とある一般聖兵の日常 (チョコラBB)
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今日の星十字騎士団

本日2回目の投稿です。
気付かないうちに一人ジェダイが混じってました。
ありがとうございます。


A:ユーハバッハ

とりあえず一応念のためAは与えないつもりだったのでA以外の聖文字から本当にくじで決めた。ただ後に石田雨竜が本人の素質も合わさって勝手に“A”に目覚めた。

 

B:ハッシュヴァルト

自分も悪乗りしたけど陛下も事前のホウレンソウなしに除名とか星十字騎士団候補とか言わないでほしい。想定を超えて摸擬戦に参加した星十字騎士団員がボロボロになった。

久しぶりにバズビーとの掛け合いが楽しかった。

 

C:ペルニダ

摸擬戦には参加していないしジュダスとも関りがない。

もしジュダスがペルニダの能力を知ったら恋次みたく「どうやって戦えばいいんだ・・・」

とか呟く。

 

D:アスキン

実はジュダスにとって天敵。

ジュダスは霊子を吸収して運用したり回復したりするのを多用するので霊子に対する致死量を変更すると即死する。

ジェダイではない。

 

E:バンビエッタ

相も変わらず性格が悪い。

ただジュダスに凹まされて他の星十字騎士団と同様に基礎鍛錬に原作より励んでいる。

尚、未だにゾンビエッタフラグは折れていない。

ゾンビエッタちゃんは可愛いからね仕方ないね。

 

F:エス・ノト

ジュダスに「恐怖」が効かずビビったので、

他の星十字騎士団と同様に基礎鍛錬に原作より励んでいる。

後の朽木白哉戦でルッキャさんの死体や蟲の大群に混ざって△様も登場するらしい。

 

G:リルトット・ランパード

大天使。

ジュダスの影響で原作よりも基礎能力が強化されている。

ジュダスは彼女の能力は強力だが、最大にして唯一の弱点は

「星十字騎士団同士の中が悪いこと」だと感じている。

 

H:バズビー

他の星十字騎士団と同様に基礎鍛錬に原作より励んでいる。

久しぶりにハッシュヴァルトとの掛け合いが楽しかった。

 

I:蒼都

ジュダスが完全に自分の上位互換で焦っている。

その為、他の星十字騎士団とよりも基礎鍛錬に励んでいる。

本人は知らないがジュダスから3代目ガードベントとして狙われている。

 

J:キルゲ・オピー

後方師匠面。

ジュダスと鍛錬したため、基礎能力及び移動能力が原作よりも跳ね上がっている。

なお死んだとしても戦争だからしょうがないとジュダスは考えているので復讐とかしない。

でもそれはそれとして悲しくて泣く。

 

K:BG9

ロボ。

足がキャタピラになった。

 

L:ペペ様

催眠系エロ同人竿役の擬人化。

ジュダスに「愛」が効かずビビったので、

他の星十字騎士団と同様に基礎鍛錬に原作より励んでいる。

ジュダスは一瞬彼の能力が欲しいと思ったのはナイショ。

 

M:ジェラルド

原作とは変わらないが、他の星十字騎士団が鍛錬に励んでいるのには好意的。

ジュダスは彼の滅茶苦茶さを未だ知らず、せいぜいマスキュリンの上位互換程度だと思っている。

 

N:ロバート

後方師匠面。

実は本編よりも楽しんでる節のあるジジイ。

他の星十字騎士団と同様に基礎鍛錬に原作より励んでいる。

 

O:ドリスコール

他の星十字騎士団と同様に基礎鍛錬に原作より励んでいる。

実は言動が荒っぽいが仕事もまじめ。

ただ多少強くなっても雀部を殺害した時点で死亡フラグが自動的に立つ人。

 

‘P:ミニーニャ

能力に加えて原作では見られなかったボクシング、動血装との併用を行っており、

地味に戦闘力が強化されている。

やはり暴力‥‥!! 暴力は全てを解決する‥‥!!

 

Q:ベレニケ

他の星十字騎士団と同様に基礎鍛錬に原作より励んでいる。

特に(首の)静血装の展開速度と強度の鍛錬に力を入れている。

おやフラグの様子が・・・?

 

R:ジェローム

ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ

 

S:マスキュリン

ジュダスと殴り合ってるので原作より強い。

マスキュリン的にはサイドバック的な立ち位置でジュダスを気に入っているが、ジュダスは暑苦しく絡んでくる苦手な相手。

 

T:キャンディス

他の星十字騎士団と同様に基礎鍛錬に原作より励んでいる。

ジュダスに能力をパクられたことを気にしており、肉体の活性化など練習している。

ジュダスはこっそり彼女のボンッキュッボンを見ているつもりだがバレている。

 

U:ナナナ

他の星十字騎士団と同様に基礎鍛錬に原作より励んでいる。

実は彼の能力で停止させられた場合、乱装天傀を発動することすらできないので地味に天敵。まあ普通に殴れば勝てる。

 

V:グエナエル

勝者。

ジュダスは後に彼の能力を知りシンプルにヤバいと感じた。

とくにバージョン3は危ない。

火力が低いのがネック。

 

V:グレミィ

原作と変わらず。

リルトットちゃんとの掛け合いをジュダスが見たら脳が破壊される。

 

W:ニャンゾル

他の星十字騎士団と同様に基礎鍛錬に原作より励んでいる。

実は飽和攻撃以外攻守に優れた能力。

作者はコイツのセリフをメンドイので嫌い。

 

X:リジェ・バロ

ジョジョ6部に居そう。

実は銃作成時に少しだけジュダスと接点がある。

 

Y:ロイド・ロイド

摸擬戦には参加していないが、他の星十字騎士団と同様に基礎鍛錬に原作より励んでいる。

ジュダスにたっちの「幽体離脱」ネタを教えられた。

 

Z:ジゼル

基本原作と変わらないが、他の星十字騎士団と同様に基礎鍛錬に原作より励んでいる。

ゲラになってしまった。

 



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1話

この日ユーハバッハは腹心にして星十字騎士団最高位のハッシュヴァルト、同じく忠臣にして「J」の聖文字を与えられた星十字騎士キルゲ・オピーを連れ視察より帰還していた。

彼が皇帝を務める「見えざる帝国」はかつて死神のよって滅ぼされたとされる滅却師が隠れ住む、死神たちの本拠地「瀞霊廷」の陰に存在する場所である。

其処を統べるユーハバッハは先月ついに星十字騎士団を全員決定し、現在は彼らを含めた一般の滅却師兵たちの習熟に勤めている。

今回もそういった兵たちの鼓舞や反抗勢力の鎮圧などのため各地へ視察に赴いていた。

 

(本音を言えば一般の聖兵以下など何の助けにもならんだろうが・・・相手はあの山本元柳斎重國だ。油断はならない。)

 

ユーハバッハはかつて山本元柳斎重國に敗北した苦い経験を思い出し、気を引き締める。

現状でもほぼ100%勝てるだろうが、まだ力を取り戻すのに1年以上の時間を要するのだ。

それにギリギリまで力を向上させることは無駄にはならない。

たとえ星十字騎士団が全滅しても自分の力になる。

自分さえ生きていればどうとでもなるのでどう転んでも問題はない。

ふと玉座に続く渡り廊下を歩いていると、眼下から、鍛練のための修練場から、喧噪が聞こえてきた。

ユーハバッハが気まぐれに修練場を視線を移す。

そこには背筋をピンと伸ばした正座の恰好のまま水平に高速移動する一般兵士と、ソレを必死に追う星十字騎士団員の姿だった。

確か・・・星十字騎士団の女性(一部除く)で構成された“バンビーズ”という集団だったか。

どうでもいいが、自分の属する集団の名称に自分の名前を入れるなどどれほど自己顕示欲が強いのか、とユーハバッハは内心首をかしげる。

 

「アレは・・・なんだ?」

 

「———申し訳ありません。私には分かりかねますので直ちに問い正してきましょう。」

 

ハッシュヴァルトがすぐさま修練場に降りようとするが、それを止める声があがる。

 

「ハッシュヴァルト殿お待ちを。陛下私が存じております。発言よろしいでしょうか?」

 

「許す。」

 

声を上げたのはキルゲであった。

 

「まず今しがた彼女らの先頭を正座姿で高速移動していたのは一般聖兵の“ジュダス”という者です。彼は後ろを追っていたリルトットとは同期でして、彼女が星十字騎士団へ昇格した際には彼女の補佐官として他の兵士を取りまとめております。」

 

「そうか」

 

ユーハバッハはクソ不吉な名前では?と訝しんだ。

 

「彼は聖文字こそ受け賜わっていないもの優秀かつ勤勉な人物で、私も個人的に霊子の制御法のコツなど教授しております。」

 

なるほど勤勉に己を高める。

名前はともかくユーハバッハとしても好ましい。

ましてやキルゲがここまで評価するのなら人格的にも問題ないだろう。

 

「うむ。それで奴はなぜあのような状況なのだ。」

 

「ハイ!残念ながら追いかけれている理由までは分かりませんが、あの移動方法についてはご説明させていただきます!」

 

「陛下にはもちろん説明する理由はありませんが敢えて説明させていただくと、我々滅却師の基本技能として霊子の収束があります。更にこれを応用して霊子の足場を作りそれに乗って高速移動する飛廉脚と続きますが・・・」

 

キルゲが一拍呼吸を置き説明を続ける

 

「基本我々は癖ではないですが足でその動作を行い高速移動を行います。ですがジュダスは日ごろから常々言っていました。足に限定せず全身のどこでも発動できれば理論上より高速に!より高機動に!よりトリッキーな動作が可能になるのではないかと!恰好こそ珍妙ではありますがアレはそれを達成したのでしょう!私も霊子の収束のコツを教授したものとして嬉しい限りであります。」

 

「なるほど確かに道理だな。一般的にどうしても足に限定してしまう操作ではあるが、難易度は上がるがアレのように全身のどこでも出来るのだ有れば有益だ。良くやったキルゲ。」

 

「ありがとうございます!」

 

「ハーヴェストだぎゃああ!」

 

眼下から新たに声が聞こえる。

視線を向けるとジュダスが仰向けに寝そべった状況で壁や天井に張り付いて高速移動している。

 

「キモッ!?」

 

「何か腹立つ!」

 

「ブフォ!?ゴ〇ブリみたいっ!?」

 

「ねえジジが笑いすぎてダウンしてるんだけど?」

 

「ほっとけ!今ジュダスの野郎を捕まえるのが先だ!」

 

ゴ〇ブリのような動きで這い回るジュダスをみて噴き出す星十字騎士団の一人。

むしろお前の触覚もゴ〇ブリみたいだろ。

 

「・・・あれは?」

 

「私も詳細は知りませんが確か「ニンジャはチャクラを操作して木登りしたりメスにして切ったりできるのだから滅却師なら霊子で同じことが出来るはず。」と言っていましたからソレでは?」

 

「そうか。」

 

そうはならんやろ。

 

「チャクラコントロール!からのパーンチ!」

 

「何イ!ミニーの拳を相殺しただとオ!?」

 

再度視線を向けると「P」の聖文字を与えたミニーニャ・マカロンと拳をぶつけ合って、少年漫画のように周囲に衝撃破をまき散らしている。

なお地面は二人を中心にクレータ状になっていた。

 

「私の知っている滅却師と違う。」

 

ハッシュヴァルトが遠い目をして何か呟いている。

まったくもってその通りだ。

 

「修練場は元に戻すように。」

 

ユーハバッハは今日は早く休むことにした。

 




霊圧が高ければ隊長格を圧倒できる。
小宇宙を燃やせば半裸でも神を倒せる。
体術を鍛えればクレイジーサイコホモを瀕死に出来る。

霊子を精密に操作出来れば何が出来る?

(BLEACH ポエム風味)


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2話

「あんた何か面白いことしなさいよ。」

 

そんな芸人以外には、むしろ芸人だからこそ眉を顰めるような無茶ブリを行うパワハラ上司。

彼女こそ「E」の聖文字をユーハバッハより与えられ、星十字騎士団の中でもトップクラスの戦闘力を誇るバンビエッタ・バスターバインその人である。

なお、彼女は外見こそ美しく男性人気が高いが、内面を知る人物からすると中身がクソ過ぎて密かに嫌われている。

現在も非公式女性グループ「バンビーズ」の溜まり場にて暇を持て余し、同僚のリルトット直属の部下に勝手に命令を出している。

その様子を見て密かに不満そうな様子を見せるのはバンビエッタと同様にユーハバッハから「G」の聖文字を与えられたリルトット・ランパード。

彼女は口調こそ荒いが冷静かつ真面目、実は仲間(バンビちゃんは除く)への情も深い人格的に優れた人物だ。

今もジュダスに目で謝っている。

 

「面白いこと、ですか。」

 

さてクソ上司からパワハラを受けているリルトット付の一般聖兵

ジュダス君は頭を回転させた。

ジュダスは転生者である。

ブリーチという漫画を始め数々のジャンプ漫画を産湯として育った生粋の日本人であった。

普通?に死亡して、記憶を取り戻した時には既に聖兵だった。

此処がブリーチ世界ということはすぐ分かった。

だがどういうわけか原作に関わる記憶だけがほぼ欠けていた。

覚えているのは死神の「クロサキ イチゴ」が主人公で自分の所属する「見えざる帝国」は敵側であることだけだった。

 

彼には2つ目的がある。

1つ目は生き残りボンッキュッボンな奥さんを貰って生涯を全うすること。

2つ目は今は上司になった同期のリルトットが生き残ること

 

(主人公のイチゴと親しくなれば補正か何かで生き残れるだろ?ジャンプ漫画だし。

 イチゴちゃんか・・・名は体を表すというしきっとカワイイ系かな?主人公だからきっと元気娘タイプだろう・・・しかも聞いた話では現役高校生らしいし個人的には巨乳JKだと嬉しいなあ。)

 

「バンビエッタ様。では血装について一つ小話でも。」

 

内面と外面の温度差が激しすぎて風を引きそうである。

 

「血装~?血装っても動血装と静血装くらいしかないじゃない。ツマンない話だったら殺すわよ?」

 

「!?・・・オイ!」

 

流石に暇つぶしのために自分の部下、最も付合いの長い同期を殺されるのは看過できない。

リルトットはそう考えバンビエッタに声をかける。

 

「何よリルトット。流石に冗談だってば。」

 

一瞬空気が凍る。

他の聖兵は怯え固まり、二人と同様に星十字騎士団員であるキャンディス・キャットニップとジゼル・ジュエルは声こそ上げないもののバンビエッタに非難の目を向ける。

尚一番新米のミニーニャ・マカロンはオドオドと右往左往している。

 

「まあまあ。バンビエッタ様には簡単かもしれませんが血装の仕組みを今一度説明していただいてもよろしいですか?」

 

そんな最悪の空気の中、当の本人はマイペースに話を進める。

 

「はあ?簡単よ。血装ってのは私たちの血液の中に霊子を流すことで防御力または攻撃力を強化する技術よ。霊子を精密に操作できる滅却師固有の、ね。」

 

「そうです。では質問ですが何故血液に霊子を流すと防御力または攻撃力を強化されるのでしょうか?」

 

「はあ!?そりゃあ・・そりゃあそういう物だから・・・じゃないの?」

 

ジュダスの言葉にバンビエッタはもちろんその場に居た全員が首を傾げる。

そういえば何でだ?

霊子を精密に操作して血液の中に通すことは、それに長けた滅却師にとっても難易度が高い。だがあくまで難しいのはそこまでで流すことさえ出来れば、後は守りたい、攻撃したいという意思に応じて勝手に動血装もしくは静血装が発動するのだ。

滅却師にとって“そういうもの”だったのだが、改めて言われてみると何故だろうか?

 

「私の以前からそれが疑問でした。そこで私はその仕組みについて我が師キルゲとディスカッションを行い一つの仮説を立てました。」

 

「簡単に言えば我々滅却師固有の機能です。根拠としては滅却師以外に使い手がいないこと、そして血装発動時に現れる紋様です。」

 

「紋様?どーいうこと?」

 

「まず一つ目ですが確かに難易度は高いですが、今までの長い歴史の中で死神にも一人も血装やそれの類似技術すらありません。それは鬼道など霊子、霊力を扱う技術があるのに、です。」

 

「じれったいわねえ。それは最初にワタシが言っていたように、血装を起動出来るレベルで霊子を精密に操作できるのが滅却師しかいないからじゃないの?」

 

「その可能性はもちろんあります。でもいくらなんでも一人もいないのは不思議ではないですか?千年前に滅却師を滅ぼした際にそういう物があるって知っているのに。」

 

「次に紋様についてですが、もし血液に霊子を流して現れるとしたら不思議じゃありませんか?もし血液、血管なら人体模型みたいにグニャグニャした紋様が浮き出るはずなんです。でも現れるのは回路みたいなオサレな紋様です。

つまり血液に霊子を流すのは血装という機能を起動するスイッチであって、機能そのものは血液もしくは血管とは別の器官によって発動しているのでは?と思ったんです。」

 

「確かにアンタの言っていることは理屈が通ってる気がするけど・・・アンタいつもそんな小難しいこと考えてるの?」

 

「いつもではないですけど・・・割と?リルトット様はよく聞いてくれますよ?」

 

ヤレヤレというリアクションを行うジュダス。

微妙にイラっとするバンビエッタ。

 

「話を進めます。最後に根拠になったのは先日陛下が反抗勢力を処刑するのに使用した“外殻静脈血装”です。アレ血液が噴出し続けてるわけでもないのにバリアみたいになるでしょう?アレを見て私は考えました。我々滅却師の身体には血装を発動するための器官がある。だから体外でも出来るのでは?と。」

 

ジュダスはおもむろに上着を脱いで一段高い場所に立ち全員を視界に入れるように振り向く。垣間見える胸元や腕の筋肉は細く鍛え抜かれ、野生の肉食動物を連想させる。

 

「っ。」

 

ジュダスの意外といい肉体を見てつばを飲み込むキャンディス。

かーっ!見てみんねえ!卑しか女ばい!

 

「その仮説を前提に俺は鍛錬を積みました。その過程で私たち滅却師には疑似的な神経回路があることに気付いたんです。それを意識して霊子を色々な方法で流してみて会得したのがコレです。ハッ!」

 

駆け声と共にジュダスは鍛錬により新たに会得した血装を発動する。

身体の右側が赤く、左側が青く輝いた。

 

「「「キモい!?」」」

 

キモかった。

 

「あれだけ前話を振ってコレ?キモいんだけど?」

 

「ア〇ラ男爵か?」

 

「リルトットアレはどちらかと言うと超〇神だろ、シンメトリカルドッキングしたんじゃないか?」

 

「すみませーん!ジジが笑いすぎて痙攣してますー!?」

 

「解せぬ。」

 

「いや前半は確かに興味深かったけど最後にソレはちょっと・・・動血装と静血装を同時に行ってるのは凄いけど絵面が酷すぎるわ。」

 

「ちなみに普通の動血装と静血装をそれぞれ筋力100%、防御力100%とするならばコレはそれぞれ50%づつの強化です。

コレを更に発展させるとこうなります。【静動轟一】」

 

超竜〇なジュダスに紫色の紋様が浮かび強大な霊圧が部屋内を蹂躙し、

その場全員が重圧に押しつぶされる。

尚霊圧の大きさは1アイゼン位である。

 

「な、なによこの霊圧!あんた何なのよ!?」

 

この男は自分をいつでも殺せる。

その事実に気付いたバンビエッタは怯えた。

まさにバンビ(小鹿)のような有様で、それを見たゲラ気味な某男の娘は這いつくばりながら興奮した。

 

「ちなみにこの状態はすごく強いんですけど、あと10秒くらい続けると割れた水風船みたくなるんですよね、俺が。」

 

「ちょっと止めてよ!?私は面白いモノが見たいんであってグロ画像が見たいわけじゃないのよ!?」

 

「了解しました。解除。」

 

静動轟一の解除と共に圧力は霧散し全員がほうっと息をつく。

バンビエッタはまさか部下にパワハラ(無自覚)しただけでスプラッタ映画な展開になるとは思わなかった。

リハクもびっくりだ。

 

「・・・・」

 

だが一息つき冷静になると徐々にバンビエッタの内心は羞恥と怒り、そして恐怖で満たされる。

聖文字を与えられ自分を害することが出来る存在はほとんどいなくなった。

それは他の星十字騎士団を含めてもだ。

なのに今こうして自分の目の前に聖文字を持っていないにも関わらず自分を害する存在がいる。

目の前で床に正座させられてリルトットに説教されているジュダスというナニカ。

これから先このまま成長したらコイツはワタシより強くなる!

そしたら少しイジッただけのワタシを逆恨みしてきっと復讐しに来る!

 

(怖い。殺さなきゃ!今ならまだ殺せる!)

 

元来臆病なバンビエッタは恐怖にかられて爆撃(The Explode)を発動した。

 

 

 

バンビエッタからモノを爆弾に変える霊子が放たれる一瞬前、ジュダスは霊子の流れからバンビエッタの能力の発動を予見した。

同時にバンビエッタが正気ではないこと、このままではリルトットが巻き込まれることを理解した。

ジュダスは周囲には隠していた周囲の霊子の隷属の域まで達している制御能力を発動させてバンビエッタの霊子そのものを分解・吸収し、正座の姿勢のまま飛廉脚の応用で部屋から逃走した。

その際、自身の能力を無効化され呆然とするバンビエッタを跳ね飛ばすが、この時点でジュダスはリルトットごと爆破しようとしたバンビエッタのバスターをバインバインすることを決意する。

 

 

 

その後何故かバンビーズの面々と共にグランドマスターのハッシュヴァルトに説教された。

 




1年後に一護を見て絶望する主人公


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3話

「ねえジュダスあんた序列ってものが分かってないようね。」

 

「はあ序列ですかバンビエッタ様。」

 

日々鍛錬に励むジュダスは先日の〇竜神降臨から頻繁にバンビエッタに絡まれるようになった。

その際狂乱したとはいえ敬愛するリルトットを爆破しようとした彼女については、彼の中で噛みすぎて味のしないガムより僅差でマシという扱いである。

面倒くさいと感じているジュダスは近くにいるリルトットや他のバンビーズの面々に助けを求めるが目線を合わせて貰えなかった。

 

「まあ・・・確かにな。」

 

「だよな~。変な動きでアタシたちをからかってたもんなあ。」

 

「そうだよね~。キャンディちゃん天井に張り付いたジュダス君に驚かされたり超高速反復横跳びで涙目だったもんねえ。」

 

「ウルセエ!焼き付くされてえか!?ジジ!」

 

「何気にワタシの拳相殺されてショックでした。」

 

先日少しハッチャけすぎたようで助けがない。

俺の直属の上司にして付き合いが一番長い親友は、俺を見捨てていた。

ガッデム!

 

「・・・それで今日は何ですかバンビエッタ様?」

 

「ひう。あ、あんた最近私の扱い雑じゃない・・・?」

 

「気のせいではないでしょうか?バンビエッタ様。それで具体的にはどうすればよろしいので?」

 

「そ、そうよ!最近少し私たちに対するアンタの態度が悪いのよ!だからまずはアンタが私たちのことを心の奥底でどう思っているのか確認することにするわ!」

 

塩対応しているのはバンビエッタだけのつもりなのだが。

再度リルトットたちを見るが助けてくれる気はないようだ。

 

「それでどうすれば良いのでしょうか?」

 

「その為に今日は協力者を連れてきたわ!」

 

バンビエッタの声と共に一人の男が部屋に入ってきた。

星十字騎士団「Q」ベレニケ・ガブリエリ

それが男の名前だった。

 

「僕はベレニケ。今日はバンビエッタに脅s、協力を依頼されてね。

僕の力「異議(The Question)」を使うんだ。もちろん本来の使い方とは異なるが質問を行うことでその解答を強制させることが出来る、もちろん嘘はなしだ。」

 

「そうよ!だからアンタは今から私がする質問に嘘をつけないの。覚悟することね!」

 

(気に食わない答えをしたからと言って、どうするつもりなんだろう?全力で反抗するつもりだけど。)

 

「まずは手始めに・・・そうねえ。このベレニケについてどう思っているのかしら?」

 

「えっ僕?」

 

「影の薄い人」

 

「君酷くない?」

 

「そんなの当り前のことじゃない。もう少しないのかしら?」

 

「能力を説明する間もなく登場して1コマで喉えぐられて殺されそう。」

 

「怖っ!?なにその具体的かつむg「まあそんなものね。」そんなものなの!?」

 

ベレニケさんは素晴らしいツッコミ力だな。

 

「じゃあ・・・本番よ!アンタ私の事をどう思っているのかしら?」

 

「顔、スタイル共に美しく非常に好みの容姿をしています。胸は大きいのに腰は細くすっとした長い脚など100点満点に近い。また黒髪ロングなどもかなり得点が高いですね。俺が知っている女性の中でも3指に入ります。」

 

なんだと!?

俺の内心が暴かれていく!

ベレニケ、なんて恐ろしい男なんだ!?

俺の性癖が、聖域が白日の下に晒されてしまう!!

 

「へ、へえ。ふ~んアンタ私に事そういう目で見てたのねえ!まあ身体はなかなか良いモノを持ってたけど、アンタみたいなフツメンには欠片も興味はないけど!」

 

イラっ

 

「ただ・・・」

 

「・・・ただ?」

 

「内面が男が想像する女性の嫌いなところだけを集めて煮込んだようなクソみたいな性格なので、外見と合わせて総合的にマイナスですね。嚙みすぎて味のしなくなったガムにギリ勝てるくらいの好感度です。」

 

「ハア!?何よアンタ!!ぶっ殺すわよ!?」

 

「前半の外見については凄い高評価なのに、総合で味のしなくなったガム程度の好感度って・・・中身クソ過ぎない?」

 

ベレニケさん割と言うね。

 

「オイ!ジジがまた爆笑し過ぎでビクビクしてるぞ!?」

 

「ジジ様がまた死んでおられるぞ。」

 

「~~~~じゃ、じゃあミニーニャ、ミニーニャのことはどう思ってるのよ!?」

 

「え、ワタシですか?」

 

「発育の暴力。」

 

やべえぇぇぇ!

セクハラで訴えられたら完敗だよ!?

バンビエッタならどれだけイジっても問題ないけど他のメンバーは不味い。

これ以上は色々な意味で・・・

 

「おっぱいが大きくとても全身がフワフワと柔らかそうな可愛らしい容姿をしています。」

 

ストップ。

まじでストップ。

 

「ただあまり接点がないせいか内面についてはよく知らないので、少し重そうというか怖い女ってイメージがあります。」

 

やばい。

前半とは別の意味でヤバい。

前半がセクハラ的な意味でヤバいが後半は生死的な意味でヤバい。

 

「・・・・・」

 

なんかリアクションしてえ!?

 

「プッじゃあジジは?」

 

バンビエッタ本当に性格が悪いな(確信)。

お前気づいてるか?

ミニーニャ様の視線俺だけでなくお前にも向いてるぜ?

ベレニケさんなんか顔面蒼白で静血装展開してるっていうのに・・・。

うん部屋の出入り口が塞がれた。

 

「可愛らしいですね。あとニッチな分野で凄いファンできそうですよね。」

 

「ん~まあねえ!」

 

セエェェフ!

ある意味一番ヤバそうな気配のするジゼルさんは喜んでいる。

マジセェェフ!!

 

「でも自分ボンッキュッボンが好みなのでそう意味ではあんまりですね。そもそも可愛くても男の娘は俺の対象外です。」

 

ピシっ

ジゼルさんが停止した。

 

「・・・・」

 

なんかリアクションしてえ!?(2度目)

 

「ひっ・・・じゃ、じゃあキャンディスは!?」

 

「え?・・・ジゼルって男なの!?嘘だろ・・・かわいいと思ってたのに・・・。」

 

オラ!バンビ!まだ被害を広げるつもりなのかコラ!?

何気にベレニケさんにも流れ弾が飛んでってるぞ!?

 

「キャンディス様は派手な容姿ですが美人ですし正に理想のボンッキュッボンですね。ギャルっぽい感じも俺は好きですね。内面もキツそうですが、普段の様子を見ていると・・・何というか・・・割と真面目というか可愛い気がしますね。」

 

「・・・・」

 

なんかリアクションしてえ!?(3度目)

 

「でも普段の言動からビ〇チというか性に奔放そうな感じなんですよねえ。まあそれでも男としては興奮しますし、処〇厨というわけでもないのでバッチコイなんですけどお付き合いしてからもビッ〇は勘弁してほしいです。自分NTRれ趣味無いので。」

 

「・・・・」

 

なんかリアクションしてえ!?(4度目)

それほど酷いこと言ってない気がするけど、位置取り的にキャンディスさんの

様子が全く分からないんで怖いんですけどぉ!?

 

「ん~じゃあリルトットは?」

 

バンビ何が不満なのか。

既に俺も含めてこの後は地獄絵図しか想像できないぞ。

見てみろよ?俺たち以外の聖兵皆逃げたんだぜ?

 

「リルトットですか・・・彼女は実は同期でしてその時からの付き合いですので、本当に長い付き合いです。」

 

ヤメロォ!?

 

「彼女も口調がキャンディス様と同様で乱暴というか荒いですが、見ての通りとても可愛らしい容姿をしています。ある意味あのキュートな少女然とした容姿に「オレ」という男っぽい一人称に乱暴な口調のミスマッチも中々に魅力的、ああこれがギャップ萌えか。

ほかにもあの綺麗でサラサラの髪、いつもちゃんとケアしていて帽子をぬぐとキューティクルが整っていて天使の輪が輝いているんです。常時完聖体といっても過言ではないと思うんですよ。内面でいうと常に努力を欠かさず頑張り屋さんでしていつもクールを装っているんですが可愛いモノやあまいものが大好きなんです。彼女の能力上食事が多いのでよく自分が作るんですがいつも美味しそうに食べてくれて美味しいとお礼を毎回行ってくるし、片づけを手伝ってくれて、もちろん仕事の時の自分の仕事をきっちり行ったうえで俺を助けてくれたりねぎらいの言葉をかけてくれて・・・あああとは彼女も料理が旨いですし、掃除など家事一通り出来るんです。女子力は凄いです。・・・本当にいい子ですね。(早口)

つまりですね、リルトットは凄く可愛くて魅力的な女の子なんですよ。」

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛アアア!!」

 

「オイ、リルトットの奴両手で顔を覆って動かないぞ?顔真っ赤だ。」

 

「リルちゃん悶えててか~わいい!」

 

「リルトット先輩死にかけのウーパールーパーみたいで可愛らしいですね。」

 

「え?コイツを貶めようと思って聞いたのに・・・何コレ?」

 

「俺もう帰っていいかな。凄くブラックコーヒー飲みたいんだけど」

 

「まあ自分の好みであるボンッキュッボンではないので今のところ性的な意味ではピクリともしませんが・・・これで体型も理想的だったら大変でしたね。きっと俺のバスターがバインバインするところでしたね!」

 

「ねえ唐突に私の名前を卑猥な表現に使うの辞めてくれない?」

 

「オイ、リルトット凄い虚無顔で私の胸ガン見するの止めてくんない?」

 

「とりあえずジュダス君は土下座した方が良いと思うな。」

 

「ねえ甘酸っぱすぎるんだけど。帰っちゃダメか?」

 

「どうぞブラックコーヒーです。」

 

「ありがとう。ミニーニャちゃん」

 

唐突だが俺は以前から思っていたことがある。

無数の糸状に縒り合せた霊子の束を動かない箇所に接続し、自分の霊力で自分の身体を操り人形のように強制的に動かす超高等技術 乱装天傀。

これは体外に動きの起点を作って自分の身体を霊子でコントロールする技術なのだが、霊力のロスも大きく、霊子の束そのものを砕かれるとすぐさま身体が動かなくなる。

俺は先の血装の鍛錬をする過程でこの乱装天傀を体内から起動することでそれらのデメリットを解消するに至ったが・・・同時に新たなメリットが2つ生まれた。

一つ目は隠密性。

体内で完結する事象のため、白眼でもない限りまず気づかれることがない。

二つ目は肉体操作への干渉。

精神または肉体に干渉するタイプの能力を受けた際、俺自身の制御をオートからマニュアルに切り替えることで、都度正常な状態へ修正することが可能なのだ。

流石に干渉されていること自体気づけない類だとそもそも無理なのだが・・・

つまり今回のように肉体を操作し質疑に答えるよう強制させる状態なら解除することが出来るのだ。

 

(・・・肉体の操作権は取り戻した。霊子の操作による飛廉脚改良版もイケる。

そして・・・アレもイケる!)

 

「最後に一つ言いたいのは・・・」

 

床に座り霊子の路を作る。

イメージとしてはどこぞの戦闘機人の使うウイングロードだ。

一瞬で道を作り、一瞬で駆ける!

失敗すれば俺はここで社会的にも物理的にも不味い気がする!

 

宙を浮かぶ道を作る。

自分の身体を加速し、道を駆ける。

まだ足りない。

向かい風の影響を少しでも少なくするために寝そべる。

最後に・・・揃えた両足を静血装で防御して霊子に点火する!

 

「今からしばらく休暇をとります。」

 

バンビーズの面々がこちらの意図に気付き動き出す。

・・・リルトットちゃん滅却師完聖体まで使わなくてもよくない?

 

「爆撃(The Explode)」

 

ドオン!!

 

一気に加速して俺は窓から飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星十字騎士団最高位ハッシュヴァルトの朝は早い。

日中はユーハバッハの補佐に加えて他の癖の強い星十字騎士団員たちの監査及び指示を行う。

その他にも個人で滅却師達の避難先の手配もある。

もちろん自身の鍛錬も欠かせないし、ユーハバッハの急な思い付きで余計な仕事が増えた時などThe Balance(ザ・バランス)を使用してこっそりバズビーに不幸を押し付けようかと考えるほど多忙を極める。

 

「今日もいい天気だ。」

 

ハッシュヴァルトは爽やかな朝日を見るのが好きだ。

美しいし、生命力に溢れており、自身にも活力が沸いてくる。

この日も彼は朝日を眺めて己を奮起させていると・・・

 

「涅槃のポーズで空をかっ飛ぶ不審者」と目が合った。

 

「なん・・・だと・・・!?」

 

ハッシュヴァルトにとって忘れられない夜明けとなった。

 




シャンフロのギャラクシア・ヒーローズ編は良いぞ!


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4話

「すいませんキルゲ先生少しの間泊めてもらえないでしょうか?」

 

「構いませんがどうしたのですか?」

 

ジュダスはバンビエッタによる審問会から逃亡し師であるキルゲの元を訪ねていた。

他はともかく付き合いの長いリルトットは自分の人間関係など全て知られているのでほとぼりが冷めるまで身を隠したとしてもすぐに見つかってしまうだろう。

だが唯一キルゲについては彼女が星十字騎士団員として昇進する前後の多忙な時期に知り合ったため彼のところならば大丈夫だろうと考えたのだ。

 

「少し自分の無力を自覚する機会がありまして・・・改めて鍛えなおそうと思いまして。」

 

「ふむ。何があったのか聞きませんが・・・己を高めんと努力する姿勢には好感を持てますね。・・・良いでしょう!幸いこのキルゲ・オピー、丁度まとまった休暇を頂いてきたところです!敬愛する陛下に会えないと沈んでいましたが可愛い教え子に協力を求められたのならば!全力で協力しましょう!」

 

「いやそこまでは言ってないんですが・・・・でも協力していただけるなら助かります。」

 

「まあ今日のところは食事でもとってのんびりしましょう。丁度良いブランデーが手に入ったんですよ。」

 

「ええ・・・。俺も先生も酒に弱いじゃないですか。ワインとかならともかくブレンデーは不味いのでは?」

 

「大丈夫です。二人とも弱いのは自覚しているのですから注意していれば問題ないでしょう。なあに多少酔っても明日も休みなのですから寝坊しても誰に迷惑をかけるわけではないのですから!」

 

そして思い出話に花を咲かせながら夜は更けていく。

普段自分かリルトットくらいしか味あわない料理の腕をキルゲに堪能してもらった。

彼のお気に入りは塩唐揚げである。

 

「・・・そこで俺はリルトットちゃんは可愛いって言ったんです!そしてそれと同時に飛廉脚改良版とバンビエッタ様の爆発の模倣で逃亡に成功したんです。」

 

「なるほど。素晴らしい!私もあなたとのディスカッションを経て飛廉脚改良版こそ会得しましたが血装はあなたの足元にも及ばない。特に聖文字の能力の模倣など・・・驚愕を通り越して恐怖を感じるほどです。」

 

「またまたあ!先生持ち上げすぎですよ!模倣って言っても触れたものを爆弾に変えてるんじゃなくて霊子そのものに“爆発する”という性質を付加しただけですよ。ただ・・・最近行き詰ってまして、血装も飛廉脚も一応は完成と言っても良いんですが・・・新たに何を鍛えようかと・・・悩んでまして。」

 

「ふむ。難しい問題ですね・・・。あ、もう1杯どうぞ。」

 

「ありがとうございます。どうぞ返杯です。」

 

「ありがとう。ありきたりですが基礎を鍛えるというのも一つの道ですが・・・貴方には不要でしょう。基礎鍛錬という点においてあなたに勝る人間はいないでしょう。

そもそも最近の星十字騎士団員は陛下より与えられた聖文字の能力にばかりかまけて基礎が疎かになっています。もちろん一般の聖兵に比べれば優れていますが・・・能力ありきの戦闘となっています。万が一能力が通用しない場合、途端に弱体化する。私の「J」の能力が滅却師に使用できないからと言って舐めた口を利いてくる輩が多いし。ちょっと強い力に目覚めただけの俗物があ!!」

 

「溜まってますねえ。どうぞハイボールも唐揚げに合いますよ?」

 

「コレも中々。どうぞ秘蔵の日本酒です。確か・・・DASSAIでしたか。」

 

「結構いい酒じゃないですか!うん旨い!そこで基礎錬はもちろん続けるんですが何か他にパワーアップするのにいいアイデアは無いですかね?乾杯!」

 

「乾杯!う~ん基礎錬により君のスペックは下手な星十字騎士団員より上です。特に頑強さには目を張るものがありますし・・・そうだ!貴方には経験が足りません。ここは実戦形式でシンプルに体術を鍛えてみたらどうでしょうか?ウォッカで乾杯!」

 

「hooo!!乾杯!そうすっね!では問題は何の体術にするかですが・・・中国拳法?」

 

「何故中国拳法?」

 

「いやなんか格好いいし、凄い強いイメージなんですよね。老酒ロックで乾杯!!」

 

「ロックで乾杯!!中国系と言えば蒼都君ですが・・・彼はあまりそういうぶじゅくに通じているという話を聞いたことはないですねえ~。」

 

「先生呂律が回ってないですよ~。一周回ってブランデーを直飲みしちゃう~!」

 

「まったく中国拳法を使えないなんて中国人の風上にも置けないですねえ」

 

「ははは!それ言ったら俺だってジュードーもケンドーも出来ませんよ?ニンジツは少しできますけど!」

 

「ふふふふふふふ何を言ってるんですかジュダスはヨーロッパ?系でしょう?乾杯!」

 

「いやあ俺の前世は日本人なんですよかんぱい。」

 

「フハハハ!冗談がつまらないですよ乾杯&乾杯!」

 

「あはははは!あ!!そういえば現世でDVDを買ってきたんですけど見ません?」

 

「ほう映画ですか。何がありますか?チー鱈は正義ですね。」

 

「ビールジョッキ!」

 

「テキーラ!」

 

「タイトルは「ぐらんぶる」「リベリオン」「逃げるは恥だが役に立つ」の3本ですね。どれ見ます!?」

 

「all for one! One for all!」

 

「つ~ま~り~?」

 

「今夜は徹夜ですべて見ます!」

 

「yeeeee!!」

 

夜も更け・・・机の上、床の上、キッチン。

全ての場所に多種多様の酒瓶が転がり、キルゲとジュダスは完全に出来上がっていた。

空気そのものがアルコールに侵され、まさに致命的だ。

 

「ガンカタかっけええ!!」

 

「・・・ふむ新○結衣ですか・・・。この気持ちは恋?」

 

「先生それは恋です!だから時代は二丁拳銃ですなんです!!」

 

「二丁拳銃は格好いいに決まっています。どうせならガンソードにしてスタイリッシュに乾杯!武器を作りませんか?もう一回乾杯!」

 

「見えざる帝国には海がないからな・・・新○結衣・・・どん兵衛の妖精?・・・狐?・・・お前だったのか、ごん。」

 

「聞いていますかあ!?もっしも~~~し!!」

 

「目があ!?アルコールで消毒だ!」

 

「「乾杯!!」」

 

「拳銃を使ってる人っていましたっけ?」

 

「拳銃ならロバート殿、銃というくくりならリジェ・パロ殿もですかねえ?」

 

「あ~・・・ああ爺さんとジョジョ6部とかに出てきそうな人か。」

 

「フハハハは!6部!?フハハハ!6部!ウーロン茶で乾杯!」

 

「PaB式ウーロン茶で乾杯!」

 

「ほかに何を鍛えますかねえ!」

 

「ん~二人でギブスを~つけて~ムキムキになりま~す!そしてとりあえず爺さんに拳銃をガンカタを教えてもらいます!」

 

「CANKATA!ああ!そうだ霊子そのものをどうにかしてどうにかなりませんかね~!」

 

「唐突に閃いた!霊子を周囲に巻き散らかして~・・・何か攻撃してみて「オラア!!」は~や~い!なんちゃって見聞色の覇気!」

 

「素晴らしい!」

 

「腕の筋肉一本一本に霊子を通して~筋力アップ!さらに皮膚に霊子を通して硬質化!ついでに神経にも通してクロックアップ!!おら!武装色の覇気だコラア!?」

 

「ウボア!?私の全力の静血装をあっさりと抜くとは・・・。――――――――あれ?蒼都君の上位互換では?」

 

「一発芸マーライオン行きまっす!」

 

「安心してください。履いてますよ!」

 

「「乾杯!!」」

 

 

 

 

 

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛頭が割れるように痛い・・・。オロロロロ!?」

 

「・・・・・・は、覇気が出来てる。・・・どういう理屈で出来てるんだコレ?」

 

次回

ガンカタ編に続く。

 




アルコールを摂取した勢いで執筆。
この小説でぐらんぶるネタを書きたいな。


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5話

初代護廷十三隊は皆格好良かったですね!
まあ個人的には雀部のアンブッシュが一番印象深いです。
そりゃ真っ先に殺されるわ、と思いました。







初代護廷十三隊は皆頭剣八かよ、怖すぎるわ。


久しぶりにキルゲと飲み明かし、ダウンした日の翌日・・・の翌日。

ジュダスはキルゲの紹介で「N」の聖文字を与えられた星十字騎士団員ロバート・アキュトロンと会っていた。

お互いに自己紹介を行った後、ジュダスは自分に出来る動きを実際に行ってみせた。

素早くトリッキーに動き覇気もどきや血装を用いて大地を砕く。

 

「ふむ。確かにキルゲの言う通り、いえそれ以上のスペックのようですね。」

 

「ありがとうございます!」

 

やはり好きでやっているとはいえ、キツイ鍛錬の成果を認められるのは嬉しいものだ。

ジュダスはつい顔が綻んでしまう。

 

「ですが同時にいくつかの問題点も見えてくる。」

 

「えっ・・・」

 

「まずはキルゲの言う通り実戦経験の無さが垣間見えます。動きが型通りという点であったり、貴方の技術は革新的ですが・・・なんというか机上の空論?実戦で目まぐるしく変わる状況に対して取捨選択出来るほど習熟していない印象があります。」

 

「あー・・・確かにそうですねえ。やはり実戦経験の機会がないのが痛いですねえ」

 

「まあそれは仕方ない。一昔前なら抵抗勢力狩りで経験を積めましたが、今はそういった勢力もほとんど居ませんし・・・虚や死神などもってのほかですからね。」

 

キルゲがロバートの言葉に同意する。

滅却師が死神に滅ぼされる200年前までは虚や死神との戦闘経験を積む機会もあったのだが、戦いに敗れ潜伏している現在はそんな機会も無い。

同様に以前はいた抵抗勢力の掃討も最近はほぼ無い。

 

「ああ先ほど見せてもらったリベリオンという映画は非常に興味深かった。ありがとうございます。アレを習得したいとの話ですが・・・端的に言うとジュダス君には向いてませんね。」

 

「ええ!?」

 

「正確には習得する意味がない、ですが。」

 

「ああやっぱりですか。」

 

ロバートはもちろんキルゲも容赦のない駄目だし。

ジュダスのメンタルはもうボドボドだ。

 

「ジュダス君。私が分析したガンカタの性質ですが、あの武術のメインは“払い”によって防御し、打撃の代わりに超近接からの射撃することです。」

 

「もちろん銃床などを用いた打撃もありますが、リソースの多くを“払い”による防御や相手の体勢を崩すことに使用しており攻撃力については拳銃そのものの性能に依存しています。」

 

「なるほど・・・つまり鍛えぬいた身体、血装、覇気?によりスペックお化けのジュダス君の場合は・・・」

 

「はい。態々銃を打つよりシンプルに殴った方が効率がいいし威力も高い。」

 

「つ、つまり俺にとってガンカタは・・・?」

 

「「格好よさ以外が意味がない。」」

 

「ウワアアアア!?」

 

ジュダスは崩れ落ちた。

二人の正論パンチがジュダスを打ちのめしたからだ。

 

「まあ“払い”の技術自体は有用でしょうが、シンプルに空手とか、先ほど言っていた拳法など肉体を武器とする体術の方が相性がいいでしょう。」

 

へんじがない しかばね のようだ

 

「そういう方向性でいくなら、やはり銃もしくは弓は遠距離もしくは速度重視でけん制を主眼にするべきでしょうね。」

 

「・・・ロバート。残念ながら彼は虚弾もどきも虚閃もどきも使えるのでそういうのは自前で出来るのです。」

 

「銃要りますか?もう手甲だけあれば良いのでは?」

 

「それは・・・まあロマンですから・・・」

 

「ならば仕方ないですね。では・・・いっそのこと威力や遠距離、範囲などにのみ特化させるのも一考の余地があると思います。」

 

「なるほど。私は逆に多種多様の性質を持たせるという方針を推しますね。・・・ここにダ〇の大冒険という漫画があります。コレには魔弾銃というものが・・・」

 

「ほうほう」

 

「業腹ですが死神たちの鬼道についても情報を集めております。これらを習得出来れば・・・」

 

「興味深い・・・ですがそこまで注ぎ込んでジュダス君に習得できますかね?難しいのでは?」

 

「そうですか?・・・彼は例えるなら超巨大な基礎があり、さらに多種多様な材料や重機などがご丁寧に揃えられているような状態です。あと足りないのは設計図そして工事を進める作業者です。(ニチャア)」

 

「なるほど作業者ですか・・・(ニチャア)」

 

「まあ実際は鬼道習得は時間が無いですし、魔弾銃を開発できる人間なんてありませんから無理でしょうけど。」

 

「・・・なぜ滅却師には研究者枠がいなんでしょうか?死神にも虚にすらいるのに・・・」

 

「・・・」

 

粛々と本人を放置してジュダス強化計画が立てられていく。

誰が悪いかというと、基礎スペックが高いくせに戦い方の基礎が出来ていないジュダスが悪い。

伸びしろがあって何でも無茶ブリ出来そうな奴がいたら・・・仕方ないよね?

 

「後は・・・切り札のようなものが欲しい。予定通りなら彼の戦闘力は多くの星十字騎士団に勝てるものになるでしょうが、例えばペペのような彼自身に干渉するような能力には滅法強いですがバズビーやバンビエッタなどの純粋に戦闘力に長けるタイプには決定打が足りません。」

 

「同感です。更に親衛隊の力は反則ですからね。勝てるビジョンすら見えませんな。」

 

「ふふ久しぶりに燃えてきました。。もし許されるならグレミィに色々相手を用意してもらって実戦経験を積ませたいですが我々でどうにかするしかありませんね。」

 

「キルゲもですか?私も老骨に鞭打って体術の基礎くらいは仕込みましょう。後は彼自身で自分で落とし込めばいい。今はただの喧嘩殺法ですから。」

 

「「ふふふふふ」」

 

それからキルゲとロバート、他数名の有志(・・)により可愛がられたジュダスはボロボロの状態でリルトットの元に戻された。

それ以降リルトットの補佐をしながらジュダスは毎日ヤムチャする日々が続く。

 

 

 

 

半年後、星十字騎士団員の合同鍛錬がユーハバッハの名の下に発令された。

 




ジュダスにガンカタを覚えさせるといったな?アレは嘘だ。

実際はマジでガンカタを覚えさせようと思ったけど、シミュレーションすると覚えさせるメリットが格好良さ以外無くない?と思いました。
ガンカタへの理解不足なども有るかもしれませんが・・・


後ジュダス君長年の鍛錬でスペックお化けですが、経験不足&決定力不足です。
状態異常系には自己回復可能なので滅法強いですが、シンプルに戦闘力高いタイプだと普通に殺されます。

仮にバンビエッタとか霊子を分解・吸収出来ない勢いで飽和攻撃されたら詰みます。


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6話

ジュダスは孤児だ。

幼い時の記憶は曖昧で、もの心着いた時には“見えざる帝国”の孤児院にいた。

ある程度成長した後、孤児院に出資していた帝国に見習いとして引き取られた。

このころからジュダスは鍛錬に心血を注ぎ始めた。

今では半ば趣味になっているが、切っ掛けは早く一人前になっていい生活をしたかったからだった。

しばらくして正式な聖兵になったときリルトットと出会った。

最初はたいして親交はなかった。

男女の性差もあったし、当時は上を目指していたから必要以上に他人と接するつもりがなかったからだ。

ただ何が切っ掛けだったか。

自分が作った料理を彼女が食べて笑ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

(何か夢を見ていたような?)

 

現在ジュダスは地獄の中に居た。

当初はロバートとキルゲに痛みと共に体術を身体に叩きこまれ、後はひたすら摸擬戦を繰り返していた。

途中から「滅却師矯正ギプス」なる散霊手套を元に作成された狂気の産物をつけられた。

霊子制御はぐちゃぐちゃだし身体に延々と負担はかかるしなんか臭かったし。

ギプスに何とか慣れてきたころ、人が増えた。

 

リルトットに食事を作ったり、マスキュリンにサンドバックにされたり、リルトットの部屋を掃除したり、ミニーニャに埋められたりした。

バンビエッタに吹っ飛ばされたり、リルトットに食事を作ったり、キャンディスにビリビリされたり、マスキュリンにサンドバックにされたり、マスキュリンをサンドバックにしたり、

突如復活したマスキュリンに再度サンドバックにされたり。

リルトットの業務を手伝ったり、マスキュリンをサンドバックにしたり、何故かキレッキレのハッシュヴァルトに気絶させられたり、キルゲやロバートにギプスを強化されたり・・・。

最後らへんにはバンビエッタ、マスキュリン、ジェラルドの合間にリルトットの食事というルーティーンが出来ていた。

ジェラルドさん良い人なんだけど手加減が下手すぎるよ・・・。

後マスキュリンとバンビエッタは必ず死なす。

 

気づけば半年の期間が経過して徐々に動きがよくなったころ・・・

俺は変な仮面を渡されて、星十字騎士団員の合同鍛錬という初めての試みに連れてこられたのだった。

ギプスは外してもらった。

 

(どういうことなの?)

 

目の前に星十字騎士団員が全員整列している。

俺はというと仮面のせいでうまく声を出せず、呆然としていた。

 

陛下が来られた。

そして傍に控えていたハッシュヴァルトが声を発した。

 

「今から星十字騎士団員合同で摸擬戦を行う!バトルロワイヤル方式で行う生き残り方式である。親衛隊含め一部の団員は参加しない。そして星十字騎士団員候補生の試験も兼ねている。これは陛下がご覧になられているので心するように!!」

 

ざわっ

 

現役の星十字騎士団員たちは気になっていた。

重厚な金属製の四角錐を被ったボロボロの服を着た半裸の男。

一目見てペペとは別ベクトルでヤベえ奴がいるとは思っていたが、まさか十字騎士団員候補生とは・・・。

 

「お前たち。」

 

空気が硬質化する。

 

「今回摸擬戦を企画したのは他でもない。先日、星十字騎士団全員を選定したがどうにも私はお前たちの一部は与えた能力の胡坐をかき、成長が見られないと感じた。価値無き者は不要。見込みのある者にチャンスを与えるべきだと思わんか?」

 

一部を除き星十字騎士団員の視線がジュダスに突き刺さる。

その目は既に不審者を見る目ではなく、敵を見る目だった。

 

「うむ。やる気が出たようだな・・・そうだ候補生より先に倒れたものは“聖文字”をはく奪するとしよう。所詮その程度の者ならいくらでも代わりはいるだろう?」

 

(何言ってんのこの髭。俺にヘイト集中させるんじゃねえよ!?)

 

「陛下。」

 

「なんだバズビー。」

 

「ハッシュヴァルト、アンタじゃねえ。俺は陛下に話しかけたんだ。」

 

「陛下は言うべきことは既におっしゃられた。何か疑問があるのならば私が答えよう。」

 

ハッシュヴァルトの言う通りユーハバッハは既に興味がないのか玉座に座っている。

 

「チッそこの見習いは何なんだよ。そんな奴初めて見たぞ?」

 

数人の団員が同意の意を示す。

彼らは少しでもこの未知の敵の情報を集めるつもりなのだ。

 

「ふむ。彼の名前は・・・・・・レッドピラミッドシング君という。」

 

「明らかに偽名じゃねえか!?」

 

「名前などどうでも良いことだ。今ここで関係あるのは強いか弱いかだけだ。そうだろう?」

 

「てめえ・・・!?」

 

「だが折角だ。レッドピラミッドシング君挨拶を。」

 

え!?

この空気の中で挨拶!?

ハッシュヴァルトはバズビーを煽ってんの?

ま、まあ挨拶は大事だもんな。

 

「コロシテ・・・コロシテ・・・。」

 

「挨拶じゃねえじゃねえか!?ソイツ大丈夫か!?寿命とか感情とか何か大事なものを犠牲して強さだけを求めた悲しき怪物じゃねえよな!?」

 

何か勝手に音声を変換してる――――

ジュダスはハッとして陛下のそばに控えているロバートを見やる。

親指をサムズアップするクソジジイ。

 

「陛下にガンつけてやがる!?」

 

「狂犬じゃないか。」

 

「姿も内面もただモノじゃないっ!?」

 

「おかしいわね・・・何か見覚えのある筋肉なんだけど・・・・」

 

「奇遇だなバンビエッタ。俺も知ってる気がするんだが・・・?」

 

「バンビエッタ先輩、リルトット先輩!またジジ先輩が腹筋をやられました!」

 

「何アレ、怖・・・」

 

「お前がソレを言うのか・・・。」

 

エス・ノトが呟いた「怖い」という言葉に突っ込むナナナ。

 

「陛下にもガンつけるたあ普通じゃねえ!・・・良いだろう。お前をぶちのめす!んで次はハッシュヴァルトてめえだ!」

 

「残念ながら私を含め親衛隊、そしてキルゲとロバートは参加しない。」

 

「オレサマ!オマエマルカジリ!(マジで!?良かった!)」

 

「なんだとぉ!?やっぱりソイツ悲しき怪物じゃないのか!?」

 

殺伐とする空気。

尚、久々にバズビーと会話が続いたハッシュヴァルトはニッコリだ。

 

「それではそろそろ開始とする。3・・・2・・・1」

 

「っち!速攻終わらせてやる!」

 

その場の全員が構える。

ある者は武器を構え、またある者は霊圧を高めてくる。

ある者は笑いながら気配を薄め、ある者は能力を発動しようとする。

 

「開始!!」

 

瞬間、ジュダスは地を駆ける。

 

「お前の全てに異議が―――」

 

ベレニケが能力を発する前に接近、首を絞め頸動脈を圧迫、

ベレニケの意識は失われた。

 

「ガアアアッ!!」

 

続けて大猿に変化しかけていた「R」の聖文字を与えられたジェローム・ギズバットを武装色の覇気と動血装を同時発動して殴り倒す。

 

「マズ フタリ。(まず二人)」

 

この二人は良いところ一つもなく倒された。

あまりに情けない結末に、きっと今後二人こういった倒され方を警戒することだろう。

 

「やるじゃねえか!だが俺をその雑魚二人と一緒にするんじゃねえぞ!!」

 

気炎を上げるバズビー。

他の者も意識を切り替える。

 

 

 

 

 

 

「・・・デデーン。ベレニケ、ジェロームOUTー。」

 

「うるせえ!ハッシュヴァルト!!」

 

残り20人

 




コミック見直すと、バスビーとハッシュヴァルト湿度が高い・・・。
後、改めてみるとバンビエッタと他4人の温度差に心が痛む(愉悦)


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7話

難産!


ジュダスは2名を無力化した後すぐさまバズビーに攻撃を仕掛けた。

理由は簡単だ。

バズビー、バンビエッタ、キャンディスが本気で飽和攻撃を行ったら霊子を分解・吸収が間に合わないからだ。

後者二人はバンビーズとして固まっていたため、まずは単独のバズビーを落とさんとした。

 

「上っ等!!」

 

指1本を立ててジュダスに向ける。

 

「バーナーフィンガー1!」

 

一筋の熱線が放たれ、膨大な高熱により空気が膨張する。

ジュダスは避けもせず霊子を分解吸収し残った高熱も血装で防ぎながら突撃。

バズビーが本気を出す前に無力化する!

 

「!? バーナーフィンガー2!!」

 

直前。

ダッシュの速度を維持したまま下段蹴りを行った。

熱線はジュダスの頭の上を奔るが影響はない。

はたから見ると2Dの格闘ゲームのようなしゃがみキックに見えただろう。

 

「ガハッ!?」

 

バズビーは足を跳ね飛ばされ宙を舞う。

体制を整えようとするが純粋な近接戦においてジュダスは彼の上を行く。

 

「ダディャーナザァーン!!(叩き落とす!!)」

 

上から下に拳を叩き落す。

地面に挟まれ衝撃波は余すことなくバズビーの身体を貫いた。

その結果、バズビーは地に沈み沈黙する。

 

「・・・(次は・・・)」

 

ジュダスは止まれない。

自力で劣る自分は意表をついて敵が全力を出す前に決めなければ敗北してしまう。

全員の能力を知るわけではないが・・・次は・・・

 

「曲がれ」

 

身体に不可視の圧力がかかる。

前屈するかのように折りたたまれるが、各種バフをかけて何とか圧力に耐える。

潰れはしないが・・・耐えるのが精いっぱいで身動きが取れない。

 

「!?」

 

「オイの能力は紆余曲折(ザ・ワインド)いちゅまで耐えれるかな?」

 

「ゲゲゲそれを待つまでもないヨ!ミーの力で終わりサ!」

 

「僕ノ力デ身動キ出来ナイヨウニ」

 

「W」ニャンゾル・ワイゾルに身体を縛られ、

更に「L」ペペ・ワキャブラーダと「F」エス・ノトの手で「愛」と「恐怖」により精神を縛られる。

 

「これで終わりだネ。」

 

精神と肉体を三重に縛られ完全に停止しする。

此処まで縛られたら動くことも、動くという意思すら発することはないだろう。

そのため未だ能力は解除しないものの弛緩した空気が流れるが・・・

 

「まだだ!ソイツに時間を与えたら」

 

「G」リルトット・ランパートが叫ぶが遅かった。

彼女が知っている人物ならすぐに復帰するだろう。

以前同系統の能力による縛りからすら自力で復帰したのだから!

 

「ガ、ガアアア!!(うおおおおお!!)」

 

自身に乱装天傀を使用、マニュアル操作で異常個所を解析・解除する。

同時に一瞬だけ静動轟一を発動し、精神と肉体の縛りを強制的に破戒した。

 

「な!?」

 

「縛道の四 這縄」

 

動きを止めたエス・ノトを鬼道で縛り上げたうえで首を二の腕で締め上げる。

完全に油断したところを締め上げたので一瞬でエス・ノトの意識は夢の世界に旅立った。

尚、同時にペペに執拗にストンピングを繰り返している。

 

「ら、ラブ・・・アビャ!?何故ミ―の能力が利かないノ!?真逆、心が無いとでもいうノ!?」

 

(解析した。もう俺に「愛」も「恐怖」も利かない。)

 

ジュダスはペペの顔面を叩き潰した後、白目をむいたソレをこちらを狙っていたバンビエッタへ投げつける。

もちろんペペは爆発して吹き飛ばされたがけん制にはなった。

瞬時に最高速へ。

ジュダスは見聞色で周囲を監視しつつニャンゾルへ接近。

彼の能力は精神の縛りではなく物理的な現象なので無効化できない。

故に早く、早く!

 

「アェ!?」

 

「無駄ら怪物。お前の拳も何もかもオイにはとろかない。全て捻じ曲がるれ。」

 

拳が自然にニャンゾルの身体を避けて地面に突き刺さる。

焦りすぎた。

深く刺しすぎたためか完全に動きが止まってしまったジュダスに対し、ニャンゾルが手をかざす。

ジュダスは咄嗟に距離を取ろうとするが、間に合わず

 

「スター・ドロップキック!!」

 

横合いからのスターの一撃を無防備に食らってしまった。

 

「グガアア!?」

 

強烈な一撃に身体が軋む。

素の状態なら間違いなく骨が何か所も骨折していただろう一撃に

修練場の壁面にめり込みながらジュダスは意識を失いかけた。

 

「フハハハ!正義は勝つ!さあお前の罪を数えるのだ!!」

 

「流石ミスター!格好いい!!」

 

ドゴッドゴッ!!

「S」のマスキュリンは高らかに笑いながらジュダスにパンチを叩き込む。

凄まじい威力により人体同士が発する音ではないが、拳は止まらない。

何故ならばこの程度で目の前の怪物、ジュダスが倒れないことを知っているから。

伊達にサンドバック仲間ではないのだ。

 

「!?なんの!」

 

一方的に殴られ続けるもジュダスは隙を見てマスキュリンの拳を額、ではなく三角兜で受けて反撃の拳をふるう。

だが以外にもその攻撃を受け流し、さらに体勢が崩れたジュダスのみぞうちを蹴り飛ばし、再度ラッシュで肉を打つ。

 

「フハッ甘いな!怪物!何度貴様に殴り返されたと思っている?ワガハイとてこれだけ殴られれば避け方程度学習するわ!」

 

「成長するヒーロー!その名はマスキュリン!」

 

「その通りだ!ジェームズ!!」

 

(・・・・頭が冷えた。焦りすぎだ俺。)

 

マスキュリンの拳を掴む。

 

「ムッコロス!!(だけどお前ポンポン殴りすぎだろうが!!)」

 

拳を握り潰し、軽くマスキュリンの腹を叩く。

 

「!?ゲエ!?」

 

ズシン!

能力により巨大化していたマスキュリンは重い音と共に倒れこむ。

意識はあるのか動いてはいるものの、白目をむき脂汗をかきながら腹を抑える。

 

「ミスター!?」

 

起き上がったジュダスは慌てて近づいてきたジェームズを爆破し気絶させる。

この二人の関係はよく分からないが片方を殺してももう片方が何故か復活するので、両方を殺さず行動不能にしたのだ。

 

「縛道の二十一 赤煙遁」

 

鬼道により煙幕を発生させる。

まあ煙など一瞬で払われるだろうが時間はそれで充分。

視界も霊圧感知も封じられたがジュダスには見聞色の覇気がある。

今更であるが、覇気とは漫画「ワンピース」で登場する概念で、「気」と呼ばれるものの一種かもしれない。コレにはいくつか面白い特性があるが、その一つに覇気はある程度まで習熟が進むと厳しい実戦でしか成長しなくなるというモノがある。

今ジュダスにはこの“段階”に到達していた。

見聞色の覇気による未来予知。

生き残っている団員たちのけん制の矢を全て避け、ある場所に霊子を打ち込む。

 

「もう一度お前を曲げるろ!」

 

ジュダスを仕留めるためにニャンゾルは静かに移動していた。

だがそれも予知通り。

 

「破芒陣」

 

攻撃を全て捻じ曲げられるなら全方位囲めばいいじゃない。

奇しくも原作と同様の攻略方法をジュダスは選択した。

ニャンゾルの周囲を結界が囲み、内部に向けて爆散。

 

「ア・・・」

 

まだ辛うじてニャンゾルに意識があるようなのでもう一度・・・

予知によりいち早く反応し、ジュダスはソレ(・・)の元に移動して防御を固める。

 

今まで様子見に徹していたバンビーズが動き出したのだ。

彼女らは試合が始まってすぐにレッドピラミッドシング君の正体がジュダスと感づいた。

同時に彼がある一定以上の飽和攻撃については分解・吸収しての無効化が間に合わないことも知っていた。

故にバンビーズ全員はジュダスを侮らず既に完聖体に変身ししての全力攻撃だ。

一瞬の後、雷撃と爆撃、そして炎がジュダスを蹂躙する。

 

「・・・バズビー無事だったのか?」

 

「当たり前だ。・・・まあ一瞬意識が飛んだがすぐに復帰したさ。・・・だが思ったよりもあの悲しき怪物が強いことは分かったからしばらく様子見してがな。」

 

「フンッ!バズビー次はアンタだよ!」

 

「アア!?キャンディス!テメエ何を言ってるか分かってんだろうなあ!?」

 

「・・・おいお前らまだだ!よく見ろ!」

 

「「!?」」

 

強力な攻撃により修練場の原型がほぼなくなってしまった。

それだけの強力な威力で土埃は舞いよく見えないがジュダスが居た場所に人影がひとつ。

 

「ガードベント」

 

「なんて奴だ!?」

 

視界が晴れると其処にはボロボロになったマスキュリンと無傷のジュダスがいた。

そう。ジュダスは近くで倒れていたマスキュリンを盾にして雷撃、爆撃、炎を防いだのだった。

 

「うわ!エゲツな!!」

 

「ジュダスどうしちまったんだ!?お前はこんなことする奴じゃなかっただろう!?」

 

変わり果てた友に対し、リルトットの悲痛な叫びがこだまする。

 

「チカクニイタ コイツガワルイ」

 

ボロボロのマスキュリンをジェームズに回復させ再度ガードベントしようとするジュダス。

リルトットは泣きそうな顔で確信する。

ユーハバッハ達に何かされたのだと。

ジュダスは確かに滅茶苦茶な所はあったが仮にも味方を盾にするような非道な人間ではなかった。

リルトットは玉座を見上げ叫ぶ!

 

「ユーハバッハ!!コイツに!ジュダスに何をしやがった!?コイツはこんな無茶をするような奴じゃなかった!!」

 

「フッ。何のことか分からんな。」

 

「ユーハバッハァァ!!」

 

 

 

参加者の多くが倒れ、

戦いは終盤に進む。

 




リルトットちゃん
「ユーハバッハ!!コイツに!ジュダスに何をしやがった!?コイツはこんな無茶をするような奴じゃなかった!!」

ジュダス(戦犯1)
「」
(ええぇ!?)

ユーハバッハ
「フッ。何のことか分からんな。」
(本当に知らない)

リルトットちゃん
「ユーハバッハァァ!!」

ハッシュヴァルト(戦犯2)
「」



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8話

今回で摸擬戦を終わらせるつもりだったけど終わらなかった。
後もう一般聖兵ではなくない?っと思う今日この頃。


「ユーハバッハァァ!!」

 

何か致命的にズレている気がする。

今のところリルトットちゃんの呼び捨てに

陛下が怒ってないからセーフだけど不味いな・・・。

リジェ・バロさん当たりの米神がピクピクしてる。

リルトットちゃんがこれ以上睨まれないように早く決めなきゃ!

 

「サツバツ!(リルトットちゃん落ち着いて!)」

 

「クソ!」

 

リルトットちゃんを落ち着かそうと近づくが仮面のせいで変な声に変換される。

それでも近づくが何故か彼女は逃げてしまう。

 

「アイエエエ!?(なんでさ?)」

 

ガツン。

 

一応周囲にも注意していたのだが不意に視界が塞がれる。

咄嗟に視界をふさぐ何かを払いのけると一瞬ナイフを構えた爺さんが見えた。

だがすぐに消え去り、・・・アレ?何が消えた?

俺は確か・・・

 

稲妻が俺を撃つ。

先ほどよりも強力で俺は地面に叩きつけられた。

 

「グワアア!?」

 

上を向くと完聖体のキャンディスが俺に手を向けて――

 

電滅刑(エレクトロキューション)!!」

 

「ッ!?・・・・!!」

 

身体が灼ける。

身体が痙攣して呼吸が出来ない。

 

「キャンディス!!やり過ぎだ!ジュダスが死んじまう!?」

 

「ウルセエ!もう前のジュダスじゃねえ!それに見てみろ!アイツこの雷霆の中でもまだ動いてやがる!!」

 

(いや死にそうなんですけどおぉぉ!?電気に反応して勝手に筋肉が動いてるだけですけどおぉぉ!?)

 

「吊星!!」

 

鬼道により自分の身体を吊り上げ強制的に離脱する。

だが空中に何とか逃げたものの身体はボロボロの上痺れて満足に動かない。

 

「バーナーフィンガー4!」

 

次は炎か!

身動きの取れないまま霊子で路を作り上げ、最高速で回避。

索敵が出来なくなるのは痛いが見聞色の覇気のために周囲に散らした霊子を、キャンディスやバズビーが攻撃の為にばら撒いた霊子毎集め、肉体を再生する。

 

おや?

何か俺みたいに霊子を集めている奴がいるな?

・・・趣味の悪い柄の服を着た眼鏡男が攻撃に巻き込まれたのか火傷している。

アイツも霊子を集めて傷を再生しているのか。

 

俺は急遽眼鏡男へと進路を変えてそのまま痛む身体で突撃!

 

「シガン!(指銃!)」

 

胴体を穿ち、そのまま外殻静血装で眼鏡男の霊子の流れを調べながら拘束する。

振り向くと、バズビーとキャンディスの炎と雷は俺を逃がすまいと迫ってきていたので・・・

 

「ガードベント」

 

「ぎゃあああああ!?」

 

「!?また!」

 

ジェームズが居なくても勝手に治るのは良いが、如何せん初代(マスキュリン)に比べて二代目(眼鏡男)は耐久性に難があるな。

もっと耐久性のある三代目はいないかと周囲を見回すと引きつった顔の蒼都と目が合った・・・。

 

「ナズェミデルンディス!!(君に決めた!)」

 

眼鏡男を適当にリルトットちゃん達へ投げ飛ばし、その隙に蒼都へダッシュ!

・・・と見せかけて背後に潜んでいた独特なビジュアルの男、確かナナナ?へと霊子の床を滑らせる。

身体の動きは前方なのに霊子は後ろ向き、ムーンウォーク飛廉脚と名付けるか。

 

「はあ!?」

 

チグハグな動きに脳がバグったのか完全に無防備だったのでそのまま肘打ちから回し蹴りのコンボで普通に沈める。

 

このころにはほぼ傷は回復したので再度見聞色発動。

 

「ヒャッハー!(ああ!リルトットちゃんには悪いが、俺はどんどん成長してる!楽しい!)」

 

この時ジュダスは圧倒的に不利な戦闘の中で爆発的に成長していた。

今まで長い時をかけて練りこまれた圧倒的スペック。

濃密な戦闘経験。

星十字騎士団という素晴らしい参考資料。

そしてちょっと危ない感じの精神状態。

それら全てがジュダスのギアを際限なく跳ね上げていく。

 

雷で肉体を活性化し、炎で体を後押しして、

こちらに近づいてくるバンビーズの間を駆け抜ける!

 

「“火拳”、“千鳥”」

 

バンビーズの背後に控えていた蒼都と謎のロボットの懐へ。

蒼都の鋼鉄の守りは炎の拳に貫かれ、ロボットは抜き手を体内に突きこまれ内部から雷で蹂躙される。

 

「そりゃあ俺たちの能力じゃねえか!!」

 

「ハハハハ!!」

 

ジュダスは全力全開で雷と炎をまき散らす。

疲労は激しいが霊子を周囲から際限なく集めている限りすぐに回復するため、相手が防御に回らせざる負えない状況を作り、確実に一人づつ沈めていくつもりなのだ。

そして次の目標はジュダスの“死なすリスト”にマスキュリンと共に圧倒的ツートップを張る女、バンビエッタ・バスターバインを“分からせ”ることだ。

 

「調子に・・・のるなあああ!!」

 

先ほどと同様雷速でバンビエッタに飛び掛かるが、バンビエッタは自分の目の前全ての空間を爆破する。

他のバンビーズやバズビーなどお構いなしに吹き飛ばすあたり、彼女も焦っているのかもしれない。

・・・いや平常でもやる女か?

ジュダスはバンビエッタに目前で右掌で爆発を起こし左へ、そのまま再度両手で爆破を繰り返し、バンビエッタの死角から頭上へ高速起動。

 

「な、何で私の能力を私より使いこなしてんのよお!?」

 

バンビエッタが再度周囲全てを爆破するがジュダスは既に彼女の直上にいた。

確かにジュダスの方がバンビエッタよりも格段に使いこなしているが、それは彼の記憶の中に確固としてイメージがあるからである。

そもそも彼女の能力とは似て非なるものなので、最大威力はそこまで大きくはないが・・・お互いの息遣いすら聞こえそうな今の距離ならば関係ない。

 

「ハウザー!インッパクトー!!」

 

爆発を利用しての錐揉み回転体当たり。

とあるヒーロー見習いの技を模倣したものだがこちらには炎と雷、おまけで武装色の覇気も追加されている。

 

バンビエッタ毎地面へ激突。

彼女は白目を剥いて女の子がしちゃいけない顔で気絶していた。

ジュダスは彼女のアヘ顔を術を用いて器用に紙に焼き付ける。

後でこれをネタにバンビエッタを“分からせ”るとしよう。

 




「K」「U」は完全に忘れていた。


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9話

バンビエッタを落とせたのは良かった。

戦いの中でどんどん調子が上がっているが流石にネタ切れだ。

やはり地力で劣る分対応されてきたので、此処で強力なアタッカーを落とせたのは大きいハズだ。

しかし聖文字のありなしで此処まで差が出るとは・・・ズルい、ズルくない?

 

残りはキャンディス、ミニーニャ、バズビーにリルトットちゃん。

そして能力の都合上全力が出せないジゼルと妙に消極的なゴリ、ドリスコールという大男だ。

終わりが見えてきた。

大分キツイがここまで来たのだから勝ち残りたい。

まあ摸擬戦だし多少リルトットちゃんに手荒なことをしても許してくれるハズ。

キャンディス、バズビーは相変わらず直撃だけは注意して削っていく。ミニーニャはバフモリモリなら問題ないし、能力が利きにくいジゼルも同様。

ドリスコールは能力を知らないので最大限注意だな・・・。

リルトットちゃんは口が寄生獣みたいに変形してくるが、それさえ注意しとけば制圧は容易。

とりあえず要注意の3人以外を順次落としていき後の流れに任せるか!

 

「ガアアア!!」

 

「辛え・・・。」

 

「エ!?」

 

先ほどと同様炎と雷で加速して火拳もどきでドリスコールに殴り掛かったらクリーンヒット。一撃でノックアウトしてしまった。

 

(え!?一撃!?いや可笑しすぎる。何か罠、幻術か!?)

 

自分に乱装天傀を掛けて異常を直そうとするが、異常なし。

 

(異常なし。え?どういうこと!?)

 

この時ジュダスは知らなかったが、ドリスコールの能力は「O」─ 大量虐殺(ジ・オーヴァーキル)敵味方問わず殺した数だけ自身を永続的に強化する能力である。

本来倫理観さえ無視すれば殺せば殺すほど永遠に強くなり続けるRPGゲームのような能力なのだが、今現在の彼は派手に敵を殺せないし味方は論外であるためそこまで強化された居ない。

メタ的に言うなら尸魂界侵攻で100人殺すまでは下から数えた方が早い実力である。

今の状況は弱いドリスコールがジュダスに素で対応出来なかった。

ただそれだけの事であった。

 

(俺は何かの術中にハマっているのか!?)

 

しかしジュダスは混乱した。

自分が星十字騎士団をあっさり倒せるなんてオカシイ。

絶対何かの罠だ!と。

そしてそれは明確なスキになった。

 

「エイ!!」

 

元々ドリスコールの近くにいたジゼルが自身の頸動脈を切断、大量の血液がジュダスの視界を塞ぐ。

ジュダスは反射で反撃をしたが、驚くことにジゼルは自分からその攻撃に身を晒して胴体を抜き手で貫かれる。

 

「ゴボッつっかまえた~。」

 

ジゼルはそのまま抜き手を両手で捕まえて不気味に笑う。

慌てて腕を抜こうとするが、存外力が強く、更に得体のしれない何かがジュダスの身体を侵食する。

 

「死んでなくても影響位与えれるんだよ?」

 

乱装天傀により一瞬で異常を回復させるが、ドリスコール、ジゼルと続いて致命的な隙となった。

 

「覚悟です。」

 

ミニーニャの拳が顔面に突き刺さる。

 

「グエ!?」

 

想定をはるかに超える拳撃。

衝撃に吹き飛ばされながらジュダスは見ていた。

ミニーニャは拙いが確かにボクシングの動きで効率的に拳を振り、更にインパクトの瞬間、動血装を発動して威力を飛躍的に高めていたのだ。

 

何とか体勢を戻そうとするが脳が揺れたらしい。

視界が滲む。

バズビーが拳に炎を纏って猛スピードで突っ込んできたので何とか右手で防ぐ。

同時に反対側からもリルトットちゃんが滅却聖矢を乱射しながら突っ込んでくる。

口元は伸びていないのでそのまま殴るつもりなのだろうが残念ながら火力不足だ。

たとえ動血装は発動しようとも、生身ならまだしも今は静血装も発動している。

上空から静かに近づくキャンベル、バズビーの後方からやってくるミニーニャへと注意を向けると・・・また想定を超える拳撃が頭部に突き刺さり、ついに三角兜が吹き飛ぶ。

 

「私のThe Glutton ― 食いしんぼう ―はなただ食べるだけじゃない。

一部でも食べた相手の能力の概要や使い方を知ることが出来て、更に消化するまでの間なら使用も可能なんだ。」

 

「まさか・・・?」

 

ミニーニャ(・・・・)を喰った。一部だけだがな!」

 

バズビー、キャンベル、ミニーニャの追撃が突き刺さり意識が飛びかける。

 

「ア、アアアアアアア!!」

 

自分毎爆破して全員吹き飛ばす。

もう霊子もスッカラカン、再度集めなくては不味い・・・。

見聞色を解除する刹那、リルトットちゃんにまた殴られるビジョンが浮かぶ。

 

(ハア?吹き飛ばしたハズ・・・!?)

 

果たしてリルトットちゃんは先ほど俺を殴った位置にまだいた。

鉄色に染まり、雷光を纏っている。

 

(食べたのは一人じゃなかったのか――――)

 

「能力コピーとかチートじゃない?」

 

「「「お前が言うな!!」」」

 

何故か全員から怒鳴られた。

いや俺の場合努力した結果、再現可能な奴だけだからネ?

理屈も何もなく食べただけで再現できるとかチートだろ!!

 

最後の意地でリルトットちゃんの拳に俺の拳を合わせる。

一瞬拮抗するが、俺の勝ちだ。

複数能力という条件が同じなら、地力のパワーは俺が上!

このまま押し切る!!

ジリジリ俺の拳がリルトットちゃんに押し込・・・押し込め・・・ない!?

 

「がんばれ~。」

 

血まみれのジゼルが覇気なくリルトットちゃんに声援を送る。

ティンときた。

 

マスキュリン(初代)もかああ!?」

 

「今目を覚ましてやる!!」

 

(最初から正気です。)

 

じゃあ、もう一方の手でリルトットちゃんの迎撃を・・・

腕が動かない。

チラッと視線だけ向けると、変な・・・先ほど俺を攻撃してすぐ消えた爺さんが俺の手を抑え込んでいた。

 

(打つ手が無くなった・・・。)

 

リルトットちゃんの拳がジュダスに突き刺さる。

死ぬほどの悔しさの中、ついにジュダスの身体から力が抜けた。

・・・がまだ終わらない。

倒れながら上空をふと見上げると、ドでかい炎の塊を打ち出したバズビーと雷をこちらに投げ打つキャンベルが見えた。

隣を見るとリルトットちゃんが気絶して倒れていた。

爺さんはどうでも良い。

 

(このままじゃリルトットちゃん死んじゃうじゃん。)

 

一瞬目の前が暗くなり、力を振り絞る。

 

「月牙天衝」

 

ジュダスの手刀は

雷と炎を相殺し、天を割る。

今度こそジュダスは意識を手放した。

 

 

勝者: 「V」グエナエル・リー

 

 

 

リルトットちゃん達の悲しき怪物疑惑が解消され、また気絶した者たちも意識を既に取り戻している。

其処へ摸擬戦に参加しなかったメンバーを引き連れたユーハバッハがやってきた。

ハッシュヴァルトが前に出る。

 

「全員傾注するように。」

 

「今回の摸擬戦。不甲斐ない者が多く非常に不愉快だった。」

 

恐ろしいほどの重圧が一帯を襲う。

最初に負けたベレニケ・ガブリエリやジェローム・ギズバットなど顔が真っ白で今にも死にそうだ。

 

「しかし終盤は予想を超えるものを見れた。特例として今回除名するものはなしとしよう。」

 

重圧が解除され、全員ホッとする

 

「だが来月も摸擬戦を行う。そこでも成長が見れない場合は・・・」

 

再度全員絶望する。

 

(((見れない場合は何だよ!?)))

 

「さて・・・お前たちもわかっているだろうがここに新たな星十字騎士団 ジュダスの叙任を行う。ジュダスよ。」

 

「ハッ。」

 

「お前の戦い見事であった。お前に与える聖文字は明日与える。今日のところは体を休めるがいい。」

 

「謹んでお受けいたします。」

 

此処に新たな星十字騎士団が誕生する。

後日、同格の十字騎士団員になってもリルトットの世話を焼くジュダスと

唯一ジュダスより先に敗北してタメ口でイジられるバンビちゃんの姿がよく見られることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月光に照らされ廊下を歩く二つの影。

ユーハバッハとハッシュヴァルトである。

 

「———陛下、よろしかったので?」

 

「よい。見たいものは見れた。」

 

「見たいものとは?」

 

「・・・ジュダスは孤児だ。奴は現世で一人生き残っていたところを保護され、孤児院、そして聖兵と続き現在に至る。」

 

「はい。資料で読みましたが・・・」

 

「奴は・・・石田雨竜と同じだ。」

 

「!まさか!ならば・・・!」

 

「そうだ。奴も奴の一族も混血統滅却師だった。私の聖別により生き残ったのは石田雨竜のみとしていたが、もう一人いたのだ。それがジュダスだ。」

 

「つまり・・・奴にも?」

 

「ああ。奴にも石田雨竜同様私の力を阻む何かがあると思われる。排除も考えたが、聖文字を受け入れればそれでよし。もし反逆するならば奪えばいいだけの話だ。」

 

「・・・陛下のご意志のままに。」

 

 




NG集
リルトットちゃん
「ペペの能力もコピー済みだぁ‼」

ジュダス
「な、なんだってー!」

リルトットちゃん
「ラブラブビーム‼」

ジュダス
「ぐわあああ⁉・・・犬とお呼びください♡」

リルトットちゃん
「やったぜ。」




ジュダス君の聖文字はくじで決めます。


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10話





「・・・」

 

場は沈黙に包まれていた。

いつもならバンビーズの溜まり場で煩さ、姦しい場所だ。

リルトットのお付きであるジュダスもよくその場にいたのだが今は見る影もない。

なぜなら誤解こそ解消されたものの、ジュダス(と他2名)が悪乗りした結果リルトットは大勢の目の前で少年漫画の主人公のようなムーヴをしてしまった。

現在彼女は羞恥とジュダスへの怒りから不貞腐れて寝転んでいる。

 

「リルトットちゃん!昼食にからあげ揚げたよお!ああ!?」

 

とりあえずジュダスは不機嫌なリルトットちゃんに機嫌を直してもらおうと唐揚げを持ってきた次の瞬間、口が伸びてきて皿の上から唐揚げが消え去った。

一応他のメンバー分もあったのだが何も残らなかった。

 

「あー!私の唐揚げ!?」

 

空気読めないどこかの絶対爆発させるウーマンが叫んでいるが、声こそ出さないものの他のメンバーも残念そうな顔をしていた。

彼女の傷は時間だけが癒してくれる・・・そう判断したジュダスは自然な動作でリルトットちゃんの頭をなでつつ膝枕。

彼女の口にフライドポテト、ケーキ、クッキー、グラブジャムンと様々なおやつを運ぶが嘘のようにどんどん吸い込まれていく。

その姿はまさにシュレッダーの如く!

そんな変わり果てたリルトットに生暖かい目を向けつつ、空気を入れ替えようと他のメンバーはそれぞれおしゃべりを始めた。

 

「ところでジュダスの聖文字は何貰うのかなあ?」

 

そう口火を切るのはジジ。

まあ一応以前から知ってる奇人ジュダスがどのような文字を受け取るのか、

更に言うならすでに全文字授与済なので必ず誰かと同じ聖文字になるのだ。

同じ文字で違う能力なのか、それとも同じ能力?もし同じなら規模なども同じなのか?

非常に興味をそそる話題である。

 

「お揃いでZとかどう?同じ能力ならタフになるよ!」

 

(ふむタフになるのは嬉しいことだ。それにゾンビの能力は工夫すれば色々出来そうな気がするんだよな・・・2代目様の卑劣な術とか。)

 

ジュダスはいまだリルトットちゃんの毒牙に掛かっていない季節のフルーツタルトを1つ手に取りジジに渡した。

中々の自信作で甘酸っぱい果物の触感の違いを楽しめる一品だ。

 

「わ~おいしい!」

 

「私のPとかどうです?同じだと完全に上位互換になりそうで嫌ですが、力こそパワーです。近接が得意なジュダスさんならシンプルに強化につながりそうです。」

 

「やはり暴力‥‥!! 暴力は全てを解決する‥‥!!」

 

「ケンシロウ、暴力はいいぞ!」

 

「誰がケンシロウか。」

 

割と心惹かれる意見を出したミニーニャにはイチゴ大福を渡す。

大福にイチゴって・・・と食わず嫌いしていたが食べたら割とイケるとジュダスは考えを改め作成してみた意欲作である。

 

「じゃあ私と同じTならどうよ!?でも同じだと詰まんないから違う方が面白いかもなあ。」

 

Tで「雷霆」以外か。

雷は浪漫の塊なんだが・・・T、T、Teleport?

 

「T、T、Teleport?」

 

思考レベルが一緒?

チョコレートのトリュフを渡す。

作りなれた逸品で自信作だ。

 

「G・・・。」

 

「は?・・・二人でお揃いのGとか最高では?」

 

リルトットちゃんとお揃いのGか・・・。

凄い嬉しいのだが、二人で口を伸ばすのはシュールだな。

違う能力だったら・・・GUNDAM?GUND-ARM?

なんか碌な目に遭わなさそうだな。

 

「ふふ。」

 

リルトットちゃんの機嫌が少し良くなった。

起き上がってくれたのでジュースを差し出す。

え?紅茶?もちろん用意してるよお!

 

「じゃあ私と一緒のEなんてどうよ?」

 

「ふむ確かにThe Explodeは強力な能力だな・・・」

 

「まあでも同じ能力だとつまらないわね・・・。かといって他の能力だと・・・earth、earthquake?なんか強そうね・・・electricityだとキャンディスと被るし・・・ジュダスだしevilとかだったりして!」

 

「う~ん、この一言多い感じ。」

 

最後に一言多いバンビエッタには現世の駄菓子屋で買ってきたおしゃぶり昆布を投げておく。

オラ喜べ!特別扱いだぞ!

 

「何で私だけこんなダサいのなのよ!?」

 

「お前おしゃぶり昆布旨いだろうが!贅沢言ってんじゃねえ!!」

 

「ハア!?アンタ相変わらず目上に対する態度が成ってないわね!」

 

「バンビパイセンこの中で真っ先に俺に負けたこと覚えてますぅ~?」

 

「それは偶々そういう順番になっただけで負けたのはワタシだけじゃないでしょう!?」

 

「でも俺に負けたのは事実なんだから、態度デカくないっすか~?」

 

「なんですって!」

 

「あ~ん?んん~?そこでイキってる~困ったちゃんはぁ~?もしかしてえ~?

バァ~?ン~?ビィ~?

アッ!忘れたー!いっけなぁ~い!俺負け犬の名前は憶えらんないんだったー!!」

 

「キイィィィ!?」

 

バンビエッタを煽っていると発狂してしまった。

とりあえずリルトットちゃんの機嫌も復活したので

彼女を愛でつついろいろ想像して楽しんだ。

 

この後陛下から「E」の聖文字を与えられたが、

目の前でオサレなくじ引きで決められてなんとも言えない気分になった。

 

それを聞いたバンビエッタのドヤ顔が非常に腹立った。

 




聖文字はランダムにアルファベットを表示するサイトを利用しました。
雨竜君が来るとAが3人になってしまうのでA以外にしようと思っていたら
2連続でAが出てびっくりしました。
3回目にEが出たので英単語を調べています。

https://randommmm.com/alphabet/


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11話

Eにまつわる様々なアイデアを感想で頂いて嬉しい限りです。
全然思いつかないものやこんなの良いなというアイデアもあり参考になりましたが・・・
アイデア出過ぎ!
コレ良いなと思いつつも、他のアイデアと被りたくない・・・。
そんな複雑な心境です。
これ以上アイデアを出される前に話を進めなくては・・・!!



先週、陛下より尸魂界に侵攻するという勅令が発された。

どうにも外では藍染の乱という戦いがあったらしいがよく知らない。

また「クロサキ イチゴ」が大活躍したらしく特記戦力として名前が挙がっていたらしいが

後述する理由で俺は死んでいたのでよく知らない。

とにもかくにもリルトットちゃんや一応他のバンビーズが死なないよう頑張ろうと思う。

 

・・・ただ冷静に情報を分析しても、星十字騎士団と死神たちの戦力差でどうしてチートだらけのコチラが負けるのか、ソレが全く分からない。

こういうとき原作について知らないのは不便だな。

案外仲間割れでもしたのか?

バズビーあたり陛下に忠誠心ないのが反逆でもしたのか?

 

あれから何度か摸擬戦を行いながら、絶えず己を鍛えていたある日。

俺の能力が目覚めた。

それは聖文字「E」―経験(The Experience)というものだ。

目覚めた当初まったく効果が分からず、バンビエッタに聖文字「E」の面汚しとプギャーされて煽られたり、リルトットちゃんやキルゲ先生に慰められたり、陛下の落胆した顔されたりと・・・ざまあ展開の前振りみたいな状況だった。

だが2度目の摸擬戦が終了した瞬間、その能力の効果が発動することで完全に理解することが出来たのだ。

経験(The Experience)の効果は自身が経験したことに応じ成長すること、そして様々な経験に対して熟練度のようなものを得てソレを自身の意思で自由に割り振れるという能力だった。

分かりやすく説明すると、前者は今まで鍛錬して10程度成長していたとして同じ鍛錬で15程度成長する、所謂経験値ブーストである。

上限があるか不明だがもし無ければ大器晩成型のチートである。

後者はさらにチート臭かった。

経験値とは別の何かを経験に応じ取得しソレを消費して自身を強化する能力なのだが、今までの鍛錬や摸擬戦を通して結構その何かを俺は取得していた。

なので試しに脳裏に浮かんだスキルツリーのようなものに何か、SPとする、を割り振ってみたのだ。

項目は筋力、器用さなどの身体能力、霊圧や霊力などの霊的能力、果てには爆撃(The Explode)とかの特殊能力の項目があって驚いた。

どうも中途半端でも自力で習得した特殊能力についてはSP割り振ることが出来るようで

爆撃(The Explode)は強化できるが、食いしんぼう(The Glutton)については項目すらなかった。(ただし必要SPは文字通り桁が違っていた。)

俺は基礎能力を軒並み上げて試した結果、ワンパンでマスキュリンが汚い花火になった。

バンビーズの面々はもちろん俺自身もドン引いた。

 

陛下に能力を報告したら、凄く悪そうな顔をして親衛隊と摸擬戦を命じられた。

ただ一つ言いたい。

無限再生や防御無効、致死量を操るとか大人げないと思うの。

でも経験やSPは美味しかったのでその後も何度か戦った。

ジェラルドの能力は再生かと思っていたが、強化蘇生もある上にダメージ等倍で反射してくるとか能力と装備格差酷くない?

 

 

摸擬戦で二人のロイドとチームを組んでハッシュヴァルドとバズビー、ナナナチームと戦った。

レッドピラミッドシング君が3体!来るぞユーゴ!

The Balance(ザ・バランス)と身代わりの盾とかいうバランスもクソも無い力で完封された。

やっぱり能力と装備格差酷くない?

 

 

今日は自分の霊子兵装も完成したので初お披露目。

テンション振り切りすぎて切り札を使用。

城の一角が更地になってガチトーンで怒られた。

久しぶりの正座だ。

 

 

キルゲ先生と俺は虚圏へ破面回収部隊としていくことになった。

キルゲ先生は他にも陛下から命じられていたが、俺は知らない。

バンビーズからは一応心配されたが、死神の本拠地にカチコミしにいく君らより安全だと思う。

虚圏に行ったことがないのでイーバーンたち破面出身の滅却師に環境、虚や破面の能力について色々聞き取りを行った。

鋼皮の説明を聞いて蒼都のことを想い涙した。

 

 

摸擬戦にて遂にリルトットちゃんと組んだ。

後オマケでドリスコール。

相手はペペ、ジェローム、ベレニケだったのだが対戦中トラブルがあり真っ先にペペが落ちた。

 

「神の情愛!!」

 

「汚い乳首をリルトットちゃんに見せんじゃねえよ!怖がってんだろ!」

 

「なんだその乳首は!!早く隠せ!!」

 

「ふざけた乳首しやがって!!」

 

「うるるる」

 

「ひどい・・・それにベレニケはこっちの仲間だロ!?」

 

「苦悶の環」

 

「うそ゛ろ゛ろ゛ろ゛ろ゛ろ゛ろ゛お゛お゛お゛ん゛!!!!」

 

 

虚圏へ出発する二日前。

俺はベッドの上で夢を見た。

 

「お前料理美味いな。俺も出来るけど能力上なんども食わなきゃいけなくて面倒になってな。作らなくなっちまった。」

 

「そうなのか。リルトット・・・いや今はリルトット様だったか。」

 

「ああ、別に気にしなくてもいい・・・。なあ突然だけどジュダス俺の補佐してくれないか?」

 

「?なんで俺なんだ?」

 

「俺はお菓子よりも美味いものがあるならそっちを食べたいんだ。だから作ってくれよ。」

 

「え?そんな理由?」

 

「ああそうだよ。それに・・・お前は別に俺の事裏切らないだろ?」

 

「まあ裏切る気はないが・・・俺が必要なのか?」

 

「ああ。俺には必要だ。」

 

「・・・分かったよリルトットちゃん。」

 

「よし!とりあえず説教からな!」

 

「なんでえ?」

 

凄く懐かしい夢だ。

リルトットちゃんの補佐官になった頃だろうか。

確かいきなり馴れ馴れしすぎて怒られたんだっけ。

当時親も家族もいなかったから一匹狼気取ってて人間関係の距離感が可笑しかったんだよな。

そういえば・・・昔現世にいたころはよく虚に襲われてた気がする。

よく覚えていないけど親に守られてて・・・一人になってからはよく霊子を操作して自分で戦ってたっけ。

 

アレ?前世の記憶とごっちゃになってて気づかなかったけど変だな。

子供がどうやって戦ったんだ?

確か・・・こう手を伸ばして、深呼吸して、

 

「あ!?」

 

思い出した。

なんでこんなこと忘れてたんだ。

霊子を集めるなんてこう・・・呼吸と一緒に集めて・・・身体中に流して・・・

 

「ウルセエ!!今何時だと思ってるんだ!?」

 

「痛い!?」

 

隣の部屋で寝ていたリルトットちゃんが怒鳴ってきた。

今更だが今日はリルトットちゃんが壮行会を開いてくれたのでそのままゲストルームに泊まったのだ。

 

※壮行会ですが食事を作ったのはジュダス本人です。

※1年の内300日くらいはこの部屋を使っており、家具から着替えまで揃っています。

 

「寝ぼけてないでさっさと寝ろ!」

 

頭部に蹴りを入れられて

また意識が沈んでいく。

 

(何だっけ?確か・・・)

 

 

翌日

俺は城から外れた森の中で一人深呼吸している。

昨日見た夢で思い出したのだが俺は現世で一人になってから孤児院に連れてこられるまでの間しばらく一人で生きていた。

・・・冷静に考えると俺は見た目通りの年齢だけど、リルトットちゃんも他のバンビーズも俺より年上かもしれないんだよなあ・・・。

つまりリルトットちゃんはロリババア・・・いやでも、やっぱボンッキュッボンじゃないと・・・。

 

思考が脱線したが元に戻す。

とにかく俺は一人で生きていた。

両親から滅却師という存在をとりまく状況を聞いていた俺は死神にも霊力の無い一般人にも頼れず、一人で虚から逃げて生きていたのだ。

当時俺は滅却師としての基礎を学んでいた程度だった。

なのに俺は虚を倒していた記憶がある。

そこがおかしい。

ここで紛らわしいのは俺の前世の記憶だ。

俺の前世は成人男性で一人前の体力も思考力もあった。

だから勘違いしていたが本来子供が一人で生きる?

しかも虚なんて化け物がいる中で?

滅却師の血が流れていても普通の子供に出来るわけがない。

 

「俺はまだ何か忘れている?」

 

この日結局なにも思い出せなかった?

 




久しぶりに最終章読みました。
やっぱ滅却師側チート過ぎない?


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12話

難産すぎる。
後で書き直すかもしれません。


虚圏

現世と尸魂界のはざまにある空間で数多くの虚やその進化系である破面達が潜む場所だ。

白い砂漠のような場所で、石英のような木がまばらに生えている以外は何もない。

常に夜で、現世や尸魂界に比べて大気中の霊子濃度がかなり高いため小さな虚なら呼吸をするだけで充分な栄養を得られるほどだ。

呼吸だけでは流石に無理だったが、試しに集中して霊子を集めたら滅却師でも生きていけそうだった。

 

「それが可能なのは霊子の扱いに長けた貴方くらいです。完聖体になれば私でも可能ですが。」

 

「ああそうそう。知っていると思いますが、我々滅却師は虚に耐性がありません。虚の霊力を浴びれば魂魄すら消滅しますから間違って吸ったり、虚どもの攻撃を受けるのも要注意です。」

 

実際任務で戦力になりそうな破面たちを捕縛する際、聖兵は1名攻撃を受けて即死した。

多少傷がついても虚の霊力が流れ込まなきゃいいのだがソイツは胴体を派手に串刺しされ

遺体すら残らず身体が崩れた。

 

「キルゲ先生。でも例外とかいないんですか?滅却師は全員耐性がないので?」

 

俺現世で一人で生きてた頃はゴミ漁って食ったり、襲ってくる虚も普通にぶっ殺して霊子に変換して吸ってたんだけど・・・平気だったな。

見えざる帝国の滅却師特有の体質とかなんだろうか?

 

「まあ私と貴方のように陛下から聖文字を与えられた滅却師は耐性を得ているのか、よほど大量に取り込まない限り問題ないでしょうし・・・そういえば現世の滅却師である石田雨竜は何度も破面相手に傷を負っても即死とかしなかったですねえ。。」

 

その石田何某は知らないが、やっぱり現世出身の滅却師は大丈夫そうだな。

ヨシ!

 

「そういえば貴方も現世にいたころはよく虚に襲われていたそうですが・・・大丈夫でしたか?」

 

「ああ。俺もよく虚に怪我させられてたけど全然大丈夫でしたよ!あんまり腹減ったときは遺体を霊子に変えて吸ったりもしましたけど今もピンピンしてますし!」

 

「はははそうですか。ジュダス君はタフですねえ。でも霊子とはいえ虚を食べていたと聞けば他の人はヒキますからね、あまり他言しない方が良いでしょう。」

 

「そうですか?まあ好き好んでいうことでもないんで言わないですけど・・・。」

 

(滅却師は例外なく全員虚の霊圧に対して耐性を有しない。それは聖文字を得たとしても耐性得てもまったく影響なしなどありえない。やはり陛下のおっしゃる通りジュダス君は石田雨竜と同様に何か有る(・・)ということですか・・・。)

 

多くの破面を連行しながら話していると、キャンプに到着した。

途中捕らえた破面や虚を救出するために襲撃があったが、特に問題なく対処できた。

ただ、なまじ破面の外見が人間に近いだけあってやりにくい。

完全に俺ら侵略者な上に奴隷商人みたいなもんだもんな。

 

「並べ並べ!!」

 

「壁を背にして立つんだ!」

 

「早くしろォ!!オメーラの穴を2つ3つ増やしてやってもいいんだぞォ!!」

 

聖兵たちが虚・破面たちを追い立て壁際に整列させる。

これから選抜を始めるのだ。

 

「ハイハ――イ!静粛に――!!

これより、’’生きるか!?死ぬか!?虚・破面混合大センバツ大会’’を開催いたしまぁす!!」

 

「今の説明で分からない人はこんな風にぃ!こんな風に...こんな風にぃ...死んでもらいまあす!!」

 

キルゲ先生が言葉と共に槍をふるいドンドン虚・破面たちを刺殺していく。

う~ん質が悪い。

特に工夫もない攻撃を避けることも出来ず刺されていく。

せめて避けるとかもしくは防ぐとかないのか。

冗談抜きでヒラ聖兵のほうがマシな動きできるぞ?

十刃だっけ?

捕らえて陛下に送ったハリベルは凄く強かった。

彼らクラスはやはり珍しいのかな?

 

お!キルゲ先生の槍を避けて剣を!

 

「藍染様の側近ロリ・アイヴァーン!」

 

「同じくメノリ・マリア!」

 

「なるほど」

 

・・・なんか藍染とかいう死神界のバグの側近とか言ってる二人の女破面。

だけど速攻キルケ先生にボコボコにされた。

ええ・・・。キルゲ先生は男女関係なく殴るね。

まあ俺も戦場なら老若男女気にせず殴るけど。

 

あーまた3人ほど破面の女性が現れた。

先ほどの二人に比べると全然強そうだ。

聖兵たちがなにも出せずに倒されていくので、守ろうとするが・・・

 

「やめなさい。この程度の相手に殺される程度ではこれからの死神たちとの戦でも生き残れない。これも選別(・・)です。死んだらそこまで。生き残れば見込みがある。」

 

キルゲ先生が真剣な口調で俺を諫める。

思うところがないといえば嘘だが今更か。

実際コチラに回された聖兵たちは質が悪いし練度もマチマチ。

選別は破面だけではない、ということか・・・・。

 

「分かりました。」

 

ある程度すると聖兵たちがほぼ全滅した。

流石に情けなさ過ぎる。

先ほどまで虚や破面に高圧的にしていたのに・・・もう少しこう・・・ガッツを見せてほしい。

せめてと思い、哀れな聖兵たちの遺体を霊子に分解し取り込む。

俺の一部として故郷の戻ってもらいたい。

キルゲ先生が砂上を歩き、破面3人娘に近づく。

どうやらキルゲ先生のお眼鏡に掛かったらしくスカウトするらしい。

 

「降伏しなさい。」

 

・・・煽ってる?

あーハリベルの部下なんだな。

そりゃ降伏なんてしないだろうから心折るつもりだな。

おっ!?

デカい霊圧が近づいてくる!

キルゲ先生は・・・3人娘を倒しているがまだ気づいてないな。

 

「キルゲ先生!」

 

ショートカットの破面を矢で吹き飛ばしたキルゲ先生に声をかける。

 

「どうしましたか?」

 

「なんかデカい霊圧が近づいてきましたよ!どうしますか?」

 

「ふむ。目的が来ましたかね?」

 

「目的?」

 

「いえなんでも。おそらく私の予想通りの人物なら彼女らよりよほど強大な相手です。注意してください。」

 

「了解しました。」

 

少しすると死神が一人やってきた。

オレンジの髪に巨大な片刃の刃を背負っている。

いや何故か少女の姿をした破面も背負ってるな。

顔は精悍な面構えでイケメンだ、爆撃(The Explode)してえな・・・。

どうもキルゲ先生はあの死神の事を知っているようで話しかけている。

 

「貴男の事は知ってますよ。黒崎一護(クロサキイチゴ)。」

 

「は?」

※参考資料 コミック65巻 p153のジジ

 

「最優先で対処すべき“特記戦力”としてねえ!」

 

What?

あの女にモテそうなイケメン死神がクロサキイチゴ?

俺のカワイイ系元気っ娘爆乳JKは?

ヒロインのイチゴちゃんは?

アレが主人公?

可愛い女の子としょうがなく(ノリノリで)仲良くして生き残ろうとした俺の計画は?

 

―――——終わりだ。

 

俺は自分の勘違いを全て悟り、

天を仰ぎ涙を流すが、二人は俺を放置して激しく戦闘し始める。

 

「おい!?お前の仲間突然泣き出したぞ!?何なんだアイツ!?」

 

「・・・さてねえ。まあ発作のようなモノでしょう。とりあえず教えておいて差し上げましょう。この姿の正しき名は滅却師完聖体(クインシーフォルシュテンディッヒ)

 

キルゲ先生が完聖体になった。

やはり主人公は強い。

まだまだ余裕がありそうだし、なによりも先生の霊子吸収の影響を受けていない。

それは霊圧そのものが干渉できないほど安定し強大ということだ。

おや?

黒崎一護の仲間か?

褐色の巨漢にユニークな形状の破面、胡散臭さの擬人化のようなゲタ帽子に・・・カワイイ系清楚爆乳JK!?

そっか・・・俺分かっちゃったよ・・・彼女がヒロインで一護君とイチャイチャなんだな?

今も心配そうに一護君を心配そうに見てるし、間違いない。

 

「は?」

※2回目

 

世界が不平等過ぎない?

俺の周りには見てくれは良くて怖い女か幼女体型で良い女しかいないのに、主人公には俺の好きなモノ全部乗せとか。

 

落ち着け。

此処で切れて一護に襲い掛かったら好感度が稼げない。

憎悪と怒りしかないけど深呼吸して落ち着くのだ。

 

だが困った。

俺の目的は「俺自身とリルトットちゃんの生存」が第一目標だ。

しかし可能ならば世話になっているキルゲ先生も生き残ってほしい。

その為には程々のところで手を抜いて倒されてフィードアウトしてほしい。

だけどキルゲ先生はバンビーズと違って陛下ガチ勢だから絶対無理だろうなあ。

 

第一目標を達成するなら、最悪敵対するかもしれないキルゲ先生には此処で一護にやられた方が都合が良い。

俺は悩む。

頭では放っておくのが一番と分かっているのだが、やはり情というものが判断の邪魔をする。キルゲ先生は恩師なのだ。

 

「先生破面たちが何か化け物を作り出しましたよ。俺が対処しますか?」

 

「ん~?結構です。私一人でどうにでもなるでしょ「オオオオォォォォ!!」う!?」

 

キルゲ先生が虚?に殴られた。

眼にもともらぬ速さで凄まじい膂力だ。

先生ボコボコにされているけど静血装で防御している。

だがノーダメージとはいかないようで凄い怪力だ。

 

どうする。

どうする?

未だに俺自身ですら“見えざる帝国”が敗北するなんて信じられない現状、俺自身の手で仲間を殺すのは悪手。

かといって積極的に手を貸せば未来が変わるとも言えず、その際は死神たちからの恨みを多く買うから原作通りになれば生存率が著しく下がる。

どうする?

正直陛下が戦争仕掛ける時点で恨みとか誤差じゃない?

いやでも・・・。

 

「」

 

俺は結論が出ないまま

とりあえずキルゲ先生を助けようと化け物へ弾丸を放つ。

 

「む。」

 

なんか腕がアルター能力者みたいな巨漢に防がれた。

 

「お前が俺の相手か。」

 

答えの無い難題にイライラしてるんだ。

悪いが八つ当たりさせてもらうぞ?

俺の前立つお前が悪い。

 




キルゲ先生
陛下ガチ勢だから見殺すしかなくない?
ジュダス君と陛下なら陛下優先だろうし。
かといってジュダス君平然とキルゲ先生殺すかと言われると・・・
う~ん。



リルトットちゃんガチ勢ならいけるか?


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13話

今俺の目の前にいる石田と同じ滅却師らしい男たち。

一人は敵のリーダーで一護と戦っており、もう一人は今俺の前に立っている。

後ろには女破面の傷を治している織姫がおり動くことが出来ない。

どうも敵は積極的にこちらを狙う気配もないし、一応裏腹さんもいるが油断するべきでなないだろう。

一護が戦っている今俺が守らなくては。

目の前の男を観察する。

石田のように滅却師の衣装に身を包んでおり、体格的には一護と同じくらいだが服の上からでも筋肉質なのが見て取れる。

顔は黒髪、黒目で典型的な日本人だ。

なんというか・・・ヤンキー味のない黒髪の恋次?のような風貌だ。

 

「!?」

 

男は静かに一護達の戦い見ていたか思ったら、急に銃を構え一護に発砲した。

咄嗟に射線に入って弾丸を巨人の右腕(ブラソ・デレチャ・デ・ヒガンテ)で防いだが

予想よりも遥かに重い衝撃が身体を突き抜けるっ!

 

「む。」

 

唯の弾丸が過去の強敵たちを思い出させる。

この男も強い。

 

「お前が俺の相手か。」

 

弾丸を防がれて初めて気付いたかのように、俺を見る。

一瞬、一護、織姫や浦原さんの方に視線を送るが特に何かするつもりはないようだ。

最後に俺を見てほんの少し目を見開いて感情の見えない目でこちらを凝視する。

まるで観察されているようで居心地が悪い。

 

「なんだ?その(・・)は?雰囲気的に聖文字の力に似ているような・・・?」

 

「聖文字?これは自然と使えるようになった能力だ。何かの技術というわけじゃない。」

 

「技術じゃないのか?・・・ふーん、能力、生まれつき?気になるな。」

 

滅却師の男が拳を構える。

どうやらやる気のようだ。

 

「少し興味が出た。行くぞ!」

 

次の瞬間、滅却師は既に俺の懐で拳を振りかぶっていた。

何とか見えてはいたが、動きが間に合わなかった。

だが滅却師は無防備な俺の胴体ではなくワザワザ右腕を狙ってくる。

右腕の盾で攻撃を受ける。

 

ドゴォ!!

 

「ぬお!?」

 

想定を超える威力に右腕を後方に強く引っ張られるような形で、体勢が崩れる

咄嗟に次撃を悪魔の左腕(ブラソ・イスキエルダ・デル・ディアブロ)の拳撃で相殺するが、続く拳のラッシュに防戦一方だ。

 

「ぐうっ!が!ぐう!?」

 

マシンガンのような連撃が襲ってくる。

俺は必死に右手を盾に、左手でけん制するが相手もそれを拳で弾いてくる。

 

「なんだその能力は?理屈は分からないが・・・酷く似ている(・・・)。自分を起点に霊力で鎧を構成して・・・能力を付加、効率が・・・。こんな感じかな?」

 

バゴオ!!

 

「ぐわああ!?な、なにが・・・ハァ!?」

 

突然桁違いの衝撃が襲ってきた。

鈍い痛みを我慢しながら滅却師から距離を取り、自分の右手を確認する。

十刃との戦いでも砕けたことのない盾が粉々になっていた。

 

「なん・・・だと・・・!?」

 

滅却師の拳がいつの間にか鈍い鉄色になっていた。

よく見ると先ほどは身に着けていなかった薄いボディースーツのような物を滅却師の衣装の下に着こんでいる。

どこか・・・俺の両手や一護の卍解に似ているような気がする。

 

「チャドとか言ったっけ?感謝するよ。どういう訳かアンタの能力は俺たちの言う聖文字の力に似ているんだ。特に俺には足用がいいみたいだ。」

 

「!チャドさん!防御を固めて!!」

 

「お礼に殺しはしないが・・・動けなくはなるな。」

 

浦原さんの声に反応して反射的に防御を固めるが、左手だけでなく右手の装甲も粉々になる。腕自体は無事だが骨も粉々だろう。

体勢を戻そうとするが、ジャブを足に打ち込まれ動きが強制的に止められる。

 

「死ぬなよ。」

 

滅却師は紫色の紋様のようなモノが浮かび上がった拳を後ろに引き、まっすぐ前方へ放つ。

動画をスロー再生したようなゆっくりとした時の中・・・

ソレは皮肉なことにまるで俺の魔人の一撃(ラ・ムエルテ)ようだ。

俺と滅却師の拳の間に織姫の盾が現れるが、

 

「くそ」

 

盾が一撃で砕かれた映像を最後に、俺の意識は吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チャド君!?」

 

巨乳美少女がチャドという巨漢を心配して声を上げている。

やった本人が言うのもなんだがチャドは無事生きている。

ちょっと全身の骨が全力で床に叩きつけたガンプラみたいになってるけど生きてる。

 

(やべえ死ぬなよとか格好つけときながらヤッってしまった。)

 

違うんだ。

チャドの能力を真似て全身をボディースーツ状に霊子で編んでみたのだが、相性が良すぎた。

構成したスーツに今まで鍛えた様々な能力を付加したら出力や操作が完全に安定したのだ。

その結果今まで安定せず出せなかった最高出力が出せるようになってテンションが上がってしまったのだ。

本当にチャドには感謝してたし殺すつもりなんてなかったんだ!

 

「どうやらまだ生きているようだな。早く治すと良い。そちらから仕掛けてこなければ手を出す気はない。(震え声)」

 

「チャド君!死なないで!今治すから!!」

 

今更だけど好感度最悪では?

俺は現実逃避がてらキルゲ先生の方を見る。

クリーチャーみたいな外見になって、更に身体に大穴が開いているのを見た時は慌てたが、普通に元気だな。

といっても体内式の乱装天傀で体を無理やり動かしているようだけで早いとこ傷を治療しないと不味いな。

いつの間にか黒崎一護もいないし、チャドはダウン(瀕死)、巨乳美少女はその治療、あとは胡散臭いゲタ帽子、浦原というやつか確かアイツは特記戦力の一人だったはずだ。

クソ!一護についても資料を読み込んでいれば事前に男と知れて心構えが出来たのに。

 

「貴方の敗けだ黒崎一護。貴方はその闇くらい檻の中で尸魂界の滅亡を只為す術も無く待つのだ」

 

流石はキルゲ先生だ。

特記戦力筆頭の一護を監獄(ザ・ジェイル)で閉じ込めて無力化したようだ。

アレは滅却師である俺にはよく分からないが、滅却師以外には無敵の檻らしいので任務は完了だろう。

 

「・・・さて・・・では吸収したあの化物の力が消える前に…貴方たちも消しておきますかねえ・・・。ジュダス君私は流石に限界なので任せます。」

 

「分かりました。急ぎますので安静にしてくださ・・・キルゲ先生!後ろ!!」

 

「がはっ…」

 

油断していた。

浦原以外に脅威はないと思いそちらに意識を集中し過ぎた。

そう思った瞬間敵増援の奇襲によりキルゲ先生が両断された。

医学的知識がなくてもすぐ分かる。

これは助からない。

ましてや下手人は破面、いくら聖文字を与えられた星十字騎士団でもあそこまで霊圧を込められた一撃で両断されたのだ。

滅却師にとって死ぬどころか霊魂の消失は確定だ。

 

「あ、」

 

ぐわっと重力が捻じれたような気がしたが気のせいだ。

俺はキルゲ先生の死が確定したことに思ったよりもショックを受けているのだろう。

だが同時に直接手を出さずに死んでくれてホッとしている自分もいる。

最悪の気分だ。

 

「ジュダス君どうやら私は死ぬようです。」

 

「!?キルゲ先生大丈夫ですか!」

 

ハッとしてキルゲ先生に駆け寄る。

浦原は奇襲してきた破面と何か話している。

仲間というわけではないのか・・・?

 

「いえ時間の問題でしょう。まあ陛下のご命令通り黒崎一護の足止めは達成できました。」

 

「何!落ち着いてるんですか!?」

 

「聞きなさい!!一度だけ言います!!」

 

「私は陛下に忠誠を誓っています・・・ですから私に構わず、貴方は、貴方の意思で進みなさい。」

 

「キルゲ先生・・・。」

 

キルゲ先生はその一言を残して死んだ。

まもなく霊体も虚の霊圧に侵されて消滅するだろう。

 

「ウルセエ!まだ一人敵が残ってんだ!とりあえずぶっ殺すぞ!!」

 

破面が吠えている。

どうやら俺も殺すつもりのようだ。

まあもっともな話だ。

キルゲ先生の遺体も他の聖兵のように霊子に分解して取り込む。

このまま消滅はあまりにも・・・気に食わない。

とりあえずは・・・。

 

「取り合えずお前は死ね。」

 

全力で殴りかかってくる破面の拳を掴むが同時に

逆側の手で頭部を掴まれる。

 

掴み虚閃(アラガールセロ)!」

 

ゼロ距離で虚閃を打ち込まれるが静血装もボディースーツも展開済みなのでノーダメージだ。

俺は掴んだ拳を引っ張りながら逆の手で拳を握る。

 

「“流桜”」

 

破面のみぞうちに直接覇気と霊圧を叩き込む。

体内をグチャグチャにしたつもりだがまだ死なないな。

相手を掴んだまま何度も流桜付の拳を叩き込む。

 

「があっ!?ぐわあ!?が、がががあああ!!」

 

血反吐吐いていた破面が自分の腕を引きちぎりながら離脱した。

傷からあふれる血を使って黒い虚閃を放ってくるが、霊子に分解、吸収し追撃の聖矢を打ち込む。

浦原がソレを防いだ。

邪魔だな。

 

(きし)れ!豹王(パンテラ)!!」

 

破面が変身した。

霊圧も増したし、折角の負傷も全て治癒してしまった。

 

豹王の爪(デスガロン)!!」

 

上手い。

変身した瞬間に間を置かず最大技か?

膨大な霊圧がこめられ、速い。

霊子の分解が間に合わないな。

 

「まあこの程度なら効かないんだけどな。」

 

霊圧を高めて防御も何もなく破面の攻撃を突っ切った。

発生した粉塵を超えると同じくこちらに接近してきていた破面の顔があった。

俺は即座に頭部に手を伸ばす。

霊子を操作してチャクラメス・・・いや流石に切れないか・・・指先の霊子をドリル状に高速回転、これなら破面の鋼皮でも貫通できるだろう。

 

「剃刀紅姫!」

 

少し鋼皮を抉った辺りで浦原から血で出来た斬撃のようなものが飛んできた。

普通に防げるが、コイツに何仕込まれてるか分かったもんじゃないので避ける。

 

「本当に邪魔だな。」

 

チャドとその治療を続けている女を狙う。

守れば諸共、見捨てても敵は減る。

 

「バーニング・フル・フィンガーズ」

 

ゴオッ!!

 

「!?いけない!!」

 

どうやら守ったようだ。

煉獄の炎により砂は融解し、炎が燃え盛る。

その光景は知るものが見れば総隊長の始解の炎を連想することだろう。

 

「まだ霊圧を感じる」

 

破面にも炎を放つ。

流石に避けたので距離がまた開く。

霊子を支配して破面をロープで拘束。

一瞬で破壊されるだろうが十分だ。

再度霊圧を込め地獄の炎を吐き出そうとするが・・・

 

 

 

 

 

 

 

見えざる帝国から帰還の命令が届き、

ジュダスの背後に影が凝り固まったかのような穴が出来る。

 

「・・・・っち」

 

ジュダスは炎を消した。

そして周囲を蹂躙する炎を霊子に分解し消火したが、

そのまま炎だけでなく砂そのものも霊子に分解・吸収する。

影に飲み込まれる寸前、腕を天に掲げて

 

万雷(ママラガン)

 

降ろす。

戦場はもちろんその周囲全てに幾十もの雷が暴れ狂う。

砂漠の砂は融解し、嵐が巻き起こる。

破面と浦原たちの霊圧が雷に飲み込まれるのを確認しながらジュダスは帰還した。

 




IFもし虚圏を他の星十字騎士団が覗いていたら

ジュダス「バーニング・フル・フィンガーズ」

バズビー「」
※自分の最強技をパクられたため。


ジュダス「万雷」

キャンディス「FXで有り金全て溶かす人みたいな顔」
※自分の完全上位互換を見たため


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14話

太陽の門を通り一人で玉座へ向かう。

行きは人数が多かったのに帰りは寂しいものだ。

 

「陛下、ただいま帰還しました。」

 

「キルゲは逝ったか。」

 

「はい。」

 

「・・・ご苦労。奴は黒崎一護の足止めという大任を見事果たした。」

 

「・・・キルゲ先生の役目には意味がありましたか?」

 

「あった。」

 

「了解しました。流石に少し疲れたので休息を頂きます。」

 

「次の侵攻も近い。・・・期待しているぞ?」

 

「・・・光栄です。全力を尽くします。」

 

ジュダスが退室した玉座にてユーハバッハとハッシュヴァルトの両名がいた。

沈黙の中、ハッシュヴァルトが口を開く。

 

「・・・宜しいので陛下?ジュダスは確実に二心を抱いております。」

 

「構わん。奴がソレを糧に成長するならするで構わない。そもそも私が力を取り戻す時点でどうとでもなる。第一奴には既に(リルトット)もある・・・その枷がある限りいくら私に反感があろうとも裏切ることはない。・・・まあ石田雨竜と同様に一応枷をもう一つ増やすか。」

 

「失礼いたしました。すべては陛下の御心のままに」

 

 

コツコツコツ

 

ジュダスは玉座から退出し、長い廊下を歩く。

外からは平静そのものだが内心はグチャグチャだ。

怒り、悲しみ、安堵。

自分でもよく分からない感情である。

早くリルトットに会いたい。

怪我などしていないだろうか?

ジュダスは少し歩調を速めながら、廊下の丁度半ばで足を止める。

 

「誰だ?」

 

「失礼。驚かすつもりはなかった。」

 

誰かの気配を感じジュダスは足を止め問いかける。

此処には仲間しかいないので襲撃などまず無いのだが、仲間意識の希薄な星十字騎士団ならばワンチャンあり得る。

もし出てこなければ最悪殺すつもりでジュダスは身構えたが相手は普通にその姿を現した。

 

柱の影から姿を現したのは聖文字「X」リジェ・バロだった。

ジュダスは正直驚いた。

自分の銃を作成する際に少し話したことがある程度だったリジェ・バロが話かけてくると思わなかったからだ。

彼はキルゲ同様陛下への忠誠心が篤く、絶対の攻撃力と防御力を併せ持った最古参である。

陛下の最高傑作とマウントを取りたがる悪癖があるため他の星十字騎士団からは煙たがれているがジュダスとしては欠片も羨望の気持ちがないため普通に接している。

 

「キルゲが亡くなったそうだな。」

 

「はい。」

 

「彼が亡くなったのはボクとしても残念なことだ・・・。だが陛下の命を達成した結果のことだ。彼も本望だろう。」

 

「・・・はい、ありがとうございます。」

 

「ジュダス、君も師の名を汚さぬよう陛下の御為に励むことだ。」

 

「はい。全力を尽くします。」

 

「ならいい。おそらく数日後には再侵攻が行われる。英気を養うことだ。」

 

リジェ・バロはそう言うとジュダスの脇を通り過ぎ玉座へと歩いていく。

 

「ありがとうございます。」

 

「ああ」

 

ジュダスはその背に礼の言葉を投げる。

だがその顔に親しみはなく引き攣ったかのような歪な笑顔だった。

※悪鬼スマイルで検索してね!

 

ジュダスはしばらく微動だにせず立ち尽くしていたが、気を取り直しバンビーズ達溜まり場に向かって再び歩き出した。

 

 

 

 

バンビーズの溜まり場にしばらくぶりにジュダスが顔を出してキルゲの訃報を伝える。

その後、いつものようにイキるバンビエッタをスルーして疲れたかのように腰を下ろしたジュダスを心配してリルトットは声をかけた。

 

「まあ・・・なんだ。俺はキルゲの奴とそんなに仲が良かったわけじゃないが・・・ジュダス大丈夫か?」

 

「あー正直色々な感情で頭がいっぱいで大丈夫そうでないです・・・。そっちはどうでした?」

 

天井を眺めたままジュダスがリルトットにきく。

 

「ん?こっちは大丈夫だ。怪我も無くバンビエッタの奴が敵隊長格の卍解を奪った。」

 

珍しく疲れ切った顔を隠しもしないジュダスを心配するリルトット。

他のメンバーも普段と違う様子のジュダスの様子をうかがう。

リルトット越しとはいえ長い付き合いがあるため良好なのだ。

新生バンビーズは仲良しグループです。

 

「そうよ!ワンちゃんの顔をした隊長から奪ったの!まあ巨人が出るだけで爆撃(The Explode)に比べればショボい能力だけど!」

 

一人浮いているいつものバンビエッタ。

ジュダスは無言で監獄(ザ・ジェイル)の解析して作成した檻でバンビエッタを拘束する。

遮音性がある上に頑丈、更にバンビエッタ一人が入ると隙間がないくらいの大きさなので爆撃(The Explode)を使用すると確実にバンビエッタ本人が巻き込まれるという絶妙な塩梅だ。

え、滅却師は拘束できない?

ジュダスにとって好感度低い相手は味方判定じゃないから。

 

「ジュダス!?それ!?」

 

「ジュダス君それは!?」

 

リルトットとミニーニャは驚愕した。

キルゲの能力を模倣したことについては今更なのでどうでも良いが、能力だけは間違いなくトップクラスのバンビエッタを封殺する檻を一瞬で作成するその制御力、隠密力は明らかに少し前のジュダスでは考えられないほどの成長だからだ。

 

「・・・リルトットちゃん。うまく説明できないけどキルゲ先生が亡くなって意外なくらい動揺してる。でもなんか安心した自分もいるんだ。」

 

「安心ってのはよく分からないが・・・まあお前は情が深いからな。仲間意識なんかほぼ無い星十字騎士団の中じゃ俺たちバンビーズだって結構異質なんだぜ?足の引っ張り合いなんて日常茶飯事だしな。そういう意味じゃお前は異端なんだぜ?」

 

「・・・・そうかな?・・・・・・星十字騎士団クソ過ぎじゃない?」

 

「「・・・・」」

 

誰もが苦笑いで沈黙である。

客観的に見て同じく殺し合い上等でも陰湿さがない分十刃のほうがマシという

最悪な労働環境である。

 

「・・・・・」

 

「・・・ああ~仕様がねえなあ!オイ!ジュダスこっちへ来い!!」

 

どうにも覇気のないジュダスに業を煮やしたのか、リルトットが乱暴にジュダスを引っ張る。

 

トサ

 

「ええ!?」

 

そのままジュダスは薄、・・空気抵抗の少なそうなリルトットの胸に頭を抱えられて動きを止めた。

 

「しばらくこうしておいてやるからぼーっとしとけ!良いな!!」

 

リルトットの男前な優しさの前にジュダスは一度停止し、そのまま彼女の胸の中で身体を震わせた。

そんな二人を見てニヨニヨするミニーニャ、キャンディス、ジジの三人。

バンビエッタは檻の角度的に見えず、置いてけぼりだった。

 

 

 

 

 

時は少し経過して、ジュダスが現れて30分ほど経過した

バンビーズの溜まり場は地獄絵図に変貌していた

 

「ああ~心がピョンピョンするんじゃあああ。」

 

「しょうがねえなジュダスは。まあしばらくこうしておいてやるからな?」

 

恩師が亡くなりジュダスがヘコみ、それをリルトットが慰める。

それも良いだろう。

その手段として抱きしめて慰める、ニヨニヨ出来るのでそれもまた良し。むしろそれが良いまである。

 

「ばぶう」

 

「ふふふふ。」

 

だが目の前で二人して新しく性癖を開拓するのは違わない?

良い年した細マッチョな男が(見た目)幼い少女の胸に顔を埋めて甘えて奇声を上げているのだ。

 

「こ、これが『バブみ』と『オギャる』ってやつか!?」

 

キャンディスが戦々恐々と声を上げる

普段しっかりしているジュダスが弱り切っているのはキャンディスとしてもソソるものがあったが、此処までブッ壊れるとは思わなかった。

大の男が年下の少女に母性を感じて甘える様は・・・こう、なんというか・・・キツイ。

序でに付き合いの長かった同僚が、どういわけかエス・ノトのようなハイライトの無い目に恍惚とした表情でジュダスの髪を優しく撫でている。

端的に、凄い怖い。

ジジは目を輝かせ、熱の篭った視線をバンビエッタに送る。

ミニーニャと檻から解放されたバンビエッタは二人を見て素直にドン引いている。

 

「あ~」

 

「こんなに屈強になったのに、俺にこんなに甘えて・・・仕様がない奴だなあ。」

 

キャンディスはこの時心の底から思った。

「早く戦争がしたい」と。

 




リジェ・バロさんは善意100%です。
ただジュダス君の神経を全力で逆なでしています。

私の脳内でバンビエッタちゃんが黒髪のアクア様になっています。


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15話

新たな性癖の扉を開いて数日。

第二次瀞霊廷侵攻を明日に控え、最後の平穏を満喫するジュダスは

今朝あった出来事に思考を巡らしていた。

 

今日の早朝。

静謐な空気の中、星十字騎士団及び全聖兵が陛下によって集められた。

第二次瀞霊廷侵攻に対して陛下から激励が飛ぶのかと思っていたが、その内容はまさかの後継者の発表であった。

しかもその後継者に指名されたのはポッと出の混血統滅却師だったのだ。

確か石田雨竜という未亡人みたいな雰囲気の男だった。

彼が紹介された時の空気など最悪だった。

聖兵たちも「誰だコイツ!?」みたいな雰囲気で動揺してたし、星十字騎士団の連中なんて「何でコイツが!?」といった感じで殺気立ってた。

更に俺にとっての最悪は陛下が続けて言ったことだ。

 

「だがあくまで雨竜は候補の一人だ。もう一人はジュダスお前だ。」

 

それを聞いて俺は白目剥いたね。

再度ザワついた。

聖兵はともかく星十字騎士団は「マジかよ・・・」「この△頭が?」って感じで殺気立ってはいなかったけど、雨竜の時となんか微妙に異なる雰囲気だった。

リルトットちゃんもシリアスだし、バンビエッタとバズビーはメンチ切ってくるし。

だからつい口が滑っちゃったんだよね。

 

何言ってんだこのヒゲ?(チェンジで)

 

あの時の空気は忘れられない。

速攻で久しぶりの涅槃超高速水平移動でバンビーズの溜まり場へ逃げ帰った。

雨竜君がクッソ動揺してたが、初々しいリアクションはこう評価だ。

最近皆順応しちゃって反応がツマらなかったからな。

 

とりあえずイライラ解消のためにイケメン一般聖兵を「ぱっか~ん」しようとしたバンビエッタを雑に気絶させて今に至る。

 

「何で俺が陛下の後継者候補なんだ?普通ハッシュヴァルドあたりだと思うんだけど」

 

今朝の出来事を思い出しながら疑問が口を滑る。

すると隣でお菓子をつまみながらゴロゴロしていたリルトットちゃんが彼女の考えを教えてくれた。

 

「分からねえが・・・あの陛下の事だ。そのまんまの意味じゃないだろう。そもそも最有力だったハッシュバルドですら陛下に比べれば力不足だ。まあ陛下が強すぎるんだけど。」

 

「確かに」

 

「ん~?ジュダスとあの石田雨竜が選ばれたってことは、二人に何か共通点とかあるんじゃない?」

 

先ほどまで笑い過ぎで死んでいたジジが復活して話に入ってくる。

彼女(彼)の言う通り俺と雨竜君に後継者に選ばれる要素があるのだろうか?

といっても彼の能力も性格もよく知らないんだが。

 

「といってもアタシら誰も石田雨竜の事なんて知らないしなあ。っていうか現世の滅却師だからココにきたのも最近だし、誰も知らないんじゃない?」

 

「そうですよね~。ワタシもあと知っていることって言ったら石田雨竜はあの黒崎一護と仲間だった、とか?」

 

キャンディスとミニーニャもお茶を飲みながら話に入ってくるが、基本的に最近見えざる帝国に合流した雨竜君について俺たちみんな大して知らないようだ。

とりあえず思いつかないが、共通点と言ったら現世生まれってくらいだろうか?

だがそれが何か関係あるのか?

分からない。

 

「バンビちゃんは何か分からない?分からないよねえ。」

 

ジジが気絶から復帰したバンビエッタに俺と雨竜君の共通点について質問した。

うん。

最近俺というバンビエッタに対する抑止力が出来たせいかどんどんバンビエッタの扱いが雑になっていく。

まあバンビエッタ自身にも原因はあるので仕方ないね。

 

「ジジ!バカにするんじゃないわよ!私に掛かれば二人の共通点なんて簡単よ!」

 

「はいはい。じゃあ共通点は?」

 

「まず二人とも男よ!」

 

「バンビちゃん・・・。」

 

「バンビエッタに期待した俺が馬鹿だった。」

 

「俺と同じ聖文字“E”を与えられた星十字騎士団の姿か?これが?」

 

「バンビエッタの奴最近知能指数下がってない?」

 

「シッ。」

 

俺も含めてバンビーズの面々からの駄目だしが激しい。

だが流石に今の回答は・・・どうしようもないな。

 

「だあ~!!うっさいわねえ!こういうのは当たり前のことでもとりあえず一つ一つ口に出してくの!そしたら意外と色々と思いついていくものなのよ!」

 

むう。

バンビエッタのくせに正論を。

まあ彼女に乗ってみるか。

 

「あとは二人とも現世出身で、星十字騎士団。あとは石田雨竜は混血統滅却師で空座町出身っと。・・・そういえばジュダスは純血なの?どこに住んでたのよ?」

 

「それが分かんないんだよね。多分父親も母親も滅却師・・・いやそういえば母親は弓矢使ってたか?・・・あれ?」

 

バンビエッタに言われて思いだそうとするが・・・父親は滅却師としてスタンダードな戦い方をしていた・・・気がする。

だが母親はどうだったか?

弓矢を・・・いや刀持って・・・弓矢に変えて撃ってたような・・・。

 

「あ!ああああああ!!俺の母親斬魄刀持ってた!!」

 

「何い!?それお前の母親死神じゃねえか!?」

 

「ええ!ジュダスって死神とのハーフなの?」

 

「へえ。ってことは混血統も共通点ね。石田雨竜は死神の血は流れてないわよね?」

 

知能指数が増したバンビエッタが話を続ける。

俺の記憶が確かなら、母親は普段日本刀を持っており、弓矢に変化させて戦っていた。

父親と二人で弓矢使って戦っていた記憶が強すぎて勘違いしていた。

そうだ。

俺の母親は死神だった可能性が高い。

 

「ええ。唯のと言っていいかは分からないけど、混血統滅却師なのは間違いない。」

 

「ってことは現世生まれの混血統滅却師が条件かしら?・・・ジュダスや石田雨竜の両親はどうしたの?」

 

「あ、ああ雨竜君の両親は知らないが、俺の両親は虚に殺されてる。俺は見えざる帝国に来るまで一人で現世と虚と戦いながら生きてきたんだ。」

 

「・・・なんでアンタも石田雨竜も生きてるの?」

 

「え?」

 

「ちょ!?お前何言ってんの?」

 

「だって純血統滅却師以外って陛下の聖別されたんじゃないの?」

 

脳裏に見覚えのないハズの映像が溢れる。

ある日、空から光の柱が降ってきて・・・俺の目の前で父さんが消えて、母さんが一人で虚と戦って・・・殺されて・・・・・・・・・・・・

 

「ア、 アアアアアアア!?」

 

思い出した。

俺は思いだした。

何で忘れてたんだ。

“経験(The Experience)”で強化先に項目が増える。

そうだ

俺には死神の力も持ってる。

だから虚を喰ってもおれは大丈夫だった。

生きるために虚を喰った。

“経験(The Experience)”で強化先に項目が増える。

気持ち悪い。

前世の・・・俺が〇〇〇〇だったころの記憶が浮かび上がる。

膨大な記憶量がジュダスという人間の記憶の流れ込む。

原作の設定、流れが激流となる。

その激流のまま俺は・・・俺の可能性が広がるのを感じた。

 

「大丈夫か!?ジュダス!?」

 

リルトットちゃんが俺を心配して

焦った様子で俺の様子をうかがってくれた。

かわいい。

 

「大丈夫だ。」

 

記憶を整理するのに時間は必要だが・・・大丈夫。

だが記憶を取り戻すと同時に、かつてに自分を思い出す。

そうだ。

俺は前世でリルトットちゃんとソイポン推しだったのだ。

 

「ばぶう。」

 

俺は最後の気合でリルトットちゃんの胸に頭を押し付け、

蘇った記憶の整理し、 “経験(The Experience)”を使用して爆発的に増えた強化項目を吟味し、自身を強化する。

 

今一般聖兵に転生した一人の転生者が本当の意味で目を覚ました。

 




エタったと思っていた作品が復活していた。
流れを思い出すために遡って最新話まで読む。
小説を書く暇なんてないよね。


つまりそういうことです。


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16話

「おれは しょうきに もどった!」

 

一晩眠って記憶も心も安定した。

今まで忘れていた原作の記憶も、過去の記憶も、完全に思い出した。

おかげで妙にスッキリというか、新しいパンツを正月元旦の朝のような爽やかな気分だ。

その上で俺は考えた。

自身の“経験(The Experience)”で得られる力、原作知識より得た陛下たちの力。

 

「・・・無理では?」

 

“全知全能”とかどうしようもなくない?

勝てる勝てないとかじゃなくて倒せなくない?

陛下とか“静止の銀”とかなければ無理ゲーだし。

少なくともジェラルド、ハッシュヴァルド辺りは殺しきれる気がしない。

あいつら強さとかじゃなくて概念系の防御能力(生命力)だからその能力を無効化できる方法を編み出さなければどうにもできない。

俺の能力は炎や雷、爆撃と多彩だし、自賛になるが戦闘能力は非常に高い部類だ。

だがそれらは破壊力はあっても、種も仕掛けも無い概念系の防御力は突き抜けないし、ジェラルド並みのワケわからん生命力は殺しきれない。

ペルニダは・・・マユリ様に任せるとして、アスキンと罪深バードについては殺すことは可能と。

 

「とりあえず“原作”通りならバンビーズは無事(?)に生き残れるんだしバンビーズの金魚のフンしとこう・・・!」

 

うん。

リルトットちゃんが死ぬならまだしも原作なぞっとけば生き残れるし、厄介な連中は陛下が自分で殺すし、その陛下自身も舐めプした結果、“静止の銀”で能力無効化されて霊王様になるし。

俺自身が“聖別”で死なないようにどうにかすれば問題ない。

勝ったな!ガハハハ!!

※フラグ

 

 

朝食を摂り、準備運動を行う。

他のメンバーは割と余裕かましているが、そういうのが原因で“原作”では敗北したんだろうなと感じる。

俺は原作には存在しないイレギュラーであるため生き残る可能性は不明だ。

少しでも生存の可能性を高めるために準備を怠ることは出来ない。

十分な準備運動で体をほぐし、装備の点検を行う。

治療薬や包帯などの道具もポーチに仕舞い込み、そっと毒薬などの劇物も懐に入れる。

もう少し早く記憶が戻ればいろいろと準備できたのだがまあ贅沢は言うまい。

最終決戦の前に記憶が戻っただけ御の字だ。

 

 

 

 

準備を整えてリルトットちゃんの隣に立つ。

他のメンバーも近くに並ぶ。

バンビエッタは俺たちを率いるかのように少し前に立った。

その瞬間バンビエッタを除く全員がアイコンタクト。

 

遠くから鐘の音が響く。

景色が歪み、白亜の街並みの中に死覇装を纏った死神たちの姿が浮かび上がる。

さあ戦争の時間だ。

 

景色が切り替わり、眼下の死神に対しバンビエッタが爆撃を行いながら降り立つ。

浮足立つ死神たちに対し、何かオサレな口上を言っているのだろう。

あのドヤ顔と死神たちの驚愕顔のコントラストが美しい。

俺はそこまで見て、リルトットちゃんたちと逃げ出した。

 

少し時間が経過した。

遠く離れた場所で立て続けに爆発や炎が起こっている。

それ以外にも様々な場所で建物が倒壊していく様が見て取れる。

どうやら予定通りバンビエッタや他の面々が暴れているようだ。

死神たちの霊圧が大小問わず花火のように消えていく。

読者として読んでいるときはネームドキャラも新キャラもあっさり死んでいったのは衝撃だったものだ。

 

そんな派手に暴れている他の星十字騎士団たちと対照的に俺たちは神聖滅矢で地味にパシュパシュしている。

といってもリルトットちゃん達バンビーズがメインで、俺は周囲の警戒を理由に接触的に手を出していない。

なぜなら原作知識とはいえ滅却師の敗北の可能性が高いのだ。

戦いが終わったら速攻トンズラする予定であるが可能な限りヘイトを稼がないよう立ち回るのは無駄ではないはずだ。

 

「来たか。」

 

「おわ!?共鳴して羽が出ちまった!」

 

瀞霊廷各所で滅却師の霊圧が跳ね上がる。

同時にキャンディスに雷のような形状の羽が生えた。

原作通り浦原喜助の手により卍解を取り返されたのだろう。

だが制限がなくなったことにより、星十字騎士団達がどんどん滅却師完聖体を発動し更なる蹂躙を続ける。

順調に原作通り進んでいる。

 

「このまま行ってくれれば万々歳だな。」

 

「オイ。ジュダスそれじゃ俺たちが功績を稼げねえだろう?お前ももっと積極的に戦おうぜ。」

 

「リルトットちゃん。それも良いけどどうせ脅威度の高い奴は生き残るよ。どうせなら少なからず疲弊しているであろうそういう奴を狩ろう。」

 

「なるほどな。それでいこう。」

 

「ジュダス君は悪い男ですね~。」

 

「楽できていいじゃん!」

 

「っても少しは稼がないとなあ。なあジュダス周りに敵は?」

 

「ふむふむ。」

 

見聞色の覇気を使用して周囲の状況を読み取る。

バンビエッタの下に隊長・副隊長格クラスの霊圧が集まっているがドンドン小さくなっている。

順調、順調。

このままゾンビエッタちゃんになって新属性を得てほしい。

 

「本当便利だな。ジュダスのソレ!“ケンブンショクのハキ”だっけ?ワタシも覚えようかなー?」

 

「霊子を広範囲にばら撒いた上でそれを完全に制御して、そこから得た情報を元に情報を読み取るサムシングがあれば出来るよ。」

 

「うげー!?サムシングって何だよ!」

 

「・・・センス?勘?」

 

「自分でも分かってないのかよ・・・。」

 

だって覇気に関しては酒で泥酔してるときに習得したからイマイチ理解できてないんだよね。

武装色については筋組織、皮膚、骨に霊子を込めれば何となく出来るのは分かっているが見聞色についてはサッパリだ。

おそらく蝙蝠の超音波の反射を読み取り、脳内で像を結ぶような感じだろう。

 

「・・・バンビエッタは隊長・副隊長格を複数相手に暴れてるな。やっぱ強いな。——ああ、巨人が暴れているあそこらへん。」

 

「ああ・・・巨人居なくてもあんだけ派手に爆発してたら誰でも分かるな。」

 

「そだね。リルちゃん。」

 

BG9は負けたな。

バズビーとマスキュリンは順調に敵を倒している。

蒼都は敗北・・・アレエ!?

普通にピンピンしとるやないか蒼都ォ!?ナンデ!?ツアントォ!?ナンデ!?」

 

「うわ!?どうしたジュダス!?なんかよく分からないが蒼都が勝ってるなら良いじゃねえか?」

 

「・・・バンビエッタも疲弊してるけど巨人をブッ倒してピンピンしてる!?」

 

「・・・バンビちゃんなら全然おかしくないと思うけど?」

 

俺の驚愕の声に反応してキャンディスとジジが答える。

まあ傍から見ると友軍が健在なのを悔しがってる変な奴だもんね。

 

「どういうことだってばよ・・・?」

 

あ、蒼都は改良版飛廉脚で氷漬けを避けたのか。

・・・俺のせいじゃん!?

俺のガバじゃん!?

記憶の戻る前の俺の馬鹿!

慌てて他の戦いを探る。

 

「落ち着け・・・落ち着け・・・。」

 

読み取りづらいがグエナエルも優勢。

気のせいか相手の死神、やちるのダメージが大きい気がする。

原作よりもいい勝負・・・あグレミィに消された。

なんでや。爺さん頑張ってたじゃん。

ナナナは適当に一般隊士を刈ってるし、ペペは気配を隠して様子を伺ってるな。

ロバート、アスキンも健在、ここら辺は原作通りだな。

マスキュリンは阿散井恋次と、能登さんはルッキャさんと会敵したようだ。

 

ゴゴゴッ!!

 

グレミィと剣八が居たあたりに巨大な岩石製の舞台がせり上がる。

最強格同士の戦いが始まるようだ。

というか舞台の上で既にマグマやら水やら斬撃が飛び交っている。

海軍本部の頂上決戦かな?

 

「・・・各所で滅却師が優勢で戦っているみたいだ。あそこの石舞台の所ではグレミィと特記戦力である更木剣八が戦っているみたいだ。」

 

「・・グレミィが負けるとは思えねえが念のため近づこう。そもそもグレミィと戦ってあんな長時間戦っている時点で普通じゃねえ。グレミィが遊んでる可能性もあるがマジなら苦戦してる可能性が高い。もしグレミィが負けても流石に更木剣八も疲弊してるはずだ。取るぞ。」

 

「OK!」

 

「りょーかい!」

 

「分かりました。」

 

流石リルトットちゃんクレバーだ。

きっと原作でもこんな感じでいち早く剣八に追い打ちをかけたんだろうな。

原作でも一護が来なきゃ剣八を倒してただろうしな。

 

「分かっ「更木剣八の下へは行かせませんよ。彼は今全力で戦える敵と会えて心底楽しんでいるのですから。」たよリルトットちゃん、んん!?」

 

誰かが近づいているのは分かっていたが真逆声をかけてくると思わなかった。

まあブリーチは敵も味方も不意打ちせずに声をかけて戦ったり、なぜか能力を説明したりするからそこは驚くほどではない。

問題なのは聞こえてきた声が妙に凄みのある女性(・・)の声であることだ。

俺は半ば予想できたのだがその予想が外れていることを祈って振り返る。

其処には長く美しい黒髪を常とは異なり降ろしている美女が一人。

 

「何で此処にいるんだ四番隊隊長 卯ノ花烈!?」

 

「おかしなことを。死神である私が瀞霊廷を襲う無頼の輩を前にしてそのまま見過ごす理由などないでしょう?」

 

「せめてその良い嗤い顔を隠してもらえませんかねエ!?」

 

ジュダスは こんらん した。

 





問 本来死んでるはずの尸魂界で一二を争うヤベー女に会敵したジュダス君の
  心情を答えなさい


例 鎧なしでレッドアリーマの群れに襲撃されたアーサー




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17話

何故。

なぜ卯ノ花烈、本名卯ノ花八千流がここに生きて居るんだ!?

原作では更木剣八の眠れる力を目覚めさせるため、殺し合いを演じ、切られ、死亡した人物だ。

公式で訳分らんほど強い剣八に及ばずながらほぼ最強格かつリアル殺し愛を行う女。

を演じた初代剣八にして回道をマスターした自動回復付き狂戦士。

現在に及ばずともブイブイ言わせてたかつての陛下や滅却師達を皆殺しにした護廷とは名ばかりの殺し屋集団の一人。

自己満足のために切り殺した人の初代護廷十三隊の十一番隊長山を築くのがライフワークの剣鬼。

自身を表現する語句の悉くがヤベー、原作屈指の地雷である。

あとなんかドロドロとした情念が凄い。

 

「・・・俺はてっきり剣八の真の実力を目覚めさせるために死んだかと思ってたんでね。」

 

「ええ。どうやら貴方は私や彼のことをよく調べているようですね。

・・・確かに私もそのような結末になると考えていました。」

 

「では・・・何故二人とも生きて居るのかな?後学のために教えてほしいんだが。」

 

「簡単なことです。貴方達滅却師が強かった。突出した個がという意味だけでなく全員が平均的に強かった。それが段階を踏んで更木剣八を鍛え上げ、私が死まで至らなかった理由です。

あとは彼と共に瀞霊廷を守るため貴方達滅却師を倒すことにした、それだけです。」

 

「嘘つけ。剣八が思い切り楽しめるように、自分が戦いたいから、だろう?」

 

「   」

 

嗤い顔が素敵ですね(白目)

多分原作でも登場していない程心身ともに絶好調ですよね?

二人初めての共同作業かな?

俺たちは・・・ウエディングケーキだった!?(動揺)

 

「・・・なあジュダス。アレは隊長格だよな。ヤルか?」

 

「いやここは俺に任せて先に行け。言いにくいがリルトットちゃんたちじゃ足手まといだ。」

 

「そんなにか?」

 

「オイオイジュダスお前私たちを馬鹿にしてるのか?あんな女楽勝だっつーの」

 

「そーだ!そーだ!あまり好みじゃないけどゾンビにすれば良いでしょ?」

 

「かつてブイブイ言わせてた頃の陛下達をぶっ殺した初代護廷十三隊の十一番隊長」

 

「「「よし!ジュダス後は任せた!」」」

 

う~んやっぱりこいつら人柱にしてやろうかな?

 

「大丈夫かジュダス?」

 

リルトットちゃんは優しいなあ

 

「時間稼ぎなら大丈夫。」

 

「・・・分った。」

 

心配そうな顔をするもリルトットちゃんは他のメンバーと共に石舞台に方へ駆けていく。

俺の邪魔にならないためか、卯ノ花烈を本能的に恐れているからかいつもに比べて早い気がする。

 

「意外ですね。更木剣八の邪魔をさせないために切りかかってくるかと思ったけど仕掛けずに待ってくれるとは・・・。」

 

「アレらでは彼の敵ではありません。あるとすれば今戦っている相手を倒して疲弊した時くらいでしょうが・・・それまでに私がつけば問題ない。」

 

「ははは。・・・行かせるとでも?」

 

「護廷十三隊四番隊隊長 卯ノ花 八千流(・・・) 推して参る。」

 

 

 

強い。

滅却師達の隊長格とも言える星十字騎士団。

いま私はその一人と戦っている。

星十字騎士団は高い戦闘力に加えて斬魄刀のように固有の能力を持っている。

それらの中には恐怖や不死身、何かしらの概念系の能力もあり非常に脅威的だ。

まあ中には先ほど切った絡繰り紛いのような能力もあるので全員がそうではないが。

 

対して今戦っている男。

ジュダスと呼ばれているアジア系の顔立ちの男。

彼はシンプルに強い。

更木剣八に近いスペックに異常に硬い防御力、姿こそ珍妙だが恐ろしい速度と機動性を両立した移動法、何かの能力か未来予知的な先読み。

まだ技術こそ拙いがそれらの基礎能力が非常に厄介だ。

なによりも私との戦いを通して恐ろしい速度で成長(・・)している。

通常ならあり得ないですが、恐らくスペックのごり押しで今まで戦ってきたので、自身のスペックに慣れていなかったのでしょう。

 

「うふふ」

 

楽しい。

彼もこのような敵は大好きでしょうね。

ですが私としても何も考えずに思い切り楽しめそうな相手というのは惜しい。

・・・良いですよね?

更木剣八の覚醒も終わり、瀞霊廷の危機を脱するため敵を切らなければならない。

そして目の前の敵は強い。

そっと石舞台のほうを見る。

そこには斬魄刀を始解し、愉しそうに天から降ってきた隕石を切り砕く愛しい男の姿があった。

私や彼以外では危ないかもしれないし、何より彼も既にほかの相手に楽しそうにしている。

だから久しぶりに私が愉しんでもいいですよね。

 

「皆尽」

 

卍解を行う。

刀身から血液が溢れ零れる。

さあ瀞霊廷を守るためにも、全力で戦いましょう。

 

 

 

 

「ヒエ!?」

 

卯ノ花が石舞台のほうを見たかと思うと、急に卍解した。

それはいい。

いや良くないが、まだ良い。

問題なのはあの顔だ。

何であんな爽やかな笑顔なん?

さっきまでの嗤い顔と違いすぎて逆に怖いんだけど。

 

先ほどから卯ノ花を此処に引き留めるために戦っているが膠着している。

雷撃も炎も爆撃も実体がないはずなのになぜか切り払われる。

遠距離攻撃では効かないと判断して接近戦を仕掛けたが、押され気味だ。

虚圏での戦いを経て俺は体表面にボディースーツのような兵装を霊子を集束して纏っている。

効果はシンプルに身体能力の強化のみだ。

ただその筋力も防御力もぶっちぎりで星十字騎士団トップで、そこに武装色の覇気も入れたらバズビーのフルフィンガー食らっても無傷だったし、ついに「愛」も「恐怖」も効きすらしなくなった。

故に序盤は余裕で卯ノ花の斬撃を弾いていたのだが、ある段階で猛烈に嫌な予感がしたので咄嗟に腕を止めたのだ。

するとどうだろう。

止めたから良かったものの、当たり前のように骨まで切られた。

驚愕してつい聞いてみると

「慣れた」だと。

意味が分からん。

 

 

その後は静血装も発動して何とか再度防げるようになったが、怖くて化剄の真似事も用いて防いでいる。

前、後ろ、左下から切り上げ、突き、蹴りと唐竹、鬼道、拳、背後からの切り払い。

見分色の覇気が発動!?

三方向からの同時斬撃。

両手と鬼道で防いで、全力強化した右手で刀を握りながらの中段蹴り、卯ノ花のあばらを蹴り折る。

かと思えば握っていた指が一瞬で切り落とされる。

構わず刀の握り手を掌底で叩き潰すが、持ち替えての薙ぎ払い、全力で霊圧を高めて左腕で防いだが骨は折られる。

ここでお互いが放った鬼道と雷撃で大爆発を起こし距離をとる。

俺は切り落とされた指を霊子に変換、集束して修復ついでに骨も修復。

卯ノ花は回道で治癒。

お互い無傷の戻り再度血みどろになりながらの超接近戦。

これの繰り返しである。

今も聖滅矢に炎を付加して打ち込んだが矢を切り払われ、発生した炎も刃で切り殺される(・・・・・・)

反撃として血液で構成された斬撃が飛んできて、家屋も、通りすがりの聖兵も崩れたジェンガみたいに切り払われる。

おや?卯ノ花が負っていた細かい火傷や打撲が治癒している。

奴の卍解は血液による斬撃に、敵を切ったら自分もしくは味方を自動で治癒ってところか?

原作でも剣八と切りあいながら治していたし・・・どんだけ切り合いたいんだよ。

どうする?

逃げるか?

だが逃げようとすると卯ノ花はリルトットちゃんのところに行ったしまうだろう。

現に今もリルトットちゃんたちの霊圧を感じる方向へ視線を投げている。

そんな修羅場に第三者が乱入した。

 

「ジュダス!!あんた何やってんのよ!たった一人にさっきから手古摺ってるなんて情けないわねえ!」

 

今ほどこの声が嬉しいと感じたことはない。

戦力になり、仮に死んでもそこまで気にならない理想的な人材だ。

 

「待っていたぞ!力を貸してくれ!バンビエッタ《スケープゴート》!!|」

 

そこには軽傷を負い、服はボロボロながら力強い笑みを浮かべるバンビエッタが立っていた。

 

「・・・増援ですか。」

 

「フフン!仕様がないわね。私がやるわ!アンタは引っ込んでなさい!」

 

「一人じゃ無理だ。彼女は卯ノ花烈。かなりの強敵だ。」

 

「ハア!?何言ってんのよ!?あんなオバサン(・・・・)に。」

 

「お前・・・だからバンビエッタ(ゾンビエッタ)なんだよ・・・。」

 

コイツほんまコイツ。

初手でヘイトぶっちぎりで稼ぎやがった。

 

「小娘が。」

 

戦いはさらに加速する。

 




ボディースーツは完現術チャン一イメージ。
また卯ノ花さんの卍解は某動画の考察を参考にした想像です。




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18話

卯ノ花との闘いはバンビエッタの乱入により仕切り直しとなった。

まず初手でバンビエッタが能力を用いて爆撃を行った。

 

ここで改めて説明するが彼女の使用する聖文字によるオリジナルの「爆撃(The Explode)」は通常は自分の霊子で作った爆弾を撃ち込むだけの能力である。

だが完聖体となった場合その能力は若干であるが変化するのだ。

それは自分の霊子を打ち込んだ物質を爆弾に変質させるという点である。

つまり防御した場合、例えば防御に使用した斬魄刀であったり結界であったり接触した対象そのものが爆弾になる、極めて攻撃性の高い能力なのだ。

これがあまり人格的に良いとはいえないバンビエッタがバンビーズに排斥されない最も大きな理由であり、裏で吉良吉影と呼ばれている原因でもある。

 

序盤、ノーモーションでバンビエッタの放った霊子の弾丸はあっさりと卯ノ花の放った血液の斬撃で切り刻まれる。

爆破が起きないところを見ると、血液どころか斬撃で発生した風で切っているようだ。

 

「へ?何で爆発しないのよ?」

 

呆けた顔をするバンビエッタ。

ジュダスは然もありなんという顔をした。

彼女の能力は防御不可攻撃なのに避けるならまだしも切り払われた上で無効化されたのだ。

通常はこのような現象は発生するはずもなく、バンビエッタが呆けるのも分からなくはないのだ。

ただし今この場所においてソレは死を意味するのでジュダスは乱雑にバンビエッタのマントを引っ張った。

 

「ぐええ!?あ、あんた何を、ヒィ!?」

 

絞首刑になった咎人の如く汚い声を上げるバンビエッタ。

彼女は怒り、文句を言おうとしたが先ほどまで自分がいた建物が格子状に切り刻まれたのを見て悲鳴を上げる。

 

「な、なによアイツ!ヤバいじゃない。」

 

「卯ノ花は斬撃で真空波を起こして爆撃に触れずに無効化しているようだ。後、気を抜いたら一瞬でサイコロステーキ先輩だ。」

 

「斬撃が全然見えないんですけどォ!?」

 

「見えないなら頑張って距離を取るしかないな。後回道の達人だから自己治癒するよ。」

 

「ハア!?クソエネミーじゃない!!」

 

「分かるぅ~。」

 

ジュダスは悩む。

バンビエッタの攻撃は強力だが彼女本人は卯ノ花の攻撃に対応しきれず、他の人間との共闘も性格的にも能力的にも向いていない。

つまり二人になってもあまり意味がない。

 

(ちょうどヘイトぶっちぎりで稼いでるし、バンビエッタに人柱になって貰って逃げようかな。)

 

ジュダスは悩む。

バンビエッタに三代目(ガードベント)に就任してもらうかどうかを、だ。

 

「!?アンタ今私にあのヤバい女押し付けて逃げようと思ったでしょう!!そうでしょう!?」

 

「・・・ソンナコトナイヨ?」

 

ちっ勘がいい女だ。

 

「絶対嘘よ!私、絶対にアンタから離れないわよ!?絶対よ!?」

 

「五月蠅いなあ。ヘイヘイ考えました~。考えましたよ~。」

 

「何開き直ってんのよ!?この外道!!」

 

「ハッ!リルトットちゃんのオマケの分際で・・・」

 

「もう良いですか?いい加減、更木剣八の元へ行きたいので早く続きを行いましょう。」

 

ジュダスたちは脱兎のごとく逃げようとするが、彼らを逃がさぬよう周囲に斬撃が奔り、

人も、建物も、大地も切り刻まれた。

 

「「ヒャア!?」」

 

ジュダスとバンビエッタは咄嗟に抱き合い、身を限界まで縮める。

尚、バンビエッタは既に半泣きである。

 

「不味いわジュダス!殺る気よあの女!!今こそ変態機動で殴り倒すのよ!」

 

「ヤバいな。相当イラついてる。さあバンビエッタこういう時こそ無差別爆撃で一面焼け野原だ!」

 

「「お前(アンタ)一人で逃げる気でしょう!?」」

 

二人は醜く罵り合うが未だにバンビエッタはプルプル震えジュダスから離れない。

むしろ偶々だろうが、胸や生足をジュダスに全力で押し付けているような状態だ。

そんな時ジュダスの耳に聞きなれた声。

しかし現在もっとも聞きたくない声が聞こえる。

 

「・・・何だ。俺たちが命からがらあの化け物と戦ってたっていうのに、お前はバンビエッタと楽しそうだな。」

 

そうリルトットである。

ジュダスとバンビエッタは抱き合った状態で振り返ると、其処にはリルトットのみならず他のバンビーズのメンバーが幾分ボロボロになった姿で揃っていた。

全員ジト目である。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違うんだ。」

 

「「「・・・・・・」」」

 

他の面々はどうでもいいがリルトットのゴミを見るような目がジュダスの心を抉る。

 

「ハハハッ!!なんでえ切りがいのある奴らが揃ってるじゃねえか!?あ?アンタも愉しんでるのか!?」

 

「ええ。剣八、ボロボロですが大丈夫ですか?」

 

バンビーズの後ろから黒焦げで何で動けるのか不思議な状態の更木剣八が現れる。

怪我をしているがその気迫は凄まじく、背後に鬼が幻視出来るほどだ。

 

対して先ほどまで無表情でジュダスたちを切り刻んでいた卯ノ花は満面の笑みで剣八の傷を心配しながらモジモジとしている。

ただしその手には血液を延々と溢す不吉な刀を持っており、傍から見るとホラー以外何物でもないが。

 

前門の剣八(最強)、後門の剣八(最凶)

戦いは更に更に加速する。

 

 

 

 




バズビー他星十字騎士団「・・・何アレ。怖っ」
護廷十三隊「・・・あそこは大丈夫そうだな。」
虎徹勇音「隊・・・長・・・?」


恐らく次回はすぐ戦いが終わります。
ダブル剣八とか正攻法でジュダス以外生き残る姿が想像できないもん。


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19話

あけましておめでとうございます。


悪夢の剣八コンビとの闘いは対戦相手を変更して継続していた。

バンビーズ5人は能力と聖滅矢メインで遠距離からの攻撃に終始することで卯ノ花を封殺している。

バンビエッタとキャンディスの二人が爆撃と雷撃でメインアタッカー、他のメンバーが聖滅矢で応援と周囲の警戒、たまにジジが隙を見て血液を振りまいているが警戒されているようだ。

一応ゾンビ化した死神の平隊員や隊長格も控えているようだが単純に嗾けても卯ノ花は躊躇なく切ると思われるため温存している模様だ。

 

対して俺はというと、

 

「ハハッ!ハハハハハハッ!!お前良いな!シンプルに強え!!他の奴もいいがお前の戦い方が一番好みだぜ!!」

 

更木剣八とタイマンをしているがコイツ本当におっかない。

ボロボロだったくせに卯ノ花により軽く治療されただけなのに、クソ強い。

しかも戦えば戦うほど強くなってる気がするし、目に見えて動きが洗練されていっている。

俺もやり合いながら完現術が馴染んで動きがよくなっているが剣八に追いすがるので精いっぱいだ。

 

「お前!戦えば戦うほど強くなってるじゃねえか!?良いぜ!最高だ!」

 

剣八からの好感度が現在進行形で高くなっている。

止めて!?卯ノ花が蟲ケラを見るような目でこっちを凝視してるの!

怖いの!?

あ、バンビエッタが腕飛ばされて、ジジに直してもらってる。

 

「偶々最近得た能力が馴染んできただけだ!お前みたいに戦えば戦うほど強くなるバグじゃねえんだよ!!」

 

虚圏でチャド氏から学んだ完現術について、短い期間であるが俺は見えざる帝国に保管されていた資料を基に調査した。

どうにも現世では虚に襲われた人間、特に赤子がまれに目覚める特殊能力として伝わっていたようだが資料にはかつて霊王から分かたれた欠片を魂魄に宿した存在が目覚める力らしい。

俺に霊王の欠片が宿っていたことは驚いたが、まあその程度だった。

それよりも完現術というのは万物の魂を操る力らしく、特に術者の思いれのあるものを媒介に能力を行使することが一番強力に作用するという情報が重要だった。

俺の場合は何だろう。

俺は自分のこれまでの人生を振り返って考えた。

原作知識からチャド氏の場合は祖父との思い出がある“皮膚”こそが能力の媒介となり、

敵を穿つ拳や仲間を守る盾を生み出しているらしい。

確か織姫の場合も兄との思い出の髪飾りが媒介になっていたので、そういうことなのだろう。

では俺の場合は?

簡単だ。

記憶が不完全ながらも戻り、「俺」という存在が始まってから持っていた所有物などたった一つしかない。

俺の“肉体”そのものである。

 

「じゃあ試してみようじゃねえか!!出来なきゃ俺かお前が死ぬだけだ!」

 

思うに陛下の聖文字による能力の発現とは、陛下の持っている霊王の欠片、もしくはそれに類似するほどのナニカを分け与えた上でアルファベットという指向性を与えることで発言する完現術なのではないだろうか?

少なくとも星十字騎士団の多種多様な能力は、そのほとんどが術理もクソも無い異能だということは分析した俺がよく知っている。

特に強力な能力を持っている親衛隊とかグレミィなどは元々欠片を持っているからなのではないだろうか。

 

「“神の肉体”」

 

能力について理解したこと、剣八サンドという絶望的状況で生存本能を刺激されたことにより、滅却師としての技能、“The Experience”の能力、そして完現術という今まで俺が身に着けた力が完全に組み合わさり、俺の肉体を変質させる。

神つまり霊王という滅却師の肉体を模倣する。(模倣というにはスケールダウンが激しいが)

更木の斬撃を右腕で受ける。

 

ガギィ!!

 

「何!?」

 

更木でも俺の肉体に傷一つ付けれなかった。

今の俺は全体的に輝いて全体的に白く染まっており、全身に薄っすらと紫色に輝く文様が浮かんでいる。

他の星十字騎士団のように羽こそないが中々オサレではないだろうか。

きっと漫画なら見開き確定だろう。

 

「無駄だ。今の俺の肉体をお前であろうとも傷つけることは不可能だ。」

 

「ハッ!以前に同じようなこと言ってやがった破面がいたなぁ!今切れないんだったら切れるようになれば良いんだよォ!!」

 

知っている。

故に“The Experience”で今経験した剣八の斬撃を元に肉体を強化する。

それでもきっと剣八はそれを数回も繰り返せば強化をさらに超えるほど強くなるだろう。

ならば俺はさらにその上を行く。

見分色の覇気を応用して霊子を用いて空間を、剣八を、バンビーズを、卯ノ花を感知する。

斬撃を避け、受け流し、武装色及び強化した腕で防ぐ。

 

「面白れえ。面白れえ!!」

 

剣八を殴る。叩く。蹴る。切る。

一瞬でボロボロの肉体がさらにボロボロになる。

だが剣八は太々しく笑い、切りかかってくる。

 

(段々速く、強くなっているが・・・)

 

「舐めるな!」

 

俺は更に上に行く。

生まれ持ったものだけなら俺よりも剣八のほうが恵まれているだろう。

だが俺は鍛錬だけは人一倍してきたし、何より・・・

 

「俺が負けたらリルトットが困るだろうがぁ!!」

 

剣八が両の手で野晒を握り振り下ろす。

避けようと思えば避けれるだろうが・・・敢えて正面から打ち砕く!

 

「静動轟一!」

 

「神の肉体」を俺の制御下に完全に置く。

 

野晒を弾く。

拳が少し切れるが、刀身はひび割れ、剣八に拳が突き刺さり、剣八の肉体を構成する霊子を伝って身体の中と外を同時に破壊する。

 

「流桜・・・」

 

「ハハッ!」

 

剣八が血反吐を吐いて倒れる。

霊子の足場も作れないのだろう。

地上に落ちていく剣八は同時に見る間に霊圧が小さくなっていく。

そしてそのまま地上に廃墟に墜落。

卯ノ花が血相を変えて剣八の元に駆け寄っていくがこっこぞとばかりにバンビーズが邪魔を行うせいで近づけない。

 

「最後まで楽しそうに笑ってやがった・・・。」

 

俺は恐るべき強敵である剣八を倒したことで気を抜いた。

抜いてしまった(・・・・・)

俺が卯ノ花に攻撃を加えるリルトットちゃんの様子を見降ろしていると顔に影が差す。

 

「嘘だろう?」

 

頭上を見上げると、そこには斧を振りかぶった赤鬼がいた。

 

「ガアアアアアアアア!!!!!!!」

 

更木剣八が卍解したのだ。

油断していた俺はソレを避けきれずその身に受ける。

袈裟懸けの斬撃。

 

(ヤラれた!!原作知識で卍解という可能性があるのに油断した俺のミスだ!!)

 

霊子をかき集めてほぼ泣き別れ状態の肉体を再構成、同時に乱装天傀で身体を手動操作に切り替える。

なんとか首を動かすが、解放された剣八の力に剣八自身の肉体が耐え切れず原作のように腕が千切れかけている。

にも拘らず、斬魄刀が慌てて力の開放を止めたのか徐々に元の状態に戻っていくが、剣八は此方に飛び掛かって来る。

 

「死んでたまるかあああ!!?」

 

どうにか剣八の斬撃を避けようと足掻くが俺の身体は今にも千切れそうで全く動かない。

それでも生にしがみ付き吠えた。

だが現実に身体は動かない。

 

 

 

時間がゆっくりと流れだす。

眼前には斬魄刀の刃。

これが走馬灯というやつか?

何か手は無いのか・・・。

まだ・・・更に何か掴めそうなのに・・・

リルトットちゃん・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おや?

遥か遠くのバンビエッタが、

ナニカを抱えて、

爆発させて、

そのナニカがこっちにカッ飛んでくる。

ナニカは人の形をしており、剣八の一撃が届く間際に剣八に激突した。

 

「ガ!?」

 

「」

 

飛んできたのは気絶したまま全身に静血装を発動したベレニケだった。

ベレニケの体当たり(?)により止めを刺された剣八はついに気絶し再度落下。

ベレニケもそのまま落下。

俺は最後の力を振り絞り、剣八を“The Jail”で封印する。

後はリルトットちゃんがどうにか剣八の身柄とネタに卯ノ花と交渉してくれるだろう。

薄れる意識の中、般若の顔でこちらに走ってくる卯ノ花を見た気がするが俺は何も見なかった。

 




ベレニケ君は本作では防御に特化しています。
またベレニケ君には当初から何かしら剣八に意趣返しさせるつもりでしたが何故かこんな形になりました。

次回は遂にペペ様が登場します。
まあ原作通りでリルトットちゃんに手を出しますので・・・ねえ?

死にます(無慈悲)


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20話

あけおめ!
エアコンが壊れました!


聖文字“L”の聖十字騎士団 ペペ・ワキャブラーダは瀞霊廷侵攻に伴い、その能力で自分の手駒を増やしては次の犠牲者を手駒にするという風に自身の勢力を拡大していた。

彼の能力(ザ・ラブ)は手でハートマークを作り、そこから霊圧を飛ばして敵の体にハートマークをつけることで敵を洗脳する能力である。

簡単にいえば能力を使用された相手はペペを心底愛して彼のために自分の意志(・・・・)で全力を尽くすというエロ〇人そのものの能力である。

尚、能力は愛を植え付けるため心を持つものしか操れないが、逆を言えば心さえあれば物でも操ることが可能である。

尚、ペペ自身もその能力をフル活用して敵も味方も自身に不都合な相手は洗脳し、使い潰すという悪辣さ、合理性を兼ね備えた性格であるため、原作では味方であるミニーニャを洗脳しリルトットを襲撃させて手柄を独占しようとした結果、マユリのゾンビ軍団により失敗、最終的には報復としてリルトットに食われて死亡している。

ではこの世界ではどうなっただろうか?

 

この世界では剣八、ジュダス、ベレニケが墜落した後、特記戦力更木剣八という大手柄を得るために、バズビーなど他の聖十字騎士団と共に落下地点へと駆け付けた。

また同様にジュダスという脅威の排除、剣八の救助という目的のため生存している隊長・副隊長格の死神たちも落下地点に駆け付けた。

結果、般若顔で周囲を警戒しながら剣八を治療する卯ノ花烈と彼女に対して警戒しながらジュダスを治療するバンビーズ、気絶して放置されているベレニケ、それらの周囲を滅却師と死神の残存勢力が囲むという一触即発の状況となっていた。

 

しかし現在はとある異常事態の発生により双方一時休戦となっていた。

突然どちらかの勢力が心変わりをして和解をした?

そんな訳はない。

単純に双方にとって強大な敵が生まれたからである。

 

残存勢力が集結してからしばらく舌戦が始まった。

バズビーなど血の気が多い聖十字騎士団がボロボロの死神たちを挑発し、それに対して死神たちが皮肉を返し煽り返す。

外見は可愛らしい滅却師の少女が話したと思ったら、カマっぽい死神がその少女が男の娘であることを暴露して挙句には「精液臭い」と非常にセンシティブな煽りを行う。

ソレにブちぎれた男の娘がゾンビ化した死神を出したら、対抗して光り輝く死神がヤバい薬を投与してゾンビを奪ったり、ゾンビ化した破面を投入したり。

最終的には超シリアスな空気の中、破面・死神・滅却師という3種族のオカマ(男の娘含む)3人が煽り合うという地獄のような状況となった。

 

「ゲッゲッゲッ隙ありだネッ!」

 

そんな中、事前に洗脳して死神たちの中に紛れさせていた檜佐木修平を動かし、ペペは特記戦力である更木剣八と卯ノ花烈を洗脳することに成功した。

まあ剣八は気絶しているし、檜佐木も光り輝く死神に危ない薬を投与されて沈黙してしまったが、ペペ的には問題はない。

卯ノ花烈一人でも更木剣八に比肩するほどの戦闘力を持っているのだから。

いま彼の脳裏には死神も他の聖十字騎士団もすべて葬り、または洗脳して自分一人が手柄を独り占めにする未来でいっぱいだった。

まずは自分の身を守るために卯ノ花を自分の前に配置し、生き残った雑兵たちも集める。

さて警戒されているが、もう少し手駒を増やすまでは卯ノ花達に損害が出ないよう立ち回らなくてはいけない・・・そうペペが思考を回していた時、ソレは起きた。

 

ザシュッ

突然卯ノ花が刀を一閃、ペペを切り裂いたのだ。

 

「な、なんデ!?」

 

痛みと驚愕と共に倒れ伏すペペ。

能力は解けていない。

間違いなく卯ノ花烈はペペの術中に嵌っている。

では何故だ!?

ぺぺは混乱と共に卯ノ花を問いただした。

 

「何デ、何でMEを切るんダ!?卯ノ花烈!!ボクのことを愛してなイノ!?」

 

「? これは異なことを・・・ペペ様のことをお慕いしているに決まっているではないですか?」

 

心底不思議そうに、穏やかな慈母のような表情で卯ノ花はペペに返答する。

表情と実際にやっていることがかみ合っておらず非常に異様で、周囲の死神も滅却師も警戒し、少し距離を取る。

 

「じゃあなんでダ!?」

 

「ええ。ペペ様のことを愛しております。だからこうして斬りあおう(・・・・)と思ったのですが、ペペ様も真剣にやってください!」

 

プンプン!といった擬音が見えそうな口調であるが、血の滴る刀を持ったまま血だまりに沈むペペも前に立つ卯ノ花。

ペペも周囲の面々も卯ノ花の言葉を聞き、その異常な愛に言葉を失う。

 

「へ?・・・はあ!?オカシイだろうが!?」

 

混乱の極致、卯ノ花の言葉をかみ砕いて理解したペペは彼女の異常な価値観に愛し方に心底恐怖した。

ペペはこう見えて「愛」まつわる能力に目覚めただけあって「愛」に対してそれなりの考えを持っている。

「愛」には様々な形がある。

シンプルに相手を大切にする、性愛を感じる、自分を犠牲にする、相手に意地悪を、複数を相手に、実に様々な形がある。

なるほど、究極的には相手を自分一人で独占するために相手を束縛する、暴力的な手段を取る、過去洗脳したものたちの中にもそんな人間はいた。

だがうまく言語化できないが、卯ノ花烈、彼女のソレはそういった過去の事例のどれとも異なる気がする。

生理的な嫌悪と共にペペは能力を解除した。

ペペは経験上、能力を解除した際それまでとの落差によりしばらく相手がフリーズすることを知っていた。

もちろんフリーズが収まれば、烈火のごとく激怒するが、どうせ今のままでも切られるのならばフリーズした隙に距離を放し、気絶した更木剣八を起こすしかない。

愛する自分のために全力で守ってくれるだろう。

 

「解除!」

 

ザンっ!!

 

ペペの予想通り、確かに卯ノ花はフリーズした。

だが彼女は無感動に、すぐさま刀を振るい、ペペを両断した。

 

「エ・・・・?」

 

「・・・・・」

 

怒りのあまり一周して完全な無となった卯ノ花の表情。

ペペの背後にある街並みが1㎞近く深い亀裂を刻まれる。

 

「「ええ・・・?」」

 

ソレを見て周囲の死神と滅却師はドン引きである。

洗脳が解ければ怒るのは当然だ。

だけどコレは・・・ヒク。

愛し方もアレだし、解除された瞬間フリーズせずにとりあえず切るあたりヤバい。

聖十字騎士団もペペについては嫌われて当たり前の人格をしていたので好感度が低かったのだが・・・珍しく憐れみを覚えていた。

 

「タイチョー・・・?」

 

先ほどまでのジュダス・バンビーズ相手のキリングマシーンっぷりに引き続き、卯ノ花の異常な「愛」を見た虎徹勇音の瞳からはハイライトが消えていた。

某元五番隊隊長にブっ刺された某五番隊副隊長を彷彿とさせるその絶望顔は、一部有識者もニッコリだ。

 

(え・・・?何この空気?)

 

治療の甲斐あって、ちょうど卯ノ花が洗脳されたあたりから目を覚ましていたジュダスはとりあえず寝たふりを続けた。

意識が戻ったといってもまだ満足に動けないし、なんというか関わりたくなかったからだ。

ジュダスは剣八の霊圧を探る。

反応があった。

 

(おい剣八お前寝たふりするんじゃねえよ!?お前の嫁だろ!どうにかしろよ!?)

 

(・・・・・・・)

 

ジュダスは霊子を操り空気を操作、剣八の耳元に音を飛ばす。

 

(狸寝入りじゃん!いつもの戦い上等な十一番隊はどうしたんだ!?)

 

(うるせえ・・・。俺は今気絶してるんだ。話しかけるな。)

 

(ウッソだろ?お前本当に剣八?ウォーモンガーだったお前がそんな逃げ腰になるなんて・・・)

 

(俺は戦いが好きなんだ。最初から負けるのが分かる戦いですらない物に誰が好き好んで関わるか。)

 

(お前、いつも好き好んで関わってるじゃん(断言))

 

二人が小声で話し合う。

(剣八の分もジュダスが空気を振動させて耳元に声を飛ばしている。)

卯ノ花とペペにより生まれたこの異様な空気の中、関わりたくない二人は目を覚ます気配はない。

 

「いい加減起きろ!ジュダス!!」

 

「アイタッ!?」

 

だがさすがに延々と小声で口論を繰り返していれば周囲に気づかれる。

特にジュダスのそばにいるリルトットはもちろん、剣八センサーを常備している卯ノ花にもだ。

 

「・・・剣八、起きているのでしょう?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ。」

 

((凄い嫌そう・・・。))

 

嫌々、本当に嫌々と剣八が起き上がる。

まだボロボロであるがその流血は既に止まっていた。

 

異様な空気が解かれ、再度死神たちと滅却師達の間に戦意が高まる。

あるものは斬魄刀を、矢を、能力を構える。

ジュダスも置きあがり拳を構える。

リルトットはそんなジュダスの前に立ち口を能力によって伸ばした。

 

そんな時、天から光が降ってきて何人かの滅却師の肉体を貫いた。

 

 

 




尚、チャンイチは飛び降りたけど死神たちどうにかなりそうだった上に陛下が霊王を襲撃しているのを知ったため再度頑張って霊王殿へ登っています。

主人公の数少ない見せ場が一つ減りました。


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21話

天よりその光が落ちてきた時、ジュダスはいち早くそれが「聖別」のよる光だと気が付いた。

原作でもユーハバッハが零番隊に敗れて死亡した親衛隊を強化蘇生するために、瀞霊廷に残って死神と戦っていた星十字団から力を強制的に徴収した。

個人差はあるが光を浴びたロバートなどの星十字騎士団は死亡し、光を直接浴びなかったものもその力を奪われている描写があった。

控えめに言っても部下を捨て駒程度にしか見ていないクソ野郎である。

その記憶があったジュダスは咄嗟に「神の肉体」を発現、近くに集まっていたバンビーズを瓦礫の下に押し込んだ。

 

「全員、光に当たるなああああ!!!」

 

最後に他の星十字騎士団に対して叫ぶので精いっぱいだった。

ジュダスの肉体を光が貫いた。

 

「ちくしょう!?どうなってんだよ!俺たちはいったい何だったんだ!?」

 

光こそ直撃しなかったが、展開していた完聖体が解除され、ユーハバッハにより切り捨てられて力を奪われたことを悟ったリルトットが叫ぶ。

同じく状況を理解したロバートも絶望し、光を浴びて骨と化す。

今生存しているのはがれきの下に逃げたバンビーズ、バズビーにナナナ、卯ノ花のせいで偶々瓦礫に埋まってたベレニケ、そして光を浴びたまま硬直しているジュダスだけであった。

 

「ジュダス!?ジュダス大丈夫か!?」

 

「なんだ?」

 

「何が起こっている!?味方の攻撃か!?」

 

混乱する星十字騎士団に、死んだのが滅却師だけのため味方の攻撃と誤認している死神たち、状況を理解できずともナニカ不吉なものを感じる隊長格達と先ほどとは別種の混沌が広がっている。

そんな中ジュダスは一人聖別の光を浴びたまま、耐えていた。

引力のような何かに自分を構成する重要な物が引き寄せられる感覚、これがユーハバッハに力を収集されるということなのだろう。

 

「ジュダス大丈夫か!?痛いのか!?顔が歪んでるぞ!?」

 

以前も考察したが、星十字騎士団が聖文字のより得る特殊能力は完現術ではないか?

という疑いが俺の中には存在する。

俺がそう考えた理由としては特種能力があまりにも特異かつ技術として理論もクソもないからだ。

また原作知識によると完現術は霊王の欠片を魂魄に宿した影響で特異な能力を発現するらしい。

俺は聖文字こそ霊王の欠片に相当する、この場合はユーハバッハの欠片?だと睨んでおり、原作で混血統滅却師である石田雨竜や黒崎一護が聖別により死ななかったのはユーハバッハよりも格上の霊王の欠片を有していたことで影響を弾いたのではという考察を動画で見たことがあった。

(黒崎妹はそもそも力を受け継いでいないので滅却師ではない)

雨竜の完全反立(アンチサーシス)の特異性も、黒崎一護のチートっぷりも霊王の欠片の影響だと考えれば納得できる気がするし。

冷静に考えると霊王パネエな。

さてそれを踏まえて今の俺の状況を考察すると、現在俺の中のユーハバッハの欠片が本体の意志により引っ張られ、ついでに俺が培った能力や霊圧をも吸収しようとしているのだろう。

・・・うん以前は滅却師の血に宿るユーハバッハの力だけだったから耐えれたが、聖文字によって欠片を直々に与えられたためか引力が強い気がする。

このままでは俺の全てを奪われてしまうだろう。

だが俺は前世の記憶が戻ってからずっと考えていたことがある。

第一案としては弱体化してしまうが聖別の光を避けて命を失わないことにワンチャン賭けるという考えがあった。

だがタイミングがはっきりと分からず、万が一原作と異なりリルトットちゃんが光に直撃してしまったら、直撃ではなくても俺が耐えられなかったらと考えるとサブプランが必要であったのだ。

俺は短い時間だが深く悩んだ。

その結果、俺がずっとリルトットちゃんを守って、最悪俺が避けきれず光を浴びたらユーハバッハよりも引力が強ければ問題ないよねっという脳筋作戦しか思いつかなかったのだ。

 

(“経験(The Experience)”により霊子の制御能力を限界まで上げる・・・。)

 

ぶっちゃけ俺の想定通りならば聖別とはユーハバッハの欠片という釣り針により、俺たち滅却師の魂魄の力を引っ掛けて、霊子という糸で引っ張る釣りもしくは綱引きのような物なのだろう。

俺は思った。

もし俺の霊子制御能力がユーハバッハよりも上ならば糸もしくは綱をつないだ瞬間、逆に俺のほうへユーハバッハを引き寄せれるのではと考えたのだ。

ユーハバッハの力を吸収すること自体はキルゲ先生を看取った時に可能だと確認済みだったので十分自信はあった。

 

(引っ張られる力は強いが十分対抗できる。)

 

ただ死ぬ恐れはないのだが、ユーハバッハ側の引力が強すぎて身体を引っ張られる。

そのせいで俺は今ものすごい勢いで顔の皮膚を引っ張られているのだ。

 

「何や!?なんであの滅却師はパンスト相撲やっとるお笑い芸人みたくなっとるんや!?」

 

金髪パッツンの死神が非常に分かりやすい例えをしている。

そうか、あれが平子真子か。

 

「パンスト相撲!?何だソレは!?」

 

ガチで俺のことを心配してくれているリルトットちゃんが、とんでもなく下らないことを平子に聞いている。

リルトットちゃんが大天使ということは再確認できたが、問われた平子は困惑した様子で答える。

 

「ええ?・・・パンスト相撲ってのは現世のお笑い芸人が女性もののストッキングを被ってお互い引っ張り合うんや。その結果、パンストに引っ張られた顔があの滅却師みたいに歪んで面白いことになるんや。…なんで俺パンスト相撲を説明させられてるんやろ・・・・?」

 

「・・・そんなものの何が面白いんだ?」

 

「そんなん俺が知るかボケェ!?第一あっちの嬢ちゃんはめっちゃ笑ってるやろうが!!」

 

(嬢ちゃん?)

 

平子が指し示すほうを見てみると久しぶりに腹筋を破壊されて這いつくばるジジと、こっちを指さしてプークスクスと大爆笑しているバンビエッタ、顔が引きつっているミニーニャとキャンディスだった。

 

「・・・・おうぃ!にゃにわれってるんだ!!」

 

助けてやった恩も忘れこっちを笑っているバンビエッタにイラつき文句を言うが、顔の皮膚が引っ張られ上手く話せないし、さらに顔が歪む。

 

「ブフォ!!」

 

ジジは遂に動かなくなり、バンビエッタは腹を抱えて倒れこむ。

ミニーニャとキャンディスもついに吹き出し、シロちゃんを筆頭に死神たちもプルプルと肩を揺らしながら俺から顔をそらす。

 

「ひにゅれいな!(失礼な!)」

 

俺が叫ぶとおっぱい丸出しのパツ金女死神が震えながら後ろを向いた。

 

「いやむしろお前が失礼やろ。今お前銀魂の将軍みたく顔が凄いことになっとるで?」

 

(将軍かよォォォォォォォォォ!!)

 

ヤケになった俺はオーバーなリアクションを取りながら周囲の死神たちをゆっくりと見回す。

 

「「ボホォッ!?」」

 

今ので死神たちの大半が噴出した。

その中にはケガを負っているのに噴出したため血反吐吐いている女もいた。

 

「雛森ィィィィ!?」

 

背の低い少年が慌てて吐血女を救護している。

そうか・・・アレが師匠の寵愛を一身に受けていることで有名(・・)な雛森と日番谷か・・・。

 

ちょうどその時引力が弱まった。

俺は渾身の力で霊子を操作して聖別の光を断ち切り力を引き戻す。

 

・・・ユーハバッハから力を幾ばくか奪えたが・・・馴染むのに少し掛かるな。

とりあえずは笑いすぎて痙攣しているジジとバンビエッタには説教するとして、

あとは原作通り死神と一時休戦してユーハバッハの野郎を霊王様にしてやるとしよう。

 




この時のジュダス君の顔を知りたい人は
「銀魂 将軍 床屋」でググってください。

追記
陛下側のパンスト相撲は想定していませんでした。(笑)
実際どうなったかはご想像にお任せします!


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22話

ユーハバッハによる聖別から幾ばくかの時が経過した。

瀞霊廷では霊王の殺害により発生した地震の中、十三番隊隊長浮竹十四郎が彼自身に宿る霊王の右腕『ミミハギ様』を開放し三界の崩壊を防いでいた。

 

本来、彼は幼いころ重病に侵されて死ぬ運命だった。

だがそれを打破しようと、彼の母親が流魂街七十六番地区「逆骨」に伝わる土着神ミミハギ様に祈りを捧げたことにより、浮竹の肺にミミハギ様が憑りついて生き永らえてきたのだ。

そんな彼が、いつ、どこでミミハギ様が霊王の右腕後知ったのか、いつから霊王が死んだときに自身の命を捧げようとしたのかは本人にしか分からないだろう。

 

だがそんな自身の命を懸けた浮竹の覚悟をあざ笑うかのように、黒い泥のような霊王の右腕の力は、霊王宮のユーハバッハにより吸収された。

ユーハバッハは楔となっていた霊王及び霊王の右腕の力全てを己に取り込むため、眠りについた。

しかし霊王の力は膨大で、ユーハバッハから溢れたその力は不気味な黒い赤ん坊のような形状で瀞霊廷に押し寄せ死神たちに襲い掛かった!

 

そんなナレーションを脳内で流しながら、藍染惣右介による生「黒棺」を見てジュダスは感動していた。

 

(ヤベーよ生藍染だよ!霊圧半パネエな!!・・・・千年血戦編終わって有るか分からないけど獄頤鳴鳴篇も終わったとして・・・今より更にパワーアップした藍染がいるんだよな・・・どうするんだろう?)

 

そんなことを考えつつ、藍染が霊王宮を打ち落とそうとしてマユリの発明で霊圧を打ち消されたり、更にナナナが無防備(ジ・アンダーベリー)で藍染を無力化したりするのを待っていた。

このまま行くとナナナがバズビーにアンブッシュされてしまうので、俺がインターセプトする。

特別親しいわけじゃないけど殺したいほどでもないし事が終わった後、滅却師の戦力は多い方がいい。

関係ないが原作のナナナは聖別食らっておきながら何で陛下に忠誠を捧げていたのだろうか?不思議でたまらない。

 

「俺のモーフィーン・パターンで片っ端から麻痺させて「ヘイ!」「ゴキャッ」げえ!?」

 

背後からナナナの首をキュッとして意識を奪う。

つい考え事をしていて、力を入れすぎた気もするが問題ない。

一応目覚めて邪魔されても困るので霊子をナナナの神経に流して目覚めてもしばらく動けないように麻痺させる。

ちょっと首の角度が可笑しいけど問題ないな!

 

「ヨシ!!」

 

「何がヨシっなんだ?」

 

「あの滅却師死んだんじゃないか?」

 

「またあの滅却師かよ・・・滅却師はみんなあんなやつなのか?」

 

「ジュダスと一緒にしないでよね!アイツが特に頭が可笑しいだけよ!!」

 

「まったくだ。俺らは普通だ。」

 

バンビエッタはいつも通り後でシバくとして、バズビーはどうしてくれようか?

ハッシュヴァルドとぶつけて曇らせてやろうかな。

 

まあ今は正念場だ。

ユーハバッハを倒さなければ三界全てが混ざった原初の世界に戻ってしまう。

死神は確実に皆殺し、滅却師は・・・逆らわなきゃ生き残れるかもしれないがユーハバッハの気分次第でいつ殺されるか分からない人生など俺は勘弁してほしい。

また仮に原作通り生き残ったとして、死神との不戦を結ばなければヘイトを買いまくっている滅却師など絶滅ルートだろう。

ここで護廷十三隊に恩を売って滅却師への追撃をしないと言質を取っておいて、裏でも逃亡の準備を行う・・・裏はハッシュヴァルドの部下がどうにかしてくれる・・・・・・・してくれるよね?

ハッシュヴァルド君陛下の敗北を予知してくれるよね?

逃亡の手はずを命令してくれるよね?

 

(凄く心配になってきた。・・・・まあ最悪リルトットちゃんだけでも、次いでにバンビーズの皆が無事なら良いや。俺現世育ちだから他の滅却師なんぞ大して知らんからどうでも良いしな!(外道))

 

「協力するぜ。」

 

少し思考が脱線しているうちにバズビーがキメ顔でそう言っていた。

別に俺も協力するつもりだったのでナナナみたいに敵対しないだけ良いのだが、お前今回の侵攻で滅却師が死神を何人殺したか理解してる?

少しは申し訳なさそうな態度を示そうよ・・・。

 

「すまない。護廷十三隊の死神よ。今回の侵攻でそちらに大きな被害を出した俺たちがどの口で、と思うだろうが俺たちと共同戦線を結んでほしい。」

 

まずは謝罪。

 

「先ほどバズビーが言っていた通り、俺たちはユーハバッハに切り捨てられた。そもそも奴は確かに滅却師の王だが、自分の意志に逆らう者には滅却師だろうと皆殺し、力を吸収する餌、ついでに使い勝手のいい道具程度の認識の暴君だ。」

 

つまりユーハバッハがすべて悪いんだよ!(迫真)

まあ別に嘘吐いてないし、意図的に誤解させようともしてないしね。

本当に1から10までユーハバッハの行動を分析したら、暴君という評価しかできない。

三界に分かたれる以前など知らないから正確には分からないが、霊王関連で何か理由があったとしても、滅却師側の認識からすると都合のいい道具兼ユーハバッハ自身の強化のための餌という扱いは間違いないだろう。

だからユーハバッハには王として民を救うために人柱になって貰おう。

なあに!どうせ三界を支える人柱になる予定なんだから誤差だよ、誤差!

 

「都合のいい、と感じるだろうが利用価値のなくなった滅却師(どうぐ)などユーハバッハがどうするかなど目に見えている。やつを倒すまで共同戦線を結びたい。」

 

案の定ソイポンが嚙みついてきたが、蒲原喜助が論破している。

現状、上に行くのに必要な門を作るためには俺たち滅却師の霊圧は必要、更に戦力は有れば有るだけいいというのが理由である。

 

「更に無事戦いが終わった後、「騙して悪いが・・・」されるのは避けたい。俺たちとの休戦及び交渉の窓口を開いてほしい。代わりと言っては何だが上にいる親衛隊の能力、俺の推測込みになるがユーハバッハの目的を教える。どうだろうか?」

 

浦原の笑みが深まる。

超胡散臭い。

 

「いやー貴方とは仲良くできそうだ。えっと・・・?」

 

「ジュダスだ。こっちはまとめ役のリルトット。」

 

そういえば自己紹介していなかったな。

自分の名前を伝え、続けてまとめ役のリルトットちゃん、他の鉄砲玉達の名前を伝える。

 

「リルトットだ。」

 

「ジュダスさんにリルトットさんですね。では少しお話しましょう。ただ休戦などについては大丈夫だと思うんですが京楽総隊長でないと確約出来ません。」

 

「そうか・・・。じゃあ悪いが情報全ては出せねえな。」

 

リルトットちゃんが情報を渋る気配を出す。

だが浦原が言っていることも事実。

現在追放の罰自体は解除されていても公的には隊長ですらない協力者の立場。

尸魂界の賢者(笑)である四十六室は天膳殿ばりにいつもどおり死にかけてそれどころじゃないので、京楽総隊長の許可というのも妥当だろう。

だが早く伝えた方がいいんだけど、此方も今後の進退に関わるから妥協できないんだよな。

京楽総隊長は状況を確認するために今席を外している。

どうするべきか。

 

「丁度いい時に間に合ったみたいだね。もちろん許可するよ。」

 

そんなことを考えていると、失意に沈むモブ聖兵やモブ死神、チャド氏に織姫嬢、仮面の軍勢、此方に凄いガンつけてくるグリムジョー、一護を探しているネルと共に京楽総隊長が再度合流し、即許可を出した。

少し原作と展開が違うな。

後、キルゲ先生にトドメ刺したこと忘れてないからなグリムジョー。

こっちも悪かったから殺すまではいかねえけど、後で仮面叩き割ってネル(ロリ)みたいにグリムジョー(ショタ)にしてやろう。

 

京楽春水総隊長

うんフワッとしてる感じだけど怖いな。

この人清濁併せて騙し打ちとかしてくるから油断できないんだよね。

浦原も同じだけどアッチは敵も死神も騙して利用して必要なら犠牲にもする。

だが可能な限り念のため(・・・・)に此方を生かして繋がりを維持し、何かしら脅威が迫った時の為に利用しようとするから油断はできないけどまだマシ。

対して京楽は基本的に浦原と一緒だけど、死神に対しては少し甘く、それ以外には割とアッサリ必要なら切り捨てるイメージ。

これなら山本元柳斎重國のほうがマシだな・・・いやあっちの方が怖いわ。

 

「ユーハバッハの目的について大体予想もついているが、私も興味がある。ご一緒してもいいかな?」

 

わざと気付かないフリして見なかったのに

悪寒と共に聞こえた妙にネットリ感じるイケボ。

そこに視線を向けると椅子に拘束され全身を厳重に封印された偉丈夫が一人。

いつの間にかナナナの施した無防備(ジ・アンダーベリー)を解除した藍染惣右介がこちらを見ていた。

 

(もう無防備(ジ・アンダーベリー)は効かないだろう・・・。あの(・・)藍染が明確に自身に効く能力を放置しているとは思えない。)

 

「もちろん。」

 

ジュダスは笑顔で返答しつつ、心の底からゲンナリしていた。

キャラとしては好きだし、傍から見てる分にはテンションも上がる。

だが直接コミュニケーションを取るのは出来ればしたくなかった。

 

(コイツ何でも見透かしてそうで怖いし、・・・・内面が面倒臭すぎるんだよな・・・。)

 

とりあえず自分や他の滅却師連中が催眠に掛けられていないか後で調査しとこう。

「愛」や「恐怖」みたいなノリで解除できれば良いな。

 

 




藍染惣右介
腹黒イケメン。
天才ゆえの孤独感をこじらせてヤンチャして、天才性ゆえにそのヤンチャが凄まじい大ごとになった。
作者は心の底からメンドクサイかつ気持ち悪い男だと思っている。

①自分で騙してる癖にそれに気付かない無能、自分のことを理解してくれない人は嫌い
(雛森ィィィィ他)
②そんな中で自分を疑って気にしてくれる上に、潰しても反骨心を持って刃向かってくれる人大好き。(平子)
③無能も弱いのも嫌いなくせに、それを自覚しても勇気を持って刃向かってくる人は大好き。
(ドン観音寺、芋山さん、シロちゃん)
④有能でも保守的な人は嫌い。(浦原)
⑤自分よりも強く理解してくれる人が大好き(チャンイチ)
⑥それはそれとして自分の上に誰かいるのは我慢できないので嫌いでは無いかもしれないが排除する。(ユーハバッハ)
⑦平子との間に挟まる猿柿ひよ里

思うに藍染君、自分でそう差し向けた癖に盲目的な雛森のことは大嫌い。
よしんば嫌いでは無くても、シロちゃんを曇らせるギミック程度にしか思っていない。
ついでに大好きな平子との語らい(勘違い)に挟まる猿柿ひよ里は嫌い。
そのためこの二人はよくリョナられる。


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23話

「ユーハバッハの目的、それは簡単に言えば平和の実現だ。」

 

「平和だと?!これのどこが平和だ!?瀞霊廷に侵攻して!死神だけでなく多くの一般市民の命も奪っておいて何を言っている!!」

 

端的にユーハバッハの目的を説明しだすと細かい内容を説明する前にソイポンが噛みついてくる。

気持ちが分からないでもないが説明する前に話の腰を折らないでほしいものだ。

まあ他の死神たちも声こそ上げないまでもその顔にはソイポンと同様の表情を浮かべている。

 

「少し落ち着いてくれ。平和といってもユーハバッハにとっての平和だ。アンタの考えるそれとは違う。」

 

「何だと?では奴の言う平和とは何だ?」

 

「そうだね。教えてくれるかい?」

 

「ああ京楽総隊長殿説明させて貰うから、とりあえず最後まで聞いてくれ。っとその前に・・・」

 

「そうだぜ。せっかくジュダスが説明してるんだから途中で割り込まないでほしいな。」

 

「そーだよね。ボクたちも知らないからね。・・・ジュダスは以前から調べてたみたいだけど。」

 

「そーなの?」

 

「そーなんじゃない?」

 

リルトットちゃんがソイポンにイラついたのか軽く皮肉を言う。

またそれに同調するかのようにジジが俺が勝手に動いていたことに釘を刺してくる。

実際は原作知識なので何もしていないのだが、ユーハバッハの目的など聖十字騎士団でも知らないことを俺が知っているため、そう思われるのも仕方のないことだろう。

尚、最後のはバンビエッタとキャンディスのセリフである。

説明もいいが、そろそろ時間が無くなる。

もう少し媚を売るとするか。

 

俺は倒れている浮竹十四郎の遺体に近づくと、彼の身体を霊視する。

彼の身体に触れて霊圧を読み取り、的確に流し込む。

 

「ゴホ!?ゴホッゴホッ!?」

 

「浮竹!?」

 

「浮竹隊長!?」

 

蘇生に成功したが疲弊が激しい。

そもそも肺を患っていたのを霊王の右手の力で保っていたのだ。

一時的に復活してもすぐに浮竹の命の火が消えてしまうだろう。

 

「更に・・・・ホイサァ!!」

 

藍染の黒棺で潰されなかった黒い泥のようなナニカを捕縛する。

6匹程度しか生き残っていなかったが仕方ない。

まあ多少は持つだろう。

 

「ギイ!?ギイィ!?」

 

「えい」

 

白目向いて痙攣している浮竹の口の中にナニカを詰め込む。

ポイントは武装色の覇気でナニカの浸食を阻み、霊子を操作して力の塊に変換すること、

後は浮竹がどんなに抵抗しても容赦なく口に詰め込むことだ。

 

「何やってるんだ!?」

 

「浮竹隊長が痙攣してるぞ!?」

 

「うわあ」

 

「あ、ああ、あああああ地獄、神掛って何さ?・・・・止めてくれ!俺は頭剣八じゃない!!はっ!?」

 

ナニカを全て詰め込むと白目をむいていた浮竹が意識を取り戻した。

何か未来を先取りしていたようなことを言っていたが気にしない。

 

「目が覚めたか?浮竹十四郎」

 

「滅却師!?・・・いやここは?」

 

「俺が蘇生してやったんだ。感謝してくれ。」

 

「そうなのか・・・?だが何故・・・・いやまずはありがとう。感謝する。えっと・・・?」

 

「ジュダスだ。(蘇生はしたが霊王の右手・・・ミミハギ様の力の残滓しか無かった。悪いが半年程度保てばいい方だろう。)」

 

「!(いや・・・・十分だ。)そうか。よろしく。」

 

思ったよりも平静だな。

これが隊長か。

 

「では改めて。奴の目的を説明する前に少し霊王について説明させてもらう。・・・・まあ死神諸君には少し刺激が強い話であるが最後まで聞いてくれ。」

 

俺の言葉を聞いて浦原は顔を顰め、藍染は愉悦を浮かべている。

うむ、少し不謹慎だが霊王の現状を聞いて死神の方々がどんな曇り顔をしてくれるか、凄く楽しみだ。

 

「ではまず今の世界の形になる前、現世も、尸魂界も、虚圏もなかった原初の世界の頃、人々には死も生もなかった。だがそんな世界でも人々を襲う虚は存在し、その虚を狩り人々を守る神のごとき超越者がいた。それが現在でいう霊王という存在だ。」

 

「霊王は完現術・死神・滅却師全ての力を持つ存在だったらしい。あ!完現術者ってのは霊王の魂魄の欠片を自身の魂魄に宿しているために特殊な能力に目覚めた存在でな、最近でいうと月島や銀城とか、後はそっちの織姫嬢やチャド氏だな。」

 

「どういうことだい?」

 

「それは~」

 

しばらくの間俺は原作知識で得た情報、滅却師の見えざる帝国にあった資料からの情報、俺の考えを基に話し続けた。

完現術師の話では霊王の力の欠片程度で月島や銀城ほどの異能が得られるのかと驚き、更に原初の世界での霊王の活躍を聞いて死神たちは自分たちのトップ(笑)の偉大さに敬意を露わにする。

ソイポンなど素晴らしいほどのドヤ顔をしていた。

可愛いね、真実知って泣けメスガキが!

 

そこから原初の世界を今の三界の形にするために五大貴族の祖先が霊王を人柱にしようとして志波家の祖先が説得しようとしたこと、綱彌代家の祖先が霊王を恐れ、水晶に封じ、更に無抵抗だった霊王を達磨にして生も死もない状態に陥れた上で、臓腑を抉り取り力を削ぎ落として彼らにとって都合のよい、一切の反抗もせずに世界を留め続けるための人柱にしたこと、結局それを良しとして他の五大貴族もそれを継続したことを伝えた。

このあたりから話が進めば進むほど死神達の目から光が消えていき、半比例して藍染の笑みが深まっていく。

滅却師はドン引きで「滅却師滅ぼされた恨みかと思ったけど霊王の復讐とかか?」とか「死神達滅ぼされても残当では?」など囁いていた。

それを聞いて死神のモブ隊員達の脚が折れた。

 

「ついでにいうと零番隊はもちろん死神の上層部とか四十六室も一部は知ってて今まで隠してたんだろうね。」

 

京楽と朽木白夜の顔色が紙のように白い。

ルッキャさんが「お労しや兄様。」とか言いながら心配顔している。

少し同情するがまだまだ行くぜ!(愉悦)

 

「つまりユーハバッハの目的は楔となって生かさず殺さず状態の霊王を介錯して“死”のない原初の世界に戻すことで全ての人間を死の恐怖から開放すること、後次いでに死神たちの絶滅かな!」

 

ドサ!ドサ!

 

隊長・副隊長格の心も折れたな。

卯ノ花、剣八は難しい顔をしているが変わらず。

どうせ「死なないならずっと斬りあえるのでは?いやそれじゃあツマラナイか?」

と考えているのだろう。俺は詳しいんだ。

 

「あ!話は脱線するけど綱彌代家は完現術師の魂魄に内包されてる霊王の欠片を集めるために騙し打ちして皆殺しにして、その罪を銀城に擦り付けたんだよ!銀城からしたら仲間だと思っていた死神たちに殺されかけた上に仲間を殺されて、しかもその罪で追放とか恨んで当たり前だよね!

 

浮竹が血反吐吐いた。

 

「ついでに東仙要の友人を謀殺したのも綱彌代家と綱彌代時灘って人間の屑でね!彼が闇落ちしたのは綱彌代家とそれに従って隠ぺいした他の貴族や四十六室共のせいだよう!」

 

檜佐木と謎の野犬が崩れ落ちる。

ああ・・・俺にはそんな気はないのに・・・なんて素晴らしい顔を見せてくれるんだ。

 

「ってことでこのままだと虚と死神たちは全滅、滅却師は道具として使い捨てられて、死のない世界で暴君ユーハバッハが碌な事しない未来になるよ!」

 

空気がお通夜だ。

まだユーハバッハと親衛隊連中のチート能力の説明があるのだが・・・・休憩が必要だな!

 




ちん〇ん亭語録って意外と難しい。

そもそも更木とか治安の悪い地域とか潤林安とか極端すぎない?
生前どんな善人でも更木送りになれば悪人になるだろうし、逆に悪人が潤林安とか行ったらどうなるのだろう?
四十六室や貴族たちは無能すぎない?

この後死神たちの反乱とか起こっても仕方ないかもしれない。


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24話

藍染が難しすぎて短め。


 

「ユーハバッハの力及び親衛隊の能力は以上となる。ただ先ほどの聖別で親衛隊は強化されているだろうし、ユーハバッハも霊王の力を吸収しているため現在は更に反則じみた能力を得ている可能性が高いので・・・失礼だが副隊長格では肉壁程度にしかならないでしょうね。あ!石田雨竜については最近加入したので不明・・・おそらく同じくらいヤバい能力だと思われるな。」

 

混成部隊(特に死神の)疲弊が激しかったため、少し休息を入れてユーハバッハや親衛隊の能力を説明した。

現在、改めて相手の能力を確認して俺達滅却師も頭を掛けている状況なので、他の陣営はさらに深刻そうだ。

うん分かる。

ペルニダとかはマユリか浦原みたいな奴しか倒せないし、ハッシュヴァルドはどうにか能力をすり抜けらる方法がないと無理、ジェラルド?ユーハバッハがどうにかしてくれないと無理。

リジェパロとアスキンについては油断できない強敵であるが、殴ればダメージを負う対応なので頑張れば殺せる。

ユーハバッハ本人?

原作同様、催眠・静止の銀・斬月のコンボしか手はないね。

正確には斬月だけは同じく位破壊力があれば何でも良いけど、最終形態にユーハバッハと戦える奴なんて剣八位だろう。

俺?嫌だよ。適当にバンビーズの皆とジェラルドボコって待ってるよ。

バズビーは・・・止めてもハッシュヴァルドのところへ行くんだろうなあ。

 

「・・・ジュダスさん他に何か情報はないんスカね?」

 

浦原に聞かれるが、後は外見とか大した情報はないんだよなあ。

う~ん

 

「後は・・・ペルニダはミミハギ様と同様に“霊王の左腕”そのもの、ジェラルドは未確認だが“霊王の心臓”を宿していて普通の方法では殺しきれない程の生命力を宿しているとか?」

 

「あ、確かにジェラルドにはそんな噂あったわね。でもペルニダが“霊王の左腕”ってどこ情報?初めて聞いたわよ!?」

 

バンビエッタめ、余計なことを。

話を誤魔化すか。

 

「そうなのか?アスキン辺りが前話してたのを聞いたんだけど、アイツのデマか?」

 

「う~んアタシ、アスキンのことよく知らないのよね。」

 

「後は・・・元々集めていた死神側の情報くらいしかないなあ。すまない。」

 

「私からも質問良いだろうか?」

 

「・・・・なんですか?」

 

「そう警戒しなくても良いだろう?私は君たちと敵対したことすら無いのだから。」

 

「いやアンタのことを知っていたら警戒しないというのは無理ってもんだ。そうだろう藍染?」

 

「ふむ。お互い理解するために対話が必要だと思うのだが?」

 

「同僚の死神達を騙し続けたアンタが理解し合うとか・・・ギャグか?」

 

「違うなジュダス。私の拙い演技に気づかず、反乱を許した死神達が油断を責めるべきだろう?」

 

「コイツ面倒くさいな。(ああそうかもね。それで質問は?)」

 

「確かに!藍染だっけ?アンタさっきから屁理屈ばかり!ちょっとイケメンだからって調子に乗らないでよね!!」

 

「本音が出てるぞジュダス。後バンビエッタ・・・じゃあな達者でな。」

 

「なんで決戦前にお別れの挨拶!?」

 

「そりゃあ・・・なあ?」

 

「そうですね。」

 

「藍染についての情報見てないよね。見てたらバンビちゃんあんなこと絶対言わないもん。」

 

「手厳しいことだ。確か・・・バンビエッタ・バスターバインという名前だったかな。」

 

「うわ・・・何で私の名前知ってるのよ?何かダサい格好してるし・・・怖」

 

「」

 

凄え!?あの藍染が黙った!

本当はバンビエッタの名前という知るはずのない情報を無間に囚われていた藍染が何故か知っているという軽いジャブのようなオサレポイントだったのに!

真正面から言葉の暴力で打ち破りやがった!

そこにシビれる!憧れる~!!

 

あと最後小声でボソッと言ってるけどみんな聞こえてるよ。

見ろよ。死神連中全員笑いをこらえようとして凄い顔になってるよ?

 

「バンビエッタが決戦前に死にそうな件について」

 

「大丈夫!ゾンビ化させるから!!」

 

「それは解決になっていないのでは?」

 

その後、藍染のリクエストで俺たちの能力も教えたけど親衛隊に比べれば普通の反中なのでリアクションは少なめだった。

ただ俺が能力に頼らず技術で火や雷を出しているってことを、シロちゃんの真似して氷を出しながら説明したらドン引きされました。

 

 

 




余計なストーリーばかり浮かんできて話が進まねえ
追記
修正しました。
いきなり凍りだす程ジュダス君は非常識ではありません。多分


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番外1話

頭に思い浮かぶので吐き出しました。
続きを書くかは不明です。


 

ユーハバッハによる瀞霊廷侵攻、通称「霊王護神大戦」が集結して80年。

衰弱による浮竹十四郎の死、綱彌代時灘による反乱、大戦終結の10年後に起きた地獄とのイザコザその他大小さまざまな事件が発生したものの、死神達の不断の努力とその血肉により平和が保たれている今日この頃。

今は亡き山本元柳斎重国により護廷十三隊、鬼道衆、隠密起動の隊士となる人材を育成・発掘するために瀞霊廷内に設立された真央霊術院に彼の姿はあった。

 

彼の名前は平子真子。

現役の五番隊隊長にして、一度は藍染の謀略により尸魂界を追われながらも疑惑を晴らし隊長に返り咲いた傑物である。

関西弁や彼の言動から軽い印象を持たれることもあるが、大貴族には及ばないながらも中々の地位を持ち、度重なる戦いを生き延びた確かな実力を持っており、どっかの暗黒イケメンのせいで心を病んだ某副隊長をケアしつつ、隊長としての業務を日々こなしながら部下や仲間、現世の友人とのコミュニケーションも欠かさないナイスガイである。

 

尚、裏では「ソウルソサエティ☆パッツンスター」「女死神が選ぶ瀞霊廷で一番抱かれたい男」など様々な異名を持っているが本人は知らない。

さてそんな多忙な彼がなぜ真央霊術院いるのか?

それは今日が今年度の真央霊術院に入学した生徒たちの初授業であり、平子が急用で出席出来なくなった京楽総隊長から急遽代役を依頼されたためであった。

 

「それで・・・何で俺が此処に来る必要があったんや?普通総隊長が初授業といっても顔見せることなんてあり得へん。なんか有る(・・)んやろ?言ってみ?」

 

「さすがは平子隊長。実は今年度の新入生には色々特別(・・)な人が多いらしくて・・・それで慣れるまでの期間は席官以上が交代で監視することになったらしいんです。まあ最初だけ総隊長が見ることになってたんですけど・・・急用で来れなくなったので平子隊長に声がかかったらしいです。」

 

平子は自身の副隊長である雛森の言葉に首を傾げる

 

「ほーん。特別ねえ・・・。」

 

(特別言うても隊長格が・・・、それも元々総隊長が出張るほどのモンがあるんか?きな臭いわ・・・。)

 

「オイ雛森、その特別の理由は分かるか?」

 

「はい。資料によると、こちらは偶然ですが今年度の新入生には貴族・平民問わず中々優秀な人材が揃っており元々注目はされていたそうです。ただそれとは別に2名ほど総隊長が注目されるほどの人材がいたそうです。」

 

「その二人は?」

 

「えっと・・・一人は1年ほど前に尸魂界に来た青年で「更木」に送られた青年です。」

 

「更木かいな・・・運の悪いやっちゃな。」

 

「アハハそうですね。それで、ソレからすぐに更木の顔役に収まったらしいんですけど・・・今年度入学試験を通過して、ていう流れですね。凄いですね!」

 

「確かに凄いが、順調過ぎるわ・・・怪しすぎるわ。」

 

「もう一人はついひと月前に尸魂界に来た人らしいんですけど・・・すぐに複数の貴族の推薦を受けて入学してますね」

 

「ひと月で?こっちも胡散臭いわ、かー臭すぎて鼻が曲がりそうや。二人の名前は?貴族ってのは?」

 

「・・・すいません。名前は載っていません。どうも予備知識なしで確認してほしいそうです。」

 

「名前も分からんのにどうやって見極めるねん・・・。」

 

「“見ればわかる”そうです。また推薦者は“朽木家”、 “四楓院家”そして没落こそしていますが“志波家”、そして藍染(・・)元隊長です。」

 

「あ~~~~帰ってええ?」

 

「気持ちはわかりますが駄目です。」

 

苦労人属性な隊長と薄幸属性な副隊長は二人して肩を落とした。

丁度、新入生達は自己紹介をしているようで既に何人か紹介を済ましているようだ。

二人はそっと後ろ側から教室へと入室した。

 

 

 

 

「えっと・・・黒崎一護です。ついこの前尸魂界(ここ)に来ました。一応此方に親せきや知り合いがいて、その人たちに薦められてここに入学しました。一応斬術や瞬歩(飛廉脚)は人並みに出来ます。白打はよく分からないけど鬼道はかっらきしなので頑張りたいと思います。皆ヨロシクな!」

 

「なんでやねん!?お前何を学ぶっちゅうねん!?」

 

「!?よお!平子!久しぶり!どうしたんだよこんな所で!」

 

シュタッと手を上げる一護。

 

「こっちのセリフや!!アホォ!!」

 

ズンズンと教室の後ろから前のほうに歩いてくる平子。

それを見た一般生徒たちは歩いてくる平子の姿を見てざわめく。

それもそうだ。

彼らにとって隊士は理想の職業、席官はエリート、副隊長格でスター、隊長格など大スターかつ雲の上の存在である。

そんな人物が急に表れて自分たちのすぐ近くをズンズンと歩いてくるのだ。

騒めくのも仕方ないことだろう。

また同時に、そんな隊長と非常に親しいどころかタメ口を聞いている同級生「黒崎一護」とは一体どんな存在なのだろうか?

新入生一同は興味を掻き立てられていた。

 

「いや実はさ・・・俺が現世で死んじまったとき、平子たちも葬式に参列してくれたじゃん?

そのあとすぐに尸魂界に来てさ、親せきって分かった志波家に厄介になっていたんだよ。それで俺正式に死神になろうと思ったんだけど鬼道も知らないし、基本的な事も全然知らないことに気づいたんだよ。それで岩鷲とかに相談したら、トントン拍子で入学になっちまって・・・・あ!親父も志波家にいたぜ!死神に戻る気はないみたいだったけどな。」

 

「情報が多いわっ!理由は分かったがお前下手な隊長格より強いんやから学校の必要はないやろ!?」

 

一護から一理ある理屈を聞くが、なんか納得がいかない。

平子は一護の至近距離まで近寄り頭突きを繰り出す。

 

「顔が痛い!?」

 

平子は近場の新入生の机の上に置いてあった教科書を手に取ると、凄い速度でページをめくる。

そしてあるページで手を止めて一護の眼前に突き付けた。

 

「お前このページ見てみい。」

 

「えっと・・・・「大逆人藍染に続いて霊王護神大戦にて敵の首魁を打ち取った英雄、死神代行“黒崎一護”」っていや何か照れるなあ・・・ちょっとオーバー過ぎないかコレ?」

 

「真っ当な評価や!このアホ!?」

 

教科書の背の部分で頭を叩かれる。

 

「アイタッ!?」

 

「あの・・・平子隊長、まだ自己紹介をしていない生徒がいますので・・・その」

 

「そうですよ平子隊長。気になるのは凄く分かりますが、まだ自己紹介していない生徒もいるので少し待ちましょう?」

 

クラスの教員と雛森に声を掛けられて平子は気付く。

確かに今は授業中で、自己紹介を終えていない生徒もまだいる。

此処で自分が騒いで予定を消化でき体となれば教員はもちろん、生徒たちにも迷惑をかけてしまうだろう。

 

「スマン。このまま授業が終わるまでは後ろで見とくわ。一護!お前後で詳しく事情話せや!分かったな!」

 

「お、おう。」

 

平子は雛森と一緒に教室の後ろへ戻る。

ただこのことを知っていて黙っていた京楽には何か復讐が必要だろう。

雛森は真面目に自己紹介の様子を見て、自身の霊術院在籍時代を思い出してほっこりしていた。

 

「では、続いて“山田太郎”」

 

「はい!」

 

自己紹介が再開する。

続いては一護の隣に座っていた生徒の番のようだ。

関係ないが霊術院ではあいうえお順ではなく成績順で並ぶため、総合順位が近い者同士が近くに座る慣例がある。

 

「初めまして!山田太郎です。1年前に尸魂界に来たんですが、運悪く更木になりましてつい先日までそこにいました。縁あってここに入学出来ましたので努力して卍解に至り教科書に載る人物になりたいです!得意なのは白打と鬼道、一応斬術や瞬歩(飛廉脚)は人並みに出来ます。更木だけど怖くないので仲良くしてください!」

 

「へえアレが更木出身の特別(・・)って訳かあ!ハキハキして見どころ有りそうな奴やないか、えっと山田太郎かあ!凡人オブ凡人って感じの名前やなあ・・・ってお前!ジュダスやろうがあ!!?」

 

自己紹介が終わりひとしきりノリツッコミを行ったところで平子が虚弾を打った。

虚弾は見事に山田の顔面、なぜか黒鉄色に変色している、に突き刺さる。

 

「顔面が痛い!?」

 

「そんなけったいな防御する奴なんかジュダスしか居らんやろ!さっきの一護に関しては百歩譲ってええ!!でもお前はダメやろ!?お前滅却師やろ!?あと山田太郎ってなんやねん!?」

 

「現世で大往生した後気付いたら尸魂界にいたんです。他の滅却師はいないし、更木を〆て暇もて余してたら、黒崎一心さんに偶然出会って「暇なら通ってみたら?」って教えられたので。」

 

「なんでや!?大体お前もう教科書載ってるやろが!!」

 

再度平子が近くの新入生の教科書を手に取り、凄い勢いでページを開く。

そしてあるページを開き山田、ジュダスの眼前に突き付ける。

 

「えっと「霊王護神大戦にて黒崎一護と共に敵の首魁を打ち取った滅却師石田雨竜とジュダス」本当だ!」

 

「大体なんで山田太郎や!?せめて気合を入れて偽名を付けろや!!ついでに“山田花太郎”って似たような奴がもう居るんや!!紛らわしい!!」

 

「えっと平子隊長、本名だと横文字なので馴染まないかと思いまして・・・あと色々トラブルになりそうかなと気を使いまして。」

 

「はい!ダウトォォ―――!!?気を遣う部分が可笑しいやろう!?」

 

「えっとすみません。じゃあ本名の“ジュダス・ランパード”でお願いします。」

 

「そっか!やっと本名で呼べるな!ジュダス!」

 

「黒崎はさっきから何度も嚙んでたもんな。でも黒崎、正式に瀞霊廷という組織に所属したんだから、平子隊長を呼び捨てはやめろよ。」

 

「ああ!確かにそうだな!すみません!平子隊長!以後注意します!」

 

「・・・一護にそう呼ばれると違和感が半端ないわ。・・・まさか鏡花水月か!?」

 

「・・・落ち着いてください平子隊長。」

 

「ヒェッ!?」

 

雛森の回想は青春ともいえる霊術院在籍時代をから、藍染の副隊長をしていた黒歴史時代に突入して鬱になっていた。

そんな時に聞こえたキラーワードである鏡花水月。

彼女の目からハイライトが消え去った。

平子の胃がキリリと痛んだ。

 




現世で死んだ滅却師は尸魂界に行く人もいるという設定にしました。


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番外2話

番外編は主に掲示板のネタを参考にしています。
また番外編はいったん終了です。


一護とジュダスが入学してひと月ほど経過した。

あれからは座学を中心とした授業が多く、生来勤勉かつ真面目な一護とジュダスはなにごともなく一般生徒と親交を深めながら過ごしていた。

 

だが先週から本格的に実技授業が開始となり、いくつかの問題が発生した。

具体的には2人のレベルが高すぎて一般の教員では教えられないこと、一護が霊圧お化けの癖に制御が甘く鬼道の暴発被害が大きいこと、一護が卍解を2週間程度で習得するなど隔絶した才能マンのため無意識に生徒はもちろん教諭、一般隊士の心までも折るなど、8割一護、2割ジュダスくらいの割合でトラブルが発生していた。

尚、“霊術院の奇行種”の異名を持つジュダスだが、彼の技術はちゃんと理屈があり修練の結果として身に着けたものなので同級生へのアドバイスなど非常にタメになるものも多い。

その上長年我の強い聖十字騎士団(特にバンビーズ)と接した経験、滅却師の指導者を押し付けられた就任したハッシュヴァルトの補佐を行っていたため、かなり霊術院に溶け込んでいた。

(※一護も別に嫌われてない。でもそれはそれとして無自覚の才能の暴力で周囲の心をへし折る。)

 

「それで・・・何でまた俺なんや・・・・。俺結構忙しいんやけど他の奴らは?」

 

いつか歩いた霊術院の廊下を二人の男が教材を台車に載せて歩いている。

一人はひと月前もここを訪れた五番隊隊長「女死神が選ぶ瀞霊廷で一番抱かれたい男」平子真子。

もう一人は片目を長い髪で隠したどこか陰のある美男子、吉良イヅルである。

 

「辞退しました。そのため京楽総隊長より平子隊長が指名され、僕は雛森君に「隊長・副隊長がどちらも頻繁に不在は不味い」とのことで頼まれました。」

 

「そうか・・・雛森め逃げおったな。まあ毎度ハイライトが消えられるよりええわ、吉良よろしゅうな。」

 

「はい。」

 

「それはそれとして京楽の髭は全部剃ることにするか・・・ジュダスも巻き込むか?」

 

哀れ京楽春水、縁も所縁もある復讐が彼を襲う。

(京楽総隊長は性癖で副隊長を選任している疑惑があります。BYジュダス)

 

「まあ・・・二人の実力を考えるなら教える人材が霊術院におらんのは分かっとったからそれはええわ。周囲の心をへし折るのも・・・死神の常識を教えればええ。一護は理解しとって周囲の心へし折るようなクズじゃない。」

 

「そうですね。鬼道については・・・まあ状況と僕たちが悪いとしか言えませんね。本来段階を踏んで霊圧の制御法や鬼道を教えなければいけないのに度重なる危機的状況においてゆっくりと学べる状況になかったこと、それにも拘らず僕たちが不甲斐ないばかりに彼に頼り、彼がソレに応え続けた結果として、制御が疎かなまま強大な霊圧を身に着けてしまいましたからね。」

 

「そうや。俺らの責任や。だから俺らが一護に協力するのは別にええんや。ええんやけど・・・」

 

「けど?」

 

『私では不服ですか?平子隊長?(CV速〇奨)』

 

「当たり前や!ボケ!!」

 

平子たちが押す台車の上には椅子の拘束された謎の着ぐるみ。

黒崎一護専用鬼道教導装置が鎮座していた。

中の人は秘密だが、優秀だが危険人物でもあるとある(・・・)人物をそのまま無間より出してはいらぬ混乱が生まれる・・・とごねた四十六室対策として生み出された特殊拘束具で、その強度及び封印能力は非常に優秀なものである。

 

『・・・ところでこの拘束具のデザインは・・・ウサギかな?』

 

「・・・ワカメ大使や。」

 

「ワカメ・・・大使・・・?」

 

尚、拘束具の外見は十三番隊隊長朽木ルキア女史のデザインしたワカメ大使というクリー・・ゆるキャラである。

 

 

 

「邪魔するで。」

 

「邪魔するんなら帰ってー。」

 

「分かったーって何新喜劇させるんや!ジュダスぅ!?」

 

「ネタに乗ったのはソッチじゃないですか・・・。」

 

「フラれたからにはヤらざるおえんやろが!?」

 

「?」

 

鬼道の実技練習を行う実技場に到着した二人と一体は実技場の扉を開けて入場する。

その際ジュダスにネタをフラれて条件反射で返す平子。

そしてネタを知らず?を飛ばす吉良、愛しの怨敵 黒崎一護をガン見するワカメ大使、それらの周囲から静かに距離を取る訓練された一般生徒達。

出だしから中々混沌とした状況である。

 

 

「あーじゃあ気を取り直して鬼道の練習をするで。ジュダスのほうは出来るんやったか?」

 

「はい。見えざる帝国時代にユーハバッハ達が長年かけて陰から調査して得た情報の中に鬼道のこともありましたので。といっても聖十字騎士団レベルだと聖文字の能力を鍛えたりしたほうが効率的ですし、滅却師の誇りなど精神的な問題から一部の物好き以外学んだりはしていませんでした。俺はその一部の物好きに該当するので練習してました。」

 

「終わったこととはいえ瀞霊廷ガバガバ過ぎるやろ。ユーハバッハ達を褒めるべきか、死神全体の怠慢を責めるべきか悩ましいなあ」

 

『間違いなく後者だろう。といっても無能と退廃を極めていた当時の四十六室の手前、一部の特権以外は蔑ろとなり現世でいうコンプライアンスという言葉すら尸魂界には存在していなかったからね』

 

「ちっ・・・・」

 

ワカメ大使に痛いところを突かれたが、当時の瀞霊廷の状況を考えると否定できない。

それどころか詳しい精査もせず、虚化の実行犯と思われた浦原はまだしも、隊長格で功績もあり、被害者でもあった平子たちを即時処分しようとした四十六室は無能としかいえないだろう。

せめて前段階で隔離やら封印とかあっただろうに。

そんなんだから当時の四十六室は四十六室(笑)、賢者(賢者とは言っていない)、ゴミなどと陰でいわれるのだ。

 

「それに当時は護廷十三隊も争いを避けるために四十六室の言いなりでしたからね・・・。」

 

吉良の言葉を聞いてワカメ大使が口を挟む。

 

『そう言ってやるものではない。山本元柳斎重国は理解していたのだ。戦争の英雄どころかならず者といった方が近い自分たち初代護廷十三隊の生き残りが、一人で文字通り尸魂界を滅ぼされる自身が、政治をつかさどる四十六室と度々ことを構えては戦争となると考えて従っていたのだ。とはいえ些か以上に四十六室を増長させたようだが。』

 

「やめえ。正論ではあるがお前に言われると腹立つわ!特に今のお前にはな!!」

 

『ふふふ分かったよ平子真子。』

 

少し空気がピリつくもののワカメ大使のガワのおかげで致命的なものには至らない。

だがボソッとジュダスと一護が呟いた言葉がその空気を壊してしまった。

 

「どっちの言っていることも一理あるけど、現世では権力が集中しないように三権分立をして一応建前上はお互いを監視し合ってそういうマズい事態にならない仕組みを作っているのに・・・尸魂界って普通にヤバいんじゃね?」

 

「だよな~。ジュダスたちの滅却師の国はどうなんだ?」

 

「一応国王を象徴に置いた上で、政治は選挙で選ばれた政治家に任せるスタンス。日本の仕組みを参考にしてるから、もちろん三権分立だよ。まあ上層部は滅却師について知ってるから最終的には王家、滅却師に忖度してくれるけど。」

 

「忖度って・・・それで良いのか?」

 

「自分たちが楽しく暮らすために作った国だから問題ない。因みに俺は生前は大臣だよ。」

 

「へえ~。」

 

「でも今だったら政治の仕組みを変えるのに丁度良いかもしれないな。既得権益を持っていた大貴族はもちろん権力を持って好き勝手していた綱彌代家も潰れて四十六室も若返って今のところ随分とマシになっているから反対勢力も弱い。

後は英雄 黒崎一護の名声を使ったり、最悪は京楽総隊長がダブル剣八を引き連れて四十六室とOHANASHIすればどうにかなるんじゃないか?」

 

「俺の名声ねえ。実感ないけどまあそれで良くなるんなら全然使ってくれて構わないんだけど。」

 

「あとは四十六室の中で存在感を示している阿万門ナユラは

そちらの吉良副隊長と懇意だからその縁を使えばいいんじゃない?」

 

「「・・・・・」」

 

『フハハハハハ!!』

 

急に政治的クーデーターの話を、しかも聞けば聞くほど割と今の状況ならイケそうな現実味のある案がポンポン出てくるのを頭を抱えて聞く平子、そして急に自分に流れ弾が来て二つ目の穴が開いたような顔の吉良であった。

そして自身がかつて武力により行おうとした尸魂界の破壊を、自身を阻んだ“戦争の英雄“黒崎一護が武力以外の方法で思案している光景は、ワカメ大使の何か琴線に触れたようで、大笑いしている。

 

「・・・一旦話を止めえ。あんまそういう話を人前ですんなや余計なトラブルを引き込むで。」

 

平子が真剣な顔で忠告を行う。

まだ学生の身分で今のようなことを言っていたら、どこで誰の耳に入るか分からない。

もしどっかの馬鹿が手を出して来たらジュダスは躊躇なく報復するだろうし、一護は積極的に手を出さずとも彼のために何か仕出かしそうな連中がたくさん居る。

折角平和が戻ってきたのに戦争などまっぴらである。

 

「お、おう」

 

「はい」

 

「よし!話は戻って鬼道の話や!ジュダスはどんな腕前や?」

 

「90番台を詠唱破棄で打てます。」

 

「よしお前はそこらへんで寝とけ。一護のほうはどんな腕前や?」

 

「まだ詠唱を覚えれてなくて・・・」

 

「それは自分でどうにか覚えや。とりあえずカンペ見ながら術の制御を練習やな!「少しお待ちを」ってジュダス今度は何や!?」

 

「黒崎は霊圧の調整が不得手で馬鹿みたいに霊圧を込めて鬼道を打ちます。」

 

「で?」

 

「平子隊長は縛道の一 塞や縛道の四 這縄ってご存じですか?」

 

「当たり前やろ、塞は両手を腰の後ろで拘束する術で這縄は霊力を縄状にして相手を拘束する術や。」

 

「その通りです。コレらを黒崎が使用した場合、前者は両手首を拘束通り越して骨を砕きます。また後者はこうなります。」

 

「~~~~~縛道の四 這縄!!」

 

平子が演習場に立って詠唱を行う一護を見るとカンペを片手になんとか詠唱を行い、人型に向かって這縄を発動する。

一護の霊力を糧に縄、密林にいそうな大蛇の如く太く長いが、が構成される。

その縄は黒く染まりどこか禍々しく、高速で人型に巻き付いて拘束する。

縄はそのまま人型を締め付け、バキバキという音と共に圧し潰し、切り裂く。

次の瞬間、人型はバラバラに破壊され地面にその残骸を散乱させた。

 

「・・・破道かな?」

 

「相手を拘束じゃなくて処刑やないか・・・。」

 

『oh・・・』

 

平子と吉良は茫然とし、流石のワカメ大使も言葉を失う。

まさか術の失敗とかでなくて、拘束用の初歩の縛道が相手を破壊しつくす新種の破道になるなんて誰も思わないだろう。

 

「どないせえっちゅうねんコレ・・・・。」

 

「あいぜ・・・ワカメ大使はどう思いますか?一応アンタが天才なのは間違いないので意見を聞きたいんですが。」

 

『そうだね。ジュダスも鬼道を使えるから承知だと思うが、通常霊力の制御や詠唱による効果への変換など失敗することが鬼道の失敗とされる。だが黒崎一護の場合、詠唱を覚えていないという明らかな鍛錬不足があるが、それら二つは上手くいっているのだ。』

 

「失敗しとるやないか?」

 

『確かに制御に失敗しているようだが、それらは全て霊力の込め過ぎという1点が原因となっている。後は単純に彼の術による破壊を気にしない場所で回数をこなし、段階的に込める霊力を減らしていくことで十分解決できる事象だ。・・・どうせ威力過多ならば最初から詠唱破棄で威力を落として習熟し、追々詠唱を覚えて威力を上げていけば効率的だろう。』

 

「なるほどなあ」

 

「流石はワカメ大使。」

 

「でもそれでも威力が強すぎますよ?的も縛道の一や二であの様です。とてもじゃないけど習熟するまで保つ場所も的もありませんよ?」

 

『私にいい考えがある。』

 

「なんやワカメ大使。」

 

『無間だ。かつて更木剣八もその力を覚醒させるため卯ノ花烈と共に修練を積んだのもソコだ。』

 

「なるほどな・・・」

 

ワカメ大使の言葉に全員が感心する。

中の人の性格はダークマターだが有能なのは間違いない。

全員の顔が明るくなる。

 

『だが問題は的だな。ただ威力を調節するならば十分だが、やはり命中精度を考えると的を用意して練習するのが一番なのだが・・・』

 

「それなら俺に目星があるわ。」

 

『ほう・・・それは何だい平子隊長?』

 

「まあ落ち着けや。オイ!ジュダス、イヅル的に必要なものは何や?」

 

「頑丈?」

 

「最悪壊れてもいいものかつ長時間確保し続ける事ができるもの」

 

「そうや。ついでに勝手に治るものが此処に有る(・・)やろ。」

 

「「「・・・」」」

 

一護、ジュダス、吉良は静かに椅子に拘束されたワカメ大使の方を見る。

 

『何を考えている!平子真子!?罪もないワカメ大使に何をする気だ!?』

 

「慌ててるふりして催眠掛けましたね。解いときます。」

 

「ええ!?」

 

「ようやったジュダス。」

 

『ジュダス・ランパードっ!!』

 

ジリジリとワカメ大使に近づくジュダス・平子・吉良

その背後でストレッチを行い、気合十分な一護の姿が見える。

 

「堕ちたか!?黒崎一護!?」

 

「俺はみんなを守りてえんだ・・・。」

 

『くっ・・・良いだろう。私は敗者で貴様は勝者だ。その勝者が望むならば従おう。だが!私は敗者のままでは終わらないっ!いずれ君たちを超え、私が霊王も滅却師の王も超えて天に立とう!!』

 

「黒崎一護はあんな人物でしたっけ?」

 

「結婚して子供もできれば一護だってそりゃ変わるやろ。」

 

「昔はグリ〇ンドールでしたけど今はスリ〇リンかな?ワカメ大使はここでいいですかね?」

 

ジュダスが台車を転がし適当な壁のそばにワカメ大使を配置する。

 

「いいと思うよ。」

 

「どうやろレイブン〇ローやないか?イヅルは間違いなくス〇ザリンやろうなあ。」

 

「ワカメ大使は?」

 

「アズ〇バン」

 

全員がワカメ大使から離れたことを確認して一護は深呼吸を一つ。

 

「破道の一 衝!」

 

長い長い鍛錬が始まった。

 



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