転生したらヒーローアカデミアだった件 (生まれ変わったらスライムになりたい)
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「また転生したら異世界だった件」

初投稿です。


『告。魔王への進化(ハーヴェストフェスティバル)による変化が開始されました。身体組成が再構成され新たな種族へと進化します。』

 

魔物連邦国(テンペスト)では重要な儀式が行われていた。

 

ファルムスの二万の軍勢を滅ぼした魔物連邦国(テンペスト)の盟主、リムル=テンペストはその人間達の魂を養分とし、魔王への進化(ハーヴェストフェスティバル)が開始されれていたところである。

 

『種族: 粘性生物(スライム)から魔粘性精神体(デモンスライム)への超進化……成功しました。』

 

そこに鳴り響くのは大賢者(エイチアルモノ)の声。

 

魔王への進化(ハーヴェストフェスティバル)の進捗状況を淡々と読み上げていた。

 

『すべての身体能力が大幅に上昇しました。続けて旧個体にて寄得の各種スキル及び耐性の再取得……成功しました。』

 

『新規固有スキル。無限再生・万能感知・魔王覇気・強化分身・万能糸を獲得……成功しました。』

 

『新規耐性。自然影響無効・状態異常無効・精神攻撃耐性・聖魔攻撃耐性を獲得……成功しました。」

 

『以上で進化を完了します。』

 

ここでようやく魔王への進化(ハーヴェストフェスティバル)が終わったかと思われたが、大賢者(エイチアルモノ)の声はまだ続く。

 

『告。ユニークスキル【大賢者】より世界の言葉へ請願。【大賢者】の進化を申請。』

 

『…了。ユニークスキル大賢者(エイチアルモノ)の申請を受理。』

 

大賢者(エイチアルモノ)が進化へ挑戦。』

 

『………失敗しました。』

 

『再度実行します。……失敗しました。再度実行します。……失敗しました。再度実行します。……失敗しました。------------------------再度実行します。……失敗しました。』

 

『告。大賢者(エイチアルモノ)変質者(ウツロウモノ)統合(イケニエ)魔王への進化(ハーヴェストフェスティバル)祝福(ギフト)を得て進化に挑戦。』

 

 

『……………………成功しました。』

 

それは無限に繰り返された試みへの褒美であるかのように

 

『ユニークスキル大賢者(エイチアルモノ)究極能力(アルティメットスキル)智慧之王(ラファエル)】に進化しました。』

 

成し遂げられた超克がキッカケとなり、続く奇跡を引き起こす。

 

『【暴食者(グラトニー)】の進化を希求。【心無者(ムジヒナルモノ)】を統合(イケニエ)に実行。』

 

リムルの意識の感知し得ぬ魂の深淵にて。

 

彼の望みを叶える為に、智慧之王(ラファエル)の統率の元能力(スキル)は確実に最適化されていく。

 

そして、魔王への進化(ハーヴェストフェスティバル)はやがて終わりを迎える。

 

しかし、この物語ではもしかしたらこんなパラレルワールドもあったかもしれない……そんなお話である。

 

-----------------------

 

俺はリムル=テンペスト。スライムだ。

 

とあることで異世界にスライムとして転生した俺だったが、今は多くの仲間たちと一緒に楽しく暮らしている……はずだったのだが

 

「ここは…どこだ?」

 

あたりを見渡すと見たことのない…いや、正確には(異世界では)見たことのない景色が広がっていた。

 

そう、ここは前世では見慣れた景色。

 

聳え立つビル、交差点で交わる多く人間。そして整備された道路を走る車。

 

それは前世で見た光景とほぼ同じだった。ただ一つの点を除いて。

 

「うわぁぁ!でっけえヴィラン!」

 

線路の上に立ち暴れる巨人を見ている民衆からそんな声が聞こえた。

 

しかし、民衆も驚きはしているがこれを異常と思っている者はいないようだ。これが前世ならば明らかにおかしい光景であるにも関わらず。

 

『告。これは(マスター)の前世とは別の世界であると推測されます。』 

 

いつもの相棒(大賢者)の声が聞こえたのだが、どうやらいつもと少し雰囲気が違うような気がする。

 

「なるほどな…。というか大賢者…なのか?」

 

『否。ユニークスキル大賢者(エイチアルモノ)究極能力(アルティメットスキル)智慧之王(ラファエル)】へと進化しました。』

 

「なるほど…道理で流暢に喋れるようになってるわけだ。」

 

『もはや私に答えられないことはありません。』

 

そう威張る智慧之王(ラファエル)。そしてそんな智慧之王(ラファエル)を見て頼もしく思った。

 

(いつも頼りになった相棒(大賢者)がさらに頼もしくなったわけか。)

 

「おう!期待しているぞ!」

 

そんな会話をしている時、突如俺の体に異変が起こった。

 

(!?なんだよ、コレ……)

 

俺の脳内に存在しない【15年間の記憶】が流れてきたのである。

 

《告。この記憶はこの世界には存在しますが、(マスター)が体験していない架空の記憶であると推測されます。》

 

そこに流れてきた記憶として

 

 

優しい父と母から生まれてきた記憶

 

父は事故に遭い、死んだしまった記憶

 

そして自分もこの事故に巻き込まれてたが、ヒーローに助けられ自分もヒーローを志した記憶

 

 

すべて架空のものであるが、確かにこの世界に存在する。

 

俺も体験したわけではないが、確かに脳裏に焼き付いている。少しずつ体がこの世界に順応しているということだろう。

 

「なぁラファエルさん。俺って元の世界に戻ることが出来るのか?」

 

『否。当分は戻ることはできないと思われます。しかし、この世界と元の世界では時の速度が異なる為、この世界に滞在するのはなんの問題もないと思われます。』

 

俺としては元の世界のことが心配だった為ラファエルさんに帰る方法を聞いたのだが、それはわからないらしい。

 

「うーん困ったな。これからどうしたものか。」

 

『告。雄英高校へ入学し、プロヒーローを目指すことを推奨します。』

 

(雄英高校?確か記憶にあった気がする。俺は今中学3年生ということになってる訳だから受験するのは今年になるわけか。)

 

雄英高校の偏差値は79で倍率は300倍!誰もが認める国内最難関の高校であり、No.1ヒーローであるオールマイトを筆頭にNo.2であるエンデヴァー、No.4ベストジーニストなどを排出しているらしい。

 

「そうだね、それじゃあその高校に向けて頑張るとするよ。」

 

そう言ったものの、大賢者のさらに上の智慧之王(ラファエル)さんならいくら難関校とはいえ筆記試験は楽勝だろう。

 

『筆記試験は問題ないかと思われますが、志望するヒーロー科には筆記とは別に実技試験が用意されています。』

 

そういえばそんな記憶があった気がする。とはいえ、魔王となった自分なら何も心配はいらないだろう。そうも思ったのだが、一応智慧之王(ラファエル)さんに確認してみる。

 

「なぁ、俺って魔王になってからどのくらい強くなってるんだ?」

 

『以前の10倍です。』

 

「えぇ!!?」

 

想像以上に強くなっているようだ。

 

そして智慧之王(ラファエル)さん曰く暴食者(グラトニー)が進化し、究極能力(アルティメットスキル)である暴食之王(ベルゼビュート)へと進化したらしい。

 

更に驚きなのだが、ユニークスキルである無限牢獄が究極能力(アルティメットスキル)である誓約之王(ウリエル)へと進化したらしい。これでアルティメットスキルが3つとなる訳で、どこから突っ込んでいいのやら。

 

そんな会話をラファエルさんとしていたら後ろのトンネルから笑い声が聞こえてくる。

 

「あーっはっはっは!」

 

そこには右手にノートを持ちながら上を向きながらこっちへ歩いてくる緑髪の少年がいた。

 

俺は少し苦笑いしながらその少年のことを見つめる。

 

彼は目を瞑っていたのか、こちらには気づいていないようだった。

 

その瞬間!少年の後ろのマンホールが吹っ飛ばされ、その中からヘドロのような異形の怪物が出てきた。

 

異形の怪物は少年を襲い始めた。襲われながら少年は必死に抵抗しているが、その抵抗も虚しくヘドロの異形は口から少年の体内へ侵入している。

 

「掴めるわけないだろう?流動的なんだから。」

 

その一部始終を見ていた俺はヘドロの異形に向かってコンクリートの上をゆっくりと歩く。

 

射程圏内へと入ったことを確認したので、ヘドロの異形に向かってこう叫んだ。

 

「喰らいつくせ!暴食之王(ベルゼビュート)!!」

 

暴食之王(ベルゼビュート)の力は凄まじく、あっという間にヘドロを全て食い尽くしてしまった。

 

助けた少年の方へ目を移すと、どうやら気絶しているようだった。

 

俺は(仕方ないな)と思いつつ彼が目を覚ますまでここで待機しようと考えていたら、ラファエルさんが思いもやらないことを報告してきた。

 

『告。個体名:オールマイトがこちらへ接近しています。恐らくその狙いはこの少年の救出でしょう。』

 

報告から数秒が経ったとき

 

「私が来たぁぁぁぁ!」

 

オールマイトが登場した。

 

オールマイトはキョロキョロと周囲を見渡し、意識を失っている少年を見た後に俺に話しかけてきた。

 

「なぁ少女。ここらへんで(ヴィラン)を見かけなかったかい?」

 

(ヴィラン)ってのは確か個性を悪用する人のことを指すんだったな)

 

「あーあのヘドロみたいな奴のことですかね?それなら確かに見かけましたよ」

 

「そうか。それならソイツがどこに行ったのか教えて欲しいんだが。」

 

俺はそんな会話をしながら笑顔で答える

 

「ソイツ、俺が食べちゃいました!」

 

目を丸くしながらオールマイトは呆れたように

 

「何を言ってるんだね少女、、それなら(ヴィラン)は君の胃袋の中にいるとでも言うのかな?」

 

と冗談混じりに言ってきたので、俺は胃袋から気絶しているヘドロを取り出し、オールマイトに突きつける。

 

まぁ胃袋から出したといってもオールマイトからしたら急に出てきたようにしか見えないようだけど。

 

するとオールマイトは本気で驚いた顔をするので、少しドヤ顔をしながらオールマイトを見つめていた。

 

「いやぁ驚いたよ少女!だが人を助ける為とはいえ、人に向かって個性を使っちゃあいけないよ!」

 

ヘドロをペットボトルに詰めながらぐうの音も出ないことを言ってきたため軽く会釈をしながら「すいません」と謝っておいた。

 

「う、う〜ん」

 

オールマイトと冗談混じりの会話をしていたら少年が目を覚ましたようだった。

 

「オ、オ、オールマイトォォォ!?!?ほっ、本物だぁぁぁ!!!」

 

恐らくこの少年は余程オールマイトのことが好きなのだろう。

そうでもなきゃこの反応は過剰すぎるからだ。

 

「サ、サ、サインを…!」

 

少年は慌てながらノートを開く。

ってかそのノートには既に…

 

「ってしてあるぅぅぅ!!!?」

 

叫びながら少年は泣いて喜んでいた。

 

「じゃ、私はこれを警察に届けるので。液晶越しにまた会おう!」

 

そう言いながらオールマイトはどこかへ飛んでいった

 

 

のだが、、

 

「ラファエルさん。あれってほっといて大丈夫か?」

 

苦笑いしながらラファエルさんに聞いてみた。

 

『否。追いかけることを推奨します。』

 

あの少年、オールマイトが跳ぶ直前にしがみつくとはさては只者じゃやいな?

 

とはいえ今から飛んでいくにしてもオールマイトのスピードが速くて見失ってしまいそうだ。

 

『オールマイトは高層ビルに着地することが推測されます。したがってその後に転移魔法を使うことを推奨します。』

 

流石ラファエルさん、頼もしいね。

 

ーーーーーーーーーーーー----------

 

ラファエルさんの予想通りオールマイトは高層ビルの屋上に着地したようだ。

 

そしてそれを確認し、転移魔法を使う。

 

 

 

「全く…それじゃあ私はマジで急いでるからこれで。」

 

オールマイトはかなり焦っているらしく、今すぐにでもここから去りたがっているような気がする。

 

「待っ、待ってください!」

 

「待たない!」

 

こんな感じのやりとりを見てた俺は、これじゃあ少し少年が酷だと思った為、オールマイトに言葉をかけることにした。

 

「少しくらい話を聞いてあげてもいいんじゃないですか?警察の所に行くくらいなら後でも良いですって。」

 

「少女!!どうしてここに!!?」

 

ここにいるはずの無い俺のことをオールマイトは驚きながら見ていた。

 

(うーん、どうしてって言われても…俺はラファエルさんに言われただけだし…なんか良い言い訳ないの?ラファエルさん。)

 

『告。個体名:オールマイトにフルポーションを渡すことを推奨します。』

 

(いやいやいや、なんでそうなるんだよ)と心の中でラファエルさんに突っ込みながらも悩みながらもその指示に従うことにした。

 

「いや、折角なのでプレゼントしに来たんですよ。これ、あげますよ。どんな傷でも治せる薬みたいなものです。」

 

そう言いながら瓶に入ったフルポーションをオールマイトに投げつける。

 

「あ、あぁ。それでは有り難く貰うとするよ。」

 

戸惑いながらも受け取ってくれるオールマイト。見ず知らずの人から渡されたものを受け取る辺り本当に聖人なのかもしれない。

 

「まぁそれは良いんですけど、彼の言うことを聞いてあげた方がいいんじゃないですか?急いでるんですよね?」

 

俺とオールマイトのやりとりをソワソワしながら見ている少年に話題を振ることにした。

 

そうしたらその少年は泣きそうな顔になりながら、オールマイトに思いをぶつけていた。

 

「無個性でも…ヒーローになれますか!?無個性でも…貴方のようになれますか!?」

 

思ったよりも何気ない質問…に思えたが、その葛藤からして彼にとっては人生に関わる。夢に関わる大事な質問なのだろう。

 

そしてこの奇跡の出会いがこの少年の運命を変えることになるとは、まだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《この出会いがこの少年の運命を大きく変えると思われます》

 

(やめろ!雰囲気を壊すな!)

 

 




最後まで読んで頂きありがとうございました。
過去の記憶であったり、急展開だったりするのはご都合主義なので許してください(笑)

1話は設定とかを決めている所なのでご都合主義が多かったのでこれからは減ると良いのですが…

拙い文章で折角読んでいただいたのに申し訳ないです。

次回はもっと読みやすい文章を心がけたいと思います


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ヘドロ事件

「個性が無いせいで、そのせいだけじゃ無いかもしれないけど…ずっとバカにされてきて。だからかわかんないけど、人を助けるってめちゃくちゃかっこいいことだと思うんです。」

 

「恐れ知らずの笑顔で助けてくれる。貴方みたいな最高のヒーローに!僕も!」

 

少年はその想いを全てオールマイトにぶつけていた。

 

そしたら突然、全て言い切ったくらいからオールマイトから煙がモクモクと出てきたのである。

 

『告。個体名:オールマイトは後遺症により満身創痍だと推測されます。その為、普段大衆に見せているオールマイトの姿は偽りの物かと思われます』

 

そんなことまでわかるかよラファエルさん…と少し恐怖を覚えながらラファエルさんに質問してみる。

 

(それじゃあもしかして回復薬を渡したのはオールマイトの傷を治す為?)

 

『是。しかし、個体名:オールマイトが弱っている姿を他人に見られのは想定外でした。』

 

ラファエルさんとしては、他の人に見られるのは想定外だったらしい。

だからあの時にフルポーションを渡すように言ったのか…

 

そして、ラファエルさんの言った通り、オールマイトはいつもの筋肉質な姿の面影のないような骸骨のような姿になっていた。

 

当然その姿を見た少年は驚愕し、大声で叫んだ。

 

「うわぁぁぁぁ!萎んでるぅぅぅう!!!」

 

その少年のことを見て俺は「はぁ」とため息をつく。

 

そんな様子を見たオールマイトは右手に持っているフルポーションに目を移した後、俺にこう言ってきた。

 

「やはり君、私のこの姿のことに気付いていたんじゃないか?」

 

「え、えぇ。まぁ…」

 

俺はなんて返すべきかわからず、曖昧な返事をしてしまった。

 

「見られたついでだ、少年少女。間違ってもネットには書き込むなよ。」

 

そう言うとオールマイトは自分の服を捲り、腹部の傷を見せる。

 

「5年前、敵の襲撃で負った傷だ。呼吸器官半壊、胃袋全摘、度重なる手術によって憔悴してしまってね。」

 

「私のヒーローとしての活動限界は、1日三時間ほどなのさ。」

 

衝撃の事実を告白するオールマイト。

 

「5年前って、ドクドクチェーンソーと戦った時、?」

 

「詳しいな…だがあんなチンピラにやられはしないさ。」

 

オールマイトはヴィランとの戦闘の際にこの傷を負ったらしい。

 

もちろんそんなことが出来る人間など世界にも数えるほどしかいないだろう。寧ろ俺はそんなことが出来る人間がこの世界にいるってことに驚いたくらいだ。

 

だが俺には1人その人物について心当たりがある。

先程俺の脳内に流れてきた15年分の記憶の中にそれらしき人物がいたのだ。

通常、15年間の記憶を一度に受け取ってしまうと脳がパンクしてしまうのだが、こっちにはラファエルさんがいる為そんな心配は無用だ。

 

(なぁラファエルさん。オールマイトを襲った人物って…)

 

『是。その可能性が最も高いと思われます。』

 

やはりな。確信が持てた為、俺はオールマイトに向かってその名前を口にする。

 

 

 

 

AFO(オール・フォー・ワン)……」

 

「!?!?」

 

AFO(オール・フォー・ワン)。この世界の悪の帝王と呼ばれている人物であり、それと同時に俺のこの世界の父親を殺した人物ということになっているらしい。

 

その名前を口にした途端、オールマイトはわかりやすく動揺した。本人としては抑えてるつもりなのだろうが、あまりに衝撃的だったのか隠せていなかった。

 

オールマイトは動揺しながらもこちらを睨んできた。

 

「少女…君は一体何者なんだ。その名前を一体どこで……」

 

オールマイトは俺のことをAFOの関係者だと疑っているのだろう。

そんなことでオールマイトと敵対したく無い俺は、その誤解を解くために記憶を辿り真実を伝える。

 

「実は……俺の父親はAFOに殺されたんです。でも警察はそれを事故として片付けてしまったらしいです。AFOは裏社会の帝王とまで呼ばれているらしく、事件を書き替えたんだと思います。」

 

実際に俺が体験したわけでは無いため、それほど気にしている訳ではないが、オールマイトは申し訳なさそうに謝ってきた。

 

「すまない…辛いことを思い出させてしまった。」

 

「いえいえ、気にしないでください。」

 

どうやら俺への疑いが晴れたらしく、俺としてはそれで満足だ。

 

「にしても君は本当に油断ならないね。恐らく出会った時からこの傷のこともAFOのことも気づいていたんだろう?」

 

正確にはラファエルさんが、だけど俺はカッコつけて「勿論です。」と誤魔化しておいた。ラファエルさんから冷たい目で見られている気がするが、それは気のせいだろう。

 

「それじゃあこの青い液体も安全なものとして受け取っても良さそうだね。」

 

やはり受け取ってはいたが安全性に関しては疑っていたらしい。

そりゃあ5年間治らなかった傷が治るなんて言われても普通信じないもんね。

 

「騙されたと思って飲んでみてください。ビックリしますよ!」

 

しかしそこで期待を裏切る俺では無い。

 

オールマイトはフルポーションをゴクゴクと全て飲み干した。

 

そして腹部の傷がどんどんと癒えていき、オールマイトの体はいつも通りの筋肉質な体へと戻っていった。

 

少年もこの光景を見て驚いていたのだが、一番驚いていたのはオールマイト本人だった。まぁ5年間も悩まされた怪我がこんなに一瞬で治ったとなったらそりゃあ誰だって驚くか。

 

「し、信じられん…まさか本当に全て治ってしまうとは…、しかも摘出した胃袋や呼吸器官まで完璧に治っている…」

 

そう言われるとこちらも気分が良い。これでオールマイトは俺に一つ借りが出来た…なんて打算的な部分もないことはないが、純粋にオールマイトの怪我が治ってくれたのは嬉しい。

 

「本当にありがとう少女。なんてお礼をすれば良いか。」

 

にしてもここまで感謝されるとは…俺的にはラファエルさんに言われた通りにしただけでここまで感謝されると罪悪感があるな。

 

「それじゃあ頑張ってAFOを倒してください!応援してます!」

 

と無難にその場を収め、この話を終わらせた。

 

これからもオールマイトと会うことはあるだろうし、この出来事はラッキーだったな。

 

そしてオールマイトは思い出したかのように少年の方を向く。

 

「すまん、話をが逸れてしまったな少年。」

 

「プロはいつだって命懸けさ。力が無くても成立するとは、とてもじゃ無いが言えないね。」

 

「夢見るのは悪いことじゃ無い。ただ相応の現実を見なければな、少年。」

 

オールマイトはかなり厳しい意見を言っているがそれには俺も同意見だ。無個性というだけで夢を諦めなければいけないのは理不尽なような気がするが、弱肉強食のこの世界で力なき者の綺麗事など戯言にすぎない。それを俺は前世で大切な仲間を失い、理解したつもりだ。

 

そう言いながらオールマイトは悲しそうな背中を見せながらどこかへ飛んでいってしまった。

 

少年は絶望したような顔をして階段を降りていった。俺も声をかけようと思ったが、それはありがた迷惑というものだろうと思い家に帰ることにした。

 

----------------------

 

(今日は色々忙しい日だったな。)

 

転生した初日であるにも関わらず、事件に巻き込まれたり、No.1ヒーローと出会ったりと中々濃い一日を過ごしたような気がする。

 

俺としては元の世界が心残りではあるが、戻れる方法がないのなら考えても仕方ないだろう。そういうのはラファエルさんに任せれば良いのだ。

 

(それにしてもヒーローか、俺はそんな柄じゃ無いんだけどな…)

 

ふとそんなことを考える。

これからこの世界を生きるには目標が必要だと思ったんだが、ヒーローを目指すというのは身の丈に合ってない…というよりはヒーローになった後のことをまだ何も考えていなかったのだ。

 

ただ何も考えずにヒーローになったところで意味がない。

そこで俺は、ヒーローになった後のことについての目標を考えてみる。

 

まず最初に思い浮かんだのはAFOへの復讐だ。

直接的ではないとはいえ、父親を殺した人物がこの世界のどこかで生きていると言うのは気分のいい話ではない。

復讐と言ったら聞こえは悪いが、AFOは悪の帝王とまで呼ばれている人物の為復讐すれば他の多くな人のためになるだろう。

 

そして二つめの目標としては、できるだけ自分が知名度の高いヒーローになることである。

 

それによって元の世界への戻り方がわかる人間と出会えるかもしれないし、俺以外にも転生者…言い方を変えれば【異世界人】がきている可能性があると思う。その人と出会うきっかけとなるかもしれないから、知名度を上げるのは損がないだろう。

 

(それじゃあその為にまずは雄英を受けることを学校や親に連絡しないとな…)

 

中学生3年生である(ことになっている)俺はそんなことを考える。

母親は父が事故死している為ヒーローを目指すことに対して少し否定していたが、優しい母親なので説得すれば快く応援してくれるだろう。

 

そんなことを考えながら家に帰ってる時

 

 

 

 

 

 

突如爆発が起きた。

 

-----------------------

 

『告。この爆発の原因は先ほどのヘドロの(ヴィラン)が原因であると推測されます。』

 

え?だってそれはオールマイトが処理していたじゃんか。

 

「否。討伐時した際にペットボトルをポケットへ入れておりましたが、先程転移魔法を使って合流した際には既に所持していおりませんでした。したがって道中で落としていたと推測されます。』

 

は!?

 

もっと早く言えよ!と突っ込もうとした俺だったが、ラファエルさんも馬鹿じゃない。これにもなにか理由があるのだろう。…そう考えることにした。

 

 

急いで爆発した場所に移動してみると、そこにはラファエルさんの推測通り先ほどのヘドロの怪物がいた。

そしてそのヘドロを中心に、多くのプロヒーローが取り囲んでいるが流動的な個性である上に中学生を人質にとっている為誰も近づけない。

その為ヒーローは有利な個性のヒーローを待ち、周りに発生している火災等の被害を止めるしかない…という状況だ。

ここはまた俺が出て暴食之王(ベルゼビュート)で喰い尽くす!…というわけにはいかない。

さっきと違って大衆が見ている前では言い逃れ出来ない。

プロヒーローの免許を持っている人間以外が個性を使うのは立派な犯罪となる。

 

ってかオールマイトはどこに行ったんだ?

オールマイトならもう既にヘドロを捕らえ損ねた事に気づいてるだろうし、もう活動限界が無いのだから駆けつけるはずなのである。

 

とはいえ、この状況はちょっと…いや、かなりヤバい。

 

そんな時、俺の目には大衆の中にいる1人の少年が目に映る。

口を抑えてるが今すぐにでも助けに走ってしまいそうな…そんな危なっかしさがある、緑髪の少年。

 

そう、さっきの無個性の子だ。

 

『告。緑髪の少年と人質の少年は同じ学校だと推測されます。』

 

本当だ。制服が同じだし、そんな気がする。

 

だがそれが分かったからといっても状況が変わらないまま…かのように思われたが、そこで状況は動きだす。

 

 

 

気づいたときには既に、少年はヘドロへと突っ込んでいた。

 

 

「デ、デク!来るんじゃねえ!無個性のくせによお!」

 

「き、君が…君が助けを求める顔してた…!」

 

それはほんの一瞬の出来事だった。ヘドロが緑髪の少年を捕まえようとした瞬間にオールマイトが現れたのである。

 

「もう大丈夫だ少年。何故って?私がきたぁぁぁぁ!」

 

「デトロイト・スマァァッシュ!!」

 

オールマイトの登場によって状況は一変。

その一撃は火災すらも消し飛ばし、無事事件は解決したのである。

 

 

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

小説って定期投稿の方がいいんですかね?
迷っているのですが、どちらの方がいいんでしょうか。
ただ定期投稿を守ろうとしすぎて焦ってしまってさらに拙い文章になってしまうのも嫌だなぁって思うのですが
不定期投稿というのもなんか引っかかる部分があるんですよね、、

アンケートを置いてみるので、気軽に投票してくれると嬉しいです!

定期投稿といっても投稿する曜日だけを決めたりする程度ですが…


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解き放たれし者

誤字報告してくれた方!ありがとうございました!
一応見直してるつもりですが、誤字があるまま投稿してしまうことがあるかもしれません。

気づいてくれた方は報告してくれると非常に助かります!


「君は、ヒーローになれる。」

 

ヘドロ事件から数時間が経った。

緑髪の少年は無茶をしたことをプロヒーローに説教され、逆に人質にされた方はそのタフネスが評価され賞賛されていた。

 

そしてオールマイトはと言うと、、

報道陣に囲まれいたのだが、緑髪の少年を追いかけるべく取材者を撒いて逃げてきたらしい。

 

ん、俺か??

 

俺は今物陰に隠れてオールマイトを覗き見しているとこである。

一つオールマイトに聞きたいことがあったのだが、どうやらそんな雰囲気でもなくなっていた上にオールマイトがかなり重大な秘密を暴露していたところに出くわしてしまったので困惑している所である。

 

要約すると、オールマイトの個性は【OFA(ワン・フォー・オール)】先代から引き継がれきた個性らしく、名前からしてもAFOと何かしら繋がりがあるのは明白である。

 

そして次の継承者が緑髪の少年である…ということだ。

 

「そろそろ出てきたらどうだ?少女。」

 

(バレてたーーーー!)

 

そう言われたら仕方ない。俺は物陰から出てオールマイトに姿を見せる。

 

どうやら少年にはバレてなかったらしく、かなり驚かれている。

 

「えっと、どうして俺のことがバレてたんです?」

 

オールマイトが怒っているように見えたので恐る恐る何故バレたのか聞いてみる。

 

「まったく…気配でそのくらいわかるさ。それで、何故ここに?」

 

流石No.1ヒーローだな。と感心しつつ俺は気になってきたことをズバリ聞いてみた。

 

「いや、ちょっと疑問に思っただけなんですが…ヘドロ事件の時、オールマイトがかなり遅れていた気がして。別に責めてるとかそういうことじゃないんですけど…違和感があって。」

 

「考えられるとしたら他のヴィランから足止めを食らっているとしか考えられなかったんですが…」

 

「なるほど、私を止めれるのはAFOかその関係者…と踏んだのだね。」

 

そう、俺が気になっていたのはそこだ。

なんせオールマイトを足止めなんて出来るのはAFOかその周辺のヴィランしか考えられない。

 

「結論から言おう少女。君の推測はほとんど当たっているよ。確かに私はあの時ヴィランから足止めを受けていたのだよ。」

 

「だが、恐らくAFOの仲間では無いと思う。」

 

ん?そうなのか。てっきり遅れたのはAFOの仕業だと思っていただけにそれは意外だった。

 

「そのヴィランとは軽く交戦しただけだが、情けない話だ。全く歯が立たなかったしそのヴィランは全然本気じゃなかったんだよ。街に被害が出ないように私も本気を出さなかったのは確かだが、あのヴィランは間違いなく私やAFOよりも強い。そう感じたのさ」

 

なるほど…ってええ!

マジかよ!

 

オールマイトとAFOってこの世界では最強の2人じゃなかったのかよ!?

オールマイトが言うなら間違い無いんだろうけどさ!

 

「ってかオールマイト!そんなことあるんですか!?」

 

「そりゃあ驚いたさ。底が見えない強さというかなんというか…同じ人間とは思えなかったくらいに。」

 

まさかオールマイトがあっさりと自分より強いって認めるヴィランって…本当にこの世界の人間なのか疑わしいくらいだな…

 

『告。その可能性は非常に高いでしょう。』

 

ラファエルさんもやっぱりそう思うか。俺以外の人がこの世界に来ているってのは朗報だが、ヴィランとなってくると話は別だ。

 

ヒナタのときみたいに話が通じない可能性だってあるし、仲間にする以前の問題だ。

 

「ってかそもそもなんで交戦になったんですか?そのヴィランが何か事件を起こしたとか?」

 

「いや、それがそういう訳じゃなくてね。そのヴィランが〈この新しい体を試したい〉と言っていきなり襲いかかってきてね。』

 

うーん。謎は深まるばかりだな。

 

「なるほど、ありがとうオールマイト。それじゃあ俺はそろそろ家に帰るとするよ。」

 

別にこれで一生会えないなんてことはないだろう。そう内心思いながらオールマイトと少年に別れを告げる。

 

「あ、そうそう。君って雄英志望なんじゃない?」

 

俺は思い出したかのように少年に話しかけてみた。

 

「えっ、なんでわかったんですか?」

 

「そりゃああんだけオールマイトの方が好きならそうなんじゃないかなって思っただけだよ。」

 

そんなことラファエルさんに頼らずとも俺にはわかる。

しかも彼はオールマイトの【後継者】なのだから。

 

「俺、リムル=テンペスト。君と同じ中学3年生の雄英志望だよ。」

 

「ぼっ、僕!緑谷出久って言います!」

 

彼は緊張でガチガチになりながらもちゃんと自己紹介をしてくれた。雄英志望同士、ここで会えたのはラッキーだったと思う。

 

「それじゃあ、次会うときは雄英の入学式で!またね〜」

 

そう言いながら俺は転移魔法を使い家に帰ることにした。

 

 

 

 

-----------------------

 

 

 

「ただいま」

 

「おかえり。遅かったね。」

 

家に着くと、母が出迎えてくれた。

事件に巻き込まれた俺は帰りが遅れていたので、心配してくれていたのだろう。

 

母の名前は静江(シズエ)=テンペスト。

純の日本人であり、奇しくもシズさんと似ている。

しかも旧姓が伊沢(イザワ)であるというのだから驚きだ。

俺の容姿がシズさんとそっくりである為、本当に親子って感じがする。

 

ちなみに父の名前はレオン=テンペスト。前世のレオン=クロムウェルとは全くの別人だが、容姿がほぼ同じだった。

前世ではあまり関係が良くない2人であったが、この世界では本当に愛し合っていたそうだ。だからこそ、母は今でも少し寂しそうなときがある。心の傷というのはそう簡単に癒えるものではない。

 

シズさんとレオン…本当に運命だったのかも。と思いつつ俺から話を切り出す。

 

「ねぇ母さん。俺…雄英高校受けてもいい…かな?」

 

「リムル…ヒーローって仕事はいつ命を落とすかわかんない危険な仕事なんだよ。」

 

シズさん…いや、母さんは少し涙ぐんでそう言った。

 

大切な人を失った母さんは私がいずれ命を落としてしまうのが心配で仕方のないのだと思う。

 

でも俺はヒーローになりたいんだ。

父の仇(AFO)仲間(転生者)に会う為に。

 

「母さん、俺も父さんが死んで悲しかったんだ。でも、プロのヒーローがいなかったら俺は悲しむ間も無く死んでいたと思う。それで俺思うんだ…俺や母さんみたいに大切な人が死んで悲しむ人がいなくなって欲しいなって。」

 

「そんでさ、俺のことは心配しなくて大丈夫だよ。立派なヒーローになって母さんに楽させるから!」

 

俺は笑顔で言った。

母さんに少しも心配させないために、もうあんな悲劇を繰り返さないために。

 

そんな俺の考えていることが伝わったのか、母さんは俺を泣きながら抱きしめてくれた。

 

「立派になったね…リムル。ありがとう…」

 

ありがとうはこっちのセリフだよ。

この時、俺はこの人が親で本当に良かったと心から思った。

 

「リムルが雄英で頑張るなら、私も頑張らなきゃね!」

 

母さんは涙を腕で拭いながら、そう言ってくれた。

 

こうして俺は10ヶ月後の高校受験に備えていくことにした。

 

----------------------

 

雄英高校を目指すのは良いのだが、俺は一つだけ悩みがあった。

父が命を落としてから、母が女手一つで俺ををここまで育ててくれた。それは前前世で一人暮らしだった俺には想像絶するほどの苦労だったのだと思う。

それに加え、俺が雄英に行くとなると更に苦労することになってしまうのではないか…という懸念があった。

現に母はさっき「私も頑張らなきゃ」と言っていたし、無理して倒れてしまうのではないか…そう考えてラファエルさんに相談することにした。

 

(ラファエルさん。母さんをなんとか楽させてあげることは出来ないか?)

 

『それなら提案があります』

 

流石ラファエルさん!それじゃあその提案を教えてくれ。

 

『個体名:ヴェルドラを封じる無限牢獄の解析鑑定が間もなく終了するからです。』

 

ってええ!!ヴェルドラがマジで解放可能なの!?

 

『マジです。』

 

何百年もかかるはずだったのに…凄いなラファエルさんは、、

 

『ヴェルドラを解放すれば、何かしらの職に労働させることが可能でしょう。』

 

ってかヴェルドラって天災と言われるほどの暴風竜。世界に四人しかいない世界最強の種族【竜種】の1匹。

 

そんなヴェルドラをこき使おうなんてラファエルさんはとんでもないな…

 

ただ、本当に頼もしい限りだな。そうと決まれば実行するとしよう

 

---------------------ー

 

「ここなら大丈夫かな。」

 

転移先は富士山の頂上。

日本で一番高い場所ならば流石にヴェルドラの衝撃を気にせず召喚できるだろう。

 

(にしてもあれから2年か、ようやく約束が果たせる。違う世界に連れてきて申し訳ないが…今解放してやるよ。ヴェルドラ!)

 

『告。無限牢獄の解析鑑定が終了しました。』

 

「ラファエル、俺の分身を作ってくれ。ヴェルドラの依代にする。」

 

『スキル【強化分身】を使用します』

 

ラファエルさんがそう言うと、黒い煙が出てきて俺の分身が作られた。

 

そして俺は、ヴェルドラの魂を依代となる分身に移動させる。

 

『告。(マスター)と個体名:ヴェルドラの魂の回廊の確立を確認しました。』

 

よし!成功だ!

 

俺の分身はどんどん体が大きくなり、髪色は金髪になった。

その顔はイケメンで、どこかヴェルドラの面影がある。

 

「我!ヴェルドラ=テンペスト!完!全!復!活!逆らう者は皆殺しだぁぁぁぁ!!」

 

この日、数百年ぶりに暴風竜(ヴェルドラ)が復活した。

 

 

 

 




最後まで読んで頂きありがとうございました!

アンケートの結果ですが、週一など定期的に更新して欲しいとの声が多かったです。

個人的にはそうしていきたいのですが、結構不安も大きいです。

月一更新は少なすぎるし、週一更新だと間に合うか分からないし、間に合っても駄作になってしまうのではないか…

とか考えちゃったりします。

なので月ニ投稿を来月からやってみたいと思います。

来月からは第二日曜日と第四日曜日の正午に投稿します!



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ヴェルドラ日記

特に物語が進むわけではないですが、個人的にどうしても入れたかった回です。

ヴェルドラ日記…最高に好きです


♦︎また転生したら異世界だった件♦︎

 

むむむ…これは予測してない事態になったな。

まさかリムルが異世界に転生してしまうとは、、魔王への進化(ハーヴェストフェルティバル)自体は成功しているようだが。

 

しかし何故転生したのだ?…いや、これに関しては考えてもわからないことであろうな。我の勘がそう告げている。

 

それよりこの世界の景色だが、此処はリムルの記憶で見た景色とかなり似ているな。違いといえば人間の中にたまに異形なものが混ざっているくらいか。

 

うーむ、こう見ると結構リムルのいた世界とは違うのかもしれん。

どうやらほとんどの人間にはユニークスキルの様なものが備わっているらしい。

 

現に線路の上でなんかデカい人が暴れてるし…リムルの前世ではこんなことはなかったみたいだしな。あ、今は前前世か!

 

-----------------------

 

ん、なんだ?コレは。

リムルの脳内はこちらに筒抜けなのだが、急に大量の記憶が流れ込んできたようだ。それも15年分くらい。

 

 

なるほどな。これは恐らく“この世界のリムル”の記憶なのだろう。つまり“もしリムルがこの世界で生きていたら”というパラレルワールドのリムルということだな。

そしてこの記憶が来たということはリムルがこの世界に順応してきているということか?

 

まぁこの世界は国籍だの個性届けだの面倒くさいルールが沢山あるようだからな!好都合よ!

 

しかし…これはなかなか凄惨な記憶だな。父を幼い頃に亡くしてしまうとは。父を殺したという奴もなかなかな強さを持っているようだな。我には遠く及ばないが…イフリートくらいの強さはある気がする。

 

--------------------

 

ほほう…あれがこの世界で最強と言われるオールマイトか。

リムルの記憶にいるAFOとかいう奴と同じくらいの力と言う訳か。

 

「イフリートよ、貴様がコイツと戦ったら勝てそうか?」

 

「わかりません。しかし、遠距離戦では私が有利。パワーが活きる近距離戦闘では不利といった感じでしょう。」

 

まぁそういう感じだろうな。

 

我なら万に一度も負ける事はないが、この世界は人間しかおらぬ上にスキルという概念そのものが無いからな。それで上位精霊であるイフリートと同レベルなのを褒めるべきか。

 

しかし、何事もないように振る舞っておるが、かなり消耗しておるな。その少年やリムルは気づいておらんようだが我の目は誤魔化せんぞ。

 

♦︎ヘドロ事件♦︎

 

「しかしリムルもお人好しだな。あんな少年のことなど放っておけば良いというのに。」

 

「いやいや、そうはいかないでしょう。あんな飛び立っていった人にしがみつく一般人の少年なんて危険すぎますし!」

 

「ふん!あの程度の高度から落ちるだけ死んでしまうような軟弱な体なのが悪いのだ。」

 

「無茶言わないでくださいよ…」

 

人間の体とは不便なものだ。飛べる訳でもなければ体も貧弱とはな。

 

「それはそうと、やはりあのオールマイトとやらはかなり無理していたようだな。」

 

腹の傷が深く、今じゃ筋肉が萎んで骸骨のようになってしまってる。

 

「なるほど!だからリムル様はハイポーションを!」

 

「今頃気づきおったか。我は最初から気付いておったぞ。」

 

「本当ですか?」

 

「うむ」

 

度々イフリートから疑われることがあるのだが、今回ばかりは本当であるぞ。

 

「話を聞いておると、やはりオールマイトはAFOとやらとの戦闘でその傷を負ったようだな。」

 

「ええ、というかヴェルドラ様。オールマイトのポケットにさっきのヘドロが入っていないような気がするんですが…」

 

「あ、ほんとだ。この人落としたねきっと。」

 

しかもこの場の全員がそれに気づいてないような感じだな。なんかオールマイトはフルポーション飲んで驚いとるし。

 

「やっぱりこの世界ではフルポーションのような万能薬ってあんまり無いのかな?そこまで驚くことなかろう。」

 

「そうですね。リムル様の前世にも多少の怪我や傷を治すような仕組みがあったようですが、それも限界があるのでしょう。」

 

「まぁ我の場合は滅ぼされても復活するがな!クァーッハッハ!!」

 

「話は変わるのですがヴェルドラ様、この少年はかなり辛い人生を送ってきたようですね。プロヒーローへの憧れは人一倍強いにも関わらず、生まれつき個性がないというだけでその道が断たれてしまっているとは…」

 

「だが、それで諦めたのならソイツはそこまでの人間だったという事であろう。ユニークスキルが戦闘に向かずとも、長い鍛錬を積めば人間の中なら最強クラスになったという者だっておるのだから。大切なのは生まれ持った才能ではなく、努力次第であろう。」

 

「なるほど!流石ヴェルドラ様です!」

 

ま、我も才能あってこその強さであろうがな

 

--------------------

 

ふぅ、にしてもこれでひと段落といったところか…ん?

 

「どうしました?ヴェルドラ様。」

 

「い、いや、なんと言うかな…」

 

何か嫌な予感…というかとんでもない気配がしたような。

 

「ラ、ラファエル様!?」

 

コイツには逆らってはダメだと本能が告げておる…

 

「本日はどのような御用向きかな?」

 

「我、イフリートは貴方様に従う所存です。」

 

『是。種族名:イフリートは名前が与えられておらず、自我が貧弱です。そのためスキルを獲得する土台ができておりません。修行の再開を推奨します。』

 

「はい!私イフリートは修行の鬼となります!」

 

「あ、あのぅ…我は?」

 

「告。個体名:ヴェルドラはサボりすぎだと確信しました」

 

ギクゥッ

 

『命。早急に究極能力(アルティメットスキル)を獲得するように。』

 

 

「それはちょっと、、無茶では?」

 

『可能です。演算能力を私が強制的に拡張しています。その状態を維持するよう努力し、無限牢獄の解析鑑定を行うように。』

 

できますね?と聴かないということは「やれ」ということなのだな…

 

「やるしかない…か。」

 

--------------------

 

♦︎解き放たれしもの♦︎

 

ふぅ。やっと行ったか。これでリムルの方に集中出来るのだが…どうやらヘドロのやつはもう倒したようだな。

 

ほぅ、オールマイトは代々受け継がれた力【OFA】というスキルを持っているようだな。それをあの少年に託す…そしてリムルの親の仇であるAFOを倒すための力ということか。

 

しかし、リムルのやつも中々鋭いことに気がつくものだな。オールマイトを足止めしている奴がいるなど全然考えてなかったわ。

 

だがその質問のお陰でかなり重要なことが聞けたようだな。

オールマイトを足止め出来るやつなどこの世界にはAFOとやらしかおらぬだろうからな。

 

そして、もしオールマイトの話が本当なのだとしたらこの世界にリムル以外の転生者がこの世界に来ている可能性が高い。

 

特徴としては、上位精霊より圧倒的に強く、人間ではないと思われる程の強さ、(人間ではないのかもしれんが)そしてこの世界最強であろうオールマイトに真っ先に喧嘩を売る変わり者であり、「新しい体を試したい」と言うような奴か…そんな奴が居たような居ないような…

 

ま、考えておっても仕方ないな!わからんものはわからん!

 

我はそんなことを考えてる暇はないのだ。早く無限牢獄の解析鑑定を行うとしよう。

 

--------------------

 

アレがこの世界のリムルの母親か…どうやら名前は静江と言い、その容姿はリムルと瓜二つ…というよりもシズとやらにそっくりだな。

 

「イフリートよ。貴様が憑依していたシズとかいうやつは確かこの者にそっくりだったよな?」

 

「ええ、私でも驚きなのですが。更にこの世界のリムル様の亡くなってしまった父親は“レオン=テンペスト”という名前らしく、私の召喚主である“レオン・クロムウェル”様にそっくりな見た目でした。」

 

「ふむ、確かその2人は前世でも運命的な出会いを果たしており、因縁があったようだからな。この世界では上手くやれていたようだし、少しでも道が違えば前世でも2人は仲良くできたのかもしれぬな。」

 

「はい…私としては複雑な気持ちですが…」

 

「まぁ過ぎてしまったことは仕方のないことだ。丁度今リムルがこの世界のシズとやらを説得したみたいだし、この世界では守ってやらねばならぬな。」

 

我がここを出るのもそう遠くはないはず。もし我がここを出たのなら、リムルが大好きなシズとやらを我が守ってやらねばな。

 

イフリートも前世のことは随分と気にしているようだし。

 

--------------------

 

「ついに獲得したぞ!究極能力(アルティメットスキル)究明之王(ファウスト)をな!これもリムルからの祝福(ギフト)のお陰ということか!」

 

「これでラファエル様から怒られずに済みますね。」

 

『問。究極能力(アルティメットスキル)を獲得しましたか?』

 

「はいっ!勿論ですとも!」

 

『それでは早く無限牢獄を破りましょう。』

 

「おおっ!外に出られるのですね!おめでとうございます、ヴェルドラさん。」

 

「まだ気が早いがな!クァーッハッハ!」

 

まずリムルと再開したら何を話そうか。

 

リムルの目の前でファウストを獲得したふりをするのが面白そうだな。

 

「おおっ!これがスキルの進化か!我のユニークスキル究明者(シリタガリ)究明之王(ファウスト)に進化したぞ!我の飽くなき探究心が願う究極の真理に辿り着く力だな!」

 

と言えば

 

「すごいよヴェルドラ!そんなに簡単に究極能力(アルティメットスキル)を獲得するなんてやっぱりお前は大した奴だったんだな!」

 

と褒め称えるだろうて!ハーッハッハッハ!

 

そしたらその後はあのAFOとかいう奴をぶっ飛ばしてみるかな。我がおしおきしてやるのも面白かろうて。

 

「ヴェルドラ様、忠告しておきますが…」

 

「む、何かな?」

 

「絶対に勝手な真似はしないほうがいいかと存じます。」

 

ギクッ

 

「確かに、ヴェルドラ様はとてもお強い。」

 

「うむ!」

 

「ですが、目立つのです。」

 

「まあな!」

 

「褒めてませんよ!〈まあな〉ではなくて、自重せねばならぬという話なのです。」

 

ん?

 

「もしかして、“コッソリAFOをぶっ飛ばそう”とか考えてませんよね?

 

え?考えてたけど…ダメだったかな?

 

「そ、そんな事は考えておらんよ?」

 

「本当に?」

 

「無論だとも!」

 

ここは押し切る。認めたら負けだと、そういう気がした。

 

「ならばいいのですが、心して聞いて下さい。ヴェルドラ様がリムル様の友として立つならば、ヴェルドラ様が何かしでかした責任も全てリムル様のせいにされる、と言う事を。【ありがた迷惑】という言葉があるらしいのですが、良かれと思ってした行動でも相手にとっては迷惑になる、という意味です。」

 

「なるほど…」

 

「リムル様から嫌われたら嫌でしょう?」

 

「泣いちゃうよね」

 

「だったら、迂闊な真似はせず、事前に是非を確認するように徹底してください!約束ですよ!」

 

「うむ、わかった!ならば同時にもう一つ約束しておこう。」

 

「なんでしょう、ヴェルドラ様。」

 

「我が貴様をそう遠くないうちにそこから出してやろう。これが約束だ。」

 

「ありがとうございます!その日を指折り数えて待ってます!」

 

「うむ。約束だぞ!」

 

我は力強く頷き、イフリートと固く約束したのだった。

 

--------------------

 

『命。個体名:ヴェルドラは(マスター)の為に身を粉にして働くように。』

 

むむむ…わかっておるわい。

 

さてと…ようやく、、か。

 

随分と早かったな。リムル=テンペスト。

数百年は覚悟していたと言うのに、わずか二年で終わるとは…

 

『告。無限牢獄の解析鑑定が終了しました。』

 

「ラファエル、俺の分身を作ってくれ。ヴェルドラの依代にする。」

 

『スキル【強化分身】を使用します』

 

リムルの声が聞こえてくる。無限牢獄を本当に打ち破ってしまうとはな…

 

我も人型で生活できるようだし、不自由しないだろうな。

 

『告。主マスターと個体名:ヴェルドラの魂の回廊の確立を確認しました。』

 

ふむ、成功だな。

 

 

「我!ヴェルドラ=テンペスト!完!全!復!活!逆らう者は皆殺しだぁぁぁぁ!!」

 

我はこの日、異世界で復活を果たした。

 

イフリートよ。必ず約束、果たしてやるからな。

 




最後まで読んで頂きありがとうございました!

物語全く進まなくてすいません!


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新ヒーロー「ファウスト」

ヒロアカを全話一気見したんですけどめちゃくちゃ熱くて楽しかったです。(荼毘ダンス時点)

この小説もその一番面白いとこまで書ければ良いんですがねー
気長に頑張ります


「おい、おっさん。なんでそのセリフを知ってるんだ?、、」

 

それって確か漫画のセリフだったよな?

 

「クァーッハッハ!実は退屈だったんでお前の記憶を解析してな。漫画とやらを読み込んでおったのだ!」

 

「しかも将棋の腕は名人級…いや!暴風竜だけに竜王級であるぞ!」

 

いや、上手くねーよ。ってか誰と将棋なんてやってたんだ?

俺の胃袋にいるやつといえば…イフリート!?

全然話とか合わなそうなのになこの2人…

 

「まぁ…胃袋生活を満喫していたようで何よりだよ。」

 

「リムルよ…折角復活したのに…素っ気無いではないか……」

 

どんだけ面倒くさい性格してるんだよこのおっさん。

邪竜とか呼ばれてたのにまさかのツンデレか?

 

「だが思ってたよりはだいぶ早かったな。礼を言うぞ!リムル=テンペスト!」

 

(わが)ズッ友よ!」

 

でも、本当良い性格してるよ。ヴェルドラは。

 

「なーにかズッ友だ、ネタが古いんだよ!」

 

俺は笑いながらそう言った。

でも、本当に解放出来たんだな。

おかえり、ヴェルドラ。

 

あ、そうそう。

 

「お前には祝福(ギフト)は届かなかったのかな?」

 

「よくぞ聞いてくれたぁ!我のユニークスキル究明者(シリタガリ)究名之王(ファウスト)に進化したぞ!我の飽くなき探究心が願う究極の……」

 

おお、やっぴりそうか。俺の大賢者も究極能力(アルティメットスキル)智慧之王(ラファエル)に進化したもんなぁ。

 

『是。それだけではなく、ヴェルドラの残種を解析したことで究極能力《アルティメットスキル》である暴風之王(ヴェルドラ)を獲得しました。』

 

え、ってことはこれで究極能力(アルティメットスキル)が四つも!?

 

『そういうことです。』

 

「そういうことだリムル!今の我は無敵ぞ。大船に乗ったつもりでいるが良い!クァーッハッハ!!」

 

----------------------

 

「なぁヴェルドラ。解放した途端に申し訳ないが頼みがあるんだ…」

 

「ふむ、貴様の母親のことだろう?我に任せておけ」

 

え?なんで分かったんだ?

 

「なんで分かった?みたいな顔しておるなお主。そりゃあ腹の中から見ていたからに決まってあるだろう」

 

いや見てたんかい!てっきり見られてないと思ってたわ!

まぁそれなら話は早い…か。

 

「協力してくれるようで嬉しいよ。それで、ヴェルドラには働いて欲しいんだけど…」

 

そう、ずっと懸念していたことがあったんだ。

ラファエルさんが有能になったおかげでヴェルドラが解放出来たのは確かに喜ばしい。だけどこいつの性格上、何が起こるかわからないというかそもそも仕事できるのか?

 

「お前って何が出来るんだ?」

 

ヴェルドラってなんかやらかしそう…というよりどう考えてもコイツ不器用だろうし誰かの下で働くなんて絶対に無理だと思う。

 

やるにしても絶対に力仕事が良いとは思うんだけど…どんな仕事なら安心して任せられるのやら。

 

「ふむ、何やら貴様が失礼なことを考えているようだがそれは置いておいて…選択肢など一つしかあるまい。」

 

ん?選択肢ってまさか、、

 

「無論!プロヒーローを目指s「却下!」

 

ダメに決まってるだろ!そんなに目立つ職業をやったらどうなるか分かったもんじゃない。

 

「それじゃあ何か良い案があるのか?言っておくが、我はあのパソコンとか言うやつは使えぬぞ。」

 

ぐぬぬ、、悔しいけどプロヒーローが一番理にかなってるんだよな。

 

ヴェルドラの強さならどんなヴィランにも負けないだろうし、個性と称すれば力は使いたい放題。

ヴィランを退治するだけで金が入ってくるわけだし。

しかもヴェルドラ本人がこれだけやる気があるなら断れない。

 

俺は逆にヴェルドラにはヒーローになってもらわねば困るということに気が付いた。

 

だが問題は山のようにある。

 

まず一つ目はヴェルドラの存在についてだ。

 

俺と違ってヴェルドラは戸籍がないし、この世界にいたという証拠もない。まぁ実際いなかったんだから当たり前だが。

 

そして、二つ目は一つ目の延長線上にあるんだが、そんな状態で果たしてヒーローになれるのか…そもそもこの世界で一般人がヒーローになれる制度があるのか?

 

『是。それら点については心配無用です。個体名:ヴェルドラの戸籍、及び個性届を政府に提出しました。そして、公安が認めるヒーロー試験に合格することが出来ればヒーローとして活動することが認められます。」

 

いやいや、ちょっと待て。

なんで勝手にヴェルドラの戸籍作ってるの?この人。

 

『それが最適かつ効率的だと判断しました。』

 

うん、もう突っ込むのはやめよう。

 

(それでラファエルさん。そのヒーロー試験ってのはいつあるんだ?)

 

『明日です。』

 

え、明日!?

 

「なぁヴェルドラ。この世界でヒーローになるにはヒーロー試験ってやつに合格しなければならない。それでなんだが…急で悪いんだけど明日その試験を受けてもらうよ。」

 

「ふむ、よかろう。待ち遠しかったから丁度いいというものだ。」

 

これで一気に二つ問題が解決したんだが…あと一つは、、

 

-----------------------

 

「ただいま。母さん」

 

「あら、おかえり。リムル…と、どちら様?」

 

そう、母さんになんて説明しようか…それが三つ目の最後の問題だ。

 

「クァーッハッハ!我は暴風竜ヴェルドラ!このテンペスト一家の救世主となってやろう!」

 

そんなヴェルドラを見て母さんはポカーンとしている。

まぁ当たり前だ。  

 

「ま、まぁ順を追って説明するから!ヴェルドラもちょっと静かにしてて。」

 

俺はヴェルドラにここに来てもらった理由を説明した。

 

母さんに無理をさせない為であること、ヴェルドラは力がありヒーロー志望なのだが住み家がない為、同居するのは利害の一致であること。この二つを母さんに伝えた。

 

「話は分かったわ、リムル。でもヴェルドラさんは大丈夫なのかしら。

私としては手伝ってくれたり働いてくれたりするのは嬉しいのだけれど、ヴェルドラさんだって本当は帰るべき場所だったり待っている人がいるんじゃない?」

 

そう心配する母さんに対してヴェルドラは笑って答えた。

 

「クァーッハッハ!確かに我のことを待っている者もいるかもしれん。しかし!我とリムルは盟友である!そんな盟友の頼みを断るわけなかろう。我は約束は守る主義なのだ。」

 

そんなヴェルドラを見て母さんは「ありがとう。」と言って受け入れた。

 

こうして俺が心配していた問題についてはヴェルドラのヒーロー試験のみとなった。

 

--------------------

 

翌日

 

ヴェルドラはヒーロー試験会場へと向かった。

 

俺と母さんはヴェルドラを見送った後、一緒にゆっくり家で合格を願うことにした。

 

「リムル、とっても良い友達を持ったわね。」

 

そう言われとき、少し照れながらも

 

「ヴェルドラは自慢の友達だよ。怖がる人も沢山いるけど、本当にいい奴なんだ。今回だってあんな感じだけど、母さんを助ける為ならなんだってするって言ってたんだよ?」

 

そう言った。ヴェルドラは本当に不器用なやつだけど、本当に良い奴。母さんにもそれが伝わっていたらしい。

 

 

安心しながら自室に戻ると、雄英高校の過去問を机に広げてみた。

ヒーロー科とはいえ偏差値79の超難関高校。

 

まぁラファエルさんに頼れば大丈夫とは思いながらも一応自力で解いてみる…のだが全く分からん、、

 

そりゃあ前前世では高校受験も大学受験もしているが、別に超一流だったわけではないし、それはもう十年以上前の話だ。

勉強の内容なんて普通忘れてるだろう。

 

ため息を吐きながら俺はラファエルさんにオートモードに切り替える。

するとペンがすらすらと動き出した。

 

その後、ものの数分で解き終わってしまった。

自己採点をしたら勿論満点だった。当たり前だが量子コンピュータすら凌駕するラファエルさんなら高校生の問題どころか大学…いや、この世の真理すら解明出来そうだ。

 

中学三年生の受験生だというのに全く勉強する必要がないとは…

そんなこんなで勉強のモチベーションが下がりつつ、今日の受験勉強は終わることにした。

 

気がつけばもう夕方。俺はなんやかんや勉強に没頭していたらしい。前世では娯楽がほとんど無かったからか、楽しみながら勉学に励むことができた。

 

そろそろ夕飯かという時、ヴェルドラが勢いよくドアを開けた!

 

「我!帰還!」

 

顔を見ればわかる。絶対ヒーロー試験受かっただろ。

そうは思いながらもヴェルドラに聞いてみる。

 

「おかえりヴェルドラ。ヒーロー試験はどうだった?」

 

そう聞くとヴェルドラは「待ってました!」みたいな顔をしながらドヤ顔でヒーロー免許を見せつけてきた。

 

「クァーッハッハ!我にかかればこんなものよ!」

 

そこにはヒーロー名【ファウスト】と書かれていた。

 

おお、本当にプロヒーローになったんだな。

 

「おめでとう、ヴェルドラさん。」

 

後ろから母さんが歩いてそう言ってきた。

 

「うむ、これでこの家も安泰だな!大船に乗ったつもりでいるが良い。」

 

そんなヴェルドラを見て母さんは微笑みながらも「ありがとう」って言った。それでヴェルドラはさらに笑顔になっていた。

 

「でもヒーロー試験って何やったんだ?」

 

「なぁに、簡単な筆記と実技試験だけだったわ。我にかかればこんなもの楽勝だがな!」

 

おぉ、実技は心配していなかったが筆記試験も突破するとは…実はヴェルドラって実は頭いいのか?

 

『否。個体名:ヴェルドラとは意思疎通が使用可能である為、私が全て解きました。』

 

なーんだそういうことね。

 

「実技試験は特に簡単だったな!軟弱なヒーローと一対一の実践形式だったのだが、一撃で沈めてやったわ!」

 

「そりゃあ…そのヒーローも災難だったな。」

 

正直ヴェルドラに勝てる奴なんて俺含めてこの世界には1人もいないだろう。

 

「でもヴェルドラさん、私のことを想ってくれるのは嬉しいけれど、無理をし過ぎちゃダメですよ?」

 

「ふん!貴様がそれを言うか。だが安心しろ、このヴェルドラの辞書に無理をするなどという言葉ない!」

 

こういう時のヴェルドラは頼もしいな、本当に大黒柱って感じがするよ。

 

俺達はその後ヴェルドラのヒーロー試験合格祝いとして母さんがいつもより豪華な夜食を用意してくれた。

 

とんでもない勢いで料理をかきこむヴェルドラを見ながら俺は苦笑いしながら。母さんは微笑んでいた。

 

こんな毎日が続いてほしい、俺は内心そう思いながら今日もベットに眠る。俺とヴェルドラで母さんを支えなきゃな。

 

 

 




最後まで読んで頂きありがとうございました。
ちょっと短いですがきりが良いので終わりたいと思います。

最近はヴェルドラの話が続いてますね。好きなのがバレそう


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雄英高校試験

もしかしてこのペースって遅かったりします?


ヴェルドラがヒーローの資格を取った日の翌日。

 

俺は朝から学校に行っていたのだが、ヴェルドラはその間に事件を数十件も解決していたらしい。

常人の数百倍のスピードで移動することができるヴェルドラなら並のヒーローとは比べ物にならないくらいの効率で仕事が出来るのはわかっていたが、それにしてもここまでとは…

 

学校から帰ってきた俺はヴェルドラの仕事ぶりを少し見学してみることにした。

 

「なぁヴェルドラ。次の仕事は一体どんな感じなんだ?」

 

「ふむ、実は次やろうと思ってたのはさっきまでのヴィラン退治とは少し違うのだリムルよ。どうやら近所の公園に大量にごみが廃棄されているようでな。我がそこに行って掃除してやろうというところなのだ。」

 

なるほど、要はゴミ掃除か。

ただヴィランを殴りたいだけかと思っていただけに俺は少しヴェルドラに感心した。ここまで根までヒーローになってるとは思わなかったのだ。

 

ちなみにその海浜公園ではごみが不法投棄されており、住民の方も見てみぬふりをしているらしい。

 

「しかし!このヴェルドラの能力を使えばゴミなど一瞬で吹き飛ばせるわ!」

 

「確かにね。それじゃあ一緒に行くか。」

 

俺達は転移魔法を起動し、海浜公園へ向かった。

 

--------------------

 

「公園の入り口まで運ぶんだー!トラックに詰め込め!」

 

ん?あれはオールマイトと緑谷くんだ。何故ここに居るんだろう。

どうやら緑谷くんが掃除していてオールマイトが掃除をしているみたいだね。話を聞いてみるとしよう。

 

「おーいオールマイトー!緑谷くーん!」

 

「む、この声は…リムル少女!と、その隣の方は?」

 

「リムルさん!と…あ、貴方は!今話題沸騰中の新ヒーローファウストさん!」

 

緑谷くんはヴェルドラのことを知ってるようだな。って話題沸騰中なの!?

 

「え、話題になってるの?」

 

俺が恐る恐る聞いたら緑谷は熱くなって早口で答える

 

「うん!昨日のヒーロー試験であのNo.2エンデヴァーを一撃で倒してプロになった今大注目の超新星だよ!」

 

ふーん、そうなんだ…って待て待て待て。

 

「え、ヴェルドラが一撃で沈めたって言ってたヒーローってエンデヴァーだったの?」

 

「うーむ…確かそんな感じの名前だった気がするな。まぁ威勢だけはよかったが大したことない方だけな奴だったわ!」

 

まぁそりゃあ実力差考えたらそうだろうけどさ。

 

「まったく…そりゃあ話題になるわ。」

 

「でもなんでリムルさんとファウストがここに?」

 

あ、そういえば俺ら掃除しにここに来たんだった。エンデヴァーだったことの衝撃で忘れていたよ。

 

「実は俺らこの海浜公園の掃除をしに来たんだけどね。でもどうやらそれは緑谷くんがやってくれそうだから無駄足だったかな?」

 

わざとらしく俺はオールマイトと緑谷に聞いてみる。まぁ俺達に任せてくれてもオールマイト達が鍛練に利用してくれてもどっちでも良いんだけどね。

 

「うーんそうだな…ではこちらに任せて頂きたいかな。」

 

オールマイトは考えながもそう答えた。

 

「分かったよ。それじゃあ俺たちは引き上げようか、ヴェルドラ。」

 

「うむ、それでは達者でな!オールマイトとやら。」

 

最後に挨拶をした後、俺は転移魔法を発動させ家に帰ることにした。

 

そして、ヴェルドラの仕事ぶりを見るためにパトロールを見学していたのだが、流石の一言だ。

 

ヴェルドラの飛行速度は恐ろしいほどに速く、俺でもついていくのに精一杯だった。そして視認できるヴィランを片っ端から一撃で倒していく。

 

そして悲鳴があったらすぐに助けに行く。

その姿はオールマイトやエンデヴァーといったプロヒーローと比べても遜色ない…いや、移動速度を考えれば救助人数はトップヒーローよりも多いかもしれない。

 

前世ならこんなこと無かっただろうが、どうやらヴェルドラはチヤホヤされるのが好きらしい。お礼を言われた後にヴェルドラはあからさまに機嫌が良くなっている。

 

なるほど…だからコイツはあんなにヒーローになりたがっていたのか。

 

だが、動機はどうあれこれは本当に天職だったのかもしれない。ヴェルドラはあっという間にトップヒーローへと上り詰めるだろうからね。勿論そうなれば経済面に関しても期待して良いだろう。年収数億…いや数十億とかになるかもしれない…なんて考えると俺は期待で胸が膨らむ。

ヴェルドラの今後に期待だな。

 

--------------------

 

 

話は少し飛ぶが、10ヶ月の時が経った。

 

この10ヶ月は本当にあっという間に過ぎていった。この世界にも大分慣れていった…というか前前世の世界と個性の有無以外にはそこまで違いは無いからね。

 

ちなみにこの10ヶ月の間にはまぁ色々なことがあった。

どうやら半年に一回、【ヒーロービルボードチャートJP】というビックイベントがあるらしい。

 

簡単に言えば全国のヒーローに順位を付けて格付けする。

支持率、事件解決数、社会貢献度を基準に順位を付けるシステムなんだそうだ。トップに行けば行くほど、国民の平和と安心を守っているヒーローということになる。

ヴェルドラはエンデヴァーに次ぐ3位という十分すぎる結果だった。まぁ本人は1位になれず悔しがっていたのだが。

勿論デビューして数ヶ月で3位というのは異例中の異例。

しかも事件解決数は2位のエンデヴァーとダブルスコアというダントツ1位だったのだが、知名度はまだ低かった為支持率が足を引っ張った結果3位に落ち着いたといった感じだ。

勿論、今回の結果でヴェルドラの知名度は全国区で知られる程のヒーローとなったので次回は1位を狙えるだろう。

 

 

そして今日は待ちに待った雄英高校の入試試験!!

 

俺はようやくかと思いウキウキになりながら会場へ向かっていった。

 

家を出る時、母さんは「いってらっしゃい」と言ってくれて、ヴェルドラは「絶対に合格するのだぞ!我のようにな。クァーッハッハ!」と笑い飛ばしていた。やかましいわ。

 

そんなこんなで雄英の会場に着いた。

 

落ちる気は微塵もないが、校門を前にしてホッと深呼吸しながら校内へと入っていく。

 

そして試験説明会場へとたどり着いた

 

「今日は俺のLiveへようこそー!everybody Say Hey!!」

 

声でけえしテンション高えなあの人…

 

『あれはボイスヒーロー【プレゼント・マイク】です。』

 

ふむふむ、そんなことも知ってるのかラファエルさんは。

 

そこからは長ったらしい説明が続いた。

簡単にまとめると

・各自指定の演習場にて行う

・演習場には仮想ヴィランを多数配置してある。三種存在しており、攻略難易度に応じてポイントが変わる

・他人への妨害等の行為は御法度

 

今のところこんな所だ

 

「質問よろしいでしょうか!」

 

説明中だというのに急に質問をしたがってるやつがいるな。

眼鏡の長身でいかにも頭が良さそうな優等生って感じの子だね。

 

「プリントには四種のヴィランが掲載されています。誤載であれば、日本最高峰の雄英において恥ずべき事態!」

 

「ついでにそこの縮毛の君!先程からボソボソと…気が散る!物見遊山のつもりなら即刻、ここから去りたまえ!」

 

ほう、なるほど確かにプリントには四種のヴィランが掲載されている…がこれって絶対今から説明するとこだろ。早とちりすぎないか?

 

ってか縮毛ってよく見たら緑谷くんの事か。ヒーローオタクなのは良いけど、度が過ぎるのは良くないな全く…

 

「OKOK。受験番号711くん、NICEなお便りサンキューな。四種目のヴィランは0P。ソイツは言わばお邪魔虫。各試験会場で一体大暴れしているギミックよ。倒せないことは無いが、倒しても意味はない。リスナーにはうまく避けることをお勧めするぜ?」

 

「ありがとうございます!失礼しました!」

 

「俺からは以上だ。最後にリスナーには、我が校の校訓をプレゼントしよう。かの英雄、ナポレオン・ボナパルトは言った。《真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていくもの》と。更に向こうへ、Puls Ultra!」

 

ようやく長ったらしい説明が終わったな。

 

「それでは皆、良い受難を」

 

--------------------

 

俺は試験会場Cだった。ちなみに緑谷くんはBに向かっていったから、恐らく違う会場だろう。

 

ちなみに作戦はもう既に考えてある。ラファエルさんに確認したところ問題なさそうだっからまぁ大丈夫だろう。

 

「はいスタート」

 

ん?

 

「どーしたどーした!本番にはカウントダウンなんかねーんだよ。賽は投げられてんぞ?」

 

プレゼントマイクがそう言うと受験者達は一気に走り出した。

 

ま、俺はそんなに焦る必要もないしのんびりやるか。

 

「おいおいお前聞いてんのか!走れ走れ!」

 

プレゼントマイクはこちらを向いて怒鳴っているから返事くらいはしておくか。

 

「分かってますよ。そんなに焦んないでくださいな。」

 

そう言いながら俺は羽でフワフワと上空へ浮かんでいく。

 

(この技をまた使うことになるとはな…)

 

巨大な魔法陣を展開させ、広大な面積の試験会場の隅々にまで水滴をポタポタと垂らしていく。

 

そろそろ水滴が各地に散らばっただろうか。

そう思い俺はこう叫ぶ

 

神之怒(メギド)!!!」

 

他の受験生を傷つけず、ロボットの核のみを貫き次々と破壊していく。前の俺ではこんなことは出来なかったのだが、覚醒魔王となった俺は以前使った時とは比べ物にならないほどの膨大な魔素をコントロールすることができるようになっていた。

 

他の受験生に1Pも与えることさえも許さず、次々と屈折した光線がロボットを破壊していく。

 

そして全てのロボットを破壊した頃、満を辞して現れた0Pの巨大ヴィラン。しかし、そんな0Pすらも無情にも核を貫き一撃で破壊してしまった。

 

「終了ーーーー」

 

完全に全ての仮想ヴィランを破壊したところで数分の時間を残したところで強制的に試験は終了した。

 

試験開始から1分も経たずに試験が終わったなんて前代未聞…というか時間を残して全ての仮想ヴィランが破壊されたこと自体が想定外であり史上初なのだ。

 

会場内の受験生達が俺の事を変な目で見てくるが、別に俺は君たちが試験に不合格だったとしても知ったことではない。この世は弱肉強食、早い者勝ちだからね。

 

--------------------

 

あれから一週間経った。

 

母さんはソワソワしながら合格発表を待っていたのに対し、俺とヴェルドラは全く心配していなかった。

 

まぁ母さんがソワソワしてる姿が可愛かったもんだから、試験の手応えとかは全く伝えていない。流石にイタズラが過ぎたかな?反省するとしよう。

 

「リムル!手紙来てたよ!」

 

お、やっとか。雄英からの合格通知。

母さんも一緒に見ようと提案したのだが、まずは1人で見るべきだと言われ、俺は渋々部屋の中で1人で封筒を開けた。

 

中には小型のプロジェクターが入っていたため、起動ボタンを押す。

 

『私が投影されたぁぁ!』

 

そこに映されたのはいるはずのないNO.1ヒーロー(オールマイト)

これには流石の俺も予測出来ずに驚かされた。

 

『いやーすまないすまない。思ったよりも手続きに時間がかかってしまって、、、』

 

『私がここにいるのは他でもない!来年度からは雄英高校ヒーロー科の教師となることになったからだ!』

 

えええ!マジでか!

そんな事前会った時にも言ってなかったじゃんか!

まぁその時はヴェルドラに全部話題を持っていかれたから仕方がない…としよう。

 

『筆記試験に関しては全教科満点で合格。凄いね君!どんな頭脳を持ち合わせたらこうなるんだい!?』

 

まぁラファエルさんの力を借りたらそりゃあこうなりますわ。恐らく俺が自力で解いたとしても合格点ギリギリくらいだっただろうからラファエルさんのお陰で安心しながら試験ができたんだよな。

 

『そして実技試験に関してだが…まさか全ての仮想ヴィランを一人で倒してしまうなんて想定外だったよ!その記録はなんと500P!2位の77Pと大差をつけて堂々の主席だよ!』

 

まぁそりゃあそうだろうね。にしても2位の4倍か…我ながらとんでもない記録を叩き出したんだな。

 

『まぁ実は救助活動(レスキュー)ポイントなるものも存在していたんだが、全ての仮想ヴィランが一瞬で壊されちゃったからね。よって誰も困らなかったので残念ながら0Pだ!』

 

いやいやそんなことあるのかよ!

俺は笑いながら液晶越しのオールマイトに突っ込んだ。

 

『とはいえ、それが悪いわけじゃあない。今回に関しては誰も怪我を負わず、助けるまでもなかった。もし現場だったらそんな状況が一番理想的だからね。素晴らしい判断だったよ。リムル少女!』

 

『来いよリムル少女。ここが君の…ヒーローアカデミアだ!』

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございました!

実はヴェルドラの職なんですが、麗日の両親の会社に勤めさせるって案もあったんですが没になったりしてます。
ヴェルドラはヒーローでチヤホヤされるのを望みそうな性格ですからねw
とはいえそんなifのifも面白そうですね


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個性把握テスト

今日は少し長めです。


「実技総合成績出ました。」

 

ここは雄英高校ヒーロー科の会議室であり、職員達が会議をしている真っ只中である。

 

「レスキューP0で2位とはねぇ。」

 

「仮想ヴィランは標的を捕捉し、近寄ってくる。後半他が鈍っていく中、派手な個性で迎撃し続けた。タフネスの賜物だ。」

 

「対照的にヴィランP0で8位…」

 

「大型ヴィランに立ち向かったってのは過去にもいたけど…ぶっ飛ばしちゃったってのは久しく見てないねー。」

 

こんな感じで職員達は生徒について意見を言い合っている。

 

「そして…試験会場の全ヴィランを狩り尽くして500P…」

 

職員達はリプレイ映像を見てため息をつく。

 

 

「まさかこんなことになるなんて想定してなかったな…」

 

「いや、そこじゃないだろ。どんな個性を持っていたらこんなことが可能になるんだ?」

 

「はい、それなんですが…どうやら個性届には【スライム】としか記載がされておりませんでした。スライムになれるという個性なのは判明しておりますがそれ以外は…」

 

職員の一人は困惑しながらそう話す。

それを聞いた職員達もまた、困惑しながら聞いていた。

使用中に叫んでいたため命名された【神之怒(メギド)】という技とスライムにはなんの関連性もない。

 

「それにしても強力な技だ…ヴィランじゃなくて本当に良かったよ。」

 

「あぁ、もしこの技が街中で放たれれば都市の壊滅は免れない。それに止めれるプロヒーローもいないだろうからね。」

 

そしてそんな中オールマイトが口を開く。

 

「実は私…このリムル少女と少し面識があってね。彼女はあのファウストの知り合いらしい。詳しい関係はわからないが、かなり親密な仲らしいよ。」

 

その言葉を聞いた職員達は驚愕しながらも少し納得していたようだった。

ファウストというヒーローはかなり出鱈目な強さで有名なヒーローであり、ルーキーにも関わらずNo.3ヒーローなのだ。

そんな彼も素性は謎な部分が多い。丁度リムルと同じように。

 

「こんなことは話すもんじゃないが、話したほうが納得できると思ったね。」

 

「なるほど。それじゃあこの話題は置いておくとして、これじゃあ他の受験生が可哀想過ぎないか?」

 

そう嘆く職員に対し、ネズミのような生物が答える。

 

「それについては心配無用さ!リムル少女に帰ってもらった後にもう一度試験会場Cでは同じように試験をやったからね。」

 

本来ならこういうことは無いが、流石にこれは例外だったのだろう。

 

「そして今年だけ!異例中の異例でクラスの人数を1-A組だけ21人にしたのさ!」

 

これもリムルの影響だろう。今回も例年同様1クラス20人だったのだが、優秀な生徒が多いため21人となったそうだ

 

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今日は入学初日、不安と楽しみが混ざり合って懐かしい感じだ。

 

俺のクラスは1-A組だった。校門をくぐり地図を見ながら1-A組と書かれたクラスを見つけた。

 

(いやドアデカ過ぎでしょ。)

 

異形系個性を考慮した結果だろうか?

 

俺はそんな事を考えながらもドアを開ける

 

「君!机に足を置くな!雄英の先輩方が使っていた机だぞ!申し訳無いと思わないのか!?」

 

「あ?思わねぇよ端役!お前どこ中だ!」

 

「ぼ…俺は私立聡明中学出身!飯田天哉だ!」

 

「聡明〜?糞エリートじゃねぇか!ぶっ殺しがいがありそうだな!」

 

「ぶっ殺しがい!?君口悪いな!?本当にヒーローを目指してるのかい!?」

 

なんだこの光景は…と少し戸惑いながらも俺は教室に入る

 

威張っている方はヘドロ事件の被害者である【爆豪勝己】だったか。

それで怒っている方は試験会場で質問をしていた子か、名前は【飯田天哉】というらしい。

 

自分の机に座り、数分経ったら緑谷くんが入ってきた。

 

それに気付いた飯田くんが緑谷くんに近づいていって何か話をしているのだが、遠くてよく聞こえない。

 

「友達作りたいなら他所へ行け……ここは、ヒーロー科だぞ。」

 

寝袋に入りながらいかにも寝不足って感じの人がゼリー飲みながら説教してきた。

 

「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠けるね。担任の相澤消太だ、よろしく。」

 

なんだよあのオッサン…とか考えてたらラファエルさんが反応した。

 

『彼はヒーローである【イレイザーヘッド】だと推測されます。』

 

イレイザーヘッド…聞いたことない名前だな…

 

『イレイザーヘッドはメディア露出を極端に嫌っており、その素顔を見たことある人間は非常に少ないです。』

 

へーなるほどね。

 

「早速だが体操服着てグラウンド出ろ。」

 

急すぎるって、と戸惑いながらも文句垂れてても仕方ないため急いで着替えてグラウンドへ向かった。

 

--------------------

 

「「個性把握テストォォォ!?」」

 

「入学式は!? ガイダンスは!?」

 

「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事、出る時間はないよ」

 

いやいやいやおかしいだろ、と俺が心の中で思いつつもまぁ仕方がないので従うことにした。

 

「雄英は『自由な校風』が売り文句、それは生徒だけではなく先生側もまた然り。お前達も中学の頃にやっただろう? 個性禁止の体力テスト。今からやる8種目の競技をお前達にはやってもらう。」

 

相澤はニヤリと笑いながらそんな暴論を口にした。

 

「おいリムル、中学の時ボール投げ何mだった?」

 

え、それは恥ずかしいなちょっと。俺はこの世界では運動が苦手だったことになってるんだから。

 

「じゅっ…18mです…」

 

俺は顔少し赤くし、相澤から目を逸らしながらそう言った。

 

「まぁ女子高生ならそんなもんだろう。そんじゃあ今ここで投げてみろ、“個性あり”で。」

 

なるほど…そういう魂胆ね。この世界ではヒーロー以外は基本的には個性の使用は禁止されている。勿論それは体力テストでも例外じゃない訳なんだが、ここは雄英のヒーロー科だ。

 

「わかりました。」

 

俺はハンドボールを相澤先生から受け取り、暴風之王(ヴェルドラ)を発動させる。

 

まさしく天災と言える程の暴風のエネルギーを右手に集め、ハンドボールにその火力を上乗せして思いっきり投げ飛ばした。

 

「…ほう。♾か…」

 

相澤先生はそう呟きながらタイマーを見ていた。

 

「すっげー面白そう!」

 

「個性使えるのかよ!」

 

おいおいみんな調子に乗りすぎだって…

そりゃあ個性使えるのは嬉しいだろうけどさ、相澤先生ちょっとイライラしてるし。

 

「面白そう…か。君達はこの三年間をそんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

 

そう言って相澤先生は俺たちを威圧してくる。

こりゃあなんかとんでもないことを言う予感…とか考えてたら本当にとんでもないことを言ってきた。

 

「よし、それじゃあこの体力テストでトータル最下位だった者は見込みなしとして除籍しよう。」

 

はぁぁぁぁ!?

 

そんなの理不尽なんてもんじゃないが、俺たちは誰一人反論することができなかった。

俺達はまだ高校一年生。場数を踏んだプロのヒーローに意見を言う気にはなれずに体力テストが始まってしまった。

 

------------------------

 

1種目目 50m走

 

これは楽勝かなと思いつつ、俺はスタート位置に立ち転移魔法を起動する。

スタートの合図と同時にゴール地点へ転移した。

 

記録は測定不能と診断された。

どうやら座標が50m間に存在しなかったのが原因らしい。

とはいえ相澤先生に記録自体は認められたので問題なかろう

 

 

2種目目 握力

 

さっき俺は運動が苦手と言ったが、それはあくまでも俺がこの世界に来る前の俺の話だ。

覚醒魔王となって身体能力が10倍以上となった今は身体能力はヴェルドラの次に高いと思う。

 

思いっきり握力計を握った。

 

『バキッ』

 

なんか今鳴っちゃいけない音がなった気がする。

恐る恐る握力計を見てみると、ネジが数本外れており故障している握力計があった。

 

これもまた計測不能とは…そりゃあ良い結果?を出せたのは嬉しいんだが、皆からの視線が痛い。か弱い女の子だと思われていたから尚更。

俺は恥ずかしくなって急ぎ足で次の種目へ向かった。

 

 

3種目目 立ち幅跳び

 

これは楽勝かなと思いつつジャイアントバットの羽根を生やしながら滑空する。まぁ空を飛べるってのはそんにに珍しくない気もするが、、

相澤先生もそんなに驚いた顔もせず♾と表示されたタイマーを手に持っている。いや、ちょっと呆れてるかな?

 

4種目目 反復横跳び

 

流石にこんなの普通にやるしかないか。特にスキルを起動する訳でもなく、無難に終わらせた。

記録は62回

 

5種目目 ソフトボール投げ

 

俺はさっき投げた為この種目は免除となった。

それじゃあと思ってゆっくりと見学しようと思ったんだが、どうやらそれどころじゃないらしい。

 

「個性を消した。つくづくあの入試は合理性に欠くよ。お前のような奴も入学できてしまう」

 

どうやら緑谷くんと相澤先生が揉めている…というか相澤先生が警告を出しているのか。

 

「消した…!あのゴーグル…そうか!視ただけで人の個性を抹消する個性!抹消ヒーロー・イレイザーヘッド!!」

 

本当にイレイザーヘッドって名前のヒーローなんだな相澤先生。ラファエルさんは流石の推測能力ってところだ。

 

「個性は戻した…ボール投げは2回だ。とっとと済ませな」

 

相澤先生は捕縛を解き、緑谷くんは円の中に立つ。

 

『課題名:相澤消太は緑谷が個性を発動したとしてもしなかったとしても除籍処分とするでしょう。』

 

まぁそうだろうな、悔しいが現実なんてそんなもんだ。

緑谷くんは縁があるから助けてやりたいが、このくらい彼の力で切り抜けるべきだろう。そうじゃなきゃNo.1どころかヒーローとしてやっていかないだろう。

 

そして緑谷くんは覚悟を決めたような顔となった。どうやら玉砕覚悟の個性使用ってとこか。だがしかし、普通にやってもダメだ。緑谷くんの体がボロボロになってしまい耐えきれず他の種目どころではなくなってしまう。

 

「SMASH!!」

 

叫び声と共にボールは遥か彼方まで飛んでいった。そしてその記録は705.2mといった驚きの結果となった。

 

しかも緑谷は大怪我をしておらず、腫れ上がっているのは右手の人差し指だけであり、最小限の被害で最大限のパフォーマンスをしてみせたのだった。

 

「先生、、まだ…動けます!」

 

少し涙目になっているが、まだまだやる気なようだった。

 

相澤先生も除籍する気が少しは変わったようだし、この場を乗り切った緑谷くんは正直よくやったと思う。

そんな賞賛の意味を込めたご褒美として俺は右手からフルポーションを放出し、緑谷くんの負傷部分にかけた。

 

右手の人差し指の腫れがみるみると治っていく訳なんだが、それを見たクラスメイト達が驚いた顔でこっちを見てくる。

目立ちたくはなかったが、まぁ怪我人が出たなら仕方ないしそっちを優先するよ。

 

「どーゆー訳だデク!てめぇ!」

 

クラスメイトの一人が緑谷めがけて全速力で走ってきたので俺は慌てて鋼糸を使ってそのクラスメイトの動きを止めた。

 

「ふぅ危ない危ない。大丈夫?緑谷くん。」

 

「グッ、、体が縛られて動けねぇ…」

 

止めようとしていた相澤先生は捕縛用ロープを再び首に巻きつけ、クラスメイトに警告する。

 

「全く…何度も個性使わすな。俺はドライアイなんだ!」

 

いや個性凄いのに勿体無いなアンタ。

 

-------------------------

 

6種目目 長座体前屈

 

この競技は普通にやる、といっても人間の姿じゃあ関節とか不便だからスライムの姿になり早速…と思ったんだがクラスのみんなから勢いよく突っ込まれた。

 

「はぁ!?スライム!?お前ってどんな個性してんだよ!」

 

そんなに驚くことか?別に異形系の個性だとすればそこまで珍しいことじゃないだろうに。

まぁ個性については皆未知数だし気になるのも当然か。

 

「俺の個性は【スライム】って言ってスライムになることができるんだ。」

 

長座体前屈の機械を掴みながら身体を伸ばしてそのことをアピールする。

 

「マジかよ…てっきり発動系の個性だと思ってたんだが違ったみたいだな…」

 

確かにこの身体能力は増強系に、暴風竜(ヴェルドラ)の力はそれこそ発動系のように映っていたのだろう

 

しかし蓋を開ければ個性名【スライム】という異形系可愛らしい能力なのだ。

 

記録は1200.5cmだったため四捨五入で1201cmとなった。

 

「いや…もうその繰上げ要らないだろ…」

 

---------------------

 

7種目目 上体起こし

 

こんなの普通にやるしかないな。

そう考えながら自分の身体能力に頼ることにした。

 

記録は130回ほどだった。

 

まぁ30秒にしては上出来である。

 

---------------------

 

最終種目 持久走

 

これは一番呆気なく終わってしまった。

50m走と同様に転送魔法を起動し、スタートと同時にゴール地点へと転移した。

 

記録は50m走と同じく測定不能。相澤先生も少し呆れながらもOKを出してくれた。

 

---------------------

 

これで全種目が終了した。

相澤先生の言う通りだったらここで最下位の生徒が除籍されてしまうことになる。

 

ちなみに緑谷くんは大丈夫だろう。大記録と呼べるものはボール投げのみであったが、他の記録も悪くはなかった。

持久走なんかも怪我が治っていたおかげで人並みのペースで走ることができていた。

 

「んじゃパパッと結果発表な…トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括表示する。」

 

相澤先生がそう言うと、結果が映し出された。

 

俺は一位、緑谷くんは12位とまずまずな順位だった。

それで肝心の最下位は…

 

「あ…ぁぁ…」

 

隣にいた生徒が絶望しながらうずくまっていた。

確かあの子は…峰田実くんだったかな。

個性は【モギモギ】といって弾力のある球を頭から生やし、それをもぎ取ることが出来る。

 

反復横跳びは大記録を出してはいたものの、それ以外の記録は今ひとつといった感じだった。

 

「ちなみに除籍は嘘な。君達の能力を最大限引き出す為の合理的虚偽。」

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」」

 

ってマジかよ!あの時本気(マジ)な目をしてたから信じちゃってたわ!

 

「あんなのウソに決まっているじゃない、、ちょっと考えればわかりますわ。」

 

『否。個体名:相澤消太は素質がない場合は間違いなく除籍するつもりでした。』

 

クラスメイトの八百万さんに対してラファエルさんが反応した。あの言葉は虚偽でもなんでもない、俺たちがヒーローを目指すための資格があるのか見極めるためだったのだろう。それに俺達が合格したってだけだ。

 

そのことが少し嬉しくもあるが、除籍されそうになるってのは勘弁して欲しいものである。

そんなことを考えながら、教室へ戻った。




最後まで読んで頂きありがとうございました!


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高校生活二日目と戦闘訓練(前編)

今回は前編、後編で分ける為内容はいつもより薄めで少なめですが許してください。
本音で言うと間に合わなかったんです(泣)



雄英高校二日目。

 

二日目からは入学式も終わり、本格的に授業が始まる。

しかし他の高校とは違い、授業の先生は全員プロヒーローとなっている特殊な環境となっていて面白い。

 

例えばプレゼント・マイクの英語の授業等。いつものラジオやヒーロー活動の時とは考えられない程普通だったり、意外な一面が見れたりする。

 

ちなみに内容は日本最難関の高校なだけあって超が着くほどハードだった。俺も一応前々世では大学を卒業しているのだが、それでもついていけないレベルなのだから流石雄英といったところだ。

 

まぁ俺にはラファエルさんがいるのだから心配ないだろう。

 

『真面目に授業を受けてください。(マスター)

 

とか言ってたらラファエルさんに怒られてしまった。

 

 

長い午前の授業も終わり、昼休みとなった。昼食は食堂でクックヒーロー【ランチラッシュ】が作る一流料理を安値で食べることができる。

 

本来俺には食事は必要ないのだが、人間の姿ならばしっかりと味覚はあるし、前々世の料理が食べれるのなら食べない手はない。

まぁ節約しようとも考えたけど、ヴェルドラがしっかり稼いでくれてるからその必要もなさそうだしね。

 

そして食堂で料理を満喫した俺は、次の午後の授業に備え教室へと向かった。

 

--------------------------

 

「わーたーしーがー…普通にドアから来た!」

 

その掛け声と共に勢いよくドアが開いた。ドアから入ってきた男は勿論オールマイト、しかも銀時代(シルバーエイジ)のコスチュームである。

 

「さぁ諸君。この時間の科目【ヒーロー基礎学】だ!!単位数も最も多いぞ。そして本日行うのは…コレ!!」

 

オールマイトはそう言いながら手に持ってるプレートを俺達に見えるように突き出した。

そのプレートには“battle”と書かれていた。

 

「battle…ってことは戦闘訓練!?」

 

「その通り!そしてそいつに伴って… 入学前に送ってもらった『個性届け』と『要望』に沿って作られた戦闘服(コスチューム)!!」

 

リモコンのスイッチを押すと教室の壁の一部が飛び出し棚のようなものが出て着た。

 

「着替えたらグラウンドβに集合するように!」

 

各々がコスチュームに着替え、戦闘訓練が行われるグラウンドβへと向かった。

 

---------------------------

 

グラウンドβにて、コスチュームに着替え終わった俺達は皆とコスチュームを見せ合ったり、紹介したりしていた。

 

「あれ、デクくんかっこいいね!地に足ついた感じ!…要望ちゃんと書けばよかった…パツパツスーツ恥ずかしい…」

 

麗日さんは恥ずかしそうに緑谷くんに自分のコスチュームを見せていた。

 

「それにしてもリムルさんのコスチュームもかっこいいね!」

 

ちなみに俺のコスチュームは暖かい青いコートと青いブーツに黒いズボン。首元には白いマフラーを巻き、腰には刀を差している。そしてなんと言っても顔にはシズさんの形見である仮面を付けている。

 

前世で活動していた服装と全く同じである。特に戦闘に有利な機能が付いていたり、こだわりがある訳ではない。ただ、俺はこの格好がなんとなく好きなのだ。

 

「ありがとう緑谷くん。緑谷くんのコスチュームもオールマイトを意識していてかっこいいと思うよ。」

 

緑谷くんはオールマイトを意識していたのに気付いて貰えたのが嬉しかったらしく、笑顔で「ありがとう!」と言ってくれた。まぁあんな格好をしていたら気付かないわけ無いと思うが…

 

 

「それじゃあ始めるか!有精卵共!」

 

そんな話を緑谷くんとしていたら、そろそろ授業が始まるようだ。

 

この後はオールマイトから戦闘訓練についての詳細が説明された。

 

まず、ヒーローチーム2名とヴィランチーム2名に分かれ闘う。ヒーロー側はヴィランが保持している核を回収する、又はヴィラン2名を捕獲することで勝利条件を満たすことができる。逆に、ヴィラン側は核を制限時間まで捕獲する、又はヒーロー2名を拘束することで勝利となる。

 

核はもちろんレプリカを使用するが、今回の状況設定を踏まえ、本物の核であると仮定して行動するべきだろう。

 

オールマイトも言っていたが、本物の(ヴィラン)ってのは闇に潜む…ということで今回は室内戦となるらしい。それで核を保有されていると考えるとヒーロー側が不利と考えるのが妥当だろう。

 

ちなみに肝心のチームに関してはくじ引きで決めるらしい。

 

「先生!このクラスは21人の為1人余ってしまいます!」

 

飯田くんからもっともな指摘が飛んできた。確かにこのクラスは特例で21人となり、2人ずつチーム分けしていくと誰か1人余ってしまう。

当たり前だが、1人では2人に対してほとんど勝ち目がない。それでは訓練にもならないだろう。

 

「それについては心配無用!」

 

流石オールマイト。やっぱりここは公平に決める案があるのだろう。

 

「今回の戦闘訓練はハンデとしてリムル少女は1人とする!」

 

「はぁぁぁ!?」

 

何言ってんだ!?この人!

いくらなんでもそれは問題ありまくりだろ!

 

オールマイトの発言に対しては流石に「えぇ…ちょっとリムルさんが可哀想なんじゃない?」「ケロ、リムルちゃんはそれで大丈夫なのかしら…」と少し批判的な声もあった。

 

逆に俺の個性把握テストや、試験会場が同じだった子達はそのくらいのハンデで十分と言っていたり、何ならそれでも足りないとオールマイトの案に賛成している声も聞こえた。

 

そして、結局は俺は1人チームとして訓練に参加することとなった。

 

 

くじ引きの結果は、一試合目が緑谷・麗日ペアvs爆豪・飯田ペアとなり、二試合目が俺vs轟・障子ペアとなった。

 

よりによってクラス屈指の実力者と噂される轟と、室内戦としては圧倒的なアドバンテージを誇るであろう索敵に長けている障子という厄介なペアを引いてしまった。俺の見立てでは全てのペアで一番強いのではないか…と思っている。

 

 

一試合目の緑谷チームと爆豪チームの闘いが始まった。

 

結論から言うと勝ったのは緑谷くんのチームだったが、内容的には爆豪くんのチームだったと言える。

最終的な決め手となった攻撃なのだが、緑谷くんがAFO(ワン・フォー・オール)で下の階から爆風で上の階を壊し、その瓦礫を麗さんさんが振り回すことによって勝利した。

 

しかし、こんな戦法は核を保有された室内では勿論使用することができないリスクのある戦法だ。のちの講評では、MVPは負けた爆豪チームの飯田くんとなった。

 

 

そして、問題の二試合目がそろそろ始まろうとしていた。

 

ちなみに俺がヴィラン側となり、核を保有する立場となった。普通なら核を保有して逃げ切った方が勝率が高いと考えるだろう。1人チームなのだから拘束された時点で全員拘束されたと見做され敗北となってしまうし、2対1の状況となると勝てる見込みがほぼ0となってしまうと考えるからだ。

 

しかし、今回の作戦はその逆。こちらから積極的に仕掛け、核を保有されるよりも前に2人共拘束してしまおうという作戦だ。

 

恐らくだが、相手は障子くんが索敵した後、轟くんが室内全てを凍らせる奇襲を仕掛けてくるだろう。そうなると核を保有して制限時間まで逃げ切るのはほぼ不可能だ。つまり、こちらから仕掛けるしか勝機がない…とラファエルさんが言っていた。

 

と、まぁこんな感じで勝機が薄いかのように話したが、正直なところそこまでヤバいとは思っていない。

 

こちらは前世で得た能力が多く、2人くらいなら正直なんとかなるだろうとも思っているしなんなら負ける気がしない。

 

自画自賛のように聞こえてしまうかもしれないが、実際そんなもんだろう。油断しなければ負ける相手ではないからね。

 

俺がそんなことを考えてる間に、試合開始の合図が鳴った。




最後まで読んで頂きありがとうございました!


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