 

キャルは陛下に食べてもらえることが嬉しく、テンションも高い。

 

「美味しいですよ!私たちが自分で刈り入れて精米したんです!朝炊きたてのお米なのでまだ温かいかと…あ、すいません…!」

 

「はぁ…。」

 

陛下はため息をつきながらもキャルの作ってきたおにぎりを一つ手に取る。

 

「具は?梅干し?」

 

「あ、いえ、鰹節です。陛下酸っぱいの嫌いかなと思って…あれ?なんでそう思ったんだっけ?でも、梅干しも美味しいんで一つありますよ!」

 

「…このままで構わないわ。キャル、あなたも一緒に食べなさい。」

 

キャルと陛下は並んでおにぎりを食べる。キャルは幸せそうだった。

 

「…えっへへ…。」

 

「なあに?変な子ね。」

 

「いやー、苦労してお米を収穫した甲斐があったかも…えっへへ…。」

 

「…ホント、変な子ね…。」

 

「……。」

 

この時…また木の影からもう一人の陛下と思われる人物がキャル達を見ていた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ランドソル城 地下

 

 

黒い鎧を身につけている『ジュン』という王宮騎士団の団長はランドソル城の地下へ足を運んでいた。

 

ジュンはクリスティーナが前に言った言葉を思い出す。いや、正しくはブラックに借りを返すために言っていたのだろうが…。

 

『あの城の奥で、我らが王は何をお考えなのだろうな…。』

 

ジュンはその言葉がずっと引っかかっていた。

 

「私でも知らされていない場所があると…。」

 

 

『この国は人間、ヒューマンの国なのに…いつから獣人が玉座に座ることになったのかな?』

 

「何故それが今まで当たり前と感じていたのか…まるで記憶を…っ!?」

 

その時、突然ジュンの目前に赤い魔法陣が浮かび上がった。

 

ジュンは警戒しながらそのまま奥へ進む。

 

進んだ先には…

 

まるで封印でもされているかのような不気味なオブジェの中に変貌王妃が眠っていた。

 

「…何なのだ…これは!」

 

「オオオオオオ…。」

 

ジュンが後ろを振り向くと大量のシャドウと覇瞳皇帝がいた。

 

「……。」

 

「陛下…あなたは一体何者なのだ!」

 

陛下はただ不気味に笑っていた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

美食殿 ギルドハウス

 

美食殿のギルドハウスにはイカッチとチャーリーが訪ねてきていた。

 

「…お祭り?」

 

「そうなんですよ!」

 

「ウチの商店街でね、小さな祭りだけど皆で盛り上げようって!」

 

「いいですね!お祭り!ワクワクします!」

 

「今日からなんで是非皆で来てくだせえ!!」

 

「楽しいですよお!!」

 

「…ほう、人間の祭りか…興味深い。」

 

「おっ!珍しくゴクウさんも行く気ですね!」

 

「是非皆さんで参りましょう!」

 

「行くーー!!」

 

 

こうしてブラック達は祭りへ行くこととなった。

 

「ふんふんふん♪」

 

「キャルちゃーん!!」

 

ペコリーヌ達は城から帰る途中だったキャルを見つけた。

 

「いたいた!」

 

「ようやく来たか。」

 

「お祭り!お祭りですよ!」

 

「は?」

 

ペコリーヌとユウキはキャルの腕を掴む。

 

「早く早くー!りんご飴売り切れちゃいますよー!」

 

「その通りだ、早く行くぞ。」

 

「ちょ、あたし行くって言ってない!バカァァァ!!!」

 

キャルは半ば強引にお祭りに連れられた。

 

 

お祭り会場

 

 

 

「わぁ…!!」

 

「ほう…。」

 

商店街の祭りにしてはかなり賑わっていた。

 

すると、

 

「おや、よく来たね!それにカッコいい男二人も連れて!楽しんでっておくれ!」

 

ヤスコはイカッチの母親である。恐らくブラックとは初対面。

 

「ヤスコさん!」

 

「かなり賑わっているな。」

 

「お陰様で、ウチの商店街以外の店も出店してくれたんでね。」

 

「あ!弟くん!」

 

何やら不審者らしき声が聞こえた。

 

自称ユウキの姉を名乗っているシズルだ。

 

「嘘!?どうしてここに?やだ、これも運命!?ちょっと会わない間にまた少し大きくなった?お姉ちゃんドキドキだよー!」

 

「シズル様…!」

 

「誰だ貴様。」

 

「ん?あー皆やっほー…!?」

 

ユウキ以外は何故か素っ気ない。と思いきや…

 

「ねえねえキミ、ゴクウくんだよね!あの時は弟君を助けてくれてありがとう!!よかったらクレープ食べていって!」

 

「あの時?」

 

「是非食べてー!!」

 

シズルはユウキを連れ先にクレープ屋の方へ行ってしまった。

 

「…一体なんの話なのだ…!」

 

クレープ屋に着くともう一人妹を名乗る不審…いや、妹はまだマシな方。リノだ。

 

「お、おおおお兄ちゃん!?にゴクウさん!?」

 

「さっきから誰だ貴様らは…私はお前たちのことなど知らん。」

 

すると…

 

「いらっしゃい…!」

 

ラビリスタもこの祭りに屋台を出していた。

 

「ん?成程お前の仲間か…。」

 

「こんにちは。」

 

「あ、マスター!弟くんとゴクウくんに新メニューを食べて貰おうと思って!」

 

「いいねぇ!じゃ美味しく焼いちゃって!」

 

「「オッケー!!」」

 

ユウキとブラックは焼き終わったクレープをベンチに座りながら食べる。

 

「あむ…。」

 

「……はむ。」

 

するとラビリスタもベンチに並んで座る。

 

「どう?ウチの新メニュー。」

 

「うん!美味い!」

 

「…普通だな。」

 

「そ、よかった。」

 

「二人とも身体の方は…?」

 

「大丈夫。」

 

「…問題ない。」

 

「…大丈夫だよ。ゴクウ達もいるし。」

 

「……。」

 

「いたいたーー!!」

 

キャル達が走ってこちらに来る

 

「主様ー!ゴクウ様ー!」

 

「見てください!こんなにいっぱいお菓子買っちゃいましたー!」

 

ユウキとブラックはベンチから立つ。

 

「皆は、この絆は…今度こそ守るよ。」

 

「そういう事だ…貴様は何も心配する必要は無い。」

 

「……ふっ…。」

 

ラビリスタは安心したように笑った。

 

「…そうだね。」

 

「ゴクウ、あんたちゃんとユウキの面倒みなさいよ…ユウキの口にクリームついてるじゃない…子供か!」

 

「よく食べる子は育つ!ですから!」

 

「ふふっ…。」

 

「さあ、たこ焼き冷めちゃう前に!」

 

「熱ーーーー!!!!」

 

「バカね、もっと冷ましてからじゃないと……熱ーー!!!」

 

「お前たち…もう少し冷まさないと…熱ーーーーー!!!!…食えたものではないぞ!!」

 

「ごめんなさい!食べやすくしましょうね!」

 

「私も一緒に…!」

 

コッコロとペコリーヌでたこ焼きをフーフーして冷ます。

 

ラビリスタは美食殿のこの光景を見て静かに去っていった。

 

 

ランドソル城

 

覇瞳皇帝は一人で城の中を歩く。

 

「……。」

 

覇瞳皇帝は何かに気づいたのかその場で立ち止まる。

 

すると何も無い場所から突如として複数の柱のような物が覇瞳皇帝を中心に囲んで行った。

 

その中はまるで別世界のような空間に変化する。

 

「君と話すのに…少々舞台を変えさせてもらったよ、『真那』。」

 

この空間を作った人物はラビリスタだった。

そして、覇瞳皇帝の本当の名は『真那』と言う名前だった。

 

「いつ以来かな?」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

商店街の祭り

 

 

ペコリーヌ達は射的屋にいた。

 

パンッ

 

「…うーん。」

 

「てんでダメね〜、貸してご覧なさい?」

 

キャルが得意げに銃を構える。

 

「あの人形が欲しいのね…っと。」

 

キャルもなんだかんだ言って祭りを楽しんでいるようだ。

 

「いい?こういうのって一つ一つ癖があるから、まずはよく重心を見極めないと…!」

 

「主様、ゴクウ様。」

 

「ん?」

 

「ん?」

 

「あちらに水に浮かべた風船が。」

 

「いいね!」

 

「…ユウキはともかく何故私まで?」

 

コッコロに子供扱いされ不満を持ったブラックだったが渋々同行した。

 

「迷子になるんじゃないわよー!」

 

「おっけー!」

 

コッコロはペコリーヌがキャルに打ち明けられるように気を使ってくれたらしい。

 

 

そして、キャルは景品をとることが出来ずにオマケの飴を舐めながらペコリーヌとベンチに座っていた。

 

「…今日は本調子じゃなかったわ。」

 

「でもオマケの飴、美味しいです!」

 

「はいはい…。」

 

「……。」モジモジ

 

ペコリーヌは打ち明けるタイミングを見計らっている。

 

「…あ、あのですね…私…、」

 

「いい天気〜。」

 

「……。」

 

打ち明けようとした瞬間キャルと会話が被ってしまった。

 

「ずっと…ずっと続けばいいのに…。」

 

「……ふふっ……本当ですね……!」

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

その頃、覇瞳皇帝とラビリスタは激戦を繰り広げていた。

 

覇瞳皇帝は自分で作り出した無数のナイフをラビリスタに向けて攻撃する。しかしラビリスタはナイフが当たらないように自分で作り出した球体のオブジェクトの中に身を潜め難を逃れる。

 

ナイフによってオブジェクトが徐々に削られていく。するとオブジェクトから柱のような物が複数本生え、ナイフを全てはじき飛ばした。

 

「…。」

 

そしてラビリスタはオブジェクトの中から再び姿を現した。

 

「あなた、一人で乗り込んでくるような愚か者だったかしら?『ソンゴクウ』に比べたら貴女の能力なんてちっぽけなものね。」

 

「らしくないなーとは思うよ?覇瞳皇帝、時間が無くてね私も…君も。」

 

「……。」

 

「同じ七冠として今の状況には責任を感じちゃっててね、今回は…。」

 

ラビリスタは何も無い空間から剣を取り出す。

 

「君を止めたいと思ってさ。」

 

ラビリスタが剣を構えると後ろの何もない空間から複数の柱が出てくる。

 

「それが出来なかったから今の状況なんでしょ…?」

 

「……!」

 

覇瞳皇帝は片手から強大な魔法を放った。

 

ラビリスタは咄嗟に自分を柱で囲いダメージを防いだ。

 

続けてラビリスタが剣を何も無い地面に突き刺すと覇瞳皇帝の上空、足元から巨大な柱が出てくる。二つの柱は覇瞳皇帝を上下から挟むように、さらに前後左右と4つの柱が加わり覇瞳皇帝を完全に柱の中に閉じ込めた。

 

「これは…。」

 

ただ閉じこまれただけのように見える柱の内部は不思議な事に、地形が火山の噴火した光景に変わった。

 

それは幻覚などではなく、実際に火山が生成されていた。

 

溶岩が覇瞳皇帝を襲うように追いかける。

 

「…ちっ!」

 

それを覇瞳皇帝は自分の魔法で全て相殺する。

 

「……。」パチンッ

 

ラビリスタが指を鳴らすと、またもや背景が変わり、今度は大量の水が流れ込んできた。

 

だがそれでは覇瞳皇帝を倒すことは出来ず、覇瞳皇帝はオブジェクトを切り裂いて内部から出てきた。

 

「…世界のオブジェクトを自在に構築する貴女のその力、欲しいわね…。」

 

次の瞬間、覇瞳皇帝の背中の位置にある光輪が輝いた。

 

「なっ…!」

 

「このようにね!」

 

すると覇瞳皇帝の前に洗脳されたかのような変貌王妃が現れた。

 

「変貌王妃…!?」

 

次の瞬間、変貌王妃は覇瞳皇帝のナイフに姿を変え、さらに何百万本ものナイフへと増殖し、ラビリスタを囲った。

 

「…これは…!?」

 

そして、そのナイフがラビリスタ目掛けて一斉に襲いかかった。

 

「くっ…!」

 

ラビリスタは瞬時にオブジェクト変更で自分の逃げ道を作りナイフから逃れる。しかしナイフはラビリスタを追跡し、まるで巨大な竜巻が起こったかのような勢いでラビリスタを襲う。

 

「っ…!!」

 

ラビリスタはナイフから逃れオブジェクトで巨大な塊を作り、迫り来るナイフを片っ端から一掃していった。

 

「はあああああ!!!!」

 

「…ふん!」

 

しかし、ナイフを捌ききったラビリスタの隙を突き、覇瞳皇帝が死角から不意打ちをし、ラビリスタは吹き飛ばされた。

 

「くっ…!」

 

既にかなりのダメージを受けているラビリスタに、操られている変貌王妃は巨大な白い隕石へと姿を変える。

 

「……。」サッ

 

覇瞳皇帝が合図をするとその隕石はゆっくりとラビリスタに向かってくる。

 

「…うおおおお!!!」

 

 

ラビリスタもまた、オブジェクトで赤い巨大な隕石を作り出した。

 

二つの巨大な隕石が衝突しあい、大きな爆発が起きた。

 

ラビリスタはまだ辛うじて立っている。

 

跳躍王(キング・リープ)誓約女君(レジーナ・ゲッシュ)変貌王妃(メタモル・レグナント)…何人七冠が集まろうとも私には敵わない。この覇瞳皇帝(カイザー・インサイト)にはね…!」

 

「…今までの君ならね。」

 

「…っ!」

 

「これみよがしに変貌王妃の力を使役してるけどキミ本来の力はどうした?使わないのかい?」

 

「……。」

 

「キミ固有の力、『覇瞳天星(はどうてんせい)』を。」

 

「くっ、あなた…!」

 

「使えないんだろう?少年と同じく、リダイブを繰り返してきたキミの身体もまた、変化を間逃れない。」

 

「なっ…!?」

 

覇瞳皇帝が能力を使おうとしたが、変貌王妃は光となって消えた。

 

「大技を連発し過ぎたね、魔力切れだ…。」

 

「バカな…私に魔力切れなど!シャドウ達は…!?」

 

「策を公示させて貰ったよ。」

 

「!!」

 

 

ラビリスタ達のいる外の世界では…

 

「アローレイン!!」

 

「セイクリッドパニッシュ!!」

 

リノとシズルが大量のシャドウを倒していた。

 

「キミの魔力供給源であるシャドウは、私の仲間が足止めしている。」

 

「……。」

 

「異変に気づいたのは別の時間軸…キミが皆を集めて殺そうとした時があっただろう?未来を予測する覇瞳天星を持つキミに予想外の事が起き、眠りに落ちた…何故か、壊れていたんだろう?あの時から…だからシャドウという仮初の力を寄せ集めて、足掻いていたのかい?」

 

「……。」

 

「…チェックメイトだ。」

 

ラビリスタは勝利を宣言した。

 

「くっ…!!」

 

覇瞳皇帝はラビリスタから距離をとるために逃げる。しかし、能力が使えなくなった覇瞳皇帝はラビリスタのオブジェクト変更の能力の前にはなすすべがなかった。追い詰められた覇瞳皇帝。

 

 

 

後一歩という所だった…。

 

 

 

────────────────────

 

「ふんふんふふん♪」

 

キャル達はお祭りから帰ってきた。

 

ペコリーヌは部屋にいるキャルへ『ユースティアナ』である事を伝えようと再び部屋の前に立つ。

 

「ん?」

 

ペコリーヌはキャルの部屋をノックし、部屋へ入る。

 

だが、

 

 

 

そこにキャルの姿はなかった。

 

 

 

「!?」

 

「…え…?」

 

「……。」ニッ…

 

キャルは覇瞳皇帝の前に転移された。

 

それに気づいたラビリスタは攻撃をとめるが…

 

その隙が勝敗を分けた。

 

「かはっ…!!」

 

ラビリスタは突如後ろから覇瞳皇帝にナイフで刺された。

 

ラビリスタの目の前にはキャルを人質にとっている覇瞳皇帝がいるのにだ。

 

ラビリスタの返り血がキャルの顔にかかる…。

 

「……いやぁああああああ!!!!!」

 

「グワアアアアア!!!」

 

「「!?」」

 

ラビリスタは力なく落下していく。

 

それによりラビリスタのオブジェクト変更で作り出した世界もボロボロに崩れてなくなっていく。

 

キャルは覇瞳皇帝に抱えられ、泣きながらラビリスタに手を伸ばすが届かない。

 

ラビリスタは薄れていく意識の中、ユウキの言葉を思い出す。

 

 

『皆は、この絆は…今度こそ守るよ。』

 

 

「…すまない、キミの大切な仲間に…こんな辛い想いをさせてしまった…。」

 

「……願わくば、願わくば…。」

 

「…キミ達が、あの時のままで…ありますように…。」

 

 

 

 




いよいよ2期終盤…!!


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ランドソルの明日を守る闘い

百合に割って入る男(ブラック)


悪魔偽王国軍(ディアボロス)のメンバーは突如自分達の城に現れたシャドウから逃げ回っていた。

 

「…くそ!夜になれば後れを取ることなど…!」

 

「……まずいですね。」

 

「ヨリもアカリも捕まっちゃったの…!」

 

「グォォォォォォォォ…!!」

 

シャドウはまだまだいる。

 

「…しまった…っ!?」

 

その時だった…向こうから杖の先に魔導書を付けている人物が歩いてくる。

 

「…あれは!?」

 

イリヤ達ははこの人物が誰か知っていた。前に会ったことがある…ミヤコは彼女をプリンに変えたこともあった。

 

「…このっ!?」

 

するとイリヤは赤い空間に閉じ込められた。

 

「イリヤさん!!」

 

「イリヤ!!」

 

そしてその時、もう一人の人物がでてくる。

 

その人物は…覇瞳皇帝に敗れたラビリスタだ。

恐らく洗脳でもされたのだろう。

 

「……。」

 

ラビリスタは城の全体をオブジェクトで覆った。

 

 

 

────────────────────

 

美食殿 ギルドハウス

 

「キャル様はお帰りには…?」

 

「…キャルがいないだと?」

 

「はい…家を空けられるなんて珍しいですね…。」

 

「…きっとお腹空かせて帰ってくる筈ですから…!」

 

「……。」

 

「キャルちゃんの好きな料理を作っておきましょう!」

 

「はい!」

 

その時だった。

 

「ペコ!コッコロ!ゴクウ!!」

 

「「「!?」」」

 

ユウキがブラック達を呼んでいた。

 

ブラック達は急いでユウキの下へ向かう。

そこには…

 

「ミヤコさま…!?」

 

ボロボロになったミヤコとシノブがいた。ミヤコはソファーの上で寝かされていた。

 

「こいつは…。」

 

ブラックも会ったことはないが見たことはあった。

 

「どうしたんですか!?」

 

「…見間違いと思いたいのですが…。」

 

「「「???」」」

 

 

 

────────────────────

 

ランドソル城

 

ランドソル城の玉座の前には捕らえられてしまったディアボロスのヨリ、アカリ、イリヤが翡翠の中に閉じ込められたまま並べられていた。

 

「…よくやったわ、『キャル』。」

 

「…はっ!」

 

これをやったのは目の辺りに仮面を付けているキャルだった。

 

「おい、お前確か…『美食殿』のメンバーだろ?どういうつもりじゃ!!ぐあっ!!」

 

イリヤがキャルに問いかけるもキャルは答えず、イリヤに電流を流した。

 

「陛下の前です…静かに。」

 

「…くっ、なんなのだ…あやつの違和感は…!」

 

 

────────────────────

シノブはイリヤ達を襲ったのはキャルであるとペコリーヌ達に伝えた。

 

「…そんな!」

 

「何かの間違いでは!?」

 

「…貴様、適当なことを言ってるんじゃないだろうな?」

 

「…事実です、キャルさんから私たちをイリヤさんが身をていして救ってくれたのです。」

 

「…うぅ、ミヤコやイリヤの魂が特別だからって言ってたの…。」

 

「…幽霊であるミヤコさんや、夜を統べる者と呼ばれるイリヤさんは…魂という概念が我々とは違うかもしれません。しかし、それが何を意味するのか…。」

 

「……。」

 

ペコリーヌはギルドハウスの外で一人佇む。

 

「……キャルちゃん。」

 

 

 

────────────────────

 

ランドソル城内

 

「賊が侵入したぞお!!!」

 

ランドソル城に忍びこんでいたのはタマキとカスミだった。騎士達に見つかり今は城内を逃げ回っている。

 

「はぁ…はぁ!」

 

「流石は王宮だにゃ…ここまで警備が厳重だとは…こんな依頼受けなきゃよかったにゃー!!」

 

 

一方、ハツネとシオリはピクニックにきたのだろうか、大きな庭のような場所でハツネは寝て、シオリはその隣で本を読んでいた。

 

「はにゃぁ……元気になってよかったねー…シオリン…。」

 

「うん…!」

 

その時だった。

 

 

ドスン!

 

突如大きな音がなる。

 

 

「はわわ!!!」

 

「なになになに!?」

 

「お姉ちゃん!!」

 

「大丈夫だよ、シオリン!お姉ちゃんがついてるから!」

 

 

その大きな音…いや地鳴りはランドソル全体に届いていた。

 

各々が足を止めて状況を確認する。

 

そしてランドソルはラビリスタの能力であるオブジェクト変更の柱によって全てが囲まれ、ランドソルから逃げられないという状況になった。

 

人々はその恐怖に震えている。

 

すると、ランドソルの上空に覇瞳皇帝の映像のような物が浮かびあがる。

 

『よき日、実によき日!親愛なる我が国民たちよ、この停滞した世界より今、解き放たれよう…我が贄になる事によって…。』

 

すると覇瞳皇帝の姿は消え、次に映ったのは、目元に仮面を付けたキャルだった。

 

「あれは…!!」

 

「「美食殿の!?」」

 

「「キャル姉さん!?」」

 

「……!」

 

「…くっ!」

 

皆が戸惑う中、キャルは詠唱を始める。

 

『降臨せよ。』

 

キャルがそう言うと上空から大量のシャドウが生み出され、ランドソルの街中にシャドウが溢れかえった。

 

 

「うわあああああ!!!!」

 

街の中はパニックになってしまった。

 

 

「あれは…キャル様!?どうしてランドソル城に…?」

 

「……覇瞳皇帝…!どうやら本気で私を怒らせたいようだな?」

 

「分からない事ばかりですけど、行かなくちゃ!」

 

「行こう!」

 

「……私も同行しよう。」

 

「ゴクウ様!?」

 

「本当はお前たちに任せようと思ったが気が変わった。覇瞳皇帝を仕留める…。」

 

「ゴクウさん…ありがとうございます!」

 

こうしてブラック達はランドソル城へと向かった。

 

 

────────────────────

ランドソル城

 

「……。」

 

「よくできたわ…キャル、『プリンセスナイト』の力…馴染んできたようね。」

 

「ありがとうございます…陛下。」

 

 

 

一方、聖テレサ女学院でもシャドウは溢れかえっており、ユニ、チエル、クロエは本の影に隠れながら対策を練っていた。

 

「ちぇ、ちぇるーん…どうするんですか、逃げ遅れちゃったじゃないですか…。」

 

「はあー…終わったわ…完全に詰みだわ…。」

 

「思えば儚い人生であったよ…どれ、辞世の句でも一つしたためておこう。」

 

3人が本に隠れていると…

 

「グォォォォォォォォ!!!」

 

「「「うわあああああ!!!」」」

 

「ネコネコファイナルブレイク!」

 

「無事かい!?ドクターユニ!」

 

タマキとカスミがシャドウを倒した。

 

「…なんで?」

 

「…探偵であるカスミ君に調査を依頼していてな。」

 

「…調査?」

 

「…これを。」

 

カスミは1冊の本を取り出した。

 

「ほわあ!手に入ったのか!」

 

ユニはこの本を机に広げる。

 

「警備が厳重で苦労したにゃ。」

 

「怪盗であるタマキ君の協力がなければ王宮には忍びこめなかったよ。」

 

「…怪盗は秘密にゃ、ていうか私は唯のたい焼き職人にゃ!」

 

すると…

 

「あった。」

 

「「「「ん?」」」」

 

「では、仮説は!?」

 

「ふむ、これで全ての謎が解けた訳では無いが…一つの真実に近づいたことに違いはないだろう…。僕の論文を見て興味を持ったかすみ君が訪ねてきてな…聞けば彼女も不思議な体験をしているでないか。」

 

カスミは前に自分と同じ姿をしたシャドウ、『キーリ』と出会っている。

 

「世界に蟠る根源的な虚構…僕とカスミ君はこの国の成り立ちから検証しようと動いていた訳だが…ようやく綻びを見つけることに成功したようだ。そもそもヒューマンの国であるはずのランドソルに、何故獣人族が玉座に座っているのか…またその事に誰も違和感を感じることも無く今まで過ごしていた。」

 

「そういえば…ユースティアナ様はビーストだにゃ!」

 

「信じ難い事だが、この国全員…記憶操作を受けていた可能性がある。」

 

「「「「え!?」」」」

 

「どういうことです…?」

 

ユニは本に書かれている絵を指さす。

 

「この『ティアラ』見覚えはないかね?」

 

「これって…!?」

 

「あの獣人族のユースティアナが偽物だと仮定して、では本物のユースティアナは一体誰か…。」

 

「…!!」

 

「その人物は…我々の知ってる人ではないのか…?」

 

 

 

────────────────────

 

ペコリーヌ達は出没しているシャドウを倒しながらランドソル城へ向かっていた。

 

「ユウキくん!」

 

「全力、全開!!」

 

ユウキはプリンセスナイトの力でペコリーヌを強化する。

 

「プリンセスストライク!」

 

「受けるがいい…我が刃!!」

 

街の人達を守りつつシャドウを倒す。

 

「まだあっちの方はシャドウがいない。死にたくなかったら急げ!」

 

「あ、ありがとう!!」

 

ドォン!!

 

城の近くで爆発が起きる。

 

「ゴクウさん!」

 

「…ああ。」

 

「…わかりました!」

 

「ペコリーヌ様!!ゴクウ様!!」

 

「……行こう!!」

 

「は、はい!!」

 

この時、コッコロの足が止まった。いや、数秒意識が飛んでいた。コッコロの意識は何もない暗い空間を彷徨う。

 

「……コッコロ!」

 

「……。」

 

「コッコロ!何をしている!」

 

「大丈夫!?」

 

コッコロは意識を取り戻した。

 

「す、すみません…!」

 

 

ランドソル城の外では国民が集まっており、シャドウの件について必死に訴えかけている。

 

「ユースティアナ様!助けて!」

 

「中に入れてくれ!!」

 

様々な声が飛び交う。

 

そんな国民を見下ろしながら覇瞳皇帝はキャルに指示を下した。

 

「キャル。」

 

「はっ…。」

 

キャルは地上に降りる。

 

「……。」

 

そして集まっている国民に向けて強力な魔法を躊躇なく放った。

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

しかし、国民に攻撃が当たることはなかった。

 

「……。」

 

「……。」

 

ブラックとペコリーヌがその攻撃を防いだ。

 

「…キャルちゃん?」

 

「…貴様。」

 

キャルは杖を下ろす。

 

「一体……一体何があったんですか?キャルちゃん!」

 

「落ち着けペコリーヌ…キャルはどうやら洗脳されているようだ。」

 

「…洗脳?」

 

「…上を見てみろ。」

 

ペコリーヌが上を見ると覇瞳皇帝がブラック達を見下ろしている。

 

「神を見下ろすとは…愚か者め。」

 

「キャル…私に美種を。」

 

「……。」

 

キャルの後ろに三つの魔法陣が展開される。

 

「っ…お前達!ここにいると巻き添えをくらうぞ!離れろ!」

 

国民に向けて放たれた魔法はペコリーヌが防ぐ。

 

「……早く!」

 

ペコリーヌも国民へ避難を呼びかけた。

 

魔法を防ぎきったペコリーヌは前へ飛び出す。

 

「…!!」

 

それはキャルに攻撃する為ではなく…見下ろしている覇瞳皇帝へ攻撃する為だった。

ペコリーヌは壁を走りながら覇瞳皇帝に近づく。

 

「…はぁ!!」

 

キャルはペコリーヌを覇瞳皇帝の下へは行かせまいと魔法の雷を落す。だが…

 

「…!?」

 

「私を忘れてもらっては困るな…。」

 

ブラックは雷を全て捌ききった。

 

「はあああああ!!…うぐっ!?」

 

ペコリーヌは覇瞳皇帝に弾き飛ばされた。

 

ズザザ…

 

「くっ…!」

 

「どうするべきか…。」

 

キャルは上空からブラック達を見下ろす。

 

「初めからこういう運命だったのよ、あたし達は。」

 

「……!」

 

「本当にそうか…?」

 

「…もう終わらせる。全てを。」

 

キャルは一点に溜めた魔法をペコリーヌとブラックに向けて放った。

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

「!?」

 

ペコリーヌが煙の中から飛び出してきた。

 

これにはキャルも反応が遅れた。しかし、魔法をペコリーヌに向けて乱射する。

 

「……!」

 

魔法はペコリーヌの身体を掠っていたが魔法を潜り抜けキャルに抱きついた。

 

「う、うぐっ…離せ…離せ!!」

 

「美食殿の……!!!美食殿のあの日々は、皆で笑ったり、泣いたり、一緒に食べたご飯の美味しさは…暗闇の中にいた私を救ってくれました…!」

 

ペコリーヌは涙を零す。

 

「……!」

 

「お願いです…キャルちゃんの本当の気持ち…教えてください。」

 

「……進んだ針は…戻らない。」

 

キャルは攻撃を止めることはなく、ペコリーヌに魔法を浴びせた。

 

「くっ…うわあああああ!!」

 

その様子を街の人達は見ている。

 

キャルは杖をかざし、トドメを刺そうとした時…

 

『あー、あー、てすてす…てす。』

 

『ホントにこれで放送出来てんの?』

 

「…!?」

 

『問題ないさ。ランドソル中の小石にロゼッタ同様自我を付与しておいた。』

 

『友達の輪〜。』

 

ユニ、いやユニちゃんズだった。

 

『聞こえるだろうか、ランドソルの諸君。僕はドクターユニ、聖テレサ女学院に籍をおく者だ。今やランドソルは未曾有の危機…端的に換言すれば、お先真っ暗だ。だが、暗闇の中にも光はある。』

 

『こぉらーー!!!ユースティアナ様の真似をしてふんぞり返ってる奴!』

 

『てめぇ何してくれてんだぶっ飛ばすぞこの野郎!!』

 

「……ちっ。」

 

『いるのだ。ランドソルの玉座に座るべき人物が。真の『ユースティアナ王』が。』

 

「まさか…。」

 

「あの陛下は偽物なのか!?」

 

「じゃあ本物は何処に!?」

 

国民達がざわつき始める。

 

「…キャル。皆殺しにしなさい。」

 

「……。」

 

キャルは静かに上空へと飛ぶ。

 

そして大量の魔法陣がキャルを中心に展開され、そのまま人々に向けて乱射された。

 

「「「うわあああああ!!!」」」

 

「くそっ…!!」

 

ブラックはある程度の魔法は弾いたが全ての魔法は防ぎきれない。

 

「……。」

 

あれだけの攻撃があったが国民には誰一人死亡した者はいなかった。そしてキャルは攻撃をやめた。

 

「すみません…陛下、これ以上はもう…!」

 

「くだらないわね…人形は人形らしく振る舞いなさい!!」

 

「…あ…!?」

 

キャルの意志とは逆に覇瞳皇帝が無理やりキャルを操り国民へ攻撃した。

まるで操り人形かの様に糸でキャルを操っていた。

 

「「「うわあああああ!!!」」」

 

「…やめて、やめてください陛下!こんなこと、いや、もう嫌あああ!!!」

 

覇瞳皇帝にそのキャルの声は届かない。

 

「陛下やめてください!これ以上人を傷つけたくない!やめてえええ!!!!」

 

キャルの仮面が外れる。

 

「…消して、誰か私を消し去って…!」

 

「……!!」

 

「……!!」

 

ペコリーヌとブラックはキャルの魔法を全て剣でかき消した。

 

「……!!」

 

「助けて…助けてよ…ペコリーヌ、ゴクウ!!」

 

「勿論です!!」

 

「当然だ!!」

 

「!?」

 

ペコリーヌとブラックが力強く答える。

 

「…ロゼッタ。」

 

ロゼッタはブラック達をスクリーンに映し出し、ランドソル中に映像を映す。

 

「……!」

 

ペコリーヌは剣を構える。

 

「『ユースティアナ・フォン・アストライア』の名において、あなたから皆を守る!」

 

「私は『孫悟空』だ……!貴様を倒し、全てのシャドウを消し去り、永遠に汚れることなき世界の夜明けをもたらす者だ…!」

 

 

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」

 

「……。」

 

 

最終決戦が始まろうとしていた。

 




そろそろあの形態がでるのか…?


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気高き美しさの頂点

次で2章は最終話かな?


「ペコリーヌ…ゴクウ…。」

 

「キャル、今行くぞ…。」

 

「今、助けます…っ!?」

 

「!?」

 

その時、キャルの身体は覇瞳皇帝の操っている糸によって覇瞳皇帝の下へ引き寄せられる。

 

「…陛下!?」

 

「こうしたかった…?」

 

「違う…こんな!!」

 

「くっ…!!」

 

「……。」

 

覇瞳皇帝はキャルの耳元で囁く。

 

「ああ…愚かで可愛い私のキャル…いっそこのまま壊してしまおうかしら?」

 

ペコリーヌは覇瞳皇帝へ向かって走り出す。

しかし、シャドウがブラック達の行方を阻む。

 

「グオオオオオオオオ!!」

 

「シャドウの分際で私の行方を阻むとは……身の程を知るがいい!」

 

ブラックもシャドウを倒していると…

 

「あなたに相応しい相手を用意したわ…。この国の守護者、王宮騎士団、NIGHTMAREの団長よ?」

 

なんとジュンが覇瞳皇帝によって洗脳されていた。ジュンはブラック達の前に立ち塞がる。

 

「くっ…!!」

 

「さあ、存分に殺し合いなさい?」

 

その時だった。

 

「がっ……!!」

 

洗脳を受けたジュンが一瞬にして倒れたのだ。

何故倒れたのか、誰が倒したのか、それは一瞬でわかった。

 

「…は?」

 

覇瞳皇帝も何が起こったのか分からないという顔をしていた。

 

「いい加減にしろ…次から次へと洗脳とふざけた事ばかり…もう貴様の遊びには付き合ってられん。」

 

「ゴクウさん…!?」

 

「安心しろ…気絶させただけだ。」

 

「よ、よかった…。」

 

その光景を見た覇瞳皇帝は激昂した。

 

「茶番!!茶番茶番茶番茶番茶番茶番茶番ねえ!!!!!」

 

「もっと私を楽しませなさい!!!!命を焦がす光を!!!私に!!!」

 

ブラックはその覇瞳皇帝の姿を見て嘲笑う。

 

「ふん、無様だな…覇瞳皇帝。この程度のことで取り乱していたらこの世界など支配はできんな。」

 

「黙りなさい!!もっと私を!!!」

 

「おいおい…私に構ってばかりで大丈夫か?」

 

「はっ…!!」

 

その時だった。

 

「キャルーーーーーーー!!!!」

 

「ユウキ!?」

 

「なにっ!?」

 

ユウキは上空から覇瞳皇帝の隙をつきキャルを解放した。

 

「大丈夫?」

 

「う、うん…。」

 

「ユウキくん…コッコロちゃん!?」

 

「間に合ってよかったです…ゴクウ様が隙をつくってくださらなければ不可能でございました。」

 

「みんな……!!」

 

「後は、ゴクウ様に任せましょう!」

 

「はい…!」

 

「ゴクウ…!!」

 

コッコロ達はキャルを無事に救出し後はブラックに託した。

 

「……さあ、覇瞳皇帝……裁きの時だ。」

 

「だ、黙りなさい……!あなた如きが……!」

 

「ふっ……。」

 

「っ……!?」

 

ブラックは一瞬で覇瞳皇帝の上空に瞬間移動した。

 

 

「……波ァッ!!」

 

そして覇瞳皇帝に向けてかめはめ波が放たれた。

 

「ぐぅっ…!」

 

覇瞳皇帝は咄嗟に防御を固めた。

 

「こんなもの……!!」

 

覇瞳皇帝は煙を払い除ける。

 

「隙だらけだぞ?」

 

「ぐはっ!!」

 

煙を払い除けると同時にブラックの蹴りが鳩尾に入った。

 

「ぐっ……どけえええ!!」

 

覇瞳皇帝はブラックに無数の魔法を放つがブラックはそれを全て避け、覇瞳皇帝の目の前に現れる。

 

「はぁぁぁぁぁあ!!!」

 

「…なにッ!!」

 

「どうした!この程度か……!」

 

「ぐぅっ……!!」

 

上空で覇瞳皇帝とブラックの一歩も引かない攻防が繰り広げられる。

この闘いにランドソルの運命がかかっているだけあって皆がこの闘いに注目している。

 

「行けええええ!!!」

 

「偽物なんてやっちまええ!!」

 

「ゴクウーー!!いけえええ!!」

 

「嘘でしょ…あの陛下と互角以上に闘ってる!?」

 

「…本当に凄いです、ゴクウさん!!」

 

「はい、思わず見入ってしまいますね。」

 

「……ゴクウ!!」

 

ペコリーヌ達は一瞬足りとも見放さずに戦いを見守る。

 

「てかなんで当たり前のように空飛んでんの?おかしくない?いや、まあ…カッコイイけど…。」

 

「チエルあの先輩嫌いなんで強いとちょっとムカつきますね。でも、絶対に勝ってくださいね…!」

 

「命運は彼に託されたのだ。我々は見守るしかあるまい。」

 

なかよし部もスクリーンを通して戦いをみていた。

 

そしてここで…

 

「だりゃあ!!」

 

「ぐはぁ!!」

 

ブラックの膝が覇瞳皇帝の腹部に入った。

 

「はぁぁぁぁぁあ………たぁああああっ!!!」

 

「ぐわあああああああああ!!!」

 

そのまま両腕を振り上げ覇瞳皇帝の背中に叩きつけ地面に落とした。

 

「「「やったあー!!!」」」

 

リトルリリカルも戦いを観戦しブラックを応援していた。

 

「マジで強え!!あの兄ちゃんやるじゃねえか!」

 

「ゴクウマジでLove!!」

 

「…ぐぐ…おのれ…!!」

 

地面に叩きつけれた覇瞳皇帝はゆっくりと体を起こし上空にいるブラックを睨む。

 

「ふん…。」

 

覇瞳皇帝が起き上がったと同時にブラックは真っ直ぐ覇瞳皇帝目掛けて急降下する。

 

「ぐっ……はああああ!!」

 

覇瞳皇帝も負けじとブラック目掛けて飛びかかった。二人の拳の衝突の後、一拍遅れてランドソル中に轟音が鳴り響いた。

 

「「「「「「うわああああ!!!!」」」」」」

 

この衝突に勝ったのは…

 

「ふん…!!」ニヤリ

 

「…。」

 

覇瞳皇帝だった。

 

覇瞳皇帝はブラックの拳を片手で防ぎ、逆に覇瞳皇帝の拳はブラックの顔面を捉えていた。

 

「はああああああ!!!!!」

 

覇瞳皇帝はそのまま容赦なくブラックの顔面に自分の拳から強力な魔法をぶつけ上空へ吹き飛ばした。

 

「ゴクウ!!!」

 

それをまともにくらったブラックは…。

 

「…どうした、効かないぞ?この程度では。」

 

ブラックは全くダメージを負っていなかった。

 

「ぐぅ…はあ!!!」

 

「…。」

 

苦し紛れの覇瞳皇帝の攻撃は全て防がれた。

 

「はああああ!!!」

 

ブラックは巨大な気弾を作り覇瞳皇帝へと放った。その威力はランドソル中を覆っていたラビリスタのオブジェクトを打ち砕いた。

 

「ぐわあああああ!!!!!」

 

「ふん…。」

 

「終わったんですね…。」

 

ペコリーヌ達がブラックの側へ駆け寄る。

 

「いや、まだだ。」

 

「!?」

 

瓦礫から出てきたのは…

 

「い、嫌だ…消えたくない、死にたく、ない…。」

 

シャドウだった。どうやら覇瞳皇帝の姿を真似ていたらしい。

 

「こいつは覇瞳皇帝の姿をしたシャドウだったようだな。」

 

「シャドウ!?」

 

「死…死とはなに…?私は、影…私は…わ、た、し、は…。」

 

その時だった。突如目を覆うような眩しい光に包まれる。

 

「うっ!!」

 

「なんですか!?」

 

「あれは…!?」

 

「陛下…!?」

 

突如その光から姿を現したのは先程倒した偽物とは比べ物にならないほどの力を付けた覇瞳皇帝だった。

 

「どういうことだ!」

 

「また偽物!?」

 

「倒したんじゃなかったのか!?」

 

「…少し寝ている間に、さわがしくなっているわね。まあいいわ。」

 

「な!?」

 

「何これ…重い!!」

 

すると突然ペコリーヌとキャルが地面にうつ伏せに押しつぶされる様に倒れた。

 

「おい…。」

 

「…何かしら。」

 

「お前の相手はこの私だ。」

 

ブラックは再び覇瞳皇帝の前にたつ。

 

「驚いたわ…あなたこの重力の中、立っていられるの?」

 

「ん?何かしてたのか…?ちっぽけな能力は感じ取れないんでな。」

 

「そう…最後まで私に抵抗するのは()()()()()…貴方なのね。」

 

「…貴様のその力…人間には分不相応だ。」

 

ブラックの顔から余裕が消える。

 

「いい顔になったわね…ソンゴクウ。」

 

「……。」

 

「貴方の全てを奪い尽くす。」

 

「…いいや、返してもらうぞ?ペコリーヌの奪われた全てを…!」

 

ブラックは覇瞳皇帝に向かって殴りかかる。

 

「オブジェクト…。」

 

しかしブラックの攻撃はオブジェクト変更によって突如柱が飛び出し防がれた。

 

「……面白い、前よりも比べ物にならないほど強くなっている…。」

 

「…貴方達が馬鹿みたいにシャドウと闘ったおかげでね…!」

 

覇瞳皇帝は続けて柱でブラックを攻撃する。

 

「くっ……!」

 

柱か前後左右からブラックを襲う。

 

「……これは!」

 

「終わりね…。」

 

「…はっ!」

 

ブラックは身体を捻り死角から飛び出してくる柱をよけ、急所を避けた。

 

「……ぐっ!」

 

「ゴクウ…!!」

 

「ゴクウさん!!」

 

「ゴクウ!!」

 

「ゴクウ様!!」

 

致命傷は避けたとはいえかなりのダメージを受けてしまった。

 

「どうしたのかしら…貴方の全力はこんなものではないでしょう……!?」

 

そして、次の瞬間、ブラックの雰囲気が突然変わった。

 

「……フフフ、人の身でよくぞそこまで…。褒美にいいものを見せてやろう。」

 

「…なにっ!?」

 

「いいものって…?」

 

「あの金色になるやつ…?」

 

「全く予測がつきません…!」

 

ブラックは静かに構えた。

 

「ハァァァァァ…!!!」

 

ブラックが声を上げると突如大地は震えだし、太陽は雲に隠れ、雷が鳴り響く。

 

「はあ…!?ちょちょちょ、どういうこと!?天気が…地震が…!!」

 

「…これ程の揺れ、体験したことございません…!!」

 

「一体どうなっているんですか!?」

 

「うわわわわ……!!」

 

「なんだ!?」

 

「地震か!?」

 

「ほわあああああ!!興味深ああああ!」

 

「ちぇるるるるるるるる!??」

 

「ちょ、これガチもんのやべえやつじゃん!!」

 

「何…何なのこれは…!?」

 

「ハァアアアア!!!!!」

 

「「「「「「!!???」」」」」」

 

ランドソルにいる全員は目を見開いて驚いた。

突然ブラックの髪が逆立ち薔薇色に染まり、綺麗なピンク色のオーラを身にまとっていたのだから。

 

「…ピンク…!?」

 

「……かっこいいです!!」

 

「うわぁぁぁ…!!」

 

「なんと神々しい…!」

 

「まるで、()()のようだ…。」

 

「美しすぎる…!」

 

「な、何者だ…!!」

 

覇瞳皇帝はブラックの凄まじい変化に驚いた。

 

「どうだこの色、美しいだろう?」

 

ブラックは両手を広げてこれ見よがしに自身の変化を見せつける。

 

「ご、ゴクウ……さま……!?」

 

「さっきと全然違うじゃない……!本当にゴクウ……なの?」

 

コッコロとキャルも突然薔薇色のオーラを纏ったブラックの変化に驚かざるをえなかった。

 

()()()()のネーミングセンスに合わせて名付けるとしたら…。」

 

「『ロゼ』…、そう…。」

 

(スーパー)サイヤ人ロゼ……!』

 

ブラックは手を顔の前にかざしながら覇瞳皇帝を真っ直ぐに見る。

 

「興味深ああああああ!!!!!」

 

「ピンクって!!あの先輩がピンクってなんかウケる。」

 

「何なん?(スーパー)サイヤ人ロゼって…めちゃめちゃカッケーじゃん…なんそれ…!」

 

覇瞳皇帝はその姿を見て激怒した。

 

「そんな変身で…神に適うと思うなあっ!!!」

 

覇瞳皇帝は隙を見せているブラックに強力な魔法を乱射した。

 

だがブラックはその攻撃を余裕で交わし覇瞳皇帝の背後に現れた。

 

「なっ…!?」

 

「……いつまで支配者気取りでいるつもりだ?この世界の支配者は『オレ』一人だ。」




アニメではあんなに奮闘してた団長さんの出番ェェ…


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超絶覚醒の紅き戦士

祝20話!!
※誤字だらけで編集し直しました。


「フフフ…オレの志も、美しさも…そう!オレという存在全ては…ただひたすらに…孤高…。」

 

ブラックは自分の力に酔いしれる。

 

「…気づいたかねチエルくん、クロエくん…彼の一人称が『私』ではなく『オレ』に変わっている!そして何よりあのオーラ…やっぱり興味深ああああああああああ!!!!」

 

「あっは!先輩絶対チエルの事意識してんじゃんウケる!」

 

「ロゼって…かっこよさぶち破ってんじゃん、最高かよ。」

 

 

なかよし部は全員揃って興奮していた。

 

 

 

「ソンゴクウ…!!あなた、調子に乗りすぎじゃないかしら?」

 

「文句があるなら、オレを地に降ろしてみればいい。」

 

「…ふざけるなあ!!!」

 

覇瞳皇帝はブラックに挑発され、殴りにかかった。

 

しかし。

 

「なっ…!?」

 

その攻撃はあっさりとブラックに防がれる。

 

「なんという未熟……感情に任せるだけの攻撃で私を倒せると思うか?」

 

そしてブラックは掴んだ拳を捻り、体勢を崩した覇瞳皇帝を地面に蹴り飛ばした。

 

「ぐわあああああ!!!!!」

 

「貴様は…地上で俺を見上げているのがお似合いだ。」

 

圧倒的なブラックの強さにペコリーヌ達は驚愕する。

 

「とてつもなく強いです…!!」

 

「あいつ、今まで本気じゃなかったっていうの!?」

 

「それにゴクウ様の性格も以前とは少し違いますね…!」

 

「すごい……!!」

 

「さあ、メインディッシュを平らげ、更なる高みへ昇るとしよう…。」

 

ブラックは手に気の刃を作り覇瞳皇帝に攻撃をする。

 

覇瞳皇帝は紫色の結界の様なものを纏い何とかブラックの攻撃を防ぐ。

 

「…ここが、貴方の旅の終わりよ!」

 

覇瞳皇帝は左右に浮いている謎の物体をブラックの後ろに配置し、強烈なレーザーを撃ち込んだ。

 

「ゴクウさん!!」

 

「ゴクウ!!」

 

0距離からのレーザーだったが…

 

「こんなオモチャで…オレに勝てるとでも?」

 

「なっ…!?」

 

「覇瞳皇帝よ…オレの計画のため…徒花と散れ…!!」

 

ブラックはそのまま覇瞳皇帝の結界を切り裂く。

 

「おのれ…!!!」

 

覇瞳皇帝は正面から飛び込んでくるブラックを迎え撃とうとしたが…。

 

「……。」ニヤリ

 

ブラックの姿が突然目の前から消える。

 

「そんなっ……!?」

 

「ここだ。」

 

ブラックは覇瞳皇帝の後ろへ瞬間移動した。

 

覇瞳皇帝がそれに気づき振り向いた時、既にブラックの手には赤黒い気弾を覇瞳皇帝の腹部に密着させていた。

 

「しまっ……!!」

 

「神に抗う罪人が…失せろ。」

 

ドォォォォォォォォォォォォン!!

 

ブラックの攻撃は炸裂し、辺りが砂埃で舞う。

 

「……。」

 

覇瞳皇帝は辛うじて防御が間に合っていた。

 

「ん?まだ立ち上がるか…。」

 

「何度目の光景かしら…もう、思い出すこともできない。」

 

すると…

 

「なに…?」

 

「そんな……!」

 

「ウソ…!?」

 

「あの方は…!」

 

覇瞳皇帝は洗脳しているラビリスタと変貌王妃を出した。

 

「…。」

 

「…。」

 

「だからこそ、この呪われた世界を終わらせる。」

 

「…なんと無様な姿だ…ラビリスタ。」

 

ラビリスタは覇瞳皇帝のナイフに変化した変貌王妃を操る。

 

変貌王妃が変化したナイフは無数に増え続ける。

 

「まずいです…!」

 

「……くっ!」

 

全てのナイフはブラック目掛けて飛んでいった。

 

「ゴクウさん…!!」

 

「ゴクウ様!!」

 

「危ない!!」

 

「ゴクウ!!」

 

ナイフの数が多すぎてブラックの姿が見えない。

 

やがてナイフの攻撃は終わり、変貌王妃は変化を解いた。

 

「ふははははは!!無様ね!!」

 

するとブラックは土煙の中から歩いてくる。

 

「!?」

 

「まさかお前にこれ程の力があるとは思わなかったぞ?」

 

ブラックは口元の血を親指で拭いながら姿を現した。

 

「これだけやっても……どんなに足掻いても…ループから抜け出せないというの…!?私は……こんなに絶大な力を持ったというのに……!!」

 

「……確かに今までの貴様より比べ物にならない程強くなっている……。ふふ……今分かったぞ?貴様の急激な成長の原因が…。」

 

「なに…?」

 

「怒りだな…?プライドを傷つけられた怒りが、貴様を強くしたのだろう?」

 

「……黙れ!!」

 

「…気づいてみれば単純な話だが、怒りを力に変える…。人間にしか思いつかないおぞましい方法ゆえ、つい見逃してしまった。」

 

「ゴクウ…?」

 

「ゴクウ様…?」

 

「あんた…どうしたの?」

 

「ゴクウさん…?」

 

唐突に覇瞳皇帝の強さの原因を探り出したブラックに全員は不思議に思う。

 

「そうか、怒りか…。」

 

そういうとブラックは気の刃を自分の手に深く刺し込む。

 

「やめなさい…!あんた、自分の手になに刀ぶっ刺してんのよ!」

 

「…この世界を汚す貴様への怒り…。キャルを自らの欲望のために利用された怒り…。そして、人間如きに不覚をとった無力な自分への怒り…。」

 

「ゴクウさん!?何してるんですか!?」

 

「それ以上はいけません!」

 

ブラックはペコリーヌ達の忠告を無視しながらそのまま自分の手に刀を刺し込む。

 

「くっ…ふふ、はぁぁぁぁ……!!」

 

「ゴクウ!!」

 

「はあああああああ!!!」

 

ブラックは自分の手に刃を刺す…そのまま掌から抜くと、気の刃は鎌になっていた。。

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「あれは、鎌!?」

 

「見ろ、覇瞳皇帝…。怒りを力に変えたことで、オレはまた新たな力を手に入れたぞ…。」

 

「…こんなっ…!!!」

 

「怒りが力の源となりうるならば。誰よりも強い怒りを抱えた、このオレこそが最強だ。」

 

「あれがゴクウ様の本気…!」

 

「神の怒りの強さが如何程のものなのか…その身に刻み込め!」

 

ブラックは鎌を覇瞳皇帝へ向ける。

 

「そんな物…っ!!」

 

「斬ッ!!!」

 

ブラックは気の鎌を横一閃に振る。

 

しかしその攻撃は覇瞳皇帝に軽々と避けられた。

 

「ふん…!避けられない程の速さではない…わ!?」

 

覇瞳皇帝が振り向くと先程避けた鎌の攻撃が空間を切り裂き、次元の裂け目が広がっていた。

 

「なに…あれ!?」

 

「あれは…!?」

 

「空間に穴が…!!」

 

「なん、なの…何なのよこれは…!?」

 

「さあな、オレにも分からん。」

 

「はあ!?」

 

「見えているのは別の宇宙か、遥か未来か過去か…あるいはオレが抱え込んだ底なしの怒りそのものかもしれない。」

 

この時ブラックは気づいていなかったが身につけている()()()()が微かに反応を示していた。

 

「空間を切り裂くなんて…!!」

 

「これでどうしようというの…!?」

 

「この裂け目がある場合、周りの『気』がデタラメになる…。つまり、お前達の洗脳も解ける。」

 

「…!?」

 

「…!!」

 

「…!!」

 

ブラックの予想通りラビリスタと変貌王妃の洗脳が解けた。

 

「ゴクウ…恩に着るよ!!」

 

「助かりました…!」

 

「あと少し…あと少しなのに…『ミネルヴァ』を…あいつを!今度こそ私の世界を!!」

 

「……。」

 

「ソン…ゴクウウウウウ!!!!」

 

覇瞳皇帝は我を失いブラックに飛びかかった。

 

だが、

 

「はああああああ!!!」

 

「阻止します!!」

 

覇瞳皇帝の攻撃はラビリスタと変貌王妃に防がれた。

 

「うわあああああ!!!」

 

「「「うおおおおおおおおお!!!」」」

 

ラビリスタと変貌王妃の手助けにより、遂に覇瞳皇帝を倒した。

 

「今ので力を使い果たしたようだなラビリスタ、それにそこのピンク…。」

 

「まあね…それにしても君、随分姿変わったね?イメチェン?」

 

「……私の事は『ネネカ』と呼びなさい。」

 

「…陛下。」

 

キャルは覇瞳皇帝が吹き飛ばされた方を見ている。

 

「……。」

 

覇瞳皇帝は瓦礫の中から出てくる。

 

「しぶとい奴だ…。」

 

「…真那、君の力は絶大だ。だがそれ故に孤独で…自身の限界を超えることはない。」

 

「……。」

 

「もう一度言うよ…チェックメイトだ。」

 

「そうね…私の限界はここなのかも知れない…。」

 

「………。」

 

「間違っていた……。」

 

「…え?」

 

ラビリスタは素直に覇瞳皇帝が間違っていたと認めたことに驚いた。

 

「間違っていたわ…この焦がれる願いを叶えるためなら、私は私の限界を超えねばならない…。」

 

「まさか…!!」

 

「……!!」

 

覇瞳皇帝の身体には、偽物の覇瞳皇帝がしがみついていた。

 

「例え…影に呑まれようとも。」

 

「グワアアアアアアアア!!」

 

「私という存在を賭け、私は自分の願いに準ずる…。この魂に賭けて!!」

 

シャドウは覇瞳皇帝を体内に取り込んだ。

 

「そんなっ…!!」

 

「これは…!!」

 

「陛下…!!」

 

「…!!」

 

「オオオオオオオオオオオオオ……!!」

 

覇瞳皇帝を取り込んだシャドウはみるみる大きくなっていき次第にはランドソル城よりも大きいシャドウになってしまった。

 

「愚かな…自ら影に呑まれるなど…。」

 

「ええ!?」

 

「……!!」

 

「賭けに出た覇瞳皇帝は失敗に終わったということです。」

 

だが既に影に呑まれた覇瞳皇帝の自我は完全に無くなっていた。

 

「……。」

 

「あぁ…陛下…!!」

 

「影に自らの身体を取り込ませた結果…自我は闇へと埋没…あのシャドウと共に魂は滅ぶでしょう。」

 

「…そんな!!」

 

キャルはなんとか助けたいと思っていたが……

 

「いいぞ!勝手に自滅してやがる!」

 

「散々俺たちを苦しめやがって!!」

 

「ユースティアナ様の名を語る偽物め!」

 

覇瞳皇帝は国民から散々罵られた。

 

「…大したパワーだ…だがその醜さは見るに堪えん!」

 

ブラックもトドメを刺そうとしたその時だった。

 

「待ってください!!」

 

「ん?」

 

ペコリーヌがブラックを呼び止めた。

 

「私は…あの人を助けたいです!」

 

「ペコリーヌ…あいつが何をしたのか分かってるのか?」

 

「分かってます…でも、お願いします…!!」

 

「私からもお願い…陛下を助けて!!」

 

キャルとペコリーヌにそう言われたブラックは呆れながらも刃を下ろした。

 

「……はあ…恐らくあいつは、シャドウの奥底に囚われている。オレがなんとか隙を作る。お前たちはその瞬間にあのシャドウの体内へ入れ。」

 

「ゴクウ…!!」

 

「ゴクウさん…!!」

 

「やはりゴクウ様はお優しい…!」

 

「勘違いするな…お前たちの説得をするのが面倒なだけだ。」

 

「ゴクウ……!!」

 

「おいユウキ。」

 

「何?」

 

「……このオレを強化しろ。」

 

「ゴクウを…!?」

 

ユウキは今まで一度足りともブラックに対してプリンセスナイトの力を使ったことがなかった。

 

「いや、オレだけではない。ここにいる全員をな。」

 

「全員…?」

 

「オオオオオオオオオオオオオ…!!!」

 

その時、覇瞳皇帝のシャドウがユウキ達を捕らえようと手を伸ばしていた。

 

「うわっ!!」

 

その刹那

 

「ウルフェンバイトォォォ!!!」

 

「待たせたさー!!」

 

シャドウの腕がマコトとカオリによって弾かれた。

 

「大丈夫さー!?」

 

それだけではない

 

「エンチャントアロー!!」

 

「シューティングスター!!」

 

ハツネとシオリも加勢にきた。

 

「私達も!」

 

「一緒に!」

 

そして、

 

「リマリマリマリマ!!」

 

「行っくよー!!」

 

「街の人達は…サレンディアや他のギルドが守ってくれてるべ!!」

 

エリザベスパークも駆けつけた。

 

「「「「みんな!!!」」」」

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

覇瞳皇帝のシャドウは暴走し強力なレーザーを放ってきた。

 

「「うわあああ!!」」

 

だが…

 

「インフェルノシールド!!」

 

「ジュンさん!!」

 

「彼の一撃で頭が冷えたよ。ここからは私も!!」

 

更に…

 

乱数聖域(ナンバーズ・アヴァロン)!!」

 

クリスティーナも駆けつけた。

 

「思っていたより楽しそうだ…!」

 

「クリスちゃん…!」

 

沢山の助っ人が来てくれた。

 

「…!!ハァァァァァァ!!!」

 

そしてユウキは最後にプリンセスナイトの力でブラックを強化する。

 

「…これが…プリンセスナイトの力か…!!!!」

 

「ゴクウ…!!」

 

「薔薇色がますます濃くなっています…!」

 

「それに先程よりも輝いて見える様な…!」

 

「この果てしない力は…!!」

 

「…オレはまた一つ『進化』できた…。」

 

超サイヤ人ロゼは進化した。

 

「オオオオオオオオオオオオオ…!!」

 

「かめはめ……!!」

 

ブラックは両手に身体全体の気を集中させた。

 

「波───────ッッッ!!!」

 

巨大な紫色のエネルギーがシャドウに向けて放たれる。

 

「オオオオオオオオオオオオオ…!!!」

 

その強力なかめはめ波はシャドウを貫いた。

 

「…行ってこい!」

 

「…ゴクウさん……行ってきます!!」

 

ペコリーヌ達は閃光のごとく覇瞳皇帝シャドウの中に入っていった。

 




あと少しだけ続くんじゃ!


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さらばゴクウ…また逢う日まで。

次回から新章開幕!!


覇瞳皇帝のシャドウの内部

 

ペコリーヌ、キャル、コッコロ、ユウキはブラック達が足止めをしてる間にシャドウの内部に侵入した。

 

「あそこ!!」

 

ユウキの示した方向には薄い紫色の光が見えた。

 

「陛下…!!」

 

しかしその光からは何者も近づけさせまいと攻撃が飛んでくる。

 

ペコリーヌはその攻撃を剣で捌く。

 

「私達でキャルちゃんをあの人の所に!だから、後は頼みます!!」

 

「うん…!!」

 

キャルは覇瞳皇帝を助けるために先に進んだ。

 

「「はあああああ!!!!」」

 

ユウキとペコリーヌで内部のシャドウを倒す。

 

その攻撃は本体にも影響があるらしく、ブラック達の目にも見えるほどシャドウの身体が所々跳ねている。

 

「…頼んだよ…少年達…ってゴクウ!?」

 

ブラックの様子がおかしい。

 

「…ぐっ……!!」

 

「おい!ゴクウ…!!」

 

「しっかりするさー!!」

 

「…恐らく、プリンセスナイトの力は貴方の身体に対しての負担が大きかったのでしょう…!早く決着を付けなければ不味いかもしれません…!」

 

「ぐっ…くそ、身体が動かん…!!」

 

 

「プリンセス…ストライク!!」

 

ペコリーヌ達は全てのシャドウを倒し、薄紫色の光を目指す。

 

「後…少し!!!」

 

「キャルちゃん!!」

 

「ええ!」

 

ユウキは全力でキャル達を強化する。

 

「いっけええええええ!!!」

 

「プリンセスストライク!!!!」

 

ペコリーヌのプリンセスストライクは紫色の光をこじ開けた…と思われた。

 

「やった…やりましたよユウキく…ん…?」

 

「………!!」

 

「がはっ……!!」

 

ペコリーヌのプリンセスストライクが貫いたのは…ユウキだった。

 

「あ、はぁっ…あ…。」

 

ユウキは口から大量の血を流す。

 

「ユウキくん!!!」

 

「主様!!!!」

 

ユウキが倒れたと言うことは、外でシャドウと奮闘している皆にプリンセスナイトの力が行き届いていないということだ。

 

「…どうなってるんだ…!」

 

「ユウキさんの力が…!」

 

ラビリスタとブラックはその様子をラビリスタの魔法を通じて観ていた。

 

「……ユウキ!!」

 

「そんな……!」

 

「……ぐっ、ハァァァァァァ!!!」

 

「何をするつもりだい!?」

 

「お待ちなさい!それ以上動いたら死んでしまいますよ……!」

 

ブラックは限界に近い身体を無理やり起こし、ユウキ達の下へ向かった。

 

 

薄紫色の光の中

 

 

覇瞳皇帝は一人で椅子に腰掛けていた。

 

そこに…

 

「陛下…。」

 

「……。」

 

「ここにいらしたんですね…。」

 

キャルが覇瞳皇帝を探しにここまで来た。

 

「はぁ…こんな所にまで…馬鹿な娘…。」

 

覇瞳皇帝は呆れたようにため息をつく。

 

「私は…陛下のプリンセスナイトですから…!」

 

「……。」

 

 

その頃…ユウキは死の淵にいた。

 

「ユウキくん…!!」

 

「何処までも…お供させていただくと、約束したではありませんか…!!」

 

「……。」

 

「主様!!」

 

「ユウキ!!」

 

「「!?」」

 

ブラックがユウキ達を探しにきた。

 

「ゴクウ様!!」

 

「どうして!?」

 

「……ハァァァァッ!」

 

ブラックはユウキに自分の持っている『気』を宿した。

 

「……!!」

 

「主様!!」

 

「治ったんですか!?」

 

ユウキの傷は塞がっていき意識が回復した。

 

「動けるだろう…?さあ……早く行くんだ!」

 

「ゴクウさん……!!」

 

「ゴクウ様…!!」

 

「ゴクウ……!」

 

「…必ず、必ず生きてここを脱出しましょう!」

 

「ゴクウ様…待っていてください!」

 

「ゴクウ…!絶対に助けに来るよ!」

 

「…必要ない!オレは一人で脱出する。」

 

ブラックはそう言ってペコリーヌ達を先へと行かせた。

 

「……絶対ですよ!!!」

 

ブラックは全てをユウキ達に託した。

 

「………オレの最期は…大嫌いな人間を守って死ぬ…か。ふん…堕落した神もいたものだな……。ん?これは…。」

 

ブラックは服の中にある白くて硬い平べったい物を見つけた。

 

 

 

「つまらない日常、つまらない仕来り…ただそこから抜け出したかった。理想郷を創って。でも辿り着いたのは無限の牢獄……もう、どうでもいい。」

 

すると徐々に覇瞳皇帝がいる空間が崩れ始める。

 

「……仲間が陛下を助けるためにここまで導いてくれました。こんな私を信じてくれて…。」

 

「!?」

 

キャルは覇瞳皇帝の手を掴む。

 

「貴方がこの世界を諦めても構わない…必ず私が、貴方を絶望の淵から救い出す!」

 

「…!」

 

そしてとうとう…覇瞳皇帝の足場が崩れる。

しかし、キャルは腕を掴んだまま離さなかった。

 

「陛下!!」

 

「そう…この繰り返される世界で…貴女も変わったのね…キャル。」

 

その時だった…突然シャドウが指の先から石化し始める。

 

「そんな!!あの中にはアイツらが!」

 

 

「…陛下!手を手を掴んでください!」

 

「もう諦めなさい。この手を離せば…貴女だけでも…。」

 

覇瞳皇帝は助かる事を諦めていた。

 

「聞こえる…聞こえるんですあいつの声が…!!」

 

「!!」

 

次の瞬間…金色の光に包まれながら、ユウキが手を伸ばしていた。

ユウキだけではない、コッコロもペコリーヌもいる。

 

「諦めるな!!諦めるんじゃない!!キャル!!」

 

「キャル様!!」

 

「キャルちゃん!!」

 

「今度こそ…この絆は僕が守る!!帰ろう!僕達のギルドハウスに!!」

 

「………うん!!!」

 

キャルは涙を流しながらユウキの手を掴んだ。

 

 

「お、おい嘘だろ!!」

 

「ペコ姉さん…!」

 

シャドウは完全に石化して崩れた。

 

誰もが駄目だと思ったその時だった。

 

「おいみろ!!」

 

「あの光は…!!」

 

王宮に一筋の光が差す。

 

「まさかな、あの崩壊の中生き抜いてみせるとは…。」

 

ユウキ達は間一髪シャドウの石化から逃れられたのだ。

 

覇瞳皇帝を含めて5人で戻ってきた。

 

そう……5人だ。

 

「…少年、無事で良かったよ……。」

 

「……ゴクウは?」

 

ブラックはあの時、一人で戻ると言っていた。

 

「一人で戻ると言っていたのですが…。」

 

「…戻ってきてるわけがないでしょう…。あなた達の様子を観て、既に限界を迎えた身体で貴女達を助けに行ったのですよ…。」

 

ネネカは辛そうな顔で答える。

 

「…そんな…!!」

 

「恐らく…貴方が無事なのも…彼に傷を治してもらったからではないのですか?」

 

「あの時…僕は!!」

 

「ゴクウさーーーーん!!!!!」

 

ドォォォォォォォォォォォォン!!!

 

突如瓦礫が粉々に砕かれる。

 

「「「「「!?」」」」」

 

「全く、サイヤ人の身体というのは…何処まで頑丈なのだ。死のうとしても死にきれん。」

 

ブラックは本当に自力で帰ってきた。

 

「「「「「「「うおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」」

 

 

大きな歓声が上がった。

 

ランドソル中が震えあがっている。

 

「ゴクウさん!!」

 

「ゴクウ様!!」

 

「ゴクウ!!」

 

「ゴクウ…!!」

 

「無事でしたか…。」

 

「いやーよかった…!!」

 

皆がブラックが生きていた事に歓喜した。

 

「……当たり前だ。オレはそう簡単には死なない。」

 

「もう……もう……本当にバカ!!」

 

キャルは溢れる涙をこらえることが出来ずに泣き出した。

 

「ぐすっ……本当に良かったです!!」

 

ペコリーヌも泣き出した。

 

「……泣くな。とっとと帰ってご飯でも……!?」

 

「どうしたんですか…?」

 

するとブラックの時の指輪が反応する。

 

「……!!」

 

ブラックは覇瞳皇帝との闘いで切り裂いた次元の裂け目に引き寄せられた。

 

「くっ……!」

 

「ゴクウさん!?」

 

「ゴクウ!?」

 

「あんた……どうしたの!?ねえ!!」

 

「こ、これは…!時空の裂け目が元に戻ろうとしているのか…私もろとも…!!」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「どういうこと!?」

 

するとブラックは全てを悟ったように冷静になった。

 

「……どうやらお別れのようだな。」

 

「…え…??」

 

「今…なんと……??」

 

「お、お別れ……??何言ってんの……ねえ、何言ってんの!?」

 

ブラックが唐突に言い出した言葉に、全員は耳を疑った。

 

「……くっ……ぐっ!!」

 

「ゴクウ!!!」

 

ブラックは吸い寄せられる身体を無理やり前に出しながら言葉を振り絞った。

 

「……私は、人間が嫌いだ…。人間は醜く争い合う…。だが、お前達と過ごした日々は……悪くなかった…。」

 

「ゴクウさん…!?」

 

「待ちなさいよ……ねえってば………!!」

 

「そんなこと…言わないでください!」

 

「……ペコリーヌ、コッコロ、キャル、そして…ユウキ。お前達はまだまだ強くなれる…。」

 

そして遂にブラックの身体が裂け目に半分以上引きずり込まれる。

 

「……達者でな。」

 

「「「「ゴクウ!!!!!」」」」

 

 

 

ブラックは時空の狭間に姿を消した。

 

 

 

「ゴクウ!!」

 

「!?」

 

ブラックはアメスのいる世界で目を覚ました。

 

「オレは確か…。」

 

「ギリギリでこっちに呼んだのよ。」

 

「お前が…!」

 

「今はそんなことどうでもいいわ。それよりも…。」

 

「?」

 

「ゴクウ、この世界を救ってくれて感謝するわ。」

 

「…ああ、そういえば…。」

 

「この後のことは彼らに任せましょう。」

 

「この後?」

 

アメスは何やら意味深な発言をする。

 

「…そう、ね。実は根本的な解決にはなっていないのよね…。」

 

「どういう事だ…覇瞳皇帝を殺さなきゃいけなかったのか?」

 

「そうじゃないわ…真の黒幕は覇瞳皇帝じゃないの。」

 

「なんだと…!?」

 

突如告げられた衝撃の事実にブラックは驚愕する。

 

「ユウキたちはこの後、七冠を狙う【レイジレギオン】というギルドと戦うことになるわ。」

 

「なんだと…?何故七冠を狙うんだ。」

 

「それは…『願いを叶える』ためよ。」

 

「願いを叶えるだと…!?」

 

「そう…レイジレギオンは七冠を一人確保する度に願いを叶えるという条件で黒幕が指示をしているの。」

 

「……。」

 

「でももう大丈夫だわ。あんたは立派に世界を救った。この後のことはあんたにとっては蛇足でしょ?確かに突然の別れだったけど…あなたの事をユウキたちは感謝してるわ。」

 

「……。」

 

「…じゃあアンタを元の世界に戻すわね。そのままゆっくりと目を閉じなさい。気がつけば元の世界にいるわ。」

 

アメスはブラックに目を閉じろと促す。だがブラックはそれには従わなかった。

 

「…ユウキ達を救う術があると言ったらどうする…?」

 

「え!?そ、そんなことできるの!?でもアンタはもう十分…!」

 

「今更オレに帰る世界などはない。それに一度引き受けたことは最後までやり抜かねば私のプライドが許さん。」

 

「……あんたほんと変わってるわね…。それで、どうやってユウキ達を助けに行くの?」

 

「…全てはこの『時の指輪』がもたらしてくれる……。」

 

ブラックは人差し指に付けている『時の指輪』というアイテムを前に突き出す。

 

「時の指輪……!?」

 

「私はこれを使い未来に行く……。」

 

「未来に……!」

 

「……ではごきげんよう。」

 

「ちょっとゴクウ!?」

 

アメスに別れを告げ、ブラックは時の指輪を使い未来の世界へと渡った。




無理やりアニメの話終わらせたけどこれでよかったのか…?


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第三章 紅き仮面の侵略編
【レイジ・レギオン】


カリザきゅんかわいい(ノンケ)


ブラックは時の指輪を使い未来の世界へとやってきた。

 

「ここが未来の世界…とは言っても覇瞳皇帝の闘いから数ヶ月程しか経っていないようだが…。」

 

ランドソルに平和な光景が広がっている。

 

「それにしても…危なかった。シャドウの体内で仮面を被っていなければ…私は間違いなく死んでいた…。」

 

ブラックがあの時生き延びられたのは『フュー』に貰った仮面があったからだった。

 

「『フュー』は私の身体に限界か来ると言っていた…。正しくその通りだった……。」

 

ブラックは仮面をゆっくりと着ける。

 

「これからの私の『計画』の為にはやむを得ないか……。」

 

「私の願いを叶えるためには…な。」

 

ブラックは紅い仮面を被り、ランドソルの街へ向かった。

 

そして……

 

「美味しいです〜!!!」

 

「……誰だ、あいつらは…。」

 

ペコリーヌ達がレストランでご飯を食べているのを見つけた。そこにいたのは美食殿だけでなく、水色の髪のドラゴンの翼らしきものが生えた少女がいた。言葉が上手く話せていないようでまるで赤子のような精神状態だった。それに髪がピンク色の女の子、青い長髪の女の子、黄色い髪の獣人の女の子もいた。

 

それぞれ名前は羽が生えた少女は「シェフィ」、ピンク色の髪の女の子は「ユイ」、青色の長髪の女の子は「レイ」、黄色い髪の女の子は「ヒヨリ」といった。

 

 

そしてそこにラビリスタもいた。

 

何やら会話が聞こえる。

 

「ありがとう…少年、真那を止めてくれて…そして、真那を殺さないでくれた。」

 

「……。」

 

そして何やらユウキも精神状態が赤子のように戻っているようだった。

 

「あれはユウキか…一体なにがあったのだ…?」

 

するとラビリスタが衝撃の一言を発する。

 

「ゴクウのことは……残念だった。」

 

場が一瞬で鎮まる。

 

「!?」

 

「ゴクウ様…。」

 

「ゴクウさんは…私のせいで…!」

 

「あ、ごめん…場をしらけさせちゃったね…でも決して、ゴクウが亡くなったのは君たちのせいではない。」

 

「ん?亡くなった…?どういう事だ…!?」

 

聞き間違いかと疑うほど聞き捨てならない事を聞いた。

 

「あの…ゴクウさんってどんな方だったんですか…?」

 

「確かに…私達はその時に居なかったから、そのゴクウって人がどんな人か知らない…。」

 

「…うん。良かったら、そのゴクウさんって人の事教えて欲しいな…。」

 

覇瞳皇帝と闘った時にはいなかった三人はゴクウのことがどんな人物だったか気になっていた。

 

ペコリーヌ達はゆっくりと語り始めた。

 

「……ゴクウさんは、とっても強かったです。それに、優しかった…。」

 

「そうでございますね…終始一人で覇瞳皇帝と闘い、私達を守ってくださいました。」

 

「…ゴクウは、いつも私と喧嘩してたけど……でもそれは素直じゃなかっただけで、本当は皆のことをちゃんと考えてくれてた…。」

 

「……ゴ、クウ?」

 

「……あのシャドウの崩壊から逃れることは厳しかった。でも彼がいたお陰で少年たちは無事だったんだ…。」

 

「ゴクウさんって凄い人だったんだね…。」

 

「ああ、それにとても勇敢だ…あの覇瞳皇帝を相手に…!」

 

「友達になりたかったな…。」

 

「!!」

 

ブラックはこの時点でおかしいと思っていた。

 

ブラックはあの時死なずに生き残りそのまま時空の裂け目に消えた。

 

しかし、彼女達の記憶の中ではブラックは死んだことになっている。

 

「…まさか、ここは…『並行世界』の未来ということか…!」

 

ブラックの至った答えは並行世界だった。

 

「あの時に現れた『フュー』という男…あの時に渡された仮面のアイテムが無かったら私は死んでいた…。」

 

ブラックの出した結論は…。

 

「私が仮面を使って生き延びた世界が前の世界…そして私が仮面を貰わずに限界がきて死んでしまった世界がこの世界ということか…!」

 

なんともややこしい話である。

 

「……なんということだ…。」

 

ブラックは試しに時の指輪を前に突き出す。

 

「……。」

 

しかし、指輪は何も反応しない。

 

「もうあの世界には戻れないか…。」

 

ブラックが落胆した時…何やらペコリーヌ達が騒いでいる。

 

「大変です!ユウキくんがいません!」

 

「ありゃ?退屈な話をしたからどっか行っちゃったかな?」

 

「「「「「えええええ!!!!!」」」」」

 

ユウキはレストランの裏口から一人で抜け出していたのだ。

 

「……なんだと?」

 

すると一人の少女がブラックに話しかけてきた。

 

「すみませーん、そこの素敵な仮面を着けたおにーさん☆」

 

「ん?」

 

ブラックが振り返ると、何やらニコニコしていて頭には黒いリボン、それになんとも言い難い変な服装をしている少女がいた。

 

「何者だ?」

 

「私は『ミソラ』っていいます!誰か探してるんですか?」

 

「何故私が貴様に言わねばならんのだ。」

 

ブラックはミソラと名乗る少女に警戒をする。

 

「…貴方が探してるのって、【レイジ・レギオン】ってギルドじゃないですか?」

 

「貴様…何故それを…!」

 

「そんなのなんだっていいじゃないですか☆だって私は【レイジ・レギオン】のメンバーなんですから…。」

 

ミソラは自分を【レイジ・レギオン】のメンバーだと言った。

 

「なに…?」

 

「うふふ…。」

 

ミソラは不気味に笑う。

 

「それで、【レイジ・レギオン】の貴様が何の用だ…。」

 

「今日は貴方を【レイジ・レギオン】にスカウトする為にきました☆」

 

「スカウトだと…?」

 

「…私達【レイジ・レギオン】は各々が持つ願いを叶えるために集まったんです。」

 

「…願い…!!」

 

「貴方にも叶えたい願いがあるんじゃないですか?」

 

「願いを叶える条件とは…!」

 

「七冠一人につき一つの願いを叶えられます☆」

 

「……。」

 

「どうですか…?」

 

「…お前たちのギルドハウスに案内しろ。」

 

これはブラックの計画には渡りに船だった。

 

「…うふふ、これから仲良くしましょうね☆えーっと…名前は、、、」

 

「『ザマス』だ。」

 

ブラックは今まで自分を『孫悟空』と名乗っていたが、この世界では『ザマス』と嘘偽りの無い名前を名乗ることとした。

 

こうしてブラックはミソラと共に【レイジ・レギオン】のギルドハウスへと向かった。

 

道中

 

「所属メンバーは私を含めて5人います。」

 

「……。」

 

「まずは『カリザ』くんですね。カリザくんは口は悪いですけど弄りがいがあって面白いです☆」

 

「……。」

 

「次に『アゾールド』さん。豚の獣人さんです☆アゾールドさんの作る料理は美味しいんですよ!」

 

「……。」

 

「次に『ランファ』さん。ランファさんはとっても綺麗な歌声をしています。よくカリザ君に根暗とか言われますけどとっても可愛いですよ☆」

 

「……。」

 

「最後にギルドマスターの『ゼーン』さんです。ゼーンさんはドラゴン族で普段は怖そうに見えるんですがとっても仲間思いで優しいです☆」

 

「……ミソラ。」

 

「なんですか?ザマスさん。」

 

「何か、企んでいるだろう?私に支障がなければ別にいいが…。」

 

ブラックはやはり警戒している。

 

「……それはザマスさんもですよね。お互い今は心の内に秘めておきましょう?」

 

ミソラは隠し事がある事を否定はしなかった。

 

「ふん…今のうちはな。」

 

そんな会話をしていると…

 

「着きましたよザマスさん!」

 

レイジ・レギオンの拠点に辿り着いた。

 

「ああ…。」

 

ブラックとミソラは拠点の中へ入っていった。

 

「……ふぅ……。」

 

中へ入るとランファがランドソルから転移で戻ってきた。

 

「瞬間移動…?」

 

「似たようなものですね。ランファさーーーん♪」

 

ミソラは帰ってきたばかりのランファに抱きつく。

 

「……きゃっ……。ミソラ、ちゃん…?それに、えっと……。」

 

ランファはミソラともう一人知らない謎の仮面を被った人物に気づく。

 

「…この人はですね、今日から【レイジ・レギオン】の新たな仲間になった『ザマス』さんです!」

 

「……。」

 

「今日、から……?」

 

すると、

 

「ほっほっほ。何やら楽しげですな、お嬢さんがた。」

 

「あっ♪こんにちはアゾールドさん☆それにゼーンさんも☆」

 

金の鎧に包まれたアゾールドと大きな大剣を持ったドラゴン族のゼーンもやってきた。

 

「…邪魔をする。ん?ミソラ、その男は…。」

 

「確かに気になりますな。」

 

「今日から【レイジ・レギオン】の新しい仲間の『ザマス』さんです!皆さん仲良くしてくださいね☆」

 

「…ザマスだ。」

 

すると、

 

「へっ!何が新しい仲間だ!こんな実力も分からねえ変な奴と協力なんかできるかよ!」

 

カリザはブラックを仲間と認めず喚き散らす。

 

「…ふん、実力が知りたいのならかかってくるがいい。」

 

「なんだと?」

 

「カリザ…落ち着け。」

 

「うっせえよゼーン!!」

 

「もーカリザくんってば…そんなんじゃ嫌われちゃいますよ?」

 

「ほっほっほ。まあいいではありませんか!」

 

「俺も反対はしない。仲間が増えるのなら心強い。」

 

「私、も…うるさくないなら…構わない、わ…。」

 

「じゃあ多数決でオッケーってことですね☆あ、ほらほらザマスさんも拠点の中では仮面を外しちゃいましょう☆」

 

「…。」

 

ブラックは仮面を外した。

 

「改めて…私は『ザマス』。私の願いを叶えるために来た。」

 

「ほっほっほ。男前ですな!」

 

「ザマス…歓迎しよう。」

 

「けっ…!!」

 

カリザは不貞腐れてしまった。

 

「んもー!カリザくんってば…仲良くしましょうよぉ?」

 

「そうですな。ワタクシたち一人ひとりが抱く『願い』は異なりますが、手段は同じ。となれば、事を為すまで互いに手を携えるのが賢いやり方ですぞ。」

 

「…ま、いいけどよォ、抜け駆けなんざしやがったらブチ殺すぞっ?」

 

「…ふん。」

 

取り敢えず一旦は落ち着いたようだ。

 

「『願い』を叶える御業は、我々の掌の上にある。後は空の鍋に必要な贄をくべ、火にかけるだけだ。」

 

「イチイチまだるっこしいんだよ、ゼーン!要するにランドソルをぶっ潰して、ボーボー燃やしてやりゃあいいんだろ?」

 

「……。」

 

「ほっほっほ。それだけでは正解の半分というところですぞ、カリザ君。」

 

「そうですねーそれだけではお鍋が空っぽのままですっ。」

 

「ワカッてるっつーの!揚げ足とんじゃねェ、ったく!」

 

カリザはそういうとその場から出ていく。

 

「……カ、カリザくん……?どこに……行くの?」

 

「……散歩だよ。ついでに、ウチのクソ魔獣(バカ)どもをシゴきなおしてやらァ。あっさりやられちまいやがって、だらしねェ!」

 

カリザは魔獣を操ることができるようだがペコリーヌ達に敗れたようだ。

 

「おい、スライムども!テメーら来やがれ!ついでのついでに、テメーらも特訓だ!」

 

「ぷるぷるっ……。」

 

カリザは赤色と青色と黄色いスライムを連れて散歩に行った。

 

「カリザは魔獣を使役できるのか。」

 

「ああ、二体の強力な魔獣…『アーノルド』と『イーノリス』をカリザが鞭で叩くことで強化される。そしてカリザ本人の頭脳や行動力も高い。」

 

ゼーンはカリザのことを高く評価していた。

 

「あんまりいぢめちゃダメですよーっ?」

 

「で、でもミソラちゃん……ランドソルは……壊さなくちゃ、いけない……のよね……?」

 

ランファはあまり乗り気ではないようだった。

 

「そうですねーお料理と一緒で、順番が大事ですけど♪」

 

「ミソラ、アゾールド。『七冠』達の行方は、どこまで掴めている?」

 

「残念ながら芳しくありませんな。誓約女君は【王宮騎士団(NIGHTMARE)】所属となっておりますが……現状、放浪の旅に出たまま行方知れずだそうで。」

 

「変貌王妃さんは最近ランドソルを出入りしてるみたいですけど…名前通り変幻自在な人ですから、尻尾が見えたと思っても、その尻尾の形が変わっちゃうんですよね…。」

 

「『こちら』に来ていない者も、まだ二つ名すらわからない者もおります。唯一確実なのは……」

 

「覇瞳皇帝か…?」

 

「ほっほっほ。ザマス君は知っていたのですな。」

 

「ごめんなさいゼーンさん、お役に立てなくてー」

 

実際に覇瞳皇帝を倒したのはブラックだ。

 

「私も、ごめんなさい……私…人探しとか、そういうのは……。」

 

「その点については俺も、カリザも似たようなものだ。情報収集に向いているとは言い難い。」

 

「互いに苦手な事を補い合ってこそ、良きギルドというものですな。」

 

「呑気なものだな…貴様らは。」

 

「ほっほっほ。ザマス君にも期待していますぞ。」

 

「わ、私…こんな性格だから…きっとお荷物だと思う……。」

 

「えーっ?そんな事ないですよっ!ランファさんの歌、私とっても好きですし☆」

 

「ありがとう…ミソラちゃん……だから、わたし、できること……してみるわ…。」

 

「あぁっ、待ってくださいよぉ〜!お出かけの前に、一緒にご飯食べましょ〜っ☆」

 

「……。」

 

「毎回こんな感じなのか?」

 

「…ああ。」

 

「ほっほっほ。若い皆さんはせっかちですなぁ。召使いたちに、お茶の用意をさせてる所なのですが……。」

 

「俺でよければ、いただこう。ザマス、お前もどうだ。」

 

「…では私もいただくとしよう。」

 

「おお、気を使ってくださってありがとうございますですぞ。何より、ゼーン君もザマス君もワタクシに比べれば随分若かったですな、失礼しました。」

 

「あなたのほうが年長なのは事実だ。へりくだる必要は無い。」

 

「ふん、私はこう見えて若くはないのだがな。」

 

「まぁまぁ、これはワタクシの性分のようなものですからな。」

 

「……そういえば、お前はギルドマスターなんだってな。」

 

「…形ばかりに過ぎない。それに、俺よりもザマスの方がギルドマスターは適任と思っている。」

 

「…そんな物に興味はないな。」

 

「アゾールド…あなたの意見も聞いておきたい。」

 

「ふむ…ゼーン君、それにザマス君が加わったことにより、このギルドの戦闘能力は他所の比にあらず。かてて加えてスポンサーからの支援も盤石。」

 

「スポンサーとはなんだ?」

 

「我々の願いを叶えるために支援してくれているお方だ。」

 

「…そうか。」

 

「懸念があるとすればやはり……我々の信頼関係の薄さでしょうかな。それはもう、粗雑な偽造紙幣のごとしです。」

 

「ああ。我々は『願いを叶える』というエサに引き寄せられた……言ってしまえば烏合の衆だ。無数のプレイヤーの嘆きを引鉄に、叶う願いは『今は』ひとつきり。同士討ちを避けるには、これを増やすことが必須だが……。」

 

「左様。カリザ君も申しておりましたが、抜けがけの心配はしたくありませんからな。」

 

「焦ることは無い…。例え時間がかかろうとも願いを叶えるまでは協力してやる。」

 

「ああ。それにカリザは実直だ。その点において、我々に欠けている部分を埋めてくれる。」

 

「フフ、そうですな。互いを補い合うということはいいものです。とはいえ、我々【レイジ・レギオン】は、6人。それぞれに別の願いを持つとなれば──」

 

「我々が狩るべき七冠は、あと5人。というわけだな。」

 

「既に一人は狩っているということか。」

 

「ええ、『七冠一人狩るごとに、叶えられる願いが一つ増える』──」

 

「我々のスポンサーはそれだけの力をお持ちですゆえに。」

 

そしてブラックはお茶を飲み終わった。

 

「…さて、美味かったぞ?アゾールド。」

 

「ほっほっほ。これはこれは丁寧に。」

 

「ザマス。部屋はそこを左だ。」

 

「ああ…。」

 

ブラックはゼーンに言われ部屋へと戻った。

 

「ゼーン君…彼、ザマス君はどう思われますか。」

 

ゼーンは静かにカップを皿の上に置く。

 

「ザマスの力は…既に俺を超えているだろう。だが様子を見る限り、抜けがけの心配はない。」

 

「そうですか。彼がこのギルドにとって吉と出るか凶と出るか…。」

 

「……。」

 




ブラックが美食殿と一緒などと…その気になっていたお前らの姿はお笑いだったぜ…腐☆腐。


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暗躍する紅き仮面戦士

レイジレギオンもギルドの仲はいいからほのぼのしててほしい。


ブラックが【レイジ・レギオン】に所属してから数日が経った。

 

「はむ…。」

 

「あむ…。」

 

「…。」

 

アゾールド、ブラック、カリザは食事をとっていた。

 

「……うむ、これはなかなか。ワタクシの召使い達も、さらに腕を上げたようですな。ザマス君にもお気に召したようでなによりですな。」

 

「あむあむ…。」

 

「……。」

 

カリザは食欲がないのか手が止まっている。

 

「おや?カリザ君。手が止まってるようですが……パラス高原産の子牛のステーキはお口に合いませんかな?ドラゴンステーキとまではいきませんが、極上の一品ですぞ?」

 

「っせぇな!もう腹いっぱいだっつってんだよ!さっきから寿司だのスキヤキだのロブスターだの、どかどか食わせやがって!……うっぷ……」

 

「ほっほっほ。若いうちから、随分少食ですな。」

 

「ふん、その程度の食事ではデカくはなれんぞ?」

 

「うるっせえ!!てめぇは食いすぎなんだよ!」

 

「良いですかカリザ君。よく食べ、よく動き、よく眠ることです。そうすればワタクシやザマス君、ゼーン君のように大きくなれます故。」

 

「ざけんな!ゼーンとザマスはともかく、あんたみてぇなデブにゃなりたくねーってのっ。」

 

「…っつーか。いい加減本題に入れよアゾールド。今日はなんでわざわざオレとザマスを呼びつけた?」

 

「ああ、それは私も気になっていた。」

 

ブラックとカリザは満を持してアゾールドに呼だされた理由を聞いた。

 

「ほっほ。いいでしょう…今日は……なんと!フリガの北海で水揚げされたエンペラークラブが手に入ったのです!これこそ本日のメインディッシュですぞ……!」

 

「なんだと!?そのような物が…!」

 

「メシの本題じゃねーよっ!てかザマスも食いついてんじゃねえ!なんの話をしようってのか聞いてんだ!っつーかまだ食う気なのかよっ!?」

 

「もちろんですとも。ワタクシ、まだ腹六分といったところでありますし。」

 

「私もまだ腹四分といったところだ。」

 

「てめえは化け物か!!」

 

「…カリザ君がそれほどにワタクシの話を聞きたいとおっしゃるなら是非もありません。順序を早めましょう。……滅多に水揚げされない、最高級の蟹ではありますが……。」

 

「……ったく、話があるっつったのはそっちだっつーの。」

 

「まあ、簡単な話です。そろそろ、カリザ君が再びランドソルへと乗り込まんとする頃合かと思いましてな。」

 

「……おう、この前は様子見してミスったが、もう容赦はなしだ。今度こそ、ギッタギタにしてやんだよ……!」

 

「カリザ、お前負けたのか?」

 

「しくっただけだって言ってんだろ!」

 

「……まあいい。」

 

「……再戦を挑むというのであれば……策はお有りで?」

 

「ったり前だろ。……簡単なこった。結局アイツらの要は──っとぉ!」

 

カリザは途中で話を切る。何か聞かれては不味いことでもあったのだろう。

 

「結構けっこう。無策で挑むわけではないと聞き、安心いたしました。」

 

「ああ、無能では無いとわかっただけでも儲けだ。」

 

「フンっ、まさか、『一口乗らせろ』とか『一緒に戦いますぞー』とか言うんじゃねーだろうな。」

 

「そんなつもりなどはない。」

 

「ええ、そんな厚かましいことは申しませんとも。ワタクシでは身軽なカリザ君に並ぶことは難しいでしょうし。」

 

「ま、ザマスはともかくあんたは見るからにトロそうだしな……。」

 

「ワタクシが申し出たいのはほんのちょっとしたお手伝い。ザマス君と一緒に後方支援というやつですな。」

 

「私が支援だと?」

 

「ええ、見たところザマス君は戦闘能力だけでなくその他のサポートもできるようですからな。」

 

「支援ンン?ヘッ、ナメんなよ。ガキじゃねーんだ、子守りなんざいらねーよっ。」

 

「いやお前はガキだろ。」

 

ブラックの容赦ない言葉がカリザを襲う。

 

「……黙りやがれえ!!」

 

「子守りなどとんでもない──カリザ君の年頃ともなれば、目的を達する為に最善の方法を選べるでしょう。」

 

「……。」

 

「相手はランファ嬢すら退ける切り札を持つ模様。こちらも、手数はより多くあって然るべきかと。」

 

「確かに……侮れんな。」

 

「はい。それに……カリザ君自身はともかく。配下の魔獣たちは前回手酷くやられた傷が完治していないのではありませんかな?」

 

「グォォ……」

 

カリザの魔物はまだ怪我を負っていた。

 

「……チッ。」

 

「ワタクシの得意とする錬金術は、治癒魔法にも応用が利きます。後ろに控えていれば、何かとお役に立てましょうぞ。」

 

「私も『気』を分ければカリザの魔物とやらを強化することは可能だ…。共に夢を見ようではないか。」

 

「……。」

 

「いかがですかな?」

 

「お前らに一つだけ、教えとく。ランドソルのバカ王女は、『変貌王妃』のロリババアと何かコネがあるらしい。」

 

「ほう?」

 

「……。」

 

「前に戦った時、それっぽいことを言ってたからな。影武者でもしてるか、覇瞳皇帝を捕まえた牢屋の管理をしてるとか……大方そんなトコじゃねーの?」

 

カリザはブラック達に情報を教えた。

 

ア「ほうほうほう。貴重な情報、感謝致しますぞ。」

 

「ああ。カリザにしてはやるではないか。」

 

「フン。ほんとならオレが『変貌王妃』も捕まえるつもりだったけど……借りは作らねー。アゾールドにもザマスにもな。」

 

「……。」

 

「さすがはカリザ君。良き判断ですぞ。どのような経路を辿ろうと、『七冠』を必要な数だけ捕らえ……我々全員の願いが叶えば

、それが一番です。」

 

「けっ、ついてくるっつーんなら、足引っ張んなよ?そっちがヤバくなったって、オレは助けてやらねーかんな。」

 

「お手並み拝見といこう……。」

 

「ほっほ。心配はご無用。それより──カリザ君、ザマス君、最後にお尋ねしたいのですが。」

 

「なんだ。」

 

「あん?ひとつだけって言ったろ。」

 

「大事なことです。……デザートは、何になさいますかな?」

 

「イチゴパフェだ。」

 

「いらねーよぉっ!」

 

 

数日後

 

サレンディア救護院

 

ユウキ達はサレンディア救護院でアヤネ達と遊んでいた。

 

「お兄ちゃんコッコロシェフィちゃん、今日は楽しかったよっ!」

 

「ミミちゃんミソギちゃんキョウカちゃんも、また来てね……♪」

 

夕方になったので皆帰るようだ。

 

「うん!」

 

「ばいばーい!」

 

「さようなら〜!」

 

こうしてサレンディア救護院を後にした。

 

「るんたった、るんたった〜♪いっぱい遊んじゃったねー♪」

 

「遊んじゃったぁー♪」

 

「ふふんっ。にいちゃんがずっとこのままだったら楽しいのになー!キョウカもそう思うよね?」

 

「ば、馬鹿なこと言わないでください!……そりゃあ、今日は私も楽しかったですけど……。」

 

「でもやっぱり、このままでは困ります。この人はへんたいで、ふしんしゃで、イタズラ好きで、どうしようもない人ですが……でもでも。前はいちおう、たまには……かっこいいかもしれない時も、ないわけではなかったですから。」

 

「そうですね。現在は、頼りになる方々が手を尽くしてくれていますし。きっとほどなく元の主さまに、戻られるかと……。」

 

するとミソギがコッコロに一つ質問をする。

 

「ねぇねぇ、にいちゃんと言えばさぁ。もう一人黒い服のにいちゃんもいたよね?」

 

「!!……そうですね、ゴクウ様もミソギ様たちのお知り合いでございましたね。ゴクウ様は、何処か遠くの方へ行ってしまわれました……。」

 

「そうなの?じゃあまた会えるかな?」

 

「……ええ。そう、願いましょう。」

 

「……でも、コッコロさんの顔。なんだかとっても辛そうですよ?」

 

「……え?」

 

キョウカはコッコロの顔が辛そうなことに気づいた。

 

「……いつかまたあの人と会えるといいですね!」

 

「キョウカ様……はい、いつかもう一度お会いしたいです!」

 

コッコロはブラックが帰ってこないと分かっていながらも、実際に死んでしまった所は見ていないため、ブラックの事なら自分達の予想を超えてまた会うことができると信じた。

 

するとシェフィがユウキに話しかける。

 

「おにーたん、おにーたんー」

 

「……?」

 

「あれなーにー?」

 

シェフィが指を指した方には……

 

「ぷるぷるぷるぷる……」

 

黄色と赤色と青色のスライムがいた。

 

「……?」

 

「なんだろー?」

 

シェフィとユウキは、コッコロ達とはぐれてスライムの方へと行ってしまった。

 

「……コッコロさん?」

 

『ゴクウ様、私が必ずや主さまを立派にお導き致します……。』

 

コッコロはユウキの将来設計に夢中である。

 

「?……コッコロちゃーん?どしたの?」

 

「──あ、はい。なんでしょう。」

 

「さっきはありがとうございました。ピーマンを食べやすいように工夫してくれて……。」

 

「どういたしまして。あのようにして苦味を取り除けば、小さなお子様も、笑顔で召し上がってくださるのです。そうですよね主さま、シェフィさま。……?」

 

コッコロはユウキとシェフィに問いかけるが返事は返ってこない。

 

「あ、主さま?」

 

「あれ?にいちゃん、いないっ?」

 

「シェフィちゃんもいないよーっ?ついさっきまで、一緒に歩いてたんだけど……。」

 

「ええっ!?ほんの一瞬、目を離しただけなのに……!」

 

ユウキとシェフィは、おかしな動きをするスライムに興味を惹かれ路地裏の奥にまで入り込んでしまっていた……。

 

「まてまてー♪ぷるぷるー!」

 

「ぷるぷるぷるぷる……。」

 

「まてまてー♪……?」

 

スライム達を追ってきたシェフィが立ち止まる。そこに居たのは……

 

「よーしよし。うまいコト、おびき寄せたな……アカアオキイロ、テメーらにしちゃ上出来だ。」

 

「……あぁーっ!あぁた、は……!」

 

「こないだの……!」

 

「よォ。『模索路晶』のプリンセスナイト。オレのカオは覚えてるみてーだな。ちっとばかし、テメーだけに用があってよ。よけいなドラゴン娘がついてきちまったが、ま、良しとしてやるぜ。」

 

「……?」

 

「……っとーによォ、ムカつくんだよなァ。他にもやるコトあるっつーのに。けど、作っちまった借りは返すぜ。ウチのクソ魔獣どもをブチのめした、よくわかんねーパワーアップ。ありゃ結局、テメーの能力がキモだ。……つまり。テメーを……今みてーにボッチのときにブチ殺せば。残ったピンク髪やバカ王女はただのザコってコトだよなァ!」

 

「しぇふぃ……走って!」

 

ユウキはシェフィを逃がそうとするが……

 

「ハッ。逃がしゃしねーよっ!」

 

カリザは鞭でユウキを叩く。

 

「いたいっ!」

 

「あう〜っ!」

 

シェフィは鞭で打たれるユウキをただ見てることしかできない。

 

「ハッ!ワリーとは思わねえぜ?こいつぁ戦いだからな。そのかわり──」

 

「せめてもの手向けに、あのナマイキなクソ猫、テメーと同じ墓にぶち込んでやっからよ!ありがたく思いな!」

 

するとミソギ達がユウキ達を探しにここまで来たようだ。

 

「あっ!いたいた!キョウカ!コッコロ!こっちこっちー!ってなんだコイツ!?にいちゃん達をいじめるなーっ!」

 

「んだテメーらっ、うぜえな!そのガキどもと遊んでやれ、アカアオキイロ!」

 

「ぷるぷるぷるるんっ!」

 

スライム達は特殊な液体をミソギたちにかける。

 

「うわっ!なにこれ!」

 

「すっごいネバネバするよー!」

 

そこへキョウカとコッコロが駆けつける。

 

「ミミ、ミソギ!」

 

「──はっ!」

 

「チッ!」

 

コッコロの攻撃はカリザに避けられる。

 

「主さまっ!シェフィさま!ご無事ですか!?」

 

「ままー!」

 

「へーき……!」

 

「二人とも、ケガしてないですよね!?」

 

「だいじょーぶだよ!ネバネバしてるだけ!」

 

「も〜、こいつらとれない〜!」

 

「あークソっ!今度はテメーか!邪魔すんな!チビエルフ共が!」

 

「そちらこそ……主さまとわたくしたちの時間を邪魔しないでください!【レイジ・レギオン】のカリザ……!」

 

「みなさま、少々お待ちを!先にこの少年を、追いかけます……!」

 

「うんっ!」

 

「私たちも、このスライムをやっつけちゃいます!」

 

「こんにゃろー!」

 

「ぷるぷるぷるっ!」

 

「フン!テメーひとりでオレの相手をしようってのか!?チビエルフが!」

 

「ひとりではありません!主さま──わたくしに、力を!」

 

「うん……!」

 

ユウキがコッコロを強化する。

 

「チェンジ・プリンセスフォーム!」

 

コッコロの体が光り輝き、服も白く華やかな衣装に変わった。

 

「ああんっ!?テメーもそのカッコになれるってのか!?へっ!しゃあねーな!いけ、『アーノルド』!『イーノリス』!」

 

カリザが2体の強力な魔物を呼び寄せる。

 

「「──グォォォォォ!!」」

 

『主さまが、完全に力を使いこなせていない現状……前のペコリーヌさまやユイさまのように、プリンセスフォームでいる時間は限られているはず。』

 

「ならば。ここは最速で、決着を付けなくては……!」

 

コッコロは魔物達を攻撃する。

 

「「グォォォォォ!!」」

 

しかし、

 

「っ!?押し切れません……!」

 

カリザの魔物がやけに強くなっている。

 

「ハッ!前とは違ーんだ、舐めんじゃねーよっ!」

 

「コッコロちゃんを、助けなきゃ!」

 

「うーんっ……そうだ!キョウカ、ミミ!その赤いスライムを捕まえて!」

 

ミソギは作戦を思いつく。

 

「えぇっ!こ、こうですか……ってあああ〜っ、すっごいネバネバします〜っ!」

 

ミソギはキョウカが捕まえたスライムに爆竹を詰める。

 

「ぷるぷる!?」

 

「完成!スライム爆弾っ!えーい!」

 

ミソギは爆竹を詰めたスライムをカリザの魔物に投げつける。

 

「「グォォっ!?」」

 

「わっ!魔物がスライムでベタベタ〜!ミソギちゃんすっごーい!」

 

「コッコロさん、チャンスです……!」

 

「──!ありがとうございます、みなさま……!たあぁっ!」

 

コッコロは動きが遅くなった魔物を攻撃する。

 

「ギャオオオオオオオッ!」

 

「まずは、一体……!」

 

「……。」

 

その時だった。

 

「コッコロちゃん、みなさん!お待たせしてすみません!」

 

ペコリーヌがコッコロ達の下に駆けつけた。

 

「ペコリーヌさま!」

 

「あっ!お姫様だーっ!?」

 

「えへへ☆お城から超特急でトバして来ちゃいました!」

 

するとペコリーヌもユウキからの強化をうけプリンセスフォームへと変身した。

 

「チッ!」

 

「わたしが絶対ぜったい、ユウキくんを……みんなを守ります!もう誰にも死んでほしくありませんから!」

 




アニメより絶望的に話が長すぎる。いつ完結するんだこれ……


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カリザの願望

話の進展遅い(絶望)


ペコリーヌの手助けもあり、コッコロ達はカリザの魔物に順調にダメージを与えていた。

 

「「グォォォォォ!!」」

 

魔物は強力な攻撃を受けて倒れる。

 

「あーあ、ったく……まーたやられちまったか。ほんとに使えねーなクソ魔獣(バカ)どもがよ。」

 

「大人しくしてください【レイジ・レギオン】!タイホですよタイホ!捕まえた貴方の目の前で、かつ丼100杯です!」

 

「じ、自分が食べるんですか……」

 

「ちっ、相変わらずうるせーバカ王女だな。まぁ、いいさ。こうなった時のための保険は掛けてきたからなァ──」

 

「油断なさいませんよう、今回はまだ、奥の手があるようでございます……!」

 

次の瞬間、カリザの魔物が回復し、さらに謎の赤黒いオーラを纏いながら立ち上がった。

 

「「グォォォォォ!!!」」

 

「ひぅっ!」

 

「うわわっ!?魔物の怪我が、治って……!」

 

「なんかもっと凶暴になっちゃったー!?」

 

「これって、回復魔法ですか!?」

 

「──いえいえ。こちらは『即時再生(ファスト・リジェネ)』という魔法ですぞ。もっとも、それだけではありませんが。あらかじめ、仕込みをさせていただいた次第で。」

 

するとカリザの後ろから一人の男が歩いてくる。

 

「あなたはっ!?」

 

「お初にお目にかかります、お嬢様がた。ワタクシ、【レイジ・レギオン】のアゾールドと申します。」

 

「「……。」」

 

アゾールドは敵でありながら紳士的な挨拶を交わす。

 

「ブタだー!」

 

「ブタですー!」

 

「ほっほ。然様、ワタクシはブタさんですぞ。」

 

アゾールドは嫌な顔一つせず肯定する。

子供の扱いが上手いようにも見える。

 

「ブタさんの獣人族だねー。ミミは、ウサギさんの獣人族♪」

 

「みなさま、侮ってはなりません。ブタは賢く、清潔で、社会性のある生物。加えて身体能力も相当に高いはず……!」

 

「はい、ブタさんを侮っちゃダメです!ハムにベーコン、ソーセージ!ブタまんシュウマイハンバーグ……それに……カツ丼☆たまらないですね〜☆じゅるっ♪」

 

ペコリーヌはブタ料理を想像して涎をたらす。

 

「ほっほっほ……王女さまの視線が恐ろしいので、ワタクシと『ザマス』くんは下がることにします。表通りで、良さそうなレストランをいくつか見かけましたし。」

 

()()()?」

 

ペコリーヌは聞きなれない名前に疑問を持つ。

 

「カリザ君。魔獣たちにかけた『即時再生』とザマス君の『気』は継続しておりますゆえ……あとはご存分に、お楽しみを。」

 

そういうとアゾールドは去っていった。

 

「おーおー、そのへんでゴミでも食ってな!コイツらはオレがミンチにしておくからよ!」

 

「「グォォォォォォォ!!!!」」

 

魔物の強さは先程とは比にならない。

 

「えいっ!」

 

「やあああっ!」

 

ペコリーヌとコッコロは魔物を攻撃するが、先程よりもダメージが通らず、受けた傷は直ぐに復活しさらに謎の赤黒いオーラが魔物を強くさせる。

 

「っ強いです……!!」

 

「くっ……決定打を与えられません!私たちは体力を消耗する中、魔物たちは強くなっていきます……!」

 

「これじゃあキリがないですよ〜!」

 

「はい……!それに……おそらく、もう時間が……!」

 

コッコロ達はプリンセスフォームには長く変身していることができない。そしてついに……

 

「「!!」」

 

「あっ!コッコロちゃんたちのパワーアップ、解けちゃった!」

 

コッコロとペコリーヌはその場に倒れ込む。

 

「ふたりとも、お腹押さえてしゃがんじゃったよ!?」

 

「だ、大丈夫なんでしょうかっ……」

 

プリンセスフォームはその力の反動で猛烈にお腹が空くという欠点がある。

 

「はうっ!や、やばいですね!お腹が〜っ!」

 

「……いけません……!これでは、戦うどころが……まともに動くことすら……!」

 

「へへっ!アゾールドの『即時再生』も中々だが、ザマスの力も認めたかねぇがすげぇな……。やれっ!」

 

「「グォォォォォ!!」」

 

そしてプリンセスフォームを解除したペコリーヌ達に魔物たちの反撃がくる。

 

「ひゃああっ!」

 

「ううっ……!」

 

「姉ちゃんたち!」

 

ミソギは助けに行こうとするがスライム達がミソギ達を襲う。

 

「ぷるぷるぷる!!」

 

「ひゃぁあ〜っ!?」

 

「あっ、赤いスライム元に戻っちゃってる!?」

 

「まじ!?生命力すごーいっ!?」

 

「こっちの黄色いスライムっ、動きが……!」

 

「あうぅぅ……ねばねばー!」

 

「みんな……!」

 

ユウキはみんなを助けようと出てきた。

 

「出てきちゃダメです!ユウキくん!」

 

「彼の狙いは、主さまなのですよ……!」

 

「はっ!そういうこった!」

 

カリザは出てきたユウキに鞭をうつ。

 

「……っ!」

 

ユウキはそのまま倒れカリザに頭を踏まれる。

 

「あぁ……!!」

 

「お兄ちゃんっ!?」

 

「手こずらせやがって、ようやく捕まえたぜ、プリンセスナイト!」

 

「おまえーっ!にいちゃんを離せーっ!」

 

「ひどいです!あなた、どうしてこんなことをっ!?」

 

「あ?ムカつくからに決まってんだろ!」

 

「く、ぅ……!あるじ、さま……!こんな時に……ゴクウさまがいれば…!ペコリーヌさま、ここは……少しでも時間稼ぎを……!」

 

コッコロはペコリーヌに小声で時間稼ぎをしようと伝える。

 

「そ、そうですねコッコロちゃん。まともに立ち上がれないですし……!」

 

そしてペコリーヌは時間稼ぎのためカリザ質問をする。

 

「【レイジ・レギオン】のカリザ!あなたも何か、願いを持ってるんですよねっ……!」

 

「……フン。」

 

「ランファという女性が言ってました……あなたたちは、願いを叶えるためにランドソルを襲っていると……!」

 

「それって、いったいなんですか!?」

 

「……ケッ。ムカつくんだよ。どいつもこいつもよォ。」

 

「ムカつく……とは、わたくしたちがですか……?」

 

「ちげーよ!全部だ全部っ!世の中すべてがムカつくっつってんだよ……!」

 

カリザは自分の心境を語り始める。

 

「制度だとか!社会のルールだとか!オレが生まれる前に勝手に決めて、勝手に押し付けてきやがって!あーしろこーしろ、あれはするな……ああっ、気にくわねぇ……!」

 

「どっかのオトナが勝手に決めた世の中の仕組みになんざ、オレは絶対に従ってやらねー!オレはオレの好きなように生きる!それがオレの願いだ!」

 

カリザが自分の願いを言い終わると……。

 

「な、なんですかそれ……!?あなた、バカなんじゃないですかっ?」

 

キョウカ達にからもの凄い批判を浴びた。

 

「ハ!テメーらガキと、一緒にすんじゃねえ!」

 

「ガキはお前もだろー!」

 

「うるせぇ!誰かのルールなんざ、まとめて踏みにじってやる!こんなふーになぁ!」

 

そういうとカリザはユウキの頭を更に強く踏みつける。

 

「ぐぁっ……!」

 

「……主さま!」

 

「おにーたんっ!」

 

「ハッハァ!!潰れやがれプリンセスナイト!そーれグシャッと!」

 

カリザがユウキの頭をまた踏みつけると……

 

グシャッ……

 

本当にグシャッと音がした。

 

「……グシャッと……?」

 

突如、ユウキの体が地面に沈んでいく。

 

「えっ!?ユウキくんの体が!?」

 

「あァっ!?なんだこりゃっ……!?」

 

これにはカリザも驚愕する。そして、

 

「き、消えたっ……!?」

 

ユウキの体は完全に消えた。

 

「幻術……いや、こいつぁ……?」

 

「おにいちゃん何処行っちゃったの?地面のなかっ!?」

 

しかし沈んでいくのはユウキだけではなく…

 

「えっ!?キョウカ!?キョウカも地面に沈んでるよ!?」

 

「ミソギもですよ!!なんで!?」

 

カリザ以外の全員が地面に沈んでいく。

 

「わ、わたくし達もです……!」

 

「わぁ!やばいです!!」

 

これは誰の仕業なのか、カリザはその答えに辿り着く。

 

「こいつぁ……オブジェクト変更か!──模索路晶ァッ!くそっ待ちやがれぇーっ!」

 

そして全員は完全に地面の中へと姿を消してしまった。

 

「くそっ!あと少しの所で……!」

 

すると、

 

「カリザ君〜!!たたた大変ですぞ〜っ!!」

 

アゾールドが慌てた様子で全力で走ってきてカリザと衝突した。

 

「──だぁぁっ!?なんだってんだよアゾールドっ!!こっちは忙しいんだ!ってか、奴ら逃げやがった!テメーも『召使い』どもを出して追いかけんぞ!こんなことザマスに知られたらバカにされるだろうが!」

 

「そんなことよりっ!マズい!のです!」

 

「あぁっ!?マズいって何が!?」

 

「食事が!食事がマズいのです!」

 

「はああっ!?テメッ、フザけたこと言ってんじゃ──」

 

「これは今すぐ口直しせねば!ワタクシの命に関わりますっ!戻りますよカリザ君、我らが本拠地へ!」

 

アゾールドはランドソルのあまりの食事のマズさに一度拠点へ戻り口直しをしようといいだした。

 

「バカバカバカッ!戻んなら1人でもどれ!オレはアイツを……」

 

とカリザは一人だけで追おうとしたが……

 

「ふん!!」

 

アゾールドは既に転移アイテムを起動していた。

 

「っておい!なに起動してんだこのブタ野郎!!」

 

こうしてカリザ達は基地へと戻って行った。

 

 

【レイジ・レギオン】拠点

 

「……はむ。はむ、ふむ……。」

 

アゾールドは口直しに食事をしている。

 

「……。」

 

「食ってんじゃねーよこのブタ野郎!!」

 

「それで、どうなったんだ?」

 

ブラックは結果を聞いた。

 

「……邪魔が入った。七冠の『迷宮女王』模索路晶……別名、ラビリスタ。アイツがいなければ……!!」

 

「ラビリスタか、やはりこの世界でもその能力は健在か……。」

 

「けどまぁ、『即時再生』とザマスの『気』ってのが使えるってのは分かったぜ。食い意地は別としてそっちは認めてやる。」

 

「当然だ。私の気を分けてやったのだ。それぐらいしてもらわなければ困る。」

 

「お褒めに預かり恐悦至極でございます。ふむふむ……良きところはきちんと認め、悪しき所と相殺しない……実に素晴らしい美徳ですぞカリザ君。」

 

「ちっ、オレはもう行くぜ。」

 

カリザはまた散歩にでもでかけたのだろう。

 

すると、ゼーンも拠点に戻ってくる。

 

「アゾールド、それにザマス。苦労を掛ける。」

 

「何ほどのこともありません。……カリザ君では、『迷宮女王』に挑むには時期尚早ですからな。」

 

「ああ。今のままでは返り討ちにあうのが目に見えている。」

 

「少し遅い時間ですが……ゼーン君とザマス君も食事をいかがですかな?遠慮はご無用ですぞ。」

 

「では、少しだけ。」

 

「せっかくの誘いだが……私に食事はもう()()()()()()()のでな。」

 

「?」

 

「?」

 

ゼーンとアゾールドは少しその言葉に違和感を覚えたがそのまま会話を続ける。

 

「それより、首尾は……?」

 

「はい、滞りなく。ランドソル宮殿内部の構造は、あらかた観測を終えています。幽閉中とされる覇瞳皇帝の位置も、もはや詳やらかに明らかですぞ。」

 

「流石だ、アゾールド。」

 

「もうそこまで事が進んでいるとはな。」

 

「……ですが。宮殿の周辺には、転移魔法を妨害する術式が施されている模様。すぐに乗り込んで寝首をいただく、という手段は叶いませんな。」

 

「向こうもこちらに気づいている。警戒されるのは当然だ。」

 

「だが、カリザからの情報が確かなのであれば、もう一人の七冠の所在もおおよそ掴めている。」

 

「そして現在、あの街にいる七冠は──3名。覇瞳皇帝、変貌王妃。そして、」

 

「……迷宮女王、か。できるなら、一網打尽といきたいところだが……。」

 

「焦りは禁物だ、ゼーン……。」

 

「そうですな、相手はこのゲームの創造者たち。どのような奥の手を隠しているかもわかりませんからな。」

 

「ああ……。ならば、まず先に獲るべき駒は──」

 

「フフフ……。」




次回から物語のテンポが早まるかもしれません。(遅すぎるので)


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重なる面影

圧倒的強者感のブラックが好きです。


カリザがユウキ達を襲撃した翌日。

 

カリザの攻撃から間一髪ユウキ達を救ったラビリスタはその後の【レイジ・レギオン】の襲撃を予測しユウキ達に教え去っていった。

 

ユウキ達がギルドハウスへ戻ったあと、ネネカが持ってきた新薬の副作用によって眠ってしまったユウキを追ってカリザが美食殿のギルドハウスを襲撃していた。

 

「へーえ。ロリババアは入れ違いか。そいつァ残念。ヤツの首を独りで獲ったとなりゃ……ザマスのスカしたお小言も、ちったぁ減っただろーによ。」

 

「えっ!?な、なによあんた!どっから入ってきたの!?」

 

そう言って最初に反応したのは美食殿のギルドハウスに住まう妖精の『ネビア』だった。

 

「カリザくん!?」

 

「もう!勝手に入ってきてーっ!」

 

ギルドハウスの中にはユイ、ヒヨリ、キャルがいた。

 

「どうしてここが……!?」

 

「ハッ!言うわけねーだろバーカ!プリンセスナイトはそのベッドの中だな!くらいやがれ!」

 

カリザは鞭でベッドを叩くがそこにユウキの姿はなかった。

 

「……なにっ!?ただの布きれっ!?」

 

「えへへ。キミがまた来るっていうのは、分かってたからね!」

 

「騎士クンが寝てるっぽく見えるように、端切れ布をベッドに入れておいたの……♪」

 

「くっだらねェ偽装しやがって……何処に隠した!出せ、プリンセスナイトを!」

 

「出すワケないでしょバーカ!さっさと帰って、オネショで地図でも描いてなさいよこのクソチビ!」

 

「こんのクソ猫、ぬかしやがったなっ……!アゾールド!オレがコイツらブチ殺してるあいだ、プリンセスナイトを探してきやがれ!」

 

カリザがそういうと気配を隠していたのかどこからともなくアゾールドが現れた。

 

「ほっほっほ。よろしいでしょう。」

 

アゾールドはそういうとユウキを探しに行ってしまった。

 

「っ!もう一人いたの!?」

 

「あんなに大きな人なのに、全然気が付かなかったぁ!」

 

「ボサっとしてんじゃねえ!テメーらも生かしちゃおかねーぞっ!」

 

一方でアゾールドは既にユウキの位置を調べあげたらしく、その場所にむかっていた。

 

その場所はサレンディア救護院だった。

 

サレンディア救護院内

 

「──今、キャルさまから通信魔法が……!ギルドハウスを【レイジ・レギオン】が襲撃、交戦が始まった模様です。」

 

「そうか……案の定だったな。カリザという少年は先日、ユウキの帰り道に待ち伏せをしていた。ならば【美食殿】のギルドハウスの所在は、割れてしまっていると考えるべきだろう。近しい人を頼らせてもらって、正解だった。」

 

「このサレンディア救護院も絶対安全とは言えないけど……危ないって分かってる場所に居続けるよりマシよね。ナイスな判断だわ。」

 

「ないすー。」

 

「シェフィちゃん、お話の邪魔しちゃダメですよ。こっちで遊びましょう?」

 

「うん!」

 

「私も少しキッチンの方に行ってくるわ。レイさん、コッコロ。ユウキのことをお願いね。」

 

スズメとサレンはキッチンへと足を運ぶ。

 

「もうすぐ、お夕飯もできますからね!っていっても、作ってくれてるのは私じゃないんですけど……。」

 

「えへへ……任せて、スズメお姉ちゃん。」

 

「私たちも、料理けっこう上手になったんだから!」

 

『ウィーン、ウィーン。』

 

「「「「え?」」」」

全員が不思議とその音のした方を見ると見たこともないロボットのような物が料理を手伝っていた。

 

「きゃあっ……!なっ、なにこの……へんなのっ?」

 

「ゴ、ゴーレム?」

 

「なによこいつ……!」

 

「あわわ……なんですかこのロボット!」

 

「い、一応、おとなしいみたいだけど……。」

 

『ウィーン、ウィーン。』

 

そのロボットは急に武器、ではなくおたまを取り出し、鍋の中のものをすくい上げる。

 

「え?味見してみろってこと……?」

 

クルミが一口食べると……

 

「わぁ……とってもおいしいスープ!」

 

味は凄く美味しいらしいが……

 

「な、なんなのよこいつは……!」

 

すると一人の男が現れる。

 

「──そちらはワタクシ自慢の召使。家事から虐殺まで、なんでもござれの『万能人形(オムニ・フォーク)』ですぞ。」

 

「!?」

 

「えぇ!?」

 

「えっ?」

 

「ブタっ!?」

 

「ほっほっほ。然様ですぞ。ワタクシ、夕餉の匂いに釣られたブタさんです。」

 

すると騒ぎに気づいたコッコロ達がやってくる。

 

「……あなたは……!【レイジ・レギオン】の、アゾールド……!」

 

「じゃあ、コイツらがコッコロ達の敵ってわけね!」

 

「??」

 

「ほっほっほ。そういうことになりますかな。」

 

「お前が【レイジ・レギオン】の3人目か……!これほど早く見つかるとは……。」

 

「シェフィさま、お下がりください!クルミさまもアヤネさまも!」

 

「う、うん!」

 

「シェフィちゃんこっち!お兄ちゃんのベッドへ行こうっ!」

 

クルミ達はユウキの眠る部屋へと行った。

 

「……ふむふむ。察するに、騎士の少年は容体が優れないのですかな?ワタクシとしては、これは大変好都合。彼が眠っているうちに、任せられた役割を済ませるとしましょうか。」

 

「……!やはり狙いは彼か!」

 

「主さまを傷つけさせはしません!」

 

「か、帰ってくださいー!」

 

「【レイジ・レギオン】……!あたしの家で、好き勝手はさせないわよっ!」

 

「やれやれ……お夕飯抜きでは済みませんぞ。」

 

すると外から大量の万能人形が入ってくる。

 

『ウィーン。』

 

「変なロボットいっぱい入ってきましたー!?」

 

「『万能人形』です。様々な仕事をそつなくこなす、自慢の召使達です。」

 

「「きゃああああっ!?」」

 

するとユウキの居る部屋から悲鳴が聞こえる。

 

「……!もしや、寝室の方にも!」

 

「ごめん!あたし、向こうに行ってくる!」

 

サレンはクルミとアヤネを助けに向かった。

 

「ほっほっほ。多勢に無勢でございます。カリザ君も、すぐこちらに参られるでしょう。」

 

「くっ……!【レイジ・レギオン】、二人がかりということか……!」

 

「いえいえ。今日は特別でしてな。実は──あと()()来ておりますぞ。」

 

「二人……!?」

 

アゾールドが言うその二人は現在ランドソルの外門にいた。

 

「……ゼーン。お前一人でも十分な役割の筈だが?」

 

「……ザマス。仲間はいるに越したことはない。共に役割を果たすぞ。」

 

アゾールドが言っていた二人の人物はブラックとゼーンだった。

 

「……いいだろう。お前の力も気になっていた所だ。」

 

その時だった。覇瞳皇帝の下へ向かう途中、キャルから通信魔法を受け、サレンディア救護院へと急ぐペコリーヌとジュン率いる【王宮騎士団(NIGHTMARE)】とブラックとゼーンはすれ違った。

 

「……。」

 

「……。」

 

「……っ!?」

 

ジュンはすれ違うもその二人の異常な力を感じ取り足を止める。

 

「ジュンさんっ?どうして立ち止まっちゃうんですかっ!?」

 

「──失礼、陛下。今、すれ違った二人の男。あれは……。」

 

「あの人達ですか?」

 

「わかりますか陛下?只者じゃない……!そこの男達!止まれ!」

 

ジュンは通り過ぎたブラックとゼーンを呼び止める。

 

「……。」

 

「……。」

 

ブラックとゼーンは呼び止められたことに気づかずそのまま進む。

 

「待てそこの男と仮面の男!ジュン団長が呼び止めているというのに、無視するとは!」

 

するとブラックとゼーンはその声に気づき立ち止まる。

 

「……?俺に、用か?」

 

「先を急いでいるのだがな。」

 

「こちらは【王宮騎士団(NIGHTMARE)】だ。貴方達の氏名と、所属するギルドをお聞かせ願いたい。」

 

「俺は、ゼーン。所属ギルドは、【レイジ・レギオン】ギルドマスターを務めている。」

 

「私はザマス。所属ギルドは同じく【レイジ・レギオン】だ。」

 

「【レイジ・レギオン】のギルドマスター!?それに『ザマス』って……あの時のアゾールドって人が言ってた……?」

 

「敵の首魁と仲間と言うわけか……!ならば貴方達も、この国の転覆を狙うと?」

 

「そんな物に興味は無い。私たちの狙いは……。」

 

「『七冠』。覇瞳皇帝、千里真那。」

 

「覇瞳皇帝!?」

 

その人物の名にジュンは驚く。

 

「た、確かに……この通りを真っ直ぐ行けば、王宮ですけど……!もしかして、何か恨みでも!?」

 

「個人的な因果は無い、が……。」

 

「……お前たちの用件には応えた。私たちはもう行くぞ。」

 

ブラックとゼーンが行こうとした時、ジュンが止めに入った。

 

「止まれ!みすみす行かせは──」

 

「……っ。」

 

ブラックはジュンを謎の衝撃波ではね返した。

 

「何っ!?──あぐっ!」

 

「「「「団長っぉ!??」」」」

 

「ジュンさん!?」

 

「お前を倒すのはこれで()()()だ。」

 

「貴様っ!許さんぞ!」

 

騎士たちは剣をブラックに向け、そして攻撃を仕掛ける。

 

「……っ。」

 

「「「「ぎゃああ〜っ!!」」」」

 

またもや謎の衝撃波で騎士たちは吹き飛ばされる。

 

「みなさん!!」

 

「ゼーン、先に行ってろ。私が足止めをしておく。」

 

「ああ……。頼んだ。」

 

ゼーンはペコリーヌ達を振り切り王宮へと向かった。

 

「あっ!待ってください!!」

 

「おっと……お前たちの相手はこの私だ。」

 

ブラックがペコリーヌ達の前に立ち塞がる。

 

「へ、いか……お逃げ……くださ……。」

 

ジュンは意識が朦朧としている。

 

「……すみません、ジュンさん。王家の装備、フルパワーですっ!!」

 

ペコリーヌは装備の力を最大限に発揮する。

 

「……。」

 

「行きますよ、【レイジ・レギオン】!やあああーっ!!」

 

ペコリーヌは本気の力でブラックを攻撃するが……。

 

「どうした……この程度か?」

 

あろう事かブラックはペコリーヌの剣を素手で止めた。

 

「えぇっ!?これ剣ですよ!?」

 

「へ、陛下……っ!」

 

「私が子供扱いされるなんて、やばいですね……!」

 

その時だった。急にペコリーヌにプリンセスナイトの力が宿る。

 

「えっ?この光……!」

 

「……。」

 

「もしかして、ユウキ君が目覚めたんでしょうか?確かめに行きたいですけど今はっ!」

 

「……。」

 

「力を借ります、ユウキくん!チェンジ・プリンセスフォーム!」

 

するとペコリーヌの衣装が変わり、気が大きく膨れ上がる。

 

「……ほう。随分おもしろい力を身につけたな。ペコリーヌ……。」

 

「……えっ!?なんであなた、私のあだ名を……!?いや、それよりも……これで貴方とも闘えるはずです!」

 

ペコリーヌは精一杯の力を込めてブラックへと攻撃する。

 

「超全力全開!プリンセスストライク──!!」

 

しかし、ペコリーヌの一撃はブラックの指1本だけで止められた。

 

「……ふん。」

 

「へぇ!???」

 

「陛下!後ろですっ……!!」

 

ペコリーヌが気づいた時にはブラックは既に背後にいた。

 

「遅いな……。」

 

ブラックはペコリーヌの腹に拳をねじ込ませる。

 

「あ、あぐっ……あ!!」

 

ペコリーヌはその場に倒れ込む。一応手加減はしてくれたようだが……。

 

「陛下ぁっ!」

 

「う、うぅ……。つ、強すぎます……化け物ですか、このひと……ごほっ、ごほっ!」

 

「……お前たちはこれからも闘ってくれればいい。お前たちの闘いが、私の計画の力となる……。」

 

ブラックはそう言い残すとゼーンの後を追った。

 

「くっ……!」

 

「……えっ……?い、行っちゃいました……えーっと……見逃して、くれたんでしょうか……?」

 

「いえ……違います。きっとあのゼーンという男の後を追ったのでしょう……。我々が彼を邪魔できないなら、それで良いと……そういうこと、なのでしょう……。」

 

「……それにしても、あの人の強さは異常でした……。それに、聞き覚えのある声だった気もしますし……。あんなに強いひと、今まででも()()()()()しか……一人ぐらい……しか……ッ!?」

 

 

 

 

 

 

「『ゴクウ』、、、さん……?」

 

 




いろいろすっとばした気がしないでもないけどいっか!(良くない)


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ゼーンvs迷宮女王

ゼーンってかなり強い部類だよね?


仮面の男に手も足も出なかったペコリーヌはその男の正体を考えていた。

そして至った答えが『ゴクウ』ではないのか?と思ったものの、やはりその考えは取り消される。

 

「ゴクウさん……なわけ、ないですよね……。左耳にアクセサリーもしていませんし、服も若干違いますし、似ているのなんて……声とか、髪型しか……それしか……。」

 

「陛下……?」

 

ジュンは心配そうにペコリーヌに声をかける。

 

「……でも、顔を隠しているのはどうして…………?」

 

「……陛下!」

 

今度は少し強めに呼びかける。

 

「わっ!ひゃいいっ!!」

 

ペコリーヌがびっくりして声をだす。

 

「あ、すみません陛下……ずっと独り言を言っているようだったので……。」

 

「あ、あはは……なんかあの仮面の人のこと考えてたらボーッとしちゃって……。」

 

「……そうですね。私もあの男については色々と聞きたいこともありました。あの男は私にこう言ったんです。『お前を倒すのはこれで二度目だ。』と……。」

 

「二度目?ジュンさんあの人に会ったことあるんですか?」

 

「いえ、私の記憶が正しければあのような男と会った覚えはありません。」

 

「……私、あの人のことが気になります。」

 

「ええ……一体何者なのでしょうか。」

 

 

その頃、ペコリーヌ達を始末したブラックはゼーンと合流し、再び城の警備をしている兵士達を襲っていた。

 

「「うわあああ〜っ!!」」

 

「ひぃ〜っ!逃げろっ、逃げろっ!」

 

「怪物だ、バケモノだっ!絶対勝てねぇ!」

 

するとこの兵士たちの指揮をとっている『ゴウシン』という人物も声をあげる。

 

「ぐ、ぐぬぬぬっ!なんということか!宮殿前の守りを、たった二人に苦もなく突破されるとはっ……!」

 

「……。」

 

「……。」

 

ブラックはその指揮をとっている男に気づき指先を向けゆっくりと赤いエネルギーを溜める。

 

「ひっ!……た、退却、退却っ!【黄金の手】部隊、全員たいきゃ〜くっ!」

 

ゴウシンはブラック達の恐怖に怯え、遂に退却を命令した。

 

「で、ですが隊長!それでは宮殿の守りが……!」

 

「馬鹿者っ!我らが守るべきは陛下の御身!陛下がご出陣なされている以上、身体を張る道理などあるまいて!」

 

と、なんとも指揮官らしからぬ言葉を並べた。

 

「というわけで……退却っ!たいきゃくぅぅ〜!」

 

ゴウシンは部下達を置いて先に逃げた。

 

「議長ぉ〜っ!待ってくださ〜いっ!」

 

こうしてゼーンとブラックは難なく城を突破した。

 

「……どうしたザマス。」

 

突如ブラックの動きがとまった。

 

「ゼーン、どうやら覇瞳皇帝の前に、いい味の前菜がやってきたようだ。」

 

「……?」

 

するとゼーン達の前にはラビリスタが現れる。

 

「いやぁ、すごいすごい。天下無双とはキミたちのことだね。【レイジ・レギオン】。」

 

「お前は……。」

 

「……。」

 

「えーっと、自己紹介、いる?」

 

「『七冠』──迷宮女王、ラビリスタ。……模索路晶。」

 

「ふぅん、アタシをそっちの名前で呼ぶんだ。それに君のその角とシッポ、そして謎の仮面の男……ますます興味深いな〜。」

 

ラビリスタはゼーンとブラックを観察しながら目的を探る。

 

「それで。キミたちの狙いは、この城の千里真那かな?」

 

「そのつもりだったが、おもわぬ収穫もありそうなのでな……。」

 

「あはは。じゃあアタシは、まんまと釣られちゃったって訳か〜。……キミたちが七冠を狙ってるって噂、ホントだったんだね。」

 

「……。」

 

「……アタシたち全員がターゲット。そして、怨根が理由でないとすると……ははぁ。なんとなくわかってきちゃったぞ。キミたちの背景。」

 

「……。」

 

「少年達は大変みたいだし……しょうがない、ひと肌脱ぐとしますか。いま真那をそっちにあげちゃいたくないんだよね〜。それにほら。賊に大罪人を奪われたとなると、アタシが利用したい『王家の威信』ってやつにも関わるしさ?」

 

「……貴様如きが勝てるとでも?」

 

「そうなんだよね〜そこなんだよ。ゼーンって人とはいい勝負できそうなんだけど、何故だかそこの仮面の人には全く勝てるビジョンがみえないんだよね……キミさ、一体何者?」

 

ラビリスタはハッキリとブラックには勝てないと最初から悟っていた。

 

「過去に一人……覇瞳皇帝を一方的に倒した……私たちでも手も足もでないような凄い人がいたんだけどさ……キミ、なんかその人に似てるんだよね。」

 

ラビリスタは流石の観察力でブラックの正体に限りなく近い答えをだしていた。

 

「……?」

 

「……安心しろ。私が直接手を下すことはない。ゼーン、お前に任せるぞ。」

 

「──仕る。」

 

ゼーンは力強く踏み込んでラビリスタの前へと出る。その速さは常人では目で捕らえることは不可能な速度だった。

 

「ふっ……。」

 

ラビリスタは少し笑みを浮かべ振り下ろされた大剣をかわす。

 

「……。」

 

ブラックはゼーンとラビリスタの闘いを観戦している。

 

「……!」

 

大剣をかわしたラビリスタは光の電子となって消えていった。ゼーンが攻撃したのは偽物のラビリスタだったのだ。

 

「こっちこっち〜!」

 

ラビリスタは建物の上に移動していた。

 

「……!」

 

「そこ、足元注意だよ。」

 

ラビリスタはゼーンの立っている位置を指さす。

 

「っ……!」

 

するとゼーンの立っている床が正方形に切り抜かれゼーンはそのまま落下した。そして落下した先には横から4本の巨大な柱がゼーンを潰しにかかるような速度で出現した。

 

「!!」

 

何か硬いものが砕ける音が穴の中から聞こえてくる。

 

「……。」

 

ゼーンはそのまま穴の中から傷一つ負わずに上空へと脱出した。

 

「……。」

 

ラビリスタが指で合図をすると今度は大きな穴が塞がり巨大なゴーレムの手のような物が生成されゼーンを鷲掴みにする。

 

「……。」

 

「私の特技はオブジェクト変更。ま、石や土をちょっといじるくらいのモノさ。」

 

ラビリスタはそういうと巨大な手で掴んだゼーンを空へと投げる。

 

「なっ……!」

 

ゼーンはこの時キラリと光る何かが見えた。その正体は……

 

「空に浮かぶ物質もそんなモノなんだよね〜。」

 

まるで灼熱の太陽のようなものだった。

 

「……ふん!!」

 

ゼーンが力を込めると顔に血管が浮きだし、身体の筋肉は膨張する。

 

「はっ……!!」

 

ゼーンは迫ってくる太陽をその大きな大剣で切り裂いた。

 

「……ほう。」

 

これにはブラックも関心したようだ。

 

「……!!」

 

ラビリスタも予想外だったらしくかなり驚いた様子だった。

 

「……。」

 

ゼーンは地上に降り立つ。

 

「──いっやぁ、つくづくとんでもないねキミ。覚醒もなしでそこまでの力がでるなんて。しかも、その剣って──」

 

しかし、ゼーンの攻撃はとまらない。

 

「喰い千切れ──」

 

「!」

 

ゼーンがそう言った時、ラビリスタはその技の危険性を瞬時に察知した。

 

「──『蛮牙竜咬(ブルートバイト)』。」

 

その威力は凄まじく、まともにあたればそこら一体の建物が全て破壊されるほどだった。

 

「おっとと!あ〜怖い怖い……まったく、命がいくつあったって足りやしない、っと!」

 

ラビリスタはギリギリでかわすがそれでもゼーンの勢いはとまらない。

 

「はっ……!」

 

ゼーンの繰り出す攻撃は一撃一撃がとても重く、地面や壁が抉れている。

 

「ほんとに、こんなに誰かを相手にしたくないって思ったのは『ゴクウ』以来だよ。」

 

「ゴクウ……?とは?」

 

ゼーンは聞き覚えのない名前に反応する。

 

「さっきいった、私たち七冠が束になっても敵わない人だよ。」

 

「……そうか。それにしても、こちらの詰めを悉くいなし、随所に反撃まで仕込むとは。流石に『迷宮女王』か。」

 

「ねぇねぇ。ゼーンくんだっけ?お互い、結構消耗しちゃったしさ〜そろそろ痛み分けってことにしない?」

 

ここでラビリスタが闘いを止めるよう促す。

 

しかし、

 

「──断る。こちらの攻めてはまだ途切れていない。そして、俺の後ろには『ザマス』が控えている。根くらべなら俺たちの方に分があると見た。」

 

「うん、そう?まぁ確かに、泥臭いのはアタシの好みじゃあない。それじゃあ……。」

 

ラビリスタは予想外の行動に出た。

 

「……厶ッ!」

 

「──ちゃぶ台をひっくり返しちゃおうかな?」

 

そういうと突如辺りが巨大な地震が来たかのような揺れが起こる。

 

「……。」

 

「ただの地震では無いな。お前の能力か。」

 

「フフ。そゆこと。準備にちょぉっと時間がかかったけど……キミたちがもともと狙ってた城の地下。千里真那が収監されている元宝物庫……牢獄の位置を、ごそっと移動させてもらったよ。」

 

「……。」

 

「残念ながら、ちょっとやそっと掘ったくらいじゃたどり着けない。そもそも、位置が分からないと思うけどね。」

 

「……。」

 

「真那が出てきちゃわないように気を配りながら、ネネカの張った転移避けの結界ごとオブジェクトを組み換えるのは、なかなか大変だったけど……ま、どうにかセーフって事で。じゃ、もう用事は済んだから。お疲れ様ー!」

 

ラビリスタはそういうと姿を消した。

 

「……読み負けた……か。」

 

「ラビリスタ……奴は以前よりも強くなっているようだな。」

 

「すまない、ザマス。」

 

「問題ない。アジトへと戻るぞ。」

 

「……ああ。」

 

 

一方、逃げたラビリスタは……

 

「あ〜しんどかった〜……ドラゴン族のアバターにまさか『魂喰い(データロガー)』の武器まで持ち出してくるとはね。それにあの仮面の男……謎は深まるばかりだ。」

 

ラビリスタはゼーンとの闘いを終え、仮の拠点で一旦出来事を整理していた。

 

「真那は奪われなかったけど……結果だけみると向こうの勝ちかな。こっちの情報を半分以上持ってかれちゃった。」

 

『ウィーン、ウィーン。』

 

するとラビリスタの拠点には何故か万能人形が大量にいた。

 

「こっちもしんどそうだなー……少年達のほうも無事だといいけど……ごめん。ちょっと、そっちまで行けそうもないかも……。」

 

ラビリスタは万能人形を全て破壊することから始めたのであった。




週に2、3くらいのペースであげたいなー。


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正義の神

まさかまさかの


ユウキ達を襲った【レイジ・レギオン】のメンバー達だったが、ゼーンとブラックは迷宮女王に逃げられ、アゾールドとカリザの方でも突如ユウキが目を覚まし、プリンセス・フォームに変身したレイとヒヨリによって撤退を余儀なくされた。

 

【レイジ・レギオン】アジト

 

「ふぅ。カリザ君の手当て、完了いたしましたぞ。」

 

カリザはサレンディア救護院でボコボコにされたらしい。

 

「ご苦労さまです……アゾールドさん……。」

 

「カリザくん、大丈夫でした?」

 

「まぁ、たんこぶはしばらく残るでしょうが……あれだけ悪態をつく元気があれば、心配ご無用でありますな。」

 

「よかった……。」

 

「良かったですけど……カリザくんってば、また負けちゃって、しばらく荒れちゃいそうですねー。」

 

「敗北は、カリザだけではない。俺も当初の目的を完遂できなかった。すまない。」

 

「ああ……やはり一筋縄ではいかなかった。悪かったな。」

 

「そんなことはありませんぞ。覇瞳皇帝が幽閉中なことに変わりはありませんし……。」

 

「ゼーンさんとザマスさん、迷宮女王の情報はちゃーんと取ってきてくれましたしね☆」

 

「だが、まだ完全では……。」

 

「それより、ゼーンの手当でもやっておけ。」

 

「この程度……問題ない。」

 

「恥じることはない。『七冠』は厄介な相手だった。それに……カリザよりも傷の度合いが酷い。」

 

「流石はザマス君……ゼーン君の怪我はお見通しでしたか。」

 

「怪我って……そうだったんですか?」

 

「わぁ、やっせがまんー!オトコノコって感じですね☆」

 

「次に備え、万全を尽くすのも騎士の役割といえましょう。まずはご静養を。」

 

「……恩に着る。」

 

ゼーンはアゾールドに連れられ治療をしに行った。

 

「ゼーンさんも、大丈夫かしら……。」

 

「まあ大丈夫だと思いますけど……それよりうーん……。」

 

「……。」

 

ミソラ「次はどうしましょうか?ランファさんはぁ……また『騎士クン』さんにあいにいきたいですよねぇ?」

 

「えっ……!?それは、その……うぅ……。」

 

ランファの顔がほんのり赤くなる。

 

「知り合いか?」

 

「ランファさんの好きな人ですよ☆」

 

「……人間というのはつくづく理解できんな。」

 

「もうー!ザマスさんにもいずれできますよ?好きな人!」

 

「くだらん……。」

 

「そ、そんな……!好き、だなんて……わたしとあの子とは、敵同士だし……それに……は、恥ずかしいし……。」

 

「だからってぇーひとりで『はじめての育児ガイド』なんか読んでも彼とは仲良くなれないですよーランファさん☆」

 

「っ……!?ミソラちゃん、な、なんでそれ、知って……!?」

 

「ふん……くだらん。ん?なんだこの『気』は……?」

 

「あ、ちょっと待ってください。」

 

ブラックが謎の気を感じ、その場を離れようとした時、急にミソラに呼び止められた。

 

「……なんだ。」

 

「ザマスさんとランファさんに一つお願いしたいんですけど。」

 

「私たち……?」

 

「実はですね。七番目の『七冠』……かもしれないっていう人のウワサがあって。お二人に調べてきて欲しいんですよ。場合によってはやっつけちゃってもいいです☆」

 

「別に構わないが……ランファ、先に行っててくれ。私も後でお前のもとへ向かう。」

 

改めてブラックは謎の『気』の正体を探りに、その場所へ瞬間移動で向かった。

 

「ええ、わかったわ……。」

 

「ありがとうございまーす☆わたしはその間、またランドソルにそーっと潜り込んできますので♪」

 

「うん……お願いね、ミソラちゃん。それで、最後の『七冠』かもしれない人って?」

 

「はい♪【ドラゴンズネスト】っていうギルドの、ギルドマスターさんです☆」

 

一方、闘いが終わったサレンディア救護院では、傷を負った一同がベッドに運び込まれ、手当を受けていた。

 

「……はぁ〜一時はどうなることかと思いましたぁ……。サレンお嬢様もユウキさんも、みなさんも。ひどいお怪我ですけど……命に別状はないみたいです。」

 

「スズメ、さん……助かりました。私一人だけじゃ、手のほどこしようがなかったから……。」

 

シェフィというドラゴン族の少女は幼児退行から戻ったらしく、今は普通に会話ができるようだ。

 

「ごめんなさい。わたしたちも、魔力が切れちゃって……。」

 

「どうにかここにたどり着くだけで、精一杯だったわね。しかも、着いたら終わってたし……。」

 

「みんな、もうちょっと待ってね。まりよが溜まったら、すぐ回復魔法を使うから…。」

 

「いたたた……ごめんね。スズメちゃんばっかり、手当させちゃって。」

 

「いえいえ、むしろみなさんが戦ってる間、お助けすることができなくてごめんなさいって感じです。」

 

「ありがとねスズメ。子どもたちを、ちゃんと逃がしてくれて……。」

 

「えへへ……どういたしまして。安静にしててくださいね、お嬢様。……あっ、そういえばシェフィちゃん。すっかりおしゃべりできるようになって……記憶、戻ったんですね?」

 

「……その……意識のほうは、ハッキリしたんだけど。記憶はまだで……ほんとうの名前とか、昔の自分が何をしていたのかまでは……ちゃんと思い出せないの。」

 

「そ、そうなんですか……でもきっと、すぐに思い出せますよっ♪」

 

すると、怪我を負ったレイが身体を起こしてシェフィに問いかける。

 

「それよりシェフィ。こうしてきちんと、会話できるようになったのなら……ひとつだけ、聞かせてもらいたい。」

 

「……なにかしら?」

 

「キミは、我々の味方か?それとも、敵なのか?」

 

レイはずっとシェフィか【レイジ・レギオン】の刺客なのではないかと疑っていた。

 

「……分からない。」

 

「……。」

 

「……でも、ユウキや、コッコロさんに。たくさんお世話になって、助けてもらったことは……覚えてる。だから……そのぶんの恩を返したいとは、思ってるわ。」

 

シェフィは自分の今の正直な気持ちをレイに伝えた。

 

「そうか。ならば……すまなかった。謝罪させてほしい。」

 

レイはそんなシェフィの言葉を聞き謝罪をする。

 

「えっ?どうして、あなたが謝るの?」

 

「私は、キミのことを疑っていた。【レイジ・レギオン】と、あるいは内通しているんじゃないかってね。」

 

「疑り深くなったのは、友達を守るためでしょう?無理もないと思うわ。それに、どうにかなったのは、そこで寝てるユウキのおかげよ。彼が力を与えてくれなかったら、勝てなかったわ。」

 

するとユウキは目を覚ます。

 

「……そんなことないよ。」

 

「あっ、騎士クン!」

 

「騎士クンも、目が覚めたんだね!」

 

「うん、それに……!」

 

「みんな心配かけて、ごめんね。」

 

「よかったぁ……!いつもの騎士クンだっ……♪ホントによかったよぅ……!」

 

ユウキの記憶も元に戻ったようだ。

 

「ふん、これでもう、しっぽガジガジされる心配もないってわけね。あ〜よかったよかったー。」

 

「今までごめんねキャルちゃん。」

 

「べ、別に謝るようなコトじゃ……あんただって、嫌がらせでガジガジしてたわけじゃないんだろうし……。」

 

「私も謝っておくわ……キャル。ずいぶん、齧っちゃった気がするし……。」

 

「はいはい。あんたも貸しってことにしてあげるわよ。それにしてもシェフィ、あんたのその口調、正直めちゃくちゃ違和感あるわね。もうバブバブ言わないワケ?」

 

「当たり前よ……!」

 

「それじゃ、怪我が治ったら、みんなでお祝いしましょうか♪シェフィちゃんとユウキくんの、復帰祝いです!」

 

「あ、いいねいいね!」

 

「みんなでパーティーだぁー……♪」

 

「料理はどなたかお願いします……。」

 

「料理か……。」

 

「そういえばプリンセスフォームの反動なのかお腹が空いてきちゃった。」

 

すると突然ラビリスタが現れる。

 

「みんな、お腹が空いてるのかな?それじゃあ、アタシがクレープを用意しよう!」

 

「ラビリスタさん!?」

 

「や、ちょっとぶり。」

 

よくみるとラビリスタも腕の方に怪我を負っているようだった。

 

「ラビリスタさんも怪我を!?」

 

「こんなの皆に比べたら大したことないない!この怪我よりももっと『とんでもない人』がいたのはちょっと、いやかなりマズいけどね……。それよりも、皆が無事でよかった!今すぐにでもパーティーをしたい気分だ!」

 

「では……わたくしがお料理を……ごほ、ごほっ。」

 

コッコロはかなり手酷くやられたらしく体調も優れない。

 

「あっ、コッコロちゃん!?まずいですよ!!」

 

「カリザくんの鞭に酷くやられちゃったみたいだね。普通の回復魔法だけじゃ、しばらく治らないかも……。」

 

「うんうん。安静にしといた方がいいよ。キミの身体はちょっとだけみんなとちがうしね。」

 

こうしてサレンディア救護院は一先ずは落ち着いたようだ。

 

一方その頃、謎の気を感知したブラックは薄暗い洞窟の中に瞬間移動をしていた。

 

「これは……『シャドウ』か。」

 

ブラックの感じた奇妙な気の正体はシャドウだった。

 

「…………。」

 

てっきりシャドウは全て居なくなったと思い込んでいたブラックはシャドウがまだいた事に驚いた。

 

「ん?シャドウ……そういえば過去に、覇瞳皇帝の姿をしたシャドウがいたな……。」

 

ブラックはシャドウにゆっくりと近寄る。

 

「どうやってやったかは分からないが……!」

 

ブラックはシャドウの腕を自分の胸に引き寄せる。

 

「…………。」

 

「ふふふ……感じるだろう?私の身体に刻まれている『ザマス』の記憶が……!」

 

「……ざ、ま……す?」

 

「……お前は『ザマス』なのだ。」

 

「……私は、『ザマス』?」

 

するとシャドウがはっきりと言葉を喋り、見た目がどんどん変わっていく。肌は緑色になり、服も界王神のような服を身に纏う。

 

「……私は……!!」

 

「フフフ……久しぶりだな。」

 

「……?」

 

ザマスに変化したシャドウはまだ状況がよく分かっていないようだ。

 

「……私は過去から正義を求めてやってきた。悪を滅ぼすために……!」

 

「悪を……滅ぼす……?それに、お前は……。」

 

「『私』は『お前』だ。」

 

「『お前』は『私』……?」

 

ブラックとザマスは互いに身体を向かい合わせる。

 

「「共に正義を!!」」

 

 




かっこいい仙豆


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それぞれの闘いの行方

ごちゃごちゃしててこれもうわかんねえな


ブラックは『ザマス』に変化したシャドウと共に今後の計画について話し合った。

 

「それで……我々の計画はやはり、『人間0計画』なのか?」

 

「……それはできない。」

 

「どういうことだ?」

 

「……この世界は少し特殊でな……闇雲に人間を殺すとよからぬ事が起こるらしい。」

 

「なんだと!?」

 

「そんな顔をするな。私とお前が組めば……全宇宙を思い通りにすることができる。しばらくの辛抱だ……。」

 

「理想郷の完成まで……あと僅か……といったところか。」

 

「ああ……だが今はくれぐれも人間を殺すなよ?」

 

「……肝に銘じる。それにしても……お前のその仮面はなんだ?」

 

「……訳ありでな。今は詳しく話せない。」

 

「まあいいだろう……私はどうすればいい。」

 

「……『ミソラ』という女を見張ってくれ。」

 

「……人間を見張るだと?」

 

「ああ、あの女は何かを企んでいる……。」

 

ブラックはミソラが怪しいと思っていたようだ。

 

「……いいだろう。用が終わり次第そちらに向かう。」

 

「……頼んだぞ。私はやることがあるのでな。」

 

「……では、また後で。」

 

ザマスはミソラの観察をしに向かった。

 

それから約1週間ほど経ったある日。

 

「ランファから連絡が来ない……。何かあったのか?」

 

ブラックがランファの気を探るとランファの気が小さくなっているのを感じ取った。

 

「ランファの『気』が小さくなっていく、一体何があったというのだ……?」

 

ブラックはランファの気をたどり瞬間移動した。

 

 

その頃ランファは、最後の七冠かもしれない人物が【ドラゴンズネスト】のギルドマスターという情報をミソラから聞き、現在はそのギルドマスターの『ホマレ』と交戦している所だった。その闘いを【ドラゴンズネスト】の二人の『カヤ』と『イノリ』がその戦いを見守っていた。

 

 

 

「うぅ……。」

 

「ふふっ!あははっ!うんうん、今のはよかったよ〜♪もっとも〜っと、あなたの力を見せてほしいな。私も楽しくなってきちゃったし☆」

 

ホマレは赤く光る目でランファを見下ろす。

 

「……わたしは……ぜんぜん、楽しくなんか……ありません。……それに……」

 

ランファはアジトへ瞬間移動移動するためのアイテムをとりだす。

 

「あれあれ?それって空間跳躍のアイテム?」

 

「空間跳躍!?逃げるつもりかよっ!」

 

「卑怯者!いくじなしー!ボソボソ女ー!」

 

カヤとイノリがランファに対し口々に文句をいう。

 

「はい……逃げます。わたしは、卑怯者で、いくじなしで、ボソボソ女だから……。」

 

そして、転移しようとしたその時だった。

 

ビリビリ

 

「っ!?」

 

何故か転移アイテムが使うことができなかった。

 

「……うふふふっ☆あれ?あれあれ〜?どうしたのかな〜?」

 

「転移、できない……?なぜ……?」

 

「そっか、知らないんだ。空間跳躍を妨害する結界だよ。」

 

「……!さっきまでオレたちがさせられてた、魔法の修行って……!」

 

「もしかして、その結界ってやつをつくるための手伝いだったです!?ふざけるなですよ!残業手当を要求するです!」

 

ランファが転移できなかったのは、予めホマレがカヤとイノリに転移魔法を妨害する魔法陣をかかせていたからだった。

 

「こっちはあなたたちと遊びたくて、ギャングのみんなを使ってウワサを流したんだもん。これくらいの準備は、するに決まってるよね〜♪それに……ケンカをするなら勝たなくちゃ♪……どんなコトをしてでも☆」

 

「っ……!!」

 

「それじゃあ、第2ラウンド、そろそろ始めよっか。」

 

その時だった。

 

「残念ながらそれはできないな。」

 

「!?」

 

ブラックが瞬間移動で突然現れた。

 

「すまないなランファ……時間を少しとられた。」

 

「ザマス……さん……!?」

 

「今、あいつどっから現れやがった!?」

 

「全然見えなかったですよ……!」

 

「……すっご〜い☆全然気づかなかったよ!それにキミ、『龍眼』でもなにも見えなかったけど……その仮面で、心を閉ざしているのかな?」

 

「さあ……どうかな?」

 

「キミ、今までの『周回』でも見たことがないけど……何者?」

 

「お前の質問に答える気はない。ランファ、私の手に掴まれ。」

 

「え?こ、こう……?」

 

「では、ごきげんよう……。」

 

こうしてランファとブラックはホマレの前から姿を消した。

 

「……今までの()()()でこんな事一度もなかった……。どういうことかな?」

 

ホマレからは今まで見せていた余裕の笑みは消え、何処か遠くの空を眺めた。

 

 

ホマレから逃げたランファとブラックは【レイジ・レギオン】のアジトに戻る。

 

「あの……あり、がとう……。」

 

「いや、私も来るのが遅かったからな……。」

 

するとゼーン達が何やら難しい顔をして立っていた。

 

「随分と遅せぇじゃねえかよ。」

 

「あっ!ランファさん!」

 

「ランファ、ザマス……最後の七冠かもしれない人物とは接触できたのか?」

 

「ええ、接触できた……わ。想定以上の力だった……けど、ザマスくんが……助けてくれた、の……。」

 

「さっすがザマスさん!」

 

「けっ……!」

 

「そうか……。」

 

「それに……【ドラゴンズネスト】のギルドマスターは……七冠では、なかった……わ。七番目の人物も……こちらにはいない……みたい……。」

 

「わあ!お手柄ですよ!ランファさん☆」

 

「情報提供、感謝する……。」

 

「ゼーン、アゾールドがいないようだが……。」

 

「……アゾールドは現在、怪我を負って療養中だ。」

 

「アゾールドが怪我だと?」

 

「ああ。先程までランドソルではアゾールドが撒いた偽の金貨によって混乱が生じていたのだが、その後に来た少女4人がプリンセスフォームに変身し、アゾールドを退けた。」

 

「……プリンセスフォーム。やはり束になるとアゾールド程の男を倒せるか……。」

 

「ああ。甘く見てはいけないようだ。」

 

「ふん!ロクに運動もしないでブクブク太ってるからそうなんだよ!」

 

「それにしてもアゾールドさん、腰の方をかなりやっちゃってるのでしばらくは安静ですね……。」

 

「……それよりも……我々はアゾールドに頼りすぎた。当面は、彼に負担をかけずに物事を進めなくては。」

 

「……ではどうするのだ。」

 

「……ん〜、そうですねー……それじゃあ……息抜きに、温泉にでも行っちゃいますか☆」

 

ミソラは突然温泉に行きたいと言い出した。

 

「……温泉だと?行くならお前たちだけで行ってこい。」

 

ブラックは当然これを断る。

 

「んもー!ザマスさんも一緒に行きましょうよ!!疲れとれますよ?」

 

「そう、よ……?たまには……息抜きも……大事だし……。」

 

「……ザマス。行ってきたらどうだ?俺はアゾールドの様子をみておく。」

 

ゼーンはアゾールドの怪我の具合をみておくようだ。

 

「……カリザ、お前はどうする。」

 

「……仕方ねェから行ってやるよ。ミソラと根暗女とザマスだけじゃ不安だからな。」

 

「それじゃあ、『オーエド温泉』にレッツゴーです!」

 

こうしてブラック達はオーエド温泉に行くこととなった。

 




次回からオーエド温泉編♨


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最後の教え

最近文字数が少なくなってしまい申し訳ないです


【美食殿】ギルドハウス

 

突然ネネカから彼女たちのもとへ手紙が届いた。

 

「ふぅん……『ソルオーブ』っぽい宝石が、オーエドの質屋にねぇ。」

 

ソルオーブというものは全部で12個あり、ソルの塔の登頂に必要とされる半透明の球体の物だ。

 

「ま、腕の立つ冒険者とかがソルオーブを持ってる魔物を倒しちゃったりしたら、そういう店に流れててもおかしくないけどね。ネネカの情報網ってどうなってんのかしら。」

 

「自分の分身を魔法で何人か作って、変装させて、あちこちの情報収集をさせていると言っていたよ。クリスティーナもだが、七冠たちの出鱈目さには驚かされてばかりだ。」

 

「最近はネネカさん、覇瞳皇帝さんに吸い取られた魔力も戻って、元気なんだって。プリンセスナイトの『マサキ』さんもいるしね。」

 

「ただ……その分身の一体が、【レイジ・レギオン】に奪われてしまったらしくてね。不完全ながら、能力を解析されてしまって……これ以上、大事な任務には使いたくないようだ。」

 

「なるほど……では【トゥインクルウィッシュ】のみなさまは、そのオーブを求めてオーエドに向かわれるのですか。」

 

「えっと、そのことなんだけど……。」

 

「【美食殿】のみんなに、ひとつ相談に乗ってもらいたいたくてね。実は、いまこちらですぐ動けるのが、ユイだけなんだ。」

 

「そうなの?」

 

「うぅ……街を離れてた分もと思って、あたし、お手伝いをたーっくさん引き受けちゃって。しばらく、そっちの約束でいっぱいいっぱいかなって……。」

 

「私も、ペコリーヌから少々協力を依頼されていてね。……まぁ正確には……王宮から、私の家へ、なんだけど……。」

 

と、こんな感じの理由もあり、レイとヒヨリはオーエドへはこられないようだ。

 

「私とヒヨリはすぐには動けないんだが……せっかく在り処のわかったソルオーブを、みすみす放置したくはない。他の誰かが手に入れてしまうかもしれないしね。」

 

「うん。あと6個も集めないといけないんだもん。奪い合いになっちゃったら、大変だよね。」

 

「クリスさんにお願いできれば良かったんだけど……今は、ランドソルを挟んで反対側だからね。でもユイちゃんひとりで行かせるわけにもいかないし……。」

 

「たしかにねー。敵がよっぽど弱っちいってワケじゃないなら、壁役なしの魔法使い一人っきりなんて危なっかしくてしょうがないわ。」

 

「それで、わたくしたち【美食殿】にソルオーブ集めの協力を要請したい……というわけなのですね。いかがでしょうか、主さま?」

 

「もちろんいいよ。」

 

「ありがとう騎士クン……!」

 

「街で何かあっても、一方通行の転移魔法を使えば、すぐ戻ってこられるものね。」

 

「あー……まあ、そうなんだけど……。」

 

キャルは申し訳なさそうに喋る。

 

「キャルさま?」

 

「ごめんっ!あたしとペコリーヌは、ちょっと無理っぽいわ一緒に行くの……。」

 

すると部屋の隅で話を聴いていたネビアがキャルをおちょくる。

 

「かーっ!かーっ!またまたはじまっちゃうのかしらね〜へんたいふしんキャッツキャルちゃんのあたしコミュ障なんです劇場が〜っ!」

 

「違うわよ!ってかイキナリ沸いてくるんじゃないわよ害虫エロ妖精っ、シェフィとユウキにその羽しゃぶらせるわよ!?」

 

「しゃぶらないわよ!」

 

「っと、まあ……別にあんたらと一緒にいたくないか、パスってわけじゃないのよ。……ただ、ペコリーヌのやつがね……。」

 

「ペコリーヌちゃん?」

 

「そっか、ペコさんは王女様だから、お城を何日も空けるのは無理だよね。」

 

「あー……それ、ここだけの話。オーエドに行って戻ってくるくらいの時間なら、ネネカのやつに影武者させればなんとかならないこともないんだけどね。でも、タイミングが悪いの。今はペコリーヌのやつ、しばらく王宮を離れられないわ。」

 

「そうなの?毒のせい……?」

 

ペコリーヌは前に大食い大会でアゾールドに毒を仕込まれたことがあった。

 

「ううん。体はもう良くなってるんだけど……このあいだの騒ぎで街の人たちから、クレームが山ほど来ちゃってさ。そういう話を受け止めるのは、ネネカに放り投げたくないんだって。」

 

「そうなんだ。」

 

「ペコリーヌさん……つらいわね。守ろうとしている人たちから責められるなんて……。」

 

「ペコさんはえらいね。」

 

「うん。ペコリーヌちゃん、私たちと歳は変わらないのに、本当にすごいなぁ……。」

 

「で、保護観察のあたしは【美食殿】のギルドマスターが一緒じゃなきゃ、自由に街から出られないってわけ。それに、ペコリーヌの書類仕事のひとつでも、手伝ってやろうかしらって……。」

 

キャルはランドソルに残ってペコリーヌと共に作業をしておくようだ。

 

「キャルさまがおそばにいらっしゃれば、ペコリーヌさまも大変心強いはずです。」

 

「ま、そんなわけだからさ。コッコロとシェフィ、それにユウキは、ユイについていってあげたらいいんじゃない?」

 

「わかった!」

 

「では……旅の準備や、馬車の都合もありますし。出発は、3日後にいたしましょう。」

 

 

 

3日後

 

オーエドへと旅に出たコッコロ、ユウキ、シェフィ、ユイはネネカが手配した医者のミツキと共にオーエドの街へとやってきた。途中、クウカ、ニノンと出会い、質屋へ行くがお目当てのソルオーブは何者かによって既に買われていた。買った人物を店主に聞いてみたところ、ヒューマン族、リボン、スカートが特徴的だったと話していた。

 

ユウキ達は手分けしてソルオーブを買い取っていったという観光客の少女の姿を求めオーエド中を探し回ったが見つかることはなく日が暮れてしまった。

 

「……みんな、成果なしね。」

 

「今日はもう、探しようがありませんね。」

 

「みんな疲れてるし、今日はもう休もうか。」

 

「はぁはぁ……♪足がすっかり棒になって、ビリビリしてます……♪」

 

「汗もかいちゃったし、せっかくだから、温泉に入って休みたいわね……♪」

 

 

 

こうして宿に宿泊した一行は温泉に浸かりこれまでの疲れを癒していた。

 

「これが温泉……少し熱めのお湯が、つま先にまで染み渡って……とっても気持ちいいわ。」

 

「主さまー?そちらの湯加減は、いかがですかー?」

 

「いい湯だよ。」

 

女湯と男湯の間には壁があり声だけは聞こえるようになっている。

 

「あっ、こんばんわー。」

 

ユウキの他にもお湯に浸かっているひとがいた。その人物は……

 

「……。」

 

ブラックだった。しかし、湯気もかなりでているためか……顔までは見えない。

 

「?」

 

返事が返ってこなかったが、そのままユウキは温泉に浸かる。すると、ブラックはユウキに質問をした。

 

「……旅でもしてるのか?」

 

「……うん!みんなと旅してるよ!」

 

「そうか……今を、楽しんでるか?」

 

「……今は、楽しいよ。」

 

ユウキにとってはただの一般人だが、この男といると不思議と関係ない話までしてしまう。過去のことも……。

 

「……仲間が、いたんだ……。」

 

「……。」

 

「……『ゴクウ』っていうんだけど、強くて、優しくて……。」

 

「……そいつはどうなったんだ。」

 

「……僕たちを庇って……。」

 

「そうか。」

 

「僕が弱かったから……。」

 

するとブラックはユウキに一つアドバイスをした。

 

「その『ゴクウ』ってやつはお前を恨んではいない。希望をお前たちに託しただけだ。そして、今のお前が己の使命を果たすために必要なものは『力』だ。」

 

「『力』……。」

 

ユウキはこの時、過去にブラックに言われた言葉を思い出した。

 

「……お前が世界を救うためにはもっと力をつけろ。それがお前の次に繋がる。」

 

ブラックはそれを伝え温泉から出た。

 

「力……『ゴクウ』と同じこと言ってた。それになんだか、声も聞いたことあったような……。」

 

「主さまー?なにかございましたか?何やら話し声が聞こえていましたが。」

 

「なんでもなーい。」

 

今は敵同士でも、顔は見えずとも、きっと……過去のブラックの教えはユウキに伝わったであろう。




ブラックのユウキへのアドバイスは第10話の『悪を砕く金色の戦士』を閲覧ください!


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戦いの矜恃

話が進まねえな……


「それでは……おやすみなさいませ、主さま。」

 

「男女別室じゃ、寂しくないかしら?いつでもコッチに来ていいのよ?」

 

「ダメですよぉミツキさん!別々なのがふつうです、ふつうっ!」

 

「おやすみ、みんな。」

 

「ええ、おやすみなさい。」

 

宿の布団に入って、ユウキは目を閉じた。

 

すると……

 

「♪ねんねん ころりよ……。」

 

なにやら優しい歌声が聞こえてくる。

 

「……?」

 

「♪ぼうやは よいこだ ねんねしな。」

 

「……どこからか、子守歌が聞こえる……。」

 

そしてユウキが目を開けると、何やら見知らぬ場所にいた。

 

するとユイが話しかけてくる。

 

「──騎士クン♪」

 

「ユイ……?」

 

「おはよう♪今日も一緒に、いっぱいがんばろうね!」

 

「えっ、何を?」

 

ユウキは状況を理解出来ていない。

 

「えっ?やだなぁ騎士クン!わたしたちのお店に、決まってるじゃない……♪」

 

ユイは何か訳の分からないことを言っているようだがユウキはすぐさま返事をした。

 

「……そうだった。」

 

何を思ったのか……ユウキもユイと共にお店の手伝いをする。

 

「お待たせしました♪コロッケ定食と、カレイの煮付け定食です♪」

 

ユイとユウキは、力を合わせて定食屋を切り盛りした。

 

そして閉店後……

 

「ふぅ……。」

 

「お疲れ様。」

 

「お疲れ様、騎士クン。今日も忙しかったね。お客さんがいっぱいなのは、良い事だけど……。」

 

「ユイ、肩揉むよ。」

 

「騎士クン……じゃあ、お願いしちゃおうかな……♪」

 

ユウキはユイの肩をもんであげた。

 

「騎士クンの手、気持ちいいな……♪」

 

ユイはユウキに肩を揉まれながら考えていた。

 

『……まるで、夢みたい。このままずっと、定食屋さんでいたいな。騎士クンと二人で……。』

 

そして、ユイはここで疑問を持つ。

 

『あれ……?でも、私の夢って……私の『願い』って……騎士クンと『定食屋さんをすること』だったっけ……?』

 

そんな事を考えていると、店に二人の女性が入ってきた。

 

「あれっ?お客さん?すみません、今日はもう閉店で……。えっ……?」

 

「あ、あら……?」

 

「あれー?閉店なんですかー?っていうか……」

 

【レイジ・レギオン】のミソラとランファだった。

 

「どうして『夢の中』に……彼の精神世界に、この子まで……?魔法をかけたのは、彼だけのはずだったのに……。」

 

どうやらこの世界はユウキの精神世界のようだ。

 

「んーランファさんの魔法の歌と、私の洗脳魔法そーちの組み合わせ……ぶっつけ本番でしたからねー。それにザマスさんは何処かに行っちゃいましたし多少のトラブルはしょうがないですよ☆」

 

ミソラは面倒くさそうな目でユイを見る。

 

「……っていうか……よりにもよって、『ユイ』さんですかぁ。これはまた、扱い注意なヒトですねー。」

 

ユイは急に入ってきた二人に困惑する。

 

「えっ?えっと……あなたたちは……?」

 

「すみませーんっ。わたしたち、これから騎士さんと仲良しさん♪したいので。ユイさんは……お外に出てってくださいね☆」

 

「えっ?えっ?出てけって、ここは、わたしと騎士クンのお店だし……!」

 

「カーリザくん♪例のアレ、出せますかー?」

 

するともう一人、カリザも現れた。

 

「チッ、しゃーねーな。ピンク髪の弱点は、っと……!」

 

すると突然大量の虫が店を這い回る。

 

「虫ぃっ!?それもこんなにっ、どこからっ!?!?」

 

「へへっ!クソ魔獣(バカ)どもにオマケして、イモ虫・ゲジゲジ・ミミズにガガンボ!大サービスだっ!おら行けー!」

 

「きゃあああああああっ!!」

 

そうしてユイの精神はユウキの夢から出され現実へと戻ってきた。

 

「いやああああああっ!!」

 

ユイは勢いよく目を覚ます。

 

「……はっ!」

 

「ユイさま!お目覚めになられたのですね……!」

 

「コッコロちゃん!?虫が、虫がぁ〜っ!!」

 

先程の夢が相当トラウマだったようだ。

 

「落ち着いて、ユイさん。虫なんて、どこにもいないわ。」

 

「シェフィちゃん……ほんとだ……じゃあ、今のは夢……?」

 

「ずいぶん、ひどい夢だったみたいデース。」

 

「途中までは、とっても幸せそうでしたけど……『……でへ、でへ、でへへへ……』っていう感じで〜。」

 

「……ぅぅ……。」

 

「あの、ユイさま。夢の中で、何かおかしなことはありませんでしたか。虫以外で。」

 

「うん。前に戦ったカリザくんや、ランファさん……それに、紫色の髪の毛の、リボンでスカートの女の子が出てきて……。」

 

「リボンでスカート……?それって……。」

 

「ミソラ、なのかしら……。」

 

「では、【レイジ・レギオン】が攻撃を……!?」

 

「攻撃っ?」

 

「ユイさま。すでに今は昼過ぎです。朝方から、どれほど手を尽くしても……お二人はお目覚めにならなかったのです。」

 

「えっ!?そうなの!?……二人って、もしかして……!」

 

「……はい。主さまの方は、未だにお目覚めになっておりません……!」

 

「えええっ……!?」

 

「魔法を使った精神的な干渉ってことかしら……。ユイさんの場合は、夢の中でおどかされて目が覚めたみたいだけど。」

 

「では、夢に干渉した【レイジ・レギオン】の側がそのつもりにならない限り、主さまはお目覚めにならないと言うことでしょうか?」

 

「そ、そんなぁ〜っ!」

 

「どうすればいいのかな?夢に入り込む魔法なんてわたし、覚えてないし……。」

 

「──ウフフ。どうやら、私の出番……みたいね。」

 

「お前たちの出る幕はない。」

 

「「「「!?」」」」

 

突如一人の男が全員の前に現れた。

 

「あ、あなたは……?」

 

「……。」

 

ブラックはユイ達の前に立ち塞がった。

 

「だ、誰なの!?」

 

「……あ、あなたは……!?」

 

コッコロはこの男に見覚えがあった。過去に覇瞳皇帝を倒す為に共に戦った「ゴクウ」とそっくりだったからだ。

 

「……あ、あ……。」

 

コッコロは体を震えさせる。

 

「……みすぼらしい姿になったものだな『コッコロ』。」

 

「そ、そんなはずありません……!あなたは……!!」

 

ブラックの仮面の奥から覗かせる目はコッコロを見て赤く光る。

 

「コッコロさん!?一体どうしたの!?」

 

シェフィはやや過呼吸気味のコッコロの身体をおさえて布団の上に寝かせた。

 

「コッコロちゃん!?」

 

「……ユイ、もう起きたのか。……ほら、これでもやろう。」

 

ブラックは半透明の球体をユイに渡した。

 

「……えっ!?これって、ソルオーブ!???」

 

「……!!」

 

「どうしてあなたが……!?」

 

「何か裏があるわね?」

 

「……フフフ。お目当てはこれだろう?ユウキの邪魔をしてやるな。」

 

「……あなたの目的は一体何なの!?」

 

「目的などない……。ユウキが死線を超え、どのような変化を迎えるか……共に見届けようではないか。」

 

 




コイツどっちの味方やねん


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覚醒のプリンセスナイト

週1投稿……ですかね?


突如姿を現した仮面の男にユイ達は驚く。

 

「ど、どういうことですか!?それに……あなたは一体誰ですか!?」

 

「見るからに怪しいデース。」

 

「ク、クウカには分かりますぅ……!あの人クウカと同じドMですぅ!!」

 

「……。」

 

ブラックは勝手にドMと認定された。

 

「……コッコロさんが姿を見ただけでこんな風になるなんて……。」

 

「……たしかに気になるわね。あなた、一体何者なの?」

 

全員がその正体に疑問を持つ。

 

「……そういえば自己紹介がまだだったな。私は『ザマス』。所属ギルドは【レイジ・レギオン】だ。」

 

「「「レイジレギオン!?」」」

 

「……ザマス?」

 

たしかに姿はブラックに似ているが名前が「ゴクウ」でないことにコッコロは違和感を持った。

 

「ちょっと待って!」

 

「……シェフィちゃん、どうしたの?」

 

シェフィは『ザマス』という名を聞いて顔を曇らせる。

 

「『ザマス』って……前にペコリーヌさんが遭遇して、手も足も出なかったって言ってた人……??」

 

「……!やはり、ペコリーヌさまを子供扱いできる相手など……1人しか思い浮かびません。」

 

「……コッコロちゃん!?何か知ってるの?」

 

「はい……。ですが、まだ確信したわけではありません。しかし……このお方は、『ゴクウ』さまにそっくりなのです……!」

 

コッコロは一番最初からブラックと冒険してきただけあり真っ先に正体に勘づく。

 

「ええっ……!?『ゴクウ』さんって、前にコッコロちゃん達と一緒に覇瞳皇帝を倒したっていう人!?」

 

「でも、その人は既にこの世にはいないんじゃなかったの!?」

 

「はい。ですが……ゴクウさまならもしかしたらと、わたくしは……心の何処かでは思っているのでございます……。」

 

ミツキもその正体について興味を示す。

 

「……もしかしたら、そのゴクウって人の『クローン』なんてのも有り得るわね。」

 

「ゴクウさまのクローン……!?」

 

「ええ。あくまで可能性だけど、死んでしまってから身体を誰かに利用されてクローンが作られたというのも不思議ではないわ。」

 

ミツキはブラックが何者かによって作られた存在と睨んでいた。

 

「わたくしは……貴方が『ゴクウ』さまである事を信じたくありません。『ゴクウ』さまは、決して悪に手を染める方ではありませんから……!」

 

「……相手の観察は終わったか?貴様らは大人しくユウキの無事でも祈っておくんだな。」

 

「……!!助けに行かなくては主さまが……!」

 

「そうだよ……!騎士クンが危ないよ!」

 

「……バカが。みすみす行かせると思うか?」

 

ここでシェフィが動く。

 

「貴方を倒さないとユウキを助けられないのなら……私は戦うわ。」

 

「シェフィちゃん!?」

 

「シェフィさま!?」

 

「ユイさんとコッコロさんは彼をお願い。」

 

「シェフィさま、いけません!相手はペコリーヌ様ですら……いえ、考えたくもありませんが……もしかすれば覇瞳皇帝をも凌駕するかもしれない相手でございます……!」

 

「この人が強いことはこうして向き合ってみて伝わっているわ……時間を稼ぐ位はしてみせるからコッコロさんは彼と一緒にいてあげて。」

 

「……シェフィさま……!」

 

「シェフィちゃん、私も行くよ!騎士クンが大変な時にじっと待ってるなんてできない!」

 

ユイもシェフィと一緒にブラックの足止めすることを決めた。

 

「ユイさん……!ミツキさん、今のうちにお願いします。」

 

「任せて……!」

 

「……勝てぬと知りながら無駄な抵抗を止めぬとは……本当に愚かだな。」

 

「……場所を変えるわよ。」

 

「……よかろう。」

 

シェフィとユイはブラックを連れて人気のない草原へと移動した。

 

「……たった二人で何ができる?」

 

「……貴方に邪魔はさせないわ!」

 

「う、うん……!騎士クンの為だもん!」

 

シェフィとユイはブラックを前に構える。

 

「……なんだその顔は。コッコロ達を上手く逃がしたとでも思っているのか?」

 

「えっ……!?」

 

次の瞬間、ブラックは目に見えない程のスピードで距離を詰めシェフィの腹部を蹴り飛ばす。

 

「うわああああああ!!!」

 

「シェフィちゃん!?」

 

シェフィは数メートル程吹き飛ばされその場に倒れ込んだ。

 

「何を企もうが私の前では無力。私はもっと強くなる……!!」

 

ブラックは倒れているシェフィに追い討ちを仕掛ける。

 

「やめて……シェフィちゃんを放して!!」

 

ユイは攻撃魔法を放つがブラックにはまるで効いていない。

 

「そ、そんな……!!」

 

「ジャマだ。」

 

ブラックは目力だけでユイを吹き飛ばす。

 

「きゃあっ……!!」

 

「ユイさん!!」

 

「往生際が悪いな。 」

 

しかし、吹き飛ばされてもなお、シェフィとユイは立ち上がった。

 

「うぅ……。」

 

「くっ……。」

 

「理解できんな。なぜそうも醜く抗う。お前たちに希望などないのだぞ……?」

 

「希望は今も繋がっているわ……。」

 

「わたしも、騎士クンを救うためならなんだってする……!」

 

シェフィとユイは力強く答える。

 

「くだらん…どんな大義があるかと戯れに聞いてみれば単なる意地か…。」

 

「私は……絶対に諦めない!」

 

シェフィがブラックに向かって飛び出す。

 

「そんな単調な攻撃が当たるとでも……!?」

 

その瞬間、ユイが魔法を唱える。

 

「お願い!当たって!!」

 

するとユイを中心に眩しい光が広がりブラックの視界を潰した。

 

「なに……!?」

 

「……はぁ!!」

 

シェフィの攻撃はブラックの顔に当たる直前、ギリギリで腕でのガードが間に合い致命傷には至らなかった。

 

「くっ……!」

 

「ほう……これは少々驚いた…なかなかの連携だ。」

 

ブラックは左手に切り傷を少し負った程度だった。

 

「そんな……。」

 

そこでブラックは手を下ろす。

 

「な、なんのつもり!?」

 

「……そうか、お前たちがユウキの新たな仲間……か。」

 

「あなた、彼のことを知っているの……?確かに私は美食殿に所属したのは最近だけど……。」

 

「わ、私は結構前から騎士クンとは繋がりがあります……!」

 

「……おもしろい、今日は見逃してやろう。」

 

「えっ!?」

 

「お前達はまだまだ強くなるようだ。もっと強くなって、私を楽しませろ……!その時は正面から全てを叩き潰してやろう。」

 

「ちょ、ちょっと!!」

 

「ま、待って……!!なんで私たちにソルオーブをくれたの!?」

 

「……さあな、単なる暇つぶしだ。そもそもソルオーブなんぞに興味がない。」

 

「えっ!?」

 

「……どうした、私に時間を割いていいのか?早く行け。」

 

「え、えぇっと……ありがとうございます……?」

 

「最後に一つ質問してもいいかしら?」

 

「ん……?」

 

「あなたは……本当に【レイジ・レギオン】の仲間なの?」

 

「……さぁ、どうかな?」

 

ブラックは景色の中に溶け込むように消えていった。

 

「なんか、悪い人には見えなかったけど……。」

 

「そうね。それに、あの人手加減してくれたみたい……。」

 

「え?シェフィちゃん……さっき、思い切りお腹を蹴られてたけど大丈夫なの……?」

 

「私も驚いてるけど、何ともないわ。それより早くコッコロさん達の方に戻らないと……!」

 

「う、うん!そうだね!」

 

ユイとシェフィは急いで宿に戻る。

 

「こ、これは……どういう状況なのかしら……。」

 

「あ、あわわわ……みんな騎士クンにくっついてる……!?」

 

どうやらミツキの魔法によってコッコロ達はユウキの夢に侵入しているらしい。

 

「夢の中に……みんな行っているのよね。」

 

「うん……そうみたい。私達もくっつけば……行けるのかな?」

 

「……迷っている時間はないわ。私達も取り敢えず彼にくっつきましょう。」

 

「うん……騎士クン、隣ごめんね。」

 

シェフィとユイも無事にユウキの夢の中に入れたようだ。

 

 

 

ユウキの夢の中

 

 

【レイジ・レギオン】のランファとミソラはユウキの夢の中にいた。

 

「ここは……あなたの、夢の中よ。」

 

「夢……?」

 

「はい☆そして、夢から覚めた時には……ふふっ。騎士さんは、わたしたちのオトモダチですよー♪」

 

「安心して……怖いことは、なんにもしないから……。」

 

「それじゃあ、わたしたちといーっぱい仲良くしましょうね♪きーしさん♪つんつーん♪」

 

ミソラがユウキのほっぺをつっつく。

 

「……ぅ……。」

 

「ど、どう……?ミソラちゃん。催眠術……うまくいっているかしら……?」

 

「うーん、どうでしょー?ランファさんもつんつんしてみてください♪」

 

「えっ?ええ……つ、つん……?」

 

「ぅ、ぅ……」

 

「ほーら騎士さん、敵に囲まれちゃってますよぉ?逃げなくていいんですかぁ?つんつーん☆」

 

「……。」

 

ユウキはじっとしていて動かない。

 

「とっても、大人しいわ……いい子ね……。」

 

「ふふっ☆すっかり抵抗心がなくなっちゃったみたいです。いーカンジですね♪」

 

「……。」

 

「じゃあまずは、騎士さんとオトモダチになるためにランファさんにひざまくらでもしてもらいましょう☆」

 

「ひ、ひざまくらっ……?私が彼を……?」

 

「だいじょーぶだいじょーぶ!ランファさんのお膝なら、寝心地良いに決まってますって♪ささ、どーんといってみましょう☆」

 

「そ、それじゃあ……。」

 

ランファはユウキを寝かせひざまくらをする。

 

「……はぅ……。」

 

ミソラ「ラ、ランファさんー?そんなおひざのはじっこじゃ、騎士さんの頭が落っこちちゃいますよ?もっと、しっかりひざまくらしてあげなくちゃ……。」

 

「で、でも……。あっ……!」

 

ミソラの言う通りユウキの頭がひざから落ちて地面にぶつけた。

 

「あー、やっぱり。」

 

「ご、ごめんなさいっ……大丈夫?」

 

「……あーあーっとにくだらねー。見てらんねーなー。」

 

「ぷるぷる!!」

 

するとカリザのペットである『キイロ』がでてきた。

 

「あん?なんだ、キイロじゃねーか。ちょーどイイヤ、テメーを潰してヒマ潰しを……。」

 

ここでカリザはあることに気付く。

 

「って待てよ。ここはプリンセスナイトの夢の世界だっつーのに、なんでテメーが?アカやアオのヤツはいねーのかよ?」

 

「ぷるぷる……?」

 

「んー?この子だけ、ユイさんみたく紛れ込んじゃったんでしょうかねー?」

 

「オレが知るかよ。つかランファとプリンセスナイトはほったらかしでいいのかよ。」

 

「はい♪ランファさん、いま頑張ってひざまくらの練習中なので☆」

 

「もうちょっと……もうちょっと……彼の頭を手前に……ああっ……!」

 

ランファはまたしてもユウキの頭をひざから落とす。これで何度目だろうか。

 

ユウキはぼんやりとした頭の中で、ある1つの言葉を思い出す。

 

 

 

お前がこの世界を救うためにはもっと力をつけなければな……。

 

 

 

ブラックの言葉だった。

 

「……ゴクウ……。」

 

「あれー?」

 

「どう、したの……?ミソラちゃん。」

 

「へっ!とうとう頭をぶつけすぎておかしくなっちまったか?って……なんだこれ!?」

 

その時、ユウキの体が銀色のオーラに包まれる。

 

「え……?彼の身体が光って……!?」

 

「これは、予想外ですね……。」

 

「……これって……!」

 

ユウキは立ち上がりランファのひざまくらから解放される。

 

「はぁ!?プリンセスナイトが強くなったって言うのか!?」

 

「そうですねー、プリンセスナイトの力が『限界突破』しちゃった感じですねー。どうして突然そうなったのかは分からないですけど。」

 

「…………。」

 

「そこまでです!【レイジ・レギオン】!」

 

と、そこへコッコロ達も駆けつける。

 

「間に合ってよかったわ……ってユウキ!?あんた、どうしたの!?なんか凄いことになってるけど……!」

 

「主さま!?いつの間にそのような力を……!」

 

「騎士クン!?」

 

「……あっ……。」

 

「ちっ……。」

 

「ミソラ……先回りしていたのは、やっぱりあなただったのね。」

 

「シェフィさん、それにみなさんも☆こんなところで、奇遇ですね♪」

 

「彼の夢の中への潜入……どうにか、うまくいったみたいね。よかったわー。」

 

「ここが、ドSさんの夢の中……?つまり……ドS空間〜っ!?」

 

「というか、ここどこデスか?せっかくオーエドにいますから、夢の中もオーエドがいいデース!オーエドッ!オーエドッ!」

 

ニノンがそういうと、突然周りの景色がオーエドの街に変わる。

 

「えっ!?まわりの景色が、変わっちゃった……!」

 

「へぇ〜♪イメージの強さや思い込みが空間に影響するのかしら?私の服も、新しいのからいつものに戻っちゃってるし……夢の中ならではって感じね、面白いわ♪」

 

「ああ、もう……うるさいひとたち……。」

 

「騎士クンから、凄い力を感じる……!」

 

「はぁぁぁぁぁあ!!!」

 

ユウキが強化をすると、コッコロ達の体も今までの金色のオーラではなく銀色のオーラに包まれる。

 

「これは……!身体が信じられないほど軽く……!」

 

「凄い……ユウキ、今までよりもパワーアップしたのね……!」

 

「これが、騎士クンの新しい力……!」

 

「へっ!たかが色が変わったくらいで調子に乗ってんじゃねえっ!!」

 

カリザが鞭でコッコロ達を攻撃する。

 

「……全ての軌道がわかります!」

 

「……これなら!」

 

「うん……!」

 

「な、なんだコイツら……!前までと動きが全然違ぇぞ!!」

 

【レイジ・レギオン】は新たな力を身につけたユウキ達の前に翻弄されていた。

 

「……せっかく、彼と仲良ししてたのに……。」

 

「……ランファさま。先ほど少々、あなたが主さまをあやす手並みを拝見いたしました……。申し訳ありませんが──あのような拙い手際の方に、主さまのお世話を任せる訳には参りません!」

 

「そ、そんなっ……。」

 

「ひどーいっ!ランファさんも、頑張ってるんですよ?」

 

「と、とにかく!早く騎士クンの夢の中から出ていってもらいます!!」

 

「そうはいかないです☆せっかくの機会ですから、騎士さんはばっちりセンノーしちゃいますよっ♪」

 

「……僕は、洗脳なんてされない。」

 

「あれっ……?」

 

「……ゴクウと約束した!強くなるって。」

 

「ゴクウ……?誰ですかそれ。」

 

「わたくしたちの大切な仲間でございます……!」

 

「……仲間、ですか?まあそんな事はどうでもいいです☆さっさとセンノーしちゃいますね☆」

 

「……コッコロ、行くよ、」

 

「はい、主さま……!」

 

「!?」

 

「チェンジ・プリンセスフォーム!」

 

コッコロは銀色のオーラを纏ったままプリンセスフォームに変身した。

 

「コッコロちゃん!?」

 

「コッコロさん……凄い!あの力のままプリンセスフォームに変身するなんて…!」

 

「……これは、少しまずいですね……。」

 

ミソラも重ねがけで変身できるとは思わなかったようだ。

 

「オーロラ・サンクチュアリ……!」

 

コッコロがフィールドを展開する。

 

「主さまは取り戻しました!夢から脱出いたしましょう!」

 

「させるかぁ!!」

 

カリザは鞭で攻撃を仕掛けるがコッコロのフィールドの周りには強力なバリアがあり攻撃が通らない。

 

「なっ……!?こんなのありかよ!!クソが!!」

 

「ミツキさま!戻りましょう!」

 

「ええ、それじゃあ戻るわ!」

 

こうして精神世界はユウキが目覚めると共に消滅した。

 

「仕方ないですね……私たちも戻りましょう。」

 

「あ、せっかくなかよく……できたのに……。」

 

「くそっ!次会った時はタダじゃおかねえからな!!」

 

「あんな強化……本来なら騎士さんに出来るはずがないんですけどどういうことでしょうか……。」

 




俺もランファママに膝枕されたい


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作戦会議

がわ゛い゛い゛な゛ぁ゛か゛り゛さ゛く゛ん゛


オーエドでの出来事から何日か経ったある日、カリザは何やら機嫌が悪く自分のペットを鞭で叩いて八つ当たりをしていた。

 

「クソ!クソ!オーエドではプリンセスナイト共に逃げられ……あのロリババアにも返り討ちっ…………クッソがああーーーーッ!!」

 

どうやらオーエドから帰ってきた後、単独で変貌王妃を捕らえようとしたカリザは返り討ちにあったようだ。

 

「……カリザ。ペットへの八つ当たりは良くないと、以前言っただろう。」

 

「うっせェ!コイツら、叩こうが潰そうがすぐ戻っちまうっつったろ!」

 

「だが──」

 

「ゼーンっ!オレに指図しようとすんじゃねェ!そういうのが一番ムカつくんだよッ!子供扱いしやがって!!」

 

カリザの怒りはなかなか収まらない。そこへミソラもやってくる。

 

「カリザくん、ゼーンさんっ?ケンカしちゃダメですよぉ〜っ!」

 

「出やがったな脳みそ水アメ女が!テメーもオレに指図しようってのか、アァ!?」

 

「へっ?なんのことですか?」

 

「変貌王妃を仕留められず、気が立っているようだ。」

 

「変貌王妃……グッ……あンのドピンクロリババアがぁああッ!!」

 

「落ち着けカリザ……まだチャンスはあるだろう。」

 

「ゼーンも!ミソラも!ザマスも!腹ン中じゃブザマにやられたオレを笑ってんだろッ!なぁオイ!!」

 

「何条もって、そのようなことがあるものか。」

 

「私は寧ろ称賛したいところだ。単独で変貌王妃のアジトを特定するとは思わなかったからな。」

 

ゼーンとブラックはカリザの事をバカにせず逆に称賛した。

 

「なっ……!?」

 

「うんうん☆カリザくん、頑張ってるじゃないですか♪」

 

「二人の言う通りだ。カリザ。俺はお前に、敬意を持っている。」

 

「けっ……!?」

 

カリザはゼーンとブラック二人にそう言われ少しだけ嬉しそうな顔をした。

 

「……フ、フカシこくんじゃねーよっ!ゼーンと、ザマスがオレの、どこに敬意なんざ持ってるってワケっ……?」

 

「まずもって、非常に賢い。特に戦術面ではな。」

 

「子供扱いするなと言うが……本当にお前を年相応に扱ったのなら、その相手は痛い目を見るだろうな。」

 

「……ッ……。」

 

カリザは顔を赤くしてゼーンとブラックに続けて問う。

 

「……ほっ、……他にはっ?」

 

「さらに、その行動力の高さだ。どんな作戦でも果断に、躊躇なく実行する。」

 

「己の目的の、願いのために邁進する様は、実に素晴らしい。」

 

「翻って、俺は──迷っている。」

 

「……ああ?迷うだァ?」

 

「そうだ。お前たちも知っているだろう。俺の『願い』は──……。」

 

「……。」

 

「それは、己の欠落を。失われた自身の記憶を、取り戻すことだ。」

 

「……ほう。」

 

ブラックはゼーンの願いを初めて聞いた。

 

「俺は、一体何者なのか。何のために、この世界に来たのか。それを突き止めるための手段として……このギルドに身を寄せている。」

 

「……。」

 

「だが……その行動が正しいのか否か、と。時に迷うこともある。自分の願いを叶えるために、他の者たちを踏み台にすることが果たして本当に正しい行いと言えるのか……と。」

 

「ケッ。イイに決まってんだろンなもんよー。くだらねー遠慮なんざしてたら、そのうち自分の方がどっかの誰かの踏み台にされちまうだけだっつの。『こっち』でも『あっち』でも、同じだろーがよンなもん。」

 

「……そうだな。それは変わらぬ真意というものだろう。やはり、お前は賢い。」

 

「……ケッ!おだてたって何もでねーっつのっ!」

 

「それに。先ほどお前は、変貌王妃に敗れた己を無様だと評していたが。そうは思わない。七冠は、ひとり残らず油断ならない相手だ。現状唯一捕らえることができた『跳躍王』も、また──」

 

「謙遜すんじゃねーよ。アイツはテメーが捕まえたんだろーが。」

 

「確かに、詰みの一手を打ったのは俺だ。だが──」

 

「まだザマスがこのギルドに入る前の話だが、アゾールドが所在を掴まなければ。ランファが『ダイゴ』というプリンセスナイトを相手取らなければ。俺は跳躍王と対峙することもできなかった。」

 

「……。」

 

「そして……ミソラが、奴の権能を封じなければ。得意の空間跳躍によって、盤外へ逃げられてたことだろう。」

 

「いえいえ、わたしにはそんなことできないですよ〜。あの時も言いましたけど、アレはスポンサーさんが力を貸してくれたからこそなので☆」

 

「たしか──『エリス』っつったか。なんもねー所からこのアジトを出したりとか。跳躍王の権能を止めちまったりだとか。」

 

「……『エリス』か……。なぜ私たちの前に姿を見せないのだ?」

 

「うーん。キチンとご紹介したいのはヤマヤマなんですけど……今は無理ですねー。あっ、いぢわるとかじゃないですよ?エリスさま、とってもお寝坊さんな方なので☆」

 

「チッ。そんな寝坊助ヤローが、ほんとにアテになんのかねェ?」

 

「大丈夫ですってー♪そもそも自由に動けない方だからこそ、私たちに依頼をされてるわけですし?」

 

「そうだな。『エリス』からの信頼を得るためにもまず、我々が一人でも多くの七冠を捕らえることが必要だろう。」

 

「フン……ま、今はそういうことにしてやんよ。」

 

「はい☆アゾールドさんもまだ暫く、養生が必要みたいですし。焦らずいきましょう♪わたしも、のーんびりバカンスでもしながら獲物が掛かるのを待ちたいと思います♪」

 

「ミソラ。何か、仕掛けを?」

 

「……ふふっ♪それはですね〜?ヒミツです☆」

 

「……『エリス』か、面白くなりそうだな。」

 

 

 

数日後、【美食殿】と【トゥインクルウィッシュ】は王宮に集まっていた。

 

ユイは王宮で通信魔法を使いクリスティーナに繋ごうとしているが反応がない?

 

「どうですか、ユイちゃん?クリスティーナさんへの通信魔法は、繋がりそうですか?」

 

「うーん…………ダメみたい。」

 

「……あたしもネネカへ通信魔法しようとしてみたけど、さっぱりダメだわ。」

 

どうやらこの数日間の間にクリスティーナとネネカと連絡が取れなくなってしまったらしい。

 

「ネネカさんだけじゃなく、クリスティーナって人も?これってやっぱり……。」

 

「道すがら、コッコロから聞かせてもらったけど……本当なの?あのネネカが、誘拐されてしまったなんて。」

 

「本当みたいです。昨日はネネカさん、王宮にいたんですけど……。」

 

「護衛をしていた『マサキ』さんが、ひどい状態で見つかったわ。そしてネネカさんの方は、いくら捜しても影も形もで……。」

 

「ええっ!?マサキさん、大丈夫なのっ?」

 

「ま、どうにかねー。でも、あたしとコロ助の回復魔法だけじゃ死んでたわね、たぶんアレ。」

 

「はい。ユイさまがお力を貸してくださって、ようやくでした。」

 

「それでさっき、少しだけ意識を回復したマサキさんが言ってたの。ネネカさんが誘拐された、って……。」

 

「……驚いたな。彼女は『七冠』……指折りの実力者のはずだ。」

 

「そうだよね。それにマサキさんだっていたのに、二人ともやっつけられちゃったなんて……。」

 

「はい。私たちも本当にびっくりしてるところなんです。」

 

「マサキさまの証言では仮面をつけた女性に連れ去られたと言っておりましたが……。」

 

「仮面の女性か……それだけでは手がかりが少なすぎるな。」

 

「可能性があるとしたら……【レイジ・レギオン】の連中かしら。」

 

「王宮のまわりには、空間跳躍を妨害する結界をかけてもらっているんですけど。あの人たちならそれを破っても、不思議じゃないですね。」

 

「彼らの狙いのひとつは、七冠を捕らえることらしいので。動機の面でも、頷けますね。」

 

「……実は、地下牢の方でも兵士の人や、貴族の人たちが行方不明になっちゃったんですが……これも【レイジ・レギオン】の人たちのせいなのか、調べてもらってる最中です。」

 

「んで……どうするの?このまま、連中にやられっぱなしなワケ?」

 

「……そうですね。それじゃあ……【レイジ・レギオン】の拠点に、乗り込んじゃいますか☆」

 

「「「「はああああっ!?」」」」

 

ペコリーヌは【レイジ・レギオン】のアジトへ直接出向くという選択肢を選んだ。

 

 

一方、【レイジ・レギオン】では。

 

 

「うーんっ♪今日のごはん、とっても美味しかったですアゾールドさん♪」

 

アゾールドの怪我がようやく治り万能人形を動かすだけの余裕ができた。

 

「ほっほっほ。喜んで頂けて何よりですぞ。」

 

「へっ。ランファの作るコゲたメシよりか、人形どものメシの方が多少はマシだぁな。」

 

「はぅ……ご、ごめんなさい……人形さんたちも……ありがとう。」

 

「身体はもういいのか、アゾールド。」

 

「かなりの怪我だったが……。」

 

「ええもう、おかげさまですっかりと。十分な休養を頂きましたゆえ、腰の痛みもだいぶ改善いたしました。」

 

「ふふっ♪良かったですね、アゾールドさん☆」

 

「本当に……。」

 

「こちらこそ、本当にありがとうございました。それにどうやら、ワタクシが静養している間に随分と事態が動いたようで……。」

 

「そろそろ訊ねなくてはと思っていたが。ミソラ。」

 

「はい?なんでしょう?」

 

「変貌王妃と、誓約女君。あの二人を、お前はどうやって倒した?」

 

七冠の二人を捕らえたのはミソラだった。

 

「……。」

 

「だよなー。ったく、テメー一人で手柄立てちまいやがって。」

 

「んもう。ゼーンさんったらー。わたし一人じゃ、あの二人を倒せるわけないじゃないですか♪でもでも……うふふっ☆要は、倒さなくっても捕まえられればいいわけですから。」

 

「ほう?」

 

ブラックはミソラの行動に興味を示した。

 

「居場所を突き止めたら……こそーっと、お食事にお薬をポタッとです☆なにも力押しだけが、勝つ方法じゃないですからねー☆」

 

「なるほど……すごいわ、ミソラちゃん……。」

 

「ケッ──」

 

「ふむ、ですが……言うは易し、行うは難しではありませんかな。特に、変貌王妃のほうは……。」

 

アゾールドはあっさりとそんな作戦で七冠を捕らえたミソラを疑う。

 

「んーっ。アゾールドさん、信じてくれないんですかぁ?」

 

「信じ難い気持ちはわかるが……事実として、ミソラは両名を捕らえ。この拠点に拘束している。」

 

「……然様ですな。結果を見れば、我々の目的達成は大きく近づきました。」

 

「そ、そうよね……ミソラちゃんだけでなく……わたしたちも……がんばらなきゃ……。」

 

「アストルム内に残る七冠は残り二人。」

 

「迷宮女王と、覇瞳皇帝だな。」

 

「……ここは先に、覇瞳皇帝を取るべきだ。」

 

「ああ?なんでだよ。」

 

「変貌王妃を仕留めた以上、覇瞳皇帝を封じる結界は以前より破りやすくなっているはずだ。それに……。」

 

「……フム。現状で、覇瞳皇帝の幽閉に関わっているのが迷宮女王のみであるなら。ここで迷宮女王まで押さえた場合……。」

 

「あ……覇瞳皇帝が……結界から、出てきてしまう……かも?」

 

「ああ。その可能性は、十分にある。」

 

「チッ。ビビってんじゃねーっての。」

 

「無為な戦いをせずとも目的を達せられるなら、そうすべきだろう。ミソラのようにな。」

 

「あの時はワタクシとカリザ君、ゼーン君にザマスの4人で向かって、失敗してしまいましたからな。慎重に作戦を練らなくてはなりません。」

 

「それなら……今度は、わたしも一緒に。……ううん……みんなで一緒に行くのは、どうかしら……?」

 

「ああ?6人がかりっつーことかよ?」

 

「わぁ☆それ、とっても楽しそうですね♪」

 

「フム、ですが……捕らえた『七冠』たちを奪われぬよう、どなたかはこのアジトに残る必要があるでしょう。それに、これまでは同士討ちを避けるためなるべく単独で戦闘しておりましたが。」

 

「オーエドんときゃ、プリンセスナイトの夢ん中だったからいいけどよーランファの歌とミソラのへっぽこ射撃は乱戦になったら巻き込まれそーでこえーよなー。」

 

「えーっ、そんなことないですよぉ☆ちゃんと狙いますって♪」

 

「そんなもの当たった所でなんだというのだ。」

 

「ああ。もし背中を撃たれても我慢すればいい。」

 

「があできんのはザマスとテメーぐらいだっつーの!」

 

「う、その……みんなを、巻き込まないように……気をつけるから……ね?」

 

ここで、戦いはあまり好きではないランファが乗り気になる。

 

「……ンだよ、らしくねーなボソボソ女。テメー、戦うのはスキじゃねーだろーが。」

 

「う、うん……今回は、大きい戦いになりそうな気がして……とても、怖いけど……もし、二人の七冠を捕らえたら。このギルドも目的を、終えることになるわけだから……。」

 

「そうですねー。でも、正確には6人なので後一人ですねー。」

 

するとブラックが話を遮る。

 

「いや、今回で終わりだ。」

 

「……え?」

 

「どーいうことですか?」

 

「……この世界に七冠は5人しかいないとはいえ、来ないとも言いきれない。このギルドが解散したあと、オレは単独で探す。」

 

「ザマス……お前。」

 

「ザマスさん……わたしだけじゃなくて、みんなにも、願いを叶えてほしい……わ。そのためになら……わたし、一生懸命、頑張るから。」

 

「フフ。何やら、面映ゆいですな。……ワタクシも、譲れぬ願いはありますが……ザマス君や、みなさまの願いも是非叶えていただきたい。そう思っておりますよ。」

 

「同感だ。むしろ俺は……もし、七冠を5人までしか取れないようであるならば。願いを叶える席が、5つまでしか空かないとするならば。俺は、俺の分をお前たちに譲ることも構わないと……そう思う。」

 

「ゼーン……?」

 

「テメー、マジで言ってんのかよ?」

 

「ああ。以前言った通り、俺の願いは失った記憶を取り戻すことだが。そこには、お前たちほどの切実さは無く……それに手段のほうもまた、他にないとも限らないからだ。」

 

「ゼーンさんにザマスさんも、それはダメですって〜!!せっかくみんなで頑張ってきたんですもん、願いを叶える時はみんなで一緒に、ですよ♪」

 

「そうですな。どのみち非道を進むのならば、せめて共に歩む者のことくらいは見捨てず行きたいものです。」

 

「ケッ!どいつもこいつもオヤサシーこったなァ。本人がいらねーっつーならそれでいーだろーによ。」

 

「ええと……でも、ゼーンさんも、ザマスさんも……願いを叶えられれば……それに越したことはない、のよね……?」

 

「ああ。ならば……。」

 

「まずは覇瞳皇帝と、迷宮女王を捕らえ。そしてまたこの場で、共に食事でもするとしよう。」

 

「ええ。そのときは今日よりもさらに、腕によりをかけましょうとも。」

 

「楽しみ……。」

 

「それじゃあ、勝利のための作戦会議をしましょう♪」

 




多分次回からレギオンウォーの内容かな。ブラックがどのような立場で戦うか注目です!


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終焉をもたらす力

ブラックの厨二病ポーズすき


ペコリーヌ達は【レイジ・レギオン】のアジトを突き止め、ある孤島に飛行船を使ってやってきた。

 

「「「グオオオオオ!!!」」」

 

アジトに行くまでに強力な魔物が数多く生息していた。

 

「たぁああっ!!」

 

ペコリーヌ達は魔物を一掃しながら先へ進む。

 

「なんとか、島の端っこの浅瀬に船を降ろせたけどっ……!」

 

「はぁっ……!!」

 

「「「グオオオオオ!!」」」

 

「キャルさま……!【レイジ・レギオン】のアジトがあるのは、この島で間違いないのですね……!?」

 

「航路的には間違ってないはずよ……!周りは見渡す限り海で、他になんにもなかったでしょ!?」

 

「そこらじゅう、魔物だらけだし……木どころか、草の一本も生えてないし!こんなところ、人が住んでるとは思えないんだけどっ!?」

 

「でも、【レイジ・レギオン】の人達は空間跳躍を使えるんだし……!殺風景でも魔物でも、関係ないのかもっ……!?」

 

そして、魔物たちを一掃していると、とうとう魔物は出てこなくなった。

 

「……ふぅ。とりあえず、魔物は片付いたみたいだね。」

 

「みんな、怪我はない?」

 

「大丈夫!!」

 

「もうちょっと静かに上陸したかったですけど、こんなに魔物だらけとは思いませんでした……。」

 

「ま、そもそも空から乗り込んでる時点で隠密作戦って感じじゃなかったしね。」

 

「だが、奇襲ならばまだ成立するはずだよ。ここからは時間との勝負だ。」

 

「あっちに、島の真ん中に塔みたいなのが見えるわね。」

 

「はい。拠点があるとしたら、あの塔が一番怪しいですが……。」

 

「よーし!行きましょう、みなさん!」

 

こうしてペコリーヌ達は塔に向かって走り出した。

 

「走りながら作戦会議するわよっ!【レイジ・レギオン】の連中に遭遇したとして……連中が5人以上ならどうするんだっけ?シェフィ!」

 

「全力で逃げるわ!あいつらが勢ぞろいしてないことを、祈るしかないわね……!」

 

「彼らとて、七冠を捜してるわけだし、その可能性は高いと思うが……!」

 

「2人か3人と遭遇したときは?コロ助!」

 

「誰かが囮となって1対1をひとつ、3人の場合は1対1をふたつ作り、残った相手を、集中で攻撃いたします……!」

 

「前のときは、こっちが4人がかりでアゾールドさんってひとを倒せたもんね。ギリギリだったけど……!」

 

「じゃあ、敵が1人だけのときは?ヒヨリ!」

 

「うん……!そのときは全力で、速攻でやっつける!」

 

「敵の応援が来てしまう前に倒すことができれば、1人だけと遭遇するパターンが最善ですね……!」

 

「えっ?誰とも遭遇しない場合じゃなくて……?」

 

「はい!これまではこっちが仕掛けられてばかりで、いつも後手後手でしたけど……今回は、初めてこっちが攻撃する側ですからっ。この機会に少しでも、【レイジ・レギオン】の戦力を削ってしまいたいです!」

 

「そーね!珍しくマトモなこと言うじゃない、ペコリーヌ……!」

 

「つまり、私たちの目標は、どこかに囚われているはずのネネカさま達を捜し、救い出しつつ……。」

 

「【レイジ・レギオン】を1人でも多く倒す、ということだな……!」

 

「そう聞くと、何だかとっても大変そうだけど……!」

 

「頑張ろう!」

 

「……っ!みんな待って!」

 

すると、突然シェフィが足をとめる。

 

「シェフィちゃん?」

 

「何か、来る……正面……!」

 

「……あれは……!!」

 

ユウキ達の前から1人の男が歩いてきた。衣装は黒く、紅い仮面を被っている。

 

「「「「「「「!!!!!!!」」」」」」」

 

ユウキ達は武器を持ち構える。

 

「……あの人は……?」

 

「……【レイジ・レギオン】の、『ザマス』さん……!」

 

ブラックはゆっくりと歩いてユウキ達の前に現れる。

 

「……来たか。」

 

「……これ以上、ランドソルに手出しさせないために、貴方たちを止めにきたんです……!」

 

「……そうか。」

 

「そ、それだけですか?」

 

「……ああ。」

 

「……!他の【レイジ・レギオン】のみなさまは……!?」

 

「……ここにはいない。なぜなら……!」

 

ブラックは右手に気を溜める。

 

「「「「「「「!!!!!!!」」」」」」」

 

「私ひとりで十分だからな。」

 

ブラックはそのエネルギーをユウキ達が乗ってきた飛行船に向けて放つ。

 

「……っ!?みんな、避けろ!」

 

ユウキ達が避けると、船は爆発し、爆風が辺りに吹き付ける。

 

「あっ……船が……!!」

 

船は爆散し跡形もなく消えた。

 

「飛行船は破壊した。もう戻ることはできん。」

 

「な、なんてやつだ……!たった一撃で、ここまでとは……!」

 

「あそこから船まで、何百メートルあると思ってんのよ……!それに、あいつ……!コロ助達が言っていたように『ゴクウ』にそっくりだわ……。」

 

「しかもまだ、全然本気って感じじゃないし……!」

 

「貴方は……本当に、何者なのですか……!」

 

今のブラックの一撃でやはり只者でないことをペコリーヌ達は思い知った。

 

「どうしたその程度か……?これでは話にならんな。」

 

「……あんた、喧嘩売ってるの……!?」

 

「ああ……売っているとも……!お前達の力に興味がある……前置きはなしでいこうじゃないか……!」

 

「……舐めてんじゃないわよ!」

 

「みんな……!」

 

ユウキが覚醒したプリンセスナイトの力を使い、全員を強化し、銀色のオーラがユウキたちを包む。

 

更に……

 

「チェンジ・プリンセスフォーム!!」

 

ペコリーヌはプリンセスフォームに変身する。

 

「……キャルちゃん、まずは私が1対1で戦いたいです。」

 

ペコリーヌは1対1で戦いたいと言い出した。

 

「はあ!?何言ってんの!?」

 

「ペコリーヌさま!?」

 

「無謀だ……いくらペコリーヌでも……!」

 

「お願いします……!今の私があの人に何処まで通用するのか試したいんです……!」

 

「……分かったわよ、好きにしなさい。」

 

「ありがとうございます!キャルちゃん!」

 

そしてペコリーヌだけがブラックの前に現れた。

 

「……お前一人か?」

 

「はい、でも更にここから……!」

 

「……?」

 

「王家の装備100%です!!」

 

ペコリーヌの気が一気に膨れ上がる。

 

「ペコリーヌ……!!」

 

「今までのペコリーヌさまの比じゃありません……!」

 

「ペコリーヌちゃん……!」

 

「すっごいギラギラしてる……!」

 

極限まで強化されたペコリーヌの力に全員が驚く。

 

「これが私の全力です……!」

 

「……!」

 

ブラックもこれには驚いたようだ。

 

「……ペコリーヌ。その力……そんな次元があるのか。」

 

「やっぱりあなた、私のことを知っているんですか……?」

 

「……戦えば分かるんじゃないか?」

 

「……行きますよ……!」

 

次の瞬間、2人が消えた。いや、常人では消えたように見えるほどのスピードで2人は戦っていた。

 

「……あの男、ペコリーヌの剣をいとも容易く躱している……!」

 

「でも、少しずつペコリーヌさんのスピードが上がっていってるよ……!」

 

そして……

 

「はぁぁあ!!」

 

「っ……!」

 

初めてペコリーヌの剣がブラックを掠めた。

 

「すごいわ……ペコリーヌさん、あの人にも負けてない……!」

 

ブラックとペコリーヌは距離をとる。

 

「……凄まじい力だペコリーヌ……。」

 

「……私ひとりじゃ勝てそうにないですね。」

 

「これ程までに昂った相手は覇瞳皇帝以来だ。誇るがいい……楽しませてくれた褒美に見せてやろう……!」

 

「……今、なんて……!?」

 

「覇瞳皇帝……ですって……!?」

 

「お望みのオレの全力をな…!」

 

そしてブラックが気を溜めると同時にその凄まじい力で左の目元の仮面が砕けた。それと同時に、コッコロ達は覇瞳皇帝の時にブラックが変身した薔薇色のオーラを再び見ることとなる。

 

「そ、そんな……あなたは……!!」

 

「ふざけんじゃないわよ……あんた……!!急に死んだと思ったら今度は……!」

 

「あなたは……やはり……『ゴクウ』さま!?」

 

「……ええ!?」

 

「馬鹿な……!」

 

「この人が……!?」

 

「あの『ゴクウ』さん!?」

 

ブラックは薔薇色のオーラを爆発させながらペコリーヌ達の前に降り立った。

 

「……この気高き孤高の力……とくと味わうといい……!」

 




正体明かすのはやかったかな?


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人間0計画

シリアスなのかコメディなのかわからん


ブラックは『超サイヤ人ロゼ』となり、コッコロたちの前に現れた。

 

「……どうして、どうしてでございますか!?わたくしたちは……ゴクウさまを……!」

 

「なんでよ……あんたは私たちの仲間だったじゃない……!」

 

「ゴクウさん……どうして……!」

 

「……ゴクウ!?」

 

ペコリーヌ達は感情を露わにしてブラックに問いかける。

 

「……気安く呼ぶな、オレは『神』だ。貴様ら人間とは違う……!」

 

「か、神……!?」

 

「あなた、神さまなの!?」

 

「神なわけがあるか……!どう見たってお前は人間だ!」

 

「ゴクウ……さん?」

 

ブラックは一瞬ユイの方を見る。

 

「『ユイ』。貴様がこの世界の……。」

 

ブラックは何やら意味深な発言をユイを睨みながら発する。

 

「え?」

 

「ちょっと……何処見てんのよ!あんたは一発ぶん殴ってやんないと気が済まないわ!ごちゃごちゃ言ってないでかかってきなさいよ……!」

 

「キャルちゃん……!?」

 

キャルはブラックを挑発する。

 

「『かかってこい』はこちらの台詞だ。お前が挑む側だということを忘れるなよ人間……!」

 

「……いちいち細かいわね!そこまでいうならあんたのその仮面ひっぺがしてやるわ!」

 

「来い……!!お前はいい味の前菜になりそうだ……!!」

 

「……いこう!みんな……!!」

 

ユウキがプリンセスナイトの力で全員を強化した。

 

「「「はああああっっ!!!!」」」

 

最初に飛び出して行ったのはペコリーヌとレイとシェフィだった。

 

「グロリアス・テンペスト!!」

 

「プリンセス・ストライク!!」

 

「舞斬・月下氷竜!!」

 

3人の剣士がブラックを囲い一斉に攻撃する。

 

「……コイツらッ!!」

 

ブラックは右手に気の刃を作りこれら全てを対応し、片方の腕でシェフィを掴んだ。

 

「なっ……!」

 

「小賢しい奴らめ……!」

 

「きゃああっ……!!」

 

ブラックはシェフィを蹴り飛ばし、残り二人も両腕で大きくはじき飛ばした。

 

「うわっ……!!」

 

「ぐぅぅ……!!」

 

ブラックは蹴り飛ばしたシェフィにとんでもない速さで追いつき追撃を試みるが空から二人の魔法に邪魔される。

 

「っ……!」

 

「アビスエンド・バースト!!」

 

「ディバイン・レイン!!」

 

二人の魔法がブラックに直撃する。

 

「……ハァ、ハァ……!!」

 

「ど、どうなったの?」

 

すると煙の中から紫色の光線が放たれキャルの右頬を掠めた。

 

「そんな……!!」

 

「……いい連携だ。」

 

ブラックは煙を払い除けキャルに向かって飛び出した。

 

「やばっ……!」

 

「キャルちゃん!!」

 

ブラックの蹴りはヒヨリが咄嗟にキャルを庇う。

 

「うわあああっ……!!」

 

「ヒヨリ!?」

 

ヒヨリは一撃でプリンセスフォームが解除され地上に落ちる。

 

「ヒヨリさま……今回復いたします……!」

 

「所詮はこの程度か……。」

 

「よくもヒヨリを……!!」

 

ブラックは続けて瞬間移動でレイの後ろに回り込む。

 

「消えた……!?」

 

「ここだ。」

 

「がはっ……!!」

 

ブラックは膝を振り向いたレイの腹部にくらわせる。

 

「つ、強すぎる……!私たちでは……。」

 

レイも力なくその場に倒れた。

 

「レイちゃん!?」

 

「吠えるな人間。じきに貴様もそうなる。」

 

ブラックはユイに赤黒い気功波を放つ。

 

「うわあああああ!!!!」

 

ユイは咄嗟にシールドを張るがほぼ意味をなさずに崩れた。

 

「レイさん達が……一瞬でやられてしまうなんて……!」

 

するとキャルは涙目になりながらブラックに質問をした。

 

「……あんたが生きていたのはよかったわ。でもどうして【レイジ・レギオン】に加担するの……?」

 

「生きていた……?違うな。お前たちの言う通り、この世界のオレは無様にも死んでいるのだ。」

 

「え…………?」

 

「どういうことですか……!?」

 

「じゃああんたは……!?」

 

「死んでいるって、でもあなたは……!」

 

「オレは、時の指輪を使ってこの世界にやってきた。」

 

「「「「時の指輪???」」」」

 

「……お前たち、並行世界と言う言葉を聞いたことがあるか?」

 

「並行世界!?」

 

「それって……?」

 

「オレの未来は『フュー』から聞いた。いずれ、この身体には限界がくると……!」

 

「じゃあ、あんたは……その仮面は……死ななかった世界線のゴクウって訳!?」

 

「そんな……!!」

 

「故に、時を超え、時空を渡り……この世界にたどり着いた。」

 

「……【レイジ・レギオン】の人達は、それぞれ自分の願いを叶えるために集まった人達ですよね。それじゃあ、あなたの願いってなんなんてすか!?」

 

「オレの願いはただ一つ。『人間0計画』だ。」

 

 

 

「「「「人間0計画!!??」」」」

 

 

 

「なぜ、そのような恐ろしい計画を!?」

 

「恐ろしいだと?正しい行いの間違いだろう?」

 

「人間を0にするなんて……そんなの間違ってるよ!!」

 

「全くだ……!馬鹿げている!!」

 

「ゴクウさん……!!!どうしてですか!なんでそんな酷いことを……!」

 

「まるで正義はお前たち人間にある……とでも言いたげだな……?」

 

「なんで人間を滅ぼそうとしているの!?私たち……仲間じゃない!それがあんたの正しいやり方なの!?一体なんの目的でそんなことをするのよ……!」

 

ブラックは迷うことなく即答した。

 

「……本来の美しい世界を取り戻すためだ。オレはお前たち人間の営みを数知れず見てきた……。いさかい……争い……滅び……永遠にそれを繰り返す。世界を汚し続け、愚かで醜い、それが人間だ!」

 

「そんなことないです!私たちは……!」

 

「愚かなあやまちを繰り返すだけの存在などなんの価値もない。この世界に()()()人間は不要なのだ……!」

 

「そんな……!!」

 

「私の悲願……()()()人間0計画は何人たりとも邪魔できない……!」

 

「……あなたは、『ゴクウ』さまではありません……!やはり、ミツキさまが仰ったように……あなたはゴクウさまの『クローン』なのでしょう……!?」

 

「クローン……?そうよ、あいつが人間0計画なんてするはずがないのよ。あんたは偽物……そうなんでしょう……!?」

 

「キャルちゃん……コッコロちゃん……。信じたくない気持ちは分かりますが……。」

 

ブラックは不敵な笑みを浮かべながら話す。

 

「クローン……?違うな。これは本物の『孫悟空』の……本人の身体だ。」

 

「やっぱり……ゴクウさんなの?」

 

「ああ……だが、心はこのオレ、『ザマス』の物だ。」

 

「ざ、ザマス……!?」

 

「それは、仮の名前では……!?」

 

「……本名だ。寧ろ……『孫悟空』という名前の方が仮の名前だ。」

 

「そ、そんな……!」

 

「さて……戦う気力も無くなってしまったか?」

 

その時だった。

 

「まだだ……!!」

 

「騎士クン!?」

 

「主さま……!!」

 

「逃げるんだ……!」

 

「騎士くん……!」

 

「ユウキ……!」

 

「あんた!!」

 

「ユウキくん!?」

 

ユウキが立ち上がりブラックの目の前に立つ。

 

「まだそんな力が残っていたか。さぁ、どうするユウキ。7人がかりでもかなわなかったオレに、お前1人で戦うか?」

 

「ゴクウを……救う!!」

 

ユウキの目的はブラックを元に戻すことだった。

 

「なるほど……さらなる痛みが必要というのであれば与えてやるとしよう……頭の足りぬ愚か者をさとすのも神の役目だ。」

 

「主さまっ……!!お逃げください!」

 

その時だった。

 

「そこまでです。」

 

「……ん?」

 

突如空に大穴があき、肌が薄緑色の1人の男が降りてくる。

 

「だ、だれ……?」

 

「……君に会いに来ました。『草野優衣』。」

 

そう言いながら現れたのはザマスだった。

 

「わ、私!?」

 

「あんた、誰よ……!」

 

「私は『ザマス』です。」

 

「は?」

 

「はい……?」

 

「緑色の人がザマス……?じゃあやっぱり仮面を付けてる黒い人はゴクウさん……?」

 

「オレもまた『ザマス』。」

 

「は……?」

 

「彼らが何を言っているのかさっぱり分からないのだけど……。」

 

「理解できるはずもない。人間0計画には……我々二人が必要不可欠なのだからな。」

 

「へ?」

 

「……つまり、二人は同一人物であるということか!?」

 

「えぇ!?」

 

「そうなんですか……!?」

 

ペコリーヌ達の質問には応えずザマスとブラックは会話を続ける。

 

「それよりも、随分と遅かったではないか?」

 

「そう急かすな。だが、有力な情報は取ってきた。」

 

「な、なんか2人で急に真剣な話しだしたよ?私たちどうすればいいのかな?」

 

「全くもってわからない……!」

 

「先に言っておくがザマスよ、『草野優衣』と『ユウキ』だけは殺してはならない。ターゲットは『ミソラ』だ……!」

 

「分かっているさザマス。……だから手加減して遊んでいたのだからな。」

 

「あなたは……ゴクウさまの仲間なのですか!?」

 

「仲間ではありません。『同士』といったところでしょうか。」

 

「ど、同士……?」

 

「……オレの正義を成し遂げるためには、最高の理解者が必要だった。同じ正義を持ち、同じように()()()人間の愚かしさに苦しみ、同じように理想の世界を抱く者……。」

 

「……すなわち私だ。私も同じく、()()()人間の愚かさに嘆く日々であった。」

 

「そして、この世界の神といえども……創造主の七冠は私の足元にも及ばぬ実力。」

 

「よって今、この世界で絶対的な力を持つのは、『私』と『私』。」

 

「「この二人だけだ。」」

 

「これは全て我が願い。『人間0計画』を成し遂げるため……!」

 

「人間0計画……!」

 

「御大層な名前ね……!人間を皆殺しにしたいだけじゃない!」

 

「世界は美しい……!だが()()()人間の醜さがその美しさを汚す。よって我々は……全ての()()()人間を消し去り、美しい世界を取り戻す……!」

 

「もっとも醜い者には……重い罰を与える。這い出でることすらできない、絶望と恐怖を……!!」

 

「……ゴクウさま、目を覚ましてください……!人間を消し去るなど……そんなの私たちと冒険していた時、1度たりともそのような素振りを見せなかったではありませんか!」

 

「ふざっっけんじゃないわよっ!!私が……私たちが、あんたがいなくなってからどんな気持ちで日々を過ごしてきたと思ってんのよ……!!」

 

「……。」

 

「落ち着け……別に我らは戦いに来たのではない。」

 

「はぁ!?」

 

「かつての仲間として、一つ忠告をしておこうと思ってな。」

 

「忠告……!?」

 

「……『ミソラ』には用心するんだな。」

 

「ミソラ……!?」

 

「奴は何かを企んでいる……本来であれば人間にこのような情報を渡すことはないのだが特別だ。感謝しろ。」

 

「は?ちょっあんた!!」

 

「悪いことは言わない……さっさと街に戻るんだな。今頃【レイジ・レギオン】が暴れ回っているだろう。」

 

「……どうして、私たちにその情報を!?」

 

「……私たちはお前たちの戦いの末を見届けよう。」

 

「……ふっ。」

 

そう言い残しザマスとブラックは消えた。

 

「……驚きの連続で、わたくし……くたくたでございます。」

 

ひとまずブラック達との戦闘は終わりユウキ達は一息つく。

 

「はぁ……すごい人だったわね。」

 

「……はい。」

 

「ペコリーヌ?」

 

「……ゴクウさんと久しぶりに会うことができて、嬉しかったですけど……それよりも悲しかったです。」

 

「ゴクウさまの仰っていた、『人間0計画』……それは阻止しなければなりません……!」

 

「ザマスっていう人とゴクウさんが同一人物とか、訳分からないことばかりだよ……。」

 

「……でもやっぱり、ゴクウさんは、美食殿のみんなには攻撃が優しかった気がする……。」

 

「確かに……私たちには容赦なかったけど、微かに美食殿の人達を攻撃するときに躊躇っていたような気がするね。」

 

若干だがペコリーヌ達には手加減をしているような気がした。

 

「はん!あいつがそんな事するわけないでしょ。とりあえず、ランドソルがヤバいらしいからはやく戻らないと……!そして、次アイツらが現れたら今度こそボコボコにしてやるわ!」

 

 




ザマスルーしようと思ったけど結構重要人物だからやめたお


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第四章 再誕のブラック編
絶望をもたらす者


ここら辺の話になってくると本編のシナリオをどう改変すればいいのかが分からなくなってくる。


ザマスとブラックはユウキ達との戦いの後、ランドソルから遠く離れた隠れ家で紅茶を飲んでいた。

 

「……これで、我々に楯突く人間はいなくなったということか。」

 

「いや、奴らの執念深さを侮ってはいけない。奴らはいずれ、必ずオレを止めに来るはずだ……。」

 

「……それにしても、お前ともあろうものが、随分とあの人間に肩入れしているようだな?【レイジ・レギオン】のアジトに捕縛してある七冠も奪われてしまったのではないか?」

 

「……ふっ、最早オレに七冠など必要ない。オレとお前がいれば、わざわざ七冠を捕まえてまで願いを叶える必要はないだろう?」

 

「成程。この世界がリセットされる条件もわかった今、『草野優衣』と『ユウキ』さえ死なせなければ、我々の本来の計画、『悪しき人間0計画』がついに達成されるという訳だ……。」

 

「恐らく……【レイジ・レギオン】と奴らがお互いに潰しあった後、例の『スポンサー』とやらが現れる筈だ。我々もそろそろランドソルへ出向くとしよう。」

 

「ああ。そして、『草野優衣』には……自身がどれ程重い罪を犯したのか、自覚して貰わねばな。」

 

「『草野優衣』……いや、『諸悪の根源』といったところか。神に逆らった罪、償ってもらうとしよう。」

 

 

そして、ブラックとザマスの予想通り、【レイジ・レギオン】に捕らわれていた七冠の『跳躍王(キング・リープ)』は、ペコリーヌ達によって救出され、そのまま権能を使いランドソルまで移動した。

 

ペコリーヌは最初からランドソルで戦っていた【王宮騎士団(NIGHTMARE)】と【カルミナ】のメンバーと合流した。そこにはブラックを除く【レイジ・レギオン】のメンバーが集結していたが死闘の末、ペコリーヌ達が勝利を収めた。

 

「くっ……。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「……。」

 

全員が力を使い果たし倒れる。

 

「や……!」

 

「「「「「やったあーっ!!!」」」」」

 

なんとか【レイジ・レギオン】に勝利し、全員歓喜の声をあげる。

 

「……終わったか。」

 

「危なかった……!」

 

コッコロも膝をつきその場に座り込む。

 

「……ふぅ。」

 

「はあ、キツかった……!」

 

「でも、私たちの勝利です!」

 

「……。」

 

シェフィは膝をつくゼーンを見る。

 

すると、突如ドラゴン族の女性が歩いてきた。

 

「はーいお疲れ様ー♪」

 

「っ……あ、あなたは!」

 

「うふっ、みんなよく頑張ったよー☆」

 

にこやかな顔で歩み寄ってくるホマレ。

 

そして、

 

「それじゃあトドメ、刺しちゃおっか?」

 

ホマレは杖を倒れている【レイジ・レギオン】のメンバーに向ける。

 

「ま、待って……!トドメって……!?」

 

「ふふっ。トラブルの元は根っこから絶つのが一番だよ〜シェフィちゃん♪」

 

「う……で、でも……。」

 

シェフィはなんとかホマレを止めようとする。

 

「……チ、殺るならさっさと殺れ……。」

 

「もう、抵抗する力も残ってませんしねー。」

 

「……そう、ね……。」

 

「クッ……。」

 

「……。」

 

【レイジ・レギオン】は既に諦めており抵抗する気力もない。

 

「……いいのかよボス?あのゼーンって男、ドラゴン族みたいだけど……。」

 

「ん〜素直に降参して、ウチのギルドに入ってくれれば良いんだけど……。」

 

「……断る。俺だけ命乞いなど、出来よう筈もない。」

 

ゼーンはキッパリと断る。

 

「ほらね?けんもほろろって感じだし。そもそも、この人たちってテロリストだもん。返り討ちにされても、文句は言えないはずだよ〜。【王宮騎士団(NIGHTMARE)】の人たちもそう思うよねー?」

 

「……確かに、彼らは裁かれなくてはならない。だが……。」

 

「ま、待ってくださいッスよ!戦いは終わったんじゃないんッスかっ!?」

 

「そうだね、マツリちゃん。もう動けないなら、拘束してしまえばいい。」

 

「確かにな!真那って前例もあるわけだし。悪いやつだからって始末すればいいってもんじゃないよな!」

 

この少女は『ムイミ』と言う名でこの世界の鍵を握るとラビリスタに言われている重要な人物だ。いろいろあってユウキ達の仲間になった。今は「オクトー」という男を探して旅をしている。

 

「……陛下。いかがいたしますか。」

 

「……この国の、プリンセスとしては……【レイジ・レギオン】のみなさんがしてきたことを許す訳にはいきません。人々を傷つけたりとか、街のあちこちを壊しちゃったりとか。それは、とってもひどいことですから……。」

 

「うんうん♪たっくさん被害が出ちゃったし、許す訳にはいかないよねー?」

 

「……っ……。」

 

「でも、ですね。わたしは【レイジ・レギオン】の人たちが、覇瞳皇帝ほど話が通じない相手だとは……思えないんです。」

 

「そりゃまあ、陛下を引き合いに出しちゃうとね……。」

 

「う、うんっ!きっと何か、事情があったんだと思う!」

 

「そうだね、ネネカをどこに、やったのか、聞かなくてはいけないしそこは、交渉になるかな。」

 

「わ、私も……聞きたいこと、あるわ……その、ゼーン……さんに。」

 

「……。」

 

シェフィもゼーンにどうしても聞きたいことがあった。

 

「ゼーン、さん。あなたは、私の……し、知り合いだったりしないかしら……?」

 

「あんた、それって……。」

 

「自分でも、変な質問だって分かってる。けど……あなたと同じで、私も……自分の事が、思い出せないの。」

 

「……!」

 

「……だ、だから……その、もしかしたら……って……。」

 

「シェフィさま……。」

 

「ドラゴン族同士で、記憶喪失同士……か。偶然として片付けるには、出来過ぎかもね。」

 

「かといって、偶然でないとも言いきれないだろう。だが……シェフィ、と言ったか。お前を見ていると……奇妙な気分になるのは、確かだ。理由は、分からないが……。」

 

ゼーンもシェフィの事が気になっていた。

 

「……ゼーン。」

 

「記憶を無くす前の二人は知り合いだったかも、なんだね!」

 

「シェフィさまのお知り合いかも知れないというのなら、尚更止めを刺すわけには参りませんね。」

 

「はい。それに……記憶を取り戻したいっていうゼーンさんだけじゃなくて、【レイジ・レギオン】のみなさんは、どうしても叶えたい願いがあるそうですが……内容によっては、私たちが手助け出来ることがあると思うんです。」

 

「……!」

 

「……!」

 

ペコリーヌがそういうとアゾールドとランファは驚いたような表情で顔をあげた。

 

「だから、まずは争い合うよりも先に、話し合いをしましょう。そのほうが、お互いにとってずっと良いはずですから。」

 

「ま、誰かを困らせるような願いはダメだけどねー?」

 

「……ケッ!」

 

こうして、ペコリーヌ達は和解することになった。各々が手を取り合い、握手を交わす。これで全てが終わったと思った。

 

「なんとも人間らしからぬ光景だな。」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

その時だった。突如、空に二人の人物が姿を現す。

 

「……ご、ゴクウ……!それに、ザマス!?」

 

「な、てめぇは……ザマス!!……と、誰だ!?」

 

「……無事だったか。それにその男は……。」

 

「……ザマス君と、あの男……只者じゃありませんな。」

 

空から地上を見下ろすブラック達。

 

「……ごきげんよう、人間諸君。」

 

「……『ババリ星』のような醜い争いが絶えない星もあったが……まさか、敵だった者同士が手を取り合うとは。これもまた人間といったところか。」

 

「……ゴクウさんにザマスさん!?」

 

「……。」

 

ホマレの顔から不敵な笑みが消える。密かに龍眼を使い、ブラックを見ていたのだ。以前あった時には何も見えなかったが、仮面の一部が剥がれた今のブラックを龍眼で見通すことが出来た。

 

「……!!これは……。」

 

「ふっ……。何か見えたか?それとも……これから起こる未来に絶望でもしたのか?」

 

「……そう、君は並行世界から来たのね……?そして、前の世界では覇瞳皇帝からランドソルを救った……。」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「……。」

 

「……まさか、迷宮女王が言っていた『ゴクウ』というのはお前のことか……!」

 

ゼーンはブラックの正体を見破った。

 

「……何が見えようとも、これから起きることは変えられない。大人しく滅びの運命を受け入れるのだな。」

 

「……くっ。」

 

「ボス……?どうしたんだ?」

 

「そんな顔、ボスらしくないですよ!」

 

ホマレは顔を曇らせる。

 

「……。」

 

「ざ、ザマス……さん!?」

 

ランファも突然現れたブラックに困惑した表情を見せる。

 

「……ミソラ。何をしているのだ?さっさと『スポンサー』とやらを呼んでみろ。もう準備はできてるのだろう……?」

 

「……スポンサー?」

 

「……ザマスさん、そこまでお見通しなんですね。」

 

ミソラはゆっくりと立ち上がる。

 

「……ゲームオーバーです。『ユイ』さん。」

 

「……えっ?」

 

すると、紫色の花びらが舞い上がり、空も暗くなっていく。

 

「……何か変よ……!」

 

舞い上がった花びらはやがて竜巻のように集まり、強烈な風が吹く。

 

「「「「「!?」」」」」

 

「……ほう。」

 

「……ふっ。」

 

ザマスとブラックは興味深いと言ったような顔でそれを見る。

そして、集まった花びらのなかから1人の黒い仮面をつけた女性が現れた。

 

「…………。」

 

「……あの女の人はいったい誰?」

 

「知らない奴ね。なんか、妙な仮面してるけど……。」

 

「気をつけて。あいつ、普通じゃないよ……!」

 

「信じられないほどの魔力だ。これまで、感じたことがない密度の……!」

 

「……魔力もそうだが。何故だ?私は、彼女を知っている気がする……それも、とてもはっきりと……。」

 

「な、なぁ。あいつも、【レイジ・レギオン】の一員なのか……?」

 

「し、知らねーよそんなやつ!」

 

「……ああ。」

 

「おいミソラ!誰だよそいつァ!?」

 

「……。」

 

ミソラは黙ったまま動かない。

 

「ミソラ、ちゃん……?」

 

「……気付かぬか?ソイツがお前たち【レイジ・レギオン】のスポンサー。『エリス』だ。」

 

すると痺れを切らしたブラックが正体を明かした。

 

「……!?」

 

「なっ……!?」

 

「……!!」

 

「え……!?」

 

「もう〜ザマスさんったら。ネタばらしするの早いですよ?」

 

「……その『エリス』が、なんで今になってでてくんだよ……!」

 

「…………。」

 

「エリスさまが今でてくる理由なんて、そんなのひとつしかないじゃないですかー♪」

 

「ひ、ひとつ……?」

 

「………。」

 

エリスは無言でユウキに近づく。

 

「……!!」

 

そして……。

 

「……!!」

 

「……私、だよ。騎士クン……。」

 

エリスはユウキに抱きついた。

 

「な、何をしているのですか!!」

 

それと同時にエリスの仮面が外れて地面に落ちる。

 

「え……?」

 

「……!!!」

 

エリスの素顔は、『ユイ』に限りなく似ていた。

 

「その顔……!!『ユイ』!?」

 

「似てる……この人、『ユイ』ちゃんに似てる……!」

 

「なるほど……『草野優衣』の複製か?」

 

「そのようだな。だが、存在的に言えばお前に似ているようだが。」

 

「……。」

 

次の瞬間、エリスはブラックとザマスを攻撃した。

 

「……!」

 

「!!」

 

突然の攻撃だったがブラックとザマスはこれを躱す。

 

「……。」

 

「……おのれ!神に逆らうとは……!」

 

「いいねえ……ペコリーヌ達ばかりで飽きてきたところだ。」

 

するとブラックは一気に超サイヤ人ロゼに変身した。

 

「……その姿は……!」

 

「なるほど……ザマス君の余裕はこの変身があったからですか……!」

 

「な、なんだよ……ザマス!その姿!」

 

「ピンク……。」

 

【レイジ・レギオン】はブラックの変身を初めて目にした。

 

「……これは、私も念入りに準備しないとマズイかな。」

 

「……。」

 

「陛下……!あの男、まさか!」

 

「……はい。あの人が『ゴクウ』さんです。どうやら、【レイジ・レギオン】の人たちもゴクウさんの変身は知らなかったようですね……。」

 

「……ですが、あの『エリス』という女性も今はゴクウさまを敵視しているようでございます。」

 

「……敵の敵は味方ってワケね……!」

 

ブラックは禍々しくも美しい薔薇色のオーラを身にまとう。

 

「素晴らしい……!これぞ神だ!」

 

「……いよいよだ。今日こそ、お前の息の根が止まる日だ……人間よ。」

 

 




アンケートに答えていただければ……!べ、別に票が多い方のENDにするんじゃないんだからね……!?


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絶望への反抗

ユイのメンタルブレイクな内容が含まれているのでユイ推しの方は閲覧注意です


ブラックとザマスは突如ランドソルへ現れ、人間0計画を執行しようとしていた。

 

「……いよいよだ。今日こそ、お前の息の根が止まる日だ……人間よ。」

 

ブラックは不気味な笑みを浮かべながら言った。

 

「……待て、ザマス!!俺達は全力を尽くして負けた。これ以上争う訳には行かない。俺達の負けだ。」

 

「ゼーンさん……!」

 

ペコリーヌ達に敗れたゼーンは負けを認めブラックを止めようとしたが

今のブラックにとってそんなことはどうでもいい話だ。

 

「それがどうした?今のオレに貴様らの意思など関係ない。」

 

「なんだと……!」

 

「最初から……裏切るつもりだったようですな……。」

 

アゾールドもザマスとブラックを睨む。

 

「なあ。【レイジ・レギオン】はもう用済みだろ?さっさと殺してしまえ。」

 

ザマスは早速レイジレギオンのメンバーを葬ろうとしていた。

 

「……確かにな。」

 

「……ザマス……お前!!」

 

「……!!」

 

「なっ……!」

 

「そんな……!」

 

「オレの計画によく貢献してくれたな。礼を言うよ【レイジ・レギオン】。」

 

「待ってください……!」

 

ブラックが手をかざしエネルギーを溜めるとユイがそれを止めに入った。

 

「ユイちゃん!?」

 

「ユイ……離れるんだ!!」

 

「……。」

 

「……こんなの間違っています!皆が殺されちゃうのをじっと見てるなんてできない……!これ以上好き勝手するのなら……私は戦います……!」

 

「ユイちゃん……!?」

 

「ユイ……!」

 

「ユイさん……!」

 

ユイはブラック達と戦うことを力強く宣言する。

 

「ほう……大した決意だユイ。」

 

ブラックは自分達に敵を回したユイを称賛した。

 

「そんなの……!貴方たちがやっているのは……ただの人殺しです……!!」

 

するとその言葉にブラックはニヤリと笑いユイを見下ろした。

 

「ふっ、そうかな?オレよりもお前の方が遥かに()()()()を犯しているのだ。」

 

「……え?」

 

「……!?」

 

「ユイが……罪!?」

 

「違う……!ユイはそんな事しない!」

 

みんながユイを庇うがブラックはそのまま続ける。

 

「ユイよ、オレが人間を抹殺すべきだと断じた理由のひとつがお前なのだ。」

 

「え……?」

 

「今、なんて……?」

 

「理由があのピンク……?」

 

「え……!?どういうこと……?」

 

ブラックの衝撃の発言にペコリーヌ達は困惑する。

 

「……お前が願いを叶えたことで、新たなこの世界を生んだ。これこそ、お前の罪の証。この世界を()()()()のはもう何度目だ?」

 

それはこの世界がユイの願いによって何度も再構築されたことを意味していた。

 

「……!!」

 

「……!!」

 

「…………。」

 

「知らない……何のこと……!?一体、何を言ってるの!?」

 

ユイは当然何も知らないため理解が追いつかない。だがザマスはそんなことはお構いなしに話を続けた。

 

「我々は知っている。お前は神々のタブーを人間の身でありながら犯した。」

 

「!?」

 

「……ユイ、お前は再構築される前の世界で……覇瞳皇帝(カイザー・インサイト)との闘いで死ぬはずだったユウキを救った。奴が歴史通り死んでいれば人々がこの『レジェンドオブアストルム』の世界に囚われることもなかった。」

 

「「!!」」

 

「何……何のことなの……!?私は、そんなの知らない!」

 

ユイの顔が絶望に染まっていく。

 

「だが、お前のために世界は狂い歪んでしまった。この世界を作ったのはお前なのだ……!」

 

「……!!」

 

「そんなの……!」

 

ヒヨリとレイはユイを庇おうとするが言葉が出てこなかった。

 

「この事態は全てユイ!お前が!」

 

「更に加えてお前たち人間の!」

 

「「願いを叶えたいなどという驕りが、招いたものに他ならない!!」」

 

ブラックとザマスは容赦なくユイの罪を暴露する。

 

「……!!!」

 

「「故に我ら、この世界を人間の罪から救っているのだ!」」

 

「……そんな!」

 

「そんな無茶苦茶な……!」

 

キャル達もそんなはずはないと思っていた。

 

「ユイ!お前は罪人だ!」

 

「お前の愚かな願いが……私の正義に火をつけ、『人間0計画』へと走らせた!」

 

「あ、あ……わたし、私は……!!」

 

ユイは何かを思い出したかのように震え出す。

 

「……ユイ!こんな奴の言葉なんか聞くんじゃない!」

 

「ユイちゃん……!」

 

キャルは上空にいる二人を睨みながら問う。

 

「……人間を殺して、あんたたちが言う理想の世界ってのはなに?」

 

「人間には理解できぬ。」

 

「気高く美しい世界だ。」

 

「……あ、あ……私、は……!!」

 

ユイは精神が完全に壊れてしまった。

 

「ユイ……!!」

 

「ユイちゃん!しっかり……!!」

 

「おやおや……なんと脆い精神だ。」

 

「ふっ、所詮は人間だな。」

 

「……あんた、いい加減にしなさいよ!ザマス……だっけ?あんただって『ゴクウ』の肉体がないと何も出来ないじゃない!甘ったれてんじゃないわよ!」

 

キャルはブラックの痛いところをついてしまった。

 

「……なっ……!」

 

「キャルさま……!あまり挑発してはいけません!」

 

「へっ!所詮はお前も人間の体がねェとなんも出来ねえヘタレ野郎だぜ!」

 

「なんだと……!」

 

ザマスもその言葉に苛立ちをみせる。

 

「……カリザ!あまり相手を焚きつけるな!」

 

キャルとカリザが口々にザマスとブラックに文句をいう。

 

しかし、ブラックはこれらの言葉を笑いながら一蹴した。

 

「ふ……はははは……っ!!神あっての人間…神が人間を利用するのは当然のことだ。」

 

「……なんですって!?」

 

「屁理屈言ってんじゃねえぞ!?」

 

「それをはき違え……神を『甘ったれ』呼ばわりとは……高くつくぞ!!貴様らに慈悲は不要だな……!!」

 

ブラックは自分を侮辱したキャルとカリザを睨みつける。

 

「や、やばいです……ゴクウさん達怒っちゃいましたよ!?」

 

「やっば……言いすぎた!」

 

キャルは言いすぎてしまったことを後悔した。

 

「人間が……楽に死ねると思うなよ……!」

 

「ザマス……お前はあのエリスというやつを相手しろ。オレはアイツらをいたぶらなければ気が済まん……!」

 

「いいだろう……!!」

 

ブラックはキャルとカリザと対面する。

 

「……こりゃやばいわね。」

 

「てめぇがあんなこと言うから……!」

 

「あんただってノリノリで馬鹿にしてたじゃない!」

 

「……仲間割れとは……なんと醜い。」

 

「「仲間じゃない!!」」

 

キャルとカリザは口を合わせてそう言った。

 

「……まあいい。貴様らまとめてあの世に送ってやろう。」

 

ブラックは右手から気の刃を出し、二人に迫る。

 

「インフェルノ・シールド!!」

 

するとジュンが二人を庇うように割って入る。

 

「ジュン!?」

 

「お前……!」

 

そして、

 

「はああああ!!」

 

「!?」

 

シェフィもブラックに攻撃をする。

 

「私が足止めしてる間に逃げるんだ!」

 

「あなたの好きにはさせないわ!」

 

シェフィとジュンがキャルとカリザの前に立った。

 

「……この程度ではランドソルの平和を守ることなどできんな。」

 

ブラックはシェフィの攻撃をまるで埃が付いていたかのように軽くはらい落とした。

 

「黙れ!お前は私が止める!!」

 

「……ジュン、だったか。オレを倒したいだろう?この前は無様だったからな。」

 

「私がお前を倒したいのは自分の為じゃない!ランドソルの平和の為だ!!」

 

「素晴らしいな……だが、それならばオレが人間を殺したいのも自分の為ではない。宇宙の秩序の為だからな……!」

 

するとブラックは気の刃を手に突き刺して鎌を作り出した。

 

「断罪する!!」

 

ブラックは鎌をもちシェフィへ突進した。

 

「……!!」

 

「危ない!!」

 

「……おおお!!!」

 

なんとゼーンがシェフィを庇うように前に出た。

 

「ゼーン……!?」

 

「ふっ……。」

 

するとブラックはゼーンを蹴り飛ばし鎌の斬撃を飛ばした。

 

「ぐあっ……!!」

 

すると鎌によって裂けた空間から大量のブラックのコピーのような物が現れゼーンを攻撃していった。

 

「ぐあああああ……っ!!!」

 

「あ、あぁ……ゼーン!!そんな……酷い……!」

 

シェフィはただ嬲られるゼーンを見ていることしか出来なかった。

 

「ふふふ……!神の怒り……その身に刻め!消え失せろ!!」

 

ブラックはトドメの鎌をゼーンの背中から斜めに斬り降ろした。

 

「がはっ…………ああ、理解した……。俺の願いは……俺が、守りたかったものは……ぐっ……!」

 

ゼーンは事切れる瞬間、記憶が戻った。

 

「し、しっかり……!」

 

「……無事か。シェフィ……。」

 

しかし、何とかシェフィを庇ったゼーンだったがその命は既に尽きようとしていた。

 

「……!そ……そんなっ!あなた、あなたはっ……!」

 

「……あぁ……良かっ……。」

 

「……ぁ……あ、あぁぁっ……!!」

 

 

兄さぁぁぁーーんっ!!!

 

 

ゼーンはそのまま倒れ動かなくなった。

 

「……嘘でしょ……!あのゼーンが……!?それにあのゴクウと全く同じ姿のやつはなんだったの……!?」

 

ブラックのコピーのような奴はゼーンを始末した後に消えていった。

 

「ゼーンが……!」

 

「……っ!!ゼーン君……!」

 

「ゼーンさん……!」

 

あれだけペコリーヌ達を追いつめたゼーンがあっさりと命を落としたことに全員が絶望した。

 

 

 

一方、ザマスはエリスを界王神の力の金縛りで動けなくしていた。

 

「……どうだ?神の力は便利だろう?」

 

「っ……!!」

 

「はああああ!!!」

 

「……!!」

 

ペコリーヌはザマスが金縛りをした瞬間に無防備になったザマスに剣で切りつけた。

 

「……今すぐにこんなことは止めてください!私はあなた達とは戦いたくありません。」

 

ペコリーヌの優しさなのか、剣で切りつけた傷は深くない。

 

「……。」

 

「ペコリーヌさま!ザマスの傷が……!」

 

「え……!?」

 

ザマスはペコリーヌに切られたが、その傷は一瞬で癒えてしまった。

 

「……お前たちの攻撃など意味をなさない。私は『不死身』だからな……!」

 

「不死身!?」

 

「不死身……そのようなものが……!」

 

「……困っちゃうなー。不死身なんてどうしよう……。」

 

これにはホマレもかなり困った様子だった。

 

「……不死身の私に敗北はない。諦めるのは貴様ら人間の方だ……!!」

 

ザマスとペコリーヌ達が戦いを繰り広げる中、泣きわめくシェフィの前にブラックが降りてくる。

 

「兄さん……!!」

 

「……お別れはすんだか?次はお前がそうなる……!」

 

「……兄さん……!!」

 

するとシェフィの目は赤くひかり、ドラゴンの翼がより一層の大きくなった。

 

「シェフィ……!」

 

「その姿は……!」

 

それは本来のドラゴン族の覚醒した姿だった。

 

「ほう……!!」

 

ブラックはシェフィの変化をみて少し笑った。

 

「よくも兄さんをーーーーっ!!!」

 

シェフィは怒りで覚醒しブラックに襲いかかる。

 

「はああああ!!!!」

 

シェフィは氷の剣を振る。それはブラックにはかすりもしなかったが避けた途端にシェフィの右手のパンチがブラックの腹部に直撃する。

 

「ぬお……っ……ははは!!」

 

意表を疲れたブラックは上半身が前かがみになる。しかしブラックはダメージを受けながらも笑っていた。

 

「それは囮よ……!!」

 

シェフィはそのまま殴った勢いでブラックを吹き飛ばす。

 

「………っ。」

 

ブラックは岩に打ちつけられそのまま倒れ込む。

 

「くっ……はああああ!!!!」

 

シェフィが剣を振り下ろした瞬間、ブラックはシェフィの腕を掴んだ。

 

「……ふ。」

 

「……あっ……!!」

 

ブラックは静かに笑うと片方の手で気弾を作りシェフィに向けて放った。

 

「うわああああああっ!!!!」

 

「シェフィ!!」

 

「……!!シェフィさま!!」

 

シェフィは気を失い地面に倒れてしまった。

 

「……その程度の怒りでは……オレを満足させることはできんぞ?」

 

ブラックはシェフィへの興味が薄れるとまたキャル達の前に立った。

 

「エリスさま……?『お友達』は呼ばなくていいんですか?」

 

ミソラは仲間を呼ぶことをエリスに提案する。しかし、エリスは顔を曇らせて言った。

 

「……呼べない。なぜだかわからないけど、呼び出せない。」

 

「……えぇ!?」

 

エリスは仲間を呼ぼうと試みていたが何故か呼び出せなかった。

 

「当然だ。人間0計画にぬかりなどない。貴様の仲間は予め排除しておいた。」

 

「………!!」

 

「どうやって……!!」

 

「どうやって……だと?私は随分と前から貴様を偵察していたからな。お前がエリスの下へ行くたびに私も一緒について行っていたのだ。その時に、貴様らの周りを彷徨いているハエ共は排除した。まあ、黒い天使のような奴らはどこかへ行ってしまったがな。」

 

ザマスは異空間から排除したエリスの仲間を全て出した。

 

「……これは!!」

 

「……七冠まで……!!」

 

そこに混じって七冠のネネカやクリスティーナも仮面をつけた状態で気を失っていた。

 

「……我らの人間0計画は完璧だ。」

 

「理想郷の完成まであと僅か……。」

 

 

「「お前たち人間の生き残る未来はない!!」」

 




アンケートが結構僅差だな……これはどちらのENDにしても構わないということか!


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容赦なき断罪

あけおめです!


「どうすればいいのよ……!」

 

「このままでは……!」

 

「……まだ、誰かがいますぞ……。」

 

その言葉に全員がブラックとザマスに目を向ける。するとブラックとザマスの他に黒いフードを被った白髪の男が姿を現した。

 

「……『ミロク』さん!?」

 

「……ミロク……。」

 

ミロクという男が現れた。

 

「……此奴は『ミロク』。この男は外の世界から……我らの理想に感銘を受け、助力しに来たのだ。」

 

どうやらザマスの手下らしい。

 

「ミソラとエリスは好きにして構わん。邪魔だ……何処かへ連れて行け。」

 

「……承知しました。我が主。」

 

「ちょ、やめてくださいよー!!」

 

「……!!」

 

ブラックがミロクに命令するとエリスとミソラを連れ、静かにその姿を消した。

 

「あいつは一体……!!」

 

キャル達も何が起こったのかよく分かっていなかった。

 

「……我が崇高なる計画に人間を加えるなど……なんたる妥協!」

 

ブラックはミロクのことを良くは思っていないらしい。

 

「……まあ良いではないか。その労を労い、神の手となり足となって……人間0計画を遂行する栄誉を与えてやろうでは無いか。」

 

「……ふん。我ら二人で十分だがな。」

 

「……エリスもいなくなっちゃった……。私たちだけでどうすれば……!」

 

ミソラとエリスが消えたことにより、キャル達はザマスとブラックの圧倒的な強さによって絶望の淵にいた。

 

だがその時、突如ペコリーヌとキャルの足場が沈みはじめた。

 

「え!?」

 

「これって!?」

 

「キャルさま……!ペコリーヌさま……!!」

 

「どういう事だ!?」

 

「これは……『ラビリスタ』!!」

 

これの正体はラビリスタだった。

 

「ごめんね!!ちょっとペコリーヌちゃんとキャルちゃんは借りてく!少しの間でいいから時間を稼いでもらえないかな?」

 

ラビリスタは残されたコッコロ達に時間を稼いでほしいと伝えた。

 

「ラビリスタさま……何か考えがあるのですね……!わかりました!!主さま!強化をお願い致します!」

 

「……うん!!」

 

ユウキは全員をプリンセスナイトの力で強化した。

 

「……今更二人を助けだした所でなんだというのだ。」

 

「まったく……人間というのは諦めが悪い……。」

 

「やれるだけのことはやってやる……!」

 

「うん……このまま終わるなんて嫌だしね……!!」

 

「よーし……私も頑張っちゃうぞ〜!」

 

「ボス!?正気ですか!?」

 

「へへっ!こりゃ暴れるしかねえだろ!」

 

皆がペコリーヌとキャルを信じて力を高める。

 

「ほう……抵抗するようだな。」

 

「いいとも……神の慈悲だ。抵抗を許そう……。自分の意思で何かをするのは人生で最後になるだろうからな……!ははは!!」

 

ブラックとザマスはそれを迎え撃つように構えた。

 

一方、キャルとペコリーヌはラビリスタが作った空間の中にいた。

 

「急に呼び出してごめんね。でも、ゴクウを倒すには……これしか方法がないんだ。」

 

「方法なんてあるの!?」

 

「ゴクウさん、すごく強いですけど……。」

 

「うん。方法は単純だよ。君たちが強くなること。」

 

「強くなる……って、アイツら今でも暴れているのにこんな短時間で強くなれるわけないじゃない!」

 

「……ここの空間は特殊でね。向こうとは時間の流れが違うんだ。大体……あっちの数分がこっちは数日になる。」

 

「「数日!??」」

 

「ほんとはこんな空間データ上にはないんだけどね。無理やり作ったんだ。」

 

「数日って……!」

 

「あ、でも安心してね。歳はとらないよ。君たちの生身がこの空間にいる訳じゃないから。君たちの精神をこの世界に呼んでるんだ。」

 

「そ、そんなこと出来たんですね……。」

 

「君たちの身体は安全な所で寝てるから大丈夫。そして、この空間から出たらその精神は身体とひとつになって強くなってるはずだよ。」

 

「……数日かー……。」

 

「……少年が死んでしまえば世界はまた再構築される。また次の機会に備えるってのもあるけど……わたしは……。」

 

「やってみせます……必ずゴクウさんを救います!」

 

「そうね。ユウキをみすみす殺させはしないわ!」

 

「……!!ありがとう。じゃあ早速、この空間に『ゴクウ』を呼び出そう。」

 

「は?」

 

「え?」

 

キャルとペコリーヌは気の抜けたような声をだす。

 

「あー……ごめん。説明してなかったね。言えばこの空間は夢みたいなものだから……言ってしまえば自分の記憶にある人物を呼び出せるんだ。だから死んでしまう前の君たちの中にあるゴクウの記憶をここに呼び出すってわけ。」

 

「は、はあ……。」

 

「ゴクウさんの記憶を……。」

 

キャルとペコリーヌはゴクウをイメージする。

 

すると仮面をつけてない頃のゴクウがこの空間に姿を現した。

 

「……。」

 

「ゴクウさん!私たちを強くしてください!!今、貴方の並行世界の人が……ランドソルを襲っているんです……!!」

 

「お願い!!みんなを助けたいの……!あんたなら私たちを強くできるのよね……!」

 

「……お前たちの置かれている状況は理解した。なにせ今の私はお前たちの記憶が呼んだ幻影だからな。」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ああ。……今のお前たちは不死身のザマスと……仮面をつけた私に手こずっているらしいな。」

 

「……そ、そうよ……あんたが敵になってザマスとか言うやつと人間0計画とかやろうとしてて大変なんかだら!」

 

「……アドバイスをしてやる。まず、ペコリーヌ……ザマスは不死身だが所詮はシャドウだ。回復にも限度がある。お前はザマスを斬る時に力を抜いている。一撃一撃に力を込めろ。奴はそのうち回復が追いつかなくなり消滅するはずだ。」

 

「……!!そ、そうだったんですか!?分かりました……やってみせます!」

 

「……次にキャル。お前の戦闘力も以前に比べて格段に強くなっている……だが、まだ先がある。今からお前たちに強くなるための儀式を行う。」

 

「「儀式??」」

 

「『潜在能力解放』の儀式だ。お前たちに眠る力を呼び覚ましてやる。」

 

「私たちの力!?」

 

ペコリーヌは一瞬驚いたが直ぐに顔を元に戻す。

 

「……お願いします!ゴクウさん!」

 

「やってやるわ!!」

 

ペコリーヌとキャルも覚悟を決めた。

 

「いいだろう……。動くなよ?今から始める…。」

 

「……!!」

 

「……!!」

 

「フンフンフーーーン♪」

 

するとブラックは変な儀式をはじめた。

 

「……ぶ……。」

 

「キャ、キャルちゃん……!」

 

キャルはブラックの予想外の行動に吹き出しそうになっていた。

 

「フフーンフーーン♪」

 

「あっははははは!!!あんたなにしてんの!!!?笑いがとまらないわ!!」

 

「キャルちゃん!?」

 

「やる気あるのかきさま……!!さっさと元の位置にもどるのだ!!」

 

「ぷっ……わ、わかったわよ……!」

 

こうしてブラックの潜在能力解放の儀式が始まった。

 

 




今年の目標は失踪しないことです()


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進化する不死身の肉体

強い(確信)


 

「はああああ!!」

 

「とりゃああああ!!」

 

「たあああああっ!!」

 

レイ達は時間稼ぎの為ブラックとザマスを相手に戦っていた。

 

「ククッ……無駄なことを。」

 

「貴様らが束になった所で私たちには勝てぬ。」

 

ブラックとザマスはこれらの猛攻をいとも簡単に防ぐ。

 

まだペコリーヌ達がいなくなってから30秒も経っていないが、レイ達の反抗する力はもう殆どなくなっていた。

 

ザマスとブラックは地上に降りる。

 

「終わりだな。人間……!」

 

「つまらんな。話にならん。」

 

「くっ……!!ここまでなのか……!」

 

「もう……私、動けないよ……。」

 

「とうに身体は限界を迎えております……。」

 

「……ちくしょう……!!」

 

「これ程の力とは……。」

 

「……もう、ダメ……だわ。」

 

「……くそっ!オクトーを探さなきゃいけないってのに……こんなの……!」

 

「嘘だろ……あいつ強すぎだろ……。」

 

「ボスでさえ歯がたたないなんて聞いてないですよ……。」

 

「……私に出来ることは……このくらいかな。でも、最後に()()は……セットできた……。」

 

全員が地面に倒れ伏していた。

 

「何を企んでいたのかは知らないが実行出来ねば意味を成さん。」

 

「もう貴様らに用はない。消えるがいい……!」

 

ブラックがトドメを刺そうとしたその時だった。

 

「お待ちなさい!!」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

一人の女性がブラックとザマスの前に現れた。

 

「……く、『クレジッタ』さま!?とっくに逃げた筈では……!?」

 

なんとその場に現れたのは『クレジッタ』だった。

 

「陛下を見捨てて逃げられる訳ありません!!秘書1号は逃がしておきましたけれど……。」

 

「……なんの用だ?人間……神の歩みを阻むとは……。」

 

ブラックは圧倒的なプレッシャーを放ちながらクレジッタを睨みつける。

 

「……い、いい加減にしなさい!!この……『大マヌケ』!!!」

 

「「「「「「「「「はあ!?」」」」」」」」」

 

「な……っ!?なにぃ!?」

 

ザマスも突然の暴言に驚いた。

 

「下劣な……!逃げ出した分際で今更どういうつもりだ?気でも触れたのか?」

 

「に……逃げた訳ではありませんわ……!!このクレジッタ・キャッシュが陛下の代わりにあなた方をぶっ飛ばしてさしあげます!!」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「……ふん……ゴミが。何を言い出すかと思えば……格の違いがわからぬようだ……。」

 

「格の違いが分からないのはそちらのほうでなくて……?」

 

クレジッタは一歩も引かずにザマスに楯突いた。

 

「……ほう……?」

 

「私は陛下に忠誠を誓っている以上……陛下のご友人を見捨てることなんてできませんわ。それに……こんな若い子達が戦っているというのに……私が逃げる訳にはいきません!」

 

「「「「「「「「!!」」」」」」」」

 

「クレジッタ……。」

 

「クレジッタさん……。」

 

「……だから……私の陛下の存在を脅かすような!『神を騙る悪党』を絶対に許しませんわ!!」

 

「「!!」」

 

クレジッタは自分の意見を貫き通した。

 

「へぇ〜……凄いな、あの人……こんなに堂々と、真正面からあんな意見をいうなんて……見直しちゃった……。」

 

ブラックとザマスはそのクレジッタの言葉を聞いて少し動揺した。

 

「『神を騙る悪党』か……くっくっく……!こやつの弁ではどうやら我らは神ではないらしい……。」

 

「……きさま……!そんなに我らの神経を逆なでして早死にしたいか……!」

 

「………ひっ……!」

 

「この無礼者がっ……!!」

 

ザマスが手をあげようとしたその時だった。

 

「「!?」」

 

突如目の前からクレジッタの姿が消えた。

 

「……消えた……!?」

 

何故突然消えたのか……その答えは直ぐに分かった。

 

「時間を稼いでくれて……ありがとうございました……!クレジッタさん!」

 

「見直したわよクレジッタ……後は任せなさい。」

 

「……なっ!!」

 

ペコリーヌとキャルが一瞬でクレジッタを避難させていた。

 

「し、信じられない……!あれがペコリーヌとキャルか……!?」

 

「すごい……!何をしたのか分からないくらい速かったよ……!」

 

「先程よりも……とてつもなく強くなっています……!」

 

コッコロ達でもその速さを捉えることができなかった。

 

「わ、私……生きてる……!?」

 

クレジッタは自分の身が無事であることにホッとした。

 

「貴様……!ペコリーヌ!!」

 

「キャル……!」

 

「……クレジッタが作った数十秒の時間……それが無ければ……私たちはこの場に来れてなかったわ……。」

 

明らかにさっきまでのキャルとは雰囲気が違かった。

 

「ありえん……!この短時間で……!」

 

「……性懲りもなく……しつこい連中だ。だが……無駄な足掻きだ。」

 

「……やってみれば分かります……!」

 

「……やられる覚悟はできてるんでしょうね……!!」

 

その言葉にザマスとブラックは苛立ちをみせた。

 

「……覚悟……?」

 

「……覚悟…………覚悟か……ふふふ……!」

 

ザマスとブラックは笑い出す。

 

「誰が……誰が人間ごときに覚悟を決めるというのだ……!!」

 

「……!」

 

「くくくくくっ……!まったく……!!思いあがるのもいい加減にするがいいっ!!どこまでオレを怒らせれば気が済むのだ!」

 

「……!」

 

「オレには前と同じに見えるが……何か変わったのか?キャル……。」

 

「ふん。やっとアンタをボコボコにできるわ。」

 

「威勢がいいな。新しい変身でも見つけたか?」

 

「……どうでしょうね。」

 

「いいだろう……見せてみろ。どんな変身もこのオレに勝てるとは思えんがな!」

 

「……はっ!!」

 

するとキャルはプリンセスフォームにはならずにそのままの状態で銀色のオーラを身に纏う。

 

「……。」

 

「何をしているんだ貴様……!」

 

「分かったのよ。アンタを倒すにはこれが必要だってね。」

 

「ははは……!絶望のあまり血迷ったかキャル。今更その姿で何ができる?」

 

「……。」

 

「魔法使いのお前が……このオレに勝てるか……!!」

 

ブラックは近距離に持ちこみキャルを攻撃しようとした。

 

「がはっ……!!な、何だと!?」

 

しかし、ブラックの拳はキャルを捕らえることができず、逆にキャルの拳がブラックの鳩尾にめりこんでいた。

 

「……どういう事だ!お前は肉弾戦には向かない魔法使いの筈だ……!なぜ、これ程の攻撃が……!」

 

「……()()()に教えて貰ったのよ!」

 

「……ふざけた事を……ぐっぐああ……!!」

 

そしてキャルは続けざまに左手でブラックの顔面を思い切り殴った。

 

「あ……か、仮面が……!!」

 

キャルの攻撃でブラックの仮面に大きなヒビが入った。

 

「……アンタ……その仮面に自我を奪われているのよ。」

 

「こんな……こんな事があるものか……!!」

 

「本当のアンタは……人間0計画なんて絶対にやらない。」

 

「違う!!オレの望みは人間を滅ぼすことだ!!」

 

ブラックは大きく取り乱した。

 

「……そんな仮面如きに……支配されてんじゃないわよ!!」

 

「……なっ!!」

 

そしてキャルは拳を固めブラックの顔面を殴った。

 

パキィンッ……

 

「うわああああああ!!!!」

 

ブラックの仮面は額の部分以外が全て砕けた。

 

「……仮面を壊しても……あんたの自我を戻すにはかなりの時間がかかるのね。」

 

「……か、仮面の力が……!!」

 

 

一方、ペコリーヌもザマスと戦っていた。

幻影のブラックに潜在能力を解放してもらい、ザマスを圧倒していた。

 

「はああああ!!」

 

「ぐぅ……!!効かないな……。私がダメージを受けることはない!!」

 

「本当にそうですか……?」

 

「……うぐっ!!」

 

ペコリーヌがザマスに疑問を投げかける。するとザマスはそれに気づいて焦り始めた。

 

「傷が……!!」

 

ザマスの傷は完全には直っておらず所々痣のようになっていた。

 

「……ゴクウさん、アドバイスありがとうございます……!私は……ザマスを倒します!!」

 

「……図に乗るなよ人間!!我々の計画は完璧なんだ……!失敗は許されないいっ!!」

 

「はっ!!」

 

ザマスはペコリーヌの後ろに回り込むがペコリーヌはそれを感知しザマスを蹴りで吹き飛ばした。

 

「ぐあああああ!!!」

 

吹き飛ばされたザマスにペコリーヌが追いつく。

 

「……これでおしまいです!!プリンセスストライク!!」

 

「くそ……こんな!こんなハズではぁ……ギャァァァァァァッ!!!」

 

ペコリーヌの一撃によりザマスはシャドウとなり消えていった。

 

「……終わったわね。」

 

キャルとペコリーヌが膝をつくブラックに歩み寄る。

 

「……ほら、とっとと元に戻りなさい!私たちが助けてあげたんだから。」

 

「ゴクウさん、帰りましょう……?」

 

全てが終わったと思い安堵したその時だった。

 

「……!ペコリーヌ!!!そいつから離れなさい!!」

 

「え……?」

 

キャルは気づいた。ブラックに膨大な気が流れ込んでいることに。

 

「こ、これって……!」

 

ペコリーヌも咄嗟に離れた。

 

「……ふふふ。」

 

ブラックは静かに立ち上がって上空をみる。

 

「「!?」」

 

キャルとペコリーヌも同じように空を見上げると、先程ブラックが切り裂いた裂け目から大量の気がブラックに流れ込んでいるのが見えた。

 

「……この時空でも、お前たちは決してオレには勝てない……!全点に集めた愚かな闘いのエネルギー……この光……!全てがオレの力だあああっ!!!うおああああっ!!!」

 

突如、ブラックの気が桁違いに膨れ上がり、額の仮面から赤色の凄まじいエネルギーが溢れ出した。

 

「ど、どうなって……!!」

 

「ゴクウさん!!何を……!!!」

 

ペコリーヌとキャルは荒ぶるブラックの気を必死に耐える。

 

そしてブラックの上半身の服は破れ、筋肉質な体になり、髪が腰の辺りまで伸びた。

 

「なによ……その姿……!」

 

「ゴクウさん……ですか!?」

 

驚いているのはペコリーヌ達だけではなく、勿論この場に居合わせたメンバー全員がペコリーヌと同じ感想を抱いた。

 

「ば、化け物か……あいつは……!」

 

「さっきまでの比じゃないよ!!」

 

レイやヒヨリ達も更に気を高めるブラックを目にし絶望する。

 

『……これがフルパワーだ。』

 

ブラックは不気味な笑みを浮かべながらペコリーヌ達の前に立ちはだかった。



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オリジナルを超えた進化形態

ペコリーヌとキャルは潜在能力を解放し、ブラックとザマスを圧倒していた。

 

「これは……なんとかなるかも知れないね……。」

 

「ああ!すごいなあいつら!」

 

誰もが圧倒的な強さのペコリーヌとキャルがこのまま終わらせると思っていた。

 

「ゴクウさん……!私たちと一緒に帰りましょう!」

 

だが現実は非情だった。

 

『……これがフルパワーだ。』

 

ブラックは自身の限界を超え、超サイヤ人ロゼをも超えた姿に変身した。

 

『……オレの強さは……ただひたすらに孤高……!』

 

「「「「「!?」」」」」

 

ブラックの存在感は凄まじく、その場にいるだけでもアストライア大陸全土には雷が降り注ぎ、ランドソルの街は火の海となっていた。

 

「っ……!!」

 

『どうだキャル、ペコリーヌ……。人間如きでは絶対に辿り着けない領域にオレは到達した。』

 

「ゴクウさん…………!」

 

「ふ……っざけんじゃないわよ!!!」

 

「キャルちゃん!!」

 

キャルは勝ち誇ったような表情のブラックに一人で突っ込んで行った。

 

「アビスエンドバーストッ!!!!!!」

 

キャルは渾身の魔力を込めてブラックに攻撃魔法を放った。

 

『……。』

 

その魔法は完全にブラックに直撃した。

 

だが……

 

『……ふっ。』

 

「!!」

 

煙が晴れると、ブラックは既にエネルギーを溜めており、それを無防備なキャルに容赦なく放った。

 

「きゃぁああっ!!!」

 

キャルはその攻撃に耐えられず建物に叩きつけられた。

 

「キャルちゃん!!!」

 

「嘘……だろ……。」

 

ペコリーヌと共に圧倒的な強さになって戻ってきたキャルがたった1発の攻撃でやられてしまった。

 

『……オレの身体は……オリジナルを超える。』

 

ブラックは両手を広げて有り余るエネルギーを全土に放った。

 

「「「うわあああっ!!」」」

 

人々は逃げ惑い、その光景は正に地獄とも言えるほどだった。

 

『ふはははははっ!!!』

 

ブラックは高らかに笑いながら人間0計画を遂行しようとしていた。

 

「やめろおおおっ!!!!」

 

するとその様子を見ていたユウキがいてもたってもいられず飛び出して行った。

 

「あるじさま!!」

 

「ユウキ!!」

 

ユウキは剣を握りしめてブラックに振りかざす。

 

『……邪魔だ。』

 

「うあああああっ!!!」

 

ブラックは事前にユウキを殺さないと決めていたので死なない程度の攻撃をし地面に叩き落とした。

 

「ユウキくん!!」

 

「あるじさま!!!」

 

『……無様だなユウキ。所詮はその程度か。』

 

「ぐっ……くっ……!」

 

ユウキはそのまま地面に倒れた。

 

『……さて、オレと闘いたいんだったなペコリーヌ。続きをやろうじゃないか。お前と闘うことで……この身体は更なる高みへと進化する。』

 

「……あなたとは闘いたくはありません……ですが!ランドソルを滅茶苦茶にして……皆を傷つけるのなら……あなたを倒します!」

 

『ほう……オレを倒すときたか……くっくっ……やってみるがいい。愚かな人間よ!』

 

ペコリーヌは剣を強く握りしめてブラックの前で構えた。

 

「行きます……!!」

 

ペコリーヌは地面を強く蹴りブラックに向かって飛び出した。

 

「プリンセス……ストライク!!!!」

 

『ふっ……。』

 

ブラックとペコリーヌの激しい闘いでランドソル全体、いや、アストライア大陸全体が巨大な揺れを起こす。人々は逃げ回り、地下に隠れている人も地上での不気味な光を見てただ事ではないと感じ取っていた。

 

「……み、見ろよあれ!!」

 

「どうなってんだ!!ランドソルの建物が殆ど倒壊してる!!」

 

「空中に浮いてる奴がいるぞ!!」

 

「あれがさっきの光の正体か!?」

 

「……神さまかなんかか!?」

 

ランドソルにいる住民はこの騒ぎに気づき外に出てくる。何か力になればと出てきた者も、何もかもを一瞬にして破壊するブラックを見て絶望していた。

 

『ペコリーヌ……その程度ではオレは倒せんぞ?』

 

「……くっ!」

 

剣を振り続けるペコリーヌだが力の差は歴然だった。ブラックはペコリーヌの剣を避けもせずにそのまま受け続けるがかすり傷すら負わない。

 

「おれ、まだ死にたくねえよ!!」

 

「あんなの人間が束になったところでどうにもなんねえよ!!」

 

「何言ってんだ俺たちがやらないと!!」

 

「お前も何を言ってるんだ!!グズグズしてると殺されちまうぞ!!」

 

軽くあしらわれるペコリーヌの姿にランドソルの住民は絶望していた。

 

 

そして、【リトルリリカル】の3人もブラックの姿を見ていた。

 

「怖いよぅ……。」

 

「あの人……前に美食殿にいた人に似てる……!!」

 

「……あれが兄ちゃん!?嘘だー!!」

 

 

【ルーセント学院】

 

「あれってゴクウっち!?」

 

「……そんなの嘘よ!あいつは……!」

 

「ゴクウくん……なの……!?」

 

 

【なかよし部】

 

「あれ……先輩……!?嘘ですよね?嘘ですよね……!?」

 

「……アイツが生きてて敵になってるなんて誰が思うんだよ。パイセン、ちょっと世界救ってきていいすか?」

 

「気は確かかねクロエくん。もはや我々の手の届く次元ではないのだ。命は大切にしたまえ。」

 

「あ?」

 

 

【自警団ーカォン】

 

「あいつ……折角生きてたと思ったら……!!」

 

「このままじゃ世界が危険やわ……!」

 

「ゴクウ助けるさー!!」

 

「ちょっ、カオリ!確かに彼を助けたいのは山々だが……。」

 

「ん?意外だな。カスミはゴクウの事を悪いやつって思ってないのか?」

 

「私なりに推理したのさ。彼は、悪い奴ではない……。」

 

「…………じゃ、助けるしかねえな!!」

 

「ちよっと……だから気が早いってえ!!」

 

 

【エリザベスパーク】

 

「あ、あの人……前に……。」

 

「オラ達を助けてくれたあんちゃんじゃねえべか!」

 

「……助けようよ……!」

 

「リンちゃん!?今助けるって言った!?あの面倒くさがりなリンちゃんが!?」

 

「それぐらいあの時の事に恩を感じてるんだべ。オラたちが行って何が出来るかは分からねえけどあの時の恩を返すのはここしかねえべ!」

 

「わ、私も行きます……!」

 

「シオリちゃんも!?じゃあ……皆で彼を助けましょう!」

 

 

逃げゆく国民とは逆に、至る所からブラックの為に各ギルドが続々とランドソルに向かっていた。




もうだめDA


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加熱する最終局面

ブラックの猛攻は続き、ペコリーヌのスタミナは段々と減らされていく。

 

「はぁ……はぁ……私も強くなったのに……ゴクウさんは……こんなにも……。」

 

『ふははは……素晴らしい力だ。私は孫悟空の肉体を完全に我がものにした……!』

 

「……こ、こんなのって……!」

 

ペコリーヌは膝をつき高らかに笑うブラックを見上げる。

 

『……安心しろ。すぐ楽にしてやる。』

 

ブラックは片手にエネルギーを溜めるとペコリーヌに向ける。

 

「くっ……!」

 

『……さらばだ。』

 

それを放とうとした瞬間……

 

『む?』

 

ペコリーヌの奥から攻撃魔法が飛んできた。

 

『……キャル。まだ生きていたか。』

 

「キャルちゃん!?」

 

先程ブラックに倒されたキャルがなんとか立ち上がりペコリーヌへの攻撃を防いだ。

 

「……はぁ、はぁ……。」

 

「キャル……ちゃん?」

 

息を切らしながら歩いてくるキャルはペコリーヌの隣に並ぶ。

 

「……諦めてんじゃないわよアホリーヌ!私たちが……アイツを助けてやらないでどうすんのよ!」

 

「……で、ですが……ゴクウさんはあんなに……!」

 

「……関係ないわよ。アイツがいくら強かろうが……いくら私たちを殺そうとしても……全部アイツの意思じゃないはず……!昔のアイツは……もっと……優しくて……かっこよくて……いつも助けてくれた……だから……!」

 

『…………。』

 

「…………そうですね。ゴクウさんは前から……助けてくれましたもんね。今度は私たちが……ゴクウさんを助けます!」

 

ペコリーヌとキャルは気を解放し最終決戦に臨んだ。

 

『……くだらん。奇跡など起こらんぞ?』

 

「いいえ、奇跡は起きます。」

 

「絶対にね……!」

 

『……馬鹿な人間共が……!』

 

ブラックはペコリーヌとキャルの諦めない姿勢に苛立ちを覚える。

 

「……私たちに限界はないわ!」

 

「……はい!フルパワーです!」

 

ペコリーヌとキャルは同時に飛び出した。

 

『……!』

 

「「はああああっ!!!」」

 

(こいつら……パワーが上がっている……!僅かな時間でここまで力を上げるとは……!)

 

ペコリーヌとキャルは息のあった連携でブラックを追い詰めていく。

 

『小賢しい奴らめ……!!』

 

「「くっ……!!」」

 

ブラックは右腕でペコリーヌとキャルを吹き飛ばした。

しかし、すぐさま体勢を立て直し再びブラックに突っ込む。

 

『なに……!?』

 

「あんたがどんなに強くても……私たちはそれを超えるだけよ!!」

 

「まだ終わりじゃありませんよ!!」

 

『ぐっ……!』

 

決定打はないが確実にブラックのスタミナは減らしていた。

 

『……人間0計画は今日!残る全ての命を消し去ることで完成する!!そして、かつて無い理想の世界が始まるのだ!』

 

「何を言ってるんですか!そんなことは絶対させません!!」

 

「調子に乗るんじゃないわよ!」

 

『!?』

 

「「はあああああああ!!!」」

 

そして……

 

『ぐあ……っ!!』

 

二人の拳がブラックの顔面にヒットした。

 

「くらいなさい!!」

 

「はあああああああ!!」

 

ブラックが体勢を倒したところに続けて連撃を叩き込む。

 

『……貴様ら……神に触れようとするその卑しい心根……それが罪なのだ!!』

 

「「!?」」

 

しかしブラックはそれぞれの攻撃を片手でとめ、逆に二人の腕に自分の力を流し込んだ。

 

「……ああああああっっ!!!!」

 

「ぐぅぅぅぅぅぅ…………!!!」

 

『神は見下ろす者……お前たちが軽々しく触れてはいけない存在なのだ……!にも関わらず、お前たちがオレにもたらした数々の屈辱……死に値する罪だ!!』

 

ブラックはペコリーヌとキャルをそのまま地上に投げ飛ばす。

 

「ぐあっ!」

 

「がはっ……!」

 

『人間0計画は最終段階に移行する……!』

 

ブラックは両の手を天に掲げると、今まで以上に巨大なエネルギーをその手に溜める。

 

「くっ……!まずいわね……。」

 

「そ、そんな……!?」

 

『……せめてもの慈悲だ。苦しませずに消し去ってやろう。』

 

その時だった。

 

「スラッシュテンペスト!!」

 

「ヒヨリバーニングラッシュ!!」

 

『……!』

 

レイとヒヨリがブラックに向けて攻撃を放った。

 

『……こいつら……!!』

 

「あ、あんたたち!」

 

「レイさんにヒヨリさん!?」

 

「二人ばかりに任せちゃダメだからね!」

 

「そうさ、ペコリーヌとキャルは一旦休むんだ!ここは私達が!」

 

『……貴様らが?オレをどうにかできるとでも?』

 

「さてね。だが、指を咥えて見てるだけだなんてごめんだからね!」

 

レイは剣を構えブラックを睨む。

 

『たった二人で何ができるというんだ?』

 

「……二人だけじゃないよ!」

 

『!?』

 

すると……

 

「天楼覇断剣!!」

 

「ドラゴンズドゥーム!!」

 

「ドラゴンズエンドフィスト!!」

 

「ドラゴンズロアー!!」

 

先程まで倒れていたメンバー全員が立ち上がりブラックに向けて攻撃を開始していた。

 

『……これは……。』

 

人数は10人……20人……それ以上。ランドソルを拠点としている全てのギルドのメンバーが集結しブラックに対し攻撃をしていた。

 

「みんなで食い止める!!」

 

「キャルさん達は休んで!!」

 

「み、みなさん……!」

 

「あんた達……!」

 

ペコリーヌとキャルは全てのギルドメンバーの決意に圧倒された。

そこから、ランドソルの冒険者たちの怒涛の攻撃が始まった。

 

『……鬱陶しい、虫ケラどもめ!』

 

ブラックは放たれる攻撃魔法を受け止めながら策を練る。ブラックは衝撃波を発生しギルドメンバー達を倒そうとするも、誰一人として倒れる者はいなかった。

 

「はああああっ!!」

 

『無駄だ。』

 

ブラックは全ての攻撃を自らの攻撃で相殺した。

 

『……いい気になるなよ人間共……!』

 

ブラックの怒りのボルテージはどんどん上がって行った。




助けてYO!


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謎に包まれた救世主

ランドソルはブラックの圧倒的な力によって崩壊の危機に陥っていた。

 

「「「「「はああああっ!!!!」」」」」

 

ランドソルにいるギルドメンバーは力を合わせてブラックを足止めしていた。

 

『……いい加減にしろ。いつまで無駄な抵抗を続けるつもりだ?』

 

「……ご、ゴクウ……!!」

 

ユウキはボロボロの身体を起き上がらせてプリンセスナイトの力を自分の身体に集約させる。光が集まりユウキの全身が眩しいオーラに包まれた。

 

『ほう……。』

 

「……僕が相手だ!!ゴクウ!!」

 

ユウキは勢いよくブラックに向かって飛びかかった。

 

『罪人が……永遠に自らの過ちに気づかぬ愚かな生命体が……!!』

 

ザマスは赤黒い無数の槍をユウキに飛ばす。だがユウキはこれらを剣でかき消しながら飛び込んできた。

 

『!!』

 

ブラックはユウキ以外の攻撃など気にもとめずにその場に立ちつくす。

 

「……僕は諦めない!!この世界は……僕が守るんだ!!」

 

ユウキが全力で剣を振り下ろす。

 

「……!!」

 

『!!』

 

だが……

 

「な、なに……っ!!」

 

ユウキの剣はブラックの指1本で止められていた。

 

『その傲慢が過ちなのだ……分からぬか!!』

 

ブラックはもう片方の手でエネルギー弾を作りユウキへ向けて放つ。

 

「うわああああああ!!」

 

「「「「ユウキ(くん)(さん)!!」」」」

 

ユウキは落下し、剣は半分折れて地面へ突き刺さった。

 

『人間共が……調子に乗るなよ?』

 

ブラックはついに本格的に動き出した。

 

「がっ……!」

 

「うわっ……!」

 

「ぐぅ……!」

 

「きゃっ……!!」

 

ブラックは自身を攻撃する人間達を一瞬で無力化した。

 

「い、今……動いたの……!?」

 

「あの一瞬で……皆が……!!」

 

『さて……半分ほど消えたか。安心しろ……この世界から人間が消えれば……美しい星に生まれ変わるのだ。悲観することは無い。じきに全てが終わるのだからな。』

 

ブラックが上空でエネルギーを放つ瞬間だった。

 

シュピン

 

『なに!?』

 

「……。」

 

ブラックは突然地面に叩き落とされた。

 

『…………何者だ。』

 

ブラックが起き上がり上空を見上げると、フードを被った女性らしいシルエットが見えた。

 

「…………。」

 

見た感じ少女のような小柄な人物だが、感じ取れる力は想定外だった。

 

『……奴らの仲間か……!』

 

ブラックはフードを被った少女に飛びかかった。

 

「はあっ……!!!!」

 

『……ぬおっ!!』

 

二人の拳が激突し、強烈な風が吹き荒れる。

 

ペコリーヌ達は突如現れたフードの女性の正体が気になっていた。

 

「あの人……何者なんですか!?」

 

「あのゴクウとまともにやりあってる……!」

 

誰もがその少女の正体がわからない。ただ、チラッとフードの中からピンク色の髪が見えた気がした。

 

「はっ!!」

 

『おのれ……!!』

 

ブラックはその攻撃に弾き飛ばされながらエネルギーを放つ。

 

「……バースト……!!」

 

「!?」

 

『!?』

 

キャルはその放たれる技に見覚えがあった。

 

「え……あの技って……!!」

 

「キャルちゃんの…………?」

 

だがその情報が完結する前に巨大な爆発音が鳴り響く。

 

『……今の技は……キャルの……?』

 

ブラックもその技に対し思うところがあった。

 

「隙ありですよ!」

 

『ぬっ……!』

 

少女はブラックの鳩尾に深く鋭い蹴りを突き刺した。

 

『がはっ……!!』

 

「…………!」

 

「「はああああっ!!」」

 

ブラックが怯んだその隙をキャルとペコリーヌは見逃さなかった。

 

『ぬおっ……!!!くっ……!!』

 

更に追撃をブラックに叩き込む。

 

「あなたの事はよく分かりませんが……助けてくれてありがとうございます!」

 

「ええ、本当に助かったわよ!!ここからは私たちも闘うわ!」

 

「……!」

 

フードの少女はその言葉を聞いて少し嬉しそうに笑った。

 

すると体勢を立て直したブラックはその3人を睨む。

 

『助け合いとは……醜いな。所詮は群れを成すことでしか生きれぬ人間め。』

 

「……そうかもしれないですけど……それも悪くないですよ。ゴクウさん!」

 

『戯言を……満身創痍の貴様らに何ができる。』

 

「そんなの関係ないって言ってるでしょ。私たちはあんたを超えるだけよ。」

 

『……プリンセスフォームの力をコントロールしたのかキャル。だが、それではオレには届かん。お前がいくら強くとも所詮は人間。この宇宙を統べるオレには決して及ばん……!全人間の滅亡をみているがいい!!』

 

ブラックは力を更に解放し3人に襲いかかる。

 

「そこのあんたも協力しなさいよね!」

 

キャルはフードの少女とコンタクトをとり、ブラックの攻撃をかわす。

 

「……オーバーロード・ストライク!!」

 

ペコリーヌはプリンセスフォームの力を燃やし威力を強化する。

 

『こんな物がオレに届くか!!』

 

ブラックはペコリーヌを仕留めようと大きく振りかぶった。

 

「そう来ると思ったわよ!いくわよ!」

 

「……はい!」

 

キャルとフードの少女はブラックの後ろに回り込み連撃を叩き込んだ。

 

『おのれぇ……!!』

 

ブラックは振り返りながら攻撃を放った。

 

「こっちよ!」

 

「……!」

 

『なんだと……!』

 

だがブラックの放った攻撃の方向にキャルたちはおらず、大きな隙を晒すことになった。

 

「オーバーロードバースト!!」

 

『ぐああっ!!!貴様ら……!!』

 

完璧なタイミングで放たれたキャルの攻撃はブラックに大ダメージを与えた。

 

「あんたと私、なんかコンビネーションバッチリじゃない?」

 

「え、えへへ……。」

 

『お、おのれ……!!!!』

ブラックが傷を抑えながら立ち上がった瞬間……

 

「今よペコリーヌ!!」

 

『!!』

 

「……全力全開!!プリンセスストライク!!!」

 

『があああああっ!!!!』

 

ブラックの不意を着いた最大威力のプリンセスストライクはブラックに直撃した。

 

『か……あ……!』

 

ブラックはそのまま地面に倒れた。

 

「や……!」

 

「「「やったああー!!!!!!」」」

 

ついにブラックを倒したキャル達に歓声が飛ぶ。

 

「よっしゃあ!!!」

 

「俺達は助かったんだあ!!!」

 

国民達もようやく闘いが終わったことにほっとしていた。

 

すると……

 

『……ユ……ウキ……!!キサマハ……ケス!!!』

 

「「「「「!?」」」」」

 

ブラックが無理やり身体を起こし、ユウキに攻撃しようとしていた。

 

「ゴクウさん……そんな……まだ……!」

 

「ま、まだ起き上がるの!?……わたし、もう力使い果たしちゃったのに…………。」

 

するとフードの少女はキャルに小さな光を与えた。

その光はキャルの全身を包み傷が癒えていく。

 

「あ、あんた……これ……!」

 

「私の気を少し分けてあげました。終わらせましょう……!」

 

「え、ええ……!!」

 

キャルとフードの少女は同時にエネルギーを溜め、それを放った。

 

「「グリムバースト!!!!」」

 

『ギギギ…………このオレが人間なんぞにいいいっ!!!!!』

 

ブラックは断末魔を上げながら消えていった。

 

「…………ゴクウ……。」

 

「………………。」

 

キャルはブラックを倒し、少し悲しそうな表情をした。

 

「…………あんたも、ありがとね。名前は…………?」

 

キャルが振り返ると先程までいたフードを被った少女は居なくなっていた。

 

「あれ?さっきまでいたのに……お礼も言えませんでしたね。」

 

「……ま、また会えるわよ。なんかそんな気がするし。」

 

皆が安心したその時、奇妙な機械音声が聞こえてきた。

 

『深刻ナエラーガハッセイシマシタ。』

 

「え?」

 

『世界ヲ再構築シマス。』

 

「「「「「はああああっ!???」」」」」

 



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永遠の記憶

ノーコメントで……。


ブラックを倒した途端、謎の電子音が世界に鳴り響く。

 

『深刻ナエラーガ発生シマシタ。深刻ナエラーガ発生シマシタ。プレイヤーノ方ハ、直チニログアウトシテクダサイ。』

 

「は!?」

 

『世界ヲ再構築シマス。世界ヲ再構築シマス。』

 

「再構築!?」

 

「そんな………!」

 

「なんで再構築なのよ!!何がいけなかったの!?」

 

「キャルちゃん!!みんなが!!」

 

「え!?」

 

周りを見渡すと、既にペコリーヌ、コッコロ、キャル、ユウキ以外の全ての人達がいなくなっていた。

 

「みんなが……いない!!」

 

すると、電子音で謎のメッセージが発せられていることに気づいた。

 

『継続不可能ナシナリオガ検出サレマシタ。継続不可能ナシナリオガ検出サレマシタ。』

 

「継続不可能なシナリオってなんの事よ!!」

 

『間モナク新タナ世界ガ構築サレマス。コノ世界ハ間モナク消滅シマス。』

 

その刹那、眩しい光がアストルムの全てを包んでいった。

 

「あっ………。」

 

「ペコリーヌさま!それに主さまも体が……!!」

 

全員の身体が光の粒子となって消えていく。

 

「みんな!!!待って!!!」

 

ユウキはコッコロ達に手を伸ばすが、その腕も消えていく。

 

『世界ノ再構築ヲ始メマス。』

 

「あんたたち!!」

 

「ユウキくん!コッコロちゃん!」

 

「ペコリーヌさま!!主さま!!」

 

「みんなーーーーーッッッ!!!!」

 

ユウキ達はこの光景を最後に消えていった。

 

「あっははは!!!すごいすごい!!いや〜今回の実験も面白かったな〜!そして、謎の介入者……ゾクゾクするな〜彼女は何者なんだろう……いやー実験ってのは本当に面白い!!やっぱり彼に仮面を渡して正解だったね……けど、継続不可能なシナリオってなんの事だろう……。こればっかりは僕もわからないけどまあ面白ければなんでもいいや。エネルギーもかなり溜まったし、いいデータが採れたよ。()()()も楽しみだな〜!」

 

何も無くなった世界に奇妙な男が一人いた。

 

 

そして、ユウキはとある場所で目を覚ます。

 

「こ、ここは?」

 

ユウキは目が覚めると、見慣れない空間に立っていた。

 

「主さま。」

 

コッコロが隣で目を擦っていることから、自分も同じ夢を見ていたのだろうかと考える。

 

(違う……僕だけじゃなかった?)

 

周りを見ると、そこには同じように立っている人がいた。

 

そして、周りには多くの人達がいた。

 

(どうしてみんなここにいるの?それにここはどこなの?)

 

多くの人たちがいたが何故か話しかけても反応はせずに全員が下を向いていた。

 

不思議だった。突如フワフワとした空間で目を覚ましコッコロと共にふらついている。

 

(……これは……なんだろう……。)

 

ユウキの下に見える光景……それは仲間達と楽しそうに冒険をしている光景だった。中にはブラックもいた。ただ、ひとつ言えるとしたら、こんな記憶はユウキの中には存在しない。誰かもわからない人たちも沢山いた。ブラックには似てるけど……陽気な感じの人、プライドが高そうな頭がツンツンした人、黒い綺麗な長髪で、優しい笑顔を向ける少女……そして、水色髪の……無表情な少女……。

 

(なんだろう……これ……。)

 

「……主さま……?」

 

上手くは言えないがその光景がユウキにとってすごく当たり前のような普通の光景に見えた。

 

(……なんか、いいなあ……。)

 

ユウキは目をそっと閉じた。

 

「……主……さま……。」

 

コッコロもユウキにつられるように目を閉じた。



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プリンセスコネクト!Re:Grow
再始動


前回までの話全てを見やすくリメイクしました!


ユウキは再び目を覚ました。

 

 

「……ここは…………?」

 

周りを見渡すと、のどかな自然の景色が広がっており、先程までの破壊され尽くしたランドソルの景色など嘘のようだった。

 

「コッコロちゃん……!!」

 

ユウキの隣にはコッコロが寝ていた。

 

「……主……さま!?」

 

ユウキの声でコッコロは目を覚ます。

 

「コッコロ、大丈夫?」

 

ユウキはコッコロに優しく声をかける。

 

「わたくしは大丈夫でございます。それにしても……ここはランドソルでございますか?………!??」

 

すると突然コッコロの顔が青ざめた。

 

「主さま…………あの時の事を覚えていらっしゃいますか?」

 

コッコロはブラックと戦った時の事をユウキに問いかける。

 

「うん……もしかして、ここが『再構築』された世界……?」

 

ユウキも薄々勘づいていた。この世界が普通の世界ではないと。

 

「……しかし、再構築された世界とはいえど……何故わたくし達の記憶も引き継がれているのでしょうか……?」

 

コッコロは一つ疑問に思っていた。何故記憶が引き継がれたままなのか。世界がリセットされたのなら自分達の記憶もリセットされなければ辻褄があわない。

 

「……謎は深まるばかりですが……それにしても主さま。その手の中にあるのはなんでございますか?」

 

「え?」

 

ユウキの手にアイテムが握ってある。ユウキは今まで気づかなかったがその手の中にある物をコッコロと見た。

 

「これは……!?」

 

「『ゴクウ』の…………。」

 

ユウキの言う『ゴクウ』とは「ゴクウブラック」のことである。再構築前の世界では共に冒険をしたが、仮面の力に洗脳されたブラックをみんなで協力してやっと倒したのだ。

 

ユウキの手の中にあった物はブラックが普段身に着けていた『ポタラ』と『時の指輪』だった。

 

「何故ゴクウさまのアイテムが……??」

 

「…………わからない。だけど……これには何か意味があるんだ。」

 

今は分からないが、いずれ使う時がくることを考え、ユウキはそのアイテムをコッコロに預けた。

 

「そういえば……ペコリーヌさまにキャルさまは……?」

 

「ペコともキャルとも会ってないよ。」

 

ユウキはこの世界ではまだコッコロ以外とは会っていない。

 

「では、まずはペコリーヌさまとキャルさまを探しに参りましょう。なんだか、懐かしい気分でございます……。」

 

「またみんなと一緒になりたいね。」

 

懐かしいような、寂しいような感じもするが、ユウキとコッコロはこの世界での最初の一歩を踏み出した。

 

 

その時だった。突如コッコロとユウキの前に隕石がぶつかったような衝撃音が起こった。

 

 

「あちゃ〜……いてて。ここ何処だぁ?『ブロリー』の奴どこいっちまったんだぁ??」

 

「クソッタレェ……!おい『カカロット』早く離れろ!」

 

 

 

謎の二人が降ってきた。

 




今度からはまたこっちで続編を書くので宜しくお願いします!


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第五章 新世界混乱編
新たな冒険


ユウキとコッコロが最初の一歩を踏み出した途端、突然二人の男が空から落ちてきた。

 

「な、何事でございますか!?」

 

「なんか降ってきた!!」

 

もちろんユウキとコッコロは驚いたが、本当に驚いたのはこの後だった。

 

「頭にくるぜ……オレたちを超えるサイヤ人がいたとはな。ん?誰だ貴様ら。」

 

「いちちち………へへっ。やっぱすげぇなブロリーは。ん?おめぇたち誰だぁ?」

 

二人の内一人はコッコロたちのよく見覚えのある人物にそっくりだった。

 

「「ゴクウ(さま)!?」」

 

「ええ!?オラのこと知ってんかぁ!?」

 

「……どういうことだ?それに……この星……地球ではないな。」

 

確かに見た目はブラックそっくりだが言葉遣いやら武道着の色やら所々違うところがある。

 

「あの……わたくし、コッコロと申します。こちらは主さまのユウキさま。失礼ですが、お二方のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

コッコロは一旦冷静になり自己紹介をした。

 

「名前か?オラ『孫悟空』だ!よろしくな!」

 

「……『ベジータ』だ。」

 

二人の名前は『孫悟空』と『ベジータ』と言った。そしてコッコロはこれは何かの偶然で片付けられるものではないと瞬時に理解した。

 

「『ゴクウ』に『ベジータ』、よろしく。」

 

「馴れ馴れしい奴だ……まあいい。」

 

「オッス!よろしくな!」

 

「……『ゴクウ』さまに『ベジータ』さまでございますね。一つお聞きしたいことがあるのですが……。」

 

するとベジータはコッコロの話を遮り前に出る。

 

「待て。まず聞きたいのはこちらの方だ。ここは何処だ?」

 

ベジータはまず自分たちが置かれた状況を確かめる。

 

「……ここはアストライア大陸でございます。」

 

「アストライア大陸……?聞いたことがない名前だ……。」

 

「なあ……ベジータ。オラ腹減っちまった。飯食わせてくれ!!」

 

今度は悟空が話に割って入ってくる。

 

「それでは……ランドソルに参りませんか?美味しい料理が沢山ありますのでご馳走いたします。」

 

「ホントか!?あんがとなコッコロ!!」

 

「街か……まあ確かにオレも腹が減った。コッコロ、ユウキ、案内しろ。」

 

「まかせて!!」

 

こうしてユウキ達は行動をともにすることとなった。

 

歩きながら移動をしている途中、悟空はコッコロ達に一つ質問をした。

 

「なあ。なんでおめぇたちオラのこと知ってたんだ?」

 

「……はい。そのことなのですが……以前、ゴクウさまにとてもよく似たお方とギルドを組んでおりまして……その方も『ゴクウ』さまというのです。」

 

「…………。」

 

ユウキはブラックのことを思い出し少し悲しい気持ちになっていた。

 

「カカロットに似た奴だと……?そいつはどんな奴だった?」

 

ベジータは一つ思い当たる節があり試しに聞いてみる。

 

「そうですね……黒色の道着を着ていて……。」

 

「……あのイカサマ野郎か……!!」

 

「もしかしてそれ……『ブラック』じゃねえのか!?」

 

ベジータとゴクウは一瞬で答えにたどり着いた。

 

「……知っているのですか!?」

 

「ゴクウを知ってるの!?」

 

2人は驚愕する。

 

「知っているも何も……奴はトランクス達の未来の世界を襲ったクソ野郎だ!!」

 

「ブラックの奴……この世界に来てたんか!」

 

二人は以前のブラックを知っているからこそ、真剣な表情になる。

 

「お待ちください!その……ゴクウさまはとてもお優しい方なのです!!」

 

「そうだよ!ゴクウは僕達を強くしてくれたんだ!」

 

コッコロとユウキは悟空とベジータがブラックを嫌っている空気に耐えられずにブラックを擁護した。

 

「や、優しい……?あのブラックがか!?」

 

「どういう意味だ。ブラックはカカロットの身体を奪って好き勝手に暴れ回ってたやつだ。優しいはずがないだろう。」

 

「……そ、それは……。」

 

コッコロは言い返せなかった。確かにブラックはこの世界で改心したとはいえ、前の世界では大罪人である。

 

「ゴクウは…………僕達を何度も助けてくれた。」

 

「なんだと?」

 

ユウキはベジータに言い返した。

 

「お前たちは本当の奴の残忍さを知らないだけだ!」

 

「それでも……ゴクウは僕たちの仲間なんだ!」

 

「…………ちっ。」

 

ベジータはこれ以上何も言わなかった。そして、その話を聞いた悟空はニヤリと笑う。

 

「……正直、おめぇ達の言うブラックが改心したっていうことは本当かどうかわかんねえ。だけんど……オラは信じるぞ!!」

 

「悟空さま……!ありがとうございます……!」

 

「ありがとう……!悟空!」

 

とりあえず、これで少しは打ち解けられたようだ。

すると、ベジータはユウキの前に立つ。

 

「……ユウキ。少しだけお前の力を見せて貰うぞ?ブラックと一緒に冒険をしていたなら、戦い慣れているはずだ。」

 

「ベジータさま!?主さまは……。」

 

「……うん。わかった!」

 

ユウキはベジータの誘いを承諾した。

 

「主さま!?」

 

「まあいいじゃねえか。ベジータも本気で戦ったりなんてしねえさ!ちょっと力みるだけだからよ。」

 

悟空もユウキの力に興味があった。

 

「さあ、何処からでもかかってこい。その剣でもなんでも使え!俺に一撃でもくらわせられたら遊園地に連れてってやる!」

 

「………どうして遊園地なのでしょうか……?」

 

コッコロは若干ベジータに引きながらもユウキの戦いを見守ることにした。

 

「はあっ!!!」

 

ユウキは特に策は練らずに真正面からベジータに飛び込む。ただ単純に飛び込んだ。

 

「ふっ……。」

 

ベジータはそれをいとも容易く交わしながらもユウキの力を分析する。

 

「……なるほど。お前は戦闘向きではないが……中々の突進力だ。そして、かわされることを想定して次の攻撃に備えている……。」

 

「……ユウキの奴やるじゃねえか!!鍛えたらとんでもねえことになりそうだな。それに、あの動作……間違いねえ。ブラックだ!」

 

ユウキの攻撃方法はブラックに似ていた。何手も先を読みながら攻撃する動きは正にブラックの攻撃の仕方そのものだった。

 

「やるじゃないか!」

 

ベジータはユウキの攻撃をかわし後ろに回り込む。

 

「は、はやい……!!」

 

ユウキはベジータのスピードに驚く。

 

「どうやら……修羅場を幾つも潜っているようだな。お前はまだまだ強くなれる。鍛錬を怠るんじゃないぞ。」

 

「主さま!!お怪我はありませんか?」

 

膝をつくユウキにコッコロが駆け寄る。

 

「コッコロ、大丈夫だよ。ベジータ……強かった……。」

 

「……当たり前だ。」

 

「すげぇじゃねえかユウキ!!あのベジータがここまで褒めるなんて滅多にねえぞ!!」

 

悟空もユウキの成長が楽しみになったようだ。

 

「……ちっ。それで……貴様らはこれからどうするつもりだ?」

 

「……わたくし達は仲間を探しに行きます。」

 

「うん!必ず悪いやつを倒す!」

 

ユウキとコッコロは強い決意を持って言った。

 

「それって……強えやついっぱいいるんか?」

 

「も、もちろんでございます。数々の苦難が待ち受けていようとも……私達は……」

 

「じゃあオラも行くぞ!!強えやつと戦えるなんて……ワクワクすんなぁ!!」

 

「よく言ったカカロット!オレ達サイヤ人に限界はない!己の強さを高めるために……そしてユウキ……ついでにお前も特訓してやる。覚悟しろよ!」

 

悟空とベジータは案外乗り気でコッコロとユウキの旅に同行することとなった。

 

「……頼もしいですね……主さま!」

 

「うん……!二人ともよろしく!」

 

「ああ!じゃあ先ずは腹ごしらえだな!街にもついたことだし食うぞ!!」

 

「オレが食い尽くしてやる!」

 

こうして、新たな冒険がスタートする前に、お金が底を尽きた。

 



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懐かしき日々

悟空とベジータの大食いによってお金が底を尽きたコッコロ達は、お金を稼ぐためにギルド管理協会へ足を運び、前の世界と同じようにキノコの採取クエストを受けていた。

 

「こちらです主様、悟空さま、ベジータさま。」

 

コッコロは木の枝を使い、落ち葉の下を見せた。

 

「ご覧ください、このような場所に注意して探してくださいませ。」

 

色々な種類のキノコが出てきた。

 

「わかった!ベジータ、オラとどっちが多く採れるか勝負でもすっか?」

 

「いいだろう。カカロットだけには負けんがな。」

 

悟空とベジータはキノコ狩りに燃えていた。

 

「……なんか懐かしいね。前にゴクウと一緒にキノコをとりに来たのを思い出すよ。」

 

ユウキは競い合ってキノコをとっている悟空とベジータをみながらそんな事を思い出す。

 

「……本当でございますね……。確か、ペコリーヌさまと出会ったのも、この場所でしたね。」

 

ユウキとコッコロが懐かしみながら森の奥へ進むとなにやら少女の声が聞こえてきた。

 

「キノコ〜キノコ〜!!」

 

その声の人物はユウキとコッコロのよく知る人物だった。

 

「ペコ!!」

 

「ペコリーヌさま!!」

 

二人がその名前を呼ぶと、ペコリーヌはユウキとコッコロの下へ走ってくる。

 

「ユウキくん!!コッコロちゃん!!無事だったんですね!!!」

 

そして二人に抱きついた。

 

「ペコリーヌさま……ご無事で何よりです!」

 

「ペコ!!久しぶり!!」

 

「会いたかったです……!!あれ?キャルちゃんは一緒じゃないんですか?」

 

ペコリーヌはキャルがいないことに気づく。

 

「キャルさまとはまだお会いしていません。ですが、この場所でペコリーヌさまとまた出会うことが出来たということは……キャルさまと会える場所ももしかしたら……!」

 

前の世界と同じ場所でペコリーヌと出会えたなら、きっとキャルも前の世界と同じ場所にいるはずだとコッコロは予想していた。

 

「なるほど!!早くキャルちゃんに会いたいですね!」

 

「ペコ!!新しい仲間が増えたよ!」

 

「え!?新しい仲間ですか!?」

 

ユウキは悟空とベジータが仲間になった経緯をペコリーヌに紹介した。

 

「……ゴクウさんにそっくりな人と、ベジータさんですか?」

 

「うん、今呼ぶね。ゴクウー!!ベジーター!!」

 

ユウキが大声で名前を叫ぶと二人は一瞬でユウキ達の目の前に現れた。

 

「ん?どうかしたかユウキ。あれ?おめぇは誰だぁ?」

 

「なんだユウキ。オレたちは今競ってるんだ。ん?誰だそいつは。」

 

「私、ペコリーヌっていいます。ベジータさんに悟空さん、よろしくお願いします!」

 

ペコリーヌは二人に挨拶をする。

 

「おめぇがコッコロとユウキの仲間っちゅうやつかぁ!オラ、孫悟空だ!………?」

 

「……ベジータだ。ん?……この気は……!」

 

悟空とベジータも挨拶を返す。すると二人はペコリーヌの力に一瞬で気づく。

 

「あの……どうしたんですか?」

 

ペコリーヌは急に真剣な表情になった二人に首を傾げる。

 

「へへっ……!おめぇただもんじゃねえな……。その力……ビリビリ来てんぞ?」

 

「ああ……。凄まじい力を感じる……。恐らく……ブラックよりも……。」

 

ペコリーヌは前の世界でブラックに潜在能力を解放して貰っていたため、その戦闘力は計り知れない。

 

すると悟空はペコリーヌに一つ頼み込んだ。

 

「なあ、ちょっとだけオラと手合わせしてくんねえかな?」

 

「……分かりました。私も悟空さんの力が気になっていたんです。手合わせお願いします。」

 

ペコリーヌと悟空はお互いに距離をとり構える。

 

「…………。」

 

「…………。」

 

ベジータ達は十分な距離をとりつつ観戦することにした。

 

「…………はっ!!」

 

「!!」

 

ペコリーヌは気を解放すると、物凄い速さで悟空の目の前に接近し、右の拳で攻撃をする。

 

「!!」

 

悟空は両腕でガードをしながらペコリーヌの攻撃を受けた。

 

「……すげえパワーだ……!!オラもいくぞ!」

 

「!!」

 

悟空はペコリーヌの拳を払い除け、がら空きになった胴体に蹴りを放つ。

 

「…………ふんっ!!」

 

「なにっ!?」

 

ペコリーヌは身体を捻り、蹴りを交わしながら悟空の足を払い、体勢を崩した所に追い討ちをする。

 

「おっと……!!」

 

「ええ!?」

 

すると悟空はペコリーヌの前から消え、瞬間移動でペコリーヌの後ろに回り込んだ。

 

「しまっ…………!」

 

ペコリーヌが振り向いた時には既に悟空の拳が目の前にあった。

 

「…………まいりました……!」

 

ペコリーヌは負けを認めた。

 

「へへっ。おめぇやっぱりすげぇな!!瞬間移動は使わねえつもりだったんだけどな!」

 

恐らく、悟空が瞬間移動を使わなかったら勝負はまだ分からなかったかもしれない。

 

「……悟空さん……やっぱり凄いですね!!」

 

すると、観戦していたコッコロ達が戻ってきた。

 

「やはり、お二人の力はすごいですね……!」

 

「ペコも悟空も強い!!」

 

「……ペコリーヌ。お前……その力はブラックから教えて貰ったのか?」

 

ベジータはやはりペコリーヌがどうやってその力を身につけたのか気になっていた。

 

「はい。ゴクウさんに私の力を引き出してもらったんです。それに、ちょっとした修行もつけていただきました。」

 

「…………そうか。」

 

「やっぱりブラックはいいやつじゃねえか!」

 

「ふん……オレは認めんぞ。」

 

そんな事を話しながらユウキ達はペコリーヌと一緒に再びキノコ狩りを始めた。悟空とベジータがキノコを大量に採取したため、資金はかなり増え、ランドソルの宿に泊まってその日を終えた。

 

 

翌日

 

 

「にゃー…。」

 

太陽が昇り始めた時間帯に、子猫に話しかける少女がいた。

 

「あんたは行かないの?……そうよね、仲間なんて。一人の方が気楽よね。……………行かなくちゃ。私のやるべき事を成すために…。」

 

黒い長髪の猫耳の少女は、子猫の相手をした後、一人でランドソルの街へと向かった。



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失われたもの

「ユウキくん!ベジータさん!朝食のご用意ができましたよー!……あれ?コッコロちゃん、に悟空さんだけですか?ユウキくんとベジータさんは……?」

 

ペコリーヌが部屋に入るとユウキとベジータの姿はなくコッコロと悟空が窓の外を見ていた。

 

「おはようございますペコリーヌさま。」

 

「おっす、ペコリーヌ!外を見てみろよ!」

 

「外ですか……?」

 

ペコリーヌが外を見てみると、ユウキとベジータが特訓していた。

 

「はぁ……はぁ……!師匠……!」

 

「どうしたユウキ!!お前の力はそんなものでは無いはずだ!」

 

既に二人の師弟関係が出来上がっており、ベジータは気合いを入れてユウキを鍛えていた。

 

「二人で特訓してたんですね!偉いですよユウキくん!」

 

「へへっ。ベジータの奴よっぽどユウキの成長が楽しみみてえだな!おーいベジータ!!ユウキ!!」

 

悟空が外にいるベジータとユウキに声をかける。

 

「ん?なんだ!カカロット!」

 

「飯ができたってよ!!早く食おうぜー!!」

 

こうして朝の特訓は終わった。

 

宿の朝、5人は並べられた朝食を食べる。

ユウキとコッコロの食べる量は普通なのだが、ペコリーヌ、悟空、ベジータの食べる量は尋常ではなかった。

 

「うんめぇ!!」

 

「うおお!!これも美味いぞぉ!!」

 

「美味しいです!やばいですね!」

 

「……皆さま、よい食べっぷりでございますね。」

 

「お前たちの食べる量が少ないだけだ。ユウキ、体の作りはまず食事だ。もっと食べろ!」

 

ベジータ達はコッコロやユウキの何倍もの量を食べていた。

 

「……キノコの報酬が多くて助かりました。」

 

「キノコ、さいこう!」

 

今のところは何とかなってはいるが、コッコロは金銭面の心配をしていた。

 

「ともあれ、手持ちのお金が尽きる前に、身を寄せる場所を何とかせねば……。」

 

「なんだい?お嬢ちゃん達。金無いのか?」

 

すると見知らぬ中年の男性がコッコロ達に話しかけてきた。

 

「おめぇ誰だぁ?」

 

「俺はお節介やきのタダの親父だ。」

 

「お金、大切!」 

 

「お、そうだな(適当)」 

 

「それで、何の用だ?」

 

「ああ……嬢ちゃん達見たところ、この街に慣れてないようだが【ギルド】を組むと管理協会から活動拠点になる家とか貸し出してもらえるんだぜ。」

 

「そうでした!!【ギルド】ですよコッコロちゃん!」

 

ペコリーヌは突然立ち上がりギルドの存在を思い出す。

 

「そうでございましたね。私たちはギルドを組まなくては……。」

 

「この街にいるならギルドを組むのも視野に入れておくといい。それじゃあな。」

 

見知らぬ男はそういうと去っていった。

 

「なあ、【ギルド】っちゅうのはなんだぁ?」

 

「長期的に活動を共にすることだ。以前トランクスに聞いたことがある。」

 

ベジータは息子のトランクスがゲームをしていたため頻繁にその言葉を聞いていた。

 

「へぇ〜なんだか面白そうだな!ベジータ、オラ達もギルド組みてぇな!」

 

「ふん……。」

 

「ギルドということはやっぱりキャルちゃんもシェフィちゃんも必要ですね!!早速探しに行きましょう!」

 

「はい、また皆揃って冒険しましょう!」

 

こうして最初の目的はキャルとシェフィを探して、新たにギルドを結成することに決まった。

 

「そうと決まれば……街に出っかぁ!!」

 

悟空達はランドソルの街を歩き回り、キャルとシェフィを探しに向かった。すると突然民衆が騒ぎ出した。

 

「きゃあああああああ!!!助けてええ!!」

 

街の人は全員ランドソルの出口に向かって走っていく。

 

「ええ!?突然皆さんどうしたんですか!?」

 

「みんなどうしたの!?」

 

「魔物でも現れたのでしょうか……?」

 

「なんだぁ?皆逃げてんぞ?」

 

「……どうやらあの豚が原因らしいな。」

 

ベジータ達の前には豚のような見た目の魔物が暴れていた。

 

「プギャャャャャャャャャャ!!!!!」

 

「こんな人里に現れるなんて……!」

 

「このままだと街に被害がでちゃいますね……ここは私が……!」

 

「プギャッ!」

 

ペコリーヌが退治しようとしたその時だった。

突如魔物が後ろ方向に一直線に吹き飛ばされた。

 

「「「え?」」」

 

「ずりーぞベジータ!!オラも闘いたかったぞ!!」

 

「ふん。早い者勝ちだ。」

 

ベジータが一瞬で魔物を吹き飛ばした。

 

「……流石でございますね。」

 

「あ、あはは……。」

 

「師匠すごい!!」

 

と、ベジータが吹き飛ばした時に出た砂埃で辺りが見えなかったが、うっすらと少女が倒れているのが見えた。

 

「……あっ、あそこに誰か倒れていますよ!さっきの攻撃に巻き込まれてしまったんでしょうか……。」

 

「今すぐ手当を!」

 

駆け寄る3人の後ろを悟空とベジータは後ろからついていく。

そこにいたのは……

 

「いったた…………。」

 

「「「?……!」」」

 

「キャルさま!?」

 

「ええ!?キャルちゃん!?大丈夫ですか!?」

 

「キャル!!!」

 

魔物と一緒に「キャル」が倒れていた。

 

「へえ〜コイツがキャルかあ!」

 

「……見つかったようだな。」

 

キャルは足を抑えながら立ち上がる。

 

「いたたた………。」

 

「キャルちゃん!!無事だったんですね!!良かったです!!」

 

ペコリーヌはキャルに抱きついた。

しかし、返ってきた言葉は予想外の言葉だった。

 

「……『キャル』……って誰よ?アタシの名前は『キルヤ』よ。それにあんた誰?」

 

「え……?」

 

「キャルさま……?」

 

「『キルヤ』……?」

 

その少女は『キャル』ではなく『キルヤ』と名乗った。



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願い玉

ペコリーヌ達はランドソルでキャルを見つけたが、キャルにはペコリーヌ達との記憶など無く、名前も『キルヤ』と名乗った。

 

「……誰だか知らないけどそろそろ離れてくれない?」

 

キルヤはそう言うとペコリーヌを振り払う。

 

「あっ……キャルちゃん……。」

 

ペコリーヌは寂しげな顔をしながらキルヤから離れる。

 

「それで……何よあんた達……。」

 

「……わたくしはコッコロと申します。こちらはユウキさま、ペコリーヌさま、悟空さま、そしてベジータさまです。」

 

コッコロはキルヤに仲間を紹介する。

 

「……『悟空』?」

 

キルヤは悟空の名前を聞いて少し顔をしかめる。

 

「魔物が暴れていたと思うのですが近くにキルヤ様が倒れていらしたので。」

 

「……魔物が暴れていた?」

 

「はい。ベジータさまが倒されたので街への被害は少ないですが。」

 

「……そうなのね。」

 

するとキルヤはゆっくりと一人で歩き出した。

 

「ああ!キャルちゃん怪我してるんですから動いちゃダメですよ!」

 

ペコリーヌがキルヤを引き止める。

 

「……私を『キャル』って呼ばないで!それに……一人で歩けるわ。」

 

キルヤはペコリーヌの言葉に従わずにまた歩き出す。

 

すると悟空とベジータはキルヤの腰に身につけているアイテムを見て驚愕した。

 

「おい待て……!貴様……その腰に付けているのは……まさか!」

 

「おめぇ……それ『ドラゴンボール』じゃねえか!?」

 

なんとキルヤの身につけていた物は悟空達の世界にあるドラゴンボールだった。

ボールの中には星型の模様が4つあった。

 

「あの……ドラゴンボールとはなんでしょうか?」

 

「はじめて聞きました……。」

 

「ドラゴンボール??」

 

ペコリーヌ達はドラゴンボールの事を知らない。

 

「……ああ、これ?これは陛下から頂いたの。素敵でしょ?」

 

キルヤは腰に付けているドラゴンボールを外し悟空達に見せる。

 

「おめぇ、それの使い方知ってんか?」

 

「え?使い方……?」

 

キルヤはどうやらただのアクセサリーと思って身につけていたらしい。

 

「ドラゴンボールは……7つ揃えるとどんな願いでも叶う願い玉だ。なぜお前がそれを身につけているんだ。」

 

「そ、そのようなものが……!?」

 

「どんな願いも……!?」

 

「すごい……!」

 

「これが……どんな願いも叶うアイテム!?」

 

ベジータはキルヤが何故ドラゴンボールを持っているのか……『陛下』という人物がどういった奴なのか気になっていた。

 

「し、知らないわよ……。陛下が私にくれたものだもの……。」

 

「なあおめぇ、オラ達にもドラゴンボール集め手伝わせてくんねぇか?」

 

悟空がキルヤに提案をする。

 

「はあ?手伝わせるって……願いが叶うのは1つでしょ?わたしにだって叶えたい願いはあるの!」

 

「願いが叶うのは3つだ。俺たちが手伝えばお前の願いも早く叶う。そして俺たちに願いを1つ譲ってくれればそれでいい。どうだ?悪い話では無いはずだが?」

 

「3つ!?そんなに…………。」

 

キルヤは考え込んだ。決して悪い話ではなく、ドラゴンボール集めに協力して貰えること。3つの願いの中、2つ叶えられ、1つはベジータ達に譲れば自分の願いが早く叶えられる。

 

「キルヤちゃん……お願いします!」

 

「キルヤさま……わたくしたちとギルドを組みませんか?」

 

「キルヤ……お願い!」

 

ペコリーヌ達もキルヤに頼み込んだ結果……キルヤはため息をつきながら承諾した。

 

「……はぁ。分かったわ。じゃあドラゴンボールを7つ集める手伝いをしてもらおうじゃない!願い二つは私がいたたくけどね。」

 

「……ふん。」

 

「よっしゃあっ!!よろしくな!キルヤ!」

 

こうしてキルヤが新たにペコリーヌ達の仲間になった。

 

 

 

 

日はすっかり暮れ、キルヤはペコリーヌ達の宿を抜け出し【ランドソル城】に訪れていた。

 

「……報告します。陛下。例のペコリーヌ達と接触しました。引き続き監視を続けます。」

 

キルヤは玉座に座っている人物に報告する。

 

「うんうん!お疲れキルヤ。順調そうで良かったよ。」

 

玉座に座る人物は愉快そうな男だった。

 

「陛下……もし、上手くいけば……私の願いは……。」

 

「ははっ!勿論だよ。君の働きぶり次第だけど……約束は守るよ。」

 

「……必ずや期待に応えてみせます。」

 

「うん!期待してるよ……『キャル』。」

 

キルヤは報告を終えると王室から退出した。

 

「…………やらなきゃ……私が……私が絶対に『アイツ』を生き返らせてやるんだから……!」



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働くサイヤ人

ペコリーヌ達は新たにキルヤを仲間に加え、ドラゴンボール探しの旅に出ようとしていた。

 

 

「よーし、キルヤも仲間になったことだしドラゴンボールを探しに行くぞお!」

 

「あんたってホント元気ね……。顔は似てるけどアイツとは真反対だわ。」

 

「オラと似てる?それって…………。」

 

「え!?ううん!なんでもないわ!そうねさっさとドラゴンボール探しの旅にでかけましょう!」

 

キルヤは口を滑らしたのか慌てて誤魔化した。

 

「待てカカロット!先ずは情報集めだ。ドラゴンレーダーがない今、闇雲に探してもドラゴンボールは見つからん。」

 

「またかよベジータ……オラもう飽きちまったぞ……。」

 

「久しぶりの冒険です!やばいですね!」

 

「冒険、楽しみ!!」

 

悟空達はやる気満々だったが、コッコロは申し訳なさそうな顔で悟空たちに話しかける。

 

「……その……申し訳ないのですが……冒険するのはまだ先かと……。」

 

「ええ!?まだ先ぃ!?なんでだぁ!?」

 

「…………足りないのです。」

 

コッコロは声を震わせる。

 

「足りないって……?」

 

「なんの事だ。」

 

ベジータとキルヤもコッコロの次の返事を待っていた。

 

「……圧倒的に……『お金』が足りないのでございます!!」

 

コッコロは財布を下に向けるが財布の中からは1ルピも落ちてこない。

 

「なんだと!?」

 

「嘘だろぉ!?めえったなこりゃあ……。」

 

「お金が足りないって……どうしてですか!?」

 

「コロ助……お金がないってどういう事?」

 

「なんで?」

 

コッコロ以外の全員は何故お金がないのか疑問に思っていた。

 

「その……大変申し上げにくいのですが……食費が原因かと……。」

 

「「………あ。」」

 

ユウキとキルヤは一瞬で納得した。

 

このギルドにいる3人はフードファイター以上に食べる量が多いため、食費が常人の20倍以上となっていた。せっかくキノコ採取で獲た報酬も底を尽き、今はお金も食べ物も一切ないという状況だった。

 

「オラ達、何かしちまったか?」

 

「何故俺たちを見るんだ。」

 

「…………えっへへ、やばいですね!」

 

3人は状況を理解しておらず、反省の色も見せない。

 

「『やばいですね!』じゃないわよ!!あんたらの食べる量どうなってんのよ!!」

 

キルヤがすかさずツッコミを入れる。

すると、コッコロがいつの間にか出かける準備をしていた。

 

「ってコロ助……何処かいくの?」

 

「はい。わたくし、働きに出ようと思いまして。あ、これはわたくしからの皆さまへのお小遣いでございます。」

 

そう言ってコッコロは5人分のお小遣いを渡す。

 

「コロ助ぇ!?それはまずいわ!!それはなんか色々とまずいわよ!!」

 

「コッコロ……これは……。」

 

「コ、コッコロちゃん……私も働きますからそのお金はしまってくださいね……?」

 

全員コッコロからお金を貰うことに抵抗があった。

 

すると、悟空とベジータが何故か震え出した。

 

「や、やべぇ……この金貰っちまったら……オラ、『チチ』に殺されちまうかも知れねえぞ……。」

 

「……殺される……。『ブルマ』に殺される……。」

 

小さい子からお小遣いを貰っていたという事実を妻に知られたら悟空とベジータは色んな意味で終わりだろう。

 

「よ、よしっ!オラも働くぞ!!」

 

「……ふん。俺も働いてやる……!」

 

悟空とベジータも働く気になったようだ。

 

「えっと……よろしいのですか?皆さまも働かれるということで……。」

 

「勿論よ!私たちに任せなさい!」

 

「オラに任せろ!」

 

「僕もやるよ!」

 

「サイヤ人の王子ベジータ様が相手だ!」

 

「皆で頑張りましょう!」

 

こうして各自で働くことになった。

 

悟空とペコリーヌは飲食店、コッコロとユウキは配達、ベジータとキルヤはクレープ屋のバイトを始めた。

 

 

 

飲食店にて

 

 

「悟空さん、一緒に接客頑張りましょうね!」

 

「おう!接客っちゅうのが何なのか分かんねえけど頑張っぞ!」

 

するとお客さんが入ってきた。

 

「いらっしゃいませ!何名様ですか?」

 

「2人です。」

 

「それでは空いてるお席にどうぞ!」

 

ペコリーヌは接客をマスターしているようだ。

 

「へぇ〜!そうやってやんのか!」

 

「今みたいにやれば大丈夫です!あっ、お客さん来ました!悟空さんもやってみましょう!」

 

「おう!」

 

するとお客さんが入ってくる。

 

「おっす!おめえ達何人だ?席空いてっから適当に座ってていいぞ!」

 

「え…………?」

 

お客さんが困惑してる中、すかさずペコリーヌが間に入る。

 

「いらっしゃいませ!!!空いてる席にご案内しますね!!!」

 

「ああ…………はい。」

 

ペコリーヌはお客さんを連れて席に行った。

 

「今のでいいんかなぁ……?なんかオラには難しいぞ?」

 

するとペコリーヌが戻ってくる。

 

「接客って案外難しいですよね。でも悟空さんならできるとおもいますよ!私と一緒に頑張りましょう!」

 

「おう!コッコロ一人に任せる訳にはいかねえからな!頼むぜペコリーヌ!」

 

 

 

クレープ屋にて

 

「君達が新しく来たバイト君だね。私は『アキラ』。よろしく!」

 

『アキラ』という赤髪の女性がクレープ屋の店主のようだ。

 

「キルヤです。今日からお願いします。」

 

「ベジータだ。」

 

「キルヤちゃんにベジータ君だね。それじゃあ簡単にクレープの作り方を教えるから、この通りに作ってお客さんに提供してね。」

 

「分かりました。」

 

「……見せてやろう。超エリートサイヤ人の圧倒的パワーを!」

 

「パワーは関係ないけどね。それじゃあ作るよー。」

 

アキラはクレープを作る工程を教えていった。

 

「よし。これがクレープの作り方だ。二人とも分かった?」

 

「はい。分かりました。」

 

「見せてやろう。超エリートサイヤ人の圧倒的パ」

 

「あ、お客さんが来たみたいだよ。それじゃあ早速お願いね。」

 

アキラが食い気味にベジータのセリフを遮る。

 

「イチゴクレープを二つお願いします。」

 

お客さんはイチゴクレープを頼んだ。

 

「はい。ベジータ、作り方覚えてるわよね。」

 

「ふっ……。」

 

キルヤはベジータのことを心配しながらもクレープを作り始めるが何故か隣が騒がしい。

 

「まずは『キャベツ』だ。木っ端微塵にしてやるぜ!」

 

「…………。」

 

「次は貴様だ『にんじん』野郎!」

 

「…………。」

 

「貴様の苦味には反吐が出る!ふはははははははは!!!」

 

「…………。」

 

キルヤはもう何も考えないようにしていた。

しかし、ベジータは謎のクレープをどんどん作り上げていく。

 

「お待たせしました。イチゴクレープです。」

 

「ソースに青のり、おかかでトドメだ!!『お好み焼き』クレープの完成だ!!」

 

「…………あ、ありがとうございます……。」

 

注文したお客さんは渋々と二つのクレープを受け取る。

 

「おっといけねえ、『マヨネーズ』も忘れんじゃねえぜ!」

 

お客さんは微妙そうな顔でお好み焼きクレープを食べる。

 

「……え?おいしい!!」

 

「え?まじで!?」

 

お客さんは意外にもベジータの作ったお好み焼きクレープを気に入ったようだった。

 

「すごいじゃんベジータくん!まさかしょっぱい物をクレープにするなんて……!!」

 

「当然だ。」

 

「ええ……あれでいいのかしら……。」

 

 

そして後日、このクレープがきっかけでランドソル中でお好み焼きクレープの大ブームが起こった。



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平和な毎日

3人の大食らいによって資金が枯渇したコッコロ達は、お金を稼ぐために日々アルバイトに明け暮れていた。

 

 

飲食店

 

「いらっしぇーませ。何名様ですか?それじゃあ席の方に案内します。」

 

悟空は段々と接客に慣れてきたようだ。

 

「いい感じですよ悟空さん!凄く良くなりました!」

 

「へへっ。オラ、接客っちゅうの結構慣れてきたぞぉ!」

 

ペコリーヌと悟空は楽しそうにバイトをしていた。

 

 

 

クレープ屋

 

「はいはーい!クレープ2時間待ちでーす!」

 

ベジータとキルヤがバイトをしてるクレープ屋ではベジータの作ったお好み焼きクレープが人気になり、朝から長蛇の列ができていた。

 

「このベジータ様がたっぷりと料理してやるぜ!!」

 

「なんなのよこの忙しさは!!朝の7時からなんでこんなに人が並んでるわけ!?」

 

キルヤも文句を言いながらクレープを焼く。

 

「まさか二人の新人がこんなに売上を伸ばしてくれるなんて……クレープ屋を始めてよかった……!!」

 

店主のアキラも涙を流しながら喜んでいた。

 

 

 

 

夜 【美食殿】ギルドハウス

 

バイトを終えたメンバーがそれぞれ帰ってきていた。

 

「今日も忙しい一日だったぜ。」

 

「ただいまぁ……ご飯できてるー?」

 

ベジータとキルヤが帰ってくる。

 

「おっ!ベジータにキルヤ!遅かったな!」

 

「キルヤちゃんにベジータさん、おかえりなさい!!」

 

「キルヤ、師匠、おかえり。」

 

「キルヤさま、ベジータさま。お食事の用意はできております。」

 

そして、食卓を皆で囲んだ。

 

「バイトっちゅうのも案外おもしれぇんだな!」

 

「はい!お客さんの笑顔もみられていいですよね!」

 

「主さまとの配達の仕事はとても楽しいです。」

 

「うん!」

 

「はあ……こっちは大変だって言うのにアンタらはいいわね……。」

 

「クレープを作るのも悪くはないぞ。」

 

各々のバイトの話で盛り上がっていた。

 

「よーし!明日からの仕事も頑張りましょう!」

 

「おう!オラ、ワクワクすんぞ!!」

 

「ふん!バイト代ナンバー1はこの俺だ!」

 

 

3日後の夜

 

バイトを終えたメンバーがそれぞれ帰ってきていた。

 

「今日も忙しい一日だったぜ。」

 

「ただいまぁ……ご飯できてるー?」

 

ベジータとキルヤが帰ってくる。

 

「おっ!ベジータにキルヤ!遅かったな!」

 

「キルヤちゃんにベジータさん、おかえりなさい!!」

 

「キルヤ、師匠、おかえり。」

 

「キルヤさま、ベジータさま。お食事の用意はできております。」

 

そして、食卓を皆で囲んだ。

 

「バイトっちゅうのも案外おもしれぇんだな!」

 

「はい!お客さんの笑顔もみられていいですよね!」

 

「主さまとの配達の仕事はとても楽しいです。」

 

「うん!」

 

「はあ……こっちは大変だって言うのにアンタらはいいわね……。」

 

「クレープを作るのも悪くはないぞ。」

 

各々のバイトの話で盛り上がっていた。

 

「よーし!明日からの仕事も頑張りましょう!」

 

「おう!オラ、ワクワクすんぞ!!」

 

「ふん!バイト代ナンバー1はこの俺だ!」

 

 

 

1週間後の夜

 

バイトを終えたメンバーがそれぞれ帰ってきていた。

 

「今日も忙しい一日だったぜ。」

 

「…………。」

 

ベジータとキルヤが帰ってくる。

 

「おっ!ベジータにキルヤ!遅かったな!」

 

「キルヤちゃんにベジータさん、おかえりなさい!!」

 

「キルヤ、師匠、おかえり。」

 

「キルヤさま、ベジータさま。お食事の用意はできております。」

 

そして、食卓を皆で囲んだ。

 

「バイトっちゅうのも案外おもしれぇんだな!」

 

「はい!お客さんの笑顔もみられていいですよね!」

 

「主さまとの配達の仕事はとても楽しいです。」

 

「うん!」

 

「……………。」

 

「クレープを作るのも悪くはないぞ。」

 

各々のバイトの話で盛り上がっていた。

 

「よーし!明日からの仕事も頑張りましょう!」

 

「おう!オラ、ワクワクすんぞ!!」

 

「ふん!バイト代ナンバー1はこの俺だ!」

 

「……………。」

 

 

 

約1ヶ月後の夜

 

 

バイトを終えたメンバーがそれぞれ帰ってきていた。

 

「今日も忙しい一日だったぜ。」

 

「……………………………。」

 

 

 

以下略

 

 

 

「よーし!明日からの仕事も頑張りましょう!」

 

「おう!オラ、ワクワクすんぞ!!」

 

「ふん!バイト代ナンバー1はこの俺だ!」

 

「いつまでバイトするつもりよ!!!!!!」

 

キルヤが大声をあげて仰け反る。

 

「キルヤちゃん?どうしたんですか?」

 

「キルヤさま?何かありましたか?」

 

「キルヤ?大丈夫?」

 

「キルヤの奴どうしたんだ?」

 

「おいキルヤ、明日からは新メニューの開発だ!貴様も特訓に付き合え!」

 

「アンタ達やっっっヴぁいわよ!????『ドラゴンボール』を探しに行くって言って何日たってる訳!?ていうかお金を稼ぐんだったらギルドの依頼で強力な魔物を悟空とベジータが倒してくれば済む話じゃないの!??何律儀にアルバイトで生計経てんのよ!!!」

 

キルヤの本音が爆発した。

 

「そうだった!!!オラ達、ドラゴンボールを集めにいくんだった!!」

 

「俺様としたことが……クレープに夢中になっちまった……!」

 

「ま、まぁまぁキルヤちゃん……皆さんのおかげで段々とお金も貯まってきた訳ですし……。」

 

「もう私これ以上バイト漬けなんてイヤよおおお……!明日にでも冒険に行くわよ!!いいわね!」

 

キルヤは涙目になり悟空達に訴えかける。

 

「お、おう……!わかった!」

 

「まあ貴様がどうしてもと言うなら仕方がない。」

 

「キルヤちゃんがそういうなら……。」

 

「わたくしもそれでいいと思います……。」

 

「キルヤ、せっかち?」

 

「何か言った?」

 

「なにも。」

 

こうしてある程度資金が貯まった【美食殿】はそそくさと冒険の準備を始めたのであった。

 

 

次の日。

 

 

「さあ、冒険に出発よ!!」

 

「おう!」

 

「……ふん。」

 

「冒険、楽しみ!」

 

「冒険なんて久しぶりです!やばいですね!」

 

「食料は買い込んでおきましたので暫くは大丈夫でございますね。」

 

キルヤ達はドラゴンボールがありそうな怪しい場所へ向かうため早朝に出発した。

 

 

そして、まずキルヤが目をつけた場所は山の中だった。

 

「こういう怪しい場所に大体あるのよ!気合い入れて探すわよ!」

 

「おう!任せろ!」

 

「本当にこんな場所にあるのか?」

 

「森ばっかりですね!」

 

「はい。辺りも薄暗くて……そしてとても広いです。」

 

「鳥もいっぱいいるね。」

 

キルヤ達は森の奥へ進む。すると、大きく拓けた水辺のある場所へ出た。

 

「それじゃあここでキャンプにしましょ?コロ助ー、火を炊くからユウキと一緒に枝集めてきてくれない?」

 

「わかりました。主さま、参りましょう。」

 

「うん!」

 

各自キャンプの準備をしていると悟空が何やら額に指を当てていた。

 

「あれ?悟空何やってんの?」

 

「ん?冒険は一旦ここまでだろ?ここに目印でも建てて早くギルドハウスに戻っぞ?」

 

「…………………………は?」

 

キルヤが口を開けて固まる。

 

「何をしてるんだお前たち、さっさとカカロットに掴まれ。」

 

「えっ?悟空さんに掴まればいいんですか?」

 

「こうでございますか?」

 

「こう?」

 

「…………。」

 

全員悟空に掴まる。

 

「お、まだペコリーヌ達の気がギルドハウスに残ってんな。よし!」

 

そして、キルヤ達は一瞬にしてギルドハウスに戻ってくる。

 

「明日はあそこから冒険すんぞ!それじゃあ飯でも食うか!」

 

「悟空さん瞬間移動ですか!?これなら魔物に襲われることもないですしいいですね!」

 

「はい!とっても安心でございます!」

 

「悟空、すごい!」

 

「……こんなの冒険じゃないいいいっっ!!」

 

 

ペコリーヌ達が安心している中、キルヤは叫びながら膝から崩れ落ちた。



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最高の実験材料

「いい?冒険中はギルドハウスに瞬間移動するのは禁止!本当に身の危険を感じた時にしか使っちゃダメだからね?折角の冒険がピクニックみたいになるじゃない!」

 

キルヤは悟空に冒険中に瞬間移動をしないように釘を刺す。

 

「いやーわりぃわりぃ!」

 

「ふん、注文の多いやつだ。」

 

「アンタらには常識が通じないの!?」

 

「ま、まあまあキルヤちゃん。」

 

「確かに冒険してる気はあまりしませんが……。」

 

「うん。」

 

という事で結局森の中に戻ってきたキルヤ達はその場で夜を過ごすことにした。

 

 

次の日の朝、再びキルヤ達はドラゴンボールを探索しに森の奥深くまで入っていった。

 

 

「なあキルヤ。やっぱこんなとこにドラゴンボールなんてねえんじゃねえのか?……あり?キルヤ達は何処だ?」

 

悟空はキルヤに話しかけるがいつの間にかはぐれてしまったようだ。

 

「ん?キルヤ達がいない。はぐれたか……!」

 

この場にいたのは悟空とベジータだけだった。

 

「クソッタレ……!アイツら何処に行きやがった!」

 

「彼女達とは一旦離れてもらったよ。」

 

「「!?」」

 

すると突然、悟空とベジータの背後から何者かが話しかけた。

 

「誰だおめぇ!」

 

「何者だ!」

 

悟空とベジータは戦闘態勢に入る。

 

「……僕は『フュー』。この世界の創造主さ。」

 

フューという男が悟空とベジータの前に姿を現す。

 

「くっ……ただもんじゃねえなおめぇ……!ハァァァァァァ!!」

 

「カァァァァァァ!!」

 

悟空とベジータはフューの力を感じ取り超サイヤ人ブルーに変身する。

 

「……悟空くんにベジータくん。君たちの力を封じさせて貰うよ。」

 

フューはニヤリと笑うと謎の術式を空中に書きそれを悟空とベジータに飛ばした。

 

「ふん!」

 

「だりゃあ!!」

 

悟空とベジータはその術式を手ではじき飛ばした。

 

「あ〜あ。触っちゃったね〜。」

 

「「!?」」

 

すると二人の変身が解除され通常の状態に戻っていく。

 

「な、なんだ……力が……!!」

 

「どうなっていやがる!!」

 

「君たちの力を制御させて貰ったよ。今の君たちでは精々超サイヤ人になるのがやっとだと思うよ?」

 

「ぐ……貴様……!!」

 

「おめぇ……!!」

 

「そう怒んないでよ!エネルギーを集めるには生きるか死ぬかのギリギリの戦いが1番いいんだ。そして……君たちの強さはドラゴンボールの()()()()()()によって変わる。」

 

「なんだと!?」

 

「嘘だろぉ!?」

 

「ドラゴンボールが1つなら超サイヤ人。二つ集めたら超サイヤ人2。そしてドラゴンボールを全て集めることが出来れば君たちの呪いは解除されるよ。」

 

「くっ……。」

 

「ちくしょう……!!!」

 

「君たちには最高の戦いをして貰う。この先には手強い相手がいるから……頑張ってね。」

 

そう言い残しフューは姿を消した。

 

「待て!!フュー!!」

 

「クソォ……!!」

 

悟空とベジータが悔しがる中、ペコリーヌ達の声が聞こえてくる。

 

「悟空さーーーん!!ベジータさーーーん!!」

 

「ペコリーヌ達か!?」

 

「待てお前達!!それ以上近づくな!!」

 

ベジータがそれ以上近づけさせないようにペコリーヌ達を止める。

 

「ええ!?何でですか!?」

 

「ど、どうしてでございますか!?」

 

「アンタ達……一体何が……?」

 

「悟空!師匠!」

 

「説明してる暇はない!とっとと離れろ!」

 

すると悟空とベジータの奥から何やら黒い影が近づいてくる。

 

「ベジータ!!何かがくんぞ……!!」

 

「くっ……!!」

 

悟空とベジータが警戒をすると、現れたのは『シャドウ』だった。

 

「……孫……悟空……!!」

 

シャドウは言葉を発する。

 

「あれって……シャドウ!?」

 

「この世界にまだいたなんて……!」

 

ペコリーヌ達は何度もシャドウと戦ったため、そのしぶとさは覚えている。

 

「なんだコイツ……!!」

 

「なんという不快な気だ……!!」

 

するとそのシャドウは姿を変え、『覇瞳皇帝(カイザー・インサイト)』の姿になった。

 

「どうして……!あの姿は……!」

 

「……『覇瞳皇帝』……!」

 

ペコリーヌ達もその姿に驚きを隠せない。

 

「姿が変わっただと!?」

 

「へへ。やるしかねえようだな……。」

 

次の瞬間……覇瞳皇帝の姿をしたシャドウが悟空とベジータに襲いかかった。

 

「なっ…………ぐああっ!!」

 

「ベジータ!!」

 

ベジータがシャドウに吹き飛ばされる。

 

「ぐ……!調子に乗るなあ!!」

 

ベジータは超サイヤ人に変身しシャドウに特攻した。

 

「孫……悟空!!!」

 

シャドウはベジータの蹴りをかわし、逆に上げきった足を掴み地面にベジータを叩きつけた。

 

「ぐああああああ!!!!」

 

ペコリーヌ達はその様子をただ遠くから見ていることしか出来なかった。

 

「ベジータさん!!」

 

「師匠!!」

 

「おかしいです……!幾ら覇瞳皇帝のシャドウといえども……あそこまで強いとは……!」

 

「…………。」

 

 

 

 

そして、フューはこの戦いを巨大なモニターに映し出し、ランドソル城の王室で観戦していた。

 

「あっははは!!『前の世界』の覇瞳皇帝の()への怨みがここまで強いなんてねー!」

 

フューは愉快そうに笑う。

 

「……さあ、実験の始まりだ。」



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2大超サイヤ人

ベジータと悟空は突如『覇瞳皇帝』の姿になったシャドウと戦っていた。

 

「なんだコイツぅ!?気味がわりぃ奴だな……!ベジータ、でえじょうぶか!?」

 

するとその様子を見ていたペコリーヌ達が声をかける。

 

「悟空さん!ベジータさん!」

 

「おめぇ達は下がってろ!オラ達もこいつをやっつけたらすぐに行く!」

 

「コイツ……カカロットの事を恨んでいるようだが何故だ?」

 

「孫………悟空……!!!あの時の屈辱を晴らす……!」

 

「屈辱とはなんの事だ!俺たちは貴様のことなど知らん!」

 

ベジータがそういうとシャドウはゆっくりと話し始めた。

 

「私は前に『孫悟空』に倒された……!あの全てを見下したような目は未だに忘れない……。だから私はフューに協力する代わりにこうして蘇った……!!」

 

シャドウはベジータから悟空にターゲットを変えて襲いかかる。

 

「おめぇ変な奴だな!!あの時ってなんの事だ!悪ぃけどぶっ倒させてもらうぞ!!」

 

悟空も超サイヤ人に変身した。

 

「その忌々しい姿……!!」

 

シャドウの攻撃も勢いが増す。

 

「だりゃあ!!」

 

「ふん!」

 

悟空の攻撃は受け止められ逆にシャドウのカウンターが悟空の鳩尾に決まった。

 

「ぐあああ……っ!!!くっ!!」

 

悟空はシャドウの攻撃を受けボロボロになりながら反撃の機会を窺う。

 

「どうしたのかしら?貴方の力はそんなものだった?」

 

「くっ……!!おめぇしつけえな……!!これならどうだ!!」

 

「!!」

 

すると悟空は前から突然消え、後ろ側に瞬間移動で回り込んだ。

 

「終しめぇだああ!!!」

 

シャドウが振り向いた時には悟空の攻撃が命中しており、身体の半分が吹き飛んだ。

 

「…………。」

 

シャドウは無言になり地面に倒れる。

 

「ハァ……ハァ……。」

 

「……終わったか。」

 

ベジータもそう思った。だが、バラバラになったシャドウの一部が本体に集まっていく。

 

「嘘だろ……おめぇ!!」

 

「ダニィ!?」

 

やがてシャドウの身体は元に戻り、目は赤くひかり、おぞましくドス黒いオーラを纏って復活した。

 

「……無駄よ。私はそんな簡単に死なないわ。フューに力を分けてもらったからね……!」

 

シャドウは先程までとは比べなものにならない強さになって復活した。

 

「そんな……!悟空さまがやっと倒されたのに復活とは……!!」

 

「悟空……ベジータ……!もう引きましょうよ!一旦ギルドハウスに戻ればいいでしょう!」

 

コッコロとキルヤも絶望していた。

 

「へへ……オラ達に逃げるなんて選択肢はねぇさ……!」

 

悟空は少し辛そうに笑いながら立ち上がる。

 

「ハァ……ハァ……。これはちょっとやべぇな……。動けるか?ベジータ……。」

 

「……気安く声をかけるな……!」

 

「オラ達……このままじゃ確実に殺されちまう……!もう後がねえ……フルパワーで二人同時にかかれば……!」

 

「……俺に指図するなあ!!」

 

「その意気だ……!」

 

悟空とベジータが息をきらす中、シャドウはゆっくりと近づいてくる。

 

「あらあら作戦会議かしら?」

 

「くるぞ……!いいな、フルパワーだ!!」

 

「俺に指図するなああああ!!!!」

 

ベジータと悟空は気を目一杯高めシャドウに突進した。

 

「「はあああああああっっ!!!!」」

 

「なにっ!?」

 

悟空とベジータの強烈な一撃でシャドウの身体を貫通した。

 

「くっ……無駄だと言っているでしょう!」

 

シャドウが肉体の復活をしようとしたその時だった。

 

「「はあああああああっ!!!」」

 

悟空とベジータは振り向きザマに気弾を放ちシャドウの復活の妨害をした。

 

「そ、そんな……!!」

 

「かめはめ……!!」

 

「消えてなくなれぇっ!!!!!」

 

「波ァァァァァァッ!!!!!」

 

「うわあああああああ!!!!!!!!」

 

悟空とベジータの猛攻によってシャドウは復活する間もなく跡形もなくなった。

 

悟空とベジータは力を使い果たし地面に仰向きに倒れる。

 

「ハァ……ハァ……パワーの殆ど使い切っちまった……。」

 

「ちくしょう……サイヤ人の王子である俺がこのザマとは……!!」

 

するとペコリーヌ達が駆け寄ってくる。

 

「悟空さん!ベジータさん!大丈夫でしたか!?」

 

「遂にあのシャドウを倒されたのですね!」

 

「悟空と師匠すごい!」

 

「あんた達……もう冒険はここまでにしてギルドハウスに帰りましょう?」

 

「……ああ。ここにドラゴンボールはなかった見てえだしな。」

 

「……とんだ無駄足だったぜ……!」

 

悟空とベジータが立ち上がりギルドハウスへ戻ろうとした時だった。

 

 

 

ガラガラ…………

 

突如瓦礫が落ちる音がした。

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「う、嘘だろ……!!」

 

「あれって……!」

 

「バカな……!!」

 

「そんな……!!」

 

「さっき倒した筈では……!?」

 

「嘘……!?」

 

「あ……あ…………!!」

 

悟空達が崖の上を見るとやっと倒した筈の覇瞳皇帝のシャドウが大量にいた。

 

「言ったでしょう?無駄だって。私はフューの魔術によってどんどん生み出される。これだけの私を敵に回して生きて帰れるとでも思った?」

 

悟空とベジータはゆっくりと身体を起こしペコリーヌ達の前に出る。

 

「悟空さん!?ベジータさん!?」

 

「ねえもう帰りましょう!?瞬間移動でギルドハウスに戻ればいい話じゃない!」

 

キルヤは必死に説得するがそれは悟空とベジータのプライドが許さなかった。

 

「貴様らだけで戻るんだ。逃げる時間位は稼いでやる。」

 

「そういうこった。おめぇ達はこれからも冒険すんだろ?早く行け!逃げろ!!」

 

「悟空さま……ベジータさま……!!」

 

「…………行こう。」

 

ユウキは逃げる決意した。

 

「ユウキくん!?」

 

「あんた……!!」

 

「今の僕達じゃ足でまといになる。ここは師匠の言う通りにするよ。」

 

「主さま……!!」

 

「…………ぐっ……わかりました。私たちは離れています。」

 

「悟空……師匠……!!僕たちは信じてる!!」

 

ユウキはそういうとペコリーヌ達を連れて遠くへ離れた。

 

二人残された悟空とベジータは絶望しながらも立ち上がる。

 

「へへっ。やっぱやるしかねえかな……。」

 

「クソ……目眩がするぜ……!!」

 

大量のシャドウは崖を一気に降り悟空とベジータへ向かって走ってきた。

 

「うわああああッ!!!!!!」

 

「くそったれえぇ!!!!!!」

 

悟空とベジータは気を思い切り解放する。

 

 

 

「「でやあああああああっ!!!!!!!」」

 

 

二人の気が爆発し強烈な光が辺りを呑み込んで行った。



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不可能などあるものか

「「でやあああああああっ!!!!!!!」」

 

 

 

二人の戦士の気が爆発し辺りを吹き飛ばす。

 

「!!」

 

増殖した覇瞳皇帝は二人の気の爆発によって所々身体の一部が吹き飛ばされる。

 

「ふふふふ…………!!」

 

バラバラになって尚動き続ける覇瞳皇帝の肉片は徐々にひとつの塊になっていく。

 

「…………なんだ!?」

 

「でっけえ…………!」

 

ベジータと悟空は段々と大きくなっていく覇瞳皇帝をみて驚く。その様子をペコリーヌ達は遠くから見ていた。

 

「あれは…………あの大きいシャドウは!!」

 

「あ、あれって…………!覇瞳皇帝がシャドウの体内に取り込まれた時の……!?」

 

「しかし、あの時は影に呑み込まれて自我も消えてしまった筈では……!?」

 

「あ……ああ……!!あれは……陛……下!?」

 

「キャ……キルヤちゃん!大丈夫ですか!?」

 

キルヤはその光景を見て何かトラウマの様なものを感じていた。

 

『はははははは!!!私は遂にこの力をコントロールしたわ……!!』

 

そして、以前シャドウに呑み込まれて賭けに負けた覇瞳皇帝はその力を使いこなし自我を保つ。

 

「バケモノが……!!」

 

「こりゃあやべぇな……!!」

 

悟空とベジータは力を使い果たしておりその場から一歩も動けない。

 

『さあ……まずは貴方達の体内エネルギーを全て頂くとしようかしら?』

 

覇瞳皇帝は悟空とベジータを巨大な手で握り潰しエネルギーを吸い取る。

 

 

「「ぐああああああっ!!!!」」

 

 

そしてエネルギーを吸い尽くした覇瞳皇帝は悟空とベジータを地面に叩きつけた。

 

『凄くいいわぁ……!!貴方達の力が私に馴染んで…………馴染んで……!?』

 

するとエネルギーを吸い取った筈の覇瞳皇帝の左腕が石化し崩れ落ちる。

 

『な……なんで……!?』

 

「く……オラ達のパワーを……甘く見たのが間違いだったみてぇだな…………!!」

 

「俺達の……サイヤパワーを舐めるなよ……!」

 

悟空とベジータのあまりに強大なエネルギーがよってシャドウの身体を蝕んでいた。

 

「あっ……!!シャドウの身体が一部石化しています!」

 

「悟空さまとベジータさまの力がこれ程とは思いませんでした……!」

 

「悟空……師匠……!!」

 

「アイツら……なんであんな絶望的な状況で立ち向かえるの……?」

 

ペコリーヌ達はこの戦いを見守る。

 

『……ふん!!貴方達なんて今の状態の私で十分…………!!貴方達に私を倒すことなど無理なのよ!!』

 

シャドウが黒いオーラを纏い悟空とベジータに突撃する。

 

「……ムリと分かっていても……やんなきゃならねえときだってあるんだあ!!」

 

悟空が立ち上がり超サイヤ人に変身する。

 

『が…………!!な、何っ!?』

 

するとベジータも超サイヤ人に変身し渾身の気弾で攻撃を防いだ。

 

「オレ達に……不可能などあるものか!!」

 

悟空は今自身の持てる最高のエネルギーを右手に集めて圧縮させる。

 

「うおりゃああああああ!!!」

 

悟空の投げたエネルギーは覇瞳皇帝の体内に入った。

 

『馬鹿な………!!!!ソンゴクウゥゥゥゥッッッ!!!!』

 

その放たれたエネルギーはシャドウの細胞を死滅させ、シャドウ全体が石化し、巨大な爆発を起こし消滅した。

 

 

悟空とベジータはその爆風によってペコリーヌ達の元へ飛ばされる。

 

「あっ!!悟空さん!!ベジータさん!!」

 

「悟空!!師匠!!」

 

「シャドウを遂に倒されたのですね!!」

 

「アンタら…………!!って…………え?」

 

飛ばされてきた悟空とベジータを受け止める者はおらず、猛スピードのまま二人は地面に衝突した。

 

「だ、大丈夫ですか!??」

 

「アンタら!?ちょっとこんなくだらない事でくたばるんじゃないわよ!?」

 

「くそったれ…………!」

 

すると悟空が嬉しそうに笑いながらオレンジ色の玉を掲げる。

 

「へへ…………ほら!ゲットしたぞ!『ドラゴンボール』だ!!」

 

「「「「ええええええええ!?」」」」

 

全員が驚いた。ボールの中には星型の模様が6つある。

 

「ホントにあったの!?」

 

「やったね!」

 

「悟空さんにベジータさんホントに凄いです!」

 

「これで集めるボールはあと5つでございますね。」

 

「ああ!それよりも……オラ腹減っちまった……!ギルドハウスに戻って早く飯にしようぜ!」

 

「わかりました!今日は腕によりを掛けて奮発しちゃいましょう!!」

 

「はい、お二人ともお疲れ様でした。」

 

こうして二つ目のドラゴンボールを手に入れた悟空達は一旦身体を休め、ギルドハウスで食事をとった。

 

 

 

 

ランドソル城 皇室

 

フューは腕を頭の後ろで組みながら戦いを観戦していた。

 

 

「覇瞳皇帝、お疲れ様ー♪中々面白い実験結果だったよ。さあ次は……。」

 

「オレが行く。」

 

「んー?」

 

フューの他にもう一人の男がいた。

 

「そっかあ、君もいたか。勝算はあるのかい?折角助けて上げたのに死んだら元も子もないでしょ?」

 

「俺はまだ負けたわけじゃねえ……そして、()()はこの星に既に植え付けてきた。もうじきランドソルは砂漠化する。『カカロット』を殺すのは俺だ。」

 

「そこまで言うなら任せようかな。しっかりエネルギーだけは回収してきてね。」

 

「勿論だ。それにここなら……いい『神精樹の実』がなりそうだ……!」



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第六章 決死のクライマックス編
宇宙の壊し屋の侵略


「主さまー!ゴクウさまー!」

 

「見てください!こんなにいっぱいお菓子買っちゃいましたー!」

 

「ちょっとゴクウ、あんたちゃんとユウキの面倒みなさいよ……ユウキの口にクリームついてるじゃない……子供か!」

 

ペコリーヌ達はブラックと共にお祭りを楽しむ。

 

「よく食べる子は育つ!ですから!」

 

「ふふっ……。」

 

「さあ、たこ焼き冷めちゃう前に!」

 

「熱ーーーー!!!!」

 

ペコリーヌはユウキの口に熱々のたこ焼きを突っ込む。

 

「バカね、もっと冷ましてからじゃないと……熱ーー!!!」

 

キャルも冷ましたはずのたこ焼きを頬張るが熱さで悶える。

 

「お前たち、もう少し冷まさないと……熱ーーーーー!!!!食えたものではないぞ!!」

 

ブラックも熱々のたこ焼きを食べて口の中を少し火傷した。

 

「ごめんなさい!食べやすくしましょうね!」

 

「私も一緒に……!」

 

コッコロとペコリーヌでたこ焼きをフーフーして冷ます。

 

「……ふふっ。あはは……!アンタも火傷してるの?強いのに口の中は弱っちいんじゃない?」

 

「だ、黙れ……!!お前のような猫舌に言われたくは……!」

 

キャル達は楽しそうに笑う。こんな夢のような毎日をおくりたいと心の底からそう思った。

こんな夢のような日々を…………。

 

「!!」

 

キルヤは深夜に目を覚ます。何か懐かしいような夢を見ていた。悟空達は既に熟睡しており何故かキルヤだけ目が覚めてしまったようだ。

 

「…………水でも飲もうかしら。」

 

キルヤはベッドから起き、ペコリーヌ達を起こさないようにリビングへと向かう。

 

「……これって……コロ助の?」

 

リビングへ行くとコッコロの鞄がテーブルの上に無造作に置かれている。

 

「コロ助も今日は疲れていたのかしら?」

 

キルヤが鞄を片付けようと持ち上げると、鞄の中から銀色の指輪のような物が落ちる。

 

「…………!?」

 

それはブラックの身に付けていた『時の指輪』だった。

 

キルヤはそれを拾い、悲しそうな顔で指輪を見つめる。

 

「…………『ゴクウ』……!!」

 

キルヤは指輪を両手で包み込むように持ち、胸に大事そうに押しあて小さく泣いた。

 

「……待ってて、私が……私達が絶対にアンタを……!!」

 

その時だった。

 

「おいおい、情が入っちゃ困るぜキルヤ。」

 

「!?」

 

キルヤの目の前にとある男が現れる。

 

「……あんたは……『ターレス』。」

 

見た目は悟空と瓜二つの黒いマントを身につけたターレスという男は、謎の『果実』を持ちながら不気味に笑う。

 

「……お前は何のために()()()()()()()をしてるんだ?奴らに勘づかれないようにエネルギーを集めるためだろう?」

 

「…………。」

 

「おいおい、そんな目で睨むなよ。俺たちはフューによって集められた僅かな仲間だ。仲良くしようや……!」

 

「……勘違いしないで!私はアンタを仲間だと思ったことなんて一度もないわ。」

 

「お堅いこった……。だがお前もエネルギー集めは怠るなよ?この上手い話が無くなっても知らないぜ?」

 

「余計なお世話よ。さっさと私の前から消えてちょうだい。」

 

「ふっ……。それにお前の身につけている『ドラゴンボール』……と言ったか……?実に興味深いな。ククッ…………!!」

 

そう言ってターレスは姿を消した。

 

「……ごめんね。ペコリーヌ、コロ助、ユウキ。」

 

 

次の日の朝

 

 

「キルヤちゃんがいませんね……。」

 

ペコリーヌ達はキルヤが自分の部屋からいなくなっていることに気づく。

 

「キルヤ……!」

 

「キルヤさまは何処に……?」

 

「あいつ何処いったんだろうなあ?」

 

「カカロット!キルヤの気はわからんのか!」

 

「いやあ……オラもさっきから探してんだけど見つからねえ……!」

 

「ちっ……!」

 

「……わたし、キルヤちゃんを探してきます!」

 

ペコリーヌが外に飛びだすと、外の異常な光景に目を疑った。

 

「な、な……なんですかこれは……!?」

 

「ペコリーヌさま?どうされたので……!?」

 

「な、何だこれは……!?」

 

ペコリーヌ達が見たものは変わり果てたランドソルの姿だった。

 

巨大な木の根はランドソル中を覆いつくし、中心には雲の上まで届くほど巨大な木が生い茂っていた。

 

ペコリーヌ達は急いで木の中心部まで向かう。

 

「ひ、酷い……ランドソルが……!!」

 

「昨日まで何もなかったというのに……どうしていきなり……!!」

 

「……何やらドス黒い気を感じる……!」

 

その時だった。

 

「……久しぶりだな。『カカロット』、『ベジータ王子』。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「誰だおめぇ!!」

 

「カカロット……!?」

 

「悟空さんが二人……!?」

 

「悟空さまに似ています……!」

 

「誰……!?」

 

突如悟空にそっくりの『ターレス』が現れる。

 

「……ククッ。俺の名は『ターレス』。俺とカカロットが似てるのも無理はない。俺達使い捨ての下級戦士はタイプが少ないからな……!」

 

「ターレス??……さっきから何を言ってんだ!」

 

「貴様……サイヤ人か!!」

 

「……俺を知らないという事はお前たちは別の時空のカカロットとベジータ王子か。」

 

するとペコリーヌ達が間に割って入る。

 

「この木の根は……貴方の仕業なんですか!?」

 

「なぜこのような事を!」

 

「……喜べ。この星は神精樹の実を育てるのにピッタリだ。お前達はこの星が変わり果てる姿を指を咥えてみているんだな。」

 

「ふざけるな!!」

 

「おめぇの好きにはさせねえぞ!!」

 

悟空とベジータは超サイヤ人2に変身した。

 

「……聞いているぞ。その変身……!」

 

するとターレスは謎の赤い実を齧る。

 

「……絶大なる神精樹の実が俺を高めた。見よ……!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「うおあああああっ!!!!」

 

ターレスの筋肉が一回り大きくなり、赤黒いオーラを纏いその反動で実を握りつぶす。

 

「……なんだ!この気は……!」

 

悟空の顔から焦りの表情が出る。

 

「ククッ……!神精樹の力を思い知らせてやる!!」

 

神精樹の実で強大な力を得たターレスが悟空達を襲った。



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悟空がやらねば誰がやる!

ランドソル城 皇室

 

 

「陛下!ターレスがランドソルを荒らしています。あの巨大な木はなんですか!?」

 

キルヤはフューにターレスがランドソルで暴れていることを報告する。

 

「……あれは神精樹。星のエネルギーを吸い取って成長していく恐ろしい植物さ。」

 

「そんな……!このままじゃランドソルが……!」

 

「そうだね。悟空君とベジータ君達が何とかしないと……このままじゃ危ないかもね。」

 

「!!」

 

「あーそんな顔しないでよ。僕がこのランドソルを壊したりはしないからさー。いざとなったら僕が何とかするよ。」

 

「ホントですか!?」

 

「うん。あーでもやっぱり彼らに何とかして貰わないとエネルギーがなー……じゃあそんな君にこれをあげよう。」

 

「あの……これは……。」

 

するとフューはキルヤにアイテムを渡した。

 

「それは『ドラゴンレーダー』。ドラゴンボールのある場所がわかる装置さ。」

 

「ドラゴンボールの場所がこれで分かるのですか!?」

 

「そう。もし悟空君やベジータ君達がやられる前にドラゴンボールを1つでも見つけることができれば……勝機はあるかもしれないよ?」

 

フューはニヤリと笑う。

 

「……わかりました。私が探してきます……!」

 

「うんうん!お願いねキルヤー。」

 

キルヤは走ってドラゴンボールを探しに行った。

 

「……これくらいのオマケはしないとダメだよねー。神精樹は確かに危ない植物だけど……この世にはもっと恐い……新たな宇宙を生み出す程のエネルギーを持つ植物もあるのさ……!」

 

 

 

一方、絶大な力を得たターレスは5人を相手に奮闘していた。

 

「プリンセスストライク!!」

 

「たああああ!!!」

 

ペコリーヌとユウキが上空から剣を振り下ろすがターレスはその剣を片手で抑える。

 

「ほう……中々のパワーだ。だが……!!」

 

「きゃあっ!!」

 

「うわぁ!!」

 

ターレスはそのままペコリーヌとユウキを蹴り飛ばし気弾を連続して放つ。

 

「だああぁっ!」

 

「はあっ!!」

 

悟空とベジータは気弾を腕で弾く。

 

「ペコリーヌさま!主さま!!」

 

コッコロは直ぐにペコリーヌとユウキを回復魔法で癒す。

 

「……ふははは!!どうだカカロット。神精樹の実の力は……!俺は全宇宙を支配できるほどの力を得た。」

 

悟空はターレスを少し挑発しながらニヤリと笑う。

 

「……それはどうかな?その程度ならガッカリだ。」

 

「ほざけ……!!」

 

ターレスが悟空に飛びかかった。

 

「ぐっ!!」

 

するとベジータがターレス向けて蹴り込む。

 

「いつまでカカロットと遊んでいるつもりだ。お前の相手はこのベジータ様だ!!」

 

「……邪魔をするなベジータ!!貴様らまとめて殺してやる……!」

 

ターレスがベジータを倒そうと気を高める。だが、再び回復したペコリーヌとユウキによってその攻撃はかき消された。

 

「させません!」

 

「やらせない!」

 

「くそったれめ……」

 

ターレスの額に汗が流れる。

 

(このオレが押されているだと!?)

 

相手は5人がかりとはいえ自分がここまで追い詰められていることに対して焦りを感じていた。

 

「どうした? さっきから動きがとまってんぞ!」

 

「さっきまでの威勢の良さはどこへ行ったんだ?」

 

「いい気になるなよベジータ……!」

 

ターレスは叫ぶと、両手からエネルギー波を放つ。だがそれは二人には当たらず、虚しく空を切るだけだった。

 

「何度やっても無駄だ!」

 

「オラたちを捕まえることなんてできねぇぞ!」

 

「ちいっ……!」

 

ターレスは歯噛みする。確かにこのままでは勝算はない……。ならば――。

 

ターレスはもう1つの神精樹の実を齧る。

 

するとたちまち身体中に力がみなぎり始めた。

 

「ほう、まだやる気か?」

 

「……!気いつけろベジータ……!さっきとはなんか………!」

 

二人はそう言うと身構えるが、次の瞬間、信じられないことが起きた。なんとターレスの姿が消えてしまったのだ。

 

「な、なんだと!?」

 

「一体どこに行った!?」

 

二人は辺りを見回すが見当たらない。そして背後に気配を感じると同時にペコリーヌ達は強烈な蹴りを受けてしまった。

 

「「「うわあああっ!!!」」」

 

「……まずは邪魔なお前たちからだ。」

 

一瞬の出来事だったが一撃でペコリーヌ達は倒されてしまった。そして、

 

「な、なんだと……!?」

 

「ぐわああっ!」

 

悟空とベジータも見えない何かに吹っ飛ばされる。二人は地面を転がりながら、ようやく止まる。そして顔を上げるとそこにはターレスがいた。彼はニヤリと笑う。

 

「終わりだな。カカロット、ベジータ。」

 

「見えなかった……!」

 

「……くそったれがぁ!!」

 

そして悟空とベジータはターレスとの激しい撃ち合いに発展した。

ターレスの強さは圧倒的だった。二人の超サイヤ人2を相手に互角以上に戦いを繰り広げていたのだ。

しかしターレス自身も無傷ではなかった。全身に傷を負っており、口から血を流していた。

 

「ははははははっ!!!!」

 

「なんだコイツ……!!」

 

「ぐっ……!!」

 

だがそんなことはお構いなしに攻撃を繰り出してくる。悟空たちはなんとか防いでいるものの、反撃に転じる余裕がないほど攻撃が激しく防戦一方であった。

 

「そろそろ終わりにしてやる。」

 

「「!!」」

 

やがてターレスは悟空の背後に回ると首に手をかける。

 

「ぐっ……おめぇ……!」

 

「死ねっ!!」

 

そのまま首をへし折ろうとするが、その寸前でベジータに腕を掴まれ止められてしまう。

「させるかあーーっ!!!」

 

ベジータは怒りの形相を浮かべると、ターレスの腕を掴んだまま上空へと飛び上がる。そして思いきり地面に叩きつけた。

 

「うおおおっ!!」

 

地面が大きく陥没し、ターレスは苦悶の声をあげる。だがそれでも意識を失うことはなく、よろめきながらも立ち上がった。

 

「邪魔だあああっ!!!!」

 

「ぐわああああっ!!!」

 

ベジータはターレスの強烈な蹴りをくらいその場に倒れた。

 

「こいつ……とんでもねえタフさだ……。」

 

「不死身の化け物が……!!」

 

「ふっ……ふふっ……。がはっ……!!」

 

ターレスは自分の限界を超えて神精樹の力を使い続けていたため、すでに肉体の限界を迎えようとしていた。

 

「くそっ……!」

 

ターレスは忌々しげに呟いた。

 

(まさかオレ様がここまで苦戦することになるとはな……。だがここで死ぬわけにはいかねぇ……。)

 

「は、はは……こりゃ少し……やべぇかもな。」

 

悟空にとって今の状況は絶望的だった。もはや逆転の目はなく万事休すかと思われたその時、突如ターレスの気が爆発的に上昇した。

 

「これが最後の……!!真の神精樹の実だ!!!」

 

ターレスは再び黒いオーラを纏いパワーアップを果たした。その姿を見た悟空とベジータは絶望する。

 

「おめぇ……まだ上があんのか……。」

 

その時だった。

 

「悟空!!ベジータ!!みんな!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「なっ……!!貴様……キルヤ!」

 

キルヤが走ってこの場所までやってきた。

 

「「「キルヤ(ちゃん)(さま)!!!」」」

 

「……悟空。『ドラゴンボール』を一つだけ見つけたわよ!今のアンタなら……!」

 

キルヤはドラゴンレーダーのおかげでドラゴンボールを見つけることができたらしい。

 

「で、でもオラ……もう(りき)入んねぇ……!」

 

するとベジータは悟空に自分の気を少し分けた。

 

「ベ、ベジータ!?」

 

ベジータは少し悔しそうな顔をしながらペコリーヌ達に語りかける。

 

「……お前たちも見ていろ。あれが……カカロットの築き上げた努力の証だ。」

 

「悟空さまの……!?」

 

「悟空の……!?」

 

「努力の証……??」

 

「アイツの……!?」

 

悟空は立ち上がると拳を構える。ターレスもそれに呼応するように拳を構えた。

 

「終わりだカカロット!!」

 

「……オレがやらなきゃ誰がやる……!!」

 

すると悟空の髪が腰のあたりまで伸び、超サイヤ人3に変身した。

 

「な、なんだその姿は……!!」

 

驚いたのはターレスだけではなかった。

 

「悟空さまの髪が……!」

 

「…………すごい。」

 

「あれが…………!」

 

「うわぁ……!!」

 

開いた口が塞がらなくなるほど衝撃的な変身だった。

 

そして、二人は同時に駆け出すと渾身の一撃を放った。

 

「死ねぇぇぇーーーーーーーーっ!!!!」

 

「龍拳ーーーッ!!!!」

 

悟空の気合とともに放たれたのは黄金の光を帯びた龍の拳。

 

「うわああああああっ!!!!!」

 

龍のような拳はターレスと神精樹を巻き込んでいく。

 

「うわああああああっ!!!!!」

 

その勢いはとどまることを知らず、神精樹を破壊しながら上空に昇って行く。

 

「うわあああああああああああっ!!!!!」

 

上空で巨大な爆発が起こり神精樹も完全に破壊された。

 

龍拳の威力は空に大穴を空け、そこから太陽の美しい光が差し込み右手を掲げる悟空を照らしていた。

 

「………………。」

 

悟空は優しく微笑みながら空を見上げた。



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蒼く燃ゆるサイヤ人の神

悟空達の活躍によりランドソルは神精樹から解放され元の姿に戻った。

 

「ついにやったんですね悟空さん!」

 

「ああ。もう心配いらねえ!」

 

「よかったです……!」

 

「ふん。」

 

その時だった。

 

「やあ君たち、お疲れ様ー!よくターレスを倒したね。君たちのお陰でいいデータが取れたよ。」

 

フューが悟空達の前に現れた。

 

「えっと……あなたは……?」

 

「見たことがありませんが……。」

 

「陛下!?」

 

「「「「「陛下!????」」」」」

 

キルヤの言葉にみんなが驚く。

 

「全く、ダメだよキルヤー、ネタバラシはまだ早いのにー。ま、いっか。」

 

「キルヤちゃん……陛下って……。」

 

「キルヤさま……。」

 

「おめぇ、フューのこと知ってたんか!?」

 

「どういう事だキルヤ!説明しろ!」

 

「……ごめんなさい。私……。」

 

「僕の方から説明してあげるよ。キルヤちゃんは僕が雇ったんだ。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「本来なら再構築で記憶すら無くなるけど……『ブラック』を生き返らせてあげるって条件で雇ったんだー。」

 

「ええ!?ゴクウさんを!?」

 

「ブラックを生き返らせるだと!?ふざけやがって……!」

 

「それでは……キルヤさまの記憶は……。」

 

「ごめんね……。私、本当は記憶を失ってなんかいないの。」

 

「キャルちゃん……あの時のこと……覚えてるんですね……!」

 

「……うん。」

 

「いやーそれにしても……キルヤのお陰でエネルギーがいっぱい貯まったよ。」

 

「!!陛下……!それじゃあ……アイツを……生き返らせることって……。」

 

「うん。いいよー。約束通り生き返らせて……。」

 

その時だった。

 

 

 

「ガアアアアアアアアッ!!!!!」

 

 

「なっ……!?」

 

「何故あいつがここに……!」

 

「おめぇは……『ブロリー』!?」

 

「す、凄い威圧……!」

 

悟空とベジータが前の世界で戦っていたブロリーが突然現れた。

 

「今は無理そうだねー。キルヤ、あと1回だけ頑張って。休んでる暇はないよ。ほら、代わりに僕からはドラゴンボールをあげるよ。嬉しいでしょ?ぼくは……モニターから君たちの戦いを見ているよ。」

 

「そ、そんなっ!」

 

フューは不敵な笑みを浮かべ姿を消した。

 

ブロリーは本能のまま襲いかかってくる。

 

「やべぇ!みんな、離れろ!」

 

「グオオオオッッ!!!」

 

ブロリーは悟空達に向けて拳を突き出した。

 

寸前で避けた為当たらなかったが、その衝撃波だけで後ろの山が吹き飛んだ。

 

「どんなパワーしてるんですかこの人!?」

 

「ヤバすぎるわよ!!」

 

「なんてパワーだ……。」

 

「こいつはヤベェぞ!」

 

ブロリーは今度はこちらに目掛けて突進してきた。

 

全員がバラバラに避けるも、ブロリーの通った道はボコボコに穴が空く。

 

「落ち着けブロリー!!」

 

悟空がブロリーを説得するも、ブロリーは聞く耳を持たない。

 

「……やるぞ!ベジータ!!」

 

「クソッタレェ……!!」

 

悟空とベジータは二人で構える。

 

「悟空さま、ベジータさま!!おふたりとも何を!!」

 

コッコロは心配そうに声をかける。しかし、その声は悟空とベジータには届かずひたすらに気を溜め集中する。そして、一気に気を解放した。

 

「はぁあああああああっ!!!!!」

 

「かぁあああああああっ!!!!!」

 

二人を青色の美しく荒々しいオーラが包み込む。

 

「グォォ!?」

 

「あ、青い!?」

 

「ゴクウさまの変身に似ておりますが……色が……!!」

 

「凄い……凄いですよ!!」

 

「悟空に師匠……!!すごい!」

 

ブロリーでさえその圧倒的なプレッシャーに少し怯む。

 

「……これが超サイヤ人ゴッドを超えたパワーだ!」

 

「……かかってこい。遊んでやる。」

 

二人は姿勢を低く構えた。

 

「ガァアアアアアアアッ!!!!」

 

本能のまま暴れ回る伝説の超サイヤ人と神の力を持つ悟空とベジータが衝突した。

 

 

一方、ランドソルから遠く離れた場所。

 

「く……ククッ……!カカロット……まさかあれ程の力を秘めていたとは……!!だが……このままでは終わらん!」

 

ターレスは悟空の龍拳を受けて致命傷だが辛うじて生き延びていた。するとターレスは何処かに隠し持っていた禍々しい神精樹の実を手にする。

 

「……食べた者の力を増幅させる代わり、邪悪に心を染める神精樹の実……!!これが……これこそがオレの求めている力だ!ふふふ……待っていろよカカロット!邪悪さこそがサイヤ人の本質である事を思い知らせてやる……!!」

 

ターレスは神精樹の実を齧り再び暗い森の中を歩き始めた。

 

 

 

一方、実験を見届けたフューはランドソル城の皇室まで戻った。

 

「次はどんな実験を……な!?」

 

フューが皇室へ戻ると、何故か実験用の機械やモニターが全て何者かによって破壊されていた。

 

「な………これじゃもう実験ができないじゃないか………!」

 

フューは初めて焦った表情をする。

 

「誰が……誰がやったああああっ!!!!!」

 

フューの怒りが爆発した。

 



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ひとつに重なった希望

ブロリーは超サイヤ人ブルーになった悟空を相手に一切怯むことなく戦っていた。

 

「ウオアアアアアアアアアッ!!!!」

 

ブロリーはランドソル中に自分のオーラから放たれる気弾を放つ。

 

悟空はそれを手で弾きながら何とか被害を最小限に抑えようとしていた。しかしブロリーの攻撃はとどまることを知らず、ブロリーのエネルギーは地面を抉り悟空達に迫る。

 

「わわっ!?」

 

「コッコロちゃん!ユウキくん!キャルちゃん!こっちです!!」

 

ペコリーヌは3人を抱えて安全な岩場まで避難する。

 

「あの人……強すぎですよ……。悟空さんがあんなに押されているなんて……。」

 

「一体どうすれば…………!?」

 

コッコロは何かに気がつくと自分の鞄の中を漁る。そして取り出したのは……

 

「ありました……!!ザマスが使っていたアイテムが……!!これで悟空さまとベジータさまが合体すれば…………!」

 

コッコロが取り出したのは緑色のポタラだった。

 

「でも……ポタラを渡すひまなんてないわよ……。悟空でさえあの様子じゃ…………!」

 

「……大丈夫です。私が何とか時間を稼ぎます。」

 

「ペコリーヌ!?」

 

ペコリーヌが時間稼ぎを名乗り出た。

 

「大丈夫です!!私たち、ゴクウさんに強くしてもらったじゃないですか!悟空さん達にも私たちの力を見せてあげましょう!」

 

「なっ…………はぁ、わかったわ。ユウキ、強化はできる?」

 

「うん、任せて!」

 

そしてユウキは二人をプリンセスフォームへと変身させた。

 

 

 

一方、空中へ逃げた悟空だったがブロリーは直ぐに悟空を追跡し追ってきていた。

 

「何をグダグダやってる!」

 

ベジータはブロリーから逃げる悟空に追いつく。

 

「一対一にこだわっている場合じゃないだろう!!」

 

「悔しいが……そうらしいな!!」

 

悟空とベジータは再びブロリーに向かっていき連携のとれた動きでブロリーと渡り合う。

 

「ガアアアアアアアアッ!!!!!」

 

ブロリーは悟空の拳とベジータの蹴りを受けとめ投げ飛ばす。そして追い打ちをかけるようにブロリーは悟空とベジータを追う。

 

「やるぞ!ベジータ!!」

 

「くそったれがぁあ!!」

 

悟空とベジータはブロリーの攻撃をスレスレで避け、フェイントを織りまぜながらブロリーから距離をとる。

そして、暫くすると悟空とベジータは背中を合わせ気を溜める。

 

「ギャリック砲!!」

 

「かめはめ……!!」

 

「「はあっ!!!!」」

 

二人の最強技だったが、ブロリーは両手に気弾を溜め、二人の技をかき消した。

 

「ガアアアアアアアアッ!!!」

 

悟空とベジータは襲いかかるブロリーを交わしているとペコリーヌとキャルが応戦に来た。

 

「アンタ達、今すぐコロ助の所に行きなさい!」

 

「時間稼ぎは私たちがします!」

 

「ペコリーヌにキルヤ……!その姿は……!」

 

「おまえら……!」

 

ペコリーヌとキャルは気を高める。

 

「ペコリーヌと一緒に戦うなんて久しぶりだわ。」

 

「キャルちゃんが元に戻ってよかったです!私もキャルちゃんと一緒に戦えてうれしいですよ!」

 

そしてペコリーヌとキャルはブロリーに向かっていった。

 

「任せたぞ!お前たち!」

 

「ベジータ!瞬間移動すんぞ!!」

 

そして悟空とベジータは瞬間移動でコッコロの所に移動した。

 

「悟空さま!!ベジータさま!!これを!!」

 

「「!?」」

 

コッコロは悟空とベジータに緑色のポタラを渡した。

 

「な、なんでお前がこれを!?」

 

「これ……ポタラじゃねぇか!!」

 

「はい。恐らく、ゴクウさまが私に預けてくれていたんです。」

 

ベジータはあまり乗り気では無い顔をする。

 

「……合体など二度とごめんだ!!」

 

「そういうなよベジータ……ブロリーに勝つにはこれしかねぇ!!今はペコリーヌ達が戦ってるけど時間の問題だ!!」

 

「……くっ…………!!」

 

するとブロリーと戦っているペコリーヌとキャルの声が聞こえてくる。

 

「「きゃああああああっ!!!」」

 

「「!?」」

 

それを聞いたベジータはいてもたっても居られずに悟空に手を伸ばす。

 

「よこせ!!はやく!!」

 

「……サンキュー、ベジータ。」

 

二人が緑色のポタラをつけると、互いに強力な磁力のように引き付け合う。

そして、巨大な二つの気が絡み合い竜巻のように大きくなった気はやがて人の形に変わっていく。

 

「す、すごい……!これが悟空さまとベジータさまの合体……!!ええと……名前は……?」

 

悟空とベジータが合体した人物はニヤリと笑う。

 

『……オレはベジータとカカロットの合体、「ベジット」だ!』

 

そういうとベジットは瞬間移動した。



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ベジットvsブロリー

ランドソルから遠く離れた謎の場所

 

 

「ねえねえ、さっきあの男の実験室壊したのバレてないわよね!?」

 

一人の妖精がある男に話しかける。どうやらフューの実験室を破壊したのはこの二人組のようだ。

 

「……どうだろうな。もっとも……バレていたとしても関係ないがな。」

 

「はあ……助けに行きたいのは山々だろうけどあまり無理しないでよね。コッコロたん達の事はあの人達に任せましょう?」

 

「……わかっている。……ん?奴はもうこの場所を嗅ぎつけてきたようだな。」

 

「!?」

 

すると二人の前にフューが怒りの形相で現れた。

 

「……君たちか…… !僕の実験室を壊したのは!……っ!?何故君がここに!!」

 

フューの目の前にいたのは思わぬ人物だった。

 

「……久しぶりだな。フュー。」

 

「……『ブラック』!!……そうか、そのガイド妖精が君を……。」

 

フューの前にいたのは前の世界で消えたはずの『ゴクウブラック』だった。

 

「あんた、コッコロたん達を変な実験に巻き込まないで!さっさとランドソルと彼女たちを元に戻しなさいよ!」

 

「そうはいかないよ。……君たちはやり過ぎた。これじゃあ計画が台無しだ!」

 

するとフューは剣を抜き前で交差させる。

 

「罰をくらえ!!!!」

 

「……!」

 

フューの攻撃は確実にブラックに命中した。

 

「あっはははは!!仮面を失った君の力なんて怖くないんだよ。そんな君に何ができるんだい?」

 

するとブラックの髪が突然薔薇色に逆立つ。

 

「………。」

 

「……『超サイヤ人ロゼ』ね……。その変身、もう見たよ。」

 

ブラックは今の攻撃でも傷一つ無く、余裕を見せるかと思いきや真剣な表情でフューを睨む。

 

「…………実験は失敗だ。フュー……!」

 

「実験の邪魔はさせないよ……!」

 

 

復活したブラックとフューの闘いが始まった。

 

 

 

 

一方、ランドソルでは突如現れたブロリーが大暴れしていた。

 

 

 

 

「ガアアアアアアアアッ!!!!!」

 

「くっ……もう……!!」

 

「ダメです………!!」

 

ブロリーの攻撃が二人に迫るその時だった。

 

何者かがブロリーの攻撃をいとも簡単に弾く。

 

『……よく頑張ったな。キルヤ、ペコリーヌ!』

 

ベジットがペコリーヌとキャルを救った。

 

「あ、あんた!その姿!よかった……。」

 

「無事合体出来たんですね……!」

 

『……後は俺に任せてくれ。』

 

ベジットは姿勢を低くし構える。

 

「頼んだわよ!」

 

「お願いします!」

 

ペコリーヌとキャルはベジットに全てを託した。すると気の荒いブロリーがベジットを見て唸る。

 

「ウウウウウウウウッ……!!」

 

『……こい!!』

 

次の瞬間、ベジットは地面を強く蹴り上空へ飛び上がりブロリーを誘った。

 

「ウアアアアアアアッ!!!!」

 

ブロリーは気弾をベジットに向けて乱射する。

それをベジットは余裕の笑みを浮かべ全てかわしながら移動する。

 

『ふっ……。はあああああっ……!!!』

 

ベジットはブロリーの気弾を全てかわし終わると身体全身を使い気を高める。

やがてその気は金色となりベジットの全身を包みそのパワーが解き放たれた。

 

「おおおおおおおおおっ!!!!」

 

だがブロリーは怯まずにベジットが超サイヤ人になった隙をつきベジットを蹴り飛ばした。

 

『……へへっ!』

 

「!?」

 

ブロリーに吹き飛ばされたベジットだったが途中で身体の向きを切り替えブロリーに向かって攻撃を放つ。

 

ブロリーも吹き飛ばされるがベジットと同じように身体の向きを切り替えベジットに襲いかかる。

 

「ウオオオオオオオオッ!!」

 

『ふん……。』

 

近距離での壮絶な戦いの末、ベジットの肘がブロリーの腹にくいこむ。

 

「ガアアア……ッ!!!!」

 

そしてベジットはそのまま一回転し、動きがとまったブロリーを地面へと蹴飛ばした。

 

『いいもんやるよ!!』

 

地面に叩きつけられるブロリーにシャワーのような気弾が放たれる。

 

「ウワアアアアアアアッ!!!!」

 

これにはブロリーも全力でガードを固め、気をバリアーのように展開し、ベジットを睨みつけながら再び上空へと飛び上がった。

 

ブロリーとベジットの異次元の戦いにペコリーヌ達は見入っていた。

 

「あれが悟空さんとベジータさんの合体した強さ……凄いです!」

 

「本当にすごいわね……強さの底が見えないわ……!」

 

「ですが……あのブロリーという男、力が全く衰えません。それどころかどんどん強くなっていっているような気がします。」

 

コッコロの言う通りブロリーは戦いながら学習を続け、ベジットの強さへ迫る勢いで成長していく。

 

『はあっ!!』

 

「ガアアアアアアッ!!!!」

 

二人の異次元の気功波が激突し、その衝撃で次元が裂かれた。

 

「ええっ!?空間が……!!」

 

「アイツらどんなパワーしてんのよ!!」

 

「わあっ……!!」

 

ブロリーとベジットはその変化に気づくこともなく戦いを続ける。

 

『だだだだだだだっ!!!!!』

 

「グゥウウウウウウ……!!!!」

 

ブロリーはベジットの攻撃を受けた後、身体を震わせ気を溜める。

 

「ウオアアアアアアッ!!!!!!」

 

またしても戦闘力をあげたブロリーの気が大きく膨れ上がり髪が緑色になる。

 

『だぁあああっ!!!』

 

ベジットは怯むことなくブロリーの頬に拳を叩き込む。だがブロリーには効かず、逆にブロリーの拳がベジットの腹に撃ち込まれる。

 

『ぐおあっ!!』

 

ベジットの動きが今の一撃で一瞬とまる。だがブロリーは間髪入れずに蹴りを繰り出しベジットを次元の壁へ吹き飛ばした。ブロリーは飛ばしたベジットを追いさらに追撃の拳を叩きつける。

 

『……これが、「ベジットブルー」!!!はああああああああああっ!!!!!』

 

ベジットは超サイヤ人から一瞬で超サイヤ人ブルーに変身する。

 

「ウワアアアアアアアッ!!!!!!」

 

超サイヤ人ブルーとなったベジットの強さは圧倒的だった。ブロリーはベジットの攻撃に反応しきれずにダメージを重ねていく。突如目の前に来たパンチを受け、体勢を崩して後方へ押された。

 

「グワアアアアアアアッ!!!!!!」

 

ブロリーは大きく口を開け、巨大なエネルギーをベジットへ向けて放つ。

 

『へへっ……!』

 

「ガアアアアアアッ!!!!!」

 

飛び上がって避けたベジットに向けてさらに数十発のエネルギーがベジットへ向けて追撃する。

 

『お返しだ!!』

 

全てのエネルギーを避けきったベジットはブロリーに先程と同じシャワーの様な気弾を放つ。

 

「オオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

 

ブロリーもまたこの攻撃を掻い潜りベジットの元へ向かう。そして、ブロリーとベジットの拳がお互いに衝突しあった。

 

『だあああああっ!!!』

 

「ウオアアアアッ!!!」

 

二人のこぶしの威力でまたもや次元が割れ、元の世界へと戻ってくる。

 

ぶつかり合った二人は互いに距離を置き離れた。

 

『へへ……。』

 

ベジットは未だ余裕の笑みを浮かべ、ブロリーの攻撃を待つ。

 

「ガアアアアアアッ!!!!」

 

ブロリーはベジットに向かって駆けだし、キックを繰り出す。ベジットはそれを余裕ですがブロリーは脅威の反応速度ですぐに振り返り気弾を投げつける。

 

『ふん!』

 

ベジットはそれを足で蹴り飛ばしブロリーの顔へ跳ね返す。

 

「ウワアアアアアッ!!!!」

 

強力なカウンターで怯んだブロリーに更に追い討ちの蹴りがブロリーの顔面をとらえた。

 

「ガアアアアアアアア!!!!」

 

ブロリーは地面に手をつくほど強力な一撃を貰う。ブロリーから距離をとって着地したベジットは両手に青い気弾を作りブロリーに向かって走り出した。

 

「ヌウゥ……グオオオオオオオオッ!!!!」

 

ブロリーはベジットを近づけさせまいと口から気功波を放つ。

 

地面を抉る程のエネルギーだったがベジットはそれを難なくかわしブロリーの後ろへ回り込み二つの気弾をブロリーへ放った。

それだけでは終わらず手から大量の気弾をブロリー目掛けて放っていく。

 

「ガアアアアアアアウウウウッ!!!!」

 

そしてベジットは右手を前に出しエネルギーをため、それをブロリーへ向けて放った。

 

『ビッグバンアタック!!!』

 

辺りにブロリーの絶叫と共に爆音が響き渡る。

 

「ぐわぁあぁぁあああぁあ………。」

 

『ふぅ。』

 

ベジットは息を吐いて空を見上げる。すると神精樹のような、それよりも巨大な木の根っこのようなものが辺りを張り巡らしていた。そして、何処か遠くで二つの巨大な気がぶつかり合っているのを感じた。

 

『……なんだ、あれは。』

 

気になるベジットだったが今はそれ所ではなく、ブロリーが再び立ち上がり叫ぶ。

 

「ウウウオオオオオオオアアアッ!!!!」

 

ブロリーは凄まじいスピードでベジットに飛びかかるがベジットは冷静に上へ避けガラ空きになったブロリーの胴体に強烈な蹴りを叩き込む。

 

「ガッッ……!!ウオオオオッ!!!」

 

ブロリーは吹き飛ばされながらも巨大なエネルギーをベジットへ向けて放つ。

 

『へへっ……。』

 

ベジットはそれを少し身体を横にしてかわし素早く加速しながらブロリーを殴り飛ばした。

 

「グゥゥゥゥ……!!!!」

 

ブロリーは苦し紛れの無数のエネルギー波を放つがベジットはそれを足で弾き飛ばしながらブロリーへ迫る。そして、ブロリーに追いついたベジットは連続で攻撃を打ち込んでいく。

 

「ガアアアアアアアアッ!!!!」

 

攻撃に耐えられずにうずくまったブロリーから距離を取ると、ベジットは更に気を高めブロリーへ迫る。

 

その圧倒的なベジットの気に驚愕したブロリーはベジットを迎え撃つように振りかぶる。

 

ベジットとブロリーの拳がぶつかり合い、ランドソルの大地が割れ溶岩が吹き出す。

 

「グゥウウウウウ……ウワアアアッ!!!」

 

ブロリーは顔を歪ませながら吹っ飛ばされる。

 

『だあああああああっ!!!』

 

ベジットはブロリーに追いつくと全力の拳をブロリーの腹へと打ち込む。そして、自らの気を流し込みブロリーを縛り付け、上へと蹴りあげた。

 

『かあああああああっ!!!!!!』

 

そしてベジットはブロリーの中に流し込んだ気を爆発させる。

 

「うわわわわっ!!!なんですかあの技!!」

 

「アイツらの技全部エグすぎでしょ……。」

 

「わたくし、これ程すごい戦いをみられて感激しました……!」

 

「うん……!」

 

ペコリーヌ達が見つめる先ではベジットがかめはめ波の構えをとっている。

 

『こいつでお終いだ!!』

 

ベジットは両手の気弾をひとつにあわせ腕を震わせながらエネルギーを溜める。

 

『ファイナルかめはめ波────ッ!!!!』

 

「ギャアアアアアアアアッ!!!!」

 

ベジットの最強の技のファイナルかめはめ波を受けブロリーは気を失った。

 

『ふっ……。』

 

ベジットは手に残った気をはらいながらブロリーに背を向ける。

 

『また闘おうな。』

 



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新たな世界の誕生

ランドソルのから遠く離れた謎の場所

 

 

「はあっ!!!」

 

ブラックは気弾をフューへ向けて乱射する。

 

「くっ……!」

 

フューはギリギリでブラックの気弾をかわしながら移動する。するとブラックは瞬間移動でフューの後ろに回りこみ強烈な拳を顔面に打ち込んだ。

 

「ぐぅっ………!!!」

 

フューは空中で勢いをころしながら停止する。

そして口元の血を拭った。

 

「……僕はね。本当は戦いが嫌いなんだよ。でも戦うことで僕のルーツが何かわかるような気がするんだ……!」

 

「コイツ一体何を言っているのかしら?」

 

アメスもフューには呆れていた。

 

「何をごちゃごちゃと……つまらん事を言ってないで全力でこい……!」

 

「ふっ、いいよ。」

 

ブラックがフューを挑発するとフューの髪も逆立ち目も赤色に変化する。

 

「……それがお前の全力か?」

 

「……どうせ宇宙誕生までの暇つぶしだ。」

 

「宇宙誕生???」

 

フューは少し気になる発言をした。アメスは疑問に思っていたがブラックはそのまま続ける。

 

「そんな瞬間などくるものか。ふんっ!!」

 

「くっ!!」

 

そして二人は激しくぶつかり合い近距離の戦いに発展する。

 

「ええい!!」

 

するとフューは突然刀を取り出して術式をかきそれをブラックへ向けて飛ばして攻撃した。

 

「!!」

 

その攻撃はブラックに命中する。

 

「……。」

 

フューはニヤリと笑うが煙の中から出てきたのは無傷のブラックだった。

 

「ふん。」

 

「!!」

 

するとブラックは油断していたフューに気弾をぶつける。ブラックは身動きのとれないフューの腹に蹴りを入れて吹き飛ばした。

 

「ぐがっ……!!」

 

「かめはめ……波───ッ!!!!!」

 

「はぁああ……!!!」

 

ガードも間に合わないタイミングで放たれたかめはめ波はフューに直撃した。

 

「やったわね!!!」

 

「はぁ……はぁ……!!」

 

瓦礫の中からボロボロになったフューが口から血を吐きながら立ち上がった。

 

「……君……再構築される前の世界より強くなってるじゃないか……。」

 

「当然だ。」

 

「……影でコソコソ観てるだけのアンタにゴクウの事なんて分からないでしょうね!」

 

「影でコソコソ見るのが好きなんだけどね!」

 

すると突然この世界が眩しく照らされていく。

 

「ん?なんだこれは!」

 

「……気づかなかったのかい?もう既に実験は始まっているんだよ。宇宙誕生の実験がね。」

 

「な、何を言っているの!?」

 

「!!」

 

「だからまずは宇宙誕生の実験としてこのランドソルを使わせてもらうよ。」

 

「なに!?」

 

「君もランドソルに戻った方がいいんじゃないかい?彼女たちが心配ならね。」

 

「くっ……!!!」

 

その眩しい光はブラックのいる所だけではなく戦いを終えた悟空とベジータの所まで届いていた。

 

『……なんだこの光は……!』

 

するとベジットの合体が解除される。

 

「あり?合体が解けちまったか。」

 

「ふん!」

 

するとペコリーヌ達が悟空とベジータの元に駆け寄ってくる。

 

「悟空さん!ベジータさん!」

 

「悟空!師匠!!」

 

「お疲れ様でございました。」

 

「よくあんな化け物倒せたわね……。」

 

すると悟空は先程までぶつかり合っていた気を探る。

 

「……あった。ベジータ、オラちょっくらフューとか言うやつを止めてくる。」

 

「なんだと!?」

 

「私も行かせてください。悟空さん。」

 

「僕も!!」

 

するとペコリーヌとユウキも悟空に同行したいと提案してきた。

 

「おめぇ達、フューはとんでもなく強えぞ。」

 

「はい。わかっています。でもこのまま何もしない訳には行きませんから。」

 

「うん!皆の力になりたい。」

 

ペコリーヌとユウキは固く決断していた。

 

「……そっか。じゃあ一緒にフューをぶっ飛ばして、早くブラックに会わねえとな!よし、行くぞ!」

 

「はい!」

 

「うん!」

 

3人は瞬間移動でその感じた気の元へと向かった。

 

「ちっ……カカロットめ……!」

 

すると光はどんどん強まっていき周りが視認できないほど明るくなっていく。

 

「キルヤ、コッコロ!目を閉じろ!」

 

「は、はい!」

 

「わかったわ!」

 

そして、ベジータ達はこのランドソルから姿を消した。

 

 

しばらく時間が経ったあと、キャルとコッコロは目を覚ました。

 

「う、うぅ……ここは、ランドソル……?」

 

「そのようですが……何かおかしいです。人の気配がまるでありません。それに、ベジータさまともはぐれてしまったようです。」

 

コッコロ達のいる場所は確実にランドソルだが明らかにおかしいと感じていた。すると、突如ランドソルにフューの声が響いた。

 

『やあ、みんなー、さっきぶりだね。』

 

「「フュー!?」」

 

『今君たちが居るのは、僕が作ったランドソル……いや、「ランドソルモドキ」とでも言おうか。』

 

「ランドソル…………。」

 

「モドキ…………?」

 

コッコロとキャルは首をかしげる。

 

『因みに……君たちの事は本物のランドソルの上空にも映し出される。何故なら……。』

 

するとキャル達のいるランドソルモドキの建物が崩れる。

 

「「!!」」

 

『今、建物が崩れたでしょ?本物のランドソルの方でもたった今同じ建物が崩れた。この意味が分かるよね?』

 

「まさか……!」

 

「繋がっているというのですか!?」

 

『……そういう事さ。君たちの行動しだいでは沢山の人が死んじゃうかもしれないよ?だから……おっと、来客が来たようだ。……君たちは無事に生きていられるかな?』

 

フューの声はここで途切れた。

 

「そんな……!この事をベジータさまに伝えなければ……!!」

 

「そうね……これはやばいわよ!」

 

コッコロとキャルはベジータを探しに走り出した。だが……

 

「「グォォォォォォォォォ……!!」」

 

突如、キャルとコッコロの前に二体のシャドウが現れる。

 

「シャドウ!?どうして……!」

 

「決まってるでしょう……フューが送り込んだのよ!」

 

「「グォォォォォォォォォ!!」」

 

キャルとコッコロがシャドウからの攻撃を避けようとしたその時だった。

 

「「ガァァァァァァァァァ……。」」

 

突如、二体のシャドウが倒れる。

 

「えっ!?」

 

「倒れた……??」

 

するとキャルとコッコロの後ろから一人の水色髪のドラゴン族の少女が歩いてきた。

 

「あなた達、怪我はない?」

 

「「シェフィ(さま)!?」」

 

彼女は再構築される前の美食殿にいたメンバーだった。だがこの少女は首を傾げて聞き返す。

 

「……あの、シェフィって……私のこと?私は『シフナ』よ。兄さんを探して旅をしていたんだけど……何か変な所に巻き込まれたみたい。」

 

彼女はシフナと名乗った。

 

「あっ、そ、そうなのですね……シフナさま。」

 

「……あんたも再構築の影響を受けたのね。」

 

キャルとコッコロは少し悲しげな顔をしたが久しぶりに再会できて嬉しい気持ちもあった。

 

「……あたし達もこの世界に巻き込まれちゃったの。良かったら一緒に行かない?」

 

「はい。シフナ様がいれば心強いです。」

 

「そ、そう?じゃあ……よろしく頼むわ。名前は……。」

 

「あたしはキャルよ。」

 

「わたくしはコッコロと申します。」

 

「『キャル』に『コッコロママ』ね。これから……あ、、、」

 

「「『ママ』??」」

 

シェフィは何故かコッコロに「ママ」をつけた。

 

「あ、い、今のは違うの!!なんだろう……何故かコッコロさんを見ると母性を感じるというか……。」

 

「……ふむ。再構築前の記憶がぼんやりあるということでしょうか?」

 

「まあ今はいいわ。それより、早くここから脱出しましょ?」

 

「わかったわ……!」

 

こうして新たにシフナがキャル達と共に行動を共にする事となった。

 

 

 

 

ランドソルモドキ ランドソル城 周辺

 

 

「はぁ……はぁ……!!貴様……カカロットにやられた筈……!!」

 

ベジータは意外な人物達と対峙していた。

 

「ふっ……。これがオレの求めた力だ。」

 

「……。」

 

大きな大剣を持ったドラゴン族の男と、もう一人、黒い髪を腰まで伸ばした戦闘服を来た男がいた。

 



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戦闘民族サイヤ人の誇り

「……ねえ、なんであんたフード被ってるの?」

 

ブラックはランドソルモドキに来た途端、何故か黒いフードを深々と被る。

 

「……オレはキャル達の世界を壊した……今更どんな顔をして会えばいいのだ!……だからオレはできる限りのサポートをアイツらの為にすると決めたのだ。」

 

ブラックは前の世界でキャル達の世界を襲ったのを後悔していた。

 

「……それは仕方ないことよ。あんただって洗脳されていたんだから悪くないわ。」

 

アメスは必死にブラックを慰める。

 

「……過程はどうあれ……結局壊したのはオレだ。言い訳などできない。」

 

ブラックはそういうとランドソルモドキでキャル達を探しに向かった。

 

 

一方、ベジータ達を探しに向かったキャル、コッコロ、シフナはシャドウを倒しながら先へと進んでいた。

 

「数がおおいわね……!どんだけいるのよコイツら!!」

 

「キリがありませんね……!」

 

「早く兄さんを探さなきゃ……!」

 

すると、上空から緑色の巨大な気が降ってきた。

 

「「「!!!」」」

 

「……カカロット!!ベジータ!!!」

 

「えっ……!?」

 

「そ、そんな……アンタはさっきやられた筈じゃあ……!」

 

「だ、誰なの……!?」

 

彼女達の前に現れたのは『ブロリー』だった。

しかし、さきほどのブロリーとは服も違く、何となく言葉を喋っている。

 

「カカロット……!!!ベジータ!!!」

 

ブロリーはその名を叫ぶと暴れ回り、キャル達に襲いかかった。

 

「あっぶないわね!!コイツ!!」

 

「先程の悟空さまとベジータさまが倒されたブロリーとは別なのでしょうか……?」

 

「な、なんてパワーしてるの!?」

 

キャル達は逃げるのでやっとだった。

 

「ウオオオオオオオオッ!!!!」

 

ブロリーが振り返って攻撃すると、地面に大きな穴が空く。その穴はとても深く底が見えない。すると、キャルが足を踏み外した。

 

「えっ!?ヤバっ!!」

 

「グアアアアアアアッ!!!」

 

「へ?」

 

「キャルさま!!」

 

「キャル!!」

 

「きゃあああああああっ!!!!」

 

キャルは穴の奥へ落ちていった。

 

 

 

ランドソルモドキ ランドソル城 周辺

 

ベジータは先程感じた巨大な気はブロリーのものだとすぐに理解していた。

 

「馬鹿な……!何故ブロリーがここに……ぐあああああああっ……!!!」

 

ベジータがよそ見をしているとターレスがベジータを思いきり殴り壁へ吹き飛ばした。

 

「……何処を見てるんだ王子様。っぐ……!」

 

そしてターレスに向けて巨大な剣の斬撃が飛ばされる。

 

「…………。」

 

攻撃したのは【レイジ・レギオン】のギルドマスターの『ゼーン』だった。

 

するとゼーンの攻撃を掻い潜りターレスがゼーンを殴り飛ばす。

 

「ぐっ…………!」

 

「嬉しいねぇ。伝説のドラゴン族さんよ。」

 

「くそったれぇ……。」

ベジータはよろめきながら瓦礫を動かし立ち上がった。それをみたターレスがベジータを嘲笑う。

 

「無様だなベジータ。お前もサイヤ人なら、悪の心を思い出すがいい!」

 

ターレスは悪の気をベジータに流し込んだ。

 

「ウオオアアアアアアアッ……!!!!」

 

「ククッ……。」

 

ターレスはベジータが悪に染まってくさまをみようと笑っていた。しかし、ベジータは冷静にターレスの言葉を整理する。

 

(そうだ……かつてのオレは……奴と同じだった……だが……!)

 

「サイヤ人の本質が邪悪さだと……?違う……戦闘民族サイヤ人の本質は戦い続けること……己を高め……ただ強さを求めることだ……!」

 

「なにっ!?」

 

「…………!!」

 

ベジータは超サイヤ人ブルーの気の内側で悪の気を完全に制御していた。

 

「ふざけた木の実に頼って手に入れた力に溺れる……誇りを失ったのは……貴様の方だ!!」

 

ベジータは一瞬でターレスの前に現れ、強烈な拳を腹に打ち込む。

 

「グゥぁああ……!!」

 

ベジータはターレスが倒れるより速く後ろに回り込み背中を蹴り追撃した。

 

「うわああああああっ!!!」

 

ターレスは地面を抉りながら倒れた。すると、ゼーンがベジータに向けて剣を構える。

 

「蛮牙竜咬!!!」

 

ゼーンはベジータを攻撃した。だがベジータは剣を素手で抑え弾き飛ばす。

 

「なっ……!!!」

 

「……そんな迷いのある剣でオレを斬ることなどできん!貴様の目的はなんだ!!言ってみろ!」

 

「!!」

 

ゼーンは自分の本当の目的が何かを忘れていた。いや、記憶が無かった。だが微かに……僅かに彼の中に残ってる名前があった。

 

「……『シフナ』……。」

 

ベジータはニヤリと笑うとゼーンから手を離す。

 

「貴様はまずはそれからだ。ゆっくりでいい。自分を見失うな。」

 

ゼーンは剣を下ろしその場に座り込んだ。すると、ターレスがボロボロの身体を起こす。

 

「クソォ……同じサイヤ人で……どうしてお前らばかり……オレはどうして勝てん!!」

 

ターレスは悔しがり地面を何度も殴る。

 

「貴様に、まだ少しでもサイヤ人の誇りが残っているのなら、もう一度鍛え直すんだな。」

 

その言葉はある意味、ターレスを救った。

 

「……ククッ。今更下級戦士に戻るとでも……まあ、それも悪くないか。」

 

ターレスは少し笑い、サイヤ人の誇りを取り戻した。

 

「ふっ……。」

 



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時代を超えた奇跡の共闘

ランドソルから遠く離れた謎の場所

 

「だりゃああああっ!!!!」

 

「プリンセスストライク!!」

 

超サイヤ人ブルーとなった悟空とプリンセスフォームに変身したペコリーヌを相手にフューは余裕の表情で相手をしていた。

 

「いいねいいね!君たちの強さ、嫌いじゃないよ!でも…………!」

 

するとフューは悟空、ペコリーヌ、ユウキを魔術で縛り上げる。

 

「うわああああああっ!!!」

 

「ぐううううううっ!!!」

 

「ううう…………。」

 

「……実験を邪魔する君たちは嫌いだよ。」

 

そういうとフューは謎の空間を作った。

 

「おめぇ……何を!」

 

「君たちにも実験に参加してもらおうと思ってね。この空間はランドソルモドキに繋がってる。とても手強い敵がいるけど……頑張って脱出してきてね。」

 

フューは空間へ3人を投げ入れた。

 

「「「うわああああああっ!!!」」」

 

 

ランドソルモドキ

 

突如現れた別世界のブロリーから逃げていたコッコロ達だったが、キャルは深い穴に落ちていってしまった。

 

「キャルさま!!!!」

 

「キャル!!嘘でしょ!?」

 

コッコロとシフナは手を伸ばすもキャルには届かない。

 

(ああ……アタシ、死んじゃうんだ……。もう一度、アイツと会いたかったな……。)

 

キャルはこれから死ぬことを悟り、そんなことを考えていた。

 

(……怖い……死ぬなんて嫌よ……!アタシはまだ……アイツと会うまで死にたくない……!)

 

キャルの身体が地面と衝突するまで残り数メートル程の時だった。

 

「…………助けてよ……!『ゴクウ』!!!」

 

キャルがそう叫ぶと、突如キャルの身体が何かに包まれた。

 

「…………え?アタシ……生きて……。」

 

「……無事か?キャル。」

 

その声はどこか懐かしいような、久しぶりに聞いたような声だった。

 

「……!あっ…………ああ……!!」

 

キャルは自分を横抱きしている人物をみて涙をボロボロと流す。

 

「……泣くな。前みたいな強気な態度はどうしたんだ?」

 

ブラックはキャルの涙を指で拭いた。

 

「……生ぎででよがっだああ……!!」

 

キャルはブラックに抱きつきながら泣いた。

 

「……何故怒らない。お前たちの世界を壊したのはオレだ。」

 

ブラックは何故キャルが嬉し泣きしているのかが分からなかった。

 

「ぞんなのあんたは悪くないじゃない!!洗脳されてただけでしょ!!」

 

「いやしかし……。んぐ……!」

 

自分を非難するブラックの口をキャルは人差し指で抑える。

 

「それ以上自分を追い詰めたら承知しないわよ……!今のアンタが傍にいてくれる。これだけでアタシは満足よ。」

 

キャルはそういうと優しく笑った。

 

「……キャル……。」

 

「キャーッ♪キャルったら大胆〜!!」

 

「「!!」」

 

ブラックとキャルの後ろからアメスがニヤニヤした表情で見ていた。

 

「あ、アメス……!?いつからそこに!?」

 

「うふふ……いつからかしら〜?」

 

キャルは顔を真っ赤にしながら急いでブラックから自分の身体を離した。

 

「あ……あんた!!今の皆に言ったら承知しないわよ!!!」

 

「しないしない♪コッコロたん達には内緒にするわよ〜!」

 

「……アメス。その話は後だ。今はここを脱出するのが先だ。」

 

「はいはい。ってか普通にフード外してるし……やっぱり被らなくて正解だったでしょ?」

 

「……ふん。つかまれキャル。瞬間移動で地上へ行くぞ。」

 

「わかったわ……!」

 

 

キャル達が地上へ戻ると、未だにブロリーは暴れており、ランドソルモドキが崩壊するのも時間の問題だった。

 

「グルアアアアアアアッ!!!」

 

「あっ……!」

 

するとブラックはブロリーとコッコロの間に入り攻撃を片手で阻止した。

 

「ゴ、ゴクウ……さま!?」

 

「貴方は一体……!」

 

「カカロット……カカロットォォォッ!!!!」

 

「カカロット?残念ながら人違いだ。」

 

ブロリーは激怒しブラックに襲いかかる。

 

「ハァァァァァァァッ!!!」

 

ブロリーは必死にブラックに攻撃するがその攻撃は全て空を切る。

 

「ふんっ!」

 

「ガァッ!?」

 

ブラックはブロリーの攻撃を全て見切り、がら空きになった胴体を思い切り蹴り地面に蹴落とした。

 

「……時間がない。さっさと終わらせてやる!」

 

ブラックは超サイヤ人ロゼに変身した。

 

「カカロットォォォッ!!!」

 

ブロリーは構わずに襲いかかるがブラックは右手に気を集める。

 

「これで終わりだ……!!」

 

ブラックの拳がブロリーの腹に命中する。

 

「ば……バカなぁぁぁっ……!!!!」

 

ブロリーの身体で気が膨れ上がり、やがてそれは空中で爆発した。

 

「ふぅ……。」

 

ブラックは変身を解くとキャル達が駆け寄る。

 

「あんた……また強くなったのね!」

 

「……オレだけではない。お前が強くなってることもわかってる。成長したな……キャル。」

 

キャルは顔を赤くする。

 

「あ、あんたも素直に褒めるのね……。」

 

キャルは嬉しさで少し顔がニヤけていた。

 

「ゴクウさま!?ご無事だったのですね……むぎゅっ!」

 

コッコロがブラックに話しかけたとたん、アメスがコッコロに抱きついた。

 

「コッコロたーーーん!!!!肌すべすべ〜!!」

 

「アメスさま!?いらっしゃったのですね!」

 

アメスがわちゃわちゃするなか、ブラックはシフナの前で腰を落とした。

 

「……シェフィ……だったか?すまなかったな。」

 

ブラックは前の世界でシェフィ達にしてしまったことを謝った。

 

「……貴方も私をシェフィって呼ぶのね。何を謝られたのかはわからないけど……私は大丈夫よ。」

 

シェフィには再構築前の記憶がなく、ブラックの謝罪に思い当たることがない。

 

「……やはり記憶がないか。お前と、お前の兄はオレが責任を持って元に戻す。」

 

「兄さんを知っているの!?」

 

「……ああ。」

 

再構築の前の世界で洗脳されたブラックはシェフィの兄を殺している。

 

「兄さんの事を教え……」

 

シェフィが何か言いかけたその時だった。

 

「オオオオオオオ…………。」

 

「「「「「!!!!!」」」」」

 

今まで見たことないほど大量のシャドウが溢れかえる。さらに、禍々しいオーラを放っており、先程まで倒していたシャドウよりも強力なものだった。

 

「シャドウ!?」

 

「さっきまでのやつらとは違う……!」

 

「どうなってんのよ!」

 

「これは…………!」

 

「…………どうやらやるしかないみたいだ。」

 

ブラック達は迫り来るシャドウの前で戦闘態勢に入る。

 

 

そして、ランドソルモドキに無理やり連れてこられた悟空達もシャドウの前で構える。

 

「へへっ……力が全く入んねぇ……!」

 

「私も……お腹ペコペコです……。」

 

「でも……やるしかない!!」

 

 

ランドソルモドキ ランドソル城 周辺

 

「なんだコイツらは……!」

 

「シャドウか……!」

 

「フューめ……俺たち諸共この世界を葬るつもりだな?」

 

ベジータ達のいる場所にも大量のシャドウが溢れかえる。

 

「くそったれぇ!!」

 

「待ってろ……シフナ!!」

 

「ちっ……!!」

 

次の瞬間、強化されたシャドウは一斉に襲いかかってきた。

 

「ォォォォォォォォ…………。」

 

「はあああっ!!!」

 

「は!!」

 

「ならば……死ねっ!!」

 

ベジータ達はシャドウを迎え撃った。

 

「光の精よ……!」

 

「ゴーゴーコッコロたん!!」

 

「グリム・バースト!!」

 

「はぁっ!!」

 

「受けるがいいっ!!我が刃!!」

 

ブラック達もシャドウを迎え撃つ。

 

「プリンセスストライク!!」

 

「波─────ッ!!!」

 

悟空達も一斉に攻撃をした。しかし、あまりにも数が多く、皆はバラバラになりはぐれてしまった。

 

「はあああ!!」

 

ブラックがシャドウを倒しながら進むと、とある男と鉢合わせる。

 

「……カカロット……いや、違うな。」

 

「……お前は……。」

 

ブラックとターレスはお互いに背中を合わせて構える。

 

「……仲間だと考えていいのか?」

 

「……ふん。私の邪魔さえしなければな。」

 

 

 

 

「シフナ!!」

 

「兄さん!!無事だったのね!!」

 

ゼーンとシフナも合流でき、二人でシャドウを蹴散らしていく。

 

 

 

「無事か!!キルヤ!!」

 

「ベジータ!!あんたも無事で良かったわ!」

 

ベジータもキャルと共に共闘する。

 

 

「コッコロたんをいじめるなー!!」

 

「あ、アメスさま……!!このままでは押しきられ……!」

 

「うおおおおおおおっ!!!」

 

コッコロの周りのシャドウが全て吹き飛んだ。

 

「ブ、ブロリー…………さま!?」

 

「あんたは……!?」

 

間一髪助けに入ったのはベジットに倒されたブロリーだった。彼もランドソルモドキにきていた。

 

「悪いやつ……倒す!!」

 

「……頼もしいです!!」

 

 

 

それぞれがタッグを組み、シャドウを倒していく。

 

 

「真ん中に居るのは……カカロット達か!?おいお前達!!カカロットの周りへ集まれ!!」

 

「「「「「!!!!!」」」」」

 

ベジータが呼びかけるとそれぞれが真ん中に向かって走り出した。

 

悟空の体力は限界だった。

「も、もう身体がもたねぇ……!!」

 

「悟空さん!!私たちが戦います!」

 

「うん!悟空は休んで!」

 

連戦に次ぐ連戦……特に悟空はボロボロだった。

 

「ォォォォォォォォ……!!」

 

「………くっ!」

 

シャドウの攻撃が悟空に迫るその時だった。

 

「てやぁっ!!!」

 

「ベジータ!?」

 

ベジータがシャドウから満身創痍の悟空を助ける。

 

「オレだけじゃない。」

 

「!?」

 

ベジータがそういうと悟空を守るように全員が背をむけながら集結する。

 

「おめぇ達……!!」

 

次から次へと襲いかかるシャドウを悟空を守りながら蹴散らしていく。

 

「おめぇ……ブラックぅ!?」

 

キャル達と出会い改心したブラック。

 

「それに……ターレス!?」

 

サイヤ人の誇りを取り戻したターレス

 

「ブロリー!?」

 

心優しきサイヤ人のブロリー

 

「孫悟空!これを食え!」

 

「これ……仙豆じゃねえか!なんでおめぇが……!?」

 

ブラックが悟空に投げたのは仙豆だった。

 

「詳しいことは後だ。今はコイツらを倒す。」

 

悟空は仙豆を食べると、立ち上がってニヤリと笑った。

 

「ちっ……ブラックめ。何を笑っていやがるカカロット!」

 

「へへっ……嬉しくってよ……。オラ、ワクワクしてんだ!」

 



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蒼き光と薄紅の電影

「「ゴクウ(さん)!?」」

 

ペコリーヌとユウキもブラックが生きていたことに驚いていた。

 

「……ペコリーヌ、ユウキ。いつぶりだろうな……こうして共に闘うのは。」

 

ブラックも懐かしみながら少し笑みを浮かべた。

 

「へへっ……ブラック、おめぇやっぱりいいやつになったんだなあ!」

 

悟空もブラックが改心していることを嬉しく思った。

 

「ふん。貴様ら、お喋りは後にしろ!まだまだ襲ってくるぞ!」

 

ベジータが悟空達を一度引き締める。

 

「ォォォォォォォォォォ……!!」

 

シャドウの群れはまだまだ押し寄せてくる。

 

「界王拳!!」

 

「うおおおおおおっ!!!」

 

悟空の青い気の周りには赤く荒々しい気が燃え上がり、ベジータは超サイヤ人ブルーの壁を一つ超え、青い輝きが増した。

 

「ならオレも一つ壁を超えてやるか……!ハァッ!!」

 

ブラックは気を高める。

 

「ブラック……おめぇ!?」

 

「なんだと!?」

 

するとブラックの髪は激しく逆立ち、体の周りには薔薇色のスパークが走る。

 

「ベジータ……派生的にはお前に近しいかもな。」

 

ブラックはそういうとニヤリと笑った。

 

「ブラック……おめぇの力、ビリビリ感じっぞ!」

 

「ふん、やるじゃないか。」

 

悟空とベジータもその力を認めた。

 

「すごい……力を感じるわ……!」

 

3人の最強の形態が集結した。

 

「……なんか悟空さん達の強さの次元が凄くおかしい気がします……。」

 

「……そんなの今更でしょ。でもこれだけの戦力が揃えば絶対に負けないわ!」

 

するとブラック、悟空、ベジータの3人はペコリーヌ達よりも前に出る。

 

「……孫悟空、ベジータ。上を見ろ。」

 

「ん?なんだあれ!?」

 

「なるほど……そういう事か。」

 

ブラック達の真上にはシャドウがどんどん生み出される謎のエネルギーが蓄積されていた。

 

「あれを破壊すれば恐らくシャドウは消える。ここは協力するぞ。」

 

「おう!」

 

「ちっ……。」

 

するとベジータは飛び出しシャドウを引き付けながら倒していく。

 

「はぁっ!!!」

 

ブラックと悟空は上空に昇り二人で思い切り気を溜める。

 

「孫悟空!」

 

「ああ、やるぞ!」

 

「「はあああああああっ!!!!!!」」

 

ベジータは周りのシャドウを一掃すると両手を前に突き出して構えた。

 

「ファイナルフラッシュ!!!」

 

ベジータのファイナルフラッシュが上空のエネルギーにむけて放たれる。

 

「か……!」

 

「め……!」

 

「は……!」

 

「め……!」

 

「「波─────ッ!!!!!」」

 

ブラックと悟空のかめはめ波も合わさり、上空に浮かぶエネルギーを3方向から貫いた。

 

「「「ォォォォォォォォォォ………。」」」

 

すると地上に湧き出たシャドウは全て消え去った。

 

「シャドウが……消えていくわ!」

 

「やった……!!」

 

「これで安心でございますね!」

 

ペコリーヌ達はシャドウとの戦いで力を使い果たし地面に膝をつく。

 

「よくやったなおめぇら。後はオラ達に任せて休んでてくれ!」

 

悟空、ベジータ、ブラック、ターレスは再び上空を見上げる。

 

「え?まだ何か……?」

 

ペコリーヌ達は全てが終わったと思っていた。

 

「……肝心な奴が残っている。来るぞ!」

 

ベジータがそう叫ぶと、空からとてつもない力を持った黒い翼の生えた少年が降りてきた。

 

「やあ皆。まさかここまで素晴らしい実験が出来るとは思わなかったよ。」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

空から降りてきたのは何故か背が縮み少年の姿になっているフューだった。

 

「フュー!?おめぇなんだその姿は……!」

 

突然幼い見た目になったフューに対し悟空は驚く。

 

「あっはは!これが『暗黒王』になった僕の姿さ。」

 

フューは悟空達がランドソルモドキで戦っている間に強大な力を手に入れていた。

 

「……前までのフューの強さとは比べ物にならないな……。」

 

「当然さ。君たちのおかげで『宇宙樹』のエネルギーも溜まったんだ。全ての宇宙からのエネルギーだけじゃなく、全ての時空、全ての並行世界に根を伸ばしていたんだ。今頃この星だけじゃなく、宇宙樹の影響で全ての世界で混乱が起きているだろうね。」

 

フューの前に言っていた神精樹よりも恐ろしい植物は宇宙樹のことだった。既に戦いのエネルギーは集まっており、新たな宇宙の誕生までは時間の問題だった。

 

「………。」

 

「くっ……!」

 

するとフューはターレスを見てニヤリと笑った。

 

「やあターレス。君がそっち側に味方するとは思ってもなかったよ。」

 

「ほざけ……!オレ達諸共このランドソルモドキで葬るつもりだったのだろう?もうお前の言いなりにはならねえ!」

 

「……ははっ!それじゃあ最後に、実験の邪魔をとことんしてきた君たちを消してあげるよ……!」

 

フューの気がまた一段と膨れ上がった。

 

「……ベジータ!あれやるぞ!」

 

「どうやら……それしか勝つ方法はないみたいだな。」

 

「…………。」

 

悟空、ベジータ、ブラックはフューの攻撃に備える。

 

「ゴクウさん達、大丈夫でしょうか……。」

 

「アイツらなら大丈夫よ。きっとね……。」

 

ペコリーヌ達は3人を見守る。

 

「助け合いってやつかい?つまらないね。」

 

「「「!!!」」」

 

フューは黒い翼から無数のエネルギー波を悟空達に放った。

 

「あんた達!!!」

 

「そ、そんな……!!」

 

「なんという威力だ……!」

 

ペコリーヌ達はただ見守ることしか出来なかった。

 

『…………。』

 

「…………。」

 

一発一発が宇宙を滅ぼしかけない威力の攻撃が悟空達に直撃した。

 

「ん?どういう事だ……。」

 

煙の中から現れたのは紅と青の輝く光の球体だった。

 

「「「「!!!!」」」」

 

「まさか………!」

 

次の瞬間、二つの光は砕け、中から二人の戦士が現れた。

 

『…………。』

 

「…………。」

 

ベジットの時とはまた違う特殊な衣装を着ており、青色と銀色のオーラを身にまとっている。

そしてブラックは薔薇色の髪が腰の辺りまで伸び、まるで悟空の超サイヤ人3の様な容姿になり圧倒的なプレッシャーを放っていた。

 

「また変身したのか……!」

 

すると二人の戦士は真っ直ぐフューを睨む。

 

『……オレは「ゴジータ」だ。貴様を地獄におくってやるぜ。』

 

「……この姿を見せるのはお前が初めてだ。」

 

天下無双の戦士ゴジータと超絶覚醒のブラックがフューとの最終決戦に臨んだ。



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ハッピーエンドのその先で

ランドソルモドキ

 

 

 

暗黒王になったフューは、ゴジータ、ブラックと激しい戦いを繰り広げていた。

 

「ぐっ……!!」

 

戦況はゴジータ、ブラックの方がまだ余裕を残し優勢だった。

 

「フュー!!お前はもう終わりだ……!」

 

「……っ!!」

 

膝をつくフューにブラックはそう言い放つ。

 

「ゴクウさん達が押してます!!このままいけば……!!」

 

「いや……まだだ。」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

ペコリーヌが勝利を確信すると、ターレスがその言葉を遮る。

 

「……フューはまだ奥の手があるようだ。」

 

「「「「「ええええ!?」」」」」

 

ペコリーヌ達はゴジータの方に目を向ける。

 

『……もっと、もっとだ!!もっと光を……!』

 

ゴジータの力が高まっていく。

 

『うおおおおおおおお!!!!これで終わりだ……!!』

 

「はあ─────っ!!!」

 

ゴジータとブラックは渾身の気弾をフューに放った。

 

「…………!!」

 

二つの気弾はフューに命中し巨大な爆発音が辺りに響き渡った。

 

「「なっ………!!」」

 

するとフュージョンが解け二人は元に戻ってしまった。

 

「フュージョンが解けちまった……!」

 

「くそ……力を使いすぎたか……!」

 

「悟空さんとベジータさんの合体が……!」

 

「そんな………!!」

 

すると煙の中から二人の攻撃を受けたフューが姿を現した。

 

「……危ない危ない。あっはは!さっきので全力だと思ったかい?」

 

「……馬鹿な!」

 

フューは二人の攻撃を受けてもなおダメージを負ってはいなかった。

 

「君たちの合体が解けるのを待ってたんだよ。君一人だけなら全く問題ないからね!」

 

「なっ!!」

 

「「「「!?」」」」

 

するとフューは目にも止まらぬ速さでブラックの後ろに回り込み地面に殴り飛ばした。

 

「うわあああああっ!!」

 

「ゴクウ(さま)(さん)!!」

 

すると悟空とブラックはボロボロの状態で立ち上がった。

 

「おめぇの好きには……させねぇぞ……!」

 

「お前を倒せば……全てが終わる……!」

 

それをみたフューは呆れたような表情で赤黒いエネルギーを片手で作った。

 

「はぁ……まだ立つのかい?そろそろ終わりにさせてもらうよ。はぁっ!!」

 

「くっ……!!」

 

「ぐっ……!」

 

フューのエネルギーが間近に迫るその時だった。

 

「なに!?」

 

「どういう事だ!?」

 

謎の結界がフューの攻撃を跳ね返した。

 

「お、おめぇは……!」

 

「……アメス!?」

 

アメスがフューの攻撃から悟空とブラックを守った。

 

「また面倒なやつが……!」

 

するとアメスは二人の背後に立つ。

 

「説明は後よ!長くはもたないから二人とも気を思いっきりあげちゃって!」

 

「やるっきゃねぇか……はああああ!!!」

 

「……はあああああっ!!!」

 

アメスに言われた通り、悟空は超サイヤ人ブルー、ブラックは超サイヤ人ロゼにそれぞれ変身し限界まで気を高めた。

 

「いくわよ……はあっ!」

 

「「!?」」

 

するとアメスは悟空とブラックの背中に手をおき、力を込めた。

 

「なんだ……!」

 

フューもその様子をうかがっていた。

 

「アタシの力を使えば……あんた達の気を融合できる!今のフューと闘うにはもうこの手しかない!」

 

悟空とブラックの気が合わさり、やがて金色に輝くオーラになり、赤と青の紋章のようなものが二人の背後に浮きでてきた。

 

「カ、カカロットとブラックの気が混ざっていく……!」

 

「まさかそんな奥の手を隠していたとはな……。」

 

ベジータとターレスも二人の様子をみていた。

 

「「うおああああああああ!!!!!」」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

二人の気は完全に融合し、一つの大きな金色に輝くオーラができた。

 

「「か……め……は……め……!!!!!」」

 

悟空とブラックはお互いに気を溜める。

 

「ふん………。」

 

フューは悟空達の攻撃に備え、何枚もの分厚いシールドを重ねて展開した。

 

「「はああああああああ!!!!!」」

 

その刹那、爆発したかのようなエネルギーがフューを目掛けて一直線に放たれた。

 

「!?」

 

そのエネルギーはフューの展開したシールドを難なく突破し、フューに直撃した。

 

「ぐが……!!」

 

直前に防御はしたものの、凄まじいエネルギーだったためかなりのダメージを負った。

 

「「はぁ……はぁ……!!」」

 

二人の気はまた別々に戻ってしまった。

 

「……これでも倒せねぇんか……!」

 

「しつこい奴だ……!」

 

「なんて強大で邪悪なパワー……!」

 

フューは煙をはらい姿をみせる。

 

「大分危なかったよ……!それに、邪悪かなんてどうでもいい事だよ。僕はただ知りたいだけなんだ。この宇宙の成り立ち、神、そして全王!!その為に宇宙をやり直す!どうだい?ワクワクするだろう?」

 

「ふざけるな!キャル達の世界を無茶苦茶にしていい理由にはならないぞ!」

 

「ブラック……!」

 

「仕方ない……邪魔者は排除しないとダメみたいだね。」

 

するとフューは片手を上に挙げた。

 

「宇宙樹よ!僕に力を注げ!!!」

 

するとフューの体に全宇宙から集めた強大なエネルギーが流れ込んでいく。そのエネルギーは体内には収まりきらず、フュー全体を包み込み、禍々しいエネルギーの塊の羽がフューに生えた。

 

「……いひっ。」

 

「!?」

 

フューはそのエネルギーの塊でできた羽で悟空を一瞬で地面へと吹き飛ばした。

 

「うわあああああああ!!!!!」

 

「カカロット!!」

 

「悟空さん!!」

 

倒れる悟空にペコリーヌ達は駆け寄る。

 

「あっはは!次はもつかな?」

 

「「「!?」」」

 

フューの羽が悟空達に迫るその時だった。

 

「なっ……!?」

 

「…………ぐぐっ……!!」

 

ブラックが全身を使ってフューの羽を掴んでいた。

 

「ゴクウ!!!」

 

「ブラック……!!」

 

「だあああああああっ!!!!」

 

ブラックは気合いでフューの羽を引きちぎった。

 

「は、羽をちぎった!?」

 

しかし、ちぎった羽は凶暴なエネルギーなため、その影響でブラックの上半身の服は破け、身体を襲い蝕んでいった。

 

「ぐわああああああ!!!」

 

「切ったはいいけど考えが足りなかったね。膨大なエネルギーに君の身体じゃ耐えられないよ!」

 

フューは勝ち誇った顔でブラックに忠告をした。

 

「ぐわあああ………ぐぐぐ……!!」

 

「「「!?」」」

 

だがブラックは暴れるエネルギーを堪え両手を上に挙げる。

 

「……オレにも……できるはずだ……!!」

 

「なにっ!?」

 

するとエネルギーは邪悪な色から薔薇色に変わっていきブラックはそのエネルギーを体内に取り込んだ。

 

「ぐぐぐぐ………!!!」

 

「まさか……コントロールしたのか!?」

 

フューの問いかけにブラックはニヤリと笑った。

 

「どうやら……そうらしいな……!」

 

「……もういいよ。この宇宙と君を本気で消してやる!!」

 

フューは激怒しブラックに飛びかかった。

 

「はああああ!!」

 

ブラックはフューの攻撃を片手で受け止めフューを弾き飛ばす。

 

「ぐ………!!」

 

「何処をみている!!」

 

「!!」

 

一瞬隙が生まれたフューにブラックは上空から思い切り蹴りを入れた。

 

フューは目に見えないほどのスピードで地面に叩きつけられた。

 

「フュー……お前の好きにさせる訳にはいかない!」

 

「うるさあああい!!!!!僕の実験の邪魔をするなあああああああ!!!!」

 

「…………。」

 

ブラックは勝負を決めにかめはめ波の構えをとりエネルギーを溜める。そして同じくフューも自身の最強の技で勝負を決めにいった。

 

「はあああああああ………!!」

 

「…………………………………!!」

 

ランドソルモドキの上空に浮かぶのは二人の姿と赤黒く大きいフューの作り出したエネルギーだけ。

 

そして次の瞬間────

 

 

「波─────────ッ!!!!!!!」

 

「うおわあああああああっ!!!!!!!」

 

 

二人の技が衝突しあい、宇宙全体が震える。

 

「があああああああっ!!!!!」

 

「ぐうううううううっ!!!!!」

 

最初は全くの互角だったがブラックの気がじわじわと上がっていく。

 

「ぐぎぎぎ…………はああああああ!!!!!」

 

「!?」

 

更に出力の上がったかめはめ波はフューのエネルギーを貫いた。

 

「……そんな……!!!この世界にまだこんな可能性が……!!」

 

エネルギーはフューを呑み込んでいき巨大な爆発を起こした。そして、もうフューの姿を見ることはなかった。

 

全てのエネルギーを出し尽くした宇宙樹も枯れた。

 

「……や、やったんですか……!?」

 

「フューを倒したのね!?」

 

「やはりゴクウさまは凄いです……!」

 

ペコリーヌ達は心配そうな顔でブラックに駆け寄る。

 

「終わったな………。」

 

「……ああ。」

 

ベジータもブラックをみて少し笑った。

 

「……皆さん!ランドソルに戻りましょう!これからは皆一緒に…………?」

 

「あの……どうされたのですか?」

 

「ゴクウ……早く帰りましょう?」

 

ペコリーヌ達は嬉しそうにブラック達に話しかけるがブラック達は少し暗い顔をしていた。

 

「……いや、ここでお別れだ。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「ブラック、おめぇ……。」

 

「ブラック……。」

 

「……チライが……待ってる。」

 

「……ふん。」

 

悟空、ベジータ、ターレスブロリーは何となく察していた。

 

「どうしてですかゴクウさん!!私たち……また再会できたんですよ!?なんでお別れなんですか!?」

 

「ゴクウ……なに言ってんのよ!!これからじゃない!私たちの……美食殿の活動はこれからでしょ!?」

 

「ゴ、ゴクウさま……!?」

 

「ゴクウ……なんで!?」

 

悟空は今にも泣き出しそうなペコリーヌの肩に手をおいた。

 

「ペコリーヌ、ブラックの言う通りだ。オラ達、もうここにはいらねねえ……。」

 

「そんな悟空さん……!なんで……!!」

 

「オレ達は別の世界から来た……。これ以上お前たちの冒険に踏み入る訳にはいかない。本来、オレたちがいないのが普通なんだ。」

 

ベジータも辛そうな顔をしながらペコリーヌ達に説明をした。

 

「そんな……そんなのって……!」

 

するとブラックは泣いているキャルの頭に手をおいた。

 

「やり残したことがあるだろう?再構築前の世界……お前達の手で決着をつけるんだ。」

 

「……あ、あんたも来なさいよ!私たちじゃ……!」

 

「甘ったれるなキャル!」

 

「!?」

 

ブラックは少し強めに言葉をかける。

 

「……お前は本当に強くなった。オレ達が居なくても、皆で協力すれば大丈夫だ……絶対だ!」

 

「う……うぅ……。」

 

「ゴクウさま…………。」

 

「ゴクウ……。」

 

「ゴクウさん…………。」

 

ブラックはペコリーヌ、ユウキ、コッコロ、キャルを抱き寄せた。

 

「「「「!!!!」」」」

 

「頼もしくなったな……見違えたぞ……。」

 

「ゴクウさん……!」

 

「あんた……!」

 

「ゴクウさま……!」

 

「ゴクウ……!」

 

そしてブラックはアメスの方をみた。

 

「な、なによ……!」

 

「アメス……色々と世話になったな。お前がいなかったらダメだったろうしな。」

 

「いいのよ。私もあんたといられて楽しかったわ。」

 

アメスも少し微笑んだ。

 

「孫悟空、ベジータ。」

 

「ん?」

 

「なんだ。」

 

ブラックは隠し持っていた最後のドラゴンボールを悟空に渡した。

 

「ドラゴンボール!?集めてくれてたんか!」

 

「なるほど……神龍に頼むわけだな。」

 

悟空はドラゴンボールを7つ地面に置き、叫んだ。

 

「いでよ神龍!!そして願いを叶えたまえ!」

 

悟空がそう叫ぶと空が暗くなり、緑色の巨大なドラゴンが姿を現した。

 

『ドラゴンボールを七つ揃えしものよ。お前の願いを3つだけ叶えてやろう。』

 

「……神龍!!この世界を再構築前の世界に戻すことってできるか?」

 

『可能だ。』

 

「それじゃあオラ達を元の世界に帰した後にこの世界を再構築される前の世界に戻してやってくれ!」

 

『了解した。』

 

神龍の目が赤く光り、悟空、ベジータ、ブラック、ターレス、ブロリーの5人は白い光に包まれた。

 

「皆さま……!!」

 

「本当に行ってしまわれるのですね……。」

 

「ゴクウ……!!」

 

「あんた達……!!」

 

悟空は少し寂しそうな顔をしながらもニヤリと笑う。

 

「ペコリーヌ、おめぇともう一度戦いたかったな……!コッコロ、おめぇの飯、最高だったぞ!色々と世話してくれてあんがとな!キャル、ペコリーヌ達と仲良くしろよ!ユウキ、おめぇの力はもっとすげぇ!自身を持てよ!」

 

そしてベジータもそっぽを向いてはいるがペコリーヌ達に言葉をかける。

 

「……お前達、鍛錬は怠るなよ。」

 

そしてブラックも最後にもう一度ペコリーヌ達を見る。

 

「……お前たちが命をかけて守らなければいけないものは、この世界に生きる全ての人々の平和だ。元気でな。」

 

「またな!!」

 

そして、ブラック達は皆に見送られながらこの世界から去っていった。



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幕間

悟空、ベジータ、ブラック、ターレス、ブロリーはフューを倒し元の世界へと帰ってきた。ブロリーは神龍が機転を効かせ惑星バンパへと戻って行った。

 

 

「懐かしいなー西の都!!」

 

「おい、お前たちはこれからどうするつもりだ?」

 

ベジータはターレスとブラックにこれからのことについて問いかけた。

 

「今更暴れる気はねぇよ。オレは自分のペースで修行でもするさ。」

 

ターレスは以前のように神精樹の実に頼らずに修行することを誓った。

 

「そうだ。それでこそサイヤ人だ。ブラック、貴様はこれからどうするんだ?」

 

「オレは……ゴワス様の所へ行くつもりだ。今更合わせる顔がないがな……。一度、謝らなければならない。」

 

ブラックは心の底から自分が過去に犯してしまった罪を償おうとしていた。

 

「孫悟空、ベジータ。世話になったな。」

 

「ふん、世話をしたつもりなどない。今度は道を間違えないことだな。」

 

「ブラック、おめぇすんげぇ強くなってて驚いたぞ!また今度戦ってくれよな!」

 

「ああ……!」

 

ベジータとターレスはそれぞれ帰って行った。

 

「あ、そうだ!オラおめぇに教えてぇ技があんだ!」

 

「技……?」

 

悟空はブラックを呼び止めるとブラックにその技を伝授した。

 

「……この技は……。」

 

「おめぇなら筋がいいからすぐにできっさ!そんじゃあ今度こそまたな!」

 

悟空もブラックに技を教えて帰って行った。

 

「……孫悟空……。」

 

 

 

その後3人と別れたブラックは第10宇宙の界王神、ゴワスのもとに来ていた。

 

「……ただいま戻りました。ゴワス様。」

 

「ザ、ザマス……!」

 

少し動揺しているゴワスだったがブラックからは以前のような邪悪さは感じられず、そこに関しても驚いていた。

 

「……ゴワス様。私は間違っていました。人間は不要な存在ではありませんでした。」

 

今まで人間と過ごしてきたブラックは自分の考えを改めた。

 

「うむ……全て見ていたぞ。ザマス。」

 

「!?」

 

ゴワスはテーブルの上に少し大きな水晶を置く。

 

「ゴワス様……それは……。」

 

「これでザマスと人間達がどうしているか観察していたのだ。だがもう、何も心配はいらないようだな。」

 

「……では、私が仮面を被り操られたことも……。」

 

「しっかり見ていたぞ。だがお前は洗脳されていたとはいえ、洗脳から解かれた後は彼女達の為に、共に戦おうとした。私はそれが一番ザマスの成長を感じ嬉しかった。」

 

「……。」

 

「……!!そ、そういえばキャル達はどうなったのですか!?再構築された後の世界では……!」

 

ブラックはキャル達の事が心配でその後のことが気になっていた。

 

「心配はいらない。彼女達はエリスと無事に決着をつけられたようだ。」

 

「……そうですか。よかった……。」

 

ザマスが安心すると、ゴワスは突然衝撃的な言葉を口にした。

 

「……お前も行きなさい。ザマス。」

 

「!?」

 

ゴワスはキャル達のもとにブラックを行かせようとしてきた。

 

「な、何故ですか……!私はもうキャル達の世界に踏み入っては……。」

 

「……お前こそ何を言う。今更ザマスが関わった所でもともと彼女達の冒険に最初からいたのだ。このままお別れなんて無責任ではないか?」

 

「そ、それは………。」

 

「それに……お前は前の世界では英雄かも知れないが、この世界ではお前を良く思わない人間や神が多数いる。もっと人間との理解を深め、沢山の事を学んできなさい。」

 

ゴワスのこの行動はザマスを思っての行動だった。

 

「……ゴワス様。一つ、お願いがあります。」

 

「なんだ?」

 

ザマスは一つゴワスに頼みたいことがあった。

 

「私の神の力を封印してください。」

 

「なんと……!」

 

ゴワスもザマスの口からそのような言葉が出るとは思わなかった。

 

「……私はもう神ではありません。アイツらと過ごしてきて分かったんです。神も人間も違いなんてない。私は人間として、サイヤ人としてアイツらを守っていきたい。」

 

「本気なのか、ザマス……!」

 

「はい……これは私への罰です。だから……もう二度とこの力が使えないように……。」

 

するとゴワスはブラックの胸に手を当て封印を施した。

 

「……ザマス。一度人間として生きることを選べば二度と神には戻れん。」

 

「……これでいいんです。ありがとうございます。ゴワス様。」

 

「……うむ。ではそちらの世界にお前を移す。人間達の平和は……お前達が守るのだぞ。」

 

そしてブラックはゴワスの前から姿を消した。

 

「……もうこの水晶を通して見ることも無いだろう。ザマスなら大丈夫だ……。」



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プリンセスコネクト!Z
謎に包まれた少女


フューとの激闘は終わり、再構築される前の世界に戻ってきたペコリーヌ達は決して少なくはない犠牲を出しつつもエリスとの決着を無事につけることができ、皆はそれぞれの生活に戻って行った。

そしてあれから数年が経った。

 

 

 

 

「……暇だわ……。」

 

キャルはテーブルに突っ伏しながらストローをガジガジと噛む。

 

「お行儀が悪いですよキャルさま。主さまが真似してしまいます……。」

 

「それにしても本当にやる事がないですね。何か面白いこととかないですかね〜。」

 

「でも平和が一番だよ。」

 

ペコリーヌ、コッコロ、キャル、ユウキの4人は全ての戦いが終わり、平和を満喫していた。

 

すると、一人の見知らぬ少女がペコリーヌに話しかけてきた。

 

「あっ!ペコリーヌさんですよね!」

 

「「「「????」」」」

 

4人は突然話しかけてきた少女の顔を全く知らない。

 

「……あの、何処かでお会いしましたか?」

 

ペコリーヌは不思議そうな顔で問い返した。

 

「いえ、まだ会ったことはありません。でも、私はあなた達の事を知っています。」

 

「「「「????」」」」

 

益々何言っているのか分からない4人は首を傾げる。

 

「あんた誰よ?誰かの知り合い?なんであんたが私たちのことを知ってるわけ?」

 

「……お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

「いや……あはは。」

 

キャルとコッコロも問いかけるが少女はその質問を濁す。

 

「……それよりも、あなた達に重要な知らせを持ってきたんです。」

 

「「「「知らせ?」」」」

 

「これから『ゴクウ』さんを出迎えにいくんです!皆さんも一緒に来ませんか?」

 

「「「「!?」」」」

 

「え!?嘘でしょ!?ゴ、ゴクウ……!?」

 

「ゴクウさんが!??」

 

「ゴクウさまが!?」

 

「本当に!?」

 

4人は椅子から飛び上がりブラックが帰ってくることを喜んだ。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!なんであんたがアイツが帰ってくることがわかるのよ!」

 

「……秘密です。私に着いてきてください。」

 

そういうと少女は何も無い高原へと歩き出した。

 

「誰だろう?」

 

「……あいつ何者なのかしら?」

 

「……わかりません。ですが私たちの事を知ってるとは一体どういう事なのでしょうか?」

 

「不思議な方ですね。」

 

 

誰もいない高原

 

 

 

「ここで大丈夫だと思います。」

 

「「「「????」」」」

 

「えっと……何もありませんが……。」

 

「まあまあ、もうちょっとですよコッコロさん。あ、ほら来た。」

 

「「「「!?」」」」

 

少女が空を見ると何やら一人の人物が降ってくる。

 

「ええええ!?」

 

「あれって…………!!!」

 

「まさか…………!」

 

「ゴクウ!?」

 

ブラックが空から降ってきた。

 

謎の少女↓

 

【挿絵表示】

 

 



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第七章 シャルル編
謎の少女「シャルル」


ゴワスにこちらの世界に移させられたブラックは何故か上空にテレポートしていた。

 

「何故空にテレポートされたのだ!!……まあいい、体勢を立て直して……立て直し……!?」

 

ブラックは気を集中するが身体が浮かぶどころかどんどん急降下していく。

 

「何!?飛べないだと……!!くそ、仕方ない。受け身だけは取るか……。」

 

覚悟を決めたブラックはガードを固めながら地面にそのまま激突した。

 

「……何故飛べない。飛ぶことは神の技では無いはずだが……。ん?」

 

ブラックはゆっくりと立ち上がり周囲を確認する。すると何やら目に涙を浮かべている人物が4人いた。

 

「おまえら……!?」

 

ブラックが見た人物はキャル達だった。

 

「ゴクウ……よね!?」

 

「ゴクウさま!?」

 

「本当に降ってきた!」

 

「ゴクウさん!」

 

キャル達は未だに信じられないような顔でブラックを見た。

 

「どうしてここにお前たちが……。」

 

「ああ……それはこの娘が教えてくれたんです。」

 

ブラックが驚いていると一人の少女が前に出る。

 

「初めまして。ゴクウさんですよね。」

 

見覚えのない少女にブラックは少し戸惑う。

 

「誰だ……?」

 

「……ごめんなさい。私のことはまだあなたには言えないんです。少し、ここでキャルさんと待っててもらえますか?3人と話したいことがあるんです。」

 

「ちょっと!私とゴクウだけ仲間はずれ!?」

 

「すみません……理由はどうしても言えないんです。」

 

「はあ……わかったわ。ゴクウとは積もる話もあるしさっさと話してきなさい。」

 

「ありがとうございます。」

 

ペコリーヌ、コッコロ、ユウキと謎の少女は離れた場所に歩いていった。

 

「…………不思議なやつだな。」

 

ブラックはその後ろ姿をみてポツりと呟いた。

 

「それにしても久しぶりね。もう二度と戻ってこないと思ってたわ。」

 

キャルは嬉しそうにブラックに話しかける。

 

「ゴワス様に……師匠に背中を押されたからな。こっちの世界でもっと人間のことについて学んでこいとな……ん?キャル。お前少し大きくなったか?」

 

ブラックはキャルの身長が少し大きくなってることに気づいた。

 

「当たり前でしょ。あれから数年経ってるんだから。コロ助もデカくなったわよ。でもあんたは全然見た目が変わらないのね。」

 

「……時間の流れが少し違うらしいな。こっちの数年は私の世界の数時間程か……。」

 

「え!?それって……あの時のままってこと!?」

 

「そういうことだ。」

 

「いいわよね……あんたは歳をとらなくて。」

 

 

 

一方、謎の少女に呼び出されたペコリーヌ達は……

 

「それじゃあ……皆さんに知って頂きたい重大なことがあるんですが……これから話すことは絶対に他の人に言わないでください。」

 

「私口は硬い方ですから大丈夫です!」

 

「はい。決して口外致しません。」

 

「うん!僕もしないよ!」

 

すると謎の少女は安心したのかゆっくりと話を始めた。

 

「……みんな、信じてくれるか分からないけど……私は未来から来ました。」

 

「「「未来!?」」」

 

3人は驚きで口を開けたまま固まった。

 

「はい。今から18年後の未来から来ました。」

 

「「「18年後!?」」」

 

次から次に衝撃的なことをカミングアウトする謎の少女にペコリーヌ達は驚愕する。

 

「……私の名前は『シャルル』。ゴクウさんの娘です。」

 

「ん?」

 

「はい?」

 

「え?」

 

ペコリーヌ達は一瞬沈黙し……

 

「「「えええええええええええ!?」」」

 

更っと口に出した言葉にペコリーヌ達は人生で一番の衝撃をうけた。

 

「ごごごご……ゴクウさんの娘……!?」

 

「ゴクウの!?」

 

「ゴクウさまの…………!?」

 

驚きすぎてペコリーヌ達は腰が抜けたようだ。

 

「何やってんだあいつら。」

 

「さあ?なんかビックリしてるけどどうしたのかしら?」

 

ブラックとキャルも遠くから呆れたように様子を見ていた。

 

「あ、ごめんなさい。こんな事を話に来たのではないんでした。話を戻しますね。」

 

「は、はい……。」

 

「続けてください……。」

 

「うん……。」

 

3人は疲れた様子だった。

 

「……あなた達はフューという敵を倒し、ドラゴンボールで再構築前の世界に戻ったと思うんですけど……。」

 

「はい。確かにそうしました……。」

 

ペコリーヌは今までの出来事を整理する。

するとシャルルはとんでもない事を言い出した。

 

「……願いは3つ叶えられるはずですがあなた達は2つしか願いを言わなかった。」

 

「「「!!!」」」

 

「た、確かに……再構築される前の世界にきた時にはドラゴンボールが私たちの前から無くなっていました。」

 

「それでどうなったの?」

 

ユウキはそれで未来がどうなったのかを知りたかった。

 

「……3つめの願いが悪用された可能性があります。」

 

「「「!?」」」

 

シャルルは顔をしかめ拳を強く握った。

 

「今はまだこの世界は平和かもしれませんが……3年後にとてつもない力を持った魔人が人間を襲うんです。」

 

「「「魔人!?」」」

 

「……本来現れる筈がないんです!ですが……フューがあらゆる時代から戦士を集めた影響で時空が歪み、本来いるはずの無い敵が現れたんです。」

 

「……そんな!未来の私たちってどうなっちゃったんですか!?」

 

シャルルは肩を震わせ重い口を開けた。

 

「……数年後に戦えるのは私しか残っていません。」

 

「「「!?」」」

 

「……皆さんは死んでしまったんです。」

 

「ええ!?」

 

「そ、そんな……!」

 

「なんで……!」

 

「強すぎるんです……あの魔人は……!」

 

シャルルは悔しそうに話した。

 

「……ゴ、ゴクウさんはなんで死んでしまったんですか!?ゴクウさんはとっても強いのに……!」

 

「そうです……ゴクウさまが簡単に負けるなどありえません!」

 

「ゴクウは強いよ!」

 

しかしシャルルは首を横に振った。

 

「……ゴクウさんは戦っていません。」

 

「……どういうことですか?」

 

ペコリーヌが問うと、帰ってきた言葉は耳を疑う内容だった。

 

「……ゴクウさんは……父は、私が産まれてすぐに『心臓病』で亡くなってしまいました。」

 

「「「え…………???」」」



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未来からのSOS

第10宇宙 界王神界

 

「おっす!ゴワス様、オラに用ってなんだ?」

 

「これはこれは悟空さん……遠路遥々ようこそおいでくださった。貴方にザマスについて聞きたいことがあるのだ。」

 

悟空は第10宇宙界王神のゴワスに呼び出されていた。

 

「ザマス?ブラックの事か?」

 

「そうだ。そちらの世界で共に戦ったザマスにおかしな所はなかったかをお聞きしたい。」

 

ゴワスは何か焦っているのか少し落ち着きがない様子だった。

 

「おかしなところって言ってもなあ……。オラ達はフューと戦って……ブラックもすんげぇ強くなってて驚いたなぁ……。でも最後にブラックが宇宙樹のエネルギーを吸収した時の力はすんげかったぞ!!」

 

悟空のこの発言でゴワスの額に汗が滲んだ。

 

「宇宙樹……!?今宇宙樹と言ったのだな!?」

 

ゴワスの冷静さが消えた。

 

「お、おう……それがどうかしたか?」

 

「なんという事だ……宇宙樹とは、全宇宙に根を伸ばして全てのエネルギーを吸って成長していく禁忌の植物だ……!ザマスはその力を吸収したのか!?」

 

「どうしたんだよゴワス様……顔色悪ぃぞ?ブラックに何かあったんか?」

 

悟空もゴワスの様子がおかしいと思いなにがあったのか聞いた。

 

「……私はザマスの神の力を封じあの世界へ戻した。しかし……宇宙樹のエネルギーを体内に吸収したザマスの力は既に変身などしなくとも十分に神の力を超えていただろう。」

 

「神の力……?それってどういう事だ!?」

 

ゴワスは拳を強く握りしめ言葉を絞り出す。

 

「……今のザマスは大半の力を失っているということだ。恐らく……飛ぶことすらままならないだろう……。」

 

「なんだってえええ!???」

 

悟空は大声をあげて飛び上がった。

 

「なんでブラックの力を封じちまったんだよゴワス様!!勿体ねえよ!あいつはまだまだ強くなるのによ……!」

 

「……神の力を封じることを望んだのはザマスなのだ……。ザマスは人間として生きることを選んだのだ。」

 

「で、でもよぉ……なんとかならねぇんか!?オラ、もう一度アイツと戦いてぇ……!」

 

「うむ……私もどうするか今考えてるところだ……。どうしたものか……。」

 

 

 

────────────────────

 

 

 

ランドソルから少し離れた高原

 

 

 

「ゴクウさんが……病気で……!?」

 

「そんな……!」

 

「ゴクウが病気!?」

 

ペコリーヌ達は未来のブラックが病気によって亡くなったことについて驚いていた。

 

「……私が産まれて直ぐに亡くなってしまったので顔をみたり会話をしたことはないんです。」

 

シャルルは悲しそうに経緯を語った。

 

「そうだったのですね……。」

 

「ゴクウさんでも病気には勝てなかったんですね……。」

 

「…………。」

 

ブラックが死ぬとわかったペコリーヌ達の顔は一気に暗くなる。

するとシャルルはペコリーヌ達を元気づけようと話題を変えた。

 

「で、でも……ママからはとっても強くて優しい人って聞いてはいました!」

 

「「「ママ???」」」

 

ペコリーヌ達はシャルルの言った『ママ』という単語に引っかかった。

 

「その……シャルルさまのお母さまとは……。」

 

コッコロが恐る恐る聞くと……

 

「はい。私のママはあそこにいる……。」

 

シャルルが見た方向にいた女性は黒猫少女ただ一人。

 

「キャ……キャ……キャルちゃんんんん!?」

 

「キャルさまとゴクウさまが!????」

 

「えええええええ!?????」

 

驚きのあまり3人は尻もちをついた。

 

「ペコリーヌ達また何か驚いてるわね。」

 

「……そうだな。」

 

当の本人達は何食わぬ顔で様子をみている。

 

「言われてみれば……似てます!!どことなくキャルちゃんの面影があります!!」

 

「はい……とてもキャルさまに似ております……。」

 

「ほんとだ……似てる!!」

 

「ふふ……信じて貰えてよかったです。」

 

シャルルは満足そうに笑った。

 

「それじゃあコッコロさんに渡したい物があるんです。」

 

「わたくしにですか……?」

 

するとシャルルは懐から小さいカプセルを取り出しコッコロに渡した。

 

「これは……。」

 

「それは心臓病の薬です。未来では心臓病の特効薬があるんです。」

 

「特効薬……ということはこれがあればゴクウさまは……!!」

 

「助かるってことですか!?」

 

「はい。この世界のお父さんには生きていて欲しいですから。」

 

「ゴクウ助かるならよかった!」

 

ブラックが死なないとわかったみんなの表情はまた明るくなり笑顔が戻った。

 

「症状がでたらお父さんに飲ませてあげてください。3年後……私がまだ生きていたら必ず応援に駆けつけます!」

 

「いろいろとありがとうございました。シャルルさま。」

 

「僕、もっと強くなるよ!!」

 

「そうですね、私も強くなって悟空さんをサポートします!……シャルルちゃんの未来も変わるといいですね。」

 

「……はい。それではまた3年後に……!」

 

シャルルはそう言うと空を飛んで何処か遠くまで行ってしまった。

 

「シャルルちゃん……ゴクウさんは絶対に死なせません。どうか無事で……。」

 

ペコリーヌ達はシャルルが見えなくなるまで見送った。



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差し伸べた手

コッコロ達はシャルルの正体を明かさないようにしながらブラックとキャルにこれから起こる出来事を話した。

 

「魔人だと……?そんな奴が現れるというのか……。」

 

「3年後ってすぐじゃない!ど、どうしよう……!あ、でも……フューを倒したアンタがいればその魔人なんて楽勝よね……!」

 

キャルはブラックが居ることに安心して息を吐く。

 

(確かに心臓病の薬があればゴクウさんは死なずに共に戦ってくれるはずです!)

 

ペコリーヌもそんな事を考えているとブラックの背後に馬車が通った。

 

「あ、ゴクウさん。馬車が近くまで来てますので避けてあげましょう。……ゴクウさん!?」

 

「……!」

 

しかしペコリーヌが声をかけたにも関わらず、ブラックは近くまで来ていた馬車に気づかずに衝突してしまった。

 

(馬車……!?いつの間に背後に……。)

 

「何道の真ん中で立ってんだ!危ねぇだろ!」

 

馬車の中にいた人は怒りながら馬を走らせすぐに去っていった。

 

「ゴクウさま!?」

 

「ゴクウ!?」

 

「ゴクウさん大丈夫ですか!?」

 

「ちょっとゴクウ、何ボケっとしてんのよ。アンタらしくないわよ。」

 

キャルは呆れたように地面にうつ伏せに横たわるブラックに手を差し伸べる。

 

「……すまない。」

 

ブラックは擦りむいて口の中が切れたのだろうか口元の血を拭いながらキャルの手を掴み立ち上がった。

 

「ゴクウさま、こちらへいらしてください。消毒致します。」

 

「大丈夫ですか?痛いの痛いの飛んでけー!」

 

「全く……って…………!?」

 

ここでキャルはブラックの様子がおかしい事に気づいた。

 

(……え?なんでコイツは馬車に小突かれただけでこんなダメージを受けてるの……?私の見間違い?……確かめてみようかしら。)

 

「さて……これで大丈夫です。私は今からお夕飯の買い出しに行ってきますので皆様は先に戻っていてくださいませ。」

 

「僕も行くー!」

 

「じゃあ私も行きます!キャルちゃん達はどうしますか?」

 

「……遠慮しておくわ。」

 

「……私も先に戻るとしよう。」

 

「そうですか……それじゃあ行ってきますねー!」

 

コッコロ達はブラックの消毒をし終わると夕飯の買い出しをしに出かけて行った。

 

(しめた……今が確かめるチャンスだわ!)

 

「……キャル、ギルドハウスに戻るぞ。……!」

 

ブラックが後ろを振り向いた瞬間、キャルの魔法がすぐ真近まで迫ってきていた。

 

「………くっ!」

 

ブラックは咄嗟にガードをするが間に合わずそのまま直撃した。

 

「…………。」

 

キャルはブラックをじっと見つめていた。

 

「……気づいていたのか。」

 

ブラックは顔を俯かせながらキャルに質問をした。

 

「……アンタ、どうしちゃったの……?何かおかしいわよ……!私の魔法も避けられないなんて……一体何があったの?」

 

膝をつき黙り込むブラックにキャルは近寄る。

 

「……ちゃんと教えて?」

 

キャルは優しくブラックに話しかけた。

 

「……私はお前たちと出会う前、数え切れないほど多くの罪を犯してきた。身体を奪い……人間を皆殺しにし、悪の限りを尽くしてきた。神の力に溺れた私の罪を少しでも償えるのは神の力を封印することだ。その結果がこれだ。私の力は今はこの程度なのだ……っ!?」

 

ブラックが言葉の全てを吐き出すとキャルはそっとブラックを抱きしめた。

 

「……アンタっていつも何考えてるか分からなくて、自分勝手で……急にいなくなったりしてさ……ずっと一人だったじゃない?私も同じよ。ペコリーヌ達と出会う前、私には陛下しかいなかった。だから……あんたの背負っているもの、あたしにも背負わせなさいよ。ここまできたら運命共同体ってやつでしょうが……!」

 

「…………!!」

 

お互いに本音をぶつけ合ったのはこれが初めてだった。

 

「……まだ3年もあるんだし、これから強くなっていきましょ?」

 

「……っ……ああ……。」

 

ブラックは立ち上がるとキャルと一緒に夕日を見ながらギルドハウスへと帰って行った。



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迫り来る新たな敵

ブラック達は修行を続け、約1年後に迫る魔人の強襲に向けて各自特訓していた。

 

「……はぁ……はぁ……!」

 

ブラックは酸素の薄い山頂でトレーニングをしていた。

 

(ゴクウさんの動きは2年前と比べてかなり良くなっていますが……。)

 

ペコリーヌもブラックと共に修行をしに山へ来ていたので気になったことを一つ質問した。

 

「……ゴクウさん、身体は悪くないですか?」

 

ペコリーヌはシャルルに言われたブラックの心臓病を心配していた。

 

「……身体?……問題ない。」

 

「そ、そうですか……。」

 

ペコリーヌは特に時間が過ぎてもブラックの身体に異変が起こらないことを不思議に思いつつもいつか来る日のために向けて備えていた。

 

「……先にギルドハウスへ戻っていてくれ。私はまだここで修行を続ける。」

 

「わかりました……無理はしないでくださいね。」

 

ペコリーヌはブラックに言われた通りに先にギルドハウスへと戻った。

 

「…………くっ……この程度では……!」

 

しかし、この時既にブラックのスタミナの消耗が異常に速いことにペコリーヌは気づいていなかった。

 

 

そして月日はあっという間に過ぎていき、魔人が現れるまで1年を切ったある日、新たな命が誕生した。

 

「オギャー……オギャー……!」

 

「はいはい、ママですよー♪」

 

赤ん坊を抱きながらキャルは嬉しそうにあやす。

 

「ふふ……キャルさまの赤ちゃん、とっても可愛らしいです!」

 

「可愛すぎて食べちゃいたいですね!やばいですね!」

 

「キャルの赤ちゃんだ……!」

 

キャルが赤ちゃんを抱いている光景をペコリーヌ達は優しく見守る。

 

「………。」

 

ブラックは部屋の隅でその様子を見ていた。

 

「ちょっとゴクウ……!そんな所に立ってないでこっちきなさいよ。」

 

「……いや、私は……。」

 

ブラックは顔を赤くしそっぽを向いた。

 

「もう、ほーら抱っこしてあげて!アンタはもうパパなのよ!」

 

「パ……!?」

 

キャルは動揺するブラックに近づき赤ん坊を抱かせる。

 

「ダァー……ァー……?」

 

赤ちゃんはブラックの腕の中で抱かれると泣き止んだ。

 

「……おお、女の子か……!」

 

どことなくブラックは嬉しそうに笑った。

 

「ふふっ、ゴクウさまの腕が居心地いいのでしょうね。微笑ましいです。」

 

「『シャルル』ちゃん本当に可愛いですね!」

 

「え?なんでアンタこの子の名前知ってるのよ。皆んなに内緒にしてたのに。私どっかで話しちゃったかしら……?」

 

「あ……。」

 

「ペ、ペコリーヌさま……その名前はまだ……。」

 

ペコリーヌは不意に口を滑らしまだ知るはずもない名前を言い当ててしまった。

 

「あ……いや、そんな気がしたんですよ。えっへへ……。」

 

「それにしては迷いもなく予め知っていた感がでてたけど……。」

 

「ま、まぁ細かいことはいいじゃないですか。今はそれよりもこの娘と遊びたいです!そーれツンツン♪」

 

「ァゥー……ァー。」

 

「ペコリーヌさま、私もシャルルさまと遊びたいです。」

 

「僕も!」

 

ペコリーヌ達はシャルルと一緒に遊んだ。

 

「全く呑気な物ね。」

 

「……ふっ……。」

 

その時だった。

 

 

ドォォォォォォォォォォン!!!!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

突如大きな爆発音が鳴り響いた。

 

「!!」

 

「いきなり何!?」

 

「な、なんですか今の音は……!!」

 

「町の中央部から聞こえましたが……まさかもう……!?」

 

「とにかく行こう!!」

 

ペコリーヌ達は爆発音の鳴った場所へと向かった。

 

そこにいたのは額に『M』と書かれた白い肌を露出した二人の人物だった。

 

「……。」

 

「……。」

 

二人は不気味な笑みを浮かべながら人々を襲っていた。

 

「そこまでです!!」

 

ペコリーヌは二人の前にでる。

 

「貴方たちが魔人なんですか……?」

 

ペコリーヌが話しかけるも二人は何も喋らずにただ不気味にニヤついているだけだった。

 

「……みつけたぞスポポビッチ、強いエネルギーだ。」

 

「そうだなヤムー、『バビディ』様がお喜びになるに違いない。」

 

するとスポポビッチとヤムーは勢いよくペコリーヌに襲いかかった。

 

「……させません!!」

 

「「何!?」」

 

ペコリーヌは瞬時に反応すると二人の攻撃をかわしそれぞれにカウンターを決め距離をとった。

 

「……中々のスピードですがそれなら避けれます!」

 

ペコリーヌは剣を構えて牽制した。

 

「……お前たちがこの世界に危害を加えるなら容赦はしない!」

 

ブラックが一気に勝負をつけようと二人に迫ったその時だった。

 

「……何者だ!」

 

ブラックの攻撃を何者かが防いだ。

 

「「『プイプイ』様!」」

 

プイプイと呼ばれる額に『M』と書かれた異星人の様な人物がブラックの攻撃を弾いた。

 

「お前たちの相手など俺一人で十分だ!」

 

「やってみろ!」

 

「ペコリーヌさま!!前です!!」

 

「え!?」

 

するとプイプイとブラックに気をとられたペコリーヌの身体にヤムーの持っているジョウロのような物が突き刺さった。

 

「あぅ……あ!!」

 

「ペコリーヌ!!ぐあっ……!!」

 

「何処を見ているんだ!!」

 

ブラックはペコリーヌの元に向かおうとするがプイプイの反撃に合ってしまった。

 

「あ……あ……が……。」

 

するとペコリーヌは地面に倒れてしまった。

 

「ペコリーヌさま!!」

 

「ペコ!!」

 

「ペコリーヌ!!」

 

キャル達はペコリーヌに近寄る。

 

「直ちに回復魔法を……!」

 

「ぅ……コッコロちゃん……!」

 

コッコロはエネルギーを吸い取られたペコリーヌに回復魔法をかけた。

 

「これだけのエネルギーがあればバビディ様はお喜びになる。」

 

「戻るとするか。」

 

すると目的を終わらせたヤムーとスポポビッチはバビディの元に帰って行った。

 

「くそ……ペコリーヌ!!」

 

「くははは!!どうした、その程度の攻撃じゃ俺は倒せないぞ!」

 

「くっ……!」

 

ブラックはプイプイ相手に防戦一方だった。

 

「はっはーーーー!!!!」

 

「ぐおぁあ……っ!!!!」

 

防御が甘くなったブラックの腹に強烈な蹴りが決まる。

 

「ゴクウ……!!」

 

プイプイは膝をつくブラックにゆっくりと近づく。

 

「お前をバビディ様の下へ持ち帰らなきゃ行けないからな……!手加減はしてやる。」

 

「ふ……この身体がダメージを負う事に私は強くなる……今に貴様なんぞ……ぐぐ……!」

 

ブラックは左胸を押さえながら立ち上がった。

するとコッコロの回復魔法で目を覚ましたペコリーヌが起き上がった。

 

「……ゴクウさん……!」

 

「ペコリーヌさま……目を覚ましたのですね!」

 

「ペコリーヌ……!!」

 

「オギャー……!!オギャー!!」

 

するとキャルの腕の中でこの戦いを見ていた赤ん坊は泣き出してしまった。

 

「……うるさいハエどもだ!先ずはアイツらを殺してやる!!」

 

「!!」

 

プイプイは泣き喚く赤ん坊に向けてエネルギーを放った。

 

「やめろおおおおお!!!!!」

 

ブラックは手を伸ばすも確実に間に合わない。

 

「きゃっ─────。」

 

だがそのエネルギーはキャルに当たる直前に弾かれた。

 

「!?」

 

プイプイも驚くと、そこに居たのは未来から来た「シャルル」だった。

 

「あ、あんたはあの時の……?」

 

「大丈夫ですか、キャルさん。」

 

シャルルは静かにキャルに向けて笑うとブラックの真正面まで歩く。

 

「……お前は。」

 

「……どういうつもりなんですか。」

 

「!!」

 

シャルルはブラックを静かに睨みつけた。

 

「さっきのエネルギーがキャルさんに当たっていたらどうするんですか!貴方の奥さんなんですよ……!」

 

「そ、それは……!!」

 

「……がっかりです。貴方はとても強い人だと聞いていましたが……あの攻撃がキャルさんに迫っても何もしないなんて……!奥さんと子供がどうなってもいいんですか!?」

 

「…………すまない。」

 

ペコリーヌ達はシャルルとブラックが話している様子を離れた場所から見ていた。

 

「……助けに来てくれたんですね……それにしても何を話してるんでしょうか。」

 

「分かりませんが……ゴクウさまに怒っているようにも見えます。」

 

「ね、ねえ!アンタ達はあの助けてくれた子を知ってるの!?」

 

「そ、それは……。」

 

キャルはシャルルの正体が気になっていた。

 

「……キャルさま、その事はまた後日話しましょう。今はあのお二人を頼るしかありません。」

 

コッコロはシャルルとブラックを見守る。

 

「……もういいです。貴方の助けなんて無くてもあれくらいの敵は私が倒します!」

 

シャルルは一人で飛び出して行った。

 

「ま、待つんだ……!くっ……!」

 

シャルルに次いでブラックも飛び出した。

 

「仲間割れか、この俺に勝てるわけないだろ!」

 

「グリムバースト!!」

 

「な、なんだと!?」

 

「お前……その技は……!」

 

シャルルはグリムバーストを容赦なくプイプイに浴びせる。

 

「があっ……!!中々やるじゃねえか、こうなったらそっちの奴から倒してやる!」

 

「……来い!」

 

プイプイは標的を変えブラックに襲いかかった。

 

「まずい!」

 

シャルルはブラックの援護に向かった。

 

するとその戦いをみていたペコリーヌはブラックの異常に気づいた。

 

「あ……や、やっぱりそうです!!ゴクウさんは病気なんです!!」

 

「ペコリーヌ……!?それってどういう事よ!!」

 

「そんな……!!」

 

「ペコリーヌさま!?ですがゴクウさまの病気を治す特効薬があったはずでは!?」

 

「……症状が出なかったんです……!今まで一度も心臓病の症状なんて出なかったんです……!」

 

「「「!?」」」



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病と敵の挟み撃ち

ブラックとシャルルは突如現れたプイプイと戦っていた。

 

「ぐっ……はぁ……はぁ……!」

 

ブラックは左胸を押さえながら何とかプイプイからの攻撃を防いでいた。

 

「シャルルちゃん!!ゴクウさんは病気です……!心臓病なんです!!」

 

ペコリーヌはシャルルに聞こえるように大きな声で叫んだ。

 

「……な、心臓病……!?治った筈じゃ……。まさか私がこの世界に来たことで歴史が変わった……?」

 

そしてブラックもあるひとつの事に気づいた。

 

「……シャルル……?シャルルだと……!?」

 

今ブラックと戦っている少女と自分の娘の名前が同じことに驚いていた。

 

「シャルル……あの子の名前がシャルルって……!?」

 

そしてそれに気づいたのはキャルもだった。

 

「動きがとまってるぜ!!」

 

「しまっ……!!」

 

プイプイの攻撃がシャルルに迫る。

 

「シャルル!!」

 

「がはっ……!!」

 

シャルルに迫るプイプイの顔面をブラックは咄嗟に蹴り飛ばした。

 

「お……ゴクウさん……!?」

 

ブラックに助けられると思わなかったシャルルは少し驚いたような表情をした。

 

「はぁ……はぁ……『界王拳』!!」

 

「!!」

 

ブラックは界王拳を使い、身体に負担をかけた。

 

「ちょっと待ってください!それ以上身体に負担をかけたら心臓病の進行が早くなってしまいます!!」

 

「……関係ない……!だりゃああああ!!!」

 

シャルルが必死に止めるがブラックはその忠告を無視して界王拳を使った。

 

「貴様、ど、何処にそんな力が……ぎゃあああああああバビディ様ーーーー!!!!!!」

 

界王拳を使用したブラックのスピードは遥かに上がり、プイプイの目では追うことすら不可能な程だった。そしてブラックの本気の攻撃によりプイプイは消滅した。

 

「……ぐっ……うあああっ……!」

 

そして今の界王拳で心臓病の症状が悪化した。

 

「そ、そんな……お父さああああん!!!!」

 

「ちょっと……ゴクウ!!」

 

「ゴクウさん!!」

 

「ゴクウ!!」

 

「ゴクウさま!!」

 

シャルル達はブラックを抱えてギルドハウスへと運んだ。

 

「ぐあ……ぁ……!」

 

ブラックはベッドに横たわり苦しんでいた。

 

「ゴクウさま……!」

 

「ゴクウさん!!特効薬です!!飲んでください!!」

 

ペコリーヌは特効薬をブラックに飲ませた。

 

「……ねえ!!私にも説明してよ!!一体何がどうなってるのよ……!」

 

キャルはブラックが心臓病である事を知り気が動転していた。

 

「……わかりました。私が話します。」

 

シャルルはキャルの顔を見つめてゆっくりと話し始めた。

 

「……私の名前はシャルル。18年後の未来からきました。」

 

「……シャルル。やっぱりそうなのね……。」

 

キャルは内心覚悟していたかのような顔をした。

 

「皆さんの世界を救うために3年前にペコリーヌさん達に伝えていたんです。」

 

「……何か私たちに言えない理由があったのね。」

 

「はい。このように勝手に歴史を変えてしまうことはまずいんです。ですがあんな未来なら変えてしまった方がいいと判断しました……。キャルさんとゴクウさんにはまだ私が生まれる前だったので存在を知られてはまずかったんです。」

 

シャルルは全てを説明した。未来の世界のこと、恐ろしい魔人の事などを余すことなく話した。

 

「……それじゃあ未来の世界で生きているのは私とシャルルだけってこと……?」

 

数々の衝撃の事実にキャルは肩を落として座り込む。

 

「……はい。私とキャルさんは隠れ家で暮らしているんです。それに人口も今の1割程しか残っていません。」

 

「……そんな。」

 

するとシャルルはブラックの寝ているベッドの前に座った。

 

「……未来のキャルさんは……お父さんはとても強いから何とかしてくれるって言ってたんです。でも私はこの世界に来て、心臓病になって弱っているお父さんに酷いことを沢山言ってしまいました……。」

 

「シャルルちゃん……。」

 

「……私が悪いんです……!私が不用意に歴史を変えてしまったせいで……!お父さんの心臓病の発病が遅れてしまった……!」

 

泣き出しそうなシャルルをキャルはそっと抱きしめた。

 

「……泣かないで。私たちのためにわざわざ未来から助けに来てくれたんでしょう?誰もあなたの事を責めたりなんてしないわよ。寧ろ感謝したいくらいだわ……。」

 

「ま、ママ……!」

 

と、その時だった。

 

コンコン

 

「「「!?」」」

 

誰かがギルドハウスのドアを叩いた。

 

「だ、誰でしょうか。」

 

「……ママはお父さんの側にいてあげて。私が行ってくるわ。」

 

「え、ええ。」

 

シャルルは玄関へ行き恐る恐るドアを開けると……

 

「オッス!元気してたか?」

 

「え……お父さん……が二人……???」

 

「あり?おめぇ誰だあ?」

 

シャルルの前には山吹色の道着を着たブラックにそっくりの男が立っていた。

 

「悟空さん…………ですよね!?」

 

「悟空さま……ですか!?」

 

「おう!久しぶりだなおめぇ達!」

 

悟空は再びこの世界に戻ってきていた。



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お父さんが二人……?

(何処だここは……。)

 

気づけばブラックは夢の中で何も無い暗い場所を歩いていた。

 

(果てしない闇の中……何故私はここに……?)

 

すると周りの闇が晴れ、不思議な光景が映し出される。

 

「貴様ら、お菓子にして食ってやる!」

 

「きゃあああああああ!!!」

 

(なんだ!?あのピンク色の化け物は……!ペコリーヌがチョコになった……?)

 

謎のピンク色の人物は人々をチョコに変えて食べていた。

 

「主さま!!お逃げください!!」

 

「コッコロちゃん!!!」

 

(コッコロ……!お前まで……。)

 

ペコリーヌに続きコッコロまでチョコにされ食べられてしまった。

 

「よ……よくも皆を……!!」

 

「一人も逃がさない。皆チョコにしてやる!」

 

「うわあああああっ!!!」

 

(ユウキ!!)

 

「きゃあああああああ!!!」

 

(シャルル!!)

 

「後はお前だけだ。」

 

「いやあああああああああっ!!!」

 

(キャル!!)

 

そしてここで再び景色は暗転した。

 

(…………今のは……夢なのか……?)

 

「……いや、違うな。お前達のこれから起こる未来だ。」

 

(お前は……!!)

 

「……。」

 

ブラックの前に突如現れたのはザマス?だった。

 

 

 

 

一方、美食殿ギルドハウス

 

 

「よお!元気だったか?」

 

悟空は美食殿のギルドハウスを訪れていた。

 

「お久しぶりです!悟空さま!」

 

「コッコロ、ペコリーヌ、キャル……おめぇ達デカくなったな!」

 

「悟空さんと最後に会ったの6年前ですからね……。」

 

「あんたは見た目変わってないのね……。」

 

「ん?そりゃあそうだ。オラ、フューと戦ってからまだ数時間しか経ってねえしな。」

 

「……やっぱり時の流れがおかしいわよ。」

 

「……それよりも、ブラックはいるか?」

 

「……ゴクウさんなら……寝ていますよ。」

 

ペコリーヌは悲しそうな顔で寝ているブラックを見つめた。

 

「……何があったんだ。」

 

悟空の表情も深刻になる。

 

「……ゴクウさんは心臓病なんです。」

 

「なんだって!?ブラックが……。」

 

「一応特効薬は飲ませたんですが……ゴクウさんはかなり前から症状を私たちに言わないで隠してたので悪化してるんです……。」

 

「……そうか。こんな大変な時にすまなかったな。おめぇ達に渡してぇ物があんだ。」

 

悟空はそう言うと小さい茶色い袋をペコリーヌに渡した。

 

「……これはなんですか?」

 

「そいつの中は『仙豆』だ。一粒食えばどんな怪我でも治るぞ!でも病気には効かねえからホントに危ねぇってなった時に食うんだ。」

 

「そのような物があるとは……ありがとうございます。悟空さま!」

 

「礼なんていいさ。こっちとしてもブラックに死なれちゃ困っかんな。」

 

「あの……そろそろ大丈夫ですか?えーっと……。」

 

すると悟空の事を知らないシャルルが話しかける。

 

「ん?ああ……オラ悟空だ!おめぇ名前はなんて言うんだ?」

 

「……『シャルル』です。未来から来ました。ママ……『キャル』さんの娘です。」

 

「未来!?キャルの娘!?おめぇトランクスみてぇなやつだな!」

 

「ええっと……トラ……?」

 

シャルルは聞いた事ない名前に戸惑った。

 

「ん?どっひゃー!キャルが抱えてる赤ん坊が今のシャルルって事だな。ユウキとキャルの子供かあ……!」

 

「……違いますね。」

 

「違うよ?」

 

「違うわね。」

 

「断じて主さまではありません。」

 

「え?違いますよ?」

 

ペコリーヌ達は一斉に否定する。

 

「え……あ……ま、まさかおめぇの父親って……?」

 

チラ

 

皆は一斉に寝ているブラックの方を見る。

 

「ぶぶ、ブ、ブラックぅぅぅぅっ!????」

 

悟空は驚きのあまり床に倒れた。

 

「ブラックとキャルが……!?驚れえたな……!!」

 

「あっはは!私も最初は驚きました☆」

 

「……それにしてもブラックとキャルの娘か……確かによく見たらキャルに似てるな……。」

 

悟空はシャルルの顔を真近で見つめる。

 

「あ、あの……悟空……さん?ち、近いです!」

 

シャルルは顔を赤くしながら照れる。

 

「お、すまねえ。オラこんなことをしに来たんじゃなかったんだ。」

 

「あ、そういえばどうして悟空さんがここに居るんですか?」

 

「……ゴワス様っていうブラックの師匠に頼まれてよ……強え奴とも戦えるし色々とおめぇ達の助けになりてえんだ。だから暫くの間よろしくな。」

 

「ゴクウさまの師匠ですか……ですが悟空さまがいれば心強いです!」

 

「そういえばベジータとかはいないの?」

 

「ベジータは頑固だからな……多分呼んでも来ねぇぞ?」

 

「……残念でございますね。」

 

すると悟空は立ち上がり帯をキツく締める。

 

「そんじゃあ……ブラックが起きるまでオラと組手いっちょやってみっか!」

 

悟空は姿勢を低くし構えた。



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サイヤ人の血筋

「いつでもいいぞ!かかってこい!」

 

悟空はペコリーヌ、ユウキと組手をしていた。

 

「まだまだ行きますよ!!」

 

「ペコリーヌ……また腕上げたなぁ!」

 

「たぁーーーー!!!」

 

するとユウキが悟空の背後から攻撃する。

 

「おっと……今のは結構いい攻撃だったぞ!おめぇも強くなったな!」

 

3人の様子をシャルルは一人でじっと見ていた。

 

「……あれが悟空さん……本当に私のお父さんそっくりだな……。」

 

「おーい!シャルル、おめぇの力をオラに見してくれ!色々とおめぇの事が知りてえかんな。」

 

悟空はシャルルの力が未知数な為どれほどの力を持っているのか知りたくなった。

 

「……わかりました。」

 

シャルルは立ち上がると気を自分の体の中に集中させる。

 

「……すげぇ、まるで超サイヤ人みてぇだ。」

 

「シャルルちゃん……それって……!」

 

「僕の力に似てる……?」

 

シャルルの身体が金色のオーラに包まれた。

 

「……よし、来い!」

 

「……行きますよ!」

 

シャルルは勢いよく地面を蹴って悟空に向かっていった。

 

「すげぇスピードだな……!」

 

「……!」

 

シャルルの鋭い攻撃は惜しくも悟空の手で防がれた。

 

「シャルルちゃんの攻撃……凄く速いですね……!」

 

「うん……!」

 

ユウキとペコリーヌは悟空とシャルルの組手に見入っていた。

 

「驚いたな……パワーもスピードもバランスよく鍛えている……。きっといい師匠に鍛えられたんだろうな……!」

 

悟空もシャルルの強さを認めた。

 

「……これはプリンセスナイトの力を自分の身体に集約させたんです。」

 

「「プリンセスナイト!?」」

 

ユウキとペコリーヌは同時に驚いた。

 

「シャルルちゃんって……プリンセスナイトだったんですか!?」

 

「いえ……そういえばまだ言ってなかったですね。私の……未来の師匠はユウキさんなんですよ。」

 

「どっひゃー!ユウキがシャルルの師匠だったんか!」

 

「ユウキくんが!?」

 

「僕が!?」

 

「……はい。ユウキさんからは沢山学ばせて頂きました。」

 

未だに空いた口が塞がらないユウキに対しシャルルは笑顔を見せた。

 

「さて、今度はこっちから行くぞ……!」

 

悟空はニヤりと笑い構えた。

 

「負けませんよ……!」

 

シャルルもそれに応えるように同じ構えを取った。

 

……そして二人の戦いは夜まで続いた。

 

「……あれは悟空と、シャルル……?あの二人まだ戦ってたのね……。」

 

「はい……中々終わらないんですよ。恐らく両方のスタミナが切れるまでは終わらなそうです。」

 

「……全く。」

 

キャルは呆れた様子で二人を見る。

 

「ゴクウさんの状態はどうですか?」

 

「……大分良くはなったけどまだ何かうなされてるみたい……。今はコロ助が看病してるわ。」

 

「そうですか……」

 

そんな話をしながらペコリーヌとキャルは二人の戦いを観戦していた。

 

「おめぇやるなぁ!すげぇぞシャルル!!」

 

「ありがとうございます……!何故か分かりませんが戦うのが楽しいんです……!」

 

シャルルは息を切らしながらも笑った。

 

「やっぱおめぇにもサイヤ人の血が流れてんだな!」

 

「サイヤ人………?」

 

サイヤ人という言葉に引っかかったシャルルだが観戦していたキャルが二人に声をかける。

 

「ちょっとー!いつまで戦ってるつもりよ!そろそろ夕飯が出来るわよ!」

 

「お、きたきた!アイツらの作る飯はうめぇんだ!早く行こうぜシャルル!」

 

「は、はい……!」

 

 

 

【美食殿】ギルドハウス 寝室

 

 

コッコロは心臓病に苦しむブラックを看病していた。

 

「……ぐっ……があ……あああ……!」

 

「ゴクウさま……!!大丈夫でございます……きっとすぐに良くなります!」

 

コッコロはブラックの額に手を当てる。

 

「……熱もありますね。……何か悪い夢でも見てるのでしょうか……?」

 

「がっ……やめろ……やめろ…………!」

 

ブラックはやはり何かにうなされていた。

 

「……ゴクウさま……!!」

 

コンコン

 

「?」

 

すると誰かが扉を叩く。

 

「入るぞ?」

 

扉を叩いていたのは悟空だった。

 

「悟空さま……!」

 

「コッコロ、もう戻ってていいぞ。キャルが来るまでオラが見てっからよ。」

 

「わ、わかりました……。」

 

コッコロは静かに寝室から出ていった。

 

「あ……がぁ……!」

 

「……それにしてもおめぇまで心臓病になるなんてな……。まるで誰かに運命を操られてるみてぇだ。」

 

悟空も一度心臓病にかかっていた為その辛さは分かっていた。

 

「……孫、悟空……!」

 

「ブラック……!」

 

するとブラックは少しだけ目を開けた。

 

「…………魔人だ……魔人『ブウ』がこれからオレ達を…………!」

 

「何だって……!?今、魔人ブウって言ったんか!?」

 

悟空はブラックに聞き返すも意識を保つことがやっとのブラックは答えられなかった。

 

「おい!しっかりするんだ!!」

 

悟空の声は届かず、またブラックの意識は遠のいていった。

 

「……どういうことだ……魔人ブウがこの世界にも現れるっちゅう事か……!?」



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時空を超えし者

「悟空さま……!!何かありましたか!?」

 

「悟空さん!どうしたんですか!?」

 

「お父さんに何か……!?」

 

「何があったの!?」

 

悟空の声を聞きペコリーヌ達が寝室に急いで来る。

 

「……シャルル。おめぇに聞きたいことがある!」

 

悟空はすぐさま振り向くとシャルルの目を見る。

 

「はい……?何でしょうか?」

 

「おめぇの未来を襲った魔人は……どんな奴だった?」

 

「私の未来を襲った魔人は……暗黒魔界の王?とか言ってた気がします……。」

 

「……成程。そういう事か……!」

 

悟空は拳を固く握りしめる。

 

「悟空さま……?」

 

コッコロが心配そうに悟空を見る。

 

「コッコロ……いや、おめぇ達……今からオラが言うことを落ち着いて聞いてくれ。」

 

「わ、わかりました……。」

 

全員は息をのんで悟空の言葉を待つ。

 

「……恐らく、シャルルの未来はもう大丈夫だ……。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「だ、大丈夫ってどういう事ですか!?」

 

「もう平和ってことなの!?」

 

シャルルとキャルは当然驚いた。

 

「いや、大丈夫だけど……全く大丈夫じゃねえんだ。」

 

「「「「「???」」」」」

 

全員は首を傾げた。

 

「シャルルの未来を襲ったのは恐らく『ダーブラ』っちゅう奴だ。シャルルでも歯が立たなかったって事は相当強くなってんな……。」

 

「あれはダーブラって言うんですか……。ですが、それで何で私の世界は大丈夫って言えるんですか!?」

 

「シャルル……おめぇのいる未来で最近ダーブラに襲われたか?」

 

「!!」

 

シャルルはその言葉を聞いて気づいた。ダーブラが何年も攻めてこないことに。

 

「そういえば……ずっと私の前に姿を現していない……。」

 

「……いいか?ダーブラは確かに強え。だがもっとそれよりもとんでもねぇ魔人がいるんだ!」

 

「あれよりも強い魔人!?」

 

「それって一体……!」

 

「……『魔人ブウ』だ。」

 

「「「「「魔人ブウ!?」」」」」

 

「……だがそいつが誕生するには沢山のエネルギーが必要なんだ。恐らくシャルルの未来を襲ったのがダーブラなら魔人ブウはまだ誕生してねぇ。」

 

「えぇっと……つまり……?」

 

「ダーブラ達はシャルルの未来からいなくなった訳じゃねえ!オラ達のいるこの世界に移動してんだ!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

悟空の衝撃的な発言に全員は固まる。

 

「そんな………!」

 

「ダーブラがこの世界に……!?」

 

「どうすれば………。」

 

「シャルルの未来には恐らく人は殆どいねえんだろ?だからエネルギーを集めにこの世界に来たんだ……!」

 

「そんな……そんな事って……!」

 

「それじゃあ皆……ランドソルにいる人達が殺されちゃいます……!」

 

「シャルルちゃん!?」

 

「シャルルさま!?」

 

シャルルは一人でランドソルに向かおうとした。

 

「無駄なことはやめろ!今のおめぇ一人じゃ無理だ!」

 

悟空はシャルルの腕を掴んで引き止めた。

 

「ですが……このままじゃ皆が……!」

 

「……大丈夫だ、殺された皆は『ドラゴンボール』で生きけえれる。」

 

「……ドラゴンボール……?」

 

シャルルはドラゴンボールの存在を知らなかった。

 

「そうですよ……!!ドラゴンボールがあればシャルルちゃんの未来で死んでしまった人も生き返るかも知れませんよ!」

 

「そうだな……もしかしたらできっかも知んねえぞ!」

 

「ほ、本当ですか……!?また……皆と会うことが出来るんですか……?」

 

「ああ!多分な……!」

 

シャルルの未来に希望が見えてきたその時だった。

 

 

ドォォォォォォォン!!

 

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

何かがギルドハウスの前に追突した。

 

「な、なんだ……!?もうダーブラが動き出したのか……!?」

 

「な、何!?何が起きたの!?」

 

「何かが追突したような音がしましたが……!」

 

キャル達は慌ててギルドハウスの外に出た。

 

「……………痛てて……ここは何処だ……?父さんに修行をつけてもらう為にタイムマシンに乗って……?」

 

ギルドハウスの前には近未来の様な大きな機械が転がっており、その機械の中には青髪の青年が入っていた。

 

 



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ブラックを守れ!その1

「痛てて……。」

 

青髪の青年は突如現れた。

 

大きな音がしたギルドハウスの前にキャル達が集まる。

 

「大きな音がしましたが……おや?」

 

「一体何が……!?」

 

「これは……何でしょうか。タイムマシン的なやつなんでしょうか?」

 

「ん……?こいつは……!?」

 

するとその青髪の青年を見た悟空は驚いた。

 

「お、おめぇ……『トランクス』か!?なんでここに……!」

 

「悟空さん!?貴方こそどうしてこんな所に……?」

 

「へへっ、色々あってよ。」

 

「悟空さまのお知り合いですか?」

 

「『トランクス』……って、何処かで聞いたことがあるような……。」

 

ペコリーヌは何処かでその名前を聞いたことがあるのか少し考えこんだ。

 

「ああ、オラの知り合いだ。こいつはトランクスで、シャルルと同じように未来からきたんだ!」

 

「未来!?」

 

トランクスはキャルの隣にいる少女に目を向ける。

 

「君は未来から来たのか!?」

 

「はい……とある魔人を追ってこの世界へ来ました。」

 

「そうだったのか……。」

 

するとトランクスはみんなの方に顔を向ける。

 

「……お騒がせしてすみません。僕の名前はトランクスです。皆さんよろしくお願いします。」

 

トランクスは丁寧に自己紹介した。

 

「わたくしはコッコロと申します。」

 

「ユウキ!」

 

「ペコリーヌです!」

 

「キャルよ。この赤ちゃんが私の娘のシャルル。」

 

各々トランクスに向けて自己紹介した。

 

「……なるほど。キャルさんの抱きかかえているシャルルちゃんが未来から来た貴女と言うことですか。」

 

「そういうことです。」

 

「トランクス!実はオラ、ペコリーヌ達とは結構仲良くてよ、特にユウキはベジータの弟子なんだ!」

 

「えっ……父さんの弟子!?」

 

「「「「父さん???」」」」

 

ユウキ達の思考が一瞬停止する。

 

「はい……ベジータさんは僕の父さんなんです。」

 

「「「「えええええええ!?」」」」

 

「ベジータさんの息子さんだったんですか!?」

 

「嘘でしょ?ベジータの息子……!?」

 

ペコリーヌ達はトランクスがベジータの息子であることを知って驚いた。

 

「ああ、という事はシャルルさんのお父さんは……。」

 

トランクスは不意にそんなことを聞いた。

 

「あ……私のお父さんは()()()さんです。」

 

「え………………………………。」

 

トランクスの顔が固まった。

 

「ちょ、ちょっとタンマ!!!タンマ!!!」

 

「ど、どうしたんですか悟空さん!?」

 

悟空は焦った顔を見せながら一旦シャルル達をトランクスから離して集合させる。

 

「……いいか?詳しい理由は言えねえけどトランクスはブラックの事を相当恨んでんだ。」

 

「ええ!?」

 

「そ、そうなのですか!?」

 

「本当ですか!?」

 

「あ……まさか、アイツの昔やらかした事って……。」

 

キャルは何となく察した。

 

「だからトランクスとブラックは絶対会わせちゃダメだ!トランクスがブラックの寝ている部屋まで行かないようにこれから見張っててくれ!」

 

「わ、分かりました……。」

 

「あの……悟空さん?」

 

するとトランクスが悟空に話しかける。

 

「あ、ああ……なんだトランクス?」

 

「……シャルルさんが悟空さんの娘……って。」

 

「いや……それは……。」

 

悟空の声がどんどん小さくなる。

 

「悟空さん!!チチさんがいるのに他の子と子供を作るなんて何をしてるんですか!!」

 

トランクスの感情が爆発した。

 

「い、いや……誤解だって……!!!」

 

「……チチさんに何と伝えればいいんだ……。」

 

「や、やめてくれトランクス!そんなことされたらオラ殺されちまうよ!本当に違えんだ!な、シャルル!」

 

「はい、私は()()()さんの娘なので……。」

 

「悟空さん!!」

 

「そりゃねぇぞシャルル!!」

 

「う、嘘は言ってませんよ!!」

 

シャルルの爆弾発言により悟空は暫くトランクスに説教された。

 

数分後、トランクスは美食殿のギルドハウスでもてなされていた。

 

「はい!これもどうぞ!美味しいですよ?」

 

「すみません……お夕飯まで頂いてしまって……。」

 

すると悟空がトランクスの正面に座った。

 

「トランクス、おめぇ……なんでここに来たんだ?」

 

「それが……さっぱりわからないんです。」

 

「分からねえ?」

 

「はい。実は……本来であれば父さんに修行をつけてもらうはずだったのですが……タイムマシンで移動中に謎の裂け目に吸い込まれてしまって……気づけばここにいたんです。」

 

「……やっぱバビディのせいで時空が歪んでんだなぁ……。」

 

「バビディ!?魔人ブウの復活は未来で俺が阻止したはずでは……!」

 

「……どうやらオラ達の世界にいた魔人とは比べ物にならねえほど強くなってるらしいんだ。」

 

「そうだったんですか……。悟空さん、俺も手伝います!皆さんには俺たちみたいに地獄のような未来を味合わせたくない!」

 

「トランクスさん……。」

 

「トランクスさま……!」

 

「トランクス……いいのか?」

 

「はい!一緒に戦いましょう……!」

 

トランクスは堅い決意をもって悟空達と共に戦うことを選んだ。



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ブラックを守れ!その2

「トランクスさま、お風呂が沸いておりますのでお入りになってくださいまし。何かございましたら何なりとお呼びください。」

 

「コッコロさん、ありがとうございます。」

 

コッコロはトランクスをお風呂へ誘導するとブラックの寝ている部屋へと戻って行った。

 

「じゃあ私も部屋に戻るわ。シャルルを寝かしつけてくるわね。」

 

「あっ、私も一緒にシャルルちゃんを寝かしつけますよ!」

 

ペコリーヌとキャルも赤ん坊のシャルルを寝かしつけに寝室へと戻って行った。

 

「私は少し外にでてくるね。こんなに濃い一日は久しぶりだから新鮮な空気を吸いたいー。」

 

「じゃあ僕も外行こうかな。」

 

「ユウキさんも一緒に行きますか?」

 

「うん!」

 

未来のシャルルとユウキは外に出ていった。

 

「悟空さん、俺はお風呂に行ってきます。」

 

「おう、また後でな!」

 

トランクスはお風呂へ入りに行った。

 

「ふぅー……危なかったなぁ。コッコロがいてくれて助かったな。もしブラックがここにいるなんてバレちまったら大変なことになるだろうしな……。ま、このままバレないように……。」

 

と、悟空が一人でそんな事を呟いた時だった。

 

「すいませーん!コッコロさん。タオルが何処にあるか知りませんか?」

 

トランクスはブラックの寝ている寝室の前にいた。

 

「と、トランクスさま!?しょ、少々お待ちください!」

 

コッコロはトランクスがこの部屋に来るとは思いもしなかった為必死にタオルを探す。

 

「トランクス!?まだ風呂に行ってなかったんか!?」

 

そしてトランクスの声が聞こえた悟空も額に汗を滲ませながらタオルを探していた。

 

「……コッコロさん?」

 

トランクスがドアノブに手を伸ばしたその時だった。

 

「おーい!!トランクス!タオルならここにあっぞ!」

 

悟空が先にタオルを見つけトランクスを呼ぶ。

 

「悟空さん!すみませんコッコロさん、タオルがあったみたいです。」

 

「あ、いえ……よかったです。」

 

コッコロは無事にブラックを匿うことが出来てほっとした。

 

「それではお風呂に入ってきますね。」

 

「お、おう。たっぷり入ってていいぞ。」

 

こうしてトランクスは今度こそお風呂に行った。

 

 

 

ブラック 寝室

 

コッコロはブラックの看病を続ける。

 

「ゴクウさま……早くお目覚めになってくださいまし……!ペコリーヌさまも、キャルさまも、シャルルさまも、そしてわたくしも……ずっと待っております……。どうか……!」

 

「…………。」

 

ブラックは今も意識を失っている。

 

「……今お水をお持ちしますね。」

 

コッコロは静かにブラックの部屋から出ていき水を用意しに行った。

 

 

 

 

 

一方ブラックは夢の中に現れたザマスと対話していた。

 

(これから起こる未来だと……!)

 

「そうだ。お前たちは間もなく魔人ブウに殺される。」

 

(……何故今更ザマスが俺の中に出てくる……!)

 

「……何故だと?お前が私を呼び出したのだ。」

 

(!?)

 

「お前は神の力を捨てたことで自らの弱さを自覚し私を求めた。」

 

ザマスの幻影はブラックの心乱れが生み出したものだった。

 

(……オレが……。)

 

「……貴様らまとめて魔人に消されたくなければさっさと神の力を取り戻すことだな。」

 

(オレは……オレはもう神ではない!!お前なんぞに頼ってたまるものか!)

 

「……嘘だな。聞こえるぞ……貴様の悲痛な心の声が。」

 

(!!)

 

「……ん?そろそろ目覚める様だな。まだ答えが出ないようならこの私が貴様の変わりに……!」

 

(や、やめろ……!!)

 

ザマスの幻影がブラックに迫るその瞬間だった。

 

「……くっ……!」

 

ブラックは夢から目を覚ました。

 

「……身体が軽い。心臓病が治ったのか……?」

 

(どうやらそのようだな。)

 

「なっ……!?」

 

するとブラックの脳内にザマスの声が響き渡る。

 

(……言っておくが夢ではないぞ?私はお前の中で生きている。)

 

「バカな……!」

 

(安心しろ……今の人格は全てお前のものだ。だが……少しでも心に隙が生まれたら私は躊躇なくお前の精神を乗っ取る。)

 

「……くそ……だが今はそれどころでは無いか。」

 

ブラックは窓の外から見える星を眺める。

 

「……全てオレが守ってみせる。たとえこの命に代えてでも……!」

 

「失礼します、ゴクウさま…………!?」

 

コッコロがブラックの寝室に入るとブラックは既に目覚めており窓の外を眺めていた。

 

「……コッコロ。」

 

「ゴクウさま……!!よかった……!お目覚めになられたのですね!」

 

「……心配かけたな。コッコロ。」

 

「本当によかったです…………!」

 

コッコロはブラックが回復した嬉しさで涙を流す。

 

「ご飯はできているか?腹が減って死にそうだ。」

 

ブラックは少し笑った。

 

「はい……!ただいまお持ちいたしますね!本日の夕食はキャルさまが作られたのです!」

 

コッコロとブラックが部屋を出たその時だった。

 

「ふぅ……コッコロさん。お風呂ありがとうございました………………!?????」

 

「キャルが作った料理か…………!?????」

 

「あ……………………。」

 

お風呂から上がったトランクスと心臓病から回復したブラックが出会ってしまった。



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永遠の宿敵

トランクスとブラックは偶然出会ってしまった。

 

「……トランクス……!?」

 

「ハッ……!?」

 

この時トランクスは未来での出来事を思い出した。

 

『生き延びなきゃいけないのはあんたの方だよ!!』

 

『行きなさい!トランクス!行って……早く!』

 

未来の世界を地獄に変えたゴクウブラックを完全に思い出した。

 

「あ…………っ、貴様ァァァッ!!!!」

 

次の瞬間、トランクスはブラックの顔を目掛けて思い切り殴りかかった。

 

「!!」

 

しかし、その拳はブラックの顔の目の前で止まった。

 

「……悟空さん!?何故とめるんですか……!」

 

「……。」

 

悟空がギリギリでトランクスの攻撃を止めていた。

 

「トランクス……!今のブラックは敵じゃねえ!」

 

「何を……何を言ってるんですか!こんな奴を生かしておいたら……宇宙は破壊し尽くされてしまう……!」

 

すると騒ぎを聞きつけたペコリーヌ達が戻ってきた。

 

「なんの騒ぎ!?……ってゴクウ!病気が治ったのね!」

 

「どうしたんですか!?ってホントにどういう状況ですか!?」

 

「ゴクウ……!」

 

「トランクスさんと……お父さん!?心臓病が治ったんですね!」

 

「……お父さん……?シャルルさん、貴女の言うお父さんって……もしかして、、、」

 

「え?はい。そこにいる……。」

 

「……ば、バカな……!」

 

するとトランクスは拳を下げた。

 

「……俺は……貴様のように非情ではない。」

 

「……トランクス……。」

 

トランクスは諦めたように気を大幅に落とした。

 

「……すまなかった。」

 

「!?」

 

するとブラックはトランクスに対し深く頭を下げた。

 

「「「「「!?」」」」」

 

これには悟空も含む全員が衝撃を受けた。

 

「……今更……今更謝っても……!あの世界は……母さん達は帰ってこないんだ!」

 

トランクスは後ろを振り向き、溢れる涙を堪えていた。

 

「トランクスさま……。」

 

「トランクス、今日の話はまた明日ゆっくり話そう。今日はもう寝るんだ。」

 

悟空はトランクスを寝室へと誘導した。

 

「すみません、俺は先に寝ます。」

 

トランクスは静かに部屋に入っていった。

 

「…………。」

 

ブラックは頭を上げると肩を落とす。

 

「……やはり、こんなものでは足りない……。」

 

「……あんた達、本当に仲が悪いのね……。」

 

キャルは落ち込むブラックを慰める。

 

「……なんとかトランクスさんとお父さんは仲直りをする必要がありますね。」

 

シャルルもトランクスとブラックを和解させようとした。

 

「何とかならないかな?」

 

「あ、そうだ……それならゴクウさんが前と変わったっていうのを教えればいいんですよ。」

 

ペコリーヌが何やらいい事を思いついたらしい。

 

「私が変わった……?」

 

「はい、えっとですね……ゴニョゴニョ。」

 

「「「「????」」」」

 

 

 

そして次の日の朝がやってきた。

 

「……おはようございます。皆さん……!?」

 

トランクスが食卓に顔を出すとそこにいたのは……

 

「トランクス、ご飯ならもう出来ているぞ。」

 

ピンク色のエプロンを着けて朝食を作っているブラックだった。

 

「……貴様、ふざけているのか?」

 

トランクスはブラックを睨みつける。

 

「まあまあ、トランクスさん。ゴクウさんの料理とっても美味しいんですよ?キャルちゃんが妊娠してから家族の為に料理を練習したりしてたんですから。」

 

「最初に比べたら本当に上手くなったわよねー!」

 

「そ、そうか……。」

 

キャルがブラックの料理を褒めるとブラックは少し顔を赤くして照れたような表情をみせた。

 

(……誰だコイツ……。)

 

トランクスは心の中でツッコんだ。

 

「わぁ……これがお父さんの料理……!」

 

シャルルも初めて自分の父の手料理を食べて喜んでいた。

 

(……これが本当にあのブラックなのか……?今俺が見ているこの光景は夢じゃないのか!?)

 

トランクスも困惑しながら料理を口に運ぶ。

 

「……美味い……。」

 

本当に美味しいらしい。

 

「ブラック!!おめぇの料理うんめぇな!オラビックリしたぞ!」

 

「……ふっ。」

 

(……わからない。ブラックは何を企んでいるんだ……。企んで……いない?今俺が見てる光景は普通の一般的な家庭で見られる光景と同じだ……。)

 

トランクスは自分でもよく分からない感情を抱きながらご飯を食べた。

 

「ふぅー食った食った!おめぇ達、ちょっと来てくれ。」

 

悟空も満足そうにご飯を平らげるとトランクスとブラックをお互いがしっかりと見れるように向かい合わせた。

 

「悟空さん……!?」

 

「孫悟空……。」

 

ブラックとトランクスは悟空のこの行動に戸惑った。

 

「トランクス、魔人ブウの復活を阻止するにはおめぇの力が必要だ。それに、ブラックの力も必要なんだ。」

 

「!!」

 

「!!」

 

するとブラックはトランクスの目をまっすぐ見た。

 

「……虫がいいのは分かっている。だが頼む……!お前の力を貸してくれ……。もし全てが終わったら……オレを殺してくれて構わない。」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

ブラックの覚悟は決まっていた。

 

「…………。」

 

トランクスはしばらくブラックを睨むと諦めたのか右手をブラックの前に出した。

 

「……トランクス?」

 

「……オレは今でも貴様の事を許すことはできない。でも悟空さんが言うように……魔人を倒すまで一時休戦だ。言っておくが裏切った途端に貴様を斬る。」

 

「……!」

 

そしてブラックも手を伸ばしトランクスと握手を交わした。

 

「……ああ、宜しく頼む。」

 

するとその様子を見守っていたペコリーヌ達は安心したように息を吐いた。

 

「へへ……よかったぁ!ブラックとトランクスが和解してくれて助かったぞ!」

 

「悟空さん?オレはまだブラックと和解した訳ではありませんよ?」

 

「堅えこと言うなよ!おめぇの父ちゃんだって元は悪ぃやつだったんだぞ?」

 

「あ、それは………。」

 

シャルルはそのやり取りをみて少し笑った。

 

「……本当に頼もしいです。悟空さん、トランクスさん、そしてお父さんがいれば……なんとかなるかも知れません……!」

 

少しだけ希望が見えてきた気がした。



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またまたお父さん?

「ブラック……!時間がねぇ!今すぐにでも特訓すんぞ!」

 

「……ああ。」

 

「それなら……オレもやりますよ!」

 

悟空、ブラック、トランクスの3人は少しでも強くなるために特訓を始めた。

 

「私たちも負けてられませんね!」

 

「そうでございますね!」

 

「うん!」

 

「ユウキさん、私たちも特訓しましょう!」

 

シャルル達も外に出て特訓を始めた。

 

「……私は、戦力にはなりそうにないわね。……って……!?」

 

キャルが赤ん坊を抱きながらその様子を見守っていたその時だった。

 

「……よう。元気にしてたか?」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

突如ペコリーヌ達の前に現れたのはランドソルモドキで一時的に共闘したターレスだった。

 

「いぃ!?なんでおめぇがここに……!?」

 

悟空もビックリした表情でターレスをみた。

 

「こっちの世界の方が面白いことになっているからな……遊びにきてやったぞ。」

 

(……なんかまたお父さんみたいな人がでてきたんだけど……。)

 

シャルルも流石に似ている人物が出てきても動じなくなった。

 

「ターレスさん!?」

 

「知らない……オレはこんな奴知らないぞ……。」

 

トランクスも初めてターレスをみた。

 

「お前はあの時の……。」

 

「……ターレス!?」

 

キャルも以前ターレスと関わりがあったため驚いた。

 

「……随分でかくなったなキャル。」

 

「な、なんの用……?」

 

キャルは少し警戒を強める。

 

「……そう邪険にするなよ。オレたちは元々仲間だっただろ?」

 

「む、昔の話よ……!」

 

ターレスは不気味な笑みを見せながらジリジリと近寄る。

 

(……昔の話?それにしてもどうしてママの知り合いにお父さんに似ている人がいっぱいいるんだろ……まさか…………!)

 

「ま、ママ!?いくらお父さんが大好きだからって似ている人と浮気はダメだよ!」

 

シャルルの頭の中は既にお花畑のようだ。

 

「シャ、シャルル!?違うわよ!!私はアイツ一筋だからあ!!」

 

「おアツいですね☆ひゅーひゅー!」

 

「キャルさま……素敵でございます!」

 

「キャルは一途?」

 

「おめぇらラブラブだなぁ!」

 

「うっさいわ!ぶっころすぞ!!」

 

(複雑だ……。)

 

トランクスだけは複雑な心境で会話を聞いていた。

 

「ったく、くだらねぇ妄想しやがって……ん?お前はサイヤ人か。」

 

ターレスはシャルルを見てサイヤ人である事を見抜いた。

 

「サイヤ人……?」

 

「お前の親父に教えてもらわなかったか?まあそんな事はどうでもいい……まさかこんな所で同族と出会えるとはな……。オレの名は『ターレス』。そう、オレもサイヤ人だ。」

 

「……ターレス……さん。そういえば悟空さんも少し言ってましたね。サイヤ人の血が流れてるって……。」

 

「……サイヤ人というのは戦闘民族だ。まあこの話はいずれしてやる。それより……オレの用があるのはそいつだ。」

 

するとターレスはユウキの前に立った。

 

「ぼ、僕……??」

 

困惑するユウキにターレスはニヤリと笑う。

 

「ああ……お前の力に興味がある。」

 

「!?」

 

「ターレスの奴、ユウキに目をつけやがったな?やっぱりアイツにはすんげぇ力が眠ってそうだ……。」

 

(……わからない。オレにはユウキさんの力がまだわからない……でも父さんが師匠ということはそれだけの実力があるということなのか?)

 

トランクスはまだユウキのことをよく知らなかったが悟空はユウキを見て不敵な笑みを浮かべた。

 

「……僕は弱いよ?」

 

「そいつはどうかな?まだお前が自分の力に気づいてないだけかも知れないぜ?」

 

「僕の気づいていない……力?」

 

「……そうだな。時間もある事だし少しオレと遊ぼうぜ。お前は将来有望なルーキーだ。オレが稽古をつけてやるよ。」

 

ターレスはユウキの前で軽く構えた。

 

「おっ、これは見物だぞ……!」

 

悟空もワクワクしながらその様子を見ていた。

 

(……これでわかる。ユウキさんの実力が……それに、あのターレスという男……かなりの実力者だ……!)

 

トランクスもじっくりと観察する。

 

「くくっ……クラッシャー軍団の出撃だな。」

 

「…………!」

 

ユウキも拳を硬く握りしめターレスへ向かっていった。



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覚醒の兆し

「くっくっ……あまりがっかりさせてくれるなよ?」

 

「……!!」

 

覚悟を決めたユウキはターレスに向かって飛びかかった。

 

「たぁあっ!!」

 

「ふっ……。」

 

ターレスはユウキの剣を軽々とかわし余裕の笑みを浮かべる。

 

「いいぞ……気を抜いていると痛い目にあうからな……オレは見ているぞ。ふふふ……。」

 

するとターレスは不気味に笑いながらユウキに攻撃を仕掛けた。

 

「足がお留守になってるぜ?」

 

「!!」

 

ユウキはターレスの攻撃をかわして、間合いを取った。

 

「「「!!!」」」

 

悟空、ブラック、トランクスは今のユウキの動きに驚いた。

 

「すんげぇ……今の攻撃は流石に避けられねぇと思ったんだけどなぁ……。」

 

「今のどうやって避けたんだ……!」

 

「……ユウキ、前よりもやはり成長しているようだな。」

 

「あの……今の攻撃って普通なら絶対に避けられないと思うんですけど……。」

 

シャルルも何故ユウキが死角からの攻撃を避けることが出来たのか分からなかった。

 

「……あの動き……何処かで見たことがある様な気がるんだけどなあ……。」

 

悟空は思い当たる節を探しながら再び二人の戦いの観戦を続けた。

 

「ほう……なかなか勘が良いじゃないか。」

 

ターレスは予想外の動きをしたユウキに興味を示した。

 

「……?」

 

ユウキは自分が何をしたのかすら気づいていなかった。

 

「自分でも何が起こったのか分からないような顔をしているな?ならばその力に気づくまでオレが手伝ってやるよ……!」

 

「!!」

 

するとターレスはとんでもないスピードでユウキとの距離を一瞬で詰めるとユウキの鳩尾に拳を叩き込んだ。

 

「ぐはぁっ!!!……くっ!」

 

「主さま!!」

 

「ユウキくん!!」

 

「ユウキさん!!」

 

確実に急所をつかれたユウキを心配しペコリーヌ達は声をあげる。

 

「うあああっ!!!」

 

ユウキは痛みに堪えながらターレスを押し返した。

 

「……休んでる暇はないぞ?」

 

「え……!?」

 

ユウキが気づいた時にはターレスは既にユウキの背後にまわっていた。

 

「何処をみてるんだ?」

 

「!!」

 

ターレスは容赦なく攻撃をあびせる。

 

「がっ……はぁ……!!」

 

ユウキの体力は徐々に削れていった。

 

「どうした?このままでは死んでしまうぞ?」

 

ターレスは楽しみながらユウキを攻撃していく。

 

「つ、強い……ターレスが圧倒的だ!」

 

トランクスもターレスの強さを理解した。

 

「それ以上痛めつける必要はありません!このままじゃユウキさんが死んでしまいます!!」

 

シャルルはターレスに攻撃をやめさせようと叫んだ。だがターレスはその言葉を聞き鼻で笑った。

 

「この程度の攻撃でくたばるようならコイツはその程度の実力だったってことだ。」

 

「そ、そんな……!」

 

「まあ待てシャルル。アイツはこんなんじゃ死なねえさ。」

 

「え……でも!」

 

「……孫悟空の言うとおりだ。ユウキはその気になれば……誰よりも強い。」

 

ブラックもユウキの力を信じて疑わなかった。

 

その時だった。

 

「……つまらん。もうこれで終わりにしようか……。」

 

ボロボロのユウキを地面に投げ捨てるとターレスは上空に移動し両手で輪っかのような気弾を作った。

 

「……。」

 

ユウキはもう立っていることがやっとの状態だった。

 

「あ、あれは……!?」

 

「そうか……ターレスのやつ……。」

 

悟空はターレスの行動をみてニヤリと笑った。

 

「これで終わりだ!『キルドライバー』!!」

 

ターレスの攻撃がユウキに迫るその時だった。

 

「ん?なんだそれは……!」

 

ターレスはユウキの突然の変化に驚く。

ハッキリとはわからないがユウキの瞳が銀色になっている。

 

「…………。」

 

次の瞬間、ユウキはその攻撃を最低限の動きで弾きながらターレスとの距離を縮める。

 

「なんだ……!さっきまでのこいつとは別人だ!」

 

ターレスは迫り来るユウキに向かって拳を放ったがその拳は空を切った。

 

「!!」

 

ターレスは一瞬驚いた表情を見せたがすぐにまた不敵な笑みを浮かべた。

 

「……それがお前の本当の力か……!面白い!」

 

ターレスは次々と蹴り技や突きなどを放つが全てユウキにかわされる。

 

「…………。」

 

ユウキの突然の変化にペコリーヌ達も目を見開く。

 

「さっきまでのユウキくんじゃない……!」

 

「一体主さまの身に何が……!」

 

「あれがユウキさん……!未来の世界ではあんな姿見たことない……!」

 

「あれがユウキさんの本当の力なのか……!強すぎるんです!強すぎるんですよユウキさんは!ハァッ☆」

 

「あれが……ユウキの力なのか……!」

 

「これはオラも驚ぇたな……ユウキのやつまさか……!」

 

 

ターレスとユウキの戦いはまだ続いていた。

 

「はあああああああっ!!!!」

 

「……!?」

 

ユウキは腕を振り下ろしターレスが作った気弾を破壊した。

 

「何だと!?」

 

そして落下しながら気功波を放ちターレスを攻撃した。

 

ターレスは何とかそれをかわした。

 

「……なかなかいい動きだ。おまえ……気に入ったぜ。」

 

「はぁ……はぁ……。」

 

ユウキは着地すると息を整えた。

 

「くっくっ……。まさかここまでとは思わなかったぜ。オレの見立てに間違いがなければお前とは仲良く出来そうだ……!」

 

ターレスはユウキの力を認めた。

 

そうしてユウキは糸が切れたようにその場に倒れた。

 

「今のは…………。」

 

「なぁに……今すぐそれを使いこなす必要は無い。じきに嫌でも自分の力を思い知ることになるだろうからな……。お前をクラッシャー軍団のNo.2にしてやろう。」

 

「遠慮しとく。」

 

すると戦いを見届けた悟空がユウキを抱きかかえる。

 

「ユウキ!お前すんげぇな……とりあえず今は仙豆でもくえ!」

 

悟空がユウキに仙豆を食べさせるとユウキの傷は治っていった。

 

「あれ!?傷がない!」

 

「おう!もう平気だろ?オラもおめぇ達の戦い見てたらワクワクしてきたぞ!ブラック、トランクス!オラ達もやろうぜ!」

 

「……リハビリにはちょうどいいか。」

 

「そうですね!オレ達も頑張りましょう!」

 

皆の戦いのモチベーションが一気にあがった。

 



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誤算だった

ランドソルから遠く離れた謎の場所

 

「どうやらプイプイはやられちゃったみたいだね。」

 

一人の魔術師が水晶を通して戦いを見ていた。

 

「そのようですね。しかしバビディ様。このダーブラがいれば心配には及ばないかと。」

 

隣にいるダーブラという男が自信満々に言う。

 

「そうだね、ダーブラがいれば安心さ。それにしても……ヤムーとスポポビッチはどうやってこんな大量のエネルギーを集めてきたんだろうね。こんな短時間でこれだけのエネルギーを集められるんなら殺さなきゃ良かったな。」

 

どうやらバビディは用済みになったヤムーとスポポビッチを殺してしまったようだ。

 

「確かにそうですね。あれ程のエネルギーをもつ人間などそうはいないでしょう。ですがこの世界にはまだ強いエネルギーをもった人間が何人かいるようです。」

 

「うーん……なんとか誘い出すことができれば一気に魔人ブウを復活させる事が出来るのにね。」

 

「ならば、この私にお任せ下さい。私が少し人間共の町で暴れてまいります。」

 

「それはいい考えだ。ダーブラが暴れてここのアジトまでおびき寄せれば大量のエネルギーが手に入る……!」

 

「……では行ってまいります。」

 

ダーブラはランドソルの町へと向かった。

 

「……ひひ。こんな世界の人間なんてダーブラさえいれば十分だもんね。でも念には念をいれておくとしようかな……。」

 

 

 

 

 

美食殿ギルドハウス

 

 

「ブラック……やっぱりお前の力は封印されちまったんだな。以前よりもパワーが大分落ちてんぞ?」

 

悟空はブラックと組手をしているとブラックの変化にすぐに気づいた。

 

「……あの力に頼っていてはオレの成長はとまってしまうからな……それに今のオレはサイヤ人だ。お前たちの様に限界を超えて自分の強さを高め続けてみせるさ。」

 

「……そっか。まあおめぇがそうしたいんならオラは否定しねえさ。」

 

(……ブラック、本当に変わった……。あの時のおぞましい殺気が微塵も感じられない。)

 

トランクスも流石にブラックが改心したことを認めざるを得なかった。

 

「さ、そろそろ修行を……!?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

すると悟空を含めた全員がランドソルに邪悪な気が迫っていることに気づいた。

 

「なんだ……この気は!!」

 

「こ、この気は……私が一番よく知っています……!」

 

「シャルルが感じたことがある気ということは……この気の正体は『ダーブラ』だ!まさかもう襲ってくるとはな……。」

 

「悟空さん!急いで行きましょう!」

 

トランクス達も覚悟を決めている。

 

「ああ……!そんじゃ行くか!瞬間移動すっからみんなオラに捕まってくれ!」

 

「………!」

 

ユウキはまだ不安そうな顔をしていた。

 

「おい行くぞユウキ。安心しろ。オレとお前が組めば全宇宙をひざまづかせる事だってできるのだからな。」

 

「う、うん……!」

 

ターレスもユウキの気持ちを奮い立たせる。

 

「……さっさとやっつけてみんな無事に帰ってきなさいよ!私……待ってるから!」

 

キャルは赤ん坊を守るためギルドハウスに残る。

 

「キャルちゃん!行ってきます!」

 

「キャルさま、絶対に帰ってきます!」

 

ペコリーヌとコッコロも帰ってくる事を約束し悟空の肩に手をおく。

 

「………!」

 

ブラックも小さキャルに頷くと悟空達と共にランドソルへ向かった。

 

「……頼んだわよ、みんな……!」

 

キャルは皆が帰ってくることを信じながら遠くにあるランドソルの方向をみた。

 

 

 

 

ランドソル中央部

 

 

「ふっ……ようやくきたか。」

 

ダーブラは悟空達が来るのを待っていた。

 

「おめぇか!いろんな世界で暴れ回ってエネルギーを集めているのは!」

 

悟空は静かにダーブラを睨みつけた。

 

「……そう怒るな。今から貴様らもエネルギーを吸収されるのだからな。」

 

ダーブラはニヤリと不気味に笑った。

 

「あなた方の好きにされる訳にはいきません!」

 

「これ以上悪さをするなら許しませんよ!」

 

「……!」

 

「貴様がダーブラか……なるほど。確かに強い気を感じる。」

 

「……オレの未来に現れたダーブラよりも遥かに強い!」

 

ターレスとトランクスはダーブラの実力を感じ取った。

 

 

 

「よくも……よくも皆を!!」

 

するとシャルルは自信にプリンセスナイトの力をかけた。

 

「ん?お前……前の世界にいたあの小娘か……!ふはは!わざわざこんな所まで追ってきていたとはな。」

 

ダーブラはシャルルの事を覚えていた。

 

「……あなたのせいでコッコロさんや……ペコリーヌさん……そしてユウキさんが……!!」

 

「前よりも腕をあげたようだがその程度では私には勝てんぞ?」

 

「……皆の仇を討ちます……!」

 

ダーブラが挑発するとシャルルは一気に気を爆発させダーブラへと飛びかかった。

 

「オレも行きます!!」

 

トランクスも超サイヤ人になるとシャルルに加勢しダーブラへ突進した。

 

「遅いな……!」

 

ダーブラはトランクスの攻撃を回避しシャルルの攻撃を受け流しながらカウンターを与えた。

 

「「うわああああああっ!!」」

 

「トランクスさん!!」

 

「シャルルさま!!」

 

ペコリーヌとコッコロも相手に攻撃の隙を与えぬように続けて飛び出した。

 

「貴様らの攻撃など避けるまでもない!」

 

ダーブラは二人の攻撃をノーガードで受けはじき飛ばした。

 

「つ、強い……!」

 

「刃が通りません……!」

 

「この程度なのか?」

 

「はっ……!!」

 

「!?」

 

ダーブラが油断した途端、後ろに回り込んでいたブラックが気弾をダーブラにぶつける。

 

「小癪な!」

 

「こっちだ!!」

 

「なに!?」

 

「だりゃあああああっ!!!」

 

すると悟空はダーブラの目の前に現れて顔を蹴り飛ばした。

 

「ぐっ!!」

 

ダーブラは体勢を立て直すとにまた不気味に笑う。

 

(!?何を企んでやがるんだ?)

 

悟空はダーブラのニヤケ顔に違和感を持った。

 

「……それ程のパワーを持つお前なら魔人ブウを復活する事ができる!ふふふ…………!」

 

するとダーブラはペコリーヌとコッコロを睨んだ。

 

「……お前たちに用はないな……!」

 

(まさか!!)

 

悟空はダーブラの能力を思い出した。

 

「ぺっ!!」

 

ダーブラはコッコロとペコリーヌに唾を飛ばした。

 

「ペコリーヌ!!コッコロ!!その唾に触れるな!!」

 

「え……?」

 

「あ……?」

 

しかし悟空が気づいた時にはもう遅かった。

 

「な……これは!」

 

ブラックは目を見開き驚いた。

 

「あ……が……!」

 

「あ……主さ……!」

 

徐々にペコリーヌとコッコロが石化していく。

 

「ペコリーヌさん!!コッコロさん!!」

 

シャルルの声は2人に届くことはなく完全に石になってしまった。

 

「ペコ………!!コッコロちゃん……!!!」

 

「馬鹿な……アイツらが石になっちまった!」

 

ユウキとターレスもダーブラの恐ろしさを目の当たりにした。

 

(く、くそ……!!オラがもうちょっと早く気づいていれば!)

 

悟空は拳を硬く握った。

 

「ふっ……そいつらを救いたければ大人しく着いてくるのだな。」

 

ダーブラはそれだけを言い残し飛び去った。

 



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みつけられた邪心

「そいつらを救いたければ大人しく着いてくるんだな。」

 

ダーブラはペコリーヌとコッコロを石化し、遠くへ飛び去った。

 

「……ペコリーヌさん……コッコロさん……!」

 

シャルルは石になった二人に近寄る。

 

「……心配すんなシャルル。ペコリーヌとコッコロはダーブラって言うやつを倒せば元に戻るんだ。」

 

するとターレスは気を大きく高めた。

 

「気に入らねぇ野郎だ……。お前がどうしたいのかは知らねえが……あの野郎を倒すのならオレも手を貸すぜ?」

 

「もちろん……絶対に2人を助ける!」

 

「ならば行くぞ。奴の余裕な表情を消してやる!」

 

「……ペコリーヌ、コッコロ……もうしばらく待っていてくれ。……すぐに助ける。」

 

決意が固まったブラック達はダーブラを追ってとあるアジトまで飛んで行った。

 

「ここが奴らのアジトか……!」

 

「さあ、ここなら存分に戦えるぞ?」

 

ダーブラは依然として余裕の笑みを浮かべながら登場する。

 

「ふん、貴様一人だけならどうってことない。すぐに終わらせてペコリーヌとコッコロを元に戻してやる!」

 

ブラックはすぐさま戦闘態勢に入ったがダーブラはブラックをみて嘲笑した。

 

「馬鹿め……貴様らは為す術もなくオレに殺される。この部屋で貴様らが受けたダメージは全て魔人ブウの復活の為のエネルギーとなるのだ。」

 

「なんだって……!?」

 

「後悔してももう遅い。この部屋に来た時点で貴様らが死ぬことに変わりはないのだからな。バビディ様!闘いやすい場所に移動させてください!この人間共に私の力を思い知らせてやります!!」

 

『……わかったよ。』

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

すると、どこからともなくバビディの声が響き、周りの景色がかわった。

 

「いぃ!?ここ……外か!?戻ってきちまったんか!?」

 

「闘いやすい場所にすると言っただろう?さあ……暗黒魔界の王の力をみせてやろう!」

 

「「「「「「!!!!!!」」」」」」

 

するとダーブラは手始めに無数のエネルギー弾を飛ばした。

 

「行くぞ……ユウキ!!」

 

「うん……!!」

 

ターレスとユウキは共に行動し連携をとる。

 

「トランクスさん!!私たちも……!」

 

「はい……行きましょう……あの、悟空さんとブラックは……。」

 

「うーん……オラ、複数で一人の敵をやっつけんのは少し苦手なんだよなぁ……フェアじゃねえだろ?ここはおめぇ達に任せようと思うんだ。」

 

「ほ、本気で言ってるんですか!?」

 

「悟空さん!?そんなこと言ってる場合じゃないんですよ!?お父さんもなんか……お父さん!?」

 

「どうしたブラック!?」

 

シャルルと悟空がブラックの方に目を向けると、何故だかブラックが頭を押さえていた。

 

(何をしているのだ?いつまでその程度の力で醜態を晒すつもりだ?神の力がないお前など何の役にもたたんのだぞ?)

 

「だ……黙れ……!」

 

ブラックは自分の精神の中にいるザマスになにかを吹き込まれていた。

 

(さっさと力を取り戻して終わらせてしまえ。)

 

「ぐ……ぅ……!!」

 

「お父さん…………!?」

 

シャルルは心配してブラックの元に駆け寄る。

 

「しっかりしろ!ブラック!!」

 

「ブラック!!何をやってるんだ!」

 

トランクスも必死にブラックに呼びかけるがブラックに声は届かない。

 

「……!?あいつら……一体何を……!」

 

「ゴクウ!?」

 

ダーブラと闘っていたターレスとユウキも一度中断してブラックを見た。

 

「ん?あれは…………!」

 

するとダーブラはブラックの様子をみてニヤリと笑った。

 

「バビディ様!とてもいい発見をしましたぞ!これで復活しますぞ!魔人ブウが!!」

 

ダーブラはバビディに報告すると上空に飛び上がった。

 

「待て!逃げるのか貴様!」

 

ターレスはダーブラを呼び止めるとダーブラは不気味に笑った。

 

「逃げる……?ふっふっふ、違うな。このダーブラが戦うまでもないうってつけの戦士が見つかったのだ!」

 

「な、なんだって……!?」

 

それだけを言い残すとダーブラはバビディの元へと帰ってくる。

 

「どういう事なの?ダーブラ。」

 

バビディはダーブラの意図を聞く。

 

「やつらの中の一匹に、とても強い邪心を持つものがいたのです……。あれ程の邪心があれば、十分こちら側に引き込めますぞ……。」

 

「……そうか!!同士討ちをさせればエネルギーはたっぷりいただき!そして魔人ブウはついに復活!!」

 

「ふふふ……これは面白いことになりそうですな……!」

 

 

 

 

一方で悟空達は苦しむブラックを見守るしかなかった。

 

「あ……あ……!」

 

「おい……!!大丈夫か!?」

 

「……悟空さん。お父さんをお願いします。私はママにこの事を報告してきます。」

 

「シャルル……わかった。言いにくいかもしれねぇがペコリーヌ達のことをキャルに伝えてきてくれ。」

 

「……はい。」

 

シャルルはこの戦いで起こったことをキャルに伝えるため一旦戻って行った。

 

するとターレスとユウキも一旦ブラックの元に戻ってきた。

 

「おめぇ達……ダーブラはなんて言ってたんだ!?」

 

「よく分からんが自分が闘うまでもないうってつけの戦士が見つかったと言ってどっか行きやがった……!」

 

「見つかった!?見つかったっちゅうのはどういう事だ……!」

 

「見つかった…………!?悟空さん……まさかバビディは……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

使わせてもらうぞ、貴様を……!!

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

すると突如ブラックの脳内にバビディの声が響き渡る。

 

「あああああ…………!!!」

 

「ま、まさか…………!!」

 

悟空がブラックの異変に気づいたその時だった。

 

「ぐあああああっ……!!!!」

 

「「「「!?」」」」

 

ブラックの身体が金色のオーラに包まれた。

 

「お、おめぇ……!!」

 

「ブラック……まさか……!!」

 

ブラックがゆっくりと顔を上げると額には『M』のマークが浮かび上がり目の下には黒い隈ができる。

 

「ブラックは改心したはずだ……!なんでバビディに操られるんだ……!!」

 

「……さあ、ようやく表に出られたのだ……早速人間どもを消すとするか。」

 

「「「「!!!!」」」」

 



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ゆずれない決着

あー疲れた……。


とある惑星

 

「……おい『ピバラ』。後何日こうしてればいいんだ?」

 

一人の男は不思議な術を使う種族の『ピバラ』という人物の修行を受けていた。

 

「キミは『悟空』くん以上にスピリットが安定していない。まずは心と体のバランスをととのえるんだ。ちなみに悟空くんはそこに150日いたよ。」

 

「150日だと!?」

 

「ほらまたバランスが崩れてる。」

 

「う……ぐぅ……!くそ……この星に来たことを後悔し始めたぜ……。」

 

 

 

一方、悟空達は……

 

 

「さて……神に楯突いた罪……思い知らせてやろう。」

 

ブラックは精神にいるザマスの邪心によりバビディに操られた。

 

「ブラック……いや、ザマスなのか!?」

 

「トランクス……今度こそ貴様を殺してやるぞ……!」

 

ブラックの精神は完全にザマスに乗っ取られてしまった。そしてバビディはそれを見て愉快そうに笑っていた。

 

「へへへへへ!いいぞいいぞ!こいつは最早僕の下僕だ!……いい所で戦わせてやろうかな……?パッパラパー!!」

 

バビディが呪文を唱えると瞬く間に周りの景色が変わる。そして、ユウキ達はいつの間にかランドソルの中央部にいた。

 

「「「「「!?」」」」」

 

「こ、ここは……!」

 

「ランドソル!?」

 

「場所を変えたということか……!」

 

そして勿論それは幻覚などではなく実際に起こったことだ。ランドソルの人達は急に現れたユウキ達を見て驚いていた。

 

「なんだなんだ!?急に人が現れたぞ!」

 

「なんだアイツら……!!」

 

しかし中にはユウキ達を知る人達も多数いた。

 

「あれって……ユウキ先輩とゴクウ先輩じゃないですか!」

 

「あ?うわマジじゃん。超お久じゃね?」

 

「やぁ同士……こんな所で会うとは奇遇だな。」

 

「……!!」

 

なかよし部がユウキ達の元へと近寄ったその時だった。

 

「危ねぇ!!」

 

悟空がなかよし部達に注意を呼びかけた瞬間、ブラックは気を解放し辺りに爆風が吹き荒れた。

 

「ちぇるるるる!?」

 

「ちょっ!!いきなりなんだって!?」

 

「ふぉあああああ!!興味深ぁぁぁあ!!」

 

悟空はなかよし部の前に飛び出して爆風を抑えた。

 

「おめぇ達!ここは危ねぇ!急いで逃げるんだ!」

 

「は、はい!!」

 

「……よく分かんないけどとりまアンタの言う通りにしとくわ。ん?てかあんたら顔がゴクウと瓜二つじゃん。ウケる。」

 

「ふむ……何やらよからぬ事が起きそうだ。この街にいる人は全員遠くに逃げた方がいいな。端的に換言するとヤバい。」

 

なかよし部は悟空に言われた通りに逃げた。

そして目の前にいる操られたブラックを見てターレス達は顔を引き締める。

 

「……どうなってやがる。あいつはあんな性格ではなかったはずだが。」

 

「……!」

 

ターレスとユウキもブラックが突如操られてしまったことに冷や汗をかく。

 

「これがバビディの能力だ……!人の邪心につけこみ操っちまうんだ……!ちくしょう……バビディの恐ろしさを今まで完全に忘れちまってた……!」

 

「人の心を操るだと……!」

 

するとブラックの脳内にまたバビディの声が響き渡った。

 

『ひひひ、「ザマス」だっけ?そいつらからエネルギーを奪うんだよ。思いっきり戦いな。殺してもいいからね〜。』

 

「……黙れ!神に指図するな。私の目的はトランクスだ。他の奴らなどどうでもいい!」

 

「ブラック……お前!」

 

しかしブラックはバビディの命令には従わなかった。

 

これにはバビディも驚いた。

 

『な、なんてやつだ。まだこの僕に完全にコントロールされないでいる……!こんなやつは初めてだ……!まあいいけどね別に。』

 

トランクスは剣を構えた。

 

「……悟空さん!ここはオレに任せてください。悟空さん達は魔人ブウが復活した時の事を考えて色々と準備をしてください!」

 

「で、でもよ……!」

 

「行くぞ、カカロット。」

 

「タ、ターレス!?」

 

「どっちみちあのダーブラに苦戦した今のオレたちではその魔人ブウって奴に勝てっこない。トランクスの言う通り一旦戻り準備をするべきだ!」

 

ターレスは冷静に判断し最善の方法を考えた。

 

「くっ……トランクス!おめぇに仙豆は預けとく!ヤバくなったら食うんだ……任せたぞ!」

 

「はい!!」

 

悟空はトランクスに仙豆を渡すと悔しそうに後ろを振り向きユウキ、ターレスと共に一度ギルドハウスへと戻って行った。

 

「ふっ……アイツらを逃がしたつもりか?」

 

「……ブラック!言ったはずだぞ。裏切ればお前を斬るとな!」

 

トランクスがそう言うとブラックは片腕を前に出した。

 

「……ふふふ。」

 

「貴様!こんな場所で……!!」

 

そしてブラックはそのまま容赦なくエネルギー弾を放った。

 

「ぐっ……が、あ……!!!」

 

トランクスは必死に堪えているが徐々に後ろへと押されていく。

 

そして…………

 

「し、しまった!!」

 

トランクスは抑えることが出来ずにブラックの放ったエネルギーはランドソルの建物に直撃してしまった。

 

「「「「「うあああああ!!!!!」」」」」

 

今の攻撃によって多くの人間が死んでしまった。

 

「な、なんてことを……!!」

 

「ふっ……。」

 

ブラックはトランクスの顔をみてニヤリと笑った。

 

「街への攻撃が気になるか?それにその攻め方……時間稼ぎだろ?」

 

「ブラック……いや、ザマス!!これ以上はやめるんだ!!もし魔人ブウが復活してしまったらどうするんだ!!もはや俺たちの手におえる相手ではないかもしれないんだぞ!」

 

「……魔人ブウなどどうでもいい!全力で来いトランクス。全力の貴様を叩き潰し、再び人間0計画を遂行する……!!」

 

 

美食殿ギルドハウス

 

 

「嘘……ペコリーヌとコッコロが……!?」

 

シャルルはこれまでに起こった出来事をキャルに伝えた。

 

「はい……石になってしまったんです。元に戻すにはダーブラを倒すしか方法がありません……!」

 

「あ……あぁ……。」

 

キャルは膝から崩れ落ちた。

 

「ごめんなさいママ……私の力ではどうすることも出来なかった……。」

 

「おーーい!!」

 

「「!!」」

 

シャルルも悔しがっていると一旦作戦を考える為に悟空達もギルドハウスへと戻ってきた。

 

「悟空!?」

 

「悟空さん!!」

 

深刻そうな顔をしながら悟空達が帰ってきた。

 

「すまねぇなキャル……思ったより大変な事になっちまった。」

 

「何かあったんですか!?」

 

「ゴクウが……!!」

 

ユウキはブラックがバビディによって洗脳されてしまった事をシャルル達に伝えた。

 

「お、お父さんが……!?」

 

「アイツが……操られた!?」

 

シャルルとキャルはその事実に驚きを隠せなかった。

 

「……しかしどうするんだ。今は何とかトランクスが食い止めているがもう時間がないぞ。」

 

ターレスもこの絶望的な状況でどうするか悩む。

 

「……精神と時の部屋があればな……。」

 

と、悟空はそんな事を口走った。

 

「精神と時の部屋って何?」

 

「なんだそれは。」

 

ユウキ、ターレス、シャルルは首を傾げた。

 

「ん?精神と時の部屋ってのは一日で1年分の修行ができる場所だ!」

 

「そんな部屋があるわけ…………ってそれよ!!!」

 

「「「!?」」」

 

キャルは突然閃いたかのように叫んだ。

 

「あるのよその部屋!!私も前にペコリーヌと一緒に行ったのよ!」

 

「なんだってえ!?ホントか!?」

 

「ええ!確かラビリスタがその部屋を作れるんだけど……。」

 

その部屋は七冠であるラビリスタだけが作れるものだった。

 

「そのラビリスタっちゅうのは今何処にいんだ!?」

 

「うーん……確か前にラビリスタから通信機を貰った気がしたんだけど……。」

 

キャルが物置に行き通信機を探すと……

 

「あったわ!!これよこれ!!」

 

キャルは急いでラビリスタに向けて通信を始めた。

 

『あっれ〜!?久しぶりキャルちゃん!何か用かな?あっ、そういえば出産おめでと〜!』

 

陽気そうにラビリスタは通信に出た。

 

「ラビリスタ!?今すぐ私たちのギルドハウスに来てくれない!?緊急事態なの!」

 

『例の件だね?今ランドソルでは大変な事になってるそうだけど……わかった!今から行くからちょっと待っててね。』

 

するとラビリスタが通信を切った途端にギルドハウスの床からラビリスタが出てきた。

 

「ちょ、どっからでてきてんのよ!」

 

「え?緊急でしょ!?オブジェクトをいじって短縮してきたよーって……はじめまして、私はラビリスタ。よろしくね。」

 

相変わらずマイペースそうにそんなことを言った。

 

「……噂には聞いたことがありましたが貴女が七冠のラビリスタさんなんですね!」

 

シャルルは目を輝かせてラビリスタを見た。

 

「ん?キミは私の事知ってるの?」

 

「はい!よくお母さんがお世話になったと言ってましたから。」

 

「お母さん?キミのお母さんは私と知り合いなんだ。」

 

「ちょっとストップ!!今話すとややこしくなるから今度話しましょうね?ね?」

 

と、話がごちゃごちゃになりそうだったのでキャルが一旦話を区切る。すると悟空はラビリスタの前まで焦ったような顔で近づいてきた。

 

「おめぇがラビリスタっちゅう奴か!頼む!精神と時の部屋に連れてってくれ!」

 

「精神と時の部屋?てかキミ達ゴクウにそっくりだねぇ……!」

 

「……下級戦士は顔のパターンが少ないんだ。」

 

「……イマイチ何言ってるか分からないけど……その精神と時の部屋ってのはなんだい?」

 

「ほら、前にザマスが攻め込んできた時に私とペコリーヌで行ったじゃない?」

 

「……あー!!あれか!そうだった忘れてたよ!」

 

ラビリスタはキャルに言われると速攻で魔法陣を展開した。

 

「おめぇすげぇな!一瞬でこんなこと出来るんか!」

 

悟空もラビリスタの素早い魔法の展開に驚いた。

 

「さあ……今からとある魔法をかけて君たちには眠ってもらうよ。精神だけをこの部屋の中に連れていく。部屋に入れるのは一度に2人まで……誰から入る?」

 

「……カカロット、ユウキ。お前たちから入ってこい。ハッキリ言ってあの化け物共に太刀打ちできるのはお前らだ。」

 

「僕!?」

 

「……ターレス。いいんだな?」

 

ターレスは悟空とユウキに部屋を譲った。

 

「……私も賛成です。少し街の雲行きが怪しいのでこれから見に行くとこなんです。敵が現れても少しは時間を稼ぐのでお2人は修行をしていてください。」

 

シャルルも納得した。

 

「……それにこの魔法をかけると二人は暫く無防備な状態になっちゃうから誰かが見張ってた方がいい。勿論アタシも暫く様子を見るけど今敵が来たらかなり厳しい。」

 

「……わかった。よし、じゃあ行くかユウキ!」

 

「……うん!」

 

ユウキと悟空は覚悟を決めるとラビリスタの作った部屋の中に入っていった。

 

 

 




おまたせ


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1%残った理性

どんどん書きたい。


「へへへへへ。いいぞいいぞ!200人は死んだなー!」

 

「やはりやつの方が適任でしたな。ふふふ……。」

 

バビディは愉快そうにブラックとトランクスの戦いを観察していた。

 

 

 

ランドソル中央部

 

「さあ、どうするトランクス。これ以上死体を増やしたくなければ私と戦え!」

 

「貴様……オレと戦うために多くの人間を殺したというのか!!」

 

するとブラックは自分の真横に腕を伸ばした。

 

「!?やめろ!!!」

 

「…………。」

 

そしてブラックはもう一度エネルギー弾をランドソルの街へと放った。

 

「「「「うわあああああああ!!!!」」」」

 

爆風が起こり瓦礫がランドソル中にばらまかれた。

 

「ふはははは……!!」

 

「くっ………………貴様ァ!!!!!」

 

トランクスは拳を硬く握りしめてブラックを睨むと超サイヤ人に変身した。

 

「……ようやくやる気になった様だな。」

 

ブラックはニヤリと笑った。

 

「バビディ!!誰もいない場所にかえろ!!これ以上無関係の人を巻き込むな!オレはザマスと戦う!!」

 

その言葉を聞いたバビディとダーブラは高らかに笑った。

 

「へへへへへ!仲間割れが始まったぞ!」

 

「魔人ブウが蘇るのも時間の問題ですな。」

 

「望み通り場所を変えてやるよ!パッパラパー!!」

 

「!?」

 

バビディが呪文を唱えるとブラックとトランクスはその場から姿を消した。

 

「……さあトランクス。ここなら気にするものは何も無い。」

 

「…………!!」

 

 

 

 

美食殿ギルドハウス

 

 

「……悟空とユウキは無事にあの空間に入れたようね。」

 

「……今はユウキさんと悟空さんを信じましょう……!」

 

「トランクスは今頃どうなってるんだ……?」

 

ターレスは不安そうにそう呟く。するとラビリスタが何やら魔法を操作していた。

 

「ラビリスタ?何やってるの?」

 

「ここから様子を見ようと思ってね。その操られてしまったゴクウとトランクスっていう人が今どんな状況なのかをね!」

 

ラビリスタは天井にブラックとトランクスの今の状況を映し出した。

 

「「「「!?」」」」

 

「あ……ゴクウ!!」

 

キャルはモニター越しにブラックの姿を見て涙を浮かべる。

 

「トランクスさんに……お父さん!!あの姿は……!」

 

「ん?お父さん?あれ……お父さんって言うことは……ははーん。何やら深い事情があるようだね。」

 

ラビリスタはシャルルとブラックの関係を察したがこれ以上は何も言わなかつた。

 

「……あれは超サイヤ人か。トランクスにブラックも本気で闘うようだな……。」

 

ターレス達はトランクスとブラックを見守った。

 

 

 

 

トランクスとブラックはバビディの魔術によって誰もいない更地に移動された。そしてブラックの脳内に再びバビディの声が響く。

 

『さあ殺すんだよ。トランクスを!!そしてそれが終わったら邪魔者を全て殺せ。魔人ブウをお前の手で復活させるんだよ。』

 

「が…………ぁあ……!!!!!」

 

ブラックはバビディの声に苦しむ。

 

「ザマス……!!」

 

『さあ、早くやるんだよ。』

 

「…………こ、断る……!!」

 

「!?」

 

ブラックはバビディの指示を無視した。

 

「何ぃ!?」

 

「むぅ!?」

 

これにはバビディとダーブラも予想外だったらしく驚いた。

 

「魔人ブウの復活など……私の知ったことではない!」

 

「ザマス……!!」

 

次の瞬間だった。

 

「うおああああああっ!!!!!」

 

ブラックは溢れる気を解放しトランクスに襲いかかった。

 

「くっ……ハァッ!!」

 

トランクスはブラックと拳を衝突させた。

 

「トランクス!!貴様さえ……貴様さえいなければ……!!」

 

「ザマス……!!これが……これがお前の本当にしたい事なのか!!」

 

「何だと……!?」

 

「お前は改心したんじゃなかったのか!!」

 

「改心だと……!?誰がそのような事を!」

 

トランクスとブラックは戦いながら会話をする。

 

「少なくとも……オレが見た限りでは今のお前は裏切る様な奴ではなかった!」

 

トランクスが見たブラックの姿は一般的な家庭で見られるような暖かいものだった。

 

 

 

 

「あぁ……ゴクウ!お願いだから操られないで……!」

 

「お父さんにトランクスさん……二人ともなんて強さなの!?」

 

「……全く。神精樹の実をあと何個食ったらアイツらに追いつけるのかね……。」

 

「なんて力なんだ……!!」

 

モニター越しに繰り広げられるトランクスとブラックの闘い……お互いがダメージを受ける度にキャル達も辛そうに顔を歪めた。

 

 

「答えろザマス!!これがお前の本当にしたい事なのか!!」

 

「……当然だ。トランクス!お前が今まで見てきた私の姿はゴクウブラックの私だ!今の私はザマスの心だ……ザマスの精神だ!!」

 

「何っ!?」

 

「「「「!?」」」」

 

「ザマスの精神……!?」

 

キャルとラビリスタも予想外の言葉に驚いた。

 

「……私はずっと奴の心にいた……!人間と仲良く暮らしている姿を見て私が思ったのは憎しみだ!!人間に敗れた私が人間と共存などありえない!!こんな事があっていいはずがないのだ!!」

 

「ぐああああっ!!!」

 

ザマスはそう言ってトランクスを吹き飛ばした。

 

「人間など……二度と……!?」

 

「ザマスッッッ!!!!」

 

「ぐわああああっ!!!」

 

トランクスはすぐさま起き上がるとブラックを殴り飛ばした。

 

「ハァ、ハァ……貴様がブラックの心にいたのなら……一体今まで何を見てきたんだ!!」

 

「!?」

 

「お前と同じ考えをもつブラックが変わったということは……お前だって変われたはずだ!神と人間が手を取りあう未来もあったはずだ!」

 

「何……!?」

 

「神と人間の違いなんてない!!ブラックは……キャルさん達と一緒にいて気づいたはずだ!!お前は……それを見ていたんじゃないのか……!!」

 

「!?」

 

「お前のその力は……神の力は人間を消すためにある物なのか……!!」

 

「……私の……力は…………っ!!」

 

 

 

その時、ザマスは昔の事を思い出した。

 

「どうだ?界王神界に来て私のもとで学んではみないか?」

 

かつてザマスが界王だったころ、ゴワスに見習い界王神としてスカウトされた時のことだった。

 

「わ、私が界王神界に……光栄です!全宇宙の平和の為に全力を尽くします!」

 

この力は人間を殺し尽くす為にあるものではない、全宇宙の平和のために……そして今はブラックの愛するものを守るためにある。ザマスは今の自分がしている事と過去の自分を重ねた。

 

 

 

「……本当は気づいてるんじゃないのか?人間を0にする意味はないと……!!過去の自分を否定することを認められないだけなんだ!!」

 

「あ……が……だ、黙れぇぇぇぇえ!!!!!」

 

「……自分以外を信じないお前には……オレは負けない!!」

 

二人は全力でぶつかり合った。

 

「ぐはぁっ!!」

 

「がはぁっ!!」

 

そしてお互いに一歩も譲らない激しい攻防が始まった。

 

「はぁあああっ!!!!」

 

「でやあああっ!!!!」

 

ブラックの拳とトランクスの拳が互いの顔面を捉えた。

 

「「ぐぐぐぐぐっ…………!!!」」

 

 

「お互いに酷い怪我……もうこれ以上は……!」

 

「全くの互角だ……!」

 

「でも……こんなお互いにダメージを受けたら魔人ブウが……!」

 

「……今のアイツらは魔人ブウの復活など考えてない。ただお互いに本気でぶつかり合って純粋に闘いを楽しんでいる……流石はサイヤ人だな。」

 

ターレスも二人の闘いをみて気持ちが高ぶった。

 

 

 

「ま、まさか……こんなにはやくエネルギーが……見てみてダーブラ……エネルギーが!!」

 

「なんと……!!これ程まで……!!」

 

それに伴い魔人ブウの復活のメーターがすごい勢いで上がっていた。

 

 

「くっ……がは……ふふふ……腕を上げたようだなトランクス。」

 

「……それは貴様もだろう……!」

 

ブラックとトランクスは互いにニヤリと笑う。サイヤ人の血が二人の闘いを熱くさせていた。

 

 

一方で、

 

 

「ユウキ!そんじゃあ始めんぞ!」

 

「いつでもいいよ!!」

 

ユウキと悟空はラビリスタの作り出した魔法によって外の世界よりも時間の流れが遅い部屋で修行をしていた。

 

「……よし。」

 

「!?」

 

すると悟空は突然銀色のオーラを纏い始めた。

 

「そ、それって…………。」

 

「ユウキ、今のおめぇが目指す姿はこれだ。」

 

圧倒的な悟空のプレッシャーにユウキは震えた。

 

「だがこれはそう簡単には使いこなせねぇぞ?オラだってまだ安定しねぇんだ。」

 

「ボクは……どうすればそれになれるの……?」

 

「この技をやるには心を空っぽにしねぇといけねぇ。でも普通は闘ってる時にはどうしても心が乱れちまうもんなんだ。」

 

「心を……空っぽに?」

 

「ああ……ブラックやオラ達の変身する超サイヤ人は怒りがきっかけだ。でもこれはそれの全く逆なんだ。」

 

「???」

 

「感情を揺さぶられる衝動を抑えられた時に発動する技。それが…………。」

 

 

「『身勝手の極意』だ。」




ザマスも最初は歪んでなかったんだよな。


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ブラックの決断

「「はあああああっ!!!!!!」」

 

トランクスとブラックの激しい闘い。一撃一撃が空気を震わすほどの激戦だった。

 

「だああああっ!!」

 

「ふんっ……!!」

 

「!?」

 

ブラックの攻撃はトランクスを捉えることが出来ずに空を切った。

 

「こっちだ!!」

 

「ぐあああっ!!!」

 

トランクスはブラックの横に回り込み地面へとたたき落とした。

 

「この程度でやられるかああああっ!!!」

 

「!?」

 

ブラックはすぐさま起き上がるとトランクスの顔目掛けて回転蹴りを放った。

 

「ザマスッ!!!」

 

トランクスもそれに応えるように強烈な拳をブラックの顔に放った。

 

「「ぐあああああっ……!!!」」

 

お互いに相打ちになったブラックとトランクスは一旦距離をとった。

 

そして、遂に恐れていた事態が起こってしまう。

 

「な、なった……魔人ブウのエネルギーが……『フルパワー』になったよおっ!!!!」

 

「遂に蘇るのですね……魔人ブウが!!」

 

なんとブラックとトランクスの凄まじい闘いが強力なエネルギーを生んでしまっていた。

 

「出てこい魔人ブウ!!」

 

するとピンク色の煙が一箇所に集まっていく。

やがてそれは人の形になり魔人ブウは遂に姿を現した。

 

「…………。」

 

魔人ブウは無愛想な顔を浮かべながら一言も言葉を発さない。

 

「バビディさま。あれが魔人ブウなのですか?」

 

「さ、さあね……魔人ブウは僕のパパしか見たことがないからわからない。」

 

すると魔人ブウはゆっくりとダーブラの前まで歩いてくる。

 

「……!!」

 

目の前から伝わる圧倒的な気を前にダーブラは少し後ずさりした。

 

「……お前ムカつく。」

 

「がはっ……!?」

 

次の瞬間、魔人ブウはダーブラの腹に強烈な蹴りをくらわした。

 

「ま、魔人ブウ!?」

 

「貴様……!!」

 

ダーブラは反撃を試みるもあっさりと魔人ブウにかわされる。

 

「お前、面白くない。消えろ。」

 

「がぁっ……!バビディ様あああっ!!!!」

 

魔人ブウはダーブラを跡形もなく消し去った。

 

「す……すごいぞ魔人ブウ!!あのダーブラをこうもあっさりと……!!」

 

「……腹減った。何か食わせろ。」

 

「それならこの世界にいる人間達を全員お菓子にして食べちゃえ。お前なら余裕だろ魔人ブウ!」

 

 

魔人ブウが復活したことはシャルル達も感じ取っていた。

 

 

「こ、この気は……!!この……巨大な気は……!」

 

「どうしたのシャルル!?」

 

「……魔人ブウが復活しました…………!」

 

「「「!?」」」

 

「なんだと!?もう復活したのか……!」

 

「嘘でしょ……まだユウキ達が入ってから10分も経ってないわよ!!」

 

「これはまずい事になったね……。」

 

 

 

そしてブラックやトランクスもその事に気がついた。

 

「待てザマス!!感じるか……とてつもなく大きい気だ……!!」

 

「!?これは……!!」

 

ブラックとトランクスは立ち止まり気の感じる方を見た。

 

「とうとう出てしまったんだ……魔人ブウが!」

 

「……なんて気だ……これが魔人ブウなのか…………!だがそんなことは関係ない!」

 

「!?」

 

ブラックはそのままお構い無しにトランクスへ攻撃を続けた。

 

「な、何をやってるんだザマス!!こんなことをやっている場合じゃないんだぞ!魔人ブウを出してしまったのはオレ達なんだ!!」

 

「それがどうした……!!私達の勝負には関係ない!!」

 

「ここはオレ達で協力して魔人ブウを倒すのが先だ!!」

 

「…………くっ!」

 

「お前の力を貸してくれ!ザマス!!」

 

トランクスが必死に説得するとブラックは拳を下ろした。

 

 

「………………まさかお前に諭されるとはな。全く人間というのは…………。」

 

(……今からでも罪が償えるなら……。ゴワス様……私はどうしたら人間の営みを見守ることができたのでしょう……。)

 

「ザマス……!!」

 

するとザマスは諦めたのか自我を手放しブラックの精神へと戻った。

 

「……罪を清算しなければならないのは私も同じだ……ザマスよ、お前は私だからな。」

 

ブラックは自我を取り戻すとザマスの意思を深く刻んだ。

 

「……!!ブラック……戻ったのか!!」

 

「……ああ。トランクス、ザマスを鎮めてもらってすまなかったな。」

 

 

 

「ゴクウの洗脳が解けた……!?」

 

「いや、まだ額に『М』のマークが残っているが……どういう事だ?」

 

「お父さん……。」

 

「……何か嫌な予感がするよ。」

 

ラビリスタ達はブラックが正気を取り戻し一瞬だけ安心したがまだ不安は残っていた。

 

「……ブラック!オレとお前が手を組めばなんとかなるかもしれない!」

 

「ふっ、共に戦うかトランクス……!」

 

ブラックはそう言ってトランクスに近づいた。

 

「待っててくれ、確か悟空さんに貰った仙豆が……。」

 

「……。」

 

トランクスが仙豆を探したその時だった。

 

「ぐぼぁあ……っ!!!!」

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

「え!?」

 

「ゴクウ……何やってんのよ……!!」

 

「お父さん!?」

 

「なっ……!!」

 

ラビリスタ達はブラックの予想外の行動に目を疑った。

 

なんとブラックがトランクスを背後から攻撃したのだ。

 

「…………。」

 

「な……ブラック……きさ…………!!」

 

トランクスは気絶しそのまま倒れた。

 

「…………。」

 

そしてブラックはトランクスの落とした仙豆を一粒食べた。

 

「……トランクス。私が出してしまった魔人ブウは私が片付ける……。多くの人間を殺してきた私にできることは……この世界の人間を守ることだけだ……これは私のケジメだ……!」

 

ブラックはそう言うと一人で魔人ブウの下へと向かった。




因みに魔人ブウは最初から(悪)です。


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徒花と散る葬送曲

トータル30万字超えてるやん……!


 

「お、お父さんを止めなきゃ……!!私はもう行きます!!」

 

シャルルはいてもたってもいられずにギルドハウスを飛び出した。

 

「待て!シャルル!!ちっ……!」

 

ターレスもシャルルの後を追うように飛び出して行った。

 

「シャルル!!ターレス!!」

 

「………………。」

 

するとラビリスタはモニターを閉じた。

 

「ラビリスタ!?なんでモニターを閉じちゃうのよ!これじゃどうなってるか分からないじゃない!」

 

「……これ以上は見ないほうがいい。ゴクウの為にも……君の為にもね。」

 

「ど、どういう事よ……!」

 

ラビリスタは薄々これから起こることに気づいていた。

 

 

 

 

「……あ、あれ!?私は一体……!!」

 

「はっ……!!確かわたくしは……!」

 

ダーブラが魔人ブウによって殺されたのでコッコロとペコリーヌは石化が解除された。

 

「私たち……確かダーブラって人に……ってなんですかあのピンク色の人は……!!」

 

「あ……あれがまさか魔人ブウでございますか!?」

 

ペコリーヌとコッコロの見る先には魔人ブウがバビディと共にいた。

 

「へへへへへ。魔人ブウ!この世界の奴ら全員お菓子にしちゃえー。」

 

「……オレが食い尽くす。」

 

ペコリーヌ達は崖から隠れて様子を伺う

 

「なんだか物騒ですね……!」

 

「は、はい……。」

 

「ペコリーヌさん!!コッコロさん!!」

 

「「!?」」

 

するとギルドハウスから飛んできたシャルルとターレスがペコリーヌ達を見つけた。

 

「シャルルさま!ターレスさま!」

 

「よお、元に戻ったようだな。」

 

「は、はい!どうやらダーブラがやられたみたいですね。」

 

「……恐らくダーブラをやったのはあの魔人ブウです……。」

 

「「!?」」

 

「……それよりも早くお父さんを見つけないと……!」

 

シャルルがブラックを探し初めたその時だった。

 

 

ドォォォォォォォンッ!!!

 

 

「「「「!?」」」」

 

 

「な、なんだー……!」

 

「…………。」

 

バビディは激しい爆風により地面を転がった。

そして、突如現れた人物にバビディは驚いた。

 

「な、お前は……!!」

 

「「「「!?」」」」

 

「…………その無愛想な木偶の坊が魔人ブウか。」

 

現れたのはブラックだった。

 

 

「お父さん……!」

 

「ゴクウさん!?」

 

「ゴクウさま!?」

 

「……ブラック……。」

 

ペコリーヌ達も突如現れたブラックに驚く。

 

「ざ、ザマス……どうしてお前がここに……。」

 

バビディはブラックを見て体を震わせると魔人ブウが首を傾げる。

 

「……木偶の坊?ってなんだ。うまいのか?」

 

「……木偶の坊は無能とか役に立たないって意味だよ……。」

 

「…………。」

 

木偶の坊の意味をバビディに教えてもらった魔人ブウは顔を強ばらせた。

 

「……お前、嫌いだ。殺してやる。」

 

「……いいぞ魔人ブウ!!アイツは逆らうし命令も聞かないからやっちゃえー!」

 

すると魔人ブウは気を大きく膨れ上がらせた。

 

「……お前ももういらない。」

 

「!?」

 

「貴様!何を……!」

 

すると魔人ブウはバビディの首を掴んだ。

 

「……!!」

 

「……声が出なければオレを封じる呪文言えない。オレは好きなようにする。」

 

「!!」

 

魔人ブウはそのままバビディに向けて強力な気功波を放った。

 

「……なんてやつだ。」

 

 

その光景には遠くから離れて見ていたシャルル達も驚いた。

 

「バビディを殺した……!!」

 

「ど、どういう事……!?」

 

「恐ろしいです……。」

 

「これは……やばいですね……。」

 

 

 

ブラックは魔人ブウの前に立つと今までの出来事を振り返る。

 

「……この世界に来て色んな事があったな。かつて私は人間を消そうとしていたのにも関わらず……今となっては家族をもつとはな。ようやく私にも……守るべきものができた。トランクス……お前はゆっくり待っていてくれ。事が済んだら……いや、私はもういないかも知れないがな……。はあああああ……っ!!!!!」

 

ブラックは気を解放し魔人ブウと向かい合った。

 

ブラックの気は激しく揺れ周りの瓦礫が空中に浮かぶほど強大なものだった。

 

「…………。」

 

だが依然として魔人ブウは表情を変えずにブラックを見る。

 

 

 

「……すごい。お父さんの気が……こんなに……!!」

 

「……まるでゴクウさんの力が戻ったような感覚です……仮面をつけていた時よりも……!」

 

「これならば……なんとかなるかもしれませんね!」

 

「………………。」

 

コッコロ達はブラックの力を見て安心したがターレスは複雑な表情でそれを見ていた。

 

 

そして次の瞬間だった。

 

「たりゃあああああっ!!!」

 

「…………。」

 

ブラックは一瞬で魔人ブウとの距離を詰めると顔を蹴り飛ばした。

 

「…………!」

 

「はああああっ!!!」

 

魔人ブウは少しよろめく程度でなんの抵抗もせずにブラックの攻撃を受け続けた。

 

「……受けるがいい!我が刃!!」

 

ブラックは攻撃を手刀に切り替える。

 

「…………。」

 

だが……

 

「……どうした。それで終わりか。」

 

どんなに攻撃を浴びせようとも傷が元に戻りダメージが通らない。

 

「……敵に不死身の奴がいるのがこんなに厄介とはな……。」

 

ブラックも魔人ブウの強さを感じで苦笑した。

 

「もう来ないならこっちから行くぞ。」

 

「!?」

 

すると魔人ブウは一瞬でブラックの背後に回り込んだ。

 

「な……!?貴様……!!」

 

「…………お前、つまんない。」

 

そしてそのまま魔人ブウはブラックを殴り飛ばした。

 

「ぐああああああっ!!!!」

 

 

「「「「!?」」」」

 

 

「み、見えませんでした……今、攻撃したんですか!?」

 

「……ゴクウさまが……!!」

 

「お父さん……もう……!!」

 

「とんでもねえ化け物だな……。」

 

 

 

殴り飛ばされたブラックは巨大な岩に激突し瓦礫の下敷きになった。

 

 

「…………ぐぁ……っ!」

 

たった一発のパンチで体中の骨が砕けたブラックはその場に横たわった。

 

「…………。」

 

魔人ブウはゆっくりとブラックに近づく。

 

「……お前、終わりだ。」

 

「!?」

 

魔人ブウが手をかざしたその時だった。

 

「ぐおっ……。」

 

「……!…………シャ……シャルル……ペコリーヌ……。」

 

ペコリーヌとシャルルが魔人ブウを蹴り飛ばし瓦礫の下敷きにした。

 

 

「アイツら……飛び出していきやがって……。」

 

「そ、そんな……ペコリーヌさまにシャルルさま!」

 

ペコリーヌとシャルルはいてもたってもいられずにブラックの加勢にいった。

 

「くっ……が…………!」

 

ブラックは無理やり体を起こして立ち上がった。

 

「お父さん!!しっかり……!!」

 

「ゴクウさん!!」

 

ブラックは立ち上がると静かに空を見上げた。

 

「…………シャルル。キャルを……ママを大切にしろよ。」

 

「え…………?」

 

「ゴクウ……さん?」

 

シャルルとペコリーヌは突然のブラックの言葉に驚いた。

 

「ど、どういうこと……お父さん。」

 

「……お前達はどこか遠くへ避難していろ。魔人ブウとは……私一人で闘う。」

 

「そんな……無茶です!!」

 

「いやです……!!わたし達もお父さんと一緒に闘います!!」

 

「……無理だ。アイツには何人でかかっても倒せない。」

 

「……お父さん……!!なんでそんな事いうの……?」

 

するとブラックはシャルルの方をみた。

 

「……シャルル。お前の未来では私はお前が生まれる前に心臓病で死んでしまったんだったな。」

 

「え……う、うん……どうしたのいきなり?」

 

「……お前は赤ん坊の頃から一度も抱いてやれなかったんだな……。」

 

「……え?」

 

するとブラックはシャルルに近寄った。

 

「……抱かせてくれ。」

 

「お、お父さん…………?」

 

ブラックはシャルルを抱き寄せた。

 

「お、お父さん……。こんな急に……恥ずかしいよ。私……もう子供じゃないのに……。」

 

恥ずかしがっていたシャルルだが初めて父親に抱かれた事が嬉しかったのかブラックの服に顔を埋めていた。

 

「…………わぁ……!」

 

ペコリーヌも羨ましそうに二人を見ていた。

 

ブラックはしばらくシャルルを抱くと静かに微笑んだ。

 

「……元気でな。シャルル……。」

 

「……え?」

 

「!?」

 

「ぁ…………お父さ…………。」

 

ブラックはシャルルの首を叩いて気絶させた。

 

「シャルルちゃん!?ゴクウさん!!なんでシャルルちゃんを……!!」

 

ペコリーヌはブラックの肩を掴んだ。

 

「なんでシャルルちゃんを……あっ……!?」

 

「……すまない。」

 

そしてブラックはペコリーヌの事も気絶させた。

 

 

 

 

「……やはりそうか。」

 

「ゴクウさまはなんで……!!」

 

ターレスはブラックの行動に気がついた。

 

「……コッコロ。お前はここで待っていろ。」

 

「ターレスさま!?」

 

ターレスはコッコロをおいてブラックのところへと降り立った。

 

「ブラック…………!?」

 

「……。」

 

すると先程シャルルとペコリーヌに蹴り飛ばされた魔人ブウが起き上がりこっちへと向かってきていた。

 

「……オレを蹴ったやつ……許さない。」

 

魔人ブウは怒りながら歩いて来ていた。

 

「……ターレス。二人を連れてどこか遠くへ避難してくれ……急いでな。」

 

「…………ああ。」

 

ターレスはペコリーヌとシャルルを両腕で抱え込んだ。

 

「……頼んだぞ。ターレス……!」

 

「……貴様……死ぬ気だな?」

 

「…………。」

 

ブラックは歩いてくる魔人ブウだけを真っ直ぐ見つめる。

 

「…………後はお前たちに任せた。私の役目は終わりだ。さあ……早く行け。」

 

「…………。」

 

ターレスは小さく頷くと二人を抱え飛び去った。

 

「コッコロ!俺の背中に乗れ!」

 

「で、ですがゴクウさまは……!!」

 

「早くするんだ!!アイツは今……自分の大切なものを守ろうとしているんだ!自分の命を捨ててまでな……!」

 

「命を!?……た、ターレスさま……!!」

 

ターレスは強引にコッコロを背中へ乗せて飛んで行った。

 

 

「……お前ら逃がさない!!」

 

魔人ブウはターレスを追跡しようとした。

 

「待て!!魔人ブウ!!アイツらはこの私を倒してからにするんだな!分かったかこの木偶の坊が!」

 

「また木偶の坊と言ったな!?殺してやる!」

 

するとブラックはニヤリと笑った。

 

「……貴様の片付け方が分かったぞ。やっとな……!」

 

「!!」

 

ブラックは自身を中心に強力な気を展開した。

 

「……何をやっても無駄だ。お前の攻撃は効かない。」

 

「……貴様を倒すには……二度と修復出来ないよう……粉々にぶっ飛ばすことだ!!」

 

「なに……?こ、これは……。」

 

すると魔人ブウの体から小さい光がどんどん上に上がっていく。少しずつブラックの強力な気が魔人ブウの体を削っていた。

 

ブラックは最後の瞬間まで笑っていた。

 

 

 

 

 

 

さらばだ……。キャル…シャルル………そして…トランクス…………

 

 

 

 

 

 

 

「うおああああああ───っ!!!!!!」

 

 

次の瞬間、ブラックの身体から信じられないほどの気が放出され辺りを呑み込んで行った。

 

「はああああああ────────っ!!!!!!」

 

ブラックは叫びながら凄絶な光の彼方へと消えていった。




ブラックも変わったんやなって……


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誰が為に護りぬく意志

ドラゴンボールレジェンズも魔人ブウ編にスポット当ててんのね。


「ま、まさかそんな……ゴクウさま───っ!!!」

 

「……くっ……。」

 

ターレスはコッコロ達を連れギルドハウスへと向かった。

 

 

「はああああああ────────っ!!!!!!」

 

 

 

ブラックの身を呈した大爆発はランドソルの街まで響き渡った。

それはギルドハウスからでも爆発したのがわかるほどのものだった。

 

「い、今の爆発は……!?」

 

「ァゥ……ァ……。」

 

「……起きちゃった?大丈夫よシャルル。ママがついてるから……。」

 

キャルはシャルルを再び寝かしつけた。

 

「…………。」

 

 

 

 

「う……ぐっ……い、今の爆発は一体……!」

 

ブラックに気絶させられたトランクスも目を覚ました。

 

「どこだ……ブラックはどこに行った……!気が感じられない……!ん?あれは……。」

 

トランクスが見つけたのはブラックの爆発から逃れたターレス達だった。

 

「おーーーーーーーいっ!!!!」

 

トランクスは大声でターレスに呼びかけた。

 

「!?トランクス……!」

 

「あれはトランクスさま!!」

 

ターレスとコッコロはトランクスの存在に気づいた。

 

「トランクス!!お前も一度ギルドハウスへ戻るぞ!」

 

「なっ……わかった……!!」

 

トランクスはターレス達と共にギルドハウスへと帰還した。

 

 

 

 

美食殿ギルドハウス

 

 

 

「……戻ったぞ。」

 

「ターレス!!コロ助!それに……トランクスまで!」

 

キャルがターレス達を出迎えた。

 

「…………あれ……ここは……ってラビリスタさん……?」

 

「……やあ久しぶり。」

 

ラビリスタも今は無理して笑顔を作っているような気がした。

 

「ま、ママ…………?」

 

すると気絶していたペコリーヌとシャルルも目を覚ました。

 

「ペコリーヌ!シャルル!よかった……。」

 

キャルは全員が無事であることにホットした。ただ一人を除いては…………。

 

「……あれ?ターレス。ゴクウは何処にいるの……?」

 

キャルはターレスにそんな質問をした。

 

「……キャルさま。」

 

コッコロもブラックの結末を知ってしまっているため言葉がでない。

 

「……ブラックはオレと闘ったあとどうなったんですか……!」

 

トランクスもそれが気になっていた。

 

「………………アイツは死んだ……。」

 

「「「「!?」」」」

 

「え………………?」

 

「お父さんが…………死んだ…………?」

 

「嘘……ですよね……。」

 

「ブラックが……死んだ!?」

 

ターレスは包み隠さずにブラックの安否を伝えた。

 

するとその事を受け入れられないキャルはターレスを問い詰めた。

 

「は?……ターレス……アタシそういう冗談好きじゃないの。何があったのかさっさと教えなさいよ……!!」

 

「キャルさま……!!」

 

「ママ……!!」

 

コッコロとシャルルはキャルを必死にとめた。

 

「なによコロ助……シャルル……アンタまでコイツの言葉を信じるの……?」

 

「……キャルさま含め……わたくし達はゴクウさまに…助けられたのです……。」

 

「……嘘よ。嘘よ嘘よ嘘よ!!そんなの嘘よ……!」

 

「……お父さんは最後……私に『ママを大切にしろよ』って伝えたんです……。」

 

「どうしてなの……?どうして……アイツは毎回勝手にいなくなるのよ……!!」

 

キャルは涙が枯れるまで泣いていた。

 

「……うっ…………うぅ……。」

 

「キャルちゃん……。」

 

「ママ……。」

 

「キャルさま……。」

 

ペコリーヌ達もキャルと同じ気持ちだった。

ギルドハウスでは暫く静寂が続いた。

 

「…………せめて爆発のあった場所まで行ってみようか。このままじゃ彼が報われないだろうしね。」

 

「……私も行きたいです……グスッ……せめてお父さんに……。」

 

「……わかった。じゃあ行くよ。」

 

ラビリスタはオブジェクトを変更しキャル達を爆発のあった場所まで連れてきた。

 

「……あ、あれは…………。」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

トランクス達が見つけたのは気を全て放出し身体が全て灰になったブラックの姿だった。

 

「ゴクウ…………さん…………。」

 

「お父さん………………。」

 

「………………。」

 

「ブラック…………。」

 

「ゴクウさま………………!」

 

「……………ゴクウ………ねぇ………ぁ……!」

 

キャルがブラックの身体に触れた途端、灰はバラバラに崩れて空中に舞う。

 

「ゴクウさんの……身体が………………。」

 

「あぁ…………ゴクウさま…………!」

 

「お、お父さん………………。」

 

「あ…………あぁ………………!!」

 

キャルは風で飛んでいってしまうブラックの灰に手を伸ばした。

 

「待ってよ…………行かないでよ…………!!」

 

全員がこの目で見るまではブラックが死んだと信じたくはなかった。だが……これを見てしまっては受け入れるしかない。

 

「……キャルちゃん。ゴクウさんが私達に託してくれたんです……。わたし……絶対に無駄にしません。」

 

「ママ……お父さんは噂に聞いた通り……いや、それ以上にすごい人だったよ……。」

 

「ゴクウさまは…………本当に凄いお方でした……。」

 

「ゴクウ……今までありがとう。せめて安らかに…………。」

 

「……オレは………………ブラックに命を救われたのか………。」

 

「…………そうだな。アイツの死を無駄にしないようにしないとな。」

 

ターレスとトランクスも拳を強く握りしめた。

 

 

 

モクモク…………

 

 

 

悲しみにくれる中、キャル達の後ろで謎のピンク色の物体が徐々に集まっている事には誰も気づいていなかった。




よくよく考えたら今まで一緒に旅してた仲間が目の前で灰になって消えるって普通にトラウマになりそう。
あ、あと近々オリキャラが登場予定です!ようやく納得の行く絵をAIが作ってくれました。性別は女性です。お楽しみに


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楽しかった。

ドッカンバトルもLR魔人ブウ出てきて草


「…………さあ、戻ろうか。」

 

「…………。」

 

キャルの顔は酷く絶望に染まり目の光も失っていた。

 

「キャルちゃん……。行きましょう……。」

 

「ママ…………。」

 

ペコリーヌとシャルルはキャルを支えながら立ち上がった。

 

「…………。」

 

ラビリスタが空中に舞うブラックの灰を見届けてギルドハウスへ戻ろうとした時だった。

 

モクモク…………

 

「な、なんだこれは!!!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

トランクスが大きな声をあげた。

 

するとピンク色のバラバラになった物体が一箇所に集まっていく。

 

「え…………嘘……でしょ……?」

 

「ゴクウさまが……命をかけたのに……!」

 

「お父さんが……せっかく…………!」

 

「馬鹿な!!そんなはずは……!!」

 

「な……なんて事だ……!魔人ブウの肉片が……!!」

 

なんとバラバラになった魔人ブウの肉片は再生しようとしていた。

 

「皆!!一度ギルドハウスへ戻るんだ!!まだこの分だと完全に再生しきるまで時間が掛かるはずだ!!」

 

「……はい!!」

 

ブラックのやった事は決して無駄ではなかった。魔人ブウが再生するのに掛かる時間を稼いでくれていた。

 

 

そしてラビリスタ達はオブジェクト変更でギルドハウスへと戻ってきた。

 

 

「……あれだけの爆発の中生き残っているなんて……本当になんてやつだ……!」

 

「で、ですが……完全に再生するのにどれくらいの時間がかかるのでしょうか……。」

 

「……多く見積もって……5分程だね。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「5分!?」

 

「たったそれだけですか!?」

 

「…………。」

 

復活の時間が迫る中、ペコリーヌ達の顔色は暗くなる。

 

だがその時だった。

 

「ん?この魔法陣は……修行がようやく終わったようだね。」

 

「「「「「!!」」」」」

 

するとラビリスタの作った部屋から悟空が出てきた。

 

「……随分待たせちまったな。おめぇ達。」

 

「カカロット!?」

 

「悟空さん!!」

 

「悟空さま!!」

 

「悟空……って……ユウキは……?」

 

出てきたのは悟空1人だけだった。

 

「ユウキにはまだ修行してて貰う。」

 

「「「「「!!」」」」」

 

「……オラ、ユウキの修行が終わるまでの時間を稼ぎに来たんだ。」

 

「ユウキはまだなのね……。」

 

「……ああ。でもユウキのやつ……すげぇ根性だ。あの調子なら間に合うかも知れねぇ……。」

 

悟空はユウキの成長にワクワクしていた。

 

「……ん?ブラックはどうした……一緒じゃねえんか?」

 

「「「「…………。」」」」

 

悟空は当然ブラックが死んでしまったことを知らない。

 

「……ブラックは……オレたちを守るために死にました。」

 

「なんだって………!?ブラックが死んじまったんか……!」

 

「……残念だがその通りだ。魔人ブウが復活し、ブラックは一人で魔人ブウと闘い死んで行った。だが……アイツの攻撃で今の魔人ブウは粉々になっている。完全に再生するまで5分も無いそうだがな……。オレたちに残された時間は少ない。」

 

「くっ………!ブラックの奴……せっかくいいやつになったのに悔しいな……。」

 

悟空もブラックが死んでしまった事を悔やんだ。

 

「……はい。」

 

すると悟空は道着の帯をキツく締めた。

 

「……オラがちょっくら行ってくる。」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「悟空さん……!」

 

「……どっちみちユウキが出てくるまで時間を稼がなきゃいけねぇんだ。なるべく闘いを長引かせてみせるさ。」

 

悟空は額に指をあてる。

 

「……とんでもねぇ気だ……。そんじゃ行ってくる!」

 

悟空は瞬間移動で魔人ブウの元へと向かった。

 

「悟空さん……。」

 

「カカロット……。」

 

 

 

 

 

 

「……………だめだ。まだ僕には……。」

 

ユウキは一人で修行を続けていた。

 

「……早く完成させなきゃ行けないのに……。」

 

ユウキは修行を続けるが何か突破できない壁に挫折していた。

 

その時だった……。

 

「……焦る必要はないぞユウキ。」

 

「!?」

 

ユウキの前に姿を現したのはブラックだった。

 

「ゴクウ…………?」

 

「……すまないなユウキ。私はもう死んでしまった。」

 

「し、死んだ…………?ゴクウが…………?」

 

ブラックの口から発せられる言葉はとても信じられない事だった。

 

「じゃあ……僕の前にいるゴクウは………。」

 

「……心配になってな。地獄に行く前に立ち寄っただけだ。」

 

「ゴクウ……そんな………。」

 

ユウキの目には既に涙が浮かんでいた

 

「僕がもっと早く……完成させていれば……。」

 

「……いや、お前の今やってる修行にはなんの問題もない。」

 

「え…………?」

 

「……完成まではあときっかけだけなんだ。」

 

「きっかけ…………?」

 

するとブラックはユウキを見て微笑んだ。

 

「……私は以前まで人間を滅ぼす事が正義だと思ってた。でもそれは正義ではなく唯の私の歪んだ正義に過ぎなかった。」

 

「……ゴクウ……?」

 

ブラックは今までの長い人生を振り返っていた。

 

「……だけどな……この世界に来てお前たちと過ごしていくうちにやっと私にも……本当の正義の感情が芽生えてきたんだ。」

 

「…………………。」

 

「……不思議だよな。前までは誰が死のうが……どの世界が滅ぼうが私には関係なかった。だが仲間というものを知り……家族を知り……思ったんだ。」

 

「!!」

 

「この平和な世界は失いたくない……とな。」

 

「………………ゴクウ……身体が……!!」

 

ブラックの身体は徐々に透けていった。

 

「………ユウキ。今の実力で身勝手の極意が完成すれば遥かに安定したものになる。相手が魔人ブウだろうと……誰だろうと負けることはない。」

 

「!!」

 

「私が愛したこの世界を……お前の手で守ってやってくれ。……ユウキ、今までの旅は本当に…………楽しかったな。

 

最期にブラックはユウキに笑顔を向けると霧のように消えていった。

 

「…………………守るよ。この世界も……仲間も絶対に僕が守るよ………!」

 




僕がもう耐えられないので次回はほのぼのにします


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【番外編】美食殿の日常

たまにはほのぼのも大事だよね。


ある日の朝

 

 

美食殿ギルドハウス

 

「おっす!ブラック!」

 

「孫悟空……もう起きたのか。」

 

時刻は朝の5時前だというのに悟空はもう起きてきた。

 

「いやー昨日は早めに寝たからな……もう起きっちまった!それにしてもブラックは毎朝こんな早い時間に起きてんのか?」

 

「まあな。朝は色々とやる事があるのだ。」

 

そういってブラックは忙しそうに家事をやる。

 

「オラ今から寝ようとしても寝れねえぞ……。オラと組手しねぇか?」

 

「……すまないが私はこれから仕事だ。」

 

ブラックは悟空とは違いちゃんと働いていた。

 

「仕事!?ブラック……おめぇ仕事してんのか!?」

 

「当たり前だ。普通は家族の為に働くものだろ。」

 

「そ、そうだよな……!ははは…………。」

 

修行ばかりであまり働かない悟空はブラックの発言が心に刺さる。

 

「……孫悟空。お前まさかニー」

 

「と、ところでさ!ブラックの仕事って……なんだ?」

 

悟空は食い気味にブラックのセリフに割り込む。

 

「……フラワーデザイナーだ。」

 

「ふらわーでざいなー???」

 

「花の飾り付けなどで会場を華やかにする仕事だ。」

 

「へぇ〜よく分かんねぇけどすげぇな。」

 

悟空はいまいちブラックの仕事が分からなかった。

 

「まあいい……朝食はもう作っておいた。食べるなら先に食べてていいぞ。キャル達は7時頃になったら起こしておいてくれ。」

 

「お、おうわかった!」

 

ブラックはそそくさと準備を済ますと仕事に向かった。

 

「じゃあ行ってくる。」

 

ブラックは静かに扉を閉めて職場へと向かった。

 

「……めえったな。ブラックまで働いてるなんて……チチからしたらオラよりブラックの方がよっぽどいいんじゃねえか……?」

 

そして時刻は7時前になり、悟空はブラックに言われた通りに先に朝食を済ませキャル達を起こした。

 

「おーい!おめぇ達!!朝だぞー!」

 

悟空の声に反応し皆が起きる。

 

「ふぁあ……もう朝ですか?」

 

「……おはようございます。悟空さま。」

 

シャルルは目が半分開いてない状態で下へ降りてきたがコッコロはとっくに起きていたらしくユウキを連れて下へと降りてきた。

 

「朝飯はブラックが作ってったぞ。」

 

「主さま……こちらの席にどうぞ。……それにしてもゴクウさまは今日も仕事ですか。」

 

「……お父さん毎朝大変そうだね。」

 

「オラ5時前に起きちまったけどブラックはとっくに起きてて朝の5時くらいには仕事に行っちまったな。」

 

「は……はやいですね……。」

 

シャルルはブラックの生活に少々驚きながら朝食を食べる。

 

「おはようございます!」

 

するとペコリーヌも部屋から出てきた。

 

「おっすペコリーヌ!」

 

「悟空さんオイッス‪☆」

 

ペコリーヌはご機嫌にテーブルの上に並べられたご飯を食べる。

 

「うんうん!やっぱりゴクウさんの作る料理は美味しいです!やばいですね‪☆」

 

すると……

 

「おはようございます悟空さん。」

 

「よお、カカロット。」

 

トランクスとターレスも部屋から出てくる。

 

「お、やっと起きたな!そんじゃあオラと組手しようぜ!オラもう体動かしたくてうずうずしてんだ。」

 

トランクスとターレスが起きてきた瞬間に悟空は目を輝かせて修行へ誘う。

 

「相変わらずですね悟空さん。いいですよ……オレも強くなりたいですから!」

 

「ふっ……いいだろう。それでこそサイヤ人だ。だがユウキ……お前も強制参加だ。」

 

「え……僕も……!?」

 

「よーし!始めっか!!」

 

「ちょっとまっ……!!」

 

若干ユウキも巻き添えをくらいながら4人は外へと飛び出した。

 

「………男の人ってみんなああいう感じなんでしょうか。」

 

「ふふっ……でも、微笑ましいですね。」

 

「はい!ターレスさんもすっかり馴染んでて敵だったなんて嘘みたいです。」

 

シャルル達はそんな4人を見て少し笑った。

 

「………おはよー………。」

 

すると最後にキャルが起きてきた。

 

「ママ!おはよう!」

 

「キャルさま。おはようございます。」

 

「キャルちゃん!おはようのハグです!ギュー……!」

 

ペコリーヌが早速キャルに抱きつく。

 

「うぅ……熱い……。ってあれ?ゴクウは?」

 

キャルはペコリーヌに抱きつかれながらもゴクウがいないことに気づいた。

 

「ゴクウさんなら朝早くから仕事に行きましたよ。」

 

「仕事?そっか……じゃあ仕方ないわね……。」

 

キャルは少ししょんぼりした感じになった。

 

「キャルさま……?ゴクウさまに何かご用でしたか?用件があるならワタクシが後ほどゴクウさまに伝えておきますが……。」

 

「え?ああ……別にいいのよ。大した用じゃないわ。」

 

「……そうですか。」

 

「あ、コロ助。赤ん坊の方のシャルルのこと任せていい?」

 

「はい。お任せ下さい。」

 

「あ……私も面倒みますよ。」

 

「それではシャルルさまも一緒に赤ちゃんの方のシャルルさまのお世話をいたしましょうか。」

 

「ごめんね……すぐに戻るわ。」

 

キャルはそう言うとふらふらと歩きながら自分の部屋に戻って行った。

 

「キャルさま……なんだか元気がありませんね。耳と尻尾が垂れ下がっております。」

 

「……そうですね。いつもなら私が抱きつくと離れようとするのに今日はそのまま受け入れちゃってましたね。」

 

「……ペコリーヌさん、毎日ママに抱きついてたなんて羨ま……駄目ですよ?」

 

「…………。」

 

シャルル達の会話を聞き流しながらキャルは階段を上り自分の部屋までたどり着くとベッドに横たわった。

 

(………今朝から身体の調子が良くないからゴクウに看病して貰いたかったけど……いないなら仕方ないわね。万が一シャルルに風邪が移ったら大変だしね……。)

 

キャルは風邪を引いてしまったため風邪を移さないように赤ちゃんを自分から遠ざけ今日くらいはブラックに甘えたかったのだろう。

 

コンコン……

 

するとキャルの部屋の扉を叩く音が聞こえた。

 

「……?入っていいわよー。」

 

ガチャ

 

「……よお。」

 

「……え、ゴクウ……?仕事に行ってたんじゃないの?」

 

仕事に行ったはずのブラックがキャルの部屋に入ってきた。

 

「……行ってきたぞ。今日は早退きしてきた。そして風邪薬と体に良さそうな物を買ってきた。」

 

「え……体に……??」

 

「……今朝から顔色があまり良くなかったからな。」

 

「…………!」

 

ブラックはキャルの体調が悪かったことを事前に知っていた為早めに仕事を終わらせて帰ってきたらしい。

 

「あ……ありがと……。」

 

キャルは嬉しかったのか顔を赤くした。

 

「キャル……少し動くなよ?」

 

「はえ……?」

 

ブラックはキャルの顔の横に手を置きそのまま自分の顔を近づけた。

 

「ちょ……ちょちょちょちょ!!やばいわよ!?あ、でも……。」

 

キャルは動揺しながらも少し期待して目を瞑った。

 

「ん?」

 

キャルが目を開けると目の前にはブラックの顔が……。

 

「……熱はあるか?」

 

「熱は……あひゃ……!?」

 

するとブラックはキャルのおでこと自分のおでこを合わせる。

 

(そそそそそそっち!??いや……嬉しいけど……)

 

「……コッコロにはこうすれば熱があるかどうか分かると教えられたのだが……よく分からないな。」

 

「ちょ……!!ち、近い……近いって……!!」

 

キャルは顔を真っ赤にしながら照れていた。

 

「アツアツですね☆」

 

「あぁ……キャルさま。どうかお幸せに……。」

 

「……お父さんとママってあんなに仲良しだったんだ……。」

 

「ブラック…………もうあの時のお前は見る影もないな……。」

 

「……キャルとブラック何してんだ?」

 

「………わからんな。」

 

キャルの部屋の扉の隙間からペコリーヌ達はその様子をこっそりと覗いていた。

 

 

※後でブラックとキャルにバレて怒られた。




ブラックの意外な職業……


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そろそろオラとやろうぜ

今更だけど文章を読み上げてくれる機能がある事を知った


ランドソルから遠く離れた場所

 

 

 

「ガアアアアアアアアッ!!!!!」

 

ついに魔人ブウの再生が完了した。

 

「……許さない。許さないぞーっ!!!」

 

魔人ブウは声を上げて吠えた。

 

その時だった。

 

「……おいおめぇ!!」

 

「??」

 

魔人ブウの前に修行を終えた悟空が現れた。

 

「お前……生きていたのか?」

 

ブラックと悟空の容姿は瓜二つな為魔人ブウも勘違いをしていた。

 

「……ブラックはもうこの世にいねぇ。おめぇの相手はオラだ。」

 

「………フゥー。」

 

魔人ブウは首を傾げると大きく息を吐いた。

 

「お前、頭おかしいのか?オレより強い奴はいない。」

 

「……そう言うなよ。そろそろ、オラとやろうぜ。」

 

すると悟空は準備運動で少し軽めにリラックスしながら跳ねる。

 

魔人ブウは悟空の無謀さに腹をたて体の穴から蒸気を吹き出した。

すると悟空は魔人ブウを真っ直ぐ見つめて片腕を前に出して構えた。

 

「…………。」

 

「…………。」

 

その刹那───

 

「はあああああああっ!!!」

 

「ガアアアアアアアッ!!!」

 

二人は同時に気を開放すると拳をお互いに突き出した。

 

だがブウの攻撃をもろにくらった悟空は激しく吹き飛ばされる。

 

「うわあああっ!!!……くっ!」

 

だが空中で勢いを殺しながら踏みとどまった悟空は再び魔人ブウに突撃した。

 

「……お前もさっきの奴と同じだ。つまらない。」

 

「そいつはどうかな?」

 

魔人ブウに攻撃を受け止められた悟空は再び距離をとった。

 

「はぁああああああああっ!!!!!」

 

「!?」

 

悟空は気合いを入れると超サイヤ人に変身し魔人ブウとの距離を一気に詰めた。

 

「!!」

 

するとブウも悟空の変化に気づき自信も気を高めながら接近する悟空に飛びかかった。

 

悟空は接近戦に持ちこみブウとの激しい攻防が繰り広げられる。

 

「だだだだだだだだだ!!!」

 

「ぬぅ……はぁああああ……!!!」

 

魔人ブウは闘いながら悟空の動きを学習していく。

 

「ダァァァァァァァッ!!!!」

 

「うわあああああっ!!!」

 

ついには悟空の攻撃は見切られブウに反撃を許した。

 

(なんちゅう奴だ……あの一瞬の戦いでオラの戦い方を見切ったってのか……!)

 

ブウはすかさず吹き飛ばされた悟空を追跡する。

 

「くっ……波ァ────ッ!!!!」

 

悟空は苦し紛れのかめはめ波をブウに放つが簡単に避けられて背後に回られてしまった。

 

「!?」

 

「ここまでだったようだな。」

 

ブウがトドメを悟空に誘うとした瞬間、悟空は額に指をあて瞬間移動で更にブウの背後へと回り込んだ。

 

「なに!?」

 

「だりゃあああああっ!!!」

 

悟空はブウの死角から攻撃し地面へと蹴落とした。

 

「……今のは危なかったぞ。出てこいブウ!こんなので終わりじゃねえだろ……っ!?」

 

「………。」

 

悟空が再び見下ろした時、そこには既に魔人ブウの姿はなかった。

 

「覚えたぞ。お前の技。」

 

「!?」

 

魔人ブウは既に悟空の背後をとっていた。

 

「なっ……!?」

 

そして魔人ブウはそのまま悟空の背中を蹴り吹き飛ばした。

 

「うわあああああっ!!!くっ……。」

 

悟空は地面に手でブレーキを掛けながらゆっくり止まった。

 

「……本当にすげぇなブウ。オラ……ワクワクしてきたぞ。」

 

「なに?」

 

悟空はニヤリと笑うと自身の超サイヤ人のオーラを体内に抑えて新たに赤く燃えるような気を膨れ上がらせた。

 

悟空の髪と目の色は真紅に染まった。

 

「な、なんだ……それは。」

 

「これが超サイヤ人ゴッド……。」

 

悟空のプレッシャーに魔人ブウは少し汗を滲ませた。

 

「……なんだその顔は。余裕のつもりか?」

 

「………別に余裕ぶってるわけじゃねえさ。オラは純粋におめぇとの闘いを楽しみたいだけだ。」

 

「舐めるなよ……!」

 

「!!」

 

魔人ブウは瞬間移動で悟空の背後に回る。

 

「おっと……。」

 

「グガアッ!!!」

 

だが悟空はそれに瞬時に反応し、逆に魔人ブウを蹴り飛ばした。

 

「……オラに同じ手は通用しねぇぞ?」

 

「グガ………お前、面白いな。でもこれで終わらせる……!」

 

すると悟空はそのまま魔人ブウの前まで一気に距離を詰め、自分の気を操り魔人ブウを一時的に拘束した。

 

「あ……が……身体が…動かない……!!」

 

悟空は動けなくした魔人ブウに話しかける。

 

「……そう勝負を焦るなよブウ。オラ達はここで平和に暮らしてるんだ。まあ……色々あったけどな。」

 

「グゥゥ………!」

 

「ブウ!おめぇは強え……。正直今のオラじゃ勝てる気がしねぇ……。」

 

「なら大人しくオレに殺されろ!」

 

魔人ブウが叫ぶと拘束も解除された。

 

「!?……そ、そう言うなよ……。ブウ、おめぇオラと戦うのは楽しかったか?」

 

「楽しい。お前ともっと遊ぶぞ……。」

 

魔人ブウも悟空との戦いを楽しんでいた。

 

「じゃあさ……もうちっとだけ待ってくんねぇか?」

 

悟空はひとつの提案を魔人ブウにだした。

 

「なんでだ。」

 

「もうちっと待ってたらオラよりも強え奴と戦えっからよ………。」

 

「オレ、待つの嫌い。」

 

「頼む!!あと1ヶ月待ってくれ!!」

 

「長い!無理だ!!」

 

「じゃあ後3週間待ってくれ!!」

 

「長い!!絶対嫌だ!!」

 

「じゃあ……………1週間だけ待ってくんねえか?」

 

すると魔人ブウは少し大人しくなった。

 

「……………。」

 

「な?頼むよ……!後1週間したらすんげぇ強ぇ奴が来っからよ!!」

 

「……ほんとか?」

 

「ああ!約束だ!」

 

すると魔人ブウはその場に座り込み目を閉じた。

 

「約束したぞ。オレ、それまで寝る。」

 

「よっしゃあ……!!これで少しは修行できんぞ……!」

 

ようやく魔人ブウの説得ができた悟空は瞬間移動でギルドハウスへと戻った。

 

 

 

 

美食殿ギルドハウス

 

 

「よお!時間稼いできたぞ!!」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

悟空があまりにも早く帰ってきた為ペコリーヌ達は驚いた。

 

「悟空さん!?時間を稼いできたって……。」

 

「とりあえず1週間は大丈夫だ。」

 

「「「「「「1週間!?」」」」」」

 

「悟空さん……本当ですか!1週間というのは……!」

 

「ああ……しっかり約束してきた。魔人ブウはそれまで寝て待っているそうだぞ。」

 

「ありがとうございます悟空さん!!」

 

「い、いいんですか……そんなの……。」

 

「まあ魔人ブウに勝つにはこれしか方法がねえからな……。1週間もあればユウキもかなり修行できるはずだ。」

 

「……それはそうですけど……。」

 

「ですが……一先ずは安心?なんでしょうか……。」

 

暫しの休息にコッコロ達は肩の力を抜いた。

 

「とりあえず1週間は平和ってことは……ランドソルに買い出しにでも行ってきてもよろしいのでしょうか。」

 

「多分大丈夫だと思うぞ?」

 

「では、夕飯の買い出しに行ってきますね。」

 

「私も一緒に行きますよ。コッコロさん。」

 

シャルルもコッコロの買い出しを手伝う。

 

「シャルルさま……。ありがとうございます。では、行きましょうか。」

 

「はい。」

 

1週間という短い時間だがそれぞれが身体を休めたりする期間ができた。

 

 

ランドソル中央部。

 

「……酷く建物が崩壊していますね。」

 

「こんな状況でお店なんかやってるのかな?」

 

洗脳されたブラックが街を破壊した名残がある。皆が建物の修理や怪我人の救助をしていた。

 

「ん?あの子……なんか……。」

 

シャルルは少し気になる少女を見つけた。

 

ガララ……

 

今にも崩れそうな建物の下に青い蝶々と戯れる少女がいた。

 

「あ……あの子……大変!」

 

「シャルルさま!?」

 

シャルルは飛び出していき今にも下敷きになりそうな少女を抱えて瓦礫を避けた。

 

「…………大丈夫ですか?」

 

「……!?あ、あなたは…………?いや、先ずは助けて頂きありがとうございます。かも?」

 

助けられた少女は驚きながらもシャルルにお礼を言う。

 

「シャルルさまー!ご無事ですか?」

 

「コッコロさん……大丈夫ですよ。」

 

コッコロがシャルルを追いかけて走ってきた。

 

「……私はシャルルって言います。この人はコッコロさん。あなたの名前は?」

 

「名前…………私の名前は……確か……『ユリシス』?って呼ばれてた気がするかも?うーん……よく分からないかも。」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「「分からない?」」

 

シャルルとコッコロは『ユリシス』という少女と出会った。




オリキャラです。
実は意外な人物と関係があるかも……?


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初めてのお友達

「名前…………私の名前は……確か……『ユリシス』?って呼ばれてた気がするかも?うーん……よく分からないかも。」

 

ユリシスという少女は記憶が曖昧のようだった。

 

「分からないってどういう事かな?」

 

「……もしや、ユリシスさまは記憶が無いのでしょうか……。」

 

「ええ!?」

 

「……私、なんで今ここに居るのかもわからない。でも私はずっとずっと長い間ここで歩いてたよ。」

 

「「??」」

 

ユリシスの言うことは謎が多かった。

 

「……ユリシスさま、ご家族は何処に……?」

 

「かぞく…………?かぞくって………何?」

 

「え!?」

 

シャルルもユリシスが普通の人じゃ無いことを悟った。

 

「家族がわからないんだ……。」

 

「……ここに放置していく訳には行きません。一度わたくし達のギルドハウスへと連れていきましょう。」

 

「そ、そうだねコッコロさん。えっと……ユリシスちゃんでいいかな?」

 

「……うん、分かった。シャルルちゃんに……コッコロさん。」

 

シャルルとコッコロはユリシスをギルドハウスへと連れ込んだ。

 

 

「ただいま戻りました。」

 

「ただいまママ!」

 

「…………。」

 

ユリシスもコッコロとシャルルに続き静かに入る。

 

「あ、コッコロちゃんにシャルルちゃん!おや?その娘はどうしたんですか?」

 

「……見たことないわね。シャルルの知り合い?」

 

「いえ……実は……。」

 

シャルルは全員にランドソルで一人でいたユリシスを保護して連れてきた事を伝えた。

 

「…………なるほど。記憶も曖昧か……。」

 

「家族のことを覚えてないとかではなく知らないのか……。」

 

「へぇ!おめぇ結構不思議なやつだな。」

 

トランクス達もユリシスの存在が謎すぎる事に違和感を覚えた。

 

「みなさーん!!ご飯が出来ましたよ!今日はシチューです!」

 

ペコリーヌの皆を呼ぶ声が聞こえてくる。

 

「ユリシスちゃん。ご飯が出来たから一緒に行こ!」

 

「ご、ご飯……?」

 

「うん!とっても美味しいよ!」

 

シャルルは躊躇うユリシスの手を握り食卓へと向かった。

 

「…………わぁ……!」

 

ユリシスはシチューを見て目を輝かせた。

 

「ユリシスちゃん!いっぱい食べてくださいね!」

 

「……これ、なに!?」

 

「シチューです!熱々で美味しいですよ!」

 

「………………ぁむ。」

 

ユリシスは一口シチューを食べた。すると……

 

「…………。」

 

ユリシスは顔の表情はそのままで涙を流した。

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「ユリシスちゃん!?お、美味しくなかったですか?」

 

ペコリーヌはあたふたしながらユリシスの顔を覗いた。

 

「うぅん…………違う。この感情は……なんだろう。私……おいしいって事がよく分からくて。」

 

「おいしいが……わからないって……?」

 

「……失礼ですがユリシスさまは普段何を口にしていましたか?」

 

「…………普段。毎日……支給される1粒のカプセル…………と……一欠片のパンと…………お水……かな。」

 

「「「「「「「!???」」」」」」」

 

「ユリシスおめぇそれだけじゃ死んじまうぞ!?」

 

「……驚いたな。本当にそれだけなのか?」

 

「……」

 

「そ、それは食事ではありません……!」

 

「ユリシスちゃんは一体今までどんな生活をしていたんでしょうか……。」

 

「……私も分からない。でもずっと暗かった……。酷いことを沢山されたし…………沢山した気がする…………。」

 

ユリシスはぼんやりと頭の中に浮かぶ記憶を探った。

 

「…………なんですかそれ……!あんまりですよ!それじゃあユリシスちゃんが可哀想ですよ……!」

 

シャルルはユリシスの今までの生活を聞き感情が動いた。

 

「…………でも。だからなのかな。このシチューっていうの……凄く温かい。これがおいしいってことなのかな。」

 

ユリシスはそう言うと少しだけ笑ったような気がした。

 

 

 

その日の夜。

 

 

 

「……。」

 

ユリシスは用意された部屋の中で一人でいた。

 

「ユリシスちゃん。入るね。」

 

するとシャルルがユリシスの部屋へと入った。

 

「あ、シャルル……ちゃん。どうしたの?」

 

「少しユリシスちゃんとお話したいなーって思って。」

 

「おはなし…………?」

 

「うん。」

 

「ユリシスちゃんは────」

 

シャルルはユリシスの隣に座り二人だけで話し込んだ。

ユリシスはシャルルの話を遮らずに最後まで相槌をしながら話を聞いていた。

 

「でさ……私のお父さんったら……ん?ユリシスちゃん?」

 

ユリシスはシャルルの手を握った。

 

「……シャルルちゃんって不思議ですね。」

 

そしてユリシスは少しだけ笑った。

 

「え?そうかな……!」

 

「……とっても不思議だよ。ね、私たちお友達になれるかな?」

 

「お友達…………?」

 

「うん……。私、お友達とかよく分からないけど……多分、一緒にいて……楽しい?……人の事だよね。だったら……シャルルちゃんとお友達になりたいな。」

 

「と、と、友達……!??友達……!!」

 

シャルルは今まで友達が出来たことがなかった為動揺しながらも喜んでいた。

 

「なろうよ!!友達!!私今まで友達なんてできたこと無かったから嬉しいよ!!」

 

「……うん。よろしくね。シャルルちゃん。」

 

シャルルもユリシスの手を強く握った。

 

「……私今すっごく嬉しい!始めての友達ができたんだもん!」

 

 

 

 

美食殿ギルドハウス 外

 

 

 

「……ターレス。お前も外にいたのか。」

 

「トランクス……。」

 

トランクスとターレスは外に出て芝生に座った。

 

「……ターレス。お前は今回の事をどう思っている?」

 

「……不自然だ。普通の生活をしていればユリシスはあんな状態にはならない。」

 

トランクスとターレスはユリシスの正体が気になっていた。

 

「…………ああ。オレもそう思う。何か嫌な予感がするんだ……!」

 

「…………ユリシスには感情がない。いや、本能で感情を殺しているんだ。ったく……魔人ブウに続いて厄介な問題が出てきやがった。」

 

トランクスとターレスはまた大きな問題が出てきたことに頭を抱えた。

 

 

深夜3時

 

「やっぱしあんま眠れねぇな……。昼間から寝ちまうと夜寝れねぇぞ。」

 

とっくに皆は眠ったが悟空は眠りから覚めたのかリビングにいた。

 

「……前にこの時間にターレスとトランクスを修行に誘ったらすんげぇ怒られたから誘いにくいな……。仕方ねぇ……一人でトレーニングでもすっか。」

 

すると悟空はその場で腕立て伏せを始めた。

 

「1…2…3…………」

 

1時間後

 

「4997…4998…4999…………!」

 

(いいぞ……結構体が暖まってきたぞ!)

 

その時だった。

 

「……こんばんわ。」

 

「いぃ!?」

 

突然後ろから声をかけられた悟空は体勢を崩してその場に倒れた。

 

「いちち…………。」

 

「あ、ごめんなさい。お邪魔してしまいました……。」

 

「おめぇ……ユリシス!?」

 

悟空の後ろから声をかけた人物はユリシスだった。

 

(……オラが気配を察知できなかった……!?)

 

悟空は自分が背後をとられたことに驚いていた。

 

「あの…………。」

 

「あ、ああ……どうしたんだ?」

 

「トイレに行きたいんですけど…………どうすればいいですか?」

 

「トイレ?あぁ……それならそこの角を右だぞ。」

 

「……ありがとうございます。」

 

ユリシスは悟空にお礼を言うとトイレに行った。

 

「……オラ、油断してたんか……?いや、修行に集中してたから気は研ぎ澄まされていた筈だ……。じゃあなんでユリシスの気配に気づかなかったんだ……?」

 

悟空もユリシスが何者なのか興味が湧いた。

 

「すみませ〜ん……。」

 

「ん?」

 

するとトイレからユリシスの声が聞こえた。

 

「どうしたんだ?」

 

「……トイレって……どうやって流すんですか……?」

 

「え!?」

 

 

その後……悟空はコッコロを起こしユリシスのトイレに同行させた。

 




シャルル「ガタッ」


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刹那の暗殺者

「……依頼か。」

 

ロングコートを着た男に怪しげな手紙が一通届く。

 

『【エルロ・ソロリティ】から裏切り者が出た。「No.644」を抹殺せよ。』

 

【エルロ・ソロリティ】という組織からの依頼だった。

 

「…………宇宙規模の暗殺組織からオレに依頼だと?場所は……『ランドソル』?聞いたことが無いが…………No.644とは奴以外にいない。」

 

男はその人物を知っているのか……腰を上げると静かに歩いていった。

 

 

 

魔人ブウとの約束の日まであと6日

 

残された僅かな時間の中でも悟空達は普段通りの生活を送っていた。

 

「朝ごはんができましたよー!」

 

「ユリシスちゃん。昨日はよく眠れた?」

 

「うん。こんなに眠った事なんて今までないよ。」

 

「それはよかったです……!」

 

ユリシスはすっかり皆と打ち解け会話もある程度できるようになった。

 

「…………感じねぇ。」

 

「「「「「「「???」」」」」」」

 

悟空は目を閉じてお米を一粒ずつ口に運んで食べていた。

 

「……気が感じねぇ……。」

 

「どうしたカカロット。その調子じゃ夕方まで飯が食い終わらねえぞ。」

 

「悟空さん?」

 

ターレスとトランクスも不思議そうに悟空を見るが悟空はそのままのペースでご飯を食べる。

 

「……いや、感じねぇようにしてんのかもな……。」

 

悟空は気を集中させる。

 

カサカサ

 

「……キャル。冷蔵庫の奥にゴキブリが3匹いるぞ。」

 

「食事中にぬぁんてこと言ってんのよ!!!」

 

「あ、すまねぇ……。」

 

悟空は集中しすぎてゴキブリの動きまで感じ取ってしまったらしい。

 

「悟空さま?朝から様子がおかしいですが何かありましたか?」

 

「いやぁ……これにはちょっと訳があってな…………っ!!」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

すると悟空は何かを感じたのか急いで扉を開けて構えた。

 

「!?うわぁびっくりしたぁ〜……!」

 

「あり?おめぇラビリスタか……なんだよ驚かせんなよ……。」

 

「こっちのセリフだけどね。」

 

悟空はラビリスタがドアノブに手をかけた動きにも反応していた。

 

「おはようございますラビリスタさま。」

 

「やあ皆、おはよう〜!……ん?キミ見かけない子だね。」

 

ラビリスタは気さくに挨拶をしながらギルドハウスの中に入るとユリシスを見た。

 

「ラビリスタさん……この子は昨日一人でいた所を私たちが保護したんです。ですが家族も分からないそうで……。」

 

「……ユリシスです。」

 

ユリシスはラビリスタに自己紹介をする。

 

「紹介ありがとう。私はラビリスタ……よろしくね。」

 

「……はい。」

 

お互いに挨拶を交わした。

 

 

「あの……ラビリスタさん。ユウキくんは……。」

 

「……少年は相変わらずあの空間の中にいるよ。……あっちの時間からすれば確実に1年以上はいることになるね。」

 

「1年!?」

 

「そんなに修行してたんですか!?」

 

全員ユウキが1年以上修行してるとは思わなかった。

 

「今はただ待つしかないね。あと6日間しかないけど間に合うかどうか……。」

 

「…………よし。」

 

すると悟空が立ち上がった。

 

「……なんかじっとしてると落ち着かねぇな。コッコロ……オラが買い物行ってくる。」

 

「悟空さまが!?」

 

「あんたが買い物に行くなんてどういう風の吹き回しよ……。」

 

「いやぁ……たまにはこういうのも悪くねぇと思ってよ。」

 

「「「「「………………。」」」」」

 

全員が悟空を怪しい目で見ていた。

 

「そ、そんじゃあ行ってくる!!」

 

悟空はそそくさと買い物に出かけて行った。

 

 

ランドソル 繁華街

 

「……コッコロに頼まれた物はこれで最後か。」

 

悟空は依然として目を瞑りながら街中を歩いていた。

 

「……一体悟空さんは何をやってるんだ。」

 

「……何かあったんですかね?朝からずっと目を閉じたままで変ですよ……。」

 

「悟空さんが変なのはいつもの事です。きっと何かいい修行方法をみつけたんじゃないですか?」

 

トランクスとペコリーヌは悟空の跡をこっそりとつけていた。

 

「…………。」

 

悟空は目を瞑りながらそのまま道の角を曲がった。

 

「トランクスさん!悟空さんを見失っちゃいます!早く追いかけましょう!」

 

「は、はい……!」

 

トランクスとペコリーヌは急いで悟空を追いかけた。

 

そしてそのまま悟空はずっとおかしな行動ばかりをとっていた。

 

「…………いや、こっちか?何か感じるんだよなぁ……。」

 

「「…………。」」

 

悟空は女性の下着コーナーで前屈みになって止まっていた。

 

「ご、悟空さん…………。」

 

「何をやってるんだ悟空さんは……!」

 

ペコリーヌは顔を赤くしながら悟空を見ていた。

 

「あああもう我慢できねえ!!目ぇ開けっぞ!!」

 

そして悟空が目を開けると目の前にはブラジャーがあった。

 

「全然違うじゃねぇかぁ!!!」

 

悟空は遂に我慢が出来なくなり目を開けて辺りを探し始めた。

 

「何処だあっ!!!」

 

「……悟空さんは誰かを探してるのか……?」

 

「……分からないですけど夕食に誘ってでも直接聞いてみましょうか。」

 

 

 

 

夕方

 

 

「今日はバーベキューです!!美味しいお肉やお野菜が沢山ですよ!!」

 

ペコリーヌ達はギルドハウスの外でバーベキューをした。

 

「バーベキューなんて久しぶりねー。」

 

「はい。本当は主さまも一緒がよかったですが……。」

 

「うっひゃあ!!すんげぇなあ!!」

 

悟空も今までの悩みが無くなったようにガッツリと食べる。

 

「この肉うんめぇなぁ!!おいターレス!!おめぇも焼いてばっかいないでこっち来いよ!!」

 

「こっちはまだ手が離せん!!」

 

「早くしねぇとオラが食っちまうぞ?」

 

「ユリシスちゃん。このお肉とっても美味しいよ。」

 

「……お肉……。私、こんな大きなお肉食べたことない。」

 

シャルルとユリシスも楽しそうに食事をしていた。

 

「……………ん?」

 

すると突然ユリシスの周りの空気が変わったことにターレスは気づいた。

 

「……シャルルちゃん。このお肉……とっても美味しい……?ね。」

 

「でしょ!もっと────」

 

「シャルル!ユリシス!そこをどいてろ!!」

 

「「!?」」

 

次の瞬間。

 

パシッ

 

一人のロングコートを着た男の拳をターレスは掴んで止めていた。

 

「……誰だか知らねぇがガキ一人に対して不意打ちとはやる事が随分汚ぇじゃねぇか。」

 

「……ほう。気配は完全に消していた筈だがなぜ分かった?それに……孫悟空に似ているようだが。」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

突如現れた謎の男に全員が驚いた。だがその中でも一番驚いたのは悟空だった。

 

「お、おめぇ…………『ヒット』!?」

 

その人物は第6宇宙最強の殺し屋の『ヒット』だった。

 

「おめぇがなんで此処に……!!」

 

「……依頼を受けた。裏切り者のNo.644を始末する。」

 

ヒットはユリシスを睨んだ。

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「始末って……なんで……!!」

 

「……ユリシスちゃん。この人分かるの?」

 

「……わからない。」

 

ヒットはユリシスの様子を見て不思議に思った。

 

「……貴様、記憶が無いのか?」

 

「…………記憶……?」

 

すると悟空がヒットの前に立ち塞がった。

 

「裏切り者ってなんの事だ!それにユリシスを殺す依頼ってのはどういうことだ!!」

 

「……記憶が無いならそれでいい。そのままあの世に送ってやる。」

 

ヒットが動こうとする。

 

「……させる訳ねえだろ!」

 

「待て!ターレス!!ヒットは『時飛ばし』っていう技を使えるんだ!闇雲に手をだすな!!」

 

「…………分かっていても防げん。」

 

「なっ……がはっ!!」

 

悟空の忠告も虚しく突如ターレスの腹部に拳がめり込んだ。

 

「な、何が……っ!!」

 

何が起こったのか分からないままターレスは倒れた。

 

「た、ターレスさんが……一瞬で……!?」

 

「ヒット!!おめぇ……こんな事はやめろ!」

 

悟空は止めに入るがヒットはそれに応じない。

 

「……そこをどけ孫悟空。オレは仕事を終わらせるだけだ。」

 

「や、やっぱりユリシスちゃんの知り合いなんですか……!」

 

「……あなたは誰……なの?」

 

「……忘れたとは言わせんぞ。暗殺組織【エルロ・ソロリティ】の最高傑作……コードネーム『無情の蒼死蝶(ユリシス)』」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」




気づいたら毎日投稿してたけど明日は流石に疲れたから許して♡


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芽生えた感情

胸糞注意


第6宇宙最強の殺し屋ヒットは突如ユリシスを殺しにやってきた。

 

「……忘れたとは言わせんぞ。暗殺組織【エルロ・ソロリティ】の最高傑作……コードネーム『無情の蒼死蝶』」

 

「暗殺……組織!?」

 

「何よそれ………!」

 

「ユリシスちゃんが組織の最高傑作って……!」

 

「【エルロ・ソロリティ】だと……!?」

 

ヒットの言う組織にターレスは耳を疑った。

 

「ターレスさん……知ってるんですか!?」

 

「……俺が銀河で暴れ回ってた時に聞いたことがある……。宇宙規模の暗殺組織【エルロ・ソロリティ】にはとんでもない化け物がいるとな。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「……かつては関わることが無く手出しはしていなかったが……まさかその組織の最高傑作がユリシスだと……!」

 

「……わからない。私は……そんなの知らない。」

 

ユリシスは身に覚えのない記憶に戸惑う。

 

「ヒット……!ユリシスには記憶がねぇんだ。殺す必要はねえ!」

 

「……孫悟空。お前は知らないだけだ。そいつの恐ろしさをな。」

 

「何だって……!」

 

「…………だがお前の言う通り記憶のないまま殺すのはオレの性にあわん。思い出せ。『霧雨の暗殺者』と呼ばれていた頃をな。」

 

 

「…………!」

 

 

 

 

 

 

 

ユリシスには母がいた。父は物心がついた時には既にいなかったが母とユリシス二人だけでも何不自由なく平和に過ごしていた。

 

「ママー見てみて!花飾り!ママにプレゼント!」

 

「あら上手にできたわね!私にくれるの?……とっても素敵よ。ありがとうユリシス。」

 

母はユリシスを育てるために必死に働き、忙しかったが時間があればユリシスと一緒に遊んでくれた。

 

「ねえママ……。お友達って……本当にできるのかな……?」

 

「ユリシスならお友達を作るなんて簡単だわ!いつかきっと素敵なお友達ができるわよ!」

 

「ほんとっ!?ほんとにほんと!?」

 

ユリシスは目を輝かせた。

 

「本当よ!いい?ユリシス……。あなたには人を幸せにする不思議な力があるの。ほら、あの青い蝶々さんはね、幸せを運んでくれるって昔から伝えられてるのよ。」

 

「青い蝶々さん?」

 

「うん。あの青い蝶々さんの名前はね、『ユリシスバタフライ』っていうの」

 

「ユリシスバタフライ?私、蝶々さんと同じ名前!!」

 

「うんうん!ユリシスには幸せになってほしいからあの蝶々さんから名前をとったの。だから、大きくなったら沢山の人を幸せにして笑顔にしてあげてね。いつか出会うお友達……仲間……あなた自身のこともね。」

 

「……うん。わかった!!私は皆を幸せにする蝶々さんになる!!」

 

「蝶々さん?ふふっ……そうね!幸せが訪れる蝶々さんって……素敵ね!」

 

「うん!!」

 

 

 

そして暫くしたある日の事だった。

 

 

「ママただいまーー!!………あれ?ママ……?」

 

ユリシスが元気に扉を開けて叫んでもいつもの母の声は返ってこない。

 

「……なんだこのガキは。」

 

「……驚いた。ガキなんていたのか。」

 

すると何故か見覚えのない二人の男が家の中にいた。

 

「あ…………え……ママ…………?」

 

二人の男の奥で母が血まみれで倒れているのが見えた。

 

「ママ……!!!ママッ!!!」

 

ユリシスは必死に叫んだ。

 

「……おいガキ。てめぇのママは死んだ。悪く思うな?これも仕事だからな。」

 

「ママが……死んだ………………?」

 

「……そう言えば、あのお方が実験体を欲していたではないか?丁度いい……このガキを連れていくとしよう。」

 

「い、いや……!!やめて……!!」

 

二人の男は嫌がるユリシスを無理やり連れて組織へ連れて行った。

この組織こそ宇宙規模の暗殺組織【エルロ・ソロリティ】だった。

 

 

「た……助けて…………。」

 

震えるユリシスに先程の二人の男が近寄る。

 

「おい。お前はこれから644番だ。」

 

「それ以外の名は許さん。」

 

「あ…………あぁ…………。」

 

そしてらそれからユリシスは数々の人体実験をされた。

 

「あ……いや!!痛……痛い……!!」

 

「誰が発言していいと言った!」

 

「うぐっ……!!」

 

「貴様に人権などないのだぞ?」

 

「がっ……!!」

 

殴られ、蹴られ……人体実験の毎日。ユリシスの心は既にボロボロだった。

そして人間とは思えないほどの身体能力の上昇、特出した能力を手にした。

 

「………………。」

 

「644番……任務だ。この男を抹殺しろ。」

 

「…………はい。」

 

こうしてユリシスは暗殺者として活動して行った。

 

「……素晴らしい。なんと素晴らしい能力だ。644番に任務の失敗はない。」

 

ユリシスの能力に酔いしれる一人の男がいた。

 

「素晴らしい……!だが、まだだ。まだ……完全に感情を殺しきれてない。644番に感情などいらない。そうなれば彼女はこの組織の最高傑作だ!!」

 

まだ僅かに残るユリシスの感情を殺すために敢えて食事を与えず、暴力により徹底的にユリシスの心を砕いた。

 

そして……実験によって完成されたユリシスは何の感情も持つことはなく、常に冷たく笑っていた。

 

「……ターゲットは抹殺しました。」

 

目に光は無く、与えられた任務をただひたすらこなす機械と化していた。

 

「……ば、化け物が……!!」

 

「こっちに来るな!!!」

 

何度ユリシスに銃弾を浴びせようとも、幾ら集団で襲いかかっても何故かユリシスを殺すことができない。ターゲットからは化け物などと恐れられた。

 

ユリシスはもはや人間ではなく『人工生命体』となり、いつしか『無情の蒼死蝶』、『霧雨の暗殺者』と呼ばれるようになった。

 

そしてある日、とある任務を与えられたユリシスは廃屋へと足を運んでいた。

そこで、ある男と鉢合わせることになる。

 

 

「……噂は聞いている。お前が、No.644……無情の蒼死蝶だな?」

 

「…………。」

 

 

ユリシスはヒットと出会っていた。

 

 

「……どうやらターゲットが被ったようだが……生憎オレは譲る気はない。」

 

「…………あのターゲットは私の物です。身を引かないのでしたら…………殺します。」

 

ヒットとユリシスは互いに睨み合った。

 

「…………。」

 

そしてヒットが時飛ばしを発動しようとしたその時だった。

 

「…………!?」

 

「…………。」

 

なぜか時飛ばしが発動しなかった。

 

「……時飛ばしが発動しない……!?」

 

「いえ、発動してますよ。ただ……戻っているだけです。」

 

「…………どういうことだ。」

 

「……時飛ばしを発動する前の行動に戻っていると言うことです。」

 

それがユリシスの能力だった。

 

「貴様……言うなれば『時戻し』ということか?」

 

ユリシスの能力は『相手を行動する前の行動に戻す』というものだった。

これは人体実験を行う内に、絶対に死ぬ事のない最強の暗殺者を作りたいという研究者の執念がユリシスの能力を発動させたのだ。

 

「………………分かったところでどうにもならないですが。」

 

すると、ユリシスがヒットを攻撃しようとした瞬間に1つの通信が入った。

 

『緊急招集だ。今すぐに任務を中止し本部へ帰還せよ。』

 

本部からの緊急招集だった。

 

「………承知しました。ヒットさん、ターゲットはあなたにお譲りします。」

 

「なに?」

 

「……本部から通信が入りましたので私は失礼させていただきます。」

 

「…………!」

 

この日以降、ヒットとユリシスが会うことはなかった。

 

 

 

 

 

「………私は………暗殺者…………。」

 

「思い出したか?貴様が何者だったのか。」

 

ユリシスは自分の過去を思い出したのか頭を抱えて膝をついた。

 

「ユリシス!おめぇ……。」

 

「ユリシスちゃん!」

 

シャルルはすぐさまユリシスに駆け寄った。

 

「邪魔だ……その女を殺す。退けろ。」

 

ヒットはシャルルに警告をした。

 

「嫌です……!私は友達を見捨てたりなんてしない……!!」

 

「シャ、シャルルちゃん………?」

 

シャルルは決してユリシスの前から退こうとはしなかった。

 

「…………記憶が戻ったのではなかったのか?」

 

「……戻ったわ。今まで私がしてきた事も……されてきた事も全部……!!でも…………今の私には感情がある!!!組織のことなんてどうだっていい………!!!」

 

「ユリシスちゃん……!」

 

ユリシスは涙を流し、シャルルを庇うように前に立った。

 

「……………。」

 

するとそれを見たヒットは拳を収めた。

 

「ヒット……!」

 

「構えを解いた……?」

 

「どういう事でございますか?」

 

急にヒットから殺気がなくなりペコリーヌ達も困惑していた。

 

「……どうやら依頼に誤りがあったようだ。」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

ヒットの言葉に全員が驚く。

 

「あ、誤り!?」

 

「それって…………。」

 

「No.644は既に死んでいる。死んだ奴を殺すことはできない。ここにいるのは感情のあるユリシスだけだ。」

 

「……………………!」

 

ヒットはそう言うと後ろを振り向いた。

 

「ヒット……?」

 

「…………私を殺さないんですか?」

 

「……そもそもお前は殺しても死なないからな。もう貴様と闘うのは御免だ。」

 

するとヒットはユリシスを見てニヤリと笑った。

 

「……あ、ありがとう…………?」

 

「勘違いするな。依頼に誤りがあっただけだ。俺は組織にお前が死んだということを伝える。」

 

ヒットは再び歩きだした。

 

「おいヒット!!」

 

悟空は歩き出すヒットを呼び止めた。

 

「なんだ。孫悟空。」

 

「…………もう少しで魔人ブウっちゅう化け物が眠りから覚めちまう。お前の力を貸してくれねえか?」

 

「…………オレは依頼がなければ動かん。他を当たってくれ。」

 

ヒットはそう言うと飛び去っていった。

 

「ま、だろうな……。それにしてもヒットの奴、また強くなってんな……いつかもう1回闘いてえなぁ。」

 

悟空は飛び去っていくヒットをみながらそんなことを呟いた。

 

「な、何とかなったんでしょうか。」

 

「……オレだけ殴られ損なんだが……。」

 

「ターレス……肉でも食べるか?」

 

ターレスは不満を撒き散らしながら肉にかぶりついた。

 

「……ユリシスちゃん。これからも友達でいてね。」

 

「うん……シャルルちゃん。」

 

決して悲しい過去が消えた訳では無いが、ユリシスは今からでも母の言っていた友達や仲間を幸せにしようと決意を固めた。そして迷いが吹っ切れたのか、ユリシスもやっと本当の笑顔を見せられた様な気がした。




そう言えば魔人ブウいたんだったな。


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荒れ狂う魔人

「ユリシスさま……記憶が戻ったのですね?」

 

「……はい。」

 

ユリシスの記憶はヒットと接触したことにより戻った。

 

「………そうでした。私はとある任務を任されていた所で記憶を失ったんです。」

 

「「「とある任務???」」」

 

ユリシスは組織から命令されていた事を思い出した。

 

「……はい。かなり前の事です。……私は【レッドリボン軍】という組織を壊滅させるよう命令されました。」

 

「「レッドリボン軍!?」」

 

その組織の名前に悟空とトランクスだけが反応した。

 

「悟空さん?トランクスさんも知ってるんですか?」

 

「……ああ。オラがガキの頃に戦った組織だ。」

 

「オレの未来はその軍の作った殺戮兵器に壊されてしまったんです。」

 

「……カカロットとトランクスが……?」

 

しかしその言葉にユリシスは首を横に振った。

 

「……確かに悟空さんが『そちらの世界』のレッドリボン軍を壊滅させたことは噂になってます。」

 

「そちらの世界???……て事は……。」

 

「……このアストルムの世界にもあったんです。【レッドリボン軍】が……。」

 

「「「!?」」」

 

「嘘だろぉ!?こっちの世界にレッドリボン軍が!??」

 

「馬鹿な……!!この世界にも存在しているのか!!」

 

「……はい。恐らくこちらの世界でも何かを企んでいたのでしょう。ですが……私が命令を受けその組織の場所にたどり着い時、既に組織は無くなっていました。」

 

「無くなってた……?」

 

「あの……レッドリボン軍というのは何をしている組織なんですか?」

 

「……『人造人間』を作り世界を侵略しようと企んでると聞きました。」

 

 

レッドリボン軍の目的は人造人間を使い世界を征服する事だった。

 

 

「人造人間でございますか!?」

 

「そんな物を……!!」

 

レッドリボンの目的にキャル達は驚いた。

 

「さっきかなり前って言ったわよね?それっていつの話なの?」

 

「……覇瞳皇帝が健在だった頃……と言えば分かるでしょうか……?」

 

「「「「覇瞳皇帝!?」」」」

 

再構築される前の世界での出来事だった。

 

「なんだ?そのカイザーインサイトってのは。」

 

「あんたも結構前にベジータと戦ってたでしょ?」

 

「……ああっ!!あのいっぱいいた変な奴か!!」

 

悟空も一応ベジータと共にフューの強化した覇瞳皇帝と戦った。

 

「………私はレッドリボン軍の壊滅と、とある資料を入手することを命令されていたんです。」

 

「……とある資料……?」

 

「それってどんな資料なんですか?」

 

「……その資料には恐ろしい『人造人間』のデータが記載されているんです。組織曰くその人造人間が完成してしまえば宇宙が滅びてしまうらしく……その前に始末しろと命じられました。」

 

「……宇宙を滅ぼす程の人造人間だと………!」

 

トランクスは人造人間によって未来の悟飯を殺されたことを思い出し拳を握った。

 

「そんな人造人間を作ることが可能なのでしょうか……!」

 

「……私はせめて資料だけでも入手しようと探したのですが……何故かその探してる資料だけがなかったんです。」

 

「「「!?」」」

 

「それってまさか……。」

 

「……生き残りが持ち逃げしてしまったのでしょう。」

 

「「「………………。」」」

 

知られざる過去の話を知り全員は黙り込んでしまった。

 

「……それじゃあユリシスちゃんはどうして記憶を失ってしまったんですか?」

 

「…………組織からの任務を終わらせるまでの期間は無期限でしたので私はこの世界で資料を探し続けていました。ですが……空に不気味な顔のような物が出てきてからの記憶がないんです。」

 

ユリシスは謎の現象に巻き込まれて記憶を失ったらしい。

 

「……それって『再構築』に巻き込まれたんじゃない!?」

 

「…………きっとそうでございます。」

 

コッコロ達はユリシスが再構築に巻き込まれ記憶が無くなったと推理した。

 

「……再構築というのは……?」

 

「この世界がリセットされて最初からになることです。」

 

「…………リセット……?そんな事があるんでしょうか…………でもこれしか考えられないかも知れませんね。」

 

ユリシスは半分疑いながらも記憶を失う原因がこれしか無いと思い納得した。

 

「ユリシスちゃん、少し休みましょう?今まで大変な毎日を送ってきたんだからせめてゆっくり休んで。」

 

「そうそう。あんた記憶喪失で今まで大変だったでしょ?部屋1つ空いてるから好きにしていいわよ。」

 

「……ありがとうございます。皆さん。」

 

キャル達は今までの辛い過去を持ったユリシスを休ませるため部屋のベッドへと移動させると、すぐにユリシスは眠ってしまった。

 

「………………。」

 

「……ぐっすり眠ってますね。」

 

「…………沢山休んでね。」

 

シャルルもユリシスの寝顔をみると部屋を出ていった。

 

 

 

キャルは部屋で赤ん坊を抱きながら窓の外を眺めていた。

 

「…………。」

 

コンコン

 

「?」

 

小さく扉を叩く音が聞こえる。

 

「入っていいわよ。」

 

「……失礼しますね。」

 

キャルがそれに反応すると、部屋に入ってきたのはペコリーヌだった。

 

「ペコリーヌ……。」

 

「……隣いいですか?」

 

ペコリーヌは部屋に入るとキャルの隣に座った。

 

「…………。」

 

「…………。」

 

暫く沈黙が続いたが、最初にペコリーヌが口を開けた。

 

「……その、ゴクウさんの事は……。」

 

「もういいのよ……ペコリーヌ。」

 

「キャルちゃん?」

 

キャルの顔には悲しさなどは出ておらず、それどころか強い決意がその目に宿っていた。

 

「……アイツは私に悲しんで欲しいわけじゃない。ただ前を向いて生きて欲しいって思うはずよ。」

 

ブラックの事を誰よりも知ってるキャルだからこそ、そう思えた。

 

「…………そうですね。きっとゴクウさんならそう言うはずです。」

 

キャルは赤ん坊を優しく撫でる。

 

「……魔人ブウになんて……私は絶対に負けないんだから!」

 

「キャルちゃん……!私も……絶対負けません!」

 

ペコリーヌとキャルはいつまでも悲しみに暮れずに魔人ブウを倒す事を強く誓った。

 

 

 

 

 

 

それから平和な日々が過ぎていき、ユウキが来ないまま魔人ブウとの約束まで4日を切ったある日の事だった。

 

 

「………………ウウウウウ…………!!!」

 

魔人ブウは眠りから覚め、何も無い平地の場所で一人で唸っていた。

 

そして次の瞬間だった。

 

 

「……もうやめだあ!!!もう待たないぞおお────ッ!!!!!」

 

痺れを切らした魔人ブウが思い切り気を解放した。その強大な気で地面は揺れ、空気が震える。

 

そして魔人ブウの気はもちろんギルドハウスにいる悟空達の元にも伝わっていた。

 

「「「「!!!!」」」」

 

「ええっ!?約束の日までまだありますよ!?」

 

「な!?まだ1週間経ってないぞ!!」

 

「ブウのやつ……痺れ切らしちまったみてぇだ!!」

 

「ど、どうするのよ!!」

 

「主さまはまだでございますよ……!!」

 

その時だった。

 

シュピン

 

「「「「!?」」」」

 

魔人ブウが瞬間移動で悟空達の前に現れた。

 

「ブウ!!おめぇ……約束はどうした!!」

 

「…………もう待たない。闘う……!出て来い!殺してやる!!!!」

 

魔人ブウが大声で叫び地面に亀裂が入る。

 

「……本当にやるんか……!」

 

「…………オレと闘うやつ出せえっ!!!」

 

魔人ブウは更に気を高めた。

 

「……まだユウキは戻ってこねぇ。おめぇの相手はオラだ!!」

 

悟空は超サイヤ人ブルーに変身した。

 

「悟空さん…………!!」

 

「…………そんな変身をしても無駄だ。オレには勝てない。」

 

魔人ブウは悟空の超サイヤ人ブルーを見ても顔色一つ変えなかった。

 

「……気を引き締めろおめぇ達!!ブウは恐ろしく強ぇぞ!!」

 

「………ちっ……やれるだけやってみるか。」

 

「お前の好きにはさせないぞ!!魔人ブウ!」

 

ターレスとトランクスも悟空と共に前に出た。

 

「……よし、行くぞおめぇ達!!」

 

「ああ……!」

 

「はい……!」

 

悟空、ターレス、トランクスは覚悟を決めると一斉に魔人ブウへ向かっていった。




レッドリボン軍を壊滅させた人物は一章の7話を見れば分かるかも…?


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真の怒りに目覚めた時

 

魔人ブウは痺れを切らし、約束の期間を破り悟空たちの元に現れ暴れていた。

 

「だりゃああああっ!!!」

 

「はああああっ!!!」

 

「……くたばりやがれ!!」

 

悟空、トランクス、ターレスは魔人ブウと闘うもダメージは全く通らずにスタミナだけが消耗される。

 

「…………その程度なのか?」

 

「こ、こいつ……これだけオレ達が攻撃を浴びせても傷が一瞬で塞がってしまう!」

 

「化け物が……!」

 

「ちくしょう…………オラ達が攻撃する度に学習しちまうから攻撃がきかねぇ……!」

 

魔人ブウは余裕の顔で3人同時に相手にしていた。

 

「……もうお前たちの攻撃は覚えた。」

 

「「!?」」

 

魔人ブウはトランクスとターレスの後ろに回り込むと二人を同時に殴り飛ばした。

 

「「ぐあああああっ!!!」」

 

「トランクス!ターレス!!」

 

「お前の技も覚えた。」

 

「なに!?」

 

悟空が吹き飛ばされるトランクスとターレスを追うと魔人ブウは瞬間移動で悟空の前に回り込んだ。

 

「……お前も終わりだ。」

 

「がはっ……!!」

 

そして悟空も魔人ブウの攻撃によってその場に倒れた。

 

「そ、そんな……悟空さん達があんな一瞬で……!」

 

闘いを見ていたコッコロ達は魔人ブウの強さを見て絶望していた。

 

「……次はどいつからだ。早く出てこい。殺してやる。……っ!?」

 

「「「!?」」」

 

すると魔人ブウの後ろから突如爆発したかのような荒々しい気が吹き上がった。

 

「……どこへ行くつもりだ。」

 

悟空は超サイヤ人ブルーに上乗せで界王拳を使っていた。

 

「……まだ動けたのか。」

 

「悟空さま!?」

 

悟空は姿勢を低く腕を前に出して構えると魔人ブウに向かっていった。

 

「なに!?」

 

「はあっ!!」

 

魔人ブウの視界から一瞬で悟空が消え、気がつけば魔人ブウは殴り飛ばされていた。

 

「……ぐうう……速い。でも瞬間移動は覚えたと言っただろ!」

 

「これは瞬間移動じゃねえさ。ただ速く動いてるだけだ!!」

 

「がはぁっ……!!」

 

悟空は瞬間移動するよりも速く動き魔人ブウを攻撃していく。

 

「す……すごい!悟空さんが押しています!」

 

「……いや、体力の消耗が激しいわ……。このままじゃ悟空は…………!」

 

「そんな…………!」

 

キャルは冷静に悟空のパワーを分析していた。

 

そして……

 

 

「はああああ……!!だりゃあああっ!!!」

 

「ぐはああああっ!!!!」

 

悟空が魔人ブウを岩に叩きつけた。

 

「……はぁ……はぁ……。」

 

流石に界王拳を全力で使ってしまった為、悟空の体力は大幅に下がってしまっていた。

 

「…………はぁ……はぁ……っ!!し、しまった!!」

 

「「「!?」」」

 

悟空は魔人ブウの吹き飛ばされた方向を見て何かを察した。

 

「ど、どうしたんですか悟空さん!!」

 

「……そっちにはさっきブウに殴り飛ばされたターレスとトランクスがいるんだ!!まさか……!!」

 

「……そのまさかだ。」

 

「「「!?」」」

 

すると悟空が言い終わる前に魔人ブウが姿を見せた。

 

「さ、さっきと姿が違いますよ!?」

 

「あの服装は……ターレスさんの!?」

 

魔人ブウの姿はターレスの戦闘服に白いマントを着けたものに変わっていた。

 

「……吸収しやがった……!!」

 

「「「吸収!?」」」

 

その言葉に全員が驚いた。

 

「ははは!!いいぞ……いい力だ。トランクスの力にターレスの頭脳……素晴らしい!」

 

魔人ブウはターレスだけではなくトランクスも吸収してしまっていた。

 

「言葉使いもさっきと変わってます……知能を得たと言うことでしょうか……!」

 

「……折角得た力を試してみるとするか。」

 

「「「「!?」」」」

 

魔人ブウは両手を前に出して気を溜める。

 

「あ……まさかあの技は……!!」

 

見覚えのある技にコッコロ達は震えていた。

 

「……キルドライバー!!」

 

「や、やめろ!!」

 

輪っかのような気弾が悟空達の真上を通り過ぎていき、山に直撃し巨大な爆発音が起こった。

 

「……ふん、大層な名前をつけてはいるがなんて事ないただの気功波だな。」

 

魔人ブウは崩壊する山を見てニヤリと笑った。

 

「あれがただの気功波……!?」

 

「……めえったな……こっからどうすればいいのかオラにもわかんねぇ……。」

 

悟空もただ圧倒的な強さの魔人ブウをみて笑うことしかできなかった。

 

「さあ……あの世に行け。孫悟空!!」

 

「くっ……!」

 

魔人ブウの攻撃が悟空に迫るその時だった。

 

「「はああああっ!!」」

 

「なに!?」

 

悟空の前に咄嗟にペコリーヌとキャルが飛び出し魔人ブウの攻撃を逸らした。

 

「……ペコリーヌ……キャル……!」

 

「……悟空さんは少し後ろで休んでいてください。」

 

「で、でもよ……!」

 

「はやくどきなさい!アタシは今無性にイライラしてるの。」

 

「……わかった。無理はすんなよ。」

 

悟空はキャルとペコリーヌの表情を見て後ろへ下がった。

 

「……ふん。誰かと思えば後ろで震えて見ていることしかできないゴミ共か。」

 

魔人ブウはキャルとペコリーヌを見て嘲笑う。

 

「あんたこそ悟空にやられてトランクスとターレスを吸収しないとまともに戦えないチキンじゃないの?」

 

「…………どうやら先に死にたいらしいな。」

 

「……私たちはあなたなんかに負けません。」

 

ペコリーヌとキャルの目には闘志が宿っていた。

 

「……ゴミが。あの無様に散っていった男の仇か?自爆してくたばるとは無駄死にもいいところだ。」

 

「「!!」」

 

次の瞬間、ペコリーヌとキャルの雰囲気が一気に変わった。

 

「……無駄死にですって…………?」

 

「……無様に散った………………?」

 

「ん?」

 

そして二人の気が爆発的に上昇した。

 

「……ゴクウはみんなを守るために死んだ。それは無駄なんかじゃない。アンタの為に死んだんじゃないのよ……!!」

 

「……ゴクウさんは私たちを絶対に傷つけさせない為に散っていったんです。貴方にゴクウさんの事をとやかく言う資格はありません!」

 

「ペコリーヌ……!キャル……!すげぇ気だ……!」

 

悟空も離れた場所からペコリーヌとキャルの強大な気を感じた。

 

「ほう?大した力だな。だがその程度では私を倒すことはできんぞ?大人しく身を引いておけばよかったのだがな。」

 

魔人ブウは未だに余裕の笑みを浮かべていた。

 

「……ここで引くわけにはいきません!」

 

「……ペコリーヌの言う通りよ。私はアンタを倒さなくちゃいけないんだから……!!」

 

 

「…………。」

 

 

「「はああああああああああ!!!!」」

 

ペコリーヌとキャルは一気に力を込めた。

 

「「プリンセスフォーム!!!」」

 

すると二人の体は白い光に包まれプリンセスフォームに変身した。

 

「……あれが噂に聞いていたプリンセスフォーム……!ママもペコリーヌさんもすごい気です……!」

 

「…………すげぇけど……これじゃあまだ……っ!?いや、ペコリーヌとキャルの気がどんどん上がっていくぞ……!?」

 

プリンセスフォームに変身したペコリーヌとキャルは未だに気を上げ続けていた。

 

「「はああああああああああ!!!!」」

 

「……ゴクウは……私のパートナーでもあって……命の恩人でもあるのよ……!!」

 

「……そして……今までも……これからも私たちの大切な【美食殿】のメンバーです!!」

 

二人は思い思いの言葉を口にした。

 

「……だからアンタに……」

 

「……だからあなたに……」

 

 

「「私たちの旅は邪魔させない!!」」

 

「「「「「!!!!」」」」」

 

 

眩しい輝きに二人は包まれると、大きな光の羽が生え、荒々しく燃える青い炎の様なものを身にまとった。

 

「ママ……!?ペコリーヌさん!?」

 

「……お、おめぇら……その姿……!」

 

悟空とシャルルは二人の姿を見て目を見開いた。

 

「……な、なんだ……それは……!」

 

魔人ブウの顔からも余裕の顔が消えた。

 

ペコリーヌとキャルはその力をコントロールすると魔人ブウを真っ直ぐに見つめた。

 

「これが私たちの全て……!」

 

「……これが……!!」

 

 

「「プリンセスオーバーフォーム!!」」



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意外な助っ人

キャルとペコリーヌは自信の限界を超え『プリンセスオーバーフォーム』へと変身した。

 

「…………あんただけは許さないから。」

 

「…………ここで倒します。」

 

以前までのペコリーヌとキャルの気とは比べ物にならないほど強力な気は魔人ブウでさえも冷や汗を流すほどだった。

 

「……調子に乗るなよ?貴様らなんぞにオレを倒せるか!じっくり痛めつけてからチョコにして食ってやる!」

 

すると魔人ブウは二つの気弾をペコリーヌとキャルに放った。

だがペコリーヌはその気弾を剣で切り裂き魔人ブウへと迫った。

 

「……行きます。」

 

(速い……!!)

 

魔人ブウもそのスピードに驚きつつもペコリーヌの剣を交わした。

 

「……どこ見てんのよ!」

 

「!?」

 

するとキャルは魔人ブウの懐へと入り込みそのまま魔人ブウの顔面を蹴りあげた。

 

「ぐああっ!!」

 

「…………。」

 

そしてペコリーヌは蹴りあげられた魔人ブウよりも先回りし渾身の一撃を叩き込み再び地面へと突き落とした。

 

「が……ぐあっ!!」

 

魔人ブウはうつ伏せの状態で倒れた。

 

「………あ……あぐぁ……っ!!」

 

流石に魔人ブウにもダメージが通っていた。

 

「す、すげぇ!ペコリーヌとキャルあんなに強かったんか……!」

 

「これならきっと……!!」

 

悟空達もペコリーヌとキャルがこのまま行けば魔人ブウに勝てると予測していた。

だが……

 

「がああああああああっ!!!!!」

 

「「!?」」

 

魔人ブウが突如叫びながら上空に飛び上がった。

 

「ううう……っ!!!ああああああっ!!!」

 

魔人ブウは怒りのあまりに我を忘れこの世界を破壊しようと気を溜めていた。

 

「……キャルちゃん!なんだかまずそうです!」

 

「……私たちにやられてよっぽど悔しかったんでしょうね……自我を失ってるじゃない!」

 

魔人ブウのエネルギーはどんどん膨れ上がっていく。

 

「……行くわよペコリーヌ!!」

 

「はい……!」

 

そしてキャルとペコリーヌはそれを止めるべく魔人ブウに飛びかかった。

 

バチバチ

 

「「!?」」

 

しかし魔人ブウの周りには見えない気でできた壁があり触れることすらできなかった。

 

「なによ……これ!!」

 

「見えない何かが……あります!!」

 

ペコリーヌとキャルはその壁を突破しようとするが中々破ることはできない。

 

「くたばれえええええ!!」

 

そして魔人ブウがエネルギーを撃とうとしたその時だった。

 

「ぐわあああああっ!!!」

 

「「!?」」

 

突如エネルギーを撃とうとした魔人ブウが一瞬で吹き飛ばされた。

 

「な、何が……!?って……あんたは!!」

 

「あ……この前の……!!」

 

ペコリーヌとキャルの前に現れたのは以前ユリシスを殺しにきたヒットだった。

 

「あ……!!あの人!!」

 

「ヒット!?なんでおめぇが……!」

 

悟空達も意外な人物の登場に驚いた。

 

「……とある女から依頼を受けた。魔人ブウを始末しろとな。」

 

「とある女?」

 

「私だよ私!!」

 

「「「!?」」」

 

現れたのはラビリスタだった。

 

「私が彼に依頼したんだー!私は今ちょっとやる事があるから頼もしい助っ人としてね。」

 

ラビリスタはそれだけを言うとやる事があるのかすぐに姿を消した。

すると吹き飛ばされた勢いで魔人ブウは自我を取り戻した。

 

「……オレは一体何を……!…っ誰だ貴様は!」

 

「……オレはヒット。貴様を殺しに来た。」

 

「な……!?はぐぁっ……!!」

 

そしてヒットが突如前から消えると同時に魔人ブウがまた攻撃を受けていた。

 

「ヒットって奴あんなに強かったの!?」

 

「すごいです……攻撃の瞬間が見えません!」

 

魔人ブウは訳も分からないままヒットに攻撃され続ける。

 

「な……何が起こっているんだ……!!」

 

「……時間を飛ばした。貴様にオレの技は見切れない。」

 

「!!」

 

そしてヒットはそのまま魔人ブウをボコボコにしていった。

 

「が……がぐああああっ!!」

 

「……そろそろ終わらせるか。」

 

ヒットが最後の時飛ばしをした瞬間だった。

 

「……ここだ。」

 

「何……!?」

 

魔人ブウがヒットの動きを読み攻撃を掠らせた。

 

「………貴様。」

 

「………ふふっ。時飛ばしか……厄介な技だ。」

 

魔人ブウはそう言うとニヤリと笑った。

 

「……嫌な予感がします。キャルちゃん!私達も加勢しましょう!3人ならきっと勝てます!」

 

「そうね……!!ここで魔人ブウを仕留めるわよ!!」

 

ペコリーヌとキャルは魔人ブウに突撃する。

 

「ヒットさん!!ここは協力しましょう。」

 

「……助けなど不要だ。これはオレの仕事だ。」

 

「……そんな事言ってる場合じゃないでしょうが!!それなら私もアイツの仇をとらなきゃいけないの!ごちゃごちゃ言ってないで手伝いなさい!」

 

「………オレの邪魔はするなよ。」

 

キャルとペコリーヌがヒットを説得するとヒットが先陣を切り飛び出して行った。

 

「……馬鹿め。時飛ばしは攻略したと言っただろう!」

 

魔人ブウは向かってくるヒットの前で構えながら時飛ばしに備えていた。

 

「………。」

 

「ここだ!!」

 

魔人ブウがヒットの時飛ばしを読み攻撃した。

 

「な、なんだと………!?」

 

「馬鹿め。攻略された時飛ばしをそう簡単に使うわけがないだろう。」

 

魔人ブウの攻撃は外れヒットの拳が腹にくい込む。

そして……

 

「警戒するのはヒットだけじゃないわよ!」

 

「いきますよ……全力全開……!!」

 

「!?」

 

「アビスエンド・バースト!!」

 

「プリンセス・ストライク!!」

 

意識外からの攻撃で魔人ブウは反応する事が出来ずにそのまま直撃した。

 

「ぎゃあああああああああっ!!!」

 

3人の連携により着実に魔人ブウにダメージを与えていた。

 

「ぐうう……。」

 

だがやはり時間はかかるが傷を再生する為、致命的なダメージを負わせることはできなかった。

 

「……へへ。やっぱすげぇな……あの3人。」

 

「………あまりの強さに魔人ブウも予想外だったみたいですね!ピンク色の触覚みたいなのも取れちゃってますよ!」

 

「これならばペコリーヌ様たちが勝つのは間違いないです!!」

 

すると魔人ブウはボロボロの身体を起き上がらせる。

 

「……オレは最強の魔人だ。貴様らの攻撃は全部覚えた。もうオレには通じない。」

 

「……大した自信だな。」

 

「何が最強の魔人よ!吸収して強くなっただけじゃない!」

 

「……そうです!ターレスさんとトランクスさんは返してもらいますよ!!」

 

ペコリーヌ達が構えたその時だった。

 

「……!?」

 

「消え……た?」

 

「ど、何処に……!?」

 

突如ペコリーヌ達の前から魔人ブウが消えた。そして……

 

「ぐあああああっ!!!」

 

「ヒット!?」

 

「ヒットさん!?」

 

ヒットが突然激しく後ろに吹き飛ばされた。

 

「……これが時飛ばしか。ふふふ……素晴らしい技だな。」

 

魔人ブウは既にペコリーヌとキャルの背後にいた。

 

「「!?」」

 

「言っただろう?オレは最強の魔人だ。貴様らに勝てる見込みなど無い。」

 

「いつの間に……!!」

 

「ヒットさんの技をあの一瞬で覚えたんですか……!?」

 

「……さあ。もう一度貴様らと闘うとするか。」

 

「「!!」」

 

それから魔人ブウは時飛ばしを使いながらペコリーヌ達を攻撃していった。

 

「動きが……読みずらいわね!!」

 

「くっ……!!」

 

ペコリーヌとキャルはなんとか魔人ブウの攻撃を凌いではいるが段々と時飛ばしのコツを掴んできた魔人ブウの強さは脅威だった。

 

「……バカな。この一瞬でオレの技が……!」

 

「……ヒット……と言ったか?素晴らしい技だな。時飛ばしというのは。これからも大切に使わせてもらうとしよう。」

 

「!?」

 

魔人ブウが時飛ばしで視界から消えるとヒットも時飛ばしで応戦する。

 

「……同じ時飛ばしならオレの方の練度が上だ。」

 

「……ぐがっ……今はそうかもな。」

 

「!?」

 

ヒットは一時的に魔人ブウの時飛ばしを超えたが魔人ブウはニヤリと笑いながら意味深な発言をした。

 

「「はあああああああっ!!」」

 

「ふん……その技はもう通用しない。」

 

「「「!?」」」

 

魔人ブウはペコリーヌとキャルの攻撃を軽く避けながらヒットも同時に攻撃した。

 

「……わかるぞ。お前たちの動きが。次の動きの予測がな!」

 

「くっ………!」

 

段々と技を覚え学習していく魔人ブウにヒット達は苦戦を強いられていた。



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無敵の吸収形態

 

「どうした?もう策はないのか?」

 

「……埒が明かないな。このままでは奴を倒せん。」

 

「……はぁ、はぁ……そうみたいですね。」

 

「……どうすればこんな化け物倒せるっていうのよ……。」

 

体力を消耗していくヒット達と比べ、魔人ブウは技を学習しながら強くなっていく。

 

「……くそ……オラも体が効かねえ……!まだ体力が回復できねぇ……!」

 

「……どうすれば……3人がかりでも魔人ブウはを倒せないなんて……!」

 

「……悔しいですがわたくしがお役に立てることはありそうにないですね……。」

 

シャルルも自分が加勢しに行ったところでどうにもならない事を分かっていた。

 

「……なんとか時間を稼がなくちゃいけないのに……!」

 

「ユウキはいつになったら出てくるのよ!!」

 

「……ユウキ?」

 

するとヒットは攻撃の手を止めた。

 

「……ヒットさん?」

 

「……ユウキというやつがくるまで時間を稼げばいいんだな?」

 

「そ、そうだけど……。」

 

「……よし、はあああああああっ!!!」

 

ヒットはコートを脱ぎ、気を本気で解放した。

 

「ヒットさん!?そんな力まだあったんですか!?」

 

「す、凄いプレッシャー……!」

 

「……ほう。まだ心は折れてなかったか?」

 

だが魔人ブウはヒットの姿を見てもまだ笑っていた。

 

「……オレがなんとか時間を稼いでやる。お前達はオレが合図したら一斉に攻撃しろ。」

 

「は、はい!!」

 

「……わかったわ!」

 

ヒットはそういうと一人で魔人ブウへ向かっていった。

 

「……バカが。貴様一人でオレとやり合うつもりか?」

 

「……!」

 

ヒットは時飛ばしを使い魔人ブウの背後に回り込んだ。

 

「ぐがぁあっ!!!」

 

「……もうその技は覚えたと言っただろう?」

 

だが魔人ブウは背後のヒットの攻撃をノールックで避け片手で弾いた。

 

「……くっ!!」

 

「…………。」

 

だがヒットはその後も何度も時飛ばしを使い魔人ブウへ攻撃をしていく。

 

「ぐあああああっ!!!」

 

その様子を悟空とシャルルはずっと見ていた。

 

「……なんでヒットさんは通用しない時飛ばしを何度も使ってるんでしょうか……。」

 

「……ヒットは無駄な事は絶対にやらねぇ。何か考えがあるはずだ……!」

 

何度も時飛ばしを繰り返すヒットに魔人ブウも呆れていた。

 

「……何度同じことを繰り返す。無駄なことはやめろ!!」

 

「ぐっ……!!!」

 

魔人ブウはヒットを岩場に蹴り飛ばした。

その衝撃で崩れた瓦礫がヒットを下敷きにした。

 

「ヒットさん!!」

 

「ヒット!?」

 

するとヒットはボロボロの状態で立ち上がった。

 

「……やつの攻撃は体で覚えた。……仕事の仕上げといくか……!」

 

ヒットは片腕を挙げ拳の衝撃波を魔人ブウへと飛ばした。

 

「こんな物がオレに効くか!!」

 

魔人ブウがヒットの攻撃を弾き飛ばした瞬間、ヒットが時飛ばしで魔人ブウの後ろへと回り込んだ。

 

「……またそれか。無駄だと言っただろう!!がっ!?」

 

 

 

魔人ブウは後ろを振り向くがそこにヒットはおらず、ヒットは更に魔人ブウの後ろへ回り込んで不意打ちの一撃を胸に叩き込んだ。

 

「…………この一撃が必要だった。この一撃が……お前を時間の牢獄に縛り付ける……はあっ!!」

 

「なんだ……ぐあああああっ!!!」

 

「ヒットさんの攻撃が入った!?」

 

「やるじゃないあいつ!!」

 

ヒットの攻撃により吹き飛ばされた魔人ブウは体勢を立て直しながら足でブレーキをかけて勢いを殺した。

 

「……この程度の攻撃でいい気になるな……っ!?」

 

「…………。」

 

すると魔人ブウの体が突如紫色のオーラで包まれ動きが完全に止まった。

 

「「「「「!?」」」」」

 

「魔人ブウの動きが……!!」

 

「止まった!?」

 

「これがヒットの奥の手っちゅう奴か……!」

 

「完全に停止してます……!」

 

「…………これならば主さまが戻るまで時間が……!」

 

コッコロが安心した表情をしたがヒットは顔を辛そうに歪ませていた。

 

「……いや、あまり長くは持たない。」

 

「ぐぐぐぐぐが…………………………。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

魔人ブウは徐々に時間の檻を破り動き出していた。

 

「ぐっ………………!!」

 

ヒットは必死に抑えてはいるものの、魔人ブウの気が強大過ぎるあまり、時間は持ちそうになかった。

 

「ががががが……こ……ろす…………!!」

 

自由自在に身体を動かすことができない魔人ブウの怒りも限界に達しており、いつこの技が破られてもおかしくなかった。

 

「ちょっと!!魔人ブウが段々動き出してるじゃない……!!このままじゃやばいわよ!」

 

「ヒットさん!!合図はまだなんですか!!」

 

「……ぐっ…………くっ……このままユウキというやつがくるまでこいつを抑えられるほどオレの体力は持たない……。ならば、オレの全てを賭けよう……!賭け事など……殺し屋らしくないがな。」

 

ヒットは覚悟を決めたように魔人ブウを見た。

 

「……今だ!!お前たち!!この一撃で……決める!!」

 

「待ってたわよ!オーバーロード・バースト!」

 

「……行きます!!オーバーロード・ストライク!!」

 

「はああああっ!!!」

 

身動きのできない魔人ブウを3人で同時に攻撃した。

 

だが……

 

「……ヒット。これは時飛ばしを連続してオレにかけてるな?」

 

「「「!?」」」

 

なんと3人の攻撃の瞬間、魔人ブウがヒットの奥の手を学習しヒット達全員に連続して時飛ばしをかけた。

 

「ば…………馬鹿な!!」

 

「嘘……でしょ……!?」

 

「動けませ…………ん……!」

 

攻撃の直前で動きを止められた3人は改めて魔人ブウの恐ろしさを思い知った。

 

「あ、あんなの反則ですよ!!なんであんな事ができるんですか!?」

 

「も、もう……これじゃあ魔人ブウには勝てっこねぇ……!」

 

「そんな!?」

 

魔人ブウは止まっている3人を見てニヤリと笑った。

 

「おい。気づいていたか?さっきの貴様らの攻撃でオレの体の一部が何処かにいっただろう?いまどこにあると思う?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

すると止まっている3人の後ろに魔人ブウの体の一部が浮かんでいた。

 

「ま、まさか…………!!」

 

「え………………?」

 

そのピンク色の魔人ブウの一部は急に大きくなっていき、なんと3人を一気に包んだ。

 

「くっ……これは完全にオレのミスだ……せめてお前たちだけでも!!」

 

「「!?」」

 

魔人ブウに吸収される瞬間に、ヒットはペコリーヌとキャルを気合いで弾き飛ばした。

 

「ヒットさん!?」

 

「……あんた!?」

 

「やめろ──ッ!!ブウッ!!」

 

悟空は叫んだが既に遅く、ヒットを包んだピンク色の物体は魔人ブウの体へと吸収された。

 

「あ……あ…………!!」

 

「どうしたら………………!!」

 

シャルルとコッコロはその光景を見て絶望した。

 

「う、嘘だろ…………本当に吸収しやがった……!」

 

吸収された魔人ブウの姿はまた変わりヒットのロングコートのような物を羽織った姿になった。

 

「……どうかな?無事作成成功だよ。見たまえ。素晴らしいだろう?この瞬間こそ……未来においても二度と現れぬであろう最強の魔人の誕生だ……!」

 

魔人ブウは勝ち誇ったような顔でペコリーヌ達を見下ろす。

 

「……そりゃねえだろ……!!」

 

「ヒットさんの力もプラスされて……もう……!」

 

「…………こんな……!」

 

「きたないわよ…………何人も吸収ばっかりして……!!」

 

「くっくっく……勝利こそ全てなのは、お前とて同じことだろう?」

 

「……こんな……どうしたら……!」

 

「……まあ、そう絶望的になることもなかろう。すぐ楽にしてやる……ほんの少し苦しむだけだ。」

 

ヒットを吸収し、更に力を増した史上最強の魔人が誕生してしまった。




これヒット来ない方が勝ち目あったのでは()


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身勝手の極意

「ふはははは!!素晴らしい!力が溢れてくるぞ……!」

 

ヒットを吸収した魔人ブウは高らかに笑う。

 

「……ヒットさんが……!」

 

「……どうしろっていうのよ……。」

 

キャルも半ば諦めて抵抗もしなくなっていた。

 

「……さあ、お前たちに勝ち目はない。大人しく吸収された方がいいぞ?」

 

「……誰があんたなんかに吸収されるもんですか!」

 

「………お前たちに拒否権はない。力ずくでも………っ!?」

 

「「「!?」」」

 

すると突如魔人ブウの目の前からペコリーヌとキャルの姿が消えた。

 

「な……何処に行った!?」

 

魔人ブウが後ろを振り向いたその時だった。

 

「ぐふぉああっ!!!」

 

何者かが魔人ブウの顔を蹴り飛ばした。その人物は……

 

「………。」

 

「……ゆ、ユウキ……なの……?」

 

「ユウキくん……!?」

 

「ユウキ!!おめぇ間に合ったんだな……!」

 

「ユウキさん!」

 

「主さま!?」

 

修行を終えたユウキが二人を助けた。

 

「ぐがっ……何が起きた……。」

 

魔人ブウはよろめきながら立ち上がりユウキの姿を見た。

 

「……誰だお前は。」

 

「……………。」

 

ユウキは魔人ブウから一切目を離さない。

 

「……ユウキ。……ゴクウはアイツに………!」

 

キャルは声を振り絞りながらユウキにゴクウが死んでしまった事を伝えた。

 

「……うん。わかってるよ。」

 

「ユウキくん!?……なんでそんなに落ち着いているんですか……?悔しくないんですか……!」

 

今までのユウキからは考えられないほどの落ち着きようだった。

 

「……悔しいよ。でも……怒ったところでどうにもならない。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「……ユウキ……!すげぇな……オラでさえブラックが死んじまって感情が揺さぶられたのにな……。」

 

そしてユウキはマントを脱ぎ捨て構えた。

 

「……来い魔人ブウ。お前の相手は僕だ。」

 

「……一撃入れたからっていい気になるなよ?」

 

ユウキの瞳とオーラは銀色になった。

 

「あ、あのオーラ……以前ターレスさまと戦った時に発動した……。」

 

「……へへっ。ユウキのやつ……相当修行したんだな……。」

 

悟空はユウキの姿を見て少しワクワクしていた。

 

「……ほう。お前も面白い技を持っているな。もっと見せてくれよ。」

 

魔人ブウは圧倒的な余裕をもってユウキの行動を待っていた。

 

「…………。」

 

「!?」

 

するとユウキは一瞬で魔人ブウとの間合いを詰めて強烈な蹴りを繰り出した。

 

「……素早い動きがその技の特徴か?」

 

だが魔人ブウはこの攻撃を辛うじて防いでいた。

 

「……まだまだこれからだ。」

 

「面白い……見せてもらおう!!」

 

そして魔人ブウとユウキの壮絶な肉弾戦が始まった。

 

「……どっちが勝ってるの?」

 

「……見えません……。」

 

「……どうやら魔人ブウの方が若干優勢みてぇだ……。やっぱ中途半端な攻撃じゃかえって相手に学習されちまう……!」

 

「あれでもダメなんですか……!!」

 

「……いえ大丈夫です。」

 

皆がユウキの心配をする中、コッコロだけはユウキの事を信じていた。

 

「「「「!?」」」」

 

「コッコロ……大丈夫ってどういう事だ?」

 

「……主さまは……いつ如何なる時でも諦めずにわたくしたちを勝利に導いてくださいました。覇瞳皇帝の時も……ザマスの時も……。今回だって……わたくしは信じております。」

 

「コロ助……。」

 

「コッコロちゃん……!そうですね……ユウキくんなら大丈夫です……!」

 

コッコロの言葉を聞き、全員がユウキを信じてその闘いを見守っていた。

 

「はははは!!どうした!さっきまでの勢いが無いぞ……!」

 

「………………。」

 

ユウキは目を閉じ、ブラックがユウキに伝えた言葉を思い出していた。

 

『完成まではあときっかけだけなんだ。』

 

「………………。」

 

『………ユウキ。今の実力で身勝手の極意が完成すれば遥かに安定したものになる。相手が魔人ブウだろうと……誰だろうと負けることはない。』

 

「………………。」

 

『私が愛したこの世界を……お前の手で守ってやってくれ。……ユウキ、今までの旅は本当に…………楽しかったな。』

 

「………………。」

 

ブラックの言葉はユウキの心に一言一句刻まれていた。

 

「……僕はまた……大切なことを一つ教わったよ。」

 

「……なっ……!?」

 

ユウキは目を開けると魔人ブウの攻撃を全てかわしきり強烈な拳を腹にくらわせて吹き飛ばした。

 

「「「!!」」」

 

「ぐがっ……な、何が…………!」

 

魔人ブウはゆっくりと立ち上がった。

 

「……僕は一人で闘っているんじゃない。コッコロちゃん、ペコさん、キャルちゃん、そしてゴクウもいる。」

 

「……何をごちゃごちゃと言っているんだ?」

 

魔人ブウはユウキを見て苛立つ。

 

「……僕は美食殿のメンバーだ。今までも……そしてこれからも。」

 

「……そうか。お前もあの男の仇をとりにきたのか。よっぽど慕われていたらしいな……戦闘力はゴミ同然だったがな。」

 

魔人ブウがユウキを挑発するがユウキは至って冷静なまま魔人ブウを真っ直ぐ見る。

 

「……ゴクウはもう存在しない。お前を倒すのが僕の役目だ。」

 

「……まだそんなことを言ってるのか?」

 

「ゴクウの遺志は……僕が引き継ぐ。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

すると急にユウキの気が爆発したかのように膨れ上がり、髪も逆立っていく。

 

 

ドドドドドド…………

 

 

ユウキの気は大地を揺らし、突風が吹き荒れ、海もまるで地震が起こった時のように荒れていた。

 

「ユウキ……おめぇまさか……!」

 

「ユウキくんの気が……!」

 

「主さま……!!」

 

「ユウキさん…………!」

 

「まるで別人だわ……。」

 

そして、気は静まりさっきまでの嵐が嘘のように何も感じなくなった。

 

「………………。」

 

ユウキの髪は黒髪から銀髪に変わった。

 

「なんだ……その姿は……。」

 

ユウキから気は何も感じないが、魔人ブウはユウキのプレッシャーに圧倒され後ずさりしていた。

 

「…………。」

 

ユウキは静かに魔人ブウに向かって歩く。

 

「近寄るな!!!っ!?」

 

「…………。」

 

魔人ブウが気弾を放とうとした瞬間、ユウキは一瞬で魔人ブウの腕を掴み攻撃を阻止していた。

 

「……これ以上この世界で暴れるな。」

 

「な、何者だあっ!!」

 

魔人ブウは冷静さを失いユウキに何度も攻撃するが一撃も当たらない。

 

「どうなってるんですかあれ……!!」

 

「あれが身勝手の極意だ……!ユウキのやつ完成させちまったのか……!」

 

「完全に魔人ブウを圧倒してるじゃない!」

 

「……わたし、まだこの目で見ても信じられません……あれがこの前のユウキくんと同じだなんて……!」

 

「はい……主さまの雰囲気が以前とはまるで違います……。」

 

ユウキの身勝手の極意は悟空が見ても完璧なものだった。

 

「……。」

 

「な、何故だ……!何故時飛ばしも効かんのだ!!」

 

時飛ばしを駆使しながら攻撃をするも全ての攻撃は避けられ、弾かれる。

 

「ぐあああっ!!!」

 

そしてカウンターまで決められ魔人ブウは吹き飛ばされた。

 

「なんだ……何をしたんだ!!」

 

魔人ブウは再びユウキへ攻撃するが今度は片手で全ての攻撃をあしらわれた。

 

「くっ…………!」

 

魔人ブウは一度ユウキと距離をとる。

 

「お前……どういう事だ……!どうやって避けている!!」

 

「なにも……考えてない。」

 

「なんだと……!?」

 

「体が勝手に判断して攻撃を避けている。だから……お前の攻撃は絶対に当たらない。」

 

「体が勝手にだと!?訳の分からない事を言いやがって……!」

 

魔人ブウがユウキに今までで一番のスピードで襲いかかる。

 

「…………。」

 

「!?」

 

だがユウキは向かってくる魔人ブウの身体を手をかざすだけでピタリと止めそのまま中に浮かせた。

 

「「「「「!?」」」」」

 

「あいつ……あんな事もできるの!?」

 

「魔人ブウが浮いちゃってます……!」

 

「いつの間にあんな技を……!」

 

「すげぇ……すげぇぞユウキ!!」

 

「ユウキさんの底がみえません……。」

 

ユウキの突如繰り出した技に悟空達も驚く。

 

「な、なんで浮いているんだ……!!」

 

空中に浮かされ驚く魔人ブウの下でユウキは姿勢を低く構え片方の腕に力を込める。

 

「……はっ!!!」

 

「っ……!!」

 

ユウキは地面を蹴って飛び上がると力を込めた拳を魔人ブウの腹へ撃ち込んだ。

 

パァンッ!!!

 

魔人ブウを攻撃した衝撃波がアストライア大陸全土に響き渡った。

 

「ぐああああああああああぁぁぁっ!!!」

 

そのまま魔人ブウは激しく真上に吹き飛ばされ、しばらくすると地上に勢いよく落下した。

 

「あ……あ……っ……!!」

 

何が起きたのかわからない魔人ブウはユウキの攻撃によって痙攣し、血を吐き腹を押さえながら必死に立ち上がった。

 

「がああああああああぁぁぁっ……!!!!!」

 

だが大きなダメージを負った魔人ブウは再び膝を付き倒れた。

 

するとここで魔人ブウを圧倒しているユウキがニヤリと笑い衝撃の発言をした。

 

「……ウスノロ。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「ゆ、ユウキ?おめぇ……まさか。」

 

 




ん?流れ変わったな……
ユウキくんこのままだとイキリなろう主人公みたいになっちゃうよ!


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勝てんぜお前には・・・

強そう(小並感)


「……ウスノロ。」

 

「ゆ、ユウキ……?」

 

魔人ブウを圧倒したユウキは慢心からか魔人ブウを煽る。

 

「ぐっ……許さんぞ!!お前だけは絶対にぶちころしてやる!!」

 

ボロボロの魔人ブウは立ち上がって大きな声で叫んだ。

 

「……そいつが無理なことはお前が一番知ってるはずだ。」

 

「ぐうううう……舐めやがってええっ!!」

 

その後も何度攻撃してもユウキには一切当たらず一方的に攻撃を受け続ける。

 

「あああああぁぁぁっ……!!」

 

次第に魔人ブウの身体中から血が流れ出した。

魔人ブウは地面に膝をつき、荒い息を吐きながら顔を上げる。

そこには相変わらず表情一つ変えずに自分を見つめる少年の姿があった。

その瞳には憎しみの色はない。

 

しかし、この世のものとは思えない何かが宿っていた。

 

その何かを言葉で表すなら"無"。

何も感情のない空虚な目だった。

 

それを見た瞬間魔人ブウは自分の中に恐怖が生まれた事に気がついた。

 

そして同時に理解する。

 

(くる……!次の攻撃が……く……)

 

そう思った時にはもう遅かった。

 

「ぐっ……ぐあああああ!!!」

 

突如として魔人ブウの全身に痛みが走る。

魔人ブウは必死に耐えようとするが、耐えきれずその場に倒れてしまった。

 

「……どうしたウスノロ。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「ね、ねぇ……ユウキってあんな性格だったかしら……?」

 

「……言葉の節々から怒りが感じられますね。」

 

「主さま……?」

 

「で、でもユウキさんの強さは圧倒的ですし大丈夫…………ですよね?」

 

「……オラ、なんか嫌な予感がすんぞ……。」

 

悟空達もユウキの発言に困惑していた。

 

「……勝てんぜ、お前は……。」

 

「なに……??」

 

「「「「「!!!!!」」」」」

 

「……もはや誰よ!!明らかにユウキの言葉がおかしいわよ!?」

 

「おかしいですね……いつもならユウキくんはあんなに煽ったりしないはずなんですが……。」

 

「身勝手の極意が解かれてねぇって事は心は穏やかなはずだが……。ユウキ!!もういい!さっさと魔人ブウにトドメをさせ!!」

 

見かねた悟空がユウキに魔人ブウを倒すように指示をする。

だがユウキはその言葉には頷かなかった。

 

「……もうトドメを?まだ早いよ。あんな奴はもっと痛めつけてやらなきゃゴクウの仇は取れない。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

(ゆ、ユウキの奴の心は穏やかじゃねえ!何ならめちゃめちゃブラックが死んじまったことを根に持ってやがる!!このままじゃ大変な事になっちまう!!)

 

「ユウキ!!魔人ブウにトドメをさせるのはおめぇだけなんだ!!はやくやれ!!」

 

「…………。」

 

ユウキは依然として魔人を見てニヤけたままだ。

 

「これ以上魔人ブウを追い詰めんな!!何すっか分かんねぇぞ!!」

 

「くそっ!!オレは一番強いはずなんだ!!お前なんかに……お前なんかに!!!」

 

魔人ブウは何度も地面に拳を叩きつけた。

 

「ペラペラ喋ってる割には頭の悪さは変わってないみたいだな。お前は吸収してもその程度だ。一番強くなりたいのなら僕を吸収すれば簡単だったのにな。」

 

「なんだと………!!」

 

魔人ブウは怒りで体の穴という穴から蒸気を吹き出した。

 

「あのバカなんてこと言ってんのよ!!魔人ブウがキレたらどうすんのよ……!」

 

「なんだか本当に様子がおかしくないですか?長い間修行をしたせいでユウキくんの精神が壊れちゃったんじゃ……。」

 

ユウキの様子を心配するペコリーヌ達の目の前で魔人ブウの怒りのボルテージはさらに上がっていく。

 

「…………。」

 

魔人ブウはゆっくりと立ち上がった。

その瞳には憎悪の色がありありと浮かんでいる。

 

その様子を確認したユウキも魔人ブウから距離をとり構えた。

 

二人の間にピリついた空気が流れたその時、魔人ブウが口を開いた。

その声からは先程までの余裕は一切感じられない。

まるで絞り出すような声だった。

その声を聞いたユウキの目が大きく開かれる。

そして、次の瞬間──

 

「あああああああっ!!!」

 

突如として魔人ブウの身体中から煙が立ち上ぼり始めた。

 

「お前なんかに負けてたまるかああああっ!!」

 

(っ!?速い……。)

 

魔人ブウはユウキの身勝手の極意に迫るスピードで襲いかかってきた。

 

しかしユウキもそれに反応してみせた。

 

「はあああっ!!!」

 

二人は互いに右ストレートを放った。

二人の拳がぶつかり合うと同時に衝撃波が広がり周囲の地面を大きく抉っていく。

 

「うおおおっ!!こんなやつにいいいいっ!!」

 

魔人ブウは雄叫びをあげながらさらに力を込める。

 

だが、徐々にユウキに押されていく。

 

「なぜだ!なぜオレが押されるんだああぁっ!!」

 

魔人ブウは必死に抵抗するがそれでも押し返せない。

 

「オレは誰よりも強くなったはずだ!!なのになんでお前みたいな奴にいいいっ!!」

 

魔人ブウは焦燥感を覚えていた。それは自身の強さに対する自信の喪失によるものなのか、それとも単純な恐怖心によるものだったのか。

 

「……終わりだよ。」

 

「!?」

 

ついにユウキの拳は魔人ブウの肉体を貫いた。

 

「がああああああああぁぁぁっ!!!」

 

魔人ブウはその衝撃に耐えきれず吹っ飛ばされていった。

そのまま近くの岩山に衝突しようやく止まることができたものの既に虫の息であった。

 

「……トドメだ。」

 

ユウキが魔人ブウに近付きトドメをさそうとしたその時だった。

 

「……がはっ………!!!!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

突如ユウキが口から血を吐きながら地面に倒れた。

 

「ユウキ!?」

 

「主さま!!どうして……!!」

 

「……身勝手の極意の体への負担だ。く、くそ……あと少しで魔人ブウを倒せたって言うのに……!!」

 

「そんな……!!」

 

悟空達の顔は絶望に染まると同時に魔人ブウの顔には醜悪な笑みが浮かび上がった。

 

「はははは!!……今まで散々こけにしやがって……お前を吸収してやる!!」

 

「がっ……は……こんな……。」

 

ユウキは体をピクリとも動かせないまま魔人ブウに吸収されてしまった。

 

「ユウキくん!!!」

 

「ユウキさん!!!」

 

魔人ブウは容赦なくユウキを吸収し、また一段と気が膨れ上がった。

 

「ははははは!!素晴らしい!!前より更にパワーアップしてしまったぞ!!」

 

「よくもユウキくんを…………!」

 

ペコリーヌ達は怒りに震えていた。

 

「今の私は誰にも止められんぞ?まあいい、この世界にいる全ての人間どもよ!!今から私が皆殺しにしてやる!!逃げても無駄だ!!どこに隠れようと必ず見つけ出して殺してやる!!」

 

こうして魔人ブウはさらなる力を得て復活を果たしたのだった。

 

「畜生……!!こうなったらやぶれかぶれだ!!はああああっ!!!」

 

悟空も残りの気を全て消費し身勝手の極意の『兆し』に変身した。

 

「ゴクウさん!!」

 

「だりゃああああっ!!!」

 

悟空は魔人ブウに向かって行った。

 

「……身勝手の極意と言ったか?……楽しみだ。」

 

「!?」

 

魔人ブウのオーラが銀色に変わる。

 

「これでお前の力がどれ程のものか分かるわけだ。はああぁぁっ!!」

 

「うわっ!!ぐっ……!」

 

次の瞬間、魔人ブウの姿が見えなくなったと思うと悟空の身体は吹っ飛んでいた。

 

(……嘘だろ!?最初から身勝手の極意を使いこなせんるか……!オラはまだ兆しだからこれじゃ勝負にならねぇ……!!)

 

「く、くそ……。」

 

「どうした、もう終わりか?」

 

魔人ブウは再び姿を消した。今度は背後から攻撃がくる。

 

「死ねっ!!」

 

「!?」

 

次の瞬間、魔人ブウの拳は空を切り、逆に悟空の蹴りが魔人ブウの顔面を捉えていた。

 

「……なんだ貴様、まだ動けたのか。」

 

「へへ……。」

 

しかし魔人ブウは余裕そうに笑っていた。

 

「……オラが出来るのはせいぜいブウの攻撃を受け流すことくれぇか……!」

 

「……どうやら身勝手の極意の精度は私の方が上らしいな。貴様に勝ち目などないぞ!!」

 

「くっ……!だけどこのまま引き下がる訳にはいかねえんだ!!だりゃああぁっ!!」

 

「ふんっ!!」

 

「ぐあああっ!!」

 

悟空は再度魔人ブウに攻撃を仕掛けるがまたしても返り討ちに遭ってしまう。

 

その度に悟空の身体は傷つき血を流していった。

 

「はぁ……はぁ……。」

 

「そろそろお別れだな。孫悟空……。」

 

「くっ…………!」

 

「さあ……死ね!!」

 

魔人ブウの攻撃が悟空に迫るその時だった。

 

シュピン

 

「「「「「!?」」」」」

 

突如目の前から悟空の姿が消えた。

 

「……なに?」

 

魔人ブウが後ろを見るとそこには戦闘服を来た男が悟空の目の前に立っていた。

 

「……ようカカロット。それに……顔なじみのお前ら。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「べ、ベジータ!?」

 

ベジータが修行を終え瞬間移動で悟空達の前に現れた。

 

「ベジータさん!!」

 

「ベジータさま!!」

 

「ベジータ……!」

 

戻ってきたベジータにキャル達は顔を上げて喜んだ。

 

「情けねえツラしやがって……身勝手の極意は使い物にならなかったか?」

 

「おめぇ……今のは瞬間移動か!?」

 

「……安心しろ。キサマの特技を奪うつもりは無い。おそらく二度と使えんし今後覚えるつもりもない。オレはこんなものよりも遥かにレベルの高い技を覚えたからな。」

 

「!?」

 

ベジータは自信満々の顔で魔人ブウの前に立った。

 

「久しぶりだな魔人ブウ。相変わらず間抜けなツラだ。弱い者いじめは楽しいか?」

 

「……誰だか知らないがお前は私の事を知っているようだな。だが弱い者か……確かにそうだな。私は強くなりすぎてしまった。私と闘えるヤツが存在しない世界というのは退屈だ。」

 

「じゃあその心配はいらないぞ。」

 

するとベジータは超サイヤ人ブルー進化に変身した。

 

「ほう?」

 

「お前より強いヤツがここに居るからな!」




ベジータは高笑いとグミ撃ちさえしなければ強いからね。


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純粋な破壊衝動

もう100話!?


悟空達のピンチについに修行を終えたベジータがやってきた。

 

「……ベジータと言ったな?随分と自信があるようじゃないか?」

 

「当たり前だ。今更キサマを恐れるとでも思うか?」

 

ユウキまでも吸収し最強となった魔人ブウに対しベジータは一切怯むこと無く強気にでる。

 

「……それよりカカロット。ブラックの野郎はどうした。」

 

当然ベジータはブラックもこの世界に来ていることを知っていた。

 

「……ブラックはオラ達を庇って死んじまった。」

 

「……ちっ。ブラックめ……!」

 

ベジータは吐き捨てるようにセリフ吐いた。

 

「でもよぉ……こいつシャルルっていうんだけどブラックの娘なんだぜ?」

 

「なんだと!?ブラックに娘だと!?」

 

ベジータもシャルルがブラックの娘だということには驚いた。

 

「……えーと……今更ですけどシャルルです。」

 

「……そうか。ブラックのヤツも家族をもっていたのか。」

 

ベジータは自分とブラックの似た最期を悟ったのか気を引き締め1歩魔人ブウに近寄った。

 

「……よお。よくもブラックを殺しやがったな。次はてめぇの番だ。」

 

「ふん。どいつもこいつもくだらん事で……弱いやつは死ぬ。それだけの事だろう?」

 

魔人ブウはニヤリと笑い言葉を返した。

 

「……ベジータ!!魔人ブウはユウキ達を吸収して……身勝手の極意まで使えるようになってんだ……!おめぇ一人じゃ……!」

 

「黙っていろカカロット!吸収されたからなんだと言うのだ!そんなことで今更オレが引くか!」

 

ベジータは気を限界まで高めた。

 

「……行くぞ!魔人ブウ!!」

 

「っ!?」

 

 

次の瞬間、ベジータは一瞬にして魔人ブウの背後に回った。

 

(こいつ……速い!!)

 

「そこだ!!」

 

「ふん!」

 

魔人ブウはベジータの気配を感じ攻撃するも避けられる。

 

「なに!?」

 

「はあっ!!」

 

そしてベジータは逆に魔人ブウの背中に強烈な一撃を浴びせた。

 

ドゴォッ!!

 

「くっ……ふふ……!一撃当てられたことは褒めてやろうベジータ。だがその程度の攻撃がこの私に通用するとでも思っているのか?」

 

「ふっ。そうやってニヤケ面してられるのも今のうちだ。」

 

「!?」

 

次の瞬間、魔人ブウはベジータの動きが速くなった事に気づいた。

 

(な、またスピードが上がった……!?)

 

「はぁっ!!」

 

「ぐっ……!?」

 

そしてまた魔人ブウはベジータの攻撃をくらってしまった。

 

「はぁ……はぁ……どういう事だ!」

 

魔人ブウは必死に応戦するがまるで歯が立たない状態だった。

 

「バカが!いくら速く動こうが所詮は直線的な動きしか出来ん!!それでは避けてくれと言ってるようなものだ!!」

 

「く、くそ……!」

 

「……いい事を教えてやろうか?」

 

「なに?」

 

「オレが強くなったんじゃない。貴様がただ弱くなっただけだ。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

するとベジータと闘っている魔人ブウの異変に悟空達はすぐに気がついた。

 

「悟空さん!!あれ……魔人ブウの体からトランクスさんとターレスさんが……!」

 

「!!」

 

なんと魔人ブウの体からトランクスとターレスが気を失っている状態で出てきた。

 

「……なるほど。トランクスにターレスまでも吸収していたのか。」

 

「がっ……!!ど、どういう事だ!」

 

魔人ブウも知らぬ間に二人が自分の体から抜け出していることに驚いた。

 

「……ベジータ!!おめぇが覚えてきた技ってまさか……!」

 

「……スピリットの強制分離だ。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

ベジータはヤードラットという星でスピリットの強制分離わ習得していた。

そしてベジータはそのまま魔人ブウを攻撃していく。

 

「がああああああああぁぁぁ!!こうなったらお前の攻撃を避ければいいだけだ!!」

 

「ならやってみろよ。」

 

「ぐはあああっ!!!」

 

魔人ブウは身勝手の極意を使おうとするがベジータの攻撃を避けきれない。

 

「バカが。身勝手の精度が落ちているぞ?身勝手の極意は厳しい修行を乗り越えてこそ使える神の技だ。貴様なんぞに使いこなせるはずがないだろう!!」

 

ベジータは一方的に魔人ブウをボコボコにする。

 

「が……ぁ……なんだ……力が……!」

 

「相変わらず悪趣味な野郎だ。ヒットとユウキも吸収してやがったとはな。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

そしてついに魔人ブウの体からヒットとユウキも気を失った状態で出てきた。

 

「や、やった!!二人も出てきました!」

 

「ベジータ……!」

 

魔人ブウは何が起こったのかわからないまま吸収したものを剥がされ通常の姿に戻ってしまった。

 

「……おまえ……なにをした!」

 

「お前が無理やり奪ったスピリット……つまり魂と生命エネルギーを解放しただけだ。」

 

「悟空さま……あれはどういう技なんでしょうか。」

 

「スピリットの強制分離は合体とか吸収とかしたヤツを無理やり剥がしちまう技だ。オラも実際に使ってるとこは初めて見たな……。」

 

悟空は悔しそうに嬉しそうにしながらベジータの闘いを見ていた。

 

「やるなベジータ。そいつはオラが覚えられなかった技だ。」

 

「当たり前だ。同じトレーニングをしたらオレの方が遥かにセンスがいい。今回はオレの勝ちだカカロット。」

 

「……ああ!」

 

そしてベジータはそのまま魔人ブウを殴り続けスピリットを全て剥がし尽くした。

 

「弱いやつは死ぬ……だったか。ためしてみるか?」

 

「っ!!」

 

最後にベジータは魔人ブウの顔を思い切り殴った。

 

ドガァッ!!

 

「が……はっ……!!」

 

魔人ブウは吹き飛びそのまま倒れた。

 

「ぐぐ……ごああああっ……!!」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

すると魔人ブウは唐突に頭を抱えて苦しみ出した。

 

「さ、さっきから魔人ブウの様子がおかしいわよ……!」

 

「どうなってるんですか!?」

 

魔人ブウはずっと何かを叫んでいた。

 

「があああああああ……俺が……俺じゃ……なくなる……!!!」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

魔人ブウの姿はどんどん小さくなっていった。

 

「……………。」

 

そして無口になり静かに目の前を睨んでいた。

 

「あれ?なんだか魔人ブウが小さくなりましたよ?」

 

「……気も結構減ってるし弱体化したって事じゃない!?」

 

「……何か前にもこんな事があったような気がすんぞ……。」

 

キャル達が油断していたその時だった。

 

「ウギャギャオオオッ!!!!」

 

 

 

突然、魔人ブウは叫び声を上げて自身の頭上に禍々しい巨大なエネルギーを溜める。

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「は!?えっ!?ちょっとあいつ何してんのよ!!」

 

「な、なんですかあの巨大なエネルギーは!!」

 

魔人ブウはそのままノールックで突如その巨大なエネルギーを地面に向かって放った。

 

「う、嘘だろ!?おめぇら!!オラに掴まれ!!」

 

「カカロット!!」

 

「悟空さん!?」

 

悟空は全員に手を伸ばした。

だが……

 

「く、くそ……!!気が読めねぇ……これじゃあ何処にも……!!」

 

その時だった。

 

「みんな!!アタシに掴まって!!」

 

「ラビリスタさん!?」

 

悟空達の危機にラビリスタが慌てた様子で駆けつけた。

 

「で、でもユウキ君達が!!」

 

「そうです!!主さまが!!」

 

「皆さんを置いて行くっていうんですか!?」

 

魔人ブウのエネルギーが迫る中、ユウキ達は依然として気絶したままだった。

 

「おい待て!!トランクスもいるんだぞ!!」

 

破滅の迫る世界にトランクス達を置いて逃げるしかない状況でベジータも声をあげる。

 

「くそ……間に合わねぇぇ!!ラビリスタ!!行ってくれ!!今は行くしかねええええ!!!」

 

「……くっ!!」

 

悟空が叫ぶとラビリスタは了承しオブジェクトを変更してとある場所へと避難した。

 

 

 

ドォォォォォォォンッ!!!!!

 

魔人ブウの攻撃によりアストルムは跡形もなく消滅した。




理性のないやつが一番恐ろしい


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全宇宙最後の希望

理性を失った魔人ブウの攻撃によりアストルムは跡形もなく消滅した。

 

ラビリスタはギリギリで悟空達のピンチに駆けつけてとある場所へ避難したが気絶していたユウキ達は魔人ブウの攻撃に巻き込まれて死んでしまった。

 

 

 

 

謎の空間

 

 

 

悟空達が移動したのはラビリスタが作った不思議な空間だった。

 

「……ここは……!」

 

「何処だ!?」

 

気がつくと目の前には長閑な緑色の景色が広がっていた。

 

「皆さん!大丈夫ですか!?」

 

すると一人の少女が走ってきた。

 

「おめぇ……ユリシス!!無事だったんだな!」

 

「それに赤ん坊のシャルルも……!よかった……本当に良かったわ!」

 

ユリシスは予めラビリスタがこっちの世界に避難させていた。

 

「どういう事だカカロット!説明しろ。コイツらは一体何者だ。」

 

「……ユリシスには色々と訳があってな……詳しく説明すると長くなるんだけどよ。なんというかヒットの同業者というか……。」

 

「……同業者だと?」

 

「まあとにかく仲間だ。」

 

「……まあいい。それにしても魔人ブウの野郎……あの世界ごと破壊しやがって……!」

 

ベジータは立ち上がって周りを見渡した。

 

「それにしてもこの場所は……。」

 

「……ここは私が作ったデータの空間さ。簡単に言えば『レジェンドオブアストルム』の次のアップデートで追加予定だったマップさ。」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「そ、そういえばこの世界はゲームの世界でしたね。」

 

「言われてみればそうよね……。今までこっちが現実だと思ってたけど……。」

 

キャル達はゲームの世界ということを思い出した。

 

するとラビリスタは顔を暗くしながら口を開いた。

 

「……いや。……もうこっちが現実なんだ。」

 

「……え?」

 

「どういう事ですか…………!」

 

ラビリスタは衝撃の事実を発言した。

 

「……簡単に言えば……もう君たちは元の世界に帰っている。」

 

「はあっ!?」

 

「よ、よく分からないのですが……!!」

 

コッコロやペコリーヌも困惑していた。

 

「……この世界は完全に孤立している。現実とは切り離されているんだ。現実の世界ではとっくに君たちは元の生活に戻っている。でもそれは君たち本人じゃない。別の君たちだ。」

 

「だ、だからどういう事よ……!!」

 

「……データ状の君たちと現実の君たちの精神は切り離されてそれぞれ生活しているということさ。」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「私たちの精神が別々に違う世界で生活している……!?」

 

「……そう。だからあっちの世界では君たちはエリスを倒した後に目が覚め現実に戻り普通の生活を送っている。エリスを倒した時点で世界が完全に切り離されたんだ。」

 

「……頭がこんがらがって……難しいです……。」

 

「な、なんでそんな事になっちゃったのよ!」

 

「……わからない。だけどまだ問題はあってね。本来なら少年が死んでしまえばそれで世界は元に戻る。だけど今はどうだい?なぜ世界がリセットされないのか……。そしてシャルルちゃんの未来でも少年は死んでしまっているのに世界がリセットされないでいる。おかしいとは思わないかい?」

 

「……オラはさっぱりんかんねぇぞ……。」

 

「……!!……まさか……!」

 

その時シャルルは1つ心当たりのある事に気がついた。

 

「……フューを倒した後に使用されなかった3つ目の願いが…………!?」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「……うん。考えられるとしたらドラゴンボールで何者かがよからぬ願いを叶えたとしか考えられない。例えば『リセットされる条件が変わった』。とかね。」

 

「ドラゴンボールで!?でもよ……アストルムはブウに破壊されちまったしドラゴンボールも無くなっちまったんだろ!?もうアイツらを生き返らせることはできねぇ……!」

 

「……いや、ドラゴンボールはここにある。」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「ええ!?あったんですか!?」

 

「これがドラゴンボール……!」

 

ラビリスタは7つのドラゴンボールを空間から出した。

 

「……実はキャルちゃんからドラゴンレーダーを借りていてね。君たちが魔人ブウと闘っていた時にこっそり集めていたんだ。」

 

「本当か!?そんじゃあ早速これでアストルムを元にもどして……!?」

 

その時だった。

 

シュピン

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「ハハァ〜〜……ッ!!!!」

 

魔人ブウが瞬間移動を使ってラビリスタの作った空間に入り込んだ。

 

「な、なんでアイツがここへ……!!」

 

「あれだけの攻撃で生きてたっていうの!?」

 

「……いくら吸収したやつらを剥がしたとしても覚えた技は使えるみてぇだな……!」

 

「ギャッハッハーッ!!!!」

 

「!?」

 

魔人ブウは予備動作なしでシャルルにエネルギー弾を放った。

 

「え!?」

 

「シャルル!!」

 

「まずい!!避けろ!!」

 

反応が遅れたシャルルにの気弾が迫るその時だった。

 

「波ァ──────ッ!!!!!!」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

突如魔人ブウのエネルギーが逸れてあさっての方向に飛んで行った。

 

「………………。」

 

「…………!?お、お父さん…………!?」

 

シャルルの前に現れたのは死んだ筈のブラックだった。

 

「ブラック!!おめぇ……!」

 

「……ブラック!!」

 

「ゴクウ……!?アンタ…………!」

 

「ゴクウさん!?生きていたんですか!?」

 

突然現れたブラックに全員が驚愕した。

 

「…………占いババという人物に頼んでな。一日だけ生き返らせてもらった。」

 

「そうか!!占いババに頼んだんか!!」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

よく見るとブラックの頭上には天使の輪があった。

 

「…………一日だけ…………なの?」

 

その言葉を聞きキャルは少し悲しそうな顔をする。

 

「……ああ。一日経てばいなくなる。だが私のことは気にするな。お前達が無事ならそれでいい。」

 

「…………ふざけんじゃないわよ!アタシ、あんたの事まだ許してないから。勝手にアタシ達を残して死んで……!!アタシ達の無事よりもっと自分の体の心配しなさいよ!」

 

「…………その事はすまなかった。でもあの時はああするしかなかったんだ……。」

 

「言い訳なんて聞きたくないわよ!!とにかくこの戦いが終わったら説教よ説教!!」

 

「……わ、わかった。」

 

ブラックは了承すると魔人ブウの目の前まで歩いていった。

 

「まてよブラック!!闘う順番をまだ決めてねぇだろ!おめぇ一人だけずりぃぞ!」

 

「じゅ、順番……?」

 

ブラックは悟空の発言に困惑する。

 

「カカロットの言う通りだブラック。闘うのは順番を決めてからだ!」

 

そして3人は集まってジャンケンをした。

 

「「「ジャンケン……」」」

 

その様子をペコリーヌ達は遠くから見ていた。

 

「……アイツらバカなの?」

 

「サイヤ人ですからね……。」

 

「お父さん……。」

 

そして……

 

「「「ポン!!!」」」

 

「……私の勝ちだがこれでいいか。」

 

「クソッタレ!!」

 

「負けちまったか……!!」

 

勝負に勝ったのはブラックだった。

 

「…………孫悟空、ベジータ。私が魔人ブウに勝てないことはわかっている。そして今のお前達は激戦の後で体力を使い果たしまともに戦えない。」

 

「……そんな事はない!オレは……!」

 

「ベジータ。お前もスピリットの強制分離と超サイヤ人ブルーを超えた変身を両方使いながら闘っただろ。気が大幅に減っているぞ。」

 

「……ちっ……。」

 

「そして孫悟空。お前は今立っているのもやっとの状態じゃないのか?残りの気を全て消費し身勝手の極意を使ったんだ。無理に体をうごかすと命に関わる。」

 

「……へへ……バレちまってたか。」

 

「……この中で一番持続力があるとしたら既に死んでいる私だ。だから……お前たちに頼みがある。」

 

「頼みだと?」

 

「……私が魔人ブウをくい止めている間にドラゴンボールで願いを叶えていてくれ。まずは魔人ブウに破壊されてしまったアストルムを元通りにすること……そして次に、バビディの洗脳や魔人ブウの連中によって殺された極悪人を除く全ての人々を生き返らせてくれ。」

 

「…………ブラック。随分人間らしくなったんじゃないか?」

 

「……神はやめたからな。今は一人の人間だ。」

 

「何か考えがあるんか!?」

 

「……孫悟空。お前に以前教えて貰った技があるだろう?」

 

「……!!へへっ……ああ。わかった!」

 

すると悟空はブラックに教えた技を思い出しニヤリと笑った。

 

「ラビリスタ!!今すぐにドラゴンボールで願いを叶える!!準備してくれ!」

 

「…………わかった。すぐに準備しよう。」

 

ラビリスタはドラゴンボール7個を地面に置いた。

 

「ラビリスタ……毎回助けてもらってすまねぇな。後はオラ達が何とかする。ユリシス達を連れて何処かに避難していてくれ。」

 

「……わかった。君たちの無事を祈るよ。」

 

ラビリスタはオブジェクトを変更し皆を連れて避難して行った。

 

そしてブラックが一人で魔人ブウの前に立つと悟空は言葉を投げかける。

 

「……本当にやばくなった時にはオラやベジータと交代だ。絶対に無理すんじゃねえぞ。」

 

「……どうだろうな。1分もつかどうかだ……。」

 

「いいか……。今のおめぇは死んじまってる状態だ。そんな奴がもう一度死んだらどうなるか知ってるか?」

 

「…………。」

 

「消えちまうんだ……。この世からもあの世からもおめぇは存在しなくなる。」

 

「「死ぬなよ……ブラック。」」

 

悟空とベジータは静かに笑うとブラックに託した。

 

「ふっ……よし!!!行くか!!!!」

 

ブラックは超サイヤ人2に変身し全力で魔人ブウへ飛びかかって行った。

 

「アァ〜……イヒィ〜ッ……ギャハァアッ!!!」

 

「はぁああああああああああっ!!!!」

 

魔人ブウとブラックはお互いに走り、同時に本気の拳を突き出した。

 

 




そろそろ新章の準備するか……。


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全力のファイナルバトル

「アァ〜……イヒィ〜ッ……ギャハァアッ!!!」

 

「はぁああああああああああっ!!!!」

 

一日だけ生き返ったブラックと魔人ブウが本気で衝突した。

 

「……いよいよ始まるか。全宇宙の命運を賭けた……最後の闘いが……!!」

 

「……ああ。よし、オラ達も神龍に頼んで皆を生き返らせてやんなきゃな。」

 

ブラックに命運を託した悟空とベジータはユリシス達を避難させドラゴンボールで願いを叶えようとしていた。

 

 

悟空はドラゴンボールを7つ地面に置き、叫んだ。

 

「いでよ神龍!!そして願いを叶えたまえ!」

 

悟空がそう叫ぶと緑色の巨大なドラゴンが目を赤く光らせ姿を現した。

 

『ドラゴンボールを七つ揃えしものよ。お前の願いを3つだけ叶えてやろう。』

 

「神龍!!アストルムの世界が魔人ブウに破壊されちまったから元に戻してくれ!!」

 

『容易いことだ。』

 

神龍が目を光らせると不思議な力で破壊されたアストルムが元に戻った。

 

『1つめの願いは叶えた。さあ次だ。2つ目の願いを言うがいい。』

 

「バビディの洗脳や魔人ブウの連中によって殺された極悪人を除く全ての人々を生き返らせてくれ!」

 

『……わかった。だが少し待ってくれ。数が多いので大変だ。』

 

「な、なんだと!?すぐに出来ないのか!」

 

流石に死んでしまった人数が多く条件もあるため願いを叶えるには時間がかかってしまう。

すると遠くからブラックの声が聞こえてきた。

 

「ぐああああああっ!!!!」

 

「!?ブラック……!!くそ……。だがじきに願いは叶うはずだ。なんとか持ちこたえろ……!」

 

「ギッ!!ウギャギャ!!」

 

魔人ブウはブラックを相手に遊んでいるのかふざけながら闘っていた。

 

「……化け物が。」

 

魔人ブウの攻撃がブラックに襲いかかるその時だった。

 

「「はああっ!!!」」

 

「ギャッ!!!」

 

キャルとシャルルがブラックの前に現れ魔人ブウを蹴り飛ばした。

 

「キャル……シャルル……!避難していたはずじゃ……。」

 

「何が時間稼ぎよ!危なっかしくて見てられないわ!ここは魔法の天才であるアタシに任せなさい。」

 

「……私もせっかく未来から来たのにこのままなにもせずに終わるのはいやですから!」

 

「…………お前たち……。」

 

キャルとシャルルはブラックの変わりに魔人ブウと戦いに行った。

 

そして……

 

『またせたな。二つ目の願いは叶えられた。』

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

するとブラックの頭上にあった天使の輪も無くなった。

 

「や、やった!!お父さんも生き返った!」

 

「ほ、本当!?嬉しいけど今はそれどころじゃないわね……!」

 

「……生き返ったのか……私は。」

 

「ブラック!!よかった!!おめぇ極悪人じゃねえと思われてんぞ!」

 

「………………。」

 

そして破壊されたアストルムの人達も生き返ったことに驚いていた。

 

「あ、あれ?私たち……死んだはずじゃ……?」

 

「どうなってるのかしら……!」

 

 

 

そして吸収されたターレス達も自分の身に何が起こったのか分からなかった。

 

「……!生きてる……!オレは魔人ブウに吸収されたはずだが……!」

 

「…………どういうことだ。」

 

「……僕も……生きてる……?」

 

「俺はターゲットに吸収されたと思っていたが……。」

 

 

そして一度戦闘から離れたブラックはベジータの元に行く。

 

「…………生き返ったのか。皆は……。」

 

「……ああ。それより準備はいいか?はじめるぞ。用意をしろ……。」

 

「……用意?」

 

「元気玉の用意だ!お前も使えるんだろう?」

 

「……ベジータ……!」

 

「……ブラック。お前は何度もこの世界を救っているんだろう?たまにはこの世界の奴らにも責任をとらせるんだ。少しずつ元気を集めるのでは無い。ギリギリまで元気を集めさせて貰うんだ。」

 

「……………。」

 

「おいラビリスタ!!聞いてるか!アストルムの奴ら全員に話がしたい。なんとかしてくれ!」

 

『聞こえてるよ〜!任せて、そういうのは得意分野だから!アストルム中に君の声が届くように設定したからいつでもいいよ!』

 

ラビリスタはとっくにアストルム中に声が聞こえるようにしていた。

するとベジータはアストルムにいる人間全員に話しかけた。

 

『聞こえるか世界の人間ども!オレはあるところからお前たちに話しかけている。』

 

「なんだなんだ!?」

 

「どっかから声が聞こえるぞ!!」

 

最初のうちはベジータの声に驚いていたがそのうち話を聞くようになった。

 

『お前たちは魔人ブウという怪物に殺されたがある不思議な力で生き返らせてもらった。街や家、全てが元通りのはずだ。……だが、こいつは決して夢なんかじゃないぞ!』

 

「確かに建物がなおってる……!」

 

「ああ、瓦礫でぐちゃぐちゃだったのによ……!」

 

『いま、あるところでお前たちに変わって魔人ブウと闘っている戦士がいる!だが、正直言って情勢はかなり悪いと言える。そこで、お前たちの力を借りたい……!!』

 

「だ、誰がそんな化け物と闘ってるんだ?」

 

「そもそも本当かどうか怪しくないか……?」

 

世界の人間の中にはこの事態を怪しみ不審に思う者たちも多かった。

 

『手を空に向けてあげろ!!お前たちの力を集めて魔人ブウを倒すんだ!!かなり疲れるが、思いっきり走った後と同じようなもんだ!さあやれ!手をあげろ!!』

 

ベジータは一通りの事をアストルムの人間たちに説明すると一度ブラックに合図を出した。

 

「よしブラック!はじめろ……!」

 

「……ああ。」

 

ブラックは上着を脱ぐと空に飛び上がり両手をあげた。

 

その様子を見た悟空もアストルムの人間たちに声をかけた。

 

「よーし!おめぇたち!元気を分けてくれ!」

 

悟空の声がアストルムに届きターレス達も手をあげる。

 

「……何を考えてるか分からんがオレの元気を持っていけ!」

 

「この声は悟空さんに父さん!!オレの元気を使ってください!!」

 

「僕のもあげるよ!!絶対に魔人ブウを倒して!」

 

「……この技は孫悟空が力の大会でやった技か……ふん。今回ばかりは力を貸してやる。」

 

ヒットも両手をあげて元気をブラックに送った。

 

ブラックの両手の上に元気が溜まっていく。

 

「お、これはトランクス達の気だ!どうだブラック!!結構きたんじゃねえか?」

 

「…………くっ。」

 

「……だ、だがまだ完全じゃない。な、なぜだ……!」

 

しかしその様子を見ていたベジータはその元気玉が完全じゃないことを知っていた。

するとベジータ達の方にもアストルムの人間達の声が聞こえてきた。

 

『みんな気をつけろ!ほんとに力を吸い取られるらしいぞ!!』

 

『苦しそうだ!!騙されるなよ!!』

 

『だれが、こんな怪しい声の言うことなんか聞くかよ!!』

 

かなりの数の人間が怪しいと思っており中々元気が溜まらない。

 

「ち、ちくしょう……どいつもこいつもオレの言うことなんか信用しやがらない!」

 

そして、魔人ブウと闘っていたキャルとシャルルもボロボロになっていた。

 

「くぅ……どんだけ再生するのよこいつ!!」

 

「…………恐ろしく強いです……。」

 

「ま、まずい……キャルとシャルルは恐らくもう限界だ!オレがなんとかして時間を稼ぐ!!カカロットはなんとかしてアストルムのバカ共を説得しろ!!」

 

「わ、わかった……!!」

 

「待て…………ベジータ……っ。」

 

「!?」

 

すると元気を溜めているブラックがベジータを引き止めた。

 

「……なんだブラック!!」

 

「……強制分離の逆は出来るのか?」

 

「なに!?」

 

「気を集めてシャルルに渡すことは出来るのかと聞いてるんだ……!」

 

「……ああ、できる。原理は同じだからな。だがシャルルに気を渡してどうするつもりだ!」

 

「……トランクスとターレスから気を貰うんだ!シャルルならなれるはずだ……『超サイヤ人ゴッド』にな。」

 

「!?」

 

ブラックの狙いはシャルルを超サイヤ人ゴッドに変身させる事だった。

 

「……!!そうか……キャルとお前の娘なら……潜在能力は計り知れん……!よし分かった……!!」

 

ベジータはターレスとトランクスにテレパシーを送った。

 

『トランクス!ターレス!!お前たちの気を少しだけ分けてくれ!!緊急だ……急げ!』

 

「……父さん……!分かりました!」

 

「……持っていけ!!」

 

ターレスとトランクスの気がベジータの手に渡る。

 

「カカロット!!お前の気も分けろ!少しでいい!」

 

「ああ!オラの気を使ってくれ!!」

 

「……よし、オレの気もくれてやる!!」

 

悟空の気とベジータ自身の気も込めたがここである事に気づいた。

 

「!?だ、駄目だ……!気を注ぐサイヤ人は5人いなければならない!これじゃ4人分の気が集まっただけだ……!!そして今のブラックは身動きが取れん……!!」

 

するとその時だった。

 

「べ、ベジータ!!上を見てみろ!!」

 

「な、なんだ……これは!!」

 

悟空の声に気づき上を見上げるとベジータの頭上に巨大な気が現れた。

 

「……か、神の気だ……!サイヤ人の気でもあるけど……神力を感じるぞ……!」

 

「……神の気だと……!それにサイヤ人!?にしても、とんでもないデカさだぞ……一体誰の……!」

 

その気を送った人物は案外近くにいた。

 

「アゥー……ダー……!」

 

「ん?どうしたのかないきなり手をあげて。あ、そっか。ママとパパと将来の君が闘ってるもんね。応援しなくちゃ。」

 

ラビリスタ達と共に避難していた赤ちゃんの方のシャルルの気だった。

 

こうしてベジータの手の中に5人目のサイヤ人の気が渡った。

 

「……誰の気でもいい……!!受け取れシャルル!!コイツでゴッドになりやがれえっ!!」

 

「……え!?な、なんですかいきなり!」

 

ベジータは手の中に集まった5人のサイヤ人の気をシャルルへと投げた。

 

シャルルの体内に5人のサイヤ人の気が注がれる。そして、シャルルの体の中で何かが燃え上がる熱いものが込み上げてきた。

 

「…………これは。」

 

途端にシャルルの体は青白い光に包まれる。

赤い髪に赤い目。そして真紅に燃えるオーラを身にまといながらシャルルは目を開けた。

 

「シャルル!?その姿……!!」

 

キャルもシャルルの変わりように驚いた。

 

「……これが私…………!?」

 

新たなサイヤ人の神が誕生した。




そういえばキャルには魔法の天才って設定があったきがしたんで。なかったらごめん。
超サイヤ人の過程色々すっ飛ばしてゴッドか。でも正直シャルルは髪の変化が少ないゴッドが似合うと思うんだ。


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時を超えた親子の絆

シャルルは5人の正しい心をもつサイヤ人の気を体内に宿し超サイヤ人ゴッドへと変身した。

 

「……すごい……力がどんどん湧き上がる……!」

 

「……そっか。さすがアタシとゴクウの娘ね!まだまだ時間がかかるようだし……私たちでくいとめるわよ!!」

 

「ウギャギャッ!?」

 

すると魔人ブウは姿の変わったシャルルに襲いかかった。

 

「その動きはみえます……!!」

 

「ギャッ!?」

 

シャルルは魔人ブウの攻撃を片手で防ぐとそのまま蹴り飛ばした。

 

「……私もまだまだですね。こんな世界があるなんて知りませんでした……!」

 

「そりゃあ知らない世界の一つや二つあるわよ。あんたはまだまだ若いんだし尚更ね。さあ行くわよシャルル!!」

 

「はい!」

 

シャルルとキャルは再び魔人ブウをくい止めるために闘っていた。

 

「……今の内だぞカカロット!!」

 

「……ああ!みんな!元気を分けてくれ!!」

 

悟空は再びアストルムの人間に力を分けるように呼びかけた。

 

「……『ザマス』さんったら、大変そうですね〜。じゃあ……私の気をあげちゃいますね☆」

 

「………私も……あげるわ……。大変そうみたいだし……。」

 

「ケッ!誰が協力なんかすっかよ。」

 

「んもー!カリザ君も協力しましょうよ〜!」

 

「ほっほっほ!ランドソルの危機というなら手を貸しましょう。なにせ大きな借りがありますからな。」

 

かつて闘った以外な人物達からの元気が徐々にブラックに集まっていく。だがこれだけではまだまだ足りない。

 

「ブラック!どれくらい集まった!!」

 

「ダ、ダメだ……!ちょっと増えただけだ!」

 

元気玉が完成するには程遠かった。

 

「なんでだ!!なんで、みんな分かってくれねぇんだよ!!はやくしてくれ!!みんなーーーーーーーーっ!!」

 

悟空が必死に呼びかけるも一向に元気は溜まらない。

 

「この世界も宇宙もどうなってもいいのか!?バッキャローーーーーーーーーッ!!!!」

 

悟空の言葉にアストルムの人間達はますます協力することをやめていた。

 

「なんだと!?バカヤローだと?」

 

「人に頼むのにデカい態度だぜ。」

 

「あんなの無視無視。」

 

誰もがバカバカしいと思い手を貸さない。

 

その時だった。

 

「悟空さん!私と変わってくれませんか?」

 

「ペコリーヌ……おめぇ……よし、わかった!」

 

名乗り出たのはペコリーヌだった。

そしてペコリーヌは顔を引き締めてアストルムの人間に呼びかけた。

 

『……皆さん。私は「ユースティアナ・フォン・アストライア」です。どうかお願いします。力を貸してください!』

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

この呼びかけに人々はざわめき出した。

 

「ユースティアナ様!?」

 

「もしかして……魔人ブウと戦っているのはユースティアナ様なんですか!?」

 

『…………今、私の友達のキャルちゃんと、その娘のシャルルちゃんが時間稼ぎの為に闘ってくれています。いつまでもつか分かりません。皆さん、偽物のユースティアナ陛下が現れた時に助けてくれた一人の男性を覚えていますか?私たちの為に闘ってくれたあの人……「ゴクウさん」です。ゴクウさんは今も皆からの力を待っているんです。どうか……協力をお願いします!』

 

ペコリーヌのスピーチはアストルム全体に響き渡り、人々はあの日の出来事を思い出した。

 

「……この声。ペコリーヌさんだわ……!」

 

水色髪のドラゴン族の少女もペコリーヌの声を懐かしく思い、空に手をかざした。

 

 

そしてランドソルでは2人の男がみんなを説得していた。

 

「おまえら!!ペコ姉さんとキャル姉さん達に恩を受けた事を忘れたのか!!さっさと手をあげんか!!」

 

「ゴクウが俺たちの為に戦ってたところをこの目でしっかりとみただろ!?今度は俺たちが手を貸す番だろ!!」

 

ペコリーヌ達が最初にからんだ街の住人のイカッチとチャーリーだった。

 

「……そうだ。あの時にいたあの男!急にいなくなっちまったから忘れてたけど……確かにみたぞ!俺、助けられた!」

 

「私もだわ……!」

 

「攻撃から私達を守ってくれていた!!」

 

全てを思い出した人々は一斉に空に向かって手をあげる。

そしてすごい量の気が空に向かって飛んで行った。

 

「ペコリーヌ!おめぇすげぇ奴だったんだな!」

 

「いえ、ただ私に出来るのはこのくらいですから。」

 

一方でキャルとシャルルは未だに魔人ブウをくい止めていた。

 

だが……

 

「きゃぁあっ……!!!」

 

「ママ……!!ぐっああああっ……!」

 

キャルは既に体がボロボロ、シャルルも限界を超えて闘っていたため既に倒れていてもおかしくはない状況だった。

 

「ウギャ!!ギィーーーッ!!」

 

ブラックはキャルとシャルルがどんどん魔人ブウに押されて行くことを見ていることしか出来なかった。

 

「くっ……こらえろ!なんとか堪えてくれキャル……シャルル!……っ!?」

 

すると突如ブラックの感覚が研ぎ澄まされ上に十分に溜まったエネルギーが完成したことを感じ取った。

 

「きっ……きたっ!!!」

 

遂に元気玉が完成した。

 

「ギッ!?ィイイイイイッ!!」

 

魔人ブウも元気玉の存在に気づき表情を変えた。

 

「完成……した……のね。」

 

「お父さん………!」

 

キャルはシャルルよりも怪我の状態が酷く既に意識を失いそうなほどやられていたがブラックの完成した元気玉をみて少し微笑んだ。

 

だが……

 

「イイイイィッ!!ギャッハ〜ッ!!」

 

「「!?」」

 

肝心のブラックが無防備状態な為魔人ブウはエネルギーを溜めてブラックに放った。

 

「くっ……!」

 

シュピン

 

「ギィーーーッ!?」

 

ブラックの体にエネルギーが命中する瞬間、ブラックは上空に元気玉のエネルギーを残したまま魔人ブウの背後に瞬間移動した。

 

「はあっ!!」

 

「ウギャギャオオオッ!!」

 

ブラックと魔人ブウの攻撃が衝突し、お互いに距離をとる。

 

「シャルル!まだ動けるか……!」

 

「……もちろんです!」

 

「……いいか?もしもの時だ。魔人ブウに隙を作らせたとしても元気玉で消滅するとは限らない。だから……今のうちに目いっぱいの気を溜めていてくれ。元気玉と一緒にお前の力を解き放つんだ……!」

 

「……え?でもお父さんは今から何をするつもりなんですか!」

 

「……オレがなんとか魔人ブウに隙を作る。いいな?」

 

「……っ!はい…………!」

 

ブラックはそれだけを伝えると気を溜め始めるシャルルを見て魔人ブウへ向かっていった。

 

「魔人ブウ!!貴様の相手はこの私だ!!」

 

「ギャッハ〜ッ!!!!」

 

ブラックは超サイヤ人になる力も無く、通常の状態で魔人ブウと闘う。

 

「くっ……なんという速く重い一撃だ……!」

 

「ヤッハァアアッ!!」

 

「がぁっ……は……!!」

 

ブラックは魔人ブウの隙を作るためにわざと攻撃を受けながら反撃の機会を待つ。

 

「ウギャギャオオオッ!!」

 

「ぐぁああっ!!!」

 

しかし一撃一撃が重くブラックがそれらを全て耐え切るのは困難だった。間もなくしてブラックの左肩の関節が魔人ブウの攻撃によって外れた。

 

「くっ……うあああっ!!」

 

「おい!ブラックのやつ……死んじまうだろ!」

 

「だが……今のオレたちは身体が全く動かん……今はブラックの時間稼ぎを信じるしかない……!」

 

「お父さん!!」

 

シャルルはやられるブラックを見て助けに行こうとしたが……

 

「まて……!まだだ……!」

 

「で、でも……!!」

 

「落ち着け……私はこの程度では死なない……。」

 

ブラックは無理やり笑うと再び魔人ブウに攻撃をする。

 

「ギャギャギャァッ!!!!」

 

「あ……ぁ……かはっ…………。」

 

魔人ブウの蹴りがブラックの腹を捉える。

 

「もう少し…………!!」

 

シャルルの気は徐々に溜まって言ったが魔人ブウを消滅させる程には溜まってはいなかった。

 

「……かならず……とめてみせる……。」

 

ブラックは執念で何度も立ち上がり魔人ブウに立ち向かった。

 

だが……

 

「ウギャギャアアッ!!」

 

魔人ブウはブラックを都合のいいサンドバックかのように攻撃し続ける。

 

「ぁ……ああ……。」

 

シャルルはそれを呆然と見ていることしか出来なかった。

 

「……………………ぁ…………ぁ。」

 

ブラックはもう声を出すことすらままならなくなっていた。

 

「イヒ〜ッ……!」

 

そして、魔人ブウはブラックの首を掴んだ。

 

「や、やめて…………!」

 

魔人ブウの片手にはエネルギーが溜まっている。

 

「ギャッハ〜ッ!!」

 

「!?」

 

そしてそのエネルギーはブラックに直撃し、その場に倒れピクリとも動かなくなった。

 

「「ブラックッ!!!!!」」

 

「…………………………。」

 

ブラックの身体が力なく地面に倒れる瞬間、シャルルの中の何かが切れた音がした。

 

「くっ……うぅ……うわあああああ──────っ!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

突如、シャルルの気が爆発したかのような閃光に包まれた。

 

その気はまるで魔人ブウがユウキを吸収して膨れ上がった時のものと同様、いや……それすらもちっぽけに感じるほどの量の気がシャルルから溢れていた。

 

「イィイーーーーッ!?」

 

魔人ブウはシャルルのその気を感じ取った。

 

「……………………。」

 

そして閃光のような眩しい気がおさまると、そこには薔薇色のオーラを纏った人物が佇んでいた。

 

「…………裁きの時です。」

 

「ギャッ!??」

 

シャルルはポツリと呟くと圧倒的なスピードで魔人ブウの背後へと回り込み鋭い槍のような蹴りをあびせた。

 

「ウギャアァァッ!???」

 

魔人ブウはシャルルの蹴りによって吹き飛び岩山へ激しく衝突した。

 

「…………この程度ですか?」

 

シャルルは瓦礫の上に立ち、魔人ブウを見てニヤりと笑った。

そしてこの攻撃により魔人ブウに大きな隙ができた。

 

「シャ……シャルル…………!」

 

「!!」

 

倒れていたキャルが立ち上がり慢心しそうなシャルルを我にかえらせた。

 

そして、ブラックに言われた通りに全力で気を一点に溜めていった。

 

「……よくやったぞ。シャルル……!」

 

「!!」

 

そしてシャルルが上を見上げると既にブラックは元気玉の下でスタンバイしていた。

 

「……お前が作った隙……無駄にはしない!」

 

ブラックは完成した元気玉を魔人ブウへと放った。

 

「ギッ……!!ギィィィィッ!?」

 

魔人ブウは迫り来る巨大な元気玉を全力で受け止める。

 

「ガガガガガ……ガァアッ!!」

 

「なに……!?」

 

だが魔人ブウは押されるどころか逆に元気玉を押し返していた。

 

「くそ……力が……入らない……!」

 

魔人ブウに左肩を壊されたブラックは片手で元気玉を抑え込むしか無かった。

 

「……何弱気になってんのよ!!」

 

「キャル……!?」

 

キャルがブラックの隣で元気玉を押さえ込んだ。

 

「………私たちに出来ないことはないわ!」

 

キャルも加わった事により更に元気玉を魔人ブウに押し返す。

 

「ギィィイイイイイッ!!!!」

 

「……………!」

 

その後ろではシャルルが気を溜めていた。

シャルルを中心に巨大な魔法陣が展開され、赤と白の電光のような気が集まっていく。

 

「……今よ……シャルル!!」

 

「シャルル………撃てえっ!!!!」

 

キャルとブラックがシャルルに合図を出す。

 

シャルルの周りを走っていた気はシャルルの右手に集中していく。

 

 

 

神裂断罪グリムバーストッッ!!!!!

 

 

 

空気を震わせるほどの声と共にシャルルの恐ろしく練り上げられた魔力が魔人ブウ目掛けて放たれた。

 

「ァッ!!ガァアァァァアッ!!!!」

 

シャルルの技と元気玉が合わさり魔人ブウの身体を細胞の隅々まで抉っていく。

 

「「「「「行けえぇぇえっっ!!!」」」」」

 

 

「ゴ……ゴガ……ガァァァァ…………。」

 

その威力はラビリスタの作った空間を突き破り宇宙の彼方へと飛んで行き爆発した。

 

 

「…………はぁ、はぁ……ふっ。」

 

「……やっと……終わったのね……ん。」

 

キャルとブラックはお互いに笑うとグータッチし地上へと降りた。

 

「ママ!!お父さん……!!」

 

そしてシャルルの髪も黒に戻りキャルとブラックに駆け寄り抱きついた。

 

「……やったじゃないシャルル!!」

 

「ああ……よくやったな。」

 

その様子を見て悟空やベジータも安心して笑った。

 

「………アイツらすげぇな。本当に魔人ブウをやっつけちまいやがった。」

 

「……ふっ。」

 

「……凄かったですね。ゴクウさん達……!」

 

「はい……!シャルルさまはやはりお二人の力を受け継いでおりました……。」

 

ペコリーヌ達も空気を読み暫く仲良さそうにするキャル達を見守っていた。

 

 

 

 

 

 




シャルルはロゼも似合うと思うんだ。ギャップ萌えで……
それにしてもかなり長かったこの章も次回で終わりですよ……


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いつかまた逢う未来で

「ママ!!お父さん……!!」

 

そしてシャルルの髪も黒に戻りキャルとブラックに駆け寄った。

 

「……やったじゃないシャルル!!」

 

「ああ……お前のおかげだ。」

 

その様子を見て悟空やベジータも安心して笑った。

 

「………アイツらすげぇな。本当に魔人ブウをやっつけちまいやがった。」

 

「……ふっ。」

 

 

 

 

 

 

皆の気が集まった元気玉とシャルルの渾身の技により見事、魔人ブウを倒すことに成功した。

 

 

「……やれやれ、手間取りやがって……。」

 

「でも……よかったな。無事に倒すことができてよ。」

 

悟空とベジータはブラック達を見て微笑んだ。

 

「……もう!お父さんもママも無茶しすぎ!」

 

「はは……確かにそうかもな……。」

 

「私も今回ばかりはハリキリ過ぎたわ……。」

 

ブラック達はお互いに労っていた。

 

「……嬉しそうな顔しやがって……ほんとムカつくやろうだ……。」

 

「……へへ。」

 

するとペコリーヌがアストルムに向けて魔人ブウを倒したことを報告した。

 

『皆さん……!魔人ブウは……皆さんの協力もあって無事に倒すことができました!もう安心しても大丈夫です……!!』

 

 

「「「「うおおおおおおっ!!!!!」」」」

 

ペコリーヌの声が届くと全員が大きな歓声をあげた。

 

「……これで、やっと終わりました。」

 

そして、避難していたラビリスタ達も戻ってくる。

 

「やあ、お疲れ様!君たちは英雄だ……!」

 

「皆さん酷い怪我……!今治しますね?」

 

ユリシスはボロボロの状態のブラック達に手をかざす。

 

「え?……傷が……!」

 

「治った…………?」

 

全員の傷が一瞬で完治した。

 

「……皆さんの体の状態を元に戻しました。傷はどこにもないはずです。」

 

「ユリシスちゃん……そんなことできたの!?」

 

「へぇ〜すげぇなユリシス!おめぇデンデみたいだな!」

 

「で、デンデ……?」

 

とにかくユリシスが皆の傷を治したことで元気になった。

すると後ろからとても低い声が聞こえてきた。

 

『……いつまで待たせるつもりだ。早く3つ目の願いを言え。』

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「そ、そうだった!!3つ目の願いがまだ残ってた……!!」

 

「でも……あと叶えてもらう願いって……。」

 

「じゃあ……シャルル。お前の好きな願いを叶えろ。」

 

「わ、私ですか……!?」

 

ブラックの提案にシャルルは戸惑うが覚悟を決めると願いを言った。

 

「……………未来でまた……皆さんと逢えますように。」

 

シャルルの叶えたい願いはただ一つ。もう一度未来でみんなと会うことだった。

 

「……シャルル。」

 

「シャルルさま……。」

 

未来の世界はダーブラ達によって破壊され、正に絶望の未来だった。咄嗟にそんな言葉がシャルルの口から出た。

 

『…………わかった。いずれ、未来で出会うだろう。願いは叶えてやった。ではさらばだ。』

 

神龍は光となって消えていき7つのドラゴンボールがまた散っていった。

 

「……きっと会えますよ。シャルルちゃん。」

 

「……はい。」

 

「……さあ、ランドソルへもどろう。」

 

 

こうしてついにブラック達はランドソルへと帰ってきた。

 

シュピン

 

「よう!」

 

悟空と共に皆が一斉にトランクス達の前に瞬間移動で帰ってきた。

 

「悟空さん!父さん!!それに……ブラック!生き返ったんだな!」

 

「随分手こずったらしいじゃねえか。」

 

「師匠……それに……ご、ゴクウ……!!」

 

トランクス達は仲間たちとの再開を喜びあった。

 

「あり?ヒットはどうした?」

 

「元気を渡したあとに帰った。後はお前たちに任せると言ってな。」

 

「そっかあ!まっ、その内また会えるさ。」

 

皆は再開を喜びあった後、トランクスはベジータと共に修行のため元の世界へと帰って行った。

 

 

そして次の日。

 

 

残された者達は……

 

「悟空さんとターレスさんはまだ元の世界には帰らなくて大丈夫なんですか?」

 

「ああ……!まだまだこっちの世界にもすんげぇ奴がいると思うとワクワクすっからな……!それに、居心地がいいし暫くはここで暮らすのも悪くねえな!」

 

「俺も元の世界よりこっちの世界のほうが興味があるからな。」

 

悟空とターレスはまだこの世界に残るようだ。

 

一方でシャルル達は……

 

「ユリシスちゃん……こっちの世界の私とも仲良くしてね。」

 

「……うん。まさかシャルルちゃんが未来から来たなんてビックリだけど……私はずっとシャルルちゃんとお友達だよ。」

 

ユリシスは赤ちゃんの方のシャルルを抱っこしながら未来から来たシャルルとの別れを惜しむ。

 

「……シャルルさま。どうかお元気で。」

 

「はい!コッコロさんも!」

 

「……未来でも頑張って!」

 

「はい……!ユウキさんもお元気で!」

 

「……シャルル。本当に未来に帰っちゃうの?シャルルがよければずっとここに居てもいいのよ?」

 

「…………ありがとうママ。でも私はやっぱり未来に帰りたいんです。早くこの事を未来のママに報告したいですし。」

 

「…………そうか。」

 

ブラックも少し寂しそうな顔をしていた。

 

「……この時の指輪……多分これで未来に帰ったらこっちの世界には来られません。無理やり過去に来たことで指輪にヒビが入っているんです。だから……ずっとお別れですね……。」

 

シャルルもまた寂しそうに顔を俯かせた。

 

「……シャルル、受け取れ。」

 

「え……?」

 

ブラックがシャルルに投げたのは新しい時の指輪だった。

 

「これ…………!」

 

「……私の時の指輪だ。…………また何かあったらいつでも戻ってこい。お前は……家族なんだからな。」

 

ブラックはそう言って笑った。

 

「………………うん!!」

 

シャルルも目に涙を浮かべながら強く頷いた。

 

「……寂しくなるわね……って!?」

 

「なっ!?」

 

するとシャルルは勢いよくブラックとキャルに抱きついた。

 

「……会えてよかったよ……ママ……。」

 

「……私もよシャルル。未来でも元気でね。」

 

キャルも優しくシャルルを抱きしめた。

そしてシャルルはブラックの方を見る。

 

「………今度ママを泣かすようなことしたら『ぶっ殺す』からね!」

 

「……!!ふっ……全く誰に似たんだか……。」

 

その様子を見ていたペコリーヌ達も自然と笑みが零れる。

 

「……やっぱり親子ですね。」

 

「はい。まるで昔のキャルさまを見ているような気分になりますね。」

 

シャルルはブラックとキャルから離れると時の指輪で時空を開く。

 

「…………またねママ。あと……………『パパ』。」

 

「パ…………!?」

 

シャルルは顔を真っ赤にしながら動揺するブラックの方を見ると未来へと帰って行った。

 

「『パパ』ですって!よかったじゃない?」

 

キャルはニヤニヤしながらブラックの方を見る。

 

「…………パパか…………。」

 

ブラックは満更でもなさそうな顔をする。

 

「おいブラック!そんなことよりオラと修行しようぜ!また強え奴が来た時の為に特訓だ!」

 

「特訓ですって…………?またあんた危険な目に合うつもり?」

 

「ちょっ!……孫悟空!!」

 

その言葉を聞いたキャルは一気にブラックを睨みつける。

 

「お前……余計なことを言いやがって!私がキャル達を残して自爆して死んでしまったことをまだ許してもらってないんだぞ!?」

 

「そ、そうだったんか!?」

 

「そ、そうだキャル……!シャルルのおむつをかえてやろう!ミルクも私が作ってやる!」

 

ブラックはその日一日キャルの機嫌をそこねないように過ごした。

 

 

 

 

未来世界

 

 

 

 

「ただいまママ!!」

 

「シャルル!!お帰りなさい!」

 

帰ってきたシャルルをキャルが快く出迎える。

 

「やったよママ!!ついに魔人を倒したの!」

 

「ほ、本当!?もう魔人は現れないの!?」

 

「うん……!!」

 

キャルが喜んだその時だった。

 

 

\ピンポーン/

 

誰かがインターホンを鳴らす音がした。

 

「はーい…………っ!?」

 

キャルがドアを開けるとそこに居たのは……

 

「おいっすー!!なんだか物凄い間寝ていたような不思議な気分ですけどキャルちゃん達に会いに来ちゃいました!!って、なんだかかなり大人になりましたねキャルちゃん。雰囲気がかなり変わりました!」

 

「わたくしもかなりの間眠っていたような気がしますが……キャルさまの様子を伺いに来ました。おや?キャルさまが素敵な女性に……。」

 

「僕はシャルルと特訓しようと思ってね。ってキャル!?なんだか見違えたね……!」

 

魔人に殺されてしまったハズの3人がキャルの元にやってきた。

 

「あ、あんた達…………生きて…………っ?」

 

「ペコリーヌさんにコッコロさんにユウキさん!?」

 

シャルルのドラゴンボールで叶えた願いの影響で皆が生き返っていた。

 

「な、なによ…………!!あんた達が……殺されちゃうから……アタシだけ年取っちゃってさ……!」

 

キャルは手を震わせながら3人に駆け寄る。

 

「うわあああああんっ!!!!」

 

「「「!!!」」」

 

そして全力でペコリーヌ達を抱きしめた。

 

「キャルちゃん!?どうして泣いてるんですか?」

 

「ああ……キャルさま……!」

 

「キャル!?」

 

ペコリーヌ達は驚きながらもキャルを優しく受け止めた。

 

「……なんだかごめんなさいキャルちゃん。でも、私たちはずっとキャルちゃんの味方ですから……。」

 

「当たり前でしょ!!今度勝手に死んだら許さないから……!!」

 

シャルルも暖かい目でキャル達を見ていた。

 

「……久しぶりに見たな。ママの泣いた顔。……お父さんは病気で死んじゃったから生き返らないけど……また、いつか過去のお父さんに会いに行こうね。ママ……!」

 

 

 

 

 

第七章[完]




ハッピーエンドなのかな?
とりあえず……ちょっと休んでいいすか?


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第八章 暗黒の共鳴編
取り戻した平和


史上最悪の敵、魔人ブウの復活によりアストルムは絶体絶命の危機に見舞われた。

魔人ブウに立ち向かうキャルと未来から来たシャルル。悟空とベジータの助けやペコリーヌの呼びかけにより元気を集めたゴクウブラックの超元気玉とシャルルの渾身の一撃でついに魔人ブウを倒した。

 

あれから3年の月日が流れた。

 

 

 

 

「………これは違う……これも違う……。」

 

ブラックは机の上で花の種類を見ながら独り言を呟く。

 

「……お花の研究ですか?」

 

「ああ。今度の会議にまで資料を作らなきゃ行けないからな。」

 

ユリシスはブラックの机の上に静かに紅茶を置く。

未来のシャルルが帰ったあと、ユリシスは美食殿の専属メイドとして家事の手伝いをしている。

 

「……あまり無理はされないでくださいね?キャルさんが心配してしまいます。」

 

「気をつけるさ。」

 

するとシャルルがブラックの服をつんつんと引っ張った。

 

「ねぇねぇパパー。あそんでー!ターレスおじさんもう寝ちゃったー!」

 

「ん?シャルル……また勝手にパパの部屋に入ってきたな……ってあっ……!まて、メガネをもってくな!」

 

「わー!!逃げろー!!」

 

「ははっ。逃がさないぞ?」

 

「ふふっ。シャルルちゃんったら。」

 

ユリシスもブラックとシャルルの追いかけっこを微笑みながら見ていた。

 

魔人ブウとの戦いから3年が経ちシャルルも成長した。そしてブラックの性格も大分丸くなり、服装も一般の人が着るような私服を着こなしすっかり馴染んでいた。

 

「ほらつかまえたぞシャルル!」

 

「きゃあ!たかいたかーい!!」

 

ブラックはシャルルを両手で上に持ち上げる。

 

「ねぇねぇ!パパって闘ったりしないの?」

 

「闘いか……。もうこの世界の危機は去ったからな。闘わなくても大丈夫だ。」

 

ブラックは魔人ブウを倒した後、子育てに専念するため闘うことをやめていた。

 

「ふーん。ターレスおじさんやユウキさんは今でも修行してるのになんだかもったいないね。」

 

「まあ確かにそれもあるが……一番はキャルに叱られるからだな。」

 

「ママはなんでパパが闘うことを嫌ってるの?」

 

「……3年ほど前に色々とあってな……。」

 

キャルはブラックが3年前に魔人ブウとの闘いで命を落としてから闘わせることが嫌になったらしい。

 

「でもパパが闘ってるところ見たいなー!」

 

「闘ってるとこ?うーん……仕方ないな。ユリシス。ここから少しは離れた森に行ってくる。」

 

「はい。お気をつけて。」

 

ブラックはシャルルを抱きながら外に出た。

 

「……まあたまには運動がてら体を動かさないとな。座りっぱなしだと色々と疲れる。……はっ!!」

 

ブラックは気を解放するとそのまま修行を始める。

 

「…………うーん……やっぱり体力落ちたな。」

 

「ねぇねぇパパ。アレ見せてー!!」

 

「アレか……よしっ!」

 

ブラックは袖を捲り超サイヤ人に変身した。

 

「パパすごーい!!その姿かっこいい!!」

 

シャルルは超サイヤ人の姿を見てはしゃぐ。

 

「はは。超サイヤ人になるのはママには内緒だぞ?ママは闘いが嫌いだからな。」

 

「うん!」

 

「かなり久しぶりに変身したから力加減が難しいな……。まあ少しずつ慣らせばいいか。」

 

ブラックはそのまま敵と闘うシュミレーションをしながら攻撃を繰り出す。

 

「すごい!!シャルルもやりたい!」

 

「シャルルにはまだ少しはやいな。もう少しターレスに基礎を教わってからだ。」

 

「えぇ〜!むぅ〜……!!」

 

シャルルは頬を膨らませてブラックを睨みつける。

そんなシャルルを横目にブラックは空を見上げた。

 

「……本当は孫悟空達と修行がしたいんだがな。これから仕事は忙しくなるしキャルには迷惑かけられない。それに今は平和かも知れないがいつ魔人ブウのような敵がくるかもわからない。だから……たまにこうして仕事の息抜きに修行をするのは悪くない。」

 

「……パパなに言ってるかぜんぜん分からない。」

 

「ははっ。シャルルにはすこし難しかったか。帰りに何かランドソルでお菓子でも買っていくか?」

 

「……うん!」

 

ブラックとシャルルは手を繋ぎランドソルの街まで歩いてきた。

相変わらず街は沢山の人で賑わっている。

 

「私クレープ食べたい!」

 

「クレープ?それなら丁度いい店があるな。」

 

ブラックはシャルルを連れてとあるクレープ屋の屋台へと足を運んだ。

 

「よう、ラビリスタ。繁盛しているか?」

 

「あっれー!?ゴクウ久しぶりだねー!まあ繁盛してると言えばしてる方なのかな?ってあれ!?その子もしかしてシャルルちゃん!?大きくなったね。今は何歳かな?」

 

「いまは……3さい!!」

 

ラビリスタはシャルルの姿を見て嬉しそうに話した。

 

「そっかそっか3歳かぁ!!時が流れるのは早いね。それにしてもゴクウもすっかり馴染んだね。その格好似合ってるよ。」

 

「まあな。それよりクレープをくれ。いちごクレープを3つだ。」

 

ブラックはルピをラビリスタに渡した。

 

「はいよー!!待っててね。今から作るから!」

 

ラビリスタは慣れた手つきでクレープを作り始めた。

 

「はいおまたせ!いちごクレープ3つ!!シャルルちゃんのクレープにいちご少しオマケしとくね。」

 

ラビリスタはシャルルにクレープを手渡しブラックにクレープを2つ手渡した。

 

「わぁ!ありがとう!!」

 

「ありがとなラビリスタ。また来る。」

 

「うんうん!また来てねー!!」

 

ブラックとシャルルはラビリスタの屋台から離れた。

 

「さ、そこのベンチに座ろう。」

 

ブラックはシャルルを連れベンチに腰を下ろした。

 

「パパ?なんでクレープ3つも頼んだの?」

 

「ん?ああ、それは。」

 

すると……

 

「あら?珍しいじゃない!シャルルとゴクウが一緒なんて!」

 

「キャル。買い物は終わったのか?」

 

「ええ。今日はお肉が安かったの!」

 

「ママだぁー!!」

 

キャルは買い物袋を持ちながらブラックとシャルルの所へ歩いてくる。

 

「お前も食べるだろ?クレープ。」

 

「ゴクウにしては気が利くじゃない!ありがたくいただくわ。」

 

キャルもベンチに座り3人並んでクレープを食べる。

 

「おいしー!!」

 

「シャルル。口にクリームいっぱいついてるわよ?……それにしても、こうやって家族揃って過ごすのも久しぶりねー。ゴクウは中々仕事の休みがないんでしょ?」

 

「……シャルル。おでこにクリームついてるぞ?そうだな……仕事は大変で休みもあんまりとれないが……それと、私は来月あたりに仕事で出張だ。こうやって過ごす日も当分は出来ないかもなあ。」

 

「……出張?それって何処にいくの?」

 

「出張先は……『ジオ・テオゴニア』というところらしい。最近発見された場所らしく、そこに咲く花を調べに行くんだ。」

 

「へぇ〜そんな所あったのね……またしばらく会えないのは寂しいけど頑張ってよね。」

 

「ああ。」

 

そんな話をしながら3人はクレープを食べ終わった。

 

「ふぅ、ごちそうさま。帰りましょうか。」

 

「さ、家に戻るか。ん?どうしたシャルル?」

 

シャルルはキャルとブラックに手を伸ばした。

 

「手を繋ぎながら帰りたい!」

 

「……仕方ないな。」

 

「でも、たまには悪くないんじゃない?」

 

ブラックとキャルはそれぞれシャルルと手を繋いだ。

 

「……えへ。ママとパパの手、暖かい。」

 

3人は手を繋ぎながらギルドハウスへと戻る。

 

「そういえばもうすぐペコリーヌの赤ちゃんが産まれそうって言ってたわね。今度会いに行きましょ?」

 

「……そういえばユウキからもそんな話を聞いていたような……ま、そうだな。今度行くか。」

 

「行くー!!」

 

キャル達は楽しそうに会話をしながらギルドハウスへと戻って行った。




「ごめんなさいユイさん☆」


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悟空VS悟空!時空を守るタイムパトロール

「……ようやく私がこの世界……いや、この宇宙を統べる時がきた。ふふふ………あっははははは!!!……『ユリシス』はまだ生きている。あの最高傑作さえ私の手に再び戻れば更に私を完璧にしてくれる……!!」

 

一人の男が高らかに笑うと、謎の黒い箱を取り出した。

 

「蘇れ……数多の世界の邪悪なもの達よ!」

 

 

男は謎の箱を高く掲げるとその箱から黒い塊が四方八方に散っていった。

 

 

 

ギルドハウスへの帰り道

 

 

ブラック達がギルドハウスへと帰る途中……

 

 

「…………っ!キャル、シャルル……。少し下がっていてくれ。」

 

「え……?」

 

「パパ……?」

 

ブラックは後方から奇妙な気を感じ取った。

 

「……な、なんだこの気は……!!何かが向かってくる……!!」

 

謎の気はどんどん近づいてくる。

 

 

「…………。」

 

 

そして現れたのは全く予想外な人物だった。

 

 

「孫……悟空?」

 

「悟空……よね?服装がなんか違うけど……。」

 

「誰ー?」

 

ブラック達の前に現れたのは紛れもなく孫悟空だった。しかし、服装は赤いロングコートのようなものを着ており、背中には如意棒が背負ってあった。

 

「……見つけたぞ。」

 

「っ!?」

 

その悟空はブラックを見ると突然見たことの無い変身をし、ブラックに襲いかかった。

 

「くっ……!!」

 

ブラックは悟空の拳に合わせるように自分の拳をぶつけた。

 

「………その変身……いつの時代の孫悟空だ?」

 

「……………オレはお前を捕まえにきた。」

 

「タイムパトロールか……!?」

 

すると悟空はブラックの拳を逸らしそのまま数発の攻撃をブラックに叩き込んだ。

 

「くっ……!」

 

「ゴクウ!!」

 

「パパ!!」

 

防戦一方のブラックにキャル達が近寄る。

その時だった。

 

「だりゃあああっ!!!!」

 

「!?」

 

もう一人の悟空がブラックと悟空の間に入り攻撃を阻止した。

 

「……孫悟空……!」

 

「大丈夫かブラック!!」

 

「……ああ。」

 

「キャルとシャルルも下がってろ!危ねぇぞ!」

 

「え、えぇ。」

 

悟空はブラック達の安全を確認すると超サイヤ人ブルーに変身した。

 

「………そうか。お前、あっちのオレか。」

 

「あっちのオラ……??」

 

「……奴らの仲間か!!」

 

そして悟空と悟空の闘いが始まった。

 

「……何が起こってるの?なんであたし達の目の前で悟空と悟空が闘ってるの!?」

 

「……ふしぎだね。」

 

「………あの孫悟空……別の時空からやって来たのか……!」

 

ブラック達ももう片方の悟空の事が気になっていた。

 

「へへ……おめぇ中々やるなぁ!」

 

「……お前の方こそ。」

 

両方悟空である為楽しみながら戦っていた。

しばらくすると、悟空と悟空はお互いに距離をとった。

 

「……あっちのオラってどういう事だ。」

 

「……オレはお前達とは別の次元の孫悟空だ。時空を超え……悪さをする奴を捕まえるのが仕事だ。」

 

「……別の次元のオラ……!?言っておくけどな、ブラックは別に悪いやつじゃねぇぞ!」

 

「……どうやらそうらしいな。」

 

「え?」

 

すると片方の悟空はあっさりとブラックが悪い奴ではないことを認めた。

 

「…………家族の事を第一に考えて行動するこいつが悪いやつなはずがない。少し試させてもらっただけだ。」

 

「そうだったんか…………。」

 

すると悟空は変身を解きキャル達に近づいた。

 

「……驚かせてすまなかったな。」

 

「……別に……いいけど。」

 

「おじさんパパそっくりだね。」

 

「はは。そうだな……。」

 

すると別次元の悟空はブラックに近寄る。

 

「……いきなり攻撃してすまねえな。実は今……この世界でとんでもねぇ事が起こりそうなんだ。」

 

「……とんでもない事?」

 

「……ああ。下手したら……宇宙そのものが滅んじまうかもしんねぇ……!」

 

別次元の悟空の話によると、今までブラック達が戦った敵が何者かによって次々と復活しているのだという。

その邪悪なものが復活する度に宇宙のバランスが崩れていく。

それを止める為に悟空達は動いているらしい。

 

「……因みにだが3年程前から宇宙の時間が崩れている。あっちの世界の時の流れとこちらの世界の時の流れが同じになってるんだ。」

 

「……えっ。……つまり…………オラ……あっちの世界を3年留守にしてるってことか………………???」

 

「…………そんなことしてたのか。」

 

悟空は衝撃の事実に驚くと同時にチチに絶対怒られることを悟った。

 

「……オラ帰ったらチチに殺されちまうかも知れねえな。そんじゃあその黒幕を倒せば元に戻るってことか?」

 

「ああ、そういうことだ。」

 

「……そうか。ならオレも協力しよう。」

 

「……ちょっと待ちなさいよ。」

 

「……キャル。」

 

キャルは別次元の悟空の前にでる。

 

「…………もうゴクウは闘うことはやめたの。これ以上危険な目にあわせたくない……!!折角平和を手に入れたのに……!」

 

キャルは絶対にこれ以上ブラックを危険な闘いに参加させたくはなかった。

 

「……おめぇの気持ちはわかる。だが……奴らを倒すには必要な事なんだ。」

 

「…………。」

 

ブラックは黙り込み自分の中で葛藤していた。

 

「…………まだ考えているならそれでいい。またしばらくしたらおめぇの答えを聞きにくる。……またな。」

 

別次元の悟空はそう言ってその場を離れた。

 

「……あっちのオラは見たことねぇ超サイヤ人だったな。ワクワクしてきたぞ……!」

 

「…………。」

 

「…………。」

 

「パパ……ママ……?」

 

悟空はワクワクしていたがブラックとキャルは複雑な気持ちだった。

 

ブラック達がギルドハウスに帰る途中、キャルが口を開く。

 

「……あんた……どうして急に協力するなんて言い出したのよ。魔人ブウと闘った時にあんたは一回死んじゃってるのよ!?」

「……確かにオレは一度死んだ。だからこそ、生きている家族を……仲間を守りたいと思った。」

 

「……ブラック。じゃあもうお前の中で答えは決まってんだな?」

 

「ああ。すまないキャル……私は……」

 

「……何を言っても無駄ね。わかったわよ。でも……危なくなったら帰ってくるって約束して!じゃなかったら絶対に認めないわよ!」

 

「……絶対に約束するさ。」

 

ブラックの覚悟を決めた表情を見てキャルはそれ以上何も言わなかった。

 

その頃、ギルドハウスでは……

 

「……どうしたユリシス。窓の外を眺めて。」

 

ターレスが窓の外をじっと見つめるユリシスに話しかける。

 

「……うまく言えないんですが……分かるんです。」

 

「……分かる?一体なにが分かるんだ?」

 

「…………この世界によからぬ事が起こる気がするんです。」

 

ユリシスは本能でこの世界に迫る危機を感じ取っていた。

 



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蘇る悪の戦士達

 

 

 

 

「帰ったわよー。」

 

「おっす!元気してたか?」

 

キャル達がギルドハウスへと戻ってきた。

 

「……カカロット。」

 

「……皆さん。」

 

ターレスとユリシスが悟空達を出迎えるが二人の顔色はどことなく暗かった。

 

「二人ともどうかした?」

 

「……お前達もとっくに気づいてるんだろう?」

「……この邪悪な気の正体……何かが起ころうとしてるんですね?」

ターレスとユリシスもこの異変に気づいていた。

「……ああ。どうやらそうらしい。さっき……別の世界のオラと会ってその事を聞かされたんだ。」

 

「……平和というのは長くは続かないものだな……っ!?」

 

「「「「!?」」」」

 

その時だった。

 

 

ドォォォォォォォォンッ!!!

 

突如大きな爆発音が鳴り響く。

 

ブラック達は急いで外へと出た。

 

そこには邪悪なオーラを纏った人物がいた。

 

「!?」

 

「誰だ……!!」

 

男はブラック達に気づくとニヤリと笑みを浮かべ目の前に降り立つ。

 

「……会いたかったぜ。サイヤ人……!」

 

「「「「!?」」」」

 

現れたのはボージャックだった。

 

「おめぇ……誰だ!!」

 

「ほう……ボージャックか。まさか生きていたとはな。」

 

ターレスはボージャックを見て多少驚いた様子だった。

 

「ターレス!知ってんのか!?」

 

「……まあな。以前フューと共に連れてこられたオレの同期……とでも言っておこうか。」

 

するとボージャックはターレスの姿を見て顔をしかめる。

 

「……ターレスッ!?何故貴様がここにいるんだぁあっ!!!」

 

「おっと……。」

 

ボージャックはターレスにいきなり襲いかかるがターレスはそれを難なく交わした。

 

「……腕が落ちたんじゃないか?ボージャック。」

 

「ふざけるなぁああっ!!!」

 

ボージャックは怒り狂い、さらに邪悪なパワーを増大させた。

 

「おい!なんなんだあいつは……!?」

 

「わかんねぇ……けど……ターレスが何とか食い止めてくれてっぞ!!」

 

「……何者なんだ?あの男……!」

 

「……わかりません。ただ……私はこの気を知っています……!」

 

ユリシスは冷や汗を流しながら言った。

「「「「!?」」」」

 

「知ってるってどういう事よ……!!」

 

「……この気は……!!まさか……既に近くに……っ!」

 

ユリシスは何故かボージャックの気に敏感に反応していた。

 

 

パチパチパチ

 

 

「「「!?」」」

 

突然乾いた拍手がユリシスの背後から聞こえた。

 

「……流石はユリシス。君もこの気には思い入れがあるだろう……?」

 

「……あ、あ……っ……!」

 

一人の黒いフードを被った男が突如現れた。ユリシスはその男を見て震え上がった。

 

「…………『ミロク』…………さま。」

 

「ミロク…………だと……!!」

 

ブラックはその名前に聞き覚えがあった。

 

以前ブラックが仮面を着けザマスとランドソルを襲っていた時に一度だけ話した。

 

『……此奴は「ミロク」この男は外の世界から……我らの理想に感銘を受け、助力しに来たのだ。』

 

ブラックはザマスの言葉を思い出した。

 

「……そうか。あの時の……!」

 

「……お久しぶりですねザマスさん。」

 

ミロクは涼し気な表情でブラックを見下ろす。

 

「……貴様は確か……ペコリーヌ達に敗れ去ったと聞いていたが……。」

 

「……そのような事実はありませんよ。そもそも……私は『あちらの世界』で組織を担っていましたからね。……そうですよね?……ユリシス。」

 

ミロクは冷たい眼差しをユリシスに向けた。

 

「……あ……、あ……。」

 

ユリシスは震えて声がでない。

その様子を見たキャルはユリシスに関することで一つ確信に至った。

 

「……それじゃあユリシスを拘束して無理やり人体実験をしたっていうクズはあんたってことね?」

 

「おや、人体実験など人聞きの悪い。彼女は最高傑作だ。正に……人類の英智と呼ぶべきですよ。」

 

ミロクは悪びれもせずにそう言った。

 

「……この……っ!?ゴクウ……?」

 

ブラックはキャルの前に立ち、今にも感情を爆発させそうなキャルを手で抑えた。

 

「……キャル。お前はシャルルを連れて王宮へ行け!とにかくここから逃げるんだ。」

 

「そ、そんな!アンタを置いて……!」

 

「……約束しただろ。私は死なない。危なくなったらすぐに瞬間移動でそっちに行くさ。」

 

「……っ!わかったわ。絶対に死なないでよね!」

 

「パパ!負けないで!!」

 

キャルはシャルルを抱っこして王宮まで走って行った。

 

「……ブラック。オラも一緒に闘うぞ。どうやら相手は相当なもんみてぇだからな。」

 

「……頼む。」

 

悟空とブラックは共に構えた。

 

「やれやれ。私にばかり構っていてはいけませんね。この世界中にありとあらゆる邪悪な者を解き放ったんですよ?今頃…………どうなっているでしょうね。」

 

 

「なにっ!!」

 

「なんだと……!」

 

 

 

ランドソル城

 

 

「……俺と闘え……!!オレはまだ闘い足りん!」

 

「…………。」

 

「ユウキくん……!!」

 

「主さま……!!」

 

ランドソル城の周辺にはこの男に立ち向かった兵士達が大勢倒れていた。

 

ユウキと黒い髪を腰まで伸ばした巨体な大男が対峙していた。男は悪のオーラを発しながらユウキを睨みつけている。

 

「………………。」

 

ユウキは無言のまま身勝手の極意の兆しへと変身した。

そして両者は同時に動き出す。

 

「「はあああああああっ!!!」」

 

ドガァッ!!

 

両者の拳がぶつかり合い激しい衝撃波が巻き起こった。

 

 

 

ランドソルから遠く離れた場所では……

 

「この程度ですか?これじゃあ殺しがいがありませんね。」

 

全身が金色の化け物が【レイジ・レギオン】を襲っていた。

 

「…………倒せ……ゼーン…………!」

 

「……ゼーン……くん。」

 

「ゼーン…………さん。」

 

「………………。」

 

「…………アゾールド、ミソラ、ランファ、カリザ………!これは一体……!」

 

ゼーンは異変に気づきアジトへ戻ってきていた。

 

「ようやく殺しがいのある相手がやってきましたか。では……復讐の続きを始めましょうか。」

 

だが遅れてきたゼーン以外の【レイジ・レギオン】のメンバーが瀕死の状態だった。

 



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ヒートアップする闘い

突如として復活した邪悪な敵はアストルム全体で暴れ回っていた。

 

 

「……ここだ、トランクス!どうやら奴らはもう既に暴れ回っていやがる!」

 

「……そのようですね……。くっ……折角皆で取り戻した世界がこんな……!」

 

ベジータとトランクスもアストルムの異変を聞きつけてこの世界へとやって来た。

 

すると……

 

「っ!?避けろトランクス!!」

 

「!!」

 

突如ベジータとトランクスに気弾が放たれた。トランクスはその攻撃を皮1枚でかわした。

 

「……中々いい勘ね。」

 

一人の女性が不気味な笑みを浮かべながらベジータの前に現れた。

 

「貴様はたしか……覇瞳皇帝……!!」

 

「父さん!知ってるんですか!」

 

「……ああ。オレとカカロットが前に倒したはずだが……気を抜くなよトランクス!こいつはかなり厄介だ。」

 

「はい……!」

 

ベジータとトランクスは戦闘態勢に入り構えた。

 

 

 

一方、ランドソル城では……

 

 

「くらえぇえ……!!下郎共ぉ!!!」

 

「……!」

 

ユウキを攻撃ているのは『カンバー』という悪のサイヤ人だった。ユウキはカンバーの黒い気弾を受け流しながら闘っていた。

 

「うおあああああっ!!!!」

 

「っ……!」

 

カンバーは大振りの拳でユウキを攻撃するがそれは全て空を切る。

 

「ここだ……!!」

 

「ぐあっ……!」

 

ユウキはカンバーの攻撃の隙を縫って顔面に拳を叩き込んだ。

 

「があああああっ!!!」

 

「くっ…………!!」

 

だがカンバーは怯むことなくユウキを攻撃していく。そして……

 

「ぐあああああっ!!」

 

カンバーの攻撃を防御したはずのユウキが大きく吹き飛ばされた。

 

「一撃が…………重い!」

 

「あ、主さま…………!!」

 

「そんな、ユウキくん!!」

 

コッコロとペコリーヌがユウキの心配をしているとユウキは瓦礫から飛び出しカンバーに攻撃を仕掛けた。

 

「たぁああああっ!!!」

 

「ぬぅ……!!」

 

カンバーはユウキの攻撃を片手で掴みユウキに殴りかかった。

 

「!!」

 

だがユウキもカンバーの攻撃を片手で掴み両者は硬直状態になった。

 

「……互角のようだな……だがお前にオレは倒せない。……ぅうおああああああっ!!!!!」

 

「!?」

 

カンバーの気は更に膨れ上がり超サイヤ人3に変身した。

 

「がああああああっ!!!!」

 

「ぐああああああっ!!!!」

 

カンバーはユウキの手を振りほどき蹴り飛ばした。

 

「口ほどにもない。これでトドメだあっ!」

 

「くっ…………」

 

カンバーは再び巨大なエネルギー波を放った。

 

(ダメだ……!今度こそ耐えきれない!!)

 

ユウキは死を覚悟し目を瞑った。するとその時だった。

 

シュピン

 

「!?」

 

「「………………。」」

 

間一髪の所で別次元の悟空とベジータが気弾を逸らした。

 

「悟空……に……師匠……?その姿は……。」

 

「おい、もう喋るな。お前はそこでじっとしていろ。」

 

「よく一人で耐えたな。後はオレたちに任せてくれ。」

 

カンバーの前に悟空とベジータが立ちはだかる。

 

「……おめぇの相手はオレ達だ。」

 

「……何処のどいつか知らんが……いい度胸だ!誰でも構わん……オレの相手になればだがな。」

 

カンバーも二人を見て気を高まらせる。

 

「……あれは悟空さまにベジータさま……?いつもと格好が違います……!」

 

「それに……あんな変身見たこともありません。」

 

コッコロとペコリーヌも見慣れない二人の姿に驚いていた。

 

「そこの二人!そいつを連れて早く逃げろ!」

 

ベジータはペコリーヌとコッコロに指示をだす。

 

「は、はい……!」

 

「……わかりました。」

 

「ユウキくん!しっかりしてください!」

 

「くっ……。」

 

コッコロとペコリーヌはユウキに肩をかしその場から離れた。

 

「……こい。オレはまだ暴れ足りぬ!!闘ええええええええっ!!!!」

 

「「………!!」」

 

カンバーの声が周りの空気を震えさせる。

 

「すげぇ気だぞアイツ………!!」

 

「……クソッタレが……!!」

 

 

一方その頃【レイジ・レギオン】は……

 

「キェエエエエエッ!!!!」

 

「はぁっ!!」

 

フリーザとゼーンが激しい闘いを繰り広げていた。

 

「ほぉ、中々やりますね。ですがまだ私には遠く及びませんよ?」

 

「……!」

 

ゼーンの大剣と足技が次々と繰り出されるがフリーザはそれを難なくかわしていく。

 

「はっ!!」

 

「くっ……力だけは大したもんですよ……!」

 

ゼーンは渾身の力を込めて大剣を横に振る。しかしそれも避けられてしまった。

 

「……!!」

 

「この程度ですか……はぁあああっ!!」

 

「くっ……!!」

 

ゼーンは大きく吹き飛ばされる。

 

「さて、そろそろ終わらせましょうか。」

 

「……っ!」

 

フリーザはゆっくりと歩み寄ってくる。

 

「………ふぅううう…………。」

 

ゼーンは大きく息を吐く。

 

「おや、諦めてため息しかでませんか?無様ですね。」

 

だがゼーンのこの行動は意味の無いものではなかった。

 

「おおおおおおおおおおっ!!!!」

 

「なに!?」

 

ゼーンの気が爆発したかのように急激に膨れ上がる。

 

「……本当の闘いはこれからだ。」

 

ゼーンの目が赤く光り大きな翼が生える。

 

「あれはドラゴン族の覚醒……!」

 

「……あれはゼーン君の最終手段ですがはたして……。」

 

ゼーンの姿を見たフリーザは苛立ちを見せる。

 

「………下等なサルが……!いいだろう!そこまで死にたいのならお望み通りにしてやる!!」

 

「はぁあああっ!!」

 

「でぁああっ!!」

 

二人は激しくぶつかり合いながら宙へと舞う。

 

「くたばれぇっ!!」

 

「──蛮牙竜咬!!」

 

「!?」

 

ゼーンは空から雷のような威力の大剣を振り落とした。

 

「こ、こんなものっ!!こんなものぉおおおおっ!!!」

 

フリーザは両手でゼーンの剣を抑え込む。

 

「はあああああああっ!!!!」

 

だがゼーンの攻撃はとまらない。

 

「そ、そんな……!!!ちくしょおおおおおおっ!!!!!!!」

 

フリーザはゼーンの攻撃のより真っ二つになり断末魔をあげながら消滅した。

 

 



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終焉へのカウントダウン

アストルム各地で闘いが繰り広げられる中、悟空とブラックはミロクと対峙していた。

 

「おめぇ……この世界を無茶苦茶にしてどうするつもりだ!」

 

「何が目的だ!」

 

「……わたしは待っていた。お前達の力が弱まるこの瞬間をな。おかげでスムーズに事が進みユリシスを見つける手間も省けた。」

 

ミロクはユリシスの体に手を置く。

 

「な、何を!!」

 

「貴様……!」

 

「……今からこの私が支配する新たな時代が幕を明ける。さあユリシス……共に変えよう。この宇宙をあるべき姿に。」

 

「うわぁああああ!!!」

 

ユリシスの体から光り輝く何かがミロクの体内に吸収された。

 

「ふふふふ…………。」

 

ユリシスはそのまま意識を失い地面に倒れた。

 

「貴様!何をした……!!」

 

「くっ……おめぇの好きにはさせねぇ!」

 

悟空は超サイヤ人ブルーになり、ミロクへかめはめ波を放った。

 

しかし……

 

「あ……かめはめ波がでない……!」

 

悟空の手からは何も放出されなかった。

 

「……いえいえ、ちゃんと出ていましたよ?あなたの技は。」

 

「なに!?」

 

ミロクはニヤリと笑いながら上空に昇る。

 

「……あなたの技をただ元に戻しただけです。この能力は以前ユリシスから聞いていたのでは無いですか?」

 

「くっ……!!おめぇ……!!」

 

「これでは私が相手をしなくてもよさようですね……そういえばちょうどいい相手がいたんでした。」

 

ミロクはそう言って指を鳴らした。

 

するとそこに現れたのは……

 

「カカロットォォォォッ!!!」

 

ブロリーだった。

 

「ウオオオオオオオッ!!」

 

ブロリーは登場すると同時にブラックに殴りかかった。

 

「こいつ……ランドソルモドキに現れたやつと同じか……!」

 

ブロリーは以前ランドソルモドキでブラックと闘い敗れたことで怒りが頂点に達していた。

 

「殺してやる……殺してやるぞカカロット!!」

 

「くっ……孫悟空!こいつは私が引き受ける。お前はミロクを倒せ!後……これを渡しておく。」

 

ブラックは悟空にとあるアイテムを投げた。

 

「ブラック……!わかった……!」

 

ブラックからあるものを受け取った悟空は改めてミロクと向かい合う。

 

「着いてこい!ブロリー!!」

 

「ウオアアアアアアッ!!」

 

ブラックはブロリーを連れて遠くへと移動した。

 

そして悟空とミロクの戦いが始まる。

 

「いくぜ!!」

 

悟空は一気に距離を詰めて蹴りを放つ。

 

 

しかしそれは簡単に受け止められてしまった。

 

「……遅いですねぇ……。」

 

ミロクは余裕綽々といった様子である。

だが次の瞬間……

「なっ……」

一瞬で背後をとった悟空はミロクの背中にエネルギー弾を押し当てる。

 

「オラだって強くなったんだ……舐めてっと痛い目みんぞ?」

 

「……これは驚いた。いつの間に背後をとられていたとは。」

 

「……オラ、おめぇの弱点分かっちまったぞ?」

 

「何?」

 

ミロクは眉間にシワを寄せて怪しげな表情をする。

 

「……おめぇ、まだユリシスの能力を使いこなせてねえな?一回能力を使っちまったら暫くは発動できないんだろ?」

 

「!!」

 

図星であった。

 

ミロクの能力は強力であるが故にデメリットもあるのだ。

一度能力を使えば次に使うまでに時間を要する。

それが数秒なのか数分なのか、あるいは数時間かかるのか、その詳細はわかっていない。

しかしそれを見抜いた悟空もまた、戦闘センスの塊なのだと言えるだろう。

 

「ふん……観察眼だけはいいらしいな。だがこの能力が無くともどちらにせよお前達はここで死ぬ運命だ。」

 

「果たしてそううまくいくかな?」

 

「……消え失せろ!」

 

ミロクは悟空に向けて手をかざすとそこから無数の光線が放たれた。

「うおっ!」

 

悟空はそれを咄嵯の判断で避け続ける。

 

(このままじゃキリがねぇ……。)

 

そう思った悟空は意を決して反撃に出る。

 

「はあっ!!」

 

気合を込めて地面を踏みつけると、そこから衝撃波が発生しミロクに向かって一直線に進んでいく。

 

「こんなもの……!!」

 

ミロクは両手を前に出してバリアを張ると、それを受け止めた。

 

「まだまだぁ!」

 

今度は悟空が瞬間移動で背後をとる。

 

「そこだっ!」

 

悟空は拳を振り上げたが、それが届くことはなかった。

 

「……なるほど、確かになかなか素早い動きができるようだ。しかし、所詮はその程度……!」

 

ミロクが腕を振ると、悟空は勢いよく吹き飛ばされた。

 

「ぐああっ!」

 

地面に叩きつけられた悟空だったが、すぐに立ち上がる。

 

「くっ……まだだ……!」

 

「ほう、随分とタフですね……。」

 

「おめえこそ余裕そうだな。オラの攻撃が効かなかったわけでもねぇだろ?」

 

「……さあ、どうでしょうね。」

 

そう言うとミロクは上空へ飛び上がった。

 

「なんだ……?逃げるつもりか?」

 

「いえいえ、あなたを確実に殺すために、今から準備しようと思いましてね。」

ミロクは空中で静止すると、両手を天に掲げた。

 

「一体何をするつもりだ……?」

 

「はああぁっ……!!」

 

ミロクの手のひらから光が溢れ出すと、それに呼応するように空も光り輝いた。

 

「な、なんだ……この気は!」

 

「何がはじまるんだ……!」

 

闘っていたターレス達も手を止めて空を見上げる。

 

「父さん!この巨大な気は……!」

 

「……クソッタレが!カカロットのやつ何してやがる……!」

 

「……一体これは……!」

 

そして別次元の悟空やベジータ、そしてカンバーでさえも空を見上げた。

 

「ベジータ!これは……!」

 

「どうやら黒幕は見つかったようだな。」

 

「ぬぅ……!この強大な気……!」

 

そしてミロクの気が膨れ上がり目に見えるほど巨大なオーラを身にまとった。

 

「なっ……!?」

 

「ふっ……。」

 

ミロクはニヤリと笑う。

 

「……さて、では始めましょうか。この宇宙の終焉を!」

 



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敵の敵は味方

「てやあああああっ!!!!」

 

「はあああああああ!!」

 

「ふん!」

 

ベジータとトランクスは復活した覇瞳皇帝と闘っていた。

 

「おかしい……今のタイミングは完璧だったはずだ!!」

 

「……どうなっていやがる!」

 

しかしベジータとトランクスは覇瞳皇帝を相手に苦戦を強いられていた。

 

「……あなた達の攻撃は読めるわ。私の能力……『覇瞳天星』でね。」

 

「「!?」」

 

覇瞳皇帝は七冠の特権である固有の能力を使いベジータ達の攻撃を避け続けていた。

 

「くっ……どうすれば……!」

 

「…………ふっ。」

 

トランクスが勝負を急ぐ中、ベジータは冷静に笑った。

 

「……何がおかしいのかしら?あなた達に勝ち目なんて無いのよ?」

 

「……ナメるなよ?はあああああああああっ!」

 

「「!?」」

 

ベジータは超サイヤ人ブルー進化に変身し両手を大きく広げて気を溜めた。

 

 

「父さん!?一体何を!」

 

「いくら攻撃の軌道が読めても防げなければ意味を成さん!」

 

「……無駄なのよ……全て。」

 

覇瞳皇帝は両手を前に突き出し結界を張った。

 

そして次の瞬間、

 

 

「ファイナルフラ────ッシュ!!」

 

ベジータの本気のファイナルフラッシュが覇瞳皇帝に向けて放たれた。

 

「!?」

 

覇瞳皇帝の作った結界にベジータのファイナルフラッシュがぶつかる。

 

「な、何よこの威力……!!さっきまでとは桁違い……!!」

 

そして結界に亀裂が入った。

 

「ぎゃあああああああああっ!!!!」

 

結界は粉々に砕け強烈なエネルギー波は覇瞳皇帝を呑み込んでいった。

 

「はぁ……はぁ……!」

 

覇瞳皇帝はボロボロの状態でなんとか立ち上がった。

 

「……ふん。自分の能力を過信しすぎるからだ。これからは能力に頼った闘いはやめるんだな。」

 

「なんですって!?」

 

「……お前は別に殺さなきゃならない程の悪いやつではない。」

 

「!?」

 

「……行くぞ。トランクス。」

 

「父さん……はい!」

 

ベジータはそれを言い残しトランクスと共にその場を去った。

 

「どこいくのよ……!くっ……覚えておきなさい。今度はこうはいかないわ。」

 

覇瞳皇帝もやるせない表情を浮かべながらその場から消えた。

 

 

一方、ブラックは……

 

 

「カカロットォォォォッ!!!!ウオオオオオオオッ!!!!!」

 

「!!」

 

ブロリーはブラックに攻撃を仕掛ける。

 

「……あの時よりも強くなってるとは……くっ……!」

 

ブラックはブロリーの攻撃を受け流しながら反撃の機会を待つ。

 

「ガアアアアアアアアッ!!!!!」

 

ブロリーの攻撃が一瞬大振りになった。

 

「ふん……!!!」

 

「グオアアアアアッ!!!」

 

ブラックはブロリーの攻撃をギリギリで避けながら腹部に拳をめり込ませた。

 

「はあああああああ……!!!」

 

「グアアアアアアアアッ!!!!」

 

ブロリーは拳の衝撃で少し怯みブラックと距離をとった。

 

「グルルルル……ウウッ……ウオオオオオオオアアアアアアッ!!!!!」

 

「なに!?」

 

するとブロリーの気が急激に膨れ上がり体中から赤い体毛が生える。

 

「これは……まさか!!」

 

それだけではなくブロリーの筋肉も一回り大きくなり髪も赤く染まる。

 

「ウアアアアアアアアアアッ!!!!!」

 

別次元の悟空の変身と似ているがブロリーの桁外れな怒りによってオーラも燃え上がるような薄紅色になっていた。

 

「ウオオオアアアアアアッ!!」

 

ブロリーは超サイヤ人4に変身すると同時にブラックに突進する。

 

「くっ……!速い!!」

 

ブラックは咄嵯に反応してガードするがあまりの力の強さに吹き飛ばされる。

 

「うおおおおお!!!」

 

「ぐうううっ……!!」

 

しかし、ブラックはすぐに体勢を立て直す。

 

「さっきまでとは比べ物にならないくらいパワーが上がっただと……?それにその髪の色……一体何なんだ?」

 

「カカロットォォォォッ!!」

 

ブロリーは先程よりも数倍速く動きブラックに迫る。

 

「ぐおっ……!?」

 

そして目にも止まらぬ速さで攻撃を繰り返す。

 

「ハアアッ!!」

 

「ぐあっ!!」

 

ブラックはそのスピードについていけず一方的に殴られ続ける。

 

 

「ウオオオオオオオッ!!」

 

「ぐあああっ!!」

 

ブラックは壁に叩きつけられた。

 

「はぁ……はぁ……。」

 

(このままではまずい……一旦離れなければ……!)

 

ブラックはブロリーから距離を取ろうとしたその時だった。

 

「ウオオアアッ!!」

 

ブロリーは目にも止まらぬスピードで移動をし、ブラックの前に現れ腕を振り下ろす。

 

「なっ……!?」

 

それがブラックに命中するその時だった。

 

シュピン

 

「グアアアアアッ!!!」

 

「!?」

 

ブロリーは突如何者かによって吹き飛ばされた。

 

「やあ、大変そうだねブラック君。」

 

現れたのは意外な人物だった。

 

「な!?貴様は……『フュー』!!」

 

以前ブラックが倒したはずのフューがブラックの目の前に現れた。

 

「久しぶりだね〜!キミ、この世界を守ろうとしてるんでしょ?ボクが協力してあげるよ。」

 

フューは突然そんなことを提案してきた。

 

「……私が倒したはずのお前が何故ここにいる!」

 

「まあまあいいじゃない。それより今はこの状況をどうにかしないとじゃないかい?」

 

「お前のような奴は信用ならない……とっとと失せろ!」

 

だがフューはそんなブラックの言葉を笑い飛ばした。

 

「そんな事言っちゃってボロボロじゃない?人の親切は素直に受け取るものだよ!それに……ミロクって奴ボクもあんまり好きじゃないんだよね。だから今回は一緒に闘おうよ!」

 

「……一体何を企んでいる!」

 

「何にも企んでなんかないって。君たちがボクに可能性を示してくれたことの恩返しとでも思ってくれればいいよ。」

 

フューは少なからず新たな可能性を見出したブラックたちに恩を感じていたらしい。

 

「……。」

 

すると吹き飛ばされたブロリーが叫びながら立ち上がった。

 

「ウオオオオオオオオアアアアアッ!!カカロットォォォォッ!!!!」

 

「……まあ見てなよ。」

 

フューは一人で飛び出した。

 

「おい!勝手なことを……!」

 

ブラックが止めようとするがフューは既に戦闘態勢に入っていた。

 

「ふーん。中々興味深い力だねキミ。」

 

「ウオオアアッ!!」

 

ブロリーは無数の気弾を放つがフューはそれを全て捌ききった。

 

「あは!すごい威力だねー!これをまともにくらってたら危なかったよー!ねぇねぇ、どうかなー?」

 

フューはそのままブラックと背中を合わせる。

 

「チッ……今のが全力なら願い下げだ。」

 

「アハハ!まさか!せいぜいお役に立ってみせるよ!」

 

二人はブロリーに向き合い構えた。




この話書きながらふと思うんだ……シャルル編面白かったなって。まあzの話のオマージュだからだけど。


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蒼神の合体戦士

 

 

「グルルル……ウオオアアッ!!」

 

ブロリーは二人に向かって突撃する。

 

「じゃ、行こうか。」

 

「……ああ。」

 

ブラックとフューはそれぞれブロリーに立ち向かっていった。

 

「はっ!!」

 

「はあっ!!」

 

「ガアアアアアアアッ!!」

 

三人による激しい攻防が続く。

 

ブロリーの怒りは収まらずその力は更に増していく。

 

「こいつまだ強くなるのか……!おい、こいつの変身はなんなんだ!見たことがないぞ。」

 

「ブロリーの姿は『超サイヤ人4』というらしいよ。でも……それに更に力がプラスされて限界突破してるから力だけで言ったら適うものは誰もいないだろうね。」

 

ブロリーは二人の猛攻をものともせず攻撃を続ける。

 

そして一瞬の隙をついてフューに蹴りかかる。

 

が、それを見越していたかのようにフューは素早く回避した。

 

「危ないなあもう!」

 

「カカロットォォォォッ!!」

 

すると今度はブラックに殴り掛かる。

しかしブラックもすぐに反応して拳を受け止める。

 

「確かに力で適うものはいないだろうな。だが……こいつを止めなければ宇宙は終わりだ。」

 

「そうそう!止めないと大変な事になっちゃうから……本気でいこうか。ついてこれるかい?ブラック君。」

 

「……ふっ。ナメるなよ?お前の方こそ実験ばかりで腕が訛ってるんじゃないのか?」

 

「アハ!言ってくれるね!」

 

ブラックとフューは拳にエネルギーを込めてブロリーに攻撃を仕掛ける。

 

「「はっ!!」」

 

「グオオッ!!」

 

ブロリーは二人の攻撃を受け吹き飛ぶ。

 

「どうだい?少しは効いたかな?」

 

「相手が誰だろうと負ける訳にはいかないんでな。この戦いでお前を戦闘不能にする。行くぞ……ブロリー!!」

 

「ガアアアアアアッ!!!!!」

 

 

一方……悟空はミロクと闘いを繰り広げていた。

 

「……さて、では始めましょうか。この宇宙の終焉を!」

 

そう言うとミロクは力を解放した。

 

ユリシスの能力を吸収し新たな力を手にしたミロクの身体から発せられる凄まじいエネルギー。

 

それは瞬く間に周囲を包み込んだ。

 

「くっ……そんなことさせねぇぞ!!」

 

悟空は身勝手の極意の兆しに変身しミロクに突撃した。

 

「無駄ですよ。今の私に敵などいないのですから……!」

 

ミロクは指先から閃光のようなビームを放つ。

 

それは身勝手の極意を発動している悟空の頬をかすめた。

 

「チッ……!反応しずれぇ……!」

 

「ははは!遅い!遅すぎるぞ孫悟空!」

 

「なら……これでどうだ!!」

 

悟空は超スピードで接近すると、渾身の一撃をミロクに放った。

 

「全て見えるぞ……お前の攻撃がな。」

 

ミロクは軽くかわして悟空の背後に回ると、強烈な蹴りを浴びせる。

 

「グハッ!!」

 

「フッハハ!いいぞ!素晴らしい力だ!これが……私の求めていた圧倒的な力!!実に私の体に馴染む……!!」

 

ミロクは倒れる悟空の体を無理やり起こし追撃の拳を叩き込む。

 

「がはっ……!」

 

「まだまだ……!簡単に死なれてしまっては面白くないんですよ。」

 

さらに追い討ちをかけるように蹴りを繰り出すミロク。

 

「ぐああああっ!!!」

 

「ふははは!さあ、あと何発もつのか楽しみですね。いざ死にそうになったらあなたの傷を元に戻し……また一から殴り続けるのでご安心を。」

 

ミロクの顔が狂気に染まったその時だった。

 

「はぁああああああっ!!!」

 

「………!?」

 

突如強烈な光を纏ったエネルギーがミロクに放たれた。

 

「………ちっ。」

 

ミロクは悟空から手を離しそのエネルギーをはじき飛ばした。

 

「……小賢しい。あれは……ベジータか。」

 

ミロクの先には青いオーラを纏ったベジータがいた。

 

「……ふん。情けないぞカカロット。」

 

「へ……へへ……すまねぇベジータ。あ……そうだ………。」

 

悟空は立ち上がるとブラックに貰ったアイテムを取り出す。

 

「………やるしかねぇ。でも……ミロクがあの様子じゃこれをベジータに渡す隙がねぇぞ……。」

 

するとミロクが再び悟空に近づきトドメを刺そうとしていた。

 

「ふん、たかが一人増えた所でどうにもなりませんが……今のうちに始末しておくか。」

 

ミロクが手を前に出した時だった。

 

「!?なんだ……!!手が……動かん……!!」

 

「………私が……あなたの行動を戻しています!」

 

「!?」

 

なんとユリシスが力を振り絞りミロクの動きを制限していた。

 

「この出来損ないが……!!私の邪魔をするとは……!!今貴様が何をしているのか分かっているのか!!その能力を授けたのは私なんだぞ……!!こんなこと……ふざけるなぁっ!!」

 

「くっ……!!」

 

だがユリシスの力は完全では無いため徐々にミロクの拘束が解かれていく。

 

「……忌々しい……!!お前を作ったのは私なのだそ?その恩を忘れ……私に牙を向けるとは……貴様は用済みだ!!ユリシス……!!」

 

「!!」

 

「さあ……死ぬがいい!!」

 

ミロクが拘束を解きユリシスにトドメを刺そうとしたその時だった。

 

「ごはぁあああああっ!!!」

 

「え……!?」

 

『…………隙ありだ。』

 

ユリシスに拳が振り下ろされる瞬間、悟空とベジータはポタラで合体しミロクの顔面を殴り飛ばした。

 

突然の出来事に唖然とするユリシス。

そしてミロクはそのまま吹き飛んでいき岩山を貫通し巨大な岩石に激突した。

 

「……お、おのれぇ……!」

 

ミロクは予想外の威力の攻撃に暫く立ち上がることが出来ずにベジットを睨みつけていた。

 

『ふっ、すまねぇな……。ガラ空きだったもんでよ。さあ立てよミロク、お前はオレがぶっ飛ばす!』

 

ベジットは神々しい蒼色のオーラを身にまとい余裕の笑みを浮かべてミロクの前に立った。




ベジット何話ぶりだ……?


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もっと本気でやってほしいな

別次元の悟空とベジータはカンバーと激戦を繰り広げていた。

 

「……なんてパワーだ。」

 

「想像以上だ……!」

 

悟空とベジータは驚きながらも集中力を保ち、カンバーとの激しい戦闘を続ける。しかし、攻撃はカンバーに通用せず次第に追い詰められていった。

 

「へああああああっ!!!!」

 

「「ぐあああああっ!!!」」

 

カンバーは自身の悪のオーラで作った巨大な気の手で悟空とベジータを薙ぎ払った。

 

「下郎共……!!俺の手で葬られる栄誉をやろう!」

 

「「!?」」

 

するとカンバーは片手で白く発光するエネルギーを作り出しそれを空へ向かって投げた。

 

「まさか……!!」

 

「あ、あれは……!!」

 

悟空とベジータが気づいた時には既に遅かった。

 

「弾けて混ざれ!!」

 

カンバーがそう言うと放たれたエネルギーは強烈な光を発した。

 

「うああああああああ…………!!!!!」

 

するとカンバーの身体が突然大きくなりオレンジ色の体毛が生えみるみると大猿の姿へと変わっていった。

 

「ペコリーヌさま!!あの巨大な怪物は一体……!!」

 

「なんですかあれ!!ユウキくん!!大丈夫ですか!?」

 

「…………。」

 

大猿になったカンバーは遠くまで避難していたペコリーヌ達ですら視認できるような大きさだった。

 

「くっ……やりやがったか……。」

 

「化け物が……!」

 

【ウウウウウウ…………ッ……!!!】

 

もはや制御不能の化け物が誕生してしまった。

 

 

 

一方で、別の場所ではミロクとベジットが激突しようとしていた。

 

『立てよミロク。キサマはオレがぶっ飛ばす!』

 

「くっ……くくく。愚かな。お前など私の前ではただの虫けらだ……!」

 

ベジットは自信に満ちた表情でミロクの前に現れ身体からは蒼色のオーラが溢れ出す。

 

「……ポタラですか。そんな安定しない力など恐れるに足らん。せいぜい1時間ってところだろう?それだけあればお前を倒すなど他愛もない。」

 

ミロクは冷酷な笑みを浮かべながら、圧倒的な力を宿した姿で前に立った。

 

『勘違いしてもらっちゃ困るぜ。オレは闘いを引き延ばすつもりなんかない。』

 

「……何?」

 

『はぁっ!!!』

 

「!?」

 

ベジットは余裕の微笑を浮かべながら気を高めた。

 

『ユリシスの能力を手に入れ調子に乗っているようだが教えてやる。キサマはオレに跡形もなく消去される。復活する隙など与えない。』

 

「なんだとっ!?」

 

『はっ!!』

 

一瞬の隙を突いて、ベジットが超高速でミロクに近づいた。ベジットの繰り出した蹴りはミロクの顔面に炸裂し、衝撃波が広がった。

 

「がっはぁああああっ!!!」

 

驚愕したミロクは後退し、攻撃から身を守るがベジットは容赦なく攻撃を続けた。

 

『どうした!神を超えた力はその程度か?』

 

連続した拳と蹴りが繰り出され、瞬く間にミロクは追い詰められる。ベジットの攻撃は破壊的な威力を持ち、ミロクの身体に深い傷を刻み込んだ。

 

「くっ…くそっ!こんな……こんなはずでは……!」

 

ベジットの攻撃が絶え間なく続き、ミロクは苦悶の表情を浮かべながら吹き飛ばされ瓦礫の下敷きになった。ミロクの身体は壮絶なダメージを受け、血しぶきが舞い上がる。

 

『おーい、出てこいミロク。もうくたばったのか?』

 

ベジットはミロクを挑発しニヤリと笑った。

 

すると……

 

「はあ!!」

 

『お?』

 

ミロクが突然ベジットの背後に現れ気弾を放った。

 

「……はあ……はあ……馬鹿にしやがって……!だが……これ程の攻撃をまともにくらったんだ。無事でいられるはずが………っ!?」

 

しかし煙の中から現れたのは傷一つついてないベジットの姿だった。

 

『もっと本気でやってほしいもんだな。だがいい作戦だったぞ?ユリシスの能力で元いた場所に戻りオレの隙をついたんだろう?』

 

ミロクは虚弱な声で言葉を漏らします。

 

「く…くそっ……なんだこの馬鹿げた奴は……!」

 

ベジットはミロクに目を向け、その弱り切った姿を見つめた。

 

『ふっ……。まだよく分かってないようだから、ハッキリ教えてやろうか?ムダなんだよ、オレに勝とうなんて。キサマなんかが、どう頑張ったってな。』

 

ミロクはベジットの言葉に絶望と怒りが入り混じった表情を浮かべた。しかし、ミロクの身体は限界に達し、立ち上がることさえままならなくなっていた。

 

『その程度では宇宙を支配なんて出来やしない。』

 

「……私は神をも超えた力を手に入れたのだ……。こんな所で…………終わるものかあっ!」

 

『っ……!!』

 

ミロクはベジットの圧倒的な力に苦しむ姿を見せながらも、内に秘めた闇の力を解放した。

するとミロクの身体の周りを紫色の禍々しいオーラが走り闇のエネルギーがミロクを包み込んだ。ミロクは先程よりも更におぞましい姿へと変貌した。

 

「くくく……お前の力には屈しはしない。」

 

ミロクの声は歪み、その言葉からは深い執念が感じられた。ミロクは闇の力を集中させ、その手から黒い球体を生み出した。

 

『何をするつもりだ。』

 

それは次第に膨れ上がり、巨大なエネルギーの塊となった。

 

「受け取れ!」

 

その瞬間、ミロクはベジットに向かって巨大なエネルギー弾を放った。その威力は圧倒的で、周囲の空気をも歪ませ、地面を揺るがすほどだった。ベジットはそれに反応し、闘志に燃えた瞳でその攻撃に立ち向かった。

 

『ふん……!はああああっ!!』

 

ベジットはそれを両手で抑え込むとそのままゆっくりと前進していった。

 

「!?」

 

『……へへ。このまま返してやるよ。』

 

「なっ!?」

 

ベジットはミロクの放った渾身のエネルギーを足で蹴り飛ばした。

 

「くっ……!!」

 

ミロクはそのエネルギーを回避しなんとか空中での爆発に巻き込まれずに済んだ。

 

「……いい加減あなたにはうんざりですよ。」

 

『こっちのセリフだ。さっさと決着をつけようぜ。』

 

ミロクとベジットは再び睨み合った。

 

 



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プリンセスコネクトLEGENDS!
カオスワールド


今回は話短め。許してくれ。


「……この私をコケにしやがって……!!もうこの世界も宇宙もいらん!!全て消し去ってやる!!」

 

ミロクはそう言うと頭上に巨大な禍々しいエネルギーを作り出した。

 

「許さんぞ……!今度こそ消え去れぇぇっ!」

 

『そいつはこっちのセリフだ。さっさと終わらせるぜ!』

 

ベジットは身体全体を拡げ気を溜めた。

 

「ぐぬぬぬ……くたばれええええ!!!」

 

ミロクのエネルギーは小さく凝縮されベジットに放たれた。

 

『ファイナルかめはめ波────ッ!!!』

 

ベジットのかめはめ波はミロクのエネルギーをいとも容易く呑み込んでいく。

 

「なっ……そんな馬鹿な……!!!!」

 

そしてついにベジットの技がミロクの目の前まで迫った。

 

「や、やめろ……!!私が死ねば誰がこの宇宙を変えるというのだ!!秩序が……理が……こんな馬鹿なあぁぁぁぁああああっ!!!!!!」

 

ミロクは醜い断末魔を叫びながら塵となって消え去った。

 

『ふぅ……。』

 

ミロクを撃破したベジットは息をついた。

 

『ん!?な、なんだこれは……!!』

 

しかし、突如不可解な現象が至る所で起こり始めた。

 

「待てボージャック!!何か変だ……。」

 

「なに?……!?これは……なぜ空間にヒビが入ってるんだ!!」

 

 

 

「……!!なんだこのヒビは……。」

 

「ま、まずい……遅かったか!」

 

ブロリーと激闘を繰り広げていたブラックとフューもその現象に思わず闘いの手を止めていた。

 

 

起こった不可解な現象はそのヒビだけでは無かった。

 

「あ、主さま……!!身体が透けて……!!」

 

「ユウキくん!!いや、コッコロちゃんもですよ!!」

 

 

この世界にいる人々全員の身体が透けていた。

 

 

「ママ!!身体が……。」

 

「シャルル!!大丈夫よ。きっとパパが何とかしてくれるから……!!」

 

キャルはシャルルを抱きしめていた。

 

だがその現象は一向に止まることはなく人々は身体が消えていく恐怖に怯えていた。

 

 

そして身体の半分以上が透けたその時、何者かの声が聞こえた。

 

 

『さあ……これからが本当の闘いだ。その世界に行っても……生き残れることを心から願っているぞ?お前達を歴戦の戦士達が多数存在する【カオスワールド】へ招待しよう。』

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

その謎の声の主を知る由もないまま世界は眩い光に包まれて無くなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………。」

 

「……………………………………!……い!……………………おい……!…………かりしろ……!!」

 

何者かが一人の青年に呼びかける。

 

「しっかりするんだ!!」

 

「……う……。」

 

青年が目を開けると、目の前にはトランクスの姿があった。

 

「……目が覚めたか。こんな所に一人で……何があった?」

 

「うっ……ここはどこだ……?オレは……なにをしてたんだ……?……思い出せねえ……!」

 

青年は記憶の整理が着いておらず混乱していた。

 

「……もしかして……記憶が混乱しているのか……?……自分の名前は思い出せるか?」

 

「…………オレの……名前……!」

 

青年はぼんやりと頭に浮かぶ名前を思い出した。

 

「……っ!!そうだ…………オレの名前は『シャロット』だ……!!」

 




主人公交代のお知らせ。
シャロットは本編だと幼少期のブルマとジャコがサポートで仲間になってるけど今回のシャロットの仲間は誰かな?

因みにこの世界では過去の世界未来の世界関係なく歴戦の戦士達が集結しています。

例→覇瞳皇帝に忠誠を誓っている時のキャル等

様々な時代の人物がいるのでもしかしたら夢の対決があるかも。


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第九章 新時空崩壊編
未知との遭遇


トランクスはこの世界で倒れていたシャロットと言う青年と出会った。

 

 

「シャロット……それがキミの名前か。他に覚えていることは……いや、話は後にしよう。とにかく今はここから離れた方がいい……!」

 

「離れる?一体どういうことだ?」

 

シャロットが首を傾げた瞬間。

 

「「「ギャギャギャーーーー!!!」」」

 

「「!!」」

 

複数の栽培マンがシャロット達の前に現れた。

 

「なっ……!なんだこいつら!?」

 

「くそっ……こんな時に!スグにコイツらを倒して移動するぞ!」

 

「倒すって……こいつらをか!?」

 

突然の戦闘にシャロットは戸惑っている様子だった。

 

「……大丈夫だ!おそらくキミは闘える……!」

 

トランクスはシャロットにそう言うと剣を構えた。

 

「くそっ……!!なんだかよく分からねぇがやるってんなら相手になってやる!」

 

そしてシャロットはそのまま栽培マンを倒して行った。そのシャロットの動きを見てトランクスも感心している様子だった。

 

「いい動きだ!記憶がなくても身体が戦い方を覚えているようだな。」

 

全ての敵を倒し終わったトランクスとシャロットは再び向かい合った。

 

「……やはりな。思った通りだ。その尻尾を見てもしやと思ったが……キミは『サイヤ人』……この宇宙でも有数の戦闘民族だ……!」

 

「サイヤ人……?戦闘……民族……?オレがか……?」

 

だがシャロットにはやはりその記憶が無く何も覚えてはいなかった。

 

「ああ。オレには尻尾はないが父親がサイヤ人なんだ。」

 

「ふーん……。」

 

(……しかし、彼の格好……父さんが着ていたのとだいぶ違う……一体どの時代の……。)

 

トランクスはシャロットの正体を考察していた。

 

「なんだよ急に黙り込みやがって。」

 

「あ、ああ……すまない!とにかくここから離れよう!ここにいると危険だ……!!」

 

「……大体さっきから離れるだの危険だの……一体なんだ?いい加減説明……」

 

その時だった。

 

巨大な気がシャロット達の元へ迫っていることに気づいた。

 

「マズイ!!『ヤツ』の気だ!!」

 

そしてシャロット達の前に姿を現したのは緑色のオーラを纏ったブロリーだった。

 

「くっくっく……!カカロット以外にもムシケラが2匹隠れていたか……!」

 

「ブロリー……!!しまった……気づかれたか!」

 

「こ、こいつは……!!」

 

シャロットも突如現れたブロリーに驚いていた。するとブロリーはシャロットの姿を見てニヤリと笑った。

 

「なんだぁ……そいつもサイヤ人か……ふっふっ……潰しがいがありそうだ!フハハハッ!!」

 

「「!!」」

 

ブロリーは気を大きく膨らませるとトランクス達に襲いかかった。

 

「構えろシャロット!なんとかこの場を切り抜けるんだ!」

 

「だ……だけど!」

 

「くくっ……やる気だな?面白い……!!」

 

ブロリーがシャロットを攻撃しようとした瞬間、どこからともなく声が聞こえてきた。

 

「待て!!ブロリー!!」

 

「「!?」」

 

そしてトランクスとシャロットの前に悟空が瞬間移動で現れた。

 

「カカロット……!!」

 

ブロリーは悟空の姿を見ると顔をしかめる。

 

「なんとか間に合ったっ!……無事かトランクス!」

 

「はい!なんとか……!」

 

すると悟空はトランクスの隣にいるシャロットの存在に気がついた。

 

「……ん?トランクス、そこにいるそいつは誰だ?」

 

「ああ……彼は……。」

 

だがブロリーは3人の会話を遮り迫ってきていた。

 

「おしゃべりはそこまでだ!3匹まとめて潰してやるぞ!!ハアアッ!!」

 

ブロリーは拳を大きく振り上げシャロット目掛けて攻撃した。

 

「!?」

 

「あぶねえ!よけろ!!」

 

するとシャロットは悟空に言われた通りにブロリーの攻撃をかわしてみせた。

 

「あ……あぶねえ!いきなり仕掛けてきやがって……!!」

 

「いい動きだ!おめぇ結構やるなぁ!!」

 

「チイィ……!ちょこまかと鬱陶しいヤツめ!!調子に乗るなよムシケラ!!」

 

だがその程度でブロリーの攻撃は止まるはずが無く、その後ブロリーの攻撃を受けたシャロットはかなりの重症を負ってしまった。

 

「ぐぅ……!?こ……この……!!やりやがったな……デカブツ!」

 

「さっさとくたばるがいい!!」

 

「!?」

 

「あぶねえ!!」

 

悟空が咄嗟にブロリーの攻撃からシャロットを守った。

 

「なっ……余計なことすんな!あのくらいの攻撃なんざ……!!」

 

「おめぇは逃げろ!!ブロリーの相手はオラ達がやる!!」

 

自分達と力の差を感じた悟空達はシャロットを逃がすことを優先とした。

 

「ざっけんな!!やられっぱなしで尻尾まいて逃げるわけねえだろ!」

 

「いいから行け!!おめぇじゃかえって邪魔だ!!」

 

「なっ……!!」

 

その言葉にシャロットは何も言うことが出来なかった。

 

「こい!ブロリー!!」

 

そして悟空とトランクスはブロリーを連れてどこか遠くへと行ってしまった。

 

シャロットは悟空の言う通り真反対の方向に走って逃げた。

 

「ハァ……ッ!ハァ……ッ!クソ!クソ!クソォッ!!」

 

シャロットは逃げてしまった自分が情けなく感じひたすらに地面を殴っていた。

 

「なんでアイツの言うことを聞いて逃げてんだオレは……っ!!」

 

「ギィーッ!!」

 

「!?」

 

すると、逃げた先にも敵がいたらしく、先程倒した栽培マンが再びシャロットの前に現れた。

 

「うっ!?さ、さっきの化け物!?に……逃げ……!!」

 

逃げようとしたシャロットだったが先程悟空に言われた言葉がフラッシュバックした。

 

『おめぇはこのまま逃げろ!!』

 

そしてもう一つの言葉が頭の中に響いた。

 

『シャロット!!お前は逃げろ!!』

 

遠い昔の記憶で誰が言ったのかは覚えていないが確かにシャロットは何者かによってそう言われていた。

 

 

「ぐっ……!どいつもこいつも……逃げろ逃げろって言いやがって……!!逃げてたまるか……オ、オレはもう……逃げねぇ……!!……こいよっ!!化け物っ!!」

 

シャロットは逃げずに栽培マンの前で構えた。

 

「ギヒヒヒヒ……ヒギャーッ!!」

 

「!?」

 

すると目の前の栽培マンが突如倒れた。

何故突如倒れたのか分からずにいると後ろから声が聞こえてきた。

 

「オイッスー!!今のあなたの覚悟……すっごいかっこよかったですよ!でもあなた一人だけじゃ危ないですから私も手伝っちゃいました!」

 

「確かに無謀ではあったけど……その勇気は彼を思い出すね。」

 

「……お、おまえらは……?」

 

シャロットの前に現れたのは剣を構えた二人の少女だった。

 

「私はユース……ゴホン……ンッ ンッ…ペコリーヌです!」

 

「私はレイ。よろしく。」

 

それぞれペコリーヌとレイと言うらしい。

 

「……シャロットだ。チッ……余計なことしやがって……助けてくれなんて言った覚えはねぇぞ。」

 

シャロットは不貞腐れた様に自己紹介を済ます。

 

「あはは!年頃の男の子って感じですね!ヤバいですね☆」

 

「まあまあ、そう邪険にしなくてもいいじゃないか。ちょうどキミに聞きたいことがあったんだ。」

 

「聞きたいこと?そりゃ残念だったな。あいにくオレは名前以外全部忘れちまってるみたいでな……ったく目が覚めるなり化け物やデカブツに襲われるし状況がさっぱりわかんねぇぜ。」

 

「デカブツだって……?ペコリーヌ、やはりシャロットは何か知ってるかも知れないよ。」

 

「そうみたいですね……シャロットくん!ちょっといいですか?」

 

「……。」

 

そうしてペコリーヌとレイはシャロットの身に起きた今までの出来事を聞き出した。

 

「……なるほど、そんな事があったのか。」

 

「それも大変ですけど……問題なのはシャロット君ですよね。なにせ記憶がないんですから……。」

 

「でも『バトルロイヤルの参加者』には違いないみたいだ。」

 

「バトル……ロイヤル?なんだ?そりゃあ……?」

 

シャロットはその言葉に首を傾げた。

 

「そうか……キミはそれすら忘れてしまってるんだね。」

 

「どうやら前に謎の声が聞こえた人はこのバトルロイヤルに強制参加させられてしまったようなんです。」

 

 

様々な時代から集められた戦士たちが生き残りをかけて戦い、勝ち残った者には「超ドラゴンボール」が授けられる。この大規模の騒動の名は『超時空バトルロイヤル』と言うらしい。

 

 

「いろんな時代……なんでも叶う?へっ!うさんくせえ祭りだな……!そんなもん信じてるヤツの気が知れねぇぜ!」

 

シャロットは鼻で笑いながら否定する。

 

「だが1部の参加者は『超ドラゴンボール』欲しさに既に各地で闘いを始めているようだよ。」

 

「……ふん。しかし……わざわざ敵になる相手にこんな事を説明するとは余裕だな。」

 

「……事情の分かってない人と闘うのはどうかと思ってね。」

 

「……チッ。礼は言わねえかんな……!」

 

「まあ今すぐ闘う必要なんてありませんよ!まずはあの街に行ってみたらどうですか?美味しいご飯を食べてしっかり休むのも大切です!闘うのはそれからでもいいですからね!」

 

「飯!?その街に行けば腹ごしらえが出来るのか!?」

 

ペコリーヌの提案にシャロットがすごい勢いで食いついた。

 

「はい!いっぱいご飯を食べれば元気もいっぱいですよ!!」

 

「…………ま、まあ……やっぱ一応……礼は言っておいてやる……。」

 

「……シャロット。キミはなんか感情が分かりやすいね。まあ大変だとは思うけど……キミの無事を祈っているよ。」

 

「シャロット君!ファイトですよ!!」

 

「ああ!」

 

こうしてシャロットはペコリーヌとレイとは別れ、一旦街まで歩いていくことにした。




この二人が一緒って珍しくない?


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不思議な出会い

「さて……なにはともあれまずは飯だ!確かこっちに進めば街が見えるんだよな……。そこで腹ごしらえしてその後どうしたもんか……。覚えているのは名前と『誰か』の記憶が微かに……それと闘う力か……。」

 

シャロットが独り言を言いながら歩いてる時だった。

 

「……っとーーー!!!!」

 

「は!?」

 

「どいてぇーーーーーーっ!!!」

 

突如大きな車がシャロットに突っ込んできた。

 

「うっわあああああっ!!!」

 

その車はギリギリの所でようやく止まった。

するとその車から2人が降りてきた。

 

「あっぶな……ギリギリセーフ!」

 

「私今のは死んだと思いましたよ……。」

 

2人はシャロットの前で話し始める。

 

「な、なんだてめぇら!妙な箱でいきなり突っ込んできやがって!」

 

シャロットは運転していた女性に声を張り上げる。

 

「ごめんごめん!私は『ブルマ』。これは自動車っていうの。それにしてもあんた見たことない格好ね。」

 

「あの……私は『ユリシス』って言います。貴方もこのバトルロイヤルの参加者なんですか?」

 

二人は自己紹介をした。

 

「……オレはシャロットだ。それと……オレには記憶がねえから何も覚えてねえ。」

 

「あんたも記憶がないの!?」

 

「あんたも??」

 

ブルマが驚きながらシャロットの顔を覗き込む。

 

「実はこのユリシスって娘も記憶が無いって言ってるのよ。何かの偶然にしてはおかしいわよね。」

 

「お前も記憶が無いのか……。」

 

シャロットもその言葉を聞き驚く。

 

「……私は……えっと……お友達とお話してる時にこっちに来てしまったみたいです。でも前の世界にいた時から記憶が無くて……。」

 

「そうだったのか……。」

 

するとその時だった。

 

「あ、ブルマさん……下がって!シャドウがいるよ……!」

 

「えっ!?嘘!?」

 

ユリシスの言葉にブルマが硬直する。

 

「ォォォォォォ………。」

 

シャドウは既にブルマ達を囲うようにして出現した。

 

「うひゃあああ!!化け物〜〜〜!!」

 

「……落ち着け!オレがやる!!」

 

するとシャロットは一人で現れたシャドウを次々と攻撃して行った。

 

「オオオオオオ……!!」

 

「はぁああああっ!!!!」

 

シャロットは少しずつ戦闘の勘を取り戻していきシャドウを蹴散らした。

 

「ど……どう?ちゃんと倒した!?」

 

ブルマは恐る恐る状況を確認する。

 

「あ、ああ……って……なんでオレがてめぇらの為に闘わなきゃいけねえんだ!!」

 

「か弱い女の子を守るのは男として当然じゃない!」

 

「えっと……守ってくれてありがとう。」

 

「………!」

 

ユリシスがお礼を言うとシャロットは少し顔を赤くした。

 

「あ……大丈夫ですかシャロットさん……。」

 

「………大丈夫だ!」

 

するとブルマはシャロットを見て少し気分が上がった。

 

「それにしても驚いたわ!あんたなかなか強いわね……!ちょっと見直しちゃった!」

 

「な……なんだよ……褒めてもなんも出ねえぞ。」

 

シャロットはブルマに褒められて少し嬉しかったのか口角を少し上げた。

 

「……え〜っと、シャロットだっけ?あんた、記憶が無いんでしょ?だったら暫く私とユリシスのボディガードにならない?」

 

「はあ?」

 

それはシャロットからしても思ってもみない提案だった。

 

「私とユリシスを悪党から守ってくれたら代わりに私はあんたにこの時代の事を教えてあげるわ!」

 

「な……べ、別にそんなの……。」

 

「あんた、この時代のこと何も知らないんでしょ?このままじゃ野垂れ死によ?」

 

「むぐぐ……。チッ……仕方ねえ……しばらくの間だけだ……!この時代のアレコレを知ったら後は勝手にやるからな!忘れんなよ!!」

 

シャロットはブルマの口車に上手く乗せられて付き添うこととなった。

 

「じゃあ改めて自己紹介をするわね。私はブルマよ。」

 

「ユリシスです。よろしくお願いしますねシャロットさん。」

 

「ブルマにユリシスか……ふん……せいぜい利用してやる!覚悟しとけよ!」

 

するとブルマがシャルルの尻尾を指さした。

 

「それよりあんた……その尻尾のアクセサリーダサいわよ?外したら?」

 

「この尻尾は飾りじゃねえ。」

 

「「え!?」」

 

ブルマとユリシスは同時に驚く。

 

「……どうやらオレはサイヤ人という種族らしい。」

 

「……サイヤ人……。聞いたことがあるような……。」

 

ユリシスはその言葉に何か引っかかる事があるのかしばらく考え込んだ。

 

 

 

 

そして3人は街まで移動していた。

 

「へえ……てめぇも違う時代から来たクチか。」

 

「そうなのよ……夏休みを利用して旅に出た途端いきなり巻き込まれてこの時代に放り込まれたってわけ!」

 

「でも……ブルマさんには感謝しています。一人でいた私を助けてくれるなんて。」

 

「そりゃああなたみたいな可愛い子ほっとけるわけないでしょ?」

 

「か、可愛い……?私がですか?」

 

「可愛いわよ!どう見たって綺麗な顔じゃない!」

 

「あ、ありがとうございます……?」

 

ユリシスは少し照れながらブルマから目を逸らした。

 

「あ!そろそろ街に着くわ!」

 

そうしてブルマ達はランドソルという街に入って行った。

 

「ふーん……なかなかいい街じゃない!私のいた時代よりは少し古いけど味があるわね!」

 

「な……な……なんだここ!でけぇ家ばっかりだ!すげぇ村だな!」

 

「村じゃなくて街よ。とりあえず……着替えと食料を買っておかないとね!」

 

「なあ、オレ腹減ったから飯食ってていいか?」

 

「いいけど……あんたこの世界のお金持ってないでしょ?はいこれ!」

 

そういうとブルマはシャロットに大量のルピを渡した。

 

「そのお金でユリシスとなんか食べてきてもいいわよ。」

 

「おお!なんか分からねえけどありがてぇ!行こうぜユリシス!」

 

「あ……はい!」

 

シャロットはユリシスを連れてレストランへ行った。

 

「んで……どれが美味いんだ?」

 

「……私もこういうのはあまり食べた事がありませんけど……あっ!このシチューっていうものは前の世界で食べた時に凄く美味しかったです!」

 

「これだな?よし!じゃあ食うか!!」

 

シャロットがシチューを注文すると白い料理が運ばれてきた。

 

「……これがシチュー……ってやつか?こんな真っ白なのに美味いのか?まあ……匂いは悪くねえが……。」

 

「わああ……美味しそう……!」

 

そしてシャロットがシチューを一口食べると……

 

 

「……!!なんだこりゃ!!こ、こんなうめえモノ初めてだ!!」

 

「本当に美味しいですね!」

 

ユリシスとシャロットはシチューを食べ進めた。

すると……

 

「やあ!君たち!私の作ったクレープは如何かな?」

 

「食べる!!って……だれだお前!!」

 

クレープ二つを持った赤髪の女性がシャロットとユリシスに話しかけた。

 

「ああ〜ごめんごめん。私は『ラビリスタ』。君たちの食べっぷりが気持ちよかったからつい話しかけちゃったよ。ま、ほらクレープ食べな?」

 

ラビリスタはそう言ってシャロットとユリシスにクレープを握らせた。

 

「ありがとうございます……。」

 

「んで……何の用だよ。」

 

シャロットとユリシスはクレープを受け取るとラビリスタの方に向き直った。

 

「私はこの時空の混乱の調査をしていてね、この事態を招いた黒幕を探してるんだ。だから……君たちにはこの超時空バトルロイヤルに参加して欲しくてね。」

 

「バトルロイヤル……って生き残ったら願いが叶うってやつか?」

 

「私たちが……?」

 

「うん。君たちはバトルロイヤルに参加しながらブルマっていう娘と一緒に各地を好きに回ってみて欲しいんだ。それに……君はサイヤ人でしょ?知り合いにも君に似た人がいるから分かるんだ。もしかしたら闘うことが刺激になって記憶を取り戻すことがあるかもしれないしね。」

 

「お、オレの記憶が闘いで……?」

 

「うん、じゃあ君たちの健闘を祈るよ。また何かあったら私のところにおいで。あそこのクレープ屋の屋台に行けばいると思うからさ。」

 

ラビリスタはそう言うと帰って行った。

 

「……好き放題言いやがって!確かにあの女の面倒は少しの間見るつもりだがお前の話に乗るわけじゃないからな!」

 

シャロット達は食事を済ませるとブルマと合流し再び旅に出た。

 

 

「……まったく、バトルロイヤルの参加者達もお行儀よく正々堂々闘えばいいのにね〜。」

 

「この世界に招かれた人達は悪党から子供まで様々らしいですからね。」

 

「子供もいるの?見境がないわね……。」

 

ブルマ達がそんなことを話しながら歩いていると、突然誰かの叫び声が聞こえてきた。

 

「うわあああああっ!!!」

 

「え!?な、なに!?」

 

「あれは……!?」

 

3人が駆け寄るとそこには青いマントを羽織った一人の少年がシャドウの前で怯えていた。

 

「少し待ってろ!!」

 

「え……!?」

 

「危ないですよシャロットさん!」

 

シャロットはシャドウの群れの中に飛び込んでいった。

 

「ちょ……あんた何やってんのよ!?」

 

「あ……あ…………!」

 

「チッ……仕方ねえな!」

 

シャロットは一瞬でシャドウとの距離を詰めると一撃でシャドウ達を倒して行った。

 

「え……!」

 

「大丈夫か?」

 

「あ……ありがとう!」

 

少年は立ち上がると服に着いた埃をはらい落とす。

 

「あんた大丈夫?」

 

「どこも痛くありませんか?」

 

ブルマとユリシスも心配そうに声をかけた。

 

「……助けてくれてありがとう。僕の名前は『ユウキ』。ギルド管理協会の依頼でキノコ狩りをしていたら突然この世界に連れてこられたんだ……!」

 




スピンオフのスーパーヒーロー編の話も更新したので良ければ読んでくださいねー


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復讐のラディッツ

今後登場して欲しいキャラがいたら教えてください!できる限り登場させます!


シャロットはシャドウに襲われそうになったユウキという人物を助けた。

 

 

 

「……助けてくれてありがとう。僕の名前は『ユウキ』。ギルド管理協会の依頼でキノコ狩りをしていたら突然この世界に連れてこられたんだ……!」

 

「ギルド……キノコ狩り?何を言ってるのか全くわからねぇな。」

 

シャロット達もユウキの言っている意味が分からずにしばらく固まっていた。するとユウキが思い出したかのような顔をしシャロットの肩を掴んだ。

 

「そ、そうだ!コッコロと『ゴクウ』っていう人を見なかった!?」

 

「いや、知らねぇし見たこともねえ。」

 

シャロットはそう言ったがその言葉にユリシスが反応した。

 

「あ、あの……!貴方もコッコロさんと『悟空』さんの関係者なんですか!?」

 

「うん!コッコロとゴクウは僕の仲間だよ!」

 

「ユリシス?何か知ってるの?」

 

「はい……私のいた世界ではコッコロさん達に保護して貰っていたので。」

 

ユウキとユリシスの意外な共通点が見つかった。

 

「……つまりお前はそのコッコロとゴクウってやつとはぐれてこの世界に来ちまったってことか。ま、てめぇが何者かは知らねえがオレの邪魔だけはするなよ?」

 

シャロットは冷たくユウキに言い放つ。

 

「僕……弱いけどシャロット達の力になりたい!だからしばらくの間僕も同行させて欲しい!」

 

「はあ?お前に何ができるつて言うんだよ。」

 

シャロットが面倒くさそうにしているとブルマが話に割って入った。

 

「別にいいじゃない。私としてはボディガードが増えてラッキーだしこのまま放っておく訳にも行かないでしょ?」

 

「……私も賛成です。ユウキ君と一緒にコッコロさん達も探したいですし。」

 

「……ちっ。分かったよ。ほら行くぞユウキ。」

 

「ありがとう……!」

 

シャロットがユウキを仲間として迎え入れようとした時だった。

 

 

 

「うわああああっ!!!!」

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

 

「こ、子どもの声!?」

 

ブルマが反応した瞬間、ユウキは既にその声のする方向へと走っていた。

 

「ユウキさん!?」

 

「おいユウキ!!」

 

シャロットもユウキの後を追いかけるように走って行った。

 

「ちょっとユウキ!?置いていかないでよ〜!!」

 

ブルマ達も走ってその方向に向かうと小さな子どもがシャドウと対峙していた。

 

「ォォォォォォ……。」

 

「こ、怖いよ〜!!!」

 

紫色の道着に長い髪の男の子だった。

 

「たぁああっ!!!!」

 

すると駆けつけたユウキがシャドウの攻撃から男の子を守った。

 

「!?」

 

しかしユウキはシャドウを抑え込むので精一杯な為反撃ができなかった。

 

「おらぁあっ!!!」

 

「ォォォォォォ…………。」

 

だがユウキがシャドウを押さえ込んでいる間にシャロットがシャドウを葬った。

 

「あっ……あなた達は……?」

 

男の子が驚いていると……

 

「ユウキ君!シャロット君!後ろにシャドウが……!!」

 

「「!?」」

 

「ォォォォォォ……!!」

 

シャドウが背後に現れた。反応が完全に遅れたシャロットとユウキだったがここで思わぬ助けが入った。

 

「……やれやれ、間一髪だ。」

 

助けに入ったのは肌が水色で2本の剣を空中に浮かせている不思議な格好をしたやつだった。

 

「てめぇは……!?」

 

驚くシャロット達だったがその男はそのまま続ける。

 

「子どもを助けに入ったのは立派だが……助けるならちゃんと最後まで気を抜くなよ?でないと締まらないぜ?」

 

「ぐっ…………。」

 

すると遅れてブルマが走ってきた。

 

「はあ……はあ……!2人のボディガードが私を置いて行ってどうするのよ!」

 

ブルマは息を整えると助けてくれた人物にお礼を言った。

 

「えっと……貴方がシャロット達を助けてくれたのね?ありがとう。」

 

「ふ……放っておいてもよかったんだが見ていて危なそうだったんでつい……な。」

 

するとシャロットがまたもやその発言に食いついた。

 

「なんだと?てめぇなんぞの力なんか借りなくてもあの程度……!」

 

「はいはいそこまで。」

 

シャロットが喧嘩をふっかけそうになっていたがブルマが一旦止めさせた。

 

「とにかく……キミ大丈夫だった?怪我とかしてない?お名前は?」

 

「あ……ボク、『孫悟飯』って言います。その……ありがとうございます……助けてくれて。」

 

その男の子は『孫悟飯』と名乗った。

 

(……なんか……この子悟空さんに似てますね……。)

 

ユリシスは悟飯の顔を見てそう感じた。

 

「ガキがなんでこんな所に一人でいやがるんだ?まさかてめぇもバトルロイヤル参加者か?」

 

「はい……そうです……。」

 

「ふーん……こんな弱そうなガキがねぇ……。」

 

するとシャロットを助けた男が改めて問いかける。

 

「それでお前たちは何者なんだ?」

 

「名乗る必要なんてあるか?てめぇとは潰し合う敵同士なんだぜ?」

 

「……たしかにバトルロイヤル参加者である以上いずれ闘うことになる相手だ。……とはいえ今ここで闘えばせっかく助けた子供やそこの彼女も巻き込んでしまう。それはお前も本意ではないだろう?ここは一つ穏便にいこうじゃないか。」

 

「そうね!話がわかる人でよかったわ!シャロット!あんたもここで闘いはじめたりしないでよ!」

 

「チッ……しょうがねえな。」

 

「……オレの名は『ザッハ』。改めて聞こう。お前の名は?」

 

シャロットはそれを受け入れると渋々自己紹介をはじめた。

 

「……シャロットだ。」

 

「シャロットか……まあ、よろしく……って感じでもないな。次会ったら敵同士だ。」

 

「……あの、悟飯くんは私たちが保護するって感じでいいんでしょうか?」

 

「ああ、そうしてくれ。」

 

「ちょ、ちょっとまってください!」

 

すると悟飯が焦ったような表情でシャロット達に話す。

 

「?」

 

「実は僕……師匠とはぐれちゃって……師匠を探してる途中なんです!」

 

「……師匠?」

 

シャロットが首を傾げると、後ろから大きな声が聞こえてきた。

 

「見つけたぞ悟飯!!!」

 

「「「「!?」」」」

 

現れたのは肌が緑色で悟飯と同じ道着を着た男だった。

 

「見つけたぞ!このクソガキめ……!手間をかけさせやがって!」

 

男は怒っていたが、そんなことはお構いなしにシャロット達は突然の出来事で驚いていた。

 

「あ!ピッコロさん!!」

 

「え!?」

 

「はあ!?」

 

「こ、こいつがお前の師匠!?いけすかねぇヤツだな……ガキ相手に威張り散らしやがって……!」

 

「なんだ貴様らは。このガキをどう扱おうがオレさまの勝手だ。」

 

「なにぃ!?」

 

「おいおい、落ち着けよ。お前もバトルロイヤル参加者なのか?」

 

ザッハが男に声をかけるとピッコロはその通りだと返してきた。

 

「ちっ……本来ならここで消してやる所だが今はそんな場合ではない!すぐにここから離れろ!!」

 

「……どういうことだ?」

 

ピッコロが忠告したその時、空から一人の男が現れた。

 

「ふはははっ!!とうとう見つけたぞ!『カカロット』のガキ!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

そう言って現れたのは『ラディッツ』だった。

 

「てめぇは……!?」

 

「そ、そんな……!この人……お父さんが倒したハズじゃ……な、なんで……!?」

 

「気をつけろ悟飯。奴は以前よりも強くなっていやがる……!」

 

「こ……こいつは……その尻尾は……!」

 

するとラディッツはシャロットを物珍しい顔で見た。

 

「……ん?そこのお前……!まさかサイヤ人……!?」

 

「やっぱりてめぇもサイヤ人だったか……!」

 

同族と会うとは思わなかったラディッツはニヤリと笑った。

 

「くくく……こいつはいい!貴様も手を貸せ!!そいつらを血祭りにあげるのだ!」

 

ラディッツはシャロットを仲間に引き込もうとしていた。

 

「ふざけんじゃねぇ!あいにくオレにガキをいたぶる趣味はないんでな……お断りだ!」

 

「何……?甘ったれたことを……!どうやら貴様もカカロット同様出来損ないのサイヤ人のようだな……!」

 

するとラディッツの目が怪しく光った。

 

「な……なに……?」

 

「……いいだろうこの面汚しめ!貴様もガキとナメック星人もろともオレが消してやる!」

 

するとラディッツの気が大幅に膨れ上がりシャロット達目掛けて突進してきた。

 

「「!?」」

 

「死ねい!!」

 

「まずい……!!」

 

ユウキはとっさにブルマとユリシスを抱えて避けた。

 

「うわぁあっ!!」

 

「きゃあああ!!」

 

「よし、いいぞユウキ!てめぇはそいつらと一緒に引っ込んでろ。こいつはオレがやる!」

 

「シャロット君!」

 

「オラァアッ!!」

 

シャロットは向かってくるラディッツに向けて拳を振りかざすがそれは簡単に避けられてしまった。

 

「はっはっはっはっ!!どこを狙っているんだ!?」

 

「チィ……!」

 

(なんてスピードだ……!今のオレじゃあ追いつけねぇ……!)

 

「おいシャロット!お前一人で勝てる相手じゃないだろう。」

 

ザッハもシャロットの助っ人として前に出た。

 

「お前なんかに心配されなくてもあんな野郎くらいぶっ飛ばしてやるぜ!」

 

するとその様子を見たピッコロも闘うことを決めた。

 

「チッ……!おい貴様ら!貴様らもここで死にたくはあるまい。どうにかして奴に隙を作れ!奴を倒す作戦がある!」

 

「なに……!?なんでてめぇの言うことを……!」

 

シャロットは不満を漏らすもザッハはピッコロの意見に賛成した。

 

「……強がらずに言う通りにしたほうがいい。あいつの強さは普通じゃない……!!」

 

ザッハはラディッツから溢れ出る膨大な気を感じ取っていた。

 

「そういうことだ。オレだって貴様らと組んで闘うなんてヘドがでるぜ……!」

 

「チッ……隙を作ればいいんだな?やってやるよ……!」

 

シャロットはピッコロの提案に乗ることにした。

 

「作戦会議は終わったのか?ならばさっさと死ねぇい!!!」

 

ラディッツはエネルギー波を放った。

 

「!?」

 

「当たってたまるかよ!」

 

シャロットはギリギリでかわしながらザッハと共にラディッツとの距離を一気に詰める。

 

「おらぁああっ!!!」

 

「はぁあああっ!!!」

 

「ふん………!」

 

ラディッツは余裕の笑みを浮かべ二人の攻撃を全てかわす。

 

 

「この……ちょこまか動きやがって……!」

 

「どんな身のこなししてるんだ……!」

 

「この程度とは……まるで話にならんな。」

 

「うるせぇ……!」

 

「なにやら話しているようだが……そんな小細工が通用すると思っているのか?はぁっ!!!」

 

 

「「!?」」

 

ラディッツは気合いだけで二人を吹き飛ばした。

 

「ぐぁああっ!!」

 

「ぐっ……!」

 

攻撃を受けてシャロットとザッハは倒れてしまった。

 

「オレの隙を狙っていた様だが……その程度ではオレに傷一つ付けることもできんぞ?」

 

「く、くそぉ……!」

 

シャロットは苦痛の表情を浮かべながら地面に倒れ伏す。

 

 

「だ……駄目だ……くそっ……隙を作ることさえできんとは……!くっ……悟飯!!せめて貴様らだけでも逃げるんだ!!」

 

「そ、そんな……!!」

 

何か作戦があったピッコロだったがラディッツの強さが想像の遥か上をいっておりとても実行できることではなかった。

 

「おい、何処をみている!」

 

「何っ!?」

 

するとラディッツは無防備なピッコロに距離を詰め腹に膝蹴りをくらわした。

 

「がっはぁ……!!」

 

ピッコロまでも一撃でやられてしまった。

 

「う、嘘でしょ……シャロット達がこうも簡単に……!」

 

「あぁ……皆さん……!」

 

「みんな……!」

 

「そ、そんな……ピッコロさん!ピッコロさん……!!!」

 

ピッコロが倒れたのを目の当たりにした悟飯の気が少しずつ上昇する。

だがその瞬間をラディッツは見逃さなかった。

 

「そうはさせんぞ?」

 

「!?」

 

ラディッツは悟飯の前に現れ腹に思い切り拳を撃ち込んだ。

 

「あ……っ……か……。」

 

悟飯も一瞬にして意識を手放してしまった。

 

「ふん。カカロットのガキめ……貴様は怒りで戦闘力があがり厄介だからな。」

 

ラディッツは倒れゆく悟飯を尻目にユリシス達の前まで歩いてきた。

 

「わ、私たちをどうするつもりよ……!」

 

「…………うぅ……。」

 

「くっくっ……安心しろ。今に貴様らも地獄へ送ってやる。くたば……!?」

 

「ひぃっ……!」

 

「くっ……!」

 

ラディッツがブルマ達をなぶり殺しにしようとしたその時、突如ラディッツは身体を強ばらせた。

 

「あ…………な、なんだ……!」

 

ラディッツの拳はユリシスの目の前で止まっていた。

 

(な、なんだ……この凍るような殺気は……!!)

 

ラディッツの視線の先には目を虚ろにしたユリシスがいた。ユリシスの目に光はなくただ冷たくラディッツを見ていた。

 

「………………。」

 

(なんだこの女は…………!何者だ……!今、オレが攻撃していたら……間違いなくオレは死んでいた…………!!ば……化け物だ……!こいつは化け物だ……!!)

 

ラディッツの身体は震え額からも汗を滲ませる。するとその隙をつきピッコロがラディッツを取り押さえた。

 

「動きがとまっているぞ!!!」

 

「!?」

 

ピッコロはラディッツに飛びかかった。

 

「ぐぅ……貴様ごときがオレをとめられるかぁ!!」

 

「ぐわああああっ!!!」

 

ラディッツはピッコロを返り討ちにした。

 

「ピッコロ……さん…………!」

 

悟飯は力を振り絞りピッコロの元へ歩く。

 

「がっ……ぐ……くるな!逃げろと……言っただろう……!悟飯!」

 

「チッ……まだ息があるか……!ゴミめ!」

 

「ピッコロさん……!!どうして……!」

 

「さあな……貴様ら親子の……甘さが移っちまった……。まったく……ヘドがでるぜ……。」

 

ピッコロはその言葉を最後に意識を手放した。

 

「ピッコロさん……ピッコロさーんっ!!!」

 

悟飯は泣き叫んだがラディッツは容赦なく襲いかかってくる。

 

「お遊びはこれまでだ!!貴様らまとめて片付けてやる!」

 

「残念だがそれは無理だな。」

 

「なんだと!?」

 

倒れていたザッハが起き上がり何かの魔術を発動させていた。

 

「準備完了だ!時間稼ぎご苦労だったな!」

 

ザッハがそう言うとシャロット達の姿がラディッツの前から消えた。

 

「なっ!?ヤツら……どこ行きやがった!!」

 

ザッハはラディッツと戦うよりも遠くへ避難する事を選んだ。

 



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はじめての師匠

シャロット達はザッハの魔術によってラディッツから遠く離れた場所へ転移した。

 

「……っ……こ、ここは……!?」

 

「……チッ……!ランドソルに飛ぶはずだったが少し離れた草原に飛んでしまったようだ……。オレもまだまだ未熟だな……。」

 

「こ……こんな技があるならなんでもっと早く使わねぇんだ!」

 

「無茶をいうな……!こんな隙の多い魔術を戦闘中に使えたのはほぼマグレだ!本来こんな賭けに出るのはオレの性分じゃないんだ!」

 

シャロットとザッハが言い合ってると悟飯がピッコロの側まで歩み寄る。

 

「……う……ひぐっ……!ピッコロさぁん!」

 

「た……助かった……のか?……う……ぐっ……!」

 

ピッコロは何とか一命を取り留めたらしく目を覚ました。

だがシャロットはブルマ達の姿がないことに気がついた。

 

「……ん!?そういえばブルマとユリシスとユウキはどこだ!?」

 

「お前の連れか?なんだ気づいてなかったのか。あいつらなら……。」

 

「シャロットーー!!!!」

 

「ん?」

 

シャロットが後ろを振り返るとブルマ達が走ってきた。

 

「よかった……!無事だったんですね!」

 

「てめぇら……どこに行ってたんだ!?」

 

「ご、ごめん……。ブルマとユリシスにはさっきの闘いに巻き込ませたくなかったから僕が逃がしたんだ。」

 

ユウキが必死にラディッツから二人を遠ざけるために逃がしていた。

 

「わ……わたしはイヤだって言ったんだからね!!シャロットを置いていくなんて……!」

 

「私も……。でも……シャロット君たちの邪魔になるようならって思って……。」

 

ユリシスとブルマも反省気味になっていた。

 

「そ、そうか……。」

 

たがシャロットはそんな3人の行動に対し怒らなかった。

 

「お、怒らないの?シャロットを置いて逃げたのに……。」

 

「……ふ、ふん!あそこにいられても足手まといだったしな……!」

 

シャロットは照れくさそうにそう答えた。

 

「そういえばあんたさっきやっと私たちのこと名前で呼んだわね!ふふっ。」

 

「う、うるせえな!いつまでも『てめぇ』や『こいつ』だと面倒なだけだ!!」

 

「……でも……そのピッコロさん?って人……重症ですからランドソルまで運びましょう。後……今回のことは一度ラビリスタさんに報告した方がいいかもしれません。みなさんもついてきてください。」

 

「みんなってのはオレもか?」

 

ザッハが意外そうな顔をする。

 

「ザッハさんも関係者ですのでできればばご同行していただけると助かります。」

 

「……やれやれ。まあオレもこのままでは後味が悪いからな……話を聞かせてもらうとするか。」

 

こうしてシャロット達は一度ランドソルのラビリスタがいるクレープ屋まで足を運んだ。

 

 

「ん?やぁ!さっきぶり!!……って少年!!???うわぁー会いたかったよ少年無事だったんだね!!」

 

ラビリスタはユウキの姿をみるとそのまま抱きついた。

 

「あ、クレープ屋のお姉さん……だよね?」

 

「ん?あっ……そっか。この少年はまだ私の正体を話してない時のか……!」

 

ラビリスタは一旦ユウキから離れるとシャロットの他に何人かいる事に気づいた。

 

「ん?何人か増えてるね。何かあった?」

 

シャロットはこれまでの経緯を詳しくラビリスタに説明をした。

 

 

「…………過去に倒したはずの戦士に襲われた……か。まあ色んな時代の戦士が集結してるからそのケースは珍しいことではないよ。」

 

「で、でも……ピッコロさんが言ってました。あいつ……お父さんと二人で倒した時より強くなってる……って!」

 

「……そのラディッツって奴はサイヤ人っていう種族だね?サイヤ人の成長速度は常識では測れない。この世界に来てから強くなった可能性も十分にある。(それに……あのゴクウの兄ということは才能も十分にあるだろうしね……。)」

 

シャロットは拳を固く握りしめる。

 

「……オレもサイヤ人だ。ならあいつを倒せるくらい強くなってやる……!」

 

シャロットもサイヤ人であるためラディッツのような奴には負けたくないのだろう。

 

「な、何いってるの!?あんなのに勝負なんか挑んでたら死んじゃうわよ!?」

 

「ふざけんな!!やられっぱなしでいられるか!」

 

すると怒りが高まるシャロットにユリシスが優しく諭した。

 

「シャロット君。少し冷静になって?敵わない相手から逃げるのも立派な戦略だよ?」

 

「……っ!!」

 

だがその言葉はシャロットの奥に眠る記憶に触れた。

 

『シャロット!!お前は逃げろ!!』

 

まだ誰に言われたのかは分からないがその言葉だけがシャロットの脳内に刻まれていた。

 

「……っ!……オレは逃げねぇ……!」

 

「シャロット君……。」

 

「記憶はねぇが……オレの身体が『逃げんじゃねぇ』って……そう言ってんだ!」

 

(……!シャロット……ふっ……キミは少年と同じ目をしているんだね。)

 

ラビリスタはシャロットの姿とユウキの姿を重ねた。

 

「ぼ、僕も……!僕もピッコロさんの仇を討ちたい!!……強くなりたいです!」

 

悟飯も闘志を燃やしていた。

 

「……現実的じゃないな。お前たちがそのサイヤ人……っていうのだとしてもだ。いくら素質だけあってもお前たちでやれる修行には限界がある。」

 

「……そ、それは……。」

 

するとラビリスタがある提案をしてきた。

 

「じゃあ『師匠』がいればいいんだね?」

 

「……え?」

 

「師匠……!?ってことはそいつに頭を下げて闘いを教われってことかよ!?」

 

「うん。そうだね。それが一番いいと思うよ。」

 

「な、なんでそんなことをしなきゃいけねーんだよ!」

 

「だって強くなるためでしょ?だったら『強さとは何か?』を教えてくれる人に教えを乞うしかないじゃん。このままラディッツから逃げ続けるならそれでもいいけどね。」

 

「ぬぐっ……。」

 

そう言われるとシャロットは黙り込んだ。

 

「じゃあ君たちにピッタリな師匠を紹介してあげるよ。あ、それと……ユリシスちゃんとブルマちゃんはシャロットが修行してる間はランドソルで待機してた方がいいかな。」

 

「わかったわ。じゃあシャロット、あんたはこれを持っていきなさい!」

 

ブルマはシャロットに小さな機械を手渡した。

 

「なんだよこれ。」

 

「通信機よ。あんたって危なっかしいから連絡取れないと不安だもの。」

 

「……ふん。よく分からねぇがくれるってんなら貰っておいてやる。」

 

ある程度話が済むとラビリスタが自身の権能を使い座標を弄り始めた。

 

「それじゃあ行こうか。」

 

「ああ!……っと!ブルマ!ボディガードの件は少し待ってろ!絶対強くなって戻る!ユリシスもまた今度な!」

 

「え?う、うん……。」

 

「皆さん、頑張ってくださいね。」

 

シャロットはそれだけをブルマ達に伝えるとラビリスタと共に師匠になってくれる人物の元へ移動して行った。

 

「……ボディガードのこと覚えてたのね……意外と律儀ねあいつ……。」

 

「私もシャロット君の性格が段々分かってきたような気がします。」

 

 

 

 

シャロット達はラビリスタの能力によってとある場所に移動していた。

 

「これは……!どうやって移動したんだ!?これもザッハと同じ魔術ってやつか?」

 

「同じなものか……!オレの魔術よりも遥かにレベルが高いぞこれは!……というか…………ちょっと待て!!なんでオレまで一緒に連れてこられてるんだ!?」

 

「修行の人数は多い方がいいからね。さて……彼らはここら辺にいるはずだけど……。」

 

 

その時だった。

 

「なんだキサマら!?何者だっ!!」

 

「「「「!?」」」」

 

シャロット達の後ろにいたのは髪が尖った戦闘服を着た男だった。そして左目付近には赤いスカウターが装着されていた。

 

「こ、この人が……師匠!?」

 

悟飯はその男の姿を見て驚いた。

 

「そ。まだ暴れん坊の時の『ベジータ』だけど……彼もサイヤ人だ。サイヤ人の戦い方はサイヤ人に学ぶのが1番だからね。」

 

「さっきから突然現れてぶつぶつ言いやがって……どうやら死にたいらしいな……!」

 

「なんでそんなに怒ってるのさ!一つ頼みがあって来ただけなのに〜!」

 

「頼みだと……?ふざけるな!何故キサマの頼みを聞かなければならんのだこっちは今気が立ってるんだ……!本当に殺すぞ。」

 

ベジータは何故か頭に血が昇っており話ができる状態ではなかった。

 

「頼みがあるなら力ずくでオレをどうにかするんだな。」

 

「力ずくでだと!?」

 

「そうだ。キサマがオレに力を示したらその頼みとやらを聞いてやらんでもないぞ?」

 

「……やってやろうじゃねえか。てめぇをぶっ飛ばして頼みをきいてもらうぜ。」

 

シャロットは強気に前に出た。

 

「……ふん。おい!起きろナッパ!いつまで凹んでるんだ!」

 

するとベジータが横で小さくうずくまっているナッパというサイヤ人に声をかけた。

 

「んあ……?ベジータ……オレはもう闘いたくねぇよ。オレにはもうサイヤ人として生きる資格なんて……。」

 

だがベジータに呼ばれたナッパは何故か落ち込んでおり闘う気すら見せなかった。

 

「……なんだあいつ。なんであんな落ち込んでるんだ?」

 

シャロット達もベジータとナッパに何があったのか気になっていた。

 

「おい。なんでそのおっさんそんなに落ち込んでんだ?」

 

シャロットが疑問を投げかけるとベジータは屈辱を受けたかのような表情を浮かべて答えた。

 

「……くっ……!さっきナッパがここを通りかかった黒い長髪の女と闘って呆気なく返り討ちにあったんだ……!」

 

「……………………は?」

 

「女に………………?」

 

シャロットとザッハはその言葉を聞いて固まった。

 

「あ………………。(察し)」

 

ラビリスタだけ何故か全てを悟ったような顔をしながらそのままオブジェクトを変更して去って行った。

 

「その女はナッパとこのオレを倒した後に……『ごめんなさい!お父さんとママを探さなきゃいけないので!』とか意味不明な言葉を残して去って行きやがったんだ……!!これ程の屈辱があるか……!!」

 

ベジータは怒りをあらわにして叫んだ。

 

「……あ、なんだ……その、それは災難だったな……。」

 

「……まあ、元気出せよ…………。」

 

何故か教えを乞う側のシャロットとザッハがベジータ達の境遇に同情するという謎の展開になった。

 

「……オレはサイヤ人の王子なんだぞ!!!!敵であるオレを倒して謝りながら去っていく女など……許せるものかああああっ!!!!!」

 

「お、おう……そうだな。」

 

「う、うん……。」

 

「……腸が煮えくり返る……!!おいナッパ!!こいつらを死なない程度に遊んでやれ!」

 

「「「「は!?」」」」

 

そう言うとベジータは無理やりナッパを立たせた。

 

「いきなりなんだよベジータ……オレはもう……。」

 

「落ち込んでいる場合じゃないだろう!あの女と次に会う時までオレたちも強くならなければならない。さあ、さっさと行け!」

 

「わ、わかった……。」

 

ナッパは渋々シャロット達の前で構えた。

 

「へっ、オレ達が落ち込んだおっさんに負ける訳がねえ……!!」

 

「……オレたちの力を示すいい機会だ。」

 

「そうですね……ボク達には師匠が必要ですから!」

 

「行こう……みんな!!」

 

シャロット達も気を引き締めナッパとの戦闘に臨んだ。

 




関係ないけど最近ミソラの可愛さに気づいた


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闘う覚悟

シャロット達は覚悟を決めるとナッパに突撃して行った。

こんな凹んでるおっさんに負けるわけないと意気込んでいたシャロットだったがナッパの実力は想定を遥かに上回っていた。

 

「おらぁあっ!!!」

 

「はっ……!!」

 

シャロット達が必死にナッパへ攻撃するもナッパは防御もせずにそれら全てを受けきった。

 

「なにぃ!?」

 

「バカな……!?」

 

「うそ……!?」

 

ナッパの圧倒的な防御力を前に段々とシャロット達の戦意が削がれていく。

 

「はぁ……はぁ……!つ、強ええ……!」

 

流石のシャロットもナッパの強さを認めざるをえなかった。

 

するとナッパは自分の自信を取り戻したのかシャロット達の姿を見て少し気分が高まっていた。

 

「ふん……!寝起きの運動にもならねえ……つまんねえことさせやがって!」

 

一方でベジータもシャロット達の実力を見て少しがっかりした様子だった。

 

「わかりきってたことだがこの程度か……チッ……こんな弱いカス共をどう鍛えろというんだ……!」

 

「ああ!?てめぇだって女に負けたじゃねえか!」

 

「……くっ……キサマらにはわからんだろう!ヤツの強さをな……!あの若さであの強さ……相当『腕のいい師匠』に鍛えられたとしか思えん。ハッキリ言ってやろうか?キサマらのようなゴミ共がオレ達と戦うなんざ夢のまた夢だ!!」

 

「なんだと……ば、バカにしやがって……!」

 

「下級戦士が……威勢だけはいいな……オレはサイヤ人の王子だ。口の利き方に気をつけるんだな!」

 

「くっ……。」

 

それから数時間が経ち、完膚なきまでにやられたシャロット達は一度ベジータ達から離れていた。

 

「……ちくしょう……!」

 

自分の弱さを自覚したシャロットは拳を固める。するとシャロットの持っている通信機から声が聞こえた。

 

「アー……テステス……よし!あんたの所よく見えるし音も聞こえてるわね!」

 

「な……なんだコレ!?遠くにいるのにココにいるみてえだ……!気持ちわりいな……!」

 

「気持ち悪いとは何よ!……ともかくこの通信機を持っていればあんたがどこにいても話ができるわ!」

 

「それでシャロット君、修行をつけてくれてる師匠はどうだった?」

 

ユリシスもシャロット達の経過が気になっていた。

 

「……少なくともヤツらが強ええのは間違いねえ……けどよ……。」

 

シャロットはナッパと闘った後のやり取りを思い出していた。

 

『きさまらのようななんの才能もない下級戦士の面倒なんぞこのオレが見れるかあっ!!』

 

『オレだっててめえみたいな野郎願い下げだ!!』

 

『お、落ち着けシャロット!!仮にも師匠に対してケンカをふっかけるな!』

 

『そうだよ……喧嘩はよくないよ!師匠なんだから!』

 

『誰が師匠だ!!だいたいきさまらはなんだ!サイヤ人でもないくせに……!』

 

『ご、ごめん……。』

 

『オレだって不本意なんだよ……!』

 

『で、でも……!修行しないとそのベジータさん達の言っている例の女の人にも勝てないんじゃ……!』

 

『チッ……!きさまに言われなくてもわかっている……!だが!そんなザマじゃ途中で死ぬのがオチだ!!』

 

『あ〜……!めんどくせえ!!もうこいつらぶち殺しちまおうぜ!!』

 

『や……やめろナッパ!!うまくは言えないがさっきコイツらと一緒にいた赤い女……ヤツも相当な実力者の筈だ……!何をされるか分からんぞ!!』

 

『な……なんでえ!?ベジータらしくねえ……なんか気持ちわりいぞ……?』

 

『……とにかく!きさまらはトレーニングをつけるにしても実力不足だ!出直してこい!!』

 

 

と、こんな風にベジータ達に追い払われた。するとザッハもその事を思い出し嘆いていた。

 

「はあ……踏んだり蹴ったりだ……!なんでオレがこんな目にあわなきゃならないんだ!!」

 

「ま、まあ……突然修行を頼みに行ったボク達も悪かったのかも……。」

 

「そもそもオレはお前たちに巻き込まれて修行に連れてこられただけだ!!」

 

「……どうしよう……。」

 

みんなが不満を持っていた。

 

「……シャロットくん達は大変そうですね。その師匠って人は怖そうですし……。」

 

「ふん!あんな奴に頼るまでもねえ……!むしろあいつらより強くなってぶっ飛ばしてやる!!」

 

「でも……師匠がいないと修行も……。」

 

「師匠がいなくてもオレ達で修行ってのをしたっていいだろ。」

 

「え?ボク達だけでですか?」

 

「ああ。……ってか修行ってどうやるんだ?」

 

「どうやるって言ってもな……瞑想したり……精神を鍛えたり……。」

 

ザッハが様々な修行を提案するがシャロットは呆れたような顔でザッハを見ていた。

 

「……そんなんで強くなれんのか?お前修行したことねえだろ。」

 

「オレはお前みたいな腕力自慢と違って頭脳派なんだよ……!!」

 

「悟飯は?あの緑のやつから修行受けてたんだろ?」

 

「えっと……ボクの場合は……食事と睡眠以外の時間はとにかくピッコロさんと組手をしてました!」

 

「いいねえ……!そりゃすごそうだ……!!そんじゃその組手って奴をやってみようぜ!!ユウキも悟飯も行くぞ!」

 

「うん!」

 

「はい!!」

 

シャロットとユウキと悟飯は一緒に組手をしに別の場所へ向かった。

 

「……やれやれ。オレはそんな汗くさいのはゴメンだ。向こうで瞑想でもしているか……。」

 

ザッハも一人で修行をはじめた。

 

 

 

「いくぜユウキ!!悟飯!!」

 

「はい!!よろしくお願いします!」

 

「いつでもいいよ!」

 

3人はお互いに向き合うと組手をはじめた。

 

「てりゃああっ!!」

 

「やぁっ!!」

 

「たぁあああー!」

 

それから数時間経ち、三人はボロボロになりながらも楽しそうな顔をしていた。

 

「はぁ……はぁ……ユウキさんもシャロットさんも強いですね……!!」

 

「へっ……!お前らやるじゃねえか。」

 

「……正直ボクは着いていくのでやっとだよ……。」

 

すると通信機を通して闘いを見ていたブルマ達が心配そうにしていた。

 

「三人とも大丈夫ですか……?」

 

「ちょっとシャロット!本気出しすぎよ!!」

 

「バ、バカ言うな!こいつら……めちゃくちゃ強ええぞ……!!」

 

「シャロットさんも!ボクの知らない闘い方ばかりで……ユウキさんも動きが読みづらくてすごく勉強になりました!」

 

「シャロットと悟飯……強い!」

 

三人はお互いに実力を認め合った。

 

「……しかしザッハのヤツ……遠くでボーッとしやがってやる気ねえのか……?」

 

「でもピッコロさんも一人の時はじっとしててそれが修行なんだっていってました。」

 

「うさんくせえ……!」

 

「じゃあちょっとザッハの様子を見に行きましょうよ。」

 

「……仕方ねえな……。」

 

ブルマに言われるとシャロットはザッハの所まで歩いて行った。

 

「おい!」

 

「……なんだお前か。組手はもう終わったのか?」

 

「ブルマがてめえの様子を見てこいってうるせえんでな……随分のんびりしてたみてえだな。」

 

「さっき言っただろう。オレにとっては組手よりも瞑想で精神を磨く方が重要なんだ。」

 

「力だって重要だろうが。オレたちと組手する方が強くなれるだろ。」

 

するとザッハはシャロットの意見に溜息をつきながら答えた。

 

「はあ……組手だって同じだ。それであのラディッツに並べると思うか?あのナッパってやつにも……そしてその上にはベジータ……更にそいつらでも手も足もでないような謎の女もいるんだぞ?」

 

「むぅ……!」

 

するとザッハは立ち上がるとその場を離れようとした。

 

「おい!どこ行くんだよ!」

 

「……まあここらが潮時だな。オレは抜けさせてもらう。」

 

するとその言葉に反応したのはブルマ達だった。

 

「ええっ!?そんな!!せっかく仲良くなったんだししばらく一緒にいましょうよ!」

 

「そうですよ!いきなりそんな……。」

 

「何度も言ってるがオレは成り行き上お前たちと一緒にいただけだ。ここからはオレなりにこの闘いを生き抜く方法を考えるとするさ……じゃあな。」

 

ザッハがその場を去ろうとした時だった。

 

「てめぇ……逃げんのか?」

 

「……なんだと?」

 

「悔しくねえのかよ!?オレたちが強ければ悟飯の師匠も怪我しねえで済んだんだ!!」

 

「……弱いやつは死ぬ……この闘いはそういう命の取り合いなんだ……!!」

 

「じゃあてめぇはなんでユウキと悟飯を守った!」

 

「あいつらはまだ子供だ!ピッコロとかいうやつと違ってそんな覚悟は無い!!」

 

シャロットとザッハのお互いの意見がぶつかり合う。

 

「ちょ……ちょっと!ケンカはやめなさいよ!」

 

ブルマが必死に止めようとするがシャロットは止まらない。

 

「覚悟がありゃいいってのか……!!てめえの考えにはこれっぽっちも納得いかねえ!!!」

 

「それはお前が甘いからだ……!覚悟もないのに闘いに足を突っ込むな!!……オレはお前たちの前から消える。もう二度と会うこともないだろうな。」

 

「なっ……待ちやがれ!!」

 

「待ってください!!」

 

「待って!!」

 

シャロットとユウキと悟飯の声が重なる。

ザッハはその声を無視して歩き出した。

 

「てめえ……まだ話は終わって……っ!?危ねぇ!ザッハ!!」

 

「!?」

 

すると突如ザッハの死角から攻撃が飛んできた。

 

「うおおおおっ!!!」

 

シャロットはザッハを庇うように前に飛び出した。

 

「ぐああああ!!!!」

 

その攻撃はシャロットに命中しまともに攻撃を受けたシャロットは倒れてしまった。

 

「シャロット!!!」

 

するとザッハの横から現れたのは以前倒したシャドウよりも大きくなったシャドウだった。

 

「シャロット!!」

 

「シャロットさんっ!?シャロットさーん!!」

 

悟飯とユウキもシャロットに駆け寄った。

 

「……こいつはシャドウ……!まさかずっと不意打ちの機をうかがっていたのか……!!こいつにそんな知能があるとは思えんが………!」

 

「ォォォォォォォォ………。」

 

シャドウの声も低くなっており顔の部分には白い仮面のような物がつけてあった。

 

「そ、そんな……!不意打ちなんて卑怯だよ……!!」

 

「これが………シャドウ……!?前のやつとは全く違う!」

 

「……悟飯、ユウキ。悔しいがこのバトルロイヤルにおいて……不意打ちも立派な戦術だ……。」

 

「で、でも……!」

 

「シャロットが……!」

 

「……ああ。今のでわかった。それが……こんなにも不快とはな!!」

 

「ォォォォォォォォ……!!!」

 

「オレは自分の命をかけず安全圏から人の命を奪うようなヤツに成り下がるのはゴメンだ!!」

 

「ゥゥゥゥゥ……!!!!」

 

シャドウは大きく腕を振り上げるとそのままユウキ達に攻撃をした。

 

「……させない!」

 

「「!!」」

 

するとユウキはその攻撃を剣で弾きシャロットを守った。

 

「ナイスだユウキ!起きろ……シャロット!!」

 

ユウキがシャドウをくい止めてる間にザッハはとある魔術をシャロットにかけた。

 

「……く……う?痛みが……。」

 

シャロットはザッハの魔術によって身体が回復した。

 

「シャロットさんの傷が一瞬で治っちゃった……!!」

 

「……シャドウが不意打ちとはな。ではこちらも遠慮なく4対1で行かせてもらおうか!!」

 

「よっしゃあ!いくぜ!!」

 

「はい!!」

 

「うん!!」

 

シャロット達は一斉にシャドウに向かっていった。

 

「おりゃああっ!」

 

「はぁっ!!」

 

「てやあああっ!!!」

 

「はあぁあああっ!!!」

 

「グォォォォォ……ッ!!」

 

4人は畳み掛けるようにシャドウを攻撃していく。

するとシャロットは自分の身体に違和感を覚えた。

 

(な……なんだ?身体に力がみなぎる!ザッハの術の力なのか?)

 

シャロットの力が底から湧いてくるような感覚になっていた。

 

「これで終わりだ!!」

 

「グォォォォォォォォォォォォォ……!!!!」

 

4人は協力して無事にシャドウを倒すことに成功した。

 

「はぁ……はぁ……!やっと終わったか。」

 

「……シャロット。怪我の方はしっかり回復したみたいだな。」

 

「ん?ああ……まあな……!」

 

「……今の魔術はオレの隠し玉だ……あまり人には見せたくなかったんだが……。」

 

「ふん!そうかよ……!だが礼なんかいわねえからな!」

 

「あんたねえ……子どもじゃないんだから!!」

 

「ふふっ……でもよかったです。」

 

通信機のブルマとユリシスもシャロットの様子を見て安心した。

 

「……礼はいらない。これは詫びがわりだ。お前にも命をかける覚悟はある……それが分かったからな……。」

 

「……あ?んな覚悟あるわけねえだろ。死ぬのはゴメンだ。」

 

シャロットはその言葉を即効で否定した。

 

「たった今オレを庇って死にかけただろう!?こいつ……もしかして天然か!?」

 

「うっせえ!それよりさっきの話の続きだ!ザッハ!」

 

「……いいや、話は終わりだ。…………お前の修行……付き合ってやるよ。」

 

ザッハは潔くシャロット達の修行に付き合うことを決めた。

 

「……はあ?どういう風の吹き回しだ?」

 

「さっきのシャドウのような姑息な手も考えていたが……どうやらオレには向いてないらしい。お前たちと一緒にいるのが今1番手頃な修行の機会になりそうだからな。」

 

「ほぉ〜。いいじゃねえか!ザッハ!なら早速組手をしようぜ!オレがお前を叩き潰してや……」

 

「それは遠慮しておこう。」

 

「なんでだよっ!!」

 

こうして一先ずザッハと行動を共にすることとなった。

 

 

 

 




これこのままのペースで行ったら余裕で300話くらいいきそうなんだけど……


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すれ違う運命

引越ししてて投稿遅くなりました!


「さて、そんじゃ修行再開だ!」

 

シャドウを倒したシャロットたちは強くなるために修行を再開しようとしていた。

 

「構わないが先に言っておくぞ。……お前たちとひたすら取っ組み合うのはゴメンだ。」

 

「……なに?お前な……ワガママ言える状況じゃねえだろ!」

 

「お前がそれを言うか……!……とにかく最後まで聞け!既に手の内を知っている相手と延々と闘うのは効率が悪い……と言ってるんだ。」

 

「えっと……つまり?」

 

「つまり武者修行だ。他のバトルロイヤル参加者に勝負を挑む。」

 

ザッハは修行の効率を上げるために様々な戦士と闘かうことを提案した。

 

「回りくどい言い方しやがって……まあ、悪くねえ案だ。そんじゃあ手頃なやつを探すか?」

 

「ああ。だが、探す手間が省けたようだ。」

 

「???」

 

するとザッハ達の後ろから声が聞こえてきた。

 

「おーい!!」

 

「はあ!?て、てめえらは……!」

 

シャロットに声をかけたのは途中で出会ったペコリーヌとレイだった。

 

「ここでさっき闘っていたのはシャロットくんだったんですね!さっきぶりです!調子はどうですか?………え?ユウキくん!?」

 

「またキミと会うことになるとはね。それにしても……少し雰囲気が変わったかい?……ってユウキ!?」

 

ペコリーヌとレイはユウキを見ると驚いたような顔をした。

 

「ん?なんだてめぇらユウキの知り合いだったのか?」

 

「いや、ボクは知らないよ?」

 

「……このユウキくんは私たちのことを知らない時代のユウキくんでしたか……。」

 

「そうみたいだね。でも彼がこの世界に来てると分かっただけでもよかった。彼がこの時代にきているなら『ユイ』や『ヒヨリ』もいるはずだしね。」

 

レイとペコリーヌは別の時代のユウキを探しているようだった。

 

「おい待てよ。少しオレたちの修行につきあえよな!匂いで分かるぞ。てめぇら強ぇな?」

 

「……修行?まあシャロットがそう言うならいいよ。付き合おう。」

 

「……そうですね。私たちもこの世界で生き延びるためには強くならなくちゃいけないですから!えーっと……そのお二人は……。」

 

「……ボクは孫悟飯です!お手合わせお願いします!」

 

「……ザッハだ。すまないな。シャロットのわがままに付き合わさせてしまって。」

 

「私はレイだ。よろしく。」

 

「悟飯くんにザッハさんですね。私はペコリーヌです!では、行きますよ……!」

 

自己紹介を済ませるとシャロット達は直ぐに構えた。

 

「おっし!!いくぜえええ!!!」

 

こうしてシャロットたちの修行が始まった。

 

 

一方、とある無人の街にて……

 

「…………。」

 

赤いフードを被った一人の男が燃えゆく街を見下ろす。

 

「………ふっ。敗北者の血も……穢れた血も……このオレがこの世から消し去り正しい在り方に戻してやる……!」

 

意味深な言葉を呟く男がその場を後にしようとしたその時だった。

 

「すいませーん!少しお聞きしたい事があるんですけど……っ!」

 

一人の女性の声が背後から聞こえた。

 

「……まだ生き残りがいたのか。死ね!」

 

「………。」

 

「!?」

 

男は振り返ると同時に女性に向けて攻撃を放ったがその腕は女性に掴まれた。

 

「……物騒ですね。それにこの街の有様……あなたがやったんですか?」

 

その女性は男を真っ直ぐと睨みつけた。

 

「……貴様……まさかサイヤ人か……!」

 

「さあ?どうでしょう……っ!!」

 

「ぐっ!?」

 

女性が力を入れると男は体勢を崩した。

 

「……お父さんとママの場所を教えてほしかっただけだけど……どうやらこのバトルロイヤルの真相に深く関わってそうですね。」

 

「……丁度いい……!サイヤ人ならオレの手で消してやる。」

 

男は女性の手を振り払うと体勢を低くし足元を狙った。

 

「………!」

 

しかし、女性はその攻撃を見抜いていたかのように飛んでかわした。

 

「ちぃ……!はぁあああっ!!!」

 

男は避けられた先に追撃をしたが……

 

「ガラ空きですよ……!」

 

「がっはぁ……!」

 

女性の肘が男の腹部にめり込んだ。

 

「ぐ……ぐぅ…………!!」

 

男は腹を押さえながらゆっくりと立ち上がった。

 

「……貴様……何者だ……!!」

 

「……私は『シャルル』。未来から来たサイヤ人です!」

 

「……未来の……サイヤ人……。くっ……はは……!今のオレではまだ貴様に届かないようだな。だが覚えておけ。オレは貴様らを許しはしない。」

 

「許さない……ですか。」

 

「いずれまた会うことになるだろう。必ずオレの手で貴様らサイヤ人を殺してやる……さらばだ。」

 

男はそう言うとシャルルの前から姿を消した。

 

「……分からない。どうしてサイヤ人を恨むのか。それにあの人も……。」

 

シャルルは複雑な表情を浮かべた。

 

「……とりあえず今はお父さんとママを探しに行こう。」

 

そしてシャルルはまた歩き出した。

 

「……それにしても何処に……。」

 

暫く歩いていると、シャルルの目の前に人影が見えた。

 

「ん?あの人影……!!あのシルエット!!」

 

その後ろ姿はシャルルの父であるブラックにそっくりだった。

 

「やっと見つけたあ!!お父さーん!!」

 

シャルルが走り出すとその男はゆっくりと振り向いた。

 

「……誰だてめぇ!オレはてめぇの親父なんかじゃねえぞ?」

 

「……え?」

 

振り向いた人物は確かにブラックそっくりだったが所々特徴が違っていた。

額には赤いバンダナをつけており、頬には傷、そして戦闘服を着ていた。

 

「……オレは『バーダック』だ。てめぇのようなガキは知らねぇ!とっとと失せろ!」

 

「えぇ!?嘘ですよね!?話を聞いてよお父さんー!!」

 

シャルルは必死にバーダックにしがみついた。

 

「誰がお父さんだ!!くそ!離れろ!!なんだこのガキどんなパワーしてやがんだ!!」

 

バーダックが振りほどこうとしてもシャルルが離さないため暫くこのやり取りが続いた。

 

 

 

一方で、激しい闘いが各地で起こっている中、奇妙な出会いをした人物がいた。

 

「はあ……何なのよ何なのよもう!!いきなりこの意味わかんない世界に連れてこられて生き残れって……!!」

 

ぶつぶつと独り言を呟く黒猫少女がいた。

 

『キャル』である。

 

「……色々な事が一度に起こりすぎよ……!陛下を連れ戻した後に『アイツ』が突然いなくなっちゃって……気づけば私も一人でこの世界に……。はあ……コロ助もペコリーヌもユウキもどこにいるのかしら……。」

 

そしてそのまま行く宛てもなく歩いているととある少女とぶつかった。

 

「あいたっ……!」

 

「うわぁ!」

 

二人はぶつかると尻もちをつく。

 

「痛た……あ、ごめん!大丈夫!?」

 

キャルが少女に手を伸ばす。

 

「へ、平気だべ!そっちこそ大丈夫だっただか?オラ、下ばっか見てたから気づかなかっただ!」

 

その少女の口調は訛っているがチャイナ服のようなものを着ており、顔は美人で綺麗な人だった。

 

「ほら、立てる?それにしても変わった喋り方ね?」

 

「ありがと……オラの名前は『チチ』だ。お、オラの喋り方……やっぱり田舎くさいだか?」

 

「そんな事ないわよ。珍しいって思っただけ。私は『キャル』よ。よろしくねチチ。」

 

「キャルさんか……美人さんだな!」

 

「きゅ、急に何よ……!チチだって可愛いじゃない。」

 

キャルとチチはお互いを褒めあって照れていた。

 

「それにしてもこんな所で一人で歩いてたの?この世界は物騒だから一人で歩くのは危ないわよ?」

 

「あはは……実はオラ、運命の人を探しているだ!」

 

「運命の人?……いいわね!!そういうのってロマンチックだわ!」

 

「キャルさんも誰かを探していただか?」

 

「え?あぁ〜まあ、そんな感じね。はぐれた仲間を探していて……その中には……その……ちょっと気になってる人もいるっていうか……。」

 

キャルもチチの言う運命の人という言葉を聞いて少し意識する人物がいた。

 

「と、ところでさ、チチの言う運命の人ってどんな人なの?」

 

「オラの運命の人だか?そうだな〜……その人はすっげえ強くて、会った頃はオラ達二人とも子供だったんだけんど……そん時からすっげえ強かっただ!大人になったあの人ならきっとすっげえ強くて男前になってるに違いねえだよ!」

 

チチは運命の人の特徴を聞かれると嬉しそうにそう答えた。

 

「へぇ〜チチの運命の人って凄く頼りになりそうなのね。」

 

「ああ!キャルさんも運命の人がいるだか?どんな人だ?」

 

チチもキャルの運命の人が気になっていた。

 

「運命の人って……そんなんじゃないわよ!ただちょっと気になってるって言うか……。アイツは強くて……優しくて……こんな私を助けてくれたし……。」

 

キャルも恥ずかしそうに答えた。

 

「へぇ〜!キャルさんの運命の人も強いんだなあ!そうだ!今度会えたらオラの運命の人に会わせてやるべ!」

 

「あたしこそ今度会ったらチチにあわせてあげるわ!」

 

 

「「悟空さ(ゴクウ)に!!」」

 

 

 

「「………………え??」」

 

 

二人の周りが凍りついた。

 




はい修羅場


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最高の闘い

シャルルはバーダックを自分の父と勘違いしているらしく中々バーダックから離れようとしなかった。

 

「何度も言わせるな!オレはてめぇなんざ知らねぇ!」

 

「ひ、ひどい!なんでですか!!私ですよ!?普通自分の子供がわざわざ会いに来たら喜ぶでしょ!!」

 

「だから!!オレはてめぇの親父じゃねえええ!!!」

 

「いやだーーーー!!!」

 

そしてしばらくすると、シャルルはようやくバーダックが父では無いことを理解した。

 

「あの……本当にすみませんでした。」

 

シャルルは深々とバーダックに頭を下げる。

 

「ちっ……ようやく分かったか。それにしてもお前の親父にオレが似てるとはどういう事だ?」

 

「……はい。実は……私のお父さんの名前は『ゴクウ』って言うんですけど……本当に顔がそっくりなんです。だから……つい見間違えてしまいました。」

 

「……知らねぇ名前だな。……ん?……オレと似てるやつがてめぇの親父ということは……てめぇまさかサイヤ人か?」

 

「……は、はい!私は一応サイヤ人です!」

 

「まさかてめぇのような女がサイヤ人とは……。」

 

「あはは……よく言われます。ところで……バーダックさんも何か目的があってこんな所に?」

 

「……そうだ。サイヤ人を殺しまわってるフードの男を探している。」

 

「え!?」

 

バーダックの目的にシャルルは驚いた。

シャルルはバーダックと出会う前にそのような特徴の男と闘っていた。

 

(あの人悪い人だったんだ……逃がしちゃったけど大丈夫かな……。)

 

「おい、聞いているのか?」

 

「は、はい……!私さっきそのフードの男と会いました!」

 

「なんだと!?」

 

「敗北者の血がどうたらこうたら言ってましたけど……最終的に逃げられちゃいました……。」

 

「…………逃げられただと?」

 

バーダックはシャルルのその発言に眉根を寄せた。

 

(あのフードの男がこいつを前にして逃げたのか?よっぽど腰抜けだったのかあるいは……。)

 

「それじゃあ……お互い大変ですけどお元気d……」

 

「へっ!そうか……なら丁度いい。おいガキ!さっさと構えろ。」

 

「え?なんでですか?」

 

シャルルが話を誤魔化そうとしてその場を立ち去ろうとした瞬間、バーダックは突然シャルルを呼び止めて構えた。

 

「あの……その構えは一体……。」

 

「おいおい……サイヤ人同士が出会ったら……やることは決まってんだろ?オレに迷惑をかけさせたんだ。少しばかり付き合ってもらうぜ?」

 

バーダックの顔を見た瞬間、シャルルは全てを察した。

 

(この人もやっぱり本物のサイヤ人なんだ……。)

 

しかしここで断るのは失礼だと思いシャルルも構えた。

 

「分かりました……いつでもいいですよ!」

 

「へっ……歯ごたえのねぇ奴とばっかり闘ってたからな。本気でいくぜ?」

 

バーダックは一気に気を解放する。そのあまりの迫力にシャルルの顔が綻んだ。

 

「……素晴らしい力ですね……!」

 

「どうした?ビビってるのか?」

 

「いえ、少し……ワクワクしてきました。」

 

「……ほぅ。」

 

バーダックはニヤリと笑うと拳を振り上げる。

シャルルもそれに応えるように片腕を前に突き出した。

 

次の瞬間、バーダックの強烈な一撃がシャルルを襲った。

 

「はああっ!!」

 

「……!」

 

だがシャルルはそれを受け止めると、そのままバーダックを投げ飛ばした。

 

「ぐぉっ!」

 

バーダックは投げ飛ばされてもすぐに体制を整え着地する。

 

「へっ……まだだ!」

 

そして再び地面を蹴り一瞬にしてシャルルの背後に回り込むと、今度は後ろ回し蹴りを放った。

 

「はあっ!」

 

「ふっ!」

 

しかしそれを予測していたかのようにシャルルは振り返りながら蹴りを掴んだ。

 

「やるなぁ!オラァッ!」

 

「うわっと……!」

 

バーダックは掴まれた足を無理やり振り上げシャルルを攻撃した。

 

シャルルはその攻撃を後ろに飛んでかわすと、地面に手をついて飛び上がりバーダックに向かって蹴りを放った。

 

「はっ!!」

 

「おっと……!」

 

バーダックはそれを避けると、素早く体勢を立て直しまた攻撃を開始した。

激しい攻防が続く中、バーダックがシャルルに語りかける。

 

「……おい、名前はなんて言うんだ?」

 

「……『シャルル』です。」

 

「……シャルルか。おもしれぇ……。まさかてめぇのような温厚なサイヤ人がこれほどまでの強さとはな。」

 

「……私も……貴方のような歴戦の猛者と戦う事ができて光栄です!」

 

バーダックは更にスピードを上げ、より一層激しく攻め立てる。

だがシャルルはバーダックの猛攻を全て完璧に受け流していた。

 

「へっ、大した奴だ……!」

 

「……ここからですよ……!!はっ!」

 

「!?」

 

するとシャルルは自身にプリンセスナイトの能力をかけた。

シャルルの身体が金色の光に包まれる。

 

「……その姿……。」

 

バーダックは思わず動きを止めた。

シャルルの纏っている光が消えると、そこには先程とはまるで別人のような雰囲気を放つ少女が立っていた。

 

「……。」

 

「……さあ、続きを……!」

 

バーダックは目の前にいるシャルルを見て自分の息子の事を思い出していた。

 

(何故だろうな……こいつを見ていると……カカロットを思い出す……。こいつはまさかカカロットの……いや、これ以上はやめとくか。)

 

バーダックは静かに拳をおろした。

 

「……どうしたんですか?」

 

「……やめだ。」

 

「え?」

 

バーダックはシャルルに背を向け歩き出した。

 

「……楽しかったぜシャルル。……またいつか、何処かで闘おうぜ。お互いに生きていたらな。」

 

「……バーダックさん……。」

 

「次は……負けねぇぞ。」

 

そう言い残すとバーダックは去っていった。

 

「……はい。こちらこそありがとうございました。」

 

シャルルは見えなくなるまでバーダックを見送った。

 

「……バーダックさん。ふふっ、なんか……凄い人と出会っちゃったな。」

 

シャルルは一人笑みを浮かべながら呟いた。

 

「さて、私もお父さんとママを探しに行こうっと!」

 

シャルルはバーダックと別れ、再びブラック達を探す旅に出た。

 

 

 

おまけ↓

 

 

 

シャルルの旅日記 1

 

 

「うーん……あの人達なんだか血気盛んだったけど……あれが本来のサイヤ人の習性なのかな。でも、あれが若い時のベジータさんだったんだ〜……雰囲気が全然違ったな〜。」

 

私はとある未来の世界からカオスワールドに来ました。聞けばこの世界には様々な時代の戦士たちが集結しているらしいので私は『お父さん』と『ママ』を探して旅をしています。街並みはランドソルの街とか見たことがない街が沢山あってなんだか色々な世界の建造物がひとつになった感じがしてとても新鮮です!今日から私の行動記録をここに記していきたいと思います。

 

「ん?あの人……。」

 

私がおじさん達を倒し、バーダックさんと別れた後の事です。少し歩いていると奥の方に一人の女の人がいました。元の世界では見たことがない人なのできっと別の世界からきたんでしょうね。とりあえずお父さんとママの手がかりがないかその人に聞いてみることにします。

 

「あの〜……ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど。」

 

「ああ!?んだてめぇは……!こっちは『ケール』を探していて忙しいんだよ!」

 

あれ?ただ声をかけただけなのに物凄く警戒されちゃってるんですけど……。気の強い女の人だなぁ……多分絡まれたら面倒なタイプなのでとりあえず誤解を解きたいと思います。

 

「あっ……ごめんなさい!危害を加えるつもりは無くて……ただとある人を探してるので何か手がかりがないかと思って……。」

 

「嘘をついてんじゃねえよ。あたしは『カリフラ』だ。あたしをここで脱落させようったってそうはいかねえぞ!!」

 

……ダメでした。気に触れたみたいです。多分バーダックさんも私に絡まれた時こんな気持ちだったんだろうなぁ……。そして聞いてもないのに勝手に名乗りだしました。どうやら『カリフラ』さんと言うらしいです。なんでこの世界の人達は声をかけただけで闘いに発展するんでしょうか……。

あぁ……早くお父さんとママに会いたい……。

あとユリシスちゃん元気にしてるかな……。

 

「あたしの邪魔をするならぶっ飛ばすっ!!」

 

うん、もうやだ!!

 

 

 

 



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追いつくために

「オラァアッ!!」

 

「はぁああああっ!!」

 

シャロットとユウキはレイと闘い、ザッハと悟飯はペコリーヌの剣技と力押しの闘いを繰り広げていた。

 

「へっ、やっぱ強えな……いい修行になったぜ。」

 

「それはこちらのセリフだよシャロット。見違えるほど強くなったね。」

 

「私もびっくりしました……ザッハさんと悟飯くんも強いんですけど……この時代のユウキくんもこんなに戦えるなんて思ってませんでした!」

 

「いっぱい修行した!」

 

ユウキもペコリーヌに褒められて嬉しそうだった。

 

「さて、私達はこれで失礼させてもらうよ。また会おうね。」

 

「え?もう行くのか?」

 

「はい。私たちにも探さなきゃいけない人達がいますから!」

 

「そうかよ。へっ、くたばるんじゃねえぞ?」

 

「もちろんです!」

 

そしてペコリーヌとレイはシャロット達に別れを告げまたどこかへ歩いて行った。

 

「よし!オレらも大分強くなった……!」

 

「うん!もしかしたら……!」

 

「はい!もう一度ベジータさん達のところに行きましょう!」

 

シャロット達は強くなった実感を感じて喜んでいた。

 

「やれやれ……ま、確かにオレたちは強くなったしな。お師匠さんの足下をすくってやるとするか。」

 

ザッハも呆れながらもリベンジに燃えていた。

 

 

 

そしてシャロット達は再びベジータ達の下に足を運んだ。

 

「……また来やがったか!」

 

ベジータはシャロット達を睨みつける。

 

「てめえに教えを乞うつもりはねえが……あのままやられっぱなしじゃいられねえからな!」

 

「しつこいガキ共だな。てめえらをいたぶってもちっとも楽しくねえ……。」

 

「楽しくないかどうかはもう一度闘ってみればわかる事だ。」

 

ザッハも負けじとナッパに言い返す。

 

「ほぉ〜う……自信たっぷりだな?」

 

「大口を叩いたからには腕は上げてきたんだろうな?」

 

「もういいだろベジータ。面倒だ!ここで終わりにしてやろうじゃねえか。」

 

「何度も言うがこいつらは殺すな。あの女に何をされるかわからん……!」

 

「ふん!殺さなきゃいいんだろ?だったら二度と動けないようにギッタギタにすりゃいい……!!」

 

「「ええ!?」」

 

ナッパの提案に悟飯とユウキは震え出した。

 

「ふっ、そいつはいい。こいつらが戦えなくなったとあればトレーニングの話も無効だ……くくく……。」

 

ベジータも悪魔のように笑った。

 

「……こいつらに認めさせてやるぜ……オレの力をな!!」

 

シャロットも覚悟を決めたようだ。

 

「バカが……貴様らごときがそうやすやすとナッパに勝てるわけがないだろう!!」

 

「まあそう言うなよベジータ。少しは必死になってもらわねえといたぶりがいがねえ。ま、万に一つも有り得ねえだろうが約束してやろうじゃねえか!オレに一撃でも重いものを食らわせられたら面倒見てやるぜ!ぐははははっ!!」

 

ナッパも堂々と構えた。

 

「後悔すんなよ?ぶっ飛ばしてやる!」

 

「今度は負けません!」

 

「ボクも頑張る!」

 

「よし、修行の成果をみせるぞ!」

 

こうしてシャロット達は再びナッパとベジータに挑む事になった。

 

「まずは小手調べだ……!」

 

ナッパは気弾を放った。

 

「甘いぜ!!」

 

シャロットはそれを片手で受け止め握りつぶした。

「ほう……少しはやるみたいだがまだまだだな。」

 

ナッパは余裕の表情を浮かべている。

 

「へっ!その表情をけしてやる……!いくぞ悟飯!!」

 

「はい!」

 

今度は両手を合わせて巨大なエネルギー波を放つ。

 

 

「ワイルドキャノン!!!」

 

「魔閃光!!」

 

シャロットと悟飯が技を繰り出す。

 

「「はぁあああっ!!!」」

 

2人の合体攻撃はナッパに直撃した。

 

「ちぃいっ!調子に乗るんじゃねぇ!!」

 

ナッパが更に力を込めていると後ろから二人の気配を感じた。

 

「おい、オレたちを忘れてもらっちゃ困るぞ?」

 

「なに!?」

 

ナッパが後ろを振り向くとユウキとザッハが既に攻撃を仕掛けようとしていた。

 

「「はあああっ!!!」」

 

 

ザッハは超スピードでナッパの周りを走りながら連続で蹴りを叩き込み、ユウキもナッパの攻撃を掻い潜りながら連続で拳を打ち込んだ。

 

「ぐおおおっ!!このクソガキ共が……!」

 

だがナッパのタフネスは異常であり、4人の攻撃を全て受けきり思い切り拳を振り回した。

 

「うわああああ!!」

 

「うぅっ……!」

 

4人は吹っ飛ばされた。

 

「てめえらみてえな雑魚には負けられねえんだよ……!」

 

「くそっ……!まだこいつには届かねえのか!」

 

「ま、下級戦士じゃその程度が限界だな!とっととくたばりやがれ!」

 

ナッパはシャロットに強烈な攻撃をした。

 

「ぐああっ……!!」

 

するとその瞬間、シャロットはまた何かの言葉を思い出した。

 

『……オレはいつか肩を並べてお前と闘いたいと思ってる……きたいしているぞ。』

 

その言葉がシャロットの意識を繋いだ。

 

「……っ!!!く、くたばって……たまるかあ!!!!弱いままじゃいられねえ……!理由はわかねえがそれじゃダメなんだよ!!!」

 

「なに!?」

 

「……強くなって……追いつかねえといけねえんだああああっ!!!!」

 

シャロットは気合いで立ち上がりナッパを本気で攻撃した。

 

「むおおおーーっ!????」

 

その重い攻撃でナッパは倒れた。

 

「な、ナッパが……!」

 

その様子を見ていたベジータもナッパがやられた事に驚いていた。

 

「攻撃がはいった……これでダメなら……!!」

 

しかし、今の攻撃でもナッパの意識を刈り取ることはできず、ナッパはゆっくりと起き上がった。

 

「……小僧……!今のは効いたぜ……!」

 

「はぁ……はぁ……くっ!今の一撃でもダメか……!!」

 

シャロットの渾身の一撃だったがナッパはケロっとしていた。

するとナッパはシャロットに真剣な眼差しを向けた。

 

「……おい、てめぇ……。……さっきオレに向かって『強くなって追いつきてえ』……っつったな?」

 

「……は?……んな事言ったか!?オレ……!?」

 

シャロットはさっき言った言葉を覚えていなかった。

すると突然ナッパがシャロットの肩に腕を回した。

 

「そんなにオレに認められてえか!なかなか律儀なやろうだぜ!!」

 

「……は?はああああ!?」

 

「いいぜえ!てめえは気に入った!なかなか根性あるじゃねえか!!!」

 

「何勘違いしてやがるこのおっさん!!」

 

シャロットは誤解と言い張ったがその気になったナッパは誰にもとめられなかった。

 

「おっさんじゃねえ!!今日からオレは師匠だ!!」

 

「は?師匠!??」

 

「がはは!!師匠って響きがいいぜえ!!約束通りてめえらはオレの弟子としてみっちりしごいてやらあ!!」

 

「ほんと!?」

 

「や、やったあ!!」

 

その言葉を聞いたユウキと悟飯は喜んだ。

 

「……はあ……こうなったナッパは面倒臭いんだ……!!」

 

ベジータもナッパに呆れていた。

 

「ざっけんな!、オレはてめえに弟子入りしたくて闘ったんじゃねえ!!」

 

「わかってらあ!オレに追いつきてえってんだろ!?素直じゃねえヤツだぜ!がはは!!」

 

「話きけえええええ!!!」

 

「……このノリにはついていけそうにないな……。」

 

とりあえずシャロット達はナッパ達に修行をつけてもらえることになった。

 

 

 

おまけ↓

 

 

 

今更キャラクター紹介 ネタ切れじゃないよ()

 

シャルル(未来)

 

未来からやってきたブラックとキャルの娘。二人の娘とは思えないほど礼儀正しいがたまに思考回路が壊れて勝手に暴走する。マザコン。

最初は父であるブラックが赤ん坊を抱えたキャルへの攻撃を防げなかった事に失望していたがそれはブラックが弱体化していたと知り考えを改めた。高い戦闘力と潜在能力を秘めているがキレると何をするかわからない。魔人ブウとの最終決戦では超サイヤ人ロゼに覚醒、魔人ブウを圧倒した。ロゼの状態では厨二病となりブラックを連想させるものがある。

 

 

変身形態

 

プリンセスナイトパワー

超サイヤ人ゴッド

超サイヤ人ロゼ

 

好きな食べ物 ママの作ったご飯

 

嫌いな食べ物 魔物料理or虫料理

 

好きな人 両親、 ユリシス

 

 

 

 

ユリシス(現代)

 

本編世界では記憶を取り戻し美食殿の専属メイドとして雇われた。また、暗殺組織【エルロ・ソロリティ】に所属していた過去を持ち、組織の研究員やミロクによって感情を捨てさせられた。本能で気を完全に消しており、悟空でさえもユリシスの気配に気づくことが出来ない。素の戦闘力も異常に高く、ヒットの時飛ばしを真正面から完封した。また、『元に戻す』という能力があり、相手の行動を戻したり体の傷を元に戻したりなど色々な応用が効く。この能力はユリシス自身に常時発動しており、歳をとらず、ダメージを受けたとしてもすぐに元に戻るため死ぬことがない。本人曰く、『もし死ぬとすれば生きるのを諦めた時』だそう。

 

変身形態

 

???

 

好きな食べ物 シチュー

 

嫌いな食べ物 硬いパン

 

嫌いなもの 組織の人間 ミロク

 

好きな人 美食殿メンバー(特にシャルル)

 



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様々な思惑

「……いい……天気ね。」

 

「ほんとだな……。」

 

キャルとチチはお互いに気まずい空気になっていた。

 

(まさかチチもゴクウの事が好きだなんて……まあそうよね。アイツかっこいいし……。)

 

(どうしよう……キャルさんも悟空さの事が好きだったなんて……でも悟空さはかっこいいから仕方ないだな……。)

 

そんな事を考えていると、キャルが先に口を開いた。

 

「あ、あの!」

 

「な、なんだ?」

 

「そ、その、えっと……」

 

キャルが言いたい事は分かっていた。すると、なかなか言葉に出せないでいるのを見てチチはキャルの手を掴んだ。

 

「あぇ……?」

 

そしてチチの方から話し始めた。

 

「……あの!オラ達って似たもの同士だと思うだ!だからキャルさんとは仲良くしたいと思ってるんだ。……ダメだべか?」

 

「……チチ……!ううん!そうよね……私たち似たもの同士だもの。仲良くしなきゃね!」

 

「んだ!オラと一緒に悟空さを探すだ!」

 

「そうね!」

 

二人は無事に仲直りをし、悟空を探しに行こうとした時だった。

 

「はああああっ!!!」

 

「「!?」」

 

キャルとチチの向かう方向で1人でシャドウと闘っている少女がいた。

 

「あの子1人で……!チチ、アタシあの子を助けてくるわ!!」

 

「キャルさん!?オラも行くだ!!放っておけねえだよ!」

 

キャルとチチがシャドウと闘っている少女の加勢に向かった。

 

「私達も協力するわよ!!」

 

「もう心配いらねえだ!!」

 

「あ、あなた達は……!?いや、あなたは……。」

 

その少女はキャルの姿を見て驚愕していた。

 

「何に驚いてるのか知らないけど話は後!今はこいつを倒すわよ!」

 

「オラも……武道家だ!こんなのには負けねえ!!」

 

「……ありがとうございます!サポートお願いします!!」

 

キャルとチチと少女は協力してシャドウを倒して行った。

 

「な、なんとか倒せただ!」

 

「……ふう。あんた一人?ここは危ないわよ?」

 

キャルは水色髪の少女に顔を向けた。

 

「あなた……キャル!?アタシよ!『シェフィ』よ!あなたもこの世界に来ていたのね!」

 

「え?」

 

「二人は知り合いだか?」

 

チチも二人の関係が気になっていた。

 

「……あたし達……何処かで会ったかしら?悪いけど……あんたが誰かは分からないわ。」

 

「……!!」

 

キャルはシェフィと出会う前の時代から来たためシェフィの存在を知らない。

 

(……このキャルは私を知らない時代からきたのかしら……。でも……また会えてよかったわ。)

 

シェフィもその事実を受け入れ、自分のことを知らなくてもまたかつての仲間と会えたことに嬉しく思った。

 

「ところでアンタ、なんで一人で戦ってたわけ?」

 

「……私は仮面の男を探しているの。」

 

「「仮面の男……?」」

 

キャルとチチは仮面の男という言葉に首を傾げた。

 

「ええ。兄さんの仇なの……。でもその様子だとあなた達は知らないようね。」

 

「……そうね。私たちは見てないわ。」

 

「んだな……仮面の男……聞いたことないだ。」

 

「……仮面の男は……私たちの世界で人間を全て消し去ろうとした極悪人よ。」

 

「人間を全て……!?」

 

「消し去る……だか!?」

 

「……仮面の男の強さははっきり言って異常よ。私たちが……束になってかかったとしても……傷一つ与えるのが精一杯だったわ。」

 

「……そんな奴がいたのね。」

 

「シェフィちゃん……だっただか?よければオラ達と一緒に行動しねえか?」

 

「……え?わたしが……?でも迷惑じゃ……。」

 

「迷惑なんかじゃないわよ!それにあんた一人で生きていけるほどこの世界は甘くないわ!ついでにあんたのいう仮面の男も一緒にさがしてあげるから感謝しなさいよね!!」

 

キャルとチチの言葉を聞き、シェフィは嬉しそうに頷いた。

 

「……ありがとう!改めて……私はシェフィ。これからよろしくね。」

 

 

 

 

一方その頃……

 

 

 

「オラァ!!くたばりやがれえ!」

 

「…………。」

 

ブラック達を探していたシャルルはカリフラというサイヤ人に絡まれ闘いを強いられていた。

 

「はっはー!!どうした!手も足もでねえのか?」

 

「もう勘弁してくださいー!」

 

シャルルは文句をいいながらカリフラの攻撃を皮一枚でかわす。

 

「チィ……逃げんなコラ!!」

 

(なんだコイツ……攻撃が全然当たらねえ……。アタシの攻撃が見切られてんのか……!)

 

カリフラも闘っているうちに手応えの無さを実感していた。

 

(……カリフラさんには悪いけど早いとこ実力差を実感してもらってこの場を離れよう。)

 

するとシャルルは自身にプリンセスナイトの力をかけた。

 

「はっ!!」

 

「!?」

 

シャルルの体が綺麗な光のオーラに包まれた。

 

「な……な……!」

 

「どうですか?まだやりますか?」

 

シャルルは悪そうな笑みを浮かべてカリフラに問いかけた。するとカリフラは……

 

「すっげぇ!!それどうやってんだ!?」

 

「え?」

 

カリフラはシャルルの変身に食いついてきた。

 

「なあ!その変身どうやってんだ!?」

 

(うわ面倒くさ!どうしよう……適当に言って早いとこ逃げよう。)

 

「うーんとね、ゾワゾワって感じかな。」

 

「ゾワゾワか!?背中あたりのゾワゾワがヒントなのか!?」

 

「うんそうだよー(棒)」

 

「よし、はああああ……!!」

 

するとカリフラはシャルルが冗談で言ったアドバイスを信用して気を溜め始めた。

 

(よし、カリフラさんには悪いけど今の内に……)

 

「はああああ!!」

 

「え!?」

 

シャルルがその場から立ち去ろうとした瞬間、カリフラの気が大幅に膨れ上がり髪が金髪に変わった。

 

「できた!!これがお前と同じ変身だな?」

 

「いやいやいや!?おかしいしそれ私と同じ変身じゃないから!!」

 

まさか適当なアドバイスで超サイヤ人に覚醒するとは思わなかったシャルルは驚いた。

 

「よし!そんじゃあ教えてもらったお礼にてめぇを倒してやるよ!!」

 

「結局そうなるの!?」

 

カリフラは超サイヤ人に覚醒しシャルルに襲いかかった。

 

「オラオラオラァ!!まだまだいくぜぇ!!どんどん力が溢れてきやがる!!」

 

(……この人……サイヤ人の中でも天才なのでは?あんな雑なアドバイスで超サイヤ人に覚醒するなんて……。)

 

「流石ですね。動きが比べ物にならないほど良くなってます!」

 

「へっ!当たり前だ!!このままてめぇを倒してやるぜ!」

 

カリフラの攻撃はどんどん加速していく。すると突然、シャルルの雰囲気が一変した。

 

「……ごめんなさい。」

 

「がっ……!!」

 

シャルルは瞬間的にスピードを上げるとカリフラの後ろに回り込み首の後ろを叩いた。

 

その攻撃でカリフラは気絶した。

 

「……せめて安全な所まで運びますね。ごめんなさい……また今度ゆっくり闘いましょう。」

 

シャルルはカリフラを抱えて安全な所まで運んであげることにした。

 

 

 

「……強い。まさか、あのガキ……サイヤ人……!」

 

一人の男がカリフラを運ぶシャルルを後ろから見ていた。

 

「こいつは……本物だ……!フフフ……!!」

 

男は一人で不気味に笑うと姿を消した。

 

 

 

 

「さてと……。」

 

カリフラを安全な場所に置いてシャルルは考えていた。

 

「カリフラさんは逞しいし大丈夫かな。それにしても……お父さんとママを探したいけど闇雲に声をかけるのはやめようかな。今回みたいに声掛けてもどうせ闘うはめになるのがオチだし……。それにさっき私のことジロジロ見ていた人いたけどもしかしたら変態さんかな……。」

 

シャルルが一人で歩いていると……

 

「すいませーん☆」

 

「ん?」

 

今度は誰かから声を掛けられた。

 

「呼び止めちゃってごめんなさい!私、『ミソラ』っていいます☆」

 

「え?あ……シャルルです。どうしましたか?」

 

「『シャルル』さん……って言うんですね☆素敵な名前です!実は……私、この世界に来たばかりで何も分からないんですよ〜!」

 

(よかったー!また闘い仕掛けられるかとおもった……普通の人でよかった……!)

 

「そうだったんですね。よければ私が案内しますよ。」

 

「本当ですか?ありがとうございます!じゃあ……よろしくお願いしまーす☆」

 

シャルルはミソラと行動を共にすることになった。




登場人物モリモリです。


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※簡単に登場人物紹介。(前回の続きではありません)

要望があったので作りました!


 

シャロットチーム

 

・シャロット

 

謎多きサイヤ人。現代のサイヤ人の戦闘服とは違いベジータからも古臭い格好と言われているためかなり昔の時代からやってきた。負けず嫌いで意外と仲間想い。

 

・ブルマ(幼女期)

 

ドラゴンボールで願いを叶えるために旅に出た少女。旅の途中で今回の騒動に巻き込まれた。シャロットをボディガードとして雇おうとしておりちゃんとサポートもする優秀な人物。

 

・ユリシス

 

記憶喪失でこの世界をフラフラと歩いている時にブルマと出会い共に行動することとなった。基本的にニコニコしてるように見えるが目は一切笑っておらずちょっと怖い時がある。その気になればこの世界でも彼女の右に出るものはいないと言えるほどの実力者だが基本的に自分から闘うことはせずシャロットのサポート役。

 

・ラビリスタ

 

8章の世界からやってきた本編世界のラビリスタ。バトルロイヤルを開催した黒幕を探している。シャロット達と協力関係にあり、手分けして真実を探している。

もう一人最新の時代からきた強力な助っ人がいるらしい。

 

 

・孫悟飯(幼少期)

 

サイヤ人編の世界からこの世界に連れてこられた。今はシャロットと共にラディッツを倒すことを目標としナッパとベジータの元で修行している。

 

・ユウキ(再構築前)

 

ペコリーヌに会う直前の時代からやってきた。コッコロとブラックの事しか分からず今はシャロット達と共に修行中。プリンセスナイトの力の使い方もまだ分かってない。

 

・ザッハ

 

ユウキと悟飯を助けてからシャロット達と行動を共にすることになった。(全部成り行き)

今は強制的にナッパの弟子になりシャロット達と共に修行中。

 

 

 

ペコリーヌチーム

 

 

 

・ペコリーヌ

 

いつの時代のペコリーヌかは不明だがレイと知り合いであることから『3章』以降のペコリーヌである可能性が高い。

 

・レイ

 

ユイやヒヨリを見つけるためにペコリーヌと協力中。いつの時代のレイかは不明。

 

 

キャルチーム

 

 

 

・キャル

 

ブラックが覇瞳皇帝を倒した直後の世界からやってきた。(2章)

実はこの頃からブラックに気があったらしい。もう一度ブラック達と会うためにチチ達と行動中。

 

・チチ

 

運命の人(孫悟空)と出会うために旅をしている。旅の途中でキャルと出会いお互いの意中の相手が同じ(実際は違う)と知り気まずくなる。現在は普通に打ち解けてキャル達と一緒に旅をしている。

 

・シェフィ

 

合体ザマスが猛威を振るっていた時代からやってきた。(4章以降)

兄を殺した仮面の男を憎んでおり仇を取ろうとしている。今はキャルとチチと一緒に行動中。

 

 

単独行動者

 

 

・バーダック

 

サイヤ人を大量に殺している赤いフードの男を探している。シャルルに父と間違えられて付きまとわれたがなんとか誤解を解いた。シャルルとは一旦別れ今は一人で行動中。

 

 

・カリフラ

 

話しかけただけのシャルルにいきなり攻撃を仕掛けた。シャルルから教えてもらった適当なアドバイスで超サイヤ人に覚醒するという天才ぶりをみせた。

 

 

シャルルチーム(?)

 

 

・シャルル(未来)

 

魔人ブウを倒した後の世界からやってきた。(7章以降)

ブラックとキャルを探して旅をしている。毎回個性の強い人達と出会っており、その都度闘いを仕掛けられている。魔人ブウとの闘いで一気に成長し、戦闘力も桁違いにアップしている。

 

 

・ミソラ

 

突如シャルルの前に現れた少女。シャルルの感覚が麻痺して普通の人と思われているがかなりアカンやつ。エロい。

 

 

 

 




今後も登場人物がどんどん増えていくかも……てか確実に増える。
オリキャラは多分増えないので安心してください。


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打倒ナッパ師匠!

「シャルルさん、この世界に無理やり連れてこられて……とっても辛いですよね?」

 

「え?……うん、そうだね。またママ達と離れ離れになっちゃったから寂しいかな。」

 

ミソラはさり気なくシャルルに近づきながら話をする。

 

「シャルルさん可哀想ー!シャルルさんも……私と同じで理不尽な境遇に置かれてるんですね……☆」

 

「み、ミソラちゃん?何だか近くない……?こんなくっついて歩かなくてもいいと思うんだけど……。」

 

ミソラの距離感は明らかにおかしく、話す時に必ず耳元で囁きながらシャルルのお腹に手を伸ばしていた。

 

「え〜?そんな事ないですよぉ?私はただ普通にしてるだけですし……☆」

 

(シャルルさん見たいな過去を持つ人……もっともっと親しくなって……最後には……。ふふっ☆私を責めてくれるかな?ハートがドキドキします☆)

 

ミソラは心の奥で何かを待っているようだった。

そして……

 

「え〜いっ!隙ありです☆」

 

「ぁわっ!ど、何処触って……!」

 

「うわぁ〜シャルルさんって……凄く大きいですね☆ランファさん以上です♪」

 

ミソラは背後からシャルルの胸を鷲掴みにした。

 

「ひゃあぁああ!な、なんてことするんですかあ!」

 

シャルルは恥ずかしさで顔がリンゴのように真っ赤になった。

 

「ん〜?それは勿論……シャルルさんの事が好きだからです☆」

 

「す、好き!?でも私そういう経験……無い……って……とにかく離してください!」

 

「はい、大好きです♪だからこうして……スキンシップしてるんですよぉ?」

 

「そ、そういう問題じゃないです!離してください……!」

 

「うーん……分かりました。今日のところはこれくらいにしておきますね。でもでも……シャルルさんも私の身体好きなように触ってくれて良いんですよ?」

 

「触りません!!もう……早く行きますよ!!」

 

顔を真っ赤にしながら先に進むシャルル。

その後ろ姿を見つめながらニヤリとするミソラであった。

 

 

一方、シャロット達は……

 

「ほらほらどうした!!気合いが足りねえぞ!ガハハ!!」

 

ナッパによって修行をつけられていた。

 

「こ、この人……もしかして人に修行をつけたことないんじゃあ……?」

 

「し、死ぬかも……。」

 

悟飯とユウキはあまりの授業内容の無茶苦茶さにそんな感想を抱いた。

 

「もしかしなくてもそうだろ!」

 

「ちくしょおお!!かかってきやがれ!全部ぶっ倒してやる!」

 

シャロット達は文句を言いながらもがむしゃらにナッパの修行をこなしていった。

 

「よーしよし!!いいぞぉ!!さあてお次のトレーニングは……。」

 

「……それくらいにしておけナッパ。あまり栽培マンを無駄づかいするな。」

 

「むう……!そ、そうか……まあ仕方ねえな……。」

 

ベジータがここで一旦修行を終わりにさせた。

 

「……はぁ……っふう……むちゃくちゃだがこりゃあたしかにいい修行になるぜ……!この調子でさっさと強くなって……ラディッツの野郎をぶっ倒す!」

 

すると、その言葉を聞いたナッパが驚いた様子をみせた。

 

「……ラディッツだあ!?あいつもこっちに来てやがったのか!?おいベジータ。こりゃどういうことだ?」

 

「さあな、別にやることは変わらん。こいつらを鍛えればいいんだろう?くだらん約束をしたのは貴様だ。貴様が責任をもって鍛え上げろ。」

 

「ま、まあいいか……!こいつらなかなか根性があって鍛えがいがあるしな!へへ……!!それじゃあトレーニング再開だ!!さっさとこいつらをラディッツより強くしねえとな!!」

 

「げえっ!?……いや、もうなんでもやってやる!!きやがれ!!」

 

こうしてシャロット達が修行を続けてかなりの時間が経った。

 

「てやああああ!!」

 

「はああああ!!」

 

「ぬおっ!?……はっはっはぁ!やるようになったじゃねえか!!」

 

ユウキと悟飯がナッパとかなりのいい勝負を繰り広げていた。

 

「フン。ナッパのヤツめ……すっかり師匠役が馴染んでやがる。」

 

「……どうもこのノリにはいつまで経っても慣れないな。」

 

「いいじゃねえか!オレはこういうのなら大歓迎だぜ!」

 

「ふん……バカ同士ナッパとはウマが合うか……そいつはよかったな。」

 

するとシャロットの持っている通信機が反応した。

 

「イヤミなヤツね……!あんた友達少ないでしょ!」

 

「このオレに友など必要ない!くだらん馴れ合いを見せられてイライラするぜ……!!」

 

「ブルマさん……あまり刺激しない方が……。」

 

そんな会話をしていると、ベジータ達の前にラビリスタが現れた。

 

「やあ、修行は順調かい?」

 

「うわあっ!?い、いつの間に現れやがった!?」

 

「き、貴様……!?一体何の用だ……!?」

 

「ちょっと要件を伝えにきたんた。」

 

「要件……だと?」

 

「うん、修行の最終日に君たちには試験を受けてもらう。試験の合格条件はベジータくんとの真剣勝負に勝利すること。」

 

「はっ!?ベジータに!?」

 

するとその要件を聞いたベジータは鼻で笑った。

 

「コイツらがオレに勝つだと?ふっ、そんな試験ハナから不合格か決まっているようなものだろう……!!」

 

「あはは、そういえば君たちを倒した黒い髪の女の子さ、アタシの知り合いなんだけど……もし不合格になったら『近いうちに倒させてもらいますね』って言っててさ。」

(勿論嘘だけど。)

 

「……はああっ!?」

 

「最悪の場合……ご愁傷さまってなっちゃうからよろしくね。じゃ、修行の

成果期待してるよ!頑張ってね〜!」

 

ラビリスタは要件を伝えて姿を消した、

 

「………………。」

 

「おお……ベジータのヤツ見たことねえ顔になってんぞ……。」

 

「ふっ……これは痛快だな。」

 

するとベジータは声を震わせながら二人を見た。

 

「…………れ……。」

 

「あ?」

 

「ん?」

 

「何を呑気にしてやがる!!さっさとトレーニングに戻れ!!!オレも手を貸してやる!!!」

 

「なっ……!……はあっ!?」

 

「だが!きさまらごときがこのオレに勝てると思うなよ!!絶対に負けんからな!!」

 

「合格させたいのかさせたくないのかどっちなんだよ!!」

 

ベジータはナッパと共に今まで以上の修行をシャロット達に行った。

 

「め、めちゃくちゃだ!!殺す気かてめえら!!」

 

「ああ!!殺す気だ!!サイヤ人は死を乗り越える度に戦闘力が高まるんだ!!!死ぬ寸前まで戦い続けてどんどん戦闘力を上げやがれ!!」

 

こうしてシャロット達は最終日までナッパとベジータの厳しい修行を乗り越えていった。

 

そして……

 

「むおおおーっ!?なんだとおおおっ!?」

 

修行を続けたシャロット達は、本気のナッパを倒すことが出来るほどパワーアップしていた。

 

「か……勝ったっ!!」

 

「やった!!ボクたち、ナッパ師匠に勝ったんだぁぁーっ!!」

 

(……こいつら……!とうとう全力のナッパに勝ちやがった……!?)

 

ベジータもシャロット達の急成長の驚いていた。

 

「これで文句はねえよな?ベジータさんよ。」

 

「……いいだろう。だが気を抜くんじゃないぞ?むしろ本番は明日なんだ……。」

 

「へっ、わかってらあ。」

 

「で、あっちの伸びた師匠は大丈夫なのか?」

 

「ナッパなら放っておけ。どうせすぐに……。」

 

「……ふう……っ!効いたぜぇ!まさかあのヒヨっこどもがオレに勝っちまうもはな!!」

 

心配しているとナッパがケロッとしながら立ち上がった。

 

「……ほらな、この通りだ。」

 

 

「……タフなお師匠さんだな。」

 

こうしてシャロット達は明日の試験に挑むことになった。



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師匠を越えろ!

シャロット達は修行を続け、ナッパに勝てるようになるほど成長した。

そしてついに、最後の試験が始まろうとしていた。

 

「……やあ、待ってたよ。」

 

シャロット達はベジータ、ナッパと共にラビリスタのもとに来た。

 

「4人共見違えたわ……!」

 

「そうですね!頑張ってくださいね皆さん!」

 

そこにはブルマとユリシスの姿もあった。

 

そしてベジータが一人でラビリスタの前に出た。

 

「ご要望通りこいつらを鍛えてきてやったぞ?」

 

「なあベジータ……見たところ黒髪の女なんていねえぞ?前からこの女一人になにビビってやがんだ……!」

 

「く、口を慎めナッパ……!殺されるぞ……!!」

 

ナッパとベジータがそんなやり取りをしているとラビリスタは本題に入った。

 

「じゃあ早速、修行の成果を見せてもらえるかな?」

 

ラビリスタがそう言うと待ってましたとばかりにシャロット達が前に出た。

 

「へっ……!よし、やってやるぜ!」

 

「さて……どうなるかな……!」

 

「頑張りましょう!」

 

「うん!」

 

それぞれベジータの前で構えた。

するとベジータもシャロット達の闘志を見て満足そうに笑った。

 

「……闘う前に言っておく。貴様らを『才能のない下級戦士』と言ったことは訂正してやる。相変わらず気にくわんガキではあるが……貴様らはもはや一人前の戦士だ!オレもそのつもりでやらせてもらう。」

 

「「「「!!!!」」」」

 

シャロット達もベジータが自分達を認めてくれた事に驚いた。

 

「いいか!ブザマな闘いは絶対許さん……!!オレを殺すつもりでかかってこい!!!」

 

「ベジータさん……!!」

 

「上等……!!やってやる!!」

 

こうしてベジータとの最後の試験が始まった。

 

最初に仕掛けたのはシャロットだった。

 

「うおおおっ!!!」

 

シャロットの拳をベジータは軽々と避ける。

 

「ふん!」

 

続いてシャロットの横からユウキと悟飯が攻撃を仕掛けた。

 

「たぁあああっ!」

 

「魔閃光!」

 

2人の攻撃を避けながら、同時に襲ってくるザッハにも注意を払う。

 

ベジータはザッハの鋭い蹴りを受け止めるとそのままはじき飛ばした。

 

「……はあああっ!!」

 

「なにっ!?」

 

だがさらにそこからシャロット達の攻撃

が絶え間なく来る。

 

(ちっ……!やはり一筋縄ではいかないか……。)

 

「ここだあああっ!!!」

 

「!?」

 

シャロットの攻撃がベジータをとらえた。

 

「くっ……調子に乗るな!!」

 

ベジータは攻撃を受けながらもシャロットを殴り飛ばした。

 

「ぐああああっ!!!」

 

「シャロットさん!大丈夫ですか!?」

 

「ああ……なんとかな……!」

 

シャロットはすぐに立ち上がる。

 

「はぁ……強え……!さすがベジータだ……!」

 

「まだまだ行くぞシャロット!」

 

ベジータは再び構えると勢いよくシャロットに突っ込んできた。

 

「へっ!負けるかよっ!!」

 

シャロットも負けじと向かっていく。

 

シャロットとベジータは勢いよくぶつかった。

 

「ぐあああっ!!!」

 

弾かれたのはベジータ方だった。

 

「これで終わりだベジータっ!」

 

「魔閃光……!!」

 

「はああああっ!!」

 

「おおおおおっ!!!」

 

シャロット達は一斉にベジータを攻撃した。

 

「ぐあああっ!?」

 

ベジータは4人の攻撃を受けて倒れた。

 

「……勝負ありだね。」

 

そしてここでラビリスタが試験を終わらせた。

 

「ぜぇ……っ!!ぜぇっ……か、勝った……のか?」

 

するとシャロット達の攻撃を受けたベジータも何とか立ち上がった。

 

「チッ……!さすがにこいつらをまとめて相手するんじゃ……分が悪いぜ……!!」

 

「よく言う……4人がかりでなければとても勝てる相手じゃなかったぞ……。」

 

ザッハも4人がかりでやっと倒せたベジータの強さを改めて再確認した。

 

「……ムカつくがオレも本気だった……!!こいつらは合格だ!!……これで文句はないだろう!!!」

 

「……うん。問題ないよ。よくシャロット達をここまで育ててくれたね。ありがとう……ベジータくん。」

 

ラビリスタも納得した。

 

「はあ〜あ……こいつらをあんな女にくれてやるのは惜しいなあ……どうにかならねえのか?ベジータ。」

 

「今はヤツの顔を立てておいてやれ。……またこいつらとは出会うことになる。必ずな……。」

 

ベジータとナッパも名残惜しそうにしていた。

 

「師匠!!今までありがとう!ボク、強くなれた気がする!!」

 

「ベジータさん!ナッパ師匠!ありがとうございます!何かあった時には必ず恩を返します!!」

 

「……へっ、ヒヨっこ共が……!!オレに『何かあった時には』だと?弟子が師匠の心配するなんざ十年早ええんだよ!!がっはっは!!!」

 

ナッパはユウキと悟飯の頭を豪快に撫でた。

 

「ふっ……ナッパめ。こいつらの甘さをまんまとうつされやがったな。」

 

「そう言うお前はどうなんだ?」

 

「ふん……くだらん。オレは軟弱なサイヤ人が気に食わなかっただけだ。」

 

「……とにかく、あんたには随分世話になったな、ベジータ。」

 

「ふ……せっかくオレ達が鍛えてやったんだ。簡単にくたばることは許さんぞ。」

 

「そんじゃあてめえら!達者でやれよ!!」

 

ベジータとナッパはシャロット達に別れを告げ飛び去って行った。

 

「……ああ。アンタらもな。師匠……!」

 

シャロット達も飛んでいくベジータ達を見送った。

 

 

「じゃあ次はいよいよラディッツとの決戦だね。」

 

「へへっ。負ける気がしねえ……!今度こそぶっ飛ばしてやるぜ!!」

 

「勝てなければ困る……バトルロイヤルを勝ち抜くためにも……それに悟飯の師匠のためにもな。」

 

「はいっ!!」

 

「……で、そのラディッツってのはどこにいるんだ?」

 

「……ここから大分離れてるな。まあ飛んでいけば数分でつくだろう。」

 

「ん?なんでわかるんだよ?それもザッハの不思議な技か?」

 

「シャロットさん……もしかして……!?」

 

「お……おまえ!そんなに腕を上げてて『気』の感知ができないのか!?」

 

「気の……感知……?」

 

「なにそれ?」

 

勿論それを知らないのはユウキもだった。

 

「気の感知は確か地球の戦士が得意とする技です。サイヤ人にはそう言った技術は無いので分からないのも無理ないですよ。」

 

「ユリシス!?私も地球人なんだけど、そんなの聞いたことないわよ!?てかなんでそんなこと知ってるの!?」

 

「あれ?言われてみれば……なんで私……知ってるんだろう……。」

 

ユリシスも咄嗟に出た言葉を不思議に思っていた。

 

「お?ユリシスも知ってたのか?」

 

「はい。ユウキくんとシャロットくんにも教えてあげますね。」

 

「ホントか!?」

 

「ありがとう!」

 

するとユリシスはシャロットとユウキの手を掴んだ。

 

「な、なんだよ……ユリシス!」

 

「?」

 

「大丈夫です。落ち着いて目を閉じてください。」

 

シャロットとユウキはユリシスに言われた通りに目を閉じた。

 

(落ち着いて……目を閉じて……。落ち着……やべぇ……!ユリシスからめっちゃいい匂いがする……!集中できるか……!!)

 

「シャロットくん?大丈夫ですか?息が荒いですよ?」

 

「あ、!?あぁ……悪ぃ……。」

 

「ねぇシャロット。あんたユリシスに手を握られてなんでそんな息荒くなってんの?それだと変態にしか見えないわよ?ユウキを見習いなさい?」

 

「だ、黙ってろブルマ!!集中集中……!」

 

シャロットはもう一度精神を集中させた。

 

「そのまま精神を集中して……身体全体を目にして周りを見渡す感じで……。」

 

「精神を集中……全身を目に……。」

 

シャロットとユウキが精神を集中させると、とある1つの気を感知した。

 

「見つけた……!!」

 

「見つけたぜ……!あっちだな!!助かったぜユリシス!」

 

「お役に立てたのなら良かったです!」

 

二人が気を感知し喜んでいる中、ザッハはその様子を不思議そうに見ていた。

 

(……シャロットはともかく、ユウキには気を感知する才能などなかった。だが……ユリシスが教えた瞬間にこうもあっさりと…………。ユリシス……一体何者なんだ?)

 

ザッハは明らかに不自然な出来事に眉根を寄せた。

 

「シャロットさん!ユウキさん!行きましょう!」

 

「ああ!……っと!……そうだ!ブルマ!ユリシス!お前らはここに残れ!……ジャマだからな!」

 

「もうちょっとオブラートに包みなさいよ!!でも、あんた達なら絶対大丈夫よ!」

 

「ふふ、頑張ってくださいね!」

 

「ああ!!」

 

こうしてシャロット達はラディッツの元へ向かった。




最近は今までの登場キャラで最強キャラトップ15だったらどんな順位になるか想像してる。


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それぞれの目的の為に

荒れ果てた町に一人の男がいた。

 

「……チッ、ここにもいなかったか……!!」

 

ラディッツが暴れ回り街を破壊していた。

 

「いたぞ……!!あいつ……!街を!」

 

シャロット達はラディッツの気を感知しこの街に急いで駆けつけた。

 

「やめろおおっ!!!」

 

シャロット達は破壊活動を続けるラディッツの前に現れた。

 

「ぬうっ!?カカロットのガキ……!それとあの時の出来損ないか!!まさか自分たちから死にに来るとはな……あぶりだす手間が省けたぞ。それに……どうやらあの不気味な女はいないか。くくっ……好都合だ。」

 

ラディッツは悪魔のような笑みを浮かべた。

 

「あぶりだす……だと?……じゃあこの街を破壊していたのは……!!」

 

「そ……そんな……!ボクたちを探すためだけに……街をこんなにしたの!?」

 

「……許せない……!!」

 

ザッハ、悟飯、ユウキはラディッツに対し憤りをみせた。

 

「フン、くだらん小細工をしやがって……!貴様らが逃げたせいで街はこのザマだ……!!」

 

「…………。」

 

「この街の連中もかわいそうになあ……ククク……!!」

 

「…………。」

 

するとシャロットは黙り込み静かにラディッツを睨みつけた。

 

「……もういい……!てめえは黙れ……!!」

 

「……!」

 

ラディッツはシャロットの気がどんどん上がっていくことに気がついた。

 

「さっきから聞いてりゃ……!!てめえは……いったい……っ!!ナニサマのつもりだああっ!!!」

 

「な……なんだ!?あのガキ……!!」

 

シャロットの怒りが爆発した。

 

「オレたちをナメてんのも……!この街をメチャクチャにしたのも……!!てめえは何もかもが許せねえ……!!」

 

「き、きさま……!一体……!?」

 

「黙れっつっただろ……!てめえは二度とクチきけねえよう……バッキバキにぶっとばしてやるっ!!覚悟しやがれ!」

 

シャロットの気迫に圧倒されラディッツは冷や汗を流した。

さらにシャロットの後ろにいる3人も戦闘態勢をとった。

 

「行くぞラディッツ!!!」

 

シャロット達が一斉に攻撃を仕掛けた。

 

「な、なんだ!こいつら……!戦闘力も以前よりも遥かに上がっている!?」

 

(この俺が押されているだと……!?)

 

「おああぁぁーっ!!!」

 

「ぐぅわあああっ!!」

 

ラディッツはシャロット達の猛攻を受け吹き飛ばされてしまった。

 

「随分とやってくれるじゃねえか……!だがな……この程度で俺は死なんぞ……!」

 

ラディッツはすぐに立ち上がり構えをとった。

 

「うるせえ……!!てめえはここで潰す!!」

 

「フン、減らず口を叩くな……!今度こそ跡形もなく消し去ってやるぞ……!!」

 

ラディッツは両手にエネルギーを溜め始めた。

 

「くたばれええええ!!!」

 

シャロット達に向かって強力な光線を放った。

 

「うおおおっ!!」

 

「効くもんか!!」

 

「はっ!!」

 

「たああっ!!」

 

「は、弾き飛ばしただと……!?」

しかしシャロット達はラディッツの気弾を全て弾き返した。

 

「ぬるいんだよ……!!こんな攻撃……師匠たちに比べたらな!!」

 

「な、何ぃ……!!」

 

「今度はこっちの番だぜ……!」

 

シャロットが腕を振りかざすと強烈な衝撃波が発生しラディッツを襲った。

 

「ぐうぉおおっ!!」

 

ラディッツは建物に衝突し倒れ込んだ。

 

「ハァ……ハァ……!!どうだ……勝ったぞ……!!ざ……ざまあみやがれ……へへっ。」

 

シャロットは勝利を確信していた。

するとラディッツがゆっくりと体を起こし立ち上がった。

 

「ぐ……う……うう……!!きさまらの……その闘い方……!!覚えがある……あいつか……!あいつの差し金か……!!」

 

次の瞬間、ラディッツの様子がおかしくなった。

 

「……ベジータ!!あのヤロォォォーーーッ!!!」

 

「「「「!?」」」」

 

ラディッツの雰囲気が明らかに変わった。

 

「うウうがァーーッ!!!」

 

ラディッツの身体が紫色のオーラに包まれ、響くような濁った声になった。

 

「な……なんだ……!?こいつ……!!何が起きた……!!?」

 

「この気……!!さっきよりもずっと……怖い感じ……!!」

 

「……フゥーーーッ……!!!どいつもこいつも……オレの復讐をジャマしやがって!!!みんな……みンな殺しテやる!!ベジータも……ナッパも……!!オレの復讐をジャマするやつは……ミな殺しだアアアーッ!!!」

 

ラディッツを包む紫色の靄がかかったような気が膨れ上がった。

 

「……っ!!来るぞ!!シャロット!!ユウキ!!悟飯!!!」

 

「うん……!!」

 

「はい……!!」

 

「やるしかねえ……!!」

 

4人は戦闘態勢をとり身構えた。

 

「ククク……!カカロットのガキに出来損ないの猿に半端者め……。貴様らを皆殺しにして、あの女をいたぶってから……次は貴様らの街を破壊してやろう……!!クハハハハッ!!」

 

ラディッツは邪悪な笑みを浮かべながら

シャロット達に襲いかかってきた。

 

「チイッ……!!」

 

シャロット達はラディッツを迎え撃った。

 

「オラアッ!!」

 

シャロットはラディッツに拳を叩き込もうとした。

 

「ふん……!!」

 

「な……こいつ!?」

 

しかしラディッツは片手だけでシャロットの攻撃を止めた。

 

「たあああっ!!!」

 

するとユウキが背後からラディッツに攻撃を仕掛けた。

 

「無駄だ……!!」

 

「えっ……!?」

 

ラディッツはもう片方の手でユウキの攻撃を受け止めていた。

 

「まだだ!!悟飯!!」

 

「はい!!」

 

ザッハと悟飯も同時にラディッツに突撃した。

 

「馬鹿め……ふん!!」

 

「……!?」

 

「えっ!?」

 

「うわっ……!?」

 

ラディッツはシャロットとユウキを同時に投げ飛ばし向かってくる悟飯とザッハに直撃させた。

 

「ぐぅっ……!!」

 

4人は吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。

 

「なんてパワーだ……!」

 

「つ、強い……!」

 

ラディッツの強さは想像以上だった。

 

「クハハ……!この程度か!?所詮は下等生物ということだなあ……!雑魚どもが……!!」

 

「くそっ……!」

 

「ここまでとは……!!」

 

ラディッツはシャロット達を見下ろし嘲笑っていた。

 

「どうした!?もう終わりか!?」

 

ラディッツは余裕を見せ、両手を広げ挑発してきた。

 

「畜生……身体が……動か……。」

 

シャロットには起き上がる体力が残っていなかった。誰もが諦めたその時だった。

 

「……ま、だだ……!!」

 

「「「「!?」」」」

 

ユウキが額から血を流しながら立ち上がった。

 

「お前なんかに……お前なんかにボクは負けない……はああああ……っ!!」

 

ユウキが立ち上がると、シャロット達の身体が金色の光に包まれた。

 

「力が……溢れてくる……!!」

 

シャロット達はユウキから授かったこの光によって再び立ち上がった。それはユウキのプリンセスナイトの力が初めて覚醒した瞬間だった。

 

「馬鹿な……!!こいつらの体力は残っていないはず……!!」

 

予想外の出来事にラディッツも焦りをみせた。

 

「ありがとよユウキ……!!いくぞラディッツ……!!」

 

「!?」

 

シャロットが力強く地面を蹴り、一瞬にしてラディッツとの距離をつめた。

 

「は、速い……!!」

 

「シャロットだけじゃないぞ?」

 

「!?」

 

ザッハもシャロットと共に距離を詰めていた。

 

「「はああああっ!!!」」

 

「ぐおああああっ!!!」

 

シャロットとザッハの蹴りがラディッツに炸裂した。

 

「悟飯!!トドメだ!!いけーーーっ!!」

 

「はああ……!!」

 

悟飯は密かに気を溜め続けていた。

 

「よせ!や、やめろお!!!」

 

ラディッツは情けない声を上げる。

 

「魔閃光ーーーっ!!!」

 

悟飯の魔閃光がラディッツを呑み込む。

 

「ガああ……!!ち……ク……しょオおお……!!!ちくしょおおおーーーっ!!!!」

 

断末魔の叫びをあげ、ラディッツは消滅した。

 

「はあ……はあ……。」

 

「はあ〜……っ、今度こそ終わりか。」

 

「やれやれ……これでようやく一息つけるな……!ユウキも大したものだ。」

 

「……頑張った……!」

 

「……しかし、あのヤロウ……最後のあのとんでもねえパワーはなんだったんだ……?」

 

「なんだか……すごく気が上がっていたような……。」

 

「ああ……あれはやばいニオイがした……くそ……まだ鼻がツーンとするぜ……!」

 

「……まあ……なんにせよもう終わったことだ。これで一安心だな……。」

 

こうして無事にラディッツを倒したシャロット達は一旦もとの街に戻りラビリスタに報告した。

 

「あ!シャロットくん達帰ってきましたよブルマさん!」

 

「シャロット!おかえり!!どう?ちゃんと勝てたの?」

 

「トーゼン!ぶっとばしてやったぜ!!」

 

「じゃあこれで悟飯くんの目的……ピッコロさんの仇討ちは達成された訳だけど……これから君たちはどうするんだい?」

 

「オレはもちろんこの闘いで生き残るため力をつけるつもりだ。まあそれはみんなも同じだろう?」

 

「……さあ、オレはここに来る前の記憶もねえし……バトルロイヤルで叶えたい願い……ってのもピンとこねえからな……ユウキ、お前はどうすんだ?」

 

「……ボクは、コッコロちゃんを探しに行く。もっともっと強くなって……生き抜いてみせるよ!」

 

「……そうか。ユウキ。死ぬんじゃねえぞ?」

 

「うん……!」

 

ユウキは一人でコッコロを探しに行くことに決めた。

 

「悟飯はどうすんだ?」

 

「……ボクは……」

 

「もちろん……この時代でも修行だ。このオレとな。」

 

するとピッコロが悟飯の前に現れた。

 

「あ……あ……!ピッコロさん……!」

 

「キミ!?もう起き上がって大丈夫かい?」

 

「ふん。寝すぎたくらいだぜ。これ以上貴様らのような得体の知れん連中の世話になるのはゴメンなんでな……!」

 

「そっかあ……。」

 

(このラビリスタという女はともかく……ユリシスというこの女からは気を感じ取れん……それなのに底知れぬ恐怖を感じる……いったい何者なんだ……!?)

 

すると悟飯がピッコロに駆け寄る。

 

「ピッコロさん!……ボク……!ボク!頑張ったんだよ!!」

 

「……ああ。上出来だ。オレがいない間にずいぶん強くなったな……。」

 

「ピッコロさん!ボク……お願いがあるんだけど……!」

 

「お願い……?なんだ言ってみろ。」

 

「ボク修行をしながらお父さんのことも探したいんです……!」

 

「孫悟空をか。たしかにあいつもこの時代に来ていても不思議では無いが……。」

 

だがその言葉にラビリスタは苦い顔をした。

 

「……うーん……はっきり言って望みはかなり薄いよ?悟空は数々の歴史の悪党から恨みを買いすぎた……ここには色々な時代の悟空が来てはいるだろうけど……その中で生き残っている者は残念だけど少ないと思う。」

 

「へっ……悪党から狙われる……か……あいつらしいっちゃあいつらしい。自業自得だな。」

 

「それでもボクはお父さんを探してみたいです!うまく言えないけど……お父さんならこういう時でも絶対に諦めませんから!!」

 

「……諦めない……か。そうだね……その通りだ。『悟空』も『ゴクウ』の方もきっと諦めないだろうね。」

 

「……孫悟空と協力なんぞ本来ならお断りだが……たしかにヤツの力も欲しいところだ。今回ばかりは悟飯の願いを聞いてやろう。そうと決まればさっさと行くぞ!もうここに用はない。」

 

ピッコロが悟飯を連れて行こうとしたその時、シャロットが呼び止めた。

 

「おい……緑の。」

 

「なんだ?」

 

「……ちったあ悟飯に優しくしてやれよ?」

 

「……ふ、余計なお世話だ。」

 

「それじゃあ皆さんお元気で!!」

 

「ああ!ユウキもまたな!!」

 

「うん!また会おうね!」

 

ピッコロと悟飯は孫悟空を探しに、ユウキはコッコロを探しに旅に出て行った。

 




やっとラディッツ撃破!え、長ない?


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次なる目標

「……よしっ……!全快全快……っと!調子いいぜ!」

 

シャロット達はラディッツを倒すことに成功し、一晩ゆっくりと休息をとった。

 

「シャロットくんの回復力凄いですね……。」

 

「あんなにボロボロだったのにねえ。」

 

ユリシスとブルマもシャロットの驚異的な回復力に驚いた。

 

「……そんでブルマ。こっから先どうするんだ?」

 

「もちろん旅を再開!……と言いたいけど……あのラディッツってヤツの件もあるし……。物騒だからしばらく都でのんびり……ってのも悪くないかもね。」

 

「おいおい……せっかく強くなったんだ!そんなダセえマネできるか!」

 

「お、落ち着いてシャロットくん……闘いたいのはやまやまだろうけどブルマさんは闘えないから……。」

 

「そうよ!あんたはいいわよね!!何かあっても闘えるんだから!!」

 

「別にブルマとユリシスを守るくらいわけねえよ!」

 

シャロットが自信に満ち溢れていたその時だった。

 

「ふん。貴様程度がボディガードをしたところで生き延びられるほどこのバトルロイヤルは甘くないぞ。」

 

突如ベジータとナッパがシャロットの前に現れた。

 

「……!?」

 

「よう!無事にラディッツのヤツはぶっ倒せたみたいだな!!」

 

「あ、あんたら……!?都に来てたのか……!」

 

「な、なに!?あんたたちも人恋しくなって都に来たの?」

 

「勘違いするな女。別にこんな低レベルな街に興味などない。……あのチビと……ユウキと……剣士のヤツはいないようだが?」

 

「あ、ああ……悟飯とユウキはあの後すぐに都を出てった……ザッハは朝からいつもの『瞑想』だとよ。」

 

「なら貴様だけでいい。オレの下で働け。」

 

「は?どういうことだ?」

 

「……お前をスカウトしているのだ。」

 

「な、なんですって!?」

 

「シャロットくんをスカウト……?」

 

突然のベジータ達からの誘いに一同驚きの声をあげた。

 

「何を言ってるんだ……?」

 

シャロットも突然の話に困惑していた。

 

「オレの部下になれ……と言っているのだ。ラディッツの代わりにな。」

 

「ラディッツの……。」

 

「かわり……?」

 

ブルマとユリシスの思考も一旦止まった。

 

「ちょっと待て……ラディッツはあんたの部下だったのか!?」

 

「……話していなかったか?てんで使い物にならん弱虫だったがな……。貴様がラディッツを倒したというのなら新しい部下に申し分ない。」

 

「ようするにオレをラディッツの代わりにコキ使おうってことか……!お断りだ……!オレはそんなつもりで闘ったんじゃねえ……!!」

 

「な、なんだとお……!?」

 

「……くくく、そうだろうな。貴様のことだ。そう言うと思ってたぜ。……だがこのオレに意見を通したいならどうすればいいか……貴様もわかっているだろう?」

 

「……ああ!あの時の修行で身に染みてるぜ……!ベジータ……それにナッパのオッサン……あんたらをぶっとばして黙らせてやる!!」

 

シャロットの言葉にベジータはニヤリと笑った。

 

「それでいい……!!屈服させてやるぞ!シャロットっ!!」

 

そして、シャロットとベジータが激突した。

戦いは長引き、お互いに全力を出し合った。

 

「くっ……ははは……!今のは効いたぜ……!!!」

 

「くっ……!!」

 

「やはり貴様のセンスは本物だ。必ずオレの部下にしてやるぞ……!」

 

するとここでブルマとユリシスが止めに入った。

 

「ちょ……ちょっと!!やめなさ〜い!!」

 

「3人とも……これ以上やったらこの街が壊れてしまいますよ?」

 

そしてブルマとユリシスが呼びかけると同時にラビリスタも騒ぎを聞きつけてやつてきた。

 

「はいはい、そこまでそこまで!」

 

「き、きさま……!まだこの街にいやがったのか……!!」

 

「仲間を探すのはいいけど……シャロットはアタシが目をつけたんだ。君たちにはあげないよ!」

 

「くっ……。」

 

するとベジータ達は観念したのか踵をかえした。

 

「チイィ……!!シャロット!!この話は次の機会にしてやる……!!その時まで考えとけ!……いいな!」

 

ベジータはそれだけを言い残しナッパと共に飛び去った。

 

「……行っちゃった……?」

 

「そ、そうみたいだね。」

 

するとザッハも闘いの音をきき駆けつけてきた。

 

「おい!なんの騒ぎだ!」

 

「別に……ただのケンカだ……おまえにゃ関係ねえよ。」

 

「あの……ラビリスタさん。さっきの『シャロットくんに目をつけた』っていうのはなんのことですか?」

 

「そのままの意味だよ。シャロット達にはみどころがあると思ってね。」

 

「みどころ?」

 

「……まずは君たちにいろいろ事情を話そう。さ、もうでてきていいよ!」

 

ラビリスタがとある人物を呼んだ。

 

「おっ!やっとかあ!!いや〜若え頃のベジータを見てると懐かしくてよ〜……!出てくの我慢すんの大変だったぜ!」

 

そこに現れたのは『孫悟空』だった。

 

「「「「!?」」」」

 

「て、てめぇは……!」

 

「あなたは……!」

 

シャロットとユリシスはこの悟空に見覚えがあった。シャロットはブロリーと闘った時に助けてもらい、ユリシスは前の世界で悟空達と一緒に暮らしていた。

 

「悟空……さん?ですよね。私の事……わかり……ますか?」

 

「……ああ!おめぇ随分明るくなったなユリシス!無事でよかったぞ!」

 

「は、はい……!悟空さんもご無事で……!」

 

この悟空はユリシスの事を知っている時代の悟空だった。

 

「あの時の……!!なんで髪が黒いんだ!?」

 

「孫……悟空……。」

 

ザッハも悟空の事を知っているようだった。

 

「……ん?オラのこと知ってんのか?」

 

「あれ?シャロット達もどこかの時代の『孫悟空』に会ってたのかな?まあでも……ここにいるのは正真正銘……『この時代』に生きる……孫悟空だ。」

 

「まあおめえ達が会ったオラのことはわかんねえけんど……よろしくな!」

 

「こ、この人は?」

 

ブルマだけが悟空の姿を見て首を傾げた。

 

「おおっ!ぶ、ブルマだ!!若え頃のブルマまで来てるんか!!」

 

悟空は若い頃のブルマに会えて喜んでいるようだった。

 

「えっ!?えっ!?な、なに!?わたしを知ってるの!?も、もしかして未来の旦那様かしら……!?」

 

「多分違うと思うよブルマさん……。」

 

「よし、悟空も来たことだし早速例の話を進めようか。」

 

「おう、そうだな!!……実はよ、オラ達におめえ達の力貸して欲しいんだ!」

 

「……どういう事だ?一体何をしようってんだ?」

 

「バトルロイヤルの主催者を見つける!そんでこの時代で起きてる騒動をやめさせんだ!」

 

「……!バトルロイヤルの……主催者!?」

 

「……それと……もう1人探し出してほしいヤツがいるんだ。」

 

「もう1人……ですか?」

 

「ああ……オラに似たそっくりな奴がこの世界には来ているはずだ……『ブラック』を探してくれ……!」

 

「ぶ、ブラック……?」



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兄様

とある廃墟にて……

 

「た、助けてくれ……!!俺たちは本当に何もしてないんだ!!」

 

「そうだ!!俺たちが何をしたってんだよ!!」

 

とある人物に追い詰められた男たちの声が響き渡る。

 

「……私はあなた達が複数人で女性を襲っているのを見ましたし……何もしてないってことは有り得ませんよね。どっちにしても……組織からの命令により、今からあなた達を殺します。でも、大丈夫ですよ。あなた達は精一杯生きました。精一杯生きた……もう悔いはないですよね。」

 

水色髪の少女は張り付けたような笑みを浮かべながら近づいた。

 

「ひぃっ!?く、来るなぁ!!!!」

 

「いやだ!死にたくない!!!!この……ば、化け物がぁああ!!!!」

 

男達は最後の抵抗で少女に襲いかかった。

 

「………。」

 

しかし……

 

「あ……ぁ……なんで……。」

 

「俺たちは一歩も動いていない……。」

 

男達は動けていなかった。厳密に言えばその動いた行動が無かった事になったと言った方が正しい。

 

「……んふ♪では、さようなら。」

 

「「うわあああああっ!!!!」」

 

男達は泣き叫びながらその人生を終えた。

 

「……任務完了。次の目標は……『D型検体0005b』」

 

少女は自分に付着した返り血を謎の能力で消しながら歩き出した。

 

「血に染まる響き 命の輝き♪闇の奥底に響く死者の歌♪蒼き蝶が運命を運ぶ♪」

 

不気味な歌をうたいながら少女は歩いて行った。

 

 

その頃、シャロット達は……

 

「ぶ、ブラック……ってなんだ?」

 

「ブラックっちゅうのはオラの体を乗っ取って好き放題暴れた悪ぃやつだ。けんどな……いいやつのブラックもいるんだ。」

 

「悪いブラックの他に……いいブラック……?何言ってるか全く分からねえ……。」

 

シャロットの頭はこんがらがって何がなんだか分からなくなっていた。

 

「まあ今は無理に探すことはねえさ。一番重要なのはバトルロイヤルの主催者を探すことだかんな!」

 

「バトルロイヤルの主催者……って……。この世界に来た時にテレパシーみたいなのでルールを説明した人の事?」

 

「いや、この世界に来た戦士にルールを伝えたのは私だよ。」

 

この世界の戦士たちにルールを伝えたのはラビリスタだった。

 

「えっ!?それじゃ主催者はあんたじゃない!」

 

ブルマがやっぱりという顔をしながらラビリスタを睨む。

 

「まあまあ最後まで聞いてよ。私はね……『黒幕』に人質をとられて仕方なくこのバトルロイヤルを開催したんだ……!」

 

「黒幕……!いや、そもそも……ラビリスタさんって……何者なの!?」

 

「……私はこの世界の創造主……『七冠』の一人……まあちょっとチートを使ってる一般人さ。」

 

「創造主……!?それって神さまみたいなもんじゃない!じゃあ……人質の方は……。」

 

「人質は『ミネルヴァ』と言ってね。私たち『七冠』が作った人工知能さ。」

 

「『ミネルヴァを救いたければ戦士たちが闘う場を用意しろ。』それが黒幕の要求だったんだ。そして今のところ……『黒幕』が何のためにバトルロイヤルを開催してるのかはわからない。」

 

「そ、そんな……。」

 

「だからこの騒動は私たちで解決するしかないのさ。私は七冠だからね、表立って色々と行動することはできないんだ。」

 

「そこでオラ達の出番ってわけだ!ラビリスタの代わりに『黒幕』をオラ達で、探し出すんだ!」

 

「……!!」

 

「とにかくこれが『超時空バトルロイヤル』の真実だ。ほかにも戦力は必ず必要……君たちにも期待しているよ。」

 

「……イヤだといったら?」

 

シャロットがラビリスタを静かに威圧する。

 

「ふふ……その気迫……嫌いじゃないよ。まあ、みんなにも考える時間は必要だろうしね。ひとまず解散してから後で君たちの答えを聞かせてほしい。」

 

こうしてシャロット達は一度解散し戻ることにした。

 

「……う〜……!!ああ〜っ!!なんでこんなことに……!!」

 

「元気だしてブルマさん。」

 

「なんにも知らないまま世界が滅んじまうより手伝えるだけマシだろうが……」

 

「私みたいなか弱い女の子にやれることなんてたかが知れてるわよ……。は〜あ〜このまま都に引きこもってたいわ……」

 

「またそれか……暗いことばっか言ってっと……」

 

その時だった……

 

「オラーー!!メシがまずいんだよ!!」

 

「「「!?」」」

 

街中で騒ぎがあった。

 

「な、何っ!?」

 

「なんの音だ!!」

 

シャロット達が急いでその騒ぎのあった場所に向かうと、一人のピンク色の巨体な男が暴れていた。

 

「チッ……!この星にはロクな食いモンがねえぜ……!!」

 

「おい!てめえ!何してやがる!!!」

 

「……あん?……ほ〜う……!これはこれはお強そうなのがきやがったな……!俺様はドドリアだ。へへへ……!」

 

ドドリアはシャロットを見て悪い笑みを浮かべる。

するとユリシスはこの男の姿を見て首を傾げた。

 

「……この人何処かで……。ん?その戦闘服……確か……フリーザ軍……?」

 

「な、何!?ユリシスの知り合い?」

 

「いえ、知り合いではないですけど……何かの張り紙で見た気が……。」

 

するとドドリアはユリシスの顔を見て顔を青ざめた。

 

「あ、あぁ!?て、てめぇは……まさか…………。この世界に来てやがったのか……!?おい、今日のところは見逃してやる……!!」

 

「は、はぁ!?」

 

ドドリアは突如シャロット達から背を向けた。

 

「こ、今度あったらギタギタにしてやる!!覚えてやがれ!!!」

 

そのまま慌てるようにどこかへ逃げてしまった。

 

「……な、なんだあいつ……。てかあいつなんかユリシスのこと見て驚いてなかったか?」

 

「?そうですか?別に知り合いでもないですけど……。」

 

「……ったく、それにしてもメシ屋をめちゃくちゃにしやがって……!ま、これで都に引きこもってても安全じゃねえことが証明されたなブルマ。」

 

「そ、そんなあ……。」

 

「でもラビリスタさんのもとにいれば少なくとも身の安全は約束されますよ!」

 

「それじゃぁ拒否権ないのと同じじゃない〜!!!」

 

「やるしかねえ……ってことだな。ラビリスタにはラディッツの件で面倒みてもらった借りがある。」

 

「……シャロットくん。」

 

「それに……まだおまえらから『この時代のこと』をいろいろ教わってねえからな……!オレをボディガードにした時にそう言ってただろう……!約束を忘れてねえだろうな!」

 

シャロットは少し照れくさそうに言った。

 

「……シャロット……。そうね、こんな事件……さっさと終わらせましょう、」

 

ブルマは嬉しくなり思わず笑顔になった。

 

答えが出たシャロット達は再びラビリスタの所までやってきた。

 

「よおラビリスタ。さっきの話決めたぜ……オレたちあんたの仲間になってやるよ。」

 

「え、随分と早いね!?まだ明日くらいまでなら待とうと思ってたけど……。」

 

「こういうのは早えほうがいいだろ。どのみち今のオレには目的なんざねえからな。」

 

「……ところでザッハはどこに行ったの?」

 

「ザッハならラビリスタさんの話を聞いたあとふらっと一人でどこかに行っちゃったわ。」

 

「あのヤロウ……まだ悩んでんのか?ビビってんじゃねえだろうな?……ちょっと見に行ってくるぜ!」

 

 

シャロットはザッハを探しに向かった。

一方その頃、ザッハは街の外れの草原にいた。

 

「ようザッハ!」

 

「シャロットか、どうした?」

 

「ああ、ラビリスタの計画に協力するって話、お前どうすんだ?オレはやるってさっき伝えたぜ!」

 

「ふ……お前らしいな。……オレはやめておく。」

 

ザッハの意外な返答にシャロットは驚いた。

 

「……はっ?お前まさかビビってんのか!?」

 

「おまえそう言えばオレが釣れると思うなよ?」

 

「ぬぐ……。」

 

「あの女の話を信じてない訳じゃないし、このバトルロイヤルが真っ当ではないってことも本当だろうな……。」

 

「だったらなんでやらねえんだよ……!」

 

「そう怒るなシャロット。この世界の異変を解決することにはオレも賛同している。この後はオレなりにこの異変について調べてみようと思う。」

 

その言葉を聞いたシャロットは諦めたように笑った。

 

「そうか……ま、そういう事なら別にオレが止める理由はねえ……。」

 

「シャロット、一つ言っておくぞ。あの女……いや、『七冠』が曲がったことをしようとしたなら……お前が止めろ。」

 

「言われるまでもねえ!今までも気に食わねえヤツにはそうしてきたんだ!」

 

「お前なら……相手がどんなヤツだろうとズケズケと言いたいことを言ってくれそうだしな。ふ……。」

 

「……それ、ホメてねえだろ……!」

 

「ははは……!!」

 

お互いにそんなやり取りをした後、二人は向かい合った。

 

「じゃあここからは別行動か……。」

 

「ああ、お互い生き延びて強くなってまた会おう!!」

 

「そしたら勝負だ!今度もオレが勝つけどな!」

 

「冗談……!いつまでも負けっぱなしでいると思うなよ?」

 

「いいや、絶対今度もオレが勝つ!!」

 

「ふ……それじゃあ皆にもよろしく伝えておいてくれ。」

 

「ああ!……くたばんなよザッハ!」

 

こうしてシャロットとザッハはそれぞれ違う道を歩むことにした。

 

あれから数日が経ち、シャロット達はラビリスタに言われた通りにスカウト出来そうな仲間を探していた。

 

「……結局やることは『バトルロイヤルに参加』じゃないの!!」

 

シャロットの通信機からブルマの声が鳴り響く。

 

「バトルロイヤルに紛れつつ、悪党を倒して黒幕の調査……それと並行して味方になりそうな人をスカウトする……やる事が多くて大変だね……。」

 

シャロットとユリシスはその為に知らぬ土地を歩き回っていた。

すると……

 

「きゃあああっ!!!」

 

「「「!?」」」

 

少女の悲鳴が遠くから聞こえた。

 

「あっちだ……!!行くぞユリシス!」

 

「う、うん……!」

 

シャロットとユリシスは猛スピードで声のした方に飛んで行った。

そこに居たのは尻もちをついて動けない和装を着た黒髪の少女と戦闘服を着た野蛮な男たちだった。

 

「何してんだてめえらあっ!!」

 

「ごふっ!」

 

「がはっ!」

 

「!?」

 

シャロットは登場と同時に男たちを蹴り飛ばした。

 

すると蹴られた男たちはシャロットの顔をみて怯えた様子をみせた。

 

「ヒィィイ!な、なんでてめえがここに……!」

 

「あ?」

 

シャロットは身に覚えのないことで恐れられていた。

 

「く、くそ!殺されてたまるか!!返り討ちにしてや……。」

 

「うるせえ!寄ってたかって女をいじめてんじゃねえよ!!」

 

「「ぎゃああああ!!」」

 

シャロットは有無を言わさずにカタをつけた。

 

「ふう……たくっ馬鹿どもが。」

 

「シャロットくん、なんかこの人達焦ってたみたいで様子おかしくなかった?」

 

「そうね……何処かから逃げてきたような感じで……。」

 

「あ?そうだったか?」

 

「……あ、あの!」

 

するとシャロットの後ろで尻もちをついていた少女が立ち上がった。

 

「ん?ああ、大丈夫だったか?」

 

「は、はい……!わたくし、『リリ』と申します。助けていただきありがとうございました!」

 

「いいってそんなの。オレはシャロットだ!」

 

「私はユリシスです。何があったのか聞かせて貰えませんか?」

 

「……わたくしは【アルターメイデン】というギルドのギルドマスターをやっているのですが……と、突然この世界に飛ばされてしまって……。」

 

「あるたー……めいでん?よく分からねえが……おまえもこの世界に突然連れてこられたやつか。」

 

「……あと二人……わたくしの仲間がいるんです。『プレシア』と『クリア』という人は見かけませんでしたか?」

 

「いや、知らねえな……。っつってもお前一人じゃこの世界で生きていくにはかなり厳しいんじゃねえか?」

 

「……あの……こんな事言うのも……おかしいとは思うのですが……わたくしも一緒に同行させていただけませんか!」

 

「ん?」

 

ユリシスがリリの顔を見ると微かに頬が赤くなっているのがみてとれた。

 

(………この人シャロットくんに惚れちゃった感じなのかな……。いやでも助けて貰って恩を返したいだけかもしれないし……。あれ、なんか胸がズキズキするこの感じ……なんだろう。)

 

「別に構わねえけど……戦闘の時は大人しくしてろよ?お前一人守ることは容易いけど戦闘の邪魔されたらたまったもんじゃねえからな!」

 

シャロットが了承するとリリは嬉しそうに顔を輝かせた。

 

「あ、ありがとうございます……!あの……不躾でなければ……に、『兄様』とお呼びしてもよろしいでしょうか……!」

 

(兄様???????)

 

「ユリシス……?目が笑ってないわよ……!」

 

ブルマの通信機越しでもユリシスの顔が少し曇ってるのが分かった。

 

「兄様?まあ好きなように呼べよ。オレはリリって呼ぶぜ。」

 

こうしてシャロット達は、新たな仲間リリを加え旅をすることになった。

 



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赤衣のサイヤ人

シャロットとユリシスは襲われていた『リリ』という少女を助け、共に行動することとなった。

 

「……!シャロットくん、この先を見て……!煙が上がっている……!」

 

ユリシスの見る先には黒い煙が上がっていた。

 

「な、なんだあれ……!」

 

「う、嘘でしょ!?その方角には小さな街があるはずよ!?」

 

「兄様!実は先程兄様が倒された人はあそこの方面からこっちに走ってきていたんです!」

 

「まじか……何かが起きてやがるな……!リリ、お前走れるか?」

 

「はい!」

 

シャロット達は急いで煙の上がる方向に走っていった。

 

「嫌なニオイが漂ってきやがる……!一体何が起きてんだ……!!(だが……このニオイ……オレはどっかで……。)」

 

シャロットはこのニオイに何故か過剰に反応していた。

 

「シャロットくん?」

 

「兄様?」

 

「……いや、なんでもねえ。飛ばすぞ!着いてこい!」

 

「「はい!!」」

 

シャロットが急いで街に駆けつけると、そこには倒壊した建物がいくつもあり至る所から煙があがっていた。

 

「そ、そんな……街が……!」

 

「何よ……これ。街がめちゃくちゃじゃない……!!」

 

「……くそ!誰がやりやがった!」

 

「……どうやら敵は近くにいるようですね。」

 

「ああ。とりあえずどっかに話を聞けそうなヤツがいりゃいいんだが……。」

 

その時だった。

 

「見つけたぞ!サイヤ人のガキめ!!」

 

「!?」

 

現れたのは戦闘服を着た美形な男だった。

 

「てめえは……!?」

 

「ひっ……!だ、誰ですかこの人!」

 

「……フリーザ軍の……たしか、『ザーボン』」

 

「ユリシス!お前知ってるのか……!」

 

「はい。どこかで見たことがあります。」

 

そのザーボンという男は何処か怒った様子だった。

 

「やってくれたな……おかげで私の部下はほぼ全滅だ……!」

 

「なっ、何のことだ!?」

 

「……ふっ、とぼけるつもりか……?全く美しくないな……!」

 

「……シャロットくんはたった今ここにきたんです。人違いではないですか?」

 

するとユリシスが一人で前に出た。

 

「なんだ?貴様は……。」

 

「おいユリシス!!!危ねぇからそいつには近づくな!!」

 

「ユリシスさん!!」

 

だが次の瞬間、ザーボンの顔が一気に青ざめた。

 

「ユ、ユリシス…………だと……!!この小娘が……!?ば、バカな……!くっ……この屈辱……!!!絶対に忘れん!!」

 

ザーボンは拳をおさめて飛び去って行った。

 

「な、なんだアイツ……!ザーボンといいドドリアといい逃げてばっかじゃねえか!」

 

「………。」

 

シャロットもどうするべきか迷っていた時、また近くで奇妙な気を感じた。

 

「この気……!誰かが向こうで闘ってる……!?あそこか……!」

 

「兄様!!」

 

「待って!」

 

シャロットが感じた気の方向に向かおうとしたがユリシスとリリはシャロットの手を掴んだ。

 

「なっ!?離せよお前ら!!」

 

「兄様!!ここは一旦引きましょう!」

 

「はあ!?」

 

「落ち着いて気持ちを抑えてください。先程の敵は恐らく巨大な組織……フリーザ軍の兵士でした。そしてシャロットくんが今から向かおうとしてる場所にいるのはそのフリーザ軍に大打撃を与えられるような相手です。今のシャロットくんでは太刀打ちできません。」

 

「うるせえ……!!黙ってろよユリシス!大体なんでてめえがアイツらの事を知ってんだ?フリーザ軍ってなんなんだよ!」

 

「そ、それは……。」

 

ユリシスもなんで自分がその事を知っているのかが分からなかった。

 

「それよりも……このままじっとしてられるか!!」

 

「兄様!!」

 

「シャロットくん!!」

 

シャロットは二人の手を振りほどき奇妙な気を感じた場所に向かった。ユリシスとリリも一人で走って行ったシャロットを追った。

 

「くっ……!めちゃくちゃだ……悪党もそうじゃねえヤツも……みんな全滅してやがる……!一体誰だ!!!こんなことしやがったのは……!!」

 

するとシャロットの通信機からブルマの声が聞こえてきた。

 

「ちょっとシャロット!あそこ!誰かいるわ!!」

 

「ん?!!!!!あ……あ…………!!あいつは……!?」

 

シャロットの見た方向にいた男はシャロットにそっくりな赤いフードを被った男だった。

 

「……あの人……!シャロットくんにそっくり……。」

 

「兄様……が……2人……?」

 

するとフードの男はシャロット達を見つけると地上におりてきた。

 

「…………ん?まだ生き残りがいたか。」

 

「……て、てめえ……何もんだ……?そのツラ……!」

 

「……ほう……まさかこんな所で出会うことになるとは……。きさまもこの時代にいるとはおもっていたが……ふふ……。」

 

「!?」

 

フードの男はシャロットを知っているようだった。

 

「な……何を言ってやがる……!?質問に答えやがれ……!!!てめえは……誰だっ……!!!」

 

「オレはな……きさまに会う時を待っていた。」

 

「!?」

 

「……くくく……やっと……やっとだ……!やっと……!きさまを……この手で殺すことができる……!!」

 

「……何者か知らねえが……てめえはぶっ飛ばしてやる!!」

 

「やってみろ。」

 

謎の男の正体、そしてその目的とは何か……。

 



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深まる謎

 

 

シャロットは自分とそっくりな顔をした赤いフードを被った男と闘っていたが……

 

「はっ!!!」

 

「ぐああああっ!!」

 

今のシャロットでは分が悪すぎる相手だった。

 

「な、なんて容赦のない攻撃……!!このままでは兄様が……!!」

 

「シャロットくん!!」

 

「がっ……手を出すなよリリ!ユリシス!!」

 

「そんなこと言ってる場合じゃ……逃げようよシャロットくん!」

 

ユリシスが必死に呼びかけるがシャロットは逃げようとはしなかった。

 

(くっ……!ダメだ……っ!!こいつ……全く隙がねえ……っ!)

 

「ふん、その程度か……やはりきさまは弱いままだ……。」

 

フードの男もシャロットを見下していた。

 

「ぐう……っ!」

 

「その弱さが……オレを苛立たせる……!!」

 

「があっ!!?」

 

そのままフードの男は容赦なく攻撃を浴びせた。

 

「この世から消え失せろ!!」

 

そしてシャロットにトドメを刺そうとしたとき、何者かがその攻撃を阻止した。

 

「!?」

 

「……おい、そのへんにしとけ。」

 

「……っ!」

 

「おまえは……孫悟空……!」

 

シャロットの前には超サイヤ人に変身した悟空がいた。

 

「ようシャロット!ぎりぎり間に合ったみてえだな!」

 

「悟空さん……!」

 

「こ、この人が……『ゴクウ』さん……!?」

 

リリは何故か悟空の事を知ってる口ぶりだった。

 

「おまえ……どうしてここに……!」

 

「ブルマがラビリスタを通してオラに伝えてくれたんだ。それにしてもこいつは何モンだ?おめえとそっくりじゃねえか。」

 

「オ、オレに聞くな……!一体なんなんだよ……!!あのヤロウは……!?」

 

「オラ達と同じサイヤ人にはちげえねえが……。」

 

「……きさまもサイヤ人か……!丁度いい……二人まとめてオレが消してやる……!」

 

「さあ……そううまく行くかな?」

 

「その余裕……あの女を思い出す……!!すぐに消してやる……!」

 

フードの男が先に攻撃を仕掛ける。

 

だが悟空はそれを難なく避けると拳に気を込めて男に叩き込んだ。

 

「うおおりゃああ!!!」

 

「ぐっ!!」

 

男はなんとか耐え悟空に反撃をする。

 

「しね……!!」

 

「でりゃあ!!」

 

「ちぃ……!」

 

悟空は男の放つ気弾を全て弾き飛ばすと一瞬で間合いを詰めて殴り飛ばした。

 

「だありゃあ!!!」

 

「ぐぅ!?」

 

男はなんとか体勢を立て直すも自分と悟空との力の差を感じていた。

 

「まだやるか?オラとの力の差はもうわかったはずだ。」

 

(こ……これが孫悟空の力……!こんな強いヤロウが……この時代にいやがるのか……!!)

 

シャロットも悟空の強さを目の当たりにして驚いていた。

するとフードの男も諦めたのか拳を下ろした。

 

「……ふん。今のままではまだきさまには届かないようだな。だが……覚えておけ。オレはきさまらを絶対に許しはしない。きさまの『敗北者の血』も……そこのサイヤ人の『穢れた血』も……このオレがこの世から消し去り正しい在り方に戻してやる……!」

 

男はその言葉を言い残すとどこかに飛び去って行った。

 

「た、助かったんでしょうか……。」

 

「どうやらそうみたいですね。」

 

「……ふ〜、行ったかあ!」

 

「……くっ!……はあ……今度ばかりは助かったぜ……借りができたな。」

 

「なあに気にすんな!これから一緒に修行する仲だしな!!」

 

「……それにしても……街はめちゃくちゃですね。」

 

「あ、貴方が……『ゴクウ』さん……なんですか?」

 

リリが悟空にそんなことを聞いた。

 

「ん?オラが悟空だけど……おめぇ誰だぁ?」

 

「申し遅れました。わたくしはリリです。あなたの事はペコリーヌさん達から聞いてました。」

 

「ペコリーヌ達から!?おめぇあいつらの知り合いだったんか!でも、ペコリーヌ達が言ってるのは多分オラの事じゃねえぞ?」

 

「ど、どういうことでしょうか……。」

 

「へへっ、まあその辺のことも含めてとりあえずラビリスタの所に一旦行くぞ!」

 

こうしてシャロット達はラビリスタがいる場所に戻ってきた。

 

「やあ、どうやら大変な目にあったみたいだね。ん?一人増えた?私はラビリスタ、よろしくねー。」

 

「リリです。よろしくお願いします……!」

 

「さて、本題だけど……既に話はブルマから聞いたよ。」

 

「ああ!無事……とまではいかねえけどシャロットを助けてきたぞ!」

 

「随分こっぴどくやられたみたいだね……。」

 

「オレの怪我なんざどうでもいいんだよ!!」

 

シャロットは急に声を荒らげた。

 

「……シャロット……?」

 

「……オレは何も出来なかった……!オレがもっと強ければ……あのヤロウをぶっ飛ばせた……ハズなんだ……!くそっ!」

 

「街がああなった事を悔やんでいるのかい?……その点なら安心して構わないよ。」

 

「……!?」

 

「今回の異変の後始末のために、私たちの世界にあるドラゴンボールを集めて安全な場所に保管してある。」

 

「ドラゴンボール!?持ってるの!?」

 

「当然!『超ドラゴンボール』ほどじゃないにしろこれも保護しておかないと大変なことになるからね。」

 

「ど、どうりでレーダーの反応がないわけだわ……。と、とにかく壊された街や犠牲になった人をドラゴンボールで元に戻せるのね!?」

 

「うん。だけどそれはこの異変を解決し終わってから!今願いを叶えてもまた同じことが起きるだろうからね。それより気になるのがシャロットそっくりの奴。何か心当たりはないかい?」

 

ラビリスタの質問に対してシャロットは首を横に振った。

 

「……なにもねえ。あったとしても……オレは覚えてねえ……。あいつは……何モンなんだ!なんでオレのことを知ってる……!!あのツラは……!!」

 

シャロットは一度に色々とありすぎてパニック状態になっていた。

 

「兄様……。」

 

「……シャロットくん。いくつかの可能性は考えられるけど……今はまだ結論はだせないよ。焦らないでゆっくり考えていこう?」

 

「……あいつ見た目はそっくりだけどシャロットとはまるで別人みたいに非道なヤツだったわね。」

 

「よし!じゃあ調べてみっか!」

 

悟空が何かを思いついた。

 

「調べるって……どうやって?」

 

「オラとシャロットで組手すんだ!そんでシャロットの気とあのサイヤ人の気を比べてみる!いけんな、シャロット!」

 

「……ああ!オレも一度あんたと闘いたかった!」

 

そして悟空とシャロットは街から離れた草原へと向かった。

 

「……行っちゃいましたね。」

 

「……まあ気に関しては悟空が適任だし任せて大丈夫そうかな。それじゃ……君!リリって言ったかな?」

 

「は、はい……。」

 

「聞かせてもらってもいいかな。君のこと。」

 

悟空とシャロットが離れた後、リリは今までのことを全て話した。

 

リリの所属するギルドは初心者ギルドであり、戦闘には慣れていない。元いた世界では『世界の裏側』に行くという目的のために、【美食殿】に護衛の依頼をしていた。

その後、ジオ・テオゴニアで【美食殿】と共に魔物討伐をしていたらしい。

 

「……『世界の裏側』?なるほど……君たちはそこで冒険をしていたんだね。」

 

「……はい。」

 

「そして……かつて『世界の管理者の端末』として多くの人を傷つけたからその罪滅ぼしのために【アルターメイデン】として活動していた……。」

 

「……そうです。」

 

ラビリスタはリリの話を聞いて納得していた。そして同時にリリの姿に既視感を感じていた。

 

「ん?君……もしかして『エリス』の……仲間……だったというか仮面を着けてた……よね?」

 

「…………はい。」

 

リリは少し間を空けてから返事をした。

 

「……そっか。君たちはもう囚われてないんだね。安心したよ。元の世界に戻っても……ペコリーヌちゃん達と共に旅を続けて欲しいな。あわよくば『彼』も一緒にね。」

 

ラビリスタはそう言うと笑っていた。リリが分岐した世界線から来たことを察していたのだろう。

 

(……彼?)

 

リリはその『彼』という言葉の意味がよくわからなかったが……いずれ出会う仲間と言うことだろう。




端的に言うとリリはシャルルが助けに来なかった世界線から来たわけですね。歴史が変わらずにペコリーヌ達と裏側の世界を冒険してた時にこの異変に巻き込まれた。という解釈で…………いいかな?

裏世界編の話今度書こうかな……



関係ないけどドッカンバトルはいつか出る超絶かっこいいブラックが出る時まで貯めます!フルパワー4もかっこいいけど


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誘拐

 

 

悟空はシャロットと赤いフードの男の気を比べるためにシャロットと組手をしていた。

 

「……そんじゃ!いくぞっ!!ついてこれっか!シャロット!!」

 

悟空は超サイヤ人に変身した。

 

「そうそう……それだ!!『超サイヤ人』……!!そいつが気になってた!!」

 

「へへ……おめえも鍛えればここまで登り詰めることができっさ!きっとな!」

 

「へっ、余裕こきやがって!見てろよ……てめえの力追い越してやる!!」

 

「おっしゃこい!」

 

2人の拳がぶつかり合い衝撃波が発生する。

 

「だりゃあ!」

 

「うおおお!」

 

シャロットは負けじと悟空の動きに着いていくが徐々に差がひらきはじめてきた。

 

「はっ!!」

 

「ぐああっ!!」

 

「まだまだこんなもんじゃねえぞ!」

 

「なっ……!」

 

更に悟空のスピードが上がった。

 

(つ、強え……これが孫悟空の力なのか……!?)

 

「ゼエッ……ゼエッ……!」

 

「ふうっ……!」

 

シャロットの様子を見た悟空は変身を解いた。

 

すると話が終わったラビリスタ達も悟空の所にやってきた。

 

「やあ、どうだった?」

 

「そうだなあ……ハッキリ言ってシャロットとあのサイヤ人の気はほとんど同じだ……けんど……。」

 

「けど……?」

 

「なんちゅうか……しっくりこねえ……なんか違うんだよなあ……。」

 

悟空も答えに確信を持てないでいた。

 

「ふむ……となると……シャロットはみんなも知っての通りサイヤ人……。だけどただのサイヤ人ではない。」

 

「なんだと?……どういう意味だよ?」

 

「……ユリシスさん。サイヤ人ってなんですか?」

 

リリは当然サイヤ人と言うのを知らない。

 

「難しい話だから後でゆっくり教えてあげるね。」

 

「シャロットはサイヤ人の歴史の中でもかなり古い年代の気のようだね。……言うならば『古代のサイヤ人』……といったところかな。」

 

「「「!?」」」

 

「古代の……サイヤ人……。」

 

「つ、つまりシャロットの出身時代って大昔ってこと!?」

 

「そういうことだね。」

 

衝撃の事実に皆が唖然としていた。

 

「ま、焦らなくても赤いフードの男とはまた出会うだろうからね。」

 

「……だな!じゃあそん時までにもっと強くなっとかねえとな!シャロット!」

 

「お前に言われなくても分かってるさ。強くなって……今度こそあのヤロウをぶっ飛ばしてやる!!」

 

 

それからシャロットと悟空の修行の日々が始まった。

 

「……はあああああああ……!!だあーーーっ!!!」

 

「ちがうちがう。それじゃ気をでかくしてるだけだ。超サイヤ人になるには怒りがきっかけなんだ!」

 

 

悟空はシャロットを超サイヤ人にする特訓をしていた。シャロットは悟空との組手もこなしていきボロボロになるまで特訓した。

 

「か……簡単に言いやがって!もうちょっと分かりやすいやり方はねえのか!?」

 

すると近くでシャロット達の修行を傍観していたブルマとユリシスも心配していた。

 

「あんたたち、任務の無い日くらい戦うのやめてゆっくりしたら?よく飽きないわね。」

 

「たまには休憩も大事だよシャロットくん。」

 

「……早いとこ超サイヤ人になってあのニセモノヤロウをぶっとばしてえんだよ……!次は絶対にぶっ飛ばしてやる……!」

 

シャロットのやる気は十分だが悟空もシャロットが何故超サイヤ人に慣れないのか少し分からなかった。

 

「うーん、シャロットくらいの力ならもう超サイヤ人にはなれると思うんだけどなあ……。」

 

するとラビリスタもアドバイスをしにシャロットの元にやってきた。

 

「それはシャロットの心持ちの問題かもね。」

 

「こころもち……?」

 

「うん。記憶を失ってることが原因で無意識に力にセーブをかけているのかもしれないよ?」

 

「………。」

 

「まあ今はまだ大丈夫だシャロット!ちっと休憩してメシにするぞ!シャロット、おめえも食うだろ?」

 

「……いや、オレはもう少し修行する!!」

 

「ええ!?シャロットくん……まだやるの?」

 

「今日はまだ組手を1回やっただけだ。体力が有り余ってんだよ!」

 

「……そう。それじゃわたしたちは悟空さんと先に戻ってるからね。」

 

「……『悟空さん』……?な、なんかブルマにそう呼ばれっとムズっ痒いなあ……。なあ、オラの事は今のブルマみてえに『孫くん』って呼んでくんねえか?」

 

「ええ……!?そ、孫くん!?かなり年上の男の人に『くん付け』はなんか抵抗あるんだけど……!?」

 

そんな会話をしながらブルマ達は街に戻った。だがユリシスは1人でシャロットの修行をじっと見つめていた。

 

「ん?ユリシス。お前まだ戻ってなかったのか?」

 

「あ、……ごめんね。邪魔だったよね……。」

 

「いやそんなことねえけど。」

 

「ちょっといい?」

 

「ん?」

 

ユリシスはゆっくりとシャロットに近づくと手を握った。

 

「ゆ、ユリシス……?」

 

「……特訓……頑張ってね!応援してるよ、シャロットくん。」

 

ユリシスはそれだけをシャロットに伝えると街に戻って行った。

 

「な、何だったんだ……?ん?なんか身体の調子が妙にいいぞ……?」

 

何故かシャロットの体にできた傷や疲れが治っていた。

 

シャロットはそのまま修行を続けた。

 

1時間ほど経った後、食事を済ませたブルマとリリがシャロットの所に戻ってきた。そこにユリシスの姿は無かったためどうやら入れ違いになったのだろう。

 

「シャロットー!」

 

「……ん?ブルマ、リリ、どうしたんだよ?」

 

「兄様にお弁当を持ってきました。」

 

「あんたどうせあれからずっとごはん食べずに修行してたんでしょ?」

 

「……あっ……!」

 

シャロットは我を忘れて修行をしていたため食事をしていなかった。

 

「悟空さんが料理を全部食べてしまいそうだったのでいくつかお弁当に詰めて持ってきました。」

 

「そ、そういえば腹減ったな!丁度いいぜ!!」

 

「全く、やっぱあんたは私たちが見ていないと危なっかしくて……。」

 

シャロットが弁当にがっついたがシャロットにとっては少なかったらしくすぐに具材が無くなってしまった。

 

「……ん?おいおいこれっぽっちかよ?これじゃあ全然腹の足しになんねえじゃねえか。」

 

「……って、少しは感謝しなさいよ!!ほんっとあんたはデリカシーないわね!」

 

文句を言いながら弁当を食べるシャロットだったが案外腹は膨れたようだった。

 

「ふう……それなりに腹も膨れたな……。」

 

「兄様の食欲……凄いですね……。あっという間に平らげてしまいました。」

 

「さっきは『腹の足しになんねえ』なんて言ってたクセに……調子いいわね……。」

 

「ま、食い足りねえ分はそこらの獣でもとっ捕まえて食えばいいだろ!!」

 

「野蛮だわ……。」

 

「ワイルドですね……。」

 

その時だった。

 

「食い足りないならうまい果実でもどうだ?ボウズ……。」

 

ブルマ達の背後から怪しい声が聞こえた。

振り向くとそこには褐色肌で悟空にそっくりな戦闘服を着た男がいた。

 

「あら?悟空さん……じゃなかった……えっと……孫くん?」

 

だがブルマは気づかずにそのまま男に近寄った。

 

「果実ってなあに……?あんたたちはほんとに良く食べるわね……。」

 

ブルマが迂闊に近づいたその時、シャロットはこの男が孫悟空でないことに気づいた。

 

「……!!ブルマ!!そいつに近寄るな!!」

 

「えっ……?」

 

「なっ……!!」

 

シャロットが叫んだ瞬間、その男はブルマを抱えて逃走した。

 

「きゃあっ!?」

 

「ブルマッ!!」

 

「ブルマさん!!」

 

男はそのままブルマを連れ去って行った。




ユリシスの挿絵は全身絵なのにシャルルの挿絵は全身絵じゃないのは何故なのか。シャルルの全体見たいな


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第十章 フリーザ編
宇宙の帝王


怪しげな男はブルマを連れ去る。

 

「よう嬢ちゃん……おまえ、随分優秀な科学者らしいな……その年で大したもんだ……。」

 

「えっ!?な、なに!?そ、孫悟空……さん……くん?よね……!?あなた……!」

 

ブルマが混乱していると急いでシャロット達が追いかけてきた。

 

「おいブルマ!!そいつは孫悟空じゃねえ!振りほどいて逃げろ!!!」

 

「む、無茶言わないでよ!?というかこの人孫くんじゃないなら誰なのよっ!」

 

ブルマが叫んでいるとターレスの部下らしき人物達が現れた。

 

「おい、この嬢ちゃんをオレたちの船にエスコートしてやれ。優しく……丁重にな……くくくっ……。」

 

ターレスが命令すると部下たちはブルマを連れて行ってしまった。

 

「ブルマさんっ!!」

 

「ブルマーッ!!」

 

シャロット達が追おうとするが男が立ちはだかる。

 

「さて……と、お次の用事は……と……。」

 

「そこを……どけえええっ!!!」

 

「はやく通してください……!!」

 

リリとシャロットも戦闘態勢に入った。

 

「……はあ……聞く耳持たず……か……おい、あの小僧を足止めしろ。」

 

男が命令するとまたもや部下達がシャロット達の前に現れた。

 

「ちっ……!!おいリリ!お前は下がってろ……!」

 

「いえ、私だって……闘えます!」

 

「!?」

 

するとリリの身体が白い光で包まれた。

そして光が消えるとそこには漆黒の翼を持つ天使がいた。

 

「な……なんだそりゃ!?お前本当にリリ……なのか!?」

 

髪の色も白紫色に変わり武器も鎌のような得物になっていた。

シャロットは驚きの声を上げる。

 

「兄様、行きましょう!!」

 

「ああ!!」

 

二人は同時に飛び出した。

 

シャロットは拳を振りかざし、リリは大鎌を振るい部下をなぎ倒していった。

 

「ほおう……やるじゃないか……。」

 

「余裕ぶっこいてんじゃねえ!!とっとと……どきやがれえっ!!!」

 

シャロットは拳に力を込めて男を思いきり殴った。

 

「……いいパンチだ……古臭いナリだが流石はサイヤ人だな。」

 

「兄様の攻撃が……、」

 

「なっ……!?き、効いてねえのか……!!くっ……てめえ……!!一体なにもんだっ!!!」

 

「おいおい、そう怖い顔するなよ?サイヤ人同士仲良くしようや……。」

 

 

「てめえもサイヤ人か……!」

 

「ああそうさ。オレの名は『ターレス』……お前の特訓……見てたぜ?お前、強くなりたいんだろ?オレの元へ来る気はないか?」

 

「なんだと?」

 

ターレスはシャロットを仲間に引き込もうとしていた。

 

「オレについてくれば『力』をくれてやる……どうだ?」

 

「話に乗ってはいけません兄様……!」

 

「ああ、こんな怪しいニオイのヤツの話に乗るわけねえだろ!」

 

「……ほう……サイヤ人のクセに強くなれる機を逃すか……変わり者だなお前……。」

 

「ペラペラとくっちゃべってねえでどけっつってんだ!!ぶっとばされてえのか!てめえ!!!」

 

「ふっ……ぶっとばされるのはゴメンだな……どいてやるよ。」

 

ターレスがシャロット達の前から引くと、またしてもターレスの部下達がシャロットたちの前に立ち塞がった。

 

「「!?」」

 

「それじゃあオレは行く。お前たちで適当に遊んでやれ……くくくっ。」

 

「てめえっ!!!」

 

ターレスは一人で行ってしまった。

 

シャロットとリリも後を追うために部下たちを倒すがシャロットは違和感を覚えていた。

 

「チッ……!!こいつら……やっぱり今までのヤツと何かが違う……!」

 

「はい……ただの傭兵ですが……かなり手こずりますね……。」

 

「くそ……あのヤロウは何処に……!」

 

「兄様、ブルマさんの気を探って居場所は分からないのですか?」

 

「……ダメだ。あいつの気は小さすぎてわかんねえ……!それにブルマを連れてったヤツらも似た気のヤツがそこらにウヨウヨいやがる……!」

 

「……一度ラビリスタさんの所に戻るしか……。」

 

リリが街に戻ろうとしたその時だった。

 

「……!!待て!!!と……とんでもねえ気だ……!!オレ達のすぐ近くに……!!!」

 

突如シャロット達の近くに恐ろしく大きな気が現れた。

 

「……おや……わたしに気づきましたか……なかなか勘が良いようですね……。」

 

どこから声が聞こえた。

 

「……!誰だっ!?」

 

「先程のやりとり……見ていましたよ……フフッ。」

 

シャロット達の前に現れたのは『フリーザ』だった。

 

「あなたは……!」

 

「わたしの名は『フリーザ』です。」

 

「フリーザ……!?……ってことは……こいつがさっきのヤツらの親玉か……!?」

 

「ええ!?」

 

シャロットとリリも驚いていた。

 

「おや、そこのお嬢さんも中々の力をお持ちのようで。どうです?わたしの部下になるのは。」

 

「え、ええ……!?」

 

「まあ今はいいでしょう……それよりも私が話をしたいのはそちらのサイヤ人です……。」

 

「てめえと話すことなんかあるか!!ブルマを連れ去りやがって……!!」

 

「兄様……!この人と闘うのは危険です!!」

 

「……くっ……んなこと……気をかんじりゃわかる……!!でもよ!!」

 

するとフリーザが話を割って質問をしてきた。

 

「……あなたが最近ウワサになっている『フードの男』……ですね?」

 

「……はあ……?……フード……?」

 

「聞けばザーボンさんとドドリアさんの部隊もあなたが潰したそうではないですか?」

 

「てめえ……!一体なんの話を…………っ!!なるほど……あのヤロウと勘違いしてやがるのか……!あいにく人違いだ。そいつはオレじゃねえ……!」

 

「……ほう?随分見え透いた嘘をつくのですねえ……。」

 

「嘘じゃねえ……!!あんなヤロウとオレを一緒にすんじゃねえ!!!」

 

「ふん、まあいいでしょう。あなたが認めようが認めまいがわたしのすることは変わりません。部下をいたぶってくれたお礼をしなければね!」

 

「なっ……!?」

 

「覚悟なさいっ!!」

 

フリーザが襲いかかってきた。

 

「「!!」」

 

咄嵯に二人は避ける。

 

フリーザの攻撃で地面は大きく割れた。

 

「な、こんなの当たったら……!」

 

「なんて攻撃力……!」

 

その威力を見て二人は戦慄した。

 

「ふむ……今のを避けるとは……少しはできるようですね……。」

 

「舐めんなよっ!!今度はこっちの番だぜっ!!」

 

シャロットが殴りかかる。

 

しかしフリーザはノーガードでシャロットの拳を受けた。

 

「なっ!?」

 

「!?」

 

「……ふむ……少しチクッとしましたよ……だてにザーボンさんとドドリアさんを倒していませんね……フフ……。」

 

(つ……強すぎる……!!こいつ……!やべえ……っ!!)

 

「リリ……お前は逃げろ……!!」

 

「え……?」

 

「逃げろっつってんだ!!!死んじまうぞ!!!」

 

「フフ……逃げる間など与えませんよ。でもご安心なさい……苦しむ間も与えませんので……!」

 

フリーザは指先に気を溜める。

 

「「っ……!!」」

 

そしてフリーザの指先からビームが放たれた。

 

「……!?」

 

「……はず……れた……?」

 

しかしフリーザのビームはあさっての方角に飛んでいき小さな岩を破壊した。

 

「ワザとはずしやがった……!一体何のつもりだ……!!」

 

「ふむ……ま、こんなところですか……それなりに使えそうですね。」

 

「……はあ?」

 

フリーザは何事もなかったかのように話を続ける。

 

「失礼……シャロットさんに……リリさん……と言いましたね。あなた達の実力を試させてもらいました。」

 

「……へ……?じゃあ……ザーボンとドドリアの仇討ち……というのは……?」

 

「もちろん冗談ですよ……このバトルロイヤルで弱者が死ぬのは当然のことなのですから……ふふ……。さて、あなたは軍にさらわれた仲間を助け出したいのでしょう?でしたら……わたしと手を組みませんか?」

 

だが突然の提案にシャロットたちは戸惑った。

 

「……話が見えねえ……てめえがブルマをさらった張本人だろうが……!!!」

 

「……わたしは軍にそんな命令をしてはいません。」

 

「「!?」」

 

「そうですね……『今のフリーザ軍』は私にとっても敵……とでも言うべきでしょうか……。ですのでお互いのために協力しましょう……と言っているのです。」

 

(……こいつ……信用できるのか……!?)

 

「少し時間を頂けませんか!」

 

シャロットが答えに迷っているとリリがフリーザに発言をした。

 

「……む?」

 

「お、おい!?リリ!?」

 

「兄様……これはわたくし達だけで判断できるものじゃありません……!」

 

「……まあいいでしょう。では、明日の朝……この先の岩場で落ち合いましょう……色よい返事を期待していますよ。」

 

フリーザはそう言うと去っていった。

 

シャロットはこの事をラビリスタ達に相談する為に街に戻った。

 

「おいラビリスタ!!」

 

「あ!シャロット!!ユリシスちゃん見てない!?」

 

「ユリシス?」

 

何故かラビリスタも焦っていた。

 

「ユリシスちゃんがいないんだよ!!どこにも!」

 

「「えええっ!?」」

 

ブルマに続きユリシスも謎にいなくなった。

 

「ユリシスも心配だが……ブルマがフリーザ軍に連れ去られたんだよ!!」

 

「えええ!?」

 

さすがのラビリスタも驚いていた。シャロットはこれまでの事を全てラビリスタ達にはなした。

 

「ブルマがさらわれた!?それに……フリーザって人と協力!?」

 

「ほ〜!!おめえフリーザと闘ったんか!やるなあ!!」

 

悟空だけは呑気にしていた。

 

「キミは呑気だな……!!それにしても……トップを無視したフリーザ軍の行動……ブルマがさらわれた理由……そして突然姿を消したユリシスちゃん……。それにフリーザシャロットを仲間に誘った理由……不可解な点が多すぎるよ〜!」

 

「……オラもフリーザが誰かに助けを求めるなんて聞いたことがねえぞ……。あいつならこういう時逆らった部下を殺してそれでしめえだ。」

 

「おい!それよりも……もしかしたらブルマと同じように……ユリシスもフリーザ軍に連れてかれたのかも知れねえだろ!さっさと助けに行かねえと……!」

 

「じゃあオラも……」

 

「あ、悟空はダメだよ?」

 

「ええ!?なんでだぁ!?」

 

「フリーザ軍のような大きな組織が相手となると……キミが解決するのは少々目立ちすぎるからね。黒幕にこっちの動きがバレちゃうでしょ?」

 

「そんなあ……!オラも闘いてえよ……!」

 

「じゃ、じゃあどうするんですか!?まさかブルマさんとユリシスさんを見捨てると……!?」

 

「そうじゃないよ。今回の件は色々と引っかかる……よし、シャロット……フリーザの仲間になってきて!」

 

「はあっ!?な、何言ってんだよ!なんであのヤロウの仲間になんか……!」

 

「シャロット、これは任務だよ。協力するフリをしてフリーザの動向を探るんだ。」

 

「そ、それは……兄様にスパイをしろってことですか!?」

 

「な、なんでわざわざそんなこと……!俺が全員ぶっ飛ばせば良いだけの話じゃねえか!」

 

「キミはフリーザの実力を知ってるでしょ?」

 

「……っ!」

 

「あまり敵に回すのは好ましくない。今回はブルマとユリシスの救出だけにしておこう。いいね?とにかく頑張れ!」

 

ラビリスタのゴリ押しでシャロットはフリーザの仲間になることになった。

 



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狂気の殺戮劇

更新頻度低いの許してください。ある動画のmadの編集してたら思いのほか面白すぎて他のものに手がつけられなくなったんだ……


翌朝、シャロットとリリは約束通り指定された場所に向かった。

そこにはフリーザが待っていた。

 

「答えは決まりましたか?」

 

「兄様……。」

 

「……ああ。分かってる。……てめえの話に乗ることにした。」

 

「……結構。よろしくお願いします。シャロットさんにリリさん……。それではこれからの活動について説明をしましょう。」

 

「…………。」

 

「さて……それではまずは軍の現状と我々のこれからの行動についてお話を……。」

 

「……そんなモンに興味はねえ……!てめえが軍に出向きゃ話は終わりだろうが!さっさと軍の暴走を止めてブルマを返しやがれ!!」

 

シャロットはフリーザが話終わる前に割って入った。

 

「……これだからサイヤ人は……少しは落ち着いたらどうですか……わたしの役に立つ気がないのなら……あなたも殺しますよ?」

 

フリーザがそう言って放ったのは圧倒的なオーラだった。

 

「……っ……!!」

 

「兄様……抑えてください……!」

 

「……わ、悪ぃ……。」

 

フリーザの気に驚くシャロットとリリだったがフリーザはニヤリと笑い気を鎮めた。

 

「……なんてね……ふふ……ほほほ!!冗談ですよ……冗談……。」

 

フリーザはそう言うと楽しそうな表情を浮かべた。

その笑顔を見た瞬間、シャロットとリリは寒気を感じた。

 

(こいつ……本気だ……!)

 

(じょ……冗談には聞こえません……!)

 

「今すぐにでも軍へと向かいたいのはわたしとて同じ……それが無理だからこうやって話をしているのです……以前もお話した通り今のフリーザ軍はわたしの管理下にありません。わたしがこの時代に来た時点で既に軍はああして独自に活動していました。」

 

「……はあ?じゃあ今のフリーザ軍に命令を出してんのは誰だよ?」

 

「フリーザさんの管理下でないのに誰がそんな命令を……。」

 

「さあ……?現時点では判明していません。この時代に集まった兵士たちはわたしでない誰かによって率いられているようなのです。」

 

「……ふーん……だがよ、てめえだってこの時代の出身じゃねえんだろ?だったら『別の時代のてめえ』が好き勝手やってるんじゃねえのか?」

 

「それはありえませんね。別の時代の『わたし』がいたとしても自分同士で争うようなマネはしません。お互い敵対するよりも利用しあった方が良いことくらいわかるでしょうしね……ふふ……。」

 

「じ、自分を利用し合うって……。」

 

「とにかく今の軍を率いている者のことは軍に近づけば後々判明することでしょう……ですがそうするには一つ問題がありましてね……」

 

その時だった。

 

「いたぞ!!フリーザさまの名をかたるニセモノだ!!」

 

「「「!!!」」」

 

突如謎の軍から送られた兵士たちがシャロット達の周りを囲んだ。

 

「なんだこいつら……!!」

 

「囲まれてしまいましたよ……!」

 

「もうここをかぎつけてきましたか……全く、騙されてるとはいえ優秀な仕事ぶりでわたくしも鼻が高いですよ。ですが……主をニセモノ呼ばわりとは少々しつけが必要ですね……!!丁度いい機会です。シャロットさん、リリさん……この兵士たちを倒してください。」

 

「「っ!!」」

 

「そうすればわたしが軍に近づけない理由がわかると思います……フフフ。」

 

「ああ……やってやるよ!」

 

「……はい!」

 

こうしてシャロット達は敵兵たちと戦うことになった。

 

「おいリリ、オレの後ろから離れるんじゃねぇぞ!」

 

「は、はい!!」

 

シャロットとリリはそれぞれの戦闘態勢をとった。

そして敵が二人に向かって一斉に攻撃を始めた。

 

「偽者め!!」

 

「覚悟しろ!!」

 

シャロットとリリはそれをかわしながら敵をなぎ倒していく。

だが……

 

「がぁ……こ、こんなもの!!」

 

「なに!?」

 

シャロットとリリの攻撃を受けても一撃では沈まずに再び襲いかかる。

 

「兄様……やはり今まで闘ってきた兵士よりも強い気がします……!」

 

「くっ……確かにな……。」

 

シャロットとリリは多少苦戦をしたもののなんとか撃退した。

 

「……おわかり頂けましたか?これがわたしが単独で軍に乗り込まない理由です。彼らは何か『力』を劇的にアップさせる技術を持っているのですよ……。」

 

「そ、そんな都合のいいものなんて……。」

 

シャロットはそんなものがあるはず無いと否定しようとしたが前にターレスに言われた言葉を思い出した。

 

『オレについてくれば「力」をくれてやる……どうだ?』

 

(……あのヤロウが言ってたのは……このことか……!?)

 

断言は出来ないがターレスの発言が引っかかる。

 

「もちろんこの程度のパワーアップでわたしが劣勢になるなどありえませんが……この謎のパワーアップ技術はなかなかに興味深い……この技術と軍の両方を得る為にはわたし一人では少々手間だと思いましてね……。」

 

「……それがてめえが人手を欲しがってた理由か……?」

 

「その通り。わたしは軍の実権を取り返した上でこのパワーアップ技術を得たい……そしてあなたは軍に囚われた仲間を助け出したい……お互いに手を組む理由があるというわけです。」

 

(おいおいラビリスタ……こりゃあ思ったより面倒なことになってるぞ……!?)

 

(正直あまりフリーザさんに関わるのは好ましくありませんが……ブルマさんを助けない訳にはいけないですし……それにクリアさんやプレシアさんのヒントも見つかるかもしれません。ですが……兄様と二人でそれができるのでしょうか……。)

 

シャロットとリリはお互いに不安を抱いていた。

 

そして同時刻……敵の本拠地である船で異常事態が起こっていた。

 

「なんだこいつは!?ぐあああ!!!」

 

「うわあああ!!」

 

突如として兵士達が次々と惨殺されていく。

 

「………ブルマさんを拐ったのは……貴方たちですね………。」

 

「何事だ!!」

 

「一体どこから侵入したんだ……!まさかニセモノの部下か……!?」

 

すると部下たちが慌てた様子でターレスに報告をしにきた。

 

「ほ、報告します!謎の女が……ひ、一人で……侵入し……第一部隊が……壊滅しました……!!」

 

「なんだと!?たった一人の女にやられたのか……!?そいつは今何処にいる!」

 

「こ、この船にいる兵士たちを片っ端から始末しています!!どうやらわたし達が拐った女の関係者かと……!」

 

「なに……!何としてでも食い止めろ!今すぐに全勢力を出動させろ……!」

 

「はい!」

 

ターレスは部下たちを総動員しその女のもとに向かわせたが聞こえてくるのは部下の悲鳴と爆発音……そして少女の不気味な歌声だった。まるで感情のない歌声だった。

 

「ど……どうなってるんだ……一体……何が起こってるんだ……!!」

 

ターレスはモニター越しから何が起こっているのかを確認した。

 

「!?ば、バカな……!!こいつは……まさか……!!何故こんな所に……!」

 

そこに映っていたのは冷たい笑みを浮かべながら兵士たちを次々と殺していくユリシスだった。




本気で裏世界編書こうか迷ってる
味変したいしそろそろ皆飽きてきたでしょ()


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頼もしい助っ人

「さて……シャロットさんやリリさんの他にももう少し人手が欲しいところですね。……まあ私としては例の『フードの男』が仲間になってくれるのが理想的だったのですが……人違いではありましたが今はシャロットさんで我慢しましょう。」

 

「てっ……!てめえ……!!!」

 

フリーザはシャロットの神経を逆なでするように少し煽った。

 

「彼と比べられるのが嫌ならしっかりと実力を示しなさい……くくくっ……!とにかく、我々の目下の目的は使えそうな人材のスカウトです。……さて、『アプール』やることが分かりましたね?さっさと動きなさい。」

 

「……ハッ!かしこまりました。」

 

フリーザは部下のアプールという男に指示を出した。そしてシャロットとリリは一度ラビリスタとの通信をする為に一度ここから離れた。

すると少し離れた先に先程フリーザから指示を受けたアプールが一人でボソボソと何か言っているのを見つけた。

 

「……はあ……ムチャクチャだよな〜……そんなのオレ一人でどうしろってんだよ……。」

 

フリーザの理不尽さに不満があるようだった。

 

「……なんつーか……てめえも大変だな。」

 

「もう少し肩の力を抜かれてはいかがでしょうか。」

 

「!?」

 

アプールが不満を言っている後ろからシャロットとリリが同情するように現れた。

 

「んげえっ!?シャロットさまに……リリさまっ!?も、もうしわけありません!!任務の完了にはもうしばらくお時間を頂きたく……っ!!」

 

アプールにとってシャロットとリリはフリーザという上司の直々の部下な為不満を聞かれたと思い焦っていた。

 

「お、落ち着いてください!」

 

「オレ達は別にてめえらの仲間になったワケじゃねえしてめえがサボってても気にしねえよ。あと……その『シャロットさま』……ってのもやめろ。なんか落ち着かねえ……。」

 

「そ、そうですか……いや、さそ、そっか……!……ほっ……。」

 

アプールの緊張が一気に解けた。

 

「いや〜それにしてもあんたら強えな!!さっきの戦い見てたぜ!!」

 

「……いきなり態度変わりすぎだろ……。」

 

「しっかし……オレを叱りにきたんじゃねえんならなんでこんなトコまで来たんだ?」

 

「……ちょっとした気晴らしです。(本当はここならラビリスタさんと通信が出来ると思って来たんですけどつい話しかけてしまいました……。)」

 

「……で、お前確か強えヤツを探すんだろ?誰かアテはあるのか?」

 

「そんなもんねえよ……それこそフリーザさまが言ってる『フードの男』ってのを連れてこれりゃいいんだがな……。」

 

「またフードの男かよ……あんなオレのニセモノなんざお呼びじゃねえよ……!」

 

「ま、あんたらみたいな強い助っ人を探さねえとな……。」

 

シャロット達は宛もなく探し始めたのだがここで少しおかしい事に気づいた。

 

「……兄様、わたくし達……さっきからずっと歩き回っているのになぜフリーザ軍のニセモノは現れないのでしょうか……。」

 

さっきまでは大人数で襲いかかってきたのにも関わらず今度は一切その姿をみせない。

 

「……わからねえ。向こうも諦めたんじゃねえのか?それにしてもさっき倒したやつ……普通じゃなかったな……なんか強化されてたっつうか……。どういうことだ?」

 

「さあ?『効果』だのなんだの言ってやがったが……そういえばさっきあんたらが倒した奴らがなんか持ってたな。」

 

アプールは懐からシャロット達が倒した敵が持っていたアイテムを取り出した。

 

「……あった。これだ。」

 

アプールが取り出したのは赤い果実のようなものだった。

 

「……果物……ではありませんよね?」

 

「なんかの果実か……?オヤツにでもするつもりだったのか?……果実……。」

 

シャロットはその実を見て前にターレスが言っていたことを思い出した。

 

『オレについてくれば「力」をくれてやる……どうだ?』

 

『うまい果実でもどうだ?』

 

 

ターレスの言っていた言葉はどれも意味深なものだった。

 

(……まさかな……そんなもんで……。)

 

「オレはあっちの方で探してくる。あんたらも強そうなヤツを探すのか?」

 

「そうですね……わたくし達も探しながら行動します。」

 

「そうか、んじゃよろしくな。」

 

アプールはそう言うと一人でスカウト出来そうな人材を探しに行った。

 

「……兄様、今のうちにラビリスタさんに報告しましょう。」

 

「ああ、そうだな。」

 

シャロットは通信機を取り出してラビリスタに連絡した。

 

「やあ、シャロット。何か情報は掴めたかい?」

 

シャロットとリリは今までの事を全てラビリスタに報告した。

 

「……フリーザ軍が乗っ取られた……か……。つまりブルマをさらったのはフリーザではなく軍を操ってるヤツってワケね……ややこしいことになってるけどフリーザの状況と目的はハッキリしたね。」

 

「な〜……ラビリスタ……オラもなんか出来ねえんか?このままじゃオラ退屈なんだよ〜。」

 

「いやいや君は………んー、そうだね……それじゃあ遠くから常にシャロットの気を感知していてほしいな。」

 

「え?オレの気を!?」

 

「何かあればすぐにこちらも動けるようにだよ。うまく軍に接近できてタイミングが合えば瞬間移動でブルマを助け出すくらいはできる!」

 

「な、なるほど……!!ついでにその軍を乗っ取ったっちゅう親玉と……」

 

「闘うのはダメ。」

 

「ええ〜っ!?や、やっぱ退屈なままじゃんかよ〜!!」

 

「とにかく、シャロット……キミは引き続きフリーザに協力しながら動向をさぐってほしい。」

 

「そうは言うけどよ……このあとオレは何をどうしたらいいんだよ?誰か強えヤツを連れてこねえことにはブルマを取り返しにもいけねえぞ……!」

 

「ん?強い助っ人か……じゃあ見つけてきてあげるよ。」

 

「あ?」

 

ラビリスタはいとも簡単そうに言った。

 

「……んだよ?簡単に言いやがって……そんな都合よくヤツの仲間になるようなヤツがいるわけ……」

 

「いやいや、一人……二人は心当たりがあるよ。」

 

「まじでか!?そいつは一体……」

 

「……キミがよく知っている人さ。」

 

「?」

 

するとラビリスタはオブジェクトを変更しシャロットの前に現れる。

 

「地面が!?」

 

「急にでてくんじゃねえ!リリがビックリしてるだろうが……!」

 

「あははごめんごめん。」

 

「にしても……結局誰なんだよ?その助っ人になりそうなヤツってのは……。」

 

「キミも鈍いね〜、じゃ、会ってからのお楽しみにしようか。ほら、行くよ。」

 

シャロット達はその人物に会うために歩いて行った。

そしてシャロット達が見つけた人物は確かによく知っている二人だった。

 

「…………はあ〜……!ヒマで仕方ねえや……。なあベジータ、ちょっとそこらの街をふっ飛ばしてきていいか?」

 

「やめておけナッパ……この星を仕切っているのはあの『赤い女』だ。とはいえ、オレとしてこんな星でのんびり平和に過ごしたいなどと思ってはいない。このバトルロイヤルを勝ち抜くための戦力が集まりさえすれば本格的に闘いのはじまりだ……。」

 

ベジータとナッパが話していると、そこにラビリスタ達が現れた。

 

「はーい注目ー!そんなキミたちにチャンスだよー!」

 

「ぬおおっ!!?」

 

「なあっ!?」

 

驚いたのはシャロットもだった。

 

「べ、ベジータ!?それに……ナッパのオッサンも……!?」

 

「兄様……この方々は……?」

 

「安心しろよリリ。こいつらはオレを鍛えてくれたやつだ。」

 

「シャロット……!!いきなり出てきて何の用だ!?……もしやオレの部下になる決心でもついたのか……?」

 

「半分は正解かな?実はキミたちにまたお願いがあってね。」

 

「また依頼か!?オレたちを便利屋扱いするのもいい加減にしやがれ!!」

 

「今回はキミたちにとってもいいお話だと思うんだけどなあ……。まさに今ベジータくんが欲してる戦力が手に入るチャンス……かもしれないよ?」

 

「何?」

 

その話にベジータはくいついた。

 

「なんでえ!さっきからベラベラと!ぶっ殺されたくなかったら……!!!」

 

「よせ!!!ナッパ!!」

 

「……っ!?」

 

「……チッ!!どうせイヤと言っても手伝わされるんだろう……!!……話してみろ!!」

 

「おい!ベジータ!何をひよってやがる!!!こんなヤツの言うことなんざ……!!」

 

「ナッパ!きさまはシャロットの今の実力をはかってやれ……!!ヒマなんだろう!?」

 

「は……!?はああっ!?」

 

ベジータはナッパを抑制するとラビリスタの話を聞くことにした。

 

「おいおいおい!なんでオレがまたナッパのオッサンと闘わなきゃなんねえんだよ!!」

 

「に、兄様……わたくしも手伝いますよ。……。」

 

ベジータの指示を聞いたナッパは過去一イキイキしてるようにみえた。

 

「よっしゃあ!丁度この辺におもしれえサイバイマンが育つ場所があるんだ!!そこで実力テストだ!おらっ!嬢ちゃんもついてきな!!」

 

「い、今からかよ!?」

 

ナッパは強引にシャロットとリリを連れていった。

 

「……行ったか。それで、要件はなんだ。」

 

「……実は………………。」

 

 

ベジータとラビリスタが話す中、ナッパとシャロット達も闘っていた。

 

「はぁーっ!!いい汗かいたぜえ!!!前より腕をあげたんじゃねえか?ったく……ヒヨっ子を卒業したと思ったら色気ずきやがって……それも中々根性のあるいい嬢ちゃんじゃねえか!がはは!」

 

「い、色気ずくって……兄様は兄様ですから!」

 

「ああ!?リリとはそんなんじゃねえよ!旅の仲間だ!それより……オレはまだまだ強くなるからな!覚悟しとけよ!!」

 

「……おう!ベジータ!!そいつの戯言は聞き終わったかあ?」

 

すると話を終えたベジータが歩いてきた。

 

「……ああ。大体な……。」

 

「どうかな?ベジータくん……このフリーザを取り巻く一連の騒動……シャロット達と力を合わせうまく立ち回れば……キミが軍のトップの座を狙うことも……。」

 

「……いいや、そんな簡単な話では無い……。」

 

「……。」

 

「……確かにオレはもちろんシャロットも以前に比べ戦闘力を増している……。だがフリーザのヤロウを出し抜くにはまだ足りん。」

 

(……流石はベジータくんだ……やっぱ口八丁では無理か……。)

 

「……だが可能性が全くないわけではない。」

 

「……ほう。」

 

「今軍を率いている親玉の実力は恐らくフリーザとほぼ同程度だろう……。」

 

「……なんでそう言い切れるんだよ?」

 

「フリーザが率いている軍は血の気が多い荒くれ者だらけだ。」

 

「ただフリーザの名を騙るだけでまとめあげられるようなお上品な軍ではないからだ。逆にフリーザを上回る実力があるならわざわざフリーザの名前を騙る必要は無い。……堂々と己の実力で部下を集めればいいからな。

 

「……さすがだね。フリーザを出し抜こうと苦心しているだけのことはある。その手の分析はお手の物ってことだ。」

 

「チッ……イヤミな言い方しやがって……!とにかくだ、もしこのオレの予想が正しいのならフリーザと偽フリーザ……この二人が共倒れになるよう仕向ける手段もきっとある……!そうなってくれれば……オレたちがバトルロイヤルで優勝する可能性も上がるだろうな。」

 

「なるほどなあ!そいつはいいぜ!」

 

(……おい、ラビリスタ……、このバトルロイヤルってマトモじゃねえんだろ!?)

 

(……『このベジータくん』には黙っておこう……。)

 

(……は?いいのかよ……!?これじゃ騙してるようなもんじゃねえか!!)

 

(バトルロイヤルという目的がないと彼もまた何しでかすかわからないからね……)

 

「おい、なにをこそこそしゃべってやがる?」

 

「あはは……シャロットに夕食は何か聞かれただけさ。」

 

「……ふん、とぼけやがって……まあいい……貴様らの話に乗ってやる……フリーザの元へ案内しろ!」

 

そしてシャロット達はラビリスタに連れられ、フリーザの元まで行くこととなった。

 

おまけ↓

 

ユリシスの立ち絵更新

 

 

【挿絵表示】

 




ユリシスの立ち絵更新しました。少し?美化されました。


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【番外編】究極の聖戦

時空の混乱により続々と集う戦士たち。そしてこの場所では最強クラスの激しい戦いが行われていた。

 

「ぐはっ……!!!」

 

ベジータは既にボロボロの状態で最強の戦士と闘っていた。

 

「オレは不本意な決着となったヤツとの勝負をもう一度つけなければならない!その邪魔をすると言うのなら……お前にはこの時代でも脱落してもらうだけだ!」

 

ベジータの前に立ちはだかっているのは第11宇宙最強の戦士『ジレン』だった。

 

「くそ……!!」

 

ベジータにジレンの気弾が迫る。

そして直撃したかと思われたが、ベジータの前には身勝手の極意の『兆』になった悟空がいた。

 

「……。」

 

「カカ……ロット……!チッ……余計な事を……。」

 

「来たな……。」

 

ジレンは悟空の姿を見てニヤリと笑った。

 

「…………。」

 

最強の戦士たちによる超バトルが氷の大地の上で始まろうとしていた。

 

「……行くぞ!孫悟空!!」

 

「ああ、来い……ジレン!」

 

ジレンが凄まじいスピードで悟空に迫る。

対する悟空も瞬時に反応し、ジレンを迎え撃つ構えをとった。

 

「はあっ!」

 

ジレンの拳が空気を切り裂きながら、悟空の顔を掠める。

 

「くっ……はあっ!」

 

しかし悟空もまたジレンの顔面目掛けて鋭い突きを放つ。

 

「ぬうっ……!」

 

両者の拳が激しくぶつかり合い衝撃波が巻き起こる。

 

「くっ……!!」

 

だが力は圧倒的ジレンが上回っていた。

 

「くぁっ!!!」

 

「うわあああっ!!!」

 

ジレンは強引に拳を振り抜き悟空を吹き飛ばした。

悟空はなんとか勢いを殺しながら地面に着地する。

だがその様子を見たジレンは何処か不満そうな表情を浮かべていた。

 

「……ふ……ふざけるな!!孫悟空!!」

 

「……!?」

 

「全力のオレを追い詰めた確かな一撃……!そしてあの熱さ……あの時見せた力で闘え!そうでなければお前に勝つ意味などない!」

 

「…………。」

 

ジレンは悟空の身勝手の極意が完全では無いことを事前に知っていた。

 

「……オラにはおめえの言ってることがよく分からねえ……これが今のオラの全力だ。けど……おめえに負けるつもりはねえぞ……!」

 

(……そういう事か。ヤツはオレに打ち勝つ前……オレがいた時代よりも少し前の孫悟空……だから己の殻をまだ破れてない……か。)

 

「ならば……もう一度無理にでも目覚めさせてやる!全力のままオレと闘うことで!!」

 

ジレンの荒々しく熱い気が膨れ上がった。

 

ゴゴゴゴゴゴ……

 

「「!?」」

 

二人が同時に踏み出そうとした瞬間、どこからとも無く氷の崩れる音が聞こえた。少し離れた場所で誰かが闘っていた。

 

「ぬううう……!!」

 

「……あなたもサイヤ人……なんですね。」

 

そこで闘っていたのは理性を失ったブロリーと金色のオーラを身にまとっているシャルルだった。

 

「ヤツらは……!?」

 

ジレンは一瞬でシャルルとブロリーの強さを感じ取った。

するとシャルルもジレン達に気づき闘いの手をとめた。

 

「……!あれは、お父……悟空さんと……すごい気を感じます……。」

 

「ぐううう……!!」

 

するとブロリーもジレンと悟空の強さに気づいた。

 

「……この人もどうやら悟空さん達の強さに気づいたようですね。」

 

シャルルも少し微笑見ながらジレンたちに視線を向ける。

 

「凄まじい闘気だ……あの二人只者では無い。」

 

「あれは……誰だ?でも……あいつからオラと似たような気を感じる……。」

 

「ウオオオオオ!!!!」

 

「「……!!」」

 

ジレンと悟空が冷静に力の分析をしているとブロリーが二人に突如攻撃を仕掛けてきた。

 

二人はこれをかわすがジレンと悟空は離れてしまいブロリーが悟空に襲いかかった。

 

「ウアアアッ!!!」

 

「落ち着け……って言っても無駄か……。」

 

「グオオオオオッ!!」

 

「……!」

 

悟空とブロリーの闘いが始まった。

 

 

「……向こうは向こうで始めたみたいですね。……ですが……悟空さんのあの力は不完全……勝つことは難しいかもしれませんね。」

 

「……まさかお前も孫悟空のあの力の事を知っているのか?」

 

「……ええ。この目で見ましたから。」

 

シャルルとジレンが互いに向かい合う……するとまたしても何者かが二人の間に割って入ってきた。

 

『まさかお前までこの世界に来ていたとはな。ジレン。』

 

「!?」

 

「!!」

 

ジレンとシャルルの前に現れたのは超サイヤ人ブルーに変身したゴジータだった。

 

「何者だ。」

 

「悟空さん……いや、ベジータ……さん?いや……??」

 

シャルルはゴジータの姿を見て悟空かベジータかで悩んでいた。

 

『……お前は何者かは知らないがオレの事を知ってるようだな。まあ、オレが何者かなんてどうでもいいだろ。それよりも……こっちはこっちで始めようぜ。』

 

ゴジータは気を大きく解放して構える。

 

『最強達による最高の闘いをな。』

 

「いいだろう……!」

 

「……!」

 

ジレン、ゴジータ、シャルルの戦いが始まる。

 

「うおおっ!」

 

「はあああっ!」

 

『ふんっ!!』

 

ゴジータはジレンの拳をかわしシャルルに蹴りを放つ。だがシャルルはゴジータの蹴りを受けとめた。そのたった一連の動作で辺り一面が吹き飛んだ。

 

『驚いたぜ。女がオレのスピードについてこれるなんてよ。そしてジレン……またお前と闘うことができるとはな。こんなに嬉しいことはないぜ。』

 

「……よく言いますよ……全然本気出してないくせに……。」

 

「……オレはお前にあった事すらない。先程からの言動といい……貴様は何者だ?」

 

『ああそうか……おまえは「力の大会」の時代からこっちに飛ばされてきたんだったな。そうなるとオレたちの方がお前たちより少しあとの時代になる。全くややこしいことだ。まあ、別に誰かなんてどうでもいいことなんじゃないか?』

 

「なに?」

 

『オレは未来からやってきた謎の戦士……同じくオレのことを知ってる未来からきたかもしれない女戦士……そしてお前は第11宇宙最強の戦士 ジレン……この奇妙な時空混乱のせいで出会うはずのなかった強いやつらがここで出会っちまった……だったら今はその運命ってやつをとことん楽しもうぜっ!!』

 

「「!!」」

 

「運命……ですか。そういう事なら……!!」

 

「オレが望むもの……それは力の大会でつけられなかった孫悟空との完全決着だ……ヤツの強さを否定し……オレは再び自分の強さを証明する!オレと孫悟空の闘いを邪魔する者は誰であろうと排除するだけだ!!」

 

「悟空さんとの決着……私たちのことは眼中にないってことですか。」

 

『へっ……さすがはジレンだぜ。』

 

「そこをどけええっ!!」

 

ジレンはシャルルとゴジータに同時に襲いかかった。

 

「はあっ!!」

 

ジレンはゴジータとシャルルを吹き飛ばす。

 

「はあっ!!」

 

『だりゃああっ!!』

 

シャルルとゴジータは体勢をたてなおしジレンに同時に攻撃を放った。

 

「くっ……!」

 

ジレンは二人の攻撃を避けるとシャルルの前に現れて近接戦に持ちこんだ。

 

「はっ!!」

 

「むう……!」

 

シャルルはジレンの攻撃を全て受け流しながら隙を見てカウンターでダメージを与える。

 

『オレを忘れてもらっちゃ困るぜ!』

 

「「!!」」

 

「わっ!今の攻撃は危なかったですよ……!」

 

『へへっ……!』

 

3人はお互いに距離をとり睨み合う。

 

(なんだコイツらは……!強さの底が全く見えん……!)

 

『どうだ?このパワーは……ワクワクするだろ?さあて……様子見はここまでだ。そろそろ本気で……』

 

その時だった。

 

「「「!!!」」」

 

ゴジータ達は悟空とブロリーの気を感じ取った。

 

「この気は……!」

 

「これは……!!」

 

『……チッ!こいつはまずいな。』

 

ブロリーと闘っていた悟空は不完全な身勝手の極意を使用した反動で段々弱っていた。

 

「うっ……くっ……!はぁ……はぁ……!」

 

そしてついに悟空の身勝手の極意が解除された。

 

「や、やべえ……身勝手の極意が……!今のオラではここまで……ってことか……!」

 

「グガアアアッ!!!」

 

「くそぉ……!」

 

ブロリーが悟空にトドメを刺そうとした瞬間……

 

『ふんっ!』

 

「ガアアアアッ!!!!」

 

ゴジータがブロリーを蹴り飛ばした。

 

「お、おめえは……!」

 

『ふう……危ねえ危ねえ……。こんな時に身勝手の極意が切れちまうなんてよ。』

 

「おめえ……なんでそのことを……!そうか……おめえ達はオラよりも先の……。」

 

『ふっ……そういう事だ。』

 

「ウオオオオオッ!!」

 

すると蹴り飛ばされたブロリーは再び立ち上がり悟空に向かって走り出す。

 

「!?」

 

「「はあっ!!」」

 

「ヌウウ!?」

 

だがそれはジレンとシャルルによって防がれた。

 

「……ジレン……!それに……おめえ……。」

 

「……私は信じてますよ。あなたが身勝手の極意を完成させることを。」

 

「!?」

 

シャルルは悟空に笑顔を向けるとまた闘いに戻って行った。

 

「孫悟空……こんな所で倒れることはこのオレが許さん!お前は『力の大会』で何度やられても立ち上がってきた……だから…………再び立ち上がってこい。あの時のように……。」

 

ジレンもそれを悟空に伝えるとシャルルとブロリーとの闘いに戻った。

 

『ジレンのやつ……お前との決着にすげえこだわってんな。……ま、オレも信じてるぜ。お前が『身勝手の極意』を完成させるのをな……。オレ達は一足先に楽しんでおく。待ってるぜ……!』

 

ゴジータも再び闘いに戻った。

 

「……へへ。あいつら好き勝手言いやがって……。」

 

「ゴオオオオッ!!」

 

「うおおおおっ!!!」

 

ブロリーとジレンはお互いに殴り合う。

 

『はああああっ!!』

 

「はあっ!!!」

 

シャルルとゴジータもお互いに一歩も譲らない闘いを繰り広げていた。

 

『どうした?もっとかかってこいよ。』

 

「……じゃあ……私も行きますよ!はあっ!!」

 

シャルルは気合いを入れると同時に髪が赤色に変わる。

 

『超サイヤ人ゴッドか……まさかお前もそれになれるとはな……面白くなってきたぜ。』

 

「ん?」

 

『おっ!』

 

「ウオオオオオ!!!」

 

「はあああああああっ!!」

 

シャルルとゴジータが睨み合う中、ブロリーとジレンの闘いもヒートアップしていきシャルルとゴジータをも巻き込んで闘いを繰り広げる。

 

『……っと、お前との決着もまだだったな……ブロリー!!この場で誰が1番強いかはっきりさせなえとな。』

 

「誰が一番強いか……ふふ、なんだかワクワクしますね……!」

 

「誰が相手だろうが……オレはもう二度と負ける訳にはいかない!!」

 

『おいおい、そう焦るなよ。まだ全員……「揃ってない」だろ?』

 

その頃、悟空は……

 

「ベジータ……!おめえもこっ酷くやられたな。大丈夫か?」

 

「う、うるさい……!こんな傷……どうってこと……ぐっ……!」

 

悟空はジレンにやられたベジータと話していた。

 

「無理すんな。お前はここで休んでろ。こっからはオラだけでいく。」

 

「今のままではヤツらには勝てんぞ……!」

 

「へへっ……そうだろうな……けどオラはそれでも闘いたいんだ。とてつもねえ強さのヤツらがこの世界にはまだまだいる。そう思うとワクワクしちまって闘いてえって気持ちがとめられねえんだ。それに……あいつらにあそこまで言われちゃあこのまま引き下がれねえしな。」

 

「チッ……つくづくムカつく野郎だぜ。」

 

ベジータはそう言いつつも悟空に自分の気を分け与えた。

 

「お、おめぇ……!」

 

「残り少ないがオレさまの気を貴様に全て分けてやる。いいかカカロット!このオレさまの力も誇りも貴様に分けてやったんだ!負けることなど許さんぞ……絶対に勝つんだ!」

 

「ベジータ……!ああ!」

 

悟空はベジータから気を受け取ると闘いの場所に戻った。

 

「……オレたちサイヤ人は力の大会というわずかな時間のなかで幾度となく限界をぶち破ってきた……いや、力の大会だけではない。ここまでの闘いでも……!カカロット……見せてやれ!きさまの力を……!そして…………『神の領域』など踏み越えてみせろ!!!」

 

ベジータは悟空に全てを託した。

 

「……待たせたな。」

 

「「「「!!!!」」」」

 

「ぐうううう……!?」

 

(もしかして……ブロリーというサイヤ人は悟空さんの力に勘づいている……?)

 

(ブロリーのヤツ……神の領域を踏み越えたアイツの力を感じ取っているな……。)

 

悟空は身勝手の極意の「兆」に覚醒すると再びブロリーと闘う。

 

「ウオオオオオ!!」

 

「…………行くぞブロリー。」

 

「…………。」

 

ジレンは黙って悟空の力を感じ取る。

 

『まあようやくあいつもここまでこれたってところか……だけど……最強を決めるのにはまだ足りてねえよな?』

 

「ああ……だが……。」

 

「この感じはきっと……。」

 

『……ふっ……そうだな……もうそろそろだ。』

 

(……感じる……あの戦士と打ちあう度に高まる孫悟空の純粋な衝動による熱さを……ヤツは今……より深い領域の先へと進んでいる……『あの時』と同じように……!)

 

ベジータも遠くから悟空とブロリーの闘いを静かに観戦していた。

 

「…………ふっ。そうだ……それでいい……。」

 

そしてブロリーと悟空の闘いが加熱していく。

 

「だあああああっ!!!」

 

「……さあ、始めようぜ……限界を超えたバトルを……!」

 

悟空の身体は白く輝く光に包まれる。

 

「うああああああああっ!!!!」

 

悟空の気が膨れ上がりその膨大な気の量だけで銀河のような気が形成される。

そして悟空の髪色は銀髪に染まり輝きがより一層強くなった。

 

「……身勝手の極意……参戦だ!」

 

 




誰が勝つかは皆さんの想像におまかせです


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このクズヤローが!!

間空いてごめんよ。内容忘れて中々書けんかった


 

 

 

 

シャロット達が戻るとそこには既にアプールが待機していた。

 

「シャロットの旦那!もうスカウトしてきたんですか!流石ですぜ!」

 

「へへっ……なんてったってオレのシ……じゃねえや。おんなじサイヤ人だからな!」

 

「がはは!照れんじゃねえ!素直に『師匠』って言えばいいんだよ!」

 

「う、うるっせえな!オレは弟子になった覚えなんざねえっつってんだろ!」

 

「まあまあ兄様……おふたりともとても素敵な方ではないですか?」

 

「ふん……オレもシャロットの仲間になったつもりはない。『フリーザさま』がこの時代においでだと聞いたから合流しただけだ。」

 

勿論ベジータはフリーザに忠誠など誓ってはいないが今だけは仲間のフリをする。

 

「な……なんだあ……?なんだか複雑な関係なみてえだな……まあいいけどよ。」

 

「……で?そういうお前は誰か強いヤツを連れてこれたのか?」

 

「ああ!もちろん!シャロットの旦那ばっかに迷惑はかけられねえからな!!」

 

そういうアプールの横から現れたのは感情の読めない丸々と太ったような男だった。

 

「……。」

 

「ほおう?図体だけの約立たずでないことを祈るぜ……。」

 

だがシャロットはこのアプールの横から現れた人物が普通じゃないことを本能で感じていた。

 

(……な、なんだ!?こいつ!?ヒトとも虫とも獣ともちがう……血や汗のニオイもしねえ……)

 

するとその人物は小さく口を開いた。

 

「……おい、はやくフリーザのもとに案内しろ。」

 

「へいへい……!もうすぐだよ……!それと『フリーザさま』……だ!間違えたら殺されるぞ。」

 

「わかった……『フリーザサマ』……だな?」

 

「なんだあこいつ?ボンヤリしやがって使いもんになんのか?」

 

「なんだか不思議なお方ですね……。」

 

(……こいつのニオイ……得体がしれねえ……大丈夫なのか……!?)

 

シャロット達は違和感を感じながらもそのままフリーザの所に歩いていった。

 

「ほおう……まさかベジータさんとナッパさんもこの時代に来ていたとはね……。」

 

「……はっ。到着が遅れ申し訳ありません……フリーザさま。」

 

ベジータとナッパはフリーザに深く頭を下げる。

 

(チッ……まさかこの時代までフリーザのヤロウにヘコヘコしなきゃなんねえとはよ……)

 

(ベジータのヤツが自分からこんな丁寧な喋り方を……!?すっげえ気持ちわりいな……!)

 

だがフリーザはそんなベジータとナッパを見下ろしながら少し眉根を寄せる。

 

「ふっ……白々しいですね。大方私がいないと思ってこの時代で好き放題戦闘を満喫していたのでしょう?以前いた時代でもあなた達の独断行動には手を焼きましたからねえ……。」

 

「…………。」

 

「……ま、いいでしょう。今は少しでも優秀な兵士が欲しいですし過去のことには目をつぶりましょう……それとアプール。あなたも新しい戦力を連れてきたそうですね。」

 

「はっ……!こちらの者でございます!」

 

アプールはそう言って先程の奇妙な人物を前に出す。

 

「……お前がフリーザサマ か?」

 

「ええその通り……まずはあなたのお名前を教えてもらいましょうか。」

 

「名乗る必要は無い……これでお前の所在地はラボに送信できた。」

 

「「「!?」」」

 

なんとこの人物は敵のスパイだった。

 

「敵が放ったスパイ……というわけですか……!!まんまと騙されましたね……アプール……!!」

 

「ひ、ひえ……!」

 

「チッ……シャロット!あのデカブツはオレとナッパがやる!お前はそこの女と……!?」

 

だがここで予想外のことが起こった。

 

「が……がが……ああああ!!!!」

 

ボンッ

 

「「「!!!」」」

 

その人物は突如内側から破裂した。

 

「何!?一体どういう事だ……!」

 

「でも……破裂したってことは……私たちの情報はバレてない……?」

 

「いえ、死んだところで無意味でしょう。私たちを見つけた時には既にデータを送信していたようですからね。それにしてもまったく……やってくれましたねアプール……!」

 

フリーザは凍てつくような眼光でアプールを睨みつける。

 

「ひっ……!そ……そんな……!も、申し訳ありません……!!」

 

「これ以上使えない部下を抱えておくとこちらの足を引っ張りかねませんね……。」

 

「ひいいっ……!?」

 

フリーザはアプールを始末しようと指を向ける。だがシャロットとリリはそれを必死に説得しようと前に出た。

 

「お……おい……!?よせよ!!別にこいつだってワザと敵を連れてきたワケじゃねえだろうが!!」

 

「そうです……!!失敗なんて……誰にでもあることではないですか!」

 

「ふん、シャロットさんにリリさんはお優しいですねえ……ですが、その失敗が命取りになるのであれば……」

 

フリーザはそのまま躊躇せずに指先に気を集める。

 

「お、おい……!?フリーザ……!よせっ!!」

 

「ま、待ってください!!話はまだ……!!」

 

ピッ……

 

指先から放たれたビームは無情にもアプールの胸を貫いていた?

 

「……あ……ああ……フリーザさま……そ……そん…………な……。」

 

アプールはそのまま地面に倒れた。

 

「わたしの部下に無能は必要ありません……。」

 

「あ、そんな……。」

 

リリは必死に感情を堪える。

 

「…………。」

 

ベジータもそのやり取りをじっとみていた。だがシャロットはここで感情を抑えることはできなかった。

 

「…………て……!……てめえ……っ……!!」

 

「……さて、それではここから離れましょう。軍にこちらの居場所がバレた以上何が起きるか分かりませんからね……。」

 

「……待てよフリーザ!てめえ……どんだけ仲間を殺せば気が済むんだ……!!」

 

「……お、おい!シャロット!」

 

「兄様!!ここは……!!」

 

ベジータとリリが必死に止めようとしたが……

 

 

「この……クズヤローがあっ!!!」

 

シャロットがフリーザに殴りかかった。

 

だが……

 

「ぐうう……っ!!!」

 

ベジータはその攻撃をフリーザを庇って受け止めた。

 

「……!!ベジータ……!!おまえ……!!!」

 

「……っ!……フリーザさまに刃向かうんじゃない……!……身の程をわきまえろ!!!」

 

「……!?なん……っ……!!」

 

ベジータの口から出た言葉にシャロットは耳を疑った。

 

「あいつはこちらの身を危険に晒した……死んで当然だ……!!」

 

「……ふ……ふ……っ!!ふざ……けん……なよ……!!!こいつは……!こんなヤロウは……ぶん殴らねえと……!!いけねえだろうがっ!!!」

 

「チッ……!ナッパ!!シャロットを取り押さえるぞ!!!」

 

「そこをどけええええ!!!!」

 

シャロットは豪快にベジータの腕を振りほどきフリーザに突進する。

 

「止まれ!シャロット!!」

 

「兄様!!」

 

「……ナッパのおっさん!!リリ……!どけえっ!!」

 

「くっ……!!」

 

「ぐうう……!!」

 

ナッパとリリが必死にシャロットを押さえつけると同時にベジータがシャロットを殴る。

 

「かああああーーーーーっ!!!」

 

「うがぁっ……ああーーっ!!!」

 

シャロットは怒りで痛みなど感じずにただ吠える。

 

「あ、頭を冷やせシャロット!!今ここで闘ってどうなる!!落ち着くんだ!!!」

 

「う……る……っせえええ!!!そこをどけぇ!!!ベジータァーーーッ!!」

 

「……っ!こ……この!!!大バカヤロウがああっ!!!」

 

「が……っ!?」

 

ベジータは渾身の一撃でようやくシャロットを気絶させた。

 

「……ぜえっ!!ぜえっ!!」

 

「に、兄様に……こんな力があったなんて……!」

 

「シャロットのヤロウ……!!なんつーパワーだ……!!」

 

するとそれを端でみていたフリーザが歩み寄る。

 

「……内輪揉めは終わりましたか?」

 

「……はっ、わ……わたしの仲間が失礼いたしました……こいつには…………しっかりと言い聞かせます。」

 

「……ふ、まあいいでしょう……しかしシャロットさんはどうにも非情になりきれないところがありますねえ……あなたがしっかり彼の手綱を握りなさい。リリさん……あなたもですよ?シャロットさんのことをしっかりとみていなさい。」

 

「…………はい。」

 

「……次はありません。肝に銘じておきなさい。とにかくこの場から移動しますよ。さっさとなさい……!」

 

「…………くそったれが……!!」

 

ベジータ達は一先ず移動することにした。

 

 

先程の闘いからどのくらい経っただろうか。

 

「…………!!あれ……?お、オレは……。」

 

「!!よかった!ご無事で何よりです兄様!」

 

「リリ……?」

 

「……目が覚めたか?……このバカヤローが……!!」

 

シャロットが目を覚ますとリリ、ベジータ、ナッパがいた。

 

「ベジータ……?……!!しまったっ!!オレ……フリーザに……!!!」

 

「いやあブチ切れたシャロットがあんな力を出すとはなあ……!!流石はオレの弟子だぜ!!」

 

「笑い事ではないぞ!ナッパ!!……シャロット!きさまもフリーザと協力する理由があるのだろう……敵対してどうする!」

 

「くっ……けどよ……!あのヤロウのやりくちには我慢ならねえんだよ!!」

 

「それでも我慢しろ……と言っているんだ。ヤツを倒したいなら機をうかがえ……それまでは耐えるんだ!」

 

「ぐっ……そもそもオレの目的はフリーザを倒すことじゃなえ……!!」

 

「だ……だったらなおの事なぜ戦闘を仕掛けたんだ!?……この単細胞のバカが……!!」

 

「だがよ……倒すにしても……ヤツが仲間を殺すのを見逃して我慢して味方のフリを続けて……隙を見てぶっ飛ばす……なんて……今やろうとしてるこのやり方もモヤモヤすんだよ……!!こんな……こんなやり方が本当に『正しい在り方』なのか?」

 

シャロットの頭に浮かんだのは『正しい在り方』という言葉だった。

 

「はあ?……た……『正しい在り方』……?」

 

「…………。」

 

「……ふっ、ははは!貴様らしくないお堅い言葉が出てきたな……!」

 

「おいおい……ベジータにぶん殴られすぎて頭が変になったんじゃねえか?」

 

だがベジータ達はそんなシャロットを冗談げに笑った。

 

「茶化すんじゃねえよ……!」

 

「ふん……くだらん……!いいか?過去にサイヤ人も善だの悪だの……その在り方で争った歴史があった……だがそれは穏やかな話し合いなどでは無い。派閥同士の潰し合いだ……。」

 

「……!!」

 

「結局サイヤ人は正しかろうが悪かろうが闘って滅ぼし合う方法しかとれん……そういう種族だ。」

 

「…………。」

 

「『正しい在り方』とやらにこだわるのは貴様の勝手だ。好きにするがいい。だが!闘いにおいて手段で迷うな!……『滅ぶ側』になりたくなければな。そんなサマじゃ目的だろうが己の誇りだろうが……なにも守ることはできんぞ……!」

 

「……くそ……!!」

 

シャロットはベジータの話を否定することはできなかった。

 

「……ふん、ガラにも無い話をしたな……いいか!二度とこんな手間掛けさせるんじゃないぞ!」

 



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不可解な現象

シャロットが目を覚まししばらくするとフリーザがやってくる。

 

「おはようございます。よく眠れましたか?」

 

「……ああ。ベジータのゲンコツのおかげでぐっすりな……。」

 

「それは何より……ちゃんと頭は冷やしてきましたか?」

 

「へっ、冷えるもんかよ……オレはてめえのやり方は何もかも気に入らねえ……!!」

 

シャロットは自分の闘志をフリーザにぶつける。

 

「……ほう。ではこの私に刃向かう……と?」

 

「……そうしてえとこだがな……あいにくオレにも目的がある……今てめえと闘う訳にはいかねえんだ……!」

 

「……つまり協力関係を続ける意思はまだある……ということですね……ほほほ……それは安心です……。」

 

「ああ……てめえをぶん殴るのは全部終わった後だ……!覚悟してろ……!!」

 

「……それはそれは……その時を楽しみにしておきますよ…………できるものならね。」

 

「……!!」

 

フリーザの声が少しだけ低くなったのを感じた。

 

そしてナッパ、ベジータ、リリも次の行動すべき指示を待っていた。

 

「……フリーザさま、これからオレたちはどうしたらいいんですかい?」

 

「私たちの存在がバレたとなればこちらを潰す動きになるでしょう……ひとまず周囲を見回り怪しい者がいないか警戒するように……もし戦闘になったら速やかに排除……ただし……今から言う二人を見つけた場合は闘う前に私に報告なさい。いいですね?」

 

そしてフリーザたちは潰しにくる敵達を順調に倒していった。

シャロットとベジータ、ナッパとリリの二手に別れ行動していた。

 

「……ふん、こんなもんか……。」

 

「今のやつらの中には例のパワーアップとやらがほどこされている者はいなかったか……。パワーアップには何か条件や制約があるのか……それともただオレたちがナメられているのか……。」

 

シャロットとベジータが考えていると、ナッパとリリも戦闘が片付いたらしく戻ってきた。

 

「こちらも問題ありませんでした。」

 

「全員ひねり潰してやったぜ!」

 

4人が再び集まるとフリーザも戻ってきた。

 

「ふむ、片付いたようですね……素晴らしい働きでしたよリリさん。それに……サイヤ人もよく働いてくれて助かりますよ。」

 

「……チッ……!てめえのためにやったんじゃねえ……!」

 

「そういえばフリーザさま!報告でさあ!この先の街で『例の二人』を見つけましたぜ……!」

 

「ほう……!お手柄ですよナッパさん。あの二人もぜひ戦力に加えたいと思ってました。さっそく接触するとしましょう。」

 

「……しかし、ヤツらはすでに軍の配下になっている可能性が……。」

 

「なに、こちらが本物であることを話せば彼らなら自分が騙されていたことに気づくでしょう。話した上でなお、こちらに刃向かうようなら……その時は仕方ありませんね……。」

 

「…………。」

 

フリーザの言葉にシャロットの表情が曇る。

 

「……ふふ……そう怖い顔をしないでください。シャロットさん……ええ、わかっていますとも。殺しはしませんよ……生け捕りにして軍の情報を聞き出さなければいけませんからね。」

 

「……ふん!別にオレは何も言っちゃいねえ……。」

 

「それでは……行きますよ。」

 

フリーザたちはこの先にある街に向かった。

 

 

荒れ果てた街に二人の影がたたずむ。

 

「ふぅ〜っ……メンドくせえ仕事だぜ……。」

 

「……ボヤくなドドリア……あの都で兵士を失ったのは私たちの失態なんだ。今は甘んじて雑務をこなすしかないだろう……。」

 

ナッパが見つけた例の二人はザーボンとドドリアだった。

 

「……けっ、だが……まさかあの女がこの世界にいるとは……。逃げきれただけで儲けもんだ……。」

 

「まったくだ……あのフリーザさまでさえ『手を出すな』という程だからな。」

 

ザーボンとドドリアはとある人物に怯えているようだった。

 

「……にしても……このあたりの雑魚どもはあらかた狩りつくしたな……。」

 

「……たいした戦闘力の戦士はいなかったが……念の為『回収』しておくか?」

 

ザーボンが何かを回収しようとしたその時だった。

 

 

「ほう……?何を『回収』するのです?私にもぜひ教えていただきたいですですね。」

 

「「!!」」

 

フリーザ達が街に到着し、二人に接触を図った。

 

「……むっ!?ふ、フリーザ……さま!?そ、それに……ベジータにナッパ……あの時のガキ共までっ!!」

 

当然ザーボン達は驚く。

 

「まったく……あなた達ともあろう者がなんの疑問も持たずに『回収作業』なんて雑用をしているとはね……この私がそんなくだらない雑用をあなた達に命じるとでもお思いですか?」

 

「……ぬう……!……ってえのは……つまり……!」

 

「少しは頭を使いなさい……今あなた達に命令を下しているのは私ではない……と言っているのです。」

 

「なにぃ……!?ってことは……オレたちはそいつに……騙されてたってのか!?」

 

「そういう事です……さあ、偽物にいいように使われるのはここまでです。真の主である私の元に戻ってきなさいザーボンさん、ドドリアさん。」

 

(……ふん……今回は話し合いで丸く収まりそうだな……つまらん。)

 

(ああ……それはそれでなんか拍子抜けだな。)

 

(ベジータさん……兄様!穏便に済むのですからいいことではないでしょうか……?)

 

ベジータ達がそんなことを考えていると……

 

「いいやそんなはずは無い……」

 

 

「「「!!!」」」

 

「……『今のフリーザさまのお姿』と一致しない……!」

 

なんとザーボンはフリーザの元に戻ることを拒否した。

 

「……!?姿……?まさか……。」

 

これにはフリーザも予想外だったようだ。

 

「フリーザさまは変身型の宇宙人……!今我々の軍を指揮するフリーザさまはすでにその姿ではない!」

 

『ホホホ……そのとおり……!!』

 

「「「!?」」」

 

するととある通信機からフリーザとよく似た声が聞こえてきた。

 

「……!?こ……この声……!!」

 

『……ヤツらの姑息な手に騙されてはいけませんよ?』

 

「これはヤツらの軍の通信か……!?」

 

「声がそっくりです……!」

 

「フリーザと同じ声だ……!……ってことは……やっぱ軍を引っ張ってんのは別の時代のてめえなんじゃねえのか!?」

 

「ば、バカを言うんじゃありません……!全然声が違うではないですか……!よく聞けばわかるでしょう!?それに前も言ったはずです……!わたしは自分同士で争うなんて不毛なマネはしませんよ……!」

 

『ええその通り……そこの者は「別時代のわたし」ですらない……ただの偽物です。我が軍を襲撃したサイヤ人を連れて歩くなど……そんな恥知らずが「わたし」のはずがないですからね。』

 

「……!こ……この……!!」

 

その時だった。

 

「「がっ……がああっ!!」」

 

突如ザーボンとドドリアが苦しみ始めた。

 

「なんだと……!?」

 

「これは……以前にも……!!」

 

この2人の苦しむ様子は以前アプールがスパイとして連れてきた人物が内側から破裂したものと同じような光景だった。

 

『どうしたのです?ザーボンさん、ドドリアさん…………っ!?』

 

そして……

 

 

「「があああああああっ!!!!」」

 

ボンッ

 

「「「!?」」」

 

あの時と同じように二人も内側から破裂した。

 

『なにっ!?ど、どうなっているんだ……!クソっ!!』

 

ここで通信は切れてしまった。

 

「……ザーボンさんとドドリアさんは死んでしまわれましたか……ま、いいでしょう。上司の顔も分からぬ無能はこちらから願い下げですからね。」

 

(……ひでえ……。)

 

「それにしても……前回の破裂は敵の仕込んだ証拠隠滅のための方法かと思いましたが……今回はそうではないようですね……。近くには……誰もいない……ですか。」

 

周りを見渡すが、怪しい人物や痕跡が見られない。

 

(そういえば……ザーボンさんが何かを回収する前に……ドドリアさんと何か喋っていましたね……。『私でさえ手を出すな』と部下に忠告した人物がどうとか……。私が以前部下に忠告した人物は3人……。思いつくとするなら……『破壊神ビルス』……ではありませんね。ビルスはあのような殺し方はせずにただ破壊するだけ……。ならば『魔人ブウ』……でもありませんか。知性がないと言われてますからあのような真似はできないでしょう……とするなら考えられる人物は……一番あってほしくないものですが…………いえ、このような事ができるのは……あの組織の暗殺者ただ一人……。)

 

フリーザの考える人物はシャロットの身近にいる人物だった。



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参上!ギニュー特戦隊!!

9月からお気に入りユーザ限定公開にします。
非ログインの方やお気に入り登録をしてない方は見れなくなってしまいますがご理解ください。


フリーザはザーボンとドドリアがいきなり内側から破裂した原因を考えていた。そして、理由はどうあれこのような事ができるのは一人の人物しかいないと確信を持った。

 

「……やはり……全く。彼女までこの世界に来ているとは……不愉快ですがとても敵いそうにありませんね……。ここは一先ず大人しく……」

 

その時だった。

 

「フリーザさまーーーー!!!!!」

 

「ん?」

 

「「「?」」」

 

後ろからものすごいスピードでとある5人組が迫ってきていた。そしてフリーザ達の前に着地すると各々名乗りだした。

 

「リクーム!!」

 

「バータ!!」

 

「ジース!!」

 

「グルド!!」

 

「ギニュー!!」

 

それぞれ名前を叫びながら個性的なポーズをキメる。

 

「みん」

 

「な」

 

「そ」

 

「ろっ」

 

「て!」

 

「「「「「ギニュー特戦隊!」」」」」

 

「だ、誰だこいつら……!」

 

「これも……フリーザさんの部下なんでしょうか……。」

 

この光景には流石のシャロット達もドン引きである。だがそれとは逆にナッパやベジータは驚いている様子だった。

 

「ギニュー特戦隊たぁ、これまた大物がきやがったぜ……!」

 

「お前ら知ってんのかよ!?」

 

するとフリーザがギニュー特戦隊の前に歩いてくる。

 

「ギニューさん、まさかあなたが来るとは思いませんでしたよ。それにしても……あなた達は私と敵対しておると思っておりましたが。」

 

「フリーザさま、今までのご無礼をお許しください。私たちも偽物のフリーザさまがいると命令を受けていたのですが……突如指示が下らなくなったのです。」

 

「ほう?」

 

「我らは以前から軍を率いていた『フリーザさま』の声に少し違和感を感じておりました。本物のフリーザさまよりもハリがあるような声……そして、今こうして対面して確信しました。この圧倒的なたたずまい……気品……この方は間違いなくフリーザさまだと……!」

 

(う、うるせえ……なんかこいつ苦手だ……!)

 

シャロットは微妙そうな顔をしながらギニューの話を聞いていた。

 

「フリーザさま!騙されていたとはいえ!!このギニュー!!!あなたさまへ不敬を働いたことを心の底より公開しております!!どうか我々に罰をお与えください!」

 

許しを乞うギニュー達にフリーザは優しく語りかける。

 

「いいんですよ……ギニューさんの真摯な言葉が聞けてわたしは満足です。今は謝罪の言葉よりも軍の現状について詳しく聞かせていただきましょう。」

 

その言葉をきいて安心したギニューは語り始めた。

 

「はっ!恐れながら……なにぶん我ら特戦隊も軍に合流したのはつい最近なのですが……フリーザさまが自ら……この時代に迷い込み路頭に迷っていたぐの兵士をまとめ上げた……と……そう聞いておりました。……そして軍をまとめ上げる際……フリーザさまご封じていた『変身』を行ったとも……。」

 

「ふむ……ギニューさんともあろう者がそんな不確かな話を信じていいように使われていたとは……。」

 

「申し訳ありませんっ……!、……たしかに我々は変身した姿こそ見てはおりませんでしたが……通信越しに聞こえる声や雰囲気……それがあまりにも似ていたのです……フリーザさまに……。」

 

「……たしかにあの声すっげえ似てたからな……。」

 

「はい。そっくりでしたね。」

 

シャロットとリリもこれには共感した。

 

「思えばこれもヤツが偽物であるからこそ直接我々に姿を晒さなかったのでしょう……!」

 

「……声だけで本物のわたしと信じ込むのは軽率でしたねギニューさん。」

 

「はっ!申し訳ありません!」

 

「……まあいいでしょう。では次の質問です。軍の兵士たちが時折見せる劇的なパワーアップについてなにかご存じですか?」

 

「はっ!そちらについてなら……!『神精樹の実』という異星の果実の効果です。」

 

「神精樹の実……?たかが果実ひとつで彼らはあれほど強くなったと言うのですか?」

 

「はい。なんでも軍所属の『サイヤ人』が持っていたものなのだとか……。」

 

「あなたたちはその実とやらを食べたのですか?」

 

「いいえ!食べておりません!!聞けばその実を食べた者の中には錯乱状態に陥ったりかえって戦闘力が落ちた者もいるようでしたので……それに、我ら特戦隊の完璧なカロリー調整にも影響が出そうでしたからな!!」

 

「そ、そうですか……わかりました。その神精樹の実とやらを軍に持ちこんだサイヤ人……シャロットさんの話によればターレスというサイヤ人のことでしょうかね……?」

 

「う……む……申し訳ありません……わたしもそこまでは……。」

 

「……。」

 

シャロットは前にターレスに勧誘されたことを思い出す。

 

『オレについてくれば「力」をくれてやる……どうだ?』

 

『うまい果実でもどうだ?』

 

発言的にもターレスで間違いないだろう。

 

「……多分そうだろうな……あのヤロウの口ぶりがいかにもって感じだ……!」

 

「……ますますそのターレスと言うやつが何を考えているのかわからなくなってきたな。偽物が率いるフリーザ軍には神精樹の実の力を与えて兵の強化を図っている……だが一方ではオレたち『本物側』のほうにも特戦隊を合流させて戦力を与えてやがる……まるでどっちつかずなことばかりだ。一体何が狙いだ……?」

 

謎が深まる敵のフリーザ軍だが今はまだ情報が足りない。

 

「さて、ギニュー特戦隊が戦力に加わったことですし……こちらも攻勢に出るとしましょうか。」

 

フリーザが行動を起こそうとした時、ギニューがフリーザを呼び止めた

 

「すこぉ〜し!お待ちを!!フリーザさま!!」

 

「な……なんでしょう?」

 

「先程も申し上げました通り、敵は複数の歴史から来たフリーザ軍兵士を束ねています。敵の拠点となる宇宙船も複数存在しそのいずれかにフリーザさまの偽物が搭乗している……という状態になります。」

 

「カモフラージュのつもりですか……ふん、小賢しい!」

 

「そこで!このギニューめに考えがございます!」

 

「ほう……何かいい手があるのですね?話してごらんなさい。」

 

「はい!本隊を絞り込むためにこちらも隊を分けて敵の位置や数を調べて見てはいかがでしょう?」

 

「ふむ……情報収集と同時に敵へのかく乱にもなりますねぇ……兵を分散させるリスクはありますが……当てずっぽうに動くよりたしかに効率は良さそうです。ふふふ……やはりギニューさんがこちらに加わってくれて助かりましたよ。」

 

「フリーザさまにそう言っていただけて光栄です……!」

 

「よろしい!あなたたちは手分けして敵の拠点をしらみつぶしに探すのです!敵の本隊を見つけたらスカウターですぐに知らせなさい……わたしが直接行きますから!」

 

「それでは!隊の編成についてはこのギニューめにお任せ下さい!!」

 

こうしてフリーザ軍は別れて敵の拠点を探すことになった。

 

一方でシャロット達は

 

「……おいベジータ、バラバラに行動するみたいだぜ。」

 

「ふん……気に食わんがギニューのヤロウの言う通り今は情報をかき集めるのが先決だ。」

 

「ギニューさんって……かなり頭がいいのですね。この短時間でこんな作戦を思いつくなんて……。」

 

「んじゃあさっさと行こうぜ……!あのギニューってやつ……暑苦しくてどうも苦手だ……!」

 

シャロット達が早速取り掛かろうとした時だった。

 

「待てい!そこの青い服のガキ!おまえはこっちだ!おまえは我々と共に行動してもらおう!」

 

なんとシャロットだけギニューに指名された。

 

「な……なんでオレが!??」

 

「話を聞けばおまえ……なかなかの腕前らしいじゃないか。……だが、フリーザさまへの態度がなっておらん!その性根……このギニューが叩き直してくれよう!!さあ!すぐに出発だ!!このギニュー隊長に!ついて来ぉーいっ!!」

 

「お、おい!!話聞け!!勝手に話進めんなよ!!なんでてめえらなんかと……!!お、おい!ベジータ、ナッパのおっさん、リリ!!なんとか言ってやってくれよ!!」

 

「……まあ、頑張るんだな……。」

 

「オレの弟子なら……問題ねえ!」

 

「兄様なら大丈夫です!」

 

「はああっ!?あんな奴らと一緒に行動できねえよ!ベ……ベジータが行けばいいだろ!?」

 

「じ……冗談じゃない!オレだって特戦隊のふざけたノリについて行くのはゴメンだ!!」

 

「てめえ!この前はエラそうに誇りを守るために我慢しろだのなんだの言ってただろうが!!」

 

「そ……それとこれとは話が別だっ!!ムリなものはムリだ!!!」

 

「へへ、ダダこねてんじゃねえよ。師匠と離れるのが心細いってか?」

 

「な……!?……ちげーよっ!誰が心細いって!?こんなのどーってことねぇぜ!!」

 

「……いいかシャロット、フリーザにつっかかった時みたいにくれぐれも『ボロ』は出すなよ!」

 

「なんとか気持ちを抑えてくださいね……!私たちは止められませんので!」

 

「がはは!じゃあな!!」

 

ベジータ達はシャロットを置いて行ってしまった。

 

「い……行っちまいやがった……どうなっちまうんだよ……これ!?」

 

 

こうしてシャロットは強烈な個性をもつ特戦隊メンバーとチームを組むことになってしまった……。




お気に入りユーザ限定公開にする理由はラスボスの強さや正体で賛否があるかもしれないから(?)最終話まで完走したらお気に入りユーザー限定公開は外しますが何年かかるか分からないです。どんな結末になろうと応援していただければ嬉しいです


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ファイティングポーズ

お久しぶりです。第四章のストーリーを勝手ながら大幅に改変しました。もう一度目を通しておくことをオススメします。



 

特戦隊のメンバーとなってしまったシャロットはリクームとグルドと共に行動していた。

 

「はあ〜い!シャロットちゃ〜ん!まずはオレたちと出撃だよーん!よろしく頼むぜぇひひひ!」

 

「へ……変な呼び方すんじゃねえ!きもちわりいヤツだな……!」

 

「は〜あ……なんでオレたちがこいつの面倒みなきゃいけねぇんだ……やってらんねえぜ……いいか!?フリーザさまにちょっと目をかけられたからって調子にのるんじゃないぞ!!お前なんかただのサルに過ぎないってことをオレが教えてやる……覚悟しとけよ!」

 

グルドはいきなりシャロットを下に見ているような発言をする。

 

「こ……こんのチビ……!気も大したことねえくせにエラそうにすんじゃねえ!!」

 

「な……なにぃ〜!?チビじゃねえ!グルドセンパイって呼べ!!」

 

「フン!やなこった!!」

 

早速グルドとシャロットが不仲になった。

 

「こ……こいつ……低俗なサル野郎の分際で……!」

 

「まぁその辺にしとけってグルドぉ。シャロットちゃんはフリーザさまがお認めになった戦士なんだぞぉ。お前がベジータを大嫌いなのは知ってるけどよぉ、何もシャロットちゃんにまで強く当たることはねえだろぉが。仲良くしないと隊長に叱られちまうぞぉ?な?」

 

「チッ……しょうがねえな……!」

 

「お前もだぜ?シャロットちゃん〜。」

 

「……んなことよりその『シャロットちゃん』って呼び方やめろって……!」

 

「よーしっ!仲直りのついでに、ギニュー隊長から教えてもらった『喜びのダンス』を踊ってやろう!いくぞぉ〜……喜びのダンスぅ〜……。」

 

そういってリクームは踊り始めた。

 

「お、おいおい!?なに勝手に踊り始めてんだ……!」

 

「はっ!ふん!ほい!……!」

 

「やいてめえ……!人の話を……」

 

と、その時だった。

 

「っ……この感じ、敵が集まってきやがった!」

 

「キヒヒ……よ〜し!あの雑魚どもはオレが片付けてやる!」

 

「へっ!いっちょハデに暴れてやるか!!」

 

「こら!オレの方が先輩なんだか!お前は新入りなんだからオレより目立つんじゃないぞ!!戦闘中はセンパイであるオレの言うことに従うんだぞ!いいな!!」

 

(こいつ……めんどくせぇ……。)

 

「返事はどうしたあ!」

 

「へいへい……。」

 

こんな感じでシャロットはギニュー特戦隊と行動を共にすることになった。

リクーム、グルド、バータ、ジースと行動し、大分動きに磨きがかかってきた。

そして今度はギニューと接触していた。

 

「ふふふ……特戦隊メンバーにしごかれて少しはいい面構えになったな……。」

 

「……いや、しごかれたっつーか……あいつらロクなもんじゃなかったぞ……。」

 

「シャロットよ!お次はこのギニュー隊長自らが闘いのお手本を見せてやろう!だが、オレさまのしごきはあいつらの比ではないぞ!覚悟するがよい!!」

 

(……ってことはこいつはあいつらよりもっとひでぇのかよ……カンベンしてくれ……。)

 

「だがその前に……貴様には戦士として欠けているものがある……!」

 

「な……なに!?なんだよそりゃ。」

 

「それは……ポーズだ!きさまには美しいポーズがない!!」

 

「……は……??」

 

「ふふん!教えてやるぞ!特戦隊ポーズのフルコースを!」

 

「いや……あのよ……。」

 

何かを言おうとしたシャロットだったが強引にポーズの練習になった。

 

「ダメだダメだ!そんなことではギニュー特戦隊の一員として務まるわけがなかろう!」

 

「くっ……!なんだって……オレがこんな格好をしなきゃなんねえんだ……よっ!」

 

「よし!お次は『喜びのダンス』を10セットだ!このギニューさまのあとに続いて……むっ!?」

 

するとその時、ギニューの身につけているスカウターが反応した。

 

「敵軍の兵か!それもかなりの数……!!」

 

「チッ!また来やがったのか!?」

 

「……シャロットよ。きさま、あの敵の軍勢を一人で全て倒してみせい!」

 

「な……!?あの数を……オレだけでか!?」

 

「敵の多さに怖気づいたのか?ふん、青いな。」

 

「くっ!……んだとお〜!?上等だ!やってやらあっ!!てめえはそこで踊ってやがれ!あっという間に終わらせてやるぜ!!」

 

「ふ!その意気だ!ゆけいシャロット!!この窮地を己の力で切り開いて見せるのだ!!見事ヤツらを倒すことが出来たらきさまにはオレが新たに開発したサイコーのポーズをさずけよう!」

 

「いらねえよっ!!!!!」

 

 

そしてシャロットはその後もギニューからの指導を受け続けて本日の訓練は終わった。だがシャロットはギニューに言われたことを思い出しながら歩いていた。

 

『……もう……腕が上がらねえ……!一体このポーズになんの意味があんだよ……!!』

 

『シャロットよ!戦士たるもの己の士気を高め鼓舞するのは当然のこと!きさまも一人前の戦士であるならポーズぐらいキメれなくてどーする!?もっと自分らしさをさらけ出せ!!そう……きさまに足りんのは戦士として己を示す「覚悟」だ!!』

 

『……!!!な……なんだとぉ〜……!?』

 

『よいか!明日までに自分なりのファイティングポーズを用意しておけぃ!!そしてきさまの覚悟を我々の前で証明してみよっ!!!』

 

 

と、このような事を言われたのだ。

 

 

「…………。」

 

シャロットは通信機を取り出して連絡をする。

 

『あり?シャロット、どうかした?』

 

通信機に出たのはラビリスタだった。

 

「ラビリスタか……実は……。」

 

シャロットは今日あった出来事をありのままラビリスタに説明した。

 

『……要するに……そのファイティングポーズとやらに悩んでいる……ということだね?』

 

「あぁ……。」

 

『…………シャロット……キミは一体なにをやってるんだい……?』

 

流石のラビリスタもまさかファイティングポーズの事を聞かれるとは思っていなかったらしい。

 

「でもよ……!このままあいつらにナメられっぱなしじゃガマンならねえ!ムズかしいことわからねえけどようは男なら『やるかやらねえか』っていう覚悟の話だ……!だから……!あいつらにオレは覚悟を示さなきゃいけねえ……!!」

 

『いや、会話が噛み合ってないんだけど……。』

 

『ん?ラビリスタ、どうしたんだあ?』

 

するとその通信を聞いていた悟空がラビリスタに声をかけた。

 

『ん?あ〜、実はシャロットが何故かファイティングポーズで悩んでいるらしくてね。私はそういうのには疎いからどうしたものかと困っていたんだ。』

 

『ファイティングポーズ?なんだ!そんな事か!オラ、知ってっぞ!!昔悟飯が妙なポーズをしてたのみてたからな!』

 

「ほんとか!?」

 

『おう!オラが教えてやるさ!ちょっと待っててくれ!!』

 

そう言って通信が途絶える。と、同時に悟空は瞬間移動でシャロットの前に現れた。

 

「オッス!シャロット!」

 

「うおっ!急に現れやがって!いや、それよりもオレにポーズを教えてくれ!」

 

「おっし、任せろ!!確かこうして……。」

 

 

そして悟空は、昔の悟飯がキメていたうろ覚えなポーズをシャロットに教えた。

そして、次の日がやってきた。

 

 

「よーしお前たち!今日もファイティングポーズのチェックを行うぞぉ!今回は特別にシャロットにも参加してもらう!ついでにポーズも審査してやろう!オレがチェックするから順番にポーズをとるんだ!いいな!」

 

「「「「オオーーッ!!!」」」」

 

「…………。」

 

「おいおいシャロットちゃん緊張してんのか?」

 

「へっ!こいつは新入りだ。無理もねえぜ!」

 

「まーまーリラックスしていこーぜえ!」

 

「ふん!だらしないヤローだ。」

 

「ふふふ、シャロットよ。準備は出来ているんだろうな?」

 

「よけーなお世話だ……黙って見てやがれ!」

 

「ではいくぞ!はじめーいっ!!」

 

そして抜き打ちのファイティングポーズのチェックが始まった。

 

「リックーーム!!」

 

「バーータ!!」

 

「ジィーース!!」

 

「グルドぉっ!!」

 

そして……

 

(いくぜっ!こいつがオレの……!覚悟だっ!!)

 

「シ……シャロットぉ!!」

 

シャロットのとったポーズは、グレートサイヤマンになり損ねたようなポーズだった。悟空がうろ覚えでシャロットに教えたため、ポーズの格好はそれはもう酷いことになっている。

 

「「「「「…………」」」」」

 

「…………ぶっ……!」

 

「ぶわーーっはっはっはっは!!どんなポーズかと思ったら……とんでもねえカッコ悪さだぞぉ!!」

 

「おいおい!見てるこっちまで恥ずかしいぜ!」

 

シャロットのポーズは当然笑いものにされた。

 

「…………ぐぬ……ぬ……!っきしょう!!」

 

だが……

 

 

「………………ふむ!合格だ!!」

 

「「「えええーーーっ!!!!?」」」

 

ギニューだけはシャロットの覚悟を認めた。

 

「ポーズのデキは今一つだがシャロット……きさまの覚悟確かに見せてもらったぞ!本日より!ギニュー特戦隊はシャロットを正式なメンバーに加えリニューアルする!!」

 

「「「ま……マジかよ……。」」」

 

するとまたしてもギニューのスカウターが反応した。

 

「む!また敵が現れたか……!お前たち出撃の準備だ!!」

 

「「「オオーーッ!!!」」」

 

そしてギニュー以外のメンバーが飛び立って行った。一人取り残されたシャロットにギニューが静かに歩み寄った。

 

「……おいシャロット。さっきのポーズだがな…………あれはオレもカッコ悪いと思うぞ……?あとでもっと良いポーズを教えてやる。いいな?」

 

それだけをシャロットに伝え飛び去って行った。

 

「………………。」

 

(……孫悟空……帰ったらブッとばす……。)

シャロットは心の中でそう誓った。



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裏切り者

なんとか自分の覚悟をギニューに示したシャロットは、無事に特戦隊のメンバーとなり、引き続き襲いかかってくる敵を倒していた。

 

「うおおーーっ!!コンヤローーッ!」

 

「ほ?シャロットちゃんいつにも増して気合入ってるじゃないのぉ。」

 

「でもよ……なんか鬼気迫るもんがあるぜ……。」

 

「おいグルド!シャロットにちょっと声かけて来いよ!」

 

「な、なんで俺なんだよ!!」

 

特戦隊のメンバーからしても今のシャロットは近寄りがたかった。

 

そして数々の敵を倒していくうちに、ついに襲撃のチャンスがやってきた。

 

「ぬぁにぃ!?敵の本隊が見つかっただとぉ!?」

 

「は……はい!ベジータの連絡ではこの先の島に停泊中の宇宙船があるそうで……それが敵の本隊で間違いないだろうと……との情報でした!」

 

「ぬう……!ベジータたちに先を越されるとは……なんたる失態……!」

 

(そりゃそうだろ……おまえらマジメに探してねえし……。)

 

シャロットは心の中でツッコんだ。

 

「まあいい……我々もフリーザさまの元に合流するぞ!」

 

「いよいよか……ブルマ……ユリシス……待ってろよ!」

 

そしてシャロットは一旦ベジータ達と合流する。

 

「よう……戻ったか。」

 

「兄様!なんだか雰囲気が変わりましたか?」

 

「がはは!特戦隊の連中とはちゃんと仲良くなれたのか?」

 

「んなわけあるかよ……!二度とゴメンだぜ……!」

 

するとそこへフリーザもやってきた。

 

「……で、あの宇宙船に敵の司令官……つまり私の名をかたる偽物がいる……というわけですね。」

 

「は!敵の拠点は調べ尽くしましたのでまず間違いはないかと!」

 

「この時を待ちわびました……ほほほ、初めてですよ……この私をここまでコケにしたおバカさんは……。絶対に許しません……!」

 

フリーザは怒りのあまり力の片鱗を見せる。

 

(……!!フリーザの野郎の気が膨れ上がった……こいつ強さの底が見えねえ……!)

 

(ば……バケモノめ……!)

 

「それでは皆さん!ここからは総力戦となりますのでよろしくお願いしますよ。下級兵士たちは死なない程度に痛めつけてやりなさい!ですが……敵の司令官は別です。この私が粉々に殺してあげましょう。」

 

「がははっ!面白くなってきやがった!!」

 

「よぉし、やってやるぜ!」

 

「おいシャロット!オレたちの目的を忘れるんじゃないぞ?」

 

「わ……分かってるって……!」

 

するとフリーザが宇宙船の様子をみて眉根を寄せた。

 

「……妙ですね。ヤケに静かではありませんか。」

 

「言われてみれば……。」

 

こちらが攻めてきているにも関わらず敵兵一人出てくる気配がなかった。

 

「……シャロットさん、ベジータさん。宇宙船に乗り込みますよ。他の部下たちは誰も入ってこないように見張っていてください。」

 

「の、乗り込むのか!?」

 

「フリーザさま……!」

 

フリーザはシャロットとベジータを連れて宇宙船に乗り込んで行った。

 

「こ、これは……!」

 

宇宙船の中に侵入した瞬間、異質な光景がフリーザ達の前に飛び込んできた。

 

「全員……やられてる……!」

 

「馬鹿な……どういう事だ!!」

 

宇宙船に入った途端、そこら中に兵士たちの亡骸がころがっており、誰一人として生きている者はいなかった。

 

「な、なんでコイツら全員死んでんだよ!!」

 

「一体誰が……!!」

 

「……妙ですね……あのターレスという男は……どこに……。」

 

全員が何が起こったのか分からないでいた。

 

「ぶ、ブルマは……!!あいつももしかしたら……!!」

 

シャロットは一人でブルマを探そうと走り出したが……

 

「お待ちなさい。」

 

「っ!!」

 

フリーザがそれを止めた。

 

「あなたの目的も分かりますが……探すだけ無駄です。ヤツらの傷跡をごらんなさい。」

 

「「!!」」

 

一人一人の傷跡は同じ箇所にあった。全て左胸の辺りを抉られたような傷があり、全員心臓を貫かれている。

 

「どうやら一撃で仕留められてるみたいてすね。あなたの探してるブルマという人物も……これじゃ生きているわけがないでしょう。」

 

「そ、そんな………!」

 

そして暫く宇宙船内を探索すると、ひときわ大きい扉がある場所についた。

そして、そこに入ると……

 

「な……!!こ、こいつは……!!」

 

「た、ターレス……!!!!」

 

「……ま、そうでしょうね。それにしても……なるほど。これが私の偽物の正体でしたか……無様なものですね。」

 

ターレスの隣にはフリーザによく似た姿の奴が同じように左胸を抉られ死んでいた。

 

「……どうやら生存者はいないようですね。ギニューさん達にもこの事を伝えましょう。戻りますよ。シャロットさん、ベジータさん。」

 

そういってフリーザは宇宙船を後にした。

 

(……く、くそ……偽フリーザと共倒れを狙う作戦もダメになった……マズイぞ……!)

 

ベジータは予想外な出来事が起こったため予め考えていた計画が実行できなくなった。

 

(ブルマ……!!死んじまったのかよ……!!)

 

シャロットはブルマが死んだと思い込み酷く落ち込んでいた。

 

そうして戻ったフリーザはこの事を部下たちに大々的に伝えた。

 

「皆さん……!このフリーザの名をかたり軍を支配していた不届き者は何者かによって殺されていました。ですが……丁度よく消えてくれましたからいいでしょう。あなたたちはこれからも変わらず宇宙最強の軍団として活動するのです。」

 

「「「フリーザさま!!バンザーーイ!!!」」」

 

部下たちはフリーザの復活を大喜びした。

 

「……オレはもう一度宇宙船の中を調べる!!いいな!!」

 

「お好きになさい。ベジータさん達もシャロットさんについていったらいかがですか?」

 

「え……はい。分かりました。」

 

リリ、ナッパ、ベジータはシャロットについて行き宇宙船の中を調べることにした。

 

ベジータ達の姿が見えなくなった瞬間、フリーザの目の色が変わる。

 

「……さて、神精樹の実とやらもなくなってしまったことですし、あのサイヤ人共はもう用済みですね……ラズベリ、こっちに来なさい。」

 

「はっ!」

 

フリーザが一人の兵士を呼んだ。

 

「全員に伝えなさい。『3人のサイヤ人と女は私の暗殺を企んでいます。消してしまいなさい。成功すれば……褒賞がありますよ。』とね。」

 

「はっ……直ちに!!」

 

 

ラズベリはフリーザからの言伝を聞くと全兵士に向けて声を張り上げた。

 

「全兵士に告ぐ!フリーザさまの命令だ!!フリーザさまと行動を共にしていた3名のサイヤ人と女……ヤツらはフリーザさまの暗殺を企んでいる!これよりヤツらを発見次第抹殺せよ!成功した者にはフリーザさまから褒賞が与えられるぞ!」

 

 

「「「「おおおおおおっ!!!」」」」

 

全員が一斉に雄叫びをあげた。

 

 

「…………。」

 

調査に来ていた悟空は影に隠れてこの事を聞いていた。

 

(むむ……!こいつは大ごとになりそうだな。ラビリスタに知らせねえと!)

 

悟空は瞬間移動でラビリスタのいる所まで戻って行った。

 

 

一方、何も知らないシャロット達は……

 

「ひ、ひどい……こんな……胸の奥まで抉られてる……!」

 

リリは死体だらけの宇宙船に入って早々気分を悪くしていた。

 

「ほ、ほんとに死体がゴロゴロ転がってやがる…………似たようなとこ回ってばっかで飽きてきたなあ……おいベジータ。もう帰ろうぜ!!」

 

「そうはいくか。シャロットの仲間はどうでもいいが敵情視察のチャンスを逃す手はない。」

 

「クソッ……!いろんなニオイが邪魔してブルマが何処にいるか分からねえ……ん……?このニオイ…………ユリ…………シス……の?いや、気のせいか……。」

 

一瞬ユリシスの匂いがした気がするがシャロットは気にせず進む。

 

「ったく……どいつもこいつも……そんなもんフリーザ軍のヤツに聞いてみりゃいいだろうが。」

 

「あ……ああ!そっか!そういやもうあいつら敵じゃねえもんな!」

 

「まったくよ!今度は頭のトレーニングもしねえとなあ!がはははは!」

 

「うるせえな……!あんたもそんなに頭良くねえだろうが!」

 

そんなことを話しながら進んでいると、フリーザ軍の兵士たちがシャロットの目の前に現れた。

 

「……!丁度いいとこに!おいお前らちょっと聞きたいことが……。」

 

シャロットがブルマの居場所を聞き出そうと、兵士に話しかけたが……

 

「……!サイヤ人に女……!!いたぞこいつらだ!!」

 

「やっちまえ!!」

 

「はああああ!?なんでだよ!!」

 

兵士たちはシャロット達に襲いかかってきた。

 



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絶望に抗う戦士たち

シャロット達はもう敵ではないはずのフリーザ軍の兵士たちにいきなり襲われた。

 

「オレ達は味方だろうが!どうなってんだ!?」

 

「……!静かにしろ!」

 

するとベジータは何かに気づいたのかシャロット達と共に身を潜めた。

影から様子を覗くと、フリーザ軍の兵士たちが続々と宇宙船内に乗り込んで来る。

 

「サイヤ人と女め……!どこへいった!?探せ!この辺にいるはずだ!」

 

「チッ……集まってきやがった……!一旦離脱するぞ。敵に気取られないよう気をつけろ!」

 

「は……はい!」

 

ベジータ達は気づかれないように宇宙船から脱出し外に出た。

 

「……フリーザ軍のヤツら一体どうなってんだ!」

 

シャロット達が外に出ると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

『…………かー……!!』

 

「……ん?」

 

『……だれかーっ!!この通信を拾って!お願いっ!!誰かーーっ!』

 

「うおっ!この声ブルマか!?」

 

「え!?ブルマさんですか!?」

 

その声の正体はブルマだった。

 

「ブルマ!オレだ!!お前今どこにいるんだ!ユリシスもいるのか!?」

 

『……シャロット?それにリリ!?やった……つながった!私は無事よ!ユリシスがこんなとこにいるわけないじゃない!』

 

「一緒じゃねえのか!?」

 

「相変わらずうるさい女だ。」

 

『ベジータ!あんた達も一緒なのね。』

 

「フン、成り行きでな。で、きさまは何をしているんだ?」

 

『それが……あのサイヤ人にさらわれて船から船へ移動させられた挙句妙な研究室に放り込まれて……「ドクター・ゲロ」の研究を手伝えって言われたの……!科学者の本にも載ってる天才科学者よ!信じられる!?』

 

「知らねえよ……そんな奴は……!ソイツは何やってたんだよ。」

 

『正直ほとんど分かんなかったわ。遺伝子とか人造人間とか言ってたけど……とにかく研究を手伝うフリをしながら新しい通信機を作ったの。それでこうして連絡が取れたって訳!でもバレるのも時間の問題ね早く助けに来てっ!!』

 

「バカが……場所が分からないのに向かえるか!助けて欲しいなら居場所を言え。」

 

『そ、そうね!ええと……今位置情報のデータを送ったわ。』

 

すると通信機からブルマ以外の人物の声も聞こえてきた。

 

『……おい。コソコソと何をしている……!研究データの入力は……な、なんだお前は……!!!がっはあああっ!!!!!』

 

「「「!?」」」

 

『え、な……何が起きたの!??』

 

急に男の断末魔が通信機を伝い聞こえてきた。

 

「知りたいのはこっちだ!!ブルマ!なんとか生きてろよ!!」

 

『わ、分かったから早くたすけにきてよっ!私怖すぎて死んじゃうから!!』

 

ここで通信は途切れた。

 

「や、やべえぞ!早く行かねえと……!」

 

シャロットはブルマを探しつつフリーザ軍の追っ手からも逃げながら行動していた。すると、またしてもシャロットの通信機が反応した。

 

『あ、シャロット。無事かい?』

 

「……!ラビリスタか!?」

 

ラビリスタからの通信だった。

 

「次から次へと……なんだってんだ?」

 

『状況はどうだい?』

 

「ラビリスタ……それが大変なことになってんだよ!」

 

『やっぱりか……状況は悟空から聞いたよ。』

 

「そ……孫悟空から……!?なんであいつがこっちの状況知ってんだよ……?」

 

『へへっ!ちょっとフリーザたちの様子見てきたんだ!そしたら……ちとマズイことになってるみてえだ。』

 

悟空はその事をシャロットに伝えた。

 

「……フリーザがオレ達を始末しようとしてる……!?」

 

「私たちが裏切りって……!」

 

「そしてもう一人……ドクター・ゲロと言ったか。確かあの女が口にしていた名だな。」

 

「オレ達が反逆者だと……!?ふざけやがって!!」

 

「くっ……フリーザを出し抜くどころかこっちがうまく利用されたわけだ……チクショウ……!!」

 

『そっちの話を聞くにブルマはドクター・ゲロという科学者のもとにいるみたいだね。シャロット、フリーザたちが本格的に動き出す前にブルマとユリシスを助け出して離脱するんだ。』

 

「離脱しろって……フリーザたちはほっとけってのか!?」

 

『何度も言うけど今のキミじゃフリーザには勝てない……!無駄死には許さないよ。今は二人の救出に専念してくれ!いいね!』

 

『なあラビリスタ。オラもブルマとユリシス助けに行ってもいいか?』

 

『ダメ。』

 

『え〜いいじゃんか。』

 

『私の指示を無視したばっかじゃん!フリーザのところに乗り込んで聞き耳立ててこいなんて言ってないよ!』

 

『ば、バレなかったらいいじゃんかよー!』

 

『軍を取り戻したあとのフリーザの動向に注意しろとは言ったけどね……目立つ行動は避けるようにと言ったでしょ!』

 

と、悟空とラビリスタが言い合いをしてる時だった。

 

『あ、皆さんー!ただいま戻りましたー!』

 

『「「「「え????」」」」』

 

通信機から聞こえてきたのは明らかにユリシスの声だった。

 

「ゆ、ユリシス!?お前……今までどこ行ってたんだよ!??」

 

『ユリシス!?お、おめぇ……それに……ブルマも!?』

 

「なんだと!?」

 

ユリシスは気絶したブルマを背負いながら歩いてきていた。

 

「ブルマを助けたのか……!?」

 

『え?はい。なんか道に迷ってさまよってたらブルマさんが気絶していらっしゃったので……。』

 

「え……そ、そうなのか……?」

 

「……さっきまでブルマさんピンピンしてましたけど……。」

 

『と、とにかく……ブルマは救出成功ってことかな……。』

 

「「「…………。」」」

 

一気に気の抜けたシャロットだったが結果オーライだろう。

 

『ふぅ……任務成功かな…?じゃ、じゃあシャロット……キミも早く戻っておいで。間違ってもフリーザと戦おうとしちゃダメだよ?フリじゃないからね?ダメだよ?じゃあねー!』

 

そして通信機は途切れた。

 

「……この短時間で何があったんだ……!」

 

「で、でも良かったですよ……何事もなくて……。」

 

「そうだな……。」

 

そしてラビリスタにはフリーザに絶対手を出すなと言われたシャロットだったが……

 

「……リリ。お前、先帰ってろ。」

 

「……いえ、私は兄様に着いていきます。」

 

「オレは……まだここに用がある……!」

 

「シャロット……貴様まさか……!」

 

ベジータは薄々察していた。

 

「……何度も何度も仲間をゴミのように扱いやがって……!!これ以上は許せねえ……!フリーザのヤツは……ここでぶっとばす!!!」

 

「ばっ……バカヤローがっ!!きさま本気で言ってるのか!?」

 

「おいおい……!落ち着けよシャロット!」

 

「ナッパのオッサンもベジータも、リリも……今までありがとな。フリーザと闘わねえんならここまでだ。オレは……もう逃げねえっ!!誰もアイツを止める気がねえなら……オレがやってやるっ!」

 

その時だった。

 

「……ほほほ。気合いが入っていますね。やる気のある方は好きですよ。そういえば以前仰っていましたね。全部終わったあと私をぶん殴る……と。」

 

「……っ!?」

 

現れたのはフリーザだった。

 

「……う……!フ……フリーザ……!」

 

「出やがったな。てめえと闘う時を待ってたぜ……フリーザっ!!!」

 

「フリーザ……っ!!」

 

「まさか逃げずに私と闘うことを選ぶとはね……ま、こちらとしても好都合ですが……。まずは……リリさん。あなたの足でも撃ち抜きましょうか。」

 

「……!!」

 

フリーザが指から光線を放とうとした瞬間……

 

「おっと……!」

 

「なに!?」

 

悟空が瞬間移動で現れたフリーザの腕を掴んでいた。

 

「……へへっ!間に合った!今度はラビリスタに許しをもらって来たぞ!」

 

「……!!孫悟空!!」

 

「……あなた……何者です!?」

 

「……おめえはオラを知らねえ時代のフリーザか……。」

 

「……ふん、『未来の私に』痛い目にあわされた方ですか?次から次へと……。」

 

「痛い目にあったのはオラの方じゃねえ……って言ったらおめえ信じるか?」

 

「ふっ……わたしが何も知らないと思って……このフリーザがそんな目にあうわけないでしょう。」

 

「……だよな。やっぱおめえはどの時代でも変わんねえな。」

 

「……知ったふうな口をきかれるのは不愉快ですね……!いいでしょう……あなたもシャロットさんのお仲間のようですし……まとめて殺して差し上げますよ……!」

 

「オラはおめえとは闘わねえ……。」

 

「なんですって?」

 

「おめえを倒すのはシャロットだ。……そうだろ?」

 

「孫悟空……ああ!そうだ!!フリーザの野郎はオレが倒す!!」

 

その言葉を聞いた悟空はニヤリと笑い、袋をシャロットに渡した。

 

「……シャロット!受け取れ!」

 

「こいつは……!」

 

「仙豆だ……あいにく今は手持ちが2つしかねえけど……持っとけ。」

 

「そんじゃ!オラは行く!リリ、おめえは……。」

 

「私も兄様と闘います……!」

 

「……そうか。よし、勝ってこいよ!シャロット!リリ!!」

 

悟空は瞬間移動で消えた。

 

「き、消えた……!?一体……あいつは何者……!」

 

「てめえが気にする必要なんざねえ……!オレを無視すんなよフリーザ!!」

 

「ふん、まあいいでしょう。まずはここに残ったあなた達を消しておきましょう。どの道この時代に集まったサイヤ人は皆殺しにするつもりですしね。」

 

「……チィ……!」

 

「……ワリィなベジータ、ナッパのオッサン、リリ……アンタらまで巻き込んじまったけど……。」

 

「今更謝っても遅い!」

 

「全くだぜ……!このバカ弟子が……!」

 

「ここまで来たら運命共同体です!」

 

「……だがどちらにしろヤツがその気になればオレたちなどすぐに探し出せるだろう……今逃げたところでどうにもならん……!!ここで闘うしかないという訳だ……!」

 

「さあ、ギニュー特戦隊の皆さん!出番ですよ!!」

 

だがここでフリーザが呼び出したのはギニュー特戦隊だった。

 

「ギ……ギニュー特戦隊……!!」

 

「きさまら……特にシャロットには見所があると思っていたんだが……こうなってしまっては仕方がない。」

 

「……覚悟を決めるぞ……!!」

 

「ナッパ!!シャロット!!リリ!!特戦隊は貴様らが倒せ!!フリーザとは……オレがやる!!」

 

「ま……まてよ……!フリーザとはオレが……!!」

 

「つべこべ言うな!こうするより勝率の高い戦法はないんだっ!!やる以上は勝つ……!きさまもそのためには私情を捨てろ!!」

 

「チッ……!分かったよ……じゃあベジータ。こいつを持ってけ!」

 

「……なんだ?さっきの妙なヤツから受け取った豆か……?」

 

「仙豆……っていうんだ。そいつを食えばどんな怪我もすぐに治る……あんたに渡しとく。」

 

「……ふん、便利なものを持ってやがる……少しは勝機が見えてきたが……きさまの分はいらんのか?」

 

「こっちにはナッパのオッサンもリリもいる……あんたが二つとも持っといた方がいいだろ。」

 

「ふっ、くだらん気を回しやがって……あとで泣きつくなよ……!」

 

ベジータはギニュー特戦隊をシャロット達に任せてフリーザの前に立った。

 

「作戦会議は終わりましたか?人生最後のね……ふふ……。」

 

「……オレたちをなめるなよ……!!フリーザ!!!」

 

 

 



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師匠として

 

フリーザ軍とシャロット達の闘いが始まろうとしていた時、悟空はラビリスタの元に戻ってきた。

 

「…よっ!戻ったぞラビリスタ!ユリシス!」

 

「悟空さん。あれ?シャロット君たちは……。」

 

「お、助かったよ悟空!!……ん?シャロットは?」

 

「……あ〜……えっと……そのことなんだけどよ……シャロットはフリーザをぶちのめしてから帰るらしいぞ……。」

 

「「……は??」」

 

ユリシスとラビリスタが固まった。

 

「……たはは……!」

 

「今のシャロット君じゃフリーザと闘うなんて無謀ですよ!?」

 

「な……何をやってるんだい!なんでシャロットを引っ張ってでも連れて帰ってこなかったんだい……!」

 

「……オラもサイヤ人だからな……シャロットの気持ちはよく分かんだ……。」

 

「う……それを言われちゃうとな〜……でもシャロットとフリーザの力の差は明らかだよ……。」

 

「……そうかな?」

 

「「……!!」」

 

「なんとなくだけどよ……シャロットは『もうすぐ』だと思うんだよな……。」

 

「もうすぐ……?」

 

「なあ、ラビリスタ。ココはオラのこと信じちゃくんねえかな?シャロットのことも!」

 

「……わかったよ。キミとシャロットを信じる。」

 

「サンキュー……あ、それと……ユリシス。ちょっとおめぇに聞きてえ事があんだ。」

 

「……私にですか?」

 

「……ああ。二人だけで話がしてえ。」

 

悟空はユリシスと人気のない場所へ移動した。

 

「……フリーザ軍の兵士たちを壊滅させたのは……おめぇだろ、ユリシス。」

 

「……私が壊滅……?すいません……何を言ってるのか分からないのですが……。」

 

「……オラ、前から気になってたんだ。オラが修行をしてた時も、おめぇの気配は感じなかったのにいつの間に背後を取られてたり、さっきも……まるでフリーザの力を知ってるような感じだったからな。」

 

「……。」

 

「……!?」

 

次の瞬間、ユリシスは一瞬凍てつくような殺気を悟空に向けた。

 

「……この私がフリーザ軍を壊滅させたと……悟空さんはそう言いたいのですね?」

 

「あ、ああ……オラにはそうとしか思えねえんだ。(とんでもねえ気だ……やっぱりおめぇ……)」

 

悟空がユリシスに探りを入れようとした時だった。

 

「……悟空さん、おでこにゴミがついてますよ。」

 

チョン

 

「はえ……?」

 

ユリシスは悟空の額を人差し指でツンツンとつついた。

 

「お、おお……サンキュー……あり?オラ、なんでこんな所にいるんだ?」

 

「もう……悟空さん寝ぼけてるんですか?悟空さんが連れてきたんですよ?」

 

「そ、そっか……!じゃあラビリスタとブルマの所に戻っか!」

 

悟空は不思議な感覚を覚えてユリシスと共にラビリスタ達の所へ戻った。

 

一方、シャロット達は……

 

「へっへ……!悪く思うなよ……シャロットちゃーん!!」

 

ギニュー特戦隊と対峙していた。

 

「フリーザさまを出し抜こうとしたお前が悪いんだからな!!」

 

「ああ!こんなことになるなんて残念で仕方ねぇぜ……!」

 

「くっ……!!」

 

「に、兄様!!」

 

「ビビるんじゃねえ!シャロット!!リリ!!さっさとこいつらを片付けてベジータんトコに行くぞ!!!」

 

「ああ……わかってる!!」

 

「よーし!!隊長!指示をっ!!」

 

「……特戦隊は待機だ!!……兵士たちよ!!こいつらを抹殺せよ!」

 

ギニューが指示を出すとフリーザ軍の兵士が続々と現れた。

 

「ええっ!?た、隊長!?オレ達が闘うんじゃないんですか!?」

 

「黙っていろ……!まずは様子見だ!!」

 

シャロット達は次々と現れる兵士たちを倒していく。

 

「まとめてふっ飛ばしてやらぁ!!」

 

「はあっ!」

 

「へっ!こんな雑魚どもでオレたちを止められると思ってんのかあ?」

 

シャロット達の闘いぶりにギニューが唸る。

 

「……むう……!やはりな……!」

 

「隊長!あいつらはオレたち特戦隊が相手をしないと……!!」

 

「なんだったらオレがまとめて片付けてやりましょうかあ?隊長!」

 

「バッカ!抜け駆けすんじゃねえ!!オレがやるに決まってるだろ!?」

 

「いつお前がやるって決まったんだ!ジャンケンで決めようじゃねえか!!」

 

特戦隊のメンバーが口々に言い合う。

 

「こ……こいつら……!相変わらずふざけた事を……!」

 

だが……

 

「貴様らーっ!!敵から注意をそらすな!!集中しろ!!」

 

「「「「!?」」」」

 

ギニューが声をあげた。

 

「……貴様もだ!シャロット!!」

 

「は!?オ……オレ!?」

 

「さっきから見ていれば煮え切らん闘い方ばかりしおって……!!フリーザさまとの対戦に備えて力を温存しておく……などという知恵が回るタイプでもなかろう……もっとシャキッと!やる気をだして挑まんかっ!!」

 

ギニューのこの言葉にはナッパも驚いた。

 

「ギ……ギニューの野郎が……まともな事を言いやがった!?」

 

「た……隊長……!?シャロットは敵なんですよ!?」

 

「そ、そうですよ!なんでわざわざ敵をやる気にさせようとしてるんですか!!」

 

「シャロットは敵ではある……が……!仮にもこのギニューが指導した戦士だ……!!それゆえに!!今のシャロットのふぬけた姿は我慢ならーん!!」

 

「お、おいコラ!!誰がふぬけだ!!好き勝手言ってんじゃねえぞ!!」

 

「……貴様はフリーザさまとベジータのことが気になって闘いに集中出来ずにいる……そして!我ら特戦隊と闘うことに迷っている!!……違うかっ!!」

 

「……!!」

 

「それがふぬけでなければなんだというのだ!シャロット!!」

 

「……ぐ……う……!!」

 

シャロットは言い返す言葉がなかった。

 

「そんな体たらくで我ら特戦隊に挑む気であるまいな……!」

 

「ぐっ……そ……そんなことは」

 

「きさま……それでも戦士かっ!!!」

 

「……!!!」

 

「思い出すがいい!、我ら特戦隊との特訓の日々を!!」

 

「……いや……あの特訓は別に……けど、わかったよ……!どうあっても潰し合うしかねえんだな……?」

 

「そういうことだ……こうなった以上貴様も悔いを残すようなマネはするな……!!本気でこい!!」

 

「……ああ。目が覚めた……!アレコレ考えるのはやめだ……!!てめえらをぶっ飛ばして先に進むっ!!」

 

「……それでいい!!では!改めて!!ギニュー特戦隊!!行くぞーーっ!!」

 

「「「「オーーッ!!!!」」」」

 

シャロット達はギニュー特戦隊メンバーに本気で応えた。

 

「「「はああああっ!!!」」」

 

「こ……の……!!ついこの前まで……あんなヒヨっ子だったのによ……。」

 

「ぐ……ふふ……!い……い〜いパンチ打つようになったじゃな〜い……。」

 

まずはリクームとジースをなんとか協力して倒した。

 

「まずは二人!!こりゃあ大仕事だぜ……!!」

 

「おいおい!ジースたち……やられちまったぞ……!?……うむ……!!見事だ!それでこそ!!」

 

「隊長!?どっちの味方なんすか!」

 

「無論!ギニュー特戦隊!ひいてはフリーザさまの味方だとも!!だが……久しぶりに楽しめそうな闘いなんだ……!高ぶりもしよう!!」

 

「余裕かましてられんのも今だけだ……!!さっさとかかってこいよ!!」

 

「さ〜て!それじゃあ……だらしねえジースとリクームに代わって……この!ギニュー特戦隊の副隊長!!バータさまが闘いのお手本を見せてやるぜ!!」

 

「……えっ……?副隊長ってジースじゃねえのか?」

 

「ぐぬ!?ち、ちげーよっ!!特戦隊の副隊長はオレだっつーの!!この闘いで証明してやらあ!!」

 

「ナメんなよ……!!返り討ちにしてやるっ!!」

 

そしてシャロット達はバータのスピードどグルドの超能力に苦戦しながらもついに、倒した。

 

「こんなサル共に負けるとはな……あ、アタマにくるぜ……へへ……。」

 

「へ……へっ……すげえスピードじゃねえか……くそ……。」

 

「……みんな……ご苦労だった……!あとは……オレがやる!!」

 

とうとうギニューが直接シャロットと闘うことになった。

 

「ぜぇ……ぜぇ……!よ……ようやく隊長のおでましってわけだ……!」

 

「……はぁ……はぁ……!これからが……本当の闘いなんですね……。」

 

ナッパとリリは連戦により体力をかなり消耗していた。

 

「ギニュー……!!そういえばてめぇとはマトモにやり合ったことはなかったな……!隊長とやらの力……見せてみろ!!ギニュー!!!」

 

「ふっ……生意気なクチを……だが……それでこそだ!シャロット!!しかし!はああああっ!!」

 

ギニューが力を込めると、気が膨れ上がった。

 

「な、なんて気だ……!」

 

「このギニューさまの力の前では貴様たちに勝機などないっ!覚悟してもらうぞ!!」

 

「ちっ!ニオイからして強えとは思ってたが……気の量が段違いだ……!ここまですげえなんてな……!!」

 

「気合い入れろよシャロット!リリ!こいつは……ちとヤバいぜ……!」

 

「はい……!凄い気迫です……!」

 

「へっ……言われなくてもわかってるよ!出し惜しみはしねえ……!!ギニュー!てめえは全力でぶっ飛ばす!!」

 

「いい闘志だ!こいつはかつてないほどの面白い闘いになりそうだ……!!」

 

シャロットは気を一気に解放する。

 

「いくぜっ!!ギニュー!!」

 

「こい!!シャロット!!」

 

そして、二人がぶつかると凄まじい衝撃波が周囲を包んだ。

 

「はああああっ!!」

 

「……な!こ……この力は!?見事なものだ……シャロット!!」

 

ギニューはシャロットと拳を交えながらも称賛した。

 

「ナッパさん!兄様!一気に決めます!『残花流転』……!」

 

リリはナッパとシャロットの攻撃を強化する魔法を唱える。

 

「助かるぜ!!」

 

「行くぞ……ギニュー……吹き飛べぇぇえ!!!」

 

「はああああっ!!!」

 

ナッパとシャロットの同時攻撃でギニューを吹き飛ばした。

 

「ぐあああっ!!!ぬうう……!ま……まさか……!これほどとは……!!」

 

「……はあっ……はあっ……!オレたちの……勝ちだ……!!」

 

「ぜえ……!ぜえ……っ!……へへっ……!人間死ぬ気になりゃなんとかなるもんだなあ……。」

 

シャロット達も気を一気に爆発させたため体力を大幅に消費していた。

 

「……見事だ……!この勝負……貴様たちの勝ちだ……だが……『勝負』で負けてもフリーザさまへの『忠誠』だけは貫かせてもらう……!!」

 

すると先程シャロットにやられた特戦隊メンバーが再び起き上がりシャロットの前に立った。

 

「個々では貴様たちには勝てぬ……しかし!!我ら5人がかりでなら話は別だ……!!」

 

「……てめえら……!……っ!!なんで……そこまで……!!!」

 

「我らはギニュー特戦隊!!フリーザさまに害をなす者たちを……みすみす行かせるわけには……いかぬ!我々としてもきさまとの決着を数に頼る形で終わらせたくはなかったがな……卑怯……と思うか?」

 

「思わねえ……!!てめえらにも譲れねえもんがあんのはわかった……いいぜ!トコトンまで……やってやる!!!」

 

「……よく言った!シャロット!!特戦隊6人目の戦士よ!!……我らの手で散るがいい!!!」

 

その時だった。

 

「ちょっと待ちやがれっ!!!」

 

ナッパが声をあげた。

 

「……ぬっ!?」

 

「ナッパさん……!?」

 

「ナッパのオッサン……!?」

 

「……シャロット!リリ!てめえらはバカか?こんなくたばりぞこない相手にいつまでも構ってられっかよ!!こいつらはオレが片付けといてやる!てめえらは先にベジータの援護に行っとけ!!」

 

「はあ!?な……何言ってやがる!!」

 

ギニューはナッパの発言に困惑していた。

 

「そ……そうだぞ!ナッパ!!……きさま……我らの覚悟に泥を塗る気かっ!」

 

「うるせえ!!てめえらの覚悟なんざ知るかっ!!こっちにも事情ってもんがあんだよ!!」

 

「なっ……!?」

 

「だいたいなあ!さっきから聞いてりゃシャロットの師匠ヅラしやがってて……!いいか!シャロットの師匠は!!この!!オレさまなんだよ!!!」

 

「は……はああああ!?」

 

「何を言い出すかと思えば!!笑わせるな!!貴様なんぞに師匠役が務まるわけなかろう!」

 

「ナッパさん!?無茶です!!一人でこの人達全員を相手にするなんて……!」

 

「へっ!前にも言ったろうが!弟子が師匠の心配なんざ百年早えんだよ!」

 

「わたしいつの間に弟子になってたんです!?」

 

「いや……!心配っつーか……。」

 

「シャロット!!!てめえがホントにやりたいことはこいつらとの決着じゃねえだろ!!」

 

「……っ!!」

 

「おらっ!わかったら!とっとと!!行きやがれえっ!!!」

 

「「えええええっ!??」」

 

ナッパはシャロットとリリを思い切り投げ飛ばした。

 

「……きさま一人だけ残るとは……!師匠の意地というやつか……?」

 

「…………。」

 

「……いや、そもそもシャロットとリリをフリーザさまのもとに行かせてなんになる?ヤツら程度の戦闘力でフリーザさまと勝負になるはずもなかろう……!」

 

「ふん……知ったこっちゃねえ……!勝負になろうがなるまいがあいつはフリーザとやりたがってんだ!あのリリとかいうのもシャロットにベッタリで離れたくねえだろうからよ。オレ様はそんな弟子のささやかな願いを叶えてやっただけのことよ!!どうせ命を張るなら……そっちの方が言いだろうがよ……へへ……!」

 

「…………シャロットを行かせたのはせめて最後にヤツが望む相手と闘えるように……リリは最期までシャロットの隣にいれるように……ということか。ふん……サイヤ人らしい不器用で血なまぐさい優しさだ……!ではナッパよ……きさまはここで死ぬ気なんだな……?」

 

「へっ……さあな……。」

 

ナッパは自分の命を捨てる覚悟を決めていた。

 

「……貴様に対してはベジータの付き人程度の認識だった……だがその考え……改めてやる……!いいだろう……!こちらも命を捨てる覚悟で行くぞっ!!」

 

 

一方……ナッパに投げ飛ばされたシャロットとリリは……

 

「いてて……あのオッサン思い切り投げ飛ばしやがって……!」

 

「兄様!大丈夫ですか……!」

 

「ああ……なんともねえよ……。とにかく……ベジータはあっちかっ!」

 

ベジータの所へ急いで向かおうとした瞬間……

 

 

ドォォォォォォン!!

 

 

大きな爆発音が起こった。

 

「……っ!?今の音……ナッパのオッサンか…………!?…………!!!ギニューたちも……ナッパのオッサンも……気を感じねえ……!!」

 

「まさか……!!そんな……!」

 

「…………っ!バ……バカヤロウが……っ!!」

 

シャロットとリリはナッパの死に悲しみながらも急いでベジータの所に向かって行った。



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兄様ならきっと

 

ナッパは自分を犠牲にしてシャロットとリリをフリーザの所に向かわせた。

その頃、ベジータは一人でフリーザと闘っていた。

 

「はあ……!はあ……!」

 

「ふん……今回の闘いでさらに腕をあげたようですね……!!それだけに惜しい……サイヤ人がわたしに忠誠を誓える従順な種族であったなら死ぬこともなかったでしょうにねえ……。」

 

「……ふざけるな……!きさまに忠誠を誓うくらいなら……死んだ方がマシだ……!!」

 

その時だった。

 

「「ベジータ(さん)!!」」

 

シャロットとリリが駆けつけた。

 

「やっと手が空いたようだな。待たせやがって……!!」

 

「……ベジータ……!ナッパのオッサンは……。」

 

「……わかっている……だが……今は闘いに集中しろ……!!」

 

ベジータも一瞬落ち込んだような表情を見せたがすぐさま切り替える。

 

「……まさかギニュー特戦隊がたかがサイヤ人に後れを取るとは……。」

 

「……へっ「たかが」だと?いつまでもそうやって余裕でいられると思うなよ……!オレやシャロットの戦闘力は限界を超えてまだまだ強さを増している……そしてリリにも凄まじい潜在パワーが眠っているはずだ。」

 

「ふん、くだらない話ですね。」

 

「オレ達は伝説の戦士……『超サイヤ人』になりつつあるんだ!!」

 

「……よくそんな大ボラが吹けますね……超サイヤ人などと……いちいちカンに障る野郎だあっ!!!」

 

フリーザは激昂しシャロット達に襲いかかる。

 

「かあああっ!!!」

 

ベジータはフリーザの突進を両手でがっちりと防いだ。

 

「なに!?」

 

「オレだけじゃないぞ!!」

 

「!!」

 

ベジータが合図を出すとリリとシャロットも同時に攻撃をフリーザに仕掛ける。

 

「「はああああっ!!!」」

 

3人の連携により一時的にフリーザの攻撃を凌いだ。

 

「……っ!!」

 

「……ッチ……!!」

 

だがそれでもフリーザは本気を出しているようには見えなかった。

 

「……なるほど。まんざらでたらめばかりではなさそうですね……。」

 

「ふん、様子見とは余裕だな……!さっさと変身でもして正体を見せたらどうだ!!」

 

「おや、よく私が変身することを知ってましたね。」

 

「へ、変身……!?」

 

「まさか……!」

 

だがシャロットとリリはフリーザが変身することを知らなかった。

 

「いいだろう!そこまで死にたいのなら見せてやる!!このフリーザの変身……!!絶望的な力の差をな!!!」

 

するとフリーザの気が一気に高まった。

 

「ほああああああああ……!!!かああーーーーーっ!!!!」

 

するとフリーザの戦闘服は粉々に砕け、体格も先程とは比べ物にならないほど大きくなり声もドスのきいた低い声に変わった。

 

「ぬ……う……!!これが……フリーザの……変身……!!ま、まさか……こんなことが……!!」

 

「さっきまでとは……まるで別人です……!!」

 

「ぐっ……!!すげえ気の上がりようだ……!これが……!!」

 

「……その通り……!これがお待ちかねの……オレの変身した姿だあっ!!」

 

「なっ!?」

 

それと同時にフリーザは既に攻撃を始めており、ベジータを容赦なく殴りつけた。

 

「があっ……!?」

 

「なっ……!?ベジータァっ!!!」

 

「な、なんてパワー……!!」

 

ベジータは吹き飛び、なんとか全身でブレーキをかけながら勢いを殺す。

 

「おいおい……たった一撃でそのザマか……悪かったな。なにしろ力がありあまっているんだ。ちょっとやりすぎてしまったな……。」

 

「……っ!て……てめえ……っ!!」

 

「さて……せっかくこの姿になったんだ。もう一匹のほうはすぐに壊れんようじっくり遊ぶとするか……!」

 

「っ……!!」

 

フリーザはターゲットをリリに絞った。

リリはフリーザのあまりの迫力に押され、その場で動けなくなってしまった。

 

「……ナメるなよ……!!フリーザァーッ!!!」

 

シャロットはなんとかリリから注意を逸らそうとし食い止めようとした。

しかしそれでもまったく歯が立たず一方的に攻撃されるばかりであった。

 

「はあ……!はあ……!!」

 

「兄様……申し訳ありません……!私ばかり守ってもらってしまい……!」

 

「はぁ……はあ……気にすんな!今のうちに呼吸を整えろ!」

 

「……ほお……こいつは驚いたな……意外と頑張るじゃあないか……これなら……もう少し力をこめても……よさそうだっ!!」

 

フリーザは攻撃を少し強めに上げ、再びシャロットをいたぶる。

 

「がああっ……!!!」

 

「……くくく……この程度でダメージを受けるんじゃないぞ……お楽しみはこれからなんだからな……そおれっ!!もう一発だあっ!!」

 

「………っ……!!!」

 

フリーザが追撃しようとした時、

 

「ギャリック砲っ!!!」

 

「ぬあああっ!?」

 

ベジータのギャリック砲がフリーザに命中した。

 

「く……な……にぃ……!?」

 

「ベジータ……!な……なぜだ……!?きさまは少なくとも相当の重症だったはずだ……!!」

 

「……そうかっ!仙豆だ!!!」

 

「ベジータさん……!よかった……!」

 

「へっ……地球にも便利なものがあったもんだ……かあああーーっ!!!」

 

ベジータは死の淵から回復したため、戦闘力も大幅に上昇した。

 

「……オレはまたひとつ死を乗り越え……戦闘力を増した……!!もうきさまに後れはとらんぞ!!」

 

「…………ふっふっふ……!」

 

だがこの状況でもフリーザは笑っていた。

 

「何がおかしい……!?」

 

「悪かったなベジータ……きさまをなめていた……だがこのままきさまに調子づかれるのもシャクなんでな……実力を見せることにしたぞ……!!」

 

「……なん……っ!?」

 

「い、今のが全力なんじゃ……!?」

 

「……くっ……ははははは!!まさかフリーザサマともあろう者がそんなハッタリを言うとはな!!」

 

ベジータは冗談だと思っていたが、シャロットとリリはこれがハッタリではないことを感じ取っていた。

 

「ベジータさん!!フリーザはまだ……何かを隠してます!」

 

「リリの言う通りだ!やべえぞベジータ!!!」

 

「ふん……相変わらず勘だけはいいなシャロット……その通り!このフリーザはまだ変身を残しているのだ……!!」

 

「なんだと……!?」

 

「かあああ……!!!」

 

フリーザが再び気を溜める。

 

「はああああっ!!!」

 

するとフリーザの頭部が異様に伸び、エイリアンのような見た目に変化した。

 

「ふうっ……。」

 

「そ……そんな……!!」

 

「ふっふっふ……!光栄に思いなさい……この変身まで見せるのはあなた達が初めてですよ……!」

 

「な……なんてバカでかい気だ……!?」

 

「こんな怪物が……存在していたなんて……!」

 

「きえええっ!!!」

 

フリーザは指から小さな気弾を連発してシャロットに放った。

 

「ぐあああっ!!!」

 

「チッ……!!くたばりやがれえっ!!」

 

「シャドウ・スプリット!嘆鎌!!」

 

ベジータとリリもそれに応戦する。

 

だが……

 

「……ふふっ……危ない危ない……。」

 

フリーザはその攻撃を恐ろしく速いスピードで全て回避した。

 

「さ……さっきより速え……!」

 

「くそったれ……!ヤツとの実力差が開き始めた……。」

 

「はぁ……はあ……!」

 

(オレはまだいい……だがシャロットとリリの体力はもう限界に近い……!!仙豆という豆はあと一つ……ヤツに食らいつくには……もう一度オレが死を乗り越え戦闘力をあげるしかない……か……!)

 

「ほう……まだ何か策を隠してるようですね……!」

 

「……ですが……それを待つほどわたくしはお人よしでは……ありませんよっ!」

 

「がっ!!?」

 

フリーザは既に重症のシャロットにトドメとばかりに閃光のような気弾を放った。

 

「……シャロット!!」

 

「兄様!!!」

 

「貴様もだベジータ!!」

 

「ぐあああっ!!!」

 

フリーザはすぐさまベジータに気弾を放った。

 

吹き飛ばされたベジータはリリの前に横たわる。

 

「ぐっ……くそ……!!」

 

シャロットはフリーザの攻撃で気を失っており、状況は絶望的だった。

 

「まずは死にかけのシャロットから消して差し上げますよ……ほっほっほ……!」

 

フリーザは再びシャロットにトドメを刺そうとしていた。

するとベジータが横になりながらリリに話しかけた。

 

「くっ……リリ……!この仙豆を……シャロットに……やってくれ……頼む……!!」

 

「べ、ベジータさん……!!」

 

自分で仙豆を使おうとしていたベジータがシャロットに渡すためにリリに手渡した。

 

「……っ!!!」

 

リリは仙豆を持って倒れてるシャロットの所に走った。

だが……

 

「うろちょろと……鬱陶しいヤツめ!」

 

「ぅう…………っ!!!」

 

「リリ……!!」

 

フリーザはシャロットに駆け寄るリリの足を容赦なく撃ち抜いた。

 

「また何かくだらぬ策を思いついたんでしょうが……無駄ですよ。まずはあなたから殺してしまいましょうか。」

 

「かっ……く……ぅ……!!」

 

フリーザはそのままリリの腹部を撃ち抜く。だが……

 

「うぅ……う……兄……様……!!!」

 

リリは大量に血を流しながらも這いつくばってでもシャロットの所に向かう。

だがベジータはその姿を見て声をあげた。

 

「もういい。!!リリ!!そいつはお前が使え!!このままじゃ……死ぬぞ!!」

 

ベジータらしくない発言だったかも知れない。だが、リリはベジータの言葉に従おうとはせず、ひたすらシャロットの所まで這っていった。

そして……

 

「すい、ません……兄様……!私……には……これしか……兄様の役に立てません……!申し訳…………ありません……!絶対に……勝って……兄……さ……。」

 

意識が朦朧とする中、リリは最後の執念で仙豆をシャロットの口にギリギリ押し込んだ。そして、リリは動かなくなった。

 

「……やっとくたばったか。」

 

フリーザもリリの最後の姿を見てニヤリと笑った。

 

「この……大バカ野郎が…………!くそっ……リリ……!!」

 

ベジータもリリが目の前で死に、血がにじむくらいに拳を握りしめる。

 

カリッ……

 

シャロットが仙豆を噛み、飲み込む。

 

「…………リリ……!オレのために……すまねぇ……!!」

 

シャロットは起き上がるとすぐさまフリーザを睨みつける。

 

「また傷を治しましたか……妙な小細工を……!その女が最後に余計なことを……!だが……無駄死にだったな。」

 

「……傷が治っただけじゃあない……!きさまも知っているはずだ!!死を乗り越え戦闘力をあげたサイヤ人はこれで二人……リリの死は無駄なんかではない!!勝負はこれからだあっ!!」

 

「フリーザ……!!リリの……いや、妹の仇だ……てめぇは絶対ぶっ飛ばす……!!!!」

 

 




今更だけどユリシスのフルネーム知ってる人います?画像一覧にしか名前乗せてないから多分だれも知らない()


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※ネタバレ注意 登場人物紹介

※前回の続きではありません


シャロットチーム

 

・シャロット

 

無事にラディッツを倒し、ブルマを救うためにフリーザ軍に潜入。ナッパの活躍もあり特戦隊をも倒し、フリーザとの最終決戦にベジータ、シャロット、リリと共に挑む。

 

 

・ブルマ(幼女期)

 

突如ターレスに連れ去られ謎の研究の手伝いをさせられていた。シャロット達に助けてもらう予定だったが、ユリシスがブルマが気絶してるところを見つけて助けてくれたらしい(?)

 

・ユリシス

 

単独でフリーザ軍の宇宙船に堂々と侵入する。かなり情緒がおかしく、次々とフリーザ軍の兵士を倒していった。悟空にフリーザ軍を壊滅させたことを疑われたが、悟空の記憶の一部を消失させ忘れさせている。この悟空は身勝手の極意の「兆」に任意になる事ができる時代の悟空であり、ユリシスと実際闘ったらどうなるのか気になるところではある。また最初の方とは明らかに性格が変わっており、本編世界とは違い悪い方向に記憶が戻りつつあるのかもしれない。

 

・ラビリスタ

 

シャロットの安全が優先なため、危険な行動はさせないように悟空に釘をさしていたが普通に約束を破られた。

 

 

・ナッパ

 

相変わらずうるさいオッサンだがシャロットとリリをベジータの下に行かせるために一人でギニュー特戦隊と闘った。最後に師匠としての意地を見せて散っていった。

 

・ベジータ

 

フリーザを倒すためにシャロット、リリと手を組んだ。以前までは冷徹なサイヤ人という印象だったが、シャロット達の影響を受けたのかナッパとリリの死を悲しんでいた。

 

 

・リリ

 

プリコネ本編第3部に登場する【アルター・メイデン】のリーダー。気づいたらカオスワールドで倒れており、襲われているところをシャロットに助けてもらった。それからはシャロットのことを『兄様』と呼び慕っている。フリーザとの最終決戦でシャロットに仙豆を渡し死亡した。

 

・ユウキ(再構築前)

 

ラディッツ戦で共に闘った。一人でコッコロとブラックを探しに旅に出た。その程度の戦闘力で歩き回って大丈夫だろうか。

 

 

 

ペコリーヌチーム

 

・ペコリーヌ

 

シャロット達と修行を1回した。現在何をしてるのかは不明。

 

・レイ

 

現在何をしてるのかは不明。

 

 

キャルチーム

 

・キャル

 

ブラックを探している。未来トランクス編のブラックと会ったら終わりだが大丈夫だろうか。

 

・チチ

 

少年編の悟空を探している。同じく未来トランクス編のブラックと会ったら終わり。

 

・シェフィ

 

兄を殺した紅き仮面の男を探している。悪いことは言わんからやめとけ。

 

 

単独行動者

 

 

・赤衣のサイヤ人

 

未だに多くの時代のサイヤ人を殺しまくっているらしい。ただ絶対に手をだしてはいけない人物がいるためあまり暴れ回ってると彼女のターゲットの対象になりかねないので注意が必要。

 

・バーダック

 

サイヤ人を皆殺しにしている赤衣のサイヤ人を探している。

 

 

・カリフラ

 

ケールを探している。

 

 

シャルルチーム(?)

 

 

・シャルル(未来)

 

現在何をしてるのかは分からないがしょっちゅう闘いに駆り出されているらしい。ただブラックとキャルを探してるだけなのに色々な闘いに巻き込まれているのはかなりかわいそう。この前の闘いは相当やばかったらしく、戻ってから1日は筋肉痛で動けなかったらしい。本人曰く「あんな脳筋な人たちとは二度と闘いたくない」と話していた。

 

 

・ミソラ

 

シャルルと行動を共にしている。移動してる時でも急にシャルルがどこかに転移させられて闘わせられてるので必然的に一人になる事が多い。あと一人くらいは仲間が欲しいらしい。全く何を企んでいるのかは分からないがこの前は筋肉痛で動けなくなったシャルルにあんな事やこんな事をしてたらしい。



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伝説の戦士『超サイヤ人』

リリは自分の身を犠牲にしシャロットを仙豆で回復させた。

 

「……傷が治っただけじゃないあない……!きさまも知っているはずだ!!死を乗り越え戦闘力を上げたサイヤ人がこれで二人……!!勝負はこれからだあっ!!」

 

ベジータとシャロットは二人がかりでフリーザに攻撃をはなった。

 

「……ぬう……!!」

 

さすがのフリーザもこれには少々ダメージを受け防御に徹していた。

 

「……見える……!さっきまでワケのわかんなかったフリーザの動きが……!」

 

「よーし……いいぞ……!こっちに運が向いてきやがった……!」

 

「まったく……サイヤ人というのは厄介な種族ですね……!」

 

「ふん……!今更サイヤ人の特性に恐れをなしたか……?だがもう遅いぞフリーザ!!これできさまの全力の姿にも食らいつける……!!オレたちをなめるなよっ!!」

 

「……全力……?」

 

するとフリーザは不敵な笑みを浮かべた。

 

「……!?」

 

「わたくしがいつこの姿が『全力』だなんて言いました?」

 

「……な……にっ!?」

 

「わたくしの変身はあと1回……残っています……。」

 

フリーザはなんとまだ変身を隠していた。

 

「な……なんだと……!?んな……バカな……!!!」

 

「こ……これ以上……さらに戦闘力が……!?」

 

「これはここまでわたくしを楽しませてくれたお礼です……ご覧にいれましょう!!わたくしの最後の変身……わたくしの真の姿を!!!」

 

フリーザの気が爆発的に膨れ上がった。

先程までの見た目とは違い逆に邪魔なものがなくなりスッキリとした見た目になっていた。

 

「……バ……バケモンが……!!」

 

「く……くそったれ……!!オレたちは……こんなヤツに勝つ気でいたのか……!!ナッパやリリは……何のために……!!クソォ……ッ!!!」

 

「……ふっ……史上最強の超サイヤ人……なんてバカな伝説を信じてはいなかったけど……ボクをこの姿にまでさせたんだ……満更ただの伝説というわけでもなかったのかもね……やはりサイヤ人は危険だ……一匹残らず滅ぼしておかないとね……。」

 

「……………どうやらオレたちの考えは相当に甘かったらしい……!!」

 

「……ベジータ……?」

 

「……オレたちの命運は尽きた……!」

 

あのベジータでさえ絶望に染まり闘う気力をなくしていた。

 

「さて……せっかくこの姿になったんだ……少しは楽しませてくれよ?サイヤ人。」

 

「くっ……!ベジータ!!やべえぞ……!!」

 

「…………。」

 

「……おい!ベジータ!、聞いてんのかっ!!」

 

ベジータは戦意を消失していた。

 

「……やれやれ……完全に闘う気を失ってしまったか……ま、ある意味利口だね……下等なサルでもさすがは王子……といったところかな?ふふ……。」

 

「……っ……てめえ……!!」

 

「さて……それじゃあ諦めの悪いほうの小ザルにはボクからの慈悲をあげようか……。」

 

「……!!」

 

「闘って死ぬのがお望みだろう?……存分に闘って死ね……!」

 

「…………お、終わりだ……。」

 

「……さあ、サイヤ人は闘いが大好きなんだろう?うってこいよ……。」

 

「……っ……!!…………く……く……くそおおおーっ!!!!」

 

シャロットはがむしゃらにフリーザに突撃し、精一杯の攻撃を放った。

 

だが、

 

「き……効いて……ねえ……っ……!」

 

「…………どうした?攻撃してこないのか?」

 

「……!……なんっ……!」

 

「それとも……さっきのが攻撃のつもりだったのか?ククッ……!!」

 

「……くそ……!」

 

「残念……実力に差がつきすぎてしまったようだね。フフフッ。」

 

「……てめえぇっ!!!!」

 

フリーザに煽られたシャロットが再び殴り掛かるもダメージは見受けられない。

 

「……はあ……っ……はあっ……!」

 

「さあ?どうする?シャロット……もはや闘いにすらならないぞ?」

 

「……シャロット……。」

 

ベジータはシャロットが一人でフリーザに立ち向かう姿を黙って見ていた。

 

「闘いにならねえ……だと……!?ざけんなよ……!!勝手に闘いが終わった気になってんじゃねえ!!オレはまだ諦めてねえぞ!!!」

 

「……!!!」

 

ベジータはシャロットのその言葉にハッとした。

 

「……やれやれ……最後くらいはその憎たらしいツラを絶望に染められると思ったのに……お前は最後まで物覚えの悪い低俗なサルのままだったな!!」

 

「ぐっ……!!」

 

「ナマイキだよ!!おまえはっ!!!」

 

フリーザはシャロットのトドメの攻撃を放った。だがその時だった。

 

「……シャロットォッ!!!」

 

「なっ……!!」

 

ベジータがシャロットを思い切り突き飛ばし、フリーザの攻撃をまともにくらった。

 

「がああーーっ……!!!」

 

フリーザの攻撃をまともに受けたベジータはその場に倒れた。

 

「……え……ベジータ……っ!!……ベジータァァァァァア!!!」

 

「……がふ……っ!!」

 

ベジータは口から大量に血を吐いた。

 

「……な……っ……なんで……なんでだ……!?あんたが……あんたがなんでオレをかばうんだよ!!?あんたは……あんたは……っ!そんなガラじゃねえでろうがっ!!!」

 

「……う……あ……はあ……き…きさまに……サイヤ人の……『誇り』を見た……。」

 

「……『誇り』……?」

 

だがフリーザはベジータのその言葉に笑っていた。

 

「……サイヤ人の誇りだって?ククッ……!笑わせるなよベジータ。ボクに尻尾を振って生きるしかなかったサイヤ人どものどこに誇りとやらがあったというんだ?」

 

「……ああ……そうだ…………オレの周りの……サイヤ人は……そ……そんなザマだった……だから…………だから滅びた…………いつからか…サイヤ人は『誇り』を捨て『闘い』をフリーザにこびる道具として使い始めた……オレは……それが…許せなかった…!サイヤ人の誇りは……そうじゃなかったはずなんだ……っ!」

 

「べ、ベジータ……!」

 

「……シャロット……きさまは……きっと…『そうなる前』のサイヤ人なんだ…………だ…だから…闘え……誇りのために……フリーザを倒せ…………サ…サイヤ人の……手…で…………。」

 

ベジータはそれをシャロットに伝え、息絶えた。

 

「……くたばったか……誇りとやらの話もだが最後の言葉もお笑いだったな……このガキにボクを倒せ……だって……?」

 

「……。」

 

「死の恐怖で頭がおかしくなったか?できるわけがないだろう……?あわれな最後だったな……クククッ……。」

 

「…………。」

 

シャロットは以前ベジータに言われた言葉を思い出していた。

 

『闘いにおいて手段で迷うな!……「滅ぶ側」になりたくなければな。そんなザマじゃ目的だろうが己の誇りだろうが……なにも守ることはできんぞ……!!』

 

このベジータの言葉がシャロットの胸には深く刻まれていた。

 

「……そうか…ベジータ……あんたはずっと闘ってたんだな……憎いフリーザの下についてでも……『誇り』を守るために……。」

 

「ふん…ボクにヘコヘコして出し抜こうとしてた…あのザマでか?…なんとも安い誇りだな……。」

 

「…………黙れ……!」

 

「所詮きさまらサイヤ人の誇りなんてそんなもんだ。あの女もこんなくだらんことのために死ぬこともなかっただろうに。ククッ……。」

 

「…黙れ……っ!!」

 

「くだらない妄想に浸ってないで……自分の身を心配したらどうだ……?」

 

そして、シャロットの中で何かが切れた。

 

「黙れえええっ!!!」

 

シャロットの怒りと共に湧き上がったのは金色に輝くオーラだった。黒かった髪は金色に逆立ち、尻尾も金色に変化した。

 

「な……にぃ!?」

 

突然のシャロットの変化にフリーザは驚かざるをえなかった。

 

「てめぇに……オレたちサイヤ人の……リリの……何が分かるってんだ!!」

 

「な……なんだ!その姿は…!?サイヤ人は大猿にしか変わらんはず…ま……ま……まさか……!!きさま……!!」

 

「……てめえはココでオレが滅ぼす……!!リリの兄として……そしてサイヤ人の……オレの手でっ……!ベジータたちの……!サイヤ人の誇りも!!取り戻してやるっ!!!」

 

「ふっ…ふざけるな…!きさまのようなサルに……も……もし本当にきさまが……あの…!超サイヤ人であったとしてもだ……!!サイヤ人ごときに…!!オレが負けるかあっ!!!」

 

「サイヤ人を…ナメるなっ!!フリーザァーーーッ!!!」

 

シャロットがフリーザに向かって飛びかかり、激闘が始まった。

 

「はあああああーーーっ!!」

 

「きさまごときに……!!きさまなんぞに……!このオレが負けるかっ!はあああああああ……!!」

 

フリーザはシャロットに向かって渾身のエネルギー波を放った。

 

「……っ!!」

 

だが、シャロットはそれを避けることすらしなかった。

 

「なっ……!!」

 

「……フリーザァァァァアッ!!」

 

シャロットはフリーザの気弾を真正面から突破しそのまま顔面を殴り飛ばした。

 

「ぐああっ……!!きさまぁぁっ!!なめるなあぁあああっ!!!」

 

フリーザは巨大な気弾をシャロットめがけて放った。

 

「きさまごときが!!このオレを倒せると思うなぁぁあああーーっ!!」

 

「はあああーーーーっ!!」

 

シャロットはフリーザの気弾を片腕でかき消した。

 

「ば……バカな…!こんなはずが……!き、きさまは……たかがサイヤ人のはずだ……!!」

 

「……たかがじゃねえ……!てめえも知ってるんだろ……?これが……この力が……!!超サイヤ人だあっ!!!」

 

「ぐ……ぐぎぎぎ……っ……っ……ふふふ……なるほど……どうやら本当に超サイヤ人らしい……そんなものはただのくだらないおとぎ話……仮に事実だとしてもその姿になる可能性があるのはベジータくらいだと思っていたよ……。」

 

「…………。」

 

「…………なぜだ……!なぜ……きさまなんだ!!!きさまのようなガキが超サイヤ人に……!ふ……っ…ざけるな……!!ふざけるなあっ!!!ちくしょおおおおーっ!!!」

 

「…………。」

 

「こんなことがあるはずかない!!これは悪夢かっ!!オレは……フリーザだぞ……!!!」

 

「泣き言言ってねえでかかってこい……!!てめえはもう……謝っても許さねえぞ!!!」

 

「ぐ……ぬううう……言っておくがオレは貴様なんかに殺されるくらいなら自らの死を選ぶぞ……。」

 

「……てめえがどうしたいかなんざ知ったこっちゃねえ……!オレが潰す……!!」

 

「……っ……ふ……ふふ……!!だがこのオレは死なん…………。」

 

そう言ってフリーザが取り出したのは神精樹の実だった。

 

「……!それは……。」

 

「……ふ……ふふ……本来なら……このフリーザがこんなものに頼るなどありえない話だ……!だが……!!敗北よりはいい……!!この場で敗れるよりはな!!!」

 

「…………。」

 

「……きさまが死ぬ前に一言褒めておいてやろう……素晴らしい強さだったぞ……超サイヤ人。だが……最後に勝つのはこのオレだ!!」

 

「……実でもなんでも食いやがれ……!てめえがどんだけ強くなろうが……さらに追い越してやる!!!」

 

「……な……なめやがって……!!!でかいクチをきくのもそこまでだ!!今すぐ黙らせてやるぞっ!!!」

 

フリーザはそう言って神精樹の実を齧った。

 

「後悔しやがれっ!!シャロットォォォオ!!!」

 

「……ケリをつけてやる……!!フリーザァアアッ!!!!」

 

シャロットとフリーザは激しい殴り合いに発展した。両者の拳がぶつかり合うたびに衝撃波が発生する。

 

「だありゃあああーーっ!!」

 

「はああああーーっ!!」

 

神精樹の実を食べたフリーザだったが、シャロットはそれに食らいつきながら闘いを繰り広げて行った。

 

「が…はっ!!……フーッ…!……フーッ…!!」

 

「はあっ……!はあっ……!!……っ……ざまあねえな……。」

 

「な……なにぃぃ……!!?」

 

「……変身とやらで無理やり気を上げた上にさらに実まで食ったんだ……てめえはもう身体がぶっ壊れて力が落ちてきてやがる……終わりだ……!フリーザ……!!」

 

「あ……うう……ぐ……!!お……っの……れええええ……!!ふ……ふざけるな……!!このオレが……オレが……!!オレが!!!宇宙一なんだああっ!!!!」

 

「ほざけ……!てめえより強いやつなんざこの時代にゴロゴロいるんだよ……!!」

 

「み……認めん……!!認めて……たまるかあああっ!!!」

 

「見苦しいんだよ……!とっととくたばりやがれえええっ!!!!」

 

シャロットは自分の力を全て込めたエネルギーをフリーザに放った。

 

「が……!?ああああああああぁぁぁーーーーっ!!!!!」

 

シャロットの攻撃によりフリーザは跡形もなく消え去った。

 

「…………っぐ……!…………う……。」

 

全ての力を使い果たしたシャロットは変身も解けて一気に地面に倒れる。

 

「……っ……はあっ……!はあっ……!……っく……!」

 

息を整えながらシャロットは静かに笑った。

 

「……勝った……!……へへ……勝ったぞ……!!……どうだ……っ!!!」

 

それと同時に涙が頬を伝った。

 

「サイヤ人の誇りってのを……ちゃんと取り戻したぞ……リリ!!!ベジータ!!!……ナッパ師匠ーーっ!!!」

 

 

 

 




やっとフリーザ編終わったああああああああぁぁぁ


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第十一章 人造人間編
ユリシスの謎


シャロットはフリーザとの闘いで超サイヤ人へと覚醒し、多くの犠牲を出しながらもフリーザを倒した。

シャロットは全ての力を使い果たし、その場で意識を失い倒れた。

あれからどのくらいの時間がたっただろうか。

 

「シャロット……!シャロットはどこ!??」

 

ブルマの声が聞こえる。

 

「……シャロット……!大丈夫か?」

 

悟空の声も聞こえた。

 

「…………う……ブルマ……孫悟空……!」

 

シャロットは何とか返事をした。

 

「ひでえ怪我だ……!!すぐにラビリスタのトコに連れてってやっからな……!」

 

「……オレは……フリーザに……………。」

 

「ああ、よくやったなシャロット。おめぇはフリーザに勝ったんだ……!」

 

「……っ!!」

 

「…………おめぇは本当によくやった。さ、帰るぞ……。」

 

「……シャロット……悟空さん……。」

 

「時間がねえ……いくぞシャロット。」

 

悟空はシャロットとブルマを連れてラビリスタの所に戻った。

シャロットは戻ったあと、傷が癒えるまで十分に休息をとった。そして後遺症もなくある程度の怪我が治りかけてきた。

 

「……シャロットくん。怪我は……。」

 

「心配いらねーよユリシス。」

 

そしてシャロットはラビリスタの下に向かった。

 

「……やあシャロット。傷は大丈夫かい?」

 

「……ああ。」

 

「さて……じゃあまずは任務の報告をしてもらおうかな。」

 

「あ……ああ!そうだったな……!!……っと……その前に……ラビリスタ……えっと……その……命令を無視してフリーザと闘っちまったのは……その……。」

 

「命令違反はもういいよ。君がフリーザの所で見たことをいろいろ話して欲しいな。」

 

「……ああ。実は…………。」

 

シャロットはこれまであった事を全て隠さずに全て話した。

 

「……どうやら色々とあったようですけどシャロットくんの話を聞く限り怪しいのはドクター・ゲロとかいう人物の存在ですね。」

 

「うん……フリーザは倒したらしいけどどうやら裏でまだ暗躍してる人物がいそうだ。」

 

「ちょ……ちょっと!それよりももっとベジータとナッパとリリの話題に触れなさいよ!!」

 

ブルマは泣きそうな顔をしながら話に割り込む。

 

「……ブルマさんにとってはショッキングなことかも知れませんが……。」

 

「誰が聞いてもショッキングに決まってるでしょうがっ!!」

 

「まあまあ、ベジータ達もバトルロイヤルに呼ばれた別の時代の戦士だから……本来この時代にいるべきでない者が消え正常な状態に近づいた……こればかりはそう前向きにとらえるしかないんだ。」

 

「そ、そんな……。」

 

「…………。」

 

「……残された人たちや当人にとっては悲しいことだけどこればかりは避けては通れないんだよ。」

 

「それは……そうなんだろうけど……つらいものはつらいわよっ!!あんたたち血も涙もないわね!!!」

 

「…………っ。」

 

ブルマはそう訴えるが勿論つらい思いをしているのはシャロットもだ。目の前で師匠と妹が殺されたため心に残るものはあるだろう。

 

「……この際だから言っておくよ。君たち『別時代の者』は死ぬか……『黒幕』を見つけ時空混乱を解決するか……恐らくそのどちらかでしか元の時代には帰れないよ。」

 

「うう……薄々そんな気はしてたけどお……。」

 

「ふん!トーゼン!『黒幕』とやらをぶっとばして元の時代に帰ってやるさ!!」

 

「……シャロットくんと私はその前に記憶を取り戻さないと元の時代に帰っても苦労しちゃうんじゃ……?」

 

「……記憶か……。まあどうせ考えてもわかんねえんだ……今はそれよりも……孫悟空!!」

 

「……おっ?やるかっ!?」

 

「ああ!やるぜっ!!」

 

「……なに?なに?」

 

「……試し合いかな?」

 

シャロットは悟空と組手をしたがっていた。

 

「せっかく超サイヤ人になったんだ!!今日こそ一発かましてやるっ!!」

 

「よおし!おめえの力見せてみろ!シャロット!!」

 

二人はそう言って飛んでいこうとしていた。

 

「全くサイヤ人ってのは……人の話を最後まで聞かないなあ……。」

 

「ほんっとに!!悟空さんもシャロットも!!あの二人は闘いばっかりね!!」

 

「シャロットくんが楽しそうなら……まあいいんじゃないですか?」

 

すると……

 

「あ、おいユリシス!お前に教えてもらった気の使い方上手くなってるか見せてえから一緒に来いよ!」

 

「え?私もですか……?」

 

「ほら行くぞ!」

 

シャロットはユリシスの手を引っ張って駆け出した。

 

 

とある草原にて

 

シャロットは新たに身につけた超サイヤ人の力を悟空を相手に試していた。

 

「……チッ……!まだてめえには届かねえか……!」

 

「でも……今回の闘いでまた強くなったなシャロット!!ユリシスもそう思うよな!」

 

「はい。以前よりシャロットくんの動きも洗練されていて間違いなく強くなってますね。」

 

「ああ!いい感じだ……?ん?ユリシス……俺が見てくれって言っといてあれなんだけどよ……お前……オレの動きが分かるのか……?」

 

「……?分かりますよ。前に見た時よりも現在は53.92倍ほど強くなってますね。超サイヤ人というのになればもっとでしょうか。スピードも以前より遥かに増していて素晴らしい成長速度だと思いますけど不満ですか?」

 

「いや……不満はねえんだけどよ……。」

 

不満は確かにないがシャロットは少し不気味に感じた。

 

(……前から思ってたけどユリシスって普段から何考えてるか分からねえんだよな……いつも薄く笑ってて目の光もなんか見えねえんだよな……。たまに顔を赤くしたりしてっけどあれが素のユリシスかと言われたら微妙だしな……。)

 

そしてユリシスがなぜ自分の動きをこんなにも分析できているのか、何故『気』の使い方を知っていて自分に教えてくれたのか。気になることがいくつもあった。

 

「…………。」

 

悟空もユリシスについて気になることがいくつもあったが何かは思い出せないでいた。

 

「……どうしたんですか?おふたりとも黙り込んで。」

 

「いや、なんでもねえよ。それより……孫悟空!オレはまだ足りねえ!これから……めちゃくちゃ強えヤツらが現れるんだろ?オレはまだまだ強くなりてえ。」

 

「……なあに…心配いらねえさ。おめえが今回変身できるようになった超サイヤ人にもまだ先がある!」

 

「……なんだって…?」

 

「このまま修行続けてればおめえならきっとそこまでたどり着けるさ!」

 

「…ははは……!!そっか……!!!まだ先があんのか!!」

 

「……なんか嬉しそうだな。」

 

「トーゼンだ!まだまだオレは強くなれるんだろ?これから現れるヤツらもオレがぶっとばしてやる!!」

 

「おう!オラもおめえには期待してっからな!」

 

シャロットは悟空と新たな強敵に向けて特訓を始めた。

 

「……二人とも修行は程々にしてね?私は先に戻ってるよ?」

 

「「おう!!」」

 

ユリシスは組手をする悟空とシャロットをおいて一人で帰った。

 

「……なあ孫悟空。」

 

「なんだ?シャロット。」

 

シャロットはユリシスの姿が完全に見えなくなってから闘いの手を止めた。

 

「…ユリシスってよ、なんか不思議すぎねえか?」

 

「あ、ああ……オラもそう思う。ユリシスって強えんかな?もし強えなら闘ってみてえよな〜!」

 

「バカいうんじゃねえよ。ユリシスはブルマと同じで闘えねえだろ。でもオレたちの闘いが見えるってことは……目はいいんだろうけどよ。」

 

「そうか?オラなんか気になってきたぞ……今度隙を見て攻撃してみっかな〜。」

 

二人ともユリシスの正体が気になりすぎていた。

 

 

数日後

 

 

「よーし……!!今日こそ超サイヤ人の先ってのを見せてもらうぞ!孫悟空!!」

 

「へへ……まだまだおめえには見せらんねえな……!超サイヤ人の先が見たけりゃもっと修行してからかかってこいっ!!」

 

「……全く。毎日毎日修行ばっかでよく飽きないね君たち。」

 

「ホントにね〜……。」

 

「私は見てる分には面白いと思いますよ?」

 

ラビリスタ、ユリシス、ブルマはテーブルの上で飲み物を飲みながらシャロットと悟空の修行を眺めていた。

 

「……大分超サイヤ人の力に慣れてきたみたいだねシャロット。」

 

「ああ!これならいつでもどんな奴とでもやりあえるぜ!!」

 

「それは丁度いいね。今回の任務はズバリ……『究極の戦士』という者の正体を探るというものだ。」

 

「究極の……戦士…!!すっげぇ……なんだその強そうなのは!」

 

「ふふ、ラビリスタさんはシャロットくんのコンディションが整うまで待っててくれてたんですよ。」

 

「ラビリスタも結構過保護よね〜。」

 

「ちょ、ユリシスにブルマは……余計なこと言わなくていいよ!」

 

ラビリスタはシャロットの成長をみて頃合と見たようだ。

 

「これはブルマから聞いた情報だけど……ドクター・ゲロという人物がどうやら口にしていた言葉らしくてね。まあ心当たりのある人は少ないと思うけどそいつの情報を持っていそうなヤツを当たって欲しいんだ。」

 

「ド、ドクター・ゲロ?」

 

「そ、ドクター・ゲロはターレスというサイヤ人と手を組んでいたそうだけど、お互いに謎の死を遂げたらしいんだ。」

 

「ホントの話よ!私が捕まってるときに話してたんだから!ドクター・ゲロが私の目の前で殺されたの!」

 

「まじか……。」

 

「私が聞いた話だとドクター・ゲロはバトルロイヤル参加者の遺伝子を集めていたそうよ。」

 

「遺伝子か……。」

 

「つまりどこかに『遺伝子』を保管しておく場所がある……ってことだと思うの。でね、昔パパから……ドクター・ゲロの研究施設が北の都あたりの山にある……って聞いたことがあるの!」

 

「その施設っちゅうのはたしかもうぶっ壊れちまってなんも残ってねえんじゃなかったか?」

 

「本来の歴史でいくならそうだろうけど『今回のドクター・ゲロ』が同じ場所に施設を設ける可能性がある。どちらにせよ今アテになる情報はこれしかないからね。」

 

「だからシャロットの出番ってわけ!」

 

「…………。」

 

この時、シャロットは前に悟空と組手をしていた時に話していたことを思い出した。

 

『…ユリシスってよ、なんか不思議すぎねえか?』

 

『あ、ああ……オラもそう思う。ユリシスって強えんかな?もし強えなら闘ってみてえよな〜!』

 

『バカいうんじゃねえよ。ユリシスはブルマと同じで闘えねえだろ。でもオレたちの闘いが見えるってことは……目はいいんだろうけどよ。』

 

『そうか?オラなんか気になってきたぞ……今度隙を見て攻撃してみっかな〜。』

 

 

 

あの時悟空は冗談でこんなことを言ったのかもしれないがシャロットはそれが気になってしょうがなかった。

 

 

「………ユリシスも一緒に来いよ。」

 

「え?」

 

「ちょっとシャロット!ユリシスはあんた達と違って戦闘バカじゃないのよ!ユリシスは私と一緒にティータイムするんだから!」

 

「いや、でも……。」

 

「……いいよ、シャロットくん。一緒に行こうか。」

 

「え!?」

 

ユリシスはあっさりと承諾した。

 

「えー!?私とティータイムしてた方がずっと安全よ!?ねえユリシスってば!」

 

「大丈夫だよ。いざとなったらシャロットくんが守ってくれるし……ブルマさんも通信機越しにナビゲートしてくれるんでしょ?」

 

「ま、まあそれはそうだけど……。」

 

「よーし……そんじゃ行くぞユリシス!」

 

「うん。」

 

ユリシスはいつもと同じ少し含み笑いを浮かべた表情でシャロットと捜査に向かった。



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意外な再会

 

シャロットとユリシスは『究極の戦士』

の情報を探していた。

 

「なあユリシス。こっちの方をまっすぐ…でいいんだよな?」

 

「はい。ブルマさんが言ってるので間違いなと思います。」

 

『遠くに山が見えるでしょ?そのあたりのはずよ!』

 

ブルマも通信機越しにナビゲートしていた。

 

「……本当にそうか?」

 

「?どういうことですか?」

 

「この辺のどっかから鉄と油……それと血のニオイがする……!」

 

『えっ?まだ目的の場所まで距離はあると思うんだけど……。』

 

シャロットは気になるニオイがあったためこの辺りで一度降りた。

 

「この辺……でしょうか。」

 

「ああ……こっちだ!」

 

『……相変わらずよくきく鼻ね……。』

 

シャロットが向かった先にあったのはボロボロの研究施設のような所だった。

 

『……ホントにあった……!やるわね……シャロット……。』

 

「なるほど……流石のドクター・ゲロも同じ場所に研究施設を設けたりはしなかったようですね。」

 

すると……

 

「……なんだ……!?こりゃあ……!?」

 

「…………。」

 

『ど、どうしたのシャロット!なんかみつけたの!?』

 

「いや、見つけたわけじゃねえけど……ここに残ってるニオイ……!フリーザにベジータ……孫悟空……!?それだけじゃねえ……いろんなヤツのニオイがまじってやがる……!」

 

「……ドクター・ゲロの集めた遺伝子のニオイ……ってことかな。」

 

「やべえぞユリシス……イヤな感じだ……!!」

 

「…………うん。わかるよシャロットくん。」

 

『でも……設備の電源は落ちてる……もうここにはニオイ以外何も残ってないんじゃないかしら?』

 

「いえ、誰かいます。シャロットくん、気をつけてください。」

 

「えっ?」

 

ユリシスは何者かの気配を感じとった瞬間……

 

「ひょおおーっ!!」

 

シャロットの目の前に突然気弾が飛んできた。

 

「なっ……!?」

 

シャロットに気弾が当たる直前、

 

「シャロットくん、失礼しますね。」

 

グイッ

 

「うおっ!?」

 

ユリシスがシャロットの腕を引っ張りシャロットの位置をずらした。

 

「あ、あっぶねえ……!!誰だ!!」

 

『だ、大丈夫!?シャロット!!ユリシス!!』

 

「ああ……なんとかな……それよりも……誰だてめえら!」

 

シャロットとユリシスの前現れたのは以前フリーザ軍のスパイをしていた時にアプールが連れてきた感情の読めない丸々と太った人造人間だった。それも1人だけではなく複数人もいた。

 

「……排除対象……シャロット……発見……!!それに……データがないがお前も排除する。」

 

「チッ……!機械野郎……!!こんな所まで……!!上等だっ!!ユリシス!お前はとりあえず俺の後ろにいろ!」

 

「……うん。」

 

シャロットはユリシスの前に立ちながら複数の人造人間を相手にする。

 

「オラァッ!!吹き飛べ!!」

 

「っ!!」

 

「こいつら……中々強えな……。」

 

シャロットの攻撃を受け続けている人造人間はダメージはあるにしろなかなかのタフネスがあった。

 

「わたしはこれからもどんどん量産される……その度に機能をアップデートされてな。」

 

「な、なにい……!」

 

「お前たちを排除させてもらう。」

 

「!?」

 

すると一人の人造人間がシャロットの攻撃を掻い潜りユリシスの前まで突破されてしまった。

 

「しまった!!ユリシスーッ!!」

 

「……。」

 

だが……

 

「がががががが………がああああっ!!!!!」

 

突如その人造人間は苦しみだし、暫くすると内部から破裂して粉々になった。

 

「……ま、まただ!!あの時と同じだ……!!」

 

シャロットは以前にもこの人造人間が爆発した所をみていた。

 

「な、なんで急に……ってユリシス大丈夫か!?」

 

「はい。シャロットくんが守ってくれましたから。」

 

ユリシスはいつもと変わらぬ笑顔でシャロットにそう言った。

 

「そ、そうか……じゃあさっさとこいつらを片付けて……!」

 

と、シャロットが残りの人造人間を片付けようとした時、

 

「なに!?」

 

またしても気弾がシャロットに飛んできた。

 

「チッ…!!」

 

シャロットは今度はその攻撃を避けると気弾は片方の人造人間に当たり爆発した。

 

「あっぶね…!!今の攻撃…!どっから……!?」

 

「……データに該当なし……何者だ。」

 

人造人間も困惑していた。「」

 

「……ふむ…強いエネルギーを放っていたのは……青い服の方か…。」

 

そこに現れたのは暗黒魔界の王であるダーブラだった。

 

「……な、なにもんだ……!てめえ……!!!」

 

「……敵性と判断…シャロット達と同様に排除する……!!」

 

人造人間がダーブラを排除しようと動いた。

 

「……ふん貴様などに用はない……ペッ…!!」

 

するとダーブラは人造人間に唾を吐いた。

 

「……っ!?」

 

「うわあっ!?唾!?きったねえな!!」

 

「……ふふふ。」

 

だが唯の唾では無いことをユリシスは知っていた。

 

「シャロットくん。あの唾には絶対に当たらないようにしてください。」

 

「はあ?どういう事だ……?」

 

すると唾をつけられた人造人間の様子がおかしくなった。

 

「こ……これは…!?データにない技……!きさま……何者…なに……。な……ナナ…ナニ……モノ……ノノノノ……ノノノノ……オゴ……オ……オオ……!!」

 

人造人間はみるみると石化していき完全に石ころになってしまった。

 

「なっ……!?い、石に……!?」

 

ダーブラが人造人間を処理すると、シャロットに向かって歩いてきた。

 

「さてと……わたしが用があるのはお前だ……!」

 

「……なに……?」

 

『な、なんなのそいつ!シャロットに用って……?』

 

「……わかんねえ……!……けど……こいつと似たニオイをどっかで……。」

 

「……くくっ……かああーーっ!!」

 

「なに!?」

 

「……!」

 

ダーブラは突然シャロットに攻撃を放った。するとユリシスがそれに反応しシャロットの足を弾き、耐性を崩すことでそれを回避させた。

 

「っ……!!あっ……ぶねえ……!!こいつ……!いきなり……!!助かったぜユリシス……!」

 

「うん。助けられてよかった。」

 

シャロットはユリシスの手を掴んで立ち上がった。

 

「おいてめえ!!いきなりなにしやがんだっ!!」

 

「ほお、今のを避けたか。素晴らしい……思った通りよい身のこなしだ……さぞ強大な『キリ』を持っていることだろう……。」

 

「……は?てめえ……一体なにを……。」

 

「いただくぞ!!きさまのキリを!!」

 

ダーブラはそう言ってシャロットに襲いかかってきた。

 

「っ!!上等だこらあっ!!」

 

ダーブラはシャロットの攻撃をノーガードで受けながら強烈な攻撃を放っ つ。

 

「……うらあああっ……!!」

 

ダーブラは凄まじいパワーとタフネスでシャロットを圧倒していた。

 

「……ぬぐ……!!」

 

シャロットは無防備なダーブラに拳を叩き込むがダメージはほとんど通っていない。

 

『シ……シャロットが押してる……!?……そうよね……!!なんてったってフリーザを倒したんだもの!』

 

「いえ、シャロットくんの攻撃は通用してません。それに……妙な動きもしてます。」

 

ユリシスの目から見ればどちらが優勢なのか一目瞭然だった。

 

(くそ……!この野郎……!!手を抜いてやがる……!?本気を出したらフリーザどころじゃねえ……!何者なんだ……!?こいつ……!)

 

「ふふふ……気づいたか?これがバトルロイヤルを制するための知恵だ……。」

 

「!?」

 

「この時代……上には上がいる……それに気づかず不用心に強いパワーを放つ者が真っ先に狙われ脱落するのだ!!最後に勉強になったな!」

 

(…………くる!)

 

ユリシスは一足先に飛び出してシャロットを突き飛ばした。

 

その瞬間、

 

「ペッ……!!」

 

ダーブラの唾がユリシスの手首にかかった。

 

「ユリシス!?」

 

「……。」

 

「バカめ!こいつを庇うとは!もうじき石になるぞ!!」

 

ユリシスの手から徐々に石化が進行していく……と思われたが……。

 

「…………なるほど……。」

 

「なんだと!?」

 

なんとユリシスの石化は途中で止まり徐々に石化が解除されていく。

 

「あれ?治っちゃいましたね。」

 

「「!?」」

 

「もしかして……手加減でもしてくれたのでしょうか。」

 

「そ、そんなはずはない……今度こそ!!」

 

ダーブラがもう一度ユリシスに唾を吐こうとした時だった。

 

「そこまでだ!!!」

 

「!?」

 

「……よう!シャロット!ユリシス!まさかこんなところで再開するとはな!」

 

ここに駆けつけたのはザッハだった。

 

「ザッハさん?」

 

「ザ……ザッハ!?おまえ……!どうして!?」

 

「話は後だ!今はそれよりも……。」

 

「きさま……俺と同じ暗黒魔界の出身か……!」

 

ダーブラはザッハを見てそのような事を言った。

 

「同じ出身!?……そうか!だからこのツノ野郎のニオイ……ザッハと似てるのか!!」

 

「…………あいにくそいつはタダの勘違いだ……オレの故郷は既にない。」

 

「ふん……まあいい。何者かは知らんが貴様のキリも『足し』にしてやる!」

 

ダーブラは再びシャロット達に襲いかかった。

 

「くっ……!」

 

ザッハはダーブラの攻撃を受け流し続け、やはり本気で攻撃してきていない事に気づく。

 

「……見たところ……おまえの目的はオレ達を殺すことじゃなくて捕らえること……だな?だが……お前の魔術はオレがいる以上効かない……。この勝負、長丁場になるぞ……?根くらべといくか?」

 

「ふん……減らず口を……!だが……きさまらもなかなかよいキリの持ち主のようだな……。」

 

「……さっきからキリキリと……!なんなんだよっ!!てめえはっ!!!」

 

「……ふふ……はっはっはっは!!」

 

「……今度は笑い始めましたね……なんか気持ち悪いです……。」

 

「よかろう。きさまらはもう暫く生かしておいてやる……!!」

 

「……。」

 

「せいぜい強くなっておけ!この私に刈り取られる……その時までな!!」

 

ダーブラはそう言い残しこの場から去っていった。

 

「……消えましたね。」

 

「……ふう……!引いたか……このまま続けていたら危なかったかもな……。」

 

「ああ……一体なにもんだったんだ……

あいつは…………って!ザッハ!!久しぶりじゃねえか!!あれから少しは強くなったのか!?今まで何してたんだ!?それに……!!ええと…………!!あ〜くそっ!!いきなりすぎて言いたいことがまとまんねえ!もうちょっとゆっくり出てこいよ!!」

 

「……おいおい。落ち着けよ。相変わらず脳みそ筋肉なのは変わってないんだな……ははは!」

 

「う……!うるせえな!お前こそその憎まれ口は変わってねえだろうが……!」

 

「ふふっ……シャロットくん嬉しそうだね。ザッハさんにいつも会いたがってたもんね!」

 

「ははは!シャロットは寂しがりなのか?」

 

「おいユリシス!!そんなんじゃねえって……!!それで……なんでこんな所にいるんだよ?」

 

「……まあ、ドクター・ゲロがらみで色々な……。」

 

「お前もか?でもドクター・ゲロなら死んだらしいぞ?」

 

「厳密にはドクター・ゲロを探してるわけではないんだが……そうだな……そのあたりのはなしも含めて軽く情報交換でも……。」

 

するとザッハの持ってる通信機から女性の声が聞こえてきた。

 

『ザッハ!目標をみつけた!そこから東の小さな村だ!』

 

「わかった!位置情報をくれ!すぐに向かう!!」

 

そう言ってザッハは一度通信を切った。

 

「今のは……?」

 

「そうだな……説明と申し出が逆になるが……まずはオレに手を貸してくれ!」

 

「……よ、よくわかんねえけど……ああ!わかった!!」

 

「え、シャロットくん。ラビリスタさんからの任務はどうするの?」

 

「ザッハにはさっきのツノやろうとの闘いで借りができたからな!まず任務の前にそれを返す!!」

 

「……だそうだが……ユリシス。お前はどうする?」

 

「えっと……じゃあ私は先に戻ってこの事をラビリスタさんに報告しますね。」

 

「ああ!わかった!!」

 

「じゃ、シャロットを少し借りてくぞ!」

 

そう言ってザッハとシャロットは飛んで行った。

 

「…………手……汚いから洗おっと。」

 

ユリシスは一先ず近くの水場まで歩いていくことにした。



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二人の人造人間

※キャラ崩壊注意(特に最後)


無事にダーブラとの闘いを終え、シャロットはザッハへの借りを返すために任務の手伝いをするためにザッハと共に移動していた。

 

「さて……それじゃ色々説明してもらうぞザッハ。オレは何をしたらいいんだ?」

 

「ああ……!だがその前に……まずは謝罪をしないといけない。」

 

「謝罪?」

 

「……すまなかったな。お前がフリーザと闘っていることはわかっていたんだが……。」

 

「知ってたのかよ……?だったらお前も闘いに来ればよかったのによ……。」

 

「闘う気ではいたさ……ただあの大軍と正面きって闘うには相応の準備がいると思ってた……それをまさかお前が先走って大暴れするなんて思ってもみなかったぞ……!様子をうかがっていたオレたちは完全に出遅れたんだ……まったく……おまえの無鉄砲ぶりには困ったぜ。」

 

「……ぬぐ……!」

 

「……ま、結果的にオレたちが出る必要なくフリーザを倒してしまったんだから大したものだ。……だが、本題はここからだ。」

 

「その後オレたちはドクター・ゲロの残した痕跡を追っていたんだ。そしてさっきお前はドクター・ゲロが死んだと言っていたがそれは間違いだ。」

 

「なに!?」

 

「確かにお前たちの聞いたドクター・ゲロは死んだのかも知れないが……ドクター・ゲロは1人だけでは無い。どうやら複数のドクター・ゲロがいるらしいんだ。」

 

「なんだって!?」

 

「恐らく自分のコピーを何体も作っていたんだろうな。そして……そのドクター・ゲロは今『ある人造人間』を探してるようでな……こちらの調べではその『人造人間』の出方しだいで地球……いや宇宙全体に危険が及ぶ。」

 

「なんだと……!?」

 

ザッハから聞いた情報は自分たちでは知り得ない情報ばかりだった。

 

「オレたちとしてはドクター・ゲロより先にその『人造人間』と接触したい。」

 

「……なるほど……!それじゃあオレはその人造人間をぶっ飛ばせばいいんだな!」

 

「いや……まずはその人造人間とはたいわあを望みたい……お前はあくまでも何かあった時の保険だ。」

 

「……なんだそりゃ……つまんねえな……!」

 

『ねえザッハ?』

 

するとブルマが通信機越しに話しかける。

 

「……ん、ブルマか。挨拶が遅れたな。しばらくぶりだ。」

 

「ええ!それより……ザッハ。あんたさっきから『オレたち』って言ってるけど……。」

 

「ああ。オレはオレでこの時空混乱をどうにかしたくてな。同じ志をもつ仲間を集めて色々調べ回ったんだ……!」

 

「同じ志の仲間って……そらはさっきの通信の女か?」

 

「ああそうだ……『キャル』。」

 

ザッハは通信機を取り出してそのキャルという人物に呼びかけた。

 

『はじめまして。あんたがシャロットね?あんたの事はザッハから聞いてるわよ!』

 

「こ……こいつがザッハの新しい仲間……?……強いのか?」

 

「第一声がそれか……!キャルは戦闘がメインじゃない……そっちのブルマと似たような役割だ。あと一人『マイ』というのもいるが今度紹介しよう。それに……戦闘に関しては別の仲間がいるんだが……お前そいつの名前を聞けばきっと驚くぞ?」

 

「……なに?なんだよ?オレの知り合いか?」

 

「ふふ……どうせそいつとも街に着いたら合流するだろう。楽しみにしておけ。」

 

「……!?いや……この先にある街……だったよな?そこからどうもイヤなニオイがしてやがる……!!」

 

『なんですって!?』

 

『……におい?シャロットはそれで何かが分かるの?』

 

「まあ……キャルのリアクションは至極真っ当だな……だがシャロットの鼻は信用できる……!街で何か起きてるんだな……!」

 

「ああ……多分な……!!」

 

「よし、急ぐぞ!!」

 

 

それから数分後にシャロット達が街に着くと、そこには異様な光景が広がっていた。

 

「な……なんだこれ……!」

 

「これは……!!」

 

街の至る所に服だけが散乱していた。

 

「ど……どうなってんだよ……!人はいねえのに服だけ散らばってやがる……!!」

 

『き……気味悪いわね。なんなのよ……。』

 

「……恐らく『人が吸収された後』だ。キャルたちから聞いた情報と一致する。」

 

『吸収……ってどーいうことっ!?』

 

「ドクター・ゲロが造った人造人間の中に特殊なタイプがいるらしい。そいつは人の生命エキスを吸収して自分のエネルギーにするんだ……!」

 

「人を食うのか……!!なんて野郎だ……!!」

 

「街の異変の原因はその人造人間の仕業とみて間違いないな……!」

 

「……そいつがお前の探してる人造人間か?」

 

「いいや……違う。街の住人を吸収した人造人間とオレが探してるじんそは別物だ。」

 

「別物?……ってことは……。」

 

「この街には2種類の人造人間が潜んでいる……!!」

 

その時だった。

 

「うわああああ!!!」

 

「「!?」」

 

何者かが叫びながらこちらに向かってきていた。必死の形相で向かってくるのはドドリアだった。

 

「ドドリア!?てめえ……爆発したはずじゃ!?」

 

「な……なな……!なんだあ?てめえ!?気安く話しかけんじゃねえ!」

 

だがドドリアはシャロットの事を知らないらしい。

 

「なんだ……別の時代のやつかよ。びっくりしたじゃねえか!」

 

「い……いいからそこをどけーーっ!!やつが来る!!」

 

「!?」

 

ドドリアはシャロットの事を見向きもしないで走り去って行った。

 

「おい!待てって!話を……。」

 

「なんだ……さっきのやつらお前が追い払っちゃったの?」

 

「獲物の横取りはいただけないがまあいいさ……こいつらと闘うほうが楽しそうだ。」

 

「だ……誰だ!?」

 

シャロットがドドリアを追おうとした時、二人の人物が現れた。

ザッハはこの二人をみて声をあげた。

 

「人造人間17号……18号!!見つけたぞ!」

 

「……ほう?知っているのか。オレたちも少しは有名になったか?」

 

「アンタがいろんなところでケンカ売ってるからじゃない?」

 

「……ザッハ!こいつらがお前の探していたほうの人造人間なのか?というか二人だったのかよ!」

 

「そうだ。そしてさっき話した別の人造人間もこの街にいる……マズイ状況だ……! 17号! 18号!単刀直入に言う!至急この街から離れてくれ!」

 

ザッハは人造人間17号と18号にこの街から離れるように警告した。

 

「いきなり街から出てけだって?随分な物言いだね。」

 

「すまない!だが緊急事態だ……!ここにはお前たちを狙う者がいて危険なんだ!!」

 

「へえ、そいつはいいな!楽しめそうじゃないか。」

 

だが人造人間たちはザッハのいう警告をかなり軽視していた。

 

「なっ……!?どうしてそうなるんだ……!?」

 

「まあそいつとやるのはあとの楽しみとして……お前らバトルロイヤル参加者だろ?ここで闘わない手はないよな!」

 

「待て!そんなことをしている場合では……!」

 

「いや、オレが相手になってやる!」

 

「シャロット!?だが……!」

 

「こいつらは1回闘わねえと気がすまねえ見てえだからな……それに俺もてめぇらと闘いたかったところだ!」

 

「よく分かってるじゃないか。じゃ、早速いくぞ。」

 

「!?」

 

すると17号と18号は同時に飛び出してシャロットに連携攻撃を仕掛けた。

17号と18号のスピードはシャロットの予想を超えていた。

 

「速え……!!」

 

「シャロット!!そいつらの連携に気をつけろ!!」

 

「わ……わかってる!!」

 

「そらそら!!もっと楽しませてくれよ!」

 

「ここの所退屈してたんだ。ガッカリさせないでくれよ?」

 

(この動き……パワーも半端ねえ……!!)

 

17号と18号は見た目とは裏腹の鋭い攻撃を繰り出してくる。防御に徹しているシャロットだったがこのままでは追い詰められそうだった。

 

「チッ……オラァ!!」

 

シャロットは連携の合間を縫ってアッパーを放った。それは惜しくもとらえることはできなかったが相手との距離を遠ざけるのには最適だった。

 

「へえ……案外やるね。人造人間でもないのにさ。」

 

「ああ。この時代にきてよかった。元の時代で孫悟空を探してた時よりバトルロイヤルしてる今の方がずっと面白い……!」

 

(……元の時代で孫悟空を探していた……?つまりこいつらは……『孫悟空が病死している時代』の出身ではない……ということか。)

 

ザッハは17号の発言から察するにそのようなことを考えていた。

 

「てめえらもなかなかやるじゃねえか!!こいつぁ楽しめそうだぜ!!」

 

「……ってちょっと待てシャロット!!17号たちのペースに付き合うな!」

 

「つっても口で言って従うヤツらじゃねえよ!力ずくしかねえだろ!?」

 

「しかし……!」

 

ザッハがどうしようかと考えていた時だった。

 

「見つけたぞ!17号……18号……!!」

 

 

ドクター・ゲロが17号と18号を追ってきていた。

 

 

 

一方、シャルル達は……。

 

 

「シャルルさーん。お身体大丈夫ですか?」

 

「も……ももも……問題ありません……ただ……こ、腰が……!」

 

シャルルは杖をつきながらプルプルと立ち上がった。先日の闘いで筋肉痛になり、その痛みが完全になくならないうちにまた何処かの闘いに参加させられたらしい。闘いの終盤、シャルルの全力の蹴りが当たる前に相手が転移させられてしまい、シャルルはその勢いのまま地面にすっ転び腰をやってしまったようだ。

 

「もう、それ問題なくないですよー。というか……いつも私をおいてそんなプルプルになるまで何してるんです?1人だけ行っちゃうなんて私悲しいですよ?」

 

「……私だって行きたくて行ってる訳じゃないんですよ……。ただ……出会う人の強さが最近上がってきてまして……。」

 

「???」

 

ミソラにはシャルルの言ってる言葉の意味はわからないだろう。

 

「もう、シャルルさん。早くここに座ってください。そんな状態じゃなにも出来ないんですから暫くは安静です。湿布貼ってあげますから。」

 

「し、湿布は自分で貼ります!!ミソラちゃんに貼らせるとロクな事に……!」

 

「そーれ☆」バシッ

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!」

 

ミソラが容赦なくシャルルの腰に湿布を貼った。

 

「ミ……ソラ……ちゃん!!もうちょっと……優しく……貼って……!」

 

「ワガママ言わないでください☆この方が早く治りますので……ん?シャルルさん?」

 

「え?ま、まさか……この光………!!!」

 

突如シャルルの身体が光り出した。そう、次なる闘いの合図である。

 

「無理無理無理無理無理無理無理!!!!!!絶対無理!!!今度こそ死んじゃうからあああ!!!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!なんで私だけこんな目にいいいい!!!!!」

 

無慈悲にもシャルルは次の闘いの場に転移された。

 

「あらら……シャルルさん可哀想。また私一人ぼっちですし……。」

 

相変わらず可哀想な目にあってるシャルルであった。




因みにどの時代のキャルかと言いますと未来のキャルですね。


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【番外編】少女2人、ただし最強。

最後にシャルルとユリシスの新ビジュアル画像が……


第7宇宙の各地で繰り広げられる『超時空バトルロイヤル』

その頂点をかけ……地球と宇宙の狭間で時空を超えた極限バトルが今……始まろうとしていた。

 

この場所では、一人の女戦士が奮闘していた。

 

「こ、腰……!!でも……死にたくないし……やるしかない……!!」

 

一人の少女が腰を抑えながら数々の敵を蹴散らしていく。

すると少女は思いもよらぬ人物とばったりと出くわした。

 

「え……!?ユリシス……ちゃん!?」

 

「……その声……シャルルちゃん?」

 

シャルルと同じようにユリシスもこの闘いに参加しており、数多の敵を倒している最中だった。

 

「え!?本当にユリシスちゃん!?なんか凄い大人っぽいオーラ出してるけど……!」

 

「シャルルちゃんも。前にあった時よりも気が大きくなってるね……ん?シャルルちゃん腰でも痛いの?治してあげようか?」

 

「ホント!?ここの所ずっと闘いばかりで身体が悲鳴をあげていたところだったの!助かる!」

 

ユリシスはシャルルの怪我を治し、お互いに再会を喜んでいると、2人はとある『気』を感じ取った。

 

「「!!」」

 

「シャルルちゃん……わかる?」

 

「うん、大きな気が……二つ……!」

 

巨大な気が二人に近づいてきているのを感じた。

 

「来るよ……!」

 

そこに現れたのは……

 

「……こんな所に女が2人……?お前たちもバトルロイヤル参加者なのか。」

 

「ここで闘ってたのはおめえ達か?」

 

悟空とベジータだったが、服装がいつものとは違う。

 

「え、お、お父……!!」

 

「違うよシャルルちゃん。この人は……別時空の悟空さんとベジータさんみたいだね。」

 

「別時空……?」

 

「その口ぶり……オレ達のことを知ってるらしいな。」

 

「それに……おめえ達からすげぇ力感じっぞ……!」

 

別時空の悟空とベジータはシャルルとユリシスを相手に闘おうとしていた。

 

「このバトルロイヤルで出会ったからには……闘うしかないということですね?」

 

「そういうことだ。」

 

すると悟空はシャルルを見てニヤリと笑う。

 

「オラ……おめぇと闘ってみてえな。ベジータ……おめぇはどうすんだ?」

 

「ふん、ならオレはそっちの青い方と闘うか。」

 

「シャルルちゃん。闘えそう?」

 

「うん。おかげさまで!」

 

「ベジータさん、私と闘うんですよね?お互い邪魔が入らないところでやりましょう。」

 

「いいだろう。」

 

ユリシスは気を利かせベジータと遠くまで飛んで行った。

 

「おめぇとは何だか他人って気がしねえな。」

 

「……そうですね。実際他人ではないですし……探り合いは無しでいいですよね?」

 

「ああ……全開で行くぜ……!!うおあああああああっ!!!!」

 

悟空はそう言うと超サイヤ人4に変身した。しかし従来の超サイヤ人4とは違い深紅のオーラを身にまとい、髪も少し伸びていた。

 

「……!」

 

シャルルもその変身に応えるように超サイヤ人ゴッドに変身した。

 

するとお互いに飛び出し、辺りの障害物を破壊しながら闘いが始まった。

 

「だだだだだだっ!!!」

 

「はああああっ!!!」

 

激しい拳と蹴りの応酬が繰り広げられる。

 

「だりゃあっ!!」

 

悟空がシャルルにパンチを繰り出すが、それを腕で防ぎ逆に反撃する。しかし悟空はバク転してそれを避けた。

 

「そこです!!」

 

「!?」

 

シャルルは一瞬にも満たない隙を縫って目に見えないほどの拳の拳圧を悟空に浴びせた。

 

「ぐっ……!!」

 

悟空はそれを咄嗟に両手で防ぎながらシャルルと距離をとった。

悟空は足でブレーキをかけながらかめはめ波の構えをとる。

 

「…………。」

 

「……かめはめ波ですか……っ!?」

 

すると目の前から突如悟空が消え、シャルルの懐に入り込んでいた。

 

「瞬間移動……!」

 

「波ーーーっ!!!」

 

0距離から放たれたかめはめ波をシャルルは悟空の後方に飛んで交わした。

 

「これは……!?」

 

だが悟空はシャルルの着地の瞬間を尻尾で絡めて捕らえた。

 

「うおりゃああああっ!!!!」

 

「ぐっ……!!」

 

悟空は振り返り渾身のパンチをシャルルに叩き込んだ。

直前で防いだはずの拳だが勢いを殺しきれずにシャルルは吹き飛ぶ。

 

「うわああああっ!!!!」

 

だがそれと同時にシャルルは攻撃を仕込んでおり悟空も吹き飛んだ。

 

「すげぇ……いつの間に撃ってたんだ?」

 

「なんて重たい拳……これが大猿の力というやつですか……!」

 

お互いが未知なる力にワクワクしていた。

 

「行くぞ……!シャルル!!」

 

「いつでもいいですよ!!」

 

そこから再び激しい攻防が繰り広げられた。

悟空の拳をシャルルはしっかりとガードし、蹴りを繰り出す。

 

「ふん!!」

 

「よ、読みにくいな……!!」

 

シャルルの攻撃は上下に振られ、悟空でさえも読み切るのがほぼ不可能だった。

 

「たあっ!!」

 

それに合わせシャルルは悟空の背後に周り意識外からの攻撃を放つ。

 

「ぐうっ……!?」

 

悟空はシャルルの攻撃を避けきれずにダメージを受ける。

 

(あの細い腕から放たれてるとは思えねぇ……!)

 

お互い一進一退の戦いを繰り広げていたが徐々に差が開き始めた。

 

「はぁ……はぁ……!」

 

「……そろそろ決着です……。」

 

するとシャルルが構えをとり、闘いを終わらそうとしていた時だった。

 

「ぐああああああっ!!!」

 

「「!?」」

 

ユリシスと戦闘をしていたベジータが吹き飛んできた。

 

「ベジータ……!!」

 

「クソ……あの野郎……力を隠してやがった……!」

 

ベジータが立ち上がるとユリシスもベジータを追って飛んでくる。

 

「シャルルちゃん、大丈夫だった?」

 

「え?う、うん……大丈夫だけどユリシスちゃんは……?」

 

「問題ないよ。ベジータさんと闘うの面白かったし。」

 

「面白かっただと……!!!」

 

その一言にベジータは苛立ちをみせる。

 

「ベジータ、おめえの相手もすげぇ強ぇな!」

 

「……ちっ…お互いボロボロか……頭にくるぜ……!!」

 

悟空とベジータはボロボロになりながら立ち上がった。

 

「すげぇ……こんな強えやつがいるなんてよ……。」

 

するとベジータは悟空にとある提案をした。

 

「……フュージョンするぞ。カカロット……!」

 

「フュージョン!?」

 

ベジータの発言に悟空も驚く。

 

「……ユリシスちゃん。フュージョンってなに?」

 

「……合体するってことだよ。」

 

(合体……もしかして……あの時闘ったバカみたいに強かった人って…………)

 

シャルルの頭の中で色々な考察がされる。

 

「奴らは並大抵のヤツじゃない……!こうでもしないと俺たちの力を示せん!オレは卑怯とは思わんぞ。」

 

「……わかった。やるぞ……ベジータ!」

 

悟空とベジータはフュージョンの構えをとる。

 

「シャルルちゃん。気を引き締めてね。」

 

「うん……これからとんでもない戦士が生まれるって……なんか察しちゃった……。」

 

「「フューーーージョン!!はっ!」」

 

眩い光に包まれ悟空とベジータは一つに融合した。

 

「これは……。」

 

「やっぱり……!」

 

『オレは悟空でもベジータでもない。オレは……貴様らを倒す者だ!』

 

圧倒的なプレッシャーを放ちながら、ゴジータが誕生した。

 

『いっちょいくぜ!』

 

ゴジータは超スピードでシャルルに迫る。

 

「……え、速っ!」

 

シャルルは何とかギリギリでゴジータの拳を防ぐが、勢いが強すぎてそのまま吹き飛ばされた。

 

「シャルルちゃん……!」

 

『ユリシス……とか言ったか。今度は前みたいにはいかねえぜ。』

 

「……!!」

 

ゴジータは一瞬でユリシスの背後に回り込む。

 

「……ここ。」

 

『!?』

 

だがユリシスはゴジータの拳をノールックで掴み地面に叩きつけた。

ゴジータは受け身をとり起き上がった。

 

『……やっぱ強えな。』

 

「……ふふ。」

 

するとユリシスは狂気の笑みを見せた。

 

「懐かしいですね……この感じ……あの時の『猫さん』を思い出します。」

 

『はあ?猫?何言ってんだお前。』

 

ユリシスの意味深な言葉にゴジータも首を傾げる。

 

「いえ、こちらの話です。これならもう少し本気をだしても……。」

 

「隙ありー!!!!」

 

『うおっ!?』

 

シャルルがゴジータの隙をついて蹴りとばした。

 

「シャルルちゃん?大丈夫だった!?」

 

「へ、へへ……平気だよ……!」

 

明らかにシャルルは無理をしていた。

 

「でも……ユリシスちゃんと一緒なら……負ける気はしないよ!」

 

「……!!そうだね。私もシャルルちゃんが一緒なら…………!」

 

『へっ、今のは効いたぜ。じゃあ、お互いに力を振り絞って……決着といこうじゃねえか!!』

 

ゴジータは手を前にかざし、エネルギーを溜める。

 

「ユリシスちゃん!!」

 

「うん、頑張ろうね。」

 

シャルルとユリシスも気を溜めた。

 

『ビッグバン!!かめはめ波ーー!!』

 

ゴジータの両手から巨大なかめはめ波が放たれる。

 

「シャルルちゃん、あの時の力を思い出して。」

 

「あの時……?」

 

「シャルルちゃんがその気になったら……誰にも負けないよ。」

 

(……あの時……。)

 

シャルルは魔人ブウとの闘いで覚醒した変身を思い浮かべる。

 

「…………断罪します……!!」

 

シャルルの髪色が薔薇色に染まり、気も大きく上昇する。

 

「うん……それでこそシャルルちゃん!行くよ……!」

二人は息を合わせ、力を共有する。

 

「神烈断罪……!」

 

「アビスエンド……!」

 

「「バーストッッ!!!!」」

 

 

ゴジータのかめはめ波とシャルルとユリシスの2つのエネルギーがぶつかり合う。

 

「「はあああああああっ!!!!」」

 

『はあああああああっ!!!!!』

 

シャルルとユリシスのエネルギーが混ざり、より強力なエネルギーへと変化した。

 

『ぐうっ……!!』

 

「くっ…………!」

 

「……!」

 

行き場を無くしたエネルギーは、巨大な爆発を起こし、辺りをのみこんでいった。

 

黒い煙が辺りに充満する。

 

「はあ……はあ……。」

 

シャルルは地面に仰向けに倒れていた。

 

「煙たいですけど……シャルルちゃん大丈夫ですか?」

 

「…………はあ………はあ……。」

 

「クソッタレ…………。」

 

悟空とベジータも力を使いすぎたためフュージョンが解除されていた。

 

「……決着つかず……ですね。」

 

「おめぇら本当に強えなあ……!」

 

「おいユリシス!!」

 

「はい……?」

 

「貴様とは……また決着をつける。覚悟しておけ。」

 

「……はい。いつでも待ってますよ。」

 

すると4人の身体は光り出した。

 

「お、また転移か……シャルル!ユリシス!また闘おうな!」

 

「……二度とゴメンです!!」

 

悟空とベジータは転移で何処かに戻って行った。

 

「シャルルちゃん、元気そうでよかったよ。また今度会おうね。」

 

「ああ!!唯一の癒しが……!!」

 

ユリシスも笑顔でシャルルに別れを告げた。

 

「……また振り出しかあ……。」

 

シャルルもまたボロボロになりながらミソラの元に戻っていった。

 

 

 

おまけ↓シャルルの全身絵

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

ユリシス(スーパーヒーロー編)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 




今回はシャルルとスーパーヒーロー編のちょっぴり大人っぽくなったユリシスの共闘でした。ユリシスは美食殿専属メイドなのであのような服を着ています。


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脅威の暗殺者『644』

いつかはAIに頼らず自分の手でユリシスとシャルルを描いてみたいと思う今日このごろ


 

「もー動けない!!これだけ探しても出会うのはどうでもいいチンピラばっか!!ゴクウは本当にこの時代に来てるのかしら……。」

 

キャル、チチ、シェフィは共に行動し、それぞれの目的のためにとある人物を探していた。

 

「キャル……そう簡単には見つからないわよ。この時代には私達以外にも数え切れないほどの戦士が集まっているんだから……気長に行きましょ。」

 

「そうだべ!悟空さをピンポイントで探し当てるのは難しいけど……きっとそのうち見つかるべ。今日のところは近くの都で休むだ。」

 

「ん~……それもそうね。今日のところは一旦休んで……」

 

キャルはチチとシェフィの言葉に従い、都に戻ろうとした時だった。

 

「……何処にいくんですか?」

 

「「「!?」」」

 

3人が気づいた時、既にシェフィの背後から優しく抱きしめるようにとある少女が腕を回していた。

 

「お、おめぇ誰だ!?」

 

「シェフィ……!?」

 

「あ、あなたは……!?」

 

「ん〜……?」

 

キャル達は状況の整理が出来ずに硬直する。

 

(い、いつの間に後ろに!?全然気づかなかった……!!)

 

「……んふふ……。」

 

黒い衣装に身を包んだ少女はシェフィの耳元で小さく笑い、囁いた。

 

「『コードCFF9FE D型検体0005b』」

 

「!?」

 

少女は何かの暗号のような言葉を呟く。

 

「だ……誰……なの!?」

 

シェフィは少女の余りのプレッシャーに動けずにいた。

 

「……『アガトシフナ』さん……ですよね?あなたに暗殺の依頼がきています。」

 

「「「!???」」」

 

少女の口から思いもよらぬ言葉が発せられる。

 

「あ、暗殺!?シェフィはなんも悪いことなんてしてないでしょう!?」

 

「そうだ!!シェフィさんを離すだ!!」

 

(う……動けない……動いたら……確実に死ぬわ……!)

 

キャルとチチも少女に対しシェフィを話すように促す。

 

「……え?わたし……別にシフナさんをつかまえてませんよ?ほら、こんなに隙間が出来てる。逃げようと思えば逃げれますよ。」

 

「……っ!!」

 

確かに少女の拘束はかなりユルユルで逃げ出そうと思えば逃げれる程だった。

 

「シェ……シェフィ!はやく離れなさい!!」

 

「駄目よ……!今離れたら……間違いなく殺されるわ……!」

 

「「!?」」

 

「……バレてましたか。察しがいいですねシフナさん……♪」

 

すると少女はシェフィから手を離す。

 

「ど、どういうつもり……?」

 

あっさりとシェフィを解放した少女に3人は疑問を抱く。

 

「?そんな深い意味はないですよ。ここまで逃げ出さないターゲットははじめてなのでお話しようかなって思っただけです。」

 

「お話……?」

 

「話すことなんて……何もないわよ……!」

 

「そうだ!そうやって油断させてシェフィちゃんを殺そうったってそうはいかねえぞ!」

 

「そう邪険にしないでくださいよ……でも……そうですね。まずは私のことを教えましょうか。」

 

「……っ!」

 

「……私は『No.644』。よろしくお願いしますね。みなさん♪」

 

そう言って644は小さく笑った。

 

「644?あんたそれ名前!?」

 

「本当の名前は……秘密です♪」

 

「それで……話ってなんなんだ?」

 

「ああ……そうですね、単刀直入に聞きますけど……『シャルル』と言う人物を探してるんです。」

 

「はあ?シャルル?誰よそれ……なんで探してる……って……聞く必要も無いわね。どうせ暗殺でしょ?」

 

「ええ、その通りです。彼女は過去と未来を行き来するといった罪を犯したので……残念ながら殺すことになってます。」

 

「あんた……そうやって簡単に人を殺すんじゃないわよ!人の心とか無いわけ?」

 

「人の心?ふふ……あなたも殺しますよ?」

 

「なっ……!?」

 

一瞬だけだがキャルは644の殺気に気を失いかけた。

 

「……冗談ですよ、キャルさん。ん?……そうですね……彼女の特徴と言えば……キャルさんに似てますね。ふふ……。」

 

「気味悪い奴ね……!!とっととどっかいきなさいよ!!」

 

「…………んー……。」

 

すると644は少しシェフィを見て首を傾げた。

 

「……もう少しだけ。いいですよ。」

 

「え?」

 

「罪の重さで言えば……彼女の方がよっぽど重い。あなたは後回しです。」

 

「あ、後回し?」

 

「ええ。あなたの反応から察するあたり組織の誤認かもしれませんし……まだ命は奪いません。」

 

「え、あ、ありがとう…………?」

 

シェフィも思わず感謝をしていた。

 

「…………あなたは不思議な人ですね。」

 

「それはこっちのセリフでしょ……あんたは何もかも不思議だわ。」

 

「んだ……あんまり悪さするでねえぞ。」

 

「ご忠告ありがとうございます。それでは……次に会う時は……敵同士じゃないといいですね。」

 

そう言って少女は目の前から突然消えた。

 

「き、消えた……!?」

 

「本当に不思議な奴だな……。」

 

「あんたも厄介なのに狙われたわね……シェフィ。」

 

一応危機は去ったシェフィ達だった。

 

 

 

一方、シャロットが街で17号と18号と闘っていると、ドクター・ゲロが追ってきた。

 

「ずいぶん探したぞ……全く手間をかけさせおって……!」

 

「おまえは……。」

 

「ドクター・ゲロ……!なんでここに……いや、都合がいいぜ!!てめえに聞きたいことがある!『究極の戦士』のことだ!!」

 

「なぜ貴様がその名を……!そうかあの小娘……余計なことを……!!」

 

「知ってたか!!今すぐ教えやがれ!!」

 

「ふん……今にわかる……!」

 

すると17号、18号はドクター・ゲロをみて嫌悪感を抱いていた。

 

「ドクター・ゲロ……おまえはオレが殺したはずだが……?」

 

「別の時代のヤツでしょ。また殺しちゃおうよ。今度は私がやろうか?」

 

「……きさまらも元の時代の者たち同様制御のきかないできそこないか。がっかりだ……!だが喜べ。そんなきさまらにも相応しい役割がある……捕らえろ!」

 

「「!!」」

 

ドクターゲロが指示をだすと、どこからともなく白く太った人造人間が大量に飛び出す。

 

「なんだ?こいつらも人造人間か?」

 

「多分こいつらが19号じゃない?ほら、私たちが起きる前に壊されたやつ。」

 

「ああ……時代遅れのエネルギー吸収式か。一撃で壊してやるよ!」

 

17号はそう言うと真っ先に飛び出し19号の体に拳で穴をあける。

 

「がががが……!!」

 

19号は一瞬で17号と18号に破壊された。

 

「こんなポンコツ……何体いたところでわたしたちご負けるはずがないだろ……おまえ、私たちをナメてんの?」

 

「次はジジイ……おまえの番だ!」

 

「くっ……!」

 

「だんまりか?お前にはだいぶ恨みがある。断末魔の1つも聞かせてもらわないと気がすまないな!」

 

17号は躊躇なく気弾をドクターゲロに放った。

 

「うわあああっ!!!」

 

 

ドクターゲロは身体を破損しながらも何とか立っていた。

 

「くくく……馬鹿どもめ……!スペアのわたし相手にイキがっておれ……!」

 

「なに……?」

 

「恐れ……震えて待つがいい。じきに来るぞ……わたしの最高傑作が!!」

 

ドクターゲロはそれを言い残すと壊れて動かなくなった。

 

「スペアだってさ。自分を増やすなんてイカれてるね。」

 

「面白いことをするジジイだ。なら一人残らず破壊してやろう。バトルロイヤルをしながらな……。どっちが本物を破壊できるか勝負しようぜ18号。」

 

「それもいいけど16号を探すのも忘れないでよ?一応仲間なんだしさ。」

 

その時だった。

 

「きゃあああーーー!!!」

 

すると、街から沢山の悲鳴が聞こえてきた。

 

「「「「!!!!」」」」

 

「なに?今の声……?」

 

「また強いヤツが現れたか?行ってみようぜ。」

 

17号と18号が行こうとすると……

 

「行くなっ!!」

 

ザッハが大声で二人を呼び止めた。

 

街からの悲鳴の数は徐々に少なくなっていく。気が少しずつ減っていった。

 

そして……

 

「……静かになったね。」

 

「この気……おいザッハ。これ……もしかして人を食うってヤツの……。」

 

「ああ……一気に大きくなっていく気があった。間違いない!ヤツだ……!!」

 

「来るぞ!!!」

 

シャロットたちの前から緑色の化け物が歩いてくる。

その化け物はシャロット達の目の前で足を止めた。

 

「最強の人造人間……セル!!!」

 

「「「!!!」」」

 

 

 

 

 

 

↓ユリシス(644)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 




ユリシスは隠れ巨〇だった…………!?


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僅かな良心

人造人間編とかなってるけど、結構この章ではユリシスを掘り下げてく。


シェフィ達を見逃したユリシスは次なるターゲットを見つけるために各地を飛び回っていた。

 

「……この世界なら一人くらいは見つかりそうですが……なかなか見当たりませんね……ん?はあ……またですか。」

 

ユリシスが立ち止まると、とあるバトルロイヤル参加者が無謀にもユリシスに闘いを仕掛ける。

 

 

「貴様に恨みはないがここで消えてもらうぞ……!」

 

ユリシスの目の前に奇妙な生命体が立ちはだかっている

 

「……ここだけの大チャンスです。今なら見逃してあげますよ?」

 

ユリシスはその人物に向かって忠告をした。だが、そいつはユリシスの言葉を嘲笑った。

 

「ふはははは!面白いやつだ。見逃すだと?貴様ごときの戦闘力じゃ……この『ベビー様』には勝てんな。」

 

ユリシスに勝負を仕掛けたのはベビーというやつだった。

 

「……なるほど。ツフル人ですか。なかなか珍しい種族ですね。」

 

ユリシスは一瞬でベビーの種族を言い当てる。

 

「ん?なぜこの俺様がツフル人という事が分かった?」

 

「見ただけで分かりますよ。私も……たくさんのツフル人を殺してきましたから。」

 

「なに!?」

 

ユリシスは不敵な笑みを浮かべてベビーを見下ろす。

 

「どうやらあなたは誰かに寄生したようですね。その体……サイヤ人のものでしょうか?」

 

「ほう……下等なサイヤ猿の事まで知ってるのか。それに……ツフル人を殺してきたというのはどういうことだ?」

 

「そのままの意味ですよ。私は命令に従っただけですので。ですが……あなたは私がいた宇宙のツフル人とは違うみたいですね。第7宇宙のツフル人ってところですか。」

 

「貴様……さっきから何を言っている!第7宇宙とは……一体なんだ!」

 

「あなたは知らないのですか?宇宙は……全部で18個……いや、もっと沢山あるかもしれないんですよ。その中であなたは第7宇宙の出身……私は……『第18宇宙』の出身。宇宙って広いですね。」

 

「な……なに?第18宇宙だと……?」

 

「よかったですね。死ぬ前に1ついい事を知れて。」

 

「!?」

 

するとベビーの前からユリシスの姿が消える。

 

「なっ……きっ……消えた!?」

 

ユリシスはベビーの背後に現れる。

 

「ここですよ♪」

 

「な……!舐めるなあっ!!!!」

 

ベビーは振り向きざまに両手で強力なエネルギーをユリシスに放った。

 

「……。」

 

それは間違いなくユリシスに直撃した。

 

「ははは!馬鹿が……油断してるからだ。さて……!?」

 

すると黒い煙の中からユリシスが目にも止まらぬ速さで現れ、ベビーの顔を鷲掴みにした。

 

「ぐ……ぐ……っ……ぐぐ……!」

 

「……わたし、忙しいんですよ。とっても。」

 

「!?」

 

その場の空気が一変した。

ユリシスはベビーの顔面を掴んだまま地面に向かって急降下し、そのまま頭から叩きつけた。

 

「ごはああっ!!!!」

 

ベビーはその衝撃で口から大量の血を吐いた。

 

「悪趣味な人ですね。ちゃんと元の人の身体に戻しておきますね。」

 

ユリシスはベビーの顔を掴んだまま力をこめると、ベビーの体から青い液体のような物が溶けだす。

 

「が……ぐが……ぁ……!!と、溶ける……無くなる……っ!!!」

 

ベビーは苦しみながら必死にもがくが、やがてその体は寄生していた身体と完全に分離してしまった。

 

「や、やめ……!!俺は……どうなるんだ…………!!」

 

もはや原型など留めておらず、なにかを喋っているベビーだったが、ユリシスはニッコリと笑いながら言った。

 

「安心してください。ただ元に戻るだけです。あなたが生まれる前……『無』の状態に戻るだけです。意識も何もなくなりますから怖いことなんてありませんよ♪」

 

「!!????」

 

ベビーは自分の状況が理解できず、そのまま無になって消えていった。

 

「これが寄生していた体……ですか。そのうち目を覚ますでしょうし……まあ、放っておいても大丈夫……かな?」

 

 

そしてユリシスはまた何事もなかったかのようにその場をあとにしようとした。すると……

 

 

「ママー!!パパー!!どこにいるのー!!」

 

「……女の子……なんでこんな所に。」

 

ユリシスの目線の先には4歳にも満たない小さな女の子が泣きながら歩いていた。放っておく訳にもいかず、ユリシスはその少女に近づいた。

 

「大丈夫?こんな所でどうしたの?ここは危ないから早く逃げないと。」

 

ユリシスは泣いている女の子に近づきしゃがみこんで話しかけた。

すると、その少女はユリシスの顔を見ると目を輝かせ……

 

「ユリシスちゃんだー!!!!!」

 

なんとユリシスに抱きついた。

 

「え……?」

 

これにはユリシスも予想外だった。何故こんなにも小さな面識もない少女が自分の名前を知ってて抱きついたのか……

 

「……ねえ、あなたの名前は?」

 

戸惑うユリシスはこの少女に名前を聞くことにした。

 

「えー!私だよ!『シャルル』だよ!!いつも一緒に遊んでくれたじゃん!!」

 

「シャ……!?」

 

ユリシスは驚きの声を挙げた。

まさか自分の狙ってるターゲットがこの少女とは思わないだろう。

 

(私のターゲットはシャルル……だけど、こんな小さい娘を……。恐らく、私のことを知ってるということは……どこかの並行世界では私とシャルルに繋がりがあったということ……。)

 

ユリシスは色々な思考を巡らせる。

 

(確かに……この子を始末すれば……同時に未来のシャルルの存在も消える……だけど…………こんな小さい子を……!)

 

ユリシスは考えた結果……

 

「シャルルちゃん、ここは危ないからお姉ちゃんと一緒に行こっか。」

 

「うん!早くパパとママに会いたい!はやく行こ!!ユリシスちゃん!!」

 

「……シャルルちゃん。危ないから手繋ごっか。」

 

(例え組織からの命令でも……この子を殺すことは…………まずは観察するしかないですね。この子が将来……どんな罪を犯そうとも……今のこの子には何の罪もないですから。)

 

ユリシスはシャルルの手を握り、ひとまず安全そうな所まで歩いていくのだった。




ドラゴンボール超では宇宙は元々18個あったらしいですけど6つの宇宙は何かが原因で全王に消されて現在の宇宙は12個となってます。どんな原因で消えたのか。そもそもなんでユリシスが生きてるのかも謎ですけどね


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感謝の言葉

今回は今までの話と比べると100倍くらいほのぼの。


ユリシスは次なる殺しのターゲットであるシャルルと出会ったが、子供のシャルルだった為、殺すことを諦めた。そして、この殺伐とした世界に一人で放っておく訳にもいかないため、とりあえず一緒に行動することにした。

 

「ねえねえユリシスちゃん。なんか雰囲気が前と違うよ?どうしたの?」

 

「……シャルルちゃんの言う前の私がどんな雰囲気だったのかは分からないけど、私はいつもと変わらないよ。」

 

「うーん……そうかなあ。」

 

シャルルは何となく今のユリシスに違和感を感じているようだった。

 

(……それにしても……この子、普通の子供じゃない……かな。まだ4歳にも満たないのに身体能力は平均を軽く超えている……そして攻守共にバランスよく鍛えられている。この子の言うパパとママは何のためにここまで鍛えたんだろう……。)

 

ユリシスも一目でシャルルの身体能力がずば抜けて高いということに気づいていた。

 

「ねぇ、シャルルちゃんって……とても強そうだけど……パパとママに鍛えられたの?」

 

「違うよ!パパは闘わないしママは闘いが嫌いだもん!ターレスおじさんが毎日修行してくれるんだよ!」

 

「ターレスおじさん???」

 

ユリシスはその人物の名前を聞いてとある人物を思い浮かべた。

 

(ターレス……確か、宇宙の壊し屋と言われてたクラッシャー軍団のリーダー……。彼にも暗殺依頼はありましたね。見かけたら始末すると言った程度で優先度はそこまで高くなかったですが……シャルルちゃんとはどういう関係なのでしょうか……。)

 

 

「ターレスおじさんはね、とにかくすっごく強いの!それに優しいんだよ!」

 

「つ、強い?優しい?……そ、そうなんだ……。」

 

ユリシスは少し冷や汗をかきながら答える。

 

(シャルルちゃんの身体能力はとっくにクラッシャー軍団を上回ってるはずですが……ターレスの修行だけでここまで強くなるものなんですかね……?)

 

ユリシスが考え事をしていたその時だった。

 

「見つけたぞこのクソガキ!!」

 

仮面を被った大勢の男たちがユリシス達を囲んだ。

 

「わわっ!!!」

 

「……私たちになにか用ですか?」

 

ユリシスはシャルルを庇うように前に出る。

 

「なにか用だと!?そこのガキをとっ捕まえんだよ!」

 

「おかしな人達ですね。こんな小さな子を大の大人が寄ってたかって捕らえるだなんて。それになんですかそのダサい仮面は?」

 

「……うっるせえ!!俺たちはな……そこのガキに顔を落書きされたんだよ!」

 

そういうと一人の男は仮面を外してその落書きされた顔面をユリシスに見せた。

 

「…………え?」

 

予想外の返答にユリシスも素で驚く。

 

「俺たちの顔も見ろよ!!全部そいつがやったんだ!!俺たちが昼寝してる時にそいつが……油性のペンで……!!」

 

「ぎくっ……!」

 

当の落書きをした本人はユリシスの足にしがみついて隠れている。

 

「……………シャルルちゃん、本当なの?」

 

「お、覚えてないもん!知らないもんっ!!」

 

シャルルは違うと言い張るが目が泳ぎまくっており完全に嘘をついているのがバレバレだった。

 

「はぁ……さすがにこれはこちらが悪いですね。シャルルちゃん……謝ろうね。」

 

だが男たちは一斉に激昂する。

 

「ふざけんな!!謝ってすむわけねえだろ!!油性で書きやがったから全く落ちねえんだぞ!!どうしてくれんだコラ!」

 

男たちの言い分は最もである。

 

「お、落ち着いてください。私が皆さんの落書きを消してあげますから……!」

 

するとユリシスがある一人の男の顔に触れて落書きを消した。

 

「き……消えた……!?」

 

「おいおい、油性だぞ……!跡も全く残ってねえ……!!」

 

「……皆さんの落書きも全部消しますからここは一旦落ち着いてくれませんか?」

 

「どうする……?」

 

「いや、この落書きが消えるってんならまあ……。」

 

男たちはユリシスの能力に期待して一旦落ち着くことにした。

 

そして、僅か数分で、ユリシスによって落書きは全て消え去り、男たちの怒りも静まった。

 

「ま、マジかよ……俺の肌って……こんなにツルツルだったんだ……。」

 

「額に書かれた『肉』の文字が消えてる!!」

 

「お、俺も……!変な花の落書きが消えた!!」

 

男たちは全ての落書きが消え、皆で喜んでいた。

 

「……ほら、シャルルちゃん。ごめんなさいしようね。」

 

ユリシスがシャルルを上手く謝罪に誘導する。

 

「ご、ごめんなさい……もうしません……。」

 

シャルルはちゃんと反省しながら謝った。

 

「へっ、イタズラは程々にしとけよ嬢ちゃん。そこの姉ちゃんもありがとな。これでやっとまともに歩けるぜ。」

 

「……!」

 

その男の言葉にユリシスは驚いた。

 

「……あ、ありがとう……?」

 

「ん?どうした姉ちゃん?」

 

「今……ありがとうって言いましたか……?」

 

「あぁ、だって姉ちゃんのおかげじゃねえか。ほんとに助かったぜ。」

 

「……!」

 

殺しの仕事をしてきたユリシスは今まで感謝、ましてや『ありがとう』なんて言葉を言われたことなどなかった。

任務の達成は当然であり、人を殺したからといって褒賞がある訳でもない。ただ与えられた依頼をこなすだけ。言うなれば組織の操り人形だった。手柄は全て組織のものとなり、ユリシスには何も残らない。あるとするならば全宇宙にユリシスの恐ろしさや噂が広がるばかり。

そんなユリシスが殺し以外のことで役に立ち、感謝をされるというのは新鮮だろう。

 

「……そんじゃあ達者でな!」

 

そうして落書きが消えた男たちはユリシスに感謝をして帰って行った。

 

「……ありがとう……か……。」

 

ユリシスは今までに感じたことのない感情を抱き、戸惑う。

 

「ユリシスちゃん?」

 

シャルルは不思議そうにユリシスのことをずっと見ていた。

 

「……シャルルちゃん。変な感じだけど……なんか……ありがとう。」

 

ユリシスは偶然であるがきっかけを作ってくれたシャルルに感謝をした。

 

「?なんでおじさんたちに落書きしたのにお礼を言うの?」

 

シャルルもイタズラしたのになんでユリシスに感謝されたのか分かっていない。

 

「うーん……なんでかな。でも、シャルルちゃんにお礼を言いたくなっちゃった。」

 

そう言ってユリシスはシャルルに向かって優しく微笑んだ。

 

「……なんだか前のユリシスちゃんにちょっと戻った気がする!」

 

「……私も……なんだか『前の』私に少しだけ戻れた気が……しなくもないかな。」

 

「じゃあ私これからもイタズラ沢山しておじさん達を怒らせてもいい?」

 

「ふふっ♪ぶっ殺すよ、シャルルちゃん♪(冗談ですけどね♪)」

 

「Σ( ˙꒳˙ ;)」

 

 

二人はそんな会話をしながら行くあてもなく旅を再開した。




ユリシスの過去はどっかで書いた気がするけど何話だったか忘れたんで各自探して見てくだせえ()


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動き出す戦士たち

最後の方にアンケートがあります。多分見てる人少ないですけど協力してくれたら嬉しいです!


 

スーパードラゴンボールを賭けて、各地で繰り広げられる超時空バトルロイヤル。様々な戦士が時空を超え、最後の一人になるまで終わることの無い大会だが、当然これをよく思わない人物もいる。

 

 

「お、お呼びでしょうか……『大神官』さま。」

 

第7宇宙の破壊神、『ビルス』とその付き人である『ウイス』は大神官に呼ばれ全王のいる場所に来ていた。

 

「お久しぶりですね。ウイスさん、ビルスさん。」

 

「は、はい……本日はお日柄もよく……。」

 

ビルスは大神官にビビりまくっており言葉が上手くでてこない。

 

「大神官さま、本日はどう言った要件でございましょうか。」

 

すると様子を見かねたウイスが大神官に要件を尋ねる。

 

「今回あなた達を呼び出したのは……現在第7宇宙で行われている『超時空バトルロイヤル』の件です。」

 

「はっ!大変お騒がせしております……。」

 

ビルスは冷や汗をかきながら大神官に頭を下げる。

 

「いえ、別にどうということはないのですが……どうやら第7宇宙の界王神が人質に囚われているようですのでこうしてお呼び出ししたのです。」

 

「!!」

 

(何やってんだあのバカ!!あいつが死ねばボクも死んでしまうのだぞ!!!)

 

「それは大変ですね。早くしなければビルス様は死んでしまい私も機能を停止してしまいますよ?」

 

「そ、そんなことは分かってる!だがどうやってそいつを助け出せば……。」

 

ビルスが迷っていると……

 

「ご心配なく。現在、とあるサイヤ人が黒幕を見つけだそうと動いておりますよ。」

 

「さ、サイヤ人?」

 

「はい。どうやら古代のサイヤ人らしいのですが、あなた達のよく知る孫悟空さんも協力しております。」

 

「何い!?ご、悟空が!?」

 

「あらま。」

 

ビルスは悟空が余計な事をしていないか不安で震え上がる。

 

「ですので、今からお二人には悟空さん達のサポートをしにいってほしいのです。」

 

「は!す、すぐに向かいます!!」

 

「くれぐれも目立つような行動は控えてくださいね。ああ、それと悟空さん達のお仲間に『リーザ』さんがおられますので仲良くしてください。」

 

「かしこまりました!行くぞウイス!!」

 

「はい、ビルスさま。」

 

ビルスは慌てた様子でウイスと共に地球に向かった。

 

「……何事もないといいですが……まさか彼女もこのバトルロイヤルに参加してるとは思いもしませんでした。……全王様には黙ってた方がいいですね。」

 

大神官はそんな事を呟きながらビルスとウイスを見送った。

 

ビルスとウイスは地球に向かいながら先程の事を振り返る。

 

「あのバカが……!!世話焼かせやがって……!!」

 

「グチグチ言ってても仕方ありませんよ。どちらにせよビルスさまは直接戦えませんし、黒幕の機嫌次第では今すぐにでも殺されても仕方ないのですから。」

 

「くそ……厄介なことになったな。そういえばウイス……さっき大神官さまが言ってたんだが、悟空達の仲間に誰がいると言ってた?」

 

「ふむ、確か『リーザ』さんと言ってましたね。」

 

「そうか。リーザか…………………ウイス。」

 

「はい?」

 

「聞き間違いじゃないよな?」

 

「はい。」

 

「リーザって……大昔に存在してた第18宇宙の?」

 

「そうですね。」

 

「……………。」

 

ビルスの顔が徐々に曇っていく。

 

「……っな……なんであいつが悟空の仲間になってんだああああ!!!!??」

 

ビルスは驚きのあまり声を張り上げる。

 

「ビルスさま落ち着いてください。きっと何か理由があるのでしょう。それになんでそんな怒ってるんですか?……あー確か以前リーザさんと喧嘩して負」

 

「負けてない!!あの時はちょっと足を捻っただけだ!」

 

「はいはい。あの時は『僕に強敵が現れたー』とか言って喜んでらしたのに。」

 

「あんな卑怯なやつ知らないね。正々堂々勝負しろって言ったのに小細工ばっかだろ!!」

 

「リーザさんはビルスさまと違って暗殺が生業なので仕方ないと思いますけどね…………間違っても悟空さんが勝負を仕掛けてないといいですが……。」

 

「それに関しては心配いらないだろ。悟空なんざ相手にすらならん。」

 

「しっかり実力は認めてるんですね。しかし……リーザさんの第18宇宙はとっくに全王様に消されてしまったのですが生きていたんですね〜。」

 

「色んな時空から戦士が集まってるんだろ?別に消される前のあいつがいても不思議じゃない。それよりも急げ!こうしてるうちにも死ぬかもしれないんだぞ!」

 

「これでも宇宙一速く飛んでるんですけどね……。」

 

 

 

 

一方……

 

 

「だだだだだだ!!!!!」

 

「はああああっ!!!!」

 

とある場所で2人の闘いが繰り広げられる。

 

「どうしたブラック!腕が落ちたんじゃないのか?」

 

「ふっ……まだまだこれからだ!」

 

闘っていたのはベジータと改心した時代のブラックだった。

そしてもう1人……

 

「はい、そこまでです。一旦休憩しましょう。」

 

ベジータとブラックと一緒にいたのは、以前シャルルと共闘した時代のユリシスだった。

 

「ふう……以前と比べるとだいぶ動きがよくなりましたよゴクウさん。それにベジータさんも基礎体力が大幅に上昇しています。」

 

「ふん。」

 

「すまないなユリシス、修行に付き合ってもらって。」

 

「いえ、こうして二人が成長するのをみるのも楽しいですよ。それにしても……ゴクウさんはやけに気合いが入ってますね。」

 

「ああ、ユリシスとベジータは知らないと思うが『セルマックス』とかいう化け物が現れて大変だったからな。このままじゃいざと言う時に大切なものを守りきれない。」

 

「ふっ……人間くさくなりやがって。前の貴様と比べると調子が狂うぜ……。」

 

ブラックとベジータが話してると……

 

「ちょっと!ベジータと孫くんのそっくりさん!今度から離れたところで闘いなさいよ!ホコリが舞っちゃうじゃない!」

 

現代のブルマもそこにはいた。

ベジータはブルマから顔を背ける。

 

「奥さんとは仲良くしなきゃダメですよー?それじゃ私は夕御飯の準備をしてますね?」

 

「ちっ……!」

 

ユリシスはベジータをからかうと夕御飯の準備をする為にブルマの所に戻った。

 

「お互い気の強い奥さんだなベジータ。」

 

「ふん……ま、まあな……だが、オレは嫌いじゃない。」

 

「それならオレだってキャルのことは好きだぞ?」

 

「……気の強い女しかいないサイヤ人の血だな。」

 

「そ、そういうものなのか……。」

 

「そういえば……キャルとはまだ会ってないのか?」

 

「ああ。恐らくキャルもこの時代に来てるはずだが全く会っていない。それに……もし子供のシャルルまでこの時代に来てるとなるとそっちも心配だ……!」

 

「ならばさっさと見つけるぞ。誰かに保護されているならまだしも……子供一人この時代に放っておいたらすぐにやられるぞ。」

 

ベジータはキャル達を見つけることを最優先にした。

 

「だがベジータ……お前も孫悟空を見つけるのではなかったのか?」

 

「ふん、最初はそのつもりだったがカカロットは自分なりに動くはずだ。しかし、ブルマを置いて二人で探す訳にもいかないからな……交代で探すことにするか。」

 

「すまないなベジータ。」

 

「ふん、早速明日から探すぞ。ユリシスにはそう伝える。」

 

「ああ。」

 

ブラックとベジータはかつての仲間であるキャル達を探すことに決めた。

 

 




ようやく前作主人公が登場ですよ。
『リーザ』と言う人物が誰かわからない人は僕のマイページの画像一覧から見てみてください。(ただのフルネームですが)


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破壊の神

ドラゴンボールの新作アニメ楽しみだあ……


シャロットが人造人間と対峙してる中、悟空達はシャロットとユリシスの帰りを待つ。

 

「ねえ悟空さん……シャロットとユリシスはまだかしら。もう随分時間が経つと思うんだけど。」

 

「うーん……何かあったら連絡寄越すと思うんだけどなぁ。オラちょっくら行ってくっか?」

 

「はいはい君はここて大人しくしてて。」

 

「ちぇっ、なんだよつまんねえな〜。」

 

悟空がソワソワしていると……

 

「この気は……!!」

 

悟空は神の気を感じ取った。

そしてその直後。

 

ズドーーーーンッ!!!!

 

「いぃ!?」

 

「な、なに!?」

 

「これは一体……!」

 

悟空の目の前で何かが衝突したかのような爆音が鳴り響いた。

すると土煙の中から二人の人物が姿を現した。

 

「び、ビルスさまに……ウイスさん!?」

 

悟空達は二人を見て驚いていた。

 

「だ、誰よこの人達……!!」

 

「人……ではないみたいだね。」

 

ビルスも小さいブルマを見て少し驚いている。

 

「ん?子供の頃のブルマか……この時から生意気そうだな……。」

 

「ビルスさま!それにウイスさんもなんでここにいるんだ!?」

 

「大神官さまに言われましてね。界王神がどうやら何者かによって人質にされたんですよ。」

 

「界王神さまが!?それは大変だな!!」

 

「全く……!!あいつが死ねば僕も死んでしまうからな。仕方なくこうして来てやったんだ。ん?おい、お前は何者だ?」

 

ビルスはラビリスタを見て少々威圧をかけた。

 

「うわっ、怖いから睨まないでよもう〜!」

 

ラビリスタはビルスから後ずさる。

 

「ビルスさま!こいつはラビリスタっていって、なんか黒幕に捕まった『ミネルヴァ』っちゅうやつを助けるためにオラ達と協力してんだ!」

 

『ミネルヴァ』という単語にウイスも驚く。

 

「ミネルヴァ……超高性能のAIといったところでしょうか。まさか人間が作り上げるなんて思ってもいませんでしたよ。」

 

「まーそういうとこかな。2人は悟空の知り合い?」

 

「まあな。それより、僕は破壊神だぞ。もっと敬うんだ。」

 

「まあまあ良いではありませんかビルスさま。私はビルスさまの付き人のウイスです。以後お見知り置きを。」

 

「自己紹介どうも。私はラビリスタ。あと二人いるんだけど……。」

 

ラビリスタがユリシスとシャロットの事を教えようとすると、ビルスが思い出したかのように悟空のある事を問い詰めた。

 

「そ、そうだ……!!おい悟空!!お前……『リーザ』に余計なことしてないだろうな!!」

 

「な、なんだよビルスさま!!それに『リーザ』って誰だぁ?オラそんなやつ知らねえぞ……。もしかしてそいつ強えんか!?」

 

「あ、当たりま……」

 

するとウイスがビルスに耳元で小さく囁く。

 

「ビルスさま。リーザさんが強いことは悟空さんにはまだ教えない方が宜しいかと。知らない方が面倒ごとを避けられるでしょう。」

 

「そ……それもそうだな。」

 

ビルスはリーザの強さを隠すことに決めた。

 

「と、とにかく……絶対に知らないんだな?関わってないんだな!?」

 

「だから知らねえって……ん?」

 

悟空とビルスが揉めていると、遠くから1人の少女が戻ってくる。

 

「おーい!!ユリシス!!」

 

悟空はユリシスの姿を見つけると手を振った。

 

「ん?ユリシス……?ああああっ!!! !」

 

ビルスはその姿をみて飛び上がった。

 

「どうしたんだよビルスさま。今日のビルスさまなんか変だぞ?」

 

「……ええい……黙ってろ!ウイス……あれ、本物か?」

 

「はい。間違いありません。彼女が『ユリシス・リーザ・アウレリア』さんですね。」

 

「「「!?」」」

 

「?」

 

ユリシスはよく分からないビルスとウイスに向かっても笑顔で手を振った。

 

するとビルスとウイスの話を聞いていたブルマとラビリスタも驚く。

 

「ビルスさんにウイスさんってユリシスの知り合いなの!?リーザアウレリアって……ユリシスの本名なの!?」

 

「それは本当かい……?」

 

「……知り合いといっても昔の話だ。」

 

「初めまして。ユリシスです。悟空さんのお知り合いですか?」

 

ユリシスはビルスとウイスを見て何も感じていないように笑顔で自己紹介をする。

 

「お、お前……僕のことを忘れたのか……!?」

 

「???すいません……よく分からなくて。」

 

「ビルスさま、どうやらリーザさんは記憶を失ってしまっているようです。」

 

「記憶を?こいつが……?いやそれともあの時の影響か……?ウイス、どっちだと思う?」

 

「……五分五分ですね。消される前の彼女……それとも本当に記憶がないままなのか……謎ですね。」

 

ウイスとビルスがユリシスを見て深く考えこむ。

 

「それよりユリシス、シャロットはどうしたの?」

 

「あ、そうでした。シャロットくんならザッハさんとばったり出会ってそのまま二人でどこかに行ってしまったんでした。」

 

「ええ!?」

 

「ザッハと!?」

 

「シャロット……?大神官さまが言っていた古代のサイヤ人か?」

 

「ふむ、会ってみないことには分かりませんがどうでしょうか。」

 

「そういえばお二人はどうしてここに?」

 

「界王神がへまをしたからな。僕達も黒幕の捜索に協力することになったんだ。」

 

「黒幕の捜索ですか……?それは頼もしいですね。よろしくお願いしますねビルスさん、ウイスさん。」

 

「「……。」」

 

このユリシスの話し方に、ビルスとウイスは若干の違和感を感じていた。

 

(リーザってこんな奴だったか?昔あった時はもっと殺伐としてたイメージなんだが……。)

 

(確かに性格や言葉遣いが180違いますから多少の違和感はありますね。)

 

「ビルスさまもウイスさんも協力してくれるみたいだしよかった〜!もう少ししたらシャロットっていうサイヤ人が戻ってくっからよろしくな!」

 

「ま、そうだな……そのシャロットとかって奴がくるまで……美味しいものでも食べて待つとするか。」

 

「はいビルスさま!では私たちは都で美味しいものを食べてきますね。」

 

ビルスとウイスは二人で都に食事をしに行った。

 

「ふう……それにしてもあの2人ただ者じゃないね。」

 

「お、ラビリスタも気づいたか?あの二人すんげぇ強くてよ、オラもまだ勝てる気がしねえんだ。」

 

「悟空でさえも勝てないのかい!?」

 

「ああ!ビルスさまもなんか力まだ最後まで見せてくれねえしウイスさんはオラの師匠なんだ!」

 

「ご、悟空の師匠!?へ〜……それは勝てないね。」

 

「おふたりともお強いんですね。」

 

「ああ!ユリシスも今度教えてもらえばいいさ!」

 

「ちょっと!ユリシスを戦闘に引き込まないでよね!」

 

「じょ、冗談だってブルマ……!」

 

「……あの二人……何処かで……。」

 

ユリシスもビルスとウイスについてなにか引っかかるものがあった。




ユリシスの強さの秘密やビルス、ウイスとの関係、過去は今後紹介する予定です!(人造人間編が終わり次第)


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ユリシスの『気』

悟空達はシャロットの帰りを待つが、中々帰ってこない。暇すぎた悟空は何かを思い出したかのようにユリシスに詰め寄った。

 

「そういえばさ、シャロットに『気』の使い方を教えたのってユリシスなんか?」

 

「はい。確かに私がシャロットくんに教えましたけど少しだけですよ。シャロットくんは飲み込みが早いのですぐに習得してましたね。」

 

「ふーん……でもおめぇから『気』を全く感じないのは何でなんだ?いつも気を消して過ごしてるんか?」

 

悟空は以前のこともあり、ユリシスから気が感じられないことが気になっていた。

 

「うーん……言われてみれば考えたこともありませんでしたね。よく分かりませんが自然と消えてるみたいです。」

 

「なあなあ、それってさ……オラ達みたいに気を解放する事ってできんのか?出来るんならちょっとだけ見してくれよ!な!ちょっとだけ!!」

 

悟空はますますユリシスのことが興味深くなり、気を解放してみて欲しいと頼んだ。

 

「気の解放……ですか。上手くできるかはわかりませんが……えーっと、こうやってこう……。」

 

ユリシスは悟空に言われた通りに少し気を解放しようとした。すると……

 

ズアッッッ

 

「っ!?」

 

一瞬の出来事だったが悟空はユリシスの気を感じ取り、ゾッとした。

 

(な、なんだ……今の……!感じたこともねえ桁違いの気だ……!)

 

悟空でさえ足がすくんでしまうほどの圧力だった。

するとユリシスはとんでもない事を口にした。

 

「なーんて、冗談ですよ。本当に『気』を解放したりなんてしませんよ。」

 

ユリシスは気を解放しようとしただけで実際にはしていなかった。

 

「え……でも、今確かに……感じたぞ……!それがおめぇの気なんだろ!?」

 

「いえ?解放しちゃおうかな〜……って思っただけで私の『気』は1ミリも出していませんよ?」

 

「ラ、ラビリスタも感じただろ!?」

 

「ん?何かあったのかい?私には何も感じなかったけど……。」

 

「ユリシスがどうかしたの?」

 

ラビリスタとブルマも何も感じておらずにキョトンとしていた。

 

「そ、そうか……なんかよく分からねえな……ハハハ……。」

 

悟空が呑気に笑っていると、向こうから物凄い形相でビルスがこっちに向かってきた。

 

「おい!なんだ今の馬鹿デカい気は!!悟空!お前まさかリーザに余計なことをしたんじゃないだろうな!?」

 

 

ビルスはこの異常な気を感じ取っており猛スピードで悟空に迫る。

 

「いやいや、オラ別に何にもしてねえって……!!ただちょっとユリシスの気を感じたかったから頼んでみただけだ!」

 

「それを余計なことって言うんだよ!お前は黙ってシャロットとかいうサイヤ人の帰りを待ってろ!!」

 

ボカッ

 

ビルスはそういうと悟空の頭にゲンコツをした。

 

「痛ってー!!!何すんだよビルスさま!」

 

「うるさーい!とにかくあんまり刺激するな!!」

 

「あの……私は別に大丈夫ですよ?ただ悟空さんとお喋りしてただけですから……。」

 

ユリシスも悟空をビルスから庇おうと気を利かせる。

 

「ン゛ン゛ッ!!ユリシスとか言ったか。君も悟空の事なんかほっといていいぞ。嫌なことは嫌とちゃんと言うようにしろ。」

 

「あ……は、はい……。」

 

ビルスはユリシスにも軽めに説教をした。

 

「それじゃあ僕は美味しいものを食べに戻るから大人しくしとけよ。」

 

そうしてビルスはまた都に戻って行った。

 

「痛ててて……ビルスさまは容赦ねえな〜……。」

 

「おっきなタンコブ……今治しますね?」

 

ユリシスは悟空のタンコブを治療する。

 

「さ、サンキュー……痛ちち……へへ。」

 

「?」

 

悟空は自分か痛い目に合っているにも関わらず笑っていた。

 

「悟空さんは……どうして笑ってるんですか?」

 

「ん?だってよ……まだまだこの宇宙にはオラの知らねえ強え奴がいるって分かったんだ。嬉しくってよ、オラ、ワクワクしてんだ。」

 

悟空はそう言って笑っていた。

 

「ワクワク……ですか?」

 

「オラ、ビルスさまに出会った時はよ……一人では勝てなくて皆の力を借りてやっとビルスさまと闘えたんだ。それでも全然本気だして貰えなかったんだけど……ビルスさまっていう目標を見つけてどんどん強くなれたんだ。」

 

「……それでワクワクするんですか?」

 

「……ああ。オラやっと分かったんだ。おめぇがとんでもなく強え奴だってな!」

 

「悟空さん……。」

 

「おめぇの力……まだまだ隠してんだろ?」

 

「…………最近……思い出すんです。記憶の一部……と言いますか……以前の私……と言うのか分かりませんが何かの記憶を……。悟空さんの言うとおりまだ隠している力があるかもしれません。」

 

「そっか……やっぱワクワクするな!今はビルスさまに叱られるからできねえけど……今度絶対オラと本気で闘ってくれ!」

 

「はい、悟空さんがそう言うなら。」

 

「本当か!?約束だぞ!!」

 

「ふふ……はい!」

 

「よっしゃあ!オラそん時までにもっと強くなっぞ!!」

 

悟空は今後ユリシスと闘う約束をし、無邪気な子供のように喜んでいた。

 

 

一方、シャルル達は……

 

 

「はぁ……はぁ……!」

 

「シャルルさん大丈夫です?」

 

シャルルは地面にうつ伏せになりながら息を切らす。

 

「だ、大丈夫じゃないです……もう30連戦ですよ……。さすがに休憩しないと死んじゃう……。」

 

相変わらずシャルルは理不尽過ぎる戦闘を強いられ続けておりバテていた。

 

すると……

 

「キャー!!食い逃げよー!!!」

 

街の方が何やら騒がしい。どうやら食い逃げが起こったらしい。

 

「がはは!!誰が金なんか払うか!!」

 

いかにも悪そうな見た目をした太った男が走って逃げていく。

 

「シャルルさん!食い逃げですよ!」

 

「く、食い逃げ?それくらいならまあ……。」

 

シャルルは食い逃げ犯を捕まえるために走り出した。

 

「止まってくださいー!」

 

シャルルは一瞬で食い逃げ犯に追いつくと足を引っ掛けて転ばせる。

 

「うげええ!!!」

 

「お金は払わないとですよ!」

 

シャルルが拘束しようとした時、見たこともない人物が話しかけてきた。

 

「あなたが食い逃げ犯を捕まえてくれたんですね?ご協力ありがとうございました!」

 

「え、ええ……と。あなたは……。」

 

見慣れない全身タイツで腰には銃らしきものが備わっている。前髪も短く特徴的な髪型をしていた。

 

「申し遅れました。私は銀河パトロール隊員の『メルス』です。」

 

 

 



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ユリシスと腕相撲

ユリシスに罵られたい


「銀河パトロール……ですか?それって……。」

 

「はい。私は銀河の平和を守る銀河パトロールの隊員です。ですから食い逃げといった些細な犯罪も見逃す訳にはいかないんです。それで……あなた達のことを教えてくれませんか?」

 

「あ、私はシャルルといいます。」

 

「私はミソラっていいまーす♪」

 

シャルルとミソラはそれぞれ自己紹介をする。

 

「シャルルさんにミソラさんですね。お陰で助かりました。」

 

「あの……メルスさんもこのバトルロイヤルに参加してるんですか?」

 

「参加……してるといえばしていますね。ただし、とある人物を捕まえるために参加していますが。」

 

「とある人物……ですか?」

 

「ええ、宇宙最大の巨大な暗殺組織……【エルロソロリティ】最強の暗殺者。恐らくその人物もこのバトルロイヤルに参加しているでしょうからね。」

 

「エルロ……ソロリティ?」

 

「暗殺者……どこかで聞いたことあるような……ないような……。」

 

「私は『リーザ』という人物を捕まえるためにこの大会に参加したんです。何か情報はありませんか?」

 

「うーん……ごめんなさい。リーザって人は聞いたことないです。」

 

「私も知らないですー。」

 

「……そうですか。」

 

「リーザって人は……そんなに悪い人なんですか?」

 

「ええ……邪悪で、とても残虐な人物です。もし見つけたとしても闘おうなんて思ってはいけません。恐らく自分が死んでしまったという事さえも気づかずに死ぬでしょう。」

 

「そ、そんなヤバい人なんですか……!?それだけの人ならもっと話が広まると思うんですけど聞いたことありません……!」

 

「それはそうです。リーザは全宇宙最強の殺し屋なだけあり、正体がバレたりすることはありません。彼女のことを知っているのは破壊神などの限られた一部の神だけです。」

 

「聞いてるだけで胃が痛くなってきました。」

 

「何言ってるんですかメルスさん♪実はシャルルさんは……とってもお強いんですよ!」

 

「ミソラちゃん!?」

 

「シャルルさんがお強い……?それは本当ですか?」

 

ミソラが余計なことを言うとメルスはシャルルの少し興味を示した。

 

「……人並みよりは闘い慣れているはずです。このバトルロイヤルでも数多くの戦士達と戦ってきましたから。」

 

「……もしよろしければ、私に本気で攻撃して頂けませんか?」

 

「え?」

 

「ほ、本気で!?それは流石に……。」

 

「いえ、大丈夫です。遠慮なくきてください。」

 

「……!!」

 

メルスの自信にシャルルは冷や汗を流す。そして次の瞬間……

 

「っ!!」

 

「……。」

 

シャルルは目にも止まらぬ速さで拳を抜き、メルスに向かって攻撃をする。

だが……

 

 

「……。」

 

メルスはそれを予備動作無しで素早く完璧に避けた。

 

「私は……今……本気で拳を出しました……!」

 

「はい……だから避けました。」

 

「???」

 

ミソラ目線では何が起こったのか分からなかった。

 

「あなたは……一体……!」

 

「……シャルルさん。あなたは素晴らしい力を持っています。その力……私に貸してくれませんか?」

 

「……!!貴方の強さは分かりませんが……一つだけ分かりました……。あなたは……私の知らない世界を知っているんですね?」

 

「…………。」

 

「分かりました……協力します。だけど……ひとつ忠告しておく事があります。」

 

「……なんでしょうか。」

 

「わたし2日に1回はいなくなりますのでそれだけは覚えておいてください……。」

 

「え、なんでです?」

 

「シャルルさんは高確率でどこかに突然転移させられてしまうんですよ。しかも毎回理不尽すぎる相手と闘ってヘトヘトになって帰ってくるんです。」

 

「そ、そうだったんですか……それはお気の毒ですね……。」

 

「やっぱり私可哀想ですよね?みんなそう思いますよね?」

 

「も、もちろんです。」

 

「そうですねーシャルルさんは可哀想です。だけど……いっぱい頑張ってるシャルルさんは偉いですよー♪よしよし♪」

 

「み、ミソラちゃん……!」

 

「…………。」

 

ミソラに頭を撫でられ母性を感じているシャルルを横目に若干引き気味なメルスだったが頼もしい仲間が増えた。

 

 

 

一方で、殺し屋時代のユリシスと、幼女期シャルルは、とある都を2人で歩いていた。

 

 

「シャルルちゃん、何かしたいことはある?歩いてばかりで疲れただろうからどこかで休憩しようか?」

 

「うーん……お腹空いた……。何か食べたい!」

 

「食べる……それってやっぱりお金が必要……なんだよね。」

 

ユリシスはお金というものを使ったことも貰ったこともないため困っていた。

 

「私もママから貰ったお小遣いしかないから少ないよ。」

 

「困りましたね……。」

 

ユリシスとシャルルが困っていると……

 

「さあー!寄ってらっしゃい見てらっしゃい!腕相撲大会!!優勝者には賞金100万ルピだよー!!参加者は他にいないかー!!飛び入り参加歓迎だよー!!」

 

そのような声が聞こえてきた。

 

「腕相撲……?」

 

「ユリシスちゃんが参加したら勝てるよ!!参加しなよ!!」

 

「……優勝すればお金というものが貰えるなら……参加しようかな……?」

 

ユリシスはシャルルに背中を押されて大会会場にきた。

 

「私も参加してよろしいですか?」

 

ユリシスがそういうと、まさか彼女のような少女が参加するとは思ってもなかったらしく、会場全体が歓喜の声に包まれた。

 

「うおお!!あんたも参加するのか!」

 

「いいぞー!嬢ちゃん!!」

 

「俺絶対あの子に勝って口説くぞ!!」

 

「あの可愛い子が参加するのか!?」

 

ユリシスの力を知らない馬鹿な男どもはあわよくばお近づきになろうと必死だった。

 

「それじゃあ早速1回戦!!飛び入り参加のお嬢ちゃんと……なんと……いきなりこの都で一番怪力の男の対戦だ!」

 

ユリシスと対戦相手の男が舞台に上がる。

 

「がはは!!運の悪いヤツめ!俺はいくらかわい子ちゃんでも手加減しねえぜ!」

 

「……。」

 

ユリシスは無言で構える。

 

「レディ……ゴー!!」

 

試合開始の合図と共に、男は力を入れて勝負を決めようとした。だが……

 

「な、なんだ!?」

 

ユリシスの腕がピクリとも動かないのだ。むしろ動かそうとすればするほど腕から激痛が走るのだ。

 

(く……くそ!!どうなってやがる!!)

 

「……これ以上力を入れると……折れますよ?」

 

「!?」

 

ユリシスの言葉に、周りの観客たちはざわつき始める。

 

「おい……嘘だろ……。」

 

「怪力の男が……ビクともしないなんて……。」

 

「……うるせっせええ!!!!!これで終わりだあああっ!!!!」

 

だが男はユリシスの忠告を無視し、腕を本気で振るった。

 

その結果……

 

ボキッ

 

「ぎゃあああああ!?」

 

男の腕の骨が折れてしまったのだ。

 

「そ、それまで!勝者は飛び入り参加のお嬢ちゃんだああ!!」

 

「「「うおおおおおおお!!!」」」

 

歓声が会場全体を包む。

対戦相手の男は一人で喚いていた。

 

 

「ああああ!!お、俺の……俺の腕があああああ!!!こんな……こんなああ…………ん?……何ともない……?」

 

「「「!?」」」

 

男の腕の骨はユリシスが元通りに治し、何事もなかったかのように会場を降りた。

 

「ど、どうなってんだ!?さっき腕折れてただろ!???」

 

「いや、それも気になるがあの嬢ちゃんやべえぞ……。」

 

ザワザワと周囲の人達がユリシスを見る。勿論シャルルも。

 

「ゆ、ユリシスちゃん!?さっき何したの!?」

 

「いえ、私は特に……相手が勝手に腕を折ってしまったので……。」

 

と、そんな話をしていると……

 

「続きまして2回戦!対戦相手は……」

 

司会者が次の試合を始めようとした瞬間……

 

「棄権します。」

 

「俺も……。」

 

「お、俺も!」

 

ユリシス以外の参加者が全員棄権した。

 

「え、すいません……この場合って賞金はどうなるんですか?」

 

「もちろん優勝者はあなたなので100万ルピをお渡しします!!」

 

「え、これだけでこんな沢山のお金……。」

 

「これだけって……いいもの見せてもらいましたよ!長年この大会をやってきましたけどこんな予想外の大会は初めてだ!次に開く時は変装でもしてまた参加してね!!」

 

司会者は満足そうに去っていった。

すると試合をみていたシャルルがユリシスに駆け寄る。

 

「凄いよユリシスちゃん!!こんなに沢山のお金!!これなら何でも食べられる!!!」

 

「食べる……私は食の事とかあまりよく分からないな。シャルルちゃんが行きたいお店でも行こうか。」

 

「えー!それじゃあ私シチュー食べたい!」

 

「シチュー??うん、シャルルちゃんがそれを食べたいなら行こっか。硬いパンとかじゃないなら私も食べてみたいな。」

 

ユリシスとシャルルは賞金の100万ルピを持って、手を繋ぎながらシチューを食べに行った。




ユリシスがドッカンとかで出るとしたらカテゴリどうなるんだろ。
ぱっと思いつくやつだと『ピチピチギャル』『神次元』『体得した進化』『大会出場者』『天才戦士』『宇宙をわたる戦士』『伝説の存在』『悪逆非道』『惑星破壊』『頭脳戦』『高速戦闘』『世界の混乱』『クロスオーバー』とかか。結構多いな。


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オレたちの闘いはこれからだ!

シャロット、17号、18号、ザッハは目の前に現れた人造人間のセルと対峙していた。

 

「……こいつも人造人間なの……?こんな化け物と一緒にされたくないね。」

 

「こいつが最強だって?……笑わせるなよ。最強はオレに決まっているだろう。」

 

「ブェェ……!」

 

セルはシャロット達を前にして不気味に笑う。

 

「……最悪だ……!みんなっ!セルには絶対に捕まるな!この街の住人のように生体エキスを吸収されるぞ……!」

 

「吸収だと?どういう事だ……?」

 

「興味無いね……何にせよわたしはあんな気持ち悪いやつに触りたくないよ……

!」

 

「やれやれ……それじゃあオレが……」

 

すると、闘おうとする17号の前にシャロットが前に出た。

 

「おい……化け物!」

 

「……?」

 

「てめえ……なんなんだ……!?てめえにはギニューやフリーザ……色々な奴の気が混じってやがる………!ナッパのオッサンやベジータ……それにリリまで……!なんなんだよ!?てめえはっ!!」

 

セルからはシャロットの覚えのあるものばかりが混じっていた。

 

「ほう……ベジータを知っているのか。では面白いものを見せてやろう……。」

 

「!?」

 

セルはそう言うと見覚えのある構えをとった。

 

「ギャリック砲!!!」

 

セルの放ったギャリック砲は街を一瞬で破壊し遠くにある山をも砕いた。

 

「なっ……!!?なんでだよ……!?なんでこいつが……!!ベジータの技を使うんだよっ!!?」

 

「様々な戦士の遺伝子を合成して造られた人造人間……それがセルだ……!!それゆえ彼らの技も使えるんだろう……

!」

 

「ほう……?よく知っているな……それでは準備運動はこの辺にして……貴様らを吸収してやるぞ!!」

 

「構えろ!!来るぞ!!!」

 

セルが襲いかかり、17号達も戦闘態勢に入った。

 

「ふっ!!はあっ!!」

 

シャロットはセルの拳を受け止めた。

 

「お前のような化け物に吸収されてたまるか!!!」

 

17号も気弾を放ち攻撃をするが、セルはそれをよけて代わりに気弾を全員にに向けて放った。

 

「くっ……!」

 

「ぐわっ……!」

 

「……ぐっ!!」

 

「なんて威力だ……!!」

 

セルの攻撃によりシャロットたちは数メートル後退する。

 

「くっ……強いじゃないか化け物ヤロウ……!!」

 

「18号!!まずはお前からだ!!」

 

「!!」

 

セルは18号の標的を定めると吸収しようと襲いかかった。

だがその時だった。

 

「そうはさせん!!」

 

「ぬっ……!?」

 

どこから現れたのか、セルを蹴り飛ばしたのはピッコロ、それと見たことの無い細身の男だった。

 

「ピッコロにキャベ!!いいところに来た!時間を稼いでくれ!!」

 

どうやらこの二人はザッハの仲間のようだった。

 

「ふん、着いて早々それか。人使いが荒いな。」

 

「……!ピッコロ!?」

 

シャロットは以前と雰囲気の変わったピッコロの姿を見て驚く。

 

「あっ……ザッハ!お前の言ってた仲間ってピッコロだったのかよ!でもこいつ……気の感じが前と違うぞ…?それに……すげえ強くなってねえか!?」

 

「当然だ。お前が会ったヤツより後の時代から来たピッコロだからな。」

 

「おいおい、どんな修行したらそんなに変わるんだよ!」

 

「うるさいガキだ……今はそんなことを話している場合ではなかろう……!セル……きさまの面を再び拝む日が来るとはな。」

 

「ほう……ピッコロか。そうか、お前は『セル』を知っているんだな?だが残念ながら人違いだ。」

 

「人違いだと!?どういう事だ……!」

 

「ついでだ……きさまの生命エキスもいただくとしよう……!」

 

「ちっ……くるぞ!」

 

「ああ……オレたちの闘いは……これからだ!!!」

 

 

 

 

~完~

 

 

 

ここまで見てくれた人のためのご褒美だ↓

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 




最終話です()
これで物語が終わりってことじゃないですけど新しい方のリメイクした方に力入れたいのでこの小説は終わろうかなと思います。リメイクの方では深堀りされなかった部分とか書き出して新しい物語を作りたいと思います。
↓タイトルは変わってますが内容はこれのリメイクなので安心してくだせえ
https://syosetu.org/?mode=ss_detail&nid=330022




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