グングニルと呼ばれたウィッチ (夜かな)
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登場人物と時系列 (仮)

リオ・ブラウン

本作の主人公

使い魔チョウゲンボウ

 

固有魔法 

鷹の目 対象の視界に入る情報を短時間で処理する

経歴

転生者で大学生だったが、三徹して過労死した。

生まれ変わるもすぐに親戚らしい一家に預けられ大切に育てられる。

絵を描いたり、本を読むのが趣味だったが、経済的な理由で適正があってウィッチになる。

ブリタニア空軍、第601飛行隊所属

 

性格

前世の影響か捨てられた事は特に気にしておらず、好きなことをしたがる癖がある。その為紅茶を飲みたいから茶葉を勝手に取ったり好きなこと以外には無頓着。

また考えることを面倒くさがる。

趣味は読書絵描き

好きな本

歴史本や有名人の著作

嫌いな本

物理学や力学などの理系本(前世の過労死の原因)

好きなもの

シアの淹れた紅茶

嫌いなもの

えび、タコ、イカ

嫌いなこと

働くこと、書類仕事(前世の以下略)

 

 

ルシア・リンドン

愛称、略称シア

使い魔フクロウ

固有魔法

相手に気づかれなくなるほど存在感を調整できる。さらにネウロイのコアの位置などの存在を感じ取れる。

経歴

ブリタニア空軍、第601飛行隊所属

 

性格

口数が少ないが、内心では色々思っているタイプ。料理が好きで料理本をよく読んでいる。リオに対しては結構甘いが、他にはなかなか気を許さない。

 

趣味は何も考えず、ぼーとすること。

好きな本

料理本と恋愛小説

嫌いな本

ホラー

好きなもの

リオの作ったもの全部

嫌いなもの

ピーマン

嫌いなこと

遊泳

    

           

司令官

ルティ・ラウフェイ

経歴

パラワン島連合軍空軍基地及びパラワン島守備隊司令官。

ブリタニア空軍第601飛行隊所属。

 

趣味は書類整理

好きな本

戦史

好きなもの

ケーキ

嫌いなもの

キノコ

嫌いなこと

残業

 

管制官(中尉)

経歴

不明

 

エラ准尉

経歴

 

エヴィ准尉

経歴

 

呉田大尉

経歴

空母三雲所属のウィッチ。ベテラン。

 

日和軍曹

経歴

空母三雲所属のウィッチ。

 

二千花軍曹

経歴

空母三雲所属のウィッチ。

 

アマリス曹長

経歴

新米ウィッチ。

 

時系列

1960年

8月  扶桑海、中東の戦闘激化

10月 インドシナ北部にネウロイが多数出現

12月 ハイフォン、バンコクにネウロイの巣が出現

1961年

3月インドシナ西部からビルマへ大規模な撤退戦が開始

12月 マレー半島へのネウロイの侵攻が開始

1962年

10月 インドシナの6割を喪失

1963年

8月 パラワン島迎撃

9月 インド北部で大規模な攻勢が起きる

10月 デリー陥落、インド北部を喪失

バラバク島攻防戦

11月 スエズ陥落、北ボルネオ島上陸戦

12月 ミンダナオ島陥落

1964年

1月 ミンダナオ島強行偵察及び攻略戦

3月 春季攻勢

 



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序章
プロローグ的な奴


 

プロローグ 1963年 パラワン島北部連合軍臨時航空基地

 

セミたちの鳴き声と肌を焼くような日差し、真夏のような気温。ぽつんとそびえ立つ大木の木陰で私はパラパラと本をめくる。

 時折、風が優しく吹いては枝葉が揺れて葉っぱの音を奏でた。この流れる平穏な時は

私の求めていた世界のようで、できれば永遠と続いてほしいと望んでいた。

 

 私には前世があった。その前世はただの大学生。普通の大学に通って講義を受ける毎日。けれど試験をギリギリで乗り越えてやっと単位を取れる、凡庸の人間。

 そんな誇れるようなことのない私は毎日をできる限り勉学に時間を割く日々を送っていた。

 学期末の試験に向けて三日連続で徹夜の勉強をしていた時、身体の限界を感じて息抜きをしよう、そう思い椅子から立ち上がった、その瞬間、目の前が突然真っ暗になり。そのまま立つこともできず、ふらふらと床に倒れ伏した。 

 

 徐々に薄れる意識の中で私は抗う気力を無くしていた。だって―――私は才能があるわけじゃない、こうして限界まで突き詰めても平凡にも届かない、何の為に私はこんなことをしているのだろう、と

 

 ギリギリまで己の限界を超えて努力した結果、身体も心も折れてしまった。そして何もかも諦めて意識を手放した。恐らく死んだのだろう、そして気づいたら生まれ変わっていた。

 前世の記憶と意識を持ったままこの世界に生まれ、これまで生きてきた。前世から反省して改めた部分もあるが他の部分は変わることはなかった。ただ、私自身の内面以外世界の歴史から常識といったものは大きく変化していた。パンツがズボンだったり、女の子が空を飛んでたり、有名な人物が女性だったり、自身の性別が変わったことよりも慣れる時間がかかった。

 ゲームはないが本はある、絵を描く道具も前世と差はない、鉛筆と紙だけであれば別によかった。音楽はそもそも聞くための機材が高くてラジオもそれ程裕福でもない私の家には買えるもではなかった。でも読書やデッサンは前世の趣味、娯楽自体に困ることはなかった。前世の最後もあって子供のうちにできるだけ好きなことをしようと思っていた。

 

 

 ふと、一際強い風が吹いた、右手で長くて鬱陶しい前髪を抑えたがその拍子に、本の読んでいた所からパラパラとめくれて、少し進んだところまでめくれてしまった。

 突然の風の裏切りに眉を顰める。渋々と読んでいた所までめくり直して続きを読もうとした。そのとき―――

 

ゥ~ウォ~オー――

 

 平穏な時は突然の警報が鳴り響いたことで終わりを告げた。私は本を閉じて警報の発信源の中心に振り向く。白い塔の生える建物、管制塔から鳴り響いていた。

 

『スクランブル!target two enemy type3…』

 

 見上げるように管制室のある最上階を見つめる。日の反射と角度で中の様子までは見えない。しかし誰かと目が合っているように感じた。

『非常事態のため、諸々は省く、待機中のウィッチは直ちに出撃、特に格納庫横の木の下の暇人は急げ!』

 

 管制官が警報の内容を生真面目に伝えている最中に基地司令殿が遮ると指示を出す。

非常時には、マニュアル通りの行動はできるだけ省く。そうでなければ間に合わないことも実戦ではあるからだ。

しかし管制官の真面目なエリートはマニュアル通りに行動しようとするため大抵基地司令殿が出てきて、指示を出す。私としては口うるさい上司より真面目なエリートの方がまだ楽だったりする、でも基地司令殿の方がいいとかいう輩がこの基地には多くいたり、私にとってはめんどくさい上司トップである。

 

 しかし、今は非常事態、とにもかくにも格納庫の愛機に向かわねばならない。読んでいた本は、地面に広げたレジャーシートに置いておき、早歩きで格納庫に入っていく。

ちなみにだが格納庫は第二次世界大戦の防空壕のようだがガチガチのコンクリートと鋼鉄で覆った作りであり、2000㍀の直撃に耐えられるようにできている。しかしその代わり、中の広さはとてつもなく狭く、整備作業要員が急いで作業を終わらせているため、走るともれなく大事故が起きることがある。決して面倒だからではない。

 

 格納庫内には既に待機シフトのウィッチが二人、各々のストライカーユニットと呼ばれる物を足に履いている。

ストライカーユニットには魔道エンジンと呼ばれるものを搭載しており、彼女たちの履いているストライカーユニットからは、薄くこれまた不可思議なエーテルが噴射されており、ホバリングのような状態を維持している。

 ちなみに噴射事態は、ストライカーユニット面倒なので、ユニットの側面にある小さなノズルで、行われていて補助的なものだが、ホバリング等によく使われるものだ。しかしホバリング自体は補助ノズルを使わずともできる。

 通常は新米ウィッチが主体ノズルのエーテル操作の加減になれるまでの間に使われる。

 

 私は滑走路に移動を始めた彼女たちを尻目に固定されている自らの愛機であるユニットを履く。魔導エンジンが起動するのと同時に先端が薄く褐色の羽が頭部に、そして魔法陣が囲むように円を描きながら表れる。そして魔道エンジンは音を静かに響かせそして徐々に高くなり、ある一定のとこで維持する。

 私は愛機の魔道エンジンの音を聞きながら、調子を確かめると出る準備を整える

 

「準備よーし、でるよ」

「私も準備できた」

「お~さすが、というかいつの間にいたの」

「リオが来たときから」

 

 隣にはいつの間にかいたバディであるルシア・リンドンが同じように準備を整えていた

 シアとはそれなりに長く付き合ってきたが、使い魔の影響なのか存在に気付けないことが多くある。一度、お風呂に一緒に入っていたことに入浴後に着替えるまで気付かないことがあった。

 さすがに長い付き合いなのでもう驚くことはないが、いるなら声をかけてほしい。

 

「そうなんだ。まあいいや今日のジャベリンは、すっごく調子がいいから作戦は、ガンガンいこうぜ、でいくよ」

「リオは時々、変わってる。でもそれがいい」

「……おやおや~、シアは私に惚れちゃったのかな」

「うん、昔からリオは好きだよ」

 

“えっマジで、りありー、本当、というかそうなん、うそだろ…”

 

 ……うん、これはあれだ、ガチの奴なのだろう。シアの顔が本気の真顔でいっている。格納庫の雰囲気が慌ただしい感じから静かな感じに、周りが見事に固まっている。視線は私がどう答えるのかどうするのか注目している。

 

「……そ、そうだね、うん、とりあえず、は、はやくでようっか、基地司令に怒られちゃうかもだし」

「……」

 

私がとった行動ははぐらかしてその場から逃げることだった。

 

「……いくじなし」

 

私の背後からは答えなかったわたしへのシアの言葉と複数の嫉妬の目線である。シアは白金の髪と真っ白な綺麗な肌が合わさった美少女なので基地でも一番の人気がある。私はベージュがかった金髪で普通の見た目なのでそこまで人気ではない、と思われる。

 

あとで起きることに戦々恐々としつつも、滑走路に入る。少し斜めのところにシアがつくと、耳につける無線機に基地司令殿から通信が入る。

 

『リオ少尉、ネウロイの数は3、大型が1小型2だ、先行した新米ウィッチでは対応できないだろう、貴様とシア少尉が頼りだ、やれるか』

「基地司令殿、赤ん坊の面倒を見ながらでも余裕ですね、なので精々椅子でも磨いて待っていてくださいよ」

 軽く冗談を言ったら通信機の電源を切る。ユニットの出力を最大まで上げると、体の重心を少し前に倒す。徐々に加速度的に滑走路を進む速度上がり、ある速度で、高度を上げていき、それに合わせてシアが続く。

 

高度が2万フィートに達したあたりで、無線機の電源入れる。

 

「ねえ、シアネウロイの方角と高度ってどっち」

「方角は大体あってる、高度は2万7000フィートあたりだからもう少し高度をあげる必要がある」

「了解、3万フィートあたりから仕掛けよう」

「ん、でも距離的に会敵まで時間はそんなにない」

「どれくらい」

「2分ぐらい」

 

 その言葉を聞いた瞬間上方から雲を引き裂き赤色のビームがすぐそばをかすらない程度に通りすぎる。すぐさま左旋回しつつ降下、続くようにビームが背後より数発再び通り抜けていく。

 

「シア、もっとはやくいってよ。この、というかしつこい、そんなんじゃもてないよ」

「リオ、ずっと無線切ってた、つまり自業自得」

「ぐっ、たしかに……というか、大型のネウロイだけ?小型は先行した子たちが相手をしてる?」

「多分そう、攻撃してきたのは大型」

 

 会話をしつつも余裕がある。今戦っている大型ネウロイは、この世界で第二次ネウロイ大戦と呼ばれる大戦で後期に出てきたネウロイで、大型ネウロイの中でも高機動高速の部類にあたる。しかし、ジェットストライカーが主流になり、音速を超えるようになったいまではビームの発射パネルの多さ以外に取り柄はなく、いまのようにある程度高度差がない限り、ただの的でしかない。

 

「ということは、一番厄介な方を新米ウィッチたちが相手してるわけだ」

「そうなる」

「……めっちゃやばいじゃんそれ!?」

 

 第二次ネウロイ大戦時、大型ネウロイは脅威とされてきた。しかしそれは速度がこちら側より優位な状態でもあったからで、後半になれば攻撃力の高さや手数以外に厄介なところはなくなり、通常の戦闘機の高性能化も合わさっていまでは撃墜しやすくなっていた。                 しかし逆に小型のネウロイは脅威度を増していた。いままでより大きくなり、武装を増やした小型ネウロイは高速高機動も合わさって、都市への奇襲攻撃を許すことも多くまた、既に多数のウィッチが犠牲になっていた。

 

 「シア、さっさと片付けて、新米ウィッチたちの援護にいくよ!」

 「お~、がんばる」

 

 会話の最中も、ネウロイから繰り出される激しいビームの嵐を避けながらループを描き上昇と旋回を繰り返していた。相手にしている大型ネウロイの手数はすさまじいものだが

後方下部のパネルをシアが、L7汎用機関銃の弾幕で一時的に封じることで、反撃を受けない空間をつくりだす。

 

 「雑魚にかまっている時間はないから、仕留めさせてもらうよ!」

 

 私の手に持つ25mm対物ライフルの砲身を大型ネウロイの中心を貫くように、向けて引き金を引いた。

 

 放たれた弾丸は、大型ネウロイの中心を貫き、弾丸がそのままコアを貫いた。そしてネウロイは白い破片になり消滅した。

 

 「あっけないね」

 「うん、でも少し時間が掛かってしまったから、急ごうシア」

 「…リオ、わかった」

 

 大型ネウロイを撃破した私とシアは魔道エンジンの出力を最大まで上げて、新人ウィッチのほうへと急ぎ向かうのだった。

 



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第1話 パラワン島北部空中戦と紅茶

 

 穏やかに見えて実際は荒々しい海は、晴天も相まって青く美しい宝石箱である。ふわふわした綿飴のような雲が、あわさって芸術的だった。

 空から見る景色にここが戦場だということを忘れたくなる。しかし一条のビームがすべてを切り裂いて死の気配を、現実を、見せてくる。

 

 「エラっ後ろ!」

 「わかってる、でも離せないよ」

 

 景色の裏側では、1人のウィッチの後ろにまるで、獲物を追い詰める黒と赤のハニカム模様をした菱形のネウロイがピッタリと付き、獲物が疲弊するのを待ち追い詰めていく。

 もう1人のウィッチ、エヴィが助けるため降下して仕掛けようとする。しかし上方からもう一機の同型のネウロイが左右の穴から小型のネウロイを放ち、放たれた小型ネウロイは、エヴィを目がけて追尾する。

 

 「くっ避けられない」

 「エヴィ⁉」

 

 エヴィは、一か八か、出力を下げて素早く背後へと振り向きL7汎用機関銃を、小型ネウロイに向けて弾幕をばらまいていく。弾幕を避けきれなかった小型ネウロイを一つ破壊することに成功する。しかし弾幕をすり抜けた小型ネウロイがエヴィに直撃する前に爆発する。

 

 「……え、エヴィ?」

 

エラは爆風に巻き込まれたエヴィに動揺して、背後のネウロイを忘れ回避機動をやめてしまう。菱形ネウロイはその隙を逃さず確実仕留めようとする。後ろにピッタリと付き赤く光るパネルが一瞬、獲物を狩る喜びに震えているようにエラは感じ、死を―――――――

 

 『やらせないよ』

 

 菱形ネウロイが直線に動いた瞬間、大型ネウロイを簡単に貫く弾丸が、跡形も無く貫いていった。

 

 「……っ」

 

 『シア!こっちは、無事だよ。そっちはどう?』

 『ん、無事だよ』

 

 エラは無線を聞いてエヴィが巻き込まれた方へと視線を向ける。

 

 『し、死ぬかと思いました』

 『大丈夫、死んでないから』

 

 爆風があった場所には、少し煤けてはいるが無傷のエヴィと憧れの美少女ウィッチが仲良く抱き合っていた。

 

 「………」

 「?」

 「う、」

 「う?」

 「羨ましですぅぅ!私もシア少尉を抱きたいぃぃいい!?」

 

 『『えっ』』

 

広大な景色の裏側で、おとなしい見た目の1人のウィッチが、響かせた本性の裏側が、無線を通して広がったのは言うまでもないだろう。

 

 

「うむ、その後、シアを抱きたいと叫んだ少女は舞台の表から去ることに…」

「あの、そのお書きになられているものは」

「これはね、新米ウィッチの黒歴史ノート」

「………」

 

 格納庫横の大きな木の下に、丸テーブルを囲み、置かれたクッキーと紅茶を2人の少女が午後のティータイムのようなことをしていた。

 

 「いや~この前は、いろいろ大変だったね」

 「……う」

 

 私は一通り書き終わったノートを閉じると、カップの縁に唇につける。

この紅茶はシアが、先ほど入れてくれた物だが、とても美味しい。ただこの一言に尽きる。

特にこの茶葉は基地司令のお気に入りの高級茶葉であり、保管庫から勝手にくすねた物だが、シアの高度な技術と合わさってほどよい味に仕上がっている。まさに完璧な紅茶である。

 しばらく高級茶葉(基地司令印)で入れた紅茶を堪能したのち、ブリタニア本土から届いた新作小説を片手にさらに楽しいひとときをしばらく過ごす。

 

 「リオ、基地司令、呼んでる」

 「はて、シア私、呼ばれるようなことあったけ」

 

 せっかくの憩いの時間を基地司令のために、諦めるのはなかなかに決断するのが難しい。

多少はサボってしまってもティータイムなら仕方がないだろう。問題なし。

 

 『リオ・ブラウン少尉!直ちに司令室に来るように、もし30分以内に来ない場合、待機シフトに夜間哨戒任務も加えるぞ』

 「ブフっ!?」

 「リオ、汚い」

 

 シアに紅茶を吹き出したことについて注意されてしまったが、私の内心はそれどころではなかった。日中は常に待機状態にあるのに、これに加えて夜間哨戒任務まで加わったらたまったものではない。

 

 仕方が無く今日のティータイムはこれで終わりにすることになってしまった。

 



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第2話 バラバク海峡攻防戦 前編

 

 パラワン島北部連合軍臨時航空基地、臨時とはいってはいるものの、滑走路はコンクリートによって舗装されており、二つの強固な格納庫や扶桑製の旧式とはいえ高射砲が8門配備され、複数の防空陣地が周辺に設置されている。この周辺区域のあらゆる航空支援を担う重要な拠点であった。

 

 とはいえ、配備されている部隊は、私たちの第60飛行隊とアウストリア空軍第2飛行隊のみであり、ウィッチが私、シア、そして先週、運悪く死にかけた新米ウィッチのエラとエヴィ、他哨戒機のキャンベラが2機、と担当する区域の広さに対してウィッチの数も航空戦力も足りていない。

パラワン島を中心とした哨戒範囲も2機のキャンベラだけでは担うことができず、だから、時々ウィッチがその任を担うことがある。

 

あの日、司令室に呼び出され基地司令に老若男女を問わず惚れてしまうような素晴らし笑顔でこの哨戒任務を言い渡された。

 

 「でも、さすがに四日連続で周辺地域の哨戒任務とかありえないでしょ」

 「リオがサボった罰、だよ」

 「別にサボってないし、だいたい待機シフト関係なく招集されるたびに、いちいち報告書を出さなきゃいけないのは、おかしいでしょ」

 「で、リオは報告書を出さなかった、よね」

 

 シアに言い訳を言おうと顔を向けた私は、シアの普段とは違う真顔の笑顔に、でかかった言葉を飲み込んで、話を切り替えることにした。

 

 「シア、今日の哨戒任務ってさ、なんでこっちなのかな」

 「……また文句「違うから、そうじゃなくてね」

 「ハイフォンにできたネウロイの巣とは反対方向の場所じゃん、だから気になって」

 

 1960年、ネウロイとの欧州での大戦以降、ネウロイとの戦いは局所的なものではあるものの続いており、中東やインドシナでは、ネウロイとの小規模な戦いが起きていた。しかし、扶桑海にて新たなネウロイの巣が現れ、同時にペルシア、インドシナ東部でもネウロイが活発化、遂にはインドシナの大都市バンコクとハイフォンの両都市にネウロイの巣が現われ、連合軍はマレーシア半島やビルマ連邦にじりじりと押されつつあった。

 

 「基地司令の話だと、先週のネウロイは突然後背地から出てきた、らしいよ」

 「先週のやつ?、だから真面目なエリートくんがいつもより慌ただしい感じだったのか」

 

  先週のネウロイとの戦闘は、基地からそれほど離れておらず、しかし新米ウィッチたちが危うく小型ネウロイの餌食になりかけたため、どの方向から来たのか気にしてはいなかった。いまになって考えると普段よりハイフォンからくるネウロイより接敵が早かったように感じる。

 

 「ということは、ネウロイの前線基地でもあるかもしれないからこっちの哨戒任務をするのか」

 「そういうこと、だと思う」

 「………でもシアにだけ話をするとかさ、基地司令のやつめ」

 

  基地司令への文句をボソボソとシアに聞かれないようにする。

 

 「…ん、基地司令、から無線」

 「……あ~はい、何でしょうか基地司令殿、こちらは平穏同然異常なしです」

 

 無線から次に聞こえるであろう基地司令の通信に対して、からかう言葉をため込んだレパートリーからどう答えるか考える。しかし

 

 『リオ少尉、定時報告はシア少尉からきいている。君に聞きたかったのは、空飛ぶ問題児に対して下す罰は、何が1番よいのか聞きたくてなったのでな1週間の飛行禁止と1ヶ月休暇なしの夜間哨戒どれが、いいと思う』

 「基地司令殿、小官の考えるに、前者は前線基地ともいえる我が愛しの基地においては、空飛ぶ問題児といえども、貴重な戦力を損なうは愚といえます。後者に関しても効率的に確実に抜け目なく行なわれなければならぬことであります。故に適切な休暇無くしてこれらを実行することは不可能ですから、どちらかを選ぶことは小官出来かねます」

 『ふむ、しかしリオ少尉、軍において信賞必罰は絶対、何かしらの成果をださねば、空飛ぶ問題児には、それなりの罰を下す必要性があるのだがねぇ』

 

 基地司令の何かしらに、空飛ぶ問題児とやらが琴線触れてしまったらしい、砂糖と塩の瓶を入れ替えたり、高級茶葉を勝手に使ったり、はたまた、本国で有名な貴重なクッキーを食べたりしてしまったことが、基地司令の怒り買ってしまったのだろうか。

 

視線をシアに向けてアドバイスを求めてみる。

 

 「リオ、どんまい」

 

救いはないらしい。

 

 哨戒任務も残りわずかなところ、基地司令に空飛ぶ問題児の減刑、もとい命乞いという任務を新たに受けることになり、疲労感に包まれていたが、バラバク海峡が見え始める。

 

 「う~、シアどうしよう」

 「大丈夫、だよ、リオ謝るの、手伝うから」

 「……シア!」

 「おうふ」

 

 ついシアに勢いよく抱き付いたため、出てはならない声が聞こえた気がするが、シアは

空中でのバランスを崩すことはなかった。

 

 「……リオ、ぎぶ」

 「あっごめん、つい…っ!?」

 

シアを解放すると、周辺を見渡す。一瞬とはいえ、何か殺気のようなものを感じたような気がした。

 

 

 

~司令官室~

 

突貫工事で建てられたここは、部屋の主の性格もあるのか、特に装飾や高級な調度品が置かれてはいない。しかし、執務机は質素な部屋の中で、うまく溶け込んではいるが、それなりに値が張るもののように感じられる。そして執務机の上には黒電話と整えられた書類が置かれていて、部屋の主は、何処かに連絡をとっていた。

 

「*****中将、すでに基地の戦力は限界が来ています。いくら新米ウィッチを二人増員したところで、それらを支える人員も装備も少なく、ましてや、本来の定員を満たしていない飛行隊では一人一人の負担が大きすぎます」

 

『大佐、君の言い訳などどうでもいいのだよ、君の仕事は、文句をたれることではなく与えられた戦力で最大限の戦果を出すことだよ』

 

大佐と呼ばれる女性は拳を強く握りながら、電話越しの相手に丁寧に言葉をつむぐ。

 

「は、しかし、今のままでは、この区域一帯の防衛は不可能です。せめて連邦加盟国から追加の部隊を」

 

『……ふむ、しかしだね、いま他の連邦加盟国にも余力はないのだよ、それにスエズの防衛のためには、連邦加盟国の戦力は欠かせないのだよ、大佐の気持ちはよく分かっているつもりだ、人員は難しいが、本国で使われなくなった初期のジャベリンのユニットを送ろう。

それだけあれば1年ぐらいは余裕だろう、私も忙しいのでね、これで失礼するよ』

 

「待ってください、中将!……くそが、これだから椅子を磨くだけの豚は」

 

 大佐は、乱暴に受話器を置くと、書類を一つ一つ処理していく。

 

 

「......あの子達は、ウィッチが居なくなったら何も守れもしない、フフ、何とも情けないな」

 

 言葉には自身に対する自虐が含まれていた。

 

 

 

 

 



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第3話 バラバク海峡攻防戦 中編

実はノートに書いていたプロットが7割、どっか行った。


 

 

 ~バラバク島防空隊 監視塔 ~

 

 バラバク島は、海峡の要所であるため、監視レーダーや3.7inch高射砲が配備され、120名の守備隊が駐留していた。

 

「ジョン、レーダーさんの調子はどうだ」

「はい、今日は機嫌がいつもより良さそうです」

「そりゃいいや、今日はウィッチがくるからな、しっかり準備して最高の歓迎をしようぜ」

 

 監視塔の中で三人の見張り番がウィッチについて会話をしていた。

 

「そういや、連合軍北部臨時基地って長すぎて言いにくいよな」

「確かにそうですね、これから規模が増えるなら臨時のままにするのもどうなんでしょうか」

 

ギッブがFALをメンテナンスしながら言った。

 

「まあ、仕方がないんだよ、あの基地はな、もともとは戦争犯罪者を収容して戦わせるために作られた場所だからな、本来は正規の部隊の基地ではないんだ。だから臨時基地って、いっているのさ」

「それって、というかそんな基地が存在しているなんて知りませんでした」

「確かに、問題児を集めたっていうウィッチの部隊の噂は前の大戦中に聞いたことはあったが、戦争犯罪者の基地なんて聞いたことがないぜ」

「……ま、知らなくてもいいことだからな、この手の話は」

 

ライアーは、会話を打ち切り、黙々と扶桑製レーションの食事を続ける

 

「……って、隊長それ扶桑の新作じゃないんですか!」

「うお、本当じゃん、ずるいっすよそりゃ」

「っち、気付かなければいいものを、ほしくてもやらんからな、これは…隊長権限だ」

「こ、こんな時だけ、隊長権限使いやがって」

「そうですよ、見損ないましたよ隊長」

 

監視塔の中は騒がしく、戦時中というにはほど遠い、和やかな雰囲気がただよっていた

 

「ところで、ジョンしっかりとレーダーはみとけよ、今日の夕方にはウィッチが来ることになっているんだからな」

「はあ…わかっていますよ、でも特に反応は…あれ、二つほど何かが接近してるようです」

「あん?予定より早くねえか」

 

ギッブはメンテナンスしている手を止めて、同じく食事を途中で切り上げたライアーとともにPPIスコープを覗き込む。

 

「おいおい、まさかネウロイか」

「いやいや、もしそうなら、妨害電波がでるはずですよ、わざわざレーダーに写るメリットなんか無いですって」

「ふむ、まあそうか…おいギッブ、上に上って念のため目視で確認してこい、運がよけりゃウィッチを一番最初にお目にかかれる」

 

ギッブはそれを聞いて、

 

「そりゃいいや、ハニカム模様の野郎でないことを祈るぜ」

「はは、羨ましですね、最近はむさ苦しい野郎ばかりですし」

 

ギッブは端から見たらテンション高めに、階段を登り、さあらに梯子を登っていって頂上に向かう。

 

「さてと、ジョンのために、お気楽演じたが、このヒリヒリする感じ……こりゃ、ちとやばいかもしれねぇな」

 

ギッブは手に持った双眼鏡を覗き込み周囲を見渡す。しかし

 

「こりゃ、霧か、視界が悪すぎて何も見えないぞ」

 

置かれている無線機を取りながら周囲の状況を伝える

 

「隊長、周囲が異常な霧で見えません、接近中の目標は確認できず…あん?繋がってねえ」

 

ギッブは手に持っている無線機の本体の周波数を弄りつなげようと試すが、ノイズを垂れ流すだけの機械は繋がることはなかった。

そこで、仕方なくギッブは、下にむかって大声で呼びかけようとした。しかしそれは口から出る前に、赤い高熱源によって止められる。

 

「な、ネウロイ」

 

“複数体の”大型のネウロイが放った一撃は瞬く間に監視塔やその周辺に降り注ぎ、無数の破壊を招く。

ギッブは咄嗟に飛び降りたため、そして運良く藁の山に落ちることで無傷にちかい状態だった。

 

「はは、隊長、ジョン」

 

しかし監視塔の中にいたライリーやジョンはビームの集中砲火を受けて生存は絶望的だった。ギッブは呆然とした頭を振り、とにかく防空陣地に移動しようとする。しかし無情にも彼の目の前には“多数の陸戦ネウロイ”と大型ネウロイから切り離されて降下している多数のネウロイ。その光景に彼は苦笑し、そして

「うそだろ、k―――」

 

バラバク島防空隊第1高射砲陣地兼司令部

 

「撃て、あんなでかい的を外すなよ!」

「中尉!、第5高射砲からの通信途絶、第2高射砲からネウロイの空挺降下を受けて救援要請がでいます」

「ネ、ネウロイの空挺降下だと⁉そんなばかなことがあるもんか…」

 

中尉は突然のネウロイの奇襲攻撃と島全体に及ぶ空挺降下に冷静な判断は既に不可能な状態にあった。分かっているだけでも高射砲が3つ門、機関砲が8基、防空陣地が二つ、既に破壊もしくは通信途絶の状態にあった。

 

「こ、こんなネウロイの大部隊、いったいどこからきたんだ」

「中尉!指示を、中尉?」

 

 防空陣地の周囲は既に陸戦ネウロイの大軍に包囲され、他の陣地はとうに消滅し、この陣地も既に負傷と死者にあふれかえり、この島の防空隊の運命は決していた。

 

「わたし、わたしはわるく―――」

 

大型ネウロイと陸戦ネウロイさらに無数のパネルがまとめられたロケット砲のようなネウロイからの集中砲火を受けてコンクリートで作られた司令部は複数の爆発とともに完全に沈黙した。

 

1963年 バラバク島陥落、泥沼の戦況はこのときから大きく動き出す。

 



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第4話 バラバク海峡攻防戦 息抜き編

 

 

~パラワン島北部連合軍臨時基地 司令官室~

 

 「なに?リオ少尉たちと連絡が取れないだと」

 『は、定時報告もなく、こちらから呼びかけているのですが…それと』

 「それと、なんだ」

 『バラバク島からの、定時報告もありません』

 

 基地司令はそれを聞いて、座っていた椅子から勢いよく立ち上がり、机に拳を激しく叩きつけた。

 

 「なぜそれを先に言わん!?直ちに、南部駐留部隊に連絡を取るんだ!」

 『は、はい!直ぐに』

 

 「(馬鹿な、いや、さすがにリオたちがやられたとは、思えん何かトラブルがあったか、だが、バラバク島が落ちたのは確実だろう、これではこの島への上陸拠点を作られたようなものだ。民間人の南部からの避難や部隊の派遣を急がねばなるまい。)」

 

基地司令は次に行なうべき行動に向けて、司令官室をあとにする。

 

 

~リオ少尉~

 

 「シア、大丈夫」

 「問題なし」

 

 潮風漂う、小さな砂浜で私とシアは寝転がっていた。なぜこうなったのか、それについてはたいしたことではない。

 

 あのとき、殺気のようなものを感じた私は一度近くの防空基地に移動することにした。しかし、バラバク島まで少しというところで、霧が起きた。異常な霧に対してシアも私も警戒して高度を上げるために上昇しようとした。

 

 でも突然ジャベリンの出力が不安定になり、いやなタイミングで現われた大型ネウロイと交戦。大型ではあったがパネルは乏しく動きも遅いただのでかいだけの的で、苦戦らしい苦戦はなく、あっけなく撃破。

 

 しかし、ジャベリンは限界だったのかそのまま墜落、なぜかシアも一緒に墜落。

その結果が、この状態である。

 

「シア、これからどうしたらいいかな、お腹減ってきたし」

「…リオ、とりあえずバナナとココナッツとその葉、そこに生えてるの取ってきて、葉は若いのがいい」

「お~、わかった」

 

どうやらシアは、何か作ってくれるらしい

 

「まずは、リオはとりあえず砂浜を日当たりのいいところ掘って、できるだけ浅く深く」

「砂浜を?うん、まあ、わかった」

 

 とりあえす手で砂浜を掘りながらシアのほうをみる。シアはまず、葉を手に取り茎の部分を青か赤で確認してわけていく。全部分けたら赤い物は、捨てる。

 

 次に集めたそれなりの石をユニットの一部を利用して起こした火でしばらく熱してそのあと私が掘った穴に置いていき、そのあとにバナナの葉と分けた葉で隙間無く並べていく。

 

 そしたら、並べ終わったところで。今度はココナッツ縦にしてをユニットの壊れた破片(ナイフ相当)でバッサリ綺麗に上の部分を切り、中身のココナッツミルクを半分ぐらいの量で葉を敷いた穴に入れる。残ったものはそのままに切った部分から肉質な部分を取り分けてまた穴にいれる。さらにバナナも皮をそれは丁寧に剥いて力強く切り分けていく。半分に分けたバナナたちを砂浜の葉を敷いた穴に入れて、さいごに分けた葉で入れた物をそれぞれ包んでいく。最後にバナナの葉で周りを包む。

 

「ん、砂でとじて」

「えっ、とじるの」

「うん」

 

 言われた通りに砂で埋める。それからしばらくココナッツミルクを飲んだり肉質な部分を食べたりしながら待つ。

 

そしたら埋めたところを掘り出し、葉を慎重に取り出した。

 

「おお、暖かい、というかココナッツミルクがなんか固まっているような」

「そう、ならもう食べれる」

 

 バナナで包んだ葉を一つ開くと、茶色葉に包まれて固まったココナッツミルクから漂う美味しそうな匂いが使い魔も気になるほどに嗅覚を刺激する。

 

「やばい、すっごく食べたい」

「ふ、いいよ、リオ食べて」

「うん、いただきまーす」

 

口に含んだ瞬間、私の脳裏に南国の島で、シアと楽しく遊び回る光景が広がっていく。

 

「すごいよこれ」

「へへ、バナナもおいしいよ」

 

 シアに言われて、バナナを口に含む。するとバナナの甘さと焼けた食感が合わさりこれは普段食べるそのままのバナナよりさらに美味しくなっている。さらにバナナの風味が口全体に広がっていく。

 

「飲み物には、ココナッツの身とバナナを使った南国のホットティ、どうぞ」

「シア、しあ、大好き、シアがいないと私いきてけないよ!」

「ふふん」

 

このまま私たちはとりあえず夕食を楽しみながら一晩を暮らしたのだった。

 

 

~ラモス島守備隊 司令部~

 

「大尉、バラバク島からのネウロイの砲撃が激しく、さらにその中に陸戦ネウロイが混じっており、いつまでも砂浜でとどめることは出来ません!」

「…くそ、とにかく、南部駐留部隊から扶桑の陸戦隊が来るまで持ちこたえるんだ」

「しかし、旧式の47mmでは殆ど効果はなくていつまで持ち堪えられるか」

「だがそれでも増援が来るまではあと一日は砂浜でとどめるひつようがある」

 

扶桑の若い士官と軍曹はあまりにも絶望的な戦況に、もはや玉砕の覚悟を決めざる終えない。それ程までに戦況は絶望的だった。

 



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第5話 バラバク海峡攻防戦 後編

 

 

~リオ少尉~

 

 一夜が明けた次の日、私たちは、バラバク島の北にある、ラモス島へ向かうことにした。

 バラバク島にある防空陣地は海峡付近に近くにあり、墜落地点からは向かう場合少し遠い位置にあることが、食材集めの際に分かった。

 そこで、歩きやすい沿岸部を通り、バラバク島とラモス島の間にある島を経由してラモス島の南部駐留部隊ラモス島守備隊の基地へ向かうほうが早く着くと考えた。

 

 道中は異常な霧や大型ネウロイについてシアと気になったことについて意見を交換することにした。

 

「あのときの霧はどう考えても、ネウロイの仕業だと思う。だってこのあたりで視界があそこまで極端に悪くなる霧が起きたことなんて、ないしそれに、大型ネウロイが現われたとき、にあそこまでピンポイントで霧が起きるのは絶対にあり得ない」

「ん、でも、大型ネウロイは弱かった」

「まあ、確かに霧を起こすことに特化しているなら、分かるけど、確かに柔らかかったというか、脆いというか」

「質量と密度薄かった、気がする」

 

 あのとき、大型ネウロイはゆっくりと降下しているようにも感じた。

 

「それに、下部分から、ビームはほとんどこなかった」

「(確かに、そう、あのときのネウロイは胴体下部からの反撃がなくて、コア自体の発見も、単純に上部のビームパネルを破壊するための過程で偶然みつけただけで…)」

「ん、霧は別のネウロイ、大型は輸送機?」

「…シアの言うとおり霧は多分別のネウロイだと思うけど、なんで輸送機って思ったの?」

「もし、先週の空爆が、偵察、なら、もうネウロイは海峡、超えて拠点をもってる、なら本格的に攻める、つもりになる」

 

つまり、ネウロイはすでにスール―海のどこかに拠点を確保していて、本格的に侵攻するための事前偵察をおこなった。あの時の輸送機は侵攻するためのネウロイを運ぶためで、軽くて脆かったのは、既に降ろしたあとだったから。

 

「それってつまり、この島にネウロイが降下していて、なぜか通信が繋がらないのは、ネウロイの妨害電波か中継するはずのバラバク島の防空隊が、すでに全滅していた…から?」

 

 突然の殺気のようなものを感じ、咄嗟にシアと私は、左右に避ける。ビームが先ほどまでいた場所を、通り過ぎた。

 

「ああ、シア大当たりだね、これ」

「ん、最悪な当たり」

 

 私たちの前に現われたのは、四足歩行の三メートルのネウロイ。ビームパネルが前の胴体に一つ、砲塔のようなところに一つ、陸戦ネウロイの密林地帯に適応した新型のネウロイで、インドシナの東部では、軽装備のリベリオンの部隊がこいつの待ち伏せにあい、壊滅まで追い込まれた、インドシナではこいつの機動力に苦戦を強いられている。

 

 私の武器は墜落した時に、海に投棄したので、こいつを仕留めるには、シアのL7汎用機関銃に頼るしかない。

 

 私がシアに視線を向けて合図をだそうとしたとき、ダダダダンッ、という音ともにネウロイはビームパネルを破壊、そして伏せたシアが正確にネウロイへ向けて弾丸の雨をお見舞いし、ネウロイを消滅させた。

 

「リオは、お姫様だね」

「あはは、シア、その立場交代しない?」

「ふふん、やだ」

 

 自身より、可愛い少女に守られることになった瞬間である。

 

~パラワン島北部連合軍臨時基地 通信室~

 

「つまり、ボルネオ島北部並びに、ミンダナオ島、そしてスールー諸島にも、ネウロイによる本格的な侵攻が起きている、ということですか」

 

『そうだ、大佐、極東方面連合軍司令部では、この事態に対して責任のなすりつけ合いで、直ぐには動けそうにない、バラバク島は現有の陸戦戦力で、対応してもらうほか無い』

「ですが沖島中将、すでに一個中隊が消滅し、装備も旧式の戦力だけでは、」

『分かっている、支援のために重巡一隻と駆逐艦二隻を派遣してもらえるよう、リベリオンと交渉している。もっとも近くにいる艦だ、話はつけておくから、艦砲射撃のもと、なんとしてもバラバク島は奪還してほしい』

「…了解しました」

『貴君らの武運を祈るよ、大佐』

 

 基地司令は、艦砲射撃の支援をなんとか取り付けることはできた。

 

「どうでしたか」

「陸戦部隊の増援はないが、艦砲射撃は用意してもらえそうだ…南部駐留部隊につないでくれ」

「了解です、こちらパラワン島北部連合軍臨時基地、南部駐留部隊….」

 

基地司令は、バラバク島奪還にむけて、派遣する部隊と各隊の状況をから今後の展開について考えていた。

 

「はい…えっ!?ウィッチが、大佐!」

「どうした」

「ラモス島を砲撃していたネウロイを、殲滅したそうです!!」

 

「………はっ?」

 

 

 

~ラモス島守備隊~

 

「大尉、陸戦隊の増援が現地に到着し、ネウロイの侵攻は沿岸部でなんとか押しとどめることができました」

「そうか、間に合ったか」

「しかし、以前砲戦型ネウロイからの砲撃が止んでおらず、被害が出続けています」

「やはり、火砲が足りなすぎるか」

「ここは、橋を爆破してこちらへの侵攻を止めるべきでは」

「いや、橋があるから連中の戦力が集中している、もし爆破しても連中の戦力を削らなければ、砲撃で疲弊したところを、空から攻撃されかねん、ここは、戦場を、絞り敵戦力を削りながら砲戦型ネウロイを破壊するチャンス待つ」

 

 橋を爆破してしまえば、ネウロイからの侵攻自体は止められる。しかし砲撃に対してこちらは何も出来ず、一方的に撃たれるだけだ。それに、ネウロイがバラバク島をどうやって落としたのかが分からないうちに、戦闘の流れを止めるわけにはいかなかった。

 

~ラモス島前線~

 

「伍長、あの忌々しい砲戦型ネウロイを仕留めてこい」

「はは、無茶言わないでくださいよ、47mmの直撃を受けてピンピンしてる奴さんに、一歩兵の私が倒せるわけ無いでしょう?」

「……そうか」

「いや、そんな顔されても無理ですぜ、さすがに」

 

 双眼鏡をのぞきながら陸戦隊の隊長と部下がそんな会話をしていると、突然砲戦型ネウロイの一体が消滅する。

 

「おお、言えば出来るもんだな」

「…いや偶々でしょ」

「でも一体…」

「うん?あれは、ウィッチ、か?」

 

 

~リオ少尉~

 

「ひぃふぅみぃ、それなりの数だね、さすがに」

「ん、まあなんとかなる」

「……ふむ、確かに出来なくはないのか、シアなら」

 

 私とシアはさっき遭遇したネウロイを除いて特に、襲われることはなく、ラモス島と繋がる橋がある場所までたどりついていた。しかし、そこはまさに戦闘中の真っ只中で、どうするか、相談していた。

 

「つまり、砲戦型を破壊して、そのまま、ラモス島守備隊が築いた、陣地まで強行突破すると……シアの負担がすごいことになるけど、大丈夫?」

「問題ない、リオはいま、お姫様、よってシアは王子、このまま恋のらんでぶー」

「…うん、まあ、大丈夫みたいだね」

 

どうやら勧めた恋愛小説の中に、戦場を通り抜けて駆け落ちするものが、あったようだ。

もはや、こうなったシアはネウロイの大群の中を余裕で突っ切ってしまうだろう。

 

「レッツ恋のらんでぶー作戦、開始」

「えっ、ちょ、ま」

 

シアは私の右手を引っ張りながら、ネウロイの大群へと突っ込んでいく、その勢いたるや、ネウロイが、一瞬固まってしまうほどである。

 

「じゃま、どいて」

 

無慈悲にも、片手撃ちでL7汎用機関銃が放たれるが、ウィッチの力で反動を無理矢理制御し、正確に放たれた弾幕は的確にネウロイを消滅させていく。

 

時々、ネウロイから放たれるビームをシールドで受け流し、そしてシアが砲戦型ネウロイを仕留めていく、そうやって走り続け、遂に橋にまで至り、橋の途中まで来た、その時だった。突如、空から、ビームが降り注ぎ後方の橋部分から破壊していく。

 

さすがのシアも、ユニットなしで、空中のネウロイを破壊するのは難しく、タイミング悪く、弾を撃ちきったL7汎用機関銃を放り投げ、とにかく橋を私たちは全力で駆け抜けた。

 

「ふ、なかなか、いいらんでぶー、だった」

「いや、それはもういいから」

 

新たに現われたのは輸送機型と思われる大型ネウロイ、しかし一部に差異があり、対地用のパネルが前方に複数確認できた。

 

「…さすがに、まずい」

「そうだね、これは」

 

 大型ネウロイはこちらにとどめを刺そうと、ビームを放った。シアと二人でシールドを出してなんとかビームの奔流に耐えるも、私もシアも魔力は平均よりそれなりに上なだけであり、長く耐えられる物ではなかった。

 

「おいおい、野郎ども、ウィッチを援護しろ、間違っても当てるんじゃないぞ」

「ウィッチに傷でも付いたら、俺らは全員ベトナム送りにされちまうぞ」

 

それを見た聞いた、ラモス島守備隊や陸戦隊は陣地からありったけの砲弾薬をつかって大型ネウロイに集中砲火を開始する

 

 ラモス島守備隊の陣地から、ヴィッカース重機関銃や扶桑製47mmの集中砲火が行なわれた、それに、対応するため大型ネウロイの攻撃が分散し、少しの猶予が生まれるが、それでも焼け石に水であり、状況が変わる物ではなかった。

 

「ねえ、シア、どこ行っても、付いてきてくれるかな」

「んっ…とうぜん、だってリオはシアが必要、だから」

 

耳がいい伍長が

 

「いや、お願いだから、もう少し粘ってください!?そんな悲劇的展開より、ハッピーエンドにしてくださいよ!」

 

「うるさい、下っ端1、そんなの、だから、もてない」

 

「いや、戦場でピンチな時に何いってんすか、というか自分は、妻子持ちですよ」

『「「えっ!?まじで」」』

 

驚愕する声が無線や周囲の陣地から出る。

 

「ん、エラたちきた」

『えっと、はい救援きました、その』

 「エラ准尉、話は後で、とにかくネウロイをお願いします」

 「はい、了解です!」

 

 ドドンッ エラ准尉が放った25mmの弾丸は、大型ネウロイに二つの大穴をあけ、中心のコアを露出させる。

 

 「エヴィ!」

 

 「ok、任せて」

 

 そしてダイブしたエヴィ准尉が露出したコアをL7汎用機関銃で破壊し、大型ネウロイは消滅した。

 

 その後は特に何事もなく、霧を起こしたネウロイも現われずに、艦砲射撃の支援を得た陸戦隊と増援の南部駐留部隊によってバラバク島は奪還された。私たちも基地に無事に帰還でき、基地司令から山のような報告書の提出を、命じられ忙しくは、あるが一応は通常の任務に戻った。

 

しかし、バラバク海峡はバラバク島の対岸を押さえられたままであり、ミンダナオ島では、激戦が繰り広げられていた。

 



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第6話 ボルネオ島北部 上陸戦 前編

 

 

~パラワン島北部連合軍臨時基地~

 

 パラワン島では11月に入っても、気温は変わらず、夏が続いている。お気に入りの大きな木の下で、ユニットに被せるシートを地面に敷いた上で、扶桑から取り寄せた文学本を読む。今日は久方ぶりの休日という名の待機シフトの日。

 

バラバク島の戦いから早、1ヶ月、戦況は日に増して悪化する一方で、先日扶桑から新たに空母二隻を中核とした東南アジア支援艦隊が到着したことで、哨戒任務や航空支援から解放された。

 

基地司令の容赦のない、采配で休む時間は、殆どなく、こうして本を読むこと自体、ひさしぶりだった。

 

しかし、今日に限っては、シアはパラワン島中央の港までエラ准尉と届いたユニットを受領するために基地にはいなかった。シアの紅茶を楽しみながら、読書に勤しむことができないのが残念だった。

中身は、本国の余剰となった旧式のジャベリンであることには間違いない。せめてレーダーを内蔵している機種であればいいけれど、多分取り外されているものしかない。

 

太陽の、日の光が茂った木の葉の隙間から差し込み、小鳥のさえずりが聞こえてくる、平和なひとときは、本来私が望んでいる、平穏そのもの。しかし、やはり紅茶がのみたいと感じる。今日に合うような紅茶を、シアなら用意してくれるだろう。

 

寝転がった身体少し、動かして、少し小さなため息を吐く。

 

「どうした、リオ少尉、暇そうだったから、わざわざ私が、休暇とやらを、ともにしてやっているのに、ため息をつくとは」

「それは、聞かずともおわかりでしょう、休む暇無く任務を指示する上官が、常に近くにいては、おちおち休んではいられませんよ」

 

 ため息の理由は、この方、私の上官にして、後見人でもある、この基地とその周辺の部隊を統括している司令官ルティ・ラウフェイ大佐である。

 

「だいたい、司令官殿は、重要な役職故、多くの仕事があるのではないのですか」

「ふっ、やらなければいけない必要なことは、既に終えている。私も久方ぶりの休暇だ」

「へえ、部下には休暇は与えないで、常に待機シフトに加えているお方が休暇ですか」

 

嫌みを言ったつもりであった。しかし一切動じた様子はない。

 

「まぁ、せっかくの休暇を用意してやるたびに、生活習慣が乱れに乱れてしまう、問題児には、常に何かをさせている方が、安定するのでな、そうでなければわざわざ、こちらで予定を立ててやる必要も無いのだが」

「(ああ言えばこう言う、これだからこの人は苦手なんだ)」

 

口で言い合ってもなかなか決着がつかない相手である以上、こういう時は無視するに限る。体勢を変えて読書の続きを読む。時たま聞こえてくる、私以外の本をめくる音を聞こえないふりをしながら過ごした。

 

 

~シア少尉~

 

中央の港に来るのは、久方ぶりで、先月からのこともあり、街の活気はほとんど無いと思っていた。しかし予想より、街の活気は変わっておらず、市場では多くの人々が買い物をしていた。

 

「あまり、かわってない」

「ええ、確かに、でも私が前に来たときよりは、賑わいは小さいようにかんじますね」

「そう」

 

目的地の港は、市場を抜けた先にある。そこはでは、ブリタニア本土から送られてきた物資が荷揚げされ置かれていた。目的の物を受け取るため、近くにいる荷揚げを管理している若い准尉に目的の物が届いているか尋ねる。

 

「ストライカーユニットですね、確か第4集積場に、輸送用の車両と運転手がセットでいるはずですよ」

「ん、ありがと」

「い、いえ、少尉のお役に立てて光栄です、あのもしよければこの後」

「申し訳ないのですが、この後シア少尉には、急ぎユニットを基地まで運ぶ仕事がありますので」

「ああ、いえ、これは失礼を、それでは失礼します」

「?特にこの後は急ぐ必要は無いけど」

「いえ、少尉、いいですか、世の中男性はみな飢えた狼のようなものです、そう気軽に、ホイホイ誘いを受けてしまわれると、襲われてしまいますよ」

「そう、わかった、気をつける」

 

第4集積場に向かう道中、小さな白猫を拾ったり、転けて泣いている男の子を励ましたり、白猫の母猫を捕らえて連れて行こうとした密輸業者を壊滅させたり、様々なことに巻き込まれながら、片道10分も掛からない距離をじ実に3時間かけて到着した。

 

「……シアさんって、巻き込まれ体質だったんですね」

「巻き込まれ体質?」

「いえ、気にしないでください」

「???」

 

第4集積場には准尉の言った通り、ストライカーユニットをのせたトラックと運転手がセットでいた。

 

「お待ちしておりました、シア少尉、エラ准尉」

「ん」

「ごめんなさい、少し遅くなってしましました」

「いえ、お気になさらず、基地までは私が運転いたしますので、少し手狭ではありますが、荷台に席を用意してありますのでどうぞ」

「ええ、ありがとうございます。基地までよろしくお願いしますね」

「よろしく」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 

その後は、特に何もなく、基地まで着き、ストライカーユニットはそのまま、ハンガーに運ばれていった。

 

「ところで、あのストライカーユニット、ジャベリンより縦に大きかったようですが」

「ん、多分いい物、でも本国の余剰だと思うから期待するのは無駄」

「そうですか、いい物であるいいですね」

 

 

~深夜 第2格納庫~

 

「基地司令、新しく届いたユニットの開封とメンテが終わりましたので見ていただけると」

「ほう、これはなかなか、良さそうな機体だな、今度の作戦のために、リベリオン海軍から取り寄せた戦闘脚は」

 

開かれた格納庫に鎮座する四人分の戦闘脚、エアインテークが中央に置かれ、翼はジャベリンのデルタ翼とは違い、高翼配置の後退翼、ユニットの側面には、ハードポイントが設けられており、赤外線誘導によってネウロイのコアに向かっていく、AIM-9Bを運用できるため、度々起きている菱形ネウロイの誘導ミサイルの有無の不利が多少は増しになるはずだ。

 

「(F-8 クルセイダー、初期型の壊れかけのジャベリンよりはマシなはずだ)」

 

 新たな翼に、基地司令は期待しつつも、若干、ユニットを破壊する癖がある部下たちに不安を抱いていた。

 

 




もともと、クルセイダーじゃなくて、バッカ二アだったけど、武装の関係で、諦めた。あとジャベリンくんは後期型になるまで、出番はない模様。


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第7話 ボルネオ島北部 上陸戦 中編

 

 

 ~会議室~

 

 「…以上が、今回の作戦の詳細だ、会議に来なかったものについては、作戦当日に、シア少尉から伝えてもらう。以上解散だ」

 

会議室から基地司令が立ち去ると、会議室にいる面々は各々会話を始める。

 

 「シア少尉、いつものごとく基地司令凄く怖かったですね」

 「ん、いつものこと、けど、あれはやばい」

 「シア少尉が言うんだから相当やばかったんだ、あれ」

 

エラ准尉、エヴィ准尉、シア少尉が揃って、先ほどの基地司令の態度に恐ろしさを話していた。

 

 「…リオ少尉、今度はどんな罰がくだるんでしょうか」

 「たしか前回は、夜間哨戒任務三日連続で、その前が食堂の給仕だったね」

 「扶桑の割烹着姿や伝統的なメイド服は、さいこー、だった」

 「へえ、シア少尉は、そういった格好がお好きなのですか?」

 「リオ、あまりああいう、服、着ないから」

 「ああなるほど、確かにリオ少尉は、服装には頓着しなさそうですね、」

 「ん、昔は、よく男物着たりしてた、でも、最近は、ちゃんとしたの、きてる」

 「そうなんだ、リオ少尉すっごい美少女で、基地内人気1位なのに、以外だねぇ」

 

エヴィ准尉の言葉にシア少尉とエラ准尉は同意する。

 

 「確か、あまりにも、人気が高くて、ズボンが頻繁に盗まれてたって聞きましたけど」

 「ん、リアは知らない、けど、盗む輩が、多くて、基地司令が、密かに処理してた」

 「えっとさ、それって、へんな意味じゃないよね」

 「違う、よ、こうやって、こうする感じ」

 

シア少尉は、首を着るジェスチャーと、ぞうさんの鼻を切るジェスチャーをする。

 

 「…基地司令って、けっこう過保護だったりする感じ?」

 「新作の有名ブランドのズボンを予備も含めて用意したり、リオが頼んだ本を最優先で、届けるよう指示出したり、リオが好む扶桑式のお風呂立てたり、あと他にもいろいろ」

「過保護というより、もはや、親馬鹿の域に達している気がしますね。

 

~ルティ・ラウフェイ大佐~

 

「はい、分かりました、そのようにします」

『ああ、頼むよ大佐、今回の作戦は、コタ・バルを失ったために、補給路が絶たれたハノイのインドシナ連邦軍の救出作戦に欠かせないことだ、リベリオンが新型戦闘脚を優先的にこちらへ回してきたのもそういった理由があるのだろう』

「政治的な理由でしょうか沖島大将閣下」

『閣下はいらないよ、ルティ・ラウフェイ大佐、政治的な理由はもちろんだが、インドシナ連邦軍のほとんどは、リベリオンの“義勇兵”というのが、ほとんどだからね』

「なるほど、あの国らしい、そういえば、健康上の理由で少し早く選挙が行なわれるのでしたか」

『まあ、そういうことだ、それにいまリベリオンが動けなくなれば、スエズやインドが落ちてしまうからな。北部の兵站の要所たるデリーが陥落したことで、インドは南部に向けて大幅に退却しつつある。弱体化が乏しいブリタニア軍の支援だけでは、持ち堪えることは出来ないだろう』

「スエズもガリアとブリタニアだけでは難しいでしょう、利権に固執するあまり、ネウロイの恐ろしさを忘れてしまったようです」

 

手に持つ紅茶は冷め切り、まるでルティ・ラウフェイ大佐のブリタニアに対する感情を表しているように、感じる。

 

『そっちはオラ-シャやリベリオン、扶桑の三国が、外交的圧力をかけているそうだから、少しはマシになるだろう……』

「そうだといいのですが……では大将最後に、その例の件は」

 

先ほどまでの冷たい雰囲気が代わり、紅茶にミルクを入れたようなものに変わる

 

『ああ、君からの珍しい、頼み事だ、来月の前日に届くようにしているよ』

「ふふ、ありがとうございます……んん、では、沖島大将、これで失礼します」

『うむ、今後の大佐の活躍を期待する』

 

黒電話の受話器を置いた大佐の雰囲気はやはりいつもより優しく感じる物だった。

 

~リオ少尉~

 

 会議から一週間後、ついに作戦が行なわれることになった。ことの詳細はシアから聞いた。とはいえ、ストライカーユニットが新型の戦闘脚になったということに、驚き内容のおおよそ半分近くが入らなかった。

 

「リオ少尉、F-8Dはジャベリンより、速く動けますし、アフターバーナーを使用すれば超音速も行けますが、元が艦載用の戦闘脚です、離陸時の滑走距離の違いに気をつけてください」

 

「はいはい、わかってるよ、仕様も癖も特徴もしっかり確認してる、シア行ける?」

「問題なし、準備完了」

「うん…よし、滑走路でるよ」

 

滑走路まで自力でタキシングする。すでに、エラ准尉、エヴィ准尉は飛んでおり、私たちと合流するのを待っている。

 

『こちら管制塔、リオ少尉たちのあとにアウストリアのキャンベラが2機飛ぶので、離陸後は、右旋回でお願いします。風の向きに気をつけてくださいね』

「了解」

「ん」

 

確かに、後方から格納庫横に駐機されたキャンベラがタキシング牽引車によってタキシングを始めていた。どうやら今回の作戦は、相当規模がでかい物になるのかもしれない。

とにもかくにも、基地の滑走路に達したので、離陸に入る。今回は、ゆっくり加速するのに合わせながら、徐々に体を倒していく。しかし、やはりジャベリンより、少し上昇が速く、

短い距離で離陸できてしまった。

 

「おお、いいね、この子、速く飛びたいって感じがする」

「ん、いい機体」

 

離陸後は、エラ准尉たちと合流、続くキャンベラ2機が高度をあげたのち、目的地へと、今回の作戦目標、ボルネオ島へ向けて出発した。

 




平日は内容、少なめかも。
ちなみに、パラワン島中央からカリマンタン島中央までは、約1000kmはあるので往復しながらの空戦はジャベリンでは少し難しいというのを知って、プロットを書き直してたりする。
追記:沖島中将は色々あって昇格してます


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第8話 ボルネオ島北部 上陸戦 説明的な編

 

 

~リオ少尉~

 

 「そういえば、シア、今日の作戦珍しく、扶桑海軍が参加するよね、確か空母が二隻」

 「ん、出雲と三雲、元はリベリオンの後期型エセックス級空母」

 

エラ准尉が続いて答える

 

 「確か、扶桑が保有していた空母の、ジェット機対応への改修コストが高くて、リベリオンから購入したのがその二隻でしたね」

 「ああ、新聞にも載ってたよね、扶桑海軍、空母天城の改修費が戦艦大和に匹敵、さすがに割に合わないから、いくつかの空母を売って、一部は改修して、穴埋めに購入だっけ」

 

扶桑海軍というか、扶桑の人間は物を大事にし過ぎる癖がある。

 

 「で、その空母が、たいしたことない、作戦に参加してるの」

 「えっと、シア少尉、リオ少尉に説明したんですよね」

 「ん、一言一句間違えなく」

 「え~と、ね、半分ぐらい聞き流しちゃった、てへぺろ」

 

エラ准尉やシア少尉、さらにエヴィ准尉、アウストラリスのキャンベラのパイロット達から

厳しい視線が飛ぶ。

 

 「もう一回、説明する」

 「……お願いします」

 「まず、今回の作戦目標は何か覚えてる?」

 「ボルネオ島北部の奪還とバラバク海峡の確保で、ボルネオ島の駐留部隊が、攻勢をかけるのに合わせて別方向から強襲上陸をかけて挟撃し、ネウロイを殲滅すること、だよね」

 「ん、そう、私たちは、制空権の確保、上陸援護、そのとき、扶桑の空母航空隊も加わる」

 

エヴィ准尉が続けていう。

 

「ただし、扶桑の空母も艦隊も、ボルネオ島北部の沿岸部を押さえたら、バラバク海峡を越えてハイフォンの、それもネウロイの巣に攻撃を仕掛けるんだ、ハノイからインドシナ連邦軍の撤退を援護するためにね」

「なので、この作戦は最終的な目的であるインドシナ連邦軍の撤退支援のために、行なわれるものなんです」

「そうなんだ」

「……重要なところ、エヴィとエラに、言われた」

 「あ、あのその、これはですね、シア少尉……」

 

しばらくの間、シアのご機嫌を取り直すのにそれなりに時間がかかった。

 

~空母出雲~

 

アングルデッキを備えた空母の甲板上では、蒸気カタパルトから、F-8Dが次々と射出されている。

 

「艦長、発艦は順調だな」

「はっ、まもなく作戦参加機の全機の発艦が完了します」

「うむ結構、これは始まりに過ぎん、奴らには、“扶桑”の力をしっかりと見せつけてようぞ」

 

出雲の艦橋には、似つかわしくない、小綺麗な軍服と少将の階級をつけた男がいた。

男は、華族で士官学校を何とかコネで卒業し、後方勤務でそれなりに手柄を出し続け、やっとのことで、艦隊司令官に上り詰めた。

 

誰もがやりたがらない、東南アジア支援艦隊の司令官になった自信満々な男だが、慎重な面もあり、ネウロイの襲撃が多くなる大陸側ルートを避け、遠回りではあるが、比較的襲撃が少なくなる、バラバク海峡を通るルートを選び、早急な行動を取るべきとする本土の意見に反対してでも、今回の作戦に参加した。

 

事実、ネウロイは対艦用ミサイルを搭載した中型ネウロイ多数をもって、扶桑海で空母数隻を大破ないし中破させており、徐々に対艦用ミサイルの破壊力も増していたため、地上からの支援が受けにくく、襲撃が多い大陸側を選ぶことはある意味自殺行為であった。

 

「しかし、ウィッチを本当に出さないのですか」

「何度もいわせるな航空参謀、ウィッチは切り札だ、例え士気が上がるからとそうそう、切っていいものではない、ましてや、コタ・バルのレーダーにギリギリまで、写らなかったという、謎のネウロイについて分かっていないのに、艦隊の守りを疎かにするわけにはいかんのだ」

 

 慎重な面は時に、選択肢を自ら減らしてしまう危険性があった。しかし、この男の慎重さがいつも、自身の命を守ってきたものであり、分かってはいても変えられるものでもなかった。

 

~空母三雲~

 

「あ~あつい、もう船の上、あきたんだけど」

「うっぷ、この揺れ嫌いです」

「そういうな、この暑さも揺れも慣れるといいものだぞ」

 

服の襟元をばたつかせる、黒髪ショートヘアの少女と、船の揺れによって中身が出る寸前の同じく黒髪の三つ編みの少女、そして、少し茶色が混ざった髪を結んで前に垂らしている元気過ぎる少女、この三人は空母三雲の所属ウィッチである。

 

「呉田さんは、よくこの暑さ、平気ですよね、頭おかしいです」

「うっぷ、う、同意です、この揺れ平気とかどうかしています」

「やれやれ、普段の鍛錬が足らんようだ、よし、今日は甲板が空いているから、好きなだけ走り放題だぞ、さあ、立て、走れば何とかなる」

 

気温30度超える中、さらに熱い何かを燃やす呉田大尉に、

 

「う~、やだあ、この人本気でやる気だよ」

「う、頭おかしいです、頭おかしいです」

 

呉田大尉は、死にかけている二人にとどめを刺すため灼熱の甲板に二人を引きずって行くのだった。ちなみに使い魔の補正なしで、二人を引っ張っている素の怪力である。

 




追記:続きは、来月に、逃げ因子集め徹夜中。(過去編とプロットの制作に時間を投資しています。なので、少し貯めた上で投稿します。後編は内容をできるだけ厚めにしたいので)


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第9話 ボルネオ島北部 上陸戦 後編

待てなかった、反省はしていない


 

 

~リオ少尉~

 

私たちが作戦空域に着くまで、あとわずか、既に上陸ポイントに向けて、扶桑陸戦隊、リベリオン海兵隊、そのあとに続くように東南アジア方面軍フィリピン駐留部隊が上陸艇に乗って向かっている。

 

「リオ少尉、まもなく作戦空域に到着します。扶桑空母航空隊も、予定通りに進んでいるようです」

「よし、ここまで問題なし、あとは、ネウロイ次第だね、さすがにこの規模の動きは気付いているだろうし…シア、今回は本気でね」

「ん、当然」

 

 シアは今回、両手にL7汎用機関銃、背中には25mm対物ライフル、更に両脚のハードポイントに、AIM9Bが二つとかなりの重装備。私も、普段使っている25mm対物ライフルは背中に背負い、12.7mm重機関銃を両手で持ち、ハードポイントにはシアと同じAIM9Bを四つ、基本的には小型ネウロイへの対処を目的とした手数重視になっている。

 

 「まもなく作戦開始時間です」

 『全隊に通達、地獄の門へ至り、繰り返す地獄の門へ至り』

 「おお~始まったね、でも、凄いね……ネウロイはさ」

 

 作戦開始を告げる合図と同時に、雲海の隙間から見える、密林の複数から、多数のネウロイが出現、およそ100を超える小型、中型ネウロイが、迎撃に上がってきていた。

 

 「大型は、いない」

 「まあ、鈍亀よりは厄介ではあるけどね」

 「あの、新型もいるみたいですよ」

 「……准尉達はキャンベラの護衛をよろしく、新型でもなんとかなるよ、多分」

 

 見慣れた菱形のネウロイの他にミサイルのようにとんがった新型の中型ネウロイが、混じっている。とはいえ、こちらもそれなりに戦力を整えてきた訳で、ここで簡単にやられるつもりも、まして、一匹も逃がす気はいまの私にはない。久々の狩りに、使い魔はやる気にあふれ、私も溜まった鬱憤を晴らすために、最初っから飛ばしていくことにした。

 

~ボルネオ島駐留部隊第2前線司令部~

 

「各地にて我が軍は優勢、北部への上陸部隊は航空支援を受けつつ沿岸部を確保しつつあり、また、第56大隊がポイントDを確保、更にバルジ島へ上陸した部隊が、島の6割を制圧、続々と各地で優勢の報告がきています」

 

「よし、想定より、ネウロイの戦力は少ないようだ。このまま行けば、バラバク海峡の確保ができる。更に戦力を投入だ、ここで一気に行くぞ、予備大隊に連絡をつなげ「急報!!」何だ」

 

司令部に突然の急報が届く

 

「ネウロイ、ネウロイの、ネ、ネウロイの……超大型ネウロイが出現!、そ、それで」

「それで、何だ」

「く、空母、出雲が、大破。扶桑艦隊は壊滅状態です!」

 

それは、誰しもが全くの想定外の、いや、この作戦の根底が、壊れ、戦況の変化が起きてしまうほどの、いや、そもそもが、うまく行き過ぎていたことの、答えでもあった。

 

「なっ!?中佐、奥地に進んでいた部隊が、待ち伏せに合い救援要請が出ています」

 

まるで計ったかのように、ネウロイの伏兵が、突出し守りが薄くなった部隊に襲いかかる、更に、この前線司令部にも、激しいビームが降り注ぐ。

 

“何ごとだ!なぜ、こ―――“ ”敵襲だ、ネ、ネウロイの奴らまっすぐここに“

 

前線司令部は、瞬く間にネウロイに、蹂躙されていく。勇敢な兵士達が、塹壕やトーチカ、対戦車砲陣地によって抵抗をするも、圧倒的な火力によって塹壕ごと吹き飛ばされ、トーチカは、質量を活かした突撃によってコンクリートごと生き埋めに、対戦車砲陣地は長距離からの砲撃で粉砕され、彼らの抵抗はむなしく、蹂躙劇が続いていく。

 

「こちら、だいよん、ぜんせん、司令ブッ、ゴハッ、ネウロ、いの…げき…きゅう、えん」

 

無線機に力を振り絞り、救援を呼ぼうとする、士官、しかし、ネウロイに見つかり、無残にも鮮血を散らすこととなった。

 

~東南アジア方面連合軍 作戦司令部~

 

 慌ただしく、士官が走り、無線が飛び交い、混沌が広がっていた。そのような中で、一人の将官は、ただ冷静に、静かに、戦況を見極めていた。

 

「(ふむ、さすがに一筋縄にはいかないか、攻勢に出た部隊のもっとも兵士の質の層が薄いところを突いている、それに、前線の指揮系統を見事に、狙った攻撃で、一部部隊が孤立してしまった。だが、それも想定のうち、もともと、現地の人々で編成された各駐留部隊をかき集めて、新たに作った急ごしらえの方面軍だ。士気は高くても、部隊間の連携はバラバラ

そもそも、地形が最悪だ。密林と山岳部が部隊の連携を更に難しくしている上に、小さな洞窟や狭い道がひしめき、待ち伏せ、奇襲の格好の場所が広がっている。もともと攻略できる物ではないのはわかっていたことだ)」

 

広大な地図に置かれた小さな、大隊クラスを表す駒が、いくつか、バツ印に変わる。しかしその印より離れた場所に整った配置をした駒が十倍近く置かれていた。

 

「(だからこそ、出てきてもらう必要があった。わざわざ、不利な地形、条件で戦ってやる必要はない。今回の作戦は、あくまで、インドシナ軍の救援、そして―――

 

~パラワン島北部連合軍臨時基地 司令官室~

 

「―――“扶桑海軍の権威の失墜”か、まさか、内部の政争のために、4万の兵士を地獄へと送るとは、世も末だな、そう思うだろう、中尉?」

 

中尉と呼ばれた男は、普段付けいている、真面目なエリートの仮面ではなく、今回の計画の一端に関わり、扶桑の内部の政争による弱体化を望む、ブリタニア政府の犬は、死神が、悪魔の笑顔が、その本性を現していた。

 

「いえいえ、これもまた、世の中を維持するのには、欠かせない物ですから、それに彼らの死が“我々人類”の未来の礎になるのですよ」

 

悪魔は願いを叶えるのだろう、この悪魔は人類が願いを、かなえるために、必要なことをしているだけ、それが例え、何千、何百万の屍の塔を築きあげたとしても

 

「それが、家族を、見捨てた理由か、中尉」

 

「はっはは、何をいうかと、思いきや、あなたもそうでしょう。“実の娘”を捨てておいて、その上、拾ったくせに、また捨てた、今度は死地に送り込んで、いやー、私ならこんな、母親はごめんですよ、ルティ・ラウフェイ大佐」

 

男は、机に置かれた角砂糖を、自身の紅茶に、ドバドバといれ、ゴリゴリと音を立てながらかき混ぜる。

 

「フッ、実の娘か、ああそうだ」

 

後悔と憎しみが入り交じった言葉が、感情が

 

「あの忌まわしい奴との間に、出来てしまった、憎くて仕方が無い、悪魔に呪われた

 

―――私にとって最悪の呪いだよ」

 

司令官室の開かれた窓から一瞬の風に、ルティ・ラウフェイ大佐の、憎しみと怨嗟の瞳が僅かに露わになった、そこに“実の娘”対しての、彼女の歪んでしまった、感情があった。

 

 

 

~リア少尉~

 

赤いビームが無数に飛び交う中で、私の心は冷めていた。いつ訪れるか、分からない死に、対して、いまの私は、何も感じずにいる。上体少しひねり、射線に入る中型ネウロイを、無数の弾丸で“壊していく”、それが一瞬の間に起こり、また次に向けて動き出す。

 

正面から、迫る三機の小型ネウロイの移動先を、予測して、誤差無く弾丸をばら撒く、ネウロイもまた、回避機動をとり、数発は避けて見せる。しかし避けた先へ別の方向から弾丸が降り注ぎ、3機のネウロイは、瞬く間消滅する。

 

それをやった張本人は、無数の小型ネウロイを引き連れて、次々と処理していく。

 

「シア、あと何機いる」

「ん、60機」

 

正確な数を把握している、シアの言葉道理、ネウロイはまだまだいた。

複数のネウロイをまた葬り、激しく鋭く一度でも視界に入ったネウロイを残りの弾丸を使い切るまで、撃つ。

 

12.7mmの弾丸が尽きたため、鈍器として振り回した、重機関銃を、中型ネウロイに叩きつけ、無駄なく使い切り、背中の25mm対物ライフルをシアの援護を受けながら、装備する。既に小型ネウロイはシアによってほとんど刈られてしまい、残ってはいなかった。

 

残る中型ネウロイをAIM9Bで楽に落とせず、結局は一匹ちまちまと消滅させていく。シアが誘導し、私が撃つ。

 

既に空域に残っているのは、数機のF8Dクルセイダーと、エラ准尉やエヴィ准尉、そして、運良く生き残ったキャンベラ隊のみ、戦況は、終局に近く、ネウロイを掃討後に、生き残った扶桑の部隊の勧めで一旦扶桑の空母で、補給を受ける話になる。キャンベラ隊はさすがに難しく先に基地へと帰投することになったが、私たちは補給を受けることにした。

 

生き残った人たちは、ほとんどがベテランらしく、道中親しくなった。

 

「ほんとうに凄かったです、リオ少尉とシア少尉の連携は凄すぎですううぅぅぅうう」

 「うぐっ、エラ、くるしい」

 「はあ、はあ、こんなに可愛いのに、無数のネウロイに追いかけられても勇敢に立ち向かうシア少尉わああ、最高ですっ」

 

器用にシアをホールドしたエラ准尉は、ネウロイ相手にも見せなかったほどの姿をシアにさせるとてつもなく凄いことを空中で行なっている。

 

 「エラ、抱きつくのはほどほどにしときなよ、シア少尉に、いやシア少尉が、限界みたいだからさ」

 「あっ私としたことが、つい夢中になってしまいました、ごめんないシア少尉」

 「ん、だいじょうぶ」

 

普段の姿を取り繕ってはいるが、結構ギリギリだったようだ。

 

 「そろそろ見えてくる頃じゃないかな」

 「おお、空母かあ、こっち来るときに乗って以来だから楽しみだなあ」

 

そうこうしているうちに、雲を抜けだし、ついに空母が視界にはいる。黒煙を吹き船体が傾き、いつ沈んでもおかしくない、大破した空母のが、そして、空母に攻撃を加える遙かに大きな超大型ネウロイが、眼前の視界に現われた。

 



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第10話 バラバク海峡空中戦とその後 その1

 

 

 

 私たちは、ボルネオ島北部上陸戦の航空支援として、制空権の確保と維持に当たり、戦況が、一時的な終局に至ったことから、基地に帰還することにした。そのとき、扶桑空母航空隊の生き残りから空母での補給に誘われたので、キャンベラ隊を先に基地に返し、私を含めたウィッチ四人と8機のF-8Dクルセイダーとともに、空母に向かう。

久しぶりに乗る空母に期待感を募らせていた私たち、しかしそこには、大破した沈みかけの空母と超大型ネウロイだった。

 

「どうしようか、これ、空母めっちゃ攻撃されてるよ」

「…ん、航空隊の人たち、かえれないよ」

「あの、多分ですが、空母って二隻いましたよね」

「……ああ、確かにということは、一隻はまだ健在で、何処かに待避している可能性はあるのか」

 

 現状で視界に入る状況から判断すれば、まだ一隻生きている可能性があるといえた。

 

「なら、あの超大型ネウロイを、撃破、出来ればまだ補給を受けれる可能性はある」

「ん、わかった、やる」

「いやいや、弾はどうするんです、リオ少尉、シア少尉、二人の残ってるのは25mmだけですよね、それも予備弾薬なしで、私たちだって、L7の弾は、超大型ネウロイに叩き込むのには、少なすぎるんですが」

「そうですね、これでは、よくて牽制か時間稼ぎしか出来ないと思うのですが」

 

 二人の意見ももっともだし、わかっている。だが、ここで引いても、どのみち、相まみえることになる。ただし、扶桑の航空戦力なしで挑むことになる。

 

 「まあ、そこは何とかなるでしょ、さっき空母航空隊の人から聞いたことだけど、扶桑のウィッチ三人が空母に残ってるらしんだよね、だからたとえ空母が一隻沈んでても片方にいたのは無事って可能性もある。つまりウィッチが七人も揃うわけじゃん、なら何とかなるよ、うん」

 「ん、そういうこと」

 

 「「何とかなる理由にはならないのでは」」

 

 私とシアの適当な理由には訳があり、既に思考能力の大部分を戦闘中に酷使したため、空戦ならともかく戦況分析するだけの気力はがなくなっていた。なのでもうウィッチがいっぱいいるし何とか出来るでしょ、だからさっさとやっつけて、補給して帰る、という脳が死んでいるのかという考えをしていた。

 分かりやすくいうと、遊園地で乗りたい物は全部乗ったからさっさ帰る、という感じ。

 

 「とにかく、さっさとやって帰る、これ上官の指示だから、わかった?」

 「ん、二人、わかった?」

 

 「「……はい(諦め)」」

 

 というわけで、帰りについでに土産(超大型ネウロイ)でも買っていく感じで私たちは、超大型ネウロイに攻撃を仕掛けに向かう。

 

「あの、作戦は、どうしますか」

「ねえ、シア、超大型ネウロイのコアって大体中央にあるって、昔、ほんで読んだ気がするから、その範囲で、あの形状からありそうなの絞れるよね」

「……ん、あれは見える範囲で胴体の中央の上部が厚い、それに、胴体したに多数のビームパネル、それと、細い尾翼、両翼に当たる部分に、爆弾のようなネウロイを投下してるから、収容スペースがあると思う、だから胴体上部から尾翼までの何処かにコアがある」

「さすがにそれでも、見つけるの難しいのでは」

 

「うん、シアがいうならそこら辺ね、なら、数発撃てば大体分かるね、よし、胴体から尾翼へ集中攻撃、位置が分かったら、突撃接近してズドンする感じで」

「ん。わかった」

 

 

「「(もう、いいやなんとかなりそうだし)」」

 

戦場では既に航空隊の人たちが、次々とビームの餌食になり、全滅するのも時間の問題だった。

 

『っくう、やっぱり無理だよ、ウィッチが三人いても、コアがありそうなとこに近づけない』

『肯定、確かに守りが堅い、それに味方を守りつつは無理』

『何とかなる、それに支援に行っていたパイロットの話によれば、他にもウィッチが四人いたそうだ、なら増援も見込める、よって無理ではない』

 

似たような無線が聞こえていたので私もそれにのる。

 

「『ウィッチに不可能はない、と本に書いてあった』」

 

「ん?」

『ん?』

『『えっ』』

 

「…増援、きたよ」

『…まじかよ』

 

 謎のシンパシーを感じた扶桑の隊長とお互いに視線で同士を、見つけたことに感動し、他は似たようなのがいることに呆れかえり、増援の来たことに、えっこれ本当?Really?となっていた。

 

しかし私は最近読んでいる愛読書の同士と出会えたことに、感動に感激に包まれていた。

 

 




続きは明日


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第11話 バラバク海峡空中戦とその後 その2

 

 

 私たちは、何やかんやあって、超大型ネウロイと交戦中の扶桑航空隊と扶桑のウィッチと合流、そこで私は、愛読書の同士と出会い、即座に意気投合、超大型ネウロイのビームをシールドで、跳ね返しながら私たちは、ネウロイに対して集中攻撃に関して話す。

 

「つまり、コアがありそうな、胴体と尾翼に総攻撃をするのだな」

「そんな感じですね」

 

『うわっ…でもそれって、違っていたら、どうするんですか』

『反対です、確かに違った場合のことを考えるべきです』

 

 扶桑の二人組が反対する。

 

「いいや、確かに二人の意見も分かる、しかしウィッチが七人もいる、今しか攻めるチャンスはない、よし私たちもその策に協力するぞ」

 

 扶桑のウィッチ隊の隊長である呉田大尉は、協力してくれることになった。

 

「もし反対するなら、ここにいる少尉二人と大尉の私に対する命令不服従となるな」

 

『『喜んで、やりますとも、呉田大尉!!』

 

 このとき、扶桑のウィッチとエラ准尉達の考えは一致する、大尉の階級は絶対この人たちに与えてはいけないものだ、としかし時既におそし、彼女たちのとんでもない作戦は実行に移すことになる。

 

 まずは、扶桑の呉田大尉率いる扶桑隊が超大型ネウロイに切り込む、呉田大尉は、M240の弾幕でビームパネルを次々に破壊、おまけとばかりに、胴体上部の突起部の砲台に57mm無反動砲を撃ち込み、破壊する。

 

『うそぉ、呉田さん、ネウロイの攻撃全部避けてる』

『っく、ほらしゃっべってないで、撃つ』

 

その後に続くように、二人の扶桑のウィッチが続き、超大型ネウロイの再生を阻止し削っていく。

 

「私たちもいきますよ、エヴィ」

「うん、まあ、程々に行こうね」

 

ネウロイの尾翼から、無数のパネルが、現われエラ准尉とエヴィ准尉に、無数のビームが放たれる。しかし、二人はこれを左右に別れ、回避していく。

 

 「小型よりは、避けやすいよね」

 「そうですね、あちらは、後ろを取って撃ってきますから」

 

 二人は超大型ネウロイの攻撃を避けきり、ビームパネルにL7を叩き込んでいく。さらに

 

 「でかいのいきますよ」

 「お、なら私も使っちゃうかな」

 

 エラ准尉はポケットから取り出した銃弾に固有魔法で付与し、懐のリボルバーに込めると、「吹っ飛んでください」と言いながら引き金を引く。放たれた弾丸は、赤く光りながら超大型ネウロイの尾翼に命中し、半分以上を吹き飛ばす爆発を起こす。

 

 「ん、でかい」

 「確かに、私たちの中で断トツだね」

 「って、どこ見てるんですか!?」

 

 爆発の余波で揺れる、素晴らしく大きなものに私とシアは、視線を引き寄せられた。Cカップより少し大きい位だろうか、もしかしたら服で着痩せしているのかもしれない、今度お風呂に誘って、確かめてみようと思う。

 

 またエヴィ准尉の固有魔法は、AIM9Bが本来描けない機動で、エラ准尉が開けた部分に、命中させる。

 

 二人の固有魔法による連携で、超大型ネウロイの尾翼は半分が消滅し、その結果、超大型ネウロイのコアが露出する。

 

「ん、見つけた」

「よし、じゃ行くよ、シア」

 

 私とシアは、コアへと接近、超大型ネウロイは、両翼から小型ネウロイを出して、近づけないように塞ぎ、反撃しようとする。しかし、それを周囲の扶桑航空隊の生き残りが、残ったAIM9Bで活路を開く。

 

『援護するぞ』

『ウィッチの道を開く』

 

 コアに続く道を通り、再生しつつあった閉じるコアの周りを、シアが25mmの弾丸で強引に開く。

 

「ん、しつこいと、モテナイらしい?」

「そういうこと、よく覚えてたね、シア」

「ふふん。リオのことなら、忘れない、からね」

「あはは……、さてと、いい加減疲れたからさ、これで終わりだよネウロイ」

 

 私は25mm対物ライフルを構え、確実に仕留めるため弾丸を複数撃ち込み、コアを破壊した。

 

 ネウロイは白い破片に、その場から離れた私たちは、超大型ネウロイの消滅を確認した。

 

「さて、三雲に案内するよ、今日は久々に豪華な料理が出るから食べていくといいさ」

「おお、いいね、欧州戦記の話もしたいし、今日はお世話になるよ」

 

「「(それが本命でしょうね)」」

 

 ウィッチ達は、騒がしくも帰路につく、彼女たちは見事、超大型ネウロイを討ち果たした。しかしそれ以上に戦いは激しく、そして遠い中東でも、大きな動きが起きていた。しかし今は勝利を喜ぶべきだろう。

 




ちなみに、次回以降、休日以外は投稿頻度が減ります。


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第12話 休息編 その1

連戦し過ぎたので、休息編入ります、といっても前回のその後の説明を少しとその他で今回はとても短め。



 

 

 トラックに乗った私たちは舗装されていない凸凹した道に揺られながら最近の出来事を振り返っていた。

 

 「でも、まさか私たちがいない間にマニラが、空爆されているなんて」

 「確かに、あそこの守りは、厳重」

 「うむ、しかし聞く話では、新型のネウロイによる大規模な空爆だったようだ」

 「肯定、一定の距離まで、レーダーで探知できず気付いた時点で、空爆され直ぐに、レーダーから消えたと聞きました」

 

 扶桑の面々とシアの四人が話しているのは、私たちが、超大型ネウロイを撃破後、空母三雲に帰還した時に知ったことである。何でも、レーダーに写らない新型ネウロイが高高度から、マニラ港を空爆、他にもフィリピンの主要港は殆どが空爆を受け、壊滅的被害を被った。

 

「まあ、でもそれ以上に驚く出来事ですよね、これは」

「たしかにねぇ、これ本当なのかな、リア少尉」

 

 エラ准尉とエヴィ准尉が言う出来事とは、中東スエズが、ネウロイの手に落ちたということである。

 

「うーん、まだハッキリとは分からないけど、多分本当のこと、みたい」

 

トラックの荷台から、視線を少しあげれば、曇り空が視界にはいる。それはまるで、これからのことを暗示しているように感じた。

 

 

~司令官室~

 

「……分かりました、扶桑の残存艦隊はしばらく、こちらで見ます。しかしスエズ陥落とは、嘘であったらよかったのですが」

『私もだよ、大佐。まさか十万以上の兵力が守備に当たっていたのだが、たった一日で陥落することになるとはね』

「はい、旧式の戦艦から取り外した16インチの要塞砲に、数千門の火砲、更に最新式の防空レーダーと防空システム、二千を超える戦車に対空砲、ウィッチ50名以上、ブリタニアの全戦力の20%、ガリア軍の15%、これが一日で陥落するとは…」

『ああ、だが事実だ、ネウロイ側も、超大型ネウロイを二十体、大型百体以上、更に小型多数、空挺降下した陸戦ネウロイは駐留部隊の半分に達する、更にこちらで確認された、輸送型ネウロイが、要塞に突入し、ネウロイを展開したそうだ』

「大規模な空爆と、空挺降下、そのどさくさに紛れて、最も守りが堅い場所に強襲とは、見事な作戦です」

 

ネウロイへの賞賛と同時に、ルティ・ラウフェイ大佐の表情は冷め切っていた。

 

「しかし、聞くところによると、現場の総司令官が逃亡、指揮官不在と奇襲による混乱が今回の大敗を招いたとも」

『そうだ、君とそして…部下達に、好き勝手していた豚についてだが、サトゥルヌスを迎える前には、銃殺刑よりも、厳しい法の裁きを受けることになるそうだ』

「当然の報いです。私の、特に可愛い娘達に、好き勝手したのですから」

『やれやれ、君はやはり親馬鹿だ、いっそ娘達に真実を告げて、私の実家で戦場とは無縁の生活を送ればいいものを』

「ふん、私をおいて一人戦場に戻った男が何をいう、最近は事情を知っている馬鹿に、娘を捨てた最悪の母親扱いまでされたぞ」

『いや、娘達を適当に預けて、戦場に追いかけてきたら、そう言われるよ普通』

 

途中から会話の雰囲気が変わる。

 

「しかし、私の娘達は、ちゃんと育ったし、戦場でも獅子奮迅の活躍もしている、強いていうなら、報告書の書き方を、教えておればよかったが、でも私も戦場で育った身、母親として子を谷に落とすのは当然のことだ」

『はは、君の歪んだその教育方針には物申したいところだが、さてと話を戻そう大佐』

「はっ、将軍」

『うむ、扶桑の件は先ほど言ったようにたのむ、しばらくは、再びの空爆に備え、警戒態勢を敷くように、こちらからもウィッチを追加人員として一名派遣する、アウストラリスで訓練教育を終えたばかりの徴兵された即席ウィッチだが、さすがに新兵を見る余裕がこちらにはない、そちらで鍛えた上で戦力として活用して欲しい』

「はっ、了解しました、人員補充に感謝します将軍」

『うむ、大佐の今後のさらなる健闘に期待する、以上だ』

 

 よく冷めてしまう紅茶を再び手に取りながら、ルティ・ラウフェイ大佐は内心愚痴る。

 

 

「(私の教育方針を歪んでいる等とは、私があの娘らと同い年の頃は、既に戦場でネウロイと常に生死を賭けた戦いをしていたものだ)」

 

ルティ・ラウフェイ大佐の教育方針は自身の経験からくるものだった。しかし常に戦場で生きてきた彼女には、普通の教育方針という物が何かよく分からなかった。そもそも本を用意したり、高級ブランドの服や用品を購入することも、女の子達には定番とされる物や好きなものをとにかく集めた結果だった。

 

「(しかし、普通とは、どういう風なものか、今度彼女に相談してみるべきか)」

 

 ルティ・ラウフェイ大佐の女子力と母親力は、今後変化していくのか、それによっては普段見ることのできない一面が見られるかもしれない。

 

 




ちな、次回はお風呂回、冬だからね。


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第13話 休息編 その2

何故か、休息編は長くなりそうな気がする。ちなみに、ウィッチ達全員分やる予定。


 

 

 今日から扶桑のウィッチ達が何やかんやで、しばらくパラワン島北部連合軍臨時基地で過ごすことになった。

そして港から帰ったその夜に、私たちは、歓迎会を急遽やろうと決めたのだ。しかし……

 

 「といっても、準備、してない」

 「どうしましょうか、材料は言えばもらえますけど」

 「いまから作ると、明日は起きないかも」

 

シアやエラ准尉、エヴィ准尉たちが悩んでいる中、私は突然脳裏に、ひらめくものが、あるわけもなく、本を読みながら自室で行なわれている会議に、耳を傾けていた。

 

「あの、リオ少尉は何か、意見などはありますか?」

「うーん、思いつかないなあ」

 

 このまま時間が過ぎてしまえば、明日行なえばいいだけである。なのでこのまま読書をしながら、ゴロゴロしながら待つ。

 

 「まあ、明日するのが、いいかもしれないね」

 「そうですね、そう「待て」

 

 突然、聞き慣れた、夜には絶対に聞きたくない声。その人が扉を開けて入ってくる。

 

 「げっ、基地司令殿」

 「げ、とは何だ、リオ少尉…それよりだ、今日からしばらく協力する、扶桑のウィッチと親睦を深めるなら、早いほうがいいだろう。そこで基地のお風呂を使えるよう準備してある」

 

 突然現われた基地司令によって、ウィッチ達全員でお風呂に入ることになった。もちろん即決である。決まった時の会話はこんな感じ

 

「風呂、露天風呂」

「ああ、あるぞ」

「効能付きの風呂は」

「ああ、あるぞ」

「サウナとかって」

「ああ、あるぞ」

 

「「「やりましょう!」」」

 

 圧倒的賛成多数の民主的な決定だった。それにしても基地の風呂は何故かバリエーション豊かである。

 

そのまま、扶桑の面々も誘い、基地司令やウィッチ全員で、お風呂に入ることになった。

 

風呂場は、基地の中でも警備が強固な場所にあり、お風呂場を守るようにコンクリート製の壁に囲まれ、お風呂場一帯に侵入できないようになっている。また、警備には女性兵士が常につき、重武装のうえで、最新式の対空砲や迫撃砲、この基地で貴重な戦車であるセンチュリオンが配備され、厳重な警備がされている。

 

「ここっていつも、警備が厳重だけど、少し過剰すぎない?」

 

着替えながら、気になったことを口にする。

 

「ん、そんなこと、ない」

「そうだ、世の中、平穏に見えて物騒なものだ。このぐらいの備えはして当然、リオ少尉はもう少し警戒することを覚えるべきだな」

「……そう、なんだ」

 

基地司令やシアの答えに、私は少し警戒心が足らないらしい。

 

「確かに、リオ少尉は少し自身のことに無頓着過ぎです」

「肯定、少しは気にすべき」

 

エラ准尉や日和軍曹も同意見らしい

 

「うむ、堂々と着替えているから、豪胆故と思ったが、単純に無警戒だったか」

「ああ、確かにあの活躍を見てるとそう思いますよね」

「呉田大尉は堂々し過ぎです」

 

会話に脱ぎ終わった呉田大尉やエヴィ准尉、さらタオルでしっかり身体を隠した二千花軍曹も加わる。

 さて、とりあえず会話は程々に、普段来ている白シャツや下着を脱ぎ終わり、風呂場に向かう。

 

それぞれ、分かれて身体を洗いに向かう。私も端っこに近い場所で身体や髪を洗うことにする。いつも隣にシアが座るのだが、今回はなぜか基地司令もシアとは反対側、私の左側に普通に座っている。

 

「…なぜに、基地司令殿が私の隣に、座るので」

「なんだ、私が隣に座ることに問題があるか、リオ少尉」

 

まあ、特に問題は無い。私の前世が例え男だったとしても、特に何か思うわけではない。しかし、バランスのとれた体型、程々にある胸、何故か私と似た髪色で、腰まで届くロング前世の記憶から考えるに世の男どもがみたら、惚れてしまうだろう。絶世の美女、傾国の美女、これらが当てはまるのではないだろうか、とはいえ、普段は軍服やその身から漂う強者の気配が台無しにしているが…

 

「ん?なんだ、私の身体に何か付いているのか」

「いえいえ、別に」

「ふむ、リオ少尉は、世の男共が惚れる良い身体をしているのだ、比べる必要も無いぞ」

 

どうやら基地司令は私が自身の見た目を気にしていると勘違いしたらしい。

 

 「基地司令殿に、言われるほど、気にしていませんよ」

 「……そうか」

 

その後は会話もなく、黙々と洗い続けるはず。しかし

 

 「うん?リオ少尉、髪がしっかり洗えていないぞ、それでは髪を傷めるぞ」

 「ん、基地司令より、だめ、リオ、やり直し」

 

基地司令に洗い方について指摘され、シアが基地司令に同意する。

 

 「ええ、だめなの、でも面倒くさいし」

 「ふむ、なら私が「いいから、リオ、こっちくる、私が洗う」そうか」

 

 

基地司令が何か言う前にシアの前に座らされる。基地司令が、なぜか見たこともないようなションボリした顔をしていた。

 

「リオ、髪が長いから、こうやって、手でやるの、いつもいってる、でしょ」

「う、でも、いちいちやるのは、手間だし」

「ん、なら、私が毎回、やる、よ」

「そ、それは」

 

 シアに説教されながら、全身くまなく洗われる、普段より長く時間が掛かった。しかし普段より綺麗になった。

 洗い終わったので、目当ての風呂である。屋内用もあるが、まずは露天風呂から行く。

 

「おお、いつ見ても広い」

「ん」

「うむ」

 

 何故か基地司令もまたいるが、気にせずに、入る。露天風呂は和風に作られており、扶桑の職人の手によって作られたそうだ。

 そこでは、呉田大尉が先に一人入っていた。

 

「お、リオ少尉たちに、基地司令殿」

「ん、ああ基地司令とかは、気にするな、仕事中ではないからな、このリオ少尉を除けば普段は大佐呼びがほとんどだ」

「では、大佐殿、これからしばらくよろしくお願いします」

「ああ、こちらこそ、よろしく呉田大尉」

 

二人が挨拶をしている間に、風呂に先に入る、というか、ここが赤道付近とはいえ、よく夜の外で普通にいられるのだろうか、基地司令や大尉は。

 

 それにしても、星がなかなか、綺麗で、それにいい湯である。

 

 




基地司令苦戦中。


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第14話 休息編 その3

今日は二つ。


 

 

 シアと基地司令の二人とともに基地のお風呂を回ることになった私は、まず露天風呂に行くことにした。

そこで扶桑のウィッチ達の隊長を務める呉田大尉と出会う。いろいろさらけ出して、基地司令と交流を深める呉田大尉の二人よそに、丁度良い湯加減の露天風呂に肩まで浸かった私は、露天風呂から夜空を見ながらじっくり堪能しているのだった。

 

ちなみにシアは、私の後ろで私の髪をまとめている。

 

「ん、リオ、お風呂に浸かるときは、結ぶ」

「う、でも長いし面倒くさい」

「だめ、リオは、髪が長いから、なおさら」

「……はい」

 

さすがに、許されなかった。

 

さて、基地司令と呉田大尉は、というと……

 

「ふむ、扶桑酒も、悪くないな」

「そうでしょう、特に露店風呂に浸かりながら飲むと、なおさら」

「ああ、味があるな、これは」

 

お酒をお互いに飲み交わしていた。いつの間に、というより扶桑酒はどこから出てきたのだろうか。

 

「ん、さっきのとこに、売り場、ある」

「えぇ……」

 

聞くところによると最近、建てられたらしいもので、本当に何でか結構充実し過ぎているような気がする。

 

さて、次は何処にいこうか。

 

「ふう、なかなか、いい湯だった、身体もそれなりに温まってきたが、どうだろう、ここは一度、健康に良い効能風呂とやらに行ってみないか?」

 

呉田大尉の提案に、確かにどんな物か気になったのもあり、ここにいるみんなで、行ってみることにした。

 

露店風呂から再び、中に戻り効能付き風呂と書かれた案内を頼りに向かう、それにしても基地の滑走路と同じぐらい広い気がするのだが、もはや、前世でいうスパというものではないだろうか、規模的に……

 

まあデカさはともかく、目的の効能付き風呂がある場所に着く。そこでは、エラ准尉と、日和軍曹が、並んで溶けていた。

 

 「ええと、大丈夫それ」

 「肯定、も~んだい、ナシぃですぅ」

 

日和軍曹は酔った人間のように、完全にのぼせて溶けかけていた。

 

 「は、はい、すこし川が見えますけど、だいじょうぶです」

 「ん、それは、大丈夫じゃない」

 

エラ准尉は、見えてはいけない物をみているようだ。ちなみに三途の川と似たようなものは世界各地にある。

 

「ふ、いい湯のようだな、効き目は抜群のようだ」

「うむ、これはなかなか、楽しめそうだ」

 

酒飲み連中は、酒瓶片手に、悠々と既に楽しんでいた。それにしても基地司令何故か、酒をよく飲んでいる。普段は紅茶をよく飲んでいる印象だが、もしかしたら酒好きなのだろうか。

 

 さて、早速私も、効能付き風呂に片足から入っていく。足からはじわじわと、これは炭酸風呂なのだろうか、なかなかよい感じである。シアにきつく結ばれた髪の重さを感じながら、しっかり胸を、隠しながら入る。これもシアから、言われたことで何でも隠さないのは、そこの二人と同じような、女子力を捨てた人だけらしい。

 

 とはいえ、程々にあるだけで、隠すほどのものでもない気がするのだが、女性の風呂の入り方は、なかなか複雑のようだ。

 

この風呂はなかなかよい感じである。身体が露天風呂とは違う温かさを感じる。芯まで疲れがとれていくように感じる。

 

それから1時間以上は浸かっていたのだろうか、すっかり私もシアもとろけていた。

 ちなみに、大事なものをかなぐり捨てた二人は、いい加減、川を渡ってしまいそうなほどのエラ准尉を、捕まえて中盤戦に入ったようである。必要な犠牲だった。

 

 ちなみに、日和軍曹は危険を察知したのか、先にあがり湯風に吹かれにいった。

 



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第15話 休息編 その4

夢って儚いよね


 

 

 私たちがお風呂に入っていた頃……

 

「各員、配置に着きました」

「よし、無線を貸してくれ」

 

そこは大きな天幕の、中で通信員や下士官たち、その指揮官が何かの作戦の準備を整えていた。

 

「キャンベラ隊、問題ないな」

『は、目標地点まで直ぐで待機中です』

 

夜空の中で1機のキャンベラが飛んでいる。地上からは見えずらい高度にいた。

 

「第50中隊及び扶桑陸戦隊、問題ないか」

『こちら50中隊、各小隊準備できています』

『扶桑陸戦隊も士気高く、いつでも、突入できます』

 

顔や一部を迷彩に染めたブリタニア、リベリオン、フィリピン駐留部隊の混成中隊と揚陸艇に乗った扶桑陸戦隊の兵士達。

 

「よし、全員に通達するこれより男連合軍パラワン島北部守備隊は、要塞エデンの攻略を行なう…作戦開始せよ」

 

合図とともに通信員が、作戦名を通達する。

「各員、 Go to heaven作戦を開始せよ」

 

 

その合図とともに、それぞれが動き出した。まずコンクリート塀に囲まれた地点の、砂浜に扶桑陸戦隊の揚陸艇が乗り上げ、扶桑陸戦隊が展開、先陣をきる。

 

「よーし、いくぞ野郎共、天国を見るぞ」

「「「おおおおおおお」」」

 

彼らは特に何の障害もなく塀の近くまで接近、あと100メートルというところまで近づいた。しかし……

 

「馬鹿でしょ、ウィッチが入るのに備えてないとでも、思ってるのかしら」

「ほんと、というか最低」

 

突然地面からせり上がるように、トーチカが現われ彼らの進路を完全に塞ぐ。

 

「な、気付かれていたのか」

「だが、そんなことは、想定済みだ。総員つg―――

 

トーチカを前にそれでも進もうとする、下士官だろう男、その物はたった一発の銃弾が頭に命中し気絶に追い込まれた。

 

「「「えっ」」」

 

『守備隊各員に通達、武器の無制限使用を許可する、これは基地司令より許可がでている、一人も残さず……ヤレ』

 

「「「サーチアンドデストロイ」」」

 

扶桑陸戦隊の彼らの前に重機関銃や複数の装備で重武装した女性兵士達が、普段は見せてくれない、素晴らしい笑顔で、引き金を

 

「に、逃げろ」

「こ、こいつら」

 

引いた。

 

「「「完全武装してやがるうぅぅ!?」」」

 

放たれる魔力を含んだ、気絶したり、吹っ飛んだりする程度の弾丸が扶桑陸戦隊の男達を刈り取っていく。トーチかの重機関銃でなぎ倒されて、頭上からは迫撃砲が降り注ぎ、退路がない兵士達は、次々と倒れていく。砂浜に無数の死に体が広がり、徐々にそれは地獄を作りだす。

 

 そして別の場所でも―――

第50中隊は正面を突破、何故かいない警備を気にしつつも、意気揚々と、玄関前の広場に向け突入して……しまった。

 

 「ひ、こ、こちら第24小隊、待ち伏せにあってみんなやられちまった、救援を」

 「あらあら~、イケない人ですね、待ち伏せを受けたところに、救援なんて」

 「そうそう、普通しちゃいけないよね、だって、そう」

 

「「「ここは、私たちの狩り場ですからね」」」

 

軽装備の女性兵士、彼女らはインドシナ軍所属の、ベトコンと呼ばれるゲリラ戦のプロである。そんな彼女たちに、囲まれた兵士は瞳から光りが完全になくなっており、諦めの体勢である。

 

「精々、いい声で、泣いてくださいね、可愛い兵隊さん」

 

「ひっ、いやだ、ごめんないさ」

『どうした、何が』

「……ぎゃあああああああ」

 

無数の銃弾が、まだ若い兵士に襲いかかり、兵士は悲鳴を上げて通信が切れる。とはいえ、結構彼女たちにしてはやさしめの対応だったそうだ。

 

 

そして天幕では、各中隊の惨状が伝わり、そこにいた男達はみな顔を青くしていた。さらにそこに最悪の情報が入る。

 

『こちら、キャンベラ隊!ウィッチだ、日和軍曹だと思われるウィッt、ぎゃああああ』

「どうした、キャンベラ隊何があった」

 

上空から強行撮影をするはずだったキャンベラとの通信が途絶。ことここにいたり、彼らは事態を悟る。

 

「詰んだな、これは」

「はい、情報がどこからか、漏れていたようです、恐らくあの中尉かと」

「だろうな、くそう、俺たちの夢がああああ」

 

彼の叫びと同時に、女性兵士で構成された完全武装の海兵隊とセンチュリオンが突入。第50中隊を後方から漬ぶしたセンチュリオンの戦車隊の一両が蹂躙、生き残りは徹底的に潰し、ここに、男達は夢とともに、鎮圧された。

 

ちなみに、男兵士達の何人かが攫われ、休暇をしばらく取ることになったらしいが、私には関係がないことである。

 




クリスマスまでには休息編は何とか、終わらせる予定。


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第16話 休息編 その5

短め。


 

 

なんやかんやで色々と基地のお風呂、というかスーパー銭湯のような何かを基地司令や呉田大尉と共に回ることになった私。道中エラ准尉が地上で撃墜されてしまったり、それなりの犠牲はあったものの、最後にサウナ風呂を楽しむことになった。

 

 それなりに広い、というか広すぎる基地のお風呂場を移動した一行はサウナ風呂の入口を開いて中に入る。

 

 するとぶわっと熱と湿度を肌で感じる。基地司令と呉田大尉の女子力捨てた組は感嘆の声を上げ、期待感に胸を膨らませている。

 

 中に入るとほどよいぐらい、そしてここにはエヴィ准尉が居る。いつも思うがエラ准尉とエヴィ准尉の名前はよく間違えやすい気がする。

 

 「うーん、気持ちよくなった後のサウナは、なかなか、きついかも」

 「ん、程々に出る」

 「そうだね、そうしよっか」

 

 サウナ風呂に入ってからそれ程時間はたっていないが、さすがに長くお風呂に入りすぎて、眠気やらで、体力が限界に来ていた。なのでシアと早めに出ることにした。が…

 

 「ふふ、りいお~めいれいだ、しばりゃくう、そばにぃいろ」

 

 立ち上がった時、誰かに引っ張られてしまう。そしてなかなかのものを背中に感じ、更に柔らかい所に座らされ脇を通る腕にホールドされてしまう。

 

 何事か、後ろを首だけ動かして確認すると……普段の表情から緩んだ顔をした基地司令がアップで視界に写る。

 

現状を確認、つまるところ、酔いに耐えれなかった基地司令に捕まってしまったのである。

 

「えぇと、基地司令殿、その…そろそろ上がりたいのですが、離しては頂けませんか」

「むりぃ、そりぇにぃたいさあのめいれいだぁぞ」

 

酔った勢いで職権乱用をする基地司令。しかし力の面で劣る私は、ホールド、抱擁から抜け出すことは叶わない。

そこでシアに救援の視線を送るもかえってきたのは、浮気現場を見たような冷たい視線である。サウナにいるはずなのに一瞬、強烈な寒気、悪寒を感じた。

 

このままでは、刺されかねない。なのでエヴィ准尉や呉田大尉に救援の視線を向ける。が

 

「さて、エヴィ准尉、大佐達は忙しいようだし、良ければ一杯付き合ってもらえんか」

「いいですよ、呉田大尉。お勧めのものを持ってきているので、風呂上がりに一杯やりましょう」

 

二人は、仲良くサウナ風呂から出て行った。たぶん仲良く飲み会でもするのだろう。それにしても、呉田大尉は凄くピンピンしている。まだ飲むつもりらしい。

 

二人がサウナ風呂を出て行ったあとも、状況はかわらない、どころか悪化する一方だった。

しかし基地司令はしばらくしたら、腕を解く。

 

「基地司令殿?」

「……」

 

 不思議に思い問いかけるが、返事がなく振り返って見れば、小さな寝息とともに基地司令は寝てしまっていた。

 

「ん、どうする」

「どうするも何も……はあ、しょうがないね、部屋まで運ぶ、シア手伝って」

「ん、」

 

 なんだか、長かったような、短いような、とりあえず基地司令を着替えて着替えさせて部屋まで運びながら、騒がしいのも悪くないとそう思った。

 

 ちなみに帰る途中、何か忘れているような気がしたが、外が戦闘があったような光景にすっかり頭の中から消えていた。

 

~二千花軍曹~

 

「それにしても、皆さん遅いですねぇ」

 その頃、一人露店風呂に浸かり完全に忘れ去られてしまった少女は、夜空を楽しみながら静かに一人寂しくお風呂を楽しんでいたようである。

 



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第一章 ミンダナオ島血戦
第17話 ミンダナオ島血戦 前編


 

 

 年が変わっても私の日常は、あまり変化はしない。いつもの大きな木の下で、本をめくりながら、平穏な時間を過ごす。特に何かあるわけではないこの時間はゆったりできる。

 先月までは、ネウロイとの戦況が大きく動く日々ばかりであったが、ここしばらくはおちついている。変わったことと言えば、新入りのウィッチが入ってきたことだろう。

 確か名前は、アマリス・アスター、階級は曹長でこの基地最年少になる少女だ。赤茶色の綺麗な長髪で年齢相応の元気な子である。

 

 アウストラリス空軍の新米ウィッチらしい、しかし基本的な訓練も殆ど受けておらず、基地に着た時点で飛行時間、僅か6時間とペーパードライバーどころか、チュートリアルを受けている途中の段階である。

 

 なので、呉田大尉の教導のもと、扶桑のウィッチたちと訓練中でいまは走り込みの最中のようである。ウィッチたるもの日頃の訓練鍛錬は疎かにはできない。私も一日に数回は滑走路を往復している。

 

「なんだ、リオ少尉暇そうだな、どうだろう先日の罰の続きに走ってきたらどうだ」

 

 走る彼女らを尻目に、読書に戻ろうとした私に基地司令が話しかけてきた。どうも先日の酒入り紅茶を飲ませたことを未だに許してくれないらしい。しかし罰として滑走路走り込みを果たしたのだ。その言葉に乗る気はなく、途中読みかけの本を読むことに意識を向ける。

 

「ほう、無視かリオ少尉、なら「いえいえ、基地司令殿、威勢の良い彼女たちに目が釘付けになっておりまして、そうです、ところで用事か何かでしょうか、ご多忙の基地司令殿がここに来るのはそうそうありませんから」

「……ふん、まあいいか、リオ少尉先日の件含めて言いたいことがあるが、それとは別件だ、ブリーフィングルームに必ず参加しろ、今回はウィッチ隊全員に指示がある」

 

 いつもなら、雷が落ちるものいいをしたが、普段呼びつけることがない事前ブリーフィング、ミーティングに直接呼びにくるのも珍しく、何か厄介なことでもあるように感じた。

 

 結局、平穏な時間はまたも終わりえお告げてしまった。

 

 

 

 そのあと、シアと合流した私は普段参加することがないブリーフィングに参加する。そしてその内容は…

 

 「ふむ、それはつまり、フィリピン陥落の危機ということか」

 「ああそうだ、呉田大尉。もう一度言うが、フィリピン駐留部隊は壊滅、ミンダナオ島を制圧、拠点としたネウロイの度重なる空爆により、既に上陸から守ることが難しい状況だ」

 

 フィリピンの防衛、周辺の支援を担っていた駐留部隊が連日の空襲で壊滅、ミンダナオ島をネウロイに完全に制圧され、そこから空爆がおこなわれて、いつ上陸されてもおかしくなく、そのうえ守ることも難しいという。はっきりいって危機的状況である。

 

「あの、じゃあ私たちはフィリピンからの撤退を支援するということでしょうか」

 

 歓迎お風呂会で、すっかり忘れ去られてしまい一時へこんでいたが、何とか立ち直った二千花軍曹が、今回のブリーフィングの内容について聞く。

 

「いいや、違うその逆だ、今回我々は、ミンダナオ島にあると思われるネウロイの拠点の偵察任務をおこなう。この任務は危機的状況を鑑みて、極東方面連合軍司令部より発せられた作戦に基づきおこなわれる」

 

 ここ一帯に、新しく新設されたばかりの本来の上級司令部であった東南アジア方面連合軍司令部は、フィリピンへの司令部再配置の途中であったが、今回の空爆によって多数の将校が戦死、機能不全に陥り、一時的に極東方面連合軍司令部が上級司令部となっている。

 そして今回の作戦は、極東方面連合軍司令部が主導していた。

 

 

「……今回の作戦は、急遽組まれたものだ。戦力も我々ウィッチ隊と戦艦アーカンソー、及び重巡洋艦二隻、その護衛のみでおこなわれる。この任務は作戦の第一段階だ」

 

 八人のウィッチと戦艦と重巡二隻他護衛、撤退ではなく偵察 この戦力だけで一体どんな作戦をしようというのか。

 

 ちなみに作戦内容はあまりに馬鹿らしいぐらいシンプルなもので、とにかく出撃と相成った。

 

 

~極東方面連合軍司令部~

 

 高級絨毯が敷かれた会議室でこれまた豪華な椅子に腰掛け、二人の人物が話し合いをしていた。

 

「タカシマ将軍、今回の作戦些か、無謀すぎるのではないかね、ウィッチがいくら居たところで、巨大なネウロイの要塞を落とすのは不可能だろう、ましてや、中枢を見つける前に全滅するのがオチだ」

 

 ボイルオ・バガンダス将軍、ウィッチに対して懐疑的な派閥に属するリベリオンの将軍。リベリオン現政権の反対派であり、軍需特需で成り上がった軍政出身、とある特殊兵器の開発推進者。

 

「ええ、だからこそ、ボイルオ将軍のお力添えを得て戦艦を作戦に加えたのですよ」

 

 高島義元少将、極東方面連合軍司令部の作戦参謀長、今回の作戦を立案した人物。本来の作戦ではウィッチ隊だけでおこなう作戦を立てていた。しかしウィッチ懐疑派閥の妨害と介入に合い仕方なく、ボイルオ将軍らの意見を取り入れた。

 

「ふん、ウィッチに頼らんでも、ネウロイの拠点を見つけるのは簡単にできる。あの特殊なものを使えばネウロイの拠点は丸裸にできるのだ。何故つかわない」

 

 高島少将は、拳をばれない程度に強く握り押さえる。

 

「いえ、確かにあの特殊なものを使えば、発見はたやすくなります、しかし次の大規模な作戦までネウロイに知られるわけにはまいりません」

 

 ボイルオ将軍は、あざ笑うかのような顔をして言う。

 

「ハッ、ネウロイの連中に理解できる訳は無いだろう。まあいい、私は食後のデザートは最後まで待つことぐらいはできる。楽しみは取っておくとするよ、まあせいぜい作戦が成功するよう祈っているよ」

 

 そういうと、ボイルオ将軍は座っていた椅子をそのままに、会議室を出て行った。

扉が完全に閉まり、離れる足音が聞こえなくなると、どっと息を吐き、同時に愚痴る。

 

「何が待つことができるだよ、それぐらい扶桑の子供でも出来ることだよ。まったくもって不愉快の塊だ、とんだ無能が……まあいい、この作戦は必ず成功する。あのスレイプルの血を引く彼女がいるんだ成功しないことはない……そうだろうシア」

 

男の顔はその時、狂気に取り憑かれた悪魔の微笑みを浮かべた。

 



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第18話 ミンダナオ島血戦 前編2

今回も短め


 

 

 ミンダナオ島はフィリピンで二番目に大きな島であり、全人口の二割近くが住んでいた。だからこそ、主要都市には大隊規模の守備隊と二個飛行隊が配備され島の総戦力は二個師団に達していた。しかし、ボルネオ島北部の戦いで人員を補充するため、引き抜かれてしまい結果、ネウロイの大規模攻勢に耐え切れずに壊滅してしまったらしい。

 そしてミンダナオ島の何処かにネウロイの拠点が存在し、そこから出現したネウロイによってフィリピン全島が陥落の危機に陥っている。

 

 「ねえ、シアこんだけ広い島の何処かにあるって、言われても探しようが無くない」

 「ん、地点を絞るしか、ない、おすすめは、ネウロイ居るところ」

 

 私たちは急遽この危機的状況を脱するための作戦に参加することになり、第一段階として、ネウロイの拠点の偵察及びそれらの中枢、本拠地を成すネウロイの発見、そのミンダナオ島への偵察任務が今回の私たちの任務である。

 とはいえ、私たちの基地からミンダナオ島の偵察は距離的に難しいため、マニラを経由してミンダナオ島まで飛んできている。

 

 「でもさ、ネウロイの1機も見かけないけど」

 「ん、高度を下げれば、出てくる、はず」

 「まぁ、そうだね、そうしようか連絡よろ」

 「ん、各班へA班は、これより低高度偵察を行なう以上」

 

 今回の任務ではウィッチ隊をいくつかの班に分かれて偵察任務をしている。A班が私とシア、B班、エラとエヴィ准尉、C班二千花軍曹と日和軍曹、D班呉田大尉とアマリス曹長、この四班に分かれて偵察にあたっている。

 

 『て、低高度偵察ってなんですか、それ』

 『ええと、多分強行偵察のことだと思います…』

 『うむ?なんだアマリス曹長、興味があるのか、なかなか良い心がけではないか、なら実際に体験した方が速いな、私たちもやるぞ!』

 『えっ』

 『……良い子を亡くした』

 『うん』

 『いやいや、それよr『イクゾー―』OH MY GIRL』

 

 

 無線が少し騒がしいので、ぶち切っておく。

 高度を下げる前に、少し加速する。今回の任務にはF8戦闘脚ではなくジャベリン戦闘脚で任務をしている。前回の戦いで酷使し過ぎたため、予備部品が枯渇、全員分の用意ができなかった。

 それゆえにクルセイダーを使い慣れた扶桑のみんなや練度に不安の新入りにF8を使い、私やシアそれにエラ准尉エヴィ准尉は使い慣れたジャベリンを履いている。

 まるで末期の国のようだ。

 

 とはいえF8には劣る部分が多くあるが、ジャベリンも悪いものではない。例えば、速度の遅さが、背後に回りこちらを狙う小型ネウロイに、本来の速度を抑えさせることができる。

 

 実戦してみよう。

 ある程度高度をさげつつ途中、目的の高度の半分前あたりでシアが積雲の一つに潜るように離脱する。そして高度が目的の6500ftに達したとき、背後からハニカム模様をした三角形、デルタ翼の形をしたネウロイが現われた。

 高度を下げたら襲いかかってくるあたり、高度有利は理解しているらしい。ただし、こちらに速度を合わせた時点でそれは無駄でしかない。

左右に動きながらもできるだけ間隔は狭く、背後の小型ネウロイの動きを直線的に誘導していく。

 そして雲から飛び出たシアが降下し加速、丁度小型ネウロイの背後にポジションをとる形になる。私はそのタイミングで右から左に大きく180度の旋回を行なう。ただし少し斜め上向きに動く。当然この隙を見て獲物に食いつく小型ネウロイは斜めに上昇し攻撃を狙ってくる。

 

小型ネウロイは勝ちを確信したのか、赤く一瞬鈍い光が揺れる。

 

しかしこの状況、小型ネウロイへの射線に私が重ならず、ましてや、大きな面積を晒した小型ネウロイ、それを見逃すほどシアは甘くない。

 背後から必中のポジションについたシアが ダダダダンッ とL7汎用機関銃を放ち、三角形の形をした小型ネウロイは大きな面を無数の銃弾貫かれ、白い破片を散らし消滅した。

 

 そのあと一旦高度を元の所まで上げながら、これと同じことを何度か行ないながら、偵察を続けていく。

 

「手応えがなさ過ぎるね、菱形より遅いし動きも鈍い、攻撃機みたいな奴なのかな」

「ん、でも、速い」

 

 既にジャベリン戦闘脚では、速度、加速度、上昇力といった面でネウロイ相手に劣る部分が増えている。だからこそ後継の配備が本国では進んでいる。でもおかげで、使われなくなった余りが送られてくるために予備部品には困らなかったりする。

 

「そうだね一旦、合流ポイントに行こうシア、なんか違う気がするし」

「ん、同意」

 

 目的のネウロイの拠点が無いと判断し、事前に定めた合流ポイントに向かうことにした。迎撃が少なすぎるため、ここらには重要な拠点が存在しないとそう感じた。

 




余裕ができれば。前中後編で終わるはず。
追記:一部追加、あとキャラ設定消えた。


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第19話 ミンダナオ島血戦 中編

 

 

 ハノイの市街は大都市としては、とても寂れている。活気の溢れていた交通の要である道路にはいくつかの軍用車両が行き交うだけだった。そんな寂れた道にて、警備をしていた兵士が愚痴る。

 

 「こんな街、守る価値があるものかねえ」

 「さあ、まあ上にも何か考えがあるんだろ」

 

 曇天の空の下に、立って警備につく彼らにやる気はなかった。それも仕方のないことで、ネウロイの勢力圏にて突出しているハノイを維持する戦略的意味は薄れていた。特に一時とはいえ、補給路が切断されたため、孤立した結果それは躊躇であった。

 特に彼らが警備する道は、ハノイ駐留部隊の補給を担う要衝、そのため本来重要な役目を任されているにも関わらず、彼らのやる気のなさ、いえ士気の低さはちょっとした攻撃にも簡単に崩れてしまう。そんな状態だった。

 

 この状況を勿論将校達は知らない訳では無い。しかし将校たちの中にもこの状況に不満を抱く者達も多く、尚更に解決できることではなかった。

 

 しかしどうにかしようと行動する者達もいた。インドシナ連邦軍第21師団、師団長ルン・ドウ少将。彼女はハノイ駐留部隊の中で数少ないウィッチ出身の指揮官であり、唯一の陸戦ウィッチ隊を指揮下に持つインドシナ連邦軍の精鋭を率いる指揮官でもある。とはいえ、齢24の彼女は他の指揮官たちからすれば、権力で成り上がっただけの若い将校にしかみえず煙たがられている。

 

 それはさておき、彼女はこの状況を打開するために、何かしらの行動を起こすため各方面に問い合わせていた。

 

 彼女は兵の士気の低さから、ハノイを次のネウロイからの攻勢に耐えることはできないと、そのため一時ハノイを放棄し、インドシナ東部の人類が維持している大都市サイゴンまで撤退しそこに要塞や飛行場を設置、近隣の港からの補給を受けることで、兵の士気を回復させ、装備や航空戦力を整えたうえでハイフォンのネウロイの巣へ総攻撃を掛ける、という案を各方面に打診していた。

 

 しかし彼女の若さが、それを難しくしていて、同意する人もいるが、古参の将校達の支持を得ることができなかった。

 根回しや工作を彼女は苦手だったことが、さらに拍車をかけていた。

 

 ところがそんな状況がかわる転機が訪れる。新たに新設された東南アジア方面連合軍司令部の将校の多数がフィリピンに、移動中に戦死したのである。しかものその大半が彼女の提案に反対していた将校達で、生き残った将校達が“偶々”彼女の案に賛成していた人でたちである。

 

 これによって、リオ達が極東方面連合軍の作戦に参加している間に、裏では密かに決戦の舞台が徐々に作られつつあった。ちなみにこれらは特に邪魔が入ることはなく、表で狂信的な男が暴れていたことで着々と進んでいた。

 

~リオ少尉~

 

 私たちは、ティヌイアン滝と呼ばれるミンダナオ島東部に位置する落差約55m、幅95mのフィリピン最大の滝がある場所で分かれた各班と合流し情報交換をおこなった。

 

 「私達が接敵したのはデルタ翼の形をした小型ネウロイが数機、降下上昇と速度に爆装できるだけの、小型としてはでかい大きさからCASもしくは攻撃機のようなネウロイと考えてる。だからミンダナオ島中央には、拠点がないと思う」

 

 「そうですね、私たちも同じ型の小型ネウロイと接敵しましたので西部にもネウロイの拠点はないと思います」

 

 私とエラ准尉の会話に分からない点があったのか、アマリス曹長が質問を投げかけてくる。

 

 「あの、何故その小型ネウロイがいると、拠点がないと分かるのでしょうか。普通ネウロイがいるのに、拠点がないとは思えないのですが」

 

 この質問に対して、呉田大尉が答える。

 

 「ああ、小型ネウロイのほとんどは、ある程度行動範囲が決まっていることが、わかっていてな、戦闘機型の小型ネウロイはそれなりの範囲を活動域としてはいるが、殆どの場合、大型の護衛か、拠点の周辺100km圏内しか現われることはない。逆にデルタ翼、三角形の小型ネウロイは、爆装が可能な型と考えられる、そういったネウロイは奇襲を目的とした空爆を行なうために、拠点としている場所もしくは母艦から、500km以上離れて単機で飛ぶことが多い。もしくは偵察や哨戒を兼ねているとされる、だからもしこの島にネウロイの拠点があるとすれば、彼らの活動域より離れていると考えられる、というわけだ」

 

 「な、なるほど?」

 

 アマリス曹長はあまり分からなかったらしい、わかりやすくいえば爆装できる小型のネウロイは拠点から離れた場所で偵察しているから、その周辺には拠点はないとある程度わかるということである。勿論逆もしかり、今回の場合は複数の地点で接敵したことと、大規模な拠点、もしくは母艦であることは、フィリピン駐留部隊が壊滅したことからわかる。

 

 だから、わざわざ単機で偵察や迎撃をさせるより大規模な数で迎撃してくるだろう。

 そのため接敵した地点にはネウロイの拠点がないと判断したのだ。

 

 しかし既に私たちが偵察をしていることは、ばれているかもしれない。勿論あっちから大規模な部隊を派遣してくることを見込んで大胆な行動をしたというのもある。

 

 そのため二日目の偵察では班分けせず、残った偵察していない南部、そして大都市ダバオに向かうことにした。

 

 




追記:そういえば男性キャラの殆ど一回以上出ているのは二人か三人しかいないね。


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第20話 ミンダナオ島血戦 後編

明けましておめでとうございます。新年最初の投稿です。とはいえ忙しくて、とても短いですが。


 

 

 ミンダナオ島ダバオ、そこはこの島最大の軍事拠点があった場所であり、フィリピン島で最初に陥落した大都市でもでもある。

 そこには一隻の戦艦と数隻の巡洋艦が停泊していたらしいが、陥落時に放棄された。何でも陸戦ネウロイに強襲されたらしく、港から逃がすことができなかったらしい。

 

 その後どうなったかは分かっておらず、巨大な鋼鉄の塊は十分ネウロイの拠点たり得た。 

 今回の偵察任務で最も可能性が高いここを最後にした理由はアマリス曹長の経験を積ませること、

 

そして―― ネウロイに来訪する挨拶をするため ――

 

 空は灰色の雲に覆われ、早朝の明るさをまるで感じられず、本来の気候ではこの季節でも27度を記録したこの島の空気は寒々しさを感じさせる。

 そのうえ、大胆な動きをしたのが良い方向に、傾いたのだろう。私の視線の先には、無数の小型ネウロイが灰色の雲空の下、ひしめいている。

 

 「これは想定以上にに多いねえ、どうしたものか……シア何かアイデアある? 」

 

 首を傾げて隣を飛ぶシアに話しかける。

 

 「ん、まだ拠点がわかならい、だから強行突破一択」

 

 それを聞いたエラとエヴィ准尉の二人が青ざめる。

 

 「えっと、シア少尉ここは一旦引いて間引くのが良いのでは」

 「そうそう、それにアマリス曹長もいる、無理は禁物だよ」

 

 しかし二人の反論は一人の発言で無意味と化す。

 

 「大丈夫です! 私、やれます。皆さんの脚は引っ張りません」

 「ふ、そうだなアマリス曹長は成長が早くてな十分ついて行ける。私が保証するぞ、それに扶桑では学ぶより慣れろという言葉もある。問題なかろう、それに既に小型ネウロイを五機撃墜している」

 

 エラとエヴィ准尉は初陣で危うく小型ネウロイに墜とされかけた自分たちより、著しいアマリス曹長の成長の早さと戦果に驚愕することになり、この中で階級が上である呉田大尉の存在もあって止める術を失ったことで諦めた。

 

 強行突破にあたり隊を二つに分けることにした。私やシア、エラ准尉エヴィ准尉の正面突破チーム、呉田大尉たち扶桑のウィッチとアマリス曹長の迂回チームに分かれた。

 正面突破チームはそのままの意味で、小型ネウロイの群に突っ込み、ダバオ港を目指す。

 そして迂回チームは高度を上げて灰色の雲より上までのぼり、ダバオ港を目指す。

 

 呉田大尉たちが上るのを見届けると、限界まで加速する。

 無数の大群が正面から向かってきている。相手も加速したのか相対距離は加速度的に近づき、正面から接敵する形となる。

 手元のL7汎用機関銃を構え、正面の小型ネウロイに照準を定める。

 そして迎える、お互いが有効射程に入った瞬間、私は引き金を間をおいて複数回に引きながら、回避行動のロールを行なう。

 直ぐそばを赤いビームが通り抜け、次に通るのは白い破片と化す複数の小型ネウロイ。

 回避行動のロールで弾丸を複数の目標に続けて放ち、その結果複数の小型ネウロイは破片と化した。呉田大尉いわく、これができてやっと一人前のエースらしい。

 

 エースかどうかはともかく、正面からの接敵、ヘッドオンで小型ネウロイの出鼻を挫き、続くシアやエラ准尉エヴィ准尉が、次々と小型ネウロイを撃墜。その勢いで激しい乱戦にもつれ込み、有利に空戦を進めることになった。

 

 

 




戦闘シーン難しいですね。


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間話 〜インド戦役1〜

本編が詰まったので少し横道に逸れます。


1963年8月東南アジアでのネウロイと人類の戦いが激しい攻防戦となり一進一退を繰り返している頃、インド北部でも激戦が繰り広げられていた。

 

 三角形の中型ネウロイが、胴体中央部の発射口から上下合わせて八つのミサイル型ネウロイを放つ。

 放たれたミサイルは二つの群れに分かれ三角形のかたちをなして、目標に向けて飛ぶ。

 

 中型ネウロイは放たれた群れに祝福するように赤いパネルを光らせた。

 

 それから数分後にインド連邦の首都デリーに空襲警報が鳴り響く。

 中型ネウロイが放ったミサイルがレーダー網に侵入したことを感知したからだ。

 

 そして迎撃のために二人のウィッチが空に上がった。

 

『エステル少尉、敵は既に第一次迎撃網を突破、まもなく少尉のいる地点に到達します』

 

「了解、迎撃します・・・・・・ネフィ、そろそろ来るって」

 

「はぁい、めんどくさいなぁ」

 

ベージュの髪を三つ編みにしたエステルと呼ばれたウィッチは隣の相方である赤髪のネフィの返事に呆れた表情を浮かべた。

 

「もう、ネフィがいつもそう言うから、待機シフトを少なめにしてるんだから、少しは、やる気出そうよ」

 

「やだぁ、やる気出すのもめんどくさい」

 

「はぁ......とりあえず迎撃はしっかりやってね、ネフィ」

 

「あいあい」

 

変わらずやる気のないネフィの返事にエステルはため息を吐いた。

意識を切り替え、視界に映る小さな黒点を見る。

 

エステルが30mmの大型機関砲を構え正面からすれ違うように動いた。

 

ネフィは高度を上げ、200mほど高い位置に着いた。

 

ミサイル型ネウロイは時速800kmの速さで飛翔しながらエステル達の方向に向けて直進する。目標以外を無視して進もうとしていた。

 

しかしエステルがそれを阻むため、重く体の芯に響くような轟音を響かせ、30mmの弾丸が放たれた。

 

ドン、ドン、と二発の音、それと同時に相対的にネウロイと弾丸の命中が一瞬で、なされたことで、白い破片がくの字になってエステルの両側を横切った。

 

側から見たならばそれは、ネウロイがエステルの正面にて白い破片となって分たれるように見えた。

 

そして先方を務めたミサイル型ネウロイの二つがやられたことに、残されたミサイル型ネウロイは認識を変え、エステルを避けるため二つの群れを上下に分かれて直進しようとした。

 

しかし数が減った群れが上昇した瞬間、降下して加速したネフィが7.62mmの軽機関銃を刀で斬るように放ち、残った二つのネウロイを白い破片に変えた。

 

さらに、降下することで加速したネフィは降下したもう一つの群れに追いつき、鷹が獲物を捕えるように一瞬で二つのミサイル型ネウロイを喰い散らかした。

 

残ったミサイル型ネウロイは、降下したことで加速した勢いを活かし何としても目標に向けて直進しようとする。

 

エステルは距離があるため、ネフィは激しい機動で加速し追いつくためのエネルギーを消耗してしまい、追撃することができない。

 

さらにミサイル型ネウロイは目標に向けて加速した。

ミサイル型ネウロイは、抵抗を受けず遂に目標であるレーダー施設へと直進。

 

最後の迎撃に対空砲が豪雨のように激しい弾幕作り、阻止しようとする。

 

最後の意地は、ミサイル型ネウロイを一つを白い破片に変えた。

しかしそれを嘲笑うように赤く鈍く光ったミサイル型ネウロイがレーダー施設に直撃。

 

周辺のレーダーアンテナごと破壊する爆発が起き、これによってレーダー網に大きな穴が開いてしまった。

 

「......明日は休み、エステル」

 

「諦めて、ネフィ」

 

ついでに一人のウィッチの休暇も破壊された




次回は本編の続き


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第21話 ミンダナオ島血戦 ダバオ港突入編

久しぶりの本編です。


 

 私とシアそしてエラ准尉エヴィ准尉はネウロイの群を正面から進み激しい空戦の中着実にダバオ港に向けて侵入しつつあった。

 

「ん、リオもうすぐ目的地」

「お~けっこう速く着く、やっぱり正面突破したのは正解だね」

 

 中型ネウロイのコアを7.62mmで貫き消滅させるとこのことを後方の二人に言った。

 

「まぁ……確かに速いです、ね」

「はは、うん」

 

 二人は喋る気力が殆どなくなっていた。常に背後を取られ続けながら、というのは大変だったらしい。

 

「ところでシア少尉、呉田大尉たちと連絡は取れないですけど」

「ん、ネウロイの妨害、だと思う」

 

 別の迂回チームである呉田大尉たちとは、連絡が取れない状況にあった。ネウロイは通信妨害を戦術の一つに組み込んでいるのか、こういった事態は珍しい事でもない。

 

「ネウロイの拠点が近いのかな、ってことはダバオ港にありそうだね」

「ん、あとは正確な位置と場所」

 

 またネウロイこういった妨害ができるネウロイいるということは、それだけ重要な場所ということも考えられた。

 

私たちは目的を完遂するため、ダバオ港に突入を開始した。

その裏で色々と事態は動いていたが、それを私たちが知る術はなかった。

 

 

~セレベス海 洋上 戦艦アーカンソー艦橋

 

ミンダナオ島に作られていると思われるネウロイの拠点を砲撃するため、セレベス海にて戦艦アーカンソーは待機していた。

 

「司令、ウィッチ達からダバオ港への突入を行なうと連絡がありました」

 

老齢な艦隊司令官は、士官の報告を聞き即座に指示を出した。

 

「そうか、艦隊にダバオ港へ向けて移動することを通達せよ」

「はっ、し、しかし司令、ダバオ港の偵察結果を待ってからでよろしいのでは」

 

若い艦長が慌てたように、止める言葉を投げる。

 

「奴らの拠点がありそうな所などダバオ港を除いて偵察したのであろう、ならば確実にいるということではないか、偵察を待つなど相手に時間を与えるだけだろう」

 

投げられた言葉を艦隊司令官は判断材料を掲げて否定し、決断を変えることはなかった。

しかし、突如として僚艦の重巡にて大きな水柱が上がり、事態は急変を迎える。

 

「な、何事だ」

「重巡アウストリア“被雷”」

 

その報告によって艦橋にいたものたちは、一部を除いて混乱の極みに陥る。この艦隊の内側にいた重巡が魚雷によって攻撃された、それはつまりネウロイの水中型が艦隊の輪形陣の内側にいる可能性がありえるからだ。

 

「周辺は新型の対潜装備をした駆逐艦で固めていたのだろう、なぜ気づかなかった」

「はっ、それが魚雷の発射音も兆候もなく、突然魚雷が現われたため気づけなかったと」

「それと気になる報告が」

「何だ」

 

艦隊司令官は冷静に事態の把握に努め、部下からの気になる報告にいち早く反応する。

 

「魚雷が命中する直前に、艦隊輪形陣内に落下物が落ちたと見張りが言っており、その落下物は、直方体の形をした全長約7メートルのものだったとのこと」

 

「......艦隊に対空警戒もさせろ、もしかしたら本国で開発中のロケットの弾頭に魚雷を積み込み目標地点で魚雷をロケットから切り離し投下するというものと同じ兵器かもしれん」

 

「はっ、各艦に通達、対潜対空警戒を厳とせよ」

 

艦長は艦隊司令の言葉を聞き、すぐさま各艦に指示を通達した。

 

「司令、このまま突入しても艦隊は訳も分からない攻撃にさらされ続けます、やはり一度引き返して航空支援を受けながら突入するべきでは……」

 

「いや、このままダバオ港に突入する。引くに進むにしてもどっちにしろ攻撃を受けるのは変わらん、艦隊の代価に敵の拠点を破壊できれば戦略的勝利を得られる。引けば損害だけを被るだけで何も得られんむしろ万全に備えた敵と戦う羽目になる、突入以外に選択肢はない」

 

艦長は、戦略的勝利という得る代わりに失う対価の犠牲と撤退の引き換えに待ち受ける犠牲を選択肢に出されれば、もはや何も反論はできなかった。

 

~ダバオ港 上空 ~

 

私たち強行突破チームがダバオ港に突入したとき、視界に入ってきたのは、ダバオ港の中心にドーム状の形をした霧状のものがある光景だった。

 

そしてドーム状の中心部分から直方体の物体が飛び出し曲線を描きながらどこかへと飛翔するのも確認できた。さらに小型ネウロイが数機飛びだし迎撃に上がってきた。

 

「すごく分かりやすいね」

「ん、あれがネウロイの拠点」

 

背後から着いてきた小型ネウロイを始末しながら、ドーム状の周辺を観察する。そしてわかったことといえば、定期的に何かが発射されていることとドーム状の中に空間があるかもしれないということだけだった。

 

「やっぱり、中に入らないと詳しくはわからないね」

「ええ、エラの言うとおり、周辺から観察するだけではほとんど分かりませんね」

 

「ん、リオどうする」

「そりゃ、一つしかないよね」

 

エラ准尉エヴィ准尉の二人は、私とシアの態度と雰囲気から次の展開を悟り諦観する。

 

「それじゃ、二人ともいくよ……突入」

 

―――ああ、やっぱりこうなるか―――

 

ドーム状の中に突入していった二人に続くように准尉の二人は続いて突入していった。

 

 




ミンダナオ島血戦は思ったより長くなりそう、十回ぐらいは書き直して何とかギリギリ納得いく内容にするのに、気付いたら四ヶ月もかかってしまった....


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第22話 ミンダナオ島血戦 ダバオ港突入編その2

久しぶりの一日に複数投稿


 

 ネウロイの拠点と思われるドーム状の霧に突入した私たちはしばらく霧の中を進むと大きな広い空間に入る。

 

「霧の先には空間、何というかテンプレを感じる」

「テンプレ? えっと確かに空間ですね、って下に何かいます!」

 

 エヴィ准尉の声で、空間の下に視界を向けると、確かに何かいる。まるで戦艦のような形をしたそいつはネウロイが苦手とする水上に堂々と居座っており、船首甲板と思われる部分には巨大な16インチ級の三連主砲が二基見える。船尾にも同様の物が一基あり、其方は砲身を仰角60度まであげて先ほど発射されていた何かを発射していた。

 

「……もしかして、放棄された戦艦ってあれのこと、だったり」

「ん、ノースカロライナ級戦艦、16インチ三連三基、速力27ノット、15インチ級の主砲に耐える事ができるバランスの良い攻守が特徴の戦艦」

 

 16インチの主砲、そして“15インチ級に耐える”と聞いてエヴィ准尉が呟く。

 

「あのそれって、アーカンソーの主砲で貫けるのでしょうか」

「……ん、12インチ主砲だと舷側を貫くのは無理、遠距離から曲射を描いて甲板を貫けるかどうか、多分射程に入る前に撃沈されるのが落ち」

 

それを聞いてエヴィ准尉は黙る。

 

「ありゃりゃ、つまりネウロイは強力な装甲と火力を手に入れた訳だ。なら話は早いね、奴の主砲を、攻撃手段を奪った上で味方の戦艦に甲板を壊して貰って、奴のコアを破壊すれば良いってことだね」

 

「ん、そうなる」

 

「でもリオ少尉、主砲を壊す手段はどうするんだい、主砲となれば当然装甲も厚いはずだよ」

 

エラ准尉にエヴィ准尉が頷くように同意する

 

 

「確かに今回の私たちの武装はL7汎用機関銃と25mmt対物ライフルだけですし、火力に欠けますね、とてもあの装甲は貫くのは、魔法力を限界まで込めても難しいです」

 

火力の不足を問題視する二人に私はあることを伝える。

 

「ね、シアあれって確かアマリス曹長に持たせていたよね」

「ん、そう」

 

「「あれ?」」

 

エラ准尉とエヴィ准尉の二人は首を傾げる。

 

 

 

~ダバオ港 上空 迂回チーム~

 

正面突破チームがドーム状の中に突入している頃、迂回チームもダバオ港の上空に到達した。

 

「ぐう、しつこい! 日和さん早くやって!」

「肯定、撃破」

 

二千花軍曹と日和軍曹は小型ネウロイを連携して撃破していく。

 

「呉田大尉! 撃墜しました!」

「よくやったアマリス曹長、だが油断するな、背後の警戒も怠るな」

 

呉田大尉はアマリス曹長に着実経験を積ませながら、アマリス曹長の背後を狙う小型ネウロイを複数撃破していた。

 

「そろそろ、ダバオ港直上だ、雲を抜けて降下するぞ」

「「「了解!」」」

 

呉田大尉の合図で迂回チームは、灰色の雲を抜けてダバオ港に降下していった。

しばらく雲海の中を呉田大尉を先導に通り抜ける。

 

そして視界が開けて正面突破チームが突入したドーム状の霧を見つける。

 

「凄いでかい霧ですね」

「肯定、ダバオ港の殆どを覆う規模と思われる」

「はえ~ネウロイってあんなのも作れるんですね」

 

三者三様の感想を漏らす

 

「ふむ、アマリス曹長、渡した荷物はしっかり持っているな」

「はっはい、あのこれ何ですか、結構重たいのですが」

 

アマリス曹長の背中には自身の身長より少し長く直径は10インチ以上はある大きな箱が背負われていた。

 

「うむ、まあなんだ実際に使うときに教える、切り札みたいなものだ」

「は、はあ」

 

呉田大尉は少し視線を泳がし、何か言いよどむ。アマリス曹長は少し気になるものの、大事な物と聞いてしっかり背負うように力を入れる。

 

「さてと、見た感じ正面突破チームは見当たらないが、あのドーム状の中に突入するぞ」

「「えっ」」

 

呉田大尉は躊躇もせず突入を決める。

二人の軍曹は上官の即決に唖然とするが、

 

「了解です!大尉」

「「えっ」」

 

アマリス曹長は元気の良い戦場には、似合わない返事をする彼女に二人の軍曹は二回目の驚きに包まれる。というかコイツ227kgを背負いながら空戦してドーム状の霧に突っ込むのを躊躇しないのは馬鹿なのか? と

 

「いやいや、さすがに考えましょうよ、大尉」

「肯定、慎重に動くべき」

 

すぐさま大尉の考えを否定する二人、ところが直後ドーム状の霧から飛び出すように赤い閃光が打ち上げられる。

 

「うむ、どうやら正面突破チームは中に居るようだ、つまり問題ないな突入するぞ」

「はい!」

 

「「ああやっぱりこうなるのかあ」」

 

渋々二人の軍曹は奇しくも二人の准尉と同じくドーム状の中に諦観した瞳で突入することになった。

 

 

 




新人ウィッチのアマリス曹長、彼女が背負う切り札とは、
次回、第23話ミンダナオ島血戦 ダバオ港突入編 
ノースカロライナ級ネウロイに魔王が微笑む


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第23話 ミンダナオ島血戦 ダバオ港突入編その3

さすがに三回目は短め


 

 

 私は懐から信号拳銃を取り出して信号弾を上空に放つ。

 

「これで呉田大尉が気付いてくれればすぐにあれも届くはず」

 

「ん、今のうちに、小型砲潰す」

 

シアの言葉と共にエラ准尉とエヴィ准尉が加速して先行する

 

「アマリス曹長になんて物を呉田大尉は」

「はは、まあ、あのネウロイを考えると丁度良いのかな」

 

ノースカロライナ級戦艦を取り込んだネウロイへ向けて二人はクロスしながら海面ギリギリまで降下、左舷から接近する二人にノースカロライナ級ネウロイは格納していた5インチ級の連装砲台と無数の小型パネルを展開、甲板からせり上がった5インチ級連装砲台は本来放たれる実弾ではなく、赤いビームを砲身から連続で放ち接近するウィッチの二人に集中して水柱を立てる。

 

「側面は防ぐから、進んでエヴィ」

 

「わかった一気に突っ込むよ」

 

 水柱をシールドで貫きエラ准尉が直進、それを見てノースカロライナ級ネウロイは展開した小型パネルから無数のビームを放つ。さらにエラ准尉の右側を通過するビームを屈折させエラ准尉を横から貫かんとする。

 

「やらせません!」

 

 すぐさま間に入ったエヴィ准尉が命中コースにあるビームをシールド傾け弾く。

 

「残念だったね、僕の相棒は不埒な輩は絶対にお断りなんだ」

 

 ノースカロライナ級ネウロイは自身をあざ笑い近づくウィッチに、ありったけのビームを降り注ぐが、ことごとくが避けられるか防がれてしまう。

 

「さあて、ミサイル以外にも実は機動って曲げられるんだよね」

 

 エラ准尉はL7汎用機関銃を正面に構え舷側に向けてフルオートで放つ。しかし放たれた弾丸はノースカロライナ級を取り込んだネウロイからしてみればたとえ魔法力を込められていようが舷側に合っても削る事はできない、余裕だと言うように金属音のような何かであざ笑う。

 

「君の舷側や主砲は確かに装甲が厚い、甲板も削ったとしてもあまり効果はないだろう。でも小型砲台なら魔法力を込めた弾丸で貫ける」

 

 放たれた7.62mmの弾丸は突然直進ではなく上に向かって直角に進む。そしてまたもや向きを変える。その方向の先には5インチ級連装砲があった。

 

「更に回転も合わせて味わうと良いよ」

 

片舷5基の5インチ級連装砲に向かって無数の7,62mmの弾丸が色々と無視して回転しながら降り注ぐ。瞬く間に5基の5インチ級連装砲は白い破片へ変えられた。

 

「もうエラったら無駄に格好つけて、パネルは残しているじゃないですか」

 

エヴィ准尉はしょうがないなあといった表情で、懐からリボルバーを取り出し魔法力を込めた弾丸を0.4秒の早さで次々と撃ち抜く。

 

「だってエヴィなら必ず残さず削りきるって信頼しているからさ」

 

「はあ、まったく」

 

エヴィ准尉の魔法を込めた弾丸は左舷側の無数のパネルを全て破壊し尽くしていた。

 

「ん、今日は眼福」

 

「だね、さすがDカップ」

 

「あの無線で普通に聞こえていますからね」

 

 見事な早撃ちと合わせて揺れる素晴らしくおおきなものに視線を完全に引き寄せられてしまった。シアも羨ましいを通り超して感嘆していた。今度一緒にお風呂入る時は適切丁寧に洗ってみようと思う。

 




はう、燃え尽きたぜ


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間話 ~インド戦役2~

息抜きにインド戦役再び、結構平穏な内容です。今日は昼寝したい気分な良い日に合わせた内容になってます。


 

1963年 9月

 

先月のデリー空襲でレーダー網に大きな穴が開いてしまった。それ以降定期的にミサイル型ネウロイの空襲が繰り返され、インフラ、工場、空港、あらゆる戦略的要所を攻撃される。遂にはウィッチのストライカーユニット格納庫を直撃、オラーシャ製のMig21Fを全て破壊されてしまった。

 

「はぁ、めんどくさい、何でわざわざ雑用なんかぁ」

 

「もう、ネフィったら、ネフィが休み欲しいって言うから新型ユニットの受け取りついでに街での休暇を組んでくれたんだよ、文句言うなら運転ぐらい代わってよ」

 

「やだぁ」

 

「だったら文句言わないの」

 

 先月のデリー空襲で迎撃に上がった二人は新型ユニットの受け取りついでに休暇を貰い港町ムンバイに来ていた。ちなみにデリーからムンバイまでは1000km以上離れており

エステルは二日間も運転をぶっ通しでしている。

 

「って、ネフィが新聞を見るなんて珍しいね。気になることでもあったの」

 

 カールスラント製のシュヴィムワーゲンの助手席でブリタニア語の書かれた新聞を読むネフィに珍しいこともあるといった顔をするエステル。

 ネフィは相方の態度には気付かずに新聞に書かれた内容に注視する。

 

「ネフィ? 」

 

「……この子、Cカップに見えるけどエステルと同じで着痩せするタイプだ」

 

「……ネフィ?」

 

「うん?なにえすtごふぁ」

 

 横からのキツい一撃を食らいネフィは気絶させられる。読んでいた新聞が顔を隠すことで道中醜態をさらすことはなかった。

 

 数時間ガタガタと揺れる道すがらネフィは意識を取り戻し、新聞で気になった事をエステルに話す。決して大きな夢の塊にばかり注視していた訳ではなかった。

 

「むう、西パキスタン州軍にガリアの新型だってさぁ、羨ましぃなぁ」

 

 新聞にはデカデカと西パキスタン州軍にミラジュⅢというデルタ翼をしたストライカーユニットが多数配備され大きな戦果を挙げていると書かれている。

 

「ネフィ、デリー管区軍だってミグの最新機種が配備されてるでしょ、それに今日はオストマルク製の最新機のS106を受けとるんだし」

 

「ミグのライセンス機で殆ど同jごふっ」

 

「ネフィ?」

 

ネフィは突然の急ブレーキを掛けられたため慣性の勢いでフロントガラスに衝突、おでこを押さえ悶える。エステルはそんなネフィをまるでさもミスしたように申し訳なさそうな表情をして見ていた。

 

「はは、うんだいじょうぶ、だいじょうぶ」

 

「よかったあ、ごめんなさい、ちょっと疲れてたのかミスしちゃった」

 

「う、うん、運転長いもんね、どこかでお昼にしよ、きゅうけいがてら……えすてるこわい」

 

 道中の小さな街に着いた二人は軍の駐留所にシュヴィムワーゲンを預け小さなレストランで昼食を取ることにした。

 

「いらっしゃい、お嬢ちゃんたち二人かい」

 

「えぇ、席はできればテーブル席が良いのだけど」

 

「ああ大丈夫さ、今日は客が殆どいなくてね、好きな席に座っていいよ」

「ほんとだ、お客さん殆どいないね、がらがらだよ」

 

「こら、ネフィ失礼でしょ」

 

「はっはっは、いやいや、いいよお嬢さん本当のことだからね」

 

レストラン内は食事時のお昼であるにも関わらず客がいない。綺麗に埃一つなく拭かれた机には誰も座っていない椅子が並んでいるだけだった。

ネフィとエステルは日差しがほどよく差し込むテーブル席に対面で座った。

 

「おじさん、おすすめのメニューってなに」

 

「もうネフィ……」

 

「はっはっは、構わないよ、そうだね、グジャラート・ターリーがお昼はお勧めかな、今日はプーリーでライスは白米だね」

 

「ターリーかあ、エステルいいよね」

 

「ええ、私もそれでいいわ」

 

「あいよ、すぐ作るから待っていてくれ」

 

レストランの店主はメニューの注文を受け取るとすぐさま調理に取りかかった。

店主が奥に行くのを見届けた二人はそれぞれ時間を潰す。

 

「って、ネフィまた新聞を読んでいるの」

 

「だってさ、今日の新聞気になることたくさんあるんだもん」

 

車内でも読んでいた新聞をわざわざ持ってきてネフィは読んでいる。今度は何を見ているのか、エステルはまた何を言い出すのか、半目になってネフィを見つめる。

時々唸るように反応するネフィをエステルが見つめる穏やかな時間がしばらく続く。

 

「扶桑で空襲、内閣総辞職、ダキア・モエシア連合軍第二次ヴェネツィア戦役に派遣、扶桑海軍東南アジアへ艦隊派遣計画、リベリオンで大統領暗殺未遂、スエズブリタニア将校難攻不落宣言、ギリシア王国、北エピロス、トラキア、テッサロニキを要求」

 

「ブフォ!?」

 

エステルは先ほどの会話が可愛くなるような内容に先ほどまでの平穏が何だったのか、分からなくなる。世界はいつになく、混沌としていた。

 



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第24話 ミンダナオ島血戦 ダバオ港突入編その4

ひゃっはー、止まるんじゃねーぞ、止まらねえからよおおお

最終回までの構想は作っているから毎日でも良いけど書く度に設定を加えてるせいで伏線を回収できるかわからんね。


 

~マニラ連合軍仮設司令部~

 

「ここはいつ来ても賑やかな場所だな」

 

マニラ市街地は空爆があった後とは言え露店が道端に並び、資材や食料を運ぶ無数のトラックが行き交い、人々もまた日常生活を戦時であってなお変わらず続けていた。

 

「ええ、まあここら辺は防空網が生きていますし、被害が最小限に済んだ地域ですからね。他の被害が大きい地域は酷いもんですよ」

 

運転手の扶桑陸軍少尉は乗客であるルティ・ラウフェイ大佐にこの地域の状況をを目的地まで丁寧に解説する。

 

「ところで大佐殿は司令部のどんな用事で向かうのでしょうか、あ、機密でしたら」

 

「いや、構わない。大した用ではなくてな、今後の補給に関して直接話を通す必要があってな、今回の空襲でそこら辺がややこしいんだ」

 

「ああ、なるほど。士官も結構亡くなりましたからね、事務も猫の手が欲しいと嘆いていました。っと、大佐殿ここがマニラ司令部です」

 

マニラ連合軍仮設司令部は適当な大きな建物をそのまま借りたのか、門番である兵士が居なければこの建物が司令部だとは思わないだろう。

 

ルティ・ラウフェイ大佐は少尉に礼を述べ、建物中に入っていく。案内に従って目的の場所に向かって進む。途中士官がすれ違い敬礼を交わす。

 

そうしてしばらく歩くと目的の部屋に着く。トントンを扉をノックし、目的の人物に入る許可をもらい、扉を開き中に入った。

 

目的の人物である沖島大将は机に積まれた山のような書類と向き合って格闘していた。沖島大将は待ち人来たると気づき、書類から視線をルティ・ラウフェイ大佐に向ける。

 

「待っていたよルティ、こうやって顔を合わせるのはいつぶりかな」

 

「ふん、5ヶ月と三日と4時間振りだ。大体貴様が時間をなかなか作らんで仕事ばかりに浮気しているからだろう」

 

「あはは、面目ない。ついつい謀略とか政治に手を付けちゃってさ、今だって自分の後始末でこの様さ」

 

そういって沖島大将は、手元の書類を取り出してルティ・ラウフェイ大佐に渡す。書かれていたのは、フィリピン駐留部隊の損害報告書だった。

 

「手ひどくやられたものだな、立て直すのは少し苦労するぞ、これは」

 

「ああ、全体の4割が何かしらの損害が出ている。補給に関しては扶桑やリベリオンに掛け合ってはいるが、貴重な士官がことごとく殉職してね、人材は本当にどうしようもない」

 

沖島大将は殆ど眠っていないのか、瞼には隈ができている。服装も几帳面な彼にしては意識するほどではないが乱れている。

 

「まあなんだ、道中で君の副官に休ませるよう頼まれたからな。少し休もうか、丁度良くソファもある太ももで膝枕をしてやる」

 

「君がそう言うなら、少し休むとするよ。ところで今日はやけに機嫌がいいね、何か嬉しいことでもあったのかい」

 

「いやなに、我が娘達ながらさすがだなと思うことがあってな。帰ってきたらどうしてやろうかと考えると楽しみでしょうがない」

 

「あーなるほど、で一体何を仕出かしたんだい」

 

ルティ・ラウフェイ大佐はとても良い笑顔で懐から握りしめられたくしゃくしゃの紙を取り出して沖島大将に渡す。沖島大将は苦笑いしながらそれを広げて見る。

 

「なになに、空母三雲よりあるものを借用します、許可申請は後日でお願いします。シア少尉、リオ少尉より。……え、もしかして勝手に持ってたり」

 

「ああ、それだけ置いて、三雲から持って行ったらしいな」

 

「は、はは、ま、まあ君も昔似たようnごふっ」

 

「おっとつい手が、沖島大将はどうやらお疲れのようだ、仕方ないな沖島大将は」

 

ルティ・ラウフェイ大佐の肘打ちが沖島大将の鳩尾に一撃をもたらした。意識を失った沖島大将はソファまで運ばれしばらくルティ・ラウフェイ大佐の膝枕を本人は気絶した状態で味わった。

 

 

 

~リオ少尉~

 

私はノースカロライナ級ネウロイの右舷側に周りながら何か背筋にひんやりとした寒気を一瞬だが感じられた。隣に並ぶシアも同じく何かを感じていた。

 

それはともかく、左舷からエラ准尉とエヴィ准尉が仕掛け、小型砲台と小型パネルを破壊。私とシアも同じく続くように右舷側に降下しながら接近、さすがにエラ准尉達ほど破壊力のある固有魔法はないので、ビームによる攻撃を避けながら25mm対物ライフルで5インチ級連装砲を狙撃で一つ一つ丁寧に潰していく、そしてシアが私のL7汎用機関銃を受け取って二丁のL7汎用機関銃でパネルを掃討していく。

 

「なかなか弾幕が凄すぎる、シアそっちはどう」

 

「ん、もう直ぐ片付くはず、多分」

 

激しい弾幕を躱しながら的確な射撃でパネルを破壊するシア。シアの白金の髪が汗ばんだ肌に絡み戦場の中で不思議な色香を感じさせる。とはいえそれは自分も言えたこと。ブリタニアのウィッチの制服はこの気候において下半身を除いて最悪だった。なので上は、ブラウスと首元を開いただけのラフな格好をしていた。だが今現在、汗でしっかり透けて中まで見えてしまっている。

 

「そろそろ呉田大尉達も気付いていたら来る頃だけど」

 

『……き…聞こえるか、リオ少尉』

 

「ん、噂をすれば」

 

「呉田大尉待ってました、さっそくあれの出番ですよ」

 

ドーム状の中心を90度の直角でダイブして呉田大尉達は突入してくる。アマリス曹長は必死に呉田大尉についていくので精一杯で、後ろの軍曹二人は何かを諦めた顔をしながらもしっかりと適切な距離を保って並んでいる。

 

「ほう、なかなか良い的だな。アマリス曹長背中の箱を前に持ってきて、持ち手の部分を手で持て」

 

水平に編隊を直し呉田大尉はアマリス曹長に背中の物を両手に持たせる。

 

「あの呉田大尉、これをどう使うんです」

 

「うむ、あのデカいネウロイの上に持って行き、丁度中心のあたりにそれを投げるだけだ。簡単だろう」

 

「えっと、中心というとあの出っ張った煙突あたりでしょうか」

 

呉田大尉はアマリス曹長の言ったことをどう捉えたのか、面白い事を聞いたような表情になった。

 

「なるほど、中心に当たるだけでよかったのだが、アマリス曹長は一撃必殺を望むか。気に入った、よしでは私が先行するからその後ろに着いてこい、私の合図でそれを投げろ、できるな」

 

「えっと?はい分かりました、大尉」

 

((ああ、無垢って羨ましいなあ))

 

その後ろで会話を聞いていた日和軍曹二千花軍曹の二人は色々と振り回されたのか疲れ切った表情をしていた。

 

 




次回でミンダナオ島血戦は終わるはず、多分!!


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第25話 ミンダナオ島血戦 ダバオ港突入編その5

 

~リオ少尉~

 

呉田大尉達が動き出した。あれを多分だがノースカロライナ級ネウロイに投げ込むためだろう。シアに目線だけで合図を送る。

 

(そろそろ、決める)

(ん、わかった)

 

 シアからL7汎用機関銃を受け取り、とにかくばら撒くことで砲台の再生を阻止することに努める。

 

ノースカロライナ級ネウロイはそれがうっとうしいのか、金属音のような鳴き声を周囲に響かせた。それに答えるように霧のドーム状の中に次々と大型、中型、小型ネウロイが数体侵入してくる。その中には輸送型ネウロイも含まれていて、ネウロイ側にとってノースカロライナ級ネウロイが重要なことを思わせた。

 

「ああもう、大尉はほんと何処かに大事なネジが外れているんじゃないですかね」

 

「肯定、無茶振りの宝物庫です」

 

日和軍曹と二千花軍曹は呉田大尉の愚痴を言いながら、輸送型ネウロイを鎧袖一触で撃破し二千花軍曹が削り日和軍曹がトドメに大型、中型を25mm対物ライフルで次々とコアを見つけては三発できっちりと仕留めていく。

 

寄せ集め程度の戦力では、あの二人を突破することは難しいと思わせる活躍振りだった。恐らく色々と心労が溜まっていたのだろう。

 

 そして十分な時間を稼ぎノースカロライナ級ネウロイの直上に呉田大尉とアマリス曹長が加速しながら接近する。

 

「ひゃああ、呉田大尉、ほんとにこんな角度で突っ込むんですか」

「ああそうだ、アマリス曹長しっかりついてこい」

 

凄まじい速さで二人はノースカロライナ級ネウロイに接近していた。

そして距離が僅か1200ftまで接近した瞬間。

 

「アマリス曹長、今だ! 投げろ」

 

呉田大尉が一気に上昇アマリス曹長は合図と同時に直方体の箱を投げ、自身も続くように上昇する。

 

箱は空中で落下中に分解、中からは空気抵抗考えられた流線型をした直径10インチ、全長87インチ、重量500ポンド(227kg)のMk82通常爆弾が露わになる。

 

リベリオン製のMk82はウィッチ用の物と航空機用の物と2種類が存在する。今回アマリス曹長が持たされていたのは航空機用の通常爆弾だが密かにシア少尉とリオ少尉、爆弾を手配した呉田大尉三人の魔法力を限界まで込められていた。

 

まあ、つまるところ破壊力はちょっとした戦艦なら撃沈できる程に強化されているヤバい爆弾である。

 

「って呉田大尉!? あれ爆弾だったんですか」

「うむ、その何だ、すまなかった」

 

アマリス曹長は自分が運んでいた物に驚き、そしてその破壊力に涙することになる。

 

Mk82は一切の迎撃を受ける事なく、ノースカロライナ級ネウロイの本来なら煙突がある部分を突き破って降下して加速し加わった勢いで中心部まで見事に進む。そしてノースカロライナ級ネウロイが悲鳴に近い叫びを響かせた瞬間、大きな破壊の渦を生み出し、船体中心部をその破壊の渦は呑み込んでいった。

 

「……思ったより破壊力がデカいね」

「ん、想定外、込めすぎたかも」

 

想定を上回る破壊力は、とどまるところを知らなかったらしい。生まれる爆風はドーム状の空間を壊す勢いで広がっていく。

 

「ええと、とにかく離脱します!エヴィ」

「うん、そうしようというか、巻き込まれる」

 

「ああもう大尉は何考えてるんですか」

「同意見、あれはMk82だけど多分炸薬が普通より多く入ってた可能性大」

 

「ふむ、思ったよりも……そういえばネウロイの巣を破壊するために特殊な炸薬を入れた物があると聞いていたが、適当に余っている物を銀蠅したがどうやら当たりを引いたらしいな」

「呉田大尉って時々凄いことしますね」

 

全員は爆風から逃れるようにドーム状の空間を離脱、同時にドーム状の空間は展開していた主を失い崩壊した。

 

「ん、死ぬかと思った」

「ほんとう、ギリギリだったね、でもきたねえ花火だぜってね」

 

私とシアは一仕事終えたと言った感じで巨大な爆心地を眺める。そして後ろではこの現状を生み出した元凶をどうしてやろうかと見つめる苦労人の4人。そしてその後ろではあまりの破壊力にビビって泣いたアマリス曹長を慰める呉田大尉と全員は一応無事に離脱できた。

 

「まあ、これで任務達成したし、帰ろっかシア」

「ん……なにか、忘れてる、気がする」

「えっと、確かこの港には戦艦以外にも巡洋艦がいましたよね」

「でもさすがに巡洋艦クラスなら気づけるだろうし、鉄くずとして食われたんじゃないか」

 

シアの一言でちょっとして疑念が浮かぶ。

 

「まあ、さすがに水中に潜っている、ということもないだろう、気にしすぎだろう」

「えっと、あの…」

 

呉田大尉の言葉がきっかけになった訳では無いが、アマリス曹長がダバオ港を眺めていて何かに気づいたのか、ある地点を指さす。

 

その場所に視線を全員で見ると、水中からぷくぷくと泡立ち、それがだんだんと大きくなっていく。この時の私の脳裏にフラグという三文字が浮かび上がった。

 

ダバオ港の地面を裂くように底から巡洋艦を二つ繋げたような何かが徐々に水上に上ってくる。二つの塔が海水を滝のように上から下に流して現われ、二つの船体をくっ付けた胴体とその上に乗る大型の砲台達、そしてハニカム模様をした模様がそれをネウロイだと証明した。

 

「「「………」」」

 

「ん、お代わり、頼んでない」

「あはは、でっかいネウロイさん、ですね」

 

「「「「oh」」」

 

最終ラウンドを告げる鐘の音が、ネウロイの忌々しい叫びによって鳴り響く。

 

 

「まあ、やるしかないよね、シア行くよ」

「ん、当然、倒してリオとデートする」

「ブファ!?なんで今それをいうの……いいけど」

「ついでにキスも、する」

 

……私は恥ずかしいことを堂々宣言するシアに顔が真っ赤になってしまい、それを隠すのに必死だ。

 

「……大胆ですねシア少尉は」

「だね、聞いてる方が恥ずかしくなるよ」

 

茶化すようにエラ准尉とエヴィ准尉の二人が言う。

 

「うむ、青春だな」

「いつか私も……」

 

呉田大尉は大人目線で眺め、アマリス曹長は新たな扉を開きつつあった。

 




終わらなかったよ、次回で多分、今度こそ、終わるはず。


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第26話 ミンダナオ島血戦 最終戦その1

遅くなりましたが本編です。


 

~空母 三雲~

 

晴天の下、スールー海に護衛の駆逐艦数隻と共に空母三雲は、試験航海を実施していた。

 

「賀来艦長、本艦問題なく航行中、航空隊もいつでも発艦可能であります」

「そうか、では航空隊は直ちに発艦、目的地はダバオだ」

 

艦長の号令が下ると、待ってましたと言わんばかりに、飛行甲板に爆装したF8Dクルセイダーがカタパルトによって次々と矢を放つように飛び立っていく。

 

「副長、例の艦隊はどうしているか」

「はっ! 先ほど本艦に続き航空隊を出したとのこと。本艦の艦載機の到着予定時刻より数分遅れで目的地に達するかと」

「ほう、一番槍は譲って貰えたらしい、航空隊に伝達。見敵必殺、以上だ」

 

艦長の言葉が届くと航空隊の発艦の勢いが増していった。

 

 

 

~リオ少尉~

 

「うーん、勢いで攻撃したのは良いけど、硬いね。削れはするけど…シアそっちはどう」

 

シアは双胴型のネウロイに対してリオとは別の装甲をL7汎用機関銃で表面に攻撃を加えているが、表面を少し削ることしかできておらず、再生によって元に戻ってしまう。

 

「ん、駄目削った端から再生する」

「だよねえ、火力不足かあ」

 

巡洋艦が2隻もくっついた双胴型ネウロイと交戦を開始してそれなりに経つがいまだ致命的な攻撃を与えられずにいた。

 

それは火力不足もあったが弾薬の不足もまた原因だった。任務を開始してからの複数回の哨戒機との戦闘で消耗した分と戦艦を取り込んだネウロイとの戦闘で弾薬は殆ど残っていなかった。特に25mm対物ライフルは残弾数一発のみであり、コアを撃ち抜くにはとても足りなかった。

 

どうしたものかと悩んでいると、シアが何かを思い出したような顔をする。そして続く言葉にそういえば、となる。

 

「ん、今回の任務、偵察して伝えるだけ、だったはず」

「……そういえばそうだったね」

 

今更だが、今回の任務か作戦だったか忘れたがそもそもネウロイの拠点を見つけそれを戦艦アーカンソーに伝えることである。

 

すっかり存在そのものを忘れていたが、今必要な火力を満たすことができる。

 

「あの、でも無線は使えるでしょうか。ネウロイの妨害されているのでは」

 

エヴィ准尉の言葉にシアは耳を叩くモーション見せる。

 

「ん、多分使える。妨害してたネウロイはあの霧のドームを作っていた戦艦のネウロイ」

 

それを証明するように離れている呉田大尉に無線で連絡を取る。

 

『呉田大尉、聞こえる』

『うむ、聞こえるぞ、どうやら問題ないらしい』

 

私は霧のドームが無線の妨害の大本であり、バラバク島でのことも含めて考えるにネウロイの霧には電波や周波数の波を遮断もしくは逸らす効果あるのかもしれない。

 

「連絡が取れるなら、アーカンソーに砲撃を要請すればいい。でもさすがに遠距離からの砲戦だと精度に問題があると思うよ」

 

エヴィ准尉の言葉も確か。正確にコアのある付近を砲撃で吹き飛ばせなければ撃破することは難しく、遠距離の砲撃は静止目標ならともかく動く相手に確実に当てることは賭けに近い。はずだった。

 

「ふむ、ならば視界に入る距離からだと、問題はないな」

「「えっ」

 

 

~戦艦アーカンソー~

 

「敵目標と思われる水上に双胴型ネウロイを確認、前部主砲いつでも撃てます」

「うむ、全艦に通達、本艦はダバオ港に突入する。目標は双胴型のネウロイ。艦長、攻撃開始だ」

 

ダバオ港入口にボロボロの護衛艦や巡洋艦を後ろに先頭を威風堂々と突入する1隻の戦艦

 

 

この戦いの本来の主役が大口径の砲音を鳴らし、戦場に現われた。

 

 

 




今回は短め、やっぱりミンダナオ島血戦は2か3は掛かりそうですね。


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第27話 ミンダナオ島血戦 最終戦その2

深夜テンションで書いたので色々酷いかもしれない。


 

~戦艦アーカンソー~

 

ダバオ港に突入した戦艦アーカンソーとその艦隊は双胴型ネウロイと激しい砲撃戦を繰り返していた。

 

「もっと早く次の弾を装填しろ! 奴さんはまだまだ元気だぞ」

「サー、しかしこれ効いているのですか、10発は撃ち込んだはずですよ」

 

そういいながら新兵は甲板上のMk75インチ速射砲に同じ新兵達と共に装填作業を完了する。それを確認した古参の砲手は、双胴型ネウロイに正確に照準して放つ。

 

「まあ、牽制にはなるだろう、本命は主砲塔の連中だ。アイツらが上手く奴さんのウィークポイントを突けばな」

 

それを聞いていたもう一人の古参が笑いながら言う。

 

「そりゃあ無理ってもんだろうさ、なんせジョーンの奴あの年して一回も彼女の一人も居ねえんだぜ。双胴の美人のウィークポイントなんか突けるかよ」

「そりゃそうだ、HAHAHA!! おい新米手が止まっているぞ、弾もってこい」

「サ、サーイエッサー」

 

新兵は慌てて装填を再開しようとするが砲弾が見当たらない。すぐさま砲弾を運ぶ班から受け取ろうとした時だった。

 

一瞬の大きな衝撃が船体を揺らし、新兵もその衝撃でバランスを崩し、尻から床に着く情けない態勢になってしまう。

 

「う、いったいなにが……え」

 

新兵が振り返った衝撃の元は船体中央部から上がる黒煙から一目で分かった。双胴型ネウロイの放ったビームの直撃を受けたのだ。

 

 

アーカンソーの艦橋では被害状況の確認が行なわれていた。

 

「それで被害は」

「はっ左舷中央部の副砲が消滅、第3主砲旋回機故障旋回不能、第4主砲砲身大破、更に船体中央部より亀裂による浸水、また二番煙突付近で火災炎上中です」

 

たった一撃のビームを食らっただけで大きな被害を被ったことに動揺を隠せない艦橋要員達。そんな中、艦隊司令が振り向かずに艦長に話しかける。

 

「艦長、この船は駄目かね」

「……いいえ、戦艦はこの程度で沈むほど柔な乗り物ではありません。なんなら乗組員かき集めて第3主砲を旋回させて撃つことも可能ですが」

「そうか、艦長ウィッチ達の要請どおり本艦の全火力を奴の中央に集中だ、この程度では沈まないのだろう」

 

艦長はかっこつけて言った自身の発言に若干後悔しつつも、艦の全火力を双胴型ネウロイの中央に向けさせる。そして同時にこれ以上直撃しないことを密かに存在するかわからない神に祈った。

 

 

~リオ少尉~

 

戦艦アーカンソーが双胴型ネウロイと激しいが砲撃戦を繰り返している間に私たちは手持ちの弾薬を共有し合う。残り一戦分を戦うことは可能になった。

 

「結構ギリギリですね」

「肯定、でも十分と考える」

「あのう、少なすぎでは……」

「まあ、現状を考えれば十分かもね……シア少尉コアの位置は」

 

L7の7.62mm弾の薬莢をいじりながらシアは双胴型ネウロイの中心部を眺める。シアの灰色の瞳が魔法力に一瞬包まれる。

 

「ん、装甲、配置、多分中心部の艦橋部の下にある」

「まあお約束って感じだね、分かりやすくて助かる」

「うむ、既に戦艦の方には伝えた、後はタイミングを合わせ仕掛けるだけだな」

 

戦艦アーカンソーは双胴型ネウロイと同航戦になるように動きつつあった。

 

 

~戦艦アーカンソー~

 

戦艦アーカンソーの艦橋内部ではビームの至近弾によって発生した波によって幾度も揺れに襲われていた。

 

「ぐっ……被害状況は」

「左舷水密隔壁に亀裂! 浸水なお拡大中、本艦傾斜角30度」

 

戦艦アーカンソーは竣工から半世紀経ちつつある歴戦艦であった。近代化改装によって対ネウロイ装甲を施されてはいたが、船体の老朽化はどうしようもなく、強力なビームの至近弾によって破口や亀裂が次々と生じてしまっていた。

 

「ダメコンはもう少し保たせよ! 何としても奴に一撃を与えるぞ」

「戦艦アーカンソーを除く艦隊は双胴型ネウロイの攻撃を引き寄せて援護、時間を稼ぐのだ」

 

戦艦アーカンソーに続き重巡や護衛の駆逐艦が持てる火力で双胴型ネウロイに攻撃を仕掛ける。しかし双胴型ネウロイの一部がひっくり返る。そして小型のビームパネルが無数に展開、豪雨の如く放たれたビームが重巡や駆逐艦に降り注ぐ。

 

「なっ!フォレスト、フィッチ轟沈、クイックが戦列より離脱します」

「まるで散弾銃のようだ。駆逐艦が一瞬で穴だらけに」

 

先頭にいた駆逐艦三隻の内二隻が船体に無数のビームの直撃を食らい轟沈、何とか耐えることができた駆逐艦は炎上しつつ離脱していった。

 

「艦長! いつでも撃てます」

「よし! 全砲門撃て」

 

僅かな時間ではあったが、戦艦アーカンソーの全門が双胴型ネウロイを捉える。12インチの砲弾がコアのある中心部にむけて確実に放たれた。

 

 

~リオ少尉~

 

戦艦アーカンソーが斉射し中心部を大きく穿つ。そこに私たちは向かって突撃する。

先頭として呉田大尉に二千花軍曹、日和軍曹が先行して仕掛ける。

 

「久しぶりにこいつの出番だな」

 

呉田大尉はそう言うと身につけていた刀を抜く。刀の刀身は魔法力を込められていた。

 

「刀って、呉田大尉ってやっぱり生きる時代間違えてませんか」

「肯定、絶対おかしい」

「おかしくはないぞ、欧州戦記いわく、ネウロイの巣を刀で真っ二つにできるのだ、問題ない」

 

「「さすがに、それはない」」

 

呉田大尉は二人の反応に、刀を正面に構えて双胴型ネウロイに突撃する。

 

「呉田大尉危ないって、ビームを切った!?」

 

双胴型ネウロイは刀を構えて突っ込んでくる呉田大尉に向かって大型砲台ビームを向け放つ。放たれたビームを呉田大尉は刀で真っ二つにしながらそのまま大型砲台ごと切り裂いた。

 

「呉田大尉ってほんとヤバい」

「今更、でしょ」

 

日和軍曹が続くように小型パネルの弾幕をくぐり抜け、懐からパイナップル状の物体を取り出して投げる。

 

「今、二千花」

「手榴弾持ってたなら、早く使ってよ! もう」

 

パイナップル状の手榴弾が小型パネルの中心部に達した時、二千花軍曹がL7汎用機関銃を手榴弾にむけて正確に撃ち込み、爆発させる。甲板の小型パネルを多数巻き込み破壊する。

 

「扶桑のウィッチって大概おかしい気がします」

「ぼくもそう思う。アマリス曹長ついてきてね」

「はい! 私も頑張ります」

 

エラエヴィ准尉の二人とアマリス曹長の三人は12インチの砲弾が直撃し再生の途上にある中心部を削り追撃していく。

 

「さすがにコア露出は無理か、エラ」

「一発しかないけど、それでも痛いですよ」

 

エラ准尉が懐から大口径リボルバーを取り出し固有魔法を込めた弾丸を構え放つ。放たれた弾丸は再生途上の中心部を更に削りとる。

しかしノースカロライナ級ネウロイとの戦闘でエラ准尉の魔法力は消耗しており、固有魔法を込めた弾丸もわずか一発しかなかったためコアの露出までには至らない。

 

「そんな、あと一撃なのに」

 

「まだです! 私だって」

 

 アマリス曹長が拳を作り、追撃を掛けるように魔法力を込めた一撃を叩きつけた。それは確実に赤く光るコアを露出させた。

 

「……ん、Bカップ」

「将来性に期待だね」

「ああもう、この二人は……」

 

 残念ながらアマリス曹長はまだまだ発達途上にあるらしい、とはいえ新米ウィッチである。彼女は将来性に期待できる。

 

「さてと、いい加減休みたいんだよね」

「ん、終わらせる」

 

私とシアはアマリス曹長が露出させたコアに向けて接近、しようとしたときだった。

 

「……ッ危ない! リオ」

 

私をシアが突き飛ばた瞬間、先ほどまでいた所を鮮紅のビームが通り過ぎる。その後に続くように前後対称の菱形主翼とV字の形をした尾翼をもつジェット戦闘機のような見たことのないネウロイがマッハ1を超える速さで通り過ぎた。

 

「なっ、新型ネウロイ、それに速い」

「呉田大尉、新手です! 数は4機」

「まずい、全員ブレイク、ブレイク」

 

新たに現われた新型ネウロイは圧倒的な速度と機動性で私たちに襲いかかる。

 

「クルセイダーでも追いつけられないってやばいかも」

「否定、やばいどころか、ピンチ」

 

新型ネウロイの一機を日和軍曹と二千花軍曹が背後から追いかけるが、新型ネウロイがさらに加速することで突き放される。そして意識が前に向いたその隙を突くかのようにもう一機が二人の背後から仕掛け、二人は回避に専念せざる終えなくなる。

 

「アマリス曹長こっちだ、各員は2機編隊を組んで迎撃、双胴型は……とにかく今は新型ネウロイとの空戦に集中だ、クソ、クルビットからのヘッドオンだと、なかなかやりおる」

 

 呉田大尉は連携を取って動く新型ネウロイに対して一対二を避けるため編隊を組ませる。同時に新米ウィッチであるアマリス曹長をカバーしながら新型ネウロイの一機と交戦する。         

新型ネウロイの背後を取った呉田大尉に対して新型ネウロイは機首を180度に回転させ正面からヘッドオンを挑み交差した。

 

 私とシアは双胴型ネウロイへの接近を諦めるしかなく、新型ネウロイと空中戦を行なうしかなかった。

 

 

 




新型ネウロイのモデルはYF23。第二世代に第四世代ぶつけるのはやり過ぎたかもしれない。
一応反省はしている。


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第28話 ミンダナオ島血戦 最終戦 結末

遅くなりましたが投稿です。ミンダナオ島血戦もこれでエピローグに移れます。ちなみに今回はおっさん成分謀略マシマシになっております。


 私たちの双胴型に対する攻撃は、突然現れた新型ネウロイによって阻止されてしまった。

 

「シア、これまずい、完全に意表を突かれた」

「ん、有利な点がない」

 

 新型ネウロイの完全な不意打ちが、空戦において圧倒的な不利の状況を生み出している。そもそも空戦の基本とは常に相手に有利になること、つまり()()()を握れるかどうかが決め手になる。

 ところが双胴型ネウロイへの攻撃で空中への警戒が薄れた絶妙なタイミングで奇襲を掛けられた。

 消耗し疲弊した私たちに反撃する余裕がないそんな時に。

 

 先ほどまでのネウロイたちとは動きが完全に違う。おそらく新型ネウロイは対ウィッチを想定している。効果的な奇襲によって主導権を握り、編隊を組み複数で連携しながら戦う人類のロッテ戦術のようなもの、各種戦闘機動、これら戦術を新型ネウロイは組み込んでいる。

 

「......長期戦は、不利だなあ」

「短期、決戦、んッ」

「シア?、どう、したの...え」

 

 シアの様子がおかしいことに気付いた私は、後ろを飛ぶシアに振り返る。曇天の風景に映る赤い血、私の視界に映る吐血するシア、明確に分かる腹部からの出血。

 

「もしかして、さっきの攻撃で」

「......だい、じょう、ぶ」

「全然大丈夫じゃない!?、ッまずい」

 

 私は動揺のあまり、動きに繊細さを欠く。その隙を新型ネウロイが見逃すはずがなかった。二体の新型ネウロイは直線に飛ぶ私とシアの背後を取り攻撃の態勢に入る。それに気付いた私は、咄嗟にL7を投げ、シアの腕を掴んで回避行動を取ろうとした。

 

「シア!」

「り、お」

 

 シアを抱え守るように、来る瞬間を待つ。

 

 そして―――――雷雨のような轟音が鳴り響いた

 

『コーラル1、1kill』

『コーラル2、1kill』

 

 白い破片を撒き散らし、二体の新型ネウロイが消滅する。双発の轟音を靡かせ後退翼からクリップトデルタ翼の変化を感じさせる大型ジェット機が翔ける。

 続くように身の桁に合わない大型のジェットストライカー履いたウィッチが現われる。彼女は私とシアに振り返ると、シアを一瞥したのち申し訳ないという顔をする。

 

「遅くなりました、リベリオン第7艦隊第5空母航空団第21戦闘飛行隊(VF-21)所属マリネ・ディンリヒト少尉です。ブリタニア空軍の第60飛行隊の方ですよね」

 

 カールスラント系のシルバーに近い色味をした髪を持つ彼女は所属と名前を告げると、シアを抱える私とは反対側から支えに入る。

 

「援軍が何で、確か今回の作戦に参加した航空戦力は私たちだけのはずですが」

「はい、極東方面軍の司令部が立てた作戦ですね、でも数分ほど前に作戦は変更されました。ミンダナオ島への強襲上陸に、です」

「強襲、上陸、ん、第7艦隊、ほんたい?」

 

 シアは何とか意識を保ちながら会話に入る。

 

「そうです、とにかくあの海上のネウロイは第5空母航空団と三雲より発艦した攻撃隊がどうにかします。すぐ近くまで空母が来ていますので、そこで治療と補給をしましょう。それ以降の第60飛行隊と扶桑のウィッチの皆さんは空母コーラル・シーで待機して貰います」

「うん、シア行こう」

「ん、りお、大丈夫、だよ、しん、ぱい、ない」

「シア......」

 

 マリネの案内で空母コーラル・シーまでシアを運ぶ。シアの傷は深い。けれど空母コーラル・シーまで意識を保ち、何とか危機を抜けることができた。

 

□■□■□■

 

 

 ~扶桑皇国極東方面連合軍司令部~

 

「ふむ、思ったより早くリベリオンの大統領選が終わったようですね。貴国の新しい大統領は行動も早いようだ、すぐさまこの戦役に本格的介入を始め、その第一陣として太平洋洋上で待機中だった第7艦隊を派遣してくるとはさすがに想定外です」

「ふん、もともと不確定要素の多い作戦だ、今回は偶々艦隊が近くにいたからこそ、派遣できただけだ。あの者の力ではない」

 

 高級絨毯の会議室で今回の作戦の結果が書かれた書類を読みながら対談する二人の人物。リベリオン派遣将校のボイルオ将軍と極東方面連合軍司令部の作戦参謀の高島少将。

 

「それに高速化するネウロイ対抗するために生み出された次世代戦闘機のF-4とストライカーが配備された我が国で世界最強を誇る精鋭をわざわざ運河という利権の旨みがある、中東ではなく密林しかない東南アジアに派遣するなど過剰ではないか」

 

 ボイルオ将軍はそう不満の声を漏らしわずかばかりの私怨も含んだ口調で言う。

 

「まあまあ、比較的損害も旧式艦と消耗品の駆逐艦だけですみましたし良いじゃありませんか、それよりも次を考えましょう」

 

 高島少将はボイルオ将軍を宥めると胡散臭い表情を隠しもせず、次の話題を切り出す。

 

「どうやら、我々が派手に動いている裏でコツコツと作戦を立てている者が居るようで、管轄も東南アジア方面連合軍主導で動いているようです」

 

 ボイルオ将軍は眉をわずかにあげ、興味を示す。

 

「ふん、先の空襲で将校も士官も打撃を被った東南アジア方面の連中がかね、ばかばかしい、どんな作戦なのかね、まさか反攻作戦というわけはないだろう」

「ええ、それが将軍のいう反攻作戦も半分ほど間違ってはおりません」

「ふん、愚かな者も居たな、で内容は」

 

 良いように釣れたと胸中でほくそ笑む高島少将は、すっ、と封をされた指令書を渡す。

 

「なかなかよくできていますよ、ハノイから撤退し防衛線を引き直す、そして十分な補給と航空艦隊支援でハイフォンの巣に攻勢を仕掛ける、まあ素人でも思いつく作戦ではありますが、利にはかなっています。どうせなら我々主導でやりたいものです」

「ふん、だがインドシナ連邦の首都を事実上放棄するようなものだ、到底実行は無理であろう」

「そうでもないようですよ、どうやらインドシナ連邦首脳陣に許可は取り付けているようです、まあ政府中枢は移転が進んでいますから、問題はないようです」

 

 情報を小出しに出す高島少将に苛立ちを持ちながらもボイルオ将軍は話を続ける。

 

「で、どうするのだ、我々が主導権を握るのは難しいのだろう、タカシマ将軍」

「ええ、ボイルオ将軍の切り札あれを使いましょう。あれを作戦にねじ込むぐらいなら簡単にできます」

「ふむ、私はあまりポーカーが得意ではなくてね、切り札を切ることには慎重なたちなんだ。しかしまあ、タカシマ将軍のことだ、何か策があるのだろう......そうだな、扶桑の新鋭戦艦あれを引っ張ってきたならば承知しよう」

 

 ボイルオ将軍の言葉を聞いて高島少将は胡散臭い目をさらに細めると、了承の返事を返した。

 

「では、一か月後、作戦の開始前までには手配しておきましょう、大和を越える戦艦を......」

 

 

 

 

 




 次回はミンダナオ島血戦のエピローグ。平穏な回になると思います。その後はインド戦役の間話か、シアの日常編などを挟んで次章に移ると思います。それにしても気付けば6万字まで書き、話数も30超えて、当初は数ヶ月で完結するだろうと思っていたのですが、気付けば半年以上も経っていました。本当に時間が進むのは早いですね。まあ、スケジュール管理がガバガバ過ぎて投稿頻度が酷いことになったのが原因ですが。
 ともあれ、今後とも本作をどうぞよろしくお願いします。


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第29話 ミンダナオ島血戦 エピローグ

一か月ぐらい経ってしまったけどエピローグです。時間が経つのは早いですね。気づいたら夏でした、おそらく次も来月になるかもですね。あと短め。


 

 1964年 2月

 

 普段は格納庫横で読書に紅茶に勤しむ私は、雨粒降り注ぐ外での読書は諦め、雨雲によって薄暗い部屋の中で黙々と本のページを捲っていた。傍らには包帯を足回りに巻いたシアが側に居て慣れた手つきで、紅茶をポットからカップに注いでいる。

 

 私がページを捲る音が二、三回ほど鳴った時、異様なほど静かだった部屋で私は部屋にいる人物に話しかけた。

 

「......えっと、マリネ少尉はどうしてこの部屋にいるのか聞いても」

「お気になさらず、どうぞ、読書を続けてください」

「いや、一応ここはウィッチの待機室なので居ることに問題があるわけじゃないのですが、そのずっと見られ続けると落ち着かないというか、そもそもリベリオンの空母所属ですよね、どうしてここにいるのかと」

 

 リベリオンの人間らしいラフな服装を、カールスラントのようなきっちりとした着こなしで身だしなみのいいシルバーヘアの美少女が木製の図学室にあるような椅子に背筋をしっかりと伸ばして、視線は私に向けて座っていた。

 

「............先輩に興味がある、それだけです」

「......」

 

 そして密着するほどの距離まで近くに寄り時折シアに向けてチラチラと視線を寄こす。そのシアも紅茶を淹れながらそれを意にせずに堂々と私のマリネ少尉の反対側で同じくふわふわした甘い匂いのするシアの髪がかかる距離まで寄っていた。

 間に挟まれる形の私は二人のバチバチと火花散るような気配を感じ、ただただ口を開くのが難しい状況が小一時間も続いていた。

 

 何故こうなったのか、語ればそれこそ文庫本の序章を書くことが出来てしまうため省略させてもらう。ただそれだけでは状況についていけないかもしれないので、簡潔に3行で纏めると.........

 

 ・シアを運んでくれたマリネ少尉に感謝の言葉を告げる

 

 ・このお礼は誠心誠意身体を使って返す的なことをいう

 

 ・マリネ少尉に先輩って呼ばせてくださいと言われる

 

 そして今に至る。これの何処にこの状況を生み出す原因があるのか私は分からず、この状況を打開することが出来ないでいる。

 

 さらにこの状況打開してくれる存在がいないのもこの状況が続く原因だった。基地司令はいてほしくない時にはいて居て欲しい時に限っていない。何でもミンダナオでの戦いの書類の後始末が残っているらしかった。そのときには恨めしいものを見る目でこちらを見ていたが理由はわからない。

 エラエヴィ准尉の二人は基地司令に頼まれてシンガポールまで荷物を受け取りにいっている、なんでもボロボロになったジャベリンの改修キットを運良く手配できたらしい。

 そして扶桑組は、空母三雲が新たに派遣される新型空母と合流するためそちらに一時的に原隊に戻っている。とはいえ主要な港湾は未だ復興途上のためパワラン島の沖合に最終的には停泊するためこの基地には帰ってくるそうだ。

 あとアマリス曹長は近くの港町まで買い物に出掛けている。毎日扶桑組に鍛えあげられているアマリス曹長だが新米卒業を果たしたため久しぶりの休暇を兼ねたおつかいが与えられた。

 

 さてつまりは今この状況を打開出来る存在はいないということだ。最短でアマリス曹長が基地に帰ってくれば、何かしらの変化をもたらすかもしれないが、そもそも彼女がこの二人の下士官、士官を止められるとは思えない。

 

 逃げ道足りえる外はザアザアと降り注ぐ雨によって塞がれてしまっている。

 

 「はぁ......」

 

 思わずため息が漏れてしまう、それで状況が改善するわけもなく平穏な今日は静かな騒がしさを感じながらゆっくりと過ぎていく。

 

 けれど内心はこの時を愛おしくも感じていた......

 

 




 試験的に一人称と三人称混ぜ混ぜで書いてみました。これスラスラ内容が浮かんできて書けるので内容が濃く感じやすい反面、実はそんなに話が進まないという。一人称と三人称の中間のような、うまく書ける方たちは本当に凄いと思います。


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間話 ~インド戦役3~

作者が本編で詰まった時に入れるインド戦役編の回



何故か筆が進まない、私はただほんの少しポケモン厳選をしているだけなのに...


 

 1963年10月

 

 パラパラ、使い終わった薬莢の残りたちが炎上する街中に向けて落ちて行く。時々光る爆発音が夜ということを示すように炎より明るく街を照らす。この街はほんの少し前まではインド連邦の首都にして、そして今はネウロイと人類の最前線とも言える場所。

 

 その上空では、この街を守る為にエステルやネフィの二人がネウロイとの空戦を繰り広げていた。

 

 

 エステルはその身を超える機関砲から、カキンッ、と30mmの大口径を誇る機関砲から火傷を負うことも構うことなく排出口に引っかかった薬莢を素手ではじき出すと装填レバーを引き薬室内に弾薬を装填する。そして地上で四足の陸戦型ネウロイに向けて大口径の弾丸を放ち白い破片へと変える。しかし続々と無数のネウロイが現われ更に先へと進んでいく。

 

「もう、一体どれほどの数がいるのかしらきりが無いわ」

 

 彼女の表情は魔法力の酷使した極度の疲労が現われており、既に相当長く戦闘を続けていることが伺え得た。

 

「……エステル、これ以上は無理だよ。魔法力もほとんど残ってない」

 

 普段は戦闘中でも面倒くさがりなネフィは真剣な表情を崩さずにエステルに向かって言葉を投げかける。それの意味を理解しているエステルは、いまの戦況のどうしようもない現実に苦悶の表情を浮かべる。

 

「でも…でもでも!? ……ここで私たちが退いたら避難してる人たちが」

 

「エステル!……もうこの街に居るのはネウロイ、だけだよ」

 

 現実を伝えるように見せるように、ネフィの指さす先には、都市の中央に撃ち込まれた巨大な塔。そこからは人が生身では生きていけない毒ガスが垂れ流され、街の殆どに広がっていた。

 数百万を誇る人口の街は火の手が上がり、毒によって人の気配さえ感じられない。既にこの街はネウロイの手中に落ちていた。

 

 この街で暮らし戦ってきた、いつか戦争が終わればさらに活気が溢れたかもしれない、エステルは怒りと悲しみに呑み込まれてしまいたい感情に、必死で抗う。側には危険を承知でいまも一生に居てくれるネフィがいる。だから逃げることを、選択した。

 

 

□■□■□■□

 

 

 

炎上する街から撤退を選んだ二人は、友軍の撤退先の基地に向けて夜の空を飛行していた。既に魔法力の殆どを感情任せに使い切ったエステルをネフィが支えながら、背後には小さくなった燃える街が刻々と輝いていた。

 

 

 

「ねえ、ネフィ……デリー燃えちゃったね」

 

 暗い内の感情がエステルの口から吐き出すように漏れ出した。

 

「昨日さ、街のみんな笑って果物を分けてくれたんだ」

 

 ネフィは静かにそれをしっかりと受け止めるように聞く。

 

「いつも、街を守ってくれてるお礼だって……ネフィの好きなオレンジの果物だって沢山、たくさん渡して、くれたんだ」

 

「うん」

 

「小さな女の子が私に憧れてて、ウィッチになるって」

 

 肩を震わせ、歯を食いしばり、頬を滴が流れていく。

 

「…うん」

 

「わだ、わたじ、みんなを、ひぐっ、守れなかっだあ」

 

 ダムが決壊するようにエステルからは溢れんばかりの悲しみが涙となって溢れ出す、ネフィは強く、強くエステルを支え、拳を震わせ、必死に耐える。

 

 街から遠くなるほどそれは躊躇に現われた......

 

 

 

 

 勝者がいれば敗者もいる。

 

 この日、インド北部の要衝であったデリーが僅か半日で、陥落する。この結果いくつかの国では政変が起き、本格的なネウロイとの戦いへと動き出した。

 

 しかし余りにも遅すぎたのだった。

 




次も恐らく来月。ああ夏が終わる


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第二章 インドシナ攻防戦
第30話 春季攻勢 前編


 

 1964年3月 インドシナ連邦サイゴン

 

 サイゴンはインドシナ一帯の人類最大の拠点であり、この地域で唯一の無傷な港湾設備が存在する。そのためこの都市が一度攻撃の憂き目に遭うことがあればインドシナの前線が崩壊することにもなり得る場所だった。昨年のボルネオ島北部を奪還する作戦もこの都市への海路を確保するために実施された。

 

それだけの要衝は、今危機的な状況に晒されていた。

 

「それで、方面軍司令部はなんと言ってきている」

 

 通信機器が設置された一つの天幕の中で女性士官が通信士に問いかけていた。

 

「ハッ、現有戦力の総力を持って死守せよ、とのことです……」

 

「上は状況が分かって言っているのか」

 

 苛立ちを隠さない女性士官それも大尉という上官に詰め寄られる哀れな伍長。彼は一介の通信士に過ぎず伝えられたことしか答えようがない、上官に逆らうことができない彼は、美人な女性士官に間近まで詰め寄られる幸運と不運。その板挟みに青い顔しながら頬を赤らめるという複雑な表情を披露していた。

 

「全前線で攻勢が起きているということか、航空支援はどうだ」

「インドシナの北部前線すべての支援に出払っているようで、第514戦闘飛行隊が航空支援に当たると……」

「回転翼機だけの部隊か、航空優勢は取れていない現状では役立たず同然だ」

 

 インドシナ全域の連合軍側の航空戦力は制空権を奪われないように維持するだけの航空戦力しか配備されていなかった。

 

「……パラワン島の航空隊はどうだ、すぐ繋いでくれ」

「司令部を無視して支援を要請するのですか!?」

「そうだ、第1にこの都市が落ちてみろ、それだけでインドシナにいる200万近い戦力が消えることになるぞ」

 

 女性士官の鬼気迫る言葉に通信士の伍長は、急ぎパラワン島北部連合軍基地に通信を繋いだ。

 

 

 そのパラワン島基地では、警報音が鳴り響きリオとシアの2人が緊急発進の最中だった。

 

「魔道エンジンの確認よし、すぐ出るよ」

「ん、すぐに出る」

「よしわかった、お前ら格納庫開けろウィッチが出るぞ!」

 

 整備班長が叫ぶと狭い格納庫内のドタバタは更に激しくなり、入口付近が開ける。リオとシアはすぐさまホバリング状態で格納庫を出ると、滑走路に止まらずに進出。管制塔への連絡もせずにそのまま加速して離陸した。

 

「今日は一段と慌ただしいですね班長」

「そりゃお前、100機を超えるネウロイの大群がこっちに来ているのだから当然だろうよ、それよりサボってないでさっさと機材を地下に運べ、すぐさまネウロイがわんさか来るぞ!」

「ひぃい、了解」

 

 整備班長は話しかけてきた部下を叱ると次の作業をさせる。すでにこの基地に向けて迫る空襲に備える為にだ。

 帽子のつばを持って最近薄くなってきた頭部を撫でつつ、帽子を被り直す。自身の気を引き締める行動だった。

 

 

基地の管制塔内では基地司令のルティ・ラウフェイ大佐が地図を眺めて状況の確認をおこなっていた。

 

「敵はパラワン島本島から北西と南西の2カ所から接近中、リオ少尉とシア少尉の2人は指示通り北西の敵への迎撃に向かわせています」

「南西の敵の予想到着時刻はどうだ」

「約30分ほどです、北西2人の接敵が10分後」

 

 部下の手によって地図に2つのマークが刻み込まれていく。

 

「敵の数は北西が40、南西が60です」

「リベリオン第7艦隊と扶桑第2機動艦隊は」

「スールー海から第7艦隊の第5航空団より第21戦闘飛行隊が、第2機動艦隊より第634、632海軍航空隊がそれぞれ援軍を出しています」

 

 第7艦隊はリベリオンの太平洋における主力艦隊であり、扶桑より再編された第2機動艦隊とスールー海で演習をしていた。

扶桑の第2機動艦隊は空母出雲を失い空母三雲だけになった扶桑派遣艦隊を再編、新たに購入したエセックス級空母八雲を加え、三雲、八雲で第4航空戦隊編成、更に新造艦の空母浅間、常磐、近代化改修を施した大鳳の第3航空戦隊を編成し、この2つの航空戦隊で第3艦隊を編成、戦艦2隻を介する第2艦隊を加えた空母5隻戦艦2隻によって編成されたのが第2機動艦隊だ。リベリオンの本格介入に合わせて扶桑もできる限りの戦力を用意した。

 

「呉田大尉達の634空か、大尉達は信用出来るが、632空は新編された部隊と聞くどれだけやれるのやら」

「ですが、扶桑が貴重な新兵を送るとは思えないのですがそれなりに戦えるのでは」

「どうだろうな、扶桑海の戦況は苦戦していると聞いている。ベテランの消耗は激しいはずだ、ウィッチも一線級は引き抜く訳にはいかんだろう。呉田大尉クラスのベテランを1人送るだけで精一杯だったことを考えるとな」

 

 扶桑の艦隊派遣時の裏事情をとある中尉から聞いていたルティ・ラウフェイ大佐。恐らく今回も壮絶に揉めたことは容易に想像できていた。故に新たな航空隊の練度には大した期待していなかった。

 



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