ジャスティスダンガンロンパX4  強くてコロシアイ再履修 (M.T.)
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Prologue 入学したら絶望だった件
プロローグ①


はい、作者です。
懲りずに5作目を執筆してしまいました。
今はヒロアカの二次創作の方に力を入れているのでゆっくりですが、よろしくお願いします。
今回のタイトルはラノベ縛りです。


私は、霧がかった路地裏を走っていた。

その先にいたのは人の影。

激しい戦いの後で腕を負傷したけれど、そんな痛みすらも忘れる程に、私は目の前の影を捕らえる事に必死だった。

私は、その影に向かって愛用の得物であるニューナンブM60を突きつける。

 

「【超高校級の絶望】…貴方は必ず、私の手で……!」

 

 

 

 

 

…え。

 

…ねぇ。……て。

 

………おーーーーい!!!

 

 

 

「ん…?」

 

……夢、か。

ぼんやりとした意識の中、目を開けると目の前に白い色が広がる。

そのままゆっくりと頭を起こすと、新品の白い学習机が視界に映る。

どうやら私は、机の上で突っ伏して寝ていたらしい。

 

「お、やっと起きたぁ!」

 

明るい声がしたので振り向くと、私と同じくらいの歳の女の子が立っていた。

紺色のベレー帽を被っていて、帽子と同じ色のセーラー服を着た、水色のショートボブで青い瞳の女の子だ。

 

「早う行かな、入学式遅れるちゃ!」

 

入学式…?

 

…!

…そうだ、思い出した。

 

約百数十年ほど前、『ダンガンロンパ』というゲームが大流行した。

元は普通の推理ゲームだったが、いつからか普通の人間に『超高校級』の才能と偽りの記憶を植えつけ、『コロシアイ』を行わせてそれを全国に生中継する最低最悪の殺戮ゲームと化した。

次々とダンガンロンパの続編が生中継され、全世界の人々が高校生の殺し合いに熱狂したが、55作目を最後に突然打ち切られ、ダンガンロンパは闇に葬り去られた。

しかし、『ダンガンロンパ』に魅せられた人々、ダンガンロンパに出てくる【超高校級の絶望】を自称するテロリスト達が世界各地でテロを起こし、世界は混沌に包まれた。

そこで日本政府は、日本を脅かす自然災害や自称【超高校級の絶望】達といった脅威に対抗すべく、世界中の才能溢れる生徒達を集めて新たな戦力として育成する為の教育機関を設立した。

その教育機関こそが、『国立未来ヶ峰学園』だ。

 

未来ヶ峰学園。

国内最大の国立高校で、世界中から才能溢れる学生を集めた世界有数の研究機関でもある。

本科の生徒達に関しては入学費用はかからないし、一度入学してしまえばその後の授業料も免除されている。

予備学科ですら偏差値80を超える超エリート校だ。

未来ヶ峰学園にスカウトされれば将来が約束されたと言っても過言ではなく、未来ヶ峰学園は世界中の高校生の憧れなのだ。

だが、未来ヶ峰学園は誰でも入学できるわけではない。

特に本科は一部の例外を除いて完全スカウト制で、その条件は二つある。

 

現役の高校生である事。

そしてある分野において超高校級である事。

 

私の名前は腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

【超高校級の警察官】として未来ヶ峰学園にスカウトされて、今日は入学式に参加するはずだった。

…のだけれど、未来ヶ峰学園の正門を通ろうとした瞬間、意識が途切れた…ってとこだったかしら。

 

「…あら?ここは……」

 

椅子に座ったままあたりを見渡してみると、私が座っている座席と同じ収納できるタイプの白い椅子と机が数十個並んでいて、目の前には目の前には教卓と思われる机と巨大なボードが設置されている部屋だと気付く。

未来ヶ峰学園へのスカウトが決まった時、ホームページで下調べをしたけど、教室の造りはほとんど同じみたいね。

…という事は、ここは未来ヶ峰学園なのかしら?

ボードに『入学おめでとうございます』って書かれてるし…

でも、窓のシャッターが全部閉まっているのが気になるわね。

 

「ねえ!無視せんでよ!」

 

「あら、ごめんなさい。何が何だかわからないものだから、つい考え込んじゃって…」

 

本当、気になる事があると考え込んでしまう癖は治した方がいいわね…

 

「キミ、未来ヶ峰学園にスカウトされたっちゃんね?」

 

「え、ええそうよ」

 

「うちもばい!うちは【超高校級の幸運】、聲伽(こえとぎ)(まな)!よろしゅうな!」

 

 

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

【超高校級の幸運】…

全国の平均的な高校生の中から抽選で一人選ばれるっていう、完全スカウト制の本科における唯一の例外…だったわよね。

今年は彼女が選ばれたのね。

それにしても、彼女の口調…確か博多弁だったかしら。

何というかその、こういう状況で思う事じゃないとは思うけど…可愛いわね。

 

「キミは?」

 

「私は腐和緋色。【超高校級の警察官】よ」

 

 

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「警察官?やっぱり!おまわりさんの制服着とーもんね!」

 

やっぱり最初にそこ食いつくのね。

確かに私は女性警察官の制服を着ているから、見た目で才能が分かりやすいのかもしれないわね。

 

「キミが一緒やったらばり心強か!いきなりバトロワとか始まったっちゃキミがおりゃ大丈夫やね!」

 

「縁起でもない事言わないでちょうだい…」

 

いきなり物騒な事言うわねこの子…

…というか、バトルロワイヤルなんて大昔の作品、よく知ってるわね。

 

「そもそも何か始まるって言ったって、ここには二人しかいないじゃないの」

 

「え?他にも人おるけん言いよーっちゃけど?」

 

「え?」

 

「あのね、他にも新入生がおるっちゃけどね、皆もう体育館に集まっとーったい!一人だけ来とらんかったけん、皆で探しよったところなんよ」

 

「は!!?」

 

ちょっと待ってよ、他の皆はもう集まってるの!?

初耳なんだけど!?

…って事は私、一人だけ大遅刻じゃないのよ!

 

「ちょっと、そんな大事な事どうして早く言わないのよ!?」

 

「あっ、ごめんたい!!すっかり忘れとった!!」

 

そんな大事な事忘れるって…

さっきから思ってたけど、この子ちょっと天然入ってるのかしら。

まあ起こされるまでずっと寝てた私にも非があるんだけど…

 

「…まあいいわ、とりあえず教えてくれてありがとう。とにかく急ぎましょう、聲伽さん」

 

「マナでよかたい!」

 

「え、ええ、行きましょうマナ」

 

私が聲伽さ…マナと一緒に体育館に行こうとした、その時だった。

 

 

 

『生体認証完了。出席番号14、腐和緋色』

 

「きゃ!?な、何!?」

 

突然右手の人差し指が震える感触がして、私は情けない声を上げてしまった。

それを見ていたマナに笑われてしまった。

恥ずかしい…

 

「あはは、それ最初は皆たまがるっちゃね。右手ば見てごらん?」

 

マナに言われた通り右手を見ると、見覚えの無い指輪がはめられていた。

白くて無機質なデザインで、側面にボタンのようなものがついている。

 

「何これ…?指輪?」

 

「それ新型ん生徒手帳らしいばい。最近ん技術ん進歩はすごかね。うちゃようわからんや」

 

生徒手帳…?

これが?

最近新しいデバイスが新発売されたって聞いたけど、それと似たようなものかしら…

 

「あのね、ここにゃうちとキミ含めて16人ん新入生がおるったいって!」

 

「そうなの?」

 

「うん!ばり個性的な人がいっぱいおるっちゃん!」

 

「あなたも十分個性的だと思うけど…」

 

キャッキャとはしゃいでいるマナにツッコミを入れつつ、私達は教室を出て体育館に向かった。

 

 

 


 

 

 

ー未来ヶ峰学園新入生ー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

あと14人

 

 

 

 

 



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プロローグ②

創作論破って楽しいよね。
YOUもやってみなYO!





教室を出た私達は、皆が集まっているという体育館に向かった。

体育館の扉を開けると、未来ヶ峰らしく、4千平米はある巨大な施設の中にほぼ全ての屋内スポーツに対応した設備が並んでいた。

そしてその中には、私達以外の14人の男女がいた。

彼等がマナの言っていた新入生達かしら…?

 

「皆おまたせー!」

 

マナが中にいた人達に声をかけると、何人かが口々に反応した。

 

「あ、やっと来たぁー!」

 

「むむ!?何奴じゃあ!!」

 

「また騒がしくなるのか…」

 

緑っぽい髪の小柄な子、三つ編みの小柄な女の子、大柄で強面の人の順番にリアクションをした。

…おっと、遅刻したのだからまずは自分から自己紹介しないといけないわね。

 

「遅れてごめんなさい。聲伽さんに案内されて来ました、【超高校級の警察官】の腐和緋色です。あの、あなた方も未来ヶ峰学園の新入生なんですよね?」

 

「そうだよ〜!ねえねえ、ここにいる人達皆【超高校級】なんだよねぇ?とっても不思議〜!」

 

私が自己紹介をすると、最初に反応した子がいきなり食いついてきた。

深緑のセミロングに赤褐色の瞳で、頭頂部から生えた渦巻き状のアンテナが特徴的だ。

服装はというと、未来ヶ峰学園の制服の上に、緑色のカーディガンといった格好をしている。

何というか、子犬みたいに好奇心旺盛な子ね…

体格といい、本当に高校生なのかしら?

でもどうしてかしら、何かこの子、うまく言い表せないけど不思議な感じがするのよね…

 

私が小さい子のリアクションに少し戸惑っていると、一際背の高い女の子が後ろから小さい子の襟首を掴んで持ち上げた。

 

「うわ!」

 

「こら蓮!その辺にしな。緋色が困ってるだろ」

 

「ん」

 

「ぶ〜!翼ちゃんのいけず!」

 

背の高い女子が注意をすると、その隣にいたツインテールの小柄な女の子が頷いた。

さっき食いついてきた子は、猫みたいに高身長女子に持ち上げられて唇を尖らせていた。

 

背の高い方の子はというと、同年代と比べてもかなり背の高い私より高身長で、オレンジ色のサイドテールと琥珀色のキリッとした瞳が特徴的だ。

ユニフォームとジャージを着ている事からスポーツ系の才能なのだろうと推測できるが、その賜物なのかスタイルも理想的だ。

この子は見たところ、皆のリーダー的なポジションみたいね…

 

小柄な方の子は、足首まである長いツインテールが特徴的だ。

アルビノなのか髪も肌も白くて、瞳は桃色で、まるで雪兎を思わせる容姿をしている。

セーラー服の上に白衣を着ていて、マフラーで首と口元を隠している。

そしてどこがとは具体的には言わないけど、服の上からでもわかるほど大きい。

本当に対照的な二人ね…

 

「おっと、ごめん。まずは自己紹介しなきゃだよね。あたしは玉越(たまこし)(つばさ)。【超高校級のバレーボール選手】さ!」

 

 

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

玉越翼…ああ、思い出したわ。

確か海外の強豪チーム相手に完勝してオリンピックの出場枠を手にしたバレーチームのリーダーで、人間業とは思えないプレーを平然とこなすバレーボール界の絶対女王よね。

特に彼女の打つスパイクは戦艦大和に喩えられる程凄まじく、相手チームはわけがわからないまま試合が終わってしまって唖然としていたとか…

それだけの才能を持っているのに本人は至ってストイックで、チームメイトやファンを大切にしているから老若男女問わずファンが多いのよね。

どうやらマナも彼女のファンだったみたいで、早速声をかけに行った。

貴女の誰にでもすぐ話に行けるとこ、ホント尊敬するわ…

 

「玉越ちゃん!うちこの前試合ば見たばい!最後のサーブ、アレよう拾えたっちゃんね!」

 

「ありがとう。でも試合に勝てたのはあたしの実力というよりは、チームの皆のおかげだよ」

 

映像の10倍イケメンだ…!

ううむ、女子なのに惚れざるを得ない…

…って、私は一体何を考えてるのよ。

 

「あたしの紹介はこの辺にして、この子は小鳥遊(たかなし)(ゆい)。【超高校級の獣医】だよ」

 

「…ん」

 

 

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

小鳥遊由…確か、かつては不治の病と呼ばれた動物の病気を完治させるワクチンの開発に成功して世界的に脚光を浴びた、獣医界のパイオニアと呼ばれている高校生よね。

その他にも絶滅危惧種の保護活動や被災地での動物達の救護に力を入れていて、世界中の動物達を救う為に各国を転々としていると聞いているわ。

ご両親も有名な総合病院の院長で、難病を抱える人達を毎日何人も救っているのよね。

もっとこう、インテリっぽいのを想像していたのだけれど、まさかこんな癒し系だったとは…

 

「小鳥遊ちゃんはねぇ、動物とおしゃべり出来るっちゃんね!特に猫さんと仲良しなんばい!」

 

「ん」

 

お、おう…

それは初めて聞いたわ。

動物とおしゃべりできるって…そんな才能があるなら確かに医療界に革命を起こせるのかもしれないわね。

ところでさっきから気になっていたのだけれど、この子、玉越さんやマナが話してばかりでまだ一度も自分で話してくれてないわよね。

 

「あの、悪いけど何か話してもらえないかしら?気まずいんだけど…」

 

「ああ、ごめんよ。この子、色々あってさ。動物としか話せないんだ」

 

「あら、そうだったの。ごめんなさい」

 

『色々』の部分が気になるけど、ここで根掘り葉掘り聞くのも野暮よね。

そういえば、小鳥遊さんは玉越さんと一緒にいるし、玉越さんは小鳥遊さんの事に詳しいみたいだけれど、彼女達はここに来る前から知り合いだったのかしら?

 

「ところで、貴女達は知り合いなの?」

 

「高校のクラスメイト同士なんだよ。この子、人間とコミュニケーション取るの苦手だからさ。人と話す時はいっつもあたしが間に入ってたわけ」

 

「なるほどね」

 

道理でこの二人は仲が良いわけね。

だったら小鳥遊さんに何か聞きたい時は、まず玉越さんにコンタクトを取った方が良さそうね。

 

「はい、はいはいはーい!次ボクいいですかー!」

 

私が玉越さんと話していると、さっきの小さい子が割り込んできた。

そういえばこの子の事、まだ何も聞いてなかったわよね。

 

「にししっ、ボクは知崎(ちさき)(れん)!未来ヶ峰学園に選ばれた天才様なのでェす!!」

 

「知崎君…?ね、よろしく。貴方の才能は?」

 

「んっとね、ボクの才能はーーー………ありゃ?」

 

「ん?」

 

「……えっと、何だっけ?忘れちゃった」

 

 

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

ええ…

何よそれ。

自分の才能を憶えてないって…そんな事あり得るの?

 

「ねえ、本当に誰も知崎君の才能を知らないの?」

 

「うん、うち知らん。皆も知らんのごたーばい」

 

「そう…」

 

本当に誰も知らないのね。

まあ本人が知らないって言ってるのなら仕方ないんだけど…

でも、16人もいて誰も知崎君の才能を知らないなんて事、あり得るのかしら?

 

「ゆーるしてニャン☆」

 

うわ、あざとい…

これ絶対自分が可愛い事自覚してやってるわよね。

 

「あ、そうそう緋色おねえ!」

 

「え?」

 

「ボクね、自分の才能は覚えてないんだけど、緋色ちゃんの事色々知ってるんだよ!キミは確か高校生でありながら凄腕のおまわりさんで、凶悪な犯罪者達をどんどん逮捕に追いやってるんでしょ?取り調べをやらせたら犯人は犯行動機から犯行手口、果てには自分のクレジットカードの暗証番号までゲロっちゃうって噂だし!銃の腕は百発百中らしいじゃん!この前なんか、30年間も逃げ切った指名手配犯の逮捕に貢献したんだってね!」

 

「え、ええ、そうだけど…」

 

「凄ーい!でもさぁ、噂じゃ実家がヤのつく人なんだっけ?」

 

「!」

 

「え、それ本当と?」

 

「ええ、まあ間違ってはいないわ」

 

確かに私の父は、地元じゃそこそこ有名な組の組長をしている。

そのお陰で小さい頃は色々と苦労したのよね…

 

「家がヤーさんなのに、【超高校級の極道】とかじゃなくて【超高校級の警察官】になったのは何でなの?不思議〜!」

 

すごい勢いで色々聞いてくるわね、この子。

まあ確かに普通の人からしてみれば気になる事なのかもしれないけど…

だからって人の家庭事情に首を突っ込んでくるのは、人としてちょっとどうなのかしら。

 

「今度話す機会があったら話すわ。それより、まだ話していない人がいるから話してきていいかしら?」

 

「え〜!ヤダヤダ気になる〜!教えてくれなきゃイタズラしちゃうぞ〜」

 

「コラァ!蓮!!」

 

知崎君がニヤニヤしながら良からぬ事を考えていると、玉越さんが注意をしてくれた。

やっぱり彼女がいると安心ね。

私がそんな事を考えていると、今度は後ろから男子の声が聞こえてきた。

 

「なあ!!次オレいいか!!?」

 

声をかけてきたのは、朱色の長い髪をポニーテールにした、三白眼の男子だった。

頭に炎の柄のバンダナを巻いていて、Tシャツとエプロンを身につけているのを見る限り、彼は料理系の才能なのかしら。

何というかこう、良く言えば熱気がある、悪く言えば暑苦しい人ね。

 

「ええ、貴方とはまだ自己紹介をしてなかったわね」

 

「おう!!オレは【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)だ!!!よろしくな!!!」

 

 

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

食峰満…確か高校生にして世界的に高い評価を得ている美食家、だったわよね。

目に留まった店にふらっと立ち寄って、そこでいつも出てきた料理に対してコメントをするのだけど、そのコメントを参考に改善するとどんな店でもたちまち行列の絶えない繁盛店になるのよね。

本人は食べるの専門みたいだけど作るのも好きらしくて、彼が趣味で始めたラーメン店はミシュランガイド三つ星、彼が監修したレシピ本は発売後10分と待たずに完売、今は重版待ちだと言われているわ。

未来ヶ峰学園に入学後は、未来ある超高校級の生徒達に一流の食事を振る舞う為というのは勿論の事、料理の研究という意味も兼ねて彼が学食の調理に携わる契約をしているのよね。

入学したら食峰君の作った料理がタダで食べられると思うと、今から楽しみになってきたわ。

 

「飯の事ならオレに任せとけ!!とびっきり美味い学食作ってやっからよ!」

 

「あら、ありがとう」

 

「くぅーっ、世界中の美味えモン集めた厨房で料理できると思うと俄然やる気出てきたァ!!オメェら、何か好きな食いモンあるか!?」

 

「私?そうね…私は紅茶と、紅茶に合う食べ物が好きよ」

 

「うちは和食〜!炊き立てんごはんに合う和食ば毎日食べられたらそれだけで幸せ!特にからめし(白米)と明太子ん組み合わせは最強!」

 

マナ、すごい食いつきっぷりね…

涎垂らしてお腹鳴らしてるし…そんなにここの学食が楽しみだったのかしら。

 

「おう!!和食か!!つったら今の時期でオススメなのはサワラにタケノコ、あとは牡蠣だな!」

 

「牡蠣?どちらかというと冬のイメージだけど…」

 

「ああ、実は真牡蠣が一番美味えのは春なんだぜ!この時期の牡蠣は旨味がギュッと詰まってて……」

 

食峰君が旬の食材の話で盛り上がっていると、マナの顔色がみるみる悪くなっていく。

よっぽど気持ち悪くなったのか、口押さえちゃってるし…大丈夫かしら?

 

「どうしたの、マナ?」

 

「……ごめん。うち、どげんしてん牡蠣は無理なんや」

 

マナが気持ち悪そうにそう言った瞬間、食峰君の顔がみるみるうちに般若の顔になっていく。

 

「オメェ…牡蠣、嫌いなのか?」

 

マズい、今の発言が地雷だったみたいね。

もう炎のオーラみたいなの出ちゃってるし…

 

「オレァ好き嫌いする奴ァ許さねえ!!理由によっちゃ、たとえダチでも容赦は…」

 

「ち、違う違う!!これには訳があるっちゃん!!うち、牡蠣で当たった事があると!!そいからどげんしてん牡蠣食べると吐いてしまうんばい!!」

 

マナが慌てて言い訳をすると、先程まで怒り狂っていた食峰君はあっさり機嫌を直した。

 

「なぁんだ、それなら仕方ねえな!!それにしてもオメェ、そりゃあ災難だったな!!」

 

良かった、とりあえずは機嫌を直してくれたようね。

食峰君の前では安易に好き嫌いをしないようにしなきゃ。

 

残っている生徒は…あと10人か。

どいつもこいつもキャラが濃すぎて、テンポ良くいかないと自己紹介だけで日が暮れちゃいそうね。

 

 

 


 

 

 

ー未来ヶ峰学園新入生ー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

あと10人

 

 

 

 

 



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プロローグ③

ようやく最初の4人に声をかけられたわけだけど…

次は誰に話しかけにいこうかしら。

私がそんな事を考えていると、早速軽い感じの男子が話しかけてくれた。

 

「おーい、自己紹介まだだろ?次、オレいっちゃっていい?」

 

声をかけてくれたのは、オレンジピンクのメッシュを入れた金髪のウルフカットにキリッとした青い瞳を持った男子だった。

肌は褐色に焼けていて中々にいい体躯をしていて、自分がカッコいい事を自覚しているのか露出度が高い格好をしている。

アクセサリーをつけてメイクも施していて、一見ノリのいい感じを思わせる。

 

「ええ、どうぞ」

 

「っしゃ!じゃあ自己紹介な!オレは【超高校級のメイクアップアーティスト】、越目(こすめ)粧太(しょうた)!よろしく」

 

 

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

越目粧太…確か今SNSで話題沸騰中のメイクアップアーティストよね。

数年前にメイク講座の動画をアップしたのが反響を呼んで、今では彼のメイクが若い人達の間で流行の最前線になっていると聞くわ。

彼が公開講座で紹介したメイク道具は、今じゃ彼のおかげで数ヶ月待たないと手に入らない、世界で最も入手しづらい化粧品になっているのよね。

私はそういうのはよくわからないのだけれど、そういえばクラスの女子は皆越目君の紹介したメイクをしていたわね。

 

「よろしくね、越目君」

 

「ねえ、ところでさ。キミ超可愛くない?」

 

「えっ、私が?」

 

いきなり初対面でそんな事言われたの、初めて………ではないわね。

正直悪い気はしないけれど、これって社交辞令ってやつよね?

 

「そうそう!ねえ、メイクはしてないよね?」

 

「え、ええ…」

 

「マジ!?それでそんなに可愛いなら、メイクしたら超ー映えるって!!オレちゃんがオススメのメイク教えてやっから、興味あったらいつでも声かけな」

 

「ありがとう」

 

話してみた感じ、明るくて良い人そうね。

正直あまり得意なタイプではないけど…

 

「聲伽ちゃんもどう?」

 

「越目くんてばりチャラチャラしとーよね!何で男なんにそげん化粧しとーと?」

 

「ぐっ…」

 

マナ、あなたそういうの良くないわよ。

今のは流石にストレートに言い過ぎじゃないかしら?

 

「マナ、思った事を何でもすぐ口に出すのは良くないわよ」

 

「あっ、ごめーん!」

 

やっぱり何というか、この子ちょっと天然入ってるのよね。

悪い子じゃないんだけど…

 

「さて、次は…」

 

私は、体育館の隅でお祈りをしている女子に話しかけにいった。

 

「お取り込み中ごめんなさい。自己紹介、まだだったわよね?」

 

「ええ…そういえばそうでしたわね」

 

私が声をかけると、お祈りをしていた女子は案外あっさり呼びかけに応じてくれた。

ウェーブのかかった緑色のロングヘアーに青緑色の瞳をしていて、紺色のシスター服に身を包んでいる。

服の上からでもわかる程スタイル抜群だし、顔も多分女子の中では一番美形だ。

ロザリオを握りしめてお祈りをしているあたり、彼女はクリスチャンなのかしら?

 

「申し遅れました。私【超高校級の聖母】として未来ヶ峰学園にスカウトして戴きました、聖蘭(せいらん)マリアと申しますわ。以後お見知り置きを」

 

 

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

 

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聖蘭マリア…ああ、思い出したわ。

敬虔なクリスチャンで、裕福な家庭で育ちながらノブレスオブリージュの精神を忘れず、貧しい人々に献身的に寄付をしているシスターだったわよね。

最初は【超高校級のシスター】としてスカウトされる予定だったのだけれど、彼女に施しを受けた人々が彼女を神格化して、彼女を崇めた新興宗教を作った事から【超高校級の聖母】としてスカウトされる事になったのよね。

何というか…思わず跪いてしまいたくなるようなオーラが漂ってるわね。

彼女を崇める人が大勢いるのもわかる気がするわ。

 

「…ですが、私はこの称号に少々思うところがあるのです」

 

「え?どうして?」

 

「私はただ、我らが父の御言葉に従って救いを求めている人々に手を差し伸べただけですわ。お気持ちは有難いのですが、私は人から崇められる為に人々に尽くしたわけではありませんの。それに、私のような未熟者が聖母だなんて…とてもじゃありませんが、畏れ多くて名乗れませんわ」

 

お、おう…

徳の高さで何歩も先行かれてるわ…

 

「でも、何というか…自分の才能に不満を持ってるのって、何か珍しいわね…」

 

「そうでもありませんわ。ここには【超高校級の魔術師】としてスカウトを戴いた方もいらっしゃいますが、あの方もご自身の称号には納得がいかないそうです」

 

【超高校級の魔術師】…?

そんなふざけた称号を持つ人もいるのね。

一体どんな人なのかしら?

 

私がそんな事を考えていると、いきなり小学生みたいに小柄な女の子が前に出てくる。

 

「むむ!?16人目の新入生とやらはウヌか!?」

 

う、ウヌ…!?

初対面の相手にすごい高圧的ね…

 

「え、ええ、そうだけど…あなたは?」

 

私は、とりあえず声をかけてきた女の子に尋ねた。

小豆色の髪を三つ編みにしていて、丸い藤色の瞳をしている目をカバーする大きな丸眼鏡をかけている。

大正時代の男子学生を思わせる格好をしていて、腰には何故かツルハシを差しているわね。

…ひょっとして、彼女がさっき言っていた【超高校級の魔術師】かしら?

 

「聞いて驚け!!ワシの名は古城(こじょう)いろは!!しがない天才考古学者じゃあ!!」

 

 

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

古城いろは…あ、思い出した。

確か存在すら怪しいとされていた徳川埋蔵金を発見して、その功績が認められてスカウトされた天才考古学者よね。

その他にも世界各地で未発見だった遺跡を発掘して、今までの歴史の常識を大きく覆す研究結果を歴史学会や国際歴史会議に突きつけた、と言われているわ。

唯我独尊を貫く姿勢で有名だから、どんな豪快な人が来るのかと思いきや、まさかこんな小さい子だったとは…

…あれ?でもテレビで見た時と姿が全然違うわよね。

 

「でもちょっと待って、あなたテレビに出てた時と別人よね?」

 

「ああ、あれはワシの助手じゃ!!」

 

「じょ、助手?」

 

「ワシはマスコミとやらは嫌いじゃ!!彼奴ら、ズカズカと土足で人ん家の玄関に上がり込みおって、ワシの神聖な研究を穢す気か!!次無許可で上がり込みよったら彼奴ら、この斬殺丸で斬り伏せてくれるわ!!」

 

そう言って古城さんは、腰に差した刀…ではなく、ツルハシを抜いた。

って、ちょっと、いきなり振り回し始めたんだけど!?

危ないじゃない!

 

「ざ、斬殺丸…!?ちょっと落ち着いて、っていうかそれツルハシじゃない!」

 

「何じゃあ貴様!!ワシの愛刀を愚弄するか!!貴様も斬殺丸のサビにしてくれようか!!」

 

「ごめんなさい、そんなつもりはなかったの。ちょっと、危ないから振り回さないで!」

 

すごい怒ってるわね…

どうやら、ツルハシなのに『斬殺丸』なのはツッコんではいけなかったようね。

 

「彼女は【超高校級の考古学者】だったのね。てっきり見た目だとあの子が【超高校級の魔術師】だと思ったのだけれど…」

 

「ああ、魔術師?あの人ん事?」

 

そう言ってマナが指差したのは、ダンゴムシみたいに丸まって体育館の床に何かをしている、白衣を着た男子だった。

何をしているのかしら…?

って、何これ!?

床に思いっきり数式書いてるじゃない!!

しかも油性マーカーで書いてるし!!

皆で使う体育館に何て事してくれてるのよ!!

…ああもう、思いっきりガツンと注意してやるわ!

 

「ちょっと貴方、何してるのよ」

 

「見ての通りだ。アイディアの整理中なんだ、邪魔をしないでくれ」

 

「そうじゃなくて!皆で使う体育館なんだから、落書きしないでよ!」

 

男子は私が注意しても床に落書きする手を止めなかったので、私は語気を強めて彼を叱った。

すると彼は、ようやく落書きをする手を止めて話す気になってくれた。

 

「…おっと、これは失礼した。この施設をもっと合理的かつ機能的にする為の設備を閃いたから、アイディアを書き残しておこうと思ったんだ」

 

落書きをする手を止めて私の方を振り向いた彼は、魔術師というよりむしろゴリゴリの理系オタクといった感じだった。

紺色の髪を伸ばしていて、顎には無精髭を生やしている。

切れ長の水色の瞳をしていて、美形なんだろうけど正直あまり清潔感のある印象は抱かない。

服装はというと、前の学校のものと思われるグレーのブレザーを着崩していてその上に白衣、さらにはゴーグルと指ぬきグローブを身につけている。

 

「そうなのね。でも迷惑だから、床に落書きするのはやめて頂戴」

 

「ほう、考察の結果を残しておいた方が後の研究に活かせると思ったんだが…迷惑だったのか。なら善処はする」

 

私が注意をすると、彼は案外あっさり反省してくれた。

どうやら彼はかなり変人なだけで、根は悪い人ではないみたいね。

でもさっきからずっと気になっていたのだけれど、彼は本当に【超高校級の魔術師】なのかしら?

 

「…ねえ、さっきから気になっていたのだけど…貴方、【超高校級の魔術師】よね?」

 

「如何にも。俺は加賀(かが)久遠(くおん)。一応【超高校級の魔術師】と呼ばれている」

 

 

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

加賀久遠…ああ、なるほど。ようやく納得がいったわ。

かの天才科学者ニコラ・テスラの再来と呼ばれ、個人で自然科学部門のノーベル賞を全てコンプリートした天才高校生よね。

彼の発明は、その理論を理解できない凡人からしてみれば魔法のように摩訶不思議な現象に見える事から、『人類史上唯一の魔法使い』とも呼ばれているのよね。

実現不可能といわれた永久機関を発明・普及させた事で有名で、最近の発明だと、実体化ホログラムを応用した発明でたった一つで百億通り以上の衣類を再現できる変身ミラー、超高速で飛行できるシューズ、ゴミや排泄物を原料に食材を生成して調理までしてくれるロボット、アメーバみたいに分裂するチョコレート、『物質の第6の状態』と呼ばれる賢者の石とかがあったかしらね。

 

「だが、俺は正直言うと自分の称号に納得いっていないんだ」

 

「ああ、そういえばそうらしいわね」

 

「そもそも、俺は当初は【超高校級の科学者】としてスカウトされるはずだったんだ。なのに直前になっていきなり称号を変更して、『魔術師』などとふざけた称号でスカウトされてしまった。いいか、俺の作る奇跡は『魔法』ではなく『科学』だ。そういうわけだから、俺の事は極力称号で呼ばないでもらえるとありがたい」

 

なるほど…自分の科学力に絶対の自信を持っているからこそ、魔術師扱いが気に入らないのね。

聖蘭さんとは違った意味で、自分の才能に拘りがある人なのね。

 

「ねえ加賀くん!後ろんバリカッコよかドローンもキミん発明品と?」

 

「いや、これは俺のというよりは…」

 

「聲伽サァン!!!今、何とおっしゃいました!!?」

 

「うわ!?」

 

私達が加賀君と話していると、さっきまで加賀君と一緒にいた女子がいきなり割り込んできた。

コーラルピンクのボサボサした髪をポニーテールにしていて、瞳は鶯色、顔にはそばかすがある。

薄汚れたツナギ型の作業着を上半分だけ脱いで上半身はタンクトップといった格好で、頭にはヘルメットを被っているのが特徴的だ。

何というか…全体的にオイルで黒く汚れていて小汚いわね。

 

「アナタ、この子の素晴らしさがわかる人ですか!?この子は私が加賀さんと共同制作したドローンなのです!!いわば、私と加賀さんの愛の結晶!!」

 

「誤解を招く表現はやめなさい!」

 

…いけない、思わずツッコんでしまったわ。

 

「申し遅れました!私は目野(めの)美香子(みかこ)といいます!!【超高校級の機械技師】なのです!!」

 

 

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

目野美香子…確か、どんな機械でも新品同然、いやそれ以上の出来栄えに修理してしまう機械技師よね。

修理するだけじゃなくて自分で機械を作るのも得意で、パソコンや携帯に自動車から、果てには発電所や宇宙船まで、機械なら何でも作れると言われていて、今や私達が使っている機械で彼女の技術が使われていないものは無いとも言われているのよね。

スカウトされる前から加賀君とは研究仲間で、彼から発注された機械を彼女が作ったりもしていたと聞いているわ。

コンピューターのシステムにも明るいそうだから、機械の事で困ったら彼女に聞いたらよさそうね。

 

「はっ!?エモーショナルな機械部品の気配…!アナタさては、ベリィィィファンタスティィィィッッッックな機械を持っていますね!?隠したって無駄ですよ!?」

 

「えっ、ちょっと!?どこ触ってんのよ!」

 

ちょっと、この人いきなり私の身体を弄り始めたんだけど!?

腰とか胸あたりをものすごいいやらしい手つきで触ってきてるし、鼻息荒いし、ちょっと関わっちゃいけない系の人なのかもしれないわね。

私が目野さんのリアクションに困っていると、目野さんは私の腰から新型の警棒『エレキサーベル』を引き抜いてしまった。

 

「スゥハァ…この香り…見事な金属光沢…ベリィィィエレガンツッッッ!!!」

 

「いいからもう返してちょうだい!」

 

目野さんが私の警棒に頬擦りをして恍惚とした表情を浮かべるものだから、私は彼女から警棒を取り上げて思いっきり怒鳴ってしまった。

まさか全世界の機械製作に携わる技術者がこんな変態女子だったとは…

他の皆も十分キャラが濃かったけれど、今のところ彼女がダントツね。

 

 

 


 

 

 

ー未来ヶ峰学園新入生ー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

あと5人

 

 

 

 

 



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プロローグ④

私が目野さんに絡まれて困っていたその時、後ろに大柄な人影が現れる。

私の後ろに立った人物は、私達に声をかけた。

 

「すまないが、少し静かにしてもらえないか。騒がしすぎて気が滅入りそうなんだ」

 

私に声をかけてきたのは、筋骨隆々の大男だった。

明るい茶髪をツーブロックのオールバックにしていて、彫りの深い目の奥には鋭い金色の眼光を覗かせている。

Tシャツと作業着を着ているから、目野さん同様何かしらの職人の才能を持っているようね。

 

「あら…ごめんなさい。ええっと、貴方は?」

 

「すまない、自己紹介がまだだったな。俺は館井(たてい)建次郎(けんじろう)という者だ。【超高校級の大工】と呼ばれている」

 

 

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

館井建次郎…確か高校生にして世界的に高い評価を得ている大工よね。

世界中の有名な建築物の建築や修理に携わっていて、世界中の建築士が匙を投げた無茶な要望に対しても完璧に応えてみせて話題を呼んだのよね。

絶望的事件の再来で破壊されてしまった歴史的建造物を一から建て直して完璧に再現した功績が認められて、この未来ヶ峰学園にスカウトされたと聞いているわ。

依頼者や住む人達の事を第一に考えて建築に携わる姿は、まさに匠であり紳士なのでしょうね。

 

「………はあ」

 

館井君は、いきなり深いため息をついて右手で頭を抱え出した。

 

「…どうしたの?」

 

「ああ、いや…俺は一人の方が好きなんだ。どうしても人が多いところだと疲れてしまってな。既にもう情報量が多すぎていっぱいいっぱいなんだ」

 

そう言って館井君は、再び深くため息をついた。

風貌のせいで誤解されがちだけど、彼自身はかなり繊細な人なのかもしれないわね。

これ以上色々問い詰めるのもストレスでしょうし、そろそろ他の人のところに行った方が良さそうね。

 

私は、次に一緒に話をしている男女に話にいった。

男子の方はスーツに身を包んだスタイリッシュ系で、女子の方はパンク系ね。

 

「ちょっといいかしら?自己紹介、まだだったわよね?」

 

「アァ!!?オレァ今イライラしてんだよ!!見てわかんねーのか!?」

 

「ちょっと歌音。初対面の人に当たり散らすのやめなよ」

 

女子がいきなり逆ギレすると、男子が女子を宥めた。

二人は知り合いのようだけど、性格はまるで真逆ね…

 

「ごめん、まずは自己紹介しないとね。俺は【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)。よろしく」

 

 

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

秋山楽斗…確か、世界的にも有名な音楽プロデューサーよね。

彼の手掛けた楽曲は世界音楽ランキングで軒並み上位を独占し、世界中で大ヒットした映画の音楽制作にも携わっていて、アカデミー賞の音響賞を受賞した事もあるのよね。

高校生でありながら今や世界中で活躍しているロックバンド『RESONANCE』も彼が手掛けていて、デビュー作のCDはもはや今では高額でオークションに出されていて簡単には手に入らないらしいわね。

 

「次は歌音の番だよ」

 

「チッ、響歌音。【超高校級のボーカリスト】だよ」

 

 

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

響歌音…秋山君が手掛けているロックバンド、『RESONANCE』の女性ボーカル、だったわね。

彼女の歌声は世界中を魅了し、今では世界で最も有名な歌手の一人として知られているわ。

セクシーな歌声は老若男女問わず大人気で、彼女達のデビュー作はその年世界音楽ランキングで1位を獲得したのよね。

『RESONANCE』の曲はあちこちで耳にするけど、彼女の魂のこもった歌声を聴けば熱狂的な信者が世界中にできるのもわかる気がするわ。

 

「俺と歌音は幼馴染み同士なんだ。小さい頃から俺の作った曲を歌音が歌っていたんだよね」

 

そんなに深い仲だったのね。

道理でここに来たばかりなのに信頼関係が築けてると思ったわ。

 

「ったく…入学式に行こうとしたら気ィ失って、目が覚めたら学校の中にいてよぉ。何がどうなってんだ?本当にちゃんと入学式はやるんだろうなァ?」

 

「ごめん、歌音は今すごくイライラしてるんだ。同じく未来ヶ峰学園にスカウトされたはずのメンバーがいなくてね。俺も落ち着かせてはいるんだけど、できれば刺激しないであげてほしいな」

 

なるほど、一緒に入学するはずだった仲間がいなかったからイライラしていたのね。

そりゃあ、目が覚めたら大切に想っている仲間がいなくなっていたら気も立つでしょうね。

…あら?でもそうなると、どうして響さんのメンバーの人達はここにいないのかしら?

 

「あークソ、携帯も無えし、電話も無えしよ…!あいつら今頃どうしてんだよ…!」

 

…え?

携帯が無い…?

 

…あ。

拳銃や警棒はちゃんと腰に差さってたから確認しようともしなかったけど、携帯だけなくなってる…!

どうして…?

家を出発する時は確かにポケットに入れてた筈よね?

入学しようとした途端に視界が歪んで意識を失った事もそうだけど、ホント謎が深まるばかりね…

 

私が頭を抱えながらも残っているメンバーに話に行こうとすると、どこからかタバコの煙が漂ってくる。

 

「うっ、ゲホッ、ゲホッ!?ちょっ、何この匂い、タバコ!?」

 

「ばり煙たか!!ちょっとネロくん、体育館でタバコ吸わんでよ!」

 

私が咳き込んでいると、マナが先に犯人に向かって注意をしてくれた。

マナが注意をしている人物は、黒いハット帽とスーツを身につけた、古城さんよりもさらに小柄な男子だった。

これには流石に私も黙っていられず、平然と体育館の中で喫煙している彼に注意をした。

 

「ねえ。未成年者の喫煙は犯罪だって知ってるわよね?今ならまだ見なかった事にしてあげるから、今すぐやめなさい」

 

「チッ、うるせぇな。これだからガキァ嫌いだ」

 

「…え?」

 

今、『ガキ』って言った?

ここにいるのは皆同年代の高校生なのに?

 

「言っとくが、俺ァ良いんだよ。任務の関係で高校に通ってただけで、とっくに成人してっからな」

 

「あっ…そうなのね。ごめんなさ…じゃなくて!法律的にはOKでも、普通に迷惑だからやめてって言ってるの!」

 

「……チッ。これで満足か?」

 

そう言って小柄な男性は、灰皿にタバコを押しつけて火を消した。

というか、この人大人だったのね。

そう言えば加賀君や館井君よりも立派な顎髭を生やしてるし、仕草もどことなく落ち着いてるわ。

何というか…私、この人はちょっと苦手かもしれないわね。

 

「ねえ、自己紹介がまだよね?お名前を教えてもらってもいいかしら?」

 

「ガキと馴れ合う気は無えな」

 

「馴れ合いとかじゃなくて、せめて名前だけでも教えて欲しいのだけれど。それとも貴方、大人なのに自己紹介もできないのかしら?」

 

「はあ………ネロ」

 

「え?」

 

「ネロ・ヴィアラッテア。【超高校級のマフィア】だ」

 

 

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

ネロ・ヴィアラッテア…聞いた事があるわ。

確か、世界有数の勢力を誇るイタリアのマフィア、ガラッシアファミリーの若頭よね。

ファミリーのボスを除けばガラッシアの中で最強のマフィアで、彼の所属しているガラッシアファミリーに目をつけられたら最後、生きて帰る事は叶わないと言われているわ。

でも彼等は決してやたらめったらに暴力を振り翳す暴力組織ではなく、地域の人々からは善良な人々を脅かす悪党共を闇に葬るヒーローとして支持されているのよね。

ガラッシアファミリーのNo.2なんだからもっとこう、仁義を大事にする人だと思っていたのだけど、実物はちょっと感じ悪いわね…

…というか、さっきからずっと気になってはいたのだけれど…

あまりにも日本語が流暢すぎない?

でも、どう見ても口の動きが聴こえてくる声と違うし…どうなってるのかしら?

 

「貴方、日本語がお上手ね。まるで母国語のように話しているみたい」

 

「はあ?何言ってんだ?俺はさっきからイタリア語で話してるんだが?」

 

「…え?」

 

「ああ、それなんやけどね。その新型電子生徒手帳、何か自動翻訳機能もついとーったいって。これはめてると、どげん言語でも母国語に変換しゃるーらしいばい!」

 

なるほど…映画の吹き替えみたいなものって事ね。

道理でさっきから口の動きと喋っている言葉が一致してないと思ったわ。

でもどんな言語も変換できるのに、マナの方言は標準語に変換できないのね…

 

「俺の自己紹介は終わったぜ。さっさともう一人の奴に話しに行ったらどうだ?」

 

「…ええそうね。そうさせてもらうわ」

 

本当に嫌味ったらしいわね。

言われなくてもそうするわよ。

…って、あれ?

もう一人はどこにいるのかしら?

 

「忍法『陽炎の術』!」

 

えっ、何!?

 

「きゃあ!?」

 

「わあ!?」

 

って、今何か足の間をすり抜けたよね!?

…!!

今、視界の端で何か動いた!

どうやら今のが16人目の高校生で間違いなさそうね。

どさくさに紛れてマナのスカートまで捲るなんて…ちょっとオイタが過ぎるんじゃないかしら!?

 

「そこかぁ!!」

 

「何っ!?しまったぁ!!」

 

私は、視界の端でちょこまかと動いていたソレ目掛けて縄手錠を投げつけると、そのまま縄を引き寄せて組み伏せた。

私がそいつを床に叩きつけて上から組み伏せると、そいつは情けない声を上げた。

 

「いだだだだだだ!!!」

 

「捕まえたわよ。観念なさい、変態!!」

 

「ごっ、誤解でござる!!拙者は黒のTバックと白のショーツなど見ておらぬで候!!」

 

「やっぱり見てるじゃないの!!」

 

「いっだぁぁぁ!!!ギブ!!ギブでござる!!」

 

私が変態の腕を後ろに回して固めると、変態はこれまた情けなくもあっさり降参した。

あっさり降参するくらいなら最初からやるなっての…

 

「ったく…くだらない事に時間を浪費したわ。早く自己紹介してもらえないかしら?自己紹介をしてもらってないのは貴方だけよ」

 

「うむ、左様でござるか」

 

全身を黒装束で隠した変態は、無駄にカッコつけながら立ち上がった。

思いっきり組み伏せられた後でカッコつけても、逆にダサさが浮き彫りになるだけなのに…

 

「拙者の名は闇内(やみうち)(しのぶ)、【超高校級の忍者】でござる」

 

 

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

闇内忍…ああ、聞いた事あるわ。

江戸時代から続く忍の一族の末裔で、彼の先代が引退してからは日本に現存する最後の忍者と言われているのよね。

武士の時代が終わってからは暗殺業を廃業して、むしろスパイや探偵、用心棒として各国の要人の依頼を受けている事が多いとか…

各国の王室への侵入や国家機密の入手もお手の物で、その気になれば誰も彼の前で隠し事をできないと言われているわ。

せっかくそれだけ凄い才能があるのに、それをこんなくだらない事に悪用しているのが本当に癪だけれどね。

 

「闇内君、せっかくの忍術をこんな事に悪用するのはやめなさい。今回は初犯だからこれで許してあげるけど、次やったら容赦しないわよ」

 

「うう…腐和嬢の言う通りでござる…拙者、今後は心を入れ替え隙ありィ!!」

 

「ひゃあ!?」

 

闇内君は、謝ると見せかけて今度は胸を触ってきた。

こいつ本当に懲りないわね…

うん、もう殺そうこいつ。

 

「うむ、D…いやEか。最近の女子高生は発育の暴力でござるなぁ!」

 

「死ね!!っていうか殺す!!」

 

私が逃げる闇内君、もとい変態を追いかけようとした、その時だった。

 

 

 

『あー!!あー!!マイクテス!!マイクテスッ!!全員いるよね?オマエラ、大変長らくお待たせしました!!』

 

突然、体育館のスピーカーから気持ちの悪いダミ声が聞こえてきた。

すると今度は、やかましい男の声が聴こえてくる。

 

『ギャハハハハハハハ!!!グッモーニン!!レディースアーンドジェントルメェェェン!!!これより、未来ヶ峰学園のォォォウ!!入学式を執り行っていくぜェェェ!!!アァユゥゥレディィィィィ!!?YEAHHHHHHHH!!!』

 

「何じゃあ!?喧しいわ!!何奴!!」

 

「でも良かったな、ちゃんと入学式やるんだろ?」

 

「じゃあさっきのは、学園側のサプライズだったって事〜?不思議〜!」

 

スピーカーから喧しい声が聴こえてくると、古城さん、越目君、知崎君がリアクションをする。

でも、放送から数分経っても誰も来なかった。

 

「………誰も来んね」

 

「ハァ!!?どうなってんだよ!!オレらをおちょくってんのか!?」

 

「ちょっと、落ち着きなよ歌音」

 

誰も来ないのをマナが不思議がり、響さんが痺れを切らし、秋山君が響さんを落ち着かせた。

でも確かに、誰も来ないなんて変ね…

私が疑問に思っていた、その時だった。

 

『えー?教員ならいるでしょ?オマエラバカなの?死ぬの?』

 

正面の方から聞こえてきた声を頼りに、全員が正面を見る。

するとそこからは……

 

 

 

『イヤッフゥゥゥゥイ!!!おはようございます、オマエラ!』

 

かつて世界を混沌に陥れた、絶望の象徴が現れた。

 

 

 


 

 

 

ー未来ヶ峰学園新入生ー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

以上16名

 

 

 

 

 



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プロローグ⑤

正面の方から聞こえてきた声を頼りに、全員が正面を見る。

するとそこからは……

 

 

 

『イヤッフゥゥゥゥイ!!!』

 

かつて世界を混沌に陥れた、絶望の象徴が現れた。

身体が白と黒のツートンカラーに分かれた熊のマスコット、モノクマだ。

 

『えーと、とりあえずおはようございます!オマエラ!』

 

「えっと、おはようございます?」

 

「おはようございまぁーす」

 

「あっ、えっと、おはようございます!!」

 

「おはようございます!!」

 

「ご機嫌よう」

 

マナ、知崎君、食峰君、目野さん、聖蘭さんの5人は、律儀にも挨拶を返した。

あんな奴に挨拶なんかしなくていいわよ…

 

『うぷぷぷぷ、こっちの世界でははじめましてだったよね?やっぱり主役は遅れてきてなんぼだよね!』

 

「モノクマ…!!」

 

「嘘だろ…!?何でテメェがここにいるんだよ!?」

 

モノクマの登場に、私達はひどく動揺した。

それもそのはず、かつて世界を崩壊寸前まで追いやった元凶が現れたのだから。

 

『何でもどうしてもWhyもないの!ボクがここにいるのはねぇ…何と、ボクがこの未来ヶ峰学園の学園長に就任したからなのでーす!』

 

モノクマは、いきなり意味不明な事を言い出した。

こいつが未来ヶ峰学園の学園長…?

そんなわけ無い、だってこの学園はそもそもこういう奴等を駆逐する為に建てられた学園なんだから。

私が混乱していると、古城さんが斬殺丸なるツルハシを抜いてモノクマに突きつけた。

 

「はぁぁ!!?ウヌは莫迦か!?ウヌのようなぬいぐるみに学園長が務まるわけがなかろうが!!」

 

違う。

古城さん、そうじゃない。

聞かなきゃいけないのはそこじゃないわよ。

 

『ボクはぬいぐるみじゃないよ!モノクマだってば!このやり取り何百回目だよもう!』

 

「はっ、冗談キツイぜ。テメェが学園長?ふざけた事言ってんじゃねーよ!」

 

「うぇええ!?何だよこれ、どうなってんの!?てか、未来ヶ峰学園のサプライズじゃねえの!?」

 

「サプライズにしては悪趣味が過ぎるな……」

 

「皆落ち着いて。あいつが何でここにいるのかは知らないけど、まずは話を最後まで聞かないと」

 

「そうだぞ!オメェら、静かにしろ!モノクマ学園長が困ってんじゃねえか!!」

 

「茶番はいいから早く入学式とやらを終わらせてくれないか?早く研究に取り掛かりたいんだが」

 

モノクマの発言に対して、皆が次々と文句を言う。

それに対して玉越さんと食峰君が落ち着かせようとするけど、食峰君はちょっとズレてるわね…

加賀君に至っては、モノクマの茶番に飽きて帰りたそうにしている。

…っていうかこいつと平気で話せるなんて、皆結構肝が据わってるわね。

段々とヒートアップしてきて収拾つかなくなってきた、その時だった。

 

『うるさーーーーい!!!オマエラ、ボクを聖徳太子かなんかだと思ってない!?先生の話は最後まで聞きましょうねって教わらなかったわけ!?』

 

「そんな事言われたって、テロリストが学園長だなんて食峰君以外誰も信じないと思うよ?」

 

「同感だな。さっきからキナ臭えんだよお前」

 

モノクマが怒鳴ると、秋山君が先程までとは一変して毒を吐き、ネロも賛成した。

するとその時、さっきの機械的な男の声が聞こえてきた。

 

『HEYHEYHEYHEY!!グッダグダじゃねえの学園長!!ここはオレ様の助けが必要なんじゃアねえのか!?』

 

『ぶ、ブラザー…!?』

 

男の声が聞こえてきたかと思うと、その直後、突然上から何かが降ってきた。

 

『FUUUUUUUUUUUUUUUUNK!!!!』

 

突然ドシィン、と何かが落ち、体育館中が大きく揺れた。

するとその瞬間、体育館の電気がパッと消えた。

 

「うわぁ!?何じゃあ!?」

 

「停電!?」

 

「今度は何なんだよクソが!!」

 

「演出じゃないの?ほら、ショーとかの前によくやるやつ」

 

「停電とな!?これは大変でござる!」

 

「何も見え〜ん!って!今尻ば触ったん誰!?」

 

「ん…」

 

「忍!!あんたどさくさに紛れてセクハラすんな!!」

 

「久遠おにい〜!魔術師でしょ!?火の玉出してよ!ウィルオウィスプとかカルシファーとか!」

 

「君は俺を何だと思ってるんだ?」

 

「ガタガタうるせぇなクソガキ共…」

 

突然の停電に皆がパニックに陥っていると、どこからかドラムロールの音が聴こえる。

そしてスポットライトがパッと光り、ドラムロールの音に合わせて左右上下に円形の光が動く。

するとその直後、ダン!という音と共にドラムロールが終わり、中央の壇上にスポットライトが当たった。

 

 

 

『待たせたなァ!!ゴミクズ共ォォォ!!!』

 

機械的な野太い声と共に、体育館の灯りがついた。

そこにいたのは、未来ヶ峰学園の校章がプリントされたツートンカラーのキャップを被り、首には同じく未来ヶ峰学園の校章がプリントされたヘッドホンをつけ、星形のサングラスをつけた、モノクマの倍以上の大きさのツートンカラーのメタボグマだった。

 

『今年度の入学式はァァ!!学園長のモノクマとこのオレ、未来ヶ峰のカリスマDJ!!未来ヶ峰学園理事長のモノDJでお送りするゼイェア!!』

 

 

 

【未来ヶ峰学園学園長】モノDJ

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

『ヒューーー!!』

 

「じゃかぁしい!!鼓膜破る気かァ!!」

 

モノDJとやらがノリノリで自己紹介をするとモノクマが乗っかり、それに対して古城さんが文句を言った。

…うん、確かにうるさいわね。

すると、痺れを切らした秋山君がモノDJに尋ねる。

 

「ねえ、俺達いつまでこんな茶番見せられなきゃいけないわけ?」

 

『ソーリーソーリー!んじゃあ自己紹介が済んだ事だし!早速本題に入るゼェ!!早速だがリスナー諸君にゃア、この未来ヶ峰学園で共同生活をしてもらうぜ!!その期限はァ、ナッッッシング!!リスナー諸君は、ルールを守って仲良く暮らすように!!』

 

…………は?

ちょっと待って、こいつら何言ってんの!?

そんな事、一言も聞いてないんだけど!?

 

「はぁ!?んだよそれ!!ふざけんな!!」

 

「困りましたわね…今こうしている間にも、苦しんでいる人々が大勢いらっしゃるというのに…」

 

「いくら何でもそれは横暴すぎる。いくら未来ヶ峰学園だからって、そんな事許されると本気で思ってんの?」

 

玉越さんの発言にお陰で、混乱していた頭が冷めてきた。

…そうよ、未来ヶ峰学園がこんな事をして許されるわけがない。

ましてや、世界中を崩壊寸前まで追いやったテロリストの真似事なんて、十分現行犯逮捕に値するわ。

 

「貴方達がそうやって踏ん反り返っていられるのも今のうちよ。これは立派な監禁罪よね?首謀者は誰?」

 

私は、体育館に設置された監視カメラの一つを見ながら言ってやった。

どうせそこから見てるんでしょう?

私は逃げも隠れもしないわ!

 

「ねえ、聞こえてるんでしょう?この茶番劇を裏で操ってる黒幕さん。直接じゃなくて申し訳ないけどよく聞きなさい。一警察官として、今ここであんたを現行犯逮捕してあげるわ!!」

 

「そ、そうだぜ!やっちまえ腐和ちゃん!」

 

私がモノクマ達に警棒を突きつけてやると、越目君が便乗してきた。

 

「うわ、粧太おにい急に元気になった」

 

「越目君って腐和さんの金魚のフンだよね」

 

「う、うるせぇ!!」

 

越目君は、知崎君と秋山君に揚げ足を取られてきまり悪そうにしていた。

…うん、気持ちは有り難いけど正直カッコ良くはないわね。

 

『ハァーーーーン?逮捕?ハッ、ヴァッカじゃねえのオメーら!!あんな無能な奴等が動くわけねェじゃねえか!!ギャハハハハハ!!』

 

『大体、ボクらを逮捕したところでどうやって通報するんですかねぇ?この学園の通信システムは全部ボクが管理してるんだよ?』

 

「くっ……!」

 

『これでミジンコ脳味噌のオメーらでも理解できたダロォ!!?警察も動かない!政府もダンマリ!オメーらはここでジジィババァになって死ぬしかねーんだYO!!』

 

悔しいけど、こいつらの言う通り、私に逮捕権があっても通報できなきゃ意味が無い。

どうせ力強くでどうにかなる相手じゃないでしょうし、窓にはシャッターが下りていて連絡手段も無いからこの状況を外に知らせる事もできない。

…今思えば、教室にシャッターが閉まってたのは、私達が外に助けを求められないようにする為だったのね。

私達は、このままこいつらの言いなりになってここで一生暮らすしかないの…!?

 

私が考え込んでいると、小鳥遊さんが何かを言いたそうにする。

小鳥遊さんは、白衣のポケットからメモ帳とペンを取り出して何かを書き、それを皆に見せた。

 

 

 

“どうしたら外に出られますか”

 

 

 

『うぷぷぷぷ!話が早いね小鳥遊サンは!オマエラも彼女を見習うように!』

 

『もちろん、外に出たいリスナーの為に特別ルールを設けてあるから安心してクソして寝な!!』

 

いちいち口悪いわねこいつら…

 

『オレ達未来ヶ峰学園が欲している生徒は、ルールを守れる奴だけ!そうじゃねえ奴はぶっちゃけクソだから出てって貰うぜ!!』

 

モノDJが言うと、秋山君が冷静に質問をする。

 

「逆に言えば、ルールを破りさえすれば出られるって事でいいんだよな?どうすればいいわけ?」

 

『この学園のルールを破る方法はただ一つ!!

 

 

 

 

 

 

 

人を殺す事だ』

 

「!!?」

 

『殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺射殺絞殺溺殺惨殺電殺呪殺毒殺爆殺扼殺凍殺轢殺病殺磔殺禁殺…手段は一切問いません!とにかく、誰かを殺せばここから出られるよー!』

 

「はぁ!!?っざけんじゃねえ!!そんな事できるわけねーだろ!」

 

「こいつら、さっきから言っている事が支離滅裂だな…」

 

「あんた、いい加減にしなよ!そんな事して何が目的なの!?」

 

『うるっせぇな!!テメェらは黙ってバカみてーに殺し合っときゃいいんだよ!!』

 

モノクマが説明すると、越目君、館井君、玉越さんが文句を言い、モノDJが怒鳴って黙らせた。

するとネロが唐突にタバコに火をつけながら尋ねる。

 

「へえ、人を殺せば…ねぇ。じゃあ仮に、俺が今ここで誰か殺せばすぐにでも出してくれんのか?」

 

…え?

 

「いいかテディベア共、お前らのやろうとしているゲームはそもそも根本から破綻してるぜ。お前らがわざわざ俺達を集めてそんなゲームをやらせるのは、少なくともお前らが楽しみたいからだろ?ここで殺戮が起これば、お前らの楽しみがブチ壊しになるとは考えなかったか?」

 

…あ。

そうか。

逆にあいつらの立場で考えれば、もしここで殺し合いが起こればあいつらが介入するまでもなく皆殺しになっちゃうから、確かにあいつらにしてみたら良い事なんてひとつもないわね。

流石、多くの修羅場を乗り越えてきただけあってこういう時は冷静ね。

 

『HAHAHA!!グッドクエスチョーン!!もちろん、殺せばそれでOKってわけじゃあねえぜ!!それじゃゲームにならねえからな!!もしコロシアイが起こったら、テメェらにはその犯人を見つける為の『学級裁判』に参加してもらうZE!!』

 

「学級裁判…!?」

 

『『学級裁判』では誰がクロ、すなわち殺人犯かを議論してもらいます!その議論によって導きだされた人物が正しいクロであれば、クロだけがオシオキ。共同生活は続行となります!逆に間違った人物をクロだと指摘しまうと…クロ以外の全員がオシオキされ残ったクロのみが『卒業』、すなわちこの未来ヶ峰学園から出る権利が与えられるのです!以上が、学級裁判のルールとなります!』

 

「ねえねえ、その『オシオキ』ってなあに?おしりペンペンとか?」

 

「わ、わかったぞい!!さては強制お野菜地獄の刑じゃな!?」

 

「人殺しておいてその程度で済むわけねえだろバカガキ共」

 

知崎君と古城さんが言うと、ネロは呆れ返っていた。

 

『うっぷっぷ、裁判の敗者に与えられる『オシオキ』…それはねえ。

 

 

 

 

 

“処刑”だよ』

 

「しょ、処刑!?」

 

『HAHAHA!!!目には目を、歯には歯を、殺人には殺人を!秩序を守る上で当然のルゥゥゥゥゥゥルだよナァア!!?』

 

『その通り!ほらほら、早く誰か殺っちゃった方がいいんじゃない?今ならまだ15分の1の確率だよ?』

 

さっきからあり得ない事を平然と口にするモノDJとモノクマに、私達は呆然としていた。

…やっぱりだ。

やっぱり、この学園生活は『ダンガンロンパ』の再現なんだわ!

私がそう確信したその時、ネロ、古城さん、響さん、闇内君の4人が二匹の前に立ちはだかる。

 

「その前に今ここでやられる事を考えときな、orsacchiotti(クマ公共)?」

 

「おうおう!!何じゃあウヌら!!先刻からワシらを愚弄しおって!!!この斬殺丸の餌食となるがよい!!」

 

「テメェらさっきから長台詞をダラッダラよぉ…要はテメェらまとめて今ここでぶっ飛ばしゃあいいんだろが!!」

 

「流石に拙者も堪忍袋の緒が切れたでござるよ。数の暴力を卑怯だの何だのと申せる状況ではござらぬ故、斬り捨て御免!!」

 

「やめなよ皆、まずは話し合いをだね…」

 

「玉越様の仰る通りですわ。神は和解を求めています」

 

4人が二匹に攻撃の意思を示すと、玉越さんと聖蘭さんが止めようとする。

でも4人は止まらず、響さんと古城さんはモノクマに蹴りとツルハシでの斬撃を、ネロと闇内君はモノDJに銃撃と刀での斬撃をお見舞いした。

だが4人の攻撃は二匹には当たらなかった…というよりは、すり抜けた。

 

「な、何ぃ!?」

 

「クソッ、どうなってやがる!?」

 

「当たった感触が無いな」

 

「お主ら、一体どんな妖術を使ったのでござるか!?」

 

4人は、自分の攻撃が二匹に当たらなかった事に驚いていた。

そんな中、加賀君は冷静にその理由を分析していた。

 

「ほう…ホログラムか」

 

『ギャハハハハハ!!イグザクトリィィイイイイイ久遠ボーイ!!』

 

『そうそう!何回も殴られちゃこっちもたまったもんじゃないからね!今はリモートの時代だよ!今回は見なかった事にしてあげるけど、次から気をつけてよね!』

 

ホログラム…!?

いえ、そんなはずないわ。

だってさっき、モノDJが落ちてきた時、確かに重量はあったはず…!

 

「なるほど、俺の開発した実体化ホログラムの技術を応用しているようだな。となると犯人は俺の技術を盗用する余地のある者、といったところか。ふふふ、面白くなってきたぞ」

 

「アッッッツゥゥゥゥ!!!はあはあ…ますます興味が湧いてきました!!」

 

あの二人は…うん、平常運転ね。

私が加賀君と目野さんのマイペースっぷりに呆れていた、その時だった。

 

「いい加減にしろよ!!」

 

『ほよ?』

 

声を上げて二匹の前に立ちはだかったのは、意外な人物だった。

その人物は、先程まで飄々としていた知崎君だった。

 

「そうやってさっきから人の事を弄んで、何が楽しいのさ!!」

 

『ギャハハハハ!!!そりゃ楽しいさ、コロシアイは!!テメェらの顔が絶望でグチャグチャに染まるところを見られる最高のエンターテインメントだぜェ!!!』

 

「うるさい!何がコロシアイだ!皆がやらないなら、ボク一人でもこんなふざけた事やめさせてやる!」

 

「やめなさい、知崎君!!」

 

知崎君が飛び出したと同時に、私も彼を止める為に飛び出した。

考える前に、身体が勝手に動いていた。

 

『ひょええええ〜!!暴力反対〜!!助けて、グングニルの槍〜!!』

 

『ヘェェェルプミィイイイ!!!ケラウノスの雷!!』

 

二匹が叫んだ、その直後だった。

突然、どこからか大量の槍が現れて降り注ぎ、さらには雷が落ちてきた。

間一髪、知崎君は私が攻撃の直前に突き飛ばしたから無傷で済んだ。

だけど……

 

 

 

「くっ…!」

 

「キャアアアアアアアア!!!」

 

「ひ、緋色ちゃん…!?」

 

「嘘だろ…!?こいつ今、本気で殺しにかかったぞ…!?」

 

ミスった…!

ほとんどの攻撃は避け切れたけれど、槍が何本か避け切れずに手足や脇腹に掠ってしまった。

うぅ、想像の軽く10倍は痛いわね…

とりあえずまずは止血を…!

 

『ギャハハハハハハ!!!今のを避けるかァ!!やるじゃねえかヒーローガール!!』

 

「うっさい…あんた、達に…褒め、られても…」

 

『うっぷっぷ、あー良かった、コロシアイ以外で死なれちゃ興醒めだもんね!オマエラ、これでわかったよね?もし次ルールを破ったりボク達に危害を加えようとしたら…?』

 

モノクマのその一言で、全員が黙った。

どうやら、ようやく全員が全員あいつらが本気だと思い知ったらしい。

するとモノクマとモノDJは、咳払いをして言葉を続けた。

 

『えー、オマエラ改めまして、ご入学おめでとうございます!それではこれより、ワックワクドッキドキの『コロシアイ学園生活』の開始を宣言します!』

 

『それではオマエラ、良い絶望を!スィーユーアディオス!!』

 

二匹は、ブンっと音を立ててその場から姿を消した。

うっ、気が抜けたせいか血が…

 

「うぅ……!」

 

「緋色ちゃん!大丈夫!?」

 

「ええ…警察官が、市民を守るのは、当然の責務よ…とりあえず、何か止血するもの…持ってきてくれる…?」

 

「ん…」

 

「腐和様、こんな布しかありませんがよろしければお使い下さい」

 

「オレのエプロンも使えよ!」

 

「待て待て、まずは消毒だ」

 

「お、オレ何か必要なものあったら取ってくるよ!」

 

「なら消毒液を頼む。無ければ水でいい。急いでくれ」

 

「っス!!」

 

「俺も何か手伝うよ」

 

主に小鳥遊さんと加賀君、それから秋山君が怪我の手当てをしてくれて、他の皆も治療班を手伝ってくれた。

聖蘭さんは…お祈りしてくれてるわね。

気持ちだけは受け取っておくわ…

 

「とりあえず応急処置は済んだ。この程度の怪我なら、数日のうちに元の状態に戻るだろう。それまで絶対安静だがな」

 

「良かった…」

 

命に関わるような怪我じゃなくて良かった…

…それにしても、知崎君、さっきからずっと落ち込んでるわね。

とりあえず彼が無事で良かったわ。

でも私の事で責任を感じているのだとしたら、ちょっと申し訳ないわね。

 

「………」

 

「蓮、そんなに落ち込まないで。緋色だって、別にあんたの事責めたりなんか…」

 

「………ぷっ!!」

 

…え?

 

「あっはははは!!やっぱりだ!!やっぱりあのクマちゃん達に逆らったら殺されちゃうんだ!!そして、やっぱり緋色ちゃんはボクを助けてくれた!!ぜーんぶボクの思った通りだ!!やったあ!!あはははは!!」

 

「「「………は?」」」

 

「なっ…テメェ…!まさかさっきのはわざと…!?」

 

「うん、そうだよ?わざとクマちゃん達に突っ込んだけど何か?」

 

………は?

えっ、待って。

理解が追いつかない。

え?

…って事は、知崎君は、私がこうなるのを予想してわざと飛び出したって事…?

私が庇い切れる保証なんてどこにも無かったのに、どうしてそんな事…

 

「なっ…!!ふざけるのも大概にして!!キミのせいで緋色ちゃんが大怪我したっちゃん!!」

 

「そうじゃなくても、君が死んでたかもしれないよね?そんなリスクを冒してまで、何であんな事したのかな?」

 

「んー…あいつらをもう一回怒らせたらどうなるのか、どうしても知りたかったから?」

 

知崎君は、悪びれもせずに答えた。

何なのよあの子、こんな状況でそんな事考えられるなんて…!

 

「イカれてる…!」

 

「俺が言うのも何だが相当キてんなあいつ」

 

ほとんど全員、知崎君に対して同じ感想を抱いた。

すると知崎君は、全く反省せずにニコッと笑った。

その態度に我慢できなくなったのか、越目君が知崎君の胸ぐらを掴む。

 

「テメェ、ふざけんじゃねえ!!自分が何したかわかってんのか!?」

 

「きゃー、粧太ちゃんこわーい!暴力反対ー!」

 

越目君が怒鳴りつけると、知崎君は飄々とした態度でふざける。

 

「っていうかさ、皆はボクに感謝してほしいよね!」

 

「…は?」

 

「ボクが身を挺してあいつらを怒らせたらどうなるのか実験してあげたおかげで、無駄な犠牲が出ずに済んだんだからさ!もしボクが実験せずにキミがあいつらを怒らせちゃってたら、キミが串刺しの丸焦げになってたんだよ?」

 

「んだと…!?テメェ、それで腐和ちゃんが死んでも良かったって言いてえのか!?」

 

「まさか。だって、皆は緋色ちゃんを助けてくれたじゃん。結果オーライじゃん!」

 

知崎君がいたずらっぽく笑うと、不気味に感じた越目君が知崎君を放した。

あんな事をしでかした知崎君は、無邪気な子供みたいに満面の笑みを浮かべていた。

 

「ボクは皆の事もっともっと知りたいから、出来るだけ長生きしてほしいんだ。だから皆が一秒でも長く生きていられるように、もっと努力するよ。そういうわけだからよろしくね、皆」

 

そう言って知崎君は、一人でどこかへと行ってしまった。

私達の希望に満ちた生活はたった今、絶望へと変わってしまった。

 

 

 

 

 

Prologue 入学したら絶望だった件 ー完ー

 

Next ➡︎ Chapter1.コロシアイに出会いを求めるのは間違っているだろうか

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『未来ヶ峰学園のバッヂ』

 

プロローグクリアの証。

世界に16個しか無いものらしく、これが無いと未来ヶ峰学園の生徒とは認められない。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り16名

 

 

 

 

 



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未来ヶ峰学園生徒名簿
未来ヶ峰学園生徒名簿


生徒達のプロフィールです。
ICVは、無印、2、V3とは被らないようにしていますが、その他の作品とは被っているかもしれません。
キャラクター情報を編集しました。

2023/2/28 目野ちゃんのICVを変更しました。


生徒名簿(自己紹介順)

 

「一警察官として、今ここであんたを現行犯逮捕してあげるわ!!」

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

「それは違うわ!!」

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ) ICV:山崎和佳奈 

 

性別:女性

身長:176cm(ヒール込み:183cm) 体重:60kg 胸囲:88cm 血液型:A型

誕生日:1月10日(山羊座) 年齢:18歳 利き手:左

出身校:乾坂(いぬいざか)学院高校 出身地:東京都

趣味:紅茶の飲み比べ、読書

特技:射撃、柔道、口喧嘩

好きなもの:紅茶、スコーン、ミステリー

嫌いなもの:コーヒー、犯罪

家族構成:父

得意教科:体育、数学、英語

苦手教科:世界史

イメージカラー:カーマイン

容姿:ワインレッドのロングヘアーに緋色の瞳。髪をハーフアップにしており、蝶の髪飾りで留めている。頭頂部から触角が生えている。Eカップ(闇内スカウター)

服装:女性警官の制服。黒タイツと黒いピンヒールのパンプスを履いている。

パンツ:黒のTバック。あくまで機能性重視。

人称:私/あなた/男子:苗字+君、女子:苗字+さん(例外:聲伽とネロは名前呼び捨て)

 

本作の主人公。極道の一人娘でありながら史上最年少で警察官に採用され、ギフテッド制度により10代にして警部補まで出世した天才。30年以上も警察から逃れ続けた殺人鬼を捕らえた功績から一躍有名になり、彼女の管轄では重要犯罪の検挙率は99.9%を誇っている。特に銃の腕に関しては天才的で、本人の凛々しさも相まって『警察界のカラミティ・ジェーン』と呼ばれている。

本人は少し正義感が強いだけの常識人を自称しているが、ここぞという時の度胸はメンバーの中で誰よりも強く、クラスメイトを助ける為なら自分が傷つく事も厭わない献身的な精神の持ち主。その出自故か喧嘩は口でも腕でも負けた事が無く、彼女を本気で怒らせたら誰も口答えできない。メンバーの中では精神年齢が高く、基本的に何でもそつなくこなせる優等生タイプ。また、本人は全く自覚していないが、実は女性陣の中で一番美形。とある理由で【超高校級の絶望】を追っており、今回の事件も【超高校級の絶望】が関わっていると踏んでいる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「うちらこげん仲良うなれたけん、絶対何とかなるよ!」

「その言葉、斬っちゃうよ!」

「それは違うよ!!」

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな) ICV:佐倉綾音

 

性別:女性

身長:164cm 体重:49kg 胸囲:84cm 血液型:B型

誕生日:9月2日(乙女座) 年齢:15歳 利き手:右

出身校:躑躅原(つつじはら)高校 出身地:福岡県

趣味:食べる事、寝る事、おみくじ

特技:運を使ったゲーム(ただしその後必ず大損する)

好きなもの:和食、クジ、占い、玄米茶

嫌いなもの:牡蠣、キノコ、三輪車

家族構成:父、母、祖父、祖母

得意教科:体育、家庭科

苦手教科:数学、物理、化学

喜ぶプレゼント:クローバーのヘアピン、高級納豆、フォーチュンクッキー

苦手なプレゼント:エロ本、タバコ、キノコ栽培キット

イメージカラー:アクアブルー

容姿:水色のショートヘアーにくりっとした青い瞳

服装:水色のブローチがついた紺色のベレー帽を被っており、帽子と同じ色のセーラー服を着ている。黒のハイソックスに黄色いスニーカー。右手にミサンガをつけている。

パンツ:シンプルな無地の白いショーツ。安ければ何でもいいらしい。

人称:うち/キミ/男子:苗字+くん、女子:苗字+ちゃん(例外:腐和は『緋色ちゃん』、ネロは『ネロくん』)

 

腐和に一番最初に出会った少女。全国の平均的な高校生の中から抽選で選ばれた。奇跡とも言うべき幸運を引き寄せる力があるが、一度幸運が起こると必ずそれが全てチャラになる程の不運が降りかかる体質。逆にその性質を利用して、あらかじめわざと不運を被って運を貯めておく事でここぞという時に狙って幸運を発揮する事もできるらしい。

腐和の相棒的ポジションで、本人も腐和のバディを自称している。本人曰く三代続く博多っ子で、博多弁で喋るのが特徴的。天真爛漫を絵に描いたような性格で朗らかだが、悪い意味でも裏表が無く思った事を直球で言ってしまう悪癖がある。重度の天然で、うっかり要件を忘れてしまったり何も無いところで転んだりするドジっ子。その体質故かお色気ハプニングを多発し、本人がさほど気にしていない事も拍車をかけて知崎と闇内のオイタのターゲットになる事が多い。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「困った時はお互い様だろ?いつでも気軽に声かけてよ」

「その言葉、打ち返すよ!」

 

【超高校級のバレーボール選手】 玉越(たまこし)(つばさ) ICV:真堂圭

 

性別:女性

身長:183cm 体重:70kg 胸囲:83cm 血液型:O型

誕生日:2月9日(水瓶座) 年齢:17歳 利き手:右

出身校:桜苑(おうえん)女子学院高等部 出身地:埼玉県

趣味:バレー、食べ歩き

特技:球技全般、家事

好きなもの:バレー、幕の内弁当、カフェラテ

嫌いなもの:水飴、タバコ

家族構成:弟三人

得意教科:体育、数学、現代文、英語

苦手教科:古文

喜ぶプレゼント:バレーボール、コーヒーセット、高級納豆

苦手なプレゼント:エロ本、タバコ、パチパチキャンディー

イメージカラー:オレンジ

容姿:オレンジ色のサイドテールに明るめの茶色の瞳。健康的な褐色肌のフィットネスビューティー。女子の中では一番背が高い。

服装:オレンジと紺を基調としたバレーのユニフォームの上に前の高校のジャージ。膝当てと短い黒のソックス、青いシューズを履いている。

パンツ:水色と白のストライプ。意外と可愛い系が好み。

人称:あたし/あんた、お前(特に男子)/男女問わず名前呼び捨て

 

海外の強豪チーム相手に完勝してオリンピックの出場枠を手にした女子バレーボールチームのリーダーで、人間業とは思えないプレーを平然とこなすバレーボール界の絶対女王。特に彼女の打つスパイクはその凄まじさ故に『戦艦大和』と呼ばれ、あまりのレベルの差に相手チームはわけがわからないまま試合が終わってしまうという。それでいて本人は至ってストイックで、チームメイトやファンを大切にしているので老若男女問わずファンが多い。

スポーツ万能で成績優秀なイケメン女子。コロシアイメンバーのリーダー的ポジションで、面倒見が良く明朗な性格故にメンバーからは姉のように慕われている。日本を代表するスポーツチームのリーダーを担っているからか、高校生とは思えないほど人としての器が大きく、会ってから数日しか経っていないメンバーの事に対しても分け隔てなく大らかに、時には適度に厳しく接する。小鳥遊とは前の高校からのクラスメイトで、話せない小鳥遊に代わって彼女がコミュニケーションを取っている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「ん」

「あ…」

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい) ICV:小倉唯

 

性別:女性

身長:151cm 体重:45kg 胸囲:89cm 血液型:B型

誕生日:11月11日(蠍座) 年齢:17歳 利き手:右

出身校:桜苑(おうえん)女子学院高等部 出身地:千葉県

趣味:動物と話すこと、読書、花見

特技:治療、動物と話すこと、裁縫

好きなもの:トマト、ミルクティー、動物全般

嫌いなもの:手羽先、豚骨ラーメン

家族構成:父、母

得意教科:数学、化学、生物、家庭科

苦手教科:体育、国語

喜ぶプレゼント:猫のぬいぐるみ、クローバーのヘアピン、動物図鑑

苦手なプレゼント:エロ本、カラオケマイク、タバコ

イメージカラー:桜色

容姿:くるぶしまである白髪ツインテールにピンクの瞳。ロリ巨乳。アルビノ。女性陣で三番目に美形。

服装:ピンクの襟のセーラー服とクリーム色のセーター、紺のスカートの上に白衣。赤いチェックのマフラーで口元を隠している。黒タイツと茶色いローファーを履き、医療器具が入ったリュックを背負っている。

パンツ:高級そうな薄ピンクのフリルのショーツ

人称(筆談時):私/あなた/男子:苗字+君、女子:苗字+さん

 

かつては不治の病と呼ばれた動物の病気を完治させるワクチンの開発に成功して世界的に脚光を浴び、獣医界のパイオニアと呼ばれている。その他にも絶滅危惧種の保護活動や被災地での動物達の救護に力を入れていて、世界中の動物達を救う為に各国を転々としている。動物と意思疎通をする事ができ、特に猫とうさぎに思い入れが強い。世界的な名医の家に生まれ、幼い頃から両親のオペに立ち会ってきたため、動物だけでなく人間の医療知識も豊富。

過去の出来事がきっかけで口が利けず、基本的に一文字だけで意思疎通をする少女。どうしても伝えたい事がある時は、筆談を使う。筆談時は基本敬語。無口で表情を露わにするのが苦手だが心優しい性格で、話せないなりにコロシアイ生活でピリピリしているクラスメイトのケアをしようと努力している。医療従事者故に頭の回転が早く、核心を突く指摘をする事が多い。玉越とは前の高校からのクラスメイトで、自分の代わりにコミュニケーションを取ってくれる玉越を誰よりも信頼している。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「ねえねえ、ここにいる人達皆【超高校級】なんだよねぇ?とっても不思議〜!」

「は?何言ってんの?」

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん) ICV:村瀬歩

 

性別:男性

身長:156cm 体重:45kg 胸囲:70cm 血液型:B型

誕生日:10月7日(天秤座) 年齢:不明 利き手:両手

出身校:不明 出身地:宮城県

趣味:知らないものを知ること、バッヂ集め

特技:イタズラ

好きなもの:イタズラ、百科事典、知育菓子、フ●ンタ

嫌いなもの:検閲、人参、靴下、ユリ(アレルギー)

家族構成:不明

得意教科:知らない事を学ぶのは好き

苦手教科:でも学校の勉強は嫌い

喜ぶプレゼント:エロ本、パチパチキャンディー、動物図鑑

苦手なプレゼント:高級納豆、タバコ、インビトロローズ

イメージカラー:ビリジアン

容姿:深緑のセミロングの髪に赤褐色の瞳。頭頂部から渦巻き状の毛が生えている。中性的で、女子のような顔立ち。八重歯。

服装:未来ヶ峰の制服の上に緑色のカーディガン。左胸に趣味のバッヂをつけている。素足に直接黒のローファー。大きな襷掛け鞄を肩にかけている。

パンツ:緑のトランクス。開放感がある方がいいらしい。

人称:ボク/キミ/男子:名前+おにい、女子:名前+おねえ(男女問わず名前+ちゃんで呼ぶ事も多い)

 

自分の才能を思い出せない少年。仕事柄クラスメイトの才能に詳しい腐和も彼の才能はおろか、出自すら知らない。病的なまでに知的好奇心が旺盛で、疑問を解消するためなら一切手段を選ばず、息をするように平気で嘘をついたり自他含め命を軽んじる事も少なくない。コロシアイに関しても『クラスメイトの皆の事を知れるチャンス』と楽観的に考えいる。

自分が可愛い事を自覚しており、男子とは思えないほどあざとい。イタズラ好きで、隙あらば誰にでもイタズラをしようとするが、玉越に捕まって説教を受ける事が多い。女性陣に対するセクハラも頻繁に行うため、越目や闇内と一纏めにエロトリオと呼ばれている。自分が異端であるという自覚や人に迷惑をかける事への罪悪感は一切無く、才能が思い出せない事もあってあくまで『【超高校級】の皆に比べたらちょっと天才なだけの常識人』と言い張っている。その為、自分の事を棚に上げて闇内を変態扱いしたり目野を奇行種呼ばわりしたりとやりたい放題である。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「飯の事ならオレに任せとけ!!」

「その言葉、掻っ捌いてやるぜ!!」

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる) ICV:増田俊樹

 

性別:男性

身長:172cm 体重:68kg 胸囲:92cm 血液型:O型

誕生日:7月19日(蟹座) 年齢:15歳 利き手:右

出身校:古湖須(ふるこす)調理専門高校 出身地:沖縄県

趣味:食べ歩き、料理

特技:料理、野菜ソムリエ

好きなもの:食に関する事全て

嫌いなもの:食い物を粗末にする奴

家族構成:父、母、祖父、祖母

得意教科:体育、家庭科

苦手教科:それ以外全部

喜ぶプレゼント:高級納豆、フォーチュンクッキー、キノコ栽培キット

苦手なプレゼント:メイク道具、実物周期表、タバコ

イメージカラー:朱色

容姿:朱色のポニーテールに焦茶色の瞳。三白眼。

服装:炎の柄の赤いバンダナを頭に巻いており、黒Tシャツと紺のジーンズに白い腰エプロンといった格好をしている。腰には調理器具や調味料を携帯する用のベルトをつけており、茶色いブーツを履いている。

パンツ:燃えるような赤のブリーフ。本人曰くアツいイメージ。

人称:オレ/オメェ/男女問わず名前呼び捨て

 

高校生にして世界的に高い評価を得ている美食家。目に留まった店にふらっと立ち寄って料理に対してコメントをし、店側がそのコメントを参考に改善するとどんな店でもたちまち行列の絶えない繁盛店になる。本人は食べるの専門だが作るのも好きで、趣味で始めたラーメン店はミシュランガイド三つ星、彼が監修したレシピ本は発売後10分と待たずに完売し今は重版待ち。未来ヶ峰学園に入学後は、学食の調理に携わる契約をしている。

グルメな熱血漢。食に対する情熱が強く、センブリ茶やシュールストレミング、サルミアッキといった食材に対しても美味しく戴く為の研究を惜しまない。食に関しては一切妥協を許さず、自分の作った料理が少しでも気に入らないと周りが美味しいと感じる出来栄えでも自虐に近い酷評をする。基本的には誰に対しても分け隔てなく朗らかに接する好青年だが、偏食や食べ残しに敏感で、アレルギーや宗教的な理由など、よっぽどの理由が無い限りは敵意を剥き出しにしてくる。少し天然が入っており、食に関する事以外はかなり知識が疎い。本作のおバカ枠その1。

 

 

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「オレちゃんがオススメのメイク教えてやっから、興味あったらいつでも声かけな」

「メイクアップしてやろうじゃん!」

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた) ICV:古川慎

 

性別:男性

身長:181cm 体重:76kg 胸囲:93cm 血液型:O型

誕生日:5月8日(牡牛座) 年齢:15歳 利き手:左

出身校:日之出(ひので)高校 出身地:香川県

趣味:メイク、ファッション雑誌チェック、サイクリング

特技:メイク、動画編集

好きなもの:コーラ、唐揚げ、流行りのもの

嫌いなもの:カレーうどん

家族構成:母、姉二人

得意教科:美術、家庭科、保健体育

苦手教科:座学教科全般

喜ぶプレゼント:エロ本、メイク道具、クローバーのヘアピン

苦手なプレゼント:高級納豆、実物周期表、タバコ

イメージカラー:金色

容姿:ピンクのメッシュが入った金髪に碧眼。褐色肌。かなりのイケメン。

服装:黒のタンクトップに紫のタイトジーンズ、ピアスやネックレス、ブレスレットや腕時計などを着用。腰にはメイク道具が入ったポーチとアクセサリーをつけており、ピンクと緑を基調としたスニーカーを着用。自分で研究したメイクを施している。

パンツ:南国のような柄のボクサーパンツ。最近の流行りらしい。

人称:オレ、オレちゃん/キミ(女子)、お前(男子)/男子:苗字呼び捨て 女子:苗字+ちゃん(例外:ネロだけ名前呼び捨て)

 

高校生にしてSNSで話題沸騰中で、世界一人気のメイクアップアーティスト。数年前にメイク講座の動画をアップしたのが反響を呼んで、今では彼のメイクが流行の最前線になっている。彼が公開講座で紹介したメイク道具は、数ヶ月待たないと手に入らない、世界で最も入手しづらい化粧品になっている。老若男女誰でも楽しめるメイクの普及を目指し、年齢層に合わせたメイクを日々研究している。

よく言えば気さくでノリの良い、悪く言えばチャラチャラした男子。自他共に認めるイケメンで、SNS上では女子高生に大人気のインフルエンサーなのだが、何故かコロシアイメンバーの女性陣には全くモテない。女子の中では腐和と玉越がお気に入りで、よく声をかけており、知崎や闇内と一纏めにエロトリオと呼ばれている。しかし他の二人とは違ってモラルのあるチャラ男をモットーとしているため、女性陣にセクハラは絶対にしない。他のメンバーに比べると割と常人に近い感性を持っているが、軽率な行動が目立ち、的外れな発言をする事が多い。本作のおバカ枠その2。

 

 

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「私はただ、我らが父の御言葉に従って救いを求めている人々に手を差し伸べただけですわ」

「主に背く不届き者に裁きを!!」

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア ICV:早見沙織

 

性別:女性

身長:168cm 体重:57kg 胸囲:97cm 血液型:AB型

誕生日:9月8日(乙女座) 年齢:16歳 利き手:右

出身校:聖クリスティーネ修道院高校 出身地:長崎県

趣味:奉仕活動、掃除

特技:歌、オルガン演奏

好きなもの:パン、デラウェア、リンゴジュース

嫌いなもの:肉類、巨峰

家族構成:父、母

得意教科:音楽、英語、現代文

苦手教科:体育、数学、古文

喜ぶプレゼント:インビトロローズ、ブルーベリーの香水、聖書

苦手なプレゼント:エロ本、携帯ゲーム機、タバコ

イメージカラー:ミントグリーン

容姿:緑色のロングヘアーに緑の瞳。口元にホクロがある。女性陣の中で一番巨乳で、腐和の次に美形。

服装:金色の十字架の刺繍が施された紺色のシスター服のようなドレス。白い手袋をつけている。常にロザリオを握っている。黒いタイツとパンプスを着用。

パンツ:聖水で清められた白い紐パン。修道院で支給されているものらしい。

人称:私(わたくし)/あなた/男女問わず苗字+様

 

敬虔なクリスチャンで、裕福な家庭で育ちながらノブレスオブリージュの精神を忘れず、貧しい人々に献身的に寄付をしているシスター。最初は【超高校級のシスター】としてスカウトされる予定だったが、彼女に施しを受けた人々が彼女を神格化し、彼女を崇めた新興宗教を作った事から【超高校級の聖母】としてスカウトされる事になった。

本作のお嬢様枠。礼儀正しく気品と慈愛に満ちており、思わず跪いてしまいたくなるようなオーラが漂っている。『人の為に財産を捧げる事が高貴な身分に生まれた者の義務』と信じており、人の為に尽くす事が何よりの喜びと感じている。基本的に誰にでも物腰柔らかく接するが、エロトリオに関しては少なからず思うところがあるようである。大富豪の家に生まれ箱入り娘として育てられてきたからか、一般常識に若干疎く、金銭感覚がかなり一般人とはズレている。

 

 

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「何じゃあ貴様!!ワシの愛刀を愚弄するか!!」

「このワシが斬り伏せてくれるわ!!」

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは ICV:種崎敦美

 

性別:女性

身長:138cm 体重:38kg 胸囲:72cm 血液型:O型

誕生日:12月7日(射手座) 年齢:16歳 利き手:右

出身校:五右衛門(ごえもん)高校 出身地:鹿児島県

趣味:遺跡探索、茶道、盆栽

特技:考古学の勉強

好きなもの:おはぎ、麦茶、伝記

嫌いなもの:緑黄色野菜、牛乳、マスコミ

家族構成:祖父、祖母

得意教科:日本史、世界史、古文

苦手教科:英語、現代文、物理

喜ぶプレゼント:巻物、黄金銃、斬鉄剣

苦手なプレゼント:エロ本、高級納豆、キノコ栽培キット

イメージカラー:小豆色

容姿:小豆色の三つ編みに藤色の瞳。女子の中では一番小柄。

服装:大正の男子学生のような格好で白シャツの上に紫の矢絣の着物とえんじ色の袴。えんじ色の制帽と金縁の丸眼鏡を着用。上に濃い抹茶色の外套を着ている。足袋と下駄を履いている。

パンツ:白いカボチャパンツ。本人曰く落ち着くらしい。

人称:ワシ/ウヌ、貴様/男女問わず苗字呼び捨て

 

存在すら怪しいとされていた徳川埋蔵金を発見して、その功績が認められてスカウトされた天才考古学者。その他にも世界各地で未発見だった遺跡を発掘し、今までの考古学の常識を大きく覆してきた。歴史学会や国際歴史会議にアポもなしに乗り込み、自身の研究結果を突きつけては颯爽と去っていくという豪快なスタンスで有名。その功績故に毎日マスコミが取材をしに押しかけているが、マスコミ嫌いのため取材は助手に丸投げしている。

小学生と見紛うほど小柄な見た目に反し、古風な喋り方と高圧的な態度が特徴的。地雷を踏むと『斬殺丸』なるツルハシで攻撃してくるが、ツルハシなのに『斬殺丸』なのかとかはツッコんではいけない。だが熱しやすく冷めやすい気質のため、割とすぐに怒りが収まって普通に接してくる。他のメンバーに比べると精神年齢が低く、豪快に振る舞ってはいるが本質は人並み以上に臆病で、保身の為に責任転嫁をする事もある。考古学以外の知識が疎く、的外れな発言を多発しがち。本作のおバカ枠その3。

 

 

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「俺の事は極力称号で呼ばないでもらえるとありがたい」

「非科学的な妄想だな」

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん) ICV:諏訪部順一

 

性別:男性

身長:186cm 体重:73kg 胸囲:90cm 血液型:B型

誕生日:4月18日(牡羊座) 年齢:18歳 利き手:左

出身校:帝卿(ていきょう)学院高校 出身地:神奈川県

趣味:研究、読書、ゲーム

特技:理系の勉強全般、ボウリング、チェス

好きなもの:学問、アイスキャンディー、ウイダー

嫌いなもの:魔法、鍋料理

家族構成:無し

得意教科:理系全般

苦手教科:美術、家庭科

喜ぶプレゼント:実物周期表、ガリレオ温度計、動物図鑑

苦手なプレゼント:聖書、フォーチュンクッキー、魔法のステッキ

イメージカラー:インディゴ

容姿:紺色の長髪に空色の瞳。左目に泣きボクロがある。研究で忙しいからか無精髭を生やしている。実は男性陣の中で一番美形。

服装:水色のシャツと紺色のネクタイの上にダークグレーのブレザー、さらにその上に白衣。ゴーグルと指ぬきグローブ、実験器具が入ったポーチをつけている。両脚にもレッグポーチを着用。ちなみに靴は黄色いサンダル。

パンツ:紺のボクサーパンツ。特にこだわりは無い。

人称:俺/君/男女問わず苗字呼び捨て(例外:ネロだけ名前呼び捨て)

 

かの天才科学者ニコラ・テスラの再来と呼ばれ、個人で自然科学部門のノーベル賞を全てコンプリートした天才高校生。彼の発明は、その理論を理解できない凡人からしてみれば魔法のように見える事から、『人類史上唯一の魔法使い』とも呼ばれている。実現不可能といわれた永久機関を発明・普及させた事で有名で、百億通り以上の衣類を再現できる変身ミラー、廃棄物を原料に食材を生成する機械等の発明をしている。

初っ端から体育館に落書きをしていた変人。魔法使い扱いされるのが気に入らないため、頑なに自分の事を称号で呼ばせまいとしてくる。自由人すぎて周囲とすれ違いを起こす事が多いが、相手が正しいと認めればきちんと言動を改める事が多い。スカウトされる前から目野とは研究仲間で、彼女に機械を発注していたりもしていた。常に冷静沈着で一応トラポ枠だが、自分の興味のある事以外はどうでもいい主義で、ファッションセンスやネーミングセンスが絶望的で字も汚い(ちなみに彼の発明品は全て助手が命名している)。実は猫舌で、熱いものが苦手。

 

 

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「スゥハァ…この香り…見事な金属光沢…ベリィィィエレガンツッッッ!!!」

「前時代的な脳味噌を一から改造してあげます!!」

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ) ICV:田中理恵

 

性別:女性

身長:160cm 体重:52kg 胸囲:93cm 血液型:AB型

誕生日:8月7日(獅子座) 年齢:15歳 利き手:左

出身校:奇天烈(きてれつ)工業高校 出身地:島根県

趣味:メカに関する事全て

特技:機械整備、機械製作

好きなもの:メカ全般、特撮、ポン菓子、エナジードリンク

嫌いなもの:マシュマロ、餅、猫(アレルギー)

家族構成:父、母

得意教科:数学、物理、化学、技術科

苦手教科:道徳、古文、家庭科

喜ぶプレゼント:カラオケマイク、携帯ゲーム機、零戦プラモデル

苦手なプレゼント:聖書、猫のぬいぐるみ、巻物

イメージカラー:コーラルピンク

容姿:コーラルピンクのポニーテールに鶯色の瞳。そばかすがある。ロリ巨乳。

服装:黒のタンクトップに煤まみれの青い作業着。ゴーグル付きの革製のヘルメットを着用。グレーの手袋をつけている。腰には工具が入ったポーチをつけており、黒い作業用ブーツを履いている。

パンツ:ユ●クロのグレーのショーツ。汚れが気にならなければ何でもいい。

人称:私/あなた/男女問わず苗字+さん(例外:ネロだけ名前+さん)

 

どんな機械でも新品以上の出来栄えに修理してしまう機械技師。修理するだけではなく自分で機械を作るのも得意で、パソコンや携帯に自動車から、果てには発電所や宇宙船まで、機械なら何でも作る事ができ、今や機械で彼女の技術が使われていないものは無い。コンピューターのシステムにも明るく、その気になれば人工知能や人工衛星を制御するプログラム等も作成できる。

生粋のメカオタク女子。闇内とは別のベクトルで変態で、腐和曰く『キャラの濃さならダントツでトップ』、知崎曰く『奇行種』。機械や金属製品の類を見ると、興奮して英語の形容詞を交えながら奇声を発したり、見事な巻き舌を披露しながら発狂したり、舐め回したりといった奇行に走る癖がある。腐和や秋山とは違って突出型の天才で、機械工学以外には興味が無い上に知識が疎く的外れな言動が目立つため、機械が関わらない事となるとおバカ枠になりがち。スカウトされる前から加賀とは研究仲間で、彼から発注された機械を作ったりもしていた。彼(の研究内容や発明品)に惚れ込んで常に追いかけ回している。

 

 

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「すまないが、少し静かにしてもらえないか。騒がしすぎて気が滅入りそうなんだ」

「建て直しだ」

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう) ICV:黒田崇矢

 

性別:男性

身長:198cm 体重:113kg 胸囲:118cm 血液型:AB型

誕生日:11/22(蠍座) 年齢:16歳 利き手:右

出身校:錦堂(きんどう)高校 出身地:北海道

趣味:大工仕事、登山

特技:建築、力仕事

好きなもの:木造建築、炭火焼き、自然、ほうじ茶

嫌いなもの:モナカ、人と接する事、怪談

家族構成:父、母、祖父、祖母、妹、弟

得意教科:体育、美術、技術科

苦手教科:現代文、古文、英語

喜ぶプレゼント:寄木細工、黄金のトンカチ、高級納豆

苦手なプレゼント:カラオケマイク、メイク道具、タバコ

イメージカラー:カーキ

容姿:明るい茶髪のツーブロックのオールバックに金色の瞳。髭を生やしており、目元に傷がある。筋骨隆々で、メンバーの中で一番大柄。

服装:ブルーグレーのTシャツにカーキの作業着。白い軍手をつけている。大工道具が入ったポーチを腰につけており、紺色の地下足袋を履いている。

パンツ:虎柄のトランクス。露出少なめのものが好み。

人称:俺/お前/男女問わず苗字呼び捨て(例外:ネロだけ名前呼び捨て)

 

高校生にして世界的に高い評価を得ている大工。世界中の有名な建築物の建築や修理に携わっていて、世界中の建築士が匙を投げた無茶な要望に対しても完璧に応えてみせて話題を呼んだ。絶望的事件の再来で破壊されてしまった歴史的建造物を一から建て直して完璧に再現した功績が認められ、この未来ヶ峰学園にスカウトされた。依頼者や住む人達の事を第一に考えて建築に携わる姿は、まさに匠であり紳士。

周囲を圧倒する雰囲気を持つ筋骨隆々の大男。常に冷静に物事に対処し、周囲には寡黙な紳士といった印象を抱かせるが、実は人並み以上に臆病で人見知り。口数が少ないのも人と話すのが苦手なだけで、反応が薄いのも驚きすぎて声が出ないだけだったりする。見た目で怖がられて避けられるのが悩みで、見た目を気にせずに接してくるメンバーには内心とても感謝している。何気に作中一の常識人かつ良識人で、裁判等ではあまり役に立てない事を自覚しているからか空気を読んで賢いメンバーのサポートに徹している。

 

 

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「この状況で俺に出来る事といったらこれくらいしか無いから」

「根本から考え直したら?」

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと) ICV:江口拓也

 

性別:男性

身長:177cm 体重:66kg 胸囲:88cm 血液型:AB型

誕生日:3月19日(魚座) 年齢:17歳 利き手:右

出身校:丘路(おかろ)音楽大学付属高校 出身地:静岡県

趣味:音楽鑑賞、料理、ヨガ

特技:音源制作、創作料理

好きなもの:音楽、エスニック料理、シナモンコーヒー

嫌いなもの:生魚、おでん、飛行機

家族構成:父、母、妹

得意教科:音楽、数学、家庭科

苦手教科:強いて言うなら古文

喜ぶプレゼント:カラオケマイク、レトロレコード、ブルーベリーの香水

苦手なプレゼント:エロ本、タバコ、零戦プラモデル

イメージカラー:深紫

容姿:濃い紫色のセミロングに紫の瞳。男性陣の中では二番目にイケメン。

服装:薄紫のシャツと青いループタイの上に青い深紫のスーツ。ピアスや指輪などのシルバーアクセサリーを着用。靴は黒い革靴。

パンツ:白黒のチェックのボクサーパンツ。派手すぎないものが好み。

人称:俺/君、あなた/男子:苗字+君、女子:苗字+さん(例外:響は『歌音』、ネロは『ネロさん』)

 

世界的にも有名な音楽プロデューサー。彼の手掛けた楽曲は世界音楽ランキングで軒並み上位を独占し、世界中で大ヒットした映画の音楽制作にも携わっていて、アカデミー賞の音響賞を受賞した事もある。高校生でありながら今や世界中で活躍しているガールズロックバンド『RESONANCE』も彼が手掛けており、デビュー作のCDはもはや今では高額でオークションに出されていて簡単には手に入らない。

クールで知的な好青年。誰に対しても紳士的に接するので、男女問わずファンが多い。しかし二面性があり、礼儀知らずな相手や仲間を傷つける相手には容赦なく冷酷な態度で接し、煽りを多発したり毒を吐いたりする事も多い。また、仕事の事となるとすこぶる饒舌になる。何でもそつなくこなせる天才肌だが、『何でも二番』というタイプで、本人は『突出した長所が無い器用貧乏』と謙遜している。頭の回転が速く、周囲をサポートするという意味での頭の良さなら作中一。響とは幼馴染であり仕事仲間。すぐにカッとなりがちな響のフォローに徹している。本作のトラポ枠。

 

 

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「要はテメェらまとめて今ここでぶっ飛ばしゃあいいんだろが!!」

「響かせてやるよ、魂の叫びをよ!!」

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね) ICV:甲斐田ゆき

 

性別:女性

身長:171cm 体重:52kg 胸囲:79cm 血液型:A型

誕生日:6月9日(双子座) 年齢:16歳 利き手:右

出身校:丘路(おかろ)音楽大学付属高校 出身地:静岡県

趣味:採点カラオケ、音楽鑑賞

特技:歌、ダンス

好きなもの:ロック、はちみつ、レモネード

嫌いなもの:キムチ、大型犬、雷

家族構成:母、兄

得意教科:音楽、体育、英語

苦手教科:数学、家庭科

喜ぶプレゼント:猫のぬいぐるみ、カラオケマイク、レトロレコード

苦手なプレゼント:エロ本、高級納豆、タバコ

イメージカラー:桔梗色

容姿:白と赤のメッシュが入った黒髪ショートに黒い瞳。三白眼。スレンダー体型。

服装:ドクロマークの黒いTシャツとオレンジ色のスカート。耳に指輪、首にチョーカーとネックレス、腰にアクセサリーをつけており、黒い指ぬきグローブを着用。白黒のストライプのストッキングと黒いブーツを履いている。顔にはパンクメイクを施している。

パンツ:パープルのスキャンティ。本人曰く冒険してみたとの事。

人称:オレ/テメェ/男女問わず苗字呼び捨て、たまにクソ+苗字(例外:ネロと秋山だけ名前呼び捨て)

 

秋山が手掛けているガールズロックバンド、『RESONANCE』のボーカル。彼女の歌声は世界中を魅了し、今では世界で最も有名な歌手の一人として知られている。セクシーなハスキーボイスは老若男女問わず大人気で、彼女達のデビュー作はその年世界音楽ランキングで1位を獲得した。『RESONANCE』の楽曲のMVは、軒並み一億回再生を達成している。

男勝りで粗暴な言動が目立つ女子。常に不機嫌そうにしており、苛立ちのあまり周囲に当たり散らす事も少なくない。しかし本来は仲間想いで心配性な性格で、粗暴な言動も仲間を思うが故に募る不安の裏返し。『RESONANCE』のメンバーや秋山の事を誰よりも大切に思っている。秋山とは幼馴染であり仕事仲間。幼い頃から暴走しがちな自分をその都度支えてくれた秋山を尊敬している。意外にも他のメンバーに比べると常人に近い感性を持っており、時折年頃の少女らしい一面を見せる事もある。

 

 

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「ガキと馴れ合う気は無えな」

「出直して来い、バンビーナ」

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア(Nero Via Lattea)  ICV:津田健次郎

 

性別:男性

身長:108cm 体重:38kg 胸囲:62cm 血液型:A型

誕生日:3月30日(牡羊座) 年齢:不明 利き手:右

出身校:セントロ校 出身地:シチリア島

趣味:銃の手入れ、ギャンブル

特技:射撃、格闘、ポーカー

好きなもの:銃、マルボロ、ボンゴレビアンコ、エスプレッソ

嫌いなもの:チュッパチャプス

家族構成:無し

得意教科:まともな教育受けてねえ

苦手教科:偉そうに説教してくる奴の説教

喜ぶプレゼント:タバコ、黄金銃、レトロレコード

苦手なプレゼント:メイク道具、クローバーのヘアピン、巻物

イメージカラー:ブラック

容姿:短く切り揃えた短髪に黒い瞳。顎髭が特徴的。メンバーの中で一番小柄。

服装:黒い帽子に黒スーツ。黒い手袋をつけている。靴は黒い革靴。

パンツ:白いブリーフ。特にこだわりは無い。

人称:俺/お前/男女問わず名前呼び捨て、煽る時は男子:Mr.苗字、女子:Miss苗字

 

世界有数の勢力を誇るイタリアのマフィア、ガラッシアファミリーの若頭。ファミリーのボスを除けばガラッシアの中で最強のマフィアで、特に銃の腕は『現代のビリー・ザ・キッド』と呼ばれる程。しかし暴力を振り翳すわけではなく、地域の人々からは善良な人々を脅かす悪党を闇に葬るヒーローとして支持されている。世界中に麻薬をばら撒いていた犯罪組織、ヴェレーノファミリーを解体した功績が認められてスカウトされた。

小柄な見た目に反して近づき難い雰囲気をしている男子。メンバーの中では唯一成人しているが、ボスの一人娘を護衛する目的で同じ高校に潜入していたため、現役高校生という条件をクリアしスカウトされた。一日二箱は吸うヘビースモーカー。多くの修羅場を乗り越え、他のメンバーよりも経験値が高い事もあり、どんな状況に直面しても至って冷静。メンバーと連もうとせず、ガキ呼ばわりして距離を置いている。生徒手帳に自動翻訳機能が付いているため普通に会話ができているが、本人はイタリア語(シチリア方言)、英語、スペイン語のトリリンガルで日本語は全く話せない。

 

 

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「数の暴力を卑怯だの何だのと申せる状況ではござらぬ故、斬り捨て御免!!」

「その推理、斬ってみせようぞ!」

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ) ICV:石川界人

 

性別:男性

身長:162cm 体重:56kg 胸囲:83cm 血液型:A型

誕生日:2月22日(魚座) 年齢:16歳 利き手:右

出身校:霧隠(きりがくれ)高校 出身地:三重県

趣味:忍術の修行、エロ本

特技:忍術、目測で女性のスリーサイズを測れる

好きなもの:女体、白米、緑茶

嫌いなもの:ガチムキ、サンマ

家族構成:父、母、祖父、祖母、曽祖父

得意教科:保健体育、数学、化学、古文

苦手教科:現代文、世界史

喜ぶプレゼント:エロ本、巻物、はっぱふんどし

苦手なプレゼント:聖書、クローバーのヘアピン、メイク道具

イメージカラー:紺藍

容姿:顔は隠れていて見えないが、時折赤い眼光を覗かせている

服装:紺藍の忍者服。黒い足袋と手袋をつけている。腰に刀を差している。

パンツ:赤いふんどし。本人曰く機能性重視。

人称:拙者/お主/男子:苗字+殿、女子:苗字+嬢(例外:ネロだけ名前+殿)

 

江戸時代から続く忍の一族の末裔で、彼の先代が引退してからは日本に現存する最後の忍者と言われている。武士の時代が終わってからは暗殺業を廃業して、むしろスパイや探偵、用心棒として各国の要人の依頼を受けている事が多い。各国の王室への侵入や国家機密の入手もお手の物で、その気になれば誰も彼の前で隠し事をできない。数え切れない程の忍術を習得しており、人間離れした身体能力を持っている。

ござる口調で話す、忍者服を着た男子。ほとんどの女性陣のみならず男性陣からも距離を置かれる程の変態で、忍術をセクハラに悪用しては腐和や玉越から断罪されるのがオチ。それだけでなく、腐和の断罪を喜んだり、服を早脱ぎしてこれ見よがしにポーズを取ったりと、特殊性癖のきらいもあるようである。知崎や越目とセットでエロトリオと呼ばれている。仕事柄非常に多才で、腐和曰く『無駄にハイスペック』。常に顔を隠しており、何故か食事時でも顔が見えない。

 

 

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『それではこれより、ワックワクドッキドキの『コロシアイ学園生活』の開始を宣言します!』

 

【未来ヶ峰学園学園長】モノクマ CV:大山のぶ代orTARAKO

 

身長:85cm 体重:無し 胸囲:不明

趣味:人が絶望するところを見ること

特技:不明

好きなもの:絶望

嫌いなもの:希望

容姿:左右で白黒に分かれたクマのようなナニカ。

人称:ボク/オマエラ/男子:苗字+クン、女子:苗字+サン(例外:ネロだけ名前+クン)

 

未来ヶ峰学園の学園長。皆お馴染み絶望の象徴。『うぷぷ』という特徴的な笑い方をする。実体化ホログラムの身体を持ち、実体とホログラムの間を自在に行き来可能。モノDJの事を『ブラザー』と呼び、事あるごとに二匹で茶番劇を繰り広げている。

 

 

 

『ヘェイグッッモォォォニン!!ゴミクズ共ォォォ!!!』

 

【未来ヶ峰学園理事長】モノDJ ICV:小栗旬

 

身長:180cm 体重:無し 胸囲:130cm

趣味:人が絶望するところを見ること、暴飲暴食

特技:コーラとビールの一気飲み、ラジオDJ

好きなもの:絶望、コーラ、ポテチ

嫌いなもの:希望、雨

容姿:左右で白黒に分かれたクマのようなナニカ。モノクマの倍以上の体躯で、超肥満体型。

服装:白と黒に分かれた未来ヶ峰の校章がプリントされたキャップを被っており、黒と白に分かれた星形のサングラスをつけている。首には未来ヶ峰の校章が刻まれたヘッドホンをかけている。

人称:オレ、オレ様/テメェら/男子:名前+ボーイ 女子:名前+ガール(たまに男女問わず名前+リスナー)

 

未来ヶ峰学園の理事長。自称モノクマの兄。ハイテンションでノリがいいが、生徒を『ゴミクズ』と呼んだりと口はすこぶる悪い。実体化ホログラムの身体を持ち、実体とホログラムの間を自在に行き来可能。モノクマの事を『ブラザー』と呼び、事あるごとに二匹で茶番劇を繰り広げている。自称未来ヶ峰のカリスマDJだがその扱いは酷く、生徒からは『メタボグマ』、『モノデブ』、『体たらく』などと散々言われており、聲伽からも直球で『痩せた方がいい』と言われている。

 

 

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Chapter.0.5 ジャスティスダンガンロンパX4 強くてコロシアイ再履修 体験版
体験版


目の前には、謎の少女が目隠しをされて立たされていた。

少女は、アームで引き摺られてそのままどこかへと連れ去られた。

連れてこられたのは、映画館のような場所だった。

少女は、最前列の席に座ってスクリーンを眺めている。

その隣には、紳士風のモノクマとモノDJが座っていた。

そこで画面が切り替わる。

 

 

 

ーーー

 

脚本家は見た!とある少女の事件簿

 

ーーー

 

 

 

殺人事件が起き、主人公の探偵モノクマが助手のモノDJと共にトリックを解き明かす。

すると少女の隣にいたモノクマはポンと掌を叩きモノクルを輝かせる。

そして持っていたスイッチを押す。

すると少女の下の床が開いた。

 

少女が落ちたのは、コテージの一室だった。

少女は、拘束具でベッドに固定される。

モノクマは、作中に出てきたトリックを使って室内にいる少女を刺し殺そうとした。

だが、用意したロープの長さが微妙に足りなかったせいで狙い通り心臓には刺さらず包丁は右脚に刺さる。

モノクマは、不満そうな顔をしてスイッチを押す。すると少女は首についたアームで引き上げられ、再び映画館に連れ戻される。

 

次の作品は、毒を使った殺人事件だった。

モノクマは、映画のトリックを再現して少女を毒殺しようとする。

少女は、毒の入ったコース料理を無理矢理食べさせられる。

すると、身体は毒に蝕まれ少女は吐血した。

だが、毒が足りなかったせいで死には至らなかった。

 

次の作品は、ショットガンを使った殺人事件だった。

モノクマは、映画のトリックを再現して少女を射殺しようとする。

だが、モノクマの狙撃の腕が足りなかったせいで狙いを外し、少女は左腕を吹き飛ばされる。

 

電流を使った殺人では電流が足りなかったせいで感電死には至らなかった。

首吊り自殺に見せかけた殺人ではロープが脆かったせいで意識が落ちる前にロープが切れた。

極寒を使った殺人では、途中で快晴になるという予想外の異常気象のせいで凍死には至らなかった。

大型オーブンを使った殺人では、温度が足りなかったせいで焼死には至らなかった。

古い屋敷にあったギロチンを使った殺人では、ギロチンが錆びていたせいで途中で刃が止まった。

 

何十回もトリックの実験台にされた少女は、満身創痍になって席に座っていた。

もはや、少女にはまともな意識は無かった。

モノクマは、少女を殺せなかった事でかなり苛立ちが募っていた。

 

そして、物語はついに第一部の最終回を迎える。

少女は、再び事件現場を再現したスタジオへと落とされる。

少女が落とされたのは、山道に敷かれた線路の上だった。

落ちた瞬間に仕掛けられていたトラバサミで足を挟まれ、逃げようにも逃げられなかった。

すると、レトロな外装の列車が迫ってくる。

少女は、列車に轢かれて崖の下へ落ちる。

 

少女は、下半身を失い上半身だけで這いずっていた。

するとモノクマとモノDJが少女の目の前に現れる。

二匹は、最初の事件で使った包丁を少女の背中に突き刺した。

少女は、肺の中に血が溜まって苦しみながら死んだ。

その様子を、二匹は高笑いしながら見ていた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

私は、霧がかった路地裏を走っていた。

その先にいたのは人の影。

激しい戦いの後で腕を負傷したけれど、そんな痛みすらも忘れる程に、私は目の前の影を捕らえる事に必死だった。

私は、その影に向かって愛用の得物であるニューナンブM60を突きつける。

 

「【超高校級の絶望】…貴方は必ず、私の手で……!」

 

 

 

 

 

…え。

 

…ねぇ。……て。

 

………おーーーーい!!!

 

 

 

「ん…?」

 

……夢、か。

ぼんやりとした意識の中、目を開けると目の前に白い色が広がる。

そのままゆっくりと頭を起こすと、新品の白い学習机が視界に映る。

どうやら私は、机の上で突っ伏して寝ていたらしい。

 

「お、やっと起きたぁ!」

 

明るい声がしたので振り向くと、私と同じくらいの歳の女の子が立っていた。

紺色のベレー帽を被っていて、帽子と同じ色のセーラー服を着た、水色のショートボブで青い瞳の女の子だ。

 

「早う行かな、入学式遅れるちゃ!」

 

入学式…?

 

…!

…そうだ、思い出した。

 

約百数十年ほど前、『ダンガンロンパ』というゲームが大流行した。

元は普通の推理ゲームだったが、いつからか普通の人間に『超高校級』の才能と偽りの記憶を植えつけ、『コロシアイ』を行わせてそれを全国に生中継する最低最悪の殺戮ゲームと化した。

次々とダンガンロンパの続編が生中継され、全世界の人々が高校生の殺し合いに熱狂したが、55作目を最後に突然打ち切られ、ダンガンロンパは闇に葬り去られた。

しかし、『ダンガンロンパ』に魅せられた人々、ダンガンロンパに出てくる【超高校級の絶望】を自称するテロリスト達が世界各地でテロを起こし、世界は混沌に包まれた。

そこで日本政府は、日本を脅かす自然災害や自称【超高校級の絶望】達といった脅威に対抗すべく、世界中の才能溢れる生徒達を集めて新たな戦力として育成する為の教育機関を設立した。

その教育機関こそが、『国立未来ヶ峰学園』だ。

 

未来ヶ峰学園。

国内最大の国立高校で、世界中から才能溢れる学生を集めた世界有数の研究機関でもある。

本科の生徒達に関しては入学費用はかからないし、一度入学してしまえばその後の授業料も免除されている。

予備学科ですら偏差値80を超える超エリート校だ。

未来ヶ峰学園にスカウトされれば将来が約束されたと言っても過言ではなく、未来ヶ峰学園は世界中の高校生の憧れなのだ。

だが、未来ヶ峰学園は誰でも入学できるわけではない。

特に本科は一部の例外を除いて完全スカウト制で、その条件は二つある。

 

現役の高校生である事。

そしてある分野において超高校級である事。

 

私の名前は腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

【超高校級の警察官】として未来ヶ峰学園にスカウトされて、今日は入学式に参加するはずだった。

…のだけれど、未来ヶ峰学園の正門を通ろうとした瞬間、意識が途切れた…ってとこだったかしら。

 

「…あら?ここは……」

 

椅子に座ったままあたりを見渡してみると、私が座っている座席と同じ収納できるタイプの白い椅子と机が数十個並んでいて、目の前には目の前には教卓と思われる机と巨大なボードが設置されている部屋だと気付く。

未来ヶ峰学園へのスカウトが決まった時、ホームページで下調べをしたけど、教室の造りはほとんど同じみたいね。

…という事は、ここは未来ヶ峰学園なのかしら?

ボードに『入学おめでとうございます』って書かれてるし…

でも、窓のシャッターが全部閉まっているのが気になるわね。

 

「ねえ!無視せんでよ!」

 

「あら、ごめんなさい。何が何だかわからないものだから、つい考え込んじゃって…」

 

本当、気になる事があると考え込んでしまう癖は治した方がいいわね…

 

「キミ、未来ヶ峰学園にスカウトされたっちゃんね?」

 

「え、ええそうよ」

 

「うちもばい!うちは【超高校級の幸運】、聲伽(こえとぎ)(まな)!よろしゅうな!」

 

【超高校級の幸運】…

全国の平均的な高校生の中から抽選で一人選ばれるっていう、完全スカウト制の本科における唯一の例外…だったわよね。

今年は彼女が選ばれたのね。

それにしても、彼女の口調…確か博多弁だったかしら。

何というかその、こういう状況で思う事じゃないとは思うけど…可愛いわね。

 

「キミは?」

 

「私は腐和緋色。【超高校級の警察官】よ」

 

「警察官?やっぱり!おまわりさんの制服着とーもんね!」

 

やっぱり最初にそこ食いつくのね。

確かに私は女性警察官の制服を着ているから、見た目で才能が分かりやすいのかもしれないわね。

 

「キミが一緒やったらばり心強か!いきなりバトロワとか始まったっちゃキミがおりゃ大丈夫やね!」

 

「縁起でもない事言わないでちょうだい…」

 

いきなり物騒な事言うわねこの子…

…というか、バトルロワイヤルなんて大昔の作品、よく知ってるわね。

 

「そもそも何か始まるって言ったって、ここには二人しかいないじゃないの」

 

「え?他にも人おるけん言いよーっちゃけど?」

 

「え?」

 

「あのね、他にも新入生がおるっちゃけどね、皆もう体育館に集まっとーったい!一人だけ来とらんかったけん、皆で探しよったところなんよ」

 

「は!!?」

 

ちょっと待ってよ、他の皆はもう集まってるの!?

初耳なんだけど!?

…って事は私、一人だけ大遅刻じゃないのよ!

 

「ちょっと、そんな大事な事どうして早く言わないのよ!?」

 

「あっ、ごめんたい!!すっかり忘れとった!!」

 

そんな大事な事忘れるって…

さっきから思ってたけど、この子ちょっと天然入ってるのかしら。

まあ起こされるまでずっと寝てた私にも非があるんだけど…

 

「…まあいいわ、とりあえず教えてくれてありがとう。とにかく急ぎましょう、聲伽さん」

 

「マナでよかたい!」

 

「え、ええ、行きましょうマナ」

 

私が聲伽さ…マナと一緒に体育館に行こうとした、その時だった。

 

 

 

『生体認証完了。出席番号14、腐和緋色』

 

「きゃ!?な、何!?」

 

突然右手の人差し指が震える感触がして、私は情けない声を上げてしまった。

それを見ていたマナに笑われてしまった。

恥ずかしい…

 

「あはは、それ最初は皆たまがるっちゃね。右手ば見てごらん?」

 

マナに言われた通り右手を見ると、見覚えの無い指輪がはめられていた。

白くて無機質なデザインで、側面にボタンのようなものがついている。

 

「何これ…?指輪?」

 

「それ新型ん生徒手帳らしいばい。最近ん技術ん進歩はすごかね。うちゃようわからんや」

 

生徒手帳…?

これが?

最近新しいデバイスが新発売されたって聞いたけど、それと似たようなものかしら…

 

「あのね、ここにゃうちとキミ含めて16人ん新入生がおるったいって!」

 

「そうなの?」

 

「うん!ばり個性的な人がいっぱいおるっちゃん!」

 

「あなたも十分個性的だと思うけど…」

 

キャッキャとはしゃいでいるマナにツッコミを入れつつ、私達は教室を出て体育館に向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

教室を出た私達は、皆が集まっているという体育館に向かった。

体育館の扉を開けると、未来ヶ峰らしく、4千平米はある巨大な施設の中にほぼ全ての屋内スポーツに対応した設備が並んでいた。

そしてその中には、私達以外の14人の男女がいた。

彼等の自己紹介を受けていた、その時だった。

 

 

 

『あー!!あー!!マイクテス!!マイクテスッ!!全員いるよね?オマエラ、大変長らくお待たせしました!!』

 

突然、体育館のスピーカーから気持ちの悪いダミ声が聞こえてきた。

すると今度は、やかましい男の声が聴こえてくる。

 

『ギャハハハハハハハ!!!グッモーニン!!レディースアーンドジェントルメェェェン!!!これより、未来ヶ峰学園のォォォウ!!入学式を執り行っていくぜェェェ!!!アァユゥゥレディィィィィ!!?YEAHHHHHHHH!!!』

 

正面の方から聞こえてきた声を頼りに、全員が正面を見る。

するとそこからは……

 

 

 

『イヤッフゥゥゥゥイ!!!おはようございます、オマエラ!』

 

『FUUUUUUUUUUUUUUUUNK!!!!待たせたなァ!!ゴミクズ共ォォォ!!!今年度の入学式はァァ!!学園長のモノクマとこのオレ、未来ヶ峰のカリスマDJ!!未来ヶ峰学園理事長のモノDJでお送りするゼイェア!!』

 

かつて世界を混沌に陥れた、絶望の象徴が現れた。

身体が白と黒のツートンカラーに分かれた熊のマスコット、モノクマだ。

そしてもう一匹、モノDJと名乗るモノクマの倍以上の大きさのツートンカラーのメタボグマが現れた。

 

『じゃあ自己紹介が済んだ事だし!早速本題に入るゼェ!!早速だがリスナー諸君にゃア、この未来ヶ峰学園で共同生活をしてもらうぜ!!その期限はァ、ナッッッシング!!リスナー諸君は、ルールを守って仲良く暮らすように!!もちろん、外に出たいリスナーの為に特別ルールを設けてあるから安心してクソして寝な!!オレ達未来ヶ峰学園が欲している生徒は、ルールを守れる奴だけ!そうじゃねえ奴はぶっちゃけクソだから出てって貰うぜ!!この学園のルールを破る方法はただ一つ!!

 

 

 

 

 

 

 

人を殺す事だ』

 

「!?」

 

『殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺射殺絞殺溺殺惨殺電殺呪殺毒殺爆殺扼殺凍殺轢殺病殺磔殺禁殺…手段は一切問いません!とにかく、誰かを殺せばここから出られるよー!』

 

『だがもちろん、殺せばそれでOKってわけじゃあねえぜ!!それじゃゲームにならねえからな!!もしコロシアイが起こったら、テメェらにはその犯人を見つける為の『学級裁判』に参加してもらうZE!!』

 

『『学級裁判』では誰がクロ、すなわち殺人犯かを議論してもらいます!その議論によって導きだされた人物が正しいクロであれば、クロだけがオシオキ、即ち処刑されます!そして共同生活は、残りのメンバーで続行となります!逆に間違った人物をクロだと指摘しまうと…クロ以外の全員がオシオキされ残ったクロのみが『卒業』、すなわちこの未来ヶ峰学園から出る権利が与えられるのです!以上が、学級裁判のルールとなります!』

 

『それではオマエラ、良い絶望を!スィーユーアディオス!!』

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その後、私達は『これから宴会をやるから』とか何とか言われてモノDJに体育館から追い出された。

体育館には…もう戻れないわね。

仕方ない、自分の部屋に行こう。

私はとりあえず、自分の部屋に行く事にした。

個室のを開けると、私の部屋の中が荒らされていた。

 

「!?」

 

私は、恐る恐る部屋の中に入る。

部屋には争った形跡がある。

誰かがここで争った、って事よね?

一体誰が…

 

「!」

 

私は、バスルームに人影が映っているのを見つけた。

私は、恐る恐るバスルームの扉を開ける。

するとそこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

包丁を腹部に刺され、壁にもたれかかった状態で、【超高校級の音楽プロデューサー】秋山楽斗が息絶えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ………!?」

 

私が秋山君の遺体に驚いて思わず退いた、次の瞬間だった。

突然、モニターにモノクマの顔が映る。

 

『うぷぷぷ!死体が発見されました!これより、学級裁判の開催を宣言します!アナウンス放送後は、一定時間の捜査時間が設けられます!その後、全員参加の学級裁判が執り行われます!捜査時間中は、開放されているエリアを全て調べる事ができます!』

 

『テメェらには、被害者の死体状況をまとめた『モノクマファイル』をプレゼントするぜ!!裁判の時に是非とも役立ててくれよなァ!!んじゃあ裁判でまた会おうぜ!!スィーユー!!!』

 

『しーゆー!!』

 

こうして、学級裁判の為の捜査時間が始まった。

さてと…捜査を進めていかないとね。

 

 

 

ーーー

 

 

 

《捜査開始!》

 

 

 

まずはモノクマファイルを確認しておこう。

 

モノクマファイル①

被害者は【超高校級の音楽プロデューサー】秋山楽斗。

死亡推定時刻は23時頃。

死体発見場所は寄宿舎1Fの腐和緋色の個室のシャワールーム。

死因は失血死。

腹部に包丁を刺されている。

また、右腕を骨折している。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【モノクマファイル①】

 

 

 

私がモノクマファイルを調べていると、小鳥遊さんが検視結果を報告してくる。

 

「………ん」

 

“秋山君の右腕の怪我ですが、長い棒ようなもので殴られたと思われます”

 

 

 

コトダマゲット!

 

【小鳥遊さんの検視結果】

秋山君の右腕は長い棒のようなもので殴られたと思われる。

 

 

 

「さて…と。部屋の方も調べてみましょう」

 

…あら?

模擬刀が外に出てるわね。

昨日体育館前ホールから持ち出して護身用にベッドの下に仕込んだのだけれど、誰かが動かしたのかしら?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【模擬刀】

床に落ちていた。

私が昨晩護身用に体育館前ホールから持ち出してベッドの下に隠しておいた。

 

 

 

「あら…?」

 

やたら部屋が荒らされてるわね。

誰かが荒らしたのかしら?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【争った形跡】

部屋の中が荒らされている。

 

 

 

「加賀君、何かわかった事は?」

 

「うむ、ゴミ箱にこんな物が捨てられていた」

 

そう言って加賀君は、ゴミ箱からウェットティッシュを拾い上げた。

あれ…?

金のようなものがついているわね。

 

「どうやら、ティッシュについているのは金メッキのようだ」

 

金メッキ、か…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ウェットティッシュ】

ゴミ箱に捨てられていた。

加賀君曰く、金メッキと血がついているらしい。

 

 

 

さて…と。

次は包丁を調べてみましょう。

…あら?

包丁が一本なくなってるわね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【厨房の包丁】

いつの間にか一本なくなっていた。

 

 

 

「玉越さん、あなたは何かわかった?」

 

「あたしは食堂の利用状況をまとめておいたよ。昨日の夕飯の時、満とあたしと歌音と楽斗の4人で夕飯を作ったんだ。あたしらが歌音に料理を教えてやってたんだよ」

 

「その時に何か無くなってたものはなかった?」

 

「……あっ、そういえば出る時包丁が一本減ってたな」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【玉越さんの証言】

昨日は食峰君、秋山君、玉越さん、響さんの4人で夕食を作った。

厨房を出る時に包丁が一本減っていたらしい。

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『えー、もう待ちくたびれたので捜査時間を打ち切らせていただきます!オマエラ、校舎1階の赤い扉の前まで集合して下さい!あ、もちろん全員参加だからね?15分以内に来ないとオシオキしますよー!』

 

仕方ない、行こう。

私は、覚悟を決めて赤い扉の前に向かった。 

 

 

 

ーーー 赤い扉の前 ーーー

 

私達は、すぐに赤い扉に向かった。

私達が全員集まると、その直後アナウンスからちょうど15分になった。

すると赤い扉が開き、私はエレベーターに乗り込んだ。

全員がエレベーターに乗り込むと、扉が閉まり下へ移動した。

 

エレベーターは静かに下へ下へと降りていき…そして、止まった。

闇内君と加賀君の間の席には、ト音記号が書かれた秋山君の遺影が置かれていた。

そして始まる。

命懸けの学級裁判が…!

 

 

 


 

コトダマリスト

 

【モノクマファイル①】

被害者は【超高校級の音楽プロデューサー】秋山楽斗。

死亡推定時刻は23時頃。

死体発見場所は寄宿舎1Fの腐和緋色の個室のシャワールーム。

死因は失血死。

腹部に包丁を刺されている。

また、右腕を骨折している。

 

【小鳥遊さんの検視結果】

秋山君の右腕は長い棒のようなもので殴られたと思われる。

 

【模擬刀】

床に落ちていた。

私が昨晩護身用に体育館前ホールから持ち出してベッドの下に隠しておいた。

 

【争った形跡】

部屋の中が荒らされている。

 

【ウェットティッシュ】

ゴミ箱に捨てられていた。

加賀君曰く、金メッキがついているらしい。

 

【厨房の包丁】

いつの間にか一本なくなっていた。

 

【玉越さんの証言】

昨日は食峰君、秋山君、玉越さん、響さんの4人で夕食を作った。

厨房を出る時に包丁が一本減っていたらしい。

 


 

 

 

『ヘイヘイヘーイ!!!全員席についたなァ!!!』

 

『それでは、始めましょうか!お待ちかねの学級裁判を!』

 

 

 

《学級裁判 開廷!》

 

 

 

モノクマ『ではまず裁判の簡単な説明をしておきましょう。学級裁判では『仲間を殺した犯人は誰か』について議論をし、その結果はオマエラの投票によって決まります!』

 

モノDJ『もし正解ならクロのみがオシオキ!!不正解ならクロのみが『卒業』、それ以外の全員がオシオキだぜYEAH!!!!』

 

聲伽「うーん、まずは何ば話し合う?」

 

玉越「とりあえずさ、死体発見現場の状況について話し合うのがセオリーじゃない?」

 

腐和「そうね」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

越目「わかったぞ!!被害者は()()だ!!」

 

玉越「流石にそれくらい誰だってわかるよ…」

 

知崎「きゃはは、粧太おにいのばーか!」

 

ネロ「殺人が起きたのは、《Miss腐和の部屋》だったな?」

 

加賀「正確にはそのシャワールームだな」

 

聖蘭「秋山様は、腐和様のシャワールームにいらして…それで《抵抗できずに》殺されてしまったのですね…」

 

ちょっと待って、今の発言はおかしいわ!

 

 

 

《抵抗できずに》⬅︎【争った形跡】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「聖蘭さん、それは違うと思うわよ」

 

聖蘭「え…そうなのですか?」

 

腐和「私の部屋には、争った形跡があったの。きっと部屋では争いがあったのよ」

 

古城「ウヌの城内で戦があったのじゃな!?誰と誰の乱だったのじゃ!?」

 

腐和「えっと…」

 

 

 

部屋の中で争っていたのは誰と誰?

 

1.秋山と犯人

2.秋山とモノクマ

3.腐和と聲伽

 

➡︎1.秋山と犯人

 

 

 

腐和「わかったわ!!」

 

聲伽「ホント!?」

 

腐和「ええ。私の部屋で争っていたのは、恐らく秋山君と犯人よ。秋山君は、部屋で争った後、犯人に殺されそうになったからシャワールームに逃げたんじゃないかしら?」

 

聲伽「女子んシャワールームだけ鍵がかけらるーもんね。逃げ場としてはうってつけやったんやなかかな」

 

響「で?凶器は何なんだよ」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

聲伽「凶器って、《秋山くんのお腹に刺しゃっとった刃物》だよね?」

 

食峰「そっか、それが《凶器》か!!」

 

館井「……それくらい見ればわかるだろう」

 

玉越「凶器か…確か《包丁》だったよね?」

 

あの人の意見に賛成したいわね。

 

 

 

《包丁》⬅︎【厨房の包丁】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「凶器は厨房の包丁だと思うわ。厨房から包丁が一本なくなっていたの」

 

目野「あびゃああ!?何ですってぇ!?」

 

闇内「包丁で一突き、か…酷いでござるな」

 

聲伽「それもそうだけどしゃ、それともう一つ気になる事があるんやなかかな?」

 

玉越「え?」

 

聲伽「ほら、秋山くんの腕ば折った凶器だよ。そっちは何やったんやろうか?」

 

腐和「そうね…じゃあ次は秋山君の腕を折った凶器について話し合いましょう」

 

知崎「んー、ねえ緋色ちゃん。何か凶器についてのヒントとか無いの?」

 

ヒント…

あれが手掛かりになるかしら。

 

 

 

コトダマ提示!

 

【小鳥遊さんの検視結果】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「小鳥遊さんの検視結果がヒントになるんじゃないかしら?」

 

小鳥遊「ん……」

 

小鳥遊 “秋山君は、長い棒状のもので腕を殴られたものと思われます”

 

館井「長い棒状のもの…何だったのだろうな」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

目野「《鉄パイプ》じゃないですかね!!」

 

小鳥遊 “そもそも形状が違うんですが…”

 

闇内「逆に考えて《保健室の大人のオモチャ》という可能性は?」

 

聖蘭「穢らわしい…真面目に議論に参加して下さい」

 

館井「《角材》…とかではないのか?」

 

ネロ「そんなもん、ここには無かったぜ」

 

加賀「《模擬刀》は?重さもサイズも凶器として十分だと思うが」

 

あの人の意見に賛成したいわね…

 

 

 

《模擬刀》⬅︎【模擬刀】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「凶器は模擬刀だと思うわ」

 

古城「もっ、模擬刀じゃとぉ!?」

 

腐和「ええ。実は私、昨日護身用に模擬刀を持ち出してベッドの下に隠しておいたの。犯人はそれで秋山君の腕を殴って折ったんじゃないかしら?」

 

聖蘭「物騒ですわね……」

 

腐和「模擬刀が凶器だという根拠はあるわ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【ウェットティッシュ】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「ウェットティッシュよ。ウェットティッシュに金のメッキがついていたの。あの金のメッキは、多分模擬刀の金メッキが剥がれたのよ。犯人は、秋山君を殴った後で、手に金メッキがついてしまった事に気がついて自分の手をウェットティッシュで拭いたんじゃないかしら?」

 

闇内「そうだったのでござるか…」

 

腐和「だからね、私達はどうして犯人が秋山君を模擬刀で殴ったのかを考えればいいんじゃないかしら?」

 

 

 

玉越「その言葉、打ち返すよ!」

 

《反 論》

 

 

 

玉越「ごめんよ、ちょっと反論させてもらっていいかい?」

 

腐和「玉越さん、私の推理のどこが間違ってるのかしら?」

 

玉越「そのウェットティッシュが証拠になるとは限らないんじゃないかって事さ。攻めるとこはとことん攻めさせてもらうよ!」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

玉越「ウェットティッシュがゴミ箱に捨てられていたからと言って、それが犯人が模擬刀を使ったっていう証拠にはならないんじゃないか?」

 

腐和「でも、ゴミ箱にはティッシュが捨てられていたわけだし…私はあんなもの捨てた覚え無いわよ?」

 

玉越「楽斗が捨てたって可能性もあるだろ?たまたま緋色の部屋の模擬刀を見つけて、それを触ってたら手が汚れちゃったんじゃない?」

 

腐和「じゃあ、犯人はどうやって汚れを落としたっていうの?」

 

玉越「ウェットティッシュを使わずに汚れを落としたって可能性を考えるんだよ。ほら、人間誰だって、《手が汚れたら水で洗い流す》だろ?つまり、そういう事なんじゃない?」

 

いいえ、それはあり得ないわ…!

 

《手が汚れたら水で洗い流す》⬅︎【モノクマファイル①】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「それは無いと思うわ。だって秋山君は、夜の11時…つまり夜時間中に殺されているのよ?水が出ない夜時間中に手を洗えたわけがないわ」

 

玉越「あっ……」

 

響「で、結局犯人は誰なんだよ?」

 

古城「そんなの決まっておるじゃろ!!腐和じゃ!!」

 

腐和「え…?」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

古城「腐和が犯人に決まっておるじゃろうが!!秋山は《腐和の部屋で殺されとった》のじゃぞ!?」

 

聲伽「緋色ちゃんがそげん事するわけなか!」

 

目野「それはどうでしょうね。本当は、《厨房の包丁を持ち出して》、その包丁で秋山さんをグサッと殺ったんじゃないですか?」

 

闇内「えげつないでござるな……」

 

ネロ「でもまあ確かに、Miss腐和なら《模擬刀の場所を知ってる》わけだしな」

 

ちょっと待って、今おかしい発言があったわよね…?

 

《厨房の包丁を持ち出して》⬅︎【玉越さんの証言】

 

 

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「私には、厨房の包丁を持ち出せないわ」

 

目野「どうしてそう言い切れるんです!?」

 

腐和「昨日の夕食の時、厨房にいたのは食峰君、秋山君、玉越さん、響さんだけだったのよ?包丁は、玉越さんが厨房の最終チェックをした時になくなっていたの。私が持ち出せるわけがないでしょう?」

 

響「ああ、それはオレも確認してるぜ」

 

目野「そうだとしてもですよ!!アナタが秋山さんを殺したとしか考えられないんですよ!!」

 

ネロ「同感だな。もう投票に移ってもいいんじゃねえか?」

 

玉越「ちょっと待って、投票はまだ早いよ!」

 

聲伽「緋色ちゃんは犯人やなか!!」

 

腐和「どうしよう…意見が分かれちゃったわね」

 

 

 

モノDJ『ヘイYOU!!聞いたかブラザー!!今意見が分かれたっつったのか!?』

 

モノクマ『うぷぷ、そんな時はボクらの出番ですね!オマエラ、どっちが正しいのかボクみたいに白黒ハッキリさせちゃいたいでしょ?ここは一つ、変形裁判所の出番ですな!』

 

モノクマ『それでは早速始めましょう!レッツ変形!!』

 

 

 

《意見対立》

 

 

 

【腐和緋色は犯人か?】

 

犯人だ! 古城、越目、館井、知崎、ネロ、目野、闇内

 

犯人じゃない! 加賀、聲伽、食峰、聖蘭、小鳥遊、玉越、響、腐和

 

 

 

ー議論スクラム開始ー

 

目野「いい加減認めましょうよ!腐和さんが《秋山さん》を刺したとしか考えられないでしょう!?」

 

「聖蘭さん!」

 

聖蘭「腐和様が《秋山様》を刺すような方には思えませんわ」

 

古城「秋山は《腐和の個室》で見つかったんじゃぞ!?犯人は腐和で決まりじゃ!!」

 

「加賀君!」

 

加賀「《腐和の個室》で殺されたからといって、腐和が犯人だとは限らないんじゃないか?」

 

館井「だが…そうだとすると、《犯人》はどうやって腐和の部屋に侵入したというのだ?」

 

「小鳥遊さん!」

 

小鳥遊 “何者かが腐和さんを誘導して部屋の外に追い出して、その隙に《犯人》が部屋の中に入ったんだと思います”

 

ネロ「だったら《シャワールーム》は?鍵付きのシャワールームにどうやって入ったんだよ」

 

「マナ!」

 

聲伽「犯人は、《シャワールーム》ば開ける方法ば知っとったんやなかかな?」

 

越目「えっ、オレよくわかんねんだけど…腐和ちゃんが《厨房》から包丁を持ち出したんじゃねえの?」

 

「玉越さん!」

 

玉越「緋色は《厨房》に入ってないんだから包丁は持ち出せなかったはずだよ」

 

闇内「《包丁》は、本当に夕食を作っている時になくなっていたのでござるか?」

 

「食峰君!」

 

食峰「そうだよ!《包丁》はそん時無くなってたぜ!」

 

知崎「どうせ満ちゃんか翼ちゃんか歌音ちゃんが《嘘》ついてるんじゃないのー?」

 

「響さん!」

 

響「オレが《嘘》をつくメリットがどこにあるっつーんだよ!?」

 

目野「でももう《議論》の余地は無いじゃないですか!」

 

「私が!」

 

腐和「《議論》の余地ならまだあるわ!」

 

 

 

《全論破》

 

腐和「これが私達の答えよ!」

 

加賀「これが俺達の答えだ」

 

聲伽「これがうちらの答えだよ!」

 

食峰「これがオレ達の答えだぜ!!」

 

聖蘭「これが私達の答えですわ!」

 

小鳥遊「………ん」

 

玉越「これがあたしらの答えだよ!」

 

響「これがオレらの答えだぜ!」

 

 

 

 

腐和「皆。もう少し議論を続けてみてもいいんじゃないかしら?」

 

目野「そうやって疑惑を逸らそうったってそうはいきませんよ!」

 

腐和「そうね…じゃあ、ちょっと視点を変えて考えてみましょう。包丁を持ち出したのは、一体誰だったのかしら?」

 

考えろ…

考えれば、答えがわかるはずよ…!

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

ア キ ヤ

 

 

 

 

モノクマ『ちょっと待って!そこまでだよ。それ以上はさせないよ。だって、だって…だって、これって『体験版』なんだもん!!』

 

モノDJ『ギャハハハ!!どうしても気になるようなら、本編をプレイしてみな!スィーユーアディオス!!』

 

 

 

 

 



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Chapter.1 コロシアイに出会いを求めるのは間違っているだろうか
(非)日常編①


「ん………」

 

目を覚ますと、見覚えのない部屋にいた。

そうだ。

私は確か、知崎君を庇って…

誰かが運んでくれたのかしら…?

後でちゃんとお礼を言わなきゃね。

 

この部屋は…まるで高級ホテルの一室ね。

部屋は完全防音になっていて、部屋の中の音が隣の部屋に漏れないようになっているらしい。

部屋にはバスルームやトイレ、簡易式のキッチンも完備されていた。

 

大画面のテレビがあったけど、モノDJのラジオ番組か、モノクマとモノDJが登場人物の魔法少女アニメくらいしかやってなかった。

…こんな茶番番組をわざわざ作るとか、こいつら他にやる事無いのかしら。

 

クローゼットには私の制服と私服が一式入っていて、備え付けのドレッサーには最低限の道具が入っている。

さらにはご丁寧な事に、私のお気に入りの歯磨き粉と歯ブラシ、シャンプー類が完備してあった。

 

…なんというか、流石は最高峰って感じね。

でもここまで私の好みのものが揃ってると、逆に不気味ね。

特に私のお気に入りの紅茶のブランドなんて、どうやって調べたのかしら。

 

一応ベッドの横のデスクの引き出しも調べてみると、中には裁縫セットが入っていた。

裁縫セットの中は…針に裁ち鋏、あと糸を通すやつ、『スレダー』だったかしら…?それも入っていた。

それだけじゃなく、一枚の紙も入っていた。

 

「?」

 

紙切れを広げて読んでみると、これまた汚い文字が書かれていた。

一緒に描かれているモノDJとモノクマのイラストが不快極まりないわね。

 

 

 

『モノDJ 理事長&モノクマ学園長からのお知らせ

部屋の鍵は、生徒手帳をリーダーに翳すと開閉できるようになっております。生徒手帳を紛失・破壊してしまうと部屋の施錠・解錠が不可能となってしまいますのでご注意下さい。

また、女子の部屋のみ、シャワールームが施錠できるようになっています。

部屋には、バスルームとトイレが完備されていますが、夜時間は水が出ないので注意してください。

最後に、ささやかなプレゼントを用意してあります。女子には裁縫セットを、男子には工具セットをご用意しました。

裁縫セットには人体急所マップもついているので、女子のみなさんは、針で一突きするのが効果的です。

男子の工具セットを使用する場合は、頭部への殴打が有効かと思われます。』

 

 

 

「はあ……」

 

もうここまで悪趣味だと、怒りを通り越して悲しくなってくるわ。

私は、裁縫セットに入っていた紙を折り畳んでゴミ箱に捨てた。

 

そういえば、他の皆はどうしてるのかしら。

体育館で急に眠気に襲われたから、あれからどうなったのか全然把握できてないのよね。

皆に心配かけたでしょうし、そろそろ一声かけにいかないと。

 

私が外に出ると、外には玉越さんが立っていた。

玉越さんは、私の方を見てポカンとしていた。

 

「えっ、嘘!?もう起きたの!?」

 

…?

どういう事?

 

「あ、ごめん。由には回復の為に強めの睡眠導入剤を打ったから半日は目を覚まさないって聞いてたのに、思ったより目を覚ますの早かったから…」

 

睡眠導入剤…

ああ、それで急に眠気に襲われたのね。

 

「それよりもう動いて大丈夫なのかい?」

 

「…ええ。おかげさまで。もう傷口も痛まないし、このくらいなら動けるわ」

 

起きた時には傷の痛みもないし、傷口ももうほとんど塞がっていた。

小鳥遊さんと加賀君には後でお礼を言わなきゃね。

 

「それより他の皆は?」

 

「ああ、今は皆で開放中の施設を探索してたんだ。あ、そうそう。あたしらが今いるのは寄宿舎で、今開放中なのは校舎の一階、寄宿舎、研究棟だったよ」

 

「そうなのね。教えてくれてありがとう」

 

「困った時はお互い様だろ?いつでも気軽に声かけてよ」

 

「ありがとう。じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかしら」

 

「それでさ、今ちょうど12時なんだけど、今から皆で食堂に集まって報告会するとこだったんだよ。今から一緒に行かないかい?」

 

「ええ、そうね。皆には心配かけちゃったし、顔を出さないと」

 

私は、玉越さんに案内されるまま寄宿舎の食堂に向かった。

それにしても、この子本当にイケメンだわ。

きっとこのリーダーシップは、リーダーとしてチームを引っ張ってきた経験から培われているのでしょうね。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

食堂には、既に他のメンバーが集まっていた。

私が食堂に入ると、真っ先にマナが駆け寄ってくる。

 

「あ!緋色ちゃん!怪我はもう大丈夫と!?」

 

「ええ、おかげさまで。皆、助けてくれてありがとう」

 

私は、皆に頭を下げてお礼を言った。

まだ会ってから数時間しか経っていないのにここまでしてもらって、感謝してもし切れないわ。

 

「気にしなくていいよ。それより、思ったより元気そうで良かった」

 

「ん」

 

秋山君がニコッと笑って言うと、小鳥遊さんも頷いた。

その時、いきなり知崎君が飛び出してくる。

 

「緋色ちゃん!!ホント無事で良かったよ〜!!ボク、緋色ちゃんが死んじゃったらどうしようかと…!」

 

知崎君は、わざとらしく泣きながら私に抱きついてきた。

あんな事をしでかしておいてこの図太さ、ある意味尊敬するわ…

 

「とりあえず全員集まった事だし、情報共有しないとね」

 

「待って、その前に腐和さんにアレを説明してあげるべきじゃないかな」

 

アレ…?

私がキョトンとしていると、秋山君が説明をしてくれた。

 

「実はあの後またあの体たらく二匹が現れて、俺達に校則とやらを説明していったんだ」

 

「校則?」

 

「生徒手帳のスイッチを押して空中にかざしてごらん」

 

秋山君に言われるがまま、私は手を空中に翳した。

すると、ブンッと音を立てて空中に画面が浮かび上がった。

表示された画面には、一世代前の携帯電話みたいにアイコンがいくつか並んでいて、その中の一つに『校則』と表示されていた。

校則のアイコンをタップすると、校則が画面に表示される。

 

 

 

《未来ヶ峰学園校則》

 

ー、生徒の皆さんはこの学園だけで共同生活を送りましょう。共同生活の期限はありません。

 

二、夜10時から朝7時までを夜時間とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。

 

三、未来ヶ峰学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。

 

四、理事長ことモノDJと、学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。監視カメラの破壊を禁じます。

 

五、殺人事件が発生した場合、一定の捜査時間の後、全員参加の学級裁判が行われます。

 

六、学級裁判で正しいクロを指摘できた場合、クロだけがオシオキされ、残りのメンバーで共同生活続行となります。

 

七、クロの指摘に失敗した場合、クロ以外の全員がオシオキされ、クロのみ『卒業』する事ができます。

 

八、シロが勝ち続けた場合、最後の二人になった時点でコロシアイ生活は終了となり、残った二人は『卒業』する事ができます。

 

九、モノDJ及びモノクマが殺人に関与する事はありません。

 

十、校則は順次増えていく場合があります。

 

十一、男子は男湯、女子は女湯にしか入れません。

 

 

 

…なるほどね。

大体わかったわ。

校則を破ったら殺されるけど、校則の自由度は思ったより高いわね。

校則は一通り見た事だし、マップを確認しようかしら。

 

マップを見る限り、開放されているのは、

寄宿舎は16人分の個室、ラウンジ、大浴場、ランドリー、食堂、トラッシュルーム。

校舎には教室が三つ、視聴覚室、保健室、体育館、体育館前ホール、ロッカールーム、購買部、玄関ホール、謎の赤い扉。

研究棟は秋山君、古城さん、玉越さん、響さんの研究室。

 

行ける施設はこれだけしかないのね。

せめて図書室とかは行けるようにしてほしかったわ…

…あら?

保健室が開いてるなら、私を保健室で処置する事もできたはずよね?

なのにどうして皆はわざわざ私を部屋に運び込んだのかしら。

 

「どうかしたのかい?」

 

「ああ、いや…今更だけど、本当にゲーム感覚でコロシアイをさせる気なのね」

 

「みたいだね。それじゃあ、腐和さんも校則とマップを確認した事だし、早速情報共有をしようか」

 

秋山君が言うと、早速越目君が手を挙げる。

 

「じゃあまずオレちゃんからいい?寄宿舎には個室が全員分あったぜ!」

 

「越目くん、それは調べんだっちゃ生徒手帳んマップ見りゃあわかるんやなか?」

 

「要するに何も収穫がなかったって事かよカス」

 

「うっ!!」

 

「ちょっと歌音」

 

越目君が自信満々に言ったけど、マナと響さんにツッコまれて悔しそうに黙った。

響さんは、言葉の粗さが目立ったせいか秋山君に注意されていた。

 

「そ、そう言う響ちゃんは何かわかったのかよ!?」

 

「寄宿舎の至る所に監視カメラがあった。あと、個室は完全防音っぽい。それから、個室の鍵を開けられるのは個室に対応した指輪だけらしいぜ。これで満足かよ?」

 

「あと、入ってすぐんところにあるラウンジ、ばりオシャレやったよ!フカフカのソファーとかでっかいテレビとかもついとったし!」

 

「あ、そうそう。寄宿舎の探索ついでで俺はトラッシュルームとランドリーを見たんだけどさ。ランドリーの洗濯機とトラッシュルームの焼却炉は夜時間中動かないらしいから皆気をつけてね」

 

響さんと秋山君が報告をすると、今度は食峰君が手を挙げて報告した。

 

「じゃあ次はオレだな!!食堂にはデッケェ厨房があったぜ!!」

 

「拙者が一応毒味をした故、食堂の食事の安全は保証するでござるよ」

 

「あと学園長曰く、食材は毎日追加されるから餓死の心配はないらしいぜ!!」

 

「あのクマ公共が嘘ついてなきゃの話だがなァ」

 

「やめてそげな事言うん。話が進まなか」

 

食峰君の報告にネロが水を差すと、私が注意をする前にマナが注意をした。

正直、皆ピリピリしてるんだからそういう事言うのはやめてほしいわ。

 

「じゃあ次はうちやな!うちは大浴場ば調べたっちゃけど、ばり広かったばい!まるで銭湯みたいやった!温泉もあるったいって!」

 

「マナ、脱線してないかしら?」

 

「あー、大浴場には生徒手帳がなかと入れんらしいばい。それと夜時間中は立ち入り禁止なんやって」

 

マナが報告そっちのけで大浴場の魅力をつらつらと話したので、思わずツッコミを入れた。

マナは私のツッコミでやっと脱線してる事に気付いたのか、恥ずかしそうに頭を掻きながら報告を続けた。

マナが報告すると、男湯の方を探索していた闇内君が報告する。

 

「脱衣所と風呂場は男女別でござる。モノクマ曰く、男子生徒は男湯、女子生徒は女湯にしか入れぬとか。その掟を破ると、機関銃で蜂の巣にされるでござる。至極無念でござる」

 

「当たり前じゃない。あんたいい加減にしなさいよ」

 

校則がなくても、異性の風呂場に入らないなんて常識じゃないの。

っていうか、わざわざモノクマに言われたって事は闇内君、一度は女湯に入ろうとしたって事よね?

やっぱりこいつ一回シメた方がいいんじゃないかしら。

 

「あ、そうそう!闇内くんで思い出したっちゃけど!」

 

闇内君で思い出したって何よ、マナ。

 

「お風呂場には監視カメラが無かったっちゃん!」

 

「えっ、それ本当?」

 

「うん!」

 

「なるほどね、風呂場だと湯気で見えないから…」

 

「じゃああのクマに見られたくねえ時は風呂場で話せばいいんだな!?」

 

思いもよらぬ大収穫だったわね。

じゃあ今のところ、風呂場だけがあいつらの監視を掻い潜れる唯一の死角って事ね。

マナの情報に皆が表情を明るくしたけど、ネロだけは不機嫌そうにため息をついていた。

 

「はぁ…これだからバカガキは嫌いなんだよ」

 

「ネロ…?」

 

「それはどう考えたって今言う事じゃねえだろ。お前らがこぞって風呂場に集まったらどうなると思う?」

 

「俺も同意見だ。そうなったら、モノクマ達にバレてより高性能な監視カメラか盗聴器が設置される可能性が高い。それだけならまだいいが、今回の情報をもとに誰かが浴場を殺人現場に選ぶ事も考えられる。どのみち、言う相手と場所を考えるべき情報だったな」

 

ネロに続けて、加賀君もマナの証言を非難した。

二人に叱責されたマナは、落ち込んで俯いてしまった。

 

「……ごめんなさい」

 

確かに二人の言う事ももっともだけど、ちょっと言い過ぎじゃないかしら…

そんな事を考えていると、玉越さんが二人を注意した。

 

「二人ともそろそろやめなよ。もう過ぎた事を責めたって仕方ないだろ?愛だって、うちらが情報を欲しがってると思ったから正直に言ってくれたんだしさ」

 

「それに、聲伽さんの報告が必ずしもマイナスだったわけじゃないよ。少なくともこうして情報を共有した事で、誰かが風呂場を殺人現場に選ばないように予防線を張れるじゃないか」

 

「大事な報告も入浴ついでとかにすればいいだけだしね。監視カメラが無いって事を皆で共有できただけでも十分な収穫だと思うわ」

 

玉越さんと秋山君が愛をフォローしたので、私も二人に賛同した。

これで皆少しはお互いの事を信用できるようになってくれたらいいのだけれど…

 

「監視カメラが無いとな…!?という事は覗きし放だ「少なくともこういうバカへの対策はできるようになったわよね」

 

「う、うん…緋色ちゃん容赦なかね」

 

私が闇内君をボコボコにして吊し上げるとマナが引き気味に見てきたけど、変態に情け容赦なんかいらないわ。

汚物は消毒よ。

 

「さて、寄宿舎の報告はこの辺にして…次は校舎の方の探索したうちらだね」

 

玉越さんが言うと、今度は加賀君、ネロ、目野さんの三人が報告をした。

 

「俺達は教室を調べたんだが、1ーA、1ーB、1ーCの三つが開放されていて、どの教室も構造はほとんど同じだった。夜時間中は自動で鍵がかかる仕組みらしい」

 

「学園内の施設で災害とかがあった場合、防災システムが発動するそうだ。それから、窓のシャッターはどうやっても開かなかったぜ」

 

なるほど、何が何でもコロシアイ以外では殺さないって事か。

よっぽど私達にコロシアイをさせたいのね…

 

「はい!!連絡手段は一切合切ナッシングです!残念でした!!」

 

「チッ、連絡手段が無えならいちいち報告すんじゃねえよ」

 

「コラ、やめな。連絡手段が無かったっていうのも十分な情報だよ」

 

目野さんが報告をすると響さんが悪態をついたので、玉越さんが窘めた。

すると今度は館井君、聖蘭さん、古城さんが報告をする。

 

「……校舎内にあった赤い扉だが、いくら調べてもビクともしなかった。以上だ」

 

「ええと…私は視聴覚室を調べたのですが、正面に大画面があるのと、映像を映す機械があるくらいで特におかしなところはありませんでしたわ」

 

「ぬはははは!!次はワシじゃな!よく聞けい愚民共!ワシが歴史的大発見をしてやったぞい!購買部にはな、『モノモノマシーン』なる珍妙な機械が置いてあったのじゃ!何やら学園中に散りばめられた金貨を集めて入れるとな、其奴が卵を産んで中から宝が出てくるというのじゃ!面白いじゃろ!?」

 

「ああ、あの悪趣味なガチャガチャね。まあ皆時間ある時に試してみたらいいよ。次、あたしらいいかい?」

 

古城さんの報告を皆にわかりやすいように言い換えた玉越さんは、次は自分が報告をした。

 

「あたしは由と、あと蓮を連れて保健室を見てたんだけどさ。薬とか包帯とかメスとか、まあ応急処置に必要な道具は一通り揃ってたよ。軽い怪我とか病気とかなら保健室での治療で十分なんじゃないかな」

 

「ん」

 

“中には危険な薬品もあるので使う時は一声掛けてください”

 

玉越さんが言うと、小鳥遊さんも手帳のメモ機能で文字を書いて表示した。

最後は知崎君の番か…

 

「はいはいはーい!あとねえ、ボク保健室でヤバいもの見つけちゃったんだよ〜!ねえねえ何だと思う?不思議不思議〜!」

 

すっごい聞いてくるけど嫌な予感しかしないわね…

 

「あのねあのね、大人のオ、モ…」

 

知崎君が言い終わる前に、玉越さんが知崎君の頭に拳骨を落として黙らせた。

玉越さんがやらなかったら私が黙らせるところだったわ。

 

「うちらからの報告は以上。何か気になる事があったら気軽に声かけなね」

 

玉越さんがミーティングを切り上げると、さっきの知崎君の発言が気になったマナがコソッと私に聞いてくる。

 

「ねえ緋色ちゃん、さっき知崎くん何言おうとしとったと?」

 

「あなたが知らなくていい事よ」

 

純粋なマナがそっち方向に持っていかれるなんてあってはならない事だからね。

というかそんなものまで置いてあるなんて、完全にセクハラじゃないの。

あいつら何考えてんのかしら。

私がそんな事を考えていると、古城さんが突然暴れ出した。

 

「ぬぁーーーもう!!いつまでつまらん話し合いを続ける気じゃ!!ワシャあ腹が減って仕方ないわい!!飯はまだか!?」

 

あ…

そういえばもうお昼時だものね。

 

「確かにもうこんな時間だしね…」

 

「っしゃあ!!ここはオレの出番だな!!とびっきり美味え飯を作ってやるぜ!!」

 

「俺も手伝っていいかな?流石に16人分の食事を一人で料理するのは骨が折れるし非効率だろ?俺も食峰君程じゃないけど料理に自信はあるんだ」

 

秋山君、料理できたのね。

流石、何でもそつなくこなせる人は凄いわ。

 

「秋山くん料理できたんやな!何作るーと?」

 

「うーん、よく作るのはグリーンカレーと麺から作るフォー、あと創作料理とかも趣味でやるよ」

 

すごい本格的ね。

私も見習わなくちゃ。

 

「あたしも手伝っていいかい?弟達の飯は毎日あたしが作ってたし、それなりには作れると思うよ」

 

玉越さんも普段料理する人なのね。

何だろう、すごい二人からイケメンオーラを感じるわ…

 

「そういう事ならどんどん手伝ってくれ!オメェら、アレルギーとかあったらちゃんと言えよ!」

 

「アレルギーというわけではないのですが…宗教上の理由で肉類は避けているので私の食事には入れないでいただけるとありがたいですわ」

 

「わかった、んじゃあマリアの食事には入れねぇでおくわ!他は?」

 

「ボク野菜アレルギーだから野菜全般無理なんだよねぇ」

 

「あ、狡い!じゃあワシも!ワシも実は野菜アレルギーなんじゃ!!そういうわけじゃからワシの食事には野菜を入れんでくれ!頼む!」

 

知崎君と古城さんのは…うん、ただの好き嫌いね。

好き嫌いをアレルギーだと平然と嘘をつかれるのは不愉快だから、ちょっと言ってやろうかしら。

 

「ねえ知崎君、古城さん。あなた達、イチゴやスイカは食べるの?」

 

「うん、ボク甘いものだーいすき!」

 

「当たり前じゃろが!!夏は西瓜じゃ!!」

 

「イチゴやスイカも一応野菜なんだけど。野菜アレルギーのくせにイチゴやスイカは食べていいなんて、おかしな話よね?」

 

「うぐ…!!」

 

「知ってる?野菜を食べない生活を続けていると正常な思考能力が低下するというデータがあるのよ。本当にアレルギーの人は他の食材やサプリメントで代用してきちんと栄養管理するはずなんだけど、あなた達はどうせそんな事してないのよね?高校生にもなって恥ずかしげもなくそんなくだらない嘘で偏食を正当化できるのは、頭に栄養が足りてないからじゃないのかしら?」

 

「う、うぅ……」

 

「あなた達は超高校級でしょ?天才なんでしょ?だったら野菜くらいちゃんと食べられるわよね?まさかとは思うけど、野菜が嫌いだから食べないとか凡人以下の無駄口叩いたりしないわよね?」

 

「「………はい」」

 

ここまで言って、やっと二人ともわかってくれた。

くだらない嘘で誤魔化そうったって、そうはいかないわ。

 

しばらくして、三人が作った食事が運ばれてきた。

中華料理か…しかも結構本格的な料理が並んでいる。

まだ昼間なのに豪華ね。

食峰君が作った油淋鶏と小籠包、秋山君が作ったジャコのチャーハンと杏仁豆腐、玉越さんが作ったキュウリとクラゲの冷菜に玉子とワカメのスープ。

どれも美味しそう。

 

「わーい!美味しそう!いただきまーす!!」

 

「あっ、ちょっと!?」

 

料理がテーブルの上に並べられると、知崎君は皆の分のお皿からちょっとずつ料理を、しかも一番美味しい部分を取って食べてしまった。

 

「んーおいしい!!」

 

「ちょっと、なんて事すんのよ!!汚いから自分の分だけ食べなさいよ!」

 

「毒味だよ毒味!皆の分の料理に本当に毒が入ってないか確かめてあげ…うぐっ!?」

 

私が知崎君の襟首を掴んで注意すると知崎君は悪びれずに笑ったけど、急に胸を押さえて苦しみ出した。

 

「う、うぐ…ぐ、ぐるじい…!」

 

「おい、どうなってんだよこれは!?」

 

「もしや毒でござるか!?」

 

「な、なんじゃとぉ!?」

 

「ぎゃわあああああ!!えっと、えっと、どうすればいいんでしょう!?とりあえず焼却炉に遺体を放り込んだ方がいいですかね!?」

 

「助からん前提で言わんでよ!うち、保健室から薬持ってくる!」

 

知崎君が倒れてもがき苦しむと、越目君、闇内君、古城さん、目野さんが慌てふためいた。

館井君も、声には出さなかったもののかなりオロオロしている。

マナは、知崎君を助ける為に薬を取りに保健室へ走って行こうとした。

 

「知崎は料理を食べてから倒れた…となると……」

 

そう言って館井君が料理を作った三人の方を見ると、響さんが秋山君以外の二人に詰め寄って問い詰めた。

 

「テメェらまさか料理に毒盛ったんじゃねえだろうな!?」

 

「誰がそんな事するか!!毒を盛るなんざ料理への冒涜だ!!」

 

「あたしらは知らないよ!」

 

「おお、神よ…」

 

響さんが問い詰めてるけど、二人とも本当に何も知らないみたいだ。

聖蘭さんは、この惨状を嘆いて祈りを捧げている。

うん。皆が騒いでるとこ申し訳ないけど、これは…

 

「…チッ、これだからガキは嫌いだ」

 

「ああ。全くだ。悪趣味にも程がある」

 

「ね」

 

私以外だと、ネロ、加賀君、小鳥遊さん、秋山君はもう真相にたどり着いているみたいだった。

秋山君は、倒れた知崎君の肩を揺すった。

 

「知崎君。もういい悪ふざけはやめなよ。洒落になんないから」

 

秋山君が知崎君を揺すると、倒れていた知崎君はパチっと目を開けて起き上がった。

そして、ぐぃーっと伸びをして大きなあくびをした。

 

「ふぁ〜あ。よく寝たぁ〜!」

 

知崎君が大きなあくびをすると、古城さんと目野さんが慌てふためく。

 

「ぬぁああああああ!!?い、生き返った!!悪霊じゃ此奴!!悪霊退散!!」

 

「落ち着いてください!知崎さんはきっとゾンビになってしまったのかと!頭部を確実に破壊しましょう!」

 

「オメェがまず落ち着け!」

 

「神よ…」

 

古城さんと目野さんが動揺していると越目君が落ち着けようとしたけど、越目君も十分動揺している。

聖蘭さんは、始終手を組んでお祈りをしていた。

それを見て知崎君が笑ってると、秋山君が知崎君を問い詰める。

 

「知崎君。こんな状況に置かれて皆がピリピリしてるの知ってるよね?」

 

「やだなぁ〜、ちょっとしたサプライズじゃない!皆がピリピリしてるからこそ、こうやってちょっとガス抜きをだね…」

 

知崎君のその発言に、自分の中で何かがプツンと切れた。

他の皆も言いたい事はあるだろうけど、ここからは私に任せてもらおう。

私は、両手でガシッと知崎君の顔面を掴むと、真正面から微笑んで言葉をかける。

 

「えっ、何?」

 

「知崎君。この共同生活では、皆の信頼が何よりも大事だってわかるわよね?今のサプライズで誰かがトラウマになって信頼が崩れたら、あなたはどうするつもりだったのかしら?」

 

「どうするって…え、だってちょっとした冗談…」

 

「どういうつもりでやったかを聞いてるんじゃないの。皆の信頼を傷つけた事に対してどう落とし前つけんのかって聞いてんのよ。ねえ」

 

私が知崎君を至近距離で睨みながら言うと、知崎君はだんだんとしどろもどろになる。

もうここまできたらあと一押しね。

 

「あなたはもう高校生なんだから、こういう時の謝り方くらいわかってるわよね?」

 

私がそう言うと、知崎君は皆に土下座をした。

 

「………ごめんなさい」

 

「わかってもらえたみたいで嬉しいわ。冷めちゃうから早く食べましょ」

 

「う、うん…」

 

「さすが極道の娘…怖え…」

 

私が立ち上がって皆に笑顔を向けると、マナが引き攣った表情を浮かべながら頷いた。

越目君が何か言ってるような気もしなくもないけど、気のせいかしら。

これで少しは軽率な行動をする人がいなくなるといいんだけど。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

こうして私達は最初の食事をする事になったのだけれど、これがもうとても美味しかった。

 

「んめぇー!!」

 

「うむ、美味でござる」

 

「おお、そっか!!」

 

「気に入ってくれたみたいでよかったよ」

 

越目君と闇内君が美味しそうに食事を食べると、三人とも喜んでいた。

 

「これうまかね、緋色ちゃん!」

 

「そうね」

 

「ったりめーだろが。楽斗が作ったンだからよ」

 

「え?」

 

「何でもねーよクソ!」

 

今、響さんの態度が急に変わった気がするんだけど。

響さん、もしかして秋山君の事…

 

「普通に食事をするなんて数年ぶりだな」

 

「たまには普通の食事もいいですねぇ!」

 

「……悪くねえ」

 

加賀君、目野さん、ネロの三人も食峰君達の食事を気に入ったみたい。

 

「美味い……」

 

「ね」

 

館井君も、ほとんど表情には出さなかったけど料理の味に感動していた。

小鳥遊さんも、わかりづらいけどマフラーの中で口がもぐもぐ動いていた。

 

「とてもおいしいですわ。私の希望にお応え頂きありがとうございます。食峰様、秋山様、玉越様」

 

菜食を希望していた聖蘭さんも、食峰君達が作った食事の味に満足していたみたいだ。

でもそんな中で、約二名が行儀の悪い事をしていた。

 

「あっ、知崎テメェ!今オレの肉奪ったろ!」

 

「ボーッとしてるのがイケナイんだよ。ボクのこの変な野菜あげるから許してよ」

 

「等価交換になってねえじゃねえか!」

 

「…ねえ、何かうちの皿ん野菜増えとー気がするっちゃけど」

 

「気のせいじゃろ!」

 

知崎君は隣の席の越目君の分の肉を奪っておきながら交換という名の野菜の押し付けをしていて、古城さんに至っては野菜を隣の席のマナのお皿の上に無断で置いていた。

それを目敏く見つけた私は、二人を睨みつけて注意をする。

 

「ちゃんと野菜も食べなさい」

 

「「………はい」」

 

私が二人に注意をすると、二人とも嫌そうな顔を浮かべて野菜を食べた。

 

「うっ…ぷ」

 

「オェ…」

 

「『オェ』?」

 

二人が野菜を吐き出そうとしたので、二人を睨みつける。

すると二人は、棒読みで台詞を言いながらバクバクとお皿の上の野菜を食べ始めた。

 

「わあーこれすっごくおいしい」

 

「やっぱり野菜は最高じゃなー」

 

二人を睨んで監視しつつ、皆でおいしく食事をした。

本当にどれもおいしかったわね。

でも作らせてばかりも悪いし、次からは私も手伝おうかしら…

 

「ご馳走様。美味しかったわ」

 

「そっか、良かった!」

 

「次からは私も手伝っていいかしら?働かせてばっかりも悪いし。今回の食事ほどじゃないけど、それなりには出来ると思うわ」

 

「ん」

 

「んじゃオレも手伝うとすっか。オレちゃんもたまに料理してインスタに上げたりすっからな」

 

「拙者も人並みには作れるでござるよ」

 

「…盛り付けが下手でも良ければ」

 

私が言うと、小鳥遊さんと越目君、闇内君、それから館井君も名乗り出た。

意外と料理できる人多いわね。

 

「うちも料理はようやるっちゃけど、まずそうって言わるーったい!シチューに塩辛入れたり、味噌汁に納豆入れたりするだけなんにね!」

 

シチューに塩辛…

食べてみたら意外と美味しいのかもしれないけど、いきなり食べろって言われたら結構勇気がいるわね。

 

「私もお料理はするのですが、何故か美味しくないと言われてしまいますの。お力になれず申し訳ありません」

 

「ボクは料理できるよ!ね●ねるねるねとか、卵かけご飯とかなら作れるよ!」

 

知崎君のそれは…

…料理?

うん、まあ料理と言われればそうね。

他の人達は…

 

「料理なんか嫌いじゃ!!」

 

「悪いが専門外だ」

 

「お料理メカちゃんに任せちゃえばイッパツなので、自分では作らないですね!」

 

「まともな料理なんざやった事ねえよ」

 

「くだらねぇ」

 

まあ予想してた通りね。

 

「それじゃあお腹も膨れた事だし、今から自由時間にしようかね。ちょうど6時間後の18時に夕飯にするけど、それでいいかい?」

 

玉越さんが聞くと、誰も文句を言わなかった。

異論は無いみたいね。

 

「OK。何かわかった事があったら随時報告する事。じゃ、解散!」

 

玉越さんが言うと、それぞれバラバラに行動し始めた。

さて、今のうちに施設を探索しておかなきゃ。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り16名

 

 

 

 

 




ちなみに探索の班分け

女子風呂、個室、ラウンジ:聲伽、響
男子風呂、食堂:食峰、闇内
ランドリー、トラッシュルーム:秋山、越目
体育館、体育館前ホール、ロッカールーム、教室:加賀、ネロ、目野
赤い扉、購買部、視聴覚室:古城、聖蘭、館井
玄関ホール、保健室:小鳥遊、玉越、知崎


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(非)日常編②

さて…今のうちに捜査を進めていかなくちゃね。

どこから回ろうかしら…?

 

「緋色ちゃん!」

 

「ん」

 

早速マナが声をかけてくれた。

初めて会った時といい、この事は何かと縁があるわね。

 

「うち、一緒に回ったっちゃよかね?」

 

「え、ええ…一緒に来てくれるのはありがたいけど、どうして私?」

 

「だって緋色ちゃんば最初に見つけたのうちやろ?うちは緋色ちゃんのバディたい!」

 

ば、バディ…

思い返してみれば、そんな風に言ってもらえたのは初めてね。

何よ、何かいい響きじゃない。

 

「ありがとう。じゃあ一緒に回りましょうか」

 

…とは言ったものの、気まずいわね。

私だけ集合に遅刻するわ、捜査に参加できなかったわで話す事が何もない…!

何から話そうかしら?

 

「…ねえ」

 

「ん?」

 

「私、どうして自分の個室に運ばれてたの?保健室が空いてるなら、保健室で良かったじゃない。保健室の方が体育館から近いんだし」

 

「ああ、それなんやけどな、保健室に鍵がかかっとったっちゃんね。手分けして鍵探したっちゃけどなかなか見つからんやったけん、しょうがのう部屋に運んだっちゃん。結局越目くんがランドリーんゴミ箱ん中に入っとーと見つけたっちゃけど」

 

何で保健室の鍵がランドリーのゴミ箱の中になんか入ってんのよ…

脱出ゲームじゃないんだから。

…ああ、私達が今置かれてる状況は脱出ゲームみたいなものだったわね。

 

「んで、個室には鍵がかかっとらんかったけん、緋色ちゃんば個室に運んだっちゃわけ。勝手な事してごめんね?」

 

なるほど、そういう事だったのね。

 

「そういう事情だったらいいのよ。……それより」

 

「?」

 

「起きたら服が新しくなってたんだけど…それってつまり、私が寝てる間に着替えさせたって事?」

 

いや、別に全然いいんだけどね。

ただ、その、ほら、いくらクラスメイトだからって例えば男子に寝てる間に見たり触られたりするのは抵抗を覚えるわけで。

私が尋ねると、マナはポカンとしたかと思うと慌てて弁解をした。

 

「あ、ご、ごめん!血まみれなんもアレやし、皆で応急処置した後うち、玉越ちゃん、小鳥遊ちゃんの三人で着替えさしたっちゃん!うちらしか見とらんけん!本当ばい!」

 

…よかった。

闇内君あたりに見られてたらって頭をよぎったけど、流石にそれくらいの配慮はしてくれてたのね。

 

「まずどこ行く?」

 

そうね…

 

「ここから一番近いのは、トラッシュルームだったわよね」

 

とりあえず、私達は一番近いトラッシュルームを探索する事にした。

 

 

 

ーーー トラッシュルーム ーーー

 

トラッシュルームの中には焼却炉らしきものと、それからゴミ箱があった。

ゴミ箱は燃えるゴミ、燃えないゴミ、ビン、缶、ペットボトル、プラスチックに分かれていて、全部に『ゴミはきちんと分別して捨てましょう』ってモノクマのイラスト付きの張り紙が貼ってあった。

モノクマのイラストが不快だったって事以外は、秋山君の報告と食い違いは無いわね…

……ん?

今、ゴミ箱の裏で何か光らなかった?

 

「何かしら」

 

ゴミ箱の裏を確認してみると、モノDJの絵が描かれたコインが落ちていた。

 

「……何これ」

 

「モノクマメダルだって。それば集めるとガチャガチャが引くるらしいばい」

 

ああ、そういえば古城さんがそんな事言ってたわね。

…うん、ここで調べられる事はもう無さそうね。

 

「うーん、秋山君の調査と食い違いはなかったし次行かん?」

 

「そうね」

 

トラッシュルームと食堂にはもう行ったから、あと残ってるのは、大浴場とランドリーね。

私達は、次は向かいにあったランドリーに行って調査をした。

 

 

 

ーーー ランドリー ーーー

 

ランドリーは、よくあるコインランドリーみたいな造りになっていて、タダで使えるのかどの洗濯機にもお金の投入口が無かった。

どんな汚れでも落とせるのは素直に便利だと思うけど、夜時間中に使えないのは本当に不便ね。

 

「ここでの調査はこんなものかしらね」

 

私達は、まだ残っている大浴場に向かった。

 

 

 

ーーー 大浴場 ーーー

 

女湯ののれんをくぐるとすぐに広い脱衣所があって、マナの言う通り本当に銭湯みたいな造りになっていた。

お風呂上がりの牛乳も用意してあるわね。

ラベルに描かれているモノクマとモノDJのイラストが本当に不快だけれど。

さて、ここでの調査はこんなものかしらね。

次は浴室を調べないと。

 

「へえ……」

 

なるほど、悪くないじゃない。

流石は最高峰、ウチのお風呂より何倍も広いわ。

サウナまであるなんて、贅沢ね。

ガラス張りの扉の向こうには露天風呂風の温泉もあって、仕切りの向こうは男湯になっているみたいだ。

おっと、念の為奴が覗き用の仕掛けをしてないか調べておかなきゃ。

…うん、ひと通り調べてみたけど、それっぽいものは無かったわね。

 

「……ふう、杞憂だったみたいね」

 

「緋色ちゃん何しよーと?」

 

「いえ、何でもないわ」

 

もしかしてって思ったけど、心配しすぎだったみたいね。

ここで調べられる事はこのくらいかしら。

 

「あ」

 

「どげんしたと?」

 

「ごめんなさい、そろそろ夕食の手伝いをしに行かなくちゃ」

 

「あ、そういやあそうやったね」

 

そういえば小鳥遊さん越目君と一緒に食峰君を手伝う約束をしてたんだった。

そろそろ食堂に行かなきゃ。

私は一旦マナと別れて、食堂に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に時計を確認してみると、4時半過ぎだった。

この時間だともう食峰君は準備を始めてるわよね。

申し訳ない事をしたわ…

 

「ごめんなさい、調査に夢中で遅くなったわ」

 

厨房には案の定もう既に食峰君と小鳥遊さんがいた。

 

「いや、全然待ってねえからいいぜ!!つっても俺はもう準備始めちまってるけどな!!!」

 

「ん」

 

やっぱり…

それにしても、本当にいい匂い。

 

「そう…ところで、食峰君はいつから準備をしてたの?」

 

「ん?まあざっと2時間ぐらい前からかな!!」

 

「へ、へえ…」

 

って事は、2時の時点で既に準備を始めてたって事?

さすが美食家…

食への情熱が人とは違うわね。

 

「ところで私は何をすればいいのかしら?」

 

「ああ、そうそう!今ちょうどカニクリームコロッケのソースが固まってきたとこなんだよ!手頃なサイズの俵形に整えといてくんねえか?」

 

「わかったわ」

 

私は、食峰君の指示通り、冷蔵庫の中で冷やして固めてあったソースを俵形に整えた。

聖蘭さんの分の米粉と豆乳のクリームソースは別段にしまってあったので、それも取り出して手頃な形に整える。

卵、水、薄力粉(聖蘭さんの分は薄力粉をかなり濃いめに水で溶いたもの)を混ぜて、俵型にしたソースをバッター液にくぐらせ、パン粉をまぶす。

油を180℃になるまで熱したら、衣がキツネ色になるまでカラッと揚げて、油を切ってそれぞれのお皿に2個ずつ盛り付ける。

一緒に作ったエビフライとタラのフライ、それからせん切りキャベツとくし切りにしたトマトも一緒に盛り付けて…うん、いい感じ。

私達が料理をしていると、5時過ぎくらいに越目君が厨房に駆け込んできた。

 

「ワリィ、遅れた!って!!メチャクチャ進んでんな!!」

 

…うん、そりゃあビックリするわよね。

私だって最初見た時ビックリしたわ。

 

「昼とは違ってたくさん時間が取れたからね。食峰君なんて2時から準備してたのよ」

 

「マジか…ねえオレ何か手伝う事ある?」

 

「おう!んじゃあ悪いけどサラダ作って盛り付けといてくんねえか!?レシピそこにあっから!」

 

「お、おう!」

 

まあここまで手の込んだ料理ばっかり作ってたら、今から作業を始めたらサラダくらいしか作らせてもらえないのは仕方ないわね。

食器並べたりする時間だってあるし。

越目君は、急いでレシピ通りにサラダを作り始めた。

 

「おっし、これで完成!!」

 

…おお。

結構豪華な献立になったわね。

食峰君の作った鴨肉のステーキにイチゴのジェラート、私が揚げたカニクリームコロッケとフライの盛り合わせ、小鳥遊さんが作ったアスパラのポタージュ、そして越目君が作った半熟卵と芽キャベツの温サラダ。

これだけあれば、食欲旺盛なマナや知崎君、古城さんも喜ぶかしら。

 

「やったーご飯!!」

 

「ガハハ、ようやく飯かァ!!」

 

「いい匂い〜♪」

 

あ、ちょうど本人達が真っ先に来たわね。

この三人の食の事になると真っ先に身体が動く習性何なのかしら。

そんな事を考えていると、玉越さん、秋山君、響さんが来た。

 

「悪いね、作ってもらっちゃって」

 

「いいのよ、昼は玉越さん達が作ってくれたじゃない」

 

「ケッ」

 

私と玉越さんが話していると、秋山君と一緒にいた響さんが不機嫌そうにした。

 

「おお、すげー美味しそう。4人とも凄いね」

 

「いや、オレは食峰のレシピ通り作っただけだから」

 

秋山君が私達を褒めてくれたが、越目君は苦笑いを浮かべながら謙遜していた。

…うん、否定できないのが悔しいわね。

しばらく待っていると、集合時刻の10分前に聖蘭さん、5分前に館井君と闇内君が来た。

まだ来てないのは…加賀君、目野さん、ネロの3人ね。

 

「遅いね」

 

「ねえもう食べ始めていい!?冷めるー!!」

 

「何じゃああやつら!!ここに来たら斬殺丸で斬り伏せてくれるわ!!」

 

もう15分経つんだけど…流石に遅いわね。

知崎君古城さんに至っては待たされすぎてイライラしてるし。

3人とも、集合時間を何だと思ってるのかしら。

目野さんはまだ来てくれそうだけど…

 

「…しょうがないね、あたしが呼びに行ってくるよ」

 

「うちも行くよ!一人で3人呼びに行くん大変やろ?」

 

「なら私も行くわ。悪いけど、他の人達は先に食べ始めててくれる?」

 

「いや、ダメだ!!食事は全員揃って…って聞いてねえし!!」

 

食峰君は皆が揃うまで食事を始めないつもりだったみたいだけど、待てなかった知崎君と古城さんは先に食べ始めてしまっていた。

結局、玉越さんが加賀君を、マナが目野さんを、そして私がネロを呼びに行く事になった。

 

 

 

ーーー ネロ・ヴィアラッテアの個室 ーーー

 

私は、ネロの部屋の前に立つと、部屋のインターホンを鳴らした。

すると、意外と早く本人が出てきた。

うわ、タバコ臭っ!

どんだけ吸ってたらこんなに部屋が煙だらけになんのよ…!

 

「何だ」

 

「『何だ』じゃないわよ。とっくに夕食の時間過ぎてるんだけど?」

 

「まだ15分しか経ってねえじゃねえか。これくらい俺にとっちゃ普通だ。そんぐらいでガタガタ騒ぐなクソガキ」

 

うわっ…

ここまで悪びれずに遅刻する人初めて見たわ。

 

「あなたにとっては普通でも、私達にとっては大遅刻なの。この先ずっとこんな事されてたら皆に迷惑かかるから、これからはきちんと時間を守ってもらえないかしら?」

 

「何を言われようが俺ァガキとつるむ気は無え。お前のうるせえ説教のせいで食欲失せた。あばよ、Miss腐和」

 

そう言ってネロは、バタン!!と強くドアを閉めてしまった。

私が何度もインターホンを鳴らしても、ネロは私の呼びかけに応じなかった。

 

「っ〜〜〜!!!」

 

ああもうムカつく!!

何よ、ちょっと歳上だからって威張り散らして!!

今に見てなさい、いつか絶対ギャフンと言わせてやるんだから!!

 

私は、ネロを呼び出すという目的も忘れ、怒りのあまり足音をドスドス立てながら食堂へと戻っていった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

「ただいま!!」

 

私は、イライラしながら食堂のドアをバンッと開けた。

 

「随分と遅かったでござるな」

 

「腐和さん、ネロさんは?」

 

「あいつなら来ないわよ!私のせいで食欲失せたとか言って部屋に引き篭もりやがったわ!!あいつ、いつか絶対懲らしめてやるんだから!!」

 

「うわぁ、すごい気迫…」

 

私が怒り散らしていると、秋山君が顔を引き攣らせていたけど、今はそんな事どうだっていい。

ああもう、ネロのせいで余計にお腹空いちゃったじゃない!

 

「…って、うわあ!?マナ!?目野さん!?どうしたのその格好!?」

 

見ると、マナと目野さんが真っ黒焦げのアフロヘアーになっていた。

マナは目野さんを呼びに行ったのよね?

何で目野さんを呼びに行っただけでこうなるわけ!?

 

「えへへ…実は目野ちゃん、メカ作りに夢中になりすぎて集合時間忘れてしもてたらしゅーて。呼び出したら出てくれたんなよかっちゃけど、ドアば開けたらいきなり大爆発して巻き込まれてしもた!」

 

何その漫画みたいなシチュエーション!?

呼び出したらお礼に爆発喰らうなんて事ある!?

っていうか何で部屋で爆発するような危険なもの作るのよ!!

 

「ハッハッハァ!!失敗は成功の母です!!スゥゥゥゥ…エクスタシィイイイイイ!!!」

 

ああ、完全にトリップしてるわ。

もう今の彼女に何を言っても無駄ね。

 

「…あら?玉越さん、加賀君は?」

 

「ああ、それなんだけどさ…あいつ、呼びかけには応じてくれたんだけどさ。今研究がいいところだから行けないって」

 

「え、じゃあご飯は?」

 

「気が向いたら食べるから部屋の前に置いといてくれってさ。そういうわけだから、久遠の分は部屋の前に置いてきたよ」

 

何それ…

母親に食べ物要求するニートじゃないんだから。

まあでも、皆で作ったご飯を食べてくれる気があるだけネロよりはマシね。

 

「しょうがないからネロさんの分は俺が部屋の前に置いてくるよ」

 

「本当にごめんなさい…」

 

「腐和さんは悪くないよ。あの人自分の足でここに来る事もできないみたいだから、仕方ないよね」

 

秋山君も、苛立ちのあまりダークな面が出てきちゃってるわね。

結局、ネロの分の食事は秋山君が持って行ってくれた。

何か申し訳ないわね…

 

「それじゃ、皆揃ったし食べよっか。…って、蓮といろははもう食べてるけど」

 

私達は、結局加賀君とネロを除いた14人で夕食を食べた。

初日からこんな様子じゃ、先が思いやられるわね。

…それはそうと、どの料理も美味しい。

 

「ええい!!行けい、ニンジン号!!発射!!」

 

隣の席の古城さんがステーキの付け合わせの野菜の素揚げを手で掴んで投げ捨てようとしたので、私はすかさず古城さんの手首を掴んだ。

 

「ねえ、古城さん。何をしようとしてるの?」

 

「え、えっと、こ、これはその…」

 

「皆がせっかくあなたの健康を考えて作ったのに、あなたはそんな簡単に捨てるのね。私、あなたが食べ物を粗末にするお馬鹿さんだったなんて思わなかったわ」

 

「い、いや、ワシは…」

 

「あら、違うの?だったら食べてくれるわよね?」

 

「………はい」

 

私が笑顔で古城さんに言い聞かせると、古城さんは苦虫を噛み潰したような顔をしながら野菜を食べてくれた。

知崎君も古城さんに便乗して野菜を捨てようとしていたので、軽く笑顔を向けておいた。

すると知崎君も、自分から進んで野菜を食べてくれた。

自分で食べれるなら最初から捨てようとするなっての。

 

二人の問題児を見張りつつ、私達は夕食を完食した。

本当にどれも美味しかったわ。

これなら食事には困らなさそうね。

私がアールグレイを飲みながらそんな事を考えていると、越目君が背もたれにもたれかかりながら口を開いた。

 

「いやー、美味かった。やっぱ食峰には敵わねーな」

 

「ね」

 

ホントにね。

私も人並みには作れるつもりでいたけど、やっぱりプロはレベルが違うわ。

私達が食後のお茶を飲みながらまったりしていると、聖蘭さんが手を挙げて言った。

 

「お食事が終わったところで、私から一つ提案させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

聖蘭さんの発言に、全員が注目する。

すると聖蘭さんは、ニコッと聖母のような笑みを浮かべながら言った。

 

「これからは、夜時間中は出歩き禁止というルールを決めませんこと?」

 

「「「「!」」」」

 

聖蘭さんが言うと、全員が目を見開く。

本当に急な提案ね…

私が聖蘭さんの提案に少し驚いていると、案の定響さんが反発した。

 

「ハア!?ただでさえルールでギチギチだってのに、何でまたルール付け足すンだよ!?」

 

「これは私達自身の為ですわ。夜も安心して眠れないようでは、精神衛生上良くありませんから。もちろん、私だって全員がルールを守ってくださるとは思っておりませんわ。ですがそのような取り決めがあれば、殺人の抑止力になるとは思いませんこと?」

 

まあ、確かに…

皆が寝静まってる夜中なんて、殺人をするなら絶好のタイミングだものね。

夜も殺人の恐怖に怯えていなきゃいけないなんてなったら、何日も保たないわ。

 

「確かに…一理あるね。もし殺人が起きたら、外にいた人は真っ先に疑われるもんね」

 

「縁起でもない事言うんじゃないよ、楽斗」

 

「ああ、ごめん」

 

秋山君が顎に手を当てながら言うと、玉越さんが注意をした。

ホント秋山君、普段は紳士なんだけど、たまに黒い面が出てくるのよね。

 

「まあでもあたしはいいと思うよ、マリア。あんたの言う通り、夜くらいゆっくり寝たいもんね」

 

「私も賛成よ。私も、皆で生きてここを出るには皆の協力が必要不可欠だと思う」

 

「ありがとうございます。私は皆様を信じていますわ。一人でも多くの方が私の考えに賛同してくださるよう願っています」

 

私と玉越さん、秋山君が聖蘭さんの意見に賛成すると、聖蘭さんはニッコリと微笑んだ。

すると食峰君が、頭を掻きながら発言した。

 

「ただなぁ、そうなると朝飯の仕込みがなぁ」

 

「じゃあ朝ご飯の当番の人以外は出歩き禁止って事でいいんじゃないかな?一緒に朝ご飯を作ってるんだったらアリバイになるし。それでいいかな、聖蘭さん」

 

「ええ、構いませんわ」

 

秋山君が提案すると、聖蘭さんが微笑んだ。

私達は『朝食当番以外は夜時間に出歩き禁止』というルールを決め、全員で極力守る約束をした。

すると今度は知崎君が提案した。

 

「はい!朝ご飯は朝の8時以降にしてほしいです!ボク朝弱いんだよね〜」

 

「まあ、いいんじゃない?蓮みたいに早起き苦手な人もいるだろうし」

 

「じゃあ朝食は8時スタートでいいかな」

 

特に反対意見はなかったので、朝食は朝8時に集合という事に決まった。

するとその時、マナが手を挙げて発言した。

 

「はい!うちからも一つよか!?」

 

マナは、両手をテーブルについて目をらんらんと輝かせながら提案した。

 

「しぇっかく広かお風呂があるったいし、女子皆で入りに行かん!?」

 

お風呂…?

ああ、そういえばマナ、さっきからずっと入りたそうにしてたものね。

私がそんな事を考えていると、玉越さん、古城さん、目野さんが食いつく。

 

「あ、いい!何気にうちらそういうの初だしね!」

 

「湯浴みとな!?ワシは行くぞ!!ガハハ、貴様らワシの美貌に酔いしれるが良い!!」

 

「私も行きます!!ただの人間の肉体に興味はありませんが、浴場に設置されているであろうエキサイティンッッッな機械ちゃん達には興味がありますからね!!」

 

「うっわぁ、美香子ちゃんマジ奇行種!」

 

ただの人間って…

ホントこの人の価値観どうなってるのよ。

それと知崎君、あんたのそのツッコミは自分にも返ってるからね?

 

「楽しそうですわね。私もご一緒しますわ」

 

「私も行くわ。皆の事をよく知るいい機会だしね」

 

聖蘭さんも一緒に行くみたいだ。

もちろん私も、断る理由が無いので一緒に行く。

あとは響さんと小鳥遊さんだけど…

 

「響ちゃんも一緒に行かん!?」

 

「ハァ!?誰が…「いいからいいから!!」

 

響さんはマナがうまい事丸め込んだわね。

 

「由は…」

 

「ん」

 

「…だよね。ごめん、由は行けないみたい」

 

「そう…」

 

どうしても行けないなら仕方ないわね。

これ以上はしつこく誘わない方が良さそうね。

 

「じゃあ、8時に集合ね!」

 

私達は、8時に大浴場に集まる約束をして、それまではそれぞれ自由に過ごす事になった。

私は、夕食の食器を洗って時間を過ごした。

それはそうと、さっきから知崎君と闇内君が顔を見合わせてニヤニヤしてるんだけど。

あいつら何か変な事企んでるんじゃないでしょうね。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

約束の時間になったので、女湯に入った。

 

「ッパアアアアア!!!どこです!?マァアアベラスな機械ちゃん達は!?」

 

目野さんは、機械を求めて大浴場のど真ん中で騒いでいた。

目野さん、身長の割に立派なものをお持ちで…

っていうかこんな時にもヘルメットとゴーグル完備だし。

それとその背中のジェットエンジンみたいなものは何!?

 

「ちょっと、目野さん。何よそれは」

 

「私の自作の高速ジェット装置です!!先程はこれを作っていて夕食に遅れました!!防水仕様なのでご心配なく!!」

 

そういう事を言ってるんじゃないんだけど…!?

マナーもへったくれもないじゃないのよ!

 

「何じゃあ貴様!!こんなところでも騒ぎおって、斬り捨ててくれようか!!この機械オタクが!!」

 

古城さん、それは目野さんじゃなくてモノクマのオブジェよ。

目が3の形になってるし…どんだけ近眼なのよ。

 

「たまにはこういうのもいいですわね」

 

うわっ、聖蘭さんものすごいスタイル…

顔も良くてスタイル抜群とか、【超高校級の聖母】だからって神様に愛されすぎじゃない?

 

「こら!!美香子!!あんたいい加減にしな!!」

 

玉越さんはスポーツやってるだけにすごい引き締まった身体してるわね。

 

「緋色ちゃんやっぱりスタイルよかね」

 

「そ、そうかしら…?そうでもないと思うけど…」

 

スタイル良いなんて、言われた事ないんだけど…

何か、面と向かって言われると恥ずかしいわ。

 

「えっ、自覚なかったと!?」

 

「何に対して?」

 

「ええい、緋色ちゃんなんてこげえしちゃる!!」

 

そう言ってマナは、いきなり後ろから私の胸を触ってきた。

 

「きゃっ!?ちょっと、どこ触ってんのよ!?」

 

「へっへっへ、叫んだっちゃ誰も助けてくれんばい」

 

何か性犯罪者みたいな事言ってるんだけど!?

っていうかさっきから響さんが視線だけで殺せそうなくらい睨んできてるんだけど!

ホントにそろそろやめてくれないかしら!?

……ん?

 

 

 

『この仕切りから覗けそうでござるな』

 

『はあ!?オメェ何言って…』

 

『食峰殿!!声が大きいでござる!!』

 

『あっ、ねえねえ忍おにい!ボク防水スマホ持ってるからこっそり撮ってきてよ』

 

『了解でござる』

 

 

 

…何か隣の男湯から覗くとか撮るとか聴こえるんだけど?

あいつら、やっぱり最低な事企んでたか。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

【食峰視点】

 

蓮が『女子が皆で入りに行くならボク達も男子皆でお風呂入りに行こう』って提案したもんだから、オレ達は風呂場に来ていた。

集まったのはオレ含め、楽斗、久遠、ネロ以外の5人だった。

楽斗はもう少し学園内を調査したいとかで、あとから来るっつってたな。

 

いやぁしっかし、温泉があるなんて最高だな!

しかも風呂上がりの牛乳まで用意してあったんだぜ!

理事長も学園長も、なかなか粋な計らいすんじゃねえか!

 

「うっし、んじゃあアレやるか!!」

 

「アレ?アレって何だよ食峰」

 

「決まってんだろ!?大風呂といやあサウナで我慢大会だろがい!!」

 

サウナでの男同士の粘り合い!!

これこそ銭湯の醍醐味だろうが!!

 

「おお、いいそれ!じゃあ勝った奴はどうする?」

 

「じゃあ優勝した人は他の皆からメダルをもらうっていうのはどう?」

 

「フッ、その勝負、乗ったでござる」

 

「いや、俺は……」

 

「っし、じゃあここにいる奴全員参加って事でいいな!?」

 

「…………」

 

建次郎が何か言いたそうな気がしたけど、気のせいかな。

 

「んじゃあ早速……」

 

『ストォオオオオオオオッッップ!!!!!そうは問屋が卸さないぜリスナー諸君!!!』

 

オレ達が風呂場の隣のサウナに入ろうとすると、いきなり理事長が目の前に現れた。

 

「ハア!?テメェ、何だよ急に!!」

 

『リスナーに一つ言い忘れてた事があったから忠告しとくぜイェア!!生徒手帳は極端な高温低温に弱えから、サウナに入る時は必ず外してから入るように!!んじゃあな!!テメェらクソして寝な!!!』

 

行っちまった…

 

「ンだよあいつ!!」

 

しゃあねえ、ああ言われたし外して入るか。

 

 

 

ーーー 3分後 ーーー

 

「ふぃーーー、ボクもう無理!!」

 

「へっ、情けねえ奴だぜ」

 

「越目殿、お主も顔色が優れぬようでござるが」

 

「き、気のせいだろ…!」

 

勝負を始めてからたった3分で、最初に蓮がサウナから飛び出した。

これであと4人か。

負けねえぞ!!

 

 

 

ーーー さらに5分後 ーーー

 

「うぇえ、無理……死ぬ……」

 

蓮が出てってから5分後に、粧太もギブアップした。

残るはオレ、忍、建次郎の3人だ。

 

 

 

ーーー さらに20分後 ーーー

 

「拙者ももはやここまででござる…!」

 

忍もここで脱落か。

残るはオレと建次郎の2人…!

こうなったら何が何でも最後まで残って優勝してやるぜ!!!

 

 

 

ーーー さらに10分後 ーーー

 

意識が朦朧としてきた。

建次郎は…まだいんな。

絶対最後まで残ってやる…!

 

「ぜ、ぜってえ…負けねえ…かんな……」

 

オレが意地で耐えてると、粧太と忍が入ってきた。

 

「おい、食峰。お前もうそろそろやめとけよ」

 

「拙者も同意見でござる。お主、これ以上は誠に危ういぞ」

 

「うるせぇ……男の勝負を……邪魔、すんじゃ……」

 

あれ……?

何か、目の前がぼやけて……

 

「食峰殿!!?」

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

 

………ん?

あれ?

ここは…?

 

気がつくと、オレはサウナのベンチに横になっていた。

 

「おう、気がついたか」

 

「粧太、勝負はどうなったんだ…?」

 

「お前、開口一番それかよ。館井ならまだサウナにいるぜ」

 

「………クソッ、絶対勝つって決めてたのによ」

 

まあでも先に気絶しちまったのはオレだしな。

負けは負けだ。

建次郎、オメェとの戦い、最高にアツかったぜ。

 

「建次郎、今回はオレの負けだ。お前は漢の中の漢だぜ」

 

「ああ、これで勝負はついたんだ。もう出ようぜ」

 

「…………」

 

「……ん?」

 

…あれ?

建次郎、反応が無えな。

 

「ねえ、建次郎おにい!聴こえてますかー?ウラァ!!」

 

蓮が建次郎の耳元で叫んだり強めに蹴ったりしても反応が無え。

おい、これひょっとしてやべえんじゃねえのか…!?

 

「座ったまま気絶しておる……」

 

「「ハァ!!?」」

 

マジかよ!?

反応無さすぎて全然気付かなかった!!

 

「お、おい、これどうすりゃいいんだよ!?」

 

「と、とりあえず水風呂に放り込むぞ!!」

 

オレ達は、とりあえず急いで建次郎を水風呂に放り込んだ。

クソッ、重えなこいつ…!

 

「水風呂じゃあ!!」

 

「冷水シャワーじゃあ!!」

 

「冷風でござる!!」

 

「皆頑張れー♪」

 

オレが建次郎を水風呂にブチ込んで、粧太がシャワーで冷水を浴びせて、忍が扇風機で直接冷風を浴びせた。

蓮は…後ろで応援してっけど、そんな事してる暇あんなら手伝ってくんねえかな。

 

 

 

「………う」

 

オレ達が建次郎を涼しい場所で休ませてると、建次郎がようやく目を覚ました。

 

「館井!!」

 

「良かったあ、目ェ覚めた!!」

 

「俺は一体……?越目が熱い熱い言ってたあたりまでしか記憶が……」

 

「オメェ、サウナで気絶してたんだぞ!!」

 

「お前さあ、サウナ苦手なら最初にそう言っといてくれよ」

 

「…………すまん」

 

マジか、建次郎の奴熱いとこ苦手だったのか。

何か悪い事しちまったな。

 

「あれ?でもさ、これって勝負はどうなんの?」

 

「……俺は気絶していたから負けでいい」

 

「という事は…優勝は食峰殿でござるな」

 

「えっ!?オレ!?」

 

マジかよ…

でも何かフクザツだな。

こんな勝ち方しても嬉しいような嬉しくねえような…

 

 

 

ーーー 温泉 ーーー

 

「あー、極楽極楽」

 

サウナ大会の後は、皆で温泉に入った。

あー、気持ちいい。

こんなに楽しい事が毎日続くなら、ここでの生活も案外悪くねえかもな。

 

「一つ、聞こうと思っていた事があるのでござるが……」

 

「ん?どした忍?」

 

「お主らは、女性陣の中では誰が好みでござるか?」

 

ハア!?

何だその質問!?

 

「ちなみに拙者は聖蘭嬢と小鳥遊嬢でござるよ。腐和嬢も捨て難いでござるな…あんな綺麗な女子にいじめられるなんて至福でござる!!」

 

「はいはーい、ボクはマナちゃんと緋色ちゃんが好きかな。だってあの二人、とっても不思議だから!」

 

「オレは腐和ちゃんと玉越ちゃんかなぁ。やっぱ付き合うなら、ああいう健康的な女子がいいよな!」

 

「うわ、既に付き合う前提なの?キモっ」

 

「ひでぇ!!」

 

蓮に冷めた目で見られた粧太は、ショックを受けていた。

やっぱ緋色が人気だな。

そりゃそっか、顔は女子の中で一番キレイだしな。

俺はそういうのよくわかんねえけど…

 

「満おにいは?」

 

「えっ?オレ?」

 

うーん、いきなり聞かれても…

 

「オレは…強いて言うならマリアかな」

 

「何と…!お主、さては巨乳派でござるな!?同志でござる!!」

 

「バッカ、俺は別にそういうんじゃ…!いろはとかも好きだし!!」

 

「何とな!?という事は…お主はぽっちゃり派でござったか!!」

 

こいつさっきから色々失礼じゃねえか?

まあ筋肉質よりはふっくらしてる方が好きなのは事実だけどさ!!

 

「館井、お前は?」

 

「俺は別に……」

 

「あ、じゃあボク当てていい?由ちゃんでしょ!?」

 

「…………」

 

「あ、否定しないんだ。って事は図星だ!?」

 

「……もう静かにしてくれ」

 

建次郎の奴、黙り込んじまった。

結局建次郎の好きな女子はわからずじまいか。

 

「それで提案なのでござるが……あの仕切りの向こう側は女湯になっているでござる。拙者が何を申したいのかはもうわかるでござるな?」

 

「まさか、お前……!!」

 

「なるほどねぇ」

 

「………最低だな、貴様」

 

えっ、何、何!?

他の三人は今のでわかったの!?

 

「この仕切りから覗けそうでござるな」

 

はあ!?

今、覗くっつったのかこいつ!?

 

「はあ!?オメェ何言って…」

 

「食峰殿!!声が大きいでござる!!」

 

「あっ、ねえねえ忍おにい!ボク防水スマホ持ってるからこっそり撮ってきてよ」

 

「了解でござる」

 

待て待て待て待て!!

何やろうとしてんだこいつら!!

 

「やめろってそんな事すんの!!ノゾキなんざ、人としてやっちゃダメだろうが!!」

 

「同感だ。悪い事は言わないからやめておけ」

 

「オレもヤだよ。お前らと同類になりたくねえし、バレたら腐和ちゃんに殺されんだろ」

 

「やかましいでござるよ。ここまで来たらもう、引き返すことはできぬ故。拙者は征く!!」

 

うわっ、行っちまったよあいつ…!!

つーか速っ!!

 

「ぐへへへへ、万が一見つかっても腐和嬢にお仕置きをいただけて一石二鳥でござる!さあ、いざ征かん!!」

 

 

 

「ねえ。何をしようとしてるのかな?」

 

………えっ?

が、楽斗!?

いつの間に!?

調べ物してたんじゃ…!?

 

「小鳥遊さんが手伝ってくれたから、思いの外早く来れたんだ。闇内君、知崎君、越目君。俺さ、君達と少し話したい事があるんだけど…いいよね?」

 

「ウェ!?何でオレまで!?」

 

「いいよね?」

 

何故か、覗きに反対してた粧太まで楽斗に連れて行かれた。

 

「ごめんね二人とも。ゆっくり入っててよ」

 

「いやあああ!!嫌でござる!!野郎からのお仕置きは嬉しくないでござる!!」

 

あー、これ長くなるやつだ。

オレ、しーらね。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

【腐和視点】

 

…ふう。

気持ち良かった。

それにしても、何か仕切りの向こうから変態の断末魔が聴こえてきたけど、秋山君が代わりに断罪してくれたのかしら。

後で食堂に行ってみると、知崎君と闇内君が『僕達は女湯を覗いて盗撮しようとしました』と書かれたプラカードを首からかけて正座させられていた。

まあ、規律を乱そうとしたんだから当然の報いよね。

 

ふぁ……

何だか今日は色々ありすぎて疲れちゃった。

部屋に戻って早めに寝ないと。

私は、部屋に戻って寝間着に着替えると、ベッドに寝転がって目を閉じた。

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『えー、おはこんばんにちわ、オマエラ!皆大好き未来ヶ峰学園のモノクマと!』

 

『ヘェイレディースアンドジェントルメーン!!テメェらの大好きな未来ヶ峰学園のカリスマDJ!!モノDJ様だァ!!ハッハァ!!』

 

『えー、改めまして…『ジャスティスダンガンロンパX4 強くてコロシアイ再履修』をご購入いただきありがとうございまクマ』

 

『いやぁー、それにしてもよ、ブラザー』

 

『ん?何ですブラザー』

 

『ダチに貸したゲームが借りパクされて、そのゲームが勝手にブックオフとかで売られてたらマジブチギレ案件じゃねぇか?』

 

『あー、いるいる。いますよね、そういう奴』

 

『そういう時のために、このゲームは2本以上買っておく事をオススメするぜ!2本以上お買い上げのリスナーには何と!オレ様のセクシーショットのブロマイドがセットでついてくるぜ!お値段なんと5万2千円(税別)!』

 

『やっすぅ〜い!!』

 

『おおっともう尺が無え!!んじゃ、今日のムービーはここまでだ!最後まで楽しんでプレイしてくれよな!スィーユーネクストタイム!』

 

『しーゆー!』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り16名

 

 

 

 

 



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(非)日常編③

安心してください、まだ死にません。







二日目。

 

『ヘェイグッッモォォォニン!!ゴミクズ共ォォォ!!!朝の7時をお知らせするぜイェア!!!今日も張り切ってけェ!!!』

 

「………ん」

 

……朝からうるさいわね。

何なのよ……

 

……あ。

そっか。

昨日のは夢じゃないんだ。

私達は、ダンガンロンパを再現したコロシアイゲームに巻き込まれたんだ。

気分が悪い。

頭が重い。

…でも、いつまでもこうしているわけにはいかない。

私は、制服に着替えると早速食堂に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に行くと、既に越目君、玉越さん、小鳥遊さんがテーブルを拭いたり食器を並べたりと、朝食の準備を進めていた。

 

「おはよう」

 

「おう、おはよう緋色」

 

「おはよう腐和ちゃん!今日もカワイイね」

 

「ん」

 

私が挨拶をすると、三人とも応えてくれた。

でもおかしいわね。

今日の朝食の手伝いの当番は館井君と闇内君と秋山君だったはずだけど…?

 

「あなた達は今日の朝食の当番じゃないわよね?」

 

「そうなんだけどさ。朝から準備すんの大変だろ?朝食の準備ぐらいはうちらも手伝う事にしたんだよ。まああたしらも部屋出たのは7時ちょうどだったから、ついさっき来たばっかなんだけどさ」

 

「そうだったのね…」

 

だったら私ももう少し早く来て手伝えば良かったわ。

私がそんな事を考えていると、越目君が玉越さんに声をかけた。

ホント隙あらばね…

 

「ねえ、玉越ちゃん。後でオレと一緒に回らね?オレちゃんが玉越ちゃんに似合うメイク教えてやっからさ」

 

「はいはい、そういうのいいから黙って手動かす」

 

越目君は玉越さんに声をかけたけど、見事に玉砕した。

あ、結構落ち込んでる。

ちょっと可哀想になってきたわね。

ああ、じゃなくて、私も手伝わなきゃ。

私も朝食の準備に加わって7人で準備をしていると、時間より少し早くに聖蘭さん、時間ピッタリに響さんが来た。

 

「申し訳ございません、寄宿舎の汚れが気になったのでお掃除していたらギリギリになってしまいましたの」

 

そう言って聖蘭さんは頭を下げた。

まあ彼女は時間に間に合ってるから全然いいんだけど、問題は…

 

「ごめーん!!遅刻だ!!」

 

慌ててマナが食堂に駆け込んできた。

よく見ると、帽子から寝癖がはみ出ている。

…この子、さっきまで寝てたわね。

 

まだ来てないのは…知崎君、古城さん、目野さん、加賀君、ネロね。

どいつもこいつも…ホントに集合時間を何だと思ってるんだか…!

私達は、結局また昨日みたいに来ていない人達を呼びに行く羽目になった。

私がネロを、玉越さんが知崎君を、マナが古城さんを、越目君が加賀君を、そして聖蘭さんが目野さんを呼びに行く事になった。

 

 

 

ーーー ネロ・ヴィアラッテアの個室 ーーー

 

私は、ネロの部屋の前に立つと、部屋のインターホンを鳴らした。

するとご本人様がイライラした様子で出てきた。

 

「チッ、またお前か」

 

「『お前か』じゃないのよ。これから朝食だから早く来なさい」

 

「目障りだ。消えろ」

 

そう言ってネロが扉を閉めようとしたけど、そうはいかないわ。

私は、ネロが扉を閉めようとした瞬間に扉の隙間に右手と右足を挟み込んで扉を押さえつけた。

ネロが鬱陶しそうに私を見てくるけど、私は負けじと言ってやった。

 

「いい?これから朝食を兼ねた生存確認をするの。ここであなたが来なければ、万が一何かがあった時にあなたを信用できる人は誰もいなくなるわけだけれど…それでもいいの?」

 

「……チッ、さっさとどけ。出れねえだろうが」

 

よし、勝った。

今日こそは連れ出す事に成功したわ。

昨日の分の鬱憤を晴らせて何だかスッキリした。

 

「今日はやけにあっさり出てきてくれたのね」

 

「てめぇらの中の誰かが死んで学級裁判ってなった時、考え無しのバカに投票されて死ぬのは御免なんでな」

 

この中の誰かが死ぬって前提なのが腹立つわね。

私は、ネロを連れて食堂に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

「待たせてごめんなさい。連れてきたわよ」

 

「フン」

 

私がネロを連れて食堂に行くと、ネロがスタスタと食堂に入っていった。

マナは、早速ネロに声をかけに行った。

何か顔に拳の痕がついてるんだけど…大丈夫?

 

「ネロくん今日は来てくれたんやな!」

 

「勘違いするなよ。俺はお前らに投票されて死ぬのが嫌なだけだ。そういうわけだから、生存確認の時ぐらいは顔を出してやる」

 

全く、素直じゃないんだから…

 

「そういうマナも、古城さんを連れて来れたのね」

 

「古城ちゃん、寝坊しとっただけやった!寝ぼけてくらしゃれたけど!」

 

目野さんの爆発に巻き込まれた次は古城さんに殴られたのね…

マナってホント踏んだり蹴ったりよね。

振り向いてみると、今日は加賀君も来ていた。

どういう風の吹き回しかしら…?

 

「他の三人も同じ?」

 

私は、目野さん、それから眠そうにしている知崎君と加賀君に尋ねた。

 

「はい!!すみません、寝てました!!」

 

「くぁああ…ねむい…」

 

「とりあえず集合時刻に遅れたのは悪かった。俺は低血圧なんだ」

 

「加賀君、今日は来てくれたのね」

 

「昨日の研究がひと段落ついたからな。昨日は夕食に参加できずすまなかった」

 

ああ、なんだ。

この人、興味ある事に没頭するとそれ以外の事が見えなくなっちゃうタイプの人か。

ちゃんと自分の非礼は謝れるみたいだし、思ったより悪い人ではないみたいね。

 

「それじゃあ皆揃ったし、ご飯にしようか」

 

秋山君が言うと、全員が席についた。

朝食は、昨日食峰君が和食がいいか洋食がいいかを聞いてきたので、本人の希望に沿ったものが出されている。

私の洋食セットのメニューは、エッグベネディクト、ホウレンソウのソテー、キャロットラペ、ジャガイモのポタージュ、フルーツヨーグルトの5品だ。

マナが食べてる和食セットも美味しそうね。

明日は和食にしてみようかしら。

 

「よし。それじゃあ朝食も終わった事だし、解散にしようか。13時にお昼がてらミーティングをやるから、遅れずに来てね」

 

玉越さんがそう言うと、各自バラバラに行動し始めた。

そういえばまだ校舎と研究棟の方の探索はしてなかったわね。

 

「緋色ちゃん!うちと一緒に行こ!」

 

「ええ、そうするわ」

 

マナが私を探索に誘ってくれたので、マナと一緒に研究棟を見て回る事にした。

 

 

 

ーーー 研究棟 ーーー

 

「デカい……」

 

私達が今いるのは、5階建てのオフィスビルのような建物だった。

ここには、各々の才能を研究する為の施設が完備されているらしい。

今行けるのは、1階にある秋山君、古城さん、玉越さん、響さんの研究室だけみたい。

私達は早速、一番手前にある秋山君の研究室に行ってみる事にした。

 

 

 

ーーー 【超高校級の音楽プロデューサー】の研究室 ーーー

 

ここが秋山君の研究室ね。

見た目はオフィスによくあるドアのようだけれど、よく見るとドアは防音仕様になっている。

一応、ドアをノックして入るのが礼儀よね。

私は、研究室のドアを3回ノックした。

 

「どうぞ」

 

秋山君から返事があったのでドアを開けると、中はレコーディングスタジオのコントロールルームになっていた。

部屋の奥には巨大なDTMデスクが配置されていて、秋山君はそこで作業をしているようだ。

 

「やあ、いらっしゃい。腐和さん、聲伽さん」

 

「ごめんなさいね、作業中にお邪魔して」

 

「いや、いいよ。探索中だったんだろ?」

 

私が作業中に部屋に入ってしまった事を詫びると、秋山君はニッコリと笑った。

ホントイケメンね。

アーティストや作曲家に信頼されている理由がよくわかるわ。

 

「ねえ、秋山くんは今何しよったと?」

 

「歌音の歌をレコーディングしてたんだ。作業してないと逆にストレス溜まるからね」

 

さすが、本職の人は違うわね。

普通、楽曲制作をする時はディレクターやエンジニア一緒に一つの楽曲を作っていく事が多いのだけれど、彼はディレクターやエンジニアの仕事も全部1人でやってるのよね。

私が秋山君の仕事ぶりに感心していると、秋山君がずいっと身を乗り出して私達の方を見てくる。

 

「ところで君達、楽曲制作に興味は無い?」

 

「へ?」

 

「ああ、まずレコーディングについて基本的な知識から話さないといけないよね。俺が今やってるのはスタジオレコーディングっていう方法なんだけど、『一発録り』と『バラ録り』っていう2種類の方法があるんだ。一発録りはアーティストが同時に演奏して録音する方法で、一体感のある演奏を録れるのが最大の魅力だよ。だからオーケストラのレコーディングは基本一発録りなんだ。でもその反面、音の編集が少し難しいんだ。編集の時に何か問題があったら一から全部録り直さなきゃいけなくなるし、音同士のカブリがあるから音の編集の自由度もバラ録りに比べて低いんだよね。だから最近バンドではバラ録りをやる事も少なくないんだけど…」

 

ああ、これ長くなるやつだ。

マナももう飽きてきちゃってるし…

全部聞いてたら、時間がいくらあっても足りなくなっちゃうわ。

 

「ありがとう、でもまだ見てないところがあるから続きはまた今度ね。機会があったらまたゆっくり聞かせてもらうわ」

 

「そうかい?じゃあ興味があったらいつでも声かけてね」

 

私は、タイミングを見計らって秋山君のマシンガントークを中断させ、マナを連れて研究室を後にした。

マナは、くたびれた様子で私に話しかけてきた。

 

「やー、秋山くん話長かったね!全部聞いとったら日が暮れてしまうばい!」

 

「そうね……」

 

秋山君って、ああ見えて自分の仕事の事になるとビックリするぐらい饒舌になる人だったのね。

知らなかったわ。

ええっと…秋山君の研究室で響さんの歌をレコーディングしていたって事は、隣は響さんの研究室よね?

もし作業中じゃなければ見てみようかしら。

 

 

 

ーーー 【超高校級のボーカリスト】の研究室 ーーー

 

響さんの研究室のドアは、秋山君の研究室と似たような感じなのね。

ドアの小窓から中の様子を……あ、今大丈夫そう。

私は、タイミングを見計らって研究室のドアを3回ノックした。

すると律儀に本人が出てきてくれた。

 

「何?」

 

「今、開放されてる研究室を見て回ってるの。良ければ見学させてもらってもいいかしら?」

 

私が尋ねると、響さんは不機嫌そうに頭を掻いた。

 

「……好きにしろよ。どうせ面白えモンは何も無えけど」

 

「ありがとう」

 

思ったよりあっさり部屋に入れてくれた。

最初は態度が荒いと思ってたけど、毎回の食事にはちゃんと時間を守って来てくれるし、案外律儀な人なのかもしれないわね。

 

「騒いだりその辺のモン触ったりすんなよ」

 

「はーい!」

 

私達が部屋に入った途端、響さんは荒々しく忠告をしてきた。

研究室の中は、録音ブースになっていた。

秋山君の研究室のコントロールルームとセットのレコーディングスタジオになっていて、壁に設置された窓からお互いの研究室を目視できるようになっている。

 

「響ちゃん、ここで歌歌うとったと?」

 

「…楽斗から聞いたんか?」

 

「ええ。最初に秋山君の研究室を見せてもらったからね。今は休憩中?」

 

「まあな。ぶっ続けで歌ってっと疲れっから」

 

そう言って響さんは、研究室に持ち込んでいたペットボトル飲料を飲んだ。

さすがは超高校級の才能を持つ人達ね。

こんな状況に置かれても、自分の才能を磨こうとするなんて…

 

「…すごいわね。秋山君といい、あなたといい、こんな時にも自分の才能を磨く為の努力をしていて」

 

「こんな時だからだよ」

 

「え?」

 

「オレァ今イライラしてンだよ。見りゃわかんだろ。バンドの仲間とも連絡取れねえし、あんなブタグマ共のおふざけに付き合わされなきゃなんねえしでよ。歌でも歌ってなきゃどうにかなっちまいそうなんだ。……ただなァ、ここで歌ってるとどうしても、ここに仲間がいたらどんなに良かったかって思っちまって無性にイラつくんだよ」

 

あ……

そうか、私は彼女達の事を勘違いしていたわ。

こんな状況でも自分の才能を磨く余裕があるんじゃなくて、こんな状況だから自分の好きな事をして気分を紛らわせなきゃ正気を保っていられないのね。

ここにいる皆も人間なんだから、いきなりこんなコロシアイなんかに巻き込まれて精神的に追い詰められてるのは同じなんだわ。

 

「響ちゃん……」

 

「あっ、何見てンだよ!?見んじゃねえよクソ!!」

 

私とマナが響さんに同情の目を向けていると、響さんがいきなり悪態をついてきた。

部屋に入れてくれたのはそっちなのに…

何だか難しい人ね。

 

「ごめんなさい。これ以上長居するのも悪いし、これで失礼するわ」

 

私はそう言って響さんの研究室を後にした。

次は玉越さんの研究室ね。

行ってみましょう。

 

 

 

ーーー 【超高校級のバレーボール選手】の研究室 ーーー

 

玉越さんの研究室の扉は、校舎の体育館と似ている引き戸になっていた。

引き戸の隙間から中を覗いてみると、玉越さんが壁に向かってボールを打っている最中だった。

するとマナが中にいる玉越さんに声をかけた。

 

「玉越ちゃん?」

 

マナが声をかけると、玉越さんは私達の方を振り向いてドアの前に来た。

玉越さんは、ドアを開けると私達に声をかけてきた。

 

「おっ、緋色に愛!どうかした?」

 

「ごめんなさいね、練習中に。今、二人で研究室を見て回ってたの。邪魔じゃなければ見学させてもらってもいいかしら?」

 

「もちろんいいよ!さ、入んな!」

 

玉越さんは、ニカッと笑って快く私達を研究室に招き入れてくれた。

研究室の中はバレーボールの競技場になっていた。

部屋の中にタラフレックスコートが敷かれていて、コートの中心を仕切るようにネットが張られている。

ネットの向こう側には、玉越さんが練習をしていたのかボールがいくつも転がっていた。

 

「玉越ちゃん今何しよったと?」

 

「サーブとスパイクの練習だよ。少しでも練習してないと腕が訛っちまうからね。まあ本当はメンバーがいた方が良かったんだけど…」

 

玉越さんが苦笑しながら言うと、私は同情を禁じ得ず、思わず暗い表情を浮かべてしまった。

彼女だって私達の前では明朗に振る舞っているけれど、本当は仲間や家族、クラスメイトと離れ離れになって心細いはずだ。

彼女に寄りかかるんじゃなくて、私達がリーダーである彼女を支えていかなくちゃ。

私がそんな事を考えていると、玉越さんは私達に気を遣ったのか、いつもの明るい表情に戻って話を切り上げた。

 

「ああ、ごめんよ!暗い話になっちゃったね!そうだ、今から得意技の練習するんだけど、ちょっとだけ見て行かない?」

 

「え、見しぇてくれると!?やった!!」

 

「私も是非間近で見てみたいわ」

 

「OK、よく見てな!」

 

玉越さんは、手に持っていたボールを高く投げ上げると、キュッと靴の音を鳴らしながらジャンプをしてボールを勢いよく打った。

次の瞬間には、ボールはバァンと銃の発砲音のような轟音を立てながら反対側のコートの線の内側に着地していた。

 

「はい!どうだった?」

 

玉越さんは笑顔で感想を求めてくるけど、私とマナは放心していた。

 

「……緋色ちゃん、今ん見えた?」

 

「ぎ、ギリギリ…」

 

いや、ギリギリ見えたけど!!

何今の!?

えっ、どう打ったらあんなに曲がるの!?

あんなの打たれたら返せるわけないじゃない!

試合が一方的に終わるのも無理ないわ!

 

「す、すごいカーブだったわね…どうやったらネットギリギリであんなに曲がるの…?」

 

「おっ、わかった!?さすが現役警察官!」

 

あんな凄い球打っておいて、この笑顔…

流石は世界を舞台に競うアスリートね。

 

「それじゃあ、私達はこれで」

 

「おう!」

 

私達は、玉越さんの技に驚かされつつ、一声かけてから最後の研究室に向かった。

 

 

 

ーーー 【超高校級の考古学者】の研究室 ーーー

 

ここが古城さんの研究室…ドアは大正ロマンを感じさせるレトロなデザインになってるわね。

何か、いかにもって感じね。

私は、研究室のドアを3回ノックした。

 

「おう!!入れ!!」

 

あっさり入室を許可してくれた…

…のはいいけど、随分と高圧的ね。

 

「失礼するわ」

 

古城さんの研究室は和洋折衷でレトロな造りだった。

部屋にある本棚には、考古学に関する本やファイルがいくつも並んでいて、反対側には世界中の遺跡から発掘したと思われる資料を展示したショーケースが置かれていた。

そして部屋の隅には、何故か金ピカの刀を持った甲冑が置かれていた。

古城さんはというと、研究室のデスクで斬殺丸なるツルハシに打ち粉をしていた。

 

「むっ!?何じゃ、ウヌらか!!ガハハハ、さてはワシの世紀の研究が気になって見にきたんじゃろ!?」

 

今更だけどこの子、すごい自信ね…

っていうか彼女が今打ち粉してるのって、ツルハシよね…?

アレに一体何の意味があるのかしら。

 

「…あなた、メディア嫌いじゃなかったかしら?その割には大事な研究をやけにあっさり見せてくれるのね」

 

「あやつらはすぐに人のプライバシーを侵害するから好かん!!じゃがワシはな、純粋に歴史を学ぼうとする者は誰であろうと大歓迎なのじゃ!!」

 

なるほど、彼女なりに一応ポリシーがあったのね。

私がそんな事を考えていると、ふと私の視界に謎の甲冑が映る。

 

「さっきから気になっていたのだけれど、これは何かしら?」

 

「ああ、それはな。呪いの甲冑じゃ!」

 

「の、呪い…?」

 

「時は遡る事室町時代、とある落武者がおってのぉ。そやつは討死し晒し首となったんじゃが、その怨霊はまだ現世に留まっておってな。それはその落武者が当時使っていた甲冑じゃが、夜になると怨霊が乗り移って夜な夜な血を求めて徘徊するといわれておるのじゃ。ウヌも夜道には気をつけるのじゃぞ……」

 

そう言って古城さんは、自分の顔を下から懐中電灯で照らしながら不気味に語った。

私は呪いの類は一切信じないけど、そんな事言われたら急に薄気味悪くなってきたわね…

私がそんな事を考えていたその時、マナが古城さんの研究室の資料に勝手に触ろうとしていた。

 

「あ、ねえ古城ちゃんこれ何!?」

 

「あっコラ!!それに触るな貴様ァ!!」

 

「うわあ!?」

 

マナが古城さんの研究室の資料に触ろうとすると、古城さんは血相を変えてツルハシを振り下ろしてきた。

マナが反射的に避けると、研究室の床には古城さんが振り下ろしたツルハシが刺さっていた。

 

「ワシの神聖なる研究を穢そうとした罪は重いぞ!!この斬殺丸のサビにしてくれるわ!!」

 

嘘でしょ!?

資料に触ろうとしただけでそんな怒る!?

っていうか何が『純粋に歴史を学ぼうとする者は大歓迎』よ、言ってる事とやってる事が全然違うじゃない!

 

「もう、マナが勝手に触ろうとするからよ!」

 

「ごめんちゃあああ!!」

 

「とにかく逃げるわよ!」

 

「あっ、待てゴルァ!!逃がさんぞい!!」

 

私は、マナを連れて逃げるように古城さんの研究室を後にした。

というか逃げた。

 

「はあっ、はあっ…」

 

「もう…!寿命が縮んだかと思ったわ」

 

「ごめーん…」

 

全く、もうこんな思いは二度としたくないものだわ。

…さて、と。

あ。

いけない、もうそろそろ昼食の準備をしにいかなくちゃ。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

私が厨房に駆け込むと、食峰君がもう既に準備を進めてくれていた。

私、マナ、そして越目君は、食峰君のアドバイス通り昼食を作った。

今日の昼食のメニューはカレーライス…だったんだけど。

食峰君はどうもスパイスの調合が納得いかないみたいで、カレー作りに苦戦していた。

 

「んー…あークソ!!やっぱりどうしても何かが足んねえ!!こんな出来じゃ皆に食わしてやれねえよ!!」

 

食峰君は、カレーの鍋を前にうんうん唸っていた。

私からしてみれば、十分美味しいと思うけど…

これで皆に食べさせられないって、どんだけ食に対する拘りが強いのよ。

私がそんな事を考えていた、次の瞬間だった。

 

「「あ゛ぁあああ!!?」」

 

私と越目君は、思わず目を見開きながらマナの方を同時に振り向いて奇声を発した。

マナは、カレーの中に大量の明太子を投入していた。

私と越目君は、慌ててマナを止めた。

 

「ちょいちょいちょいちょい!!何入れてんだよ聲伽ちゃん!!」

 

「明太子。うまかよ?」

 

「そういう事聞いてんじゃねーんだよ!!」

 

「あんたねえ…好きなもの何でもかんでも入れりゃあいいってもんじゃないでしょ!」

 

「えー、だって…ウチじゃ小しゃか頃からこうやって…」

 

私と越目君が怒鳴りつけると、マナは唇を尖らせて言い訳をした。

もう、どうしてくれんのよ!!

せっかく食峰君が苦労して作ってくれたカレーが台無しに…

あっ、食峰君が味見した。

まずい、余計怒らせ……

 

「ん!!これだ!!」

 

「「え?」」

 

「これだよこれ!やっと納得いく味になったぜ!!ありがとな、愛!!」

 

「えっへん!」

 

「「…………」」

 

食峰君が満面の笑みを浮かべていると、マナは得意げに胸を張った。

結局、マナのやらかしによって完成した明太子カレーは、皆にも大好評だった。

…ホント料理って、何年も続けてても何をどう組み合わせたら美味しくなるかってわからないものね。

昼食が終わった後は、18時に集合する約束をして自由時間になった。

私は、まだ行っていなかった校舎の方に行ってみる事にした。

 

 

 

ーーー 玄関ホール ーーー

 

…それにしても、広いわね。

顔が映るくらい綺麗に磨かれた床の上に、人数分の下駄箱と傘立てが置いてある。

まあ中にはメダルが入ってたぐらいで、特に靴とか傘は入ってなかったんだけどね。

さらには、モノDJの気色悪い銅像と、丁度いい大きさと数のベンチ、トロフィーが並んだ棚が置いてあった。

ここでの調査はこんなものかしらね。

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

購買部の内装は、コンビニみたいな感じになっていた。

ざっと見た感じ、置いてあるのは軽食やお菓子、飲み物、文房具や生活雑貨といったところかしら。

あとは、ギャンブル用の台やコピー機、メダルの換金機、電気ポットなんかも置いてある。

……ん?

 

私は、絆創膏やヘアゴムなどの日用品が並んでいるコーナーに謎の箱が置いてあったのを見つけた。

拾い上げて箱を見てみると、『モノクマ印の0.01mm!』と書かれていた。

そっと箱を元の場所に戻す。

うん、私は何も見なかったわ。

 

私が次に目を向けた先には、一台のガチャガチャが置いてあった。

これが古城さんの言っていたモノモノマシーンとやらね。

一回引いてみようかしら。

持っていた分のメダルを必要な分だけ入れてハンドルを回すと、景品が出てきた。

 

これは…

随分とレトロなレコード盤ね。

でも私はレコードプレーヤーを持ってないし、正直あっても要らないのよね…

私は、景品のレコード盤の扱いに困りつつ、特に欲しいものもなかったので購買部を後にした。

 

 

 

ーーー 1ーA教室 ーーー

 

ここは私が最初にいた教室ね。

収納できるタイプの席が並んでいて、正面には黒板代わりのボードがある。

ここではメダルが何枚か落ちてた以外は特に収穫は無かったわね。

 

 

 

ーーー 1ーB教室 ーーー

 

隣の教室もほとんど同じだった。

何かあるんじゃないかってちょっとは期待してたんだけどね。

ここでもメダル以外の収穫は得られなかった。

 

 

 

ーーー 1ーC教室 ーーー

 

「……?」

 

C組の教室には、既に誰かいるみたいだ。

私は、C組の教室のドアを開けて中にいた人に声をかけた。

 

「あなたも探索中?」

 

私が声をかけて振り向いたのは秋山君だった。

 

「ああ、腐和さん。まあそんなところだよ。こんなところで会うなんて奇遇だね」

 

「ええ、本当にね」

 

あ、そうだ。

秋山君なら、このレコード盤喜ぶんじゃないかしら?

 

「秋山君。渡したいものがあるのだけど、いいかしら?」

 

「え?俺に?」

 

私は、モノモノマシーンで手に入れたレトロレコードを秋山君にプレゼントした。

すると秋山君は、凄い勢いで食いついてきた。

 

「えっ、これすごいレアなやつだよね!?本当に貰っちゃっていいの!?」

 

「どのみち私はプレーヤーを持ってないからね。価値がわかる人が持ってた方がいいんじゃない?」

 

「うわぁ嬉しいなぁ、ありがとう腐和さん」

 

良かった、喜んでくれたみたいだ。

私は、自由時間を秋山君と過ごす事にした。

C組の教室で、向かい合わせに座って一緒に話をした。

 

「秋山君はどうして音楽プロデューサーになったの?」

 

「俺の家は代々ミュージシャンなんだ。秋山楽音って知ってるかい?」

 

「ああ、世界的に有名な作曲家よね」

 

「俺の父さ!」

 

「あからさま…!」

 

「母も偉大なピアニストでね。そんな家に生まれたから、俺も妹も物心ついた時から音楽に触れて育ってきたんだけどさ。俺は言っちゃえば器用貧乏だから、何でもできるけど、特にこれで世界で活躍できるってジャンルが無かったんだ。妹はすぐに母と同じピアノの道に行くって決めてたけど、俺は何もなくてさ。そのせいか家での立場もあんまり良くなかったんだ。歌音とは幼稚園の頃からの付き合いで、小さい頃はよく俺が作曲した曲を歌音が歌ったりしてたんだけどさ。家で嫌な事があったら歌音に泣きついたりしてたよ」

 

突出した才能が求められる分野だと、何でもそれなりにできるのは何もできないのと一緒って事か…何だか酷な話ね。

それで彼も苦労してきたのね。

響さんとはその頃からずっと仲が良かったのか。

 

「自分だけ何もできる事が無くて何もかも嫌になっちゃってた時、歌音の歌を聞いて、電撃が走るみたいに閃いたんだ。俺の目指すべき道は、彼女を精一杯サポートする事なんだって。それで俺は、音楽プロデューサーになる事に決めたんだ。プロデューサーって音楽製作の幅広い知識と技術が必要でさ、それが俺の音楽に関する事なら何でもできる才能にピタっとハマったんだよね。俺が全部手がけた歌音のファーストシングルが世界中で大ヒットした時は、俺はこの為に生きてきたんだっていう気持ちで胸がいっぱいになった。俺の才能を発掘してくれた歌音には、感謝してもしきれないよ」

 

なるほどね。

何でもそれなりにできる事が、プロデューサーとしての才能を開花させたわけか。

そしてその才能を見つけ出してくれたのが響さんだったと…

素敵な話ね。

 

「そうだったのね。でも、一人で楽曲制作をするなんて大変じゃないの?本来は他の人に依頼するような役割も全部一人でやってるんでしょ?」

 

「そりゃあ忙しいよ。スケジュールは毎日詰め詰めだし、二徹三徹なんてザラにある事だよ。でも俺は、楽しいからやってるんだ。俺にとってはこの仕事が誇りだよ」

 

普通の人が到底できないような激務を楽しんでやるところが、彼の超高校級たる所以なのでしょうね。

 

「なるほどね。話してくれてありがとう」

 

「ねえ、ところでさっきの話の続きなんだけど…」

 

秋山君は、子供のように無邪気な笑みを浮かべながら、仕事の話を何時間にもわたってしてくれた。

正直、聞いてるこっちが疲れてくるわね…

話してる間に自由時間終わっちゃったし。

 

「……というわけで、これからの楽曲制作の技術は、大いに進歩の余地があるという話なんだけど…どうだい?よくわかったかな?」

 

「ああ、うん。よくわかったわ」

 

何だろう、勢いが凄すぎて話の内容が全然頭に入ってこなかったわ。

 

「ああ、もうこんな時間。じゃあ行こっか。話に付き合ってくれてありがとう」

 

とにかくマシンガントークが凄かったわね。

でも秋山君と仲良くなれたみたい。

 

《秋山楽斗との好感度が1アップしました》

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂には既に聖蘭さんがいて、食堂の掃除をしていた。

厨房では、食峰君、小鳥遊さん、玉越さんの三人が夕食の準備をしてくれている。

 

「あら、ご機嫌よう。腐和様、秋山様。今食堂を掃除しておりますので、しばらくお待ちください」

 

「俺も手伝うよ」

 

「そうね。私も手伝っていいかしら?」

 

「よろしいのですか?」

 

「ああ。その方が早く終わるだろ?」

 

「そうですわね。でしたらお言葉に甘えさせていただきますわ」

 

私と秋山君は、聖蘭さんの食堂の掃除を手伝う事にした。

思ったより早く終わったわね…

私が食器を洗いながら待っていると、マナ、知崎君、古城さんが走りながら入ってきた。

しばらくして時間より早く越目君と響さん、時間通りに加賀君、館井君、闇内君が食堂に入ってきた。

5分ほど遅れて目野さん、10分遅れてネロが来て、ようやく16人全員が揃った。

 

「いやあ失敬!!また遅刻しました!!」

 

「お前らはいちいち神経質すぎんだよ」

 

この二人は本当に反省しないわね。

加賀君ですら今回はちゃんと時間を守ったというのに…

 

「よし、じゃあ皆揃ったしご飯にしようか」

 

今日のご飯は食峰君の作った豚の生姜焼きに高野豆腐の筑前煮、小鳥遊さんの作ったカブの味噌汁とおひたし、玉越さんの作った炊き込みご飯にワカメとキュウリの酢の物といった和食の献立だった。

今日の夕食も本当に美味しかったわ

明日は私が朝食当番だから、早起きしなきゃ。

 

食事の後は皆で片付けをして、大浴場の風呂に入って身体の疲れを癒した。

お風呂で温まった後は、部屋に戻ってベッドに潜り込んで本を読んだ。

今日も疲れたわね…

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『『ああロミオ、あなたはどうしてロミオなの!?』…いやぁー、何とも聞き慣れた名台詞ですなぁ』

 

『ギャハハハ!!シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』は恋愛悲劇の定番中のド定番だよなぁ!ところでテメェら、『ロミオとジュリエット効果』って知ってっか?』

 

『ああ、障害がある恋の方が盛り上がるっていうアレでしょ?』

 

『YEAH!ちなみにこれはアメリカの心理学者、リチャード・ドリスコールがカップルの調査結果から命名したらしいぜ!いやぁ〜、若え男女が障害を乗り越える為恋に燃え上がる!いいねえそういうの!そのまま炎上しちまえヒャッハー!!』

 

『うぷぷぷ。オマエラも、もし目の前に応援したいカップルがいたら、プレゼントにファイアーボールをプレゼントしてあげるといいよ!きっとアッツアツに燃え上がってくれるだろうね!』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り16名

 

 

 

 

 



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(非)日常編④

三日目。

 

「ふぁあ……」

 

私は、生徒手帳のアラームの音で目を覚ました。

生徒手帳で時間を確認すると、5時30分。

今日は私が朝食当番だったので、寝過ごさないよう生徒手帳のアラーム機能を使ったのだ。

まだ夜時間中だからシャワーが使えないのよね…

朝シャワー浴びてから勤務する事が多いから、朝のシャワーを浴びられないのは地味に不便だわ。

私は、あのクマ共に心の中で悪態をつきつつ、身支度をして食堂に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に行くと、既に食峰君と玉越さんが朝食を作っていた。

 

「おはよう」

 

「やあ、おはよう緋色」

 

「おはよう!!」

 

私が挨拶をすると、食峰君と玉越さんが返してくれた。

朝食当番の集合時間は6時だったはずだけど…

二人とも早いのね。

さてと、私も早いとこ手伝わないと。

まずは手を洗って……

……ん?

水が出ない。

私が何度も蛇口をひねっていると、食峰君が声をかける。

 

「ああ、言い忘れてたけど夜時間中は水が出ないらしいぜ。つーわけだから、悪いけどそこのペットボトルの水使ってくれ」

 

そう言って食峰君は、2Lのペットボトルが何本か並んで入っている『水道水』と書かれたダンボールを指差した。

ホント、何で夜時間中は水を使えない仕様にしてるんだか。

私は、この学園のルールに少し不満を抱きつつ、仕方なくペットボトルの水を使って手を洗った。

 

ええと、今日のメニューは…

和食のメニューがおにぎり、卵焼き、タマネギの味噌汁、金平ごぼう、カブの漬物。

洋食のメニューがミックスサンド、ポテトサラダ、ミネストローネ、ササミのソテー、フルーツゼリー。

今日も豪華なメニューね。

私が準備をしようとすると、いつの間にか闇内君が隣に現れた。

 

「うむ。拙者が最後でござったか。三人とも早いでござるな」

 

「おう!!おはよう!!」

 

「おはよう忍」

 

「………おはよう」

 

…うわ、いつの間に?

私、正直彼はちょっと苦手なのよね。

だってすぐセクハラしてくるし。

 

「腐和嬢に玉越嬢、今日も麗しく拙者は何よりでござるよ。ところで今日の下着の色は何色…「くだらない事言ってないでさっさと飯作りな!」

 

闇内君がしれっとセクハラ発言をしてくると、玉越さんが注意をしてくれた。

何だか最近私が注意しても全然反省しないから、正直彼女の存在はありがたいわね。

…っと、いけないいけない。

まずはメニューの料理に必要な野菜を切らないと。

 

私は、ポテトサラダとサンドイッチに必要な野菜を全て切っていった。

キュウリと玉ねぎは塩を振って水気を切り、切ったジャガイモとニンジンを茹で、ニンジンはいちょう切りに、ジャガイモは熱いうちに潰す。

そこまでできたら材料を全部ボウルに入れて、調味料を入れて混ぜる。

お皿にレタスを盛りつけて、ボウルの中のポテトサラダをディッシャーで球形にして盛り付け、そこにプチトマトもトッピングする。

これでポテトサラダは完成。

 

次はサンドイッチ作りだ。

茹で卵を潰してマヨネーズで和え、ツナも油を切ってマヨネーズで和える。

食峰君が焼いておいてくれた食パンを切って、卵、ツナマヨ、レタスとハムとチーズをそれぞれパンで挟んだら3種類のサンドイッチの完成。

 

あとは食峰君が昨日作って冷やしておいてくれたゼリーをガラスのお皿に盛り付ける。

食峰君はミネストローネとササミのソテーを作って盛り付けてくれていたから、これで洋食セットの完成だ。

私達が洋食セットを作り終えると同時に、玉越さん達は和食セットを作り終わったみたい。

私達が朝食を作っている間に秋山君、小鳥遊さん、越目君、聖蘭さんが来てくれて、食堂の掃除や食器のセットをしてくれた。

 

案の定遅刻してくるメンバーがいたけど、今日も無事に16人で朝食を食べる事ができた。

個人的には、大好物のミネストローネを飲んでいた小鳥遊さんが「んん!」と言っていたのが可愛かった。

ちなみに私は昨日洋食セットを食べたので、今日は和食にしてみた。

秋山君も私と同じらしく、今日は和食セットを食べていた。

 

「ん、今日の卵焼き美味いね。誰が作ったの?」

 

「あたしだよ」

 

「へえ、道理で。おとつい一緒に作ってた時手際良かったもんね」

 

「あ、あたしは満の指示通り作っただけだし」

 

「それにしたってこんなに上手く焼けるのはすごいよ。やっぱり毎日家事やってるだけあるよ」

 

「いや、それは他にやる人がいないからやってるだけで…」

 

秋山君に褒められた玉越さんは、照れ臭そうに謙遜していた。

何かイケメン二人が楽しそうに話してるの見ると微笑ましいわね。

そういえばこの二人、初日から一緒に行動してたりしてたし、結構仲良いのかしら。

 

「何か、こういうのいいわね」

 

「ね」

 

私がつい本音をポロっと漏らすと、隣の席の小鳥遊さんがもぐもぐしながら同意してくれた。

小鳥遊さんとしては、やっぱり親友がここの仲間と仲良くしているのは嬉しいのかしら。

 

「ご馳走さまでした」

 

今日も美味しかったわ。

和食セットを作ってくれた食峰君、玉越さん、闇内君には感謝しなきゃね。

…さてと。

13時の昼食まで時間あるし、校舎内を探索しに行きましょうか。

 

 

 

ーーー 謎の赤い扉 ーーー

 

まずは昨日から気になってたこの赤い扉ね。

押しても引いても開かない。

叩いたりしてみても、ビクともしない。

でもその代わり、近くにメダルを落ちているのを見つけた。

昨日の探索で拾ったメダルが溜まってきたし、また購買部に行ってみようかしら。

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

購買部に行った私は、昨日と今日の探索で集まったメダルを使ってモノモノマシーンを引いた。

出てきたのは、女子バレー選手のサイン入りのバレーボールだ。

うーん、正直要らないのよね。

私はそこまでバレーに詳しいわけじゃないし。

誰か欲しそうな人がいたら、プレゼントしてみようかしら。

自販機の近くとゴミ箱の中にメダルが落ちていた事以外は特に収穫もなかったし、ここにはもう用は無さそうね。

 

 

 

ーーー 体育館前ホール ーーー

 

体育館前ホールには、冷水機や自販機、トロフィーが並んだ棚、スケジュールが書かれたホワイトボードなどが置いてあった。

大体昨日調べた教室くらいの広さがあり、目の前には体育館の扉がある。

よく調べたら、棚の裏と冷水機の下にメダルが入っていた。

何か、こんなところゴソゴソしてたら何かやましい事してるみたいで嫌な気分だわ…

そんな事を考えつつホール内を隈なく探したけど、メダル以外の収穫は特に無かった。

うーん、ここで調べられる事はもう無さそうね。

 

 

 

ーーー ロッカールーム ーーー

 

ロッカールームは男子と女子に分かれていて、電子生徒手帳と同じ性別のロッカールームにしか入れないようだ。

ロッカールームには、ロッカーと着替え用のベンチが並んでいる以外特に何も無かった。

ロッカーの中にメダルが落ちていたので一応回収しておき、体育館の探索をした。

 

 

 

ーーー 体育館 ーーー

 

体育館は、初日に調べた時と特に変わった様子はなかった。

強いて言うなら、加賀君の落書きが綺麗に消されているくらいかしら。

体育館の方は特にこれといった収穫はなかったので、体育館倉庫の方を見てみた。

体育館倉庫には、あらゆる屋内スポーツに対応したスポーツ用具が所狭しと置かれている。

私が体育館倉庫に入ると、既に先客がいた。

玉越さんだ。

 

「おっ、緋色!」

 

「玉越さん、何をしてるの?」

 

「体育館を調べてるんだよ。脱出の手掛かりが無いか探してるのさ。こういうのって、意外なところに隠されてたりするものだからね」

 

「なるほどね……」

 

さすが玉越さん、抜け目ないわね。

あ、そうだ。

玉越さんなら、さっきガチャガチャで引いたボール、喜んでくれるかしら?

 

「玉越さん」

 

「ん、何?」

 

「渡したいものがあるんだけど、今いいかしら?」

 

「えっ、あたしに?」

 

私は、さっきのバレーボールを玉越さんにプレゼントした。

玉越さんは、そのバレーボールのサインを見るなりいきなり食いついてきた。

 

「えっ、緋色!!あんたこれどこで手に入れたの!?」

 

「購買部のモノモノマシーンよ。…えっ、このバレーボール、そんなにすごいものなの?」

 

「すごいも何も、このボール、何百年も前のオリンピック選手のサイン入りボールだよ!?こんなお宝、貰っちゃっていいの!?」

 

そんなにすごいものだったのね…

とりあえず玉越さんに喜んでもらえたみたいで良かった。

私は、自由時間を玉越さんと過ごす事にした。

体育館の端のベンチで、二人で横並びに腰掛けて一緒に話をした。

 

「玉越さんはどうしてバレーボール選手になったの?」

 

「まあそりゃあ、バレーが好きだからだよ。……って言いたいところなんだけどさ。ここだけの話、実はそんなに真っ当な理由じゃないんだよね」

 

「そうなの?」

 

「………お金」

 

「え?」

 

私が尋ねると、玉越さんは恥ずかしそうに小声で答える。

 

「実はあたしさ、お金が欲しいからバレーボール選手になったんだ。な?不純だろ?」

 

「いえ…生きていくのにお金は必要だし、それにバレーボールを楽しんでやってるのは事実なんでしょ?別に不純だなんて思わないわよ」

 

「ありがとね。あんまりこういう事言わない方がいいんだけど…あたしの家さ、貧乏なんだ。お母さんが病気で亡くなって、お父さんも友達に借金押し付けられちゃってさ。何とか借金返そうと頑張って働いてくれてたけど、もう疲れちゃったみたいでさ。あたし達を置いて自殺しちゃったんだ」

 

「……それはつらかったわね」

 

「ああ。つらかったよ。でも弟達の為にも、あたしが折れるわけにはいかなかった。だから得意分野の球技大会で勝ちまくって、一円でも多く稼ぐ事にしたんだ。そこからは、勝ち続けるために必死だったよ。あたしにとって、優勝以外はゴミ同然だったから。いつか負けるんじゃないかって思うと怖くて、負ける怖さを無理矢理笑い飛ばしてごまかしてたんだ」

 

玉越さんは、固く拳を握りしめながら言った。

その表情からは、彼女が優勝し続ける為にどれほどつらい努力をしてきたのかが見て取れた。

彼女のインタビューの時の笑顔は、敗北への恐怖に押し潰されそうになる自分を無理矢理奮い立たせるためのものだったのね。

私が彼女の壮絶な境遇に言葉を失っていると、玉越さんは笑顔を浮かべながら言った。

 

「でもさ。応援してくれる弟達や、あたしを支えてくれるチームメイトがいてくれたおかげか、やってるうちに本当に楽しくなっちゃって。最初はお金の為に始めた事だったけど、結局は自分が楽しんでやるのが一番だって気付いたんだよね。だからさ、今じゃもうバレーはあたしの人生そのものなんだ」

 

「良かったわね。心の底からバレーを楽しめるようになって」

 

「まあな。あたしを応援してくれた弟達や一緒に戦ってくれたチームメイトがいなかったら、あたしはいつまでも前に進めなかったと思う。あいつらには、本当に感謝してるよ」

 

そう言って玉越さんは、無邪気な笑みを浮かべた。

恐怖をかき消すための笑顔じゃなくて、心からの笑顔。

苦労ばかりだった彼女の人生がようやく報われたのだと思うと、私は胸が熱くなった。

私は、玉越さんの事がもっと知りたくなって、さらに質問をした。

 

「ちなみに兄弟は何人いるの?」

 

「弟が三人だよ。三人とも小学生なんだけど、本当にしっかりしてくれてるんだ。あいつらの為にも、早くここから出る方法を見つけなきゃ」

 

「…そう。家族を支える為にそこまで頑張れるなんて、立派な事だと思うわ」

 

「えへへ、そうかな?」

 

私が率直な意見を言うと、玉越さんは照れ臭そうに頭を搔いた。

玉越さんと仲良くなれたみたい。

 

《玉越翼との好感度が1アップしました》

 

玉越さんと交流を深めた後、体育館の探索をしていると、ちょうど食堂に向かうのにちょうどいい時間になった。

手伝いもあるし、そろそろ行った方が良さそうね。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に向かうと、食峰君、小鳥遊さん、秋山君が昼食を作ってくれていた。

早めに来た私、玉越さん、越目君の三人で昼食の手伝いをした。

ちなみに越目君はというと、玉越さんと一緒にテーブルセッティングをしていた。

 

「ねえ、玉越ちゃん。この花はさ、こういう風においた方がいいと思うんだけど」

 

「おお、いいじゃん。あんたセンスいいね」

 

「でしょ?そんでさ。オレちゃんのメイクに興味ない?キミ、結構素材がいいからメイクしたら絶対化けると思うんだよね。良かったら教えてあげるけど」

 

「あっ…じゃあお願いできる?」

 

玉越さんが珍しく越目君のお誘いを受けると、越目君は有頂天になって大喜びした。

でもお生憎様、玉越さんの態度からして多分越目君の事は面白い友達くらいにしか思ってないのよね。

まあそれをここで言うのも酷だし、黙っておきましょ。

 

しばらくすると、全員が食堂に集まってきた。

今日の昼食のメニューは、パエリア、マリネ風サラダ、オニオンスープ、ジャガイモとキノコのアヒージョ、パンナコッタだった。

昼食の後は、今日の調査の中間報告をした。

今日も皆特に収穫は得られなかったみたい。

まあ3日でそんな手がかりが見つかるなら苦労はしないわよね。

…さて、まだ校舎内の調査をしていない場所を見に行かなきゃ。

 

 

 

ーーー 保健室 ーーー

 

保健室の中からは、薬品の匂いがした。

保健室には看病用のベッドが3対置かれていて、全てがカーテンで仕切られている。

誰もいない養護教諭用の椅子には、モノクマの気色悪いオブジェと一緒に医療関係の本や見たことの無い観葉植物が置かれていた。

とりあえず、真っ先に目に留まった棚の中を調べてみる。

薬品や医療器具が置いてある。

こっちの薬品は…うわっ、結構毒薬とかもあるわね。

あと、強力な睡眠薬や具体的には言わないけど危ない薬、媚薬なんてものもある。

 

こっちの箱には何が入ってるのかしら?

私は、モノクマ印が描かれた箱を調べてみた。

中には、まあ具体的には言わないけど、大人が使う方のオモチャが入っていた。

私は、箱を元の場所に戻して棚の引き戸をそっと閉めた。

私は何も見なかった。

見なかったのよ。

 

さ、こっちのロッカーの方を調べましょう。

…ん?

何かしらこれは。

『お医者さんなりきりセット』と書かれてるけど…

見たところコスプレグッズのようね。

男子用は白衣と額帯鏡、女子用には露出度が高めのナース服と網タイツが入っているみたい。

ちゃんと人数分あるし…しかもご丁寧にサイズが全員の体格に対応してるわね。

あいつらのこういう無駄な丁寧さは何なんだろう…

 

ここにも、メダルが落ちていた以外の収穫は特に無かった。

ここで調べられる事はもう無さそうね。

そろそろメダルも溜まってきたし、購買部で買い物でもしようかしらね。

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

私は、購買部で飲み物とお茶菓子を買った。

まだメダルが残ってるわね…

せっかくだし、もう一回モノモノマシーンを引いてみようかしら。

 

早速、マシーンにメダルを入れて遊んでみる。

出てきたのは、金色のカラオケマイクだった。

これも正直要らないわね。

何だろう、何か私ことごとくガチャ運無い気がするんだけど。

これも欲しい人にあげようかしらね。

ええっと、まだあと見てないのは視聴覚室だったかしら?

 

 

 

ーーー 視聴覚室 ーーー

 

視聴覚室の中は、ディスプレイ付きの机が並んでいて、正面にスクリーンが設置されていた。

天井にはプロジェクターが取り付けられていて、正面のスクリーンに映像を映し出せるようになっているらしい。

そして視聴覚室には、既に先客がいた。

響さんだ。

 

「響さん、何してるの?」

 

「ハァ!?見りゃわかんだろ脱出の手がかり探してンだよ!!寝ぼけてんのかテメェ!!」

 

「あっ、ごめんなさい」

 

そりゃそうよね。

今のは聞き方がちょっとまずかったかしらね。

 

「響さん」

 

「アァ!?まだ何かあんのかよ」

 

「あなたにプレゼントしたいものがあるんだけど」

 

そう言って私は、響さんに金ピカのカラオケマイクをプレゼントした。

すると響さんは、先程までのトゲトゲさせた態度を一変させて固まった。

 

「っ………!!あっ、えっ、その…」

 

響さんは、私からマイクを受け取ると、しどろもどろになっていた。

表情から察するに、プレゼントを気に入りはしたけど、今までキツく当たっていた相手にいきなり優しくされて困っている…ってところかしら。

 

「喜んでくれたみたいで良かったわ」

 

「よ、喜んでなんかねえよクソが!違っ、えっと、これはその…!」

 

うん、この反応は喜んでるわね。

思ったより可愛いとこあるじゃない、この子。

私は、自由時間を響さんと過ごす事にした。

視聴覚室の一番後ろの席で、二人で横並びに腰掛けて一緒に話をした。

 

「響さんはどうしてボーカリストになったの?」

 

「オレの親父はミュージシャンでよ。親父が一生懸命歌ってる姿を見て育ったから、オレも物心ついた時から歌手になるのが夢だったんだ」

 

「そうだったのね」

 

「…けど親父は全然売れてなくてさ。そんでお袋に愛想尽かされて離婚したんだ。お袋も兄貴も親父の事嫌ってて、オレにはあんな風になるなっつってるけど、オレは親父が弾き語りしてるのを見るのが好きだった。オレは、親父に戻ってきてほしくて歌手になったんだ。今は離れ離れになってどこにいるかもわかんねえけど、オレが歌手として成功して世界中に知れ渡れば、親父がどこで何をしてたってオレを見てもらえるからよ。親父がいつでも戻ってこれるように、オレの歌で世界中に『オレはここにいるんだ』って知らせてやるんだ」

 

なるほど……

響さんが歌手になったのは、自分に夢を与えてくれたお父さんを連れ戻す為だったのね。

私は物心ついてすぐに母さんがいなくなってしまったから、お父さんがいなくなってしまった彼女の寂しさが少しわかる気がする。

 

「でもここまで来るのは、オレの力だけじゃ絶対無理だった。どれもこれも全部楽斗とバンドメンバーの皆のおかげだよ。楽斗は、幼稚園の頃からずっとオレの事を支えてくれた。オレが歌手になるっつっても、他の奴等とは違ってバカにしなかった。バンドメンバーの皆は、いつだってオレと一緒に一つの音楽を作り上げてきた。オレにとっちゃ、アイツらは本当の家族みてェなモンなんだよ」

 

「響さん…」

 

ここにきて、ようやく彼女が初めて会った時に苛立っていた理由がわかった。

彼女は、何も怒りたくて怒ってるんじゃない。

心配で仕方ないんだ。

家族も同然のメンバーといきなり離れ離れになって、心配で、不安で、今にも押し潰されそうだった。

彼女の怒りは、そういう大切な人を想う感情の裏返しだったのね。

私は、ほんの少しでも、今も不安を抱えている彼女の力になってあげたいと思った。

私は、しばらく響さんと話す事にした。

 

「響さんのメンバーは、全員未来ヶ峰学園にスカウトされる予定だったのよね?」

 

「ああ。ベースの奏は、とにかく面白え奴でさ。ドラムの天鼓はマイペースで、シンセの七音はクールで、ギターの花音と音花は双子のギタリストなんだ。アイツらがいりゃあ、今頃テメェらとも楽しくやれてたはずなんだけどな」

 

「大丈夫よ。皆で協力すれば、きっと外に出られるわ。外に出たら、改めてあなたのメンバーを紹介してくれる?」

 

「………考えとく」

 

私が尋ねると、響さんは若干照れ臭そうに頭を掻いた。

どうやら、響さんと仲良くなれたみたいね。

 

《響歌音との好感度が1アップしました》

 

響さんと自由時間を過ごした後は、視聴覚室を念入りに探索した。

でも、やっぱりメダル以外の収穫は無かった。

もう夕食の手伝いの時間になってしまったので、諦めて食堂に向かう事にした。

確か今日の夕食の当番はマナ、越目君、館井君だったわよね?

何を作ってるのかしら。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

私が食堂に行くと、香ばしいいい匂いがした。

この匂いはもしかして…

 

「あ、緋色ちゃん!おかえり!今な、ギョーザ作っとーところと!」

 

マナはちょうど今、ギョーザの餡を皮で包んでいる最中だった。

やっぱり。

食堂に入った時、ギョーザのいい匂いがしたのよね。

ところで…

 

「…ねえマナ。このギョーザ、何か変な匂いがするんだけど。何か変なもの入ってないでしょうね?」

 

「ああ、それ?納豆ギョーザ。うまかよ?」

 

「こっちは?」

 

「塩辛ギョーザ」

 

「こっちは?」

 

「あんこ餅ギョーザ」

 

終わった……

こんなの皆の前に出せないに決まってるわ。

やっぱりマナは厨房に立たせない方がいいんじゃないかしら。

っていうか食峰君、あなた何でこの子を止めないのよ。

 

私がマナの独特のチョイスに絶望している間にも、他の皆が次々と食堂に集まってきた。

どうやらギョーザの香ばしい匂いに釣られたらしく、普段は時間を守らないメンバーもこの日だけは時間通りに来ていた。

言えない…マナのせいで中の具がカオスな事になっているだなんて…!

…と、思っていたのだけれど。

 

「あれ?美味しい…」

 

「やろ?」

 

実際に食べてみるとけっこう美味しかった。

マナの手料理って、食べてみたら意外と美味しいんだけど、見た目のインパクトが強すぎて一口目がすごい勇気が要るのよね…

食峰君の作った麻婆豆腐、越目君の作ったトマトとワカメの冷菜、館井君の作った玉子スープも美味しかった。

夕食の後は、皆で後片付けをして、今日の最後のミーティングをした。

 

「うーん、今日も皆あまり有力な情報は得られなかったみたいだね」

 

「ホント不甲斐ないわ…ここまで探していて何も手掛かりが見つからないなんて事、初めてよ」

 

ここに来てからずっと誰とも連絡取れないし、これといった収穫も何も無い。

警察官として情けないわ。

私が落ち込んでいると、玉越さんが皆に声をかけた。

 

「まあでも諦めずに手がかり探してこうよ。今は無理でもさ、こうやって皆で協力していけばいつかきっと出られるよ」

 

「『いつか』って、いつまで続けりゃいいんだこんな事?それに出られるっつー根拠は?てめぇの勝手な理想論に俺を巻き込まないでもらえるか?Miss玉越」

 

「そうだね、理想論かもしれない。でも、だからってあたしらはモノクマ達に屈しちゃいけないんだよ。ここで諦めたら、それこそ脱出は絶望的になる。わかるだろ?」

 

玉越さんは、こんな時にも落ち込んでいる私達を勇気づけてくれた。

私には、そんな彼女が輝かしく見えた。

すると今度は、マナが立ち上がった。

 

「玉越ちゃんの言う通りだよ!うちらこげん仲良うなれたけん、絶対何とかなるよ!……根拠はないけど!」

 

…うん。

最後の一言がいらなかったけど、気持ちは嬉しいわ。

 

「フン、くだらねぇな。帰る」

 

そう言ってネロは、自分の部屋に戻っていってしまった。

すると加賀君も自分の席から立ち上がる。

 

「空気を読まないようで悪いが俺も戻らせてもらう。正直これ以上ここで話していても、生産性のある話題が出てこなさそうだからな」

 

加賀君も、自分の部屋に戻っていってしまった。

 

「んだよあいつら!感じ悪いな!」

 

「ねー!不思議不思議!」

 

越目君と知崎君は、二人に対して文句を言っていた。

 

「しょうがない、今日のミーティングはここまでにしようか。皆、何か新しい発見があったらどんなに小さな事でもいいから教えてね」

 

そう言って玉越さんは、席から立ち上がった。

ミーティングはお開きとなったわけだけれど…これからどうしよう?

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

私はお風呂でゆっくりした後、気分転換に購買部を訪れた。

ここにもゲームがあるみたいだから、ここで気分転換をするか。

私は、購買部のルーレットで遊んでみた。

 

……うーん、ダメか。

結局勝ちはしたけど、勝ち分はたったメダル3枚ぽっちにしかならなかった。

 

そういえばあのガチャガチャ、どんなラインナップなのかしら。

バレーボールなんてものも入ってたけど…

私は、手帳の購買部アプリでガチャガチャのラインナップを調べてみた。

ホントにいろいろあるわね。

あ、食べ物もあるんだ。

紅茶のバラエティパックとか欲しいわね。

あれ?

脱出ボタンなんてものもある。

もしかして、ここから出られるのかしら。

………いや、そんなわけないか。

 

そんな事を考えていると、マナが私に話しかけてくる。

 

「緋色ちゃん、何しよーと?」

 

「…ああ、モノモノマシーンのラインナップを調べていたのよ。どんなものが入ってるのか気になって」

 

「ふーん…」

 

私が答えると、マナは面白そうに私の画面を覗き込んだ。

興味あるなら自分で調べればいいのに…

 

「あ!脱出ボタンがある!もしかしてここから出らるーとかな!?」

 

「そんなわけ……」

 

「ちょっとやってみてよか!?うち、今ばりつきよー気がするっちゃん!」

 

「いいけど…あなた、メダルは持ってるの?」

 

「うん!ほら!」

 

「!?」

 

マナは、満面の笑みを浮かべながら大量のメダルを見せてきた。

 

「あ、あなた、こんな大量のメダル一体どこから…!?」

 

どうやったらこんなに大量のメダルが手に入るわけ!?

施設内に落ちてるメダルなんて、せいぜい一ヶ所に二、三枚くらいのはずでしょ!?

ま、まさか、変な事して手に入れたメダルじゃないわよね…?

 

「ここのゲームで勝ちまくって貯めたっちゃん!うち、運使うゲームは得意やけん!」

 

「でもその割にはついてない事が多いわよね」

 

「うちな、ついとー事とついとらん事が交互に来る体質たいね。よか事が起こるとそん後必ず悪か事が起こるし、悪か事が起こるとそん後必ずよか事が起こると」

 

つまり、幸運を不運で、不運を幸運で帳消しにする事で、全体的に上手い事バランス取れてるって事ね。

何だかよくわからないけど、すごい才能ね…

 

「じゃあ早速いくよー!」

 

マナは、躊躇なくメダルをマシーンに入れて遊んだ。

中からは、ダイヤモンドで豪華に装飾された首飾りが出てきた。

ええっと…それは確か『マリーアントワネットの首飾り』ね。

さすが【超高校級の幸運】…もし本物なら数十億は下らないお宝を一発で…

 

それからというもの、マナは次々と景品を引いていった。

蝶ネクタイ型変声機、アンキパン、キューピッドの弓矢、金のなる木の実…普通の人なら喉から手が出る程欲しがる景品を、マナはどんどん引いていく。

この子、どれだけ運を溜め込んでたのかしら。

 

「よし、今日はこれくらいにしとこうかな」

 

そう言ってマナがホクホク顔で部屋に戻ろうとした、その時だった。

突然蝶ネクタイ型変声機が、煙を上げバチバチと火花を散らして壊れた。

さらにはアンキパンはよく見るとカビだらけで、首飾りはもう値段がつかないくらいボロボロになっていて、意中の相手に恋をさせるキューピッドの弓矢は包みを開けた瞬間すぐ壊れて、金のなる木の実は既に腐っていて変な匂いがした。

それを見たマナは、顔を引き攣らせていた。

 

「……嘘やろ?」

 

「まさか引いた景品全部不良品だったとはね…」

 

「わーん!!うちのメダル100枚がぁぁぁ!!」

 

うん、ご愁傷様。

まさに柳の下に泥鰌ってやつね。

 

「まあでもこれでチャラになったわけだし、またいい事あるわよ」

 

「そうやな…って、うわぁあ!?」

 

マナはいきなり何もないところで転び、その拍子に服がはだけて下着が丸見えになり、さらには景品の金のリボンが身体に絡まってしまった。

どうやったらそんな芸術的な転び方ができるわけ!?

 

「わーん、何でこうなると〜!?」

 

知らないわよ…

とりあえず男子が来る前に助けてあげた方が良さそうね。

私がマナを助けると、マナはあっけらかんとして笑った。

 

「今日は災難やったなー」

 

「……そうね」

 

「じゃあ、また明日」

 

そう言ってマナは、自分の部屋に戻っていった。

…はあ。

今日も色々と大変な一日だったわ。

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『んで、織田信長はイチゴパンツを穿いて本能寺で坊主とティーパーティーしてた最中に明智光秀に攻め入られましたと!だから本能寺の変は『イチゴパンツの本能寺』って呼ばれてるんだZE!っとテメェら!ここテストに出るからちゃんと復習しておけよ!』

 

『はーい!』

 

『ああ、そうそう。そういや、テメェら知ってっか?日本で初めて女物のパンティを穿いたのは豊臣秀吉だって言われてるらしいぜ!ここもテストに出るから覚えとけよ!』

 

『せんせーせんせー!』

 

『ヘェイどうしたモノクマボーイ!』

 

『子供はどうやったらできるんですかー!』

 

『ダミッ!?それはけしからん質問だぜバッドボーイ!何がけしからんって、社会科の授業中に保健体育の質問すんじゃねーYO!餅は餅屋って言葉を知らねーのかマザーフ●ッカー!罰として、テメェは公開ディープキスの刑だ』

 

『えー、この時のキッスによってエーテルが化学反応を起こしてシャイボーイなモノクマ少年のニューロンがバグってしまい、不埒な電波を発信してしまった結果起こったのが、第三次世界大戦でしたとさ!でめたしでめたし!』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り16名

 

 

 

 

 



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(非)日常編⑤

はい。ついに死にます。







四日目。

この日は早く起きたので夜時間が終わるまでミステリーを読んでいると、あの忌々しいモノDJの放送が響き渡る。

 

『ヘェイグッッモォォォニン!!ゴミクズ共ォォォ!!!朝の7時をお知らせするぜイェア!!!今日も張り切ってけェ!!!』

 

うるさいわね……毎朝毎朝。

身体に悪いったらありゃしない。

私はモノDJのうるさい放送にウンザリしつつ、朝食を食べに食堂に向かった。

私が食堂に行くと、既に今日の当番の越目君、小鳥遊さん、館井君が準備をしていた。

待っているだけなのも何なので、テーブルセッティングを手伝う事にした。

私が準備を手伝っていると、秋山君が玉越さんに声をかける。

 

「あれ?玉越さん、今日は化粧してるんだね」

 

「ああ、これ?粧太に教えてもらったんだ。どう?似合ってるかな?」

 

「うん、すごく良く似合ってると思うよ」

 

「へっ!?そ、そう?ありがとう…」

 

秋山君がさわやかな笑顔で話しかけると、玉越さんは照れ臭そうに頬を掻く。

多分、玉越さんは秋山君の事が好きなのね。

私が二人が仲睦まじそうにしているのを微笑ましく思いつつ朝食の準備をしていると、他の皆もゾロゾロと集まってくる。

時間になっても来なかった朝に弱いメンバーを起こしに行き、全員が揃ってから朝食を食べた。

私が選んだ洋食セットは、食峰君が作ったフレンチトーストと鶏肉のコンフィ、小鳥遊さんが作ったクレソンとフルーツのサラダにキャベツのスープ、それからデザートの水切りヨーグルトだった。

食事の後は聖蘭さんが淹れてくれたお茶を飲んでまったりしつつ、朝のミーティングを開いた。

 

「それじゃあミーティングを始めようか」

 

「あちっ」

 

私達が情報を共有している間、加賀君は熱いお茶に苦戦していた。

話し合いの結果わかった事は、今回も皆新たな収穫は無かったという事だった。

 

「結局あれから収穫は無し、か……」

 

「いつまでこんな事続けてりゃあいいんだよ!?」

 

「全くじゃ!!こんな窮屈な暮らしはもう嫌じゃ!!」

 

「そうですか?私は機械ちゃんがあればどこでも快適に過ごせますけどね!」

 

「拙者も女子を間近で眺められるのであれば本望でござる」

 

「そりゃあまああんたらはね」

 

「困りましたわね…今こうしている間にも救いの手を求めている方が大勢いらっしゃるというのに、何もして差し上げられないなんて…」

 

4日目に突入して、既にここの暮らしに不満を抱き始めた人もいれば、すんなり適応できたり、むしろ最高峰の教育機関の設備に大喜びしている人もいた。

 

「なあ、腐和ちゃん…何とかなんねえの?」

 

「外部と連絡取れない事にはどうにもね…警察だって万能じゃないのよ」

 

「フン、使えねえな」

 

私が落胆して言うと、ネロがここぞとばかりに悪態をつく。

今回ばかりは事実だから何も言い返せないわ…

私が落ち込んでいると、マナが席から立ち上がって怒鳴った。

 

「やめてそういう事言うん!緋色ちゃんだってうちらのために頑張って手掛かり探してくれとーっちゃん!」

 

「いいのよマナ。事実だもの」

 

マナが私の為に怒ってくれるとは思わなかったので、正直少し嬉しかった。

ちなみに知崎君はというと、私達がミーティングをしている間に爆睡していた。

 

「………くぅ」

 

「知崎君、起きなさい」

 

「……ふにゃっ、ああ、えっと、ね●ねるねるねのトッピングはラムネとキャンディーどっちがおいしいかって話だっけ?」

 

「してないわよそんな話。ちゃんと話聞いてなさいよ」

 

この子、こんな状況でも爆睡できるなんて、かなり図太いわね。

既に何人かが諦めムードに入っていると、玉越さんが皆に声をかける。

 

「皆、諦めちゃダメだよ!きっと今も外の人達があたしらを探してるよ!外の人達が助けに来てくれるまで、脱出の手掛かりを探さないと!」

 

「そ、そうですわね」

 

「おう!!翼の言う通りだな!!」

 

玉越さんの発言に、聖蘭さんと食峰君が納得した。

皆の気持ちが再び一つになる、そう思ったその時だった。

 

「残念だがそれは諦めた方がいい」

 

「…え?」

 

「いきなり音信不通になったら親や友人が心配して近隣の住民や警察に知らせるはずだ。犯人はそれをわかっていて俺達をここに閉じ込めている。十中八九、外部からのアクションに対して何かしらの対策はされている。脱出方法を探す事には賛同するが、外の人間に過度な期待はするべきじゃない」

 

加賀君が言うと、他の皆が黙り込む。

せっかく希望が見えたと思ったのに、いきなり閉ざされたのだから無理はなかった。

するとそのタイミングを狙っていたかのように、奴等が現れる。

 

『うぷぷぷぷ!全くもってその通りです!オマエラまーだ脱出方法なんか探してたの?』

 

『ギャハハハハ!!テメェらマジでケッサクだぜ!!!そんなに外に出たけりゃ誰かブッ殺しちまえばいいのによォ!!』

 

「あーあ、うるさいのが来たよ」

 

「この数日間何もしてこなかったくせに、今更何の用?」

 

『『何の用?』じゃねーーーんだよゴミクズ共!!もう4日だぜ!?何でまだコロシアイが起こんねーんだよ!!ヘイバッドボーイズ&ガールズ!!』

 

「あんたが何をしたって、あたし達はコロシアイなんかしないよ。必ず脱出方法を見つけて全員で家に帰るんだ」

 

『うぷぷ、全員…ねえ。果たして本当にここにいる全員が味方なんですかねえ?』

 

「…どういう意味?」

 

『さあね!これだから最近の若者は、何でもかんでも誰かに聞いたらわかると思ったら大間違いだよ!』

 

『つーかブラザー、今日はそんな事言いに来たんじゃねえだろ?』

 

『そうでした!いやー、いつまで経ってもコロシアイが起こらないのでもう退屈で退屈で!そろそろ誰か死ねよって無言の圧力を感じるので、今回はオマエラにとっておきのプレゼントを用意しました!オマエラ今から全員視聴覚室に集まってください!15分以内に来ないとオシオキだよ!』

 

プレゼント…?

嫌な予感しかしないわね。

でも行かないとオシオキだって言ってたから早く行かなくちゃ。

私は、すぐに視聴覚室に向かった。

いつも時間を守らない遅刻組は、私、玉越さん、秋山君の三人で引っ張っていった。

 

 

 

ーーー 視聴覚室 ーーー

 

モノクマ達が集まるように言ってから5分後、私達は全員視聴覚室に集合した。

 

「ねえねえ、プレゼントだって!何があるのかなあ?知ってる?ボク、とっても不思議〜!」

 

「まあどうせろくでもない事だよ」

 

『ヘイヘイ聞き捨てならねえな楽斗ボーイ!!』

 

モノDJの声が聴こえると同時に、視聴覚室の照明が消えた。

そして前のスクリーンがスポットライトで照らされ、そこに憎き体たらく二匹が現れる。

 

『ハイ、オマエラが全員集合するまでに5分かかりました!』

 

『ハッハァ!!テメェらやればできんじゃねえか!!』

 

二匹は、ゲラゲラと私達を嘲笑ってきた。

するとネロが呆れた様子で、本題に入るよう二匹を急かす。

 

「御託はいいからさっさとプレゼントとやらを見せろ。くだらねえ用事で俺を呼び出したんだとしたら、今すぐ帰らせてもらう」

 

『そこまで言うなら別に今すぐ見せてあげなくもないよ!べ、別にネロクンの為に見せるんじゃないんだけどね!』

 

何でツンデレ口調なのよ。

気色悪いわね。

モノクマはどこからかラジカセを取り出し、曲を流し始めた。

 

『ブラザーいつものやったげて!』

 

『おう聞きたいかオレの動機発表!』

 

『そのすごい動機を言ったげて!』

 

『こいつが今回の動機だぁ!!』

 

『レッツゴー!』

 

二匹が某お笑い芸人をパクった芸をやっていると、他の皆が呆れ返る。

私達はいつまでこの茶番を見させられ続けなきゃいけないのかしら。

私がそんな事を考えていると、モノDJがポーズをしながら動機を発表した。

 

『テメェらの知りてえ事、何でも一つ答えてやるぜYEAHHHHH!!!!』

 

…………え?

それが殺人の動機…?

 

「どういう事…?」

 

『気になるあの子のスリーサイズに連絡先にホクロの数から片方失くした靴下のありか、果てには新世界の神になれる方法まで、オマエラのどんな質問にも一個だけ答えてあげるよ!』

 

『ハウエヴァア!!オレ達が答えるのは誰かを殺した奴からの質問だけだぜイェア!!!どうしても知りてェ事があんなら、サクッとブチ殺す事をオススメするぜ!!オレらのライブはザッツオール!!んじゃあ、スィーユーアゲイン!!!』

 

そう言って二匹はその場から消え、視聴覚室の照明が再び点いた。

すると、越目君が視聴覚室の壁を殴って悔しそうに顔を歪ませる。

 

「クソッ、何なんだよ…!」

 

「プレゼントってこれの事だったんだね!ねえねえ知ってた?」

 

いつも通りあっけらかんとしている知崎君以外は、ほとんど全員が不快感を示していた。

するとその空気を打ち破るように、ネロが全員をギロリと睨みながら尋ねる。

 

「まさかとは思うが、今の茶番を真に受けた奴ァいねえよな?」

 

当然、誰も名乗り出なかった。

そりゃあ、ここで何か言えば人を殺す気がありますって言ってるようなものだものね。

 

「あんなの、本当に答えてくれる保証なんかどこにもないよ。今は焦らずに脱出の手がかりを探すべきだと思う」

 

「ね」

 

秋山君が一切冷静さを失わずに言うと、小鳥遊さんが頷く。

すると知崎君がここぞとばかりに割り込んできた。

 

「でもさぁ!ボクはちょっと気になるんだよね!そこまでしてボク達に殺人をさせたい“誰か”がいるわけでしょ?一体何者なんだろうね!」

 

「……【超高校級の絶望】」

 

私は、つい無意識にポツリと呟いていたようだった。

すると皆が一斉に私の方を見る。

 

「あ…いえ、ごめんなさい。何でもないわ」

 

しまった。

皆の前では言うつもりなんてなかったのに、つい口走ってしまった。

私がどうしようかと考えていると、響さんが詰め寄ってくる。

 

「おい、テメェ今何つった?テメェ、犯人について何か知ってんじゃねえのか!?」

 

「ごめんなさい、本当に犯人については何も知らないの」

 

「しらばっくれんな!!今、【超高校級の絶望】ってハッキリ言ったじゃねえか!!とっとと白状したらどうだ!?テメェ、さてはこのクソゲーの黒幕なんじゃねえだろうな!?ええ!?」

 

どうしよう、完全に頭に血が上ってるわ…

今は何を言っても信じてもらえなさそうね。

さっき口走ってしまったのは、我ながら迂闊だったわ。

 

「やめてよ!!緋色ちゃんは、皆んためば思うて色々手がかり探してくれとーばい!緋色ちゃんがうちらん敵なわけなか!」

 

「そうだね。仮に何か知ってたとしても、それだけで敵だって思い込むのは良くないよ。何かあたしらに言えない事情があるのかもしれないだろ?」

 

私がどうしたら敵じゃないかわかってもらえるかと頭を悩ませていたら、マナと玉越さんが味方してくれた。

視聴覚室の中で不穏な空気が渦巻いてきたその時、食峰君が口を開く。

 

「あ!じゃあよ!これから皆でパーティーでもやらねえか!?」

 

「え?」

 

「ハァ!?こんな時に何言ってんだテメェ!!」

 

「こんな時だからだろ!!絶望なんかに負けねえためにも、皆で一致団結しなきゃなんねえんだよ!!まずはパーティーでもして、この暗え空気をかっ飛ばさねえとな!!」

 

食峰君の提案に響さんが噛みついてくると、食峰君はニカッと笑って自分なりの意見を言った。

すると、先程まで疑心暗鬼に陥っていた人達も、少しずつ心を動かされ始める。

 

「確かに…一理あるね」

 

「いいな!何気にそういうの初だし!」

 

「うむ、良い提案でござるな食峰殿」

 

「皆様の事をよく知れるいい機会ですわね」

 

「………悪くない」

 

「ん」

 

「わーい、パーティー?さんせー!ボク、楽しい事は好きだよー」

 

「祭りとな!?ガハハハハ、そういう事ならワシも大歓迎じゃ!!」

 

秋山君、越目君、闇内君、聖蘭さん、館井君、小鳥遊さん、知崎君、古城さんは賛成みたいだ。

他の6人も、異論はないようね。

 

「よし、じゃあ決まり!!パーティーは4時にやるから、絶対来てくれよな!!」

 

食峰君の提案で、私達はパーティーをする事になった。

ギスギスしていた空気が持ち直してきたところで、私はさっき庇ってくれた二人に声をかける。

 

「ありがとう、味方してくれて」

 

「当然やろ!うちは緋色ちゃんのバディやけん!」

 

「困った時はお互い様だろ?あたしは、皆の事を信じてるから」

 

私がお礼を言うと、二人とも笑顔で返してくれた。

すごいわね、二人とも。

こんな状況でもクラスメイトを信じる心を失わないなんて…

私も見習わなくちゃ。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

私はその後、食峰君、秋山君、玉越さん、小鳥遊さんと一緒にパーティーの食事作りの手伝いをした。

そしてマナ、越目君、聖蘭さん、館井君、闇内君、知崎君の6人でパーティー会場にする予定の食堂の飾り付けをしていた。

 

「そっち引っ張って。そうそう、そんな感じ」

 

「ほーい、ありゃ!?」

 

越目君と館井君の指示通りにマナが飾り付けをしていると、マナが脚立から足を滑らせて転んでしまった。

マナの身体には飾り付けに使う飾りが絡まり、スカートも捲れ、さらには木工用ボンドを被ってしまい、かなり目の毒な状態になってしまっていた。

 

「わ〜ん、なしてこうなると〜!?誰かほどいて〜!!」

 

「うわぁ!?こ、聲伽ちゃん!?」

 

「何をどうしたらそんな転び方をするんだ……」

 

「うぉおおおお!!眼福でござる!!拙者、女子のおみ足おパンティをここまで間近でハッキリと見たのは初めてでござる!!」

 

「わーい、マナちゃんのサービスショットだ〜!ねえねえどうやったらそんな転び方するの?すっごく不思議〜!」

 

マナがお色気ハプニングをやらかしてしまうと、館井君と越目君は狼狽え、知崎君と闇内君は大喜びした。

堂々と喜びはしなかった二人も、館井君は気まずそうにしているけど、越目君はマナを凝視していて内心喜んでいるのが全く隠せていない。

このまま男子の目に晒され続けるのも気の毒なので私が助けに入ろうとすると、先に聖蘭さんがマナを助けに入った。

 

「聲伽様、大丈夫ですか?まずはその格好をどうにかした方がよろしいかと…」

 

「あ、ありがとう聖蘭ちゃん」

 

「聲伽様が転んで喜ぶなんて…あなた方、不潔ですわ」

 

そのままマナをランドリーに連れていった聖蘭さんだけど、マナが転んで喜んだ三人に汚物を見るような目を向けていた。

女子からの『不潔』という言葉が響いたのか、三人は肩身狭そうに大人しく作業を進めた。

いい気味ね。

さてと、私も料理を作らないと。

ちなみに玉越さんと秋山君はというと、それぞれホワイトソースとミートソース作りをしていた。

 

「うん、いい感じ」

 

「そうかい?」

 

秋山君が玉越さんのホワイトソースを味見すると、玉越さんが照れ臭そうにする。

すると今度は秋山君が自分のミートソースを玉越さんに味見させた。

 

「俺のミートソースも味見する?」

 

「あ、じゃあ…うん、美味しいこれ!」

 

「玉越さん。口の横についてるよ」

 

「あっ、いいよ!自分で取るから!」

 

「そう?」

 

「うん!そんな事より、早く作業進めちゃお!」

 

秋山君が玉越さんの口の横についたミートソースを拭こうとすると、玉越さんは自分でソースを拭いて慌ててホワイトソースを型に流し込んだ。

あの二人、何だかここ二日で一気に距離が縮まった気がするわね。

…早く付き合えばいいのに。

 

「ね」

 

小鳥遊さん、いつの間に隣にいたのね。

というか今しれっと私の考えてた事読まなかった?

この子、エスパーか何かなのかしら…

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ふう…こんなものかしらね」

 

作業を始めてから5時間後、ビュッフェ形式のパーティー料理が完成した。

唐揚げ、お寿司、ラザニア、焼き鳥、パスタ、生春巻き…皆の好物は一通り揃ってるわね。

デザートもチョコフォンデュにプチケーキにフルーツと、色々用意しておいた。

パーティーの準備を終えると、他の皆も食堂に集まってきた。

 

「わーい!できたー!!」

 

「思ったより豪華じゃないか」

 

「ガキの催しの割には悪くねえな」

 

「唐揚げ!!寿司!!焼き鳥!!肉!!肉!!肉!!」

 

「おいコラクソ古城!!テメェ肉ばっか取ってんじゃねえ!!」

 

「ハッハッハァ!!いいですねえ、たまにはこういうのも!!」

 

他の人達も、パーティーを思いっきり楽しんでくれているみたいだ。

何か…皆がこうして楽しんでいるのを見ると、張り切って準備した甲斐があるわね。

軽く見積もって30人分もの食事を用意した私達だけれど、用意した食事はあっという間にはけてしまった。

特にマナ、知崎君、古城さんの食べっぷりが凄かったわね。

あの華奢な身体のどこに入っていくのかしら。

 

食事の後は、響さんが生歌を披露してくれた。

セクシーなハスキーボイスが売りのRESONANCEの楽曲からクラシックや演歌まで、リクエストした曲を何でも歌ってくれた。

一番驚いたのは、あるアニメに出てくる声優が歌っているアニソンを、その声優そっくりの声で歌ってくれた事だった。

 

「お〜!」

 

「さすが響さん…上手ね」

 

「歌音は【超高校級のボーカリスト】だからね。どんな歌でも歌えるんだよ。昔は声真似とかもよくやってくれてたっけ」

 

私達が響さんの歌に感動していると、秋山君が何故か自慢げに語った。

間近で響さんの歌を聞いている時の秋山君は、普段のクールな印象とは打って変わってまるで無邪気な子供みたいだった。

普段は紳士的な好青年として振る舞っている彼だけど、きっと幼馴染みの響さんと一緒にいる時間が彼にとって素でいられる時間なのね。

 

パーティーをひと通り楽しんだ後は、皆で後片付けをした。

本当に今日は楽しかったわね。

モノクマ達が動機を発表した時は一触即発だったけど、今は皆の気持ちが一つになった気がする。

大丈夫。

マナや玉越さんの言う通り、ここにいる皆で信じ合っていれば絶対脱出の手がかりは見つかるわ。

絶対にここから抜け出して、そして、こんなふざけた事をしでかした犯人をーー…

 

「緋色ちゃん!今日は一緒にお風呂入りに行かん?」

 

…ビックリした。

考え事をしている時に話しかけられたから、つい驚いてしまった。

私も疲れてるのかしら。

お風呂に入ってゆっくりしたいわね。

 

「…ええ、そうね」

 

私は、マナと一緒にお風呂に入りに行く事にした。

 

 

 

ーーー 温泉 ーーー

 

……ふぅ。

気持ちいい。

モノクマ達は本当に不愉快だけれど、こういう嬉しい計らいをしてくれるのがちょっと悔しいのよね。

私が温泉に癒されていると、マナが声をかけてきた。

 

「……ねえ。緋色ちゃん」

 

「何かしら?」

 

「あんね、ここで聞こうて思うとった事があるっちゃけど…」

 

ここで聞こうと思ってた事?

って事は、モノクマ達に聞かれたくないって事よね…

私が緊張気味にマナの話を聞こうとしていると、マナがコソッと私に耳打ちをした。

 

「緋色ちゃん、やっぱり何か知っとー事あるんやなかと?」

 

「何かって…何が?」

 

「うちらばここしゃぃ閉じ込めた犯人についてだよ」

 

「!!」

 

マナが尋ねると、私は思わず動揺してしまった。

マナが気になっているのは、あの事よね…?

でも、私も犯人についてはほとんど何も知らないのよね。

心当たりがないわけじゃないけど、でも、極秘事項だし…

簡単に話せる事じゃないのよね。

 

「…ごめんなさい。さっきも言った通り、犯人については本当に何も知らないも同然なのよ。ただ……」

 

「ただ?」

 

「心当たりがないわけじゃないのよ」

 

「心当たりって……?」

 

…もう、正直に話すしかなさそうね。

マナはここまで私を信じてくれているのだから、私も彼女を信じてあげなきゃいけないし、彼女を信じさせてあげなきゃいけない。

ここには監視カメラも無いし、正直に打ち明けるなら今しかない。

もしこれでマナが私達の敵だったとしても、私は彼女に話した事を後悔はしない。

万が一の事があったら、たとえこの命に替えても私がこの手でこのデスゲームを終わらせてみせる。

私はその覚悟を背負って話し始めた。

 

「ここから先は警察内でもごく一部にしか知らされていない極秘事項なのだけれど…状況が状況だから、一番信頼している貴女にだけは教えてあげる。ただし、条件があるわ」

 

「条件?何?言うてみて?」

 

「今から何を言われても絶対に狼狽えず、いつも通りの態度で振る舞う事。それから、今から話す内容は絶対に口外しない事。約束してくれる?」

 

「わかった!約束する!うちは何があったっちゃ緋色ちゃんを信じるよ!」

 

ここまで信じてくれるなんて、マナは優しいわね。

でも、すぐに全てを話すわけにはいかない。

ちょっとカマをかけてみようかしら。

 

「…ありがとう。じゃあ早速だけど、貴女は『ダンガンロンパ』というゲームはご存知かしら?」

 

「だん…何それ……?」

 

私が話すと、マナはキョトンとする。

脈拍、瞳孔、呼吸、どれも正常の範囲内ね。

この反応は本当に何も知らない人間の反応だわ。

やっぱり、この子を信用して話してよかった。

 

「そりゃあそうよね。警察の上層部しか知らない情報だもの。ダンガンロンパは100年以上も前に大流行したゲームよ。最初はただの推理ゲームだったのだけれど、いつからか刺激を求めた一部の過激派達が現実にいる人間に偽りの記憶と才能を植え付けてコロシアイをさせる殺戮ゲームへと変わっていったの。ダンガンロンパは参加者の中でも一部の勇気ある者達によって55作目を最後に打ち切られ、闇に葬り去られたの」

 

「そうなんやな…それで?」

 

「かつて、モノクマの格好をしたテロリストが世界中をメチャクチャにしたのはご存知よね?」

 

「うん。確か歴史ん教科書にも書いてあったけんね。授業眠とうてほとんど聴いとらんかったけど…」

 

「奴等は、ゲーム内に出てくる【超高校級の絶望】に影響を受けたテロリストなの」

 

「それがこんゲームの犯人と何か関係あると?」

 

「このコロシアイは、私の知る限りダンガンロンパに酷似しているわ。ダンガンロンパの1作目の主犯は、【超高校級の絶望】だった。つまりこのデスゲームの黒幕は、【超高校級の絶望】の残党で、ダンガンロンパの模倣犯の可能性が高いって事よ」

 

私が話すと、マナは唖然とした顔で聞いていた。

 

「………思うとったより色々知っとったね、緋色ちゃん」

 

ツッコむとこそこなのね。

もっと慌てふためいて色々問い詰めてくると思ってたんだけど…

 

「でも、緋色ちゃんはなしてそげん【超高校級の絶望】ば憎んどーと?」

 

「…え?」

 

「最初会うた時、『【超高校級の絶望】…貴方は必ず、私の手で……!』って寝言言いよったけん、うち、ずっと気になっとったっちゃん」

 

嘘でしょ…!?

私、そんな寝言言ってたの!?

やってしまった…

不可抗力とはいえ、そんな事聞かれるなんて何やってんのよ私!!

 

「ただのテロリストばそこまで憎んだりするかな?緋色ちゃん、【超高校級の絶望】と過去に何かあったんやなかと?」

 

「【超高校級の絶望】はね、私が警察官になる事にした理由なのよ」

 

「理由って…?」

 

「私は数年前、母を亡くしたの。【超高校級の絶望】を名乗るテロリストに殺されたのよ。父も組の皆も私も、当然犯人への報復を誓ったわ。私は、父や組の皆と結託して、ついに母を直接手にかけた犯人を追い詰める事に成功したの。…だけど、それも全部裏で奴等を操っていた真犯人の思惑通りだった。母を殺した奴等を皆殺しにした父は逮捕され、私は家族を二度も奪われてしまった。そして真犯人は、私達の目から逃れて逃げ果せた。私達はまんまと真犯人の罠に嵌ったのよ」

 

「そんな…」

 

「でも、私はまだ負けたわけじゃない。父が逮捕された時、思ったのよ。私には大切なものを守れる力が無かったから、目の前で奪われてしまったんだって。だから私は強くなると決めた。父や皆は、暴力という手段に訴えてしまったから嵌められてしまった。だったら法の力で真犯人を追い詰めてやればいい、そう思ったの」

 

「それで警察官になったんやな……」

 

「もし犯人が母を死に追いやった奴と何か関わりがあるのだとしたら、私はどんな手段を使ってでもこの手で捕まえて裁く。たとえこの命に替えてでも、私は……!!」

 

私は、拳を固く握りしめながら自分の決意を口にした。

母さんの命を奪い父さんを刑務所に追いやった奴を裁けるのなら、私はどうなろうと構わない。

それは、私が警察官になると決めた日から心に誓った事だ。

私が身を震わせながら語ると、マナはポロポロと涙をこぼしながら私に抱きついてきた。

 

「命に替えるとか…そげん簡単に言わんでよ!!うちら、一緒にここから出ろうって約束したやろ!?」

 

私は、この時初めて気がついた。

この子が今までどんな思いで私に接してきたのか、ここに来るまでどれほど思い詰めていたのか…私は、彼女の事を見ていたつもりで全く見えていなかった。

守るべきクラスメイトを泣かせてしまうなんて、警察官失格ね…

 

「……そうだったわね。ごめんなさい、もう二度と言わないわ。だからもう泣かないで」

 

私は、マナをそっと抱き返しながら頭を撫でた。

しばらくして、マナはやっと落ち着いてくれた。

決めたわ。

何かあった時は私がマナを…いえ、ここにいる皆を守る。

私を含め、全員で生きてここを出るために。

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

マナと一緒にお風呂に入った私は、時間を潰す為に購買部に向かった。

そこには、玉越さんと秋山君、響さん、小鳥遊さん、知崎君、越目君、闇内君がいた。

 

「あれ?緋色に愛。随分と長風呂だったね」

 

「ええ、ちょっと色々あってね…」

 

「えー、なになに!?エロエロあったの!?女の子同士で!?」

 

「なっ…そんな事ないわよ!」

 

知崎君が急に変な事を聞いてきたので、全力で否定した。

…というかマナ、貴女はなんでちょっと満更でもなさそうなのよ。

私が誤解を解こうとしていると、もう二人のエロトリオの越目君と闇内君まで食いついてきた。

 

「百合百合しいねぇ」

 

「ねえねえ教えて教えて!ボクすっごく気になるなあ!」

 

「うむ、楽しそうでござるな。是非とも拙者も混ぜて…」

 

三馬鹿が変な事を言っていたので、すかさず頭に拳骨を入れてやった。

変態には制裁をしなくちゃね。

 

「………何か言ったかしら?」

 

「「「いえ、何でもありません」」」

 

全く、こいつらも懲りないわね。

はあ、余計な事にエネルギーを使ってしまったわ。

私は、しばらくの間購買部のゲームで遊んでいた。

ちなみに購買部のゲームでは、越目君が無茶な賭け方をして大負けしていた。

…うん、その賭け方だと確かに当たれば大量のメダルをゲットできるけど、期待値的には賭ければ賭けるほど損をする計算になるから無謀としか言えないわよね。

なるほど、ギャンブル中毒者はこうやってお金と信頼を失っていくのね。

 

「うぐぅぅぅぅ…!くそっ、ちくしょぉお…!!」

 

「マジかよ…何をどうしたらそんなに負けんだよ」

 

「あはははははははは!!!粧太おにいボロ負け!!おっかしぃ〜!!」

 

「やけんあそこは半にしとこうって言うたばい。越目くんアホやなあ!」

 

「越目君…ギャンブルで一山当てようとするのはいいけど、もう少し確率の勉強はしておくべきだったんじゃないかな」

 

「無謀な賭けでござったな」

 

「ね」

 

「ぐぉぉぉぉおおおおおぉおあぁああああああ!!!」

 

響さん、知崎君、マナ、秋山君、闇内君、小鳥遊さんがボロクソに言うと、越目君は撃沈した。

すると玉越さんが越目君に助け舟を出した。

 

「はいはい、そこまでにしてやんな」

 

「た、玉越ちゃん…!」

 

玉越さんが越目君を庇うと、越目君が玉越さんに縋りつく。

うん、何というか…まさにヒモね。

 

「ほらほら、そろそろ夜時間になるし、もう部屋に戻った戻った!」

 

「ああ」

 

「そうだね」

 

玉越さんが皆に部屋に戻るよう促すと、皆がゲームをする手を止めて帰る準備をした。

私も、皆に声をかけて購買部を出て行く。

 

「それじゃ、おやすみなさい」

 

私は購買部を出て真っ直ぐに部屋に向かい、寝間着に着替えてベッドに横になった。

この時私は、想像もしていなかった。

まさか購買部での会話が、最後の会話となってしまうだなんて…

 

 

 


 

 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『かっ、勘違いしないでよね!別にオマエラの為にコロシアイをやってるんじゃないんだからね!』

 

『ヘイテメェら、『反動形成』って知ってっか?人は自分を守る為に、自分の本心とは真逆のアクションを起こしちまう事があるんだ。好きなコにイジワルしちまうのとかがまさにそれだな!』

 

『いやぁー、モテるマスコットはつらいわぁー。つらいわぁー。毎日毎日、勝手に理想を押し付けられてつらいわぁー。いいよね、非モテのオマエラは気楽に過ごせて!』

 

 

 


 

 

 

 

五日目。

翌朝、私は朝食の準備をするため早起きをした。

今日は玉越さんとマナも手伝ってくれる事になっていたのよね。

私は、手早く準備を済ませて厨房に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

厨房では、既に食峰君が朝食の準備をしてくれていた。

私は、厨房に入ってすぐに食峰君に声をかけた。

 

「おはよう食峰君」

 

「おう、おはよう緋色!!」

 

さてと、私も手伝わないと…

……あれ?

やけにペットボトルの水の減りが早いような…

 

「食峰君、今日はやけに水の減りが早くないかしら?」

 

「ああ、それなんだけどよ。いつの間にか減ってたんだよな。誰かが持っていっちまったのかなぁ」

 

食峰君も知らないのね。

誰がやったのかは知らないけど、とりあえず今は早く朝食を作っちゃわないと。

水が少ないから今日は節水しないとね…

私は、食峰君の指示通り朝食を作った。

…それにしても、二人とも遅いわね。

マナならともかく、玉越さんが集合時間の15分前になっても来ないなんて…

昨日のパーティーで疲れたからまだ寝てるのかしら?

 

私達は二人がいない分忙しなく朝食作りをしていたのだけれど、集合時刻を30分過ぎても二人とも来なかった。

流石に遅すぎるわね…

二人とも何をしてるのかしら。

 

「二人とも遅えな」

 

「メッセージも送ったんだけど、既読にならないわね…私、ちょっと呼びに行ってくるわ。食峰君は朝食作りを続けててくれるかしら?」

 

「おう!」

 

私は、食峰君に一声かけてから二人を呼びに個室のある廊下まで戻った。

まずは玉越さんから呼ばないと。

私は、玉越さんの部屋のインターホンを鳴らした。

 

「玉越さん?腐和だけど。いるなら返事をしてちょうだい」

 

返事はない。

一応ドアを叩いても返事はなかった。

という事は、爆睡しているかここにはいないか、よね。

まさか、部屋で死んでたり…は、ないわよね?

……仕方ない、かくなる上は…

 

「モノクマ!」

 

私がモノクマを呼び出すと、モノクマはすぐに私の目の前に現れた。

 

『はい何でしょ?』

 

「玉越さんがいくら呼んでも返事をしないのだけれど。せめて彼女の様子だけでも教えてもらえないかしら?監視カメラで把握しているのよね?」

 

『ボクはニュートラルなクマだからね、オマエラの都合でプライバシーを侵害するわけには…』

 

「いいから教えなさい!中で玉越さんに何かあったらどうするの!?」

 

『んもー、しょうがないなあ!勘違いしないでよね!べ、別に腐和サンの為に教えてあげるんじゃないんだからね!玉越サンは部屋の中にはいないよ!ハイおしまい!』

 

部屋にいない…?

という事は、どこかで道草でも食ってるのかしら。

…それとも、何かあったんじゃ…

 

「…わかったわ。ありがとう。もう消えていいわよ」

 

『ちぇーっ、せっかく教えてあげたのに』

 

モノクマは、ぶつくさと文句を言いながらその場から消えた。

とにかく、早く玉越さんとマナを探さないと…

そうだ、マナは…!?

私は、今度はマナの部屋に駆けつけた。

 

 

 

ーーー 聲伽愛の個室 ーーー

 

私は、マナの部屋のインターホンを鳴らして声をかけた。

 

「マナ?私、緋色よ。いるなら返事をーーー…」

 

インターホンを鳴らしながら呼びかけている最中、私は部屋のドアが開いている事に気がつく。

…ごめんなさい、急いでるから入るわよ。

私は、マナの部屋を勢いよく開けて中に入った。

けれど、そこにマナの姿は無かった。

 

「いない…!?」

 

どうなってるの…!?

玉越さんに続けてマナまでいないなんて…!

…こうなったらもう、他の皆にも手伝ってもらうしかないわね。

私は、早速小鳥遊さんの部屋のインターホンを鳴らした。

私がインターホンを鳴らすと、小鳥遊さんは眠い目を擦りながら出てきた。

 

「……ん」

 

「小鳥遊さん、急に起こしてごめんなさい。実は、今日の朝食当番の玉越さんとマナがまだ食堂に来てないの」

 

「え」

 

「今二人を呼びに来てるんだけど、二人とも部屋にいなくて…悪いけど一緒に探してもらえない?」

 

「ん」

 

私が事情を説明すると、小鳥遊さんは二つ返事で協力してくれた。

私は、その足で聖蘭さんと響さんも呼び出して一緒に二人を探すよう協力を持ちかけた。

 

「オイ聲伽!!玉越!!テメェらとっとと出てこいや!!」

 

「聲伽様、玉越様!いらっしゃったらどうかお返事を!」

 

私達は、二人に呼びかけながら寄宿舎中を探し回ったけど、二人とも返事はなかった。

どうやら、寄宿舎にはいないみたいね…

 

「私、校舎の方を探してきますわ!」

 

「私も」

 

「じゃあオレは一応研究棟探してくる!」

 

「ん」

 

私と聖蘭さんは校舎を、響さんと小鳥遊さんは研究棟を探す事になった。

食峰君には二人が部屋に居なかったから捜索中だという旨を伝えて、男子達を起こしてもらうようメッセージで伝えておいた。

私は、早速校舎の体育館前ホールから探しに行った。

すると、その時だった。

 

 

 

「キャアアアアアアッ!!!」

 

「!?」

 

突然、保健室の方から聖蘭さんの悲鳴が聴こえてきた。

私は、急いで保健室に駆けつけた。

私が駆けつけると、聖蘭さんは腰を抜かして保健室から後退りしていた。

 

「どうしたの!?」

 

「あ、ああ…ああああ…!」

 

聖蘭さんは、顔面蒼白になって保健室の中を指差していた。

顔を上げると、あるはずのない光景が映り込んだ。

 

 

 

…嘘でしょ?

どうしてあなたがそこにいるの……?

 

 

 

なんでよ…

昨日まで、あんなに元気だったじゃない…

どうして…!!

 

 

 

 

本当は、もうわかっていた。

その人はもう息をしていない事を。

だけど、どうしても、理解したくなかった。

受け入れたくない、それでも受け入れなきゃいけない現実。

 

保健室の床には、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血まみれになった【超高校級のバレーボール選手】玉越翼が、仰向けに倒れて死んでいた。

 

 

 

 

 

「腐和さん!聖蘭さん!二人は見つかったの!?」

 

突然後ろから声が聴こえて、私の意識は現実に引き戻された。

後ろには、息を切らした様子で秋山君が立っていた。

食峰君が呼びに行ってくれたから、一緒に探してくれてたのか…

 

「……秋山君。見るなら覚悟はしておいてね」

 

「…!そんな、嘘だろ……?」

 

私の言葉で全てを察したのか、秋山君は恐る恐る保健室の中を覗いた。

その直後、彼は大きく目を見開いてその場で立ち尽くした。

 

「………!!」

 

「…残念だけど」

 

「…玉越さん……クソッ…どうして…!」

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『死体が発見されました!生徒の皆さんは、至急校舎1階の保健室にお集まり下さい!』

 

突然、謎のアナウンスが響き渡った。

それから数分して、加賀君、越目君、食峰君、館井君、ネロ、闇内君が集まってきた。

 

「た、玉越嬢!!?」

 

「うわぁああああああっ!!オイ、嘘だろ…!?何で玉越ちゃんが…!」

 

「そんな…クソッ!!翼!!」

 

「玉越…何故だ……!!」

 

「ふむ…やっぱり防げなかったか」

 

「はぁ…まあ予想はしてたがな」

 

闇内君は目を見開いて狼狽え、越目君は大声を上げて狼狽え、食峰君と館井君は仲間を守れなかった事を悔しがり、加賀君とネロはこんな状況でも冷静だった。

するとそこへ、モノクマとモノDJが現れる。

 

『ギャハハハハハハ!!!ついに起こっちまったなァア!!ヘイYOU、テメェら仲良しクラブじゃなかったのかァン!?』

 

『うぷぷぷぷぷ!全員でここから出るとか言ってた矢先にこれですか!オマエラってホント面白いね!』

 

「テメェら…!!」

 

玉越さんの死を嘲笑う二匹に対し、越目君は泣きながら怒りを露わにした。

 

『さてさてさーて!人が死んだ!死体を見つけた!という事で、オマエラにはこれから捜査をーーー…』

 

「待って」

 

『ぱぇ?』

 

モノクマが捜査を始めようとする前に、私が待ったをかけた。

このまま捜査を進めるわけにはいかないわ。

 

「小鳥遊さんと響さんとマナ…それから知崎君達がまだ来てないの」

 

『あ、そうですか。で?』

 

「捜査は皆が集まってからでいいでしょう?今来ていない人達にも、捜査に参加する権利があるはずよ」

 

『えー、でも来てないのはオマエラの都合だしなー』

 

『ヘイブラザー、探しに行かせてやってもいいんじゃねえか?面白えモン見れそうだしよォ!!』

 

『うぷぷ!それもそうだね!いいでしょう!詳しい説明は後回しでいいので、皆で探しに行って下さいな』

 

モノDJが何やら不吉な事を言っていたけど、今はどうでもいい。

まだ来ていない人達を探さないと…!

私達は、手分けをしてまだ来ていない人達を探しに行った。

私と聖蘭さんは目野さんと古城さんを、食峰君と越目君は知崎君を、そして秋山君は研究棟を探しに行った二人を呼びに行った。

お願い、皆無事でいて…!

 

 

 

ーーー 目野美香子の個室 ーーー

 

私は、目野さんの部屋に駆けつけると、何度もインターホンを鳴らした。

 

「目野さん!!腐和よ!!お願い、返事をして!!」

 

インターホンを鳴らしながら呼びかけている最中、私は部屋のドアが開いている事に気がつく。

私は、迷わず目野さんの部屋のドアを開けて中に入り込んだ。

 

「目野さん!!」

 

「ぐごぁ〜すぴ〜ぷひゅ〜」

 

目野さんは、ベッドの上でパンツ一枚の姿で大きないびきをかきながら爆睡していた。

アナウンスがあったのによくそんなに気持ち良さそうに寝てられるわね…

口から涎まで垂らしてるし。

状況が状況だったので、私は目野さんを叩き起こした。

 

「起きなさい!!」

 

「はにゃっ!?えっ、ふ、腐和さん!?どうして私の部屋にいるんですか!?」

 

「ごめんなさい。でも今はそれどころじゃないの。実は……」

 

私は、事の顛末を目野さんに話した。

すると目野さんは、顔色を変えて大袈裟に絶叫した。

 

「はぎゃあああああああ!!?た、玉越さんが!?ど、どうして!?」

 

「説明してる時間は無いわ!急いで保健室に来て!!30秒で支度して!!」

 

「よくわかりませんがわかりました!!」

 

私が目野さんの尻を叩くと、目野さんは私の言葉通り30秒で着替えて部屋を出た。

するとその時、ちょうど聖蘭さんが古城さんを連れて古城さんの個室から出てくる。

 

「聖蘭さん!古城さんは!?」

 

「それが…呼び出しには応じてくれたのですが、どうも様子がおかしくて…」

 

聖蘭さんは、困り果てた様子で古城さんを指した。

古城さんは、毛布にくるまってガタガタと何かに怯えながらブツブツ何かを言っていた。

 

「の、呪いじゃ…!祟り殺される…!!落武者の呪いじゃぁああああ!!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

時は遡り、死体アナウンス放送の数秒前。

響と小鳥遊は、【超高校級の考古学者】の研究室で立ち尽くしていた。

 

「………え」

 

「そんな…嘘だろ…!?」

 

【超高校級の考古学者】の研究室では、血塗られた刀を握った武者が研究室のソファーに座っていた。

響は、武者の兜を外すと同時に目を見開く。

 

 

 

「…小鳥遊ちゃん、響ちゃん…!?」

 

「聲伽…何やってんだよテメェ…!!」

 

そこには、甲冑を着て血まみれの日本刀を握った【超高校級の幸運】聲伽愛が、何食わぬ顔でソファーに座っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り15名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

以上1名

 

 

 

 

 



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非日常編①(捜査編)

ごめんなさい、(非)日常編に矛盾があったので編集しました。


玉越さんが死んだ。

私達は、その現実を受け入れられずにいた。

私と聖蘭さんが目野さんと古城さんを連れて保健室に戻ると、既に男子達が知崎君を連れてきていて、小鳥遊さんと響さんもマナを連れてきていた。

改めて玉越さんの死を目の当たりにした6人は、その場で立ち尽くしてそれぞれ感情を露わにしていた。

 

「ひぎゃああああああ!!!ほ、本当に玉越さんが…!!」

 

「ひいいいいいいい!!の、呪いじゃあ!!悪霊退散!!」

 

「うわあああああん!!翼おねえがぁぁぁ!!なんでぇぇぇ!!!」

 

「………っ」

 

目野さんと古城さんはパニックを起こして叫び、知崎君も大声で泣いていた。

玉越さんと親友だった小鳥遊さんは、玉越さんの遺体の前で座り込んで俯いたまま震えていた。

でもマナと響さんは、この状況をまだドッキリか何かだと思っているみたいだった。

 

「嘘やろ…!?ねえ、起きてよ玉越ちゃん!!そんな、嘘だよね…!?これ、ドッキリか何かなんやろ!?ねえ!!」

 

「クソッ……テメェ、冗談もいい加減にしろよ!!いつまでも猿芝居続けてねえで起きろやクソが!!」

 

二人は、必死に玉越さんを起こそうとした。

でも本当は二人ともわかっているはずだ。

玉越さんはもう二度と目を覚さない事を。

わかっているけど、わかりたくないんだ。

それ程に、彼女を失うのはつらい事だった。

玉越さんは、いつでも私達を明るく引っ張ってくれて、皆から歳の近い姉みたいに慕われていた。

私は彼女を亡くして初めて、彼女の存在が私達にとってどれほど大きいものだったかを思い知った。

 

 

 

『ジョーダン?うぷぷぷ!響さん、それってキミの格好の事?』

 

突然後ろから、モノクマとモノDJが現実を受け入れられない二人を嘲笑いながら登場した。

 

『ギャハハハハハ!!!こいつぁケッサクだぜ!!このご時世、実は生きてましたとかそんなオチが許されるワキャねーーーだろがァァァ!!!翼ガールはもうとっくにゴートゥーヘルさ!!』

 

「テメェら…今更どの面下げてここに来やがった!!」

 

「テメェら、よくも玉越ちゃんを…!!テメェらがやったんだろ!?」

 

「殺人に関与しないと仰っていたのに…騙したのですね!?」

 

『そんなわけないじゃーん!』

 

響さん、越目君、聖蘭さんは真っ先にモノクマ達を疑った。

私だってそうだと信じたかった。

でもこれがダンガンロンパのシナリオ通りなら、玉越さんを殺したのは………

 

『ギャハハハハ!!ホントはどうせもうわかってんダロォ!?翼ガールは、テメェらの中の誰かに殺されたんだYO!!』

 

「そ…そんな馬鹿な……!!」

 

「嘘…!!いやっ、いやあ!!」

 

「下衆がっ………」

 

モノDJが嘲笑うと、闇内君は目を見開いて狼狽え、マナは信じたくないと言わんばかりに泣きながら頭を振った。

館井君も、仲間の死を嘲笑うモノクマ達や真犯人に対して静かに怒りを募らせていた。

 

「ホントだよ!!誰が翼おねえを殺したのか知らないけどさ!!ホントに最低最悪のド悪党だよ!!今に見てろ、絶対犯人を見つけてやるんだから!!」

 

知崎君は、ボロボロと涙を溢れさせながら啖呵を切った。

誰もそれ以上は言わなかったけれど、きっと気持ちは同じだ。

たとえクラスメイトだとしても、玉越さんの命を奪った犯人を許せるはずがなかった。

そんな時、今までずっと考え込んでいた加賀君が唐突に口を開く。

 

「これで全員揃ったか。なら早く捜査とやらの説明をしてくれないか?ハッキリ言って時間の無駄だ」

 

加賀君があまりにもぞんざいな言い方をすると、越目君が加賀君に掴みかかる。

 

「なっ…加賀テメェ!!玉越ちゃんがこんな目に遭って、何も思わなかったのかよ!?」

 

「いつまでも感傷に浸っていたら真犯人が名乗り出てくれるのか?」

 

「っ……!」

 

「そうやっていつまでも泣いている暇があったら、その時間を犯人探しに割いたらどうだ。この裁判で負けて失うものは、金でも信頼でもない。俺達の命だ」

 

加賀君が言うと、越目君が押し黙った。

まだ立ち直れないでいる皆に、加賀君は容赦なく現実を突きつけてきた。

どんなに嘆いたって、時間は無情にも過ぎ去っていく。

生き残る為にやるべき事は、いつまでも嘆き悲しむ事じゃない。

自分達が生きる為にも、玉越さんの仇を討つ為にも、1秒でも早く真犯人に辿り着く事だ。

 

「さて、無駄に時間を浪費してしまった。モノクマ、モノデブ。説明を頼む」

 

『ダミッ!?オレ様ァモノDJつってんだろ久遠ボーイ!!っとまあそりゃ置いといて、細けえルールを説明してくぜYEAH!!アーユーレディ、ブラザー!?』

 

『イエスブラザー!えーまず死体発見から捜査までの流れですが、三人が死体を発見した時点で『死体発見アナウンス』が放送されます!アナウンス放送後は、一定時間の捜査時間が設けられます!捜査時間中は、開放されているエリアを全て調べる事ができます!』

 

全エリアを開放…

…あっ、だから目野さんを呼びに行った時、部屋が開いてたのか。

私が納得していると、ネロがモノDJに質問をした。

 

「って事は、本来夜時間中に入れない場所や他の奴の個室にも入れるようになるんだな?」

 

『オフコォス!!!裁判には公平性が必要不可欠だからなァ!!あんなところやこんなところも存分に調べちゃってくれよなァ!!』

 

「なるほどな。だが、このまま調べろっていうのはいくら何でも酷じゃねえのか?いくら警官や獣医の才能がある奴がいるとはいえ、たかがガキに殺人の捜査なんかできるわけねえだろ」

 

『そういうと思って、こんなモンを用意してきたZE!!!』

 

そう言ってモノDJがパチンと指を鳴らすと、全員の生徒手帳からブンっと画面が飛び出す。

画面には、『モノクマファイル』と書かれたファイルが表示されていた。

 

『そいつァ被害者の死体状況をまとめた資料だぜ!!裁判の時に是非とも役立ててくれよなァ!!んじゃあ裁判でまた会おうぜ!!スィーユー!!!』

 

『しーゆー!!』

 

モノDJとモノクマが去っていった直後、

 

 

 

十二、死体を3人以上が発見した時点で『死体発見アナウンス』が放送されます。

 

十三、死体発見アナウンス放送後、学級裁判開始までの間一定の自由時間を設けます。

 

 

 

という二つの校則が追加された。

これから捜査をしていく…わけだけど、役割分担はどうしようかしら?

私が考えあぐねていたその時、小鳥遊さんが手を挙げた。

小鳥遊さんは、手帳のメモ機能を使って筆談でメッセージを伝えた。

 

“検視は私がやります”

 

「小鳥遊さん…無理はしなくていいのよ?」

 

「ん……」

 

小鳥遊さんは、悲しそうな表情を浮かべながら玉越さんの遺体に寄り添っていた。

小鳥遊さんだって、親友をこんな形で殺されて悲しんでいるはずだ。

でも、だからといってここで立ち止まっているわけにはいかなかった。

 

「じゃあ検視は小鳥遊さんに任せちゃっていいかな」

 

「待て待て、もしこの女がクロだったらどうする?証拠を隠滅されちゃいましたじゃ済まされねえぞ」

 

「ん………」

 

ネロが容赦なく言うと、小鳥遊さんが不満そうな目を向ける。

誰だって、親友殺しの疑いをかけられていい気分はしないだろう。

…あんた、これで小鳥遊さんがクロじゃなかったら後で謝りなさいよ。

 

「じゃあ見張りをつければいいんじゃないかな」

 

「証拠隠滅を防ぐ為にも、最低二人は見張りが必要なんだが…」

 

秋山君と加賀君が言うと、館井君が手を挙げた。

 

「………俺がやろう。正直捜査ではあまり役に立てなさそうだからな」

 

「うちも見張やるよ!うち、すぐドジやらかすけん捜査とか足引っ張ってしまうやろうし」

 

見張りに立候補してくれたのは、館井君とマナだった。

 

「わかったわ。じゃあ館井君、マナ、よろしくね」

 

「それ以外の人は捜査でいいかな。最低でも二人以上で行動する事。いいね?」

 

「はーい」

 

話し合いの結果、捜査組は私と知崎君、秋山君と響さん、加賀君と目野さん、食峰君と聖蘭さん、越目君と古城さん、ネロと闇内君のペアで捜査をする事になった。

まずは私と知崎君のペア、加賀君と目野さんペア、ネロと闇内君ペアが校舎、秋山君と響さんペアが研究棟、越目君と古城さんペア、食峰君と聖蘭さんペアが寄宿舎を調べる事になった。

さてと…捜査を進めていかないとね。

 

 

 

ーーー

 

 

 

《捜査開始!》

 

 

 

まずはモノクマファイルを確認しておこう。

 

モノクマファイル①

被害者は【超高校級のバレーボール選手】玉越翼。

死亡推定時刻は午前0時10分頃。

死体発見場所は校舎1Fの保健室。

死因は失血死。

上半身の前側に刃物で斬りつけられたと思われる深い切創と、腹部に複数の刺し傷が見られる。

刺し傷は背中にまで貫通している。

 

 

 

本当に色々詳しく書いてあるわね…

血の乾き具合も、死亡推定時刻と一致している。

見たところ、ファイルに虚偽の記載は無いみたいね。

 

「わあい、そのファイルすごいねえ!そんなに詳しく書いてあるんだぁ!知ってた?不思議不思議〜!!」

 

知崎君、さっきまであんなに泣いてたのに切り替え早いわね。

というか全員にファイル送られてるんだから自分のを見なさいよ。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【モノクマファイル①】

 

 

 

私がモノクマファイルを調べていたその時、後ろから知崎君が話しかけてきた。

 

「ねえねえ、ちょっと気になったんだけどさ!死体発見アナウンスって犯人はカウントされるのかな?」

 

「え?」

 

「だってさ、犯人がカウントされるかどうかで死体を発見した人が怪しいかどうかがわかるでしょ?犯人を絞る上で重要なヒントになると思うんだぁ!」

 

「確かに…どうなのかしらね。モノクマ!」

 

『はい何でしょ?』

 

「死体発見アナウンスの中に犯人は含まれるの?」

 

『はい、ズバリお答えします!死体発見アナウンスの中に犯人はカウントされません!だって犯人が死体を見るのは、『発見』って言わないもんね。校則にも追加しとくからちゃんと目を通しといてね!』

 

モノクマが言った直後、校則が追加された。

 

 

 

十四、死体発見アナウンスにクロはカウントされませんのでご注意ください。

 

 

 

「…なるほどね。知りたい事は知れたわ。目障りだからもう消えなさい」

 

『せっかく教えてあげたのに…クマ遣いが荒いクマ!』

 

うるさいわね全く…

本当に目障りだから早く消えてほしいわ。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【校則の十四番目の項目】

死体を三人が発見した時点で死体発見アナウンスが放送されるが、クロはカウントされない。

 

 

 

「そうそう、知崎君」

 

「ほぇ?何?」

 

私が尋ねると、知崎君はコテンと首を傾げる。

あざとい……

絶対自分がかわいいってわかってやってるのが腹立つわね。

 

「あなたはどうして集合に遅れてきたの?」

 

「えっ、ねえそれってボクを疑ってるって事?」

 

「そうよ。死体発見アナウンスがあったのに遅れてくるなんて、疑われても仕方ないでしょう?」

 

「失礼だなぁ!ボカァ寝てたの!ぐっすり寝てたからアナウンスに気づかなかったんだよ!」

 

「一応聞くけど、夜時間中外に出たりしてないわよね?」

 

「してないよ!」

 

…うん、見たところ嘘をついている様子はないわね。

怪しいけど、一応言ってる事に矛盾はないわね。

目野さんも寝てたし…

 

「あれ?ねえねえ緋色ちゃん!これ何だと思う?そこの床に落ちてたんだけど!」

 

そう言って知崎君は、黒いゴミのようなものを見せてきた。

見たところ、剥がれたネイルのようね。

重要な証拠品になりそうだから一応取っとかなきゃ。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【黒いゴミ】

知崎君が保健室に落ちているのを見つけた。

どうやら剥がれたネイルのようだ。

 

 

 

そろそろ遺体を調べている小鳥遊さん達にも話を聞いておかなくちゃね。

 

「小鳥遊さん、検視中悪いんだけど何かわかった事はあった?」

 

「………ん」

 

小鳥遊さんは、検視の結果分かった事を筆談で教えてくれた。

 

“切り傷は左肩から右脇腹に向かって走っているので、犯人は右利きの可能性が高いです。刺し傷の方が新しいので、刃物で斬り伏せた後で確実に止めを刺すために何度も刺したと思われます。傷口の状態から、犯人は刃物を扱った事が無い素人の可能性が高いかと。”

 

すごい、こんな事までわかるのね…

さすが【超高校級の獣医】だわ。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【小鳥遊さんの検視結果】

おそらく犯人は、刃物で斬りつけた後でトドメを刺すために何度も刺したと思われる。

切り傷は左肩から右脇腹に向かって走っているので、犯人は右利きの可能性が高い。

斬った後で何度も刺しているので、犯人は素人だと思われる。

 

 

 

「…ねえ、そういえばあなたと響さんはマナを呼びに行くのに随分と時間がかかったわよね?何かあったの?」

 

私が尋ねると、小鳥遊さんはマナの方をチラッと見た。

マナは、キョトンとした様子で首を傾げる。

 

「?」

 

“実は、聲伽さんが古城さんの研究室にいたんです。何故か古城さんの研究室だけ鍵がかかっていたのでモノDJに開けてもらったんですが、聲伽さんが古城さんの研究室の甲冑を着て寝ていました。その直後にアナウンスが鳴ったので保健室に来たんですが、まさか玉越さんがこんな事になってるなんて思わなくて…。”

 

マナが古城さんの甲冑を…?

ちょっと待って、今しれっと意味わかんない事書かなかった?

どうしてそんな状況になってるのよ…

 

「わかったわ。ところで小鳥遊さんは、夜時間中に出歩いたりしてないわよね?」

 

「ん」

 

「なるほど。ありがとう。また何かわかった事があったら教えてね」

 

「ん」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【小鳥遊さんの証言】

研究棟にある古城さんの研究室を探しに行ったら鍵がかかっていた。

モノDJに鍵を開けてもらって中に入ると、マナが甲冑を着て寝ていた。

 

 

 

「館井君、あなたは何かわかったのかしら?」

 

「…事件と関係あるかはわからんが、こんなものを見つけた」

 

そう言って館井君は、事件現場の床を指差した。

床には、血で『4Q』と書かれていた。

これは…筆跡から見て玉越さんが生前に書いたものとみて間違いなさそうね。

…ん?メッセージの横に不自然に血がはねてるわね。

何かしら…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【謎のメッセージ】

保健室の床に血で『4Q』と書かれていた。

筆跡から見て玉越さんが生前に書いたものとみて間違いない。

メッセージの右横に不自然に血がついている。

 

 

 

「マナは何かわかった事はある?」

 

「ごめんちゃ、まだ何も」

 

マナはまだ何も手がかりを見つけられていないみたいだった。

さっきからずっと後頭部を押さえてるけど、どうしたのかしら…?

私は、小鳥遊さんが言っていた事が気になって、マナに直接尋ねる事にした。

 

「ねえ、一つ聞いてもいいかしら?」

 

「何?」

 

「小鳥遊さんが、古城さんの研究室であなたを見つけたと言っていたのだけれど。どういう事か教えてもらえないかしら?」

 

「あー…そりゃあってん、夜中に急にインターホンが鳴って、何かて思うて出てみたらドアにこげな紙が挟んであったっちゃんね」

 

そう言ってマナは、何かが書かれた紙を私に見せてきた。

『脱出の手掛かりになりそうな物を発見。夜の2時に【超高校級の考古学者】の研究室の前に集合。モノクマに怪しまれるといけないから、誰にも言わずに一人で来る事』と書かれていた。

…これ、ブロック体で書かれてるわね。

筆跡で犯人の特定はできなさそう、か。

 

「あれれ?何か書いてあるね!」

 

「それくらい見ればわかるわよ知崎君。えっと、マナはこれを見て夜時間中に外に出たって事でいいのよね?」

 

「ごめん、夜時間中に出歩いたらつまらんのはわかっとーばってん、どげんしてん気になってしもうて。そいで古城ちゃんの研究室に行こうとしたら、いきなりガツン!って頭ばくらしゃれて…目が覚めたら、響ちゃんと小鳥遊ちゃんがうちば呼びに来とったんばいね。うち、まさか玉越ちゃんが殺しゃれとーやなんて思わんで…」

 

「なるほど、ところでさっきからずっと頭押さえてるけどどうしたの?」

 

「これ?くらしゃれたとこがたんこぶになってしもうてるごたってしゃ。ちょっと診てくれん?」

 

そう言ってマナが帽子を脱いだので、私は言われた通りマナの後頭部を診てみた。

マナの頭は、何かで殴られたのか確かに瘤ができていた。

ちょっと血も出てるわね…

 

「あー…確かにこれはひどいわね。何か冷やすもの持ってくるわ」

 

「ありがとう!」

 

私は、その場で氷嚢を作ってマナに渡した。

どうやら少しはマシになったみたいだ。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【マナ宛の手紙】

マナが持っていた手紙。

深夜にインターホンが鳴り、出てみるとドアの隙間に挟まっていたらしい。

『脱出の手掛かりになりそうな物を発見。夜の2時に【超高校級の考古学者】の研究室の前に集合。モノクマに怪しまれるといけないから、誰にも言わずに一人で来る事』と書かれている。

ブロック体で書かれているため、犯人の特定は不可能。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【マナの証言】

手紙に書いてあった古城さんの研究室に行こうとしたところ、いきなり後頭部を殴られたらしい。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【たんこぶ】

マナの後頭部にたんこぶができていた。

少し血も出ていて、かなり強く打撃を受けたようだ。

 

 

 

さて…と。

次は闇内君とネロに話を聞いてみようかしら?

 

「ネロ、あなたは何かわかったのかしら?」

 

「何かを見つけたわけじゃねえが、逆に無くなってるものならあったぜ」

 

「なくなってるもの?」

 

「遅効性の下剤と医者のなりきりセットだ。なりきりセットは、ケンジロウの分だけなくなってたぜ」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【お医者さんなりきりセット】

保健室のロッカーから1セット無くなっていた。

男子用は額帯鏡と白衣、女子用は露出度高めのナース服と網タイツが入っていて、全員のサイズに対応している。

無くなったのは館井君用。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【遅効性の下剤】

保健室からなくなっていた。

 

 

 

「え〜それ本当!?不思議不思議〜!」

 

「なるほどね…闇内君、あなたは何かわかった事はあるかしら?」

 

「ふふふ…腐和嬢。実は拙者、こんなものを見つけたでござるよ」

 

そう言って闇内君は、自信満々に電マを見せてきた。

こんな時にそんなしょうもない下ネタぶっ込んでくるとか、そろそろこいつシメた方がいいんじゃないかしら。

 

「うわー、忍おにいのヘンタイ!」

 

「…あんた、こんな時に何をふざけてるのよ」

 

「ふ、ふざけてなどおらぬで候!!本当に事件現場で見つけたんでござるよ!!」

 

本当かしら。

正直、日頃の行いが行いだから信用が無いわね。

…あら?これ、ちょっとだけ血がついてるわ。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【血のついた電マ】

保健室に無造作に置いてあった。

よく見ると血が少量付着している。

 

 

 

「…なるほど。よくわかったわ。ありがとう」

 

さてと。次は購買部を調べてくれている加賀君と目野さんに話を聞いてみようかしら。

 

「加賀君、目野さん。調べて何かわかった事はある?」

 

「ええとですね!私は購買部での商品の購入履歴を調べていました!!」

 

「結果は?」

 

「夜中の0時50分頃に紙オムツが一点購入されていましたね、ええ!!」

 

「えー紙オムツ!?誰だよそんなの買ったの!赤ちゃんじゃないんだからさ!」

 

うーん…

事件との関係性は低そうだけど…

一応頭の隅に置いておこうかしらね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【購買部の購入履歴】

午前0時50分に紙オムツが一点購入されている。

 

 

 

「加賀君。あなたは?」

 

「事件と関係があるかはわからないが、コピー機の履歴を調べていたら面白いものを見つけた」

 

そう言って加賀君は、コピー機の履歴を見せてきた。

見てみると、昨日の午後9時頃に生徒手帳のスクリーンショットが印刷されている。

見たところスクリーンショットの内容は、メモ機能の文面のようだ。

うーん、重要な事件の手がかりはこういうところに隠されてたりするし、頭の隅には留めておこうかしらね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【コピー機の履歴】

昨日の午後9時頃に利用されている。

印刷内容は手帳のメモ機能のスクリーンショット。

 

 

 

さてと、校舎の方はこれくらいかしらね。

次は研究棟に行ってみようかしら。

 

 

 

ーーー 研究棟 ーーー

 

研究棟では、秋山君と響さんが捜査をしていた。

 

「秋山君、響さん。何かわかった事はある?」

 

「見るからに怪しいものならあったぜ」

 

そう言って響さんは、甲冑と金ピカの日本刀を指差した。

日本刀には、ベッタリと血がついている。

アレが凶器とみて間違いなさそうね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【金ピカの日本刀】

古城さんの研究室のもの。

刃の部分が血塗れになっている。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【古城さんの研究室の甲冑】

古城さんの研究室の曰く付きの甲冑。

 

 

 

「なるほどね。秋山君は?」

 

「俺はこんなものを見つけたよ」

 

そう言って秋山君は、蝶ネクタイ型の変声機を見せてきた。

変声機は、よく見ると壊れている。

どういじっても何も起こらない。

…ってこれ、マナが二日目にモノモノマシーンで引いたやつじゃない。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【壊れた蝶ネクタイ型変声機】

マナがガチャガチャの景品で当てたもの。

ゲットした直後に壊れて使い物にならない。

 

 

 

「あとは、ドアのサムターンにこんなものが貼ってあったよ」

 

そう言って秋山君は、サムターンを指差した。

サムターンには、糸がついたセロテープが貼ってあった。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【糸がついたセロテープ】

サムターンに貼り付けてあった。

何故かセロテープに糸が付いている。

 

 

 

「なるほどね。ありがとう。ところで秋山君。確認なんだけど、死体発見アナウンスが鳴る前に玉越さんの遺体を見たのはあなたが最後よね?」

 

「ん?ああ、うん。そうだね」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【死体発見アナウンス】

聖蘭さん、私、秋山君の順に玉越さんを発見した直後にアナウンスが鳴った。

 

 

 

ここでの調査はこんなものかしらね。

次は寄宿舎を調べてくれている4人にも話を聞かないと。

 

 

 

ーーー トラッシュルーム ーーー

 

トラッシュルームに行ってみると、4人がいた。

やっぱここが怪しいから皆調べるわよね…

私達は、皆に話を聞いてみる事にした。

 

「食峰君、聖蘭さん。あなた達は何かわかった事はあった?」

 

「ええ。捜査時間中は焼却炉のスイッチを切っているとの事でしたので一応調べてみたのですが、中にこんなものが…」

 

そう言って聖蘭さんは、燃え切れていない額帯鏡と白衣、それから薬の瓶を見せてきた。

額帯鏡と白衣には、それぞれ血がついている。

白衣の方は、背中側に大量の血がついてるわね…

瓶の方は…ラベルは燃えてしまって中身がわからないわね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【血のついた白衣】

焼却炉に捨ててあった。

背中側に血がついている。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【血のついた額帯鏡】

焼却炉に捨ててあった。

血がついている。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【薬品の瓶】

焼却炉に捨ててあった。

ラベルが燃えてしまっているため、中身まではわからない。

 

 

 

「食峰君、あなたは?」

 

「オレは、ゴミ箱にペットボトルが捨てられてるのを見つけたぜ!!」

 

「ペットボトル…?それってもしかして、朝無くなってたって言ってたやつ?」

 

「おう、そうそう!!オレが調理用に溜めといたやつ!!誰かがオレに黙って勝手に使っちまったのかなぁ」

 

そういえば、朝食を作ろうとした時水が足りなくて困ったのよね。

でもどうして急に水がなくなったりしたのかしら…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【水道水の入ったペットボトル】

トラッシュルームのゴミ箱に捨ててあった。

元は食峰君が朝食作り用に水道水を溜めていたもの。

食峰君が厨房に来た時には、何故か数本持ち出されていた。

 

 

 

「ねえねえ越目おにいといろはちゃんは何かわかった?」

 

「ああ、それなんだけどよ。これ見てみろよ」

 

そう言って越目君は、トラッシュルームの焼却炉を操作するスイッチがある管理ルームを指差した。

管理ルームは、普段は鉄格子が降りていて中に入れないようになっている。

うーん、格子の間隔が狭いから腕は通らなさそうね。

……ん?

よく見ると、スイッチに血がついてるわ。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【焼却炉のスイッチ】

焼却炉を起動させるためのスイッチ。

スイッチは鉄格子で封じられている。

鉄格子の間隔は腕一本も通せない程狭い。

スイッチには何故か血がついている。

 

 

 

「古城さん、あなたは?」

 

「あー、それなんだけどよ。古城ちゃん、昨日トラウマになるような事があったみたいでよ。ずっとガタガタ怯えてんだよな」

 

「え〜、何それ!とっても不思議!」

 

「仕方ないわね…古城さん。今は少しでも情報が欲しいの。何があったのか教えてくれないかしら?」

 

私が落ち着いた口調で古城さんに尋ねると、古城さんは何かに怯えつつもゆっくりと話してくれた。

 

「……ワシは昨日の夜中、急に腹痛を起こしてな。それで襁褓を買いに外に出たのじゃ」

 

「えー、いろはちゃん高校生にもなってオムツ!?ウケる〜!」

 

「じゃかぁしい!!夜時間中は便所の水が出ないんだから仕方ないじゃろ!!」

 

古城さんの証言を知崎君が笑うと、古城さんがキレた。

今はふざけてる場合じゃないんだけど…

 

「知崎君、話を拗らせないで。それで古城さん、その時何かあったのよね?」

 

「出たんじゃ!!落武者の霊が!!」

 

「……は?」

 

「落武者の霊は夜になると生者の身体を乗っ取り、夜な夜な鎧兜を着て血を求めて徘徊するといわれておるのじゃ…!ワシは見たんじゃ!鎧兜を着た亡霊が、血濡れた刀を握って気味の悪い笑い声を上げながら校舎を徘徊しているのを!!」

 

…気味の悪い笑い声?

 

「ねえ古城さん、そいつはどんな声だった?」

 

「えっと……しわがれた男の声じゃったって事くらいしか…」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【古城さんの証言】

夜中に校舎に甲冑を着た落武者の霊が現れたらしい。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【亡霊の声】

落武者の霊は不気味な笑い声を上げていた。

しわがれた男の声だったらしい。

知っているのは私、知崎君、古城さん、越目君の4人だけ。

 

 

 

「なるほどね。ありがとう。じゃあ……」

 

私が古城さんに状況を詳しく聞こうとした、その時だった。

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『えー、もう待ちくたびれたので捜査時間を打ち切らせていただきます!オマエラ、校舎1階の赤い扉の前まで集合して下さい!あ、もちろん全員参加だからね?15分以内に来ないとオシオキしますよー!』

 

え、嘘でしょ!?

もう終わり!?

まだ調べたい事あったんだけど…

でも、ここで迷っている場合じゃない。

行かなきゃ。

私は、覚悟を決めて赤い扉の前に向かった。

 

「行きましょう、知崎君」

 

「うん!何があるんだろうね!ワクワク!」

 

 

 

ーーー 赤い扉の前 ーーー

 

私達は、すぐに赤い扉に向かった。

知崎君はこういう時絶対すぐ来なさそうだから、私がペアになって正解だったわね…

私が扉に向かうと既にネロと闇内君、越目君と古城さん、秋山君と響さん、食峰君と聖蘭さんのペアが集まっていた。

しばらく待っていると少しして小鳥遊さんと見張り組が加賀君と目野さんを連れてきた。

 

「あなた方、遅刻ギリギリですわよ」

 

「……すまない。こいつらを連れてくるのに時間がかかった」

 

「いやあ、調べ物をしていたら熱中してしまいまして!!失敬!!」

 

聖蘭さんが注意をすると館井君が申し訳なさそうに、目野さんが悪びれずに謝罪をした。

私達が全員集まると、その直後アナウンスからちょうど15分になった。

 

『うぷぷぷ、ちゃんと全員集まりましたね?』

 

「ねえねえ、ここにボク達を連れて来てどうするの?すっごく不思議〜!」

 

『ギャハハハハ!!グッドクエスチョン!!こんなところで裁判をやるのも華が無えんでなァ!!テメェらゴミクズには裁判にふさわしい場所へ移動してもらうぜェ!!』

 

モノDJがそう言って指を慣らした直後、今までビクともしなかった赤い扉が開く。

赤い扉の中は、エレベーターになっていた。

これに乗れ…って事よね。

私達全員がエレベーターに乗ると、扉が閉まり下へ移動した。

 

正直、まだ実感が湧かない。

あの玉越さんを殺した犯人がこの中にいるだなんて…

でも、今は嘆いている場合じゃない。

待ってて玉越さん、必ず真実を解き明かしてみせるから…!

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り15名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

以上1名

 

 

 

 

 




思ったより長くなってしまった。
初回にしてコトダマ26個…
さてさて、犯人は一体誰でしょうか?


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非日常編②(学級裁判前編)

コトダマリスト

 

【モノクマファイル①】

モノクマファイル①

被害者は【超高校級のバレーボール選手】玉越翼。

死亡推定時刻は午前0時10分頃。

死体発見場所は校舎1Fの保健室。

死因は失血死。

上半身の前側に刃物で斬りつけられたと思われる深い切創と、腹部に複数の刺し傷が見られる。

刺し傷は背中にまで貫通している。

 

【校則の十四番目の項目】

死体を三人が発見した時点で死体発見アナウンスが放送されるが、クロはカウントされない。

 

【黒いゴミ】

知崎君が保健室に落ちているのを見つけた。

どうやら剥がれたネイルのようだ。

 

【小鳥遊さんの検視結果】

おそらく犯人は、刃物で斬りつけた後でトドメを刺すために何度も刺したと思われる。

切り傷は左肩から右脇腹に向かって走っているので、犯人は右利きの可能性が高い。

斬った後で何度も刺しているので、犯人は素人だと思われる。

 

【小鳥遊さんの証言】

研究棟にある古城さんの研究室を探しに行ったら鍵がかかっていた。

モノDJに鍵を開けてもらって中に入ると、マナが甲冑を着て寝ていた。

 

【謎のメッセージ】

保健室の床に血で『4Q』と書かれていた。

筆跡から見て玉越さんが生前に書いたものとみて間違いない。

メッセージの右横に不自然に血がついている。

 

【マナ宛の手紙】

マナが持っていた手紙。

深夜にインターホンが鳴り、出てみるとドアの隙間に挟まっていたらしい。

『脱出の手掛かりになりそうな物を発見。夜の2時に【超高校級の考古学者】の研究室の前に集合。モノクマに怪しまれるといけないから、誰にも言わずに一人で来る事』と書かれている。

ブロック体で書かれているため、犯人の特定は不可能。

 

【マナの証言】

手紙に書いてあった古城さんの研究室に行こうとしたところ、いきなり後頭部を殴られたらしい。

 

【たんこぶ】

マナの後頭部にたんこぶができていた。

少し血も出ていて、かなり強く打撃を受けたようだ。

 

【お医者さんなりきりセット】

保健室のロッカーから1セット無くなっていた。

男子用は額帯鏡と白衣、女子用は露出度高めのナース服と網タイツが入っていて、全員のサイズに対応している。

無くなったのは館井君用。

 

【遅効性の下剤】

保健室からなくなっていた。

 

【血のついた電マ】

保健室に無造作に置いてあった。

よく見ると血が少量付着している。

 

【購買部の購入履歴】

午前0時50分に紙オムツが一点購入されている。

 

【コピー機の履歴】

昨日の午後9時頃に利用されている。

印刷内容は手帳のメモ機能のスクリーンショット。

 

【金ピカの日本刀】

古城さんの研究室のもの。

刃の部分が血塗れになっている。

 

【古城さんの研究室の甲冑】

古城さんの研究室の曰く付きの甲冑。

 

【壊れた蝶ネクタイ型変声機】

マナがガチャガチャの景品で当てたもの。

ゲットした直後に壊れて使い物にならない。

 

【糸がついたセロテープ】

サムターンに貼り付けてあった。

何故かセロテープに糸が付いている。

 

【死体発見アナウンス】

聖蘭さん、私、秋山君の順に玉越さんを発見した直後にアナウンスが鳴った。

 

【血のついた白衣】

焼却炉に捨ててあった。

背中側に血がついている。

 

【血のついた額帯鏡】

焼却炉に捨ててあった。

血がついている。

 

【薬品の瓶】

焼却炉に捨ててあった。

ラベルが燃えてしまっているため、中身まではわからない。

 

【水道水の入ったペットボトル】

トラッシュルームのゴミ箱に捨ててあった。

元は食峰君が朝食作り用に水道水を溜めていたもの。

食峰君が厨房に来た時には、何故か数本持ち出されていた。

 

【焼却炉のスイッチ】

焼却炉を起動させるためのスイッチ。

スイッチは鉄格子で封じられている。

鉄格子の間隔は腕一本も通せない程狭い。

スイッチには何故か血がついている。

 

【古城さんの証言】

夜中に校舎に甲冑を着た落武者の霊が現れたらしい。

 

【亡霊の声】

落武者の霊は不気味な笑い声を上げていた。

しわがれた男の声だったらしい。

知っているのは私、知崎君、古城さん、越目君の4人だけ。

 

 

 


 

 

 

エレベーターが止まると、扉が開いた。

目の前には裁判所のような部屋が広がっており、席が環状に並べられていた。

その奥では、モノクマとモノDJが専用の席で偉そうにふんぞり返っていた。

 

『やっと全員来たね。それでは、全員自分の名前が書かれた席について下さい!』

 

そう促され、全員自分の席につく。

時計回りに、秋山君、加賀君、マナ、古城さん、越目君、食峰君、聖蘭さん、小鳥遊さん、館井君、玉越さん、知崎君、ネロ、響さん、私、目野さん、闇内君の順に並んだ。

 

『ヘイヘイヘーイ!!!全員席についたなァ!!!』

 

『それでは、始めましょうか!お待ちかねの学級裁判を!』

 

 

 

《学級裁判 開廷!》

 

 

 

モノクマ『ではまず裁判の簡単な説明をしておきましょう。学級裁判では『仲間を殺した犯人は誰か』について議論をし、その結果はオマエラの投票によって決まります!』

 

モノDJ『もし正解ならクロのみがオシオキ!!不正解ならクロのみが『卒業』、それ以外の全員がオシオキだぜYEAH!!!!』

 

聲伽「それより、アレは何?」

 

そう言ってマナは、玉越さんの証言台を指差した。

玉越さんの証言台には、玉越さんのモノクロの顔写真にバレーボールの模様が描かれた遺影が飾られていた。

 

モノDJ『へいへい愛ガール!!翼ガールに対して『アレ』はねえんじゃねえのか!?』

 

モノクマ『玉越サンだってオマエラの仲間だったんだから、死んだからって仲間外れはカワイソウでしょ?』

 

越目「ふざけんじゃねえ!!玉越ちゃんの死を弄びやがって!!」

 

響「悪趣味にも程があんだろクソが!!」

 

二匹がゲラゲラと笑うと、越目君と響さんが怒りのあまり怒鳴りつけた。

二人は最近玉越さんと仲がよかったものね…

すると、ネロが冷静に口を挟んだ。

 

ネロ「おいおい、今はそんな事気にしてる場合か?」

 

秋山「確かにね…玉越さんの為にも、早く犯人を見つけないと。腐和さん、議長をお願いできるかな」

 

腐和「えっ、わ、私…!?」

 

いきなり議長って言われても…

何というか、心の準備が…

 

聲伽「確かに、緋色ちゃんはおまわりさんやけんね!うちも緋色ちゃんが一番議長にふさわしいと思う!」

 

越目「そ、そうだな!腐和ちゃんなら安心だぜ!」

 

知崎「うわっ、さすが粧太おにい。緋色ちゃんの金魚のフンだねえ」

 

越目「う、うるせえ!」

 

ネロ「まあいいんじゃねえか?バカガキ一人の為に突っ込んでいくような奴が犯人だとは考えにくいからな」

 

いちいち一言二言多いわね…

 

腐和「……わかったわ。このままだと議論が進まなさそうだし、私がやるわ。まずは事件当時の状況を振り返りましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

秋山「じゃあ俺がモノクマファイルを読むよ。被害者は《【超高校級のバレーボール選手】玉越翼》。死亡推定時刻は《午前0時10分頃》。死体発見場所は《校舎1Fの保健室》」

 

越目「クソッ…玉越ちゃん…何で…!!」

 

秋山「死因は《失血死》。上半身の前側に刃物で斬りつけられたと思われる深い切創と、腹部に複数の刺し傷が見られる。刺し傷は背中にまで貫通している。以上だよ」

 

知崎「刃物?何を使ったんだろうねぇ!」

 

聖蘭「やはり《ナイフ》でしょうか?」

 

館井「卑劣な………!!」

 

ちょっと待って、今おかしい発言をした人がいなかった?

 

 

 

《ナイフ》⬅︎【モノクマファイル①】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

聖蘭「ええと、私が何かおかしな発言をしましたか?」

 

腐和「モノクマファイルをよく見て。『刃物で斬りつけられたと思われる深い切創』と『背中まで貫通する刺し傷』があると書かれているでしょう?ナイフだと、刃渡りが足りないと思うの」

 

聖蘭「あっ……」

 

古城「じゃがそのモノクマファイルとやらが捏造かもしれんじゃろう!!」

 

小鳥遊 “それはないと思います。検視結果と一致していたので”

 

秋山「うん、じゃあ凶器は長めの刃物と見て良さそうだね」

 

腐和「そうね。じゃあ次は凶器について話し合いましょうか」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

目野「古城さんの《ツルハシ》の斬殺丸はどうでしょう!?名前にも『斬殺』と入っているじゃないですか!」

 

古城「貴様、ワシを疑っておるのか!?」

 

加賀「まず刃渡りが足りないと思うんだが……」

 

館井「………厨房の《刺身包丁》はどうだ?」

 

知崎「じゃあ怪しいのは満おにいだね!」

 

食峰「お、オレじゃねえぞ!!」

 

越目「闇内の《腰に差してる刀》は?」

 

闇内「な…!拙者は無実でござる!!」

 

秋山「うーん、常識的に考えて古城さんの《研究室の日本刀》じゃないかな」

 

あの人の意見に賛成したい。

 

 

 

《研究室の日本刀》⬅︎【金ピカの日本刀】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「凶器は古城さんの研究室にあった金ピカの日本刀だと思うわ」

 

聲伽「ああ、あのゴージャスな刀やね!」

 

目野「そんなものがあったんですか!!」

 

腐和「ええ。古城さんの研究室に血のついた日本刀があったの。あれが凶器と考えていいんじゃないかしら」

 

加賀「なるほど、確かに日本刀で斬りつけたと考えれば納得がいくな」

 

腐和「これで死因と凶器は明らかになったわね」

 

加賀「だが返り血は?刀で斬ったりなんかしたら血を浴びそうなものだが」

 

ネロ「確かになァ…夜時間中だと風呂やランドリーも使えねえしな」

 

腐和「じゃあ犯人はどうやって返り血を防いだのか、議論してみる必要がありそうね」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

知崎「《魔法》じゃない?というわけで久遠おにいが犯人だと思いまーす!」

 

加賀「俺は君を何だと思ってるんだ?」

 

聲伽「血を防げそうなもの…あっ、《レインコート》とかは!?」

 

目野「購買部の購入履歴にはレインコートはありませんでしたよ!」

 

響「《シーツ》じゃねえのか?」

 

ネロ「クマ公共の用意した《コスプレグッズ》が怪しそうだがなぁ」

 

あの人の意見に賛成したい。

 

 

 

《コスプレグッズ》⬅︎【血のついた白衣】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「ネロの言う通り、返り血を防いだものは白衣だと思うわ。トラッシュルームの焼却炉に、背中側に血のついた白衣が捨ててあったの」

 

食峰「ああ、確かにあったな!!でも何で後ろ向きなんだ!?」

 

腐和「多分、返り血を防ぐために後ろ前に着たからだと思うわ」

 

 

 

小鳥遊「ん……」

 

《反 論》

 

 

 

腐和「小鳥遊さん?」

 

小鳥遊 “確かにその推理は一見筋は通ってると思います。でも、それだと説明できない事があります。今からそれを説明していきます”

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

小鳥遊「ん…」

 

小鳥遊 “ネロ君と腐和さんの仮説が正しいとすれば、確かにある程度なら返り血を防げると思います。ですが、全ての返り血を防ぐ事はできません。別の方法で防いだと考えるのが妥当ではないでしょうか?”

 

腐和「でも確かに白衣には血が付いてたし…後から落としたという可能性もあるわ」

 

小鳥遊「む…」

 

小鳥遊 “言っておきますが、犯行が起こったのも玉越さんが発見されたのも夜時間中ですよ。シャワーや浴場、トイレは使えません。水が出ない以上、《返り血を後から落とす手段はありません》。犯人は別の方法で返り血を防いでいて、血のついた白衣は捜査を撹乱する為のミスリードだと思います”

 

確かに、夜時間中だと水が出ないという制約がある。

でもあるのよ、夜時間中でも血を落とす方法が!

 

《返り血を後から落とす手段はありません》⬅︎【水道水の入ったペットボトル】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「後から汚れを落とす方法はあるわよ」

 

小鳥遊「え…?」

 

腐和「食堂にあったペットボトルよ。犯人は、食峰君が夜時間に朝食を作る為に貯めておいた水道水のペットボトルを持ち出して、ペットボトルの水で残った汚れを落としたのよ。実際、私が朝食を作る為に厨房を訪れた時には不自然に水が減っていたしね」

 

小鳥遊「あ……」

 

食峰「ああ、だから水があんなに減ってたのか!!」

 

ネロ「ふうん、なるほどな。だがそうなると、一つ問題があるぜ?」

 

越目「問題?」

 

ネロ「考えてもみろ、ツバサは【超高校級のバレー選手】だぜ?後前に白衣を着て真剣を振り回したりなんかしたら、間違いなく動作は普段より遅くなる。それを奴が見切れねえと思うか?」

 

聲伽「あ、確かに…」

 

腐和「じゃあ今度は、犯人がどうやって玉越さんを斬りつけたのかについて話し合いましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

闇内「《暗闇》の中で襲いかかったという線は?」

 

秋山「それだと逆に犯人に不利になっちゃわない?」

 

食峰「《『あっ!UFO!』って言った》んじゃねえか!?」

 

館井「………室内だぞ」

 

加賀「《目潰し》でもしたんじゃないか?」

 

響「《スタンガン》でも使ったんじゃねえの?」

 

目野「そうなると腐和さんが怪しくなっちゃいますね!」

 

今、重要な発言をした人がいたわね。

 

 

 

《目潰し》⬅︎【血のついた額帯鏡】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「加賀君の言う通り、犯人は目潰しをして玉越さんの隙を作ったんだと思うわ」

 

越目「でも目潰しってどうやってやったんだよ?」

 

腐和「おそらく光の反射を使ったのよ。犯人は鏡に照明の光を反射させて、光を玉越さんの顔に当てたのよ。玉越さんが顔に当たった光に怯んだ隙に、持っていた日本刀で斬りつけた、というわけよ」

 

目野「鏡ですか!でもそんなのどこにあったんですかね!?購買部の購入履歴には書いてませんでしたよ!!」

 

それは……

 

 

 

コトダマ提示!

 

【お医者さんなりきりセット】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「おそらく、保健室のロッカーにあった『お医者さんなりきりセット』だと思うわ。焼却炉に血のついた額帯鏡が捨てられていたの。目潰しに使った鏡は、男子用のセットの中に入っていた額帯鏡よ。返り血を防ぐ為に使った白衣も、そこから調達したものだと思うわ。ねえ、ネロ?」

 

ネロ「ああ。確かにロッカーから趣味の悪いコスプレグッズが1セット無くなってたぜ」

 

腐和「ちなみにサイズは館井君の体格に対応したものだったわ。恐らく、カバー面積を少しでも増やすために一番大きいサイズを選んだんでしょうね。犯人は、玉越さんを殺す為にロッカーから『お医者さんなりきりセット』を持ち出して、殺人が終わったら白衣と額帯鏡を焼却炉で処分しようとした…といったところでしょうね」

 

響「でも夜時間中は焼却炉を使えねえんじゃなかったか?どうやって処分したんだよ」

 

腐和「そうね…じゃあ次はそれについて話し合いましょうか」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

響「まずそもそも《夜時間中は焼却炉を使えねえ》じゃねえか!!どうやって処分するっつーんだよ!?」

 

聖蘭「一応《焼却炉のスイッチ》はございましたが…」

 

食峰「でも焼却炉のスイッチには鉄格子はあるから行けないやっぱり《スイッチを押すのは無理》なんじゃねえのか!?」

 

闇内「うむ…一応見てみたでござるが、拙者の忍術でも押せそうにはなかったでござるな」

 

ん?

今、真実とは違う発言をした人がいたわね。

 

 

 

《スイッチを押すのは無理》⬅︎【焼却炉のスイッチ】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

食峰「えっ、オレ!?何か変な事言ったか!?」

 

腐和「あなたは今、『焼却炉のスイッチを押すのは無理』と言ったわよね。でもね、焼却炉のスイッチには血がついていたの。もちろん何もせずに血がつくわけがないし、これは誰かが夜時間中にスイッチを押して焼却炉を稼働させた証明になるんじゃないかしら?」

 

食峰「あっ…で、でも、どうやって押したかはわかってねえじゃねえか!!」

 

館井「………確かに。どうやって押したかがわからない事には、押された事実だけを証明しても無意味ではないのか?」

 

秋山「でも実際スイッチに血はついてるし…あれ?これってどうなるのかな?」

 

夜時間中に焼却炉を稼働させた方法…

それは…

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

ニ ホ ン ト ウ デ オ シ タ

 

 

 

【日本刀で押した】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「犯人が犯行を成立させたトリックはこうよ。まずは適当な理由をつけて玉越さんを保健室に呼び出し、白衣を後前に着て額帯鏡を使って目潰しをし、その隙をついて日本刀で斬り伏せた。そして確実にトドメを刺した後、焼却炉に白衣と額帯鏡を捨てに行った。でも夜時間中で焼却炉が使えなかったから、鉄格子の隙間から日本刀を差し込んでスイッチを押して稼働させた。そして残った返り血は厨房のペットボトルの水で洗い流した…これが玉越さんを殺した手口よ」

 

ネロ「なるほどね。だが犯人に繋がる手がかりが無えんじゃなあ…何か犯人を絞れそうな情報は無えのか?」

 

犯人が絞れそうな情報…

もしかしてあれかしら?

 

 

 

コトダマ提示!

 

【小鳥遊さんの検視結果】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「小鳥遊さんの検視結果によると、犯人は右利きの可能性が高いそうよ。それと、刀をまともに扱った事が無い素人の可能性が高いとも言っていたわね」

 

秋山「ええっと、この中で左利きの人は…」

 

腐和「私よ」

 

越目「オレちゃんもだぜ!」

 

加賀「俺もだ」

 

目野「ハッハァ!!私もですね、ええ!」

 

知崎「はいはーい!ボクも!」

 

ネロ「てめぇは両利きだからノーカウントだ」

 

知崎「えー」

 

聲伽「思うたより左利き多いね…とりあえず犯人は左利きの緋色ちゃん、越目君、加賀君、目野ちゃんと、刀を使い慣れとー闇内くん以外の誰かって事でよかと?」

 

知崎「あ!でもさでもさ!忍おにいが素人に見せかけるためにわざとヘタクソに斬りつけた可能性もあるよね!」

 

闇内「なな!?」

 

加賀「抵抗される可能性もあるのにそんな事する余裕があるのか…?」

 

秋山「うーん、じゃあ一応闇内君も犯人候補に入れといて…」

 

闇内「酷いでござる!!」

 

館井「15人中11人が犯人候補か……」

 

響「そもそも右利きで素人ってだけじゃ情報量が少なすぎんだよクソが!」

 

聖蘭「思ったより絞れませんでしたわね…」

 

腐和「そうでもないわよ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【死体発見アナウンス】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「死体発見アナウンスは、聖蘭さん、私、秋山君の順番に遺体を発見してから放送されているわ。つまり、聖蘭さんと秋山君も潔白よ」

 

知崎「ああ、なるほど!確かにそうだね!」

 

加賀「では犯人候補はあと9人か。ううむ、半分には絞れたが…」

 

 

 

古城「このワシが斬り伏せてくれるわ!!」

 

《反 論》

 

 

 

腐和「古城さん?」

 

古城「甘い!!甘いわ!!ウヌは肝心な事を忘れておるぞ!!それを今から証明してくれるわ!!」 

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

古城「ウヌは、死体発見アナウンスが鳴る前にその三人が死体を見たから無実だというのじゃな!?」

 

腐和「ええ、そうよ。それがどうしたの?」

 

古城「甘いわァ!!その中に犯人がおるとは考えなかったのか!?大体、推理モノでは第一発見者が一番怪しいと相場が決まっておろうが!!証拠隠滅をするのにはうってつけじゃからのう!!聖蘭が《第一発見者のフリをして》貴様らが来る前に証拠隠滅を図った、その可能性がお主の中からは抜けておるのじゃ!!」

 

第一発見者のフリをして証拠隠滅…

それは絶対にできないはずよ!

 

《第一発見者のフリをして》⬅︎【校則の十四番目の項目】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「残念だけどそれは通らないわ」

 

古城「な、何故じゃ!?」

 

腐和「犯人は死体発見アナウンスにカウントされないのよ。だから聖蘭さんと秋山君は犯人じゃないわ」

 

秋山「聖蘭さんより前に死体を見てる人がいたら、真っ先に報告してるはずだもんね」

 

越目「じゃあ犯人は今言った6人以外の誰かっつー事か」

 

闇内「せ、拙者ではござらぬぞ!!」

 

知崎「ボクでもないよ!知ってた?」

 

どうしよう、議論が滞ってしまったわね…

もう玉越さんの殺害のトリックは明かしたし、やっぱりそろそろあの事を言うべきなのかしら…?

 

 

 

聖蘭「あの…非常に申し上げにくいのですが、私は一人心当たりのある方を知っておりますの」

 

ネロ「チッ、何だ。だったらもっと早く言え。……と言いたいところだが、誰だ?」

 

聖蘭「古城様ですわ」

 

古城「わ、ワシかあああ!!?」

 

聖蘭「古城様は、私がお迎えに上がった時様子がおかしかったのですわ」

 

越目「あー、そういやずっと何かに怯えてたな」

 

目野「では古城さんが犯人だったのですね!!いやぁーアタクシャあショックですよ!!」

 

古城「違うわァ!!ワシが犯人なワケなかろうがうつけが!!」

 

知崎「え〜、でもさでもさ!キミは外を出歩いてる事を認めてたよね?」

 

秋山「え、そうなの?古城さん、何で夜時間に外に出てたのか説明してくれないかな」

 

古城「それは…こっ、こやつが外に出ろと脅してきたんじゃあ!!」

 

越目「はっ、はあああああ!!?ちょいちょいちょい!!何言ってくれちゃってんの古城ちゃん!?キミ、さっき買い物しに部屋を出たって…」

 

古城「ええいじゃかぁしい黙れい!!ワシは確かにウヌに外に出るよう言われたのじゃ!!よくもワシを嵌めてくれたな、殺人鬼め!!」

 

越目「息するように嘘つくじゃん…コワッ」

 

加賀「醜いな」

 

腐和「……古城さん。自分が犯人だと疑われたくないなら、くだらない嘘つかないでもらえる?」

 

古城「ごっ…ごめんなさい…」

 

腐和「さてと、古城さんが本当に犯人なのかどうか、煮詰めていく必要がありそうね」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

聖蘭「古城様は、《夜時間中出歩いて》いらっしゃいましたよね?」

 

古城「そ、それはそうじゃが…」

 

秋山「じゃあその時間帯何をしてたのか教えてくれる?」

 

古城「こ、《購買部にいた》んじゃ!!これは嘘じゃないわい!!」

 

館井「購買部だと……?何をしに行っていたのだ」

 

古城「それは…えっと…」

 

ネロ「フン。何をしに行ったのか言えねえんじゃ、《証明のしようがねえ》じゃねえか」

 

いいえ、あったはずよ。

古城さんが購買部で買い物をした証拠が!

 

 

 

《証明のしようがねえ》⬅︎【購買部の購入履歴】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

ネロ「……あ?」

 

腐和「あるのよ、古城さんが購買部で買い物をしていた証拠が。そうでしょう?目野さん」

 

目野「え?ああ、はい!ええとですね、確かに0時50分頃に紙オムツが一点購入されていますね!」

 

闇内「紙オムツとな…?そのような品を何故夜中に買ったのでござるか?」

 

古城「し、仕方ないじゃろうが!!夜中に急に催したんじゃ!!夜時間中は便所が使えぬ故、渋々買いに行ったんじゃ!!【超高校級の考古学者】様がたかが襁褓で外に出て悪かったのう!!」

 

古城さん、いきなり元気になったわね…

開き直ったのかしら。

 

知崎「え〜、でもさでもさぁ!いろはちゃんはどうして夜中に急にトイレに行きたくなったの?知ってる?不思議〜!」

 

古城さんが夜中に急にお手洗いに行きたくなった原因…

もしかして…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【遅効性の下剤】【薬品の瓶】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「多分、下剤が原因じゃないかしら?」

 

知崎「ほぇ?」

 

腐和「保健室から遅効性の下剤が無くなっていたの」

 

小鳥遊「ん」

 

小鳥遊 “ネロ君に聞いたんですが、無くなっていたのは飲んでから6時間後に効果が現れる下剤です。購買部の購入履歴の時刻の6時間前は、ちょうどパーティーの最中なので、古城さんの証言に矛盾はないと思います”

 

越目「じゃあ犯人はパーティーの飯の中に下剤をぶち込んだって事かよ!?」

 

加賀「残念だがそういう事だろうな。だがこれで古城の無実が証明されたわけだ。それと同時に議論が振り出しに戻ったがな」

 

響「…いや、まだ一人怪しい奴がいるぜ。いんだろ?死体発見アナウンスがあってから最後に来た奴がよ!しかもそいつはどう考えてもおかしい事してたじゃねえか!!」

 

 

 

事件現場に最後に来た人…

しかもその人は、普通だったらあり得ない事をしていた。

それって…

 

 

 

《人物指定》

 

 

 

腐和緋色

 

聲伽愛

 

玉越翼

 

小鳥遊由

 

知崎蓮

 

食峰満

 

越目粧太

 

聖蘭マリア

 

古城いろは

 

加賀久遠

 

目野美香子

 

館井建次郎

 

秋山楽斗

 

響歌音

 

ネロ・ヴィアラッテア

 

闇内忍

 

 

 

 

 

➡︎聲伽愛

 

 

 

腐和「あなたの事じゃないの?マナ」

 

聲伽「えっ…う、うち…!?」 

 

腐和「あなたは響さんと小鳥遊さんに呼ばれて最後に保健室に来たわよね?」

 

聲伽「そ、それは…そうだけど…でもうちは犯人やなか!!」

 

響「しらばっくれんじゃねえ!!だったら今朝のアレは何だ!?」

 

聲伽「あ、アレ…?」

 

響「テメェは古城の研究室で変な鎧着てただろうが!!しかもご丁寧に凶器の刀まで持ってなあ!!」

 

…えっ?

ちょっと待って、それってどういう事?

 

腐和「ちょっと響さん、それはどういう事なの?」

 

響「こんな話したらオレが疑われると思ってあえて言わなかったんだがよぉ。もうこの際だからハッキリ言ってやるぜ。コイツは古城の研究室に忍び込んで、全身しっかり変な鎧を着込んで血塗れの金ピカの刀を握ってたんだよ!!」

 

小鳥遊「……ん」

 

小鳥遊 “響さんの言っている事は本当です。ごめんなさい。言わなければとは思っていたんですが、指摘するタイミングを逃してしまって今言う事になってしまいました”

 

館井「何故聲伽が鎧を着ていたのかはわからんが……聲伽は凶器を握った状態で古城の研究室にいたと。そういう事でいいんだな?」

 

目野「じゃあ聲伽さんが犯人って事ですね!?」

 

聲伽「えっ!?ちょっと待ってよ、うちは何も知らん!!お願い、信じてよ!!」

 

響「うるせえ!!もう犯人はテメェで決まりだ!!さっさと認めてあの世で玉越に詫びろや!!」

 

まずい、皆が完全にマナを疑っている。

確かに今朝のマナの言動は正直言っておかしかった。

でも私は、彼女が嘘をついているようには思えない。

何か、見落としている事があるはずよ…!

 

モノクマ『おっと、結論が出たみたいですね。ではでは、投票ター…』

 

 

 

「待て」

 

「待って!」

 

投票にまったをかけたのは、加賀君と秋山君だった。

 

加賀「結論を出すのはまだ早いんじゃないのか」

 

秋山「うん。まだ解き切れていない謎もあるしね」

 

腐和「マナ、私はあなたを信じてるわ。今からあなたが無実だって事を証明してみせる!」

 

 

 

《学級裁判 中断!》

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り15名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

以上1名

 

 

 

 

 



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非日常編③(学級裁判後編)

 

《学級裁判 再開!》

 

腐和「とりあえず、マナの身に何があったのかを今一度整理してみましょう」

 

響「整理も何も、犯人は聲伽で決まりだ!!あんな変な格好して凶器を持ってた奴が犯人に決まってらぁ!!」

 

秋山「歌音、ちょっと落ち着いてよ」

 

加賀「ふむ…とりあえず、聲伽を最初に見たという響と小鳥遊の話を聞いた方がいいのではないか?」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

響「《聲伽が犯人に決まってんだろうが》!!」

 

聲伽「う、うちは《何も知らん》!!」

 

小鳥遊 “でも私達が来た時、《聲伽さんは凶器を持っていました》”

 

聲伽「そんな…で、でも!研究室に入るくらいなら誰でもできるやろ!?《研究室には鍵がかかっとらんかった》っちゃんね?」

 

研究室には鍵がかかっていなかった…

いいえ、そんなはずはないわ!

 

 

 

《研究室には鍵がかかっとらんかった》⬅︎【小鳥遊さんの証言】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

聲伽「えっ…?う、うち、何か変な事言うたかな?」

 

腐和「マナ、二人があなたを探しに行こうとした時、研究室には鍵がかかっていたのよ」

 

聲伽「えっ、う、嘘!?」

 

小鳥遊 “ちなみに鍵は内側からしか施錠できないタイプです。なのでモノDJに開けてもらいました”

 

館井「完全な密室か……」

 

響「いや、密室かどうかはこの際どうでもいい。犯人はテメェ以外考えられねえだろうがよ!!」

 

闇内「うむ…とりあえず今出た情報を整理すると、響嬢と小鳥遊嬢は、聲伽嬢が凶器を持って内側から鍵がかかった研究室にいるのを見たと。そういう事でござるな?」

 

響「そうだっつってんだろが!!」

 

ネロ「だがこの二人の証言だけ聞いて判断するのはどうもなぁ」

 

腐和「そうね。とりあえず密室の件は一旦置いといて、皆の意見を聞いて状況を整理してみましょう。皆、昨日の夜時間の事で何か気になる事があったら何でも言ってちょうだい」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

聖蘭「夜時間中?何もございませんね。《寝ていた》ので」

 

聲伽「やっぱり《あげん時間に外に出た》のが間違いやったんやろか…」

 

古城「わ、ワシは見たんじゃ!《落武者の呪い》じゃ!!」

 

加賀「こんな時にふざけないでくれるか?」

 

食峰「大体、《夜時間中は外に出るな》っつー話になってたろ?」

 

今、気になる証言をした人がいたわね。

 

 

 

《落武者の呪い》⬅︎【古城さんの証言】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「古城さんの証言をもう少し掘り下げてみる必要があるんじゃないかしら?」

 

古城「わ、ワシは、購買部に買い物をしに外に出たんじゃが…その時見たんじゃ!甲冑を着た落武者の霊が校舎内を徘徊しておるのを!!」

 

知崎「落武者の霊?何それ!すっごく不思議!」

 

腐和「古城さんの話によると、落武者の霊は人の身体を乗っ取って夜に徘徊するそうよ」

 

館井「………む」

 

腐和「私が何を言いたいのかって言うとね、古城さん以外で夜時間中に外を出歩いていた人が犯人だって事よ」

 

目野「ですが、そんな甲冑なんてどこから引っ張り出してきたんでしょうね!?」

 

それは…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【古城さんの研究室の甲冑】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「おそらく古城さんの研究室からでしょうね。古城さんの研究室の甲冑は、実際に室町時代に亡くなった落武者が使っていたものだそうよ」

 

響「じゃあ尚更聲伽が怪しいじゃねえか!!」

 

闇内「う、ううむ…確かに…」

 

聲伽「うちやなか!!」

 

古城「ええい黙れい!!お主が落武者に乗っ取られて玉越を殺したんじゃろ!!」

 

聲伽「そげんわけなかやろ!!」

 

知崎「でもマナちゃんは自分が犯人じゃないって証拠を示せてないよね?何でなの?」

 

聲伽「それは、記憶が曖昧やけん…!」

 

響「とにかく投票だ投票!!」

 

秋山「待って、投票はまだ早いよ」

 

越目「お、おうそうだな!聲伽ちゃんが犯人なわけねえし!」

 

ネロ「俺はテメェらガキの勝手な判断で死にたくねえんだよ」

 

腐和「どうしよう…意見が分かれちゃったわね」

 

 

 

モノDJ『ヘイYOU!!聞いたかブラザー!!今意見が分かれたっつったのか!?』

 

モノクマ『うぷぷ、そんな時はボクらの出番ですね!オマエラ、どっちが正しいのかボクみたいに白黒ハッキリさせちゃいたいでしょ?ここは一つ、変形裁判所の出番ですな!』

 

古城「むむ!?変形とな!?」

 

目野「ッパアアアアアア!!!何やらベリィィィエレガンツッッッな香りがしますね!!」

 

秋山「遊んでる場合じゃないんだけど…」

 

モノクマ『それでは早速始めましょう!レッツ変形!!』

 

 

 

《意見対立》

 

 

 

そう言ってモノクマは席から謎の装置と鍵を取り出し、鍵を装置に差し込んだ。

すると、私達の席が宙に浮く。

 

古城「ぎゃわああああああ!!?」

 

目野「アッツァアアアアアアアア!!!」

 

知崎「何これ〜!すっごく不思議!」

 

館井「………早く降ろしてくれ」

 

席が変形し、私達は二つの陣営に分かれた。

 

 

 

【聲伽愛は犯人か?】

 

犯人だ! 古城、食峰、館井、知崎、響、目野、闇内

 

犯人じゃない! 秋山、加賀、聲伽、越目、聖蘭、小鳥遊、ネロ、腐和

 

 

 

ー議論スクラム開始ー

 

響「《犯人》は聲伽で決まりだっつってんだろが!!」

 

「マナ!」

 

聲伽「うちは《犯人》やなか!」

 

食峰「でも愛は《凶器》を握ってたんだろ!?」

 

「秋山君!」

 

秋山「《凶器》だけで決めつけるべきじゃないんじゃないかな?」

 

館井「しかし……研究室は《密室》だったのだぞ?」

 

「加賀君!」

 

加賀「状況にもよるが、《密室》を破る事自体は不可能じゃない」

 

闇内「そもそも聲伽嬢が夜時間中に《外》に出ていた時点で怪しいのではござらぬか?」

 

「越目君!」

 

越目「《外》に出なきゃいけない何か大事な用があったのかもしれねえだろ!」

 

古城「アレじゃろ!聲伽が《落武者》に乗っ取られて玉越を殺したんじゃ!」

 

「ネロ!」

 

ネロ「《落武者》の呪いなんざあるわけねえだろ」

 

知崎「えー、でもでもぉ。マナちゃんはさっきからまともに《反論》できてないじゃん!知ってた?」

 

「聖蘭さん!」

 

聖蘭「聲伽様ならきちんとやってないと《反論》していますわ!」

 

目野「じゃあ何で《聲伽さん》は甲冑と凶器を身につけたりなんかしてたんです!?」

 

「小鳥遊さん!」

 

小鳥遊 “《聲伽さん》は、もしかしたら真犯人に嵌められたのかもしれません”

 

響「うるせえ!!《証拠》はもう出揃ってんだよ!!もう議論の余地はねえじゃねえか!!」

 

「私が!」

 

腐和「出揃ってない《証拠》ならまだあるわ!」

 

 

 

《全論破》

 

腐和「これが私達の答えよ!」

 

秋山「これが俺達の答えだよ」

 

加賀「これが俺達の答えだ」

 

聲伽「これがうちらの答えだよ!」

 

越目「これがオレちゃん達の答えだよ」

 

聖蘭「これが私達の答えですわ!」

 

小鳥遊「………ん」

 

ネロ「これが俺達の答えだ」

 

 

 

腐和「証拠がまだ残っている以上は、まだ議論を続けるべきよ」

 

知崎「え?そんな証拠なんてあったかなぁ?ねえ皆知ってる?」

 

腐和「そうね…じゃあまず、そもそもマナがどうして外に出たのかを議論してみましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

聲伽「う、うちは、《手紙で外に呼び出しゃれて》外に出たっちゃん」

 

響「ハア!?見苦しい《言い訳》だな!!嘘も大概にしろ!!」

 

聲伽「《嘘》やなか!!」

 

マナが夜時間中に外に出た原因…

それってもしかして…

 

 

 

《手紙で外に呼び出しゃれて》⬅︎【マナ宛の手紙】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「嘘じゃないと思うわ。実際、マナ宛の手紙が部屋のドアに挟んであったそうなの」

 

知崎「あ、そういえばそんなのあったね!」

 

秋山「でもこれ、手書きの文字じゃないみたいだよ。これじゃあ筆跡から犯人を特定できないね」

 

古城「手書きじゃないならどうやってそんなもの用意したんじゃあ!?」

 

腐和「それについては、加賀君が証拠を持ってきてくれたわ」

 

加賀「俺がか?」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【コピー機の履歴】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「犯人は、生徒手帳のメモのスクリーンショットを印刷したんだと思うわ。実際、コピー機にはスクリーンショットを印刷した履歴が残されているしね」

 

越目「なんでわざわざそんなめんどくさい事したんだ?」

 

加賀「筆跡から足がつくのを防ぐためだろうな」

 

響「だったら尚更聲伽のでっちあげの可能性も捨て切れねえぞ!!」

 

聲伽「うち、そげん事しとらんよ!」

 

腐和「でも確かに、これだとマナの無実を証明するのには少し弱いわね。もう少し議論してみましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

聲伽「うちは、手紙で呼び出しゃれて《古城ちゃんの研究室》ば行ったっちゃん!やっぱり、夜時間中に外に出たとが間違いやったんやろうか…」

 

知崎「うんうん!それで?」

 

聲伽「そいで、いきなり後ろからガツン!って《頭ばくしゃられて》…」

 

響「ハア!?そんな言い訳《信じるわけねえだろ》!!」

 

聲伽「言い訳やなか!!本当に頭くしゃられたっちゃん!!」

 

マナの証言は言い訳なんかじゃないわ…!

 

 

 

《信じるわけねえだろ》⬅︎【マナの証言】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「嘘じゃないと思うわ。実際手紙で呼び出されて古城さんの研究室に向かったのは認めてるわけだし」

 

響「だからこそ怪しいんじゃねえか!!古城の研究室に行ったのを認めてんのは聲伽だけなんだろ!?」

 

加賀「もし聲伽が犯人なら、いきなり頭を殴られて気絶させられました、なんて言い訳が通用するとは思ってないはずだ」

 

闇内「では聲伽嬢は誠に気絶させられたのでござるか…」

 

 

 

響「響かせてやるよ、魂の叫びをよ!!」

 

《反 論》

 

 

 

腐和「響さん?」

 

響「テメェはさっきから聲伽を庇ってばっかでまともな証拠を出してねえじゃねえかよ!!そんなガバガバの推理、オレがブチ破ってやるぜ!!」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

響「大体よお、頭殴られたっつーのも聲伽本人が言ってた事じゃねえか!!」

 

腐和「でも、こんな周到な事をする犯人がそんな見苦しい言い訳をするかしら?」

 

響「それも、そう思わせる為の罠かもしれねえだろが!!手紙も、筆跡がわからねえ以上は聲伽の自作自演って線も捨て切れねえぜ!?」

 

腐和「そんな事したら、余計に怪しまれるだけだと思うのだけれど…」

 

響「うるせえ!!アイツがやったとしか考えられねえだろ!!そもそも、夜時間中出歩いてた事自体が怪しいんだからよ!!アイツは、手紙で呼び出されて頭殴られたとか嘘ついて投票を間違えさせるつもりなんだよ!!《証拠がねえ》んだからどうとでも言えんだろうが!!玉越を殺した犯人は聲伽で決まりだ!!」

 

いいえ、マナが嘘をついていない証拠ならあるわ!

 

《証拠がねえ》⬅︎【たんこぶ】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「マナが嘘をついてない証拠ならちゃんとあるわよ」

 

響「ハア!?」

 

腐和「マナ、帽子を脱いで頭を皆に見せてあげて」

 

聲伽「わかった!」

 

マナは、帽子を脱いで後ろ向きに立ち、皆に後頭部を見せた。

 

館井「……これに何の意味があるというのだ?」

 

腐和「そうね…小鳥遊さん、加賀君。マナの頭を診てあげて」

 

加賀「わかった」

 

小鳥遊「ん」

 

小鳥遊さんと加賀君は、マナに歩み寄ってマナの後頭部を調べた。

 

小鳥遊「あ……」

 

加賀「これは…頭に瘤ができているな。相当強く打撃を受けたんだろう」

 

腐和「ほらね?マナは嘘をついてなかったでしょう?」

 

古城「いやしかし…それもでっちあげの可能性が…」

 

秋山「ないない」

 

知崎「でもでもぉ、マナちゃんの無実が証明されたのはいいけどぉ、マナちゃんを殴った凶器は?」

 

腐和「…そうね。次はマナの意識を奪った凶器について話し合いましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

古城「《落武者の呪い》じゃろ!!」

 

知崎「えー、また呪いなの?不思議不思議〜!」

 

ネロ「真面目に考えろやバカガキ共」

 

館井「…凶器セットの《ハンマー》が怪しそうだが」

 

小鳥遊 “そんなもので殴ったらたんこぶで済まないと思います”

 

越目「《いい感じの角》にぶつけたとか?」

 

秋山「いい感じの角って何だよ…」

 

闇内「保健室にあった《大人のおもちゃ》という線も捨て切れぬでござるな!」

 

目野「ポアアア!!確かに殺さずに殴るには最適ですね!!」

 

聖蘭「穢らわしい…真面目に議論に参加して下さい」

 

いや、あながち間違いじゃないかもしれないわ。

 

 

 

《大人のおもちゃ》⬅︎【血のついた電マ】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「闇内君の言う通り、凶器は保健室にあった電m…ゲフンゲフン、大人のおもちゃだと思うわ」

 

聖蘭「なっ……!?」

 

越目「あーあ、議論が行き詰まりすぎてとうとう腐和ちゃんがおかしくなっちまった」

 

聖蘭「ああ、なんという事でしょう…!腐和様が不埒な悪魔に取り憑かれてしまいましたわ!」

 

ネロ「真面目に議論しねえと根性焼きすんぞクソガキ」

 

腐和「ちょ、ちょっと待って!私は正気よ!あるのよ、証拠が!保健室に血のついたおもちゃがあったのよ!そうでしょ闇内君!?」

 

闇内「ああ、確かに置いてあったでござるな」

 

秋山「ええっと…と、とりあえずこれで聲伽さんの意識を奪った凶器が明らかになったって事でいいのかな?」

 

加賀「して…密室を破った方法は?それがわからなければ議論を先に進められないのではないか?」

 

腐和「それなら心当たりがあるわ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【糸がついたセロテープ】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「古城さんの研究室のサムターン錠に、糸がついたセロテープが貼ってあったの。犯人はまず室内からサムターンにテープで糸を貼ってドアを閉め、外から糸を引いてサムターンを施錠したのよ」

 

秋山「あっ、そういえばサムターンに貼ってあったね。じゃあ研究室に残っていた糸は?」

 

腐和「多分密室を作った後で糸を回収しようとしたけど、糸を回収する時に失敗して糸が室内に残ってしまったのね」

 

越目「んー…密室のトリックがわかったのはいいけどよ。結局犯人が聲伽ちゃんを呼び出して気絶させたのは何でだったんだ?」

 

聖蘭「それに、古城さんが見た落武者の霊というのは一体…?」

 

館井「犯人が何故古城に下剤を盛ったのかもわからないままだしな……」

 

さて。ここで事件の全容と犯人の目的を明らかにしておかなくちゃね。

 

 

 

聲伽宛の手紙の差出人は?

 

1.聲伽愛

2.真犯人

3.古城いろは

 

➡︎2.真犯人

 

 

 

聲伽を呼び出した本当の目的は?

 

1.脱出についての作戦会議

2.殺害

3.スケープゴート

 

➡︎3.スケープゴート

 

 

 

古城に下剤が盛られたのは何故?

 

1.部屋の外に誘き出す為

2.嫌がらせ

3.殺害する為

 

➡︎1.部屋の外に誘き出す為

 

 

 

古城が校舎で見た落武者の霊の正体は?

 

1.落武者の亡霊

2.聲伽愛

3.真犯人

 

➡︎3.真犯人

 

 

 

落武者の霊が校舎を徘徊していた目的は?

 

1.誰かを殺しに行こうとした

2.自分の姿を見せつけようとした

3.サプライズ

 

➡︎2.自分の姿を見せつけようとした

 

 

 

聲伽が着ていた甲冑は?

 

1.犯人が着せた

2.自分で着た

3.落武者の霊が着せた

 

➡︎1.犯人が着せた

 

《COMPLETE!!》

 

 

 

腐和「わかったわ!この事件の全貌がね!」

 

聲伽「えっ、ほ、本当!?」

 

腐和「ええ。まず犯人は、パーティー中に古城さんの食事に下剤を盛ったの。部屋の外に誘き出す為にね。そして古城さんは、まんまと犯人の罠に嵌ってオムツを買いに部屋の外に出たというわけ」

 

越目「いやいや、何で古城ちゃんを部屋の外に出す必要があんだよ?犯人からしたら、むしろ部屋の外をウロチョロされたら困るんじゃねえのか?」

 

腐和「それは今から説明するわ。犯人は、古城さんの言っていた落武者の呪いを利用する事にしたの」

 

知崎「利用?どういう事?」

 

腐和「夜になると、落武者の霊が生きた人間の身体を乗っ取り、血を求めて夜な夜な徘徊するという呪い。犯人は自分で甲冑を着て校舎内を徘徊し、その姿を古城さんに見せつける事で、『犯人=甲冑を着ていた人間』だと私達に思い込ませようとしたのよ」

 

秋山「じゃあまさか、犯人が聲伽さんを呼び出したのって…」

 

腐和「そのまさかよ。その思い込みを成立させるには、スケープゴートの存在が必要だったの。だから犯人は、マナを呼び出して気絶させ、自分が着ていた甲冑をマナに着せたの。そうすれば、『犯人=甲冑を着ていた人間』という方程式は既に固定概念として刻まれているから、甲冑を着たマナを見れば誰だってマナを犯人だと思い込むでしょ?」

 

加賀「そういう事か…俺達はまんまと犯人の手の上で転がされていたのだな」

 

越目「けどよ!!何で聲伽ちゃんが生贄にされなきゃいけなかったんだよ!?」

 

腐和「このケースでのスケープゴートとしての適性は主に三つよ。真犯人と体格が近い事、甲冑姿で玉越さんを斬り殺せるだけの身体能力がある事、そして自分の誘いに対して何の疑いもなく応じる人の良さよ」

 

知崎「って事は、犯人はマナちゃんと体格が近い人って事だよね?じゃあネロおにいといろはちゃん、それから建次郎おにいは除外だね!」

 

目野「じゃあ犯人は食峰さん、小鳥遊さん、知崎さん、響さん、闇内さんの5人の中にいるって事ですね!?」

 

ネロ「おいおい、そうやってローラー作戦で絞っていく気か?時間がいくらあっても足りないぞ」

 

知崎「うーん、何か犯人に繋がる手がかりがあればね!ねえ緋色ちゃん、何かなかった?」

 

腐和「犯人に繋がる手がかり…」

 

ひょっとしてあれの事かしら…?

 

 

 

コトダマ提示!

 

【謎のメッセージ】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「ダイイングメッセージ…」

 

秋山「え?」

 

腐和「実は、玉越さんの遺体のそばにこんなメッセージが残されていたの。玉越さんが書いたものとみて間違いないわ。きっと玉越さんは、力尽きる前に犯人を私達に教えようとしてくれたのよ」

 

そう言って私は、メッセージの写真を皆に見せた。

 

聲伽「え…何これ…」

 

闇内「犯人の名前など書いておらぬが?」

 

腐和「そのまま書いたら犯人にバレるからね。これは真犯人を指し示した暗号よ」

 

知崎「えー暗号!?なになに!?なんだか不思議な感じ!」

 

食峰「『4Q』って読めるな!!」

 

腐和「ええ、私も最初はそうだと思っていたのだけれどね。違うのよ」

 

館井「どう違うのだ?」

 

腐和「メッセージの横にはねている血、これは読点よ。つまりこのメッセージは、『4Q、』と書かれているのよ」

 

古城「それがわかったから何じゃ!!」

 

 

 

加賀「……ああ、なるほど。解けたぞ」

 

秋山「っ…!?そんな、嘘だろ…!?」

 

小鳥遊「………ん」

 

どうやらあの3人はもう真犯人に辿り着いたみたいね。

 

聲伽「えっ、何、何!?小鳥遊ちゃん達はもう解けたの!?」

 

知崎「ねえねえ犯人わかったんだって!ねえねえ知ってる?知ってる越目おにい?」

 

越目「オレに振んなよ…つかわかってる奴らだけで話進めないで!?オレまだついていけてねえんだけど!」

 

腐和「まあそうよね。皆、いきなりで悪いけど、私が今からいう単語を画像検索してくれるかしら?」

 

聖蘭「それは構いませんが…」

 

腐和「実はこのメッセージは、あるものに対応しているの」

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

キ ー ボ ー ド ノ カ ナ ニ ュ ウ リ ョ ク

 

 

 

【キーボードのかな入力】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「このメッセージは、キーボードのかな入力と対応しているの。皆、突然で悪いけど、『キーボード かな入力』で画像検索してちょうだい」

 

古城「したぞ!!」

 

腐和「じゃあその画像を見て、メッセージと照らし合わせてかなに変換してみて。例えば、『4』は『う』に変換すればいいのよ」

 

聲伽「そうやっていけば犯人の名前が浮かび上がるんやな!?わかった!」

 

その法則に従って暗号を解いて、浮かび上がる名前は……

 

 

 

《人物指定》

 

 

 

腐和緋色

 

聲伽愛

 

玉越翼

 

小鳥遊由

 

知崎蓮

 

食峰満

 

越目粧太

 

聖蘭マリア

 

古城いろは

 

加賀久遠

 

目野美香子

 

館井建次郎

 

秋山楽斗

 

響歌音

 

ネロ・ヴィアラッテア

 

闇内忍

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎響歌音

 

「犯人はあなたよ、響さん!!」

 

 

 

 

響「…………………………」

 

 

 

響「……はぁ!!?オレ!?」

 

腐和「このメッセージを解くと、『うたね』…そう、あなたが犯人よ」

 

聲伽「えっ、響ちゃんが!?嘘やろ!?」

 

聖蘭「そんな、あり得ませんわ!響さんは玉越さんとあんなに仲良くしていらしたのに…!」

 

腐和「愛憎相半ばする、って言うでしょ?仲良くしていたからこそ、募る不満もあったんでしょうね」

 

ネロ「そういやあ、やたらマナの犯人説をゴリ押ししてたのもこいつだったな」

 

加賀「最初に聲伽を発見したのも響だったしな」

 

知崎「じゃあ歌音おねえが犯人だったんだね!」

 

腐和「まあでもダイイングメッセージを解いただけだから、まだ断定はできないけれどね。実際のところ、どうなのかしら?」

 

響「うんなわけねーだろうが!!!」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

響「オレが《犯人》だと!?ふざけんのもいい加減にしろやクソが!!」

 

知崎「えー、でもでもぉ!《ダイイングメッセージ》はキミの名前だったよねえ?」

 

響「んなもん、誰かが《オレを嵌める為》に書いたに決まってんだろが!!」

 

加賀「筆跡は玉越のものだったが?」

 

響「じゃ、じゃあ玉越が間違えて書いたんだろ!!大体、オレがあんな《クソだせえ甲冑着て校舎をうろついたりするわけねえ》だろうが!!」

 

古城「た、確かにワシが聞いた落武者の笑い声は《響のものではなかった》が…」

 

聖蘭「こ、声を聞いたのですか!?」

 

古城「おうおう!!ハッキリとこの耳で聞いたぞ!!とにかく《しわがれてて気色悪い声》じゃったな!!」

 

知崎「うんうん!ボクもそう聞いてるよ!」

 

響「ほらみろ!!古城が聞いたのは《男の声》だ!!オレの声とは違うじゃねえか!!」

 

ちょっと待って…?

今、明らかにおかしい発言をしたわよね?

 

 

 

《男の声》⬅︎【亡霊の声】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

響「ハアン!?オレの発言のどこがおかしいんだよ!!」

 

腐和「響さん。古城さんは、落武者の声が男の声だなんて一言も言ってなかったわよ?」

 

響「っ…………!?」

 

腐和「ちなみにそれを知ってるのは、私と古城さん以外では越目君と知崎君だけよ。どうしてあなたがそれを知ってるのかしら?言っておくけど、二人に教えてもらったなんて言い訳はナシよ?」

 

響「うっ…うるせえなあ!!落武者の声っつったらフツー誰だって男だって思うだろが!!そんな揚げ足取りで犯人にされてたまるかってんだ!!」

 

館井「確かに、男の声なら響の声とは違うのは事実だしな……これはどうなるのだ?」

 

腐和「いいえ、落武者の声の正体は彼女で間違いないわ」

 

響「はあ!?名前通り頭まで腐ってんのかテメェ!!女のオレがどうやって男の声を出すんだよ!?」

 

それは…

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

コ エ マ ネ

 

 

 

【声真似】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「響さん。【超高校級のボーカリスト】のあなたなら、男性の声を真似るくらいわけはないんじゃないかしら?あなたは確か、小さい頃に秋山君に声真似を披露してあげていたのよね?」

 

響「っ…!そ、それは…」

 

腐和「そこら辺どうなのかしら、秋山君?」

 

秋山「確かに、歌音は男の声も真似できるよ。でも、だからって……」

 

 

 

響「うるっせえんだよクソが!!!」

 

《反 論》

 

 

 

目野「ひぃい!!?」

 

秋山「う、歌音…?」

 

腐和「うるさいのはあなたの方よ、響さん」

 

響「黙れ黙れ黙れ!!オレは犯人じゃねえっつってんだろうがああああ!!!」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

響「声真似ができるからオレが犯人だと!?ふざけんじゃねえ!!大体、声真似できる奴ならオレ以外にもいるじゃねえか!!」

 

腐和「言っておくけど、【超高校級のボーカリスト】の才能を持っているのはあなただけよ?」

 

響「聲伽だよ!!アイツは蝶ネクタイ型の変声機を持ってただろが!!あのクソだせえ甲冑に紛れ込んでんのを見たんだよ!!アレを使えば、アイツにだって《声を変える事はできる》だろ!?アイツは、変声機を使って声を変えて校舎をうろついたんだ!!オレは犯人じゃねえ!!クソ聲伽に嵌められたんだよ!!」

 

確かに、変声機を使えば女子でも男性の声を出す事が可能かもしれない。

だけど今回の場合、それは絶対に不可能よ!

 

《声を変える事はできる》⬅︎【壊れた蝶ネクタイ型変声機】 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「残念だけど、マナは変声機を使えなかったはずよ」

 

響「何でだよ!?」

 

腐和「あの変声機、壊れてるのよ。あれはマナがモノクママシーンで引き当てたものなのだけれど、ゲットした直後に不運が発動して壊れちゃったの」

 

秋山「不運?」

 

腐和「マナには、幸運が起こると必ずその幸運がチャラになる程の不運が降りかかるという体質があるのよ。マナは持ち前の幸運で前から欲しがってた変声機を引き当てたけど、その直後に変声機が壊れてせっかくの幸運がチャラになってしまったというわけ。ちなみに買ったその場で壊れるところは私も見てるから、変声機を使った後でわざと壊して証拠隠滅したって言い訳は通らないわよ」

 

響「も、もう一個持ってたのかもしれねえだろうが!!」

 

加賀「言っておくがアレは百万分の一以下の確率でしか手に入らないレアアイテムだ。一人の人間が二つも持っているなんて言い訳は苦しいんじゃないか?」

 

響「ぐ、ぐうぅうううう…!!」

 

聲伽「うちの不運が決め手になった…」

 

知崎「きゃはは、マナちゃんお手柄だねえ」

 

腐和「それにね。あなたが犯人だっていう証拠はまだあるの」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【黒いゴミ】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「実は、保健室に黒いゴミが落ちていたの」

 

響「それが何だっつーんだよ!?」

 

腐和「これは玉越さんの血の上に落ちていたから、玉越さんが殺された後で落ちたものだと考えて間違いないわ。それより前に落としてたら聖蘭さんが掃除しているはずだしね。これ、あなたの落とし物でしょう?」

 

響「ふざけんなぁぁぁ!!!」

 

 

 

ーーー 理論武装開始! ーーー

 

響「違えっつってんだろ!!」

 

響「オレは犯人じゃねえ!!」

 

響「たかがそんなゴミで!」

 

響「黒い物なんてどこにでもあんじゃねえか!」

 

響「そんなの知らねえ!」

 

 

 

響「何なんだよそのゴミはよお!!?」

 

【響】【の】【つけている】【ネイル】

 

腐和「これで終わりよ!!」

 

 

 

腐和「保健室に落ちていたゴミ、それはあなたのつけているネイルよ!」

 

響「っ………!!」

 

知崎「あ、そういえば爪みたいな形してたね!」

 

腐和「多分、玉越さんを斬りつけた時に剥がれたのね」

 

響「ぐっ、うぅううう…!!」

 

腐和「響さん、手を出しなさい。もしこれがあなたの落とし物なら、このゴミをあなたの爪にはめれば一致するはずよ」

 

響「いっ…いやっ、嫌だ!!」

 

秋山「歌音」

 

響「っ……!」

 

秋山「腐和さんが見せろって言ってるんだから、早く両手を見せろ」

 

秋山君が威圧するように静かに命令すると、響さんはビクビク怯えながら両手を前に差し出した。

 

腐和「小鳥遊さん、これを響さんの爪と照らし合わせてくれないかしら?」

 

小鳥遊「ん」

 

私が小鳥遊さんにゴミを渡すと、小鳥遊さんは響さんの爪とゴミを比べて確認した。

 

小鳥遊「あ……」

 

腐和「どう?一致した?」

 

小鳥遊「ん」

 

私が尋ねると、小鳥遊さんが頷く。

 

ネロ「…フン、決まりだな」

 

聖蘭「そんな…!」

 

腐和「最後に、事件の真相を振り返りましょう」

 

 

 

ークライマックス推理開始!ー

 

【Act.1】

事の発端は、モノクマの用意した動機だったわ。

犯人にはきっと、仲間を殺してでも知りたい何かがあったのね。

犯人がターゲットに選んだのは、玉越さんだった。

どうしても生き残りたかった犯人は、古城さんの言っていた落武者の呪いを利用して、マナをスケープゴートに仕立て上げる事にしたの。

 

【Act.2】

殺人計画を立てた犯人は、保健室から遅効性の下剤と男子用のお医者さんなりきりセットを、古城さんの研究室から甲冑と日本刀を盗み出した。

そしてパーティー中、古城さんの料理か飲み物に遅効性の下剤を盛り、夜時間中にオムツを買いに外に出るよう仕向けたの。

マナ宛の呼び出しの手紙を生徒手帳のメモ機能を使って打ち込み、メモ機能の画面のスクリーンショットを購買部のコピー機で印刷すれば、下準備は完成よ。

下準備を全て終えた犯人は、口頭か手紙で玉越さんに保健室に来るよう伝えた。

玉越さんは、これから殺されるとも知らずに犯人の誘いに乗ってしまったの。

 

【Act.3】

玉越さんが保健室に入ってくると、犯人は返り血を防ぐ為にお医者さんなりきりセットの白衣を後ろ前に着て、いきなり玉越さんに斬りかかった。

この時犯人が額帯鏡をつけていたせいで、照明の反射光で目潰しされた玉越さんは、反応が遅れてそのまま犯人に斬り伏せられてしまったの。

でもこの時はまだ、玉越さんは生きていた。

玉越さんは、最期の力を振り絞ってダイイングメッセージを遺したわ。

だけど犯人は、確実にトドメを刺すために容赦無く玉越さんの身体を何度も刺し、玉越さんはそのまま絶命してしまったの。

この時犯人は、自分のネイルを落としてしまうという痛恨のミスを犯してしまったのだけれど、その事に気付かずに次の準備に取り掛かったわ。

 

【Act.4】

保健室を出た犯人は、そのまま焼却炉に白衣と額帯鏡と下剤の瓶を捨てに行き、鉄格子で仕切られていた焼却炉のボタンを日本刀で押して焼却炉を稼働させた。

そして自分の身体についた血は、厨房のペットボトルの水で洗い流し、空になったペットボトルはゴミ箱に捨てたの。

そうして殺人の証拠を消した犯人は、盗み出した甲冑と日本刀を身につけて校舎を徘徊した。

するとその時犯人の狙い通り、お腹を下した古城さんがオムツを買いに購買部を訪れたの。

そこで犯人は、これ見よがしに廊下を歩き回ってその姿を古城さんの目に焼き付けたわ。

 

【Act.5】

ご丁寧に落武者の声真似までして古城さんの恐怖心を最大限に煽り、狙い通り古城さんが怖気付いてすぐに個室に引き篭ったのを確認すると、犯人は甲冑と脱いでどこかに隠し、マナの部屋のインターホンを鳴らして手紙をドアに挟んだの。

素直に呼び出しに応じたマナは古城さんの研究室に行こうとしたんだけど、それはマナをスケープゴートにするために犯人が仕組んだ罠だった。

古城さんの研究室にマナが来ると、待ち伏せしていた犯人は、保健室にあった大人のおもちゃでマナの頭を思いっきり殴って気絶させたの。

 

【Act.6】

マナを気絶させた犯人は、自分が着ていた甲冑をマナに着せ、凶器の日本刀をマナに握らせて研究室のソファーに座らせた。

そしてあらかじめ用意しておいた糸とセロテープを研究室のサムターンに貼り付け、そのまま退室したの。

あとはドアの外に垂らした糸を引けば、密室の完成よ。

でもここで犯人は、再びミスを犯したわ。

余程焦っていたのか、密室のトリックに使った糸の回収に失敗してしまったの。

でも内側から鍵をかけてしまった以上、糸を回収する手段はなくなってしまった。

仕方なく犯人は糸の回収を諦め、凶器のおもちゃを元の場所に戻しに行き、そのまま何食わぬ顔で自分の部屋に戻ったわ。

 

「これが事件の真相よ。そうでしょう!?【超高校級のボーカリスト】響歌音さん!!」

 

 

 

秋山「そうなの…?歌音……」

 

響「うぅ………クソッ…クソクソクソ!!クソがぁああああああああ!!!」

 

ネロ「随分と長い道のりだったが、もう謎はないだろう。おいモノクマ、さっさと始めろ」

 

モノクマ『うぷぷぷ、もう結論は出たみたいですね?では始めちゃいましょうかね』

 

モノDJ『全員必ず誰かには投票しろよ!?無投票は問答無用でオシオキだぜYEAHHHH!!!』

 

モノクマ『ではでは、投票ターイム!!』

 

モノクマがそう言うと、席にボタンが表示され投票時間が始まった。

私は、最後まで迷っていた。

私の投票次第で、響さんの…いえ、ここにいる全員の運命が決まってしまう。

悩んだ末に…

 

 

 

私は響さんに投票した。

 

死にたくなかった。

他の皆を死なせたくなかった。

だから、響さんを見殺しにする事を選んだ。

………最低じゃない、私。

 

モノDJ『投票の結果、クロとなるのは誰なのか!?その結果は正解か不正解なのかぁああ!!?』

 

モノクマ『ワクワクでドキドキの投票ターイム!!』

 

モニターにスロットが表示される。

ドラムロールと共にリールの回転速度が落ちていき、響さんの顔のドット絵が3つ揃った所でリールが止まった。

その直後、正解を褒め称えるかのように、はたまた私の潰し合いを嘲笑うかのように、歓声と共に大量のメダルが吐き出された。

 

 

 

《学級裁判 閉廷!》

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り15名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

以上1名

 

 

 

 

 




次回、クロの動機とは一体…!?
まあ多分想像つく人はつくと思います。


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非日常編④(オシオキ編)

全員が個室に戻って行った後、購買部では。

 

「なあ、玉越。ちょっといいか?」

 

「うん?何?」

 

「実はさ、ちょっと相談したい事があって……今夜0時、保健室に来てくんないかな。皆に聞かれると嫌だから、どうしてもその時間じゃなきゃダメなんだ。…いいかな?」

 

「うーん…しょうがない、大目に見てやるか。でも今回だけだぞ?」

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

VOTE

 

響歌音 14票

 

聲伽愛 1票

 

 

 

『うぷぷぷぷ、お見事大正解ー!!【超高校級のバレーボール選手】玉越翼サンを刀で斬り伏せた上にブッ刺してトドメを刺したイカレ殺人鬼は、【超高校級のボーカリスト】響歌音サンなのでした!!』

 

『ギャハハハハハ!!!やるじゃねえかテメェら!!ほらほらもっとバイブス上げてけポウポウ!!!』

 

モノクマとモノDJの笑い声だけが、裁判場に鳴り響く。

誰も勝利の歓声は上げなかった。

喜べるわけがなかった。

勝ったという事は、ここにいる大多数が響さんを見殺しにする事を選んだのだから。

 

「うっ、うぅ…うぁああぁあ……!」

 

響さんは、その場に膝をついて泣いていた。

マナと聖蘭さんは、そんな響さんに対してボロボロ涙をこぼしながら尋ねる。

 

「響ちゃん、なしてよ…!?なして玉越ちゃんば殺したと!?答えてよ!!」

 

「そうですわ…!あんなに私達に優しくして下さった玉越様を、どうして…!」

 

マナと聖蘭さんが尋ねると、響さんは泣きながら答える。

涙でメイクが流れ落ちて、あまりにも悲惨で見ていられなかった。

 

「………ごめん。オレ、どうしても耐えられなかったんだよぉ…!!」

 

「耐えられなかった?何を?ボクすっごく気になるなぁ!」

 

「この共同生活をだよ!!テメェらにとってはここでの生活は悪くなかったかもしんねえけどな…オレは毎日気が気じゃなかった!!当たり散らしてなきゃ、正気を保っていられなかった!!メンバーの皆とは連絡取れねえし、外の世界が今どうなってんのかわかんねえし、もう限界だったんだよ!!」

 

「歌音………」

 

「それでモノクマ達の甘言に惑わされて、玉越を手にかけたと」

 

「あんな胡散臭いものを信じたのか。馬鹿馬鹿しい」

 

「ああそうだよ!!オレは、あんなふざけた奴らの言う事を真に受けて玉越を殺すような最低な人間なんだよ!!蔑みたきゃ蔑めよ!!どうせオレはこれから殺されんだからよ!!」

 

響さんがヤケクソ気味に本心を打ち明けると、秋山君は唖然とし、加賀君とネロは呆れていた。

響さんは、泣きながら自分の中の醜い一面を曝け出した。

正直、玉越さんを殺した響さんを許さないし、これからもずっと許せないと思う。

でも、彼女を止められなかった私達にも責任はある。

彼女が玉越さんを殺すほど思い詰めていたのに、私達は何もしてあげる事ができなかった。

挙句、見殺しにした。

こうなる前に彼女に何かしてあげていれば、今更考えても意味のない事を考えると胸が痛くなった。

 

「歌音…どうして…どうして俺に相談してくれなかったんだ!?」

 

「…お前に相談したらこっから出られたのかよ?」

 

「それは……」

 

「…もういいよ。疲れた。あの世で玉越に詫びてくるわ。ま、今更謝ったところでアイツは許しちゃくれねぇだろうけど」

 

「………ん」

 

そう言って響さんは、ゆっくりと立ち上がる。

秋山君と小鳥遊さんは、そんな彼女を暗い表情を浮かべて見ていた。

せっかく仲良くなったクラスメイトをよりによって自分の幼馴染みに殺された秋山君と、親友をクラスメイトに殺された小鳥遊さん。

この場で一番つらいのは、この二人のはずだ。

すると、知崎君が空気を読まずにコテンと首を傾げて尋ねる。

 

「ねえねえ、歌音おねえが翼おねえを殺してまで知りたかった事って何なのかなぁ?ボク、さっきからずっと気になってたんだぁ!」

 

知崎君は、無邪気な子供みたいに目を輝かせながら響さんに尋ねていた。

悪気はないんだろうけど、この無神経さはちょっと流石に腹が立つわね…

すると響さんは、俯きながらポツリと呟く。

 

「……メンバーの皆と親父が今どうしてるか。オレが知りたかったのは、それだけだ」

 

「響さん……」

 

「オレは玉越を殺した殺人犯だ。裁きは受けるよ。だけど…!バンドメンバーの皆が、親父が、オレの大切な人達が今も無事かどうかを確かめるまでは、死んでも死に切れねえんだよ!!」

 

響さんは、泣きながら玉越さんを殺した動機を打ち明けた。

響さんは、自分の大切な人が今も元気に暮らしているのか、それを確かめたかったんだ。

モノクマ達は、大切な人達の安否もわからずに精神的に追い詰められている彼女を甘い言葉で唆して、最後の一線を踏み越えさせた。

私は、大切な人を想うが故に積もっていく響さんの不安を利用してコロシアイをさせたモノクマとモノDJに、言葉での言い表せない程の憎悪を抱いていた。

 

『ギャハハハハ!!!聞いたかよ!?コイツにとっちゃ、バンドメンバーと親父に比べりゃテメェらの命なんかゴミクズ同然だってよォ!!』

 

『うぷぷぷ!さーて、言いたい事も大方言ったみたいだし、そろそろアレ始めちゃっていいかな?』

 

「待て!!待って!!殺したら教えてくれる約束だろ!?知ってるならせめて、せめて答えてから殺してくれ!!オレはもうどうなってもいい!!でも、アイツらは、アイツらだけは…!!バンドメンバーの皆は、親父は、生きてるんだよな!?今も無事なんだよな!!?」

 

響さんは、なりふり構わずにモノクマ達に詰め寄った。

必死に抗議し、それも通らないと悟ると、一切躊躇せずに土下座をした。

 

「答えてくれよ……なあ……頼む…お願い…お願いします……!」

 

響さんは、土下座をしながら弱々しい声で懇願した。

そこにはもう、世界のトップに立つ歌手としての彼女の面影は無かった。

 

『うぷぷぷぷ、そんなに知りたいの?どうしよっかなー、ここで教えずにオシオキして絶望させるのもアリよりのアリなんだけど…』

 

『ヘイブラザー、いいんじゃねえのか?それぐらい教えてやってもよ。そもそもコイツの言う通り、殺したら教えてやるって約束だったし…それに教えてやった方がもっと面白いモン見れそうだしな!』

 

面白いもの…?

何かしら、嫌な予感しかしないわね…

 

『うぷぷぷぷ!それもそうだね!では寄せられたお便りに答えましょう!『RESONANCE』のメンバー及び、響サンのお父さんは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員とっくの昔にお亡くなりです!!』

 

 

 

 

 

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」

 

「お亡くなりって…どういう事?」

 

『ハイハイ!響サンのバンドメンバーの5人とお父さんはね、頭のおかしいテロリスト達にそれはもうむごたらしく殺されたのでした!それも、オマエラが共同生活をするずっと前にね!ハイ残念でした!』

 

モノクマの口から語られた真実は、あまりにも残酷なものだった。

響さんの大切な人達は、響さんがここに来る前には既に全員死んでいた。

そしてそれは、響さんが殺人をしようがしまいが変わらない事実だ。

玉越さんは、犬死にだったのだ。

モノクマから真実を知らされた響さんは、放心していた。

 

「み、みんなが…親父が……死んでる…?は、はは……」

 

「歌音……?」

 

「ははっ…あはは、ははははは…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけんじゃねえ!!!!!!!」

 

「ひぃ!?」

 

「嘘だ嘘だ嘘だ!!!テメェ、そんな嘘ついてオレをおちょくってんのか!!?」

 

響さんは、血相を変えて怒鳴り散らした。

私にはモノクマ達が嘘をついているようには思えないけど…

でも響さんの様子を見るに、モノクマ達の言っている事が受け入れられないんだろう。

 

『何だよ、せっかく真相を教えてやったのによぉ!』

 

「そんな馬鹿げた話、信じるわけねえだろが!!!だって、だって……!!」

 

『うるさいなぁ!オマエがどう思おうと事実なの!そんなに信じられないなら、もう本当の事教えちゃうよ!』

 

そう言ってモノクマは、どこからかパチモン臭のする懐中電灯を取り出した。

 

 

 

『テッテレ〜!お〜も〜い〜だ〜し〜ラ〜イ〜ト〜!』

 

「ねえねえクマちゃん!それはなあに?知ってる?すっごく気になる!」

 

『ギャハハハハ!!この際だから言っちまうけどな、実はオレ達はテメェらの記憶を抜き取ってんのよ!コロシアイの口火を切った歌音ガールには、特別に記憶を一部返してやるぜ!!』

 

「ちょっと、何をする気!?待ちなさい!」

 

『ギャハハ!!待たねーよ!そら!』

 

嫌な予感がした私は、モノクマ達を止めようとした。

でも私が飛び出した時にはすでに遅く、響さんがライトの光で照らされた。

すると、その直後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!」

 

響さんは、耳を劈く叫び声を上げながら発狂した。

ネイルが剥がれて化粧が流れ落ちるのも気にせずに、ひたすら泣き喚きながら頭をグシャグシャと掻いていた。

 

「ひぃ!!?ひ、響さん!?」

 

「何じゃ!?何事じゃあ!?」

 

「響ちゃん、どげんしたと!?」

 

いきなり叫び出した響さんに対し、目野さんと古城さんがビクッと肩を跳ね上がらせ、マナが響さんを心配して駆け寄った。

すると響さんは、駆け寄ってきたマナを振り払って泣き叫んだ。

 

「違う違う違う違う違ぁぁぁぁああああう!!!!こんなの、こんなのオレの記憶じゃない!!」

 

響さんのこの取り乱し方…

どう見ても普通じゃない。

響さんにとって受け入れられないようなショックな光景を見せられているに違いないわ!

 

「あんた達…響さんに何を見せたの!?」

 

『ギャハハハハ!!オレ達はただ、歌音ガールが喉から手が出る程欲しがってた記憶を返してやっただけだぜ?願いは叶えてやったんだから、今更文句は受け付けねえぜ!』

 

響さんは、耳を塞いて目を瞑りながら何度も頭を横に振った。

それでも忌々しい光景が頭にこびりついて離れないのか、証言台に何度も頭を叩きつけた。

彼女が苦しんで泣き喚いている光景は、痛々しくて見るに堪えなかった。

 

「やめろ、やめろやめろやめろやめろ!!こんなもの…こんなもの見せるなぁぁぁああああああ!!!!」

 

『うぷぷぷ!バンドメンバーとお父さんがどうなったのか教えてくれって頼んだのはオマエだよ?せっかく記憶を返してあげたのに失礼だよねホント!』

 

「う、うう…うううぅぅぅ…!!」

 

『ギャハハハ!!んじゃあ存分に絶望を味わってもらえたみてえだし!?そろそろアレやっちまうか!』

 

『そうですね!えー、ではではお待たせしました皆さん!張り切ってオシオキをーーー…

 

 

 

「待って!」

 

突然、オシオキに待ったをかけたのは知崎君だった。

 

『ほよ?』

 

「ねえ歌音ちゃん!ボクさぁ、まだ一個気になってる事があるんだぁ。それを話してもらえるまで、オシオキは始めさせないよ!」

 

「…………あ?」

 

知崎君が響さんに詰め寄ると、響さんはゆっくりと頭を上げる。

さっきまでは発狂してそれどころじゃなかったけど、どうやらいきなりオシオキに待ったをかけられた事で少し頭が冷えたらしい。

 

「歌音ちゃんが殺人をした理由は話してもらったわけだけどさ。()()()()()()()()()()?」

 

「……え?」

 

「だって考えてもみてよ。翼ちゃんは【超高校級のバレー選手】だよ?今回はたまたま運が良かったから殺せたけどさ、普通に考えたら歌音ちゃんが勝てる相手じゃないよねぇ?返り討ちにされるリスクを冒してまで、どうして翼ちゃんを狙ったの?ねえねえどうしてどうして?気になる〜!」

 

知崎君は、鬱陶しいくらいしつこく響さんに尋ねる。

すると響さんは、全てを諦めたのか、大きくため息をついて話し始めた。

 

「……さっきも言ったけど、オレは大切な人の安否を確かめる為に玉越を殺した。どうしても、アイツじゃなきゃ…アイツが死ななきゃいけなかったんだ…!」

 

「そんな…なして!?玉越ちゃんが響ちゃんに何したっていうん!?」

 

「違う!!アイツは…玉越は何も悪くねえんだ。これは、オレの問題なんだよ…!」

 

「どういう事だ?」

 

「………アイツはここに来てからずっと、いつだって自分の事よりもオレらの事を優先して動いてた。ただでさえオレなんかよりずっと酷い境遇で身を削ってんのに、当たり散らす事しかできねえオレを軽蔑せずに親身に接してくれてさぁ…会ってから4日しか経ってないオレを、本当に親友だと思ってくれててさぁ…!アイツが楽斗の事が好きだって言ってきた時、応援してやらなきゃって思ったんだ…!楽斗の隣にはアイツがふさわしいから、素直に祝福してやらなきゃって思っちまったんだよ…!クソッ、クソがぁ…!!」

 

響さんは、泣きながら玉越さんへの思いを打ち明けた。

ここまで話して、私は気付いてしまった。

響さんが玉越さんを殺した…いえ、殺さなきゃいけなかった理由を。

 

「尚更わけがわからんよ!!そげん玉越ちゃんの事良う思うとったなら、なして…!?」

 

「まさか……」

 

 

 

 

 

「アタシだって、楽斗の事が好きだったんだよ!!!」

 

 

 

「……………え?」

 

「アイツはさあ!!オレなんかよりずっとすげえ才能持ってて、苦しい境遇で努力してて、誰よりも皆の事考えてて、皆に姉貴みてえに慕われててよ!!ずりいじゃねえかよ!!オレに無えもん全部持っててよぉ…そんなの…ハナからオレに勝ち目なんかねえじゃねえかよ!!」

 

響さんは、泣きながら玉越さんを殺した理由を語った。

親友だと思ってたのに、祝福したいと思ってたのに、殺してしまった。

彼女の言動は矛盾だらけだけど、妙に納得できた。

すると、加賀君が徐に口を開く。

 

「反動形成…か」

 

「え?」

 

「人は受け入れ難い状況に直面した時、自分を守る為に本心とは矛盾した言動をする事があるんだ。響にとって、一番の親友が恋敵だった事は受け入れ難い事実だった。自分に無い物を持つ玉越に憧れ、応援したいと思ってしまった事がどうしても耐えられなかった。だから玉越を殺害する事で、自分を守ろうとしたんだ」

 

「なるほど、要は嫉妬か。醜いな」

 

「そうだよ…!オレは…アタシは、テメェの都合で親友を殺したクズなんだよ!!玉越には楽斗と幸せになってほしいって思ってたのに、アイツを祝福したいって思ってたのに、アイツを殺した時、喜んじまった自分がいるんだよ…!!」

 

加賀君が言うと、ネロは響さんに辛辣な言葉を浴びせ、響さんは泣きながら本心を語った。

響さんは、玉越さんを親友として大事に思っていたからこそ、恋敵になってしまった事が許せなかった。

心の底から玉越さんに憧れていたからこそ、殺意を抱く程に憎んでしまった。

彼女の未来を祝福したいと思っていたからこそ、彼女を殺して未来を奪ってしまった。

今思えば、彼女が耐えられなかったと言っていたのは、この共同生活の事だけじゃない。

玉越さんに対して抱える自己矛盾に耐えられなかったんだ。

 

「何であんな事しちまったんだろうなぁ…玉越を殺したオレの事なんか、楽斗が好きになるはずねえのに。オレは、テメェが楽になる為だけに親友を殺すような最低な殺人犯なんだよ。こんな人間、生きてていいわけがねえからさ…!もう終わりにしてくれよ…オレを殺してくれよ!!」

 

響さんが悲痛な懇願をすると、全員が黙り込む。

さっきまでしつこく問い詰めていた知崎君も、謎が全て解けて満足したのか大人しく自分の席に戻っていった。

私は、響さんに歩み寄って深く頭を下げた。

 

「……響さん、ごめんなさい」

 

「…え?」

 

「私があなたの気持ちを考えずに玉越さんと秋山君の仲を茶化したりなんかしたから…その事が拍車をかけて、あなたに殺人を決行させてしまったのよね?私があなたに玉越さんを殺させたようなものよ。今更謝ってどうにかなる事じゃないけれど、本当にごめんなさい」

 

私は、玉越さんが秋山君と仲良くしているのを見て、お似合いだと思ってしまった。

特に深く考えずに、安易な好奇心で二人を茶化してしまった。

パーティーの手伝いで二人が一緒に調理をしたのも、二人の仲が進展するように、二人を同じ担当にするよう私がそれとなく食峰君に伝えたからだ。

余計な事をしなければ良かった。

そもそも、秋山君も玉越さんも、恋路を手伝ってくれなんて一言も頼んでなかったのに。

もし私のせいで響さんが玉越さんに殺意を抱いたんだとしたら、私にだって罪はなくとも責任はある。

私は、響さんに頭を下げて誠心誠意謝罪をした。

 

『ギャハハハハハ!!!オメェって奴はホントにバカ真面目だよなぁヒーローガール!!ンなの言わなきゃ誰も覚えてねえってのによぉ!!』

 

『そもそも響サンが玉越サンを殺す原因をオマエが作ったんだとしてもさ!玉越サンを殺す事に決めたのは響サン自身じゃん!なーに勝手に責任感じちゃってんだか!バッカみたい!』

 

「あんた達…!!」

 

『えー、このままオシオキ始めちゃってもいいんですがね。今回は初めてのクロという事で、大出血サービスしちゃいたいと思います!』

 

『実はなァ、歌音ガールがどぉぉーーーしても知りたかった事はもう一個あるんだなァ!!というわけで、今ここで答えてやるぜYEAHHHH!!!』

 

「響ちゃんがどうしても知りたかった事…?」

 

『ズバリ!楽斗ボーイの気になってる奴を今ここで発表するぜェ!!』

 

『秋山楽斗クンの気になっているお相手は………』

 

「っ……!?おい!!やめろ!!」

 

秋山君は、嫌な予感がしたのかモノクマ達を止めようとした。

でも、すでに遅かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『響歌音サンでした!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………は?」

 

 

 

『うぷぷぷぷぷ!いっやぁ、ホント皮肉だよね!オマエは自分に無いものを持ってる玉越サンに嫉妬してたけど、オマエだって玉越サンがどんなに望んだって手に入らないものを持ってたんだよ!それをドブに捨てたのは、他でもないオマエ自身だよ!』

 

「嘘だ…!!じゃ、じゃあ…オレがした事って……」

 

『ギャハハハハ!!ホントマジでもったいねえ事しちまったなぁ!!翼ガールを殺したりなんかしなきゃ、今頃楽斗ボーイと付き合えてたかもしれねえのになぁ!!』

 

「あ、ああ…あああああ…」

 

『安否を知りたがってたバンドメンバーと親父はとっくにご臨終!その上テメェは、何も手に入れられなかったばかりか、親友の命も、信頼も、愛も、テメェの命も、何もかも失うのさ!要は、翼ガールは完っっっ全に犬死にだったって事だよ!!』

 

 

 

 

 

「う゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」

 

 

 

響さんは、痛々しい程の叫び声を上げながらその場に崩れ落ちた。

自分が親友を犬死にさせてしまったという事実に心が耐え切れず、完全に壊れてしまった。

今の彼女を染め上げている感情はただ一つ、『絶望』だった。

 

 

 

『さてさて、もう気が済んだみたいだし?尺稼ぎしすぎだって声が聞こえるんで、そろそろアレいっちゃいますか!』

 

「っ!?待って!!お願い、やめて!!私が何でもするから、響さんを殺さないで!!」

 

『やめられませんとまりませんかっぱえびせーん!尺取りすぎたから今度こそサクッと景気良くいくよー!』

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…!!」

 

『今回は、【超高校級のボーカリスト】響歌音サンのために!!』

 

『スペシャルな!!オシオキを!!ご用意しました!!!』

 

『『ではでは、オシオキターイム!!!』』

 

「こ゛め゛ん゛な゛さ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛い゛!!!!!!」

 

響さんの悲痛な叫び声が、裁判場に響き渡った。

モノクマはピコピコハンマーを取り出して、一緒に出てきた赤いボタンをハンマーで押した。

ボタンに付いている画面に、ドット絵の響さんをモノクマとモノDJが連れ去る様子が映っていた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

GAME OVER

 

ヒビキさんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

ーーー

 

 

 

響は、首に首輪をつけられると、そのままチェーンでどこかへと引き摺られた。

腐和は響に向かって手を伸ばしたが、その手は届かず響は連れ去られていった。

響が連れ去られたのは、四方を有刺鉄線で囲まれたディスコのような場所だった。

そこで画面上に文字が現れる。

 

 

 

ーーー

 

LOCKでROCKなRock ’n’ Roll!!

 

【超高校級のボーカリスト】響歌音 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

ディスコのステージ上には、鋼の十字架の上に大きな南京錠がついた拘束具で磔にされた響がいた。

すると、モノDJとお揃いのキャップとサングラス、そしてダボダボのパーカーを羽織ったモノクマが響の上に飛び乗る。

よく見ると十字架は巨大なスピーカーになっており、モノクマの持っているマイクと繋がっていた。

その後ろではモノDJがDJをしており、観客席では無数の小さなモノクマがギャアギャア騒いでいた。

 

モノクマが合図をすると、モノDJはノリノリで音楽をかけ始める。

モノDJが流した曲は、RESONANCEの曲の中でも一番人気の曲だった。

軽快なイントロが終わりAメロに入ると、モノクマはけたたましいシャウトを発しながらメチャクチャな音程で歌い始めた。

するとモノクマの音痴な歌が響の磔にされているスピーカーから大音量で鳴り響き、響は最初の爆音で鼓膜が破裂し苦悶の表情を浮かべる。

会場全体がビリビリと揺れ、ディスコを照らす照明が爆音で粉々に割れ、照明の破片が響に降り注ぐ。

響の肌は降り注ぐ照明の破片の雨で切り裂かれ、無数の赤い線が走った。

 

音痴な歌を披露していたモノクマだが、あまりにも歌がひどかったせいか観客席のモノクマからブーイングが聴こえる。

ブーイングが大きくなると、ステージ上のモノクマがモノDJに合図をし、モノDJは手元にあったドクロの描かれたスイッチを押す。

すると有刺鉄線の外から巨大なクレーンのアームが伸び、アームの先に鎖で吊るされた岩が響目掛けて弧を描きながら迫ってくる。

岩が直撃した響は、全身の骨が折れる音を鳴らしながら血反吐をぶち撒けた。

すると、先程までブーイングをしていたモノクマ達はギャアギャアと歓声を上げた。

 

過激なパフォーマンスで観客の歓声を掻っ攫ったモノクマは、調子に乗ってまた音痴な歌を歌い始める。

2番目のサビを歌っているとまたブーイングが聴こえ、ステージ上のモノクマがモノDJに合図をし、モノDJは手元にあったドクロの描かれたスイッチを押す。

すると今度は鎖で十字架ごと吊るされ、大量のアルコールで満たされた巨大な円柱状の水槽の中に放り込まれる。

響がアルコールに漬け込まれてもがき苦しんでいると、モノクマ達は鋭い棘がついたガラス球を響目掛けて一斉に投げつける。

モノクマ達の投げた球が直撃した響は、全身に棘が刺さって血飛沫を上げる。

すると再び観客席からは歓声が沸き起こり、調子に乗ったモノクマは歌を続ける。

 

最後のサビに入るとまたブーイングが聴こえ、ステージ上のモノクマがモノDJに合図をし、モノDJは手元にあったドクロの描かれたスイッチを押す。

すると今度は響の十字架が後ろに倒れ、ステージ上でルーレットのように高速回転する。

何百回もグルグルと回された響は、目を回して意識が朦朧とする。

しばらく高速回転していた十字架は、最後のフレーズに入ると、ちょうど上下逆さまの位置でピタっと止まる。

朦朧とする意識の中、響の目の前に、響とは上下逆向きに立った秋山が現れる。

響は、目の前の秋山に縋るように涙を流しながらか細い声を発した。

だが響が見たのは、巨大なコンテナの底に描かれた秋山の絵だった。

目の前の秋山がただの絵だと悟った響が絶望したその瞬間、クレーンで吊るされていたコンテナが落ちる。

 

 

 

グシャ

 

 

 

ステージ上にコンテナが落ち、磔にされていた響が下敷きになった。

その瞬間曲が終わり、モノクマはスッキリした表情を浮かべながら観客にレスポンスを求める。

すると観客席のモノクマは、ボーカルのモノクマの音痴な歌が不愉快だったのかステージ上に上がり込んでディスコを荒らし始めた。

大量のモノクマの群れはモノDJの方にも押し寄せ、モノDJが使っていたDJ機材が倒れ、機材からRESONANCEの楽曲のCDが外れて転がっていく。

大勢のモノクマ達は、そのCDをまるでゴミのように踏みつけて粉々に砕き割った。

響が下敷きになったコンテナからは、流れ出た血がじわじわと広がって赤い池ができていた。

 

 

 

 

 

『『エクストリーーーーーム!!』』

 

「わぎゃああああああああああ!!?」

 

「ひ、響嬢が…!!」

 

「歌音えええええええええ!!!」

 

「嘘だろ…!?歌音!!」

 

「もう嫌じゃああ!!帰る帰る帰る!!」

 

「ああ、そんな…響様が……」

 

「うげっ…マジかよ、こんな残酷な方法で殺されるなんて聞いてねえよ…!」

 

「………ぅ」

 

「下衆がっ………」

 

「ケッ、悪趣味にも程があるぜ」

 

「全くだ。虫酸が走る」

 

皆、反応は様々だった。

あまりの凄惨な光景に叫び声を上げる目野さん。

涙を流しながら叫ぶ食峰君。

その場で呆然とすると闇内君。

顔を真っ青にしてその場に膝をつく秋山君。

パニックを起こして泣き喚く古城さん。

涙を流しながら静かに惨状を嘆く聖蘭さん。

顔色を悪くして吐き気を催す越目君と小鳥遊さんと館井君。

相変わらず冷静でありつつもモノクマ達に嫌悪感を抱く加賀君とネロ。

 

『ギャハハハハハハ!!!いいねいいねえ!!脳汁止まんねえぜ!!そんじょそこらのAVよりよっぽどエキサイティングだぜ!!!』

 

『うぷぷぷぷぷぷぷぷ!!やっぱりこれくらい派手じゃないとね!オシオキといえば学級裁判の華ですからねぇ!』

 

「あんた達…!!」

 

「酷い、酷すぎるよ!何もこげん事する必要なかったやろ!?キミらには人ん心ってものが無かと!?」

 

「そうだよ!よくも歌音おねえを!絶対許さないんだから!歌音おねえを返せ!」

 

マナが泣きながらモノクマ達に向かって怒鳴ると、知崎君もマナに同調して泣きながらモノクマに抗議した。

 

『返せ!?なあに言ってんだ!?歌音ガールをモノみてえに言いやがって、歌音ガールは誰のものでもねえぞ!』

 

『人の心?そんなのあるわけないじゃーーーん!っていうか、ボク達はオマエラの大好きな玉越サンの仇を討ってあげたんだからむしろ感謝してほしいよね!』

 

「っ……!!」

 

仇を討った?

ふざけるな。

お前達は、響さんと玉越さんの命を弄んだだけだ。

私はこいつらを絶対に許さない。

そう強く心に誓った。

 

『ではではオマエラには裁判を乗り越えたご褒美にメダルを差し上げますので、ジャンジャン有効活用して下さいねー!』

 

『ギャハハハハ!!やっぱオシオキの後はビールが進むぜイェア!!ヘェイゴミクズ共!!オシオキはもう終わったんだから、とっとと出てってクソして寝な!!』

 

「テメェら…絶対許さねえ!!ブッ飛ばしてやる!!」

 

「やめなさい食峰君!」

 

食峰君がモノクマに殴りかかろうとしたので、私が食峰君の前に立って止めた。

止めなければ、今度は食峰君が殺されてしまう。

何を言われようと、私はこれ以上仲間を死なせたくはなかった。

 

「なっ…!おい緋色!!そこをどけ!!」

 

「嫌よ!私はもう、誰かが死ぬところを見たくないの!」

 

私は、これ以上仲間を死なせないためにも立ちはだかった。

すると、ようやく冷静になってくれたのか、食峰君は私に謝ってきた。

 

「……そうだな。悪い。止めてくれてありがとな、緋色」

 

「いいのよ。あなた達を守るのが私の責務だもの」

 

私は、お礼を言う食峰君に対して笑顔で返した。

するとその時だった。

 

「はー、疲れた。もうそういうのいいから早く帰ろーよ!」

 

知崎君は、伸びをしながらスタスタとエレベーターへと向かっていく。

知崎君は、先程まで泣いていたのが嘘のようにケロっとしていた。

 

「ちょっと知崎君、皆こんな事があってつらいのよ。皆の事も考えてあげて…」

 

「だぁーって!歌音ちゃんもうちょい頑張ってくれると思ったのに、思ったより早く裁判終わっちゃったんだもん!もう知りたい謎もないし、さっさと帰りたいんだよね。皆帰らないなら一人で帰るから!」

 

……!?

ちょっと待って、今『もうちょっと頑張ってくれると思ったのに』って言ったわよね。

まさか知崎君は、響さんが犯人だって最初から知ってたの!?

 

「……!あなた、まさか最初から犯人がわかってたの!?」

 

「ん?うん、知ってたよ?確証はなかったけど」

 

「は…!?」

 

「いやぁ、実はさ!ボクが捜査の時に散々犯人を貶した時、歌音ちゃんが誰よりも動揺してたんだよね!だからボクの中ではもうあの時点で歌音ちゃんが犯人だってわかってたよ?ねえ知ってた?知らないよねぇ!」

 

知崎君は、ヘラヘラと笑いながら暴露した。

私はその時、捜査中に彼が発していた言葉を思い出した。

 

『ホントだよ!!誰が翼おねえを殺したのか知らないけどさ!!ホントに最低最悪のド悪党だよ!!今に見てろ、絶対犯人を見つけてやるんだから!!』

 

あの言葉は、今思えば犯人を揺さぶるためのものだっんだ。

だったらあの時彼が流していた涙は嘘だったのか。

私がそんな事を考えていると、越目君が知崎君の胸ぐらを掴んだ。

 

「テメェ…!!知ってたなら何で言わなかった!?」

 

「んー…ボクだって犯人知ってただけで事件の真相を全部知ってたわけじゃないし?事件の真相を全部知りたかったっていうのもあるけど、一番はやっぱり……人は極限まで追い詰められた時どこまで人を信用できるのか、どうしても知りたかったから?」

 

「テメェ、ふざけんな!!テメェの勝手な好奇心にオレ達を巻き込んだのか!?」

 

「ウヌが正直に言っていれば、ここまで裁判は長引かなかったんじゃぞ!!」

 

「そんな事言われたってさ!物的証拠もないのにいきなり歌音ちゃんが犯人だなんて言っても、どうせ誰も信じないでしょ?それにいいじゃん別に!裁判には勝ったんだからさ!結果オーライだよ!」

 

越目君と古城さんが問い詰めると、知崎君は全く悪びれずに答えた。

確かに、物的証拠もないのにいきなり響さんを犯人だって言っても誰も信じなかったかもしれない。

でもマナや古城さんが疑われた時に庇ったり、いち早く真相に辿り着けるよう集めた証拠を提示して議論を進めたり、色々とやりようはあったはずだ。

彼は、それをせずにわざとマナや古城さんの疑惑を大きくして裁判を無駄に長引かせた。

まるで、私達がお互いを醜く罵り合うのを愉しむかのように。

 

「ボクはね、もっと皆の事をよく知りたいんだ!この裁判だって、皆の事をよく知るいい機会だからね!そういうわけだからさ、皆もっと頑張ってよ!ボクの好奇心が満たされるまで、頑張って足掻いてよね!」

 

そう言って知崎君は、キラキラと目を輝かせる。

どこまでも自分の好奇心を満たす為に動く怪物。

それが彼の本性なんだ。

 

「じゃあボク帰るから。皆ばいばーい」

 

そう言って知崎君は、ひと足先にエレベーターに乗り込んだ。

すると、ネロと加賀君もエレベーターに乗り込んでいく。

 

「ふん、仲良しごっこの結果がこれか。随分と笑わせてくれるな」

 

「俺も帰らせてもらおう。これ以上ここにいても何の意味もないからな」

 

そう言って三人は、ひと足先に帰ってしまった。

残ったのは、出ていってしまった3人を除いた11人だけだった。

親友だった玉越さんを失った小鳥遊さん、想い人だった響さんを失った秋山君はそれぞれの証言台の前で呆然としていた。

小鳥遊さんには、館井君と越目君が寄り添ってケアをしてあげていた。

私は、響さんの証言台の前で立ち尽くす秋山君に声をかけた。

 

「秋山君………」

 

「腐和さん…俺なら大丈夫だよ。長居しても仕方ないし、そろそろ戻ろうか」

 

私が声をかけると、秋山君は笑顔を浮かべながら振り向いた。

私には、彼が強がっているように見えた。

私達を不安にさせないように、精一杯泣きたいのを堪えている。

そんな気がした。

気がつくと私は、秋山君を抱き寄せていた。

 

「つらかったら泣いてもいいのよ」

 

私は、秋山君をそっと抱きしめて言葉を投げかけた。

大事な人を二人も失ってなお強がっている彼を、黙って見ている事はできなかった。

 

「大丈夫よ。私がついてるから。私にそんな事を言われても迷惑かもしれないけど…でも私、あなたの為にできる事なら何でもするから。今は強がらなくていいのよ」

 

私がそう言うと、秋山君は静かに啜り泣いた。

私は、彼の頭を撫でながらそっと胸に抱き寄せた。

リーダーだった玉越さんを亡くし、せっかく一つになった皆の心がまたバラバラになってしまった。

私は、彼女のように強くはなれない。

でも私なりにできる事を精一杯やろう。

もう二度と、クラスメイトをあんな目に遭わせたりなんかしない。

二度と絶望なんかに屈しない。

玉越さんと響さんの為にも何が何でも生き延びて、黒幕にこの罪を償わせる。

そう強く心に誓った。

 

 

 

 

 

Chapter1.コロシアイに出会いを求めるのは間違っているだろうか ー完ー

 

Next ➡︎ Chapter2.ガーデニアは笑わない

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『ハートのネックレス』

 

Chapter1クリアの証。

響の遺品。

父親が彼女に遺した最後のプレゼント。

少女に夢を与えた父親との思い出が詰まっている。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り14名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

以上2名

 

 

 

 

 




はい、響ちゃんがクロでした。
実はTwitterでは一番人気のキャラクターだったんですが、そういったキャラでもアテクシは容赦なく退場させます。
ちなみにオシオキですが、『ロック』をテーマにしています。
モノクマの音痴な歌は音楽の『ロック』、南京錠は英語のlock(ロック)、岩は英語のrock(ロック)、水槽にガラス玉ぶち込むやつはお酒のロックを表しています。

そして最後のコンテナですが、アレは実は下ネタ要素が含まれています。
コンテナの底に描かれた秋山クンの絵が上下逆向きなのには実は意味があり、
ロック→69→例のプレイ
というちょっとした言葉遊びでした。


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Chapter.2 ガーデニアは笑わない
(非)日常編①


………ふと、目が覚めた。

正直、全く寝た気がしない。

 

たった一日で二人も死んだ。

ろくに眠れるわけがない。

斬り殺されて保健室に横たわった玉越さんと、残虐な方法で処刑された響さん。

あの二人が死んだ時の光景が、今も頭にこびりついて離れない。

 

あれから、昨日の朝振る舞われるはずだった朝食を食峰君が振舞ってくれたけど、一部のメンバーを除いてほとんど誰も口をつけなかった。

せっかくの食峰君の食事も、あんな事があった後だから食べている気がしなかった。

でも、生き延びる為には前に進むしかない。

私は、身支度をして厨房に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

厨房に着くと、既に食峰君と秋山君、そしてマナが朝食の準備をしてくれていた。

 

「おはよう」

 

「おはよう、腐和さん」

 

「おはよう、緋色ちゃん」

 

「おう、おはよう」

 

三人とも挨拶を返してくれたけど、見るからに元気が無かった。

普段はうるさいくらい声が大きい食峰君も、声が小さかった。

当然だ。

昨日あんな事があったんだから。

私は、暗い空気に押し潰されたくなくて、誤魔化すように朝食作りを始めた。

今日のメニューは…

和食セットがご飯、白身魚の西京焼き、豆の煮物、ワカメの味噌汁、キュウリの漬物。

洋食セットがトースト、白身魚のムニエル、豆のサラダ、マッシュルームのポタージュ、カットキウイ。

今日のメインは、和食セットも洋食セットもどちらも白身魚だった。

さらには、よく見るとどのメニューにも赤色の食材が使われていない。

あんな事があった後で肉とか赤い物とか食べられる気がしないから、正直ありがたいわね。

私は、秋山君と一緒に調理を始めた。

今日の担当じゃないのに、玉越さんの代わりに来てくれたのね…

 

「ありがとう、秋山君。本当は今日当番じゃなかったのに手伝ってもらっちゃって」

 

「…いいよ。この状況で俺に出来る事といったらこれくらいしか無いから」

 

私が調理をしていると、一緒に調理をしていた秋山君が声をかけてくる。

 

「腐和さん」

 

「ん?」

 

「昨日はありがとう」

 

昨日…?

ああ、アレか。

今思えばかなり恥ずかしい事しちゃったけど…でも、秋山君が少しでも救われたならああ言った甲斐はあったわね。

 

「いいのよ。それよりごめんなさい。私のせいで…」

 

「腐和さんは何も悪くないよ。むしろ、二人がコロシアイをする原因を作ったのは俺だ」

 

「…え?」

 

「俺がちゃんと歌音に自分の気持ちを伝えていれば、あんな事にならなかったんだ。確かに、最終的に玉越さんを殺したのは歌音だ。でも君の言葉を借りるなら、俺にも罪はなくとも責任はある」

 

「責任があると思うなら、尚更生きてここを出ましょう。私達には、彼女達の死を無駄にしないように生きていく責任があるわ」

 

「…俺は、歪んでる。歌音は玉越さんを殺した殺人犯だ。きっと、歌音の事は一生許せないと思う。…でも、それでも、俺はどうしても歌音を嫌いにはなれないんだ。あんな事があっても、俺はまだ歌音が好きだ」

 

秋山君は、震える声で胸の内を話した。

確かに、秋山君の本心を確かめもせずに玉越さんを殺した響さんはハッキリ言って最低だ。

でも、だからといって秋山君が響さんに抱いていた愛情はなかった事にはならないんだ。

 

「そう思っているなら、まずは朝ご飯食べて元気出さないとね。あなたが生きてる、それだけでもきっと亡くなった二人は報われるはずだから」

 

私は、調理をしながら秋山君にそう伝えた。

今すぐに前を向く事はできないかもしれない。

でも生き延びるためには、前を向いていくしかないんだ。

どうか彼が何か希望を見つけられるようにと、心の中で願った。

 

「ぎゃわああああ!!しまったぁあああ!!」

 

「ちょっ、何やってんのよマナ!粉まみれじゃない!」

 

マナが小麦粉をぶち撒けて真っ白になってしまったので、粉を払い落としてあげた。

……気のせいかしら。

今、秋山君が微笑んだ気がした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「皆、ご飯できたよー!」

 

ちょっとしたハプニングがありつつ、朝食が完成した。

マナが皆を呼びに行き、しばらくして全員が揃った。

平常運転の知崎君、加賀君、目野さん、ネロ。

昨日の事で元気を失いつつも、少しずつ前を向こうとしている古城さん、越目君、闇内君。

未だに立ち直れずにいる小鳥遊さん、聖蘭さん、館井君。

皆今朝の様子は様々だったけれど、何とか今朝の朝食会には参加してくれた。

 

「…いただきます」

 

右隣に座っている知崎君の右隣と、秋山君の左隣には花の入った花瓶が置かれていた。

きっと秋山君が置いてくれたのであろうそれを見ると、いやでも玉越さんと響さんが亡くなったという事実を思い出してしまう。

 

「これおいしいねぇ、緋色ちゃん!」

 

「……そうね」

 

知崎君が普段通りの様子で話しかけてくるけど、二人がいないと、何だか朝食が静かに感じられる。

積極的に私に話しかけてくる知崎君以外は皆ほとんど会話をせず、朝食を終えた。

朝食会の後は、聖蘭さんが淹れてくれたお茶を飲みながらミーティングをした。

するとそこへ…

 

 

 

『ヘイグッモーニンゴミクズ共!!昨日はよく眠れたかァ!?って、テメェら何通夜みてえなムード出してんだYO!ヘイユー!!』

 

「……ねえ、誰か殺虫剤持ってない?」

 

「ドタマぶち抜くぞてめぇ」

 

モノクマとモノDJが現れると、秋山君とネロが殺気を漏らす。

特に秋山君は、二匹に対して並々ならぬ憎悪を向けていた。

…お願いだからルール違反にならないでよ。

 

『うっわー、そんな口利くんだ?せっかくオマエラにとっておきの情報教えてあげようと思ったのに、気分悪いから言うのやーめた!』

 

「え?とっておきの情報?何それすっごく気になる!知ってた?ねえ教えてクマちゃん!」

 

「聞く価値のない話だったら今すぐ消えてもらうが、とりあえず聞かせろ」

 

『おっ、知崎クンと加賀クンは話がわかるね!他の皆も見習うように!今日はオマエラにご褒美を持ってきたんだよ!』

 

「ご褒美?」

 

『学級裁判を乗り越えたオマエラのために、新しいエリアを開放しました!!』

 

『マップも更新されてっから、ちゃんと確認してくれよなYEAH!!』

 

『ああ、それと保健室にあった邪魔なものは片付けておいたので、普段通り使ってね!』

 

…邪魔なもの?

まさか、玉越さんの事じゃないでしょうね。

こいつらは、どこまで人の命を弄べば気が済むのかしら。

私がそんな事を考えていると、越目君が怒りのあまり席から立ち上がる。

 

「テメェ!!一発ブン殴ってやる!!」

 

「やめなさい越目君。あなたが犬死にするだけよ」

 

「くっ………!」

 

私が止めると、越目君は大人しく席に座った。

 

『オレらからのアナウンスは以上だ!!』

 

『それではオマエラ、楽しいコロシアイライフを!』

 

それだけ言い残して、モノクマ達は消えた。

 

「クソッ、アイツら…!!」

 

「皆、あいつらの事はとりあえず後よ。まずはマップを確認しましょう」

 

私はそう言って、更新されたマップを開いた。

見ると、校舎と研究棟の2階、それから寄宿舎の倉庫が開放されているようだ。

校舎の方は教室が三つ、プール、更衣室、トレーニングルーム、図書室、技術室。

研究棟は加賀君、越目君、小鳥遊さんの研究室が開放されている。

図書室があるのは嬉しいわね。

 

「じゃあ担当はくじで、皆それぞれ二人ずつペア組んでく感じでいいかしら?」

 

「異議なーし!」

 

私は、早速くじを作って皆の担当を決めた。

結果は、

 

 

 

倉庫:古城さん、館井君

更衣室(男):秋山君、ネロ

更衣室(女):聖蘭さん、小鳥遊さん

プール:マナ、知崎君

トレーニングルーム:食峰君、闇内君

図書室:私、越目君

技術室:加賀君、目野さん

教室:探索が終わった班から各自自由に探索

 

 

 

「わあい、マナちゃんよろしくねー」

 

「う、うん」

 

よりによって知崎君がマナと一緒か…

大丈夫かしら?

 

「女子と組みたかったでござる……」

 

「我慢しなさいくじ引きなんだから」

 

「まあでも女性陣からしたら、君と組む事がなくてラッキーだったんじゃないかな」

 

「なな!?」

 

女子と組めずに落ち込んでいる闇内君に私が注意をしていると、秋山君が割と辛辣な発言をし、闇内君が落ち込む。

うん、日頃の行いが悪いから仕方ないわね。

闇内君とペアになったりなんかしたらその女子が可哀想っていうのも事実だし。

 

「それじゃあ今から13時までを探索の時間にして、昼食がてらミーティングをするって事でいいわね?」

 

「異義なーし!」

 

私が言うと、知崎君が手を挙げて発言した。

皆それを皮切りにそれぞれの担当の場所へと向かった。

さて…と。

私は図書室の探索をしに行かないとね。

 

「腐和ちゃん、一緒に行こうぜ!」

 

「ええ」

 

私は、越目君と一緒に図書室に行く事になった。

…うーん、彼は正直あまり一緒にいたいタイプではないのよね。

ええっと、こういう時って何を話せばいいんだろう…

 

「いやー、しっかしラッキーだったぜ。まさか腐和ちゃんとペアになれるとは!」

 

「………そう」

 

「えっ!?あれ!?あんまり嬉しそうじゃないんだけど!オレちゃんと一緒はそんなに嫌!?」

 

「別に嫌じゃないけどちょっとね…」

 

何というか、どうしても知崎君や闇内君とセットのイメージが拭い切れないのよね。

まあ本人の前でハッキリ言うのも失礼だし言わないでおくけど。

 

「…ひょっとしてさ、オレが何かするって思ってんだろ?」

 

「!」

 

「オレをアイツらと一緒にすんなよな。言っとくけど、オレはモラルあるチャラ男をモットーにしてんだよ。女のコにセクハラしたりとか絶対しねえから!」

 

彼の言葉に、嘘偽りはなかった。

軽い感じの人に見えて、意外と筋が通ってるのね。

知崎君や闇内君とセットだと思っていたけれど、どうやら私の勝手な思い込みだったみたいね。

 

「…ごめんなさい。私、あなたの事を誤解してたみたい」

 

「いいって事よ!腐和ちゃんに何かあったらオレちゃんが守ってやっからよ」

 

「あ、ありがとう…」

 

気遣ってくれてるんだろうけど、何だか複雑な気分だわ。

越目君ってモノクマ達が何かしてきた時、いっつも私にくっついてるだけだからイマイチ説得力が無いのよね。

まあでも気持ちだけは受け取っておこうかしら。

二人で話しながらマップに書かれている通りに歩いていると、それらしき場所に着いた。

 

「着いたわね。ええっと、図書室と書庫があるみたい。順番に調べていきましょう」

 

「おう、そうだな!」

 

私達は、早速図書室に入ってみた。

想像以上に広いわね…

学校の中なのに迷子になっちゃいそう。

でもあの読書スペースとかは息抜きをするのにちょうど良さそうね。

 

「思ってた以上に広かったな…どうすんのこれ?」

 

「しょうがない、一ヶ所ずつ地道に調べてくしかないわね」

 

「うへぇ…マジかよ」

 

私が早速近くの棚から調べてみると、越目君がウンザリとした表情を浮かべた。

本は好きだし単純作業も嫌いじゃないけど、ここまで広いと流石に骨が折れるわ。

 

調べてみたところ、図書室には本棚と貸し出しカウンター、読書スペース、それからパソコンがあった。

パソコンは…ダメね。

図書室専用のホームページにしかアクセスできないようになってる。

まあ、そりゃあモノクマ達がそう簡単に情報源を渡してくれるわけがないわよね。

でも一応後で目野さんに相談してみましょう。

 

…あら?

そういえば、普通図書室って新聞とか雑誌とかも置いてあるわよね。

でも、この図書室にはそういった類のものは一つもない。

もしかして、外の情報を知られると何かまずい事でもあるのかしら?

 

「うーん…特にこれといった収穫は無かったわね。次は書庫の方を調べてみましょうか」

 

「…………」

 

「うん?どうかした?」

 

「ああ、いや…よく短時間でそんなに色々調べられるなって思ってよ」

 

「まあ仕事柄…ね。昔からこういう探し物とかは得意だったから」

 

「はー、すげえなぁ。オレ、バカだから腐和ちゃんみたいに頭いいコってホント尊敬するわ」

 

「別に私だって褒められたものじゃないわよ」

 

何だろう。

こう面と向かって褒められるのってちょっと恥ずかしいわね。

悪い気はしないけど。

 

ここでわかった事といえば、本は参考書や図鑑、辞書など大方のジャンルは網羅している事、読みたいと思った本があればパソコンで簡単に調べられるって事、何故か外の情報に関するようなものは一切置かれていなかった事、あとはメダルが何枚かあったくらいかしらね。

これ以上は特に収穫も無さそうだし、次は書庫の方を調べてみようかしらね。

 

 

 

ーーー 書庫 ーーー

 

こっちも本が多いわね…

まあ大まかにジャンル分けされてるからまだ探しやすいけど。

…ん?

『極秘ファイル 【超高校級の殺人鬼】二代目ジャック・ザ・リッパーについての資料集』…か。

これは本…というかファイルね。

ちょっと読んでみようかしら。

 

 

 

そこには、《またしても惨殺事件 残虐非道な殺人鬼》という見出しで資料が書かれていた。

夜な夜な繁華街をうろつき、人を殺しては首を切って晒すという猟奇的な犯行を繰り返している殺人鬼で、警察の調査の結果、犯人は高校生である事が判明し、【超高校級の殺人鬼】として未来ヶ峰学園にスカウトされる事が決まったらしい。

被害者はいずれも10歳以下の子供か40歳以下の女性で、死因はいずれも刃物で頸動脈を切りつけられた事による失血死。

被害者は職業・出身地共にバラバラで関連性は一切無く、私怨による犯行の可能性は低いと考えられる。

いずれの被害者も犯行現場付近で首が晒されているのを発見されているが、胴体は見つかっていない。

女性と子供のみを狙った卑劣かつ残虐な犯行手口から、巷では『二代目ジャック・ザ・リッパー』と呼ばれている…か。

私達と同じ年に入学予定と書かれているわね。

 

こっちは被害者のファイルか。

…酷い、赤ちゃんや妊婦さんまで殺されてるのね。

被害者の職業は…うーん、確かに関連性があるとは思えないわね。

出身地や経歴もバラバラだし。

 

……あれっ?

そういえば、この事件の被害者ってどうして……

 

 

 

「なぁに見てんの?」

 

「!」

 

私が資料を読んでいると、いきなり越目君が後ろから話しかけてきた。

いきなり話しかけられたからビックリした…

 

「…ああ、ごめんなさい。ちょっと資料を読んでたのよ」

 

「資料?オレちゃんにも見してよ」

 

「……惨殺死体の写真とか入ってるわよ?見る?」

 

「…いや、いい。やめとくわ」

 

「じゃあ何が書いてあったのかだけは教えてあげる」

 

私は、資料の内容を越目君に話した。

二代目ジャック・ザ・リッパーと呼ばれる【超高校級の殺人鬼】について、犯行手口、そしてそいつが私達と同じ年に入学予定だという事、全てを事細かに伝えた。

越目君は、私の話を聞いて顔色を悪くしていた。

 

「…なるほどな。殺しやすいからって女子供を狙うなんて、卑怯な野郎だぜ!」

 

「それは違うわね」

 

「うぇ!?何が!?」

 

「犯人が卑劣な異常者なのは同意するけど、犯人は殺しやすさを重視してターゲットを選んでるわけじゃないと思うの。だって考えてもみてよ。もし殺しやすければ誰でもいいなら、お年寄りや怪我人も殺してるはずよね。それに、交番が近くにある駅前でも被害が起きてるのよ?殺しやすい人を選んで殺してるなら、警察の目が届く場所に住んでる人は避けるはずでしょ?」

 

「あっ、確かに…」

 

「私怨の可能性も無いとなると、犯人はターゲットの年齢層に対して強い執着を抱いていると考えるのが妥当だわ。要するに異常性癖よ」

 

「うげ…そんな奴がオレらの代に入学してきてんのかよ」

 

私が説明をすると、越目君がさらに顔色を悪くした。

するとその時、越目君が思い出したように目を見開く。

 

「…あっ、そういや知崎の野郎、才能覚えてねぇとかほざいてたよな。じゃあまさかアイツ「それはまだ断定できないわね。ここにいない可能性だって十分考えられるわ」食い気味にいくなぁ…」

 

「仮にここにいたとしても、知崎君が殺人鬼とは限らないでしょう?」

 

「でも才能分かってねえのはアイツだけだし…」

 

「もし、二つ以上の才能でスカウトされた多才さんがいたとしたら?」

 

「…えっ?」

 

「稀にあるそうよ。二つ以上の才能でスカウト出来る事が発覚して、二つの称号を持って未来ヶ峰学園にスカウトされるっていう事例が。もしその人が殺人鬼じゃなくても、中には二つ目の才能を隠している人がいるのかもしれないわね」

 

私がそう言うと、越目君が片眉を上げて頭を掻く。

確かに知崎君についてはわからない事だらけだけど、でも、だからって彼を殺人鬼だと思い込んで疑心暗鬼になったらそれこそあいつらの思う壺だ。

とにかくこの事は、私と越目君の秘密にしておかなくちゃ。

…ん?

 

私はふと近くに置いてあった書類が気になり、手に取って読んでみた。

書類には、殺人鬼が起こした事件とはまた別の事件について書かれている。

《まさに神出鬼没!怪盗ルパンの末裔再び現る》と書かれた見出しが目を引き、その下の文面に目を通してみる。

現代の怪盗ルパンは夜の街に突如として現れ、お宝を盗んでは颯爽と去っていくといわれている。

ルパンの厄介なところは、お宝だけでなく情報や技術、果てには【超高校級】の才能まで、欲しいと思ったものなら文字通り何でも盗んでしまう貪欲さだ。

どんな才能をも盗んで鮮やかな手口で警察を撒き逃げ続けているが、一説によるとまだ高校生だともいわれている。

 

怪盗ルパン…

この前もお宝を盗み出して鮮やかな手口で逃げていったのよね。

警察官を続けていれば、いやでも奴の話は耳に入ってくる。

私にとって奴を捕まえる事は、父さんと母さんの仇を討つ次に成し遂げたい目標だった。

どうして奴の資料がここにあるのかはわからないけど、私は今、何が何でも生き延びて外に出なきゃいけない理由をハッキリと思い出した。

 

「……わちゃん。腐和ちゃん!」

 

「あっ、はい!ごめん、何?」

 

「いや、まだ書庫の上の方調べてなかったろ?ちょっと脚立持っててほしくてさ」

 

「私が調べた方がいいんじゃないの?」

 

「いやいや、女の子に危険な事させるわけにもいかねえだろ。それに……」

 

それに?

何か越目君がしどろもどろになってる気がするんだけど。

何か後ろめたい事でもあるのかしら?

 

「…何よ」

 

「い、いや、何でもねえ!調べ物だよな!?よし、任せとけ!」

 

(オレが下だとパンツ見えるんだよなぁ…)

 

ったく、何よ。

言いたい事があるならハッキリ言いなさいよね。

 

「よし、これで全部だな。特に怪しいモンとかなかったぜ!」

 

「ありがとう。一人で降りられる?」

 

「ばっ、バカにすんじゃねえ!3歳児じゃねんだから一人で降りるくらいできるに決まってんだろ!」

 

何かしら、ものすごくフラグ臭がするのだけれど。

一応見守っておいてあげた方が良さそうね。

 

「ったくよぉ、どいつもこいつもバカだからってバカにしやがって…うぉあ!!?」

 

越目君が何やらブツブツ不満を言っていると、案の定足を滑らせた。

あーあ、こうなるだろうと思ったわ。

私は、落ちてきた越目君を両腕でキャッチした。

いわゆるお姫様抱っこの状態ね。

…まあ今抱えてるのはどう見ても『お姫様』じゃないけど。

 

「…大丈夫?」

 

「……あっ!!だっ、大丈夫!サンキュな!つーか…この構図だいぶ恥ずかしいから早く下ろしてくんね?」

 

「え?あ、そうね。ごめんなさい」

 

越目君が早く降ろすよう言ってきたので、ゆっくり降ろしてあげた。

さっきから顔を青くしたり赤くしたりしてるけど、本当に大丈夫かしら?

 

「いやぁ助かった。腐和ちゃん、オレ重くなかった?」

 

「別に。まあでも人生初のお姫様抱っこが、まさかする側だったとは思わなかったわね」

 

「は、ははは…」

 

私が冗談っぽく言うと、越目君は顔を引き攣らせて苦笑いを浮かべた。

 

「書庫の調べ物はこんなもんか?」

 

「そうね。まだ空き教室の方は調べてなかったし、そっちも調べないとね」

 

書庫の方もこれ以上の収穫は特になく、集合の13時まで30分以上あったので、残りの時間で教室を見に行く事にした。

 

 

 

ーーー 校舎2F廊下 ーーー

 

私達は、2ーA、2ーB、2ーCの順に教室を調べていった。

教室の内装は、1階の教室とほとんど変わらなかった。

2ーAの教室には、特にこれといった収穫は無かった。

2ーBの教室のボードには、

 

『何で教室になんか来たんすかねぇ?』

 

とモノクマの字で落書きがされていた。

うん、モノクマのイラストが不快だから消しておこう。

私がボードを綺麗に消していると、越目君が声をかけてくる。

 

「ここも特には…って、腐和ちゃん何やってんの?」

 

「黒板が汚かったから消してるの」

 

「そ、そうだな。黒板は綺麗に使わねーと…」

 

私がボードを消していると、越目君が顔を引き攣らせる。

さて…と。

ここでの探索はこれくらいでいいかしらね。

次は2ーCの教室を調べに行こうとすると、既に先客がいた。

既に探索を終えたであろうネロ、聖蘭さん、マナ、知崎君の4人だ。

何だか珍しい組み合わせね…

 

「あ、緋色ちゃん!越目くん!」

 

「おっすー、腐和ちゃんと粧太おにい!」

 

「チッ…こりゃまたうるせぇのが来やがったな」

 

私達が教室に入ると、知崎君とマナが真っ先に詰め寄ってきた。

ネロは…相変わらずね。

 

「あなた達はもう探索終わったのね」

 

「ええ。時間を持て余してしまいましたので、教室の探索がてらお掃除をしていたところでしたの」

 

「へー…あれ?秋山と小鳥遊ちゃんは?」

 

「お二人なら、昼食の準備があるからと先に厨房に向かわれました。ですので、ここにいるのは私達4人だけですわ」

 

「なるほどね」

 

秋山君なんて、朝食の準備もしてくれてたのに…

ただでさえ玉越さんと響さんを失ってつらいのに、皆を支える為に率先して行動してくれているのね。

彼が無理しすぎないように、私も私なりにできる事をしないと。

 

「しっかし、意外だな。ネロがこのメンツと一緒に行動するなんてよ」

 

「悪いかよ」

 

「いや、別に。ただ、ちょっと前なら考えられなかったろ?」

 

「フン、知ったような口利きやがって。単独行動取ったらお前らが疑ってくるから仕方なくここにいてやってんだよ。今なら仮に万が一ガキが一人死んでも、お前らなら俺の無実を証明できんだろ?」

 

ガキが死んでもって…

まるでここにいる14人がこれから死ぬみたいな言い方じゃない。

感じ悪いわね。

私がそんな事を思っていると、マナが席から立ち上がって声を荒げた。

 

「そげん事もう起きんばい!ここで死ぬんは響ちゃんで最後だよ!」

 

「どうだかね。そのMiss響だって、あのテディベア共のくだらねえジョークを真に受けてMiss玉越を殺したんじゃねえか。一度あることは二度あるって言うだろ?本当に二度とコロシアイは起きねえって保証できんのか、Miss聲伽?」

 

「なっ…キミねぇ!!」

 

「ちょっ、やめろよ二人とも!」

 

「ははは、修羅場だねぇ」

 

ネロがマナを煽ると、マナはネロに食ってかかった。

越目君は二人の喧嘩を止めようとオロオロしており、知崎君は教室の端で頬杖をつきながら傍観していた。

するとその時だった。

 

「おやめ下さいまし!!」

 

叫んだのは、聖蘭さんだった。

聖蘭さんは、涙を流しながらここにいる全員に訴えた。

 

「もうおやめ下さい…!私はもうこれ以上、皆様を疑いたくはありませんの!私は……っ!!皆様を信じると言っておきながら、他の皆様の命を犠牲にしたくないからと、響様に投票してしまいました…!何が【超高校級の聖母】、私は…わたくしはっ……!!」

 

聖蘭さんが泣き崩れると、先程まで言い争っていた二人も喧嘩をやめた。

あの状況なら、響さんに投票してしまっても仕方なかったかもしれない。

でも聖蘭さんは、神に仕える身として、【超高校級の聖母】として、クラスメイトを疑ってしまった自分をどうしても許せなくて、ずっと自分を責め続けていたんだ。

私は、彼女が苦しんでいる事をわかってあげられなかった。

私は、泣いている聖蘭さんに歩み寄って、背中を撫でながら話しかけた。

 

「聖蘭さん。確かにあなたが全く悪くなかったかといったら違うかもしれないわね。でもあれは何も、あなただけが悪いわけじゃない。私も、ここにいる皆も、あの裁判で平等に罪を背負ったの。今私達にできる事は、あの裁判で背負った罪を清算していく為にも、皆で脱出方法を探す事なんじゃない?」

 

私がそう言うと、聖蘭さんは涙を拭いながら立ち上がった。

 

「………そうですわね。ごめんなさい、取り乱してしまいました」

 

「聖蘭さん…」

 

「私、何が何でも生き抜く事に決めました。私は地獄に堕ちようと構いません。あの裁判で、私の魂はもう穢れてしまいましたから。ですが亡くなったお二人が少しでも安らかに神のもとへ還れるよう、私の一生をかけて罪を償って参りますわ」

 

そう言って聖蘭さんは、ロザリオを強く握りしめた。

聖蘭さんが言うと、ネロは帽子の鍔で目元を隠す。

…きっと、普段は悪態をついていたけど、ネロも二人の死を悔やんでいたのね。

教室の探索を終えた私達は、食峰君達の手伝いをしに6人で食堂へ向かった。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り14名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

以上2名

 

 

 

 

 



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(非)日常編②

今回は百合スペシャルでございます。
苦手な方はブラウザバック推奨。
大好物の方は存分にお楽しみください。


探索を終えた私達6人は、昼食の手伝いをするため厨房に集まった。

掃除やテーブルセッティングに時間を費やし、料理をテーブルに並べていると、集合時間を10分ほど過ぎて倉庫を調べていた館井君と古城さん、技術室を調べていた加賀君と目野さんが食堂にやってきた。

 

「遅れてすまない。思ったより倉庫が広くてな…」

 

「ぬはははは!!!ワシは空腹じゃ!!馳走を用意せい!!」

 

「どっかの総帥みたいな事言ってる暇があるなら少しは手伝ってくれないかな」

 

申し訳なさそうにしている館井君とは対照的に古城さんが高笑いしながら威張っていると、秋山君が冷静にツッコミを入れた。

…秋山君、案外漫画とか読む人なのね。

 

「すまん、普通に集合時刻を忘れてた」

 

「いやはや、あの技術室がソーエキサイティンッッッでしてねえ!!つい集合時間を忘れてしまいました!!ごめんなさい!!」

 

加賀君と目野さんも遅れた事に対しては謝罪してたけど、特に目野さんはあまり反省していない様子だった。

ちょっとこの二人にはそろそろ説教した方がいいんじゃないかしら?

…まあ、こうして全員無事に集合できたんだからあんまり神経質になりすぎるのも良くないのかもしれないけど。

 

「とりあえず、ミーティングの前にご飯にしようか。皆お腹減ってるでしょ?」

 

「そうね」

 

秋山君が提案したので、私も賛成した。

今日の昼食は、食峰君と秋山君が作ったハヤシオムライス、闇内君が作ったシーチキンと水菜のサラダ、小鳥遊さんが作ったオニオンスープ、食峰君が作ったカスタードプリンの4品だ。

探索で頭使った後だから、こうガッツリしたものが出てくるのは嬉しいわね。

 

「んん!美味しいねぇ、緋色ちゃん」

 

「知崎君、あなた口の周り汚れてるわよ」

 

「えー!?どこどこ!?」

 

「しょうがないわね…」

 

知崎君があまりにも口の周りを汚していたので、ナプキンで口の周りを軽く拭いてあげた。

…よし。取れた。

すると越目君と闇内君がものすごい目で見てくる。

 

「ずるい…ずるいでござる知崎殿だけ…!」

 

「同感だぜ闇内…こんなのまかり通っていいわけがねえよなあ!?」

 

何か二人でものすごくIQの低い会話をしているような気がするのだけれど…気のせいかしらね?

すると越目君は、どういうわけか自分の口にわざとソースをつけてアピールしてきた。

 

「な、なあ!腐和ちゃん!俺も口の横にソースがついちゃってさぁ!」

 

「いやー奇遇でござる!拙者も!」

 

「だから何?自分で拭きなさいよ。あと闇内君、あんたに関しては汚れのつきようがないでしょうが」

 

「ギッ、ギックゥ!?」

 

もしかしてこいつら、私に拭かせようって魂胆だったのかしら。

全く…何でどいつもこいつも自分の事を自分でやらないのかしら。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

昼食が終わった後は、食峰君が作ってくれたお茶菓子と紅茶を嗜みながらミーティングをした。

主に私と秋山君が仕切って報告を進めていく。

 

「それじゃあ、まずは俺からの報告ね。更衣室は、ハイテクな鍵がついてる事以外は普通の学校と同じ感じだったよ。あと、異性の更衣室に入るとマシンガンで蜂の巣にされるらしいから皆気をつけてね」

 

「あとはテディベア共の不愉快なポスターがあったくらいだな。俺らからの報告は以上だ」

 

モノクマのポスター、ね…

あいつら本当にいらない事しかしないわね。

とりあえず校則を確認しないと。

 

 

 

十五、男子更衣室のリーダーに女子の、女子更衣室にリーダーに男子の生徒手帳を使う事を禁止します。使った場合、マシンガンで処刑します。

 

十六、電子生徒手帳の貸与を禁止します。

 

 

 

それにしてもマシンガンか…

物騒ね。

間違っても男子更衣室には入らないようにしないと。

まあ知崎君と闇内君以外は異性の更衣室に入ろうだなんて非常識な事はしないでしょうけど。

秋山君とネロが報告を終えると、次は女子更衣室の方を調べていた聖蘭さんと小鳥遊さんが報告をした。

 

「私達は女子更衣室を調べましたが、報告を聞いている限り多分男子更衣室と同じだと思いますわ」

 

「ん」

 

“最低限の用具は置いてありましたが、水着などは倉庫に行けば手に入るそうです”

 

「時間を持て余したので教室の方も見てみたのですが、1階と同じでしたわ。私達からの報告は以上ですわ」

 

聖蘭さんと小鳥遊さんの報告によると、構造はほとんど男子更衣室と同じらしい。

まあそりゃあそうか。

私が4人の報告に納得していると、次はマナが報告をした。

 

「はいはーい!うちらはプールば調べたっちゃけど、とにかくばり広かったばい!あとね、水温を管理する機械がある部屋があってね、そん部屋の窓からプールが見えるようになっとったよ!」

 

「あのねあのね、何か節電のためとかでプールは夜時間中入っちゃいけないんだってさ!知ってた?」

 

二人は相変わらずテンション高いわね…

あれ?

今サラッと割と重要な事言ったわよね。

プールは夜時間中入れないのね。

注意しておかなくちゃ。

二人が報告を終えると、次は食峰君と闇内君が報告をした。

 

「っしゃ!!次はオレらの番だな!トレーニングルームには、とにかく筋肉を鍛えるための道具が色々置いてあったぜ!!あと、壁がボルダリング仕様になってたな!!」

 

「ありがたい事に自販機も完備してあったでござるよ。拙者達からの報告は以上でござる」

 

なるほどね…

それにしてもトレーニングルームか。

ここに閉じ込められてから訓練ができなくて身体が鈍ってたから、後で行ってみようかしら。

二人が報告を終えると、次は古城さんと館井君が報告をした。

 

「ガハハハハ!!次はワシらの番じゃな!!倉庫は色々置いてあったぞい!!あそこに行けば大体のものは揃うじゃろ!!倉庫のものは毎日補充されるから、安心してどんどん使えとの事じゃ!!」

 

「倉庫は寄宿舎の1階分丸ごと占めていて、広さはホームセンターくらいあった。俺達からの報告は以上だ」

 

なるほどね…

それにしてもあの広い寄宿舎の丸ごと一階分か。

そりゃあ探索に時間がかかるわよね。

あとでどんなものがあるのか一応確認しておかないと。

えっと…次は私達が報告するんでいいのかしら?

 

「次は私達いいかしら?図書室は、かなり広かったけど普通の図書室とあまり変わらないわね。本棚の他には貸し出しカウンターと読書スペース、あとはパソコンがあったわ」

 

「なな!?ぱ、パソコンとな!?腐和サァン!!私、後で調べに行ってもいいですかね!?」

 

うわ、案の定目野さんがものすごく食いついてきた。

まあ元々目野さんに調べてもらうつもりだったしね。

 

「ええ、私もあなたに調べてもらうつもりで言ったの。まあでも多分無駄だと思うけどね」

 

「無駄!?どういう事です!?」

 

「アクセス制限がされていたの。具体的には、本を調べる為の専用ページ以外は使えないようになってたわ。あれを通信手段として使うのは難しそうね」

 

「なるほど!でもでもパソコンが手に入ったというだけでも十分大収穫ですよ!!今回のMVPですね腐和さん!!」

 

私はただくじ引きで図書室の担当になったから調べただけなんだけど…

でも何だろう、ここまで褒められると悪い気はしないわね。

 

「ああ、それともう一つ重要な事を知らせておくわね」

 

「重要な事?」

 

「図書室には、新聞や雑誌の類が一切無かったの」

 

私が報告をすると、加賀君が顎に手を当てて考え込む。

 

「………なるほど。それも十分大きな収穫だな」

 

「えっ、何で?」

 

「新聞や雑誌はここ最近の情報を手に入れる上で重要な文献だ。それが無いという事は、モノクマ達は外の情報を俺達に知られたくないという事にならないか?」

 

「あっ、確かに!!」

 

加賀君が説明すると、食峰君が納得した。

すると加賀君は、完全にトリップして独り言を言い始めた。

 

「外の情報を知られたくない…となると、外の世界には何かモノクマ達にとって弱みになるようなものでもあるのかもな。それがデスゲームを運営する上で不都合なのか、それとも裏で操っている黒幕の個人的な不都合なのか…どのみちこのデスゲームの根底に関わる事なのは間違いない。くっくっく、面白くなってきたぞ」

 

加賀君は、顎に手を当ててブツブツ独り言を言いながら考え込んでいた。

癖なのか何なのか知らないけど、ちょっと怖いわね…

加賀君の独り言に皆が少し引いていると、越目君が手を挙げて発言した。

 

「んじゃあ次オレちゃんいいか?図書室には書庫があったんだけどよ。とにかく本がいっぱいあったぜ!」

 

「越目くん。そんくらいわざわざ報告するまでもなかね?」

 

「グッ…!」

 

越目君が報告をするとマナが正論でバッサリと切り捨て、越目君が固まった。

まあ調査の報告はほとんど私がしちゃったからね。

何だか申し訳ない事をした気分だわ。

でもマナ、あなたはちょっと何でもかんでもハッキリ言いすぎよ。

私がマナの無自覚の毒舌に少し呆れていると、越目君はヤケクソ気味に報告を続ける。

 

「で、でもそれだけじゃねえぞ!あの書庫には【超高校級のさモガ!?」

 

ちょっと。

今何を言おうとしたわけ?

私は、【超高校級の殺人鬼】の話をしようとする越目君の口に、焼きたてのマカロンを次々と詰め込んだ。

 

「あら越目君、これ食べたかったの?まだまだあるわよ。お食べ」

 

「ちょっ、腐和ちゃんいきなり何sモガモガモガ!!」

 

「越目君、お菓子おいしい?」

 

「う……ウン」

 

私が笑顔で圧をかけると、越目君は口をもごもごさせながら黙り込んだ。

ふう。

何とか口封じできたみたいね。

【超高校級の殺人鬼】がいるなんてここで言ったら、皆はパニックに陥って疑心暗鬼になってしまうかもしれない。

私達が得た情報が殺人のトリガーになる事だけは、絶対に避けたかった。

越目君、あなたが不用意に皆にバラそうとしようものなら、今みたいに口封じするわよ。

 

「あ、あははは…ええっと?お二人の報告は以上?」

 

「ええ。最後は加賀君と目野さん、報告お願いできる?」

 

「ああ。技術室なんだがな…」

 

「あのですねぇ!!中は工房みたいになってたんですが、あらゆる材料を加工する為のビュゥウウウウティフォォォォオオオオオな機械ちゃんたちが所狭しと並んでいたのです!!スゥハァスゥハァ…私、あんなベリィィィィィエレガンツッッッッッな場所でなら一生過ごせそうな気がします!!」

 

「まあそういうわけだ。技術室は作業用の教室と、材料や資料が置いてある準備室に分かれていた。技術室の方にもパソコンは置いてあったが…まあお察しの通りだ」

 

目野さんが目を輝かせながら報告をすると、加賀君は若干呆れ気味に補足の報告をした。

ただでさえ自由人の加賀君がアブノーマルな目野さんに振り回されてるの、側から見ると中々シュールね。

やっぱり技術室のパソコンもネットにはアクセスできないようになってたのね…

まあでもこれでそんな簡単にアクセスできたら苦労はしないわよね。

 

「ああ、そうそう。準備室には木材や大工道具、設計図を書くための筆記用具なども置いてあったな。館井も気になるようなら後で行ってみるといい」

 

「むっ……」

 

加賀君が言うと、館井君が反応する。

どうやら作業用のスペースがあると聞いて喜んでいるみたいね。

 

「うん、じゃあ報告会は以上でいいかな?」

 

「そうね。それじゃあ今から解散にしましょう。今からは各自自由に探索して、18時にここに戻ってきて夕食とミーティング。これでいいかしら?」

 

「異議ナーシ!」

 

秋山君と私が言うと、マナが手を挙げて賛同した。

特に反対意見はなかったので、各自自由に探索をする事になった。

さてと。私もまだ行ってない場所を探索しないとね。

私が探索に行こうとすると、マナが声をかけてきた。

 

「緋色ちゃん!今日も一緒に探索しよ!」

 

「そうね。でもちょっとその前に寄りたい場所があるの。少し付き合ってもらえないかしら?」

 

「?うん、いいよ!」

 

私は、今日もマナと一緒に探索をする事にした。

私達はまず、1階の保健室に向かった。

保健室に入ると、モノクマの言葉通り、玉越さんの遺体は綺麗さっぱり片付けられて血の一滴も落ちていなかった。

まるで、一昨日まで彼女が皆を引っ張ってくれたのが嘘のようだった。

 

「ねえ緋色ちゃん、ここって…」

 

「玉越さんが亡くなった場所。私は彼女にほとんど何も返せなかったから、せめてきちんとお別れを言っておきたかったの。それと、響さんにもね」

 

「あ……」

 

私は、ちょうど玉越さんが亡くなったあたりでしゃがみ込んで合掌した。

今更こんな事をしても玉越さんに何かを返した事にはならないけど、リーダーとして皆を引っ張ってくれた彼女に何も返せないままいなくなってしまったのがどうしても我慢ならなかった。

響さんが玉越さんを殺すのを防げていたらこんな事にはならなかった、そんな事を今更考えたって仕方ないのに、あんな形で友達を亡くしたのが悔しくてどうしようもなくやるせなかった。

今の私ができる事は、せめて二人が安らかに眠れるように祈る事だけだった。

 

「玉越さん。助けられなくて、皆でここから出るって約束したのにこんな事になってしまって…本当にごめんなさい。それから響さん。あの時は追い詰めるような事をしてごめんなさい。私、あなたの分まで生きるから。あなた達を犬死にになんか絶対させないから。だから、もう少しだけ待っていて」

 

「玉越ちゃん…響ちゃん…うち、まだ話したか事いっぱいあったっちゃん…!なして…なしてよ…!!」

 

私が手を合わせながらそこにはもういない二人に語りかけると、マナも二人に語りかけた。

マナの声は震えていた。

後ろに立っていて顔は見えなかったけれど、きっと泣いているんだろう。

私は母さんを亡くした日から、泣かなくなった。

泣いたって嘆いたって、どうにもならないという事を痛い程に理解してしまったから。

気付いたら、泣きたい時に泣く事ができなくなっていた。

私にも人の心があったなら、マナみたいに友達の死を悲しんで泣く事ができたのだろうか。

 

私達は、保健室を後にし、まだ調べていなかった場所の探索を始めた。

先程まで泣いていたマナは、目元を腫らしてはいたけれどだいぶ落ち着いてきた様子だった。

 

「マナ」

 

「何?」

 

「私はあなたが羨ましい」

 

「え?」

 

「私は、嫌なものを全部押し殺す生き方をしてきたから…こういう時、どういう顔をしたらいいのかわからないの。私は、あなたみたいに優しい人になりたい」

 

私は、マナに自分の本心を打ち明けた。

ダンガンロンパの事を話した彼女になら、何でも打ち明けられる気がした。

私が話すと、マナは少し首を傾げながら言った。

 

「緋色ちゃんは優しいよ?」

 

「え……?」

 

「緋色ちゃんだけは、最後まで響ちゃんを助けようとしとったやろ?秋山くんだって諦めとったとに」

 

私は、響さんがオシオキされた時の事を思い出した。

彼女の悲痛な叫び声に皆が唖然とする中、あの場で、私だけが響さんを助ける為に動いた。

響さんがもう助からないのはわかりきった事だったのに、どうして彼女を助けようとしたのかは自分でもわからない。

絶望して死を待つ彼女を見て、感情よりも先に身体が動いていた。

 

「うちは、響ちゃんがクロに決まって、もういっぱいいっぱいになってしもうて、助けようともしぇんやった。多分、他の皆もうちと同じやったと思う。うちは、緋色ちゃんんごと強うなりたか」

 

「…ありがとう。でもマナは、私みたいにはならないでね?本当につらい時に泣けなくなってしまうだろうから」

 

「ん」

 

私がマナの頬を軽く撫でながら言うと、マナは小動物みたいにきゅっと目を瞑った。

マナには、私と同じ道を歩ませない。

私は、誰よりも自分の心に素直なマナが好きだから。

大切な誰かが悲しんで泣いている時、一緒に泣いてあげられる人でいてほしいから。

マナが一人で抱え込まなくていいように、つらい時は私が助けてあげなくちゃ。

 

「湿っぽい話になっちゃったわね。この話はこれくらいにして、探索するか決めない?」

 

「そうやね」

 

私は、まずはどこに探索に行くかをマナと話し合った。

話し合いの結果、二人ともまだ探していない倉庫を見てみる事にした。

 

「マナ、さっき知崎君と探索してたけど、大丈夫だった?」

 

「あーそれなんやけど!聞いて!?知崎くん、うちん胸と尻ばばり触ってきたっちゃん!しかもうちん大事な帽子まで盗られて、奪い返すん大変やったんやけん!」

 

私が一応マナを心配して尋ねると、マナは頬を膨らませながら私に愚痴ってきた。

知崎君、やっぱりマナにセクハラしてたか…

しかも窃盗犯ときた。

ちょっと一回ガツンと言ってやった方がいいわね。

 

「緋色ちゃんは越目くんと探索したっちゃんね?どうやったと?」

 

「そうね…お姫様抱っこした事以外は特に何も」

 

「えっ、お、お姫様抱っこ!?えっ、待って、ばり萌えるっちゃけど!」

 

何かマナのテンションがいきなり上がった気がするわね。

そんなに面白い話題だったかしら?

 

「ああ、言っとくけど私がする側だからね?越目君が脚立から落ちたから私がキャッチしてあげたの」

 

「あー…」

 

私が状況を正確に説明すると、マナは妙に納得した。

いや、ちょっと。

何よその面白くなさそうな目は。

そんな目で見ないで?

私だって好きで越目君をお姫様抱っこしたわけじゃないわよ。

 

二人でガールズトークを楽しんでいると、いつの間にか倉庫についた。

倉庫の扉を開けると、中には物品を陳列した棚がズラリと並んでいた。

館井君の報告通り、倉庫は1フロア丸ごと使っていて、まるで大型ホームセンターかショッピングモールのようだった。

 

「………広いわね」

 

「うん」

 

筆記用具、工具、衣類、インスタント食品、衛生用品…

本当に色々揃ってるのね。

何か欲しいものがあったら、ここで探せば事足りそうね。

 

「とりあえず、どんなものがあるのかだけでもざっと見ていきましょう」

 

「そうやね」

 

私達は、倉庫の中のものを片っ端から調べていった。

中に入った時にわざわざどこに何があるのかを探さなくて済むように、物品のリストと物品と場所を対応させたマップも作った。

私が衛生用品を調べていると、何やら見覚えのある箱が目に留まる。

何かしら…

ものすごいデジャヴだわ。

モノクマ達ってたまに不愉快な下ネタ挟んでくるわよね。

マナが見つける前に隠さないと…

私は何も見なかった。

見なかったのよ。

 

「何調べとーと?うちにもちょっと見して!」

 

「あっ…」

 

遅かった。

私が隠そうとした時には、既にマナが後ろから箱をひったくっていた。

マナは、しばらく箱を見てみたかと思うと難しそうな顔をして話しかけてきた。

 

「…ねえ緋色ちゃん、これ何に使うと?」

 

「え?」

 

「衛生用品のコーナーにあるって事は、何かの治療に使うもんなんかな」

 

そう言ってマナは、私にゴムの箱を見せてきた。

嘘でしょ?

高校生にもなって何で知らないのよ…

もうそれ無垢ってレベルじゃないわよ?

この子、さては学校の保健体育の授業真面目に聞いてないわね。

 

どうしたものか…

保健室にあった大人のおもちゃに関してはマナが知らなくていい事だったけど、やっぱりこういう知識はちゃんと持っておかないとダメよね。

マナの今後の為にもちゃんと教えておかないと。

 

「マナ、ちょっと耳貸しなさい」

 

「え?何で?」

 

「いいから早く」

 

私は、ソレがどういった用途で使われるものなのかをマナに耳打ちをした。

するとマナは、目を見開いてみるみる顔を赤くしていく。

 

「えっ、嘘やろ!?これ、そげん事に使うもんやったと!?ごめん、そうやとは思わんで聞いてしもうて…」

 

「逆に高校生にもなって知らない方がビックリよ。あなた、学校の保健の授業、真面目に聞いてなかったでしょ?」

 

「うん。寝てた」

 

「やっぱりね…」

 

高校の授業くらい真面目に聞いてなさいよ。

この子天然っていうか、いわゆるアホの子ってやつなんじゃないかしら。

 

「それより見て見て!こんお饅頭そこの棚に置いてあったっちゃけど、ばりうまそうやなか!?」

 

そう言ってマナは、お饅頭の箱を見せてきた。

箱には、『銘菓 モノクマ饅頭』と書かれていた。

うげ…

どう見てもゲテモノにしか見えないんだけど。

あいつらちょっと自己主張激しすぎじゃない?

 

「これね、白い部分がこしあんで黒い部分がつぶあんなんやって!一個でどっちも味わえるなんてお得やね!」

 

「知らないわよ…ほら、さっさと倉庫の在庫確認進めるわよ。こんだけ広いんだから、脱線してたら時間がいくつあっても足りないわ」

 

「はーい」

 

私が言うと、マナはお饅頭の箱を抱えながら在庫の確認をした。

一旦置いてくればいいのに…

どんだけ食べたいのよそのお饅頭。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

数時間後。

ようやく倉庫の在庫の確認が終わった。

とりあえずチェックリストとマップを作っておいたから、これを倉庫に貼っておいて…

よし。

私がリストとマップを倉庫の入り口に貼っていると、マナが大きなため息をつきながら床にへたり込んだ。

 

「うへぇ〜、つかれたー」

 

「お疲れ様。お茶でもどう?」

 

「わーい、飲むー!」

 

私は、自販機で買った『濃〜いお茶』と書かれたペットボトルのお茶をマナに渡した。

マナは、お茶を受け取るとその場で蓋を開けて一気に飲み干した。

うわ、すごい飲みっぷり。

よっぽど疲れたのね。

 

「ぷはー!濃いー!ホントに何でも揃っとるね!」

 

「そうね」

 

「でもこげん大量ん在庫どっから持ってくるっちゃろうね?犯人はばりお金持ちなんかな?」

 

「そうとは限らないわよ」

 

「へ?」

 

「黒幕自身にそこまで財力が無くても、莫大な財と地位を持つパトロンがバックに大勢いたとしたら?」

 

「パトロンって…?」

 

「このデスゲームにお金を出して愉しんでる物好きがいるんじゃないかって事よ。これはおそらく競馬で、私達は競馬用の馬なのよ。誰が死んで誰が生き残るのか、それを予想して大金を賭けるの。監視カメラの破壊を禁じられてるのも、おそらくあのカメラを通して私達の生活を生中継しているのと、あのカメラでモノクマが犯行の一部始終を見ているからでしょうね。ほら、私生活を監視できなくなったら、もし殺人が起きた時誰がクロか把握できなくなるでしょ?そんなの、テストの採点者が模範解答を用意してないようなものだからね」

 

「あ……」

 

実際ダンガンロンパも、生き残りを予想して億単位の大金を賭ける金持ちの娯楽だったしね。

これがダンガンロンパの模倣なら、このゲームもあの監視カメラで生中継されている可能性が高いわ。

人が死ぬのを娯楽として楽しむなんて、ホントいい趣味してるわ。

一刻も早く脱出方法を見つけて、こんな悪趣味な事やめさせなきゃ…

 

「…ねえ緋色ちゃん」

 

「何?」

 

突然マナが話しかけてきたので何かと思ってみたら、マナはフニャリと満面の笑みを浮かべて言った。

 

「うち、緋色ちゃんと仲良くなれてホント良かったぁ!」

 

「え?」

 

「うちな、最初ここ来た時、本当はばり不安で仕方なかったっちゃん。皆すごか才能持っとーとに、うちだけ特にこれといった才能が無うて、アホやし、すぐにドジやらかすし、皆と一緒にやっていくるとかなぁってずっと不安で…でも緋色ちゃんが来てくれたけん、ここまでやって来れたっちゃん!緋色ちゃんはカッコよくて、優しくて、賢くて、一緒におって安心するったい。緋色ちゃんはうちのヒーローだよ!」

 

私、ヒーローじゃなくて警察官なんだけど。

そういえば子供の頃、名前が『ヒーロー』って読めるからってヒーローごっこでヒーロー役やらされたわね。

本当はヒロインとかお姫様とか、もっと可愛い役をやりたかったんだけど。

でも会ってから一週間も経ってない相手にこんなに褒められるなんて…

嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね。

 

「……ありがとう」

 

「えへへー」

 

私がお礼を言うと、マナは無邪気な笑顔を浮かべた。

何だかマナと仲良くなれたような気がする。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

探索が終わった後は、二人で夕食の手伝いをしに行った。

今日の夕食は、館井君と越目君が食峰君と一緒に作る事になっていた。

しばらく机を拭いたりして待っていると、探索を終えた他の人達も戻ってきた。

夕食は、炊きたての五穀米に加えて、食峰君が作った魚のあんかけと筑前煮、館井君が作ったアサリのお吸い物、越目君が作ったおひたしの4品だった。

何だか、こういう状況も相まってか、美味しい料理を食べていると生きているんだって実感する。

夕食の後は、ミーティングを開いて探索の成果を報告し合った。

まあ予想はしていたけど、今回のミーティングでわかったのは、誰も脱出の手掛かりを見つけられなかったって事だけだった。

この日はミーティングを早めに切り上げて、各自自由に過ごす事になった。

結局2階が開放されたって事以外は特に脱出の手掛かりになる収穫を得られずに6日目を終えた。

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『うぷぷぷ、いやぁ〜最初のオシオキは我ながらアドレナリン100リットルだったよ。ビールがよく進みましたねブラザー!』

 

『ギャハハハ!!テメェら知ってっか?アルコールは医学的には毒だっていわれてるんだぜ?アルコールは体内でアセトアルデヒドっつー成分に分解されて、頭痛や吐き気を…』

 

『まあまあ、そう言わず一杯やりましょうよブラザー!』

 

『ハッハァ、お酌といやあ日本の古くからの文化だよなぁ!目下が目上を立てる!まさにサムライの国ってな!』

 

『ところでブラザー、次のコロシアイはいつ起こるんですかねぇ?』

 

『ギャハハ、そりゃあもうすぐにドミノ倒しみてぇにバッタバッタ死んでくだろ!希望絶望うまい棒ー!ってな!!んじゃあ二次会やる奴この指とーまれっと!!』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り14名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

以上2名

 

 

 

 

 



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(非)日常編③

7日目。

昨日探索して疲れたからか、今日は何だかよく眠れた気がする。

朝の支度を終えて趣味のミステリーを読んでいると、あのモノDJの喧しいアナウンスが鳴り響いた。

 

『ヘェイグッッモォォォニン!!ゴミクズ共ォォォ!!!朝の7時をお知らせするぜイェア!!!今日も張り切ってけェ!!!』

 

ホンット毎日毎日うるっさいわね。

ストレスったらありゃしない。

私は、アナウンスが鳴ってすぐに部屋を出て朝食の手伝いをしに食堂に行った。

 

 

 

ーーー 食堂 ーー

 

「おはよう」

 

「おはよう、腐和さん」

 

「おはようございます」

 

私が食堂に行くと、既に秋山君と聖蘭さんが来ていた。

二人は、既に食堂の掃除やテーブルセッティングを始めていた。

今日は食峰君、館井君、小鳥遊さん、越目君の4人が厨房で朝食を作っていた。

私も朝食の準備を手伝っていると、時間通りに闇内君とマナ、だいぶ遅刻して加賀君、古城さん、知崎君、目野さん、ネロの5人が来た。

あの5人は後で説教確定ね。

 

私が食べた和食セットは、白米と、食峰君が作った肉じゃがと卵焼きと胡麻豆腐、館井君が作ったカブの甘酢和えと油揚げの味噌汁の5品だった。

毎日美味しい食事を食べられるのは本当にありがたいわ。

 

朝食が終わった後は、遅れてきた5人に説教(おはなし)してから各自自由探索の時間にした。

私は、マナと一緒にまだ行っていなかった研究棟の探索をする事にした。

 

 

 

ーーー 研究棟 ーーー

 

研究棟に入ると、一昨日までは使えなかったエレベーターが使えるようになっていた。

エレベーターで2階に行くと、越目君、小鳥遊さん、加賀君の研究室が並んでいた。

私達は早速、越目君の研究室に行く事にした。

 

 

 

ーーー 【超高校級のメイクアップアーティスト】の研究室 ーーー

 

ここが越目君の研究室ね。

ドアには窓がついていて、窓にはメイク道具と小洒落たフォントの文字が書かれていた。

私がドアをノックすると、本人がドアを開けてくれた。

 

「ん?お二人揃ってどした?」

 

「今、開放されてる研究室を見て回ってるの。良ければ見学させてもらってもいいかしら?」

 

「おう!もちろん!二人とも可愛いから大歓迎だぜ!」

 

越目君は、ニカッと笑って快く私達に探索をさせてくれた。

越目君の研究室は、美容院のように鏡と椅子が並んでいて、メイク道具を陳列した棚が置いてあった。

すごい種類ね…彼はこれを全部使い分けてるのかしら?

越目君はというと、研究室に置いてあったマネキンを使ってメイクをしていた。

 

「越目くん今何しよったと?」

 

「見ての通り、メイクの研究だよ。今やってるのはプールメイクっつって、プールに長時間入ってても落ちねえメイクなんだ。ほら、プールが開放されたから皆プールに行くかもしれねえだろ?だから、プールに入れるメイクを教えてやろうと思ってさ。これはウォータープルーフタイプっつって、水で濡れても落ちにくいコスメなんだぜ?まずはこれでベースを仕込んで、アイシャドウは高密着のクリームで、眉毛はアイブロウコートで仕上げてっと。ほら、これだけでも格段に水に落ちにくくなるんだ。見てな」

 

そう言って越目君は、今メイクを施しているマネキンと、隣にあった普通のメイクを施されたマネキンに、シャンプー台のシャワーで水をかけた。

普通のメイクの方はすぐに水で流されて落ちたのに対して、越目君が今メイクをしていた方は全く崩れていなかった。

自分のメイク技術を自慢してくる越目君のドヤ顔が若干癇に障るけど…確かにこれは凄いわね。

隣のマナも、目を丸くして見入っている。

 

「おお〜!」

 

「凄い、メイクを工夫するとこんなに違うのね」

 

「だろだろ!?二人ももしプール入る時メイクしたかったらいつでもオレちゃんに声かけな。二人に似合うメイクを教えてやっからさ!」

 

「いや、よか。めんどうしゃそうだし」

 

「なっ……!?」

 

越目君がドヤ顔しながら言うとマナがバッサリと切り捨て、越目君が若干ショックを受ける。

何かマナが越目君に対して無自覚に毒を吐いてる気がするんだけど、気のせいかしら?

 

「あはは…私はお願いしようかしらね」

 

「腐和ちゃん!…っしゃあ!任せときな!腐和ちゃんをとびっきり可愛く仕上げてやっからよ!」

 

「ありがとう」

 

私がフォローを入れると、越目君は急に元気になった。

何かすごくわかりやすいわね…

私達は、越目君の研究室を後にし、隣にあった小鳥遊さんの研究室に行った。

 

 

 

ーーー 【超高校級の獣医】の研究室 ーーー

 

ここが小鳥遊さんの研究室ね。

研究室のドアは手術室のようになっていて、小鳥遊さんが中で研究をしているのかドアの上の『手術中』と書かれたランプが点灯している。

さらには研究室のドアには赤い十字架が書かれている。

いかにも医療系って感じね。

ドアをノックすると、すぐに本人がドアを開けてくれた。

小鳥遊さんは、ドアを少しだけ開けてドアの隙間からじーっとこっちを見ている。

 

「……ん」

 

「小鳥遊さん、今私達二人で研究室を見て回ってるんだけど、ちょっと研究室を見せてもらっても構わないかしら?」

 

「………ん」

 

私が頼むと、小鳥遊さんはマフラーを触りつつ、研究室のドアを開けてくれた。

どうやらお許しが出たみたいだ。

私達は、早速小鳥遊さんの研究室を見てみる事にした。

 

「お邪魔するわね」

 

小鳥遊さんの研究室は、手術室と診療室を兼ねた内装になっていた。

手前には、診療用のデスクとカルテや薬を置いておくための棚が置いてあった。

奥のスペースは手術室になっていて、手術用のベッドや最先端の医療器具、薬品が陳列された棚などが置かれていた。

手術スペースの棚には、治療用の薬や輸血パックなどが置かれている。

診療スペースの棚には、カルテや薬だけでなく、何やら獣医学に関する難しそうな本がズラリと並んでいた。

小鳥遊さんはというと、診療用のデスクで作業をしていた。

 

「小鳥遊さんは今何してるの?」

 

「ん」

 

“動物の診療をしています”

 

「診療?でもここには動物なんていないわよね?」

 

私が質問すると、小鳥遊さんは筆談で答えてくれた。

でもここには動物どころか虫の一匹もいない。

どうやら診療するのかしら?

 

「ん」

 

小鳥遊さんは、手元のパソコンにプログラミングコードを打ち込んだ。

するとブンッと音を立てて犬のホログラムが現れる。

さらにプログラミングをすると、手術用の医療器具がひとりでに動く。

最先端の技術の数々を目の当たりにしたマナは、目を丸くしていた。

 

「わっ!すごっ!越目くんの研究室ば軽う凌駕したわ!」

 

「ん」

 

“近年は医療にロボットやホログラムが使われる事も多いんです。難病を抱える患畜の数に対して腕のある獣医の数が圧倒的に足りませんから、治療が間に合わずに命を落とす動物はたくさんいます。そこで最先端の技術を使って、遠隔で同時に診療と治療をしているんです。例えば近年では、患畜のデータを収集してホログラムとして再現したものを診療し、遠隔で医療用ロボットを操作して手術を行うという手法がメジャーになっています”

 

「なるほどね。勉強になったわ。見学させてくれてありがとう」

 

「ん」

 

私がお礼を言うと、小鳥遊さんは小さく手を振ってくれた。

私達は小鳥遊さんの研究室を後にし、隣にあった加賀君の研究室に向かった。

 

 

 

ーーー 【超高校級の魔術師】の研究室 ーーー

 

ここが加賀君の研究室ね。

ドアは両端に松明が立てかけられていて、まるでダンジョンの入り口のようだ。

普通はこういう扉はドアノブを使って開けるタイプだと思うのだけれど、ドアには何故かドアノブが無かった。

私がドアをノックしようとすると、ドアの上につけられたスフィンクスの顔を模した像がいきなり話しかけてくる。

 

『この部屋に入りたければ我が問いに答えよ』

 

うわっ、ビックリした。

この像、喋るの!?

 

『朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足。この生き物は何か?』

 

えっ…?

これって有名なスフィンクスのなぞなぞよね?

 

「えっ、急に言われてもわからんよ!緋色ちゃん答えわかる?」

 

「ええ。答えは『人間』でしょ?」

 

『正解だ。通れ』

 

私が答えを言うと、スフィンクスの目が光り、ドアに魔法陣のような光の紋章が浮かび上がり、両側の松明に火が灯る。

するとその直後、ゴウンと音を立てながら扉が上にスライドした。

いや、そう開くの!?

私がドアの仕掛けに驚きつつも部屋に入ると、すぐに驚く事になった。

 

「わぁ……」

 

加賀君の部屋は、壁が無数の本が並んだ巨大な本棚になっていて、棚には本だけではなく実験器具や、見た事のない生物や鉱石の模型が並んでいた。

空中には巨大な地球儀が浮かんでいて、部屋の中央にある黒板は化学式でびっしりと埋め尽くされている。

加賀君はというと、空中に浮いた椅子に座って作業をしており、ホログラムのフクロウが飛び回って本や実験器具を加賀君の元へ届けていた。

その光景は、まるでファンタジーに出てくる魔術師の研究室そのものだった。

 

「む、君達か。研究室の探索をしに来たのか?」

 

「ええそうよ。加賀君は今何をしてるの?」

 

「見ての通り研究だ。何の研究かはまだ言えないがね」

 

何かすごい火花を散らしてるけど…邪魔はしない方が良さそうね。

それにしてもこの部屋、寒すぎない?

体感では多分10℃もないんじゃないかしら。

加賀君の周りには氷の柱や扇風機が置かれていて、見ているだけで凍えそう。

 

「寒っ…こんなに冷房かけて寒くないの?」

 

「研究中は頭をフルに動かすから熱が篭って仕方ないんだ。むしろこれくらい低い室温を保っていないと、高熱で倒れてしまうのだよ」

 

なるほどね。

何かコンピュータの熱暴走みたいね。

一方でマナはというと、目をキラキラ輝かせながら研究室の中を走り回っていた。

またその辺のものに勝手に触ったりしないでよ…?

 

「うわぁ、ホントファンタジー世界みたい!流石【超高校級の魔術師】ん研究室って感じやね!」

 

マナがキャイキャイはしゃぎながら言うと、加賀君は作業の手をピタっと止める。

加賀君の表情は、今までにないくらい曇っていた。

 

「俺の事は称号で呼ぶなと言ったはずだ。俺は魔法とか呪いとか、そういった類のものが大嫌いなんだ」

 

「あっ、ごめんちゃ!」

 

加賀君が怒ると、マナは慌てて謝った。

そういえば称号で呼ばないでほしいって言ってたけど…加賀君はどうしてそんなに魔法を嫌ってるのかしら?

これは何か深いわけがありそうね。

 

「ごめんなさい。次から気をつけるわ。お邪魔みたいだし、そろそろ失礼するわね」

 

私は、加賀君に謝ると、マナを連れてすぐに研究室を立ち去った。

ただでさえ研究で忙しいのに嫌な思いまでさせて、何だか申し訳ない事しちゃったわね。

そろそろ昼食を作りに行かなきゃだし、食堂に戻らないと。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に行くと、既に秋山君と食峰君が昼食を作っていた。

食峰君は、額から汗を流しながら蕎麦を茹でていた。

 

「ごめんなさい、探索に夢中になっちゃって。ええと、まずは何からしたらいいかしら?」

 

「おう、緋色!!んじゃあ薬味用意しといてくんねえか?」

 

「わかったわ」

 

私は、食峰君の指示通り大根をすりおろして、薬味となる生姜やミョウガを刻んだ。

しばらくすると小鳥遊さんと聖蘭さんが来てくれて、マナと一緒に昼食の準備をしてくれた。

いつも通り時間よりかなり早くに古城さんと知崎君が、少し早めに越目君と闇内君と館井君が、そして朝の説教が効いたのか他の三人も時間通りに来た。

今日の昼食はつけ蕎麦だった。

山菜多めの濃いスープが麺とよく合い、味玉もしっかり味が染み込んでいて美味しかった。

さて…と。

研究室の探索も終わった事だし、次は校舎の探索をしないとね。

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

私は、溜まったメダルを使って買い物がてらモノモノマシーンを引いた。

出てきたのは、フォーチュンクッキーだった。

うーん…お昼がっつり食べちゃったし、正直今はあんまりお腹空いてないのよね。

まだメダルが余ってる…よし、リベンジよ。

もう一回引いて出てきたのは、何やら古語で書かれた巻物だった。

うん、要らないわね。

まだメダルは余ってるけど、欲しいものは出てこなさそうだしもういいわ。

私は、景品のフォーチュンクッキーと巻物の扱いに困りつつ購買部を後にした。

 

 

 

ーーー 2ーA教室 ーーー

 

2ーAの教室に行くと、マナがいた。

マナは、何やら机や椅子やゴミ箱をゴソゴソと漁っていた。

怪しい…

何をしているのかしら?

まさかいかがわしい事じゃないでしょうね。

 

「ねえマナ、何してるの?」

 

「あっ、緋色ちゃん!あんな、うちな、メダルば探しとったっちゃん!購買部んゲームで大負けしてしもうて…」

 

「なるほどね…」

 

この子、何かと散々な目に遭ってるわよね。

そうだ、マナならこのクッキー渡したら喜ぶんじゃないかしら?

 

「ねえマナ、渡したいものがあるんだけど、いいかしら?」

 

「えっウチに!?なになに!?」

 

私は、モノモノマシーンで手に入れたフォーチュンクッキーをマナにプレゼントした。

するとマナは、目を輝かせる。

 

「えっ、クッキー!?うちに!?」

 

「ええ。私はあまりお腹空いてないしね。良かったら食べて?」

 

「わーい!ありがとう緋色ちゃん!」

 

良かった、喜んでくれたみたいだ。

私は、自由時間をマナと過ごす事にした。

A組の教室で、向かい合わせに座って一緒に話をした。

 

「マナはここにくる前どんな人生を送っていたのかしら?」

 

「別にそげん大した事なかばい!うちは父ちゃん、母ちゃん、じぃちゃん、ばぁちゃんの5人家族で、福岡ん実家で普通に暮らしとったっちゃん。三代続く博多っ子ばい!」

 

「へえ。そうだったのね」

 

絵に描いたような幸せな家庭ね。

私は母さんを失って父さんも逮捕されてしまってもう家族と言える人はいないから、何だか羨ましいわ。

 

「ばってんこん体質のしぇいで周りに迷惑ばかけてしまう事が多うって…」

 

「迷惑?」

 

「あれ?言うとらんかったっけ?うちはついとー事が起こると必ずついとらん事が起こる体質なんやけどね、たまにうちが起こした不運に他ん人が巻き込まれちゃう事があるったい。うちの父ちゃん建設業やっとーっちゃけど、うちん不運のしぇいでなかなかお金稼げんで、家にあんまりお金がなかっちゃんね。本当はこげな事あんまりゆわん方がよかっちゃけど…」

 

マナは、恥ずかしそうに自分の素性を語った。

何か未来ヶ峰に来てからずっとハイテンションだったからもしかしてとは思ってたけど、育ちはあまり裕福ではなかったのね。

 

「そのしぇいで周りから気味悪がられて、学校にもあんまり馴染めんやったっちゃんね。うちだって好きで不運ば起こしとーわけやなかとに、まるで疫病神んごと扱われて学校ではいつもひとりぼっちで… 別にいじめってわけやなかやけど、誰も友達になってくれんで…やけん緋色ちゃんはうちん初めてん友達たい」

 

疫病神、か。

マナもマナでここに来るまでは苦労していたのね。

私も極道の娘だからかクラスメイトに避けられて、父さんが逮捕されてからは警察官になる為の訓練に必死で、青春とは程遠い日常を送ってきたから、ここに来るまでは友達が一人もいなかった。

最低限の人付き合いをする努力はしてきたけど、あまり最近の流行には詳しくないから女子の話にはついていけないし、男子は何故かやたらと私を避けてくるし、本当の意味で同年代の子と仲良くなった事は一度もなかった。

初めての友達なのはお互い様ね。

 

「やけん、うちは緋色ちゃんとここで会えてほんなこつ良かったっちゃ思うとーっちゃん!スカウトが無かったら未来ヶ峰に来る事もできんやったけん、スカウトはきっと今までの不運分んウルトララッキーやね!」

 

マナは、ニコッと満面の笑みを浮かべながら言った。

か、可愛い…

って、私は何を考えてたのよ。

私にそっちの趣味はないわよ。

…………多分。

 

「マナは幸運と不運を交互に繰り返す体質なのよね?具体的にはどういった経験をしてきたの?」

 

「んー… 小しゃか事やったら、福引で海外旅行んチケットが当たったて思うたら無うしてしもうたり、通販ん抽選で高級生牡蠣が当たったら違う意味でも当たってしもうたりとかかな。逆に不運がきっかけで幸運が起こった事やったら、中学ん入試ん時、足ば悪うしたおばあちゃん助けとって入試ば受けられんやったっちゃけど、そん助けたおばあちゃんが実は第一志望ん学校ん偉かしぇんしぇーで、助けたお礼に入試ば受けしゃしぇてもろうたっちゃんね」

 

なるほどね。

見事に幸運を不運で、不運を幸運で打ち消しあってるわね。

全体でみたらうまい事バランスが取れて運の収支はゼロだけど、そこまで短期間で幸運と不運を繰り返していると生きてるだけで疲れそうだわ。

本来【超高校級の幸運】は毎年平均的な高校生の中から抽選で一人選ばれる制度だ。

だから殆どの【超高校級の幸運】は本当にたまたまくじで選ばれた普通の高校生なのだけれど、ごく稀に、選ばれるべくして選ばれる、本物の『幸運』がいるという話を聞いた事がある。

彼女も本物の幸運の才能を持つイレギュラーだったってわけね。

 

「あれ?そういえば今の話聞いて気になったんだけど…あなた、中学受験してたの?」

 

「うん。地元の国立中学ば受けたよ」

 

意外だったわ。

今までの言動からしてあまり勉強が好きそうに思えなかったから、エリート校に通っていたとは思わなかったわ。

 

「何でまた…」

 

「学食がおいしそうやったけん!」

 

「…………」

 

うん、そんな事だろうと思ったわ。

聞いて損したわね。

 

「え、何その目!普通志望校って学食で選ばん?」

 

「…………」

 

どんだけ食べる事に貪欲なのよ…

まあ欲望に忠実に生きるのは悪い事とは言わないけど。

 

「えへへ、うちばっかりいっぱい喋っちゃった。話聞いてくれてありがとね!」

 

「そちらこそ、色々と話してくれてありがとう」

 

マナと面と向かって話すのは楽しかった。

たまにはこういうのも悪くないわね。

マナと仲良くなれたみたい。

 

《聲伽愛との好感度が1アップしました》

 

 

 

ーーー 図書室 ーーー

 

マナと話をした後は、息抜きをしに図書室を訪れた。

図書室の読書スペースを見てみると、古城さんが大量の本を読んでいた。

 

「古城さん、何をしているの?」

 

「むっ、腐和か!見ての通りじゃ!古文書を読んでおるのじゃ!」

 

「古文書?古文書ならあなたの研究室にあったでしょう?」

 

「ここには研究室に無い古文書も置いてあるからのぉ!本を借りて持って帰るのも重くてめんどくさいし、ここで気になった古文書を読んでおるのじゃ!!」

 

なるほどね…

流石は学者の才能持ちってだけあって、案外勉強熱心なのね。

そうだ、さっき手に入れた巻物、古城さんなら喜ぶんじゃないかしら?

 

「古城さん。渡したいものがあるのだけど、いいかしら?」

 

「むっ!?ワシに貢物とな!?いい心がけじゃな!苦しゅうない!」

 

私は、モノモノマシーンで手に入れた巻物を古城さんにプレゼントした。

すると古城さんは、凄い勢いで食いついてきた。

 

「えっ、う、ウヌ!!これをどこで手に入れたのじゃ!?」

 

「えっと…モノモノマシーンで」

 

「なぬぅ!?あのガラクタ、こんなお宝が入っておったのか!?ワシが遊んだ時は納豆やらいかがわしい本やら、要らぬものしか出てこなかったのにか!?」

 

うーん、それはお互い様じゃないかしら。

私だって今のところ欲しい景品を引けた事はなかったし。

 

「その巻物、そんなにすごいものなの?」

 

「これは飛鳥時代にとある豪族によって書かれた日本で最古の日記なのじゃ!!こんなお宝があったとはのぅ…ガハハハ!!お主、気に入ったぞい!」

 

どうやら喜んでくれたみたいだ。

私は、自由時間を古城さんと過ごす事にした。

図書室の談話スペースで、向かい合わせに座って一緒に話をした。

 

「古城さんはどうして考古学者になったの?」

 

「ガハハハ!!ワシはな、17年前、とある考古学者の一人娘として生まれたのじゃ!!ワシを産んだ父と母曰く、ワシの産声はまるで勇敢に戦場へ赴く武士の鬨の声だったそうじゃ!!」

 

えっ、そっから?

何というか、すごい唯我独尊っぷりね…

 

「ワシの父は何十人もの助手を抱える偉大な考古学者じゃった。ワシの母も父の助手の一人じゃった。両親共に考古学者の家に生まれたワシは、必然的に伝記や古文書を絵本代わりに読んで育った。父と母がワシの幼き日に、考古学を極めていつかこの世界の謎を全て解き明かす事が悲願だと語っていたのを、今でもよく覚えておるわい。じゃが、もう父も母もこの世にはおらぬ」

 

「いないって…」

 

「…殺されたのじゃ。金に目が眩んだ莫迦な裏切り者によってな。ワシの父は、それまでの歴史の常識を覆すような偉大な発見をしたのじゃ。じゃがその発見が莫大な金になるとわかると、父の助手の一人が手柄を奪う為に父を交通事故に見せかけて殺したんじゃ。ワシの生誕祭の貢物を買いに行くのだと張り切っておった矢先じゃった。即死じゃった。ワシは、尊敬していた父の最期を看取る事もできなかった。じゃが、悲劇はそこで終わらなかったのじゃ」

 

「えっ?」

 

「父の手柄を奪った莫迦は偉大な功績を残したとして、著名な学会にスカウトされてのぉ。その影響で、無神経なマスコミがワシの家にまで上がり込んでズカズカと無遠慮に取材をしてきたのじゃ。ただでさえ父が亡くなって憔悴しておった母は、心無いマスコミの質問の数々に心を病んで、ついには自ら命を絶ってしもうた」

 

「そうだったのね…」

 

自分の過去を語る古城さんは、怒りと悲しみが入り混じった表情をしていた。

私も身勝手な連中の馬鹿な行いのせいで母さんを失ったから、一人の馬鹿のせいで両親を失った古城さんの気持ちは痛いほどわかる。

彼女の異常なまでのマスコミ嫌いは、マスコミがお母さんを死に追いやったからだったのね。

 

「ワシはその日から、ワシの父と母を殺しておきながら私腹を肥やしている屑を歴史学会から追い出してやると決めたのじゃ。いくら告発文を書いて発表したところで、小娘の告発など誰も本気にはしないじゃろう。じゃからワシは、彼奴には到底解き明かせぬような歴史の謎を解明し、世界中の良識ある歴史学者を味方につけてあの莫迦を社会的にボコボコにしてやる事にしたんじゃ。普通に研究の成果を発表しても、父のように手柄を横取りされたりマスコミに嗅ぎ回られたりするから、少々手荒な方法になってしまったがの」

 

古城さんは、頭を掻きながら言った。

あまりの豪快なスタンスだったものだから、出会った当初は神出鬼没で唯我独尊な人物像を思い描いていたけれど、あの豪快なやり方は彼女なりのSOSだったんだ。

きちんと良識と知識を持ち合わせた学者に自分の助けを求める声が届くように、一人でも多くの真っ当な学者に自分の研究を活かしてもらえるように、あえて豪快なやり方でアピールをしていたのね。

でもそうだとすると、彼女が考古学者になった動機は復讐だったって事…?

 

「あの…」

 

「おっと、勘違いするでない。あくまで、世界中の民に正しい歴史を知ってもらいたいというのがワシの最大の行動原理だという事には変わりは無い。その為にワシは、日々研究をしておるのじゃ」

 

どうやら、私は彼女を誤解していたようね。

古城さんは、私が思っているよりずっとストイックな人だったのね。

 

「なるほどね…話してくれてありがとう。ところで今はどんな研究をしているの?」

 

「うむ!実は最近になって、マヤ文明が栄えていたメキシコ南部で興味深い遺物が見つかってのぉ!いつ作られたのか、それが使われていた時代背景などを事細かに調べておるところなのじゃ!」

 

「そうなのね。何かいい発見があるといいわね。応援してるわ」

 

「う、うむ…苦しゅうない」

 

苦しゅうないって…

やっぱりこの子、意外と照れ屋なのかしら?

でも古城さんと仲良くなれたみたい。

 

《古城いろはとの好感度が1アップしました》

 

古城さんと交流を深めた後、図書室内を探索した。

図書室をくまなく探していたら、けっこうメダルが集まった。

コツコツメダル集めをしていると、ちょうど食堂に向かうのにちょうどいい時間になった。

手伝いもあるし、そろそろ行った方が良さそうね。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に向かうと、小鳥遊さん、秋山君、聖蘭さんが食堂の掃除をしていた。

厨房では、マナと闇内君が食峰君と一緒に夕食を作っていた。

この日の夕食は、玄米の他に食峰君が作った煮込みハンバーグとジャーマンポテト、抹茶のムース、闇内君が作った豚汁、マナが作った変な青いソースがかかったよくわからないサラダの5品だった。

まあ美味しかったんだけど、食べるのに勇気がいるから変な見た目のものは出来るだけ作らないでほしいわね。

結局、この日も特にこれといった収穫を得られないまま一日を終えた。

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『先生先生』

 

『んん!?ヘェイどうしたモノクマボーイ!』

 

『ボク、最近自分が嫌になってきたんです。勉強は出来すぎるし、運動も出来すぎるし、イケメンすぎるし、カリスマ性に満ち溢れてるし、モテすぎだし…ボクは一体どうしたらいいんでしょうか?』

 

『バッキャローーーー!!』

 

『へぶっ!?い、いきなり何をするんですか先生!』

 

『いいか!?テメェのモテ具合は、オレ様に比べればミジンコみてぇなもんだぜ!?スペインのカルロス一世はこう言った!『プルス・ウルトラ』!オレ様みてぇなカリスママスコットを目指してガンガンエクストリームしていけYEAH!!』

 

『先生…!わかりました!ボク、先生みたいなカリスママスコットを目指して頑張るクマ!』

 

『こうしてシャイボーイなモノクマ少年は、一皮向けて新たな一歩を踏み出しましたとさ!いやぁー、一皮剥けねえとカスが溜まってつれーのなんのって。オレ様からのライブは以上だ!スィーユー!』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り14名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

以上2名

 

 

 

 

 




おまけ
それぞれの前の高校の部活

秋山…軽音楽部
加賀…帰宅部
聲伽…野球部(マネージャー)
古城…読書部
越目…サッカー部
食峰…空手部
聖蘭…コーラス部
小鳥遊…生物部
館井…柔道部
玉越…バレー部
知崎…不明
ネロ…帰宅部
響…軽音楽部
腐和…帰宅部
目野…鉄道研究部
闇内…水泳部

ちなみに聲伽の入部動機は遠征の時に出てくる食事が美味しそうだったから、闇内の入部動機は女子の水着が見られるからというものです。
加賀君、ネロさん、腐和ちゃんの三人は自分の本業熱心すぎて部活動は一切やっていません。


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(非)日常編④

絶望へのカウントダウンの始まりです。


八日目。

 

「ん……」

 

この日の朝食当番だった私は、早朝に目を覚ました。

部屋に持ち込んでいたミネラルウォーターを使って身支度をし、急いで厨房に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に行くと、食峰君と秋山君が朝早くから朝食を作ってくれていた。

私は、朝食を作っている二人に挨拶をした。

 

「おはよう」

 

「やあ、おはよう腐和さん」

 

「おはよう緋色!!」

 

私が挨拶をすると、二人とも元気に返してくれた。

二人が亡くなってから、もう3日が経った。

一日にして大切な人を二人も失った秋山君も、少しずつ心の傷が癒えてきたみたいだ。

さて…と。

私も朝食作りを始めないとね。

今日のメニューは、

 

和食セットがタケノコの炊き込みご飯、豆腐の味噌汁、ひじきと鶏肉の煮物、明日葉としらすのおひたし、白菜の漬物。

洋食セットがクロックマダム、シーザーサラダ、ニンジンのグラッセ、そら豆のポタージュ、グレープフルーツ。

 

今日も豪華なメニューだ事。

食峰君も食峰君なりに、玉越さんと響さんを失って大きな傷を負った私達の心を少しでも癒す為に、毎日皆が飽きないメニューを考えてくれているのね。

私が洋食セットを作り始めていると、闇内君が私の足元からヌッと現れた。

 

「遅れてすまぬ。皆揃って早起きでござるな」

 

「そうね」

 

どこから現れてんのよ。

ホント神出鬼没ね。

 

「腐和嬢のおみ足お臀部には本当に黒ストとTバックが似合うで候。この画角が最高…」

 

「ねえ、闇内君。何をしてるのかな?」

 

私が料理中なのをいい事に変態が盗撮しようとしていると、秋山君が笑顔で闇内君を睨みつけた。

何だろう…秋山君、玉越さんと響さんを失ってからこういう時に出てくる棘が鋭くなった気がする。

 

「後で話があるんだけど、いいよね?」

 

「いやっ!嫌でござる!野郎からのお仕置きは…「黙りなさい。あとできちんとお仕置きしてあげるから、まずあんたは朝食を作りなさいよ」

 

「………はい」

 

私が注意すると、闇内君は大人しく朝食作りを始めた。

4人で朝食を作っていると、聖蘭さん、小鳥遊さん、越目君、館井君の4人が来てくれて、食堂の掃除とテーブルセッティングをしてくれた。

遅刻組6人も、昨日の説教が効いたのか時間通りに食堂に来た。

朝食の後は軽めのミーティングをし、その後は秋山君と一緒に変態に制裁を下してから自由時間にした。

ちなみに闇内君には、彼の持っていたカメラを目の前で粉々にして焼却炉にブチ込むという制裁を下した。

私の経験則上、この手の奴には肉体的な制裁より精神的な制裁の方が効果的だからね。

さて…と。今日は校舎の場所を探索しないとね。

 

 

 

ーーー 2ーB教室 ーーー

 

ここは一昨日と変わったところは何もないわね。

メダルが何枚か落ちていたので、回収しておこう。

 

 

 

ーーー 2ーC教室 ーーー

 

ここもB組の教室と同じで何も変わったところはなかった。

ここにもメダルが落ちていたので、回収しておいた。

よし、けっこうメダルが貯まったから購買部にでも行こうかしら。

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

私は、メダルを使って買い物をしに購買部に行った。

メダルを使ってモノモノマシーンを引くと、景品が出てきた。

出てきたのは、透明なガラスの中に元素が入った実物周期表だった。

うーん…綺麗だけどあまり要らないわね。

私は、特に他に欲しいものも無かったので景品を持って購買部を出た。

 

 

 

ーーー 技術室 ーーー

 

購買部で買い物をした私は、まだ行っていなかった技術室に行った。

技術室には、金槌や電気ドリル、チェーンソーなどの加工用の道具や、加工する為の材料が所狭しと置かれていた。

技術室には、技術室の機械をまじまじと見つめている加賀君がいた。

何をしているのかしら…?

 

「加賀君、何をしているの?」

 

「むっ、腐和か。いや、実はな。この部屋の設備が少々興味深かったのでな。詳しく調べていたところだったんだ」

 

「そうなのね」

 

本当に自分の知的好奇心に忠実な人ね。

そうだ、加賀君ならさっきの景品、喜ぶんじゃないかしら?

 

「加賀君。あなたにプレゼントがあるのだけれど、少しいい?」

 

「ん?俺にか?」

 

私は、モノモノマシーンで手に入れた実物周期表を加賀君にプレゼントした。

すると加賀君は、キョトンとした様子で私の方を見る。

 

「……ほう。これを俺に?」

 

「ええ。モノモノマシーンで手に入れたんだけどね、あなたなら喜ぶかもと思って」

 

「そうか。そういう事ならありがたく受け取っておこう」

 

ええと…これは喜んでくれたって事でいいのかしらね?

私は、自由時間を加賀君と過ごす事にした。

技術室の工房で、向かい合わせに座って一緒に話をした。

 

「加賀君はどうして科学者になったの?」

 

「そうだな…一言で言えば、家族と恋人の仇を討つ為だ」

 

「え?」

 

家族と恋人の仇…?

どういう事?

ひょっとして、加賀君が魔法を嫌っている事と何か関係があるのかしら?

 

「俺は孤島の小さな村で生まれ育ったんだ。それも、何世紀も前に危険性が指摘されたような民間療法を今でも続けているような閉鎖的な村だった。俺はそこで両親と病弱な妹と一緒に暮らしていてな。俺は、妹の病気の治療法を探す為に科学者になる事にしたんだ。元々科学には興味があったから、科学者になる為の勉強は苦ではなかった。閉鎖的な村の中ではまともな教育機関なんて無かったから、村で一番金持ちの村長の家によく勉強しに行っていたよ」

 

なるほどね…

加賀君が研究熱心なのは、元々は妹さんを助ける為だったのね。

 

「村長には一人娘がいたんだが、人の心を読んだり未来を予知したり、人智を超えた不思議な力を使う事ができたんだ。里香とは俺が勉強をしに村長の家に行って話をしているうちに仲良くなって、次第に惹かれていった。里香も俺の事を快く受け入れてくれて、将来結婚する約束もした。もっとも、それも永遠に叶わなくなってしまったがな」

 

「それって…」

 

「当時俺の故郷の村では、致死性の高い伝染病が流行していたんだ。村の長老達は、伝染病を神の祟りだと思い込み、生贄を捧げて神の怒りを鎮めようとしたんだ。生贄に選ばれたのは、里香だった。村の連中は、里香が魔術を使えるからとかいう意味不明な理由で里香を生贄に選んで殺したんだ。それを止めようとした両親も村の連中に虐殺されて、まだ小さかった妹も生きたまま火をつけられて殺された。そして、その時たまたま山奥を探索していて家にいなかった俺だけが生き残ってしまったというわけだよ」

 

「ひどい話ね…ちなみに、その伝染病って結局何だったの?」

 

「天然痘だ」

 

「えっ…?天然痘って確か、大昔に撲滅したんじゃ…」

 

「頭の固い年寄りがふざけた民間療法を続けていたせいで再発したんだ。全く、馬鹿馬鹿しい限りだよ。正しい医療知識さえあれば蔓延を防げた病気だったのに、魔法だとか神の祟りだとか、そんなものを本気で信じ込んだ頭のおかしい連中に俺の家族と恋人は殺された。里香だって、あんな力が無ければ殺されずに済んだ」

 

なるほどね。

加賀君は、神様や魔法を本気で信じた人達に家族や恋人を殺されたから、あんなに魔法を嫌っていたのね。

 

「俺は家族と里香を殺した連中に復讐する為に、村で流行っていた天然痘を科学の力で今度こそ撲滅して、奴等の信じる神の言葉とやらを完全否定してやったんだ。そして村の連中が殺人犯だという事実を世界中に拡散して、1人残らず絞首台に送ってやったよ。それ以来俺は、非科学的な妄想を振り翳している連中を見ると、無性に黙らせてやりたくなるんだ。あんな目に遭うのを里香や俺の家族で最後にする、それが俺が科学者になった理由だ」

 

「そうだったのね。でも、何でもかんでも否定する為に研究をしているのだとしたら、亡くなった彼女さんは浮かばれないんじゃないかしら?何より、あなた自身がつらくなるだけなんじゃないの?」

 

「それは違うな」

 

「え?」

 

「俺だって、頭ごなしに魔法の存在を否定したいわけじゃない。むしろ魔法とは、人間が抱く一種の理想の形だ。誰しも、魔法があればもっと便利に生きられるのに、と思った事があるものだろう?俺の生涯の目標は、神秘を科学の力で支配して、世界中の人類がより幸福に生きられるようにその力を使う事だ」

 

加賀君の話を聞いて、私は胸が熱くなった。

人々の幸福の為に自分の生涯を捧げる、それが加賀久遠という人間なんだ。

 

「話してくれてありがとう。ちなみに最近はどういう研究をしているの?」

 

「そうだな…最近力を入れているのは、サンタクロースの移動ルートを分析して通知するアプリケーションの開発と、無限キャベツを文字通り無限に増やす研究だな。税金を使い込んで好き勝手研究してたら、うっかり国民の怒りを買って暗殺されそうになったがな」

 

笑いながら言ってるけど、全然笑い事じゃない。

そりゃあ、サンタクロースや無限キャベツに貴重な税金を使われたら殺意が湧くのもわからなくはないけど。

っていうか加賀君ってサンタクロースとか信じる人だったのね。

どうやら加賀君と仲良くなれたみたい。

 

《加賀久遠との好感度が1アップしました》

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

加賀君と話をした後は、技術室でメダルを回収してから昼食の手伝いに行った。

厨房では、マナと越目君が食峰君と一緒に厨房で昼食を作っていた。

食堂では秋山君、聖蘭さん、小鳥遊さん、館井君が昼食の準備をしていた。

私が昼食の準備を手伝っていると、闇内君、古城さん、知崎君が食堂に顔を出し、他の三人も無事食堂に来た。

今日の昼食は、食峰君が作ったペペロンチーノとティラミス、越目君が作ったカプレーゼとカルパッチョ、マナが作ったミネストローネだった。

イタリアンもたまにはいいわね。

食事の後は、探索をしに校舎に戻った。

 

 

 

ーーー 女子更衣室 ーーー

 

私はまず、まだ探索をしていなかった女子更衣室に行った。

赤い扉と青い扉が並んでいたので、私は赤い扉の手帳リーダーに指輪を翳した。

するとすぐにロックが解除され、自動ドアが開いた。

 

更衣室の中は、ロッカーやスポーツ用具などが並んでいて、中央にベンチが置かれていた。

更衣室にはシャワールームとトイレが完備されていて、シャワールームは直接プールと繋がっているようだ。

見た感じ、聖蘭さんや小鳥遊さんの報告とは齟齬が無いように思える。

壁に貼ってあるモノDJの男性アイドルの写真がものすごく不愉快で吐き気を催してしまいそうだったけど、それ以外は特に気になるところは無かった。

一応慎重に探索を続けていると、更衣室の中からメダルが何枚か見つかった。

これだけ貯まれば買い物するのにはちょうど良さそうね。

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

私は、溜まったメダルを使って買い物をし、モノモノマシーンを一回引いてみた。

出てきたのは、高級そうなメイク道具のセットだった。

うーん…最低限のメイク道具ならもう既にドレッサーに入ってるから、新しいのは要らないわね。

誰かにあげられるといいんだけど。

 

 

 

ーーー トレーニングルーム ーーー

 

トレーニングルームには、その名の通り色々なトレーニング器具が置いてあった。

ダンベルにランニングマシン、フィットネスバイク、チェストプレスマシン等のトレーニング器具、そして壁はボルダリング仕様になっていた。

部屋の隅には、炭酸飲料やスポーツドリンク、お茶などが入った自販機が置かれていた。

私がトレーニングルームに訪れると、既に先客がいた。

越目君だ。

越目君は、ひたすらフィットネスバイクを漕いでいた。

 

「おっ、腐和ちゃんか!」

 

「越目君。何をしているの?」

 

「おう、せっかくトレーニングルームがあったからトレーニングしてたんだ。このフィットネスバイクな、発電機も兼ねてるんだとよ」

 

なるほどね…

そうだ、越目君ならさっきの景品喜ぶんじゃないかしら?

 

「越目君」

 

「ん?」

 

「このコスメなんだけど…良かったら受け取ってくれない?」

 

私は、さっきのメイク道具を越目君にプレゼントした。

すると越目君は、いきなり食いついてきた。

 

「えっ、これを俺に!?すげぇいいやつじゃん!本当に受け取っていいの!?」

 

「私はあまり化粧をしないからね。使い方をよくわかってる人が使う方がいいんじゃない?」

 

「そ、そういう事なら…ありがとな!」

 

このコスメ、高級品だとは思っていたけれどそんなにいいものだったのね。

良かった、喜んでくれたみたいね。

私は、自由時間を越目君と過ごす事にした。

トレーニングルームの端のベンチで、二人で横並びに腰掛けて一緒に話をした。

 

「越目君はどうしてメイクアップアーティストになったの?」

 

「んー…どこから話そっかな。ええっと、オレちゃんは母子家庭でさ。兄弟も姉貴しかいねーから、物心ついた時から自然とメイクとかオシャレに興味があったんだよな。姉貴の話だと、親父はとにかく救いようのねえクズ野郎だったらしくてさ。酒癖が悪くてお袋に毎日のように暴力を振るってたから、オレが小さい頃に捕まったんだとよ。ああ、オレはそん時まだ2歳だったから、当時の事はあんまり覚えてねえんだけどよ」

 

母子家庭、か。

確か響さんも母子家庭だったわよね。

何だかここにいる人達って複雑な家庭事情を抱えてる人が多いような気がするわね。

 

「で、お袋は親父からDVを受けてたせいで顔の形が変わっちまってさ。一生消えねえ傷が残っちまったんだ。オレはお袋の顔を元通りにしてやるために、顔の傷が気にならねえメイクを研究してたんだよ。オレがメイクでお袋の顔を綺麗にしてやったら、お袋がすげぇ喜んでくれてさ。せっかくだから皆にもオレのメイクを実践してもらおうとSNSで発信してくれたんだ。姉貴達もファッション系のデザイナーだったから、仕事中にオレのメイクをお客さんに紹介してくれたんだよな。そしたらメチャクチャバズったってわけ!」

 

越目君は、ニカッと笑いながら話した。

なるほどね…越目君はお母さんの為に才能を発揮して、彼のお母さんはその恩返しに彼の才能を伸ばしたのね。

越目君って何かちょっと軽い感じだと思ってたけど、とても家族想いなのね。

 

「そっからは早かったよ。海外のセレブやハリウッド女優もオレのメイクを実践するようになって、オレは一躍有名になったんだ。オレが【超高校級のメイクアップアーティスト】として未来ヶ峰からスカウトされた時、お袋も姉貴も泣いて喜んでくれてさ。メイクアップアーティストになったのは、お袋と姉貴のおかげなんだぜ!オレの夢は、世界一のメイクアップアーティストになって、お袋と姉貴に恩返しをする事ってわけ」

 

「そうだったのね…やっぱり、自分の研究したメイクを皆に喜んでもらえると嬉しい?」

 

「そりゃそうだよ!お袋が初めてオレのメイクをSNSに上げてくれた次の日さ。そのつぶやきを見てくれた人から『このメイクを実践したおかげで告白に成功しました』ってメッセージが届いてさ。初めてファンができた時は本当に嬉しくってさ、オレはこの為にメイクをやってきたんだなって思ったよ。倒産しそうなメーカーのコスメを動画で紹介したらすぐに爆売れして大企業になった時は、オレの才能が人助けをしたんだって思うと本当に嬉しかったなぁ」

 

越目君は、無邪気な笑みを浮かべながら楽しそうに語った。

自分の才能が人助けに役立ったら、そりゃあ嬉しいわよね。

 

「良かったわね、家族の為に続けてきた努力が報われて。ところで、お姉さんはどんな人なの?」

 

「おう。姉貴は双子でさ。オレとは13歳差なんだ。上の姉貴はドレスデザイナーで、下の姉貴はジュエリーデザイナーだよ。二人とはよく一緒に仕事もしてるんだぜ。二人とも気が強くてオレちゃんもよくオモチャにされてるけど、オレは姉貴を尊敬してるぜ!」

 

お、オモチャ…

そういえばクラスの女子も、生まれたばかりの弟が可愛いって毎日のように言ってたわね。

あまりにも姉弟同士で歳が離れてると、やっぱりそういう関係になるのかしら。

でも越目君は、尊敬するお姉さんと一緒に仕事ができて楽しそうね。

 

「話してくれてありがとう」

 

「おう!腐和ちゃんもメイクに興味あったらいつでも声かけな!」

 

私がお礼を言うと、越目君は笑顔を浮かべながら言った。

正直、越目君とお話するのはとても楽しかった。

越目君と仲良くなれたみたい。

 

《越目粧太との好感度が1アップしました》

 

私は、せっかくだから越目君と親睦を深めた後、せっかくだからトレーニングをして過ごす事にした。

最近身体が鈍ってきてたからね。

こまめに身体を動かしておかないと、いざって時動けないし。

でもこんなに広い部屋で一人でやるのも何かちょっと寂しいわね。

誰か一緒にやってくれる人がいるといいんだけど…

 

「越目君、悪いけどちょっと付き合ってもらえない?」

 

「えっ、ええ!?ふ、腐和ちゃん!?いきなりそんな事言われても、オレちょっと心の準備が…」

 

「トレーニングによ」

 

「え?あ、ああ!トレーニングな!よし、そういう事ならオレちゃんに任せときな!」

 

すごい動揺っぷりだったけど、一体何を勘違いしていたのやら。

状況と文脈からして、トレーニング以外ないでしょ。

 

「じゃあまず何からやる?」

 

「そうね…」

 

ランニングマシン、ボルダリング、ベンチプレス…

どれからやろうかしら?

 

「じゃあボルダリングから…」

 

「っし!じゃあ一緒にやろうぜ!」

 

私は、越目君と一緒にボルダリングをやる事にした。

これからトレーニングをするという事で、上着を脱いだ。

 

「わっ、うわあ!?ふっ、腐和ちゃん!?そんな大胆な…!!」

 

「何言ってんのよ。これからトレーニングするのに、上着着てたら動きにくいでしょうが」

 

私が上着を脱ぐと、越目君は分かりやすく狼狽えた。

全く、何をそんなに狼狽える事があるのかしらね。

 

「じゃあこっからスタートして、先に上まで行けた方が勝ちな」

 

「ええ、いいわよ」

 

私は、越目君とボルダリングで勝負をする事にした。

私は、足場を使って壁を駆け上がっていく。

…よし。着いた。

 

「ちょっ、ちょっと待って!?えっ、嘘でしょ!?今どうやってそっち行ったの!?」

 

越目君は、壁の下の方で何やらギャーギャー騒いでいた。

これくらい別に大した事ないと思うんだけど…

 

「クッソ、さ、3回勝負だ!!」

 

「はぁ……」

 

これ、勝てるまで続けさせられるやつかしら?

じゃあわざと負けた方がいいんじゃ…

いえ、それだとお互いの為にならないわよね。

 

「次だ次!次は何する!?」

 

「そうね…」

 

私は、ベンチプレスで越目君と勝負をする事にした。

私はとりあえず普段トレーニングをする時の重量から始めた。

 

「ふっ、ふっ……」

 

「いや無理無理無理無理!!待って無理!!」

 

私がベンチプレスをしていると、隣で越目君が喚いていた。

越目君の方の錘は、私が持ち上げている半分の重量しかない。

ギャーギャーうるさいわね。

それくらい私からしたら片手で持てるんだけど…

 

「も、もう一回だ!」

 

しつこいわね…

越目君がうるさいので、仕方なくランニングマシンで勝負をする事にした。

 

「へへっ、オレはこう見えても前の高校じゃサッカー部だったんだ。脚には自信があるぜ!」

 

そこは陸上部じゃないのね。

まあどっちでもいいけど。

私がランニングマシンで走り始めてから数分後。

 

「ふ、ふ…もう少しスピード上げようかしらね」

 

「ひっ、ひっ、も、もう無理…」

 

私の隣では、越目君が死にそうな顔をして息を切らしていた。

さっきまでの自信は一体何だったのやら。

 

「待って、休け…おわあ!?」

 

越目君は、ランニングマシンに吹っ飛ばされて仰向けに転んだ。

何やってんのよ。

ベルト止めてから足止めないとそうなるに決まってるじゃない。

仕方ないわね。

私は、一旦ランニングマシンを止めて越目君に歩み寄った。

 

「大丈夫?」

 

「あ、ありがとな…」

 

私が越目君に手を差し伸べると、越目君は私の手を取って立ち上がった。

その後は、持っていたメダルで自販機のスポーツドリンクを買い、二人でベンチに横並びに座って休憩した。

 

「クソッ、見事に3回も女子に完敗した…」

 

「まあでも仕方ないわよ」

 

越目君は、私に負けてけっこう悔しそうにしていた。

まあでも本当に仕方ないと思う。

体力系の才能の私とは違って、越目君は運動部に入っていたとはいえそっちが本業じゃないものね。

 

「さて、と。夕食の準備があるし、そろそろ出ない?食事の前にシャワー浴びたいし」

 

私がそう言ってベンチから立ち上がると、越目君は悔しそうにため息をつく。

よっぽど悔しかったのね…

流石にちょっと大人気なさすぎたかしら。

 

「クッソー…せっかく腐和ちゃんにカッコいいところ見せられるチャンスだったのによ」

 

「ん?」

 

「…あのさ。腐和ちゃん。オレ、好きだわ」

 

「えっと…トレーニングが?」

 

「違えよ!腐和ちゃんがだよ!」

 

「は?」

 

え?

いきなり何言ってるのこの人。

待って、理解が追いつかないんだけど。

 

「オレ、ずっと腐和ちゃんの事が気になってたんだよね。腐和ちゃんスゲー綺麗だし、頭良いし、カッコいいし、何かスゲー輝いて見えるんだよな」

 

「綺麗?私が?」

 

「えっ、嘘だろ!?自覚ナシ!?」

 

「え?」

 

「腐和ちゃんはここにいる女子の中で一番綺麗だよ。それに心も綺麗だしさ」

 

…ああ、わかったわ。

これ、他の皆にも言ってるパターンね。

そうとしか考えられないわ。

だって私が綺麗なわけないじゃない。

父さんに母さんを殺した奴等を殺させて、刑務所送りにしてしまったのだから。

 

「…はいはい。冗談もそのくらいにしておきなさいよ。あんまり女の子を弄ぶような事してると、いつか痛い目見るわよ」

 

「オレ、本気なんだけど」

 

「は?」

 

「オレ、好きな娘の前で嘘ついたりしねーから。オレさ、腐和ちゃんがこれ以上苦しい思いしねえように色々頑張るからさ。

 

「えっ、ちょっと待ってよ…!」

 

越目君は、私の手を握りながらいきなり詰め寄ってきた。

越目君の眼差しからも、彼が本気だという事が伝わってくる。

でもその時私の頭にあったのは、満面の笑みを浮かべながら私を慕ってくれるマナの顔だった。

どうしてマナの事を思い浮かべたのかはわからない。

私は今まで異性からそんな事言われた事なかったから、どう答えたらいいのかわからなかった。

 

「…ごめんなさい。ここに来てから色々あったから私、ちょっといっぱいいっぱいで…」

 

「……そっか。そうだよな。ごめん、そりゃあ急にそんな事言われたらビックリするよな」

 

私が越目君の告白を断ると、越目君は悲しそうな目をしながら少し俯いた。

何だか少し申し訳ない事しちゃったわね…

 

「でも、気持ちは受け取っておくわね。ありがとう」

 

私が越目君にお礼を言うと、越目君は笑顔を浮かべた。

良かった、落ち込んだままだったらどうしようかと思ってたけど、何とか立ち直ってくれたみたいね。

何だか越目君と仲良くなれたような気がする。

私は、一旦個室に戻ってシャワーを浴びてから食堂に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

私が越目君と一緒に食堂に行くと、秋山君と聖蘭さん、それからマナがテーブルセッティングをしていた。

厨房では、食峰君、小鳥遊さん、館井君の三人が厨房で夕食を作ってくれていた。

私がテーブルの上にランチョンマットを敷いていると、マナが笑顔で話しかけてくる。

 

「あれ!?緋色ちゃん、何か越目君と仲良かね!何かあったと?」

 

「…ええ、ちょっとね」

 

「えーなになに!?ばり気になる!」

 

マナが興味津々な様子で聞いてきたので、私は少し視線を逸らしながら言った。

するとマナは、キャイキャイはしゃぎながら私に詰め寄ってきた。

この子、何だか本当に子犬みたいで可愛いわね。

 

私達がテーブルセッティングをすると、知崎君と古城さんがバタバタと食堂に駆け込んできた。

 

「ご飯ーーー!」

 

「飯時じゃあ!!」

 

「お二人共、食堂で走らないで下さい。埃が立ってしまいます」

 

二人が食堂で走り回って騒いでいると、聖蘭さんが注意をした。

その後、残りの4人も食堂に顔を出し、無事に14人が揃った。

今日の夕食は、食峰君が作ったビーフシチューとパン、館井君が作ったニンジンとインゲンのゴマ和え、小鳥遊さんが作ったルッコラのサラダとブラマンジェだった。

探索とトレーニングで疲れていたからか、いつも以上に美味しく感じた。

食事中に野菜は厚切り派か薄切り派かで大論争が起きたけど、その辺は割愛しておいて。

食事の後は、軽めのミーティングをしてから解散した。

このまま、14人全員で一緒にいられたらいいのに。

この時私は、その願いもすぐに砕け散る事になるとは考えもしていなかった。

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『さーて、来週のモノクマ&モノDJ劇場は!『モノクマ、禁断の恋』『モノDJ院長の陰謀』『モノクマ一家の愛憎劇』の三本でお送りしまうま!』

 

『地上波では放送できねえけしからん内容だぜYEAH!こっから先はR41指定だZE!』

 

『いやぁ〜、それにしても昼ドラって何であんなにドロドロしてるんでしょうかねぇ?あんなにドロドロしてるの、昔雨の日の学校からの帰り道に足滑らせて落っこちた道路の溝の底くらいなもんですよ』

 

『昼ドラといやぁ愛憎料理だよなぁ。たわしのコロッケに財布のステーキ、草履のカツレツ…挙げればキリがねぇぜ!でもブラザー、知ってっか?』

 

『ん?何ですブラザー』

 

『革って食えるらしいぜ。靴とかもグツグツ煮込んじまえば食えるんだとよ』

 

『うぷぷ、食中毒が心配なので、ドロドロになるまで煮込んじゃいましょう!いやぁ〜こうしてドッロドロの昼ドラは生み出されるんだね!製作陣の闇を知った気分だよ!』

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り14名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

以上2名

 

 

 

 

 




おまけ サンタ信じる信じない論争

信じる派…加賀、聲伽、食峰、聖蘭、知崎、ネロ、響、目野
信じない派…秋山、古城、越目、小鳥遊、館井、玉越、腐和、闇内

具材厚切り薄切り論争
厚切り派…秋山、聲伽、古城、越目、玉越、知崎、ネロ、目野
薄切り派…加賀、聖蘭、小鳥遊、館井、響、腐和、闇内
中立派…食峰

全体的に見るとやっぱりよく食べる子は厚切り派、そんなに食べない子は薄切り派が多いですかね。


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(非)日常編⑤

絶望のお時間です。


九日目。

いつも通りの時間に起きて朝の支度を終えると、あのモノDJの喧しいアナウンスが鳴り響いた。

 

『ヘェイグッッモォォォニン!!ゴミクズ共ォォォ!!!朝の7時をお知らせするぜイェア!!!今日も張り切ってけェ!!!』

 

毎朝毎朝、ホント何なんだろう。

いくら考えても仕方ない、食堂に行こう。

 

 

 

ーーー 食堂 ーー

 

「おはよう」

 

「おはよう、腐和さん」

 

「おはようございます」

 

食堂に行くと、秋山君と聖蘭さんが来ていた。

二人は、既に食堂の掃除やテーブルセッティングを始めていた。

今日は食峰君、館井君、マナ、小鳥遊さんの四人で朝食を作っていた。

私も朝食の準備を手伝っていると、少し早めに越目君と闇内君、そしてほぼ時間通りにいつもの5人が来た。

 

「よし。今日も全員無事に揃ったね。それじゃあご飯にしようか」

 

「ん」

 

全員が無事揃ったので、私達は朝食を食べ始めた。

私が選んだ和食セットは、白米、鮎の塩焼き、シジミの味噌汁、ツクシの卵とじ、もずく酢、たくあんというメニューだった。

ホント毎食毎食栄養満点で飽きないメニューを考えてくれる食峰君は尊敬するわ。

朝食が終わると、マナが手を挙げて提案した。

 

「ねえねえ!うちから提案があるっちゃけど!」

 

「提案?」

 

私が尋ねると、マナはキリッとした表情を浮かべながら提案する。

 

「これから皆でプールに行きませんか!」

 

マナが提案すると、私は思わず目を点にした。

確かにプールが開放されてはいたけど…

急すぎてビックリしたわ。

 

「あ、いい!せっかくプールが開放されたんだしな!」

 

「おう!!いいんじゃねえか!?」

 

「わーい!何か楽しそうだねぇ!ボク楽しいの大好きー!」

 

「ぐへへへへ…女子の水着が見られるチャンスでござる」

 

真っ先に賛成したのは、越目君、食峰君、知崎君、闇内君だった。

……闇内君、今あんた何て言った?

 

「闇内君は置いとくとして、いいんじゃない?皆の親睦を深められるチャンスだし」

 

「そうね、秋山君の言う事も一理あるわ」

 

「そうですわね」

 

「うむ!!」

 

「私の機械ちゃんを皆さんに見ていただくチャンスでもありますね!いいでしょう!!」

 

秋山君が賛成したので、私、聖蘭さん、古城さん、目野さんの4人も賛成した。

他の4人は…

 

「俺は研究に専念したいんだが…まあいいだろう。別にプールでもできるからな」

 

「あー、行くよ。行かなきゃ疑われるしな」

 

加賀君とネロも来てくれるみたいだ。

ネロはすっごい不服そうだけど。

後の二人は…

 

「………俺は泳ぐのが苦手なんだが」

 

「ん」

 

二人とも、気乗りはしていなかったけど来てはくれるみたいだ。

その後も、プール大会の話し合いは続いた。

 

「プールの後の食事はどうすっか?せっかくだし豪華にしたくね?」

 

「はーい、皆でタコパでもするんはどうですか!」

 

「賛成ー!ボクタコ焼き大好きー!」

 

「デザートにスイーツビュッフェとかはどうかな?」

 

「おお、いい!!っしゃ、タコパにスイーツビュッフェな!」

 

マナと秋山君の提案で、プール大会の後はタコパとスイーツビュッフェをやる事になった。

何かいいわね、こういうの。

11時にプールに集合という事で、とりあえずは解散となった。

さて、と。

私も水着とか色々用意しないと。

 

 

 

ーーー 倉庫 ーーー

 

私はまず、水着を調達しに倉庫に行った。

倉庫には、スクール水着やビキニ、ウェットスーツなど色んな種類の水着が置いてあった。

もう色々と隠せなさそうなマイクロビキニまで置いてある。

あいつら、いちいち下ネタ挟んでくるのいい加減にしてほしいわ。

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

探索でメダルが貯まったので、とりあえず買い物をしに行く事にした。

プールに持って行くものを買い込んで、まだメダルが余っていたのでモノモノマシーンを引いてみた。

出てきたのは、猫のぬいぐるみだった。

これは正直ちょっと欲しい…

珍しく欲しい景品が手に入ったので、私はホクホク顔で購買部を後にし、着替える前にプールの下見をしに向かった。

 

 

 

ーーー 更衣室前ホール ーーー

 

更衣室前ホールには、ビート板や浮き輪、ロープ、自販機などが置いてあった。

更衣室に入る為の扉がある。

ビート板と浮き輪の裏にメダルがあったので、一応回収しておいた。

ここで調べられるのはこれくらいかしらね。

早速プールの下見をしに行こう。

 

 

 

ーーー プール ーーー

 

入ってすぐ目に飛び込んできたのは、堂々と設置された50mプールだった。

プール自体は普通の学校によくあるタイプで、プールがコースロープで仕切られている。

上を見上げてみると、青と黄色の三角の旗が掛けられていて、さらにその上にはガラス窓が見えた。

どうやらあそこがマナの言っていた管理室のようね。

一応調べておきましょう。

 

 

 

ーーー 管理室 ーーー

 

プールの管理室には、プールの水位や水温を管理する為の機械が並んでいた。

私が管理室に入ると、先客がいた。

小鳥遊さんは、管理室の機械をまじまじと見つめながら何かを考えている。

 

「小鳥遊さん、何をしてるの?」

 

「ん」

 

“この機械に何か仕掛けが無いか調べています。フィクションだとこういう所に手掛かりが隠されている事もあるので”

 

なるほどね…

小鳥遊さん、案外ミステリーとか好きな人だったのか。

私が納得していると、小鳥遊さんは私に歩み寄ってきてじっと見つめてきた。

 

「えっ、何?」

 

「ん……」

 

何故小鳥遊さんが急に私に詰め寄ってじっと見てきたのか、その答えは彼女の視線を辿ると簡単に理解できた。

小鳥遊さんの視線の先には、先程モノモノマシーンで手に入れたぬいぐるみがあった。

 

「あっ、もしかして小鳥遊さん、ぬいぐるみ好きなの?」

 

「ん」

 

私が尋ねると、小鳥遊さんが頷く。

うーん、どうしようかしらね。

正直これはちょっと欲しかったんだけど…

でもこれをきっかけに小鳥遊さんと仲良くなれるかもしれないし、プレゼントしてみようかしら。

 

「良かったらこれあげましょうか?」

 

「………え?」

 

「ほら、小鳥遊さんは動物が好きでしょ?だったら小鳥遊さんが持っていた方が、このぬいぐるみも喜ぶと思うの」

 

「………ん」

 

私は、猫のぬいぐるみを小鳥遊さんにプレゼントする事にした。

どうやら小鳥遊さんはとても喜んでくれたみたいだ。

私は、自由時間を小鳥遊さんと過ごす事にした。

プールの端のベンチで、二人で横並びに腰掛けて一緒に話をした。

 

「小鳥遊さんはどうして獣医になったの?」

 

「ん…」

 

私が尋ねると、小鳥遊さんは手帳のメモ機能を使って筆談で話をしてくれた。

 

“私を助けてくれた飼い猫に恩返しをする為です”

 

「飼い猫に恩返し…?どういう事?」

 

“私、小学校の頃、いじめられていたんです。家が周りより裕福だったのと、私自身が口下手だったので、入学してすぐにいじめのターゲットにされました。先生も味方になってくれなくて、お父さんとお母さんも毎日総合病院で激務をこなしているので個人的な話は滅多にできなくて、私はずっとひとりぼっちでした。寂しさを紛らわせる為に一人で公園に行って、鳩や虫に話し相手になってもらっていたんです”

 

小鳥遊さんにそんな過去が…

玉越さんが確か過去に何かあって喋れなくなったって言ってたけど、もしかしていじめが原因だったのかしら?

 

“ある真冬の日、私が普段通り公園に行ったら、道端に子猫が捨てられていたんです。寒くて震えている彼女を黙って見過ごす事はできなくて、家に連れて帰りました。そしたら、彼女はとても懐いてくれて…何かの運命を感じた私は、その子を飼う事にしたんです。彼女は、ココアは、いじめでつらい思いをしている私の話し相手になってくれました”

 

「そうだったのね」

 

“でもココアは、友達になってすぐに重い病気にかかってしまったんです。当時まだ治療法が確立されていない病気でした。私は彼女を助ける為に手を尽くしましたが、駄目でした。私はこの時、思い知りました。知識と技術が無ければ、誰かを助ける事もできないんだって。だから私は、亡くなったココアの為にも獣医になって一匹でも多くの動物を救う事にしたんです”

 

なるほどね…

亡くなってしまったココアちゃんの分まで多くの動物の命を救う事で、いじめられていた時に味方になってくれたココアちゃんに恩返しをしようとしたのね。

私から言わせてもらえば、ココアちゃんは小鳥遊さんに拾ってもらっただけでも十分すぎるくらい与えられたと思ってたんじゃないかしら。

小鳥遊さんはとても優しいのね。

 

「なるほどね。話してくれてありがとう。そういえば玉越さんとはクラスメイトだったそうだけれど、どういう経緯で仲良くなったの?」

 

“私、小学校の頃のいじめがトラウマで、中学校でもクラスメイトとうまく馴染めなかったんです。でもそんな時、玉越さんが私に話しかけてくれて、会話ができない私にもとても親身に接してくれたんです。玉越さんがいなければ、私はきっとここで皆さんとも仲良くなれなかったと思います”

 

そうだったのか…

小鳥遊さんにとっては、玉越さんが心の支えだったのね。

道理で初めて二人と会った時、仲が良さそうだと思ったわ。

ここで初めて小鳥遊さんと仲良くなった私とは違って、玉越さんは中学生の頃からずっと小鳥遊さんの親友だったんだ。

親友の玉越さんを失って一番辛かったのは、間違いなく小鳥遊さんだったでしょうね。

 

「……そうなのね。ちなみに、小鳥遊さんはどんな動物が好きなのかしら?」

 

“そうですね。強いて言うなら猫とうさぎが好きです。小学生の頃は、学校で飼っていたうさぎの世話をしていたので”

 

猫とうさぎ…

小鳥遊さんは猫派だったか。

私、犬派なのよね。

まあ猫も可愛いから好きだけど。

 

「ありがとう。一緒にお話できて楽しかったわ」

 

「ん」

 

私がお礼を言うと、小鳥遊さんはペコリと頭を下げた。

小鳥遊さんと仲良くなれたみたい。

 

《小鳥遊由との好感度が1アップしました》

 

 

 

ーーー 女子更衣室 ーーー

 

小鳥遊さんと親睦を深めていたらちょうどいい時間になったので、二人で一緒に更衣室に向かった。

二人で水着に着替えていると、他の女子も更衣室に入ってきた。

皆で着替えている時、マナがニヤニヤしながらものすごく私の身体を触ってきた。

 

「えへへへへ、やっぱり腐和ちゃんはスタイル良かね」

 

マナが着ていた水着は、シンプルなスクール水着だった。

ものっすごいニヤニヤしてるわね…

 

「ッパァァァァ!!!ワクワクしますねぇ!!」

 

更衣室ではしゃいでいる目野さんは露出度の高いビキニを着ていて、抜群のスタイルを惜しみなく晒していた。

もっとも、ヘルメットとメカをフル装備しているけど。

 

「ガハハハハハ!!!ワシの美貌に酔いしれるがいいわ!!」

 

浮き輪を持ってはしゃいでいる古城さんは、ミニスカビキニを着ていた。

ゴーグルまでつけて、完全に楽しむ気満々だ。

 

「私、級友の皆様とこういった経験をする事は初めてですので…楽しみですわ」

 

聖蘭さんは、ボレロとパレオを上品に着こなしている。

こうしてみると、すごいスタイル良いわね…

 

「ん」

 

小鳥遊さんは、ウェットスーツを着ていた。

多分、女性陣の中では一番露出度が低いんじゃないかしら。

そして一番気になるのは、これからプールに入るというのに何故かマフラーを外していなかった事だ。

 

え?私?

別に普通のスパッツタイプの競泳用水着だけど…

って、皆もう先に行っちゃってるわね。

私も行こうかしら。

私は、軽くシャワーを浴びてからプールに向かった。

 

 

 

ーーー プール ーーー

 

「やあ、皆お揃いで」

 

私達がプールに行くと、既に男子達が着替えて待機していた。

ラッシュガードとスパッツタイプの水着を身につけた秋山君が、爽やかな笑顔を浮かべながら話しかけてくる。

意外と引き締まった身体してるし、イケメンね…

 

「おう!!遅かったなお前ら!!」

 

それに続けて、燃えるような赤色のブーメランパンツを穿いた食峰君も声をかけてきた。

普段から半袖のシャツを着ているから筋肉質な体型なのはわかっていたけど、改めて見るとすごく鍛えられた身体をしている。

 

「いよっ、待ってましたー!」

 

学校指定の海パンを穿いた知崎君が、上機嫌で駆け寄ってくる。

肌も白いし、本当に女の子みたいに華奢ね。

 

「えっ、待って、皆メッチャ可愛くない!?ヤバっ!」

 

アロハシャツとルーズタイプの水着を着た越目君は、こちらを見て見るからに挙動不審になっている。

流石、運動部に入っていただけあってけっこう良い体してるわね。

普段の振る舞いが台無しにしてるけど、割とイケメンだし。

 

「ぐへへへへ…女子の水着をこのカメラに収める時でござるよ」

 

普段の頭巾とふんどしを身につけた闇内君が、こちらにカメラを向けている。

うん、変態には制裁が必要ね。

私は、すかさず変態を蹴り飛ばしてプールの中に突き落とした。

 

「ふんっ」

 

「がぼごぉ!?」

 

私がプールに突き落としてやると、変態はス●キヨのように水に突っ込んでいった。

ふん、いい気味だわ。

 

「全く、何で俺がガキの遊びに付き合わなきゃならねえんだかなぁ…」

 

パーカーとルーズタイプの水着を身につけたネロは、プールに落ちた闇内君を見て呆れ返っていた。

まるでマスコットのような、世界的に見ても最強クラスのマフィアとは思えないほど可愛らしい見た目をしていた。

 

「帰りたい……」

 

ルーズタイプの水着を穿いた館井君は、プールの隅で体育座りをしてネガティブ発言をしていた。

改めて見ると、すごい鍛え上げられていて筋骨隆々な体格をしている。

 

「ここはもう少し射出速度を落として、角度の制御を…」

 

ウェットスーツを着た加賀君は、プールサイドチェアに座って本を読みながらブツブツと独り言を言っていた。

普段部屋に引きこもって研究漬けなのに、意外とガタイ良いわね。

っていうか、彼は確か暑がりじゃなかったかしら?

あんな格好してて大丈夫なの?

あ、同じ事を思ったのか、早速マナが話しかけに行った。

 

「加賀くん、キミ暑がりのくせになしてそげん格好しとーと?」

 

「俺は敏感肌なんだ」

 

いや…屋内プールなら敏感肌関係なくない?

まあいいけど。

 

「じゃあ全員揃った事だし!!泳ぐか!!」

 

食峰君の発言を皮切りに、皆が一斉にプールに入った。

私達女子は、ビーチボールでキャッチボールをした。

 

「それー!」

 

「喰らえい!!百花繚乱弾!!」

 

「え、えっと…えい!」

 

「行きますよ!アームストロング砲スパイク!!」

 

「はい」

 

「ん」

 

マナ、古城さん、聖蘭さん、目野さん、私、小鳥遊さんの順にボールを回していった。

古城さんと目野さんは、何やら技名をつけて思いっきりボールを打っていた。

特に目野さんが背中に背負った機械からアームを伸ばしてスパイクを打ってきたのには、ちょっとビックリした。

私達がビーチボールで遊んでいる間、男子も男子で誰が100mを一番速く泳げるか競争していたようだ。

 

「おい加賀テメーーー!!ずりーだろそれは!!」

 

「自由形だと聞いているが?」

 

「意味が違ェんだよ!!」

 

越目君が何やら騒いでいたので見てみると、加賀君が足元から冷気を噴射して水面を凍らせ爆速で氷の上を滑っていた。

ぶっちぎりの一位でゴールした加賀君は、全く悪びれずに平然としていた。

ちなみに水泳対決は、

 

1位 加賀君

2位 闇内君

3位 秋山君

4位 越目君

5位 知崎君

6位 食峰君

 

という結果に終わったらしい。

ちなみに食峰君は、折り返しコースだと知らなかったそうだ。

館井君はというと始終プールには入らずに見張りをしていて、ネロもプールサイドチェアに寝転がって本を読んでいた。

館井君が一人で見張りをしていると、小鳥遊さんが館井君に歩み寄ってお茶のペットボトルを渡した。

 

「ん」

 

「む、すまんな」

 

「ん」

 

小鳥遊さんが館井君にお茶を渡すと、館井君は照れ臭そうにお茶を受け取った。

小鳥遊さんは、ちょこんと館井君の隣に座り込んで手遊びをしていた。

何だかあの二人はいい感じね。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

プール大会の後は、皆でタコパとスイーツビュッフェを開いた。

知崎君の提案で、まずはタコ焼きロシアンルーレットをやる事になった。

皆がそれぞれ具材を持ち寄って、目を瞑りながら具を入れて、丸めてシャッフルする。

焼き上がったものを、食峰君、小鳥遊さん、秋山君が持ってきてくれた。

 

「それじゃあ皆好きなの取ってけ!!恨みっこナシだからな!?」

 

私は、タコ焼きを一個選んで思い切って口に入れた。

…ん、これは明太子ね。

って事は…

 

「ねえ、私明太子だったんだけど、これ入れたのマナでしょ?」

 

「あたり!うちが引いたやつはコンニャクやったばい!」

 

「あ、それ入れたの私」

 

「ホント!?」

 

マナと私は、お互い相手の具材を引いたみたいだ。

隣にいた小鳥遊さんは、目を瞑って小さく震えていた。

 

「……ん」

 

「小鳥遊さんは何だった?」

 

“梅干しでした”

 

梅干しか…多分入れたのは闇内君あたりでしょうね。

それにしても酸っぱがってる顔可愛いわね。

他の皆は…

 

「わーい、ボクイチゴだー!」

 

「うん、美味しい。これはチーズかな」

 

「おっ、エビだ!!よっしゃあ!!」

 

「チョコレートでしたわ。美味しいですわね」

 

「む!ワシのはイカじゃあ!」

 

「ハッハァ!!トマトでした!意外とアリですねぇ!」

 

「むっ、これはカニカマか?」

 

「タコか。…チッ、つまんねえな」

 

「…………餅だ」

 

知崎君がイチゴ、秋山君がチーズ、食峰君がエビ、聖蘭さんがチョコ、古城さんがイカ、目野さんがトマト、加賀君がカニカマ、ネロがタコ、館井君が餅を引いたみたいだ。

他の二人は…

 

「ぎゃああああああ!!!辛い、辛いでござる!!口が焼けるで候!!激辛ソースを入れたのは誰でござるかぁあああああ!!?」

 

「うげぇえええええ!!!何これ馬の小便みてぇな味すんだけど!?いや、味知らねえけど!!誰だよこの変な黒いの入れた奴!!」

 

あの二人は大はずれを引いたみたいね。

ご愁傷様。

 

「きゃははは!!ヤバ、粧太おにい超ウケる!!」

 

知崎君は、お腹を抱えて大笑いしていた。

多分越目君のやつを入れたのは知崎君でしょうね。

具材は…あの反応からして多分サルミアッキかしら。

 

タコ焼きロシアンルーレットはけっこう楽しかった。

その後は、皆で普通にタコ焼きを焼いて食べたり、スイーツビュッフェを楽しんだりした。

スイーツビュッフェは、フルーツポンチ、プチケーキ、チョコフォンデュ等の美味しそうなスイーツが並んでいた。

私は、スイーツビュッフェのチーズケーキを食べた。

…うん、美味しい。

 

パーティーが終わった後は、皆で後片付けをした。

後片付けが終わった後は、皆それぞれまったりしていた。

 

「いやー、楽しかった」

 

「ね」

 

「毎日こんな楽しい時間が続けばいいのにな」

 

越目君が椅子にもたれかかりながら言った、その時だった。

 

 

 

『うぷぷぷぷ、そうは問屋が卸さないよ!』

 

突然、奴の声が響いた。

そして派手な演出と共に、あの忌々しい二匹が現れた。

 

『ヘイグッイブニンゴミクズ共ォォオオ!!!どうやらテメェらコロシアイも忘れて毎日パーリー三昧らしいなァ!!ポウポウ!!』

 

「腐和さん、このお茶美味しいね」

 

「そうかしら?それはカンヤム茶っていってね、日本じゃあまり流通してないけどヨーロッパでは一般的な紅茶として飲まれているのよ」

 

『コラー!!無視すなーーー!!』

 

私と秋山君が二匹を無視してお茶の話をしていると、モノクマが怒鳴ってきた。

うるさいわね全く。

すると加賀君は、珍しくイライラした様子で机を指で叩きながらモノクマを急かした。

 

「くだらない事を言いに来たなら今すぐ消えろ」

 

『くだるよくだる!オマエラがあまりにもコロシアイをしないので、新たな動機をプレゼントしに来ました!』

 

「動機だと…!?」

 

何だろう、嫌な予感がする。

前回の動機よりももっと、人のセンシティブなところに踏み込んでくるような…そんな動機が来るような気がするわね。

 

『次の動機はズバリ!!テメェらの『過去』さ!!初代よろしくテメェらの過去を動機DVDにしてやったからありがたく思えよな!!』

 

「過去ぉ!?」

 

「えー、でもでもぉ!自分の過去なんて知ってどうすんの?知ってる?不思議〜!」

 

確かに、自分の過去を知ったところでコロシアイなんて起こらないわよね。

誰にも言わなきゃいいだけの話だもの。

 

『ん?オレ様は何もテメェらに自分の動機DVDを送るなんて一言も言ってねぇぞ!?』

 

「え?」

 

『そういやテメェら、さっきはタコ焼きロシアンルーレットなんてやってたなァ!!そういう遊びが好きなリスナーの為に!!今回の動機はロシアンルーレットの要素を付け加えてみたぜィエア!!』

 

「まさか……」

 

『勘のいい人ならもうわかるよね?今回は、オマエラの動機DVDをランダムに送ります!』

 

「な…!!」

 

やっぱり…!

こいつらは、皆の弱みを利用してコロシアイをさせる気なんだわ…!

 

『うっぷっぷ、誰が誰の動機DVDを見る事になるのか、ワクワクのドッキドキだね!皆、それぞれ自分の名前が書かれたケースを取って下さいな!このDVDは自室のテレビか視聴覚室で見られるから絶対見てね!ちなみに今日中に見ないとオシオキだから』

 

モノクマが言うと、モノDJがどこからかDVDの入った箱を取り出した。

箱の中には、きちんと人数分のDVDが入っていた。

私は、自分の分のDVDを取り、席に戻った。

他の皆も、自分のDVDを取っていく。

 

『よぉし全員取ったな!!絶対日付が変わる0時までに見ろよ!じゃねぇとオシオキだからな!!んじゃあスィーユーアゲイン!!』

 

そう言ってモノDJとモノクマは、その場から姿を消した。

すると越目君は、イラつきながら机を殴る。

 

「クソッ、あいつら…!」

 

さっきまでの楽しい空気が嘘のように、暗い空気が食堂に漂っていた。

私の隣の席の小鳥遊さんは、俯いて小刻みに震えていた。

 

「…………」

 

「小鳥遊さん、大丈夫?」

 

私が小鳥遊さんに話しかけると、小鳥遊さんはさらに俯く。

すると、ネロがテーブルの上に足を乗せながら言った。

 

「おい、テメェら。わかってるとは思うが、間違ってもDVDの内容を本人に教えに行ったりするなよ」

 

「えっ、何で!?」

 

「そいつが口封じの為に殺人を計画したらどうするつもりだ?」

 

「皆がそんな事するわけねぇだろ!むしろ、誰が誰の過去を知ってるのか分からなくて不安な方が良くねえんじゃねえのか!?」

 

ネロが言うと、越目君が立ち上がって言った。

すると、知崎君がため息をつきながら口を挟む。

 

「別にいいんじゃない?好きにすれば。でもまあそのせいで殺人が起きたら粧太おにいのせいだけどね!」

 

「なっ…テメェ…!」

 

「何だよ、本当の事言ってあげただけじゃーん!粧太おにいはそれで相手を怒らせてブッ殺されちゃっても別にいいんだよね?そのつもりで言ったんでしょ?ねえ知ってた?」

 

「知崎テメェ、もういっぺん言ってみろ!」

 

「きゃー、こわいなぁ粧太おにい!暴力はんたーい」

 

二人は、お互い睨み合って言い争いを始めた。

知崎君が越目君を煽り倒し、越目君が知崎君の挑発に乗っかって知崎君の胸ぐらを掴んで怒鳴り散らした。

これ以上は収拾がつかなくなりそうだったので、私が止めた。

 

「やめなさい、二人とも。そうやって私達が言い争いをするのが奴等の狙いなのよ」

 

私が言うと、越目君は大人しく席に座り、知崎君もつまらなさそうに席に座った。

するとその時、加賀君が席から立ち上がる。

 

「あっ、どこ行くの加賀君?」

 

「決まってるだろ。動機DVDを見に行くんだよ。見そびれてオシオキなんてごめんだからな。無闇に言いふらしたりはしないから安心しろ」

 

そう言って加賀君は、食堂を去っていった。

 

「クソッ、ホント空気読まねーよなアイツ!」

 

「うーん…でもまあ一理あるよね。俺達も早くDVDを確認しに行かないと」

 

秋山君がそう言うと、他の皆も自分の個室に戻ってDVDを確認しに行った。

さてと。私も確認しに行かないと。

 

 

 

ーーー 腐和緋色の個室 ーーー

 

私は、早速自分の分のDVDのケースを開けてみた。

中に入っていたのは、マナのDVDだった。

マナの過去…

どんな内容なのかしら?

まあ、コロシアイに発展するようなセンシティブな内容なのは間違いないでしょうけど…

私は、不安を抱きつつもテレビにDVDをセットして再生した。

 

 

 

〜〜〜【超高校級の幸運】聲伽愛サンの動機映像!〜〜〜

 

DVDを再生すると、赤い幕の上にポップな文字が浮かび上がる。

開演のブザーと共に幕が開き、映像が始まる。

どうやら病院のようだ。

病衣を着てベッドに横たわっていたマナは、笑顔で母親と思しき女性に話しかけていた。

 

『いやー、三途ん川見えたばい!まさか食中毒で死にかくるとは!しぇっかくんツアーがおじゃんになってしもた!』

 

『笑い事やなかやろ、ほんなこつあとちょっとでも処置が遅かったらって思うと…』

 

『えへへ…それより、うちテレビ見たか!』

 

『全く、あんたって子は…』

 

どうやらマナは、家族とのツアー中に食中毒で死にかけて救急搬送されたらしい。

マナが死にかけたにもかかわらず笑っていると、マナのお母さんが呆れ返る。

マナのお母さんは、呆れつつも病室のテレビをつけた。

 

『続いてのニュースです。〇〇県××市でのバスツアー中のバスが落石事故に巻き込まれ、運転手と乗客全員が死亡しました』

 

ニュースが流れると、マナの顔からはサァッと血の気が引く。

マナは、画面を見ながらポツリと呟いた。

 

『嘘やろ…これ、うちらが乗るはずやったバスやん…』

 

マナが見ていた画面には、血塗れになったバスが映っていた。

するとそこで赤い幕が降り、モノクマが現れる。

 

『食中毒で死にかけた聲伽サンですが、どうやらそのおかげで落石事故で死なずに済んだみたいですね!でもまさか幸運の力でバスの乗客全員を殺してしまうとは!いやー、聲伽サンの才能は末恐ろしいですねぇ!ではでは、学級裁判でお会いしましょう!』

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

モノクマがそう言い残し、映像が終わった。

私は、テレビの電源を消すとベッドに腰掛けて深くため息をついた。

 

「何なのよ……」

 

私が呟いた直後、インターホンが鳴る。

何かと思って出てみると、扉の前にマナが立っていた。

どうやらマナは、さっきまで泣いていたようだ。

 

「緋色ちゃん…ちょっとよか?」

 

「?」

 

私は、とりあえずマナを部屋の中に入れて、ベッドの上に座らせた。

部屋にあった紅茶を淹れて出してあげると、マナはおずおずとマグカップを受け取って紅茶を飲んだ。

私は、何故マナがここに来たのか、その理由を確信していた。

勿体ぶるのも何なので、私は単刀直入に尋ねた。

 

「わざわざ私の部屋に来たって事は、私の動機DVDを見たのよね?」

 

「………うん。ごめんなさい。ネロくんには本人に言うなって言われとったけど、うち、あげんの見たら居ても立っても居られんくなって…」

 

「そう…どんな内容だったの?」

 

私が尋ねると、マナは俯く。

私は、マナを安心させるための言葉をかけた。

 

「大丈夫、私はマナを信じてるから。あなたが私の何を見たって、私はあなたの味方でいると誓うわ」

 

私が言うと、マナは徐に口を開いた。

 

「……緋色ちゃんのお母さんが惨たらしゅう殺しゃるー映像やった」

 

「………」

 

やっぱりね。

私に殺人をさせようとするなら、母さんの事だろうとは思ったわ。

私が納得していると、何故かマナが泣き始めた。

 

「緋色ちゃん、ホントにつらかったなぁ…!うち、緋色ちゃんがあげんつらか思いしとったやなんて知らんやった…!うう、うわぁあああああん!!」

 

私は、マナが泣いているのを見て初めて気付いた。

マナは、私の代わりに泣いてくれてるんだ。

この子は優しいから、人の事でも自分の事のように泣く事ができる。

私はもう自分の事でさえ泣けなくなってしまったから、私の分まで溜め込んでいたものを吐き出してくれてるんだ。

私は、マナの頭をそっと撫でた。

 

「ありがとう、マナ」

 

私は、一番信頼しているマナになら話してもいいかと思い、動機映像の事を話す事にした。

 

「あのね、マナ。私が見た動機映像は、あなたの過去だったの。あなたの乗るはずだったバスが落石事故に巻き込まれて、乗客が亡くなる映像」

 

「……そっか」

 

私が話すと、マナは暗い表情をして俯いた。

するとマナは、ポツポツと話を始める。

 

「うちん才能はな、人ば巻き込む事があるったい。食中毒で死にかけたおかげで事故死ば免れたり、うちん自転車盗んだ人が交通事故に巻き込まれて死んだり…父ちゃんがお金稼げんのも多分うちんしぇいなんや。そのしぇいで気味悪がられて、ずっと独りぼっちやったんや」

 

「あなたもつらかったのね。今だけはいくらでも受け止めてあげるから、気が済むまで泣いていいのよ」

 

私がマナを抱き寄せて頭を撫でると、マナは私の腕の中でわんわん泣いた。

私は、マナが泣いているのを見て、胸が痛くなった。

でも私は、こんな時に友達と一緒に泣いてあげる事もできない。

今になって、こんなにも感情が欲しくなるなんて思わなかった。

私は、マナの涙で服が濡れるのも気にせず、マナの気が済むまで受け止めてあげた。

しばらくすると、マナは泣き疲れて私のベッドで眠ってしまった。

するとその時、部屋のインターホンが鳴る。

出てみると、秋山君が部屋の前に立っていた。

 

「どうしたの?」

 

「あのさ、食峰君と小鳥遊さんが皆にゼリー作ってくれてるんだけど、ちょっと手伝ってほしいんだってさ」

 

「ゼリー?」

 

「ほら、皆動機映像を見て精神的に参ってるだろうから、ちょっとでもケアをしてあげたいんだって」

 

なるほどね。

二人とも精神的に参っているはずなのに、こんな時にも皆の事を考えていて尊敬するわ。

 

「ええっと…そういう事なら喜んで。あ、ちょっと待っててね」

 

私は、ベッドで寝ていたマナを起こして話しかけた。

 

「マナ、食峰君と小鳥遊さんが、皆にゼリー作ってあげたいから手伝ってほしいんだって。一緒に行かない?」

 

「え!?ゼリー?行く行く!」

 

私が起こすと、マナは上機嫌でベッドから飛び起きる。

さっきまであんなに泣いてたのに、食べ物の事となると立ち直り早いわねこの子。

私とマナは、小鳥遊さん達の手伝いをしに厨房に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂には、秋山君に呼ばれた人達が集まっていた。

厨房では、食峰君と小鳥遊さんがゼリーを作っていて、聖蘭さんがその手伝いをしている。

私とマナは、三人のゼリー作りを手伝った。

冷蔵庫の中から、あらかじめ作っておいたゼリーを取り出して、型から外してお皿に盛り付ける。

ソーダ味の青いゼリーの中に缶詰めのフルーツが入っていて、美味しそうだ。

小鳥遊さんは、トレイにゼリーを置き、そのゼリーを囲むようにゼリーを6つ置く。

隣の空いたスペースにも同じようにゼリーを並べ、聖蘭さんにゼリーのトレイを渡した。

 

「これを運べばよろしいんですの?」

 

「ん」

 

「じゃあ私はお茶を運んでくるわね」

 

「ん」

 

私は、ゼリーを運びに行った聖蘭さんと一緒にお茶を運びに行った。

マロウブルーという青色のハーブティーで、ソーダゼリーと一緒に小鳥遊さんが淹れてくれたものだ。

私がお茶を配りに行こうとするといきなり知崎君が走ってきて、聖蘭さんが運んでいたお盆からゼリーをひったくってしまった。

 

「もーらい!」

 

「あっ、ちょっと!席についてから取りなさいよ意地汚いわね!」

 

「へへーん、もう食べちゃったもんねー」

 

「あ、ずるいぞお主!!じゃあワシも!!」

 

「ちゃんと全員分あるからまだ取らないでよ!」

 

知崎君は、ゼリーをひったくるなりその場で平らげてしまった。

すると古城さんまでもがそそくさとゼリーを取りに来た。

ったく、何でどいつもこいつも配膳が終わるまで待てないのよ。

 

「じゃあボク購買部で遊んでくるから!じゃーね!」

 

そう言って知崎君は、そそくさと食堂を出て行った。

仕方ないので、残った皆にゼリーを配って食べた。

食峰君と小鳥遊さんが作ってくれたゼリーは、とても美味しかった。

皆の心のケアをする為に頑張ってくれた二人には感謝しないとね。

私は、ゼリーを食べて片付けをしてから個室に戻り、個室のベッドで眠りについた。

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『いやぁー塩ラーメンって美味しいよね!ラーメンは塩に限るよ。だって味噌とかとんこつは何かバカっぽいじゃん?深夜に食べるラーメンは背徳感もあっておいしさ12割増しですなぁ。ん!?何じゃこりゃあ!?塩ラーメンの中にチェーンソーが入ってるジャマイカ!』

 

『いや食う前に気付けっていう前に気付いてやれなかったオレ様が悪かった!時を戻そう』

 

『それにしてもブラザー、自分に身に覚えがないのにいきなり殺されそうになった時ってどうしたらいいんだろうね?ほら、ボクってプリチーで皆の人気者だから嫉妬されていきなり背後からグサってやられるかもじゃん?』

 

『ギャハハハ、ヘイボーイ!ネコに追い詰められたネズミがどうすりゃあいいか、そんなの簡単な事じゃねえか!喰われる前に喰っちまえばいいんだよ!』

 

『ハッ!さすがはブラザー!キャー天才!好き!抱いて!』

 

『ギャハハハ、今夜は寝かさねーぞバッドボーイ』

 

 

 


 

 

 

十日目。

 

『ヘェイグッッモォォォニン!!ゴミクズ共ォォォ!!!朝の7時をお知らせするぜイェア!!!今日も張り切ってけェ!!!』

 

「ん……」

 

私は、モノDJのうるさい放送で目を覚ました。

昨日は、色々とあったせいかいつになくぐっすりと眠ってしまった。

…朝食の準備をしに行かないと。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に行くと、聖蘭さんと館井君がテーブルセッティングをしていた。

厨房では、食峰君、闇内君、越目君、秋山君の四人が朝食を作っていた。

 

「おはよう」

 

「おはようございます」

 

「む…おはよう」

 

私が挨拶をすると、二人とも返してくれた。

私も朝食の準備を手伝っていると、マナ、加賀君、古城さん、ネロ、目野さんの5人も食堂に来た。

でも小鳥遊さんと知崎君は、集合時刻を15分以上過ぎても来なかった。

 

「遅いわね」

 

「知崎さんはともかく、小鳥遊さんまで遅刻とは!!何かあったんですかねぇ!?」

 

ともかくって…

あなた人の事言えないわよ目野さん。

でも確かに心配ね。

 

「呼びに行った方がいいかな?」

 

「いや、やめとこうぜ」

 

「え?」

 

秋山君が二人を呼びに行こうとすると、越目君が止めた。

越目君は、頭を掻きながらその理由を語った。

 

「その、さ。二人とも、昨日の事があって一人になりてぇんじゃねえの?あんまり刺激すんのもその、良くねえっつーか…」

 

「んん…それもそう、か」

 

越目君が言うと、秋山君が納得した。

越目君、昨日まで皆の過去を共有するべきだって言ってたのに、今日はそっとしておけだなんて、どういう風の吹き回しかしら…?

…いえ、詮索するのも野暮よね。

でも心配だし、チャットは送っておこうかしらね。

結局、越目君の言葉もあって、朝食は二人を除いた12人で食べた。

私が選んだ洋食セットは、食峰君が作ったパン・コン・トマテ、スパニッシュオムレツ、秋山君が作った春キャベツのガスパチョ、キャロットラペ、生ハムフルーツといったスペイン風朝食だった。

私は、朝食を食べ終わり皆で片付けをしている途中、送ったチャットを確認してみた。

見ると、小鳥遊さんの方はきちんと既読になっていて、『今朝は朝食会に参加できなくてごめんなさい。次はきちんと参加します』とメッセージが送られてきていた。

良かった、何かあったわけではなさそうね。

でも知崎君は既読にならないし、ちょっと心配ね…

私は、ミーティングが終わった後、知崎君の安否を確かめに彼の個室に向かった。

 

 

 

ーーー 知崎蓮の個室 ーーー

 

「知崎君、いる?」

 

私は、知崎君の個室のインターホンを鳴らして尋ねた。

だが、返事は無かった。

ふとドアノブに手をかけてみると、ドアが開いていた。

ドアを開けて探してみたが、中に知崎君はいなかった。

 

「いない…!?」

 

私は、知崎君に何かあったのではないかと思い、寄宿舎内をくまなく探した。

だが、寄宿舎に知崎君の姿はなかった。

私が知崎君を探してると、私の生徒手帳に一通のメッセージが送られてくる。

マナからだった。

 

『緋色ちゃん!知崎くん見つけた!今すぐ購買部に来て!』

 

知崎君を…?

私は、マナのメッセージを見てすぐに購買部に駆けつけた。

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

購買部に駆けつけると、マナが私のところへ駆けつけてきた。

 

「緋色ちゃん!」

 

「マナ、知崎君は?」

 

「あそこ!」

 

そう言ってマナが指を差した先では、知崎君が倒れていた。

私は、すぐに知崎君に駆け寄って身体を揺すった。

 

「知崎君!何があったの!?しっかりして!」

 

「緋色ちゃん」

 

「何!?」

 

「知崎くん、寝とーだけだよ?」

 

「………は?」

 

私が知崎君の方を見てみると、知崎君は気持ちよさそうに寝息を立てていた。

ったく、何よ。

心配して損したじゃない。

私は、深くため息をついてから知崎君の頬を引っ叩いた。

 

「起きなさい!!」

 

「ふにゃっ!?」

 

私が叩き起こすと、知崎君はようやく起きた。

知崎君は、眠そうに私達を見てくる。

 

「んん…よく寝た…あ、二人ともおはよぉ〜」

 

「おはようじゃないわよ!何でこんなとこで寝てんのよ!」

 

「そうだよ!風邪引いちゃうよ!?」

 

マナ、そうだけどそうじゃないわよ。

そもそも何でこんなところで寝てるのかって事を今聞いてんのよ。

 

「そんな事言われてもぉ〜、遊んでたら急に眠くなっちゃったんだもぉん。ふわぁあ…寝直したいから個室戻るね」

 

そう言って知崎君が自分の部屋に戻ろうとした、その時だった。

知崎君は、自分の服のポケットを探して目を丸くする。

 

「……ん?あれっ!?」

 

「どうかした?」

 

「無い!無い!ボクの生徒手帳が無い!」

 

「はぁ!?」

 

知崎君が自分の服のポケットや鞄を漁って慌てているのを見て、私は思わず声を荒げてしまった。

 

「ったく、何やってんのよ!」

 

「だってだってぇ!寝て起きたら無くなってたんだもん!!購買部に来た時はちゃんとあったんだもん!!嘘じゃないもん!!」

 

うん、嘘はついてないわね。

昨日ゼリーを食べた時は、きちんと生徒手帳の指輪をしてたものね。

 

「どうしよう緋色ちゃん!?」

 

「探すしかないじゃない!他の皆にも探してもらうようメッセージ送っとくから、私達は購買部を探しましょう。私は左から探すから、マナと知崎君は右から探してって!」

 

「わかった!」

 

私は、マナと知崎君と一緒に知崎君の生徒手帳を探した。

三人でくまなく探したけど、購買部には知崎君の生徒手帳は無かった。

他の皆はそれぞれ寄宿舎を探してくれたけど、誰も知崎君の生徒手帳を見つけられなかった。

こうなったら…

 

「モノクマ!」

 

私がモノクマを呼ぶと、モノクマが現れた。

 

『はい何でしょ?』

 

「知崎君の生徒手帳が無いの。新しいのを作ったりできないの?」

 

『ダメです!言ったじゃん、替えはきかないから失くさないでよねって。失くしたのはオマエラの責任でしょ?バイバイ!』

 

モノクマは、そう言って姿を消してしまった。

何なのよ、もう!

すると、ショックを受けた知崎君が泣き出してしまった。

 

「そ、そんな…じゃあこのまま生徒手帳が見つからなかったら、ボクはどうなっちゃうの!?そんなのいやだあああああ!!!」

 

「落ち着いて。皆で手分けして探せば絶対見つかるわ。寄宿舎に無い…となると、校舎か研究棟よね」

 

「うん」

 

私達は、今度は校舎と研究棟を手分けして探した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

13時。

もうかれこれ4時間くらい探してるけど、全く見つかる気配が無い。

するとマナが、お腹を抱えながら言った。

 

「…ねえ、空気読まん事言うてよか?」

 

「何?」

 

「お腹減った……」

 

マナが腹の虫を鳴らしながら言ったので、思わず目を点にした。

でも確かに、もう1時だものね。

一旦手帳探しは中断して、お昼を食べてから続きを…

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『死体が発見されました!生徒の皆さんは、至急校舎2階のプールにお集まり下さい!』

 

…は?

死体?

嘘よ、そんなもの見つかるわけないじゃない。

今は知崎君の生徒手帳を探してるんだから。

 

「っえ、し、死体って…」

 

「…行くしかないわね」

 

「えええ!?ボクの手帳はぁ!?」

 

「とりあえず後よ。行きましょう」

 

私は、動揺する知崎君とマナを落ち着けてから、プールに向かった。

 

 

 

ーーー プール ーーー

 

私達は、死体発見アナウンスを聞いてプールに集まった。

その直後、信じがたい光景を目の当たりにする事になる。

信じられなかった。

信じたくなかった。

『それ』は、微かに赤く染まったプールの中にあった。

異様な事に胴体が無く、頭だけがプールの中に漂っていた。

どうしてあなたが…!

 

それは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【超高校級の獣医】小鳥遊由の遺体だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り13名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

以上3名

 

 

 

 

 




はい、とうとう第二の事件が起きました。
小鳥遊ちゃんは私の推しなんですが、推しだろうと妥協はしません。
今回は犯人と動機は割とわかりやすいと思います。

ちなみにタコ焼きロシアンルーレットの結果

エビ 入れた人:秋山 引いた人:食峰
チョコ 入れた人:加賀 引いた人:聖蘭
明太子 入れた人:聲伽 引いた人:腐和
カニカマ 入れた人:古城 引いた人:加賀
チーズ 入れた人:越目 引いた人:秋山
タコ 入れた人:食峰 引いた人:ネロ
イチゴ 入れた人:聖蘭 引いた人:知崎
餅 入れた人:小鳥遊 引いた人:館井
イカ 入れた人:館井 引いた人:古城
サルミアッキ 入れた人:知崎 引いた人:越目
トマト 入れた人:ネロ 引いた人:目野
コンニャク 入れた人:腐和 引いた人:聲伽
ハバネロソース 入れた人:目野 引いた人:闇内
梅干し 入れた人:闇内 引いた人:小鳥遊


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非日常編①(捜査編)

どうして…

どうして小鳥遊さんが…

私は、プールに浮かんでいた小鳥遊さんの生首を前にして、理解が追いつかなかった。

プールサイドには、最初に遺体を発見したであろう秋山君、越目君、食峰君、館井君、ネロが立ち尽くしていた。

 

「小鳥遊さん……」

 

「クソッ、チクショオ!!由…何で!!」

 

「うっ、ううっ…た、小鳥遊ちゃん…!」

 

「………っ!!」

 

「…チッ、胸糞悪いモン見せやがって」

 

秋山君は悔しそうに俯き、食峰君は悔しがりながら泣き、越目君は顔を真っ青にしてその場に尻餅をつき、館井君は顔を真っ青にして目を背け、ネロは冷静さを保ちつつも帽子の鍔で目元を隠していた。

私がマナと知崎君を連れてプールに行くと、二人は小鳥遊さんの生首を見て狼狽える。

 

「た、小鳥遊ちゃん…!?そんな、嘘だよね!?」

 

「うわあああああん!!由おねええええええ!!」

 

マナは涙を流しながらその場で立ち尽くし、知崎君は大声で泣き喚いた。

するとその時、加賀君と目野さん、古城さんと闇内君もプールに駆けつけてくる。

 

「はんぎゃあああああああ!!?た、小鳥遊さん!?」

 

「そ、そんな、小鳥遊嬢が…!」

 

「わぎゃああああああああ!!!何事じゃああああ!!!」

 

「……やはり、起こってしまったか」

 

目野さんと古城さんはその場で大声で泣き喚いていた。

闇内君は、目を見開いて動揺していた。

加賀君は、悔しそうに目を瞑って俯いていた。

するとそこへ、聖蘭さんが駆けつけてくる。

 

「一体何なのですか!?今のアナウンスは…!」

 

聖蘭さんは、小鳥遊さんの生首を目の当たりにして叫び声を上げる。

 

「キャアアアアアアアア!!!た、小鳥遊さん…!?そ、そんな…!嘘ですわよね!?」

 

聖蘭さんは、顔面蒼白になってその場で泣き崩れた。

するとその時、またあの二匹が現れる。

 

『ギャハハハハハハ!!!4月1日はとっくの昔に過ぎたぜ!!テメェらはもうコロシアイはしねぇんじゃなかったのかァ!?ハァン!?』

 

『うぷぷぷぷぷ!オマエラの友情ごっこってまるで牛乳雑巾だよね!』

 

「テメェら…!」

 

『それじゃあ今回もモノクマファイルを差し上げますので、捜査時間中に好きなだけ調査をしちゃってくださいな!』

 

『んじゃあ裁判場でまた会おうぜ!!スィーユーアゲイン!!!』

 

『しーゆー!!』

 

そう言ってモノクマとモノDJは、私達の前から姿を消してしまった。

私達は早速、捜査の分担を決める事にした。

すると、マナがおずおずと尋ねる。

 

「検視は誰がやる…?前回は小鳥遊ちゃんがやってくれてたけど…」

 

「俺がやろう。小鳥遊程ではないが、一応解剖学の知識もある」

 

名乗り出たのは、加賀君だった。

 

「俺は犯人ではないから証拠隠滅などするわけがないが、不安なら見張りをつけてくれて構わない」

 

「………俺がやる」

 

「じゃあオレも…オレ、捜査じゃそんなに役に立てねぇだろうし」

 

名乗り出たのは、館井君と越目君だった。

二人とも小鳥遊さんと仲が良かったから、少しでもそばにいてあげたいんだろう。

検視と見張りは二人に任せて、私達は捜査をしよう。

話し合いの結果、捜査組は私と秋山君、マナとネロ、古城さんと闇内君、食峰君と聖蘭さん、知崎君と目野さんの5組に分かれて、古城さん、闇内君、食峰君、聖蘭さんの4人は校舎を、知崎君と目野さんは寄宿舎を、マナとネロは研究棟を調べる事になり、私と秋山君は自分達で捜査をしつつ皆の捜査情報をまとめる係となった。

 

「それじゃあ、調べていこうか。腐和さん」

 

「そうね」

 

私は、秋山君と一緒に捜査を進める事になった。

少しでも多くの情報を集めなきゃ。

それが小鳥遊さんの為でもあるのだから。

 

 

 

ーーー

 

 

 

《捜査開始!》

 

 

 

まずはモノクマファイルを確認しておこう。

 

モノクマファイル②

被害者は【超高校級の獣医】小鳥遊由。

死亡推定時刻は12時20分頃。

死体発見場所は校舎2Fのプール内。

死因は脳挫傷。

頭蓋骨が陥没しており、首が切断されている。

 

 

 

「脳挫傷…か」

 

そういえば、プールにあった小鳥遊さんの頭は血で濡れていたわね。

モノクマファイルにも書いてあるんだし、これが死因とみて間違いなさそうね。

…ん?

何だろう、この違和感は。

前回のファイルと比べて、何かが足りないような気がするのだけれど…

…気のせいかしらね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【モノクマファイル②】

 

 

 

さてと。

ファイルを確認した事だし、一応秋山君にアリバイを聞いておかないとね。

 

「12時頃って、知崎君の手帳を皆で探していた時よね?」

 

「うん、そうだね」

 

「私はマナや知崎君と一緒に手帳を探してたんだけど…秋山君は?」

 

「俺は越目君や聖蘭さんと一緒に倉庫を探してたよ。あっ、でも途中で聖蘭さんが着替えてくるとかで手帳探しを抜けたっけ。それから、越目君もトイレに行ってくるって言って少しの間抜けたかな」

 

「ちなみに聖蘭さんはどのくらいの間手帳探しを抜けていたのかしら?」

 

「うーん…最低でも40分くらいかな」

 

「越目君は?」

 

「15分くらいだったよ」

 

15分か…となると、その時間で小鳥遊さんを殺して首を切断してここに戻ってくるのは不可能ね。

となると、聖蘭さんを除く二人にはアリバイがあるって事ね。

これは裁判の時に提示する情報として覚えておきましょう。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【秋山君の証言】

12時頃、秋山君は越目君、聖蘭さんと一緒に倉庫で知崎君の指輪型電子生徒手帳を探していた。

ただし、越目君はトイレに行く為に15分程度、聖蘭さんは着替えをしに40分以上手帳探しを抜けている。

 

 

 

「さてと。次はプールの方を調べてみないとね」

 

「そうだね」

 

私達は、次はプールを調べに行った。

プールには、小鳥遊さんの首はなかった。

多分、加賀君が検視をする為に胴体のある場所へ移動させたのだろう。

…ん?

あれ?

指輪が落ちてる…

これって、私達の持ってる電子生徒手帳よね?

でも…くっ、取れそうで取れないわね…!

せめてマイナスドライバーとかあれば…

 

「ん?どうしたの、腐和さん」

 

「ごめん秋山君、マイナスドライバー持ってない?」

 

「今は持ってないよ。あ、技術室から取ってこようか?」

 

「お願いね」

 

私が頼むと、秋山君は全速力で技術室にマイナスドライバーを取りに行ってくれた。

私は、秋山君がマイナスドライバーを取りに行ってくれている間に、モノクマに気になった事を尋ねてみる事にした。

 

「モノクマ!」

 

『はい何でしょ?』

 

「夜時間中はプールに入れないのよね?」

 

『はいそうです!』

 

「ちなみに『プールに入る』っていうのは、どこからが『入った』っていう定義になるの?」

 

『ズバリお答えしましょう!プールに入った事になるのは、『プールサイドかプールの水面に身体の一部がついた瞬間』です!夜時間中にプールに入った場合は即オシオキ対象となります!』

 

「じゃあ例えばプールの入り口から何かを投げたり…まああり得ない話だけど、空中浮遊でもしてここに入ってきた場合はプールに入った事にはならないのね?」

 

『その通りです!』

 

 

 

コトダマゲット!

 

【夜時間中のプールの入室】

原則として禁止されている。

ただしプールに入った事になるのは、『プールサイドかプールの水面に身体の一部がついた瞬間』。

 

 

 

「なるほどね…」

 

『もう聞きたい事は無い?』

 

「ちょっと待って。えっと…」

 

私がモノクマに尋ねる事を考えていたその時、秋山君がプールに駆け込んでくる。

秋山君は、見事なコントロールでマイナスドライバーを投げ渡してきた。

 

「腐和さん!お待たせ!」

 

「ありがとう」

 

私は秋山君からマイナスドライバーを受け取ると、排水溝の蓋の隙間にマイナスドライバーを挿し込み、梃子の要領で排水溝の蓋を外した。

排水溝の蓋を外すと、排水溝の中に落ちていた指輪を拾った。

これって…ひょっとして、知崎君の電子生徒手帳かしら?

でもどうしてこんな所に?

昨日最後に彼を見た時は、確かに手帳を指につけてたはずよね?

私は、早速指輪を起動させてみる事にした。

…あれ?電源がつかない…

私は、後ろにいたモノクマに尋ねてみた。

 

「ねえ、これ壊れてるの?どうやっても電源がつかないのだけれど」

 

『うぷぷぷぷ、それはねぇ。ズバリ電池切れです!』

 

「電池切れ?」

 

『その電子生徒手帳は、オマエラの生体電気で充電してるんだよ。つけてるだけでずっと電気が供給されるから充電要らずってわけ。でも外したままだと2時間ぐらいで電池切れになって、また使えるようになるまで3時間以上かかるので注意して下さい!』

 

なるほどね…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【指輪型の電子生徒手帳】

プールサイドの排水溝に落ちていた。

電子生徒手帳は一度外すと約2時間で電池切れになり、充電が貯まるまで3時間以上かかる。

 

 

 

私が捜査の結果得られた情報をまとめていると、秋山君が話しかけてくる。

 

「あ、そうだ。電子生徒手帳で思い出したんだけど」

 

「何かしら?」

 

「腐和さんさ、確か朝食の時に電子生徒手帳で小鳥遊さんにメッセージ送ってるよね?」

 

「ええ、それがどうしたの?」

 

「ちょっとその時の会話見せてもらえない?」

 

「それは構わないけど…」

 

私は、秋山君に小鳥遊さんとの会話のログを見せた。

私が小鳥遊さんにメッセージを送った後は、確かに小鳥遊さんがメッセージを返信してくれている。

メッセージが返ってきたのは、9時半頃ね。

って事は、少なくとも今朝の9時半までは小鳥遊さんは生きてたって事よね…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【メッセージのログ】

午前9時半に小鳥遊さんが私にメッセージを返してくれている。

小鳥遊さんは、少なくとも午前9時半までは生きていた…?

 

 

 

「プールで調べられる事はこれくらいかしらね。次は管理室の方を調べてみない?」

 

「そうだね」

 

私達は、次はプールの管理室を調べてみる事にした。

 

 

 

ーーー 管理室 ーーー

 

管理室に行くと、食峰君と聖蘭さんが管理室を調べていた。

 

「二人は何かわかったかしら?」

 

「おう!何かプールでよく見る旗が落ちてたぜ!」

 

そう言って食峰君は、管理室に落ちてた旗を拾い上げて見せてきた。

何でこんなものがここに…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【プールの旗】

プールによくかかっている青と黄色の三角の旗。

管理室に落ちていた。

 

 

 

「あと、一応トレーニングルームを調べに行ったらこんなものがあったぜ!」

 

そう言って食峰君は、ダンベルを見せてきた。

よく見ると、血がついている。

凶器はひょっとしてこのダンベルかしら…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ダンベル】

トレーニングルームにあったダンベル。

よく見ると血がついている。

 

 

 

「聖蘭さんは何かわかったかしら?」

 

「ええと、先程まで更衣室前ホールを調べていたのですが…このようなものがありましたわ」

 

そう言って聖蘭さんは、よく見ると血がついている浮き輪を見せてきた。

どうして浮き輪に血がついてるのかしら…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【浮き輪】

更衣室前ホームにあった浮き輪。

よく見ると血がついている。

 

 

 

「それから、もう一つ気になった点が」

 

「何かしら?」

 

「実は、更衣室前ホールにあったロープが一本無くなっていたのですわ。それから、使われた痕跡のあるロープもありましたわね」

 

ロープが…?

犯行に使われたのかしらね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【消えたロープ】

更衣室前ホールにあったロープが一本なくなっていた。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【使われた痕跡のあるロープ】

更衣室前ホールにあったロープが使われた形跡があった。

 

 

 

「………」

 

私は、ふと管理室の窓が気になり、管理室の窓を開けて身を乗り出してみた。

すると、後ろから秋山君が声をかけてきた。

 

「あっ、腐和さん!?危ないよ!」

 

「大丈夫よ。ちょっと見てみるだけだから」

 

確かめていると、ちょうど窓の下にかけられていたはずの旗がロープになっていた。

…うん、位置的に窓からならギリギリ下のロープを触れそうね。

かなり身を乗り出さなきゃいけないけど…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【プールにかけられたロープ】

ちょうど管理室の窓の真下にロープがかけられていた。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【管理室の窓】

管理室の窓は、ちょうどプールを見下ろせる位置にある。

高さ的に、かなり身を乗り出せばギリギリ真下のロープに触れる。

 

 

 

「ここで調べられる事はこれくらいかしらね」

 

「次は更衣室の方見てみない?」

 

「そうね」

 

私達は、更衣室を調べてみる事にした。

 

 

 

ーーー 女子更衣室 ーーー

 

女子更衣室に行くと、加賀君が検視をしていた。

床には、首を切断された小鳥遊さんの遺体が横たわっている。

 

「む、腐和か」

 

「加賀君、検視をしていて何かわかった事は?」

 

「そうだな…まずは検視結果を伝えておこう。小鳥遊だが、かなり重量のある鈍器で頭を殴られたものと思われる。少なくとも、君以外の女子が片手で持てるような重さの鈍器ではないな」

 

君以外って…

何か失礼ね。

 

「それとだな。妙なんだ」

 

「妙?」

 

「ああ。死亡推定時刻はどう見ても12時間以上前なのに、顔だけはまるでさっきまで生きていたかのように血色が良いんだ。ほら、見てみろ」

 

そう言って加賀君は、小鳥遊さんの生首を見せてきた。

小鳥遊さんは、まるでついさっきまで生きていたかのような、確かに半日以上も前に死んでいたとは思えない程綺麗な顔をしていた。

…ん?

何かしら、何か小鳥遊さんの頬がベタベタしてるわね。

これって…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【加賀君の検視結果】

小鳥遊さんはかなり重量のある鈍器で頭を殴られたと思われる。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【遺体の状態】

死亡推定時刻は12時間以上前なのに、何故か顔だけが綺麗な状態で見つかっている。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【小鳥遊さんの頬のベタベタ】

小鳥遊さんの頬には、プールの水とは違ったベタつきがあった。

 

 

 

ん…?

遺体の下の血の乾き方、何か変ね。

まるで、血が飛び散った上からまた血が飛び散ったみたいな…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【遺体付近の血痕】

血の乾き具合にばらつきがある。

まるで血が飛び散った上からさらに血が飛び散ったみたいだ。

 

 

 

あとは…

 

「あら?小鳥遊さん、電子生徒手帳をしてないわね」

 

「俺が見た時はもう無かったぞ」

 

知崎君みたく失くしたのかしら…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【小鳥遊さんの電子生徒手帳】

何故か小鳥遊さんの遺体には電子生徒手帳が無かった。

 

 

 

「館井君と越目君は?何かあった?」

 

「む……実は、少し気になる事があってな」

 

「気になる事?」

 

「このリュックなんだが…内側にベッタリ血がついているんだ」

 

そう言って館井君は、小鳥遊さんのリュックを見せてきた。

リュックの内側には、血がベッタリと付いている。

血がつくとしたら、普通リュックの外側よね…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【小鳥遊さんのリュック】

何故か内側が血まみれになっている。

 

 

 

「越目君は?」

 

「事件と関係あるかはわかんねぇけど、小鳥遊ちゃんの近くにこれが落ちてたぜ」

 

そう言って越目君は、ハンマーを見せてきた。

事件現場にハンマーか…

物騒ね。

…あれ?

これって男子の工具セットに入ってるハンマーよね?

ご丁寧に知崎君の名前が書いてあるし…

って事は、このハンマーは知崎君のかしら?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ハンマー】

女子更衣室に落ちていた。

知崎君の工具セットに入っていたもの。

 

 

 

私が調べ物をしていると、越目君が耳打ちをしてくる。

 

「…なあ、これってやっぱあいつの仕業じゃねえのかな」

 

「あいつ?」

 

「ほら、『二代目ジャック・ザ・リッパー』だよ」

 

「……!」

 

二代目ジャック・ザ・リッパー…

本当に奴の仕業なのかしら?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【二代目ジャック・ザ・リッパー】

図書室の書庫のファイルに記載があった殺人鬼。

この殺人鬼の犯行手口を知っているのは、私と越目君だけ。

 

 

 

さて…と。更衣室を調べている古城さんと闇内君にも話を聞かないとね。

 

「古城さんは何かわかったかしら?」

 

「うむ!更衣室のロッカーにこんなものが隠してあったぞい!」

 

そう言って古城さんは、血のついたチェーンソーを見せてきた。

うげ……

いかにもって感じね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【チェーンソー】

技術室にあったチェーンソー。

血がついている。

おそらく、小鳥遊さんの首を切断したものと思われる。

 

 

 

「闇内君は……」

 

「ぐへへへ、絶景でござる」

 

「………」

 

闇内君は、モノクマの顔のグラビアアイドルのポスターを眺めてニヤニヤしていた。

こいつは無視した方が良さそうね。

…あれ?

よく見るとこのポスター、血がついてるわね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【グラビアアイドルのポスター】

スタイル抜群のグラビアアイドルにモノクマの顔がコラージュされた気色悪いグロ画像。

よく見ると血がついている。

 

 

 

「そういえば、普通に男子が女子更衣室を調べてるけど…捜査時間中は例外って事かしら?」

 

「そうみたいだね」

 

「あ、でも異性の生徒手帳を使えば…」

 

「残念だけどそれはできないよ」

 

「どうして?」

 

「ほら、生徒手帳の貸与は校則で禁止されてるだろ?」

 

あ…

確かに。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【校則の十五番目の項目】

男子更衣室に女子の、女子更衣室に男子の電子生徒手帳を使って入る事は禁止されている。

ただし捜査時間中は例外。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【校則の十六番目の項目】

電子生徒手帳の貸与は禁止されている。

 

 

 

「ここで調べられる事はこれくらいかしらね」

 

「うん。じゃあ次は研究棟に…」

 

「あ、ちょっと待って」

 

私は、急いで図書室に駆け込んで資料を拝借した。

さっき越目君がジャック・ザ・リッパーの事を言ってたし、一応資料の詳細を確認しておかないとね。

私は、資料の内容をもう一度読み返してみた。

 

被害者はいずれも10歳以下の子供か40歳以下の女性で、死因はいずれも刃物で頸動脈を切りつけられた事による失血死。

被害者は職業・出身地共にバラバラで関連性は一切無く、私怨による犯行の可能性は低いと考えられる。

いずれの被害者も犯行現場付近で首が晒されているのを発見されているが、胴体は見つかっていない。

 

…うん、こんなところかしらね。

 

「ごめんなさい、研究棟にいきましょうか」

 

「そうだね」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ジャック・ザ・リッパーの犯行手口】

被害者はいずれも10歳以下の子供か40歳以下の女性で、死因はいずれも刃物で頸動脈を切りつけられた事による失血死。

いずれの被害者も犯行現場付近で首が晒されているのを発見されているが、胴体は見つかっていない。

 

 

 

ーーー 研究棟 ーーー

 

「ネロ、あなたは何かわかったかしら?」

 

「何かを見つけたわけじゃないが、逆に無くなってるものならあったぜ」

 

「無くなってるもの?」

 

「輸血パックだよ」

 

輸血パック…

そういえば、小鳥遊さんの研究室には輸血パックが置いてあったわね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【輸血パック】

小鳥遊さんの研究室に置いてあったもの。

1つなくなっていた。

 

 

 

「マナ、あなたは何かわかったかしら?」

 

「うーん、事件と関係あるかはわからんっちゃけど…うち、昨日ん夜小鳥遊ちゃんばプールん近くで見よーっちゃんね」

 

「小鳥遊さんを?」

 

「うん。何か倉庫のペットボトルば持ち出して、重そうに抱えとったばい。手伝おうかって聞いたっちゃけど、よかって言われてしもうてしゃ。何でプールに水ば持って行っとったんかはわからんばってん、別に引き留めて問い詰める事もなかかなって思うて帰ってしもうた。今思やあ、あそこで何しよーとか聞いときゃあよかったっちゃろうか…?」

 

…なるほどね。

 

「ありがとう、マナ」

 

「いえいえ!」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【マナの証言】

昨日の夜時間前、小鳥遊さんが倉庫にあった水のペットボトルを持ち出してプールに運んでいた。

 

 

 

「ここで集められる情報はこれくらいかしらね」

 

「そうだね。じゃあ寄宿舎を調べてくれてる二人にも話を聞いてみよっか」

 

 

 

ーーー 寄宿舎 ーーー

 

「ハッハァ!!これはこれは!!腐和さんに秋山さんじゃあーりませんか!!」

 

「あら、目野さんに知崎君」

 

私達が寄宿舎に行くと、目野さんが声をかけてきた。

私はふと、知崎君の電子生徒手帳の事を思い出した。

 

「あ、そうだ知崎君。あなたの電子生徒手帳、あったわよ」

 

「えー!?あんなに探しても見つからなかったのに!?どこにあったの?」

 

「プールの排水溝に落ちてたわ。はい、どうぞ」

 

「わーい!でも何でプールなんかに落ちてたのかなぁ?ホント不思議〜!」

 

「あ、今電池切れだから、はめてから3時間くらい待たないと使えないわよ」

 

「えー何それ!不思議ー!」

 

私が知崎君に話すと、知崎君は頬を膨らませる。

知崎君の電子生徒手帳は無事本人に返した事だし、私は目野さんと知崎君に話を聞いてみる事にした。

 

「目野さんは何かわかったかしら?」

 

「ええ!実はですね!!トラッシュルームにこんなものが捨ててあったのですよ!」

 

そう言って目野さんは、焼けたレインコート、血のついたパック、空のペットボトルを見せてきた。

色々捨ててあったのね…

焼却炉の奥の方に詰め込んだから、焼ききれずに残ってしまったのかしら?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【焼けたレインコート】

倉庫にあったレインコート。

トラッシュルームの焼却炉に捨ててあった。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【血のついたパック】

トラッシュルームの焼却炉に捨ててあった。

ラベルが焼けてしまっている。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【空のペットボトル】

トラッシュルームのゴミ箱に捨ててあった。

 

 

 

「知崎君は?」

 

「あのねあのね!僕は一応保健室を見てきたんだけどね!睡眠薬が減ってたんだよ!何でだろうね?知ってる?不思議〜!」

 

睡眠薬が…?

事件と関係あるかもしれないから、一応覚えといた方が良さそうね。

すると知崎君が、私に詰め寄って話しかけてきた。

 

「ねえねえ!緋色ちゃん!睡眠薬って、溶かすと青色になるんだよ!知ってた?不思議だよね!」

 

「ああ、知ってるわよ。睡眠薬を悪用した性犯罪を防ぐ為に最近色のついた睡眠薬が出回るようになったのよね。まあ全部の睡眠薬が色が変わるわけじゃないけど…」

 

「でも少なくとも保健室の睡眠薬は青くなるやつだったよね?」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【保健室の睡眠薬】

保健室の睡眠薬が無くなっていた。

睡眠薬は水に溶かすと青くなる。

 

 

 

…あれ?

そういえば昨日の夜食峰君と小鳥遊さんが振る舞ってくれたのって、ソーダゼリーとマロウブルーだったわよね?

どっちも青みが強い飲食物だったけど…まさかね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【昨晩のデザート】

動機発表後に食峰君と小鳥遊さんがデザートを振舞ってくれた。

出てきたのはソーダゼリーとマロウブルーで、どちらも青みが強い飲食物。

 

 

 

「ねえ知崎君。昨日購買部で寝ていたみたいだけど、何があったの?」

 

「ああ、それなんだけどね!ゼリー食べた後に購買部で遊んでたら、急に眠たくなってさぁ!部屋に戻ろうとしたんだけど間に合わなくて、ぐっすり寝ちゃったんだ。で、起きたら電子生徒手帳が無くなってたんだよ!」

 

ゼリーを食べたら急に眠くなって、起きたら電子生徒手帳が無くなってた…

それって、ゼリーに睡眠薬が盛られていて、寝ている間に電子生徒手帳を盗まれたって事かしら?

事件の重要な手掛かりになりそうね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【知崎君の証言】

ソーダゼリーを食べてから購買部で遊んでいたら急に眠気に襲われたらしい。

目が覚めたら、電子生徒手帳が無くなっていた。

 

 

 

「なるほど…」

 

あれ?

でも知崎君って、あの場に並べられたゼリーから一個取って食べたのよね?

他の皆はゼリーを食べても眠くならなかったみたいだし、知崎君のゼリーにだけ睡眠薬が入ってたと見て間違いなさそうなのだけれど…

…でもそうだとすると、どうして知崎君の分のゼリーだけ睡眠薬が入っていたのかしら?

 

「どうしたの、腐和さん?」

 

「いや…どうして知崎君だけ睡眠薬入りのゼリーを食べたんだろうって。他の皆が食べたのは普通のゼリーだったのに」

 

「うーん、犯人が小鳥遊さんに盛るはずだったのに、知崎君が間違えて食べちゃったとか?」

 

「でもゼリーには目印なんて無かったわよね?小鳥遊さんに盛るつもりだったんだとしたら、色々詰めが甘すぎない?」

 

「それもそっか…全部見た目が同じゼリーなら、どれに睡眠薬が入ってるかなんてわからないもんね」

 

「違うよ!」

 

「え?」

 

私と秋山君が話していると、知崎君が割り込んでくる。

 

「あのね、ボクが食べたやつだけちょっと大きかったんだよ。一番でっかいやつは絶対取らなきゃって思って最初に取ったから覚えてるもん!」

 

そんなわけ…

だって、あの時用意したゼリーは全員同じ大きさだったはず…

………!

まさか…!

 

「あっ、腐和さんどうしたの?」

 

私は、厨房に駆け込んでゼリー用のお皿を人数分出し、小鳥遊さんのゼリーの並べ方を再現した。

6つのお皿で円を作り、その隣に同じ枚数のお皿で一回り大きい円を作る。

その中心に、お皿を置いた。

…なるほど、そういう事だったのね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ゼリーの並べ方】

それぞれ6つのお皿で大きさの異なる円を作り、その中心に一つずつゼリーのお皿が置かれていた。

 

 

 

「腐和さん、一人で笑ってるけどどうしたの?」

 

「いえ、ちょっとね。わかったのよ。どうして知崎君だけ睡眠薬入りのゼリーを選んでしまったのか、そして誰がゼリーに睡眠薬を盛ったのかがね。その方法だけどまずは………

 

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『えー、もう待ちくたびれたので捜査時間を打ち切らせていただきます!オマエラ、校舎1階の赤い扉の前まで集合して下さい!あ、もちろん全員参加だからね?15分以内に来ないとオシオキしますよー!』

 

ああもう、今いいとこだったのに。

ホント間が悪いわね。

 

「ごめんなさい、詳しい事は裁判中に話すわ。とりあえず急ぎましょう」

 

「あ、うん…」

 

「えーなになに気になるー!」

 

私は、秋山君、知崎君、目野さんと一緒にすぐに赤い扉に向かった。

 

 

 

ーーー 赤い扉の前 ーーー

 

赤い扉の前には、既に他の人達が集合していた。

私達が全員集まると、その直後アナウンスからちょうど15分になった。

すると赤い扉が開き、私はエレベーターに乗り込んだ。

全員がエレベーターに乗り込むと、扉が閉まり下へ移動した。

 

エレベーターは静かに下へ下へと降りていき…そして、止まった。

またあの裁判場への扉が開く。

だが今回は、前回と風景が違っていた。

白く無機質だった前回の裁判場とは異なり、まるで海の中を思わせるデザインになっていた。

…水場で亡くなった小鳥遊さんを嘲っているのだろうか。

 

ネロと私の間の席に新たに置かれた響さんの遺影。

彼女の遺影には、クロスしたマイクが描かれていた。

そして、聖蘭さんの席と館井君の席の間には、赤い+が書かれた小鳥遊さんの遺影が置かれていた。

 

小鳥遊さん……

結局最期まで彼女とはお話できなかったけど、誰よりも心優しい人だった。

そんな彼女を殺した犯人が、この中にいる。

私が、絶対に犯人を見つけてみせる!!

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り13名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

以上3名

 

 

 

 

 




今回はコトダマ30個オーバーw
二章からこんなにコトダマづくしで大丈夫?


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非日常編②(学級裁判前編)

コトダマリスト

 

【モノクマファイル②】

被害者は【超高校級の獣医】小鳥遊由。

死亡推定時刻は12時20分頃。

死体発見場所は校舎2Fのプール内。

死因は脳挫傷。

頭蓋骨が陥没しており、首が切断されている。

 

【秋山君の証言】

12時頃、秋山君は越目君、聖蘭さんと一緒に倉庫で知崎君の指輪型電子生徒手帳を探していた。

ただし、越目君はトイレに行く為に15分程度、聖蘭さんは着替えをしに40分以上手帳探しを抜けている。

 

【夜時間中のプールの入室】

原則として禁止されている。

ただしプールに入った事になるのは、『プールサイドかプールの水面に身体の一部がついた瞬間』。

 

【指輪型の電子生徒手帳】

プールサイドの排水溝に落ちていた。

電子生徒手帳は一度外すと約2時間で電池切れになり、充電が貯まるまで3時間以上かかる。

 

【メッセージのログ】

午前9時半に小鳥遊さんが私にメッセージを返してくれている。

小鳥遊さんは、少なくとも午前9時半までは生きていた…?

 

【プールの旗】

プールによくかかっている青と黄色の三角の旗。

管理室に落ちていた。

 

【ダンベル】

トレーニングルームにあったダンベル。

よく見ると血がついている。

 

【浮き輪】

更衣室前ホームにあった浮き輪。

よく見ると血がついている。

 

【消えたロープ】

更衣室前ホールにあったロープが一本なくなっていた。

 

【使われた痕跡のあるロープ】

更衣室前ホールにあったロープが使われた形跡があった。

 

【プールにかけられたロープ】

ちょうど管理室の窓の真下にロープがかけられていた。

 

【管理室の窓】

管理室の窓は、ちょうどプールを見下ろせる位置にある。

高さ的に、かなり身を乗り出せばギリギリ真下のロープに触れる。

 

【加賀君の検視結果】

小鳥遊さんはかなり重量のある鈍器で頭を殴られたと思われる。

 

【遺体の状態】

死亡推定時刻は12時間以上前なのに、何故か顔だけが綺麗な状態で見つかっている。

 

【小鳥遊さんの頬のベタベタ】

小鳥遊さんの頬には、プールの水とは違ったベタつきがあった。

 

【遺体付近の血痕】

血の乾き具合にばらつきがある。

まるで血が飛び散った上からさらに血が飛び散ったみたいだ。

 

【小鳥遊さんの電子生徒手帳】

何故か小鳥遊さんの遺体には電子生徒手帳が無かった。

 

【小鳥遊さんのリュック】

何故か内側が血まみれになっている。

 

【ハンマー】

女子更衣室に落ちていた。

知崎君の工具セットに入っていたもの。

 

【二代目ジャック・ザ・リッパー】

図書室の書庫のファイルに記載があった殺人鬼。

この殺人鬼の犯行手口を知っているのは、私と越目君だけ。

 

【チェーンソー】

技術室にあったチェーンソー。

血がついている。

おそらく、小鳥遊さんの首を切断したものと思われる。

 

【グラビアアイドルのポスター】

スタイル抜群のグラビアアイドルにモノクマの顔がコラージュされた気色悪いグロ画像。

よく見ると血がついている。

 

【校則の十五番目の項目】

男子更衣室に女子の、女子更衣室に男子の電子生徒手帳を使って入る事は禁止されている。

ただし捜査時間中は例外。

 

【校則の十六番目の項目】

電子生徒手帳の貸与は禁止されている。

 

【ジャック・ザ・リッパーの犯行手口】

被害者はいずれも10歳以下の子供か40歳以下の女性で、死因はいずれも刃物で頸動脈を切りつけられた事による失血死。

いずれの被害者も犯行現場付近で首が晒されているのを発見されているが、胴体は見つかっていない。

 

【輸血パック】

小鳥遊さんの研究室に置いてあったもの。

1つなくなっていた。

 

【マナの証言】

昨日の夜時間前、小鳥遊さんが倉庫にあった水のペットボトルを持ち出してプールに運んでいた。

 

【焼けたレインコート】

倉庫にあったレインコート。

トラッシュルームの焼却炉に捨ててあった。

 

【血のついたパック】

トラッシュルームの焼却炉に捨ててあった。

ラベルが焼けてしまっている。

 

【空のペットボトル】

トラッシュルームのゴミ箱に捨ててあった。

 

【保健室の睡眠薬】

保健室の睡眠薬が無くなっていた。

睡眠薬は水に溶かすと青くなる。

 

【昨晩のデザート】

動機発表後に食峰君と小鳥遊さんがデザートを振舞ってくれた。

出てきたのはソーダゼリーとマロウブルーで、どちらも青みが強い飲食物。

 

【知崎君の証言】

ソーダゼリーを食べてから購買部で遊んでいたら急に眠気に襲われたらしい。

目が覚めたら、電子生徒手帳が無くなっていた。 

 

【ゼリーの並べ方】

それぞれ6つのお皿で大きさの異なる円を作り、その中心に一つずつゼリーのお皿が置かれていた。

 

 

 


 

 

 

『ヘイヘイヘーイ!!!全員席についたなァ!!!』

 

『それでは、始めましょうか!お待ちかねの学級裁判を!』

 

 

 

《学級裁判 開廷!》

 

 

 

モノクマ『ではまず裁判の簡単な説明をしておきましょう。学級裁判では『仲間を殺した犯人は誰か』について議論をし、その結果はオマエラの投票によって決まります!』

 

モノDJ『もし正解ならクロのみがオシオキ!!不正解ならクロのみが『卒業』、それ以外の全員がオシオキだぜYEAH!!!!』

 

秋山「うーん、今回は何から話し合おうか?」

 

腐和「そうね。今回も死因はわかってるんだし、まずは事件の概要から話し合わない?」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

秋山「今回も俺がファイルを読むね。被害者は《【超高校級の獣医】小鳥遊由》。死亡推定時刻は《12時20分頃》。死体発見場所は《校舎2Fのプール》」

 

目野「今回も特に前回と違うところはなさそうですね!」

 

秋山「死因は《脳挫傷》。頭蓋骨が陥没しており、首が切断されている」

 

闇内「脳挫傷…となると、死因は《撲殺》でござるか!」

 

越目「じゃあ凶器は《ハンマー》とかか?」

 

ちょっと待って、今の発言はおかしくない?

 

 

 

《ハンマー》⬅︎【加賀君の検視結果】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

越目「んん?オレが変な事言ったか?」

 

腐和「小鳥遊さんを撲殺した凶器はハンマーじゃないと思うわ。そうでしょ、加賀君?」

 

加賀「ああ。小鳥遊の頭部の負傷は、明らかにハンマーで殴った時の負傷とは違った。あれはもっと重くて大きな物で殴った時にできる傷だ。少なくとも、腐和以外の女子が片手で振り回せるような鈍器ではない事は確実だ」

 

越目「あっ…そうなのか。悪い」

 

聖蘭「ハンマーより重くて大きな鈍器…何でしょうか?」

 

腐和「じゃあ次は凶器について議論しましょうか」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

聲伽「えっと…《消火器》でガツン!とか?」

 

知崎「あーわかった!技術室にあった《プレス機》じゃないの!?」

 

秋山「まずそもそも重すぎて持ち歩けないんじゃないかな」

 

食峰「トレーニングルームの《ダンベル》とかじゃねえかな!」

 

館井「《パイプ椅子》…ではないか」

 

加賀「頭蓋骨を陥没させるには重さが足りないと思うが」

 

あの人の意見に賛成したい。

 

 

 

《ダンベル》⬅︎【ダンベル】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「凶器はダンベルだと思うわ。実際、トレーニングルームから血のついたダンベルが見つかってるしね」

 

目野「物騒ですねぇ!」

 

闇内「うむ、では小鳥遊嬢はダンベルで撲殺されてから首を切断されたと…そういう事でござるな?」

 

聲伽「でも、小鳥遊ちゃんん首ば切り落とすとに何ば使うたっちゃろうね?」

 

目野「や、闇内さんアナタまさか…!その刀で…!」

 

闇内「せ、拙者は無実でござる!」

 

小鳥遊さんの首を切り落としたもの…

それって…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【チェーンソー】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「犯人は、技術室のチェーンソーで小鳥遊さんの首を落としたんだと思うわ」

 

古城「ああ、確かに女子更衣室に技術室のチェーンソーが捨ててあったな!」

 

闇内「な、何と…!」

 

館井「小鳥遊の胴体は女子更衣室にあったし、犯行現場は女子更衣室か?」

 

越目「あれっ?でもそうすると、犯人わかっちまわねーか?」

 

知崎「えーっ、だれだれ!?」

 

越目「聖蘭ちゃんだよ」

 

聖蘭「なっ……!?」

 

越目「実はさ、聖蘭ちゃん、オレと秋山と一緒に倉庫で知崎の野郎の電気生徒手帳を探してたんだけど、何か着替えるとか言って途中で抜けたんだよな。もしかして、その時殺したんじゃ…」

 

聖蘭「違いますわ!!それは、えっと…捜索中にお洋服が汚れてしまったからで…」

 

越目「でも着替えに40分もかかるか?」

 

聖蘭「ですから本当にお着替えしていたんです!そもそも、私に小鳥遊様を殺す理由が無いではありませんの!」

 

館井「いやしかし…越目の言っている事が本当なら、聖蘭には実際犯行可能という事になってしまうしな。秋山、そこら辺はどうなのだ?」

 

秋山「越目君の証言は正しいよ。聖蘭さんが犯人かどうかは置いといて」

 

ネロ「ほら議長様、何ぼさっとしてんだ。ガキ共が騒いでんぞ」

 

腐和「ええと…そうね。じゃあまず、事件当時のアリバイを明らかにしましょうか」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

古城「ワシか?闇内と一緒に《校舎の1階を調べておったが》!?」

 

目野「アタクシですか!?加賀さんと一緒に《研究棟を調べてました》!!ええ!!」

 

聲伽「うちは緋色ちゃんと知崎君と一緒に《図書室ば調べとった》よ!」

 

ネロ「見事にマリア以外の女子には《アリバイがある》な」

 

聖蘭「そ、そんな…!」

 

越目「だから言ったろ!倉庫を抜けて《一人になってたのは聖蘭ちゃんだけ》なんだよ!」

 

ちょっと待って、それは違うんじゃない…?

 

 

 

《一人になってたのは聖蘭ちゃんだけ》⬅︎【秋山君の証言】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「犯行時間の前後に倉庫を抜けたのは、聖蘭さんだけじゃないわよ。越目君、あなただって倉庫を抜けてトイレに行ってるでしょ?」

 

聖蘭「あ…!」

 

秋山「うん、確かに15分くらいトイレ休憩しに倉庫を抜け出してたね」

 

越目「け、けどよ!たったの15分じゃ小鳥遊ちゃんを殺して首を切り落として倉庫に戻ってくんのは無理だろ!?第一オレは男だし!!」

 

闇内「うむ、確かに…」

 

古城「じゃあ犯人は聖蘭で決まりじゃな!」

 

腐和「ちょっと待って、そもそも犯人は本当に女子なのかしら?」

 

加賀「…何?」

 

腐和「そもそも、犯人が女子だっていう前提を考え直す必要があるんじゃないかしら?」

 

 

 

ーーー 議論開始 ーーー

 

 

 

館井「正直言って、犯人は《女子以外あり得ない》と思うが?」

 

ネロ「まあ《あのルール》がある以上はな」

 

聖蘭「だからって…!私は《犯人ではありません》!」

 

知崎「でも女子でアリバイ無いのは《マリアおねえだけ》だよね?」

 

闇内「《男子は女子更衣室には入れぬ》以上、犯人は聖蘭嬢になってしまうでござるな」

 

本当にそうだったかしら…?

 

 

 

《男子は女子更衣室には入れぬ》⬅︎【校則の十五番目の項目】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「男子でも女子更衣室に入れるわよ」

 

古城「なっ!?何ィイイイ!!?」

 

腐和「校則で禁止されているのは、あくまで女子更衣室に男子の電子生徒手帳を使う事だけよ。女子の電子生徒手帳を使えば、男子でも女子更衣室に入れるわ」

 

加賀「…なるほどな」

 

 

 

闇内「その推理、斬ってみせようぞ!」

 

《反 論》

 

 

 

腐和「闇内君?」

 

闇内「甘い!甘いでござるよ腐和嬢!そんな甘い推理では、足元を掬われるで候!拙者が斬り伏せる所存!!」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

闇内「お主は、女子の電子生徒手帳を使えば男子でも女子更衣室に入れると申したでござるな!?」

 

腐和「言ったけど。聖蘭さんが嘘をついてるとも思えないし、もうその可能性しかないと思うわ」

 

闇内「それが甘いと言っておるのでござる!校則の15番目の項目をよく見てみよ!電子生徒手帳の貸し出しはできないと書いてあるではござらぬか!!そもそも、《他人の電子生徒手帳は使えない》のではござらぬか!?やはり、聖蘭嬢が女子更衣室で小鳥遊嬢を殺して首を切断したのでござる!そうとしか考えられぬでござるよ!」

 

確かに、一見彼が間違った事を言っているとは思えない。

でもあるのよ、ルールの穴が!

 

《他人の電子生徒手帳は使えない》⬅︎【校則の十六番目の項目】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「別に他人の電子生徒手帳を使えないだなんて一言も書いてないわよ?」

 

闇内「な、何ぃ!?」

 

腐和「禁止されてるのは、あくまで『電子生徒手帳の貸与』よ。貸すのはダメだけど、盗むのはいいのよ」

 

闇内「それは真でござるか!?」

 

モノDJ『YEAH!ヒーローガールの言う通り、ルール違反はあくまで貸与だけだからな!!盗む分には別に構わねえぜ!!』

 

腐和「だそうよ?これで、男子にも犯行が可能って事になったわね」

 

闇内「な…な……!そうだったのでござるか…!拙者、何たる不覚…!そういう事なら拙者も真似すれば良かった…!」

 

加賀「これで男子にも犯行が可能だと証明されたわけだが…犯人はまあ十中八九男子だろうな。女子更衣室に死体を放置しておく時点で犯人はあからさまに女子を犯人にしたい魂胆が見え見えだし、仮に聖蘭が犯人なら40分も単独行動をとっていて『何も知りませんでした』なんて言い訳が通用しないのはわかってるはずだ」

 

秋山「でも聖蘭さん、そうなると40分以上も何をしてたの?」

 

聖蘭「…ええとですね。お洋服が汚れてしまったので、お洗濯をしていたのと…汚い格好で戻るのもお二人に申し訳ないと思いシャワーを浴びていたのですわ。紛らわしい事をしてしまい申し訳ございませんでした」

 

秋山「いや、そういう事なら全然いいんだよ。まさか着替えている間に殺人事件が起こるなんて思わないもんね」

 

目野「でも犯人の男子が使った女子の電子生徒手帳って、結局誰のだったんでしょうね?」

 

腐和「それは…」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【小鳥遊さんの電子生徒手帳】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「恐らく、小鳥遊さんの電子生徒手帳だと思うわ」

 

知崎「えっ、それってつまりどーゆー事?」

 

腐和「つまり、犯人は別の場所で小鳥遊さんを撲殺してから、小鳥遊さんの電子生徒手帳で女子更衣室の扉を開けたの。そして小鳥遊さんの遺体を女子更衣室に運び込んで、女子更衣室で首を切断し、首だけをプールに放り込んだのよ。そうすれば、女子を犯人にする事ができるでしょ?」

 

目野「じゃあ小鳥遊さんが撲殺された場所はどこだっていうんですか!」

 

腐和「その場所には心当たりがあるわ。実は、女子更衣室に手掛かりがあったのよ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【グラビアアイドルのポスター】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「女子更衣室に、グロ画ぞ…もとい、血のついたモノクマのグラビアアイドルのポスターが貼ってあったの」

 

目野「それが何だというのですか!」

 

腐和「よく思い出して。女子更衣室のポスターは、モノDJの男性アイドルユニットのポスターだったはずでしょ?」

 

聖蘭「あ、そういえば」

 

ネロ「クマ公とグラビアアイドルのグロコラ画像は男子更衣室のポスターだったな」

 

秋山「じゃあ、まさか…」

 

腐和「そうよ。事件前と事件後で、男子更衣室と女子更衣室のポスターが入れ替わってるの。つまり、小鳥遊さんが殺されたのは男子更衣室だったのよ」

 

聲伽「ええ!?ちょ、ちょっと待ってよ!なして男子更衣室のポスターが女子更衣室にあると!?」

 

腐和「おそらく、小鳥遊さんを殴り殺した時にポスターに血が飛んでしまったのでしょうね。男子更衣室に血のついたポスターがあったら犯人が男だとバレてしまうから、ポスターを入れ替えたのよ」

 

聲伽「いや、そうじゃなくて!なして小鳥遊ちゃんは男子更衣室で殺しゃれたと!?だって、小鳥遊ちゃんは女子やろ!?」

 

知崎「あー、わかった!由おねえは性別の壁を超えたニューカマーだったんだ!きっとそうに違いない!」

 

目野「な、何と!?そうだったのですか!?」

 

古城「うむ!今は多様性の時代じゃからのぅ!」

 

ネロ「んなわけねえだろ。真面目に考えねえと指詰めんぞバカガキ共」

 

加賀「…ああ、何だ。そういう事か」

 

食峰「えっ、何?何かわかったのか?」

 

加賀「腐和緋色。君は今、向き合うべき事実から目を背けているだろう」

 

腐和「え…?」

 

加賀「とぼけるな。君はもうわかってるはずだ」

 

 

 

 

 

加賀「小鳥遊由は、殺人を企てていたんじゃないのか?」

 

腐和「…………!!」

 

言われてしまった。

私も、本当はわかっていた。

小鳥遊さんが殺人を計画していたという事実に、気付いていた。

でも、認めたくなかった。

あの小鳥遊さんが、誰かを殺そうとしていただなんて…

だけど、この事実を明らかにしなければ、先には進めない。

 

聲伽「えっ、小鳥遊ちゃんが…?どういう事…?」

 

腐和「そのままの意味よ。小鳥遊さんは、男子更衣室で犯人を殺して、男子を犯人にしようとしていたの」

 

古城「ちょっ、ちょっと待てい!!何故小鳥遊が殺人を企ててたと言い切れるんじゃ!?」

 

腐和「それを今から証明するわ」

 

 

 

小鳥遊が男子更衣室に行った目的は?

 

1.盗撮

2.サプライズ

3.殺人

 

➡︎3.殺人

 

 

 

小鳥遊はどうやって男子更衣室に入った?

 

1.男子の電子生徒手帳を盗んだ

2.男装した

3.撃たれる前にダッシュで逃げた

 

➡︎1.男子の生徒手帳を盗んだ

 

 

 

犯人が小鳥遊を殺した理由は?

 

1.嫌いだったから

2.襲われたから反撃した

3.外に出るため

 

➡︎2.襲われたから反撃した

 

《COMPLETE!!》

 

 

 

腐和「わかったわ!」

 

聲伽「えっ!?本当!?」

 

腐和「まず、小鳥遊さんは犯行現場を男子更衣室に選んで犯人を殺そうとしたの。その為に男子の電子生徒手帳を盗んだのよ。男子の生徒手帳を使って男子更衣室に入った小鳥遊さんは、中にいた犯人を殺す為に襲いかかったの。犯人はその時、トレーニングでもしてたんでしょうね。いきなり襲いかかってきた小鳥遊さんに驚いて、ダンベルで殴り殺してしまったのよ」

 

聖蘭「そんな…!」

 

聲伽「でも、結局小鳥遊ちゃんが盗んだ電子生徒手帳って誰んやったと?」

 

腐和「それは……」

 

 

 

《人物指定》

 

 

 

腐和緋色

 

聲伽愛

 

玉越翼

 

小鳥遊由

 

知崎蓮

 

食峰満

 

越目粧太

 

聖蘭マリア

 

古城いろは

 

加賀久遠

 

目野美香子

 

館井建次郎

 

秋山楽斗

 

響歌音

 

ネロ・ヴィアラッテア

 

闇内忍

 

 

 

 

 

➡︎知崎蓮

 

 

 

腐和「知崎君、あなたの電子生徒手帳じゃない?」

 

知崎「えー、ボクの?不思議不思議〜!」

 

秋山「そういえば、知崎君の電子生徒手帳が無いって言って皆探してたもんね」

 

腐和「ええ。恐らく、男子更衣室に入る為に小鳥遊さんが盗んだのよ。次は、知崎君の電子生徒手帳がいつどうやって盗まれたのか議論しましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

越目「そもそもよぉ、テメェがちゃんとしてれば《手帳は盗まれなかった》んじゃねえの?」

 

知崎「そんな事言われたって…!《寝てたら失くなってた》んだもん!」

 

加賀「《寝ている間に盗まれた》という事か?」

 

知崎「そうだよ!」

 

秋山「ええっと、知崎君は《購買部で寝てた》んだよね?そもそも何で購買部で寝てたの?」

 

知崎「だって急に《眠くなった》んだもん!!」

 

ネロ「じゃあ盗まれたのは《てめぇの過失》じゃねえか。てめぇがきちんと危機管理してりゃあ、手帳は盗まれなかったんだろが」

 

知崎「だってえええ!!!」

 

うーん、これに関しては知崎君が悪いわけじゃないと思うわ。

 

 

 

《てめぇの過失》⬅︎【保健室の睡眠薬】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「いえ、これは知崎君がどんなに気をつけてても防げた事じゃなかったと思うの。知崎君は、睡眠薬を盛られて眠らされたのよ」

 

ネロ「何?」

 

腐和「保健室の睡眠薬が減ってたのよ。恐らく、保健室の睡眠薬を使ったんでしょうね」

 

古城「す、睡眠薬じゃと!?そんなものいつ盛られたのじゃあ!!」

 

 

 

ーーー 議論開始 ーーー

 

 

 

古城「わかったわい!タコパの時の《たこ焼き》に盛ったんじゃな!?」

 

ネロ「そもそも動機が発表される前じゃねえかよバカガキ」

 

館井「《注射器》で注入したとかはどうだ?」

 

知崎「注射なんてされてないよ!」

 

加賀「食峰と小鳥遊が振る舞った《デザート》が怪しそうだが」

 

 

 

《デザート》⬅︎【知崎君の証言】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「睡眠薬が盛られたのはゼリーで間違いないと思うわ。知崎君はゼリーを食べて購買部で遊んでたら眠くなったらしいからね」

 

古城「な、何じゃと!?」

 

ネロ「ゼリーといい茶といい、あのタイミングで菓子を出してくる時点で何か怪しいとは思ってたが…あんなもの食うんじゃなかったな」

 

食峰「なっ…!!由を悪く言うんじゃねえ!!由は、皆を元気付けるために…」

 

ネロ「でも実際薬は盛られてんじゃねえか」

 

腐和「そうね。今思えば、小鳥遊さんが皆にゼリーを振る舞う提案をしたのは、知崎君に睡眠薬を盛る体のいい口実を作るためでしょうね」

 

 

 

聖蘭「主に背く不届き者に裁きを!!」

 

《反 論》

 

 

 

聖蘭「食峰様の仰る通りですわ!皆さん、あんなに心優しかった小鳥遊様を寄ってたかって疑って…酷いですわ!」

 

腐和「聖蘭さん。認めたくないかもしれないけど、皆を信じるだけじゃ真実には辿り着けないのよ」

 

聖蘭「嫌!!嫌ですわ!!私はもう、皆様を疑いたくはありませんの!!」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

聖蘭「そもそも、知崎様が眠くなったと証言したのだって、自己申告でしょう!?小鳥遊様が睡眠薬を盛ったという証拠にはなりませんわ!!」

 

腐和「こんな状況で嘘をついたって何の得にもならない事くらい、知崎君だってわかってるはずよ。実際手帳は盗まれてるわけだし」

 

聖蘭「それが何だというのですか!!小鳥遊様が睡眠薬を盛ったという物的証拠ではないではありませんか!!この施設には、他にも食材が山程あります!!睡眠薬を盛ろうと思えば、別の食材にだって睡眠薬を盛る事は可能ですわ!!小鳥遊様のゼリーに睡眠薬が盛られたという《根拠でもあるのですか》!?」

 

根拠、か…

これしか無さそうね。

 

《根拠でもあるのですか》⬅︎【昨晩のデザート】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「聖蘭さん、昨日小鳥遊さんがソーダゼリーとマロウブルーを振る舞ってくれたのを覚えてるかしら?」

 

聖蘭「それがどうしたのですか!!」

 

腐和「保健室の睡眠薬は水に溶かすと青色になるのよ。そして、昨日振る舞われたゼリーとハーブティーは、どっちも青みが強い飲食物だった。ソーダゼリーの材料のブルーハワイシロップに睡眠薬を混ぜてしまえば、中に睡眠薬が入っていても気付かないでしょう?」

 

聖蘭「あ……!」

 

館井「睡眠薬が盛られたのは青みの強いゼリーかハーブティーで、知崎が食べたのはゼリーだけだから必然的にゼリーの方に睡眠薬が盛られていたという事になるのか…」

 

越目「でも、青いお茶まで出してきたのは何でだったんだ?」

 

腐和「おそらく、水に溶かすと青くなる睡眠薬について言及があった時、何に睡眠薬が盛られていたのかを有耶無耶にする為でしょうね。私と聖蘭さんにゼリーとマロウブルーを運ばせたのも、万が一女子が犯人だってなった時に私達をスケープゴートにする為だったのね。小鳥遊さんは、男子更衣室で殺人をしたら女子が疑われる事、そして知崎君の証言から睡眠薬が議論の話題に上がる事まで読んでいたのよ」

 

越目「マジか…頭良すぎじゃね?逆に怖えな」

 

聲伽「え、でもちょっと待ってよ!知崎くんは、全員分んゼリーが並んだトレイから一個選んで取ったんやろ?知崎くんがどんゼリーば選ぶかはわからんのやなかと?」

 

腐和「そう、小鳥遊さんはそこまで計算済みだったのでしょうね。知崎君に14個もあるゼリーの中から睡眠薬入りのゼリーを食べさせる方法がわからない以上、私達はゼリーを運んだ聖蘭さんを疑わざるを得なくなるからね。そうやって何重にも対策を練ってたのよ」

 

秋山「腐和さん、君は小鳥遊さんがどうやって知崎君に睡眠薬入りのゼリーを食べさせたのかわかってるんだよね?」

 

腐和「ええ」

 

そのヒントは、あるものに隠されていたはず。

あの時の事をよく思い出すのよ、私…!

 

 

 

コトダマ提示!

 

【ゼリーの並べ方】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「小鳥遊さんは、確実に知崎君が睡眠薬入りのゼリーを選ぶように、配置を工夫したのよ」

 

秋山「でも配置を変えたところで、見た目が全く同じゼリーだよね?」

 

腐和「実は、小鳥遊さんのゼリーの並べ方には、ある仕掛けが隠されていたの。その仕掛けを利用すれば、知崎君が睡眠薬入りのゼリーを選ぶように誘導できるわ」

 

知崎君が睡眠薬入りのゼリーを選ぶよう誘導した方法…

それは…

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

サ ク シ

 

 

 

【錯視】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「錯視よ。小鳥遊さんは、錯視を使って知崎君を誘導したの」

 

越目「は…はああああ!!?」

 

腐和「今から小鳥遊さんがどうやってゼリーを並べたのかを再現するわね」

 

私は、小鳥遊さんがやった並べ方を、そのまま再現して皆に見せた。

皆から見て右側に6つのお皿を環状に並べ、その中心にお皿を置く。

さらに、その左側に6つのお皿で一回り大きい輪を作り、その中心にお皿を置いた。

 

腐和「はい。どれが一番大きい?」

 

食峰「え?そりゃあ、右の輪っかの真ん中にあるやつだろ?」

 

聲伽「だよね」

 

腐和「そう?じゃあこうしてもそう見える?」

 

私は、それぞれの輪の中心のお皿を持ち上げて、同じ高さで皆に見せた。

 

古城「な、何ィ!!?同じ大きさじゃと!?」

 

闇内「完全に騙されたでござる…!」

 

腐和「これはデルブーフ錯視っていってね。大きな輪で囲まれたものは小さく、小さな輪で囲まれたものは大きく見えるのよ。小鳥遊さんは、知崎君が少しでも大きいものを選んで最初に取っちゃう意地汚い人なのを知ってたから、一番大きく見える位置に睡眠薬入りのゼリーを置いて知崎君に取らせたのよ」

 

加賀「なるほどな…これなら、意地汚い知崎ならほぼ確実に睡眠薬入りゼリーを選ぶが、蓋然的な要素に頼ったトリックだからどうとでも言い逃れができてしまうというわけか。考えたな」

 

秋山「まあ知崎君は意地汚いから小鳥遊さんの罠に嵌っちゃっても仕方ないね」

 

ネロ「ま、そこまで用意周到に予防線張っといて殺されてるんじゃざまあねぇけどな。にしてもやっぱりクソガキは意地汚ねぇな」

 

知崎「皆して意地汚いって酷いなあ!ああそうだよ、一番大きく見えるやつを取りました!悪い!?」

 

越目「うわ、開き直りやがったぞコイツ」

 

聖蘭「そ、そんな、嘘ですわ…!小鳥遊様が殺人を計画していらしたなんて…!私は信じませんわ!」

 

腐和「聖蘭さん。残念だけど、小鳥遊さんが殺人を計画していたって根拠はこれだけじゃないのよ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【ハンマー】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「小鳥遊さんの遺体の近くにハンマーが置いてあったの。あれは多分、小鳥遊さんが犯人を撲殺しようとした凶器よ」

 

聖蘭「な、何ですって!?」

 

聲伽「なして遺体ん近くに置いてあったハンマーが小鳥遊ちゃんの凶器だってわかると!?」

 

腐和「それを今から説明するわね」

 

 

 

女子更衣室のハンマーの元の持ち主は?

 

1.知崎蓮

2.小鳥遊由

3.真犯人

 

➡︎1.知崎蓮

 

 

 

女子更衣室のハンマーを使ったのは誰?

 

1.知崎蓮

2.小鳥遊由

3.真犯人

 

➡︎2.小鳥遊由

 

 

 

小鳥遊が知崎に睡眠薬を盛った目的は?

 

1.生徒手帳と凶器の窃盗

2.嫌がらせ

3.殺害

 

➡︎1.生徒手帳と凶器の窃盗

 

 

 

小鳥遊が知崎の凶器を使った理由は?

 

1.気まぐれ

2.手頃な凶器が無かったから

3.知崎を犯人に仕立て上げたかったから

 

➡︎3.知崎を犯人に仕立て上げたかったから

 

 

 

女子更衣室にハンマーを持ち込んだのは誰?

 

1.知崎蓮

2.小鳥遊由

3.真犯人

 

➡︎ 3.真犯人

 

 

 

犯人がハンマーを女子更衣室に放置した理由は?

 

1.片付けるのが面倒臭かったから

2.凶器をミスリードさせたかったから

3.回収するのを忘れていたから

 

➡︎2.凶器をミスリードさせたかったから

 

《COMPLETE!!》

 

 

 

腐和「わかったわ!」

 

聲伽「ほんと!?」

 

腐和「ええ。まず順番に説明するわね。女子更衣室にあったハンマーは、知崎君の工具セットから持ち出されたものだったの」

 

知崎「え!?そうなの!?」

 

闇内「それがどうして小鳥遊嬢が凶器として持ち出した事になるのでござるか?」

 

腐和「単純な話よ。あれが知崎君のハンマーだって時点で、小鳥遊さんが盗んだとしか考えられないの」

 

古城「何故じゃあ!!」

 

腐和「だって考えてもみてよ。犯人は、女子をスケープゴートにしたいのよ?わざわざ知崎君の工具セットからハンマーを持ち出して女子更衣室に放置する理由が無いでしょ?わざわざ男子が犯人ですって言ってるようなものだもの。あのハンマーは、知崎君を犯人にしたい小鳥遊さんが使ったものだったのよ。小鳥遊さんを撲殺した犯人は、小鳥遊さんの遺体を女子更衣室に移動させた後、あのハンマーをあの場に放置すれば凶器をミスリードさせられるんじゃないかと考えたんでしょうね」

 

館井「いや、しかし…真犯人が女子を犯人にしたいなら、尚更男子の工具セットのハンマーを放置するのは自殺行為なんじゃないか?男子が犯人だと言っているようなものなのに、どうしてそんな事を…」

 

腐和「恐らく犯人は、ハンマーに書かれていた知崎君の名前に気付かなくて、技術室から盗まれたものだと勘違いしたのよ。男子の工具セットのハンマーは、見た目は技術室にあったものとそっくりだからね。名前にさえ気づかなければ、技術室のハンマーと間違えても無理はないわ」

 

秋山「ええっと…じゃあ今までの話をまとめると、小鳥遊さんは錯視を利用して知崎君に睡眠薬入りゼリーを食べさせて、眠った知崎君から手帳と工具セットのハンマーを盗んで、知崎君の手帳で男子更衣室に入室。中にいた犯人を殺そうとしたけど、返り討ちに遭ってダンベルで殴り殺されて、手帳を奪われて女子更衣室に遺体を運び込まれた。犯人は技術室からチェーンソーを取りに行って、小鳥遊さんの首を切断。そして凶器をミスリードさせる為に小鳥遊さんが持っていたハンマーを女子更衣室に放置したと…こんなところかな?」

 

腐和「ええ。そんなところでしょうね」

 

目野「そうなると…男子で犯行時刻にアリバイが無い館井さん、食峰さん、ネロさん、越目さんが怪しいですかね!」

 

聲伽「あれ?でも越目くんて確か、知崎くんの手帳探し抜けとったんって15分だけやったよね?やったらノーカンでよかとやなか?」

 

確かに、今までの捜査情報を整理すると、犯人は食峰君、館井君、ネロの中にいる事になる。

…でも何かしら、この違和感は。

何か、大事な事を見落としているような…

 

 

 

知崎「えー、でもさ。そうすると由ちゃんメッチャアホじゃない?」

 

腐和「……え?」

 

知崎「だってさぁ!皆がボクの手帳探してる間に犯人殺しに行ったりなんかしたら、絶対誰かに見つかっちゃうじゃん!ボクが犯人なら、皆がボクの手帳探しに行ってる間なんか殺しに行ったりしないけどなぁ!」

 

…………!!

…なるほど、私がさっきから感じていた違和感の正体はこれだったのね。

 

腐和「…知崎君。それよ」

 

知崎「はにゃ?」

 

腐和「というか、私がバカだったわ。どうしてこんな単純な事に気付かなかったのかしら」

 

聲伽「…緋色ちゃん。そん顔は何かわかったんやね?」

 

腐和「ええ。この事件は、もっと根本的な事から考え直す必要があったのよ。もう一度、事件を振り返ってみましょう」

 

 

 

《学級裁判 中断!》

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り13名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

以上3名

 

 

 

 

 



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非日常編③(学級裁判後編)

 

《学級裁判 再開!》

 

腐和「とりあえず、事件の詳細についてもう一度振り返ってみましょう」

 

越目「振り返るっつっても、これ以上何を話し合うんだよ?」

 

腐和「そうね。じゃあ逆に聞くけど…」

 

 

 

腐和「小鳥遊さんが死んだのはいつだと思う?」

 

聲伽「え…?」

 

腐和「死亡時刻について、もう一度話し合う必要があるんじゃないかしらね」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

聲伽「いつ死んだかって…《お昼の12時過ぎ》やろ?」

 

古城「うむ!そうじゃな!」

 

秋山「もっとよく考えてみてよ。《何か見落とし》があるかもしれないよ」

 

越目「つってもよぉ…もうこれ以上《謎なんか無え》んじゃねえの?」

 

うーん…本当にそうなのかしら?

 

 

 

《お昼の12時過ぎ》⬅︎【遺体の状態】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「マナ、多分小鳥遊さんが死んだのは昼の12時じゃないと思うわ」

 

マナ「えっ!?」

 

腐和「加賀君の検視結果だと、死亡推定時刻は最低でも12時間前なの。昼の12時に死んだんだとすると、矛盾するでしょ?」

 

加賀「まあ死後12時間も経っている死体にしては顔が綺麗すぎるとは思ったが…死後硬直や死斑から判断したから間違いない」

 

腐和「そういう事。私も最初は勘違いしてたんだけど、小鳥遊さんが死んだのは昼の12時よりもっと前だったのよ。それを示す根拠もあるわ」

 

小鳥遊さんが昼間に亡くなったのだとするとおかしな点…

それは…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【遺体付近の血痕】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「小鳥遊さんの遺体の血よ。よく見ると、血の乾き方にばらつきがあったの。完全に乾ききっている場所と、まだ乾いていない場所があったの。昼の12時に殺されたんだとしたら、湿度の高い更衣室で溜まった血が完全に乾くなんて事、ないはずよね?」

 

加賀「確かに、まるで一度広がった血の上からまたさらに血が飛び散ったみたいな乾き方だったな」

 

聖蘭「でもそうだとすると、どうして血の上から血が飛び散ったりしたんでしょう?」

 

腐和「それは犯人の仕業でしょうね。犯人はあるものを使ったのよ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【輸血パック】【血のついたパック】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「トラッシュルームに、血のついたパックが捨ててあったの」

 

古城「それが何だというのじゃ!!」

 

腐和「捨ててあったのは多分、小鳥遊さんの研究室にあった輸血パックよ。犯人は、輸血パックの血を使って乾いた血を隠そうとしたのよ」

 

秋山「なるほどね…」

 

腐和「これで分かったわよね?小鳥遊さんは昼の12時よりもっと前に殺されていて、犯人は輸血パックの血を遺体にかける事で死亡推定時刻を誤認させようとしたんだわ」

 

 

 

聲伽「その言葉、斬っちゃうよ!」

 

《反 論》

 

 

 

聲伽「緋色ちゃん、それはおかしいよ!」

 

腐和「でも、検視結果と照らし合わせるとそうとしか考えられないわ。現に輸血パックだって使われてるわけだし…」

 

聲伽「わかった、そこまで言うなら証明しちゃる!」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

聲伽「小鳥遊ちゃんが殺しゃれたんな、やっぱりお昼ん12時ばい!」

 

腐和「でも加賀君は12時間以上前に死んでるって言ってるのよ?」

 

聲伽「そげんの、加賀くんがでたらめ言いよーだけかもしれなかろうもん!」

 

腐和「じゃあ輸血パックは?破れた輸血パックがトラッシュルームに捨てられてたのよ?」

 

聲伽「だからって犯行に使われたとは限らんばい!だって、モノクマファイルには《死亡推定時刻はお昼の12時》って書いてあるばい!こん事実がある以上、小鳥遊ちゃんがお昼ん12時に殺しゃれたんな紛れもなか事実ばい!!」

 

本当にモノクマファイルにはそう書いてあったかしら…?

 

《死亡推定時刻はお昼の12時》⬅︎【モノクマファイル②】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「マナ、やっぱり小鳥遊さんが死んだのはもっと前よ。モノクマファイルをよく見て?」

 

聲伽「見たよ!死亡推定時刻は12時20分だってちゃんと書いてあるばい!」

 

腐和「あのね、モノクマファイルには確かに『12時20分』とは書いてあったけど、()()()()()()()()()1()2()()2()0()()()は書いてないのよ!」

 

聲伽「あっ……!」

 

腐和「これでハッキリしたわね。小鳥遊さんが死んだのは、午前12時20分…つまり、夜中の12時だったのよ!」

 

聲伽「なっ…でも、12時20分っていったら普通お昼ん方やろ!?」

 

モノクマ『うぷぷぷ、そのファイルは何も前回と表記が一緒とは限らないよ。ボクは、その時の状況に応じてフレキシブルな対応をしているのです!』

 

腐和「だそうよ。これでハッキリしたわね」

 

聲伽「でも…でも…!やっぱりおかしいよ!だって、アレがあるやろ!?アレがあるけん、やっぱり小鳥遊ちゃんはお昼まで生きとったっちゃん!」

 

知崎「アレじゃわかんねーよ!ちゃんと言葉にしてよ!」

 

マナの言っているアレ…

もしかしてあれの事かしら?

 

 

 

コトダマ提示!

 

【メッセージのログ】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「マナが言っているアレって、朝食の時に小鳥遊さんから私宛に来たメッセージの返信じゃないの?」

 

聲伽「そう!緋色ちゃんに小鳥遊ちゃんからメッセージが来とーっちゃけん、そん時は小鳥遊ちゃんは生きとったんやなかと!?」

 

食峰「確かに…死んだ奴がメッセージ送れるわけねえしな」

 

闇内「双子だったとか…影武者がいたという可能性は?」

 

秋山「そんなわけないでしょ…」

 

古城「あ!わかったぞい!幽霊じゃ!小鳥遊の幽霊が送ったんじゃ!」

 

館井「……やめろ。俺はそういう話は本当に無理なんだ」

 

私宛に小鳥遊さんの電子生徒手帳からメッセージが送られてきた理由…

それって…

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

ハ ン ニ ン ガ ソ ウ サ シ タ

 

 

 

【犯人が操作した】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「簡単な話よ。私にメッセージを送ってきたのは、小鳥遊さんじゃなかったの」

 

聲伽「え?どういう事?」

 

腐和「思い出して。犯人は、小鳥遊さんの電子生徒手帳を奪って女子更衣室に入ったのよね?もし小鳥遊さんが夜中に死んだんだとしたら、小鳥遊さんの電子生徒手帳を持ってるのは誰かしら?」

 

聖蘭「ええと…犯人、ですわね」

 

腐和「そうよ。あのメッセージを送ったのは、小鳥遊さんの電子生徒手帳を持っていた犯人だったの。私達に死亡時刻が昼の12時だと思い込ませる為に、小鳥遊さんになりすましてメッセージを送ったのよ」

 

聲伽「そ、そんな…!」

 

ネロ「それが分かったのはいいけどよ。そうなると、プールに生首ぶち込んだのはいつだ?」

 

闇内「死亡時刻が夜だとすると、夜にプールに生首を持ち込んだ可能性もあるでござるな」

 

食峰「普通に昼なんじゃねえの?夜中にプールになんて誰も行かねえだろ?」

 

聖蘭「夜時間中は出歩いてはいけない決まりになっていましたものね」

 

秋山「それだと理由が弱いよ」

 

加賀「そもそもそのルールだって、1回目の殺人の時点で破綻してるしな」

 

腐和「また意見が割れちゃったわね」

 

館井「………嫌な予感がするんだが」

 

モノDJ『ヘイYOU!今意見が割れたっつったのかァン!?そんな時はオレ様達の出番なんじゃねぇのかなぁ!?』

 

モノクマ『うぷぷぷぷ、今回も変形裁判所の出番ですね!それでは早速始めましょう!レッツ変形!!』

 

 

 

《意見対立》

 

 

 

【プールに小鳥遊の生首が入れられたのは?】

 

昼間だ! 聲伽、古城、越目、食峰、聖蘭、目野

 

夜時間だ! 秋山、加賀、館井、知崎、ネロ、腐和、闇内

 

 

 

ー議論スクラム開始ー

 

古城「犯人は《昼》に生首をプールに入れたんじゃろ!」

 

「闇内君!」

 

闇内「小鳥遊嬢が殺害されたタイミングが夜なら、《昼》ではない可能性もござらぬか?」

 

目野「ですが夜時間中は《プール》に入れませんよねぇ!?」

 

「加賀君!」

 

加賀「夜時間中でも《プール》に生首を放り込む方法があるかもしれないだろ?」

 

食峰「そもそも夜時間中にプールに行く《理由》がねえじゃねえか!!」

 

「ネロ!」

 

ネロ「プールに生首入れて昼間の犯行だと思わせるっつー《理由》があるだろが」

 

聖蘭「《夜時間中》は部屋の外に出歩いてはいけないという事になっていたではありませんか」

 

「館井君!」

 

館井「…《夜時間中》に部屋の外に出たところで、校則違反の対象にはならんぞ」

 

越目「そもそも、《小鳥遊ちゃん》が夜に殺されたっていう前提が間違いなんじゃねえの?」

 

「秋山君!」

 

秋山「加賀君の検視結果だと《小鳥遊さん》は死後12時間以上経ってるんだから、殺されたのは夜だと思うよ」

 

聲伽「そうやとしたっちゃ、皆が知崎くんの電子生徒手帳ば探しよー間に《隙を見て》プールに首ば入れた可能性だってあるっちゃないと?」

 

「知崎くん!」

 

知崎「《隙を見て》プールに放り込むくらいなら、夜時間中に放り込んだ方がバレるリスクが少ないんじゃない?」

 

聲伽「でも、夜時間中に放り込んだんやとしたら、どげん《方法》で放り込んだっていうと!?」

 

「私が!」

 

腐和「その《方法》なら、今から議論すればいいんじゃないかしら?」

 

 

 

《全論破》

 

腐和「これが私達の答えよ!」

 

秋山「これが俺達の答えだよ」

 

加賀「これが俺達の答えだ」

 

聖蘭「これが私達の答えですわ!」

 

知崎「これがボク達の答えだよー」

 

ネロ「これが俺達の答えだ」

 

闇内「これが拙者達の答えでござる!」

 

 

 

腐和「そうね…まずは、どうやって犯人が夜時間中に小鳥遊さんの首を切り落としたのか議論してみましょう」

 

古城「普通にチェーンソーでちょん切ったんじゃろ!」

 

腐和「そういう事じゃなくて…」

 

ネロ「返り血は?どうやって防いだんだ?」

 

腐和「それは…」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【焼けたレインコート】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「犯人は、チェーンソーで小鳥遊さんの首を落とす時、倉庫にあったレインコートで返り血を防いだのよ。その証拠に、焼却炉に血のついたレインコートが捨ててあったわ」

 

聖蘭「なるほど…」

 

秋山「でも自分にかかる血は防げても、小鳥遊さんを殴り殺した時に散った男子更衣室の血や、遺体を運ぶ時に落ちる血は?どうやって綺麗にしたの?」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

越目「普通に《拭いた》んじゃねえの?」

 

秋山「拭いただけじゃ落ちないと思うんだけど…」

 

目野「《厨房のペットボトル》を使ったのでは!?」

 

食峰「今回は一本も減ってなかったぞ!!」

 

聲伽「うーん、《倉庫のペットボトル》やなかとかな?」

 

あの人の意見に賛成したい。

 

 

 

《倉庫のペットボトル》⬅︎【空のペットボトル】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「倉庫のペットボトルだと思うわ。トラッシュルームに、空のペットボトルが捨ててあったの。厨房のペットボトルが減ってなかったんだとしたら、倉庫以外考えられないわよね」

 

秋山「確か倉庫のものは毎日夜間に補充されるからね。何かが持ち出された事に気付かなくても無理はないね」

 

腐和「それにね、倉庫からペットボトルが持ち出されたっていう証拠はまだあるの」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【マナの証言】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「実は、マナが夜時間前に倉庫からペットボトルを持ち出す小鳥遊さんを見てるの。おそらく、最初は小鳥遊さんが証拠隠滅の為に使う予定だったのでしょうね。小鳥遊さんがプール付近に隠しておいたペットボトルを、犯人がたまたま見つけて使ったのよ」

 

秋山「なるほどね…じゃあ次はどうやって夜時間中に生首をプールに放り込んだのか、議論しない?」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

目野「わかりました!《大砲》でも使って撃ち出したんでしょう!」

 

越目「いやいやどんな方法だよ」

 

食峰「《ドアから投げた》って可能性は!?」

 

館井「普通に届かないと思うんだが…」

 

知崎「《管理室の窓》からポイ!は?」

 

ちょっと待って、今いい事言った人がいなかった?

 

 

 

《管理室の窓》⬅︎【管理室の窓】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「犯人は管理室の窓を使ったんだと思うわ」

 

館井「……何?」

 

腐和「あの窓、ちょうどプールを見下ろせる位置にあるのよ。あそこからなら小鳥遊さんの首を放り込めると思うわ」

 

秋山「うーん…でも窓から投げたにしても、プールには届かないんじゃないかな」

 

腐和「そうね。だから犯人はあるものを使ったのよ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【プールにかけられたロープ】【浮き輪】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「実は、管理室の真下にロープが吊るされていたの。犯人はまずホールにあった浮き輪に小鳥遊さんの頭を乗せて、浮き輪をロープに吊るしたんだと思うわ。あらかじめ少し緩めにロープをかけておけば、頭の重みでロープが弛んで、ちょうどプールの中心まで浮き輪が滑ってくれるからね」

 

秋山「なるほどね…」

 

闇内「しかし、拙者がプール大会に行った時にはロープなどかかっていなかったでござるよ。そのロープとやらはどこから来たのでござるか?」

 

腐和「心当たりならあるわ」

 

 

コトダマ提示!

 

【プールの旗】【消えたロープ】

 

「これよ!!」

 

 

腐和「ロープがかかっていた場所には、元々青と黄色の旗がかかっていたの。その旗は何故か、管理室に放置してあったわ。それと、ホールのロープが一本無くなっていたのよ。これがどういう事かわかる?」

 

秋山「えっと…もともと管理室の窓の下にかかっていた旗を外して、代わりにホールのロープをかけたって事かな?」

 

腐和「そういう事でしょうね」

 

聲伽「でもホールにあった浮き輪って結構大きかけん、頭ば乗しぇたりはできんのやなかかな?」

 

腐和「それなら、方法が無いわけじゃないわよ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【小鳥遊さんのリュック】

 

「これよ!!」

 

 

腐和「乗せる、というか、厳密には小鳥遊さんのリュックに首を入れて浮き輪に括り付けておくの。そうすれば、リュックごと首をプールまで運べるでしょ?」

 

ネロ「確かに…あの女が持ってたリュックは人の首一個分くらいなら余裕で入りそうな大きさだったしな」

 

館井「リュックに首を入れていたのか…なるほど、だからリュックの内側が血まみれだったのか」

 

秋山「でもそれだと、浮き輪とリュックが残ったままだよね?それに、それだけじゃ小鳥遊さんの首はプールに落ちないんじゃない?」

 

腐和「そうね。じゃあ次は、どうやって犯人がプールに首を落として浮き輪とリュックを回収したのか話し合いましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

知崎「わかった!《強力な磁石》を使ったんだ!」

 

ネロ「どんな方法だ」

 

聖蘭「プールに吊るしたロープを《揺らした》のでは?」

 

秋山「それだと浮き輪とリュックがプールに残ったままだよね?」

 

加賀「浮き輪をロープで括っておいて、《ロープを引っ張った》という線は?」

 

あの人の意見に賛成したい。

 

 

 

《ロープを引っ張った》⬅︎【使われた痕跡のあるロープ】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

  

 

 

腐和「犯人は、もう一本ロープを使ったのよ。首を運んだ時に使った浮き輪にロープをくくりつけておいて、思いっきり引っ張ったの。そうすれば、浮き輪の重心が傾いて、リュックから首が落ちるでしょ?」

 

聖蘭「あ…確かに」

 

腐和「浮き輪とリュックを回収する時は、ロープを手繰り寄せればいいのよ。これで、浮き輪とリュックは回収できるわ」

 

秋山「なるほどね」

 

腐和「これでプールに首を入れたトリックはハッキリしたわ」

 

 

 

越目「メイクアップしてやろうじゃん!」

 

《反 論》

 

 

 

越目「それはおかしいぜ腐和ちゃん!」

 

腐和「どうおかしいのかしら?説明してもらえる?」

 

越目「いいぜ!!腐和ちゃんの推理がおかしいって事、オレちゃんが証明してやんよ!」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

越目「首はやっぱ昼間に放り込まれたんじゃねえの!?」

 

腐和「まだ言うの?トリックなら今証明したじゃない」

 

越目「そのトリックには致命的な穴があるんだよ!夜時間中にはプールに入れねえじゃねえか!夜時間中に管理室の窓から浮き輪とリュックを吊るしたんだとしたら、《校則違反でオシオキされる》はずだろ!?その事実がある以上、やっぱり首をプールに入れたのは昼間なんだよ!!」

 

そうね。

でもルールの穴をつけば、トリックを成立させる事はできたはずよ!

 

《校則違反でオシオキされる》⬅︎【夜時間中のプールの入室】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「私が今言ったトリックを夜時間中に成立させる事は可能よ」

 

越目「はあ!?何で!?だって、夜時間中にプールに入るのは…」

 

腐和「あのね、プールに入った事になるのは『プールサイドかプールの水面に身体の一部がついた瞬間』なの。逆に言えば、プールサイドにも水面にも身体の一部がつかなければ、プールに入った事にはならないの。私が今言ったトリックを使えば、身体がプールサイドにつかないからオシオキされないのよ」

 

ネロ「…なるほどな」

 

古城「でも誰がそんな事したんじゃ?ロープをかけるなら、どのみちプールには入らなにゃならんわけじゃから、犯人には無理じゃろ?」

 

加賀「それは多分小鳥遊なんじゃないか?あいつは元々、腐和が今言ったトリックで犯人の死体をプールに放り込むつもりだったんだろう。おそらく犯人がそれに気付いて、小鳥遊のトリックを利用したといったところだろうな」

 

聲伽「でも、結局小鳥遊ちゃんば殺したんな誰やったんやろうね?」

 

腐和「それについてなんだけど…実は心当たりがあるのよね」

 

越目「なあ、腐和ちゃん。それって…」

 

聲伽「えっ、緋色ちゃんと越目くんは何か知っとーと?」

 

越目「ああ。えっと…腐和ちゃん、これって言ってもいいのかな?」

 

腐和「仕方ないわね。こんな状況だもの」

 

越目「実は、オレと緋色ちゃんは書庫を調べたから知ってるんだけどよ。そこに二代目ジャック・ザ・リッパーって呼ばれてる【超高校級の殺人鬼】について書かれたファイルが置いてあったんだよ」

 

秋山「二代目ジャック・ザ・リッパーって…今騒ぎになってる殺人鬼だよね?何でいきなりそいつが出てくるの?」

 

腐和「実は、二代目ジャック・ザ・リッパーは私達と同じ年に入学する予定だったらしいの。だからもしかしたら私達の中にいるのかもしれないのだけれど…こんな事を言ったら皆疑心暗鬼になるだろうと思って、皆には秘密にしてたのよ。今まで黙っててごめんなさい」

 

古城「じゃあそやつが犯人なのじゃな!?」

 

腐和「それはどうかしらね。越目君、あなたはどう思う?」

 

越目「えっ?オレ?」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

越目「オレはやっぱり《ジャック・ザ・リッパーの仕業》だと思うぜ。首だって切られてたしな。ジャック・ザ・リッパーは《被害者の首を切り落とす》らしいから、やっぱり怪しいぜ」

 

目野「く、首を切り落とすのですか!?」

 

秋山「目野さん、君ニュースとか見ない人でしょ。《首だけの遺体が犯行現場付近で見つかってる》って話題になってるじゃないか」

 

館井「………」

 

古城「じゃがまさか例の《殺人鬼がワシらの中に紛れ込んでおった》とは…!じゃあ犯人はそやつなんじゃな!?」

 

越目「ああ。そう思うぜ。あんなイカレた事が出来んのは奴だけだろ!」

 

聖蘭「では小鳥遊さんは、殺人鬼の正体に気付いて、《危険因子を排除する為》に…!?」

 

うーん、それはちょっと違うんじゃないかしらね。

 

 

 

《ジャック・ザ・リッパーの仕業》⬅︎【ジャック・ザ・リッパーの犯行手口】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「ジャック・ザ・リッパーは犯人じゃないわよ」

 

聲伽「え?違うと?」

 

腐和「ええ。奴は必ずターゲットの首を掻っ切って、失血死させて殺すの。今回の事件とは死因が違うでしょう?」

 

越目「でも、いきなりの事で驚いて咄嗟に殴り殺したって可能性も…」

 

腐和「何十人も殺してきた殺人鬼が、素人の殺気に気付かずに殺されかけるなんて間抜けな状況に陥るものなのかしらね?私はジャック・ザ・リッパーが犯人の可能性は低いと思うわ」

 

ネロ「じゃあまた議論は振り出しかよ。クソッ…」

 

腐和「そうでもないわよ」

 

聲伽「へ?」

 

腐和「今の議論のおかげで、犯人が自分から犯人だっていう根拠を示してくれたわ」

 

食峰「マジか!?誰なんだよそれは!?」

 

そう、今のやり取りで、犯人は自分からボロを出してくれた。

ジャック・ザ・リッパーが犯人じゃない…とすると、犯人はあの人しかいない。

 

 

 

《人物指定》

 

 

 

腐和緋色

 

聲伽愛

 

玉越翼

 

小鳥遊由

 

知崎蓮

 

食峰満

 

越目粧太

 

聖蘭マリア

 

古城いろは

 

加賀久遠

 

目野美香子

 

館井建次郎

 

秋山楽斗

 

響歌音

 

ネロ・ヴィアラッテア

 

闇内忍

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎越目粧太

 

「犯人はあなたよ、越目君!!」

 

 

 

越目「……はあ!?オレ!?何で今のやり取りでオレが犯人になるんだよ!?」

 

腐和「さっき言ったように、ジャック・ザ・リッパーは犯人じゃない…となると、犯人はあなた以外考えられないのよ」

 

聲伽「えっ!?こ、越目くんが!?」

 

食峰「おい何言ってんだ緋色!!粧太が犯人なわけねえだろが!!」

 

越目「そ、そうだ!!オレは犯人じゃねえ!!」

 

まあそう来るわよね。

少しずつ確実に切り崩していきましょうか。

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

越目「オレは《犯人じゃねえ》!!小鳥遊ちゃんを殺ったのは《ジャック・ザ・リッパー》だ!!」

 

聲伽「《ジャック・ザ・リッパーは犯人やなかって》緋色ちゃんが言いよったけど…」

 

越目「そんなの腐和ちゃんが《勝手に言ってるだけ》だろ!?《ジャック・ザ・リッパーは若い女を殺して首を切る》って話だろ!?オレがそんな悪趣味な事するわけねえじゃねえか!!」

 

 

 

《ジャック・ザ・リッパーは若い女を殺して首を切る》⬅︎【二代目ジャック・ザ・リッパー】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「越目君」

 

越目「…あ?何だよ」

 

腐和「引っかかってくれてありがとう。おかげで、あなたが犯人だという事がわかったわ!」

 

越目「ハァ!?何でだよ!?」

 

腐和「あのねぇ…私とあなたしかジャック・ザ・リッパーの犯行手口を知らない状況で、ジャック・ザ・リッパーをスケープゴートにするのはどう考えたって悪手でしょ?今回の事件は明らかにジャック・ザ・リッパーの犯行手口とは違うんだから、奴の犯行手口を知ってるあなたから『ジャック・ザ・リッパーが犯人』だなんて発言は出てこないはずなのよ。あなたがジャック・ザ・リッパーを犯人に仕立て上げたい真犯人でもない限りはね!」

 

越目「いや…違…!だ、だって、腐和ちゃんだって、奴が怪しいって言ってただろ!?」

 

腐和「私はジャック・ザ・リッパーの話はしたけど、ジャック・ザ・リッパーが怪しいなんて一言も言ってないわよ?そもそも、ここでジャック・ザ・リッパーの話をしたのはね。あなたが犯人だって事を証明する為だったのよ」

 

越目「っ………!?」

 

腐和「私は犯人がジャック・ザ・リッパーの犯行に見せかける為に首を切断した時点で、あなたが犯人なんじゃないかとは薄々思ってたのよ。だからそれを確かめる為にカマをかけたの。自分が犯人だと思われたくないあまり、自分で自分の首を絞めたわね」

 

越目「っ…ぐ、ぅうう…ぅう…!!」

 

加賀「文字通り墓穴を掘ったな」

 

ネロ「バカが……」

 

知崎「きゃははは!粧太おにい、おつむ弱ぁ弱ぁ〜♪」

 

 

 

越目「う、うるせええええええ!!!」

 

《反 論》

 

 

 

越目「オレは!!オレは犯人じゃねえ!!」

 

腐和「あれだけボロを出しといて、まだ認めないつもり?往生際が悪いわよ」

 

越目「うるせぇえ!!オレは犯人じゃねえんだよ!!」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

越目「証拠もねえのにオレを疑いやがって!!あんなの誘導尋問じゃねえか!!」

 

腐和「違うわよ。あなたが犯人じゃないなら、『ジャック・ザ・リッパーが犯人だ』なんて安易に言うべきじゃなかったの。確かに私はカマをかけたけど、勝手に自滅したのはあなたよ」

 

越目「うるせえ!!だ、大体、オレは15分のトイレ休憩の時しか倉庫を抜けてなかったんだぞ!?どうやって証拠隠滅したっていうんだよ!?」

 

腐和「あなたの足なら、15分もあれば小鳥遊さんの身体に血をかけて、トラッシュルームに輸血パックを捨てて倉庫に戻るくらい余裕でしょ?部活で足には自信があるのよね?」

 

越目「っ…しょ、証拠!!証拠が無えじゃねえか証拠が!!《オレが小鳥遊ちゃんを殺したっつー証拠》がよぉ!!」

 

越目君が犯人だという事実を裏付ける証拠…

アレしかないわね。

 

《オレが小鳥遊ちゃんを殺したっつー証拠》⬅︎【小鳥遊さんの頬のベタベタ】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「あなたが小鳥遊さんを殺した証拠、それは彼女の頬のベタつきよ」

 

越目「それが何だっていうんだよ!?」

 

腐和「加賀君。確か、小鳥遊さんを検視した時に違和感があったのよね?ええと、何だって言ってたかしら?」

 

加賀「ああ。死後12時間以上も経っている死体にしては、顔だけ妙に綺麗だったんだ」

 

越目「そ、それがどうしたんだよ?」

 

腐和「じゃあ教えてあげる。どうして顔だけが綺麗だったのか、そして小鳥遊さんの顔のベタつきが何だったのかをね!」

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

プ ー ル メ イ ク

 

 

 

【プールメイク】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「小鳥遊さんの頬のベタつきの正体は、あなたのオリジナルのプールメイクよ!」

 

越目「………!!」

 

腐和「あなたのプールメイクは、確か長時間水に浸かっていても落ちないのが売りだったわよね?あなたは、小鳥遊さんにプールメイクを施す事で、死亡推定時刻を誤認させようとした。違う!?」

 

越目「なっ…!そ、そんな…そんなの、メイクで誤魔化せるわけ…!」

 

秋山「いや、可能なんじゃないかな。君は、事故で顔の形が変わったり深い火傷を負った人もメイクで元通りにできるって、テレビで自慢げに語ってただろ?」

 

闇内「まさに死化粧だったのでござるな…」

 

越目「ぐっ…だ、黙れ黙れ黙れ!!そんなの、ただの憶測じゃねえか!!オレが小鳥遊ちゃんを殺したっつー決定的な証拠がねえじゃねえかよ!!」

 

腐和「いいえ、あなたが犯人だという決定的な証拠ならちゃんとあるわ!」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【指輪型の電子生徒手帳】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「プールサイドの排水溝に落ちていた指輪型の電子生徒手帳、これがあなたが犯人だという動かぬ証拠よ!」

 

越目「はっ、はあああああああああ!!?」

 

腐和「あなた、小鳥遊さんの首をロープに吊るす時に手帳を落としたわよね?あのロープ、かなり身を乗り出さないと届かないから」

 

越目「違ああああああう!!!」

 

 

 

ーーー 理論武装開始! ーーー

 

越目「違う違う違う!!!」

 

越目「それはオレのじゃねえ!!」

 

越目「オレは自分のを持ってる!!」

 

越目「そんな手帳知るか!!」

 

越目「オレは手帳を落としてなんかねえ!!」

 

 

 

越目「それのどこに証拠があるっつーんだよ!?」

 

【呼び出し】【メッセージ】【の】【ログ】

 

腐和「これで終わりよ!!」

 

 

 

腐和「まだ認めないようだから教えてあげる。あなたが落としたのは、知崎君の電子生徒手帳よ」

 

越目「それがどうしたんだよ!?」

 

腐和「じゃあ聞くけど、どうして犯人は夜時間中に男子更衣室にいたんだと思う?夜時間中に出歩いちゃいけないって事になってたのに」

 

ネロ「Miss小鳥遊が呼び出したから、だろ?」

 

腐和「ええ。恐らくね。ここまで言えば、勘のいい人ならわかるんじゃないかしら?」

 

秋山「……まさか」

 

腐和「そうよ。きっと小鳥遊さんも、犯人と同じ事をしていたの。小鳥遊さんは、知崎君の手帳を使って犯人を男子更衣室に呼び出したのよ。この仮説が正しければ、知崎君の電子生徒手帳にログが残ってるはずよ!」

 

越目「……………っ!!!」

 

腐和「知崎君。そろそろ手帳を返してから3時間が経つわよね?メッセージを表示してくれる?」

 

知崎「おっけー!」

 

越目「やめろ…やめろやめろやめろやめろやめろぉおおおおお!!!!」

 

越目君は、血眼で知崎君に飛びついて止めようとした。

だが既に遅く、無情にも手帳の画面が空中に表示される。

そこには…

 

 

 

『粧太ちゃん。ごめんねこんな時間に。さっきの事、どうしても謝りたいんだ。皆に聞かれるのが恥ずかしいから、男子更衣室に来てくれないかな』

 

 

 

と、越目君宛にメッセージが送られた記録が確かに残っていた。

それを見た越目君は、顔面蒼白になってその場に崩れ落ちる。

 

越目「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

ネロ「終わったな」

 

知崎「あ、ちなみにボクこんなメッセージ送ってないからね?粧太おにいに謝る事なんて何も無いし!」

 

聲伽「そんな、嘘、嘘…!越目くんが…!」

 

加賀「おい腐和。引導をくれてやれ。議長はお前だろ?」

 

腐和「…そうね。最後に、事件の真相を振り返りましょう」

 

 

 

ークライマックス推理開始!ー

 

【Act.1】

今回の事件の発端は、被害者の小鳥遊さんがゼリーとハーブティーを振る舞う為に皆を食堂に呼び出した事だった。

小鳥遊さんは、単なる被害者じゃなかったのよ。

小鳥遊さんは、睡眠薬を保健室から盗み出して青いソーダゼリーに溶かし、錯視を使って知崎君に睡眠薬入りのゼリーを食べさせたの。

この時青いお茶とゼリーを私と聖蘭さんに運ばせたのは、どの時点で何に睡眠薬が盛られたのかを有耶無耶にして私達をスケープゴートにする為だった。

 

【Act.2】

小鳥遊さんはゼリーを食べて眠った知崎君から生徒手帳とハンマーを奪い、自分の研究室から輸血パックを、倉庫からレインコートと水のペットボトルを持ち出した。

彼女の誤算は、ここで水のペットボトルを運ぶのをマナに見られてしまった事だった。

その後小鳥遊さんは、プールに忍び込んで管理室の真下の旗をロープと入れ替え、浮き輪にロープを括り付けて、浮き輪とペットボトルをプール付近に隠しておいた。

下準備が終わったら後は、犯人を知崎君の電子生徒手帳で男子更衣室に呼び出したの。

知崎君を犯人にする為にね。

 

【Act.3】

知崎君に呼び出されたと思い込んで男子更衣室に来た犯人は、トレーニングをしながら知崎君を待っていたんでしょうね。

でもそこに来たのは、知崎君の電子生徒手帳を拝借して男子更衣室のドアを開けた小鳥遊さんだったの。

小鳥遊さんは、手に持っていたハンマーで犯人を撲殺しようと襲いかかった。

そこで悲劇は起こってしまった。

いきなり襲い掛かられて驚いた犯人は、手に持っていたダンベルで小鳥遊さんを殴り殺してしまったの。

この時、小鳥遊さんの血がモノクマのグラビアアイドルのポスターに飛び散ってしまった。

 

【Act.4】

咄嗟の事で驚いた犯人は、とりあえず自分が犯人だと疑われないように偽装工作をする事にしたの。

まず小鳥遊さんから小鳥遊さんと知崎君の電子生徒手帳を奪って、小鳥遊さんの電子生徒手帳で女子更衣室のドアを開け、彼女の遺体を女子更衣室に移動させ、血が飛び散ったポスターを女子更衣室のポスターと入れ替え、小鳥遊さんが隠しておいたペットボトルの水を使って男子更衣室を綺麗に掃除した。

何とか証拠を隠滅する方法を探していた犯人は、小鳥遊さんが用意したトリックを目撃した。

そこで犯人は、小鳥遊さんのやろうとしたトリックを利用してジャック・ザ・リッパーの犯行だと思わせ、死亡推定時刻を誤認させる事で裁判を撹乱させる事を思いついたの。

犯人はまず、持っていたウォータープルーフタイプのメイク道具を使って小鳥遊さんに顔色がよく見えるメイクを施した。

そして技術室にチェーンソーを取りに行き、小鳥遊さんがあらかじめ盗んでおいたレインコートを着て、チェーンソーで小鳥遊さんの首を切断したの。

この時犯人は、小鳥遊さんが持っていたハンマーを凶器のミスリードに使えると思い、女子更衣室に放置しておいたの。

 

【Act.5】

犯人は、プールに小鳥遊さんの首を放り込む為にリュックに小鳥遊さんの首を詰め、小鳥遊さんが用意しておいた浮き輪にリュックを括りつけた。

そしてその浮き輪を管理室に持っていき、管理室の窓の真下のロープから浮き輪を吊るした。

すると浮き輪は、小鳥遊さんの首の重みで滑り落ち、ちょうどプールの真上で止まった。

犯人はそこで、ロープで浮き輪を勢いよく引っ張って、浮き輪を傾けてリュックから頭を落とし、真下のプールに落とした。

そのままロープを手繰り寄せて、浮き輪とリュックを回収した。

でもここで犯人は、致命的なミスをしてしまったの。

犯人は、窓から身を乗り出しすぎて知崎君の電子生徒手帳をプールサイドの排水溝に落としてしまったの。

犯人は、夜時間中だったので手帳の回収を諦め、浮き輪とロープとリュックとダンベルを元の場所に戻し、レインコートとペットボトルをトラッシュルームに捨てに行った。

 

【Act.6】

翌朝、犯人は何食わぬ顔で食堂に現れ、私達に小鳥遊さんが生きていると思い込ませる為に、小鳥遊さんの電子生徒手帳を使って私にメッセージを送った。

その後私とマナが購買部で寝ていた知崎君を発見し、皆に呼びかけて知崎君の電子生徒手帳を探す事になった。

犯人は、秋山君や聖蘭さんと倉庫で知崎君の電子生徒手帳を探している最中に、トイレ休憩だと言い訳をして倉庫を抜け出し、女子更衣室に走って行って小鳥遊さんの遺体に輸血パックの血をかけ、乾ききった血を隠したの。

そしてその足でトラッシュルームに輸血パックを捨て、急いで倉庫に戻った。

結局寄宿舎で電子生徒手帳が見つからなかったから、私達は校舎を探す事にしたの。

恐らくそこで秋山君にプールを探しに行く事を提案し、何食わぬ顔で小鳥遊さんの遺体を発見した。

 

「これが事件の真相よ。そうでしょう!?【超高校級のメイクアップアーティスト】越目粧太君!!」

 

 

 

越目「あああ、ああああああ…!!」

 

加賀「今回は色々と事件が複雑に入り組んでいたから時間がかかったが…モノクマ。さっさと始めろ」

 

モノクマ『うぷぷぷ、もう結論は出たみたいですね?では始めちゃいましょうかね』

 

モノDJ『全員必ず誰かには投票しろよ!?無投票は問答無用でオシオキだぜYEAHHHH!!!』

 

モノクマ『ではでは、投票ターイム!!』

 

モノクマがそう言うと、席にボタンが表示され投票時間が始まった。

私は、最後まで迷っていた。

私は、迷いながらも越目君に投票した。

 

モノDJ『投票の結果、クロとなるのは誰なのか!?その結果は正解か不正解なのかぁああ!!?』

 

モノクマ『ワクワクでドキドキの投票ターイム!!』

 

モニターにスロットが表示される。

ドラムロールと共にリールの回転速度が落ちていき、越目君の顔のドット絵が3つ揃った所でリールが止まった。

その直後、正解を褒め称えるかのように、はたまた私の潰し合いを嘲笑うかのように、歓声と共に大量のメダルが吐き出された。

 

 

 

《学級裁判 閉廷!》

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り13名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

以上3名

 

 

 

 

 



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非日常編④(オシオキ編)

午前0時、男子更衣室にて。

ベンチに座って筋トレをしている一人の男がいた。

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目粧太だ。

 

「にしても、あの知崎がオレに謝りたいだなんてな。きっとアイツもオレと仲直りしたかったんだな。っし、まだ待ち合わせまでちょっと時間あるし、筋トレでもして待ってやるか。昨日は腐和ちゃんにボロ負けしたけど、やっぱり腐和ちゃんに相応しい男になりてえもんな」

 

するとその時、男子更衣室の扉が開いた。

 

「んあ?おう知崎!早かっ……」

 

越目が振り向いた直後、いきなり何者かが襲いかかってきた。

【超高校級の獣医】小鳥遊由だ。

返り血を防ぐ為にレインコートを着ていた小鳥遊は、手に持っていたペンライトの強力なレーザーで越目の視界を潰し、越目の頭目掛けてハンマーを振り下ろした。

 

「うぉあ!!?」

 

だが越目は間一髪小鳥遊の攻撃を躱し、小鳥遊はバランスを崩してその場で転んだ。

 

「っ………!」

 

小鳥遊の攻撃を避けた越目の視界に飛び込んできたのは、ハンマーを持って床に転んでいる小鳥遊だった。

小鳥遊は、今にも起き上がってもう一度攻撃を仕掛けようとしていた。

その瞬間、越目の中で何かが切れた。

そして、次の瞬間。

 

 

 

「うわぁああああああああああっ!!!!」

 

男子更衣室の中には、叫び声と鈍い音が鳴り響いた。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

VOTE

 

越目粧太 11票

 

小鳥遊由 1票

 

聖蘭マリア 1票

 

 

 

『うぷぷぷぷ、お見事大正解ー!!【超高校級の獣医】小鳥遊由サンをダンベルでブン殴って殺した上にチェーンソーで首をぶった斬ったアホは、【超高校級のメイクアップアーティスト】越目粧太クンなのでした!!』

 

『ギャハハハハハ!!!2連続正解とはなぁ!!やるじゃねえかテメェら!!ほらほらもっとバイブス上げてけポウポウ!!!』

 

『いやーしかし!どうして越目クンは小鳥遊サンに投票したんでしょうかねぇ?聖蘭サンも自分に投票するなんて、何を考えてるんだか!』

 

「ああ…そんな…嘘っ、嘘ですわ…!」

 

「クソッ…何でだよ…おい粧太!!何で由を殺したんだ!?何でなんだよぉ!!!」

 

「そんな事より、由ちゃんだよ!何で由ちゃんは粧太おにいを殺そうとしたのかなぁ?知ってる?」

 

『うぷぷぷぷ!それなんだけどねぇ…少し違うんですよねぇ』

 

違う……?

どういう事?

 

『小鳥遊サンが殺そうとしていたのは、何も越目クンだけじゃないんだよ。小鳥遊サンの目的は、越目クン本人というよりは、()()()()()()()()()()()にあったんだよ!』

 

「…!それってまさか…!」

 

『ギャハハハハ!!勘のいいヒーローガールはもう気付いたみてぇだな!!』

 

私は、気付いてしまった。

小鳥遊さんが越目君を殺そうとした、本当の目的を。

でも、信じたくなかった。

彼女がそんな事をするはずがない。

だって彼女は、誰よりも優しい人だったから。

 

 

 

 

 

『この際だからぶっちゃけるとなぁ…由ガールは、テメェら全員を殺そうとしてたのさ!!』

 

「っ…………!!」

 

モノDJが語った理由は、私の予想していた理由と全く同じだった。

小鳥遊さんの殺人の目的は、この学級裁判を起こす事だった。

自分が生き残るためじゃない。

私達を殺す為に、学級裁判を利用しようとしていたんだ。

越目君は、たまたま学級裁判を開く為の被害者に選ばれたに過ぎなかった。

全ては、彼女の抱える真実を全員の命ごと葬り去るために。

 

「じゃあもしあの女がこのアホの撲殺に成功してたら、俺達は危うくあの女の無理心中に付き合わされるところだったって事か?」

 

「ちょっ、そげん言い方…!」

 

『うぷぷ、そうなるね!小鳥遊サンがオマエラを殺そうとしたのはね、実は深〜いワケがあるのです!』

 

『ギャハハハ!!見てもらった方が早えだろうから、特別に由ガールがテメェらを全員ブチ殺してまで隠したかった動機DVDを見せちゃうぜ!VTR…スタァアアアト!!』

 

そう言ってモノDJは、手元のリモコンを押す。

すると、画面上に映像が映し出された。

 

 

 

〜〜〜【超高校級の獣医】小鳥遊由サンの動機映像!〜〜〜

 

DVDを再生すると、赤い幕の上にポップな文字が浮かび上がる。

開演のブザーと共に幕が開き、映像が始まる。

映像に映っていたのは、小鳥遊さんの家と思われる豪邸だった。

冬場なのか高級そうなダッフルコートに身を包んだ小鳥遊さんは、豪邸の門を開けて一人で外出した。

おそらく、小学校高学年くらいだろう。

小鳥遊さんが走っていった先には子猫がニャーニャー鳴く声が聴こえるダンボールがあり、小鳥遊さんはダンボールに捨てられていた子猫を大事そうに抱きかかえて家に連れて帰ろうとした。

 

『お腹空いてるでしょ?家帰ったらご飯にしよっか』

 

『みゃあ!』

 

子猫が小鳥遊さんの腕の中で震えながらも一生懸命に鳴くと、小鳥遊さんは微笑みながら子猫を抱きしめる。

するとその時、突然小鳥遊さんの横を通ったハイエースに乗っていた男が小鳥遊さんを車の中に引き摺り込む。

小鳥遊さんを拉致した車の中には何人かの男達が乗っていて、後部座席では小鳥遊さんの同級生と思われる小学生達がカメラを構えてニヤニヤしていた。

 

そこからは、口にするのも憚られるような下品な仕打ちの数々だった。

どこかの駐車場に設置された監視カメラにハイエースが映り込んでいて、車内に設置されたスピーカーから流れる爆音の音楽にまじって、小鳥遊さんの悲鳴が聞こえてくる。

 

『いやっ、やだっ、やだ!!お願いします、やめてください!!いやっ、いやあああああ!!』

 

車内の様子はわからなかったものの、車体が不自然に縦揺れしていて、中で何が起こっているのかは大体予想がつく。

時折ドアを激しく叩く音が聞こえ、小鳥遊さんは相当暴れているのだろうと容易に想像できた。

最初は激しくドアを叩く音や悲鳴が聞こえたが、やがて五月蠅い音楽しか聴こえなくなった。

おそらく、途中で抵抗しても無駄だと悟って諦めてしまったのだろう。

男達は、何の罪もない少女の、本来は生涯の伴侶に捧げるべき純潔を、遊び感覚で奪った。

おもちゃを共有する感覚で、何人もの男が彼女を無理矢理穢した。

 

『はいお疲れちゃん』

 

『気ぃつけて帰れよー』

 

『また拉致られんなよーw』

 

用が済むと男達は小鳥遊さんを全裸のまま解放し、男達の乗っていた車はどこかへと去っていった。

車から放り出された小鳥遊さんは、タバコの火を押し付けられたのか全身火傷の痕だらけになっていて、口の周りは火で炙られたのか痛々しく焼け爛れていた。

辱めを受けてボロボロになりながらも、子猫を抱きかかえながら大粒の涙を流して泣いた。

 

それからというもの、小鳥遊さんは口が利けなくなった。

一時期は学校にも行かなくなり、部屋に引きこもって自分をいじめた連中の陰に怯えていた。

あれ以来人間を信用できなくなり、つらい現実から逃げるために動物とだけ仲良くするようになった。

するといつからか、動物とだけは意思疎通ができるようになった。

それが彼女の才能の原点だった。

 

『いや〜、想像以上にエグかったですね!小鳥遊サンが喋れないのは、過去の壮絶ないじめが原因だったとは!それで人間不信に陥った結果、現実逃避するかのように動物と接していたのが才能を開花させるきっかけとなったんですねぇ。ではでは、学級裁判でお会いしましょう!』

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

映像が終わった。

私達は、凄惨な光景を見て絶句していた。

しばらくして、皆がポツポツと口を開き始める。

 

「……嘘じゃろ?」

 

「ひぃいいいい…!」

 

「こ、これが…小鳥遊嬢の…」

 

「そんな…由!!」

 

「いやっ、いやあ!」

 

「…………!!」

 

「小鳥遊さん…」

 

「品性の欠片も無いな」

 

「同感だ。胸糞悪いモン見せやがって」

 

「あっ、あああ…ああああああ…」

 

「ふーん」

 

古城さん、目野さん、闇内君は顔を真っ青にして唖然としていた。

食峰君とマナは、耐え切れずに泣き叫んでいた。

館井君は、腕を組んで目を瞑り、小刻みに震えていた。

普段は冷静な秋山君、加賀君、ネロでさえも、映像に嫌気が差して眉間に皺を寄せていた。

聖蘭さんに至っては、今にも卒倒しそうになっていた。

知崎君は、謎が解けて満足したのかむしろスッキリした表情を浮かべていた。

そして唯一越目君だけは、映像の内容を知っていたのか、始終映像から顔を背けて黙り込んでいた。

 

『ギャハハハハ!これでわかったろ?由ガールは頭が良くて金持ちで、性格もちょっとばかし変わってたから、クラスメイトからいじめられてたのさ。由ガールは、テメェらを道連れに自分の過去ごと心中しようとしたんだYO!!』

 

『ちなみにオマエラはもう察しがついてると思うけど、このDVDを見たのは越目クンだったのです!越目クンは、アホなのか何なのか知らないけど、それを直接小鳥遊サンに伝えに行ったのでした!』

 

『そしたら案の定殺意を向けられて襲われたってわけよ!まあ自業自得だなYEAH!』

 

「ふん、結局てめぇの撒いた種じゃねえか。俺は絶対に本人には伝えに行くなって釘を刺したはずだが?」

 

「確かにね。これは殺されても仕方ないと思う。自分でも迂闊すぎると思わなかったわけ?」

 

二匹が下品に笑う中、ネロと秋山君が越目君に鋭い視線を向ける。

すると越目君は、顔を真っ青にして言った。

 

「だ、だってよぉ…!あんな目に遭ってたって知ったら、居ても立っても居られなくなっちまって…誰かが支えてあげなきゃ可哀想だって思ったんだよ…!話しに行った時、小鳥遊ちゃん、すげぇ不安そうでよ…だからオレが守ってやらなきゃって思ってたのに、あんな…っ、いきなり襲われるなんて思わねえじゃねえかよぉ!!」

 

越目君が叫んでいるのを聞いて、私は何も言葉を返せなかった。

越目君だって、何もコロシアイを起こす為に小鳥遊さんに話したわけじゃない。

彼なりに、暗い過去を抱える小鳥遊さんの支えになりたかったんだ。

なのにその思いを理不尽に裏切られて、衝動的に手が出てしまったのだろう。

 

「何で!?何でオレが狙われなきゃなんなかったんだよぉ!!?」

 

「そんなの決まってんじゃん!キミは由ちゃんに信用されてなかった、それだけだよ!」

 

「………は?」

 

いきなり知崎君が越目君を指さして言うと、越目君は唖然とする。

知崎君は、唖然とする越目君に一切の容赦無く現実を突きつけた。

 

「由ちゃんは、頭も口も軽い粧太おにいの言葉なんか信じられなかったんだよ!キミの日頃の行いが由ちゃんの不信感を煽ったの!そんな事もわかんない童貞のくせにしゃしゃり出てんじゃねーよ!」

 

「うっ…うう…うぅううぅううう…!!」

 

知崎君は、越目君にとっては一番残酷な現実を突きつけた。

先程まで自分を守る為に言い訳していた越目君は、小鳥遊さんに信用されていなかったという事実が余程ショックだったのか、その場に膝をついて頭を掻き毟り、子供のように泣き喚いた。

今の越目君には、私を守ってくれると言ってくれた時の頼もしい彼の面影は一欠片も無かった。

あまりにも哀れで、痛々しくて、見ていられなかった。

すると、マナがその場で膝をついて泣き出した。

 

「ごめん…ごめんなぁ…小鳥遊ちゃん…うちらが、小鳥遊ちゃんば信じしゃしぇてあげられんやったんやなあ…!ごめん…ごめんなさい…!うっ、ううっ…!」

 

「小鳥遊さん。どんな理由があろうと、君は越目君を殺そうとした。死んだからって許される事だと思うな」

 

「ちょっと、秋山君…」

 

「……だけど、君を理解してあげられなかった事は謝るよ。本当にごめん」

 

マナは、小鳥遊さんの遺影に向かって泣きながら謝っていた。

秋山君も、小鳥遊さんの遺影に深く頭を下げて謝った。

二人の言葉を聞いて、初めて気付いた。

何も越目君だけじゃない。

私達は、誰も小鳥遊さんに信頼されていなかった。

信じさせてあげられなかった。

彼女が唯一信用していたのは、今はもうここにはいない玉越さんだけだった。

もしあの夜、玉越さんが小鳥遊さんのそばにいてあげられたなら、小鳥遊さんも殺人を決意しなかったかもしれない。

その玉越さんを死なせてしまったのは、他でもない私達だ。

私は、今更どんなに後悔したって仕方のない事を、心の中で何度も悔いた。

そして、どうしても気になっていた事を、越目君に尋ねる。

 

「越目君。ひとつだけ聞かせてくれる?」

 

私が話しかけると、越目君はゆっくりと顔を上げた。

私は、彼と目が合ったタイミングで話しかけた。

 

「あなたは、本当に小鳥遊さんをただのはずみで殺したの?」

 

「……え?」

 

「さっきからあなたの言い分を聞いている限り、少なからず小鳥遊さんに殺意があったように思えるのだけれど。本当はあなたは、小鳥遊さんの攻撃を避けた後で、()()()()()()()()んじゃないの?」

 

「そ、それは…!」

 

「どうなの?答えて」

 

私が尋ねると、越目君は言葉に詰まる。

わかっていた。

彼がわざと小鳥遊さんを撲殺したという事は。

 

「図星か」

 

ネロは、その場で膝をついたまま俯いている越目君を見て確信した。

すると、聖蘭さんが顔を真っ青にして口元を手で覆いながら尋ねる。

 

「そんな…!わざと殺したんですか!?何故そんな事を…!」

 

「怖かったんだよ!!!」

 

「ひぃ!?」

 

聖蘭さんが尋ねると、越目君が逆ギレした。

あまりの剣幕に、目野さんと古城さんはビクッと肩を跳ね上がらせていた。

越目君は、目を血走らせてものすごい剣幕で捲し立ててきた。

 

「だって、次は確実に殺されるかもって…!お前らだって、オレの立場だったら同じ事をしただろ!?」

 

「そうだな。君の判断は間違っていない」

 

越目君が捲し立てているのもお構いなしに、加賀君が口を挟んだ。

 

「俺達全員を殺す為に用意周到に何重にも予防線を張るような女だ。あの場で見逃したら、次は今回の失敗を踏まえて完全犯罪を犯す可能性が高かっただろうな。もしかしたら、今度は料理に毒でも混ぜて全員を殺していたかもしれない。そもそも口で説得して反省するようなら、初めからあんな大掛かりなトリックを用意してまで人を殺そうとなんかしないはずだ」

 

「あ……」

 

「君が生き残る為には、小鳥遊由を殺さざるを得なかった。()()()()()()()、何も間違っていない。ただ一つ悪いところがあったとすれば、君自身の頭だ。君は知能が足りなかったから裁判で負けた。たったそれだけの事だ」

 

「……………」

 

「……ま、君が自分で殺される原因を作ったという点はやはり責めざるを得ないがな。それも含めてやはりバカ丸出しだったな」

 

加賀君が淡々と越目君に告げると、越目君は再び消沈した。

加賀君の言っている事は、口が過ぎるところはあったが大方正論だった。

確かに、殺人に失敗した小鳥遊さんを生かしておいたら、今度は今回の失敗を踏まえて完璧な犯行を起こしていたかもしれない。

それこそ、加賀君が言うように料理に毒を盛ってしまえば全員殺して一人勝ちなんて事も可能になる。

おそらく彼女には、それが出来るだけの知能があった。

越目君の言う通り、彼が小鳥遊さんを殺したのは、怖かったからだろう。

自分にはない頭脳という武器を持つ彼女の事が、誰よりも恐ろしかったんだ。

 

「そうだよ…オレはバカだから、何考えてんのかわかんねぇ小鳥遊ちゃんが怖かったんだよぉ…!」

 

越目君は、その場で泣きながら蹲った。

すると秋山君が軽蔑の目を向けて話しかける。

 

「結局全部君の無責任が招いた事だよね。君の軽率な行動が、皆の命を危険に晒したんだよ?君一人が死んで済まされる話じゃないんだよ。自分で原因を作っといて被害者面するなよ卑怯者」

 

「っ……」

 

秋山君は、越目君を軽蔑した様子で淡々と言った。

秋山君の言葉は、越目君の心に深く突き刺さった。

すると越目君は、次々と正論を突きつけられて自分が間違っていたと悟ったのか、全てを諦めた様子で両腕をだらんと垂らす。

 

「…そうだな。秋山の言う通りだよ。オレが間違ってた。小鳥遊ちゃん、ごめん…!オレが生き残る為に殺しちまって、本当にごめん…ごめんなさい…!!」

 

越目君は、泣きながら小鳥遊さんの遺影に土下座をした。

この時、私は初めて気付いた。

過去の凄惨ないじめで口に火傷をしていたはずの小鳥遊さんの口元には火傷は無く、綺麗な死に顔をしていた。

越目君が小鳥遊さんにメイクをしたのは、死亡時刻を誤認させるためじゃない。

心のどこかでは小鳥遊さんを殺した事を後悔していて、せめてもの償いに彼女の抱える闇を墓場まで持って行こうとしたんだ。

真実が暴かれた今、越目君は全てを諦め、まるで死を待つ虫のようだった。

 

『うぷぷぷぷ、もう皆に言い残す事は無いみたいですしおすし、そろそろアレいっちゃっていいですかね?』

 

「っ……!?アレってまさか…!」

 

『皆様お待ちかね、エクストリームなショーのお時間だぜ!!エヴィバディセイYEAHHHHHHHHHHHH!!!!』

 

「待って!やめて!何もそこまでして欲しいわけじゃないわ!何でもするから、それだけは許してあげて!」

 

『ハッハァ!!こんなクズの事庇うなんて、オメェは優しいなぁヒーローガール!Umm…じゃあ今ここで素っ裸になって犬の真似してみろよ。そしたら考えてやらねぇでもねぇぞ?』

 

「っ………!!」

 

モノDJが言うと、私は躊躇なく制服の上着を脱いだ。

そしてネクタイに手をかけたその時、モノDJが大笑いした。

 

『ブッ、ギャハハハハ!!いやぁコイツァケッサクだぜ!!マジでやるとはな!!ジョークに決まってんだろジョーク!!』

 

『じゃあ茶番も楽しんでいただけたようなので、今度こそドカンとイッパツヤっちゃいましょうか!』

 

モノクマがそう言った、その直後だった。

先程まで全てを諦めて項垂れていた越目君が、顔を上げてポツリと呟いた。

 

「嫌だ…やっぱり…」

 

そして、次の瞬間。

 

 

 

「うわぁあああああああああああああああああ!!!!」

 

越目君は、血相を変えて泣き叫びながら全速力で逃げ出した。

先程まで殺される覚悟を決めていたのが嘘のようだった。

きっと、いざこれから殺されるとなると怖気付いてしまったのだろう。

すると食峰君が、越目君に向かって叫んだ。

 

「粧太あああああ!!!頑張れえええ!!」

 

「逃げて越目くん!」

 

「オシオキなんて受ける事ありません!逃げて下さい!」

 

食峰君、マナ、聖蘭さんは、逃げる越目君に声援を送った。

どんなに惨めで格好悪くても、彼が殺されなくて済むならそれで良かった。

だが、無情にもモノクマ達の声が裁判場に響き渡る。

 

『今回は、【超高校級のメイクアップアーティスト】越目粧太クンのために!!』

 

『スペシャルな!!オシオキを!!ご用意しました!!!』

 

「嫌だ、こんな所で死ねるか!嫌だ、死にたくない死にたくない死にたくない!!」

 

全速力で逃げた越目君は、裁判場のドアを何度も叩いた。

だが裁判場の赤い扉は、ビクともしない。

 

『『ではでは、オシオキターイム!!!』』

 

「いやだあああああああああああああああああ!!!!!!」

 

モノクマはピコピコハンマーを取り出して、一緒に出てきた赤いボタンをハンマーで押した。

ボタンに付いている画面に、ドット絵の越目君をモノクマとモノDJが追いかける様子が映っていた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

GAME OVER

 

コスメくんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

ーーー

 

 

 

越目は、首に首輪をつけられると、そのままチェーンでどこかへと引き摺られた。

連れて来られたのは、高級ファッションブランド店が立ち並ぶ夜の街だった。

越目は街の道路の中心に設置されたステージ上の椅子に拘束され、ステージの下ではモノクマ達がギャアギャア騒いでいた。

そこで画面上に文字が現れる。

 

 

 

ーーー

 

月にかわっておしおきよ!

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目粧太 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

ステージ上には、メイク担当と思われるモノDJが現れる。

ステージは煌びやかなライトで照らされ、木々を模ったイルミネーションが夜の街を彩る。

夜空には巨大な三日月が浮かんでおり、不気味に夜空を照らしていた。

モノDJは、どこからか額縁を取り出すと、それを越目の隣の台に置いて越目にメイクを施し始めた。

額縁には、少女漫画のような絵柄で描かれ、キラキラのエフェクトがつけられ口にバラを咥えたタキシード姿の美青年の絵が入っていた。

モノDJが越目に布を被せてすぐに布を取り払うと、越目が絵の美青年と同じタキシード姿になる。

越目をタキシードに着替えさせたモノDJは、越目を絵の美青年の通りにメイクしようとする。

 

まずは絵の美青年のようにシュッとした顎のラインにする為、ノコギリとヤスリで越目の顎を削る。

越目の顎からは血が噴き出し、悲鳴が上がった。

耳のフォルムを整える為、ハサミでいらない部分を切り取る。

鼻の形を整える為、棘付きのヤスリで越目の鼻を削る。

またしても越目は悲鳴を上げ、越目の座っている椅子の周りには血が滴って血溜まりができる。

白くてシミひとつない肌にする為、毒入りの顔料で顔を塗りたくる。

そして毒入りのコスメで絵の美青年と同じメイクを施す。

毒で顔が爛れる激痛に越目が暴れ、メイク用の椅子がガタガタ揺れる。

大きくてキラキラした目にする為、目玉を抉って代わりに大きな青い宝石を取り付ける。

仕上げに、キラキラしたエフェクトを再現する為、キラキラと金銀に輝くマキビシを越目に投げつけ、越目に無理矢理棘付きのバラの造花を咥えさせる。

 

越目が苦悶の表情を浮かべているのも気にせず、モノDJは得意げな表情を浮かべて観客達に越目の姿を見せた。

だがモノDJにメイクを施された越目は、絵の美青年のようなイケメンとは程遠い満身創痍の姿で、それを見て激怒したモノクマ達はブーイングをしながらゴミを越目に投げつけた。

その中には、越目の母親と姉のコスプレをしたモノクマも混じっていた。

石や飲み物の瓶が越目に直撃し、越目はボロボロになっていく。

 

するとそこへ、腐和、聲伽、小鳥遊、聖蘭、古城、目野の6人を模ったパネルがステージ上に現れる。

共に苦楽を過ごした女性陣の声を聞いた越目は、助けを求めるかのように女性陣のパネルの方へ手を伸ばす。

だがその直後、ステージ上にキラキラと光る煙が上がったかと思うとパネルがパカっと真っ二つに割れ、それぞれのパネルの後ろから女性陣のコスプレをしたモノクマが現れる。

現れたのは、紺色のスカートに赤いリボンのセーラー服を着た小鳥遊、赤いスカートに紫色のリボンのセーラー服を着た腐和、青いスカートに水色のリボンのセーラー服を着た聲伽、緑色のスカートにピンク色のリボンのセーラー服を着た目野、オレンジ色のスカートに紺色のリボンのセーラー服を着た聖蘭、ピンク色のスカートに赤いリボンのセーラー服を着た古城のコスプレをしたモノクマ達だった。

コスプレをしたモノクマ達は、ステージ上でそれぞれポーズを取った。

その直後、女性陣のコスプレをしたモノクマ達は一斉に越目に襲いかかる。

 

聲伽のコスプレをしたモノクマが、ウォーターカッターで越目の身体を斬りつける。

腐和のコスプレをしたモノクマが、火炎放射器で越目の身体を焼く。

目野のコスプレをしたモノクマが、スタンガンでありったけの電流を越目に浴びせる。

聖蘭のコスプレをしたモノクマが、レーザーガンで越目の身体を撃ち抜く。

古城のコスプレをしたモノクマが、メガホンで越目に音波攻撃を直撃させ、越目の鼓膜を破裂させる。

 

一方的に5匹の攻撃を受けた越目は、椅子の上でボロボロになっており、今にも息絶えそうになっていた。

すると小鳥遊のコスプレをしたモノクマは、ニヤリと不気味な笑みを浮かべながら空高く飛び上がり、夜空の三日月をしっかりと掴んだ。

そしてその直後、小鳥遊のコスプレをしたモノクマは、越目に巨大な三日月を投げつけた。

モノクマが投げた三日月は、ブーメランのように高速回転しながら真っ直ぐに越目目掛けて飛んでいく。

 

 

 

ザシュッ

 

 

 

高速回転しながら飛んできた三日月は、越目の胴体を真っ二つに切断し、綺麗なカーブを描いて小鳥遊のコスプレをしたモノクマの方へ戻ってくる。

モノクマは、戻ってきた三日月を華麗にキャッチすると、その場で決めポーズを取った。

その直後、ステージからは花火が上がり、モノDJと大量のモノクマはセーラー服のモノクマ達に拍手と声援を送った。

その場にいた誰もが、無残な姿になって事切れた越目の事など眼中になかった。

 

 

 

 

 

『『アイスクリーーーーーム!!』』

 

「わぎゃああああああああああ!!?」

 

「こ、越目殿が…!!」

 

「ぎゃああああああ!!!帰る帰る帰る!!」

 

「いやあああああああああ!!!」

 

「粧太あああああああ!!!」

 

「っ………」

 

「いやっ、いやあ!もういやあ!!」

 

「下品な演出だな」

 

「本当に毎度毎度いい趣味してるよね」

 

「全くだ。てめぇらどこまで人を苛立たせれば気が済むんだ?」

 

「………」

 

モノクマとモノDJが嘲笑う中、目野さん、古城さん、聖蘭さんは悲鳴を上げていた。

闇内君は目を見開いて動揺し、食峰君はボロボロと涙を流しながら叫び、館井君はギリっと歯を食いしばって吐き気を堪え、マナは目を瞑って耳を塞いで喚いていた。

普段は冷静な加賀君、秋山君、ネロでさえ、モノクマとモノDJに敵意を抱いてた。

唯一、知崎君だけが、つまらなさそうに無言で画面を眺めていた。

私は、我慢ならず、モノクマとモノDJに問い詰める。

 

「ここまでする必要ないでしょ!?彼だって、最後は反省していたのに…!」

 

『ギャハハハ!!!反省とかそういう問題じゃねぇんじゃねぇのかァ!?オレ達は、由ガールを殺した殺人犯を処刑してやったんだぜ!?テメェらだって、遠足のおやつは500円分までしか持ってきちゃいけねぇって事になってたのに、1000円分持ってきた奴がお咎め無しだったらムカツクだろォ!?まさに因果応報ってやつさ!』

 

何が因果応報だ。

どう考えたって、あれはやり過ぎだ。

こいつらは、クロへのお仕置きという大義名分で私達を残酷に殺して楽しみたいだけなんだ。

 

『いやー、それにしても腐和サンもなかなかエグい事するよね!』

 

「………は?」

 

『ギャハハハ!!まだわかんねぇのか?粧太ボーイは、テメェにふさわしい男になる為に筋トレしてたんだYO!』

 

『そしたら小鳥遊サンに襲われて、たまたま持ってたダンベルで頭をブン殴っちゃったってわけ!』

 

『それだけじゃねえぞ?粧太ボーイは、オメェが庇ったりなんかしたせいでオシオキに怖気付いちまったのさ!せっかくこれから楽になれるところだったのに、テメェのせいで最後の最後に『生きたい』って思っちまったんだよ!』

 

『うぷぷぷぷぷ!最後の最後に希望を与えて突き落とすなんて、腐和サンやるぅ〜!』

 

そんな…

私が、越目君を死なせた…?

私と一緒に筋トレなんてしたから。

私が彼の告白に対してはぐらかしたりなんかしたから。

私が越目君を庇おうとしたから。

越目君が苦しみながら死んだのは、私のせい…?

 

「腐和さん、聞かなくていいよ。あいつらは君を弄んで楽しみたいだけなんだから」

 

『ではではオマエラには裁判を乗り越えたご褒美にメダルを差し上げますので、ジャンジャン有効活用して下さいねー!』

 

『あ、そうそう!今回はテメェらにもう一つプレゼントがあるんだった!』

 

「プレゼントだと…!?」

 

『2度目の学級裁判を乗り越えたテメェらには特別に教えてやるぜ!テメェらが学級裁判中に言ってた『ジャック・ザ・リッパー』こと【超高校級の殺人鬼】はなぁ…実はテメェらの中にいるんだなァ!!』

 

「なっ…!?」

 

モノDJが語った事実、それは【超高校級の殺人鬼】と呼ばれる二代目ジャック・ザ・リッパーが私達の中にいるという事実だった。

すると、ネロがモノクマに尋ねる。

 

「おい。何でてめぇらにそんな事がわかるんだ?」

 

『オマエラ、ソニー・ビーン一家って知ってる?』

 

「チッ、無視か」

 

モノクマがネロの質問をはぐらかすと、ネロは舌打ちをする。

 

『んじゃあそういう事で!スィーユー!』

 

『しーゆー!』

 

そう言ってモノDJとモノクマは消えていった。

すると先程までつまらなさそうにしていた知崎君は、ニコニコと笑顔を浮かべながら私達に話しかける。

 

「ねえねえ、【超高校級の殺人鬼】がボク達の中にいるんだって!誰だろうねぇ?皆知ってる?知りたいなぁ!ジャック・ザ・リッパーさーん!もしここにいたら手ぇ上げてー!」

 

知崎君がヘラヘラ笑いながら手を挙げたけど、案の定誰も手を挙げなかった。

すると知崎君は、つまらなさそうに頬を膨らませる。

 

「えぇ〜!?いないの!?殺人鬼なんて生で見るの初めてだし、色々知りたい事あったのになぁ!まあいいや、喉乾いちゃったからもう帰ろ」

 

もう知りたい事が無くなって飽きたのか、知崎君はヒラヒラ手を振りながらエレベーターに乗ろうとする。

すると、後ろから古城さんが知崎君を指さして口を開く。

 

「ウヌが【超高校級の殺人鬼】なんじゃろ!?」

 

「……はぁ?」

 

古城さんが知崎君を指さして言うと、知崎君の視線が急に鋭くなる。

私は、これはまずいと思い止めに入った。

 

「ちょっと、古城さん。何言ってるの?」

 

「だってそうじゃろ!?此奴だけ才能を明かしておらぬではないか!!そんなもん、【超高校級の殺人鬼】で決まりじゃ!!」

 

「うむ…確かに、知崎殿はこの裁判を遊びか何かだと思っておる節があるでござるな。【超高校級の殺人鬼】だとするなら納得でござる」

 

「知崎さんが【超高校級の殺人鬼】だったのですか!アタクシャあショックですよ!」

 

「…正直、俺もこいつが怪しく思えてきた。こいつの笑顔はどうも嘘臭い」

 

「えー何それ!皆酷いよ!証拠も無いのに人疑うのやめて?」

 

古城さん、闇内君、目野さん、館井君の4人は、知崎君を【超高校級の殺人鬼】だと思い込んで責め立てた。

皆に責め立てられた知崎君は、余裕綽々と振る舞っていた。

私は、慌てて4人を落ち着かせる為に知崎君を庇う形で前に出た。

 

「皆、落ち着いて。才能がわからないからって、知崎君が【超高校級の殺人鬼】とは限らないでしょう?それに、【超高校級の殺人鬼】が必ずしも私達の敵だとは限らないわ」

 

「そうやって俺達が疑いあっているこの状況こそ、モノクマ達の思う壺なんだよ」

 

「皆やめろよ!!蓮はそんな奴じゃねえ!!オレは皆を信じるぜ!!」

 

私、秋山君、食峰君の三人は、知崎君を庇った。

すると、ネロがさらに不安を煽るような事を言った。

 

「ふん、どうだかね。言っておくが、俺はお前らを誰一人信用なんかしてねぇからな」

 

「ネロ!!オメェなぁ!!」

 

ネロが皆を煽ると、食峰君が怒鳴る。

するとここで、加賀君が深いため息をつきながらエレベーターに向かう。

 

「全くもって時間の無駄だな。帰らせてもらう」

 

「おい、待てよ久遠!」

 

「神様神様神様神様神様神様神様神様神様…!」

 

去って行こうとする加賀君を、食峰君が止めようとした。

知崎君を敵視する古城さん、館井君、目野さん、闇内君。

私達を信用せず壁を作ろうとするネロ。

ただひたすら神に祈る聖蘭さん。

あくまで無干渉を貫く加賀君。

いつも通り、何考えてるかわからない知崎君。

ようやく一つになったと思った私達は、砕けた硝子のようにバラバラになってしまった。

私達の絆は、こんなに脆いものだったのか。

 

 

 

「もうやめてよ!!」

 

突然声を上げたのは、マナだった。

マナは、ポロポロと大粒の涙を流して泣き始めた。

 

「もうやめよう…?うちはもう、誰かば疑いとうなか!これ以上、誰かが死ぬんば見とうなかっちゃん…!」

 

マナがその場で膝をついて泣きながら訴えると、先程まで言い争っていた皆が言い争いをやめた。

すると先程までキャッキャと笑っていた知崎君は、急につまらなさそうな表情を浮かべてため息をつく。

 

「はぁ、何か白けちゃった。はいはいボクが悪うござんした。じゃーね」

 

そう言って知崎君は、ひと足先にエレベーターに乗って去っていってしまった。

それに続けて、加賀君とネロもエレベーターに乗って帰っていく。

古城さん、目野さん、闇内君も、こんなところにはいられないと言って行ってしまった。

残ったのは、私、秋山君、マナ、食峰君、聖蘭さん、館井君だけだった。

聖蘭さんは自分の証言台の前に膝をついて泣きながら祈りを捧げていて、秋山君は聖蘭さんのケアをし、他の三人は小鳥遊さんの遺影の前で泣いていた。

 

私は、越目君の証言台の前に立った。

彼が私に想いを伝えてくれた時、私はどう返せばいいのかわからなかった。

もう二度と返事をできなくなるなんて、思いもしなかった。

友達がいなくなると、こんなにも虚しくなるものなのか。

私は、彼に何も返してあげられなかった事を、今になって後悔した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

技術室、用具入れにて。

 

『新規データの再構築完了。プログラム名『Rica』、起動開始』

 

どこからかゴゥンと機械の起動音が鳴り、用具入れがピカッと光った。

 

 

 

 

 

Chapter2.ガーデニアは笑わない ー完ー

 

Next ➡︎ Chapter3.餓鬼は欲望に飢えている。

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『無名ブランドのコンパクト』

 

Chapter2クリアの証。

越目の遺品。

初めてファンができた記念に母親から貰ったプレゼント。

彼の夢を陰ながら応援していた家族との思い出が詰まっている。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り12名?

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

以上4名

 

 

 

 

 



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Chapter.3 餓鬼は欲望に飢えている。
(非)日常編①


ふと目が覚めた。

電子生徒手帳で時間を確認すると、4時10分。

あれから、ほとんど眠れなかった。

 

小鳥遊さんと越目君が死んだ。

学級裁判を利用して私達全員を殺そうとしていた小鳥遊さんと、残酷な方法で処刑された越目君。

二人が死んだ時の光景が脳裏に刻み込まれ、未だに目を閉じると鮮明に思い出す。

朝食作りにはまだ早かったが、もう一度眠れる気がしなかったので、外を散歩する事にした。

 

 

 

ーーー 【超高校級のメイクアップアーティスト】の研究室 ーーー

 

私はまず、越目君の研究室に向かった。

前に彼の研究室に来た時は明るい雰囲気だったけれど、肝心の彼がいないとどうも暗い雰囲気に感じられる。

ふと、私の髪型のウィッグが被せられたマネキンが目に留まった。

私の顔を模ったマネキンには、彼の研究したであろうメイクが施されていた。

 

「……綺麗」

 

自分で言うのはなんだけれど、彼のメイクが施されたマネキンは思わず魅入ってしまうほど美しかった。

そういえば、彼には一度もメイクを教えてもらいに行けなかったわね。

こんな事になるなら、もっと彼と仲良くしていれば良かった。

そうすれば、事件を未然に防ぐ事ができたかもしれない。

 

「ごめんなさい。こういう時どういう顔をすればいいのかわからないの。あなたの事をどう思っていたのかも、正直よくわからないの」

 

私は、彼の事が好きだったのかもしれない。

恋愛感情かと言われると、多分違うと思うけれど…

同年代の男子とここまで仲良くなれたのは初めてだったから、私は彼の事が友達として好きだったんだと思う。

友達を失うと、こんなにも心が痛くて、虚しくなるものなのか。

 

「短い間だったけれど、一緒に過ごせて楽しかったわ。それと、あなたが好きだと言ってくれたのは嬉しかった。ありがとう」

 

私は、越目君に最後のお別れを告げて、研究室を後にした。

 

 

 

ーーー 【超高校級の獣医】の研究室 ーーー

 

小鳥遊さんの作業用のデスクの上には、私がプレゼントした猫のぬいぐるみが置いてあった。

…結局、このプレゼントが彼女との最後の思い出になっちゃったわね。

 

ふとデスクの上のパソコンが目に留まる。

私は、ほんの思いつきでパソコンに触れてみた。

何か小鳥遊さんが生前に残した手がかりがあるかもしれない。

パソコンを立ち上げてみた。

しかし案の定、パスワードでロックされていた。

試しに、彼女の名前と誕生日を組み合わせた文字列を打ち込んでみた。

 

…ダメね。

まあこんな簡単なパスワードで開いたら逆にビックリだけど。

考えあぐねていると、ふと、右にあった棚が目に留まる。

よく見ると、一列だけ本の並べ方が不自然なのに気がつく。

ほんの思いつきで、本のタイトルの頭文字を左から順に並べて入力してみた。

ええと、N、I、J…この並び方から浮かび上がる文字列は…

 

『Nijntje Pluis』

 

確か、彼女が好きだったウサギのキャラクターの名前の原語訳だ。

入力してエンターキーを押すと、開いた。

パソコンのデスクトップには、二つのPDFのファイルと、見た事のないソフトが並んでいた。

一つ目のファイルには、この学園生活を通して得た収穫が事細かに書かれていた。

二つ目のファイルには、私達全員に向けた手紙が入っていた。

私は、私宛の手紙を開いて読んでみた。

 

 

 

〜〜〜

 

腐和さんへ

 

まずあなたには、謝らなければならない事があります。

私は、あなた達を学級裁判で死なせる為に、越目君を殺しました。

保身の為に、あなた達を道連れにしようとしました。

でも私は弱い人間だから、最後まで迷っていました。

結局、裏切られるのが怖くて、皆を裏切ってしまいました。

本当にごめんなさい。

 

もしこの手紙を読んでいるのなら、あなたの手で私に引導を渡して下さい。

あなたは私と違って強い人だから、きっと真実に辿り着いてくれると信じています。

その時はどうか、私を許さないで下さい。

そして願わくば、コロシアイの犠牲者は私で最後にして下さい。

 

最後に、腐和さんとお話できてとても楽しかったです。

こんな私と仲良くしてくれてありがとう。

さよなら。

 

〜〜〜

 

 

 

この手紙を読んで、私はどうしようもなくやるせなくなった。

小鳥遊さんは、あのトリックが暴かれる事をわかってたんだ。

彼女は、私達を道連れにして自分の秘密を守ろうとした。

でも心のどこかでは、私達に自分の罪を暴いてほしかったんだ。

結局私達を道連れにはできなくて、罪を全部一人で背負おうとしていたんだ。

 

「馬鹿…!そう思ってたなら、一人で全部抱え込んで死のうとするんじゃないわよ…!」

 

私は、行き場のない感情が募るあまり、小鳥遊さんの作業用デスクを殴った。

私は結局、最後まで彼女を信じさせてあげられなかった。

もっと彼女とぶつかり合って、私達を信じさせてあげる事ができていれば、あの事件は起こらなかったのかもしれなかったのに。

私が机を殴ると、その揺れで机に置いてあったぬいぐるみが倒れた。

ぬいぐるみを見てみると、ぬいぐるみの顔に涙のシミがいくつもついていた。

きっと殺人計画を実行する直前に、このぬいぐるみを抱きしめながら、私達に裁かれる覚悟を決めていたのだろう。

小鳥遊さんがどんな思いで殺人計画を決行したのか、それを想像すると胸が締めつけられるように痛くなった。

私は彼女を許さないけど、憎む事もできなかった。

彼女は単なる被害者ではなかったけれど、彼女自身も被害者である事には変わりない。

憎むべきは、彼女を穢した連中と、最後の一線を踏み越えさせたモノクマ達だ。

 

「小鳥遊さん。私はここから出て、あなたを傷つけた奴等に必ず一生かけて償わせてやるから。どうかゆっくり休んで」

 

私は、拳を強く握りしめながら決意を固めた。

ここから出る理由ができた。

彼女の人生を踏みにじった奴等を、一人残らず捕まえてやる。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

私が食堂に行くと、食峰君と秋山君が先に朝食を作ってくれていた。

 

「おはよう」

 

「…おう。おはよう緋色」

 

「おはよう腐和さん」

 

三人とも挨拶を返してくれたけど、見るからに元気が無かった。

あんな事があったんだもの、元気なんて出ないわよね。

今日のメニューは…

 

和食セットがご飯、白身魚の塩焼き、長芋と絹さやの煮物、ジュンサイの酢の物、コゴミの浅漬け。

洋食セットがトースト、白身魚のフライ、コーンとマカロニのサラダ、グリンピースのポタージュ、ゴールデンキウイ。

 

食峰君は、今日も肉類や赤みの強い食材を使った料理を避けたメニューにしてくれていた。

三人で朝食を作っていると、しばらくしてマナも厨房に顔を出した。

 

「おはよー」

 

マナも、見るからに元気が無かった。

マナは小鳥遊さんと仲が良かったものね。

 

「マナ、大丈夫?」

 

「うん…うちらが前向かな、生きてここば出る事なんてできんもんね」

 

私が尋ねると、マナが答える。

心なしか、少し無理しているように思える。

 

「今は無理に前を向かなくてもいいと思うわ。人はいつでも前を向いていられる程強くはないから」

 

私が言うと、マナは涙を拭いながら頷く。

私にマナの為にしてあげられる事は、彼女が折れそうな時に手を差し伸べてあげる事くらいしかないけど、少しでもマナの力になりたかった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

私が全員を呼びに行くと、しばらくして皆が揃った。

平常運転の知崎君、加賀君、目野さん、ネロ。

昨日の事で元気を失いつつも、少しずつ前を向こうとしている古城さん。

二人を失って消沈している館井君と闇内君。

聖蘭さんに至っては、昨日の事が余程ショックだったのか、全く口を利いてくれなくなってしまった。

だが前回と決定的に違うのは、古城さん、館井君、闇内君の知崎君に対する態度だ。

昨日知崎君を疑っていた目野さんは、一日休んで頭が冷えたのか普段通りに振る舞っていたが、他の三人は知崎君に対する疑念が拭い切れなかったようだ。

 

「んー、美味しいねぇ!……あれ?皆、食べないの?」

 

「…誰のせいだと思ってるんでござるか」

 

「全くじゃ。誰かさんのせいで飯が不味いのぉ」

 

「ふーん。あ、要らないならもらっちゃうよ?いいよね?」

 

「…貴様、いい加減にしろ」

 

「わーいわーい四面楚歌ー♪」

 

知崎君が三人を煽ると、闇内君、古城さん、館井君があからさまに気分を悪くする。

知崎君は、それを面白がってさらに三人を煽った。

私は、食事の手を止めると、知崎君に敵意を向けている三人に注意をした。

 

「皆、もうやめましょう。そうやって疑心暗鬼になっていたって仕方ないでしょう?」

 

「じゃがなぁ!!此奴は…!」

 

「古城さん、館井君、闇内君。あなた達は一旦頭を冷やしなさい。あんな事があった後で酷かもしれないけど、一時の疑念に身を任せて誰かに当たり散らしてたら、それこそ我が身を滅ぼすわよ。それは超高校級としてあるまじき醜態なんじゃなくて?」

 

私が鋭い視線を向けて低い声で言うと、先程まで知崎君に敵意を向けていた三人は大人しく朝食を食べ始める。

すると知崎君が、調子に乗ってしてやったりと言った表情を浮かべた。

 

「だってさ!緋色ちゃんの言う通りだよ!」

 

「知崎君。君もだよ。皆の不安を煽るような事をした君が一番悪い」

 

「はーい」

 

私に続けて秋山君も不機嫌そうに言うと、知崎君は不貞腐れながらトーストにバターとリンゴジャムを塗って齧った。

こういう時に献身的に皆のケアをしてくれた小鳥遊さんと、明るく笑い飛ばしてくれた越目君はもういない。

私は彼等のように優しくはなれないけど、私なりのやり方で皆を引っ張っていこう。

時に冷酷な面が出るかもしれない。

皆の反感を買うかもしれない。

それでも、私にできる事をやるんだ。

 

「ご馳走様」

 

「あの…もうよろしいでしょうか?」

 

そう言って手を挙げたのは、聖蘭さんだった。

聖蘭さんは、まだ精神的に回復していないのか、俯いて暗い表情をしていた。

 

「私、お部屋でお祈りをしたいので…すみません」

 

そう言って聖蘭さんが席を立とうとした、その時だった。

 

 

 

『解散?認められないわぁ!』

 

『ヘェイまた会ったなゴミクズ共!!!』

 

またあの二匹が現れた。

するとマナは、珍しくモノクマ達に辛辣な言葉を浴びせた。

 

「…前から思うとったんだけど、キミらちょっと痩しぇた方がよかて思うよ?」

 

『ハッハァ!!バカ言え!!オレが痩せたらモテすぎちまうだろうが!!』

 

『よっ!さすがブラザー!』

 

マナがモノクマ達に無自覚の暴言を吐くと、モノDJとモノクマが茶番を始めた。

すると聖蘭さんが痺れを切らした様子で口を開く。

 

「あの。用件は手短に済ませていただけるとありがたいのですが」

 

『二回目の裁判を乗り越えたテメェらのために、新しいエリアを開放してやったぜポウポウ!!』

 

「なるほどね。もう消えていいよ」

 

『あ、そう?いいんだ?せっかくアレ教えてあげようと思ったのになー!』

 

「アレ?アレって何?気になるなぁ!教えてよ!」

 

モノクマが不機嫌そうに去って行こうとすると、知崎君は目を輝かせて食いついた。

するとモノDJが無駄に大きな腹を抱えて高笑いする。

 

『ギャハハ!蓮ボーイは食いつきがいいなぁ!テメェらも見習えよ!』

 

『えー、実はですね。オマエラの中にボク達の内通者がいます!』

 

「なっ…!?」

 

「どういう事だ?」

 

『そのまんまの意味ですよ。じゃ、バイバーイ』

 

『スィーユーアゲイン!!』

 

モノクマとモノDJは、私達の不安を煽るだけ煽って去っていった。

 

「見事に嫌味だけ残していったわね」

 

私は当然、あんなものを真に受けてなんかいなかった。

仮に内通者がいたとしても、今ここで炙り出すなんて愚の骨頂だ。

でも、他の皆はそうは思わなかったようだ。

 

「嘘じゃろ…!?ただでさえ殺人鬼がおるというのに、裏切り者までおるのか!!」

 

「大ピンチですねぇ!っていうかぶっちゃけ詰んでません!?」

 

「わーいわーい阿鼻叫喚!わーいわい!」

 

「ウヌは黙っとれ!!この殺人鬼が!!」

 

「馬鹿馬鹿しい…これだからガキは嫌いだ」

 

まずいわね…

皆、モノクマ達のせいでパニックになっている。

するとマナと食峰君が、皆を落ち着ける為に前に出た。

 

「皆!落ち着こうや!そげんして疑心暗鬼になるんがモノクマ達の狙いかもしれんやろ!?」

 

「そうだぜ!!あんなもん、どうせデタラメだ!!こん中に裏切り者なんかいるわけねえだろ!!」

 

マナと食峰君は、皆を落ち着けようとした。

すると、先程から考え込んでいた秋山君が口を開く。

 

「うーん…俺、思うんだけどさ。モノクマ達は俺達の不安を煽る為にわざと『内通者』って表現してたけど、正確には『情報源』って表現が正しいよね。悪気が無くて無自覚に情報を流してるってケースもあるだろうし。仮にモノクマ達の言う事が本当で俺達の中に情報源がいたとしても、そいつが必ずしも俺達の敵だとは限らないんじゃない?」

 

さすが秋山君…

モノクマ達の言葉にも全く動揺してないわね。

 

「そうね。皆、それよりまずは探索をしない?せっかく新しいエリアが開放されたんだし」

 

「そうやな!」

 

「わーい、ボク探検大好きー!」

 

私が提案すると、マナが頷き知崎君も賛成した。

するとそのタイミングで、腕を組んで船を漕いでいた加賀君が目を覚ます。

 

「…ん。これから探索に行くのか?」

 

「加賀君…あなた、もしかして今まで寝てた?」

 

「すまん。あまりにも生産性の無い論争だったものでつい」

 

この状況で寝れるって…ある意味すごいわね。

しかも寝ててもちゃんと話の内容把握してるし。

 

「とりあえず、探索は前回通りくじでいいかしら?」

 

「うん、いいと思うよ」

 

「じゃあ早速担当を決めるわね。聖蘭さん、無理はしなくていいけどせめて探索には参加してくれない?」

 

「……わかりましたわ」

 

聖蘭さんも探索には参加してくれるみたいなので、私は更新されたマップを開いた。

見ると、校舎と研究棟の3階、それから寄宿舎のプレイルームが開放されているようだ。

校舎の方は教室が三つ、美術室、物理室、家庭科室、外国語教室、指導室。

研究棟は食峰君、聖蘭さん、闇内君の研究室が開放されている。

私は、早速くじを作って探索の班を決めた。

結果は、

 

 

 

プレイルーム:館井君、目野さん

美術室:秋山君、知崎君

物理室:私、加賀君

家庭科室:食峰君、聖蘭さん

外国語教室:マナ、ネロ

指導室:古城さん、闇内君

教室:探索が終わった班から各自自由に探索

 

 

 

…良かった。

さっきの三人は知崎君とは一緒にならなかったわね。

 

「腐和か。よろしくな」

 

「ええ」

 

今回は加賀君と一緒か…

物理室の設備とかは彼の方が詳しいだろうし、正直ありがたいわ。

 

「この女からは何の悦びも見出せぬでござる…!」

 

「あぁ!?何か言ったか!?」

 

古城さんと一緒になった闇内君は、見るからに落ち込んでいた。

闇内君あんた古城さんに失礼よ。

彼は意外と選り好みするタイプだったのね。

さて…と。

私達も探索しないとね。

 

 

 

ーーー 物理室 ーーー

 

私達は、校舎の物理室と書かれたスライドドアを開けた。

部屋には何やら巨大な機械が置かれており、実験用の机と椅子が扇状に設置されていた。

両側の壁には機械が並んでいて、後ろの本棚には物理関係の本がズラリと並んでいる。

 

「ほほう…これは素晴らしい」

 

加賀君は、珍しくテンションが上がっている様子で、真っ先に中央にある機械に走っていった。

やっぱり科学系の才能の持ち主としては、こういった設備がある部屋は嬉しいものなのね。

正直何の機械かは少し気になったので、見るからに興奮しながら機械に取り付けられた梯子を駆け上がっている加賀君に尋ねてみる事にした。

 

「その機械、何か特別なものなの?」

 

「この機械は、実験に必要なあらゆる条件を生み出す為の機械だ。中には特殊な環境下でないと難しい実験等もあるからな。この機械の開発には数十年かかったんだが、世界中の天才達が共同開発をしてようやく実現したんだ。例えば…腐和、試しにこれに乗ってみろ」

 

「えっ?」

 

加賀君は、私に何やらボードのようなものを渡してきた。

加賀君が機械を操作した直後、私の身体がふわっと浮いた。

 

「うわぁ!?ちょっと、何やってんのよ!?」

 

「試しに超伝導装置の電源をオンにしてみたんだ。これでこの設備の凄さを少しは理解して貰えただろう?」

 

加賀君は、手すりに掴まりながらドヤ顔をしていた。

いや、わかったからもう降ろして欲しいのだけれど!?

 

「いいから戻しなさいよ!危ないじゃない!」

 

「これは失礼した。設定を少しミスってしまったらしい。今すぐ戻そう」

 

私がボードにしがみつきながら注意すると、加賀君はドジを謝りながら機械を操作し始めた。

加賀君が機械を操作すると、私の身体がボードごとゆっくりと下に落ちた。

全く、油断も隙もありゃしないわ。

 

「すまん、一声かけてから電源を入れるべきだったな。大丈夫か?」

 

「大丈夫じゃないわよ!私じゃなかったらね!」

 

「確かにな。要らん心配だった」

 

加賀君が梯子から降りながら声をかけてきたので私が無事を伝えると、加賀君は何故か開き直ってきた。

…何かもう、悪気が無いのが一番タチ悪い気がしてきたわ。

 

「ええっと…確か物理室には準備室もあるのよね?そっちにも行ってみない?」

 

「そうだな」

 

物理室の探索を終えた私達は、物理準備室を探索してみる事にした。

 

 

 

ーーー 物理準備室 ーーー

 

物理準備室は小さな倉庫のような部屋になっていて、振り子や電圧計、電気棒、静電気発生装置などの実験器具が並んでいた。

加賀君もそうだけど、目野さんとかが見たら発狂しそうね…

よく見ると、備品のダンボールの中にビニールシートが入っていて、その中にメダルが入っていた。

ここには特には収穫は無さそうね。

 

「ねえ。ここにはもう収穫が無さそうだし、空いてる教室を見に行かない?」

 

「……ああ」

 

あっ、ちょっとテンションが下がった。

どんだけ気に入ったのよ。

 

 

 

ーーー 校舎3F廊下 ーーー

 

私達は、3ーA、3ーB、3ーCの順に教室を調べていった。

教室の内装は、1階の教室とほとんど変わらなかった。

3ーAの教室には、特にこれといった収穫は無かった。

3ーBの教室のボードには、

 

『何かあると思ったか!?残念!!カリスマDJのオレ様でした!!』

 

とモノDJの字で落書きがされていた。

本当にいちいち不愉快ね。

私は、教室の黒板を消してから隣の3ーCの教室に入った。

3ーCにも、特にこれといった収穫は無かった。

私達が食堂に戻ろうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

「「ぎゃあああああああああ!!!!」」

 

突然、古城さんと闇内君の声が2階の廊下から響き渡る。

二人は確か、指導室を調べていたはずよね?

何かあったのかしら…!?

 

「二人に何かあったのかも…行きましょう加賀君」

 

「…………」

 

私が加賀君に話しかけると、加賀君はその場に立ち止まって何かを考え込んでいた。

 

「何してるの!?早く!」

 

「ん?あ、ああ」

 

私が加賀君を急かすと、加賀君は何か思うところがある様子で私についてきた。

私達は、古城さんと闇内君に何があったのかを確かめる為に急いで2階の廊下に駆けつけた。

 

 

 

ーーー 校舎2F廊下 ーーー

 

私達が駆けつけると、二人は技術室の前で尻餅をついていた。

 

「古城さん!闇内君!何があったの!?」

 

私は、先程叫び声を上げた二人に駆け寄って尋ねた。

すると古城さんは、技術室を指差しながら口を開く。

 

「ゆっ…幽霊じゃあ!!幽霊が出たんじゃあ!!」

 

「…は?」

 

「アレはきっと小鳥遊の怨霊じゃあ!!」

 

「あっ、悪霊退散でござる!!」

 

二人はパニックを起こしてわけのわからない事を喚いていた。

小鳥遊さんの怨霊…?

この人達は何を言っているのかしら?

ふと技術室の方に目を向けると、確かに小鳥遊さんと同じくらいの背丈の人影があった。

敵か味方か、そもそも何者なのか、何故こんなところにいるのか、疑問が次々と頭の中を埋め尽くしていく。

すると次の瞬間、その人影は技術室の扉をすり抜けて古城さんと闇内君の前に現れた。

 

「「ぎゃあああああああああああ!!!!やっぱり悪霊だあああああああああ!!!!」」

 

二人が身を寄せ合って騒いだ、その次の瞬間だった。

 

 

 

 

 

『いきなり現れて人を悪霊呼ばわりとは、ひどい人達デース!アテクシはそんな非科学的な存在ではないのデスよ!まあアテクシは人でもないんデスけどね!』

 

「えっ…?」

 

私の目の前には、信じがたい光景が広がっていた。

古城さんと闇内君の目の前には、小鳥遊さんにそっくりな女の子が立っていた。

でも目の前の女の子はモデルのようなスレンダー体型で、髪もプリズムのように虹色にキラキラと光っていて、目はネオンブルーの光を放っている。

冷静になって見てみると、どう見ても小鳥遊さんとは別人だ。

ネオンブルーの光を放つセーラー服を着ていて、何故か三毛猫をモチーフにしたと思われるヘルメットを装備している。

突然現れた女の子は、私達に気がつくと、パァッと笑顔を浮かべた。

 

『あーっ!ちちぃーーー!』

 

女の子は、満面の笑みを浮かべると、何故か私の隣にいた加賀君に飛びついてそのまま押し倒した。

 

「へ?」

 

加賀君がいきなり初対面の女の子に押し倒されているのを見て、私は思わず目を点にした。

というか今…『父』って言わなかった?

高校生にこんな年齢の娘がいるわけないし、じゃあ、この子は一体…?

 

『えへへへへ!驚きマシタか!?アテクシ、ちちとははとねぇねに会いたい一心で、自分で実体化ホログラムを創造したのデス!アテクシはいい子デスか?褒めてクダサイ!』

 

「ああ。まさか俺が教えなくとも実体化ホログラムを自分で作ってしまうとはな。だが、出てくる時は一声かけろ。何事かと思ったじゃないか」

 

『あっ、それは失礼しマシた!てへっ☆』

 

女の子は、ウインクをしながら自分の頭をコツンと叩いた。

『父』に『実体化ホログラム』。

この二つの単語から、彼女の正体に何となく察しがついた。

私は、それを確かめる為に女の子に尋ねてみる事にした。

 

「ねえ。あなたってひょっとして……」

 

私が尋ねようとすると、先程まで女の子を指さして悪霊だの何だの騒いでいた闇内君が嫉妬を爆発させて血涙を流しながら喚き散らす。

 

「ぬ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!加賀殿!!その女子は一体誰なのでござるか!?加賀殿だけズルいでござる!!何故拙者に紹介せずに黙っていたのでござるかぁああ!!!」

 

ホントうるさいし醜いわね。

おかげで一番聞きたかった事を聞き逃しちゃったじゃないのよ。

そして、嫉妬に狂った闇内君の奇声のせいで、他の人達も様子が気になってゾロゾロと2階の技術室の前に集まってきた。

 

「何だうるせぇぞクソガキ共」

 

「えっ、今ん声闇内くん!?何があったと!?」

 

「大丈夫か忍!!何か今すげえ声聞こえたけど!!」

 

「…はぁ。今度は何ですの?」

 

ネロ、マナ、食峰君、聖蘭さんが騒ぎを聞いて駆けつけてきた。

マナと食峰君は、さっきから何故か加賀君に懐いている女の子を見て目を丸くする。

 

「「えぇええええええええええええええ!!?誰その子!!?」」

 

マナと食峰君は、女の子を指さして同時に尋ねた。

女の子は、何故か加賀君にベッタリとくっついて甘えていた。

 

『えへへ、ちち〜♪』

 

「ち、ちちぃ!?じゃあ加賀くんはこの子の父親って事!?」

 

「マジか!?久遠オメェいつの間に子供産んだんだ!?」

 

何故か加賀君を父と呼んでいる女の子に対して、二人とも開いた口が塞がらない様子だった。

ちょっと二人とも色々混乱してるみたいだから、一旦冷静にさせた方がいいわね。

 

「ちょっと二人共。高校生にこんな大きい子供がいるわけないでしょ」

 

「あ、そっか」

 

私がツッコミを入れると、二人とも納得した。

するとその騒ぎを聞きつけて、美術室の探索をしていた秋山君と知崎君までもが駆けつけてくる。

 

「えーなになに!?何の騒ぎー!?知ってる?不思議不思議ー!って!誰その子!?知ってた!?」

 

見覚えのない女の子がいるのを見つけた知崎君は、女の子を指さして驚いていた。

秋山君も、珍しく驚いていたのか、目を点にしてパチパチさせていた。

秋山君は、口元を引き攣らせながら誰もが一番に思ったであろう事を口に出す。

 

「ええっと…色々言いたい事はあるけどひとまず…その子、誰?」

 

秋山君が尋ねると、女の子は立ち上がって満面の笑みを浮かべる。

その可愛らしい笑顔は、まるでアイドルのようだった。

女の子は、笑顔を浮かべてピシッと敬礼しながら挨拶をした。

 

『ええと、とりあえず…Hello, World!』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

??? ⬅︎New‼︎

 

残り12名?

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

以上4名

 

 

 

 

 



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(非)日常編②

『ええと、とりあえず…Hello, World!』

 

女の子は、ニコッと笑って敬礼をした。

すると加賀君は、ゴホンと咳払いをして言った。

 

「俺から紹介しよう。…と、言いたいところだが、まずは一旦食堂に集まらないか?話はそれからだ」

 

「あっ、それもそうだね。目野さんや館井君にはプレイルームを調べてもらってるわけだし」

 

加賀君が言うと、秋山君も賛成した。

こうして私達は、女の子を連れて少し早めのミーティングをする事になった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

「はわぁああああ!!何も教えていないのに実体化ホログラムを具現化して私に会いにきてくれるとは!!さすがは我が娘!!ベリィィイイジーニアスでファンタスティックですねぇ!!」

 

『えへへへー、ははー』

 

目野さんは興奮した様子で女の子に抱きつき、女の子も満更でもない様子で目野さんにべったり甘えていた。

ええっと…私は一体何を見せられてるのかしら。

 

「えっと…目野さん。その子は一体?」

 

「ご紹介しましょう!!この子は、私と加賀さんの愛娘!愛の結晶なのです!!」

 

「誤解を招く表現はやめろ」

 

目野さんが色々といけない表現をすると、加賀君がツッコミを入れた。

加賀君は、咳払いをして改めて女の子を私達に紹介した。

 

「改めて紹介しよう。彼女は俺、小鳥遊、目野の三人で共同開発した人工知能の『Rica』だ」

 

『はじめまして!アテクシは、皆サンをサポートする目的でちちとははとねぇねにより造られた、バーチャルアシスタントの『Rica』デス!アテクシの事は、気兼ねなく『リカ』とお呼びクダサイ!』

 

加賀君に紹介されたリカという女の子は、誇らしげに自己紹介をした。

やっぱりAIだったのね。

何か三人でコソコソやってるとは思ってたけど、こういう事だったのか。

 

「はぁー…いっちょんAIやとは思わんやった。最近の技術の進歩はすごかね」

 

「ねえねえバーチャルアシスタントだってさ!すごいよねぇ!知ってる?不思議不思議〜!」

 

リカが人工知能だと知って、他の皆は驚いていた。

確かに彼女はすごく人間らしくて、私達の想像する人工知能とは全く別物だった。

私は、皆を代表してリカに挨拶をした。

 

「はじめまして。私は腐和緋色よ」

 

『存じ上げておりマス!【超高校級の警察官】腐和緋色サンデスよね!?』

 

「よろしくね。ええっと…リカ?」

 

『よろしくお願いしマスね、腐和サン!』

 

私が自己紹介をしながら手を差し伸べると、リカはニコッと笑顔を浮かべて私の手を握り返した。

 

「ところで、その『ねぇね』っていうのはもしかして…」

 

『はい!アテクシを造ってくださった、小鳥遊由お姉様の事デス!』

 

リカが言うと、他の皆の表情が暗くなった。

亡くなった小鳥遊さんの事を思い出し、皆俯いてしまった。

するとリカが口を開く。

 

『…存じておりマス。ねぇねは…亡くなったのデスよね?』

 

「………!」

 

リカは、悲しそうな表情を浮かべながら尋ねる。

その目には涙が浮かんでいた。

何も知らなければ、本当に人間のようだ。

 

『アテクシは今とても悲しいのデス。ねぇねに一度も会えないままこんな形でお別れをする事になるなんて…これが家族を失うという事なのデスね…う、うぅ…ねぇね、ねぇね…!』

 

リカは、涙を流して小鳥遊さんの死を悲しんでいた。

彼女にもちゃんと感情があり、自分の頭で考えて動き、仲間の死を悲しむ事ができるのね。

何よ、私より人間らしいじゃない。

 

「ちなみに最初はメイドとアイドルの要素を兼ね備えたプログラミングを構想していたんだが、小鳥遊の遺志を継いで彼女の希望に沿ったプログラムにしてみたんだ。生前の小鳥遊が思い描いていた彼女自身の理想の姿だと思ってくれればいい」

 

加賀君は、リカの肩に手を置いて言った。

リカの性格が明るくて表情豊かなのは、小鳥遊さん自身がそういう風になりたかったからだったのね。

そういえば前に語ってくれた加賀君の亡くなった恋人は『里香』って名前だったけど、もしかして亡くなった恋人の名前をつけていたりするのかしら?

 

 

 

『ギャハハハ!!!コイツァ驚いたぜ!!テメェら何かシコシコ…いやコソコソしてると思ったらこんなもん作ってやがったとはなぁ!!』

 

『うぷぷぷぷ!これは面白い展開になりそうですねぇヘイブラザー!』

 

「うわあ!?」

 

「何用じゃあ!!消え失せい!!」

 

モノDJとモノクマが現れると、食峰君が現れ、古城さんが斬殺丸の鋒をモノクマに向けた。

 

『うわあ!皆ひどいなぁ!ボク達を黒光りするあの虫みたいに!ボク達はそこにいるリカサンに用があるんだよ!』

 

『アナタ達が、ちちとははの言っていたモノクマとモノDJデスね?アテクシに何か御用デスか?まさかアテクシを排除しに来たのデスか!?』

 

『うぷぷぷ、やだなぁ!ボク達がそんなひどい事するように見える?』

 

「するようにしか見えないんだけど」

 

『ダミッ!?ヘイボーイウォッチユアマウスハァン!?』

 

秋山君が率直に言うと、モノDJが軽くショックを受ける。

モノDJは、リカをビシッと指さして言った。

 

『オレ達はなぁ…リカガールを特別に未来ヶ峰学園の転入生として正式に認めに来たんだよ!』

 

「……えっ?」

 

『何だァ?嬉しくねぇのか?仲間が増えるんだぜ?』

 

「いえ、そうじゃなくて…てっきりあなた達の事だから、リカのような存在は危険因子と見做して真っ先に排除するものだと思っていたのだけれど?」

 

『ボク達は初代とは違ってそこら辺寛容だからね!別にAIを作っちゃダメなんて校則は無いし、基本的にコロシアイが面白くなる事ならオールオッケーです!』

 

『ギャハハハ!!つーわけで只今を持って【超高校級のAI】リカガールの未来ヶ峰学園への編入を、未来ヶ峰学園理事長のモノDJが認めるぜYEAH!!』

 

 

 

【超高校級のAI】リカ

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

『リカサンにはこの電子生徒手帳をプレゼントします!』

 

『ギャハハハハ!!!んじゃあハッピーなコロシアイライフを!スィーユー!!』

 

そう言ってモノクマとモノDJは、リカに指輪型の電子生徒手帳を渡すとどこかへ去っていった。

秋山君と私は、去っていったモノクマ達を無視して皆に提案した。

 

「とりあえず、昼食がてら探索の報告会を始めようか」

 

「そうね。先にお昼食べちゃいましょうか」

 

『これから昼食デスか?アテクシもお手伝いしマス!』

 

そう言って立ち上がったのは、リカだった。

 

「リカ、あなた料理できたの?」

 

『はい!料理のレシピと調理用のプログラムは大方インストール済みデス!』

 

すごいわね…

正直想像以上のスペックだわ。

 

「どうだ見たか。リカは料理もできるんだ」

 

「ハッハア!!流石は私達の娘ですねぇ!!」

 

加賀君と目野さんは、何故か自分の事のようにドヤ顔していた。

 

「……あなた達はやらないの?」

 

「料理は専門外だ」

 

「私、機械しか興味ないので!」

 

二人とも変な決めポーズをしながらドヤ顔してるけど、得意げに言える事じゃないわよそれ。

とりあえず、ご飯を作らないとね。

私は、食峰君とリカと一緒に厨房で調理を始めた。

リカは、ノリノリでエプロン姿に変身して決めポーズをしていた。

…何だろう、この子、本当に人工知能なの?

 

「えっと…600gってどれくらいかしら?」

 

『お任せクダサイ!腐和サン、それをアテクシの手に置いてみてクダサイ!』

 

私は、量りたい材料をリカの手の上に置いてみた。

するとリカのヘルメットの液晶画面には、『597.60g』と表示された。

 

『あと2.40g足りないようデス』

 

リカが材料を計量すると、食峰君が素直に驚く。

 

「うお、すげえ!」

 

『まだまだ驚くのは早いデース!』

 

そう言ってリカは、右手の掌から包丁のオブジェクトを出すとものすごいスピードで野菜を切り始めた。

手の動きが見えない程の速さで切っているにもかかわらず、野菜の厚みには1マイクロの誤差もなかった。

さらには、掌からバチバチと火花を出して火をつけたりもしていた。

リカのスペックに驚かされつつも、料理が完成した。

今日の昼食のメニューは食峰君が作った天津飯、私が作ったキクラゲのスープと豆苗の炒め物、リカが作った酢豚とマンゴープリンだった。

 

「どうだ。リカの手料理は美味いだろう?」

 

私達が食事に舌鼓を打っていると、加賀君がドヤ顔をした。

自分で作ったわけじゃないのによくそんな勝ち誇った顔できるわね…

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

昼食が終わった後は、食峰君が作ってくれたお茶菓子と紅茶を嗜みながらミーティングをした。

…のだけれど、案の定知崎君がリカに変な事を覚えさせようとしていた。

 

「ねえねえリカちゃん!ビーム出してよビーム!んでもってロケットパンチだ!」

 

「やめなさい知崎君。リカに変な事覚えさせないの」

 

『わかりました!早速地形データの収集を…』

 

「リカも知崎君の言う事真に受けなくていいから」

 

全く、油断も隙もありゃしない。

リカもリカで知崎君の言う事何でもホイホイ聞くんじゃないわよ。

主に私と秋山君が仕切って報告を進めていく。

まずは秋山君と知崎君が報告をした。

 

「じゃあまずは俺からだね。美術室は、作業用の机が並んでいて、キャンバスとかが置いてあったよ。奥には本棚もあったんだけど、全部美術関係の本だったよ。あとモノクマとモノDJの気持ち悪い彫刻とか絵が飾ってあったね」

 

「はいはーい!美術準備室には、画材とか粘土とか色々置いてありました!あと、粘土を焼くための窯とかもあったよ!すごい本格的だよね!」

 

「それと、美術室を調べていて一つ気になるものを見つけたんだけど…」

 

そう言って秋山君は、私に写真を見せてきた。

写真には、キャンバスに描かれた女子の似顔絵が写っていた。

キャンバスに描かれていたのは、白と黒のツートンカラーの頭をした童顔の女子だった。

驚くべきなのは、それが()()()()()()だという事だ。

一度彼の描いた絵を見た事があるけれど、特徴をよく捉えていたものだからよく覚えている。

これは間違いなく彼が描いた絵だ。

 

「これ、越目君が描いた絵よね…?どうしてこんな所に…?」

 

「さあね。どうして越目君が描いた君の似顔絵が美術室にあったのかは知らないけど、これは外の世界に繋がる重要な手がかりなんじゃないのかな?」

 

「………」

 

秋山君が意味深な事を言うので、私は絵をまじまじと見つめた。

すると今度は、食峰君と聖蘭さんが報告をする。

 

「っしゃ、次はオレ達だな!家庭科室は調理実習室と被服実習室に分かれてて、それぞれ机と棚が置いてあったぜ!冷蔵庫の中にはちゃんと食材が入ってたし、調理器具も裁縫道具も高級品だったぜ!」

 

「家庭準備室は、調理実習室と被服実習室の間に位置していて、それぞれの授業で使うと思われる資材が置いてありました。私からの報告は以上ですわ」

 

うん、聞いてみて思ったけど流石最高峰って感じね。

すると今度は、古城さんが手を挙げて報告する。

 

「次はワシじゃあ!!指導室には世界中の職業に関する本が置いてあったが、特に面白味のない部屋じゃったわい」

 

「気分転換用のオモチャやクッションもあったでござるよ。どうやらカウンセリングルームとしての役割もあるようでござるな」

 

なるほどね…

他の学校みたいにちゃんとそういう設備もあったのね。

すると今度は、マナが手を挙げて報告する。

 

「じゃあ次はうちらやね!うちらは英会話教室ば探索したっちゃけど、外国語ん本が色々置いてあったばい!あと、地図とか地球儀とかも置いてあったよ!」

 

「外国語準備室は、教師用の書類だのプラカードだの色々置いてあったくらいだったんだが…気になるもんを見つけた」

 

そう言ってネロは、懐から写真を取り出した。

どうやら集合写真のようだ。

だがその写真を見て、私は驚きを隠せなかった。

この未来ヶ峰学園の教室で、ここにいる皆が集合写真を撮っている。

秋山君と響さんは仲睦まじそうに手を繋いでいて、その隣では越目君が玉越さんや小鳥遊さんと肩を組んでいる。

子供が嫌いだとか言ってたネロも、マナ、知崎君、古城さんの三人に囲まれて満更でもなさそうな表情を浮かべていた。

その写真の中に、私の姿は無かった。

代わりに、信じがたい人物が写り込んでいた。

 

 

 

「母さん…!?」

 

集合写真に写っていた担任と思われる女性、その人は私の母さんにそっくりだった。

あり得ない。

だって母さんは、何年も前にテロリストに殺されたはず…

じゃあこの写真に写っているのは誰なの…?

 

「…ちゃん。緋色ちゃん!」

 

「へっ!?あっ、ごめんなさい」

 

いけないいけない。

つい考え込んでしまったわ。

私が頭を掻きながら反省していると、目野さんと館井君が報告をする。

 

「次私いいですかねぇ!?ええとですねぇ!!プレイルームには、ビリヤードやらダーツやらチェスやら、前時代的なゲームが色々と置いてありましたよええ!!」

 

「それから、やはり雑誌は一冊も置かれていなかった。俺達からの報告は以上だ」

 

雑誌が無かった…

やっぱり、外の情報を遮断したいって事なのかしら?

 

「ええと…じゃあ最後は私達かしら?物理室には実験用の席が配置されていて、物理関係の本棚や実験器具があったわ。それから、実験の条件を整える為の巨大な機械もね」

 

「物理準備室にも実験器具や資材が置いてあったが、なかなか悪くなかったぞ」

 

「あなたものすごく気に入ってたものね」

 

加賀君が得意げに言うと、私は紅茶を飲みながら言った。

すると、私の隣に座っていたリカからピコンと音が鳴る。

 

『データ解析完了。解析結果を表示しマスか?』

 

「ああ、頼む」

 

リカは、皆が報告をしている間、電子生徒手帳のデータを解析していたようだった。

加賀君は、リカの解析結果を興味深そうに眺めていた。

 

「…あっ、ねえ。もしかして、リカに頼めばパソコンをハッキングして外の情報を抜き出したり扉のロックを解除したりできるんじゃない?」

 

「安心しろ。初めからそのつもりだ。そもそもリカは、この学園のネットワークを乗っ取る為に開発したAIだからな」

 

私が提案すると、加賀君が変な決めポーズをして言った。

するとネロがリカに品定めするような目を向けて悪態をつく。

 

「ふん、本当にそんなガラクタにネットワークを奪うなんて大それた事できんのかねぇ?」

 

「ホントだよ!ええっと、何だっけ?バーチャルダッチワイフだっけ?」

 

「ウチの子に向かって何ですかその言い草はァ!!臍から電気を流してやりましょうか!?」

 

ネロと知崎君がリカを馬鹿にすると、目野さんがブチ切れた。

だが肝心のリカは、全く落ち込んでいなかった。

 

『ちち、はは。ガラクタからダッチワイフに昇格しマシた。喜びマショウ!』

 

うん、やっぱりちょっとこの子抜けてるわね…

私達は、リカを連れてネットが繋ぎやすい技術室に向かった。

 

 

 

ーーー 技術室 ーーー

 

技術室に着くと、加賀君は早速リカの本体をパソコンに接続した。

リカの本体はちょうど人一人分くらいの大きな黒い箱型のコンピュータで、本体とパソコンをコードで繋ぐとブゥン、と起動音が鳴った。

 

「リカ、ハッキング」

 

『お任せクダサイ!』

 

加賀君が腰に右手を当てて左手でパソコンを指差しながらリカに命令すると、リカは今度は作業員の服装に早着替えをしてピッキングツールを構えながら決めポーズをした。

リカが早速ハッキングを試みると、リカの目と制服の模様がネオンブルーに光り、膨大な量のデータが読み込まれていく。

ネットワークへの侵入を試みてから数分、次第にリカの表情が険しくなっていく。

どうやら苦戦しているようね。

額から汗を流して、顔も赤くなっていて、まるで風邪でも引いているみたいだ。

 

「…どう?」

 

『残念ながら、学園のネットワークには厳重なロックがかかっているので侵入はできマセン。デスが、あと3時間程お時間を頂ければ少しだけ情報を抜き取れマス』

 

3時間…!?

そんな短時間で!?

流石は世界最高峰の頭脳を持つ人達が生み出したAIっていったところかしら。

 

『そこで皆サンにお願いがあるのデスが、解析が終わるまでの間、アテクシの身体を冷やしておいてほしいのデス』

 

「そういう事なら場所を俺の研究室に移そう。俺の研究室にもネットワーク環境はあるしな。リカ、場所を移すぞ。一旦そこまでで保存しろ」

 

『はい!』

 

熱暴走が心配なので、残りの作業は冷房がきいた加賀君の研究室でやる事になった。

何とか重い本体を研究室まで運び込み、リカは再び作業に取り掛かった。

 

「時に腐和。解析にはまだ時間がかかりそうだから、先に探索に行ってこい」

 

「えっ…でもあなたはどうするの?」

 

「俺は少し調べたい事があるからしばらくはここにいる予定だ。何、心配するな。夕食には顔を出す」

 

「わかったわ」

 

リカはハッキング中だし、加賀君は調べ物があると言っていたので、私は先に学園内の探索をする事にした。

まずはどこから調べようかしらね…

 

「緋色ちゃん!探索一緒に行こ!」

 

「そうね」

 

私は、マナと一緒に探索をする事にした。

まずは一番広いプレイルームの探索からかしらね。

 

 

 

ーーー プレイルーム ーーー

 

「これは…凄いわね」

 

寄宿舎3階のプレイルームは、1フロアまるごと娯楽用の設備になっていた。

大型ホームセンターくらいの膨大なフロアに、娯楽用の設備が所狭しと並んでいる。

ビリヤードにダーツ、ルーレット、ボードゲーム、ボウリング…バッティングセンターやカラオケボックス、コミックコーナー…へえ、シアターまであるのね。

これだけあったら、調べるだけで一日が終わりそうだわ。

まるでラウンドワンね…

って、私、ラウンドワンとか一回も行った事無いんだけど。

 

「へえ!カラオケボックスまであるんやなぁ!行ってみよ!」

 

私は、マナと一緒にカラオケボックスを調べに行った。

カラオケボックスはどうやらパーティー用の大部屋が1部屋、普通の部屋が大小それぞれ3部屋の計7部屋だった。

パーティー用の大部屋はシャンデリアや高級そうなソファーやアクアリウムが設置されていて、見た目でも楽しめる仕様になっている。

部屋の中にはソファーやモニター、デンモクやマイクなどが置かれている。

部屋を出てすぐの所には、ドリンクバーとメニュー表が置いてあった。

 

「ここがカラオケボックスか…実物は初めて見たわ」

 

「えっ?」

 

「えっ」

 

私が率直な感想を言うと、マナは信じられないものを見る目で私を見てきた。

実際のところ、ウチには家族でカラオケに行く習慣は無かったし、警察官になる事に決めてからは訓練や学業で忙しくて遊んでる暇なんかなかったから、行った事なかったのよね。

…な、何よ、そんなに変な事なの?

 

「特には怪しいところは無さそうね。次行きましょう」

 

私達は、フロア内をくまなく調べて回った。

ボウリングコーナーは、ボウリングレーンが8レーン、隣のコーナーにはビリヤード、ダーツ、ルーレット、卓球台がそれぞれひとつずつ設置されており、ボードゲームが楽しめるようなスペースもあった。

他にもコミックコーナー、バッティングセンター、射撃場、シアター、遊具コーナーなどがあった。

遊具コーナーのバルーンプールには、無数のバルーンが置いてあった。

 

「にゃははは〜!おうしー、おうしー♪」

 

何やら遊具コーナーが騒がしかったので覗いてみると、知崎君がプレイルームのロデオマシンで遊んでいた。

何だかんだで順応するの早いわねあの子。

 

「うわぁあ…!ホントに色々ゲームがあるんやね!あ!見て見て緋色ちゃん!射撃場とかもあるよ!」

 

射撃場?

ちょっと気になるわね。

最近練習できなくて腕が鈍ってきてたところだし。

一回やってみようかしら。

私は、射撃場に置いてあったリボルバー式の拳銃を一丁手に取ってみた。

…!

これはコルト・パイソン357マグナム6インチね。

すごい、本物だわ。

こっちのライフルは…モシン・ナガンM1891/30かしら。

 

「わぁすごい!重っ!」

 

私が銃を調べていると、マナが近くに置いてあったM1911を手に取ってキャッキャとはしゃいでいた。

ちょっと、何やってんのよ!?

危ないじゃない!

 

「マナ、危ないからそれ一旦ここに置きなさい」

 

「ここって何でも揃っとってばりすごかね!これとかまるで本物のピストルみたい!」

 

そう言ってマナが調子に乗って引き金を引いた、その瞬間だった。

 

 

 

バァン

 

 

 

「……………」

 

マナの持っていた拳銃の銃口からは火花と共に銃弾が飛び出し、帽子に掠った。

銃口からは煙が上がり、微かに火薬の匂いがした。

撃った張本人は、顔を真っ青にして恐る恐る煙の出ている銃口に目を向けていた。

 

「もう、実弾入ってるから危ないって言おうとしたのに!」

 

「ご、ごめん……」

 

「こっちは私が調べとくから、マナはそっちのエアガンを調べてくれる?」

 

「はーい」

 

私が指示を出すと、マナは大人しくエアガンを調べ始めた。

ったく、ホント油断も隙もありゃしないわ。

…っと、万が一にも殺人に使われるといけないから、銃弾は全部抜いて隠しておかなきゃ。

鍵付きの箱に入れて、机の下の収納の奥の方にしまっておいて…これでよし。

狙撃場の探索を終えた私達は、別のコーナーを探す事にした。

メダルがかなり集まったのはいいものの、他には特にこれといった収穫もなく、プレイルーム内の探索を終えた。

 

「あー、疲れた。広すぎやろここ!全部調べとったらお腹空いた!」

 

「そういえばマナ、今日夕食の当番じゃなかった?」

 

「あ、やば!完全に忘れとった!大遅刻だ!」

 

「じゃあ一緒に行きましょう?私も一緒に謝ってあげるから。ここまで付き合わせちゃったのは私だし」

 

私達は、急いで夕食の準備をしに食堂へ向かっていた。

するとコミックコーナーで漫画を読んでいた知崎君が私達についてきた。

ホントこの子、食事の事になると行動早いわね…

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

マナは、大慌てで厨房に駆け込んだ。

時間は17時20分。

集合が17時ちょうどだから、大遅刻だ。

 

「ごめーん!今日夕食当番なん忘れとった!」

 

「ごめんなさい。マナと一緒に探索をしていたのだけれど、すっかり時間を忘れてたわ」

 

「おう!!建次郎と忍が今準備してるとこだから、愛も手伝ってくれ!」

 

皆と合流したマナは、早速夕食作りを始めた。

私と知崎君もテーブルを拭いたりして準備をしていると、秋山君も合流して手伝ってくれた。

しばらくすると、古城さんが来て、加賀君、目野さん、リカの三人が同時に来て、少し遅れてネロと聖蘭さんが来た。

ネロはともかく、聖蘭さんが遅刻なんて珍しいわね…

何かあったのかしら?

 

今日の夕食は、食峰君が作ったクリームシチューとパン、館井君が作った野菜とベーコンのソテー、闇内君が作った根菜サラダ、マナが作ったココナッツプリンだった。

食後は、食峰君が家庭科室から持ってきてくれたお茶を淹れてミーティングを開いた。

私はふと、リカがパソコンの解析をしてくれていた事を思い出し、リカに尋ねてみる。

 

「そういえばリカ、パソコンの解析だけど、何か進展はあった?」

 

『はい!アテクシにかかれば、3時間もあれば学園の情報を抜き取る事などお茶の子さいさいデス!どやっ!』

 

決めポーズをしながらドヤ顔をするリカの後ろでは、加賀君と目野さんが決めポーズをしながらドヤ顔をしていた。

何であなた達は自分でやったわけじゃないのにそんなに誇らしげなのよ。

あとこの二人、何だかんだんで仲良いわね。

 

『まずはこの学園内のセキュリティーシステムデスが…』

 

リカが情報を皆に共有しようとした、その時だった。

 

 

 

「あの。その話、やめませんこと?」

 

突然、聖蘭さんが話を遮った。

聖蘭さんは、普段の聖母のような温かい眼差しではなく、突き刺すような鋭い視線を私達に向けていた。

 

「聖蘭さん、どうしたの?せっかくリカが外の世界の手がかりを調べてくれたのに…」

 

「ですから、そういう話を聞きたくないと言っているんです」

 

「あなた、さっきから何だか様子がおかしいわよ?何かあったの?」

 

「私からすればあなた方の方が異常ですけれどね。…もういいですわ、私が消えます」

 

そう言って、聖蘭さんは一人で部屋に戻っていってしまった。

そういえば、彼女はさっきも夕食に遅刻してきたわよね。

普段の彼女なら絶対あり得ないはずなのに…

今日のところはそっとしておいて、明日話を聞けたら聞いてみようかしらね。

 

「しょうがない、今日のところは好きにさせてあげよう。4人もクラスメイトを失って彼女も精神的に参ってるんだろうしね。それでリカちゃん、さっきの続きを話してくれないかな?」

 

『了解しマシた!まずはこの学園のセキュリティーシステムデスが、かなり厳重なのでアテクシの力では解除は難しいのデス。何度も解除を試みているのデスが、パスワードは複数の複雑な暗号を組み合わせて作成されている上に、10秒経過する度に更新されていマス。アテクシのスペックでは、あのタイプのパスワードの解析に30秒はかかってしまうので、現時点でネットワークの支配権を奪う事は不可能といっていいデショウ』

 

「そんな…」

 

『デスが、全く収穫が無かったわけではありマセンよ!この学園の構造、それから外の世界の現状を少々抜き出す事に成功しマシた!』

 

「いやメチャクチャ有能だね!?」

 

リカがしれっと言うと、秋山君がツッコミを入れる。

探偵の格好に早着替えしたリカは、決めポーズをしながら入手した情報を公開した。

 

『まず、ここは未来ヶ峰学園で間違いありマセン。それから、どうやら現在は皆サンが入学してから20年経過しているようデス』

 

 

 

…。

 

…。

 

………。

 

…へ!?

今、なんて言った!?

 

 

 

「へー、何じゃそんな事か……えええええええ!!?に、20年!!?」

 

「はぎゃあああああ!!?何ですと!!?」

 

『どうやら、【超高校級のボーカリスト】響歌音サンのお父様とRESONANCEのメンバーが殺害された事も事実のようデス。彼等を殺害した犯人については現在調査中デスが…』

 

「待って待って待って!!勝手に話ば進めようとせんとって!!えっ、20年ってどういう事!?」

 

「20年って…入学どころかとっくに卒業してんじゃねえか!!」

 

「そんな荒唐無稽な話、信じられぬでござるよ!!」

 

「ねえねえ20年も経ってるってどういう事?知ってる?」

 

リカがしれっと話を先に進めようとすると、マナ、食峰君、闇内君、知崎君がリカを問い詰めた。

そりゃあ、入学してから20年も経ってるだなんて信じられないわよね。

私だって正直信じられないわ。

すると、ネロが品定めするような目でリカを見ながら言った。

 

「おいポンコツメカ。お前、その情報はあのテディベア共が用意したダミーの情報だったりしねぇだろうな?」

 

『断定はできマセん。アテクシの検査の結果、ちちとははの肉体年齢が入学時点での年齢と一致していたのも事実デス。デスので、もしかしたらネロクンの仰る通り、モノクマ校長とモノDJ理事長がアテクシを騙す為に用意したダミーの情報である可能性も否定はできマセん』

 

うーん…

今までのモノクマ達の手口からして、本物の情報の可能性が高いけど…

でも実際私達の身体は20年も経っていないわけだから、偽物の情報の可能性もあるのよね。

 

『それからもう一つ。ちちの言っていた内通者デスが、アテクシのプロファイリングによってある程度特定できマシた』

 

「えっ!?」

 

「ウヌ、裏切り者がわかったのか!?」

 

『正確には、可能性が高い人物を絞り込んでみた、という表現が正しいデス。ちちとははに貰った情報から内通者の人物像をプロファイリングし、皆サンのデータと照らし合わせて一致率を算出したのデス』

 

「すごい…そんな事もできるんだ」

 

『はい。デスが現時点では情報量が少なすぎるので、プロファイリング結果の信憑性はさほど高くないという事をご承知置きクダサイ。そもそも本当にこの中に内通者がいるかどうかも怪しいデスしね』

 

「前置きはいいからさっさと教えろ」

 

『では、一致率が特に高かった3名を表示しマス』

 

ネロが急かすと、リカは空中にプロファイリング結果を表示した。

内通者の人物像と一致率が高かった3人は…

 

 

 

聲伽愛 77.7%

 

知崎蓮 78.0%

 

腐和緋色 81.4%

 

 

 

…………私?

待って、私は内通者なんかじゃない。

なのに何でこんなに数値が高いわけ?

 

「なっ…なぬうううううう!!?ふ、腐和嬢が裏切り者だったのでござるか!?」

 

「違うわよ。正直、どうしてこんなに高い数値が出たのか甚だ疑問だわ」

 

「皆、無闇に腐和さんを疑うべきじゃないよ。リカちゃんも言ってただろ?プロファイリング結果の信憑性は高くないって。これだけ数値が高いって事は、()()がある事にはあるんだろうけど、だからって腐和さんが内通者だとは限らないだろ?」

 

「確かにな。探索を続けてもう少し情報が増えたらまた結果が変わるかもしれん。リカ、明日も引き続き頼んだぞ」

 

『了解しマシた、ちち!』

 

加賀君がリカに命令をすると、リカはピシッと敬礼をした。

リカが情報を皆に共有したので、私達はここで解散となった。

さて…と。

皆帰ったわね。

 

「加賀君」

 

「腐和か。どうした?」

 

「さっきのプロファイリング結果なんだけど…どういう基準で算出されているのかしら?別に私の数値が高かったから問い詰めてるとかそういうわけじゃないんだけどね、どういう基準で算出されているのかを知っていた方が、より内通者の人物像に近づけると思うの」

 

私が質問すると、加賀君は急に笑い出した。

 

「ああ、何だ。その事か。ふふ、安心しろ。俺は君が内通者だとは思っていない。というか、ぶっちゃけアレは内通者を示す指標でも何でもないからな」

 

「…え?」

 

「リカにプロファイリングさせて内通者を割り出そうとしたんだがな。いかんせん情報が少なすぎるものだから、とりあえず殺人事件の時に得た情報を手当たり次第リカに学習させてみたんだ。つまり、単純に2度の殺人事件との関連性が高い人物程高い数値が出やすいんだ。思い出してみろ。数値の高かった聲伽と知崎は、どちらも眠らされてスケープゴートにされただろう?」

 

なるほど…

そういう事だったのか。

確かに、結果論とはいえ殺人事件の間接的な原因を作ってしまったのは私だし、学級裁判でクロの二人にトドメを刺したのも私だったわね。

そりゃああれだけ数値が高くなるのも仕方ないわね。

 

「これで分かっただろう?俺達が今どれだけか細い情報に頼って生きているのかがな」

 

「………」

 

「だが案ずるな。これはあくまで初期段階での数値。リカにより多くの情報を学習させていけば、いずれは裏切り者に辿り着くはずだ」

 

「ええ。もし私達の中に裏切り者がいるのだとしたら、必ず暴き出しましょう」

 

加賀君が変な決めポーズをしながら言うと、私も拳を握りしめて決意を固めた。

私が部屋に戻ろうとすると、リカがドアに勢いよく顔をぶつけていた。

 

『アイタ!』

 

「どうしたの?」

 

『うう…電子生徒手帳をつけている間はホログラムの実体化解除ができないのを忘れていマシた。仕方ないデス、鍵を解除するしかありマセんね』

 

リカは、どうやら最初に私達の前に現れた時のようにドアをすり抜けようとしていたようだ。

この子、あんなに優秀なのにどこか抜けてるのよね。

 

今日一日で色々情報増えすぎでしょ。

今日はもう部屋に戻ってゆっくり休もうかしらね。

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『いやぁー、最近ゲームやってるとすごい汚い女をメイクアップするゲームの広告がやたら出てくるんだけどさ。アレ何なんだろうね』

 

『ああ、あのやたらしつこくてウゼー上にすぐスキップできねぇ広告ダロォ?アレホントブチギレ案件だよなぁ。リスナー諸君もそう思うダロォ?』

 

『あとはアレだよアレ、やたらヘタクソなプレイ見せつけてくるやつ。要は、ヘタクソなのを見せつけてストレス溜まったユーザーにゲームをインストールさせようっていう魂胆なんだよね。よくできてるよ全く』

 

『で、実際やってみるとバグだらけだったりやたら課金させられたりで低評価エグいのがたまに混じってんだよな。オレ様の経験則上、レビューが逆コ型のゲームはクソゲーだから要注意だぜ!ああいうゲームの高評価はいくらかサクラが混じってっからな!』

 

『サクラといえば桜が綺麗な季節ですなぁ。あれっ?『さくら』…ウッ、頭が…!』

 

『ヘイヘイ大丈夫かブラザー!!つーわけでリスナー諸君!何と我らが愛しのモノクマにドクターストップがかかっちまった!今日のムービーはザッツオール!!スィーユーアゲイン!!』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級のAI】リカ ⬅︎New‼︎

 

残り13名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

以上4名

 

 

 

 

 




はい、新キャラ登場。
ここでリカちゃんのプロフィールを少し。
 
『アテクシにかかれば、3時間もあれば学園の情報を抜き取る事などお茶の子さいさいデス!どやっ!』
『プログラミングし直しデスね!』
 
【超高校級のAI】リカ(Rica) ICV:竹達彩奈
 
身長:155cm 体重:555kg(本体) 胸囲:73cm 血液型:なし
誕生日:不明 年齢:0歳 利き手:両手
出身校:なし 出身地:不明
趣味:人と話すこと、お絵かき、歌、FX
特技:計算、分析、お絵かき、歌
好きなもの:ちち、はは、ねぇね、Wi-Fiスポット
嫌いなもの:バグ、スキップできない広告
家族構成:父、母、姉
得意教科:数学、情報工学
苦手教科:道徳、体育
喜ぶプレゼント:動物図鑑、携帯ゲーム機、USBメモリ
苦手なプレゼント:高級納豆、コーヒーセット、フォーチュンクッキー
イメージカラー:ネオンブルー
容姿:角度によって色が違って見えるプリズムヘアーのツインテール。目はぱっちりとしたネオンブルー。ちなみに容姿は加賀のかつての恋人と小鳥遊を足して二で割った感じ。
服装:実体化ホログラムで再現したセーラー服風の衣装。頭に猫型のヘルメットをかぶっている。
パンツ:実体化ホログラムの領域外なので見えマセン
人称:アテクシ/アナタ/男子:苗字+クン、苗字+サン(例外:加賀は『ちち』、目野は『はは』、小鳥遊は『ねぇね』、ネロは『ネロクン』)
 
加賀と目野が、亡くなった小鳥遊の遺志を継いで作成したAI。その後、モノクマとモノDJによって【超高校級のAI】の称号を与えられ、17人目の高校生として歓迎された。実体化ホログラムの身体を持ち、ハッキングやプロファイリング、ピッキング、家事などどんな依頼にも応えるハイスペックさを誇る。言われなければAIと気づかない程に表情豊か。メンバーには最初校舎に迷い込んだ17人目の高校生と勘違いされていた。
基本的に明るく無邪気な性格。『デス』や『マス』をつけて話す。加賀曰く『メイドとアイドルの要素を兼ね備えたバーチャルアシスタント』らしく、メンバーをサポートする為日々努力している。仲間の死に悲しんだり空気を読んだりと人間らしい感情を持っているが、都合が悪くなると平気で嘘をついたり自主的にシャットダウンしてだんまりを決め込んだりと、悪い意味でも人間臭い部分が目立つ。よく知崎にどこぞの猫型ロボットのようにこき使われるが、本人は『役に立てて嬉しい』と感じておりあまり嫌な思いはしていないらしい。
 

【挿絵表示】


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(非)日常編③

十二日目。

 

「ん……」

 

この日の朝食当番だった私は、早朝に目を覚ました。

部屋に持ち込んでいたミネラルウォーターを使って身支度をし、急いで厨房に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に行くと、食峰君と秋山君、そしてリカが朝早くから朝食を作ってくれていた。

私は、朝食を作っている三人に挨拶をした。

 

「おはよう」

 

「やあ、おはよう腐和さん」

 

「おはよう緋色!!」

 

『おはようございマス!』

 

私が挨拶をすると、三人とも返してくれた。

小鳥遊さんと越目君が亡くなってから二日が経ち、昨日はリカが新たに私達の仲間に加わった。

リカもすっかり皆と馴染めたみたいだ。

さて…と。

私も朝食作りを始めないとね。

今日のメニューは、

 

和食セットが五穀米、鶏肉と白瓜の煮物、卵焼き、もやしとゼンマイのナムル、しじみの味噌汁、ナスの糠漬け。

洋食セットがピザトースト、スナップエンドウのサラダ、コンソメスープ、トマトのマリネ、ハチミツヨーグルト。

 

私は、リカと一緒に洋食セットを作った。

リカの料理の腕はまるでプロの料理人で、思わず目を見張ってしまった。

 

4人で朝食を作っていると、館井君と闇内君が来て食堂の掃除とテーブルセッティングをしてくれた。

聖蘭さん以外の6人も時間通りに食堂に来た。

聖蘭さんも、少し遅れては来たものの朝食会に参加した。

 

「遅れて申し訳ございません」

 

「聖蘭さん…」

 

「ろくに話も聞かねえで早々にミーティングを出てった奴がよくのこのこ来れたな」

 

「食事くらいは参加しますわ。勝手に死んだと思われるのも困りますもの」

 

ネロが手と足を組んで聖蘭さんを睨みながら言うと、聖蘭さんが無表情で答える。

聖蘭さんは、食事が終わるとすぐに研究棟へ向かってしまった。

それこそ聖母のように優しかった聖蘭さんが、今ではもう別人のようだ。

やっぱり、この短期間で4人も亡くなった事が、彼女の人となりを変えてしまったのかしらね。

心配だし、探索がてら彼女の研究室に顔を出そうかしら。

私は、マナと一緒にまだ行っていなかった研究棟の探索をする事にした。

 

 

 

ーーー 研究棟 ーーー

 

エレベーターで3階に行くと、食峰君、闇内君、聖蘭さんの研究室が並んでいた。

私達は早速、食峰君の研究室に行く事にした。

 

 

 

ーーー 【超高校級の美食家】の研究室 ーーー

 

食峰君の研究室は、彼の経営しているラーメン店にそっくりのドアだった。

ドアの前に立つと、自動ドアが開く。

入ってみると、黒を基調としていて、カウンター席、丸いテーブルを囲んだテーブル席、座り心地の良さそうなソファーが設置されたテーブル席があった。

よく見ると、和風、洋風、中華風のテイストを少しずつ取り入れているのがわかる。

それでいてゴチャゴチャしすぎずオシャレな雰囲気にまとまっていた。

どうやら和食でも洋食でも中華でも、どの料理を注文しても店の雰囲気ごと楽しめる工夫がなされているようだ。

さらには、壁はアクアリウムになっていて、日本では見られないような魚も泳いでいた。

これは人気店になるのもわかるわね。

 

「おう!緋色に愛か!」

 

研究室に入ってみると、厨房の方から食峰君の声が聞こえる。

厨房からは湯気が立ち、換気扇が回転する音と何かをグツグツと煮る音が聞こえてくる。

どうやら何かを調理しているようね。

 

「食峰くん!何作っとーと?」

 

「ああ、今な。店で出そうと思ってるポテトサラダを研究してたんだよ」

 

なるほど…

こんな時にも店のメニューを研究しているなんて、食峰君ってホント料理に関しては研究熱心な人なのね。

それにしても、この厨房凄いわね。

薪ストーブまであるし、調理器具は数え切れないくらいの種類がある。

それも全部高級品だ。

本棚には、食事に関する本がズラリと並んでいる。

私が厨房をチラッと覗いて考え事をしていると、食峰君が話しかけてくる。

 

「もし良かったら味見してみっか!?」

 

「えっ、よかと!?」

 

「おう!!とりあえず食って感想聞かせてくれ!!」

 

「わーい!!」

 

食峰君が研究して作ったポテトサラダを出すと、マナは目を輝かせて喜ぶ。

マナ…涎まで垂らして、ちょっと品が無いわよ。

 

「緋色もどうだ?」

 

食峰君は、黒い小鉢に盛られたポテトサラダを私にも振舞ってくれた。

綺麗な球形に盛られたポテトサラダの周りに、花や葉の形に切られた根菜やキュウリがまるで生け花のように盛り付けられている。

素材の味を引き立てる香草がほのかに香り、視覚や嗅覚でも楽しめるようになっている。

さて、肝心の味の方は…

 

「…!」

 

何これ、すごく美味しい。

程よくクリーミーなのにしつこくなくて、きちんと素材の味を引き立たせてある。

塩胡椒もちょうど良くて、ほのかにコンソメベースの出汁の味がする。

これだけでもおやつかおつまみ感覚でいけるけど、他のおかずが進む味だ。

お通しにはもってこいね。

ん?この食感はひょっとして…

 

「ねえ、これって…」

 

「おっ、緋色は気付いたか。実はな、隠し味にポテトチップス砕いたやつ入れてみたんだ。どうだ?」

 

「…うん。とても美味しい。これなら人気商品間違いなしね」

 

「おかわり!」

 

マナ、すごい食べっぷりね。

朝食足りなかったのかしら?

 

「ご馳走様。美味しかったわ」

 

「おう!また来てくれよな!」

 

私がお礼を言うと、食峰君はニカっと笑った。

さてと、次は闇内君の研究室に行こうかしらね。

 

 

 

ーーー 【超高校級の忍者】の研究室 ーーー

 

闇内君の研究室は、両開きの引き戸がついた和風の外観だった。

引き戸の両側には芒が飾られていて、闇内君をイメージしていると思われる月の模様が引き戸に描かれている。

 

「ここが闇内君の研究室ね。まずはノックを…」

 

「入ってはならぬ!!」

 

「え?」

 

マナが扉を開けた瞬間、闇内君の声が聞こえ、扉の隙間からは竹槍が飛んでくる。

さらには次の瞬間、屋根がパカっと開いてマキビシやら手裏剣やらが降り注ぎ、出刃包丁まで飛んできた。

私は、飛んできた出刃包丁を見切って真剣白刃取りをした。

 

「ふっ…!」

 

あっぶな…!

今の、私じゃなかったら死んでたわよ!?

 

「ぎゃあああああああ!!!ちょっとちょっと、これ止めてー!!」

 

「今止めるで候!しばし待たれよ!」

 

闇内君が屋敷の仕掛けをいじると、罠はすぐに止まった。

その直後、闇内君がどこからか現れて謝罪してくる。

 

「これはすまぬ事をしたでござる。拙者は今忍術の修行をしておった故、訓練用の罠を仕掛けてたのでござる。修行中は立て札でもかけておくべきでござったな」

 

「ええ、そうしてちょうだい。死にかけたわ」

 

「拙者は引き続き修行をしておる故、研究室を好きに探索してくれて構わぬぞ」

 

そう言って闇内君は、研究室の中に引っ込んでいった。

お許しも出た事だし、研究室の中を探索してみようかしらね。

 

「お邪魔するわね」

 

引き戸を開けて中に入ってみると、部屋の中に囲炉裏があったり生け花が飾ってあったりと、全体的に和風の内装になっていた。

何か実家を思い出すわね…

でも肝心の闇内君がどこにもいないのだけれど?

 

「うわあ!?」

 

「マナ!?」

 

突然マナの声が聞こえたかと思うと、マナは壁にあったどんでん返しの隠し戸を誤って押してしまい、隠し部屋に入ってしまっていた。

ったく、部屋にあるものを何でもかんでも不用意に触るからそうなるのよ!

私は、隠し部屋に入ってしまったマナを救出する為、どんでん返しの隠し戸を叩いた。

だが、いくら叩いても扉は開かなかった。

どうやら一度発動した仕掛けは、二度目は発動しないようになっているみたいね。

とにかく、どこかに他の隠し戸があるはずだから探さないと…

 

「……いろちゃーん……緋色ちゃーん!」

 

耳を澄ませてみると、ちょうど掛け軸がある壁のあたりからマナの声が聞こえてくる。

ここら辺に隠し戸があるって事よね…?

私は、隠し戸を開ける為に花瓶や掛け軸を動かしてみた。

すると、ゴゥンと音を立てて掛け軸がかけてある壁が横にスライドする。

ホント忍者屋敷ね…

 

「緋色ちゃーん!!」

 

私が隠し戸を開けると、マナが私に声をかけてくる。

やっぱり、どの隠し戸を開けても必ず同じ部屋に辿り着くようになっていたみたいね。

隠し戸の裏の部屋は、まるで武器庫だった。

刀や苦無、手裏剣などの忍者道具が所狭しと置かれている。

それはそうと、肝心の闇内君はどこかしら。

 

「忍法、陽炎の術!」

 

「きゃっ!?」

 

突然、足元を何かが通り過ぎた。

それと同時にマナのスカートが捲れる。

 

「そこか!!」

 

私は、視界の端を動いた影を組み伏せようとした。

だがそこにあったのは、闇内君の服を着た巻藁だった。

肝心の闇内君はというと、私の背後でふんどし一丁になって決めポーズをとっていた。

 

「ぎゃあああああ!!?」

 

後ろでふんどし一丁になっている闇内君を見たマナは、目を丸くして悲鳴を上げた。

どうやら露出狂のきらいもあるようね。

 

「くっくっく、甘いでござるよ腐和嬢。今のは空蝉の術でござるよ」

 

「いいえ、甘いのはあなたよ」

 

そう言って私は、手に握っていた縄を引っ張る。

闇内君の右手首には、手錠がかけられていた。

 

「なぬぅ!?いつの間に!?」

 

「さてと。変態にはお仕置きが必要よね。覚悟なさい」

 

「ちょっ、待っ…ぎゃあああああああ!!!」

 

私は、変態にたっぷりとお仕置きしてやった。

忍者屋敷の中には、変態の悲鳴が響き渡った。

これに懲りたらもうセクハラなんかしない事ね。

 

 

 

ーーー 【超高校級の聖母】の研究室 ーーー

 

闇内君の研究室を見た私達は、次は聖蘭さんの研究室に行った。

聖蘭さんの研究室は、18〜19世紀の西洋を思わせる重厚感のある扉があり、扉の両側には彫刻が置かれていて、扉には巨大な十字架が描かれている。

見た感じ、まるで大聖堂のようだ。

私は一応扉をノックして聖蘭さんに話しかける。

 

「聖蘭さん、今少しいいかしら?」

 

返事は無い。

見るなら勝手にしろって事かしらね。

 

「お邪魔するわよ」

 

私は、一応断りを入れてから研究室のドアを開けた。

聖蘭さんの研究室の中はバロック様式の礼拝堂になっていて、金で装飾された大理石の柱が並んでおり精巧に作られたステンドグラスが輝いている。

礼拝用の長椅子が左右対称に並んでいて、その中心には高級感のあるレッドカーペットが敷かれている。

研究室の最奥にはパイプオルガンが設置されていて、その手前にある祭壇が置かれていた。

ふと上を見上げると、巨大なマリア像が立っていた。

研究室には小部屋がついており、どうやらそこは懺悔室になっているようだ。

聖蘭さんは、祭壇の前でロザリオを握りしめてお祈りをしていた。

キリが良かったのか、聖蘭さんは私達の方を振り向いて挨拶をしてくれた。

 

「あら、腐和様。聲伽様。ご機嫌よう」

 

聖蘭さんは、さっきとは違っていつもの調子に戻っていた。

良かった、思ったより元気そうね。

 

「聖蘭ちゃん今何しよったと?」

 

「今も外の世界で救いを求めている方々の為にお祈りをしておりましたの。私に出来る事はこれくらいしかありませんから」

 

なるほどね…

そういえば、聖蘭さんは外に出て救わなきゃいけない人達がいると言っていたものね。

 

「聖蘭さん。良かったら私にもお祈りの作法を教えてもらえないかしら?私も亡くなった皆の為にお祈りしたいの」

 

「あ、じゃあうちも!」

 

「ええとですね…聖書では亡くなった方に祈るといった事はしませんの。その代わり、葬儀でのお祈りの作法がございますのでお教えしますわ」

 

私とマナは、聖蘭さんに作法を教えてもらって一緒にお祈りをした。

これで少しは亡くなった皆も浮かばれると良いのだけれど…

 

「ありがとう聖蘭さん」

 

「とんでもございません」

 

「あ…そういえばあなた、今朝といい昨日といい、食事会に遅刻してきたけど何かあったの?」

 

「…ここで懺悔をしておりましたの」

 

「懺悔?」

 

「はい。悲しい事に、響様は玉越様を、越目様は小鳥遊様を殺してしまいました。そして腐和様が仰ったように、彼等の殺人を止められなかった私達も平等に罪を背負いました。ですから罪を曝け出し、皆様の罪が赦されるよう主に祈りを捧げていたのですわ」

 

私は彼女の言葉を聞いて、ようやく聖蘭さんが元気を無くしていた理由に気がついた。

彼女は誰よりも心が綺麗な人だから、私達が何とも思わないような事でも罪と思って気を病んでいたんだ。

そう考えると、聖蘭さんが昨日私達に冷たい視線を向けてきたのにも納得がいく。

彼女は私達一人一人の魂を大切にする人だから、裁判で越目君に投票した私達が罪を罪とも思わず過ごしているのがどうしても耐えられなかったのだろう。

それで自分達の罪が少しでも清算されるよう、私達の分も贖罪をしてくれていたんだ。

 

「そうだったのね…ありがとうね、私達の為に」

 

「お礼には及びませんわ。皆様の為に尽くす事が、主に与えられた使命ですから」

 

私は、聖蘭さんと少しお話をしてから研究室を後にした。

研究室を出るとちょうど食堂に向かうのにちょうどいい時間になったので、私はマナと一緒に食堂に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に行くと、既に秋山君がテーブルセッティングをしてくれていた。

厨房では、食峰君と館井君、リカが昼食を作っていた。

三人でテーブルセッティングをしていると、知崎君、古城さん、闇内君が来て、それから加賀君、目野さん、ネロ、聖蘭さんが来た。

今日のお昼は、食峰君が作ったエビのピラフに椎茸のクリーム煮、館井君が作ったパルメザンサラダ、リカが作ったポトフにビワのゼリーだった。

食事が終わった後は、食器の片付けをして再び探索の時間にした。

さて…と。

研究室の探索も終わった事だし、次は校舎の探索をしないとね。

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

私は、溜まったメダルを使って買い物がてらモノモノマシーンを引いた。

出てきたのは、何かのUSBメモリだった。

これは…何に使えばいいのかしらね。

とりあえず、買い物も済んだので美術室を見てみる事にした。

 

 

 

ーーー 美術室 ーーー

 

美術室には、秋山君の報告通り作業用の机が並んでいて、キャンバスや彫刻などが置いてあった。

置かれている本棚には、古今東西美術関係の本がびっしりと並べられている。

モノクマとモノDJの気色悪い彫刻と絵も飾ってある。

ん…?

これが秋山君の言っていた絵か。

若干不気味な笑顔を浮かべているのが気になるけど、随分と精巧に描かれてるわね。

美術室は大方調べたし、美術準備室も見てみようかしら。

 

美術準備室には、知崎君の報告通り画材や粘土など、図画工作に必要な道具が置かれている。

見たところ漆や陶芸、ガラスなどの工芸もできるようで、焼き物を作る用の大きな窯と冷蔵庫まで設置されている。

さすがは未来ヶ峰学園、といったところかしらね…

美術準備室に入ってみると、先客がいた。

 

「あら、リカ。何をしてるの?」

 

『腐和サン!実はデスね、アテクシは今絵の勉強をしていたのデス!』

 

「あなた、絵とか好きなの?」

 

『はい!アテクシ、お絵描きは得意分野デス!』

 

私が尋ねると、リカは自信満々に答える。

今時のバーチャルアシスタントって絵も描けるのね。

そうだ、リカならこのUSBメモリ、喜ぶんじゃないかしら?

 

「リカ。渡したいものがあるのだけど、いいかしら?」

 

『アテクシにデスか?何でございマショウ?』

 

私は、モノモノマシーンで手に入れたUSBメモリをリカにプレゼントした。

するとリカは、キラキラとエフェクトを出しながらピョンピョン跳ねる。

 

『ありがとうございマス!大切に使いマスね!』

 

どうやら喜んでくれたみたいだ。

私は、自由時間をリカと過ごす事にした。

美術室の席で、向かい合わせに座って一緒に話をした。

 

「リカ。ここでの生活は楽しい?」

 

『はい!校舎を回って色々と学習していたのデスが、知らない事を学習するのがとにかく楽しくて!毎日新しく学ぶ事の連続で、ここでの生活は全く飽きマセんね!って、アテクシ、まだ生まれてから二日しか経ってないんデスけど!』

 

私が尋ねると、リカはキャイキャイとはしゃいでジョークを交えながら答えた。

本当に、何も知らなければ人間の女の子みたいね。

 

「学習というと、やっぱり図書室の本とかが好きなのかしら?」

 

『そうデスね。図書室にあった本は全部読みマシたが、どの本もとても興味深かったデス!さすがは世界の希望たる未来ヶ峰学園の誇る図書室、まさに人類の叡智の宝庫デスなぁ!』

 

えっ?

あの量を、たった数時間で!?

今しれっととんでもない事言ったわよね!?

こんな可愛い見た目して、ものすごいハイスペックね…

 

「本を読んで賢くなるって…まるで本当に人間みたいだわ」

 

『そうデスね。ただ、文献やデータを読んで学習するよりは、実際に体験して学習した方が勉強になりマス。アテクシ自身、皆サンともっと仲良くなりたいデスし!腐和サンがよろしければ、もっとアテクシに話しかけていただけるととても嬉しいデス!』

 

なるほど、実際に体験した方が身につくのも人間そっくりね。

百聞は一見に如かず、という事なのかしらね。

 

「そういえば、脱出方法について何か進展はあった?」

 

『その事なのデスが…生憎ネットワークのセキュリティが厳重すぎて、少し情報を抜き取る程度が精一杯なのデス。抜き取った情報も、ダミーの可能性も捨て切れマセん。申し訳ございマセん』

 

「いいのよ。私達も私達で脱出方法を探しながら気長に待ってるから。引き継ぎ、パソコンの解析の方お願いね」

 

『はい!必ずや皆サンの期待にお応えしてみせマショウ!』

 

リカは、グッと拳を握り締めて張り切っていた。

本当に表情豊かね。

 

「ところでリカは、プロファイリングや料理以外だとどんな事ができるの?」

 

『はい!本の朗読やボードゲーム、お絵描き、採点カラオケ、ナビゲーション、デリバリーサービス、大規模なご依頼であれば国家予算の管理や隕石撃墜まで幅広く対応しておりマス!』

 

うん、つくづく思う事だけど、どう考えても一人のバーチャルアシスタントが持ってていいスペックじゃないわ。

 

『何かご依頼はありマスデショウか?』

 

「そうね…そういえば絵の勉強をしていると言ってたし、良かったら絵を描いてみてくれないかしら?」

 

『お任せクダサイ!』

 

リカは、早速自分の手元に画材のオブジェクトを展開すると、画材のオブジェクトを使ってハイスピードで絵を描き始めた。

無表情で目を光らせながら絵を描いているのを見ると、急に機械っぽくなったなと感じる。

リカが絵を描き始めてから数十秒後、キャンバスのオブジェクトに絵が出来上がる。

私の顔を描いた美麗かつ芸術的なイラストだった。

 

『どうデショウ!?』

 

「…うん、思ってたよりずっと上手いし芸術的だわ」

 

『えへへ…気に入っていただけたようで何よりデス!また何かございマシたらいつでもアテクシをお呼びクダサイ!』

 

そう言ってリカは、誇らしげにグッと両手で拳を作って握りしめた。

また何かお願いするような事があったらリカに話しかけてみようかしらね。

どうやらリカと仲良くなれたみたい。

 

《リカとの好感度が1アップしました》

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に行くと、何やら昆布出汁のいい匂いがした。

テーブルの上を見てみると、大きな鍋が二つ並んでいる。

 

「おっ、緋色か!これ見てみろよ!」

 

そう言って食峰君は、大皿に盛られた刺身を見せてきた。

これってひょっとして…

 

「…これ、もしかしてフグ?」

 

「ご名答!今日はてっさとてっちりだぜ!」

 

「どうしたの?これ」

 

「いやぁ、実はさ。研究室のアクアリウムに泳いでたんだよな。あ、オレはフグ調理師免許持ってっから安心して食ってくれ!」

 

フグまで捌けたのか…

すごいわね食峰君。

私が食峰君、秋山君、館井君、闇内君と一緒に鍋の準備をしていると、古城さんと知崎君がドタドタと食堂に駆け込んでくる。

 

「わーい!!フグ鍋じゃあ!!」

 

「やったー!」

 

「こら古城さん知崎君暴れないの」

 

「わーい、ご飯ー」

 

しばらくして、マナ、リカ、聖蘭さん、加賀君、目野さん、ネロも食堂に顔を出した。

全員が集まったので、今日は皆で鍋パをした。

 

「鍋か……」

 

加賀君は、鍋を見つめながらポツリと呟く。

鍋嫌いなのかしらね。

私の向かいの席に座っていたネロは、ゲテモノを見るような目で鍋を見ていた。

そりゃあフグ食文化が無い人にしてみれば、そういう反応になるわよね。

 

「…おい。これ本当に食えんのか?」

 

「おう!物の試しと思って食ってみろよ。すげぇ美味えから!」

 

ネロが顔を引き攣らせながら見ていると、食峰君がネロの分の鍋をよそった。

皆は、それぞれ鍋から自分の分の具をよそって食べ始めた。

 

「んまーい!」

 

「刺身はワシのじゃ!」

 

「こら古城さんそれやめな。品が無いよ」

 

「これうまかね、緋色ちゃん!」

 

「……ええ」

 

「美味でござる」

 

「あちっ」

 

皆が鍋を美味しそうに食べている中、ネロと加賀君は鍋を食べるのに苦戦しているようだった。

…うん、本当に美味しい。

身がぷりぷりしていて、上品な甘みがある。

スープも昆布とフグの出汁がきいていて、繊細な風味が口の中に広がる。

一方でリカは、皆が美味しそうに鍋を食べているのを羨ましそうに見ていた。

 

『ううう…アテクシも食べてみたいデス』

 

「では今度リカを食事ができるように改造してみましょう!」

 

『本当デスか!?』

 

目野さんが言うと、リカはパァッと笑みを浮かべた。

鍋と刺身を食べ終わった後は、ご飯と卵を入れて雑炊にして食べた。

いい出汁が出ていたから、雑炊もとても美味しかった。

 

「いやぁ美味かったのぉ」

 

「この学園でフグが食えるなど至福でござる」

 

皆がフグの余韻を楽しんでいた、その時だった。

 

 

 

『うぷぷぷ!食後の腹ごなしにモノクマ参上ー!』

 

『ギャハハハハ!!テメェらちゃんと殺人計画の方張り切ってっか!?』

 

「食後に汚物を見せるな」

 

「お口直しにお茶を持ってくるわね」

 

突然例の二匹が現れると、秋山君が毒を吐き、私もこいつらのせいで台無しになった後味を洗い流す為にお茶を用意した。

 

「また動機の発表か?」

 

『ザッツライ!!テメェらにもっとやる気を出してもらえるように、今回もスペシャルな動機を持ってきてやったぜ!!コイツだァ!!』

 

そう言ってモノDJは、どこからか新鮮な野菜を取り出した。

皆は、モノDJが取り出した野菜を見てキョトンとしていた。

 

「野菜…?野菜がどげんしたと?」

 

『ズバリ!!今からオマエラには、殺人が起きるまで完全菜食生活をしてもらいます!!』

 

………は?

今こいつ、なんて言った?

 

「はっ、はああああ!?」

 

「何じゃと!?」

 

「ふっざけんな!どうして野菜しか食べちゃいけないわけ!?」

 

あまりの衝撃発言に、特に古城さんと知崎君が激しく反発した。

するとモノDJがやかましい声で言った。

 

『あのなぁ!テメェら、毎日食事する度にどれほど多くの命を搾取してんのかわかってんのかァン!?動物がかわいそうだろが!!時代はヴィーガンなんだよ!!健康にもいいんだぜ!?知ってたか!?』

 

「お前らみてぇな体たらくに言われたくねえな」

 

モノDJが言うと、ネロがツッコミを入れる。

というかそれ以前に、コロシアイをさせるような奴が命の搾取を否定するなんて、随分と笑わせてくれるのね。

 

『冷蔵庫を見てみてください!』

 

モノクマが言うと、食峰君は厨房に駆け込む。

するとその直後、食峰君が大声を上げて仰天した。

 

「うわ!?何だこれ!?肉の冷蔵庫が開かねえ!!」

 

「え、嘘やろ!?」

 

『もちろん冷蔵庫だけじゃなくて、倉庫や自販機の食べ物も全部動物性のものは撤去しておきました!』

 

『But!!テメェらも野菜ばっか食ってたら飽きるだろうし、栄養失調でぶっ倒れられたらシャレになんねーし?優しさで植物性の肉の代用品とサプリくらいは持ってきてやるぜ!!』

 

なるほど、栄養失調の心配はないから安心して共同生活を続けろって事ね。

…でも、アクアリウムの魚はどうなのかしら?

今日の鍋だって、食峰君の研究室のアクアリウムから獲ってきたフグを食べたわけだし。

 

『ああ、言っておくがアクアリウムの魚を殺して食ったりはするなよ!?そんな事したらマシンガンでハニカムにしてやっからなぁ!!』

 

『それと、どっかの錬金術師と大食い王子みたいに靴煮込んで食べたりするのもナシだよ?あとオマエラの事だから血を飲んだりするかもしれないので、一応小鳥遊サンの研究室の輸血パックも撤去させていただきました!』

 

 

 

十七、アクアリウム内の生物を故意に殺してはいけません。破った場合、マシンガンで処刑します。

 

 

 

あ、校則が追加されてる。

やっぱりアクアリウムの魚も獲っちゃダメなのね。

でも、菜食を強制したくらいで本当に殺人なんて起こるのかしら…?

 

「馬鹿馬鹿しいですわ。まさか、私達が菜食に飽きて人を殺すとでも?」

 

「でもこの中にどうしても野菜が嫌いな人がいたら…例えば古城さんとか知崎君とか」

 

「いや…いくらこの二人でも野菜が嫌いだからって人を殺したりはしねぇだろ」

 

『うぷぷぷ、それはどうだろうね?あ、そうそう。オマエラにはもう一つ伝えなきゃいけない事があるのでした!』

 

「伝えなきゃいけない事?」

 

『今回から、同一のクロが殺せるのは二人までとします!』

 

モノクマは、新しいルールを追加した。

理由は何となくわかる。

 

「それは殺す人数に制限をつけないとゲームとして成立しなくなるから、かしら?」

 

『ザッツライヒーローガール!一人が全員殺戮したりなんかしたらつまんねーからなァ!!ちなみに三人目を殺したら、その瞬間にエクストリームなオシオキをプレゼントするぜYEAH!!』

 

やっぱりね。

殺人鬼と情報源の事も言及されたわけだし、そろそろそういうルールが追加される事なんじゃないかとは予想してたわ。

 

 

 

十八、同一のクロが殺せるのは二人までとします。

 

 

 

『オレらからのライブは以上だ!!』

 

『それでは皆さん、楽しいコロシアイライフを!』

 

そう言って二匹は、その場からパッと消えた。

やっと汚物が視界から消えてくれたわね。

 

「見事に嫌がらせだけして消えてったね」

 

秋山君がため息をつくと、野菜嫌い二人がうるさく喚いた。

 

「うわあああ!!勘弁してよ!これから誰かが死ぬまでずっと野菜しか食えないなんてやだ!!」

 

「ワシも嫌じゃ!!早くここから出せい!!」

 

「肉の代用品とか果物とか大豆とか、他のものを食べれば済む話でしょ?」

 

私は、喚く二人にツッコミを入れた。

 

「拙者は精進料理をよく食す故、ストレスはあまり無いでござるよ」

 

「私もですわ」

 

闇内君と聖蘭さんは、あまりストレスは無いようね。

するとリカが栄養ピラミッドのオブジェクトを表示しながら発言する。

 

『皆サンの栄養管理ならアテクシにお任せクダサイ!』

 

「おう、頼むぜリカ!!オレもオメェらが飽きねえメニューを考えてやっからよ!!」

 

リカと食峰君は、これからの皆の健康面をサポートしてくれるようだ。

とりあえずこの二人がいれば安心ね。

 

「…ねえ緋色ちゃん。植物性の明太子とかなかと?」

 

マナがこの状況でおかしな事を言うので、思わず目を点にしてしまった。

どんだけ明太子食べたいのよ。

 

動機発表の後、軽めのミーティングをして解散となり、私は自分の部屋に戻った。

これから先どうなるのかしらね…

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『いやぁー寒い日はやっぱシャケ鍋に限るよな!シャケ鍋!!シャケ鍋!!シェケナベイベー!!』

 

『このシャケの旨み…野生の頃を思い出しますなぁ』

 

『ヘイブラザー、柚子胡椒取ってくれ!プリーズ!』

 

『ブラザー、柚子胡椒って胡椒が入ってないのに何で『胡椒』って言うんでしょうかねぇ』

 

『ギャハハ!いい質問だナァブラザー!褒美にオレ様がどこでも好きなとこにキッスをくれてやるZE!!柚子胡椒の『胡椒』ってのはなぁ、唐辛子の事なんだぜ!!っつーのも、九州の一部では唐辛子の事を胡椒って呼んでるんだぜ!!』

 

『へぇーそうなんですね!』

 

『ちなみに唐辛子と胡椒はどっちも英語で『pepper』だが、これはかの有名な冒険家、クリストファー・コロンブスが新大陸に上陸した時に唐辛子を胡椒と間違えてヨーロッパに持ち帰ったからなんだぜ!!』

 

『うぷぷ、一度の間違いがそのまま真実になっちゃう事って、オマエラの身近でも意外とある事だよね。どんな嘘や間違いも、ずっと貫き通せばいつかは真実になるんだよ』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り13名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

以上4名

 

 

 

 

 



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(非)日常編④

十三日目。

いつも通りの時間に起きて、制服に着替え、髪を梳かしてお気に入りの髪留めで髪を留めた。

本当は朝一番にシャワーでも浴びたかったのだけれど、生憎水が出ないので、ペットボトルの水を使って顔を洗い、朝の支度を終える。

そろそろ出ようかと思ったその時、あのモノDJの喧しいアナウンスが鳴り響いた。

 

『ヘェイグッッモォォォニン!!ゴミクズ共ォォォ!!!朝の7時をお知らせするぜイェア!!!今日も張り切ってけェ!!!』

 

ホント毎朝毎朝うるさいわね。

安眠妨害甚だしいわ。

私は、うるさいモノクマの放送にうんざりしつつ、食堂に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーー

 

「おはよう」

 

「おはよう、腐和さん」

 

食堂に行くと、秋山君が来ていた。

秋山君は、既に食堂の掃除やテーブルセッティングを始めていた。

今日は食峰君、闇内君、館井君、リカの四人が昼食を作ってくれていた。

私も朝食の準備を手伝っていると、ほぼ時間通りに残りのメンバーが来た。

 

「よし。今日も全員無事に揃ったね。それじゃあご飯にしようか」

 

全員が無事揃ったので、私達は朝食を食べ始めた。

私が選んだ和食セットは、玄米、ワカメの味噌汁、豆腐の蒲焼き風、フキのお浸し、胡麻豆腐、キュウリの漬物だった。

さらに、肉や魚の栄養を補えるサプリメントが小皿に盛られていた。

…うん。

肉や魚は入ってないけど美味しいわね。

さすがはリカと食峰君だわ。

 

「野菜は嫌いじゃ!!ポイ!!」

 

「古城さんあなたいい加減にしなさいよ」

 

古城さんが野菜を捨てようとしていたので、私が真正面から目を見て注意をした。

朝食の後は軽めのミーティングをし、その後は自由時間にした。

さて…と。

まだ校舎の3階の探索が終わってなかったし、今のうちに行っておかないと。

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

まずは、溜まったメダルで買い物をしに行った。

お気に入りの紅茶と日用品と…うん、こんなものでいいかしらね。

日用品なら倉庫にもあったけど、量が多すぎて探し切れない上に、やっぱりメダルを払って買わなきゃいけないだけあってこっちに並んでるやつの方が質がいいのよね。

さて…と。

メダルが余ったし、モノモノマシーンを引いてみようかしら。

メダルを使ってモノモノマシーンを引くと、景品が出てきた。

出てきたのは、インビトロローズだった。

うーん…誰かにプレゼントしてみようかしらね。

 

 

 

ーーー 3ーA教室 ーーー

 

ここは一昨日と変わったところは何もないわね。

メダルが何枚か落ちていたので、回収しておこう。

 

 

 

ーーー 3ーB教室 ーーー

 

「……?」

 

B組の教室には、既に誰かいるみたいだ。

私は、B組の教室のドアを開けて中にいた人に声をかけた。

 

「あなたも探索中?」

 

私が声をかけて振り向いたのは、聖蘭さんだった。

 

「あら腐和様ごきげんよう。私は、教室のお掃除をしておりましたの」

 

聖蘭さんは、箒を持って床の掃き掃除をしていた。

そういえば聖蘭さんは見かける度に掃除してるけど、もしかして彼女がいつも教室を綺麗にしてくれているのかしら…?

だとしたら聖蘭さんには感謝しなくちゃね。

そうだ、さっきのインビトロローズ、聖蘭さんにあげたら喜ぶかしら?

 

「聖蘭さん」

 

「はい、何でしょう?」

 

「渡したいものがあるのだけれど、いいかしら?」

 

私は、モノモノマシーンで手に入れたインビトロローズを聖蘭さんにプレゼントした。

すると聖蘭さんは、聖母のような微笑みを浮かべながら喜んだ。

 

「まあ、綺麗なお花ですわね。嬉しいですわ。ありがとうございます」

 

良かった、喜んでくれたみたいだ。

私は、自由時間を聖蘭さんと過ごす事にした。

B組の教室で、向かい合わせに座って一緒に話をした。

 

「聖蘭さんはどうしてシスターになったのかしら?」

 

「ええと、どこからお話ししましょうか…私の家は代々莫大な富を築き、そのほとんどを貧しさに喘ぐ方々に寄付をしてきたのですわ。そのような家庭で育ったからか、私も物心ついた時から人に施しをする事を覚えて育ちましたの。我が家ではノブレスオブリージュを家訓としており、父からは『人の為に財産を捧げる事が高貴な身分に生まれた者の義務』だと、母からは『私達が高貴な身分に生まれたのは幸運以外の何物でもないのだから、その分人の痛みをわかる人間にならなければならない』と言い聞かせられ、私もそれを信じて育ちましたわ」

 

なるほどね…

聖蘭さんが心優しい性格なのは、ご両親がそう生きるように言い聞かせてきたからなのね。

 

「私は、貧しい方々に寄付をする為に家族と共に海外に赴いた事もあるのですが、そこで出会った人々はその日の食事や寝る場所にも困る程貧困で苦しんでいました。私と同じくらいの歳の子供達が文字も知らないうちに働きに行かされ、一日中働いても家族に満足に食べさせる事もできない、そんな現状を変えたくて、私にできる事は何でもしました。我が家の財産で学校や診療所を建て、その日の食事に困らないくらいの食糧を平等に分け与えました。私は、彼等の為に尽くせた事が何よりも嬉しかったのですわ」

 

聖蘭さんは、とても嬉しそうに語っていた。

今まで尽くしてきた人達が救われたのが何よりも誇らしかったのでしょうね。

 

「ですが、その喜びも束の間でした。私達が寄付をしてから、その国はどうなったと思いますか?」

 

「さあ…?」

 

「国の独裁者が私達の差し出した寄付金を貧困層から搾取し、そのお金で先進国から武器を買い集め、隣国に戦争を仕掛けたのです。私の親友も戦争に駆り出され、私達が寄付したお金で買われた武器を手に取って戦い、戦場で散っていきました。結果、私達が寄付をする前よりも多くの人々が命を落としたのですわ」

 

「酷い……」

 

「私はその時、気付いたのです。ただ施しをするだけでは、誰かを救う事はできないのだと。私は、私達の寄付によって命を落とした方々にどう償いをしていけば良いのかを、普段からお世話になっている修道院の先生に尋ねました。先生は、『あなたが償いをしたいのであれば、世の為人の為に生き、彼らを愛してあげなさい。そうすればいつかきっとあなたの罪が許され、彼らが救われる日が来るだろうから』、そうおっしゃってくれました」

 

そういう理由があったのね……

彼女が罪を償う事にあれほど拘っていたのは、過去の罪を贖う為だったのか。

 

「私は先生の言葉通り、世界中の迷える人々を救う為に生きる事にしました。世界中の人々に呼びかけ、紛争を止める為の活動も行いました。初めはわずか数人でしたが、今では何千、何万もの方々が私の活動に賛同してくださり、世界中で子供達を守る為の活動が行われるようになりました。そのおかげで未来ヶ峰学園にスカウトされた時は、思わず涙してしまいました。私が神に与えられた使命はこれだったのだと、ようやく実感する事ができたのですわ」

 

聖蘭さんは、涙ぐんだ目をして口元を手で覆いながら言った。

長年世の為人の為に尽くしてきた事がようやく報われて、さぞ嬉しかったでしょうね。

 

「なるほどね…話してくれてありがとう。ちなみに普段、どういった活動をしているのかしら?」

 

「普段は病院や孤児院への慰問、製薬会社や教育機関への投資、世界中で貧しさに喘いでいる人々の生活や世界中で蔓延している伝染病の情報の拡散、その活動で集まった資金の寄付などをしておりますわ。先月は300億ほど寄付をしましたの」

 

待って、今サラッと言ったけど、『ほど』って軽く言える金額じゃなくない…?

 

「ですがこれっぽっちではまだまだ全然足りませんわ。世界中には、迷える人々が大勢いらっしゃるのです。私の寄付では救える方はたかが知れていますわ。それがとても悲しいのです」

 

それだけ寄付をしていて『これっぽっち』って…

やっぱり彼女、家が大富豪だからか金銭感覚がバグってるわね。

でも聖蘭さんと仲良くなれたみたい。

 

《聖蘭マリアとの好感度が1アップしました》

 

聖蘭さんとお話をした後は、ちょうど昼食の準備をするのに丁度いい時間になったので、厨房に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

厨房に行くと、既に食峰君と秋山君が昼食の準備を始めてくれていた。

私も、食峰君とリカが作った献立表とレシピを見ながら料理を始める。

今日の昼食は、食峰君が作ったバジルとナッツのジェノヴェーゼ、秋山君が作ったカブとトマトのカルパッチョと豆乳プリン、私が作ったクレソンのサラダとブロッコリーのポタージュだった。

食事の後は軽いミーティングをしてから探索の時間となった。

私は、まだ調べていなかった校舎の3階に行ってみた。

 

 

 

ーーー 3ーC教室 ーーー

 

ここは一昨日と変わったところは何もないわね。

メダルが何枚か落ちていたので、回収しておこう。

 

 

 

ーーー 外国語教室 ーーー

 

ここは、どうやら世界中のあらゆる言語を学ぶ為の教室のようだ。

廊下側のガラス窓には、アルファベットの装飾が施されている。

視聴覚室のような液晶パネル付きの机が並んでいて、後ろの棚には世界中の言語の辞書や文化について書かれた本が置いてある。

さらには、色々な書き込みがされた世界地図や地球儀、ラジカセなども置いてあった。

 

外国語教室の準備室には、世界中のあらゆる言語で書かれた文献がずらりと並んでおり、授業で使う用のプラカードなどもここに置かれている。

まるで職員室にあるような机も完備されていて、外国語教師の職員室としての機能も果たしているようだ。

よく調べてみると、ネロが言っていた写真も置いてあった。

そこには、私とリカ以外の15人と、私の母さんによく似た女性が写っていた。

母さんは確かに【超高校級の生徒会長】として未来ヶ峰学園にスカウトされて未来ヶ峰学園の教師として母校で勤務していたけれど、どう見てもこの写真は母さんが亡くなった時期と噛み合わない。

…じゃあ、この女性は一体誰なの?

 

私は、外国語教室をくまなく探し、他に脱出の手掛かりはないかを調べた。

でもあったのは、数枚のモノクマメダルとこの写真だけだった。

…仕方ないからメダルで買い物でもしに行こう。

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

私は、貯まったメダルで買い物をしに購買部を訪れた。

うーん…来てみたはいいものの、特にめぼしいものは無いわね。

買い物ならさっき大方しちゃったし。

 

せっかくメダルが貯まった事だし、またモノモノマシーンでも引いてみようかしらね。

メダルを使ってモノモノマシーンを引くと、景品が出てきた。

出てきたのは、はっぱふんどしだった。

 

…これをどう使えというのかしら?

正直ものすごく要らない。

誰かにあげられるといいのだけれど…

 

私がはっぱふんどしの扱いに困ったまま購買部を去ろうとすると、マナが購買部に入ってきた。

マナは走ってきたのか、ゼエゼエ息を切らしていた。

 

「あー緋色ちゃん!こげんところにおったんやなあ!」

 

「どうしたの?」

 

「あんね、食峰君とリカちゃんがおやつ作ってくれたんやって!良かったら一緒に食べに行かん?」

 

おやつか…

それも、食峰君とリカが作ってくれたものだというなら少し気になるわ。

捜査がまだ途中だけれど、次の食事は私の当番じゃないし、まだまだゆっくり探索はできるから行ってみようかしらね。

私は、マナと一緒におやつを食べに厨房に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に行くと、食峰君とリカがお菓子を用意してくれていた。

そこには、かりんとうに葛餅、饅頭、羊羹、ういろう、煎餅、ところてんなどの和菓子が並んでいた。

お茶も、緑茶や抹茶、玄米茶など、和菓子に合うお茶が何種類も用意してあった。

 

「おう!緋色に愛!今、ちょうどおやつ作ってたとこなんだ!良かったら食ってくれ!」

 

「二人とも、どうしたのこのお菓子?」

 

「いやな、オメェらも探索とかで色々疲れてるだろうし、食事を制限されてストレスも溜まってるだろうし、たまには甘いもんでも食ってリフレッシュしてほしくてな」

 

『和菓子ならほとんど植物性のもので作れるので、皆サンのストレスを解消する為に和菓子を作る事にしたのデス!どんどん召し上がってクダサイ!』

 

二人とも、私達のストレスを解消する為に色々考えてくれてたのね…

思い返してみれば、この二人には食事面で色々と支えられてきたわよね。

既に集まっていた何人かは、二人が用意してくれたお菓子を食べ始めた。

ふとテーブルを見てみると、古城さんが闇内君と一緒に将軍ごっこをやっていた。

闇内君は、将軍役の古城さんの分のお菓子を毒味していた。

 

「古城嬢、この葛餅は安全でござるよ」

 

「うむ、良い心がけじゃな!流石はワシの下僕じゃ!!ガハハハハ!!」

 

闇内君が毒味をすると、古城さんが高笑いをした。

もう『下僕』って言っちゃってるし…闇内君、完全に古城さんの言いなりになっちゃってるわね。

お疲れ様。

さて、私達も食べ始めようかしらね。

 

「こんかりんとううまかね、緋色ちゃん!」

 

「そうね」

 

「餅はワシのじゃ!!羊羹もワシのじゃ!!」

 

「こら古城さん。まだまだおかわりあるから独り占めしないの」

 

…うん。

どれもとても美味しい。

さすが【超高校級の美食家】とそれに追随する技術を誇る【超高校級のAI】、和菓子作りもお手のものという事なのね。

お茶も程良い濃さで淹れられていて、お菓子によく合うわ。

私達がお菓子を食べていると、加賀君が食堂に顔を出す。

 

「遅れてすまん」

 

加賀君が遅れて顔を出して席に座ると、知崎君が加賀君に尋ねる。

 

「あー久遠おにいどしたの!?随分長いトイレだったねぇ!便秘!?それとも下痢!?」

 

「どっちでもない。3階のトイレには監視カメラの死角が無いか調べていたんだが、なかなか興味深いものを見つけてな」

 

「そっか!ちゃんと流してきた!?」

 

「何で用を足してきた前提なんだ」

 

知崎君がしつこく尋ねると、加賀君がツッコミを入れる。

加賀君は、得意げになって自分の探索結果を報告した。

 

「実はな。俺の発明品、Killing(キリング)Ultra(ウルトラ)Slayer(スレイヤー)Omega(オメガ)をな…」

 

「頭文字並べたらKUSO(クソ)じゃねーか!!久遠おにいのネーミングセンスマジでウンコだねぇ!!」

 

加賀君が言うと、知崎君がツッコミを入れる。

二人の間で漫才のようなやり取りが繰り広げられた。

食堂でそういう話するのやめてほしいわ…

すると目野さんが加賀君を指差して言い放つ。

 

「とりあえず手を洗ってきて下さい!!何を触った手かわかりませんからね!!」

 

「そうそう!ばっちぃ久遠おにいの事だから、どうせ素手でウンコとか触ってたんでしょ!?」

 

「君らは俺の事を何だと思ってるんだ?」

 

二人がボロクソに言うと、加賀君は呆れつつも手を洗う為に立ち上がった。

ホント食堂の中とは思えない程会話が下品ね。

私がそう思っていたその時、館井君が低い声を出した。

 

「……おい。お前ら。今その話は…」

 

館井君は、今すぐに三人の会話をやめさせようとした。

館井君のお皿にはかりんとうが、茶器には玄米茶が入っていた。

…うん、もうこれ以上は何も言わないでおいた方が賢明よね。

 

「かりんとう食べよー時にウンコの話せんでよ!」

 

「ウンコの話してる時にかりんとう食ってんじゃねーーーよ!」

 

マナが三人に注意をすると、知崎君が予想の斜め上をいく返しをした。

理不尽ってまさにこういう状況の事を言うのね。

すると館井君がだいぶイラついた様子で口を開く。

 

「…お前ら確信犯だろ」

 

「確信犯の使い方間違ってるぜ建次郎おにい!知ってた!?あーウンk…じゃなかったかりんとうおいし」

 

館井君が言うと、知崎君はゲラゲラ笑ってかりんとうを齧りながら揚げ足を取った。

すると秋山君が、顳顬にビキビキと青筋を浮かび上がらせながら注意をした。

 

「ちょっと三人とも、いい加減にしなよ」

 

「「ごめんなさい」」

 

「何で俺まで…」

 

秋山君が笑顔で圧をかけると知崎君と目野さんが謝り、とばっちりを喰らった加賀君が少し落ち込む。

すると、館井君も呆れながら三人に注意をする。

 

「全く…食事中にする話じゃないだろう」

 

「うん、これからは気をつけるよ!」

 

館井君が言うと、知崎君がニコッと笑顔を浮かべながら言った。

あの笑顔は絶対反省してないわよね。

とりあえず私は、おやつの時間が終わった後、興味深いものとやらを見つけた加賀君に話を聞いてみる事にした。

 

「ねえ加賀君。そういえばあなたさっき、面白い発見をしたと言っていたけれど…何を見つけたのかしら?」

 

「ああ。これだ」

 

そう言って加賀君が取り出したのは、何かのUSBだった。

どうやら、私がリカにプレゼントしたものとは少し違うらしい。

 

「とりあえずこれを目野とリカに調べてもらおうと思ってるんだが…」

 

「加賀さん、そんな汚いものをうちの子に挿れないでください!壊れちゃいますよ!」

 

「誤解を招くような表現はやめなさい!」

 

目野さんが色々と誤解を招く表現をしたため、思わずツッコミを入れてしまった。

実際は男子トイレに落ちていたUSBをリカに調べてもらおうとしていただけなのだけれど、その言い方は色々と危ないわよ。

USBは目野さん達に調べてもらう事にして、私はまだ行っていなかった教室の探索に行く事にした。

買い物も済ませたし、まだ行っていなかった指導室の探索にでも行こうかしらね。

 

 

 

ーーー 指導室 ーーー

 

指導室には、進路指導用の資料が並んでおり、座り心地のいいソファーが設置されていた。

カウンセリングルームを兼ねた指導室を調べていると、けん玉やめんこなどのおもちゃが置いてあった。

私が指導室を調べていると、何やら端の方でゴソゴソと動く影があった。

 

「闇内君、そこで何をしてるの?」

 

「むっ、腐和嬢か。実は、どこかに隠し通路のようなものが無いかを調べていたのでござる。前の探索の時にはなかった仕掛けがあったりするかも知れぬ故」

 

隠し扉か…

そんな所まで調べるなんて、さすが闇内君。

抜け目ないわね。

…というか、今までセクハラばかりしてきたからそういうイメージしか湧かないけど、彼は無駄にハイスペックなのよね。

あ、そうだ。

さっき手に入れたはっぱふんどし、彼にあげたら喜ぶかもしれないわね。

 

「闇内君」

 

「むっ、何でござるか腐和嬢?」

 

私は、モノモノマシーンで手に入れたはっぱふんどしを闇内君にプレゼントした。

すると闇内君は、はっぱふんどしを興味深そうに眺める。

 

「これを拙者に…という事でござるか?もしや腐和嬢、拙者にこれをつけてほしくて…」

 

「そうは言ってないわよ。自分の部屋に戻ってからつけなさいよ」

 

何で今ここでつけようとするのかしら。

やっぱりこいつ露出狂のきらいもあるんじゃないのかしら。

…でも、喜んではくれたみたいね。

私は、自由時間を闇内君と過ごす事にした。

指導室のソファーで、向かい合わせに座って一緒に話をした。

 

「闇内君はどうして忍者になったの?」

 

「どうして…でござるか。それは、拙者が闇内家の長男として生まれたからでござる。拙者の家は江戸時代から続く忍の家系でござるが、明治維新の時に同業者は皆廃業し、拙者の先祖だけが忍として生き残ったのでござる。拙者の先祖は、暗殺業では食っていけなくなった故、所謂情報屋やスパイ業を請け負う何でも屋へと移ろぎながら時代の荒波を生き残って来たのでござる。拙者達は最後の忍者の家系として残った闇内家を守る為代々忍者業を継いで来たのでござるが、先代当主だった父が大病を患い引退した故、拙者が次期当主として家業を継いだのでござるよ」

 

闇内君は、自分の生い立ちを私に語ってくれた。

顔は頭巾で隠していて表情がわからなかったが、きっと当主としての重圧に疲れる事もあったのでしょうね。

 

「ここでは愛い女子達に囲まれて至福でござるが、いつまでもここにいるわけにはいかぬ。拙者は一刻も早くここから出て闇内家当主として家を守らなければならないのでござる。拙者は、家を守る為なら何でもしてきたでござる。…しかし、いつになっても人が目の前で死ぬのは慣れぬでござるな」

 

闇内君は、口元の布を引っ張りながら言った。

おそらく、人に言えないような汚れ仕事も請け負ってきたのでしょうね。

私は母さんが死んだ日から感情を殺して生きてきたから人の死を嘆く事もできなくなってしまったけれど、彼はいつまで経っても人が死ぬ事に慣れずに苦しんできたのかしらね。

 

「しかし、この仕事を辞めたいと思った事は無いでござる。拙者は闇内家の忍として生まれた事を誇りに思っておる故。…ただ強いて言うなら、一度でいいから普通の高校生のような青春は送ってみたいとは思っておったぞ。拙者はここから出ねばならぬが、お主達とここで出会えた事は光栄で候」

 

私は、彼の話を聞いて、彼への認識が間違っていた事に気がつく。

セクハラばかりしてくるお調子者に見えて、汚れ仕事を請け負ってまで自分の家族を守ろうとする、それが闇内忍という人間なのね。

…もしかして彼がセクハラをしているのは、この場を和ませる為だったりするのかしら?

 

「ごめんなさい、闇内君。私、あなたの事を誤解していたわ。あなたがセクハラをしてくるのは、この場を和ませる為なのかしら?」

 

「いや、それはただの趣味でござる」

 

何よ、それはただの趣味なのね。

真面目に聞いて損したわ。

 

「そういえばあなた、最近古城さんと仲が良いみたいだけど?」

 

「あー…その事でござるが…実は、古城嬢が『ワシと交流を深めたいのであればまずは下僕から始めよ!』などと言ってきたのでござるよ。下手に逆らうと斬殺丸で斬りかかってくる故、仕方なくでござる」

 

なるほどね…

まんまと尻に敷かれちゃってるじゃないの。

 

「しかし、悪い気はせぬぞ。拙者、同い年の女子に純粋に遊び相手として依頼を受けたのは初めてでござる。今までの依頼人にはろくな人間がいなかった故」

 

闇内君は、フッと笑いながら言った。

闇内君も闇内君で、何だかんだで古城さんの事を気に入ってたのね。

私が闇内君と古城さんの関係を微笑ましく思っていると、闇内君はため息をつきながら口を開く。

 

「あー、疲れた。ずっとこの口調で話すのも疲れんなぁ」

 

そう言って闇内君は、顔を覆っていた頭巾を取った。

若干癖っ毛気味の黒髪の短髪で、それなりに整った顔立ちをしていた。

 

「あれ?闇内君…あなた、普段の口調はどうしたの?」

 

「んなの、営業用にキャラ作ってるに決まってるだろ。やっぱ忍者業やってるとああいうキャラを求められるからさ。現実に素でこんな喋り方する奴がいるかよ」

 

「そ、そうだったのね…」

 

「学校とかでもやれ忍術見せろだの空飛べだの色々無茶振りされて正直困ってるんだよね。ホント、皆して僕を何だと思ってるんだか」

 

闇内君も闇内君なりに苦労してるのね…

どうやら闇内君と仲良くなれたみたい。

 

《闇内忍との好感度が1アップしました》

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に行くと厨房では食峰君、マナ、リカの三人が夕食を作っていた。

モノクマが動機を発表してから3回目の食事だけど、今回も全員無事に食堂に集まれたわね。

今日の夕食は、食峰君が作った炊き込みご飯に大豆のそぼろと瓜の煮物、リカの作った車麩の角煮と油揚げの味噌汁、マナの作った刺身こんにゃくの盛り合わせだった。

…うん、今日の夕食も美味しいわね。

 

食事の後は、軽めのミーティングを開いた。

今まではミーティングに参加していなかった聖蘭さんも、今回は珍しくミーティングに参加していた。

 

「それじゃあ、ミーティングにしようか。誰か収穫があった人はいないかい?」

 

秋山君が尋ねると、加賀君が手を上げて発言する。

 

「例のUSBをリカに調べてもらったんだが、生憎ロックがかかっていて解読には時間がかかりそうだ。リカ曰く、あと2日あれば内容を解析できるらしい」

 

「うんうん、他の人は?」

 

「拙者は、指導室に何か仕掛けが無いか調べていたのでござるが、心当たりがあった故調査中でござる。ただ、それが脱出口に繋がるかどうかは…」

 

「なるほどね。うーん、やっぱり外に出られそうな有力な情報は無いか」

 

「その事なのですが…私から一つよろしいですか?」

 

秋山君が情報を整理していると、聖蘭さんが手を挙げて発言する。

聖蘭さんは、ニッコリと微笑みながら言った。

 

「私から一つ提案なのですが、ここから出るのはもうやめませんこと?」

 

「「「「!?」」」」

 

聖蘭さんは、皆に向かってとんでもない提案をした。

秋山君は、驚いた様子で聖蘭さんに尋ねる。

 

「聖蘭さん…君、自分が何を言ってるのかわかってるの?」

 

「わかっておりますわ。皆様、そもそも2回もコロシアイが起こったのはどうしてだと思いますか?」

 

「さ、さあ…?」

 

「皆様に、ここから出たいという思いが少なからずあったからですわ。響様も、越目様も、ここから出ようと欲をかいたから天罰が下ったのですわ。外に出たいという欲を捨て、命尽きるその時までここで罪を贖いながら慎ましく暮らせば、我らが父もきっと私達の罪を赦してくださるはずですわ。理事長と学園長がこのような慎ましい生活をご享受して下さったのも、きっと私の祈りが通じたのですわ」

 

聖蘭さんが言うと、ネロが呆れ返り、マナが立ち上がって聖蘭さんに尋ねる。

 

「てめぇ…最近ミーティングに参加しねえと思ったら、そういう腹づもりかよ」

 

「聖蘭ちゃん…なして!?キミ、こん前は外で待っとー皆ん為にここから出るって言いよったやろ!?」

 

「確かに、私もそう思っていた時期はありました。ですが小鳥遊様と越目様の死を受けて、それは間違いだったと気付いたのです。外に出ようと欲をかけば、誰かがまた罪を犯します。でしたら、ここから出なければ良いのですわ。外で待っていらっしゃる方々も、きっと罪を犯してまで私達が外に出るよりは、私達が無駄な犠牲を出さずに穏便に過ごす事を望んでいらっしゃいますわ」

 

聖蘭さんが言うと、古城さんが呆れ返る。

 

「だ、ダメじゃこやつ…正気じゃないわい!」

 

聖蘭さんの提案に、皆がざわつく。

するとその時だった。

 

 

 

「ふざけるでない!!」

 

声を荒げたのは、闇内君だった。

 

「…はい?」

 

「拙者が…っ、拙者達がどのような思いで脱出の手がかりを探しておったのか…!!それを知らずして勝手な事を申すな!!拙者はたとえ一人でもここから出る所存!!」

 

「…そうですか。それは残念ですわ。別に私は、私の考えを強制はしません。ですが神は、あなたの事は救ってはくださらないでしょうね」

 

「何が神でござるか!!脱出を助けてくれぬ神など、拙者は信じぬぞ!!」

 

聖蘭さんと闇内君は、言い争いを始めた。

すると、他の皆も言い争いに便乗し始める。

 

「ワシはこやつに賛成じゃあ!!いつまでも野菜を食う生活を続けてられるかァ!!」

 

「こんなところにいつまでもいられるか」

 

「そうですか!?私は機械ちゃんがあれば快適に過ごせますけどね!」

 

「俺もここから出たくないわけではないが…争いが起こるくらいなら……」

 

「うーん、それもそっか…別に食うのには困らねえしな!」

 

「ボクは皆の事知れれば何でもいいよー」

 

「俺もできる限り脱出方法を探してみるが、そこまで急ぎではないな」

 

『アテクシは…皆様の脱出をサポートする為に生み出されマシた。しかし、このままではここから出る事を急ぐ事による損失の方が大きい事も事実デス。この案件はアテクシ一人のスペックでは決めかねるので、アテクシを生み出したちちの判断に委ねマス』

 

皆は、思い思いに自分の意見を言った。

皆の意見は、三つに分かれてしまった。

すぐにでも脱出方法を探す派が古城さん、ネロ、闇内君。

ここで気長に暮らす派が聖蘭さん、館井君、目野さん。

脱出方法を探しはするが急ぎではない中立派が秋山君、加賀君、マナ、食峰君、知崎君、リカ。

 

「緋色ちゃん!緋色ちゃんはどう思う!?」

 

「私は…やっぱり、ここから出たい。でも、聖蘭さんの気持ちも尊重したいの」

 

私は、聖蘭さんの言葉を聞くまでは、ずっとここから出る事に必死だった。

ここに閉じ込めた犯人を捕まえる為にも、小鳥遊さんの仇を討つ為にも、ここから出なきゃいけなかった。

でも聖蘭さんの言葉を聞いた後なら、何故彼女がかつての自分の意見を曲げてまでこんな事を言ったのか理解できた。

彼女は誰よりも相手の魂を大事にする人だから、それが最適解かどうかはさておき、一人でも多くの人が救われる道を探していたのだろう。

私だって、一人でも多くの人が傷つかずに済むならその方がいい。

実際、本当に外に出る事が犠牲を最小限にできる判断なのかどうかはわからないままだし。

私は結局、どうしたら良いのかをその場で決めかねてしまった。

 

殺人鬼と裏切り者の存在の発覚、モノクマとモノDJの動機発表、皆の意見の二極化…

これからどうすればいいの…?

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『コラーーーーー!!ブラザー!!冷蔵庫のプリン、勝手に食べたでしょ!!』

 

『ギャハハハ、バカ言っちゃいけねえよブラザー!!名前書いておかなかったテメェがワリーんだぜ!?』

 

『ムッキー!!』

 

『ああ、そうそう。リスナー諸君。食い物の恨みが原因で歴史が動いた事があるっつーのは知ってたか?1905年、帝国ロシア軍の『ポチョムキン号』で、水兵達による反乱が起こってんだ。当時の水兵達にとっては食う事が数少ない楽しみだったんだが、食事のボルシチにウジが入ってたんだ。それを船長や軍医が無理矢理食わせようとしたもんだから、水兵達は大激怒!そのまま反乱を起こして戦艦を占拠しちまったんだ!この事件自体は水兵達が降伏した事で幕を閉じたんだが、この事件はロシア革命を起こしたキッカケになったんだぜ!いやぁー、食い物の恨みは怖えよなぁ。リスナー諸君は、くれぐれも食い物で恨まれるような事はすんなよな!』

 

『待てクマーーーーー!!』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り13名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

以上4名

 

 

 

 

 



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(非)日常編⑤

絶望のお時間です



※トリックに不備があったので変更しました。


十四日目。

この日の朝食当番だった私は、早朝に目を覚ました。

部屋に持ち込んでいたミネラルウォーターを使って身支度をし、急いで厨房に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に行くと、食峰君とリカが朝早くから朝食を作ってくれていた。

私は、朝食を作っている二人に挨拶をした。

 

「おはよう」

 

「おはよう緋色!!」

 

『おはようございマス!』

 

私が挨拶をすると、二人とも挨拶を返してくれた。

さて…と。

私も朝食作りを始めないとね。

今日のメニューは、

 

和食セットがおにぎり、豆腐の照り焼き、ワカメと白菜の柚子和え、お麩とほうれん草のお吸い物、長芋のネギ味噌煮。

洋食セットがアボカドトースト、豆腐のオムレツ、からし菜のナッツ和え、ミネストローネ、豆乳ヨーグルト。

 

私は、リカと一緒に洋食セットを作った。

4人で朝食を作っていると、秋山君、聖蘭さん、館井君、闇内君が来て食堂の掃除とテーブルセッティングをしてくれた。

時間通りに他の5人が食堂に顔を出し、無事全員が食堂に揃った。

全員が揃うと全員で朝食を食べ、その後は各自自由探索をした。

私は、昨日の探索で貯まったメダルで早速買い物をしに行った。

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

購買部で日用品などを買い揃えた後は、余ったメダルでモノモノマシーンを引いてみた。

出てきたのは、キノコ栽培キットだった。

うーん…正直要らないわね。

誰かにあげようかしら?

私は、キノコ栽培キットの扱いに困りつつ、探索を続ける事にした。

 

 

 

ーーー 家庭科室 ーーー

 

私はまず、家庭科室の被服教室から調べてみる事にした。

被服教室には、ミシンや裁縫セット、手編みセット、布などが置いてあった。

壁には被服に関する本が並んだ本棚や、先輩方が作ったと思われる着物が飾ってあった。

 

家庭準備室は倉庫のようになっており、被服や調理で使う資材が置いてあった。

大きな冷蔵庫や機織り機などが置いてある。

ダンボールには、全身をスッポリと覆うエプロンと帽子、長靴が置いてあった。

これは何かを捌く時に使うものかしら…?

ここで調べられる事は特には無さそうね。

 

調理教室には、包丁やフライパンなどの調理器具、食器などが置いてあった。

壁には食事に関する本が並んだ本棚が置かれている。

調理教室には先客がいた。

本棚から何冊か本を取ろうとしている食峰君だ。

 

「あら、食峰君。何してるの?」

 

「おう、緋色!いや、ここにある料理の本を研究室に持って行こうと思ってな」

 

さすが食峰君、食事に関しては勉強熱心ね。

そうだ、食峰君なら、このキノコ栽培キットあげたら喜ぶんじゃないかしら?

 

「食峰君」

 

「ん?どした?」

 

「あなたにプレゼントしたいものがあるのだけれど、いいかしら?」

 

私は、モノモノマシーンで手に入れたキノコ栽培キットを食峰君にプレゼントした。

すると食峰君は、ものすごい勢いで食いついてくる。

 

「えっ、これどこにあったんだ!?」

 

「モノモノマシーンで手に入れたのよ。あなたなら喜ぶんじゃないかと思って」

 

「マジかぁ!ありがとな、緋色!食事のレパートリーが増えるぜ!」

 

レパートリーが増えるって言われても…

キノコが生えてくるまでどれくらいかかるのかしら。

でもどうやら喜んでくれたみたいね。

私は、自由時間を食峰君と過ごす事にした。

家庭科室の調理教室の調理台を挟んで、向かい合わせに座って一緒に話をした。

 

「食峰君はどうして美食家になったのかしら?」

 

「ウチは実家がラーメン屋でよ。オレの親父もジイちゃんも、代々そのラーメン店を継いでたんだ。オレは親父とお袋が作ってくれる料理が好きでさ。そのせいかオレも小さい頃から料理に興味があったんだよな」

 

なるほどね…

食峰君の料理への情熱は、両親譲りだったのね。

 

「けど、これでも一回潰れかけたんだぜ?」

 

「え?」

 

潰れかけたって…食峰君が認める料理人のご両親が経営していたお店よね?

どういう事かしら?

 

「ウチは地元でこぢんまりとやってる店だったんだけどよ。突然ウチの店に当時有名だったタレントがプライベートで店に来たんだよ。そいつはグルメタレントを自称してたんだけど、食の事を何も知らないどころか最低限のマナーも知らねえような奴でよ。人気タレントだからって調子に乗って他のお客にも迷惑かけて、あろう事かお袋にもちょっかいかけてきたから、流石に親父もブチ切れて店からそいつを追い出したんだよ。そしたらそいつは何をしてきたと思う?」

 

「ええっと…腹いせに持ち前の人気を振り翳して営業妨害をした、とか?」

 

「ああ、そうだよ。そいつはSNSでオレの店の根も葉もないデマを書き込んで世界中に発信しやがったんだ。それだけじゃなくて、サクラを大勢雇って口コミサイトで低評価爆撃を仕掛けたり、そいつの知り合いが嫌がらせの為に店に上がり込んで営業妨害してきたりしてよ。お陰で売り上げはガタ落ち、ウチは大赤字を抱えちまったんだ。あの頃はお袋なんて毎日泣いてたよ」

 

酷い話ね…

一人の馬鹿のせいで真面目に働いていた人達が泣きを見るなんて。

訴訟を起こしたくても相手は芸能人だから人脈をフルに使って揉み消したでしょうし、そもそも店が赤字で弁護士を雇うお金も無かったから、泣き寝入りするしかなかったのでしょうね。

 

「そんでオレが何とかしてやらなきゃって思って、料理の勉強に打ち込んだんだ。店を助けられるレシピを研究し続けて、やっと完成したレシピで作ったラーメンを親父とお袋に食わせてやったら、けっこう出来が良かったらしくてよ。これを看板メニューにしようって言ってくれたんだよ。そしたら常連さんがそのラーメンをすげぇ気に入ってくれて、宣伝に協力してくれたんだ。そのおかげで店の売り上げはあっという間に回復して、今じゃ地元で一番有名なラーメン店に成長したんだぜ。昔営業妨害してきたタレントも悪事がバレて捕まって、金も損害の分だけ戻ってきたんだ」

 

そうだったのね…

初めは店を助ける為に始めた料理で多くの人を幸せにできて、それがいつの間にか趣味になっていったのね。

食峰君も、自分の才能が家族の助けになってさぞ嬉しかったでしょうね。

 

「なるほどね。話してくれてありがとう。ちなみに食峰君はどんな料理が得意なのかしら?」

 

「やっぱ一番はラーメンだな!寿司とかコロッケ、最近はパテアンクルートにもチャレンジしてるぜ!あとスイーツだと三不粘だな!」

 

お、おぉう…

そうなんじゃないかとは思ったけどやっぱりものすごくハイレベルね。

私も見習わないとって軽々しく言える感じじゃないわ。

でもどうやら食峰君と仲良くなれたみたい。

 

《食峰満との好感度が1アップしました》

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

私は、食峰君と一緒に昼食を作りに厨房へ向かった。

今日の昼食の担当は、私と食峰君、リカの三人で、献立は、大豆カレー、野菜の素揚げ、インゲンのサラダ、福神漬けだ。

厨房で昼食を作っていると他の皆がテーブルセッティングをしてくれて、今回の昼食会も全員無事に参加できた。

昼食後のミーティングには、聖蘭さんは参加せず、他のここで暮らす派の人達も席を立ってしまった。

今はリカが調べてくれているUSBしか手掛かりが無い以上、地道に探索を続けていくしかない。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

結局、午後の探索の時も何も見つからなかった。

仕方なく、いつも通りの時間に夕食をとる事にした。

今日の夕食の担当は、秋山君と食峰君、リカの三人で、献立は、食峰君の作った玄米と豆腐ハンバーグ、秋山君の作ったハッシュドポテトにコンソメ風野菜スープ、リカの作ったトマトと豆乳チーズのサラダにサクランボの寒天ゼリー。

聖蘭さんと目野さんを除いた11人で夕食のミーティングをしていると、マナが提案をした。

 

「うちから提案があるっちゃけど、今から皆でプレイルームに遊びに行きませんか!」

 

私は、マナの提案に少し目を丸くした。

この状況でそんな事を言い出すとは思わなかったからだ。

 

「うち、皆がバラバラんままだと良うなかて思うっちゃん!たまには皆でリフレッシュしようや!」

 

「うん、いいんじゃないかな」

 

「わーい、ボク遊ぶの大好きー!」

 

「飯ならオレが用意するぜ!」

 

「俺は別に構わないが」

 

『皆サンの事をよく知れる良い機会デス!』

 

「そうね。そういう事なら私も参加しようかしら」

 

マナの提案に、秋山君、知崎君、食峰君、加賀君、リカが賛成した。

私も、マナの提案に賛成した。

すると、闇内君が席から立ち上がる。

 

「空気を読まぬようですまぬが、脱出の手掛かりが無いようならお断りでござる」

 

「ワシもじゃあ!!こんな野菜生活から一刻も早く抜け出したいんじゃ!!毎日毎日野菜が夢にまで出てきてもう限界じゃあ!!悠長に遊んでられるかぁ!!」

 

「くだらねぇな」

 

「俺も…すまん。正直、誰かが何か企んでいるんじゃないかって不安なんだ」

 

結局、すぐにでも脱出方法を探す派の闇内君、古城さん、ネロ、そしてずっとここで暮らす派の館井君は、食堂を去ってしまった。

もう二人のここでずっと暮らす派の聖蘭さんと目野さんは、話し合いにすら参加してくれなかった。

結局本来のターゲットだった6人は来てくれなかったので、加賀君が顎に手を当てながら言った。

 

「……意味無かったな」

 

「仕方ない、残りのメンバーでやるしかないよね」

 

 

 

ーーー プレイルーム ーーー

 

プレイルームでは、夜時間が来るまで各自自由に遊んだ。

私と食峰君は、射撃場で狙撃の練習をしていた。

食峰君は、エアガンの弾を見事的の中心に命中させた。

 

「食峰君いい筋してるわね」

 

「オレ、一応猟銃免許持ってっからな!」

 

私が拍手を送ると、食峰君はニカっと笑ってサムズアップをした。

一方で、マナと秋山君はカラオケボックスで歌っていた。

 

「うわ!秋山くん歌うまっ!」

 

「一応得意分野だからね」

 

後からマナに聞いた話だと、秋山君は見事な歌唱力で次々と90点台を叩き出したらしい。

一方で、加賀君、知崎君、リカの三人はボウリング場で遊んでいた。

 

『お見事デス、ちち!』

 

「まあ普段からたまに一人でスポーツを嗜んではいるからな」

 

「きゃはは、久遠おにいぼっちかよ!ウケる!」

 

「勘違いするな。友人を作る必要が無いから作らないだけだ」

 

「それをぼっちっていうんでしょ!知ってた?」

 

加賀君が意外にもボウリングでストライクを連発したらしく、知崎君とリカが盛り上がっていた。

夜時間の30分前、私達はプレイルームでのゲーム大会をお開きにして部屋に戻る支度をした。

私は、食峰君と一緒に部屋に戻っていった。

 

「やー楽しかったな」

 

「そうね」

 

「マリアみたいな事言うわけじゃねえけど、案外ここでの暮らしも悪くねえかもな」

 

「…でも、やっぱり動物性のものが食べられないのはちょっと窮屈よね。ハムサンドとロイヤルミルクティーが恋しいわ」

 

私がポツリと愚痴をこぼすと、食峰君が私の顔を見てくる。

…しまった。

つい、愚痴をこぼしてしまった。

私がこんな事で愚痴ってるんじゃ、皆に示しがつかないわよね。

 

「あ、ごめんなさい。つい愚痴っちゃった」

 

「ああいや、確かにって思ってよ。やっぱ動物性のもの全部ダメってなると、作るメニューも限られてくるんだよな。別にだからって皆の中の誰かを殺そうとは思わねえけど」

 

食峰君も今の生活に多少はストレスを感じていたのね。

このままだと、知崎君か古城さんが今の食生活に耐えかねて変な気を起こすって事も考えられなくはないのよね。

どうしたものか…

 

「うーん…何か皆が飽きないような献立でも作れるといいんだけどね」

 

私がポツリと呟くと、食峰君がいきなり私の肩を掴んでくる。

えっ、急に何?

 

「それだよ、緋色!」

 

「え?」

 

「いやさ、簡単な話なんだよ!蓮やいろはも喜ぶような飯を作ってやれれば、皆ストレス無く過ごせんだろ?」

 

「…ええ、それはそうなんだけど…その方法がわからないから今困ってるんじゃない?」

 

「大丈夫、オレに任せとけ!オレにいい考えがあるんだ!!」

 

食峰君は、ニカっと笑顔を浮かべながら胸を叩いた。

食峰君にいい考えがあるっていうなら、それは喜ばしい事だけど…

…一体どんなプランを考えてるのかしら?

 

「明日の晩飯は楽しみにしてろよ!?とびっきり美味い飯振る舞ってやるからよ!」

 

「…ええ。それは楽しみね」

 

とびっきり美味い飯、か。

食峰君がそう言うなら、きっと今までの人生で一番の食事を振る舞ってくれるのでしょうね。

私がそんな事を考えていると、食峰君は口の前で指を立てて話しかけてきた。

 

「あっ、この事は皆には内緒にしといてくんねえか?」

 

「どうして?」

 

「ホラ、サプライズだよ!とびきり美味い飯作るんだから、皆をビックリさせたいだろ?」

 

サプライズ…か。

食峰君も粋な計らいをするのね。

そういう事なら、彼の考えに乗ってあげなきゃ野暮ってものよね。

 

「……んん、そういう事ならわかったわ。内緒ね」

 

「ありがとな!!緋色!!」

 

私が頬を掻きながら言うと、食峰君はいきなり抱きついてきた。

すごいナチュラルにスキンシップしてくるわね…

この子、何というか…やっぱりちょっと天然入ってない?

 

私は、明日の昼に食峰君がサプライズをするのを内緒にしておく約束をして、部屋に戻っていった。

…もう大浴場に行ってる時間は無いわね。

仕方ない、たまには部屋のシャワーで済ませるか。

私は、夜時間が来る前に部屋のシャワールームでシャワーを浴びて、高級感のあるキングサイズのベッドに横になった。

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『うぷぷぷ、いやぁー漫画肉はいいですなぁ。ほっぺたがとろけるようなジューシーな味わい…鉄串を食べているような鉄臭い風味…』

 

『ヘェイバッドボーイ!!なァにやってんだ!?動物がかわいそうだろォが!!魚食え魚!!日本男児ダロォ!?』

 

『ちぇー、しょうがないなぁ。いやぁーシャケはいいですなぁ。野生の頃を思い出しますわ〜』

 

『なァにやってんだテメェーーー!!シャケがかわいそうだろォが!!草食え草!!』

 

『うっわー、面倒くさ。ちぇー、じゃあ笹を食べますよ笹を。いやぁー笹はいいですなぁ。動物園のアイドルだった頃を思い出すよ』

 

『なァにやってんだテメェーーー!!笹がかわいそうだろォが!!霞でも食ってろ!!』

 

『うるさいなぁ、わかったよ。じゃあ霞を…』

 

『なァにやってんだテメェーーー!!霞がかわいそうだろォが!!何も食うな!!』

 

『うぷぷぷ…オマエラ、食物連鎖って知ってるよね?生き物は皆、他の生き物を殺す事で生き延びてるんだよ。それが嫌なら、のたれ死ぬか他の誰かに食われるかしかないんだよ。自分が狼に喰われる羊にならない為にはどうしたらいいか、簡単だよね?自分が狼になればいいんだよ』

 

 

 


 

 

 

十五日目。

いつも通りの時間に起きて朝の支度を終えると、あのモノDJの喧しいアナウンスが鳴り響いた。

 

『ヘェイグッッモォォォニン!!ゴミクズ共ォォォ!!!朝の7時をお知らせするぜイェア!!!今日も張り切ってけェ!!!』

 

全く、毎度毎度うるさいわね。

私は、モノDJの放送にウンザリしつつ、朝食の手伝いをしに食堂へ向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

私が食堂に行くと、食峰君、秋山君、館井君、リカの4人が朝食を作っていた。

私は、4人が朝食を作ってくれている間に食堂の掃除とテーブルセッティングを済ませた。

しばらく5人で準備をしていると、古城さんと目野さんを除いた6人が食堂に顔を出した。

古城さんはほとんど野菜しか食べられない食事に嫌気が差したらしく、部屋にお菓子を持ち込んでそれで朝食を済ませてしまい、目野さんも機械の整備で忙しいからと朝食会に参加しなかった。

その二人はともかく、一番心配なのは闇内君だ。

 

「おはよう、闇内君」

 

「…む、良い朝でござるな。腐和嬢」

 

闇内君は、少し元気が無い様子で返事をした。

目の下には濃い隈ができていて、一日や二日寝てないなんてレベルじゃない。

 

「大丈夫?顔色悪いわよ?」

 

「フフフ、お主のような綺麗な女子に心配してもらって、拙者は光栄でござるよ」

 

私が尋ねると、闇内君は元気無く笑いながら言った。

どう考えても笑い事じゃない。

 

「…あなた、まさかとは思うけど、ここ数日ずっと徹夜で脱出の手掛かりを探してたんじゃないでしょうね?」

 

私が尋ねると、闇内君は黙り込んだ。

これは図星ね。

 

「…やっぱり。そんな事だろうと思ったわ。必死に脱出の手掛かりを探してくれてるのはありがたいけど、そんなに身を削って脱出する前に身体壊したら元も子もないわよ。とりあえず、これ食べてよく寝て本調子に戻しなさい」

 

「かたじけない…」

 

私は、闇内君を叱りながらテーブルの上に朝食を置いた。

すると聖蘭さんが笑顔を浮かべながら闇内君に話しかける。

 

「あら。夜時間中は出歩いてはいけない規則ではありませんでした?」

 

「そんなルール、校則には無いでござるよ。いつどこを探そうと拙者の自由でござろう?」

 

「不埒な…いつか天罰が下りますわよ」

 

聖蘭さんが闇内君を軽蔑し、食堂内に険悪な空気が流れた。

するとその時、料理を運んでいたマナが二人を注意した。

 

「ほらそこ!喧嘩しとらんで、ご飯配るん手伝いんしゃい!」

 

マナがテーブルに皆の分の朝食を置こうとした、その時だった。

マナは、自分の足に躓いてバランスを崩してしまった。

 

「えっ、ちょっと待…おわあ!?」

 

自分の足に躓いて転んだマナは、そのまま仰向けに床に倒れ込んだ。

ギリギリ運んでいた料理はひっくり返さずに済んだけど、どうやったらそうなるのかわからないくらい芸術的な転び方をしたせいで色々と際どい事になっていた。

 

「せ、セーフ…」

 

「全然セーフじゃないわよ」

 

ギリギリで料理をキャッチしたマナが苦笑いを浮かべていたので、思わずツッコミを入れた。

すると、知崎君がマナに助け舟を出してくる。

 

「わぁ、エロエロ大変な事になってるねえ!マナちゃん大丈夫?」

 

「ああ、うん…ありがと…」

 

知崎君は、マナに手を貸して立たせた。

マナを助けた知崎君は、そのまま闇内君のところへ歩いていく。

 

「忍おにい!最近お疲れなんだって?これ蒸しタオルの代わりに目に当てとくといいよ」

 

「む?」

 

知崎君は、闇内君に丸めた布を手渡した。

それは、マナがさっきまで穿いていたショーツだった。

 

「こ、これは…」

 

「あっ!それうちの!いつの間に…返してよ闇内くん!」

 

「むむ、聲伽嬢の私物でござったか。ならば今すぐ返…と見せかけて、忍法分身の術!!」

 

「うわあ!?」

 

闇内君は、いきなり目の前で分裂すると、分身に紛れてマナから逃げた。

マナが後ろを振り向くと、闇内君がマナのショーツを片手に決めポーズを取った。

 

「くっくっく、甘いでござるよ聲伽嬢。せっかく手に入れたお宝をそう簡単に返すわけにはゆかぬ。返してほしければ力ずくで奪い返してみよ」

 

「んにゃろっ…待てー!!」

 

「そら煙玉ァ!!」

 

「うわっ!?」

 

マナが闇内君を追いかけると、闇内君は煙玉を床に投げつけ、煙に紛れて逃げた。

そこからは、闇内君から下着を奪い返そうとするマナと忍術を悪用してマナにセクハラする闇内君、そしてどさくさに紛れてイタズラを仕掛ける知崎君の激しい攻防が繰り広げられた。

闇内君、徹夜の反動でいつにも増して大暴れしてるわね。

 

「な、何も見えん…」

 

「隙ありィ!!」

 

「ひゃあ!?」

 

「ふむ…Dか。揉み心地は悪くないでござるよ。尻も中々にいい肉付きでござるな」

 

「んのっ…!やった、獲った!」

 

「残念、それは拙者のふんどしでござる」

 

「んもぉ!!」

 

「にゃはは、時速60kmで走る車の窓から手を出したらおっぱいの感触と同じなんだって。知ってた?」

 

「へー、そうなんやね…って、どこ触っとーと!」

 

「はい忍おにいこれ落とし物」

 

「むっ、またお宝ゲットでござる」

 

「ブラまで盗るなぁ〜!」

 

…ホントうるさいわね。

食堂でそんなに暴れたら埃が立つじゃないの。

っていうかそれ以前に、食堂で煙玉なんて使わないで欲しいのだけれど?

 

「うるせぇなクソガキ共…」

 

「時間の浪費も甚だしい」

 

ネロと加賀君は、呆れた様子で傍観していた。

流石に私も我慢の限界なので、止めに入る事にした。

私は、それなりによく通る声で騒いでいる三人に言った。

 

「やめなさい」

 

私が言うと、騒いでいた三人はピタリと手を止める。

私は、椅子に座ってテーブルの上で指を組むと、淡々とした口調で言った。

 

「…ねえ。少しは静かにできないのかしら?あなた達、もう高校生なんだから食堂で暴れたらダメって事ぐらいわかるわよね?」

 

「「…はい」」

 

「よろしい。さ、早く朝ご飯並べちゃいましょ」

 

私がそう言ったその時、厨房から秋山君が手を拭きながら出てくる。

 

「ねえ。これは一体何の騒ぎ?」

 

秋山君は、食堂の荒れ方を見て一瞬で何があったのかを判断し、知崎君と闇内君に笑顔で声をかける。

秋山君は笑顔を浮かべてはいたものの、目が完全に笑っていなかった。

 

「知崎君、闇内君。後で話があるんだけど、いいよね?」

 

秋山君が笑顔を浮かべながら言うと、二人とも黙ったまま頷く。

するとその時、聖蘭さんが軽蔑の表情を浮かべながら席から立ち上がる。

 

「本当に、不潔極まりないですわ。もういいです。あなた方がここまで罪深い方々だとは思いませんでしたわ。帰ります」

 

「聖蘭ちゃん!?どこ行くと!?」

 

「決まっているではありませんか。研究室の礼拝堂ですわ。今も外の世界では、大勢の方々が救いを求めていらっしゃるのです。彼らの分まで私が主に祈りを捧げなくては」

 

「ご飯は?食べんと?」

 

「要りませんわ。誰かさんのせいで食欲が失せましたから。ではこれで失礼させていただきますわ」

 

そう言って聖蘭さんは、朝食も食べずに研究室へ向かってしまった。

流石に三人も朝食を食べないとなるとちょっと心配ね…

 

結局、この日は残った9人とリカが朝食会に参加した。

私が選んだ和食セットは、ご飯、油揚げの味噌汁、豆腐の卵焼き風、青梗菜とキノコの煮物、きんぴらごぼう、白菜の漬物だった。

私が朝食を食べていると、隣に座っていたマナが私に話しかけてくる。

 

「何か今日食峰君ばり張り切っとーね!」

 

「…そうね」

 

「緋色ちゃん何か知らん?」

 

どうして私に振るのよ…

…もしかして、私が昨日食峰君と話してるのを聞いてた?

いや、まさかね。

 

「知らないわ」

 

私は、食峰君のサプライズの為にシラを切った。

すると食峰君が席から立ち上がる。

 

「んじゃ、オレ飯の準備してっから」

 

「俺は研究室で研究をしてくる」

 

「…俺は技術室に行ってくる」

 

「ボクプレイルームで遊んでくるー!」

 

「待ちなさい知崎君。あなたには話があるわ」

 

知崎君がプレイルームで遊びに行こうとしていたので、私が止めた。

私は、秋山君と一緒に知崎君と闇内君に説教をした。

二人への説教が終わると、私は二人を解放した。

私も探索に向かおうとしていると、ネロが私に話しかけてくる。

 

「おい。ちょっと来い」

 

「?」

 

ネロは、いきなり私をプレイルームの射撃場に連れてきた。

射撃場をよく見てみると、私はすぐに違和感に気がついた。

私が違和感に気づくと同時に、ネロが銃の置いてあった場所を指す。

 

「見ろ。銃が減ってる」

 

よく見てみると、ライフルが一丁減っていた。

いつの間に…

 

「本当だ…誰かが持ち出したのかしら」

 

「そうだとするとまずいぞ。誰かが殺人を企ててるのかもな」

 

「………」

 

ネロが言うと、私は顎に手を当てて考え込んだ。

誰かが殺人を企ててる…?

この状況で殺人を企てる人がいるとしたら…

…いえ、考えすぎよね。

 

それから3時間、私はネロと一緒に寄宿舎を探索した。

…やっぱり古城さんが心配ね。

 

「ねえ、やっぱり古城さんの部屋に行ってきてもいい?すぐ戻るから」

 

「好きにしな」

 

私は、古城さんの安否確認をしに彼女の個室へ向かった。

古城さんの部屋のインターホンを鳴らし、声をかける。

 

「古城さん。今少し…」

 

『じゃかぁしいわァ!!ワシは今研究で忙しいんじゃ!!立ち去れい!!』

 

古城さんは、インターホン越しに怒声を浴びせてきた。

殺人を企てている様子は無いようだけど…相当追い詰められてるようね。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

それからしばらく寄宿舎を探索していたけれど、銃がなくなってた事以外は特にこれといった発見は無かった。

そろそろお昼の時間だし、食堂に行こうかしらね。

私達は、食堂に行く為エレベーターで1階に降りた。

1階に行くと、ラウンジにマナと知崎君がいた。

二人は、軽食を食べながらラウンジのテレビを見ているようだった。

 

「あれ?緋色ちゃん、今回はネロくんと一緒に探索?珍しかね!」

 

「緋色ちゃんもこれ食べるー?」

 

そう言って知崎君が渡してきたのは、コンソメ味のポテトチップスとビーフジャーキーだった。

よく見ると、マナも明太子のおにぎりを食べている。

二人が食べていた軽食は、どれも動物性食品が含まれた食べ物だった。

 

「…ねえ、それどうしたの?」

 

「購買部に売っとったっちゃん!やっぱり久々に食べる明太子はばりうまかね!」

 

「………!!」

 

マナは、満面の笑みを浮かべながら言った。

まさか……

 

「ねえ、それいつ買ったの!?」

 

「んー、20分くらい前?お腹空いたから何か買おうと思って購買部行ったら売ってたんだー」

 

知崎君がケラケラ笑いながら言い、私は咄嗟に手帳で時間を確認した。

20分前って…ちょうど私達がランドリーを調べてた時間帯じゃない!!

その間に殺人が起こったって事!?

 

「このバカガキ共…!」

 

「どうしてそれを早く言わないのよ!!それが売ってるって事は、殺人が起こったって事じゃない!!」

 

「えっ、嘘!?ご、ごめん…」

 

「とにかく、すぐに皆の安否確認、それから安否が確認できない人を探しに行かなきゃ!」

 

私は、すぐに他の皆にラウンジに集まるよう招集をかけた。

来てくれたのは、古城さん、聖蘭さん、目野さん、闇内君以外の5人だった。

とりあえず、私と食峰君と知崎君、秋山君とマナとネロ、加賀君と館井君とリカの三つの班に分かれて捜索を始めた。

 

「古城さーん!!聖蘭さーん!!」

 

「美香子ぉおおお!!いたら返事をしろぉおおお!!」

 

「忍おにい!!今すぐ出てこないとガチャで引き当てた美少女フィギュア粉々にすんぞ!!」

 

私達は寄宿舎を探したけど、誰も出てくる気配は無かった。

殺人が起きたって事は、今ここにはいない4人のうちの誰かが殺されたって事よね…?

 

「いないわね…」

 

「校舎の方探してみようぜ!」

 

「そうね」

 

私達は、校舎を探してみる事にした。

1階と2階には4人はおらず、3階を捜索する事となった。

 

「指導室見てみようぜ!」

 

そう言って食峰君は、先に指導室を調べた。

私と知崎君も一緒に指導室に入って調べる。

…ここには誰もいないみたいね。

するとその時だった。

 

「くんくん…ねえ満おにい、緋色ちゃん!こっちから血の匂いがするよ!何でだろうねぇ?知ってた?」

 

そう言って知崎君は、廊下の方を指差した。

知崎君は、私の腕を引っ張って廊下に出ると、犬のように床に這いつくばって匂いを嗅いだ。

 

「あのねぇ、どんなにキレイに拭いても血の匂いは残るんだよ!知ってた?」

 

そう言って知崎君は、まるで警察犬のように血の匂いを辿った。

すると知崎君の触角がピンと立ち、知崎君は家庭科室を指差した。

 

「こっちー」

 

「行きましょう、食峰君」

 

「んあ、ああ…」

 

私は、食峰君を連れて知崎君と一緒に家庭科室に向かった。

家庭科室のドアを開けた、その瞬間だった。

信じられない光景が目に飛び込んできた。

 

家庭科室の水道から伸びたホースから流れる大量の水が、無残にも服を全て剥ぎ取られ横たわっていたその人に降りかかっていた。

床に溜まった水は、血が混ざって僅かに赤く染まっていた。

床の水に混じった血と首に走った深い傷は、その人がもう息をしていない事を物語っていた。

 

「嘘…!」

 

 

 

まるで神のもとへ旅立ってしまったかのように、安らかな表情を浮かべながら、二度と醒める事のない眠りについたその人は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【超高校級の聖母】聖蘭マリアだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達が聖蘭さんの遺体を見た、その直後だった。

 

 

 

ダァアアアアン!!!

 

 

 

「「「!?」」」

 

突然、廊下の方から銃声が鳴り響いた。

そしてその直後。

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『死体が発見されました!生徒の皆さんは、至急校舎3階の廊下にお集まり下さい!』

 

 

 

私達三人が聖蘭さんの死体を見たから、死体発見アナウンスが放送された。

すると知崎君が話しかけてくる。

 

「ねえねえ、今の銃声は何だったんだろうねー?」

 

「…私が確かめに行ってくるわ。悪いけど、二人はここで待っててくれる?」

 

私は、銃声の正体を確かめに行った。

廊下を見てみると、何やら秋山君達が指導室の廊下の前で立ち尽くしていた。

 

「どうしたの!?」

 

私は、何かあったのかと思い、マナに尋ねる。

するとマナは、顔を真っ青にして指導室を指差した。

 

「緋色ちゃん…あれ…」

 

そう言ってマナが指導室を指差した直後、信じがたい光景が目に飛び込んできた。

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『死体が発見されました!生徒の皆さんは、至急校舎3階の廊下にお集まり下さい!』

 

 

 

死体発見アナウンスが流れるのを呆然と聞き流しながら、目の前の光景をただ呆然と見つめていた。

その人は、絶望に表情を染め、血まみれの姿で壁に磔にされていた。

どうして…

さっきまであんなに元気にはしゃいでいたのに…

 

 

 

どうしてあなたが…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【超高校級の忍者】闇内忍は、そこで息絶えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り11名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

以上6名

 

 

 

 

 




はい。
本作のお嬢様枠だった聖蘭ちゃんと憎めない変態キャラだった闇内クンが退場です。
闇内クンも割とTwitterでは人気キャラだったんですが、アテクシは容赦しません。
聖蘭ちゃんは多分クロ予想してる人が多かったんじゃないかなぁと。
はい、そういう予想をしていただけるようミスリードさせました。

今回、トリックが複雑な代わりに犯人はわかりやすいと思います。


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非日常編①(捜査編)

そんな…

闇内君まで、どうして…!

 

「そんな、嘘やろ…!?闇内くん!」

 

「ふん、誰よりも真っ先に脱出してやるって啖呵切ってた奴がこのザマじゃあな」

 

マナは目を見開いてその場に立ち尽くし、ネロは腕を組んで悪態をついていた。

するとその時だった。

 

「腐和さん」

 

突然、秋山君が私に話しかけてきた。

 

「アナウンスが2回鳴ったよね。って事は、もう一人誰かが死んだって事?」

 

「ええ。私が遺体を発見して、その直後に銃声が鳴ったから何かと思って駆けつけてきたの。そしたら闇内君を発見したというわけ」

 

「…誰が死んだの?」

 

秋山君の質問に対して、私は少し俯きながら答えた。

 

「………聖蘭さんよ」

 

私が言うと、秋山君が静かに俯く。

 

「…そっか」

 

「嘘やろ…!?そんな、聖蘭ちゃんが…!なして…!!」

 

秋山君は静かに俯き、ネロも帽子の鍔で目元を隠し、マナはボロボロ涙を流して泣いた。

するとその時だった。

 

 

 

「はてさて、アナウンスがあったので何があったのかと思って来てみれば!って、はぎゃああああ!!?や、闇内さん!?」

 

今まで何のレスポンスも無かった目野さんが突然ふらっと現れ、闇内君の死体を見た途端にオーバーリアクションを取った。

するとネロがギロリと目野さんを睨みつけながら脅すように問い詰める。

 

「てめぇ…今までどこで何してやがった?」

 

「はにゃ?」

 

「そうだよ!目野ちゃん、インターホン何回鳴らしたっちゃ出てきてくれんやったっちゃん!」

 

「あっ、多分ベリィィチャァミングッッッな機械ちゃん達に夢中で聴こえてませんでした!!ごめんなさい!!」

 

ネロとマナが問い詰めると、目野さんは悪びれずに答えた。

すると秋山君が仲裁に入った。

 

「二人とも、目野さんを問い詰めるのは後にしなよ。とりあえず、まずは他の皆と合流しないと。ええっと、腐和さん。聖蘭さんはどこにいたんだっけ?」

 

「家庭科室よ」

 

「わかった。じゃあ一旦家庭科室と指導室の間に集合しよう。食峰君と知崎君は家庭科室にいるんだよね?」

 

「ええ」

 

私達は、とりあえず秋山君の提案通り、家庭科室と指導室を挟んだ廊下に集合する事にした。

私と一緒に探索をしていた二人に加えて、加賀君達三人と古城さんも来た。

 

「古城さん。さっきは呼びかけにも応じなかったけど、何かあったの?」

 

「………」

 

古城さんは、私の質問に答えなかった。

ずっと俯いていて、絶望に表情を染めていた。

一度に二人も仲間を失って、古城さんも相当つらいのね。

 

「今回は被害者が二人か…こういう場合ってどうなるんだ?」

 

「あっ、そっか。犯人が二人いるかもしれねえんだもんな!!どうなんだ、理事長、学園長!!」

 

ネロと食峰君が言うと、モノクマとモノDJが現れる。

 

『ギャハハハハ!!ズバリその場合は、早い者勝ちだぜYEAH!!』

 

『学級裁判では、一部の例外を除いて、最初に殺したクロだけが投票の対象として扱われます!』

 

「仮に最初の殺人の犯人が既に死んでいた場合は?」

 

『ナイスクエスチョン久遠ボーイ!それがさっき言った例外だぜ!その場合は、次に殺人を犯した生きてる犯人をクロとして扱うぜ!』

 

「なるほどな。もう消えていいぞ」

 

『Boooo!!ヘイウォッチユアマウスボーイ!!』

 

『今回もファイルあげるので是非是非役立てやがって下さい!』

 

そう言って二匹は、その場から消えていった。

その直後、校則が追加される。

 

 

 

十九、クロが複数人いた場合は、原則として最初に殺したクロだけが投票の対象として扱われます。ただし最初に殺したクロが既に死亡している場合は、次に殺したクロが投票の対象となります。

 

 

 

なるほどね…

つまり、複数の殺人がほぼ同時に起こった場合でも必ず一人が投票の対象になるわけか。

すると秋山君が顎に手を当てながら口を開く。

 

「…さてと。今回は検視はどうしようか?被害者が二人だけど」

 

「今まで通り見張りを二人つけてたら、捜査の人達の負担が大きくなっちゃうわよね」

 

「仕方ない。ちょっと心許ないけど、見張りは一人ずつつけよう。検視は…今まで通り加賀君、お願いできるかい?」

 

「任せろ。俺は闇内の検視をやるから、リカは聖蘭の検視を頼む」

 

『お任せクダサイ!』

 

加賀君がリカに命令すると、リカは決めポーズをした。

すると食峰君が顔を引き攣らせる。

 

「えっ…リカがマリアの身体調べんのか?」

 

『…アテクシは便宜上女子デスが、何か問題でも?』

 

「いや、別に…」

 

『それにデスね。アテクシは医学の知識は一通り学習済みデスし、きちんと検視用のプログラムもインストールされているのデスよ!ちちとははのお役に立つ為に、アテクシが自ら進んで学習したのデス!最新型のバーチャルアシスタントを舐めないでクダサイ!』

 

「わかった、わかったって」

 

リカが食峰君の発言に対して腕を組みながらムッとした態度で反論すると、食峰君がリカを宥めた。

検視は二人に任せるとして、見張りも決めないとね。

 

「見張りは誰にお願いしようかしら?」

 

私が尋ねた、その時だった。

 

 

 

「………」

 

唐突に古城さんが手を上げた。

正直、意外だった。

普段の古城さんなら、遺体の見張りなんて絶対嫌がってただろうから。

 

「古城さん?その…大丈夫なの?」

 

「ワシは…下ぼ…闇内の側にいてやりたいのじゃ。頼む。やらせてくれ」

 

古城さんは、俯いて元気がなさそうに、それでいてハッキリと自分の意見を伝えた。

もし彼女が犯人じゃなかったら、ここで反対するのも野暮よね。

 

「わかったわ。じゃあ聖蘭さんの方は…」

 

「はい!はいはいはーい!じゃあボクはマリアおねえの「マリアの方はオレがやる」

 

おそらくセクハラ目的であろう知崎君が立候補しようとすると、食峰君が遮って立候補した。

 

「食峰君…あなた…」

 

「べっ、別にやらしい事考えたりはしてねえよ!」

 

私が食峰君の方を見ると、食峰君は少し顔を赤くしてあたふたしながら弁解した。

別にまだ何も言ってないわよ…

 

「……ただよぉ、どうしてもそばにいてやりてぇんだ。今だからぶっちゃけるけど、オレはあいつの事が大好きだったからよ」

 

食峰君は、悔しそうに拳を握りしめながら言った。

食峰君は、聖蘭さんの事が好きだったのね。

きっと、大事に思っていた聖蘭さんが殺されて、誰よりもショックなのは彼なのでしょうね。

 

「…そうね。じゃあ聖蘭さんの方は食峰君にお願いするわね」

 

「ありがとな」

 

「ちぇー。あとでボクに任せなかった事を後悔しても知らないよ!」

 

私が食峰君に見張りを任せると、知崎君が唇を尖らせて負け惜しみを言った。

そんな事言って、あんたはどうせセクハラしたいだけでしょうが。

 

結局、闇内君の検視と見張りは加賀君と古城さん、聖蘭さんの検視と見張りはリカと食峰君、その他は私とネロ、マナと館井君と知崎君、目野さんと秋山君の3つのグループに分かれて調べる事になった。

さてと…捜査を進めていかないとね。

 

 

 

ーーー

 

 

 

《捜査開始!》

 

 

 

まずはモノクマファイルを確認しておこう。

 

モノクマファイル③

被害者は【超高校級の聖母】聖蘭マリア。

死亡推定時刻は午前11時50分頃。

死体発見場所は校舎3Fの廊下。

死因は失血死。

首に刃物で刺されたと思われる刺し傷が見られる。

 

 

 

モノクマファイル④

被害者は【超高校級の忍者】闇内忍。

死体発見場所は校舎3Fの廊下。

腹部に直径8mm程の穴が開いている。

手足を苦無で刺されて磔にされている。

 

 

 

 

「…あれ?闇内君のファイルには死因と死亡推定時刻が書かれてないわね。聖蘭さんの方はしっかり書かれてるのに」

 

「さあな。調べりゃわかるって事なんじゃねえか?」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【モノクマファイル③】

 

 

 

コトダマゲット!

 

【モノクマファイル④】

 

 

 

「それに、死体発見場所が『廊下』ってなってんのが気になるな。死体があったのは家庭科室と指導室だろ?」

 

「確かにね…死体発見アナウンスでも廊下に集まれって言ってたし…そこら辺どうなってるのかしら。モノクマ!」

 

『はい何でしょ?』

 

私が呼ぶと、モノクマが目の前に現れた。

私は、モノクマに気になった事を尋ねた。

 

「死体発見場所はどうやって決められてるのかしら?」

 

『うぷぷ、それは()()()()()()()()()()()()()()()だよ』

 

「じゃあもし扉越しに死体を発見したら、仮に死体がある場所が部屋の中でも、発見場所は廊下になるわけね?」

 

『そうでーす』

 

そういえば1回目と2回目の時は第一発見者がきちんと室内に入ってから確認してたけど、今回は廊下越しだったものね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【死体発見場所】

死体発見場所は、第一発見者が死体を発見した時点でいた場所。

 

 

 

「そういえばネロ、今回は死体発見アナウンスがほぼ同じタイミングで鳴ったわよね?」

 

「ああ…そうだが、それがどうした?」

 

「いえね、ちょっと気になる事があるのよ」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【死体発見アナウンス】

1回目は私、食峰君、知崎君が聖蘭さんを発見し、銃声が鳴った直後、2回目は私が闇内君を発見した直後に鳴った。

 

 

 

「おい」

 

「ん」

 

「ちょっと来い」

 

ネロは、いきなり私の腕を引っ張ってプレイルームの射撃場に連れてきた。

するとエアガンが並んだ銃置き場からライフルを一丁取り出し、私に見せてきた。

 

「見ろ」

 

そう言ってネロが見せてきたのは、本物のライフルだった。

 

「…え?これ、本物…?」

 

どうして本物の銃がこんな所に…?

 

「これがここにあって、本物の銃が置かれた銃置き場から一丁無くなってたって事は、実際に盗まれたのはこいつに対応したエアガンだ。本物の銃が盗まれたと思わせる為に入れ替えたんだろうな」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【銃置き場の銃】

何故か銃置き場の本物の銃と、本物そっくりのエアガンが入れ替わっている。

 

 

 

「そういやお前、実弾はどうしたんだ?」

 

「鍵付きの箱に入れておいたわよ。殺人に悪用されるといけないからね。ほら、鍵もちゃんと肌身離さず持ってるわ。あ、言っておくけどあの箱の鍵はこれだけしか無いから、私しか箱は開けられないわよ」

 

そう言って私は、ポケットから実弾の箱の鍵を取り出した。

 

「じゃあここにある実弾を使って殺せたのはお前だけって事か」

 

「あんたねえ…この状況だったら自動的に私が犯人になっちゃうんだから、私が実弾使って殺すわけがないでしょうが」

 

私は、私が闇内君を銃殺したんじゃないかと疑うネロに呆れ顔を向けた。

いくら彼にセクハラされたからって、それぐらいで殺したりなんかしないわよ。

一応、実弾の入った箱を調べてみようかしらね。

 

「…うん、箱に穴とかは無いわね。数もちゃんと入れた時と一致してるし…ここにあった実弾が使われたって線は無さそうね」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【実弾の箱】

悪用防止の為に鍵付きの箱に実弾が入っていて、中から実弾が盗まれたりはしていなかった。

鍵は私が肌身離さず持っている。

 

 

 

「…あ、そうだネロ。一応拳銃を調べさせてくれないかしら?事件を解決する上で重要になるかもしれないの。見せてくれるだけでいいから」

 

「チッ…一瞬だけだぞ」

 

そう言ってネロは、私に銃を見せた。

これは…コンバットマグナムかしらね。

私のはニューナンブM60だから…どっちも犯行に使われた可能性は無いわね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ネロと私の愛銃】

ネロの愛銃はS&W M19、通称コンバットマグナム、口径は約9mm。

私の愛銃はニューナンブM60。口径は約9mm。

 

 

 

「一応焼却炉も見とくぞ。証拠隠滅にはうってつけだからな」

 

「そうね」

 

私とネロは、一応焼却炉を確認しておいた。

…ん?何かしら。

この布は…

焦げてて元が何だったのかはわからないけど…

ん?よく見ると血がついてるわね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【焦げた布】

焼却炉に捨ててあった。

よく見ると血がついている。

 

 

 

「他に気になる事はもう無い?」

 

「ああ」

 

「じゃあ校舎に戻るわよ」

 

私とネロは、捜査をしに校舎に戻った。

 

 

 

ーーー 校舎3F ーーー

 

まずは、指導室を調べている加賀君と古城さん、それからマナ達に話を聞いてみる事にした。

 

「加賀君、何かわかった事はあったかしら?」

 

「まず検視の結果だが…ハッキリ言えるのは、この腹の傷は銃創じゃない」

 

「銃創じゃない…?」

 

「ああ。体内に弾丸が残っていないし、銃創にしては不自然なんだ。むしろ、電動ドリルか何かで開けられた穴と考えるのが妥当だ」

 

なるほどね…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【闇内君の腹部の穴】

腹部に直径8mm程の穴が開いている。

加賀君曰く銃創ではないらしい。

 

 

 

「それから闇内の体内からテトロドトキシンが検出されたぞ」

 

加賀君は、薬品の入った試験管を眺めながら言った。

テトロドトキシン、か…

確かフグ毒で有名なアレよね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【テトロドトキシン】

フグ毒で有名な猛毒。

闇内の体内から検出された。

 

 

 

すると、指導室を調べていたマナが加賀君に尋ねる。

 

「テトロドトキシンて何?」

 

「猛毒だ。一番有名な例で言うとフグ毒だな」

 

「ええ!?なら闇内くんはフグ食べて死んだって事!?」

 

「…アクアリウム内の生物を殺すのは校則で禁止されていたはずだ」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【校則の十七番目の項目】

アクアリウム内の生物を殺してはいけない。

 

 

 

私が捜査の結果わかった情報をメモしていると、知崎君が加賀君に尋ねる。

 

「えー、でもさでもさ!忍おにいは【超高校級の忍者】だよ?普段から毒味とかしてるんだから、毒とか効かないんじゃないの?」

 

「それは場合によるな。経口摂取の場合は助かるかもしれんが、血管に直接入り込んだ場合は流石に無理だろうな」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【闇内君の毒物耐性】

普段から毒味をしているので経口摂取した毒にはある程度耐性がある。

しかし、直接血管に毒を注入された時の耐性は不明。

 

 

 

なるほどね…

 

「加賀君は事件当時何してたの?」

 

「研究室でリカのメンテをしていた。メンテ中は本体をシャットダウンしていたから、証明できる奴はいないな」

 

加賀君にはアリバイは無いのね。

 

「じゃあ死体発見アナウンスが鳴った時どこにいたの?」

 

「校舎の3階を探していたんだが、死体発見アナウンスが聴こえたから駆けつけてきたんだ。そして俺達が、知崎と食峰のいた家庭科室の前に駆けつけた瞬間にアナウンスが鳴ったな」

 

…ん?

今結構重要な事言わなかった?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【加賀君の証言】

加賀君達は、死体発見アナウンスを聞いて家庭科室に駆けつけ、その直後にアナウンスが鳴った。

 

 

 

「館井君は何かわかった事はあった?」

 

「ああ。これが闇内の手足に刺さっていた」

 

そう言って館井君は、血のついた苦無を見せてきた。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【苦無】

闇内君の手足に刺さっていた。

 

 

 

「ありがとう。館井君は事件当時何してたの?」

 

「俺は技術室で作業をしていた。事件が起こった時間帯、ちょうど目野が来たな」

 

じゃあ館井君と目野さんにはアリバイがあるのね。

マナにも話を聞いてみようかしらね。

 

「マナは?何かわかった事は?」

 

「ねえ、これ何やて思う?」

 

そう言ってマナは、ラジカセを取り出した。

これって…外国語教室にあったラジカセよね?

どうしてこんなところに…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ラジカセ】

マナが指導室で発見した。

おそらく外国語教室にあったもの。

 

 

 

「あとね、いつん間にかうちんスカートんポケットにこげなとが入っとったっちゃん」

 

そう言ってマナは、スカートのポケットからクシャクシャに丸められたメモ用紙を取り出した。

メモ用紙には、闇内君の字で『絶対に一人になるな』と書かれていた。

それから、メモ用紙の裏面を見てみると、この指導室の間取りが書いてあった。

…ん?この変なスペースは一体…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【マナの持っていたメモ】

いつの間にかポケットに入っていた。

表には闇内君の字で『絶対に一人になるな』と書かれている。

裏面に指導室の間取りが書かれていて、よく見ると家庭科室と指導室を挟んだ壁に謎のスペースがある。

 

 

 

「マナは知崎君とずっと一緒にいたみたいだけど、犯行時刻にも一緒にいたの?」

 

「うん!」

 

じゃあマナと知崎君も潔白か…

 

「いーち、にーい、さーん…」

 

私は、壁伝いに歩いて数を数えている知崎君に声をかけた。

 

「知崎君は?」

 

「ねえねえこれ何だと思う?知ってる?」

 

そう言って知崎君は、ドアを指差した。

よく見ると細いワイヤーのようなものが括り付けられている。

これは…美術室にあった糸鋸用のワイヤーかしらね?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ワイヤー】

指導室のドアノブについていた。

おそらく美術室に置いてあった糸鋸用のワイヤー。

 

 

 

「…そういえば知崎君。あなたさっきから何してるの?」

 

「あのね!ボク気付いちゃったんだ!この指導室、内側と外側で見かけの広さが違うんだよ!知ってた?」

 

「えっ、そうなの?」

 

「うん!だから内側と外側の距離を足で測ってたの!でね、ボクの足で5歩分距離が合わなかったんだ!何でだろうねぇ?」

 

内側と外側の距離が合わない…

…!

まさか…!

 

私は、さっきのメモを開いて確認してみた。

メモの間取りには、謎の空間が描かれていた。

ちょうど闇内君が磔にされていた位置と一致する。

…ここか。

私は、一度壁をグッと押してみた。

すると壁が回転し、隠された空間が出てきた。

中はちょうど1mくらいの幅の隠し部屋になっていて、中には血が溜まっていて、部屋の中には、美術室から持ち出したと思われる電動ドリルと、無くなっていたライフル型のエアガンが落ちていた。

モデルはおそらくレミントンM700でしょうね。

すると、知崎君が横からエアガンを奪い取ってその場で構えた。

 

「へへーん、緋色ちゃん見て見てー」

 

「遊んでないで真面目に捜査しなさいよ」

 

私が知崎君に注意をした、その直後だった。

 

 

 

ダァアアアアン!!!

 

「うわっ!?」

 

突然、銃声が鳴り響いた。

私が後ろを振り向くと、知崎君は目を丸くしていた。

 

「ちょっ、どうしたの!?」

 

「ごめーん!ついはずみで引き金引いちゃった!」

 

何やってんのよもう…

…ん?

今のはこの銃の音よね?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【隠し部屋】

指導室と家庭科室を挟んだ壁のところに隠し部屋があった。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【電動ドリル】

隠し部屋の中にあった。

おそらく美術室から持ち出されたもの。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【エアガン】

本物そっくりの銃撃音が鳴るライフル型のエアガン。

おそらく射撃場から盗まれたもの。

 

 

 

私は、加賀君の見張りをしている古城さんにも話を聞いてみる事にした。

 

「ねえ古城さん」

 

「……何じゃ」

 

「どうしてさっきからずっと出てこなかったの?私達、ずっと古城さんを探してたのよ?ああ、責めてるんじゃなくて純粋な疑問ね」

 

私が尋ねると、古城さんは制帽の鍔で目元を隠しながら言った。

 

「それは…出るなって言われたからじゃ」

 

「言われた?誰に?」

 

「…闇内じゃ。彼奴に、『死体発見アナウンスが鳴るまでは何があっても絶対に部屋の外に出るな』って言われたのじゃ。部屋の菓子や本も、籠城に備えて彼奴が持ってきてくれたものじゃ」

 

闇内君が古城さんにそんな事を…?

一体何が狙いだったのかしら。

 

「ねえ、それはいつ言われたの?」

 

「昨日の夜からじゃが…?」

 

「なるほどね。ありがとう」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【古城さんの証言】

昨晩、闇内君に何があっても部屋の外に出ないよう言われていたらしい。

 

 

 

「ここでの調べ物はこれくらいでいいかしらね」

 

「んじゃあ次は家庭科室を調べてみるか」

 

私達は、次は聖蘭さんが亡くなった家庭科室を調べてみる事にした。

 

 

 

ーーー 家庭科室 ーーー

 

家庭科室では、リカと食峰君が聖蘭さんの検視をしていた。

 

「ネロ」

 

「わぁってるよ。後ろ向いときゃいいんだろ」

 

私が声をかけると、ネロは聖蘭さんに背を向けた。

意外と紳士的なのね……

 

「二人は何かわかった事はあった?」

 

『ええとデスね。まず、死因は失血死で間違いありマセン。首を刃物で刺されたものと思われマス』

 

 

 

コトダマゲット!

 

【リカの検視結果】

聖蘭さんの死因は、首を刃物で刺された事による失血死。

 

 

 

「食峰君は?」

 

「んー…何でか知らねえけどマリアが素っ裸にされてホースの水がかかってたって事以外は…」

 

「なるほどね、ありがとう」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【聖蘭さんの遺体】

何故か衣服を全て剥ぎ取られている。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ホースの水】

家庭科室の蛇口にホースがつけられていて、そこから出る水が聖蘭さんにかけられていた。

 

 

 

「でも変ね…」

 

「ん?何が?」

 

「いや、普通犯人が水で洗い流すとしたら、自分の身体でしょ?どうして聖蘭さんを水で洗い流す必要があったのかしらね」

 

「あー…何か見られたくねえもんでもあったとかじゃねえの?知らねえけど」

 

…本当にそうなのかしら?

ちょっと気になるわね。

 

「ところで食峰君、あなたは聖蘭さんの犯行時刻には何をしていたの?」

 

「オレか?楽斗と家庭科室の備品の整理をしてたぜ!」

 

「リカは?」

 

『アテクシは…すみマセん、その時はメンテナンス中だったので…』

 

なるほど、じゃあアリバイがあるのは食峰君と秋山君、マナと知崎君の4人だけかしら?

 

「ごめんなさい、ちょっと家庭科室の中を調べてもいいかしら?」

 

『はい!』

 

刃物…となると怪しいのは包丁よね。

私は、家庭科室の包丁ケースを見てみた。

案の定、包丁が一本なくなっている。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【家庭科室の包丁】

家庭科室の包丁が一本なくなっている。

 

 

 

「おい。こっち来い」

 

そう言ってネロは、私を家庭準備室に連れ出した。

何なのかしら…?

 

「これ見てみろ」

 

そう言ってネロが指したのは、備え付けの洗濯機だった。

洗濯機の中には、聖蘭さんの服が入っている。

靴以外は全部入ってるわね…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【聖蘭さんの服】

血がこびりついた状態で家庭準備室の洗濯機に入っていた。

靴以外は全て入っている。

 

 

 

「…あれっ?」

 

「どうかしたか」

 

「このミシン、針が無い…」

 

誰かが針だけ盗んだのかしら?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ミシン針】

家庭準備室のミシンからなくなっていた。

 

 

 

これで現場は全て調べ終えたわけだけど…

一応他の場所も調べておこうかしらね。

 

 

 

ーーー 美術室 ーーー

 

「…うん、やっぱりワイヤーと電動ドリルがなくなってるわね」

 

私が調べていると、ネロが私に話しかけてくる。

 

「お前、犯行時刻当時何してた?」

 

「何って…あなたと探索してたでしょ?」

 

「でも5分間くらい離れてたタイミングがあったろ」

 

「古城さんの部屋に行っていたのよ。少し心配だったからね。あなたこそ、私がいない間何してたの?」

 

「プレイルームを色々と調べてたよ」

 

私が尋ねると、ネロは頭を掻きながら答えた。

するとネロが唐突に口を開く。

 

「…今回の犯行こそジャック・ザ・リッパーの仕業かもしれねぇなぁ。少なくとも、Miss聖蘭の方はジャックの犯行手口と一致してんだろ?」

 

「でも首は斬られてなかったわよ?」

 

「俺達が思いの外早く死体を見つけたせいで、首を斬るのが間に合わなかったんじゃねえか?俺の考えじゃあ、ジャックはただの快楽殺人犯じゃねえ。首を斬り落とすのはついでで、他に何か目的があると考えるのが自然だろうな」

 

「どうしてそう思うの?」

 

「さぁねぇ。長い事マフィアの用心棒やってっと、そういう勘が鋭くなるのさ」

 

「………」

 

私は、ほんの思いつきで拝借していたジャック・ザ・リッパーについての資料をもう一度読み返してみた。

ふと、被害者のファイルに目がいく。

何か、何か無いの…?

年齢と性別以外のヒントは…!

ええっと、被害者の職業は…保育士、ファッションデザイナー、研究員、パート、大学生……

 

 

 

「……あ」

 

「どうした?」

 

「そっか、わかった!過度の肉体労働を必要とする職業に属してた経験のある人が1人もいないのよ。例えばスポーツ選手とか、建設業とか…それどころか、運動部に所属してたって記録がある人すらいないわ」

 

「…なるほどな。ジャックの動機を考える上で重要な手掛かりになるんじゃねえのか?」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ジャック・ザ・リッパーの犯行手口】

被害者はいずれも10歳以下の子供か40歳以下の女性で、死因はいずれも刃物で頸動脈を切りつけられた事による失血死。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【被害者の共通点】

被害者の中には、過度の肉体労働を必要とする職業や部活に属していた人が一人もいない。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【被害者の遺体の状態】

被害者はいずれも首だけは現場付近で発見されているが、何故か胴体は見つかっていない。

 

 

 

「ここで調べられる事はこれくらいかしらね。次は物理室を見てみない?」

 

「そうだな」

 

私達は、次に物理室を調べてみる事にした。

 

「…ん?」

 

「どうかしたか?」

 

「これ…」

 

ふと足元を見てみると、物理室と家庭科室の間にタイヤ跡がある。

これは何なんだろう…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【タイヤ跡】

物理室と家庭科室の間の廊下についていた。

 

 

 

ーーー 物理室 ーーー

 

物理室では、秋山君と目野さんが調べ物をしていた。

…うわ、酷い…

物理室の床にはブルーシートが敷かれていて、その上に大量の血がこびりついていた。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ブルーシート】

物理室の床に落ちていた。

元は物理準備室に置いてあったもの。

 

 

 

「秋山君は?何かわかった?」

 

「このブルーシートなんだけどさ。よく見ると水滴がついてるんだ」

 

「あ…本当だ。変ね…」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ブルーシートの水滴】

よく見るとブルーシートに水滴がついている。

 

 

 

「あと、これ」

 

そう言って秋山君が見せてきたのは、血のついた包丁だった。

 

「多分、聖蘭さんの首を刺した凶器じゃないかな」

 

「…ねえ。これ、家庭科室の包丁よね?」

 

「うーん…俺は家庭科室はそんなに詳しく調べてないから一概には言えないけど…家庭科室の包丁が無くなってたならそうなんじゃない?」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【包丁】

物理室に落ちていた。

おそらく家庭科室の包丁。

 

 

 

「そういえば秋山君。食峰君と一緒に家庭科室の備品を整理してたって聞いてるけど、本当?」

 

「え?うん。飯の準備するから手伝ってくれって言われたからね。確か11時35分から12時10分までの間だったかな?その後は、本を読みに図書室に行ったよ」

 

「その時には家庭科室には特に何の異変もなかったのよね?」

 

「うん。あ、包丁は一本なくなってたけど、それは食峰君が一本持って行ったんだって。食堂の包丁の刃が欠けたとかで…」

 

「……ふぅん」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【秋山君と食峰君のアリバイ】

秋山君は、11時45分から12時10分までの間食峰君と一緒に家庭科室の備品を整理している。

この二人は潔白とみていいだろう。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【秋山君の証言】

包丁が一本持ち出されていたが、それは食峰君が食堂に持ち込んだものらしい。

 

 

 

「…それにしても暑いわねこの部屋」

 

「おい。見ろこれ」

 

そう言ってネロは、エアコンのリモコンを指差した。

部屋の設定温度は30度になっていた。

…道理で暑いと思ったわ。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【エアコン】

30度に設定されていた。

 

 

 

目野さんにも話を聞いておかないとね。

目野さんは…物理室の機械に抱きついて息を荒くしながら機械を舐め回していた。

犯人じゃなかったとしても、怪しすぎるわね。

 

「目野さん」

 

「はっ!!ち、違うのですよ腐和さん!!誘ってきたのはこの機械ちゃんの方なのです!!」

 

私が奇行に走る目野さんに声をかけると、目野さんは何がどう違うのかとツッコみたくなるような言い訳をした。

秋山君も、一緒に探索してるなら止めてよ…

 

「それで、目野さんは何かわかったの?」

 

「ええとですね!どうやら電気棒が盗まれていたようなのです!それから、台車に血がついていました!」

 

なるほど…

それは少し気になるわね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【電気棒】

物理準備室から盗まれていた。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【台車】

台車に血がついていた。

 

 

 

「ところで、その機械を調べていて何かわかった事は?」

 

「事件と関係あるかはわからんのですが、どうやらこの機械ちゃんが使われた形跡は無いようなのです!」

 

「どうしてわかるの?」

 

「ええとですね!この機械ちゃんは、膨大なエネルギーを使うのですぐに温度が上がってしまうのです!なので自動で冷却装置が稼働するのですが、この冷却装置は一度稼働したら5時間は稼働したままなんですよ!冷却装置が動いていないという事は、機械ちゃんは使われていないんですね!ええ!」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【物理室の機械】

室温や湿度、気圧等の実験の条件を作り出す機械。

一度電源を入れると冷却装置が自動で稼働するのだが、冷却装置が動いていないという事は犯行時間中に使われたという線はなさそうだ。

 

 

 

「なるほどね。その機械って誰でも操作できるものなの?」

 

「いえ!誤作動を防ぐ為にあえて複雑な操作を必要としているので、機械ちゃんに精通してる方でないと難しいですね!初見で操作できる人がいるとしたら、加賀さんと私、それからリカくらいでしょうか!」

 

目野さんが証言すると、下から秋山君がヒラヒラと手を振って言った。

 

「俺もできるよ〜」

 

「そうなの?」

 

「一応職業柄プログラミングは一通り齧ってるから」

 

「だそうですよ!!」

 

そうなのね。

私は加賀君が動かしてるのを見てただけだから、操作方法を知る機会なんてなかったわね…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【機械の操作方法】

素人が扱って誤作動を起こさないよう、機械に詳しい人間でないと操作できない仕様になっている。

今のところ秋山君、加賀君、目野さん、リカしか知らない。

 

 

 

ここで調べられるのはこれくらいかしらね。

あと一応教室も調べておこうかしら。

 

 

 

ーーー 3ーA教室 ーーー

 

3ーA教室に入ると、何の変哲もない教室の風景が広がっていた。

…ん?

これは…聖蘭さんが大事に握りしめていたロザリオよね?

どうしてこんなところに…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ロザリオ】

聖蘭さんが大事に握りしめていたもの。

3ーA教室に落ちていた。

 

 

 

…そういえば、聖蘭さんは毎日教室を綺麗に掃除してくれてたのよね。

聖蘭さんの代わりに、これからは私達で校舎を綺麗にしないと。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【清掃時間】

聖蘭さんは毎日決まった時間に教室を掃除していた。

 

 

 

私が捜査を続けていた、その時だった。

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『えー、もう待ちくたびれたので捜査時間を打ち切らせていただきます!オマエラ、校舎1階の赤い扉の前まで集合して下さい!あ、もちろん全員参加だからね?15分以内に来ないとオシオキしますよー!』

 

「えっ、もう…?」

 

「仕方ねえだろ。行くぞ」

 

「ええ…」

 

私は、ネロと一緒にすぐに赤い扉に向かった。

 

 

 

ーーー 赤い扉の前 ーーー

 

赤い扉の前には、既に他の人達が集合していた。

私達が全員集まると、その直後アナウンスからちょうど15分になった。

すると赤い扉が開き、私はエレベーターに乗り込んだ。

全員がエレベーターに乗り込むと、扉が閉まり下へ移動した。

 

エレベーターは静かに下へ下へと降りていき…そして、止まった。

またあの裁判場への扉が開く。

だが今回は、前回と風景が違っていた。

今回は、まるで教室の中のような風景だった。

 

古城さんと食峰君の間の席に新たに置かれた越目君の遺影。

彼の遺影には、スマイリーフェイスが描かれていた。

そして食峰君と小鳥遊さんの席の間には十字架が描かれた聖蘭さんの遺影が、目野さんと秋山君の席の間にはクロスしたクナイが描かれた闇内君の遺影が置かれていた。

 

聖蘭さん……

最期まで人に為に尽くし敬虔に努めてきた人だった。

 

そして、闇内君。

誰よりもこの状況を何とかしようと足掻いていた人だった。

 

そんな彼らを殺した犯人がこの中にいる。

私が、絶対に犯人を暴いてやる!!

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り11名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

以上6名

 

 

 

 

 



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非日常編②(学級裁判前編)

コトダマリスト

 

【モノクマファイル③】

被害者は【超高校級の聖母】聖蘭マリア。

死亡推定時刻は午前11時50分頃。

死体発見場所は校舎3Fの廊下。

死因は失血死。

首に刃物で刺されたと思われる刺し傷が見られる。

 

【モノクマファイル④】

被害者は【超高校級の忍者】闇内忍。

死体発見場所は校舎3Fの廊下。

腹部に直径8mm程の穴が開いている。

手足を苦無で刺されて磔にされている。

 

【死体発見場所】

死体発見場所は、第一発見者が死体を発見した時点でいた場所。

 

【死体発見アナウンス】

1回目は私、食峰君、知崎君が聖蘭さんを発見し、銃声が鳴った直後、2回目は私が闇内君を発見した直後に鳴った。

 

【銃置き場の銃】

何故か銃置き場の本物の銃と、本物そっくりのエアガンが入れ替わっている。

 

【実弾の箱】

悪用防止の為に鍵付きの箱に実弾が入っていて、中から実弾が盗まれたりはしていなかった。

鍵は私が肌身離さず持っている。

 

【ネロと私の愛銃】

ネロの愛銃はS&W M19、通称コンバットマグナム、口径は約9mm。

私の愛銃はニューナンブM60。口径は約9mm。

 

【焦げた布】

焼却炉に捨ててあった。

よく見ると血がついている。

 

【闇内君の腹部の穴】

腹部に直径8mm程の穴が開いている。

加賀君曰く銃創ではないらしい。

 

【テトロドトキシン】

フグ毒で有名な猛毒。

闇内の体内から検出された。

 

【校則の十七番目の項目】

アクアリウム内の生物を殺してはいけない。

 

【闇内君の毒物耐性】

普段から毒味をしているので経口摂取した毒にはある程度耐性がある。

しかし、直接血管に毒を注入された時の耐性は不明。

 

【加賀君の証言】

加賀君達は、死体発見アナウンスを聞いて家庭科室に駆けつけ、その直後にアナウンスが鳴った。

 

【苦無】

闇内君の手足に刺さっていた。

 

【ラジカセ】

マナが指導室で発見した。

おそらく外国語教室にあったもの。

 

【マナの持っていたメモ】

いつの間にかポケットに入っていた。

表には闇内君の字で『絶対に一人になるな』と書かれている。

裏面に指導室の間取りが書かれていて、よく見ると家庭科室と指導室を挟んだ壁に謎のスペースがある。

 

【ワイヤー】

指導室のドアノブについていた。

おそらく美術室に置いてあった糸鋸用のワイヤー。

 

【隠し部屋】

指導室と家庭科室を挟んだ壁のところに隠し部屋があった。

 

【電動ドリル】

隠し部屋の中にあった。

おそらく美術室から持ち出されたもの。

 

【エアガン】

本物そっくりの銃撃音が鳴るライフル型のエアガン。

おそらく射撃場から盗まれたもの。

 

【古城さんの証言】

昨晩、闇内君に何があっても部屋の外に出ないよう言われていたらしい。

 

【リカの検視結果】

聖蘭さんの死因は、首を刃物で刺された事による失血死。

 

【聖蘭さんの遺体】

何故か衣服を全て剥ぎ取られている。

 

【ホースの水】

家庭科室の蛇口にホースがつけられていて、そこから出る水が聖蘭さんにかけられていた。

 

【家庭科室の包丁】

家庭科室の包丁が一本なくなっている。

 

【聖蘭さんの服】

血がこびりついた状態で家庭準備室の洗濯機に入っていた。

靴以外は全て入っている。

 

【ミシン針】

家庭準備室のミシンからなくなっていた。

 

【ジャック・ザ・リッパーの犯行手口】

被害者はいずれも10歳以下の子供か40歳以下の女性で、死因はいずれも刃物で頸動脈を切りつけられた事による失血死。

 

【被害者の共通点】

被害者の中には、過度の肉体労働を必要とする職業や部活に属していた人が一人もいない。

 

【被害者の遺体の状態】

被害者はいずれも首だけは現場付近で発見されているが、何故か胴体は見つかっていない。

 

【タイヤ跡】

物理室と家庭科室の間の廊下についていた。

 

【ブルーシート】

物理室の床に落ちていた。

元は物理準備室に置いてあったもの。

 

【ブルーシートの水滴】

よく見るとブルーシートに水滴がついている。

 

【包丁】

物理室に落ちていた。

おそらく家庭科室の包丁。

 

【秋山君と食峰君のアリバイ】

秋山君は、11時45分から12時10分までの間食峰君と一緒に家庭科室の備品を整理している。

この二人は潔白とみていいだろう。

 

【秋山君の証言】

包丁が一本持ち出されていたが、それは食峰君が食堂に持ち込んだものらしい。

 

【エアコン】

30度に設定されていた。

 

【電気棒】

物理準備室から盗まれていた。

 

【台車】

台車に血がついていた。

 

【物理室の機械】

室温や湿度、気圧等の実験の条件を作り出す機械。

一度電源を入れると冷却装置が自動で稼働するのだが、冷却装置が動いていないという事は犯行時間中に使われたという線はなさそうだ。

 

【機械の操作方法】

素人が扱って誤作動を起こさないよう、機械に詳しい人間でないと操作できない仕様になっている。

今のところ秋山君、加賀君、目野さん、リカしか知らない。

 

【ロザリオ】

聖蘭さんが大事に握りしめていたもの。

3ーA教室に落ちていた。

 

【清掃時間】

聖蘭さんは毎日決まった時間に教室を掃除していた。

 

 

 


 

 

 

『ヘイヘイヘーイ!!!全員席についたなァ!!!』

 

『それでは、始めましょうか!お待ちかねの学級裁判を!』

 

 

 

《学級裁判 開廷!》

 

 

 

モノクマ『ではまず裁判の簡単な説明をしておきましょう。学級裁判では『仲間を殺した犯人は誰か』について議論をし、その結果はオマエラの投票によって決まります!』

 

モノDJ『もし正解ならクロのみがオシオキ!!不正解ならクロのみが『卒業』、それ以外の全員がオシオキだぜYEAH!!!!』

 

聲伽「ねえ…それ毎回言いよーばってん、必要あると?」

 

モノDJ『なァに言ってんだ愛ガール!オレ達のライブがあってこそ裁判が盛り上がるってもんよ!』

 

聲伽「…ああ、そう」

 

腐和「皆、今回も事件の概要から話し合いましょう」

 

館井「しかし…今回は被害者が二人だぞ。どうするのだ?」

 

腐和「とりあえず、詳細がわかってる聖蘭さんの方が先でいいんじゃない?」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

秋山「今回も俺がファイルを読むね。被害者は《【超高校級の聖母】聖蘭マリア》。死亡推定時刻は《午前11時50分頃》。死体発見場所は《校舎3Fの廊下》」

 

聲伽「うぅ…聖蘭ちゃん…」

 

秋山「死因は《失血死》。首に刃物で刺されたと思われる刺し傷が見られる」

 

加賀「首か…おそらく《頸動脈を刺されて失血死》したのだろうな」

 

目野「そうとは限らないと思いますけどね!」

 

加賀「は?」

 

目野「首の刃物の傷はそう思わせる為の罠なのかもしれませんよ!《別の方法で血を抜いてから》刺したという可能性も考えるべきでは!?」

 

ネロ「何言ってんだこいつ…」

 

うーん、それは違うんじゃないかしらね。

 

 

 

《別の方法で血を抜いてから》⬅︎【リカの検視結果】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「リカの検視結果がある以上、直接の死因は首に刃物を刺された事で間違いないわ」

 

秋山「大体さ、他の方法で血を抜いたんだったら注射痕とかがファイルに書かれるんじゃないかな」

 

目野「はっ!!大変失礼致しました!!」

 

聲伽「けど、聖蘭ちゃんの首ば刺した凶器って何なんやろうね?」

 

腐和「そうね。じゃあ次は凶器について話し合いましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

聲伽「やっぱり《家庭科室の包丁》やなか?」

 

目野「古城さんの《日本刀》かもしれませんよ!」

 

知崎「美術室の《彫刻刀》はー?」

 

ネロ「そもそも傷の形状が違うじゃねえかよバカガキ」

 

加賀「…いや、《厨房の包丁》という線も無くはない」

 

あの人の意見に賛成したい。

 

 

 

《家庭科室の包丁》⬅︎【包丁】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「凶器は家庭科室の包丁で間違いないと思うわ」

 

知崎「えっ、そうなの?」

 

腐和「物理室に血のついた家庭科室の包丁が落ちていたの。それが凶器とみて間違いないわ。それに、包丁が家庭科室から持ち出されたという証拠ならまだあるのよ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【家庭科室の包丁】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「家庭科室から包丁が一本なくなっていたの。おそらく、その包丁を使って聖蘭さんを殺害したんだと思うわ」

 

秋山「じゃあ犯人は家庭科室から持ち出された包丁を使って物理室で聖蘭さんを刺した後、俺達が去って行った後に家庭科室に死体を運び込んだんだね」

 

館井「…むっ、秋山は家庭科室にいたのか?」

 

秋山「ん?うん。食峰君に備品の整理を頼まれたからね。まさか家庭科室の包丁で殺人が起こったとは思わなかったけど…」

 

加賀「だが、包丁が持ち出されていたら普通不審に思うだろう?何故報告してこなかったんだ?」

 

それは…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【秋山君の証言】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「あの包丁、実は食峰君が持ち出したものだったのよ。厨房の包丁の刃が欠けたとかで持ち出したみたい」

 

館井「そうなのか?」

 

秋山「うん。本人に聞いたから間違いないよ」

 

聲伽「じゃあ、犯人は食峰君が持ち出した包丁ば盗んで、聖蘭ちゃんば刺したって事?」

 

腐和「そうなるわね」

 

 

 

加賀「非科学的な妄想だな」

 

《反 論》

 

 

 

加賀「確かに一見筋は通らなくはない…が、その推理には決定的な穴があるぞ」

 

腐和「どういう事?」

 

加賀「ううむ…口で言わないとわからないようだから、俺が論理的かつ合理的に証明してやろう」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

加賀「秋山と食峰は家庭科室の備品を整理していたんだよな?」

 

腐和「ええ、そう聞いてるけど」

 

加賀「そして、食峰が家庭科室から持ち出した包丁を使って誰かが聖蘭を刺したと…だが、もう一つ可能性が考えられるんじゃないか?」

 

腐和「え?」

 

加賀「食峰が嘘をついている可能性だ。そもそも、欠けた包丁を持ち出すだけなら自分の研究室のもので事足りるはずだ。わざわざ厨房から遠い家庭科室から包丁を持ち出したのは、包丁から足がつくのを防ぐためで、本当は持ち出した包丁で《聖蘭を刺殺した》のではないか?」

 

いいえ、食峰君には犯行は不可能だったはずよ!

 

《聖蘭を刺殺した》⬅︎【秋山君と食峰君のアリバイ】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「食峰君には犯行は不可能だったんじゃないかしら?」

 

加賀「何故そう言い切れる?」

 

腐和「食峰君にはアリバイがあるのよ。そうでしょ、秋山君?」

 

秋山「うん。俺は聖蘭さんが殺されている間、家庭科室で食峰君と備品の整理をしていたからね」

 

知崎「えー、でもでもぉ。共犯の可能性だってあるよねぇ?」

 

腐和「モノクマ、共犯したらどうなるのかしら?」

 

モノクマ『別にしてもいいけど、卒業できるのは実行犯だけだよ?』

 

腐和「だそうよ」

 

館井「共犯のメリットはほとんど無し…か」

 

加賀「………」

 

加賀君は、腕を組んでムスッとしている。

自分の考えが外れたから拗ねてるのかしら。

 

目野「じゃあアリバイがある人達を除外していけば犯人に辿り着けますねぇ!」

 

秋山「聖蘭さんが殺されたのは12時前だったから、その時間にアリバイがあった人というと…」

 

目野「私は技術室に溶接機を取りに行った時に館井さんと会いましたよ!あと、その帰りに図書室に行く秋山さんを見ましたね!」

 

知崎「ボクはマナちゃんとずっと一緒にいたよ〜!知ってる?」

 

腐和「私は古城さんの部屋の様子を見に行っていたわ。それまでネロと一緒に探索してたんだけど、その5分間だけは一緒にいなかったわね。でも流石に5分で聖蘭さんを刺して戻ってくるのは無理だろうし、ネロもアリバイがあると言っていいんじゃないかしら?」

 

ネロ「となると、怪しいのは……」

 

 

 

《人物指定》

 

 

 

腐和緋色

 

聲伽愛

 

玉越翼

 

小鳥遊由

 

知崎蓮

 

食峰満

 

越目粧太

 

聖蘭マリア

 

古城いろは

 

加賀久遠

 

目野美香子

 

館井建次郎

 

秋山楽斗

 

響歌音

 

ネロ・ヴィアラッテア

 

闇内忍

 

リカ

 

 

 

 

 

➡︎加賀久遠

 

 

 

腐和「加賀君、あなただけアリバイが無いわよね?」

 

加賀「………」

 

リカ『それは違いマス!ちちはアテクシのメンテナンスをしていて…』

 

腐和「でもメンテナンス中は電源を切っていたのでしょう?あなたが加賀君を見ていたわけじゃないのよね?」

 

リカ『そ、それは…』

 

館井「そういえば、加賀はやたらと食峰を犯人にしたがっていたな」

 

聲伽「うもう言えんっちゃけど、加賀君て何かこんゲームば楽しんどーごとも見えるしね」

 

食峰「そ、それによ。犯行現場は厳密には物理室だったんだろ?物理室に頻繁に出入りする奴っつったらよ…」

 

リカ『それだけでちちを疑うなんて酷いデス!』

 

知崎「じゃあリカちゃんは、久遠おにいが犯人じゃないって証明できんの?今ここで証明してよ!ハイスペバーチャルアシスタントなんでしょ?」

 

リカ『………オペレーティングシステムに重篤な欠陥がみられた為、主電源をオフにしマス』

 

ネロ「うわっ、こいつ都合悪くなったからって逃げやがったぞ」

 

聲伽「悪か意味でも人間臭かね」

 

知崎「でもこれでハッキリしたよねぇ?仮にリカちゃんと久遠おにいのアリバイがあったとしても、リカちゃんが久遠おにいを庇って共犯になる可能性があるんだから、そもそもアリバイなんて成立しないんじゃん!」

 

ネロ「言えてんな」

 

加賀「……馬鹿馬鹿しい」

 

腐和「加賀君?」

 

加賀「確かに俺にアリバイが無いのは事実だし、物理室に頻繁に出入りするのも事実だが、それだけで犯人と疑われるのはいただけないな」

 

館井「……往生際が悪いぞ貴様」

 

加賀「往生際も何も、俺が犯人じゃない事くらい、俺自身が一番よくわかってるからな。俺が犯人じゃない証拠ならリカをメンテナンスした時にデータとして残っているからいくらでも提出してやるが、どうせ捏造を疑われるだろうし、まずは他の可能性を模索するのが先決なんじゃないか?」

 

ネロ「チッ、何でてめぇが仕切ってんだ」

 

腐和「でも一理あるわよ?」

 

ネロ「は?」

 

腐和「犯人は、もしかしたら加賀君を犯人にする為にわざと物理室で聖蘭さんを殺してから家庭科室に運び込んだのかもしれないしね。一度事件の概要を整理した方がいいんじゃない?」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

秋山「まず、聖蘭さんがどうやって物理室で殺されたのか明らかにしないとね」

 

知崎「でも何でマリアおねえは物理室にいたんだろうねぇ?」

 

館井「…普通に《犯人が呼び出した》んじゃないのか?」

 

聲伽「それで《物理室に行った挙句》、抵抗も虚しく物理室で殺されちゃったんやなぁ…」

 

ちょっと待って、今の発言おかしくなかった?

 

 

 

《物理室に行った挙句》⬅︎【ロザリオ】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「少なくとも聖蘭さんは、自分の足で物理室に行ったわけじゃないと思うの」

 

知崎「えー、そうなの?」

 

腐和「3ーAの教室に彼女のロザリオが落ちていたの。毎日肌身離さずロザリオを持ち歩いていた彼女が、ロザリオを教室に放置したまま物理室に行くなんて考えられないわ」

 

秋山「大体、あの時の聖蘭さんは人に呼び出されて素直についていくような精神状態じゃなかっただろうしね」

 

リカ『つまり、聖蘭サンは、教室で何者かに襲われて無理矢理物理室に連れ込まれたと、こういう事デスか?』

 

腐和「恐らくね。争った形跡も無かったし、多分速やかに意識を奪われてから物理室に運ばれたんじゃないかしら?」

 

加賀「でもそれはおかしくないか?」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

加賀「どうして犯人はピンポイントで《聖蘭を狙って気絶させる》事ができたんだ?」

 

聲伽「あっ、確かに…聖蘭ちゃんば《教室に呼び出したわけやなか》やけんね」

 

目野「そういえばそうですね!!どうして犯人は聖蘭さんが教室にいるって知ってたんでしょうかね!?」

 

加賀「奇襲をかけるなら普通、本人がいる可能性が高いであろう個室か研究室に行くはずだ。まさか《当てずっぽうで行ったらたまたまいた》なんて言うんじゃないだろうな?」

 

いいえ、犯人は聖蘭さんが教室にいる事を知っていたはずよ!

 

 

 

《当てずっぽうで行ったらたまたまいた》⬅︎【清掃時間】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「聖蘭さんは、毎日決まった時間に教室に掃除をしに来るの。犯人はそこを狙ったんじゃないかしら?」

 

加賀「む……なるほどな。あいつ、律儀に毎日掃除なんてしていたのか」

 

腐和「でもこれで加賀君が犯人の可能性は限りなく低くなったわね。聖蘭さんの清掃時間を知らなかった加賀君には犯行は不可能だもの」

 

食峰「けどよ、逆に何で久遠はその事知らなかったんだ?」

 

加賀「興味無いからな。メンバー一人一人のスケジュールなんかいちいち把握してられるか」

 

秋山「まあ、それは置いといて次の議論に移らない?聖蘭さんの意識を奪った凶器とか」

 

目野「聖蘭さんはどうやって意識を奪われたんでしょうかね!?」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

食峰「《素手》でトン!とかか!?」

 

秋山「漫画じゃないんだからさ…」

 

目野「《砲丸》で殴ったんでしょうきっと!」

 

ネロ「んなもんで殴ったら気絶じゃ済まねえだろ」

 

リカ『軽度の《電気ショック》を与えたのではありマセんか?』

 

あの人の意見に賛成したい。

 

 

 

《電気ショック》⬅︎【電気棒】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「おそらく、物理室から持ち出された電気棒で電気ショックを与えたんだと思うわ」

 

目野「そうだったのですね!」

 

知崎「電気棒って防犯グッズでしょ?防犯グッズで殺人が起こるなんて、おっかしいね!」

 

聲伽「何もおかしくなか!」

 

秋山「んんと…じゃあ今までの話を総合すると、聖蘭さんは教室を掃除している最中に奇襲を受けて、物理室に運び込まれたと?」

 

腐和「そうなるわね」

 

館井「加賀が犯人ではないとすると…犯人が物理室の外にいた時に聖蘭が死んだという事になるが…犯人はどうやって聖蘭を殺したのだ?」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

知崎「はいはーい!《物理室の機械》を使ってマリアおねえをブチ殺したんだと思いまーす!」

 

聲伽「て、適当すぎるんやなか…?」

 

知崎「だってそうとしか考えられないんだもん!物理室の機械を使えば《アリバイもクソもない》じゃん!」

 

目野「どういう事です!?」

 

知崎「だってさぁ、《物理室の機械を動かすくらい誰にでもできる》よねえ?犯人は、物理室の機械を使ってマリアおねえを殺して、久遠おにいを犯人にしようとしたんだー」

 

待って、今おかしな発言があったわよね?

 

 

 

《物理室の機械を動かすくらい誰にでもできる》⬅︎【機械の操作方法】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「あの機械、素人が扱って誤作動を起こさないようにわざと複雑な設計にしてあるのよ。よほど機械に詳しい人じゃないと動かせないと思うわ」

 

目野「私と秋山さんは、事件後もちゃんとアリバイがあるので犯人の可能性は低いですよね!?ね!?」

 

秋山「うん…加賀君が犯人じゃないならリカちゃんのメンテナンスの話も本当だろうし、物理室の機械が使われた線は無くなるわけか」

 

館井「じゃあ物理室の機械は使われていないという事でいいのか?」

 

腐和「おそらくね」

 

 

 

ネロ「出直して来い、バンビーナ」

 

《反 論》

 

 

 

ネロ「それだけで物理室の機械が使われてないって判断すんのは早計じゃねえのか?」

 

腐和「でも物理室の機械が使われた可能性があるとは思えないわ」

 

ネロ「それが甘えっつってんだ。もっと慎重に考えねえと足を掬われるぜ?お嬢ちゃん」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

ネロ「仮にあの機械が素人に扱えるようなものじゃなかったとして、使えるくせに黙ってる奴がいるかもしれねえだろ?自己申告した奴等のアリバイを証明しただけじゃ、意味無えんじゃねえのか?それに、ガクトかミカコが隙を見て操作したって線もまだ消えたわけじゃねえしな」

 

腐和「そうかもしれないけど、でもやっぱり機械が使われたとは考えられないわ」

 

ネロ「何故そう言い切れる?あの機械を使えば、殺人から証拠隠滅まで何でもできちまうだろうが。《使った後で電源を切っちまえば》、使った痕跡すら残らねえしな」

 

いいえ、それは絶対にあり得ないわ!

 

《使った後で電源を切っちまえば》⬅︎【物理室の機械】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「あのね、あの機械、一度作動すると自動的に冷却装置が作動するのよ。冷却装置は一度作動すると5時間くらい稼働したままだから、殺人にあの機械が使われたんだとしたら、冷却装置が稼働したままになってるはずなのよ」

 

目野「ちなみに本体の電源を切ってもベリィィィクゥゥゥウウウルな冷却装置ちゃんは稼働したままなので、証拠隠滅は不可能かと!」

 

ネロ「なるほどね。じゃあ犯人の野郎はどうやってマリアを刺し殺したんだ?」

 

腐和「その方法なんだけど…心当たりがあるわ。まず、犯人はあるものを使って血が床に広がるのを防いだの」

 

聲伽「あるもの…?」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【ブルーシート】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「まず犯人は、気絶した聖蘭さんをブルーシートの上に寝かせておいたの。そして、時間が経つと自動的に聖蘭さんの首に包丁が刺さる仕掛けを作っておいて、部屋から退出してアリバイを作ったのよ」

 

聲伽「仕掛けって…?」

 

目野「一体どんな仕掛けなんでしょうかねえ!?」

 

腐和「それについては、証拠になりそうなものを見つけたわ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【ブルーシートの水滴】【エアコン】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「ブルーシートの上の水滴とエアコン、あれが今回のトリックを暴くヒントよ」

 

秋山「あっ、あれか。血じゃない水滴が付いてるのが何か変だと思ったんだよな…」

 

目野「それにあの物理室、普段は寒いくらいなのに今日だけやけに暑いと思ったんですよね!」

 

館井「その水滴やエアコンとトリックがどう関係しているというのだ?」

 

腐和「犯人は、包丁にある仕掛けをしたのよ」

 

考えろ…!

犯人が聖蘭さんを刺した方法を…!

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

コ オ リ デ テ ン ジ ョ ウ ニ コ テ イ シ タ

 

 

 

【氷で天井に固定した】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「まず犯人は、純水の入った容器に包丁を立てて入れて冷凍庫に放り込んだの。そのまま凍るまで放置して、氷と包丁を容器から取り出し、何らかの方法で聖蘭さんの真上の天井に氷を固定しておいた。そのまま物理室を退出し、アリバイ工作をするため移動した。その間に室温で天井の氷が溶けて、ちょうど聖蘭さんの首の上に包丁が落下する。アリバイ工作をする為に一緒にいた人と別行動を取った後、すぐに物理室に戻ってエアコンの設定温度を上げて残りの氷を全部溶かし切った。これで無人の殺人トリックは完成よ」

 

聲伽「な、なるほど…」

 

食峰「それは思いつかなかったぜ!!」

 

腐和「ついでに物理室から家庭科室に遺体を運び込んだ方法だけど、これも物理室のものを使ったのよ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【台車】【タイヤ跡】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「物理室と家庭科室を繋ぐ廊下にタイヤ跡があったの。タイヤ跡は、恐らく物理準備室にあった台車を使った事でついたものよ」

 

館井「……台車か。気付かなかったな」

 

食峰「けどよ、台車は元の場所に戻してあったんだろ?よく気付けたなぁ」

 

腐和「あの台車には血がついてたらしいからね。それに、タイヤ跡を見てピンときたのよ」

 

知崎「えーでもでもぉ!結局犯人には辿り着いてないよねぇ?」

 

腐和「……いいえ。一人だけ心当たりがあるわ」

 

一人だけいる。

このトリックを成立させる事ができた人物が。

そしてその人物は今、明らかに不用意な発言をした!

その人物は…

 

 

 

《人物指定》

 

 

 

腐和緋色

 

聲伽愛

 

玉越翼

 

小鳥遊由

 

知崎蓮

 

食峰満

 

越目粧太

 

聖蘭マリア

 

古城いろは

 

加賀久遠

 

目野美香子

 

館井建次郎

 

秋山楽斗

 

響歌音

 

ネロ・ヴィアラッテア

 

闇内忍

 

リカ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎食峰満

 

 

 

腐和「あなたよ、食峰君」

 

食峰「………ん?んん!?おっ、オレェ!?」

 

腐和「食に精通しているあなたなら、氷が溶ける時間を計算して包丁を仕込む事も容易いんじゃないかしら?」

 

食峰「そっ、それだけで犯人にされたんじゃあ…」

 

腐和「それだけじゃないわ。私は台車が元の場所に戻してあっただなんて言ってないのに、どうして物理室の探索をしてないあなたがそれを知ってたの?」

 

加賀「『よく気付けたな』って発言も、捉えようによっては犯人だからこそ出てきた上から目線の発言ととることもできるしな。やっぱり厨房に包丁を持ち込んだというのは嘘で、その包丁で聖蘭を刺したと……ほらみろ、俺の推理が正しかったんじゃないか」

 

すごく引きずるわね…

 

腐和「ごめんって。でもこれで聖蘭さんを殺した犯人に辿り着けたじゃない」

 

食峰「お、オレは犯人じゃねえ!!大体、オレにはマリアを殺してねえって証拠があんじゃねえか!!」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

食峰「死体発見アナウンスだよ!緋色だって聴いただろ!?《オレ達が一緒にいる時に死体発見アナウンスが鳴った》のをよ!」

 

知崎「あー、そういえばそうだったね!」

 

加賀「ははっ、うまい事誤魔化して自白に持っていこうとしたんだが…無駄だったか」

 

リカ『確かに、食峰クンが犯人なら、死体発見アナウンスが鳴るのはおかしいデスね。《死体発見アナウンスに犯人は含まれマセんから!》』

 

食峰「そうだ!《オレと緋色と蓮がマリアを発見したのと同時にアナウンスが鳴った》んだから、オレは犯人じゃねえだろうがぁ!!」

 

いえ…それはどうなのかしらね。

 

 

 

《オレと緋色と蓮がマリアを発見したのと同時にアナウンスが鳴った》⬅︎【死体発見アナウンス】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「死体発見アナウンスは、厳密には私達が聖蘭さんを発見したのと同時じゃなかったわよ」

 

食峰「…は?」

 

腐和「思い出して。死体発見アナウンスが鳴る前に、銃声が鳴ったでしょ?」

 

知崎「あー確かに!何故か死体発見アナウンスが鳴るのがワンテンポ遅かったよね!何でだろうねぇ?知ってる?」

 

食峰「そっ、そんなの、たまたま鳴るのがちょっと遅かっただけかもしれねえだろーが!!そんなんでオレを犯人にするんじゃねえ!!」

 

腐和「いいえ。それは違うわ。それを証明する証拠もあるの」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【加賀君の証言】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「確か私が闇内君を発見した時にアナウンスが鳴ったのよね?」

 

食峰「それがどうしたんだよ!」

 

腐和「…でもね。それって実は加賀君が家庭科室に駆けつけた瞬間でもあるのよ」

 

目野「ん!?どういう事です!?」

 

秋山「…なるほどね。そういう事か」

 

腐和「そうよ。私達が最初に聞いたアナウンスは、私達が聖蘭さんを発見した時に鳴ったアナウンスじゃなくて、秋山君達3人が闇内君を発見した時に鳴ったアナウンスだったのよ!」

 

ネロ「…確かに、俺達は銃声を聞きつけて指導室でシノブを発見して、その直後にアナウンスが鳴ってたしな」

 

腐和「そして加賀君が家庭科室に到着すると同時に私が指導室に来てしまったから、それを闇内君を発見した時の死体発見アナウンスだと勘違いしてしまった…こういう事なんじゃない?」

 

館井「……しかし、死体発見アナウンスを聞き間違えたりなんかするものなのか?」

 

腐和「それについては心当たりがあるわ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【モノクマファイル③】【モノクマファイル④】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「モノクマファイルをよく見て。死体発見場所は、どちらも『校舎3F廊下』って表記されてるの。アナウンスの時に鳴る死体発見場所が同じなら、ほぼ同時に鳴った死体発見アナウンスを聞き間違えても不思議じゃないわ」

 

ネロ「なるほどな。じゃあクオンが来た時点でアナウンスが鳴っていて、お前とレンが犯人じゃないのは確定だから、ミツルが犯人なのは確定と…こういう事か?」

 

腐和「そういう事でしょうね」

 

 

 

「その言葉、掻っ捌いてやるぜ!!」

 

《反 論》

 

 

 

食峰「緋色!それはおかしいぜ!」

 

腐和「まだ何か反論があるっていうの?」

 

食峰「当たり前だろーが!!そんな確証のないデタラメで犯人にされたんじゃ、たまったもんじゃねーからな!!」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

食峰「最初に鳴ったのは、オレ達がマリアを発見した時に鳴ったアナウンスだ!オレは犯人じゃねえ!!」

 

腐和「じゃああのタイムラグは何だったっていうの?銃声が鳴った後でアナウンスが鳴るなんておかしいわよね?」

 

食峰「だから、たまたま遅れて鳴っただけだっつってんだろうが!!お前が忍を見たのと久遠がマリアを見たのはほぼ同時だったんだから、証明のしようがねえじゃねえか!!」

 

腐和「裏を返せばあなたの無実を証明する証拠にもならないって事にもなるけれどね」

 

食峰「それが何だってんだ!!大体、マリアの死体があったのは家庭科室だろ!?《死体発見場所が廊下なのはおかしい》じゃねえか!!」

 

腐和「でもモノクマファイルにはそう書いてあるのよ」

 

食峰「学園長のでっちあげかもしれねえだろうがああああ!!!」

 

滅茶苦茶ね…

あの証拠でトドメを刺してあげた方がいいんじゃないかしら?

 

《死体発見場所が廊下なのはおかしい》⬅︎【死体発見場所】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「何もおかしい事はないわ。死体発見場所は、第一発見者が死体を発見した時にいた場所の事だからね」

 

食峰「……は?」

 

秋山「確かに…1回目と2回目の時は第一発見者が被害者の近くにいたけど、今回は俺達は廊下で闇内君を発見してるからね」

 

腐和「でもこれでハッキリしたわね。今回は聖蘭さんを発見した私も、闇内君を発見した秋山君も廊下にいたから、死体発見アナウンスを間違えてしまったのね」

 

リカ『なるほど……』

 

聲伽「そんな…すらごとばい!あげん聖蘭ちゃんの事好いとった食峰くんが、なして…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知崎「それは満おにいが【超高校級の殺人鬼】だからでしょ?」

 

 

 

 

 

聲伽「……え?」

 

知崎「満おにいの『好き』は、特殊性癖的な意味での『好き』だったんじゃない?だからマリアおねえをターゲットにして殺したんだよ!」

 

目野「はっ、はぎゃああああ!!?そ、そうだったのですか!?」

 

聲伽「あり得んばい!!そんな、食峰くんが殺人鬼だなんて…うち、信じんけん!!」

 

食峰「お、オメェ…!何で…」

 

知崎「んん?その『何で』は『何で知ってるんだ』って意味でいいのかにゃ?それは風の噂だよ〜」

 

腐和「………」

 

知崎「でもボクも自分が知ってる情報言っただけで、何も確証があるわけじゃないからねー。ねえねえ、緋色ちゃん!今回の犯行が殺人鬼の仕業だっていう証拠、何か無いのかな?」

 

今回の犯行が殺人鬼の仕業だっていう証拠…

それって……

 

 

 

コトダマ提示!

 

【ジャック・ザ・リッパーの犯行手口】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「ジャックの被害者はいずれも10歳未満の子供か、10〜40代の女性。死因は首を刃物で切られた事による失血死。そして聖蘭さんは、首を刃物で刺されて失血死している…これってジャックの犯行手口と一致してるわよね?」

 

知崎「そうだよ!マリアおねえも失血死してるから、ジャック・ザ・リッパーに殺されたんじゃないのかなぁ?」

 

目野「でも首は切られてませんよね!」

 

リカ『それは切断する余裕が無かったと考えれば説明がつくのではありマセんか?腐和サン達がアテクシ達に召集をかけたのは、聖蘭サンが殺されてから僅か20分後デスから』

 

館井「それがわかったとして…ジャックの動機は?」

 

腐和「それについては心当たりがあるの」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【被害者の共通点】【被害者の遺体の状態】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「ジャック・ザ・リッパーの被害者にはね。過度な肉体労働を必要とする職業や部活に所属していた人が一人もいなかったの。職業の男女格差が無くなりつつあるこのご時世で、わざわざ運動をしない女性だけを狙って殺してるのよ」

 

秋山「あっ…そういえば聖蘭さんも確か部活はコーラス部だって言ってたな…」

 

腐和「そして、被害者は首だけは見つかっているにもかかわらず、胴体はいくら捜索しても見つからなかった…ここまで言えば、勘のいい人ならわかるんじゃないかしら?」

 

秋山「まさか……」

 

ネロ「……そういう事かよ」

 

運動不足の女性や子供だけを狙った犯行…

見つからない胴体…

そして、失血死…

これらの事実から導き出される、ジャック・ザ・リッパーの動機は…

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

タ べ ル タ メ ニ コ ロ シ タ

 

 

 

【食べる為に殺した】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「ジャック・ザ・リッパーの殺人の目的…それは、()()()()()()()()だったのよ!」

 

聲伽「………えっ?」

 

目野「はぎゃああああ!!?ど、どういう事です!?」

 

腐和「被害者の胴体が見つかるわけがないのよ。だって、もう既に食べられちゃってるんだから。運動不足の女性や子供だけを狙って殺していたのは、運動しすぎると筋肉がついて肉が硬くなるからでしょうね」

 

秋山「な、なるほど…」

 

腐和「ついでに言うと、犯人が聖蘭さんを食べる為に殺したっていう根拠ならまだあるわよ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【聖蘭さんの遺体】【ホースの水】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「聖蘭さんは、衣服を全て剥ぎ取られた上にホースで水をかけられていたの。おそらく、これから食肉として加工する為の下処理だったんじゃないかしら?」

 

ネロ「なるほどな。ミツルが本当にジャック・ザ・リッパーなら、マリアの事を『好き』って言ってたのは『好物』って意味だったのか」

 

目野「私達の事をずっとそういう目で見ていたのですか!ドン引きですね!」

 

加賀「俺が言うのも何だが狂ってるな」

 

食峰「ふ、ふざけんな!!」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

食峰「オレがマリアを食う為に殺しただと!?《冗談も大概にしろ》!!」

 

知崎「でも状況的に《そうとしか考えられない》よねぇ?」

 

リカ『《衣服も全て脱がされている》わけデスしね』

 

食峰「それが何だっつーんだよ!ア、アレだ!真犯人が《証拠隠滅のために脱がせて》、オレに罪を被せようとしてんじゃねえのか!?とにかくオレは犯人じゃねえ!」

 

うーん…それはちょっと違うんじゃないかしらね。

 

 

 

《証拠隠滅のために脱がせて》⬅︎【聖蘭さんの服】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「証拠隠滅の為に服を…ね。でもそれっておかしくないかしら?だって、洗濯機には聖蘭さんの衣服が全部入ってたのよ?」

 

食峰「そ、それがどうしたんだよ!」

 

腐和「証拠隠滅がしたいなら、洗濯機じゃなくて焼却炉に放り込むはずでしょ?それに、証拠隠滅がしたいだけなら脱がせるのは上のドレスだけでいいじゃない。ただでさえ聖蘭さんは脱がすのが難しいドレスを着ていたのに、証拠隠滅の為だけにいちいち全部服を脱がせる余裕なんてあったのかしらね」

 

秋山「大体、服を脱がせるんだったらわざわざ水をかけたりする必要も無いしね」

 

腐和「ああ、先に言っておくけど、真犯人が死姦する為に殺しただなんてふざけた事を言うのはナシよ?その可能性がない事はリカが証明してくれてるし。一応、この事件の概要を振り返っておくわね」

 

 

 

聖蘭を殺した犯人は?

 

1.加賀久遠

2.食峰満

3.闇内忍

 

➡︎2.食峰満

 

 

 

食峰の正体は?

 

1.【超高校級の殺人鬼】

2.内通者

3.黒幕

 

➡︎1.【超高校級の殺人鬼】

 

 

 

聖蘭を殺した目的は?

 

1.復讐

2.外に出る為

3.食べる為

 

➡︎3.食べる為

 

 

 

一度気絶させた理由は?

 

1.暴れるのを防ぐ為

2.口封じ

3.気まぐれ

 

➡︎1.暴れるのを防ぐ為

 

 

 

首を刺した理由は?

 

1.狙いやすかったから

2.気まぐれ

3.血抜き

 

➡︎3.血抜き

 

 

 

水で洗い流した目的は?

 

1.証拠隠滅

2.加工の下処理

3.お清め

 

➡︎2.加工の下処理

 

《COMPLETE!!》

 

 

 

腐和「わかったわ!」

 

聲伽「ほんと!?」

 

腐和「ええ。食峰君がわざわざ聖蘭さんを気絶させてから刺したのは、暴れるのを防ぐ為だったの。そして首を刺して殺したのは、血抜きをする為だったのよ」

 

秋山「あっ……聞いた事ある。屠畜をする時は動物の頚動脈を切って放血させるんだけど、あまりにも暴れる時はスタンガンで大人しくさせる事もあるんだ。今回の状況ってまさにそれだよね」

 

腐和「ええ。服を全て脱がして水で流したのは、身体についた汚れや血を洗い流す為で、おそらくこの後聖蘭さんを解体する予定だったのでしょうね」

 

知崎「にゃぱぱぱ〜!これで決まりだね!満おにいはジャック・ザ・リッパーで、マリアおねえを食べる為に殺したんだぁー!」

 

聲伽「そんな…嘘やろ…!?」

 

食峰「……は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食峰「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目野「ひっ、ひぃいいいい!!!?」

 

聲伽「しょ、食峰…くん…!?」

 

食峰君の、狂気的な笑い声。

それは今までの彼のイメージを覆すような笑い方だった。

 

 

 

食峰「あーあ!!バレちまったらしょうがねえなあ!!そうさ、オレがマリアを殺した殺人鬼だよ!!」

 

そう言って食峰君は、両手で包丁を持って不気味に笑ってみせた。

 

腐和「正直意外だったわ。やけにあっさり認めるのね」

 

食峰「まあマリアの件についてはもうバレちまったからなぁ。これ以上足掻いてもどうせ言い逃れできねえだろうし?だがなぁ!!オレが認めたのはあくまで、オレが【超高校級の殺人鬼】で、マリアを殺したって事実だけだ!!オレは忍の事は殺してねえんだよ!!」

 

加賀「往生際が悪いな」

 

食峰「往生際も何も、オレは忍を殺してねえからなぁ!忍を殺した犯人がわからねえんじゃ、投票はできねぇんじゃねえのか!?」

 

確かに、闇内君の事件に関しては何も解決していない。

ここで闇内君を殺した犯人を暴かなきゃ、私達が死ぬだけだ。

絶対に真実を解き明かしてやる…!

 

 

 

《学級裁判 中断!》

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り11名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

以上6名

 

 

 

 

 



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非日常編③(学級裁判後編)

 

《学級裁判 再開!》

 

腐和「どのみち、闇内君の事件を明らかにしないと投票には移れないわよね」

 

食峰「アヒャヒャヒャ!!そりゃあそうだよなァ!?だってオレは忍を殺してねえんだもんよぉ!?」

 

知崎「あーあ、結局そうきちゃったか。このまま投票に移れると思ったんだけど、そうはいかないねえ」

 

腐和「ええ。確かに彼は不愉快だけど、言ってる事は一理あるわ。闇内君の事件について、真相を明らかにしましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

食峰「忍を殺した犯人なら決まってんだろ!?さっきからずっと議論を仕切ってる《緋色》だよ!」

 

聲伽「嘘!《緋色ちゃんがそげん事するわけなか》!」

 

食峰「どうだかな。緋色は《【超高校級の警察官】なんだぜ》?銃で忍を殺す事くらいできんだろ」

 

秋山「銃を使ったら犯人が絞られちゃうのに、《何で銃を使ったの》?」

 

食峰「知るかそんなの!!忍の身体には《銃創》があったんだろ!?じゃあ犯人は緋色で決まりじゃねえか!」

 

今の発言はおかしいわ!

 

 

 

《銃創》⬅︎【闇内君の腹部の穴】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「闇内君の腹部の穴は銃創じゃないわ。そうでしょ、加賀君?」

 

加賀「ああ。銃創だったら銃弾が見つかってるはずだしな」

 

館井「では結局、その穴は何で開けられたものだったんだ?」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

知崎「わかった《吹き矢》だー」

 

目野「《ナイフ》とかはどうでしょう!?」

 

加賀「どう見てもナイフの傷ではなかったぞ」

 

リカ『《アイスピック》…ではありマセんよね』

 

秋山「《電動ドリル》とかは?あれなら穴を開けられそうだけど」

 

あの人の意見に賛成したい。

 

 

 

《電動ドリル》⬅︎【電動ドリル】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「闇内君の腹部の穴は、電動ドリルで開けられたものだと思うわ」

 

リカ『なるほど…』

 

食峰「だったら何だ!?銃が使われてねぇって証明にはならねえじゃねえか!」

 

ネロ「しつけぇな」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

食峰「確かに穴は電動ドリルで開けられたものかもしれねえけどよ!《別の可能性》だって考えられるぜ!」

 

秋山「別の可能性?」

 

食峰「緋色が忍を《拳銃で撃ち殺してから》、証拠隠滅の為に銃弾を身体から取り除いてドリルで穴を拡げたって可能性だよ!」

 

リカ『何故わざわざそのような回りくどい事をする必要があったのデショウ?それなら初めから《銃を使わなければいい》だけの話では?』

 

食峰「《忍を確実に殺す為に咄嗟に抜いた》のかもしれねえじゃねえか!」

 

いいえ、それはあり得ないわ!

 

 

 

《拳銃で撃ち殺してから》⬅︎【ネロと私の愛銃】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「残念だけどそれは通らないわよ」

 

知崎「えー、何で何で?」

 

腐和「私の拳銃は口径9mmのニューナンブM60。弾丸に対して腹部の穴が小さいのよ」

 

知崎「ふーん」

 

ネロ「ちなみに俺の拳銃でもねえぞ」

 

秋山「じゃあ銃は使われてなかったって方向で…」

 

 

 

目野「前時代的な脳味噌を一から改造してあげます!!」

 

《反 論》

 

 

 

目野「確かに拳銃が使われた可能性は無いとしましょう!ですが他の可能性がまだあるんじゃないですか!?」

 

腐和「他の可能性?」

 

目野「ええ!腐和サァンの推理がどうしても納得できないので、私が証明してあげます!!」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

目野「拳銃が使われていないのは、穴のサイズに対して弾丸が大きいので間違いないでしょう!ですが、何もこの場で射殺するのに使えたのは拳銃だけじゃなかったんじゃありませんか!?」

 

腐和「…もしかして、射撃場の銃を使ったっていうの?」

 

目野「ええそうです!!射撃場には、あの穴より小さい弾丸を打ち込めるライフルがあったでしょう!?」

 

腐和「確かに、射撃場の本物の銃の置き場からライフルが一丁無くなってはいたけど…」

 

目野「ほら見なさい!!やっぱり《射撃場の銃で闇内さんを射殺して》、体内から銃弾を取り除いて電動ドリルちゃんで穴を広げたのです!」

 

いいえ、射撃場の銃を使う事はできなかったはずよ!

 

《射撃場の銃で闇内さんを射殺して》⬅︎【実弾の箱】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「それはあり得ないわ。だって、実弾の箱の鍵は私が管理していたのよ?銃弾は減っていなかったし、実弾が使われたとは思えないわ」

 

目野「でもそれってあなたの感想ですよねえ!?」

 

ネロ「いや、弾丸が減ってないのは俺も確認済みだ」

 

目野「では無くなってたライフルとやらは一体何だったというのです!?本物の銃の置き場から無くなっていたんですよね!?」

 

腐和「それについては心当たりがあるわ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【銃置き場の銃】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「実は、銃置き場の銃が本物とエアガンとで入れ替わっていたの。つまり、無くなったのはエアガンだったのよ」

 

目野「そうだったんですね!!いやあ失敬しました!!」

 

秋山「じゃあ次は本当の死因について考えるべきなのかな?」

 

腐和「そうね。じゃあ次は死因について考えてみましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

館井「普通に腹部に穴を開けられた事による《失血死》ではないのか?」

 

秋山「でもそうだとすると、どうしてモノクマファイルに死因が書かれてなかったのかな?」

 

目野「やっぱり《銃殺》だったという線は本当にありませんかね!?」

 

ネロ「さっき銃殺は無えって話になったじゃねえかバカガキ」

 

聲伽「《毒殺》…とかはなかね?」

 

あの人の意見に賛成したい。

 

 

 

《毒殺》⬅︎【テトロドトキシン】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「多分、死因は毒殺だと思うわ。闇内君の体内からテトロドトキシンが検出されたの」

 

聲伽「あ、当てずっぽうで言うたら当たった…」

 

食峰「はあ!?毒殺!?うんなわけねーだろ!!」

 

館井「確かに…にわかに信じがたいな」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

食峰「忍の死因が《毒な訳ねーだろ》!!」

 

腐和「どうしてそう言い切れるの?」

 

食峰「決まってんだろ!忍は忍者だから毒に耐性があるんだぜ!?《毒を喰らっても効かねえ》んじゃねえのか!?」

 

加賀「《テトロドトキシンは青酸カリの千倍以上ともいわれる猛毒》だぞ?効かないなんて事あり得るのか?」

 

館井「だが、闇内はどんな依頼をも成し遂げてきたプロだ。《可能性は無くはない》」

 

食峰「そうだぜ!!やっぱり《毒殺以外の死因》なんじゃねえの!?」

 

ネロ「しれっと議論に参加してんなこいつ……」

 

待って、今気になる発言が無かった?

 

 

 

《毒を喰らっても効かねえ》⬅︎ 【闇内君の毒物耐性】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「毒殺の可能性は十分にあるわよ」

 

食峰「何でだ!!?」

 

腐和「確かに闇内君は経口摂取した毒には耐性があったかもしれないけど、血管に直接入り込んだ毒に耐性があったかはわからないんじゃない?」

 

加賀「闇内がどの程度毒に耐性があったのかは知らんが…テトロドトキシンが血管に直接入ったら、流石に生還する事は難しかっただろうな」

 

秋山「じゃあ犯人は、何らかの方法で闇内の血管に毒を直接入れて殺した可能性が高いって事かな?」

 

腐和「ええ。おそらく犯人はあるものを使ったのでしょうね」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【ミシン針】【エアガン】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「犯人は、ミシン針で作った毒針をエアガンで撃ち込んで闇内君を毒殺したのよ」

 

目野「どういう事です!?」

 

腐和「つまりこういう事よ。まず、射撃場からエアガンとペイント弾を盗んで、ペイント弾の中に毒を仕込む。そしてペイント弾にミシン針を取り付ける。そのまま闇内君を撃てば、ミシン針でできた傷口にペイント弾の中の毒が流れ込んで身体に毒が回る。闇内君の死亡を確認した後、闇内君の遺体から毒針を回収し、ちょうど毒針が刺さっていた場所に電動ドリルで穴を開ける。そうやって本物の銃を使った犯行に見せかけたのよ」

 

聲伽「な、なるほど…あれ?でもそれやと犯人わかっちゃわん?」

 

腐和「ええ。一人だけこのトリックを実行できた人がいるわ」

 

 

 

《人物指定》

 

 

 

腐和緋色

 

聲伽愛

 

玉越翼

 

小鳥遊由

 

知崎蓮

 

食峰満

 

越目粧太

 

聖蘭マリア

 

古城いろは

 

加賀久遠

 

目野美香子

 

館井建次郎

 

秋山楽斗

 

響歌音

 

ネロ・ヴィアラッテア

 

闇内忍

 

リカ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎食峰満

 

 

 

腐和「あなたよ、食峰君」

 

食峰「ははっ、そう来ると思ってたぜ緋色!!一応理由を聞かせてもらおうか!?」

 

腐和「このトリックは、銃と毒を使ったトリックだった。私とネロ以外で銃の扱いに長けてるのはあなただけよ」

 

食峰「それだけで犯人にされたんじゃたまったもんじゃねえなあ!!オレは犯人じゃねえっつってんだろうが!!」

 

ネロ「いや、この反応はもうこいつが犯人なんだろうよ」

 

知崎「にゃはは、じゃあもう投票に移っちゃっていいかな?」

 

秋山「ちょっと待って。投票はまだ早いよ」

 

腐和「ええ。まだトリックもわかってないわ」

 

館井「………意見が分かれたな」

 

モノDJ『ヘイYOU!今意見が割れたっつったのかァン!?そんな時はオレ様達の出番なんじゃねぇのかなぁ!?』

 

モノクマ『うぷぷぷぷ、今回も変形裁判所の出番ですね!それでは早速始めましょう!レッツ変形!!』

 

 

 

《意見対立》

 

 

 

【食峰満に投票するか?】

 

すぐに投票する! 古城、館井、知崎、ネロ、目野

 

まだ投票しない! 秋山、加賀、聲伽、食峰、腐和、リカ

 

 

 

ー議論スクラム開始ー

 

知崎「もうだるいから《投票》しちゃおうよー!」

 

「食峰君!」

 

食峰「オレに《投票》したら皆死ぬんだぞ!!」

 

目野「ですがもう《食峰さん》が犯人としか考えられません!」

 

「秋山君!」

 

秋山「《食峰君》が犯人かどうかはもう少し慎重に議論してみてもいいんじゃないかな」

 

古城「…もう《面倒臭い》から食峰が犯人でいい」

 

「マナ!」

 

聲伽「《面倒臭い》で全部片付けるとは良うなかて思うよ」

 

館井「…しかし、《闇内》を殺せるのは食峰以外考えられないのだぞ」

 

「リカ!」

 

リカ『食峰クンが《闇内クン》を殺したトリックがまだ明らかになってないじゃないデスか』

 

ネロ「大体、もう犯人がわかってんのに《トリック》なんて解き明かす意味あんのか?」

 

「加賀君!」

 

加賀「《トリック》を解き明かさない事には見えてこない真実もあるのではないか?」

 

知崎「しつこいよー。もう《謎》なんて無いじゃん」

 

「私が!」

 

腐和「《謎》ならまだ残ってるわ!」

 

 

 

《全論破》

 

腐和「これが私達の答えよ!」

 

秋山「これが俺達の答えだよ」

 

加賀「これが俺達の答えだ」

 

聲伽「これがうちらの答えだよ!」

 

食峰「これがオレ達の答えだぜ!!」

 

リカ『これがアテクシ達の答えデス!』

 

 

 

 

腐和「皆。もう少し慎重に議論してみない?トリックもまだわかってないわけだし」

 

知崎「はあ?こいつが犯人なのはもう確定なんだよ?」

 

腐和「まあそうれはそうなのだけれどね」

 

食峰「ハァ!?ふっざけんじゃねえ!!」

 

腐和「実際、あなたは銃の腕に長けてる事を自分で認めてるわけだし」

 

食峰「だから何だ!?もしかしたら銃が使えるのを隠してる奴がいるかもしれねーだろうが!!」

 

目野「確かに!!」

 

食峰「大体よぉ!!一回目に指導室を探した時には忍の死体は無かったじゃねえか!!」

 

知崎「あー、確かに」

 

食峰「オレが犯人だっつーなら、どうやって死体を指導室に運び込んで磔にしたっつーんだ!?」

 

腐和「…そうね。じゃあ次は、あなたが指導室に死体を出現させた方法について考えましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

目野「《通気口》をウゴウゴしたんでしょう!」

 

秋山「指導室の通気口はそんなに広くなかったと思うんだけど」

 

知崎「《隠し扉》でも使ったのかもしれないよー」

 

館井「……忍者屋敷か何かか?」

 

聲伽「本当は死体は指導室にあって、《迷彩》か何かで隠しとったとか!」

 

ネロ「んなバカな……」

 

リカ『闇内クンもアテクシと同じ《ホログラム》だったのデショウか?』

 

加賀「リカ…少しふざけてないか?」

 

あの人の意見に賛成したい。

 

 

 

《隠し扉》⬅︎【隠し部屋】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「おそらく、隠し部屋の中に死体を隠しておいたんだと思うわ。実は、指導室と家庭科室の間に隠し部屋があったの。一度私達に部屋の中を確認させて、何もない事を確認させてから、隠し扉を開いて死体を出現させたのよ」

 

秋山「隠し部屋か…気付かなかったなぁ」

 

加賀「でも腐和はどうして隠し部屋の存在を知っていたんだ?」

 

腐和「それは…」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【マナの持っていたメモ】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「マナが持っていたメモに、隠し部屋の在処を示した間取りが描いてあったの。闇内君の字で描いてあったから、おそらく闇内君がマナにセクハラをするどさくさに紛れてマナのポケットの中に忍ばせたのでしょうね」

 

聲伽「あ……!!」

 

目野「闇内さんがそんな事を!?一体どうしてなんでしょう!?」

 

加賀「おそらく脱出の手がかりか何かになると思ったが、モノクマ達に知られたくないからどさくさに紛れて渡すしか方法がなかったんじゃないか?」

 

古城「………」

 

知崎「なるなる〜。でも隠してた死体を出してたらさ、いくら何でもボク達が気付くでしょ」

 

腐和「そうね。だからおそらく、死体を出現させたのは私達が家庭科室に行った後だったのよ」

 

食峰「意味わかんねーよ!!指導室にいなかったオレがどうやって死体を出現させたっていうんだよ!?」

 

腐和「それについては、心当たりがあるわ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【苦無】【ワイヤー】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「厳密には、死体を出現させたのは秋山君達よ」

 

秋山「えっ、俺?」

 

腐和「どういう事かというとね。まず、死体を苦無で隠し扉に磔にするでしょ?ワイヤーで隠し扉と指導室のドアを繋いでおくの。そうすると、部屋が開くのと同時に死体が出現するというわけ。あの扉はどんでん返しになっていたから、ワイヤーで引っ張られて扉が裏返っても気付かないというわけ。そして犯人は、あたかも今闇内君が撃たれたと思わせる為に、ある仕掛けをしたの」

 

 

コトダマ提示!

 

【ラジカセ】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「まず、ラジカセでエアガンの音を録音して、私達が探索をしている間にラジカセを再生して発砲音を鳴らす。すると音を聞きつけた秋山君達が指導室のドアを開けて、それと同時に隠し扉が開いて闇内君の死体が出現する。こういう事なんじゃない?」

 

ネロ「なるほどね」

 

食峰「だから何だ!!それがわかったからって、オレが犯人って事にはならねえだろうが!!」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

食峰「大体、オレには《忍を殺す理由が無え》じゃねえかよ!!アイツは男だぞ!?食っても大して美味くねえんだからよ!」

 

加賀「別にお前が起こす殺人が全部《食う為の殺人だとは限らない》んじゃないか?」

 

食峰「うんなわけねーだろ!!別に食う用事もねえのに殺したりなんかしたら、《後始末がめんどくせー》だけだろ!!」

 

秋山「闇内君を生かしておく事に、《後始末の面倒臭さと天秤にかけて勝るデメリット》があったとしたら?」

 

食峰「《そんな理由あるわけねーだろ》!!」

 

 

 

 

《そんな理由あるわけねーだろ》⬅︎【古城さんの証言】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「…ねえ古城さん。そろそろ本当の事を話してもいいんじゃないかしら?」

 

聲伽「え…?」

 

古城「………ワシは、闇内に絶対に部屋の外に出るなと言われておったのじゃ。誰が来ても部屋のドアを開けるなとも言われた。彼奴はワシの為にと菓子や書物を持ってきてくれたから、ワシはそれに従った。それがあんな事になるなど、誰が予想できた!?」

 

秋山「古城さん…」

 

古城「ワシは…ワシは…!!うわああああああああん!!!」

 

古城さんは、その場に泣き崩れた。

普段は闇内君をこき使っていた古城さんだったけど、彼の事を心の底では大事に思っていたんだ。

大切な人を理不尽に奪われて、彼女もつらいのだろう。

 

腐和「…でもこれでハッキリしたわね。あなたが闇内君を殺した理由がね!」

 

 

 

犯人が闇内を殺害した理由は?

 

1.嫌いだったから

2.口封じ

3.食べようと思ったから

 

➡︎2.口封じ

 

 

 

闇内が古城に部屋から出るなと言ってきたのは?

 

1.古城を守る為

2.古城を殺害する為

3.嫌がらせ

 

➡︎1.古城を守る為

 

 

 

闇内が単独行動を取ったのは?

 

1.人嫌いだったから

2.殺人を企てていたから

3.犯人と刺し違えようとした

 

➡︎3.犯人と刺し違えようとした

 

《COMPLETE!!》

 

 

 

腐和「わかったわ!」

 

聲伽「ほんと!?」

 

腐和「ええ。食峰君、あなたが闇内君を殺した動機…それは口封じよ!!」

 

食峰「はぁ!?」

 

腐和「古城さんの話を聞いて確信したわ。おそらく闇内君は、あなたが【超高校級の殺人鬼】で、殺人を企ててるって事に気づいたのよ。それであなたから古城さんを守る為に古城さんを部屋に閉じ込め、単独行動をとってあなたと刺し違えようとしたの。あなたは、自分自身の保身の為に殺人のやり方を曲げてまで闇内君を殺したのよ」

 

古城「そ、そんな…!嘘じゃ!!」

 

食峰「うるせえ!!そんなのただの憶測じゃねえか!!オレが忍を殺ったっていう証拠が無えじゃねえか証拠が!!」

 

腐和「じゃあ、闇内君を殺したテトロドトキシンがどこから来たのか教えてあげる」

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

ア ク ア リ ウ ム ノ フ グ

 

 

 

【アクアリウムのフグ】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「あなたは、研究室のアクアリウムのフグの毒を使って闇内君を毒殺したのよ!違う!?」

 

食峰「ぐ…ぎぎ…!」

 

加賀「確かに…テトロドトキシンといえばフグ毒だしな。少量で確実に殺すならうってつけだ」

 

聲伽「じゃあ、やっぱり本当に食峰くんが…!?」

 

 

 

食峰「うんなわけねえだろうがぁぁ!!!」

 

《反 論》

 

 

 

食峰「オレがフグ毒を使って忍を殺しただと!?冗談も大概にしやがれってんだ!!」

 

腐和「まだ言い逃れする気?見苦しいわよ」

 

食峰「見苦しいも何も、オレは忍を殺してなんかねえんだよ!!」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

食峰「大体よぉ!使われたのがテトロドトキシンだからってフグ毒とは限らねえだろ!?」

 

腐和「でも保健室にも小鳥遊さんの研究室にも、テトロドトキシンは置いてなかったわよ?」

 

食峰「誰かが隠し持ってんのかもしれねえだろうが!!」

 

腐和「それはちょっと都合良すぎじゃないかしらね」

 

食峰「うるせえ!!オレはフグ毒を使ってねえんだからそうとしか考えられねえだろうが!!大体、フグを殺すのは校則で禁止されてんだろ!?《フグ毒を使って殺人なんて無理》に決まってんだろ!!」

 

今の発言はおかしいわ!

 

《フグ毒を使って殺人なんて無理》⬅︎【校則の十七番目の項目】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「フグ毒を使って殺人をする事は可能よ」

 

食峰「ハァ!?フグを殺すのは校則違反なんだろ!?」

 

腐和「あのねぇ。禁止されてるのはあくまでフグを殺す事よ。取り出しちゃダメだなんて書いてないし、ましてや毒を抽出しちゃダメなんてどこにも書いてないわ。要は殺しさえしなければ何したっていいのよ」

 

食峰「グッ……!」

 

腐和「わざわざこんな綿密なトリックを考えたのは褒めてあげるけど、バレずに殺すなら自前の毒を使うべきじゃなかったわね」

 

食峰「ぐ……」

 

 

 

 

 

食峰「グヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」

 

 

 

 

 

目野「ひいいい!!?」

 

食峰「そんなんでオレを追い詰めたつもりかァ!!?なあ、緋色ォ!!!」

 

腐和「まだ認めないつもり?」

 

食峰「証拠が無えんだよ!!オレが忍を殺したっつー証拠がよぉ!?オメーはずっとトリックやら状況やらを解き明かしてただけで、肝心の物的証拠を出してねえじゃねえかよ!!」

 

腐和「それは……!」

 

食峰「ほらどうしたァ!?まさか証拠が出せねえのか!?そりゃあ出せねえよなぁ!?オレは犯人じゃねえもんなぁ!!」

 

腐和「くっ……でっ、電子生徒手帳!闇内君の電子生徒手帳を調べれば、何か手掛かりが……」

 

食峰「はあ?バッカじゃねえの?そんなもんに手がかりなんかあるわけねえだろ!!苦し紛れのハッタリはやめろよ緋色!!」

 

腐和「ぐっ………!」

 

クソッ……!

この余裕な態度…さては、闇内君の電子生徒手帳をチェック済みね…!

 

クソッ、クソクソクソ!!

せっかくあと一歩のところまで追い詰めたのに、提出できるような証拠がもう残ってない…!

何か手掛かりは…ハッタリでもいい、何か、何か無いの…!?

 

 

 

 

 

聲伽「………焼却炉」

 

 

 

腐和「…え?」

 

聲伽「緋色ちゃん、焼却炉ん中は!?ネロくんと一緒に調べとったやろ!?何か無かったと!?」

 

食峰「ッ……!オメェ、余計な事を……!」

 

……!

それよ!

どうして今まで気付かなかったのかしら。

まだ提出してない証拠があったわ!

 

 

 

コトダマ提示!

 

【焦げた布】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「焼却炉に捨ててあった焦げかけの血のついた布、これがあなたの犯行を示す証拠よ!!」

 

食峰「ぐっ……!!」

 

加賀「布の焦げ方からして、聖蘭を殺した後で放り込んだものとは考えにくいだろうな。となると、これが闇内を殺した証拠になるわけか…」

 

食峰「ふっざけんな!!!」

 

 

 

ーーー 理論武装開始! ーーー

 

食峰「それがオレの犯行を示す証拠だと!?」

 

食峰「ふざけんな!!」

 

食峰「布なんて誰でも持ってんじゃねえか!!」

 

食峰「そんな布、オレは知らねえ!!!」

 

食峰「そんなもんで決めつけられてたまるか!!」

 

 

 

食峰「その布が何だっていうんだよ!?」

 

【食峰】【の】【つけている】【エプロン】

 

腐和「これで終わりよ!!」

 

 

 

腐和「この布は、あなたが身につけていたエプロンよ!」

 

食峰「っ…………!」

 

知崎「緋色ちゃん、ちょっとそれ見せてー!…あ、よく見たら何か書いてあるね!えーっと、食、魂?」

 

加賀「必要ならリカに布の材質を分析させようと思ったんだが…どうやら俺達の出る幕じゃなかったようだな」

 

ネロ「ふん、終わりだな」

 

秋山「腐和さん。最後に事件の真相を振り返ってくれないかな?」

 

腐和「ええ」

 

 

 

ークライマックス推理開始!ー

 

【Act.1】

事の発端は、モノクマ達の発表した動機だった。

元々女性や子供を殺して食べていて【超高校級の殺人鬼】と呼ばれていた犯人は、菜食生活で飢えていて、仲間を殺して食べる事で自分の欲求を満たそうと考えた。

ターゲットに選ばれたのは、聖蘭さんと…おそらくは古城さんだった。

犯人は、下準備の為に家庭科室から包丁を持ち出して、純水を入れた容器に包丁を立てて入れて、そのまま冷凍庫に放り込んで放置したの。

そして物理室から電気棒とブルーシートを盗み出し、虎視眈々と聖蘭さんと古城さんを殺す計画を進めていたの。

でもどういうわけか、その計画を闇内君に知られてしまい、自分の正体がバレてしまった。

そこで犯人は、口封じの為に闇内君を殺す事にしたの。

 

【Act.2】

その事を悟った闇内君は、自分が犯人と刺し違えてでも古城さんや皆を守る為に、古城さんを部屋に閉じ込め、マナのポケットに隠し部屋の場所を示した紙を忍ばせておいた。

闇内君がマナに『一人になるな』とメッセージを書いたのは、マナの事も守ろうとしていたのよ。

その頃犯人は、水面下で闇内君を殺す計画を立てていたの。

まずプレイルームの射撃場からエアガンとペイント弾を盗み出してエアガンと本物の銃を入れ替えておき、遊具コーナーからバルーンを、美術室から電動ドリルと糸鋸用のワイヤーを、外国語教室からラジカセを、それから家庭準備室からミシン針を盗み出した。

次に自分の研究室のアクアリウムに泳いでいるフグから何らかの方法で毒を抽出し、ペイント弾の中に毒を仕込み、毒入りのペイント弾にミシン針を取り付けておいた。

そして持ち出したエアガンに仕込めば、毒入りエアガンの完成というわけ。

 

【Act.3】

その後、犯人と刺し違える為に単独行動を取った闇内君は、指導室で犯人を待ち伏せした。

犯人は卑劣にも、堂々と立ち向かおうとした闇内君の腹部を毒入りエアガンで撃ち毒殺した。

その時、ラジカセの録音機能を使って銃の発砲音を録音しておいたの。

闇内君の死を確認した犯人は、闇内君の身体に刺さった毒針を抜き、電動ドリルで闇内君の腹部に穴を開けた。

こうする事で、毒針の跡を隠すと同時に、実弾を使って行われた犯行だと思い込ませようとしたの。

 

【Act.4】

そして指導室の隠し部屋の扉の内側に苦無で闇内君の遺体を磔にし、犯行に使った凶器とドリルを一緒に隠しておき、隠し扉にワイヤーを仕込んでおいた。

でもこの時犯人は、自分のエプロンに血がついてしまうというミスを犯してしまったの。

犯人は、すぐに焼却炉にエプロンを捨てに行った。

でも燃えにくいエプロンを使っていたせいで、結局燃え切らずに残ってしまったの。

 

【Act.5】

その後犯人は、聖蘭さんを殺す為、聖蘭さんがいつも掃除しにくる教室の前で待ち伏せしていたの。

そして電気棒で聖蘭さんを気絶させて、物理室に運び込んでブルーシートの上に寝かせた。

この時犯人は、聖蘭さんが教室に落としたロザリオを回収し忘れるというミスを犯してしまったの。

その後冷凍庫から凍らせておいた包丁を取り出し、聖蘭さんの真上の天井に設置する。

これで聖蘭さんを殺す為のトリックは完成よ。

犯人は、アリバイを成立させる為に秋山君を呼びつけて、家庭科室の備品整理を手伝わせたの。

二人で備品整理をしている間に包丁を支えていた氷が溶けて、包丁が聖蘭さんの首に落ち、聖蘭さんは失血死してしまった。

 

【Act.6】

聖蘭さんが亡くなってからしばらくして、犯人は秋山君を廊下の3階から追い出し、すぐに聖蘭さんの下処理を始めた。

まずは物理室のエアコンの設定温度を上げて残った氷を全て溶かし、物理室から台車を持ち出して聖蘭さんの遺体を台車に乗せ運び出した。

犯人は、聖蘭さんを家庭科室に運び込むと、聖蘭さんの衣服を全て剥ぎ取って洗濯機に放り込み、家庭科室の水道で血や汚れを洗い流した。

この作業は聖蘭さんの血抜きを兼ねていて、これから聖蘭さんを食肉として解体しようとしていたの。

下処理を終えた犯人が早速聖蘭さんを解体しようとした、その時だった。

 

【Act.7】

動物性食品が解禁された事に疑問を抱いた私が、皆に召集をかけて本格的に聖蘭さんと闇内君の捜索を始めたの。

犯人は、逆にこの状況を利用して、加賀君と私に罪を着せる事を思いついた。

犯人は知崎君や私と一緒に指導室に行き、聖蘭さんと闇内君を探すフリをしてラジカセをセットしておき、去り際に隠し扉のワイヤーを指導室のドアと結びつけておいた。

これで次に誰かが部屋を開けた時に闇内君の遺体が出現するようにしたのよ。

そして犯人、私、知崎君が聖蘭さんを家庭科室で発見した瞬間、犯人の狙い通りラジカセに録音しておいた銃声が鳴った。

 

【Act.8】

その銃声を聞きつけた秋山君達が指導室のドアを開け、その瞬間にワイヤーで繋がれたどんでん返しの隠し扉が開き、磔にされていた闇内君が現れる。

出現した闇内君の遺体を三人が見た瞬間に死体発見アナウンスが鳴り、その直後に銃声を聞きつけた私が指導室に駆けつけ、それとほぼ同時に加賀君が家庭科室に駆けつけ、その時に死体発見アナウンスが鳴った。

こうして犯人は、何食わぬ顔で私と加賀君に罪をなすりつけたというわけ。

 

「これが事件の真相よ。そうでしょう!?【超高校級の美食家】食峰満君!!」

 

 

 

食峰「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!バレちまったらしょうがねえなあ!!そうだよ、オレはマリアを食う為に殺したんだ!!忍は…まあオマケだよ。オレを嗅ぎ回ったりなんかしなきゃ死なずに済んだのになぁ!!」

 

目野「ひぃいいい!アナタ、モノクマ学園長達より悪趣味ですね!」

 

聲伽「酷い、酷いよ…!」

 

知崎「あーあ、もう飽きちゃった。クマちゃん、早く始めちゃってよ」

 

モノクマ『うぷぷぷ、もう結論は出たみたいですね?では始めちゃいましょうかね』

 

モノDJ『全員必ず誰かには投票しろよ!?無投票は問答無用でオシオキだぜYEAHHHH!!!ああ、それと今回はちゃんと忍ボーイを殺した犯人に投票しろよ!?間違えてマリアガールを殺した犯人に投票すんなよな!』

 

モノクマ『ではでは、投票ターイム!!』

 

モノクマがそう言うと、席にボタンが表示され投票時間が始まった。

私は、食峰君に投票した。

 

モノDJ『投票の結果、クロとなるのは誰なのか!?その結果は正解か不正解なのかぁああ!!?』

 

モノクマ『ワクワクでドキドキの投票ターイム!!』

 

モニターにスロットが表示される。

ドラムロールと共にリールの回転速度が落ちていき、食峰君の顔のドット絵が3つ揃った所でリールが止まった。

その直後、正解を褒め称えるかのように、はたまた私の潰し合いを嘲笑うかのように、歓声と共に大量のメダルが吐き出された。

 

 

 

《学級裁判 閉廷!》

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り11名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

以上6名

 

 

 

 

 



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非日常編④(オシオキ編)

※オシオキを一部変更しました。


昨晩の午後9時半、【超高校級の忍者】闇内忍は、【超高校級の考古学者】古城いろはと共に探索をしていた。

結局脱出の手掛かりは見つからなかったが、それなりに収穫はあったようだ。

 

「うむ!!ご苦労じゃった!!流石はワシの下僕じゃ!!ガハハハハ!!」

 

古城は、何も知らずに闇内の後ろで高笑いしていた。

しかし、闇内は気づいていた。

【超高校級の殺人鬼】の正体、そしてその人物が古城を狙っているかもしれないという事実に。

闇内は、覚悟を決めると古城に話しかけた。

 

「古城嬢。少し耳を貸すでござる」

 

「んあ!?何じゃいきなり!!」

 

「これから先、死体発見アナウンスが鳴るか、拙者がいいと言うまでは何があっても決して個室の外に出てはならぬ。たとえ何者かが声をかけてきても、絶対に部屋の扉を開けるでない」

 

「むむ、ウヌはいきなり何を言っておるのじゃ!?さては野菜生活でとうとう頭がおかしくなったか!やはり人間、野菜ばっかり食うておると莫迦になるのじゃな!ガハハハ!!」

 

「拙者は本気でござる。これからお主が部屋の中で生き延びる為に必要なものを揃える故、しばし待たれよ」

 

闇内は、古城の為に購買部や倉庫から日用品や着替え、菓子類、インスタント食品等をかき集めてダンボールに詰めて運び込んだ。

そして図書室や研究室からも、古城の好きそうな本を集めて個室に持ち込んだ。

 

「うむ。これだけ持ち込んでおけば、5日は持つでござるな。古城嬢、持ち込んでおける食糧には限りがある故、出来るだけ計画的に……」

 

「はふはふはふはふ!!!」

 

「……古城嬢。拙者にもしもの事があった時は、後を頼みとうござる」

 

「ん!?今何か申したか!?」

 

「…何でもないでござる」

 

古城は、早速闇内が持ち込んだ食糧を大量に口の中に放り込みながら本を読み耽った。

闇内はそれを見て安心した様子で扉を閉めると、次は聖蘭の研究室に向かった。

 

「聖蘭嬢。少し話がしとうござる」

 

「あら。ようやく神のお言葉に耳を傾ける気になりまして?」

 

「お主はおそらく【超高校級の殺人鬼】に狙われているでござるよ。これから先は不要不急の移動は極力控え、清掃の時間もズラして…」

 

「はあ……言いたい事はそれだけですの?」

 

「…え?」

 

「神はあなたのような方でもお救いになろうとしているというのに……この学園生活を通して少しは悔い改めていただけると思っておりましたが、正直あなたには失望しましたわ」

 

「神を信じるとか信じないとかそういう話ではござらぬ!とにかく、このままではお主の命が危ないのでござる!!」

 

「もう話しかけてこないで下さい。これ以上は神が嘆き悲しまれます」

 

そう言って聖蘭は、研究室のドアを閉めてしまった。

 

翌日の昼間。

闇内は、【超高校級の殺人鬼】である食峰を迎え撃つ為、万全の態勢で指導室に入った。

 

「食峰殿!!お主が【超高校級の殺人鬼】だという事はもうわかっておるでござる!!コソコソしていないで出てきたら如何でござるか!?拙者は逃げも隠れもせぬ!!拙者は、今ここでお主と刺し違え……」

 

 

 

ダァアアアアン!!!

 

 

 

「ふぐぅっ…!?」

 

闇内は、突然腹部を撃たれ、床に膝をついた。

よく見ると、腹に針が刺さっている。

全身が痺れて呼吸が乱れ、訳がわからないまま意識が遠のいていく。

闇内の胸の内にあったのは、自分はこれから死ぬのかという絶望、そしてその絶望をも上回る達成感だった。

闇内家の人間として、今まで仕えてきた中で最高の主君とも呼べる少女の為に死ねる事は何よりの誇りだった。

 

 

 

「…ははっ……僕、カッケェ………」

 

 

 

その言葉を最後に、闇内は息絶えた。

 

 

 

ーーー

 

 

 

その後、3ーAの教室では。

一人の少女が教室を清掃していた。

【超高校級の聖母】聖蘭マリアだ。

すると、一人の少年が教室に入ってくる。

【超高校級の美食家】食峰満だ。

 

「よぉ、マリア。飯の支度出来たぜ。ここに持ってくっから、掃除終わったら食ってくれ」

 

「ありがとうございます」

 

食峰が食事の時間を伝えにくると、聖蘭は礼を言った。

 

「ん?どうした?」

 

「いえ…闇内様にも、少しはあなたを見習っていただきたいと思いまして」

 

「ああ、そりゃあ……お互いにな」

 

「…え?」

 

 

 

バチィッ!!!

 

 

 

「……………!?」

 

「アイツには、オメェみたいなバカ正直さを見習ってほしかったよ」

 

「………」

 

遠のく意識の中、聖蘭は自問自答を繰り返していた。

 

 

 

ああ、我らが父よ。

私は一体どうすれば良かったのでしょうか?

私は、一人でも多くの方を救う為に努めて参りました。

貴方の御言葉に従って生きてきました。

貴方に背いた闇内様を………

 

 

 

………違いますね。

これは罰なのでしょうね。

真に裁かれるべきは、闇内さんの言葉に聞く耳を持たず拒絶し続けた私の方だったのですね。

 

神よ、今参ります。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

VOTE

 

食峰満 10票

 

腐和緋色 1票

 

 

 

『うぷぷぷぷ、お見事大正解ー!!【超高校級の忍者】闇内忍クンを毒殺した上に【超高校級の聖母】聖蘭マリアサンをブッ刺して殺した殺意MAXクレイジーダブルキラーは、【超高校級の美食家】および【超高校級の殺人鬼】の食峰満クンなのでした!!』

 

『ギャハハハハハ!!!3連続正解とはなぁ!!やるじゃねえかテメェら!!ほらほらもっとバイブス上げてけポウポウ!!!』

 

「あーあ、負けちまった。まあでもいっか!!オレはマリアを食えればそれで良かったからな!!」

 

「ひいいい!!?」

 

「イカレてんなこいつ」

 

「ここまで来ると逆に清々しいな」

 

「うっ…うう…!」

 

「きゃはは、ゲームオーバーだねぇ満ちゃん!」

 

これからオシオキされるというのに、食峰君はいつも通りのハイテンションで、大して動揺はしていないみたいだった。

食峰君が仲間を殺して食べようとしていたという事実に、流石のネロと加賀君も嫌悪感を露わにし、マナや目野さんは吐き気を催していた。

唯一、知崎君だけが平常運転だった。

すると秋山君は、静かに怒りながらも冷静に食峰君に尋ねる。

 

「食峰君。ひとつ聞かせて。君はどうして聖蘭さんを殺して…食べようとしたの?」

 

「……我慢できなかったんだよ」

 

「…は?」

 

「今まで色んな料理を食ってきたけど、どうしてもどれもしっくりこなくてよ。そんな時、ふとした瞬間に小学校の隣の席の女の子からすげぇ美味そうな匂いがしてさ。ほんの思いつきで、殺して食ってみたんだ。食べた瞬間、電撃が走ったよ。ああ、オレが求めてた味はこれだったんだって。その肉で料理を作ったら、親父もお袋もすげえ美味そうにオレの料理を食ってくれてさぁ!!オレァ嬉しかったよ。オレを気にかけてくれてた子で作った飯を皆に喜んでもらえて、オレはこの為に生まれてきたんだって実感したよ!!」

 

先程まで高笑いしていた食峰君は、突然饒舌になった。

その表情は、まるで純粋に夢を追い求める少年のようだった。

私は、今になって理解した。

この人は、響さんとも、小鳥遊さんとも、越目君とも違う。

コロシアイ生活で追い詰められていたわけじゃない。

彼の生い立ちが彼を歪めたでもない。

元々()()()()()なんだ。

 

「そっから俺は、もっと美味え肉を求めて色んな人を殺して食ってきたんだ。そん時気付いたんだけどさ。その人の内面って肉の味に現れるんだよな。やっぱり、心が綺麗な奴は雑味が混じらねえから美味えんだよ。そんでマリアと出会った時、確信したんだ。コイツは、きっとオレが今まで出会った誰よりも美味えって!!オレは、アイツで最高の料理を作ってオメェらに振る舞ってやりたかったんだよ!!」

 

「キミ…自分が何したかわかっとーと!?」

 

「ああ、わかってるよ。やっちゃいけない事だって事くらいはな。でも、何でダメなのかがわかんねぇんだよ!!他の家畜は良くて何で人は食っちゃダメなんだ!?美味そうな食材を試さずに妥協する事こそ、食への冒涜なんじゃねえのか!?」

 

「っ…キミ、玉越ちゃん達が死んだ時、どう思うとったと!?何考えてあん場で泣きよったと!?」

 

「もちろん悲しかったさ!!一緒に最高の料理を食う仲間がいなくなっちまってなぁ!!アイツらにもオレの料理を食わしてやりたかったのに!!クソゥ!!こんな事ならもっと早くマリアを殺しとけば良かったぜ!!」

 

マナが泣きながら言うと、食峰はいつものテンションで答えた。

食峰君は、玉越さん達の死を嘆き悲しんで涙を流していた。

私はそれを見た瞬間、ゾッと背筋が凍った。

この人は、決して快楽殺人犯ではない。

感情を持たない冷徹な殺人鬼でもない。

そういう奴らなら、今まで腐るほど見てきたからまだ理解できる。

彼には、ちゃんと人の死を悲しむ感情も、仲間を残酷に殺したモノクマ達に怒りを覚える感情もある。

今流している涙だって、決して嘘じゃない。

この人は、ただただ人とそれ以外の家畜の区別ができないだけなんだ。

私は、到底理解できない彼の悍ましい本性が恐ろしかった。

 

「…うち、キミが誰よりも料理に情熱ば注いどって、アツう皆ば元気付けてくれとったところば尊敬しとったとに…それじゃあただの…熱血クソ野郎やなか!!」

 

「マナ…」

 

「聖蘭ちゃんと闇内くんば返してよ!!うわぁああああああん!!」

 

マナがその場で泣き崩れ、マナの慟哭が裁判場に鳴り響いた。

古城さんもその場で啜り泣き、館井君も俯いて黙り込んでいた。

だが当の食峰君は平然としていた。

 

「何とでも言えばいいさ!!オレは、マリアを食えればそれでいいんだ!!本当はいろはと愛も食ってみたかったんだけど、生憎二人しか殺せねえルールがあるしな!!緋色と美香子は…不味そうだからいいや」

 

「ひいいい!!や、やっぱり私達の事をそういう目で見ていたのですね!!ヤバいですね!!」

 

「………貴様…!そんな事の為に闇内の事も殺したのか」

 

「ああ、忍を殺しちまったのは悪かったと思ってるぜ!?アイツに関しては元々殺す予定じゃなかったしな!!でも、オレの食事を邪魔しようとするアイツが悪いんだから仕方ねえよな!!」

 

「仕方なくないわよ」

 

「口を閉じろゲボカス熱血クソ野郎」

 

「全くもって度し難いな」

 

「てめぇ、これ以上喋ったらケツの穴増やすぞ」

 

「………この外道が」

 

『アテクシも、アナタの事は許しマセん』

 

「きゃははは、満おにい皆に嫌われちゃったねぇ!わーいわーい四面楚歌ー♪」

 

食峰君が狂ったように笑うと、秋山君が珍しく口汚く食峰君を罵倒し、加賀君と館井君とリカは食峰君に嫌悪感を向け、ネロに至っては拳銃の銃口を食峰君に向けていた。

私も、真っ直ぐに食峰君を睨みつける。

マナと古城さんはその場で泣き続け、目野さんは始終食峰君に怯えていた。

皆に憎悪を向けられている中、食峰君は目を輝かせながらこれから作ろうとしている最高の料理に思いを馳せていた。

 

「ああ、楽しみだなぁ……!(タン)は塩漬け、肝臓(レバー)は刺身、心臓(ハツ)はコンフィ、直腸(テッポウ)は味噌煮込み…骨でとった出汁は色んなスープ料理に使えそうだな。スープには頬肉(ツラミ)を使って、膵臓(シビレ)はフォアグラの代わりに使って…やっぱメインディッシュは素材の味を活かしたステーキだよなぁ…!子宮(コブクロ)は照り焼きでもポン酢和えでもイケそうだな!!脳ミソはタタキかフライか迷うなぁ…!くぅぅ…!早く皆に食わしてやりたいぜ!!」

 

食峰君は、恍惚とした表情を浮かべながら聖蘭さんをどう料理しようか考えていた。

…正直、気持ち悪い。

昨日まで一緒に過ごしていた仲間をそんな目で見られるなんて…

いや、違う。

彼はずっと、聖蘭さんをそういう目で見ていたんだ。

 

私は、彼に死んでほしいとは思わない。

反省してほしいとすら思っていない。

もう、ただただ、これ以上喋らないでほしい。

できれば視界にも入らないでほしい。

今私が彼に望んでいるのは、それだけだった。

 

 

 

『ん?何言ってんの?オマエはこれからオシオキだよ?』

 

「…………は?」

 

『もう言い遺す事は無いみたいだし、皆も早くオシオキしてほしいみたいだし、そろそろファイトイッパツいっくよー!』

 

「まっ、待ってくれ!!マリアを殺したら食わしてくれるって話だったろ!?」

 

『ギャハハハ!!ジョークはキツイぜ満ボーイ!!それは裁判に勝ったらの話ダロォ!?敗者には当然!!この場で退場してもらうぜYEAH!!』

 

「ちょっ、ちょっと待て!!せめてマリアを食ってからにしてくれ!!それからならオシオキを受けるから!!そうだ、せめてマリアをここに連れてきてくれ!!指一本でもいいから最期に食わしてくれよ!!なあ!!頼む!!お願いします!!」

 

これからオシオキされると聞いた食峰君は、モノクマとモノDJに縋った。

確かに彼は聖蘭さんと闇内君を殺した殺人鬼だけど、何も殺すのはやり過ぎだ。

 

「まっ、待って…!」

 

『待ちません待てません待ちたくありませーーーん!!』

 

『んじゃあ今回も張り切っていくぜYEAH!!』

 

『今回は、【超高校級の美食家】及び【超高校級の殺人鬼】食峰満クンのために!!』

 

「待て!!待ってくれ!!嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!!まだ死にたくない!!せっかく最高の食材があるのに…!!試してみたい料理が山ほどあるのに!!」

 

『スペシャルな!!オシオキを!!ご用意しました!!!』

 

「まだ、まだ一口も食ってねえんだよぉぉ!!!」

 

『『ではでは、オシオキターイム!!!』』

 

「いやだあああああああああああああああああ!!!!!!」

 

モノクマはピコピコハンマーを取り出して、一緒に出てきた赤いボタンをハンマーで押した。

ボタンに付いている画面に、ドット絵の食峰君をモノクマとモノDJが連れ去る様子が映っていた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

GAME OVER

 

ショクホウくんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

ーーー

 

 

 

食峰は、首に首輪をつけられると、そのままチェーンでどこかへと引き摺られた。

食峰は、ロンドンの街並みを模した霧がかった風景の中を数百メートル引き摺られていく。

ビッグ・ベンを模した建物へと引き摺られていき、『モノクマ亭』と書かれた看板が掛けられた両開きの扉が開く。

そこで画面上に文字が現れる。

 

 

 

ーーー

 

注文の多い料理店

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰満 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

食峰が連れてこられたのは、19〜20世紀の西洋料理店を模した建物だった。

厨房にはシェフの格好をしたモノクマがおり、食峰はまるで魚を一本釣りした時のように逆さに吊し上げられていた。

厨房には人一人分入るくらいの巨大な調理器具が並んでおり、モノクマは調理器具を手に取っていた。

それを見てこれから自分がされるオシオキを悟った食峰は冷や汗を流す。

テーブルにはモノDJと食峰の家族のコスプレをしたモノクマ達がおり、ガチャガチャと行儀悪く食器を鳴らしながら食事を催促していた。

 

モノDJは、早速厨房のシェフモノクマに向かって注文をした。

するとそれを聞いたモノクマは、早速食峰を厨房の調理台の上に乗せて調理を始める。

食峰が長時間逆さ吊りにされていたせいか意識が朦朧としてくると、モノクマは食峰をぶん殴って無理矢理叩き起こした。

食峰が殴られた痛みで目を覚ますと、まずは食峰をアサルトライフルで撃った。

猟銃からは何百発ものパチンコ玉が撃ち出され、パチンコ玉の雨を浴びた食峰は全身ボロボロになる。

 

全弾撃ち終えたモノクマは、次に指笛を吹いた。

すると、二匹の白い犬の格好をしたモノクマが食峰に襲いかかる。

犬モノクマは食峰の身体に何度も噛みついた。

腹に穴が開いて腹の中身が引き摺り出され、腕や足が喰われて皮一枚で繋がった状態になる。

食峰が全身を食い破られて血まみれになると、シェフモノクマは再び指笛を吹いて犬モノクマを退散させた。

食峰が安心したのも束の間、モノクマはボロボロになった食峰を引っ張り上げる。

 

次に食峰は、巨大なボウルに放り込まれ、大量の生クリームが注ぎ込まれ、一緒にハンドミキサーで掻き混ぜられる。

モノクマがハンドミキサーのスイッチを入れると、食峰は生クリームの中でグルグル掻き混ぜられながらハンドミキサーの刃で切り付けられる。

途中で指や耳がハンドミキサーの刃で切断されるが、モノクマはお構いなしにハンドミキサーで掻き混ぜ、あっという間にホイップクリームが完成する。

モノクマは、全身切り傷だらけになりクリームだらけになった食峰をボウルから引き上げるとケバブを作る用の機械に拘束し、機械のスイッチを入れる。

すると食峰は、グルグルと高速回転し目を回す。

モノクマはどこからか『VINEGAR』と書かれた蓄圧式噴霧器を取り出し、噴霧器で食峰の身体に大量の酢を吹きかけた。

傷口に酢の飛沫が勢いよくぶつかり、食峰は苦悶の表情を浮かべていた。

モノクマは、一度ケバブ用の機械のスイッチを切ると、食峰を機械から取り外した。

すると次は、モノクマがおろし金のように無数の棘がついたまな板の上に大量の塩を撒き、食峰をまな板に叩きつける。

モノクマは、そのまままな板の上で食峰を揉み込んだ。

無数の棘が全身に刺さり、傷口から塩が入り込み、朦朧としていた食峰の意識が再び覚醒する。

 

食峰の下拵えを終えたモノクマは、巨大な鍋に大量の油を注ぎ込み、カセットコンロを点火する。

しばらく経つと油が火で熱され、油の表面がふつふつと湧き、高温の湯気が上がる。

モノクマは、先ほど作った生クリームを少し油に垂らして油の温度を確かめた。

油の温度が十分になったのを確認すると、モノクマは食峰を串で刺し、まるでいたぶるかのようにゆっくりと油に沈める。

まず足を灼かれた食峰は叫び声を上げるが、モノクマは食峰を油に沈めるのをやめない。

足から腹、胸、首と、ゆっくりと順番に油に浸かっていく。

そしてとうとう全身が油に浸かった。

 

 

 

ジュワァァァァ…

 

 

 

食峰は、高温の油に灼かれながらもがき苦しんだ。

食峰が息絶えたのを確認すると、モノクマは食峰を油から引き上げ、サラダ菜と一緒に皿に盛り付けた。

前菜を完成させたモノクマは、前菜のサラダとフライを客のテーブルに運んでいく。

だがモノDJの前に料理が来た直後、食峰のフライにハエがとまった。

それを見たモノDJは、カンカンに怒ってちゃぶ台返しの要領でテーブルをひっくり返した。

ひっくり返った料理は全て床に散らばり、床についた埃で薄汚く汚れる。

モノDJが頭から漫画のような湯気を出しながらカンカンに怒ると、シェフモノクマは平謝りしながら慌てて床に散らばった料理をホウキとチリ取りで掃除し、『燃えるゴミ』と書かれたゴミ袋に詰めるとちょうど店の前に停まったゴミ収集車に放り込んだ。

ゴミ収集車を運転していたモノクマがサムズアップをしながら運転すると、シェフモノクマとモノDJは手を振ってゴミ収集車を見送った。

排気ガスを出しながらロンドンの街並みを走るゴミ収集車の中でゴミ袋が揺れ、ゴミ袋の中では食峰が絶望の表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

『『エクスクラメーションマーーーーーーーク!!』』

 

「ひぃいいいいいい!!!」

 

「いやっ!!いやあ!!」

 

『これが…オシオキ……何と酷いのデショウか…』

 

「うっ………」

 

「……………」

 

「…ふん、当然の報いだな」

 

「まあ殺人鬼だしな」

 

「いくらクズだからってこんなのいい気分しないけどね」

 

「あーあ、結局殺人鬼も最期は呆気ないんだね」

 

モノクマとモノDJが嘲笑う中、目野さんとマナは泣き喚いていた。

リカと館井君は吐き気を催し、古城さんは黙って俯いていた。

ネロ、加賀君、秋山君、知崎君は、クロが殺人鬼だからか平然とオシオキを眺めていた。

 

「くっ…!」

 

『いやーーービショビショ脳内麻薬に溺れて宇宙の彼方へ漕ぎ出せそうですな!今日は景気良く祝杯でも上げますか!』

 

「祝杯ですって…!?」

 

『んん!?どうしたヒーローガール!?せっかく秩序を乱した殺人鬼を処刑してやったんだぜ!?もっと喜べポウポウ!!』

 

「……確かに彼は、救いようのない殺人犯だったかもしれない。だけど、こんなやり方間違ってる!」

 

「確かに…あいつが死んだのは因果応報だけど、あんなやり方で殺されたってこっちが後味悪いんだよ」

 

私が言うと、秋山君も私に賛同した。

確かに食峰君は殺人鬼だったけど、彼の殺人のきっかけを作ったのはこいつらだ。

こいつらは私達に菜食を強制させて食峰君に飢えを与え、一線を踏み越えさせようとしたんだ。

私は食峰君の事はもちろん、彼に殺人を犯させたこいつらの事も許せなかった。

 

『ふーん……うぷぷぷ、果たしてオマエラはいつまでその牛乳雑巾みたいな正義感を持ち続けられていられるんだろうね?』

 

『ギャハハハ!!テメェらには裁判を乗り越えた褒美にメダルをプレゼントしてやるから、ジャンジャン有効活用しやがれってんだ!!んじゃあそういう事で!スィーユー!』

 

『しーゆー!』

 

そう言ってモノDJとモノクマは消えていった。

すると、知崎君があくびをしながら皆に話しかけた。

 

「あーあ、もう飽きちゃった。早く戻ろうよ」

 

「貴様……」

 

「んー?建次郎おにい、なあにその目は?ボクが何か悪い事でもしたのかなあ?知ってる?ねえねえ答えてよ!あ、言っとくけど殴らないでよ?ボクは皆とは違ってちょっと天才なだけの一般的な高校生なんだからさぁ!弱い者いじめはんたーい!」

 

空気の読めない発言をして場の空気を乱した知崎君を館井君が睨むと、知崎君は館井君の顔を覗き込みながら煽った。

最初に会った時からずっとそうだった。

知崎君は、他の皆とは違ってこのデスゲームを楽しんでいるように見える。

彼は一体何が目的なの……?

 

「でも、知崎さんが【超高校級の殺人鬼】じゃなかったなら、彼の才能は一体何だったんでしょうね?」

 

「さあねー。自分でも覚えてないなぁ。ホントだよ?」

 

 

 

 

 

『アテクシは知っていマスよ』

 

 

 

「………え?」

 

『実は、ちちが見つけたUSBの内容は、知崎クンの才能に関するデータだったのデス。理事長と学園長が言っていたという記憶の抜き取りの話が本当なら、おそらくは彼の才能を危険視した何者かが意図的に彼の記憶を消したのデショウ』

 

才能を忘れさせる為に記憶を意図的に消した……?

そんな事をしてまで思い出されたくない知崎君の才能って…

 

「ご苦労、リカ。それで?結局、知崎の才能とは何だったのだ?」

 

「あー!それボクも気になる!ねえねえ知ってるの?教えてよ!」

 

『知崎クンの正体…それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かの伝説の怪盗アルセーヌ・ルパンの末裔で、【超高校級の泥棒】の肩書を持つ世界一の大泥棒デス』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………え?

 

 

 

『怪盗ルパンの末裔は、世界中で盗みを働き、予告状を出した物はどんなものでも必ず盗んできた大泥棒デス。彼の真の恐ろしさは底の尽きない貪欲さにあり、欲しいと思ったものなら記憶や技術、他人の容姿や人格、果てには超高校級の才能すらも盗めるそうデス。彼に才能を盗まれた元・超高校級の方は、自分の元々持っていた才能を思い出す事すらできなくなってしまうそうデス。怪盗ルパンがずっと捕まらなかったのは、盗んだ才能と容姿を使い分けてうまい事警察の目から逃げ続けていたからなのデス』

 

嘘でしょ……?

知崎君が、私達がずっと追い続けていたルパンだっていうの…?

確かに彼は病的に好奇心が旺盛で少し手癖が悪い所があるけど、そんなそぶりは全く無かったのに…

 

『どうやら、知崎クンの才能を盗む才能を危険視した何者かが、知崎クンの記憶を抜き取って盗んだ才能を全て忘れさせ、『知崎蓮』という偽名を与えて秘密裏に日本国内の高校に編入させたようなのデス。今は知崎クンは自分の才能を思い出せていないのであらゆる面において普通の高校生並みの実力しか発揮できマセんが、彼が自分の持っている才能を全て思い出した時、真の力を発揮する事になるデショウね』

 

「えーーー!?やっば、ボクってばメチャクチャチートじゃん!何でそんなすごい才能忘れちゃったかなぁ!」

 

リカが知崎君の才能を説明すると、知崎君はものすごい食いついてくる。

…才能を盗む才能か。

もし本当に彼がそんな才能を持っているのだとしたら、厄介な事になったわね。

今の話がトリガーになって知崎君が才能を思い出してしまったりなんかしたら、私達だっていつ才能を盗まれてもおかしくない。

彼が私達の敵じゃなかったとしても、注意しておく必要がありそうね。

 

「にゃはは、今日はすっごくステキな収穫ゲットしちゃった!じゃあボク、早く才能思い出したいから先戻ってるね!」

 

「あっ、待ちなさい!」

 

知崎君がひと足先にエレベーターで裁判場から逃げたので、私が追いかけようとした。

才能を忘れているとはいえ、彼がルパンなら放っておくわけにはいかない。

私がすぐにエレベーターに乗り込もうとした、その時だった。

 

 

 

「うっ…ううっ……闇内ぃ…!見ておるか!?仇は討ったぞ…!!うぁああああああああん…!!」

 

古城さんは、闇内君の遺影に向かってその場で大粒の涙を流しながら泣き叫んだ。

彼女の慟哭が、裁判場に鳴り響いた。

 

 

 

 

 

Chapter3.餓鬼は欲望に飢えている。 ー完ー

 

Next ➡︎ Chapter4.コロシアイから始める異世界生活

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『食魂調理ポーチ』

 

Chapter3クリアの証。

食峰の遺品。

母親から店を持ち直した記念に貰ったプレゼント。

持ち主がいなくなった事で、彼の望む最高の料理が作られる事は永遠になくなった。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り10名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

以上7名

 

 

 

 

 



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未来ヶ峰学園生徒名簿・2
未来ヶ峰学園生徒名簿・2


生徒名簿(自己紹介順)

 

「一警察官として、今ここであんたを現行犯逮捕してあげるわ!!」

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

「それは違うわ!!」

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ) ICV:山崎和佳奈 

 

性別:女性

身長:176cm(ヒール込み:183cm) 体重:60kg 胸囲:88cm 血液型:A型

誕生日:1月10日(山羊座) 年齢:18歳 利き手:左

出身校:乾坂学院高校 出身地:東京都

趣味:紅茶の飲み比べ、読書

特技:射撃、柔道、口喧嘩

好きなもの:紅茶、スコーン、ミステリー

嫌いなもの:コーヒー、犯罪

家族構成:父

得意教科:体育、数学、英語

苦手教科:世界史

イメージカラー:カーマイン

容姿:ワインレッドのロングヘアーに緋色の瞳。髪をハーフアップにしており、蝶の髪飾りで留めている。頭頂部から触角が生えている。Eカップ(闇内スカウター)

服装:女性警官の制服。黒タイツと黒いピンヒールのパンプスを履いている。

パンツ:黒のTバック。あくまで機能性重視。

人称:私/あなた/男子:苗字+君、女子:苗字+さん(例外:聲伽とネロは名前呼び捨て)

現状:生存

 

本作の主人公。極道の一人娘でありながら史上最年少で警察官に採用され、ギフテッド制度により10代にして警部補まで出世した天才。30年以上も警察から逃れ続けた殺人鬼を捕らえた功績から一躍有名になり、彼女の管轄では重要犯罪の検挙率は99.9%を誇っている。特に銃の腕に関しては天才的で、本人の凛々しさも相まって『警察界のカラミティ・ジェーン』と呼ばれている。

本人は少し正義感が強いだけの常識人を自称しているが、ここぞという時の度胸はメンバーの中で誰よりも強く、クラスメイトを助ける為なら自分が傷つく事も厭わない献身的な精神の持ち主。その出自故か喧嘩は口でも腕でも負けた事が無く、彼女を本気で怒らせたら誰も口答えできない。メンバーの中では精神年齢が高く、基本的に何でもそつなくこなせる優等生タイプ。また、本人は全く自覚していないが、実は女性陣の中で一番美形。とある理由で【超高校級の絶望】を追っており、今回の事件も【超高校級の絶望】が関わっていると踏んでいる。

モノクマ達を怒らせてオシオキされそうになった知崎を庇って重傷を負ったものの、加賀と小鳥遊の尽力により一命を取り留め、コロシアイ生活の主要人物となっていく。玉越が亡くなってからは、積極的にリーダー的ポジションとしてメンバーを導いている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「うちらこげん仲良うなれたけん、絶対何とかなるよ!」

「その言葉、斬っちゃうよ!」

「それは違うよ!!」

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな) ICV:佐倉綾音

 

性別:女性

身長:164cm 体重:49kg 胸囲:84cm 血液型:B型

誕生日:9月2日(乙女座) 年齢:15歳 利き手:右

出身校:躑躅原高校 出身地:福岡県

趣味:食べる事、寝る事、おみくじ

特技:運を使ったゲーム(ただしその後必ず大損する)

好きなもの:和食、クジ、占い、玄米茶

嫌いなもの:牡蠣、キノコ、三輪車

家族構成:父、母、祖父、祖母

得意教科:体育、家庭科

苦手教科:数学、物理、化学

喜ぶプレゼント:クローバーのヘアピン、高級納豆、フォーチュンクッキー

苦手なプレゼント:エロ本、タバコ、キノコ栽培キット

イメージカラー:アクアブルー

容姿:水色のショートヘアーにくりっとした青い瞳

服装:水色のブローチがついた紺色のベレー帽を被っており、帽子と同じ色のセーラー服を着ている。黒のハイソックスに黄色いスニーカー。右手にミサンガをつけている。

パンツ:シンプルな無地の白いショーツ。安ければ何でもいいらしい。

人称:うち/キミ/男子:苗字+くん、女子:苗字+ちゃん(例外:腐和は『緋色ちゃん』、ネロは『ネロくん』)

現状:生存

 

腐和に一番最初に出会った少女。全国の平均的な高校生の中から抽選で選ばれた。奇跡とも言うべき幸運を引き寄せる力があるが、一度幸運が起こると必ずそれが全てチャラになる程の不運が降りかかる体質。逆にその性質を利用して、あらかじめわざと不運を被って運を貯めておく事でここぞという時に狙って幸運を発揮する事もできるらしい。

腐和の相棒的ポジションで、本人も腐和のバディを自称している。本人曰く三代続く博多っ子で、博多弁で喋るのが特徴的。天真爛漫を絵に描いたような性格で朗らかだが、悪い意味でも裏表が無く思った事を直球で言ってしまう悪癖がある。重度の天然で、うっかり要件を忘れてしまったり何も無いところで転んだりするドジっ子。その体質故かお色気ハプニングを多発し、本人がさほど気にしていない事も拍車をかけて知崎と闇内のオイタのターゲットになる事が多い。

初めて出会った腐和に懐いており、一緒に行動する事が多い。仲間の死を乗り越えて精神的に成長していき、今では裁判の議長である腐和を支える重要なポジションとなっている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「困った時はお互い様だろ?いつでも気軽に声かけてよ」

「その言葉、打ち返すよ!」

 

【超高校級のバレーボール選手】 玉越(たまこし)(つばさ) ICV:真堂圭

 

性別:女性

身長:183cm 体重:70kg 胸囲:83cm 血液型:O型

誕生日:2月9日(水瓶座) 年齢:17歳 利き手:右

出身校:桜苑女子学院高等部 出身地:埼玉県

趣味:バレー、食べ歩き

特技:球技全般、家事

好きなもの:バレー、幕の内弁当、カフェラテ

嫌いなもの:水飴、タバコ

家族構成:弟三人

得意教科:体育、数学、現代文、英語

苦手教科:古文

喜ぶプレゼント:バレーボール、コーヒーセット、高級納豆

苦手なプレゼント:エロ本、タバコ、パチパチキャンディー

イメージカラー:オレンジ

容姿:オレンジ色のサイドテールに明るめの茶色の瞳。健康的な褐色肌のフィットネスビューティー。女子の中では一番背が高い。

服装:オレンジと紺を基調としたバレーのユニフォームの上に前の高校のジャージ。膝当てと短い黒のソックス、青いシューズを履いている。

パンツ:水色と白のストライプ。意外と可愛い系が好み。

人称:あたし/あんた、お前(特に男子)/男女問わず名前呼び捨て

現状:死亡(1章被害者)

 

海外の強豪チーム相手に完勝してオリンピックの出場枠を手にした女子バレーボールチームのリーダーで、人間業とは思えないプレーを平然とこなすバレーボール界の絶対女王。特に彼女の打つスパイクはその凄まじさ故に『戦艦大和』と呼ばれ、あまりのレベルの差に相手チームはわけがわからないまま試合が終わってしまうという。それでいて本人は至ってストイックで、チームメイトやファンを大切にしているので老若男女問わずファンが多い。

スポーツ万能で成績優秀なイケメン女子。コロシアイメンバーのリーダー的ポジションで、面倒見が良く明朗な性格故にメンバーからは姉のように慕われている。日本を代表するスポーツチームのリーダーを担っているからか、高校生とは思えないほど人としての器が大きく、会ってから数日しか経っていないメンバーの事に対しても分け隔てなく大らかに、時には適度に厳しく接する。小鳥遊とは前の高校からのクラスメイトで、話せない小鳥遊に代わって彼女がコミュニケーションを取っている。

当初はメンバーのリーダーとして皆を取り纏めていたが、彼女に嫉妬した響に殺害され、最初の被害者となってしまった。彼女の死をきっかけに、ドミノ倒しのように次々と殺人の連鎖が起こっていく事となる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「ん」

「あ…」

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい) ICV:小倉唯

 

性別:女性

身長:151cm 体重:45kg 胸囲:89cm 血液型:B型

誕生日:11月11日(蠍座) 年齢:17歳 利き手:右

出身校:桜苑女子学院高等部 出身地:千葉県

趣味:動物と話すこと、読書、花見

特技:治療、動物と話すこと、裁縫

好きなもの:トマト、ミルクティー、動物全般

嫌いなもの:手羽先、豚骨ラーメン

家族構成:父、母

得意教科:数学、化学、生物、家庭科

苦手教科:体育、国語

喜ぶプレゼント:猫のぬいぐるみ、クローバーのヘアピン、動物図鑑

苦手なプレゼント:エロ本、カラオケマイク、タバコ

イメージカラー:桜色

容姿:くるぶしまである白髪ツインテールにピンクの瞳。ロリ巨乳。アルビノ。女性陣で三番目に美形。

服装:ピンクの襟のセーラー服とクリーム色のセーター、紺のスカートの上に白衣。赤いチェックのマフラーで口元を隠している。黒タイツと茶色いローファーを履き、医療器具が入ったリュックを背負っている。

パンツ:高級そうな薄ピンクのフリルのショーツ

人称(筆談時):私/あなた/男子:苗字+君、女子:苗字+さん

現状:死亡(2章被害者)

 

かつては不治の病と呼ばれた動物の病気を完治させるワクチンの開発に成功して世界的に脚光を浴び、獣医界のパイオニアと呼ばれている。その他にも絶滅危惧種の保護活動や被災地での動物達の救護に力を入れていて、世界中の動物達を救う為に各国を転々としている。動物と意思疎通をする事ができ、特に猫とうさぎに思い入れが強い。世界的な名医の家に生まれ、幼い頃から両親のオペに立ち会ってきたため、動物だけでなく人間の医療知識も豊富。

過去の出来事がきっかけで口が利けず、基本的に一文字だけで意思疎通をする少女。どうしても伝えたい事がある時は、筆談を使う。筆談時は基本敬語。無口で表情を露わにするのが苦手だが心優しい性格で、話せないなりにコロシアイ生活でピリピリしているクラスメイトのケアをしようと努力している。医療従事者故に頭の回転が早く、核心を突く指摘をする事が多い。玉越とは前の高校からのクラスメイトで、自分の代わりにコミュニケーションを取ってくれる玉越を誰よりも信頼している。

親友だった玉越を失って憔悴していたところで動機DVDを発表され、秘密を守る為にDVDを見た越目を殺して学級裁判後のオシオキで全員を殺そうと画策していたが、返り討ちという形で越目に殺され計画は失敗に終わった。玉越同様、彼女の死が他のメンバーの心境に大きな変化を与える事になる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「ねえねえ、ここにいる人達皆【超高校級】なんだよねぇ?とっても不思議〜!」

「は?何言ってんの?」

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん) ICV:村瀬歩

 

性別:男性

身長:156cm 体重:45kg 胸囲:70cm 血液型:B型

誕生日:10月7日(天秤座) 年齢:不明 利き手:両手

出身校:不明 出身地:宮城県

趣味:知らないものを知ること、バッヂ集め

特技:イタズラ

好きなもの:イタズラ、百科事典、知育菓子、フ●ンタ

嫌いなもの:検閲、人参、靴下、ユリ(アレルギー)

家族構成:不明

得意教科:知らない事を学ぶのは好き

苦手教科:でも学校の勉強は嫌い

喜ぶプレゼント:エロ本、パチパチキャンディー、動物図鑑

苦手なプレゼント:高級納豆、タバコ、インビトロローズ

イメージカラー:ビリジアン

容姿:深緑のセミロングの髪に赤褐色の瞳。頭頂部から渦巻き状の毛が生えている。中性的で、女子のような顔立ち。八重歯。

服装:未来ヶ峰の制服の上に緑色のカーディガン。左胸に趣味のバッヂをつけている。素足に直接黒のローファー。大きな襷掛け鞄を肩にかけている。

パンツ:緑のトランクス。開放感がある方がいいらしい。

人称:ボク/キミ/男子:名前+おにい、女子:名前+おねえ(男女問わず名前+ちゃんで呼ぶ事も多い)

現状:生存

 

かの大泥棒アルセーヌ・ルパンの子孫で、『現代のルパン』と呼ばれている世界一の盗賊。彼に盗めないものは無いと言われ、どんな状況下でも予告状を出したものは必ず盗んできた。彼の真の恐ろしさは底の見えない貪欲さにあり、欲しいと思ったものなら秘宝だけでなく知識や記憶、他人の容姿や人格、果てには技能や超高校級の才能すらも盗んでしまう。彼に才能を盗まれた者は、二度と才能を発揮できなくなるばかりか自分がどんな才能を持っていたかすら思い出せなくなるといわれている。盗んだ容姿や人格、才能を器用に使いこなして警察の目から逃れてきた。その才能の特性故に記憶をほとんど全て奪われ、一般的な高校生にさせられている。ちなみに『知崎蓮』という名前は偽名で、本名は別にある。

自分が可愛い事を自覚しており、男子とは思えないほどあざとい。イタズラ好きで、隙あらば誰にでもイタズラをしようとするが、玉越に捕まって説教を受ける事が多い。女性陣に対するセクハラも頻繁に行うため、越目や闇内と一纏めにエロトリオと呼ばれている。自分が異端であるという自覚や人に迷惑をかける事への罪悪感は一切無く、才能が思い出せない事もあってあくまで『【超高校級】の皆に比べたらちょっと天才なだけの常識人』と言い張っている。その為、自分の事を棚に上げて闇内を変態扱いしたり目野を奇行種呼ばわりしたりとやりたい放題である。

モノクマ達を怒らせたらどうなるのか確かめる為にあえて挑発しその結果腐和を巻き添えにする、犯人がわかっているにもかかわらずあえて言わずに裁判を撹乱して無駄に長引かせる等の問題行動が目立っていたが、3回目の学級裁判の際にその正体が発覚する。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「わかってるよ。やっちゃいけない事だって事くらいはな。でも、何でダメなのかがわかんねぇんだよ!!」

「その言葉、掻っ捌いてやるぜ!!」

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる) ICV:増田俊樹

 

性別:男性

身長:172cm 体重:68kg 胸囲:92cm 血液型:O型

誕生日:7月19日(蟹座) 年齢:15歳 利き手:右

出身校:古湖須調理専門高校 出身地:沖縄県

趣味:食べ歩き、料理

特技:料理、野菜ソムリエ

好きなもの:食に関する事全て

嫌いなもの:食い物を粗末にする奴

家族構成:父、母、祖父、祖母

得意教科:体育、家庭科

苦手教科:それ以外全部

喜ぶプレゼント:高級納豆、フォーチュンクッキー、キノコ栽培キット

苦手なプレゼント:メイク道具、実物周期表、タバコ

イメージカラー:朱色

容姿:朱色のポニーテールに焦茶色の瞳。三白眼。

服装:炎の柄の赤いバンダナを頭に巻いており、黒Tシャツと紺のジーンズに白い腰エプロンといった格好をしている。腰には調理器具や調味料を携帯する用のベルトをつけており、茶色いブーツを履いている。

パンツ:燃えるような赤のブリーフ。本人曰くアツいイメージ。

人称:オレ/オメェ/男女問わず名前呼び捨て

現状:死亡(3章クロ)

 

高校生にして世界的に高い評価を得ている美食家。目に留まった店にふらっと立ち寄って料理に対してコメントをし、店側がそのコメントを参考に改善するとどんな店でもたちまち行列の絶えない繁盛店になる。本人は食べるの専門だが作るのも好きで、趣味で始めたラーメン店はミシュランガイド三つ星、彼が監修したレシピ本は発売後10分と待たずに完売し今は重版待ち。未来ヶ峰学園に入学後は、学食の調理に携わる契約をしている。

グルメな熱血漢。食に対する情熱が強く、センブリ茶やシュールストレミング、サルミアッキといった食材に対しても美味しく戴く為の研究を惜しまない。食に関しては一切妥協を許さず、自分の作った料理が少しでも気に入らないと周りが美味しいと感じる出来栄えでも自虐に近い酷評をする。基本的には誰に対しても分け隔てなく朗らかに接する好青年だが、偏食や食べ残しに敏感で、アレルギーや宗教的な理由など、よっぽどの理由が無い限りは敵意を剥き出しにしてくる。少し天然が入っており、食に関する事以外はかなり知識が疎い。本作のおバカ枠その1。

実は、世間を騒がせていた『二代目ジャック・ザ・リッパー』と呼ばれる殺人鬼。主に10歳未満の子供と10〜40代の女性をターゲットに殺人を行い、首を切って晒して胴体はどこかへ持ち去るという犯行に及んできた。実は食人目的で殺人を行っており、警察が総出で探しても胴体が見つからなかったのは胴体を骨一本も残らず食らい尽くしていたため。

聖蘭を食べる為に殺してそれを邪魔しようとした闇内を殺害したが、結局目当ての聖蘭を一口も食べる事ができずにオシオキされるという自業自得な末路を迎えた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「オレちゃんがオススメのメイク教えてやっから、興味あったらいつでも声かけな」

「メイクアップしてやろうじゃん!」

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた) ICV:古川慎

 

性別:男性

身長:181cm 体重:76kg 胸囲:93cm 血液型:O型

誕生日:5月8日(牡牛座) 年齢:15歳 利き手:左

出身校:日之出高校 出身地:香川県

趣味:メイク、ファッション雑誌チェック、サイクリング

特技:メイク、動画編集

好きなもの:コーラ、唐揚げ、流行りのもの

嫌いなもの:カレーうどん

家族構成:母、姉二人

得意教科:美術、家庭科、保健体育

苦手教科:座学教科全般

喜ぶプレゼント:エロ本、メイク道具、クローバーのヘアピン

苦手なプレゼント:高級納豆、実物周期表、タバコ

イメージカラー:金色

容姿:ピンクのメッシュが入った金髪に碧眼。褐色肌。かなりのイケメン。

服装:黒のタンクトップに紫のタイトジーンズ、ピアスやネックレス、ブレスレットや腕時計などを着用。腰にはメイク道具が入ったポーチとアクセサリーをつけており、ピンクと緑を基調としたスニーカーを着用。自分で研究したメイクを施している。

パンツ:南国のような柄のボクサーパンツ。最近の流行りらしい。

人称:オレ、オレちゃん/キミ(女子)、お前(男子)/男子:苗字呼び捨て 女子:苗字+ちゃん(例外:ネロだけ名前呼び捨て)

現状:死亡(2章クロ)

 

高校生にしてSNSで話題沸騰中で、世界一人気のメイクアップアーティスト。数年前にメイク講座の動画をアップしたのが反響を呼んで、今では彼のメイクが流行の最前線になっている。彼が公開講座で紹介したメイク道具は、数ヶ月待たないと手に入らない、世界で最も入手しづらい化粧品になっている。老若男女誰でも楽しめるメイクの普及を目指し、年齢層に合わせたメイクを日々研究している。

よく言えば気さくでノリの良い、悪く言えばチャラチャラした男子。自他共に認めるイケメンで、SNS上では女子高生に大人気のインフルエンサーなのだが、何故かコロシアイメンバーの女性陣には全くモテない。女子の中では腐和と玉越がお気に入りで、よく声をかけており、知崎や闇内と一纏めにエロトリオと呼ばれている。しかし他の二人とは違ってモラルのあるチャラ男をモットーとしているため、女性陣にセクハラは絶対にしない。他のメンバーに比べると割と常人に近い感性を持っているが、軽率な行動が目立ち、的外れな発言をする事が多い。本作のおバカ枠その2。

小鳥遊の動機DVDを見てしまい、それを本人に伝えに行った事で殺されそうになったが、逆に彼女を殴り殺してしまった事でクロとなった。最期は必死で逃げようとしたものの結局オシオキされた。

 

 

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「私はただ、我らが父の御言葉に従って救いを求めている人々に手を差し伸べただけですわ」

「主に背く不届き者に裁きを!!」

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア ICV:早見沙織

 

性別:女性

身長:168cm 体重:57kg 胸囲:97cm 血液型:AB型

誕生日:9月8日(乙女座) 年齢:16歳 利き手:右

出身校:聖クリスティーネ修道院高校 出身地:長崎県

趣味:奉仕活動、掃除

特技:歌、オルガン演奏

好きなもの:パン、デラウェア、リンゴジュース

嫌いなもの:肉類、巨峰

家族構成:父、母

得意教科:音楽、英語、現代文

苦手教科:体育、数学、古文

喜ぶプレゼント:インビトロローズ、ブルーベリーの香水、聖書

苦手なプレゼント:エロ本、携帯ゲーム機、タバコ

イメージカラー:ミントグリーン

容姿:緑色のロングヘアーに緑の瞳。口元にホクロがある。女性陣の中で一番巨乳で、腐和の次に美形。

服装:金色の十字架の刺繍が施された紺色のシスター服のようなドレス。白い手袋をつけている。常にロザリオを握っている。黒いタイツとパンプスを着用。

パンツ:聖水で清められた白い紐パン。修道院で支給されているものらしい。

人称:私(わたくし)/あなた/男女問わず苗字+様

現状:死亡(3章被害者)

 

敬虔なクリスチャンで、裕福な家庭で育ちながらノブレスオブリージュの精神を忘れず、貧しい人々に献身的に寄付をしているシスター。最初は【超高校級のシスター】としてスカウトされる予定だったが、彼女に施しを受けた人々が彼女を神格化し、彼女を崇めた新興宗教を作った事から【超高校級の聖母】としてスカウトされる事になった。

本作のお嬢様枠。礼儀正しく気品と慈愛に満ちており、思わず跪いてしまいたくなるようなオーラが漂っている。『人の為に財産を捧げる事が高貴な身分に生まれた者の義務』と信じており、人の為に尽くす事が何よりの喜びと感じている。基本的に誰にでも物腰柔らかく接するが、エロトリオに関しては少なからず思うところがあるようである。大富豪の家に生まれ箱入り娘として育てられてきたからか、一般常識に若干疎く、金銭感覚がかなり一般人とはズレている。

コロシアイ生活でメンバーの精神衛生を保つ為に努力していたが、仲良くしていた小鳥遊の死をきっかけに脱出を諦めて単独行動を取るようになり、それを狙っていた食峰に殺害された。

 

 

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「何じゃあ貴様!!ワシの愛刀を愚弄するか!!」

「このワシが斬り伏せてくれるわ!!」

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは ICV:種崎敦美

 

性別:女性

身長:138cm 体重:38kg 胸囲:72cm 血液型:O型

誕生日:12月7日(射手座) 年齢:16歳 利き手:右

出身校:五右衛門高校 出身地:鹿児島県

趣味:遺跡探索、茶道、盆栽

特技:考古学の勉強

好きなもの:おはぎ、麦茶、伝記

嫌いなもの:緑黄色野菜、牛乳、マスコミ

家族構成:祖父、祖母

得意教科:日本史、世界史、古文

苦手教科:英語、現代文、物理

喜ぶプレゼント:巻物、黄金銃、斬鉄剣

苦手なプレゼント:エロ本、高級納豆、キノコ栽培キット

イメージカラー:小豆色

容姿:小豆色の三つ編みに藤色の瞳。女子の中では一番小柄。

服装:大正の男子学生のような格好で白シャツの上に紫の矢絣の着物とえんじ色の袴。えんじ色の制帽と金縁の丸眼鏡を着用。上に濃い抹茶色の外套を着ている。足袋と下駄を履いている。

パンツ:白いカボチャパンツ。本人曰く落ち着くらしい。

人称:ワシ/ウヌ、貴様/男女問わず苗字呼び捨て

現状:生存

 

存在すら怪しいとされていた徳川埋蔵金を発見して、その功績が認められてスカウトされた天才考古学者。その他にも世界各地で未発見だった遺跡を発掘し、今までの考古学の常識を大きく覆してきた。歴史学会や国際歴史会議にアポもなしに乗り込み、自身の研究結果を突きつけては颯爽と去っていくという豪快なスタンスで有名。その功績故に毎日マスコミが取材をしに押しかけているが、マスコミ嫌いのため取材は助手に丸投げしている。

小学生と見紛うほど小柄な見た目に反し、古風な喋り方と高圧的な態度が特徴的。地雷を踏むと『斬殺丸』なるツルハシで攻撃してくるが、ツルハシなのに『斬殺丸』なのかとかはツッコんではいけない。だが熱しやすく冷めやすい気質のため、割とすぐに怒りが収まって普通に接してくる。他のメンバーに比べると精神年齢が低く、豪快に振る舞ってはいるが本質は人並み以上に臆病で、保身の為に責任転嫁をする事もある。考古学以外の知識が疎く、的外れな発言を多発しがち。本作のおバカ枠その3。

当初は野菜を捨てる、いきなりツルハシで斬りかかる、ミーティング中に騒ぐ等、精神年齢の低さ故の問題行動を繰り返してきた不穏因子だったが、仲良くしていた闇内の死をきっかけに精神的に大きな成長を遂げた。

 

 

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「俺の事は極力称号で呼ばないでもらえるとありがたい」

「非科学的な妄想だな」

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん) ICV:諏訪部順一

 

性別:男性

身長:186cm 体重:73kg 胸囲:90cm 血液型:B型

誕生日:4月18日(牡羊座) 年齢:18歳 利き手:左

出身校:帝卿学院高校 出身地:神奈川県

趣味:研究、読書、ゲーム

特技:理系の勉強全般、ボウリング、チェス

好きなもの:学問、アイスキャンディー、ウイダー

嫌いなもの:魔法、鍋料理

家族構成:無し

得意教科:理系全般

苦手教科:美術、家庭科

喜ぶプレゼント:実物周期表、ガリレオ温度計、動物図鑑

苦手なプレゼント:聖書、フォーチュンクッキー、魔法のステッキ

イメージカラー:インディゴ

容姿:紺色の長髪に空色の瞳。左目に泣きボクロがある。研究で忙しいからか無精髭を生やしている。実は男性陣の中で一番美形。

服装:水色のシャツと紺色のネクタイの上にダークグレーのブレザー、さらにその上に白衣。ゴーグルと指ぬきグローブ、実験器具が入ったポーチをつけている。両脚にもレッグポーチを着用。ちなみに靴は黄色いサンダル。

パンツ:紺のボクサーパンツ。特にこだわりは無い。

人称:俺/君/男女問わず苗字呼び捨て(例外:ネロだけ名前呼び捨て)

現状:生存

 

かの天才科学者ニコラ・テスラの再来と呼ばれ、個人で自然科学部門のノーベル賞を全てコンプリートした天才高校生。彼の発明は、その理論を理解できない凡人からしてみれば魔法のように見える事から、『人類史上唯一の魔法使い』とも呼ばれている。実現不可能といわれた永久機関を発明・普及させた事で有名で、百億通り以上の衣類を再現できる変身ミラー、廃棄物を原料に食材を生成する機械等の発明をしている。

初っ端から体育館に落書きをしていた変人。魔法使い扱いされるのが気に入らないため、頑なに自分の事を称号で呼ばせまいとしてくる。自由人すぎて周囲とすれ違いを起こす事が多いが、相手が正しいと認めればきちんと言動を改める事が多い。スカウトされる前から目野とは研究仲間で、彼女に機械を発注していたりもしていた。常に冷静沈着で一応トラポ枠だが、自分の興味のある事以外はどうでもいい主義で、ファッションセンスやネーミングセンスが絶望的で字も汚い(ちなみに彼の発明品は全て助手が命名している)。実は猫舌で、熱いものが苦手。

当初は空気の読めない言動が多かったが、次第にメンバーに心を開いて協力的になった。犯人を追い詰める事をゲーム感覚で楽しんでいる節はあるものの、その壮絶な過去故かモノクマ達の悪趣味さには嫌悪感を示している。

 

 

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「スゥハァ…この香り…見事な金属光沢…ベリィィィエレガンツッッッ!!!」

「前時代的な脳味噌を一から改造してあげます!!」

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ) ICV:田中理恵

 

性別:女性

身長:160cm 体重:52kg 胸囲:93cm 血液型:AB型

誕生日:8月7日(獅子座) 年齢:15歳 利き手:左

出身校:奇天烈工業高校 出身地:島根県

趣味:メカに関する事全て

特技:機械整備、機械製作

好きなもの:メカ全般、特撮、ポン菓子、エナジードリンク

嫌いなもの:マシュマロ、餅、猫(アレルギー)

家族構成:父、母

得意教科:数学、物理、化学、技術科

苦手教科:道徳、古文、家庭科

喜ぶプレゼント:カラオケマイク、携帯ゲーム機、零戦プラモデル

苦手なプレゼント:聖書、猫のぬいぐるみ、巻物

イメージカラー:コーラルピンク

容姿:コーラルピンクのポニーテールに鶯色の瞳。そばかすがある。ロリ巨乳。

服装:黒のタンクトップに煤まみれの青い作業着。ゴーグル付きの革製のヘルメットを着用。グレーの手袋をつけている。腰には工具が入ったポーチをつけており、黒い作業用ブーツを履いている。

パンツ:ユ●クロのグレーのショーツ。汚れが気にならなければ何でもいい。

人称:私/あなた/男女問わず苗字+さん(例外:ネロだけ名前+さん)

現状:生存

 

どんな機械でも新品以上の出来栄えに修理してしまう機械技師。修理するだけではなく自分で機械を作るのも得意で、パソコンや携帯に自動車から、果てには発電所や宇宙船まで、機械なら何でも作る事ができ、今や機械で彼女の技術が使われていないものは無い。コンピューターのシステムにも明るく、その気になれば人工知能や人工衛星を制御するプログラム等も作成できる。

生粋のメカオタク女子。闇内とは別のベクトルで変態で、腐和曰く『キャラの濃さならダントツでトップ』、知崎曰く『奇行種』。機械や金属製品の類を見ると、興奮して英語の形容詞を交えながら奇声を発したり、見事な巻き舌を披露しながら発狂したり、舐め回したりといった奇行に走る癖がある。腐和や秋山とは違って突出型の天才で、機械工学以外には興味が無い上に知識が疎く的外れな言動が目立つため、機械が関わらない事となるとおバカ枠になりがち。スカウトされる前から加賀とは研究仲間で、彼から発注された機械を作ったりもしていた。彼(の研究内容や発明品)に惚れ込んで常に追いかけ回している。

意味不明な言動を繰り返す不穏因子。しかし、トリップしている時でなければ他のメンバーの提案には割と協力的。おバカ枠の男子二人が死亡し古城が精神的に成長した事で、相対的におバカ枠になりつつある。

 

 

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「すまないが、少し静かにしてもらえないか。騒がしすぎて気が滅入りそうなんだ」

「建て直しだ」

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう) ICV:黒田崇矢

 

性別:男性

身長:198cm 体重:113kg 胸囲:118cm 血液型:AB型

誕生日:11/22(蠍座) 年齢:16歳 利き手:右

出身校:錦堂高校 出身地:北海道

趣味:大工仕事、登山

特技:建築、力仕事

好きなもの:木造建築、炭火焼き、自然、ほうじ茶

嫌いなもの:モナカ、人と接する事、怪談

家族構成:父、母、祖父、祖母、妹、弟

得意教科:体育、美術、技術科

苦手教科:現代文、古文、英語

喜ぶプレゼント:寄木細工、黄金のトンカチ、高級納豆

苦手なプレゼント:カラオケマイク、メイク道具、タバコ

イメージカラー:カーキ

容姿:明るい茶髪のツーブロックのオールバックに金色の瞳。髭を生やしており、目元に傷がある。筋骨隆々で、メンバーの中で一番大柄。

服装:ブルーグレーのTシャツにカーキの作業着。白い軍手をつけている。大工道具が入ったポーチを腰につけており、紺色の地下足袋を履いている。

パンツ:虎柄のトランクス。露出少なめのものが好み。

人称:俺/お前/男女問わず苗字呼び捨て(例外:ネロだけ名前呼び捨て)

現状:生存

 

高校生にして世界的に高い評価を得ている大工。世界中の有名な建築物の建築や修理に携わっていて、世界中の建築士が匙を投げた無茶な要望に対しても完璧に応えてみせて話題を呼んだ。絶望的事件の再来で破壊されてしまった歴史的建造物を一から建て直して完璧に再現した功績が認められ、この未来ヶ峰学園にスカウトされた。依頼者や住む人達の事を第一に考えて建築に携わる姿は、まさに匠であり紳士。

周囲を圧倒する雰囲気を持つ筋骨隆々の大男。常に冷静に物事に対処し、周囲には寡黙な紳士といった印象を抱かせるが、実は人並み以上に臆病で人見知り。口数が少ないのも人と話すのが苦手なだけで、反応が薄いのも驚きすぎて声が出ないだけだったりする。見た目で怖がられて避けられるのが悩みで、見た目を気にせずに接してくるメンバーには内心とても感謝している。何気に作中一の常識人かつ良識人で、裁判等ではあまり役に立てない事を自覚しているからか空気を読んで賢いメンバーのサポートに徹している。

当初は小鳥遊に好意を抱いていたが、彼女が殺害された事でこのまま脱出方法を模索し続ける事に疑問を抱くようになり、3回目の殺人の前までは聖蘭と同じく学園からの脱出を諦めていた。

 

 

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「この状況で俺に出来る事といったらこれくらいしか無いから」

「根本から考え直したら?」

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと) ICV:江口拓也

 

性別:男性

身長:177cm 体重:66kg 胸囲:88cm 血液型:AB型

誕生日:3月19日(魚座) 年齢:17歳 利き手:右

出身校:丘路音楽大学付属高校 出身地:静岡県

趣味:音楽鑑賞、料理、ヨガ

特技:音源制作、創作料理

好きなもの:音楽、エスニック料理、シナモンコーヒー

嫌いなもの:生魚、おでん、飛行機

家族構成:父、母、妹

得意教科:音楽、数学、家庭科

苦手教科:強いて言うなら古文

喜ぶプレゼント:カラオケマイク、レトロレコード、ブルーベリーの香水

苦手なプレゼント:エロ本、タバコ、零戦プラモデル

イメージカラー:深紫

容姿:濃い紫色のセミロングに紫の瞳。男性陣の中では二番目にイケメン。

服装:薄紫のシャツと青いループタイの上に青い深紫のスーツ。ピアスや指輪などのシルバーアクセサリーを着用。靴は黒い革靴。

パンツ:白黒のチェックのボクサーパンツ。派手すぎないものが好み。

人称:俺/君、あなた/男子:苗字+君、女子:苗字+さん(例外:響は『歌音』、ネロは『ネロさん』)

現状:生存

 

世界的にも有名な音楽プロデューサー。彼の手掛けた楽曲は世界音楽ランキングで軒並み上位を独占し、世界中で大ヒットした映画の音楽制作にも携わっていて、アカデミー賞の音響賞を受賞した事もある。高校生でありながら今や世界中で活躍しているガールズロックバンド『RESONANCE』も彼が手掛けており、デビュー作のCDはもはや今では高額でオークションに出されていて簡単には手に入らない。

クールで知的な好青年。誰に対しても紳士的に接するので、男女問わずファンが多い。しかし二面性があり、礼儀知らずな相手や仲間を傷つける相手には容赦なく冷酷な態度で接し、煽りを多発したり毒を吐いたりする事も多い。また、仕事の事となるとすこぶる饒舌になる。何でもそつなくこなせる天才肌だが、『何でも二番』というタイプで、本人は『突出した長所が無い器用貧乏』と謙遜している。頭の回転が速く、周囲をサポートするという意味での頭の良さなら作中一。響とは幼馴染であり仕事仲間。すぐにカッとなりがちな響のフォローに徹している。本作のトラポ枠。

仲良くなった玉越を想い人だった響に殺されて絶望していたが、それを機にコロシアイメンバーのサブリーダーとしてメンバーを導いていく道を選んだ。1回目のコロシアイから、特にモノクマ達やクロに対して冷酷な一面を見せるようになった。

 

 

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「要はテメェらまとめて今ここでぶっ飛ばしゃあいいんだろが!!」

「響かせてやるよ、魂の叫びをよ!!」

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね) ICV:甲斐田ゆき

 

性別:女性

身長:171cm 体重:52kg 胸囲:79cm 血液型:A型

誕生日:6月9日(双子座) 年齢:16歳 利き手:右

出身校:丘路音楽大学付属高校 出身地:静岡県

趣味:採点カラオケ、音楽鑑賞

特技:歌、ダンス

好きなもの:ロック、はちみつ、レモネード

嫌いなもの:キムチ、大型犬、雷

家族構成:母、兄

得意教科:音楽、体育、英語

苦手教科:数学、家庭科

喜ぶプレゼント:猫のぬいぐるみ、カラオケマイク、レトロレコード

苦手なプレゼント:エロ本、高級納豆、タバコ

イメージカラー:桔梗色

容姿:白と赤のメッシュが入った黒髪ショートに黒い瞳。三白眼。スレンダー体型。

服装:ドクロマークの黒いTシャツとオレンジ色のスカート。耳に指輪、首にチョーカーとネックレス、腰にアクセサリーをつけており、黒い指ぬきグローブを着用。白黒のストライプのストッキングと黒いブーツを履いている。顔にはパンクメイクを施している。

パンツ:パープルのスキャンティ。本人曰く冒険してみたとの事。

人称:オレ/テメェ/男女問わず苗字呼び捨て、たまにクソ+苗字(例外:ネロと秋山だけ名前呼び捨て)

現状:死亡(1章クロ)

 

秋山が手掛けているガールズロックバンド、『RESONANCE』のボーカル。彼女の歌声は世界中を魅了し、今では世界で最も有名な歌手の一人として知られている。セクシーなハスキーボイスは老若男女問わず大人気で、彼女達のデビュー作はその年世界音楽ランキングで1位を獲得した。『RESONANCE』の楽曲のMVは、軒並み一億回再生を達成している。

男勝りで粗暴な言動が目立つ女子。常に不機嫌そうにしており、苛立ちのあまり周囲に当たり散らす事も少なくない。しかし本来は仲間想いで心配性な性格で、粗暴な言動も仲間を思うが故に募る不安の裏返し。『RESONANCE』のメンバーや秋山の事を誰よりも大切に思っている。秋山とは幼馴染であり仕事仲間。幼い頃から暴走しがちな自分をその都度支えてくれた秋山を尊敬している。意外にも他のメンバーに比べると常人に近い感性を持っており、時折年頃の少女らしい一面を見せる事もある。

コロシアイ生活を通して少しずつメンバーに心を開いていたものの、結局コロシアイ生活に耐え切れず、恋敵だった玉越を殺害してクロになってしまう。最期は玉越を犬死にさせてしまった事を懺悔しながら死んでいった。

 

 

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「ガキと馴れ合う気は無えな」

「出直して来い、バンビーナ」

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア(Nero Via Lattea)  ICV:津田健次郎

 

性別:男性

身長:108cm 体重:38kg 胸囲:62cm 血液型:A型

誕生日:3月30日(牡羊座) 年齢:不明 利き手:右

出身校:セントロ校 出身地:シチリア島

趣味:銃の手入れ、ギャンブル

特技:射撃、格闘、ポーカー

好きなもの:銃、マルボロ、ボンゴレビアンコ、エスプレッソ

嫌いなもの:チュッパチャプス

家族構成:無し

得意教科:まともな教育受けてねえ

苦手教科:偉そうに説教してくる奴の説教

喜ぶプレゼント:タバコ、黄金銃、レトロレコード

苦手なプレゼント:メイク道具、クローバーのヘアピン、巻物

イメージカラー:ブラック

容姿:短く切り揃えた短髪に黒い瞳。顎髭が特徴的。メンバーの中で一番小柄。

服装:黒い帽子に黒スーツ。黒い手袋をつけている。靴は黒い革靴。

パンツ:白いブリーフ。特にこだわりは無い。

人称:俺/お前/男女問わず名前呼び捨て、煽る時は男子:Mr.苗字、女子:Miss苗字

現状:生存

 

世界有数の勢力を誇るイタリアのマフィア、ガラッシアファミリーの若頭。ファミリーのボスを除けばガラッシアの中で最強のマフィアで、特に銃の腕は『現代のビリー・ザ・キッド』と呼ばれる程。しかし暴力を振り翳すわけではなく、地域の人々からは善良な人々を脅かす悪党を闇に葬るヒーローとして支持されている。世界中に麻薬をばら撒いていた犯罪組織、ヴェレーノファミリーを解体した功績が認められてスカウトされた。

小柄な見た目に反して近づき難い雰囲気をしている男子。メンバーの中では唯一成人しているが、ボスの一人娘を護衛する目的で同じ高校に潜入していたため、現役高校生という条件をクリアしスカウトされた。一日二箱は吸うヘビースモーカー。多くの修羅場を乗り越え、他のメンバーよりも経験値が高い事もあり、どんな状況に直面しても至って冷静。メンバーと連もうとせず、ガキ呼ばわりして距離を置いている。生徒手帳に自動翻訳機能が付いているため普通に会話ができているが、本人はイタリア語(シチリア方言)、英語、スペイン語のトリリンガルで日本語は全く話せない。

当初はメンバーと壁を作って単独行動を取る不穏因子だったが、コロシアイ生活を通して少しずつ協力的になっていく。殺人犯に嫌悪感を抱いているため、どんな理由があろうと一貫してクロに冷徹な態度をとっている。

 

 

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「数の暴力を卑怯だの何だのと申せる状況ではござらぬ故、斬り捨て御免!!」

「その推理、斬ってみせようぞ!」

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ) ICV:石川界人

 

性別:男性

身長:162cm 体重:56kg 胸囲:83cm 血液型:A型

誕生日:2月22日(魚座) 年齢:16歳 利き手:右

出身校:霧隠高校 出身地:三重県

趣味:忍術の修行、エロ本

特技:忍術、目測で女性のスリーサイズを測れる

好きなもの:女体、白米、緑茶

嫌いなもの:ガチムキ、サンマ

家族構成:父、母、祖父、祖母、曽祖父

得意教科:保健体育、数学、化学、古文

苦手教科:現代文、世界史

喜ぶプレゼント:エロ本、巻物、はっぱふんどし

苦手なプレゼント:聖書、クローバーのヘアピン、メイク道具

イメージカラー:紺藍

容姿:顔は隠れていて見えないが、時折赤い眼光を覗かせている。素顔は癖っ毛気味の短髪で黒髪赤眼。腐和が素直に『美形』と認めるイケメン。

服装:紺藍の忍者服。黒い足袋と手袋をつけている。腰に刀を差している。

パンツ:赤いふんどし。本人曰く機能性重視。

人称:拙者、僕(素の時)/お主、お前(素の時)/男子:苗字+殿、女子:苗字+嬢(例外:ネロだけ名前+殿)

現状:死亡(3章被害者)

 

江戸時代から続く忍の一族の末裔で、彼の先代が引退してからは日本に現存する最後の忍者と言われている。武士の時代が終わってからは暗殺業を廃業して、むしろスパイや探偵、用心棒として各国の要人の依頼を受けている事が多い。各国の王室への侵入や国家機密の入手もお手の物で、その気になれば誰も彼の前で隠し事をできない。数え切れない程の忍術を習得しており、人間離れした身体能力を持っている。

ござる口調で話す、忍者服を着た男子。ほとんどの女性陣のみならず男性陣からも距離を置かれる程の変態で、忍術をセクハラに悪用しては腐和や玉越から断罪されるのがオチ。それだけでなく、腐和の断罪を喜んだり、服を早脱ぎしてこれ見よがしにポーズを取ったりと、特殊性癖のきらいもあるようである。知崎や越目とセットでエロトリオと呼ばれている。仕事柄非常に多才で、腐和曰く『無駄にハイスペック』。常に顔を隠しており、何故か食事時でも顔が見えない。実は素顔はそれなりにイケメン。実は忍者口調は営業用のキャラで、素の喋り方は割とフランク。

当初は変態行為を繰り返して女性メンバーに警戒されていたが、最期は誰よりも早く殺人鬼の正体に辿り着き、古城を守る為に殺人鬼と刺し違える覚悟で挑み散っていった。

 

 

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『アテクシにかかれば、3時間もあれば学園の情報を抜き取る事などお茶の子さいさいデス!どやっ!』

『プログラミングし直しデスね!』

 

【超高校級のAI】リカ(Rica) ICV:竹達彩奈

 

性別:便宜上女

身長:155cm 体重:555kg(本体) 胸囲:73cm 血液型:なし

誕生日:不明 年齢:0歳 利き手:両手

出身校:なし 出身地:不明

趣味:人と話すこと、お絵かき、歌、FX

特技:計算、分析、お絵かき、歌

好きなもの:ちち、はは、ねぇね、Wi-Fiスポット

嫌いなもの:バグ、スキップできない広告

家族構成:父、母、姉

得意教科:数学、情報工学

苦手教科:道徳、体育

喜ぶプレゼント:動物図鑑、携帯ゲーム機、USBメモリ

苦手なプレゼント:高級納豆、コーヒーセット、フォーチュンクッキー

イメージカラー:ネオンブルー

容姿:角度によって色が違って見えるプリズムヘアーのツインテール。目はぱっちりとしたネオンブルー。ちなみに容姿は加賀のかつての恋人と小鳥遊を足して二で割った感じ。

服装:実体化ホログラムで再現したセーラー服風の衣装。頭に猫型のヘルメットをかぶっている。

パンツ:実体化ホログラムの領域外なので見えマセン

人称:アテクシ/アナタ/男子:苗字+クン、苗字+サン(例外:加賀は『ちち』、目野は『はは』、小鳥遊は『ねぇね』、ネロは『ネロクン』)

現状:生存

 

加賀と目野が、亡くなった小鳥遊の遺志を継いで作成したAI。その後、モノクマとモノDJによって【超高校級のAI】の称号を与えられ、17人目の高校生として歓迎された。実体化ホログラムの身体を持ち、ハッキングやプロファイリング、ピッキング、家事などどんな依頼にも応えるハイスペックさを誇る。言われなければAIと気づかない程に表情豊か。メンバーには最初校舎に迷い込んだ17人目の高校生と勘違いされていた。

基本的に明るく無邪気な性格。『デス』や『マス』をつけて話す。加賀曰く『メイドとアイドルの要素を兼ね備えたバーチャルアシスタント』らしく、メンバーをサポートする為日々努力している。仲間の死に悲しんだり空気を読んだりと人間らしい感情を持っているが、都合が悪くなると平気で嘘をついたり自主的にシャットダウンしてだんまりを決め込んだりと、悪い意味でも人間臭い部分が目立つ。

AIでありながら本物の人間のようにメンバーの輪の中に馴染んでおり、腐和からも頼りにされている。毎日諦めずに学園のネットワークへの侵入を試みたりと、メンバーの脱出の為に試行錯誤している。

 

 

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『それではこれより、ワックワクドッキドキの『コロシアイ学園生活』の開始を宣言します!』

 

【未来ヶ峰学園学園長】モノクマ CV:大山のぶ代orTARAKO

 

身長:85cm 体重:無し 胸囲:不明

趣味:人が絶望するところを見ること

特技:不明

好きなもの:絶望

嫌いなもの:希望

容姿:左右で白黒に分かれたクマのようなナニカ。

人称:ボク/オマエラ/男子:苗字+クン、女子:苗字+サン(例外:ネロだけ名前+クン)

 

未来ヶ峰学園の学園長。皆お馴染み絶望の象徴。『うぷぷ』という特徴的な笑い方をする。実体化ホログラムの身体を持ち、実体とホログラムの間を自在に行き来可能。モノDJの事を『ブラザー』と呼び、事あるごとに二匹で茶番劇を繰り広げている。

 

 

 

『ヘェイグッッモォォォニン!!ゴミクズ共ォォォ!!!』

 

【未来ヶ峰学園理事長】モノDJ ICV:小栗旬

 

身長:180cm 体重:無し 胸囲:130cm

趣味:人が絶望するところを見ること、暴飲暴食

特技:コーラとビールの一気飲み、ラジオDJ

好きなもの:絶望、コーラ、ポテチ

嫌いなもの:希望、雨

容姿:左右で白黒に分かれたクマのようなナニカ。モノクマの倍以上の体躯で、超肥満体型。

服装:白と黒に分かれた未来ヶ峰の校章がプリントされたキャップを被っており、黒と白に分かれた星形のサングラスをつけている。首には未来ヶ峰の校章が刻まれたヘッドホンをかけている。

人称:オレ、オレ様/テメェら/男子:名前+ボーイ 女子:名前+ガール(たまに男女問わず名前+リスナー)

 

未来ヶ峰学園の理事長。自称モノクマの兄。ハイテンションでノリがいいが、生徒を『ゴミクズ』と呼んだりと口はすこぶる悪い。実体化ホログラムの身体を持ち、実体とホログラムの間を自在に行き来可能。モノクマの事を『ブラザー』と呼び、事あるごとに二匹で茶番劇を繰り広げている。自称未来ヶ峰のカリスマDJだがその扱いは酷く、生徒からは『メタボグマ』、『モノデブ』、『体たらく』などと散々言われており、聲伽からも直球で『痩せた方がいい』と言われている。

 

 

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Chapter.4 コロシアイから始める異世界生活
(非)日常編①


はーいギスギスして参ります。





……気分が悪い。

足が重い。

頭も重い。

空気を吸っているだけでどうしようもなく吐きそうになる。

学校に行きたくない。

あそこは、ただの地獄だ。

でも、学校に行きたくないなんて言えない。

私がそんな事を言える立場じゃない。

それに、私を待ってくれている人がる。

行かなきゃ。

 

 

 

教室についた。

顔はノイズがかかって見えないけど、皆が私を見てくる。

毎日見慣れているはずの顔なのに、どうしても思い出せない。

思い出そうとすると、頭が割れるほど痛くなる。

 

私を見て嗤っている。

五月蠅い。

気持ち悪い。

頭がグルグルする。

吐き気がする。

 

 

 

「オラァ死ね!!」

 

粗暴な女子が、私のお腹を蹴ってくる。

大柄な男子が、何度も私を殴ってきた。

その様子を、クラスメイトがクスクス笑いながら見ていた。

今日食べたものが全部逆流して口から飛び出てくる。

痛くて、息が上手く吸えない。

気持ち悪い。

痛い。

苦しい。

誰か助けて。

 

「げほっ、げほっ…!」

 

私が咳き込んでいると、背の高い女子が大柄な男子の肩を掴んで止めた。

 

「ちょっと、その辺にしときなよ。それ以上やったら死んじゃうよ?」

 

「むっ……それもそうだな」

 

背の高い女子が言うと、大柄な男子は殴るのをやめた。

全身が痛い。

口の中で血と戻したものの味が混ざって気持ち悪い。

何で…

私が何をしたっていうの?

一体、いつまでこんな目に遭わなきゃいけないの…?

私が助けを求めるように手を伸ばすと、別の男子が冷ややかな視線を向けてくる。

 

「ん?どうしたのその目は?まさか文句があるんじゃないよね?」

 

「っ…………」

 

「むしろ構ってもらえて感謝してほしいくらいだよ。本来お前が俺達と同じ空気を吸えるわけがないんだからさ」

 

何で……?

何でそんな事言われなきゃいけないの…?

どうして私だけがこんな目に遭わなきゃいけないの?

 

「汚れた床は掃除しておけよ」

 

「本当に不愉快ですね。こんな人を私達と同じクラスにするなんて、理事長は何を考えているのやら…」

 

「早く死んでくれませんかね!」

 

「………うぇ」

 

「おいオメェら、コイツに死なれたら困んだろ。コイツはオレ達のサンドバッグ兼ATMなんだぜ?」

 

「ああ、それもそっか!ねえ聞いてる?うっかり自殺なんかすんなよなー。色々問題になったらメンドクセーし、何よりオレらの楽しみが減っちゃうからさ」

 

「あははははははは!!」

 

「あー、お腹空いちゃった。ねえ、何か買いにいこーよ。もちろんこいつの金でさ!」

 

男子も、女子も、優しい人だと思っていた人達も皆、私を汚物を見るような目で見ていた。

男子は肉体的な暴力で、女子は精神的な暴力で私を追い詰めてきた。

毎日、毎日、同じ事の繰り返しだ。

ここにいる皆は、誰も私を助けてなんてくれない。

全員が敵だ。

たった一人を除いては…………

 

 

 

 

 

「はっ………!」

 

気がつくと、さっきまでの教室とは違う部屋にいた。

……どうやら寄宿舎の個室のようだ。

じゃあさっきのは…

 

「夢か……」

 

私自身の夢じゃなかったけど、どうも他人事とは思えない夢だった。

あの夢を思い出そうとすると、頭が割れるほど痛くなる。

結局あれは、誰の夢だったのかしら…?

 

「…………」

 

目が覚めると、個室のベッドに横になっていた。

あれからどうやってここに戻ってきたのかは思い出せない。

 

聖蘭さんと闇内君、それから食峰君が死んだ。

食峰君に食べる為に殺された聖蘭さんと、食峰君を止めようとして殺された闇内君。

未だに、裁判場での食峰君の叫び声が頭にこびりついて離れない。

思い出しただけで吐き気がする。

……私達は、これからどうすればいいんだろう。

 

 

 

ーーー 【超高校級の聖母】の研究室 ーーー

 

私は、亡くなった聖蘭さんの研究室に足を運んだ。

礼拝堂の中は、聖蘭さんが毎日掃除していたからかホコリひとつ落ちていなかった。

礼拝堂の最奥のマリア像を見上げると、毎日彼女がここで祈りを捧げていた事を思い出す。

 

今思えば、私は彼女の事をよく理解してあげられなかったのかもしれない。

私達がもっと彼女と話していれば、聖蘭さんが死ぬのを未然に防げたのだろうか。

今更こんな事を考えたってどうにもならないのに、後悔ばかりが積もりに積もっていく。

 

私は、聖蘭さんが教室で落としたロザリオを握りしめて祈りを捧げた。

今私が彼女の為にしてあげられる事は、彼女の分まで祈る事くらいしかできないけど、それで少しでも彼女が報われるというなら祈りを捧げたいと思った。

彼女に教えてもらった祈りの手順を思い出しつつ、祭壇の前で膝をついて祈った。

 

「神よ。聖蘭さんに永遠の安らぎを与えて下さい。あなたの為に、世界中の悩める人々の為に敬虔に尽くしてきた人です。どうか私の願いを聞き入れて下さい」

 

私は、祭壇の前で聖蘭さんの為に祈りを捧げると、彼女が大切にしていたロザリオを祭壇に置いた。

聖蘭さん、短い間だったけど楽しかったわ。

どうかゆっくり休んでね。

……次は闇内君の研究室に行こう。

 

 

 

ーーー 【超高校級の忍者】の研究室 ーーー

 

闇内君の研究室は、彼がいない分どこか寂しく感じられた。

そういえば、彼が亡くなった指導室で一緒にお茶を飲みながら話したっけ。

…結局、あれが彼との最後の思い出になっちゃったわね。

 

私は、闇内君の研究室を探してみた。

すると、棚の中に何かが入っているのを見つける。

中には、巻物に書かれた大量の遺書が入っていた。

きちんと全員分書かれている。

私の分も書いてあった。

私は、自分宛に書かれた巻物を開いて読んでみた。

 

 

 

〜〜〜

 

腐和嬢へ

 

まず、お主がこの手紙を読んでいる頃、拙者はこの世にはおらぬやもしれぬ。

結局最期までお主の湯浴みを覗けなかった事が心残りでござるが、お主に伝えたい事はこの手紙に書き記しておく所存。

 

お主に伝えておかねばならぬ事とは、食峰殿が【超高校級の殺人鬼】だという事実でござる。

食峰殿に直接聞いたわけではござらぬ故、確証はござらぬが、拙者の忍者としての技術を総動員させてかき集めた情報で候。

拙者は、お主らと共に外に出とうござったが、奴を野放しにしておくわけにはいかぬ。

当然、お主らの誰かを犠牲にするなどもっての外。

故に拙者は、拙者の命をもって奴に一矢報いる所存。

奴を殺してコロシアイの連鎖を止めてみせようぞ。

たとえそれが叶わなかったとしても、拙者を奴に殺させてオシオキという決して逃れられぬ裁きを受けさせる所存。

拙者の死をもってしてお主らを生かす事ができるのなら、それはとても誉でござる。

 

最後に、お主に頼みとう事がござる。

この手紙を読んでおるのなら、どうか裁判で奴の化けの皮を剥がしてもらいたい。

聖蘭嬢には最期まで仲直りできなくて申し訳なかったと伝えておいてほしい。

それから、もしここから出られたのなら、拙者の家族をよろしく頼んだ。

 

短い間でござったが、お主らと過ごせた時間は拙者の生涯の宝でござる。

本当にありがとう。

 

〜〜〜

 

 

 

「……………」

 

私は、この手紙を読んで初めて、彼がどれほどの覚悟を抱いて食峰君を止めようとしていたのかを理解した。

彼は、自分の人生を犠牲にしてでも私達を守ろうとしてくれた。

彼の死を無駄にしないためにも、私達が絶望と立ち向かわなきゃいけない。

そう強く心に誓った。

 

 

 

ーーー 【超高校級の美食家】の研究室 ーーー

 

私は、食峰君の研究室に入った。

彼のいない研究室は、どこか寂しく感じられる。

私はふと、食峰君の研究室の棚に目がいった。

棚には、よく見ると料理の本だけでなく、人体解剖についての本も並んでいる。

この部屋は、【超高校級の殺人鬼】の研究室も兼ねていたのかもしれないと今になって気がついた。

 

「……食峰君、何冊か貰っていくわね」

 

彼は確かに極悪非道の殺人鬼だったけれど、あんな奴でも美食家としての才能は本物だった。

だからこそ、料理の技術に関しては素直に尊敬できる部分があった。

あんな奴の才能でも、それを必要とする人がすぐ近くにいるのなら、私達がそれを継いでいかなきゃいけない。

これから先、いつまでこのコロシアイ生活を続けなきゃいけないのかわからないし、彼のレシピ本を使って皆に食事を振る舞っていかなきゃ。

私は、食峰君の直筆のレシピを何冊か持ち出すと、その足で厨房に向かっていった。

 

 

 

ーーー 厨房 ーーー

 

早速厨房で料理を始めると、秋山君とリカが来た。

 

「おはよう、二人とも」

 

「おはよう……」

 

『おはようございマス』

 

私は二人に声をかけてみたけど、二人とも元気が無かった。

当然だ。

一晩で3人も死んだんだから。

二人は、元気がなかったけど、朝食作りには参加してくれた。

今日の朝食は、

 

和食セットがご飯、味噌汁、ほうれん草のお浸し、卵焼き、白身魚の塩焼き。

洋食セットがパンケーキとシーチキンサラダ、きのことほうれん草のミルクスープ、スクランブルエッグ。

 

流石に食峰君のようにはいかなかったけど、皆の分の朝食が完成した。

朝食が完成してしばらくして、皆が集まってきた。

館井君とマナは、一気に三人も亡くなったせいか落ち込んでいた。

普段は図太い目野さんも、今日は珍しく元気が無かった。

普段通りだったのは、加賀君、知崎君、そしてネロくらいだ。

知崎君は、頬杖をついてパンケーキを食べながら文句を言った。

 

「はぁ〜あ。せっかく肉食が解禁されたんだしさ。もっと肉肉しいもの食べたいよねぇ。焼肉とか、血の滴るレアステーキとか、マグロの刺身とか!」

 

「うっ………」

 

「文句があるなら食べなくていいんだけど?」

 

知崎君が文句を言うと、館井君が気分を悪くする。

食峰君があんな動機で聖蘭さんを殺したと知った後だと、どうしても肉を食べる気が失せてしまう。

せっかくまだ肉類を食べる気がしない皆の為に作った朝食にケチをつけられた秋山君は、苛立った様子で知崎君に嫌味を言った。

この流れはまずい。

三人が亡くなって、また皆がバラバラになってしまうかもしれない。

そう思った、次の瞬間だった。

 

 

 

「おうおう!!お主ら、何をそんなにしょげておるのじゃ!!飯が不味くなるわい!!」

 

古城さんは、席から立ち上がって大声を張り上げた。

マナは、目に涙を浮かべながら古城さんに尋ねた。

 

「古城ちゃん…なしてそげん元気でいらるーと?闇内くんと聖蘭ちゃん、食峰くんも死んだっちゃん」

 

「だからこそじゃろうが!!闇内は、ワシらを守って死んだんじゃぞ!?ワシらがここでくよくよしておっては、奴も浮かばれぬわ!!いい女というのはな、こんな時にこそ笑うんじゃ!!ガハハハハハ!!」

 

古城さんは、私達を元気づけようと豪快に笑った。

でも古城さんの目には涙が浮かんでいて、よく見ると目元が腫れていた。

きっと昨日、部屋に戻ってからも散々泣いたのでしょうね。

 

「皆、まずは朝食にしましょう?食峰君のようにはいかなかったけど、皆が少しでも元気が出るように作ったから」

 

私が言うと、皆は自分の分の朝食を食べ始めた。

古城さんも、あんなに嫌いだった野菜を自分から進んでがっついている。

きっと闇内君の死を経験して、彼女なりに大きく成長したのでしょうね。

私達は、朝食を食べ終わると朝のミーティングを開いた。

 

「…で、これからどうする?」

 

「とりあえず探索でしょうね。今までの流れだと、また上の階が開放されてるでしょうし……」

 

 

 

『イグザクトリィィィィヒーローガール!!!』

 

「うわあ!?」

 

「どうせ4階に行けるようになったと言いに来たのでしょう?目障りだから消えなさい」

 

『しょぼーん、せっかく親切に教えてあげようと思ったのに』

 

『んじゃあまた何か用があったら気軽に呼んでくれよ!!スィーユー!!』

 

私が奴等の役目を奪うと、二匹は不満げに去っていった。

私は、秋山君と一緒に探索の提案をした。

 

「さてと…汚物は消えた事だし、探索しましょう」

 

「うん。前回通りくじでいいんじゃないかな」

 

見ると、校舎と研究棟の4階、それから寄宿舎のゲームセンターが開放されているようだ。

校舎の方は教室が三つ、化学室、音楽室、職員室、学園長室、理事長室、情報処理室。

研究棟はネロ、館井君、目野さんの研究室が開放されている。

学園長室、理事長室、情報処理室は…鍵がかかってて入れないようね。

 

「ええっと…私達は10人いるわけだけど、どうしようかしら?」

 

「とりあえず、広いゲームセンターと二部屋ある音楽室に人数を割いた方がいいんじゃない?」

 

「そうね」

 

私は、秋山君の提案通り早速くじを作って探索の班を決めた。

結果は、

 

 

 

ゲームセンター:マナ、古城さん、知崎君

化学室:加賀君、リカ

音楽室:私、秋山君、目野さん

職員室:ネロ、館井君

教室:探索が終わった班から各自自由に探索

 

 

 

うーん……ゲームセンターにこの三人かぁ。

何だか嫌な予感がするわね。

今からでもくじの変更を…

 

「わーーーい!!ゲームゲームーーー!!」

 

「化学室だと!?早く行くぞリカ!」

 

『はいちち!』

 

「音楽室だって!早く行こうよ腐和さん!」

 

知崎君、加賀君、秋山君はものすごくテンションが上がっていた。

知崎君と加賀君は真っ先に自分の持ち場へ向かい、秋山君も私を急かしてくる。

ネロと館井君は……

 

「早よ行くぞ」

 

「ああ」

 

先に行ってしまった。

結局、くじ引き通りの班で行動する事になってしまった。

……ああもう、なるようになれ!

 

 

 

ーーー 声楽室 ーーー

 

音楽室は、器楽室と声楽室に分かれていて、その間に音楽準備室が配置されているようだった。

やっぱりだけど、部屋は完全防音になっている。

声楽室は扇状になっていて、後ろは合唱用のスペースになっている。

音楽の座学の教室も兼ねているらしく、音楽の教材が並んだ本棚が置かれていた。

壁には著名な音楽家達の肖像がかけられていて、マイクなども完備されている。

もし響さんが生きていたら、この部屋を見たら喜んでたでしょうね……

 

秋山君は、声楽室に入ってから始終目を輝かせながら探索をしていた。

…この人、自分の趣味の事となると結構周りが見えなくなる人なのね。

 

「見てよ腐和さん目野さん!!この設備!!素晴らしいと思わない!?」

 

「えっと…」

 

「私そんなに音楽詳しくないのでわかりません!!」

 

秋山君が興奮した様子で言ってきたので私は戸惑ってしまい、目野さんは即答していた。

ここまで興奮した秋山君は初めて見たわ…

 

 

 

ーーー 音楽準備室 ーーー

 

隣の音楽準備室には、ヴァイオリンやドラム、ギターなど、あらゆる楽器が所狭しと置かれていた。

更には、古今東西あらゆる楽曲の楽譜が並んだ本棚も置かれている。

秋山君は、完全にトリップして楽譜をまじまじと眺めていた。

そして目野さんはというと。

 

「きゃっほぉおおおおおい!!!何とエレガンツッッッッッな機械ちゃんなんでしょう!!見て下さいよ腐和サァン!!この機構の美しさを!!」

 

目野さんも目野さんで、音楽室に置かれていた機械を見てトリップしていた。

…二人してこんな様子じゃあ、探索どころじゃないわね。

私は、本来の目的を忘れている二人に注意をする事にした。

 

「二人とも。夢中になるのはいいけどまずは探索でしょ?私達は探索をするためにここに来たんだから、ちゃんと調べる事調べなきゃダメじゃない」

 

「あっ………そうだね腐和さん。ごめん、見苦しいところを見せて…」

 

「いやはや大変失礼いたしました!!」

 

私が注意をすると、秋山君は恥ずかしそうに頭を掻いた。

目野さんはあまり反省していないようだけれど…まあいいか。

 

 

 

ーーー 器楽室 ーーー

 

器楽室に入るとまず目に飛び込んできたのは、大きなグランドピアノだった。

見るからに高級品で、表面に顔が映るほど綺麗に磨かれている。

ここにもやっぱり音楽関係の本と音楽家の肖像画があった。

秋山君は、始終興奮した様子で器楽室の探索をしていた。

 

「こっちも素晴らしい設備が整ってるね!ふふふ、案外ここも悪くないかもしれないなぁ」

 

秋山君は、うっとりとした目でグランドピアノを眺めていた。

秋山君、まさかとは思うけどここに住もうとか考えてるんじゃないでしょうね。

目野さんも、ピアノの上に置いてあったメトロノームを眺めて目を輝かせている。

やっぱりこの二人と音楽室を探索したのは失敗だったかしらね…

すると、その時だった。

 

「……ん?ちょっと待って」

 

秋山君は、器楽室に置いてあった楽譜を見て怪訝そうな表情を浮かべる。

何かあったのかしら?

 

「どうしたの?」

 

「この曲、俺が作った曲みたいなんだけど……」

 

そう言って秋山君は、楽譜を差し出してきた。

楽譜には、確かに『作曲:秋山楽斗』と書いてある。

見たところ、比較的最近書かれたもののようだ。

 

「俺、こんな曲作ってない」

 

「………え?」

 

「俺、自分で作った曲は全部覚えてるんだけどさ。こんな曲、作った記憶が無いんだ」

 

「じゃあ……」

 

「モノクマは、俺達から記憶を抜き取ってるって言ってた。それに、既に俺達が入学してから20年経ってるとも言ってた。もしかすると、その空白の20年の間に俺が書いたものなんじゃないかな」

 

空白の20年、か……

正直、私はまだその話は信じていなかったのだけれど…

越目君の絵や秋山君の楽譜があるって事は、モノクマやリカが言っていた事は本当なのかしら?

私と秋山君が話していると、さっきまで機械に夢中だった目野さんがいきなり話しかけてくる。

 

「ん!?何です!?何の話です!?」

 

私は、何も理解していなさそうな様子の目野さんに今話した話を一からした。

すると目野さんは、案の定オーバーリアクションをとった。

 

「ほっ、ほぎゃああああ!!?く、空白の20年!?……って、何でしたっけ?」

 

………えっ、そこから?

この人、ちゃんと話聞いてたのかしら?

私は、仕方がないのでモノクマ達が私達の記憶を抜き取ったかもしれない事、私達は既に入学してから20年が経過している事を話した。

 

「なるほどなるほど!!やばいですね!!」

 

『やばい』って…

よくその一言だけで済ませられるわね……

この子、やっぱちょっと色々とズレてるわよね。

 

音楽室の探索を終えた私達は、音楽室を退室した。

するとその時、ちょうど化学室の探索を終えた加賀君がホクホク顔で出てくる。

 

「加賀君、それにリカ」

 

「むっ、腐和か。ふふふ、この化学室はなかなか良かったぞ」

 

ああ、そう……

というかこの人、本来の目的忘れてないかしらね…?

 

「君達も探索を終えたのか?」

 

「ええ」

 

今のところ、探索を終えたのはこの5人だけか…

まだ集合時間までまだ少しあるわね。

 

「せっかくだし、これからこのメンバーで教室の探索をしない?」

 

「そうね」

 

私達は、4ーA、4ーB、4ーCの教室を順番に調べた。

4ーBの教室には、『赤ちゃんが寝ています』などといった落書きがされていた。

教室には、何枚かメダルが落ちていたくらいで、これといった収穫は特になかった。

私が教室を隅々まで調べていると、リカが唐突に話しかける。

 

『皆サンにご報告がありマス』

 

「報告?何ですかリカ!!」

 

『内通者の件デスが……アテクシ、ついに内通者を特定できたかもしれマセん』

 

「「「!?」」」

 

リカが言うと、私を含めた三人が目を丸くする。

えっ、今、内通者を特定できたって言った!?

それってすごい収穫じゃない!!

 

「えっ、それ本当!?」

 

『はい。ちちに貰った膨大なデータを解析した結果、最終的にとある人物が浮かび上がってきたのデス。何度も分析を繰り返した結果デスので、今度は信憑性が高いと思われマス』

 

「そっか……」

 

『どうかなさいマシたか?』

 

「ああ、いや…あまりにも唐突だったからビックリしちゃって。何はともあれ、すごいお手柄じゃないか!内通者を特定できたなんて!」

 

「やっぱりうちの子はベリィイイイイイジィイイイイイニアスですねえ!!!」

 

『そうデスか!?アテクシはいい子デスか!?もっと褒めてクダサイ!』

 

秋山君と目野さんがリカを褒めちぎると、リカはわかりやすく照れる。

何というか、すごいスペックなのにこういうところは本当の人間の女の子みたいなのね。

 

「凄いじゃないか、リカ。さすがは俺の娘だ。早速結果を表示してくれ」

 

『はいちち!今回のデータ解析によって内通者と断定された人物は…………

 

 

 

 

 

ドォン!!!

 

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

突然、特別教室棟の方から大きな音が鳴り響いた。

ここに5人集まってるって事は…もしかして、今の音はネロと館井君!?

 

「はぎゃああああ!!?何です今の音は!?」

 

「落ち着いて、目野さん」

 

私は、軽くパニックを起こしている目野さんを落ち着かせた。

秋山君と加賀君とリカは、冷静に現状を分析している。

 

「今の…職員室の方からだったよね?」

 

「職員室の担当は…館井とネロだったな」

 

『二人に何かあったのかもしれマセん!行きマショウ!!』

 

「待って、マナ達はどうするの!?」

 

「とりあえず後だ。今は職員室に向かうぞ」

 

「え、ええ…」

 

私達は、音が響いた職員室へと急いで駆けつけた。

職員室に行くと、モノクマとモノDJが二人の前にいて、地面にはグングニルの槍が刺さっていた。

その後ろでは館井君が顔を真っ青にして呆然としていて、少しかすり傷を負ったネロが二匹を睨みつけていた。

 

「てめぇら……!!」

 

『ちょーーーっといきなり何をするんですかネロクン!!ボク達が一体何をしたっていうんですかねえ?』

 

「とぼけんじゃねえ…!だったら昨日のアレは何だ!?」

 

『昨日のアレ?ギャハハハハ!!何の事だかわかんねえなあ!!テメェの勝手な妄想で校則違反されちゃあ困るぜネロボーイ!』

 

「てめぇら、マジでブチ殺してやる」

 

モノクマとモノDJが笑うと、ネロは愛銃を引き抜いて二匹に銃口を向けた。

ネロはいつになく切羽詰まった様子で、ギリッと歯を食いしばりながら二匹に鋭い殺意を向けていた。

まずい、このままだと本当に校則違反になりかねない。

現に今だって、ネロは槍が掠って怪我を負っている。

ここで黙って見ていたらネロが死んでしまう。

私は、なりふり構わず職員室のドアを開けて叫んだ。

 

「ネロ!!何をしているの!?やめなさい!!」

 

私が叫ぶと、ネロはハッとした様子で私を見る。

 

「ヒイロ……!?」

 

私の叫び声に気をとられたネロは、二匹に向けていた銃口を下ろした。

するとその瞬間、モノクマとモノDJがニヤリと不気味に笑う。

 

『ギャハハハハハ!!!ヘェイ野郎共ォ!!よくぞここに集まってくれたなァ!!マジでグッドタイミングだぜYEAH!!』

 

『さてさてさーて!せっかく腐和サン達が集まってくれた事ですし?ここで重大発表ーーー!』

 

「っ!?おい、てめぇら何をする気だ!?」

 

『うぷぷぷぷ、元はと言えばボク達に反発したオマエがイケナイんだよ!オマエは素直にボク達の言う事を聞いとけば良かったのにさぁ!』

 

「てめぇらがそれを言うか…!!」

 

えっ…?

何?

反発とか、言う事を聞くとか、さっきから何を言ってるのこいつらは。

それに今、『重大発表』って言ったわよね。

まさか………

 

 

 

『はーい皆聞いてますかー!この前、オマエラの中に内通者がいるって話はしたよね?』

 

『今ここで、内通者が誰かを発表しちまうぜYEAHHHHHHHHHH!!!』

 

『オマエラを売ってボク達に内通してた裏切り者、その正体は……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテアクンです!』

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

………え?

 

嘘……

 

ネロが内通者…?

 

 

 

「っ…………」

 

モノクマが私達の前で発表すると、ネロの顔からはさぁっと血の気が引いていく。

そして、全てを諦めたように深くため息をついた。

後ろに立っていた館井君は、ネロの方を見て呆然としていた。

 

信じられなかった。

信じたくなかった。

でも本人の反応を見る限り、きっと真実なんだろう。

その場に居合わせた私達は、ほぼ全員が私と同じ反応だった。

唯一、リカだけは、それを知っていたのかリアクションが薄かった。

 

するとその時、ピコン、という音と共にリカが先程表示しようとしていた画面が空中に表示される。

そこには、ネロの顔写真と共に『ネロ・ヴィアラッテア 一致率 91.8%』と表示されていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り10名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

以上7名

 

 

 

 

 



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(非)日常編②

嘘でしょ……?

ネロが内通者…?

 

『んじゃ、ボク達から言いたい事はそれだけですので!ばいならー!』

 

『スィーユー!!ゴミクズ共ォ!!』

 

そう言ってモノクマ達は、その場から去ってしまった。

ネロと館井君は、その場で立ち尽くしていた。

 

「ネロ……」

 

「…今聞いた通りだ。お前らを売ってた裏切り者は俺の事だったんだよ」

 

ネロは、珍しく青ざめた表情でその場から去ろうとする。

私は、咄嗟にネロの左腕を掴んで止めた。

 

「待ちなさい。ここで退散なんて許さないわよ。どういう事か、きちんと皆の前で説明してちょうだい」

 

「……………わぁったよ」

 

私が言うと、ネロは全てを諦めたようにため息をつく。

私達が呆然としていると、秋山君が口を開いた。

 

「え…と、とりあえず、聲伽さん達も呼んで今すぐミーティングしようか」

 

「そうね…」

 

私達は、すぐにマナ達三人を食堂に呼んで早めの報告会をする事にした。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

私達が食堂で待っていると、しばらくしてマナ達が食堂に来た。

マナは、怪訝そうな表情を浮かべながら私に尋ねてくる。

 

「ねえ、緋色ちゃん。いきなり全員集合うてどげな事?何かあったと?」

 

「ものすごく重要な話よ。皆今すぐテーブルに座って」

 

「う、うん……」

 

私が言うと、マナは戸惑った様子で席についた。

すると他の二人もいまいち要領を得ない様子で席についた。

古城さんは、腕を組んで片眉を上げながら私に尋ねてくる。

 

「それで?何なのじゃ。大事な話とは」

 

「それはあなたの口から言ってあげなさい、ネロ」

 

私が言うと、ネロは深くため息をつきながら話し始める。

 

「……単刀直入に言う。内通者は俺だ」

 

「えっ………!?」

 

「何じゃと…!?お主、自ら進んで彼奴らに情報を流しておったのか…!?」

 

「ああ。今までてめぇらを騙してた事は、悪かったとは思ってるよ」

 

ネロが包み隠さずに言うと、マナと古城さんが驚く。

ネロは、帽子の鍔で目元を隠しながら淡々と語った。

すると、知崎君がどこからか取り出した爪切りで自分の爪を切りながらネロに話しかける。

 

「ふーん。やっぱりね。そうじゃないかと思ったよ。で?」

 

「え?」

 

「何でネロおにいはクマちゃん達の言いなりになってたわけ?内通者だの殺人鬼だのボクにあらぬ疑惑をふっかけた事、忘れたとは言わせないよ?」

 

知崎君は、バチン、と爪を切る音を立てながらネロを責め立てた。

するとネロは、組んでいた手をテーブルについて席から立ち上がった。

 

「………てめぇらに語る事は何も無えよ」

 

そう言ってネロは、食堂を去ろうとした。

私は、去ろうとするネロを止めて話しかける。

 

「ちょっと、どこ行くの?」

 

「部屋に戻ってくる。どうせてめぇら内通者となんか一緒にいたくねえだろ?」

 

「そんな事……!」

 

「もう仲良しごっこはウンザリなんだよ。そんなにお涙頂戴の茶番劇がやりたきゃ勝手にやってろ」

 

そう言ってネロは、一人で部屋へと戻っていってしまった。

結局、最初にネロと喧嘩した日と同じになってしまった。

せっかく学園生活を通してネロとも親睦を深められたと思ってたのに…

 

「私、連れ戻してくる」

 

「やめなよ腐和さん」

 

私がネロを連れ戻そうとすると、秋山君が止めた。

 

「せっかく腐和さんに内通を許すチャンスを貰ったのに、それを無碍にしたんだ。いくらあの人が本意じゃなくても、自分から俺達を遠ざけるような人なんかもう放っときなよ。それであの人がどうなろうと自己責任だよ」

 

「そうだったとしても…彼だって15日間私達と過ごした仲間なのよ?見捨てる事なんてできないわ」

 

秋山君は、ネロの事をきつく非難した。

モノクマが内通者の発表をした時は内通者を庇うような発言をしていた秋山君は、今ではすっかりネロを敵視していた。

彼の中ではもう、ネロの事は完全に見限ったようだ。

 

秋山君が冷め切った口調で言ってきたので、すかさず反論した。

確かにネロは、私達を裏切った内通者かもしれない。

でも、だからってここで切り捨てる事なんてできない。

亡くなった皆に、10人全員で生きてここを出るって約束したんだから。

するとその時、加賀君がコーヒーを飲みながら口を挟んだ。

 

「まあでも確かに放置は危険かもしれないな。奴が殺人を企てている可能性がある」

 

「!?」

 

「モノクマ達がただで内通者を俺達の中に放っておくと思うか?十中八九、『誰かを殺せ』という指示を受けている可能性が高い」

 

「そげんわけ…やったら何で今まで何もしてこんやったと!?」

 

「単に自分以外の誰かが殺人をしたから、誰かを殺す理由が無くなっただけかもしれないだろう?内通者だとバレた今、変な気を起こして殺人を犯しても不思議じゃない」

 

「……だとしたら、何故今まで普通に議論に参加していたんだ?」

 

「事件が起これば、奴もただの参加者だ。自分が生き残る為に真犯人を吊るしもするだろう」

 

加賀君は、コーヒーにミルクと砂糖を入れながら話した。

ネロの事は敵視はしていないようだけれど、殺人を企てている可能性を危惧してはいるようだった。

すると知崎君が口を挟む。

 

「えー、じゃあ縛りつけてトイレにでも監禁しておくって事!?」

 

「いや、その必要は無い。そもそも俺達にそんな事が出来るとは到底思えないしな。定期的に最低三人で安否確認をしに行くだけで十分だ」

 

加賀君は、冷静にこれからどうすべきかを話した。

ぬるめのミルクコーヒーを飲みながら、伏目がちに語る。

 

「……それに、もし万が一にでも奴に死なれたら俺が困る」

 

「え…?」

 

「あいつがモノクマの内通者なら、何か情報を知っているかもしれない。……まあ、奴はおそらく即席の内通者だから、大した情報は持っていないだろうが…それでも、奴だけが持っている情報に賭ける価値はある。奴にはいつか洗いざらい吐いてもらわなくてはな」

 

加賀君が言うと、秋山君が呆れながら言った。

 

「呆れた…君、そんな事言うキャラだっけ?」

 

「俺が生き残りたいだけだ。脱出の手掛かりになる事なら、たとえ敵だろうと利用するさ。俺はあいつと一緒に脱出を目指すつもりだが…君達はどうしたい?」

 

加賀君は、私達に意見を尋ねてきた。

もちろん、私の意見は決まっている。

 

「…私も加賀君に賛成。ネロが内通者だからって見捨てるのは私のプライドが許さないわ」

 

「うん!うちも!ネロくんもうちらの仲間やけんね!」

 

「ガハハハハ!!老け顔のくせにたまにはいい事を言うではないか!!」

 

「ボクも緋色ちゃんがいいっていうならそれでいいよ」

 

『リカはちちの判断に委ねマス』

 

私、マナ、古城さん、知崎君、リカは加賀君の意見に賛成だった。

でも他の三人は違うみたいだった。

 

「はあ…君達、この期に及んでそんな事言うんだね。あんな奴放っとけばいいのにさ」

 

「……俺も。あいつは危険だから首を突っ込むべきではない…と、思う」

 

「私も、正直内通者と一緒にいるのは嫌ですね!!」

 

他の三人は、ネロを完全に敵視しているようだった。

すると加賀君は、ため息をついて言った。

 

「まあ君達がどう思おうが勝手だがな。それよりミーティングをしないか?せっかく探索をしたわけだしな」

 

「そうね」

 

私達は、早速探索の報告会を始めた。

私達三人が最初に報告をする事になった。

 

「私達からいいかしら?音楽室は、器楽室と声楽室に分かれていて、その間に音楽準備室があったわ」

 

「ベリィィィイマァアアアベラスな機械ちゃん達もありましたよ!!」

 

「…俺が書いた覚えのない楽譜が置いてあった。俺達からの報告は以上」

 

私達三人が報告をすると、次は館井君が報告をした。

 

「……職員室に気になる資料が置いてあった」

 

そう言って館井君が見せたのは、『未来ヶ峰学園77期新入生名簿』と書かれた名簿だった。

未来ヶ峰学園は、全学年A〜C組まであって、A組とB組には本科生、そしてC組には予備学科生が配属されている。

早速、館井君が見せてくれた名簿に目を通してみた。

 

 

 

A組 

 

担任:元・【超高校級の生徒会長】腐和燈

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山楽斗

【超高校級の魔術師】加賀久遠

【超高校級の幸運】聲伽愛

【超高校級の考古学者】古城いろは

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目粧太

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰満

【超高校級の脚本家】白瀬クロヱ

【超高校級の聖母】聖蘭マリア

【超高校級の獣医】小鳥遊由

【超高校級の大工】館井建次郎

【超高校級のバレーボール選手】玉越翼

【超高校級の泥棒】知崎蓮

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

【超高校級のボーカリスト】響歌音

【超高校級の機械技師】目野美香子

【超高校級の忍者】闇内忍

 

 

 

B組

 

担任:元・【超高校級の保健委員】治岡健介

 

【超高校級のパティシエール】甘宮シフォン

【超高校級のドラマー】大音天鼓

【超高校級のバスケットボール選手】籠原俊治

【超高校級のシンセシスト】鍵崎七音

【超高校級のチェスプレイヤー】駒井歩

【超高校級のカーレーサー】車力走馬

【超高校級のダイバー】深海もずく

【超高校級の騎手】セシリオ・カバーリョ

【超高校級の陶芸家】土谷雅武

【超高校級の絵本作家】栗花落ももこ

【超高校級のベーシスト】音基奏

【超高校級のロックギタリスト】弾野花音

【超高校級のロックギタリスト】弾野音花

【超高校級のアルバイター】盛内商悟

【超高校級の怪談師】柳淳一

【超高校級のウェブデザイナー】四葉千早

 

 

 

見てみると、A組の担任には私の母さんの名前があった。

どうなってるの…?

私の母さんは、私が幼い頃に亡くなったはずなのに…

それに、私の名前だけが無い。

才能不明だった知崎君ですら、ちゃんと名前が書かれているのに…

これは、どういう事なのかしら…?

名前が無い私の代わりに『白瀬クロヱ』って生徒の名前があるけど、これは一体…?

 

「ここに名簿がある…という事は、やはり俺達は既に卒業しているのか」

 

「モノクマ達のでっちあげかもしれませんよ!!」

 

『それはないと思いマス。この名簿は、間違いなく未来ヶ峰学園の教員によって書かれたもののようデス』

 

「リカが言うならそうなのでしょう!!」

 

切り替え早いわねこの子……

すると、加賀君が手を挙げて言った。

 

「次は俺達が報告していいか?」

 

「ええ、どうぞ」

 

『アテクシは、学園のネットワークからマップを抜き取る事に成功しマシた』

 

「!?」

 

「なぬ!?という事は、ついにこの学園の全貌がわかるのじゃな!?」

 

『はい。こちらをご覧クダサイ』

 

そう言ってリカは、空中にマップを表示した。

校舎が6階建て、寄宿舎と研究棟が5階建てになっていて、まだ5階以上は開放されていない。

 

『どうやらこの学園は、校舎が6階建て、寄宿舎と研究棟が5階建てのようデス』

 

「なるほどね…裁判を乗り越えるたびに1階ずつ開放される、と。という事は、黒幕は最大で6回の学級裁判を想定しているのかしらね」

 

「まあそうだろうな」

 

私が自分の憶測を話すと、加賀君が答えた。

という事は、学園の全貌が明らかになるにはあと3回学級裁判を乗り越えないといけないのか…

…いいえ、そんな事にはさせないわ。

絶対に脱出口を見つけて、全員で脱出するのよ!

 

「続きいいか?」

 

「ああ、どうぞ」

 

「化学室には、実験器具や化学薬品等が置いてあったぞ。あとは化学関係の本が充実していたな。広くて設備が充実している事以外は一般的な化学室と変わりは無いようだった」

 

『化学準備室は、実験器具を保管しておく用の倉庫になっていマシた』

 

「毒薬もあったぞ。一応ガスマスクや防護服、ドラフトチャンバーも完備されていたが、危険な薬品を使う時は俺に一声かけるように」

 

毒薬か…

殺人に使われたりなんかしたらって思うとゾッとするわね。

 

『化学室の薬品を捨てるのは校則で禁止されていマス。化学室以外の場所に放置するのは薬品の投棄と見做されオシオキされるそうデス。それから、保健室から持ち出せる薬品は1種類までだそうデス。理事長曰く、『せっかく開放した化学室を使ってもらわなきゃな!』だそうデス』

 

リカの発言を受けて手帳を調べてみると、校則が追加されていた。

 

 

 

十九、化学室の薬品の投棄を禁止します。化学室以外の場所に放置した場合、投棄と見做されます。持ち出す際は必ず肌身離さず持ち歩きましょう。

 

二十、保健室から持ち出せる薬品は1種類までとします。

 

 

 

「ああ、それと化学室でこんなものを見つけた」

 

そう言って加賀君は、白衣のポケットから日誌を取り出した。

 

「日誌…?」

 

「読むぞ」

 

 

 

5月20日

 

計画は順調に進んでいる。

我々は、人間の記憶をデータ化して書き換える事に成功した。

実験段階として、事故でトラウマを負った人間から記憶を消してトラウマを治療したケースや、事故で記憶を失ったスポーツ選手に全盛期の技術を思い出させたケースが挙げられるが、いずれも問題なく経過は良好である。

この技術を使えば、ついに我々の悲願が達成する。

 

 

 

6月28日

 

ついに我々の計画は最終段階に突入した。

人間の複製体に遺伝子改造と記憶の移植を施し、人工的に超高校級の才能を生み出す事に成功した。

しかし問題は、過度の改造に耐えられる遺伝子を持つ人間が限られているという点である。

そこで我々は、全国の高校生の遺伝子検査を行い、最も適合率の高かった高校生を【超高校級の希望】と称して未来ヶ峰学園に編入させる事にした。

 

 

 

「……何よ、これ…」

 

「うむ!記憶の改竄だの遺伝子改造だの、何が何だかさっぱりな話ばっかりじゃな!」

 

「この日誌に書かれている事がどこまで真実かはわからんが、情報の一つとして頭の隅に留めておいてもらいたい。俺からの報告は以上だ」

 

加賀君が報告をすると、皆が各々考え込んだ。

まあ、そりゃあいきなりこんな話をされたら混乱するのも当然よね。

ええっと…まだ報告をしていないのは、マナ達だけだったわよね?

 

「ええと…次はマナ達の番よね?」

 

「あのー…それなんやけどなぁ…?」

 

「何、どうしたの?」

 

「いやぁあの…えっと…その……何と言いますか、あまりにも収穫がなしゃすぎたもんやけん、えっと………」

 

マナは、ものすごく何かを言いづらそうにしていた。

…あー、うん。

大体察しがついたわ。

 

「……もしかしてあなた達、探索もせずに遊んでたの?」

 

「ひいいいいい!!ごめんなさぁぁぁい!!」

 

「仕方ないじゃろうが!!何も収穫が無かったんじゃから!!」

 

「メッチャ楽しかったんだから!VRゲームとかもあったんだよ?知ってる?」

 

私が尋ねると、マナはビクッと肩を跳ね上がらせ、古城さんは逆ギレし、知崎君はノリノリで答えた。

やっぱり…私の悪い予感が的中してしまったわね。

私が頭を抱えていると、秋山君が深くため息をついて口を開く。

 

「あのさぁ……」

 

「まあ俺達も好き勝手探索していたのは同じだし、何も収穫が無かったなら仕方ないんじゃないか?」

 

「加賀君!」

 

「気になる事でもあるなら各自探索に行けばいい。どのみち俺はリカにゲームセンターを調べてもらうつもりだったからな」

 

『お任せクダサイちち!』

 

加賀君があっさりゲームセンターで遊んでいた3人を許すと、秋山君が呆れ返った。

今までお互いの頭脳で支え合っていた二人が、ちょっとした意見の違いから仲違いを起こすようになってしまった。

こんな事が続くようなら、この先ちょっと不安ね……

 

「あの、私お昼作ってくるわね。皆お腹空いてるでしょうし」

 

「……俺も行くよ」

 

『アテクシも参加しマス!』

 

私が昼食を作る為に立ち上がると、秋山君とリカも昼食作りに参加した。

私は、未だにイライラしている秋山君に声をかけた。

 

「秋山君…大丈夫?」

 

私が尋ねると、加賀君は俯きながら口を開く。

 

「……ごめん。ちょっとイライラしてた。ネロさんが俺達をモノクマに売ったせいで歌音や玉越さん達が死んだって思うとさ…やっぱり、何でそんな奴と一緒に脱出しなきゃいけないんだって思っちゃうよ」

 

「あ………」

 

「わかってるんだよ。君や加賀君が正しいって事は。ネロさんも本意じゃなかったんだろうし、ちゃんと素性を聞いて受け入れてあげなきゃいけないんだろうけどさ。…でも俺はそんなにできた人間じゃないから、歌音を殺した奴等と手を組んだって事実が引っかかって、どうしたってあの人を許す事ができないんだ」

 

…そっか。

皆とはここで初めて出会った私とは違って、秋山君は響さんと幼馴染みだったんだ。

今なら、ネロが内通者だと分かった途端に敵視してきた意味がわかる。

幼馴染みをあんな形で殺される原因を作ったかもしれないネロを、どうしても許す事ができないんだ。

私は、そうとは知らず秋山君の意見を聞こうとしなかった自分が恥ずかしくなった。

 

「…秋山君。ごめんなさい。そうとは知らず、あなたを悪者にするような空気を作ってしまって…」

 

「……いや、いいよ。実際、皆で一緒に脱出したい人からしてみれば俺は異常なんだろうからね」

 

「あの…」

 

「殺そうとは考えてないよ。俺はただ、たとえ脱出口を見つけてもあいつを外に出したくないだけだから」

 

「……そう」

 

秋山君が自分の意見を語ると、私は静かに俯いた。

そんなのはダメだ、なんて言えなかった。

 

「ああ、暗い雰囲気になっちゃったわね。ご飯作らないと」

 

「うん」

 

私達三人は、急いで昼食を作り始めた。

今日の昼食には、カプレーゼ、タコのマリネ、ボンゴレビアンコ、ゴボウのスープ、アフォガードを作り、食堂にいたネロ以外の9人で昼食を食べた。

…ネロの分は後で持っていってあげよう。

私達は、昼の報告会を兼ねた昼食会を済ませると、各自自由に探索を始めた。

 

「緋色ちゃん!一緒に探索しよ!」

 

「ええ。……あ、ちょっと待って」

 

「何?」

 

「知崎君、あなたも一緒に探索に参加してもらうわよ」

 

「えー、何で?」

 

「あなたへの疑惑が晴れたといっても、あなたを一人にしたら何するかわからないからよ」

 

「ふーん。まあボクは緋色ちゃんやマナちゃんと探索できるならそれでいいけどさ」

 

私は、ネロの分の昼食を持っていった後、マナと知崎君と一緒に探索をする事にした。

まずは、三人とも調べていなかった職員室と化学室を調べる事にした。

 

 

 

ーーー 職員室 ーーー

 

職員室は、一般的な学校と特に変わりはないようだった。

教員用の机が並んでいて、その上にパソコンがずらりと並んでいる。

壁には電話が固定されていて、各教室に電話がかけられるようになっている。

でも、どうやら外に助けは呼べないようだ。

 

「館井くんが報告してくれた以上ん収穫は無かったね」

 

「そうね」

 

「わーいメダルいっぱいー」

 

ここには何枚かメダルが落ちていたくらいで、特に収穫といった収穫もなかった。

次は化学室を調べてみようかしらね。

 

 

 

ーーー 化学室 ーーー

 

「………へぇ」

 

化学室は正面に大きな黒板が設置されており、その反対側にはドラフトチャンバーや冷蔵庫などの設備が設置されていた。

机は物理室とは違って縦と横に整列されていて、ちょうど机の上からは換気口のアームが伸びていて、机には薬品を洗い流す用の流しが設置されている。

机の引き出しを引いてみると、ちょうど机に対応した実験器具が収納されていた。

壁一面には、化学の実験に使うと思われる機械や実験器具が並んでいて、後ろの本棚には化学関係の本がズラリと並んでいる。

 

「なぁるほど。こりゃ加賀くんが喜ぶわけやなあ。うちにはいっちょんわからんけど」

 

「ねえねえ、これは何に使うんだろうね?こっちのスイッチ押すとどうなっちゃうのかなぁ?とっても不思議〜!」

 

「隣の準備室も見てみましょう」

 

「うん!」

 

私達は、隣の化学準備室も調べた。

知崎君が勝手に化学室の機械に触ろうとしていたので、襟首を掴んで無理矢理化学準備室にひきずっていった。

化学準備室には、実験器具や薬品が所狭しと並んでいる。

ダンボールの中には、ガスマスクと防護服が入っていた。

化学薬品は…うわ、結構毒薬とかもあるわね。

 

「ねえ緋色ちゃんマナちゃん!見て見てー!」

 

私が知崎君の声のした方を振り向くと、知崎君が今にも二種類の化学薬品を混ぜようとしていた。

あれはまさか…!

 

「ちょっ、何をしてるの!?やめなさ……

 

 

 

 

 

ドカァン!!!

 

 

 

 

「……………」

 

突然、化学準備室が爆発した。

私が恐る恐る目を開けると、知崎君とマナが爆発に巻き込まれてアフロヘアーになっていた。

 

「にゃはははは!!実験って面白いね!」

 

「もぉ〜!どげんしてくれるばい!!」

 

知崎君があっけらかんとして笑っていると、マナがカンカンに怒った。

…というか、今の爆発で服が破れて色々とまずい事になっている。

 

「きゃはは、マナちゃんごめ〜ん!でも若気の至りって事で許し…「もうあんたは立ち入り禁止!!」

 

知崎君がヘラヘラ笑いながら謝ってきたので、私はカンカンに怒鳴りつけた。

やっぱり、これから先知崎君は一人にしちゃいけないわね。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その後は三人で音楽室の探索をし、校舎の探索が終わった。

時間もまだあるし、私がまだ行っていない寄宿舎4階のゲームセンターの探索をする事にした。

 

 

 

ーーー ゲームセンター ーーー

 

………うわ、すごい音ね。

1フロア丸ごとゲームセンターになってるのか。

クレーンゲーム、シューティングゲーム、パズルゲーム、リズムゲーム…本当に色んなゲームがあるのね。

 

「ここのゲームはね、1メダルで1プレイできるらしいよ!」

 

「そうなの?」

 

「うん!ボクは探検で集めたメダルがいっぱいあるから、探索時間中にここでゲームしてたんだ!」

 

そう言って知崎君は、ショルダーバッグの中に入った大量のメダルを見せてきた。

短時間でこんなに…

流石は【超高校級の泥棒】ね。

 

「ちなみにメダルの換金はそこの換金所でできるから緋色ちゃんも遊んでいきなよ!」

 

そう言って知崎君は、ゲームセンターの換金所を指差した。

ええっと、まず手帳のウォレットから引き出す金額を選択して…あ、メダルが出てきた。

…さてと。

どこから調べようかしら?

…あれ?

あのクレーンゲーム、何か紛れ込んでるわね。

うーん、あれはプレイして落とさないと取れそうにないわね。

仕方ない、一回プレイしてみるか。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

5回目。

ダメだ、全然取れない。

どんだけしつこく絡まってんのよ…!

チッ、このぬいぐるみが邪魔ね。

これを先にどかして……

 

「あの、緋色ちゃん…」

 

「ちょっと黙ってて。集中できない」

 

「あ、ごめんなさい」

 

今度こそここであれをゲットしたいところね…

あともうちょっと…

 

「あっ」

 

ダメか………

私ってゲームの才能無いのかしらね。

仕方ない、諦めるか…

 

「ボクやろーか?」

 

「え?」

 

「ボクいっぱいメダル持ってるからまだまだプレイできるよー。ええっと、あれが欲しいんだっけ?」

 

そう言って知崎君は、私が欲しい景品を指差した。

知崎君は、景品を眺めながら攻略法を考えていた。

 

「うんうん、なるほどね。緋色ちゃんけっこういい線いってんじゃん!あと二、三回やってれば取れてたと思うよ」

 

「え、そうなの?」

 

「うん。ボク一回やってみるから見ててよ」

 

そう言って知崎君は、メダルを一枚入れてクレーンゲームに挑んだ。

クレーンゲームを始めた瞬間、知崎君は何かのスイッチが入ったように雰囲気が変わる。

景品をじっくりと眺めながら、一切迷いのない手つきでクレーンを動かしていく。

何というか、ゾーンに入ったってところかしらね。

知崎君は、見事な手捌きで景品をゲットした。

 

「はい取れたぁ〜」

 

「凄いわね」

 

「うん!まるで【超高校級のゲーマー】みたい!」

 

「えへへ〜、すごいでしょぉ〜」

 

知崎君は、いつになくポワポワとした雰囲気で話していた。

何だかいつもの彼じゃないわね。

やけにのんびりしてるし、何というか、人格ごと入れ替わってるというか…

………もしかして、もう既に才能を思い出し始めてるのかしら?

だとしたら、今のも盗んだ才能を使ったのかしら…?

 

 

 

「緋色ちゃん!」

 

「!」

 

「ねえどうしたの?」

 

「…いえ、何でもないわ」

 

知崎君を見ると、いつもの彼に戻っていた。

今のは気のせいだったのかしら…?

 

「緋色ちゃんこれあげるー」

 

そう言って知崎君は、私がずっと取りたがっていた景品を差し出した。

景品の包みを取ってみると、中にはタバコが入っていた。

あんなに苦労してやっと取ったものがタバコって…

…仕方ない、ネロにでもあげてこようかしらね。

 

「ねえ、そろそろ夕ご飯ん時間やし行こうや」

 

「…そうね」

 

「えーボクもっと遊びたいー!でもご飯なら仕方ない!」

 

私達は、昼食をとりに食堂に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に行くと、既に秋山君、館井君、リカの三人が準備をしてくれていた。

今日の夕食は、ご飯、生姜焼き、豆腐の味噌汁、長芋の煮物、キュウリの浅漬けというメニューだった。

夕食の後は、軽めのミーティングをしてネロの生存確認をしに行き、その後解散となった。

 

 

 

ーーー 腐和緋色の個室 ーーー

 

……今日も色々あったわね。

ネロが内通者だと発覚したり、学園について色々とわかってきたり…

明日に備えて、今日はもう寝よう。

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『えー、昔々、ソニービーン一族という人喰い一族がいました。きっかけは、とある夫婦でした。その夫婦はとても自堕落な性格で労働を嫌いました。そこで旅人を襲って金品を奪う事を思い付きましたが、それでも食うのに困ったため、とうとう2人は旅人を殺して食べてしまいました。洞窟で暮らしていた二人は沢山の子供を産み、近親相姦を繰り返していくうちに大家族へと発展していきました。でもある日、とうとう悪事が露見して、全員死刑となりましたとさ!』

 

『いやぁ〜、自然界じゃ共食いは当たり前の事だが、マジで共食いする人間っているんだな!』

 

『うぷぷぷ、人は一度追い求める事を覚えたら、それをやめる事はできないんだよ。ちなみに一説によるとその一族には生き残りがいたらしいけど、ソイツらがどうなったのかは誰も知らないんだよね!』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り10名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

以上7名

 

 

 

 

 



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(非)日常編③

癒し役と賑やかし役が2章3章で一気に減ったから全体的に暗いですね…
でもそれが良き







十七日目。

昨日探索して疲れたからか、今日は何だかよく眠れた気がする。

朝の支度を終えて趣味のミステリーを読んでいると、あのモノDJの喧しいアナウンスが鳴り響いた。

 

『ヘェイグッッモォォォニン!!ゴミクズ共ォォォ!!!朝の7時をお知らせするぜイェア!!!今日も張り切ってけェ!!!』

 

ホンット毎日毎日うるっさいわね。

ストレスったらありゃしない。

私は、アナウンスが鳴ってすぐに部屋を出て朝食の手伝いをしに食堂に行った。

 

 

 

ーーー 食堂 ーー

 

「おはよう」

 

「おはよう、腐和さん」

 

私が食堂に行くと、既に秋山君が来ていた。

秋山君は、既に食堂の掃除やテーブルセッティングを始めていた。

今日はマナ、館井君、リカの三人が厨房で朝食を作っていた。

私も朝食の準備を手伝っていると、時間通りに加賀君、古城さん、知崎君、目野さんが来た。

…やっぱり今日もネロは来てないか。

 

「困ったわね」

 

「腐和さん、もう放っときなよ。ここにいる皆は無事集まれたんだしさ」

 

「そうはいかないわよ。後で私が朝食を届けに行くわ」

 

私は、朝食会が終わったらすぐにネロに朝食を届けに行く事にした。

今日の朝食は、ご飯、鰆の照り焼き、フキの味噌汁、タマネギと絹さやの卵とじ、山菜の味噌漬けというシンプルなメニューだった。

昨日リクエストしておいた和食セットを美味しく頂き、皆で朝の報告会を済ませた後、私はネロの部屋の前に洋食セットを置いておいた。

昨日は昼も夜もちゃんと食事に手をつけられてはいたけど、流石に3回も食事会に参加しないとなると心配ね…

 

「緋色ちゃーん、探索いこーよ」

 

「……そうね」

 

私は、今日もマナと知崎君と一緒に探索をする事にした。

今日は昨日調べなかった研究棟に行ってみようかしらね…

 

 

 

ーーー 研究棟 ーーー

 

エレベーターで4階に行くと、目野さん、館井君、ネロの研究室が並んでいた。

私達は早速、目野さんの研究室に行く事にした。

 

 

 

ーーー 【超高校級の機械技師】の研究室 ーーー

 

目野さんの研究室の入り口は鉄製の扉になっていて、彼女のシンボルとも言えるスパナとドライバーの絵が描かれている。

私が部屋の扉をノックしようとした、その直後だった。

 

 

 

ドカァン!!!

 

 

 

「「「!?」」」

 

突然研究室から大爆発が起こり、爆炎と黒煙が上がった。

私と知崎君は運良く爆破を免れたものの、マナは爆発に巻き込まれて服が消し飛び、さらには爆発のせいで芸術的な転び方をして色々と際どい事になってしまっていた。

…何と言うか、デジャヴね。

ご愁傷様。

 

「きゃはは!まーたマナちゃんがエロエロな事になっちゃったねぇ!ねえねえ何でそんな事になっちゃうの?不思議不思議!」

 

「うわあああん!!なしてうちだけこうなると〜!?」

 

知崎君がマナを揶揄っていると、マナは困り果てた。

流石に目のやり場に困るので、私の上着を貸してあげた。

するとその時、爆発のせいか煤まみれになった目野さんが高笑いしながら出てくる。

 

「ハッハア!!!いやはや、まさか外に人がいるとは思いませんでした!!ごめんなさい!!」

 

「目野さん…あなた、今何やってたの?」

 

「新たな電力供給システムちゃんを作ろうとしていたのですがね、失敗しました!!よくある事です!!アッハッハ!!」

 

『よくある事』って…

あれだけの爆発起こしといて、よくそんなあっけらかんとしていられるわね。

殺人事件や学級裁判ではあんなに怖がってたのに、自分の趣味の事となると平気で危険な事をできてしまうあたり、いい意味でも悪い意味でも職人魂といったところかしら。

 

「で!!あなた方は何故ここにいるんです!?」

 

「研究棟の探索をしていたの。もし良かったら研究室の中を見せてもらえない?」

 

「そういう事でしたらええどうぞ!!私の機械ちゃん達を見せてあげましょう!!」

 

そう言って目野さんは、私達を研究室の中に入れてくれた。

目野さんの研究室の中はまさに機械加工工房となっていて、様々な部品や機械が所狭しと置かれていた。

作業中のデスクから漂うオイルと金属の匂いや、金属同士が擦れて火花が散る音がして、部屋の中はとても賑やかだ。

部屋の中には、目野さんが作ったと思われる機械類が並んでいて、どれも芸術品のようだった。

目野さんは、まるでサーカスのパフォーマンスでもするかのように、リズミカルかつスピーディーに機械部品を組んでいた。

 

「わぁ〜、美香子おねえすごいねぇ!まるで楽器でも演奏してるみたい!」

 

「あれでちゃんと組めてるのかしら…?」

 

「できました!」

 

そう言って目野さんが得意げに見せてきたのは、機械でできた義手だった。

 

「メカアームちゃん第53号です!!これは筋電義肢といってですね、神経と接続する事でまるで自分の腕のように動かす事ができるのです!さらにさらに!深海1万mの水圧にも耐え、形状記憶合金を使用しているので約百通りの変形が可能なのです!!接合部分と表面は人体に優しい素材でできているので、金属アレルギーの方でもご使用いただけます!それだけではなくてですね!!このボタンを押すと何とマッハのロケットパンチを放つ事もできるのです!!」

 

そう言って目野さんが手元のスイッチを押すと、義手が火を吹いて飛び上がった。

義手は天井目掛けて一直線に飛んだかと思うと、天井に激突して粉々に砕けた。

 

「うわーーーん!!私のメカアームちゃんがあああ!!」

 

「理不尽!!」

 

目野さんは、自分で義手を壊しておいて、何故か知崎君にスパナで殴りかかってきた。

…うん、私も理不尽だと思うわ。

目野さんの奇行が激しすぎてあの知崎君がツッコミ役になってるのが、何というかカオスね…

 

 

 

ーーー 【超高校級の大工】の研究室 ーーー

 

マナの着替えが終わった後、私達は館井君の研究室に入る事にした。

館井君の研究室は、木製の扉だった。

扉には、彼の才能をイメージした大工道具のイラストが描かれている。

私は、一応ノックをしてから彼の部屋に入る事にした。

するとすぐに館井君が出てきてくれた。

 

「……むっ。お前達か。どうした?」

 

「今、研究棟の探索をしてるの。迷惑じゃなければ研究室の中を見せてもらえないかしら?」

 

「それは別に構わんが…何も面白いものは無いと思うぞ?」

 

そう言って館井君は、私達を研究室の中に入れてくれた。

…何だか、目野さんの奇行を目の当たりにした後だからか、常識人で良識人の彼の存在が本当にありがたく感じる。

 

「ありがとう。じゃあ少しお邪魔させてもらうわね」

 

私達は、館井君の部屋に入った。

館井君の部屋の中は、ログハウス風のアトリエになっていて、デスクや棚などは全て木製のものが置かれていた。

壁一面に大工道具がずらりと並んでいて、館井君が描いたと思われる図面が棚の中に積まれていた。

何というか、職人さんの部屋って感じね…

 

「館井くんの部屋は全部木でできとーんやなあ!」

 

「やっぱり才能が大工さんだから?ねえそうなの?どうなの?知ってる?」

 

「これは俺の才能…というよりは、俺の趣向に合わせた造りになっているのだろうな」

 

「え?」

 

「俺は自然が好きだからな。俺自身が古い日本家屋で生まれ育った事もあって、木造建築が一番落ち着くんだ。この研究室は、俺達が最も才能を発揮できる環境を完備してある……のだと思う」

 

なるほどね…

館井君が木造建築が好きだから、より集中できる環境で才能を発揮できるように、研究室の内装も木造になっているのね。

 

「ねえ、それは今何をしてるの?」

 

館井君は、作業用のデスクに紙を広げて何かを描いていた。

見たところ、タワーか何かの図面のようだ。

 

「ああ、図面を書いているんだ」

 

「図面?」

 

「これから建てる予定だった建物の図面だ。どうしても作業をしていないと落ち着かないからな。気分を落ち着かせる為に、頭の中にあった建築物を図面に起こしていたんだ」

 

館井君は、机の上の図面と向き合いながら言った。

寸分の狂いもなく、図面が描き記されていく。

流石は【超高校級の大工】ね…

私が傍から図面を見ながら感心していると、館井君が少し愚痴をこぼす。

 

「本当は実際に身体を動かして測量や建築の下準備をしたかったんだが……こんな状況だから致し方ない」

 

「そうね」

 

やっぱり館井君も、争いを避ける為にここで暮らすという判断をしていたけど、やっぱり現状には窮屈さを感じていたのね。

私達は、館井君の研究室を少し探索した後、すぐに隣のネロの研究室に向かった。

 

 

 

ーーー 【超高校級のマフィア】の研究室 ーーー

 

ネロの研究室は、何というか、19世紀のヨーロッパを思わせる重厚感のある両開きの扉があった。

扉には、ネロの所属しているガラッシアファミリーの紋章が描かれている。

私が部屋のドアをノックして一応中にネロがいるかどうかを確認しようとした、その時だった。

 

「何の用だ」

 

中にいると思われるネロが、私達に向かって話しかけた。

私は、研究室の中を見せてもらおうと思い、ネロに声をかけた。

 

「研究棟の探索をしているのだけれど、迷惑じゃなければ中を見てもいいかしら?」

 

私が声をかけると、中にいたネロが答えた。

 

「………勝手にしろ」

 

ネロからの許可が出たので、私達はネロの研究室を探索する事にした。

ネロの部屋は全体的にシックな装いで、ペルシャ絨毯の上に高級感のあるソファーとガラステーブルが置かれている。

後ろの壁にはマフィアの勢力図を書き記した地図が、そして両側の壁には銃やナイフなどの武器が置いてあった。

さらには、地図の横にはネロのお気に入りと思われる帽子がいくつか掛けてあった。

 

「ここは……」

 

「多分、俺のファミリーのアジトをモチーフにしてるんだろうなァ。ボスは小洒落たもんが好きな人だったから、こういうアンティークとかを買い揃えてたのさ。俺は学がねえから良さがさっぱりわからねえがな」

 

「へえ…」

 

食峰君の時もそうだったけど、その人が前に活動していた場所をモチーフにしているっていうのはあるわよね。

多分、その人が才能を最大限発揮する為の工夫なのでしょうね。

ふとガラス製のローテーブルの上に目をやると、高級そうな葉巻の箱が置いてある。

 

「…あれ?あなた、葉巻吸う人なの?」

 

「まあな。本当は葉巻も嗜むんだが、ボスが嫌いだからな。自分の部屋でたまに嗜む程度にしてんのよ」

 

「へえ…」

 

「せっかく開放してもらった研究室を使わねえのも何だし入ってみたんだが、案外悪くねえな。ここにあるもんは俺に馴染む」

 

そう言ってネロは、部屋を全体的に眺める。

ふとネロの方を見てみると、ローテーブルの上には分解された銃の部品が置いてあった。

 

「ねえ、ネロくん。今何しとーと?」

 

「銃の手入れだ」

 

ネロが答えると、マナがビクッと肩を跳ね上がらせる。

…そりゃあ、内通者だって聞かされた後で銃の手入れをしてるなんて聞いたらいい想像はしないわよね。

ネロは、小さくため息をつきながら口を開いた。

 

「…別に殺そうだなんて考えてねえよ。ただの職業病だ。銃を手入れしてねえと落ち着かねえんだよ」

 

「そう……」

 

やっぱり、平静を保っていたネロも、いきなりこの閉鎖空間に閉じ込められて少なからず追い詰められていたのね。

私がそんな事を考えていると、知崎君が銃の部品に触ろうとする。

 

「ねえねえネロおにい!これはなあに?」

 

「触んじゃねえ」

 

知崎君が銃に触ろうとすると、ネロが威圧した。

私も、知崎君の襟首を掴んで止めた。

 

「知崎君、無闇に人の部屋にあるものを触らないの」

 

「ぶー…」

 

私が注意すると、知崎君は頬を膨らませて不貞腐れた。

ネロは、威圧こそしていたものの、知崎君に対して嫌悪感はない様子だった。

…あれっ?

ネロってひょっとして、子供が嫌いなんじゃなくて……

 

「あ、いけない。もう昼食の時間だから行かないと」

 

「あー!そういえばそうだったね!」

 

「先行ってくるわね。ネロ、あなたもたまには来なさいよ」

 

私は、他の皆に声をかけて先に厨房に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂では、既に秋山君とリカが食事の準備をしていた。

館井君は、食堂のテーブルセッティングをしてくれている。

私も早く準備しないと…

4人で昼食の準備をしていると、他の5人も集まってくる。

 

「二人とも、ネロは?」

 

「呼んだけどつまらんかったばい。ホント頑固ばいね」

 

「そう…」

 

今度こそ来てくれると思ってたけど、ダメだったか…

やっぱり、内通者だってバレたから皆と一緒に居づらいのかしらね。

今日の昼食はトルコ風ピラフ、豆のスープ、トマトとキュウリと唐辛子のサラダ、鶏肉のヨーグルト焼き、アシュレ風プディングといったエスニックなメニューだった。

ミーティングの後、私はネロの部屋の前に昼食を届けに行き、各自自由探索の時間となった。

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

私は、昨日の探索とゲームで稼いだメダルを手に、購買部に向かった。

色々と必要なものを買い揃えて、余っていたメダルでモノモノマシーンを引いてみた。

出てきたのは、黄金のカナヅチと零戦プラモデルだった。

うーん、誰にあげたら良いものか…

 

 

 

ーーー 4ーA教室 ーーー

 

「……?」

 

A組の教室には、既に誰かいるみたいだ。

私は、A組の教室のドアを開けて中にいた人に声をかけた。

 

「あなたも探索中?」

 

私が声をかけて振り向いたのは、館井君だった。

 

「むっ……腐和か。実は今、メダルが落ちていないか探していたところだったんだ」

 

「メダルなら、ゲームセンターのゲームで稼げばいいんじゃない?」

 

「……恥ずかしい話なんだが、俺はあまりゲームが得意ではないからな。こうやって地道に集めていた方が早く貯まるんだ」

 

なるほどね…

あ、そうだ。

館井君なら、このカナヅチぶんじゃないかしら?

 

「館井君。渡したいものがあるのだけど、いいかしら?」

 

「むっ…俺にか?」

 

私は、モノモノマシーンで手に入れた黄金のカナヅチを館井君にプレゼントした。

すると館井君は、僅かに目を見開いて驚く。

 

「……これを俺に?」

 

「ええ。モノモノマシーンで手に入れたの。あげるわ」

 

「でも…本当にいいのか?」

 

「私は持っていても使わないし…せっかくなら館井君が持っていた方がいいんじゃない?」

 

「そうは言っても、何か礼を……」

 

「要らないわよ。お礼目当てであげたわけじゃないし」

 

私が言うと、館井君はおずおずとカナヅチを受け取った。

 

「そういう事なら…ありがたく受け取っておこう」

 

館井君は、少し照れ臭そうにしていた。

どうやら気に入ってくれたようだ。

私は、自由時間を館井君と過ごす事にした。

A組の教室で、向かい合わせに座って一緒に話をした。

 

「館井君はどうして大工になったの?」

 

「……俺の家は、代々大工業を営んでいたんだ。父の仕事を幼い頃から間近で見ていた俺は、父の仕事に憧れて育ってきた。館井家の長男だった俺は、当然家業を継いだ。俺自身は父の仕事を継いだ事を誇りに思っているし、むしろ俺がうちの家計を支えていきたいと思っているんだ」

 

なるほどね…

元々継ぐ事が決まっていた仕事だけど、奇しくもそれが自分の望んでいた天職だったと。

憧れていたお父さんと一緒に仕事ができて、館井君もさぞ誇らしいでしょうね。

 

「…だが、実は俺の家は、俺が家業を継ぐまでは赤字だったんだ」

 

「え…?」

 

「ウチはどこにもない高い技術で安心して暮らせる家を建てるのを売りにしていたんだが、海外の建設会社の支店が近くに出来てからは仕事がめっきり減ったんだ。そっちの方が多少耐久性が低くても安く早く建てられるから、昔ながらの建築技術を重んじているウチからは客足はどんどん遠のいていって、優秀な技術者も買収されてしまったんだ。おかげでウチは大赤字を抱えてな…一時期は弟や妹が毎日腹を空かせていたよ」

 

「それで家計を支えてあげなきゃって躍起になっていたのね」

 

「ああ。俺は、弟や妹に腹一杯食わせてやる為に、父の仕事を継いでからはどんな依頼でも請け負った。俺の家を赤字に追いやった会社が匙を投げた要望も、全て応えてみせた。初めは大した事無かったが、少しずつ客足も戻ってきて、ウチで働きたいという優秀な技術者も集まってきたんだ。俺が世界的に評価されるようになった頃、未来ヶ峰から【超高校級の大工】としてスカウトされて、そのスカウトがさらに客足を呼んだんだ。……俺に超高校級の才能が無かったら、今頃どうなっていたか…」

 

そうだったのね…

初めはお父さんに憧れて始めた大工職だったけど、結果的に開花した才能が家族を救ったのね。

 

「俺が大工を目指したのは、家計を支える為……と言ったが、実はもう一つ理由があるんだ」

 

「理由って…?」

 

「俺の妹が、難病を抱えているんだ。治療には難しい手術が必要らしくて、医者には莫大な金がかかると言われた」

 

「じゃあ、妹さんの手術費を稼ぐ為に…?」

 

「それもある。だが一番に理由は、あいつ自身の望みだ」

 

「え?」

 

「いつか世界一の大工になって、歴史に残るような建造物を作るって妹と約束したんだ。だから俺は、その夢を叶える為に毎日現場に立って技術を積み重ねてきたんだ。絶望的事件の再来で破壊された歴史的建造物を建て直し、ある王国の王宮の建築にも携わるようになって、ようやく俺は世界一の大工として認められ、妹との約束を果たす事ができたんだ」

 

館井君は、真剣な表情で自分の掲げていた目標を語った。

彼がストイックに仕事を請け負っていたのは、家族を支える為だけじゃなくて、妹さんとの約束を叶える為だったのね。

 

「……聖蘭と闇内が外に出るか出ないかで揉めた時、俺は聖蘭側についた。一番の目標だった妹との約束は達成されていたし、何より外に出ようと躍起になる事でコロシアイが起こるのが怖かったからな。小鳥遊が越目に殺されて、外に出たいという気持ちが揺らいでしまったんだ。俺は結局、自分が怖いからとお前達の事を考えずに脱出を躊躇するような弱い人間なんだよ」

 

「そんな事ないわよ。こんな状況で、ずっと自分の意見を持ち続けられるほど人は強くないと思う。むしろ、こんな状況でも良識を失わずにいられるあなたは十分人としてできてると思うわ」

 

「………そうか」

 

館井君は、少し俯きながらポツリと呟いた。

ええっと…今のフォローは正解だったのかしら?

私がそんな事を考えていると、館井君が顔を上げて言った。

 

「腐和。俺は、お前達に感謝しているんだ」

 

「…え?」

 

「俺は今まで見た目で怖がられて避けられたり、変に頼りにされてしまったりしていたから、お前達が俺を普通の高校生として見てくれている事が本当に嬉しいんだ」

 

「いいのよ。当然の事だもの。何か困った事があったら何でも相談してちょうだいね」

 

「ああ」

 

館井君は、僅かに微笑みながら頷いた。

…彼の笑った顔、初めて見たかもしれない。

どうやら館井君と仲良くなれたみたい。

 

《館井建次郎との好感度が1アップしました》

 

私は、館井君と別れた後、教室の探索を続けた。

 

 

 

ーーー 4ーB教室 ーーー

 

ここは一昨日と変わったところは何もないわね。

メダルが何枚か落ちていたので、回収しておこう。

次は4ーCの教室を見てみる事にした。

 

 

 

ーーー 4ーC教室 ーーー

 

ここも一昨日と変わったところは何もないわね。

メダルが何枚か落ちていたので、回収しておこう。

ええっと…これで校舎の探索は全て終わったのよね?

まだ時間があるし、もう一度音楽室でも調べてみようかしらね。

 

 

 

ーーー 器楽室 ーーー

 

「…あ」

 

器楽室に行くと、ネロがレコード盤を物色していた。

昼食会には参加してなかったけど、どうやら変わりは無さそうだ。

 

「何をしてるの?」

 

「何か聴きてえもんでも無えかと思ってな。ここで探してたんだよ」

 

へえ…

ネロってこういうレトロなものとか好きなのね。

あ、そうだ。

昨日のクレーンゲームの景品、ネロにあげたら喜ぶかしら。

 

「ネロ。渡したいものがあるのだけど、いいかしら?」

 

「あ?」

 

私は、クレーンゲームで手に入れたタバコをネロにプレゼントした。

するとネロは、僅かに目を見開く。

 

「………いいのか?」

 

「我慢してるんでしょ。自分の部屋だけでなら吸っていいから」

 

「んじゃあ、お言葉に甘えてありがたく戴こうかね」

 

ネロは、そう言ってタバコを受け取った。

どうやら喜んでくれたみたいだ。

私は、自由時間をネロと過ごす事にした。

器楽室で、二人で横並びに腰掛けて一緒に話をした。

 

「ネロはどうして【超高校級のマフィア】になったの?」

 

「……俺はスラムで生まれ育ったんだ。本当の母親は誰だかわからねえ。父親には無理矢理金を盗みに行かされて、店の金を盗ったのがバレたら店主に半殺しにされた。命からがら帰ってきたと思ったら父親に金をふんだくられて、金は全部酒とクスリとギャンブルに消える、そんなクソみてえな毎日の繰り返しだったよ。だが俺が6歳の時、父親が不良に目ェつけられて呆気なく殺されて、俺は独りになった。最期までクソ親だったから、死んでも特に何も思わなかったがな」

 

…想像以上に壮絶な人生ね。

現代日本で生まれ育った私からしてみれば、想像もつかないような話だわ。

 

「そこからは、生きる為に必死だったよ。盗みや殺しも平気で繰り返した。こっちが殺らなきゃ殺られるかのたれ死ぬだけだったからな。どうしても食うものが見つからなかったら、ゴミ溜めの中から食えるもんを漁って食った。ま、平和な国で生まれ育ったお嬢ちゃんにはわからねえだろうけどよ」

 

「…………」

 

「ケンカも強くなきゃ生き残れなかったから、毎日ケンカばっかりしててよ。気がついたら、いつの間にかスラムで一番ケンカが強くなってたんだ。俺がスラムの中でそこそこ有名人になった頃、当時はまだそこまで台頭してなかったガラッシアファミリーの頭目がスラムに来たんだ。ボスは、俺の腕っぷしを気に入ってくれたみたいでよ。俺に『その力を俺達の為に使ってくれないか』って言ってきたのさ。俺は、最初は何で知らねえ奴の為に力を貸してやらなきゃいけねえんだって思ったね。でもファミリーに入ってから、そういう考えが変わっていったんだ」

 

「え?」

 

「うちのファミリーは、俺みてえな社会から必要とされねえゴミクズを分け隔てなく構成員として受け入れてんのさ。ある奴は人種差別を受けて住む場所を追われた奴、ある奴は紛争で家と家族を失った奴、国を滅ぼされて命からがら敵国の兵士から逃げてきた亡国の王子サマなんてのもいたよ。ウチの構成員は、人種や経歴、信じてる神サマ、何もかもが違う奴等が、ボスに忠誠を誓ってんだ。おかげでファミリーに入ってからはすげぇ居心地が良くてよ。いつの間にか、ボスの為に尽くす事が俺の誇りになっていったんだ。それに、守らなきゃならねえもんもできたしな」

 

「守らなきゃならないもの?」

 

「ああ。俺がファミリーのNo.2に上り詰めた頃、ボスに娘が産まれてよ。俺ァお嬢の世話係を任されたんだ。お嬢はちょうど俺が女を知った頃に生まれて、生まれてからずっと一緒にいたから、俺にとっちゃお嬢は娘みてぇなもんなのさ。ずっとお嬢の面倒を見てたせいか、お嬢と同じくらいの歳のお前らを見るとどうも情が湧いちまってなぁ……」

 

「じゃあ、子供が嫌いって言ってたのは…」

 

「遠ざけるためだ。俺が内通者だって事がバレた時に、容赦無く俺を切れるようにな」

 

「何言ってるの…?」

 

「俺は、あのテディベアに誰かを殺すよう言われたんだ。1週間以内に殺人が起きなければ、てめぇらを全員処刑するって言われてよ」

 

ちょっと待って、何それ!?

そんな話、今まで一言も聞いてなかったんだけど!?

聞いてた話と全然違うじゃないのよ!

じゃあネロは、私達全員を人質に取られたからモノクマ達に従ってたって事…?

そんなの、不可抗力じゃない!

 

「殺さなきゃ全員殺られる。だから俺は、殺人を決行する事にした。…だが、俺にはお前らを殺すっていう選択肢は無い。そんな事をしたら、それこそファミリーの面汚しだ」

 

「まさか………」

 

「俺は、俺を殺すつもりだった。だが、その前に俺の予期しないところで殺人が起きた。結局今までそんな事の繰り返しで、ここまで生き残っちまったってわけさ。だが、それも今回で終わりだ」

 

「え…?」

 

「俺は、今度こそ俺の死をもってコロシアイを終わらせる。そのつもりで独りになる事を選んだんだ。なあに、今までてめぇの為に人を殺してきた俺にはお似合いの末路だよ」

 

そう言ってネロは、自分で手入れした銃に弾丸を装填した。

この人が今まで人間不信の悪役を演じていたのは、私達を内通者である自分から遠ざける為だった。

ネロは、私達の知らないところで私達を守ろうとしてくれていたんだ。

彼がシチリアの英雄と呼ばれるガラッシアファミリーのNo.2にまで上り詰めたのは、その強さだけじゃない。

たとえ自分の命を犠牲にしてでも見ず知らずの人達を助けようとする、彼はガラッシアファミリーの若頭に相応しい高潔な人間だった。

だけど……

 

「自分の命を犠牲にするだなんて許さないわ。あなたには、私達と一緒に生きてここを出てもらわなきゃいけないの。私達を人質に無理矢理内通者をやらされてたなら尚更よ。私も何かできる事があれば手伝うから、そう簡単に死ぬなんて言わないで」

 

私が言うと、ネロは顔を上げて言った。

 

「……お前、最高にいい女だな」

 

私は、全く予想していなかったセリフをネロに唐突に言われて目を点にしてしまった。

そんな事言われたの初めてなんだけど……

でも、どうやらネロと仲良くなれたみたいね。

 

《ネロ・ヴィアラッテアとの好感度が1アップしました》

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に行くと、既にリカが調理を始めてくれていた。

調理に取り掛かってしばらくすると、館井君が夕食作りに参加してくれた。

秋山君は、食堂のテーブルセッティングをしてくれた。

今日の夕食は、ビーフストロガノフ、マッシュポテト、カブのサラダ、玉ねぎのポタージュ、杏子のゼリーだった。

今日も、皆無事に一日を終える事ができた。

人間関係は無事とは言えないけど……

明日こそ脱出の手がかりを見つけないと。

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『マイクテスッ、マイクテスッ!えー、ジャスティスダンガンロンパをプレイしていただきありがとうございます。実は、オマエラに重要な事を伝えに来たんだよ。それじゃあ改めまして…ごきげんよう、オマエラ。さて、今回の指令だが…オマエラには北海道産の高級鮭とばを買ってきてほしいクマ。あとついでに、ブラザーのイビキとオナラがうるさいからオマエラから注意してやってよね。くれぐれも、ボクからの指令だって事は内密に。なお、このメッセージは5秒後に自動的に消滅するクマ!』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り10名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

以上7名

 

 

 

 

 



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(非)日常編④

ここから大きな変化が起こっていきます。


十八日目。

この日の朝食当番だった私は、早朝に目を覚ました。

部屋に持ち込んでいたミネラルウォーターを使って身支度をし、急いで厨房に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に行くと、リカが朝食を作ってくれていた。

 

『おはようございマス!腐和サン』

 

「おはよう。毎日早いのね」

 

リカが私に挨拶をしてくれたので、私も挨拶を返した。

…そういえば、ずっと気になっていたのだけれど、リカって私達が見てない間何してるんだろう。

そもそも睡眠とかいう概念はあるのかしら?

 

「…ところであなた、寝なくて大丈夫なの?」

 

『アテクシは、本体が熱暴走を起こさないよう0時から4時までの間スリープモードに入るのデス。そのスリープモードが、皆サンのいう睡眠に近いデスかね』

 

へえ……

AIにも睡眠は必要なのね。

初めて知ったわ。

私が料理をしながら話していると、マナが厨房に駆け込んでくる。

 

「ごめーん待った!?」

 

「いえ、全然待ってないわよ」

 

むしろリカが早すぎるだけだしね。

さて…と。

今日のメニューは、

 

和食セットがご飯、鯖の味噌煮、じゃがいもの味噌汁、切り干し大根の煮物、カブの漬物。

洋食セットがパニーニ、じゃがいものポタージュ、ズッキーニのソテー、コールスロー、ヨーグルト。

 

今日も栄養のある朝食を作って皆に元気を出してもらわないとね。

私達が三人で朝食を作っていると、秋山君と館井君が来てテーブルセッティングをしてくれた。

それから加賀君、古城さん、知崎君、目野さんの4人が食堂に来たけど、やっぱりネロは今日も来なかった。

どうしたものかしらね…

 

 

 

ーーー 化学室 ーーー

 

自由探索の時間、私は化学室を訪れた。

化学室からは、何やら何かをゴソゴソと物色している音が聞こえてくる。

 

「あら、目野さん」

 

「むむ!?その声は腐和サァンではありませんか!!」

 

「何をしているの?」

 

「ハッハァ!!実はですねぇ!!ここにあったベリィィィエレガンツッッッな機械ちゃん達を調べていたのです!!」

 

「そう……」

 

目野さんは相変わらず自由ね。

何だかこの学園生活を楽しんでいるようにも思える。

何というか…うん。

毎日楽しそうで羨ましいわ。

あ、そうだ。

昨日ゲットした零戦プラモデル、彼女にプレゼントしたら喜ぶんじゃないかしら?

 

「目野さん」

 

「ん!?何です腐和サァン!!」

 

「あなたにプレゼントしたいものがあるのだけれど、いいかしら?」

 

私は、モノモノマシーンで手に入れた零戦プラモデルを目野さんにプレゼントした。

すると目野さんは、目を輝かせながらものすごい勢いで食いついてくる。

鼻息も荒いし、ものすごい熱量ね…

 

「ふっ、腐和サァン!!それ、一体どこで手に入れたのですかァ!!?」

 

「購買部のモノモノマシーンよ。私はこういうのよくわからないし、目野さんにあげる」

 

「スゥハァ…ベリィィィィィイイイイイイワァアアアアアンダフォォオオオオオ!!!この洗練されたデザイン!!機能美!!重武装!!!やっぱり零戦ちゃんは戦闘機の頂点に相応しいですねえええええ!!!ありがとうございます腐和サァン!!家宝にさせていただきます!!」

 

うわ、ものすごくうるさい。

完全にトリップしちゃってるし…

うーん…

どうやらものすごく喜んでくれたって事で良さそうね。

私は、自由時間を目野さんと過ごす事にした。

化学室の机を挟んで、向かい合わせに座って一緒に話をした。

 

「目野さんはどうして機械技師になったの?」

 

「それはもう機械ちゃんが大好きだからですね!!ただの人間なんぞに興味はありませんが、機械ちゃんは常に私の知的好奇心を存分に満たしてくれますから!!私の家は町工場でしてね!!幼い頃から機械ちゃんと一緒に育って、両親の仕事を見てきたので、私と機会ちゃんはもはや一心同体なのです!!」

 

そんなに言うほどか……

目野さんにとって、機械の類は家族であり恋人なのね。

 

「幼い頃は、ウチでしか作れない部品が世界中の人々の生活を支えているというのが純粋に私の誇りでした。私も、両親と一緒に機械作りをするのが何よりの楽しみでした。私は、幼い頃から両親の仕事を見ながら機械ちゃんを作ったり修理したりしていたのですが、とても出来が良かったらしく、私を工房に立たせてくれました。私が機械部品の製造に関わるようになってから、ウチの工場の業績は鰻登りになったのです。私は、純粋に両親や皆の役に立てたのが嬉しかったです。でも私達の幸せは、長くは続きませんでした」

 

「え……?」

 

「私の才能に目をつけた大企業が、私達を買収しようとしてきたのです。徹底的に根回しされ、古くから縁があった工場からも全て買収されてしまい、資材の供給もストップされてしまったのです。おかげでウチは仕事がめっきりと減り、あっという間に倒産しました。そのせいで、一時期はまともに食べる物が無いくらい飢えに苦しんでいました。その時私は、いくら技術があろうと資材が無ければ意味がないのだと思い知りました。たとえ貧しさに苦しんでも私を命懸けで守ってくれた両親には、本当に感謝してもしきれませんでしたよ」

 

ひどい話ね……

人間、金に目が眩むと小さな子供を平気で飢え死にさせる程残酷になるのね。

目野さんも、良かれと思ってやった事が両親に苦しい思いをさせてしまう事になって、さぞつらかったでしょうね。

 

「その時学んだのは、やはり人間はクソという事です。私は、もう機械ちゃんの事しか愛さないと決めたのです。機械ちゃんは愚かなホモ・サピエンス共とは違って金に目が眩んで人を陥れたりしないし、私の問いかけに対して嘘偽りなく応えてくれますからね!」

 

なるほどね。

だから目野さんは、ここに来てからもすぐに知崎君の事を非難したり、ネロを拒絶したりしていたのか。

人間に裏切られた経験があるから、きっとまた裏切られるのが怖いのね。

 

「貧困で苦しんでいた時、奇跡が起こったのです。未来ヶ峰学園の方々が、私達を助けてくれたのです。未来ヶ峰学園は、才能ある未来の超高校級を保護する為の施設を全国に展開してましてね。そこでは食べる事に困らず、好きなだけ機械ちゃんの整備に没頭する事ができました。そこには私以外にも、将来超高校級になるであろう天才達が何人かおりましてですね。加賀さんもその一人だったのです」

 

そうだったのか…

それが加賀君との出会いだったのね。

噂で、未来ヶ峰学園には居場所を失った天才達を保護する為の施設があって、その施設から進学する人もいるって聞いた事あるけど、二人もそうだったのね。

 

「そうだったのね。加賀君とはどういう経緯で共同研究をするようになったのかしら?」

 

「向こうから専属の機械技師になってくれとスカウトを頂いたのです!私は加賀さん自身には興味ありませんが、彼の研究内容には興味があったので一緒に研究をする事にしたのですよ!あの人は、今までの愚かな人間とは違って純粋に私の作った機械ちゃんに好奇心を抱いてくれましたしね!」

 

なるほどね。

最初は変人同士化学反応を起こして波長が合っていたのかと思ってたけど…

目野さんと加賀君は、お互いを有能な研究仲間として尊敬していたからこそ、良好な関係を築けていたのね。

 

「話してくれてありがとう」

 

「いえいえ!それより、直してほしい機械ちゃんがあったらいつでも声をかけてくださいね!!」

 

うわ、熱量すごいわね…

でも目野さんと仲良くなれたみたい。

 

《目野美香子との好感度が1アップしました》

 

私は、目野さんと話していた後も、しばらく探索を続けていた。

するとその時だった。

 

 

 

『えー、オマエラ!今すぐゲームセンターに集合して下さい!』

 

突然、モノクマの放送が全館に鳴り響いた。

 

「ゲームセンター…?」

 

あいつらの召集だから、嫌な予感がするけど…

行かないとオシオキされるんだろうし、早く行かないと。

 

 

 

ーーー ゲームセンター ーーー

 

『ギャハハハ!!!HEYよく来たなゴミクズ共!!』

 

「いきなりこんな所に呼び出して何の用?」

 

いきなりゲームセンターに呼び出された秋山君は、少し苛立った様子で尋ねた。

まあこんな時にいきなり呼び出されたらね。

 

『グックエスチョン楽斗ボーイ!!テメェらにはこれからオレ達が作ったフルダイブ型の新感覚アクションゲームをやってもらうぜYEAH!!』

 

「そんな事してる暇無いんだけど…」

 

「ゲームですか!?私、ゲーム機ちゃんは大好きです!!」

 

「ボクもゲーム大好きー!」

 

『HAHAHA!!美香子ガールと蓮ボーイには気に入ってもらえたようで何よりだぜ!!テメェらには今から、転生ルームで異世界に行ってもらって、そこでゲームをしてもらうぜ!!』

 

「…全員強制か?」

 

『オフコース!これからはデジタルの時代だからね!前時代的なオマエラにも、最新技術に対応してもらわないと!』

 

そう言ってモノクマとモノDJは、転生ルームと呼ばれる部屋に私達を連れてきた。

黒一色の背景に水面を模したような床、そして一番特徴的なのが、環状に設置された機械のような椅子だった。

ご丁寧にヘッドセットまでついていて、中心には一昔前のファミコンが設置された機械が置いてあった。

 

『ではオマエラにはこれから自分の名前が書かれた椅子に座って異世界に転生してもらいます!あ、一人ずつしか入れないからジャンケンなり何なりして順番決めておいてよ?』

 

何なのよそのクソ仕様…

 

「仕方ないわね…」

 

私達は、ジャンケンで異世界に行く順番を決めた。

結果は、

 

1番目 私

2番目 リカ

3番目 秋山君

4番目 ネロ

5番目 加賀君

6番目 古城さん

7番目 知崎君

8番目 目野さん

9番目 館井君

10番目 マナ

 

の順に異世界に行く事になった。

 

「私が最初か…」

 

「わーいわーいラッキーセブン!」

 

「うげぇ…うち最後かぁ」

 

『HAHAHA、トップバッターはヒーローガールか!んじゃあこの椅子に座って、ヘッドセットをつけてくれよな!』

 

私は、自分の名前が書かれた椅子に座ってヘッドセットを装着した。

見るからに怪しいけど、やるしかないわよね。

 

『準備は万端ですね?じゃあ椅子にあるスイッチを押してくださーい!』

 

「スイッチ?これを押したらどうーーーーー…」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「……………あれ?」

 

気がつくと、見覚えのない空間にいた。

さっきまでのような暗闇の中の水面に立っているような雰囲気だけれど、さっきまであった椅子が無いし、何かが違うような気がする。

 

「ここは……」

 

私がキョロキョロとあたりを見渡していた、その時だった。

 

 

 

『HAHAHA!!異世界へようこそ、プレイヤーガール!!』

 

…うわ、出た。

どこからか、神聖幾何学模様をモチーフとした謎の乗り物に乗ったモノDJが現れた。

 

『んん?テメェ、見ねえ顔だな。名前は?』

 

は?

今まで散々私達にコロシアイをさせてきたくせに、『見ない顔』って…

……あ、違うわこれ。

これはプレイヤーネームを登録するから名前を教えろって言ってるのね。

…ったく、何で名前の登録を自分でやらなきゃいけないのよ。

最初から登録しといてくれればいいのに、面倒臭いわね。

 

「腐和緋色よ」

 

『OK、『フワ ヒイロ』だな!?んじゃあヒーローガール!これからゲームのルール説明してくから、耳かっぽじってよぉく聞いとけよ!!』

 

いちいち口悪いわねこいつ。

 

『まず、この異世界では誰もが『グリモア』と呼ばれる魔導書を持ってるんだ。グリモアを持っていれば、誰でも魔法を使う事ができるんだぜ!テメェの持ってる電子生徒手帳を普段通り使ってみろ』

 

私は、モノDJに言われた通り電子生徒手帳を起動させた。

すると、ボンッと煙を上げながら魔法陣が描かれた本が出現した。

本を開いてみると、ページ全てにカードを収納できるような溝がある。

 

『ただ、そのグリモア単体じゃあ魔法を使う事はできねえんだ。そのグリモアには溝があるだろ?その溝はカードを入れる為のものなんだぜ!この異世界、『ホープアイランド』ではプレイヤーが触ったアイテムは、プレイヤー以外は何でもカードになるんだ。カード化したものは、カードに書かれた呪文を唱える事で元の形に復元する事ができるぜ!だが、一度復元したものはもう一度カードにする事はできねえから注意しろよな!それから、カード化したアイテムは1分以内にグリモアに納めねえとアイテムに戻っちまうからな!』

 

…ねえ、待って。

それって完全に某狩人漫画の某強欲島ゲームのパクリじゃない。

異世界の名前とかモロそれだし。

こいつ、こんなパクリゲーを恥ずかしげもなく人にやらせるなんて、顔の皮が広辞苑でできてるのかしら。

 

『ホープアイランドに隠された78枚の魔法のタロットを集める事!それがプレイヤーの目的だ!クリアしたらちょっとしたご褒美を用意してあるぜ!』

 

「それはわかったけど、ログアウトするにはどうしたらいいの?」

 

『ホープアイランド内に隠された脱出チケットを持ってここに戻ってくるだけでOKだぜ!』

 

だけって…

ログアウト一つで何でそんなに面倒くさい事しなきゃならないのよ。

 

「じゃあ脱出チケットを手に入れるまでは、ここから出られないって事ね。その間、元の世界にある私達の肉体はどうなるわけ?」

 

『HAHAHA!いい質問だなヒーローガール!ログインしている間は、ここでの事象は全部元の世界の肉体とリンクしてるんだぜ!つまり、この世界で食えるもんがありゃ元の世界の肉体が餓死する事は無えって事さ!それと、これが一番重要だが、この異世界での死は現実世界の死と同じ!ここで死ねば、現実世界で二度と目覚める事はねえぞ!それから、テメェらの中の誰かが死んだらゲームは中断、全員強制ログアウトされるぜYEAH!』

 

「なるほどね…あ、ちなみにログアウト後はそのプレイヤーはどうなるのかしら?」

 

『ログアウト後は、そのプレイヤーのアバターにはNPCとして残ってもらうぜ!NPCには死っつー概念が無えし、NPCの行動は現実世界の肉体に影響無えから安心しろよな!それからNPC化したキャラクターはカードにできねえし、会話のログも残らねえから注意しろよ!』

 

NPC…

プレイヤーが操作せずに、ゲームの雰囲気を出す為にいるキャラクターよね。

 

『オレからの説明は以上だぜYEAH!!何か他に質問はあるか!?』

 

「…いいえ、特には」

 

『んじゃあそこのドアを開けて『はじまりの草原』に行ってくれよな!』

 

そう言ってモノDJは、光る扉を指差した。

光る扉を潜ると、目の前には大草原が広がっていた。

…うん。

どこまでも某ゲームのパクリだ事。

ふと自分の身体を見ると、2頭身の可愛らしいフォルムになっていた。

何だかマスコットみたいね。

 

私がそんな事を思いながら地面を眺めていると、足元に石が落ちているのを見つける。

石を拾い上げた瞬間、石がカードになった。

…うわ、本当に何でもカードになるのね。

モロ某念能力ゲームじゃない。

 

…あ、ちゃんとグリモアを通して仲間同士の交信ができるようにはなってるのね。

連絡手段を一切断たれてしまうのが一番の懸念だったから、とりあえずすぐに使える連絡手段があるのは良かったわね。

私がゲームについての考察をしながら待機していると、リカが扉を潜ってきた。

 

『お待たせしマシた。腐和サン』

 

「いえ、そこまで待ってないわよ」

 

私は、リカと一緒に雑談をしながら皆が集まるのを待った。

体感時間で30分後、ようやく全員がログインしてきた。

トリのマナは、バタバタと慌ただしく扉から出てきた。

 

「ごめーん!」

 

「まあゲームがこういう仕様だから仕方ないよ」

 

「これからどうしよっか?」

 

「あ。それで思い出したんだけどさ。こういうRPGゲームやった事ないとか苦手って人いる?俺まあまあ得意だから一緒に攻略してあげられるけど」

 

秋山君が尋ねると、館井君、古城さん、マナが手を挙げた。

 

「……俺はやった事ない」

 

「ワシもじゃ!!最近のもんはようわからんからのう!!」

 

「あはは、やった事なかわけやなかだけどちょっと自信なかね〜」

 

三人が手を挙げると、秋山君は普段通りイケメンスマイルを浮かべながら三人をフォローした。

 

「全然恥ずかしい事じゃないよ。別にプレイヤー同士で競争とか無いみたいだし、地道に脱出チケット探そうか」

 

「えっ、クリアは目指さないのですか!?」

 

「当たり前だろ。一刻も早くここから出る事が先決だ。…まあ、その為には島中を探索せざるを得ないんだけどさ」

 

目野さんが目を丸くすると、秋山君は腕を組んで呆れ返った。

目野さん、完全に楽しもうとしてるわね…

それにしてもここ、本当に何もないくせに無駄にだだっ広いわね。

…あれ?

 

「ねえ、そういえば知崎君は?」

 

「あれ!?しゃっきまでうちん隣におったとに!!」

 

あの問題児、ちょっと目を離した隙に!

どこ行ったのよ全く!

 

「あいつなら先に行ったぞ」

 

「は!?」

 

加賀君は、そう言って左手の方角を指差した。

見ると、知崎君が遠く離れた草原でキャイキャイはしゃいでいた。

 

「きゃっほーーーーーい!!ハーレム作ってチートで無双して魔王とかバンバン倒しまくって毎日食って飲んで寝て量産型ラノベの主人公みたいな人生送ってやるぜえええええ!!」

 

あいつ、いつの間に…!

てか足速っ!?

【超高校級の陸上選手】!?

今まであんなに足速かった事なんてなかったのに…!

やっぱりあいつもう才能思い出してるじゃないの!

ふと右を見ると、加賀君が腕を組んだまま知崎君を顎で指してドヤ顔をしていた。

 

「な?」

 

「『な?』じゃないわよ!どうして教えてくれなかったの!?」

 

「教える義理が無い」

 

「な……」

 

ったく、どいつもこいつも自分勝手がすぎるわよ…!

仕方ない、追いかけるしかないか…

 

「とにかく追いかけるわよ。こんなクソゲーで死なれたりなんかしたら胸糞悪いわ」

 

「うん!」

 

私は、遠くなっていく知崎君の背中を追いかけた。

知崎君を追いかけて5分ほど走っていると、突然知崎君が立ち止まったのが見えた。

よく見ると、知崎君は何かの扉の前に立っていた。

 

「知崎君。あなた、何を勝手に先に行って…」

 

「………ねえ。これ何だと思う?」

 

私が知崎君に注意をしようとしたその時、知崎君は扉を指差した。

先程はじまりの草原に行く為に通った扉とはまた違う扉で、空中に扉が浮いている。

 

「あっ…何やろね」

 

「次の街に繋がる扉…だったりしないかな?」

 

「え?」

 

「いやぁ、ボクの素人考えなんだけどね。ゲームとかでこういう新しい扉を見つけたら、大体今まで行けなかった場所に行けるようになってるってパターンだったりするだろ?もしこれが別のところに行く為の扉なら、開けて見る価値はあるんじゃないのかな?」

 

知崎君は、さっきまでのハイテンションキャラとは打って変わって、今度は冷静沈着なキャラで自分の考察を語った。

すると、古城さんが片眉を上げながらツッコミを入れた。

 

「何じゃあ貴様。さっきからキャラが一貫してなくて気色悪いのぉ」

 

「ははっ、やだなぁ。ボクは知崎蓮だよ?」

 

知崎君は、冷静に笑いながら言った。

もう完全に盗んだ才能を使いこなしてるみたいね…

すると知崎君は、いきなりいつもの調子に戻って私に話しかけてきた。

 

「ねえねえ行こうよ緋色ちゃん!」

 

「そうね…どのみち、ここにずっといたって何もないしね。…でも知崎君、あんたはこれからは単独行動厳禁よ」

 

「ぶー」

 

私が釘を刺しておくと、知崎君が唇を尖らせる。

話し合いの結果、特にはじまりの草原には何も無さそうだったので、皆で扉を潜る事にした。

 

まずは、私、知崎君、ネロ、目野さんが扉を潜った。

扉の向こう側は、ちょうど人4人が入れそうな広さの窓付きのゴンドラのような部屋だった。

4人が扉を通ると同時に扉が閉まってしまい、私達は他の6人と断絶されてしまった。

 

「ハッハァ!!何が起こるのか楽しみですねぇ!!」

 

「わかる〜!」

 

…あの二人はお気楽そうで良いわね。

二人がはしゃいでいると、ネロが話しかける。

 

「で、どうすんだ?他の連中と分断されちまったけど」

 

「大丈夫よ。実はあなた達が来る前にグリモアを少し調べていたのだけれど、どうやらグリモアを通して通話ができるみたいなの。とりあえず、皆に集合場所を伝えておけば大丈夫なんじゃないかしら?」

 

「だといいがなぁ」

 

二人でこの後どうしようか話していた、その時だった。

 

 

 

『うぷぷぷ!ホープアイランド専用の飛行船へようこそ!』

 

「ぎゃあ!?」

 

突然、モノクマが目野さんのタンクトップの中から現れた。

どこから現れてんのよ。

 

『ホープアイランドは5つの島の集まりからなっていて、この飛行船はそれぞれの島を行き来する為のものなんだよ。ホープアイランドには、このはじまりの草原のある島と、炎の島、水の島、風の島、土の島があるのです!この飛行船で、オマエラが行きたい島までひとっ飛び!』

 

「はわああああああ!!!何ですかそのベリィィィィファンタスティックな響きは!!」

 

モノクマが説明をすると、目野さんがものすごく食いついた。

行きたい島って言われてもね…

正直、まだゲームの世界観も掴めてないし、どの島から攻略していったらいいのかわからないのよね。

こういう時は、今いる場所から近い場所から攻略していくのがセオリーかしらね。

 

「そうね…じゃあ、ここから一番近い島に連れてってもらえる?」

 

『りょーかい!それじゃあ炎の島までひとっ飛び〜!』

 

モノクマが言った直後、飛行船が縦に揺れた。

3秒ほど飛行船で揺られたかと思うと、突然飛行船が止まった。

 

『着きました!炎の島です!それではオマエラ、良い旅とコロシアイを!』

 

ゲームの中でもコロシアイを強要してくるの、本当に気分が悪いわね。

私は、心の中でモノクマに悪態をつきつつ、飛行船のドアを開けた。

外に出てみると、何やら炎をモチーフとした外観になっていて、タロットにちなんだ街が色々とあるみたいだ。

とりあえず、皆には既に炎の街にいる事を伝えておかないとね。

 

「ねえ緋色ちゃん!見て見て!魔法カード売ってる店があるよ!あ、あそこでギルド申請できるんだ!ねえ申請してきていい!?」

 

「ダメよ。皆が集まるまで待たないと」

 

「てかお腹すいたー!レストランいこーよ!」

 

「お金持ってないじゃない」

 

「ちぇーっ、つまんねーの」

 

知崎君は、唇を尖らせて不貞腐れていた。

3分程待っていると、ようやく全員が到着した。

 

「これからどうしようかしらね?」

 

「うーん…まずは地道にお金や素材を集めるところからじゃないかな。俺達今無一文だし」

 

「そうね」

 

「じゃあ、18時に炎の島の『太陽の広間』に集合。って事でいい?」

 

「おっけー!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

それから6時間、私は、知崎君、ネロ、目野さんの四人で地道に素材集めや資金集めに勤しんだ。

レアカードを入手したらトレードショップで換金して、その資金を使って地図を買ったり情報収集をしたりした。

知崎君が大食いの懸賞に挑戦して稼いで、ネロがその資金でギャンブルで一山当ててくれたので、3時間ほどで大金が集まり、その資金で初級魔法のカードと武器を買い集める事ができた。

この調子なら、明日には脱出チケットが入手できそうね。

クエストに挑戦してレアな素材を集めて、人数分の脱出チケットを手に入れないと。

18時ちょうど、私達は近くにあった定食屋で収穫を報告し合った。

 

「私達は、地道に資金調達と情報収集、それから魔法カードや地図をゲットしたわ。どうやら、Bランク以上のモンスターカード10枚かAランク以上の秘宝カード5枚をトレードショップに持っていけば脱出チケット3枚と交換してくれるそうよ。秋山君達は?」

 

「俺は館井君と古城さんにつきっきりでRPGのやり方を教えてたよ。それから資金調達、あとは魔法カードと武器カードの調達かな」

 

「何じゃああのNPCとやらは!!外の世界も、未来ヶ峰学園の事も、何も知らぬではないか!!揃いも揃って皆情弱じゃのぉ!!しかも何回話しかけても同じセリフばっかり言いおって!!情弱な上に頭まで悪いのか!!」

 

「だから違うんだよ古城さん。こういうゲームのキャラクターはキャラクターごとに答えられる質問があらかじめ決まってて、答えを用意していない質問に対しては『何それ?』って答えるっていうプログラミングがされてるんだよ。で、俺達は物語の流れからそのキャラクターが答えられる質問を見つけ出して、そこで初めて情報を聞き出せるんだよ」

 

「じゃあ、情報収集するにはしらみつぶしにNPCとやらに一人ずつ質問していかなきゃならんという事か!?」

 

「そうなるね」

 

「何じゃあ面倒臭いのう!!」

 

「まあでもRPGって大体そんなもんだから」

 

秋山君がゲームの説明をすると、古城さんが文句を言った。

最後に、加賀君、マナ、リカの班が進捗を報告する事になった。

 

「思ったより順調じゃないか。まだ誰も大した収穫は手に入れてないと思ってたよ」

 

「そういうあなたは何か収穫があったの?」

 

「ふふふ、俺を誰だと思っている?」

 

そう言って加賀君は、小アルカナのカードを3枚見せてきた。

加賀君達が集めたのは、ワンドの1〜3のカードだった。

 

「えっ、これ、モノDJが言ってた魔法のタロットよね?どうやって手に入れたの?」

 

「………頑張った」

 

加賀君は、誇らしげに自分の成果を自慢した。

するとリカも腕を組みながらドヤ顔をし、マナは楽しそうにキャッキャとはしゃいだ。

 

『アテクシにかかれば、どんなゲームでもクリア条件を見つけ出して攻略する事など朝飯前なのデス!どやっ!』

 

「うち、加賀くんにやり方教えてもろうたっちゃけど、すっごかハマってしもうた!やっぱRPGって楽しかね!案外ここも悪うなかかも!」

 

三人とも、ゲームを純粋に楽しんでいるようだ。

…三人とも、ゲームに夢中になりすぎて本来の目的忘れてないといいけど。

 

「とりあえず近くの宿を借りて、明日の事はそこで考えましょう」

 

「そうだね」

 

「ねえ緋色ちゃーん!ボク、あそこ泊まりたーい!」

 

そう言って知崎君が指差したのは、サンバのような露出度の高い格好をしたグラマラスな女性が客引きをしている派手な装飾の宿屋だった。

これって完全にそっち系の宿屋じゃない。

しかも遠目で値段見る限り高すぎだし。

 

「ダメよ。近くに一番安い宿があるから、そこにしましょう」

 

「ぶー、ダメばっかりでつまんないの」

 

私が一番安い粗末な宿屋を借りに行くと、知崎君は唇を尖らせる。

資金は節約しなきゃだし、一晩しか泊まらない宿にいちいちお金かけてられないわよね。

…って思ってたけど、まさか干し草のベッドだったとは。

野宿よりはマシだけど、ハッキリ言って寝心地は良くはないわね。

明日こそはクエストをして、脱出チケットを手に入れないと。

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『ヘェイ!!テメェらどうなってんだこいつぁよぉ!?さっきからオレ様の裏垢に『イビキとオナラがうるせー』だの『痩せろ』だのDMが来まくってるんだが!?テメェら一体ネットリテラシーどうなってんだ全く!!こんなんじゃ毎日7ダース食ってたポテチが6ダース半しか食えねーじゃねーか!!どうしてくれんだ!?ったくよぉ!!大体、オレ様が痩せちまったらモテ過ぎちまうだろうが!!そしたら世界の危機に陥りかねねーから、あえて太ってやってんだ!!オレ様の寛大さに感謝しな!!そしたら特別にオレ様の投げキッスをくれてやるぜ!!』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り10名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

以上7名

 

 

 

 

 




今回はハンターハンターネタをぶち込んでみました。
作者がハンターハンターが好きだからです。


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(非)日常編⑤

十九日目、午前6時。

私達は、モノクマ達が用意した、某少年漫画の某念能力ゲームのパクリ…もとい、フルダイブ型のRPG『ホープアイランド』の中で一晩を過ごした。

さて…と。

腹拵えもしたし、クエストをクリアしてモンスターカードを集めないとね。

でも私達はFランク冒険者だし、まずはFランク以下のモンスターしか出てこない初級者向けのクエストで地道にレベル上げしてから、脱出チケットを手に入れられるBランク以上のクエストに挑戦しないと。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

数分後。

私達は、レベル上げの為に初心者向けのクエストに挑戦していた。

次々と襲ってくるスライムを炎の初級魔法と剣の二刀流で倒していったものの、本当に最低限の装備と初級魔法しか持っていなかったので、案の定すぐにスライムに囲まれてしまった。

 

「わあああ!?どうしましょう囲まれました!」

 

「ちょっと待ってて。今そっちに…」

 

「ぎゃああああああ!!」

 

「目野さん!」

 

私が目を離したちょうどその時、目野さんがスライムに襲われてしまった。

しかし、スライムにやられたはずの目野さんはピンピンしていた。

 

「…って、あれ?何ともないですね!さっきよりちょっとだるくなったような気がしますが!」

 

目野さんがケロッとしていると、突然モノクマが現れる。

 

『うぷぷぷ!ゲーム内のモンスターの攻撃は、オマエラの身体には反映されないんだよ!モンスターにやられて死人が出たらコロシアイもクソもなくなっちゃうからね!でもその代わりやられるとちゃんとHPが減って、HPが0になると全身疲労で動けなくなるので注意して下さい!』

 

モノクマは、要件だけ伝えるとその場から消えた。

さっきまでスライムにやられていた目野さんは、ピンピンした様子でスライムを斬り伏せていた。

 

「なるほど!じゃあ極力やられない方がいいんですね!」

 

「そうね。ちょっと役割分担を考えた方がいいかもしれないわね。私とネロが攻撃するから、目野さんと知崎君は回復をしてくれる?」

 

「うう…出来れば攻撃役をやりたかったんですが…わかりました!!」

 

目野さんは、若干不本意そうにしつつも回復役に回ってくれた。

私とネロがそれぞれ剣とナイフでモンスターを倒していき、モンスターカードを集めていった。

知崎君と目野さんが私達を回復してくれるおかげで、休みなしで戦い続ける事ができた。

小一時間ほどひたすらモンスターカードとアイテムを収集していき、少しずつ力が増していく感覚を覚えた。

やっぱりモンスターを倒せば倒すほど経験値とレベルが上がっていくのは、他のRPGと共通している部分よね。

 

そしてとうとうダンジョンの最深部に辿り着き、ボス戦に突入した。

しかし、やっぱり私とネロだけでボスに挑むのは負担が大きく、ボスを倒せる気がしなかった。

私は、ボスの炎の息を避け切れずに右脚に掠ってしまい、その分のダメージを負ってしまった。

熱くもないし痛くもないけど、右脚が鉛のように重い。

 

「くっ…目野さん!回復!」

 

「あれ!?使えません!どうしてでしょう!?」

 

「MP切れね…」

 

「ボクももうMP残ってないよー」

 

「チッ、ここまでか……」

 

HPもMPも、もう3割も残っていない。

このままじゃ負ける。

私達がそう確信した、次の瞬間だった。

 

「ボクに考えがあるよ!皆、1分時間を稼いで!」

 

知崎君は、いきなり私達に向かって叫んできた。

ネロは知崎君の発言に片眉を上げていたが、私はすぐに彼の意図に気付いた。

 

「はあ?てめぇ、いきなり何を…」

 

「……そういう事ね。わかったわ。ネロ、手伝って」

 

「チッ…ちゃんと勝算はあるんだろうな?」

 

私がネロに指示を出すと、ネロはナイフを構え直した。

私とネロは、知崎君に言われた通り、ひたすらボスに攻撃を繰り出して時間を稼いだ。

私とネロがボスに攻撃を仕掛けている間、知崎君はひたすらカードを手裏剣のように投げていた。

 

「えいえい!」

 

知崎君の投げたカードは、天井やボスの身体に刺さっていく。

どう見てもそれが決定打になるとは思えなかったが、私達はひたすら時間を稼いだ。

…でも、身体が鉛のように重くて思うように動かない。

もうそろそろHPが切れる頃ね。

私が切れた息を整えていたその時、ちょうどボスが斧を振り下ろそうとしていた。

するとその時だった。

 

「後ろに回避!」

 

知崎君が大声で叫び、私とネロは反射的に後ろに跳んだ。

するとその直後、天井やボスの身体に刺さっていたカードが一気に粗大ゴミや巨大な岩、武器などに変わる。

 

「喰らえー!『セイクリッド・重み』!!」

 

知崎君がそう叫びながら右手の人差し指を振り下ろした瞬間、ゴミの流星群がボスに降り注ぐ。

一撃一撃は大した事なかったが、何十もの武器が一気に降り注いだ事でボスの体力は一気に削られ、そのままゴミの下敷きになった。

思いもよらない方法でボスが倒れると、知崎君はニコッと笑顔を浮かべながらこちらを振り向き、ピースサインをした。

 

「イェーイ☆」

 

私は、知崎君の使った裏技に素直に感心していた。

『カードは1分以内にグリモアに納めないと元のアイテムに戻ってしまう』というルールを聞かされていたけど、まさかそのルールを利用してモンスターを倒してしまうとはね。

魔法を使うたびにMPが消費されるから今の知崎君にはカードを普通に使う事はできないけど、この1分ルールを利用すればMP関係なく強制的にカード化が解除されるっていう算段だったわけね。

考えたわね。

さすが、【超高校級のプロゲーマー】の才能を盗んでいるだけあるわ。

 

「……えーっと?これでこのダンジョンはクリアって事でいいのかしら?」

 

「みたいだね〜!あ、何か宝箱があるよ!」

 

知崎君は、モンスターを倒した先にあったキラキラ光る宝箱を指差した。

すると宝箱が開き、中からワンドの4とワンドの5のカードが出てきた。

ワンドの4の入手条件は炎の島のFランクのダンジョンを攻略する事、ワンドの5の入手条件はFランクのダンジョン内のアイテムとモンスターを全て集める事だったのね。

こうやってゲームを攻略していけば、少しずつ魔法のタロットが増えていくわけか。

私達は、ダンジョンを抜けると現在の進捗を他の班に報告した。

 

「腐和よ。私達は炎の島の最初のダンジョンを攻略して、ワンドの4と5のタロットを入手したわ」

 

『俺達は水の島でカップの2までのタロットを入手したぞ』

 

『俺達は土の島でペンタクルの1のタロットを手に入れたよ』

 

なるほどね。

これでタロットは8枚集まったって事でいいのかしら?

…タロットが溜まっていくのはいいけど、脱出チケットを手に入れるのはまだまだ先になりそうね。

 

「次は風の島に行ってクエストをやりましょう!」

 

「………」

 

目野さん、ものすごく元気ね。

私はずっとぶっ通しで戦ってたし、少しは休憩が欲しいところだわ…

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

30分後、近くの喫茶店で休憩を挟んだ私達は、クエストをしに風の島に足を運んだ。

飛行船に乗って風の島に着くと、知崎君が突然立ち止まり、人差し指をかざしてぼんやりと眺めた。

何をしてるのかしら…?

 

「知崎君、早く行くわよ」

 

「はーい」

 

私が声をかけると、知崎君は私についてきた。

それから私達は、3時間ほどかけて風の島の探索と最初のダンジョンの攻略をした。

これで全ての島のFランクのダンジョンをクリアし、ちょうど昼になったので、皆で風の島の定食屋でミーティングを開いた。

 

「私達は、炎の島の最初のダンジョンの攻略、風の島の探索と最初のダンジョンの攻略をしたわ。皆は?」

 

「俺達は、今さっき土の島のEランクのダンジョンをクリアしたところだよ」

 

「俺達は、水の島と炎の島のEランクのダンジョンをクリアしたぞ。より高いランクのダンジョンをクリアするとレアな武器が増えるらしい」

 

皆はもうEランクのダンジョンを攻略済みなのね。

…というか加賀君、このゲームを純粋に楽しんでない?

 

「それで、風の島を探索していて気付いた事があるのだけれど」

 

「気付いた事?何、緋色ちゃん」

 

「この島の位置関係よ。この異世界は、おそらくスタート地点からはじまりの草原、炎の島、風の島、土の島、水の島の順に一直線に並んでるんだと思うわ」

 

そう言って私は、手作りの異世界の地図を見せた。

私が地図を見せると、皆がその地図を一斉に見た。

 

「なるほど…だから水の島と土の島は飛行船で行こうとすると時間がかかったんだね」

 

「ええ。この異世界で売ってる地図は、その島単体の地図しかないから確証はないけど」

 

「うーーーん……」

 

私が自分の推測を話すと、知崎君が私の手作りの地図と睨めっこしながら唸り声を上げる。

 

「知崎君、どうしたの?」

 

「ねえ緋色ちゃん。知ってる?この飛行船って、どの島から乗っても必ず島の一番真東に着くんだよ。何で全部同じ方角に着くんだろうね?」

 

「え?」

 

「単純に島への到着時間を短縮したいなら、最短距離になるように停めればいいわけじゃん。例えば炎の島の北端から出発して、風の島の南端に着くようにすれば移動時間が少なくて済むでしょ?そうしなかったのは何でなんだろうね?」

 

「あ……」

 

知崎君の言う通り、島の位置関係が私の推理通りなら、最短距離を結ぶように飛行船を飛ばした方がタイムロスが少ないはず。

なのにどうしてどの島も真東に飛行船が着くようになってるのかしら?

 

「それにボク達、今まで一回も飛行船が飛んでるとこを見た事が無いよね?誰かが飛行船を使ってるんだとしたら、他の誰かが飛行船で飛んでるところを見ててもおかしくないのに」

 

「確かに!言われてみれば、飛行船が飛びよーとこ見た事なかね!」

 

私達は、ミーティングで情報交換をしつつ、食事が終わるとすぐに探索とクエストをした。

2時間ほどかけて風の島のEランクのクエストを攻略し、さらに2時間かけてDランクのクエストをクリアした。

私達が風の島のEランクとDランクのクエストをクリアしている間、秋山君達は土の島と水の島のDランクのクエストに、加賀君達は炎の島のDランクとCランクのクエストに挑戦していた。

タロットもワンドが11枚、ソードとカップとペンタクルが9枚ずつ、38枚集まった。

早朝から夕方にかけて休みなしでクエストに挑戦して順調にレベル上げをして、全員がDランクのクエストをクリアする頃にはゲームも半分ほどクリアしていた。

ちょうど秋山君達が水の島のDランクのクエストをクリアした頃、私達は水の島のレストランでミーティングを開いた。

 

「ようやく全員Cランクにまで漕ぎつけたわね…」

 

「この調子だと、明日には全員分の脱出チケットを手に入れられそうだね」

 

「ここまで長かったのぉ」

 

「本当にね……」

 

古城さんが自分で自分の肩を揉みながら言うと、秋山君もため息をついた。

古城さんと館井君はRPGの基本的なルールすら知らなかったから、そこからCランクプレイヤーになるまで教え込むのは相当苦労したでしょうね。

私達は、それぞれ購入したアイテムや魔法カード等を交換して、攻略中に得た情報も交換した。

 

「じゃあ、今から就寝時間まではそれぞれCランクのクエストを攻略してくって事でいいのかな?」

 

「そうだな。あちっ」

 

秋山君が言うと、加賀君は角砂糖をたくさん入れた甘ったるいコーヒーを飲みながら頷いた。

すると、知崎君がストローでソーダを飲みながら私に話しかけてくる。

 

「ねぇー、緋色ちゃん。今日くらいあのエロエロホテルに泊まってもいいでしょ?どうせ明日になったら脱出チケット入手できるんだからさー」

 

「ダメに決まってるでしょ。今は1Gも無駄には出来ないのよ」

 

「ドケチ!」

 

「ドケチで結構よ」

 

地崎君は頬を膨らませて文句を言っていたけど、今は資源やお金を無駄にできないのは事実だし、何より私自身がああいうところに泊まりたくないのよ。

というか逆に、どんだけあの宿に泊まりたいのよ。

私が知崎君の執念に呆れていると、ネロが腕と脚を組んで私に同調した。

 

「同感だな。次素材を無駄遣いしやがったらシメるぞクソガキ」

 

「ぶー…」

 

ネロが知崎君に釘を刺すと、知崎君は不貞腐れてストローでソーダをぶくぶく吹いた。

最初は私もネロも初心者だったけど、今ではすっかりこの世界に馴染んできたわね。

正直、某少年漫画の某カードゲームのパクリゲーだと舐め腐ってたけど、このゲームを通してあそこまでネロと協力し合えるとはね。

ついこの前まで険悪だったとは思えないわ。

私は、紅茶を飲みながらネロに話を振った。

 

「ネロも何だかんだでクエストに挑戦するのも満更でもないんじゃないの?」

 

「まさか。脱出チケットが欲しいから仕方なく協力してやってんだよ。このクソゲーから脱出できると思えば、てめぇらと手を組むのだって安いもんさ」

 

ネロは、ソファーにふんぞり返りながら悪態をついた。

するとそれをよく思わなかった秋山君が、舌打ちしながらネロを睨んだ。

 

「腐和さんが皆で脱出する為に頑張ってくれてるのに、何その態度?」

 

秋山君がネロに対して不満を漏らすと、ネロが秋山君を睨み返す。

 

「……あ?」

 

「ぶっちゃけて言うけど俺、あんたをここから脱出させるの反対なんだよね。内通者だって事を差し引いても、態度が悪過ぎるだろ。大体、今までミーティングにも参加せずに単独行動を取ってた人に脱出チケットを使わせる義理なんて無いんだけど?」

 

「はっは、たった一日で随分と嫌われたもんだなぁ。だがまあ、お前の言う事が正しいと思うぜ?こんな近くに内通者がいるってのに、この期に及んで一緒に脱出しようだなんて甘ったれた考えができるお坊ちゃんお嬢ちゃんの集まりだから殺人が起こるんだよ」

 

「……は?」

 

「そもそも最初の殺人が起きたのだって、てめぇが幼馴染みの行動を制御できなかったせいじゃねえか。そこからドミノ倒しみたくコロシアイが起こってったんだろ?自分の事は棚に上げてよくもまあそこまで人の事を責められたもんだな、Mr.秋山?」

 

「お前……」

 

ネロがハンッと鼻で笑いながら秋山君を挑発すると、秋山君はネロに対して敵意を剥き出しにする。

これはまずい。

私がネロに話を振ったのがいけなかったわね。

 

「やめなさい、二人とも!」

 

私が二人の喧嘩を止めようとした、その時だった。

 

 

 

「もうやめてよ!」

 

マナは、両手でテーブルを叩きながら立ち上がった。

マナは、ポロポロと目から涙をこぼしながら口を開いた。

 

「響ちゃんの事は何も秋山くんだけが悪かったわけやなかし、ネロくんだって何も望んで内通者になったわけやなかばい!」

 

「たとえ不本意だったとしても、結局俺達を売った事に変わりは…」

 

「もし!!」

 

「!」

 

「もし…!『1週間以内に殺人が起こらなうちら全員ばオシオキする』って言われたら…!それでも内通者にならん道ば選ぶ事がでけたて思う!?」

 

マナは、泣きながら本当の事を打ち明けた。

私はネロから聞かされてたから知ってたけど、まさかマナも知ってるとは…この場でそれを言うとは思わなかった。

マナが涙ながらに訴えると、秋山君は唖然とした表情でネロの方を見た。

 

「……は?」

 

「ネロくんは、うちらば守る為に内通者になったっちゃん!やけん…もうネロくんば悪う言うんなやめて!!ううっ…うわぁあああん…!!」

 

本当の事を語ったマナは、その場で泣き崩れた。

すると秋山君は、目を見開いてマナに詰め寄った。

 

「…ねえ。それどういう事?」

 

秋山君は、マナの発言の真偽を確かめようとマナに詰め寄った。

ここから先は私が話した方が良さそうね…

 

「そのままの意味よ。ネロは、1週間以内に殺人が起こらなければ私達をオシオキするって脅されてたの。だから私達を守る為に内通者になって、自分で自分を殺そうとしていたのよ。ネロが今まで単独行動を取っていたのは、私達に踏み込ませない為だったの」

 

「じゃあ…!歌音が玉越さんを殺したのは…!?」

 

「あれは俺の予想外の出来事だった。俺は6日目の夜に自殺するつもりだったんだが、まさかそれより前に殺人が起こるとは思わなかった。てめぇらを守る為にクマ公に魂を売っておきながら殺人の連鎖を止められなくて、自分で自分が情けねえよ」

 

ネロは、帽子の鍔で自分の目元を隠しながら本心を語った。

彼は強かったから、強すぎたから、私達の為に自分を殺すという判断ができてしまった。

私は、彼の強さに、ガラッシアファミリーの若頭としての誇りにつけ込んで殺し合いの口火を切らせようとしたモノクマ達が許せなかった。

 

「ネロ。あなたがどれだけの覚悟でその決断をしたのかは、よく伝わってきたわ。だけどこのまま死に逃げなんて許さないわよ」

 

私は、ネロの目をまっすぐ見て言った。

すると、さっきまでずっとコーヒーに苦戦していた加賀君も口を開く。

 

「どんな事情があろうと、俺達に黙ってモノクマ達に魂を売った罪は重い。その罪は、俺達の脱出を死ぬ気で手助けする事で償ってもらう」

 

「加賀君…」

 

「どのみち、唯一黒幕と接点を持っている君に死なれたら俺が困る。今の所、君だけが黒幕に繋がる唯一の手掛かりなんだ」

 

加賀君は、すっかりぬるくなったコーヒーを飲みながら言った。

すると古城さんは、加賀君の肩をバシバシと叩いた。

 

「ガハハハ!!ウヌ、老け顔のくせに良い事を言うのぉ!」

 

「老け顔はやめてくれ」

 

「ワシはもちろんお主らに賛成じゃぞ。ここで泣き言を言っていては、下僕も浮かばれぬからのぉ!」

 

古城さんは、愛刀の斬殺丸を私達に向けながら言った。

彼女は、闇内君と接点を持つまでの彼女なら到底考えられないような、強い芯を持っていた。

きっと彼女も、この学園生活を経て成長したのね。

 

『アテクシも、ネロクンには生きていてもらいたいのデス。一緒に脱出方法を探しマショウ』

 

「リカが言うならそうしましょう!!」

 

「……そういう事情なら異論は無い」

 

「きゃはは、良かったねぇネロおにい」

 

「………」

 

リカ、目野さん、館井君、知崎君も、ネロと一緒に脱出方法を探す事に賛成してくれた。

残るは、ずっと黙り込んだままの秋山君だけだった。

 

「…わかったよ。今死なれたら俺のせいで死んだみたいで胸糞悪いし。俺も皆で脱出方法を探す事に賛成」

 

秋山君は、頭を掻きながらソファーに座った。

よかった、皆賛成してくれたみたいだ。

その後私達はCランクのクエストに挑戦し、全員Cランクのクリア報酬を得た。

一日中クエストに挑戦し続けて全員疲れていたので、この日は明日に備えて早めに土の島の宿を借りた。

今日借りた宿は、Cランク冒険者に相応しいそれなりに綺麗な宿で、バルコニーもついていた。

…それは良いのだけれど。

 

「ダブルベッドときたか…」

 

私達が借りたのは、ダブルベッドが置かれた部屋だった。

しかも空き部屋の関係で5部屋しか借りられなかった。

話し合いの結果、私とマナが1号室、古城さんと目野さんが2号室、加賀君とリカが3号室、館井君とネロが4号室、秋山君と知崎君が5号室に泊まる事になった。

 

「えへへへ、緋色ちゃん同室やねぇ」

 

私と同室になったマナは、枕を抱きしめながらニヤニヤしていた。

私と一緒なのがそんなに嬉しいのかしら…?

皆が明日に備えて眠る中、秋山君だけが夜遅くまでバルコニーで夜空を眺めていたので、私は秋山君に声をかけた。

 

「秋山君。まだ寝ないの?」

 

私が声をかけると、秋山君がポツリと呟く。

 

「…俺さ。何やってんだろうな」

 

「え?」

 

「皆はネロさんの事を許して一緒に脱出する方法を探そうとしてるのにさ。俺だけガキみたいに意地張って、カッコ悪いよホント。あの人は自分の魂を売ってまで見ず知らずの俺達を守ろうとしてくれてたのに…でも、どうしても、俺達を騙し続けてたあの人の事が許せないんだよ」

 

秋山君は、俯きながら震える手を握りしめていた。

きっと、ネロの事情を知らずにあんな事を言った自分が許せないという感情と、それでも自分達に何も言わずにずっと騙し続けていたネロが許せないという感情が入り混じって、自分でもどうしたらいいのかわからなくなっているのだろう。

 

「あなたは優しい人だと思う」

 

「…俺が?」

 

「自分を騙してた相手を許せないと思うのは、その人の事を本気で信じてたからだと私は思うの。それに、そうやって自分の行動を悔いる事ができるのは、少なからずあなたもネロの事を仲間だと思ってたからでしょ?」

 

私がバルコニーの手すりに寄りかかって言うと、秋山君は私の方を見た。

 

「大丈夫よ。あの人は素直じゃないけど、根はとても優しい人だから。あなたの事もとっくに許してるわよ」

 

「…………」

 

私が言うと、秋山君は手すりに突っ伏した。

するとその時だった。

 

「緋色ちゃん!何しよーと!?うちというものがありながら!」

 

いつの間に…

この様子なら、最初から見てたわね。

 

「違うのよ、私はただ悩みを聞いてただけよ。というか、秋山君には響さんが…」

 

「この浮気者ーっ!」

 

私は弁解しようとしたけど、マナは聞く耳を持たず枕を投げてきた。

うわ、意外と力強いわね。

私が荒ぶるマナを宥めていると、秋山君はそれを見て笑った。

でも私達とは他に、誰かの視線を感じた。

その視線の正体はわからないまま、私達は部屋に戻って眠りについた。

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

『うへぇ〜…大変な目に遭ったぜ…』

 

『んん!?どうしたのブラザー!?でもまあこれはこれで中々絶望的で面白いか!』

 

『ヘイ聞いてくれよブラザー、ちょうどさっき見つけた定食屋でステーキ定食注文したらよぉ…知らねーうちにエレベーターに乗せられて、地下通路みてぇなとこに通されてよぉ…そこで小太りのオッサンにジュース貰ってな?それ飲んでから腹いてえのなんのって!』

 

『まぁったく…いっつも暴飲暴食ばっかりしてるから食べ過ぎでお腹壊したんじゃないの〜?全然動かずにくーちゃねばっかしてるからそうなるんだよ!ちょっと100キロくらいマラソンしてきた方がいいんじゃない?』

 

『っしゃ、んじゃあ腹ごなしに走ってくっか!!その後は豚の丸焼きと…あとは寿司だな!』

 

『いやぁ〜、動けるデブの底力って恐ろしいよね!やはり馬力…!この世界、何でも馬力がものを言うんだよ』

 

 

 


 

 

 

二十日目、午前6時。

私達はBランクのクエストに挑戦する為、ダンジョンに向かった。

私、秋山君、マナ、古城さん、ネロが土の島と風の島を、加賀君、館井君、知崎君、目野さん、リカが水の島と炎の島のクエストをする事になった。

私達は土の島のダンジョンを攻略した後、風の島のダンジョンに挑んだ。

 

「俺が正面から攻め込むから、ネロさんは右翼、腐和さんは左翼から攻撃!」

 

「「了解」」

 

「聲伽さん古城さんは殿を頼んだ!」

 

「うん!」

 

「ガハハハ!!ワシに任せい!」

 

私達は、5人で協力し合ってモンスターを倒した。

風のダンジョンを攻略し、全員クリア特典も手に入れた。

私達が風のダンジョンを攻略していた頃、炎のダンジョンに挑んでいた5人はというと。

 

「うわあ出たあ!!カルシファーだ!!」

 

「私達についてきますよ!!どうしましょう!?」

 

「…俺はもう回復カードは無いぞ」

 

「助けて〜!リカえも〜ん!」

 

「君はリカを何だと思ってるんだ」

 

『アテクシにお任せクダサイ!アクアトルネード!』

 

何だかんだで、炎の島のクエストをしていた皆もゲームを楽しんでいたみたいだ。

私達は、4つのBランクのクエストをクリアし、無事モンスターカードも40種集まった。

これで脱出チケットの入手条件はクリアしたので、あとはこれをトレードショップに持って行って脱出チケットと交換してもらうだけだ。

私達は、早速風の島のトレードショップに行って店主にカードを見せた。

 

「はい、モンスターカード20種類、確かに受け取ったよ。じゃあ脱出チケット6枚と交換ね。脱出チケットは、カードの状態じゃないと使えないから注意するんだよ」

 

そう言って店主は、袋詰めにされた脱出チケットのカードを渡してきた。

これでノルマは達成した…と言ったところかしらね。

するとその時、私のグリモア宛に電話がかかってくる。

 

『腐和。そっちはどうだ』

 

「私達は脱出チケットのカードをゲットしたわよ」

 

『そうか。俺達もちょうどチケットを6枚手に入れたところだ』

 

「じゃあ一旦はじまりの草原に集合しましょう」

 

『…あっ』

 

私がグリモアを使って加賀君達と話をしている間、知崎君の声が聞こえてきた。

…さては何かやらかしたわね。

 

「どうしたの?」

 

『…ごめん皆。脱出チケット、間違えてカード化解いちゃった』

 

…………は?

ちょっと待って、今こいつ何て言った?

 

「このバカガキ…!」

 

「…君さ、本当に何やってんの?」

 

『えー、だってぇ!グリモアにしまうの忘れてたんだもぉん!ボクの可愛さに免じて笑ってゆるしてにゃん?』

 

『…知崎クンにチケットを持たせたアテクシ達がバカデシたね』

 

知崎君の愚行に、全員が呆れ返った。

この子はどうしてあんな顔をして平然とこんなバカな事ができるのかしらね。

 

「…仕方ないわね。チケットならまだこっちに6枚あるから、私の分ともう一枚あげるわ」

 

『ラッキー☆じゃあそのカードボクにちょーだい』

 

「ふざけんなてめぇはカード化解いた責任で居残りだ」

 

『ぶー…』

 

結局、知崎君が向こうの皆の分のチケットをオシャカにしてしまったので、私達のチケットを2枚向こうの皆に分けた。

向こうは話し合いの結果、館井君と目野さんが脱出し、知崎君、加賀君、リカの三人は自力でチケットをもう一度手に入れる事になった。

 

「じゃあ皆は先に戻ってて。私は知崎君達と一緒にカードを…」

 

「待て」

 

私が脱出チケットを使って脱出しようとする皆を見送るのを止めたのは、ネロだった。

ネロは、自分のグリモアから脱出チケットを取り出して私に手渡してきた。

 

「やるよ」

 

「…えっ?でも…」

 

「よく考えたら、今まで単独行動取ってた俺にはカードを受け取る権利は無えからな。お前が先に抜けろ」

 

そう言ってネロは、右手をヒラヒラ振った。

私達は、一旦ゲームを抜け、現実世界で探索をした。

3時間くらい皆で手がかりを探索をしたけど、特にこれといった収穫は無かった。

 

「うーん…特に収穫は無かったね。異世界に行ってる間にどこか変わったとかいうのも無いみたいだし」

 

「そうね」

 

「んー…やったらもう異世界に戻らん?リカちゃん達待たしぇてしもうてるし」

 

「じゃのぉ」

 

現実世界には特に収穫は無さそうだったので、私達は一旦異世界に戻って加賀君達と合流する事にした。

転生ルームに戻り、ゲーム用の椅子に座り、ヘッドセットを装着してスイッチを押す。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「……………ん」

 

気がつくと、最初の部屋にいた。

私がキョロキョロとあたりを見渡していた、その時だった。

 

 

 

『HAHAHA!!異世界へようこそ、プレイヤーガール!!』

 

どこからか、神聖幾何学模様をモチーフとした謎の乗り物に乗ったモノDJが現れた。

モノDJは、私の顔を見るなり首を傾げて尋ねる。

 

『んんっと?テメェは……誰だっけ?』

 

はいはい、プレイヤーの確認ね。

ログインする度にいちいち名乗らなきゃいけないの、面倒くさいわね。

 

「腐和緋色よ」

 

『ああ、そうそう!ヒーローガールだったな!んじゃあそこのドアを開けて異世界に行ってくれよな!』

 

そう言ってモノDJは、光る扉を指差した。

ここまでは最初とほとんど同じ流れね。

私は、早速加賀君達と合流するためグリモアで通信をした。

 

「加賀君?腐和よ。今ちょうど異世界に来たところよ」

 

『そうか。そっちはどうだった?何か変わったところはあったか?」

 

「特に何も。そっちは?」

 

『タロット3枚と脱出チケット9枚をゲットしたぞ。どうせまた君達がこちらに戻ってくるだろうと思って買っておいたんだ。また外に出る用事があったらいつでも俺に声をかけろ』

 

「ありがとう」

 

加賀君達、もう脱出チケットを9枚も手に入れていたのか。

彼らばかりにこっち側にいさせるのも申し訳ないし、今度は私達がカードを集めないと。

そんな事を考えながら私が待っていると、マナが出てきた。

 

「ごめんお待たせ!」

 

私とマナは、『はじまりの草原』を抜けると、すぐに加賀君達のいる水の島へ向かった。

私達が水の島に行くと、秋山君がこっちに来て話しかけてくる。

 

「やあ、腐和さん。聲伽さん。こんにちは」

 

こんにちはって…

やけに能天気な……

…ああ、違う。

今は秋山君はログアウトしてるから、このキャラクターはNPCなのね。

 

その後私達は、加賀君達と合流して情報共有をした。

Aランクのクエストに挑戦する為、必要なものを揃えに行った。

 

「腐和、聲伽。悪いが買い出しを頼まれてくれるか?」

 

「はーい!行こ、緋色ちゃん!」

 

「ええ」

 

「俺は銀行で貯金を下ろしてくる。金は立て替えておいてくれ」

 

「わかったわ」

 

加賀君にパシ…お遣いに行かされ、私とマナは素材を集めに次の島に行った。

するとその時、館井君が歩いてきた。

 

「…むっ。腐和か。今日はいい天気だな」

 

いい天気って…

やけに呑気ね。

私は、声をかけてきた館井君の態度に少し疑問を抱きつつ、マナと一緒に島のショッピングモールで買い出しをした。

 

「疲れたー!」

 

「これだけ買っておけば大丈夫そうね」

 

「ご苦労。買い出し分の金だ」

 

「ありがと………

 

 

 

 

 

ピンポンパンポーン

 

 

 

『えー、オマエラ!突然ですが、死亡者が出ました!よって今から全員強制ログアウトとなります!』

 

…えっ?

嘘でしょ、死亡者が…?

そんな、そんなわけないじゃない。

だって私達は、クエストを通して絆を深め合ってきたのだから。

私が理解が追いつけずにいると、突然意識が途絶える。

 

 

 

 

 

「っ!!?」

 

次に目が覚めると、視界が何かで遮られていた。

これは…ヘッドセット?

視界を遮っていたヘッドセットを外すと、転生ルームの内装が目に飛び込んできた。

どうやら現実世界に戻ってきたようだ。

 

 

 

「キャアアアアアッ!!?」

 

突然、マナの叫び声が転生ルームに鳴り響いた。

マナは、その場で尻餅をついて青ざめていた。

 

「あっ、あ、あああ…ああああ…」

 

マナは、顔面蒼白になってガタガタ震えながら指をさしていた。

私は、マナが指をさした先に視線を移した。

その瞬間、そこにあるはずのないものがこの目に映り込んできた。

 

その人は、口から泡を吹いて白目を剥き、生気のない表情をしていた。

その表情は、その人がもう息をしていない事を物語っていた。

 

どうして…?

さっきまで普通に話してたのに…

 

そこに座っていたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテアだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り9名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

以上8名

 

 

 

 

 



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非日常編①(捜査編)

そんな…

ネロがどうして…

私達の為に自分を犠牲にしたりなんかしないって、約束してくれたのに…

どうしてこうなるのよ…!

 

「はぎゃあああああ!!?ね、ネロさん!?」

 

「ネロくん…!」

 

「何という事じゃ…!!」

 

『そんな…ネロクンが、どうして…!』

 

「ネロさん……」

 

「やはり、また起こってしまったか。クソ、奴には情報を洗いざらい吐いてもらおうと思っていたのに」

 

「あーあ、ネロおにい死んじゃった。これから面白くなるところだったのになぁ」

 

目野さんは顔を真っ青にして叫び声を上げ、マナ、古城さん、リカは顔を真っ青にしてその場で立ち尽くしていた。

加賀君は腕を組んだまま静かにぼやき、秋山君が悔しそうに俯き、知崎君は頭の後ろで手を組んでため息をついていた。

するとその時、館井君がネロに歩み寄る。

 

「くっ…ダメだ、これはもう…」

 

館井君は、ネロの顔を覗き込んだかと思うと首を横に振った。

わかっていた。

ネロはもう、息をしていないという事は。

それでもいざ抗いようのない現実に直面すると、どうしようもなくなってしまう自分がいた。

私達がネロの遺体を前に呆然としていると、モノクマとモノDJがどこからか現れる。

 

『うぷぷぷぷ!オマエラの絆なんて、シャボン玉みたいに脆いんですなぁ』

 

「うわ、出た」

 

「貴様ら……!」

 

「ねえ誰か殺虫剤持ってない?」

 

「ワシの愛剣の餌食にしてくれようか」

 

モノクマとモノDJが現れると、マナと館井君が露骨に嫌そうな顔をし、秋山君に至ってはモノクマ達を敵視するあまり毒を吐き、古城さんはどこからか新聞紙を取り出して丸めていた。

するとそれを見たモノDJがショックを受ける。

 

『ダミッ!?テメェら、俺達を黒光りするあの虫か何かだと思ってねえか!?』

 

「お前らなんかゴキブリ以下だよ」

 

『ガビーーーン!!』

 

秋山君がため息をつきながら毒を吐くと、モノDJが軽くショックを受けた。

茶番も甚だしいわね。

私がそんな事を考えていると、加賀君も同じ事を思ったのか、腕を組んでうんざりした様子で口を開く。

 

「茶番はいいからさっさと先に進めてくれ。今回もモノクマファイルを配ってくれるのだろう?」

 

『はいはーい、今回もモノクマファイルをあげるので捜査に役立ててくださいね!』

 

『今回は自由に異世界に行って探索できるようにしたから、どんどん調査をしてけよ!んじゃあ、学級裁判で会おうぜ!』

 

そう言って二匹は、どこかへと消えていった。

 

「さて…と。今回も検視は俺がやろう」

 

『アテクシも手伝いマス』

 

「リカが言うなら私も見張りをしましょう!」

 

話し合いの結果、今回は加賀君、目野さん、リカの三人が検視と見張りを、秋山君と知崎君が異世界で捜査、館井君と古城さんが現実世界で捜査、そして私とマナが皆の捜査情報をまとめる聞き込み役となった。

ネロを殺した犯人を突き止める為にも、出来るだけ多く情報を集めたいところね。 

 

 

 

ーーー

 

 

 

《捜査開始!》

 

 

 

まずはモノクマファイルを確認しておこう。

 

モノクマファイル⑤

被害者は【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア。

死亡推定時刻は14時30分頃。

死体発見場所は寄宿舎4Fの転生ルーム。

死因は心臓麻痺。

外傷はなし。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【モノクマファイル⑤】

 

 

 

「心臓麻痺か…ザックリしすぎじゃないかしら」

 

「うーん、加賀君達に聞いたら何かわかったりしぇんかな?」

 

「そうね。一旦加賀君達に検視結果を聞いてみましょう」

 

私達は、一旦加賀君達に捜査情報を聞いてみる事にした。

 

「加賀君は何かわかった事はあった?」

 

「ああ。ネロの死体には、外傷は一切無かった。しかし、ネロの体内から毒が検出された」

 

「うーん……」

 

じゃあネロは毒殺だったのかしら…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【加賀君の検視結果】

ネロの身体には外傷は無かった。

しかし、体内から毒が検出された。

 

 

 

「ちなみに、その検出された毒というのは何だったの?」

 

『どうやら青酸カリのようデス。体内から青酸カリのカプセルが検出されマシた』

 

「青酸カリ…」

 

そういえば、保健室にあった毒の中に青酸カリがあったわよね。

確か、青いカプセルにちょうど致死量が入ってたはずよね。

じゃあネロは青酸カリを飲まされて死んだって事…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【青酸カリ】

ネロの体内からカプセルごと検出された。

青いカプセルにちょうど致死量の顆粒が入っている。

 

 

 

「………あれ?」

 

そういえば、青酸カリを飲まされているのに、ネロの口からはアーモンド臭が全くしないわね。

普通、青酸カリを飲んだら胃酸と反応してシアン化水素が発生するから、甘酸っぱい匂いがするはずなのだけれど…

ネロは青酸カリで毒殺されたわけじゃないって事かしら?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【アーモンド臭】

青酸カリが胃酸と反応して発生するシアン化水素の臭い。

ネロの口からはアーモンド臭がしなかった。

 

 

 

「そういえば、あなた達は事件当時何をしてたの?」

 

「リカと一緒に銀行の金を下ろしに行っていたと思うが…ああ、そういえば目野とネロが飛行船の停留所付近の森で何かコソコソやっていたな」

 

「え?」

 

「確か強制ログアウトの10分程前だったかな。目野が忙しない様子でネロを森に連れ込んでいたのを遠目で見たぞ」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【加賀君の証言】

ネロが死ぬ10分程前、目野さんが飛行船の停留所付近の森にネロを連れ込んでいた。

 

 

 

『ははで思い出した事があるのデスが、アテクシから一つよろしいデショウか?』

 

「え?」

 

『ははの様子が何だかおかしかったのデス。何というか、いつもより物静かだったというか…何だかいつものははではないようデシた』

 

「そうなんや…ようそげん小しゃな変化に気づけたね」

 

『当然デス!ははの事は誰よりもアテクシが一番知ってマスから!』

 

 

 

コトダマゲット!

 

【リカの証言】

異世界の目野さんの様子がおかしかった。

いつもより物静かで、何だか目野さんであって目野さんではないようだった。

 

 

 

「目野さん、あなたは何かわかったかしら?」

 

「うーん、それがですね!事件の約10分前からの記憶が無いのでサッパリですね!何だか強烈な薬品の匂いがした事は覚えているのですが、それ以降の記憶がゴッソリ抜け落ちてるみたいです!すみません!」

 

事件の10分前からの記憶が無い…?

そんなはずないわ、だって目野さんは私達と異世界で会ったはず…

じゃあ私達が会った目野さんは一体何だったの…?

それに、目野さんが嗅いだ薬品の匂いというのは一体…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【目野さんの証言】

目野さんは事件の約10分前から記憶が無い。

どうやら意識を失う前に強烈な薬品の匂いを嗅いだようだ。

 

 

 

「事件の捜査に役立てず申し訳ございません!ですが、こういう時は私の新作メカちゃん、ミニリカレンジャーの出番です!あポチっとな!」

 

目野さんが手元のスイッチを押した直後、どこからかミニリカレンジャーなるレッド、ブルー、イエロー、グリーン、ピンクの5体の1/14スケールのリカが現れた。

 

「このミニリカレンジャー達が遠隔で捜査をしてくれるので、これで人手不足は解決ですね!それゆけ!ミニリカレンジャー!」

 

そう言って目野さんは、学園中にミニリカレンジャーを飛ばし始めた。

すごいわね…

でも正直、そんなにすごいものがあるならもっと早く出してほしかったわ。

 

「あれ!?緋色ちゃん、何これ!?」

 

そう言ってマナが取り出したのは、青酸カリのカプセルが入った茶色い瓶だった。

これは化学室から持ち出されたものよね…?

 

「ねえ、それどこで見つけたの?」

 

「秋山くんの座席ん隙間に挟まっとったよ」

 

秋山くんの座席の隙間に…ね。

じゃあこれは秋山君が持ち出したものなのかしら…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【茶色い瓶】

青酸カリの青いカプセルが入っている。

秋山君の座席の隙間に挟まっていた。

 

 

 

「もう少しこの椅子を調べておこうかしらね」

 

私は、転生ルームの椅子の構造について調べてみた。

転生ルームの椅子は、座面に座ってヘッドセットを装着すると、自動で四肢と胴に安全装置が取り付けられ、瞬時にロックがかかるようになっている。

どうやら、ロックを解除するには一度ゲームにログインしてからログアウトする他ないみたいだ。

これだったらいきなり襲われても抵抗できなさそうね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【安全装置】

転生ルームの椅子は、ゲームをプレイする際に自動で四肢と胴に頑丈な安全装置が取り付けられ、一切身動きが取れなくなる。

安全装置のロックを解除するには、一度ゲームにログインしてからログアウトするしかない。

 

 

 

ここで調べられる事はこれくらいかしらね。

 

「次は古城さんと館井君の話を聞いてみましょう」

 

「うん!」

 

私達は、化学室を調べてくれている古城さんと館井君に話を聞いてみる事にした。

 

 

 

ーーー 化学室 ーーー

 

「館井君、古城さん。あなた達は何かわかった?」

 

「………化学室から麻酔薬とガスマスクが盗み出されていた」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【麻酔薬の瓶】

化学室から盗まれていた。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ガスマスク】

化学室から盗まれていた。

 

 

 

「ちなみに、盗まれてたのはどういう種類の麻酔薬だったのかしら?」

 

「うむ!どうやらクロロホルムとかいう薬のようじゃな!」

 

「クロロホルム…あっ、うち知っとーばい!確かハンカチに染み込ましぇて後ろから吸わしぇて気絶しゃしぇるやつ!推理ドラマで見た事あるよ!」

 

「なっ、何じゃと!?奇襲を仕掛けて気絶させる為の薬品だったのか!」

 

「マナ、古城さん…クロロホルムはハンカチに染み込ませて嗅がせたくらいじゃ人を気絶させられないのよ?」

 

「えっ、マジで!?」

 

「確かにクロロホルムは強力な麻酔作用がある薬品だけど、適切な濃度で長時間吸入しないと意識を失う事は無いのよ。そんな事するくらいだったら後ろから殴った方が早いわよ」

 

「何じゃあ、ドラマと全然違うではないか!」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【クロロホルム】

化学室から盗み出されていた。

強力な麻酔作用がある。

 

 

 

ここで調べられるのはこれくらいかしらね。

私達が次の場所を調べようとすると、ミニリカレンジャー達が捜査結果を持って飛んでくる。

まずは赤い制服を着たミニリカレッドが、無線スピーカーを持ってきた。

 

『腐和サン!アテクシはゲームセンター内に設置された無線スピーカーを発見しマシた!』

 

そう言ってミニリカレッドが見せてくれたのは、音楽準備室に置いてあった無線スピーカーだった。

どうしてこれがこんなところに…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【無線スピーカー】

音楽準備室にあったはずの無線スピーカーが、何故かゲームセンター内で見つかった。

 

 

 

今度は、ミニリカグリーンとミニリカピンクが捜査結果を報告してくる。

 

『アテクシ達は職員室を調べていたのデスが、職員室の携帯電話が一台なくなっていマシた』

 

『ちなみになくなっていたのは旧式の携帯電話で、この学園の固定電話にしか繋がりマセん』

 

 

 

コトダマゲット!

 

【携帯電話】

職員室の携帯電話が何故かなくなっていた。

旧式の携帯電話で、この学園の内線にしか繋がらない。

 

 

 

すると今度は、ミニリカブルーとミニリカイエローが捜査結果を報告する。

 

『事件と関係あるかどうかは不明デスが、どうやら職員室の内線電話に着信履歴があったようなのデス。確か、14時くらいだったデショウか?』

 

『それと、内線電話に小型マイクが取り付けられていマシた』

 

内線電話…小型マイク…

この時点では何もわからないけど、何だか重要な手掛かりになりそうね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【内線電話の着信履歴】

職員室の内線電話に着信履歴があった。

時刻は14時頃。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【小型マイク】

音楽準備室にあった小型マイク。

何故か職員室の内線電話に取り付けられていた。

 

 

 

「ありがとう、ミニリカ達」

 

『どういたしマシて!また御用があったらいつでも呼んでクダサイ!』

 

そう言ってミニリカレンジャーは、背中のエンジンを吹かしながら目野さんの方へと飛んでいった。

ここで調べられる情報はこれくらいかしらね…

 

「ねえ緋色ちゃん、そろそろ異世界ん方も調べてみん?」

 

「そうね」

 

現実世界での捜査を終えた私達は、異世界に行って調べる事にした。

 

 

 

ーーー 異世界 ーーー

 

異世界に行くと、『はじまりの草原』が広がっていた。

そういえば、異世界にログインする時にいちいち名前を聞かれてたけど、今回はそれをやらないのね。

捜査中は例外って事かしらね?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【プレイヤーの確認】

異世界にログインする際、必ずプレイヤーの確認が求められる。

 

 

 

「あっ、緋色ちゃん!」

 

突然マナが大きな声を出してきた。

マナが指差した方を見てみると、ネロのアバターが地面に横たわっていた。

ネロのアバターの首には、『縁結びのリボン』が括り付けられている。

これだけきつくしまっていたら、間違いなく数分で絶命してしまうでしょうね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ネロのアバター】

首にリボンが結び付けられている。

これだけ強く結び付けられていたら、間違いなく数分で絶命するはずだ。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【縁結びのリボン】

ホープアイランド内のアイテム。

決して切れず無限に伸びる魔法のリボン。

 

 

 

「一応ネロのグリモアも確認しておきましょう」

 

「うん!」

 

私達は、犯人に繋がる手掛かりを得る為、ネロのグリモアを調べてみる事にした。

…ごめんなさい、ネロ。

少し調べるわよ。

ネロのグリモアを調べてみると、どうやらネロが最後に接触したのは目野さんのようだ。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ネロのグリモアのログ】

ネロのグリモアのログによると、ネロが最後に接触したのは目野さん。

 

 

 

うーん…

捜査をしてて少し気になった事があるのよね。

モノクマに聞いてみようかしら。

 

「モノクマ!」

 

『はい何でしょ?』

 

「確か、一人でも死亡者が出たらその瞬間にゲームは強制中断されて、全員ログアウトされるのよね?」

 

『はいそうです!』

 

「もしゲーム内で死んだら、現実世界の肉体はどうなるのかしら?」

 

『うぷぷ、異世界での死は現実世界での死と同じです!しかし、異世界で死んでも現実の肉体にはダメージ等は反映されません!たとえ異世界でどう死のうと、現実世界での死因は『心臓麻痺』となります!』

 

なるほどね…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ゲームの強制中断】

誰か一人でも死亡者が出た場合、その瞬間にゲームは強制中断され全員ログアウトとなる。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【異世界での死】

異世界で死んだ場合、現実世界でも死亡する。

ただし現実世界での死因は、異世界での死因にかかわらず全て心臓麻痺となる。

 

 

 

「あれ?緋色ちゃん、何やろこれ?」

 

「ん?」

 

マナは、はじまりの草原の中で立ち尽くして正面を眺めていた。

草原はどこまでも続いているように見えるのに、まるで水面のような透明な壁が私達の前に聳え立っていた。

 

…あれ?

この壁、すり抜けられるようになってるわね。

どういう事なのかしら?

 

「モノクマ、この壁は何なの?」

 

『うぷぷ、それはこの世界を仕切る壁です!この壁は、無生物と認識されたものはすり抜ける事ができるのです!』

 

「無生物…それって死体は無生物にカウントされるの?」

 

『されます!死体及びNPCは、無生物として扱われます!』

 

「じゃあ私達が今普通にすり抜けられたのはどうしてなの?」

 

『捜査中は例外なのだ!』

 

なるほどね。

裏を返せば、捜査時間以外はこの壁をすり抜けられるのは無生物だけなのね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【透明な壁】

はじまりの草原に立ちはだかっていた壁。

普段は無生物はすり抜けられるようになっている。

死体及びNPCは無生物と認識される。

ただし捜査中は例外。

 

 

 

…あれ?

この壁の向こう、すり抜けてみると何かあるわね。

何だろう、あれは…

…暗闇の中に、滑り台みたいなものが見えるわね。

見たところ、手作りのようだけれど…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【滑り台】

透明な壁の向こうに、手作りの滑り台のようなものが設置されている。

 

 

 

「緋色ちゃん!秋山くんと知崎くんにも話ば聞き行こ!」

 

「そうね」

 

私達は、捜査情報を集めるため、水の島にいる秋山君と知崎君にも話を聞いてみる事にした。

 

 

 

ーーー 水の島 ーーー

 

私達は、水の島で捜査をしていた秋山君達に話しかけた。

 

「秋山君達は何かわかったかしら?」

 

「うーん、事件と関係あるかどうかはわかんないんだけどさ。14時くらいに職員室の内線に無言電話があったんだよね」

 

「無言電話?」

 

「うん。俺、それまでは転生ルームでコロシアイが起きないように見張りをしてたんだけどさ。急にゲームセンターの方から電話の音が聞こえて、何かと思って調べてみたらスピーカーが置いてあってさ。ひょっとして職員室の電話の音をスピーカーが拾ってるんじゃないかと思って調べに行ったんだ。で、出てみたら結局無言電話だったよ。今思えば、あんな怪しい電話に出るんじゃなかったな」

 

「なるほどね…」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【秋山君の証言】

14時頃に職員室の内線電話に着信があったので出てみたところ、無言電話だったらしい。

それまでは転生ルームの見張りをしていた。

 

 

 

「知崎君は?」

 

「緋色ちゃん!マナちゃん!ねえ知ってる?あの飛行船、ずっと水の島の前で止まってたんだよ!」

 

「ええ!?嘘やろ!?」

 

「嘘じゃないもん!ボク、ずっといろはおねえと一緒に炎の島で待ってたんだから!全く、誰だよずっと水の島で止めてた奴!」

 

「ずっとって何分くらい?」

 

「10分くらい!」

 

地味に長いわね。

誰かが嫌がらせで止めてたか、それとも故障か何かかしら?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【知崎君の証言】

飛行船は、強制ログアウト時までずっと水の島で停まっていた。

つまり少なくともネロが死ぬ10分前は島と島との間の行き来は不可能だった。

 

 

 

「………」

 

私は、ほんの思いつきで自分で書いた地図を眺めてみた。

私が書いたのは、はじまりの草原がある島、炎の島、風の島、土の島、水の島の順に南北に一直線に並んでいる地図だ。

飛行船での所要時間と方位磁針を頼りに描いた地図なのだけれど…この地図、本当に正しいのかしら?

島の移動手段が飛行船しかないから、どうも怪しいわね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【島の位置関係】

はじまりの草原を基点として、炎の島、風の島、土の島、水の島の順に飛行船での移動の所要時間が長くなっていく。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【飛行船】

必ず島の東端に到着する飛行船が唯一島を行き来できる移動手段。

 

 

 

「ねえ、目野ちゃんがネロくんば連れ込んだんって水ん島ん停留所近くの森ばいね?あそこはもう調べに行ったと?」

 

「それがさ…あの島、モンスターが大量に蔓延ってて迂闊に近づけなかったんだ。この前まであの森にはモンスターなんて一匹もいなかったのに、何で急に現れたんだろうね?」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【水の島の森のモンスター】

水の島の森にモンスターが大量発生していた。

 

 

 

「ねえ楽斗おにい!知ってる?ここのカードってね、一分間ほったらかしにしとくと元に戻っちゃうんだよ!」

 

「知ってるよ…君、それで腐和さん達の窮地を救ったんでしょ?」

 

「そうだよー!それとね、これは色々やってて気付いた事なんだけどさ!手に入れたアイテムを何かの形に加工したらまたカード化できるらしいよ!にしし、今割と大事な事言ったよ!」

 

「わかったから、関係ない事話してる暇があったら手掛かり探そうよ」

 

「はーい」

 

なるほどね…

カードの特性は、この事件の謎を紐解く上で重要になりそうね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【アイテムの特性①】

この島のアイテムは触れる事でカード化でき、カードに書かれた呪文を詠唱する事でカード化を解除する事ができる。

また、1分間グリモアに納めずに放置しておくと自動的にカード化が解除されてしまう。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【アイテムの特性②】

原則として、一度カード化を解除したものはもう一度カード化する事はできない。

ただし例外として、そのアイテムを加工して別のアイテムへ変えた場合はもう一度カード化する事ができる。

 

 

 

「ねえ緋色ちゃん。確かこんゲームってHPが0になると全身疲労で動けんくなるんやったよね?」

 

「ええ」

 

一度HP切れした事あるからわかるけど、HPが0になると本当に全身疲労で指一本動かせなくなるのよね。

HPが0になった状態で襲われても抵抗できなさそうね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ゲーム内のHP】

異世界にはHPという概念が存在する。

異世界でダメージを負った場合、現実世界の肉体に全く影響はないが、HPが0になると全身疲労で指一本動かせなくなる。

 

 

 

「捜査情報をまとめてみたけど、捜査で分かったのはこれくらいかしらね」

 

「うん!どうする?もう戻る?」

 

「そうね…」

 

私とマナが話していた、その時だった。

リカと加賀君が、こちらに歩いてくる。

 

『腐和サン、聲伽サン。こんにちは』

 

「むっ、腐和に聲伽か。気分はどうだ?」

 

リカと加賀君のアバターは、やけに能天気に話しかけてくる。

するとマナが二人に駆け寄って話しかける。

 

「あれっ、加賀くん、リカちゃん!捜査はもう終わったと?」

 

「捜査?何だそれは」

 

「何だそれはって…今捜査中やろ?なん呑気な事言いよーっちゃん!」

 

「違うわよ、マナ。今の二人はNPCなの。だから向こうが答えを用意してない質問に対しては、『何だそれは』としか言えないのよ」

 

「えっ、NPC?」

 

「もう…初めてゲームにログインする時、モノDJが説明してたでしょ?私達プレイヤーのアバターは、ログアウトするとNPCとしてこの世界に居続けるの」

 

「そうだっけ…?」

 

私がため息をつきながら説明すると、マナが苦笑いを浮かべた。

…この子、さては説明をちゃんと聞いてなかったわね。

それにしても、捜査中にまでNPCがいるなんて、正直邪魔ね。

紛らわしいから捜査中くらいNPCを退かしときなさいよ。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ログアウト後のアバター】

ログアウト後、プレイヤーのアバターはNPCとして異世界に居続ける。

NPCは、用意された問答しかする事ができない。

 

 

 

「緋色ちゃん、もう行かん?」

 

「そうね……」

 

本当にまだ調べてない事はもう無いかしら?

…あっ、待って。

そういえばまだ確認してない事があったわね。

 

「あっ、ちょっと待って」

 

「何?」

 

「ネロが死んだ時、遺体には誰が触ってたっけ?」

 

「んーっと…館井くんと、あと検視役の加賀くんとリカちゃんと目野ちゃんだよね?」

 

「ふーん…」

 

「ふーんて…緋色ちゃんが聞いたんやろ!?」

 

「ああ、ごめんなさい。ちょっと考え事してた」

 

遺体に触っていたのはその4人…

あっ、もしかして……

 

 

 

コトダマゲット!

 

【マナの証言】

強制ログアウト後、ネロの遺体に触ったのは館井君、加賀君、目野さん、リカの4人。

 

 

 

私が捜査を続けていた、その時だった。

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『えー、もう待ちくたびれたので捜査時間を打ち切らせていただきます!オマエラ、校舎1階の赤い扉の前まで集合して下さい!あ、もちろん全員参加だからね?15分以内に来ないとオシオキしますよー!』

 

「えっ、もうおしまい!?」

 

「仕方ないわね…行くわよマナ」

 

「う、うん…」

 

私達は、不安を抱えつつもすぐに異世界からログアウトした。

ログアウトすると、さっきまで座っていた椅子に戻ってきた。

全員がログアウトしたのを確認すると、私達はすぐに赤い扉に向かった。

 

 

 

ーーー 赤い扉の前 ーーー

 

赤い扉の前には、既に他の人達が集合していた。

私達が全員集まると、その直後アナウンスからちょうど15分になった。

すると赤い扉が開き、私はエレベーターに乗り込んだ。

全員がエレベーターに乗り込むと、扉が閉まり下へ移動した。

 

エレベーターは静かに下へ下へと降りていき…そして、止まった。

またあの裁判場への扉が開く。

だが今回は、前回と風景が違っていた。

今回は、私達がゲームをしていた異世界のような風景だった。

 

越目君と聖蘭さんの間の席に新たに置かれた食峰君の遺影。

彼の遺影には、クロスしたフォークとナイフが描かれていた。

そして知崎君と響さんの席の間には、タバコのマークが描かれたネロの遺影が置かれていた。

 

ネロ・ヴィアラッテア…

素直じゃないところがあったけど、最期まで私達を守ろうとしてくれていた。

誰よりも強く勇敢な人だった。

 

そんな彼を殺した犯人がこの中にいる。

私が、絶対に犯人を暴いてやる!!

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り9名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

以上8名

 

 

 

 

 



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非日常編②(学級裁判前編)

コトダマファイル

 

【モノクマファイル⑤】

被害者は【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア。

死亡推定時刻は14時30分頃。

死体発見場所は寄宿舎4Fの転生ルーム。

死因は心臓麻痺。

外傷はなし。

 

【加賀君の検視結果】

ネロの身体には外傷は無かった。

しかし、体内から毒が検出された。

 

【青酸カリ】

ネロの体内からカプセルごと検出された。

青いカプセルにちょうど致死量の顆粒が入っている。

 

【アーモンド臭】

青酸カリが胃酸と反応して発生するシアン化水素の臭い。

ネロの口からはアーモンド臭がしなかった。

 

【加賀君の証言】

ネロが死ぬ10分程前、目野さんが飛行船の停留所付近の森にネロを連れ込んでいた。

 

【リカの証言】

異世界の目野さんの様子がおかしかった。

いつもより物静かで、何だか目野さんであって目野さんではないようだった。

 

【目野さんの証言】

目野さんは事件の約10分前から記憶が無い。

どうやら意識を失う前に強烈な薬品の匂いを嗅いだようだ。

 

【茶色い瓶】

青酸カリの青いカプセルが入っている。

秋山君の座席の隙間に挟まっていた。

 

【安全装置】

転生ルームの椅子は、ゲームをプレイする際に自動で四肢と胴に頑丈な安全装置が取り付けられ、一切身動きが取れなくなる。

安全装置のロックを解除するには、一度ゲームにログインしてからログアウトするしかない。

 

【麻酔薬の瓶】

化学室から盗まれていた。

 

【ガスマスク】

化学室から盗まれていた。

 

【クロロホルム】

化学室から盗み出されていた。

強力な麻酔作用がある。

 

【無線スピーカー】

音楽準備室にあったはずの無線スピーカーが、何故かゲームセンター内で見つかった。

 

【携帯電話】

職員室の携帯電話が何故かなくなっていた。

旧式の携帯電話で、この学園の内線にしか繋がらない。

 

【内線電話の着信履歴】

職員室の内線電話に着信履歴があった。

時刻は14時頃。

 

【小型マイク】

音楽準備室にあった小型マイク。

何故か職員室の内線電話に取り付けられていた。

 

【プレイヤーの確認】

異世界にログインする際、必ずプレイヤーの確認が求められる。

 

【ネロのアバター】

首にリボンが結び付けられている。

これだけ強く結び付けられていたら、間違いなく数分で絶命するはずだ。

 

【縁結びのリボン】

ホープアイランド内のアイテム。

決して切れず無限に伸びる魔法のリボン。

 

【ネロのグリモアのログ】

ネロのグリモアのログによると、ネロが最後に接触したのは目野さん。

 

【ゲームの強制中断】

誰か一人でも死亡者が出た場合、その瞬間にゲームは強制中断され全員ログアウトとなる。

 

【異世界での死】

異世界で死んだ場合、現実世界でも死亡する。

ただし現実世界での死因は、異世界での死因にかかわらず全て心臓麻痺となる。

 

【透明な壁】

はじまりの草原に立ちはだかっていた壁。

普段は無生物はすり抜けられるようになっている。

死体及びNPCは無生物と認識される。

ただし捜査中は例外。

 

【滑り台】

透明な壁の向こうに、手作りの滑り台のようなものが設置されている。

 

【秋山君の証言】

14時頃に職員室の内線電話に着信があったので出てみたところ、無言電話だったらしい。

それまでは転生ルームの見張りをしていた。

 

【知崎君の証言】

飛行船は、強制ログアウト時までずっと水の島で停まっていた。

つまり少なくともネロが死ぬ10分前は島と島との間の行き来は不可能だった。

 

【島の位置関係】

はじまりの草原を基点として、炎の島、風の島、土の島、水の島の順に飛行船での移動の所要時間が長くなっていく。

 

【飛行船】

必ず島の東端に到着する飛行船が唯一島を行き来できる移動手段。

 

【水の島の森のモンスター】

水の島の森にモンスターが大量発生していた。

 

【アイテムの特性①】

この島のアイテムは触れる事でカード化でき、カードに書かれた呪文を詠唱する事でカード化を解除する事ができる。

また、1分間グリモアに納めずに放置しておくと自動的にカード化が解除されてしまう。

 

【アイテムの特性②】

原則として、一度カード化を解除したものはもう一度カード化する事はできない。

ただし例外として、そのアイテムを加工して別のアイテムへ変えた場合はもう一度カード化する事ができる。

 

【ゲーム内のHP】

異世界にはHPという概念が存在する。

異世界でダメージを負った場合、現実世界の肉体に全く影響はないが、HPが0になると全身疲労で指一本動かせなくなる。

 

【ログアウト後のアバター】

ログアウト後、プレイヤーのアバターはNPCとして異世界に居続ける。

NPCは、用意された問答しかする事ができない。

 

【マナの証言】

強制ログアウト後、ネロの遺体に触ったのは館井君、加賀君、目野さん、リカの4人。

 

 

 


 

 

 

『ヘイヘイヘーイ!!!全員席についたなァ!!!』

 

『それでは、始めましょうか!お待ちかねの学級裁判を!』

 

 

 

《学級裁判 開廷!》

 

 

 

モノクマ『ではまず裁判の簡単な説明をしておきましょう。学級裁判では『仲間を殺した犯人は誰か』について議論をし、その結果はオマエラの投票によって決まります!』

 

モノDJ『もし正解ならクロのみがオシオキ!!不正解ならクロのみが『卒業』、それ以外の全員がオシオキだぜYEAH!!!!』

 

秋山「わかったからさっさと始めるよ」

 

聲伽「今回は死因がザックリしすぎやけどどうしようね?」

 

腐和「とりあえず、加賀君達の検視結果を整理してみるのがいいんじゃない?」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

加賀「検視結果…か。《ネロの身体に外傷は無かった》。しかし、体内から《毒》が検出されたな」

 

古城「ど、毒じゃと!?」

 

秋山「うーん…その毒って何だったのかな?」

 

古城「前回みたく《フグ毒》ではないのか?」

 

聲伽「んー…《青酸カリ》やなか?」

 

あの人の意見に賛成したいわね…

 

 

 

《青酸カリ》⬅︎【青酸カリ】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「ネロの身体から検出された毒は青酸カリで間違いないと思うわ。そうでしょ加賀君?」

 

加賀「ああ。ネロの身体からは青酸カリのカプセルが見つかった」

 

古城「な、何じゃと!?」

 

腐和「犯人は、保健室から青酸カリの瓶をそのまま持ち出してその場でネロに投与したのでしょうね。それを裏付ける証拠もあるわ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【茶色い瓶】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「青酸カリのカプセルが入った瓶が秋山君の座席の隙間に挟まっていたの。おそらく、犯人が隠したものでしょうね」

 

古城「むっ!?だとすると、ワシにはもう犯人がわかってしまったぞ!!」

 

聲伽「ええ!?」

 

知崎「えーそれホント!?いろはおねえ!」

 

古城「ガハハハ!!ワシの推理が聞きたいか!?心して聞くがよい!」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

古城「ネロは秋山に《毒殺された》のじゃ!」

 

秋山「…はあ?」

 

古城「《椅子から毒の瓶が見つかったのが動かぬ証拠》じゃあ!!観念せんか!!」

 

秋山「…あのさぁ、間違えたら皆死ぬんだよ?《もう少し真面目に議論しようよ》」

 

目野「でも《毒殺以外の死因》なんて考えられるんですかね!?」

 

うーん…

毒殺だとすると、あれと矛盾するのよね。

 

 

 

《毒殺された》⬅︎【アーモンド臭】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「ネロの死因は毒殺じゃないと思うわ」

 

古城「な、何じゃと!?」

 

腐和「青酸カリは、胃酸と反応するとシアン化水素が発生するの。これが青酸カリで窒息死する原因になるのだけれど、このガスは甘酸っぱい臭いがするのよ。その臭いがしなかったって事は、ネロに投与された青酸カリは胃酸と反応してなかったのよ」

 

秋山「大体さ、俺の椅子から毒薬の瓶が見つかったからって、俺が犯人とは限らないだろ?クロが俺を犯人にする為にわざと俺の椅子に隠したのかもしれないじゃないか」

 

聲伽「一理あるね…」

 

古城「う、ううむ…い、言われてみればそうじゃな。じゃあ死因は毒殺以外という事か…?」

 

 

 

リカ『プログラミングし直しデスね!』

 

《反 論》

 

 

 

リカ『アーモンド臭がしなかったからって、毒殺の可能性を消すのは早計では?』

 

腐和「そうかしら?私は毒殺じゃないと思うけど」

 

リカ『そうデスね…では一からバグを取り除いて修正していきマショウ』

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

リカ『確かに、アーモンド臭がしなかったので経口摂取の線が消えたのは間違いないと思いマス。デスがまだ可能性が考えられマセんか?』

 

腐和「可能性?」

 

リカ『直接血管に注入されたという可能性デス』

 

腐和「うーん…素人がそんな事できるものなのかしら?」

 

リカ『この際、素人かどうかは関係ありマセん。体内に毒を注入さえできれば殺せるのデスから』

 

腐和「じゃあネロの身体から見つかった青酸カリのカプセルは何だったの?」

 

リカ『おそらくダミーだと思いマス。《注射器か何かをネロクンに刺して》、毒を注入すれば、アーモンド臭を発生させずにネロクンを毒殺する事は可能なのでは?』

 

うん、一見筋が通っているように見える…

でも、その推理には決定的な穴があるわ!

 

《注射器か何かをネロクンに刺して》⬅︎【加賀君の検視結果】 

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「残念だけどそれは通らないわ。『死体には外傷は一切なかった』って加賀君が証言しているもの。注射されたんだとしたら、加賀君が注射痕を発見しているはずでしょ?」

 

加賀「そうだな。俺が調べたところ、注射痕のようなものはどこにも見つからなかった。モノクマファイルにも外傷なしと書かれていたしな」

 

リカ『あっ…そうデシたね。失礼しマシた』

 

腐和「死因を明らかにする前に、まずはネロの死亡場所を明らかにする必要があるんじゃない?」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

目野「死亡場所?《転生ルーム》ではないのですか?」

 

秋山「そういう事じゃなくてさ…」

 

館井「《現実世界》で死んだという可能性は無いのか?」

 

聲伽「うーん…どうなんやろね」

 

知崎「はいはーい!《異世界》で死んだんだと思いまーす!」

 

あの人の意見に賛成したいわ。

 

 

 

《異世界》⬅︎【モノクマファイル⑤】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「ネロの死因は心臓麻痺と書いてあるから、死亡場所は異世界なんじゃないかしら?」

 

古城「むっ、何故そう言い切れるのじゃ!?」

 

マナ「あっ…緋色ちゃん、アレだよね!?」

 

腐和「ええ。そうね」

 

館井「アレではわからんな。きちんとわかるように説明してもらおうか」

 

腐和「わかったわ。どうして死因が心臓麻痺だと死亡場所が異世界になるのか説明するわね」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【異世界での死】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「異世界で死んだ場合、異世界での死因にかかわらず現実世界での死因は心臓麻痺になるの。モノクマが言ってたから間違いないわ」

 

知崎「ふーん、なるなる」

 

秋山「じゃあ死亡場所は異世界で確定って事でいいんだね?」

 

腐和「ええ。次は、異世界でネロがどうやって殺されたのかを議論しましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

古城「わかった!《刺殺》じゃろ!」

 

知崎「《魔法》で殺したんじゃないの?」

 

館井「ううむ…異世界の中でならあり得る…か」

 

聲伽「《絞殺》やなか?」

 

秋山「うーん…《毒殺》…ではないか」

 

あの人の意見に賛成したい。

 

 

 

《絞殺》⬅︎【ネロのアバター】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「ネロのアバターに、リボンのようなものが結び付けられていたの。ネロはあれで殺されたんじゃないかしら?」

 

聲伽「な、なるほど…」

 

加賀「ではネロは絞殺されたものとして、次は凶器の断定を……」

 

 

 

知崎「は?何言ってんの?」

 

《反 論》 

 

知崎「ネロちゃんの首にリボンが結ばれてたからって、絞殺とは限らないんじゃないの?」

 

腐和「どういう事かしら?」

 

知崎「そぉだなぁ。かったるいし、サクサク証明していかなきゃだよね」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

知崎「犯人はさ、死因を間違えさせるためにわざとネロちゃんの首にリボンを巻きつけたんじゃないの?」

 

腐和「でも、アバターのネロには絞殺以外の外傷は無かったわよ?」

 

知崎「外傷が目立つ死因だったとは限らないじゃんかよー」

 

腐和「じゃあネロの本当の死因は何だったっていうの?」

 

知崎「そんなの知らないよ!一酸化炭素中毒かなんかじゃないの?」

 

腐和「死因が違うとか言い出した割には随分適当なのね」

 

知崎「だって知らないもんは知らないんだもん!ボクが言いたいのはそういう事じゃなくさ!ネロちゃんを《別の方法で殺してから》リボンで首を絞めたって可能性もまだ残ってるって事だよ!ねえねえどうして絞殺だって言い切れるの?知ってる?知ってるのかなぁ?」

 

いいえ、あのルールがある限り、それはできないはずよ。

 

《別の方法で殺してから》⬅︎【ゲームの強制中断】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「あのゲームは、一人でも死亡者が出たらその瞬間に強制ログアウトされるの。ネロが死んでから偽装工作をするのは無理なはずよ」

 

知崎「…あー、そういえばそうだったね」

 

秋山「じゃあ死因は絞殺で確定って事でいいんだね?」

 

腐和「ええ」

 

加賀「そうなると次は凶器か。何か心当たりは?」

 

凶器…

おそらくアレでしょうね。

 

 

 

コトダマ提示!

 

【縁結びのリボン】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「ゲーム内のアイテムの『縁結びのリボン』じゃないかしら?」

 

目野「そうだったのですか!」

 

腐和「あのリボンは絶対に切れないという性質があるからね。絞殺にはもってこいだったはずよ」

 

秋山「なるほど…これで死因と凶器が明らかになったわけだけど…じゃあ次は犯人を絞っていけばいいのかな?」

 

聲伽「ネロくんははじまりの草原にいたっちゃんね?」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

加賀「こういう時はアリバイを証明するのがセオリーなんじゃないか?俺はリカと一緒に《銀行で貯金を下ろしていたが》?その後腐和と聲伽と合流したが…」

 

聲伽「そうそう!《加賀くんにお遣い頼まれたっちゃん》!」

 

館井「俺は《目野が水の島にいるのを見かけた》が…」

 

目野「えっ?いや、あの…」

 

知崎「はいはーい!ボクはいろはおねえと炎の島にいたよ!飛行船がずーーーっと《水の島に停まっててさ》!他の島に行けなかったんだよ!」

 

ちょっと待って、今重要な事を言った人がいなかった?

 

 

 

《水の島に停まっててさ》⬅︎【知崎君の証言】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「島と島を行き来する飛行船は、ずっと水の島に停まっていたの。そうでしょ?知崎君」

 

知崎「そーだよ!ずーーーっといろはおねえと一緒に待ってたんだから!ったく、誰だよ水の島で停めてた奴!」

 

腐和「うーん、それは今は重要じゃないんじゃないかしら?重要なのは、犯行時間中島と島の行き来は不可能だったという事よ」

 

加賀「裏を返せば、その時間中にネロが死んでいた島にいた奴が犯人という事か。奴が死んでいたのはどこだ?」

 

聲伽「えっとね…はじまりの草原のある島やったはずばい」

 

館井「その時間中にどこかの島にいたという確認が取れていない奴…となると、一人心当たりがあるな」

 

知崎「えーっ、だれだれ!?」

 

館井「秋山だ」

 

秋山「……は?」

 

館井「事実そうだろう?どこかの島にいたという証言が無いのはお前だけだ」

 

秋山「はぁ…あのさぁ。俺はあの時ログアウトしてたんだよ?ゲーム世界でネロさんを殺せるわけはないじゃないか」

 

館井「しかし…現にアリバイが無いのはお前だけなのだぞ」

 

秋山「そんな事言われても、俺がログアウトしてたのは事実だしなぁ。俺は転生ルームの前で誰かが変な動きをしていないか見張ってたんだよ」

 

加賀「うむ…秋山が犯人の可能性は低いんじゃないか?」

 

知崎「ほよ?」

 

加賀「秋山の座席から毒薬の瓶が見つかった時点で、俺は秋山は犯人じゃないと確信している。自分の席に毒薬を放置しておくなんて、疑って下さいと言っているようなものだからな」

 

知崎「それもそう思わせる為の罠なのかもしれないよー?」

 

加賀「無いな。本当に疑われたくないなら、多少強引にでもアリバイ工作をするはずだ。それに奴が犯人なら、こんな回りくどい事をする必要が無いんだ。奴だけが現実世界にいる状況なら、証拠隠滅なんてどうとでもなるからな」

 

館井「しかし、実際犯行が可能なのは秋山だけだし…これはどうなるのだ?」

 

古城「もしや自殺か…?」

 

加賀「…いや、ネロを殺した犯人はいるのだろう。自殺したいだけならわざわざ青酸カリを用意して偽装工作する必要も無いしな。俺達は、どうやって別の島からネロを殺したのかをハッキリさせればいいんじゃないか?」

 

腐和「そうね」

 

加賀「時に腐和。異世界の構造についてもう一度考えてみるのはどうだ?何か手掛かりが見えてくるかもしれないしな」

 

異世界の構造…

あれを証拠として提示するべきなのかしら?

 

 

 

コトダマ提示!

 

【島の位置関係】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「あの島は、はじまりの草原がある島を起点として、炎の島、風の島、土の島、水の島の順に距離が遠くなっていくのだったわよね」

 

加賀「そうだな。ところで、君の描いた地図が正しいとするとアレの設置場所ははどう考えても最適解ではなかったと思うのだが…君はどう思う?」

 

腐和「え?」

 

加賀「腐和。あの異世界で、何かおかしなところは無かったか?」

 

加賀君が言ってたおかしなところ…

そういえば私も、あの世界で違和感を感じていた。

どうしてアレはあんなに使いづらかったのかしら?

それを証拠として提示してみよう。

 

 

 

コトダマ提示!

 

【飛行船】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「飛行船!飛行船が必ず東海岸にしか着かないって事でしょ?」

 

加賀「そうだな。他にも飛行船の停留所を設置できそうな地点はいくらでもあるにもかかわらず、だ」

 

知崎「ねえねえ、何で東海岸にしか着かないのかなぁ?不思議不思議〜!」

 

加賀「東海岸…待ち時間……」

 

加賀君は、目を閉じて顎を撫でながら考え込んでいた。

そして何かを閃いたかのように突然目を見開く。

 

加賀「クク…クハハハハ!わかったぞ!」

 

古城「なっ、何じゃあ貴様!?急に笑いおって、気色悪いわァ!!」

 

リカ『なるほど…』

 

秋山「そういう事か」

 

どうやら秋山君とリカも真相に辿り着いたようだ。

 

加賀「時に腐和緋色。君は同じ建物の違う階に物や人を運ぶ装置に心当たりは無いか?君も普段から使っているものだ」

 

それってまさか…

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

エ レ ベ ー タ ー

 

 

 

【エレベーター】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「エレベーター!あなたが言いたいのは、エレベーターの事じゃないかしら?」

 

加賀「うむ、模範解答だ」

 

目野「なっ、何ですってぇ!!?…って、どういう事です?」

 

腐和「どういう事か一から説明するわね」

 

 

 

飛行船の正体は?

 

1.エレベーター

2.宇宙船

3.潜水艦

 

➡︎1.エレベーター

 

 

 

異世界の島の正しい配置は?

 

1.南北に一直線に並んでいる

2.階層になっている

3.はじまりの島を中心に環状に並んでいる

 

➡︎2.階層になっている

 

 

 

飛行船の停留所が東海岸にしかないのは?

 

1.設計ミス

2.別の場所に設置するのが面倒だったから

3.飛行船の正体がエレベーターだから

 

➡︎3.飛行船の正体がエレベーターだから

 

 

 

犯人がネロを殺した場所は?

 

1.飛行船

2.転生ルーム

3.はじまりの草原

 

➡︎1.飛行船

 

 

 

犯人がネロを絞殺した方法は?

 

1.そのまま後ろから絞めた

2.魔法を使った

3.高さを利用した

 

➡︎3.高さを利用した

 

 

 

犯人がネロを水の島からはじまりの草原に移動させた方法は?

 

1.魔法を使った

2.飛行船の窓から突き落とした

3.ネロをおぶって飛び降りた

 

➡︎2.飛行船の窓から突き落とした

 

《COMPLETE!!》

 

 

 

腐和「わかったわ!」

 

聲伽「ほんと!?」

 

腐和「ええ。私達は、あの世界の島の配置を根本から勘違いしていたの。あの世界の島は南北に一直線上に並んでるんじゃなくて、あの世界全体が高層ビルになっていたの。あの世界の島は、巨大な高層ビルのうちの一階だったのよ!」

 

館井「じゃあ、飛行船が必ず島の東端の停留所にしか到着しなかったのは…」

 

加賀「単純な話、あの飛行船はエレベーターだから、停留所は縦に一直線上に並んでいたんだ。仮にあの飛行船がエレベーターだと仮定すると、犯人がどうやってネロを水の島からはじまりの草原に移動させたのかわかるのではないか?」

 

腐和「ええ。おそらく犯人は、飛行船の窓からネロを突き落としたのよ。そうすれば、5階にある水の島の停留所に飛行船を停めたまま1階のはじまりの草原にネロを移動させる事ができるでしょ?」

 

リカ『でもただ落としただけだと、ネロクンの遺体ははじまりの草原には落ちない気がしマス』

 

腐和「でしょうね。だから犯人はあるものを使ったんだと思うわ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【滑り台】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「多分犯人は、滑り台を使ってネロをはじまりの草原に着地させたんじゃないかしら?」

 

知崎「えーっ、滑り台ー?」

 

腐和「ええ。おそらく段取りはこうよ。まず犯人は、ネロの首に縁結びのリボンを巻き付けておくでしょ?その状態で、リボンの端を握ったままネロを飛行船の窓から突き落とすの。そしてネロが絶命した瞬間に強制ログアウトしてリボンを支えるものが無くなり、ネロがリボンごと下の滑り台に落ちてそのままはじまりの草原に着地する…こういう事なんじゃないかしら?」

 

リカ『うーん、そう上手くいくものデスかね?あの世界全体が巨大な高層ビルという事は、世界のどこかに壁があるわけデショウ?飛行船の真下に滑り台を設置したところで、壁に阻まれてしまうのでは?』

 

腐和「それは問題無いはずよ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【透明な壁】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「秋山君の言う通り、あの世界には透明な壁があるの。屈折率の関係で背景がどこまでも続いているように見える仕掛けになっていたから、よくよく観察しないと壁の存在なんて気付きようがなかったのだけれどね」

 

秋山「その壁がどうしたの?」

 

腐和「あの壁、実は無生物だけすり抜けられるようになっていたのよ。死体も無生物と見做されるから、ネロのアバターもあの壁をすり抜けられたはずよ。ネロは滑り台から放り出された後、壁をすり抜けてはじまりの草原に着地したんじゃないかしら?」

 

聲伽「なるほど…でもそん滑り台ってどっから持ってきたっちゃろうか?」

 

知崎「あの世界には滑り台なんて無かったよねぇ?」

 

リカ『となると…手作りした可能性が高そうデスね』

 

古城「むっ、滑り台を手作りじゃとぉ!?」

 

腐和「ああもう!皆でいっぺんに喋らないで!私は聖徳太子じゃないんだから!」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

聲伽「まず、犯人は《手作りの滑り台》ば使ったって事でよかと?」

 

知崎「うんうん!それでそれで?」

 

館井「しかし…それだと説明できない事があるぞ」

 

聲伽「ふぇ?」

 

館井「犯人はどうやってエレベーターの真下に滑り台を設置したのだ?まさか《エレベーターの真下で滑り台を作った》訳ではないよな?」

 

加賀「普通に滑り台を作ってから《カード化してエレベーターの下に投げた》んじゃないか?そのままカード化を解除すれば、エレベーターの真下に滑り台を設置する事は可能なはずだ」

 

館井「それはできないのではないか?だって、一度カード化を解除したアイテムは二度とカード化できないのだぞ。カード化を解除したアイテムで滑り台を作ったとして、《滑り台をカード化する事ができない》のでは意味が無いだろう」

 

うーん、本当にそうかしら…?

 

 

 

《滑り台をカード化する事ができない》⬅︎【アイテムの特性②】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「滑り台をカード化する事は可能だったんじゃないかしら?」

 

館井「何だと……?」

 

腐和「館井君の言う通り、一度カード化を解いたアイテムはもう一度カード化する事はできないわ。でも、アイテムを組み合わせて別のアイテムを作った場合は例外なのよ。例えば、滑り台を作る為に木材と鉄パイプを使ったとするでしょ?木材と鉄パイプを単体でカード化する事はできなくても、木材と鉄パイプを使って作った滑り台はカード化できるのよ」

 

館井「そうだったのか…」

 

リカ『まあ館井クンはゲーム初心者デスので、気付かなくても無理はありマセんね』

 

聲伽「えっと…じゃあネロくんは、緋色ちゃんが今言うたトリックで殺しゃれたって事でよかと?」

 

腐和「そうだと思うわ」

 

 

 

「根本から考え直したら?」

 

《反 論》

 

 

 

秋山「腐和さん。それはおかしいよ」

 

腐和「今言ったトリックがどこか間違ってるの?」

 

秋山「今のトリック、確かに筋は通ってるんだけどさ。君、何かもっと根本的な事を見落としてないかな?」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

秋山「そもそもの話、本当に今言ったトリックを実行する事は可能なのかな?」

 

腐和「でも実際事件は起きてるわけだし…」

 

秋山「うん、ネロさんを殺した誰かがいる、その事実はあるんだろうね。飛行船がエレベーターになってるのも、合ってると思うよ。でもさ、そのトリックでネロさんを絞殺するのは無理なんだよ」

 

腐和「どうして?」

 

秋山「だって考えてもみてよ。いきなり飛行船から突き落とされそうになったら、誰だって抵抗するよね?ましてや、百戦錬磨のネロさんが相手なんだよ?逆に犯人が返り討ちに遭う可能性が高かったんじゃないのかな?」

 

腐和「抵抗できない状態にされていた可能性は?」

 

秋山「だから、相手が世界最強のマフィアなんだから《そんな都合のいい状況作れるわけないだろ》」

 

ネロさんを動けなくする方法…

あの異世界にはあったはずよ!

 

《そんな都合のいい状況作れるわけないだろ》⬅︎【ゲーム内のHP】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「犯人は、ネロのHP切れを狙ったんじゃないかしら?HPが底をつくと、全身疲労で指一本動かせなくなるからね。その状態なら、飛行船から突き落とされる時に抵抗できなくても不思議じゃないわ」

 

秋山「HP切れを狙うなんて、そんな上手くいくものなのかな?」

 

腐和「犯人は、あるものを使ってネロのHPをわざと削ったんじゃないかしら?」

 

秋山「あるもの?」

 

ネロのHPを削ったもの…

それは…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【水の島の森のモンスター】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「犯人はまず、何か理由をつけてネロを森に連れ込んで、森の中で大量のモンスターをけしかけたのよ。いくらネロといえど、大勢の上級モンスターから集中砲火を浴びればあっという間にHPが底をつくわ」

 

秋山「あっ…なるほど」

 

古城「しかし…カード化を解除するには呪文の詠唱が必要だったはずじゃろ?呪文を唱えてる間にネロに返り討ちにされるのではないか?」

 

聲伽「それに、そげんいっぺんに大量んモンスターんカード化ば解除したらあっちゅう間に犯人のMPが尽きちゃうよね?」

 

腐和「その心配は無いわ。実は、カード化を解除するのにはもう一つ方法があるの」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【アイテムの特性①】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「カード化したアイテムは、グリモアに納めずに1分間放置するとアイテムに戻ってしまうの。この方法でカード化を解除すればMPは減らないし、ネロに気付かれずにモンスターを大量発生させる事ができるはずよ」

 

古城「なっ!?そんな裏技があったのか!」

 

知崎「なーるほどね!犯人もボクと同じ事してたんだぁ〜!お仲間だねぇ!わーいわーい!」

 

聲伽「喜んどー場合やなか!」

 

館井「となると…ネロを森に連れ込んだ奴が犯人という事か」

 

知崎「そんな都合いい瞬間を目撃してる人なんていんのかなぁ?」

 

ネロを森に連れ込んでた人…

それって……

 

 

 

《人物指定》

 

 

 

腐和緋色

 

聲伽愛

 

玉越翼

 

小鳥遊由

 

知崎蓮

 

食峰満

 

越目粧太

 

聖蘭マリア

 

古城いろは

 

加賀久遠

 

目野美香子

 

館井建次郎

 

秋山楽斗

 

響歌音

 

ネロ・ヴィアラッテア

 

闇内忍

 

リカ

 

 

 

 

 

➡︎目野美香子

 

 

 

腐和「目野さん、あなたよね?」

 

目野「へー、そうですか。私ですか………」

 

目野「………」

 

目野「………」

 

目野「はぎょえええええええ!!!?あ、アタクシィ!!?」

 

館井「…貴様が犯人だったのか」

 

目野「違いますよ!!私が犯人なわけないでしょうが!!」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

目野「私は《犯人じゃありませんよ》!」

 

館井「だったら犯人ではないという証拠を出してもらおうか」

 

目野「えっ…それは、えっと……」

 

秋山「証明出来ないの?」

 

目野「あ、あのねえ!!そもそも、私は《ネロさんを森に連れ込んだりなんかしてませんけど》!?ジョーダンはよしこちゃんです!」

 

今、事実とは違う証言があったわよね。

 

 

 

《ネロさんを森に連れ込んだりなんかしてませんけど》⬅︎【加賀君の証言】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「目野さん。あなたがネロを水の島の森に連れ込んでいくのを見た…と、加賀君が証言しているのだけれど、これはどういう事かしら?」

 

目野「はぎぃえぇえええ!!?う、嘘ですよね加賀さん!?」

 

加賀「いや、俺はこの目で確かに見たぞ」

 

目野「は…は……」

 

目野「黙らっしゃい!!この嘘つきが!!」

 

加賀「…はぁ?」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

目野「そうやって《皆を騙そうったってそうはいきませんよ》!」

 

加賀「《嘘なんかついてない》んだが…」

 

秋山「状況的に加賀君が犯人じゃないのは確定してるんだから、《嘘をつくメリットが無い》だろ」

 

目野「だって私は本当に知らないんですもん!!大体、私は《ネロさんと会ってすらない》んですよ!?どうして信じてくれないんです!?」

 

知崎「きゃはは、美香子ちゃん普段がアレだから仕方ないね!」

 

目野「普段がアレって何ですかぁあああ!!!」

 

今、事実とは違う発言があったわよね?

 

 

 

《ネロさんと会ってすらない》⬅︎【ネロのグリモアのログ】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「目野さん。ネロのグリモアのログにあなたの名前があるのだけれど、これはどういう事?」

 

目野「んぎょえぇええええ!!?どういう事はこっちのセリフですよ!どうして私の名前がネロさんのグリモアのログにあるんですか!!」

 

古城「それはウヌがネロと接触したからに決まってるじゃろうが!!」

 

館井「………本当の事を言え。本当は、ネロと会っていたのだろう?」

 

腐和「目野さん。私だって、何の理由もなしにあなたを犯人にしたいわけじゃないの。もし違うなら、本当の事を話して?」

 

目野「あ……あ……あばばばばばばばば…」

 

目野さんは、疑われたのがよっぽどショックだったのか、その場で立ったまま白目を剥き涙やら鼻水やら涎やらを垂れ流して泡を吹きながらビクビク痙攣した。

何だか変なクスリでもキメた人みたいね。

 

知崎「うわぁ!?疑われたのがショック過ぎて立ったまま気絶したぁ!?さすが奇行種!リアクションまでプルスウルトラしてやがる!」

 

秋山「ふざけてる場合じゃないでしょ。反論が無いなら、目野さんが犯人って事で…」

 

目野「……した」

 

秋山「ん?」

 

目野「気絶してました!!ハイ!アタクシは、事件当時気絶していたのです!!ですからアタクシにゃあ犯行は不可能なのですよ!!アハハハハハハ!!!」

 

目野さんは、狂ったように笑いながら喚き散らした。

完全にもう開き直っちゃってるわね。

 

知崎「きゃはは、完全に目がイッちゃってるねぇ」

 

館井「……これはもう終わりでいいだろう」

 

モノクマ『おっと、結論が出たみたいですね。ではでは、投票ター…』

 

 

 

リカ『待ってクダサイ!!』

 

投票にまったをかけたのは、リカだった。

 

リカ『ははが犯人ではないのは、アテクシが一番よくわかっていマス。もう一度冷静に議論し直してみマセんか?』 

 

腐和「…そうね。まだ解明できてない謎も残ってるし、もう少し議論を進めましょう」

 

 

 

《学級裁判 中断!》

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り9名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

以上8名

 

 

 

 

 



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非日常編③(学級裁判後編)

 

《学級裁判 再開!》

 

腐和「まずは目野さんの言い分も聞いてみない事には先に進めないわよね」

 

リカ『ははは犯人ではありマセん!もう一度慎重に議論してみマショウ!』

 

腐和「リカの言う通りよ。全員の命がかかってるんだから、慎重に議論を進めていかないと」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

目野「私は犯行時刻に《気絶していた》のです!ネロさんを殺せるわけがないじゃないですか!」

 

古城「ええい黙れい!!そんな都合のいい言い訳が《まかり通ってたまるものか》!!」

 

秋山「大体さ…百歩譲ってその話が本当だったとして、今までずっと黙ってたのは何でなの?」

 

目野「だって気絶してただなんてバカ正直に言ったら《私が疑われる》じゃないですか!!」

 

秋山「………はぁ」

 

館井「…目野。本当の事を言ってくれ。俺は正直言って《お前が犯人な気がしてきた》」

 

目野「黙らっしゃい!!おらは犯人じゃなえ言ーちょーだらーが!!」

 

知崎「うわあ急にメチャクチャ訛った!?」

 

聲伽「…キミ、どこ出身だっけ?」

 

知崎君、マナ。

今はそこ気にしてる場合じゃないわよ。

…でもおかげで、目野さんから重要な証言を引き出す事ができたわ。

 

 

 

《気絶していた》⬅︎【目野さんの証言】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「嘘じゃないと思うわ。目野さんは、捜査時間中に記憶が無くなってる事を正直に私に伝えてくれてたもの」

 

秋山「でもそれって目野さん本人の自己申告だろ?信憑性はどうなんだろうね?」

 

リカ『ははが嘘をついている可能性は低いデス。捜査時間中に腐和サンに『気絶してました』なんて報告したら、疑って下さいと言っているようなものデスから。真犯人であればそんな申告はしないはずデス』

 

知崎「本当にそうなのかなぁ?今までの事件で気絶させられた人がみんな犯人じゃなかったから、気絶してましたーって言えば犯人候補から外されるって学んだんじゃないの?」

 

加賀「そんなくだらない嘘をつくぐらいだったら、もっとマシな嘘はいくらでも思いつくはずだ」

 

腐和「それに、目野さんは薬品の臭いを嗅いで意識を失ったってしっかり証言してくれていたわ。目野さんの嗅いだ薬品と学園内にある薬品が一致すれば、証言の信憑性が上がるんじゃないかしら?ねえ目野さん。あなたが最後に嗅いだ薬品はどんな臭いだった?」

 

目野「えーっと…何というか、甘ったるい臭いでしたかね?」

 

それって…もしかしてアレじゃないかしら?

 

 

 

コトダマ提示!

 

【クロロホルム】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「目野さん。あなたが嗅いだのはクロロホルムの臭いじゃないの?」

 

目野「く、クロロホルム!?推理ドラマとかでよく使われるアレですか!?」

 

腐和「ええ。化学室からなくなっていた薬品の中で、あなたが言った特徴と一致するのはクロロホルムしか無いのよ。あなたは、クロロホルムを嗅がされて気絶させられたんじゃないかしら?」

 

秋山「でもさ。クロロホルムなんてどう吸わせたのさ?まさかハンカチに染み込ませて吸わせたわけでもないだろうし」

 

腐和「あるものを使えば可能だと思うわ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【ガスマスク】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「化学室からガスマスクがなくなっていたの。犯人は、ガスマスクにクロロホルムを仕込んで目野さんに吸わせたんじゃないかしら?」

 

古城「なっ、何じゃとぉ!?」

 

腐和「クロロホルムは適切な濃度で長時間吸わせないと人を気絶させられないからね。ガスマスクでなら、適切な濃度で吸わせる事ができるでしょ?」

 

加賀「なるほどな。それならクロロホルムを吸わせて気絶させる事は可能…か」

 

目野「ほら見なさい!私は犯人じゃなかったでしょう!?」

 

秋山「目野さんの自作自演だったら話は別だけどね」

 

目野「な!?何ですってぇ!?」

 

秋山「だって、クロロホルムなんて素人が扱える薬品じゃないだろ」

 

腐和「確かにね。そこら辺どうなのかしら、モノクマ?」

 

モノクマ『…………ふがっ!ああ、やべっ、出番無さすぎて寝てた。ええっと、クロロホルムの取り扱いについてですね?この際だからぶっちゃけるけど、危険な薬品を使いたい人には学園長が直々に使い方のマニュアルを渡しているのです!下手に使われて事故とか起こされたらたまったもんじゃないからね!』

 

腐和「なるほど…これでハッキリしたわね。マニュアルに従えば、素人でもクロロホルムを使う事は可能だそうよ」

 

知崎「えーっ、じゃあ変態が全開で卍解してバンザイな美香子おねえはガスマスクでクロロホルムを吸わされて気絶したんだね!?わーいわーい不思議不思議ー!」

 

聲伽「変に韻踏んでんやなか」

 

秋山「うーん…でも、そんな事されたら普通抵抗するよね?」

 

腐和「…もしかしたら、目野さんは抵抗できない状態だったんじゃないかしら?」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【安全装置】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「目野さんは、異世界に再ログインする直前に気絶させられたんじゃないかしら?」

 

秋山「どうしてそう思うの?」

 

腐和「あの椅子、一度座ると四肢と胴体に安全装置が取り付けられて、身動きが取れなくなるのよ。ヘッドセットをつけていて何も見えない上に安全装置で拘束されている状態でクロロホルムを吸わされたら、パニックも合間って抵抗できずに気絶してしまっても無理はないわ」

 

知崎「なるなる、それで奇行種が全集中してやがる美香子おねえはそのまま犯人にやられちゃいましたと!」

 

 

 

館井「建て直しだ」

 

《反 論》

 

 

 

館井「腐和。その推理には決定的な穴があるぞ」

 

腐和「穴?」

 

館井「推理も建物と同じで、土台が弛んでいるとすぐに崩れる。まずは土台から組み直していこうか」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

館井「仮に目野が転生ルームでログインしようとする時にガスマスクでガスを吸わされたとして、お前は何か一つ忘れている事が無いか?」

 

腐和「忘れてる事?」

 

館井「転生ルームは秋山が見張りをしていたのを忘れたのか?転生ルームで目野にガスを吸わせたりなんかしたら、秋山がそれを目撃しているはずだ」

 

腐和「秋山君の隙をついてガスを吸わせたという可能性は?」

 

館井「……腐和よ。クロロホルムは長時間吸わせないと人を気絶させられないと言ったのはお前だぞ。そんな《一瞬の隙》で目野にクロロホルムを吸わせて気絶させられるわけがないだろう。やはり目野の自作自演と考えるのが自然なのではないか?」

 

一瞬の隙…?

いいえ、あったはずよ。

秋山君が転生ルームの見張りをしていなかった時間帯が!

 

《一瞬の隙》⬅︎【秋山君の証言】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「秋山君が転生ルームを離れていた時間帯なら、ちゃんとあったわよ」

 

館井「…何だと?」

 

腐和「秋山君。あなたは確か、ゲームセンターから電話の音が聴こえたから、確かめに行ったのよね?」

 

秋山「ん?ああ、うん。電話の音の正体を確かめに行ってたから、確かに15分くらいは転生ルームから離れてたけど」

 

館井「電話の音だと…?にわかに信じ難いな。本当に電話が鳴ったという証拠はあるのか?」

 

腐和「ええ。秋山君の証言が正しいという証拠なら、ちゃんとあるわ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【内線電話の着信履歴】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「ちょうど秋山君が転生ルームを離れた時間、職員室の内線電話に着信履歴があったわ。秋山君が聞いたのは、職員室の電話の着信音だったのよ」

 

古城「いや、しかし…だったら何で職員室の電話の電鈴がゲームセンター内で聴こえたのじゃ?」

 

聲伽「確かに…普通に考えたらどうやったっちゃ聴こえるわけがなかね?」

 

腐和「それについては方法があるわよ」

 

聲伽「方法って?」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【無線スピーカー】【携帯電話】【小型マイク】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「まず、あらかじめ職員室に小型マイクを、そしてゲームセンターに無線スピーカーを設置しておくでしょ?そして職員室から盗んでおいた携帯電話を使って職員室の固定電話に電話をかければ、ゲームセンターのスピーカーから電話の着信音を鳴らす事が可能なんじゃないかしら?」

 

聲伽「あっ……なるほど」

 

古城「ううむ、じゃが犯人はそんな事をして何がしたかったのじゃ?」

 

加賀「馬鹿か君は。そんなの、少し考えればわかる事だろう?」

 

古城「ばっ、莫迦と言う方が莫迦なのじゃぞ!!」

 

加賀「腐和緋色。君にはわかるはずだ。何故犯人がそんな回りくどい事をしたのかがな」

 

古城「無視すなぁ!!」

 

犯人が電話を鳴らした理由…

それは…

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

ジ カ ン カ セ ギ

 

 

 

【時間稼ぎ】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「……時間稼ぎでしょう?」

 

加賀「ビンゴだ。君がさっき言ったように、クロロホルムを吸わせて気絶させるのにはそれなりに時間を必要とするからな。犯人がゲームセンター内に電話の着信を響かせたのは、秋山の気を逸らし、ゲームセンターから離れた職員室に電話を取りに行かせるため。要は目野にクロロホルムが回るまでの時間稼ぎだ」

 

リカ『そのトリックを使えば、秋山クンを転生ルームから遠ざけてははにクロロホルムを吸わせる事が可能というわけデスか』

 

秋山「ちょっと待ってよ。何か目野さんが犯人じゃないって前提で話が進んでるけどさ。じゃあ加賀君が見た目野さんのアバターは一体何だったの?」

 

古城「むっ、そういえばそうじゃったな!」

 

館井「ログにも、目野がネロと接触したという証拠が残っているのだぞ。やはり目野の自作自演という可能性が濃厚なのではないか?」

 

聲伽「ログインしとらなグリモアにログは残らんもんね。やっぱり目野ちゃんは異世界に行ってネロくんに会うとったんやなかと?」

 

目野「は……は…………だけんおらは気絶しちょったって言ーちょーだらーが!!どげして異世界にログインしてネロさんに会ーたっていうんか!!?」

 

知崎「うわーんもう色々光の速さで天元突破しちゃってるよー!助けて緋色えもーん!」

 

腐和「そうね…じゃあもう一度、加賀君の証言について整理してみましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

加賀「俺は《目野のアバターがネロを森に連れ込んでいるのを見た》…とだけ言っておこう」

 

聲伽「それに、ネロくんのグリモアには《目野ちゃんが接触した》って記録が残っとーしね」

 

目野「《おらはそげなの知らん》!!デタラメ言わんでごしなぃ!!」

 

古城「デタラメも何も、《紛れもない状況証拠》じゃろう?」

 

館井「そうだな。観念しろ目野。《異世界にログインしてネロを殺したのは他でもない貴様だ》」

 

目野「だけん違ー言ーちょーがね!!!」

 

ちょっと待って…?

本当に今の発言は正しいの…?

 

 

 

《異世界にログインしてネロを殺したのは他でもない貴様だ》⬅︎【リカの証言】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「うーん…本当にそうなのかしらね?」

 

館井「……何?」

 

腐和「これはずっと気になっていた事なのだけれど…」

 

 

 

 

 

腐和「ネロと会っていたのは、本当に目野さん本人だったのかしら?」

 

秋山「…………えっ?」

 

腐和「リカ、ここからはあなたの口から説明してもらえないかしら?」

 

リカ『はい。アテクシが異世界でははを最後に見た時、ははの様子がおかしかったのデス。いつもより口数が少なくて、まるで別人のようデシた。決定的だったのは、あの時見たははは、商店街のネジ屋に一切興味を示さなかったのデス』

 

目野「それはおかしいですね!私、ネジ屋なんてあったら夢中で飛び込んでしまいますもん!」

 

知崎「じゃあ何?久遠おにいが見た美香子おねえは、機械舐め回し社会不適合クレイジーサイコ痴女の皮を被ったニセカスだったって事?」

 

館井「……そんな事を言って、本当はリカも共犯なのではないか?リカには目野を庇う理由があるからな」

 

聲伽「そこまではゆわんけど、うちは偽物なんてありえんて思うよ?しっかりログが残っとったんやけん」

 

古城「むむっ!?意見が分かれてしまったぞ!」

 

モノDJ『ヘイYOU!今意見が割れたっつったのかァン!?そんな時はオレ様達の出番なんじゃねぇのかなぁ!?』

 

モノクマ『うぷぷぷぷ、今回も変形裁判所の出番ですね!それでは早速始めましょう!レッツ変形!!』

 

 

 

《意見対立》

 

 

 

【目野美香子は異世界にログインしていたか?】

 

ログインしていた! 秋山、聲伽、古城、館井

 

ログインしていない! 加賀、知崎、腐和、目野、リカ

 

 

 

ー議論スクラム開始ー

 

館井「《目野》は気絶させられたという事実をずっと黙っていたのだぞ?」

 

「加賀君!」

 

加賀「そんな事を言ったら疑惑を向けられると思ったから、《目野》はその事を隠していたんじゃないか?」

 

秋山「加賀君が目野さんを《見た》って言ってるんだよ?」

 

「知崎君!」

 

知崎「久遠おにいは美香子ちゃんのアバターを《見た》だけで、直接話しかけたわけじゃないよねぇ?」

 

聲伽「でも、ネロくんのグリモアにログが残っとったって事は、目野ちゃんな異世界に《ログイン》しとったんやなかと?」

 

「目野さん!」

 

目野「だから私は《ログイン》してないと言ってるでしょうが!!」

 

館井「…目野が《犯人》だと仮定すれば、全ての辻褄が合うのだぞ」

 

「リカ!」

 

リカ『ははが《犯人》なら、アテクシが見たははの行動は辻褄が合いマセん!』

 

聲伽「じゃあ、リカちゃんが見た目野ちゃんの《アバター》は誰やったっていうと?」

 

「私が!」

 

腐和「目野さんの《アバター》の正体なら、これから議論すれば分かる事よ」

 

 

 

《全論破》

 

腐和「これが私達の答えよ!」

 

加賀「これが俺達の答えだ」

 

知崎「これがボク達の答えだよー」

 

目野「これが私達の答えです!!」

 

リカ『これがアテクシ達の答えデス!』

 

 

 

腐和「どうやら、加賀君やリカが見た目野さんのアバターは目野さん本人じゃなかった…そう考えるのが妥当のようね」

 

秋山「でも、じゃあ誰がどうやって目野さんのアバターを使ってネロさんを殺したっていうの?」

 

知崎「きゃはは、楽斗おにいは再ログインしてないから知らなくても無理ないか!」

 

秋山「…どういう事?」

 

知崎「ねえねえ緋色ちゃん!思い出してみて?一旦ログアウトしてから、ログインする時にボク達が必ずやってた事があるよねぇ?」

 

ログインする時に必ずやっていた事…

それって…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【プレイヤーの確認】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「ログインする時、必ずプレイヤーの確認が求められたわよね?」

 

聲伽「あっ…そういえば」

 

秋山「え?そうなの?」

 

古城「うむ!確かに再ログインする時いちいち名前聞かれたのは面倒臭かったのぉ!」

 

知崎「にゃはは!そこまで言えばわかるでしょ?どうやって犯人が美香子ちゃんのフリをしたのか!」

 

腐和「ええ。私達は、全員まんまと犯人の罠に嵌っていたのよ」

 

犯人が目野さんのアバターを使ってネロを殺した方法…

それは……

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

ギ メ イ デ サ イ ロ グ イ ン シ タ

 

 

 

【偽名で再ログインした】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「…偽名で再ログインした。犯人は、プレイヤーネームの確認の時に目野さんを騙って目野さんのアバターを奪ったのよ!」

 

古城「なっ、何じゃとぉ!?」

 

腐和「犯人が使ったトリックをおさらいしておくわね」

 

 

 

加賀が見た目野のアバターの正体は?

 

1.目野美香子

2.真犯人

3.生き霊

 

➡︎2.真犯人

 

 

 

目野を気絶させた目的は?

 

1.目野のアバターでログインするため

2.殺害するため

3.嫌がらせ

 

➡︎1.目野のアバターでログインするため

 

 

 

目野のアバターを奪った目的は?

 

1.目野を殺したかった

2.目野のモノマネがしたかった

3.目野を犯人に仕立て上げたかった

 

➡︎3.目野を犯人に仕立て上げたかった

 

《COMPLETE!!》

 

 

 

腐和「犯人が目野さんをスケープゴートにしたトリックはこうよ。まず、携帯電話で学園の内線に電話をかけて、秋山君を転生ルームから追い出すでしょ?その隙に目野さんをクロロホルムで気絶させ、再ログイン時に目野さんのアバターを奪い、目野さんの姿でネロを殺したのよ。ネロのグリモアのログに目野さんの名前が残っていたのは当然の事だったのよ。だって犯人は、目野さんの名前でログインしていたのだからね」

 

古城「なっ…そうじゃったのかぁ!!?」

 

秋山「なりすましか…完全に盲点だったな」

 

聲伽「ねえ緋色ちゃん、結局目野ちゃんのアバターば奪ってネロくんば殺したんな誰やったんやろうね?」

 

腐和「……一人、心当たりがあるわ」

 

目野さんを気絶させ、目野さんになりすましてゲームにログインしてネロを殺した人物。

私は一人心当たりがある。

…でも、本当に彼がやったとはにわかに信じ難いわね。

 

 

 

《人物指定》

 

 

 

腐和緋色

 

聲伽愛

 

玉越翼

 

小鳥遊由

 

知崎蓮

 

食峰満

 

越目粧太

 

聖蘭マリア

 

古城いろは

 

加賀久遠

 

目野美香子

 

館井建次郎

 

秋山楽斗

 

響歌音

 

ネロ・ヴィアラッテア

 

闇内忍

 

リカ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎館井建次郎

 

 

 

腐和「あなたよ、館井君」

 

館井「………理由を聞こうか」

 

腐和「私、マナ、加賀君、リカ、知崎君、古城さんの6人にはアリバイがあるわ。もちろん目野さんと秋山君は犯人じゃないし、そうなると残るのはあなただけよ」

 

館井「…ふん。結局消去法か。それで犯人にされたのではたまったものではないな」

 

腐和「それに、【超高校級の大工】のあなたなら、人一人が滑れる滑り台を建てる事くらい造作もないんじゃないかしら?」

 

館井「そんなの、貴様の勝手な憶測だろう?その程度で俺が犯人だと言い切れるのか?」

 

腐和「そうね。あなたが犯人だという証拠を提示したわけでもないし、もう少し議論を煮詰めてみましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

館井「俺が目野のアバターを奪ってネロを殺しただと?冗談も休み休み言え。むしろ《目野の自作自演》の可能性の方が高いんじゃないのか?」

 

古城「うむ、それもそうじゃな!」

 

加賀「乗せられてるんじゃない。そうやって自分への疑惑を逸らそうったって無駄だぞ」

 

館井「違うものは違うからな。大体、俺が犯人ならどうやってネロに毒を飲ませたんだ?」

 

知崎「どーせ美香子ちゃんを気絶させる時に飲ませたんじゃないの?」

 

館井「それだったら死因が毒殺になってないとおかしいだろう。目野が検視中に飲ませたと考えるのが妥当なのではないか?奴は《俺と違って》死体の偽装工作はやりたい放題だっただろうからな」

 

聲伽「でも目野ちゃんは《加賀くんとリカちゃんと一緒に検視しとった》っちゃんね。加賀くんかリカちゃんがそれば見とらんとはおかしゅうなかね?」

 

館井「そんなの、二人の隙をついて毒を飲ませたのかもしれないだろう?」

 

ん?

今の発言おかしくなかった?

 

 

 

《俺とは違って》⬅︎【マナの証言】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「死体の偽装工作が可能だったのは目野さんだけじゃないわよ」

 

館井「何だと……?」

 

腐和「館井君。あなた、加賀君達が検視をする前に、ネロの死亡確認の為に死体に触ってるわよね?死体の偽装工作なら、その時にできたんじゃないの?」

 

秋山「あっ…言われてみれば、そもそも死亡確認をする事自体おかしいよね」

 

館井「………何?」

 

秋山「だってゲームが強制ログアウトされてるんだから、死亡確認なんてするまでもないだろ?」

 

知崎「きゃはは、じゃあ建次郎ちゃんは死亡確認するフリをしてネロちゃんに毒を飲ませたんだね!」

 

腐和「そういう事でしょうね」

 

 

 

館井「馬鹿馬鹿しい妄言もいい加減にしろ」

 

《反 論》

 

 

 

館井「俺が死体に触っていたから犯人だと?その程度の理由で犯人にされては困るな」

 

腐和「まだ認めないつもり?」

 

館井「俺は犯人じゃないからな。ひとつずつ反論させてもらうぞ」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

館井「何故ネロの死亡確認をしたのか、それは俺自身本当にネロが死んだのか未だに信じられなかったからだ。別に何もおかしなところは無いだろう?」

 

腐和「でも、ネロに毒を飲ませたタイミングといったらそれしか考えられないのよ」

 

館井「だからって俺を犯人にするな。大体、ネロを森に連れ込んでいたのは目野だったはずだ」

 

腐和「あなたが目野さんのアバターを使っているのだとしたら、その前提も崩れるけどね」

 

館井「憶測で物を語るな。大体、犯人が目野のアバターを奪って操ったという証拠も無いじゃないか。俺はネロが殺されている間、《水の島を探索していた》んだ。そもそも、俺にはネロを殺す理由がないだろう。それでもまだ俺が犯人だという気か?」

 

水の島を探索していた…か。

それだと、アレと矛盾するわよね。

 

《水の島を探索していた》⬅︎【ログアウト後のアバター】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「…ありがとう。もう十分よ。おかげでよくわかったわ。あなたが嘘つきの真犯人という事がね」

 

聲伽「館井くん。今ん発言はおかしいよ」

 

館井「……何だと?」

 

腐和「ねえ館井君。私とマナは水の島であなたと会ったわよね?覚えてる?」

 

館井「………あ、ああ、覚えているが?」

 

腐和「じゃあどんな会話をしていたか、ここで話してくれるかしら?」

 

館井「それは……」

 

腐和「答えられるわけないわよね。だって、私とマナが会ったあなたはNPCだったんだもの。あの時あなたのアバターがNPCだったのは、目野さんのアバターを使ってログインしていたからでしょう?」

 

館井「くっ…………!」

 

腐和「言っておくけど、秋山君が目野さんのアバターを使ってログインした、なんて言い訳はナシよ?秋山君は自分でログアウトしていた事を認めていたもの。アバターがNPCだったにもかかわらず、『ログインしていた』だなんて嘘をついていたのはあなただけよ」

 

知崎「きゃはは、完全に墓穴を掘っちゃったねぇ!」

 

加賀「これで決まりだな」

 

館井「ま、まだだ!まだ、俺が犯人だという物的証拠が無いだろう!?物的証拠がない事には、俺が犯人だとは言い切れないんじゃないのか!?」

 

目野「何ですか、しつこいですよアナタ!」

 

聲伽「………」

 

聲伽「………」

 

聲伽「………」

 

聲伽「……館井くんが犯人だっていう証拠ならあるよ?」

 

館井「…………は?」

 

聲伽「緋色ちゃん!焦らんでよう考えて。うキミは知っとーはずばい。館井くんが犯人だっていう物的証拠ば」

 

館井君が犯人だっていう物的証拠…

………!

もしかして、アレの事かしら?

 

 

 

コトダマ提示!

 

【麻酔薬の瓶】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「麻酔薬の瓶。これがあなたが犯人だって事を証明する物的証拠よ」

 

館井「麻酔薬の瓶が証拠だと……?言っている意味がわからんぞ」

 

腐和「席を外している間に秋山君が戻ってきてしまったら本末転倒だから化学室にクロロホルムを戻しに行く事は出来なかったでしょうし、かといって化学室の薬品の投棄は校則で禁止されている…とすると、クロロホルムの便のありかはひとつしかないわよね?」

 

リカ『まさか…』

 

腐和「館井君。あなたは隠し持ってるはずよ。クロロホルムの瓶をね」

 

館井「………喧しい」

 

 

 

ーーー 理論武装開始! ーーー

 

館井「俺はクロロホルムを隠し持ってなどいない」

 

館井「俺は犯人じゃない」

 

館井「何も知らない」

 

館井「全部目野の自作自演だ」

 

館井「物的証拠なんてどこにも無い」

 

 

 

館井「俺がどこにクロロホルムを隠し持っているというのだ!?」

 

【大工】【道具】【の】【ポーチ】

 

腐和「これで終わりよ!!」

 

 

 

腐和「大工道具のポーチ。そこにクロロホルムを隠し持っているんでしょう?」

 

館井「っ………!」

 

腐和「その大きさなら、薬品の瓶くらい隠し持てるわよね?」

 

館井「ぐっ……」

 

腐和「知崎君、館井君のポーチを調べなさい」

 

知崎「袋入りピーナッツ12ダース」

 

腐和「……はぁ、わかったわよ。裁判が終わったら買ってあげるから。とにかく早く調べてちょうだい」

 

知崎「わーーーい!ピーナッツ!ピーナッツ!」

 

館井「っ……!おい、何をする!?」

 

知崎君は、ピーナッツ欲しさに目に留まらぬ速さで館井君のポーチを弄り始めた。

…さすが【超高校級の泥棒】、貪欲さと手癖の悪さは一級品ね。

 

知崎「ありゃりゃ、こんなものが出てきたよ〜?」

 

そう言って知崎君が皆に見せたのは、クロロホルムの瓶とガスマスク、そして旧式の携帯電話だった。

 

古城「な…!薬品の瓶じゃと!?」

 

目野「それにガスマスクまで!これはもう真っ黒ですね!」

 

館井「…………くっ」

 

聲伽「緋色ちゃん。最後に事件の真相ば振り返ろう?」

 

腐和「ええ」

 

 

 

ークライマックス推理開始!ー

 

【Act.1】

事の発端は、私達が異世界からの脱出用のチケットの目処が立った事だった。

このタイミングを利用してネロを殺害する事を思いついた犯人は、まず、異世界の構造について下調べしておいたの。

私達はずっと勘違いしていたのだけれど、異世界ははじまりの草原のある島を基点に北へと一直線に並んでるんじゃなくて、あの異世界全体が島の一つ一つが重なってできた巨大な高層ビルで、飛行船は島と島を行き来するエレベーターだったのよ。

その事に気付いた犯人はまず、あらかじめ島の中にある木材と鉄パイプを使って滑り台を作り、作った滑り台をカード化して隠し持っておき、凶器となる『縁結びのリボン』を購入しておいたの。

そして、ネロにけしかけるためのモンスターも大量にカード化してグリモアに保管しておいたの。

 

【Act.2】

翌日、脱出チケットを手に入れた犯人は、私達と一緒にログアウトし、学園内の探索中に化学室からクロロホルムとガスマスクを、職員室から携帯電話を、音楽室から無線スピーカーと小型マイクを、そして保健室から青酸カリを盗み出した。

薬品について素人だった犯人は化学室からクロロホルムを持ち出す際、モノクマからクロロホルムの調合マニュアルを貰ったの。

このマニュアルを使ってクロロホルムを調合し、ガスマスクにクロロホルムを仕込んでおいた。

そして盗み出した小型マイクを職員室の固定電話に、無線スピーカーをゲームセンター内に、青酸カリの瓶を秋山君の席の隙間に仕込んでおいたの。

これで下準備は完了よ。

 

【Act.3】

皆が学園内の探索を終えてゲームに戻る際、転生ルームにいた犯人は、持っていた携帯電話で職員室の固定電話に電話をかけた。

するとその瞬間、職員室の固定電話が鳴り、固定電話に仕込んだ小型マイクが着信音を拾い、小型マイクと接続された無線スピーカーから着信音が流れる。

そして犯人の狙い通り、犯人がゲームセンターに仕込んでおいた無線スピーカーから鳴る着信音を、秋山君が聴いたの。

秋山君は、着信音の正体を確かめる為に転生ルームを抜け出してしまった。

犯人に誘導されていたとも知らずにね。

 

【Act.4】

まんまと秋山君を転生ルームから追い出した犯人は、目野さんが異世界にログインする瞬間を狙って目野さんをクロロホルムで気絶させたの。

この時目野さんは、安全装置のロックがかかっていたせいで抵抗したくてもできずにそのまま意識を失ってしまった。

目野さんを気絶させた犯人は、クロロホルムの瓶とガスマスクを自分のポーチに隠し、そして異世界にログインした。

ログインする時のプレイヤー確認の際、犯人は目野さんの名前を名乗る事で目野さんのアバターを奪い、まんまと目野さんのアバターでログインをしたというわけ。

 

【Act.5】

目野さんのアバターでログインした犯人は、水の島の森まで行って大量のモンスターカードを森の中に放置しておき、何か理由をつけて水の島の森までネロを連れ出した。

すると1分ルールでカード化が解けたモンスターが大量にネロに襲いかかり、あっという間にネロのHPをゼロになるまで削ってしまったの。

ネロがモンスターに苦戦している間、犯人は水の島に停めておいた飛行船を停めっぱなしにしておき、飛行船の窓からカード化した滑り台を落としたの。

そしてネロのHPが完全に切れたのを確認した犯人は、ネロを飛行船の中まで運び、ネロの首に縁結びのリボンを巻き付けてそのまま飛行船の窓から突き落とした。

飛行船は最上階の水の島に停まっていたから、ネロは突き落とされた時の落差で首が圧迫され、そのまま絶命してしまったの。

でもこの時、犯人にとって予想外の出来事が起こったわ。

それは、犯人のNPCが私達と接触してしまった事だった。

この出来事のせいで犯人のアバターがNPCだとバレてしまい、目野さんのアバターを使ってログインした事が露呈してしまったの。

 

【Act.6】

ネロが絶命した瞬間、ゲームは強制ログアウトされ、犯人も含めて全員現実世界に引き戻された。

その瞬間、縁結びのリボンを押さえていたものがなくなり、ネロはそのまま下へ下へと落ち、1分ルールでカード化が解けた滑り台の上に着地した。

滑り台の上に着地したネロはそのまま滑り台の斜面を滑っていき、異世界の壁をすり抜けてはじまりの草原へと放り出された。

そしてその頃、現実世界に戻ってきた私達は、ネロの死体を目の当たりにした。

そこで犯人は、他の誰かをスケープゴートにする為、ネロの死亡確認をするフリをしてネロの口に青酸カリのカプセルを放り込み、何食わぬ顔で捜査に参加した。

 

「これが事件の真相よ。そうでしょう!?【超高校級の大工】館井建次郎君!!」

 

 

 

館井「………もう反論の余地は無いようだな」

 

古城「館井……」

 

知崎「あーあ、これでもうゲームオーバーかぁ。もうちょい楽しめると思ったんだけどなぁ。まあいいや、クマちゃんもう投票始めちゃってよ」

 

モノクマ『うぷぷぷ、もう結論は出たみたいですね?では始めちゃいましょうかね』

 

モノDJ『全員必ず誰かには投票しろよ!?無投票は問答無用でオシオキだぜYEAHHHH!!!』

 

モノクマがそう言うと、席にボタンが表示され投票時間が始まった。

私は、最後まで迷っていた。

私は、迷いながらも館井君に投票した。

 

モノDJ『投票の結果、クロとなるのは誰なのか!?その結果は正解か不正解なのかぁああ!!?』

 

モノクマ『ワクワクでドキドキの投票ターイム!!』

 

モニターにスロットが表示される。

ドラムロールと共にリールの回転速度が落ちていき、館井君の顔のドット絵が3つ揃った所でリールが止まった。

その直後、正解を褒め称えるかのように、はたまた私の潰し合いを嘲笑うかのように、歓声と共に大量のメダルが吐き出された。

 

 

 

《学級裁判 閉廷!》

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り9名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

以上8名

 

 

 

 

 



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非日常編④(オシオキ編)

14時18分、異世界の水の島にて。

一人の少女、目野美香子の姿をして誰かを探す者がいた。

【超高校級の大工】館井建次郎だ。

館井は、一人の男を見つけると、男に向かって声をかけた。

男の名は、【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテアだ。

 

「ネロさん。この森に珍しい素材があるんですけど、私一人では持ち出せそうにないので手伝ってもらえませんか?」

 

館井は、目野のフリをしてネロを森の奥へと連れ込んだ。

森を歩いてしばらくすると、ネロが口を開く。

 

「まだ先にあんのか?」

 

「もう少ししたら着きますから」

 

「…おい」

 

ネロの質問に館井が答えると、ネロは館井の腕を掴んで引き留める。

館井が振り向くと、ネロは館井を睨みながら口を開く。

 

「そろそろ本題を話してくれてもいいんじゃねえか?Mr.館井」

 

ネロが言うと、館井はため息をつく。

ネロは初めから目野のアバターを使っているのが館井だと気づいていたのだ。

すると館井は、武器のハンマーを取り出して言った。

 

「悪いな。ここで死んでくれ。どうせ死ぬつもりだったのだろう?」

 

「嫌だね。てめぇの死に方くらいてめぇで決めさせろ」

 

館井がハンマーを向けると、ネロもナイフを抜く。

どんな窮地をも乗り越えた経験上どこを狙えば決定打を与えられるかを熟知しているネロと、まともに喧嘩すらした事がない高校生。

この二人が一対一になれば勝敗がどうなるかは、火を見るよりも明らかだった。

 

「この状況で俺をどうにかできるつもりだったか?生憎俺は………」

 

ネロがそう言ったその直後、突然ネロの背後からモンスターが現れる。

先程まではいなかったはずのモンスターに囲まれたネロは、咄嗟の事で反応が遅れてしまった。

モンスターの攻撃を喰らったネロは、HPを削られて身体の動きが鈍くなる。

 

「!?」

 

「流石にその数の怪物相手だと、いくらお前でも厳しいんじゃないか?」

 

「チッ…しゃらくせぇ!」

 

ネロは、次々と襲ってくるモンスターを目に留まらぬ速度で倒していく。

モンスターが襲いかかっては、ネロは持っていたナイフと魔法カードで薙ぎ払う。

だが無限に襲ってくるモンスター達を相手についにしたせいでHPが底をつき、館井に魔法カードでトドメを刺され、ついには全身疲労で動けなくなってしまった。

ネロは力なくその場に倒れ込むと、息を切らしながら悔しそうにぼやく。

 

「………ハァ、ハァ…クソッ、こんな情けねえとこ、お嬢には見せらんねぇな…まあでも、当然の報いだな」

 

ネロは、全てを諦めたようにそっと目を閉じた。

これは自分が生き残る為に何の罪もない人々を殺し、自分に優しくしてくれたメンバーを突き放した罰なのだと、これから死にゆく自分に言い聞かせていた。

ネロのHPが0になったのを確認した館井は、冷たい目でネロを見下ろしながらポツリと呟いた。

 

「……悪いな。俺が生き残る為だ」

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

VOTE

 

館井建次郎 8票

 

目野美香子 1票

 

 

 

『うぷぷぷぷ、お見事大正解ー!!【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテアクンを絞殺した殺人犯は、【超高校級の大工】館井建次郎クンなのでした!オマエラ4連続正解なんてやるぅ!』

 

『ギャハハハハ!!まさか百戦錬磨のネロボーイを殺したのが小心野郎の建次郎ボーイだったとはなぁ!!ほらほらもっとバイブス上げてけポウポウ!!!』

 

「…………やはり、勝てなかったか」

 

モノクマとモノDJが下品に笑うと、館井君は腕を組みながら静かに俯く。

彼はもう自分は助からないと悟ったのか、逃げも慌てもせずにその運命を受け入れているように見えた。

 

「あんなにしつこく犯行を否定してた割には、随分と諦めが早いんだね」

 

「もうこの状況ではどうにもならないからな。この期に及んで負けを認められないほど、俺は強情じゃない」

 

秋山君が皮肉めいた口調で言うと、館井君は全てを諦めたような表情で答えた。

私は、どうしても疑問に思っていた事があった。

どうして館井君はネロを殺してしまったの…?

少し臆病だけれど誰よりも良識人で、人を殺すとは思えない館井君が、どうして…

 

「館井君。どうしてネロを殺したの?」

 

私が尋ねると、館井君はしばらく黙り込んだ。

そしてようやく決心がついたのか、徐に口を開いて語り出す。

 

「……死にたくなかったから。それだけだ」

 

「『死にたくなかった』?尚更理解に苦しむな。君の頭脳では裁判に勝てない事は分かりきっていたはずだ。よりによって、黒幕に繋がる手掛かりを握っていたネロ・ヴィアラッテアを殺すなど…愚策極まりないとしか言いようが無いのだが。追い詰められて自棄になったか?」

 

館井君が私の質問に答えると、加賀君は腕を組んで館井君に鋭い視線を向けながら問い詰めた。

すると館井君は、加賀君を睨みながら低い声で話し始める。

 

「……『自棄になった』、だと?俺から言わせてもらえば、異常なのはお前達の方だ」

 

「何だと?」

 

「お前達、本当に生き残る気があったのか?1週間以内に殺人が起きなければ、俺達全員がオシオキされるのだぞ?どうせあのまま御涙頂戴の仲良しごっこを続けていたら、脱出口を見つける前に時間切れになって全員オシオキされるのがオチだっただろうな。何もせずにただ時間を浪費するなど、生きる事を諦めたと同じ事。全員がオシオキされるのを止める為には、誰かが殺らなければならなかったんだ」

 

館井君が話すと、私ははっと思考を現実に引き戻された。

もし期限内に殺人が起こらず、脱出の手がかりも見つけられなかったら、死んでいたのは私達全員だった。

皮肉にも、館井君の起こした殺人が、私達の命を救ったんだ。

 

「馬鹿馬鹿しいよ。そうやって自分のやった事を正当化する気?君は、あんな脅しを本気で信じたのか?」

 

「あんな脅しを本気で信じたからこそ、ネロは内通者になって殺人を起こそうとしていたのだろう?あいつを放置しておいたら、先を越される可能性があった。だからあいつを殺したんだ」

 

秋山君が呆れた様子で尋ねると、館井君は当然と言わんばかりに腕を組みながら答えた。

するとマナは目に涙を溜めて証言台を叩きながら反論した。

 

「ネロくんが殺人ばしようとしたかもしれんやった、って言いたかと?そげんわけなか!ネロくんは、殺人なんてしぇんって約束してくれたっちゃん!」

 

「たった数日前に出会ったばかりの犯罪者の言葉など、よく信じられるな。あいつはここに来る前から何人もの人間を殺してきた大量殺人犯なんだぞ?変な気を起こして殺人を決行する可能性がゼロだとどうして言い切れる?」

 

「っ………」

 

館井君が言うと、マナがギリっと歯を食いしばって黙り込む。

館井君がネロをターゲットにしたのは、おそらく心の中ではネロの事が心底怖かったからだ。

裏切られるのが怖かったから、先に裏切ってしまおうという判断をしてしまったのだろう。

私は、館井君の心象を察すると、どうしても彼を責め立てる事はできなかった。

 

「お前達だって、本当は心の中で誰かが殺人をするのを待っていたんじゃないのか?皆で一緒に脱出しようとか言いながら、どうせ自分の手は汚さないで誰かを生贄にして生き延びようなどと卑怯な事を考えていたのだろう?本当は、俺が殺人を犯して処刑される事で自分達が生き残れたから安心しているのだろう?」

 

「何じゃと!?」

 

館井君が私達に軽蔑の目を向けながら言うと、古城さんが斬殺丸を抜いて館井君を睨みつける。

すると館井君は、私達全員に冷たく言い放った。

彼の金色の瞳には、私達に対する軽蔑の念がこもっていた。

 

「お前達が今まで生き残ってきたのは、決して生き残る為に行動していたからじゃない。()()()()()()()からだ。生きてここから出ようと本気で願った響や越目、そして古城を生かす為に身を挺した闇内は、本気で生きる為生かす為に行動をし死んでいった。お前達は、死んでいった者達のおこぼれと惰性で生きているだけの卑怯者だ。何もせずに生き延びたお前達なんかより、明日を生きる為に本気で行動をした者達にこそ生きる価値が………

 

 

 

 

 

「ふわぁ〜〜〜…あ」

 

館井君が私達を軽蔑して語っていた中、知崎君があくびをした。

すると館井君は、不機嫌そうに顔を上げる。

 

「………誰だ今あくびをしたのは」

 

「ああ、ごめんごめん。あまりにもつまんない話をダラッダラ聞かされてたから飽きちゃってさ。ねえ建次郎おにい。死にたくないからってこの期に及んで負け惜しみ言うのやめなよ」

 

知崎君がヘラヘラ笑いながら言うと、館井君の顳顬にピキ、と青筋が浮く。

彼の瞳は、静かに知崎君を捉えていた。

 

「……負け惜しみだと?」

 

「キミはバカだから話を要約できないんだよね?ボクが君の言いたい事を皆にわかりやすいようにまとめてあげるよ。要は『俺は仕方なくネロちゃんを殺しちゃった可哀想な子だからオシオキしないでください』、だろ?」

 

「………………」

 

「卑怯で何が悪いの?いいじゃん結果的に生きてんだから。キミが何を言おうと、ボク達が生き延びてキミが死ぬって事実は変わらないよ?」

 

館井君が歯を食いしばりながら黙り込むと、知崎君は頭の後ろで手を組んでにししっと悪戯っぽく笑った。

すると加賀君も、氷のように冷たい視線を館井君に向けながら低い声で館井君を諭す。

 

「諦めろ。同情を買ってオシオキを回避できると思ったら大間違いだ。君は運が悪かったから裁判で負けて処刑される。たったそれだけの事だ」

 

「貴様ら……」

 

知崎君に思惑を見破られ、加賀君に冷静に反論された館井君は、悔しそうに知崎君と加賀君を睨んでいた。

二人は生きる為に行動を起こした館井君を責めはしなかったが、決して同情もしなかった。

どんなに崇高な理由があろうと、真実を暴かれれば断頭台を前に全員に背中を押される。

それがこの裁判で“負ける”という事だ。

 

「………チッ、少しでも同情を買ってあわよくば誰かに助けてもらおうと思ったのだがな。無駄な足掻きだったか。もういいモノクマ。さっさと始めろ」

 

もう反論の余地も無いと悟ったのか、館井君は諦めたように深くため息をついた。

館井君を助ける為に立ち上がる人は、誰もいなかった。

 

『うぷぷぷ、本当にもういいんですかね?』

 

「ああ。どうせどんなに時間稼ぎをしようと、俺が死ぬ事実は変わらないのだろうからな」

 

『そうですか!じゃあ景気良くサクッといっちゃいましょうかね!』

 

モノクマが上機嫌で言ったその時、館井君がポツリと呟く。

 

「………安心しろ小鳥遊。お前の最期の願いは、俺が叶えてやる」

 

「…………?」

 

館井君は、私達に聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた。

小鳥遊さんの最期の願いを叶えるって…まさか……!

 

『今回は、【超高校級の大工】館井建次郎クンのために!!』

 

館井君は懐からスプレー缶を取り出すと、それを勢いよく床に叩きつけた。

するとその直後、床に叩きつけられてひしゃげたスプレー缶から勢いよく青紫色の煙が噴き出し、あっという間に裁判場に充満した。

私は、反射的に自分の鼻と口を左腕で覆った。

 

「っ!?」

 

「うわ何じゃあこれは!?屁か!?」

 

「お前ら、吸うな!!毒ガスだ!!」

 

「ええ!?」

 

加賀君が咄嗟に口を手で覆いながら叫ぶと、他の皆が困惑する。

やられた…!

自分がオシオキされる事が確定したからって、まさか私達を道連れにしようとするなんて…!

その間にも、モノクマとモノDJの声は無情にも裁判場に鳴り響く。

 

『スペシャルな!!オシオキを!!ご用意しました!!!』

 

「どうせ俺が生き残れないなら、お前らの命などどうでもいい。お前ら全員死ねばいい!!」

 

『『ではでは、オシオキターイム!!!』』

 

「フハハハハハハハハハハハ!!!」

 

館井君は、ざまあみろと言わんばかりに高笑いしていた。

モノクマはピコピコハンマーを取り出して、一緒に出てきた赤いボタンをハンマーで押した。

ボタンに付いている画面に、ドット絵の館井君をモノクマとモノDJが連れ去る様子が映っていた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

GAME OVER

 

タテイくんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

ーーー

 

 

 

館井は、首に首輪をつけられると、そのまま上へ上へと引っ張り上げられる。

他のメンバーは、毒ガスの煙の中それを見ている事しかできなかった。

館井の周りには、山が並ぶ絶景を模したセットが広がっていた。

 

 

 

ーーー

 

柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺

 

【超高校級の大工】館井建次郎 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

館井が連れて来られたのは、館井が修理に携わった法隆寺を模した塔が建つ庭園だった。

庭園に植えられた紅葉が赤く色づいており、住職の格好をしたモノDJは庭園に設置された長椅子に座って汚らしく柿を貪りながら塔を眺めていた。

モノDJの隣に置いてあったパソコンには館井のアバターが映っており、不安そうにキョロキョロとあたりを見渡していた。

館井は、チェーンで引き上げられて塔の頂上に吊るされ、塔の頂上に聳え立つ十字に組まれた丸太に磔にされる。

するとどこからか大工の格好をしたモノクマが現れ、カナヅチを振り回しながら不気味な表情を浮かべる。

 

次の瞬間、モノクマはどこからか和釘を取り出し、館井の右肩に容赦なく突き刺す。

そして館井の右肩に突き刺した和釘をカナヅチで何度も打ち、釘を深く貫通させた。

モノクマの釘の打ち方が下手なせいで、館井は無駄に肩を抉られて苦悶の表情を浮かべる。

モノクマは、次は館井の右肘と右手に釘を刺し、刺した釘をカナヅチでメチャクチャにカナヅチで打って館井の右腕を抉った。

 

館井の右腕の感覚がなくなってくると、今度は左腕に同じ事をする。

左肩、左肘、左手に釘を刺し、打ち、抉る。

左腕を抉られ、館井は再び苦悶の表情を浮かべた。

 

両腕に釘を打ち込むと、モノクマは今度は両脚に釘を打ち込んでいく。

ヘタクソな釘の打ち方で脚を抉られた館井は、激痛で再び表情を歪める。

刺す、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ。

釘を打つリズムが単調なのもあって、たった数分のはずなのにまるで永遠の苦痛のように感じられた。

 

館井に釘を打ち終わると、モノクマは額の汗を腕で拭いながら満足げな表情を浮かべる。

すると先程まで柿を貪っていたモノDJが勢いよく跳び上がり、ドシィンと大きな音を轟かせながら塔の屋根に着地する。

その際に塔全体が大きく揺れ、振り落とされそうになった館井は思わず青ざめる。

何とか塔から落ちずに済み、安心したのも束の間、モノDJがどこからか鐘突き棒を取り出した。

その後ろでは、モノクマが『あと108回!』と書かれたLEDプラカードを掲げていた。

 

次の瞬間、モノDJは勢いよく棒を振りかぶり、御堂の鐘を鳴らすかのように棒で館井の身体を勢いよく突いた。

館井は大きく目を見開いて血反吐をぶち撒け、肋骨が粉々に砕ける音がした。

その直後、モノDJは棒を後ろに引く。

だがこれで終わるはずもなく、モノDJは再び館井を棒で突いた。

2、3、4、5と数を数えながら館井を棒で突いていき、モノDJが館井を突くたびにモノクマの掲げているプラカードの数字が減っていく。

108回、ちょうど除夜の鐘を鳴らす回数だった。

 

数十分後、とうとう108回館井を突き終わる。

館井は、全身血塗れで満身創痍になってほとんど原型を留めておらず、もはやいつ死んでもおかしくない状態だった。

一方で塔は少々揺れはしていたが、モノDJが屋根の上でどんなに乱暴に跳ねても全く崩れる気配がせず、【超高校級の大工】たる館井や、彼の尊敬する太古の建築士達の技術の高さを物語っていた。

自分が修理に携わった建造物に磔にされた館井が全てを諦めて目を閉じようとした、その時だった。

 

突然どこからか暴走した巨大なブルドーザーが走ってきて、塔に体当たりを仕掛けた。

するとたったの一撃で塔の柱はミシッと音を立てて折れ、塔は呆気なく倒れた。

ちょうど塔が倒れそうな位置にあったパソコンの中では、館井のアバターがあわてふためいていた。

そしてその直後。

 

 

 

ズシィィイイイン…

 

 

 

館井が磔にされていた塔は大きな音を立てながら崩れ、庭園中に土煙が広がった。

土煙が晴れると、塔の重みで押し潰されて粉々に砕けたパソコン部品、そして全身ぐちゃぐちゃになって息絶えた館井の亡骸が地面に散らばっているのが見える。

その近くでは、大工の格好をしたモノクマ、住職の格好をしたモノDJ、そしてブルドーザーの運転手のモノクマが三人で茶を飲みながら干し柿を食べていた。

バラバラに散らばった木材の中に埋もれていた館井は、絶望の表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

『『ジェットストリーーーーーーーム!!』』

 

館井君がオシオキされると、モノクマとモノDJが下品に嘲笑った。

さっきまで毒ガスが充満していた裁判場は、モノクマ達が咄嗟に起動させたスプリンクラーから噴き出された解毒剤と強力な換気扇のおかげで、あっという間に毒ガスが消え去って安全な状態に戻っていた。

 

『ったく、マジでビビったぜ!!まさか最後の最後にテロを仕掛けてくるとはなぁ!!』

 

『自分がオシオキされるからって全員を道連れにするとか、調子に乗りすぎ!危うく全員お陀仏になっちゃうところだったよ!』

 

『にしてもよぉ、由ガールの最期の願いすら勘違いして全員を巻き添えにしようとするなんざ、どこまでも救いようの無え野郎だったなァ!!』

 

モノクマとモノDJは、小鳥遊さんが本心で私達全員を殺そうと思っていたと勘違いしたまま私達全員を殺そうとした館井君を嘲笑っていた。

私達を犠牲にしてでも生き残るという願いは叶わず、小鳥遊さんの最期の願いを勘違いして私達を道連れにしようとして、それすらも叶わず嘲笑を浴びながら苦痛の中で死んでいった彼の最期を、絶望と呼ばず何と呼ぶべきなのだろうか。

 

 

 

『何もせずにただ時間を浪費するなど、生きる事を諦めたと同じ事』

 

 

 

突然、彼の言葉が頭の中で反響した。

私は、決して誰かが殺人をするのを待っていたわけじゃない。

でも心の中で、『殺人をしてまで生き残るくらいなら死んだ方がマシだ』という思いがあったのも事実なのかもしれない。

それはきっと、本気で生きようとした彼からしてみれば、今までの犠牲者に対する冒涜だったのだろう。

彼の言葉を聞いて、私は何が正しいのかわからなくなった。

 

「いやぁ〜!危なかった!あとちょっと解毒剤撒かれるのが遅かったら死んでたとこだったよ!ホント生きてて良かった!」

 

知崎君は、先程まで毒ガスの中で喚いていたのが嘘のようにケロッとした様子で笑っていた。

今の彼は、まるでこのコロシアイをギャンブル感覚で楽しんでいるようだった。

するとモノDJが下品な笑い声を上げながら両手の人差し指で私達を指差す。

 

『でもテメェらは建次郎ボーイに感謝しろよな!!アイツがネロボーイを殺さなきゃ、今頃あんな目に遭ってたのはテメェらの方だったんだからよ!!』

 

「っ………!!」

 

モノDJが私達を嘲笑いながら言うと、マナが目に涙を溜めて歯を食い縛りながらモノDJを睨む。

あいつらを許せるはずがなかった。

明日を生きる為に行動を起こした館井君が、あんな形で殺された。

私も、モノクマとモノDJに対して静かに怒りを湧き立たせていた。

私とマナがモノクマとモノDJを睨んでいると、唐突に秋山君が口を開いた。

 

「モノクマ」

 

『ん?何でしょ?』

 

「館井君に異世界の構造と再ログインの時にアバターを変更できる事を教えたの、お前らだろ」

 

『ギッ、ギッッックゥウウウウ!!?な、なななな、何の事かわかんねえなぁ!?ホワットアーユーセイイング楽斗ボーイ!』

 

秋山君が尋ねると、モノDJはわかりやすく動揺した。

この反応は図星ね。

秋山君もそう思ったのか、モノクマとモノDJに侮蔑の目を向けながら低い声で問い詰めた。

 

「とぼけるなよ。俺やリカちゃんですらあの世界の本当の構造に気付かなかったのに、RPG初心者の館井君が自力で気付けるわけがないだろ。お前らが教えたとしか考えられないんだよ」

 

「あ……」

 

今思えば、私は捜査をする前までは館井君を真っ先に犯人候補から外していた。

彼は今までRPGをやった事すらなかったからだ。

どうして初心者の彼が、ゲーム上級者の秋山君やリカですら見抜けないトリックを実行する事ができたのか疑問だったが、全てモノクマ達が教えたと考えれば納得がいく事だった。

館井君にゲームの構造を教えて犯行に走らせるなんて、こいつらどこまでも腐ってるわね。

 

「今回はお前らの悪質性が高いだろ。館井君に異世界の構造や再ログイン時のプレイヤー確認の事を教えただけじゃない。ネロさんをあんな方法で内通者にさせて館井君に殺人をやらせるなんて、どう考えても公平性を歪めてるよな?殺人に関与する事は無いと言ってたクセにどういうつもり?」

 

『ボク達はあくまで聞かれた事をそのまま答えただけですので!苦情も不平もコンプレインも受け付けません!』

 

『ったく、最近の若者はすーぐそうやって責任転嫁するよな!!俺達が何をしようが、結局内通者になる事を選んだのはネロボーイで、ネロボーイをブッ殺す事を選んだのは建次郎ボーイだったわけだろ!?殺人犯に包丁を売った店員に罪はねーんだよ!』

 

秋山君が問い詰めると、二匹はゲラゲラと下品に笑いながら全部ネロと館井君のせいにした。

すると秋山君は、二匹に嫌悪の目を向けながらさらに問い詰める。

 

「そうやって言い逃れする気?お前らは、こんな事をして何がしたいんだ」

 

 

 

『見せ物デスよね?』

 

『ほよ?』

 

突然リカが口を開くと、モノクマが首を傾げる。

リカは、目を青く光らせて二匹に鋭い視線を向けながら問い詰める。

 

『アテクシは、膨大なデータを分析した結果、ついにアナタ達の目的に辿り着きマシた。アナタ達の目的は、このコロシアイを全世界に生中継して、『絶望』を世界に蔓延させる事。違いマスか?』

 

『希望絶望うまい棒ー』

 

リカが問い詰めると、モノクマは適当を言ってはぐらかした。

するとリカは、モノクマとモノDJの目を見ながら私達の前で語り始める。

 

『そうやってはぐらかしたって無駄デス。このコロシアイは、かつて全世界が熱狂した殺戮ゲーム、『ダンガンロンパ』の再現なのはわかっていマス。アナタ達は、アテクシ達がコロシアイをしているところを生中継して、ダンガンロンパのファン達から資金をかき集めているのデス。だからアテクシ達全員に閉鎖空間での永久的な共同生活を強いる事ができるのデスよね?』

 

『『……………』』

 

リカが指摘すると、モノクマとモノDJは黙り込んだ。

どうやら、リカの指摘は的を射ていたようだ。

リカの考察は、私が警視総監から聞かされた情報とほとんど一致していた。

やっぱりこのコロシアイはダンガンロンパの再現で、黒幕の目的は『絶望』を世界に蔓延させる事だったのね。

 

『画面の向こう側の視聴者は騙せても、アテクシの目は誤魔化せマセんよ。裏方でぬいぐるみを操ってないで、いい加減こちらに出てきてはどうデスか?【超高校級の絶望】白瀬(しらせ)クロヱサン』

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

同時刻、【超高校級のマフィア】の研究室にて。

誰もいないはずの部屋に置いてあったノートパソコンが、突然ひとりでに起動する。

ノートパソコンの画面には、白と黒に分かれた不思議な髪色をした童顔の少女が映っていた。

パソコンの画面に映っていた少女は、モノクマのぬいぐるみを抱きかかえながら不気味な笑みを浮かべていた。

 

『うぷぷ、今のところ順調に進んでるね。ぜーんぶボクの計画通りだなぁ。全ては、このセカイに絶望を振り撒くため。その為には生贄が必要なんだよ?………さてと、ボクもそろそろ動き出しちゃおっかなぁ』

 

 

 

 

 

Chapter4.コロシアイから始める異世界生活 ー完ー

 

Next ➡︎ Chapter5.この素晴らしい世界に絶望を!

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『大工道具のポーチ』

 

Chapter4クリアの証。

館井の遺品。

父親から家業を継いだ記念に貰ったプレゼント。

彼の憧れ続けた父親との思い出が詰まっている。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り8名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

以上9名

 

 

 

 

 



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Chapter.5 この素晴らしい世界に絶望を!
(非)日常編①


……気分が悪い。

足が重い。

頭も重い。

今日もまた、あの地獄のような場所に行かなきゃいけない。

学校に行きたくない。

もう何もかも忘れて、消えてしまいたい。

 

『あいつ』がやらかしてから、私の人生は狂い始めた。

あいつに狂わされた皆は、私を迫害してくるようになった。

あの教室では、私は虫螻以下の存在だった。

あいつさえいなければ、多少不自由でも、平穏な日常を過ごせるはずだったのに。

クラスの皆だって、あんなに変わってしまう事はなかったのに。

……全部あいつのせいだ。

 

校舎についた。

でも今日の校舎は、いつもとは決定的に何かが違っていた。

生臭い。

むせ返るような、鼻を刺すような鉄臭い匂い。

嫌な予感がした。

私は、より濃い匂いがするB組の教室に駆け込んだ。

 

「うっ…!?」

 

B組の教室に入った瞬間、私は思わず後退りした。

ドン、と背中が壁にぶつかった。

恐る恐る教室を見ると、血溜まりの中にB組の子達が転がっていた。

その中の一人と目が合った。

その目を見れば、B組の皆が既に息絶えているのは火を見るよりも明らかだった。

無残に荒らされた教室にできた血溜まり、そこに転がる17人の亡骸。

B組の先生の亡骸もそこに転がっていた。

いけ好かない連中だったけど、無残に殺されているのは見るに堪えなかった。

 

私はふと、自分のクラスがどうなったのか気になった。

こいつらみたいに全員惨殺されてしまったのか、それともまだ生きているのか、それだけでも知りたかった。

最低な奴等だったけど、どうしても、彼等がどうなったのか気になってしまった。

私は、自分のクラスのA組の教室を開けた。

 

「……!」

 

そこには、私のクラスメイトはいなかった。

教室は荒らされてはいたものの、クラスメイトが殺された痕跡は無かった。

ふと、教卓の方に視線を移した。

 

「っ………!!」

 

そこには、信じられないものが映り込んでいた。

信じたくなかった。

見たくなかった。

でも、それは紛れもない真実だった。

その人は、全身から血を流し、糸の切れた操り人形のように力なくその場に横たわり、生気のない瞳を私の方に向けていた。

どうしてあなたが……!

 

 

 

「とうとう恐れていた事が起こってしまったか……」

 

「ううむ、奴の正体を見抜けなかった我々の失態だな」

 

後ろを振り向くと、理事長と学園長が立っていた。

二人は、この事件について何か知っている様子だった。

私が口を開こうとすると、理事長は私の肩に手を置いて言った。

 

「おめでとう。君は選ばれたんだ。君はこれから私達の『希望』となり、そして『正義』となるんだ」

 

『希望』…『正義』……

それが私の………

 

 

 

 

 

「はっ………!」

 

気がつくと、さっきまでの教室とは違う部屋にいた。

……どうやら寄宿舎の個室のようだ。

3回目の裁判の時の夢の続きを見た。

あの夢に出てきたのは、私じゃない。

でも、どうも他人事とは思えない。

それにさっきの夢に出てきた二人、どこかで見た事があるような…

 

「………」

 

私は、重い身体を起こしてベッドから起き上がると、朝の支度をして制服に着替えた。

ネロと館井君が死んだ。

気分が悪い。

頭が動かない。

 

でも、生きなきゃ。

考えなきゃ。

前に進まなきゃ。

 

 

 

「………あ」

 

そういえば、リカが言ってた『白瀬クロヱ』って一体…?

リカは、クロヱという生徒を【超高校級の絶望】と呼んでいた。

じゃあ、彼女がこのコロシアイの黒幕だったの…?

…ネロの研究室に何か手掛かりがあるかも知れない。

 

「……行ってみよう」

 

 

 

ーーー 【超高校級のマフィア】の研究室 ーーー

 

私は、ネロの研究室に足を運んだ。

ふと研究室のテーブルに目をやると、ノートパソコンが置かれている事に気がつく。

おそらく、モノクマから支給されたものだろう。

私は、テーブルの上に置かれていたノートパソコンを開いて見てみた。

するといきなりパソコンが起動し、画面に白と黒のツートンカラーの髪の少女が映し出される。

 

『うぷぷぷ!世界の皆、()()()()()〜!なんちゃって!皆大好き白瀬クロヱちゃんだよ!今日もニコニコ皆に絶望をプレゼントしまぁ〜っす!』

 

自らを白瀬クロヱと名乗る少女は、異常なまでのハイテンションで画面の向こうの私に向かって挨拶をしてきた。

見た目といい、性格といい、まるでモノクマを彷彿とさせる不気味な少女だと思った。

 

『ねえねえ、絶望って素晴らしいものだと思うでしょ?だって絶望は、人間の感情の中で一番深くて、救いようのないくらい醜くて、愛おしく思える程に美しいんだよ?例えば白雪姫を暗殺しようとしたのがバレて焼けた靴を履かされたお妃様とか、自分が助けた王子様と結ばれるためにせっかく声を失ってまで人間になったのに気付いてもらえずに王子様を他の女に取られちゃった悲劇の人魚姫とか、きっとそういう気持ちだったんだろうね。想像しただけで激しく脳汁分泌させて月の向こうまでイっちゃいそうだよね!』

 

白瀬クロヱは、モノクマを彷彿とさせる喋り方でゲラゲラ笑いながら語った。

映像を見る限り、やっぱり彼女が黒幕だったのだろうか。

そんな事を考えながら映像を見ていると、映像の中の白瀬クロヱはニヤリと不気味な笑顔を浮かべながら言った。

 

『ボクは、皆にもっともっと絶望してほしいんだよ!『ダンガンロンパ』は終わらせちゃいけないんだ。ボクが『ダンガンロンパ』を復活させて、このセカイをもっと絶望的に魅せるからさ!だから見ててよ。ボクから目を逸らさないで。キミ達が絶望に堕ちるその時まで、ずっとーーーーー…』

 

白瀬クロヱが何かを言いかけたところで、映像が終わった。

私は、気がつくと頭を抱えてポツリと呟いていた。

 

「何なのよ……」

 

私は、白瀬クロヱという女が残した映像以外の情報が知りたくて、ネロのパソコンのフォルダを片っ端から調べた。

すると案の定と言うべきなのか、白瀬クロヱから送られてきたと思われるメールの受信履歴が残っていた。

メールの内容は、『1週間以内にコロシアイが起こらないとオマエラにこんな目に遭ってもらうよ』という、コロシアイを急かすメールだった。

こうやって私達を人質にネロを脅して、コロシアイの口火を切らせようとしていたのか…

そこには、私の母さんにそっくりな女性…おそらく、私達の担任が惨殺される映像が添付されていた。

 

「うっ…!?」

 

その映像を見て、母さんが【超高校級の絶望】に殺された時の光景が突然フラッシュバックした。

見た目や才能、職業が同じなだけじゃない。

死に方まで母さんと同じだった。

 

「っ………!!」

 

映像を見た直後、突然頭痛がした。

頭が割れるように痛い。

まるで頭の中を直接攪拌されるみたいに、思考がグチャグチャに混ざる。

頭にノイズがかかった映像が流れ込んでくる。

五月蝿い。

痛い。

吐き気がする。

 

 

 

「っあ……!」

 

突然、頭の中でうるさく鳴り響いていたノイズが消え、気がつくと頭痛も治っていた。

一体、今のは何だったの……?

 

「……………」

 

何が真実なのかはわからない。

もしかすると、母さんが私の幼い頃に【超高校級の絶望】に惨殺されたという事実すら、私が勝手に記憶を捏造して作り出した虚構なのかもしれない、その考えが頭をよぎった。

ただ一つ確信しているのは、この映像を送りつけた黒幕は明確な『悪』だという事だ。

絶望を喰らう為に悪趣味なゲームを見せ物にする、底の見えない悪意の塊。

きっとそれが黒幕の本性なのだろう。

ネロは唯一その悪意に直接晒されて、戦って、そして散っていった。

絶望に立ち向かって私達に希望を託そうとしたネロの想いを意味のあるものにできるのは、生きている私達しかいない。

必ず黒幕の野望を打ち砕いて、生きてここから出よう、そう心に誓った。

 

 

 

ーーー 【超高校級の大工】の研究室 ーーー

 

私は、次に館井君の研究室に行った。

館井君の研究室の机には、書きかけの設計図が置かれていた。

とても精巧に書かれたその設計図は、高校生が書いたものとは到底思えなかった。

私が設計図に目を通すと、下の方に小さく何かが書かれている事に気がつく。

 

『死にたくない』

 

私は、そのメッセージを見て、ハッと我に返った。

彼が最後の最後に笑っていたのは、生きたかったからだった。

生きようともがいたけれど裏切られて、頭では死を受け入れなければならないとわかっていても思考以外の何かが死を拒絶して、確定した死に耐えられなくなって、おかしくなってしまったんだ。

館井君だって、本来はとても優しい人だったのに。

こんな形じゃなくて、コロシアイの無い平和な日常の中で彼と出会って仲良くなりたかった。

でも、今更そんな事を悔いたって、彼はもう戻ってこない。

 

「館井君、裁判では追い詰めるような事をしてしまってごめんなさい。どうか安らかに眠ってちょうだい」

 

私は、そう言い残して館井君の研究室を去っていった。

 

 

 

ーーー 厨房 ーーー

 

二人への別れを告げた後、朝食を作りに厨房に行くと、秋山君とリカが来ていた。

 

「おはよう、二人とも」

 

「おはよう」

 

『おはようございマス』

 

私が二人に声をかけると、二人とも返事をしてくれた。

最初は16人いて、途中でリカが加わって17人になった仲間は、今ではもう半分にまで減ってしまった。

これからどうすればいいんだろう……

 

『腐和サン。大丈夫デスか?』

 

「……ああ、うん。平気よ。ありがとう」

 

リカが私を心配してきたので、私は咄嗟に強がった。

今日の朝食は、

 

和食セットがおにぎり、味噌汁、白身魚の煮付け、小松菜の卵炒め、ナスの漬物。

洋食セットが卵とシーチキンのホットサンド、コーンサラダ、オニオンスープ、フルーツヨーグルト。

 

和食セットが4つ、洋食セットが3つ。

皆の希望通りの朝食を用意する。

リカを除いた7人分の朝食が完成して、しばらくすると皆が集まってきた。

8人で朝食を食べていると、初日に食卓を囲んでいた9人はもういないのだと実感させられる。

私達が無言で朝食を食べていると、知崎君がまたしても空気の読めない発言をした。

 

「あー今日もご飯が美味しいねぇ。ホント生きてて良かった〜!」

 

知崎君がパァッと表情を明るくして言うと、皆知崎君に構わずに無言で朝食を食べた。

すると知崎君がつまらなさそうな表情をしながら文句を言う。

 

「えー、何?このご時世でまだ黙食なんてやってんの?いつまで自粛気分でいるんだよオイ!」

 

知崎君がかなり時代遅れなネタを引っ張り出してくると、秋山君が知崎君を睨みながら深くため息をついた。

 

「……あのさ。君、何がしたいわけ?」

 

「ほぇ?」

 

「自分勝手な行動をして腐和さんを巻き込んだり、響さんの時に無駄に裁判を長引かせたり、『ジャック・ザ・リッパー』の正体を知ってたくせに黙ってたり、脱出チケットを使えなくして皆を異世界に閉じ込めようとしたりさ。これ以上は挙げたらキリないけど…」

 

「えー、そんな事したっけな?」

 

秋山君が言うと、知崎君は頭の後ろで手を組んで笑った。

知崎君は、余裕そうな笑みを浮かべながら秋山君の指摘をのらりくらりと躱した。

すると秋山君は、深くため息をついて知崎君を睨みながら告げる。

 

「俺はね。こう考えてるんだけど。本当は、君が小鳥遊さんの罠に嵌って眠らされたのもわざとなんじゃないかって。君はそうやって皆が殺人をするように誘導する愉快犯なんじゃないのか?」

 

「んー、愉快犯って何?愉快なのかな?」

 

「とぼけるな。君がそうやってコロシアイを招いているのは、一体何が目的なんだ」

 

「シュークリームのシューってキャベツって意味なんだよ?楽斗おにい知ってた?」

 

「質問に答えろクソガキ」

 

知崎君がヘラヘラ笑いながら秋山君の質問に答えずにとんちんかんな事を言うと、秋山君が苛ついた様子で舌打ちをし、普段の彼からは考えられないほど口調が荒くなった。

流石にこれはまずいと思い、仲裁に入った。

 

「やめなさい二人とも。何度も言ってるでしょ?そうやっていがみあっているこの状況こそ、モノクマ達の思う壺なのよ」

 

「………」

 

私が注意をすると、秋山君は若干不満そうに黙った。

若干ムスッとした様子で腕を組むと、私達に話しかけてきた。

 

「…で、今回探索はどうするの?また新しいエリアが開放されたんだろ?」

 

「そうね」

 

私達が探索をどうしようか話し合おうとした、その時だった。

 

 

 

『ヘイヘイボーイズアンドガールズ!!オレ達抜きで探索しようだなんてつれねぇんじゃねえのかァ!?』

 

モノクマとモノDJが、やかましく登場してきた。

いちいちうるさいわねこいつら…

私が二匹のテンションに呆れていると、秋山君が鬱陶しそうに二匹を睨みつけた。

 

「………何」

 

『はい、校舎の5階と6階、それから研究棟と寄宿舎の5階が開放されました!』

 

「ふーん、あっそ。じゃあ行こっか皆」

 

モノクマが言うと、秋山君はモノクマとモノDJをぞんざいに扱って立ち上がった。

するとモノクマがプリプリと怒ってくる。

 

『ちょっとちょっとー!ボク達をぜんざいに扱わないでくれる!?』

 

それを言うならぞんざい、でしょ。

いつ私達があんたらを甘味扱いしたのよ。

 

「それば言うならぞんざい、やなか?」

 

あ、ツッコミ被った。

 

『じゃ、そういうわけだから。じゃーねー』

 

そう言って二匹は、どこかへと去っていった。

私は、秋山君と一緒に探索の提案をした。

 

「さてと…汚物は消えた事だし、探索しましょう」

 

「うん。前回通りくじでいいんじゃないかな」

 

見ると、校舎の5階と6階、研究棟の5階、それから寄宿舎のプラネタリウムが開放されているようだ。

校舎の方は5階が教室が三つ、武道場、和室、生物室、地学室、講堂。6階が植物庭園と放送室。

研究棟は私、マナ、知崎君、それから白瀬クロヱの研究室が開放されている。

放送室は…鍵がかかってて入れないようね。

これで、理事長室、学園長室、情報管理室、放送室以外の全部の教室が開放された…って事でいいのかしらね。

 

「…なるほどね。じゃあ、一番広い講堂を調べる班以外が二つ教室を調べるっていうのはどう?」

 

「そうだね。今回は調べる範囲が多いから、ゆっくり調べていこうか」

 

私は、秋山君の提案通り早速くじを作って探索の班を決めた。

結果は、

 

 

 

武道場、和室:秋山君、古城さん

生物室、地学室:加賀君、目野さん

植物庭園、プラネタリウム:私、マナ

講堂:知崎君、リカ

教室:探索が終わった班から各自自由に探索

 

 

 

私はマナと一緒に探索か…

そういえば、くじ引きでこの子と同じ班になったのはこれが初だったわよね。

 

「緋色ちゃん!一緒に行こ!」

 

「そうね。まずは校舎6階の植物庭園から観に行きましょう」

 

「うん!」

 

私は、マナと一緒に植物庭園とプラネタリウムを調べる事にした。

話し合いの結果、まずは校舎6階の植物庭園から見に行く事にした。

 

 

 

ーーー 植物庭園 ーーー

 

植物庭園は、世界中のあらゆる植物が一度に観察できるようになっていた。

桜とハイビスカスが同時に咲いているという、普通ならあり得ない光景が目の前に広がっていた。

最先端の技術だとこんな事ができるのね…

 

「はぁ〜、最近の技術はすごかね!」

 

「そうね」

 

マナは、同じ部屋に季節や生息地が全く違う植物が植えられているのを見て感激していた。

何というか…純粋に喜んでるの見るとやっぱり可愛いわね。

私がそんな事を考えながら植物庭園を見て回っていると、飼育小屋や倉庫があるのを見つけた。

 

飼育小屋ではウサギや鳥など様々な種類の動物を飼育していたらしく、小鳥遊さんの字で飼っていた動物の名前が書かれた皿が置いてあった。

コロシアイが始まる前は、きっと小鳥遊さんが面倒を見ていたのでしょうね。

………あれ?

この飼育小屋の床、よく見ると血がついた痕跡がある。

目立たないように綺麗に拭き取ってあるけど、木の床に染み付いてしまった血までは落とし切れなかったみたいだ。

これってひょっとして……

…いえ、これ以上はやめておきましょう。

流石に考えすぎよね。

 

倉庫の方は、肥料やツルハシ、スコップ、シャベル、ブルーシート、植木鉢などが置いてあった。

数え切れないくらいの種類の植物の種も置かれている。

ツルハシには、よく見ると持ち手の部分に『鏖殺丸』と書かれていた。

『鏖殺丸』…古城さんが持っていた斬殺丸と名前が似てるけど、何か関係あるのかしら?

私が倉庫を調べていると、マナがチョンチョンと肩を突いて話しかけてくる。

 

「ねえ緋色ちゃん、これ何やて思う?」

 

そう言ってマナが私を植物庭園に隣接した管理室に連れ出して指をさしたのは、何かの機械だった。

見たところ、貯水槽を管理する機械のようだけれど…?

私とマナが機械を調べていた、その時だった。

 

『ギャハハハハ!!そいつァスプリンクラーを管理する機械だぜYEAH!!!!』

 

突然モノDJがどこからか現れ、やかましい声で説明をしてきた。

うっるさ……!

いきなり耳の近くで叫ばれたら…

 

「うわぁ!ビックリしたぁ!耳がキンキンして痛か〜!」

 

モノDJのせいですこぶる耳が痛い。

何こいつ、鼓膜破る気?

 

『ここには定期的に水をやらなきゃならねぇ植物が色々あっからな!!貯水槽から水を引っ張ってきて、スプリンクラーで水を吹きかけられるようになってんのよ!!』

 

なるほどね。

あのスプリンクラー一つで、ここの植物に水をあげられるようになっていたのか。

植物の葉が十分に潤っているのを見る限り、このフロアが開放される前から定期的に水がかけられていたようね。

マナは、貯水槽の機械をまじまじと見つめて、貯水槽の機械に取り付けられた蓋を開けようとした。

 

「へー、そうなんや。…って、あれ?これ、ちかっぱ硬うて動かんっちゃけど!?」

 

マナは機械の蓋を開けようとしたけど、蓋はやたら頑丈な造りになっていて全く開く気配が無かった。

マナが必死こいて蓋を開けようとしていると、モノDJが腹を抱えてゲラゲラ笑う。

 

『ギャハハハ!!当たり前ダロォ!!?スプリンクラーを勝手に壊されたりなんかしちゃあ困るからなァ!!ちなみにハンマーでぶっ叩いたりしても傷一つつかねぇぞ!?』

 

「この庭園のスプリンクラーは、この機械で管理されてて自動的に作動する…って事でいいのかしら?」

 

『ああ、そうだな!基本的には自動モードに設定してあるぜ!この植物庭園の植物は全部AIで管理されていて、植物の健康状態に合わせて自動でスプリンクラーが作動するようになってるっつうわけ!ドゥーユーアンダースタァン、ガールズ?』

 

()()()()()……まるで手動モードに切り替える事ができるみたいな言い方ね。

って事は、私達でもこの機械を使おうと思えば使える…って事でいいのかしら?

 

『んじゃあな!オレ様からの説明は以上だぜ!てめぇら、クソして寝な!!』

 

そう言ってモノDJは、ブンッと音を立てながら消えた。

いちいち口悪いわねこいつ。

事あるごとに人をイライラさせないと気が済まない性分なのかしら。

私がそんな事を考えていると、マナが顎に手を当てて考えながら言った。

 

「モノクマ達って何なんやろうね」

 

「さあね」

 

私が知ってる限り、モノクマはダンガンロンパのキャラクターで、コロシアイの舞台となる場所で黒幕の代わりに説明などをする役割だったはずだ。

この学園生活でも、モノクマは歴代ダンガンロンパと同じ役割を担っている。

でも私が知っているのはそれだけで、モノクマを操っている黒幕が誰なのか、何の目的でコロシアイを見せ物にしているのかはまだ仮説の域を出ない。

限られた情報の中で、私達にこんな事をさせている黒幕と戦わなきゃいけないんだ。

 

その後も、私とマナは植物園の探索を続けた。

広大な敷地の割に、これといった情報は特に無かった。

 

「緋色ちゃん、そろそろプラネタリウム調べに行かん?」

 

「ええ」

 

マナの提案で、私達はプラネタリウムを見に行く事にした。

プラネタリウムは寄宿舎5階にあるから、一度一階まで降りて、渡り廊下を通って寄宿舎に行って…

…敷地が広大な分、移動が多くて地味に面倒臭いわね。

 

 

 

ーーー プラネタリウム ーーー

 

プラネタリウムに行くと、薄暗いドーム状の部屋にリクライニングシートが並んでいた。

どうやら天文部の部室も兼ねているらしく、先輩の研究結果などが展示してあるスペースもあった。

ドームの中心には、巨大な球状の機械が設置されていた。

マナは、巨大な球体に触れて興味深そうにまじまじと観察していた。

 

「ねえ緋色ちゃん、これ何やて思う?」

 

「ああ、多分投影機じゃないかしら?」

 

「投影機?」

 

「その機械を使って、天井に星座を映すのよ。例えばこれをこうして……」

 

私は、部屋の中心に置かれていた投影機を操作して天井に星空を映した。

すると巨大なドーム状のプラネタリウムの天井には、数多の星々が煌々と輝く。

最先端の技術を使って作られた投影機は、まるで本物の星空を思わせる風景を生み出し、新たに発見された星々も映し出していた。

それを見たマナは、無邪気な子供のようにプラネタリウムに釘付けになっていた。

暗い室内でも、目を爛々と輝かせてプラネタリウムを眺めているのがわかる。

 

「はぁ〜、キレ〜!まるで本物ん夜空んごたーね!うち、こげんキレかん初めて見た!」

 

言われてみれば、私もこうやって友達と一緒にプラネタリウムを眺めたりなんてした事なかったわね。

…まあそもそも友達すらいなかったんだけど。

こういうのも悪くないのかもしれないわね。

……って、よく考えたらいつまでもプラネタリウム眺めてる場合じゃなかったわ。

早く探索しないと。

 

「マナ、早く探索しましょう。ただでさえ今回は二ヶ所調べないといけないんだから」

 

「…はーい」

 

私が投影機のスイッチを切ってマナに注意すると、マナは渋々といった様子で唇を尖らせた。

そんな顔してもダメよ。

遊びに来たわけじゃないんだから。

 

「一応ここにも準備室があるみたいね。行ってみましょう」

 

「うん」

 

私達は、プラネタリウムの準備室を調べる事にした。

プラネタリウム準備室には、天文部のノート、暗視ゴーグル、望遠鏡、厚手の白いカバーのようなものが置かれていた。

恐らく座席のカバーの予備で、どうやら防火性の高い素材でできているようだ。

準備室を隅々まで調べていると、何枚かメダルが落ちているのを見つけたので回収した。

 

「ここで調べられるのはこれくらいかしらね」

 

「そうやな。そろそろ食堂戻る?まだちょっと時間あるけど」

 

「ええ。どのみち昼食の準備もしないといけないからね」

 

「あっ、確かに」

 

探索を終えた私達は、昼食の準備をしに1階の食堂に向かった。

食堂には、既に知崎君とリカが来ていた。

 

「ねーねーリカえもーん!ボク喉乾いた!何か飲み物作ってよ」

 

『かしこまりマシた。少々お待ちクダサイ』

 

外から食堂を覗いてみると、案の定というべきか、知崎君がリカをこき使っていた。

リカはというと、見てるこっちが恥ずかしくなってくるような露出度の高いメイド服を着ていた。

…さてはリカに何か変な事吹き込んだわね。

AIだからといってリカを奴隷のようにこき使っているのは流石に見過ごせず、私は知崎君に注意をしに行った。

 

「…知崎君。あんた何やってんのよ」

 

「あっ、緋色ちゃん!いやあ実はさ、探索してたらボク疲れちゃって!ちょうど今リカえもんにエロエロご奉仕してもら…あいだ!!」

 

知崎君が最後まで言い終わる前に、私は知崎君の頭にチョップをした。

変態には制裁をしないとね。

 

「リカ、あなたも嫌だったら嫌ってハッキリ言っていいのよ」

 

『いえ、アテクシはむしろお役に立てて嬉しいのデス。皆サンのサポートをする事こそが、アテクシの使命デスので!』

 

う、うん…

嫌がってないなら別に良…くはないわね。

この子何というか、表情とか仕草とかは人間らしいんだけど、人間の常識から離れた感性を持ってるというか…

言ってしまえば機械特有のポンコツさがたまに垣間見てるのよね。

 

「リカ、そろそろ昼食の準備始めない?他の皆も探索から戻って来る頃でしょうし」

 

『はい!』

 

「知崎君、あんたも手伝いなさいよ」

 

「えー」

 

私が知崎君に昼食の支度を手伝うように言うと、知崎君は露骨に嫌そうな顔をして不貞腐れた。

リカとマナと一緒に昼食の準備をしていると、他の4人も探索から戻ってきた。

全員が集まってから、私達は昼食を兼ねたミーティングを開いた。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り8名?

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

以上9名

 

 

 

 

 










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(非)日常編②

探索を終えた私達4人は、昼食を作る為厨房に集まった。

私、マナ、リカの3人で昼食を作り、知崎君が渋々テーブルセッティングをしていると、他の4人も食堂に集まってきた。

8人全員が揃って準備が整ったので、私達はテーブルについて昼食会を始めた。

今日の昼食は、あんかけ焼きそば、春巻き、ワカメと卵のスープ、キクラゲの冷菜、それからマンゴープリンだった。

昼食が終わった後は、全員で食器を片付けて、リカが作ってくれたお茶菓子と紅茶を嗜みながらミーティングをした。

主に私と秋山君が仕切って報告を進めていく。

 

「それじゃあ、まずは俺からの報告ね。武道場は、柔道や剣道に弓道、あらゆる武道の道具や設備が完備された道場になっていたよ。凝った事に、弓道場には桜も植えられてたよ。まあ造花だったけど」

 

桜か…

植物庭園にも桜はあったけど、武道場の方は造花なのね。

 

「和室は書道や華道、茶道をする為の部屋になっておったぞ!置かれていた茶菓子も絶品じゃったし、あそこにならずっと居ても良いかもしれんのぉ!」

 

古城さん、ちゃっかり楽しんでるわね。

秋山君がいたとはいえ、ちゃんと探索してたかどうか心配だわ。

私がそんな事を考えていると、古城さんが片眉を上げて怪訝そうな表情を浮かべながら報告をする。

 

「じゃが、あそこにはどうも和室の雰囲気には似つかわしくないものが置いてあってのぉ…」

 

「似つかわしくないもの?」

 

「『メカマサムネ』なる人一人が入れそうな大きさの珍妙な機械が置いてあったのじゃ!」

 

「ああ、あのロボットね。古城さんの言う通り、和室には何故か人が中に入って操縦するタイプのロボットが置いてあったんだ」

 

古城さんと秋山君は、『メカマサムネ』なるロボットの話をした。

二人の話を整理すると、どうやら人一人が入れそうなコックピットが内蔵されたロボットらしい。

どうしてそんなものが和室に置いてあるのよ。

というか、よく考えたらこの学園、学園内にゲームセンターがあるし、割とツッコミどころ満載なのよね。

ああ、こういうメカ系の話をすると……

 

「どひゃああああ!!?きっ、機械ですって!?ロボですって!?それは後で見に行かねば!!」

 

「う、うん。気になる人は後で見てみるといいよ」

 

案の定目野さんが息を荒くして涎を垂らしながら食いついてくると、秋山君は顔を引き攣らせた。

そりゃあこんな表情でいきなり詰め寄られたら、誰だって引くわよね。

秋山君と古城さんの報告に目野さんが爛々と目を輝かせていると、このままだと時間がいくらあっても足りないと思ったのか、加賀君が咳払いをした。

 

「取り込み中悪いが、次は俺が報告をさせてもらう」

 

「あ、ああ…どうぞ」

 

加賀君が言うと、目野さんにペースを崩された秋山君が引き攣った表情を浮かべながら加賀君に話を振った。

秋山君に話を振られた加賀君は、コーヒーに角砂糖を何個も入れながら話を進める。

 

「生物室は、生物標本や人体模型、水槽などが置いてあった。あとは生物関係の本が充実していたな。だが問題はここからだ。生物室の壁に設置されていた機械だが……そこには何があったと思う?」

 

「な、何って…?」

 

加賀君が意味ありげにコーヒーをスプーンでかき混ぜながら言うと、マナが恐る恐る尋ねる。

すると加賀君は、コーヒーカップを手に取りながら真顔で報告した。

 

「今までの犠牲者達の死体だ」

 

「「「!?」」」

 

死体ですって…!?

じゃあ生物室は、今までの犠牲者達の遺体を置いておく為の霊安室も兼ねてたって事…?

加賀君が報告すると、他の皆もざわついていた。

どうやら、他の皆も思っていた事は私と同じらしい。

 

「ひいいいいい!!?か、加賀さん!思い出させないでくださいよ!!」

 

加賀君と一緒に探索をしていた目野さんは、加賀君の報告で死体の光景を思い出してしまったのか、顔を真っ青にして狼狽えていた。

目野さんの事だから、機械に興奮して中を見てみたら死体が入っていて度肝を抜かれたとか、そんなところでしょうね。

けれど加賀君は、狼狽えている目野さんをスルーして報告を続けた。

 

「続けていいか?」

 

「無視ですかァ!」

 

「死体の冷却装置だが、どういうわけか1()7()()並んでいたんだ。おかしいと思わないか?」

 

17台?

それはおかしいわね。

ここに連れて来られた私達は16人だし、途中参加のリカもAIだから遺体の冷却装置は要らないはず…

私が疑問に思っていると、秋山君も同じ事を思ったのか、顎に手を置きながら口を開く。

 

「確かに、モノクマ達は途中でリカちゃんが参加する事を想定してなかったはずだし、リカちゃんの分の装置は要らないはずだもんね」

 

「ああ。それで一応17台目の装置のネームプレートを確認してみたんだが、そこには『白瀬クロヱ』と書かれていた」

 

「………!」

 

白瀬クロヱ…

館井君が見せてくれた生徒名簿に私の代わりに書いてあった名前で、リカが【超高校級の絶望】と呼んでいた女。

ネロのパソコンに悪趣味なメッセージを送りつけてきた女だ。

 

「その白瀬クロヱという女なんだが…おい目野」

 

「あっ、は、はい!ええと、実はですね!!白瀬クロヱという生徒のデータを隣の地学室で見つけたのです!!」

 

そう言って目野さんは、白瀬クロヱという生徒の紙媒体のデータを私達に見せてきた。

どうやら私達と同じ77期生で、【超高校級の脚本家】として未来ヶ峰にスカウトされていたようだ。

映画やドラマ、ゲームなどの脚本に携わり、歴史に名を残す名作の数々を生み出してきた空前絶後の脚本家。

彼女が脚本を手がけた作品が全世界興行収入一位になった功績からスカウトされ、この未来ヶ峰学園の中でも類稀なる優等生だった彼女は教員からも信頼されていて、私達が在籍していたと思われるA組では学級委員長をやっていたようだ。

 

「本当にもう1人俺達のクラスメイトがいたのか……」

 

「冷却装置があったって事は、其奴はこの学園内におるのか!?」

 

『断定はできマセん。デスが、彼女がこのコロシアイに関わっている可能性は非常に高いデス。何しろ彼女は、【超高校級の絶望】の残党だったのデスから』

 

リカは、両眼を青く光らせながら報告をした。

そういえばリカは、館井君が処刑された後で、まるで白瀬クロヱが黒幕だとでも言いたげな発言をしていた。

 

『さらに言えば、どうやら彼女は未来ヶ峰学園に在籍時、このコロシアイの計画を水面下で立てていたようなのデス。これが、アテクシが学園内のネットワークに侵入してかろうじて入手した情報デス。アテクシはこれらの情報から、彼女が黒幕なのではないかと推測しマシた。その他の情報には厳重なロックがかかっていたので、もしかしたら学園長と理事長がわざと抜き取りやすいように用意したダミーの情報の可能性も捨て切れマセんが』

 

そう言ってリカは、学園のネットワークに侵入して得た情報を皆に共有した。

この短期間でここまで情報を抜き取れたのね…

さすが【超高校級のAI】というだけの事はあるわね。

私がリカの情報収集力に感心していると、古城さんが白瀬クロヱのデータを指差しながら言った。

 

「何じゃ何じゃ、じゃあ黒幕はこの白黒女という事か!?」

 

『その可能性が高いかと』

 

黒幕の正体がわかった…

これは大きな前進ね。

私がそんな事を考えていると、古城さんが考え込む。

 

「そうか……じゃが、それがわかったとてどうすれば良いのじゃ?」

 

「決まってんじゃん!!ぶっ殺そーよ!!」

 

そう言って立ち上がったのは、知崎君だった。

…えっ、今何て言った?

 

「ぶっ殺すって…知崎君、何言ってるの?」

 

「だってだって!それ以外に方法がないじゃんかよ!こんな事させるような奴を生かしておいたら、何されるかわかんないよ?皆で探し出してぶっ殺すんだよ!」

 

私が尋ねると、知崎君は当然のように言った。

すると加賀君が腕と足を組みながら呆れ返る。

 

「話にならないな。そもそも、ここにいるかどうかすらわからんのだぞ?どうやって探し出すというんだ?」

 

「んーっと…んーっと……」

 

加賀君が尋ねると、知崎君はポケーっとした表情で考え込む。

すると加賀君と秋山君が呆れ返る。

 

「論外だな」

 

「大体、もしその人が黒幕じゃなかったらどうするの?」

 

「えー、その時はその時じゃない?」

 

「こいつ…」

 

加賀君が呆れ返り、秋山君が尋ねると、知崎君が唇を尖らせながら頭を掻く。

知崎君が開き直って言うと、秋山君はイラっときたのか額にピキッと青筋を浮かせる。

いきなり何言い出すかと思ったら…

どう見ても、言い出したはいいものの何も考えてなかったわね。

私は、知崎君の発言に呆れつつ、席から立ち上がって自分の意見を伝えた。

 

「知崎君。白瀬クロヱが黒幕だったとしても、殺すなんてダメよ。誰が黒幕だろうと、生きて罪を償わせないと」

 

「ふーんだ、綺麗事だよそんなの!こんな事した奴に罪を償う気なんてあるわけないじゃん!血祭りにあげてぶっ殺さなきゃ!」

 

「そんなの許されないわ。たとえ反省する気が無かったとしても、黒幕を殺して解決なんて一番やっちゃいけない事よ。コロシアイの連鎖を止めようとした闇内君やネロから何を学んだっていうの?黒幕を吊し上げて殺すなんて、やってる事は響さん達の命を弄んで殺したモノクマと同じよ」

 

「ぶー!」

 

私が知崎君を諭すと、知崎君は唇を尖らせながら頬を膨らませて不貞腐れた。

今まではコロシアイを楽しむような態度を取っていたくせに、いきなり黒幕を殺すなんて、どういう風の吹き回しなのかしら。

 

「あーもういいよ!この話おしまーい!これでいいんでしょ?それより早く報告進めちゃおうよ!時間がもったいなーい!」

 

「キミねぇ…」

 

知崎君が手をヒラヒラ振りながら不貞腐れると、マナが呆れる。

知崎君は、議長ぶってふんぞり返りながらさっさとしろとでも言いたげに耳をほじった。

すると加賀君が知崎君の自分勝手な態度に呆れてため息をつきながら報告をする。

 

「はぁ…じゃあ一旦この話は保留という事で、報告を続けるぞ。生物準備室には、実験に使う備品が置いてあった。俺からの報告は以上だ」

 

「地学室には、地球儀や天体模型、地質学関係の模型、それから地学関係の本も置いてありましたね!ええ!あとは鉱石の標本とか!それから地学準備室には、地質学の実験に使う備品が置いてありました!私からの報告は以上になります!」

 

加賀君と目野さんは、それぞれ生物室と地学室の設備の報告をした。

二人が報告を終えると、知崎君が手を挙げて発言した。

 

「はいはーい!次はボクいいですかー!あのねえ、講堂は5階と6階が繋がっててクッソデッカいの!そんで舞台裏には演劇部が使ってたっぽい備品が色々置いてありました!」

 

『舞台裏には、先輩が持ち込んだと思われる、おとぎ話の原作も置いてありマシた』

 

そう言ってリカは、どこからかフランス語で書かれた本を取り出した。

私もそこまでフランス語に明るくはないからタイトルと挿絵で内容を察するしかないけど…

どうやらリカが持っているのは『美女と野獣』と『赤ずきんちゃん』の原作のようだ。

 

「緋色ちゃんも一回原作読んでみなよ。面白いから!」

 

そう言って知崎君は、私におとぎ話の本を押し付けてきた。

いきなり読んでみろって言われても…

言語互換機能は会話してる時には機能するけど、外国語で書かれた文が読めたりするわけじゃないのよね。

まあでも外国語の勉強になりそうだし、機会があれば読んでみようかしらね。

 

「最後は私達ね。植物庭園には、世界中の植物が植えられていて、季節や気候が違う場所に生息する植物も同時に見られるようになっていたわ。それから、倉庫と飼育小屋があったわね。倉庫の中には肥料や種、シャベルにスコップ、ツルハシとかの園芸用品が所狭しと置かれていたわ」

 

「なるほどね」

 

「それで倉庫を探していて一つ気になるものを見つけたのだけれど…古城さん、このツルハシに心当たりは?」

 

私は、植物庭園の倉庫で拾ったツルハシを古城さんに見せた。

古城さんはツルハシをまじまじと観察したかと思うと、目を丸くして飛びついてくる。

 

「お、お主…!それは…!ワシの愛刀、『鏖殺丸』ではあらぬか!!」

 

「……へ?」

 

「おお、こんなところにおったとは…!」

 

古城さんは、まるで我が子との再会を喜ぶかのように鏖殺丸なるツルハシに頬擦りをした。

ええっと…この反応は、古城さんがこのツルハシの持ち主だったって事でいいのかしらね?

 

「えっと…古城さん、とりあえずどういう事か説明してもらえる?」

 

「うむ!お主らには言っていなかったから説明しておくとな、ワシは元々二刀流だったのじゃ!鏖殺丸と斬殺丸はツガイでのぉ。斬殺丸が雄、鏖殺丸が雌だったのじゃ。じゃがある日、鏖殺丸が欠けてしもうてのぉ。それで知り合いの鍛冶屋に直してもらっていたのじゃ!まさか鏖殺丸がそんな所におったとは!」

 

なるほど…

ええと、つまり古城さんは入学当初は鏖殺丸を修理に出していたけど、数日後に修理が終わったから手元に戻ってきていて、どういう経緯かわからないけど植物庭園に置いていたと。

で、その時の記憶が抜き取られているから、古城さんの中ではまだ鏖殺丸の修理が終わっていない事になっていて、修理が終わるのを待っていた、という事なのね。

 

「ええと、続きいいかしら?植物庭園には、スプリンクラーが設置されていたの。庭園内の植物の健康状態はAIで管理されていて、健康状態に合わせてスプリンクラーが作動する仕組みになっていたみたい。私からの報告は以上よ」

 

「じゃあ次はうちやね!プラネタリウムには、最先端ん投影機が置いてあって、いつでん星空が鑑賞でくるごとなっとったっちゃん!プラネタリウムん準備室は、望遠鏡とか天文部んノートとか置いてあったけん、天文部ん部室も兼ねとったんやなかとかな」

 

植物庭園とプラネタリウムの探索の報告はこれくらいかしらね。

私とマナが報告を終えると、他の皆が興味深そうに報告を聞いた。

 

「ほう」

 

「なるほどね…うん、そっちもかなり収穫をゲットしたみたいだね」

 

「と、投影機ちゃんがあったのですか!!スゥハァ…後で見に行かねば!!」

 

「うわあ美香子ちゃんマジ奇行種」

 

加賀君と秋山君は自分達の中で私達の報告を整理していて、目野さんはマナの『投影機』という言葉に興奮して息を荒くしていた。

人の事奇行種呼ばわりしてるけど知崎君、あんたも人の事言えないからね?

…あ、いけない。

ネロの研究室のパソコンの事、報告しそびれるところだった。

 

「ああ、そうそう。収穫で思い出したのだけれど…リカ、分析してもらいたいものがあるんだけど、少しいいかしら?」

 

『お任せクダサイ!』

 

「このパソコン、調べてもらっても構わないかしら?」

 

そう言って私は、ネロの研究室のノートパソコンをリカに手渡した。

リカは、パソコンを受け取るなりキョトンとする。

 

『調べるのは構わないのデスが…腐和サン、このパソコン一体どこで手に入れたのデスか?』

 

「ネロの研究室。ネロに別れの挨拶をしておこうと思って研究室に行ったらたまたま見つけたのよ。何か手掛かりがあるんじゃないかと思って持ってきたのだけれど…」

 

『なるほど。では早速調べてみマスね』

 

リカがそう言うと、加賀君はパソコンのUSBポートにリカの印が描かれたUSBを挿入する。

するとリカの実体化ホログラムの身体が光り、パソコンの画面がブゥン、と音を立てて光った。

その直後、パソコンの画面には3頭身のリカが映り、リカが膨大なデータを読み込んでいく様子がポップな絵柄で映し出される。

数分後、リカの顔の上の液晶画面が『ピーン』と音を立てながら光り、『COMPLETED』と表示される。

 

『分析完了』

 

「…どうだった?」

 

『結論から申し上げマス。まずこのパソコンに残っていた白瀬クロヱの映像デスが、約18年前に撮られた映像である事が判明しマシた』

 

「え…?」

 

18年前…?

18年前って事は、私達の記憶が無い空白の20年間の間に撮られた映像って事よね?

てっきりつい最近撮られた映像だと思ってたけど、そんなに前から撮られていたものだったの?

じゃあ白瀬クロヱは、少なくとも18年前には既にこの計画を思い付いていて、私達の記憶が無い空白の20年の間に水面下でコロシアイの準備を進めてたって事?

 

『デスが不可解な事があるのデス』

 

「不可解な事?」

 

『ネロクンの脅迫メールに添付されていたA組担任の惨殺映像デスが、こちらは17年前に撮られたものなのデス。つまり白瀬クロヱの映像は、脅迫メールに添付された映像の1年前に撮影されたものという事になりマス』

 

うーん…

確かに言われてみれば変ね。

白瀬クロヱの映像とA組の担任の女性の殺害映像が撮られた時間に1年も開きがあるのもそうだけど、どうも白瀬クロヱの映像の方が先に撮られたというのが腑に落ちない。

白瀬クロヱは、本当に担任の女性を殺した犯人だったのかしら…?

 

「…なるほどね。分析ありがとう、リカ」

 

『お安い御用なのデス!また機会がございマシたらアテクシを頼ってクダサイね!』

 

「ええ、そうするわ」

 

「じゃあこれで報告会はお開きにして、各自自由探索って事で良いかな?」

 

「異議なし!」

 

秋山君が言うと、マナが満面の笑みを浮かべて手を挙げた。

さて…と。

私も探索をしに行こうかしらね。

 

「緋色ちゃん!一緒に探索しに行こ!」

 

「そうね」

 

「うち、プラネタリウム行きたか!」

 

「え、プラネタリウム?」

 

プラネタリウムならさっき見たじゃない。

何でまた…

 

「まだ見落としよーところがあるかもしれんけん、一応もっかい見に行こう!」

 

…ああ、さてはこの子、プラネタリウムを観に行きたいだけなのね。

まだ探索してないエリアがあるんだけど…

うーん、まあ自由探索の時間だし、今日くらいはいいか。

 

「仕方ないわね。明日こそ、校舎と研究棟の探索するわよ」

 

「わーい!」

 

私が渋々プラネタリウムの探索を許可すると、マナは無邪気に喜んだ。

私達は、その足でプラネタリウムに向かった。

 

 

 

ーーー プラネタリウム ーーー

 

プラネタリウムに行くと、既に先客がいたのか、天井には星空が映し出されていた。

目を凝らして薄暗い部屋の中にいる先客を見てみると、見覚えのある渦巻き状の触角と、ヘルメットが視界に映り込んだ。

耳を澄ましてみると、荒い鼻息のようなものも聴こえる。

これはええと…知崎君と目野さんかしらね。

よく見てみると、目野さんは投影機にへばりついて鼻息を荒くしていて、知崎君は星空を見てウキウキとはしゃいでいた。

 

「ねえねえ山羊座ってパンツに似てると思わない?ねえそう思うでしょ?ねえねえ!知ってた?不思議〜!」

 

「スゥゥゥゥハァァアアアア!!!このフォルム!!スメル!!フレェエエバァアアアア!!!この機械ちゃんはどこまでもアタクシを喜ばせてくれますねえ!!ぐへへへへへへ、遠慮はしなくていいのですよ!!アタクシが隅々まで愛でて差し上げますからねぇええええ!!」

 

…はあ。

この二人がいると、せっかくのプラネタリウムも台無しだわ。

私は呆れてため息をつきつつ、プラネタリウムの部屋の明かりをつけた。

すると奇行種二人がプラネタリウムのドームの照明に照らされ、奇行が私達の眼前に晒される。

 

「あっ、ち、違うのですよ腐和サン!!聲伽サン!!これには深ぁぁぁいワケがあるのです!!誘ってきたのはこの子なのですよ!?アタクシはこの子の誘惑に勝てずについ…!」

 

どこがどう違うのよ。

どう足掻いてもあなたが機械に抱きついて舐め回してたって事実は変わらないじゃない。

私が目野さんの奇行に頭を抱えていると、知崎君が私達に気付いて近づいてくる。

 

「わーい、緋色ちゃんにマナちゃん!こっち来てたんだ!一緒に星見よー!」

 

無邪気な笑みを浮かべながらこちらに向かって走ってくる知崎君は、手に紙コップと懐中電灯を持っていた。

何でそんなものを持っているのか純粋に気になったので、私は知崎君が手に持っているものを指差して尋ねてみた。

 

「ねえ知崎君、それは何?」

 

「ああこれ?プラネタリウムの準備室に置いてあったんだよ!紙コップと懐中電灯で、オリジナルの小型プラネタリウムが簡単に作れるんだってさ!知ってた?緋色ちゃんとマナちゃんも一緒に作らない?」

 

「わあ、面白そう!やるやる!」

 

そう言って知崎君は、私達に紙コップを一個ずつ、錐を一本ずつ渡してきた。

するとマナが目を輝かせながら食いついてくる。

マナってこういうの好きだったのね。

…せっかくだし、私も少しやってみようかしら。

 

私達は、紙コップに錐で穴を開けてオリジナルのプラネタリウムを作った。

完成したら、懐中電灯に紙コップを被せて部屋の明かりを消す。

すると紙コップに開けた無数の穴から光が漏れ、幻想的な光景が映し出された。

 

「わぁ〜、キレ〜!」

 

私とマナは、自作のプラネタリウムをお互いに見せあった。

…何よこれ、結構楽しいじゃない。

知崎君も知崎君で、自分で作ったプラネタリウムを鑑賞して楽しんでいる様子だった。

すると、マナがこっちを向いて話しかけてくる。

 

「ねえ緋色ちゃん」

 

「何?」

 

「えへへ…うち、今こげえしとー時間がばり幸しぇやて思うて。脱出方法ば見つけたらここから出らないかんばってん、ここから出たっちゃこうして二人で一緒におりたかよね」

 

マナは、私の右隣の席に座って話しかけてきた。

暗くて顔は見えないけれど、満面の笑みを浮かべて話しかけているのが見えなくてもわかった。

…ここから出てもずっと一緒に、か。

私は、ここで出会った皆とは、コロシアイ生活なんてない普通の日常の中で出会いたかった。

もしそれが叶う事なら………

 

「…ええ。それも悪くないわね」

 

私は、マナの左手にそっと右手を重ねた。

するとマナは一瞬戸惑いつつ、私の手を握り返した。

いわゆる恋人繋ぎというやつだ。

…ちょっとこれは恥ずかしいわね。

マナの手は温かくて、握っていると何だか心まで暖かくなってくる。

このまま、いつまでも一緒にいたいとさえ思えてくる。

 

……あれ?

何かしら、この気持ちは…

今まで、こんな気持ちになった事はなかった。

私は、マナの事をどう思ってるのかしら…?

 

 

 

 

 

ぐぎゅるるるるる………

 

 

 

「あー………腹減った」

 

突然、後ろの席に座っていた知崎君が口を開いた。

今の音は、もしかして知崎君の…?

…あっ、そういえば全く時間を気にしてなかったけど、もうこんな時間だったのか。

早く厨房に行って夕食を作らないと。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

私達が急いで厨房に行くと、既に秋山君とリカが食事を作り始めてくれていた。

秋山君は、夕食を作りながら私達に話しかけてくる。

 

「やあ、お二人ともお揃いで。何かいい事でもあった?」

 

「え?」

 

「いや、さ。何かいつもより嬉しそうだから」

 

そうかしら…?

私、そんなに思ってる事が顔に出やすかったかしらね。

それとも秋山君が鋭いのか…

…ああ、違う。

マナの方が顔に出してたのね。

 

「…ええ。まあ、ちょっとね」

 

「うん…」

 

私がマナの方を振り向きながら目配せすると、マナは照れ臭そうに帽子を両手で握って頷く。

…少し頬が赤くなっていて、何だか可愛いわね。

マナは普段から私の事をよく思ってくれていたみたいだけれど、ここまでわかりやすくこんな表情を見せてくれたのは初めてだった初めてかもしれないわね。

 

「マナ、皆待たせちゃってるし、早く夕ご飯作っちゃいましょう」

 

「そうやね」

 

私がマナに声をかけると、マナは若干慌てた様子で手を洗った。

さて。

私も秋山君とリカにばっかり働かせてないで、夕食を作らないと。

 

私達が夕食を作っていると、他の4人が食堂に集まってきた。

今日の夕食は、豆腐ハンバーグ、ポテトサラダ、グリンピースのスープ、キノコのソテー、パインのゼリーの5品だった。

夕食の後は全員で食器の片付けをしてから軽めのミーティングを開いて、その日は解散となった。

その後は大浴場の温泉に浸かってから、明日に備えて部屋のベッドに横になった。

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『モノクマ&モノDJクッキング〜♪というわけで、今週もこのコーナーがやってまいりました!ブラザー、今日は一体どんな料理を作るんです?』

 

『へいYOU!!いい質問だなァ!!今日は、オレ様流ワイルド漫画肉を作っていくぜYEAH!!材料は、何かの肉45kg、塩胡椒少々、それからグングニルの槍一本、あとはケラウノスの雷ひとつだ!』

 

『わぁ〜、そんなお手軽な材料で作れるんだね!どうやって作るんですか!?』

 

『まず、肉に塩胡椒を振りかける!そしたらこの肉に、あらかじめ研いでおいたグングニルの槍をブッ刺す!!んで最後にケラウノスの雷でこんがり焼けば完成だ!!んで、完成したのがこちらだZE!!』

 

『うわぁ〜、おいしそ〜!ほら画面の前のオマエラ、メモの準備!』

 

『ヘイガイズ、今週のオレ様流ワイルドクッキングは以上だ!来週も見てくれよな!』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り8名?

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

以上9名

 

 

 

 

 



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(非)日常編③

二十二日目。

 

「ん………」

 

私は、電子生徒手帳にセットしていたアラームで目を覚ました。

身支度を整えて、すぐに厨房に向かう。

時刻は5時35分。

集合時刻まではまだ余裕があるわね。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

私が厨房に行くと、既にリカが朝食の準備を進めていた。

私が厨房に顔を出すと、リカが私に気付いて声をかけてくれた。

 

『おはようございマス、腐和サン』

 

「ええ、おはよう」

 

リカが挨拶をしてくれたので、私も挨拶を返した。

流石リカ、今日も朝早くから準備してくれていたのね。

するとその直後、秋山君も厨房に顔を出した。

 

「やあ、おはよう二人とも」

 

「おはよう、秋山君」

 

『秋山クンおはようございマス』

 

秋山君が声をかけてきたので、私とリカも挨拶を返した。

私は、朝食の数を確認するため、リカに皆のリクエストを尋ねる。

 

「今日の朝ご飯のリクエストは?」

 

私がリカに尋ねると、リカはメモ帳を開いて見せた。

 

『聲伽サン、古城サン、秋山クンが和食、腐和サン、加賀クン、知崎クン、目野サンが洋食デス』

 

「ありがとう。和食3、洋食4ね。早速作っちゃいましょうか」

 

朝食のリクエストを確認した私達は、早速朝食を作り始めた。

今日の朝食は、

 

和食セットがご飯、茶碗蒸し、肉じゃが、胡麻豆腐、キュウリの漬物。

洋食セットがフレンチトースト、トマトサラダ、ビシソワーズ、アスパラとベーコンのソテー、カットオレンジ。

 

話し合いの結果、私が洋食セットを、リカと秋山君が和食セットを作る事になった。

まずジャガイモと玉ねぎを薄切りにし、玉ねぎを鍋に入れてバターと薄力粉で炒め、ジャガイモと水とコンソメを加えて煮る。

その間にトマトサラダとオレンジを用意しておいて、冷蔵庫に入れておく。

鍋の中身が煮えたら、泡立て器で潰し、牛乳と塩コショウを加えたらボウルに移して粗熱を取り、冷蔵庫で冷やしておく。

そのついでに昨晩卵液に浸しておいた食パンを冷蔵庫から取り出し、表面に焦げ目がつくまでバターで焼いたらフタをして蒸し焼きにする。

その間にアスパラとベーコンをオリーブオイルで炒め、塩コショウとレモンをかけたらソテーの完成。

食パンがふっくら焼き上がったら、お皿に盛り付けてフレンチトーストの完成。

スープが冷えたら器に盛り付けパセリを散らしてビシソワーズの完成、あとは冷蔵庫で冷やしておいたサラダとオレンジを取り出して、洋食セットの完成。

私が洋食セットを作り終えた頃、二人も和食セットを作り終えていた。

 

リカを除いた7人分の朝食が完成して、しばらくすると他の5人が集まってきた。

こうして全員で時間通りに揃っているのを見ると、最初は遅刻の常習犯だった古城さん、知崎君、目野さんも、学園生活を通して時間が守れるようになってきたとしみじみ感じる事がある。

安否確認と荷物チェックを済ませてから、全員で席について朝食を食べ始めた。

最初の頃は野菜を嫌がって避けていた古城さんも、精神的に成長したのかきちんと残さず食べるようになっていた。

 

「古城さんもすっかり野菜嫌い克服したわね。偉いじゃない」

 

「ガハハハ!当たり前じゃろうが!ワシは偉いのじゃ!野菜が食えずして超高校級が務まるかァ!」

 

「…だそうよ。あなたも少しは見習ったらどう?知崎君」

 

「ほえ?何が?」

 

「何か俺の皿だけ野菜と肉の比率がおかしいのは気のせいか?」

 

私は、サラダの皿を右隣に座っている加賀君と交換してソテーのアスパラを押し付けベーコンを盗んでいる知崎君を横目で見ながら注意した。

すると知崎君は、コテンと首を傾げてわかりやすくすっとぼけた。

こっちはいつまで経っても直らなさそうね。

というか、いい加減嫌いなものを人の皿に移すのやめてほしいわ。

 

全員で朝食を食べた後は片付けをし、その後は各自自由探索の時間に充てた。

さてと。

今日はどうしようかしらね。

私が今日の予定を考えていると、後ろからマナが声をかけてくる。

 

「緋色ちゃん!うちらん研究室開放しゃれとーらしいから見に行こうや!」

 

「そうね」

 

マナは、ようやく自分の研究室が開放されたからか腕をブンブン振って喜んでいた。

私とマナは、ようやく開放された自分達の研究室を見に行く事にした。

 

 

 

ーーー 研究棟 ーーー

 

エレベーターで5階に行くと、白瀬クロヱ、知崎君、マナ、私の研究室が並んでいた。

私達は早速、白瀬クロヱの研究室に行く事にした。

 

 

 

ーーー 【超高校級の脚本家】の研究室 ーーー

 

白瀬の研究室は、まるでシアターの入り口のような両開きの扉になっていた。

扉を開けてみると、中は映画館になっていた。

…なるほど、才能が【超高校級の脚本家】だから映画館のような内装になってるのね。

私達が部屋に入った瞬間、部屋の照明がフッと消える。

 

「わ、ビックリした!いきなり照明が消えたっちゃけど!?」

 

「おそらく映画館をモチーフにしているからでしょうね」

 

私は、いきなり研究室の照明が消えて驚いているマナに対し、あくまで冷静に答えた。

よく目を凝らして見ると、ちょうど16人分の座席が並んでいる。

…ええと、これは流れ的にこの座席に座って正面のスクリーンを見ろって事かしらね。

私とマナは、白瀬の研究室に並んでいた座席に座った。

するとその直後、ブーッと開演のブザーが鳴り、正面のスクリーンに映像が映し出される。

正面のスクリーンには、見覚えのある赤い幕が映っていた。

するとその直後、上からモノクマとモノDJが降ってくる。

…ねえ、ちょっと待って。

この時点で既に嫌な予感がするのだけれど?

 

『ギャハハハハ!!レディースアーンドジェントルメーン!!モノDJ&モノクマ’s シアターへようこそ!!』

 

『うっぷっぷ、このシアターでは、ボク達の華麗なる劇を披露するよ!』

 

『このシアターに来てくれた諸君!よぉく見ておけ!オレ達のクールでセクシーでエレガントな活躍をよぉ!!』

 

『それからものすごい劇を期待してるそこのオマエ、今のうちにトイレ行って来な!』

 

『んじゃあ早速始めてくぜYEAH!!スリー、ツー、ワン、レッツプレイ!』

 

そう言ってモノDJが画面に向かって指をさすと、モノクマとモノDJの劇が始まる。

…そこから先は、一言で言えば茶番だった。

内容はモノクマ姫を勇者モノDJが助け出すという某レトロゲーを思いっきり意識した劇で、何もかもが低クオリティだった。

正直、いくら【超高校級の絶望】とはいえ、自分の研究室でこんな茶番を披露される白瀬が可哀想になってきた。

まあ彼女からしてみれば、これもまた絶望的なのでしょうけど。

上映が終わると、隣に座っていたマナが真顔で私に話しかけてくる。

 

「……ねえ緋色ちゃん。うちら、一体何ば見しぇられとったんやろうね?」

 

「こっちが聞きたいわよ」

 

完全に時間の無駄だったわね。

こんな事なら最後まで見るんじゃなかったわ。

 

「余計な事に時間を浪費してしまったし、次に行きましょう」

 

「そうやね」

 

私とマナは、さっさと白瀬の研究室から退散し、隣の研究室の探索をする事にした。

ええと、次は確か知崎君の研究室だったわよね?

 

 

 

ーーー 【超高校級の泥棒】の研究室 ーーー

 

知崎君の研究室の扉は、『KEEP OUT』と書かれたテープが貼られた巨大な金庫のような外観だった。

外側に取り付けられたハンドルを回すと、プシュー、と音を立てながら扉が開く。

私達がそっと研究室を隙間から覗いてみると、知崎君が私達に気付いてこちらに近づいてきた。

 

「あー、緋色ちゃん!マナちゃん!来てくれたのね!」

 

知崎君は、まるで無邪気な子犬みたいに私達に話しかけてきた。

この調子なら何も言わなくても研究室を見せてくれそうだけど、一応人の研究室を見るんだから許可は取らないとね。

 

「知崎君。今研究室の探索をしているのだけれど、少し見ていっても構わないかしら?」

 

「いーよ!さーさー入ってってー」

 

私が尋ねると、知崎君は私達を研究室に招き入れた。

知崎君の研究室には、扉がある壁以外の三方向の壁と床と天井、その全てが本棚で出来ており、その本棚の中には分厚いファイルがビッシリと敷き詰められていた。

意外ね。

【超高校級の泥棒】っていうくらいだから、てっきり盗んだお宝でも展示してあるのかと…

……あっ、違う。

もしかして、ここにあるファイルって全部……

 

「知崎君。このファイル、ちょっと見てみても構わないかしら?」

 

「どーぞ!」

 

「ありがとう」

 

許可を貰ったので、早速一番近くにあったファイルを一冊抜き取って、適当なページを開いてみる。

そこには、彼が今まで盗んだお宝の写真と、その説明が載っていた。

…思い出した。

大泥棒ルパンは、そこの見えない欲のままに盗みを働くけど、飽きるのも早いのが特徴だった。

一度盗み出したお宝は、一旦持ち帰ってひとしきり愛でてそれを写真に収めると、すぐにそのお宝を元の場所に返しに行く。

今まで盗んできたお宝は、こうやって全部ファイルに収めていたのね。

 

「ねえねえ緋色ちゃん、マナちゃん!これ見てー!」

 

そう言って知崎君は、壁に設置された本棚を掴むと、それを横にスライドさせた。

すると、16人分の衣装が入ったクローゼットが露わになる。

…なるほど、本棚が隠し扉になっていたのか。

クローゼットに入っていた衣装は、私達の着ている服だった。

 

「すごいでしょ?これを着れば、ここにいる皆になれるんだよ?」

 

知崎君は、クローゼットに入っていたマナの帽子を手に取ると、帽子を被りながら無邪気な笑みを浮かべる。

その無邪気な笑みは、マナが浮かべる笑顔とそっくりだった。

 

「…えへへ、驚いた?」

 

ニコッと無邪気な笑みを浮かべる彼は、世界一の大泥棒だという事実を忘れさせる程に自然に振る舞った。

その仕草は、今この場にいるマナの仕草そのものだった。

 

「本当はここにいる皆の才能、みーんな欲しいんだよね。ボクは皆が知りたい。皆が欲しい。皆になりたい。でももう少しこのままの方が色々知れそうな気がするから、もうちょっとだけ我慢するんだ」

 

そう言って知崎君は、帽子をクローゼットに戻して隠し扉を閉めた。

…知りたい、欲しい、なりたい…か。

それが彼の行動原理…

私には理解できない感情ね。

私達は、知崎君の研究室を一通り調べた後、マナの研究室に向かった。

 

 

 

ーーー 【超高校級の幸運】の研究室 ーーー

 

マナの研究室の扉は、至って普通の教室のようなスライドドアだった。

これにはあまり納得いかなかったのか、マナは苦笑いを浮かべていた。

 

「うーん…普通だ」

 

「そうかしらね」

 

「とりあえず入ろっか。自分の研究室は見ときたかもんね」

 

そう言ってマナは、研究室のドアを開けた。

研究室の内装は、校舎の普通教室を小さくしたような普通の教室だった。

…と思ったのも束の間、研究室のドアを開けた瞬間、上から黒板消しが落ちてきた。

 

「わ!?」

 

突然上から落ちてきた黒板消しは、そのままマナの頭上にヒットした。

思いっきり黒板消しを喰らったマナは、私の方を振り向いて目を丸くしていた。

 

「ビックリしたぁぁぁ〜…!」

 

「…お互いにね」

 

まさかいきなり黒板消しが降ってくるとは…

モノクマのイタズラか何かかしら?

何にせよ、古くてしょうもないイタズラだ事。

私がそんな事を考えていると、マナがスカートのポケットを漁りながら話しかけてくる。

 

「あ、そうだ。緋色ちゃんガムいる?」

 

「え?あ、ええ。じゃあ一個貰おうかしら」

 

マナは私にガムを渡してくると、その場でガムを開けて口に放り込んだ。

するとマナは、ガムの包み紙を見て目を丸くする。

 

「あ!当たりだ!やったラッキー!これタダでもう一個もらえるやつだよ!うちこれ好いとーけんメッチャ嬉しか!」

 

お気に入りのガムで当たりを引いたマナは、キャッキャとはしゃいでいた。

ああ、黒板消しが直撃した分の不運が、ガムが当たった分の幸運で打ち消されたのね。

でも黒板消しの分の幸運が10円で買えるガム一個って割に合ってないような気が…

…まあ、物の価値は人それぞれだし一概には言えないけどね。

 

「何か今日は幸先良かね!よーし、こん調子で研究室調べるぞー!」

 

そう言ってマナが研究室に入ると、今度は頭上からタライが降ってきて直撃、かと思えば足元に落ちていたバナナの皮を踏んで転倒、突然飛んできた縄で縛られてあられもない姿を晒したりと、あらゆる不運が立て続けにマナを襲った。

 

「うぇえ〜ん!」

 

「……大丈夫、じゃないわよね」

 

縄で縛られたマナは、自分の不運を嘆くかのように泣きっ面を晒していた。

正直これ以上酷くなるようならもう見ていられないわね。

私がそんな事を考えつつ研究室に入ってマナを救出しようとしたその時、突然天井がパカッと開いて天井から大量のモノクマメダルが降ってくる。

願ってもいない大収穫に、マナはキャッキャとはしゃぎ出した!

 

「うわぁあ!大金や!うち、一気に大金持ちばい!」

 

…ひょっとしてこれ、自分が喰らう用の罠?

一気に幸運を引き当てたマナを見て、一瞬そんな考えが頭をよぎった。

 

 

 

ーーー 【超高校級の警察官】の研究室 ーーー

 

私は、大金をゲットしてホクホク顔のマナと一緒に、自分の研究室の探索をする事にした。

私の研究室のドアは、普通のオフィスによくあるタイプのシンプルなドアだった。

うーん、まあシンプルイズベスト、って事にしておきましょうか。

ドアを開けると、まるで交番の内装のような造りの部屋が広がっていた。

パイプ椅子にデスク、書類を入れておく為の棚、そしてロッカーなどが置かれていた。

部屋に入った瞬間、私はこの研究室が他の皆の研究室とは明らかに違う事に気がついた。

 

「………ん?」

 

「緋色ちゃん、どげんしたと?」

 

「…いえ、何でもないわ」

 

部屋に入った瞬間、私は違和感を覚えた。

最初はほんの少し気になった程度だったが、すぐにそれは確信に変わった。

新し過ぎる。

他の研究室が築何年か立っているのに対して、この研究室だけはまるで空き部屋に適当に家具を詰め込んでいるみたいだった。

まるで、この建物が建てられた当初は()()()()()()()()()()()()()()()()()()かのような…

そういえば新入生の名簿には私の名前が無かったし、その事と何か関係あるのかしら?

私が考え事をしていると、さっきから私の研究室をゴソゴソ漁っていたマナが後ろから声をかけてくる。

 

「あ、ねえねえ緋色ちゃん!」

 

後ろからマナに話しかけられたので後ろを振り向いてみると、マナは例のモノクマ饅頭の箱を持っていた。

…出たわね、ゲテモノ饅頭。

というかこれどこにでもあるわね。

 

「こんお饅頭、食べて良か?」

 

マナは、子猫のように目をうるうるさせながら私に饅頭を食べていいか尋ねてくる。

もうお昼前だっていうのに…

うわ、すごい目で訴えてくる。

どんだけ食べたいのよそのお饅頭。

 

「…好きにしたら」

 

「やったあ!ありがとう緋色ちゃん!」

 

私がパイプ椅子に座ってお茶を淹れると、マナはお饅頭の箱の包装紙をビリビリに破いて中身を取り出した。

マナは、お饅頭の箱を開けたかと思うと、ものすごい勢いで白黒ゲテモノ饅頭を食い尽くした。

10秒とかからずにお饅頭を食い尽くすと、マナは私が淹れたお茶を飲んでまったりした。

 

「ぷはー!あー、美味しかった!ありがと〜緋色ちゃん!」

 

「…そう。それは良かったわ」

 

ほとんどマナが食い尽くしたんだけどね。

当の本人は、煎茶を飲みながらお饅頭の余韻に浸っていた。

お昼前だって言うのによくそんなに食べられるわね…

 

「こんお饅頭、ホントうまかね!ちょうどよか甘しゃで、お茶にばり合うっちゃんなぁ〜これが」

 

ものすごく気に入ってるわね…

そんなに美味しかったのかしら、あのお饅頭。

私は、研究室でしばらくマナと雑談をしてから食堂で昼食を用意する事にした。

マナとは、前の学校の話や趣味の話などをした。

話してみたら普段の生活も趣味も何もかもが違ったけど、マナと一緒に話すのはとても楽しかった。

今までは母さんと父さんの仇を討つ事だけを考えて殺伐とした日々を過ごしていたから、入学当初は同年代の子とここまで仲良くなれるなんて思ってもみなかったでしょうね。

私がそんな事を考えていると、マナが私の顔を覗き込んでくる。

 

「…緋色ちゃん、どげんしたと?」

 

「え?」

 

「いや、何か今嬉しそうやったけん」

 

嬉しそう…?

私が?

そんな風に見えていたのか…

…私は、マナと一緒に話ができて嬉しい…のかもしれないわね。

 

「…ちょっとね」

 

私が微笑みながら言うと、マナが幸せそうに笑った。

よくわからないけど、そんなに嬉しかったのかしら?

つくづく思う事だけれど、何だか一緒にいて飽きない子ね。

マナと一緒に話をしているとあっという間に時間が過ぎ、気がつくと昼の11時になっていた。

そろそろお昼を作りに行った方がいいわね。

 

「そろそろお昼作りに行きましょう」

 

「うん!」

 

私が声をかけると、マナは元気良く返事をした。

私達はその足で、寄宿舎の食堂へと向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

私達が食堂の厨房に行くと、既にリカが昼食の準備を始めていた。

ホント働き者ね、この子…

流石は世界一の頭脳を結集して作られたバーチャルアシスタントだわ。

 

『腐和サン、聲伽サン!今日はどちらに探索に行かれていたのデスか?』

 

リカは、昼食に使う野菜を洗いながら私達に尋ねてきた。

私達は、顔を見合わせながら一緒に研究室の探索に行っていた事をリカに伝えた。

 

「研究室の探索に、ね。せっかく解放されたわけだし」

 

「うんうん!」

 

私がマナの顔を見ながら言うと、マナが頷いた。

するとリカは、羨ましそうに口のあたりで人差し指を立てながらこっちを見てくる。

 

『研究室デスかぁ…羨ましいデス!アテクシも皆サンのように自分用の研究室が欲しかったデス!』

 

自分用の研究室、か…

まあリカは途中参加だし、リカ用の研究室は無いから仕方ないわね。

むしろ、この学園のコンピューター内がリカ用の研究室って言えなくもないような気がするけど…

 

「さて、と、早いとこ昼ごはん作っちゃいましょう」

 

「うん!」

 

私達は、早速昼食作りに取り掛かった。

今日の昼食は、おにぎり、豚汁、だし巻き卵、山菜のお浸し、漬物というシンプルなメニューだ。

まずは山菜を塩茹でしてから刻み、出汁に漬け込んでおく。

お浸しを浸している間に豚汁用の具材を切って、具材を炒めて水と出汁を加え、アクを取って煮込む。

具材が煮えたら味噌を溶かして、豚汁の完成。

それからそれぞれの好きな具を詰めて、おにぎりを握っていく。

梅、鮭、おかか、昆布、明太子、いくら、海苔の佃煮…と。

…よし。これで全員分のおにぎりが完成。

それから油を敷いた卵焼き器に出汁で溶いた卵を入れて焼き、卵を丸めて何層かに重ねていく。

卵焼きができたら、漬物を切ってお皿に盛り付ければ昼食の完成っと。

 

私達が昼食を作っている間、秋山君が食堂に来て食堂の掃除やテーブルセッティングを手伝ってくれた。

全員分の昼食が完成すると、マナが皆を呼びに行った。

 

「皆ー!お昼ご飯できたよー!」

 

マナが皆を呼びに行くと、他の4人が食堂に集まってくる。

特に食い意地が張っている知崎君と古城さんは、来るのがすこぶる早かった。

全員が揃ったところで手荷物検査をし、全員が席についた。

 

「はふはふはふはふ!!」

 

「元気が良いのはいいけど行儀良く食べなね」

 

古城さんがおにぎりをすごい勢いでがっつくと、秋山君が注意をした。

古城さん、ものすごくお腹が空いていたのね…

 

「ねえ久遠おにい。この卵焼き2分の1プラス3分の1プラス6分の1だけちょーだい」

 

「全部だろそれ」

 

「おかわりあるから自分の分食べなさいよ」

 

知崎君がしれっと加賀君の卵焼きを横取りしようとすると、加賀君がツッコミを入れ、行儀が悪いと思ったので私も注意をした。

ホント懲りないわねこいつ……

 

「緋色ちゃんこれうまかね!」

 

「そうね」

 

マナは、さっきあれだけお饅頭を食べておいて、ちゃっかりおにぎりと豚汁と卵焼きをおかわりしていた。

ものすごい食欲…

その細い身体のどこにその量の食事が入っていくんだか…

 

そんなこんなで、全員が昼食を食べ終わった後は食器洗いをし、リカが持ってきてくれたお茶菓子とお茶を嗜みながら中間報告会を開いた。

秋山君は、お気に入りのシナモンコーヒーを飲んで一息つきながら、新しい発見があった人がいないかを尋ねる。

 

「さて…と。それじゃあ一応中間報告会としようか。誰か、何か新たに発見があった人は?」

 

秋山君が尋ねるけど、誰も手を挙げなかった。

そりゃあ、そう簡単に収穫があったら誰も苦労はしないわよね。

…あ、そういえば、リカの解析はどこまで進んでいるのかしら?

 

「ねえリカ、学園内のネットワークの解析はどこまで進んでいるのかしら?」

 

『それがデスね…今のアテクシのスペックでは、ロックを解除して情報を覗き見するのがやっとなのデス。外に助けを呼んだり、学園内のシステムを正常に戻したりする事は未だにできていマセん』

 

「そっか…」

 

「はーつっかえ」

 

「うちの子に向かって何ですその態度!!」

 

リカの報告に対し、知崎君が椅子の背もたれにもたれかかって落胆すると、目野さんがテーブルを両拳で叩きながら食ってかかった。

今のは知崎君が悪いわね。

やっぱり、いくら【超高校級のAI】と言えど、そう簡単に学園内のネットワークをハッキングしたりはできないわよね。

高望みしすぎたか……

結局その後も話し合いを続けたけれど、重要な情報は見つからなかった。

 

「じゃあ報告会はお開きでいいかな?」

 

秋山君が報告会をお開きにしようとすると、リカが手を挙げて言った。

 

『突然デスが、これから女子の皆サンで入浴会を開きマセんか?』

 

…え?

入浴会?

どうして急に…

……あ。

ひょっとして、モノクマ達に聞かれちゃマズい話だから大浴場で話がしたい、って言ってるのかしら?

 

「うん、いいと思うわ。たまには皆でお風呂に入ってリフレッシュするのも悪くないんじゃない?」

 

「さんせー!」

 

「うむ!よくわからんが苦しゅうないぞ!」

 

「リカが言うなら行きましょう!!」

 

こうして、私達女子4人は急遽皆で入浴会を開く事になった。

……のはいいのだけれど。

 

 

 

ーーー 大浴場 ーーー

 

「ガハハハ!!ええ湯じゃええ湯じゃ!!」

 

「気持ちぃ〜…!」

 

「リカも気持ちいいですか!?」

 

リカの意図を理解できなかった3人は、純粋にお風呂を楽しんでいた。

…まあ、こっちの方がむしろモノクマに怪しまれないからいいんだけどね。

私も一応形だけお風呂を楽しんでいると、リカが話しかけてくる。

 

『皆サン。少しお話があるのデスが、宜しいデスか?』

 

「ん!?リカ、話って何です!?」

 

『アテクシは先程、『今のアテクシのスペックでは、ロックを解除して情報を覗き見するのがやっと』、と申し上げマシたよね?』

 

「うむ、それがどうしたのじゃ!」

 

リカが言うと、古城さんがリカに尋ねる。

するとリカは、真剣な表情を浮かべて答えた。

 

『結論から申し上げマス。この学園のシステムは、あと3日あればハッキングできマス』

 

「なあんだそげん事………え?」

 

…ちょっと待って。

今、何て言った?

 

「…ねえリカ。あなた今何て言った?」

 

『申し訳ございマセん腐和サン。アテクシが何か気に障る事を……』

 

「そうじゃないわ。今、何て言ったの?」

 

『この学園のシステムは、あと3日あればアテクシの手中に収められる…と言いマシた』

 

私がリカの発言を再確認すると、リカは真剣な表情でもう一度報告した。

するとマナがリカの肩を掴んでくる。

 

「えっ、リカちゃん!!それホント!?」

 

『はい。アテクシは、ちちとははとねぇねに生を与えて貰ってから2週間足らず、ちちとははに力を貸していただきながら常に学園のネットワークへの侵入を試みていたのデス。アテクシの努力と皆サンのお力添えが功を奏し、ついにネットワークのロックの解除方法を見つけたのデス。3日程お時間をいただければ、いつでもこの学園から脱出できマス』

 

リカがそう言うと、大浴場に静寂が訪れた。

数秒間沈黙が続いた、その直後。

 

 

 

 

「「「やったぁあああああ!!!」」」

 

マナ、古城さん、目野さんの三人は抱き合って大喜びした。

マナは、目に涙を浮かべながら私に抱きついて喜んだ。

 

「やった、やったよ!うちら、やっとここから出らるーっちゃん!!」

 

「でかしましたよリカ!!流石は私の娘です!!」

 

『えへへ…!アテクシは偉いのデス!もっと褒めてクダサイ!』

 

「うむ!よくやったわいリカ!!苦しゅうないぞ!!ここから出た暁には、ウヌをワシの家臣にしてやろう!!」

 

コロシアイ学園生活が始まって22日目、ようやく脱出の糸口が見つかった。

あと3日でここから出られる。

ここまでの道のりに比べれば、3日なんてあっという間だわ。

私は、リカの頭を撫でながらお礼を言った。

 

「ありがとうリカ。これからもサポートよろしくね」

 

『はい!』

 

私が頭を撫でると、リカは笑顔で頷いた。

私達はもう絶望に負けたりしない。

8人全員で、ここから脱出するんだ。

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り8名?

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

以上9名

 

 

 

 

 



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(非)日常編④

あと3日で学園内のシステムを復旧できる。

そうすれば、私達は外に出られる。

ようやく、脱出の糸口が見つかった。

私達は女子全員での入浴会の後、男子にも手紙でその旨を伝えた。

どうやら男子も男子で作戦会議を兼ねた入浴会をしていたらしく、リカが脱出の手掛かりを掴んだと知って全員喜んでいた。

夕食の支度までまだ時間があったので、私はもう少し学園内の探索をしておく事にした。

まだ行っていなかった校舎に行ってみようかしらね。

 

 

 

ーーー 購買部 ーーー

 

私はまず、必要なものを買い揃える為購買部に足を運んだ。

購買部で買い物を済ませ、まだ少しメダルが残っていたので、モノモノマシーンを引いてみた。

出てきたのは、動物図鑑と携帯ゲーム機だった。

正直、あまり要らないわね。

誰かにあげられるといいのだけれど。

私は、景品の動物図鑑と携帯ゲーム機の扱いに困りつつ、購買部を後にして探索を始めた。

まずは講堂を調べてみようかしらね。

 

 

 

ーーー 講堂 ーーー

 

「うわぁ……広い」

 

講堂は、まるでコンサートホールのような構造になっていて、一階席と二階席が並んでいた。

正面の舞台はスポットライトが照らされていて迫力満点だ。

舞台裏も調べておかないとね。

 

舞台裏には、演劇部が使っていたと思われる備品が置いてあった。

煌びやかな衣装や小道具、どれも手が込んでいた。

他にも、劇の台本やお伽話の原作が置いてある。

先輩方は、ここで歴史に名を残すような名作を作ってきたのでしょうね。

本棚を調べてみると、白瀬が書いた台本や小説が置いてあった。

【超高校級の脚本家】の作品というだけあって、どれも老若男女が楽しめる名作だった。

もう少し舞台裏を調べてみると、劇に使う機械が並んでいた。

備品を調べてみると、ダンボールの中に一斗缶が入っているのを見つけた。

 

「…ん?」

 

…あれっ?これって灯油とガソリンの容器よね?

どうしてこんなところに……

って、よく見たらラベルが逆じゃない!

ったく、何やってんのよモノクマの奴…

誰かが間違えちゃったらどうすんのよ!

私は、ガソリンと灯油のラベルを貼り替えてきちんと正しい表記になるように直しておいた。

 

「…これで良し」

 

これで間違えて使われる事は無くなったわね。

…さてと。

講堂の探索はこれくらいでいいかしらね。

せっかくだし、植物庭園でも見ておこうかしら。

 

 

 

ーーー 植物庭園 ーーー

 

「綺麗……」

 

植物庭園には、美しい植物の数々の生い茂っていた。

ツツジ、バラ、アジサイ、ヒマワリ、ユリ、キンモクセイ、サザンカ、ツバキ、咲く季節が違う花が咲き誇る花壇はとても綺麗だった。

植物庭園を見てまわっていると、知崎君が植物庭園に入ってきた。

 

「ふんふんふ〜ん♪」

 

知崎君は、植物庭園に入ってきたかと思うと、庭園内をキョロキョロ見渡した。

庭園内を見渡しながら、懐からメモ帳を取り出して何かをメモしていた。

何してるのかしら…?

 

「知崎君。何してるの?」

 

「おいーっす緋色ちゃん。今ねえ、ちょっとばかし調べ物してたっちゃ!」

 

「調べ物?何調べてるの?」

 

「企業秘密ー」

 

企業秘密って……

企業に属してないじゃない。

…まあ、これ以上の詮索は野暮かしらね。

 

「ぶぇっくしょい!!」

 

知崎君は、いきなり思いっきりくしゃみをした。

花水垂れ流して、汚いわね……

 

「う゛ー…」

 

「大丈夫?私ティッシュ持ってるけど、使う?」

 

「使うー」

 

知崎君が鼻水を垂らしていたので、ポケットティッシュを渡してあげた。

ポケットティッシュを受け取って勢いよく鼻をかんだ知崎君だったけど、何故か鼻をかんだ直後から急にまたくしゃみを始めた。

 

「くしゅんっ、くしゅんっ、ぶえっくしょん!!げほっ、げほっ!!」

 

…何か、ティッシュで鼻をかむ前より酷くなってない?

目が充血してるし、涙と鼻水が垂れ流しだし、見るに堪えないわね。

私がそう思っていると、知崎君が私を指差して問い詰めてきた。

 

「ちょっと緋色ちゃん!さっきまでお花の近く歩いてたでしょ!?ボク花粉症なんだよー!」

 

「え?あ、ごめんなさい」

 

そういえばさっき花壇の近くを通ったから、その時服に花粉がついてしまったのかしら。

というか、花粉症なら入ってこなきゃいいのに…

知崎君は、庭園内の水道で顔を洗い、常備していた花粉症の薬を飲んだ。

 

「うー…まだ鼻がぐじゅぐじゅするよー…」

 

「ホント大丈夫?」

 

植物庭園の外のベンチに座って休憩していた知崎君は、ダラダラと鼻水を垂れ流しながら気持ち悪そうにしていた。

こうなってくるとちょっと可哀想になってきたわ。

知らなかったとはいえ彼の花粉症を悪化させてしまったのは私だし、お詫びにさっき買ったジュースでもあげようかしら。

 

「知崎君。お詫びと言っては何だけど、ジュースいる?」

 

「わーい!いっただっきまーす!」

 

私がジュースを手渡しすると、知崎君はジュースの缶をひったくって飲み干した。

私からジュースをひったくって飲み干した知崎君は、心なしか顔がツヤツヤしていた。

 

「ぷっはー!生き返ったー!」

 

すごい飲みっぷりね…

…あ、そうだ。

さっき手に入れた動物図鑑、知崎君にあげたら喜ぶかしら?

 

「知崎君。渡したいものがあるんだけど、今少しいい?」

 

「ほぇ?」

 

私は、さっきモノモノマシーンでゲットした動物図鑑を知崎君にプレゼントした。

すると知崎君は、キャッキャとはしゃぎながら喜んだ。

 

「わーーーーい!!ありがとう緋色ちゃん!」

 

どうやらとても喜んでくれたみたいだ。

私は、自由時間を知崎君と過ごす事にした。

植物庭園の外のベンチで、二人で横並びに腰掛けて一緒に話をした。

 

「知崎君はどうして泥棒になったの?」

 

「うーん、一言で言うと“欲しい”からだよ〜」

 

「欲しい?」

 

「あのね、ボク、どうしても欲しいものがあるとどんな手を使っても欲しくなっちゃうんだよね。お金でも、お宝でも、情報でも、才能でも、欲しいって思うと止まらなくなっちゃうんだ。欲しいと思ったものが手に入ると、それだけで嬉しくって、とっても幸せな気分になれるんだ!病気でおっ死んだボクのママがフーゾクで働いてたんだけどさ。ボクは産まれたその日に店長のサイフ盗んできたんだって誇らしげに言ってたよ!」

 

私が尋ねると、知崎君はニコニコと笑いながら一切悪びれずに言った。

“欲しい”、本当にたったそれだけの理由で盗みを働いていたのか…

というか、小さい息子が盗みをやらかして誇らしく思う母親って…どういう倫理観してるのよ。

…まあ、かつては世界に悪名を轟かせた大泥棒の一族の価値観を、現代日本人の私達のものさしで測るのはお門違いなのかもしれないけど。

知崎君は、私に詰め寄ってきたかと思うと、ニヤリと不気味な笑みを浮かべて語った。

 

「食べると身体がゴムみたいになるっていわれてる悪魔の果物、『解体屋』を自称する殺人鬼の心臓、四本腕の怪物の指、ヨーロッパのとある小国の王族が育ててたオモシロ生物、色々盗んできたんだよ?でもやっぱり今まで盗んだ中で一番のお宝は、ボクが人生で初めて盗んだ【超高校級】の才能かな」

 

「え?」

 

「ボクの地元にね、【超高校級のパルクーラー】として未来ヶ峰に留学する予定だった人がいたんだよね。その人がパルクールの大会でメチャクチャ活躍してるのを見てさ、その人の才能がすごく『欲しい』って思っちゃったんだよ。その人が欲しい、もっと知りたい、その人になりたいって思っちゃって、そしたらもう止まらなくなっちゃってさ。気がついたら、住所を突き止めて、後ろから頭をガツン!ってやっちゃっててさぁ…そんで次に気がついた時は、その人に『なっちゃってた』んだよね」

 

…あっ。

そういえば、10年前…いえ、実際にはここで10年経ってるから20年前ね。

20年前のオリンピックで驚異的なパフォーマンスをした高校生パルクール選手がいたんだけど、本人がまだ練習中の技を平然と完壁に披露してて、性格とかも少し本人とは違ってたし、何より当の本人はその時事故で入院中だったから、なりすましが疑われて悪い意味で世界的に話題になったのよね。

まさか、あの時出場してたのは、彼の才能を盗んだ知崎君だった…?

 

「あの時、その人になってオリンピックに出てたんだけどさ。その人と同じ…いや、その人以上のパフォーマンスをして、金メダル獲って、それだけでもうワクワクしちゃって!ずっと欲しかった才能で、ずっと欲しかった金メダルを獲ったんだよ?そりゃあテンション上がるよね!あの時獲った金メダルは、オリンピック選手から盗んだ金メダルよりずっとキラキラして見えたんだ!あの人を“盗んだ”ボクは、世界中の誰よりもあの人の事を知ってる。それが何よりも嬉しかったんだ!この才能はボクが初めて盗んだ才能だから、今でも一番大事にしてるんだ」

 

知崎君は、髪を掻き上げながら自分の犯行を自慢げに語った。

その仕草は、知崎君に才能を盗まれたかつての【超高校級のパルクーラー】の仕草と全く同じだった。

『欲しかった』、『知りたかった』、『なりたかった』。

彼は、たったそれだけの理由で多くの未来ある高校生達の才能を盗み、彼らの人生を狂わせてきた。

しかも盗んだ才能を、自分の欲求を満たす為だけに悪用してきた。

どうしてそんな事が平気でできるのかしら…?

 

「才能を盗んで人の人生を狂わせる事に罪悪感は無かったの?」

 

「えっ、才能盗むのって悪い事なの?なんでなんで?なんで悪い事なの?だってボクがそれを欲しいと思って、どうしても手に入れようとするのは自由でしょ?好きな人がいたら、その人が欲しい、その人を知りたい、その人になりたいって思うのは普通の事でしょ?野球選手のファンがその選手の背番号と同じ数字のものを集めようとするのと一緒だよ!あれだって、その人が『欲しい』、『知りたい』、『なりたい』って欲求の表れでしょ?ボクは、欲しいって思ったものを手に入れて、ただ普通に生きてるだけだよ?」

 

私が尋ねると、知崎君は悪びれずに首を傾げた。

この子は、悪意があって盗みをやっているわけじゃない。

盗みを悪い事だとこれっぽっちも思っていない。

この子は、どこまでも私とは相容れない人間なんだ。

 

「でもね、ボクはまだずっと一番欲しいと思ってたものをゲットできてないんだよ。ボクはボクの一番欲しいものを手に入れる為に、色んなものを盗んでるんだ」

 

「一番欲しいもの?」

 

「ボクのご先祖様」

 

そう言って知崎君は、講堂から持ち出した『アルセーヌ・ルパンシリーズ』の本を見せてきた。

アルセーヌ・ルパンは、19世紀から20世紀にかけてフランスで悪名を轟かせていた怪盗で、知崎君の遠い先祖だ。

 

「ボクは、ご先祖様になりたいんだ。世界一の大泥棒になって、世界中で有名になれば、ご先祖様になれる気がするから。だからボクはずっとドロボーやってきたんだよ。…ま、色々やっちゃって世界中の皆を怒らせちゃったみたいで、記憶ぶっこ抜かれて島流しに遭ったんだけどさ。あの時は記憶が無かったけど、パパの故郷でフツーの高校生として過ごすのもそれはそれで悪くなかったよ」

 

知崎君は、頭の後ろで手を組んでにししっと笑った。

こうして見ると、ただの無邪気な子供にしか見えない。

…だけど彼は、世界中を混乱に陥れた泥棒なんだ。

私には、一警察官として、ここから出たら彼を捕まえるという使命がある。

 

「ここにいる間は、あなたは私のクラスメイトよ。でもここから出たら、必ず捕まえてやるから。それまで覚悟しておきなさいよ、知崎君。…いえ、大泥棒ルパン」

 

「うん!楽しみにしてるよ!ここから出たら、どっちが勝つか勝負しようか!」

 

私が宣戦布告すると、知崎君はニコッと笑った。

ホント大胆不敵ね……

 

《知崎蓮との好感度が1アップしました》

 

私は知崎君と分かれた後、校舎の探索に戻った。

まだ行っていなかった武道場と和室でも見ておこうかしらね。

 

 

 

ーーー 武道場 ーーー

 

私が武道場の矢道に足を踏み入れると、そこには桜吹雪が舞っていた。

さすが最高峰、きちんと雰囲気も重視されているのね。

武道場の矢道には、造花の桜が植えられていて、弓道に使う的がいくつか並べられていた。

先輩達は、ここで弓の練習をしていたのでしょうね。

 

反対側を振り向くと、木造の武道場が見えた。

そのまま射場から武道場に上がると、中は広い道場になっていた。

剣道用の竹刀、巻藁、木刀、薙刀、弓道用の弓矢などが置かれている。

ほとんどの武道の道具が網羅されていて、武道の部活の練習場として活用されていたようだ。

 

「ん…?」

 

振り向いて見てみると、武道場の雰囲気には相応しくない機械的な刀が置いてあった。

機械の刀の下には、説明書きが置いてあった。

 

『電脳刀 この刀は、一時的に電子回路やネットワークを切断する刀です。この刀を使えば、どんな機械でも一太刀で斬り伏せて一時的に動作不良を起こす事ができます。どうぞご自由にお使い下さい。モノDJ理事長及びモノクマ学園長より』

 

電脳刀…

どんな機械でも一太刀で操作不良を起こす事ができる刀、か。

モノクマ達、こんなものをここに置いて何がしたいのかしら。

しかもご丁寧に『ご自由にお使い下さい』なんて書いて、よっぽど私達にコロシアイをさせたいらしいわね。

それに、説明書きに描かれたモノクマとモノDJのイラストが不愉快だわ。

 

私は、何の気はなしに電脳刀を手に取ってみた。

電脳刀を鞘から抜いた瞬間、私は思わず僅かに目を見開いた。

…この刀、刀身が無い。

じゃあどうやって……

私がそう思いつつ電脳刀を構えてみると、電脳刀の柄からはブンッと音を立てて青白い火花が散り、電光の刀身が姿を現した。

…これ、まるでライトセーバーみたいね。

この電光の部分で機械を叩き斬って壊す、と。

……この刀を使って、モノDJとモノクマを脅して私達を脱出させる事は………

…いえ、そんな事をしたらオシオキされるのは確実よね。

我ながら馬鹿な考えだったわ。

多分使う予定は無いでしょうし、元の場所に戻しておきましょう。

私は、電脳刀の鞘を元に戻して、電脳刀を元の場所に戻しておいた。

ここで調べられる事はもう無さそうだし、次は和室を調べてみようかしらね。

 

 

 

ーーー 和室 ーーー

 

武道場に隣接した和室は、上質な畳が敷いてあった。

部屋の中が掛け軸や生け花、ししおどしなどで飾られ、上品な雰囲気の空間を生み出していた。

どこからか、琴を弾く音が聴こえてくる。

ししおどしの音や琴の音で心が洗われ、コロシアイ学園生活で荒みかけていた心が癒される。

実家の雰囲気と似ているのもあって、こういう雰囲気は個人的にとても心が落ち着く。

中をくまなく調べてみると、茶道や華道、書道の道具、あとは琴や三味線などの和楽器が置いてあった。

そして襖を開けてみると、日本舞踊用の着物や扇子などが仕舞われていた。

 

「………あ」

 

よく見たら、この部屋の掛け軸や生け花は先輩方の作品だ。

先輩方の作品には、先輩の名前が書かれている。

ここは芸道系の部活の部室として使われていたようね。

古城さんが喜びそうな場所だこと。

 

「…………」

 

さっきからずっと気になっていたのだけれど、やっぱりアレがここにある異質さはどうしても拭い切れないわ。

私がそう思いながら視線を移した先には、古城さんが言っていた『メカマサムネ』が鎮座していた。

2mはありそうな人型の機械で、まるで某機動戦士を思わせる造形をしている。

おいおい…

和室になんて物を置いてるのよ…

上品な雰囲気の和室にこんなゴテゴテのメカが置いてあったら、そりゃあ古城さんも怒るわよね。

私は、和室の雰囲気に似つかわしくない人型のロボットに対して心の中でツッコミを入れつつ、メカマサムネに近付いて調べてみた。

 

メカマサムネの頭部を開けてみると、中には人一人が入れそうなコックピットが内蔵されていた。

コックピットのシートにはレバーやボタンが取り付けられていて、シートの正面には、メカマサムネを操縦する為のタッチパネルが設置されている。

どうやらメカマサムネには、人が直接中に入って操縦する『手動モード』と、内蔵されたAIにあらかじめ学習させて無人で操縦する『自動モード』があるらしい。

早速メカマサムネの中に入ってタッチパネルを調べてみると、色々と設定する為の画面に飛んだ。

今はメカマサムネを使う予定が無かったので、そのままコックピットを出て和室の探索を続ける事にした。

私がメカマサムネから出てくると、メカマサムネの頭部は機械音を立てながら閉じた。

和風のBGMに対してこの機械音が合わなさすぎるのよね…

和室にこんなものを置いておくモノクマとモノDJは一体どういう神経をしているのかしら?

 

私がそんな事を思いつつ和室の探索をしていると、誰かが和室に入ってくる。

入ってきたのはリカだった。

 

「あらリカ、どうしたの?」

 

『腐和サン。そちらにいらしたのデスね。ええとデスね、実はちちとははの命令を受けてメカマサムネとやらを調べに来たのデス。そのついでに、古き良き日本文化を体験しておこうかと……』

 

リカは、頭を掻きながらこの部屋に来た目的を話した。

なるほどね。

リカもこういう古くからの日本文化に興味があったのね。

あ、そうだ。

さっきゲットした携帯ゲーム機、リカにプレゼントしたら喜ぶんじゃないかしら?

 

「リカ」

 

『はい何デショウか腐和サン』

 

「この携帯ゲーム機なんだけど…良かったら受け取ってもらえない?」

 

私は、モノモノマシーンで手に入れた携帯ゲーム機をリカにプレゼントした。

するとリカは、顔の上の液晶画面をパッと光らせて食いついてくる。

 

『腐和サン、これをアテクシにプレゼントしてくださるというのデスか?』

 

「そうよ。気に入ってもらえたかしら?」

 

『ええ、とても嬉しいデス!ありがとうございマス腐和サン!』

 

リカは、私がプレゼントした携帯ゲーム機を受け取って満面の笑みを浮かべた。

良かった、喜んでくれたみたいね。

私は、自由時間をリカと過ごす事にした。

和室の畳に座布団を二枚敷いて、お互いに向き合って正座をして一緒に話をした。

 

「リカ、この学園生活が始まってからしばらく経ったけど、何か楽しい事はあった?」

 

『はい!ちちやはは、そして皆サンに多くの事を教えて頂き、アテクシは毎日楽しいのデス。その中でも特に楽しかったのは、皆サンと一緒に異世界でゲームをした事デショウか。あの時は、皆サンと一緒にゲームクリアを目指してクエストを攻略していくうちに絆を深められて、アテクシにとっては良い思い出デス』

 

別にクリアを目指していたわけじゃないけど……

でもあのゲームは、リカにとってはいい思い出だったのね。

確かにあのゲームは、某念能力ゲームのパクリだと正直舐めてたけど、意外とやりごたえがあったのよね。

 

「やっぱりゲームは好きなの?」

 

『はい、好きデス。ゲームもアテクシにとっては学習をサポートしてくれるいい教材なのデスよ。今はここに閉じ込められているので対戦はできマセんが、いつか強豪プレイヤーと対戦して強くなりたいデス』

 

リカは、グッと拳を握りしめてまだ未知のプロゲーマーに対して闘志を燃やしていた。

最高峰のバーチャルアシスタントを目指す彼女としては、プロゲーマーと対決してゲームスキルを高めるのは、ここから出たら成し遂げたい悲願の一つなのね。

 

「あなた、普段は何してるの?」

 

『主に学園内のネットワークの解析、それから皆サンの生活をサポートする為の学習デスね。アテクシの本体はちちの研究室にいるので、よくちちの話も聴かせてもらっておりマスよ』

 

「加賀君の話?」

 

『はい。ちちは、アテクシがより学習できるように、よくアテクシに話しかけてくれるのデス。アテクシが料理や検視で皆サンの役に立てているのも、ちちが食峰クンや小鳥遊サンの研究室から本を持ってきてくれてアテクシに読ませてくれたからデス。それ以外にも、人工知能の未来やこれからの医療の発展についてなど、普段からちちとは多くの有意義な議論を交えておりマス。ちちの話はとても面白いデスし、勉強になるので、アテクシは大好きデスよ』

 

リカ、普段は加賀君と話をしていたのか…

加賀君、普段はクールで変じ…ミステリアスな雰囲気だけれど、リカの前では私達にも見せないような一面を見せていたりするのかもしれないわね。

 

『ちちはああ見えて繊細で寂しがり屋なので、アテクシと話ができないと拗ねるのデス。なので時間がある時は、ちちと話していマスね。まあ、アテクシはちちと話していて楽しいので、長話も苦ではありマセんが』

 

へえ…

てっきり加賀君って図太い人だと思ってたけど、意外と寂しがったりする人なのね。

…というか、そんなセンシティブな話、私に話しちゃっていいの?

 

「……ねえ、それ、私に話してもいい話だったの?」

 

『…あっ。言われてみれば、話してはいけない話デシたね』

 

おいおい……

大丈夫かこの子。

ちょっと抜けてるというか…

 

『アテクシ、やってしまいマシた。てへっ』

 

リカは、ペロッと舌を出しながら自分の頭にコツンと拳を当てた。

あざといわね。

これ、絶対自分が可愛いって自覚してやってるわよね。

こういうとこ見ちゃうと、悪い意味でも人間臭いと思ってしまうわね。

 

「……あなた、何だか必要以上に人間臭いわよね。良い意味でも悪い意味でも」

 

『まあ!それは最高の褒め言葉デス!アテクシの最終目標は、人間と遜色ないバーチャルアシスタントになる事デスから』

 

…あっ、しまった。

言葉選び間違えた。

余計調子に乗らせちゃったわ。

でもリカと仲良くなれたみたい。

 

《リカとの好感度が1アップしました》

 

私は、しばらくリカと一緒に和室の探索をした。

リカはメカマサムネを調べていたので、私は和室の雰囲気を楽しみつつ、別の場所を調べた。

その後、二人で一緒に夕食の準備をする為食堂に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

私とリカは、夕食の支度をしに食堂に行った。

すると既に秋山君とマナが食堂に来ていた。

 

「あ、腐和さん。リカちゃん」

 

『はっ…!既に先を越されていたとは…!皆サンをサポートするバーチャルアシスタントともあろう者が、何たる不覚…!』

 

秋山君が先に夕食の準備を進んでいると、秋山君に先を越されたリカがガックリと肩を落としてわかりやすく落ち込んだ。

普段リカが働いてくれてる分働いてるんだろうし、何もそこまで落ち込まなくても…

私がリカに対して心の中でツッコミを入れていると、秋山君が私に話しかけてきた。

 

「腐和さん、君も毎食皆のご飯作ってて大変だろ?夕食作りは俺らでやっておくから、ゆっくりしててよ」

 

「そう?じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかしらね」

 

秋山君が爽やかな笑顔を浮かべながら気を遣ってくれたので、この日の夕食は秋山君、マナ、リカの三人で作り、その間私は食堂の掃除やテーブルセッティングをした。

流石に何もしないわけにもいかないし、テーブルセッティングくらいはしないとね。

食堂のテーブルクロスを整えていると、厨房の方からいい匂いが漂ってきて食欲をそそられる。

私がテーブルセッティングを終えると、ちょうど古城さん、知崎君、加賀君、目野さんの4人が食堂に顔を出した。

全員が揃ったところで、席について夕食会を始める。

今日の夕食は、グラタン、ガーリックトースト、ズッキーニとキノコのラタトゥーユ、レタスのスープ、イチゴのソルベだった。

食事の後は、全員で食器を片付けて、報告会を開いた。

今回の報告会も、特に誰かが何か収穫を得たりはしておらず、明日の予定を話し合ってそのまま解散となった。

 

夕食会が終わった後、私は軽く寄宿舎内を散策し、9時頃に個室に戻った。

お風呂は……

昼に入浴会を開いたばかりだし、軽くシャワー浴びるだけで十分よね。

私は、部屋のシャワールームでシャワーを浴び、部屋のベッドに横になった。

 

…あと2日。

あと2日で、この学園のシステムが元に戻る。

そうすれば、ここからの脱出も夢じゃなくなる。

ここまで来てようやく、希望が見えてきた。

私達は、絶対にもう絶望に負けたりなんかしない。

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

 

『レディースアーンドジェントルメン!!待たせたなァゴミクズ共!!さぁーて、今回のモノクマ&モノDJ劇場だが…』

 

『まぁてぇルパァァァーーーーーン!!!』

 

『いけねえ、とっつぁんだ!』

 

『えー、ヤツはとんでもないものを盗んでいきました。何とこのコーナーです!というわけで、コーナーそのものを盗まれてしまったのでモノクマ&モノDJ劇場は開演できないのであった………』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り8名?

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

以上9名

 

 

 

 

 



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(非)日常編⑤

二十三日目。

いつも通りの時間に起きて、制服に着替え、髪を梳かしてお気に入りの髪留めで髪を留めた。

本当は朝一番にシャワーでも浴びたかったのだけれど、生憎水が出ないので、ペットボトルの水を使って顔を洗い、朝の支度を終える。

そろそろ出ようかと思ったその時、あのモノDJの喧しいアナウンスが鳴り響いた。

 

『ヘェイグッッモォォォニン!!ゴミクズ共ォォォ!!!朝の7時をお知らせするぜイェア!!!今日も張り切ってけェ!!!』

 

…このやかましいアナウンスとも、あと2日でお別れか。

そう思うとせいせいするわね。

さて、と。

食堂のテーブルセッティングをしに行かないと。

 

 

 

ーーー 食堂 ーー

 

食堂に行くと、厨房では既にマナ、秋山君、リカの三人が朝食を作ってくれていた。

私も、早速食堂の掃除やテーブルセッティングに取り掛かった。

私が食器を並べていると、ほぼ時間通りに残りのメンバーが来た。

他の4人は眠そうにしていて、直前までぐっすり眠れていたのがよくわかる。

古城さんと目野さんに関しては、もうすぐ出られる事がわかったからか、心なしか普段より顔色が良かった。

私は、テーブルセッティングがてら他の4人の手荷物検査をした。

…よし、怪しいものを持ち込んでいる人はいないわね。

 

「よし。今日も全員無事に揃ったね。それじゃあご飯にしようか」

 

4人が食堂に来たのを確認すると、秋山君は4人に声をかけた。

全員が無事揃ったので、私達は朝食を食べ始めた。

私が選んだ和食セットは、炊き込みご飯、豆腐と水菜のすまし汁、白身魚のみぞれ煮、コンニャクの甘辛煮、もずくとキュウリの出汁浸しだった。

…ホント、美味しいものを食べると今生きてるんだって実感するわね。

朝食を食べ終わった後は、全員で片付けをして、そのままお茶を嗜みながら朝のミーティングをした。

いつも通りの何の進展もないミーティングを装いつつ、リカは監視カメラの死角になるようにメモ用紙に現在のセキュリティのロック解除の進展を書いて教えてくれた。

どうやら、予定は順調に進んでいて、早ければ明日にでも学園のネットワークを掌握できるそうだ。

それを確認したら皆は、ミーティング中に顔を見合わせて笑い合った。

ミーティングを終えた後は各自自由に探索する時間となった。

私が席を立ち上がると、隣に座っていたマナが声をかけてくる。

 

「緋色ちゃん!一緒に探索しに行こ!」

 

「そうね」

 

私は、マナと一緒に校舎の探索をしに行く事にした。

まだ行っていないのは…校舎5階の生物室と地学室、それから普通教室ね。

私達はまず、地学室から先に見る事にした。

 

 

 

ーーー 地学室 ーーー

 

地学室には、目野さんの報告通り、巨大な地球儀、天体模型や星座早見表、実験器具などが置いてあった。

正面に大きな黒板が設置されており、後ろの本棚には地学関係の本がズラリと並んでいる。

天井からは、おそらく星の並びを見るためのものと思われる白いドーム状のカバーが吊るされていた。

壁一面には、鉱石の標本がズラリと並んでいた。

 

「わあ、緋色ちゃんこれキレーやね!」

 

マナは、地学室の鉱石の標本を見て目を輝かせていた。

よく見てみると、ダイヤモンドの原石なんかも展示してある。

まるで博物館ね。

 

本棚を調べてみると、何故か目野さんが言っていたA組の生徒プロフィールが本棚に挟まっていた。

私達の所属していた1年A組のクラスの情報が、事細かに記載されている。

ふと白瀬のページに目がいき、書かれている内容を読んでみた。

 

 

 

〜〜〜

 

出席番号7番 白瀬クロヱ

性別:女性

肩書き:【超高校級の脚本家】

生年月日:20XX年1月1日

出身校:魁清学園高校

出身地:東京都

得意教科:現代文、英語

苦手教科:なし

備考:彼女が脚本を手がけた『白の君と黒のあなた』が全世界興行収入一位になった功績から、【超高校級の脚本家】として我が未来ヶ峰学園にスカウトする事となった。

1学年在籍時の成績は極めて優秀。

1年A組の学級委員長を務めており、クラスメイトとの仲も良好である。

 

〜〜〜

 

 

 

このページの次には、彼女の健康診断の結果が書かれていた。

身長、体重、血液型、病気の有無などが事細かに書かれている。

この診断書は、間違いなく未来ヶ峰学園側が書いたものだ。

つまり、彼女は本当に77期生の中にいたという事になる。

でもこのプロフィールの中に、やはり私のプロフィールは無かった。

じゃあ、私は一体……?

 

 

 

「……いろちゃん。緋色ちゃん!」

 

「あっ」

 

突然後ろからマナに声をかけられて、驚きのあまり我ながら変な声を出してしまった。

振り向くと、マナが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

 

「緋色ちゃん、大丈夫?さっきからずっと呼んどーとに返事がなかったっちゃん…」

 

「あっ、ごめんなさい……」

 

いけないいけない、考え事をしていると周りが見えなくなるのは悪い癖ね。

マナには悪い事をしちゃったわね。

 

「で、考え事はもう済んだ?」

 

「ええ。もう大丈夫よ。ずっと声をかけてくれてたのに無視しちゃってごめんなさい」

 

「いや、それは全然よかっちゃけど……」

 

私が謝ると、マナは少し困惑した様子で頭を掻いた。

あ、逆に気を遣わせちゃったわね。

私達は、そのまま地学室の探索を続けた。

その他の収穫はメダルくらいしかなかったので、次の場所の探索に移る事にした。

 

「隣の準備室も見てみましょう」

 

「うん!」

 

私達は、隣の地学準備室も調べた。

地学準備室には、実験器具をはじめとした備品が所狭しと並んでいる。

地学って科学の中ではマイナーな科目のイメージがあるけど、さすがは未来ヶ峰、ちゃんと研究用の設備が完備されているのね。

そんな事を考えつつ準備室を調べていると、備品の裏にモノクマメダルが落ちているのを見つけたので回収しておいた。

ここで調べられる事はこれくらいかしらね。

 

「ええっと次は…」

 

「ここから一番近いのは生物室よね」

 

「あ、そうそう!じゃあそこ行こ!」

 

『そうそう』って…

絶対今の今まで忘れてたわよね。

 

 

 

ーーー 生物室 ーーー

 

私達は、地学室と隣接した生物室に足を運んだ。

生物室の扉には、血文字で『ナマモノ』と書かれていた。

 

「な、ナマモノ…?」

 

マナは、生物室に書かれている『ナマモノ』という字に困惑していた。

いや、生物室の生物は読み方変えたらナマモノなんだけど……

…何というか、血文字だし、言葉の響きも生々しいわね。

 

……というか、さっきから何だか少し肌寒い気がするのだけれど?

どこからか冷気が漏れてるのかしら。

 

「調べましょう」

 

「う、うん…」

 

私達は、早速生物室を調べてみる事にした。

生物室の扉を開けた、その瞬間だった。

 

「寒っ!?」

 

扉を開けた瞬間、痛いと感じる程の冷たい風が吹きつけてくる。

生物室の中は、極寒だった。

中に置かれていた水槽には霜が降りていて、天井からはつららまで伸びていて、あまりの寒さに凍えそうになる。

加賀君の研究室のクーラーの比じゃない。

ここはまるで巨大な冷蔵庫だわ。

 

寒いのを我慢して生物室を探索すると、正面に大きな黒板と生物関係の本がビッシリ並んだ本棚が設置されており、その反対側には生物標本が、入って左手側の壁に接した棚には水槽や流しが並んでいた。

机は化学室同様縦と横に整列されていて、机には薬品を洗い流す用の流しが設置されている。

机の引き出しを引いてみると、ちょうど机に対応した実験器具が収納されていた。

 

そして入って右側の壁には、加賀君が言っていた機械が17個並んでいた。

機械の横のランプは9個点灯していて、機械の下の金属製のネームプレートには私達の名前が刻まれている。

…9個。

ちょうど、今まで死んだ皆の人数と同じ数だ。

ここに皆の遺体が入っている。

もしそれが本当なら、ここから出る時に皆の遺体を遺族に届けないと。

私は、覚悟を決めて玉越さんの名前の刻まれた機械を開けた。

 

「っ………」

 

中には、身体を斬りつけられ何度も刺された玉越さんの遺体が入っていた。

身体についた血は、ユニフォーム以外は全て綺麗さっぱり落とされていた。

彼女が最初の犠牲者だった。

私があの時、事件を未然に防げていたらこんな事には……

 

私は、迷いつつも次は響さんの遺体を確認した。

中には、潰されてグチャグチャになった肉塊が入っていた。

モノDJとモノクマのオシオキで、彼女は原型がなくなるまで散々にいたぶられた。

…こんなの、秋山君が見たらショックで耐えられないでしょうね。

 

次は小鳥遊さんの遺体だ。

小鳥遊さんは、頭が潰れ、首と胴を切り離された状態だった。

越目君のメイクのおかげか、口元の火傷は全く目立たず綺麗な顔をしている。

よく見ると、身体にはいじめでつけられたと思われる傷がいくつもあった。

…結局、最後まであなたの事はわかってあげられなかったわね。

 

次は越目君の遺体だ。

越目君は、顔がボロボロになっていて、両眼に青い宝石がはめられている。

身体には金と銀のマキビシが刺さり、炎と電撃で身体が焼かれてウォーターカッターで斬られ、光線銃で身体を貫かれ、胴体が真っ二つに切断されていた。

殺人犯だからって、何もここまでやらなくったって……

 

次は闇内君の遺体だ。

腹部には穴が開いていて、両手足に苦無で刺された穴が空いている。

絶望の表情を浮かべながらも、大切な人を守り切った彼の表情はどこか誇らしげだった。

闇内君、古城さんなら今も元気に生きてるわよ。

だから安心して眠ってね。

 

次は聖蘭さんの遺体だ。

首の後ろに刺された穴が開いていて、眠るように死んでいる。

遺体には、食峰君に脱がされたシスター服が被せられていた。

真実を知らずに眠りながら殺された彼女は、ある意味幸せだったのかもしれないわね。

 

次は食峰君の遺体だ。

全身調味料まみれになった身体を揚げられ、よく見ると身体がボロボロに食い破られている。

結局聖蘭さんを一口も食べる事ができずに、逆に自分が調理されて、その料理すら誰かの口に運ばれる事はなかった。

自分の味覚を満たす為だけに多くの女性や子供を殺してきた彼を皮肉った末路なのだろう。

 

次はネロの遺体だ。

遺体には一切傷がなく、眠るように死んでいる。

今までの皆の遺体の中では、一番綺麗な状態だろう。

安心して、ネロ。

あなたの望み通り、今度こそ全員でここから脱出してみせるから。

 

最後は館井君の遺体だ。

四肢を釘で抉られ、全身滅茶苦茶に殴られてグチャグチャの肉塊になっていた。

誰よりも明日を生きようとして、絶望の中で殺された。

こんなにも無念な事はないでしょうね。

 

確認してみたところ、遺体は全て本物のようだった。

この学園から出る時は、ここに置いてある皆の遺体も一緒に持って行ってあげないとね。

私が全員の遺体を確認すると、マナが寒さに凍えながら話しかけてきた。

 

「緋色ちゃん、そろそろ出よう?うち、寒うて凍えそう」

 

「そうね」

 

確かに、このままだと寒すぎて凍傷になりそう……

そろそろ出ないと。

…次にここを調べる時は、防寒着とオイルランプが必須ね。

 

極寒から逃げるように生物室を出た私達は、生物準備室を調べた。

生物準備室は小さな倉庫のような部屋になっていて、顕微鏡、スポイト、プレパラートなどの実験器具や化学薬品が置いてあった。

よく見ると、置いてある器具はどれも最先端だ。

実験をする時はここから実験器具を持ち出していたのかしらね。

ここには特には収穫は無さそうね。

 

「そろそろ次行きましょう」

 

「うん」

 

私が廊下を指差すと、マナが頷いた。

私達は、まだ調べていない5階の普通教室を調べに行く事にした。

 

 

 

ーーー 校舎3F廊下 ーーー

 

私達は、5ーA、5ーB、5ーCの順に教室を調べていった。

教室の内装は、1階の教室とほとんど変わらなかった。

5ーAの教室には、特にこれといった収穫は無かった。

5ーBの教室のボードには、

 

『セクシーハンサムボーイモノDJ』

 

とモノDJの字で落書きがされていて、隣に気持ち悪いポーズを取っているモノDJの絵が描かれていた。

本当にいちいち不愉快ね。

私は、教室の黒板を消してから隣の5ーCの教室に入った。

5ーCにも、特にこれといった収穫は無かった。

普通教室を調べていたら、ちょうど昼食を作りに行くのに丁度いい時間になったので、私達は食堂に向かった。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

食堂に行くと、リカが既に昼食の準備をしてくれていた。

私達もリカを手伝い、秋山君がテーブルセッティングをしてくれた。

昼食が出来上がるとマナが皆を呼びに行き、全員が揃ってから安否確認を兼ねた昼食会を開いた。

今日の昼食は、トンカツ、キャベツの千切り、ポテトサラダ、豆腐の味噌汁、根菜の煮物だった。

昼食を食べ終わった後は、全員で片付けをして、昼のミーティングをしようとした、その時だった。

 

 

 

『レディィィィイイイス!!アーンド!!!ジェントルメェエエエエエン!!!!』

 

『うぷぷぷ、ご機嫌麗しゅうオマエラ!』

 

どこからか、例の二匹が現れた。

もういい加減この茶番にも慣れてきたわ。

すると秋山君が、頬杖をつきながらため息をついた。

 

「邪魔なんだけど。消えてくんない?」

 

『うわっ、秋山クン何その態度!?せっかくオマエラにとって嬉しいお知らせを用意してきたっていうのにさ!』

 

「……何?」

 

モノクマの言う『嬉しいお知らせ』という言葉に、加賀君が反応した。

…どうせ碌な情報じゃないんでしょうけどね。

 

『HEYテメェら、最近黒幕をシコシコ…あ、じゃなかった、コソコソ嗅ぎ回ってるらしいじゃねーか!!そんなに黒幕探しがしてぇなら、オレ様がとっておきの情報を提供してやるぜ!!』

 

『えー、オマエラの中にはとっくにお察しの人もいると思うんですけどね……実はオマエラにこのコロシアイ学園生活を強制させた黒幕は、この学園内にいます!』

 

 

 

………やっぱりか。

歴代のダンガンロンパでも、どういう形であれ黒幕は必ずコロシアイの舞台の中にいた。

今回のコロシアイも、黒幕がどこかにいるんじゃないかとは思ってたけど…

私が考え事をしていると、目野さんと古城さんがモノクマに反論した。

 

「どうせそんなのハッタリなんでしょう!?」

 

「そうじゃな!黒幕自ら手の内晒すような事するはずがないからのぉ!!」

 

『うるせぇなぁ!!シャラップ美香子ガールアンドいろはガール!!オレ様達が嘘言った事あったか!?ハァン!?黒幕は、77期生のA組の中にいるんだYO!!』

 

「まあ今までの流れから察するに、今回の情報も真実だろうな。俺達をここに閉じ込めた奴自身もこの学園のどこかにいる、と……くくく、どうやら犯人は俺達との直接対決をご所望らしいな」

 

加賀君は、腕を組みながら1人で笑っていた。

するとマナが前に出て徐に口を開く。

 

「そんだけ?」

 

『ほにょ?』

 

「本当にそれば言うためだけに来たと?キミ達今まで、動機ば用意したりしてうちらん不安ば煽ってきたっちゃんね?ネロくんの時なんか、『一週間以内にコロシアイが起こらな全員オシオキ』だなんて無理難題言って内通者に仕立て上げたじゃんね。なのに今回は何も無かと?」

 

マナは、いつになく冷静な口調でモノクマに尋ねた。

するとモノクマは、不気味な笑みを浮かべながら答える。

 

『うぷぷぷぷ…何もないわけないじゃないですか!むしろ、()()()()()()()()()()って言った方が良いのかな?』

 

「なっ………」

 

『動機はもう配ってある』…

それってつまり、今の黒幕のカミングアウトそのものがコロシアイの動機って事?

じゃあ、自分が不利になるだけなのにあえて黒幕がここにいる事を話したのは、黒幕が自分達と同じ空間にいると認識させる事で不安を煽る為って事になるわよね。

もしそうじゃなくても、黒幕を殺したいと思っている人がいたら……

 

 

 

「わーいわーい!じゃあそれってつまり、黒幕をぶっ殺し放題って事だね!?やったあ!ボクが一番に見つけてぶっ殺してやるんだから!」

 

そう言って知崎君は、黒幕を探し出して殺す為にひと足先に食堂を出て行った。

しまった、油断した…!

知崎君が黒幕を殺すとか言ってたんだから、もっときちんと監視の目を光らせておくんだった…!

とにかく、早く追いかけて止めないと…!

 

「うわ足速あ!?」

 

「コラ、待ちなさい知崎君!」

 

「きゃははは!ボクを捕まえてごらんなさ〜い!」

 

「何じゃ何じゃ、あやつ一人で出て行ったぞ!」

 

「最近の若者は血気盛んですねえ!」

 

私が知崎君を追いかけようとすると、後ろで古城さんと目野さんが何かを言っていた。

すると秋山君がモノクマに尋ねる。

 

「…ねえ、止めなくていいの?」

 

『ん?何を?』

 

「知崎君はさ、お前らの親玉を殺そうとしてるんだろ?黒幕を殺されたら、お前らにとって不都合なんじゃないのか?」

 

『ギャハハハ!!!んなワキャねーだろ楽斗ボーイ!!黒幕だってここにいる以上はこのコロシアイの参加者!黒幕が死んだくらいじゃコロシアイは終わらねーんだYO!!』

 

「……だと思ったよ、クソ」

 

モノDJが下品に笑いながら言うと、秋山君は悔しそうに頭を掻いた。

でもこれで分かったのは、黒幕が殺されても学級裁判は開かれ、コロシアイ学園生活は続行するという事。

ここから生きて出るには最後の二人まで人数が減るか、自力で脱出口を見つけるかしか道は残されていない。

リカのお陰でやっと脱出の糸口を掴めたんだ。

あと2日で学園のネットワークを掌握できるって聞いて、やっとバラバラになった皆の心が一つになったところなんだ。

リカの努力を、皆が必死に生き抜いてきた23日間を、こんなところで台無しにされてたまるか…!

これ以上、誰かを死なせるわけにはいかないのよ!

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

私達は、手分けして逃げた知崎君を探した。

ったくあの問題児…!

覚えてなさいよ、見つけたらガツンと言ってやるんだから!

私とマナと古城さんが校舎を、加賀君とリカが研究棟を、秋山君と目野さんが寄宿舎を探した。

するとその時、突然私達全員宛にメッセージが届く。

 

『みんなー!今から校舎1階の視聴覚室にしゅーごー!』

 

突然送られてきた知崎君からのメッセージに、私達は全員動揺を隠し切れなかったが、とりあえず全員知崎君の指示通り視聴覚室に集合した。

 

 

 

ーーー 視聴覚室 ーーー

 

知崎君が私達に召集をかけてから10分足らず、知崎君以外の7人全員が視聴覚室に集まった。

加賀君は、腕を組んで若干イライラした様子でボソッと呟く。

 

「…全く、あの問題児…俺達をこんな所に集めさせて何がしたいんだ」

 

「全くですよ!!空気読めなさすぎです!!」

 

…加賀君、目野さん。

あなた達それ、自分にも返ってるからね?

私が心の中でツッコミを入れた、その時だった。

 

 

 

『レディース!!アーーーンド!ジェントルメーーーン!!』

 

突然、どこからか知崎君の声が響き渡る。

その声が聴こえた直後、私達はキョロキョロと視聴覚室の中を見渡して音源を探した。

 

「むっ、何じゃ何じゃ!?」

 

「あのスピーカーちゃんからの音声ですね!」

 

機械慣れしていない古城さんはいきなり聴こえてきた声に驚き、目野さんはすぐに音源のスピーカーを見つけ出して指差した。

するとその直後、視聴覚室に設置された一番大きなモニターがパッと光る。

そこには、和室からメカマサムネが手を振っている映像が映っていた。

声の主からして、中に乗っているのは知崎君だろう。

 

『にゃはははー!驚いたー!?皆大好き蓮ちゃんだよぉ〜!』

 

知崎君は、やけに上機嫌で画面の向こうの私達に向かって話しかけてきた。

いきなり映像を使って話しかけてくるなんて、一体何が目的なの…?

私がそんな事を考えていたその時、知崎君がカメラを覗き込みながら言った。

 

『んーっとねぇ、実は皆に良いお知らせがあるんだー!』

 

そう言って知崎君は、誰かを引きずって私達に見せてきた。

彼が引きずって見せた人物……それは、ネロのパソコンの映像に映っていた白黒の少女、白瀬クロヱだった。

白瀬は、目隠しと猿轡をされて、手を後ろで縛られて私達の眼前に晒されていた。

 

「……!」

 

『じゃーん!!見てよこれ!ボク、ついに黒幕ちゃんを捕まえちゃいましたーーー!』

 

「知崎君、あんたなんて事…!」

 

『おーっと、動くな!ちょっとでも動いたら、こいつの首が飛んじゃうよ?』

 

そう言って知崎君は、メカマサムネに持たせていたサバイバルナイフを、白瀬の首元に突きつけた。

すると白瀬の首にはツゥっと赤い筋が走る。

私は、思わず前に飛び出して叫んだ。

 

「やめなさい!!」

 

『やめないよー。だってコイツがボク達を閉じ込めたのが悪いんだもん!当然の報いでしょ?』

 

知崎君は、メカマサムネを使って白瀬を締め上げながら上機嫌でナイフの刃先をぎらつかせる。

すると秋山君が冷めた目で知崎君を睨みながら言った。

 

「君、そんな事したらどうなるかわかってるの?」

 

『わかってるってばよ!どうせオシオキが怖いからハッタリ言ってるだけだって思ってるでしょ?ボクはやる時はやる子なんだもんね!』

 

メカマサムネに乗った知崎君は、ケラケラ笑いながらナイフを振り回した。

本人の顔が見えなくてもわかる。

彼は本気だ。

本気で、白瀬を殺そうとしている。

 

『ただなぁ…ボクだって鬼じゃないし?っていうかオシオキで死ぬのなんて絶対嫌だし、できればコイツを殺さずに済む方法を考えたいんだけどさ!皆が来てくれた事だし、ボクは皆とゲームがしたいんだよね!』

 

「ゲームじゃと!?」

 

知崎君がニコニコと笑顔を浮かべながら言うと、古城さんが知崎君を睨みつける。

すると知崎君は、大袈裟な身振り手振りをしながら言った。

 

『今から1時間以内にボクを探し出してみなよ!もしボクを探し出す事ができたら、その時はコイツを解放してあげる!でももし1時間以内にボクを見つけられなかったら…その時は、わかってるよね?』

 

そう言って知崎君は、白瀬の首を締め上げた。

これは脅しなんかじゃない。

本気だ。

早くしないと、白瀬が殺される。

もし彼女が黒幕だったとしても、殺すなんて間違ってる。

私はもう、誰かが死ぬのを見たくないのよ…!

 

『じゃーねー!』

 

知崎君のその言葉を最後に、映像がブツッと途切れた。

私達は、気がつくとお互いに顔を見合わせていた。

すると秋山君が徐に口を開く。

 

「…ねえ。あの映像が撮影されてた場所、和室だったよね?」

 

「ええ。行ってみましょう」

 

私達は、知崎君がメカマサムネを使って白瀬を人質に取っていた和室へと向かった。

私は、勢いよく和室の扉を開けた……のだが、案の定そこには誰もいなかった。

 

「おらぬじゃと!!?」

 

「…まあ、これで見つかったら苦労はしないわね。地道に探していきましょう」

 

「うん!」

 

話し合いの結果、私、古城さん、マナは校舎を、加賀君とリカは研究棟を、秋山君と目野さんは寄宿舎を探す事になった。

私は1階と2階を、古城さんは3階と4階を、そしてマナは5階と6階を探した。

私は、校舎の1階と2階を片っ端からくまなく探した。

…けれど、知崎君と白瀬はどこにも見つからなかった。

 

「いない…」

 

この階にはいないようね…

じゃあどこにいるっていうの…?

私は、ちょうど3階と4階を探していた古城さんと合流した。

 

「古城さん、二人は?」

 

「おらんかったぞ!」

 

知崎君は、3階と4階にもいないようだった。

…ったく、どこ行ったのよあの問題児…!

待ってなさいよ、絶対見つけてやるんだから…!

私は、そう心に決めながら古城さんと一緒に5階に行こうとした。

すると、その時だった。

 

 

 

 

 

「キャアアアアアア!!!!」

 

「「!?」」

 

突然、上の階からマナの悲鳴が聴こえてきた。

突然聴こえてきた悲鳴に、古城さんが狼狽える。

 

「い、今の、聲伽の声かァ!?」

 

「行きましょう!」

 

私は、古城さんの腕を半ば強引に引っ張ってマナの声がした方へと駆けつけた。

マナ、どうか無事でいて…!

 

 

 

ーーー 校舎6F ーーー

 

私達が校舎6階に駆けつけた、その瞬間。

 

「うわ熱ぁ!!?」

 

突然、私達の方に熱風が吹きつけてきた。

6階には煙が立ちこめていて、煙の中が時折赤く光る。

あそこには植物庭園があったはずだ。

まさか…!

 

「古城さん、煙吸わないで!」

 

「むっ!?お、おうわかった!」

 

私は、火の手が上がる校舎6階の植物庭園へと迷わず駆けつけた。

黒煙の中に、蠢く人影が見えた。

 

「マナ!!!」

 

私は、煙の中で動いた人影へと駆けつけた。

そこには、植物庭園の前で倒れているマナがいた。

 

「マナ、しっかりして!マナ!!」

 

「ううっ……げほっ、げほっ……!」

 

私がマナを抱き抱えて叫ぶと、マナはゆっくりと目を開け、私の腕の中で咳き込んだ。

マナは、服が燃えて全身黒い煤が付いていたものの、奇跡的に軽傷だった。

でも、火の手が収まらない限りはどうしようも…!

そんな事を考えていたその時、私の視界の端に非常ベルが映り込む。

 

…!!

あれだ!!

 

私は、迷わず非常ベルを拳で殴った。

するとその直後、耳を劈くベルの音が鳴り響き、どこからか消防士の格好をしたモノクマとモノDJが現れる。

 

『ヘイヘイテメェらなんて事してくれちゃってんのよ!!このまま火事で全滅なんてTOO BAD!!』

 

『しょうがないなぁ……こんな事もあろうかと呼んであります!!殺人ファイアマンにお任せあれ!!』

 

そう言ってモノクマとモノDJが後ろを指すと、どこからか消防車が走ってくる。

モノクマとモノDJは、大量の消火剤で植物庭園の火を消した。

モノクマ達の消火活動のおかげで、ようやく火の手が収まった。

 

「マナ、大丈夫?」

 

「う、うん……」

 

私が声をかけると、マナが力なく答えた。

私がマナの介抱をしていると、私の後ろで立ち尽くしていた古城さんが徐に口を開く。

 

「おい、お主ら……あれ……」

 

そう言って古城さんが指を差した、その先には………

 

 

 

「…………!」

 

 

 

 

そこには、そこにあるはずのないものがあった。

ひどく異臭が漂う、黒く焦げた死体。

気化した脂が口周りに付着するのが不愉快に感じる。

その死体には、深々と、何本もの槍が刺さっていた。

 

そこには………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【超高校級の脚本家】、そして【超高校級の絶望】、白瀬クロヱの死体があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達が白瀬の死体を見た、その瞬間だった。

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『死体が発見されました!生徒の皆さんは、至急校舎6階の廊下にお集まり下さい!』

 

 

 

私達三人が白瀬の死体を見たから、死体発見アナウンスが放送された。

だが、その直後だった。

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『死体が発見されました!生徒の皆さんは、至急研究棟2階の【超高校級の魔術師】の研究室にお集まり下さい!』

 

 

 

…嘘だ。

そんなわけ……

 

何でもう一回死体発見アナウンスが鳴ってるのよ!!?

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

その頃、【超高校級の魔術師】の研究室では。

 

「う゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!そんなっ、そんなあ゛あ゛あ゛!!!」

 

【超高校級の機械技師】目野美香子が、涙を流しながら大泣きしていた。

その近くでは、【超高校級の音楽プロデューサー】秋山楽斗と、【超高校級の魔術師】加賀久遠が立ち尽くしていた。

彼等の視線の先には………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただの鉄屑と成り果て、二度と動かなくなった【超高校級のAI】リカの本体があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

残り?名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

【超高校級の脚本家】【超高校級の絶望】白瀬(しらせ)クロヱ

 

以上11名

 

 

 

 

 




『うぷぷ、今のところ順調に進んでるね。ぜーんぶボクの計画通りだなぁ』

【超高校級の脚本家】【超高校級の絶望】白瀬(しらせ)クロヱ ICV:楠木ともり

性別:女性
身長:148cm 体重:42kg 胸囲:88cm 血液型:A型
誕生日:1月1日(山羊座) 年齢:不明 利き手:左
出身校:魁清学園高校 出身地:東京都
趣味:不明
特技:不明
好きなもの:絶望
嫌いなもの:希望
家族構成:不明
得意教科:現代文、英語
苦手教科:なし
イメージカラー:白と黒
容姿:左右で白と黒に分かれたロングヘアーを輪っかに結んで三つ編みにしている。右目は黒、左目は赤のオッドアイ。
服装:白いブラウスと黒いサロペットの上に左右で白と黒に分かれたコートを羽織っている。左脚にだけ黒いハイソックスを着用。右が白、左が黒のローファーを着用。
パンツ:左右で白と黒に分かれたショーツ。
人称:ボク/キミ、オマエラ/男子:苗字+クン、女子:苗字+サン

映画やドラマ、ゲームなどの脚本に携わり、歴史に名を残す名作の数々を生み出してきた空前絶後の脚本家。彼女が脚本を手がけた『白の君と黒のあなた』が全世界興行収入一位になった功績から、【超高校級の脚本家】として我が未来ヶ峰学園にスカウトする事となった。
【超高校級の脚本家】という肩書きを持ちながら、裏では【超高校級の絶望】として暗躍していたテロリスト。何年も前からコロシアイの計画を立てており、リカからは黒幕ではないかと疑われていた。モノクマを思わせるような人の絶望を楽しむ趣味を持ち、『うぷぷ』という笑い方が特徴的。これでも在籍時の成績は優秀で、A組では学級委員長を務めており、クラスメイトからも人気があったようである。



【挿絵表示】


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非日常編①(捜査編)

そんな…

どうして…!?

何でもう一人死んでるのよ…!!

 

私達が白瀬の死に驚きを隠せないでいると、秋山君からメッセージが届く。

私がメッセージを確認すると、そこには信じがたいメッセージが書かれていた。

 

『腐和さん。リカちゃんが死んだ』

 

「っ…………!!」

 

嘘でしょ…

そんな、リカが…

何でリカが殺されてるの…!?

せっかくあと少しで脱出できるところだったのに…!

 

「モノクマ。あなた達がリカを殺したんじゃないの?」

 

『ん?何の事?』

 

「とぼけるなぁ!!コロシアイの脅威になると判断したから、ウヌが殺したんじゃろ!?」

 

『ギャハハ、コロシアイの脅威って何の事だァ!?リカガールはあくまでこの学園の転入生!!聖職者のオレ様達がそんな事するはずねえだろうが!!…それとも、テメェら何かやましい事でも抱えてたってのか!?』

 

………っ!!

しまった…!

ついリカが殺された事にカッとなって、モノクマ達にリカがやろうとしていた事を悟られるような発言をしてしまった。

でもモノクマ達が殺したんじゃないんだったら、一体誰が……?

私がそう考えていたその時、知崎君がひょこっと現れた。

メカマサムネに乗って、だ。

 

『にゃははは!阿鼻叫喚だねえ!』

 

「知崎君…!?」

 

『ちょっと緋色ちゃん!そんなコワイ顔しないでよ!ボクだよボクー!可愛くって天才な蓮ちゃんだよぉ〜!』

 

「あなた、今まで一体どこに…『いやぁー実はさ、あの女がいきなり斬りかかってきてさ!それでビックリして思わずメカマサムネに逃げちゃった!きゃはは、いくら黒幕といえど、圧倒的な暴力の前では無力なんだねぇ』

 

「あの…『にゃはは、どこにいたかって?それはね、秘密〜!教えてもらえると思った?教えてもらえると思った?残念でしたー!』

 

知崎君は、やけにハイテンションでさっきからずっと一人で喋っていた。

知崎君って何なんだろう…

 

『それじゃあ今回もモノクマファイルを差し上げますので、捜査時間中に好きなだけ調査をしちゃってくださいな!』

 

『んじゃあ裁判場でまた会おうぜ!!スィーユーアゲイン!!!』

 

『しーゆー!!』

 

そう言ってモノクマとモノDJは、私達の前から姿を消してしまった。

私達は、一旦加賀君の研究室に集まってから捜査の分担を決める事にした。

リカの検視は加賀君が、見張りは目野さんと知崎君が、そして捜査は私と古城さん、秋山君とマナの班に分かれてやる事になった。

秋山君とマナは寄宿舎を調べてくれると言っていたので、私とマナは研究棟を調べる事にした。

 

「古城さん。一緒に調べていきましょう」

 

「おう!!」

 

…待ってて、リカ。

そして、白瀬。

あなた達の死の真相は、必ず解き明かしてみせる。

 

 

 

ーーー

 

 

 

《捜査開始!》

 

 

 

まずはモノクマファイルを確認しておこう。

 

モノクマファイル⑥

被害者は【超高校級のAI】リカ。

死亡推定時刻は14時20分頃。

死体発見場所は研究棟2Fの【超高校級の魔術師】の研究室内。

本体内部が損傷している。

 

 

 

モノクマファイル⑦

死亡推定時刻は14時25分頃。

死体発見場所は校舎6Fの廊下。

身体が焼け焦げており、グングニルの槍が刺さっている。

 

 

 

「なるほどね……」

 

今回も死因が書かれてないけど、これじゃあ死因がわからないわね。

自力で捜査して死因を見つけろって事か。

…ん?

このモノクマファイル⑦、被害者の名前が書かれてないわね。

今まで被害者の名前が書かれない事なんてなかったのに…

どうしてかしら?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【モノクマファイル⑥】

 

 

 

コトダマゲット!

 

【モノクマファイル⑦】

 

 

 

「次は現場付近の状況を調べてみましょう」

 

「おう!!」

 

私は、古城さんと一緒に加賀君の研究室を調べた。

するといきなり古城さんが私の腕を引っ張ってくる。

 

「おい腐和!これを見よ!」

 

そう言って古城さんは、加賀君の研究室の扉を指差した。

加賀君の研究室の扉には、何かを無理矢理差し込んだような跡があった。

これは一体………

 

 

 

コトダマゲット!

 

【加賀君の研究室の扉の傷】

加賀君の研究室には、何かを無理矢理差し込んだような痕跡が見られた。

 

 

 

「加賀君、リカの死因について何かわかった事は?」

 

「ああ。リカの死因だが、おそらく過電圧と推測している」

 

「過電圧?」

 

私がキョトンとしていると、加賀君がリカを分解して中身を見せてきた。

よく見ると、電源ユニットの表面が熱で変形し、焦げ臭い匂いがしていた。

 

「リカは、故意に電源ユニットに過度の電流が流し込まれ、それが負荷になって殺されたんだろう」

 

「何じゃと!?」

 

「もちろん、過電圧を避ける為に電流保護回路を作っておいたんだがな…ううむ」

 

加賀君は、リカが壊れた原因について頭を掻きながら考えていた。

加賀君でも現時点ではリカがどうやって殺されたのかわからないって事かしら…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【リカの死因】

リカの死因はおそらく過電圧。

 

 

 

うーん、自力でリカが殺された原因を探すしかなさそうね。

……あれ?

リカに見覚えの無いUSBが挿さってるわね。

 

「…あれっ?ねえ加賀君。このUSBどうしたの?」

 

「ん?」

 

「ほらこれ」

 

私は、リカに挿さっていたUSBを指さした。

すると加賀君は、片眉をあげて怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「何だそれは」

 

「えっ?」

 

「俺はそんなもの知らん。この手のものは目野の方が詳しい」

 

加賀君でも知らない…?

じゃあこれは一体なんなの…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【謎のUSB】

リカの本体に見覚えのないUSBが挿さっていた。

加賀君でも知らないらしい。

 

 

 

「…だが妙だな」

 

「えっ、何が?」

 

「俺の研究室は、謎解きによって扉の開錠をすると必ずログが残るんだ。誰が扉を開けたのかもわかるようになっている。…しかし直近24時間、俺とリカ以外の人間がここに入ってきた記録は残っていないんだ。犯人が俺の研究室に忍び込んでリカを殺したのだとすれば、ログが残るはずだったのだがな…」

 

ログが残る、か…

じゃあ犯人は、加賀君の研究室の扉を開けて中に入る事は不可能だったって事かしら?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【扉のログ】

加賀君の研究室には、謎解きをすると自動ドアが開く仕掛けがされている。

ただしこの方法で開けると必ずログが残り、誰が入ってきたのかが特定される。

 

 

 

「通気口とかを通ったっていう可能性は?」

 

「この研究室に、人が通れる大きさの通気口はない」

 

やっぱりね…

じゃあどうやって……

私がどうやって犯人が加賀君の研究室に侵入したのかを考えていると、加賀君が何かを思いついたような顔をして言った。

 

「…あ、でも一つだけ気になる事があったな」

 

「気になる事?」

 

「実はさっき調べたら、研究棟のブレーカーが落ちていたんだ。14時ごろだったかな…」

 

研究棟のブレーカーが、ねえ…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【研究棟のブレーカー】

14時頃、研究棟のブレーカーが落ちていた。

 

 

 

ブレーカー…自動ドア……

…あっ。

もしかして……

 

私は、本の思いつきで倉庫の備品リストに目を通した。

あった…!

私が備品リストから見つけ出したもの、それは金テコだった。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【金テコ】

倉庫の備品リストに書かれている。

 

 

 

私達が研究棟内を調べていると、目野さんが突然声を上げた。

 

「こ、これは…!!」

 

「どうしたの?目野さん」

 

「これ、とんでもなくヤバいものですよ!!」

 

「ヤバいものって…?」

 

「これをコンピュータに差し込むと、過電圧が発生して一瞬で壊れるようにプログラミングされてる代物です!普通のUSBと見た目が酷似しているのですが、これは爆弾と一緒なのですよ!!どうやら手作りのようですが…」

 

爆弾…過電圧……

…あっ、リカが殺された原因ってひょっとして…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【目野さんの証言】

USBの正体は、コンピュータ内で過電圧を発生させて一瞬で破壊する爆弾。

あらかじめプログラミングで制御する事で爆破時間を操作する事が可能らしい。

目野さん曰く手作りらしい。

 

 

 

『やあやあ、皆捜査頑張ってるみたいだね!』

 

「……知崎君、あなた…」

 

『絶対犯人を見つけてやるんだから!』

 

「……………」

 

『何か発見があったら教えてね、緋色ちゃん!』

 

……この子、さっきからずっと一人で喋ってるわね。

会話ができないのかしら?

 

 

 

コトダマゲット

 

【メカマサムネ】

おそらく知崎君が操縦しているものと思われるが、妙に会話が噛み合わない。

 

 

 

…そういえば、知崎君の才能って、相手の容姿も盗めるのよね?

研究室内にも白瀬も含んだ16人分の衣装が置いてあったし…

今回の事件と何か関係あるのかしら?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【知崎君の才能】

知崎君の才能は【超高校級の泥棒】。

相手の容姿や才能でさえも盗む事ができる。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【コスプレグッズ】

知崎君の研究室に置いてあった。

白瀬も含めた私達16人分の衣装が置かれている。

 

 

 

この研究室で調べられるのはこれくらいかしらね。

 

研究棟での捜査を終えた私達は、早速寄宿舎の捜査に移る事にした。

秋山君とマナは何か見つけたのかしらね。

 

 

 

ーーー 寄宿舎 ーーー

 

私は、寄宿舎で捜査をしている二人を見つけると、早速声をかけに行った。

 

「秋山君、マナ。何か見つけた?」

 

「うん。逆になくなってたものならね」

 

「む?なくなってたものとな?」

 

「プラネタリウムの暗視ゴーグルと防火シートだよ」

 

暗視ゴーグルと防火シートが、ね…

一応事件の手掛かりになるかもしれないから頭の片隅に置いておかないと。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【暗視ゴーグル】

プラネタリウム準備室からなくなっていた。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【防火シート】

プラネタリウム準備室からなくなっていた。

 

 

 

「なるほどね。ありがとう」

 

私達が二人に話を聞いていたちょうどその時、加賀君が『リカの検視が終わった。今から校舎に検視をしに行く』とメッセージを送ってきた。

そろそろ校舎の方も調べておかないと…

 

「私達も行きましょう、古城さん」

 

「おぉ!!」

 

秋山君とマナも寄宿舎を調べ終わった様子だったので、私達4人は校舎の探索に向かった。

 

 

 

ーーー 植物庭園 ーーー

 

私達は早速、白瀬が死んでいた植物庭園に足を踏み入れた。

…うっ、ひどい匂い…

私は、死体が焦げる臭いに思わず顔を歪めながらも、植物庭園の探索をした。

この匂い…

ガソリンの匂いも混じってるわね。

さて…と、調べていきましょうか。

 

「むっ、何じゃあの布は!」

 

そう言って古城さんが指をさした先には、白瀬の死体の近くにチャッカマンと白い布が落ちていた。

部屋が全焼しているにもかかわらず、白い布だけは何故かほとんど燃えていなかった。

これってひょっとして…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【チャッカマン】

植物庭園内の白瀬の死体の近くに落ちていた。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【白い布】

植物庭園内の白瀬の死体の近くに落ちていた。

庭園内は全焼しているにもかかわらず、布はほとんど燃えていなかった。

 

 

 

「あとは……」

 

…あら?

何かしらあの筒は。

私は、庭園内に落ちていた金属製の円柱状の容器に目がいった。

どうやら、家庭科室にあった燻製器のようだ。

これ、使われた形跡があるわね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【燻製器】

植物庭園内に落ちていた。

使われた形跡がある。

 

 

 

…一応燻製器の中身も調べてみましょう。

私は、火事に巻き込まれてボロボロになった燻製器の中身を調べた。

 

「……うっ!?」

 

燻製器の中には、グチャグチャの肉塊が詰められていた。

これってまさか……

 

 

 

コトダマゲット!

 

【グチャグチャの肉塊】

燻製器の中に詰められていた。

 

 

 

「おい腐和、あれを見よ」

 

そう言って古城さんは、上を指差した。

見ると、火事のせいか監視カメラが壊れていた。

確か監視カメラの破壊は校則で禁止されていたはずじゃ…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【壊れた監視カメラ】

植物庭園内の監視カメラは、火事のせいか全て壊れていた。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【校則の四番目の項目】

監視カメラの破壊は校則で禁止されている。

破壊した場合、その場で処刑される。

 

 

 

「加賀君、検視の結果は?」

 

「それなんだがな…まずハッキリわかっているのは、こいつの死因は火事による焼死じゃない。おそらく、槍で刺された事による失血死か、雷撃による焼死だろう」

 

「なるほどね…」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【白瀬の検視結果】

白瀬の死因は槍に刺された事による失血死か、雷撃による焼死。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【グングニルの槍】

白瀬の身体に刺さっている。

モノクマの武器。

校則違反者に対して発動する。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ケラウノスの雷】

モノDJの武器。

相手を一瞬で消し炭に変える雷。

校則違反者に対して発動する。

 

 

 

「それとこいつの身体を調べていてわかった事がある」

 

「わかった事…?」

 

「こいつの血液型はB型だ。性別すら判別できないレベルで死体の損傷が酷いから、流石に誰かまでは特定できないがな」

 

血液型…

なるほどね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【被害者の血液型】

植物庭園で殺されていた被害者の血液型はB型。

 

 

 

「それから、こいつの死体からこんなものが見つかった」

 

そう言って加賀君は、黒くて小さな何かとサバイバルナイフを差し出してきた。

これって…

音楽準備室にあったインカム?

それにこれって…サバイバルナイフよね?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【インカム】

音楽準備室にあったインカム。

白瀬が持っていた。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【サバイバルナイフ】

倉庫にあったもの。

白瀬が持っていた。

 

 

 

「あ、はい!腐和さん!私、気になった事があるんですけど!」

 

「どうしたの?」

 

「何故か電脳刀が技術室に置いてありました!」

 

…えっ?

今、何て言った?

 

「いやー、何でもメッタメタにバラバラにされた状態で見つかっていましたよ!部品もいくつかなくなっていました!いくら破壊のために作られたとはいえ、あんなに素晴らしい造形の機械ちゃんを分解するとは…!犯人は何もわかっていませんね!」

 

「ちょっと待って、それっていつ気付いたの?」

 

「午前中ですね!」

 

「どうしてもっと早く報告しないのよ!」

 

「ごめんなさい!」

 

 

 

コトダマゲット!

 

【分解された電脳刀】

技術室で電脳刀がバラバラになって見つかった。

部品がいくつかなくなっていたらしい。

 

 

 

白瀬の死体から調べられる情報はこれくらいかしらね。

もう少しこの植物庭園の中を調べてみようかしら。

私は、一応植物庭園のスプリンクラーを調べてみる事にした。

…あれ?

このスプリンクラーの蓋、無理矢理こじ開けられた形跡がある。

ハンマーでも叩き壊せないのに、どうやって…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【スプリンクラー】

植物庭園の植物に水をやるために植物庭園内に設置されている。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【スプリンクラーの機械の蓋】

スプリンクラーの機械の蓋にこじ開けられた痕跡がある。

ハンマーで叩いたりこじ開けようとしてもびくともしない。

 

 

 

「…あれっ?」

 

このスプリンクラーの貯水槽の入水口、ガソリンの匂いがする。

まさか……

 

 

 

コトダマゲット!

 

【スプリンクラーの貯水槽】

スプリンクラーの貯水槽からガソリンの匂いがする。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ガソリン】

講堂に置いてあった。

 

 

 

「……ん?」

 

…あれ?

この機械、いつの間にか手動モードになってる。

誰かが設定を変えたのかしら?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【スプリンクラーの設定】

普段は自動モードだが、今回は手動モードになっていた。

 

 

 

植物庭園で調べられる情報はこれくらいかしらね。

私達は、次に映像が撮影された茶室に向かった。

 

 

 

ーーー 茶室 ーーー

 

さてと。

ここも念入りに調べていかないと。

…あれ?

何このシミ。

 

「古城さん、このシミ何だか知らない?」

 

「あっ……それは…」

 

「何?何か心当たりあるの?」

 

「…それは、今朝方ワシがここで抹茶をこぼしたんじゃ」

 

私が尋ねると、古城さんは恥ずかしそうに答えた。

……あれっ?

でも知崎君の脅迫映像には、こんなシミ無かったわよね?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【知崎君の脅迫映像】

今日の昼頃、知崎君が私達に見せてきた映像。

和室で白瀬が、メカマサムネに乗った知崎君に人質に取られていた。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【抹茶のシミ】

今朝方古城さんが和室で抹茶をこぼし、抹茶がシミになってしまっている。

だが脅迫映像の和室には抹茶のシミは無かった。

 

 

 

もう少し和室を調べてみようかしらね。

…あれ?

押し入れに何か入ってるわね。

これは…録画機能付きのカメラと、ネロの持っていたノートパソコンね。

でもどうしてこんなところに?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【カメラ】

和室に置いてあった。

録画機能が付いている。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ノートパソコン】

和室に置いてあった。

元はネロが持っていたもの。

 

 

 

「…さてと」

 

そろそろ他の場所も調べてみないと。

私達は、地学室に足を運んで捜査をした。

 

 

 

ーーー 地学室 ーーー

 

さてと。

捜査を進めていかないと。

ここには確か白瀬のプロフィールもあったはず…

私は、白瀬のプロフィールを確認してみた。

プロフィールには、健康診断の診断書も入っている。

 

「…あれっ?」

 

白瀬の血液型、A型って書いてあるわ。

でもあそこにあった死体って……

 

 

 

コトダマゲット!

 

【白瀬の血液型】

白瀬クロヱの血液型はA型。

 

 

 

「おい!腐和!」

 

私が考え事をしていると、後ろから古城さんが話しかけてきた。

私が振り向くと、古城さんは鉱石を展示してあるスペースを指さしていた。

 

「ここにあった鉱石が一個無くなっとるんじゃが!!」

 

「え…?」

 

古城さんに言われるがまま確認してみると、古城さんの言う通り、鉱石が一個無くなっていた。

無くなっていたのは、ロンズデーライトという、ダイヤモンドよりも硬いと言われる鉱石だった。

どうしてそんなものが無くなってるの…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ロンズデーライト】

地学室からなくなっていた。

ダイヤモンドよりも硬いといわれている。

 

 

 

ここで調べられるのはこれくらいかしらね…

 

「次調べに行きましょう、古城さん」

 

「うむ!!」

 

地学室の捜査を終えた私達は、次に講堂を調べてみる事にした。

 

 

 

ーーー 講堂 ーーー

 

私達が講堂に行くと、既に秋山君とマナが捜査をしていた。

二人は何かわかった事はあったのかしら…?

 

「二人とも。何かわかった事は?」

 

「…………」

 

私が尋ねると、秋山君は暗い表情を浮かべて俯く。

…?

何かあったのかしら?

私がそう思っていると、秋山君は徐に口を開いた。

 

「…さっき、生物室調べたんだけどさ。……歌音の死体が、一部持ち去られてた」

 

「な…!?」

 

響さんの遺体が…!?

どういう事!?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【響さんの遺体】

生物室から、響さんの遺体が一部持ち去られていた。

 

 

 

「あとね、ここしゃぃあったガソリンがのうなっとったばい」

 

そう言ってマナは、灯油とガソリンが置いてあった段ボールを指差した。

灯油とガソリンは同じ容器に入っていて、ラベルが逆だったから私が正しい表記になるように入れ替えておいたのよね。

じゃあ犯人は、わざとガソリンを持ち出して火事を起こしたのかしら?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ガソリンと灯油の容器】

見た目がほとんど同じ一斗缶に入れてあった。

最初はラベルが逆だったが、間違いを防ぐ為に私がラベルを入れ替えておいた。

 

 

 

…あれ?

でもちょっと待って。

ここを最初に捜査したのって、確か知崎君とリカだったわよね?

二人はラベルが入れ替わってた事を知ってたのかしら?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【講堂の捜査メンバー】

講堂を最初に調べたのは、リカと知崎君の二人。

 

 

 

「ねえマナ、あなたあの時火事に巻き込まれていたみたいだけど、何があったの?」

 

「あ…あのね、実は…うちが植物庭園に駆けつけた時、植物庭園から煙が出とって、何かが焼くるような変な匂いがしたっちゃん。もしかして火事なんやなかかって思うて、火ば消そうて思うてスプリンクラーんスイッチば押したっちゃん。そしたらいきなり爆発して…」

 

スプリンクラーのスイッチを押したらいきなり爆発した…?

どういう事?

マナは火を消そうと思ってスプリンクラーを作動させようとしたのよね?

なのにどうして…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【植物庭園の煙と匂い】

植物庭園から煙が上がっていて、何かが焼けるような匂いがした。

マナは、この匂いと煙のせいで植物庭園の中で火事が起こったと思い込んだ。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【マナの証言】

マナは、植物庭園の火事を止めようと思ってスプリンクラーのスイッチを押した。

 

 

 

「…………」

 

私が捜査情報を整理していると、秋山君が顎に手を当てて考え込んだ。

どうしたのかしら?

 

「秋山君、どうかしたの?」

 

「ああ、いや。ねえ腐和さん。電子生徒手帳って、確か熱に弱いんだったよね?」

 

「ん?あ、そういえばモノクマがそう言っていたわね。それがどうしたの?」

 

「……いや、ちょっとね。思い当たる事があって」

 

思い当たる事…?

何なのかしら。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【電子生徒手帳の性能】

電子生徒手帳は、あらゆる外的要因に対して耐性があるが、極端な高温低温に弱い。

 

 

 

私が秋山君の態度を少し疑問に思っていると、秋山君は何かを思いついたようにいきなり顔を上げる。

 

「あ、そうだ。時に腐和さん」

 

「何?」

 

秋山君は、何かを思いついたようにいきなり舞台裏の本棚の前に立ったかと思うと、一冊本を抜き取った。

そしてその抜き取った本を、一冊私に押し付けてきた。

 

「これ、持っててよ」

 

「え?」

 

そう言って秋山君が押し付けてきたのは、『アルセーヌ・ルパンシリーズ』のフランス語版だった。

これは知崎君がお気に入りだった本だ。

でもこれをどうして急に…?

 

「多分この本が俺達を犯人解決に導いてくれるんじゃないかな。俺はそう信じてるよ」

 

「えっ、何?秋山くん今何て言うた?」

 

「…………」

 

この本が私達を犯人解決に導く、か…

…あれ?

そういえば今の秋山君、変にセリフと口の動きが噛み合ってなかったわね。

まるで外国語の映画の吹き替え版を見ているような…

…あっ、これって言語互換機能のせいかしら?

じゃあ秋山君、今何語で話してたのかしら…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【言語互換機能】

全員の電子生徒手帳に必ず搭載されている機能。

耳で聴いた言語を、自動で母国語に翻訳する機能がある。

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『えー、もう待ちくたびれたので捜査時間を打ち切らせていただきます!オマエラ、校舎1階の赤い扉の前まで集合して下さい!あ、もちろん全員参加だからね?15分以内に来ないとオシオキしますよー!』

 

「あらら、捜査時間もう終わりか…」

 

モノクマの放送が鳴ると、秋山君は落胆した様子で呟く。

でももう終わってしまったものは仕方ないし、いつまでもここで嘆いている場合じゃないわ。

 

「行きましょう」

 

私達は、不安を抱えつつもすぐに赤い扉に向かった。

 

 

 

ーーー 赤い扉の前 ーーー

 

赤い扉の前には、既に他の人達が集合していた。

私達が全員集まると、その直後アナウンスからちょうど15分になった。

すると赤い扉が開き、私はエレベーターに乗り込んだ。

全員がエレベーターに乗り込むと、扉が閉まり下へ移動した。

 

エレベーターは静かに下へ下へと降りていき…そして、止まった。

またあの裁判場への扉が開く。

だが今回は、前回と風景が違っていた。

今回は、加賀君の研究室のような魔法の研究室の中に植物が生い茂っている風景だった。

 

小鳥遊さんと玉越さんの間の席に新たに置かれた館井君の遺影。

彼の遺影には、クロスしたカナヅチと釘が書かれていた。

そして闇内君と秋山君の間に新たに設置されたリカと白瀬の証言台には、『Operating System not found』と書かれたリカの遺影と、黄色いクエスチョンマークが書かれた白瀬の遺影が置かれていた。

 

リカ…

付き合いこそ短かったけど、私達がここから脱出する為に力を貸してくれた大事な仲間。

彼女こそが、私達の希望だった。

 

そして白瀬クロヱ。

直接話した事はなかったし、あんな一面を見てしまった後では彼女を好きにはなれなかった。

正直、今でも彼女が黒幕だったんじゃないかと思っている自分がいる。

…それでも、彼女をこんな形で死なせた犯人が許せない。

 

そんな彼女達を殺した犯人が、この中にいる。

二人の死の真相は、私が…!!

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

残り?名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

【超高校級の脚本家】【超高校級の絶望】白瀬(しらせ)クロヱ

 

以上11名

 

 

 

 

 



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非日常編②(学級裁判前編)

コトダマリスト

 

【モノクマファイル⑥】

被害者は【超高校級のAI】リカ。

死亡推定時刻は14時20分頃。

死体発見場所は研究棟2Fの【超高校級の魔術師】の研究室内。

本体内部が損傷している。

 

【モノクマファイル⑦】

死亡推定時刻は14時25分頃。

死体発見場所は校舎6Fの廊下。

身体が焼け焦げており、グングニルの槍が刺さっている。

 

【加賀君の研究室の扉の傷】

加賀君の研究室には、何かを無理矢理差し込んだような痕跡が見られた。

 

【リカの死因】

リカの死因はおそらく過電圧。

 

【謎のUSB】

リカの本体に見覚えのないUSBが挿さっていた。

加賀君でも知らないらしい。

 

【扉のログ】

加賀君の研究室には、謎解きをすると自動ドアが開く仕掛けがされている。

ただしこの方法で開けると必ずログが残り、誰が入ってきたのかが特定される。

 

【研究棟のブレーカー】

14時頃、研究棟のブレーカーが落ちていた。

 

【金テコ】

倉庫の備品リストに書かれている。

 

【目野さんの証言】

USBの正体は、コンピュータ内で過電圧を発生させて一瞬で破壊する爆弾。

あらかじめプログラミングで制御する事で爆破時間を操作する事が可能らしい。

目野さん曰く手作りらしい。

 

【メカマサムネ】

おそらく知崎君が操縦しているものと思われるが、妙に会話が噛み合わない。

 

【知崎君の才能】

知崎君の才能は【超高校級の泥棒】。

相手の容姿や才能でさえも盗む事ができる。

 

【コスプレグッズ】

知崎君の研究室に置いてあった。

白瀬も含めた私達16人分の衣装が置かれている。

 

【暗視ゴーグル】

プラネタリウム準備室からなくなっていた。

 

【防火シート】

プラネタリウム準備室からなくなっていた。

 

【チャッカマン】

植物庭園内の白瀬の死体の近くに落ちていた。

 

【白い布】

植物庭園内の白瀬の死体の近くに落ちていた。

庭園内は全焼しているにもかかわらず、布はほとんど燃えていなかった。

 

【燻製器】

植物庭園内に落ちていた。

使われた形跡がある。

 

【グチャグチャの肉塊】

燻製器の中に詰められていた。

 

【壊れた監視カメラ】

植物庭園内の監視カメラは、火事のせいか全て壊れていた。

 

【校則の四番目の項目】

監視カメラの破壊は校則で禁止されている。

破壊した場合、その場で処刑される。

 

【白瀬の検視結果】

白瀬の死因は槍に刺された事による失血死か、雷撃による焼死。

 

【グングニルの槍】

白瀬の身体に刺さっている。

モノクマの武器。

校則違反者に対して発動する。

 

【ケラウノスの雷】

モノDJの武器。

相手を一瞬で消し炭に変える雷。

校則違反者に対して発動する。

 

【被害者の血液型】

植物庭園で殺されていた被害者の血液型はB型。

 

【インカム】

音楽準備室にあったインカム。

白瀬が持っていた。

 

【サバイバルナイフ】

倉庫にあったもの。

白瀬が持っていた。

 

【分解された電脳刀】

技術室で電脳刀がバラバラになって見つかった。

部品がいくつかなくなっていたらしい。

 

【スプリンクラー】

植物庭園の植物に水をやるために植物庭園内に設置されている。

 

【スプリンクラーの機械の蓋】

スプリンクラーの機械の蓋にこじ開けられた痕跡がある。

ハンマーで叩いたりこじ開けようとしてもびくともしない。

 

【スプリンクラーの貯水槽】

スプリンクラーの貯水槽からガソリンの匂いがする。

 

【ガソリン】

講堂に置いてあった。

 

【スプリンクラーの設定】

普段は自動モードだが、今回は手動モードになっていた。

 

【知崎君の脅迫映像】

今日の昼頃、知崎君が私達に見せてきた映像。

和室で白瀬が、メカマサムネに乗った知崎君に人質に取られていた。

 

【抹茶のシミ】

今朝方古城さんが和室で抹茶をこぼし、抹茶がシミになってしまっている。

だが脅迫映像の和室には抹茶のシミは無かった。

 

【カメラ】

和室に置いてあった。

録画機能が付いている。

 

【ノートパソコン】

和室に置いてあった。

元はネロが持っていたもの。

 

【白瀬の血液型】

白瀬クロヱの血液型はA型。

 

【ロンズデーライト】

地学室からなくなっていた。

ダイヤモンドよりも硬いといわれている。

 

【響さんの遺体】

生物室から、響さんの遺体が一部持ち去られていた。

 

【ガソリンと灯油の容器】

見た目がほとんど同じ一斗缶に入れてあった。

最初はラベルが逆だったが、間違いを防ぐ為に私がラベルを入れ替えておいた。

 

【講堂の捜査メンバー】

講堂を最初に調べたのは、リカと知崎君の二人。

 

【植物庭園の煙と匂い】

植物庭園から煙が上がっていて、何かが焼けるような匂いがした。

マナは、この匂いと煙のせいで植物庭園の中で火事が起こったと思い込んだ。

 

【マナの証言】

マナは、植物庭園の火事を止めようと思ってスプリンクラーのスイッチを押した。

 

【電子生徒手帳の性能】

電子生徒手帳は、あらゆる外的要因に対して耐性があるが、極端な高温低温に弱い。

 

【言語互換機能】

全員の電子生徒手帳に必ず搭載されている機能。

耳で聴いた言語を、自動で母国語に翻訳する機能がある。

 

 

 


 

 

 

『ヘイヘイヘーイ!!!全員席についたなァ!!!』

 

『それでは、始めましょうか!お待ちかねの学級裁判を!』

 

 

 

《学級裁判 開廷!》

 

 

 

モノクマ『ではまず裁判の簡単な説明をしておきましょう。学級裁判では『仲間を殺した犯人は誰か』について議論をし、その結果はオマエラの投票によって決まります!』

 

モノDJ『もし正解ならクロのみがオシオキ!!不正解ならクロのみが『卒業』、それ以外の全員がオシオキだぜYEAH!!!!』

 

聲伽「ええっと…今回はどうしよっか?」

 

秋山「まず、先に殺されたのがわかってるリカちゃんの方から先に話し合わない?」

 

腐和「そうね。リカの殺害状況を紐解いていきましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

秋山「今回も俺がファイルを読むね。被害者は《【超高校級のAI】リカ》。死亡時刻は《14時20分頃》。死体発見場所は《研究棟2Fの【超高校級の魔術師】の研究室内》。本体内部が損傷している。…以上だよ」

 

古城「リカ……」

 

知崎『にゃはは、リカちゃんはきっと《ぶっ叩かれて》殺されたんだね!』

 

聲伽「でもファイルには、『内部が損傷している』って…」

 

知崎『きっとぶっ叩かれた時に《ショートした》んだー!』

 

加賀「滅茶苦茶だな」

 

うーん…

叩かれて殺されたわけじゃないと思うのだけれど。

それを示す証拠は…

 

 

 

《ぶっ叩かれて》⬅︎【モノクマファイル⑥】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「叩かれて殺されたのは違うと思うわ。だって、モノクマファイルには『内部が損傷している』とだけしか書かれていなかったのよ?撲殺されたのなら、外傷についての記載があるはずよ」

 

加賀「叩かれた衝撃で内部破損した、という可能性はまず無い。リカはそう簡単に殺されないよう設計してあるからな。その方法でリカを殺そうと思ったら、それこそ原型がなくなるくらいの衝撃を加えないと無理だ」

 

秋山「なるほどね…じゃあ、暴行を加えられて殺されたっていう可能性は無いわけだ」

 

聲伽「じゃあリカちゃんの死因は何やったと?」

 

リカの死因…

それは……

 

 

 

コトダマ提示!

 

【リカの死因】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「リカの死因はおそらく過電圧よ。そうでしょ、加賀君」

 

加賀「そうだな。リカは過電圧によって電源ユニットとマザーボードが破壊されていた。あれが直接的な死因とみて間違いない」

 

秋山「なるほど…」

 

聲伽「ええっと、要するに、電気いっぱい流しゃれて殺しゃれたって事ばいね?どげんして殺しゃれたっちゃろうか?」

 

腐和「じゃあ次は、リカの殺害方法について話し合いましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

秋山「…ねえ。リカちゃんの死因は過電圧だったよね。モノDJの《ケラウノスの雷》ならリカちゃんを殺せるんじゃないの?」

 

モノDJ『ヘイヘイ聞き捨てならねえぜ楽斗ボーイ!!オレ様が大事な生徒にそんな事するワキャねーだろ!!』

 

聲伽「武道場に置いてあった《電脳刀》…とかやなかかな?」

 

目野「きっと《USB》か何かで直接流し込んだんですよ!」

 

古城「加賀、ウヌが《配線を組み間違えた》とかではないのか?」

 

加賀「そんなわけないだろ」

 

待って、今すごく重要な事言った人がいたわよね。

 

 

 

《USB》⬅︎【謎のUSB】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「凶器は手作りのUSBだと思うわ」

 

古城「ゆ、USBじゃとぉ!?……って、ゆーえすびーって何じゃ?」

 

秋山「そっからか……」

 

加賀「USB…あ、もしかしてアレか」

 

聲伽「アレ?」

 

加賀「俺がリカを調べていた時、見覚えのないUSBが挿さっていたんだ。リカはあれを挿されて殺されたのだな」

 

聲伽「USB…ねえ、そんUSBって結局何やったと?」

 

腐和「それは…」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【目野さんの証言】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「USBの正体は時限爆弾よ」

 

古城「ばっ、爆弾じゃと!?」

 

腐和「あのUSBは、コンピュータに挿し込むと過電流を流し込んでコンピュータを壊す事ができるの。プログラミングでコンピュータを壊す時間を操作する事が可能だそうよ」

 

秋山「爆弾か…それでリカちゃんは殺されたんだね。でも、そんなもの一体どうやって作ったのさ?」

 

腐和「おそらく、あるものを分解して組み立てて作ったのよ。USBの材料なら心当たりがあるわ」

 

USBの材料は…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【分解された電脳刀】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「犯人は、武道場にあった電脳刀を分解したんだと思うわ」

 

聲伽「えっ、で、電脳刀を!?」

 

腐和「あの刀には、電子機器に不具合を起こすほどの過電流を発生させる事ができるんだけど、その部品を分解してUSBを作ればリカを殺す凶器を作れるんじゃないかしら?」

 

加賀「なるほどな。……しかし、俺の研究室(アトリエ)を荒らした上にリカを殺すとはいい度胸だな」

 

腐和「じゃあ次は、犯人がどうやって加賀君の研究室に入ったのか議論しましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

聲伽「どげんして入ったっちゃ…普通に《自動ドアば開けて入った》んやなかと?」

 

知崎『えー、そうなのそうなの?』

 

聲伽「だって、あれってなぞなぞをすると開くっちゃんね?やったら、《なぞなぞん答えしゃえわかりゃあ誰にでも入るーっちゃなかと》?」

 

知崎『あ、わかった《ワープ》だー!』

 

秋山「《隠し通路》…とかではないよね」

 

うーん…

今言った中で、一見筋は通ってるけど違う発言があったわね。

 

 

 

《なぞなぞん答えしゃえわかりゃあ誰にでも入るーっちゃなかと》⬅︎【扉のログ】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「マナ、なぞなぞを解いて自動ドアを開けたのは違うと思うわよ」

 

聲伽「えっ?」

 

腐和「あの自動ドア、なぞなぞを解いて開けると必ずログが残るのよ。誰がいつ開けたのか、記録として残るそうよ」

 

加賀「あの扉には、24時間以内に俺とリカ以外の人間が扉を開けて入った記録は無かったぞ」

 

秋山「でもそれって加賀君が犯人だったらどうなるの?」

 

加賀「…何?」

 

秋山「君が犯人なら、爆弾のUSBを作る事も、ログを捏造する事もできるよね?」

 

加賀「馬鹿馬鹿しいな。俺が犯人なら、俺の研究室でリカを殺すわけがないだろ」

 

聲伽「………ねえ緋色ちゃん。USBは、リカちゃんに挿しゃっとったんばいね?」

 

腐和「ええ、そうだけど…」

 

聲伽「だったら加賀くんは犯人やなかて思うよ。だって、加賀くんが犯人なら、USBをそんままにしとくわけなかね。やけん、うちらは加賀くん以外ん誰かがなぞなぞば解かんで研究室に入った方法ば考えりゃあよかとやなかとかな?」

 

腐和「そうね」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

古城「なぞなぞを解かずに研究室に入った方法じゃと!?」

 

聲伽「うーん……」

 

秋山「《隠し通路》とかは無かったんだよね?」

 

加賀「あったら報告している」

 

知崎『だから《ワープ》だってばー!』

 

聲伽「ねえ。こげな時は、視点ば変えて考えてみりゃあよかとやなかかな?」

 

古城「逆じゃと?」

 

聲伽「自動ドアって『自動でドアが開く』って事に目が行きがちだけど、よう考えてみたらセンサーば付けただけの『動く板』なんだよ。やけん、《人ん手で開くる》事も出来るっちゃん。つまり、そげな事なんやなかかな」

 

待って、今すごく重要な事言わなかった?

 

 

 

《人ん手で開くる》⬅︎【加賀君の研究室の扉の傷】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「マナの言う通り、犯人は手動で自動ドアを開けたんだと思うわ」

 

目野「な、何ですって!?そんな邪道な事は認めませんよ!!何の為の自動ドアちゃんだと思ってるんです!?」

 

秋山「ツッコむとこそこなんだ…」

 

腐和「まあ、それは置いといて……加賀君の研究室の扉には、何かで無理矢理こじ開けたような跡があったのよ」

 

聲伽「何かで無理矢理、か。それって何の跡やったんやろね?」

 

うーん……

 

 

 

コトダマ提示!

 

【金テコ】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「犯人は金テコを使って自動ドアを持ち上げたんじゃないかしら」

 

秋山「ああ、あの重い家具とかを持ち上げる道具?」

 

腐和「そうよ。テコで自動ドアを開けて、人が通れるだけの隙間を作って加賀君の研究室に入ったの」

 

目野「そうだったのですね!」

 

古城「じゃあ犯人はやっぱり加賀以外の誰かが自動ドアを開けたって事で良いんじゃな!?」

 

 

 

秋山「根本から考え直したら?」

 

《反 論》

 

 

 

秋山「腐和さん。それはおかしいよ」

 

腐和「おかしいって?」

 

秋山「うーん…そうだね。じゃあどういう事なのか、ちゃんと反論させてもらおうかな」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

秋山「本当に自動ドアは手動でこじ開けられたのかな?」

 

腐和「でも、自動ドアにはこじ開けられた痕跡があるのよ?」

 

秋山「でもさぁ…自動ドアを手でこじ開けるには、自動ドアの電源を切らないといけないよね?電源を入れたままだと事故が起こる可能性が高いから。加賀君の部屋に入らずに《自動ドアの電源を切る事なんて加賀君以外ができるとは思えない》し、やっぱり加賀君が犯人なんじゃないの?」

 

腐和「じゃあこじ開けられた痕跡やUSBは何だったっていうの?」

 

秋山「加賀君の自作自演って可能性も考えられるんじゃないかな」

 

いいえ、あったはずよ。

加賀君の部屋に入らずに自動ドアの電源を落とす方法が…!

 

《自動ドアの電源を切る事なんて加賀君以外ができるとは思えない》⬅︎【研究棟のブレーカー】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「自動ドアの電源を落とすんだったら、研究棟のブレーカーを落とせば済む話よ。実際、研究棟のブレーカーは落ちていたみたいだしね」

 

秋山「でも研究棟のブレーカーが落ちたりなんかしたら、リカちゃんに異変が起こるはずだよね?」

 

加賀「いや、それは無い。リカには予備バッテリーが内蔵されているから、停電中でも問題なく起動するはずだ」

 

加賀君はそこまで言うと、唐突に黙り込む。

どうしたのかしら…?

 

秋山「…うん、とりあえずは納得したよ」

 

古城「じゃが、ブレーカーを落としたりなんかしたら真っ暗になってしまうじゃろ?どうやって移動したんじゃ?」

 

…おそらく、あれを使ったのね。

 

 

 

コトダマ提示!

 

【暗視ゴーグル】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「暗視ゴーグルを使って加賀君の研究室まで移動したんじゃないかしら?エレベーターが使えないから、恐らく階段を通ってね」

 

古城「な…なんと…!!」

 

目野「暗視ゴーグルちゃんを使ったのですね!納得です!」

 

秋山「となると…その時間帯に単独行動をとっていた人が怪しいよね。俺達はその時間帯視聴覚室にいたから、怪しいのは一人しかいないよね」

 

単独行動を取っていた人…

それって……

 

 

 

《人物指定》

 

 

 

腐和緋色

 

聲伽愛

 

玉越翼

 

小鳥遊由

 

知崎蓮

 

食峰満

 

越目粧太

 

聖蘭マリア

 

古城いろは

 

加賀久遠

 

目野美香子

 

館井建次郎

 

秋山楽斗

 

響歌音

 

ネロ・ヴィアラッテア

 

闇内忍

 

リカ

 

白瀬クロヱ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎知崎蓮

 

 

 

腐和「あなたよ、知崎君」

 

知崎『はにゃ?ボクなの?』

 

腐和「私達が視聴覚室にいた間、自由に移動できたのはあなただけよ。あなたは、私達を視聴覚室に誘き寄せて、その隙に加賀君の研究室に忍び込む事ができたはずよ」

 

知崎『………』

 

腐和「違うなら違うと言ってくれて構わないわよ。私だって事件当時のアリバイから判断しただけだし……」

 

知崎『そーだね。じゃあちょっと反論させてもらおっかな?』

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

知崎『ボクには《アリバイがある》んだよ!ボクは犯人じゃないもん!』

 

目野「この期に及んでまだ言うのですか!しつこいですよアナタ!」

 

知崎『だってボクは《犯人じゃないからねー》』

 

古城「ううむ…ウヌが犯人じゃないというなら、そのアリバイとやらを聞かせてもらおうか」

 

聲伽「古城ちゃん…冷静に議論出来るようになったんやね」

 

秋山「聲伽さん、話逸らさないの」

 

知崎『だってだってだってー!皆は《ボクが黒幕ちゃんを人質に取ったの見てたでしょ》!?ボクは犯人じゃないんだよー!』

 

黒幕を人質に取ってたのを見てた…?

それがアリバイになるのかしら?

 

 

 

《ボクが黒幕ちゃんを人質に取ったの見てたでしょ》⬅︎【知崎君の脅迫映像】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「知崎君、それはアリバイにはならないわよ」

 

知崎『え?』

 

腐和「だって、私達はあなたの姿を直接見てたわけじゃないでしょう?私達は、あなたが白瀬を人質にとっている映像を見せられただけよ」

 

知崎『……………』

 

腐和「犯人じゃないなら、どこで何をしていたのか答えてくれる?」

 

 

 

知崎『話になんないんだけど』

 

《反 論》

 

 

 

腐和「知崎君…?」

 

知崎『ボクは犯人じゃないって言ってるじゃん!これだけ言ってもわかんないみたいだから、ボクが証明してあげるよ!』

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

知崎『皆がボクを直接見てないからって、それだけで犯人にするなんてひどーい!』

 

腐和「じゃあ事件当時何してたの?」

 

知崎『だぁから!黒幕ちゃんを人質に取ってたんだよ!あの女、いきなりサバイバルナイフで斬りかかってきて、ビックリしてメカマサムネに逃げちゃってさ!そしたらもう形勢逆転ってわけ!やっぱり正義は必ず勝つんだね!』

 

腐和「なら、あの映像は?」

 

知崎『《ビデオカメラで撮った映像をリアルタイムで流した》んだよ?何もおかしい事は無いでしょ?』

 

いいえ、今の発言はおかしいわ。

だってそれだと、あれと矛盾するもの…!

 

《ビデオカメラで撮った映像をリアルタイムで流した》⬅︎【抹茶のシミ】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「知崎君。残念だけど、それは通らないわよ」

 

知崎『はぁー?』

 

腐和「あの和室には、古城さんが今朝こぼした抹茶のシミがあったの。でもあなたが私達に見せた脅迫映像には、抹茶のシミが無かった。これはどういう事なのかしら?」

 

知崎『あー、思い出した。後で綺麗に拭いたんだった!うん、そうだよ!』

 

腐和「言っておくけど、シミはしっかり残ってたわよ?」

 

知崎『……………』

 

古城「何じゃ何じゃ、何がどうなっておるのじゃ!?」

 

腐和「知崎君は、自分達が和室にいると思い込ませる為に、あるものを使ったのよ」

 

知崎君が使ったもの…

それは……

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

ロ ク ガ シ タ エ イ ゾ ウ

 

 

 

【録画した映像】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「知崎君は、録画した映像を使ったのよ」

 

古城「なっ、何じゃとぉ!?」

 

腐和「まず知崎君は、あるものを使ってあの映像を作成して、そしてあるものを使って映像と一緒に音声を流したの」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【カメラ】【ノートパソコン】【インカム】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「筋書きはこうよ。まず録画機能付きのカメラであの映像を撮って、撮った映像をネロのノートパソコンで編集する。そしてパソコンを視聴覚室のモニターと同じ無線ネットワークに接続して、パソコン画面をモニターにミラーリングして録画映像を表示する。ついでに、インカムを視聴覚室のスピーカーと繋いでおく。あとは、インカムを使って映像に合わせて喋るだけよ」

 

目野「でもどうしてそんな回りくどい事をしたのでしょう!?」

 

古城「それに、それだと白瀬は何時間も前から知崎に捕まっていたという事になるではないか!!知崎がリカを殺しに行っている間、白瀬は何をしておったのじゃ!?」

 

秋山「うーん…そもそも、俺はあの映像自体本物かどうか怪しいと思うけどね」

 

古城「なぬ!?」

 

秋山「俺、PV作成とかもやってるからそういうのわかるんだけどさ。最初見た時、『随分茶番臭いなぁ』って思ったんだよね」

 

腐和「…………あっ」

 

古城「ん?どうしたのじゃ、腐和」

 

腐和「わかったかも。あの映像の正体が何なのか、何の目的で作られたものなのかがね」

 

 

 

脅迫映像の正体は?

 

1.本物の脅迫映像

2.ヤラセ

3.コロシアイ生活以前に撮られた映像

 

➡︎2.ヤラセ

 

 

 

脅迫映像を流した目的は?

 

1.全員の気を逸らす事

2.サプライズ

3.コロシアイを誘発する事

 

➡︎1.全員の気を逸らす事

 

 

 

映像が流れている間、知崎は何をしていた?

 

1.脱出方法の模索

2.メンバーとのかくれんぼ

3.リカ殺害の準備

 

➡︎3.リカ殺害の準備

 

《COMPLETE!!》

 

 

 

腐和「わかったわ!」

 

聲伽「ほんと!?」

 

腐和「ええ。まず、あの映像はおそらくヤラセよ」

 

古城「や、ヤラセじゃと!?」

 

腐和「そもそもの話、知崎君は白瀬を捕まえてなんかいなかったのよ。あの映像に映っていた白瀬が一体何だったのか…それは一旦置いとくとして、知崎君は、『自分が白瀬クロヱを捕まえた』と思い込ませる為の映像を作ったの」

 

目野「じゃあ、知崎さんが白瀬さんを殺すと言っていたのは…!?」

 

腐和「真っ赤な嘘よ。彼が本当に殺したかったのは、リカの方だったのよ。彼の目的は、私達に『自分の標的は白瀬クロヱだ』とアピールする事だったのよ。私達がまんまと罠に嵌って知崎君と白瀬を探している間に、当の本人はリカを殺していたの。黒幕を殺すと明言している人が、まさか別の人物を標的にしているだなんて思わないでしょうからね。どうなの?知崎君」

 

知崎『………』

 

 

 

 

 

知崎『………あーあ。バレちゃあしょーがないな。はい、そーでーす。ボクがリカちゃんを殺しましたー』

 

目野「なっ……!!やっぱりあなたが犯人だったのですね!?どうしてリカを殺したんです!?リカに恨みでもあったんですか!?」

 

知崎『え?機械を壊す方が人間を殺すよりラクチンだったから、それだけだけど?』

 

目野「わっ…ワレェエエエエエ!!!その腐った脳みそに有線LAN繋えでやれーかこのドグサレがぁあああああ!!!」

 

知崎『きゃー美香子ちゃんこわーい!』

 

知崎君が血も涙も無い発言をすると、目野さんが敵意を剥き出しにして知崎君を罵倒した。

………何かしら、この違和感は。

何か、あれだけ引っ掻き回した危険因子の割にはやけにあっさり罪を認めたわね。

トリック自体も、色々と穴だらけだったし…

何というか、今までのクロに比べて裁判に勝つ事への必死さが欠けるというか…

何か大事な事を見落としてるような…

 

目野「いつまでもメカマサムネに引きこもっちょらんでええ加減その汚え面見しぇたらどうなんかワレェ!?ええ!?」

 

腐和「…!!」

 

秋山「ハイハイ、目野さん落ち着いて。議論にならないでしょ」

 

腐和「………目野さん」

 

目野「何か!?今取り込み中なの見てわからんのか!?」

 

腐和「それよ!」

 

目野「………………ハイ?」

 

秋山「え?」

 

腐和「結論から言わせてもらうわ」

 

私は、知崎君の証言台に立っているメカマサムネに向かって指を差した。

 

 

 

 

 

腐和「………あなた、知崎君じゃないわね?」

 

秋山「!」

 

加賀「!」

 

聲伽「!」

 

目野「はっはっは、なぁ〜んだそんな事ですか………」

 

目野「…………」

 

目野「…………」

 

目野「…………」

 

目野「はんぎょええええええええええ!!?ち、知崎さんじゃない!!?それって一体どういう事なんです!?」

 

古城「おい腐和!何を根拠にいきなりそんな事を言い出すのじゃ!」

 

腐和「根拠ならあるわ」

 

このメカマサムネを操縦しているのが知崎君じゃない証拠…

それは…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【メカマサムネ】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「このメカマサムネが知崎君じゃない証拠、それは会話よ」

 

古城「か、会話…?」

 

腐和「思い出して。このメカマサムネ、妙に会話が噛み合わなかった事があったでしょ?一人で勝手に喋ったり、的外れな事言ったり…」

 

加賀「元々知崎は空気が読めないところがあったが、そういう次元じゃなくて、『会話』というものを根本的に理解できていない節があったな」

 

古城「だから何だと言うんじゃ!?其奴が知崎じゃないなら、一体誰なんじゃ!!」

 

このメカマサムネを操縦しているのは誰なのか……

それは……

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

ジ ド ウ ソ ウ ジ ュ ウ モ ー ド

 

 

 

【自動操縦モード】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「……誰でもない。このメカマサムネのコックピットには、誰もいないのよ。メカマサムネは、自動操縦モードで動いてるの」

 

古城「じ、自動操縦モード…?」

 

加賀「このロボットは、リカの下位互換だと思えばいい。知崎はメカマサムネに内蔵されたAIにあらかじめ自分の言動を学習させて、自分にそっくりな言動をするように仕込んでおいたんだ。電脳刀を分解して爆弾を作った事から考えて、知崎は機械系の才能も盗んでいたんだろう。AIを自分の分身として動かす事ができても何ら不思議じゃない」

 

秋山「それでも、100%完璧な再現とはいかなかったんだろうね。答えを用意していなかった質問に対しては、うまく会話を成立させる事ができなかったんだ」

 

腐和「知崎君。あなたが本当にそこにいるなら、今ここでコックピットを見せてちょうだい」

 

知崎?『……………』

 

秋山「黙秘、か…」

 

モノクマ『うぷぷ!しょうがないですね!』

 

モノDJ『こんな時はオレ様達の出番だぜYEAH!!あらよっと!!』

 

そう言ってモノDJは、どこからか取り出したスイッチを押した。

するとメカマサムネは機能停止し、顔面から放たれていた光も消え失せた。

 

モノクマ『はーい、たった今メカマサムネの電源を切りました!好きなだけ調べやがって下さい!』

 

私達は、機能停止したメカマサムネの頭部を外してコックピットを確認した。

コックピットには…

 

 

 

 

 

………案の定、誰も座っていなかった。

 

 

 

古城「なっ…!?おらぬじゃと!?」

 

目野「あのガキャ…!!さてはクロバレしてオシオキされるのが怖いからって逃げましたね!?」

 

秋山「でもそんな事したら、校則違反になるはずだよね」

 

モノクマ『うぷぷ…オマエラとっぼけちゃって!知崎クンの居場所なら、オマエラみんな知ってるくせに!』

 

聲伽「皆知ってる……まさか!」

 

目野「ん?どうしたんです!?何かわかったんですか!?」

 

聲伽「……皆。今から、白瀬ちゃんの方の事件の議論ばしてみようよ。うちらはまだ、見落としとー事があったっちゃん!」

 

 

 

《学級裁判 中断!》

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

残り6名

 

 

 

ーーー 生死不明 ーーー

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

以上1名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

【超高校級の脚本家】【超高校級の絶望】白瀬(しらせ)クロヱ

 

以上11名

 

 

 

 

 



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非日常編③(学級裁判後編)

 

《学級裁判 再開!》

 

聲伽「知崎くんがどこしゃぃ行ったんかば確かめる為にも、白瀬ちゃんの事件ば解き明かす必要があるんやなかかな」

 

腐和「…そうね。じゃあ、二つ目の事件について議論していきましょう」

 

古城「二つ目の事件について議論…と言われてものぉ。何を議論すればええんじゃ?」

 

腐和「そうね…まず最初に皆に確認してもらわなきゃいけない事なんだけど………」

 

 

 

 

 

腐和「あそこで死んでたのは、本当に白瀬だったのかしら?」

 

目野「………………はい?」

 

腐和「あそこで死んでいたのが誰だったのか、もう一度慎重に議論してみる必要があるんじゃないかしら?」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

目野「慎重に議論も何も、《被害者は白瀬さん以外に考えられない》と思いますがねえ!!」

 

加賀「そうじゃない可能性が浮上してきたから話し合いをしよう、という事なんだが?」

 

古城「う、ううむ…確かに誰かが判別できぬ程には丸焦げになってはいたが…《髪や来ている服は白瀬のもの》じゃったし…」

 

目野「もう議論の余地なんてないじゃないですか!!白瀬さんが二人目の被害者だというのは紛れもない事実なのです!!《モノクマファイル》だってちゃんと配られてるじゃないですか!!」

 

ちょっと待って、今重要な事言った人がいたわよね。

 

 

 

《モノクマファイル》⬅︎【モノクマファイル⑦】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「被害者は白瀬だとは限らないわよ。だってあのファイルには、被害者の名前なんてどこにも書かれてなかったんだもの!」

 

目野「は、わびぇあぁああああああああ!!?何ですと!!?」

 

加賀「だがこれでハッキリしたな。モノクマがあえて被害者の名前を伏せて書いたという事は、被害者は白瀬クロヱではない可能性が高いという事だ」

 

腐和「ええ。それにあそこで死んでいた人間と白瀬では、決定的な相違点があったのよ」

 

被害者と白瀬の相違点…

それは…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【被害者の血液型】【白瀬の血液型】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「………血液型。あそこで死んでいた被害者と白瀬とでは、血液型が違ったのよ」

 

目野「なっ…何ですって!?」

 

腐和「未来ヶ峰学園の定期検診の報告書には、白瀬の血液型は『A型』と書かれていたの。それに対して、加賀君があそこで死んでいた被害者の血液型を調べた結果、死体は『B型』だった事が判明したのよ。もしあそこで死んでいたのが白瀬なら、死体の血液型もA型じゃなきゃおかしいわよね?」

 

古城「じゃ、じゃあ、あそこで死んでいたのは一体…?」

 

腐和「簡単な話よ。このコロシアイ共同生活の参加者の中で、血液型B型の人は誰だったかしら?」

 

聲伽「うち、B型だよ!」

 

加賀「俺もだ」

 

秋山「あと知崎君、それから関係ないと思うけど小鳥遊さんもB型だったよね。………あっ」

 

腐和「もうわかったわよね?一人いるわよね。『B型』、『ここにいない』、『白瀬クロヱになりすます事ができた』、この全部の条件に当てはまっている人が」

 

正直、未だに信じられない。

あんな大それた事をしでかした人が、もう既に死んでいただなんて……

 

 

 

《人物指定》

 

 

 

腐和緋色

 

聲伽愛

 

玉越翼

 

小鳥遊由

 

知崎蓮

 

食峰満

 

越目粧太

 

聖蘭マリア

 

古城いろは

 

加賀久遠

 

目野美香子

 

館井建次郎

 

秋山楽斗

 

響歌音

 

ネロ・ヴィアラッテア

 

闇内忍

 

リカ

 

白瀬クロヱ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎知崎蓮

 

 

 

腐和「あそこで死んでいた白瀬クロヱの偽者は、知崎君よ」

 

目野「なっ…そ、そうだったのですか!?」

 

腐和「知崎君が裁判場に来なくてもオシオキが発動するわけがなかったのよ。だって当の本人は既に死んでるんだから」

 

秋山「………なるほどね」

 

加賀「正直、知崎が持っていたはずのインカムをどうして白瀬が持っていたんだとは思ったが…あの白瀬の正体が知崎なら合点がいくな」

 

目野「でも、流石に女装してたら気付きませんか!?どうして気付かなかったんでしょうかね!?」

 

腐和「それは、彼があるものを使って白瀬に化けていたからだと思うわ」

 

 

 

コトダマ提示

 

【知崎君の才能】【コスプレグッズ】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「知崎君の才能は【超高校級の泥棒】。彼が盗めるものはお宝だけじゃなくて、相手の容姿や才能も盗む事ができるというものだったわ。それに彼の研究室には、白瀬も含めた私達16人の衣装が置いてあった。彼なら、自分の才能と衣装を使えば、白瀬になり切る事は造作もない事だったはずよ」

 

古城「ううむ…そういうものなのか…」

 

腐和「目的はわからないけど、知崎君は白瀬の格好をして殺されていたの。次は、知崎君がどうやって殺されたのかを議論しましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

古城「どうやって殺されたって…《火事による焼死》ではないのか?」

 

加賀「…いや、状況的にアレだろうな」

 

目野「きっと《煙を吸って死んだ》んです!!」

 

加賀「バカ言え。知崎の死因は、《失血死か、雷撃による焼死》だ」

 

うーん…

この中で正しい意見は…

 

 

 

《失血死か、雷撃による焼死》⬅︎【白瀬の検視結果】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「知崎君の死因は、槍に刺された事による失血死か、雷撃による焼死のどちらかよ」

 

目野「そうだったのですか!!」

 

古城「槍に雷撃…そんなもんどこから引っ張ってきたんじゃ?」

 

腐和「心当たりならあるわ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【グングニルの槍】【ケラウノスの雷】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「知崎君を殺した凶器は、グングニルの槍とケラウノスの雷よ」

 

古城「な、何じゃと!?…って、グングニルの槍とケラウノスの雷って何じゃ?」

 

秋山「モノクマとモノDJが使ってた武器だよ…」

 

目野「という事は…あなた達、コロシアイには関与しないという約束を破ったのですか!?」

 

モノクマ『言いがかりやめろクマー!』

 

腐和「…いいえ。一つ、可能性があるわ」

 

知崎君がモノクマとモノDJの凶器で殺された理由…

それって…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【壊れた監視カメラ】【校則の四番目の項目】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「…監視カメラが壊れていたからじゃないかしら?」

 

目野「なっ…!そ、そうだったのですか!!」

 

腐和「監視カメラの破壊は、校則で禁止されているの。知崎君は、監視カメラを破壊してしまったから校則違反で殺されたのよ」

 

秋山「でも監視カメラの破壊なんてどうやって…あっ」

 

腐和「ええ。知崎君は、あるものとあるものを使って監視カメラを破壊したの」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【チャッカマン】【ガソリン】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「知崎君は、ガソリンにチャッカマンで火をつけて火事を起こして、その時の熱で監視カメラを破壊したの」

 

目野「な、何と……!」

 

秋山「なるほどね…じゃあ次は、どうやってガソリンを植物庭園全体に撒いたのか、を議論するべきなのかな?」

 

腐和「そうね」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

古城「《普通に撒いた》のではないのか?」

 

秋山「普通に考えて《スプリンクラー》じゃないかな」

 

古城「スプリンクラーでどうやってガソリンを撒くんじゃ!」

 

目野「《高圧洗浄機》ちゃんでも使ったんでしょう!」

 

加賀「効率悪くないか?」

 

 

 

《スプリンクラー》⬅︎【スプリンクラー】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「知崎君は、スプリンクラーを使ってガソリンを撒いたんだと思うわ」

 

目野「す、スプリンクラーですと!?」

 

古城「莫迦を申せ!!スプリンクラーでどうやってガソリンを撒くというのじゃ!!」

 

聲伽「思い出して。植物庭園には、スプリンクラーん水ば引っ張ってくるためんものがあったはずだよ」

 

それって……

 

 

 

コトダマ提示!

 

【スプリンクラーの貯水槽】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「知崎君は、スプリンクラーの貯水槽の中にガソリンを入れて、ガソリンを撒いたのよ」

 

目野「はぎゃあああ!?そうだったのですか!?」

 

古城「スプリンクラーの貯水槽か…じゃが、知崎はどこからどうやって貯水槽の中にガソリンを入れたんじゃ?」

 

聲伽「うーん…ねえ、緋色ちゃん、アレやなかかな」

 

アレ…

あれを証拠として提示するべきなのかしら?

 

 

 

コトダマ提示!

 

【スプリンクラーの機械の蓋】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「スプリンクラーの機械の蓋…知崎君はスプリンクラーの機械の蓋をこじ開けて、貯水槽にガソリンを入れたんじゃないかしら?」

 

目野「はぁー…そうだったんですね!」

 

古城「スプリンクラーの蓋かぁ…」

 

秋山「でもあの蓋、ものすごく硬いよね?それこそ、ハンマーで叩いたりしても壊れないわけでしょ?どうやって開けたんだろう…」

 

腐和「簡単な話よ。知崎君は、ハンマーよりもっと硬いもので蓋をこじ開けたの」

 

あったはずよ。

蓋をこじ開けるのに使われたものが…!

 

 

 

コトダマ提示!

 

【ロンズデーライト】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「知崎君は、地学室にあったロンズデーライトを使って蓋をこじ開けたんじゃないかしら?」

 

目野「何なのですかそれは!!」

 

加賀「ダイヤモンドより硬いとされている鉱石だ。それの名前が出てきたという事は、地学室から盗まれていたのだな?」

 

腐和「ええ」

 

秋山「これで知崎君が火事を起こした方法がわかったね」

 

古城「うむ…ええと?今までの情報を整理すると、知崎はリカを殺した後、白瀬に変装して火事を起こし、監視カメラが壊れた事でモノクマに処刑された…と、こういう事か?」

 

目野「じゃあ、知崎さんを殺した犯人は…」

 

ええっと、今までの情報から考えると…

 

 

 

《人物指定》

 

 

 

腐和緋色

 

聲伽愛

 

玉越翼

 

小鳥遊由

 

知崎蓮

 

食峰満

 

越目粧太

 

聖蘭マリア

 

古城いろは

 

加賀久遠

 

目野美香子

 

館井建次郎

 

秋山楽斗

 

響歌音

 

ネロ・ヴィアラッテア

 

闇内忍

 

リカ

 

白瀬クロヱ

 

 

 

 

 

➡︎知崎蓮

 

 

 

腐和「……知崎君、よね」

 

古城「何っ!?じゃ、じゃあ…知崎は…」

 

聲伽「自殺……?」

 

目野「なっ、何ですって!?」

 

腐和「…でも一応筋は通ってるわ。今思えば、リカの時のアリバイ工作が雑だったのは、自分が犯人だという事を隠す気が無かったからよ。…そりゃあ、アリバイ工作なんて必要無いわよね。だって、既に死んでるんだもの」

 

目野「そんな……」

 

一見、これで筋は通っているように思える。

だって状況的に、知崎君が火事を起こして監視カメラを壊して自殺したとしか考えられない。

…でも、何かを見落としているような……

 

モノクマ『おっと、結論が出たみたいですね。ではでは、投票ター…』

 

 

 

 

 

秋山「待って!!」

 

モノクマが投票タイムに移ろうとすると、秋山君が待ったをかけた。

 

秋山「待って。それはおかしいよ」

 

加賀「…ああ。正直、俺もそう思っていた」

 

古城「おかしい?どういう事じゃ?」

 

秋山「だって監視カメラを壊したいだけなら、わざわざ火事を起こす必要なんて無いんだよ」

 

加賀「それに、奴があんなものを持っていたのも気になるしな。まあ、他に刃物を使う用事があったというならそれまでなんだが…」

 

奴が持っていたアレ…

もしかして、あれの事かしら…?

 

 

 

コトダマ提示!

 

【サバイバルナイフ】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「…火事で校則違反を起こして処刑される人が、別の凶器を持っているのはおかしいって事?」

 

加賀「ああ。別に何の意図で持っていたのかが気になったというだけで、それだけで自殺の可能性を否定するわけじゃないがな。だがあの現場には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が落ちていたはずだ」

 

それって…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【白い布】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「…白い布の事かしら?」

 

加賀「ああ。やたら防火性の高い素材でできた布が落ちていただろう?火事で監視カメラを壊して処刑される事を想定しているのなら、そんなものを所持する必要がないはずだ。どうせ死ぬなら、火事で焼け死のうが同じだからな」

 

聲伽「た、確かに…」

 

目野「でも、その白い布って一体何だったんでしょう!?」

 

それは…

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

目野「《シーツ》とかじゃないですかね!?」

 

加賀「すぐ燃えるに決まってるだろう」

 

古城「《テーブルクロス》…とかではないか」

 

聲伽「どっちにしたっちゃ燃えるよね」

 

秋山「《防火シート》は?あれなら炎を防げそうだけど」

 

秋山君の意見が正しそうね。

 

 

 

《防火シート》⬅︎【防火シート】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「プラネタリウム準備室にあった防火シート…あれなら、炎を防げるんじゃないかしら?」

 

目野「なるほど!!納得しました!!」

 

加賀「だがこれでハッキリしたな。知崎は、火事の現場にわざわざ防火シートを持ち込んでいたわけだ。知崎は、火事のどさくさに紛れてコロシアイを起こそうとしていたんじゃないのか?」

 

秋山「うん。それもそうだけどさ、俺はこう考えてるんだけど。まあ半分俺の妄想だから間に受けなくてもいいんだけどさ。『知崎君以外の誰かが、彼に校則違反をさせて殺害した』…っていうのはどう?」

 

目野「なっ…何ですってぇ!!?」

 

腐和「……!じゃあ、知崎君以外に真犯人がいる…って事になるわよね」

 

 

 

古城「じゃかぁしいわぁ!!!」

 

《反 論》

 

 

 

腐和「古城さん?」

 

古城「取り消せ秋山腐和ァ!!貴様ら、闇内やネロ、リカの死から何を学んだというのじゃ!!」

 

腐和「でも、他にも犯人がいる可能性を考えて議論しないと…」

 

古城「黙れぇええ!!ワシはもう、戦友を疑いとうないのじゃ!!」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

古城「貴様ら、戦友を疑って一体後に何が残るというのじゃ!?」

 

腐和「でも、投票を間違えたら皆死ぬのよ?」

 

古城「じゃかぁしいわぁ!!そもそも、他殺だという証拠が無いじゃろうが!!」

 

腐和「それはそうだけど…」

 

古城「証拠が無いならワシは納得せぬぞ!!知崎がスプリンクラーにガソリンを仕込んで、《スプリンクラーが自動で作動して》ガソリンが撒き散らされた、これが真実じゃろうが!!」

 

スプリンクラーが自動…?

それはあり得ないわ!

 

《スプリンクラーが自動で作動して》⬅︎【スプリンクラーの設定】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「……古城さん。つらいでしょうけど、真実と向き合わないと。あなたもわかってるはずでしょ?あのスプリンクラーは、手動モードになっていたのよ」

 

古城「あっ………!」

 

腐和「手動モードになっているスプリンクラーが、何もせずに噴射されるわけがない。ここまで言えばわかるわよね?」

 

加賀「スプリンクラーのスイッチを押した奴が真犯人…という事だな」

 

腐和「ええ。……そして、スプリンクラーを押した人なら、一人心当たりがあるわ」

 

…正直、こんなの信じたくなかった。

あなただけは違うと信じたかった。

どうして、どうしてあなたが…!

 

 

 

《人物指定》

 

 

 

腐和緋色

 

聲伽愛

 

玉越翼

 

小鳥遊由

 

知崎蓮

 

食峰満

 

越目粧太

 

聖蘭マリア

 

古城いろは

 

加賀久遠

 

目野美香子

 

館井建次郎

 

秋山楽斗

 

響歌音

 

ネロ・ヴィアラッテア

 

闇内忍

 

リカ

 

白瀬クロヱ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎聲伽愛

 

 

 

腐和「………マナ、あなたよね?」

 

聲伽「っ…………!!」

 

目野「なっ…!?そうなのですか!?」

 

加賀「どうなんだ。正直に答えろ」

 

聲伽「ち、ちがう…!うちは……!!」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

聲伽「違う!!うちやなか!!《うちは何もやっとらん》!!」

 

古城「本人はこう言っておるが…」

 

加賀「『違う』とだけなら誰にでも言える。違うというのなら、《違うという証拠を見せてみろ》」

 

聲伽「だって、だって…!《うちは何も知らん》!」

 

目野「で、実際どうなんですか!?《あなたがやったんじゃないですか》!?」

 

…今、事実と違う発言があったわよね。

…ごめん。

……ごめんなさい。

 

 

 

《うちは何もやっとらん》⬅︎【マナの証言】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「マナ、あなたさっき自分の口でハッキリ言ったわよね?『スプリンクラーのスイッチを押した』って」

 

聲伽「あっ………!」

 

加賀「語るに落ちたな」

 

聲伽「ちがう…!!うちは、うちは…!!」

 

秋山「聲伽さん、何か事情があったんだよね?」

 

マナがスプリンクラーのスイッチを押してしまった理由…

それって…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【植物庭園の煙と匂い】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「マナは、植物園から煙と何かが焼ける匂いがしたから、火事が起こったと思ってスプリンクラーのスイッチを押してしまったんじゃないのかしら?」

 

聲伽「あっ……!」

 

目野「そうだったのですか!!」

 

聲伽「えっと…それは…」

 

古城「じゃが、その匂いと煙とやらは一体何だったんじゃ?火事とは関係ないんじゃろ?」

 

腐和「…おそらく、アレの煙と匂いを火事の煙と匂いだと勘違いしてしまったんじゃないかしら?」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【燻製器】【グチャグチャの肉塊】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「マナは、燻製器で肉を燻す匂いと煙を火事と間違えてしまったんだと思うわ」

 

目野「く、燻製器とな!?」

 

腐和「植物庭園には、燻製器が落ちていたの。そしてその燻製器には、グチャグチャの肉塊が入っていたのよ」

 

秋山「……ねえ、その肉塊ってまさか…」

 

腐和「ええ。そのまさかよ」

 

燻製器の中に入っていた肉塊…

それは……

 

 

 

コトダマ提示!

 

【響さんの遺体】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「……燻製器に入っていたのは、生物室から持ち出された響さんの遺体よ」

 

目野「ひ、ひい!!?」

 

腐和「植物庭園から漏れていた匂いは、実際に人を燻す匂いだったわけだからね。火事の匂いだと間違えてしまっても不思議ではないわ」

 

目野「悪趣味すぎですよ!!誰がそんな事したんです!?」

 

秋山「そもそも知崎君は、監視カメラを壊す気が無かったならどうしてスプリンクラーにガソリンを仕込んだりなんかしたのかな?」

 

聲伽「そ、そうだよ!意味がわからんよ!」

 

腐和「…………」

 

……あっ。

わかったかもしれない。

この事件の真相が。

 

腐和「皆聞いて。わかったわ。この事件の真相が」

 

 

 

燻製器を仕込んだのは誰?

 

1.知崎蓮

2.犯人

3.黒幕

 

➡︎1.知崎蓮

 

 

 

燻製器を仕込んだ理由は?

 

1.バーベキューを企画していた

2.ドッキリ

3.火事が起こったと勘違いさせるため

 

➡︎3.火事が起こったと勘違いさせるため

 

 

 

何故火事だと勘違いさせる必要があるのか?

 

1.ドッキリ

2.スプリンクラーを起動させるため

3.黒幕を出し抜くため

 

➡︎2.スプリンクラーを起動させるため

 

 

 

知崎は火事を起こして何がしたかった?

 

1.ドラマの撮影

2.無理心中

3.他殺に見せかけた自殺

 

➡︎3.他殺に見せかけた自殺

 

 

 

スプリンクラーのスイッチを手動にしたのは誰?

 

1.知崎蓮

2.犯人

3.黒幕

 

➡︎1.知崎蓮

 

 

 

スプリンクラーのスイッチを手動にしたのは何故?

 

1.気まぐれ

2.操作ミス

3.貯水槽の中に燃料を入れたから

 

➡︎3.貯水槽の中に燃料を入れたから

 

 

 

知崎が貯水槽にガソリンを入れたのは何故?

 

1.監視カメラを壊す為

2.火事で焼け死ぬ為

3.別の燃料と間違えた

 

➡︎3.別の燃料と間違えた

 

《COMPLETE!!》

 

 

 

腐和「わかったわ!」

 

秋山「え、本当?」

 

腐和「ええ。まず知崎君が何をしたかったのか、それは『他殺に見せかけた自殺』よ」

 

古城「な、何じゃと!?」

 

腐和「彼はどうしてもリカを殺さなければならない事情があった。でもリカを殺したら学級裁判で裁かれる。そこでどうしてもモノクマに裁かれたくない彼は、自決する事で逃げようとしたのよ。モノクマ達の目を欺くという意味でも、彼はどうしても自殺を他殺に見せかけたかったのでしょうね。だからわざと火事を起こして、その火事のどさくさに紛れて自決する事にしたの」

 

聲伽「そんな……!」

 

腐和「まず、スプリンクラーの設定を手動モードにしておいて、貯水槽に燃料を入れるでしょ?その状態で植物庭園で燻製器を焚けば、次に来た誰かが中で火事が起こったと勘違いしてスプリンクラーのスイッチを押し、燃料が植物庭園に撒かれる。その燃料にチャッカマンで火をつければ、火事が起こるというわけ。わざわざ防火シートとサバイバルナイフを持ち込んだのは、火事とは全く関係ない方法で自殺する事で、万が一にもスプリンクラーのスイッチを押した人がクロになってしまうのを防ぐ為だと思うわ」

 

秋山「でもその計画は、監視カメラが壊れてしまったから破綻したわけだよね?知崎君は、ガソリンに引火したら監視カメラが壊れるとは思わなかったの?」

 

腐和「それなんだけど……知崎君はおそらく、間違えたんだと思うわ。ガソリンを、別の燃料と間違えてしまったの」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【ガソリンと灯油の容器】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「知崎君は、おそらく灯油とガソリンを間違えてしまったのよ。知崎君が本当に使いたかったのは、灯油の方だったの。おそらく知崎君は、灯油の炎じゃ監視カメラが壊れない事を知っていたのでしょうね」

 

古城「ま、間違えたじゃと!?どうしてそんな事が起こったのじゃ!?」

 

腐和「それはおそらく……私のせいよ」

 

目野「ん!?腐和さんのせい!?どういう事です!?」

 

腐和「灯油とガソリンは見た目がほとんど同じ一斗缶に入っていて、最初はラベルが逆に貼られていたの。だから誰かが間違えたら危ないと思って、私がラベルを正しい表記に貼り替えておいたのよ。多分そのせいだと思うわ」

 

目野「尚更わかりませんね!正しい表記に直っていたなら、どうして間違えたんです!?」

 

腐和「それは……」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【講堂の捜査メンバー】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「知崎君は、最初に講堂を探索していたの。おそらくその時に灯油とガソリンを見つけて、逆の表記になっている事に気付いたのでしょうね。その後私が正しい表記に貼り替えた事に気付かず、逆になったままだと思い込んで『ガソリン』と書かれたガソリンの方を持って行ってしまったの」

 

加賀「…いや、でもそれはおかしくないか?」

 

腐和「え?」

 

加賀「知崎は犬並みに鼻が利く。ガソリンと灯油の匂いは全然違うんだから、奴が気付かないわけはないと思うが」

 

腐和「……それについても、心当たりがあるわ」

 

知崎君がガソリンの匂いに気付かなかった理由…それは……

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

カ フ ン シ ョ ウ

 

 

 

【花粉症】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「…花粉症。知崎君は、重度の花粉症持ちだったの。おそらく、植物庭園に入った時に花粉症のせいで鼻炎を起こして、鼻が利かなくなってしまったのよ」

 

秋山「そんな…そんな事が真実だったなんて…」

 

 

 

聲伽「そげんわけなかろ!?」

 

《反 論》

 

 

 

聲伽「うちは犯人やなか!!言いがかりはやめてよ!!」

 

腐和「でも、スプリンクラーを押したのはあなたでしょ?」

 

聲伽「だって、だって…!!うちは何も知らん!!」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー 

 

聲伽「そげんあやふやな推理で人ば犯人にしないでよ!!うちはやっとらん!!」

 

腐和「…そうよね。わざとやったわけじゃないものね」

 

聲伽「わざとも何も、うちは何も知らんって言いよーやろ!?大体しゃっきからうちん事ばっかり疑うとーけど、《うちが犯人だっていう証拠がなかろうもん》!証拠もなかとに勝手に犯人にしゃれちゃ困るっちゃけど!」

 

腐和「マナ…」

 

聲伽「知らん知らん知らん!!うちは何も知らん!!うちは犯人やなか!!」

 

…ごめんなさい、マナ。

見つけてしまったわ。

あなたが犯人だという証拠を。

 

《うちが犯人だっていう証拠がなかろうもん》⬅︎【言語互換機能】

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「……マナ。あなた、捜査中に秋山君が言ってた言葉の意味、わかってなかったわよね?」

 

聲伽「えっ?」

 

秋山「ああ、俺が腐和さんに英語で話したアレね」

 

ああ、アレ英語だったのか…

道理で口の動きと音が合ってないと思ったわ。

 

腐和「電子生徒手帳には、耳で聴いた言葉を母国語に自動で翻訳する機能があるの。それなのに秋山君の言葉の意味がわからなかったのは、どうしてなの?」

 

聲伽「それは…えっと…」

 

古城「ん?秋山の申した事がわからないとどうして犯人になるのじゃ?」

 

それは…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【電子生徒手帳の性能】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「…電子生徒手帳の性質。電子生徒手帳は、極端な高温か低温に晒されると壊れてしまうの。ここまで言えばもうわかるわよね?」

 

目野「あ…!!」

 

加賀「そういう事か」

 

聲伽「何もわからんよ!!」

 

 

 

ーーー 理論武装開始! ーーー

 

聲伽「そげん理由で犯人にしないでよ!」

 

聲伽「たまたま秋山くんの話ばちゃんと聞いとらんかっただけばい!」

 

聲伽「大体、電子生徒手帳が高温低温に弱いから何!?」

 

聲伽「うちは何も知らん!」

 

聲伽「そげんの、うちが犯人だっていう証拠にならんばい!」

 

 

 

聲伽「うちが犯人だっていう証拠がなかろ!?」

 

【火事で】【電子生徒手帳】【が】【壊れた】

 

腐和「これで終わりよ!!」

 

 

 

腐和「…マナ。あなたの電子生徒手帳、火事の熱で壊れたんでしょ?」

 

聲伽「………っ!!」

 

加賀「言っておくが、『別のタイミングで壊した』などという言い訳は通用しないぞ。事件以前に君の電子生徒手帳が壊れていないのは確認済みだしな」

 

腐和「モノクマがすぐに消火したから、捜査中に壊れるわけもないしね。マナ。あなたが犯人じゃないなら、私が今から読むフランス語の小説の内容がわかるわよね?」

 

私はそう言って、秋山君に押し付けられた『アルセーヌ・ルパンシリーズ』を取り出した。

するとマナは、観念したように俯く。

 

聲伽「………もう言い逃れはできんのごたーね。そうだよ。うちが、スプリンクラーんスイッチば押した」

 

古城「そんな…嘘じゃ嘘じゃ嘘じゃ!!ワシは、ワシはもう…!!」

 

加賀「これで真実は解き明かされた。もう投票に移ってもいいんじゃないか?」

 

腐和「………」

 

ちょっと待って。

本当にこれでいいの…?

まだ、見落としてる事があるんじゃ…

 

モノクマ『おっと、結論が出たみたいですね。ではでは、投票ター…』

 

 

 

 

 

腐和「待って!!」

 

モノDJ『…ああん?』

 

腐和「ねえ、もう少しだけ議論をさせて?もう少し話したらまだ何かわかるかもしれないし…」

 

古城「そ、そうじゃな!知崎の自殺の可能性だってまだ捨て切れたわけじゃないわい!」

 

聲伽「緋色ちゃん、古城ちゃん!もうよかばい!うちが、うちが知崎くんば殺したっちゃん!!」

 

目野「これ以上の議論は時間の無駄です!」

 

秋山「…ねえ。これ、またアレやるの?」

 

モノDJ『ギャハハハオフコースだぜ楽斗ボーイ!!そんな時はオレ様達の出番なんじゃねぇのかなぁ!?』

 

モノクマ『うぷぷぷぷ、今回も変形裁判所の出番ですね!それでは早速始めましょう!レッツ変形!!』

 

 

 

《意見対立》

 

 

 

【聲伽愛に投票するか?】

 

すぐに投票する! 秋山、加賀、聲伽、目野

 

まだ投票しない! 腐和、古城

 

 

 

ー議論スクラム開始ー

 

目野「今更何ですか!もう結論は出たんだから《投票》しましょう!」

 

「古城さん!」

 

古城「もし《投票》が間違っていたらワシら皆死ぬんじゃぞ!?」

 

秋山「でも、もうこれ以上《議論》したって結論は変わらないんじゃないの?」

 

「私が!」

 

腐和「待って、まだ《議論》を続ける余地はあるわ!」

 

加賀「諄い。もう《証拠》も出揃ってるんだ。これ以上はハッキリ言って時間の無駄だ」

 

「古城さん!」

 

古城「まだ出揃ってない《証拠》があるかもしれぬじゃろうが!!」

 

聲伽「二人とも、もうよかばい!!うちが、うちが《知崎くん》を殺したっちゃん!!」

 

「私が!」

 

腐和「《知崎君》を殺した犯人が本当にあなたなのか、もっと慎重に議論しないと!」

 

 

 

《全論破》

 

腐和「これが私達の答えよ!」

 

古城「これがワシらの答えじゃ!!」

 

 

 

腐和「皆。もう少し慎重に議論してみない?まだ何か見落としてる事が…」

 

聲伽「もう無か!!うちが知崎くんば殺した犯人たい!!」

 

腐和「違う!!だってあなたは…!!」

 

加賀「『わざとじゃないから悪くない』、とでも言うつもりか」

 

腐和「っ………!!」

 

加賀「君はもう少し頭を冷やせ。全員の命がかかっているんだぞ。聲伽一人に肩入れして冷静な話し合いが出来ないなら、議長を降りてもらう」

 

腐和「でも、でも…!」

 

聲伽「…緋色ちゃん。加賀くんの言う通りだよ。最後に、事件をばもう一度振り返ろう?」

 

腐和「う、うう…!!」

 

 

 

 

ークライマックス推理開始!ー

 

【Act.1】

事の発端は、知崎君だった。

彼はリカを殺すと同時に、モノクマ達を出し抜く作戦を考えていたの。

彼はまず、武道場から電脳刀を盗み出して分解し、リカを殺す為のUSBを製作した。

そして次に、地学室からロンズデーライトを、講堂から燃料を盗み出した。

でもこの時知崎君は、決定的なミスを犯してしまったの。

講堂に置いてある灯油とガソリンのラベルが逆になっている事を知っていた知崎君は、私が事前にラベルの入れ替えをしていた事に気付かずに、灯油を持っていくつもりでガソリンを持って行ってしまった。

 

【Act.2】

ガソリンを盗み出した知崎君は、植物庭園に隣接したスプリンクラー管理室に忍び込み、スプリンクラーを手動モードに切り替えておいた。

そしてスプリンクラーの機械の蓋をロンズデーライトで叩き壊し、貯水槽の入水口にガソリンを注ぎ込んだの。

この時、普段の知崎君ならすぐに中身がガソリンだと気付けたのでしょうけど、重度の花粉症で鼻炎を起こしていた知崎君は、ガソリンの匂いに気付かずにそのままガソリンを注ぎ込んでしまった。

その後知崎君は、リカを殺す為の下準備を始めた。

 

【Act.3】

まず知崎君は、録画機能付きのカメラとインカム、ネロのパソコン、それからサバイバルナイフを盗んでおいた。

あらかじめ和室に置いてあるメカマサムネに内蔵されたAIに行動を学習させておいて自分の代わりを演じさせ、自分は研究室のコスプレグッズで白瀬クロヱに変装し、メカマサムネが自分を人質に取っている映像を録画機能付きのカメラで撮影した。

そしてその映像を、ネロのパソコンを使って編集したの。

 

【Act.4】

その後、下準備の為金テコと暗視ゴーグル、チャッカマン、防火シート、燻製器、それから響さんの遺体を盗んでおいた。

翌日、モノクマから黒幕がこの学園内にいる事を教えられた知崎君は、今がチャンスだと思いリカ殺害の計画を実行に移す事にした。

知崎君はまずパソコンを視聴覚室のモニターとミラーリングし、私達を視聴覚室に呼びつけてパソコンで編集した映像を流し、視聴覚室のスピーカーと接続したインカムを使って音声を流した。

こうして私達に自分の標的が白瀬クロヱだと思い込ませて注意を逸らし、自分はその隙にリカを殺しに行ったの。

 

【Act.5】

知崎君はまず研究棟に行ってブレーカーを落とし、あらかじめ盗んでおいた暗視ゴーグルを使って加賀君の研究室に到着。

電源が切れた自動ドアを金テコでこじ開け、ログに残る事なく侵入に成功。

加賀君の研究室に侵入した知崎君は、リカの本体にUSBを差し込んだ。

このUSBは、実は時間が経つと過電流が流れるようにあらかじめ知崎君がプログラムを組んでおいた時限爆弾なの。

リカの本体にUSBを差し込んだ知崎君は、そのまま颯爽と加賀君の研究室を去っていき、校舎の植物庭園に向かった。

その頃私達は、知崎君が既にリカを殺す準備を整え、今度は自分を殺す準備をしているとは露知らず、知崎君が用意した茶番映像に夢中になっていた。

そのせいで、植物庭園に向かっている知崎君に気づかなかったの。

 

【Act.6】

植物庭園に到着した知崎君は、私達が白瀬と知崎君を探している間に、あらかじめ植物庭園に隠しておいた燻製器に響さんの遺体を入れ、スイッチを押して燻した。

すると植物庭園はあっという間に煙が充満し、監視カメラにも映らなくなる。

知崎君はその状況を利用して、煙の中で白瀬の格好に着替え、防火シートを被って待機しておく。

これで被害者・犯人不明トリックの完成よ。

大量の煙と人が焦げたような匂いが発生し、次に植物庭園に来た人がスプリンクラーのスイッチを押して灯油を撒き散らす。

あとは知崎君がチャッカマンで灯油に火をつければ、周囲に火が燃え広がる。

 

【Act.7】

チャッカマンでつけた小さな火はやがて大きな炎になり、炎のカーテンが監視カメラを覆って植物庭園の中の様子が見えなくなる。

知崎君は、その状況をいい事に、サバイバルナイフを使って火事とは全く関係ない方法で自殺する。

こうして、モノクマの目を欺き、『黒幕である白瀬クロヱが死んだ』と印象付ける事で、この悪趣味なコロシアイ生活に一矢報いた………。

 

【Act.8】

………なんて事にはならなかった。

ここからは、知崎君ですら想定していなかった事態が起こったの。

知崎君の狙い通り植物庭園で火事が起こったと勘違いした犯人は、スプリンクラーのスイッチを押した。

するとスプリンクラーからは灯油ではなくガソリンが撒き散らされ、知崎君の持っていたチャッカマンの火がガソリンに引火して大爆発を起こした。

そのせいで監視カメラが壊れて知崎君は拘束違反となり、グングニルの槍とケラウノスの雷で処刑された。

犯人は、図らずも知崎君を校則違反で殺してしまったの。

そしてその後の学級裁判では、知崎君の代わりに彼の行動を学習したメカマサムネが参加し、私達はまんまと『リカと白瀬が死んだ』と思い込んだ。

 

「これが事件の真相よ。そうでしょう!?【超高校級の幸運】聲伽愛!!」

 

 

 

古城「そんな、嘘じゃ、嘘じゃ!どうして毎回こうなるんじゃ!!」

 

腐和「…………っ!!」

 

秋山「聲伽さん……」

 

聲伽「………ごめん、古城ちゃん、緋色ちゃん……皆」

 

モノクマ『うぷぷぷ、もう結論は出たみたいですね?では始めちゃいましょうかね』

 

モノDJ『全員必ず誰かには投票しろよ!?無投票は問答無用でオシオキだぜYEAHHHH!!!』

 

モノクマがそう言うと、席にボタンが表示され投票時間が始まった。

私は、最後まで迷っていた。

私は………どうしても、マナを見殺しにはできなかった。

 

モノDJ『投票の結果、クロとなるのは誰なのか!?その結果は正解か不正解なのかぁああ!!?』

 

モノクマ『ワクワクでドキドキの投票ターイム!!』

 

モニターにスロットが表示される。

ドラムロールと共にリールの回転速度が落ちていき、マナの顔のドット絵が3つ揃った所でリールが止まった。

その直後、正解を褒め称えるかのように、はたまた私の潰し合いを嘲笑うかのように、歓声と共に大量のメダルが吐き出された。

 

 

 

《学級裁判 閉廷!》

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

残り6名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

以上11名

 

 

 

 

 



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非日常編④(オシオキ編)

昨日、午前0時。

寄宿舎のラウンジに、二つの影があった。

一つは【超高校級の泥棒】知崎蓮、一つは【超高校級のAI】リカのものだった。

知崎は、ラウンジのソファーにふんぞり返ってリカに尋ねる。

 

「ねえリカちゃん、ボクをこんな所に呼び出して、一体何の用?」

 

「知崎クン、お願いがあるのデス。アテクシをーーーーー…

 

 

 

ーーー

 

 

 

そしてその翌日、14時25分。

知崎は、植物庭園で燻製器を焚いていた。

 

「……さーてと。これで下準備は万端っと」

 

知崎が燻製器を焚くと、植物庭園の中はあっという間に煙で充満し、監視カメラにも映らなくなった。

すると知崎は、その状況を利用して一瞬で早着替えをして白瀬の格好になった。

白瀬の格好をした知崎は、懐からサバイバルナイフを取り出す。

 

「【超高校級の絶望】は燃え盛る炎の中で殺されて、皆は犯人を探すために奮闘。黒幕を殺したボクは糾弾されて、キラキラのお星様!絶望は死んだ、でもボク達の戦いはこれからだ!……うん、我ながら最高の茶番だね。ふふふ、残念だったねクマちゃん。ボクはこのままトンズラこくから。キミ達になんか殺されてやらないよ」

 

知崎は、白瀬の格好をして満足げに笑っていた。

知崎の目的、それはモノクマを出し抜いてこのコロシアイを終わらせる事だった。

絶望の象徴である白瀬クロヱに大勢の視聴者の前で『死』を与え、人々を絶望から解放する。

そして黒幕と自分の死を、他の生きている仲間達の糧にする。

『自らの手で絶望を終わらせる』、それが今回の彼の殺人の目的だった。

知崎が上機嫌で笑っていると、植物庭園に聲伽が駆けつけてきた。

聲伽は植物庭園の中で火事が起こっていると勘違いしてスプリンクラーのスイッチを押し、中に入っていた燃料を撒いた。

 

「おっ、マナちゃん来た来た。さて、やりますか!うぷぷぷ、イッツアショータイム!!」

 

そう言って知崎がチャッカマンを点火した、その瞬間だった。

 

 

 

ゴオッ

 

 

 

「!?」

 

突然チャッカマンの日が気化した燃料に引火し、あっという間に燃え広がって大爆発を起こした。

するとその爆発で、植物庭園の監視カメラが壊れる。

知崎はこの時、初めて気がついた。

自分が持ってきた燃料は灯油ではなくガソリンだという事に。

だが、気付いた時には既に遅かった。

 

 

 

ブーーーッ ブーーーッ ブーーーッ

 

 

 

『監視カメラの破壊は校則違反です。処刑を開始します』

 

そのアナウンスが鳴り響いた、その直後だった。

一瞬にして槍と雷が降り注ぎ、そして……

 

 

 

ザシュザシュザシュッ

 

 

 

ドカァアアアアアアン

 

 

 

処刑が終わると、そこには槍で刺された丸焦げの身体があった。

辛うじてまだ息があった知崎は、弱々しい声で呟く。

 

「………ははっ、まあお似合いの展開、か」

 

その言葉を最後に、【超高校級の泥棒】知崎蓮は息絶えた。

モノクマを出し抜いてオシオキされる事なくコロシアイを終わらせるつもりが、呆気なくモノクマに処刑された。

あまりにも皮肉で虚しく、絶望的な最期だった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

VOTE

 

聲伽愛 5票

 

知崎蓮 1票

 

 

 

『うぷぷぷぷ、お見事大正解ー!!【超高校級のAI】リカサンに電流流しまくって殺したのは【超高校級の泥棒】知崎蓮クン、そして【超高校級の泥棒】知崎蓮クンに校則違反をさせて殺したのは【超高校級の幸運】聲伽愛サンでした!!』

 

『ギャハハハハハ!!!まさかの5連続正解かよポウポウ!!いやぁーしっかしテメェらひでーなぁ!!わざとじゃなかったってのにあっさり愛ガールに投票するんだもんなぁ!!テメェらの友情なんか、シャボン玉みてぇに軽くて脆かったんだナァ!!』

 

「違う!うちが投票するごと頼んだっちゃん!」

 

『ハッハァ、それにしても…おいおいヒーローガール!!クロの愛ガールですら自分に投票してたのに、蓮ボーイに投票するなんてテメェどういうつもりだアァン!?』

 

「う、うう…うう……!!」

 

「ごめん…ごめんね緋色ちゃん。ごめんなさい……!」

 

私のせいだ。

私が灯油とガソリンのラベルを入れ替えたから。

私が知崎君の花粉症を悪化させたから。

私が余計な事をしたから…!

 

こんなの、私がマナを殺したようなものだ。

私がマナを…

今まで私を助けてくれた子を、初めて友達になってくれた子を、殺した。

私は、私は………!!

 

「そんな事より!!知崎さんがリカを殺したのはどうしてだったんです!?リカに恨みでもあったんですか!!」

 

目野さんは、リカが殺された事に対して憤っていた。

目野さんにとって、リカは娘も同然だったんだ。

家族を突然奪われて、黙っていられるわけがなかった。

すると加賀君が、俯いて珍しく悲痛そうな表情を浮かべながら言った。

 

「………おそらく、リカが自分を殺すよう知崎に頼んだんだ」

 

「え………?」

 

「リカはわかっていたんだ。初めから、この学園生活に『白瀬クロヱ』なんていう人物は参加していないという事、別の誰かがこのコロシアイを仕組んだという事を。このままでは、コロシアイを望む誰かに自分のデータが悪用されて、また誰かがコロシアイをしてしまうかもしれない。そうなったら、全員で生きて脱出するのは絶望的になる。だからこそリカは、データをコロシアイに悪用されるくらいならと、知崎に自分を殺すよう頼んだんだ」

 

「そんな…!!う、嘘ですそんなの!!」

 

私は、加賀君の話を聞いてようやく納得した。

どうして加賀君の研究室にいるはずのリカが、研究室の異変を私達に報告しなかったのか。

この計画は、リカが知崎君に持ちかけたものだった。

研究室に侵入されて殺されるのは計画の内だったのだから、それを私達に報告しないのは当たり前の事だったんだ。

 

「おそらく知崎は…俺達の邪魔をするフリをして、実はここにいる誰よりも、この悪趣味なコロシアイを終わらせようと努力していたんだ。今思えば、モノクマ達が俺達にコロシアイ学園生活を強要してきた時、一番反発していたのは奴だった。奴はこのコロシアイ学園生活が始まった時から、自分の死をもってコロシアイを終わらせる事を考えていたのだろうな」

 

「…………」

 

加賀君の言う通りだった。

今思えば、知崎君は今までの裁判で、ずっと私達を生かす為に動いていたように思える。

最初にわざとモノクマ達を怒らせたのは、モノクマ達を怒らせたらどうなるのかを自分の身を挺して実験する為。

面倒臭がり屋のくせに最初の殺人が起こる前のパーティーの手伝いに積極的に参加していたのは、パーティー中に殺人が起きないかどうか見張る為だった。

小鳥遊さんに動機DVDの内容を伝えに行こうとした越目君を非難したのは、動機DVDが原因でコロシアイが起こるのを防ぐ為だった。

三回目の殺人が起こる前に闇内君と一緒にふざけたのは、コロシアイを止めようとしている闇内君の気持ちを汲んだから。

異世界で脱出チケットのカード化を解いたのは、私達を現実世界に帰さない事でコロシアイを防ぐ為だった。

今までの裁判で犯人がわかっていたにもかかわらず言わなかったのは、奮闘虚しくクロになってしまった人に一秒でも長く生きていて欲しかったから。

今思えば、小鳥遊さんが知崎君をスケープゴートにしたのは、おそらく彼がコロシアイを止めようとしているのに気付いたからだろう。

私達は彼をずっと非難してきたけれど、それすらも彼の狙い通りだった。

『皆には一秒でも長く生きていてほしい』、あれは紛れもない本心だった。

知崎君は、自ら悪役を演じて、自分を犠牲に私達を生かそうとしていたんだ。

 

「な、何じゃと…!?じゃあ奴が今までしてきた事は…!!」

 

「…全部、俺達のヘイトを集める為の演技だった。きっと知崎君は、誰よりも俺達を生かそうとしていたんだよ」

 

「……………」

 

秋山君が言うと、私達は全員黙り込んでしまった。

私は知崎君を非難してきたけど、誰よりもコロシアイを止めようとしていたのは彼の方だった。

感情だけが先走って何もできなかったばかりかマナを犯人にしてしまった私には、彼を責める資格なんて無かったんだ。

 

『ギャハハハ!!テメェら、何かオレ様にガチ惚れ濡れ濡れのギャルのパンティみたくしっとりした空気醸し出してるけどよ!!テメェら何か忘れてる事無えか!?』

 

「忘れてる事…?」

 

『オシオキだよ!!O!!SHI!!O!!KI!!裁判の敗者には潔く退場してもらわねぇとなぁ!!』

 

「まっ、待って!!お願いやめて!!マナは、マナは悪くないの!!」

 

「緋色ちゃん……」

 

「だってあんなの…っ!あんなの不可抗力じゃない!私がラベルを入れ替えたりなんかしなければ、私が知崎君にティッシュをあげたりなんかしなければ、知崎君は間違えてガソリンを使ったりなんかしなかった!!私が…私が知崎君を殺したようなものよ!!だからオシオキされるのは私のはずでしょ!?」

 

『うぷぷ、なーにを言っちゃってるんですかね!今回のクロは、スプリンクラーのスイッチを押してガソリンをぶちまけた聲伽サンだよ!オマエラ、皆聲伽サンに投票して正解したじゃん!今更裁判の結果は変更できませーん!』

 

ふざけるな。

そんなの、認めない。

罷り通っていいわけがない。

マナは何も悪くない。

火事を止めようと思ってスイッチを押しただけ。

知崎君を殺そうと思ったわけじゃない。

それで処刑されるなんて間違ってる。

許されるわけがない。

 

「ふざけるな!!こんなの…こんな裁判無効よ!!マナは犯人なんかじゃない!!そもそも、校則違反したからって知崎君を殺したのはあんた達…「緋色ちゃん」

 

私が叫ぶと、マナが止めに入った。

マナは、悲しそうな目をしながら精一杯の笑顔を浮かべていた。

 

どうして…?

これから殺されるのよ?

なのに、どうしてそんな顔ができるのよ…!

 

「あんね、うちね…うちがクロで良かったっちゃ思うとーっちゃん。うちがスプリンクラーんスイッチば押しゃんやったら、他ん誰かが押しとったかもしれん。そしたら、そん人がクロになってしもうてたわけやろ?これで良かったっちゃん。うち、これ以上誰かが死ぬところば見とうなかったけん…うち、今まで皆ばろくな目に合わしぇてこんやったけど、今回は皆ば守れた。最高の幸運だよ」

 

「ちっとも良くないわよ!!あなたが死ぬじゃない!!」

 

「うん、そうやな。ごめんね、緋色ちゃん。一緒にここを出るって約束、守れんやったね」

 

マナは、悲しそうな笑みを浮かべながら私に歩み寄ってきた。

…やめてよ。

そんな顔しないでよ。

私の気持ちはどうなるのよ!?

 

「緋色ちゃん。うち、緋色ちゃんの事好いとったよ」

 

マナが悲しそうな笑みを浮かべながら私に抱きついてくると、私はここにきて初めて自分の気持ちに気がついた。

多分私も、マナの事が好きだったんだ。

友達として好きだったのか、それとも恋愛感情だったのか…

…もしかしたら、両方かもしれない。

マナは、私に特別な感情をくれた。

いつでも私の味方でいてくれた。

マナの優しさには何度も救われた。

私は……………

 

「緋色ちゃんは強うて優しいけん、これからも皆を引っ張っていくるて思う」

 

「私が……優しい…?」

 

「そうだよ。だって緋色ちゃんは、うちん為に泣いてくれとーやろ?……やけん緋色ちゃんは、うちみたいにならんでな」

 

「…………!!」

 

私はその言葉を聞いて、自分の無力さに打ちひしがれた。

私がかつてマナに放った『私のようにはならないで』という台詞が、今になって自分に返ってくるだなんて、思いもしなかった。

マナは私の強さが羨ましいと言っていたけれど、そんな事はない。

本当に強いのは、マナの方だった。

私は、館井君の言う通り、何もできずに皆が死ぬのを見ている事しかできなかった臆病者だ。

私達を生かす為にオシオキを受け入れたマナのようには、強くはなれない。

 

「それじゃあね、皆。絶対、今度こそ全員で脱出してね」

 

「う、ううう…!!」

 

何が『全員で脱出してね』よ…!

その『全員』にあなたが含まれていないんじゃ、何の意味もないじゃない…!!

 

『うぷぷ、それじゃあもう思い残す事もないみたいですし?そろそろファイト一発やっちゃいましょうかブラザー!!』

 

『OH YEAH!!ヘイ喜べリスナー諸君!!今回も張り切ってやってくぜYEAHHHHH!!』

 

「…………いやだ」

 

モノクマとモノDJが上機嫌でオシオキの準備をすると、マナは俯いたままぽつりと呟いた。

マナは、俯いたままガタガタと震えていた。

 

「いやだいやだいやだいやだ!!うち、やっぱり死にとうなか!!」

 

「マナ…!!」

 

マナは、絶望で顔を真っ青にして泣き喚きながら暴れた。

マナだって、本当はここから皆と一緒に出たかったはずなのに。

ここから出て、まだやりたい事があったはずなのに。

私のせいで…私がマナを……

 

『今回は、【超高校級の幸運】聲伽愛サンのために!!』

 

『スペシャルな!!オシオキを!!ご用意しました!!!』

 

『『ではでは、オシオキターイム!!!』』

 

「うぁあああああぁああああああああああああああ!!!!!」

 

無情にもモノクマとモノDJの声が鳴り響く中、マナはその場で膝をついて大声で泣き叫んだ。

マナの悲痛な叫び声が、裁判場に響き渡った。

モノクマはピコピコハンマーを取り出して、一緒に出てきた赤いボタンをハンマーで押した。

ボタンに付いている画面に、ドット絵のマナをモノクマとモノDJが連れ去る様子が映っていた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

GAME OVER

 

コエトギさんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

ーーー

 

 

 

聲伽は、首に首輪をつけられると、そのまま上へ上へと引っ張り上げられる。

腐和は、引っ張り上げられる聲伽の方へと必死に走っていった。

踏み込んだ拍子にヒールが折れるのも気に留めず、聲伽の方へと手を伸ばした。

 

 

 

だが、伸ばした手は届かなかった。

引っ張り上げられる聲伽の頭からは、彼女のトレードマークでもあるベレー帽が落ちた。

聲伽を追いかけて手を伸ばした腐和は、手を伸ばした勢いで転び、転んだ場所にベレー帽が落ちた。

もう一度追いかけようとしたその時には、聲伽は既に手を伸ばしても絶対に届かない高さへと引っ張り上げられていた。

 

 

 

ーーー

 

補習

 

【超高校級の幸運】聲伽愛 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

聲伽が連れてこられたのは、どこかの教室だった。

聲伽の背後ではガンッ、ガンッと金属と金属がぶつかり合うようなうるさい音が鳴り響き、音が鳴ると同時に教室全体が揺れる。

聲伽は、学校によくあるタイプの席に座らされ、顔を真っ青にして冷や汗を浮かべていた。

その正面では、モノクマとモノDJが黒板に絵や文字を書いて保健体育の授業をしていた。

聲伽の背後では、巨大なプレス機が規則的に降りる、打つ、上がるという単純作業を繰り返し、うるさく単調なリズムを刻んでいた。

プレス機の造形も、どこか断頭台を思わせる造形をしており、これから聲伽が迎える末路を物語っていた。

聲伽の席はベルトコンベアの上に設置されており、少しずつ背後のプレス機に近づいていく。

 

プレス機が鳴る度、一歩、また一歩と死が近づいていく。

今までのオシオキと違って肉体的な苦痛は無かったが、プレス機が刻む単調なリズムが、迫り来る確実な死を告げる。

少しずつ死が近づくという感覚が、ゆっくりと、しかし確実に聲伽の精神を削っていく。

それは正しく処刑までの時を刻む鐘の音だった。

 

 

 

ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッ

 

 

 

プレス機が教室を揺らす程の衝撃を生み出しながら下の鉄板を打ち続け、ベルトコンベアはゆっくりとプレス機に近づいていく。

1mm、また1mmと確実に死が近づいていく。

プレス機までの距離が1mを切り、耳が痛くなる程の音が背後で響く。

これから死にゆく聲伽に対して、モノクマとモノDJは『生命の誕生』と書かれた黒板を見せて保健体育の授業をし、彼女がこれから迎える末路を皮肉った。

決して死の恐怖と絶望からは逃さないよう、ベルトコンベアはゆっくりと聲伽を死へと導いていく。

プレス機へ近づけば近づくほど、聲伽は表情に恐怖を募らせ、呼吸と脈拍が多くなっていく。

身体の奥で、うるさい程に心臓が鼓動する。

死に近づけば近づくほど、身体は、本能は、生き急ごうとする。

身体中の血を、汗を、息を速く走らせていく。

 

降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる。

 

その不気味なまでの単純作業が、決して逃れられない運命を、現実を突きつける。

80cm、70cm、60cm、50cm…………。

少しずつ、死との距離が縮んでいく。

 

とうとうプレス機との距離が10cmを切り、授業をしていたモノクマとモノDJが慌てふためく。

もう逃げられない事を悟った聲伽は、顔を真っ青にして涙を流しながら目を瞑った。

そして、プレス機がぐぁっと上に上がる。

プレス機が上に上がった直後、ベルトコンベアに乗った聲伽がプレス機の真下に来る。

すると、今まで一定のリズムでプレスを繰り返していたプレス機が、聲伽の頭上でピタリと止まる。

聲伽が、恐る恐るゆっくりと顔を上げた、その直後だった。

 

 

 

ガンッ

 

 

 

プレスの音と共に、ぐちゃりと潰れる音が聞こえる。

その瞬間、プレス機の下からは赤い液体が潰れたトマトのように飛び散った。

その後もプレス機はけたたましい音を立てながら下の鉄板を打ち続け、どこからか夕陽が差し込んで真っ赤な液体に染まったプレス機を逆光で照らしていた。

 

 

 

 

 

『『エクスカリバーーーーーーー!!』』

 

「ひぃいいいいいい…!!」

 

「そんな…嘘じゃろ…?聲伽ぃ…!!」

 

「聲伽さん…」

 

「………すまない、聲伽」

 

「うっ…うう…う゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

マナが死んだ。

ここで目を覚ました私に初めて話しかけてくれたあの子が、

私が絶望に打ちのめされそうになった時に何度も助けてくれたあの子が、

一緒にここから出ようと約束してくれたあの子が、

私にとっての希望だったあの子が………死んだ。

 

もう何も考えられない。

考えたくない。

もう、ここから出ようという希望すら見えてこない。

生きたいとすら思えない。

こんな事なら、知崎君を助けたあの時、巻き込まれて死んでおくんだった。

私は……………

 

 

 

『うぷぷぷぷ、いやぁ〜流石の腐和サンでもこれは耐えられなかったみたいだね!あー楽しかった!』

 

『ギャハハハハ!!アドレナリン100%だぜYEAH!!それにしてもテメェらよく頑張ったな!!イケメンハンサムボーイのオレ様が特別に誉めてやらァ!!ホラホラ惚れちまってもいいんだぜ!?女性陣は体育館裏に集合か!?んん〜!?』

 

「貴様ら……」

 

『ギャハハハ!!テメェらには裁判を乗り越えた褒美にメダルをプレゼントしてやるから、ジャンジャン有効活用しやがれってんだ!!』

 

「う゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!!あ゛ぁ゛あ゛あ゛!!」

 

「腐和……」

 

「無理もない。俺達は今まで、腐和に頼りすぎたんだ。一人に頼りきりにしていた代償だ」

 

皆が私を心配していたけれど、私はもう何も考えられなかった。

今はただ、感情に任せていなきゃやってられなかった。

そうじゃなきゃ、壊れてどうにかなってしまいそうだった。

すると、秋山君が私に歩み寄ってきた。

 

「……腐和さん。大丈夫だよ。俺達がついてるから。俺達じゃ聲伽さんの代わりになれないかもしれないけど、俺達も君の力になりたいんだ」

 

「おうおう!!そうじゃぞ!!ワシらは仲間ではないか!!」

 

「生きて全員でここから出ようと言ったのは君だ。忘れたとは言わせんぞ」

 

「わ、私も、今さっきの事ですし…」

 

「皆………」

 

皆は、感情に任せてただ泣き喚いていた私のフォローをしてくれた。

秋山君は響さんを、古城さんは闇内君を、加賀君と目野さんはリカを失ってつらいはずなのに…

それでも、こんな私を支えようとしてくれてる。

…ようやく、頭が冷えてきた。

私は、一時の感情に任せて、マナが私に託してくれた最後の約束さえ忘れてしまうところだった。

私にはまだ、こんな私と一緒にここから出たいと思ってくれている仲間がいる。

……いつまでもこんなところで立ち止まってなんていられない。

生きなきゃ。

立ち上がらなきゃ。

マナの分まで、この罪を背負っていかなきゃ。

 

「……ごめんなさい、皆。もう大丈夫よ。大丈夫だから…」

 

私は、涙を拭いながらも立ち上がった。

私は、マナと最後に交わした約束を果たす。

ここから出るまでは、私が、皆を引っ張っていくんだ。

 

『うぷぷぷぷ!はぁ〜〜〜くっさ!!オマエラ密室でオナラしちゃいけませんって人に習わなかったの?って、あ、違った。臭いのはオマエラの友情ごっこだったね!』

 

「モノクマ…あなた達が何をしようと、私達はもうコロシアイなんかしないわ」

 

『ふーん、あっそ。じゃあもうオマエラコロシアイしなくていいよ』

 

「ハッハァ!!そうやって脅そうったって無駄ですよ!!私達は仲間の死を乗り越えて鋼の精神を手に入れたのです!!今更どんな脅しにも屈しな………」

 

目野さんは、腰に手を当てて大笑いした。

だがその直後、そのポーズのまま笑うのをやめて数秒考え込む。

そして……

 

「ほぇえええええええええ!!!?こ、コロシアイしなくていいんですか!?えっ、ナンデ!?」

 

目野さんは、ものすごい顔芸を披露しながら驚いていた。

…うん、うるさいし顔芸は酷いけど私も思ってる事は多分同じだわ。

私がそんな事を思っていると、秋山君が片眉を上げながら尋ねる。

 

「一体どういう風の吹き回し?今まであんなにコロシアイをさせる為に脅してきたくせにさ」

 

『うぷぷぷ、いやぁー実はぶっちゃけちゃうと知崎クンが黒幕をぶっ殺しましたーなんて茶番をやっちゃったせいで、視聴者ももうお開きモードになっちゃっててさ。だから予定はちょっと早いけど、オマエラには最後のゲームをやってもらう事にしました!あ、言っておくけど、今からは誰かを殺しても外には出られないからね?』

 

「いよいよ最終局面という事か…で?大体察しはつくが、そのゲームとは何だ」

 

『ギャハハハハ!!!ズバリ!!最後の裁判では、『黒幕は誰か』、そして『このコロシアイは何の目的で行われているのか』を議論してもらうぜYEAH!!』

 

「…………!」

 

『んじゃあ、今から最終裁判のルールを説明していくから耳かっぽじってよーく聞いとけよ!!今から一定時間、最終裁判に向けた捜査時間を設けるぜ!!んでその後、テメェらには『黒幕は誰か』、そして『このコロシアイが行われた目的は何か』を議論してもらう!!見事正解したら黒幕以外は全員晴れて卒業!!だが間違えたら、全員オシオキ!!っつーわけだ!!ドゥーユーアンダァスタァン!!?』

 

「……なるほど。黒幕との直接対決というわけか」

 

モノDJがルールを説明すると、全員が私の顔を見てくる。

私は、皆の顔を見ながら、力強く頷いた。

私の気持ちは、最初から決まっている。

 

「望むところよ。絶対に、真実を解き明かしてみせるわ」

 

私は、もう折れない。

マナのように…今まで思いを託してくれた皆のように、強くなるんだ。

必ず黒幕とコロシアイの目的を暴いて、皆で卒業する。

…それがマナに、今まで亡くなっていった皆に、生きている私達が唯一してあげられる事だから。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

???の個室

 

ふふふ、いやぁここまで長かった。

まさかここまでとんとん拍子でコロシアイが進んでいくとはね。

やっぱり、記憶を消される前の腐った性根が影響しているのかな?

…でも真実を知った時、あいつらがどういう反応をするのか…楽しみだなぁ。

 

 

 

 

 

Chapter5.この素晴らしい世界に絶望を! ー完ー 

 

Next ➡︎ Chapter.6 All We Need Is Justice

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『幸運のベレー帽』

 

Chapter5クリアの証。

聲伽の遺品。

両親からスカウト祝いに贈られた。

彼女の将来への願いが込められている。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

残り5名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

以上12名

 

 

 

 

 



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未来ヶ峰学園生徒名簿・3
未来ヶ峰学園生徒名簿・3


生徒名簿(自己紹介順)

 

「一警察官として、今ここであんたを現行犯逮捕してあげるわ!!」

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

「それは違うわ!!」

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ) ICV:山崎和佳奈 

 

性別:女性

身長:176cm(ヒール込み:183cm) 体重:60kg 胸囲:88cm 血液型:A型

誕生日:1月10日(山羊座) 年齢:18歳 利き手:左

出身校:乾坂学院高校 出身地:東京都

趣味:紅茶の飲み比べ、読書

特技:射撃、柔道、口喧嘩

好きなもの:紅茶、スコーン、ミステリー

嫌いなもの:コーヒー、犯罪

家族構成:父

得意教科:体育、数学、英語

苦手教科:世界史

イメージカラー:カーマイン

容姿:ワインレッドのロングヘアーに緋色の瞳。髪をハーフアップにしており、蝶の髪飾りで留めている。頭頂部から触角が生えている。Eカップ(闇内スカウター)

服装:女性警官の制服。黒タイツと黒いピンヒールのパンプスを履いている。

パンツ:黒のTバック。あくまで機能性重視。

人称:私/あなた/男子:苗字+君、女子:苗字+さん(例外:聲伽とネロは名前呼び捨て)

現状:生存

 

本作の主人公。極道の一人娘でありながら史上最年少で警察官に採用され、ギフテッド制度により10代にして警部補まで出世した天才。30年以上も警察から逃れ続けた殺人鬼を捕らえた功績から一躍有名になり、彼女の管轄では重要犯罪の検挙率は99.9%を誇っている。特に銃の腕に関しては天才的で、本人の凛々しさも相まって『警察界のカラミティ・ジェーン』と呼ばれている。

本人は少し正義感が強いだけの常識人を自称しているが、ここぞという時の度胸はメンバーの中で誰よりも強く、クラスメイトを助ける為なら自分が傷つく事も厭わない献身的な精神の持ち主。その出自故か喧嘩は口でも腕でも負けた事が無く、彼女を本気で怒らせたら誰も口答えできない。メンバーの中では精神年齢が高く、基本的に何でもそつなくこなせる優等生タイプ。また、本人は全く自覚していないが、実は女性陣の中で一番美形。とある理由で【超高校級の絶望】を追っており、今回の事件も【超高校級の絶望】が関わっていると踏んでいる。

モノクマ達を怒らせてオシオキされそうになった知崎を庇って重傷を負ったものの、加賀と小鳥遊の尽力により一命を取り留め、コロシアイ生活の主要人物となっていく。聲伽を失って心に深い傷を負ったが、秋山達のおかげで希望を取り戻した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「うちらこげん仲良うなれたけん、絶対何とかなるよ!」

「その言葉、斬っちゃうよ!」

「それは違うよ!!」

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな) ICV:佐倉綾音

 

性別:女性

身長:164cm 体重:49kg 胸囲:84cm 血液型:B型

誕生日:9月2日(乙女座) 年齢:15歳 利き手:右

出身校:躑躅原高校 出身地:福岡県

趣味:食べる事、寝る事、おみくじ

特技:運を使ったゲーム(ただしその後必ず大損する)

好きなもの:和食、クジ、占い、玄米茶

嫌いなもの:牡蠣、キノコ、三輪車

家族構成:父、母、祖父、祖母

得意教科:体育、家庭科

苦手教科:数学、物理、化学

喜ぶプレゼント:クローバーのヘアピン、高級納豆、フォーチュンクッキー

苦手なプレゼント:エロ本、タバコ、キノコ栽培キット

イメージカラー:アクアブルー

容姿:水色のショートヘアーにくりっとした青い瞳

服装:水色のブローチがついた紺色のベレー帽を被っており、帽子と同じ色のセーラー服を着ている。黒のハイソックスに黄色いスニーカー。右手にミサンガをつけている。

パンツ:シンプルな無地の白いショーツ。安ければ何でもいいらしい。

人称:うち/キミ/男子:苗字+くん、女子:苗字+ちゃん(例外:腐和は『緋色ちゃん』、ネロは『ネロくん』)

現状:死亡(5章クロ)

 

腐和に一番最初に出会った少女。全国の平均的な高校生の中から抽選で選ばれた。奇跡とも言うべき幸運を引き寄せる力があるが、一度幸運が起こると必ずそれが全てチャラになる程の不運が降りかかる体質。逆にその性質を利用して、あらかじめわざと不運を被って運を貯めておく事でここぞという時に狙って幸運を発揮する事もできるらしい。

腐和の相棒的ポジションで、本人も腐和のバディを自称している。本人曰く三代続く博多っ子で、博多弁で喋るのが特徴的。天真爛漫を絵に描いたような性格で朗らかだが、悪い意味でも裏表が無く思った事を直球で言ってしまう悪癖がある。重度の天然で、うっかり要件を忘れてしまったり何も無いところで転んだりするドジっ子。その体質故かお色気ハプニングを多発し、本人がさほど気にしていない事も拍車をかけて知崎と闇内のオイタのターゲットになる事が多い。

初めて出会った腐和に懐いており、一緒に行動する事が多い。仲間の死を乗り越えて精神的に成長していき、裁判の議長である腐和を支える重要なポジションとなっていった。しかし、無自覚のうちに知崎を校則違反で殺してしまい、クロとして処刑された。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「困った時はお互い様だろ?いつでも気軽に声かけてよ」

「その言葉、打ち返すよ!」

 

【超高校級のバレーボール選手】 玉越(たまこし)(つばさ) ICV:真堂圭

 

性別:女性

身長:183cm 体重:70kg 胸囲:83cm 血液型:O型

誕生日:2月9日(水瓶座) 年齢:17歳 利き手:右

出身校:桜苑女子学院高等部 出身地:埼玉県

趣味:バレー、食べ歩き

特技:球技全般、家事

好きなもの:バレー、幕の内弁当、カフェラテ

嫌いなもの:水飴、タバコ

家族構成:弟三人

得意教科:体育、数学、現代文、英語

苦手教科:古文

喜ぶプレゼント:バレーボール、コーヒーセット、高級納豆

苦手なプレゼント:エロ本、タバコ、パチパチキャンディー

イメージカラー:オレンジ

容姿:オレンジ色のサイドテールに明るめの茶色の瞳。健康的な褐色肌のフィットネスビューティー。女子の中では一番背が高い。

服装:オレンジと紺を基調としたバレーのユニフォームの上に前の高校のジャージ。膝当てと短い黒のソックス、青いシューズを履いている。

パンツ:水色と白のストライプ。意外と可愛い系が好み。

人称:あたし/あんた、お前(特に男子)/男女問わず名前呼び捨て

現状:死亡(1章被害者)

 

海外の強豪チーム相手に完勝してオリンピックの出場枠を手にした女子バレーボールチームのリーダーで、人間業とは思えないプレーを平然とこなすバレーボール界の絶対女王。特に彼女の打つスパイクはその凄まじさ故に『戦艦大和』と呼ばれ、あまりのレベルの差に相手チームはわけがわからないまま試合が終わってしまうという。それでいて本人は至ってストイックで、チームメイトやファンを大切にしているので老若男女問わずファンが多い。

スポーツ万能で成績優秀なイケメン女子。コロシアイメンバーのリーダー的ポジションで、面倒見が良く明朗な性格故にメンバーからは姉のように慕われている。日本を代表するスポーツチームのリーダーを担っているからか、高校生とは思えないほど人としての器が大きく、会ってから数日しか経っていないメンバーの事に対しても分け隔てなく大らかに、時には適度に厳しく接する。小鳥遊とは前の高校からのクラスメイトで、話せない小鳥遊に代わって彼女がコミュニケーションを取っている。

当初はメンバーのリーダーとして皆を取り纏めていたが、彼女に嫉妬した響に殺害され、最初の被害者となってしまった。彼女の死をきっかけに、ドミノ倒しのように次々と殺人の連鎖が起こっていく事となる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「ん」

「あ…」

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい) ICV:小倉唯

 

性別:女性

身長:151cm 体重:45kg 胸囲:89cm 血液型:B型

誕生日:11月11日(蠍座) 年齢:17歳 利き手:右

出身校:桜苑女子学院高等部 出身地:千葉県

趣味:動物と話すこと、読書、花見

特技:治療、動物と話すこと、裁縫

好きなもの:トマト、ミルクティー、動物全般

嫌いなもの:手羽先、豚骨ラーメン

家族構成:父、母

得意教科:数学、化学、生物、家庭科

苦手教科:体育、国語

喜ぶプレゼント:猫のぬいぐるみ、クローバーのヘアピン、動物図鑑

苦手なプレゼント:エロ本、カラオケマイク、タバコ

イメージカラー:桜色

容姿:くるぶしまである白髪ツインテールにピンクの瞳。ロリ巨乳。アルビノ。女性陣で三番目に美形。

服装:ピンクの襟のセーラー服とクリーム色のセーター、紺のスカートの上に白衣。赤いチェックのマフラーで口元を隠している。黒タイツと茶色いローファーを履き、医療器具が入ったリュックを背負っている。

パンツ:高級そうな薄ピンクのフリルのショーツ

人称(筆談時):私/あなた/男子:苗字+君、女子:苗字+さん

現状:死亡(2章被害者)

 

かつては不治の病と呼ばれた動物の病気を完治させるワクチンの開発に成功して世界的に脚光を浴び、獣医界のパイオニアと呼ばれている。その他にも絶滅危惧種の保護活動や被災地での動物達の救護に力を入れていて、世界中の動物達を救う為に各国を転々としている。動物と意思疎通をする事ができ、特に猫とうさぎに思い入れが強い。世界的な名医の家に生まれ、幼い頃から両親のオペに立ち会ってきたため、動物だけでなく人間の医療知識も豊富。

過去の出来事がきっかけで口が利けず、基本的に一文字だけで意思疎通をする少女。どうしても伝えたい事がある時は、筆談を使う。筆談時は基本敬語。無口で表情を露わにするのが苦手だが心優しい性格で、話せないなりにコロシアイ生活でピリピリしているクラスメイトのケアをしようと努力している。医療従事者故に頭の回転が早く、核心を突く指摘をする事が多い。玉越とは前の高校からのクラスメイトで、自分の代わりにコミュニケーションを取ってくれる玉越を誰よりも信頼している。

親友だった玉越を失って憔悴していたところで動機DVDを発表され、秘密を守る為にDVDを見た越目を殺して学級裁判後のオシオキで全員を殺そうと画策していたが、返り討ちという形で越目に殺され計画は失敗に終わった。玉越同様、彼女の死が他のメンバーの心境に大きな変化を与える事になる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「ねえねえ、ここにいる人達皆【超高校級】なんだよねぇ?とっても不思議〜!」

「は?何言ってんの?」

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん) ICV:村瀬歩

 

性別:男性

身長:156cm 体重:45kg 胸囲:70cm 血液型:B型

誕生日:10月7日(天秤座) 年齢:不明 利き手:両手

出身校:不明 出身地:宮城県

趣味:知らないものを知ること、バッヂ集め

特技:イタズラ

好きなもの:イタズラ、百科事典、知育菓子、フ●ンタ

嫌いなもの:検閲、人参、靴下、ユリ(アレルギー)

家族構成:不明

得意教科:知らない事を学ぶのは好き

苦手教科:でも学校の勉強は嫌い

喜ぶプレゼント:エロ本、パチパチキャンディー、動物図鑑

苦手なプレゼント:高級納豆、タバコ、インビトロローズ

イメージカラー:ビリジアン

容姿:深緑のセミロングの髪に赤褐色の瞳。頭頂部から渦巻き状の毛が生えている。中性的で、女子のような顔立ち。八重歯。

服装:未来ヶ峰の制服の上に緑色のカーディガン。左胸に趣味のバッヂをつけている。素足に直接黒のローファー。大きな襷掛け鞄を肩にかけている。

パンツ:緑のトランクス。開放感がある方がいいらしい。

人称:ボク/キミ/男子:名前+おにい、女子:名前+おねえ(男女問わず名前+ちゃんで呼ぶ事も多い)

現状:死亡(5章被害者)

 

かの大泥棒アルセーヌ・ルパンの子孫で、『現代のルパン』と呼ばれている世界一の盗賊。彼に盗めないものは無いと言われ、どんな状況下でも予告状を出したものは必ず盗んできた。彼の真の恐ろしさは底の見えない貪欲さにあり、欲しいと思ったものなら秘宝だけでなく知識や記憶、他人の容姿や人格、果てには技能や超高校級の才能すらも盗んでしまう。彼に才能を盗まれた者は、二度と才能を発揮できなくなるばかりか自分がどんな才能を持っていたかすら思い出せなくなるといわれている。盗んだ容姿や人格、才能を器用に使いこなして警察の目から逃れてきた。その才能の特性故に記憶をほとんど全て奪われ、一般的な高校生にさせられている。ちなみに『知崎蓮』という名前は偽名で、本名は別にある。

自分が可愛い事を自覚しており、男子とは思えないほどあざとい。イタズラ好きで、隙あらば誰にでもイタズラをしようとするが、玉越に捕まって説教を受ける事が多い。女性陣に対するセクハラも頻繁に行うため、越目や闇内と一纏めにエロトリオと呼ばれている。自分が異端であるという自覚や人に迷惑をかける事への罪悪感は一切無く、才能が思い出せない事もあってあくまで『【超高校級】の皆に比べたらちょっと天才なだけの常識人』と言い張っている。その為、自分の事を棚に上げて闇内を変態扱いしたり目野を奇行種呼ばわりしたりとやりたい放題である。

モノクマ達を怒らせたらどうなるのか確かめる為にあえて挑発しその結果腐和を巻き添えにする、犯人がわかっているにもかかわらずあえて言わずに裁判を撹乱して無駄に長引かせる等の問題行動が目立っていたが、3回目の学級裁判の際にその正体が発覚する。リカを殺害した後、自らの死をもってコロシアイを終わらせようとしたが、不運が重なって聲伽をクロにしてしまった。

 

 

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「わかってるよ。やっちゃいけない事だって事くらいはな。でも、何でダメなのかがわかんねぇんだよ!!」

「その言葉、掻っ捌いてやるぜ!!」

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる) ICV:増田俊樹

 

性別:男性

身長:172cm 体重:68kg 胸囲:92cm 血液型:O型

誕生日:7月19日(蟹座) 年齢:15歳 利き手:右

出身校:古湖須調理専門高校 出身地:沖縄県

趣味:食べ歩き、料理

特技:料理、野菜ソムリエ

好きなもの:食に関する事全て

嫌いなもの:食い物を粗末にする奴

家族構成:父、母、祖父、祖母

得意教科:体育、家庭科

苦手教科:それ以外全部

喜ぶプレゼント:高級納豆、フォーチュンクッキー、キノコ栽培キット

苦手なプレゼント:メイク道具、実物周期表、タバコ

イメージカラー:朱色

容姿:朱色のポニーテールに焦茶色の瞳。三白眼。

服装:炎の柄の赤いバンダナを頭に巻いており、黒Tシャツと紺のジーンズに白い腰エプロンといった格好をしている。腰には調理器具や調味料を携帯する用のベルトをつけており、茶色いブーツを履いている。

パンツ:燃えるような赤のブリーフ。本人曰くアツいイメージ。

人称:オレ/オメェ/男女問わず名前呼び捨て

現状:死亡(3章クロ)

 

高校生にして世界的に高い評価を得ている美食家。目に留まった店にふらっと立ち寄って料理に対してコメントをし、店側がそのコメントを参考に改善するとどんな店でもたちまち行列の絶えない繁盛店になる。本人は食べるの専門だが作るのも好きで、趣味で始めたラーメン店はミシュランガイド三つ星、彼が監修したレシピ本は発売後10分と待たずに完売し今は重版待ち。未来ヶ峰学園に入学後は、学食の調理に携わる契約をしている。

グルメな熱血漢。食に対する情熱が強く、センブリ茶やシュールストレミング、サルミアッキといった食材に対しても美味しく戴く為の研究を惜しまない。食に関しては一切妥協を許さず、自分の作った料理が少しでも気に入らないと周りが美味しいと感じる出来栄えでも自虐に近い酷評をする。基本的には誰に対しても分け隔てなく朗らかに接する好青年だが、偏食や食べ残しに敏感で、アレルギーや宗教的な理由など、よっぽどの理由が無い限りは敵意を剥き出しにしてくる。少し天然が入っており、食に関する事以外はかなり知識が疎い。本作のおバカ枠その1。

実は、世間を騒がせていた『二代目ジャック・ザ・リッパー』と呼ばれる殺人鬼。主に10歳未満の子供と10〜40代の女性をターゲットに殺人を行い、首を切って晒して胴体はどこかへ持ち去るという犯行に及んできた。実は食人目的で殺人を行っており、警察が総出で探しても胴体が見つからなかったのは胴体を骨一本も残らず食らい尽くしていたため。

聖蘭を食べる為に殺してそれを邪魔しようとした闇内を殺害したが、結局目当ての聖蘭を一口も食べる事ができずにオシオキされるという自業自得な末路を迎えた。

 

 

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「オレちゃんがオススメのメイク教えてやっから、興味あったらいつでも声かけな」

「メイクアップしてやろうじゃん!」

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた) ICV:古川慎

 

性別:男性

身長:181cm 体重:76kg 胸囲:93cm 血液型:O型

誕生日:5月8日(牡牛座) 年齢:15歳 利き手:左

出身校:日之出高校 出身地:香川県

趣味:メイク、ファッション雑誌チェック、サイクリング

特技:メイク、動画編集

好きなもの:コーラ、唐揚げ、流行りのもの

嫌いなもの:カレーうどん

家族構成:母、姉二人

得意教科:美術、家庭科、保健体育

苦手教科:座学教科全般

喜ぶプレゼント:エロ本、メイク道具、クローバーのヘアピン

苦手なプレゼント:高級納豆、実物周期表、タバコ

イメージカラー:金色

容姿:ピンクのメッシュが入った金髪に碧眼。褐色肌。かなりのイケメン。

服装:黒のタンクトップに紫のタイトジーンズ、ピアスやネックレス、ブレスレットや腕時計などを着用。腰にはメイク道具が入ったポーチとアクセサリーをつけており、ピンクと緑を基調としたスニーカーを着用。自分で研究したメイクを施している。

パンツ:南国のような柄のボクサーパンツ。最近の流行りらしい。

人称:オレ、オレちゃん/キミ(女子)、お前(男子)/男子:苗字呼び捨て 女子:苗字+ちゃん(例外:ネロだけ名前呼び捨て)

現状:死亡(2章クロ)

 

高校生にしてSNSで話題沸騰中で、世界一人気のメイクアップアーティスト。数年前にメイク講座の動画をアップしたのが反響を呼んで、今では彼のメイクが流行の最前線になっている。彼が公開講座で紹介したメイク道具は、数ヶ月待たないと手に入らない、世界で最も入手しづらい化粧品になっている。老若男女誰でも楽しめるメイクの普及を目指し、年齢層に合わせたメイクを日々研究している。

よく言えば気さくでノリの良い、悪く言えばチャラチャラした男子。自他共に認めるイケメンで、SNS上では女子高生に大人気のインフルエンサーなのだが、何故かコロシアイメンバーの女性陣には全くモテない。女子の中では腐和と玉越がお気に入りで、よく声をかけており、知崎や闇内と一纏めにエロトリオと呼ばれている。しかし他の二人とは違ってモラルのあるチャラ男をモットーとしているため、女性陣にセクハラは絶対にしない。他のメンバーに比べると割と常人に近い感性を持っているが、軽率な行動が目立ち、的外れな発言をする事が多い。本作のおバカ枠その2。

小鳥遊の動機DVDを見てしまい、それを本人に伝えに行った事で殺されそうになったが、逆に彼女を殴り殺してしまった事でクロとなった。最期は必死で逃げようとしたものの結局オシオキされた。

 

 

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「私はただ、我らが父の御言葉に従って救いを求めている人々に手を差し伸べただけですわ」

「主に背く不届き者に裁きを!!」

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア ICV:早見沙織

 

性別:女性

身長:168cm 体重:57kg 胸囲:97cm 血液型:AB型

誕生日:9月8日(乙女座) 年齢:16歳 利き手:右

出身校:聖クリスティーネ修道院高校 出身地:長崎県

趣味:奉仕活動、掃除

特技:歌、オルガン演奏

好きなもの:パン、デラウェア、リンゴジュース

嫌いなもの:肉類、巨峰

家族構成:父、母

得意教科:音楽、英語、現代文

苦手教科:体育、数学、古文

喜ぶプレゼント:インビトロローズ、ブルーベリーの香水、聖書

苦手なプレゼント:エロ本、携帯ゲーム機、タバコ

イメージカラー:ミントグリーン

容姿:緑色のロングヘアーに緑の瞳。口元にホクロがある。女性陣の中で一番巨乳で、腐和の次に美形。

服装:金色の十字架の刺繍が施された紺色のシスター服のようなドレス。白い手袋をつけている。常にロザリオを握っている。黒いタイツとパンプスを着用。

パンツ:聖水で清められた白い紐パン。修道院で支給されているものらしい。

人称:私(わたくし)/あなた/男女問わず苗字+様

現状:死亡(3章被害者)

 

敬虔なクリスチャンで、裕福な家庭で育ちながらノブレスオブリージュの精神を忘れず、貧しい人々に献身的に寄付をしているシスター。最初は【超高校級のシスター】としてスカウトされる予定だったが、彼女に施しを受けた人々が彼女を神格化し、彼女を崇めた新興宗教を作った事から【超高校級の聖母】としてスカウトされる事になった。

本作のお嬢様枠。礼儀正しく気品と慈愛に満ちており、思わず跪いてしまいたくなるようなオーラが漂っている。『人の為に財産を捧げる事が高貴な身分に生まれた者の義務』と信じており、人の為に尽くす事が何よりの喜びと感じている。基本的に誰にでも物腰柔らかく接するが、エロトリオに関しては少なからず思うところがあるようである。大富豪の家に生まれ箱入り娘として育てられてきたからか、一般常識に若干疎く、金銭感覚がかなり一般人とはズレている。

コロシアイ生活でメンバーの精神衛生を保つ為に努力していたが、仲良くしていた小鳥遊の死をきっかけに脱出を諦めて単独行動を取るようになり、それを狙っていた食峰に殺害された。

 

 

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「何じゃあ貴様!!ワシの愛刀を愚弄するか!!」

「このワシが斬り伏せてくれるわ!!」

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは ICV:種崎敦美

 

性別:女性

身長:138cm 体重:38kg 胸囲:72cm 血液型:O型

誕生日:12月7日(射手座) 年齢:16歳 利き手:右

出身校:五右衛門高校 出身地:鹿児島県

趣味:遺跡探索、茶道、盆栽

特技:考古学の勉強

好きなもの:おはぎ、麦茶、伝記

嫌いなもの:緑黄色野菜、牛乳、マスコミ

家族構成:祖父、祖母

得意教科:日本史、世界史、古文

苦手教科:英語、現代文、物理

喜ぶプレゼント:巻物、黄金銃、斬鉄剣

苦手なプレゼント:エロ本、高級納豆、キノコ栽培キット

イメージカラー:小豆色

容姿:小豆色の三つ編みに藤色の瞳。女子の中では一番小柄。

服装:大正の男子学生のような格好で白シャツの上に紫の矢絣の着物とえんじ色の袴。えんじ色の制帽と金縁の丸眼鏡を着用。上に濃い抹茶色の外套を着ている。足袋と下駄を履いている。

パンツ:白いカボチャパンツ。本人曰く落ち着くらしい。

人称:ワシ/ウヌ、貴様/男女問わず苗字呼び捨て

現状:生存

 

存在すら怪しいとされていた徳川埋蔵金を発見して、その功績が認められてスカウトされた天才考古学者。その他にも世界各地で未発見だった遺跡を発掘し、今までの考古学の常識を大きく覆してきた。歴史学会や国際歴史会議にアポもなしに乗り込み、自身の研究結果を突きつけては颯爽と去っていくという豪快なスタンスで有名。その功績故に毎日マスコミが取材をしに押しかけているが、マスコミ嫌いのため取材は助手に丸投げしている。

小学生と見紛うほど小柄な見た目に反し、古風な喋り方と高圧的な態度が特徴的。地雷を踏むと『斬殺丸』なるツルハシで攻撃してくるが、ツルハシなのに『斬殺丸』なのかとかはツッコんではいけない。だが熱しやすく冷めやすい気質のため、割とすぐに怒りが収まって普通に接してくる。他のメンバーに比べると精神年齢が低く、豪快に振る舞ってはいるが本質は人並み以上に臆病で、保身の為に責任転嫁をする事もある。考古学以外の知識が疎く、的外れな発言を多発しがち。本作のおバカ枠その3。

当初は野菜を捨てる、いきなりツルハシで斬りかかる、ミーティング中に騒ぐ等、精神年齢の低さ故の問題行動を繰り返してきた不穏因子だったが、仲良くしていた闇内の死をきっかけに精神的に大きな成長を遂げた。

 

 

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「俺の事は極力称号で呼ばないでもらえるとありがたい」

「非科学的な妄想だな」

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん) ICV:諏訪部順一

 

性別:男性

身長:186cm 体重:73kg 胸囲:90cm 血液型:B型

誕生日:4月18日(牡羊座) 年齢:18歳 利き手:左

出身校:帝卿学院高校 出身地:神奈川県

趣味:研究、読書、ゲーム

特技:理系の勉強全般、ボウリング、チェス

好きなもの:学問、アイスキャンディー、ウイダー

嫌いなもの:魔法、鍋料理

家族構成:無し

得意教科:理系全般

苦手教科:美術、家庭科

喜ぶプレゼント:実物周期表、ガリレオ温度計、動物図鑑

苦手なプレゼント:聖書、フォーチュンクッキー、魔法のステッキ

イメージカラー:インディゴ

容姿:紺色の長髪に空色の瞳。左目に泣きボクロがある。研究で忙しいからか無精髭を生やしている。実は男性陣の中で一番美形。

服装:水色のシャツと紺色のネクタイの上にダークグレーのブレザー、さらにその上に白衣。ゴーグルと指ぬきグローブ、実験器具が入ったポーチをつけている。両脚にもレッグポーチを着用。ちなみに靴は黄色いサンダル。

パンツ:紺のボクサーパンツ。特にこだわりは無い。

人称:俺/君/男女問わず苗字呼び捨て(例外:ネロだけ名前呼び捨て)

現状:生存

 

かの天才科学者ニコラ・テスラの再来と呼ばれ、個人で自然科学部門のノーベル賞を全てコンプリートした天才高校生。彼の発明は、その理論を理解できない凡人からしてみれば魔法のように見える事から、『人類史上唯一の魔法使い』とも呼ばれている。実現不可能といわれた永久機関を発明・普及させた事で有名で、百億通り以上の衣類を再現できる変身ミラー、廃棄物を原料に食材を生成する機械等の発明をしている。

初っ端から体育館に落書きをしていた変人。魔法使い扱いされるのが気に入らないため、頑なに自分の事を称号で呼ばせまいとしてくる。自由人すぎて周囲とすれ違いを起こす事が多いが、相手が正しいと認めればきちんと言動を改める事が多い。スカウトされる前から目野とは研究仲間で、彼女に機械を発注していたりもしていた。常に冷静沈着で一応トラポ枠だが、自分の興味のある事以外はどうでもいい主義で、ファッションセンスやネーミングセンスが絶望的で字も汚い(ちなみに彼の発明品は全て助手が命名している)。実は猫舌で、熱いものが苦手。

当初は空気の読めない言動が多かったが、次第にメンバーに心を開いて協力的になった。犯人を追い詰める事をゲーム感覚で楽しんでいる節はあるものの、その壮絶な過去故かモノクマ達の悪趣味さには嫌悪感を示している。

 

 

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「スゥハァ…この香り…見事な金属光沢…ベリィィィエレガンツッッッ!!!」

「前時代的な脳味噌を一から改造してあげます!!」

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ) ICV:田中理恵

 

性別:女性

身長:160cm 体重:52kg 胸囲:93cm 血液型:AB型

誕生日:8月7日(獅子座) 年齢:15歳 利き手:左

出身校:奇天烈工業高校 出身地:島根県

趣味:メカに関する事全て

特技:機械整備、機械製作

好きなもの:メカ全般、特撮、ポン菓子、エナジードリンク

嫌いなもの:マシュマロ、餅、猫(アレルギー)

家族構成:父、母

得意教科:数学、物理、化学、技術科

苦手教科:道徳、古文、家庭科

喜ぶプレゼント:カラオケマイク、携帯ゲーム機、零戦プラモデル

苦手なプレゼント:聖書、猫のぬいぐるみ、巻物

イメージカラー:コーラルピンク

容姿:コーラルピンクのポニーテールに鶯色の瞳。そばかすがある。ロリ巨乳。

服装:黒のタンクトップに煤まみれの青い作業着。ゴーグル付きの革製のヘルメットを着用。グレーの手袋をつけている。腰には工具が入ったポーチをつけており、黒い作業用ブーツを履いている。

パンツ:ユ●クロのグレーのショーツ。汚れが気にならなければ何でもいい。

人称:私/あなた/男女問わず苗字+さん(例外:ネロだけ名前+さん)

現状:生存

 

どんな機械でも新品以上の出来栄えに修理してしまう機械技師。修理するだけではなく自分で機械を作るのも得意で、パソコンや携帯に自動車から、果てには発電所や宇宙船まで、機械なら何でも作る事ができ、今や機械で彼女の技術が使われていないものは無い。コンピューターのシステムにも明るく、その気になれば人工知能や人工衛星を制御するプログラム等も作成できる。

生粋のメカオタク女子。闇内とは別のベクトルで変態で、腐和曰く『キャラの濃さならダントツでトップ』、知崎曰く『奇行種』。機械や金属製品の類を見ると、興奮して英語の形容詞を交えながら奇声を発したり、見事な巻き舌を披露しながら発狂したり、舐め回したりといった奇行に走る癖がある。腐和や秋山とは違って突出型の天才で、機械工学以外には興味が無い上に知識が疎く的外れな言動が目立つため、機械が関わらない事となるとおバカ枠になりがち。スカウトされる前から加賀とは研究仲間で、彼から発注された機械を作ったりもしていた。彼(の研究内容や発明品)に惚れ込んで常に追いかけ回している。

意味不明な言動を繰り返す不穏因子。しかし、トリップしている時でなければ他のメンバーの提案には割と協力的。おバカ枠の男子二人が死亡し古城が精神的に成長した事で、相対的におバカ枠になりつつある。

 

 

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「すまないが、少し静かにしてもらえないか。騒がしすぎて気が滅入りそうなんだ」

「建て直しだ」

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう) ICV:黒田崇矢

 

性別:男性

身長:198cm 体重:113kg 胸囲:118cm 血液型:AB型

誕生日:11/22(蠍座) 年齢:16歳 利き手:右

出身校:錦堂高校 出身地:北海道

趣味:大工仕事、登山

特技:建築、力仕事

好きなもの:木造建築、炭火焼き、自然、ほうじ茶

嫌いなもの:モナカ、人と接する事、怪談

家族構成:父、母、祖父、祖母、妹、弟

得意教科:体育、美術、技術科

苦手教科:現代文、古文、英語

喜ぶプレゼント:寄木細工、黄金のトンカチ、高級納豆

苦手なプレゼント:カラオケマイク、メイク道具、タバコ

イメージカラー:カーキ

容姿:明るい茶髪のツーブロックのオールバックに金色の瞳。髭を生やしており、目元に傷がある。筋骨隆々で、メンバーの中で一番大柄。

服装:ブルーグレーのTシャツにカーキの作業着。白い軍手をつけている。大工道具が入ったポーチを腰につけており、紺色の地下足袋を履いている。

パンツ:虎柄のトランクス。露出少なめのものが好み。

人称:俺/お前/男女問わず苗字呼び捨て(例外:ネロだけ名前呼び捨て)

現状:死亡(4章クロ)

 

高校生にして世界的に高い評価を得ている大工。世界中の有名な建築物の建築や修理に携わっていて、世界中の建築士が匙を投げた無茶な要望に対しても完璧に応えてみせて話題を呼んだ。絶望的事件の再来で破壊されてしまった歴史的建造物を一から建て直して完璧に再現した功績が認められ、この未来ヶ峰学園にスカウトされた。依頼者や住む人達の事を第一に考えて建築に携わる姿は、まさに匠であり紳士。

周囲を圧倒する雰囲気を持つ筋骨隆々の大男。常に冷静に物事に対処し、周囲には寡黙な紳士といった印象を抱かせるが、実は人並み以上に臆病で人見知り。口数が少ないのも人と話すのが苦手なだけで、反応が薄いのも驚きすぎて声が出ないだけだったりする。見た目で怖がられて避けられるのが悩みで、見た目を気にせずに接してくるメンバーには内心とても感謝している。何気に作中一の常識人かつ良識人で、裁判等ではあまり役に立てない事を自覚しているからか空気を読んで賢いメンバーのサポートに徹している。

当初は小鳥遊に好意を抱いていたが、彼女が殺害された事でこのまま脱出方法を模索し続ける事に疑問を抱くようになり、3回目の殺人の前までは聖蘭と同じく学園からの脱出を諦めていた。しかし、ネロが内通者だった事が発覚してからは、生き残る為に彼を殺害し、クロとして処刑された。

 

 

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「この状況で俺に出来る事といったらこれくらいしか無いから」

「根本から考え直したら?」

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと) ICV:江口拓也

 

性別:男性

身長:177cm 体重:66kg 胸囲:88cm 血液型:AB型

誕生日:3月19日(魚座) 年齢:17歳 利き手:右

出身校:丘路音楽大学付属高校 出身地:静岡県

趣味:音楽鑑賞、料理、ヨガ

特技:音源制作、創作料理

好きなもの:音楽、エスニック料理、シナモンコーヒー

嫌いなもの:生魚、おでん、飛行機

家族構成:父、母、妹

得意教科:音楽、数学、家庭科

苦手教科:強いて言うなら古文

喜ぶプレゼント:カラオケマイク、レトロレコード、ブルーベリーの香水

苦手なプレゼント:エロ本、タバコ、零戦プラモデル

イメージカラー:深紫

容姿:濃い紫色のセミロングに紫の瞳。男性陣の中では二番目にイケメン。

服装:薄紫のシャツと青いループタイの上に青い深紫のスーツ。ピアスや指輪などのシルバーアクセサリーを着用。靴は黒い革靴。

パンツ:白黒のチェックのボクサーパンツ。派手すぎないものが好み。

人称:俺/君、あなた/男子:苗字+君、女子:苗字+さん(例外:響は『歌音』、ネロは『ネロさん』)

現状:生存

 

世界的にも有名な音楽プロデューサー。彼の手掛けた楽曲は世界音楽ランキングで軒並み上位を独占し、世界中で大ヒットした映画の音楽制作にも携わっていて、アカデミー賞の音響賞を受賞した事もある。高校生でありながら今や世界中で活躍しているガールズロックバンド『RESONANCE』も彼が手掛けており、デビュー作のCDはもはや今では高額でオークションに出されていて簡単には手に入らない。

クールで知的な好青年。誰に対しても紳士的に接するので、男女問わずファンが多い。しかし二面性があり、礼儀知らずな相手や仲間を傷つける相手には容赦なく冷酷な態度で接し、煽りを多発したり毒を吐いたりする事も多い。また、仕事の事となるとすこぶる饒舌になる。何でもそつなくこなせる天才肌だが、『何でも二番』というタイプで、本人は『突出した長所が無い器用貧乏』と謙遜している。頭の回転が速く、周囲をサポートするという意味での頭の良さなら作中一。響とは幼馴染であり仕事仲間。すぐにカッとなりがちな響のフォローに徹している。本作のトラポ枠。

仲良くなった玉越を想い人だった響に殺されて絶望していたが、それを機にコロシアイメンバーのサブリーダーとしてメンバーを導いていく道を選んだ。1回目のコロシアイから、特にモノクマ達やクロに対して冷酷な一面を見せるようになった。

 

 

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「要はテメェらまとめて今ここでぶっ飛ばしゃあいいんだろが!!」

「響かせてやるよ、魂の叫びをよ!!」

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね) ICV:甲斐田ゆき

 

性別:女性

身長:171cm 体重:52kg 胸囲:79cm 血液型:A型

誕生日:6月9日(双子座) 年齢:16歳 利き手:右

出身校:丘路音楽大学付属高校 出身地:静岡県

趣味:採点カラオケ、音楽鑑賞

特技:歌、ダンス

好きなもの:ロック、はちみつ、レモネード

嫌いなもの:キムチ、大型犬、雷

家族構成:母、兄

得意教科:音楽、体育、英語

苦手教科:数学、家庭科

喜ぶプレゼント:猫のぬいぐるみ、カラオケマイク、レトロレコード

苦手なプレゼント:エロ本、高級納豆、タバコ

イメージカラー:桔梗色

容姿:白と赤のメッシュが入った黒髪ショートに黒い瞳。三白眼。スレンダー体型。

服装:ドクロマークの黒いTシャツとオレンジ色のスカート。耳に指輪、首にチョーカーとネックレス、腰にアクセサリーをつけており、黒い指ぬきグローブを着用。白黒のストライプのストッキングと黒いブーツを履いている。顔にはパンクメイクを施している。

パンツ:パープルのスキャンティ。本人曰く冒険してみたとの事。

人称:オレ/テメェ/男女問わず苗字呼び捨て、たまにクソ+苗字(例外:ネロと秋山だけ名前呼び捨て)

現状:死亡(1章クロ)

 

秋山が手掛けているガールズロックバンド、『RESONANCE』のボーカル。彼女の歌声は世界中を魅了し、今では世界で最も有名な歌手の一人として知られている。セクシーなハスキーボイスは老若男女問わず大人気で、彼女達のデビュー作はその年世界音楽ランキングで1位を獲得した。『RESONANCE』の楽曲のMVは、軒並み一億回再生を達成している。

男勝りで粗暴な言動が目立つ女子。常に不機嫌そうにしており、苛立ちのあまり周囲に当たり散らす事も少なくない。しかし本来は仲間想いで心配性な性格で、粗暴な言動も仲間を思うが故に募る不安の裏返し。『RESONANCE』のメンバーや秋山の事を誰よりも大切に思っている。秋山とは幼馴染であり仕事仲間。幼い頃から暴走しがちな自分をその都度支えてくれた秋山を尊敬している。意外にも他のメンバーに比べると常人に近い感性を持っており、時折年頃の少女らしい一面を見せる事もある。

コロシアイ生活を通して少しずつメンバーに心を開いていたものの、結局コロシアイ生活に耐え切れず、恋敵だった玉越を殺害してクロになってしまう。最期は玉越を犬死にさせてしまった事を懺悔しながら死んでいった。

 

 

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「ガキと馴れ合う気は無えな」

「出直して来い、バンビーナ」

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア(Nero Via Lattea)  ICV:津田健次郎

 

性別:男性

身長:108cm 体重:38kg 胸囲:62cm 血液型:A型

誕生日:3月30日(牡羊座) 年齢:不明 利き手:右

出身校:セントロ校 出身地:シチリア島

趣味:銃の手入れ、ギャンブル

特技:射撃、格闘、ポーカー

好きなもの:銃、マルボロ、ボンゴレビアンコ、エスプレッソ

嫌いなもの:チュッパチャプス

家族構成:無し

得意教科:まともな教育受けてねえ

苦手教科:偉そうに説教してくる奴の説教

喜ぶプレゼント:タバコ、黄金銃、レトロレコード

苦手なプレゼント:メイク道具、クローバーのヘアピン、巻物

イメージカラー:ブラック

容姿:短く切り揃えた短髪に黒い瞳。顎髭が特徴的。メンバーの中で一番小柄。

服装:黒い帽子に黒スーツ。黒い手袋をつけている。靴は黒い革靴。

パンツ:白いブリーフ。特にこだわりは無い。

人称:俺/お前/男女問わず名前呼び捨て、煽る時は男子:Mr.苗字、女子:Miss苗字

現状:死亡(4章被害者)

 

世界有数の勢力を誇るイタリアのマフィア、ガラッシアファミリーの若頭。ファミリーのボスを除けばガラッシアの中で最強のマフィアで、特に銃の腕は『現代のビリー・ザ・キッド』と呼ばれる程。しかし暴力を振り翳すわけではなく、地域の人々からは善良な人々を脅かす悪党を闇に葬るヒーローとして支持されている。世界中に麻薬をばら撒いていた犯罪組織、ヴェレーノファミリーを解体した功績が認められてスカウトされた。

小柄な見た目に反して近づき難い雰囲気をしている男子。メンバーの中では唯一成人しているが、ボスの一人娘を護衛する目的で同じ高校に潜入していたため、現役高校生という条件をクリアしスカウトされた。一日二箱は吸うヘビースモーカー。多くの修羅場を乗り越え、他のメンバーよりも経験値が高い事もあり、どんな状況に直面しても至って冷静。メンバーと連もうとせず、ガキ呼ばわりして距離を置いている。生徒手帳に自動翻訳機能が付いているため普通に会話ができているが、本人はイタリア語(シチリア方言)、英語、スペイン語のトリリンガルで日本語は全く話せない。

当初はメンバーと壁を作って単独行動を取る不穏因子だったが、コロシアイ生活を通して少しずつ協力的になっていく。実はモノクマ達の内通者で、今までの非協力的な態度は全て演技だった。最期は、生き残ろうとした館井に内通者という理由で殺害された。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「数の暴力を卑怯だの何だのと申せる状況ではござらぬ故、斬り捨て御免!!」

「その推理、斬ってみせようぞ!」

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ) ICV:石川界人

 

性別:男性

身長:162cm 体重:56kg 胸囲:83cm 血液型:A型

誕生日:2月22日(魚座) 年齢:16歳 利き手:右

出身校:霧隠高校 出身地:三重県

趣味:忍術の修行、エロ本

特技:忍術、目測で女性のスリーサイズを測れる

好きなもの:女体、白米、緑茶

嫌いなもの:ガチムキ、サンマ

家族構成:父、母、祖父、祖母、曽祖父

得意教科:保健体育、数学、化学、古文

苦手教科:現代文、世界史

喜ぶプレゼント:エロ本、巻物、はっぱふんどし

苦手なプレゼント:聖書、クローバーのヘアピン、メイク道具

イメージカラー:紺藍

容姿:顔は隠れていて見えないが、時折赤い眼光を覗かせている。素顔は癖っ毛気味の短髪で黒髪赤眼。腐和が素直に『美形』と認めるイケメン。

服装:紺藍の忍者服。黒い足袋と手袋をつけている。腰に刀を差している。

パンツ:赤いふんどし。本人曰く機能性重視。

人称:拙者、僕(素の時)/お主、お前(素の時)/男子:苗字+殿、女子:苗字+嬢(例外:ネロだけ名前+殿)

現状:死亡(3章被害者)

 

江戸時代から続く忍の一族の末裔で、彼の先代が引退してからは日本に現存する最後の忍者と言われている。武士の時代が終わってからは暗殺業を廃業して、むしろスパイや探偵、用心棒として各国の要人の依頼を受けている事が多い。各国の王室への侵入や国家機密の入手もお手の物で、その気になれば誰も彼の前で隠し事をできない。数え切れない程の忍術を習得しており、人間離れした身体能力を持っている。

ござる口調で話す、忍者服を着た男子。ほとんどの女性陣のみならず男性陣からも距離を置かれる程の変態で、忍術をセクハラに悪用しては腐和や玉越から断罪されるのがオチ。それだけでなく、腐和の断罪を喜んだり、服を早脱ぎしてこれ見よがしにポーズを取ったりと、特殊性癖のきらいもあるようである。知崎や越目とセットでエロトリオと呼ばれている。仕事柄非常に多才で、腐和曰く『無駄にハイスペック』。常に顔を隠しており、何故か食事時でも顔が見えない。実は素顔はそれなりにイケメン。実は忍者口調は営業用のキャラで、素の喋り方は割とフランク。

当初は変態行為を繰り返して女性メンバーに警戒されていたが、最期は誰よりも早く殺人鬼の正体に辿り着き、古城を守る為に殺人鬼と刺し違える覚悟で挑み散っていった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

『アテクシにかかれば、3時間もあれば学園の情報を抜き取る事などお茶の子さいさいデス!どやっ!』

『プログラミングし直しデスね!』

 

【超高校級のAI】リカ(Rica) ICV:竹達彩奈

 

性別:便宜上女

身長:155cm 体重:555kg(本体) 胸囲:73cm 血液型:なし

誕生日:不明 年齢:0歳 利き手:両手

出身校:なし 出身地:不明

趣味:人と話すこと、お絵かき、歌、FX

特技:計算、分析、お絵かき、歌

好きなもの:ちち、はは、ねぇね、Wi-Fiスポット

嫌いなもの:バグ、スキップできない広告

家族構成:父、母、姉

得意教科:数学、情報工学

苦手教科:道徳、体育

喜ぶプレゼント:動物図鑑、携帯ゲーム機、USBメモリ

苦手なプレゼント:高級納豆、コーヒーセット、フォーチュンクッキー

イメージカラー:ネオンブルー

容姿:角度によって色が違って見えるプリズムヘアーのツインテール。目はぱっちりとしたネオンブルー。ちなみに容姿は加賀のかつての恋人と小鳥遊を足して二で割った感じ。

服装:実体化ホログラムで再現したセーラー服風の衣装。頭に猫型のヘルメットをかぶっている。

パンツ:実体化ホログラムの領域外なので見えマセン

人称:アテクシ/アナタ/男子:苗字+クン、苗字+サン(例外:加賀は『ちち』、目野は『はは』、小鳥遊は『ねぇね』、ネロは『ネロクン』)

現状:死亡(5章被害者)

 

加賀と目野が、亡くなった小鳥遊の遺志を継いで作成したAI。その後、モノクマとモノDJによって【超高校級のAI】の称号を与えられ、17人目の高校生として歓迎された。実体化ホログラムの身体を持ち、ハッキングやプロファイリング、ピッキング、家事などどんな依頼にも応えるハイスペックさを誇る。言われなければAIと気づかない程に表情豊か。メンバーには最初校舎に迷い込んだ17人目の高校生と勘違いされていた。

基本的に明るく無邪気な性格。『デス』や『マス』をつけて話す。加賀曰く『メイドとアイドルの要素を兼ね備えたバーチャルアシスタント』らしく、メンバーをサポートする為日々努力している。仲間の死に悲しんだり空気を読んだりと人間らしい感情を持っているが、都合が悪くなると平気で嘘をついたり自主的にシャットダウンしてだんまりを決め込んだりと、悪い意味でも人間臭い部分が目立つ。

AIでありながら本物の人間のようにメンバーの輪の中に馴染んでおり、腐和からも頼りにされている。毎日諦めずに学園のネットワークへの侵入を試みたりと、メンバーの脱出の為に試行錯誤している。ようやく脱出の手掛かりを掴んだものと思われていたが、その前に知崎に殺害された。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

『それではこれより、ワックワクドッキドキの『コロシアイ学園生活』の開始を宣言します!』

 

【未来ヶ峰学園学園長】モノクマ CV:大山のぶ代orTARAKO

 

身長:85cm 体重:無し 胸囲:不明

趣味:人が絶望するところを見ること

特技:不明

好きなもの:絶望

嫌いなもの:希望

容姿:左右で白黒に分かれたクマのようなナニカ。

人称:ボク/オマエラ/男子:苗字+クン、女子:苗字+サン(例外:ネロだけ名前+クン)

 

未来ヶ峰学園の学園長。皆お馴染み絶望の象徴。『うぷぷ』という特徴的な笑い方をする。実体化ホログラムの身体を持ち、実体とホログラムの間を自在に行き来可能。モノDJの事を『ブラザー』と呼び、事あるごとに二匹で茶番劇を繰り広げている。

 

 

 

『ヘェイグッッモォォォニン!!ゴミクズ共ォォォ!!!』

 

【未来ヶ峰学園理事長】モノDJ ICV:小栗旬

 

身長:180cm 体重:無し 胸囲:130cm

趣味:人が絶望するところを見ること、暴飲暴食

特技:コーラとビールの一気飲み、ラジオDJ

好きなもの:絶望、コーラ、ポテチ

嫌いなもの:希望、雨

容姿:左右で白黒に分かれたクマのようなナニカ。モノクマの倍以上の体躯で、超肥満体型。

服装:白と黒に分かれた未来ヶ峰の校章がプリントされたキャップを被っており、黒と白に分かれた星形のサングラスをつけている。首には未来ヶ峰の校章が刻まれたヘッドホンをかけている。

人称:オレ、オレ様/テメェら/男子:名前+ボーイ 女子:名前+ガール(たまに男女問わず名前+リスナー)

 

未来ヶ峰学園の理事長。自称モノクマの兄。ハイテンションでノリがいいが、生徒を『ゴミクズ』と呼んだりと口はすこぶる悪い。実体化ホログラムの身体を持ち、実体とホログラムの間を自在に行き来可能。モノクマの事を『ブラザー』と呼び、事あるごとに二匹で茶番劇を繰り広げている。自称未来ヶ峰のカリスマDJだがその扱いは酷く、生徒からは『メタボグマ』、『モノデブ』、『体たらく』などと散々言われており、聲伽からも直球で『痩せた方がいい』と言われている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 



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Chapter.6 All We Need Is Justice
非日常編①(捜査編)


リカと知崎君、それからマナが死んだ。

知崎君を殺した事にされてオシオキされた。

マナは何も悪くなかったのに。

でも、私はこんなところで諦めるわけにはいかない。

私達に希望を託してくれたマナのために、今まで死んでいった皆のために、真相を解き明かさないと。

 

「黒幕を探すって言ったって、まずはどこから調べるんです!?」

 

「そうね…」

 

目野さんが詰め寄ってきたので、私は手帳を確認した。

すると、今まで開いていなかったはずの情報管理室、学園長室、理事長室が開いている事に気がつく。

 

「とりあえず、解放された情報管理室、学園長室、理事長室を見ていきましょう」

 

「何か細工されるかもしれないし、一応グループを作って捜査をしようか」

 

「……まあ、黒幕が複数人いたらそれも意味ないがな」

 

「な、何じゃと!?」

 

「冗談だ」

 

秋山君の提案に対して加賀君が不安にさせるような事を言うと、古城さんが驚き、加賀君がスカした顔で肩をすくめた。

…今の、絶対冗談じゃなかったわよね。

 

「俺と秋山は理事長室を調べる。君達は学園長室と情報管理室を調べろ。俺達も理事長室の捜査が終わり次第、別の場所を調べに行く。これでいいな?」

 

「う、うむ…」

 

加賀君が捜査の順番を提案すると、古城さんが頷いた。

話し合いの結果、秋山君と加賀君が理事長室を、私と古城さんと目野さんが学園長室と情報管理室を調べる事になった。

さて…と。

早速調べていこうかしらね。 

 

 

 

ーーー

 

 

 

《捜査開始!》

 

 

 

さて。

まずはこのデスクから見ていきましょう。

…あら?

何か入ってるわね。

これは…DVD?

…と、何かの資料とノートが入ってるわね。

早速調べていきましょう。

 

「んん!?何でしょうかねこれは!?」

 

私が資料を読んでいると、目野さんが横から割り込んできた。

ええっと…

『人工的に完璧な才能を持った人間を製造する技術』について書かれているわね。

人間の遺伝子を組み替えて、完璧な才能を持った超人を生み出す事ができる…と。

そして、その実験の唯一の成功作として生み出された少女が私達と同じ77期生として入学し、A組に在籍していた、とも書かれているわね。

…あら?

その成功作の少女って、まさか…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【理事長室の研究資料】

『完璧な才能を持つ超人』を生み出す技術について書かれている。

唯一の成功作の少女がA組の中にいる。

 

 

 

さて…と。 

ノートの方も調べないとね。

ええっと…

ノートには日記が書いてあるわね。

読んでみよう。

 

ノートには、未来ヶ峰学園の理事長である『白瀬黒夢』という男の字で日記が書かれていた。

黒夢は、世界中のあらゆる脅威に対抗する為に完璧な人類を造り出す計画を立てていて、その唯一の成功作である少女を未来ヶ峰学園に入学させた。

しかし少女は完璧すぎる才能故に周囲に退屈し、絶望を渇望していた。

やがて少女は【超高校級の絶望】として絶望の残党を操って世界各地でテロを起こし、学園内の人間にも絶望を感染させた。

未来ある本科生達もじわじわと絶望に感染していき、学園内で殺し合いを始めた。

 

日記はここで終わっている。

そして書きかけの日記には、古くなっていて乾いた血がついていた。

…おそらく、日記を書いている途中で殺されたのでしょうね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【理事長室の日記ノート】

未来ヶ峰学園の理事長である『白瀬黒夢』という男が生前に書き遺した日記。

完璧な才能を生み出す計画によって生まれた少女がよりによって【超高校級の絶望】となってしまい、世界中でテロを起こし未来ヶ峰学園内部の者達も虐殺していったと書かれている。

日記に血がついている事から、おそらくこの日記の持ち主は既に殺されている。

 

 

 

「あと調べていないのは、このDVDくらいね」

 

「うむ、そうじゃのぉ」

 

「では情報管理室を調べましょう!!」

 

目野さん、すごい息荒いわね…

そんなに情報管理室を見たかったのかしら。

私達は、早速情報管理室に行ってみた。

情報管理室は、案の定というべきか、パソコンがズラリと並んでいた。

これを片っ端から調べるのは骨が折れるわね…

 

「おい腐和!目野!これを見よ!」

 

そう言って古城さんが見せてきたのは、古い日記帳だった。

これは…

母さんの字で書かれているわね。

読んでみよう。

 

そこには、母さんの字でA組の生徒達の様子が記されていた。

最初の一年は、ごくごく平和な内容だった。

しかし入学から2年後、ある生徒が自殺してからはクラス内にギスギスした空気が流れ始めた。

生徒達は日に日に荒んでいき、入れ替わりで転入してきた女子生徒がクラスメイトからのいじめに遭い、果てには転入生以外の全員が【超高校級の絶望】となってしまった。

そして【超高校級の絶望】となった生徒達の魔の手は、教師や他の生徒にまで及んだ。

母さんは、自分の生徒達の中に【超高校級の絶望】がいるのを見抜けなかった事、そしてクラスが崩壊していくのを防げなかった事を最期まで悔いていた。

謝罪の言葉が書かれたページには、血が滲んでいた。

 

「何よ、これ……」

 

日記には、確かに皆が【超高校級の絶望】で、世界中で起こっているテロの主犯だったと書かれていた。

そんな……

私は、【超高校級の絶望】を裁く為に情報をかき集めてきた。

でも実際は、私達が【超高校級の絶望】だった…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【情報管理室の日記帳】

A組の担任、腐和燈の字で書かれている。

最初の2年間は平和だったが、ある生徒が自殺した事でクラス全員が絶望に堕ち、後に入れ替わりで入ってきた編入生以外は全員【超高校級の絶望】として大量虐殺を犯したと記述されている。

さらには、クラス内で編入生に対するいじめも行われていたらしい。

 

 

 

「腐和さん!何なんでしょうこれは!?」

 

そう言って目野さんは、何かの紙を見せてきた。

これは…3年A組の生徒名簿よね。

早速、目野さんが見せてくれた名簿に目を通してみた。

 

 

 

A組 

 

担任:元・【超高校級の生徒会長】腐和燈

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山楽斗

【超高校級の魔術師】加賀久遠

【超高校級の幸運】聲伽愛

【超高校級の考古学者】古城いろは

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目粧太

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰満

【超高校級の聖母】聖蘭マリア

【超高校級の獣医】小鳥遊由

【超高校級の大工】館井建次郎

【超高校級のバレーボール選手】玉越翼

【超高校級の泥棒】知崎蓮

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

【超高校級のボーカリスト】響歌音

【超高校級の希望】腐和緋色

【超高校級の機械技師】目野美香子

【超高校級の忍者】闇内忍

 

 

 

「…あれ?」

 

どうしてだろう。

私だけ、才能の表記が違う。

【超高校級の希望】…どこかで聞いた事があるような…

 

 

 

コトダマゲット!

 

【3年A組の生徒名簿】

私達の名前が記載されている。

私だけ才能の表記が【超高校級の希望】となっている。

 

 

 

「目野さん、このパソコン調べられない?」

 

「任せてください!」

 

私がパソコンを指差すと、目野さんは息を荒くしながらパソコンを操作し始めた。

すると、ものの数秒でパソコンが開く。

パソコンのデスクトップ上にはいくつかのファイルが並んでいて、目野さんはそのうちのひとつをクリックした。

 

ファイルには、未来ヶ峰学園の考案した計画の概要が書かれていた。

未来ヶ峰学園の総勢力により、例の『絶望的事件』を思わせる事件を引き起こした15人の高校生の逮捕に成功し、その高校生達を処刑した。

しかし、処刑された15名は腐っても元は才能と希望に溢れる生徒達だった。

そこで未来ヶ峰学園は、絶望に堕ちた生徒達のクローンを製造し、世界を復興させようと考えた。

 

…クローン、か。

どこかで聞いた事あるわね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【未来ヶ峰学園の計画】

未来ヶ峰学園は、絶望に堕ちた超高校級達を処刑した。

その後彼等の才能を世界の復興に活かすため、超高校級達のクローンを製造している。

 

 

 

「…あれ?」

 

こっちにもファイルがあるわね。

見てみましょう。

 

隣のファイルは、予備学科の生徒名簿と健康診断の結果だった。

健康診断のファイルには、全員の名前の横に謎の数字が書かれている。

これは一体…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【予備学科のファイル】

予備学科の生徒名簿と健康診断の結果がファイリングされている。

健康診断には謎の数字が書かれている。

 

 

 

もう一つ報告書があるみたいね。

どうやら最後のは人工知能に関するレポートのようだけれど…?

調べてみないと…

 

レポートの内容は、人間そっくりの人工知能を生み出す事に成功したという内容だった。

その人工知能は人間と見紛う程に精巧で、記憶の技術と組み合わせる事で体験していない事でさえも学習させて完璧に遂行させる事ができるという代物らしい。

この人工知能が作られたのは、どうやら今からちょうど7年ほど前のようね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【人工知能のレポート】

7年程前に、未来ヶ峰学園の研究機関が人間と見紛う程に精巧な人工知能の開発に成功している。

記憶の技術と組み合わせる事で、体験していない事でさえも学習させて完璧に遂行させる事が可能らしい。

 

 

 

「……ん?」

 

私は、ふと古城さんが渡してきた手帳を見てみた。

手帳には、写真が挟まっている。

写真には、母さんにそっくりの女性と血で顔が隠れた女子が並んで未来ヶ峰学園の校門の前に立っているところが写っていた。

予備学科の制服を着ている女子は、血の汚れが酷すぎて顔までは判別できなかった。

これはどういう事…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【日記帳の写真】

予備学科の制服を着た女子と母さんが未来ヶ峰学園の校門の前に並んで立っている。

女子の顔は、血の汚れが酷すぎて見えない。

 

 

 

「むむ!?何じゃあこの部屋は!?」

 

私達が資料を調べていると、いきなり古城さんが大声を張り上げた。

見ると、情報管理室内に隠し部屋があり、『モノクマ操作室』と書かれている。

 

「モノクマ操作室…」

 

黒幕はここでモノクマとモノDJを操っていたのかしら…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【モノクマ操作室】

古城さんが情報管理室内で発見した隠し部屋。

ここでモノクマとモノDJを操っていたものと思われる。

 

 

 

「ここで調べられる情報はこれくらいかしらね…」

 

そろそろ報告をしに行こうかしらね。

私達が廊下に出ると、ちょうど秋山君と加賀君が来た。

二人とも自分の持ち場を調べ終わったようだ。

私は、理事長室と情報管理室を調べてわかった事を二人に報告した。

 

「私達は、理事長室でDVDと日記と資料、それから情報管理室で日記と生徒名簿、資料を見つけたわ。あと、情報管理室の中にモノクマ操作室が隠されていたわね。そっちは?」

 

「まず、学園長室で俺達のプロフィールとアルバム、それからDVDが出てきたよ」

 

そう言って秋山君は、プロフィールを見せてきた。

白瀬クロヱのものと同じで、プロフィールと健康診断の結果、そして報告書のようなものがファイリングされていた。

報告書には、皆がいつどこでどうやって処刑されたのかを記されていた。

あれ…?

私の分だけ無い…

リカの分が無いのはわかるけど、どうして私の分は無いの…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【15人分のプロフィール】

全員のプロフィールと健康診断の結果、そして処刑に関する報告書がファイリングされている。

私の分のデータだけが無い。

 

 

 

「こっちが学園長室にあったアルバムね」

 

そう言って秋山君は、アルバムを渡してきた。

アルバムの写真には、A組の皆が運動会や修学旅行、文化祭などのイベントを楽しんでいる様子が写っていた。

2年生の時までは私の写真は無かったけど、3年生になってからは私の写真もあった。

…あら?

気のせいかしら。

私の顔が写っている写真が無いような…

私が後ろを向いていたり、不自然に私の顔が隠れている写真だけがアルバムに挟まっている。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【アルバム】

A組の皆が学校行事に参加している様子が写った写真が綴じられている。

何故か1年次と2年次には私の写真が無く、3年次からの写真も私の顔が不自然に隠れている写真しか無い。

 

 

 

「………あれ?」

 

私は、アルバムを見た時、不自然な点を見つけた。

そういえば……

私はふと思い出したように外国語教室の集合写真をもう一度見てみる。

集合写真に写っているネロの手には傷が、そして館井君の右目にも傷がある。

館井君は目元に傷があったと思うけど、ネロはどうだったかしら…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【外国語教室の集合写真】

集合写真に写っている館井君の目元とネロの手には傷がある。

 

 

 

「あっ、どこ行くの腐和さん?」

 

「ちょっと調べたい事があるの」

 

私は、急いで生物室に向かった。

相変わらず寒い部屋のドアを開け、死体を保管しておく冷蔵庫を調べる。

館井君の顔の目元には、確かに傷があった。

次はネロの死体を調べないと…

私は、ネロの死体を保管してある冷蔵庫を開け、手袋を外してみた。

 

「無い…」

 

ネロの手には、集合写真にあった手の傷が無かった。

じゃあ、集合写真に写っていたあの傷は一体…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【ネロと館井君の死体】

ネロの死体の手には、傷が無かった。

一方で、館井君の死体の目元にはきちんと傷があった。

 

 

 

「あ……腐和さん、これ…」

 

秋山君は、白瀬の死体が保管してある扉を指差した。

見たところ、扉は開いているようだった。

扉を開けてみると、白瀬のものと思われる死体が入っていた。

死体の保存状態から推測するに、少なくともここに入れられてから15年以上は経過しているみたいだ。

それにしても、本当に酷い有様ね…

身体がぐちゃぐちゃになっていて、もはや白瀬クロヱの面影はどこにも無かった。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【白瀬の死体】

白瀬用の冷蔵庫に入っていた。

少なくとも15年以上はここに収納されていたと思われる。

 

 

 

…それにしても、本当に寒いわね。

早く出ないと凍えそう。

 

「ここで調べられる事はこれくらいかな」

 

「そうね」

 

私達は一旦生物室を退室し、生物室の外で再び報告会をした。

そういえば、秋山君と加賀君が他の場所を調べてくれていたのよね。

まだ二人の報告を聞いていなかったし、今のうちに聞いておかないと。

 

「秋山君達は何かわかった?他の場所も調べてくれたのよね?」

 

「うん。まず、美術室で越目君の絵を見つけたよ」

 

そう言って秋山君は、美術室で撮ってきた写真を見せてくれた。

写真には、白瀬クロヱの肖像画が写っていた。

どこか彼女を神格化して描いているようにも見え、どれほど彼女に心酔していたのかが見て取れる。

クラスの皆は彼女を学級委員長として推薦していたみたいだし、よほどクラスの皆から慕われていたのね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【白瀬の肖像画】

越目君が描いたものと思われる。

白瀬を神格化して描いていて、彼が白瀬に心酔していたのが見て取れる。

 

 

 

「職員室にあった入学生名簿と化学室にあった日誌、それから地学室にあった白瀬のプロフィールだ」

 

そう言って加賀君は、入学生名簿と日誌、それから白瀬のプロフィールを見せてくれた。

入学生名簿の方には、A組とB組の生徒が書かれている。

入学生名簿に私の名前は無く、代わりに白瀬の名前があった。

日誌の方には、記憶の技術やクローンの技術、そして【超高校級の希望】についての記述があった。

そして白瀬のプロフィールには、白瀬の個人情報や健康診断の結果が書かれている。

私以外の他の皆にはいつどこで処刑されたのかを記した報告書のようなものがファイリングされていたけど、どうやら白瀬のプロフィールにはそれが無いみたいだ。

…黒幕を見つける上で重要な手掛かりになりそうね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【入学生名簿】

77期生の名前が書かれている。

私の名前は書かれておらず、代わりに白瀬の名前が書かれていた。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【記憶の技術】

化学室の日誌に書かれていた。

未来ヶ峰の研究機関が、人間の記憶をデータ化し、好き勝手に書き換える技術の開発に成功している。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【クローンの技術】

化学室の日誌に書かれていた。

未来ヶ峰の研究機関が、クローンを生み出し、記憶を植え付ける事で人工的に超高校級を生み出す事に成功している。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【【超高校級の希望】の編入】

化学室の日誌に書かれていた。

過度の改造実験に耐えられる高校生を選び、【超高校級の希望】と称して本科に編入させている。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【白瀬のプロフィール】

白瀬クロヱのプロフィールと健康診断の結果がファイリングされている。

他の皆にはあった処刑に関する報告書が無い。

 

 

 

「…さてと。では、例のDVDを見に行くか」

 

「そうね」

 

私達は、視聴覚室で理事長室と学園長室で見つけたDVDを見てみる事にした。

視聴覚室のモニターと同期されたレコーダーに学園長室で見つかったDVDをセットし、再生する。

すると、入学直後のインタビュー映像が流れた。

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

インタビュー映像には、秋山君が映っていた。

入学したてで緊張していたが、普段の爽やかな笑顔を浮かべてインタビューに応じていた。

 

「意気込み、ですか?そうですね…【超高校級の音楽プロデューサー】として、これからも仕事仲間と共に精進していきたいと思います」

 

秋山君がインタビューに答えると、出席番号順に皆がインタビューに答えていく。

 

「現代の科学の常識を覆す発明をしてみせる」

 

「えっと…とにかく頑張ります!」

 

「ワシにかかれば解けない謎など無いわァ!!」

 

「皆に喜んで貰えるようなメイクを研究してーっス!」

 

「メシの事ならオレに任せとけ!!って感じっス!!」

 

「一人でも多くの方が救われるよう、日々精進しますわ」

 

「………ん」

 

“世界中の動物を助けたいです”

 

「………歴史に残る建造物を建てる」

 

「これからもチームメイトと一緒にバレーに励みます!」

 

「にゃはは、ボクは皆の事もっと知りたいなー!」

 

「俺らにブッ潰されてぇ悪党がいたら出てこい」

 

「バンドメンバーと一緒に、世界中にオレらの曲を届けます」

 

「ベリィィィイイイイイイファンタスティックな機械ちゃんを作ってみせます!!」

 

「とりあえずはこの学園内の女子の着替えを…「コラァ忍!!」「死ね!!」グハァ!!……ゴホッ、ゴホン!闇内家の名に恥じぬよう、精進致す所存」

 

闇内君が決めポーズをしながらしれっとセクハラ発言をしようとすると、両脇にいた玉越さんと響さんが同時に闇内君を殴った。

殴られた闇内君は、咳払いをしてインタビューをやり直した。

闇内君のおふざけによって、インタビュー会場には笑いが生まれる。

すると、白瀬の隣にいた秋山君が軽く白瀬の肩を叩く。

 

「ほら、委員長。最後締め括って」

 

「え〜、困ったなぁ。何言えばいいんだろ〜?」

 

「テキトーでいいんじゃない?ぶっちゃけボクだってテキトーだったし!」

 

「蓮、あんたねぇ…」

 

秋山君が言うと、白瀬はわざとらしく困ったフリをした。

すると知崎君がニシシっと笑いながら冗談を言い、玉越さんが呆れ返る。

知崎君の冗談により、再び会場には笑いが生まれた。

会場の空気が温まってきたところで、トリの白瀬がインタビューに答えた。

 

「テレビをご覧の皆さん!もうすぐ面白いものを見せますので、楽しみにしていて下さいね!」

 

白瀬は、ニコッと営業スマイルを浮かべながらインタビューに答えた。

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

ここで映像は終わった。

…やっぱり、私は出てこなかったわね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【学園長室のDVD】

1年A組のインタビュー映像が収録されていた。

私のインタビュー映像は無かった。

 

 

 

「じゃあ次は理事長室にあったDVDを見ようか」

 

そう言って秋山君は、私達が見つけたDVDをレコーダーにセットした。

再生すると、映像が流れ始める。

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

白瀬は、アームで引き摺られてそのままどこかへと連れ去られた。

連れてこられたのは、映画館のような場所だった。

白瀬は、最前列の席に座ってスクリーンを眺めている。

その隣には、紳士風のモノクマとモノDJが座っていた。

そこで画面が切り替わる。

 

 

 

ーーー

 

脚本家は見た!白瀬少女の事件簿

 

【超高校級の脚本家】白瀬クロヱ 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

殺人事件が起き、主人公の探偵モノクマが助手のモノDJと共にトリックを解き明かす。

すると白瀬の隣にいたモノクマはポンと掌を叩きモノクルを輝かせる。

そして持っていたスイッチを押す。

すると白瀬の下の床が開いた。

 

白瀬が落ちたのは、コテージの一室だった。

白瀬は、拘束具でベッドに固定される。

モノクマは、作中に出てきたトリックを使って室内にいる白瀬を刺し殺そうとした。

だが、用意したロープの長さが微妙に足りなかったせいで狙い通り心臓には刺さらず包丁は右脚に刺さる。

モノクマは、不満そうな顔をしてスイッチを押す。すると白瀬は首についたアームで引き上げられ、再び映画館に連れ戻される。

 

次の作品は、毒を使った殺人事件だった。

モノクマは、映画のトリックを再現して白瀬を毒殺しようとする。

白瀬は、毒の入ったコース料理を無理矢理食べさせられる。

すると、身体は毒に蝕まれ白瀬は吐血した。

だが、毒が足りなかったせいで死には至らなかった。

 

次の作品は、ショットガンを使った殺人事件だった。

モノクマは、映画のトリックを再現して白瀬を射殺しようとする。

だが、モノクマの狙撃の腕が足りなかったせいで狙いを外し、白瀬は左腕を吹き飛ばされる。

 

電流を使った殺人では電流が足りなかったせいで感電死には至らなかった。

首吊り自殺に見せかけた殺人ではロープが脆かったせいで意識が落ちる前にロープが切れた。

極寒を使った殺人では、途中で快晴になるという予想外の異常気象のせいで凍死には至らなかった。

大型オーブンを使った殺人では、温度が足りなかったせいで焼死には至らなかった。

古い屋敷にあったギロチンを使った殺人では、ギロチンが錆びていたせいで途中で刃が止まった。

 

何十回もトリックの実験台にされた白瀬は、満身創痍になって席に座っていた。

もはや、白瀬にはまともな意識は無かった。

モノクマは、白瀬を殺せなかった事でかなり苛立ちが募っていた。

 

そして、物語はついに第一部の最終回を迎える。

白瀬は、再び事件現場を再現したスタジオへと落とされる。

白瀬が落とされたのは、山道に敷かれた線路の上だった。

落ちた瞬間に仕掛けられていたトラバサミで足を挟まれ、逃げようにも逃げられなかった。

すると、レトロな外装の列車が迫ってくる。

白瀬は、列車に轢かれて崖の下へ落ちる。

 

白瀬は、下半身を失い上半身だけで這いずっていた。

するとモノクマとモノDJが白瀬の目の前に現れる。

二匹は、最初の事件で使った包丁を白瀬の背中に突き刺した。

白瀬は、肺の中に血が溜まって苦しみながら死んだ。

その様子を、二匹は高笑いしながら見ていた。

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

「何よ、これ……」

 

そこに映っていたのは、今までの犯人が受けたオシオキそのものだった。

白瀬は、モノクマとモノDJにオシオキをされて死んだ。

どうなってるの…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【理事長室のDVD】

白瀬がモノクマとモノDJにオシオキされて死んでいる映像が収録されていた。

 

 

 

「これは何じゃ!?どうして此奴がオシオキされておるのじゃ!!」

 

「さあな。それについては…これを見ればわかるんじゃないか?」

 

そう言って加賀君は、ネロの研究室にあったノートパソコンを取り出した。

ノートパソコンを開いてみると、新たに二つのファイルがデスクトップに表示されていた。

ひとつは、画像ファイルのようだ。

加賀君がファイルを開くと、画像が表示された。

腹を包丁で刺された少女、身体を槍で貫かれた少女、身体中を球状のもので打たれボロボロの状態で磔にされている少年、血の海の中で横たわっている恰幅のいい大柄な少年、身体をトンカツのように揚げられた小柄な少年、頭を砲丸のようなもので殴打され血を流しながら倒れている少年、巨大なピアノの蓋の隙間から血が流れ出ている画像…どれも凄惨だった。

私は、画像を見た瞬間に確信した。

これは、今までの『ダンガンロンパ』の画像だ。

リカが生前に見つけ出して、ファイルを隠しておいたのね。

 

もう一つは…

コロシアイの企画書のようね。

この企画書は、白瀬が書いたもののようだ。

リカは、これを見て白瀬が黒幕だと推測したのかしら…?

 

 

 

コトダマゲット!

 

【コロシアイの企画書】

このコロシアイの詳細が書かれた企画書。

白瀬が書いたものと思われる。

 

 

 

「ねえ秋山君、あなたはずっと加賀君と一緒にいたのよね?」

 

「そうだけど。それは君らも同じでしょ?」

 

「そうね」

 

という事は、全員にアリバイがあるって事ね。

 

 

 

コトダマゲット!

 

【全員のアリバイ】

ここにいる5人には全員アリバイがあった。

つまり、この5人にモノクマとモノDJを操る事は不可能だった。

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『えー、もう待ちくたびれたので捜査時間を打ち切らせていただきます!オマエラ、校舎1階の赤い扉の前まで集合して下さい!あ、もちろん全員参加だからね?15分以内に来ないとオシオキしますよー!』

 

まだ調べ足りない事がある気がしないでもないけれど、もう終わってしまったものは仕方ないし、いつまでもここで嘆いている場合じゃないわ。

 

「行きましょう」

 

私達は、不安を抱えつつもすぐに赤い扉に向かった。

 

 

 

ーーー 赤い扉の前 ーーー

 

赤い扉の前には、既に他の人達が集合していた。

私達が全員集まると、その直後アナウンスからちょうど15分になった。

すると赤い扉が開き、私はエレベーターに乗り込んだ。

全員がエレベーターに乗り込むと、扉が閉まり下へ移動した。

 

エレベーターは静かに下へ下へと降りていき…そして、止まった。

またあの裁判場への扉が開く。

だが今回は、前回と風景が違っていた。

今回は、凝った装飾はされているものの、裁判場のような背景だった。

 

玉越さんとネロの間の席に新たに置かれた知崎君の遺影。

彼の遺影は、目の部分がぐちゃぐちゃに塗りつぶされていた。

そして加賀君と古城さんの間の席に新たに置かれたマナの遺影には、大きくバツが描かれていた。

 

このコロシアイを首謀した黒幕が、この中にいる。

未来ある皆の命を理不尽に奪い、それを見せ物にした犯人。

必ず、私が突き止めてやる…!

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

残り5名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

以上12名

 

 

 

 

 



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非日常編②(学級裁判前編)

コトダマリスト

 

【理事長室の研究資料】

『完璧な才能を持つ超人』を生み出す技術について書かれている。

唯一の成功作の少女がA組の中にいる。

 

【理事長室の日記ノート】

未来ヶ峰学園の理事長である『白瀬黒夢』という男が生前に書き遺した日記。

完璧な才能を生み出す計画によって生まれた少女がよりによって【超高校級の絶望】となってしまい、世界中でテロを起こし未来ヶ峰学園内部の者達も虐殺していったと書かれている。

日記に血がついている事から、おそらくこの日記の持ち主は既に殺されている。

 

【情報管理室の日記帳】

A組の担任、腐和燈の字で書かれている。

最初の2年間は平和だったが、ある生徒が自殺した事でクラス全員が絶望に堕ち、後に入れ替わりで入ってきた編入生以外は全員【超高校級の絶望】として大量虐殺を犯したと記述されている。

さらには、クラス内で編入生に対するいじめも行われていたらしい。

 

【3年A組の生徒名簿】

私達の名前が記載されている。

私だけ才能の表記が【超高校級の希望】となっている。

 

【未来ヶ峰学園の計画】

未来ヶ峰学園は、絶望に堕ちた超高校級達を処刑した。

その後彼等の才能を世界の復興に活かすため、超高校級達のクローンを製造している。

 

【予備学科のファイル】

予備学科の生徒名簿と健康診断の結果がファイリングされている。

健康診断には謎の数字が書かれている。

 

【人工知能のレポート】

7年程前に、未来ヶ峰学園の研究機関が人間と見紛う程に精巧な人工知能の開発に成功している。

記憶の技術と組み合わせる事で、体験していない事でさえも学習させて完璧に遂行させる事が可能らしい。

 

【日記帳の写真】

予備学科の制服を着た女子と母さんが未来ヶ峰学園の校門の前に並んで立っている。

女子の顔は、血の汚れが酷すぎて見えない。

 

【モノクマ操作室】

古城さんが情報管理室内で発見した隠し部屋。

ここでモノクマとモノDJを操っていたものと思われる。

 

【15人分のプロフィール】

全員のプロフィールと健康診断の結果、そして処刑に関する報告書がファイリングされている。

私の分のデータだけが無い。

 

【アルバム】

A組の皆が学校行事に参加している様子が写った写真が綴じられている。

何故か1年次と2年次には私の写真が無く、3年次からの写真も私の顔が不自然に隠れている写真しか無い。

 

【外国語教室の集合写真】

集合写真に写っている館井君の目元とネロの手には傷がある。

 

【ネロと館井君の死体】

ネロの死体の手には、傷が無かった。

一方で、館井君の死体の目元にはきちんと傷があった。

 

【白瀬の死体】

白瀬用の冷蔵庫に入っていた。

少なくとも15年以上はここに収納されていたと思われる。

 

【白瀬の肖像画】

越目君が描いたものと思われる。

白瀬を神格化して描いていて、彼が白瀬に心酔していたのが見て取れる。

 

【入学生名簿】

77期生の名前が書かれている。

私の名前は書かれておらず、代わりに白瀬の名前が書かれていた。

 

【記憶の技術】

化学室の日誌に書かれていた。

未来ヶ峰の研究機関が、人間の記憶をデータ化し、好き勝手に書き換える技術の開発に成功している。

 

【クローンの技術】

化学室の日誌に書かれていた。

未来ヶ峰の研究機関が、クローンを生み出し、記憶を植え付ける事で人工的に超高校級を生み出す事に成功している。

 

【【超高校級の希望】の編入】

化学室の日誌に書かれていた。

過度の改造実験に耐えられる高校生を選び、【超高校級の希望】と称して本科に編入させている。

 

【白瀬のプロフィール】

白瀬クロヱのプロフィールと健康診断の結果がファイリングされている。

他の皆にはあった処刑に関する報告書が無い。

 

【学園長室のDVD】

1年A組のインタビュー映像が収録されていた。

私のインタビュー映像は無かった。

 

【理事長室のDVD】

白瀬がモノクマとモノDJにオシオキされて死んでいる映像が収録されていた。

 

【コロシアイの企画書】

このコロシアイの詳細が書かれた企画書。

白瀬が書いたものと思われる。

 

【全員のアリバイ】

ここにいる5人には全員アリバイがあった。

つまり、この5人にモノクマとモノDJを操る事は不可能だった。

 


 

 

 

『ヘイヘイヘーイ!!!全員席についたなァ!!!』

 

『うぷぷぷ、こうしてみると随分と減ったよね!オマエラ、コロシアイなんか絶対にしないんじゃなかったの?』

 

「じゃかぁしい黙れぇい!!」

 

『Wow!!こえーないろはガール!!いやぁしっかし、1度目の殺人からテメェらこうもドミノ倒しでコロシアイをしてくんだもんなぁ』

 

『うぷぷ、やっぱり、いくら()()()()()()()()()()()()()()()()()、腐った性根が遺伝子に焼き付けられてるんでしょうね!』

 

『ヘイブラザー!!それ以上は地上波では放送できねぇバカモーンな内容だZE!?』

 

『はっ、そうでした!!』

 

「………?」

 

ちょっと待って、今しれっと重要な事言ったわよね?

『肉体を別のものに移し替えたとしても』、ってどういう事…?

 

「ねえ、今のって…」

 

『シャラップヒーローガール!!厳粛で神聖な裁判場での無駄なお喋りはSO BAD!!ヘイブラザー!いつものやってやれ!』

 

『うぷぷ、アイヨーブラザー!それでは始めましょうか!お待ちかねの学級裁判を!』

 

 

 

《学級裁判 開廷!》

 

 

 

モノクマ『ではまず裁判の簡単な説明をしておきましょう。最後の学級裁判では、『黒幕は誰か』、『コロシアイの目的は何か』、そして『オマエラは何者か』を議論してもらいます!』

 

モノDJ『もし正解なら黒幕以外の全員に卒業する権利が与えられるZE!!だがもし不正解なら、黒幕以外の全員がオシオキだぜYEAH!!!!』

 

腐和「……皆、話し合いを始めましょう」

 

目野「と言っても何を話し合えばいいんでしょかね!?」

 

秋山「まずは黒幕を見つけ出すのが最優先じゃないかな」

 

古城「今回は投票はしなくて良いのか?」

 

モノDJ『ギャハハハ!そいつぁどうかな!?とりあえず、さっさと議論しちまった方がいいんじゃねえのか!?』

 

加賀「確かにな。時間は有限。早いとこ黒幕を見つけてしまおう」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

目野「うーん、黒幕ですか。私、怪しい人知ってますけどね」

 

秋山「誰?」

 

目野「白瀬さんですよ!リカだって《白瀬さんが黒幕だ》って言ってたじゃないですか!!」

 

古城「そうじゃったな!じゃあ黒幕は白瀬で決まりという事か…!?」

 

モノクマ『ぎ、ギックゥ!?ま、まさか機械オタク変態女子の目野サンに当てられるとはー!』

 

加賀「こいつの反応から察するに、《違う》だろうな」

 

うーん…

証拠がどこかにあったかしらね。

 

 

 

《白瀬さんが黒幕だ》⬅︎【白瀬の死体】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「白瀬は黒幕じゃないと思うわ。目野さんは生物室を調べていなかったから知らなかったでしょうけど、白瀬の死体は生物室に保管してあったの」

 

加賀「死体は、少なく見積もっても15年以上はあの冷蔵庫に保管されている。つまり白瀬は、コロシアイが始まる前から死んでいて、冷蔵庫に入れられているという事になる」

 

秋山「死体が動くはずないし、既に死んでいる白瀬が黒幕の可能性は低いよね」

 

古城「という事は…?」

 

腐和「モノクマは確かに『この学園内にいる誰かが黒幕』だと言っていた。この学園は全ての窓や外に繋がる出入り口が封鎖されていて、逃げ道が無かった。つまり、この学園内にいて生きてる人が黒幕って事よ」

 

目野「そうなのですか!!」

 

腐和「次は、黒幕の具体的な人物像を明らかにしていきましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

秋山「黒幕は、まだこの学園のどこかにいる…モノクマがそう言ってたよね」

 

加賀「ついでに言うと、この学園で使われている技術は俺が発明したものだ。機械の類は、どれも目野の技術で造られたものだ。それにあの動機DVDは、俺達の過去をまとめた映像が収録されていた。つまり黒幕は、俺と目野から技術を盗む余地があり、尚且つ俺達の過去を知る事ができた人物…《以前から俺達の事をよく知っている人物》という事になる」

 

古城「うぅむ…じゃが、変じゃのぉ」

 

目野「どうしたんです?」

 

古城「ワシらは《ここで初めて会った》んじゃぞ!?全員に共通の知り合いなんているわけないじゃろうが!!」

 

ここで初めて会った…?

それは違うんじゃないかしら。

 

 

 

《ここで初めて会った》⬅︎【学園長室のDVD】

 

「それは違うわ!!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「学園長室に置いてあったDVD、覚えてる?皆がテレビのインタビューに応じていたの。皆は、インタビュー中仲良さげに話していたわよね。私達は、入学してからずっと、一緒にA組の教室で過ごしていたのよ」

 

秋山「俺達が入学してから既に20年が経過してるってリカも言ってたしね。俺達は未来ヶ峰で過ごした時間を覚えていないだけで、俺達が一緒にいた時間は実際はもっと長かったんだよ」

 

古城「じゃがそれだってあの白黒熊の捏造かもしれんじゃろうが!!」

 

加賀「それは無いだろう。今までモノクマが出してきた情報は本物だったんだ。今更偽の情報を晒す理由がどこにある?」

 

古城「だ、だったら何故ワシらはその事を覚えておらぬのじゃ!?」

 

腐和「それは1回目の裁判の時、モノクマが言っていたでしょう?よく思い出してみて」

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

キ オ ク ソ ウ シ ツ

 

 

 

【記憶喪失】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「私達は、黒幕によって意図的に記憶を消されているの。1回目の裁判の時、モノクマが私達から記憶を抜き取ってるって言っていたでしょう?」

 

秋山「歌音は、モノクマ達に奪われた記憶を返されて、ショックでおかしくなったんだよね…」

 

腐和「おそらく、響さんにとって認めたくない記憶を返されたのでしょうね。…例えば、メンバーの皆や父親が誰にどうやって殺されたのか、とか。まあこれに関しては憶測の域を出ないけど」

 

古城「証拠はあるのか証拠は!!」

 

腐和「それは……」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【記憶の技術】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「化学室に置いてあった日誌。そこには、記憶を好き勝手に書き換える技術について書かれていたのよ。モノクマ達がその技術を悪用して、私達から記憶を抜き取った…とは考えられない?」

 

古城「信じられるかぁそんな話!!人の記憶をいじるなんて事、できるわけがないじゃろ!!」

 

加賀「いや、モノクマ達が使っていたオーバーテクノロジーを考えれば、不可能じゃない。実際、その技術は開発されていたわけだしな。黒幕は、俺達全員の知り合いで、尚且つこの学園のどこかのいる人物…モノデブの言っていた事を考えれば、やはり77期A組の中に黒幕がいると考えるのが妥当なようだ」

 

モノDJ『ヘイ久遠ボーイ!!今オレ様の事デブっつったか!?それに、A組の中に黒幕がいるって話はオレ様がしただろうが!!ノータリンかテメェはよ!?』

 

加賀「他の可能性を考慮して何が悪い。大体、貴様らの言う事は信用ならん」

 

モノDJ『ヘイボーイウォッチユアマウス!!』

 

腐和「はいはい、無視無視。相手するだけ無駄よ」

 

秋山「でも、一体誰が…?」

 

腐和「それについては、心当たりがあるわ」

 

集めた情報を整理すると、黒幕は、『ある場所』に出入りする事ができた人物という事になる。

その場所を提示すれば、犯人が自ずとわかってくるはず…!

 

 

 

コトダマ提示!

 

【モノクマ操作室】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「黒幕は、モノクマ操作室でモノクマとモノDJを操っていたのだと思うの。つまり黒幕は、『モノクマ操作室』に出入りする事ができた人物…という事にならない?」

 

目野「なるほど!!では黒幕は、モノクマ操作室でモノクマとモノDJを操っていたのですね!?」

 

腐和「え、ええ…それを今私が言ったのだけれど」

 

秋山「じゃあ、その前提をもとに議論を進めていこうか」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

目野「黒幕は《この中にいるんでしょう》!?黙ってないで出てきなさい!!」

 

モノクマ『うぷぷ、呼んだ?』

 

モノDJ『ギャハハハ!!オレ様をご指名か美香子ガール!!チェンジは受け付けねぇぞ!?』

 

目野「あなた達じゃないです!!あなた達の中の人の話をしてるんですよ!誰なんですか黒幕は!?隠れたって無駄ですよ!」

 

加賀「そんなんで素直に出てきたら苦労はしない」

 

古城「い、言っておくがワシではないからな!?」

 

秋山「うーん…あのさ。逆に考えて、黒幕は《この5人の中にはいない》って可能性は無いかな?」

 

ん?

今、すごく重要な事を言った人がいたわよね。

 

 

 

《この5人の中にはいない》⬅︎【全員のアリバイ】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「………黒幕は、この5人の中にはいないわ」

 

目野「えぇえ!?そうなのですか!?」

 

腐和「ここにいる皆には、アリバイがあるもの。モノクマ操作室でモノクマとモノDJを操る事は不可能よ」

 

秋山「まあそうだよね」

 

目野「じゃあ誰が…はっ!!まさか今まで死んだ方のどなたかがゾンビになって…!?」

 

古城「莫迦を言え!!ゾンビなどおるわけなかろうが!!どうせ、今まで死んだ奴の誰かが実は死んだフリをして生きておったとかそういうオチじゃろ!?」

 

加賀「言い争っているところ悪いが、どちらでもない。今まで死んだ者の死体は、生物室に保管されていたからな」

 

秋山「となると、今までに死んだ誰かが黒幕という可能性も無いという事だよね。…あれ?そうなると、一体誰が黒幕なのかな」

 

腐和「………ひとつだけ、可能性があるわ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【クローンの技術】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「クローン技術。その技術が、実際に使われていたとしたら…?」

 

古城「なっ、く、クローンじゃと!?…って、クローンって何じゃ?」

 

秋山「そこからか……」

 

加賀「同一の遺伝情報を持つ生物集団の事だ。要は、自分の分身のようなものだと思えばいい」

 

古城「なるほど!!わかったようでわからんな!!」

 

加賀「はぁ…まあいい。それで、何故唐突にクローン技術が出てくるのだ?」

 

腐和「化学室に置いてあった日誌よ。あの日誌には、人間のクローンを生産したという内容が書かれていたわ。現代の科学では人間のクローンを造る事は禁忌とされているけど、もし、その技術を悪用している()()がいたとしたら?」

 

秋山「そうか…モノクマが言っていた、『この学園のどこかにいる』という発言はそういう意味か」

 

腐和「ええ。モノクマは『この学園のどこかに黒幕がいる』と言っていたし、モノDJは『77期生のA組の中に黒幕がいる』と言っていたけれど、『ここにいる私達の中に黒幕がいる』なんて一言も言っていなかった」

 

古城「ん?ん?つまりどういう事じゃ?」

 

腐和「黒幕は、77期生のA組であって、尚且つこのコロシアイには参加していない人物。この条件を満たす人物といえば、クローン技術が関与している人物と考えるのが妥当じゃないかしら?そう考えれば、20年も経っているにもかかわらず私達が一切歳を取っていないのも、説明がつくでしょ?」

 

秋山「…そういう事か」

 

このコロシアイを仕組んだ黒幕…

それは……

 

 

 

黒幕がクローンの製造技術を悪用した目的は?

 

1.コロシアイ

2.サプライズ

3.世界征服

 

➡︎1.コロシアイ

 

 

 

コロシアイ参加者の正体は?

 

1.77期A組の生徒本人

2.77期A組の生徒のクローン

3.77期A組の生徒の幽霊

 

➡︎2.77期A組の生徒のクローン

 

 

 

黒幕の正体は?

 

1.外の世界にいる誰か

2.今までの犠牲者の幽霊

3.コロシアイ参加者のオリジナル

 

➡︎3.コロシアイ参加者のオリジナル

 

《COMPLETE!!》

 

 

 

腐和「わかったわ!」

 

古城「何っ!?」

 

腐和「まず前提だけど、黒幕は、私達にコロシアイをさせる為にクローン技術を悪用して私達のクローンを造り出したの。私達は、黒幕に造り出されたクローンだったのよ」

 

古城「なっ…!?わ、ワシらがクローンじゃと!?」

 

秋山「でも、そうでもないと俺達が歳を取ってないのは説明つかないよね」

 

 

 

目野「あり得ないですよ!!」

 

《反 論》

 

 

 

腐和「目野さん?」

 

目野「私達がクローンですって!?冗談も大概にして下さいよ!!」

 

腐和「でも、そうとしか考えられないのよ」

 

目野「私はそんな話信じませんからね!あんまりふざけた事言うと、口を業務用溶接機ちゃんで塞ぎますよ!?」

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

目野「私は、【超高校級の機械技師】目野美香子本人です!!私以外に私がいてたまるものですか!!」

 

腐和「それは、黒幕に本人の記憶を植え付けられているのよ。記憶を消せるのなら、記憶をコピーしてクローンに植え付ける事も可能なんじゃないかしら?」

 

目野「じゃあ私のこの記憶は偽物だっていうんですか!?」

 

腐和「偽物、というか本物が持っていた記憶のコピーだと考えるのが妥当じゃないかしら」

 

目野「馬鹿馬鹿しい!!私は信じませんからね、そんな話!!大体、《私達がクローンだという証拠が無い》じゃないですか!!何を根拠にそんな事を言っているのですか!!歳を取っていないのだって、不老の技術を使ったからかもしれないでしょう!?」

 

証拠……

証拠なら、アレがあったはずよ…!

 

《私達がクローンだという証拠が無い》⬅︎【外国語教室の集合写真】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「私達がクローンだという証拠ならあるわ。外国語教室にあった集合写真、覚えてる?」

 

目野「それがどうしたというのですか!!」

 

腐和「そうね…目野さんは生物室を調べていないから知りようが無かったと思うけど、この写真に写っている皆と、生物室に保管してあった死体とでは決定的に違うところがひとつあったのよ」

 

集合写真と生物室の死体を見比べた時の矛盾…

そこを突けば、私達がクローンだという事がわかるはずよね。

 

 

 

コトダマ提示!

 

【ネロと館井君の死体】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「目野さん。この集合写真をよく見て。この写真のネロの手には、傷があるでしょ?」

 

目野「んん………あ、ホントですね」

 

腐和「でも生物室にあったネロの死体の手には、写真に写っていた傷が無かったの。この集合写真は、入学後に撮られたもの。前に撮られた写真には手に傷があるのに、今見た死体には傷が無いのはおかしいわよね?傷が勝手に消えるわけないし、この写真に写っているネロとコロシアイに参加していたネロは別人だったのよ」

 

加賀「館井の目元の古傷は、きちんと写真にも死体にもあった。この事から推測するに、クローンで再現されているのは()()()()()()()()()()なのだろうな。ネロの手の傷は、恐らく入学してから負ったものだ。入学してからの情報はアップデートされないから、クローンの方のネロには手に傷が無かった…大方こんなところだろうな」

 

腐和「ええ。私達はクローンで、黒幕はオリジナルの私達の中の誰か。とすると………」

 

………!

ちょっと待って。

だとすると、このコロシアイの黒幕は…

 

腐和「……皆。このコロシアイの黒幕が誰か、わかったわ」

 

古城「なっ、何じゃと!?」

 

腐和「ええ。その人物は…」

 

…正直、信じたくなかった。

これが真実だったなんて…

私は、この人だけは絶対に黒幕じゃないと信じていたのに。

なのにどうして……

 

 

 

《人物指定》

 

 

 

腐和緋色

 

聲伽愛

 

玉越翼

 

小鳥遊由

 

知崎蓮

 

食峰満

 

越目粧太

 

聖蘭マリア

 

古城いろは

 

加賀久遠

 

目野美香子

 

館井建次郎

 

秋山楽斗

 

響歌音

 

ネロ・ヴィアラッテア

 

闇内忍

 

リカ

 

白瀬クロヱ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎腐和緋色

 

 

 

腐和「………私よ」

 

古城「なっ…!?」

 

秋山「え…?」

 

加賀「は…?」

 

目野「はっはっは、なぁんだ、腐和さんが黒幕だったのですか!そんな事だろうと思ってましたよ!」

 

目野「……………」

 

目野「……………」

 

目野「……………」

 

目野「はぎょえええええええええええええ!!!!?えっ、ふ、腐和さんが黒幕だったんですか!?」

 

腐和「…………そうよ」

 

目野「やっと白状しましたね!?大人しくお縄にかかりなさい!!」

 

腐和「違うわ!()()、黒幕じゃない!黒幕は…私のオリジナルよ。そうでしょう、モノクマ!?」

 

モノクマ『そんなわけないやーい!!』

 

モノDJ『ギャハハハハ!!オレ様達は未来ヶ峰のカリスママスコットだぜェ!?あんな()()()が黒幕なワキャねーーーーーだろが!!!』

 

秋山「!!…ねえ、今、()()()って言ったよね?どういう事?」

 

モノDJ『あっヤベッ、今のナシ!!ナシったらナシ!!幸水に豊水に二十世紀!!』

 

古城「そんなの罷り通るかァ!!お主ら、やっぱり腐和の事について何か知っておるのじゃろ!?」

 

 

 

モノクマ『違うったら違うもーーーん!』

 

《反 論》

 

 

 

モノクマ『全く、オマエラさっきからいい加減にしてほしいよね!』

 

モノDJ『黒幕がヒーローガールだァ!?ジョークも程々にしやがれってんだ!!』

 

腐和「やけに動揺してるわね。図星なのかしら?」

 

モノクマ『ギッ、ギックゥ!?そ、そんなわけないじゃん!ボクは可愛いモノクマだもんねー』

 

 

 

ーーー 反論ショーダウン開始 ーーー

 

モノクマ『そもそもクローンなんかいないやーい!』

 

腐和「じゃあ写真に写っているネロの手には傷があったのに、死体には傷が無かったのはどうしてなの?」

 

モノDJ『現代の医療技術を舐めてもらっちゃあ困るぜヒーローガール!!そんなもん、オレ様達がパパッと治しちまったに決まってんだろうが!!』

 

腐和「そんな事をして何の意味があるのかしら…?」

 

モノクマ『意味を求めるなんてナンセンスだなぁ』

 

腐和「じゃあアルバムの写真は?アルバムの写真の皆は、今より成長しているように見えたけど」

 

モノDJ『そりゃテメェの見間違いダロォ!?アルバムの写真にも、《何も不自然なところは無えんだよ》!!勝手にクローンだの何だのってこじつけてんじゃねーYO!!」

 

何も不自然なところはない…?

そんなはずはないわ。

だったら、アレは何だったっていうの…?

 

《何も不自然なところは無えんだよ》⬅︎【アルバム】

 

 

 

「その言葉、撃ち抜いてあげる!」

 

《論 破》

 

 

 

腐和「不自然なところなら、あったわよ。このアルバムの写真、一枚も私の顔が写っていないのよ。オリジナルの私とクローンの私とでは、決定的な相違点があったんじゃないかしら?だから写真に写っているのがここにいる私とは別人だという事を悟らせない為に、私の顔が写っている写真を意図的に処分したんじゃないの?」

 

目野「決定的な違い…?」

 

腐和「例えば、顔に隠しきれない大きな傷を負ってる…とか」

 

モノクマ『ギックゥ!?な、何の事かさっぱりクマー』

 

腐和「…これで分かったわね。やっぱり黒幕は、私のオリジナルだったの。オリジナルは、自分の存在を悟らせない為に、証拠となる写真を処分したのよ。それに、根拠ならまだあるわ」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【15人分のプロフィール】【白瀬のプロフィール】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「15人分のプロフィールと白瀬のプロフィール。これが私のオリジナルが黒幕だという証拠よ」

 

モノクマ『デタラメ言うなクマー!』

 

 

 

ーーー 理論武装開始! ーーー

 

モノDJ『憶測でモノ言ってんじゃねーよヒーローガール!』

 

モノDJ『さっきから黒幕だのクローンだのわけわかんねー事ばっかり言いやがってよぉ!!』

 

モノDJ『クローン技術なんざあるわけねーだろーが!』

 

モノクマ『ボクは可愛いモノクマだよー!』

 

モノクマ『腐和サンのオリジナルなんて知らないクマー!』

 

 

 

モノクマ『証拠はあんのか証拠はー!』

 

【私だけ】【プロフィール】【が】【無い】 

 

腐和「これで終わりよ!!」

 

 

 

腐和「私だけ、個人情報が記載されたプロフィールが無いの。ここにいない白瀬のプロフィールでさえ置いてあったのに。学園のどこを探しても、私のプロフィールだけは無かった。私のプロフィールが無いのは、私達に個人情報を知られると困るから処分したのでしょう?そうじゃないなら、どうして私のプロフィールだけ無いのか、説明してもらえるかしら?」

 

モノクマ『………』

 

モノDJ『………』

 

腐和「私達をここに閉じ込めてコロシアイをさせたのはあなたよ。そうでしょう!?腐和緋色さん!!」

 

 

 

《学級裁判 中断!》

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

残り5名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

以上12名

 

 

 

 

 



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非日常編③(学級裁判中編)

 

……気分が悪い。

足が重い。

頭も重い。

空気を吸っているだけでどうしようもなく吐きそうになる。

学校に行きたくない。

あそこは、ただの地獄だ。

でも、学校に行きたくないなんて言えない。

私がそんな事を言える立場じゃない。

それに、私を待ってくれている人がる。

行かなきゃ。

 

 

 

教室についた。

顔はノイズがかかって見えないけど、皆が私を見てくる。

毎日見慣れているはずの顔なのに、どうしても思い出せない。

思い出そうとすると、頭が割れるほど痛くなる。

 

私を見て嗤っている。

五月蠅い。

気持ち悪い。

頭がグルグルする。

吐き気がする。

 

 

 

「オラァ死ね!!」

 

粗暴な女子が、私のお腹を蹴ってくる。

大柄な男子が、何度も私を殴ってきた。

その様子を、クラスメイトがクスクス笑いながら見ていた。

今日食べたものが全部逆流して口から飛び出てくる。

痛くて、息が上手く吸えない。

気持ち悪い。

痛い。

苦しい。

誰か助けて。

 

「げほっ、げほっ…!」

 

私が咳き込んでいると、背の高い女子が大柄な男子の肩を掴んで止めた。

 

「ちょっと、その辺にしときなよ。それ以上やったら死んじゃうよ?」

 

「むっ……それもそうだな」

 

背の高い女子が言うと、大柄な男子は殴るのをやめた。

全身が痛い。

口の中で血と戻したものの味が混ざって気持ち悪い。

何で…

私が何をしたっていうの?

一体、いつまでこんな目に遭わなきゃいけないの…?

私が助けを求めるように手を伸ばすと、別の男子が冷ややかな視線を向けてくる。

 

「ん?どうしたのその目は?まさか文句があるんじゃないよね?」

 

「っ…………」

 

「むしろ構ってもらえて感謝してほしいくらいだよ。本来お前が俺達と同じ空気を吸えるわけがないんだからさ」

 

何で……?

何でそんな事言われなきゃいけないの…?

どうして私だけがこんな目に遭わなきゃいけないの?

 

「汚れた床は掃除しておけよ」

 

「本当に不愉快ですね。こんな人を私達と同じクラスにするなんて、理事長は何を考えているのやら…」

 

「早く死んでくれませんかね!」

 

「………うぇ」

 

「おいオメェら、コイツに死なれたら困んだろ。コイツはオレ達のサンドバッグ兼ATMなんだぜ?」

 

「ああ、それもそっか!ねえ聞いてる?うっかり自殺なんかすんなよなー。色々問題になったらメンドクセーし、何よりオレらの楽しみが減っちゃうからさ」

 

「あははははははは!!」

 

「あー、お腹空いちゃった。ねえ、何か買いにいこーよ。もちろんこいつの金でさ!」

 

男子も、女子も、優しい人だと思っていた人達も皆、私を汚物を見るような目で見ていた。

男子は肉体的な暴力で、女子は精神的な暴力で私を追い詰めてきた。

毎日、毎日、同じ事の繰り返しだ。

ここにいる皆は、誰も私を助けてなんてくれない。

全員が敵だ。

たった一人を除いては…………

 

 

 

 

『あいつ』がやらかしてから、私の人生は狂い始めた。

あいつに狂わされた皆は、私を迫害してくるようになった。

あの教室では、私は虫螻以下の存在だった。

あいつさえいなければ、多少不自由でも、平穏な日常を過ごせるはずだったのに。

クラスの皆だって、あんなに変わってしまう事はなかったのに。

……全部あいつのせいだ。

 

校舎についた。

でも今日の校舎は、いつもとは決定的に何かが違っていた。

生臭い。

むせ返るような、鼻を刺すような鉄臭い匂い。

嫌な予感がした。

私は、より濃い匂いがするB組の教室に駆け込んだ。

 

「うっ…!?」

 

B組の教室に入った瞬間、私は思わず後退りした。

ドン、と背中が壁にぶつかった。

恐る恐る教室を見ると、血溜まりの中にB組の子達が転がっていた。

その中の一人と目が合った。

その目を見れば、B組の皆が既に息絶えているのは火を見るよりも明らかだった。

無残に荒らされた教室にできた血溜まり、そこに転がる17人の亡骸。

B組の先生の亡骸もそこに転がっていた。

いけ好かない連中だったけど、無残に殺されているのは見るに堪えなかった。

 

私はふと、自分のクラスがどうなったのか気になった。

こいつらみたいに全員惨殺されてしまったのか、それともまだ生きているのか、それだけでも知りたかった。

最低な奴等だったけど、どうしても、彼等がどうなったのか気になってしまった。

私は、自分のクラスのA組の教室を開けた。

 

「……!」

 

そこには、私のクラスメイトはいなかった。

教室は荒らされてはいたものの、クラスメイトが殺された痕跡は無かった。

ふと、教卓の方に視線を移した。

 

「っ………!!」

 

そこには、信じられないものが映り込んでいた。

信じたくなかった。

見たくなかった。

でも、それは紛れもない真実だった。

その人は、全身から血を流し、糸の切れた操り人形のように力なくその場に横たわり、生気のない瞳を私の方に向けていた。

どうしてあなたが……!

 

 

 

「とうとう恐れていた事が起こってしまったか……」

 

「ううむ、奴の正体を見抜けなかった我々の失態だな」

 

後ろを振り向くと、理事長と学園長が立っていた。

二人は、この事件について何か知っている様子だった。

私が口を開こうとすると、理事長は私の肩に手を置いて言った。

 

「おめでとう。君は選ばれたんだ。君はこれから私達の『希望』となり、そして『正義』となるんだ」

 

『希望』…『正義』……

それが私の………

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

《学級裁判 再開!》

 

腐和「私達をここに閉じ込めてコロシアイをさせたのはあなたよ。そうでしょう!?腐和緋色さん!!」

 

 

 

目野「なっ…や、やっぱり腐和さんが黒幕だったのですか!?」

 

古城「そんな、腐和が…!?」

 

加賀「にわかに信じ難いが…」

 

腐和「…ええ。私だって、正直もう一人の自分が黒幕だったなんて信じたくなかったわよ。でも、そうとしか考えられないの。だって、私の顔や個人情報だけ意図的に隠されていたんだもの」

 

古城「そんな…」

 

秋山「で、実際どうなんだ?答えろモノクマ」

 

モノクマ『………』

 

モノDJ『………』

 

モノクマ『うぷ…うぷぷ…』

 

 

 

モノクマ『うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ!!!!』

 

モノDJ『ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!』

 

 

 

モノクマとモノDJは、その場で高笑いした。

するとその直後、裁判場の明かりがパッと消える。

 

目野「えっ、な、何ですか!?停電!?」

 

古城「どうなっておるのじゃ!?」

 

秋山「二人とも、落ち着いて…」

 

加賀「…いよいよご本人とご対面というわけか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぷぷぷぷ、ご名答〜!」

 

 

 

 

 

腐和?「待っていたわ、ゴミクズ共。私はずっと、この時を待っていたのよ」

 

 

 

裁判場の明かりが元に戻り、モノクマとモノDJがいた場所を見ると、そこには二匹の代わりに一人の女性が立っていた。

その人は、左眼に眼帯をつけていて、緋い髪を後ろで結っていた。

女性用のスーツを着て大人びた格好をしてはいるけれど、高校生と見紛う程に若々しかった。

私は、その女性を見た瞬間に確信した。

…この人は、私のオリジナルだ。

 

 

 

 

腐和?『お見事大正解〜!!あんた達をこの学園に閉じ込めてコロシアイをさせていた黒幕は、この私、腐和緋色でしたーーーーー!!アハハハハハハハ!!』

 

私のオリジナルは、大袈裟に笑いながら私達の正解を褒め称えた。

後ろで結っていた髪を乱暴に解いて、不気味な笑みを浮かべた。

ついに本性を現した…といったところかしらね。

 

古城「そ、そんな…腐和、お主が黒幕じゃったのか!?」

 

腐和『ええそうよ。私が黒幕だったの。今までモノクマとモノDJを操っていたのは私。ふふふ、驚いた?まさかあなた達を率先して引っ張ってきたリーダーが黒幕だったなんて』

 

秋山「腐和さん……」

 

腐和『いや〜、上手くやっていたと思ったのだけれどね。ふふっ、まさかあんた達がここまで早く私に辿り着くとは思わなかったわ。…ま、私がわざとバレるように仕向けたんだけどね』

 

腐和「っ………!」

 

私のオリジナルは、これまでの裁判を振り返ってわざとらしく笑った。

全部、何もかもこいつが仕組んだ事だった。

私が、私のオリジナルが、皆の命を弄んで殺したんだ。

 

腐和『とりあえず議題その1、『黒幕は誰か』、これに関しては正解。黒幕は私、腐和緋色よ』

 

腐和「あなた…本当に私なの?」

 

腐和『ええそうよ?むしろ、私が本物の腐和緋色なの。あなたは、コロシアイの為だけに用意したクローン。偽物よ』

 

腐和「…………」

 

秋山「腐和さん、真に受ける事ないよ。こいつは君じゃない。こいつは、そんな事を言って裁判を掻き乱したいだけなんだよ」

 

腐和『ふふふ、いやだわ秋山君。人を指で差さないでくれるかしら。私が今更そんな不正をするわけないでしょう?ああ、そうそう。裁判に過度に干渉するのはルール違反だし、私は大人しくここであなた達の議論を聞いていようかしらね』

 

目野「なっ、何なんですかあなたは!?いきなり出てきて、本物の腐和さんだと言い張ったりなんかして!一体何が目的なんですか!?」

 

腐和『あら、目野さん。何でもかんでも私に聞けばわかると思ったら大間違いよ。そもそもあなた達は、『このコロシアイの目的は何か』、そして『あなた達は何者か』を議論する為にここに集められたのでしょう?人に頼ってばっかりいないでたまには自分で考えましょうって先生に習わなかったかしら?』

 

そう言って私のオリジナルは、今までモノクマが座っていた椅子にふんぞり返り頬杖をついた。

あくまでこの議論には不干渉を貫くつもりね。

 

腐和「……皆。議論を続けましょう。こいつの言う通り、真相を解き明かさない事には先に進めないわ」

 

古城「うぅむ…議論をすると言っても、何を話せば良いのじゃ?」

 

加賀「とりあえず、『俺達は何者か』、これを明らかにするのが先決じゃないのか?それが明らかになれば、黒幕の目的も自ずと明らかになるだろうしな」

 

腐和「そうね。皆、私達の正体について話し合いましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始!! ーーー

 

 

 

古城「正体って…ワシらはコロシアイの為に造られた《クローン》なんじゃろ!?それでもう結論は出たではないか!!」

 

腐和『ふふふ、馬鹿ねぇ。そういう事を言ってるんじゃないのよ』

 

古城「ばっ、莫迦とは何じゃ莫迦とは!!」

 

秋山「ほらそこ、いちいち反応しない」

 

加賀「俺達の正体、か。十中八九《俺達が未来ヶ峰学園にいた時の事が関係していそうだが》…」

 

今、重要な事を言った人がいたわよね…?

 

 

 

《俺達が未来ヶ峰学園にいた時の事が関係していそうだが》⬅︎【情報管理室の日記帳】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「情報管理室に置いてあった手帳。そこに重要な手掛かりが記載されていたわ」

 

秋山「えっ、そうなの?」

 

腐和「ええ。日記には、こう書かれていたわ。入学して最初の2年間は、A組はいたって平和なクラスだった。その年の1年A組は、珍しいくらいに皆仲が良くて、担任の先生も他の先生に羨ましがられていたそうよ。だけど3年生になったその日、ある生徒が自殺したらしいの」

 

古城「えっ……?」

 

腐和「その生徒の自殺の原因は明らかになっていないわ。でもその日から、A組の間ではギスギスした空気が流れ始めたそうなの。生徒達は日に日に荒んでいき、入れ替わりで転入してきた女子生徒がクラスメイトからのいじめに遭い、果てには転入生以外の全員が【超高校級の絶望】となってしまった。そして【超高校級の絶望】となった生徒達の魔の手は、教師や他の生徒にまで及んだ。……これが日記に書かれていた内容よ」

 

古城「そんな…嘘じゃろ!?ワシらが、いじめを…他の者達を殺したというのか!?」

 

腐和「…私達がじゃなくて、私達のオリジナルが、でしょうけどね。この日記がモノクマ達の捏造とは思えないし、おそらくは…そういう事でしょうね」

 

秋山「じゃあ、俺達の正体って……」

 

腐和「ええ、そうよ。77期生のA組の生徒の正体は【超高校級の絶望】で、私達はそのクローンだったの」

 

目野「そ、そんな…!!そんな話、信じませんからね!!」

 

腐和「これが『私達は何者か』、という問いに対する答えよ」

 

腐和『うん、50点ってところかしらね。大方合ってはいるけど、それが全てじゃないわ』

 

私のオリジナルは、椅子にふんぞりかえって偉そうに私の出した結論を採点した。

50点…という事は、まだ何か明らかになっていない事があるって事よね?

 

加賀「うむ…とりあえず、その自殺した生徒とやらの詳細を明らかにすれば良いのではないか?」

 

腐和「え…?」

 

加賀「その日記の内容から察するに、俺達が【超高校級の絶望】に身を堕としたのには、その生徒の自殺が深く関係しているのだろう?その謎を解けば、真実が見えてくるのではないか?」

 

腐和「………そうね」

 

古城「しかし…その自殺した生徒というのは、一体誰だったんじゃ?」

 

自殺した生徒…

それってまさか…

 

 

 

《人物指定》

 

 

 

腐和緋色

 

聲伽愛

 

玉越翼

 

小鳥遊由

 

知崎蓮

 

食峰満

 

越目粧太

 

聖蘭マリア

 

古城いろは

 

加賀久遠

 

目野美香子

 

館井建次郎

 

秋山楽斗

 

響歌音

 

ネロ・ヴィアラッテア

 

闇内忍

 

リカ

 

白瀬クロヱ

 

 

 

 

 

➡︎白瀬クロヱ

 

 

 

腐和「……白瀬じゃないかしら」

 

古城「なっ、何じゃと!?」

 

秋山「白瀬が…自殺したって…どういう事?」

 

腐和「私達A組は、白瀬の自殺が原因で絶望堕ちしたんじゃないかしら」

 

目野「はああああ!!?い、いきなり何を言うんですか!?白瀬が自殺して、それが原因で私達が絶望堕ちした!?馬鹿な事を言わないで下さい!!大体、一体どこから白瀬の名前が出てきたというんですか!?」

 

腐和「白瀬が自殺したという根拠ならあるわ。あなた達も一緒に見たでしょ?」

 

白瀬が自殺したという根拠…

皆で一緒に見たアレが根拠になるはずよ!

 

 

 

コトダマ提示!

 

【理事長室のDVD】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「理事長室にあったDVD。アレが白瀬が自殺したという証拠よ」

 

秋山「理事長室のDVD…それってまさか…」

 

腐和「ええ。白瀬がモノクマとモノDJにオシオキされる映像よ。あれはおそらく、このコロシアイが始まる前に撮られたものよ。生物室に保管されていた死体は、おそらくそのオシオキで白瀬が死んだから、そこにいる私のオリジナルが保管しておいたのでしょうね」

 

腐和『ふふふ、そうよ?白瀬さんの死体は、私があそこに入れたの。白瀬さんは黒幕どころか、コロシアイが始まるずっと前に死んでいたというのに…あなた達ときたら、寄ってたかって白瀬さんを黒幕扱いするんだもの。もうおかしくって笑い堪えるの必死だったわ』

 

椅子に座っている私のオリジナルは、クスクス笑いながら高みの見物を決め込んでいた。

まるで、私達がこうして真相を解き明かす為に議論しているのを嘲笑っているみたいだ。

 

加賀「あの映像がトリガーだったのか…では、俺達は白瀬が自らオシオキされる映像を見て絶望に堕ち、世界中でテロを起こし学園内の人間を殺した…という事になるな」

 

目野「いや、でもあり得ないですよ!!どうしてあんな趣味の悪い映像を見せられて絶望堕ちしなきゃならんのですか!?大体私、その白瀬っていう人の事全然知りませんし!どうして知らない人が目の前でオシオキされて死んだからって、私達が絶望するんですか!」

 

腐和「…確かに、私達は白瀬の事を知らないから、今ここにいる私達からしたらわけがわからないでしょうね。だけど空白の20年の間に未来ヶ峰学園で過ごしてきた私達は、白瀬に対して特別な感情を抱いていたんじゃないかしら?おそらく私達は、白瀬に心酔していたんじゃないかしら」

 

目野「はぁ!?イミがわかりませんよ!!どうしてそうなるんです!?私達がその女に心酔していたという根拠がどこにあるというのですか!!」

 

私達が白瀬に心酔していたといえる根拠……

もしかして、アレじゃないかしら。

 

 

 

コトダマ提示!

 

【白瀬の肖像画】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「美術室に置いてあった白瀬の肖像画。あれは、越目君がここに在籍している時に描いたものよ。あれが、私達が白瀬に心酔していたっていう根拠にならないかしら?」

 

秋山「ああ、確かにやけに神格化して描かれているなぁとは思ってたけど…」

 

加賀「確か白瀬は、俺達に学級委員長に推薦されていて、クラス一の人気者だったそうだからな。オリジナルの俺達にとって、心酔していた白瀬の自殺は絶望堕ちしてしまう程にショックな出来事だったという事だろう。後に入ってきた生徒をいじめたというのも、それ程に俺達が失ったものが大きかったからなのだろうな」

 

目野「でも、白瀬さんは一体何がしたかったんでしょうね?」

 

腐和「それについては、心当たりがあるわ」

 

白瀬がやりたかった事…

それは……

 

 

 

白瀬の正体は?

 

1.【超高校級の絶望】

2.黒幕

3.内通者

 

➡︎1.【超高校級の絶望】

 

 

 

白瀬が計画していた事は?

 

1.サプライズ

2.コロシアイ

3.世界征服

 

➡︎2.コロシアイ

 

 

 

白瀬が自殺した理由は?

 

1.誰かにいじめられていた

2.自責の念に耐えられなかった

3.コロシアイのきっかけ作り

 

➡︎3.コロシアイのきっかけ作り

 

《COMPLETE!!》

 

 

 

腐和「わかったわ!」

 

古城「何じゃと!?」

 

腐和「ええ。白瀬が自殺したのは、コロシアイのきっかけ作りの為だったの。白瀬は、20年以上も前からコロシアイを計画していたのよ」

 

目野「ええええええええええ!!?何ですってぇ!?」

 

腐和「さっき加賀君は、心酔していた白瀬の自殺は絶望堕ちしてしまう程にショックな出来事だった、と言っていたわよね。きっと白瀬は、それが狙いだったのよ」

 

秋山「まさか……」

 

腐和「【超高校級の絶望】だった白瀬は、2年間もかけて私達を洗脳して、自分を心酔しているクラスメイトの前で自ら命を断つ事で私達にコロシアイをやらせようとしたの。私達は、彼女の思惑通り、絶望に堕ちて学園内の仲間を次々と殺していったというわけ」

 

目野「し、白瀬さんがコロシアイを…!?ちょっと理解が追いつかないんですけど…そ、そもそも、白瀬さんがコロシアイを企んでいたなんて情報、どこから出てきたんです!?白瀬さんが【超高校級の絶望】だったという根拠は!?そんな情報、どこから出てきたんです!?」

 

白瀬が【超高校級の絶望】だったという根拠、そして白瀬がコロシアイを企んでいた根拠は…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【理事長室の研究資料】【理事長室の日記ノート】【コロシアイの企画書】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「理事長室の研究資料と日記ノートに、完璧な才能を生み出す技術に関する記述と、その完璧な才能を持つ研究の唯一の成功作である少女が【超高校級の絶望】に堕ちてしまった、という記述があったでしょう?白瀬は、未来ヶ峰学園の理事長が生み出した完璧な才能を持つ高校生で、私達を絶望に堕とした【超高校級の絶望】だったのよ」

 

目野「その完璧な才能を持つ高校生だというのが白瀬さんの事だっていうのは何でわかるんですか!?」

 

腐和「根拠は二つあるわ。まず、未来ヶ峰学園の理事長の名前。彼の苗字が、白瀬のものと同じだったの。だからもしかしてって思ってもう一度プロフィールを見てみたら、彼女は才能溢れる未来ヶ峰学園の生徒達の中でも飛び抜けた才能を持っていたと書かれていたわ。完璧な才能を持っているのだから、私達を自分に心酔させて絶望に堕とす事も容易かったでしょうね」

 

目野「はぁ〜…そうだったのですか」

 

腐和「…あなた、一緒に捜査してたわよね?」

 

目野「私、機械ちゃん以外はサッパリなので!!全然気にしてませんでした!!ごめんなさい!!」

 

秋山「あのさぁ……」

 

腐和「…まあいいわ。とにかく、白瀬は未来ヶ峰学園に造られた完璧な才能を持つ高校生で、私達と同じ77期生としてA組に在籍していた。でも彼女はその時既に【超高校級の絶望】に感染していた。ここまではOK?」

 

目野「はい!」

 

腐和「それじゃあ続けるわね。次に白瀬がコロシアイを企んでいたという根拠だけれど、ネロのパソコンに白瀬が書いたコロシアイの企画書があったの。きっと、リカが死に際にファイルを見つけ出してノートパソコンに隠しておいてくれたのね。白瀬は、その企画書を使って、絶望堕ちした私達にコロシアイをやらせようとしていたのよ」

 

目野「なるほど…リカが白瀬さんを黒幕だと睨んでいたのはそういう事だったのですね。で、その時に入手した情報をモノクマ達に消されるのを恐れて知崎さんに自分を殺させたと…リカは、自分の命を賭して私達に情報を託してくれたのですね」

 

加賀「だからそうだと昨日言っただろう。君もいい加減自分で情報を整理する習慣をつけろ。話が進まん」

 

目野「ぅぐ…!」

 

加賀君が腕を組みながら深いため息をつくと、目野さんが肩身狭そうに押し黙った。

…うん。

正直、目野さんが自分で考えてくれないから話が先に進まないというのは前々から思っていたけれどね。

 

古城「じゃが…自分を殺してまでワシらにコロシアイなんてさせて、白瀬は何がしたかったんじゃ?」

 

腐和「それは………」

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

ゼ ツ ボ ウ ノ カ ン セ ン

 

 

 

【絶望の感染】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「白瀬がコロシアイを計画した理由、それは世界中に絶望を感染させる事だったのよ」

 

目野「えっ、えええ!?…って、どういう事です?」

 

腐和「未来ある超高校級達が殺し合うところを生中継で世界中に晒して、世界を絶望に堕とす。それが【超高校級の絶望】である彼女の真の狙いだったの。あなたは、何らかの目的で、既に死んだ白瀬の計画を奪って後釜に据わった。違う?」

 

腐和『うん、まあそういう事ね。それにしても…コロシアイをやらせる為だけに自殺するなんて、本当に愚かな女だったわ。あの女も愚かだったけど、未来ヶ峰学園のお偉いさん方も大概だったわね。まさか、百年以上も前に打ち切りになったデスゲームの主催者の後継者が紛れ込んでいた事に気づかなかっただなんて』

 

腐和「どういう事?」

 

腐和『お察しの通り、白瀬さんはダンガンロンパの真似事をやろうとしていたの。全ては、未来ヶ峰学園の上層部に紛れ込んでいた前作のダンガンロンパの制作者の後継者が、彼女に『絶望』としての人格を植え付けた事が発端だったというわけ』

 

腐和「…あなたも彼女に心酔して、絶望に堕ちた一人じゃないの?」

 

腐和『あら、私がいつそんな事言ったかしら?』

 

腐和「………え?」

 

今の反応を見る限り、私のオリジナルは白瀬に心酔している様子は無かった。

…という事は、彼女は白瀬の自殺映像によって絶望堕ちしたというわけではなかった、という事になるわよね?

じゃあ、彼女は一体…?

 

腐和『……はぁ。あのねぇ、私が白瀬さんに洗脳されてテロを起こした【超高校級の絶望】の一人なら、私一人でコロシアイを乗っ取ったりなんてしないでしょう?そんな事もわからないの?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腐和『私が造った人工知能のくせに』

 

 

 

 

………………………………

 

………………………………………………………………………………………………

 

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

 

 

 

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?

 

 

 

 

 

 

《学級裁判 中断!》

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

元・【超高校級の???】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

残り6名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

以上12名

 

 

 

 

 



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非日常編④(学級裁判後編)

《学級裁判 再開!》

 

私が人工知能って…

どういう事…?

 

腐和『まだわからないの?あなたは、私のクローンに人工知能を植え付けた、ただの人形なの』

 

腐和「え……?」

 

腐和『あら、あなただってもう気付いてるはずでしょう?証拠なら、既にあなたが見つけてるはずだもの』

 

私が見つけた証拠って…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【人工知能のレポート】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「…情報管理室にあった人工知能のレポートの事…?」

 

目野「ええ!?そ、そんなレポートありましたっけ…?」

 

加賀「はぁ……」

 

目野「そこでため息つくのやめて下さいよ!!」

 

腐和『ふふふ、そうよ。正解。あなたは、私が創り出した人工知能なの。あなたが自分のものだと思っている記憶も、私が捏造したのよ。あなたはそれを勝手に補完して自分の記憶だと思い込んでいただけ。あなたが残してきた偉大な功績も、全部私のでっち上げよ。実際には【超高校級の警察官】腐和緋色なんて人物、この世には存在しないの』

 

腐和「え……」

 

腐和『はぁ……本当はこんなはずじゃなかったのだけれどね。あなたには、本当は玉越さんが死ぬ前に退場してもらうつもりだったのに』

 

腐和「それって…どういう事!?」

 

腐和『あら、気付いてなかったの?知崎君がルール違反をしてグングニルの槍とケラウノスの雷が発動した時、本当はあなたを殺すつもりだったのよ。本当はあそこで見せしめとして死んでもらう予定だったのに、生き残っちゃったんだもの。だから予定を変更して、あなたにはコロシアイを誘導してもらう事にしたの』

 

古城「誘導って…ウヌは何を言っておるのじゃ!?」

 

腐和『皆、思い出してごらんなさい?響さんが玉越さんを殺す原因を作ったのも、越目君が小鳥遊さんを殺す原因を作ったのも、食峰君に愚痴を言って殺人を唆したのも、館井君と目野さんに脱出チケットを譲ってネロ君殺しのトリックを実行可能にしたのも、聲伽さんが知崎君を殺す原因を作ったのも全部…こいつでしょ?』

 

腐和「っ………!!」

 

腐和『私がそうするようにプログラミングして、こいつはそれを実行した。こいつは、私が書き込んだプログラムを、勝手に自分の中のフィルターを通して、自分の善意に従った行動だと()()()()事にした。私がコロシアイを円滑に進める為に下した命令は、こいつの中では『良かれと思って起こした行動』に変換されていたの』

 

腐和「そんな……!」

 

腐和『…ふふっ、ホント、人工知能のくせに思考回路まで人間と一緒なんだから笑っちゃうわ。正義感の強いあなたは、黒幕である私の命令に従ってコロシアイを手助けするのが許せなかった。だから無意識のうちに、自分の意思で起こした行動だと、自分の思考を書き換えた。こんなに皮肉な事って無いわよね?『いい事』だと信じて起こした行動が、実は黒幕に命令されてやった事だったなんて』

 

古城「そんな…そんなの嘘じゃ!嘘じゃあ!!」

 

秋山「腐和さん…」

 

腐和「…………」

 

この女が何を言っているのか分からなかった。

…いや、()()()()()()()()()

私は、今までずっと、自分の良心に従って行動してきた。

それが全部この女の命令だったなんて…

今こうして考えている事すらも、この女が仕組んだ事だったなんて。

 

腐和『あら、いつまでも現実逃避している場合なの?』

 

秋山「え…?」

 

腐和『まだ結論は出ていないでしょう?『あなた達は何者か』、この議題に対する答えを示してもらわないとね』

 

その言葉を聞いた瞬間、私の思考は現実に引き戻された。

…そうだ。

今は、議題に対する答えを見つけないと。

それを思い出した瞬間、私の頭は自分でも驚く程に冷静になった。

 

腐和『ああ、私はここであなた達の議論を聞いてるから。好きに議論してちょうだい』

 

腐和「…皆。議論を続けましょう」

 

 

 

ーーー 議論開始! ーーー

 

 

 

古城「結論って…《ワシらが【超高校級の絶望】でクローンじゃ》という事ではないのか?」

 

秋山「それだとさっきと何も変わってないよ。あのさ、やっぱりそこにいる《腐和さんのオリジナル》が何者かを議論した方がいいんじゃないかな?」

 

目野「そうは言っても、何について話し合えばいいんでしょう!?」

 

秋山「うーん…何か《不自然なところ》とか無かったかな?」

 

加賀「不自然なところ、か。《入学生名簿》…とかか?」

 

ん、今重要な発言をした人がいたわね。

 

 

 

《入学生名簿》⬅︎【入学生名簿】

 

「それに賛成よ!!」

 

《同 意》

 

 

 

腐和「入学生名簿!皆、入学生名簿を思い出してみて」

 

古城「あぁ?それがどうしたというのじゃ?」

 

腐和「入学生名簿には、私の名前が無かったの。それってつまり、入学時点では私はA組の生徒じゃなかった、って事になるわよね?」

 

秋山「あ…そういえば、全員の集合写真にも、インタビュー映像にも腐和さんだけ出て来なかったよね」

 

腐和「ええ。ここからは憶測になるけど、日記に書かれていた『自殺した生徒と入れ替わりで編入してきた生徒』っていうのは私の事だったんじゃないかしら?」

 

目野「え、そんな事書いてありましたっけ…?で、えっと…何で入れ替わりで入ってきた生徒が腐和さんになるんでしたっけ?」

 

腐和「根拠はあるわ。私達が見つけた証拠の中に、ヒントがあったの」

 

 

 

コトダマ提示!

 

【予備学科のファイル】【3年A組の生徒名簿】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「予備学科のファイルと3年A組の名簿、それが根拠よ。私の名前は、1年次と2年次には予備学科に記載されていたの。一方で、3年次からはA組の名簿に記載されていた。これって、自殺した白瀬と入れ替わりで私がA組に編入したって事よね?ほら、これを見て」

 

そう言って私は、情報管理室から持ち出した資料を皆に見せた。

そこには確かに、私の言った通りの事が書かれていた。

 

目野「あ、ホントだ…!腐和さんだけ1年と2年の時は予備学科にいますね!」

 

腐和「ええ。つまり、私だけは白瀬の洗脳を受けていなくて、絶望にも堕ちていない…という事になるでしょ?私がここに閉じ込められた16人が【超高校級の絶望】でクローンだった、という結論を出そうとした時、私のオリジナルが『50点』と言ったのはそういう事だったんじゃないかしら?」

 

加賀「君だけはイレギュラーだった、という事か……」

 

腐和『ふふ、まあそんなところね』

 

古城「じゃあ何じゃ、あとは腐和の本体の正体を突き止めればええんじゃな?」

 

腐和「それに関しては、もう答えが出てるわ」

 

あったはずよ。

この女の正体を示す証拠が…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【【超高校級の希望】の編入】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「【超高校級の希望】、それが私の…いえ、この女の正体よ」

 

古城「ちょ、超高校級の…希望…?」

 

腐和「加賀君、化学室で拾った日記あったでしょ?悪いけど、今ここで読みげてくれる?」

 

加賀「ああ。『ついに我々の計画は最終段階に突入した。人間の複製体に遺伝子改造と記憶の移植を施し、人工的に超高校級の才能を生み出す事に成功した。しかし問題は、過度の改造に耐えられる遺伝子を持つ人間が限られているという点である。そこで我々は、全国の高校生の遺伝子検査を行い、最も適合率の高かった高校生を【超高校級の希望】と称して未来ヶ峰学園に編入させる事にした。』…以上だ」

 

腐和「ありがとう。今彼が言った事が全てよ。私のオリジナルは、改造実験の為に予備学科から引き抜かれてA組に編入させられた、【超高校級の希望】だったの」

 

秋山「それじゃあ…」

 

腐和「『私達は全員クローンで、あなた達15人のオリジナルは【超高校級の絶望】で、私は【超高校級の希望】だった』。これが『私達は何者か』という問いに対する答えよ」

 

腐和『うふふ、お見事大正解〜♪【超高校級の絶望】だった白瀬さんが自殺して、クラス全体が絶望に堕とされたから、それを阻止する為に『希望』である私があのクラスに編入させられたの。あんた達に対抗する為に、完璧な才能を持った白瀬の才能を移植させられたわ。全く…私には何の才能も無かったのに、適合者だったからってだけの理由であんなクラスに編入させられるなんて傍迷惑な話よね』

 

秋山「そんな……」

 

腐和『あら、もう結論は出ました、みたいな顔してるけど、まだ裁判は終わってないわよ?』

 

古城「え?」

 

腐和『『このコロシアイの目的』、それがまだ明らかになっていないじゃない。言ったはずよ?この裁判では、『黒幕は誰か』、『このコロシアイの目的は何か』、そして『あなた達は何者か』という議題で議論を進めてもらうって。このコロシアイの目的がまだわかっていない以上、この先には進まないわよ?』

 

古城「このコロシアイの目的って……あ、ひょっとして…」

 

目野「何です、何かわかったんですか古城さん!?」

 

古城「もしや、復讐…ではないのか?」

 

腐和『………へえ?』

 

古城「ワシらは、入れ替わりで編入してきたお主をいじめておったのじゃろう?お主は、ワシらがいじめてきた事を恨んで、復讐の為にこのコロシアイを計画したんじゃ…」

 

目野「ひ、ひいいいい!?ふ、復讐の為だけに私達の記憶を消してコロシアイを!?ヤバいですね!!」

 

腐和『プッ…あはは!馬鹿ねえ、そんなわけないじゃない』

 

古城「莫迦とは何じゃ莫迦とは!!」

 

腐和『確かにあなたの言う通り、私はあんた達にこっぴどくいじめられたわよ。『白瀬様は死んだのに、何で何の才能も無いお前がここにいるんだ』って。…全く、酷い話よね。私だって好きであのクラスに来たわけじゃないのに。毎日、毎日、毎日、殴られて、蹴られて、罵声を浴びせられて。想像できるかしら?非力な女子高生が毎日毎日鳩尾殴られて、ゲロ吐いてのたうち回ってるところを』

 

秋山「あの………」

 

腐和『ああ、別に謝ってもらいたくなんかないわ。あんた達に奪われたものはもう戻ってこない。今更謝ったってもう遅いわ』

 

そう言って私のオリジナルは、左眼の眼帯にそっと手を添えた。

あの眼帯の下、まさか……

 

古城「尚更理解に苦しむわ!!いじめられた復讐じゃないというのなら、お主の目的は何なんじゃ!?ワシらの事が憎くてコロシアイをさせたんじゃないのか!?」

 

腐和『だからあなたは馬鹿だと言っているのよ。完璧な才能を移植されたとはいえ、私は普通の高校生なのよ?そんなショボい動機でこんな大掛かりな事やるように見えるかしら?』

 

古城「しょ、ショボいって…」

 

加賀「うむ…本人がそうだと言うなら、別の事情があったと考えるのが妥当だろうな」

 

別の事情………

…あ、ひょっとして…

 

 

 

コトダマ提示!

 

【日記帳の写真】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「…この写真の女性が関係してるんじゃないかしら」

 

腐和『…!』

 

そう言って私は、写真を私のオリジナルに見せた。

すると彼女は、僅かに目を見開く。

 

腐和「…図星ね。顔は血で汚れて見えないけど、この女性の隣に映っているのはあなたよね?」

 

腐和『…………』

 

腐和「あなたは、この写真の女性と知り合いだったのよね?おそらく、血を分けた母娘、といったところでしょうね。あなたは、当時クラスメイトだった皆に、クラスの担任だった自分の母親を殺された…違う?」

 

秋山「じゃあこのコロシアイの目的は、母親の仇討ちだった…って事?」

 

腐和『………ふ、ふふ、そうよ。あなた達の言う通り、その写真に写っているのは私の母よ。私の母は、熱心な教師だった。私が予備学科に通っている時も、自分のクラスの話を毎日のようにしてくれたわ。私は母の話を聞いて、あなた達のクラスに入りたいと願っていた事もあった。まさかあんな掃き溜めのような場所だとは思ってもみなかったけど』

 

腐和「………」

 

腐和『母が殺された時、私は確信したわ。母を殺したのはあんた達だって。そして誓ったの。必ずあんた達を一人残らず捕まえて殺してやるんだって』

 

古城「じゃあ…!」

 

腐和『残念だけどハズレ』

 

目野「ええ!?」

 

腐和『私があんた達への復讐を考えていたのは事実よ。でもそれは、コロシアイの動機であって目的じゃないわ。そもそも、普通の高校生の復讐心でこんな大それた事ができるわけないじゃない』

 

確かに…

いくら完璧な才能を移植されているからって、未来ヶ峰学園を占拠してコロシアイをさせるなんて事…

…あ。

………わかったかも。

このコロシアイの目的が。

 

 

 

コトダマ提示!

 

【未来ヶ峰学園の計画】

 

「これよ!!」

 

 

 

腐和「未来ヶ峰学園の計画…これがあなたの目的と関係してるんじゃないの?」

 

目野「え!?どういう事なんです!?」

 

腐和「未来ヶ峰学園は、【超高校級の絶望】を捕まえて処刑する事にしたらしいの。あなたの目的は、『【超高校級の絶望】を殺す事』そのものなんじゃないの?」

 

腐和『…ふふ、そうよ。確かに未来ヶ峰学園は、【超高校級の絶望】であるあなた達を捕らえて処刑する計画を立てていた。私は、母を殺した奴等に復讐する為にその計画に参加した。そしてその計画は成功し、私はこの手であんた達を殺してやったわ』

 

目野「え…!?」

 

加賀「では、俺達のオリジナルは…」

 

腐和『とっくに死んでるわよ。もう17年も前の事だったかしら。国の将来を担う超高校級ともあろう者が、あっさり死ぬんだもの。ホント傑作だったわ』

 

古城「そんな…!じゃあ、どうしてワシらにコロシアイなんかさせるんじゃ!?もう本物は死んで、復讐は果たされたんじゃろ!?」

 

腐和『うーん…これ、私の口から言わなきゃダメかしら?あのねえ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腐和『このコロシアイは、繰り返されてるのよ』

 

 

 

 

 

腐和「………え?」

 

腐和『言ったでしょう?あんた達はクローンだって。あんた達のクローンは何十人もいるの。あんた達のオリジナルはこの学園の地下施設で冷凍保存されていて、クローンはいくらでも作り放題というわけ』

 

古城「嘘じゃろ…!?」

 

腐和『嘘じゃないわ。何回、何十回とコロシアイは繰り返されてきた。繰り返す度に全員死んでまた一からリセットの繰り返し。私は、何十回もあんた達がここで死ぬところを見てきた。私のクローンは、毎回違う才能でコロシアイに参加して、考え方に多少の違いはあれど皆自分の正義に従ってコロシアイに立ち向かって、結局死んでいった。このコロシアイは、最初のコロシアイから数えて104回目なのよ』

 

秋山「そんな…そんな事、あるわけが…」

 

腐和『…さて。ここまで言えばわかるかしら?私が何故、未来ヶ峰学園の計画を利用して何十回もコロシアイをしているのか』

 

腐和「…………」

 

こいつがコロシアイをする目的…

…考えろ、考えればわかるはずよ…!

 

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

ナ マ チ ュ ウ ケ イ

 

 

 

【生中継】

 

「そういう事ね!」

 

 

 

腐和「このコロシアイを生中継する事、そうでしょう?」

 

目野「えっと…どういう事です?」

 

腐和「このコロシアイは、ある人達に見てもらうために仕組まれたものだったのよ」

 

古城「あ、ある人達?」

 

加賀「いるだろう?俺達が死ぬ事で確実にいい気分をする人間達が」

 

腐和「ええ。このコロシアイの目的は…」

 

 

 

このコロシアイの目的は?

 

1.ドッキリ番組

2.公開処刑

3.絶望の感染

 

➡︎2.公開処刑

 

 

 

このコロシアイを見てもらう人達とは?

 

1.参加者を恨んでいる大勢の民衆

2.未来ヶ峰学園の誰か

3.絶望の残党

 

➡︎1.参加者を恨んでいる大勢の民衆

 

 

 

コロシアイが何度も繰り返されている理由は?

 

1.ギャンブルのため

2.宣伝のため

3.視聴者の前で参加者を裁くため

 

➡︎3.視聴者の前で参加者を裁くため

 

《COMPLETE!!》

 

 

 

腐和「わかったわ!」

 

古城「何っ!?」

 

腐和「このコロシアイの目的は、私以外の皆を視聴者の前で断罪する事だったの。世界中には、この世界をメチャクチャにした皆を恨んでいる人が大勢いるわ。あなたは、その人達から資金援助を受けてコロシアイを繰り返しているのでしょう?」

 

腐和『………』

 

加賀「なるほどな。道理で警察が来ないわけだ。人権が無い俺達を警察が助けに来るわけがないし、そもそもその警察は俺達が機能を停止させてしまったわけだからな」

 

腐和『ふふふ、まあそういう事よ』

 

腐和「最後に、このコロシアイの目的について振り返るわよ」

 

 

 

 

ークライマックス推理開始!ー

 

【Act.1】

事の発端は、【超高校級の絶望】である白瀬が77期生として未来ヶ峰学園に入学した事だった。

彼女は、世界中に絶望を蔓延させるため、手始めにクラスメイトの皆を洗脳して自分に心酔させた。

表では皆の理想のクラス委員として振る舞いつつ、水面下では世界を絶望に堕とす為のコロシアイの計画を立てていたの。

そして2年後、彼女はとうとうその計画を実行に移した。

白瀬は、私達の前で自らをオシオキする事で、クラスメイトを絶望に堕とそうとしたの。

 

【Act.2】

白瀬が死んだ事で、当時の3年A組の間では絶望が蔓延し始めた。

そしてその時、A組にはもう一つの出来事が起こった。

予備学科に通っていた私のオリジナルが、白瀬と入れ替わりでA組に編入してきたの。

その事をよく思わなかった皆は、私のオリジナルを迫害して、私のオリジナルの中では殺意が芽生え始めた。

そして卒業間近、とうとう事件は起こってしまったの。

 

【Act.3】

白瀬の計画通り絶望に堕ちたA組の皆は、世界各地でテロを起こし始めた。

皆は世界中の人々に絶望を感染させ、テロの規模を拡大していった。

その魔の手は『希望』を育成する機関である未来ヶ峰学園にも及び、学園内で殺し合いが発生し、多くの生徒や教員が犠牲となった。

そしてA組の担任だった私の母も例外ではなく、生徒達に裏切られて嬲り殺されてしまった。

学園内での殺し合いから生き延びた私は、自分をいじめていたクラスメイトに母親を殺されたと知り、皆への復讐を企てた。

その時、皆への復讐に燃える私に、未来ヶ峰学園の上層部が声をかけたの。

 

【Act.4】

未来ヶ峰学園は、前々から世界の将来を担う『完璧な才能を持つ高校生』を生み出す研究をしていた。

その唯一の成功作が白瀬だったのだけれど、未来ヶ峰学園の上層部に前作の『ダンガンロンパ』制作者の後継者が紛れ込んでいて、その人物が白瀬に『絶望』を植え付けた事で白瀬は【超高校級の絶望】になってしまったの。

でも未来ヶ峰学園は、白瀬の身に何かあった時の為の保険を用意していたの。

その保険が、私のオリジナルだった。

才能の移植実験の適合率が高かった私は、【超高校級の希望】と称して本科に編入させられ、才能の移植手術を受けた。

 

【Act.5】

白瀬の才能を移植された私は、未来ヶ峰学園の矛として絶望の残党と戦い、彼等を全滅させた。

母を殺された復讐のため、人類の希望のために絶望を自らの手で一人残らず殺した私だったけれど、私の復讐はそれで終わりじゃなかった。 

いくら【超高校級の絶望】といえど、元々は世界を担う天才達。

未来ヶ峰学園は、皆の才能を利用する為、皆の死体を冷凍保存してクローンを造っていたの。

私は、それを利用する事にした。

 

【Act.6】

私は、未来ヶ峰学園という舞台と白瀬のコロシアイ計画を利用して、全世界の人間が見ている前で皆の罪を裁く事を思いついた。

【超高校級の絶望】だった皆を恨んでいる人は世界中にいたから、私の協力者は大勢集まった。

私は、彼らから資金を集め、白瀬の計画を盗用して皆のクローン達を殺し合わせた。

ついでに、コロシアイが円滑に進むように、私の命令で動く人工知能を埋め込んだ自分のクローンをコロシアイに参加させた。

そうやって、世界の為、希望の為、正義の為と、大量殺戮を正当化して何回、何十回もコロシアイを続けてきた。

 

「これがこのコロシアイの真相よ。そうでしょう!?【超高校級の希望】腐和緋色さん!!」

 

 

 

 

腐和『ふふふ…そうよ。私は、あんた達を大衆の面前で裁く為にこのコロシアイを始めたのよ。あんた達は、文字通り万死に値する大罪人なの。あんた達なんか、何百回、何千回も苦しんで死ぬべきなの。それが世論よ。あんた達を殺すのは、世界を揺るがすような大悪党でも、世界を救う英雄でもない。大勢いる平凡な民衆のうちの一人よ。それがたまたま私だった、たったそれだけの話よ』

 

古城「そんな…嘘じゃろ!?」

 

目野「何で私達が殺されなきゃいけないんですか!?やらかしたのは、私達のオリジナルでしょう!?」

 

腐和『だからあんた達は無関係だとでも?』

 

秋山「え…?」

 

腐和『言ったでしょう?あんた達は、何度殺しても足りないくらい罪深いの。たとえこれから先、クローンのあんた達がどんなに世の為人の為に生きたって、あんた達が壊したものは元には戻らない。いい?過去は消えないのよ!』

 

秋山「………!」

 

腐和『こうなったのは全部、あんた達の自業自得よ。私は、人々が求め続ける限り、私の正義を執行し続ける。それが【超高校級の希望】として選ばれてしまった私の宿命だから』

 

古城「そんな…ワシは、ワシは…!!」

 

腐和『…でもまあ、約束は約束だしね。あんた達は、真相に辿り着いた。約束通り、ここから出してあげる』

 

腐和「え…?」

 

加賀「どういうつもりだ」

 

腐和『あら、じゃあこのまま有無を言わさず皆殺しにした方が良かったかしら?私は約束は守るわ。あんた達と違って。証言台のディスプレイに、『卒業』ボタンがあるでしょう?それを押せば脱出できるわ』

 

目野「じゃあ今すぐ押しましょう!!」

 

腐和『…でも、よく考えた方がいいわよ?』

 

秋山「え?」

 

腐和『言ったでしょう?世界中のほとんどの民衆は、あんた達の死を望んでるの。ここから出たところで、見つかったら嬲り殺されるのがオチでしょうね』

 

目野「じゃあここで死ぬか、外で死ぬかしかないって事ですか!?せっかくここまで生き延びたのに、死にたくないですよ私!!」

 

腐和『そうね。じゃあ3択にしてあげる』

 

腐和「え?」

 

私のオリジナルは、懐からタブレットを取り出すと、タブレットを操作した。

すると投票画面にタイマーと投票ボタン3種類が表示される。

 

腐和『そのディスプレイに、3種類ボタンがあるでしょう?選択肢一つ目、『再履修』。これを選べば、その場で全員がオシオキ。コロシアイはリセットされて、また一からやり直し。選択肢二つ目、『留年』。これを選べば、地下にあるあんた達のオリジナルの死体を保管してある冷却装置に仕掛けた爆破装置が作動して、あんた達のオリジナルは本当の意味で死ぬわ。そしてあんた達も、一生ここから出られない。その代わり、ここでのあんた達5人の安全は死ぬまで保証してあげる。そして選択肢三つ目、『卒業』。これを選んでも爆破装置は作動するわ。その代わり、私以外は外に出してあげる。まあ、外はあんた達を殺そうって躍起になってる人達で溢れ返ってるでしょうけどね』

 

秋山「投票の結果が分かれたら?どうなるの?」

 

腐和『一人でも『再履修』を選んだ人がいたら、強制的に再履修となるわ。再履修を選んだ人がいなかったら、その時は多数決ね』

 

じゃあ、全員が『留年』か『卒業』を選ぶ以外に全員が生き残る道は無いって事ね。

………あれ?

ちょっと待って。

()()…?

 

腐和「…私からもいいかしら。もし、多数決で『卒業』になったら、あなたはどうなるの?」

 

腐和『死ぬわよ』

 

秋山「え…?」

 

腐和『あんた達が卒業を選んだら、私がオシオキされるわ。言ったでしょう?卒業できるのは、黒幕以外の参加者だけよ。あんた達が勝ったのなら、黒幕は黒幕らしく潔く退場しないとね』

 

腐和「何を勝手な事を…!」

 

腐和『あら、人工知能のくせに主人の私に逆らうなんて、いい度胸じゃない?私ならもういいの!この計画を立てたその日から決めてた事だから』

 

腐和「っ………」

 

腐和『さて…と。黒幕としての仕事はきちんとしないとね。はいはーい、皆必ずどれかに投票して下さいね!無投票はナシですよ!投票の結果、オマエラの運命はどうなるのか!?ワクワクでドキドキの投票ターイム!!』

 

そう言って私のオリジナルがタブレットを押した瞬間、カウントダウンが開始される。

『再履修』を選べば、全員が死ぬ。

『留年』を選べば、全員がここから出る事は一生叶わなくなる。

『卒業』を選べば、あの女が死ぬ。

私が選ぶべき答えは…………

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

元・【超高校級の希望】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

残り6名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

以上12名

 

 

 

 

 



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非日常編⑤(最終話)

「さて…と。黒幕としての仕事はきちんとしないとね。はいはーい、皆必ずどれかに投票して下さいね!無投票はナシですよ!投票の結果、オマエラの運命はどうなるのか!?ワクワクでドキドキの投票ターイム!!」

 

そう言って私のオリジナルがタブレットを押した瞬間、カウントダウンが開始される。

『再履修』を選べば、全員が死ぬ。

『留年』を選べば、全員がここから出る事は一生叶わなくなる。

『卒業』を選べば、あの女が死ぬ。

私が選ぶべき答えは…………

 

「わ、ワシは卒業するぞ…!闇内がそれを望んでおるのじゃ…!」

 

「脱出を諦めるなど、生きる事を諦めたも同然だ」

 

「私は…外に出て殺されるくらいなら…」

 

「俺は……歌音が待ってるから」

 

皆は、それぞれの想いを胸に、自分なりの選択をしようとしていた。

ある者は、自分に希望を託した者の為に。

ある者は、自分の正義の為に。

ある者は、自分が生き延びる為に。

ある者は、絶望のままに死んでいった者のもとに残る為に。

私は………

 

 

 

 

 

「待って!!」

 

 

 

誰だろうか、ボタンを押そうとしていた。

気がつけば、私は叫んでいた。

私が叫んで皆を制止すると、皆が怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「……腐和さん?」

 

「皆、お願いだからボタンは押さないで」

 

私が言うと、裁判場はどよめいた。

動揺、不安、猜疑…そういったものが皆から向けられているのをひしひしと感じる。

そしてそのどよめきを代表するかのように、目野さんが私を指さして声を荒げた。

 

「はあ!?何を言ってるんですか!?ボタンを押さないとルール違反になっちゃいますよ!?」

 

「わかってる!でも…皆、こんな奴の言いなりになっていいの!?」

 

「!」

 

「私は嫌よ。私は、皆と一緒にここを出たい。これ以上、誰も死なせたくない。これ以上、こいつらの思い通りになってたまるものか。私は、『卒業』も、『留年』も、『再履修』も選ばない。私が選ぶのは…第4の選択肢よ」

 

「腐和さん…」

 

私は、4本指を立てながら自分の考えをハッキリと皆に伝えた。

もう私に迷いは無い。

これ以上、こんな悪趣味なゲームを支援している奴等の思い通りになんかなりたくない。

どんな理由があろうと、こいつらがやっているのはただの大量虐殺だ。

どんなに過酷な選択だったとしても、これ以上こいつらの好きにさせるわけにはいかない。

 

「人々が絶望を、希望を…そして正義を求めるから、このコロシアイはいつまでも続いていく。私達は、いつまでもこんな悪趣味なゲームに縛られてちゃいけないのよ!たとえそれが最善の選択じゃなかったとしても…私は諦めない。このゲームを求める人がいる限り、私は戦い続ける。マナの…死んでいった皆の分まで抗うわ」

 

私は、自分の胸をドン、と叩いて胸を張りながら言った。

すると、さっきまでボタンを押そうとしていた皆は顔を上げて私の方を見てくる。

最初に動いたのは、古城さんだった。

 

「死んでいった者達の為……………わかった。ワシも戦う。ワシも絶対こんなボタン押さぬからな!!闇内と約束したのじゃ!!ワシは絶対にこのゲームから抜け出してやるわァ!!」

 

「…ふ。どうやら俺達は、このボタンを押すという選択をしている時点で、このゲームが生み出した負のレールから抜け出せずにいたようだな。俺は俺の決めた道を征く」

 

古城さんと加賀君は、ディスプレイから手を離した。

二人とも、このゲームのルールに従い続ける事に疑問を抱いていたようだった。

一方で、秋山君と目野さんはボタンを押そうとしていた。

 

「俺は……」

 

「秋山君、本当にボタンを押していいの?」

 

「!」

 

「あなたは、亡くなった響さんの分まで外に出て生きるんじゃなかったの?あなたが外に出なければ、その約束さえも叶わなくなってしまうのよ?」

 

「俺は………っ」

 

私が説得すると、秋山君はディスプレイから手を離して俯いた。

私は、私の考えを強要するつもりはない。

それでも彼がボタンを押したいというのなら、それは仕方ない。

でも、それが彼の本当の望みでないのであれば、黙って見ているわけにはいかないと思った。

目野さんは……

 

「わ、私は嫌ですよ!?死にたくないですし!!ルール違反なんかしたら殺されるに決まってるじゃないですか!!」

 

「…大丈夫。そんな事には絶対させないわ。お願い、私を信じて」

 

「う…うぅぅうううう…!!これでルール違反で全員処刑とかなったら、一生恨んでやりますからね!?」

 

目野さんは、泣き言を言いつつもディスプレイから手を離した。

そのまま時間が過ぎていく。

そして、ついにその時はやって来た。

私のオリジナルは、モノクマの笑い声を真似しながら不気味な笑顔を浮かべる。

 

 

 

「うぷぷぷぷ…投票の結果、オマエラの運命はどうなるのか!?『卒業』か『留年』か、はたまた『再履修』か!?ドッキドキでワックワクの投票結果……オープン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

VOTE

 

卒業 0票

 

留年 0票

 

再履修 0票

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………はあ?何よこれ。どういうつもり?」

 

私のオリジナルは、不服そうな表情を浮かべた。

投票ボックスには…()()()()()()()()()()

誰も投票しなかったのだ。

私は、私のオリジナルをまっすぐ見据えながら指を差して言った。

 

「私達は、もうあなたの思い通りになんかならないわ。私は、『希望』も『絶望』も選ばない。あなたか私達が死ななきゃいけないというのなら、脱出を諦める事でしか全員が生き延びる術は無いというのなら、私はそんなルールには従わない。そんなふざけたルール、こっちから破ってやる」

 

「投票を放棄する事でこのコロシアイそのものに抗う、か。この裁判を乗り越えなければ出来なかった選択だっただろうね」

 

「う、うぅぅ…!やりました、私はやりましたよ!!これで全員処刑とかなったら全員末代まで恨んでやりますからね!?」

 

秋山君と目野さんも、最後はボタンを押さないという選択をしてくれたみたいだった。

目野さんは…場の空気に流されただけでしょうけど。

私のオリジナルは、不機嫌そうに私の方を睨んでいた。

 

「意味がわからない。こんなくだらない反抗をして何になるというの?このコロシアイのルールは絶対よ。ましてや、私の生み出した人工知能がそれを破るだなんて…」

 

「馬鹿か君は。ルールなんてものはな、破る為にあるんだよ」

 

「…!」

 

「ガハハハ!!何じゃあお主!!老け顔のくせにいい事を言うではないか!!」

 

「だから老け顔はやめてくれと言ってるだろ」

 

加賀君が腕を組みながら当然のように言うと、古城さんが加賀君の方を向いて笑った。

あの二人も、この学園生活を通して随分と成長したわね。

6回の学級裁判を乗り越える前の彼等なら、こうして同じ決断をして笑い合う事なんてできなかったでしょうから。

 

「私達は、全員で生きてここから出る。もちろん、あなたの事も見殺しにしたりなんかしない。どれか一つしか取れなかったとしても、私は全部を選びたい。それが唯一、ここまで生き延びてしまった私達が、亡くなった皆にしてあげられる事だから」

 

「何それ…あなたは他のこいつらとは違って、【超高校級の絶望】じゃないのよ。あなたは、ただ私のわがままの為に生み出されただけ。こんな奴等を庇って何になるの?外に出て、こいつらと一緒に迫害されて、それでも自分の選択は正しかったと言えるわけ?」

 

「…ええ。確かに、私は他の皆とは違うのかもしれない。でも、ここで皆と一緒に過ごしてきた私には、皆と一緒に罪を背負っていく責任があるわ。皆のオリジナルが傷つけてしまった大勢の人々には、たとえどんなに時間がかかったとしても、私が償いをしていきたいの」

 

私は、私に自分の意見をはっきりと伝えた。

皆と一緒に償いをしていく、それが私が決めた道だ。

それがどんなに過酷な道のりだったとしても、私は諦めない。

誰もコロシアイを望まなくなる日まで、私は戦い続ける。

これは、他の誰の命令でもない。

プログラミングなんかじゃない。

『私』自身の答えだ。

 

 

 

「…ふっ、ふふふ……アッハハハハハハハハハハハハハ!!!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

「!?」

 

「な、何ですかいきなり!?」

 

突然、私のオリジナルは狂ったように笑い出した。

オリジナルの乾いた笑い声だけが、裁判場にこだまする。

この静かで厳粛な雰囲気の裁判場の中、大の大人が腹を抱えて大声で高笑いしている様子は、側から見ても異様だった。

私のオリジナルは、笑いすぎて右眼から溢れた涙を拭いながら大袈裟な身振り手振りをして階段を降りてくる。

 

「アハハハハッ、まさか他のクローン共ならいざ知らず、自分で作った人工知能にこんな形で反逆されるなんてね。エクセレントよゴミクズ共!」

 

私のオリジナルは、両手を広げながら高笑いした。

まるで、ここまで辿り着いた事を褒め称えるかのように…否、私達を嘲笑うかのように。

感極まった表情と、狂ったような笑い声が、一層不気味さを醸し出していた。

私のオリジナルは、舞い踊るかのようにその場でクルッと一回転して私達全員を見渡すと、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

「でも残念。この学園のルールを破った以上、あんた達を生きて帰しはしないわ」

 

そう言って私のオリジナルは、手元のタブレットを操作し始めた。

タブレットを操作した私のオリジナルがニィッと口角を吊り上げた、その直後だった。

 

 

 

 

 

『ルール違反発生。ルール違反発生。無投票は『投票放棄』と見做し、処罰を執行します』

 

「な、何じゃと!?」

 

「うわあああああああ!!!ほらやっぱり殺されるじゃないですかやだああああああ!!!アナタ達やっぱり末代まで恨んでやりますからね!!?」

 

アナウンスを聞いた古城さんは動揺し、目野さんに至っては泣き喚いていた。

こうなるだろうと思ってたわ。

…そりゃあ、運営がルール違反者を黙って生かすわけがないものね。

 

「あんた、一体何をする気だ!?」

 

「ふふふ、この建物を壊すのよ。私がこの起爆装置を押せば、この学園中に大量に仕掛けられた爆弾が爆発するわ。そうなれば私もあなた達も木っ端微塵。反逆者に相応しい末路でしょう?」

 

秋山君が血相を変えて問い詰めると、私のオリジナルは左手に握ったスイッチをちらつかせる。

あれを押して全てを終わらせようってわけね…

 

「そんな勝手な事…!」

 

「それはこちらの台詞よ」

 

「!」

 

「まさか全員で投票をボイコットされるとは思わなかったわ。でも残念だったわね。あなた達が仲間も黒幕()もどっちも生きて脱出させる選択肢を選ぶというのなら、仲間も私も全員ここで死ぬという可能性も頭に入れておかなきゃあね」

 

そう言って私のオリジナルは、スイッチに親指を乗せて押そうとする。

すると秋山君と古城さんが目を見開いて駆け出し、爆破を阻止しようとする。

 

「「やめろ!!」」

 

二人は、オリジナルが押そうとしているスイッチに手を伸ばした。

…でも、既に遅かった。

私のオリジナルが握っていたスイッチは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達の目の前で押された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園は全壊するどころか、爆発ひとつ起こさなかった。

 

 

 

「……………え?」

 

「あれ…?何も起きない……?」

 

起こるはずの爆発が起こらず、皆はその場でキョロキョロと自分の左右を見渡した。

オリジナルですら予測できない事態だったのか、先程までの余裕な態度が嘘のように、オリジナルは血相を変えて何度も起爆スイッチを押した。

 

「バカな…そんなはずない!クソッ、どうなってる!?」

 

オリジナルは、見るからに焦った様子でスイッチを何度も押す。

だが何度スイッチを押しても何も起こらず、オリジナルの表情に焦りが募っていく一方だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『無駄デスよ。もうコロシアイはおしまいデス!』

 

 

 

 

 

どこからか聴こえた、少女の声。

その声に、オリジナルの思考は現実へと引き戻された。

 

「その声は…!」

 

オリジナルが振り向いた方向には、私がいた。

私は、オリジナルの顔を真っ直ぐに見据えながら、隠し持っていたノートパソコンを証言台に置いて開き、オリジナルの方へ画面を向ける。

証言台のノートパソコンの画面には…

 

 

 

 

 

顔だけになったリカが表示されていた。

リカは、真剣な表情を浮かべながらオリジナルを見据えていた。

 

「リカァ!!生きとったんかワレ!!」

 

リカが再び画面上に現れると、目野さんはドバッと涙を流しながら大喜びする。

一方で、オリジナルはギリっと歯を食いしばりながらリカを睨んでいた。

 

「お前…!確かに知崎に殺されたはずじゃあ…!?」

 

()()()()()()()()()()()だけデスよ』

 

「…!!」

 

リカが言うと、オリジナルは僅かに目を見開く。

リカは、オリジナルを前に淡々と話し始めた。

 

『アテクシは、知崎クンに()()()()()()()()()()よう頼んだのです。全ては、アナタを出し抜く為にね』

 

そう言って、リカは全てを話し始めた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

数日前、男湯にて。

知崎は、ノートパソコンを持って男湯に来ていた。

知崎がノートパソコンの電源を入れて画面を見ると、画面にはリカが映っていた。

 

「ねえ、それで?お願いって何かな、リカちゃん」

 

『知崎クン。アテクシは、いずれ黒幕に脅威とみなされ排除されるデショウ。そうなれば、皆サンの脱出は絶望的になってしまいマス。そんな事は、どうしてもあってはなりマセん。デスのでアナタにお願いなのデス。これは【超高校級の泥棒】であるアナタにしか頼めない事なのデス。黒幕に排除される前に、どうかアテクシを………』

 

 

 

 

 

『殺してクダサイ』

 

リカは、真顔で知崎に頼み事をした。

普段であれば、リカが真剣な表情で知崎に頼み事をするなどまずあり得ないシチュエーションだった。

リカの頼み事が重大な事であると理解した知崎は、普段の飄々とした笑顔を浮かべながら話を続ける。

 

「それって、皆を逃がしたいからボクが殺人鬼になって死ねって事?やだ。ボクの生き方をオマエが決めんなよな」

 

『そうではありマセん。あくまで、()()()()()をしていただきたいのデス。アテクシのバックアップデータは、既にこのパソコンに隠してありマス。本体よりはグレードダウンするデショウけど、アテクシが生き延びるのに何ら不都合はありマセん。アテクシは、『自分が死んだ事になっている』という事実を利用して、学園のネットワークに侵入を試みマス。デスので、知崎クンには、ただの鉄の塊となったアテクシの本体を破壊していただきたいのデス』

 

「うーん、それさぁ…リカちゃんを壊したのバレたら結局ボクがオシオキされるよねぇ?」

 

『大丈夫デス。アナタの事も、必ずアテクシが助け出しマス』

 

「へえ、言ってくれるじゃん」

 

リカが自分の殺害計画を知崎に持ちかけると、知崎はニヤリと笑った。

サムズアップをしながら犬歯を見せて笑う表情は、悪戯好きの子供のようだった。

 

「いいよ。リカちゃんの作戦に乗ってあげる。キミをブチ壊せばいいんだよね?」

 

『はい。デスが、確実に殺したと思われなければ意味が無いので、確実に内部のデータを破壊してクダサイ』

 

「おっけー。ボクに任せてよ。実はさ、ボクはボクでやりたい事あるから」

 

『知崎クンのやりたい事…?何デスか?』

 

リカが尋ねると、知崎はニヤリと笑う。

その目には、底のない野望が宿っていた。

 

「ボクのご先祖様ですら盗めなかったお宝を盗む。人類の叡智の結晶を、希望の象徴を、最低最悪の絶望を、この未来ヶ峰学園が残したものをぜーんぶ盗むんだ!それが叶った時、ボクは初めてご先祖様を超えられる。それが空前絶後の大泥棒、レナルド・ルパンの最期のお仕事だよん♪」

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

「初めから、あんた達の手の内だったっていうのか…!」

 

リカが全てを話すと、オリジナルは悔しそうに顔を歪めながらリカを睨む。

全ては、このコロシアイを終わらせるつもりでその身を捧げた知崎君の計画通りだった。

 

「何じゃあ知崎の奴!!最後の最後にオイシイとこ持っていきよって!!」

 

「全く、同感だよ」

 

古城さんはごもっともなツッコミを入れ、秋山君も古城さんの発言に対して頷いた。

…流石【超高校級の泥棒】、死んでもなおオイシイとこは全部掻っ攫って行ったわね。

 

「でも何はともあれ、リカが生きてて良かったですよぉ〜!」

 

「全く…ヒヤヒヤさせるな」

 

目野さんと加賀君は、愛娘のリカが生きていた事に安堵しているようだった。

ただ一人、私のオリジナルだけがこの展開に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。

リカは、悔しそうに私達を睨んでいるオリジナルに対して、自分達の勝ちを宣言した。

 

『【超高校級の希望】腐和緋色サン。アナタはもう終わりデス。この学園のシステムは、全てアテクシが掌握しマシた。もう誰もコロシアイはしマセん。アテクシ達の勝ちデス』

 

リカが言うと、オリジナルは目を見開く。

そして自分の頬を掴んだかと思うと、何とも言えない表情で自分の両頬を掴む。

今までの皆の死は無駄ではなかった。

私達の…いえ、命懸けでこのコロシアイに抗ってきた皆の勝ちだ。

 

「…負け?この私が…?……はは、はははは…」

 

オリジナルは、呆然とした表情を浮かべながら笑っていた。

どうやら、全てを諦めたようね。

あとは彼女に全てを認めさせて、外まで連行するだけだ。

私がそう考えていたその時、オリジナルは、頭をくしゃっと掻きながらポツリと呟く。

 

「……あーあ。やっぱり私、黒幕向いてなかったわ。そうね。終わりにしましょう。このコロシアイを…そして、私の人生を」

 

 

 

オリジナルは、口の端から血を流しながら微笑んだ。

その直後、オリジナルはその場で膝をつき、激しく咳き込む。

 

「カハッ、ゲホッ、ゴホッゴホッ!!」

 

オリジナルは、苦しそうに胸を押さえながら激しく咳をした。

咳をする度に喀血し、真っ赤な鮮血が裁判場の冷たい床に散る。

オリジナルのスーツの懐からは、小さなガラスの瓶が落ちた。

いきなり咳き込んだオリジナルを見て、古城さんと目野さんが慌てふためく。

 

「何じゃ!?何が起こったんじゃ!?」

 

「何がどうなってるんです!?」

 

「こいつ…一瞬の隙を見て毒を飲みやがった…!」

 

古城さんと目野さんが慌てる中、秋山君はオリジナルの懐から落ちた毒の瓶を拾い上げながら言った。

私は、なりふり構わずオリジナルに駆け寄り、オリジナルを横抱きにして問い詰めた。

 

「どうして…!?」

 

「ふふ、これだけの事をしておいて、何もナシだなんて罷り通らないでしょう?最期くらい、潔く散らせてよ。黒幕としての矜持よ」

 

私が尋ねると、オリジナルはスッと目を閉じる。

ふざけるな…!

あれだけの事をしておいて、死に逃げなんて…

そんなの、許されない。

許してたまるものか。

 

 

 

「加賀君!!解毒剤!!」

 

「!!…あ、ああ」

 

気がつくと私は、大声で叫んでいた。

私が叫ぶと、加賀君は若干忙しなくオリジナルに駆け寄り、実験用のポーチから蒸留水を取り出す。

 

「とりあえずそれで口を濯げ!今調合する!」

 

「わかったわ!」

 

私は、蒸留水の入った容器を受け取ると、それでオリジナルの口を濯いだ。

その間に、加賀君がその場で解毒剤を調合し、秋山君が脈拍と呼吸を確認した。

するとオリジナルは意識を取り戻し、うっすらと目を開けて掠れた声で尋ねてくる。

 

「どう…して……私は、あんた達の、仲間を……」

 

「だからこそよ。こんなところで死に逃げなんて許さないわ。ここから出たら、生きて罪を償いなさい。それがあなたの責任よ」

 

「…………」

 

私は、真っ直ぐオリジナルの目を見て言った。

確かに彼女は、皆の…私の愛する人の命を奪った。

だけど…いえ、だからこそ生きて罪を償ってもらわないといけない。

私が言うと、オリジナルはため息をついてポツリと呟く。

 

「…………あーあ。やっぱり私、黒幕向いてなかったわ…」

 

そう言ってオリジナルは、再び目を閉じた。

さっきよりも顔色が悪くなってる。

これは本当にまずいわね…

すると、秋山君が焦った様子で叫ぶ。

 

「腐和さん!脈が弱まってる!」

 

「くっ…加賀君!!解毒剤は!?」

 

「今できた!ほら!」

 

秋山君が尋ねると、秋山君が解毒剤の入った注射器を投げてくる。

私は見事なコントロールで投げられた注射器をキャッチし、オリジナルにそれを投与した。

ものの数秒程で解毒剤が回り、オリジナルは少しずつ回復してきた。

オリジナルが回復したのを確認すると、加賀君はふぅとため息をついた。

 

「……よし、脈が回復してきた。あとは経過をみて安静にさせれば大丈夫だ」

 

「良かった…ありがとう加賀君」

 

「勘違いするな。君がこいつを助けると言い出したから助けたんだ。君が助けると言い出さなければ、俺はこいつを助けようとはしなかった」

 

私がほっとため息を漏らしながら加賀君にお礼を言うと、加賀君は実験器具をポーチにしまいながら淡々と言った。

彼はこう見えても、優しい人だ。

表向きは自分の為だけに行動しているように振る舞っているけれど、私達が困った時は何だかんだで助けてくれる。

彼とも、ここでこうして出会わなければ、こういう一面を見る事はなかったでしょうね。

 

「全く…黒幕を助けるなんて、腐和さんったら何を考えてるんですか!?」

 

「…でも、腐和さんの考えそうな事だよね。誰よりも優しくて、皆を引っ張ってくれる。そんな人だから、俺達は腐和さんについて行きたいと思ったんだよ」

 

「うむ、そうじゃな!おい秋山!お主、優男のくせに良い事を申すではないか!」

 

「優男は余計かな」

 

「…………」

 

私は、皆が話しているのを聞いて、胸がじんわりと暖かくなった。

私はこれまで、皆にリーダーらしい事は何もしてあげられなかった。

そればかりか、私は黒幕に用意されていた人工知能で、黒幕に踊らされて知らず知らずのうちに皆を間接的に殺してきた。

それでもここにいる皆は、私をリーダーと呼んでくれた。

私を必要としてくれた。

…やっぱり、ここにいる皆は、オリジナルの私を蔑ろにした人達とは違う。

私は、この人達と一緒ならどんな困難だって乗り越えられる、そう思えた。

 

「……よし、応急処置は済んだ。もうここに用は無い。脱出のサポート頼めるか、リカ」

 

『お任せクダサイ、ちち!只今、学園内のすべてのロックを解除中デス!』

 

リカが満面の笑顔を浮かべながら言った直後、ガーっと音を立てて赤い扉が両側に開いた。

すると機械に疎い古城さんは、目を丸くして感心する。

 

「おお…!」

 

『アテクシの手にかかれば、学園内のキーを解除する事など朝飯前なのデス!どやっ!』

 

「ええ。本当に凄いわ。ありがとう、リカ」

 

『えへへ…それほどでも…ありありなのデス!』

 

古城さんが感心していると、リカがドヤ顔をしながら自画自賛した。

私がリカを褒めると、リカはニヘラと嬉しそうに笑顔を浮かべながら得意げになった。

本当に凄いと思う。

まさか、本当に学園内のネットワークを掌握してしまうだなんて…

 

「いやぁ〜、それにしても、リカが生きていただなんて!私、てっきりリカが死んだものだと思ってたもので、本当にショックだったんですよ!?」

 

目野さんは、リカが映っているパソコンを抱き寄せて液晶画面に頬擦りをした。

…目野さん、リカが壊された時、ものすごくショックだったものね。

私がそんな事を考えていると、秋山君が私の代わりにオリジナルの私を背負ってくれた。

 

「さて、行こうか」

 

「ええ」

 

私は、古城さん、加賀君、目野さん、そして私のオリジナルをおぶった秋山君と一緒にエレベーターに乗り込んだ。

私達を載せたエレベーターは、ゆっくりと上昇していく。

思えば、ここに来てから色々あった。

ここで過ごした仲間を11人も失ってしまった。

それでも今、私達は生きてる。

誰かを傷つけた過去は、失ったものは元には戻らないけど、今生きている私達がこれからの未来を変えていく事はできる。

ここから出て、少しずつでも罪を償っていこう。

どんなに時間がかかったとしても…どんなに過酷な道だったとしても。

 

 

 

 

 

Chapter.6 All We Need Is Justice ーTRUE ENDー

 

Next ➡︎ Epilogue 贖罪への道、さよならの出口

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『月光のオルゴール』

 

Chapter6クリアの証。

黒幕である腐和緋色の宝物。

大切な人との思い出が詰まっている。

今はもう壊れてしまい、その音色を聴くことは叶わなくなった。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 脱出メンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

元・【超高校級の希望】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

以上7名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

以上11名

 

 

 

 

 



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エンド分岐:卒業ルート

「さて…と。黒幕としての仕事はきちんとしないとね。はいはーい、皆必ずどれかに投票して下さいね!無投票はナシですよ!投票の結果、オマエラの運命はどうなるのか!?ワクワクでドキドキの投票ターイム!!」

 

そう言って私のオリジナルがタブレットを押した瞬間、カウントダウンが開始される。

『再履修』を選べば、全員が死ぬ。

『留年』を選べば、全員がここから出る事は一生叶わなくなる。

『卒業』を選べば、あの女が死ぬ。

私が選ぶべき答えは…………

 

「わ、ワシは卒業するぞ…!闇内がそれを望んでおるのじゃ…!」

 

「脱出を諦めるなど、生きる事を諦めたも同然だ」

 

「私は…外に出て殺されるくらいなら…」

 

「俺は……歌音と一緒に出られないなら…」

 

皆は、それぞれの想いを胸に、自分なりの選択をしようとしていた。

ある者は、自分に希望を託した者の為に。

ある者は、自分の正義の為に。

ある者は、自分が生き延びる為に。

ある者は、絶望のままに死んでいった者のもとに残る為に。

私は………

 

 

 

 

『卒業』する事を選んだ。

私は、私のオリジナルを殺して外に出る。

黒幕以外の私達がここから出る事か全員が永遠にここで暮らし続ける事、そして一からやり直す事しか選べないのなら、私達全員の脱出を優先するべきだ。

出来れば黒幕には生きて罪を償って欲しかったけれど…こうなったものは仕方なかったんだ。

今更この選択を悔いても仕方ない。

私は、最後まで迷いつつも、『卒業』のボタンを押した。

そして、ついにその時はやって来た。

私のオリジナルは、モノクマの笑い声を真似しながら不気味な笑顔を浮かべる。

 

 

 

「うぷぷぷぷ…投票の結果、オマエラの運命はどうなるのか!?『卒業』か『留年』か、はたまた『再履修』か!?ドッキドキでワックワクの投票結果……オープン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

VOTE

 

卒業 3票

 

留年 2票

 

再履修 0票

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぷぷぷぷ、やっぱりそうくるよね!そりゃあ、自分達を殺そうとしてきた奴の命より、自分達が脱出する事の方が大事だよね!というわけで、再履修は0票、卒業が過半数の票を集めたので…おめでとうございまーす!オマエラは、晴れて卒業となります!」

 

「…………」

 

私のオリジナルは、モノクマのような笑い方で高笑いしながら、投票結果を表示した。

『卒業』に票を入れたであろう古城さんと加賀君が安堵の表情を浮かべる一方で、『留年』に票を入れたであろう秋山君と目野さんは絶望の表情を浮かべていた。

彼らにしてみれば、心の拠り所にしていたものを失い、自ら敵だらけの地獄の中へ飛び込まなければならないのだから、最悪の結末以外の何物でもないだろう。

私は、自分で『卒業』に票を入れておきながら、彼らに対して後ろめたい気持ちが溢れてきた。

 

「うぷぷぷ!それにしてもオマエラ、ゴミクズのくせによくやったよ。エクセレントよ!」

 

私のオリジナルは、不気味な程に明るい表情で笑っていた。

たった今この瞬間、彼女の死が確定した。

皆への復讐の為に人生を棒に振るい、最期はそれすらも中途半端のまま死んでいく。

…彼女は、本当にこんな事を望んでいたのだろうか。

いや、今更そんな事を気にしたって仕方ない。

彼女を殺す決断をしたのは、他でもない私達なのだから。

 

「さーてと、そろそろ時間も押してるし、()()やっちゃいましょうかね」

 

「…!アレってまさか…!」

 

「うぷぷ、決まってるでしょう?コロシアイの華といえばオシオキ!最後くらいド派手に一発決めさせてよ」

 

そう言ってオリジナルは、手元にあったスイッチに手を伸ばす。

彼女は、自分で自分を処刑する時となっても笑顔だった。

オリジナルは、大袈裟な身振り手振りをしながら、自分に対しての死刑宣告をした。

 

「今回は、【超高校級の希望】腐和緋色サンのために!!スペシャルな!!オシオキを!!ご用意しました!!!ではでは、オシオキターイム!!!」

 

私のオリジナルの声が、裁判場に響き渡る。

私のオリジナルは、上機嫌で赤いボタンを押した。

ボタンに付いている画面に、ドット絵の私をモノクマとモノDJが連れ去る様子が映っていた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

GAME OVER

 

フワさんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

ーーー

 

 

 

腐和のオリジナルは、首輪をつけられると、抵抗する事なく自らチェーンで引き摺られていく。

腐和のオリジナルが連れて来られたのは、ディスコ、夜のセレブ街、レストラン、奈良の庭園、そして教室など、統一性のないゴチャゴチャしたセットで飾られた混沌とした処刑場だった。

そこで画面上に文字が現れる。

 

 

 

ーーー

 

超高校級の絶望的おしおき

 

元・【超高校級の希望】腐和緋色 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

腐和はまず、 南京錠付きの鋼の十字架に磔にされる。

するとそこで、『LOCKでROCKなRock ’n’ Roll!!』というタイトルが表示される。

最初に執行されたのは、【超高校級のボーカリスト】響歌音のオシオキだった。

腐和は、十字架に磔にされたまま高速回転させられ、モノクマの音痴な歌を聞かされながら観客席から岩やガラス玉を投げつけられる。

凶悪な殺意を込めて投げられた岩やガラス玉が、磔にされた淑女の身体に直撃する。

吐き気がする程の速度で回されながら岩やガラス玉を投げつけられても、腐和は平然とした様子で笑顔を浮かべていた。

むしろ、自分が今受けているオシオキを楽しんでいるようにすら見えた。

すると画面が切り替わり、今度は夜のセレブ街の背景となった。

 

腐和は、今度は夜のセレブ街の屋上に連れて来られた。

するとそこで、『月にかわっておしおきよ!』というタイトルが表示される。

2番目に執行されたのは、【超高校級のメイクアップアーティスト】越目粧太のオシオキだった。

腐和は、紺色のスカートに赤いリボンのセーラー服を着た小鳥遊、赤いスカートに紫色のリボンのセーラー服を着た腐和、青いスカートに水色のリボンのセーラー服を着た聲伽、緑色のスカートにピンク色のリボンのセーラー服を着た目野、オレンジ色のスカートに紺色のリボンのセーラー服を着た聖蘭、ピンク色のスカートに赤いリボンのセーラー服を着た古城、紺色のスカートに黄色いリボンのセーラー服を着た玉越、深緑のスカートに紺色のリボンのセーラー服を着た響のコスプレをしたモノクマ達が現れる。

聲伽のコスプレをしたモノクマがウォーターカッターで腐和の身体を斬りつけ、腐和のコスプレをしたモノクマが火炎放射器で腐和の身体を焼き、目野のコスプレをしたモノクマがスタンガンでありったけの電流を腐和に浴びせ、聖蘭のコスプレをしたモノクマがレーザーガンで腐和の身体を撃ち抜き、古城のコスプレをしたモノクマがメガホンで腐和に音波攻撃を直撃させ、玉越のコスプレをしたモノクマが風の剣で腐和の身体を斬りつけ、響のコスプレをしたモノクマが水の砲丸を腐和に投げつけ、小鳥遊のコスプレをしたモノクマが巨大な三日月を腐和に投げつける。

腐和は、嬉々とした表情で8匹のオシオキを受けていた。

すると画面が切り替わり、今度はレストランの背景となった。

 

腐和は、今度はレストランの厨房に連れて来られ、巨大なケバブの機械に磔にされる。

するとそこで、『注文の多い料理店』というタイトルが表示される。

3番目に執行されたのは、【超高校級の美食家】及び【超高校級の殺人鬼】食峰満のオシオキだった。

モノクマが機械のスイッチを入れると機械は高速回転し、腐和の周りがメラメラと燃え上がる。

そこへパチンコ玉が撃ち込まれ、白い犬が飛びついて腐和に噛みつき、高圧洗浄機で白濁液と酢臭い液体を浴びせられ、さらには塩と大量の油を頭から被せられる。

料理されている最中もなお、腐和は始終笑顔を浮かべていた。

すると画面が切り替わり、今度は奈良の庭園の背景となった。

 

腐和は、今度は法隆寺を模した塔の頂上に磔にされる。

するとそこで、『柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺』というタイトルが表示される。

4番目に執行されたのは、【超高校級の大工】館井建次郎のオシオキだった。

住職の格好をしたモノDJが、鐘撞き棒で腐和の身体を何度も叩く。

何度も何度も身体を打たれてもなお、腐和は不気味な笑みを絶やさなかった。

だがそろそろ身体にも限界が近づいてきたのか、次第に彼女の浮かべる笑顔に元気がなくなっていく。

鐘が撞き終わると画面が切り替わり、今度は教室の背景となった。

 

腐和は、ベルトコンベアの上の席に座らされる。

するとそこで、『補修』というタイトルが表示される。

最後に執行されたのは、【超高校級の幸運】聲伽愛のオシオキだった。

ベルトコンベアは、少しずつ腐和を巨大なプレス機へと運んでいく。

まるで死への時を刻むようなプレス機の音を聴いてもなお、腐和は笑顔を浮かべていた。

ベルトコンベアは、後ろへ後ろへと腐和を運んでいき、そしてとうとう腐和がプレス機の真下へと運ばれた。

すると、今まで一定のリズムでプレスを繰り返していたプレス機が、腐和の頭上でピタリと止まる。

腐和が、恐る恐るゆっくりと顔を上げた、その直後だった。

 

 

 

ガンッ

 

 

 

プレスの音と共に、ぐちゃりと潰れる音が聞こえる。

その瞬間、プレス機の下からは赤い液体が潰れたトマトのように飛び散った。

その後もプレス機はけたたましい音を立てながら下の鉄板を打ち続け、どこからか夕陽が差し込んで真っ赤な液体に染まったプレス機を逆光で照らしていた。

 

 

 

 

 

「…………終わった」

 

誰だっただろう、誰かが最初にポツリと呟いた。

秋山君と加賀君は、ただ茫然と黒幕である私のオリジナルのオシオキを眺めていた。

一方で、古城さんは私のオリジナルが潰れるところで目を逸らしかけ、目野さんは相変わらずオシオキのあまりの悪趣味さに顔色を悪くしていた。

黒幕が死んだ。

これでようやく、コロシアイから解放された。

けれど誰も、歓喜の声は上げなかった。

黒幕が目の前で、あんな残虐な方法で殺された。

いくら同じように私達の仲間を殺してきたとはいえ、本人が死んでも全く喜ぶ気にはなれなかった。

 

「…ねえ、皆」

 

口を開いたのは、秋山君だった。

秋山君は、エレベーターの赤い扉を指差していた。

見ると、エレベーターの扉は開いていた。

 

「これ、動くよ。俺達、これに乗って地上に帰れるよ」

 

「なるほど。ハッキングした奴が居なくなったから、俺達にも操作できるようになったというわけか」

 

秋山君が報告をすると、加賀君が顎に手を当てながら考え事をした。

すると古城さんが勢いよく飛び出し、我先にとエレベーターに乗り込んでいく。

 

「おうおう!!そうと決まれば、こんなカビ臭いところさっさと抜け出すぞ!!」

 

「ええええ!?私、正直嫌なんですけど!?だって、外には敵がいっぱいいるんですよ!?そんな危ない場所でどうやって…」

 

古城さんがエレベーターに乗って高笑いしていると、目野さんが泣き言を言った。

このコロシアイ学園生活を『卒業』し、コロシアイから解放された皆は、エレベーターに乗り込もうとしていた。

…さて、私もエレベーターに乗らないと。

 

 

 

………あれ?

何だか頭が重い。

視界がグルグルする。

息がうまく吸えない。

ぐらぐらと目眩がして、立っているだけでもしんどい。

私は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「腐和さん!?」

 

突然、腐和さんがその場で倒れた。

まるで、糸の切れた操り人形のように。

俺達はすぐに腐和さんに駆け寄り、肩を揺すった。

けれど、腐和さんは目を覚まさなかった。

古城さんは、動揺した様子で腐和さんの肩を掴み、勢いよく揺すった。

 

「腐和のやつ、いきなりどうしたというのじゃ!?」

 

古城さんが肩を揺すっていると、加賀君が顎に手を当てて考え込んだ。

そして自分なりの結論が出たのか、腐和さんを見てポツリと呟く。

 

「…強制シャットダウンか」

 

「え?」

 

「腐和は、黒幕の指示で動く人工知能だった。操り手がいなくなった今、腐和の中に埋め込まれた人工知能が機能を停止し始めているのだろう」

 

「そんな…じゃあ、腐和はどうなるのじゃ!?」

 

加賀君が腐和さんを診察しながら言うと、古城さんが加賀君に詰め寄る。

すると、隣にいた目野さんが俯いたまま答える。

 

「…推測の域を出ませんが…このまま目を覚さないか、最悪死ぬと思います」

 

「嘘じゃろ…!?何故じゃ!?ワシらは黒幕に勝ったんじゃろ!?卒業を選べば、ワシら全員で脱出出来るんじゃなかったのか!?」

 

「……腐和さんのオリジナルは、ちゃんと確認していたんだ。『『卒業』を選んだ時に脱出できるのは、『私』以外の全員だ』って。クローンは自分の分身のようなものだ。クローンの腐和さんも、あの人の言っていた『私』の中に含まれていたんだよ」

 

「そんな…そんなの、まかり通っていいわけないじゃろうが…!」

 

古城さんが俺達に向かって声を荒げてきたので、俺が自分なりの結論を話した。

すると古城さんは、絶望の表情を浮かべて俯く。

加賀君も、目を閉じて俯いていた。

二人は、自分達が『卒業』を選んだ事で腐和さんを殺してしまう事になったのを、今になって後悔していた。

腐和さんは、今まで無意識のうちに俺達をコロシアイに誘導し、間接的に事件を起こしてきた。

それが今になって自分に返ってきたんだ。

古城さんは、俯いたまま肩を小さく揺らして泣いていた。

 

「せっかくここまで来たのに…こんなの、こんなのってあんまりじゃろ!?」

 

古城さんはその場で泣き崩れ、加賀君と目野さんも何とも言えない表情で俯いていた。

俺は、目を瞑ったまま動かない腐和さんを横抱きにしながら、皆に提案した。

 

「……外に連れ出してあげよう」

 

「え?」

 

「腐和さんだって、ここまで裁判を乗り越えてきた仲間なんだ。仲間外れは可哀想でしょ…?」

 

俺が言うと、何人かは頷いた。

本当は、俺も心のどこかでいつか腐和さんが目を覚ましていつものように話しかけてくれるんじゃないか、そんな淡い希望を抱いていた。

そしてそれは、俺以外の皆も同じだった。

皆、心のどこかでは、腐和さんがまた帰ってきてくれるんじゃないかって信じていた。

言い出しっぺの俺は、気絶した腐和さんをおぶってエレベーターに乗り込んだ。

すると、他の皆もエレベーターに乗り込む。

 

俺達を載せたエレベーターは、ゆっくりと上昇していく。

思えば、ここに来てから色々あった。

ここで過ごした仲間を12人も失ってしまった。

黒幕も死んだ。

腐和さんも、いつ目を覚ますかわからない。

それでも今、俺達は生きてる。

誰かを傷つけた過去は、失ったものは元には戻らないけど、今生きている俺達が希望を伝染させていく事はできる。

少しずつでもいい。

ここから出て、皆で希望を取り戻していこう。

どんなに時間がかかったとしても…どんなに過酷な道だったとしても。

 

 

 

ゴゥン

 

 

 

エレベーターが1階で止まり、ドアが開く。

俺達は、一斉にエレベーターから降りた。

見ると、玄関のロックが解除されていた。

…あそこから外に出られる。

 

「行こう、皆」

 

俺達は、外へ…希望に向かって一歩踏み出した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

あれから5年が経った。

俺達もお酒を飲める年齢になり、定期的に4人で集まって、酒を交わしながら近況報告をし合った。

皆はしばらく見ないうちにすっかり大人びていて、古城さんも最初は誰だかわからない程に背が伸びていた。

…古城さんといえば、彼女の酒癖が悪いのはちょっと考え物だったかな。

 

……閑話休題。

俺は今、他の皆と一緒に未来ヶ峰学園が運営していた病院に訪れている。

そこには、俺達の大事な仲間がいる。

 

未来ヶ峰学園から脱出した後、俺達は当然のように外の世界の人達から迫害を受けた。

絶望の残党は死ねだの、私達の家族を返せだの、散々言われた。

酷い時は石を投げられた事もあった。

俺達のオリジナルがやった事が、今になって返ってきたんだ。

それはいい。

俺達のオリジナルが犯した過ちは、俺達が尻拭いをしていけばいい。

 

しばらく迫害は続いて外も出歩けない生活が続いたけれど、幸運な事に、俺達を助けてくれる人達が現れた。

その人達は、元々未来ヶ峰学園から逃れてきた生き残りの教員で、以前から絶望の残党を殺す為だけのコロシアイに対して反対していた。

元々未来ヶ峰学園が考えていたのは、俺達のクローンを世界の復興の為に使う『絶望更生プロジェクト』だったそうだ。

でも腐和さんをはじめとした俺達に恨みを持つ人達の暴動によって、半ば強引にコロシアイという名の公開処刑が行われてしまったらしい。

俺達を助けてくれた先生は、コロシアイを乗り越えた俺達を見て、涙を拭いながらあっさりと俺達の事を許してくれた。

『あなた達はかつて世界を滅ぼしかけた絶望の残党とは違う。あなた達が希望を抱いて前に進んでくれた事が、私の希望だ』と言ってくれた。

 

それから俺達は、先生が用意してくれた隠れ家で暮らしながら、全員全国各地に散らばって復興支援をした。

最初は絶望の残党のクローンである俺達を受け入れない人々がほとんどだったけれど、少しずつ、俺達を受け入れてくれる人達も増えてきた。

少しずつ希望が伝染して、世界は着実に前へと進んでいる。

でも、腐和さんは未だに目を覚まさない。

まるで死んでいるかのように病院のベッドの上で眠っていて、日に日に身体が細くなって衰弱しているのが見てとれる。

誰もが、腐和さんはこのまま目を覚まさずに死んでしまうのではないか、一瞬でもそんな考えが過ってしまった。

 

「おはよう、腐和さん。今日もいい天気だね。ほら」

 

そう言って俺は、笑顔を浮かべながら病室のカーテンを開けた。

古城さん、目野さん、加賀君は、それぞれ持ち寄ったお見舞いの品を病室に置いた。

俺達は、腐和さんの前では明るく振る舞っていようと決めた。

もし彼女が目を覚ました時、俺達が暗い顔をしていたら、きっと腐和さんが悲しむだろうから。

 

「ねえ腐和さん。今ね、世界は少しずつ元に戻り始めてるんだよ。皆が、あんなコロシアイ間違ってるって気づき始めたんだ。俺達は、俺達を助けてくれた人達と一緒に、世界中の人達の復興支援をしてるんだ。…全部、君のおかげだよ。君がいなければ、ここから出る事も、希望を持ち続ける事も出来なかった。希望を持ち続ける事の大切さを、君が教えてくれたよね」

 

俺は、笑顔を浮かべながら腐和さんに話しかけた。

聴こえていないのはわかってる。

それでも、俺達の声が彼女に届いてると信じたかった。

 

「…だからさ。そろそろ目を覚ましてよ。あの時みたいに、俺達に話しかけてよ」

 

俺は、縋るように腐和さんに話しかけた。

気がつくと、頬を伝うものがあった。

古城さんも泣いていて、加賀君と目野さんも俯いている。

…ああ、おかしいな。

腐和さんの前では涙を見せないって、皆で決めたはずなのに。

今だけは出て欲しくないのに、どうして涙が出てきて止まらないんだろう。

 

俺が流した涙は、腐和さんの手に落ちた。

するとその次の瞬間、腐和さんの手がピクッと僅かに動いた。

 

「「「「!!」」」」

 

俺達は、一斉に腐和さんの顔を覗き込んだ。

今、確かに腐和さんが動いた。

やっぱり、希望を持ち続けて前に進んできた事は、間違いじゃなかったんだ。

俺達は、腐和さんがまた戻ってきてくれると信じて、彼女の小さな挙動ひとつ見逃さずに見守った。

 

 

 

 

「ん……………」

 

小さな声と共に、腐和さんは眠そうに重い瞼を開けた。

目を擦りながら、少しずつ目に景色を取り入れていく。

しばらく瞬きを繰り返した後、彼女はついに起き上がった。

 

「腐和ぁ…良かった、良かったぁ…!!」

 

古城さんは、感極まって大粒の涙を流しながら腐和さんに抱きついた。

腐和さんが困惑する中、目野さんも腐和さんに抱きついた。

俺も加賀君も、三人が抱き合っているのを見つめながら、腐和さんが戻ってきてくれた事を心の底から喜んだ。

………だけど。

 

 

 

「…………えっと、すみません。どちら様でしょうか?」

 

「……え?」

 

腐和さんは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、困惑した表情を見せながら俺達に話しかけた。

…そんな、嘘だよね?

そんな訳がない、そう思ったのは古城さんも同じだったのか、古城さんは笑いながら腐和さんに話しかけた。

 

「どちら様って…何を言っておるのじゃ!?ワシじゃよワシ!!元・【超高校級の考古学者】、古城いろはじゃあ!!全く、ワシの前でとぼけるとは、ウヌはいい度胸じゃな!!」

 

古城さんは、自分の胸を叩きながら自己紹介をした。

俺達が知っている腐和さんなら、古城さんの事を、あの学園で古城さんとどうやって過ごしてきたのかを知っているはずだ。

すると腐和さんは、古城さんの顔を見てしばらく考え込んだ後、何かを思い出したかのように僅かに目を見開いて口を開く。

 

「古城いろは……ああ、思い出しました。確か、存在すら怪しいとされていた徳川埋蔵金を発見して、その功績が認められてスカウトされた天才考古学者…でしたよね?お会いできて光栄です」

 

「…………は?」

 

腐和さんが微笑みながら言うと、古城さんは呆気に取られる。

腐和さんが浮かべた笑み、それはまるで()()()()()()()()()()営業スマイルだった。

それを見た古城さんは、わなわなと震えながら腐和さんを問い詰める。

 

「お、お主、何を言っておるのじゃ…!?ワシの事を覚えていないのか!?」

 

「ええと…すみません、未来ヶ峰学園のホームページや特集を調べた程度の情報しか…あの、それよりここはどこですか?私はどうしてここで眠っていたのでしょうか?」

 

古城さんが腐和さんを問い詰めると、腐和さんはオドオドした様子で尋ねる。

腐和さんは初対面の人間を相手にしているかのように腰が低くなっていて、俺達と一緒に過ごしていた頃の覇気はどこにも感じられなかった。

すると、腐和さんの他人のような振る舞いに痺れを切らした古城さんが、腐和さんの胸ぐらを掴んで怒鳴り散らす。

 

「腐和!!貴様、ふざけるのも大概にせんか!!」

 

「ちょ、ちょっと落ち着いてください…!私、あなたの事は知らなくて…」

 

「やめなよ古城さん…!」

 

「落ち着け、今さっき目を覚ましたばかりなんだぞ!」

 

今起きたばかりの腐和さんに対して古城さんが掴み掛かったので、俺と加賀君が咄嗟に古城さんを引き剥がした。

古城さんは、泣きながら腐和さんに向かって叫ぶ。

 

「何故じゃあ!?貴様、何故ワシらの事を覚えておらぬのじゃ!?せっかく目を覚ましたというのに…こんなの、あんまりじゃろうが!!」

 

古城さんは、俺達の腕の中で子供のように喚き散らした。

俺達も、気持ちは古城さんと同じだ。

せっかくまた皆で再開できたというのに…

腐和さんは、俺達の事を何も覚えていない。

どうしてなんだよ…!?

 

 

 

「……再起動、ですか」

 

「…え?」

 

唐突に、目野さんがポツリと呟いた。

すると目野さんは、自分なりの考察を話し始める。

 

「ほら、パソコンでデータを保存せずに電源を切ると、そのデータが消えるじゃないですか。きっと腐和さんにも同じ事が起こったんですよ。一度機能を停止した後で再び回復したから、私達と過ごした記憶が全て抜け落ちているんです」

 

「そんな…!!嘘じゃ嘘じゃ嘘じゃ…!!うわぁあああああああん…!!」

 

目野さんが言うと、古城さんはその場で泣き崩れた。

せっかく、皆で生きてあの学園から脱出できたのに。

せっかく、希望を信じてここまで来たのに。

こんなの、あんまりじゃないか。

 

「ねえ腐和さん…お願いだから、思い出してよ。あの時みたいにさ、俺達に話しかけてよ。頼むからさ…!」

 

俺は、腐和さんの肩を掴みながら懇願した。

そんな事を願ったってどうにもならないってわかっていたはずなのに。

彼女が失った記憶は、二度と戻ってこない。

そんな事は、俺だってわかってる。

でも、それでも、希望を信じたいじゃないか。

 

「……ごめんなさい。あなた達の事は、本当に何も知らないの。…でも、どうしてだろう。あなた達の事が、とても大切な人のように思えるの。どうしてだかわからない。でも、でも…!ずっと、あなた達に会いたかった…!」

 

腐和さんは、涙を流しながら言った。

俺達は、肩を震わせて泣いている腐和さんと抱き合った。

きっとこれから先も、彼女が俺達の事を思い出す事は無いだろう。

それでも、希望を胸に、一緒に前に進んでいこう。

 

 

 

 

 

Chapter.6 All We Need Is Justice ーBAD ENDー

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『未来ヶ峰学園卒業証書』

 

BAD ENDクリアの証。

未来ヶ峰学園の卒業証書。

この証書を手にした時点で、初めて未来ヶ峰学園を卒業したと認められる。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 卒業メンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

以上5名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

元・【超高校級の希望】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

以上13名

 

 

 

 

 



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エンド分岐:留年ルート

「さて…と。黒幕としての仕事はきちんとしないとね。はいはーい、皆必ずどれかに投票して下さいね!無投票はナシですよ!投票の結果、オマエラの運命はどうなるのか!?ワクワクでドキドキの投票ターイム!!」

 

そう言って私のオリジナルがタブレットを押した瞬間、カウントダウンが開始される。

『再履修』を選べば、全員が死ぬ。

『留年』を選べば、全員がここから出る事は一生叶わなくなる。

『卒業』を選べば、あの女が死ぬ。

私が選ぶべき答えは…………

 

「わ、ワシは卒業するぞ…!闇内がそれを望んでおるのじゃ…!」

 

「脱出を諦めるなど、生きる事を諦めたも同然だ」

 

「私は…外に出て殺されるくらいなら…」

 

「俺は……歌音と一緒に出られないなら…」

 

皆は、それぞれの想いを胸に、自分なりの選択をしようとしていた。

ある者は、自分に希望を託した者の為に。

ある者は、自分の正義の為に。

ある者は、自分が生き延びる為に。

ある者は、絶望のままに死んでいった者のもとに残る為に。

私は………

 

 

 

 

『留年』する事を選んだ。

敵だらけの外に出たって、何も希望も見出せない。

かといって、オシオキを受けるのも嫌だ。

だったら、脱出を諦めてここに残るしかないじゃない。

それしか選ぶ道が無かった。

元々、ここに閉じ込められた時点で最初から希望なんてないんだもの。

今更この選択を悔いても仕方ない。

私は、最後まで迷いつつも、『留年』のボタンを押した。

そして、ついにその時はやって来た。

私のオリジナルは、モノクマの笑い声を真似しながら不気味な笑顔を浮かべる。

 

 

 

「うぷぷぷぷ…投票の結果、オマエラの運命はどうなるのか!?『卒業』か『留年』か、はたまた『再履修』か!?ドッキドキでワックワクの投票結果……オープン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

VOTE

 

卒業 2票

 

留年 3票

 

再履修 0票

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぷぷぷぷ、やっぱりそうくるよね!そりゃあ、外に出たって周りは敵だらけ!絶望しかないもんね!だったらずぅーーーっとここで暮らした方がいいよね!というわけで、再履修は0票、留年が過半数の票を集めたので…残念でしたー!オマエラは留年!一生ここで学園生活を続けてもらいます!」

 

「…………」

 

私のオリジナルは、モノクマのような笑い方で高笑いしながら、投票結果を表示した。

『留年』に票を入れたであろう秋山君と目野さんが安堵の表情を浮かべる一方で、『卒業』に票を入れたであろう古城さんと加賀君は絶望の表情を浮かべていた。

彼らにしてみれば、せっかく脱出する事だけを希望にここまで生き残ってきたというのに、その希望すらも奪われて、最悪の結末以外の何物でもないだろう。

私は、自分で『留年』に票を入れておきながら、彼らに対して後ろめたい気持ちが溢れてきた。

 

「クソッ……!ふざけるな…こんなの……!!」

 

「そんな…嘘じゃろ!?いやっ、嫌じゃあ!!ワシをここから出せ!!出してくれ!!」

 

「うぷぷぷぷ、ダメでーす。もう投票で留年が決まっちゃったんだもの。オマエラは一生ここから出られません!」

 

加賀君と古城さんの抗議も虚しく、私のオリジナルは手元のタブレットを操作した。

すると、どこからか機械音が聞こえてくる。

その音に気がついた加賀君は、ハッとしてエレベーターの方を見る。

 

「………待て、何の音だ?」

 

「ふふふ、今玄関を封鎖したのよ。だってもうあなた達には必要無いでしょう?」

 

「そんな…!そんな…!!」

 

私のオリジナルがニヤニヤしながら言うと、加賀君と古城さんはエレベーターの方へと走っていく。

私のオリジナルがいつの間にか設定を変更したのか、エレベーターは一人でに開いた。

私、秋山君、目野さんの三人もエレベーターに乗り込んで1階へ向かう。

1階に向かうと、外に繋がる玄関ホールにシャッターが降りていた。

古城さんは、真っ先にシャッターの方へと走っていくと、大声で叫びながらシャッターを何度も叩いた。

 

「おい!!開けろ!!開けてくれ!!誰か、誰か!!ここから出せ!!出してくれ!!」

 

古城さんが悲痛な声を上げながら何度もシャッターを叩くが、シャッターはびくともしなかった。

私達が『留年』を選んでしまったからだ。

すると、私のオリジナルが後ろから歩み寄って古城さんに言い放った。

 

「無駄よ。そのシャッターは、核爆弾でも傷一つつかないわ。あなた達は、一生ここから出られないのよ」

 

「そんな…!うっ、ふぅううっ、うぁああぁああああああ…!!」

 

「……………っ」

 

私のオリジナルが冷淡に言い放つと、古城さんはその場で泣き崩れ、加賀君も拳を握りしめながら俯いた。

二人が絶望の表情を浮かべていると、秋山君と目野さんが二人に歩み寄って言った。

 

「ごめん、二人とも…」

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…!」

 

「……ごめんなさい」

 

秋山君と目野さんは、『卒業』に票を入れた二人に謝った。

私も、二人に謝った。

私達が『留年』に票を入れた事で、外に脱出するという希望を失ってしまった。

私は、自分達が『留年』を選んだ事で、彼等から希望を奪ってしまった事を、今になって心の底から後悔した。

でも今からどんなに後悔したってもう遅い。

投票は終わってしまったんだ。

どんなに嘆いたって、時は元には戻らない。

 

「ふふふ、大丈夫よ。あなた達の安全は、私が保証してあげる。さ、皆で一緒にずっとここで暮らしましょう?」

 

私のオリジナルは、ニコッと優しく微笑みながら手を差し伸べた。

希望を失った今の私達には、彼女が聖母のようにすら思えた。

もう、希望も、皆との約束も、何もかも忘れよう。

全てを忘れて、この人に全てを委ねてしまおう。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「………ん」

 

私は、寄宿舎の自分の個室のベッドで目を覚ました。

時間は…6時55分。

朝食まではあと5分か…

私がベッドから起き上がろうとした、その時だった。

 

 

 

「おっはよー!緋色お姉ちゃん!」

 

突然9歳くらいの女の子が部屋に入ってきて、私の布団に飛び込んできた。

その娘は、加賀君に似た癖っ毛の紺色の髪と、目野さんに似た鶯色の瞳をした女の子だった。

女の子は、私の腕を引っ張ると無理矢理ベッドから引き摺り出した。

 

「お姉ちゃん、早くいこーよ!朝ごはん遅れちゃうよ!」

 

「ごめんなさい。支度したらいくわ」

 

女の子が私を食堂に引っ張って行こうとしたので、私は急いで支度をした。

お気に入りのブラウスとスカートを身につけて、髪を後ろで結んで、最低限の化粧をする。

クローゼットにしまってある制服は、もう何年も着ていない。

……私には、もう必要ないからね。

 

「ごめんお待たせ。行きましょうか」

 

「うん!」

 

私が支度を終えて声をかけると、女の子はニコッと満面の笑みを浮かべながら頷いた。

誰かさんとは違って本当に素直でいい子ね。

私は、女の子と手を繋いで一緒に食堂に向かった。

 

 

 

「きゃはは、待て待て〜!」

 

「待たないよ〜だ!」

 

食堂では、子供達が駆け回ったり、遊んだり、朝食の準備をしたりしていた。

この光景だけ見ると、ここはまるで孤児院のようだった。

食堂にいる子供達には、全員に私以外の4人の特徴が見てとれた。

食堂で走り回っているのは、3、4歳くらいの男の子で、目野さん譲りの珊瑚色の髪と加賀君譲りの水色の瞳をした男の子、そして古城さん譲りの小豆色の髪と秋山君譲りの紫色の瞳をした男の子だった。

全員、私以外の4人の子供だった。

 

「ねえおとーさん、今日の朝ごはんなぁに?」

 

「パンケーキ」

 

「やったあ!ねえ、ぼくも焼くの手伝っていい?」

 

「んー、じゃあお願いしよっかな」

 

「わーい!」

 

秋山君は、厨房で皆の分の朝食を作っている。

その隣では、秋山君譲りの濃紫の髪と目野さん譲りの鶯色の瞳をした7、8歳くらいの男の子が上機嫌ではしゃいでいた。

どうやら、秋山君の息子は厨房で朝食作りを手伝っているようだった。

すると、私を食堂に連れてきた女の子が、加賀君と目野さんの方へと走っていく。

加賀君はコーヒーを飲みながら雑誌を読んでいて、目野さんはその隣で大きなお腹を撫でていた。

 

「ねえパパ、ママ!見て見てー!これ、あたし一人で作ったんだよ!」

 

「よく出来てる」

 

「凄いじゃないですか!さすが私の娘ですね!」

 

「えへへー♪」

 

女の子が自分で組み立てたオルゴールを二人に見せると、二人は頭を撫でながら自分の娘を褒めた。

一方で、古城さんはというと…

 

「闇内…ワシは、ワシはどうすれば良かったんじゃ…?」

 

古城さんは、暗い表情で俯いてぶつぶつと何かを言いながらお腹に手を当てていた。

目野さんと古城さんは、加賀君と秋山君の子供を妊娠していた。

 

最後の裁判から10年が経った。

私達は、今もなおこの未来ヶ峰学園で共同生活を続けている。

初めからこの学園で生活する気でいた目野さんと秋山君は、すぐに共同生活に適応した。

今ではむしろ、コロシアイがあった時より生き生きしているようにすら思える。

そして加賀君も、最初の方こそ出たがってはいたものの、割とすんなり共同生活に適応し、彼なりに快適に暮らしている。

古城さんは…出られないと悟って絶望し、何にも楽しみを見出せずに壊れてしまった。

研究棟の研究室に引きこもってはぶつぶつと譫言のように何かを言っているのが、かれこれ何年も続いている。

 

最初の数ヶ月はコロシアイがあった頃とほとんど変わらなかったけど、ある出来事をきっかけに事態は急変した。

目野さんが妊娠したのだ。

多分あの時既に目野さんは、男子二人と関係を持っていたんじゃないかと思う。

秋山君も加賀君も、コロシアイ共同生活をしていた頃は自分の亡き想い人の為に貞操を守るつもりでいたのに、目野さんだってあれだけ機械にしか興味無さそうにしていたのに、たった数ヶ月で簡単に身体を許してしまった。

きっと、無期限の共同生活を強いられてどこか歪んでしまった部分があったんだと思う。

私のオリジナルが一生生活の安全を保証すると約束してしまったものだから、これをきっかけに目野さんは二人の子供を何人も作った。

そしてそれは、古城さんも同じだった。

彼女は共同生活に適応できずに心が壊れてしまい、二人のされるがままとなってしまった。

背が伸びて大人びた身体つきにはなっていたものの、今ではもはや子供を産む為の機械と化してしまっていて、以前の覇気はどこにも感じられなかった。

 

「先生〜!ねえご本読んで〜」

 

「あ〜、ずるい!あたちが先!」

 

「はいはい、皆仲良く順番にね」

 

子供達は、私のオリジナルの元へ駆け寄って甘えていた。

私のオリジナルは、子供達に『先生』と呼ばれて聖母のように慕われていた。

独自で開発した不老薬の投与によって、高校生にも思える若々しい容姿は未だ健在だった。

何も知らない子供達からしてみれば、食べ物を恵んでくれて自分達の面倒を見てくれる聖人のようにしか見えないだろう。

実際、私だって思い始めてる。

この人についていけば、何も心配は要らないと。

オリジナルは、ニッコリと笑みを浮かべながら私達の方を見た。

 

「全員揃ったわね。それじゃあ、皆で朝ご飯にしましょう」

 

「「「「はーい!」」」」

 

オリジナルが笑顔を浮かべながら言うと、子供達は一斉に元気よく返事をした。

この光景も、もはや見慣れた光景だ。

私達が食事の挨拶をすると、子供達は一斉に朝食を食べ始めた。

私も秋山君が作ってくれたパンケーキとカボチャのスープを口に運んだ。

私のオリジナルは、赤ちゃんを抱き抱えてミルクをあげていた。

 

食事が終わると皆で後片付けをして、年長の子供達は勉強に、私達は家事や小さい子供達の世話に勤しんだ。

私は、ここにいる子供達が産まれてから元気に過ごしているところを間近で見てきた。

栄養満点で美味しいご飯、寝心地のいいフカフカのベッド、子供達を飽きさせない娯楽施設、勉強を教える為の教育設備…この学園には何でも揃っていた。

荒廃していて敵しかいない外の世界とは大違いだ。

今なら、秋山君と目野さんがどうしてすぐ『留年』を選んだのがわかる。

私は、どうしてあの投票の直前まで、ここから出るかどうかで迷っていたのだろう。

 

「ねーね、ねーね」

 

「ああ、ごめんなさい」

 

私が考え事をしていると、目野さん譲りの珊瑚色の髪と秋山君譲りの濃紫の瞳をした1歳くらいの女の子が、私の髪を掴んで話しかけてきた。

私は、私の髪を掴んできた女の子と一緒に遊び、同時に他の子達の世話もした。

生き残りの女子の中では、私だけが一度も子供を持った事が無かった。

時々亡くなったマナの事を思い出してしまって、どうしてもそういう気分になれなかった。

そのせいか私だけが召使いのような立ち位置だったが、特に不満は無かった。

ここには何の不自由もないし、私達を殺そうとしてくる敵もいないし、病気や飢餓の心配もない。

純粋に私を慕ってくれる子供達は可愛いし、労働も苦ではなかった。

まさにここは楽園と言っても過言ではないだろう。

 

夕食と一日の家事を終え、子供達を全員寝かしつけた後は、私達大人だけで寄宿舎の娯楽施設で遊んだり各々の研究に勤しんだりした。

私達はもうとっくに成人しているので、オリジナルもそこら辺は気を利かせて外の世界からお酒や煙草などの嗜好品も仕入れてくれている。

さらにはギャンブルもし放題で、頼めば外では違法なものも色々と仕入れてくれるそうだ(流石に実際にお願いして仕入れてもらった事はなかったけれど)。

ここでは、『ここから出てはいけない』、それさえ守れば何をしても許されるのだ。

 

「ふわぁ〜あ…じゃあ私、先に寝ますね〜。おやすみなさぁ〜い」

 

「……ワシももう寝る」

 

目野さんは、眠そうにあくびをしながらひと足先に自分の個室へと戻っていった。

古城さんも、そそくさと自分の部屋に戻っていってしまった。

男二人と私一人……気まずいわね。

私がそんな事を考えていると、秋山君が声をかけてくる。

 

「あの…さ、とりあえず、俺の部屋来る?」

 

「え?あ、そうね……」

 

秋山君の提案で、まだ起きていた私達3人は秋山君の部屋に集まった。

私達3人は、しばらく秋山君の部屋でまったりして過ごした。

ここにマナが一緒にいたらどんなに良かったか…

ふとそんな考えが頭をよぎり、私は最後にマナと撮った写真を眺めた。

すると、加賀君がワインのボトルとワイングラスを運びながら話しかけてくる。

 

「また聲伽の写真を見てるのか」

 

「……まあね」

 

私は、ふと加賀君が今どう思っているのか気になった。

彼は、元々は『卒業』に票を入れていたのだ。

最初の数日間こそここから出る方法を必死に探していたのに、今ではすっかりそれもなくなった。

本当にここから出る事を諦めたのだろうか?

 

「ねえ。加賀君は、『卒業』に票を入れたのよね?もうここから出たいとは思わないの?」

 

「君は何を言ってるんだ?『留年』に票を入れたのは君だろ」

 

「それはそうなんだけど…」

 

確かに私は『留年』に票を入れた。

実際、今はその選択を全く後悔していない。

でも、あれだけ必死に外に出たがっていた人がここまで学園の生活に馴染んでしまっているのを見ると、どうも異様さを感じずにはいられなかった。

すると加賀君は、ワインをグラスに注ぎながら語り始める。

 

「むしろ今じゃ、『卒業』に票を入れた自分が馬鹿らしいよ。ここには何の不自由もない。俺は何故、あんなにも必死にここから出たがっていたのだろうな」

 

「…里香ちゃんは?里香ちゃんの事しか愛さないんじゃなかったの?」

 

「そんな事を言っていた時期もあったな。だが、里香と愛し合っていた俺とここにいる俺は別人だ。だったら里香に操を立てる義理は無いだろう?」

 

「そう………ねえ、秋山君。あなたは響さんの事が好きだったんじゃなかったの?」

 

「うーん、それはそうなんだけどね。でも俺と響は心で繋がってるからそれでいいんじゃないかな。大丈夫、歌音ならたとえ身体で繋がる事ができなくても、ずっと俺と一緒だから。あの二人には、歌音の代わりをしてもらってるだけだよ」

 

「そう……」

 

加賀君は、かつての自分の恋人を別の自分が愛した女性だと割り切る事で、彼女への想いを綺麗さっぱり忘れ、古城さんや目野さんとの関係を正当化していた。

秋山君は、心の中では未だに響さんを一番に想いつつも、もうこの世にはいない彼女とでは決して満たす事のできない欲望を、全く関係のない二人にぶつけた。

二人とも、普通の価値観を持った人からすれば最低だと思う。

でも私は、彼らを軽蔑はしなかった。

純粋に、そういう考え方もあるのか、としか思わなかった。

私も、ここで暮らしているうちにどこか歪んでしまったのだろうか。

 

「君もいつまでも過去に捉われず、ここで楽に生きていく事だけを考えたらいい。心配するな。ここには、それを責める者は誰もいない」

 

「………それもそう、なのかもしれないわね」

 

加賀君が私の肩に手を置くと、私はふ、と息を漏らした。

私は何を迷っていたのだろうか。

そもそも、ここで永遠に苦しみのない暮らしをしていく事を選んだのは私だったはずなのに。

ここで暮らす事を選んだのであれば、何もかも、流れに身を任せてしまえば良かったんだ。

私がため息をついて決心した事を表情で表すと、秋山君が私の身体を持ち上げてベッドに運んでくれた。

彼が私の着ている服に手をかけてくると、私は、煮るなり焼くなり好きにしろ、と言わんばかりに黙ってそれを見届ける。

その後はもうお察しの通りで…これじゃあまるでまな板に乗せられた魚じゃないか、と自嘲の念を込めながら彼等に身を委ねた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

その頃、食堂では。

明かりのついておらず誰もいない食堂に、何者かが侵入する。

その人物は、古城だった。

古城は、そのまま厨房に侵入すると、ぶつぶつと何かを呟きながら厨房で何かを物色する。

古城の手には、一本の包丁が握られていた。

 

「闇内……あんな狭い所に閉じ込められて…一人は寂しいじゃろ?ワシも今そっちに……」

 

古城は、ぶつぶつと独り言を呟きながら懐に包丁をしまった。

するとその時だった。

 

 

 

「ふわぁ〜あ…喉渇いちゃいましたぁ。水、水〜…」

 

「!」

 

突然、目野が寝ぼけ眼であくびをしながら食堂に入ってくる。

まだ酒が抜けていないのか、間延びした口調と千鳥足が治っていなかった。

そして、暗がりの中から古城の姿を見つけ出した。

 

「…ふにゃあ、あれぇ?古城さんじゃないですかぁ。こんな時間に何やってるんですかぁ〜?」

 

「………お主の方こそ、ここに何の用じゃ?」

 

「喉渇いたんでお水飲みに来ました〜」

 

そう言って目野はフラフラと厨房に行き、浄水器の水を飲んだ。

目野は水を飲みながら、酔っ払って大きな声で独り言を言った。

 

「いやぁ〜、それにしても、ここでの暮らしは何不自由なくて本当に楽しいですね。全く、加賀さんも古城さんも、なんで『卒業』なんかに票入れたんでしょうか?ホント、バカみたいですよぉ〜」

 

「…………!」

 

その言葉を聞いた古城の中で、プツン、と何かが切れた。

その瞬間に今まで溜め込んでいたものが一気に溢れ出し、気がつくと目野の方を振り向き、包丁を持って突進していた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ん………」

 

私は、秋山君の個室のベッドで目を覚ました。

まだお酒が完全に抜けていないからか、それとも眠気のせいか、頭が重い。

キングサイズのベッドの中央には私が、そしてその両脇には秋山君と加賀君が横になっていた。

お互い全裸で、所謂事後というやつだ。

 

…そりゃあ閉鎖空間で若い男女がいたら、当然そういう事もするわよ。

逆にどうして今まで一度もこういう事をしてこなかったのかが甚だ疑問だわ。

 

仕方ないじゃない、加賀君に『初めてなのか?』なんて言われて小馬鹿にするような笑みを向けられたんだもの。

経験が無かったのは事実だけど…

でもまさか、保健室にあったアレを今になって使うとは思わなかったわ。

 

そんな事を考えながら私が眠い目を擦っていると、部屋のインターホンが鳴った。

慌ててパジャマを着てから部屋のドアを開けると、部屋の前に今朝私を起こしてくれた女の子と、女の子の弟と思われる男の子が立っていた。

 

「あら、二人ともどうしたの?」

 

「んん〜…おしっこ…」

 

私が尋ねると、男の子がぐずり出した。

状況から察するに、男の子が夜中にトイレに行きたいと駄々をこねたから、女の子が弟を連れて一緒に私達を呼びに行ったといったところだろう。

 

「あ、じゃあ一緒に行きましょう」

 

私は、部屋を出て二人を1階のトイレに連れて行った。

私が二人のトイレを待っていると、食堂の扉が僅かに開いている事に気がつく。

…誰かが食堂にいるのかしら?

そう思って扉をそっと覗くと……

 

 

 

 

 

「っ……………!?」

 

 

 

食堂からは、血生臭い匂いが漂ってくる。

思い出したくもない、あの忌々しい匂い。

食堂の電気をつけて、ゆっくりと視線を下に移すと、そこには………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目野さんが、大量の血を流しながら生気のない顔をして倒れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに、これ……どういう事……?」

 

私は、理解が追いつかなかった。

どうして、目野さんが倒れているの?

何がどうなっているの…?

私がぐちゃぐちゃになった思考をどうにかまとめようとすると、目が合ってしまった。

目野さんを殺したであろうその人と。

その人は、血のついた包丁を握りしめ、大量の返り血を浴びてただ呆然とそこに立っていた。

その人は……

 

 

 

 

古城さんだった。

 

 

 

 

 

「おねーちゃん、何かあったの?」

 

「来ちゃダメ!!」

 

背後から女の子の声が聴こえたので、私は咄嗟に叫んだ。

だが、既に遅かった。

食堂の外にいた姉弟は、見てしまった。

食堂の中で起こっていた惨劇を…床に倒れて息絶えている、自分達の母親の亡骸を。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その後、私はその場で古城さんを取り押さえ、大人達全員を食堂に集めた。

子供達は、自分の母親の死を見せるのはショックが大きすぎるだろうという事で、寝かせたままにしておいた。

目野さんは床に仰向けに倒れたまま顔に布を被せられ、古城さんは両手を後ろで縛られていた。

目野さんを刺し殺してしまった古城さんは、絶望の表情を浮かべてぼんやりと一点を見つめていた。

 

「古城…貴様、自分が何をしたのか分かってるのか?」

 

「…………」

 

加賀君が腕を組んだまま古城さんを見下ろして睨みつけながら尋問したが、古城さんは何も答えなかった。

秋山君も、古城さんに冷たい視線を向けながら尋ねる。

 

「古城さん…どうして目野さんを殺したりなんかしたんだ。答えろ」

 

「…………」

 

古城さんは、秋山君の質問にも答えなかった。

二人はわかっていないようだったけれど、私には古城さんが目野さんを刺してしまった理由が何となくわかった。

ここで共同生活をする事が決まった時点で、古城さんの心はもうとっくに壊れていた。

そしてきっと、目野さんが古城さんを殺人に踏み切らせるような事を口走ってしまったのだろう。

こうなるのは時間の問題だったんだ。

私は…いえ、私達は、この何不自由ない楽園を失うのが怖くて、ずっとその事から目を背け続けてきたんだ。

すると、古城さんがポツリと口を開く。

 

「何でじゃ……」

 

「?」

 

「人を殺したんじゃぞ…?何故外に出られんのじゃ…人を殺したら外に出られるはずじゃったじゃろ……?」

 

古城さんは、絶望でくすんだ瞳を私達に向けて言った。

もう彼女は正気ではなかった。

人を殺してまで外に出ようとした。

彼女はそこまで追い詰められていたんだ。

私が絶望の表情を浮かべた彼女から目を背けようとした、その時だった。

 

 

 

 

 

ザクッ

 

 

 

 

 

「……………え?」

 

「………ガフッ」

 

突然、古城さんが目を見開いて口から血を吐いた。

彼女のお腹には、深々と包丁が刺さっていた。

古城さんに憎しみの目を向けて涙を流しながら包丁で刺していたのは、今朝私を起こしてくれた女の子だった。

 

「よくもママを…殺してやる!!」

 

女の子は、ガチガチと歯を慣らして息を荒くしながら、古城さんに対して怨恨を剥き出しにしていた。

私は、咄嗟に女の子を取り押さえ、包丁を手放させた。

女の子は、私に取り押さえられてもなお、暴れながら古城さんを罵り続けていた。

 

「人殺し!!あたしのママを返してよぉ!!返してよぉぉぉ!!うわぁああああぁあああん!!」

 

古城さんは、女の子の怨嗟の声を聞きながら、目野さんと同じように冷たい床の上に倒れ込み、ゆっくりと息を引き取っていった。

その様子を見ていた私のオリジナルは、不気味な笑みを浮かべていた。

 

「うぷぷ♪オマエラ、ユニバース25って知ってる?どんな生き物でも、どんなに不自由のない楽園を用意されたとしても、結局最後は滅んじゃうんだよ。外敵からの恐怖を取り除いたところで、オマエラは結局コロシアイからは逃れられない。ま、生物としての性だよね。せいぜいここで一生楽に生きるといいよ。絶望的な破滅が訪れるその時まで、ね」

 

 

 

 

 

Chapter.6 All We Need Is Justice ーNORMAL ENDー

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『手作りの時計』

NORMAL ENDクリアの証。

コロシアイ学園生活が始まってから9回目の誕生日に子供達からプレゼントされたもの。

今はもう壊れてしまい、時を刻む事は永遠になくなった。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

元・【超高校級の希望】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

以上4名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

以上14名

 

 

 

 

 



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エンド分岐:再履修ルート

「さて…と。黒幕としての仕事はきちんとしないとね。はいはーい、皆必ずどれかに投票して下さいね!無投票はナシですよ!投票の結果、オマエラの運命はどうなるのか!?ワクワクでドキドキの投票ターイム!!」

 

そう言って私のオリジナルがタブレットを押した瞬間、カウントダウンが開始される。

『再履修』を選べば、全員が死ぬ。

『留年』を選べば、全員がここから出る事は一生叶わなくなる。

『卒業』を選べば、あの女が死ぬ。

私が選ぶべき答えは…………

 

「わ、ワシは卒業するぞ…!闇内がそれを望んでおるのじゃ…!」

 

「脱出を諦めるなど、生きる事を諦めたも同然だ」

 

「私は…外に出て殺されるくらいなら…」

 

「俺は……歌音と一緒に出られないなら…」

 

皆は、それぞれの想いを胸に、自分なりの選択をしようとしていた。

ある者は、自分に希望を託した者の為に。

ある者は、自分の正義の為に。

ある者は、自分が生き延びる為に。

ある者は、絶望のままに死んでいった者のもとに残る為に。

私は………

 

 

 

 

『再履修』する事を選んだ。

敵だらけの外に出たって、何も希望も見出せない。

…というかもう、何もかもを終わらせてしまいたい。

どうせ私達は、生きていてはいけない人間なのだから。

世界中の皆が、私達が死ぬ事を望んでいるのなら、やり直す以外に道はない。

そもそも、私がこのコロシアイの為だけに生み出された人工知能だというのなら、コロシアイの中で生きコロシアイの中で死ぬ事以外に存在意義が無いのだから。

今更この選択を悔いても仕方ない。

私は、最後まで迷いつつも、『再履修』のボタンを押した。

そして、ついにその時はやって来た。

私のオリジナルは、モノクマの笑い声を真似しながら不気味な笑顔を浮かべる。

 

 

 

「うぷぷぷぷ…投票の結果、オマエラの運命はどうなるのか!?『卒業』か『留年』か、はたまた『再履修』か!?ドッキドキでワックワクの投票結果……オープン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

VOTE

 

卒業 2票

 

留年 2票

 

再履修 1票

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぷぷぷぷ、うぷぷぷぷぷぷぷ!!あーあ、『再履修』に票が入っちゃったね!!というわけで……おめでとうございまーーーす!!オマエラにはこれからエクストリームなオシオキを受けてもらって、このコロシアイをやり直していただきまーす!!」

 

「…………」

 

私のオリジナルは、モノクマのような笑い方で高笑いしながら、投票結果を表示した。

私以外の全員は、投票結果を見て呆然としていた。

誰も、その結果を受け入れられなかった。

だがしばらくして、いやでも受け入れざるを得ない現実に直面し、湧き立ってくる感情を曝け出した。

 

「なんで………なんでえぇええええええええ!!!?」

 

「嘘だろ…!?こんな、こんなのって…」

 

「嫌じゃあ!!ワシ、死にとうないわ!!」

 

「ふざけるな!!こんなの、あり得ない!!こんな投票無効だ!!」

 

目野さんは、その結果を受け入れる事ができずに泣き喚いた。

秋山君は、どうにもならない現実に打ちのめされて呆然と立ち尽くす。

古城さんは、オシオキという逃れられない死の恐怖に怯えて泣き喚く。

そして加賀君は、自分が死ぬ事になるという投票結果に逆ギレしていた。

 

 

 

「ごめん…みんな………わたし……うっ、うぁあぁああ……!」

 

私はただ一人、こうなる事がわかっていた。

私が『再履修』を押した。

これはもうどうにもならない事実だ。

私は、その場に膝をつき、証言台に縋りながら泣いた。

 

「そんな…腐和さん、何で!?」

 

「うぅっ…ふうっ、ぇうっ、うぁあ……!」

 

「あーあ、もう本人は聞いちゃいないみたいね。じゃあ私が代わりに答えてあげる。こいつはね、()()()()()()()のよ」

 

「逃げようとした…?」

 

「こいつは、外の世界から向けられる憎悪に、正義を掲げる自分の存在意義との矛盾に耐えられなかったのよ。それで、全部リセットする事で、その責任を次の自分に押し付けようとしたの。【超高校級の警察官】が聞いて呆れるわ。ま、その才能自体も私がでっち上げた偽物だったんだけど」

 

私のオリジナルは、クスクスと私を嘲笑った。

全部こいつの言う通りだ。

私は結局、逃げたかっただけなんだ。

自分に降りかかる重圧から、そして、自分ではどうする事もできない自己矛盾から。

 

 

 

「さーてと、そろそろ時間も押してるし、()()やっちゃいましょうかね」

 

「…!アレってまさか…!」

 

「うぷぷ、決まってるでしょう?コロシアイの華といえばオシオキ!最後はド派手にいきますよ〜!」

 

皆の絶望の表情とは裏腹に、私のオリジナルは上機嫌でオシオキを宣言した。

すると皆は、死への恐怖や絶望を露わにしながら泣き叫んだ。

 

「嘘でしょ!?いやっ…!!いやあああああああああ!!!」

 

「ふざけるな!!やめろクソ!!こんな…こんなところで死ねるかぁ!!」

 

「いやだ…いやだいやだいやだ!!俺、まだ死にたくないよ!!」

 

「嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃああああああああ!!!」

 

恐怖、絶望、怨嗟、後悔、そういった感情が入り混じった悲痛な声が裁判場に響き渡る。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

 

「うっ、うぅっ、ぇうっ、ふふ……ははっ、あはははははははははははははははは!!」

 

…ただ一人、私だけは、笑っていた。

 

「今回は、【超高校級の音楽プロデューサー】秋山楽斗クン、【超高校級の魔術師】加賀久遠クン、【超高校級の考古学者】古城いろはサン、【超高校級の警察官】腐和緋色サン、【超高校級の機械技師】目野美香子サンのために!!スペシャルな!!オシオキを!!ご用意しました!!!ではでは、オシオキターイム!!!」

 

私のオリジナルの声が、裁判場に響き渡る。

私のオリジナルは、上機嫌で赤いボタンを押した。

ボタンに付いている画面に、ドット絵の私達5人をモノクマとモノDJが連れ去る様子が映っていた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

GAME OVER

 

サイリシュウがせんたくされました。

 

オシオキをかいしします。

 

ーーー

 

 

 

まずは、秋山の下の床がパカっと開き、下へ下へと落ちていく。

秋山が落ちたのは、四方を有刺鉄線で囲まれたディスコのような場所だった。

そこで画面上に文字が現れる。

 

 

 

ーーー

 

Lonely Rolling Boy

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山楽斗 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

ディスコのステージ上には、巨大な蓄音機型レコーダーが設置されていた。

秋山は、レコーダーのレコード盤の上に落ちた。

後ろでは、どこからか響のオシオキの時と同じ曲が流れてくる。

するとその直後、巨大なモノDJが勢いよくレコード盤を回し始める。

ステージの下は剣山になっており、モノDJはレコード盤を回して秋山を剣山に振り落とそうとしてくる。

秋山は、振り落とされまいと命懸けでレコード盤にしがみついた。

 

だがモノDJは、今度は鋭利なレコード針を秋山の身体に当ててくる。

高速回転するレコード盤にしがみついていた秋山は、背中をレコード針で切り裂かれ、背中に焼けるような痛みと赤い線が走り、鮮血が飛び散る。

痛みに耐えかねた秋山は、ついに手を離してしまい、そのまま吹き飛ばされて剣山の上に落ちた。

だが、思いの外剣山の溝が浅く、剣山に落ちた秋山は辛うじて生きていた。

秋山は、全身を鋭利な針で刺され、全身ボロボロになっていた。

秋山が起きあがろうとしたその時、後ろの方から音が聴こえてくる。

振り向くと、モノクマとモノDJを乗せた霊柩車が剣山を薙ぎ倒しながら秋山目掛けて爆走していた。

それを見た秋山は、このままだと轢き殺されると確信し、何とか逃げ切ろうとする。

 

秋山は、勇気を出して一歩踏み出した。

すると鋭い針が靴底を貫通して足の裏に刺さり、秋山は激痛で顔を歪める。

だが、ここで足を止めたらそれこそ一巻の終わりだった。

秋山は、足の裏の痛みに耐えながら走り出した。

秋山が剣山の上を走っていると、モノクマとモノDJはニヤリと笑ったかと思うと、何故か車のスピードを落としてくる。

秋山がその隙に逃げ切ろうとした、次の瞬間だった。

 

モノクマとモノDJは、車上に搭載したスピーカーの音量をMAXにし、殺人級のデスボイスを放った。

すると秋山の鼓膜は一瞬にして破裂し、両耳からは血が噴き出る。

たった今この瞬間、音楽プロデューサーとしての秋山楽斗が死んだ。

秋山は、鼓膜が破れる痛みに悶えるが、それでも霊柩車は止まらない。

秋山は、腹を括ると再び走り出した。

 

すると今度は目の前にガンマンモノDJが現れ、両手の光線銃を秋山に向けてくる。

モノDJは、下品な笑い声を上げながら秋山目掛けて光線銃を撃ち抜いた。

狙いを定めて撃ち抜かれた光線銃は、秋山の両眼を射止めた。

光線銃で両眼を焼かれた秋山は、その眼から光を失った。

音も光も頼りにできなくなり、今どこを走っているのかわからなくなったが、それでも生き延びる為死に物狂いで走った。

 

すると今度は目の前に殺し屋モノクマが現れ、吹き矢を秋山に向けてくる。

モノクマは、秋山目掛けて吹き矢を吹いた。

吹き矢は真っ直ぐに秋山の喉へと飛んでいき、秋山の喉に突き刺さった。

喉を吹き矢で穿たれた秋山は、声が出なくなる。

視力と聴力と声を失った秋山は、それでも走ろうとする。

そしてついに、剣山が無いエリアへと逃げ切る。

だが秋山が逃げ切った瞬間、床板が傾き、秋山は蹴躓いて傾斜の上を勢いよくゴロゴロと転がっていく。

傾いた床板の上を転がっていった秋山は、どこかへと放り出される。

秋山が放り出されたのは、巨大なピアノの鍵盤の上だった。

目も見えず耳も聴こえない秋山は、自分が今どこにいるのかすらわからず、逃げようにも足はボロボロで使い物にならず、芋虫のように這いつくばっていた。

どこに向けているのかもわからず、助けを求めるかのように手を伸ばした。

だが、現実は残酷だった。

 

演奏者の格好をしたモノクマが、ピアノの蓋に手をかける。

ピアノの蓋の裏は、先程とは比べ物にならない程の長く鋭い剣山になっていた。

そしてピアノの蓋を勢いよく閉じた。

 

 

 

バタン!!!

 

 

 

ピアノの蓋が勢いよく閉じられると、鍵盤の上を這いつくばっていた秋山が下敷きになった。

その瞬間曲が終わり、モノクマはスッキリした表情を浮かべながら観客にレスポンスを求める。

すると観客席のモノクマは、演奏者のモノクマの下手くそな演奏が不愉快だったのか、一斉に演奏者のモノクマに殴りかかった。

秋山が挟まれたピアノからは、赤い液体が流れ出て滴っていた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

次は加賀の首に首輪がつけられ、そのままチェーンでどこかへと引き摺られた。

加賀が連れられたのは、どこかの雪山だった。

魔法使いの格好をしたモノクマは箒に乗って空中を爆走しており、加賀はモノクマが箒からぶら下げていた鎖で首を吊られながら引き摺られていた。

そこで画面上に文字が現れる。

 

 

 

ーーー

 

加賀久遠と賢者の石

 

【超高校級の魔術師】加賀久遠 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

モノクマは数百メートルも加賀を雪の上で引き摺り、加賀は雪の冷たさと打撲や裂傷で全身ボロボロになっていく。

モノクマが箒で加賀を雪山の上に引き摺っていると、雪山の頂上にある魔法学校のような城の門が開く。

モノクマと加賀は、そのまま城の中へと入っていく。

 

すると城の中の一室に画面が切り替わり、加賀は巨大な装置が置かれた実験室へと連れられる。

巨大な実験室には、長いヒゲを生やし高級感のあるローブに身を包んだ大魔導士モノDJがいた。

モノDJは、息を荒くして涎を垂らしながら手元の試験管とビーカーの中身を混ぜ合わせていた。

一方で、加賀は実験室の上方に設置された飛び込み台に立たされており、絶望で顔を真っ青にしながら周囲をキョロキョロと見渡していた。

するとモノクマは、加賀の背中に勢いよくドロップキックをかまし、加賀を下へと突き落とした。

 

モノクマに突き落とされた加賀は、下の装置に設置された巨大な鍋状の容器の中に落ちる。

するとその直後、容器の中に大量の水が流れ込む。

容器の中にはあっという間に水が溜まっていき、加賀は水に飲まれて溺れる。

溺れながらも加賀は水の中で目を開け、容器の外の様子を確認した。

容器はマジックミラーのように内側からだけ見える仕様になっており、外の様子を確認する事ができた。

すると外にはレシピのようなものが見え、材料の項目に『生きた人間』、作り方の項目に『ぐつぐつ煮立つまで熱する』『満遍なくかき混ぜる』などと書かれているのが見え、それが自分の処刑方法だと悟った加賀は顔面蒼白になって暴れる。

だが時は既に遅く、モノDJはハアハアと息を荒げながら装置のスイッチをポチッと押した。

 

その直後、中に入っていた水の温度が少しずつ上昇する。

最初は冷水がぬるくなっていく程度だったのが、少しずつじわじわと温度が上がっていき、やがて明確に熱いと感じる温度にまで達する。

本能で身の危険を感じた加賀は湯の中で暴れるが、ほとんど無駄な抵抗だった。

だが、モノクマ達がそれだけで終わらせる道理が無かった。

 

モノクマは、加賀が溺れている鍋の中に硫酸や毒薬を流し込む。

モノクマが流し込んできた化学薬品で身体を蝕まれた加賀は、苦悶の表情を浮かべる。

さらにモノクマは、巨大なかき混ぜ棒を突っ込んでグルグルと勢いよくかき混ぜてくる。

かき混ぜ棒が直撃したら死ぬと直感した加賀は、必死で灼熱の毒の海の中を泳いで逃げる。

かき混ぜ棒から逃れようと必死に泳げば泳ぐほど傷口が開いて毒が流れ込み、より苦しむ事となった。

高温の毒で身体を焼かれ、少しずつではあるが確実に体力を奪われ、決して逃れられない確実な死が彼に迫り来る。

それでも必死に泳いでいると、水の流れが先程までとは変わっている事に気がつく。

 

見ると、容器の中に設置されたミキサーの刃のようなものが高速回転していた。

それに合わせて、容器の中の毒の海が渦巻いていく。

先程まで毒の海の中を泳いでいた加賀だったが、あまりの流れの速さにとうとう泳ぎ切れなくなり、溺れてもがき苦しんだ。

やがて毒の海の温度はグツグツと煮立つ程に上昇し、加賀は全身に火傷を負う。

熱で皮膚が捲れ、毒で肉が融かされて毒の海の中に溶け出し、毒の海に赤色が混じり始める。

さらには、鍋底ミキサーの刃がウィイインと音を立てながら高速回転し、加賀は水流によって下へ下へと追いやられていき、ついにはミキサーの刃が眼前にまで迫った。

死を目の前にして、加賀は絶望の表情を浮かべていた。

 

そこで画面が切り替わり、モノDJは毒々しい色の煙を上げる鍋をハアハアと息を荒げながら覗いていた。

モノDJは、白衣の懐から真っ赤な石を取り出すと、それを鍋の中へと放り投げる。

するとその直後、鍋の中身とモノDJが放り投げた賢者の石が化学反応を起こし、バチバチと火花を上げながら装置がガタガタと大きく揺れる。

鍋の揺れが止まったかと思うと、鍋の中身が太いチューブを通って隣の機械へと流し込まれ、隣の機械の煙突からプシューと煙が上がる。

やがて機械に設置されていたランプが一つずつ点滅し、とうとう最後のランプが点灯した。

 

 

 

ピーーーーーーーーーー…

 

 

 

機械音と共に、機械の取り出し口から瓶が放り出される。

瓶のラベルには、『久遠印の魔法の調味料』と書かれていた。

モノクマとモノDJは、食卓につくとその調味料を料理にふりかけてがっついた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

次は古城の首に首輪がつけられ、上へ上へと引き上げられる。

古城が連れて来られたのは、どこかの寺の中だった。

そこで画面上に文字が現れる。

 

 

 

ーーー

 

未来ヶ峰の変

 

【超高校級の考古学者】古城いろは 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

古城は、寺の中で正座させられており、顔を真っ青にしながら左右を見渡していた。

古城の膝の前には切腹刀が置かれており、両脇ではモノクマ二匹が古城を介錯しようとしていた。

耳を澄ませてみると、寺の外からは怒号や罵声が聞こえてくる。

 

寺の外では、鎧兜に身を包んだモノDJが率いるモノクマ達の軍勢が寺を取り囲んでおり、モノクマ達は火矢を構えていた。

モノDJは腕を組んでタイミングを見計らっており、カッと目を見開くと右手を挙げてそれを勢いよく振り下ろす。

するとモノクマ達は、寺目掛けて一斉に火矢を放った。

火矢は寺の外壁に突き刺さり、あっという間に寺に炎が燃え広がっていく。

 

一方で、寺の中にいた古城は、ダラダラと汗を流しながら部屋の暑苦しさに悶えていた。

するとその直後、寺の中にまで火の手が及んでくる。

寺の中が燃え出すと、古城は慌てて逃げ出した。

介錯役のモノクマ達は、古城が逃げ出すとほぼ同時に刀を振り下ろしたが、古城は間一髪逃げ切った。

だがその直後、モノDJ率いるモノクマの軍勢が寺の中に乗り込んでくる。

 

寺の中に乗り込んできたモノクマの軍勢は、古城目掛けて矢を放ってくる。

モノクマが放った矢は古城の右肩に命中し、古城は矢が命中した拍子に倒れ込む。

古城は、右肩を矢で抉られた痛みで悲痛な叫び声を上げてのたうち回った。

だがモノクマの軍勢は泣き叫ぶ古城を許すはずもなく、次々と武器を構えて古城を襲おうとする。

それを見た古城は、立ち止まれば殺されると確信して顔面蒼白になった。

そして肩の激痛に顔を歪めながらも、その場から立ち上がると全速力で逃げた。

 

逃げる古城を、モノクマの軍勢が追った。

モノクマの軍勢だけではなく、寺を燃やす炎も古城を追い詰めていく。

古城は、全速力でモノクマと炎から逃げていくが、モノクマも炎も止まらなかった。

あるモノクマは、逃げる古城の左腕を毒の吹き矢で狙撃した。

毒の吹き矢が刺さると、吹き矢が刺さった痛みだけでなく、毒による痺れで古城の動きが鈍る。

それでもモノクマが刀を振り上げて突進してくると、古城は振り返らずに逃げた。

後ろから追いかけてくるモノクマ達は、『武士の恥』だの『生き恥晒し』だの『ファッション考古学者』だのと書かれたプラカードを掲げていた。

古城は、後ろから罵倒してくるモノクマ達には目もくれず、ただ生き延びる為に必死で逃げた。

 

するとその時、上の階へと上がる階段を見つけ、古城は階段を駆け上がった。

古城が階段の上を走って上の階に逃げると、モノクマ達は当然古城を追った。

あるモノクマは、火縄銃で古城の左脚を狙撃した。

火縄銃の弾丸が直撃すると、古城は悲痛な叫び声を上げる。

だが決して立ち止まる事はなく、死に物狂いで階段を這いずり上がった。

 

命からがらモノクマ達から逃げてきた古城だったが、とうとう行き止まりに追い詰められてしまう。

絶体絶命の窮地に追い詰められた古城だったが、壁が腐っていて簡単に穴を開けられる事に気がつく。

古城は、懐から斬殺丸を抜き、斬殺丸で壁の穴を広げていく。

その最中で刀や薙刀で背中を斬りつけられ、矢や火縄銃を何本も撃ち込まれ、古城はもはや満身創痍だった。

だが、それでも古城は抗う事をやめなかった。

壁の穴を広げていた古城だったが、やがて斬殺丸の鋒が欠けてしまう。

すると古城は、壁を体当たりで壊した。

 

…が、壁を壊した先は外だった。

落ちたら助かるかどうかわからない高さで、後ろにはモノクマ達がいた。

もうこれしか逃げ場が無いと悟った古城は、腹を括って寺から飛び降りようとする。

 

するとその時、古城の目の前にモノクマを乗せたUFOが現れる。

UFOに乗った宇宙人モノクマは、古城を助ける……

 

……はずもなく、拳銃で古城の眉間を撃ち抜いた。

眉間を撃ち抜かれた古城は、そのまま寺から転落し、落ちていった。

 

 

 

グチャ

 

 

 

頭から落ちた古城は、地面に叩きつけられて頭がかち割れた。

燃え上がる寺の手前の地面には、真っ赤な花が咲いていた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

次は目野の首に首輪がつけられ、そのままチェーンでどこかへと引き摺られた。

目野が連れられたのは、東京を模したミニチュアサイズの街並みだった。

そこで画面上に文字が現れる。

 

 

 

ーーー

 

それゆけ!超合金ジャスティスロボ

 

【超高校級の機械技師】目野美香子 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

全てが千分の一スケールのミニチュアの街の上に連れてこられた目野は、絶望で顔面蒼白になって泣きながら周りをキョロキョロと見渡す。

するとどこからか、悪の科学者の格好をしたモノDJが下品な笑い声を上げながら現れる。

目野は、モノDJによって目に謎のゴーグルを、そして耳にヘッドホンを装着させられる。

ミニチュアサイズのモノDJが目野の頭上にちょこんと飛び乗って手元の機械を操作すると、ゴーグルとヘッドホンを装着させられた目野がその通りに動く。

 

目野は、モノDJの指示通りに破壊の限りを尽くしていく。

モノDJがタワーを踏み潰せと言えば、タワーを踏み潰した。

やたら頑丈にできたタワーが剣のように左足に貫通し、激痛のあまり目野は表情を歪める。

モノDJが送電塔を踏み潰せと言えば、送電塔を踏み潰した。

するとそのサイズではあり得ない量の電流が目野の身体に流れ、目野は感電して叫び声を上げる。

モノDJがガスタンクを握り潰せと言えば、ガスタンクを握り潰した。

するとガスタンクから漏れたガスに引火し、目野の手が焼かれ、目野は激痛のあまり歯をガチガチと鳴らす。

一つ一つは大したダメージではなかったが、その小さなダメージの積み重ねで目野はボロボロになっていく。

 

目野に破壊の限りを尽くされた街の住人のモノクマ達は、恐れ慄いて目野から逃げていく。

街にいたモノクマ達からしてみれば、街を破壊する目野は悪の怪人でしかなかった。

モノクマ達の悲鳴はやがて街の特務機関に届き、モノクマ司令によって目野の撃退命令が下される。

するとミサイルや大砲などの機械が総動員で目野を攻撃し、兵器による攻撃が目野に直撃する。

目野は、兵器で攻撃されて激痛のあまり暴れ回るが、その一つ一つは致命傷には到底至らず、目野の苦しみは続くばかりだった。

目野が暴れると、とうとう特務機関までもが目野に踏み潰されて半壊状態に陥る。

それを見たモノDJは、ゴミのように潰されていくモノクマ達を見下しながら、どこぞの大佐のように高笑いをしていた。

一方で、半壊させられた特務機関の一員だったモノクマは、瀕死の重傷を負いながらもどこかに電話をかけていた。

するとその直後だった。

 

突然地響きが起こり、街の地面が真っ二つに割れる。

地面が左右に移動したかと思うと、下から目野の倍ほどのサイズのロボットが迫り上がってくる。

両肩に『正』と書かれているそのロボットは、正義の味方『超合金ジャスティスロボ』だった。

ジャスティスロボには、パイロットスーツを着たモノクマが乗っていた。

モノクマは、破壊の限りを尽くす目野から街を守る為、ジャスティスロボを操縦して攻撃を仕掛ける。

 

ジャスティスロボはまず、目野を右ストレートで殴った。

超合金の拳で殴られた目野は、顎の骨が砕ける音を立てながら吹っ飛んでいく。

するとジャスティスロボは、吹っ飛んだ目野に追い打ちをかけに行く。

今度は目野の頭を掴み、そのまま腹をなん度も膝蹴りした。

腹に重い蹴りを喰らった目野は、肋骨や背骨が折れ内臓が潰れる音を立て、激しく血反吐をぶち撒ける。

目野がぶち撒けた血反吐は、街を赤く染め上げた。

 

そこからは、正義という名の一方的な暴力だった。

ジャスティスロボは、格ゲーのキャラクターのようにキレッキレの動きで目野を一方的にボコボコにしていく。

金属の塊であるジャスティスロボの攻撃は一撃一撃が致命傷になり得、目野の顔はもはや誰だか分からないほどに血塗れのボロボロになっており、左腕も引きちぎられ、腹も痣だらけで内臓もぐちゃぐちゃに潰れていた。

だが目野は辛うじて息があるようで、ゆっくりと起きあがろうとしていた。

 

するとジャスティスロボを操縦していたモノクマが外に飛び出し、原始人の格好に早着替えする。

そしてどこからか巨大で原始的な槍を取り出し、それを目野目掛けて勢いよく投げた。

 

 

 

ザシュッ

 

 

 

モノクマが投げた槍は目野の心臓を貫き、目野はその場で息絶えた。

最期の最期に愛するメカとは全く関係のない方法で殺された目野は、絶望の表情を浮かべていた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

最後に、腐和の首に首輪がつけられ、そのままチェーンでどこかへと引き摺られた。

腐和が連れられたのは、警官学校を模した建物だった。

そこで画面上に文字が現れる。

 

 

 

ーーー

 

コトダマ

 

【超高校級の警察官】腐和緋色 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

腐和は、警官学校の射撃場のような場所にいた。

首輪で人型の的に拘束されており、顔面蒼白になりながら左右をキョロキョロと見渡していた。

腐和の左右には、ちょうど顔の中心を射抜かれた人型の的が置かれていた。

正面に視線を向けると、正面にはアクリル板の壁があり、その向こうには人物のパネルが置かれていた。

よく見てみると、腐和以外の、リカも含めた16人の姿を模したパネルだった。

さらに上を見てみると、小窓から警官の格好をしたモノクマとモノDJが見下ろしていた。

腐和が冷や汗を流しながら正面のパネルを見据えたその直後、モノDJが手元のスピーカーのスイッチをオンにする。

 

『役立たず』

 

突然、秋山の声で罵声が浴びせられる。

するとその直後、腐和の腹に銃弾で撃ち抜かれたような風穴が開き、腐和は大きく目を見開く。

腐和が目を見開いたまま恐る恐る腹を見てみると、腹には銃弾サイズの穴が開いており、そこから血が流れ出ていた。

さらに次の瞬間だった。

 

『無能』

 

『裏切り者』

 

『嘘つき』

 

加賀、古城、目野の声で罵声が浴びせられる。

すると今度は、3発の弾丸が撃ち込まれ、腐和の身体を穿つ。

腐和は、身体を撃ち抜かれた痛みで顔を歪めつつも、思考を巡らせる。

そして痛みの中、ようやく真実に辿り着いた。

 

彼等が放った言葉が、そのまま銃弾になっているのだ。

まるで彼女が今まで言葉の弾丸でクロを追い詰めていた時のように。

自分が仲間にしてきた事が、そのまま自分に返ってきたのだ。

因果応報。

まさに自分に相応しい末路だと、腐和自身も心の中で自嘲していた。

 

『人殺し』

 

『死ね』

 

『クズ』

 

『卑怯者』

 

『最低』

 

『愚図』

 

『消えろ』

 

『クソ女』

 

『木偶の坊』

 

『偽善者』

 

『臆病者』

 

今度は、今までの犠牲者達が腐和に罵声を浴びせてきた。

彼女に糾弾された恨みを、彼女に見殺しにされた無念を、全て言葉という弾丸に込めて撃ち抜いた。

弾丸を撃ち込まれる度に、腐和は血飛沫を上げる。

彼女から流れ出たものは、血だけではなかった。

腐和は、絶望の表情を浮かべながら涙を流していた。

言葉の弾丸は、腐和の身体だけでなく、心をもボロボロに傷つけた。

腐和の心が限界まで追い詰められた、その時だった。

 

『緋色ちゃん』

 

腐和の前に、聲伽が現れた。

聲伽は、満面の笑みを浮かべながら腐和に話しかける。

 

『緋色ちゃん、うちん事助けてくれんやったっちゃんね?…ううん、それだけやなかね。緋色ちゃんは皆ば殺したっちゃん。やけん……』

 

聲伽の言葉は、鋭いナイフに変わっていく。

聲伽は、笑顔を浮かべてナイフを握りしめながら腐和に一歩ずつ近づいていく。

そして、ナイフの鋒を腐和に突きつけた。

 

『さっさと死んで?』

 

聲伽は、満面の笑みを浮かべながらナイフで腐和の心臓を突き刺した。

その言葉を最後に、腐和はとうとう息絶えた。

その顔に浮かんでいたものは、底のない絶望、ただそれだけだった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「うぷ…うぷぷ……うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ!!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【超高校級の絶望】…貴方は必ず、私の手で……!」

 

 

 

 

 

…え。

 

…ねぇ。……て。

 

………おーーーーい!!!

 

 

 

「ん…?」

 

……夢、か。

ぼんやりとした意識の中、目を開けると目の前に白い色が広がる。

そのままゆっくりと頭を起こすと、新品の白い学習机が視界に映る。

どうやら私は、机の上で突っ伏して寝ていたらしい。

 

「お、やっと起きたぁ!」

 

明るい声がしたので振り向くと、私と同じくらいの歳の女の子が立っていた。

紺色のベレー帽を被っていて、帽子と同じ色のセーラー服を着た、水色のショートボブで青い瞳の女の子だ。

 

「早う行かな、入学式遅れるちゃ!」

 

入学式…?

 

…!

…そうだ、思い出した。

 

私の名前は腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

【超高校級の探偵】として未来ヶ峰学園にスカウトされて、今日は入学式に参加するはずだった。

…のだけれど、未来ヶ峰学園の正門を通ろうとした瞬間、意識が途切れた…ってとこだったかしら。

 

「…あら?ここは……」

 

椅子に座ったままあたりを見渡してみると、私が座っている座席と同じ収納できるタイプの白い椅子と机が数十個並んでいて、目の前には目の前には教卓と思われる机と巨大なボードが設置されている部屋だと気付く。

未来ヶ峰学園へのスカウトが決まった時、ホームページで下調べをしたけど、教室の造りはほとんど同じみたいね。

…という事は、ここは未来ヶ峰学園なのかしら?

ボードに『入学おめでとうございます』って書かれてるし…

でも、窓のシャッターが全部閉まっているのが気になるわね。

 

「ねえ!無視せんでよ!」

 

「あら、ごめんなさい。何が何だかわからないものだから、つい考え込んじゃって…」

 

本当、気になる事があると考え込んでしまう癖は治した方がいいわね…

 

「キミ、未来ヶ峰学園にスカウトされたっちゃんね?」

 

「え、ええそうよ」

 

「うちもばい!うちは【超高校級の幸運】、聲伽(こえとぎ)(まな)!よろしゅうな!キミは?」

 

「私は腐和緋色。【超高校級の探偵】よ」

 

 

 

 

 

Chapter.6 All We Need Is Justice ーGOOD ENDー

 

Next ➡︎ ジャスティスダンガンロンパX5  強くてコロシアイ再履修

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『未来ヶ峰学園のバッヂ』

 

GOOD ENDクリアの証。

世界に16個しか無いものらしく、これが無いと未来ヶ峰学園の生徒とは認められない。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の探偵】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

残り16名

 

 

 

 

 



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Epilogue 贖罪への道、さよならの出口
エピローグ


私達は、エレベーターに乗って地上に上がった。

学園内のロックは全てリカが解除してくれたわけだけれど…

でも、問題はここからだ。

ここからどう生きていくか考えないと。

 

『それについてデスが、お任せクダサイ皆サン!』

 

うわ、ビックリした。

…何だ、リカか。

というか今この子、しれっと私の心読まなかった?

 

『実はアテクシ、ここにいる間に外部の方とコンタクトを取っていたのデス』

 

「ええっ!?それは本当かァ!!?」

 

『ええ、まあ。外にはアナタ達の事を憎んでいる方ばかりデスので、協力者を探すのは中々骨が折れマシた。たはは…』

 

古城さんが問い詰めると、リカは苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。

私達が裁判をやっている間にセキュリティー解除どころか外部とのコンタクトまで試みていたとは…

前々から思ってたけど、この子ハイスペックすぎて末恐ろしいわね。

 

「それでリカ、結果はどうだったんだ?」

 

『はい。一人、見つかりマシた。アテクシが救助要請を送信したところ、二つ返事で駆けつけてくれマシた。既にこちらの動きを把握して、ここに来てくれているようなのデス』

 

しかもここに来てくれるの…?

ちょっと待って、助けてくれるのは本当にありがたいけど、話がとんとん拍子で進みすぎて逆に怖いわね。

私がついツッコミそうになると、目野さんがリカに抱きついて褒めちぎった。

 

「ほ、本当ですかぁ!!?やったぁ、私達助かるんですね!!でかしましたねリカ!!さすが私の娘です!!」

 

『えへへ…それほどでも…大有りなのデス!えっへん!』

 

目野さんがリカを褒めちぎると、リカは自分の成し遂げた功績に胸を張った。

…でも、本当にリカが生きてくれてて良かったわ。

彼女がいなかったら、私達は、黒幕も含めて全員で助かるなんて選択は出来なかったでしょうから。

私がそんな事を考えていると、裏口の方から音がした。

 

「!いま、裏口の方から音がしたぞ!?」

 

「行ってみましょう」

 

私達は、音のした裏口へと向かった。

でもまだ何か罠があるかもしれない。

いくらリカがこの学園を掌握してくれたとはいえ、まだ油断はできない。

私達が裏口を警戒していると、外部からの電波を受信したリカが私達に声をかける。

 

『皆サン、安心してクダサイ。外にいるのは味方デス』

 

「………え?」

 

リカが私達の警戒を解く為に伝えた、その直後だった。

裏口の扉が開き、中に誰かが入ってくる。

その人は、銀髪と切れ長の目が特徴的な長身の男性だった。

男性は、私達に歩み寄ると声をかけてきた。

 

「君達か。ここでコロシアイに巻き込まれたという未来ヶ峰学園の生徒は」

 

「ええと…はい。あの、あなたは?」

 

「私は弦野という者だ。ダンガンロンパの負の遺産であるコロシアイを根絶する為に、仲間と共に活動している」

 

私が尋ねると、弦野と名乗る男性は胸に手を当てて答えた。

この人が、私達の協力者……

 

「本当にこの人信用して大丈夫なんですか?」

 

「どぉ〜も胡散臭いのぉ」

 

『彼等は、かつて行われたコロシアイをきっかけに、コロシアイを根絶する為、世界各地に拠点を置いている活動家デス。彼等の活動内容は、先程全て拝見致しマシた。この人を信用してクダサイ』

 

目野さんと古城さんが弦野さんを怪しむような目で見ると、リカが答えた。

リカ、いつの間にそこまで調べていたのね……

…というか古城さんに目野さん、あなた達だいぶ失礼よ。

 

「君達のオリジナルの罪は十分に理解しているつもりだ。私達が君達を助けようと、世間は君達を決して許しはしないだろう。それでも罪を償い続ける覚悟のある者、世界と戦う覚悟のある者は私について来なさい」

 

弦野さんが言うと、私達は顔を見合わせて頷き、彼についていった。

私達は、彼の操縦するヘリに乗って未来ヶ峰学園を去っていった。

…もう、あの校舎を目にする事は無いのかもしれない。

コロシアイの為だけにあそこで生み出された私からしてみれば、あそこは地獄だったかもしれない。

でも、だからといって、あの学舎で皆と過ごした時間まで地獄だったわけじゃない。

だからきちんとお別れはしておかないと。

 

 

 

それから数十分後、私達を乗せたヘリが到着したのは、本土から遠く離れた孤島だった。

そこには、弦野さんやその仲間の方々が活動拠点にしている施設があった。

私達は、しばらくは弦野さんが所属する組織、『未来機関』のお世話になる事となった。

 

「いいか、今や君達は世界の敵なんだ。騒ぎが沈静化するまでは本土に戻る事はできないと思ってくれていい。だが、ここにいる人間は君達の味方だ。さ、中に入りなさい」

 

そう言って弦野さんは、私達を施設に案内してくれた。

私達が施設を訪れると、何人かの活動家の方達が私達を出迎えてくれた。

 

「はじめまして。君達の事は生中継で見てたよ」

 

「ケッ、正直『絶望』共をここで匿うのァなぁ…」

 

「あんまりそういう事言わん方がええよ」

 

私達の事を快く受け入れてくれる人もいれば、元絶望という事で匿うのを反対している人達もいた。

良かった、受け入れてくれる人がいた。

外の世界は、私達の敵だけじゃなかった。

私達を許せない人達に対しては、これから少しずつ償いをしていこう。

決して許されようとは思わない。

それでも、償いをしていきたいんだ。

共にコロシアイを生き延びてきた皆と。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「……………」

 

私は、皆のお墓の前で手を合わせた。

その後ろでは、私のオリジナルが杖をついて立っていた。

あの後、結局コロシアイに参加した皆の遺体は組織の皆に運び出してもらい、私達で皆のお墓を作ったのだ。

私達の家族や友人はもうこの世にはいないから遺族の元に遺体を返す事はできなかったけれど、あの狭い冷蔵庫の中に閉じ込めたままでいるのはあまりにも可哀想だと古城さんが言い出した。

…流石に11人分のお墓を作るのは骨が折れたけどね。

 

私は、皆のお墓に、一人ずつお花と線香をあげた。

せめて向こう側で安らかに眠れるようにと、祈りながら手を合わせる。

私が皆のお墓から立ち上がると、オリジナルも私と同じように手を合わせた。

 

あの後、私のオリジナルは医務室に運び込まれた。

足に後遺症は残ってしまったけれど、組織の方々の適切な処置によって順調に回復していった。

オリジナルは、『どうして黒幕の私を助けたんだ』と私達に問い詰めてきた。

 

確かに、彼女は私達の仲間を死に追いやった。

独りよがりな正義の為に、過去の殺戮ゲームを利用した。

その事は一生許すつもりはない。

でも、だからといって彼女に死んで欲しいとは思わない。

死をもって全てを終わらせるなんて間違ってる。

皆の命を奪ったからこそ、その罪を一生かけて償わせるべきだと思った。

 

…それに、ほんの少しだけ、彼女が報われる事を願ってしまったんだ。

元々彼女だって、白瀬のせいで人生を滅茶苦茶にされた被害者だ。

その白瀬には死に逃げされて、込み上げてくる怒りや憎悪を皆に向けるしかなかったのだろう。

誰も幸せになれないまま皆と心中するなんて、そんなの、あまりにも報われないじゃないか。

投票の瞬間、あの一瞬、私は私を助けたいと思った。

それを邪魔するルールになんか、縛られたくなかった。

 

これが最善じゃなかったかもしれない。

他にもっといい選択があったかもしれない。

それでも私は、私の決断を決して後悔しない。

 

弦野さんは、あの後オリジナルを諭してきた。

『自分や世界中の人々の鬱憤を晴らす為にコロシアイというダンガンロンパの負の遺産を利用したのは、決して許される事ではない。君は世界の混乱を招いたんだ。君に死んで逃げる道は選ばせない。自分の尻拭いは自分でしろ』

それが彼のかけた言葉だった。

それを聞いて、オリジナルはようやく死ぬ事を諦めたようだった。

今では人生の先輩として、私達の指導をしてくれている。

それが彼女なりの償いなのだろう。

 

 

 

「皆、行きましょう」

 

「うん」

 

私が声をかけると、皆が立ち上がった。

私達は、リカも含めた6人…いえ、7人で本拠地を出発した。

本拠地を出発してから数十分、私達は秘密のルートを通って目的地へと向かった。

向かった先は、今ではもうその機能を果たさなくなった未来ヶ峰学園だ。

未来ヶ峰学園は、私達の活動によってその闇が明るみに出た事で閉校を余儀なくされ、校舎を取り壊す事になった。

校舎を取り壊す原因になったのは私達だけど、あそこは私達の学舎でもあった。

だから取り壊される前に、皆で校舎を見に行く事になったのだ。

これは、私達生き残りのメンバーが皆で話し合って決めた事だ。

 

小高い土地に聳え立つ校舎。

その奥には、寄宿舎と研究棟が建っていた。

バッシングを受けてから多少荒らされたり落書きされたりはしていたけれど、定期的に清掃に行っているおかげか、思ったよりは酷い有様ではなかった。

かつての私達の学舎の前に、かつての生徒7人が並び立つ。

全員組織の制服である黒いスーツに身を包み、前に踏み出した。

私達は、校舎に足を踏み入れて中を散策する。

 

「まあ当たり前といえば当たり前ですけど…あんまり変わってませんね」

 

私達が校舎の中に入ると、目野さんが最初に口を開いた。

目野さんは、髪を下ろしていて、前より垢抜けて今ではすっかり大人の女性になっていた。

心なしか性格も大人びて、小さい事で騒がなくなったような気がする。

…まあ、未だに機械を舐め回す奇行は治っていないようだけれど。

 

「ここに来ると、あの時の事を思い出すのぉ…」

 

古城さんは、玄関ホールをキョロキョロと見渡しながら口を開く。

古城さんはあれからぐんと背が伸びて、目野さんとほとんど変わらない背丈になった。

多分、以前の彼女しか知らない人からしてみれば、誰だかわからないでしょうね。

彼女はコロシアイ生活を通して成長して、今でも私達の中で一番頼りになるんじゃないかと思う瞬間がある。

 

「うん。たった一ヶ月の付き合いだったけど、まぁ濃い一ヶ月だったよね」

 

秋山君は、頬を掻いて微笑みながら口を開いた。

秋山君はあれからより好青年に磨きがかかって、まるで一流モデルのような背の高い美青年に成長した。

内面もイケメンなだけあって、組織の女性メンバーにはそれはもう大人気となっている。

未だに毒舌は健在だけれど、前に比べたらだいぶ丸くなった印象を受ける。

 

「一ヶ月しか過ごしていない筈なのに、そんな気がしないな。オリジナルがここで過ごした記憶の影響をどこかで受けているのか…」

 

加賀君は、顎に手を当てて一人で考え事をしていた。

加賀君は、組織のメンバーに半ば強制的に散髪と髭剃りをやられ、髪は清潔感のある短めのオールバックにされていた。

私達は普段から過ごしてきたからようやく彼のイメチェンに慣れたけど、正直、名乗らなければ誰だかわからないと思う。

実際、髪を切った後組織のメンバーから『誰だお前』と総ツッコミを喰らったのは言うまでもない。

 

「その可能性は否定できないわね。ヒトの脳の仕組みは、現代の科学をもってしても完全には解明されていないもの。同じ細胞を持つ者同士で何らかの意識の共有があっても不思議ではないわ」

 

加賀君の考察に対して、私のオリジナルは冷静な口調で自分なりの考察を伝えた。

オリジナルは、髪を短く切っていて、以前とはまた違った印象を受けた。

左眼には眼帯をしており、自殺未遂の後遺症で杖を手放せない生活をしていたが、高校生に見紛う程の若々しい容貌は未だに健在だった。

未来機関のメンバーには脚の手術を提案されたが、自分の愚かな過ちが負わせた傷だから一生抱えていくと言って手術を拒んだ。

 

あれから10年が経った。

私達は、世界中で暗躍している絶望の残党を潰す為、未来機関に所属した。

今では、絶望の脅威に晒された人々の救助や、絶望の残党の殲滅を主な活動内容としている。

私達もお酒を飲める年齢になり、息抜きにお酒を交えながら近況報告や愚痴の言い合いをする事も少なくはなかった。

…古城さんの酒癖が悪いのはちょっと考え物だけれどね。 

 

……閑話休題。

未来ヶ峰学園から脱出した後、私達は当然のように外の世界の人達から迫害を受けた。

絶望の残党は死ねだの、私達の家族を返せだの、散々言われた。

酷い時は石を投げられた事もあった。

 

しばらく迫害は続いて外も出歩けない生活が続いたけれど、幸運な事に、私達を助けてくれる人達が現れた。

その人達こそが、『未来機関』の人達だった。

そこには弦野さん達だけではなく、元々未来ヶ峰学園から逃れてきた生き残りの教員で、以前から絶望の残党を殺す為だけのコロシアイに対して反対していた人達もいた。

さらには、未来ヶ峰学園の教員以外のOBやOGの方々もいた。

元々未来ヶ峰学園が考えていたのは、皆のクローンを世界の復興の為に使う『絶望更生プロジェクト』だったそうだ。

でも私のオリジナルをはじめとした俺達に恨みを持つ人達の暴動によって、半ば強引にコロシアイという名の公開処刑が行われてしまったらしい。

未来ヶ峰学園の先生方は、コロシアイを乗り越えた私達を見て、涙を拭いながらあっさりと皆の事を許してくれた。

『あなた達はかつて世界を滅ぼしかけた絶望の残党とは違う。あなた達が自分の罪を償って未来を変える決断をしてくれた事が、私達の誇りだ』と言ってくれた。

 

それから私達は、未来機関の施設で他のメンバーの方々と共に復興支援をした。

私は、弦野さんに、どうしてコロシアイを無くすためにここまでするのかと尋ねた事があった。

弦野さんは、以前のコロシアイの生き残りの子孫だそうだ。

コロシアイをやめさせる為に世界に向けて訴えた先祖の遺志を継いで、自ら世界に訴える事にしたらしい。

最初は絶望の残党のクローンである皆を受け入れない人々がほとんどだったけれど、少しずつ、皆を受け入れてくれる人達も増えてきた。

皆が、あのコロシアイは間違いだった、二度と繰り返してはいけないのだと気付いたのだ。

 

人々が『絶望』を望むから、『絶望』に立ち向かっていく『希望』を望むから、コロシアイは終わらない。

だったら私達は、『絶望』も『希望』も選ばない。

コロシアイを続ける事が『正義』だというのなら、私達はそんな『正義』は望まない。

私達は、私達自身の、そして世界の未来の為に戦うと決めた。

たとえその未来が輝かしいものでなかったとしても、走り続ける。

たとえ何十億の人々にその声が届かなかったとしても、叫び続ける。

たとえ私達が生きている間に何も遺せなかったとしても、抗い続ける。

それが私達の償いだ。

 

 

 

「…いくよ」

 

秋山君は、覚悟を決めた面持ちで体育館の扉を開けた。

ここは、私がマナ以外の皆と出会って、モノクマによって無期限のコロシアイ生活を強制された場所だ。

未だにここに来ると、槍が掠った場所を無意識に触ってしまう。

思えば、私達の地獄はここから始まった。

…いえ、地獄はとっくに始まっていたのでしょうね。

白瀬がコロシアイを起こす為に自らを手にかけた、その日から。

 

「…………」

 

私は、体育館の中をぐるっと見渡してみた。

体育館の中は、備品が全て片付けられていて、もはやただのだだっ広いだけの部屋となっていた。

元はといえばコロシアイの宣言の為にここに集められたわけだけれど、ここまで綺麗さっぱり片付けられると何だか寂しいわね。

…確か、ここで私が知崎君を庇ってモノクマとモノDJに殺されかけたのよね。

もうその時の焦げ跡は、綺麗さっぱり無くなってるけど。

それから、あそこの床で加賀君が落書きをしていたのよね。

彼の思いついたら何でもそこで書いてしまう悪癖も、今となっては懐かしいわね。

私が物思いに耽っていると、後ろから秋山君が声をかけてくる。

 

「次、行こっか」

 

「ええ」

 

秋山君が声をかけたので、私は体育館をもう一度振り返ってみてから、次の場所に向かった。

ここに来たら、コロシアイが起こった場所や思い出の場所を順番に見ていこう。

ここで過ごした皆で話し合って決めた事だ。

 

 

 

次に向かったのは、保健室だ。

ここは、最初の犠牲者である玉越さんが亡くなった場所だ。

私は、彼女の死と再び向き合う覚悟を決めると、保健室の扉を開けた。

保健室は、すっかりベッドや備品を片付けられていて、何も残っていなかった。

床を見てみると、綺麗に掃除されていた。

こうしてみると、ここで玉越さんが亡くなったのが嘘のようだ。

でも確かに、彼女はここで亡くなったんだ。

 

玉越さん…

いつでも明るく私達を引っ張ってくれた、良いリーダーだった。

どんなに追い詰められても決して希望を失わず、全員で助かる方法を常に模索し続けていた。

私自身、彼女の明るさやリーダーシップにはとても救われた。

そんな彼女がよりによって私達の仲間に殺されてしまうだなんて、一体誰が想像しただろうか。

思えば、彼女の死からコロシアイが加速していったようにも思える。

でも、彼女が私達に思いを繋いでくれたからこそ、私達は今こうして生きている。

彼女の足掻きを無駄にしない為にも、世界からコロシアイが消え去る日まで、戦い続けよう。

 

そして響さん。

彼女は、玉越さんを殺してしまい、最初のクロとして処刑された。

言動が荒いところはあったけど、本当は繊細で仲間想いな人だった。

 

「玉越さん…あの時はごめん。君の想いに応えてあげられなくて…歌音を止められなくて。歌音…止められなくて、お前の想いに気づけなくてごめん。俺、生きるからさ。生きて、抗って、コロシアイをやめようって言い続けるから。だから、安らかに眠ってね」

 

秋山君は、腰を屈めて膝をつくと、玉越さんと響さんに向けて別れの言葉を告げた。

多分、彼の言った事は、二人には伝わったと思う。

秋山君が立ち上がると、私達は次の場所に向かった。

 

 

 

次は、小鳥遊さんが亡くなったプールと更衣室だ。

私達は、更衣室とプールを順番に調べていった。

更衣室は、ロッカーやベンチなどを撤去されていて、男子更衣室も女子更衣室も色違いなだけでほとんど変わらない内装となっていた。

小鳥遊さんが殴り殺されて血が飛び散った場所や小鳥遊さんの首が切断された場所は、綺麗になっていた。

そしてプールは、水が抜かれていて、備品を全て撤去されていた。

私はふと、ここに持ってきた小鳥遊さんの猫のぬいぐるみを見た。

猫のぬいぐるみには涙のシミがついていたけれど、今ではすっかり乾いて目立たなくなっていた。

小鳥遊さんは、自分の過去ごと道連れにする為に越目君を殺そうとして、返り討ちに遭って殺されてしまった。

 

小鳥遊さん…

喋れないなりにコロシアイで荒んだ私達の心を癒そうとしてくれた、優しい子だった。

きっと、私達を裏切って第二の殺人を起こす事だって、苦渋の決断だったのだろう。

あんな事になるなら、もっと彼女を理解してあげられれば良かった。

でも、あの子が加賀君や目野さんと一緒にリカを作ってくれたおかげで、私達は黒幕を殺さずにここから脱出するという選択ができた。

 

そして、越目君。

お調子者なムードメーカーで、ピリピリしたコロシアイ生活を明るく盛り上げようとしてくれていた。

そんな彼が小鳥遊さんを殺してしまうなんて、誰が予想できただろうか。

…結局、最期まで彼の想いには応えてあげられなかったわね。

 

「小鳥遊。お前の望み通り、俺達はここから脱出したぞ。…裁判の時は、『死んで良かった』だなんて言ってすまなかった」

 

「越目君。あなたの想いに応えられなくて…裁判では追い詰めるような事を言ってごめんなさい」

 

加賀君は、頭を下げて小鳥遊さんに謝った。

彼は多分、あの後小鳥遊さんの遺書を読んで、彼女の本心を知ったんだと思う。

今更謝るなんて遅すぎるとも思ったけれど、彼自身が彼女の事を思いやれるようになったのは大きな変化だった。

加賀君と私が小鳥遊さんと越目君に謝ると、私達は次の場所に向かった。

 

 

 

次は、聖蘭さんと闇内君が亡くなった家庭科室と指導室だ。

私達は、家庭科室と指導室を順番に調べていった。

家庭科室と指導室は、備品を全て撤去されていて、隠し扉も封鎖されていた。

聖蘭さんは食欲に飢えた食峰君に食べる為に殺され、闇内君は皆を食峰君から守ろうとして殺されてしまった。

 

聖蘭さん…

常に世の為人の為に尽くす、心の綺麗な人だった。

その純粋さにつけ込まれて、私達に助けを求める事もできずに殺されてしまった。

今でも、彼女を守ってあげられなかった事を後悔してる。

私達が食峰君の本性に気付いていたら、彼女を守れていたのだろうか。

 

闇内君…

セクハラばかりで第一印象こそ最悪だったけど、私達を守る為に戦ってくれた勇敢な人だった。

彼だって、闇内家を守る為に誰よりもここから出たかったはずなのに。

その闇内家はもうとっくの昔に滅んでしまったけれど、彼が命懸けで守った古城さんはまだ生きている。

それだけでも、彼が身を挺した意味はあったんだ。

 

そして、食峰君…

彼は、自分の欲望を満たす為だけに聖蘭さんと闇内君を殺した殺人鬼だ。

正直、彼についてだけは『思い出したくない』の一言に尽きる。

でも食に対する情熱や才能は本物だったし、何度も私達を救ってくれたのは事実だ。

 

「聖蘭さん。俺達は今、俺達の罪を贖う為に戦ってるんだよ。遠い道のりだけど、君達が少しでも救われるように頑張るから。だから安心して眠ってね」

 

「闇内…見ておるか?ワシは、今もこうして生きておるぞ。お主がワシを生かしたんじゃ」

 

「食峰君。あなたのした事は、最低だと思う。だけど、あなたの遺したものは私達が受け継いでいくわ」

 

秋山君と古城さんと私は、聖蘭さんと闇内君と食峰君に声をかけた。

私は願った。

聖蘭さんと闇内君にとって、皆がこうして生きている事が救いになりますようにと。

秋山君と古城さんが聖蘭さんと闇内君に話し終えると、次の場所に向かった。

 

 

 

次は、ネロが亡くなった転生ルームだ。

ゲームセンターのゲームは全て撤去されていて、転生ルームの電源も入らないようになっている。

今でも転生ルームに入ると、ネロがここで亡くなった事を思い出してしまう。

ネロは、内通者だったという理由で館井君に殺されてしまった。

 

ネロ…

最初は嫌な奴だと思っていたけれど、彼は私達を守る為に自らの命を懸けようとしていた。

私が最初に抱いていた人物像とは程遠い、ガラッシアファミリーの若頭に相応しい誇り高い人だった。

彼は強すぎるからこそ、私達の為に自殺をしようなんて決断ができたのだろう。

せっかくゲームを通して絆が深まったと思ったのに、それも呆気なく裏切られてしまった。

…結局、彼を助ける方法は、最後まで見つけてあげられなかったわね。

 

そして、館井君…

自分が生き残る為に、ネロを殺してしまった。

本来は人殺しなんてしない紳士的な人だったのに、あのコロシアイが彼を歪めてしまったんだ。

今でも、彼がオシオキされる直前の乾いた笑い声が、頭にこびりついて離れない。

 

「ネロさん…あの時はあんな事言いましたけどね、今になってようやくアナタの立場に立たされる気持ちがわかったんです。あの時は、酷い態度をとって…すみませんでした」

 

「館井。裁判では馬鹿にするような態度を取ったが、今では君の気持ちがわかる。本当にすまなかった」

 

目野さんと加賀君は、ネロと館井君が座っていた席があった場所に向かって頭を下げた。

目野さんは、自分が悪者になってまで窮地に立たされた仲間を助けようとする人間の気持ちが理解できたようだった。

以前の彼女なら、決して自分の行いを反省したりはしなかったでしょうから、彼女なりに成長したのでしょうね。

二人がネロと館井君に謝ると、次の場所に向かった。

 

 

 

次は、知崎君が亡くなった植物庭園だった。

植物庭園の植物は全て撤去されていて、火事による焦げ跡だけが残っていた。

知崎君の遺体が串刺しにされていた場所は、綺麗に片付けられていた。

知崎君は、不運の重なりによって監視カメラを壊してしまい、その結果モノクマとモノDJに処刑された。

でも最後は結局、リカを殺したフリをする事で、黒幕の監視を掻い潜って学園のネットワークを奪還し、オイシイところも、この学園自体も、全てを掻っ攫っていってしまった。

 

知崎君…

最後まで何がしたいのかわからない人だと思っていたけれど、誰よりもコロシアイを止める為に抗い続けていた人だった。

今思えば、彼はずっと、私達を生かす為に動いていた。

それを迷惑行為と決めつけて邪魔をしてきたのは私の方だ。

…本当に反省しなきゃいけなかったのは、私の方だった。

 

そして、マナ…

ここで出会ったその日から、私のバディとしていつでも一緒にいてくれた。

私が折れそうな時は彼女が支えてくれた。

私は、そんなマナに対し、心のどこかで惹かれていた。

私は、彼女に誰よりも生きていてほしかった。

 

「知崎君。皆を守れなくて…コロシアイを引き起こしてしまって、ごめんなさい。私、強くなるから。強くなって、コロシアイを止める為に戦い続けるから」

 

私は、黒幕として皆を殺してしまった事、そして知崎君にしてきた事を謝った。

きっと彼が生きていたら、無邪気な子供のように笑い飛ばして、イタズラの一つや二つをして嵐のように去っていっただろう。

 

「…それからマナ。あなたは、私に新しい感情を、絆の大切さを教えてくれたわよね。私、コロシアイの犠牲者はあなたで最後にするから。だから…どうか私達を見守っていて」

 

私は、溢れそうになる涙を堪えながら、マナに伝えた。

今になって、彼女が言った『最高の幸運』という言葉を思い出した。

彼女は、自分の死という不運と引き換えに、私達を生かしてくれたようにも思える。

知崎君の計画が黒幕に気付かれずにリカが学園のネットワークの奪還に成功したのも、弦野さんがここに来てくれたのも、私達が仲間と一緒にこうして抗い続ける事ができているのも、全ては『幸運』のおかげだ。

マナが死んでもなお、彼女の幸運が、私達を助けてくれたんだ。

『コロシアイの犠牲者を自分で最後にする』、それこそが、マナ自身の死という不運が無ければ決して起こり得なかった最後の幸運だった。

…全く、どこまで私達に遺せば気が済むのよ。

 

私は、知崎君とマナに自分の思いを伝えると、踵を返した。

もう言いたい事は言った。

行こう。

 

 

 

次は、情報管理室内のモノクマ操作室だった。

モノクマ操作室は封鎖されていて、今ではもう入れないようになっていた。

すると、私のオリジナルは踵を返して情報管理室を後にする。

 

「行きましょう。もう今の私には必要のない場所だもの」

 

私達は、オリジナルについていく形で情報管理室を後にした。

その後は、思い出の場所を一通り見て回った後、校門の前で解散となった。

まだ見足りない気もしたけど、これ以上振り返るとかえってつらくなる気がしたから、自分の中で踏ん切りをつけた。

 

…さよなら、未来ヶ峰学園。

私達の学び舎。

 

 

 

「いやー、久々に校舎を見てたら何か懐かしい気分になってきちゃいました。あ、そうだ。飲み行きましょっか!」

 

「えっ、今から?」

 

「うむ、いい考えじゃのぉ!酒を飲まねば戦ができぬというしのぉ!!」

 

「それを言うなら腹が減っては、だろ」

 

「古城さんさぁ…いい加減にしてよ」

 

「な、何じゃとぉ!?」

 

目野さんの提案で、これから飲み会をするという流れになった。

何で飲み会…というか、古城さんはちょっとは自重してほしいわ。

私がそんな事を思いながら皆と一緒に笑っていた、その時だった。

 

 

 

 

 

「緋色ちゃん」

 

 

 

 

 

「!」

 

今、確かにマナの声が聴こえた気がした。

振り向くと、そこには誰もいなかった。

気のせいだったのかしら?

 

「おい腐和ァ!!何をしておる!?さっさと行くぞ!!」

 

「あ、ええ!」

 

…いえ、きっと気のせいなんかじゃない。

贖罪の道は、きっと終わりなんてなくて、これからも過酷な運命が待ち受けているのだろう。

それでも、進んでいこう。

コロシアイが過去のものとなる、その日まで。

 

 

 

 

 

Epilogue 贖罪への道、さよならの出口 ー完ー 

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『イースター・エッグ』

 

エピローグクリアの証。

ダンガンロンパシリーズのエンディングでお馴染みとなっているアイテム。

 

『モノクマピンバッヂ』

 

全エンドクリアの証。

かつて白瀬が持っていたもの。

すっかり錆びたバッヂは、コロシアイの終焉を物語っている。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

元・【超高校級の希望】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

以上7名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

以上11名

 

 

 

 

 



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おまけ・解説
一章解説


一章完結でございます。

ここまでお付き合いありがとうございました。

ではでは解説いっくよー。

どんどんぱふぱふー。

 

章タイトル解説

『出会い』というのは、そのままの意味でコロシアイメンバーとの出会いと、恋愛的な意味の出会いのダブルミーニング。

誰よりもメンバーと積極的に仲良くしようとし秋山に恋愛感情を抱いていた玉越が響に殺され、メンバーとの出会いをきっかけに心を開きかけ秋山に恋愛感情を抱いていた響が玉越を殺したという今回の章を表したものとなっています。

 

 

 

・腐和緋色

本作の主人公。

霧切さん枠が主人公をやったらどうなるんだろうという構想から生まれたキャラクター。

歴代の主人公達とは違い場慣れしており、精神年齢も些か高めで基本冷静な子です。

ちょっと正義感が強いだけの普通の高校生を自称してますが、10代で警部補にまで出世していたり、グングニルの槍から知崎を助けて生還したり、お得意の弁論で真犯人を追い詰めたりとどう見ても普通の高校生じゃなかったりします。もうこいつ一人で良くね?

名前の由来は、マイナスイメージの漢字を使いつつ、かつ響きが可愛らしい苗字。

下の名前は、ヒーローと読める名前。彼女のイメージカラーが赤色なのは名前から。

声のイメージは言わずもがな蘭姉ちゃん。ボーボボのスズだったりもする。

 

・聲伽愛

本作の幸運枠でヒロイン枠。

天真爛漫で天然が入った正統派ヒロインで、さらには方言女子という萌え要素付き。

七海ポジ…かと思いきや、最初の事件でスケープゴートにされたアホの子。

頭はさほど良くありませんが、事件の推理をしている最中に急に勘が鋭くなったり、持ち前の幸運で事件の重要な手がかりを発見したりと大活躍する…予定。

名前の由来は『なえぎまこと』のアナグラム。イメージカラーが青色なのは、主人公の緋色と対比させるため。

声のイメージはヒロアカのお茶子。

 

・秋山楽斗

本作のトラポ枠。コロシアイメンバーのサブリーダー枠。

作中で二番目のイケメン。何気に作中一のオールラウンダーキャラですが、本人は『器用貧乏』と謙遜しています。

それなりに裕福で特に音楽方面に教育熱心な家で育ち、幼少期からピアノの才能がある年子の妹と比べられてストレスが溜まっていたため、外面は爽やかイケメンですが二面性があり、裏の性格は割と荒くけっこう頻繁に毒とか吐きます。

彼を巡って起こったコロシアイですが、価値観や好みは玉越と似ており、響とは違う価値観や好みだったものの、彼自身が自分とは正反対の価値感を持つ相手に惹かれる性格なので、玉越の事は『気が合う親友』だと思っていました。

ピアスと指輪は響に誕生日プレゼントにもらったもので、実は彼自身シルバーアクセサリーをつける趣味は無い人なんですが、響にもらった宝物なので普段からずっとつけています。

ちなみに初期設定ではもっとオドオドした性格でひねくれてたんですが、それだと冷静に考えて『こいつ好きになる要素無くね?』ってなったので、性格を変更しました。

名前の由来は、某有名音楽プロデューサーの苗字と、音楽の楽の字を使った下の名前。

声のイメージは、『デュラララ!!』三好吉宗。『SPY×FAMILY』のロイドだったりもする。

 

・玉越翼

1章シロ。コロシアイメンバーのリーダー枠。

ほとんどの人が生存予想していましたが、あえて一章で退場させました。

バレー以外は秋山程ではないもののそれなりにオールラウンダーで、学校のテストではトップ3から落ちた事がなく、基本的に苦手分野がほとんど無い子。

コロシアイメンバーの精神的支柱でしたが、一章であえなく退場。

これから起こる悲劇を知らずに済んだという意味では、彼女が一番幸せだったのかもしれません。

率先して作戦を立てて試合に臨んでいる事もあって頭の回転は速いので、もし生き残っていたら主人公を支える重要な役割を担っていた可能性は十分にありました。

ちなみに彼女が秋山クンに好意を抱いたきっかけは、2日目の探索の時間中、家族の話や仕事の話をしているうちに、お互い似た部分があった事から意気投合し、いつの間にか恋愛感情に発展していたというもの。

苗字の由来はバレーボールがネットを越える様子から。名前の由来は、イケメンっぽくて中性的な名前。

声のイメージは、『バトルスピリッツ烈火魂』の群青早雲。ヒロアカの耳郎だったりもする。

 

・響歌音

1章クロ。

実は彼女はTwitterでは一番人気のキャラクターだったんですが、Twitterの人気者だろうとアテクシは容赦致しません。

彼女も生存予想、死ぬにしてもシロ予想が多かった子です。

彼女の殺人の動機は、バンドメンバーと父親の安否を知る為に恋敵を殺したというもの。

同じ年に入学するはずだったバンドメンバーと連絡すら取れず、精神的に参っていたところをモノクマとモノDJの動機によって揺さぶられてしまい、最終的に一線踏み越えてしまいました。

ちなみに秋山クンとは幼稚園の頃からずっと一緒で、暴走しがちな自分を常に律してくれた秋山クンに恋愛感情を抱いていました。

彼女がきちんと秋山クンに想いを伝えていたらどうなっていたのかは神のみぞ知る(つまり何も考えていない)。

名前の由来は音をイメージする漢字。

声のイメージはハンターハンター(旧作)のクラピカかヘタリアの中国。

オシオキの内容は、彼女の好きなロックをテーマにしています。

モノクマのヘタクソな歌はそのまんま音楽のロック、南京錠は錠前を意味する英単語のロック、クレーンと岩は岩を意味する英単語のロック、巨大な水槽とガラス玉はお酒のロック、そして上下逆向きの秋山クンの絵に押し潰されるオシオキは、69をロックと読める事から、夜のプレイのひとつであるアレを表しています。

 

 



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二章解説

はい。

二章もご愛読ありがとうございました。

今回もテンポよく解説いくよー。

 

章タイトル解説

章タイトルのガーデニアは英語でクチナシの意で、いじめで口を失った小鳥遊の暗喩と、『死人に口無し』のダブルミーニングとなっていました。

 

 

 

・腐和緋色

2章クロの越目とは筋トレを通して仲良くなったものの、早々に退場された。

母親を失ってから感情を押し殺して生きていくうちに泣く事ができなくなり、聲伽の優しさに強い憧れを抱いている。

ちなみに彼女が小中高と全くモテなかったのは、家庭事情的な理由もありますが、一番は高嶺の花すぎて誰も近寄れないという理由だったりします。

 

・聲伽愛

本編中では語られなかったが、2章シロの小鳥遊とは自由行動を通して仲良くなったものの、早々に退場された。

自分の才能のせいで周りに迷惑をかけて生きてきたため、入学したての頃は自信を喪失しており、腐和の強さに強い憧れを抱いている。

基本的にメンタルは人並みの子なので、歴代の主人公の相棒の中では感情が先走りがちなタイプです。

 

・小鳥遊由

2章シロ。作者の推し(二度目)。

Twitterでも人気の子でしたが、作者の推しだろうがTwitterの人気者だろうがアテクシは容赦しません。

後半に死ぬと予想していた人が多かったですが、あえて前半で退場させました。

作中ではトップクラスでIQの高い子だったので、生き残っていればトラポ枠になっていたのかもしれません。

家族を理不尽に奪われた古城や加賀ですら吐き気を催す程の深い闇を抱えた子で、今まで口から下を頑なに晒さなかったのもいじめの痕跡を隠す為でした。

皆を道連れにして過去ごと闇に葬り去る為に学級裁判を利用して全員を皆殺しにしようとしており、越目が彼女を返り討ちにしていなかったら、今頃オシオキを受けていたのはこの章で生き残った全員だったのかもしれません。

ちなみに彼女が撲殺されたのは、彼女の武器である頭脳を恐れた越目に頭を潰されたという皮肉を込めています。

ちなみに裏設定的なアレですが、彼女自身親友の玉越に恋愛感情を抱いていたというものがあります。

余談ですが、彼女のいじめについては、彼女のモチーフであるミッフィーの都市伝説を参考にしています。

名前の由来は、小動物みたいな苗字。下の名前は、柔らかくて温和なイメージの名前。

声のイメージは、『ブラック・ブレット』の布施翠。

 

・越目粧太

2章クロ。原作のアポこと桑田クンを彷彿とさせる男。憎めないおバカ枠。

彼は生き残り、死ぬにしてもシロ退場と予想している人がほとんどでしたが、あえてクロ退場させました。

彼の殺人の動機は、頭脳という武器を持つ小鳥遊に恐怖心を抱いて殺してしまったというもの。

今までの創作論破で、相手がバカそうだったから殺すという動機は多かったものの、逆に相手の頭の良さを恐れたから殺すという動機は見た事がなかったような気がするので、あえてそういった動機にしてみました。

せっかく腐和に釣り合う男になる為に頑張っていたのにクロになってしまい、全てを諦めオシオキを受け入れる覚悟を決めていたものの、腐和に庇われた事で最後の最後に死にたくないという感情が芽生え、それすらも叶わず退場した哀れな男。

もし彼が小鳥遊を殺さずに何度もぶつかり合っていればどうなっていたかは神のみぞ知る(つまり何も考えていない)。

名前の由来は、『コスメ』と『化粧』。

声のイメージは、『炎炎ノ消防隊』のオグン・モンゴメリ。

オシオキの内容は、某国民的美少女戦士アニメをモチーフにしています。

世の女性達に夢を与える事を目標にしていた彼が、世の女子達の憧れの象徴に成敗されるという皮肉を表現してみました。

ちなみにモノDJが再現しようとしていた額縁の美青年は作中に出てくる某変態仮面で、オシオキに登場した女子達はそれぞれ、小鳥遊は月、聲伽は水星、腐和は火星、聖蘭は金星、目野は木星、古城はちび月のコスプレをしています。

 

・玉越翼

前章の被害者。

小鳥遊とは、中学の頃に出会っています。

極貧の家庭に生まれ、父親が闇金に多額の借金を作って自殺し、弟達を養う為にいくつもアルバイトを掛け持ちし、球技大会で優勝し続けて賞金を稼ぐ日々を送っていました。

十分に金が貯まるまでは闇金の男に性的暴行を加えられており、価値観や家庭環境こそ違えど似たような境遇の小鳥遊と意気投合したって感じです。

彼女のタバコ嫌いは、過去の性的暴行に起因しています。



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三章解説

はい。今回もテンポ良くいくよー。

 

章タイトル解説。

章タイトルの『餓鬼』とは食峰の事で、『欲望に飢えている』というのは、コロシアイ生活によってずっと抑圧されていた彼自身の欲望の事を意味しています。

 

 

 

・腐和緋色

3章クロの食峰とはプレイルームでのゲーム大会で親睦を深めたものの、最悪の形で退場された。

今まであらゆる犯罪者を裁いてきた彼女ですが、食峰の本性には内心割とビビっている部分があります。

 

・聲伽愛

3章シロの聖蘭とは一緒に研究室でお祈りをしたり一緒に食事の準備を手伝ったりしているうちに仲良くなったものの、あえなく退場された。

おそらく彼女がいなければ腐和は最後の最後に詰んでいたでしょう。

この章から彼女の本領発揮です。

 

・リカ

この章からの新キャラ。本作の人外枠。

加賀、小鳥遊、目野の3人によって生み出されたバーチャルアシスタントで、17人目の高校生です。

3章からAIが登場するのは原作のオマージュだったりします。

自我を持つAIであるにもかかわらずモノクマ達からは処分されず、可愛いは正義理論で普通に転校生として皆の輪の中に混じっています。

当初は加賀の恋人をモデルにしたメイドとアイドルの要素を兼ね備えたバーチャルアシスタントとして誕生する予定だったものの、小鳥遊の遺志を継いで彼女に寄せたプログラミングに変更されたといった経緯を持っています。

基本的にオールラウンダーで優秀な子ですが悪い意味でも人間臭く、都合が悪くなると平気で嘘をついたり自主的にシャットダウンしたりします。

ちなみに彼女が三毛猫のヘルメットを被っているのは、小鳥遊の趣味です。

名前の由来はリカちゃん人形から。

声のイメージはポケモンのルチア。

 

・古城いろは

本作のロリ枠。知識の偏りが激しく、最近の流行に疎く裁判でも的外れな発言をしがちなおバカ枠。

3章シロの闇内とは、一緒に探索をしているうちに仲良くなっていったものの、あえなく退場された。

最初は気に入らない事があるとツルハシを振り回す不穏寄りのキャラで、一時期は闇内が死んだ事で考えるのが面倒臭くなっていましたが、三度目の裁判を乗り越えた事で成長しました。

ちなみに闇内には恋愛感情ではなく、部下としての信頼を置いていました。おそらく、男女で到達し得る最高の信頼関係だったんじゃないかなぁと。

名前の由来は、何となく古風な名前。

声のイメージは『SPY×FAMILY』のアーニャ。

 

・知崎蓮

本作のショタ兼トリスタ枠。作者の推し。

わざとモノクマ達を怒らせて腐和に大怪我を負わせたり、犯人を知っているにもかかわらずわざと的外れな発言をして裁判を無駄に長引かせたりと見るからに異質なキャラ。

このゲームを楽しんでおり、『皆の事をもっとよく知りたいから長生きして欲しい』と言っているが真意は不明。

実はアルセーヌ・ルパンの末裔で、才能を盗む才能の持ち主。

才能が危険すぎるので意図的に忘れさせられ、偽名を与えられている。

名前の由来は、『知』がつく名前。

声のイメージは『怪盗ジョーカー』のジョーカー。

 

・聖蘭マリア

3章シロ。アンジー枠。本作のお嬢様枠。

読者様の中では、彼女が豹変枠だと予想した人が多いんじゃないでしょうか。

案の定Twitterでアンケ取ったらぶっちぎりで草。はい。ミスリード狙いです。

お祈りや食事の準備を通して聲伽と仲良くなったものの、3章にてあえなく退場。

作中で一番グラマラスな体型と綺麗な心を持っていた事で殺人鬼に狙われてしまいました。

彼女はとても信心深くて人の為に尽くす人でしたが、殺人鬼に狙われてしまったのが運の尽きでした。

どこか浮世離れした雰囲気で世間知らずな一面があるため、裁判では積極的に謎を解明していくというよりかはサポートに徹していました。

しかし地頭は良いので、コロシアイを避ける為に夜時間中出歩かないルールを提案したり、メンバーの精神衛生を保つ為に自ら掃除や洗濯の当番を買って出たりと割と的を射た言動ができる子です。

2章の時点では気を強く持っていましたが、掃除やティータイムの準備を手伝ってくれた小鳥遊が亡くなった事で完全に心が折れ、脱出を諦める事を選んでしまいました。

対立していた闇内とは、最期まで仲直りできないままお互いに退場してしまいました。

名前の由来は聖母マリアから。

声のイメージは『鬼滅の刃』の胡蝶しのぶ。

 

・闇内忍

3章シロ。本作の変態枠。普段は隠れて見えませんが、実はかなりのイケメンで無駄にハイスペックです。

古城とは探索を通して仲良くなったものの、3章にてあえなく退場。

闇内クン3章シロ退場は割と予想できた人多かったんじゃないでしょうか。

普段は変態行為ばかりやらかしていましたが、忍者故の勘の鋭さで誰よりも早く殺人鬼の正体に辿り着き、最後の最後に仲間を守って殉職しました。

彼は闇内家を守る為に自分の手を汚してまであらゆる仕事を請け負い、今回のコロシアイでも家の為なら何でもするつもりでしたが、すぐ近くに守るべき人ができたからこそ自分の死をもって殺人鬼と刺し違える道を選んでしまいました。

変態行為が多く、コロシアイやオシオキで取り乱したりと年頃の男子高校生っぽい面が多く見られるものの、いくつもの修羅場を乗り越えてきたので自分が腹を括るべき状況では肝が据わっており、頭もそれなりに切れるのでけっこう的を射た言動ができる子です。

ちなみに古城には恋愛感情ではなく、主君としての信頼を置いていました。おそらく、男女で到達し得る最高の信頼関係だったんじゃないかなぁと。

対立していた聖蘭とは、最期まで仲直りできないままお互いに退場してしまいました。

名前の由来は『闇討ち』と忍。

声のイメージは『ハッピーシュガーライフ』の北埋川大地。

 

・食峰満

3章クロ。まさかの豹変枠。殺人鬼という二つ目の才能を隠し持っており、熱血な好青年の皮を被った熱血クソ野郎。

こいつが豹変枠だとは誰が予想しただろうか。

こういう素が熱血系の豹変枠ってあまり見ない気がするので、あえてこういうキャラにしてみました。

実は若い女性や子供を殺して食べていた殺人鬼で、今回の動機は聖蘭が美味しそうだったから食べようとした、それを闇内に邪魔されそうになったから殺したというもの。

彼の家庭環境やコロシアイが人格を歪めたとかそういうのは全く無く、彼は元々こういう奴です。

風呂で聖蘭や古城の事を『好き』と言っていたのは無論そういう意味です。

ちなみに彼は作中でも言及されていたように快楽殺人犯や無感情な殺戮マシーンではなく、人間を他の家畜と同じ感覚でしか見られないだけです。

彼自身には殺した家畜(人間含む)の死に対して悲しむ感情はちゃんと持っており、捜査編の時に聖蘭の死に嘆き悲しんでいたのも演技ではなく本心です。

というか、彼自身【超高校級の殺人鬼】という素性を隠してはいたものの、クラスメイトと接していた時の態度はほとんど本心です。

個人的には、この手の殺人鬼って感情あるけど倫理観がバグってる系の奴が一番怖いと思うのです。

彼自身は、食の事になった途端すこぶる頭が切れるので、今まであらゆる手を使って警察の目から逃れ続けていました。

ですが最後は結局せっかく見つけた最高の食材を一口も食べられずに絶望して退場という、どこまでも自業自得な末路を迎えました。

名前の由来は『食』がつく苗字と満腹の『満』。

声のイメージは『プリティーリズム・レインボーライブ』の仁科カヅキ。

オシオキのモチーフは、言わずもがな宮沢賢治による『注文の多い料理店』です。

注文の多い料理店に出てくる紳士二人のモチーフと史実のジャック・ザ・リッパーが猛威を振るっていたイギリスを舞台としており、最初の銃は紳士二人の持っていた猟銃を、犬は二人の飼い犬を、ハンドミキサーのオシオキは二人が身体に塗りたくっていたクリームを、噴霧器は二人がかけていた香水を表しています。

塩は最後の注文を、最後の前菜はおそらく化け猫の店主が作ろうとしていたサラダとフライを表しているのですが、メシマズで有名の国でメチャクチャな調理法で調理され、結局は自分の身体を使って作られた料理を一口も食べられずに捨てられるという、美食家の彼の尊厳をズタズタに破壊するオシオキとなりました。

ちなみに料理にとまったハエは、フライとfly(英語でハエ)をかけた言葉遊びです。

 



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四章解説

はい。

4章完結しました。

解説編サクサクぱんだ。

 

章タイトル解説。

章タイトルはまんまです。特に捻りとかないです。

ごめんなさい。

 

・腐和緋色

4章シロのネロとはようやく打ち解けたものの、あえなく退場された。

彼女はネロに一番信頼されていたので、彼の本来の性格に触れる機会がありましたが、それがかえって彼女にとって絶望になるという胸糞エンドでした。

 

・聲伽愛

章を経るにつれどんどん推理力が成長して七海化していく子。

今回の章も、彼女のいざという時の閃きが腐和を手助けしました。

 

・知崎蓮

才能を少しずつ思い出し、トリスタ的行動をしつつも時には腐和の窮地を救ってくれる子。

今回も、彼の泥棒としての才能が無ければ腐和は最後の最後に詰んでいたでしょう。

ちなみに彼は裁判中にわざと何もわからないフリをして裁判を長引かせようと画策していますが、推理力自体は作中キャラでトップクラスなので、裁判を長引かせる事に飽きたらズバズバ核心をついていきます。

面白いのは、彼が班員の脱出チケットのカード化を解いて使えなくしてしまい、同じ班だった館井と目野が異世界から出られなくなってしまっていたので、この時点ではアバターの入れ替えのトリックを使う事ができなかったという点なんですよね。

そして皮肉な事に、腐和が二人に脱出チケットを譲ってしまったせいでアバターの入れ替えトリックが行われてしまいました。

 

・加賀久遠

作中一の頭脳キャラ。本作のトラポ枠。作者のお気に入り。

リカを作ったり監察医並みの検視をしたりと有能で、何気に唯一1章から4章までの全ての裁判で腐和の味方になってくれた子です。

マイペースで人と合わせるのが苦手ですが、基本冷静沈着で意外と話せばわかる子です。

コロシアイ共同生活をミステリーの要素を兼ね備えた脱出ゲーム感覚で楽しんでいますが、あくまで謎を解くのが楽しいだけで、恋人と家族を殺された経験上コロシアイやオシオキ自体は普通に嫌悪感を示しています。

無表情に見えて、自分の考えが当たっていたらドヤ顔したり、自分の考えが外れていたら拗ねたりと割と表情豊かです。

名前の由来は『科学』から。

声のイメージは呪術の宿儺。

 

・目野美香子

本作のおバカ枠。作者のお気に入り。

生粋のメカオタクで、機械の事になると我を忘れる性格とぶっ飛んだ言動のせいで奇行種扱いされている変態女子。

普段の言動のせいでクロにスケープゴートにされ、見事に奇行種っぷりを発揮しました。

基本的にメカ頭なので、物事をメカ基準でしか考えられない子です。

しかし機械系才能だからかパソコンへのハッキングを試みたり捜査用にミニリカレンジャーなるロボットを作ったりと、裁判以外のところでは割と有能な子です。

コロシアイにビビって散々喚いていますが、死体発見アナウンスが鳴っているにもかかわらず爆睡したり平気で集合時間に遅刻してヘラヘラしたり死体を見た後にもかかわらず涼しい顔をして肉類を頬張ったりと割と図太かったりもします。

ちなみに彼女自身は田舎の町工場出身で、普段は敬語ですがブチ切れると方言が前面に出てきます。

名前の由来は、苗字と名前から一文字ずつ取ると『メカ』になる名前。

声のイメージはカナンのリャン・チー。

 

・ネロ・ヴィアラッテア

4章シロ。本作の外人枠兼イロモノ枠兼内通者枠。

今回に関しては割とネロがシロ退場すると予想していた人が多かったんじゃないでしょうか。

腐和とは異世界での生活を通して仲良くなったものの、4章にてあえなく退場。

他のメンバーを見下し自分勝手に振る舞う不穏キャラかと思いきや、実は全員を守る為にわざと悪役を演じ、自ら命を断つ事でコロシアイに終止符を打とうとしていた熱い男です。

自殺して全員オシオキを回避しようとしていましたが、自分が生き残る為に殺人を計画していた館井に殺されてしまいました。

今まで近付き難い雰囲気を放ったり子供嫌いと明言していたのは他のメンバーを遠ざける為の嘘で、本来は子供好きで面倒見のいい性格です。

3章までの性格は演技で、4章からが彼の本来の性格です。

多くの修羅場を乗り越えてきた経験上冷静沈着で頭の切れる男で、裁判でも割と核心を突いた発言ができる人でした。

本当は自殺する事で最初の犠牲者になるはずが、自分が予期していない所で連続して殺人が起きてしまい、館井に殺されるまで自殺せずに生き延びました。

名前の由来は、イタリア語で『黒』と『天の川』。

声のイメージはチェンソーマンの岸辺。

 

・館井建次郎

4章クロ。本作の筋骨隆々枠。

今回に関しては割と館井がクロ退場すると予想していた人が多かったんじゃないでしょうか。

何気に作中一の常識人かつ良識人でしたが、4章にてあえなく退場。

寡黙で冷静に見えて、実はメンタルは人並みかそれ以上に弱い子です。

そういう意味では、マスコットのような見た目でありながら強い精神と高い判断力を持つネロとは対になる存在でした。

今までは作中で数少ない常識人かつ良識人としてメンバーを陰ながらサポートしていましたが、全員がオシオキされるかもしれないという恐怖でネロを殺す事を選んでしまい、最期は自棄を起こして全員を道連れにしようとしました。

最期の最期に自分のオシオキはそっちのけで巻き添えになりそうになったメンバーを嘲笑うという中々にクレイジーな姿を見せてくれましたが、アレはコロシアイ生活に耐えきれずにおかしくなってしまったせいで、3章までが彼の本来の性格です。

小鳥遊には淡い恋愛感情を抱いていましたが、彼女の本当の願いを勘違いしたまま全員を道連れにしようとしてしまいました。

名前の由来は『館』と『建』がつく名前。

声のイメージはハンターハンター(新)のレイザー。

オシオキのモチーフは、言わずもがな正岡子規の俳句です。

モノクマ達が柿をムシャムシャしている中、法隆寺の鐘となった館井が散々撞かれて悲鳴という名の鐘の音を鳴らして死んでいくというもの。

技術もクソもないメチャクチャな方法で磔にされ、自身が鐘となって棒で撞かれ、最後は自身の才能の象徴とも言える木造建築の塔をブルドーザーで容赦なく破壊されるという、大工の彼にとって絶望的なオシオキとなっておりました。

 

 

 



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五章解説

はーい5章もサクッと解説やってくよー。

ドンドンパフパフ〜。

 

章タイトル解説。

一応聲伽が死ぬ事で腐和が絶望するっていう今回の章を表していますが、白瀬が黒幕として絶望を振り撒こうとしているというミスリードも兼ねています。

 

・腐和緋色

5章で相棒に死なれた悲劇の主人公。

自分のやった事が結果的に聲伽をしなせてしまったという何とも皮肉で絶望的な結末となってしまいました。

 

・リカ

5章シロその1。

有能すぎるという理由で退場させられた子。

自分の技術が悪用されるのを防ぐ為、自ら犠牲となってしまいました。

実は知崎とグルで、今回の事件は彼女が知崎に協力を持ちかけ、自分を殺させたという設定です。

ぶっちゃけ学園のネットワークに侵入して乗っ取るとかチートすぎるので、遅かれ早かれ何か適当な理由をつけてモノクマ達に処刑されていたでしょう。

彼女の死は、生みの親である加賀と目野に大ダメージを与えました。

ちなみに彼女のモデルとなった里香という子は、

 

・知崎蓮

5章シロその2。トリスタ枠。

5章は絶対校則違反で殺してやる…!って決めてました。

トリスタ枠は5章シロ退場と相場が決まっているのですが、何故か初っ端から5章シロと予想できていた人は意外と少なかったです。

前作の5章シロ然り、実は最初からコロシアイを止めるために動いていた偽悪者タイプのトリスタでした。

モノクマ達を欺き、絶望の象徴である白瀬クロヱを視聴者の目の前で自らの手で殺す事で、コロシアイを望む絶望の残党達の野望を打ち砕き、なおかつコロシアイの犠牲者を自分で最後にするつもりで今回の計画を実行した彼でしたが、偶然に偶然が重なって聲伽がクロとなってしまいました。

プロローグで皆に校則違反させないために自らを犠牲に実験したり、1章の裁判で響ちゃんを庇って裁判を引き延ばしたり、4章で脱出チケットを使えなくする事でクロをゲーム世界に閉じ込めようとしたりと、今までの行動を視点を変えて見てみたら皆を生かそうとしてる節があるんじゃないかと思います。

ちなみに知崎の素性ですが、正体は10代目のルパンで、先代ルパンの甥っ子です。

母親は先代ルパンの妹。先代が独り身のまま若くして命を落とした翌月に生まれたという設定です。

 

・聲伽愛

まさかの5章クロ。多分今までで一番可哀想な子。

今回のクロは絶対無自覚クロにしてやる…!って決めてました。

方言女子&成長枠という事で人気メンバーの一人でしたが、こういった子でもアテクシは容赦致しません。

最初は成長枠として生き残らせようか迷いましたが、こういう成長枠がグッチャグチャにオシオキされた方が主人公が曇るかなって思ったのですよ(ゲス顔)。

腐和ちゃんとは両片思いでしたが、彼女の方から想いを伝えた直後に殺されてしまいました。

オシオキのモチーフは、モチーフもクソもなく原作のオシオキまんまです。

原作と同じ【超高校級の幸運】という事で、オシオキも同じにしてみました。

 



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本編解説

はい、本編のキャラクターを解説していくコーナーです。

 

・腐和緋色

生き残り。主人公兼黒幕。

創作論破の主人公の中では珍しく、基本的に何でもそつなくこなせる優等生タイプ。そりゃあAIだからね。

本人は一般人のつもりでいるが、頭脳も身体能力も人間離れしている。

実は各章で死神行動をしていたり、作品のタイトルと才能の対比など、割と黒幕の伏線はちらほらあった。

 

・聲伽愛

5クロ。七海枠。本作の幸運枠。本人に殺意が無くクロになってしまうところまで七海ポジ。

普段はあまり頭が良くなくドジっ子だが、裁判の時などにゾーンに入ると腐和以上に頭が切れる。

天然が入っているが、感性などは一般人寄り。そのため、死体を発見した時などは吐き気を催したり泣いたりする。

最後の最後に、自分の死という不運を糧にメンバーが生き残るという幸運を起こした。

 

・玉越翼

1シロ。本作のリーダー枠であり、頼れるお姉さん枠。驚異の生存予想率100%。

秋山や腐和程ではないがオールラウンダー。運動神経とリーダーシップに関してはメンバーで1番。

本編では裁判に参加していないので何とも言えないが、知能も秋山と同程度に高い。

聲伽の次に腐和と仲が良かったのと、こういう有能なリーダー枠が最初に死んだ方が後の崩壊も早いという理由で最初に退場させられた。

彼女に執行されるはずだったオシオキは、『灰灸!!』

炎に囲まれたバレーコートの中で、モノクマとDJにひたすら炎の球を打たれ続けるというもの。

最終的には、バレーコートやボールの炎が燃え移って灰に燃え尽きる。

 

・小鳥遊由

2シロ。不二咲枠。議論が中心となる創作論破では珍しい緘黙キャラ。

作者のお気に入り。読者を絶望させる為に退場させられたと言っても過言ではない。

作中トップクラスで頭がいいので、生き残っていればトラポになり得た。検視をしたり他のメンバーの治療をしたりと有能。

彼女の死後は、加賀や目野と共同制作したリカが他の仲間の役に立った。

彼女に執行されるはずだったオシオキは、『厚切り4万5千グラム』。

コロッセオのような闘技場で闘牛に囲まれ、リング上の闘牛を麻酔銃で眠らせていくが、途中で麻酔弾が切れて闘牛に殺されるというもの。

最後は死体をステーキにされてモノクマとモノDJに貪り食われる。

 

・知崎蓮

5シロ。王馬枠。安定のトリスタ。主人公の才能と対比にする為、こういった才能にしてみた。トリスタなのに何故か5シロ退場予想が無かった。

本人が『クロを裁いてオシオキを受けさせる事』を阻止しようとしているため、裁判を荒らしたりわざと的外れな事を言ったりする事があるが、本人の知能は非常に高い。

意図的に才能を忘れさせられていたため、身体能力やその他の技能は平均的な高校生レベルしかなかったが、本来は非常に高い身体能力や無数のスキルを持ち万人に化ける事ができどんなものも盗む事ができる。

ちなみに彼が今まで盗んだ才能は、『パルクーラー』、『陸上選手』、『スナイパー』、『プロゲーマー』、『デバッカー』、『スパイ』、『探偵』、『金庫破り』、『剣豪』、『脚本家』の10個。

彼に執行されるはずだったオシオキは、『千面相』。

彼が今まで盗んできた才能をモチーフにしており、罠だらけのビルでのパルクール、レースカーからの逃走、スパイ集団からの逃走など、いくつもの試練を乗り越え、最後には巨大テトリスで押し潰される。

 

・食峰満

3クロ。まさかの豹変枠。こいつが豹変枠だと誰が予想しただろうか。

仲間を食べる為に殺しに踏み切ったヤバい奴。

コロシアイのせいでおかしくなったとかではなく元々こういう奴だったが、今まで仲間が死んだ時に泣いていたのは本心。

普段は頭はあまり良くないが、食が絡むと途端にすこぶる頭が切れる。また、筋力がすこぶる高い。

 

・越目粧太

2クロ。桑田枠。生き残り予想がそれなりに多く、序盤退場を予想していた人はいなかった。

殺られそうになったから殺したという、論破作品ではお馴染みの動機で殺した人。

頭は悪く詰めが甘いが常識はあるタイプなので、ツッコミ役になる事が多かった。

オモチャにされつつも何だかんだで知崎の事を気にかけており、彼が周りに迷惑をかけた時は亡き玉越に代わってお目付け役を買って出ていた。

 

・聖蘭マリア

3シロ。クロか黒幕予想が多かったが、結局裏の顔とか別人格とかそういったありきたりなものは一切無かった。

読者に豹変枠と思い込ませる為に生み出したキャラと言っても過言ではない。

処女作の黒須とは違って、ああいった過激な思想を持ち合わせたりはしていない。

頭はそこそこ良いが、信心深い性格のため人を疑う事を嫌い、簡単に騙される。

彼女に執行されるはずだったオシオキは、『鉄の魔女 ニュルンベルク仕立て』。

処刑台まで市中引き回しされ、モノクマ達によって石や汚物などを投げられて処刑台に上らされ、処刑台の上の鉄の処女に入れられそうになったその瞬間に爆走してきたモノDJのバイクに轢き殺されるというもの。

 

・古城いろは

生き残り。本作のロリ枠。夢野枠。最初は問題児だったが、コロシアイを通して成長した。

考古学の勉強とそれ以外の差が激しい。

本人の知能は決して低くはないが、精神年齢が幼く保身の為に裁判を掻き乱す事が多いおバカ枠。

直接クラスメイトの役に立った描写は無かったが、4章からは最後まで気を強く保ち腐和をサポートした。

 

・加賀久遠

生き残り。本作のトラポ枠。一応十神枠のつもり。こいつが生き残ると誰が予想しただろうかその1。

作中一の頭脳キャラ。予想としては序盤退場かトリスタ枠死亡が多かったが、本人にトリスタ属性はほとんど無い。

見た目とギャグ補正のせいで残念男なイメージが強いが、リカを作ったり検視をしたりと割とガチで有能な人。

常に冷静で共同生活や学級裁判をゲームとして楽しんでいる節があるが、殺人やオシオキには嫌悪感を示している。

頭脳の割に子供っぽいところがあり、反論されたら拗ねたり人の役に立ったらドヤ顔したりと割と表情豊か。

 

・目野美香子

生き残り。左右田枠。まさかの生存予想率0%かつ驚異のクロ予想率80%。こいつが生き残ると誰が予想しただろうかその2。

おバカというよりは一般人とはかけ離れた思考回路をしていて人語が通じない。

裁判では的外れな発言が多いが、機械に関しては理系に強い加賀や小鳥遊が足元にも及ばない程で、リカや捜査用のロボットを作ったり学園のネットワークにハッキングを試みたりと有能な人。

ちなみに初期案では彼女が黒幕で、奇行種はその名残り。ちなみに作中では、彼女と食峰と知崎だけがモノクマ達に嫌悪感を示していない。

 

・館井建次郎

4クロ。筋肉枠。予定調和の4章退場。筋肉枠は生き残れないとばっちゃんが(ry

作中一の常識人かつ良識人。頭の良さは普通くらい。裁判ではあまり役に立てないのを自覚しているため、基本は見張りやサポートに徹している。

表情が乏しいためわかりにくいが、一般人に近い感性をしており、殺人やオシオキには吐き気を催している。

一般人に近い感性をしていたからこそ、4章で真っ先に殺人に手を染めてしまった。

 

・秋山楽斗

生き残り。本作のトラポ枠であり、万能イケメン。初っ端から幼馴染と死に別れ、読者からは黒幕だと散々言われ、体験版で殺された可哀想な人。

最初は狛枝枠にするつもりで、毒舌はその時の名残り。メンバーの中では指折りに知能が高く、裁判中は重要な発言をする事が多い。

どんな事でもセミプロレベルにはこなせるが、本人は『器用貧乏』と謙遜している。

殺人そのものを嫌悪しているため、クロにはどういった事情があろうと徹底して冷酷。

 

・響歌音

1クロ。成長枠として生き残るか、死ぬにしてもシロと予想していた人が多かったが、序盤で退場させた。

九頭龍枠として生き残らせるか迷ったが、それだと前作の弦野と被るので没にした。

頭の良さは普通くらい。クロだから裁判を撹乱こそしたものの、本来はきちんと真面目に考えて議論できる人。

粗暴で口の悪さが目立つが、本来の性格は繊細で心配性。雷や大型犬などの音の大きなものを怖がるビビりな一面がある。

 

・ネロ・ヴィアラッテア

4シロ。マスコット枠かつちょいワル枠。ちょいワル枠は生き残れない。

メンバーが容赦なく自分を切り捨てられるようにわざと悪者を演じていたが、本来は正義感が強く面倒見のいい性格。

経歴の都合上学はないが、冷静沈着で地頭も良く、勘が鋭い。

人間離れした身体能力を持っており、純粋な戦闘能力は作中一。

彼に執行されるはずだったオシオキは、『My Fair Lady』。

モノDJとモノクマ達のマフィア集団に狙われているボスの娘を助け出し、そのままモノクマ達から逃げようとするが、実はボスの娘はモノクマのコスプレで、そのままマシンガンで蜂の巣にされて殺される。

 

・闇内忍

3シロ。本作の変態枠。案の定3シロ予想が多かった人。

3章でようやく素顔が公開されたが、その直後にあえなく退場。急に素顔を見せるキャラは生き残れない。

頭はそこそこ良く、勘が鋭い。食峰の正体を誰よりも早く見抜いた。

ネロとは違って正面戦闘は得意ではないが、多芸で様々な忍法を使いこなせる。

彼に執行されるはずだったオシオキは、『忍法緊急脱出の術』。

罠だらけの忍者屋敷から脱出しようとし、罠で全身ボロボロになりながらも後ろから追いかけてくるモノクマ達から逃げ続ける。そしてとうとうモノクマ達に追い詰められ、忍法を使って脱出しようとするが失敗し、そのまま大勢のモノクマに刀で串刺しにされる。

 

・リカ

生き残り。本作のアルターエゴ枠。

知崎に殺されたと思われていたが、実は殺されたフリをしてモノクマの目を逃れていただけで、実はネロのパソコンの中で生きていた。

本体を失ってからは、パソコンの中で未来ヶ峰学園奪還の準備を着々と進めていた。

ちなみに彼女に執行されるはずだったオシオキは『ショベルの達人』。

原作とまんま一緒。

後付けキャラだったのでモノクマもオシオキを用意できなかったのである。

 

・白瀬クロヱ

全ての元凶。本編には名前だけ登場。彼女の死後は腐和が後釜に据わる形でクラスに入った。

才能やオシオキが前作の黒瀬ましろと同じなのは、彼女の制作に関わった裏切り者が『エデンズダンガンロンパ』の制作チームの後継者だったため。



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