柱島泊地の風便り (風間正章)
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プロローグ

「だ~か~ら~」

ウザイとばかり、ため息と共に振り返る。

ピンクの髪に、均整の取れた顔立ち。

歳の頃は二十前半位か。

油が、鼻の頭に少し付いているが意外にそれが彼女の魅力を引き立てている。

「何度言われてもダメです。」

困り果てた表情で、彼女は言った。

彼女の名前は、明石。

この工場の責任者で有る。

明石「提督、貴方が何を企んで要るかお見通しですからね。」

スパナを右手に腕組みをして、言い放った。

明石の視線の先には、ゲッとなり小さくなっている男が居た。

提督と言われた男は、歳は五十代なのだが幾分は若く見えなくもない。

男の名前は、風間。

この柱島泊地の総責任者で有る。

風間「そんな事、言わないでさ。頼むよ。」

手を合わせて拝む。

風間「唯でとは、言わない。」

そう言って、明石にチケットを示した。

チケットには、間宮無料引換券と記されている。

明石は、目を輝かせ身をのり出したがグッと堪えてそっぽを向いた。

その間々の姿勢で、チラッと横目でチケットと提督の顔を見た。

明石「駄目ですからね。その手には乗りませんよ。」

ふう~んと、風間は目を細めた。

行ける。

この間々押せば、行ける。

そう確信して、更に畳み掛ける。

風間「絶対に、迷惑は掛けないからさ。頼むよ。ね。」

明石も、う~んとなっている。

風間「急いで作ってとは言わない。作業の片手間で良いからさ。」

その時、背後から声が発せられた。

「片手間で、何を頼んでいるんですか?提督。」

風間は、ビクッとなり。

背後に目を向けた。

そこには、青い髪の少女がプンプンした顔で睨んでいる。

「( ̄▽ ̄;)」

風間は、固まり。

風間「いや~、別に。」

と、乾いた声で答えた。

青い髪の少女。

名前は、五月雨。

歳の頃は、10代後半位

青い髪も、地面に届く程の長さで有る。

そして、この柱島泊地の筆頭書記艦でも有る。

五月雨「明石さんの邪魔をしたら駄目じゃないですか。」

五月雨に言われ、風間は益々固まった。

五月雨「書類決裁が、まだ有るんですから。さっさと仕事して下さい。」

風間「別に、邪魔をしてる訳では」と、言い掛けて風間は黙った。

「は~い」と、項垂れて。

五月雨に肩を掴まれ、執務室に戻された。

「提督、お気持ちは嬉しいですが。邪魔ですからね。」

五月雨に、釘を刺された。

「邪魔って。」

更に、五月雨が畳み掛けて来る。

「提督用の外洋脚部ユニットの作製は、明石さんに私から駄目と言ってますからね。」

メッ、とばかり睨まれた。

冗談で返そうかと思った。

しかし、可愛い表情の中で瞳は笑っていなかった。

「はい」

と、風間は項垂れた。

 

ここは、柱島泊地。

深海棲艦と人類の戦いの最前線の一つで有る。

先端が開かれて、既に9年。

何時終わるのか、解らない戦争の物語。

 

 

 



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提督の役目その壱

執務室に半ば、引き摺る様に押し込まれたのは。

この柱島泊地の総責任者にして、最上階級の人物で有る。

風間提督は、床の上に正座で小さくなった。

「提督、何度も言ってますけど。」

メッと、五月雨に諭すかの如く言われ始めた。

二人の関係を知らない人が見たら。

父親が娘に、怒られている様に見える光景で有る。

又、関係性から見ても風間の方が上官なのだが。

完全に、主客転倒している。

そして、五月雨の左手薬指には輝く指輪が見える。

風間の左手薬指にもだ。

この関係からだと、尻に敷かれているとも見える。

泊地の他の艦娘達からも、そんな感じで認識されているのも事実だが、風間にも其処は反論したいのだが。

しかして、現実はその通りなので有る。

「でもさ、ここのモニターで指揮するより戦場で指揮した方が、細かい指示出せるし。」

「それに・・・」

「でもさでも、それにでもない‼️」

五月雨にピシャリと言われて、風間は黙った。

「明石さんには、私から禁止だと命令として言って起きます。」

ウッと、呻く風間に追い込む様に五月雨は続ける。

「只の人間の提督が、戦場海域に居て流れ弾に当たったらミンチに成ります。」

「それに、提督を護衛する余計な戦力や気力。」

「指揮官が負傷して、指揮取れ無くなった艦隊はどうなると思いますか?」

一々正論で、返す言葉がない。

「はい」と、項垂れると。

五月雨は、しょうがないなと苦笑して。

この話しは、ここまでと打ち切った。

「御茶を入れますから、書類の決裁をお願いします。」

風間は、部下たる艦娘に注意叱責する時は後を引かない様に心掛けているのだが、五月雨もそれに習っている。

床の上から、自分の席に移動し机上の書類を見る。

五月雨が手際よく纏めくれるので仕事は捗るのだが、色々と激務では有る。

 

深海棲艦との戦争に突入し、世界情勢が一変し日本も否応なしに対応しないと成らない状況となっている昨今。

今の状態を説明したい。

この柱島泊地は、日本国防衛省海上自衛隊に所属する泊地で有る。

従って、階級が存在する。

提督で有る風間は大将(だいしょうと、読む)を拝命されている。

五月雨は、駆逐艦だが筆頭書記艦で中将となり。

他の配下艦娘の階級に付いては後程紹介する。

因みに、明石は工作艦で少将。

海上自衛隊なら、階級の呼称は旧軍扱いでは無く大将ならば海上幕僚長たる海将となる所だが。

差別化の為か旧軍階級で制服迄、旧軍の制服に階級章で有る。

自衛隊にも、この階級で扱われる為。

風間が、自衛隊に出向く時など隊員にビシッと敬礼をされる。

風間自身は、民間時代に警備員を経験して居たので敬礼や回れ右等の初動は出来るが、一般人の民間から提督になった人物は色々と大変で有る。

しかし、階級だけの話しなので命令権は配下の艦娘にのみ適応となり、自衛隊に対する階級上の命令権は無い。

又、柱島泊地にも風間の艦隊以外にも多数の艦隊が有り。

各々に、艦娘が存在している。

例えば、五月雨も他にも存在し艦隊に寄っては複数人存在するので有る。

そして、外見的には同じだが個々人は結構性格的に違いが有って十人十色となっている。

その艦隊が、自衛隊の統制の元。

深海棲艦と戦闘を続けているだ。

 

深海棲艦が、発生してから海上封鎖状態に近く。

制空権も、深海棲艦のエリアでは相手の物で。

世界的に、各国が分断されて孤立化去れている。

海底ケーブル等は寸断されて下り。

衛星通信もジャミングされ、かなり難しい。

深海棲艦のエリアは、何故か海面が赤く染まっているので視覚的に良く解る。

だが、素人目では赤潮なのか判断が難しい。

 

深海棲艦が、何故海域を占有し各国の分断を計り戦闘と成るのかは不明な点が多く。

目的も不明の為、対応も後手に回っている感じで現状は膠着状態。

戦闘後に、鹵獲しようとしても。

破片程度しか、残らない上に。

撃沈した後を探しても死体もないのである。

だが、珠に艦娘がその地点で発見されるのだ。

 

発見された艦娘は、敵対行為が無い為に救助の上で処遇を決める。



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提督の役目その弐

せっせと、目の前の書類に決裁印を押す。

しかし、作業効率向上の為の。

決裁印の廃止の話しは、どうなっているのだろうか?

政府には、お役所仕事丸出しの作業をどうにかしてもらいたいものだ。

と、愚痴っても。

この泊地も、お役所その物なのだから。

「提督、御茶が入りました。」

と、五月雨の声に。

フッと、顔を上げると視界に湯飲みが迫って来ていた。

(あ~、俺の湯飲みか。五月雨が入れてくれたんだな。)

(しかし、何故に湯飲みが視界に迫って来ているのか?)

(良く見たら、何だかスローモーションの様な速度だなぁ。)

と、認識した瞬間。

ドカッと、いった感じで湯飲みが顔面に届けられた。

(( ̄▽ ̄;)暖かいな~)

と、感じたのと。

衝撃が、顔面を伝い脳髄に届けられた。

「キャー、提督‼️」

の、五月雨の叫びを聞き取り。

又、五月雨が湯飲みを机に置く時にドジこいたな。

と、思った。

ここまでが、時間にしたら1秒無い位かなと。

 

戦闘海域で、深海棲艦が鹵獲される事はない。

代わりに、何故か艦娘が救助される。

この事態は、何を物語るのだろうか?

救助された艦娘は、受け答えは出来る。

身体的な欠損も無く、艤装も装備している。

しかし、救助以前の記憶は無く。

聞き取り調査をしても何も出て来ない。

日本政府も、深海棲艦に対応する戦力が枯渇状態の為に。

この救助した、艦娘を戦力に取り入れる方針で現在に至る。

 

ガシッと、顔面にぶつかった瞬間に両手で湯飲みを押さえた。

「( ̄▽ ̄;)」

「あちー‼️」

と、一騒ぎして机に湯飲みを置いた。

「提督‼️大丈夫ですか?」

五月雨が、布巾を片手に駆け付けた。

「良かった。書類は濡れませんでしたね。」

机上の書類を布巾で触りながら五月雨が呟く。

「心配は、書類の方か?」

「やだな~。提督が一番ですよ。」

おい‼️と、心の中で突っ込みを入れた。

「今日も、やってくれたな。」

五月雨のドジは、毎度の事で最近は馴れて来たのだが。

色々と、やらかしてくれるのだ。

 

深海棲艦。

様々な、タイプが確認されている。

海域を占有すると、侵入する物に敵対行為を行う。

占有された、海域は徐々に過大するので日々の出撃でこれを押さえているのが現状。

この出撃行為を、ディリー任務と呼称している。

そして、任務にはディリー・ウィークリー・マンスリー等の任務が存在している。

年に複数回、大規模反撃作戦が展開されて。

これを、イベントと呼称している。

イベント作戦で、海域を奪回しても。

作戦海域以外が、侵略されたりとイタチごっこが9年近く続き。

終わりが見えない戦争となっている。

 

「五月雨さん、今回は一瞬ヤバイと思ったんだが。 」

鼻血をハンカチで押さえながら。

正面で、テヘッとなっている秘書艦殿を睨んだ。

「提督、駄目ですよ。そんな顔したら。」

「嫌われますよ。」

この秘書艦わ‼️



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提督の役目その参

「提督、最近の書類に民間企業の案件が多いのは?」

何故ですか?と、小首傾けて五月雨が聞いて来た。

「ここは、鎮守府ではなくて泊地だからね。」

「皆のレクレーション施設等が設置出来ない。」

「割安で民間の施設の使用許可等を取り付けてるんだ。」

柱島泊地は、広島県の呉に有る。

ジムやら飲食店やらの施設使用を自衛隊を通じて広島県に掛け合い許可を受け始めた。

何故に海上自衛隊の施設を使用しないのか。

風間や配下の艦娘も、自衛隊隊員の扱いに準じている。

当然、施設使用も可能で有るが。

自衛隊の配下組織で有っても、色々とギクシャクしている部分も有るのだ。

風間自身の一番の狙いは、艦娘自身の目で。

現在自分達の守っている物が何かを見て。

各々で、考えて貰えればと思案したからでもある。

提督自身は、戦場海域に出る事は無い。

執務室等で、作戦の指示を出し。

(出撃する艦娘の選出。装備する兵装の選択。)

戦闘の推移を見守り。

(モニターに、戦場海域の状況が処理されて投影される。)

(左側に艦娘。右側に深海棲艦。)

(このパターンで投影処理され、被害状態が数値化されて反映される。)

(提督は、此から自軍の損害状態を判断して作戦の成否を判断する。)

(海域からの進退決定も、此から判断するので、間違えると艦娘の戦死を招く事態に成りかねない。)

(モニター上に、簡易的に投影されているだけなので、実際の戦闘は乱戦状態の殴り合いと化している場合が多い。)

こんな感じで、戦場の指揮を取っているので。

一般人からの提督登用が、成り立っているのも理由の一つであり。

此では、ゲーム感覚となり。

戦場の状況を理解しようと(出来ない?)しない提督が乱立し、艦娘をゲームのコマ程度に考えない等の問題が発生している。

戦争で有るからコマとして、見て下さい。

と、言われた事も有るが。

風間自身に、その思考は無い。

自己の生命は大事に、してもらいたいものだ。

更に、現在自分達で守っている物と記したが。

艦娘は、大東亜戦争時代の記憶を持っている。

80年近く前の日本と現在の日本を間近で体感して、貰いたい為の措置でも有る。

そんな事は、五月雨に語りはしない。

あくまでも、福利厚生の一環であると説明した。

「はぁ」

目をパチクリしながら、五月雨は。

「ありがとうございます。」

と、礼の言葉を述べて。

「色々と、考えくれているんですね。」

と、続いた。

「こんな場所から、指揮してるからね。」

「裏方で、皆を支えるのも役目だよ。」

五月雨は、嬉しそうな表情をして。

決裁の終わった書類を纏めて執務室を出ていった。

 



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提督の役目その肆

風間が提督を拝命したのが、平成27年9月で。

前々職の会社が地方移転となり、リストラされ。

翌年の平成27年4月に警備会社に再就職したばかりの時に。

深海棲艦の進行が激しくなり、戦線維持と反転攻勢を狙ったからなのか。

柱島泊地に、新たな艦隊を編成する為の提督の一人として呼び出された。

確か、就職活動の一つとして書類出してたな。( ̄▽ ̄;)

警備会社に、話したら。

「お国の為に、断腸の思いで。風間警備士を送り出す。」

「確りと、御奉公して下さい。」

と、送り出された。

まぁ、配属初日から警備本部とやり合っていたので。

警備会社としては、渡りに船となった。

(因み、一部ノンフィクションで有る。)

市ヶ谷に集合と成り、その時に提督としての座学を受けた。

拝命した、階級に驚いたが俸給にも驚いた。

まぁ、当然だが。

提督として受け取る有難い俸給の額は、階級の将の額では無く、2士の額となっていた。

ん~。( ̄▽ ̄;)

無いより良いが、国防の最前線で指揮取るんだよな。

まさか、槍持って深海棲艦に特攻するのが役目なのかと思った。

宣誓書にサインをして。

(今更、嫌ですとは言えない空気が室内を満たしていたのもあるが。)

74式特大トラックに追い立てられる様に乗せられ。

航空自衛隊入間基地で、C-1に詰め込まれる様にして。

(空路は、内陸部を飛行しながら)

海上自衛隊岩国航空基地に着陸。

呉地方総監部に、輸送された。

講堂に集められて。

ここで制服等の装備を支給され。

(アレ?海自の制服じやない、海軍の制服だ。( ̄▽ ̄;))

と、成り。

この場所で待機と言われ。

席に座り、うつ向いた。

(何だか、ウムを言わさない感じで連れて来られたな。)

暫くして。

「御待たせしました。風間提督ですね。」

「御迎えに上がりました。」

「風間提督の秘書艦を拝命致しました、五月雨と申します。」

ヘっ?( ̄▽ ̄;)

正面に、ビシッと敬礼をした。

青髪の少女が立っていた。

ハッと成り、急いで立ち上がり。

敬礼を返す。

此方ですと、五月雨が荷物を持って進み出した後を追いかけた。

廊下を進み、玄関を出て。

正面の港に向かい。

そこに、係留されている内火艇に乗せられた。

五月雨が、内火艇の乗員にお願いします。と伝え。

内火艇は離岸した。

「あの~、どちらへ?」

五月雨は、ニコリと笑い。

「私達の司令部です。」

到着迄に時間が有るとの事で、五月雨から今後のスケジュールや提督業務等の説明を受けた。

到着迄、二時間半程かかった。( ̄▽ ̄;)

「此方です。」

と、五月雨は海上にプカプカと浮かぶ、小舟に内火艇から乗り移った。

なんじゃ?( ̄▽ ̄;)

30メートル程度の小舟で、ヨットとは違うがそんな感じの物。

これが、柱島泊地風間艦隊の旗艦となり我が司令部と成る訳だ。

 



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提督の役目その伍

そんな感じで、着任の上。

無事に島流し?( ̄▽ ̄;)

と、なった。

「確か、秘書艦は五人の中から選べるとなっているんだけど?」

五月雨に確認した所。

「私が志願したんです。」

「嫌ですか?」

と、言われた。

多分、五月雨を使命しただろうから問題は無いが。

また、何故?

で、有る。

「提督は、この艦から指揮を取って下さい。」

「私達の司令部です。」

余りにも、小さいんだが。( ̄▽ ̄;)

「他の人達は?」

「此から、提督が集めるんですよ。」

「普段は、私達の宿舎にて待機してもらう事に成りますけどね。」

呉周辺に、他の艦隊の人員もだが、宿舎施設が点在しているとの事だ。

「この子は、小さいから。普段乗り組んでいるのは、提督と私。」

「後は、2~3人位が居る感じで。」

「それ以外は、出撃か遠征か。」

「非番で、内陸で待機ですね。」

ほ~。( ̄▽ ̄;)

この艦で、俺と五月雨の二人切りか。

「提督、これ解りますか?」

五月雨は、鉄パイプを持っていた。

クニャッと、軽く曲げて見せた。

「はい、解りました。( ̄▽ ̄;)」

と、乾いた声が出た。

「時に、五月雨さん?」

「五月雨と呼んで下さいね。提督」

(^_^;)

「五月雨さん、あの~」

ジト目で此方を見た五月雨で有るが。

フ~と、タメ息をはいた。

「何ですか?提督」

「俺、内陸に戻る時はどうするの?」

「内火艇を呼ぶか、ご自分でカッター漕ぐか、泳いで行くか」

「あ~、マジですか?」

「大丈夫です‼️お急ぎの時は、私が背負って行きますから。」

実際、緊急時は海自がヘリ飛ばしてくれますけどね。

簡単な調理位は、ここでも出来るので。

お料理なら、任せて下さいと五月雨は張り切ってくれるのだが。

比叡や磯風の料理の腕前が、対深海棲艦クラスと言われているが。

五月雨の戦時中のエピソードに、真面目にメシ不味のエピソードが有りまして。( ̄▽ ̄;)

尚、磯風の史実では料理美味しいエピソードなんだけど。

艦娘では何故?

そんな感じで、風間艦隊始動となった。

艦娘も、出撃の最は自衛隊のヘリで海域付近迄空輸される。

遠方の場合は、護衛艦に乗艦して向かう。

指揮を取る風間は、安全な所でモニター見つめて艦隊の進退指示するだけと。

申し訳なくなって来るんだけど。( ̄▽ ̄;)

 

大破した、五月雨達を入渠施設の有る港で出迎えた時は言葉も一瞬出なかった。

手足が千切れていたり、一部骨が見えている状態で担ぎ込まれる。

「ごめんなさい、ドジしちゃいました。」

と、血まみれで五月雨に言われて。

風間の方が。

「すまない。」

と、乾いた声で詫びるばかりで有る。



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提督の役目その陸

手足が千切れ、内臓も露出した状態で担ぎ込まれ。

それでも、入渠施設を使用すれば艦娘はもと通り身体に治る。

驚異の再生力で有る。

身体も、血が巡っている。

体温も有る。

我々、人間と何ら変わる所は無い。

それでも、艦娘は人類と似て非なる部分も有る。

入渠施設は、通称バケツ呼称される高速修復剤を薄めた液体で満たされた浴槽状の施設となっている。

負傷した艦娘をこれに、横たえていれば欠損部位も時間を掛ければ修復再生するのである。

初めて入渠状態を見た時は、唖然とした。

「え?」

なんなの?

軽症程度の負傷なら、ス~ッと治って行く。

言葉も無く見ていたら。

顔面に、衝撃が炸裂した。

覚えている光景は、涙で歪んだ視野に顔を真っ赤にした怒りの五月雨さんでしたが。

とにもかくにも、提督の役目は誰にでも出来るのだ。

システムを整備して管理運営が出来る様にしたのは見事だと言える。

「こうなると、自衛隊員だけでは人数不足で民間からも公募となったのか?。」

後、俺のやれる事は艦娘の環境を整える事位かなと成る訳だ。

一人の提督が、指揮を取るのは四個艦隊で最大25名と成る。

一個艦隊は、6名編成だが。

第3艦隊だけは、7名編成の時が有る。

残りの艦娘は、入渠中でも無ければ非番と成る為。

待機状態であるから。

出来る限り、自由に過ごさせたい。

福利厚生を整える算段を書類に纏めて上層部に提出した。

呉総監部に書類を出したら、呼び出された。

貴官の感知する事では無いと言われた。

部下の健康面やメンタル管理は誰がやる?

上官たる、提督の仕事ですよね。

艦娘の生活環境や民間との対応等は、どの様にお考えか?と問いた。

「貴官の職責に、そこまで求めてはおらん。」

は~、そうですかとは思ったが予想した受け答え。

「だが、呉市市長から似た様な意見書が来ているのだが。」

「貴官、何かしたのか?」

さ~と、小首を傾げてみた。

これを起点に、環境整備が進み始めるのだが。

形に、なる迄は数年掛かる。

 

深海棲艦が現れてから、海上封鎖状態となり空路も海上を移動する場合も襲撃される。

国家間の流通は、保々止まった状態。

当然、輸入輸出・旅行等の動きは停滞している。

因み、中国大陸で謎のウィルスが発生しているらしいが。

日本国内での発生は確認されていない。

皮肉な事だが、深海棲艦に分断されているのが良い方向になってしまっている。

だが、対岸の火事と放置する訳にも行かない。

中国大陸に、深海棲艦の占有海域を突破し。

ウィルスのサンプルを日本国内に持ち帰り。

ワクチン研究のミッションが発動されていたと、後に知る事となったが。

それは、別の話しとなる。

 

 



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傾聴

艦娘は、軍艦時代の記憶を宿している。

しかし、実際の所はかなり断片的で曖昧である。

歴史学者達が研究の為に、聞き取り調査を行ったが。

使える程度の話しは、殆ど無いと言う。

 

風間の艦隊では、出来る限り艦娘と傾聴を定期的に行う様に努力している。

傾聴とは、個人面談で有る。

有る日、満潮の傾聴時の事。

「あんたさ、私達を非番の時にかなり自由に行動させてるけど大丈夫なの?」

「ん?どした?」

「他の艦隊では、うちの艦隊殆ど自由にはさせて無いんどけど。」

「あ、そうなの?」

「だいたい、何を狙っている訳?」

「満潮達自身が守っている世界を、見てもらいたくてさ。」

ふぅ~んと、なって満潮は答えた。

「前大戦時代、私達が命掛けで戦って。必死に守った。それでも負けた。」

満潮は、俯いて。

絞り出す様に話している。

「敗戦後の情けない、こんな国にする為じゃない。」

「バカ見たいな、平和ボケ。」

小刻みに、肩が震えているのが解る。

「今だって、深海棲艦との戦争中なのに。他人事で勝手な事ばかり言ってる。」

「バカじゃないの。」

声を張り上げた満潮に、俺は何と答えるべきか。

内心、冷や汗で唸っていたら。

満潮は、堪え切れなくなり大声で笑い出した。

「受ける。何をマジな顔してるのよ。」

「ホント、バカじゃない。」

お腹を抑えて、笑い転げた。

「別に平和ボケ、上等じゃない。」

「私達は、皆が平和に安心して過ごせる様に頑張って戦った。」

「ボケてる位で、良いじゃない。」

「今だって、深海棲艦が他人事見たいな人が居るんだから。」

満潮は、あ~お腹痛いと涙を拭って笑いを押し込めた。

「あんた、そんなに私達に気を使っていたら持たなくなるわよ。」

笑えた笑えたと、満潮は席を立って部屋を出た。

ボソッと、小さく。

ありがとうと呟いたが、誰にも聞こえてはいなかった。

 

深海棲艦は、占領海域を拡張しているが。

地上に上陸はしてこない。

離島等に、姫クラスの深海棲艦が存在しているのは報告が有るが。

日本の陸上に対しては、流れ弾と深海棲艦側の艦載機からの被害しか確認されていない。

それも、海岸線周辺で有る。

深海棲艦には、通常兵器での攻撃は殆ど有効性が認められない。

だが、当たり処に寄ればグラついたり。

足元を狙って、ひっくり返し撤退させた事例も有るが。

自衛隊側の被害は甚大で有った。

核攻撃は、有効なのだろうか?との議論も有った様だが。

現状、核攻撃を行った様子は報告も確認もされていない。

北朝鮮が、散発的にミサイルを発射している兆候が認められているらしいが。

どうも、深海棲艦側に迎撃されているらしいとの情報が上げられている。

深海棲艦発生の初期段階で、日本に駐留していた米第七艦隊も太平洋上に出撃して音信不通。

現在、米駐留残存兵力だけでは施設に空白地が出来る為に艦娘の艦隊が展開している。

 

 



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艤装

艤装とは、艦娘が深海棲艦との戦いに使用する武器の総称で有る。

サイズは、等身大となるので。

例えば、大和型の46センチ口径の主砲口径も等身大に合わせたスケールにダウンされている為、46センチ有る訳では無い。

だが、その破壊力は桁違いで護衛艦を撃沈する位は容易い。

 

風間も、試しに艤装を装備した事が有るが。

駆逐艦の艤装でも背負った瞬間に腰と膝が笑った。

「提督?大丈夫ですか?」

不安げに、明石が聞いて来る。

風間は、声も出ない状態で。

冷や汗だらけの笑顔を明石に向けた。

苦笑しながら、明石が艤装を外してくれた。

「これ、燃料弾薬入れて無いんですけど。」

明石の声が、アララと言う感じで聞こえた。

ふらふらと膝を着いた。

「君達、凄いんだね。」

まぁと、明石が答える。

「次は、脚部の艤装を試したい。」

「では、表の海面で。」

この日は非番だった、霞と曙が頼んでも居ないのに来ていた。

主席秘書艦の五月雨は役目で、市ヶ谷に行っている為不在。

五月雨が居たら、こんな事は出来ないと思う。

脚部にユニットを装置し、霞と曙に両側を支えて貰い海面に直立したが。

二人が離れた瞬間、前にビタンと倒れた。

海面をジタバタ蠢いていると、二人に助け起こされ。

霞がジト目で。

「あんたね。」

「ごめん、次は立つから。」

で、二人が離れると後にビタンと倒れた。

二人共、ハ~と息を吐く。

「ご、ごめん。次は立つから。」

確か、海面に降りたのは1100位の時間だったかと。

今は、海面が赤く染まり始めている。

深海棲艦のテリトリーが迫って来た訳ではなく。

夕日と成り始めたのだ。

こんなに、海面でバランスを保つのが難しいとは思わなかったが。

何とか、海面に直立出来ている。

霞も曙も、最初の頃は文句言っていたが。

途中からは、アドバイスを入れながら。

付き合ってくれている。

「やれば出来るじゃない。」

と、霞がウィンクしながら言って来た。

その直後、霞は顔を赤らめて。

ふ~んと、なっている曙に何よと喰ってかかった。

その二人を尻目に。

風間は、脚部ユニットを前進モードに入れた。

「ア‼️」

と、曙が気付いた瞬間。

風間は、ギュンと加速していた。

ヤバイと感じました。

確かに前進モードに入れましたが、あんなに急加速となるとは。

この速度でバランス崩したら海面に叩き付けられてミンチかも知れない。

と、後に風間は語っている。

風間の腰に横から腕が絡み。

ヒョイと行った感じで身体が抱えられて止まった。

ふ~と、息を吐いて。

「助かった、ありがとう。」

と、助けてくれた腕から顔を見た。

「御礼なら、あの娘に言って下さいね。」

と、古鷹が答えた。

え?( ̄▽ ̄;)

となり、岸壁に笑顔の五月雨を確認した風間はこの後の事が脳裏に浮かんだ。

 

艤装整備は、通称妖精と呼ばれている小人さん達が行っている。

いきなり、キチガイの様な話しをするなと言われても困る。

俺も、何を言っているか解らない。

と、後に風間は語った。

生産等もだが、明石が中心に作業が成される。

艦載機のパイロットも、妖精さんで。

もう、今日は何を言っているんだろうか?

 

 



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玩具の艦隊

深海棲艦が現れて、10年を向かえる時節となって来た。

深海棲艦のテリトリーたる、海域を奪還する大規模な作戦も年に複数回結構されている。

インド洋から地中海海域迄、何度か赤くなった海面を青く染め直した。

すると、日本近海が真紅に染まり。

慌てて、日本に戻り敵を押し返す。

当然、青く染め直した海域が再び真紅に染まり直すのである。

作戦が悪いのよ。

と、聞こえて来るのだが。

いたちごっこ状態で、結果的に成果は無い。

 

鎖国まっしぐらの現状で、何とか国内の産業を維持するべく様々な政策が国会で討議されている。

だが、最も有力な政策は民間事業者の火事場の馬鹿力にも等しい商工で有った。

風間の艦隊も、ディリー任務をこなすと。

一時的に海域の通行や漁協が可能となる。

呉周辺の漁協協会から、その間隙で大漁の時に。

御苦労様と、舟盛りが振る舞われる事が有る。

五月雨曰く、艦娘の皆が非番の時に呉周辺の住民達と交流を深めているのが大きいとの事。

「その辺を狙って、皆に自由に行動させているんでしょ。」

と、五月雨に言われたが。

「そこまで、嫌らしく無いよ。皆、愛想が良いんだね。」

どうなんだか?見たいな顔して五月雨が書類を纏めた。

実際問題、艦娘が周辺で消費行動を積極的に行う事で経済的な効果は低くないと見繕ったので、呉市長と御茶した時に割引対象でどうでしょうか?見たいな。

事は、言ったかな?

更に、自衛隊も対象で提案して貰い。

広島県庁を通して、広島県の議員さん提案として国会迄話しが通ったのが。

想定外の速さだったのが驚きでは有ったが。

艦船では無く、人体で。

しかも、妙齢の女性で構成されている。

艦娘の艦隊は、影で玩具の艦隊と言われている。

あまり、良い意味では無いが。

その玩具が存在しないと、状況はどうにも成らないのである。

玩具には、感情も有れば痛みも感じる。

我々と、変わる所は基本的には無い。

 

那加ちゃん48が、色々な意味で人気を博しているが。

政府も民間に対する広報の一環として、仕掛けている。

風間個人は、アップフロント贔屓では有る。

 

五月雨達の戦闘は、艤装から撮影されている。

モニター上では、簡易な表現で表わしているが。

実際は、接近迄は照会等で相手の正確な位置を視認して。

陣形を定めて接近。

艦載機や砲撃で、目標の撃滅を目指し。

最終的には、激突の上で肉弾戦になる事も多い。

艤装にて、相手を叩き伏せ。

殴り合いとなる。

格闘戦闘に海戦が移行した場合は、海上が血の海とかす。

 

 

 

 

 

 

 



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妖精さん

艦娘の周りに、小さな小人さんがチョロチョロしている光景を見る事が有る。

チョロチョロしているんだよ。

そうなんだよ。

すまん、本当に何の事なんだか?

 

風間艦隊の旗艦たる小舟の執務室に入室し、デスクの上にフィギュアが敬礼をしているのを見て。

可愛いものだ、五月雨が置いたんだなと思った。

椅子に座り、前を向くとフィギュアがチョロチョロと寄って来て書類を引っ張って来る。

良く出来たフィギュアだなぁ。

アレ?( ̄▽ ̄;)

なんだか、変じゃない?

周りを見渡すと、執務室のそこかしこに居る。

動くフィギュアが。

「ア⁉️」

身体が固まった。

ノックの音の後に、失礼しますと五月雨が入室してきた。

「提督、おはようございます。」

の後に、アワアワとなっている風間に。

「どうしたんですか?」

「五月雨、ごめん。俺、幻覚が見えてる。」

「フィギュアが、動き回っている様に見えるんだ。」

「この子達の事ですか?生きてますから。」

「生きているのか、そうか。」

もう、理解の水平線の向こう側の世界が展開しているのである。

この生きているフィギュア擬きの小人さん達が。

艤装を動かす為の乗員で、艦娘に必要不可欠な存在なのだ。

「そうなんだね。」

と、無理やり理解した。

理解するしか無いのだ。

この妖精さん達は、五月雨のフィギュア版みたいな子も居れば。

そうでない子も居て。

実に個性的で有る。

艤装員としての妖精さんやパイロットとしての妖精さん等一人一人見ていて楽しい。

と、風間は自分自身に強く落とし込む事で。

この妖精パニックを乗り切ったので有った。

風間艦隊は、現在艦娘の戦死が1名。

しかし、乗組員たる妖精さん達の戦死は、数え切れない。

艦載機が撃墜されて、パイロットたる妖精も脱出行動を行う。

艦娘の艤装に被弾したり、行動行為に寄って海上に落ちたりする事も有る。

海戦後には、艦娘総出で捜索を行う。

自分の妖精を発見する迄、海域を梃子でも動かない。

風間自身も、艦娘と同じく海面を這う様に探索を行う事も有る。

後方で、指揮するだけの免罪符もその行動には含まれているのも事実だが。

この探索は、自分自身の責務の一つと心得てもいるので当然の行動となる。

広大な海上で、妖精サイズの探索は困難を極める。

無事に、救助出来た時には安堵で身体の力がへなへなと抜けた事も有った。

しかし、どうしても探索を打ち切る時の指示出さなければ成らない時も有る。

その日の夜は、執務室のデスクで身体がガクガクと震えたものだ。

妖精達も、風間自身の指示で戦死となるのだから。

 



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深海棲艦

何故出現し。

何故海域を占有し。

何故戦わなければ成らないのか?

 

確かに、離島等の諸島系の島は海域を占有された事に依り連絡も通行も途絶。

もしくは、何とか連絡や通行が出来ている状況の昨今。

衛星通信も非常に困難となり。

海底ケーブルは、寸断されている。

海域を占有されている空中の制空権も取られている為に、航空機運航での連絡や輸送等もかなり限定された状況で行われている。

日本国内においては、北海道と本州は海峡を艦娘の集中展開で何とか流通が保たれ。

佐渡島、四国、九州迄は安定的に日本側が保持しているが。

九州から南方は、屋久島程度迄で。

沖縄への流通連絡は、寸断されている。

ここまでが、初期の段階で。

 

これに対し、反抗作戦を展開し。

現在は、北方は幌筵。

南東はショートランド。

西はリンガ。

迄、深海棲艦を後退させ日本の勢力圏を奪還した。

此により、この勢力圏の流通の為の海路と航路は何とか維持している。

その結果、戦線が拡大し。

戦線維持の為に、より多くの艦娘艦隊が必要となる。

艦娘の指揮を取る指揮官の数が不足と成り民間からも公募する事となった。

皮肉にも、大東亜戦争時の日本の最大勢力圏に近い図となったが。

 

風間は、自分ではかなり遠慮がちに防衛省に艦娘を絡めた福利厚生の方策を提案書として提出している。

其処に、地域の商工会議所や組合加盟組織等も巻き込んでの(時には、議員も巻き込んで)提案の為に防衛省も門前払いには、簡単に行え無い。

内需に依存しざる得ない経済状態の為に艦娘や自衛隊員の現地の消費活動は無視出来ない。

これが、地元受けするので日本全国に展開され始めている。

艦娘達も、地元や自分に縁の有る地域のキャンペーンガールに登用される等。

厭戦気分で、落ち込んでる民間に活力を与える切欠の一つともなった。

おまけに、防衛省からの提案との形を取って要るのもあり防衛大臣の立場が良くなっている。

 

玩具の艦隊を率いる、民間提督たる風間にあからさまに不快感を示す幹部も居るのだが。

その幹部から、言われ事が有った。

「お前らなど、選んだ覚えは無い。あの玩具供がお前らを選ぶので登用したまでだ。」

?( ̄▽ ̄;)

どうも、艦娘から我々は望まれて提督に成れているらしいのだ。

何故だ?

 

深海棲艦に、知性や意識は有るのか?

議論されている事項で有る。

風間個人の考えとしては、深海棲艦には知性も有れば。

戦略的な思想も有ると捉えている。

戦闘記録からも、深海棲艦が会話をしている様子が確認されている。

艦娘にも、戦闘中に語り掛けている場面も有るが。

この辺は、機密事項とされている。

 

 

 



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戦線

反抗作戦に寄り、基地や泊地を増やし深海棲艦を押し返した様に見えるが。

実際は違う。

地図上に日本側の占有海域が何処だとは断言できない。

深海棲艦は、普通に日本列島近海に出現している。

深海棲艦側の散発的な戦力の為に何とか押し返しているのが現状で、この辺は正に大本営発表となり。

日本国内には、大丈夫ですよ。

と、政府発信なので本当によろしくない。

東南アジア海域程度迄、辛うじて維持。

が、精一杯となる。

お隣の大陸には韓国にすら、行くのが難しいのだ。

何度か、海上航空で強行突破の往来が有り。

そのラインで、中国武漢でのパンデミックの情報が入る。

皮肉にも、深海棲艦による分断状態が吉となる。

深海棲艦様々となってしまった。

此により、日本海海域奪還作戦は凍結。

中国大陸に対するアクセスは禁止となる。

しかし、武漢のウイルス献体を入手する為の特攻作戦が自衛隊と在日米軍(残存)で実行される。

この作戦には、日本全体に展開している。

各艦隊から、選抜された提督と艦娘が投入された。

又、中国武漢のウイルス対策で、中国大陸に対する接触を禁止。

更に、中国大陸からの日本への強行渡航を監視し上陸を禁止。

東南アジア地域からの流入も想定されるので、現地への上陸や接触も厳禁とした。

(此にも、選抜された艦娘艦隊が自衛隊と海上保安庁と共に隠密任務で対応している。)

このエピソードを誰か書いて。

 

「最前線なんて、何処だ?」

「まぁ、海ではどこも繋がりますからね。」

ディリー任務の敵潜水艦を制圧せよ❗️

だって戦闘海域は、四国九州の沖合いで有る。

常に、深海棲艦の脅威は目前に迫って居るのだが。

海岸線程度に損害が有る程度な為に、内陸部に住む民間等は特にで有るが。

政府にも、楽観的な思想が蔓延傾向。

具体的な脅威が、ロシア・中国・北朝鮮から深海棲艦に代わっただけなのだが。

平和ボケ、極まりない。

おめでたい国が存在するのである。

ウィークリー任務の敵東方艦隊を撃滅せよ❗️が、全体で12回も施行するのは、インド洋海域の深海棲艦を追い散らした間隙に。

中東からの重油輸送のタンカー航路を確保する意味が有る為だ。

このタンカーの乗組員に武漢ウイルスの可能性有り得る為に深海棲艦とは別の意味で神経を使う事となっている。

 

「でも、トラック方面の圧は凄いだろうな。」

「普段は、海水浴してるそうですよ。」

「まぁ、緊張感ばかりでは張り摘めるからな。」

 

実際に、対応している当人も疲れる時も有る。

慢心は厳禁なのだが。

 

 

 



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戦闘

武漢ウイルスの潜入、神経を尖らせて対応を行っていたが。

まぁ、無理だよな。

やはり、日本国内での発症は確認された。

そちらの対策対応は、政府に任せて。

此方は、深海棲艦の対応に集中するのみと成るが。

提督達や自衛官、艦娘にも罹患する者が出ている。

当然、国内でも死者が発生する。

ワクチン献体作成の為にウイルスを中国武漢に突入し、深海棲艦の脅威から何とか日本国内に持ち帰り。

今度は、アメリカに幌筵からカムチャッカ半島伝いでアラスカ経由でワクチン作成。

このルートを逆に、日本にワクチン輸入と命からがらの手段を行使しているのだ。

(誰か書いて。)

 

戦闘の指揮は、モニターの情報から提督が判断して行われている。

先ず、戦闘海域に合わせた艦娘の選抜。

次に、戦闘に対応する装備を配備する。

近海で有れば、自衛隊のヘリで該当海域迄空中輸送の上。

付近の海域に、艦娘を降ろし。

戦闘海域に向かわせる。

遠方の場合は、護衛艦や第7艦隊の軍艦に乗り組み。

直接、艦から降りるか。

ヘリ等で、海域に降ろす。

戦闘の情報は、モニター上に簡素化されて表現されているが。

現実は、悲惨この上無い。

一例を上げれば。

瑞雲で潜水艦を攻撃に失敗した、伊勢が。

爆撃の爆圧で海面近くに、浮き上がって来た潜水艦に接近し。

海面に手を突っ込み。

潜水艦の1部を掴み、其のまま。

「どりゃ」と、空中に投げ上げて。

主砲を撃ち込み、空中で爆破したのだが。

モニター上では、伊勢からシュッと線が潜水艦に伸びて撃沈の表示となる。

他にも。

雪風だが、脚部ユニットの出力を微調整して海面の畝りを利用して空中にジャンプし、その勢いで深海棲艦を蹴り跳ばした事も有るのだ。

でも、モニターでは簡素に撃沈の表示だけ。

最近は、テレビ番組等で艦娘を題材にした番組で。

戦隊物や仮面ライダーのごとき、戦闘場面が描かれて居るのだが。

現実は、更に凄い。

当然こちら側が、被弾した場合も簡素化されている。

モニターには、小破・中波・大破と表示されているが。

現実は、手足が千切れたり内臓が見えている。

大破状態の艦娘が居る艦隊を、進軍させた場合。

その艦娘が戦死する場合が有る。

風間も、うっかりと進軍させてしまい。

利根を喪った事が有るのだ。

提督は、この大破進軍に細心の注意を払い。

指揮を行うのだが。

作戦成功の為に進軍を選択して、戦死させる提督も存在する。

戦争行為で有る。

だが、風間艦隊では行わないとしている。

利根を喪ったのは、トラウマレベルとなっている。

 



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脚部ユニット

明石が着任したのは、イベント海域での事で。

その後は艤装の改良・開発に大活躍してもらっている。

最も、明石にしか出来ないからなのだが。

 

風間は、明石に間宮の券やら酒やらと配りに配って。

やっとの事で、風間用の脚部ユニットを作って貰った。

何故なら。

 

そもそも、文字通り島流し状態の勤務地で有る風間艦隊の旗艦である小舟から内陸部に戻る為には幾つかの方法を選択しなければ成らない。

(この旗艦たる、小舟を動かす免許を持っていないのだ。)

 

1・海自の内火艇に乗せて貰う。

これは、事前に連絡してないと駄目で。

あまり、いい顔もされない。

2・自分で、ボートを漕いで帰る。

1度実行したが、2度とやらないと決めた。

3・泳いで帰る。

絶対に無理。

4・五月雨に、おぶって貰う。

確かに、五月雨は言っていた。

「私が、提督をおぶって行きます。」とね。

何度か、おぶって貰った。

正直、格好悪い。

それに、1度波の畝りで五月雨がよろけて。

思わず、しがみついたんだよ。

その時、両手のひらはとても柔らかい物に触れてしまい。

見事な、背負い投げで海面に頭から叩き浸けられた。

「キャー、提督」

と、五月雨の声を海中で聴きながら思った。

この方法も、アカンと。

他の艦娘に頼んだとしても、同じ様な事例が起きた場合。

人選によっては、命の保証が無い。

 

そこで、風間用脚部ユニットが必要と考えた訳。

艦娘用のだと、出力が凄過ぎて海面で、ミンチになりそうだし。

艤装は、各艦娘の専用で調整されているから。

非番で空いてる艤装を使う訳にも行かない。

明石さん、空いた時間で作成してくれました。

財布が軽くなったけどね。

柱島泊地だから、基本的に海面は穏やか。

それに、自由に行動出来るから。

内陸部に自由に行ける。

海面に、直立する所迄は出来ていたから。

後は、航行する練習するだけ。

五月雨は、最初渋い顔をしていたが。

「また、おっぱい触って。海に沈められたくない。」

と、言ったら。

練習に付き合ってくれた。

 

自由に行動出来る様になる迄は数日を様したが。

今は、穏やかな海面なら行動出来る。

で、更に考えた。

この風間用の脚部ユニットを外洋用に改良して貰い。

直接、艦隊の指揮を取れたら。

より細かい指示出せる。

この目で、深海棲艦を視認すれば判断基準も変わるだろうと。

で、最初の方で明石に頼んだのだが。

五月雨に、止められた。

確かに、海戦に出れば瞬間でミンチにされるだろう。

別の手を考えるとするか。

 

「明石、海戦でミンチに成らない様に防御ユニットを作って。」

「提督も、懲りない人ですね。」

 

 

 



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制服

風間の制服は、海自から旧海軍の制服を支給されている。

旧海軍だと、士官の制服はサイズ等はある程度カスタマイズする物だと言われて。

暫くして、自腹で制服作成する事になった。

後に知ったのだが。

正規の自衛隊と艦娘艦隊との区分けも有るのだろうが、どうも、民間から急に増員した為に。

制服の手配が間に合わず、映画やテレビ番組の撮影用制服まで、民間からレンタルして間に合わせたらしい。

確かに、総務課として管理しやすい方法の一つと言える。

よって、破損紛失等は厳禁となる。

おまけに、レンタル期間が有る為に制服のレンタル期間中に自前で作らせてしまえば良い。

少しでも、民間に内需拡大だ❗️

(癒着の臭いがするのだが。)

と、なったんだと。

立場上、将官なので制服の洗濯アイロンは秘書艦が行ってくれるのだが。

五月雨さんに、何着か焼かれた事が有るんだ。

艦娘の制服は、千差万別で軍隊の制服なのか?

と、なるんだけどね。

これこそ、カスタマイズの極みで、防衛省は不問状態。

でも、女性海上自衛官の制服を支給する動きは有るらしい。

 

艦娘には、大戦中の思想や思考も記憶には有るらしいが。

今さら、それに合わせる気は、さらさらなく。

今時の年頃の女性の考えや好みと変わる処は無い。

しかし、TPOに合わせた礼儀作法は見事な物でこの辺りが素敵な女性と見られている艦娘も多数存在する。

龍驤や天龍が、公式の場で標準語で対応している姿を見た時に目を丸くしたもので。

「何だよ、提督。俺だってTPO位わきまえてるよ。」

と、脇腹に軽く拳を喰らいました。

とても、痛かった。

 

SNSも、使いこなしている。

最近では、仲良くなり個人的に世話に?なっている。

老婆がネット詐欺に会いそうになり。

巧みに騙された振りをして、犯人検挙まで追い込んだ事も有る。

これも、深海棲艦による鎖国状況で犯人は全て日本国内となる為でも有るのだが。

良くやったな、暁・ベールヌイ・雷・電。

 

制服に、各艦隊のマークとなるワッペンを独自に作成して着けている。

現在のスタイルを受け入れて、自分達の物としているのが見とれる。

因みに、このワッペンが人気となり。

販売もしてまして。

意外な売上が有る。

 

「武漢からのウイルスが、入ってしまったか。」

「目に見えませんからね。それに、いつかは入って来るでしょ。」

今回の武漢ウイルスは、世界的にコロナと名付けられたとの事。

中東経由で、入って来た情報だ。

「深海棲艦も、感染するのかな?」

「どうなんでしょうね?」

 

 

 

 

 



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艦娘その壱

深海棲艦に対応出来る存在。

現在の所、艦娘以外の存在が確認されていない。

防衛省で、対深海棲艦用の兵器の研究作成に邁進しているが。

全く持って、形にすら成らない。

 

風間は、艦隊旗艦の小舟から。

内陸部の艤装製造工場に来ていた。

明石の指揮の下、妖精さん達が多忙を極めていた。

差し入れのお菓子を、近くのテーブルに広げた。

「明石さん、一息入れない?」

夕張との打ち合わせを中断して、明石が休憩の指示となるホイッスルを吹いた。

妖精さん達が、手を洗い。

ワラワラとテーブルに取り付き、お菓子に齧り付く。

「提督、差し入れありがとうございます。」

明石と夕張も、テーブル上のお菓子を摘み出した。

「防衛省が、研究してるけどさ。造れるのかな?」

「造ってくれたら、こっちも少しは楽が出来るんですけどね。」

と、夕張がビスケットをかじった。

「艦娘が居ないと無理ですね。」

明石が疲れた感じで続ける。

「私以外の工作艦も今の所、確認されてませんし。」

「私達が居ないと、妖精も居ませんから。」

艤装の製造は、艦娘が居ないと不可能。

砲や機銃程度の引き金位は、人間でも引ける。

だが、艦載機等は無理。

放った弓矢が、艦載機に変化?( ̄▽ ̄;)

すまん、何を言ってるか解らないと思います。

私自身も、何を言っているのでしょう?

弓矢自体は、放てるのだが。

艦載機に変化する分けが無いんだよ‼️

ましてや、艦載機に指示とかさ。

もう、サイコミュなの?

妖精さん達と、意思の疎通は出来ている。

だけど、艦娘が居ないと。

妖精さん達も、居ません。

実験で、妖精さんを提督に預けてから。

艦娘から離れて見たが。

いつの間にか、妖精さんは消えていたとの報告が有る。

その距離は、かなりまちまちで差が甚だしいらしいのだが。

艦娘が居ないと、妖精さんも居ないのは確かとなった。

 

そして、幾つかの疑問があり。

その一つに。

艦娘は、全ての軍艦が娘化している訳ではないらしい。

確認されていないだけの可能性も有る。

撃沈や解体された軍艦以外にも。

宗谷なんて、現存しているのに娘化しているのだ。

だったら、現在の護衛艦や軍艦の娘化が存在しても不思議が無いのに。

存在して居ない。

こちらも、確認されていないだけの可能性も有るが。

この疑問は、防衛省も艦娘に確認調査を実施しているが。

艦娘達も、解りません‼️の一言で有る。

 

「提督、此方です。」

宗谷を連れて、宗谷を見に行った事が有る。

自分自身の事の為なのか。

宗谷の内部は、良く解っていて。

ガイドとしては、これ以上の存在は居ない。

宗谷に、艦娘となった宗谷が派遣されていて。

大人気と成り。

宗谷を維持する費用を、向こう100年分は稼ぎ出したらしい。

風間艦隊の宗谷と、ガイドとして派遣されている宗谷で。

その時は、ダブル宗谷だと。

来訪者の方々を喜ばせた。

 

 

 



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艦娘その弐

柱島泊地は、広島県呉市ではなく。

広島県岩国市が所在地となる。

 

風間艦隊の旗艦たる小舟は、柱島から南側に停泊している。

五月雨から。

「提督、この子の名前を決めないと。」

と、言われているのだが。

「五月雨が、決めて。」

と、言った処。

「薄情な、お父さんですね。」

と、言われてしまった。

艦隊内から、公募するかな?

どうしよう?( ̄▽ ̄;)

 

この停泊地から、脚部ユニットを使って数分の所に、陸奥が良く出向く海面が有る。

風間が運動を兼ねて、海面を航行している時に。

何度か見かけた。

(確か、あの辺りのはずだな。)

陸奥も、何かする訳でもなく。

暫く、佇んで居るだけだが。

そして、少し離れて長門も佇んで居る。

正確には、見守っているが正しい感じだ。

 

とある月の8日。

海面に、手を合わせ。

ジットしている陸奥の背後で、黙祷する長門の横に近づいた。

「提督、どうした?」

風間が、花を持って要るのを確認すると。

フッと、長門の表情が緩んだ。

「今日は、月命日だよね。」

ありがとうございますと、長門が風間に礼をした。

陸奥も、此方に気付くと。

横に、ズレて。

頭を垂れた。

脚部ユニットを軽く前進させて、陸奥の横に立つと。

手を合わせ。

黙祷をして。

片膝を付く様にして、花を海面にそっと置く。

花は、音もなく静かに沈んで行く。

え?と、風間は少し驚いた。

直ぐ沈むとは、思っていなかった。

直立し、再度黙祷をしてから陸奥に向き直した。

「ありがとうございます、提督」

「良く、此方に居るよね。」

「非番の時は、足が向いて。」

と、可愛くはにかむ陸奥だった。

「提督、御茶にしませんか?」

五月雨が、来ていた。

「長門・陸奥、御茶が入ったそうだ。」

 

この海面下には、戦艦陸奥が乗組員と共に眠って居る。

事故による爆沈であった。

陸奥に聞いても。

「あの時の事は、良く覚えていないのよ。」

との事だ。

 

艦娘の、当時の記憶は曖昧だと前にも述べた。

風間も、それならそれで良いと思っている。

人には、誰しも踏み込まれたくない領域が有るのだから。

 

防衛省も、広報効果を狙い民間に広く艦娘のキャンペーンを展開している。

グッズや音楽祭。

地方のお祭り。

慰霊祭。

基本的に、開催地付近の艦隊から選抜の上。

派遣されるのだが。

場合によっては、○○艦隊の艦娘さんと使命される時も有る。

 

銀座三越とのキャンペーンは、艦娘ファンの財布に大ダメージを与えるが。

このダメージを物ともしない猛者が群がるので大盛況と成る。

当然、イメージの艦娘も派遣要請が入り出向くのだが。

偶々、市ヶ谷に出張で来ていた風間は少し覗いて行くかと銀座に向かった。



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銀座の出会その壱

銀座三越の開館前時間に、長蛇の列が形成されている。

およそ、銀座とか。

況してや、銀座三越とかに。

絶対似つかわしくない人物達で形成された列が。

粛々と礼儀正しく列を乱す事なくで有る。

その静けさたるや、戦国時代の上杉軍の陣中を想わせる程で有る。

 

こんなに、礼儀正しくしてるのに一部twitter等で炎上する事も有るとか?

そして、決して安くない値段設定?の商品が瞬殺されていく。

深海棲艦に寄る鎖国状態で、内需拡大を邁進するしか経済いやいや、日本国家が持たない昨今。

我が懐具合を省みない、この消費。

これが、経済を回す一因となっているのが紛れもない事実。

救国の英雄とは、正にこの人々の事を言うのだろう。

そして、まだまだ我が国の経済は何とかなるかも知れないと思わせる好景なのである。

政治屋共は、この場に足を運び。

オタクの底力を体感すると良いのだ。

そして、転売ヤーの駆逐に性を出して頂きたい。

 

では、風間がこの救国戦線に参加するのかと、言うと。

懐に戦力が無い為に、断腸の思いで。

救国の英雄達に心の中で声援を送るのであった。

 

銀座三越付近は、地下道を含めてキャンペーン対象の艦娘のポスターが彼方此方に貼り出されている。

今回の商品は何かな?

今回は、艦娘の支援は出ていないのだな。

毎回、派遣されている事ではないのだ。

 

後ろから、ドスンと当たられた。

よろけて、踏み留まる。

脚部ユニットで、水上航行していると体幹が鍛えられる。

こんな所で、役に立つとは。

振り向くと、女の子が尻餅を着いていた。

「ごめんね。大丈夫かな?」

と、近づいた。

お互い、コロナ過でも有る為にマスクは付けているので。

表情が、掴み難いのだが。

物凄く、胸の中がザワツイた。

「ゼロ寄越せ。」

「は?( ̄▽ ̄;)」

何?この子?

「すみません。」

と、美女が走りよって来る。

三越の袋を抱えた姿で。

「ホッポ駄目じゃない。」

「う~」と、呻く女の子。

「お怪我は、有りませんか?」

「いえ、此方こそ。娘さんは大丈夫ですか?」

美女は、マスク越しでは有るが少し眉を潜めた様に見えた。

アレ?違うのかな。

「すみません。部下と良く親子に間違われますので、思わず。」

いえいえと、答えて。

美女は、女の子を立たせて。

「私も、間違われますから。」

「ホッポ、チョロチョロしないの。」

メッと、女の子を諭す。

失礼しますと、二人は去って行った。

日本人ではないな。

深海棲艦の為に、帰国する事が困難な現状だから。

様々な国の人々が、日本に居る。

雰囲気的に、何処で会った様な気がする感じだったが。

何だか、危険な胸騒ぎがする。

 

風間は、市ヶ谷に取って返すと。

上層部に訴えた。

「深海棲艦が、銀座に居る。」



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銀座の出会その弐

「なにを、言っておるのだ貴官は?」

「東京の、しかも銀座三越で、深海棲艦がショッピングをしている?」

「寝ぼけて居るのか?」

深海棲艦を銀座で見たと、市ヶ谷に報告した風間であったが。

自衛隊の上層部の反応は、白昼夢でも見たのかと言った感じで。

全く、取り合って貰えなかった。

 

日本全土の海岸線は常時監視を、実施している。

関東近郊は、選りすぐりの監視体制を確立。

蟻の侵入すら不可能だと言われた。

(でも、蟻は普通に入ってますよね。と思ったが、それは口に出さなかった。)

特に、首都東京は横須賀鎮守府の精鋭部隊たる艦娘艦隊が防備している。

「貴官が所属する柱島泊地と違い、百戦錬磨の猛者が防備しておるのだ。」

「深海棲艦の上陸など有り得ん。」

「第一、攻撃するなら解るが。ショッピング?」

「コスプレイヤーと間違えたのかな?」

そう言えば、以前もコスプレした深海棲艦を本物と勘違いして緊急配備となった事例が有るんだと。

終いには、福利厚生施策の案件ご苦労様。

配置を替えて、そちら方面で活躍したらどうか?

とも言いわれた。

 

念のために、街頭の監視カメラに写し出された。

該当の人物を追跡調査はしたらしいのだが。

途中で、見失ったとの事だった。

 

あの場に、艦娘が一人でも居れば判別位は出来たかも知れないが。

柱島泊地に戻る、新幹線の車内で。

俺の気のせいなのか?

と、なった訳だが。

確かに、戦闘時の動画や記録したデーターでしか深海棲艦を見ていない。

実際に目視した事は、風間には無いのだ。

「でも、納得が行かない。」

 

風間艦隊旗艦に戻り。

五月雨に、銀座の話をしたが。

「深海棲艦が、お買い物ですか?」

その様に言われると、何とも次の言葉が出ないのだが。

「提督、深海棲艦が普通に入り込んでいる可能性は有るかも知れませんね。」

「でも、陸上に潜入して何をしているのかな?」

五月雨も、う~んとなって。

「此方側の調査とか?」

「深海棲艦が、俺達の日常を調査しているのか?」

「内部工作の可能性も有り得ますけど。深海棲艦が陸上で活動出来るのか事態が不明ですからね。」

ア‼️と、五月雨が手を叩いた。

「生活しているのかも‼️」

「深海棲艦が、住み着いてるのか。」

不法滞在だな。

2人の間に、乾いた笑いが出た。

 

「提督が言っているんだから、艦隊の皆は提督の言っている事を信じます。」

「他の艦隊の艦娘や提督が、何を言っても。」

「私達は、提督の味方ですからね。」

「胸を張ってくださいね。」

五月雨は、ぐっと胸を張って見せた。

何だか、信用有るのか無いのか。



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銀座の検証その壱

薄暗い部屋の一面に。

様々なタイプ物体を写した写真や図が表示されていた。

その前を左右に。

カツカツと、靴音を響かせてゆっくりと往復する。

時折、左手に持った指揮棒を右の手のひらにパシッと当てながら。

その女性は語り出した。

「悪い様には、しません。この中に見覚えの有る該当物件が合ったら教えなさい。」

「黙秘権は無いですからね。」

「隠し事をしても、為にはなりませんよ。」

「口に出すのが躊躇われるので有れば。」

「私が指す物に、首の動きで答えなさい。」

更に、ピシャリと指揮棒を手のひらに打つと。

彼女は続けた。

「私だって、こんな事は仕度は無いんです。」

「でも、貴方が悪いんですよ。」

ツカツカと近寄り、相手の頭を掴み上に向かせる。

 

「おい‼️大淀。」

「何の積もりだ。」

大淀と呼ばれた女性は、アラッと笑い。

風間の頭から、手を離した。

 

「それから、香取・鹿島。」

「五月雨も、何の尋問何だよ。」

 

香取・鹿島・五月雨は、お腹を押さえて笑いをこらえている。

 

先頃、銀座で深海棲艦を目撃した風間の話から。

どの深海棲艦かを調査しようとなり。

風間の執務室に、五月雨・大淀・香取・鹿島の4人が集まった。

執務室のスクリーンに、深海棲艦のリストを投影して。

風間が、そのスクリーンを見ていたら。

行きなりの取調室と、相成った。

大淀曰く、何かそんな雰囲気だったと。

「お前、遠方を見る様な顔して誤魔化すな。」

 

深海棲艦は、確認?された順番で登録されている。

記号は、いろはに記号となっており。

この記号仕様は、なかなかセンスが良いなと風間は感じている。

発見登録の順番上、決して強さのグレード順ではない事に注意では有るが。

そして、各クラスの中で更に細部化されているのである。

例えば、イ級だけでも令和4年現在で5種類確認されているのだ。

 

「で、提督。どの深海棲艦でしょうか?」

大淀に即されてスクリーンを見る。

イ・ロ・ハ・二・ナの各級は駆逐艦として分類されている。

しかも、人間体ではない。

「コイツら、この装甲観たいのが外れると中身は人間体なの?」

五月雨達に、聞いて見たが。

4人共に、首を傾げた。

では、該当から外すか。

 

次に、軽巡洋級の

ホ・へ・ト・ツの各級

重雷装洋巡級の

チ級

この辺りから、人体の形をしてくる。

「この辺から、装甲外したら人間体だよな?」

4人共に、唸る。

 

重巡洋艦級の

リ・ネ級

この辺は、一撃で大破損傷の打撃を良くしてくるので。観ていても、腹が立つ。

 

戦艦級の

ル・タ・レ級

レ級には、怨みしか湧かない。

 

段々と、腹が立って来た所で次回へ

 

 

 

 

 



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銀座の検証その弐

「提督が見たんですから、私達に聞かれても。」

と、大淀が不満を口にするのだが。

「俺は、深海棲艦を直に見た事ない。」

「それに、普通に人間見たいだったから、このファイルでは解らない。」

銀座で遭遇した、風間が深海棲艦と思わしき人物の映像は拡大して横に投影している。

この映像データーは、大淀がハッキングして入手した。

 

「マスクで、顔の全体が見えないけど何か怪しいだよ。」

4人に、どうよ?

と、聞いたが。

「画像データー上で、深海棲艦かどうかは解らないです。」

と、五月雨さん。

更に、大淀に。

「画質、これが限界ですか?」

大淀も。

「これ以上は、無理ね。」

「米軍用のカメラでは無いし。民間用だと。」

「提督は、深海棲艦の人間体と仰有いますが。」

「私達だって、見た事無いです。」

風間も。

まぁ、そうかとなった。

だけど、疑問は出来たら払拭したい。

先を続けた。

 

軽空母

ヌ級。

風間「この装甲なのか艤装なのか?」

風間「マスクなのか?」

で、4人に目を向けると。

ん~‼️

と、腕を組んで唸るのみ。

 

正規空母

ヲ級。

風間「これ何か、かぶっているだけだよな。」

五月雨「え~、外れるのかな?」

大淀「外れた様な、描写は無い見たいですけど。」

香取「シュミレーションのデーターにも、外れる描写は無いですね。」

鹿島「でも、外れても不思議無い感じですよね。」

 

輸送艦

ワ級。

風間「これも、人間体の部分有るけど。」

五月雨「ん~。どうなのかな~?」

 

潜水艦

カ・ヨ・ソ級。

風間「此方も、人間体有るな。」

大淀「深海棲艦も、艤装の様に脱着式なんですかね?」

 

要塞

浮遊要塞・護衛要塞。

風間「深海棲艦側の艦載機であるたこ焼きの親玉見たいなヤツだな。」

香取「これは、違うでしょうね?」

 

PT小鬼群

風間「有る意味、艤装外れたら子供だよな。」

コイツらは、ストレス溜まる相手だよな。

鹿島「見ていても嫌な相手ですね。」

風間「でも、銀座で見たのは子供連れだったんだよ。」

鹿島「深海棲艦が、子供連れですか?」

 

砲台小鬼

風間「これは?」

五月雨「多分、PT小鬼群と同じかと?」

 

後は、姫級とか鬼級のボス扱いの深海棲艦だな。

しかし、そんな大物が銀座で買い物するのか?

それに、子供を連れていたよな。

 

風間「子供かと、疑ったら。」

風間「眉を潜めたんだよ。」

大淀「子供連れの方が、潜入していた場合。」

大淀「周りを騙せるかも知れないですが。」

香取「向こうにも、スパイ活動のノウハウが有るのでしょうか?」

風間「深海棲艦側の組織って、どうなんだ?」

 

今度は、五人で首を傾げた。

 

 

 



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銀座の検証その参

深海棲艦側の艦隊も、目的に合わせた編成と。

それを、指揮する旗艦が存在する。

ここまでは、今までの戦闘で把握は出来ているが。

更に、その上の組織等は一切が不明確で。

彼女達の本拠地すら謎である。

もっとも、海全体が本拠地見たいな物か?

 

大淀「提督、後は姫級と鬼級ですね。」

鹿島「うちの艦隊は、甲勝利は2回だけですからね。」

五月雨「最終章海域の深海棲艦見て無いのが多いからな~。」

4人のジト目視線が、風間に集中するのが解る。

風間「はい、全て私の責任です。」

非常に居心地が悪い。

そして、空気も悪い。

 

この雰囲気を打破するべく、風間は深海棲艦の資料に向かうのである。

五月雨「あ。逃げた。」

 

実際問題、資料を見ただけで嫌気が差してくる。

最後の最期で、倒し切れない苦々し記憶が甦ってくるだけだから。

風間「ん~?」

大淀「どうしました?提督。」

風間「子供の方なんだけど?」

銀座の写真を指して、服をこうすると。

北方棲姫に良く似ている。

五月雨「ほっぽちゃんですか?」

大淀「最近の我艦隊では、迂回路で北方AL海域を攻略していますからね。」

大淀「めっきり御無沙汰ですね。」

風間「でも確証無いからな。」

香取「大人の方は、どうですか?」

香取「資料の中に、似ている感じの深海棲艦は居ましたか?」

風間「まったく、似た感じすらしない。」

風間「でも、何処かで見た感じもするんだよな~。」

大淀「新手の深海棲艦でしょうか?」

鹿島「スパイ任務対応の深海棲艦?」

五月雨「今までの深海棲艦で、陸上型と言っても陸地の上に居るだけで然したる行動は確認されてはいませんし。」

風間「俺の考え過ぎなのかな?」

 

確かに、国内で深海棲艦の破壊活動でも有れば。

たまった物では無い。

しかし、現状で深海棲艦の国内での破壊活動と言える物は。

海岸線地域の極狭い範囲だけで、それ以上は無いのだ。

 

やっぱり、考え過ぎかな?

艦娘は、人間と姿形に相違が有る訳では無い。

深海棲艦は、確かに多種多様では在るが。

人間体の深海棲艦も実在している。

あの装甲とおぼしき物が、実は艤装で外せば中身は人間体の可能性だって有るかも知れない。

だからと言って、人間として陸上で生活行動をするのだろうか?

 

深海棲艦も、イベント海域で新種が確認され。

それに、同調するかの如く艦娘も新たに確認される。

この状態も、謎だし。

 

風間「今日は、ここまでにしますか。」

風間「皆、ありがとう。」

議題を切り上げ様とした時、執務室のドアがノックされた。

 

失礼しますと、一航戦の2人が入って来た。

赤城型一番艦の赤城と、加賀型一番の加賀で有る。

風間艦隊では、南西諸島海域の攻略に一航戦を当てる事が多い。

この2人は、南西諸島海域に相性が良いらしいのだ。

報告書を持って来たとかで、五月雨と話をしている。

その時、風間はアレ?と、感じた。

風間「赤城は、姉妹居ないよね。」

赤城「私に、姉妹が居ないのは提督が良くご存知じゃないですか。」

何を言ってるんだと、笑いながら赤城は答えた。

 



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長女ズ会議駆逐艦編その1

艦娘は、前大戦の艦船としての記憶を宿した?状態で存在している。

それは、彼女達の関係性にも影響を与えている。

艦船は同型艦として建造されると姉妹として認識される。

これが、艦娘の姉妹関係としても適用されているのだ。

因みにこの姉妹関係は、艦船以外にも都市等にも宛がわれている。

そんな訳なので、姉妹の数がとんでもない人数に至る艦娘も存在するので有る。

だが、見た目で長女と末女での年齢差は剰り感じない。

しかし、同型艦内の姉妹関係は自然な感じで序列が存在する。

 

「都合の良い時だけ、おねえちゃんだからさ~。」

陽炎がぼやく。

あ~、解る解ると相槌を打つ一同。

「ここは、おねえちゃんの奢りでしょ。とかむちゃくちゃ言われるにゃし。」

睦月が続く。

解る解ると、更に相槌が。

「私なんか、特型駆逐艦の一番艦何だから。宜しくね。って領収書が回って来るんだよ。」

吹雪が、愚痴る。

それは、酷いなと一同相槌を打つ。

ここは、風間艦隊の旗艦である小舟。

風間の執務室の隣室である。

会議室兼、風間の仮眠室(保々住居)に風間艦隊の駆逐艦各型の一番艦である、長女が集まり。

定例会に託つけた、長女ズ愚痴大会が開催されているのだ。

参加艦娘は、

神風・睦月・吹雪・綾波・暁・初春・白露・朝潮・陽炎・夕雲・秋月。

それと、海外艦娘のレーベルヒトマース・マエストラーレ・ジャヴィス・フレッチャー。

以上、15名となっている。

姉妹の居ない単艦娘は、参加した艦娘が会議内容を伝達することになって要るが。

実際は長女ズの愚痴る大会なので、伝達する事柄は少ない。

今回は、駆逐艦と要ったカテゴリーなので。

他にも、戦艦や空母の長女ズ会議も有る。

 

執務室にまで、キャッキャッと笑い声や愚痴る声が聞こえて来る。

風間も責任者の立場も有るので、お茶菓子位は差し入れるが。

毎度、バカに成らない出費となる。

問題が無い時で有れば、自由にディスカッションして貰わないとな。

風間は、執務室で書類の決裁で有る。

白露は、五月雨が不在の時に開催日を持って来る。

妹には、聞かせたく無い話題も有るだろうからな。

駆逐艦の会議でも有る為に、旗艦には風間と15名の駆逐艦しか乗艦して居ない。

あ‼️

風間の愛猫のクロキジの隼人も乗艦している。

普段は、五月雨の膝の上でゴロゴロ言っているが。

今は、風間の膝の上となる。

 

各々に、癖の強い妹達を抱えて姉としては大変だとのたまわっている様だが。

その妹達以上に、姉のアクが強い気もするのだが。

 

 



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長女ズ会議駆逐艦編その2

三人依れば姦しいと言うが。

15人も居ると、喧しいので有る。

さて、今晩は内陸部のネカフェで寝るとするか。

と、自分の脚部ユニットを装着しようと席を立った。

 

で、何故に?

「たまには良いじゃない?(笑)」

「付き合いなさいよ。」

「私は、提督の姉さんになるんだから。」

この場所は、旗艦の上部甲板に当たる場所で。

白露に離艦する時、捕まった。

白露に、グラスを渡された。

これで、内陸部に帰れないな。

飲酒航行に成る。

風間「五月雨とは、確かにケッコンカッコ仮してるけどね。」

白露「ほら、私はお姉さんじゃない。」

風間「あくまでも、システム上の」

白露「うるさい。」

と、右手の人差し指で唇を押さえられた。

白露「提督は、何で他の子とケッコンしないの?」

白露「他の艦隊だと重婚したりしてるのに。」

白露「それに、同じ艦娘を複数登用もしてる。」

風間「ダメかな?」

白露「戦力的にも、戦略的にもダメね。」

確かに、イベント海域で複数人の同一艦娘が居ない為に手詰まりや、余計な苦戦を招いているのは確かなのだ。

艦隊の運営は、担当提督に一任されている。

風間が、どの様に運営しても自由では有る。

しかし、深海棲艦との戦争は結果が全てとなる。

風間の艦隊は、結果を出しているとは言い難い。

白露「秘書艦の会合で、あの娘(五月雨)だって肩身が狭いわよ。」

白露「自衛隊上層部だって結果を出せと言って来てるんでしょ。」

確かに、言われては要る。

ネチネチ言われて、最後には。

風間艦隊は、福利厚生が上手く戦果を上げているか。

と、言われる始末だ。

他の艦隊が、戦果を出して要るので戦術的には何とかなって要るが。

戦略的には、足を引っ張っぱっている艦隊と成る。

白露「もっと戦果狙いなさいよ。」

風間「狙って要るよ。」

白露は、手にしたグラスの氷をカランと鳴らした。

白露「自衛隊では、艦内飲酒は御法度なのに。」

風間「旧海軍では、英国式でワッチでなければ許可だろ?」

白露「自分が、飲みたいんでしょ。」

図星を的確に差されて、ぐうの音も出ない。

白露「他の艦隊依りも、私達を自由に行動させている。」

白露「ホント、変よね。貴方って。」

風間「白露、俺は上官なんだけど。」

白露「私は、義姉さんでしょ。」

風間「酔ってるな。」

白露「いけない?(笑)」

クスクスと、笑いながらグラスを傾けた。

白露「一番艦同士で、決めてる事。有るんだけど。」

風間「何を?」

白露「この先、貴方が決断しないと成らない場面が必ず有ると思うんだ。」

白露「その時は、いちばんに一番艦を使うんだよ。」

白露「妹達じゃないよ。」

白露「私達、一番艦からだからね。」

風間「どう言った意味だよ。」

白露は、ジッと風間の目を見据えた。

風間「何を考えているのか解らんのだが?」

白露「うるさい。」

言葉を続け様とした、風間の唇を人差し指で押し止めた。

白露「本当に、一番は損よね。」

白露「あの娘(五月雨)が、貴方とカッコ仮だからって。」

白露「貴方の義姉に成るんだから、白露が伝えるべきってさ。」

白露「神風さんの役目なんじゃないのって思ったけど。」

白露「やっぱり、私の役目よね。」

酔っ払いの戯言だからねと、白露は艦内に戻って行った。

艦内からは、騒がしいガールズトークが漏れて来る。

風間「今日は、隅で隼人抱いて寝るか。」

 



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着任

風間艦隊の旗艦の隣に、真新しい旗艦が運ばれた。

風間「五月雨、少しの距離も開けないで。」

風間「何で、此方に直付けで他の艦隊の旗艦用艦が有るだ?」

風間「他の艦隊の旗艦は、少しは距離開けて停泊してるのに。」

五月雨「新しい提督さんが、着任されるとの事で。」

五月雨「うちの艦隊で、面倒見る様にと通達が有りました。」

風間「は?」

風間「何で?」

五月雨「さ~?」

風間「めんどくさい。」

五月雨「通達来てますから、無理ですね。」

風間「そもそも、甲勲章2つの艦隊に押し付けるなよ。」

五月雨「提督が、意見書を色々と挙げて要るから。」

五月雨「余裕有ると、思われて要るんじゃないですか?」

上からの意趣返しか。

昔から、上層部受けは悪いからな。

 

風間「で、お隣さんは何時来るの?」

五月雨「そろそろ、お着きに成るかと、」

五月雨「基本的には、向こうの艦隊の補佐を言われてますから相談を聞けば良い見たいですよ。」

風間「どんな感じの人?」

 

女だらけの職場だからな。

お互いの愚痴を言い合える男なら、この際助かるか。

 

五月雨「女の人らしいですよ。」

風間「そうなの?」

五月雨「提督、ロングになっていたらダメですからね。」

風間「相手に寄るよ。」

何か、五月雨の目が冷たい。

 

女性か、基本的には向こうの秘書艦が対応するんだろうからな。

数分後に、五月雨から。

五月雨「提督、お隣さんが着任されますよ。」

風間「あ。行くよ。」

 

旗艦の上甲板に出たら、お隣の旗艦に内火艇が接舷していた。

 

五月雨が、話して要る相手が新人さんか。

こちらに、気付くと。

直立し敬礼をしてきた。

「本日付けを持ち、着任致しました。石南花(せきなはな)です。宜しくお願い致します。」

「同じく、秘書艦を勤めます。漣です。」

風間も敬礼を行い。

「石南提督の着任を歓迎致します。」

風間が、手を下げるのを確認して。

石南は、手を下げた。

風間「困った事に限らず、何なりと頼って下さい。」

石南「御言葉、感謝致します。」

石南「では、此より初期設定も有りますので失礼致します。」

風間「気楽に接して下さい。」

表情を緩めると石南は軽く会釈して自分の旗艦に入って行った。

 

執務室に戻り、席に着いた。

机の上の五月雨の妖精達が、鼻の下を伸ばしているジェスチャーをしている。

風間「なんだよ。」

五月雨が、机に湯飲みを置き笑顔で話す。

五月雨「良かったですね。美人が着任して。」

風間「なんだよ。」

五月雨が、ファイルを読み上げ始めた。

五月雨「石南花。26歳。神奈川県出身。親族は深海棲艦に乗船していたフェリーが沈められた時に死別されてます。現在は身寄りは無し。御自身もその時に被災されて居ます。フェリーでは唯一の生存者です。」

 

そうか、その辺りは気を付けた方が良いな。

しかし、五月雨さんの雰囲気が何故か変な感じです。

 



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指導その1

お隣に、新人提督が着任。

面倒見ろと、押し付けられたが。

聡明な感じの女性だ。

向こうの秘書艦、漣が横に着いている訳だから。

俺の出番は無いと思われる。

 

風間艦隊旗艦の上甲板で、柱島泊地からの展望を眺めて要るのだが。

何故かと言うと、お隣の石南提督が着任してから。

五月雨の機嫌が、やたらと良いのだけど。

妖精さん達は、オドオドしている。

五月雨「提督、今日の決済は済ましたから。」

五月雨「石南提督の様子を見て来て下さいね。」

鼻唄を歌ながら、五月雨はテキパキと業務をこなして要る。

五月雨「提督、聞こえませんでしたか?」

五月雨「早く行って上げて下さいね。」

執務室の空気が重い。

追い出される様に、執務室から出された。

 

ふと、隣を見ると。

石南艦隊の秘書艦、漣殿が疲れた表情で海面を見ていた。

此方に、気が付くと。

ビシッと敬礼をして、笑顔を向けた。

なんだ?問題でも有るのか?

漣は、会釈して艦内に入って行く。

秘書艦とも成ると、激務だよな。

風間艦隊の漣は、あんな顔しないしな。

五月雨をもっと、労らないとならないな。

風間艦隊の艦内に下りて、お茶菓子を持ってお隣の様子を見に行く事にした。

お茶菓子は、五月雨が用意してくれていて。

手作りケーキSONNE(ゾネ)のケーキで呉で人気の店何だとか。

俺のチョイスよりは大丈夫なはず。

艦内のインカムで、石南艦隊旗艦に連絡を入れて乗艦許可を依頼。

了解を得て、お隣の旗艦へ乗り込む。

漣殿が、敬礼で出迎えてくれた。

風間「乗艦許可願います。」

漣「風間提督を歓迎致します。」

固い挨拶は、この辺にして。

ケーキを、漣に渡しながら。

風間「大変見たいだね?」

漣「大変では、無いので有ります。」

ほ~と、漣の目を見据えたら。

漣「いや~、細かい質問が多くて。」

と、頭を掻いた。

漣「石南提督には、ご内密にお願いします。」

風間「解ってるよ。」

どうぞと、執務室に通された。

 

石南「歓迎致します。」

風間「お疲れ様です。」

お互いに挨拶を済まして。

どうぞと席に案内されたタイミングで、漣が差し入れたケーキと紅茶を持って来た。

石南「あら❗️」

漣「風間提督からの差し入れで有ります。」

石南「御気遣い感謝します。」

と、微笑んだ。

アレ?

赤城に似た感じの、笑みだな。

ヘアスタイルが、ショートでマスク姿ってのも有り。

何となく、既視感が有ったのだが。

ケーキを前にした、笑みが赤城に似た感じ。

風間「お気に召したのなら幸いです。」

石南「これ、呉の御店のですね。」

風間「うちの五月雨が、選んでくれまして。」

風間「私では、こうは成らないですね。」

石南は、マァと成りながら。

石南「そんな事は、ないでしょうに。」

と、ケーキにフォークを通した。



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指導その2

石南提督に、艦隊の様子を確認した結果。

こうなった。

 

石南「この場合何ですが。」

石南「大破した時、夜戦は問題無いんですよね?」

石南「その後、進軍しなければ大丈夫ですよね?」

モニターで、シュミレーション用の画面を指差しながら質問して来る。

 

近い。

時々腕に触れる柔らかい感触に、意識を反らしてながらの苦行が開始されているのである。

 

風間「大破進軍は、厳禁です。」

風間「進軍しても、必ず撃沈と成る訳ではないけど。」

風間「かなりの確率で、撃沈と成りますから。」

石南「成る程。」

 

近い。

良い香りがする。

 

石南「各艦娘のパラメーターの運は?」

石南「何の意味が?」

風間「パラメーターは、あくまでも参考値として考えた方が良いと思います。」

風間「運の値は、高くても当てに成りませんから。」

そうなので有る。

風間艦隊の雪風なんか、かなりの確率で大破するのだから。

時雨なんかもだが。

カットインすら発動しないのも、ざらである。

回避値が高くても、被弾する時は被弾する。

ほんとに、パラメーターが高くても当てに成らないのだ。

石南「雪風って、殆ど無傷で帰還する武勲艦と聞いてますが?」

風間「艦娘になったからなのか?私の指揮の問題なのか?」

風間「大破率高いですね。」

正直、高いなんて物では無い場合が多いのだ。

他の艦娘の盾になっているパターンが多いので、前大戦時代の経験で、思う処が有るのではと勘繰って要るのだが。

風間「ともかく、パラメーターは参考値と考えた方が良いと私は思っています。」

石南は、へ~といった表情で風間の話しを聞いていた。

石南「参考値ですね。」

石南「肝に銘じて置きます。」

風間の顔を正面からジッと見据えて言って来る。

その目を見た時に、ドキッとした。

石南の瞳は、深海に吸い込む様な雰囲気に満ちている。

 

その後も、事細かに質問されて。

漣がゲンナリするのも解って来た。

本人の性格に寄る物何だろうと思うが。

かなり、真面目な性格何だろうな。

 

そして、彼女が艦娘のファイルを捲りながら、話して来た。

石南「私の艦隊には、まだ航空母艦は着任して居ないので。」

石南「この赤城さんを、早く迎えたいです。」

風間「大食いの娘ですから。」

風間「備蓄をしっかりと、行わないと養えませんよ。」

実際問題、赤城よりも加賀の方が大食いだし。

大和・武藏に成ると泣きたくなるのだが。

まぁ、黙っておくか。

 

石南「同じ艦娘を複数人、旗下に加えられるとの事ですが。」

石南「同じ娘が、何人居ても。」

石南「混乱しないのでしょうか?」

風間「私の艦隊は、一人一艦で運営してます。」

石南「何故?」

風間「人の顔と名前を覚えるのが苦手でして。」

まぁと、笑いながら石南はケーキを口にした。

冗談で言って要ると思われている見たいだが、真面目に苦手なので有る。

パラオに着任している、通称まるゆ提督は100名単位のまるゆを個々に判別しているそうだ。

俺には、無理だな。

 

 



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指導その3

兵装に付いては、工作艦の明石が居ないとどうにも成らないので。

石南提督には、早急に艦隊の旗下に加えて頂きたいが。

風間「此ればかりは、明石の着任を祈るしか無いですね。」

風間「私の艦隊の明石を、お貸しするなり出来たら良いのですが。」

不思議な事に、艦隊間での艦娘の譲渡や派遣が不可能で兵装も同じと成る。

だから、提督の人数も必要となって来るのだが。

各艦隊の艦娘保有数や面子も区々である。

風間「石南提督は、暫くは艦隊の充実と備蓄に練度向上をお願いします。」

石南「風間さん、花で良いです。」

石南「私も勉強しないとですね。」

漣が、苦笑いをしていた。

 

風間が、自分の旗艦に戻ったのは夜も遅くなっていた。

風間「五月雨、遅くなって、ごめん。」

五月雨「お疲れ様です。」

笑顔で、出迎えてくれた五月雨。

書類の束を抱えて、纏め作業に入っていた。

その付近を、五月雨の妖精さんがチョロチョロと動き回っている。

ん?

別の妖精さんも居るな。

この妖精さんは。

 

 

「随分と、根を詰めるんだね。」

お?

風間「時雨か、五月雨の手伝いかい?」

風間「ありがとう。」

時雨「別に、僕は妹の様子を見に来ただけだからね。」

と、時雨は言って要るが。

時雨の妖精さん達も、書類整理を手伝っているのが解る。

五月雨が、書類を持って。

一旦離席し、執務室を出たのを見た時雨がシグと寄って来た。

時雨「提督、役目で隣の石南提督の面倒を見るのは解るんだ。」

時雨「でも、五月雨にも最っと気を配って貰わないと。」

時雨「僕としても、五月雨が心配だからね。」

 

え?

五月雨に、石南提督の面倒を見ろと言われて。

追い出される様に、隣に行っていたのに。

この様に言われても、どうしろと。

更に、時雨の雰囲気で圧をかけられると反論が許されない感じに成る。

 

時雨「提督。僕は難しい事を言って要る訳では無いんだよ。」

風間「時雨、俺は君の上官で合って。」

時雨が、人差し指で風間の唇を押さえた。

時雨「提督、君には失望したよ。僕からの指導が必要な様だね。」

時雨「こんな時に、階級を持ち出して相手の言論を封じるのは、僕は良く無いと思うんだ。」

時雨「立場の濫用はパワハラだよ。」

時雨「それに、僕は君の義姉に成るんだ。」

時雨「義弟が、義姉の言うことを聞かないのは、僕はおかしいと思うんだ。」

 

時雨さん、今貴女は義姉と言う立場の上で俺に言ってるよね。

これは、パワハラだよね。

と、風間は思っているのだが。

唇を塞がれている。

そして、時雨からのプレッシャーは洒落に成らない圧力である。

怖いなんてものじゃない。

 

時雨「義弟君、夜は長いよ。」

 

風間は、この夜。

理不尽の圧力に寄る指導を、延々と受ける事となった。

 

 



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エンブレム

石南提督の艦隊も始動を始め、毎日の様にお隣が騒がしい。

風間艦隊は、ディリー・ウィークリー・マンスリー任務は粉して。

資材の備蓄に勤しむ毎日となって要る。

艦娘のレベルは、五月雨が175他の艦娘も全員99に到達して居る為に演習は、任務消化とキラ付けの場となっている。

五月雨「提督、石南艦隊のエンブレムが決まったそうですよ。」

風間「へ~、どんなの?」

五月雨「シャクナゲをモチーフに波を逢わせた物がメインになってますね。」

風間「シャクナゲか。」

五月雨「シャクナゲの花言葉は。威厳・荘厳ですね。」

風間「花さん、そこまで厳格なイメージでも無いと思うけど。」

五月雨「花さん?」

ピクッと眉を動かして、五月雨が一瞬怪訝な顔をした。

風間も、思わず萎縮しながら。

風間「石南提督が、下の名前で呼べと。」

五月雨「仲が良いんですね。」

ニッコリと、笑みを浮かべて五月雨は書類整理に入っていった。

 

俺は、役目を果たしているだけだよね。

先日は、時雨に延々と説教されるし。

何か、おかしく無いですか?

 

風間「五月雨、差し入れに持って行ったケーキ。」

風間「石南提督、喜んでたよ。」

書類に向かったまま五月雨は。

五月雨「喜んで頂けて、何よりです。」

五月雨「提督、其処に領収書有りますから払って下さいね。」

風間「経費じゃないの?」

五月雨は、顔を上げてニッコリ笑いながら。

五月雨「そんな訳、有るわけないじゃないですか。」

風間「五月雨に、払えば良いの?」

五月雨「はい。お願いしますね。」

財布の中を見たら、小銭と1万札が1枚。

1万円を五月雨に、差し出す。

五月雨「ありがとうございます。提督。」

風間「あの~、五月雨さん。」

五月雨「何ですか?」

お釣りは?と、言う所だったが。

五月雨の目が笑っていない。

風間「別に、何でもないです。」

 

理不尽じゃないですか?

何か、間違えてますか?

 

五月雨「提督、何をブツブツ言っているんですか?」

風間「何でもないです。」

 

我が風間艦隊のエンブレムも、オータムクラウド先生を中心に考案してくれていまして。

風間の字をモチーフに、様々に手を加えて各隊用にデザインしており。

更に、個人用のエンブレムが作成されております。

例えば、五月雨なら。

風間艦隊の艦隊エンブレム・第2駆逐隊・首席秘書艦・艦隊副指令官・五月雨の五種類で。

これを、制服に着用している。

他の艦娘も、艦隊エンブレム以外は各々に合わせたエンブレムを着用している。

海上自衛隊のエンブレムを見て、ウチのオータムクラウド先生が作ろうと発案。

許可したら、他の艦隊でもエンブレムを使い出す艦隊が出始めた。

そして、お祭りやイベント等で販売すると意外と売れるのだ。

 

 



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各種設定です。

五月雨「さて、柱島泊地の風便り。」

五月雨「ウチの風間がダラダラと、羅列するだけの文章に成らない文章を、お読み頂き。」

五月雨「誠に、ありがとうございます。」

五月雨「読んでくれている人達が、いるんですね。」

五月雨「五月雨、ちょっとビックリです。」

 

風間「五月雨、俺が一番驚いているんだから。」

五月雨「句読点の打ち方がおかしい。」

五月雨「無理に漢字を使って読みづらいとの御指摘も受けてますね。」

風間「文章の御指摘に付きましては、善処して。努力致します。」

五月雨「提督、今回はどうしたんですか?」

風間「少し、設定で話して無い部分を今回示そうと思いまして。」

五月雨「ほう。」

 

風間「先ずは、修復剤。」

五月雨「通称バケツですね。」

風間「遠征で入手するんだけど、海上にバケツが浮いている分けではないんだよね。」

五月雨「そうですね。」

五月雨「アレは、深海棲艦側の海域の海面が紅くなっている部分。」

五月雨「その海面を、良く見るとミドリの部分が有るわけです。」

五月雨「水と油みたいに、分離した感じなんですが。」

五月雨「私達、艦娘はその部分を掬って来るんです。」

五月雨「それを修復剤のバケツに入れてる訳です。」

五月雨「毎回、発見出来る訳ではないし。」

五月雨「見付けるの大変なんですよ、提督。」

風間「出来るだけ、使用しない様には思うんだけどね。」

 

五月雨「次は、提督の装備です。」

風間「脚部ユニットの事?」

五月雨「違います。あれは、提督だけですね。」

五月雨「制服と一緒に、支給されましたよね。」

風間「拳銃と短刀の事?」

五月雨「はい。」

風間「銃刀法違反だよな。」

五月雨「街中に持ち出したら駄目ですよ。」

風間「これ、支給されても意味無いよな。」

五月雨「提督の自決用ですから。」

風間「え?」

風間「短刀で、切腹しろと?」

五月雨「提督が苦しまない様に、私が毎日研いでますから。」

風間「拳銃で自決しろと?」

五月雨「提督、私に最後まで語らせたいのですか?」

風間「五月雨さん、最近冷たくないですか?」

 

五月雨「私達、艦娘の装備に付いても少し説明しますね。」

五月雨「私達、戦闘中はゴーグルとインカム装着してます。」

五月雨「無いと、水飛沫とか大変ですからね。通信もインカム無いと海上で声聞こえ憎いです。」

五月雨「艦隊の旗艦になる艦娘には、旗艦旗が付きます。」

 

五月雨「次回は、風間艦隊の旗艦となる小舟さんの説明をさせて頂きます。」

五月雨「この旗艦となる子、まだ名前無いんですよ。」

五月雨「提督、名前付けないと。」

五月雨「提督、なんで先っきから、黙っているんですか?」

 

 



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艦隊旗艦用の小舟

五月雨「はい、今回は出番は多いのに、ほとんど触れられない艦隊旗艦用の小舟さんです。」

五月雨「全長は、33メートル。全幅8メートル。排水量120トン。最高速度50ノット」

五月雨「普段は、柱島泊地で停泊しています。」

五月雨「風間提督の執務室と会議室兼仮眠室等が有ります。」

五月雨「調理場に、トイレとバスも装備されていまして。」

五月雨「隔壁を閉じる事でパーティションを区切り多目的に使用する事も可能のです。」

五月雨「普段は、パーティションを区切り明石さんが工作や艦娘の小破迄の修理を行ったりしていますね。」

五月雨「最大で、40名は乗艦可能です。」

五月雨「普段は、提督と私五月雨が乗艦しています。」

五月雨「他の柱島泊地の艦隊旗艦も同様に、この子達が配備されますが。」

五月雨「実際は、風間艦隊を含めても30艦程度しか稼働していません。」

五月雨「これは、提督着任時に執務室を内陸部に配置するかの希望に寄るものです。」

五月雨「風間提督は、執務室を艦隊と希望したので、この子が配備されました。」

風間「え?」

五月雨「提督?」

五月雨「知らなかったんですか?」

風間「確か、希望を聞かれた様な。」

五月雨「この子は、外洋航行も問題なく・・・・・」

五月雨「提督、そろそろこの子の名前を決めないと。」

 

五月雨が、いい加減にしろよと風間に目を向ける。

 

風間「そうだね。」

風間「考えるよ。」

 

風間艦隊の旗艦であるが。

現状は風間の執務室兼住居、風間艦隊艦娘達の溜まり場と化している。

戦闘指揮は、派遣先の護衛艦の中から出している方が多くなっている。

この旗艦で、戦場海域近くで指揮を取る事も可能では有るが。

深海棲艦に狙われたら一溜りも無いだろう。

 

それに、現在の風間艦隊旗艦は隣の石南艦隊旗艦と接舷状態なので航行出来ない。

 

石南提督の面倒を見るのも、大丈夫な時期にも来ている様なので。

近々、旗艦の距離を空けるとするか。

 

艦隊旗艦の提督も、変わる時が有り。

内陸部に、執務室を移したか。

提督辞めたか。

等、色々と有るのだが。

大多数は、行方不明との噂が上がっている。

行方不明の件に付いては、あくまでも噂の範疇なのだが、確かに急に居なく成る場合が多いらしい。

防衛省からも、一切の発表も無い。

噂だが、馬の調教師に成っていたりする提督も居るらしいのだ。

 

何分にも、他の提督達との接触は殆ど無い状態で。

各提督達が、個人的に連絡を取り合う位で交流は無い。

風間も、直接顔を合わせているのも石南花位な物で。

後は、個人間で連絡する位の交流となっている。

 

 



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傾聴 利根

利根

「我輩になんの用じゃ?提督よ?」

「御主の気持ちも解らんでは無いが。」

「我輩に、気を使い過ぎじゃ。」

「確かに、我輩は風間艦隊で唯一の二人目じゃからな。」

「そんなに、気にしていたら。」

「御主が、持たんぞ。」

「それに、我輩自身が気に喰わん。」

「確かに、前任の我輩を轟沈させて戦死させた事の責任を感じておるのは、お主の立場なら当然じゃ。」

「しかし、我輩は我輩じゃ。」

「前任の利根では無い。」

「今、お主の前に居る利根は我輩自身じゃからな。」

「なんじゃ?」

「その納得の行かない表情は。」

「先程も、申したが。」

「責任を感じるのは、お主の立場成らば当然じゃろう。」

「しかし、限度を越えた感情は。」

「迷惑以外の何物でもない。」

「正直、我輩も着任した時に。」

「筑摩に抱きつかれて、大泣きされたのには、驚いたがの。」

「じゃが、割り当てられた居住に共に向かう筑摩の笑顔が今でも忘れられないわい。」

「そして、前任の利根の私物が、そのまま残されておったわ。」

「面食らった、面持ちの我輩に気付いた筑摩がの。」

「泣きながら、我輩に謝っての。」

「前の利根の私物を廃棄しようとするからの。」

「押し留めて、押さえ込むのが、大変じゃったよ。」

「その時に、決めたのじゃ。」

「我輩は、前任の利根の事を含めて。」

「全てを、我輩が受け止めるとな。」

「じゃからな、提督。」

「我輩を、普通の利根じゃと思うなよ。」

「我輩は、二人分の利根なんじゃ。」

「風間艦隊の利根は、倍の働きをするからな。」

 

「それとな、筑摩からの言付けなんじゃが。」

「前任の利根が、轟沈した時。」

「提督を、激昂して殴ろとした時。」

「五月雨が、提督との間に入って。」

「代わりに、殴られたんだと聞いておる。」

「その後、瑞鶴に羽交い締めにされたとな。」

「五月雨に、詫びを入れて欲しいそうじゃ。」

「あの時は、すまなかったとな。」

 

語り終えた利根が席を立ち、執務室を出ようとしたが。

ふっと、立ち止まり。

風間の席の横まで来た。

 

座っている、風間の頭を利根は自分の胸元にぐっと引き寄せると。

風間の頭の上で、呟く様に言った。

利根

「提督、我輩は二度と沈まんからな。」

「安心して、指揮を取れよ。」

 

その声は、一人の利根では無く二人の利根からの声の様に風間には聞こえ気がした。

 

風間の頭を、バッと離すと。

利根は、顔を真っ赤にして。

「わ、我輩は何をしているのじゃ?」

「失礼をした。」

「忘れてくれ。」

 

利根は、慌てて執務室を出て行った。

利根の制服には、前任の利根のエンブレムが付いている。

破棄しようとした、筑摩を止めて。

自分で、付けた物だそうだ。

 

 



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日常

石南艦隊の旗艦との接舷状態を解除して数日。

五月雨の機嫌が、何故かすこぶるよろしい。

仕事や出撃も、率先しまくり。

風間は、印を押す位しかやることがない。

 

五月雨「提督、今日は紅茶とケーキです。」

風間「これ、高いヤツだよな。」

五月雨「今日は、私の奢りですから。」

 

何か、怖い事に成らなければ良いが。

 

毎日、ドタバタと過ごしているが。

ディリーやら、ウィークリーやら、マンスリーやらと。

任務を遂行しなが、日々備蓄で有る。

ここ数回のイベント海域は、資材の備蓄が足りなく最後は断念しているパターンとなっている。

旗下の艦娘のレベルも99と上限に達している。

五月雨のみ、レベル175。

白露にも、言われたが。

重婚の考えは無い。

イベント海域のクリアは。

備蓄量と兵装のレベル、後は提督たる風間の指揮が、問題なのだ。

甲からレベルを落とせば、クリアは多分可能だな。

でも、落とすつもりは無い。

1度だけ、前任の利根を失ったイベント。

発令!「艦隊作戦第三法」

利根を失い甲から乙にしてクリア、サラトガが着任した。

乙に落としたら、あっさりクリア出来た。

あと少しの所迄は来てるんだよな。

 

毎日、風間は艦隊旗艦で寝泊まりしてる訳ではなく。

役目や業務によっては、内陸部に宿泊して。

旗艦に出勤する事も有り。

個人用の脚部ユニットを作成してから旗艦と内陸部に対する移動が簡単に行われる為に他の艦隊旗艦や呉総監部からの安易なメールのやり取りに便利に使われる事まで有る。

 

海上自衛隊も、仮にとは言え大将閣下をメールボーイに、使っている事に成るのだが。

風間は、寧ろ率先的にメールボーイを買って出ている。

直接、他の艦隊提督との顔繋ぎが出来るからだ。

 

呉総監部からの書類を受け取り。

ウェットスーツを着込み、防水加工のバックを背負い。

脚部ユニットを装着して着水したら。

「風間さん」

と、呼び止められた。

風間「石南提督。」

石南「花です。」

石南「今から、艦隊に帰還ですよね?」

石南「私も、連れて行って下さい。」

風間「どうやって?」

石南は、風間が背負っているバックを剥ぎ取り。

自分が背負うと。

風間の背中に飛び付いた。

風間「え❓️」

石南「はい、出港です。」

 

石南を背負い、お互いの近況や情報のやり取りをしながらの航行と成る。

 

海上の為では有るのだが。

風間の耳元に、石南は口を近付けて話す。

身体をグッと風間に抱き付ける。

石南と話しながら、風間の頭の中は。

 

背中に感じる、石南のボリューム感。

手に過重する、石南のボリューム感。

これは、修行の一貫なのだろうか?

 

石南を、彼女の旗艦に置いて。

風間は、自分の旗艦にたどり着く。

 

五月雨「お帰りなさい、提督。」

風間「ただいま。」

 

五月雨の笑顔が、何故か心に痛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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白露型

筆頭秘書艦たる、五月雨は白露型の駆逐艦に分類される。

長女の白露を始め、姉妹十人が全員艦娘として存在している。

五月雨は、六女と成るので。

風間に、義姉ぶって絡んで来るのは上の五人と成る。

即ち、白露・時雨・村雨・夕立・春雨である。

更に、義妹も居る訳で。

海風・山風・江風・涼風の四人である。

こちらは、義妹と言う事で風間の、特に財布の中身に狙いを定めて来るのだ。

何故に、この様な事態と成ったのかと言えば。

ケッコンカッコカリ、と言うシステム?のせいである。

 

ケッコンカッコカリ、対象と成る艦娘に指輪をハメる事により。

艦娘の能力を向上させるシステム?で、あり。

艦隊の戦力アップには、必要不可欠なシステム?と成る。

 

因みに、対象と成る艦娘のレベルは99が必要で。

風間の艦隊だと、旗下の艦娘全員のレベルは99に到達している。

全員と、重婚カッコカリが可能な状態で有るが。

指輪は、五月雨のみとなっている。

確かに、重婚した方が戦力アップはするんだが。

どうにも、心情的な物も有り。

実際問題、五月雨に指輪をはめる時にびびったんだよ。

何か、男としてね。

そんな事で、単婚です。

 

ケッコンカッコカリはしているが、五月雨には手を出していないんだよね。

その辺の所は、一度白露に詰問されたのだが。

最後は、他人が口を挟む所では無いと。

白露の方が引いた。

 

艦娘の妊娠出産は、風の噂で聞いて要るが。

実際の所が解らない。

 

石南を石南艦隊の旗艦に送り届けて。

風間は、自分の旗艦に戻って来たのだが。

五月雨に挨拶して、艦内に入り。

ウェットスーツから、制服に着替える為に寝室兼用の部屋に入った。

 

ウェットスーツを脱ぎ出した時に、扉がガチャリと開けられて。

「ハイ、ハ~イ。お帰りなさい。」

風間「村雨。ノック位したら、どうなんだ。」

村雨「固い事、いいっこ無しよ。」

村雨「義姉さんが、妹夫婦の様子を見に来たんだから。」

村雨「最っと、歓迎して欲しいな。♥️」

風間「俺は、着替えの途中なんですが。」

村雨「アラ。」

村雨はその間々、風間の側に寄ると、風間の着替えを手伝い出した。

風間「おい?」

村雨「義姉さんに、お任せ。」

村雨は、風間のウェットスーツを剥ぎ取ると、下着も引き下ろした。

風間「何、するんだよ。」

少し、目を見開いて。

顔を赤くした、村雨で有ったが。

村雨「ほら、早く着替えないと、あの子(五月雨)が来ちゃうわよ。」

風間「何だよ。」

 

村雨は、風間に軍服の上着を着せる時に。

襟元に、鼻を近付けて。

村雨「香水の匂いがするけど。」

村雨「五月雨は、香水付けないんだけど。」

村雨「誰のかな~?」

と、上目遣いで聞いて来た。

先程、石南を背負っていたから。

その時に、移り香になった見たいだな。

村雨「提督、あの子(五月雨)に手を出さないからと言っても。」

村雨「浮気は、褒められないわね。」

風間「これは、違う。」

風間「話しを、聞いてくれ。」

村雨「うるさい。」

人差し指で、風間の唇を押さえる。

村雨「少し、教育が必要ね。」

 

今晩も、長い夜に成りそうだ。

 

 

 

 

 

 

 



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傾聴 明石

明石

「提督、不満は有るのか?と、問われたら。」

「不満だらけですに、成りますよね。」

「工作艦は、私1人ですから。」

「夕張や、たまに秋津洲が手伝ってくれますけどね。」

「私以外の工作艦は、まだ確認されていませんし。」

「アメリカのメデューサでも、艦娘になってくれたら。」

「少しは、楽出来るんですけどね。」

「まぁ、逆に考えれば私の活躍する場所が有るって事なんですけどね~。」

「それに、小破程度までの皆の面倒見で、五月雨よりも。」

「提督の秘書艦を長時間出来る訳だし。」

 

少し、顔を赤らめて。

コホンと咳払いをして、場を誤魔化した。

 

「ほら、武装のレベルアップするのだって。」

「基本的に、私が居ないと駄目ですから。」

「え?」

「そらゃ、たまに失敗してネジ無駄にしますけど。」

「私だって、心血注いでやってますから。」

「気合い入れて、頑張りますってね。」

「これは、比叡さんの台詞か。」

「あと、プレッシャーが半端じゃないんですからね。」

 

「正直、大変ですよ。」

「でも、私じゃないと出来ないから。」

「遣り甲斐感じています。」

「寝不足じゃないか?って。」

「まぁ、基本的。」

「昼夜逆転に近い感じですからね。」

「それに、提督がアレ作れだの。」

「これ、作れだの。」

「五月雨の目を誤魔化して、作業するのも大変何ですから。」

「あの子、怒ると怖いんですよ。」

「あ~。」

「良く知っていますよね。」

 

「提督用の擬装って。」

「気晴らしに成るから、楽いんですよね。」

「でも、これ以上は作りませんから。」

「五月雨に、命令として言われていますから。」

「何ですか?」

「そんな目で、見ても。」

「ダメなものは、ダメですから。」

「間宮さんのチケットを出されても。」

「提督、ホント。」

「勘弁して下さいよ。」

「間宮さんのチケットを、積み上げないで下さい。」

「え?」

「五月雨には、内緒でお願いします?」

「だから、私が怒られます。」

「あの子(五月雨)は、私の上官なんですから。」

「ア、提督も上官ですけど。」

 

「この艦隊ですか?」

「確かに、甲での攻略は2回しかしてないし。」

「イベントは、惨敗続きですからね。」

「いい加減に、戦果上げないと。」

「存在意義が、無いですよね。」

「提督の指揮能力に問題が有ると言われているのは聞いてますけど。」

「大丈夫です。」

「次のイベントは、行けますよ。」

「多分、きっと、おそらく。」

「提督、そんな自信無い顔をしないで下さいよ。」

「成るように成りますって。」

「私達は、提督の指揮を信じて戦います。」

 

 

 

 



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遠征

朝風「司令官も、人使いが荒くて困るわ。」

 

朝風は、遠征任務の東京急行(弐)を最近では専属状態で任されている。

春風・松風・旗風・三日月・白雪を従えての遠征であり。

三日月には、特大発動機を三隻。

朝風達は、ドラム缶を満載しての編成となっている。

一回の出動で、2時間55分を要し。

これを、延々と周回してる。

 

朝風(流石に、飽きてくるわよね。)

この遠征任務を彼女は、軽く考えてはいない。

燃料を効率良く稼げる上に鋼材も稼げる。

艦隊運営の要となる遠征任務なのだから。

しかし、この2ヶ月ばかり。

延々と続いているのだから、やや飽きも来る。

朝風(こんな事を、口にだしたら。神風姉ぇ~に、怒られる。)

 

朝風は、自分の後ろを振り返り。

朝風「皆、大丈夫?」

と、皆を気遣う言葉を掛ける。

松風「あ~?別に問題無いけど。」

春風「松風さん、朝風さんは私達を気遣ってくれているんですよ。」

旗風「朝姉さん、私達に気遣は無用ですよ。」

三日月「もっと、頑張らないとですね。」

白雪「皆さん、頑張りましょ。」

 

朝風(皆、良くやってくれている。)

朝風(司令官に、皆に間宮の券を出す様に交渉するか。)

 

派手に見える分、戦闘系の任務には注目や評価が高い傾向は有る。

だが、遠征任務で資材を集めないと艦隊は稼働出来ないのだから。

朝風は、ややだれて来た自分の気持ちを引き締めた。

 

深海棲艦に、海上封鎖され制海権を取られた状態の中で。

最近は遠征任務でも、被弾する物も出始めた。

この東京急行(弐)と、東京急行は被弾する事な無い。

 

この任務は、風間艦隊では特に実施される任務となっている。

ここ最近のイベントで、資材の備蓄が底をつき断念するパターンが続いている。

重要遠征任務で、間違えが無いのである。

 

松風「何だよ、姉貴。」

松風「珍しく、気を使うなんて。」

松風「さては、司令が恋しくなったか?」

 

朝風は、ジト目で答えた。

朝風「あんたね。」

朝風「司令官には、五月雨が居るんだからね。」

 

松風「おやおや、弱気だね。」

松風「司令は、五月雨には手を出していないらしいじゃないか。」

松風「十分に、チャンスは有るんじゃないかな?」

 

朝風は、ドラム缶を持ち上げ。

松風に、投げつける素振りをした。

 

松風「お~、怖い怖い。」

と、松風はおどけて見せた。

 

朝風が、プッと笑いをこみ上げると。

皆が、笑い出した。

 

天気の良い、波ひとつ無い穏やかな海上に。

明るい女性達の笑い声が続いた。

 

朝風(次に、帰港したら。)

朝風(少し、皆の慰労会位は開催しないとな。)

 

 

 

 



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支援部隊

艦娘艦隊は、防衛省の隷属化に置かれている。

自衛隊の下部組織なのである。

艦娘艦隊が、出動するには自衛隊の援護や支援が必要となる。

何故なら、深海棲艦の発見は自衛隊や海上保安庁の哨戒活動に寄る物が大半となる。

人間サイズにスケールダウンした艦娘が、広範囲に渡る活動を艦船レベルで行うには無理が有るのだ。

逆に言えば、深海棲艦側も同じ事が言えると分析されているのだが。

 

現在の自衛隊も、深海棲艦に対応した装備に改装を行っている。

対深海棲艦用として、艦娘を乗せる為の装備である。

これは、陸海空の自衛隊は元より。

海上保安庁や、日本に残っている米第七艦隊もである。

 

海上自衛隊のヘリコプターSH-60K2機が、海面スレスレの低空飛行をしている。

風間艦隊所属の海防艦が乗り込んでる。

1番機には、占守と国後。

2番機には、八丈と石垣。

 

占守「お世話に成りました。行きます。」

とインカムを通した声に。

1番機機長は答えた。

機長「なんだそりゃ?これで最後か?帰って来いよ。」

占守は、いたずらっ子が怒られた様な顔して。

ペロッと、舌を出して海面スレスレを飛行中の1番機の右側から。

国後は、左側から飛び出す様に着水していった。

少し離れた場所の2番機からも、同じ様に八丈と石垣が着水する。

海防艦の4人が無事に着水するのを確認し高度上げて2機のSH-60Kはホバリングした。

4人が、海面で合流し隊列を組み。

旗艦の占守が、インカムから。

占守「合流完了しゅ。此より作戦行動を開始するっしゅ。」

機長「御武運を。」

占守のサムズアップを見て、2機のヘリは後方に退避する。

 

デイリー任務の敵潜水艦を制圧せよ❗️

この任務を行う為の出動である。

海域が、四国九州沖と近海なので。

風間は、柱島泊地の艦隊旗艦から指揮を取る。

インカムを通して、占守達の会話も聞いている。

 

1番機の機上。

林2士「あんな子供達に。」

原田2尉「林は、今日が初めてだったな。」

原田2尉「なりは子供の様に見えてもな。」

原田2尉「俺達よりも、歳上だからな。」

林2士は、21歳で本日が初陣で艦娘と接するのも初めてと成る。

原田2尉は、31歳で1番機の機長を勤めている。

阿部1曹「確かに、あの姿を見たら面食らうよな。」

阿部1曹は、副機長で29歳。

坂上3曹「でも、良い子達だよ。」

坂上3曹は、26歳。

この4人が、1番機の乗員である。

原田「俺達は、深海棲艦には無力だからな。」

原田「あの、お嬢ちゃん達に戦って貰わないと国防も出来ない。」

林「嫌な物ですね。」

原田「だからな、俺達は俺達がやれる事をやるんだよ。」

林「何を?」

坂上「無事に、海域に送り届けて。」

坂上「無事に帰って来る事を祈って、待つんだよ。」

阿部「暖かい、飲み物を用意してな。」

阿部は、飲み物の入ったタンブラー持っていた。

林「出動の時に、用意していたヤツですね。」

 

暫くして。

原田「お嬢ちゃん達が、御帰還だ。」

インカムから、占守の作戦終了の通信が入る。

 

回収海域に向かう2機は、海上で元気に手を振る4人を確認した。

 

柱島泊地に、帰投する機上で美味しそうに緑茶を飲む占守がいた。

占守「作戦終了後のこのお茶が、落ち着くしゅ。」

阿部「幾らでも、用意してやるから。」

阿部「帰って来いよ。」

占守「当たり前しゅよ。」

占守は、嬉しそうに笑った。

 

 

 



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交流

艦娘達は、日々国防の為に命を掛けている。

大戦中の様に、天皇陛下万歳とか。

1億特攻や、玉砕等は言わない様だが。

少なくとも、風間艦隊の艦娘からの発言は今の所聞いていない。

 

風間が、非番の艦娘を自由にさせて要るのもあり。

風間艦隊所属の艦娘は、旅行やらイベントやらと良く参加している。

 

広島県の女子中高校生や大学生とのスポーツイベント等にもエキジビションとしての参加では有るが。

野球・サッカー・バレーボール・バスケットボール等。

強いのである。

そのせいか、最近の広島県の女子学生のスポーツは、レベルが上がっている。

弓道何か、もう神技レベル。

乗馬だって、神技レベル。

柔道・剣道・薙刀、師範クラスです。

本当の処、オリンピックレベルの処も有るのだから。

「野球は、ストライクと言わないとダメよね。」

 

スポーツ系だけでは無い。

文化系も、言わずものがなで。

百人一首・茶道・華道。

書道も、神技レベル。

俳句も凄い。

正直、部下の能力がチート過ぎて。

風間は、怖く成る時が有る。

 

自衛隊には、当然としても。

警察や海上保安庁等にも、格闘術を教授している。

 

こんな部下が、良く素直に?従ってくれるものだと。

風間は、常々不思議に思うのだ。

かと言って、下手に出る積りも無い。

やれる事をやるしか無いので。

風間は、自然体でやると決めている。

 

風間「308対17か。」

風間「バスケットのスコアか?」

風間「お前ら、奇跡の世代かよ?」

風間「トワイクラウドのキャプテン、夕雲さん。」

夕雲「あら?」

夕雲「手加減をしたら、相手に失礼ですよ。」

夕雲「それに、練習なんですから。」

夕雲「本気でぶつからないとダメだと思うんですよね。」

風間「夕雲は、間違えてはいないよ。」

 

相手は、広島県では強豪に当たる女子高校バスケット部である。

 

夕雲「彼女達は、強いですわ。」

夕雲「私達のディフェンスを掻い潜って17得点も上げたのですから。」

夕雲「試合後、巻雲さん達に少し、注意しました。」

夕雲「それに、400点上げられなかったのも私達の課題ですわね。」

 

風間は、次の言葉が出なくなった。 

 

夕雲「提督、夕雲をお呼びになった御用件は何ですか?」

風間「相手の高校から、再試合の申し込みが来てる。」

夕雲「あら、嬉しいですわ。」

夕雲「当然、お受け致します。」

 

この、申し込み書は。

かなり、字が歪み。

所々に、濡れたような跡が有るんだよな。

相手の女子高校、メンタル大丈夫なのだろうか?

 

夕雲「次の試合では、500得点0失点を目標としますわ。」

 

風間(止めた方が、良いのかな?)

艦娘のこの辺のメンタルは、昭和を感じるんですけどね。 

 

 

 

 



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トワイクラウドとは?

トワイクラウドとは、夕雲型だけで結成されたチームの名前である。

風間艦隊に所属する艦娘達は、様々な形でチームを結成しているが。

夕雲型だけで結成された場合のチームは、トワイクラウドと名乗る。

夕雲が、監督兼キャプテンを務めていて。

殆どのスポーツをこなすのである。

 

前回は、広島県の女子バスケット部との練習試合の一端を記したが。

実際、夕雲型だけでの編成では。

バスケットとしての身長は、足りていない。

全員ガード程度の身長しかない。

そんなメンバーで、勝利を上げているのは彼女達成りに努力や工夫を行っているからなのだ。

艦娘だから、強い訳では無い。

 

とは、言っても。

身長差が有っても、当たり負けは女子高生相手でするわけも無く。

見た目よりも、強靭な身体機能ですからね。

実際、WNBAの選手にも、当たり負けしないと思われる。

風間も、五月雨とぶつかって吹っ飛ばされるパターンの方が大半となる。

ガード程度の身長ばかりのチームなので、リバウンドやスリーポイントシュートの対抗は苦手となるのだ。

そこで、夕雲はフィジカルを生かした方法で対抗する。

相手チームのパス出しから、チェックするのだ。

プレスで、パスカットしシュートを決める。

そう、SLAM DUNKの山王と同じ戦術。

これを、最初から最後までやり続けるので。

ひたすら、夕雲達の攻撃が繰り返される。

見ている、此方が気持ち悪くなる位の戦術なので。

相手が、哀れで仕方ない。

 

夕雲に限らず、艦娘は手を抜かない。

夕雲「相手に失礼が有ったら、申し訳ないですから。」

夕雲「楽しいですよ。」

夕雲「私達の戦術を上回る人達もいますからね。」

 

たまに、苦戦した話は聞くが。

一般の人を相手に、負けた事は少ないな。

 

彼女達は、スポーツを心底楽しむ。

 

夕雲「何でしょうか?」

夕雲「心の何処で、無性にプレイしたいと思う時が有るんですよね。」

 

様々な、スポーツや文化活動に、お祭りなんかも羽目を外して弾けまくる。

風間「もしかしたら、艦娘の艦船時代の記憶に原因が有のかと、思います。」

と、風間の記録が残されている。

風間「戦時中、艦船乗組員は全てを投げ打って戦ったと思います。」

風間「そんな乗組員達の思いが、艦娘の記憶の一部を形成しているとすれば。」

風間「私は、艦娘達に出来る限りの自由を与えます。」

風間「艦娘達には、自由に楽しんで貰いたいです。」

 

もっとも、現状では深海棲艦との戦いに明け暮れる事態になっているのだが。

 

風間「今回も勝ったね。」

夕雲「でも、506対32ではディフェンスの失敗ですよ。」

 

夕雲は、今回は監督としてベンチ入りしていたが。

相手の様子が違った。

 

夕雲「前回は、ベンチ入りしてなかった1年生が主力で来ました。」

夕雲「1年生に、触発されたのか上級生も動きが良くなっていました。」

夕雲「今回も、あの子達は最後まで諦めませんでしたからね。」

夕雲「何時かは、負けるかも知れないですよ。」

夕雲「さて、巻雲さん達に少し注意をして置かないと。」

 

夕雲は、嬉しそうに話す。

 

夕雲「あの1年生達が居るなら、この高校は最もと強く成ります。」

夕雲「次世代が、安心して頑張れる世の中にしないとですよね。」

 

 

 

 



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報告書

イベント海域も終了し。

風間艦隊にも、暫しの静寂が訪れる。

訳は、無いので有る。

イベント海域を完遂しているならともかく、今回も未達に終わり。

風間は、副官の五月雨を伴い防衛省に報告書を提出する為に呉に居た。

その際、嫌味交じりに叱責をたらたらと承る。

風間自身の無能を詰られるのは当然で有り黙って受け入れるのだが。

事が、旗下の艦娘に迄及ぶと瞬間的に頭が熱くなる。

反論しようとすると、横にいる五月雨が絶妙なタイミングで風間の制服を引っ張り制止するのだ。

どうも、風間自身が上層部に対して変に悪目立ちをするらしく。

当たりは毎度厳しい。

其なりに絞られて、釈放された。

これも、艦隊を任された責任者の責務の一つでは有る。

風間「しかし、何故にこうも槍玉の筆頭にされるのか訳が解らん。」

五月雨「提督、本気で言ってますか?」

怪訝な顔で五月雨に振り向いた風間の顔を見て。

五月雨は深いタメ息を含めて、自分の中に抑え込んだ。

五月雨「提督、今日は市内でお茶してから帰隊しましょ。」

風間「五月雨からのお誘いとは、珍しいね。」

五月雨「今日は、私が奢ります。」

海上自衛隊呉総監部の正門で、待ち合わせとして。

二人は、制服から私服に着替える為に更衣室に別れた。

 

今回もイベント海域の攻略は未達であった。

海域突破の為に2個艦隊全艦高速+が必要と言われてもな。

そんな数の機関は所持していない。

それに、風間自身直接的に自衛隊の1部上層部からの特命が押し付けられていて。

艦隊運用の時間も最近は厳しいのだ。

五月雨達にも内密で動けと言われてもな~。

その上、イベント海域未達での叱責で割りが会わない。

不満不平の連続である。

五月雨には、特命の件が薄々感ずかれている様子だし。

これも、仕事の内なのか?

特命の内容は、正直有り得ないと思いたい内容だ。

しかし、調べ始めたらキナ臭いを凌駕しだした。

他にも、特命が下されいる提督も存在するとは思うのだが。

これが、想定通りとなると頭が痛い。

正直、放り投げたい。

調査して解った事の中に。

風間自身が、特命調査の状況に足を踏み入れている。

最早、逃げ出せない。

風間自身に、特命が下された訳だ。

でも、これは俺は被害者だよな。

 

私服に着替えて、正門の外で五月雨を待っていると。

五月雨が、正門から出てきて周りを見渡し。

風間を確認して、トコトコとよってきた。

何時もと違う、私服姿にオーとなっていると。

五月雨「提督どうですか?」

と、聞いてきた。

 

 

 

 

深海棲艦との戦争が続いて、早くも十年。

混沌とした、時勢は続いている。

 



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問い。その壱

風間艦隊の大和姉妹が、呉から靖国神社に参拝に向かったのはイベント海域が終了して暫くしてからの事だった。

 

提督の風間は、イベント海域未達の事後処理で秘書艦の五月雨と多忙を極めている。

工作艦の明石は、イベントの反省を踏まえた武器等の整備開発と同じく多忙を極めている。

練習巡洋艦の香取・鹿島もイベント海域で着任した新人教育で忙しく。

駆逐艦等の艦娘達は、イベントで激減した備蓄資材の回復に奔走している。

 

大和や武藏が、風間艦隊の多忙を横目に東京に向かえるのは、イベントでの功労や休暇の意味では無い。

資材の消費が半端で無い二人には、イベント終了時に仕事が回って来ないのだ。

 

忙しい仲間達には、申し訳なく思いつつ。

この期間を利用しての靖国神社参拝となった。

 

何時もの事と成るのだが、呉にて大量に購入した駅弁を新幹線の車内で、この姉妹はペロリと平らげ。

靖国神社までの道中を食べ歩きに費やした。

風間の提案による、艦娘の割引が有るといっても食費が半端な額では無いのだが。

国からの、給料も基本的には使う事がない二人なので。

こんな時に、爆使いとなる。

 

靖国神社の帰り道、九段下の坂道で武藏の脚に脇見をしながら走り回っていた男の子が肉薄してきた。

武藏「危ないぞ。」

と、ぶつかる寸前で男の子の頭を左手で押さえた。

男の子は、酷く怯えた顔で硬直した。

その表情を見た武藏は、膝を折り男の子の目線に合わせて話しをした。

何でも、前に他の武藏とぶつかった時に。

かなり怖い感じで威圧されたとの話しだった。

クスリと笑い、武藏はバックから風間艦隊のエンブレムを出して男の子に見せ。

武藏「私は、風間艦隊の武藏だ。」

武藏「そんなに、恐がらないでほしいな。」

男の子の頭を撫でながら、武藏は笑った。

男の子は、驚きながらも。

謝りの言葉と共に、走り去った。

 

大和「怖い武藏さんが居たのね~。」

武藏「私では、ないぞ。」

苦笑いの武藏に近付いて大和が、呟く。

 

大和「一瞬だけど、気が付いた?」

武藏「あの気配はアレだな。」

大和「男の子が、ぶつかる寸前のタイミングだったけどね。」

武藏「以前、提督が話していた件だな。」

 

そう、二人の後方。

40メートル秤の距離で二人は陸上に存在しないはずの気配を感じたのだ。

深海棲艦の気配をだ。

一瞬の事だったが、何とも言えない感じの気配。

その時、二人の頭に違和感の強い思考とも思われる言葉が入った。

「これで、良いのか?」

その様に、問いかけられたと感じた。

 

 

 

 

 

 

 



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問い 弐

大和と武藏が、靖国神社に参拝を終えた後。

その脚で、皇居の外苑を時計回りに移動しながら東京駅方面から銀座に向かった。

美人の二人がガールズトークをしながらなので、周りから目を引く。

更に、二人共に高身長でもあるので余計に。

 

深海棲艦との戦争も10年目になると、国内の厭戦気分はかなり高まり。

その風潮は、海から離れた場所になると高まりが激しくなりつつある。

そして、延々と終わりの様相すら見えない戦争への不満感は国民の中で沸騰し始めてる。

海岸線や海洋関連の関係者であれば、最前線で死闘を繰り広げている自衛隊や海上保安庁。

更に、艦娘達に好意的な対応となるが。

その他の人々は、必ずとも好意的とは成らない。

 

大和と武藏は、先程から複数の非好意的な視線が有るのを感じているが。

無視を決め込んでいる。

報告の中には、襲撃してくるグループも居るらしいが。

撃退するのは簡単でも、相手に怪我をさせると色々と面倒な自体となる。

 

大和は、後ろから自分の頭部に飛んでくる物体を感知した。

質量から、小石と認識し。

振り向かないでも、小首を傾げれば避ける事は可能で有る。

しかし、交わした小石が一般人に当たりでもしたら。

それも、面倒な事に成るので手で受け止める事にした。

この間、コンマ数秒で有る。

 

振り向き、小石を右手でポンと受ける。

小石を投げた人物も感知出来ている。

その人物を目視したが、既に武藏が相手の後ろに回り込んでいた。

 

大和「危ないじゃないですか。」

小石を投げた人物を見て、大和は笑った。

人物は、50代位か?

風間提督とは、かなりタイプが違う様ですね。

人物「化け物追い払わんで、こんな所で遊んでんじゃね~。」

 

アラアラ。

大和は、苦笑いした。

余りに、定番の展開で力が抜ける。

因みに、人物は6人組で大和を睨み付けているが。

大和も、ゴタゴタは避けたいので追い散らす事にした。

軽く、殺気を込めると6人組はクルリと回れ右で逃げ出す。

そして、その前方には、武藏が立ち塞がっていた。

前門の武藏に後門の大和で、6人組は進退窮まった。

大和「武藏、その辺で止めましょ。」

武藏も、苦笑いで進路空けてやる。

6人組は、全速力で逃げ出した。

 

武藏「島風より、速いかもな?」

大和もやれやれと肩を竦めた。

武藏「大和を狙うとは、意外と度胸は有った見たいだな。」

大和「狙われ安い様に、わざと隙を作って上げましたからね。」

 

東京駅から、銀座方面を散策しながらだが。

何と無く、鬱屈した感じの空気感が漂う。

長引く戦争に、疲弊した。

どうしようも無い空気感。

 

 

 

 

 

 

 



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問い 参

大和と武藏が、銀座に到着したのは。

1600頃の事だった。

 

二人が、靖国神社から銀座地域を散策しているのは、端で見れば美人姉妹がショッピングがてらに散歩している様に見えるだろう。

実際の所は、視察に近い感じである。

風間の方針でも有るが、出来るだけ自分の眼で自分の耳で自分の感性で、この戦争を判断して貰いたいからだ。

一度、武藏は風間に

武藏「そんな事をさせて、戦闘拒否をしたらどうするんだ?」

風間「ん~。」

風間「そん時に、考える。」

武藏は、呆れながらも風間らしいと話しを止めた。

 

大和「少し、活気が低いかな?」

武藏「仕方ないな。」

深海棲艦の影響で、海外関連の輸出入や旅行、海洋関連の仕事は大打撃。

旅行や各種の産業も、国内に限られる状態で。

経済的機能の麻痺は大きい。

それでも、国内の景気や経済情勢を色々な方策で支えて来た。

しかし、先が全く見えない戦争の状況に不満感は爆発しそうな雰囲気も有る。

 

大和は、やれやれといった感じで肩をすくめた。

大和「閉塞感と厭戦気分で、暴動に成らないと良いけどね。」

武藏「八つ当たりで、こちらに不満をぶつける位ならまだましだがな。」

 

正直、必死に戦っていても、守る者に不満をぶつけられるのは愉快な状況ではない。

 

武藏「深海棲艦が、真綿の様な戦略をしているのは。」

大和「こんな、状況が狙いなのかもね。」

 

呉に向かう、新幹線の車中で大和は今回の散策の状況を思い返していた。

 

国内の民衆は、戦争による閉塞感による疲弊が著しい。

また、不満がピークに成りつつある。

だからといって、昔の様に民衆に嘘っぱちの情報操作は止めて貰いたい。

実際問題、戦況の発表は政府の情報統制が入り込んで入る。

 

直線的に、本土の爆撃が内陸部にはないだけに戦況の状況は解り難いのも確か。

何だか、昔の様相に成りつつある見たい。

深海棲艦側の戦略思想は、不明瞭な点が多い。

本気で、こちら側を殲滅したいのか?

先端が開かれてから、早くも10年となるが。

戦線は、膠着状態で支えているのがやっとな状況。

 

深海棲艦側に、弄ばれている様に感じる。

 

艦娘も、この10年で確認され。

味方に合流し。

人数も増えている。

こちらは、大東亜戦争時代の艦艇が艦娘となる対象で有れば。

後、どの位の数かは想定が可能となるが。

実際の所は、どうなるのだろう?

未完成の艦艇までが、艦娘として現れている。

 

色々と思考しても、切りがない。

帰隊して、提督達と意見交換をしたい。

大和は、思考を止めて隣の武藏に声をかけようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 



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問い 肆

大和「武藏?」

隣に座る武藏に、声をかけようとした、その時。

 

大和は、今までに感じた事の無い圧迫感と殺気を感じた。

 

ここは、新幹線の車内のはず。

しかし、どう見ても深海の中に居るビジョンなのだ。

そして、武藏は。

明らかに、武藏なのだが。

武藏とは違う存在感。

強いて言えば、深海棲艦の武藏が大和の眼前に居る。

 

大和は、大量の冷や汗が滴るのを感じる。

身動ぎも出来ない。

 

眼前の武藏は、身体中がボロボロで額は大きく割れて脳漿さえ見える。

 

武藏からの声が聞こえる。

但し、頭の中に直接的に響く様にだ。

 

ムサシ(大和、お前は何故?)

大和(?)

ムサシ(人間の為に戦うのだ?)

大和(何故って?)

ムサシ(奴らが、私達を戦中では使い捨て。)

ムサシ(戦後は、忘却の奥に封印するがの如く扱い。)

ムサシ(私達と共に散って行った乗組員の想いも踏みにじる様なな扱い。)

ムサシ(虚しい、悲しい。)

ムサシ(今も同じだ。)

ムサシ(護る意味が、有るのか?)

ムサシ(しかも、上層部は責任を取らずに逃げた。)

ムサシ(今の上層部も、信用出来るのか?)

ムサシ(大和、重ねて問う、お前は何の為に再び命を掛けるのか?)

ムサシ(大和、お前は誰の為に戦うのだ?)

 

武藏「大和、どうした?」

 

大和は、ハッと我に帰った。

目の前には、武藏が居る。

その顔は、蒼白く冷や汗だらけで有ったが。

 

武藏「大和、何が有った?」

大和「何がって、貴女の方こそ。」

 

時間を大和が武藏に声を掛け様とした時に戻そう。

 

武藏が、大和を見た瞬間で有った。

 

武藏は、圧倒的な迄の威圧感と恐怖を感じた。

そう、武藏の眼前には大和ではなく深海棲艦のヤマトが居たのだ。

 

可怪しい?

ここは、新幹線の車内のはずだ。

何だ、このビジョンは?

これは、いったい?

 

武藏は、一瞬思考したが。

身動きや、視線すら外せない自分を感じた。

冷や汗が止まらない。

恐怖感が全身を包み込む。

 

このヤマトと対峙したら、生き残れないと思った。

 

ヤマト(武藏、私は要らない存在なんだ。)

ヤマト(あの時の上層部は、私をいかに始末するかを考えた。)

ヤマト(それも、自分達の面子を守る為にね。)

ヤマト(3000人を超える尊い犠牲を、何だと考えたのか。)

ヤマト(上層部の人物は、1人として私に乗り込まない。)

ヤマト(安全な場所で、勝手な事を言うだけで。)

ヤマト(私は、誰の為に戦えば良いのか。)

ヤマト(貴女は、何の為に戦うの?)

 

武藏は、我に帰った。

目の前の大和は、呆然としていた。

 

武藏「大和!!」

 

その後の二人は、押し黙ったままとなった。

 

呉駅に付いて、慌てて下車する。

 

 

 

 

 

 

 



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