戦姫武闘伝シンフォギア (ジャギィ)
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戦姫武闘伝シンフォギア

なんかGガン流行ってるみたいだから書いてみた


酷い罵倒。陰湿ないじめ。理不尽な暴力

 

青春時代に突如やってきた悪意は余す事なく少女とその家族を追い詰め、陰鬱な日々に心が砕けそうだった

 

しかし、そんな日々はある出会いで終えた…

 

『酷い怪我よの…意識はあるか?子供よ』

 

東方からやってきた、王者の風によって

 

 

 

肩口に掛かるぐらいの黒髪に、後頭部に結んだ大きな白いリボンが特徴的な少女が困った様子で木を見上げる

 

「にゃあ〜…」

 

そこには木の上に登ったまま下りられない猫がいた。見捨てる事ができない彼女は、しかし解決策が思いつかないまま木を見上げることしかできないでいた

 

「どうしよう…」

 

このままでは入学式に遅れてしまう。しかし放置していくこともできない

 

(こんな時、響なら…)

 

そこまで考えた時だ。背後でダンッ!とジャンプする音が聞こえると同時に大きな影が少女を覆い隠し、次の瞬間には猫が木の上から消え、その近くで別の少女が着地する

 

「ほ〜ら、もう大丈夫だよ〜」

「にゃあ〜」

 

短めの薄い茶髪に2つのヘアピンをつけ、パリッと糊のきいた制服を身に纏う少女が、両手に抱えた猫を地面に下ろす。猫は振り向いて礼を言うように一声鳴き、一目散に去っていった

 

「ふぅ〜」

 

一仕事したと言わんばかりに一息つくと、自身と同じ制服を着る黒髪の少女の方に体を向け、立花響は挨拶をする

 

未来(みく)、おはよー!」

「おはよう響。また人助け…猫助け?」

 

小日向未来は響の挨拶にそう返すと、彼女の肩をガシッ!と掴んで「私、怒ってます!」と言わんばかりの表情を浮かべる

 

「あと響、スカート履いてる時は激しい動きはやめてって何度も言ってるでしょ?」

「平気だよ?ちゃんとスパッツ履いてるし」

「そういう問題じゃないの!」

 

女子力皆無な発言をする幼馴染に頭を痛める未来

 

元々ヤンチャではあったが、それでもちゃんと女の子をしていた響なのだが、ある時期を境に女子力は徐々に低下。そして今の脳筋系女子としてイケナイ進化を果たしてしまったのであった。この女子らしく柔らかそうな見た目の下に、筋肉やシックスパックが詰まっているなど誰が想像できようか?

 

(恨むわよ、シュウジさん…)

「未来?」

「…なんでもないわ。それより早くしないと入学式に遅れるよ?」

「ハッ!そうだった!早くしないと遅刻する!」

 

言うや否や、響は未来を鞄ごと背中と膝裏から持ち上げる(いわゆるお姫様抱っこ)

 

「きゃっ、響!?」

「ゴメン未来、ちょっと我慢してて!」

 

そして響は、女子1人を抱えてるとは思えないほど軽やかな動きで動き出し、車と並走しながら目的地を目指す

 

(この突拍子もないところ、本当に誰に似たんだか…!いきなりお姫様抱っこで抱きかかえて…逞しいのに柔らかいところもあって…あ、良い匂いもしてきた…)

 

未来がかなりマズい妄想を働かせてるとは露程も思わず、響はこれから通う『私立リディアン音楽院』に向かって足を進めるのだった

 

 

 

そして、目立ちながらも入学式に間に合い、憧れの高校生活をスタートさせたその日の放課後…

 

「いやあ〜“ツヴァイウィング”の新作CD!!なんとか買えて良かった〜」

 

リディアンから出た響は、その強靭の脚力で学院から20分は掛かるはずのCDショップに1分で到達し、そしてホクホクした顔で店を後にしていた

 

ジャケットには蒼く、長い髪をたなびかせる美少女の姿が写っていて、その彼女がアーティストする新曲が中身のCDにはいくつも詰められていた

 

「ツヴァイウィングか…」

 

2人のダブルボーカルが特徴の“ツヴァイウィング”であるが、本来ならば存在する片翼が写ってないその理由を、響は2年前の朧げな記憶から理解していた

 

 

『生きるのを諦めるな!!』

 

 

「奏さん…」

 

ちょっぴり感傷に浸る響。しかし持ち前の元気で気持ちを取り戻すと、鍛錬の後の楽しみが増えたと帰路につき…

 

ビーッ! ビーッ!

 

…『日常』は、『非日常』へと変化した

 

「警報…!?「ノイズ」が出た!?」

 

それを聞いた響は気の探知を行う。そして数秒後、気がポツポツと消え始めている場所を発見する

 

「あっち!!」

 

響は跳び上がり、3階建ての建造物の屋根に着地する。そのまま人間離れした身体能力で何度も跳び続け、屋根伝いに目的の場所まで移動する

 

そしてたどり着いた場所の眼下に映っていたのは…

 

「ノイズだぁあああ!!」

「いやああああ!!」

「誰かあぁぁぁぁああ!!」

 

───カラフルな正体不明の怪物に襲われる人々の姿があった

 

認定特異災害“ノイズ”

 

有史以前から存在が観測されている人類共通の天敵。前触れもなく現れることも脅威だが、何より恐ろしいのが炭素分解と位相差障壁という能力を持ち合わせていることだ

 

炭素分解は触れた生物を自分ごと無理やり炭素の塵に変え、抵抗もできずバラバラに分解してしまう防御不可の攻撃

 

位相差障壁もまた厄介な能力。あらゆる攻撃を無力化してしまい、これにより銃火器やミサイルなどの兵器を一切受け付けない

 

故にノイズから逃れる手段は、ノイズが自然に自壊するまで逃げ続ける事、ひとつだけ…

 

「うわあああああ!!」

 

そしてまた1人、ノイズによって命を失おうとする人が増える…

 

「はぁ!!」

 

はずだった

 

男とノイズの間に空から割り込んできた響が、非常に洗礼された正拳突きをノイズに打ち込んだからだ

 

そんなことをすれば、本来響も犠牲者の1人として名を連ねるだけになるのだが…拳を突き出している少女は炭素分解される様子が微塵もなく、それどころか殴られたノイズが炭素の塵に変わっていく

 

「…えっ?」

「今のうちに逃げてください!…早く!」

「…っ!!」

 

ノイズを生身で倒すという異常事態に固まる男性だが、響に逃げるよう促されると、他の人たちと一緒に逃げ出す

 

同時に、一斉に響の方に体を向けるノイズの群れ。響は()()()()()()()押し寄せるノイズの群れを見事な体捌きで躱し、ノイズが他の人に向かわないよう着かず離れずの距離で人気のないところまで移動しようとし…

 

「うえええ…おかあさーん!」

「!? 女の子!?」

 

その時、避難した人たちから逸れた迷子の女の子を見つけた。しかも近くには、響を追うのとはまた違うノイズの軍勢が、女の子を塵に変えようと動いていた

 

響は即座に進路を変更すると、その脚に師匠から教わった生命エネルギー…『気』を纏い、女の子に触れようとするノイズを蹴り飛ばす

 

「せいやあああっ!!」

 

吹っ飛んだノイズは地面にバウンドした後、炭素になって消えていく

 

「君、大丈夫!?」

「…おねえちゃん、だれ?」

 

答える間もなく襲い掛かってくるノイズ。咄嗟に女の子を抱きかかえて距離を取りながら、響は女の子に質問する

 

「お母さんと逸れたの!?」

「うん…どこにも、いないの…」

 

そうなると、困ってくるのは響だ。ノイズが響を追う以上人混みの中に向かうことはできない。かと言って女の子をどこかに置いて逃げても、その子が襲われない保証はない

 

「今から逃げるよ!しっかり捕まってて!」

「うん…!」

 

子供心からそうするしかないと感じた女の子は精いっぱいの力で響の制服を握り締める。響はできるだけ女の子の負担にならないように加減しながら、今度こそ誰もいないところへ逃げ始めた

 

 

 

女の子を連れた響は、分厚い壁に囲まれた袋小路にたどり着く。ノイズでも突破できない壁の隅に女の子を下ろすと、ぞろぞろとやってくる異形の軍団に向かってファイティングポーズをとる

 

「おねえちゃん…?」

「そこでジッとしてて。…今から、あいつらやっつけてくるから」

「え…だ、だめ!おねえちゃん、しんじゃうよ!」

 

幼い子供でも…子供だからこそ、ノイズの恐ろしさは分かっている。だから女の子は響を止めようとしたのだが、響は振り返って笑顔を見える

 

「心配しないで!これくらいへいき、へっちゃらッ!」

 

それに、と続けて言う

 

「これくらいの逆境を越えられなかったら、師匠に勝つなんて夢のまた夢だから…!!」

 

直後、目に見えぬ速さで響はノイズに肉薄し、気を込めた拳を叩きつける

 

「ハァァァ!」

 

矢継ぎ早に放たれる拳撃は腕が何本にも見えるような速さで、その手数で持って次々とノイズを片っ端から炭素分解させていく

 

しかし、数があまりにも多い。子供を守るために袋小路に入ったため囲まれることはないが、それでも生身で立ち向かうには、響の気の練度は未熟だった

 

「うわっ!?」

 

ノイズのタックルを食らって吹き飛ばされ、そのまま空中で姿勢制御して着地する響。気を纏った腕でガードしたため響は炭化せず、攻撃したノイズもそのまま炭素へと散っていくが、もはや後退することもできないほどノイズたちは近づいていた

 

「くっ…!」

「…おねえちゃん…」

 

絶望的な状況に、女の子がポツリと漏らす

 

「わたしたち…しんじゃうの…?」

 

もはや泣くことも忘れるほど、絶望した目で()()()()()()()()()()()女の子に対して響は…

 

「生きるのを諦めないでっ!!」

 

一喝し、響は叫ぶ

 

「私も諦めない!!私の命を救ってくれたあの人のために…そして!」

 

 

「師匠が教えた、流派東方不敗の名の下にぃ!!」

 

 

カァァァァ…!

 

その時だった。響の胸の奥から未知のエネルギーが溢れ出したのは

 

「な、何…?」

 

そして、頭の中に浮かんでくる知らない歌。響は自然に、無意識のうちにこの歌を歌った

 

balwisyall nescell gungnir tron

 

 

…そして、ある地下施設で、その歌のエネルギーを検知した集団がいた

 

「街外れの工業区域にフォニックゲイン反応あり!これは…!」

 

巨大なモニターに「GUNGNIR」の文字が出る

 

「ガングニールだとぉ!?」

 

赤い服を着た浅黒い肌の男の絶叫が地下に響くモニターには新たに、その反応の元となる少女の姿が映った

 

 

さらに、響たちがいる場所に向かう、バイクに乗った少女の姿もあった

 

『翼くん、ノイズが移動した現場の中心にガングニールの反応が現れた!!』

「ガングニール…!?なぜ、奏の…!?」

 

長い蒼髪を揺らしながら、その少女は動揺する

 

 

歌に呼応して響の全身から光が放たれ、胸と尻の周りに2つのリングが出現する

 

次にオレンジ色のシルエットが左、赤色のシルエットが右に現れ、オレンジ色のシルエットに装甲が付く。最後に、赤色のシルエットに装甲を纏ったオレンジ色のシルエットが融合されていく

 

そして現れたのは…オレンジと黒のインナーを身につけて、白く小さいジャケットを着た立花響の姿だった

 

「これは、いったい…?いや、今は!」

 

混乱の極みにあったが、響は内から湧き上がるこの力を心で理解した

 

「ハッ!」

 

気を込めずに目の前のノイズを響は殴る。吹っ飛んで散り散りになるノイズ、そして炭素分解しない響の肉体

 

「いける…これなら!!」

 

気が非常に流しやすい、それどころか気を込めなくてもいいこの状態に感謝しながら、響は先ほど以上の勢いでノイズを倒していく

 

「うおおおおお!!」

 

拳を振るたびに風が生まれ、蹴りを放つたびに空気が破裂する

 

「肘打ち!裏拳!正拳!とぉぉりゃあああっ!!」

 

木の葉が如く軽々と飛んでいき、粉々に分解されていくノイズ。見ていて可哀想になってくるレベルの蹂躙劇は、しかし突如現れた巨人のようなノイズに阻まれる

 

「大きいけど…せえええいっ!!」

 

ガキン!

 

ビルくらいなら大きく揺れる膂力による一撃を、そのノイズは鋼鉄以上に硬い銀色の肉体で簡単に受け止める

 

「攻撃が通じない!?」

 

どれだけ拳を、脚をぶつけても、大型のノイズは分解されない。逆に分解してやるぞと攻撃を仕掛けてき、重い一撃を堪える度に余波によって周囲への被害が増す

 

「このままじゃ…!」

 

弱気になる響は、しかし記憶の中にある師の言葉を思い出す

 

“響、どのように不利な状況であろうと、決して心まで臆するでない!!強い精神、(ハート)を持ってこそ真のファイター(なり)!!”

 

「師匠……はい!!」

「おねえちゃん!!」

 

見れば、ノイズは巨大な腕を振りかぶり、勢いよく響に向かって振り下ろした

 

決意した響は、また知らぬ歌を自然と歌っていた。いや、その歌に歌詞はなく、奏でるのは燃え上がる闘志のメロディのみ

 

「そっちが銀色の体なら、私は黄金の指ぃ…!!」

 

コォォォ!

 

それが、響の気を強く増幅させた

 

 

「私のこの手が光って歌う!!」

 

 

「ガングニール…いや、ガングニールのフォニックゲインと奏者のバイタルエネルギーが高まっています!」

「何をする気だ!?」

 

 

「命を燃やせと輝き叫ぶ!!」

 

 

「奏…?」

 

 

()ぃぃぃぃぃっ(さぁつ)!!」

 

 

前に出した右の握り拳が淡い緑に輝き、そして開かれた掌の指先をノイズの腕に突き刺すと…まるで豆腐が崩れるかのようにボロボロと腕を崩壊させながら、輝く指が突き進む

 

モニターで、遠目で、間近で見ていた者たち全員が驚愕する中、響は必殺の雄叫びを上げる

 

 

「ガアァァァンッグニル…フィンガァアアアアッ!!!」

 

 

シンフォギアで増幅された気を右手に集中させ、それを捕まえた相手にぶつける“ガングニル・フィンガー”が銀のノイズの頭部に突き刺さり、誕生の産声をあげる

 

バチバチバチ!

 

直接膨大な気を流し込まれたノイズは抵抗できず硬直し、やがて全身に回った響の気によって光り輝き

 

 

「くぅぅらええええええっ!!」

 

 

爆散。キラキラと煌めく炭素の粒子に分解されながら、巨大なノイズは消えていった…

 

「私の、勝ちだァ!!」

 

 

新たな力を得た立花響

 

彼女の壮大な物語の幕が、今上がるのであった




※続きません


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