蛮勇の王が好敵手を求めるのは間違っているのだろうか (名無しの葦名衆)
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蛮勇の王は神の降り立つ地に導かれる
私は、好敵手を求めていた。
前史の王であった竜王。エルデでの巨人戦争、嵐の王との一騎討ち。
どれもが素晴らしき戦いであり、好敵手であった。
そして…黄金樹の麓で出会った名も無き褪せ人。
黄金に祝福されず、だが確かに強き力を持った戦士。
彼、または彼女との一騎討ちは私も王を捨て、最期に戦士として戦い……そして敗れ去った。
……そのはずだったのだ。
「これは…なんとも奇妙な空間だ」
名も無き褪せ人に敗れ、そのまま死んだと思ったゴッドフレイが目覚めたのは何も見えない暗黒のような空間であった。
手元には長年の戦いによって半壊され、それでもなお使い続けている斧があり、あの褪せ人と戦った時に出来た傷が見えず五体満足のままだ。
まさか長き夢だったのかとおもむろに自分の左肩を触る。
だが、
「やはり、夢ではなかったようだな。セローシュよ」
如何なる時も戦意を抑える為に嚙みつけ、爪を食い込ませていた左肩、左腰、右肩には微かな感触を感じるが彼がいないことを改めて実感でき、あの戦いが夢では無かったことが刻み込まれていく。
それを体感しているとふと視界の左側からほんのりと黄金の光が見える。
不思議に思ったゴッドフレイが光の源を見ると、そこにあったのは———狭間の地で何度も見かけ自身を導いた祝福の光であった。
「何故祝福が此処に……」
驚いたゴッドフレイを他所に祝福の光は道標のように光が筋となって光り輝く。
そしてその先にあったのは一つの大きな扉であった。
その光を導きに沿ってゴッドフレイは得物を持って立ち上がり疑いもなく進む。
かつてのように彼にとっての祝福の導きは好敵手への道筋。
好敵手との戦いを求める彼が歩みを止める理由がないのだ。
「マリカよ、お前の導きか?」
当たり前だが彼の言葉に返ってくる言葉はない。だが王は、神でありかつての伴侶ある女性の名を口にし感謝しながら扉の前で歩みを止める。
扉には何やら文字が書かれているが狭間の地や長征時に見えた文字ではなかったようでゴッドフレイには読み解く事が出来なかった。
「私が
扉に手を付き、ゆっくりと押す。扉が少しずつ開くと同時にそれに合わせて隙間から光が漏れていく。
その光は少しずつであるが前へ進むゴッドフレイの身体を包み込んでいく。
彼が扉を完全に開ききったと同時に光が身体を包み込み見えなくなる。
その瞬間、扉は勢い良く閉じ、少しずつ消えていく。
祝福の光もまた扉と同じように少しずつ消えていこうとしている。
そして、扉が完全に消え去る前に扉に書かれていた文字が光り輝く。
その文字は
『神々が降り立つ地』と
意欲が少しずつ湧いてきたので
別作品の方も少しずつ進めております
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