騎士ガンダム様、只今異世界へお出掛け中 (不死身の機動歩兵隊)
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第1話「騎士(ナイト)ガンダム、異界の大地に立つ!!」

主人公を骸骨騎士から騎士ガンダムに変えてみました。

皆さんのクエストをお待ちしてます。
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‐ローデン王国 とある森林の街道‐

 

「いやぁぁぁ!!!離してッ!!」

 

戦闘跡が残る林に挟まれた街道で貴族令嬢、ローレンの悲鳴が響き渡る。彼女を押さえ付けるのは複数人の賊達であった。そしてローレンと同様に押さえられたメイド、リタがやめる様に非難の声を上げる。

 

リタ

「やめなさいッ!あなた達、こんな事をしてどうなるか分かっているのですかッ!!」

 

盗賊A

「お前ぇは他人の心配してねぇで、自分の心配でもしてな!ハハハッ!」

 

ローレンが賊達の頭領に服と下着を破き、頭領が自身の一物で強姦を行おうとしたその時!何かが飛んで来る。その何かが頭領の首に突き刺さると同時に絶命して横に倒れる。

 

賊B

「へ・・・?」

 

賊C

「か、頭ッ!?」

 

突然何処からともなく飛んできた槍によって頭領が倒された事態に動揺する賊達。すると絶望の淵と化した街道に英雄譚から飛び出した銀と蒼を主体とした鎧に紅いマント。特徴的なV字の角が付いた兜を纏った騎士が舞い降りた。

 

‐数十分前 丘陵地帯‐

 

???

「ん・・・ここは?」

 

日が高く昇った一面緑の草叢に覆われた丘陵地帯の岩に腰かけていた騎士が緑の水面を吹き付ける風に撫でられる。そして緑の青臭さと、湿った土の薫りが混じり合い鼻孔に刺激されて意識が目覚める。同時に視界に映った日本では見る事が出来ない景色に驚き、思わず腰かけていた岩から立ち上がる。

 

???

「どういう事だ?確か、寝落ちするまでオンラインゲームをしながら・・・ん?」

 

何故こうなったかを顎に手を当てて思考しようとした時に騎士は自身の姿が見知った姿に変わっている事に気が付く。

 

???

「何か騎士ガンダムになってるんだがッ!?」

 

子供の頃から好きなSDガンダムシリーズの外伝の1つ。「騎士ガンダム物語」に登場する主役を務めるガンダム族の1人、ラクロアの勇者騎士(ナイト)ガンダムの姿になっている事態に全力で叫ばずにはいられない程に驚く。そして一先ず落ち着き、改めて自身の姿を確認する。

全身に纏った「騎士の鎧(ナイトアーマー)」。頭部の兜「ファイティングゴーグル」。背中に背負っている槍は伸縮自在で、雷の力を秘めた「電磁スピア」。左腕には、銀の盾が変異した「ナイトシールド」。ナイトシールドに収納された「ナイトソード」が目に映り、それを引き抜く。

 

騎士ガンダム

「間違いない・・・剣の重さと手応えは本物だ。」

 

騎士ガンダムは数回素振りを行った後、ふとある事が思い浮かんだ。

 

騎士ガンダム

「まさかとは思うけど・・・せっかくだ、試してみるか。」

 

そう言って騎士ガンダムはナイトソードを構える。

 

騎士ガンダム

「【飛龍斬(ワイバーンスラッシュ)】ッ!」

 

横薙ぎにナイトソードを振ってゲームの時の様に技名を叫ぶ騎士ガンダム。すると剣閃が放たれ、前方にあった岩と森の木を容易く斬り裂いた。木々はゆっくりと森に倒れ込む。

葉が他の木々に擦れて音を立てながら倒れ、地面を打つ鈍い音が辺りに響き渡る。それに合わせて周囲の木々にいた鳥達が一斉に空に飛び立つ。

 

騎士ガンダム

「マジか・・・なら、アレも使えるのか?【火炎(ファイヤ)】ッ!」

 

騎士ガンダムはナイトソードをナイトシールドに収納し、上空に向かって右手を掲げて先程と同様にゲームの技名を叫ぶと、右手から炎が火炎放射器の様に噴き出る。そこである違和感を感じる。

 

騎士ガンダム

「便利すぎる・・・いや、ゲームと違う。」

 

騎士ガンダムは寝落ち前の記憶を思い返す。ゲームの自キャラのメイン職業は天騎士でサブ職業は教皇。【火炎(ファイヤ)】と【飛龍斬(ワイバーンスラッシュ)】、この2つは魔法士と騎士のスキルであり、今の職業構成では使用不可能であると。そしてある考えが生まれた。

 

騎士ガンダム

「もしこれが夢やゲームでなく現実だとしたら、外見は騎士ガンダムで、中身はゲームで天騎士に就くまでに習得した各職業のスキルが使えるという事だろうか?」

 


【天騎士取得までの必須職業】

 

「上級職業/召喚士 聖騎士 教皇」

 

「中級職業/魔導士 騎士 司教」

 

「小級職業/魔法士 戦士 僧侶」


 

騎士ガンダム

「まぁ、この際だ。気にしても仕方がない。これだけの職業スキルが使用できるのであれば、訳分からん世界でも生きれるであろう。運営の浪漫だけで設計された天騎士のスキルしか使用できない。っと言う事態にならなかっただけで大分違うからな。」

 

メイン職業の固定されなかった事に一安心した騎士ガンダムは人か街を見つけ、今後の方針を考える為、現在位置から移動する事にした。

 

騎士ガンダム

「【転移門(ゲート)】」

 

騎士ガンダムは魔導士の補助スキルを発動させると、足元に直径3メートルはある青白い光の魔法陣が浮かび上がる。

 

騎士ガンダム

「本来なら行先の場所を選択して転移するが、まぁ何とかなるだろう。」

 

そう言って転移した結果。前方に3メートル程進んだ崖に転移して落下しかけた。

 

騎士ガンダム

「ぜぇ、ぜぇ・・・な、成程。この世界がどういった場所かは分からない以上、転移先のイメージがない現状では使えないか。だが、もう1つの移動スキル【次元歩法(ディメンションムーヴ)】なら。」

 

早速魔法士の補助スキルを試す騎士ガンダム。結果は成功した。

 

騎士ガンダム

(本来は任意の場所をタップするとその場所に移動するスキルであったが、この世界になると自分で目視できる距離を一瞬で移動できる短距離転移魔法になるのか。再発動に必要な待機時間が短く、かなり使い勝手の良い移動手段だ♪)

 

丘陵地帯を真っ直ぐ移動してくると、前方に大きな川を確認した騎士ガンダムは、そこで水を飲んで一休みする事にした。

 

騎士ガンダム

「(本当はろ過と煮沸消毒をした方がいいのだが、)それにしても・・・」

 

騎士ガンダムは水面に顔を映しながらファイティングゴーグルを外す。が、顔はガンダムのままであった。

 

騎士ガンダム

「これはガンダムクロス*1みたいな感じかと思ったが、これ完全に種族が人間からガンダム族に変わってるな。もしこの世界の宗教的な教えで亜人やらの他種族が迫害されている可能性も捨てきれない。下手をすれば討伐、奴隷、人体実験。何て事態になりかねない。」

 

冷や汗をかきながら嫌な絵図を思い浮かべる騎士ガンダム。そして今後の方針が決まった。

 

騎士ガンダム

「出来る限り目立たずに活動しよう。この格好だと目立ちはするが、多分大丈夫だろう。一先ず川沿いに下れば人の住んでる場所が見付かるだろう。そして生活基盤に必要な金を稼ぐ算段をつけなければな。」

 

ファイティングゴーグルを被り直し、騎士ガンダムは移動を再開する。暫く川沿いを転移しながら移動し、地面の土を踏み固めた道を見付けた騎士ガンダムはその道を河の下流方向に向かって行く。すると視界の先に馬車と複数の馬が停まっているのを確認する。それと同時に風に乗って血の匂いが漂う。

 

騎士ガンダム

「非常に宜しくない感じだなッ!」

 

騎士ガンダムは様子を探ろうと辺りが見やすい位置に転移。その場から馬車付近を覗き込む。そこには護衛の兵士達と、賊らしき者達の亡骸が馬車を中心に転がっていた。

そして賊に押さえ付けられた貴族令嬢の少女とメイドが眼に入る。すると貴族令嬢の少女が賊達の頭領に強姦されようとしていた。

 

騎士ガンダム

「ッ!」

 

騎士ガンダムは背中の電磁スピアを装備し、それを賊の頭領に投擲する。

 

‐現在‐

 

賊D

「な、何だテェ―――ッ!?」

 

ローレンを押さえていた賊達を騎士ガンダムはナイトシールドから抜剣したナイトソードで一閃。押さえていた賊達は両断されて絶命する。

 

賊E

「うわぁぁぁぁッ!!!」

 

賊F

「ば、化け物ぉぉぉ!!!」

 

そしてリタを強姦しようとしていた賊2人や、物品を漁っていた他の賊達は異常事態に気付き、その場から逃げ出す。騎士ガンダムは一度ナイトソードをナイトシールドに収め、また抜剣する。

 

騎士ガンダム

「【飛龍斬(ワイバーンスラッシュ)】ッ!!」

 

放たれた剣閃は逃走する賊達を斬り裂き、肉塊へと変える。騎士ガンダムは周囲に敵がいないかを確認する。

 

騎士ガンダム

「・・・(彼女達を助ける為とは言え、人を殺めたのに自分の手や感情にもそれ程強い衝撃や罪悪感は全く無い。相手が賊だからか?)」

 

などを考えつつ、敵影や気配などが無い事を確認した騎士ガンダムはナイトソードをナイトシールドに収め、ローレンとリタの元へ行く。

 

騎士ガンダム

「お二方、大事ないか?」

 

リタ

「助けていただき、感謝します。こちらは、ルビエルテ家のローレン・ラーライア・ドゥ・ルビエルテ様。私は侍女のリタ・ファレンと申します。」

 

騎士ガンダム

「いえ、私は偶々この道を通り掛かっただけです。」

 

リタ

「あの、貴方様のその出で立ち、何処の主にお仕えする騎士様でございますか?」

 

騎士ガンダム

「(やっぱりこの格好だとそう聞かれるか。)あー私の事よりも、早くお召し変えを優先してほしい。目のやり場に困るので。」

 

顔を逸らした騎士ガンダムの言葉にリタとローレンは顔を赤くする。

 

騎士ガンダム

「向こうの川で少し身体を洗い、着替えてくるといい。その間に私は賊の後始末を行う。」

 

リタ

「は、はい。ありがとうございます。さ、お嬢様あちらへ。」

 

リタは馬車に駆け寄って荷物から大きな1枚布を引っ張り出してくると、ローレンをその布に包んで川の方へと手を引いて行く。それを騎士ガンダムは見届けた後、改めて戦闘跡が残る辺りを見回す。

 

騎士ガンダム

「賊の遺体が10人。護衛兵の遺体が6人。護衛兵は一先ず街道脇に置くとして、賊は反対側の街道脇まとめて処理しよう。その前に、チラッ。」

 

騎士ガンダムは向こうの川で身体を洗っている最中の2つの人影を見た。

 

騎士ガンダム

(よし!今ならこちらを見ていない。賊の所持品を根こそぎいただこうッ!)

 

騎士ガンダムは倒した賊全員の遺体や賊の馬6頭の荷物から以下の所持品を手に入れた。

 


《戦利品》

賊の武器×10*2

賊の所持金*3

賊の馬6頭


 

騎士ガンダム

「(好きなキャラの姿で遺体を漁るのは忍びなかったが、途方に暮れて飢えて死ぬよりはマシだな。)さて、野花の肥料になるがいい。【火炎(ファイヤ)】」

 

反対側の街道脇まとめた賊の遺体の山を【火炎(ファイヤ)】で焼却した後、騎士ガンダムは賊の馬の後ろに括り付けてあった麻袋の中に武器を纏めて放り込む。すると身体を洗い、着替え終わったローレンとリタがやって来る。それに気付いた騎士ガンダムは振り返る。

 

ローレン

「この度は危ない所をお救い頂き、ありがとうございました。」

 

騎士ガンダム

「最初に言った通り、偶々この道を通り掛かっただけです。気休めしか言えませんが、お二方だけでも無事で良かった。」

 

リタ

「我々はこれより、ルビエルテへと参ります。もしよろしければ。」

 

騎士ガンダム

「その街までの護衛であるな。承知した。それと護衛兵の遺体や武器、馬はどうされますか?」

 

リタ

「遺体は街道脇に、後程他の兵の方に引き取りに来て頂きます。武器と馬だけは持ち帰りますので、お手数ですが準備の方、宜しくお願い致します。」

 

騎士ガンダム

「分かった。」

 

その後、騎士ガンダムはテキパキと作業を済ませ、その場から出発する。それぞれ牽引した馬達もトコトコとついて来る。

 

リタ

「騎士様。改めて此度の事、誠に感謝の念に堪えません。」

 

馬車の御者をしながら、横に馬を付けて歩かせている騎士ガンダムに改めて礼を言う。

 

騎士ガンダム

「礼には及ばい。偶然近くを通りかかったまでの事。」

 

そう言って視線を前方に戻す騎士ガンダム。すると馬車の窓からローレンの双眸がじっとこちらを見据える。それに騎士ガンダムは自分を見据える事に首を傾げる。それにリタはクスリと笑う。

 

リタ

「騎士様。まだ我らは、お名前を窺ってません。」

 

そう指摘され、ハッとした騎士ガンダムはまだ自己紹介をしていない事に気付く。

 

騎士ガンダム

「私は風来の旅をする騎士。騎士ガンダムと申します。」

 

こうして、新たな騎士ガンダムの物語と伝説が始まった。

 

第1話END

*1
ガンダムの聖衣(クロス)。ディフォルメされたキャラクターの可動人形にモビルスーツ(MS)の外装を着せる玩具。

*2
剣6本、メイス1本、短剣2本

*3
金貨6枚、銀貨31枚、銅貨67枚




次回「流離う蒼銀の騎士」


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第2話「流離う蒼銀の騎士」

お待たせしました!今回は2話構成です!
それと本作の騎士ガンダムの外見は
METAL ROBOT魂の騎士ガンダム 〜ラクロアの勇者〜です。

烈 勇志さんのクエスト『村の畑を襲撃しているモンスター退治』が受注されました。

皆さんのクエストをお待ちしてます。
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‐ルビエルテ・城下街の宿‐

 

木窓の隙間から朝日と小鳥のさえずりで目を覚ます騎士ガンダム。ベッドに腰掛け、固まった身体を解す様に伸びをする。首を左右に振って凝りを解す。ベッドから立ち上がって木窓を開けて日の光を部屋一杯に取り込む。

窓の外は中世ヨーロッパ風の大通りで朝市が開かれていた。様々な品を売る商売人や行き交う人々と客によって賑わっており、朝早くから街は既に起き出して活動を始めていた。

 

騎士ガンダム

「清々しい朝だ・・・」

 

そう言った後、騎士ガンダムは顔を洗ってから騎士の鎧(ナイトアーマー)を身に着ける。装備と所持品を確認して昨夜に前払いで宿泊した宿を発つ。

 

騎士ガンダム

(ローデン嬢とリタ殿をルビエルテ()まで護衛して見送った後、リタ殿から聞いた馬屋と武器屋に鹵獲品を売って所持金は増えたが、一時しのぎにすぎない。であれば・・・)

 

グ~~~ッ!

 

騎士ガンダムは資金稼ぎの為にある場所の事を考えていた時、腹が鳴る。

 

騎士ガンダム

「(よし・・・折角だ、異世界の朝市で朝食を取ってから聞き込もう。)む?この匂いは・・・」

 

香草と肉の香ばしい匂いを感じた騎士ガンダムはその方へ顔を向けると、市の店で兎肉の香草焼きが売っていた。それを1つ購入し、少し高い位置にある水道橋から低い水路へと流れ落ちる飲み水を確保する為に旅の必需品、革製の水筒を購入。そして広場の隅で朝食を食べ終えた騎士ガンダムは購入の際に商人に尋ねた場所、冒険者組合へ向かう。

 

‐数分後 冒険者組合‐

 

騎士ガンダム

(まさか昨夜に行った武器屋の真正面にあったとはな。早速入るか。)

 

そう思いながら施設内に入り、騎士ガンダムは左眼に黒の眼帯をして額に大傷がある熊の様な図体の男がいる受付カウンターへ向かう。

 

騎士ガンダム

「(内装はイメージ通り。けど、受付嬢がいないのは少し残念だ。)冒険者証の発行を頼む。」

 

熊男

「お前さんの身なりを見る限り、金に困ってなさそうだが・・・まぁいいだろう。冒険者証の支給には試験があってな。自分が倒せる獣、魔獣、盗賊、これらの中から3匹狩ってその証を持って来るんだ。簡単だろ?」

 

騎士ガンダム

「(成程。この世界では書類のサインではなく、実力を証明して発行されるのか。)分かった。獣、魔獣、盗賊のどれかを3つだな。また来る。」

 

そう言った後、騎士ガンダムは出入り口へ向かう。その際に受付カウンターでは。

 

冒険者

「大丈夫かね?あの騎士様。」

 

熊男

「察してやりな。訳があるんだよ・・・きっと病気のガキの為に仕方なく冒険者やる羽目になってんだ・・・」

 

冒険者

「くっ、泣かせやがるッ!頑張れ騎士様!」

 

騎士ガンダム

(何か勝手に設定が増えたな・・・まぁ、SDガンダムは自由だから仕方ないか。)

 

出る前に聞こえた熊男と冒険者の会話を聞いて苦笑いしながら騎士ガンダムは冒険者組合を出てから準備をして街の外へ向かう。

 

‐数時間後 近辺の森‐

 

ルビエルテの西門から出てから騎士ガンダムは北西の街道から外れた森へ入り、猪(?)2匹を仕留め、血が抜きの下処理を行った頃にはお昼時になっており、昼食を食べていた。

 

騎士ガンダム

「今朝も食べたが、この兎肉の香草焼き。パンと葉野菜でサンドイッチにしたら更に旨いな♪」

 

朝市で買った食材で兎肉の香草焼きサンドイッチを頬張る騎士ガンダム。最後の1つを食べ終えて水を飲んだ後、空を見上げながら思った事を呟く。

 

騎士ガンダム

「それにしても、現状でファンタジー要素は皆無。街もそうだが、定番の魔獣や種族達の姿を全然見掛けなかったな・・・」

 

そう残念がっていると、藪の奥からこちらにやって来る気配を感じた騎士ガンダムはナイトソードとナイトシールドを構える。藪から出てきたのは棍棒を持ったオークが現れた。

 

騎士ガンダム

(おーッ!ファンタジー要素(オーク)キターッ!!)

 

オーク

「ブギィッ!」

 

騎士ガンダムはファンタジー要素に出会えた事で隙を晒してしまい、オークの先制攻撃を受ける。それにハッと気付いた騎士ガンダムは振り下ろされた棍棒をナイトシールドで防ぎ、ナイトソードでオークの喉を突き刺して脳天を貫く。ナイトソードを引き抜いて後ろに下がると同時にオークはゆっくりと後ろへ倒れた。

 

騎士ガンダム

「あ、危なかった・・・ファンタジー要素に出会えた嬉しさで完全に浮かれて隙を晒してた・・・ここは異世界。地球と比べてほぼ無法地帯で一瞬の隙と油断で命を刈り取られる世界だ。」

 

昨日見た光景と出来事を思い出し、今自分が立っている世界(場所)は命が簡単に失われる異世界だと再認識した騎士ガンダム。倒したオークも下処理(血抜き)を行い、血が抜けきったのを確認して朝市で購入した大袋に詰めてルビエルテに戻る。

 

‐1時間後 ルビエルテ・冒険者組合‐

 

片手で大袋を持つ騎士ガンダムの姿を見て吃驚した行き交う人々の視線を受けながら中へ入り、受付の熊男に3つの証を見せる。

 

騎士ガンダム

「獣2匹と魔獣1匹だ。これで冒険者証は発行されるか?」

 

熊男

「まさか、半日で3匹一気に持って来るとはな。ブルボアが2匹にオークが1匹か。オークの肉と魔石はどうした?」

 

騎士ガンダム

「魔石?」

 

熊男

「なんだい採らなかったのかい?魔獣を倒したら魔石を採り忘れちゃいけないぜ。魔石は魔道具や武器にも加工できるからな。」

 

そう言って投げ渡された魔石を受け取る騎士ガンダム。そして熊男はドックタグを受付カウンターに置く。

 

熊男

「冒険者証だ。発行手数料として銀貨3枚と、あと登録名を。」

 

騎士ガンダム

「騎士ガンダムだ。」

 

登録の為の名前を言い、熊男に料金を支払った騎士ガンダムは冒険者証を手に取って見る。ドックタグにある文字は頭の中で自動翻訳され、「ローデン王国ルビエルテ冒険者組合」と刻印されている。

 

騎士ガンダム

「(今更だが、日本語を喋っても相手と普通に話せたり、文字の読み書きも出来る。不思議ではあるが、ありがたいからいいか。)この星の刻印は?」

 

熊男

「職員が把握する個人の能力の目安みたいなもんさ。オークを単独で狩れるなら星3相当って事さ。最高は星7だが、そんな奴は中々いねぇよ。」

 

それを聞いた騎士ガンダムはゲームのランクと同じだと判断する。

 

熊男

「それでよ。アンタの腕を買ってある依頼を受けてくれないか?」

 

騎士ガンダム

「それは構わないが、内容を聞いても?」

 

熊男

「ラクロア村の畑がゴブリンタイプの魔獣に荒らされてな、既に村人にも被害が出ているそうだ。この討伐依頼を受けてくれるか?」

 


クエスト

『ラクロア村の畑を襲撃している魔獣討伐』

を受注しますか?


 

騎士ガンダム

「(ラクロアだとッ!?いや、偶然名前が同じかもしれないが・・・)分かった。その依頼を受けよう。」

 

熊男

「おう。ありがとよ。」

 


クエスト

『ラクロア村の畑を襲撃している魔獣討伐』

が受注されました。


 

その後、ラクロア村の場所を聞いた騎士ガンダムは向かうのであった。

 

‐道中‐

 

ラクロア村へ向かう際、騎士ガンダムは街道に人気が無い事を確認してある事を試す。

 

騎士ガンダム

「ここなら試せるな。ケンタウロスッ!」

 

そう唱えると、騎士ガンダムの下半身が馬の身体へ変化する。

 

騎士ガンダム

「成功だな。このまま村の近くまで走るか!」

 

‐数十分後 ラクロア村‐

 

件の村に到着した騎士ガンダムは村人の1人に村長の家まで案内してもらい、村長から現状や魔獣の数。そして何か変わった事があるかを聞く。

 

村長

「今はまだ死人は出ておりませんが、男衆の半数が怪我を負っております。ゴブリンの数は5匹ですが、普通のゴブリンにしては珍しく1つ目の変わった姿で、鉄の斧と盾を持ってましたな。」

 

騎士ガンダム

「(1つ目で斧と盾を持ったゴブリンか・・・)分かりました。では―――

 

「また奴ら(ゴブリン)が出たぞ!今度は南の畑だッ!!」

 

ッ!村長、行ってまいりますッ!!」

 

外で魔獣の襲撃が知らされ、村長の家を飛び出して騎士ガンダムは南の畑へ向かう。

 

‐南の畑‐

 

現場へ駆け付けた騎士ガンダムが見たのは、畑仕事を行っていた村人を追いやって作物を略奪するゴブリンザクの姿があった。

 

騎士ガンダム

「(まさかとは思っていたが、あれは間違いなくゴブリンザクだ!だが何故この世界に?)いや、考えるのは後だッ!!」

 

騎士ガンダムは考えるのを止め、目の前のゴブリンザクの対処へ向かう。

 

ゴブリンザク

「ザクーッ!」

 

村娘

「キャーッ!」

 

逃げ遅れた村娘にゴブリンザクの斧が振り下ろされるが、それを駆け付けた騎士ガンダムがナイトシールドで防ぐ。

 

騎士ガンダム

「さぁ、早く逃げるんだッ!」

 

村娘

「は、はい!」

 

村娘が避難するのを見た騎士ガンダムは目の前のゴブリンザクを押し退け、ナイトソードで斬り伏せる。それを見た残りのゴブリンザクは敵討ちで騎士ガンダムに迫る。

 

ゴブリンザクA

「ザクーッ!」

 

ゴブリンザクB

「ザクザクーッ!」

 

騎士ガンダム

「く・・・ダアァァァーッ!」

 

ゴブリンザク2体の攻撃をナイトソードで防ぎ、それを払いのけて一閃。2体のゴブリンザクを倒す。

 

ゴブリンザクC

「ザ、ザクッ!?」

 

ゴブリンザクD

「ザ、ザクゥゥゥ・・・ッ!!」

 

騎士ガンダム

「逃がさん!【雷槍(ライトニングランス)】ッ!」

 

一瞬で倒された仲間を見てゴブリンザクC・Dは逃亡するが、騎士ガンダムは電磁スピアに持ち替え、魔法を放つ。放たれた雷撃は電磁スピアで強化されており、一撃でゴブリンザクが消滅する。

 

騎士ガンダム

「・・・電磁スピアは雷属性魔法を強化できるのか。使いどころは気を付けないとな。」

 

電磁スピアを見ながらそう呟いていた時、背筋に悪寒を感じた騎士ガンダムはナイトシールドを後ろに振りかざす。それと同時に強い衝撃が盾に伝わる。

 

シーフザク

「ザクーッ!」

 

騎士ガンダム

「シーフザクッ!?もしやコイツがゴブリンザクを率いていたのかッ!」

 

シーフザク

「ザクザクーッ!」

 

シーフザクの攻撃速度が増し、ナイトシールドを持つ騎士ガンダムの左腕の感覚が無くなっていく。

 

騎士ガンダム

「ぐ・・・このッ!」

 

電磁スピアで反撃を試みる騎士ガンダム。しかしそれをあっさりと躱される。シーフザクは騎士ガンダムの周囲を走り回りながら攻撃してダメージを与える。

 

騎士ガンダム

(流石にシャアザクをモデルにしているから動きが速い!危険ではあるが、これしか方法がないッ!)

 

騎士ガンダムは電磁スピアを地面に突き刺し、ナイトシールドからナイトソードを取り出して手放す。そして騎士の鎧(ナイトアーマー)とファイティングゴーグルを脱ぎ、軽装となる。

 

騎士ガンダム

「さぁ行くぞッ!」

 

シーフザク

「ザ、ザクッ!?」

 

軽装となった事で騎士ガンダムの動きが速くなり、シーフザクの動きに付いて行く。それにシーフザクは驚き、動揺する。その隙を騎士ガンダムは見逃さない!

 

騎士ガンダム

「【風斬(ウィンドスラッシュ)】ッ!!」

 

シーフザク

「ザクーッ!?」

 

騎士ガンダムの【風斬(ウィンドスラッシュ)】でシーフザクを斬り伏せると同時に戦いが終わる。

 

‐30分後‐

 

戦いの後始末と怪我を負った男衆の治癒を終えた騎士ガンダムは討伐の証を持ってルビエルテに帰投する途中、村長から受け取った欠けた石板を見ていた。

 

騎士ガンダム

「(ゴブリンザクとシーフザクもそうだが、この古の呪文が刻まれた石板。まさかこれもこの世界にあるとはな・・・)」

 

『その石板は村が出来る前からあり、刻まれた呪文は私達では分かりません。ですが1つだけ分かった事は冒険者様の盾の星と石板の裏にある星が同じである事。これは何か意味があると思うのです。私達が持つよりも冒険者様が持つ方がいいでしょう。』

 

騎士ガンダムは村長が言った言葉を思い出す。そして石板を仕舞い、空を見上げる。

 

騎士ガンダム

「何か意味がある、か。この異世界に私がやって来た事にも何か意味があるのであろうか・・・」

 

雲が流れてゆく空を見詰める騎士ガンダム。この異世界に現れたジオン族のモンスターや自身が転移する以前から存在する古の石板の謎を抱えるのであった。

 

第2話END




次回「薬草採取と忍び寄る影」


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第3話「薬草採取と忍び寄る影」

本作の騎士ガンダムの眼は平時には瞳があり、戦時では瞳なしに切り替わります。

皆さんのクエストをお待ちしてます。
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‐とある夜の森‐

 

僅かな月明かりが木々の隙間から森の中を照らす。そして1匹の猪が餌を求めて探していたその時、木々がザワめくと同時に何かが猪に巻き付く。

 

「プギィッ!?」

 

猪は森の奥へと引っ張られ、カメレオンの様な大型魔獣に捕食される。

 

大型魔獣

「クロロロオオ・・・」

 

そして大型魔獣の不気味な鳴き声が森に響くのであった。

 

‐翌朝 ルビエルテ・冒険者組合‐

 

昨日の依頼でラクロア村の畑を荒らすジオン族のモンスター、ゴブリンザクとシーフザクを討伐した騎士ガンダム。石板と共に謎が残るまま、今日も彼は依頼板にある木札を見ていた。

 

騎士ガンダム

「(現状で謎は解明できないし、気持ちを切り替えよう。)さて、どれにするか・・・」

 

雑用の依頼が依頼板の大半を占める中で、1つの木札を見付けた騎士ガンダムはそれを受付カウンターの熊男に出す。

 

熊男

「ラタ村の『薬草採取の護衛』とは、お前さんこれを本気で受けるのか?」

 

騎士ガンダム

「薬草の知識はあって困らない。場所次第で怪我を負った時に現地で手当てが出来る。」

 

熊男

「そうか!ならこの依頼人には優しくしてやれ!アンタなら大丈夫だろうがな。」

 

騎士ガンダム

「優しく?承知した。」

 

騎士ガンダムは首を傾げる間、熊男は依頼の受理手続きを行ってから依頼札を騎士ガンダムに渡す。そしてラタ村の所在を聞いた騎士ガンダムは早速ラタ村へ向かう。

 

‐数時間後 ラタ村‐

 

北の道にある最初の目印の場所までケンタウロス形態で進んだ後、上空から【次元歩法(ディメンションムーヴ)】で移動する騎士ガンダム。すると視界の先に木の柵と空堀に囲まれた畑に盛り上げた土壁とその上に丸太を縛って作った木壁と水掘りで囲まれた集落を確認する。

付近の森に転移した騎士ガンダムは歩きでラタ村へ向かう。畑を通った騎士ガンダムは村の門前に近付くと、低品質の槍と皮鎧を装備した老人2人は座って話に興じていた。

そして騎士ガンダムの姿を見た老人達は慌てて身振り手振りで協議した後、1人の老人が槍を杖にしながら、曲がった腰で騎士ガンダムの下へ駆けて来る。

 

老人

「き、騎士様!こ、この様な辺鄙な村に、何ぞ御用でありましょうか?」

 

騎士ガンダム

「そんなに畏まらないでください。私は冒険者の騎士ガンダムと申します。薬草採取の護衛の依頼を受け、この村に来ました。」

 

老人に一礼した騎士ガンダムは懐から依頼内容が記載された木札を見せる。

 

老人

「あぁ、セオナのとこかい。それなら広場の先の家がそうだよ。」

 

こうして騎士ガンダムは村へ入り、依頼主の家に行く。その道中で村人達の視線が一斉に騎士ガンダムへと集中する。

 

騎士ガンダム

(まぁ、こんな全身鎧を装備してれば何処でも目立つよな。ルビエルテの時もそうだし。)

 

そう思いながら村内を見渡す騎士ガンダム。街の木造家屋的な雰囲気はなく、山小屋風味の家が立ち並んでいた。

 

騎士ガンダム

(長閑でいい場所だな。街もいいが、こういった雰囲気も悪くない。)

 

そして依頼主の家の着いた騎士ガンダムは木戸を軽く2回叩く。

 

「はーい!どなたです・・・ッ!?

 

出てきた依頼主であろう少女とその妹は騎士ガンダムの姿を見てビクッとなり、少女は妹を背に隠し、お互い涙目になりながら騎士ガンダムに尋ねる。

 

少女

「きき・・・騎士様?ななな・・・何か御用ですか?」

 

騎士ガンダム

「あぁ、驚かせてすまない。私は冒険者の騎士ガンダム。依頼を受けてやって来た。マルカさんはご在宅か?」

 

少女

「あっ、もしかして!私の依頼を?」

 

騎士ガンダムはしゃがんで目線を合わせて驚かせた事を謝罪し、木札を見せて依頼主がいるかを聞くと、少女はそう呟く。その後、騎士ガンダムは具体的な依頼の話をしに家に上がる。

 

マルカ

「あの・・・本当に騎士様のような人が私の依頼を受けて下さったんですか?その・・・私のお小遣い程度じゃ依頼を受けてくれるか分からないって・・・」

 

騎士ガンダム

「騎士ガンダムで構わないよ、マルカさん。それに私は薬草について興味があって来た。だから気にしないでいい。」

 

マルカ

「あ、ありがとうございます!あの騎士ガンダム様!すぐに向かってもいいですかッ!?」

 

騎士ガンダム

「すぐにか?それは構わないが。」

 

マルカ

「やったー!すぐに準備しますね!」

 

そう言ってマルカは薬草採取の為の籠を持ちに行く。その様子に騎士ガンダムは首を傾げる。

 

‐数分後‐

 

マルカ

「いいヘリナ。もうすぐお母さんが帰って来るからお母さんには森に出掛けるけど、護衛の人を雇ったから大丈夫だって伝えて。」

 

ヘリナ

「うん!」

 

マルカは妹のヘリナにそう言って抱きしめる。そしてヘリナに見送られたマルカと騎士ガンダムは森へ向かうのであった。

 

騎士ガンダム

「今思えば、母親に今回の件を言わなくて良いのか?」

 

マルカ

「・・・お母さんに言ったら反対されるに決まってるから・・・昨年にお父さんが亡くなって、お母さんが1人で頑張って私達を育ててくれてるんです。

薬草は毎年お父さんが薬にして売りに行ってたので。取ってこられればビックリすると思うんです。それに私、お母さんに喜んで欲しいから!」

 

騎士ガンダム

「・・・そうか、ならたくさん集めてお母さんを喜ばせないとな!」

 

マルカ

「うん♡」

 

笑顔でそう言うマルカの姿を見た騎士ガンダムはそう答え、森へ入る。

 

‐数時間後 森の中‐

 

森の中を奥へ進む程に周辺の木々の圧力が増していく中で、先頭のマルカが何かを見つけ、動かす足が速くなる。それを騎士ガンダムが追い掛けていくと、小さな植物の絨毯が広がっていた。その中で、マルカは小さな蓮の葉が無数に分かれた植物を持って来た籠に入れる。

 

マルカ

「これはココラって薬草で、傷の回復と皮膚病なんかに効果があるんです。この花は燃やせば虫よけになるんですよ!」

 

騎士ガンダム

「ほう、とても為になる。マルカさんは博識だな。」

 

マルカ

「博識?」

 

騎士ガンダム

「薬草の先生になれるかもしれないな。」

 

マルカ

「えへへ、そうかな~///

 

照れつつ薬効の説明をしながら3つ編みの髪をピョコピョコ揺らして地面に生えたココラを採取していくマルカ。騎士ガンダムは薬効の説明を聞きつつ周囲への警戒を行っていた。

 

騎士ガンダム

(現状で周囲に危険は無さそうだが、警戒は怠らないでいよう。)

 

そして薬草採取を手伝う為、窪地に降りてココラを毟り始める騎士ガンダム。そんな様子を見ていたマルカは可笑しそうに笑った。

 

‐1時間後‐

 

籠に半分程のココラが集まった後、次の採取地を目指す騎士ガンダム達。下草の勢いが増し、木々の葉がその密度を濃くしていく中で森に生息する野生動物達は騎士ガンダム達の存在に気付くと踵を返して逃げ去る。特に魔獣の類と遭遇する事なく一同は目的地へ着く。

 

マルカ

「ついたー!」

 

騎士ガンダム

「おお、これはいい景色だ。」

 

そこは崖が広がっており、その下に綿毛の様に広げた枝一面に白い花を咲かせた樹木、コブミの木が点在した開けた場所であった。コブミの木から風に乗って運ばれた芳しい香りが騎士ガンダム達がいる崖に立ち昇る。

 

騎士ガンダム

「(う~ん。この崖だと私は平気だが、マルカさんには危ないな。)何処か降りやすい道を―――「ッ♪」マルカさんッ!!?

 

騎士ガンダムは別の道で降りようと言おうとした時、マルカは崖を飛び降りる。それを見た騎士ガンダムは慌てて崖下を見ると。

 

マルカ

「やった!やっぱり!花が満開の時だ♡コブミの木が真っ白になってる!見て見て騎士ガンダム様!」

 

そこには着地して嬉しそうに声を弾ませ、喜びのステップを踏みながら立ち並ぶコブミの木に一目散に駆け出すマルカの姿があった。

 

騎士ガンダム

「(い、いきなり飛び降りるから心臓に悪い。)まぁ本人が楽しそうで―――ん?」

 

その時、妙な気配を感じた騎士ガンダム。そしてコブミの木の向こう側に見える岩塊に眼を向ける。それは普通の岩ではなく、岩に擬態した生物であった。

 

騎士ガンダム

「ッ!戻るんだッ!!マルカさんッ!!!」

 

マルカ

「え?」

 

駆け寄って来たマルカか、騎士ガンダムの大声に反応してコブミの木の向こう側にあった岩だったものはのそりと立ち上がり、巨体を揺らして固まった身体を解す様に身震いする。

 

大型魔獣

「グロロロロォォォ・・・」

 

‐同時刻 ラタ村‐

 

???

「ほ、ほんとなのヘリナ?」

 

ヘリナ

「うん!森に行くって言ってたの!護衛の人もいるから大丈夫だよって!」

 

畑仕事から戻ったマルカの母親、セオナはもう一度ヘリナからマルカの事を聞き、不安となる。

 

セオナ

「まさかあの子、薬草を取りに・・・!?今森にはファングボアよりもっと危ない魔獣が出たっていう話なのに・・・マルカ、お願い・・・無事でいて・・・」

 

セオナは両手を握って娘の無事を祈る。

 

‐採取地‐

 

大型魔獣は眼をグリグリと辺りを見廻してマルカに視線を定める。

 

マルカ

「ひ・・・ッ!」

 

マルカはその姿を見るや、踵を返して慌てて逃げる。だが躓いて転んでしまう。大型魔獣はマルカを捕まえようと前脚を伸ばす。だがその前にケンタウロス形態の騎士ガンダムが転んだマルカを窮地から救う。

 

騎士ガンダム

「大丈夫か!?マルカさんッ!」

 

マルカ

「騎士ガンダム様ッ!」

 

マルカには目立った傷は無い事にホッとする騎士ガンダム。そして岩に擬態していた生物、魔獣に眼を向ける。その姿に騎士ガンダムは見覚えがあった。

 

騎士ガンダム

(ジャイアントバジリスクッ!ステータス異常攻撃を多く持つ魔獣・・・中級プレイヤーにとって手が焼ける相手だが、油断せずに戦えば対処できるッ!)

 

マルカ

「騎士ガンダム様・・・」

 

騎士ガンダム

「マントの中に入って私の腰に強く掴まるんだッ!」

 

マルカは言われた通りにマントの中に入り、騎士ガンダムの腰に強く掴まる。それと同時にジャイアントバジリスクは舌を伸ばしてマントの中に隠れたマルカを狙う。

 

騎士ガンダム

「やはり弱い獲物から!マルカさんには触れさせんッ!!」

 

そうはさせまいと、騎士ガンダムは舌を弾きながらケンタウロス形態の機動力で回避する。

 

ジャイアントバジリスク

「クロロロロッ!」

 

騎士ガンダム

(あの予備動作、まさかッ!?)

 

するとジャイアントバジリスクは首を上下する動作を行う。それを見た騎士ガンダムはナイトシールドを構える。すると盾の一部が展開され、大盾へ変形する。

同時にジャイアントバジリスクの範囲状態異常攻撃の【石化の眼差し】が放たれた。周囲の動植物が石化される中、騎士ガンダムやマルカは無事であった。

 

騎士ガンダム

「(よ、良かった!ナイトシールドで防げたッ!)さて、物騒な技を放った礼だ!【審判の剣(ジャッジメント)】ッ!!」

 

ジャイアントバジリスク

「グロロォロロォォオォオォ!!?」

 

ナイトシールドからナイトソードを引き抜き、片手で上段に構え、振りかざすと同時に放たれた中級戦技【審判の剣(ジャッジメント)】がジャイアントバジリスクの足元から光の剣が上に飛び出し、その巨体を貫いて天に掲げる。これにジャイアントバジリスクは絶命。

それと同時に光の剣はガラスが砕ける様にその形を崩す。間を置いてジャイアントバジリスクの巨体は地響きを立ててその場で崩れ落ちる。騎士ガンダムは暫く警戒するが、動く事は無かった。

 

騎士ガンダム

「(本来はここまで威力は無いのだが、何はともあれ。)もう心配はないです。マルカさん。」

 

マルカ

「す、すごい、すごいです!騎士ガンダム様すご―――いたッ!

 

騎士ガンダム

「マルカさんッ!?」

 

その後、マルカを降ろした騎士ガンダムは【治癒(ヒール)】で捻った足首を治す。そして騎士ガンダムはジャイアントバジリスクの様な魔獣はよく出るのかと聞く。

 

マルカ

「いえ、あんなの初めて見ました。」

 

騎士ガンダム

「そうか。」

 

騎士ガンダムはそう言った後、ジャイアントバジリスクの死体を見る。すると右の後ろ脚に赤く光る模様が入ったリングが眼に留まる。それを手に取ろうと騎士ガンダムは近付いて手を伸ばすが、その前に消滅する。

 

騎士ガンダム

「・・・マルカさん、これが最近村に出たと言う魔獣か?」

 

マルカ

「ううん。村で畑を荒らし回ったのはこーんなに大きな牙のファングボアです!」

 

騎士ガンダム

「それはもしやあれか?」

 

騎士ガンダムが指さした場所には、ブルボアより2メートル以上の体長がある黒い猪であった。それを見たマルカも確認して「あっはい。」と答える。その後、ファングボアを仕留め、残りの薬草を採取した一同はラタ村へ帰投する。

 

‐数十分後 ラタ村‐

 

セオナ

「マルカッ!良かった・・・無事で本当に・・・」

 

マルカ

「お、お母さん。痛いよお。」

 

娘が無事に帰ってきた事に喜び、強く抱きしめるセオナ。それをちょっと痛そうにするマルカの姿があった。騎士ガンダムはセオナに配慮と断りなくマルカと森へ向かった事に謝罪する。それをマルカは騎士ガンダムは悪くないと言い、自分が頼んだ事だと言う。

 

セオナ

「娘の我が儘に付き合っていただき誠にありがとうございました。」

 

騎士ガンダム

「いえ、お気になさらず。ただ、余りマルカさんを叱ってあげないでください。彼女は誰よりも母思いな子です。」

 

セオナ

「はい。」

 

娘を抱きしめながらセオナはそう答える。そして危ない目にはあったかを聞かれた際、騎士ガンダムは心配させまいと、何も無かったと答える。尚、マルカにはあの出来事を秘密にするように言ってある。

 

村人A

「ところで騎士様、このファングボアは?」

 

騎士ガンダム

「それはこの村の手土産だ。牙と魔石を報酬にして毛皮を鞣してもらえるか?鞣した毛皮はマルカさんに進呈したい。肉は村の全員で分けて食べてくれ。」

 

村人B

「うおー!騎士様バンザーイッ!」

 

‐数時間後‐

 

夕方に差し掛かった頃。依頼完了の札をマルカから、妹のヘリナからは花冠を貰った騎士ガンダムは2人に手を振りってルビエルテへ帰投する。

 

騎士ガンダム

「(あのリング・・・私の感が正しければ、あれは魔獣を従える為の制御装置。何者かが魔獣を生物兵器にしているのか?)何も無ければいいのだが・・・」

 

騎士ガンダムは山に沈んでいく夕陽を見てそう呟く。

 

‐数日後‐

 

兵士A

「うおおお!止まるなあッ!」

 

兵士B

「怯むな!攻め続けろッ!もう一押しだッ!!」

 

ジャイアントバジリスク

「クロロロ!クロロロッロロォ!」

 

ラタ村から離れた夜の森では、ジャイアントバジリスクとルビエルテ領主が派遣した討伐隊との激しい戦闘が行われていた。

 

団長

「弓隊!放てぇッ!!」

 

討伐隊の団長の号令に弓隊は矢の雨を放ち、ジャイアントバジリスクに浴びせる。怯んだ所に槍隊が突撃する。【石化の眼差し】で被害は出るも、ジャイアントバジリスクに止めを刺す。

 

ジャイアントバジリスク

「オオオォォォオオォォ・・・」

 

兵士達

「ワァァアァァァッ!!!」

 

ジャイアントバジリスクは地に伏せて動かなくなり、それを見た兵士達は武器を天に掲げ、勝利の声が夜の森に響き渡る。その際、討伐隊が倒した個体にもリングがあり、誰にも気付かれる事なく消滅する。

 

‐数分後‐

 

勝利の後、討伐隊の野営地では負傷兵の手当てや戦後の後始末を行っていた。

 

副団長

「今回の戦闘で死者3名。重軽傷合わせて11名です。」

 

団長

「ジャイアントバジリスク相手にかなり被害を少なく抑えられたな・・これで中央への手土産も「団長ーッ!大変です!」ッ!」

 

周辺に偵察をさせていた1人の兵士の報告で団長と副団長は現場に向かう。

 

兵士C

「辺りを散策しておりました所ッ!コイツが・・・」

 

団長

「こ、これは・・・ッ!?」

 

兵士Cが2人を案内した場所は、騎士ガンダムが倒した個体の死体があるコブミの木が点在した開けた場所であった。

 

兵士C

「恐らく単独の何者かによって倒されております。死後数日は経っております。」

 

その報告を聞いた団長は冷や汗を掻きながら単独の討伐ではなく、他の魔獣と殺り合ったのではと言うが。

 

副団長

「いえ、腹から魔石も切り抜かれており・・・明らかに人為的かと。」

 

副団長の言葉に否定される。そして武芸に秀で、放つ魔法は自然をも操るエルフ族の戦士達の誰かではないかと言う副団長。だがエルフ族が暮らす森は現在位置からずっと東へと距離があり、ここへ来る意味が無いと団長はそう言う。

その後、この死体の後始末を行う様に副団長に指示を任せ、団長はジャイアントバジリスクを単独で倒した存在が何者であるかを考える。

 

団長

「(軍に匹敵する戦力の何か・・・)神か・・・悪魔・・・とでも言うのか?」

 

団長の呟きは当たっていた。その人物は勇者の一面と魔王の一面を持つ存在である事を。

 

第3話END




次回「エルフ族の戦士アリアン」


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第4話「エルフ族の戦士アリアン」

お待たせしました。メインキャラ登場回です。これで漫画1巻を書き終えた。

皆さんのクエストをお待ちしてます。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=291834&uid=345359


‐ディエント領・とある森‐

 

ジャイアントバジリスクが派遣された討伐隊に倒された後日。

 

チュドーーーーーーンッ!!

 

盗賊達

「ギャーーーッ!!」

 

騎士ガンダム

「ふ~、これで盗賊は全部だな。」

 

騎士ガンダムは数日前にルビエルテ領から出発して活動拠点をディエントの街に変えて冒険者として依頼を熟していた。戦闘後、電磁スピアの力を調整してランタン代わりに盗賊の拠点である崖面の洞穴へ入る騎士ガンダム。中には生活用品や多数の武器などに混じって貴重品箱が幾つかあり、その中は大量の資金があった。

 

騎士ガンダム

「相当悪さをして荒稼ぎしたのだろうな。この資金は全て没収するか。」

 

ガタッ

 

騎士ガンダム

「ん?まだ盗賊がいたのか。」

 

物音が聞こえた広場の隅へ近付く騎士ガンダム。すると小さな鉄の檻に草色の小動物が入っていた。

 

草色の小動物

「ウゥウウウッ!」

 

騎士ガンダム

「狐・・・いや、ムササビか?左脚が怪我をしているな。連中に捕まったのか。」

 

騎士ガンダムは檻の閂を外して出入り口を開けるが、草色の小動物は綿毛尻尾を逆立てながら静かに唸りながら騎士ガンダムを警戒して檻の外へ出ようとしない。

 

騎士ガンダム

「大丈夫、傷を治すだけだ。【治癒(ヒール)】」

 

そっと手を翳して回復魔法を唱える騎士ガンダム。柔らかな光が傷口へ収束していき、弾ける。

 

草色の小動物

「きゅん?きゅんっ♡きゅん♡きゅんっ♡」

 

騎士ガンダム

「脚に問題は無さそうだな。」

 

草色の小動物は痛みが消えた事に眼をパチクリさせて脚を見ると傷は塞がっていた。それに喜んだ草色の小動物は走り回る。その元気な姿を見て微笑む騎士ガンダム。そして戦利品をまとめて洞穴を出ると、草色の小動物は後ろから付いて来る。騎士ガンダムが振り向くと、その前でお座りして大きな綿毛尻尾をゆらゆらと揺らしながら騎士ガンダムを見上げて見詰める。

 


『精霊獣ベントゥヴォルピーズが仲間になりたそうに貴方を見ています。仲間にしますか?』

『はい』 『いいえ』


 

騎士ガンダム

「・・・一緒に来たいのか?」

 

草色の小動物

「きゅんっ!」

 

騎士ガンダム

「そうか。なら名前を付けてやらないとな。う~ん尻尾がタンポポの綿毛の様だから、ポンタで良いか?」

 

ポンタ

「きゅん!きゅうぅぅうんっ♡」

 

名前が気に入ったのか、ポンタはその場でジャンプすると同時に周辺に風が巻き起こる。ポンタは被膜を広げてその風に乗ってゆっくりと空中を浮き上がる。

 

騎士ガンダム

「おおおッ!?気に入ったのかポンタ♡」

 

ポンタ

「きゅん♡きゅん♡」

 


『精霊獣ベントゥヴォルピーズのポンタが仲間になりました。』


 

騎士ガンダム

「それは良かった。では一緒に街へ帰るか。」

 

ポンタ

「きゅうううん♡」

 

そして盗賊討伐と戦後処理を終えた騎士ガンダムは旅の仲間となったポンタを連れて街へ帰るのであった。

 

‐同時刻 ディエント領・領主の居城‐

 

騎士ガンダムがポンタを連れて街へ帰る一方、ディエント領の領主トライトン・ドゥ・ディエント侯爵は執務室で執政官のセルシカ・ドーマンからある報告を聞いていた。

 

セルシカ

「ルビエルテの例の件ですが・・・失敗した様です。」

 

ディエント侯爵

「結構な手練れの盗賊に頼んだと私は聞いたのだが?」

 

セルシカ

「護衛は全員討った様ですが、近くに偶々いた冒険者に討たれたそうでして・・・」

 

彼らが企てた盗賊を用いたルビエルテ領の貴族令嬢暗殺が騎士ガンダムによって失敗した話であった。

 

ディエント侯爵

「所詮賊は賊か、肝心な所で詰めが甘いな。例の東の帝国から譲り受けてルビエルテ領に放った魔獣はどうなっている?」

 

セルシカ

「そちらの件は、東の使者もあれはまだ実験的な試みとの事で、上手く連携できず各個撃破された様です。」

 

ディエント侯爵

「そうか。ならば商品の確保だけでも急がせろ。そろそろ出荷せねばならぬ。」

 

ディエント侯爵がそう言うと、セルシカは気まずい顔をする。それが気になったディエント侯爵が訳を聞くと。

 

ディエント侯爵

「何だとッ!?商品(エルフ)を確保する為に雇った盗賊共の拠点がたった1人の冒険者に幾つも潰されただとッ!!?」

 

セルシカ

「は、はい。ここ数日前に街へやって来た騎士の格好をした冒険者が盗賊討伐の依頼を多く受けたそうです。」

 

ディエント侯爵

「えぇいッ!定期連絡が途絶えた事や商品の確保が難しくなったものそいつが原因かッ!!ならば手段は選ばん、見付け次第葬れッ!!!」

 

セルシカ

「分かりました。それと最後にウドラン様の事ですが・・・」

 

商品確保の人員と拠点が潰された事に怒るディエント侯爵に息子のウドランの事を聞いて怒りが更に増す。

 

ディエント侯爵

「あのバカ息子がッ!これは遊びではないのだぞ!エルフの森に行っても足手まといにしかならぬではないかッ!もうよい下がれ!!」

 

その言葉にセルシカは慇懃に礼をして退室した後、ディエント侯爵は机に拳を叩き付ける。

 

ディエント侯爵

「クソッ・・・何故こうも上手くいかぬッ!」

 

上手く事が運ばぬ事態にディエント侯爵の苛立ちと怒号が執務室から響く。

 

‐1日後 ディエントの街近辺‐

 

騎士ガンダム

「悪党から金品を巻き上げるのは爽快だな!ポンタ!」

 

ポンタ

「きゅいきゅい~♡」

 

ディエント侯爵の悪事を潰している事を知らずに今日も盗賊討伐を終え、歩きと転移を繰り返して街へ帰る騎士ガンダムとポンタ。街の近辺に戻った頃には夜になっていた。すると森の中を麻色の外套を纏った人物が歩いているのを見掛ける。

 

騎士ガンダム

「こんな夜中の森で1人は危ないな。一言かけた方が良いかなポンタ?」

 

ポンタ

「きゅい。」

 

そう話している間に外套を纏った人物はフードを下ろし、翠がかった金色の髪男性が素顔を晒す。その時、ある種族の特徴的な部分を見た騎士ガンダムは嬉しくなって【次元歩法(ディメンションムーヴ)】で背後まで転移する。

 

騎士ガンダム

「お初に御目に掛かる、エルフの方よ。」

 

エルフ

「ッ!?―――何者だ!貴様・・・」

 

突然背後から声を掛けられたエルフはその場から飛び退き様に後ろを振り返りながら腰に提げたレイピアを抜き、警戒した構えで騎士ガンダムを睨み付けながらそう言う。

 

騎士ガンダム

「(ま、不味い!意図的に背後を取った訳ではないが、謝罪せねばッ!)私は騎士ガンダム。風来の旅をする騎士であり冒険者だ。エルフ族を初めて見掛けたもので、突然背後から声を掛けて申し訳ない。」

 

騎士ガンダムは頭を下げてエルフに謝罪する。少しして騎士ガンダムは頭を上げると、エルフは訝しみながら警戒しているが、視線はある一点を凝視していた。

 

エルフ

「・・・人族、なのか?ベントゥヴォルピーズが人族に懐くとは思えんが・・・」

 

騎士ガンダム

「ベントウ?それはポンタの種族の名か?」

 

エルフ

「・・・そうだ。通称、綿毛狐。お前の頭に乗っている精霊獣の事だ。何処で手懐けた?」

 

騎士ガンダム

「ならポンタは精霊の類だったのか。」

 

ポンタ

「きゅい?」

 

その問いかけにポンタは不思議そうな声で鳴く。その様子を見ていたエルフは呆れた様な眼で騎士ガンダムを見詰めてくる。

 

エルフ

「精霊ではない、精霊獣だ。精霊の力を宿した生き物の事だ。そんな事も知らないのか?」

 

騎士ガンダム

「(この異世界の事情や、生態系など知る機会も無いからな。)すまない。精霊獣を初めて見たものでな。盗賊に囚われていたのを助けた時に懐かれてな。」

 

エルフ

「精霊獣はエルフ族でもなかなか懐きはしない。変わり者は何処にでもいると言う事か。」

 

そう言ってレイピアを腰の鞘に戻すエルフ。

 

騎士ガンダム

「して、貴殿はこんな所で何を?これまで街では全くエルフや他の種族を見掛けなかったが、街へ向かうのか?」

 

エルフ

「貴様、本当に人族か?人族は自分達と違う者、優秀な者、故に亜人種を恐れ嫌う。我らと条約を交わしたこのローデン王国ですら、我々は狩りの対象になってしまう。特にエルフは大層な金になるらしいからなッ!」

 

エルフは怒りと憎しみが溢れた眼を騎士ガンダムに向ける。

 

騎士ガンダム

「(マジか・・・他種族が迫害されてる系の異世界だったか。それなら代表的な種族の姿を見掛けない訳だ。正体を隠して正解だったな。とは言え、話の内容と彼の眼を見て大体予想できた。)街にいるエルフ族の救出か。」

 

騎士ガンダムがそう言うと、エルフは剣呑な眼をして最初よりも強い警戒感を露わにする。

 

騎士ガンダム

「(図星か。)この場で会ったエルフ族と話した事は人族の誰にも言わない。私の一族、ガンダムの名に誓って。」

 

エルフ

「フン!人族の言葉など本当に信用できるとでも―――」

 

ポンタ

「きゅん!きゅんきゅんッ!!」

 

エルフが語気を強めてそう言うと、騎士ガンダムの頭の上にいるポンタが抗議する様に鋭く鳴く。

 

エルフ

「曲り形にも精霊獣と心を交わした者と言う訳か。先程の言葉、忘れるなよ。そして・・・あまり我らに関わらぬ事だ。蒼銀の騎士よ。」

 

騎士ガンダム

「・・・・・・」

 

数秒後、エルフはゆっくり警戒感を緩めてレイピアから手を離し、外套を整えてフードを被った後にそう言って森の方へと歩いて行き、姿を消した。それを騎士ガンダムはジッと見詰めた。

 

‐数分後 ディエントの街・宿屋‐

 

人々の欲望を覆い隠す衝立の様に見えた街壁を抜けて宿に戻った騎士ガンダムはポンタと夜食を終えて窓から夜空の月を見ていた。

 

騎士ガンダム

「初の異種族交流が残念な結果で終わり、エルフや他の種族を含めて迫害に遭っているとは・・・」

 

ポンタ

「きゅん・・・」

 

自身が思い描くファンタジー世界がこの世の悪意によって実現されてない事に落ち込む騎士ガンダム。それを見て心配そうに鳴くポンタ。それに騎士ガンダムはそっとポンタの頭を撫でる。

 

騎士ガンダム

「(出来る限り目立たずに活動すると決めてはいるが、悪意から助けを求める者達がいるであれば、出来る限り多くを助けたい!)ポンタ、明日は少し遠出するか。」

 

ポンタ

「きゅん!」

 

その後、ポンタと一緒にベットで寝る際に騎士ガンダムはふと古の呪文が刻まれた石板の事を思い出す。

 

騎士ガンダム

「もしかしたら、私がこの異世界にやって来た意味が見付かるかもしれないな。」

 

騎士ガンダムはそう呟いて就寝する。

 

‐翌日 カナダ大森林~エルフ族の住まう森~‐

 

騎士ガンダム

「ここがエルフの森か。マルカさんと訪れた森よりも鬱蒼としているな。」

 

冒険者組合所が配布している地図を買い、騎士ガンダムとポンタは【次元歩法(ディメンションムーヴ)】でエルフの森へやって来た。

 

騎士ガンダム

「エルフを誘拐するならここへ人族が足を踏み入れているはずだが、そう簡単に尻尾は掴める訳ないか・・・」

 

ポンタ

「きゅん!」

 

騎士ガンダム

「何か見付けたのか、ポンタ?」

 

何かを見付けたポンタの所へ向かう騎士ガンダム。すると地面に血痕があった。それはまだ新しく、まだ温かった。

 

騎士ガンダム

「魔獣か、それとも―――

 

「あははは!言う事聞かねーからだッ!」

 

ッ!どうやらエルフではなく、別の者に会えたな。」

 

すると奥から人の声が聞こえた騎士ガンダム達は身を隠しながら声が聞こえた場所へ向かうと、外套を纏った20人が檻車を囲っていた。その檻車には4人のエルフの女の子が囚われていた。

 

痩せ形の男

「ケッ!またガキかよ!折角森の中に来たのにこれじゃあ僕の楽しめないじゃないか。」

 

檻車の近くにいる剣を持った痩せ形の男はそう言うと、囚われた子供の1人は痩せ形の男にキッとした眼を向ける。

 

痩せ形の男

「あ?何その眼?自分の立場、分かってんの?」

 

エルフの女の子

「~~~~~~ッ!?」

 

すると痩せ形の男はその剣で右脚を突き刺し、エルフの子供は声にならない悲鳴を上げる。それを見た痩せ形の男は高笑いし、それに他の子供達は恐怖に怯え、涙を流す。

 

エルフ狩り

「ウドランさん、コイツ等は大事な商品で「あ?お前達を雇ってるのはパパだぞ!!僕に偉そうに指図するんじゃねぇよッ!」へ、へい。」

 

エルフ狩りの1人が控える様に言うが、ウドランはそう言って黙らせる。それを見た騎士ガンダムは内心で怒りが込み上げていた。

 

騎士ガンダム

(あれがエルフ族を売り払っている連中か。地球と比べてファンタジー世界は無法地帯だと理解したつもりだったが、想像以上だった!無抵抗な子供相手に剣を突き刺したあのウドランと呼ばれた奴には一方的にやられる痛みと怖さを教えてやろうかッ!)

 

『あまり我らに関わらぬ事だ。』

 

騎士ガンダム

(確かにそうだな。だが騎士ガンダム()ならこの悪事を見過ごさないッ!)

 

昨日のエルフの言葉が頭を過るが、覚悟を決めて茂みから飛び出す直前、騎士ガンダムよりも早く飛び出す者がいた。それは剣を構えたエルフの女戦士であった。

 

エルフの女戦士

「そこまでよ、貴方達ッ!子供達を返してもらうわッ!」

 

エルフ狩りA

「ウドランさん!あいつダークエルフですッ!中々のレア物ッ!かなり高値で売れますぜッ!!」

 

ウドラン

「気の強い女には興味ないんだよ。好きにしろ。」

 

その言葉にエルフ狩りAは呆れた後、右手で部下に合図を送る。それを見た部下達はダークエルフの女戦士を舐め回す様に見ながら包囲していく。

 

エルフ狩りB

「威勢よく飛び出して来たけどな、ダークエルフのねーちゃん。こっちはざっと20人はいるんだぜ。」

 

エルフ狩りC

「まぁ返答によっちゃあ、さっきの態度を許してやってもいいぜ♪たーっぷり可愛がってやる『ジッ』よ!?えっな?」

 

エルフ狩りCがダークエルフの女戦士に触れ様とした瞬間、左腕を斬り落とされた。

 

エルフ狩りC

「ウワァア!俺の腕ぇええ、うでぇええッ!!」

 

ダークエルフの女戦士

「ッ!」

 

エルフ狩りD・F

「グガッ!?」

 

仲間が斬られた事に動きを止めた隙を突いてエルフ狩り2人を斬り伏せるダークエルフの女戦士。エルフ狩り達はこれ以上は好きにはさせんと6人で包囲して一斉に斬り掛かるが、ダークエルフの女戦士は難なく倒す。

 

騎士ガンダム

(8人を一瞬で・・・強いな。)

 

エルフ狩りG

「見た目に騙されるな!こいつ、エルフ族の戦士だッ!」

 

茂みでダークエルフの女戦士の強さに驚く騎士ガンダム。そして残ったエルフ狩り達は取り押さえようと戦うが、半数が倒される。

 

エルフの女の子達

「キャアアアッ!」

 

ダークエルフの女戦士

「ッ!?」

 

ウドラン

「動くな!大人しく投降しろッ!さもないとこいつらがどうなっても知らねぇぞ?」

 

エルフの女の子

「嫌ぁぁ!痛いッ痛い!!」

 

戦況が徐々にエルフ狩り側の不利になったその時、檻車の傍にいたウドランはエルフの子供達を人質に取った。その内の1人に剣を突き刺し、グリグリと動かす。その痛みでエルフの女の子は悲鳴を上げる。

 

ダークエルフの女戦士

「子供を盾にする気ッ!?野蛮な上に卑怯者のようね!」

 

ウドラン

「うるせえんだよッ!いいか、これ以上抵抗するんじゃあねーよ!!こいつら穴だらけにしてもいーんだぜ!アハハハッ!!」

 

両眼からは激しい憎悪と怒りが吹き上がるダークエルフの女戦士はそう叫び、今にも斬り掛かる態勢を取る。しかしウドランは脅迫して動きを止める。

生き残ったエルフ狩りは安堵の吐息が漏らすと同時に徐々に包囲する。ウドラン達は勝ち誇り、この状況にダークエルフの女戦士が悔しんだその時!

 

「助太刀するぞ。ダークエルフの女戦士よッ!!」

 

ウドラン

「え?」

 

ダークエルフの女戦士

「なッ!?今のって・・・」

 

その声が聞こえたと同時にウドランの背後へ転移して現れた騎士ガンダムの姿に驚く両者。そして騎士ガンダムはナイトシールドをウドランに振りかざす。

 

騎士ガンダム

「【強打盾(シールドバッシュ)】ッ!!」

 

殴り飛ばされたウドランは近くの木にぶつかり、意識を手放す。

 

騎士ガンダム

「子供達は助けた!存分に戦えッ!」

 

この事態に全員が一瞬唖然とした表情を浮かべる中、騎士ガンダムの言葉で思考が戻ったダークエルフの女戦士は包囲するエルフ狩りの3人を撫で斬りにする。残ったエルフ狩り達は慌てて体勢を立て直そうとするが、背後から騎士ガンダムの攻撃によって総崩れとなり、全滅した。

 

騎士ガンダム

「少し離れてくれ。今出して―――「動かないでください!」私は怪しい者ではない。ただ通り掛かっただけだ。」

 

ダークエルフの女戦士

「助けてくれた事には感謝しますが、顔を見せない様な相手を信用しろと?」

 

騎士ガンダム

(やっぱり兜で顔を隠してるって思われるか。どう説明するか・・・)

 

囚われたエルフの女の子を檻車から出そうと鉄格子に手を掛けた時、ダークエルフの女戦士に剣先を向けられる騎士ガンダム。両手を上げて敵ではないと言うが、顔を見せない者は信用できないと言われてどう答えるかと悩んだ時、マントからヒョコっとポンタが出る。

 

ポンタ

「きゅい♡」

 

ダークエルフの女戦士

「ベントゥヴォルピーズ!?」

 

騎士ガンダム

(よし!これで説明して敵ではないと話そう!)

 

様子を見ていたダークエルフの女戦士は驚きに金色の眼を見開き、構えた剣が下げる。このチャンスに騎士ガンダムは説得を試みる。

 

‐数分後‐

 

ダークエルフの女戦士を説得した騎士ガンダムは如何にか信用してもらい、現在は檻車から子供達を出していた時、ダークエルフの女戦士は子供達に付けられた首輪に気付く。

 

ダークエルフの女戦士

「ひどい・・・こんな物まで。」

 

騎士ガンダム

「その首輪がどうかしたのか?」

 

ダークエルフの女戦士

喰魔の首輪(マナバイトカラー)私達(エルフ)が得意な精霊魔法を封じる物よ。これのせいで逃げられなかったのね・・・でもどうしましょう、この場でこれを解除する魔法なんて・・・」

 

騎士ガンダム

「そうか、なら外さねばな(一度も使ってないが、可能な筈だ)。」

 

ダークエルフの女戦士

「それが出来ないから困って「【抗呪式(アンチカーズ)】」ッ!?」

 

騎士ガンダムが手を翳して唱えると、一瞬だけ喰魔の首輪が光ると同時に首から外れてその場に落ちる。それを見たダークエルフの女戦士は驚くが、この後で更に驚く。

 

騎士ガンダム

「後は傷だけだな。【治癒(ヒール)】」

 

エルフの女の子

「綺麗に治った・・・♡」

 

騎士ガンダム

「傷跡や他に痛い所は残ってないなか?」

 

エルフの女の子

「大丈夫です!」

 

ダークエルフの女戦士

(治癒魔法と解呪を演唱も無しに扱えるなんて・・・この人族、ただの騎士ではないというの・・・)

 

ダークエルフの女戦士がそう思考する間にも解呪されていき、エルフの子供達は首輪が取れた事で明るい笑顔を浮かべていた。

 

エルフの女の子達

「ありがとう、鎧のお兄さん!」

 

騎士ガンダム

「気にしないでくれ。また悪い者達が来ても私が退治するからな!」

 

騎士ガンダムとポンタはエルフの女の子達と交流する間、その光景をダークエルフの女戦士は見詰める。

 

‐数分後‐

 

エルフの女の子達

「バイバイ!鎧のお兄さん!」

 

騎士ガンダム

「あぁ、達者でな。」

 

ダークエルフの女戦士と同じく子供達を捜索していたエルフの戦士2名と合流した子供達は騎士ガンダムに手を振って故郷へと帰っていく。

 

ダークエルフの女戦士

「人族にも珍しいのがいるなね。人族は野蛮で危険な種族だと聞いていたのに精霊獣と心を通わせる事ができるなんて・・・」

 

騎士ガンダム

「少々違いはあるが、人族全てが悪人だけでは無いと言う事だ。」

 

アリアン

「改めて感謝するわ。私はアリアン・グレニス・メープル。エルフ族の戦士よ。」

 

騎士ガンダム

「私は騎士ガンダム。風来の旅をする騎士であり冒険者だ。こっちは旅の友、ポンタだ。」

 

ポンタ

「きゅい♡」

 

互いに自己紹介した後、戦後処理を行う。騎士ガンダムは戦利品を確保し、遺体を焼却する際にアリアンは徐に前に出て騎士ガンダム達を手で下がる様に指示する。それに従って騎士ガンダム達は下がる。

 

アリアン

『呑み込め、大地よ。』

 

アリアンは小さく呟き翳した手を地面に付ける。すると遺体を積んだ地面が波打ち始め、地面が生物の様に遺体を呑み込んでいく。暫く経つと遺体の山は跡形もなく消えた。

 

騎士ガンダム

「今のが精霊魔法か。初めて見た。」

 

アリアン

「少し違いはあるけど、この子が使う魔法も精霊魔法よ?」

 

騎士ガンダム

「そうだったのか。」

 

ポンタ

「きゅい!」

 

そう話してる時、白い冠と青緑の羽を持つ鳥がやって来た。アリアンは左腕を差し出すと、鳥は静かに着地する。

 

『ダンカからディエントの街で奴らの拠点を見付けたとの報告があった。アリアンはダンカと合流して同胞の救出に向ってくれ。』

 

騎士ガンダム

「アリアンさん。その鳥は一体?」

 

アリアン

「囁き鳥、精霊獣よ。この子に伝言を覚えさせて相手に届けるの。」

 

騎士ガンダム

(インコの伝書鳩みたいなものか。)

 

騎士ガンダムがそう思ってる間、アリアンは囁き鳥に報告を言い終えると囁き鳥は飛び立つ。

 

アリアン

「これでよし。」

 

騎士ガンダム

「便利なものだな。」

 

アリアン

「人族には精霊獣を手懐ける事が難しいから私達エルフ族だけの通信手段なの。」

 

騎士ガンダム

「成程な。」

 

ポンタ

「きゅい。」

 

そう言う騎士ガンダムの頭の上をモソモソ動くポンタの姿を見てアリアンはクスっと笑う。

 

アリアン

「ねぇナイト。貴方、冒険者と言ったわね。じゃあ、貴方を今ここで雇う事は可能かしら?エルフ金貨で前金5枚、後で更に5枚。悪くない話だと思うけど?」

 

騎士ガンダム

「私は構わないが、仲間に色々と言われないか?」

 

アリアン

「ただの人族なら信用しないわ。精霊獣と心を通わせる貴方なら・・・いえ、子供達を助けてくれた貴方だから信用できるの。それに!貴方、転移魔法を扱う事が出来るわね。」

 

騎士ガンダム

「(バレてたか。)その通りだ。」

 

アリアン

「やはり私の見間違いではなかったのね。まさか伝説の魔法を見る事ができるとは思わなかったけど・・・ナイト。同胞を救う為、貴方の力を私達に貸してもらえないかしら。」

 

右手を差し出し、決意を宿した眼で騎士ガンダムを見るアリアン。騎士ガンダムはその決意に応えて差し出された右手を取る。

 

騎士ガンダム

「分かった。冒険者としてアリアンさんに雇われよう。」

 

アリアン

「ありがとう、ナイト。」

 

こうして、アリアンとポンタとの出会いから騎士ガンダムの物語と伝説は加速する。

 

第4話END




次回「月夜の奪還作戦」


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第5話「月夜の奪還作戦」

作者
「こっちも50人突破したどんッ!!」

アリアン
「この物語を読んでくれて本当にありがとう。」

騎士ガンダム
「私達の冒険はまだまだ続くから楽しみにしてくれ。」

ポンタ
「きゅいきゅい♡」

???
「今回はボクも登場しますよ!」

皆さんのクエストをお待ちしてます。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=291834&uid=345359


‐ディエントの街近辺・ライデル川‐

 

エルフの森にて、エルフ狩りから子供達とダークエルフの女戦士アリアンを助けた騎士ガンダム。アリアンに雇われた彼はディエントの街にあるエルフ狩りの拠点に囚われたエルフ族を救出する為、【転移門(ゲート)】を使用してエルフの森から街の近辺に流れるライデル川まで転移した。

 

アリアン

「嘘?あれってライデル川よね?じゃあ、あっちはディエントの街?」

 

騎士ガンダム

「流石に街中だと目立つから近辺に転移した。」

 

アリアン

「驚いたわ・・・転移魔法を詠唱無しで使えるなんて。」

 

騎士ガンダム

「便利な移動手段だが、一度行った場所でしか転移出来ないのが難点ではあるが、役には立てるか?」

 

アリアン

「それでも助かるわ!仲間の救出には最高の力ね。頼りにしてるわよ!」

 

騎士ガンダム

「それは何よりだ。日が沈む前に街へ向かおう。アリアンさん。」

 

アリアン

「えぇ!それと私の事はアリアンで良いわよ。」

 

騎士ガンダム

「分かった、アリアン。」

 

街にいるアリアンの仲間と合流する為、騎士ガンダム達は移動する。

 

‐数十分後 ディエントの街中・広場の隅‐

 

日が沈まぬ内に街に入った騎士ガンダム達は門を抜けて橋を渡った先にある広場の隅でアリアンの仲間を待つ事にいした。

 

騎士ガンダム

(アリアンはこれぞ女戦士って感じだったが、仲間のダンカさんはどんな方だろうか?)

 

???

「待たせたな、アリアン。」

 

アリアン

「いえ、大丈夫です。ダンカさん。」

 

騎士ガンダム

「(噂をすれば影。どんな人―――)あッ・・・」

 

合流したアリアンの仲間がどんな人だろうかと振り返った騎士ガンダム。するとそこには以前出会ったエルフの姿があった。ダンカはアリアンの傍にいる騎士ガンダムを鋭い視線を向ける。

 

ダンカ

「アリアン、何故その男がいる?」

 

アリアン

「色々ありまして・・・立ち話も目立つので移動しましょう。」

 

ダンカ

「・・・そうだな。」

 

アリアンはそう言って広場から離れて行き、それに騎士ガンダムも続く。その際でもダンカの鋭い視線はまだ続く。

 

ダンカ

「関わるなと言ったはずだが?」

 

騎士ガンダム

「(し、視線が痛いッ!)・・・子供達が涙を流し、助けを求めていた。それを見て聞いたら身体が勝手に動いていた。こんな理由ではダメか?」

 

ダンカ

「・・・まぁいい。後でアリアンから聞く。」

 

顔を向けてそう言った騎士ガンダムの言葉にダンカは少しだけ眼を見開いてそう言い、アリアンに付いて行く。

 

‐屋台市‐

 

広場を抜けて大通り沿いを出た先にある屋台市は飲食を楽しむ客達で賑わっていた。その中にある1つのテーブルに騎士ガンダム達が座っていた。

 

アリアン

「ナイト、本当に食べなくていいの?」

 

騎士ガンダム

「私は大丈夫だ。話を聞いた後、戦利品を売り払ってから適当に何か食べるよ(本当は食べたいけど、この姿で食べたら色々と突っ込まれるからな)。」

 

そう思う騎士ガンダムの目の前のテーブルにはディエント名物、ゴアビーフの串焼きとハニービールが置かれており、その美味しそうな匂いに騎士ガンダムは唾を飲む。

 

騎士ガンダム

(この世界にMS族がいれば遠慮なく飲み食いが出来たのに、こんなの生殺しだよ。トホホ。)

 

アリアン

「彼がダンカ・ニール・メープルさん。私と同じエルフ族の戦士で、情報収集してくれていたのよ。ダンカさん、こちら―――「知っている騎士ガンダムだろ。」えっ?はい、そうです。」

 

ダンカ

「それで、どういった経緯でこいつと会った?」

 

アリアンは騎士ガンダムと出会った経緯と、今回の救出作戦に協力する為に雇った事を話す。そして騎士ガンダムは気になった事をアリアンに聞く。

 

騎士ガンダム

「さっきメープルと聞こえたが、アリアンとダンカさんは兄弟なのか?」

 

アリアン

「違うわ。エルフ族の名前は、自分の名・同性の親の名・所属している集落の名の組み合わせなの。私達はカナダ大森林の森都メープルに所属する者って意味になるの。」

 

騎士ガンダム

「成程。」

 

ダンカ

「それよりも、こいつを作戦に協力させるつもりらしいが・・・貴様、転移魔法を使えるというのは本当か?」

 

話しているアリアンと騎士ガンダムにダンカはそう言い、逸れていた話を戻す。

 

騎士ガンダム

「多少制約はあるが、問題なく使える。」

 

ダンカ

「成程。」

 

そう言ってゴアビーフの串焼きを一口食べ、ハニービールを飲むダンカ。アリアンはポンタに串焼きの肉を与えてモフモフしながら今回判明した拠点に関する質問をする。

 

アリアン

「それでダンカさん。奴らの拠点は見付かったんですよね。」

 

ダンカ

「ああ、拐かし共の拠点はこの街の歓楽街の傍だ。しかしあそこは日が暮れて暫くは人通りが多い・・・人通りが少なくなる夜中を待って侵入する。外に見張りもいるし中も結構な人数がいると思われる。」

 

アリアン

「囚われてる人数は分かりますか?」

 

ダンカ

「4人らしい。近々追加で運び込まれると言う話だったが・・・」

 

アリアン

「それを私達が潰したと言う訳ですね。今日は彼の魔法があるから脱出はかなり楽になるはずです。」

 

ダンカ

「・・・分かった。では時間までこの辺りで待機するか。」

 

騎士ガンダム

「なら私は用事を済ませて来る。行くぞ、ポンタ。」

 

ポンタ

「きゅん!」

 

騎士ガンダムは戦利品を持ち、ポンタと共に武具屋へ向かう。

 

‐数分後 屋台市・路地裏‐

 

戦利品を売った騎士ガンダム達はアリアン達と合流する前に屋台で軽食を買い、裏路地で夕食を食べていた。

 

騎士ガンダム

「ディエント名物。ゴアビーフの串焼き、剣ニジマスの塩焼き、旬の実ピザ!そしてキンキンに冷えたハニービールッ!どれも美味いな!ポンタ!」

 

ポンタ

「きゅいー♡」

 

騎士ガンダム達が夕食を摂っている一方、アリアン達は話し合っていた。

 

‐屋台市‐

 

ダンカ

「意外だったな。」

 

アリアン

「何がですか?」

 

ダンカ

「お前が他者を頼る事がさ。ましてや相手は人族だ。」

 

アリアン

「私が先走ったせいで子供達が人質に取られたんです・・・彼の加勢してくれなければ、私も捕まっていたかもしれません・・・」

 

ダンカ

「自分の力を過信したか。それとも焦りか?確かにイビンなら、1人でも危なげなく解決したろうな。」

 

アリアン

「・・・・・・」

 

顔を曇らせてそう言うアリアンにダンカは淡々と答え、そこに姉の名を聞いたアリアンは何も言えなかった。

 

ダンカ

「自身の姉と比べるな。お前はその若さで十分強い。もっと経験を積めば、いずれ彼女とも肩を並べられるだろう。」

 

アリアン

「はい・・・」

 

ダンカ

「それにしても、まさか転移魔法を使える者がこの世にいるとはな。奴は本当に人族か?」

 

アリアン

「顔はまだ見ていません。兜を取る事を少し拒んでいました。」

 

ダンカ

「お前にも素性を隠しているのか・・・よくそんな怪しげな奴を雇う気になったな。」

 

アリアン

「綿毛狐が良く懐いていましたし、私自身にも明確な理由は示しませんが、何処か姉と似た雰囲気を感じたんです。」

 

ダンカ

「・・・この際奴の正体はどうでもいい。一番大事なのは、奴は信用できるか?」

 

アリアン

「はいッ!」

 

ダンカの質問に対し、アリアンは真っ直ぐに答える。それを見たダンカは「分かった。」と答える。

 

‐数時間後 歓楽街‐

 

騎士ガンダムが合流してから時が経って深夜。一同は怪しい店が軒を連ねる歓楽街にあるエルフ狩りの拠点へ向かう。月光が届かない路地をダンカを先頭に進んで行く騎士ガンダム達。そんな時、ある1つの建物の屋根に降り立つ影があり、その影は拠点へ向かう騎士ガンダム達を見詰める。

 

騎士ガンダム

「ッ!」

 

騎士ガンダムは視線を感じ取り、立ち止まって顔を向ける。しかしその屋根には既に影は無かった。気のせいかと首を傾げた騎士ガンダムはすぐにアリアン達を追い掛ける。そして先頭のダンカが不意に止まり、続いていた騎士ガンダム達も止まる。

路地の角から見える騎士ガンダム達の前には石造りの3階建ての建物があった。鉄格子の正門に2人。更に前庭ではランプを持った4人の用心棒が警備に当たっていた。ならば裏口へと向かう一同だが、表口と同様に警備が厳重であった。

 

ダンカ

「夜間の潜入にその鎧は何とかならなかったのか?音で気付かれるだろ。」

 

騎士ガンダム

(確かに潜入には向いていない。軽装にするべきだったな。)

 

アリアン

「気付かれるのが遅いか早いかの違いよ。どうせ仲間を助けたら連中は全員始末するだけ。それよりナイト、あそこに見える小窓まで転移魔法で飛べる?」

 

そう言われた騎士ガンダムはアリアンが指さした屋根付きの小窓を確認する。

 

騎士ガンダム

「問題ない。あれなら【次元歩法(ディメンションムーヴ)】、短距離転移で屋根に移動しよう。2人は私の肩に掴まってくれ。」

 

その言葉に驚きつつも、アリアン達は騎士ガンダムの肩を掴む。それを確認した騎士ガンダムはその場から転移する。

 

‐エルフ狩りの拠点・屋根‐

 

景色が瞬時に切り替わり、騎士ガンダム達の周囲には月明かりに照らされた家々の屋根が広がっていた。

 

ダンカ

「素直にすごいな。」

 

アリアン

「短距離転移魔法まで使えるって・・・本当に何者?」

 

騎士ガンダム

「アハハ、私の事より囚われた者達の救出が先決だ。」

 

それから騎士ガンダム達は小窓に移動し、室内をアリアンが安全を確認。中は物置部屋になっており、転移を使って全員入る。

 

‐エルフ狩りの拠点内‐

 

無事潜入した騎士ガンダム達は物置部屋から階下へ続く階段を見付け、一同はゆっくりと降りる。すると降りた先に部屋があり、ダンカはそっと部屋を除いた時、何かを見て驚く。続いて騎士ガンダム達が部屋を見る。すると二段ベッドが置かれた部屋には既に事切れたエルフ狩り達の死体があった。

 

騎士ガンダム

「全員喉の動脈が斬られている。これは一体?」

 

アリアン

「それにまだ血も乾いてないわ。ダンカさん。」

 

ダンカ

「俺達以外にも侵入者がいるらしい。一旦三手に別れて捜そう。2人共、気を抜くなよ。」

 

ダンカの言葉に騎士ガンダム達は頷き、ダンカは右、アリアンが左、騎士ガンダムが中央奥を捜索する事になった。

 

‐数分後 とある部屋‐

 

次元歩法(ディメンションムーヴ)】で音を立てずに移動した騎士ガンダムはある1つの部屋から気配を感じ取り、その扉の前に立つ。ドアノブに手を掛けて開けようとするが、鍵が掛かっていた。

 

騎士ガンダム

「(室内からこっちを警戒する気配を感じる。私達以外の侵入者かもしれん。)鍵穴はあるな。」

 

鍵穴から部屋を除き、転移で入る。すると室内は暗く、先程見た部屋と同じ有様であった。

 

騎士ガンダム

「(ここもか。一体何者の―――)ッ!?」

 

突然暗闇から何かが投擲され、騎士ガンダムは咄嗟に右腕で防ぎ、投擲された何かを見る。

 

騎士ガンダム

「(あれは、苦無ッ!?だがこれは―――)囮ッ!」

 

騎士ガンダムは視線を下に向けると、そこには刀を持った全身黒ずくめの人物がいた。黒ずくめから放たれた攻撃をナイトシールドで防ぎ、騎士ガンダムはナイトシールドで黒ずくめを振り払う。黒ずくめは空中で反転し、窓の近くへ着地。窓から差し込む月光で姿がハッキリと見え、騎士ガンダムは眼を見開く。

 

黒ずくめ

「扉の鍵は閉めてあったのですが、鎧のお兄さんは今どうやって入ってきたのですか?」

 

騎士ガンダム

「(まさか、異世界で本物を見れるとはな)・・・忍者。いや、獣耳くノ一か。」

 

騎士ガンダムの呟きを聞いた黒ずくめ、獣耳くノ一は頭に生えた獣耳がピクリと反応する。

 

獣耳くノ一

「貴方は何故、忍者と言う名を知っているのです?」

 

騎士ガンダム

(おっと、どう答えるべきかな。)

 

獣耳くノ一の問いに騎士ガンダムが迷った時、ポンタが騎士ガンダムの頭からひょっこり出てくる。

 

ポンタ

「きゅい♡」

 

獣耳くノ一

「・・・・・・」

 

騎士ガンダム

(あれ?ポンタを見たら眼を開いて固まってしまった。)

 

騎士ガンダムがそう思っていた時、獣耳くノ一は腰に手を伸ばす。それを見た騎士ガンダムは身構え、ナイトソードに手を掛けた瞬間。獣耳くノ一は木の実を投げた。

 

騎士ガンダム

「え?木の実?「きゅいーっ!」ポンタッ!?」

 

投げられた木の実を飛び出したポンタがキャッチ。そのまま着地して木の実をモキュモキュと食べる。獣耳くノ一はそっと近づいてしゃがみ、ポンタを撫でる。その光景に騎士ガンダムは呆気にとられる。

 

騎士ガンダム

「余り懐かないと言われた精霊獣がたった3秒で・・・さっき殺されかけたのにそれでいいのかポンタ・・・」

 

獣耳くノ一

「如何やらここの人間ではなさそうですね。先程は失礼しました。ここへは何故?」

 

騎士ガンダム

(一先ず敵ではないが、迂闊にこちらの事を話す訳にはな。)

 

獣耳くノ一

「大方エルフ族の救助の為・・・ですか・・・それなら地下牢にいましたよ。」

 

その言葉に騎士ガンダムは自分達の目的を淀みなく言い当てた事に驚きを隠しきれなかった。その様子を見た獣耳くノ一は騎士ガンダム達の目的を確信して目元を少し細くする。そして懐から書簡を取り出し、それを騎士ガンダムに投げ渡す。

 

獣耳くノ一

「それと同じ物が奥の机にも6つあります。貴方達には必要かと。」

 

騎士ガンダム

「・・・君もエルフ族の解放が目的でここに?」

 

獣耳くノ一

「いえ、ボクの探し物は見付かりませんでした。それと・・・領主城にも2人程エルフ族の方が囚われていますよ。後はお任せします。それではまた。」

 

窓枠に右足を置き、獣耳くノ一は騎士ガンダムにそう言った後、軽い身のこなしで屋根から屋根へと飛び移りながら月光が照らす夜の街へと消える。

 

騎士ガンダム

「名を聞く暇も無かったな。しかしポンタ、君は餌を貰えれば誰でもいいのか?」

 

ポンタ

「きゅん♡」

 

そう元気に鳴くポンタに騎士ガンダムは苦笑いしながら獣耳くノ一から貰った書簡を開き、内容を見る。

 

騎士ガンダム

「エルフ族の売買契約書ッ!?」

 

それを見た騎士ガンダムはすぐにアリアン達と合流する為にその部屋を出る。

 

‐数分後‐

 

無事にアリアン達と合流した騎士ガンダムは獣耳くノ一から貰った情報を共有する。

 

ダンカ

「この契約書は・・・」

 

騎士ガンダム

「購入者の名前が書かれているから大きな手掛かりになるだろう。囚われたエルフ族はこの拠点の地下牢に監禁されている。更に領主城で2人程エルフ族が囚われている事が分かった。」

 

ダンカ

「まさか領主まで加担していたとはな・・・ッ!」

 

騎士ガンダムの情報を聞き、売買契約書を見たダンカは眉根を寄せて重々しく吐き捨てる。

 

アリアン

「ナイト、その情報は何処から・・・」

 

騎士ガンダム

「(獣耳くノ一の事は伏せておくか。)ここの幹部らしき人物から白状させた。それで、地下牢にいる囚われた者達を助けた後はどうする?」

 

アリアン

「地下牢にいる仲間を助けたら領主城にも行くしかないわね。ナイト!」

 

騎士ガンダム

「乗り掛かった舟だ。最後まで付き合おう。」

 

アリアン

「・・・ありがとう。本当に変わってるわね、貴方は。」

 

アリアンの意図を組んだ騎士ガンダムはそう答える。それを聞いたアリアンはそう言って少し微笑む。その時、向こうの廊下からエルフ狩り達の怒鳴り声が聞こえてくる。

 

騎士ガンダム

「異変に気付いたか。静かに地下牢へ行くのは無理だな。」

 

ダンカ

「どうする?」

 

アリアン

「強行突破しましょう。ただし、『炎よ、剣と共に舞い踊れ』ッ!」

 

エルフ狩りA

「何だテメ、がッ!?」

 

エルフ狩りB

「ひゃッ!?」

 

アリアンは低い声でそう唱え、手にした剣身に炎が走る。着地した先に出てきたエルフ狩り2人を斬り、血飛沫をあげると同時に全身を紅蓮の炎が包み込む。

 

アリアン

「1人残らず消し炭にしながら・・・」

 

ダンカ

「同感だな。」

 

騎士ガンダム

「承知したッ!」

 

そう言ってアリアンが倒した相手の先にいた者達をダンカが斬り、騎士ガンダムがナイトシールドで殴り飛ばす。そのまま一同は迫り来るエルフ狩り達を蹴散らしながら地下牢へ向かう。

 

‐地下牢‐

 

牢屋の中で囚われたエルフの子供達は不安と恐怖で今にも泣きそうな時、大きな振動が伝わり、皆で鉄格子の近くへ行くと自分達を攫った者達の声と戦闘音が聞こえてくる。そして扉を勢い良く吹き飛ばした騎士ガンダム達が入る。

 

アリアン

「アリアン・グレニス・メープル!助けに来たわッ!!」

 

エルフの女の子

「嘘っ!?メープルの戦士が助けに来てくれた!」

 

アリアンの名乗りが聞こえたエルフの子供達は鉄格子に取りついて驚きと喜びの声を上げる。

 

アリアン

「ナイト、お願い。」

 

騎士ガンダム

「分かった。」

 

騎士ガンダムは鉄格子をこじ開け、子供達に怖がられながらもアリアンの説明で落ち着いてもらい、【転移門(ゲート)】で全員脱出する。

 

‐とある丘‐

 

騎士ガンダム達が脱出した後、エルフ狩りの拠点は騎士ガンダム達が強行突破した際の戦闘で火の手が全体に渡り、燃え盛っていた。

 

騎士ガンダム

(派手に燃えているな。他所に飛び火しなければいいが・・・ん?)

 

騎士ガンダムはふと救出したエルフの子供達の首を見ると、全員が喰魔の首輪を付けられていた。騎士ガンダムはアリアンに顔を向けると、アリアンは頷く。

 

騎士ガンダム

「【抗呪式(アンチカーズ)】」

 

エルフの女の子

「~~~ッ!ありがとうございます!騎士様ッ!」

 

騎士ガンダムは怖がらせない様にしゃがんでエルフの子供達と目線を合わせ、【抗呪式(アンチカーズ)】を掛けて首輪を破壊していく。全員の首輪が破壊されると騎士ガンダムはエルフの子供達から感謝の言葉を貰う。

 

ダンカ

(こうも易々と封印の呪いを解くとは・・・この男、一体・・・)

 

アリアン

「ダンカさん、子供達をお願いします。」

 

ダンカ

「あぁ、任せろ。」

 

アリアン

「ナイト、このまま領主城へ行きましょうッ!」

 

騎士ガンダム

「あぁ、領主の城はあれだな。では行こうッ!」

 

そして騎士ガンダムとアリアンは囚われた残りの者達を助け出す為、領主城へ転移する。

 

第5話END




次回「力の盾と紡がれる絆」


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第6話「力の盾と紡がれる絆」

本日は2話投稿です。次は転剣の方を書こうと思います。

皆さんのクエストをお待ちしてます。
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‐ディエント領主の居城・領主の寝室‐

 

エルフ狩りの拠点が騎士ガンダム達によって壊滅した頃、ディエント侯爵は自身のベットに捕らえた女性エルフ2人を寝かせ、舐め回す様に立って眺めていた。

 

ディエント侯爵

「ふふふ。エルフは胸が足らんが、いつ見ても美しい身体をしておるな。今日もたっぷり、可愛がってやろう。」

 

女性エルフA

「―――ッ!」

 

女性エルフB

「やるならさっさとやりなさいよ!この粗○ン野郎ッ!」

 

ディエント侯爵

「ふふふ、お前の反応はいつでも新鮮だ。この儂をゴミの様に見るその瞳、ゾクゾクするわッ!」

 

そう言ってディエント侯爵は左手に持った媚薬の小瓶の蓋を開け、横目で自身のベットの横で正座をさせたウドランの姿を見る。今のウドランは右腕にギプスと頭に包帯を付けていた。

 

ディエント侯爵

「ウドランよ、エルフ狩りに同行し失敗?よくものこのこ帰ってこれたものだ。エルフの扱い方すら知らん小僧、情けないクズめッ!」

 

ウドラン

「・・・・・・」

 

ディエント侯爵

「良いか?そこでしっかり見ていろ。儂が見せてやる、扱い方というものをな。」

 

何も言えないウドランにそう言いながらディエント侯爵は女性エルフBに媚薬を塗る。

 

‐騎士ガンダムパーティーside‐

 

ディエント侯爵がお楽しみを行っている一方で、騎士ガンダムはアリアンを抱えながら転移を繰り返してディエント領主の居城に近付いていた。

 

アリアン

「ナイト、あの小塔から侵入しましょう。領主の部屋はきっとあの城の上の方。」

 

騎士ガンダム

「何故分かるんだ?」

 

アリアン

「昔から決まってるわ。何とか煙は高いところに昇る。」

 

騎士ガンダム

「確かにそれもそうだな。」

 

そう言って騎士ガンダムはアリアンが指さした小塔まで転移して侵入するが。

 

ディエント兵A

「貴様達何処からッ!?」

 

ディエント兵B

「大人しくしろ!ここを何処だと思っているッ!」

 

運悪く小塔に詰めていたディエント兵2人に発見された。

 

アリアン

「いきなり見付かっちゃたわねッ!」

 

騎士ガンダム

「【風斬(ウィンドスラッシュ)】ッ!」

 

騎士ガンダムは【風斬(ウィンドスラッシュ)】でディエント兵を倒すが、1人が下へ続く階段の方に飛ばされて落ちてしまう。それに下階に偶然いた他のディエント兵が反応し、騒ぎ出す。

 

アリアン

「全然潜入になってない!」

 

騎士ガンダム

「まぁ、気付かれるのが遅いか早いかの違いだッ!」

 

アリアン

「いくら何でも早すぎるわよッ!」

 

そんな事を言いながら騎士ガンダム達は城内へ入る。そしてディエント兵達は侵入者の騎士ガンダム達を追い掛けるが、見失ってしまう。

 

ディエント兵C

「くそッ!あいつら何処にいったッ!」

 

ディエント兵D

「探せ!探せーッ!」

 

そしてディエント兵達は脇に鎧甲冑が飾られている廊下から離れていく。すると1つの鎧甲冑が動き出す。

 

騎士ガンダム

「ふう、上手く誤魔化せたな。」

 

アリアン

「えぇ、また見付かる前に急ぎましょう。」

 

騎士ガンダム

「ああッ!」

 

‐数分後 領主の寝室‐

 

媚薬を塗られた女性エルフBは身体を捩らせ、顔を赤くする。その横顔をディエント侯爵は舌で舐める。その時、寝室の扉を乱暴に叩く音が響く。

 

セルシカ

『トライトン様ッ!トライトン様ッ!!』

 

ディエント侯爵

「何だ騒々しい。」

 

ディエント侯爵がそう言うと焦った様子で僅かに紅潮した顔に汗が浮かばせたセルシカが入ってくる。

 

セルシカ

「ぞ、賊です!族が侵入してきましたッ!」

 

ディエント侯爵

「賊?そんな者、お前達で処理できるであろう。」

 

セルシカ

「い、いえッ!奴ら化物です!急いでお逃げ

 

『ドカァァァーーーッ!!!』

 

ギャアッ!?

 

そう話していた時、扉の外が爆発。扉の近くにいたセルシカは巻き込まれて吹き飛ぶ。それを見ていたディエント侯爵が驚いていると煙の中から騎士ガンダム達が現れる。

 

ディエント侯爵

「な、何者だ!お前達はッ!?」

 

騎士ガンダム

「下郎に名乗る名は無いッ!」

 

アリアン

「助けに来たわよッ!」

 

ウドラン

(あいつらだぁぁーーーッ!)

 

騎士ガンダム達の姿を見たウドランは恐怖で身体を震わせながら気付かれない様に逃げる。逆にアリアンの姿を見た女性エルフ達は助けが来た事に喜ぶ。

 

ディエント侯爵

「答えんか貴様―――ブハッ!

 

アリアン

「もう安心です。2人共。さぁ早くこれで身体を。」

 

そう問いただすディエント侯爵を鉄拳制裁したアリアンは脱いだ自身の外套を破き、それを女性エルフ達に着せる。その間にウドランは壁沿いにコッソリと逃げるが、その先に電磁スピアが突き刺さる。

 

騎士ガンダム

「何処に行こうと言うのかね?」

 

ウドラン

「・・・・・・(白眼)」

 

電磁スピアの持ち主である騎士ガンダムの姿と圧でウドランは白眼を抜き、失禁して気絶。すると突き刺した壁が崩れ、穴が開く。

 

騎士ガンダム

「これは・・・隠し部屋か?おぉ、これはまた随分と貯め込んでいるな。アリアン、こっちに―――」

 

ディエント侯爵

「ふぎぃッ!!?」

 

アリアン

「・・・・・・」

 

隠し部屋で見たものを伝え様と騎士ガンダムが振り向くと、そこには両手首を縛られて下半身丸出しの情けない姿のディエント侯爵と、それを無言で何度も思いっきり蹴り上げるアリアンの姿があった。

 

アリアン

「ん?呼んだ?」

 

騎士ガンダム

「い、いや何でもないッ!」

 

ディエント侯爵

「き、貴様らぁ・・・!こんな事をしてタダで済むと、お、思っているのかッ!私はこの国の侯爵だぞッ!!」

 

騎士ガンダム

「・・・流石にこの国の貴族を殺すのは不味いか。」

 

アリアン

「先に約束を違えたのは彼らよ?彼ら自身にその代償を償ってもらう事に何か問題があるの?」

 

その言葉に騎士ガンダムは無言になるしかなかった。その間に辱めを受けた女性エルフ2人はディエント侯爵に躍り掛かって滅多打ちにする。

 

騎士ガンダム

(絶対にエルフを怒らせて敵に回してはいけないな。)

 

ディエント兵C

「トライトン様、ご無事ですかッ!?」

 

ディエント兵D

「侵入者を捕らえろッ!」

 

ディエント兵E

「抵抗する者に容赦はするなッ!!」

 

その光景を見た騎士ガンダムがそう思っていると、騒ぎを聞き付けた城の兵士達が領主の寝室へ集まる。それを見た騎士ガンダムは隠し部屋がある壁を壊し、人が通れる程の穴を開ける。

 

騎士ガンダム

「君達は戦いが終わるまでこの部屋に隠れてくれッ!」

 

女性エルフ達

「は、はいッ!」

 

そう言われた女性エルフ達は騎士ガンダムに従って隠し部屋に身を隠す。それを確認した騎士ガンダムは電磁スピアとナイトシールドを構え、既に剣を構えたアリアンの傍に立つ。

 

アリアン

「あの兵士達を蹴散らしたら脱出するわよ、ナイトッ!」

 

騎士ガンダム

「承知したッ!」

 

その言葉と同時に騎士ガンダム達は駆け出す。それにディエント兵達は剣と槍を構え、迎え撃つ。

 

騎士ガンダム

「【火槍(ファイヤランス)】ッ!【水槍(アクアランス)】ッ!」

 

ディエント兵×15

「ギャアァァァーーーッ!」

 

アリアン

『炎よ、剣と共に舞い踊れッ!』

 

ディエント兵×14

「グアァァァーーーッ!」

 

少数の騎士ガンダム達に対し、数の力でディエント兵達は倒そうとするが、個々の戦闘力が高い騎士ガンダム達に蹴散らされる。圧倒的な強さにディエント兵達の士気が下がり始めた時、5つの魔法のビームがアリアンに向けて放たれた。

 

騎士ガンダム

「アリアンッ!ぐッ、グアァァァッ!?

 

アリアン

「ナイトッ!?」

 

放たれた魔法のビームからアリアンをナイトシールドで守る騎士ガンダムだが、その威力の強さに吹き飛ばされてベットに激突する。それを見たアリアンはすぐに駆け寄る。

 

???

「まさかこの様な地で再び会うとはな。ガンダムッ!!

 

そう言って姿を現したのはジオン族の騎士ジオングであった。

 

騎士ガンダム

(騎士ジオングッ!?奴もこの異世界にやって来たのかッ!?)

 

ディエント兵F

「おぉッ!騎士ジオング様ッ!」

 

ディエント兵G

「騎士ジオング様が来てくれたぞッ!」

 

アリアン

「何ですってッ!?」

 

騎士ジオングの登場に騎士ガンダムが驚く一方で下がっていたディエント兵達の士気が回復。その名を聞いたアリアンの顔が強張る。

 

騎士ガンダム

「奴を知っているのか?」

 

アリアン

「私達エルフの間で危険視されている騎士よ。今まで私と同じ戦士を10人以上葬っているわ・・・」

 

騎士ガンダム

「アリアンと同じ戦士を10人以上だとッ!?」

 

騎士ジオング

「お喋りはそこまでにしてもらおう。さぁ、ガンダムよ!今こそジークジオン様の仇を取らせてもらうぞッ!!」

 

そう言うと同時に左手の指から閃光が迸る。それを見た騎士ガンダム達はその場から離れると、破壊されたベットは燃え朽ちる。

 

騎士ガンダム

「デヤッ!」

 

アリアン

「タアーッ!」

 

騎士ジオング

「甘いわッ!」

 

騎士ガンダム達はすぐさま反撃を行うが、騎士ジオングに全て防がれ、手持ちの剣と魔法のビームで迎撃される。

 

騎士ガンダム

「グアッ!」

 

アリアン

「キャアッ!」

 

ディエント兵F

「今だ!我々も続けッ!」

 

騎士ジオングの力に圧倒された騎士ガンダム達の姿を見たディエント兵達は一気に倒そうと迫る。騎士ガンダム達は応戦するも、騎士ジオングの横槍で徐々に押されていく。

 

騎士ガンダム

「ぐッ・・・(私はまだ大丈夫だが、軽装のアリアンでは長くは持たないッ!)」

 

アリアン

「・・・ナイトッ!時間を稼ぐから彼女達と一緒に脱出してッ!」

 

騎士ガンダム

「何を言っているッ!?それでは「私達の目的は彼女達の救出!だからお願いッ!」・・・分かった・・・ッ!」

 

そう話している間にもアリアンは精霊魔法を使って時間を稼ぐ。騎士ガンダムはアリアンの指示通りに女性エルフ達と共に【転移門(ゲート)】で逃走。相手が減った事にディエント兵達の士気は更に上がり、騎士ジオングと共にアリアンを完全に追い詰める。

 

アリアン

「ぐッ・・・!」

 

騎士ジオング

「仲間を逃がす為に自身を犠牲にするとはな。見事だ奴だ。ならばこの俺が止めを刺してやるッ!」

 

完全に消耗して身動きが出来ないアリアンに騎士ジオングの剣が振り下ろされる。それを見たアリアンは眼を瞑る。

 

ガキンッ!

 

すると何かがぶつかった音がし、アリアンは眼を開けて見ると、彼女の目の前にはナイトシールドで騎士ジオングの攻撃を防いだ騎士ガンダムの姿があった。

 

アリアン

「ナイトッ!?どうしてッ!?」

 

騎士ガンダム

「彼女達はダンカさんに預けて、君を助けに来たッ!」

 

アリアン

「私の事はいいからッ!逃げてッ!!」

 

騎士ガンダム

「例え種族は違えど、仲間を見捨てるものかッ!アリアンは、私が守るッ!!!」

 

騎士ガンダムはそう言って騎士ジオングの剣を跳ね除ける。その時、懐にある石板が光り出す。

 

‐某所‐

 

騎士ジオングの剣を騎士ガンダムが跳ね除ける頃、獣耳くノ一は居城の某所で爆弾を仕掛けていた。すると彼女の懐にある巾着袋が何かに共鳴する様に発光する。

 

獣耳くノ一

「ッ!?これは・・・御神体様が、共鳴している?一体何に?」

 

取り出した巾着袋を見てそう呟く獣耳くノ一。その答えは少し先の未来で判明する。

 

‐領主の寝室‐

 

騎士ガンダム

「これは・・・石板が光っているッ!?」

 

騎士ジオング

「敵を目の前にして余所見とはなッ!」

 

突然石板が光り出した事に驚いている騎士ガンダムに魔法のビームが放たれた。それに気付いた騎士ガンダムはナイトシールドを構えると、石板から1つの光が飛び出す。そして光はナイトシールドに宿った直後で魔法のビームが直撃して爆発。これに騎士ジオングは勝利を確信するが・・・

 

騎士ジオング

「何ッ!?」

 

騎士ガンダム

「これは、力の盾ッ!」

 

煙が晴れるとそこには三種の神器の1つ、力の盾を持った騎士ガンダムがいた。

 

騎士ガンダム

「(これなら奴の攻撃を完全に防げるッ!)アリアン!まだ戦えるかッ!?」

 

アリアン

「え、えぇッ!勿論よッ!」

 

騎士ガンダム

「なら反撃開始だッ!」

 

騎士ガンダムの問いに顔が少し赤くなっていたアリアンはそう答えて立ち上がり、剣を構える。それを見た騎士ガンダムは電磁スピアを持ち、2人同時に騎士ジオングへ立ち向かう。

 

騎士ジオング

「盾が変わったぐらいで調子に乗るなッ!」

 

騎士ジオングは全力の魔法のビームを放つが、力の盾に防がれてしまう。それに驚き、魔法のビームを乱射して騎士ガンダム達の接近を阻止しようとするが、全て力の盾に防がれる。

 

騎士ガンダム

「行くぞ!騎士ジオングッ!」

 

アリアン

「貴方に倒された戦士達の無念、ここで晴らさせてもらうわッ!」

 

騎士ジオング

「簡単にやられるものかッ!!」

 

騎士ガンダムが守り、アリアンが攻める連携で騎士ジオングを徐々に追い詰めていく。

 

騎士ジオング

「ぐッ・・・!」

 

アリアン

「ナイトッ!」

 

騎士ガンダム

「あぁ!これで止めだ、騎士ジオングッ!」

 

騎士ジオングが怯んだ隙に騎士ガンダムとアリアンは技を放つ。

 

アリアン

『炎よ、剣に纏いて貫き爆ぜろッ!』

 

騎士ガンダム

「【雷嵐 (ライトニングストーム)】ッ!」

 

放たれた2つの技は交じり合い、1つの技となって騎士ジオングを呑み込む。

 

騎士ジオング

「グアァァァッ!?ジ、ジークジオン様ーーーッ!!!」

 

ディエント兵F

「騎士ジオング様が倒されたッ!?」

 

ディエント兵G

「あ、あんな化物に勝てる訳ねぇッ!俺は逃げるぞッ!!」

 

断末魔と共に騎士ジオングは塵も残さず消えた。それを見たディエント兵達は戦意を失い、その場から逃げて行く。それと同時に爆発音が響き、居城全体が痺れる様に震え、火災が発生する。騎士ガンダム達は火の手が広がる前に隠し部屋のある物を回収し、転移で脱出する。

 

‐ディエントの街近辺・ライデル川‐

 

領主の居城から脱出した後、騎士ガンダムは先程の爆発について考えていた。

 

騎士ガンダム

「(あの爆発は、もしかしたら獣耳くノ一の仕業だろうな。)これで依頼は全て達成かな?」

 

アリアン

「えぇ、本当に助かったわ。約束の報酬と追加はこれで足りるかしら?まぁ奪ってきた金貨の方が高額かもしれないけど・・・」

 

そう言って脱出する際に回収した誘拐組織の活動資金が入った2つの大袋を見るアリアン。それに騎士ガンダムは苦笑いする。

 

アリアン

「・・・ねぇナイト、これからどうするかは決めてるの?」

 

騎士ガンダム

「特に決めてないな。」

 

アリアン

「じゃあ、もし良かったら私と一緒にエルフの里に来ない?ここ以外にもまだ捕まっている仲間は多い。貴方の力を今後も貸してもらいたいのッ!」

 

騎士ガンダム

「(エルフの里かッ!是非行きたいが・・・)そう簡単に余所者が行っていいのか?」

 

アリアン

「流石に長老には会ってもらって許可がいるわ。」

 

騎士ガンダム

「やはり長老に会う必要があるか。」

 

アリアン

「心配?貴方への信頼の証として長老の1人、私が最も信頼する人物を紹介するわ。どう?」

 

そう言い終わると共に風が吹き、草原が靡く。そして月の光が2人を照らす。そして騎士ガンダムはある決心を決める。

 

騎士ガンダム

「アリアン。君が私に信頼を寄せてくれるのなら、私もそれに答えよう。」

 

アリアン

「ッ!?」

 

騎士ガンダムはファイティングゴーグルに手を掛けると、頭上に乗っていたポンタは右肩へ移動する。そしてファイティングゴーグルを取った騎士ガンダムの素顔を見たアリアンは驚愕する。

 

アリアン

「ナイト・・・貴方のその顔は・・・一体どうしたの?」

 

騎士ガンダム

「分からない。気が付けば姿と種族が変わり、この身1つでこの国に放り出されていた。」

 

アリアン

「成程ね。ナイト、貴方は私達の同胞を助けるのにその力を使ってくれたわ。貴方のその身の秘密については私達は絶対に口外しない!そしてもしそれが呪いの類によるものなら、長老が何か知恵をくれるかも知れないわ!」

 

騎士ガンダム

「ありがとう、アリアン。もしこれが呪いの類ならこれ程ありがたい事はない。」

 

アリアン

「決まりね。じゃあ改めて名乗るわ。私の名はアリアン・グレニス・メープル。カナダ大森林メープルの戦士。ナイト、里へ来る気はない?」

 

騎士ガンダム

「私の名は騎士ガンダム。風来の旅をする騎士であり冒険者。そちらの厄介になる。」

 

騎士ガンダムはファイティングゴーグルを被り直し、差し出されたアリアンの右手を握り返して互いに名乗る。まだ夜は明ける事無く、見通しは月の光だけという覚束ないものだが、種族は違えど、確かな絆を紡いだ彼らは未来へと突き進む。

 

第6話END




次回「エルフの里へ」


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第7話「エルフの里へ」

次回はリクエストの消化をしてから本編に入ります。

皆さんのクエストをお待ちしてます。
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‐ローデン王国王都オーラヴ・王城‐

 

ディエントの街で囚われたエルフ達を騎士ガンダム達が救出してから4日後。ディエント侯爵が何者かに襲撃されたという件は王城の貴族達に広がり、幾つもの思惑や噂が錯綜していた。

 

???

「ディエント侯の一件、襲撃者は判明したのか?セクト。」

 

王城内のある一室でローデン国王、カルロン国王は招集した3人の王位後継者の1人である第一王子セクトにそう問う。

 

セクト

「いえ、未だ・・・ただ、エルフ族の手の者によるという噂が流れております。」

 

カルロン国王

「セクトよ、何故その様な話が口の端に昇っておる?」

 

セクト

「ディエント侯が条約を破り、エルフ族を捕縛して東の帝国に売り捌いている。その様な話も聞いておりましてね。」

 

???

「侯が?まさか・・・」

 

???

「フン、根も葉もない噂だろ?確証でもあるのかセクト兄さん。」

 

セクトの言葉に反応したのは残りの王位後継者である第二王女ユリアーナと、第二王子ダカレスであった。

 

セクト

「おや?ダカレス、ディエント侯の肩を持つのか?」

 

ダカレス

「王国の貴族を只の噂で貶めるなと言っているッ!!」

 

セクトの言葉にダカレスはテーブルに拳を叩き付けて怒鳴る。それをカルロン国王は手を出して静止させる。

 

カルロン国王

「控えよ。ダカレスの言う通り、確証もなく候を貶める様な発言はやめよ。ただ無視は出来ぬ噂である噂であるのもまた事実。」

 

ダカレス

「は・・・」

 

セクト

「・・・・・・(ニヤリ)」

 

そう言われたダカレスは顔に汗を浮かばせる。逆にセクトは口角を少し上げる。

 

カルロン国王

「早急に正式な調査団をディエントに派遣せねばならんだろう・・・この一件、ユリアーナはどう考える?」

 

ユリアーナ

「私も噂には聞いております。事実であればエルフ族との条約が破られた事だけならず、事によっては他国との軋轢を生む可能性もあります。早急に事態を解明し、エルフ族と話し合いの場を設ける事が必要でしょう。

万が一エルフ族が報復としてリンドブルトとの交易量を絞られる事になれば、他国からの突き上げをもらい受ける事になります。」

 

カルロン国王

「そうだな。魔道具ならいざ知らず、豊穣の魔結石の供給量を絞られでもすれば・・・更に国内の貴族達が王家に反発するだろう。ユリアーナ、お前はリンブルトへ行き、エルフ族と接触できるよう交渉してみてもらえるか?」

 

ユリアーナ

「承知しました。お父様。」

 

その会話を聞いたダカレスは少し顔が強張る。そして話し合いは終わり、王位後継者の3人は退室する。

 

カルロン国王

「全く、困ったものだな・・・」

 

退室する王位後継者3人の後ろ姿を少し見詰めていたカルロン国王はそう呟く。

 

‐エルフの里・ララトイア‐

 

その一方、騎士ガンダム達はダンカ達と合流後、カナダ大森林を4日間歩いた一同はエルフの里の1つ、ララトイアへ到着した。

 

アリアン

「開門ッ!!アリアン・グレニス・メープル!ダンカ・ニール・メープル!人族に囚われた者達の救出任務より帰還!長老に取り次ぎを求むッ!」

 

門の前に立ったアリアンは見張り台に向って大声で名乗りと目的を告げる。やがて正面の落とし格子が軋みながら上へと引き上げられ、遅れて奥にあるもう1枚の落とし格子も上がり始める。

 

ダンカ

「では俺は次の任務に移る。後は頼んだぞ。」

 

アリアン

「はい!」

 

その間にダンカは別の任務へ向かう。そして門が完全に開いた。

 

アリアン

「先ず長老に挨拶してくるから、ナイトは少しここで待ってて。」

 

騎士ガンダム

「分かった。」

 

アリアンはそう言って囚われていた者達を連れて門の中に入って行く。騎士ガンダムは待っている間にポンタと戯れる際に家族と再会し、涙を流して喜ぶエルフ達の姿を眼にする。

 

騎士ガンダム

「彼女達を無事に助けられて本当に良かった。なぁ、ポンタ。」

 

ポンタ

「きゅん!」

 

その光景を見た騎士ガンダムとポンタはそう微笑むのであった。

 

‐数時間後‐

 

騎士ガンダムがポンタと戯れてから辺りが随分と薄暗くなってきた時、正門の奥からアリアンが出てくる。

 

アリアン

「お待たせナイト!長老の許可を取ったわ!来て!」

 

騎士ガンダム

「分かった!行くぞ、ポンタ。」

 

ポンタ

「きゅん!」

 

騎士ガンダムは金貨の大袋を担ぎ、ポンタを乗せてエルフの里へ入る。街壁内は畑や家畜用の牧草地などが広がっており、点々と木造住宅が点在していた。

 

騎士ガンダム

(人の街と違って独自の民族文化だが、生活面が上なのが垣間見えるな。)

 

長閑な風景を見ながら、アリアンを先頭に綺麗に敷かれた石畳の道を進む騎士ガンダム。等間隔で設置された街灯らしき物が灯り、遠くの景色に明かりの道が浮かび上がる。

夕闇の空の下で幻想的な風景を騎士ガンダムは見ながら歩いていると、正面に巨大な大樹一体となった建物が見えてくる。

 

騎士ガンダム

「あの大樹一体となった建物は?」

 

アリアン

「あそこが長老の家よ。」

 

‐ララトイア長老宅‐

 

アリアンの案内で騎士ガンダムは長老宅に着くと、玄関前には2人のエルフ族が立っていた。

 

ディラン

「君がナイト君だね?よく来てくれたね。私はディラン・ターグ・ララトイア、この里の長をしている。」

 

グレニス

「妻のグレニス・アルナ・ララトイア。アリアンの母です。」

 

騎士ガンダム

「お初に御目に掛かります、長老様に奥方様。私は騎士ガンダム、風来の旅をする騎士であり冒険者で・・・ん?アリアンのご両親ッ!?じゃあアリアンは長老様の娘さんッ!?

 

アリアン

「言ってなかったっけ。」

 

ディラン

「娘が大層世話になったそうだね。」

 

グレニス

「今年で170歳です♡」

 

アリアン

「ハァ、245歳でしょ。全くお母さんはいつもいつも。」

 

まさか長老一家がアリアンの両親であり、長老の娘だと知って驚く騎士ガンダム。アリアンは母の言葉に呆れる。

 

ディラン

「娘から大体の経緯は聞いたよ。エルフ族を代表してお礼を言おう、ありがとう。それにしても今回は娘が領主城を襲撃してしまったのは予想外の出来事でね。」

 

アリアン

「条約があったのにそれを無視してローデンの貴族が関わっていたのよッ!」

 

ディラン

「今回は誘拐犯の拠点を潰すという話だったのに何故領主城まで?」

 

アリアン

「それはッ!」

 

騎士ガンダム

「ディラン長老、アリアンの代わりに私が経緯を説明します。」

 

‐家内‐

 

家内に入り、食卓に座った後で騎士ガンダムはディランに拠点での救出時に遭遇した獣耳くノ一の話を掻い摘んで説明した。

 

ディラン

「成程・・・では明日今回の件の報告と、この売買契約書を持って中央の大長老会で説明するとしよう。アリアンも付いて来てくれ。」

 

アリアン

「はい!」

 

グレニス

「難しいお話は終わったかしら?そろそろ食事にしましょう♡」

 

話が終わったタイミングでグレニスは夕飯のホワイトシチューにパンとサラダをテーブルに並べていく。

 

ポンタ

「きゅ~うッ!」

 

騎士ガンダム

(凄く美味しそうだが・・・)

 

ポンタはシチューを入れて貰った専用の皿に早速とばかりに口を付けるが、熱すぎて一声鳴き、冷めるまでジッと待つ。騎士ガンダムはシチューの入った皿を前にして悩んでいると、ディランから声を掛けられた。

 

ディラン

「娘からは君の身体の事は聞いているよ。私とグレニスなら大丈夫だよ。」

 

そう促された騎士ガンダムはファイティングゴーグルをテーブルの脇に置く。その素顔にディランとグレニスは僅かに驚くが、何も言わずにシチューを勧める。

 

騎士ガンダム

「いただきます。」

 

騎士ガンダムはそう言ってスプーンを手に取り、シチューを掬う。その際にも多少驚かれもした。

 

グレニス

「おかわりもあるので遠慮しないでね♡」

 

騎士ガンダム

「ありがとうございます。」

 

ポンタ

「きゅん♡きゅん♡」

 

久しぶりに誰かと一緒に食卓を囲んで食べる暖かさを感じた騎士ガンダム。こうしてエルフの里、ララトイアでの初めての夜は更けていった。

 

‐翌日‐

 

ディラン達が森都メープルの大長老会で救出作戦の結果報告をしている頃、朝食を取った騎士ガンダムとポンタはグレニスの案内でララトイアを見て回っていた。

 

騎士ガンダム

「すいません、案内をしてもらって。」

 

グレニス

「アリアンのお世話になったんですから、これくらい当然よ。」

 

騎士ガンダム

「この里は割と大きい方ですか?エルフ族の数も随分多い様ですが。」

 

グレニス

「安全の為、ここより先にあった小さな里を吸収したから、4000人くらいかしら?」

 

騎士ガンダム

(成程、誘拐対策か。確かに散らばってるより、纏まっていた方が安全性は高いな。)

 

騎士ガンダムがそう考えていると、彼を見掛けたエルフ達は警戒の視線を向けられ、会話が聞こえてくる。それに騎士ガンダムは気まずくなっていると、彼のもとに女の子達が駆けて来る。

 

エルフの女の子達

「鎧のお兄さん!」

 

騎士ガンダム

「あの時の子達かッ!」

 

エルフの女の子A

「お兄さん、里に来てたんだ!」

 

騎士ガンダム

「あぁ、長老の所で世話になっているよ。」

 

エルフの女の子B

「見て見て!直してもらった足、全然平気だよ!」

 

そう言ってエルフの女の子Bはジャンプして風を纏って一回転して着地する。

 

騎士ガンダム

「おぉ、それは元気で何よりだ。」

 

エルフの女の子B

「うん!」

 

そして女の子達の両親達もやって来てお礼を言われる騎士ガンダム。その様子にグレニスは微笑み、他のエルフ達の警戒心は少しだけ緩んだ。やがて交流を終えて別れる。

 

騎士ガンダム

「すいません、グレニスさん。足止めしてしまって。」

 

グレニス

「いいのよ、ナイト君。皆喜んでるんだから。それより、少し私と手合わせしてみない♡」

 

騎士ガンダム

(なんとおぉぉぉぉぉぉーーーッ!?)

 

‐鍛練場‐

 

唐突にグレニスから手合わせを受ける事になった騎士ガンダムは木刀と木盾を装備し、木刀を待つグレニスと距離を置いて対面する。ポンタは邪魔にならない場所の石の上に座る。

 

騎士ガンダム

「確認ですが、私とグレニスさんの手合わせでよろしいですか?」

 

グレニス

「えぇ♡大丈夫よ。アリアンの剣技は見たでしょ?」

 

騎士ガンダム

「はい。もしや剣を教えたのは・・・」

 

グレニス

「そうよ。あの子に剣を教えたのは私よ。そうそう後れを取ったりしないわ。それにダークエルフ族は身体能力に優れた一族なの。だからどうしても相手を量る場合には腕の方を見たくなるのよね♡あとは大事な娘の近くにいる男性がどれ程頼りになるかは親として知っておきたいから♡」

 

騎士ガンダム

「あ~、成程。分かりました。」

 

グレニス

「では、いきます・・・よ♡」

 

その言葉に臨戦態勢に入る騎士ガンダム。だが次の瞬間に一気に距離を詰められ、鋭い突きが放たれていた。それを間一髪で木盾で防ぐが、強い衝撃が騎士ガンダムを襲う。

 

騎士ガンダム

「(何て強い衝撃だッ!?騎士ジオングよりも強―――)どあぁッ!?」

 

グレニスの攻撃を利用して距離を取ろうとした時、一瞬で背後を取られた騎士ガンダムはバランスを崩されて倒れる。すぐに起き上がろうとする前に木刀の先がそれを止める。

 

グレニス

「眼と相手の攻撃を利用して距離を取ろうとしたのはいいけど、不意を突かれた時の反応が素人よ。視えているなら最少で避けなさい♡」

 

騎士ガンダム

「は、はいッ!」

 

グレニス

「ささ♡構えて構えて、どんどんいくわよ♡」

 

騎士ガンダム

「(この世界で生きる以上、戦技は必要不可欠。これ程の熟練者から戦いのイロハを受けられるとは幸運だ。)もう一度、お願いしますッ!」

 

そして騎士ガンダムは立ち上がり、グレニスに挑むが、何度も倒されてボロボロになっても立ち向かう。その繰り返しで時間は進み、やがて夕方となる。

 

騎士ガンダム

「ハァ、ハァ、ハァ・・・フッ!」

 

グレニス

「・・・・・・」

 

肩で息をする騎士ガンダムに対し、グレニスは汗を描く事も無く涼しい顔をしていた。そして騎士ガンダムは突きを放つが、グレニスは最少で回避。その瞬間で騎士ガンダムは背後に転移する。

 

騎士ガンダム

「(覚―――)ごッ!?

 

次元歩法(ディメンションムーヴ)】で背後を取るが、あっさりとグレニスに迎撃されて倒された。

 

騎士ガンダム

「無念・・・」

 

グレニス

「あら、もう夕暮れね。アリアン達が帰ってくる前に夕食の準備をしなきゃ♡手伝ってくれるかしら、ナイトさん。」

 

騎士ガンダム

「分かりました、グレニスさん。」

 

そしてグレニスは木刀を仕舞いに行き、ポンタは騎士ガンダムの近くに寄る。倒された騎士ガンダムは夕方の宙を見る。

 

騎士ガンダム

「(ステータスが高くても通用しない強さ・・・か。)異世界(せかい)は広いな、ポンタ。」

 

ポンタ

「きゅい♡きゅい♡」

 

少し休んだ騎士ガンダムは起き上がり、木刀と木盾を片付けて大樹の屋敷への帰路についく。

 

‐森都メープル‐

 

騎士ガンダムがグレニスと手合わせを受けた一方では、大長老会に参加したディランとアリアン。エルフ族族長ブリアンと、他のエルフ族やダークエルフ族とドワーフ族の族長に人質救出作戦の結果報告後、200年前のローデン国王とエルフ族の間で結ばれたエルフ族捕縛に関する禁止条約がディエント侯爵もとい人族に破られた事。

だが救出の際に結果的に一国の領主襲撃は公になれば再び戦争となるなどの話し合いが数時間及び、同胞の救出は継続。ローデン王国への対応は静観する事で一応の決着が付いた。2人が会議室から外に出る頃には夕方であった。

 

アリアン

「今回はごめんなさい、父さん・・・」

 

ディラン

「間違った事をした訳じゃない。それに今回の件は終わってない・・・アリアンには引き続きこの件の調査をしてもらう事になる。ナイト君にも正式に依頼してみよう。せっかくメープルまで来たし、イビンにも会いたかったが・・・」

 

アリアン

「姉さんに何か用事でもあったの?」

 

ディラン

「あぁ、アリアンには言ってなかったな。イビンだが、来年あたりに結婚するらしいよ。」

 

アリアン

えーーーッ!?姉さん・・・が?あの戦闘狂で一生結婚する気はないって言ってた姉さんが、結婚ッ!?」

 

転移陣の祠へ向かう道中でアリアンとディランはそう話していると、突然父から姉の結婚報告で驚くアリアン。するとそこへ全力疾走で接近する人物がいた。

 

???

「アーーーリーーーンーーーちゃーーーんッ!」

 

アリアン

「きゃ!?イッ、イビン姉さん!?」

 

噂をすれば影、アリアンに抱き着いて押し倒したのは姉であるイビンであった。

 

イビン

「も~何で会いに来てくれないのぉ!」

 

アリアン

「ひっ!久しぶりです姉さん。」

 

イビン

「折角アリンちゃんが来るって言うから任務をサボって待ってたのに~!」

 

ディラン

「イビンは相変わらずだね。」

 

イビン

「あっ、お父さんも来てたんだ!そんな事よりアリンちゃんッ!姉ちゃんじゃないでしょ!ほらほら!」

 

アリアン

「わっ、分かったから。お・・・お姉ちゃん・・・」

 

イビン

「うふふふ~♡」

 

そう言う父に素っ気無く、妹のアリアンに頬擦りしてそう言うイビン。そのいつもの光景を見たディランはヤレヤレとなり、先に転移陣の祠へ向かう。

 

アリアン

「お姉ちゃんが今後結婚するって聞いたけど、本当なの?」

 

イビン

「本当よ♡アリンちゃん的には大事なお姉ちゃんが知らない人に取られた様で妬いてるかなぁ~?」

 

アリアン

「・・・どんな人なの?」

 

イビン

「それがさ~、まじめで馬鹿正直な結構変な人なのよぉ♡」

 

そう言うイビンにアリアンは少し寂しい顔をする。

 

イビン

「やっぱり気になるのぉ?」

 

アリアン

「べ・・・別に・・・」

 

イビン

「アリンちゃんは近くに気になる人とかいないのぉ?」

 

アリアン

「わっ、私には・・・///

 

アリアンはいないと答えようとした時、ふと騎士ガンダムの姿が思い浮かび、顔を赤くして俯いてしまう。そんな見た事も無い妹の姿にイビンは眼を見開く。

 

イビン

「えっ、いるのッ!!?ダメよッ!アリンちゃんと結婚する男は私より強くないと許さないんだからねッ!!!」

 

アリアン

「ちょっ、お姉ちゃん私に結婚させないつもりッ!?・・・もう!今日はお客さんが来てるから帰るわねッ!」

 

イビン

「え~~~ッ!!」

 

そう言って抱き着いて来た姉を引っぺがしたアリアンは転移陣の祠で待っていた父と合流し、イビンに見送られながらララトイアへ帰投する。

 

‐数分後 ララトイア長老宅‐

 

ディランとアリアンが帰ってきた後、グレニスが作った夕食を騎士ガンダム達と一緒に食べ終え、ディランは騎士ガンダムとアリアンに今後の話し合いをする。

 

ディラン

「改めてこの売買契約書に書かれた人物の情報の収集と、同胞達の救出を大長老会から言い渡された。だが里の外、人族の世情には我々はかなり疎い上に、あまり大人数の戦士を派遣する事も出来ない。そこでナイト君に、引き続きアリアンの手伝いをお願いしたい。

ただ正直ナイト君に我々が支払える報酬はあまりない、ナイト君の方が我々よりお金を持っているだろうしね。なので1つ情報を売るというのはどうかな?もしかすると君の身体の呪いも解けるかも知れないよ。」

 

騎士ガンダム

「ッ!その情報とは?」

 

ディラン

龍冠樹(ロードクラウン)の傍にある、あらゆる呪いを解く泉。」

 

アリアン

「そんな泉あったかしら?」

 

ディラン

「それなりに信憑性のある話だと思うよ・・・かなり危険な場所を通る事になるだろうけどね。」

 

騎士ガンダム

「その龍冠樹とは?」

 

ディラン

「この世界に多数存在する竜種のうち最上種が龍王(ドラゴンロード)。この龍王が済み場所に稀に生えてくる大樹が龍冠樹だ。精霊を宿す龍冠樹は樹や葉に様々な効力を持つ。そして深く張られた根でその周辺の地にまで影響を及ぼすんだ。」

 

アリアン

「ただし龍冠樹が持つ効力は宿る精霊によって様々なの。付近には龍王が住んでいる可能性も高いし、精霊を怒らせればタダじゃ済まないわ。」

 

騎士ガンダム

「成程(流石に単機1人で竜種の最上種に挑みたくはないな)・・・その龍王の住処に踏み入って無事では済まないか?」

 

アリアン

「人族がいきなり踏み込めばさすがに不味いでしょうけど、エルフ族の私達から話を通しに行けば立ち入る事くらいは許可が下りる筈よ。」

 

騎士ガンダム

「そうか(以前アリアンから呪いの類ではないかと言われたが、私は本当に呪いを掛けられているか?)。」

 

騎士ガンダムはそう考えながら自身の右手を見詰める。

 

アリアン

「心配しないで、ナイトがその泉に行く時は、私も同行するわ。」

 

騎士ガンダム

「そうか!」

 

ディラン

「どうかな、ナイト君?君の力をもう暫くエルフ族に貸して貰えないだろうか?」

 

騎士ガンダム

「勿論、有益な情報を頂いた以上、全身全霊でやらせてもらいます!」

 

ポンタ

「きゅい♡」

 

ディラン

「本当に助かるよ、ありがとう。」

 

グレニス

「娘をよろしくね、ナイトさん。」

 

騎士ガンダム

「はっ、はい!お任せくださいッ!」

 

グレニスにそう言われた騎士ガンダムは起立してそう答える。それを見ていたアリアンは首を傾げる。行方不明になったエルフ族の探索する為、騎士ガンダム達の新たな冒険が始まる。

 

《おまけ》

 

‐風呂場‐

 

話を終えた後、騎士ガンダムはグレニスに頼み、ポンタと一緒に風呂に入って今日の疲れを取っていた。

 

騎士ガンダム

「あぁぁ~身体が癒されるな~ポンタ~。」

 

ポンタ

「きゅいきゅい~♡」

 

ポンタ共々身体を洗い、異世界で久しぶりに浸かる風呂を堪能する騎士ガンダム。それ故にこの後に起こる事故を知る由もなかった。

 

アリアン

「~♪あっ・・・」

 

騎士ガンダム

「あっ・・・・・・」

 

すると風呂場の戸が開き、ありのままのアリアンと騎士ガンダムの眼が合う。

 

アリアン

「キャァァァーーーッ!!!」

 

騎士ガンダム

「まっ、待ってくれアリアンッ!落ち着―――

 

「鍵を掛けときなさいよぉぉッ!!!」

 

グアァァァーーーッ!!?」

 

そしてアリアンが放った精霊魔法で騎士ガンダムは黒焦げとなって倒れた。

 

第7話END




次回「新たな冒険と炎の剣」


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第8話「新たな冒険と炎の剣」

本作に登場する騎士ガンダムや今後登場予定のSDキャラ達はリアルモデルで登場します。前半に力を注ぎ過ぎた・・・

烈 勇志さんのクエスト『森の中にいる謎の騎士の調査』『洞窟に潜むモンスター退治』が受注されました。

皆さんのクエストをお待ちしてます。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=291834&uid=345359


前回、騎士ガンダムはディラン長老から正式に行方不明のエルフ族探索依頼を受け、アリアン達と共にエルフの里・ララトイアを出発。王都に向かう道中の街に立ち寄った際に冒険者ギルドに王都の情報収集をしに行った騎士ガンダムはとある依頼を受ける。

 

‐とある森‐

 

騎士ガンダム

「本当にすまないアリアン、急がねばいけないところを。」

 

アリアン

「気にしないで。それにもしかしたら同族に会えるかもしれないんでしょ。」

 

ポンタ

「きゅいきゅい!」

 

街道から離れた森中を騎士ガンダム一同は話しながら進む。そして騎士ガンダムは昨日の冒険者ギルドで受付嬢と王都の情報を話していた時の事を思い返す。

 

‐回想 冒険者ギルド‐

 

騎士ガンダムは受付嬢から王都の情報を聞き、立ち去ろうとした際にカウンターに置いてあった依頼書が眼に留まる。

 

騎士ガンダム

「『森の中にいる謎の騎士の調査』?」

 

受付嬢

「あぁ、それはこの街と隣の離れた街との合同依頼です。街の間にある街道が敷かれた森の中で魔獣からの襲撃を受けた冒険者や商人達を今まで見た事のない鎧を身に纏った騎士が助けたりしているんです。しかしその騎士が何者かのかが不明の為、ギルドは正体を確かめようと冒険者の皆さんに依頼をだしたのですが、3日前にその森で未確認の魔獣も確認されて調査が難航してまして。」

 

騎士ガンダム

「成程。それでその謎の騎士の特徴や外見はどんな感じですか?」

 

受付嬢

「そうですね、丁度騎士様とよく似た兜を付けていました。」

 

騎士ガンダム

「私に?」

 

そして情報を聞き終えた騎士ガンダムは宿に戻り、アリアンに王都の情報とギルドで聞いた依頼を話して合って受ける事にした。

 

‐回想END‐

 

騎士ガンダム

(もし私の知っているキャラの誰かだったら事情を話してエルフ族探索を手伝ってくれたら嬉しいが、敵側のガンダム族だったら今の実力で太刀打ちできるのであろうか・・・)

 

ポンタ

「ッ!きゅんきゅん!」

 

アリアン

「ポンタッ!?」

 

騎士ガンダム

「何か見付けたのか?」

 

するとポンタは何かを見付けて駆け出す。それを見た騎士ガンダム達は追い掛けていくと、小さく開けた場所に出る。するとそこには簡易的なサバイバルシェルターとその傍には焚火の跡も残っており、ここで誰かが生活していた事を物語っていた。

 

騎士ガンダム

「これはもしや謎の騎士の拠点か?」

 

アリアン

「そうかもね。まだ焚火に熱が残ってるからここで生活しているのは間違いないわね。」

 

ポンタ

「きゅんきゅん!」

 

するとポンタが叫び、2人を呼ぶ。騎士ガンダム達はサバイバルシェルターにいるポンタの所へ集まると、ポンタの近くに革袋が置いてあった。

 

アリアン

「この革袋に何かあるのかしら?」

 

騎士ガンダム

「気が引けるが、調べるか。」

 

騎士ガンダムは革袋を開けて中を調べる。そして予備のハンカチを見付け、その隅に紋章が付いていた。それをよく見た騎士ガンダムは眼を見開く。

 

騎士ガンダム

「これは、ブリティス王国の紋章ッ!?」

 

その紋章は騎士ガンダムが知ってる物語に出た国の物であった。スダ・ドアカワールドでも珍しい、MS族により統治が為され、キングガンダム一族並びに円卓の騎士の故郷であるブリティス王国の紋章であった。

 

アリアン

「ブリティス王国?」

 

ポンタ

「きゅい?」

 

騎士ガンダム

「これは私が知っている国で、私の同族が国を統治しているんだ。」

 

アリアン

「ナイトの同族が!じゃあ謎の騎士って

 

『ウワァァァァーーーッ!!?』

 

―――ッ!?」

 

騎士ガンダム

「これは街道の方かッ!行こう!アリアン、ポンタッ!」

 

アリアン

「えぇッ!」

 

ポンタ

「きゅんッ!」

 

悲鳴を聞いた騎士ガンダム達は急いで街道へ戻ると、そこには乗客が乗った馬車と護衛の冒険者達にマンモスの様な大型魔獣が襲っていた。

 

騎士ガンダム

「あれはリアルドタンクマンモスッ!?」

 

アリアン

「あの魔獣を知ってるの?」

 

騎士ガンダム

「太古から生息している巨大な魔獣だ。あの巨体や牙も脅威だが、奴の鼻から放たれた冷気はどんなものも凍らせる。私が注意を引くからアリアンは彼らを頼むッ!」

 

アリアン

「分かったわ!」

 

そして騎士ガンダムは電磁スピアから雷撃を放ち、リアルドタンクマンモスの注意を自分に向ける。その間に護衛の冒険者達と乗客達をアリアンが避難させる。

 

リアルドタンクマンモス

「ブシュ―ッ!」

 

騎士ガンダム

「おっと!」

 

リアルドタンクマンモスの鼻から放たれた冷気を騎士ガンダムは避ける。そして騎士ガンダムがいた場所と木々は一瞬で凍り付く。

 

騎士ガンダム

「避けて正解だった。前回*1みたいに防げるとは限らないからな。」

 

リアルドタンクマンモス

「ブシュ―ッ!」

 

するとリアルドタンクマンモスは騎士ガンダムに体当たりするがこれを難なく避けた騎士ガンダムは電磁スピアを脚に突き刺すと同時に放電を放つ。

 

リアルドタンクマンモス

「ブシュ―ッ!?」

 

アリアン

「ハッ!」

 

全身に電流を流されたリアルドタンクマンモスは怯んでフラつき、そこへ避難を終わらせたアリアンが合流し、追撃の斬撃で牙の1本を斬り落とす。騎士ガンダム達がこのまま倒そうとしたその時!

 

リアルドタンクマンモスB

「ブシュ―ッ!」

 

冒険者

「こっちにも出たぞーッ!?」

 

突如避難させた冒険者達と乗客達の方からもう1体のリアルドタンクマンモスが現れた。

 

騎士ガンダム

「何ッ!?」

 

アリアン

「もう1体いたのッ!?」

 

リアルドタンクマンモスA

「ブシュ―ッ!」

 

突然の事態に騎士ガンダム達は動きを止めて隙を晒し、リアルドタンクマンモスAは冷気を吹き掛ける。それに気付いた2人は辛うじて直撃を避けて騎士ガンダム達は駆け付けるが間に合わず、冒険者達と乗客達が死んでしまう最悪の未来を想像したその時、リアルドタンクマンモスBの真上から1つの影が現れた。

 

???

「フンッ!」

 

リアルドタンクマンモスB

「ブシュ―ッ!?」

 

アリアン

「あれってッ!?」

 

騎士ガンダム

「(私と同じリアルモデルだけど間違いない!あれは)騎士ガンダムF90Ⅱッ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「ッ!」

 

リアルドタンクマンモスBにハルバートの一撃を与えて冒険者達と乗客達を助けた騎士F90Ⅱは自身の名を言った騎士ガンダムに一瞬だけ眼を向けるがすぐにリアルドタンクマンモスBへ視線を戻す。

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「こっちは俺がやる!お前達はもう1体に集中しろッ!」

 

騎士ガンダム

「わ、分かった!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

(あの者は何故俺の名を?いや、それは後で聞くかッ!)

 

そして騎士ガンダム達をもう1体のリアルドタンクマンモスAに向かわせた騎士F90Ⅱは疑問を考えるがすぐに意識を切り替え、目の前のリアルドタンクマンモスBへ立ち向かう。

 

リアルドタンクマンモスB

「ブシュ―ッ!!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「そんな攻撃は当たらんッ!」

 

冷気攻撃を避けてリアルドタンクマンモスBの死角に入り、騎士F90Ⅱはハルバートの一撃で左前足を斬り飛ばす。この攻撃で重心を失ったリアルドタンクマンモスBは倒れ、無防備な頭部を晒す。

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「止めだッ!」

 

リアルドタンクマンモスB

「ブシュ―ッ!?」

 

そして脳天へハルバートを突き刺されたリアルドタンクマンモスBは息絶える。

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「向こうも終わったか。」

 

倒し終えた頃には丁度騎士ガンダム達の方も戦闘が終わり、その後は冒険者達と乗客達を乗せた馬車を見送った騎士ガンダム達は騎士F90Ⅱの仮拠点で話をする。

 

騎士ガンダム

「では貴方はネオジオンとの最終決戦で異次元に落ちてこの世界に漂着したと。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「あぁ、この世界を調べる前にこの森でモンスターを退治しながら少しでも修行していたのさ。それとアンタに聞きたい事ある。」

 

騎士ガンダム

「私に?」

 

騎士F90Ⅱにそう言われた騎士ガンダムは首を傾げる。

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「何故俺の名を知っているんだ?名乗った覚えはないが?」

 

アリアン

「そう言えば彼の姿を見て名前を言ってたけど。どうして知ってるの?」

 

2人の問いに騎士ガンダムはどう答えるかと悩んだが、正直に話す事にした。

 

騎士ガンダム

「私が貴方を知っているのはあくまで物語の知識としてなんです。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「物語の知識?」

 

騎士ガンダムは騎士F90Ⅱが登場した聖機兵物語を話す。それを聞いた騎士F90Ⅱは自身の行動(活躍)を言い当てられた事に眼を見開いて驚きつつも納得する。その後、騎士ガンダム達は今回受けた依頼の件で騎士F90Ⅱに次の街まで同行してもらう事になり、その道中でこの世界の説明と注意事項*2を騎士ガンダムから聞いた騎士F90Ⅱは驚くと同時に少し考える。

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「・・・なぁ、俺もそのエルフ族探索に同行させてくれないか?」

 

アリアン

「え!?」

 

騎士ガンダム

「それは願ってもない事だが、理由を聞いても?」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「この世界では人間族以外の他種族は迫害を受けているのなら今後私の様にこの世界へ迷い込だMS族も迫害などを受ける。その前にその者達の保護をしたい。それに話を聞いてしまった以上はな。」

 

騎士F90Ⅱがそう言った後、騎士ガンダムとアリアンはお互いの顔を見て頷く。

 

騎士ガンダム

「分かった。これからよろしく頼む、騎士F90Ⅱ。」

 

アリアン

「私からもよろしく。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「あぁ。(これで良いんだよな?親父。)」

 

騎士F90Ⅱは空を見上げ、スダ・ドアカワールド(故郷)にいる騎士ガンダムF90(親父)にそう問う。こうして新しい仲間、騎士ガンダムF90Ⅱが仲間になった騎士ガンダム達は依頼を完了する為に街を目指す。

 

‐3日後‐

 

無事依頼を完了し、騎士ガンダムF90Ⅱを加えた騎士ガンダム達は王都を目指すが、3日前の大雨で本道の一部が泥濘んでしまい上手く進めず、現在は遠回りする道の先にある天宮(アーク)村で一泊する代わりにある依頼を受ける事になった。

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「この村の傍にある洞窟に潜む魔獣討伐か・・・」

 

騎士ガンダム

「村の規模に対して人数が少なかったのは分かったが・・・」

 

アリアン

「それがヒュドラに酷似した魔獣の仕業なのよね・・・」

 

ポンタ

「きゅい・・・」

 

天宮村に着いた騎士ガンダム達は村の異変を見て村長に話を聞き、事情を聴いてしまった以上は見て見ぬふりも出来る訳なく討伐依頼を受ける事となった一同は情報共有や対策など考えていた。

 

アリアン

「村長から聞いた感じ小さい様だけど油断できないわ。」

 

騎士ガンダム

「う~ん、ヒュドラザクの様な魔獣だったら対処は出来ると思うが・・・」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「だが全く未知の魔獣かもしれん。万全を期して挑まねばならん。」

 

騎士ガンダム達は作戦を練り、洞窟内での戦闘を避けて煙で誘き出し、村から少し離れた広場で罠を張って迎え撃つ事にした。

 

‐30分後 天宮村傍の洞窟‐

 

ポンタを村長に預けて広場に罠を張り終えた騎士ガンダム達は洞窟の前で煙を炊き、数分間洞窟へ煙を送っていると地響きが起きる。3人は武器を構え、戦闘態勢に入ると同時に洞窟に潜む魔獣の姿が露わとなる。

 

???

「よもやこの異界の地でも貴様らと会う事になるとはな、忌々しい頑駄無共ッ!!!」

 

騎士ガンダム

「あれは、大蛇飛駆塞虫ッ!!?」

 

騎士ガンダム達の前に現れたのは原作と違い一回り小柄であるが武者頑駄無の世界でかなりの被害を作り出した妖怪大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)であった。

 

大蛇飛駆塞虫

「だが丁度良い、あの村の珍妙な者達では腹の足しにもならんかったのでな。貴様らを喰らって本来の力を取り戻す糧にしてくれるッ!!!」

 

騎士ガンダム

「散開ッ!」

 

大蛇飛駆塞虫の突撃で戦闘が始まり、騎士ガンダム達は散開して斬撃や魔法で攻撃しつつ広場へ誘導する。

 

‐広場‐

 

大蛇飛駆塞虫

「ええいッ!ちょこまかとッ!!」

 

騎士ガンダム

「おっとッ!」

 

アリアン

「さっき攻撃した所がもう回復してる!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「だが不死身じゃないッ!後もう少しだッ!」

 

攻撃を避けてながら広場の中央へと誘導に成功した騎士ガンダム達は大蛇飛駆塞虫を3方向に別れて包囲する。

 

騎士ガンダム

「【大地束縛(アースバインド)】ッ!」

 

大蛇飛駆塞虫

「ぐッ!?小癪なッ!!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「今だッ!」

 

アリアン

『炎よ、剣と共に舞い踊れッ!』

 

騎士F90Ⅱの合図にアリアンは炎を纏った剣を地面に突き刺すと炎が走り、束縛されて動けない大蛇飛駆塞虫の真下に到達すると同時に大爆発する。

 

大蛇飛駆塞虫

「グアァァァアァァァッーーーーーーー!!!???」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「対機兵用の爆弾とその上に木片や尖った石を置いて殺傷力を高めた罠だ。流石の回復も―――

 

「舐めるなーーーッ!!!」

 

何ッ!?グオッ!」

 

爆炎から大蛇飛駆塞虫が振るった尻尾が騎士F90Ⅱに直撃して吹き飛ばされてしまう。

 

騎士ガンダム・アリアン

「騎士F90Ⅱッ!?」

 

大蛇飛駆塞虫

「喰らえッ!!!」

 

騎士ガンダム

「どあッ!?」

 

アリアン

「キャアッ!」

 

そして大蛇飛駆塞虫のそれぞれ8つの頭から炎、吹雪、雷に留まらず、岩、嵐、雷、闇、無の攻撃が騎士ガンダム達を襲う。騎士ガンダムはナイトシールドを力の盾に変化させ、アリアン達と負けじと応戦するが徐々に押されて追い詰められる。

 

大蛇飛駆塞虫

「さぁここまでだ。大人しく糧になってもらうッ!!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「フン、誰がなるかッ!」

 

アリアン

「えぇ、大人しく糧になる気は無いわッ!」

 

騎士ガンダム

「そう言う事だ。私達は貴様には負けないッ!」

 

騎士ガンダムがそう言った時、石板が光り出すと同時に1つの光が飛び出してナイトソードに宿ると三種の神器の1つ、炎の剣へとなった。

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「それは、炎の剣ッ!?」

 

アリアン

「ナイトッ!」

 

騎士ガンダム

「反撃だッ!」

 

大蛇飛駆塞虫

「たかが剣が変わった程度でッ!」

 

炎の剣を装備した騎士ガンダムを先頭にアリアン達は攻勢を仕掛ける。大蛇飛駆塞虫から各属性ブレスが放たれるが、騎士ガンダム達はダメージを負いながらも肉薄して近接戦に満ち込んで大蛇飛駆塞虫を攻撃する。

 

大蛇飛駆塞虫

「ぐッ・・・き、傷が癒えが遅いだとッ!?」

 

騎士ガンダム

「焼き斬ればすぐには回復できまいッ!」

 

アリアン

「一気に決めるわよッ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「あぁッ!」

 

炎の剣による攻撃で回復が追い付かない大蛇飛駆塞虫に騎士ガンダム達の一斉攻撃で5つの頭を斬り落とす。

 

大蛇飛駆塞虫

「ば、バカなッ!?たかがガンダムと珍妙な生き物にやられるだとッ!?」

 

騎士ガンダム

「これで終わりだ、大蛇飛駆塞虫ッ!【火炎斬(フレイムスラッシュ)】ッ!!!」

 

大蛇飛駆塞虫

「己ーーーーーーッ!!!!!」

 

騎士ガンダムの最後の一撃で大蛇飛駆塞虫は断末魔を上げて燃え朽ちて戦いが終わる。それを見た騎士ガンダム達は力が抜けて暫く座り込んでから天宮村へ帰投する。

 

第8話END

*1
第2話のジャイアントバジリスク戦を参照

*2
他種族迫害etc.




次回「理想に燃ゆる王女に黄金の奇跡が舞い降りた」


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第9話「理想に燃ゆる王女に黄金の奇跡が舞い降りた」

お待たせいたしました。第9話です。それと新ライダーのガッチャードが錬金術師だと発表されたので放送中のライザのアトリエが自分の中でベストマッチッ!したので書こうかなと思ってます。錬金術繋がりなので大丈夫ですよね?

皆さんのクエストをお待ちしてます。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=291834&uid=345359


新たな仲間、騎士ガンダムF90Ⅱと共にローデン王国の王都を目指す騎士ガンダム達。一同は順調に進んで行き、王都まで後2日で到着する距離であった。

 

騎士ガンダム

「後少しで王都か、どんな感じだろうか。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「この世界の人間族の国か。興味はあるな。」

 

アリアン

「もう、観光に行くんじゃないからね。」

 

ポンタ

「きゅん。」

 

そう話しながら進んで行く一行は森を抜け、湖がある開けた街道に出る。するとその湖の上を飛ぶ複数のドラゴンフライが群れに遭遇。森から急に現れた騎士ガンダム達に対してギチギチと顎を鳴らして襲い掛かる。

 

騎士ガンダム

「ぬおッ!?こっち来んなッ!」

 

アリアン

「ナイトッ!?そっちじゃないッ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「やれやれ・・・」

 

その後、思わず元の素が出た騎士ガンダムは複数のドラゴンフライに追い掛け回されながら電磁スピアを放電させて撃退する。

 

‐数時間後 とある街・宿屋‐

 

アリアン

「ナイト、虫は苦手だったのね。」

 

騎士ガンダム

「幼い頃、顔に向かって虫が飛んできた事があってな・・・」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「情けない。それで虫型モンスター・・・ここでは魔獣だったか。それに遭遇したらどうする。」

 

騎士ガンダム

「何とか克服します・・・」

 

食事を取りながらそう話し合い、騎士ガンダムと騎士F90Ⅱのやり取りを見てアリアンは小さく笑った後、地図を取り出してテーブルに広げる。

 

アリアン

「さて、話を戻しましょう。オーラヴに行くには森沿いの街道を馬車で移動するのがいいんだけど、私達はこの森を進んで近道しようと思うの。」

 

騎士ガンダム

「早く着くに越した事はないしな。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「ここに来るまで大回りをしたからな。」

 

女将

「あんたら森を突っ切る気かい?やめときな。今あそこは危険だよ。」

 

すると騎士ガンダム達が頼んだ残りの料理を運んできた女将に忠告される。

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「女将、その森で何かあったのか?」

 

女将

「ここ数日で10人以上喰われちまったって話さ。普段は森に出る様な魔獣じゃないんだけどね。確か名前はホーンテッドウルフだったね。」

 

アリアン

「ホーンテッドウルフの尻尾を使えば・・・」ボソッ

 

女将は盛大に溜息を吐いて肩を竦ませる。騎士F90Ⅱが詳細を聞くと、街道沿いにまで現れて旅人や商人を襲い、その噂が近隣に流れて街へ訪れる人が徐々に減り始めた。これに領主は冒険者に招集を掛けて討伐依頼を出し、冒険者もその毛皮が高く売れるとあって意気込んでいるらしいが、事は全く上手く運んでいないと聞く。

 

騎士ガンダム

「成程、教えてもらいありがとうございます。」

 

女将

「いいって、いいて。はい、チビちゃんの分。」

 

ポンタ

「きゅん♡」

 

ポンタの分を貰った後、女将は仕事へ戻って行くのを見計らって騎士ガンダムは何かを呟いたアリアンに声を掛ける。

 

騎士ガンダム

「アリアン。先程何かを呟いていたが、何か気になる事が?」

 

アリアン

「あぁ、聞こえてた?実は私、姉がいるんだけど、もうすぐ結婚するらしいの。」

 

唐突に身内の結婚話が上り、騎士ガンダムと騎士F90Ⅱは眼を見開いて驚く。

 

アリアン

「だからもしホーンテッドウルフの尻尾の毛が手に入ればベールを作って贈りたいと思って・・・」

 

騎士ガンダム

「成程、つまり姉君にその作ったベールを贈りたいと。」

 

アリアン

「うん・・・急がなきゃいけないのは分かってるけど、ダメかしら?」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「この世でたった1人の姉への贈り物だろ。それくらい構わない。」

 

騎士ガンダム

「そう言う事だ。喜んで協力する。」

 

ポンタ

「きゅん♡」

 

アリアン

「ありがとう、皆!」

 

そして夕食を食べ終えた一行はそれぞれの部屋に戻り、明日に備えて早めに就寝する。

 

‐翌日 麓の森‐

 

朝食を食べ終え、宿屋を発った騎士ガンダム達は森へと入り暫く進んで行くと先にポンタが反応すると同時に騎士ガンダム達も複数の視線と気配を感じ取る。

 

ポンタ

「きゅん!」

 

騎士ガンダム

「来たかッ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「意外と早い遭遇だな。」

 

アリアン

「2人共、構えてッ!」

 

武器を構え、背を合わせて臨戦態勢に入った騎士ガンダム達は周囲を警戒する。そして風が鳴らす葉擦れに紛れて急速に騎士ガンダムへ白い影、ホーンテッドウルフが迫る。それに気付いた騎士ガンダムは電磁スピアで胴体を貫いたと思った瞬間、まるで霞の如く霧散し、その奥から新たなホーンテッドウルフが飛び掛かる。

 

騎士ガンダム

「幻影ッ!?ぐッ!」

 

電磁スピアが振れない距離まで詰められ、騎士ガンダムはナイトシールドでその牙を防ぐ。その隙を騎士F90Ⅱのハルバートが仕留める。

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「話で聞いた通り、これは厄介だな。」

 

アリアン

「気を付けて!まだ来るわッ!」

 

倒された1匹を皮切りに茂みや木々の間から一斉にホーンテッドウルフの群れが襲い掛かる。騎士ガンダムは再度突き出すが先程と同様に霧散して消え、空振りに終わる。気を取られた瞬間に電磁スピアを持つ手甲に噛み付かれ、腕を食い千切ろうと身体を滅茶苦茶に捩る。騎士ガンダムは腕を振り上げて遠心力で引き剥がし、空中に放り出された隙でやっと1匹を倒す。

 

騎士ガンダム

(やっと1匹か。アリアン達はどうだろうか?)

 

騎士ガンダムは電磁スピアを放電させて牽制しながら後ろに視線を向けるとアリアンは複数の幻と実体の集団にも拘らず、精霊魔法で剣に炎を纏わせて危なげなく戦う。すると1匹が木に登って飛び跳ね、幻を作って頭上から襲おうとするがアリアンは再び精霊魔法で地面から4本の棘を出現させて幻影を含めて本体を貫く。本体が事切れると同時に幻が消える。

一方で騎士F90Ⅱはハルバートで牽制と同時に土埃を立てて近くにいた数匹のホーンテッドウルフの眼を潰し、動きが止まった瞬間に斬り倒す。

 

騎士ガンダム

(力押しだけの私と違って長年戦士と騎士として実戦を積んできた2人の戦い方はとても精練されている。見習わないければな。)

 

攻撃を防ぎながら2人の戦いを見ていた騎士ガンダムは現状をどう打開するかを考える。

 

騎士ガンダム

(現状、範囲系のスキルや魔法は効果や威力がどの程度か不明な以上使用は出来ない。ならばこの群れの長を倒すッ!)

 

騎士ガンダムは自分達がいる場所を少し離れた位置から見渡せる崖にいる一回り大きい個体、ホーンテッドウルフの長を発見すると同時に【次元歩法(ディメンションムーヴ)】で背後を取り、電磁スピアを突き出すが野生の勘で躱される。その際に騎士ガンダムは長の左後ろの足首に填められたある物に気付く。

 

騎士ガンダム

「(あれはあの時の*1リングッ!)ならばッ!!」

 

そして騎士ガンダムの背後を取ったホーンテッドウルフの長はその牙で屠ろうと迫るが、牽制で放たれた【火炎(ファイヤ)】で怯んだ一瞬に騎士ガンダムの電磁スピアがリングへ直撃して破壊する。意識を取り戻したホーンテッドウルフの長は周囲を見渡してから吠えるとアリアン達を襲っていた他の仲間を集めて森へと向かう。その際に群れの長は一度騎士ガンダムの方を振り向いて見詰める。

 

騎士ガンダム

「・・・・・・」

 

ホーンテッドウルフ(長)

「・・・・・・」

 

騎士ガンダムと長は数秒見詰めた後、長は群れを率いて木々の中へと消える。そして騎士ガンダムは破壊したリングを拾い上げた時にアリアン達が合流する。

 

アリアン

「ナイトッ!一体どうなってるの?」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「群れの長と戦っていた様だが・・・何かあったのか?」

 

騎士ガンダム

「少しな・・・これを見てくれ。」

 

そう言って騎士ガンダムはアリアン達に破壊したリングを見せる。それを見た2人は首を傾げているとリングは消滅する。そして騎士ガンダムは2人と出会う前に今回と同じ事があった事を話す。

 

アリアン

「ジャイアントバジリスクにもさっきのリングが・・・」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「謎のリングか、一体何者の仕業だ?」

 

騎士ガンダム

「それに関しては分からない、ただこれだけは言える。魔獣を軍事利用しようとする存在がいる事だ。」

 

騎士ガンダムの言葉に2人は眼を見開くと同時に魔獣を軍事利用しようとする未知の存在への警戒心が上がる。

 

‐同時刻 ユリアーナside‐

 

騎士ガンダム達がホーンテッドウルフを退けた頃、藪に覆われて奥を見通す事は出来ないあまり幅の広くない森の中の道を王命を受けたユリアーナと侍女のフェルナを乗せた馬車と護衛部隊が足早に進んでいく。大雨の影響で予定よりも遅れるが、エルフ族と対話の場を設ける為に一路リンドブルト大公国へと目指していた。

 

ユリアーナ

「ハァ・・・」

 

フェルナ

「ユリアーナ様、何か御口に入れて落ち着かれてはどうです?」

 

ユリアーナ

「ありがとう、フェルナ。」

 

フェルナ

「今回のリンブルト訪問に際して何か気懸りでもあるのですか?」

 

ユリアーナ

「今回の訪問、内々で進めてここまで来たのに何か胸騒ぎがするのよね・・・(王位継承を狙っているあの2人が動かないなんて・・・)何事もなければいいけど・・・」

 

胸中に渦巻く言い知れぬ不安を抱えながら独りごちるユリアーナは馬車の窓から今にも泣きだしそうになった空を眺める。そんな時、馬車に衝撃が走るッ!

 

護衛兵A

「敵襲ーーーッ!!!」

 

護衛兵長

「敵は魔法師の集団!魔法攻撃を防げッ!!」

 

護衛兵A

「グワァッ!」

 

護衛兵B

「守りを固めろッ!」

 

盗賊?

「防御を食い破れッ!!狙うは王女の命ッ!!!」

 

護衛兵C

「カハッ!」

 

護衛兵長

「馬車に近付けさせるなッ!」

 

護衛兵D

「グハッ!」

 

それと同時に隊列の最前列から悲鳴と怒号に戦闘音が辺りに響き渡る。護衛兵達はミスリルの盾で魔法攻撃と敵の接近を防ぐ。だが盗賊に扮した第一王子派の暗殺部隊には偶々入手したジャイアントバジリスクの毒を仕込んだ毒矢と凶刃によって1人、また1人と護衛兵達は倒れていく。護衛兵を排除した暗殺部隊は目標がいる馬車に仲間の1人が扉を強引に開ける。

 

フェルナ

「お逃げ下さいッ!姫様ッ!!」

 

暗殺者A

「グハっ!?」

 

暗殺者B

「このクソ(アマ)ッ!」

 

馬車の中から勢いよく突進して来た短剣を構えたフェルナは暗殺者Aを打倒してユリアーナを逃がそうとするが、もう1人の暗殺者の刃に討たれる。

 

ユリアーナ

「フェルナッ!!」

 

幼馴染でもあった侍女のフェルナを目の前で殺され、ユリアーナは彼女の血で豪奢なドレスが汚れるのも厭わずに追い縋ろうとした瞬間、背後から剣が突き刺さり、鮮血が飛び散ると同時にユリアーナは事切れる。それを確認した暗殺部隊の指揮官、カエクスは部下に隠蔽工作の指示を飛ばす。そして部下の1人がユリアーナから取った首飾りを持ってくる。

 

暗殺者C

「カエクス様、ユリアーナ王女殿下の形見で御座います。」

 

カエクス

「ご苦労。王女の事は実に残念だ・・・こんな災難にあうなんてな・・・ククッ。」

 

暗殺者C

「うおッ!?」

 

カエクス

「どうした?」

 

暗殺者C

「いや、変な動物がッ!」

 

ポンタ

「ウウウウウウゥ、ウウウウウッ!!」

 

カエクスや他の暗殺者達が瀬々笑っていた時、暗殺者Cの顔に飛び付き、顔を引掻いくポンタを引っぺがして見せる。

 

カエクス

「殺しちまえ、そんなもん。」

 

暗殺者C

「ハハ、そうっすね。」

 

暗殺者Cがそう言った後、ポンタを掴んでいた右腕が何かに掴まれる。

 

暗殺者C

「え?」

 

騎士ガンダム

「何をしている、貴様ら?」

 

そこには助けたポンタを右腕に抱え、左手で暗殺者Cの右腕を握り潰して放り投げた騎士ガンダムの姿があった。

 

‐数十分前‐

 

倒したホーンテッドウルフを騎士ガンダム達は血抜きを行っていた時、木陰で寝ていたポンタは不意に戦闘音が聞こえて目を覚ます。

 

ポンタ

「きゅんッ!」

 

騎士ガンダム

「どうかしたか、ポンタ?」

 

ポンタ

「きゅーーーんッ!!」

 

何かに反応したポンタに騎士ガンダムは気に掛けるとポンタは一直線にどこかへ向かう。

 

騎士ガンダム

「ポンタッ!?」

 

アリアン

「どうしたのかしら?」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「何かあったのか?」

 

騎士ガンダム

「アリアン、騎士F90Ⅱ、すまないが少し待っててくれッ!」

 

アリアン達と別れ、ポンタを追い掛ける騎士ガンダム。そしてユリアーナの暗殺現場に辿り着く。

 

‐現在‐

 

騎士ガンダムは暗殺者Cをカエクス達の方へ放り投げ、事切れたユリアーナの傍にしゃがむ。

 

暗殺者D

「何だアイツはッ!?」

 

暗殺者E

「見られたからには殺せッ!【火炎弾(ファイヤバレット)】ッ!」

 

暗殺者F

「【岩石弾(ロックバレット)】ッ!」

 

暗殺者達から魔法攻撃を背に受けながら騎士ガンダムはユリアーナの状態を見ていた。

 

騎士ガンダム

(高貴な身形、貴族か。既に事切れているか・・・中級職である司教の【蘇生復活(リニメイション)】を使ってもいいが、欠点として生命力一割弱で蘇るから重傷を負った状態では再び逝ってしまう。)

 

暗殺者G

「グワァッ!何だコイツらッ!?」

 

騎士ガンダム

「ッ!?」

 

ホーンテッドウルフ(長)

「グルルルル・・・」

 

騎士ガンダム

「お前は、ホーンテッドウルフの長ッ!」

 

ホーンテッドウルフ(長)

「ガァオオオンッ!!」

 

相手の悲鳴が聞こえ、騎士ガンダムは振り向くとそこにはついさっき戦ったホーンテッドウルフの長がいた。そして暗殺者Gを仕留めた後、遠吠えで茂みにいる仲間を呼び、暗殺部隊を包囲する。

 

騎士ガンダム

「連中が気に食わんのは君達も一緒か。」

 

ホーンテッドウルフ(長)

「ガウッ!」

 

騎士ガンダム

「では行くぞッ!!」

 

騎士ガンダムの掛け声と同時に長を含めたホーンテッドウルフ達は暗殺部隊と戦闘を始める。

 

‐数分後‐

 

戦闘後、カエクスを含めた生き残った数人の暗殺部隊は逃走した。騎士ガンダムはホーンテッドウルフ達にお礼として燻製肉を渡す。それを受け取ったホーンテッドウルフ達は森へと消えていった。それを見送った騎士ガンダムは亡くなったユリアーナの傍に戻り、蘇生を試みる。

 

騎士ガンダム

ゲーム(元の)世界なら通りすがりの蘇生と回復は感謝される程度で問題ないが、この異世界でそれを繰り返せば後々厄介ごとがやって来る。だが私よりも年下の子には早過ぎる最期だ。)

 

騎士ガンダムは念の為に周囲を確認し、横たわるユリアーナに向って手を翳して呪文を唱える。

 

騎士ガンダム

「【再生復活(リジェネティブ)】」

 

魔法は問題なく発動し、ユリアーナの身体から黄金の輝きが立ち上ると光が眩く煌めく。すると胸元に付けられた傷が映像の逆再生の様に閉じていく。

 

騎士ガンダム

「(流石上級職の教皇が持つ魔法だ。欠点として損傷が甚大、または死亡時間が経ち過ぎると失敗するが間に合って良かった。)ポンタ、この娘を見ていてくれ。私は他の者達を蘇生する。」

 

ポンタ

「きゅい!」

 

そして騎士ガンダムは他の者達の蘇生を行う。その際に僅かに意識が回復したユリアーナは蘇生を行っている騎士ガンダムの後ろ姿を見る。

 

ユリアーナ

(あれは・・・黄金の・・・竜・・・?)

 

その後ろ姿を見ている時、一瞬だけ騎士ガンダムの姿が黄金の竜へと変わった所で再び意識を失う。

 

‐数分後‐

 

生き返った大半の護衛兵達にフェルナとユリアーナはこの事態に困惑する。しかし傷は無くとも鎧には真新しい傷と服は血と破れがあるそれは現実だと認識させる。これにユリアーナは神が起こした奇跡を捉えた。そしてフェルナに皆を集める様に頼む。

 

フェルナ

「護衛の者達よッ!傾聴せよ!ユリアーナ王女殿下の御言葉であるッ!!」

 

ユリアーナ

「皆さん、此度我らは敵に討たれ死んだ筈でした・・・しかし神々は見捨てなかった。中には神々の思し召しにより天に召され戻らなかった者達もいます。」

 

ユリアーナの言葉に耳を傾けているのは約30名程の護衛兵達は50名以上いた為、20名近い犠牲が出た事になる。王女の言葉に何人もの護衛兵が涙を堪え、肩を震わせる。

 

ユリアーナ

「これは奇跡・・・いえ、天啓と言えますッ!!我らは前に進まねばなりません!受けた慈悲に報いなければなりませんッ!今や我らの歩みを止める者はおりません!いざリンブルトへッ!」

 

護衛兵達

「オォオォオォオォォォォーーーーーーッ!!!!!」

 

王女の言葉に鬨の声を上げる兵士達。そして一同はリンブルトへ向かう為、荷の整理を行う。それを離れた場所から騎士ガンダムとポンタが見ていた。

 

騎士ガンダム

「まさか貴族ではなく王族とは・・・冷静に考えれば、死者を復活させる蘇生や復活魔法は迂闊だっただろうか・・・」

 

そう考えながら騎士ガンダムはその場からアリアン達のいる場所へ戻る。

 

騎士ガンダム

「間違いなく歴史は動いた・・・出来れば良い未来になる事を祈ろう。」

 

ポンタ

「きゅん!」

 

そして騎士ガンダムはアリアン達と合流後、一度【転移門(ゲート)】でララトイアに戻って入手した尻尾の毛を実家に預け、道中で起こった出来事の報告と騎士F90を紹介した一同は捜索に戻る。

 

‐2日後 王都オーラヴ‐

 

騎士ガンダム

「おーッ!」

 

ポンタ

「きゅいー!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「これがローデン王国の首都か。大きいな。」

 

騎士ガンダム達は王都の全体が見える丘におり、その光景を眺めていた。そして一同は入税を支払い、城門の中へ入ると街は人々の賑わいで溢れていた。

 

騎士ガンダム

「圧巻とはこういうもを言うのだろうな。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「この賑わいを見るとブリティス王国(故郷)を思い出す。」

 

アリアン

「やっぱり王都となると人が多いわね。」

 

騎士ガンダム達がそう話していると男が1人吹き飛ばされ、それを騎士ガンダムは受け止める。

 

男A

「クソガキが、舐めた口をッ!!」

 

男B

「下手に出てりゃいい気になりやがってッ!」

 

騎士ガンダム

「喧嘩か?」

 

アリアン

「全く、野蛮な人達ね・・・」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「だがあの様な連中がいれば紛れ込みやすくもある、俺達には好都合だ。」

 

そう話している間に男達は絡んだ小柄な少年に簡単に倒された。

 

騎士ガンダム

「おぉ、あっさりと決着が付いたな。ん?」

 

小柄な少年

「・・・・・・」

 

騎士ガンダムがそう思っていると小柄な少年は騎士ガンダム達の方を向いて歩いてくる。

 

騎士ガンダム

「あー、眼を付けられてしまった・・・」

 

アリアン

「ナイトがジロジロ見てるからよ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「どうするんだ?」

 

小柄な少年

「どうも、お久しぶりです。」

 

騎士ガンダム・アリアン

「え?」

 

小柄な少年の言葉に騎士ガンダムとアリアンはそう反応し、騎士F90Ⅱは眼を鋭くして警戒する。

 

小柄な少年

「ディエントでは事が上手く運んだ様で何よりです。」

 

その言葉にアリアンも警戒するが、その声と気配に騎士ガンダムはある人物を思い出す。

 

騎士ガンダム

「君はもしや、獣耳くノ一か!!」

 

こうしてエルフ族捜索を行っていた騎士ガンダムは獣耳くノ一と再び会う事となった。この時に石板と御神体が共鳴し、僅かに発光していた。

 

第9話END

*1
第3話を参照。




次回「三つの星が集う時」


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第10話「三つの星が集う時」

三種の神器
「待たせたなッ!」

皆さんのクエストをお待ちしてます。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=291834&uid=345359


‐エツアト商会・隔離収容区画‐

 

エツアト商会長

「商品の様子はどうだ?」

 

秘書

「ハッ、順調です。来月には出荷できるかと。」

 

エツアト商会長

「そうか・・・獣人族は扱いが楽でいい。その後の補充状況は?」

 

秘書

「抜かりなく。この所、思う様な商売が出来ませんでしたが、ようやくですね。」

 

エツアト商会長

「あぁ、これでダカレス様もお喜びになるう。」

 

ローデン王国王都オーラヴの第3街区内にある大規模奴隷商、エツアト商会。その敷地にある隔離収容区画でエツアト商会長と秘書が瀬々笑う中、牢屋の中には腹部が膨れた複数の女性獣人達がいた。

 

‐同時刻 王都オーラヴ‐

 

獣耳くノ一

「ボクの事をくノ一・・・と。やはり聞き間違いではなかったのですね。エルフ族の救出お見事でした。貴方と少しお話がしたいのですが、構わないでしょうか?」

 

アリアン

「ナイト、この娘は?」

 

騎士ガンダム

「ディエントでの救出作戦時に言えなかったが、彼女から売買契約書と情報提供を受けたんだ。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「それで、君は何者だ?」

 

チヨメ

「申し遅れました。ボクの名はチヨメ。刃心(ジンシン)一族、六忍の1人です。この場で話すのもあれなので場所を移しませんか。」

 

そして騎士ガンダム達は獣耳くノ一、チヨメの提案を受けて王都オーラヴにある宿屋の1つへと場所を移す。

 

‐宿屋‐

 

ポンタ

「きゅん♡」

 

宿屋に到着後、1つの部屋に入るとポンタはベットに飛んで寝転ぶ。騎士ガンダム達はチヨメを交えて備え付けのテーブルに座る。

 

騎士ガンダム

「では改めて名乗ろう、私は騎士ガンダム。こっちはポンタだ。」

 

ポンタ

「きゅん♡」

 

アリアン

「アリアン・グレニス・メープル、カナダ大森林メープルの戦士よ。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「騎士ガンダムF90Ⅱだ。ナイトとの血縁は無い。」

 

チヨメ

「ナイト殿、アリアン殿、ポンタ殿にF90Ⅱ殿ですね。早速ですがナイト殿に1つお聞きしたく。」

 

騎士ガンダム

「何だろうか?」

 

チヨメ

「何故ボクを忍者と呼んだのですか?」

 

騎士ガンダム

「あー、私の故郷で大昔チヨメ殿と同じ格好をした密偵が忍者と呼んでいたんだ。」

 

チヨメ

「忍者とは我らの一族のみに伝わる隠された名。となるというナイト殿は初代様と同じ御国の生まれなのですね。」

 

騎士ガンダムが何とか捻り出した回答にチヨメは納得すると同時に気になる事を言う。

 

騎士ガンダム

「その初代様は健在か?」

 

チヨメ

「いえ、600年程前ですので・・・」

 

騎士ガンダム

「そうか(その初代も私の同様に異世界へ飛ばされた日本人、或は地球人で間違いないかもしれないな)・・・」

 

アリアン

「ところでチヨメ・・・ちゃん。ナイトにどんな話を?」

 

アリアンの言葉にチヨメは顔を引き締める。この時、騎士ガンダム達は彼女の目的を察していた。

 

チヨメ

獣人族(なかま)の救出にご助力願えませんか?皆さんは売買契約書に記された人物を探している筈・・・報酬としてボクからその人物の情報を提供します。」

 

騎士ガンダム

「成程、だが私は現在エルフ族のアリアンと協力をしている。この場で君達に協力するのは仁義に悖なってしまう。」

 

この言葉にチヨメは落ち込む。彼女の足元にいたポンタは脛をこする。

 

騎士ガンダム

「(いくら熟練の忍者でもまだ年端もいかない少女だ。出来れば笑顔にしたい・・・今の私の力で救える命を助けたいッ!)どうだろうか?アリアン、騎士F90Ⅱ。彼女の持つ情報が真実かは分からないが・・・」

 

アリアン

「良いわよ。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「俺も構わない。」

 

騎士ガンダム

「2人共ッ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「助けを求める手を拒んでは騎士の名折れだ。そんな事をすれば親父に怒られる。」

 

アリアン

「見損ないでナイト。仲間を助けたい気持ちは知ってるもの。」

 

騎士ガンダム

「チヨメ殿ッ!喜んで協力させて頂こう。」

 

チヨメ

「はっ、はいッ!」

 

その言葉にチヨメは笑顔で返す。そしてチヨメから獣人族救出作戦の具体的な話を騎士ガンダム達を聞く。大規模奴隷商のエツアト商会を襲撃するが中央と繋がりが強く、すぐに衛兵が集結し、増援として王国軍が動く前に他4箇所の奴隷商にも襲撃するとチヨメは話す。

 

アリアン

「それじゃあエツアトに襲撃する人や解放した人達が逃げるのは難しいわよ?」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「エツアトは囮か。」

 

チヨメ

「はい、同胞を囮に使い他の者達を逃がします。全員を救う事はできません・・・100を救う為に10の犠牲を払わなければならいのなら、ボク達はそれをするだけです・・・ッ!」

 

チヨメをそう言い、膝に置いた手を強く握る。それを見たアリアンは騎士ガンダムにアイコンタクトを送る。

 

騎士ガンダム

「チヨメ殿。私は転移魔法が使える。」

 

チヨメ

「転移魔法ッ!?あれは見間違いではなかったのですねッ!やはりナイト殿も初代様と同じ時空忍術をお使いにッ!?」

 

騎士ガンダム

「忍術ではないが、一度記憶した場所なら一瞬で移動できる。」

 

アリアン

「ナイトの魔法を使えばリスクを大幅に減らせるはずよ。」ドヤッ

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

(何故ドヤ顔をしているんだ?)

 

チヨメ

「時空忍術を使えるナイト殿がいてくれれば・・・作戦を大幅に変えられるッ!早速この事を他の仲間に伝えて参りますッ!」

 

騎士ガンダム

「分かった。だが慌てた状態で急ぐと危ないから気を付けてくれ。」

 

チヨメ

「ご心配ありがとうございます!そうそう、襲撃は今晩ですので準備をお願いします。」

 

騎士ガンダム達

!?

 

そしてチヨメは部屋を出る際、騎士ガンダム達に衝撃的な言葉を言い残して出ていく。

 

アリアン

「私には計画実行が今晩って聞こえたんだけど・・・」

 

騎士ガンダム

「私もそう聞こえた・・・」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「俺の空耳じゃない様だな・・・」

 

騎士ガンダム達はお互いに顔を見合わせた後、今晩に向けて準備を始める。

 

‐同時刻 王城・とある一室‐

 

ダカレス

「クソ、何故だッ!ホーンテッドウルフが、肝心な時に命令を聞かんとは!それにホーバン伯爵が何故この時期に討たれるッ?!ディエントといい、一体何が起きたと言うのだ!忌々しいッ!!」

 

男性

「何者かにリングが破壊されてしまった様です。」

 

革張りのソファから腰を浮かせ、ワインが入った杯を投げた手を力一杯握り締める第二王子のダカレス。その整った顔立ちは激しく歪め青い瞳には怒りの色を浮かべ、金色の髪を振り乱して荒い息を吐く。その問いにこの国の三将軍の1人、セトリオン・ドゥ・オルステリオ将軍が答える。

 

ダカレス

「ではユリアーナは無事だと?」

 

セトリオン

「現在捜索を行っていますが、こちらを警戒して裏道を使っているかと。ディエントとホーバンの一件以来、エルフ族や獣人族の密売に対する取締りが厳しくなっております。」

 

ダカレス

「くッ、益々こちらの商売がッ!襲撃犯の手掛かりはッ!」

 

セトリオン

「エルフ族らしき者と変わった鎧を纏った騎士が関与していたとの報告があります。ただ詳しい事はまだ・・・いずれはその者達がこのオーラヴに来るでしょう。」

 

報告を聞いたダカレスは血管がはち切れる程に怒りを浮かべる中、セトリオンは淡々と答える。

 

ダカレス

「俺にどうしろと言うのだ?」

 

セトリオン

「裏口に馬車を用意させます。誰も知られていない隠れ家へ暫く身を潜める事が賢明かと。」

 

セトリオンの助言に従い、ダカレスは馬車に乗って王城から避難する。その様子を見ていたセトリオンは懐からユリアーナが所持していた首飾りを取り出し、事が上手く進んでいる事に笑みを浮かべる。

 

‐数時間後 王都第3街区内‐

 

準備を済ませた騎士ガンダム達はチヨメとの合流地点に早く着き、軽食を食べながら待機していた。

 

騎士ガンダム

「流石王都、山と海の幸がこれ程あるとはな。」

 

アリアン

「王都には国中の物が集まって来るからね。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「物流が盛んである証拠だな。」

 

アリアン

「ねえ、これ食べてみて。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「見た事の無い串焼きだな。」

 

騎士ガンダム

「では1本貰おう。」

 

アリアンから差し出された串焼きを騎士ガンダムと騎士F90Ⅱは食べる。

 

騎士ガンダム

「サクサクした触感だけどキノコみたいで美味しい。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「悪くないな。何の食材だ?」

 

アリアン

「ドラゴンフライ。」

 

アリアンの言葉に騎士ガンダムは眼を見開き、騎士F90Ⅱは「あーあれか。次見掛けた時は捕まえて焼くか。」と言う。

 

騎士ガンダム

「あの時のトンボなのか?」

 

アリアン

「言ったでしょ、サクサクして結構いけるから今度食べてみてって。」

 

騎士ガンダム

「そうだな。この世界にはまだ知らない食があるんだな。」

 

笑顔でそう言うアリアンに騎士ガンダムはそう答えると同時に虫態勢が少し上がった。そして一同は食べ終えると丁度チヨメとその仲間であろう忍者がやって来た。

 

チヨメ

「お待たせしました。他の襲撃担当の準備も整った様です。」

 

騎士ガンダム

「こちらも準備は万全だ。それとチヨメ殿、そちらの方は?」

 

チヨメ

「私と同じ六忍の1人、ゴエモンです。ナイト殿とF90Ⅱ殿はゴエモンと正面をお願いします。」

 

騎士ガンダム

「分かった。今夜限りですが、よろしくお願いいたします。」

 

ゴエモン

「・・・・・・」

 

騎士ガンダムが右手を出して握手を求め、ゴエモンはそれに答える。互いの手が触れると同時に両者は強く握る。

 

ゴエモン

「お主、やるなッ!」

 

騎士ガンダム

「そちらこそッ!」

 

謎の絆的なものが芽生えた2人を見たアリアンと騎士F90Ⅱは困惑し、チヨメはゴエモンの珍しい光景を目の当たりにする。その後、移動中に騎士ガンダムはチヨメから初代様が半蔵だと聞いて内心驚くのであった。尚、チヨメ達六忍の名は偽名であり、実力上位の者達が襲名する事を知る。

 

‐10分後 エツアト商会近辺‐

 

チヨメ

「アリアン殿とボクは裏側から侵入します。ご武運をッ!」

 

アリアン

「陽動頼むわよ2人共ッ!」

 

ポンタ

「きゅん!」

 

騎士ガンダム

「任せてくれ。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「久しぶりの大きな戦いだ。派手に暴れてやるさッ!」

 

木の上に乗って裏側に行くアリアン達にそう言い、騎士ガンダム達はゴエモンと共に正門へと向かう。

 

‐正門‐

 

エツアト兵A

「ん?何だ?誰か来る!獣人ッ!?と、騎士?」

 

エツアト兵B

「オイ!そこで止まれテメェらッ!動くんじゃねぇぞッ!!」

 

商会の正門前で見張りをしていたエツアト兵A、Bは近付いて来る騎士ガンダム達にハルバートを構えて警告する。が、騎士ガンダム達はお構いなしに接近する。

 

エツアト兵A

「テメェら聞いえてんのか!?そこで止まれって言ってんだッ!」

 

騎士ガンダム

「さぁ、始めるとするかッ!」

 

ゴエモン

「【土遁・堅筋甲鎧】ッ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「行くぞッ!」

 

自身の術で鋼と化したゴエモンと騎士F90Ⅱのハルバート、騎士ガンダムの体当たりで突撃し、見張りごと正門を破壊してエツアト商会に殴り込む。その中で付近を警備しいた他のエツアト兵達が騒ぎに駆け付け、騎士ガンダム達の姿を見て敵襲を知らせる。

 

エツアト兵C

敵襲ーーーッ!敵は獣人1匹と鎧騎士2人のたった3人だッ!掛かれッ!!」

 

エツアト兵Cがそう言うと同時に他のエツアト兵達は各々の持つ武器で騎士ガンダム達に迫る。しかしガンダム無双の雑魚キャラの如く呆気なく吹き飛んで倒されていく。

 

エツアト兵D

「テメェら、ここがエツアト商会と知っての狼藉かッ!?こんな真似してタダで済むと思うなよッ!!」

 

騎士ガンダム

「それは怖いな。騎士F90Ⅱ、ゴエモン殿!魔法を放つので離れてくれッ!」

 

その言葉に2人は頷き、それを確認した騎士ガンダムは相手の注意を多く引く為に派手な魔法を放つ。

 

騎士ガンダム

「【岩石弾(ロックバレット)】ッ!」

 

エツアト兵達

「グアァァァーーーーーーッ!!?」

 

エツアト兵E

「クソ!あの蒼銀の騎士、魔法を使うぞッ!」

 

エツアト兵F

「もっと増援を呼べッ!!」

 

エツアト兵達は相手の強さと騎士ガンダムの魔法に戦慄する。そこへ騎士ガンダムはナイトソードにシールドを持った腕とマントを大きく広げて精神的追い討ちを掛ける。

 

騎士ガンダム

「怯えろ・・・!竦めぇッ!本来の実力を活かせぬまま、死んでゆけッ!!」

 

エツアト兵G

「ヒィッ!」

 

エツアト兵H

「ひっ、怯むなッ!」

 

ゴエモン

「【土遁・岩牙招拳】ッ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「喰らえッ!」

 

恐怖で後退り、身体が硬直して相手が動けない隙にゴエモンの術で地面から生えた岩の牙と騎士F90Ⅱの自作爆弾が炸裂し、半分近くのエツアト兵達を倒す。

そこへ騎士ガンダムはゴエモンの術と似通った【岩石鋭牙(ロックファング)】を放ったその時、魔法と術が合わさって通常よりも威力が増して暴走。

 

騎士ガンダム達

「ウワアァァァーーーッ!?」

 

その結果、騎士ガンダム達は暴走した魔法攻撃で崩れた建物の瓦礫に巻き込まれて埋もれる。

 

‐収容区画 アリアン、チヨメside‐

 

騎士ガンダム達がエツアト兵達の意識を正門に向けさせている頃、アリアン達は無事に囚われた獣人族達がいる牢屋の天井裏まで辿り着いていた。その間に他の救出部隊も動く。

 

アリアン

「・・・何か調子に乗った騎士が瓦礫に埋もれた気がする。」

 

ポンタ

「きゅーん。」

 

チヨメ

「行きます!」

 

正門の騒ぎに看守に就いていたエツアト兵達も全て回されたタイミングで天井裏から降りる。突然現れたアリアン達に牢屋の獣人族達は驚く。

 

男性獣人A

「あ、アンタらはッ!?」

 

チヨメ

「ボクは刃心一族のチヨメッ!あなた方を助けに来ました!ここから解放しますので指示に従って下さいッ!」

 

男性獣人B

「おい、刃心一族って今言ったぞ?!」

 

男性獣人C

「助けが来たんだッ!」

 

チヨメ

「手分けして仲間を解放して下さい!戦える方は武器を調達して下さいッ!」

 

チヨメの言葉を聞き、囚われた獣人族達は歓喜の声を漏らす。その間にチヨメは鍵開けを行って1つの牢屋を開け、アリアンは手枷や足枷の鎖を断ち切る。自由になった獣人族達は指示に従う。

 

エツアト兵I

「なッ!?貴様らッ!」

 

エツアト兵J

「賊と獣人共を逃がすな!捕縛が無理なら殺せッ!」

 

すると正門に駆け付ける途中であったエツアト兵達に見付かり、武器を構えて迫ってくる。それにチヨメは印を結び術を発動する。

 

チヨメ

「嚙み砕け、【水遁・水狼牙】ッ!!」

 

すると水で形作られた1メートル弱程の狼が3匹、チヨメの周囲に現れて彼女の指示が下されると意思を持つかの様にエツアト兵達に襲い掛かる。

 

アリアン

「やるわね、チヨメちゃん。」

 

チヨメ

「後は最奥の建物に囚われた者達だけです。急ぎましょうッ!」

 

内外からの騒動でエツアト兵達は事態の収拾が追い付かず混乱。アリアン達と獣人族達を発見して制圧しようにも纏った数がいない為、悪戯に数を減らす。

 

‐5分後 騎士ガンダムside‐

 

騎士ガンダム

「プハッ!死ぬかと思った・・・」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「圧死はごめんだ・・・」

 

ゴエモン

「ヌンッ!」

 

何とか瓦礫の山から這出た騎士ガンダム達は周囲を見渡すとそこには多く倒れたエツアト兵達と瓦礫の山が広がっていた。

 

騎士ガンダム

「一先ず陽動は成功か。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「また集まって来る前にアリアン達と合流するぞ。まだ囚われた獣人族達がいる筈だ。」

 

チヨメ

「ゴエモン!ナイト殿、F90Ⅱ殿ッ!」

 

すると騎士ガンダムの元にチヨメ達がやって来る。

 

騎士ガンダム

「チヨメ殿、アリアンッ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「首尾よくいった様だな。」

 

チヨメ

「はい!解放した者達は仲間と合流地点に向かってます。」

 

騎士ガンダム

「囚われていた獣人族達はそれで全員か?」

 

アリアン

「ここにいた者達はね。後は奥のあの建物で最後よ。」

 

騎士ガンダム

「そうか、そろそろ騒ぎを聞き付けた王国軍も向かって来る。急ご―――ッ!?全員この場から離れろッ!!!」

 

アリアンが顔を向けた方にある商会の離れに建物へ急ごうとした時、上空から敵意と殺意を感じた騎士ガンダムは叫び、アリアン達はそれに従ってその場から離れるとそこへ魔法ビームが直撃して爆発。巨大なクレーターが出来る。騎士ガンダムは魔法ビームが放たれた上空を見るとそこには守護獣グリフォンとユナイトしたハイパー騎士サザビーの姿があった。

 

ハイパー騎士サザビー

「ほう、避けたか。まあそうでなくては詰まらん。ダカレスのガキに感謝しないとな。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「ジオン族!?何故この世界にッ!?」

 

騎士ガンダム

「(戦えなくはない相手が、このままでは王国軍の「ここは俺が残る。」)ッ!ゴエモン殿ッ!?」

 

ゴエモン

「チヨメ達と行ってくれ。あそこだけ隔離されているのは・・・嫌な予感がする。」

 

騎士ガンダム

「だが敵の兵士がまだいる中で奴と戦うのは「なら俺も残る。」騎士F90Ⅱッ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「遠距離武器は持っている。そうそう後れは取らん。」

 

騎士ガンダム

「・・・分かったッ!」

 

少し考えた騎士ガンダムはそう言い、アリアン達と隔離された建物へと向かう。その際に背後から戦闘音が聞こえてくるが騎士ガンダム達は振り返らず、2人を信じて進み続ける。

 

‐隔離収容区画‐

 

妙に厳重な警備と偶然いたエツアト商長と秘書を倒して突破した騎士ガンダム達は奥へ進もうとした時に何かを感じ取ったチヨメは奥に走っていく。それを見た騎士ガンダム達は慌てて追い掛けると饐えた臭いが鼻を突く。

湿気を帯びた空気と草の枯れた様な臭いも混ざった奥の部屋には多数の大きなお腹を抱える妊婦の女性獣人がほぼ全員裸の姿で鎖に繋がれていた。そして騎士ガンダム達を覗う怯えを含んだ視線が多数向けられた。

 

騎士ガンダム

「(ゴエモン殿の嫌な予感はコレか・・・)アリアン、屋内で身に纏えそうな物を探してくれ。」

 

アリアン

「ええ、分かったわ・・・」

 

この光景に言葉を失っていたアリアンに騎士ガンダムは呼び掛け、アリアンは踵を返して部屋を後にし、囚われた女性獣人達の衣服を探しに出ていった。

 

騎士ガンダム

「チヨメ殿、彼女達を早く此処から脱出させよう。」

 

チヨメ

「はい・・・ッ!」

 

眉間に皺を入れて瞑目していたチヨメに声を掛けて鍵開けを行っている間、囚われた女性獣人達の光景をもう一度見た騎士ガンダムは激しい怒りを覚えるとナイトソードを持つ右手に力が入る。すると全身が黒いオーラに包まれ、右眼が紅く染まる。

 

アリアン

「服はあまりなかったわ、悪いけどこれで我慢してもらうしかないわ。」

 

チヨメ

「こちらも終わりました。ナイト殿、脱出しましょう!」

 

騎士ガンダム

「ッ!あぁ、分かった!」

 

2人に声を掛けられると同時に紅く染まった右眼は元に戻り、全身を覆っていた黒いオーラが消えた騎士ガンダムはすぐに女性獣人達と一緒に転移で脱出しようとしたその時、壁を何かが突き破って騎士ガンダム達の近くに2つの影が転がり落ちる。

 

ゴエモン

「~~~ッ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「グア・・・ッ!」

 

騎士ガンダム

「ゴエモン殿、騎士F90Ⅱッ!!」

 

ハイパー騎士サザビー

「私を相手によく奮闘したが、ここまでの様だな。」

 

すると大穴が開いた壁の外からハイパー騎士サザビーが姿を現す。

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「すまない、増援の王国軍は如何にかしたが・・・グッ!」

 

騎士ガンダム

「喋るな!傷が広がるぞッ!アリアン、チヨメ殿、2人と彼女達を連れて逃げてくれ。」

 

チヨメ

「ナイト殿ッ!?」

 

アリアン

「ダメよナイトッ!私も「それこそダメだッ!今は彼女達と負傷した2人をこの場から離脱させる事だ!!急いでくれッ!!!」ッ!」

 

チヨメ

「アリアン殿、ここはナイト殿に任せて離脱しましょうッ!」

 

アリアン

「分かった・・・ナイト、絶対に死なないでッ!」

 

騎士ガンダム

「あぁ、絶対に生きて戻るッ!」

 

負傷した騎士F90Ⅱにゴエモンと女性獣人達をチヨメと一緒に離脱する際にアリアンはそう言い、それに騎士ガンダムは心配させまいと強く答える。アリアンは一抹の不安が残る顔をするが意識を切り替えて自身のやるべき事を成す為に動く。

 

ハイパー騎士サザビー

「フン、愚かな娘だ。永遠に叶わぬ約束をするとわな。」

 

騎士ガンダム

「黙れ、貴様に彼女の約束を笑う権利は無い。貴様を倒し、彼女との約束を守り通すッ!!!」

 

騎士ガンダムがそう言うと同時にナイトソードとシールドは炎の剣、力の盾へと変わる。

 

ハイパー騎士サザビー

「そう言えるのは今の内だ。守護獣グリフォンとユナイトした私に貴様は勝てんッ!行くぞ!騎士ガンダムッ!!!」

 

騎士ガンダム

「来いッ!騎士サザビーッ!!」

 

両者は駆け出し、互いの剣が激しくぶつかる。騎士ガンダムはハイパー騎士サザビーを屋外へ押し切り、追撃を行おうとするが守護獣グリフォンの口から魔法ビームが放たれて阻止される。

 

騎士ガンダム

「くッ!」

 

ハイパー騎士サザビー

「動きが遅いぞッ!」

 

騎士ガンダム

「ガァッ!?」

 

背後に回ったハイパー騎士サザビーの斬撃が騎士ガンダムを襲い、吹き飛ばす。

 

ハイパー騎士サザビー

「ハハハッ!まだまだ行くぞッ!【グリフォンストーム】ッ!」

 

騎士ガンダム

「グアァァァーーーッ!」

 

追撃でグリフォンの翼から放たれた嵐が騎士ガンダムを呑み込みダメージを与えながら空へと巻き上げる。空中で身動きが出来ない騎士ガンダムは【次元歩法(ディメンションムーヴ)】で逃れ様とするが追撃の斬撃で妨害され、致命傷になる攻撃だけを力の盾で何とか防ぐ。

 

ハイパー騎士サザビー

「落ちろッ!」

 

騎士ガンダム

「ーーーッ!?」

 

ハイパー騎士サザビーの蹴りが腹部に大きく食い込み、騎士ガンダムは凄まじい勢いで地面へと落下。大きな罅割れとクレーターを作る。これには堪らず吐血し、血しぶきが舞う。騎士ガンダムはすぐさま起き上がろうとするが思う様に動けず、ハイパー騎士サザビーの刺突が迫るが、何とか動いて頭部を掠める。その場から逃れて反撃するが、ユナイトを解いた騎士サザビーとグリフォンによる連携と両面攻撃で返り討ちに合う。

 

騎士ガンダム

「グガッ!」

 

ハイパー騎士サザビー

「そろそろ終わりにするか。逃げ出した者達を捉えないとダカレスのガキがうるさいからな。憎きガンダム族を葬るのだ、ジークジオン様もさぞお喜びになるだろうッ!」

 

騎士ガンダム

「・・・ッ!」

 

ハイパー騎士サザビー

「まだ立ち上がれるか。だが無意味だッ!【死の嵐(デステンペスト)】ッ!!!」

 

呪文を唱えると同時に放たれた漆黒の嵐は建物や瓦礫、何もかもを呑み込みながら騎士ガンダムに迫る。

 

‐アリアン、チヨメside‐

 

チヨメ

「ッ!あれはッ!?」

 

アリアン

「黒い、嵐・・・ッ!」

 

騎士ガンダムが戦っている間、無事に離脱したアリアン達は最初に助けた獣人族達がいる合流地点に到着後、負傷した騎士F90Ⅱとゴエモンの手当てを行っているとエツアト商会がある方角から巨大な漆黒の嵐が出現する。それを見たアリアンは未だ戦っている騎士ガンダムの思い浮かべる。

 

アリアン

(ナイト、無事に戻ってきてッ!)

 

チヨメ

「熱ッ!アチチチッ!」

 

アリアン

「チヨメちゃんッ!?」

 

アリアンが騎士ガンダムの無事を祈った時、突然チヨメの懐が熱くなり、チヨメはすぐに熱くなった物を取り出すとそれは御神体が入った巾着袋が強く光っていた。

 

アリアン

「チヨメちゃん、それって?」

 

チヨメ

「分かりません。ディエントの時もそうですが、ここまで光り輝く事はありませんでした。あッ!」

 

すると巾着袋から御神体、石板の欠片が飛び出してエツアト商会の場所へ高速で飛んでいく。

 

‐騎士ガンダムside‐

 

迫る【死の嵐(デステンペスト)】に力の盾を構えた騎士ガンダムは防御姿勢を取る。そして騎士ガンダムを呑み込もうとした時、欠けた石板が光り出すと直撃寸前の【死の嵐(デステンペスト)】を消し飛ばす。

 

ハイパー騎士サザビー

「なっ、何ッ!?」

 

騎士ガンダム

「これは、一体ッ!?」

 

突然の事に唖然とする両者。その時、騎士ガンダムの懐から欠けた石板が光を纏って目の前に飛び出す。それに騎士ガンダムは驚いていると飛んできた石板の欠片が合流し、1つとなる。すると完全となった石板に文字が浮かび上がる。この世界に存在しないスダ・ドアカワールドの古代文字の呪文であるが、それを見た騎士ガンダムはその呪文を叫ぶ。

 

騎士ガンダム

「オーノホ・ティムサコ・タラーキーッ!!!」

 

呪文を唱えると同時に石板の光はより一層輝き、光となって天へと昇り、光は騎士ガンダムを包み込む。

 

騎士ガンダム

「うあぁぁぁぁぁ・・・ッ!」

 

光に包まれた騎士ガンダムに力が流れ込むと同時に騎士の鎧(ナイトアーマー)霞の鎧へと変化。そして兜が装着されると同時に背中の天空の翼を広げ、ハイパー騎士サザビーがいる上空へ飛翔する。三種の神器を身に纏ったフルアーマー騎士ガンダムが誕生した!

 

ハイパー騎士サザビー

「バカな、その姿は・・・ッ!?」

 

フルアーマー騎士ガンダム

「さあ行くぞ、ハイパー騎士サザビーッ!」

 

ハイパー騎士サザビー

「くッ、調子に乗るなッ!」

 

ハイパー騎士サザビーは【グリフォンストーム】を放つが、フルアーマー騎士ガンダムはそれよりも高速で懐に接近し、炎を纏った斬撃がハイパー騎士サザビーに迫る。だが寸前の瞬間に盾で防がれる。そこから剣と魔法の攻防戦が星空で行われる。紅と蒼の星が衝突し合うその光景をアリアン達は目撃する。

 

ハイパー騎士サザビー

「ハァ、ハァ、ハァ・・・くッ!」

 

フルアーマー騎士ガンダム

「タァッ!」

 

何度かの高速戦闘でハイパー騎士サザビーはグリフォン諸共ボロボロになりながらも剣を振るうが、フルアーマー騎士ガンダムは受け止めると同時に蹴り飛ばす。

 

ハイパー騎士サザビー

「おのれ~~~ッ!【死の嵐(デステンペスト)】ッ!!!」

 

再び【死の嵐(デステンペスト)】が放たれるが、3つの神器が揃ったフルアーマー騎士ガンダムの前には通じず、力の盾で防がれる。

 

フルアーマー騎士ガンダム

「これで最後だ、ハイパー騎士サザビーッ!【大火炎斬り(フルフレイムスラッシュ)】ッ!」

 

炎の剣から放たれた【大火炎斬り(フルフレイムスラッシュ)】が【死の嵐(デステンペスト)】を相殺し、ハイパー騎士サザビーを斬り裂く。

 

ハイパー騎士サザビー

「バカな・・・また敗れるのか、この私があぁぁぁーーーッ!?」

 

ハイパー騎士サザビーは断末魔を上げながら墜落して爆発。エツアト商会の施設はその爆発に巻き込まれて大きなクレーターを作り、大規模奴隷商のエツアト商会は消滅した。

 

‐数分後 隠れ家‐

 

隠れ家に身を潜めていたダカレスは寝耳に水の報告を聞く。エツアト商会及び騎士サザビーを含めた第二王子派の王国軍の消滅であった。資金調達の場所が無くなった事にダカレスは苛立つ。それにセトリオンは・・・

 

セトリオン

「何も心配する事はありません、ダカレス殿下。」

 

ドスッ!

 

ダカレス

「セトリオン・・・な、ぜだ・・・?」

 

普段と変わらない表情のセトリオンはダカレスの背後から短剣を胸元へと突き立てた。ダカレスは何が起こったのか理解出来ずにこの世を去った。

 

???

「苦労を掛けたな、セトリオン。」

 

セトリオン

「勿体なきお言葉にございます。セクト様。」

 

すると隠れ家に入って来たのはセトリオンの真の主である第一王子のセクトであった。

 

セクト

「しかし今回の手際、見事だったな。」

 

セトリオン

「いえ、城下に複数の獣人が潜り込んで来た事は把握しておりましたので。混乱に乗じるならば絶好の機会かと。」

 

セクト

「ああ、最高の機会だ。」

 

セトリオン

「ユリアーナ様の件も手筈通りに・・・その際に狼と謎の騎士により多くの者が殺されましたが、逃げ延びた者からユリアーナ様の遺品が届いております。」

 

セクト

「ご苦労、ユリアーナはダカレスの謀り事によって討たれたと公表する。」

 

セトリオン

「はッ!」

 

セクトは邪魔な王位継承者候補である2人が消えた事に悪笑みを浮かべ、セトリオンから受け取ったユリアーナの首飾りをダカレスの遺体の傍へ落とす。

 

セクト

「残念だったな、ダカレス。東の神聖レブラン帝国に尻尾を振っていた様だが、その甲斐も無かったな。これでローデン王国の時期王位は私の物だ。」

 

ダカレスの頭を踏み付け、冷たく言うセクトの心には家族、弟妹を失った悲しみは無い。

 

‐数時間後 翌朝・第3区画内森林‐

 

ハイパー騎士サザビーとの戦いを終えたフルアーマー騎士ガンダムは合流地点に到着すると受けた傷や完全となった三種の神器に宿る力の負担によって倒れてしまう。それを見たアリアンは駆け寄って抱き起すと三種の神器は強制解除される。

 

騎士ガンダム

「ありがとう、アリアン。もう大丈夫だ。」

 

アリアン

「ダメよ、まだ私の肩に掴まってて。」

 

そう話す間にチヨメと回復した騎士F90Ⅱとゴエモンがやって来る。

 

チヨメ

「ナイト殿、此度は誠にありがとうございます。お陰で死者を出さずに囚われた仲間を全員助ける事が出来ました。」

 

騎士ガンダム

「何、全力を尽くしただけだ。救助した者達は?」

 

チヨメ

「カルカト山群にあるボク達の隠れ里へ出発しました。ボク達も一度里に帰投します。」

 

騎士ガンダム

「そうか、また何かあったら声を掛けてくれ。」

 

チヨメ

「本当にありがとうございます。では、報酬の情報ですが皆さんが捜索中のエルフ族が連れていかれた場所は神聖レブラン帝国です。」

 

そしてチヨメの口から聞いたその情報にアリアンは目を見開き、騎士ガンダムと騎士F90Ⅱはローデン王国内だけで済む話では無くなり、事が大きくなったのを感じた。

 

第10話END




次回「嵐騎士と伝説の巨人」


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第11話「嵐騎士と伝説の巨人」

烈 勇志さんのクエスト『嵐を操る騎士』が受注されました。

皆さんのクエストをお待ちしてます。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=291834&uid=345359


獣人族救出作戦後にチヨメから得た情報を元に騎士ガンダム達はローデン王国の東にある国、神聖レブラン帝国へと向かっていた。その道中で立ち寄った街の冒険者ギルドで商隊護衛を兼ねた謎の鎧騎士の調査依頼を受けた。

 

‐東部街道‐

 

商人

「騎士様方、この辺りが例の鎧騎士が目撃された付近です。」

 

騎士ガンダム

「この地点か。」

 

ポンタ

「きゅん。」

 

騎士ガンダムとポンタは岩がいくつか点在する高原の周囲を見渡すが、それらしい姿は見付からない。

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「・・・・・・」

 

アリアン

「どうしたのF90Ⅱ?」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「あぁ、ちょっとな。件の鎧騎士が俺の知ってる人と似ていると思ってな。」

 

騎士ガンダム

「騎士F90Ⅱ、それは―――「盗賊だーーーッ!!」ッ!?」

 

商人の叫び声に騎士ガンダム達は振り向く。商隊に接近するMS族とスダドアカモンスターが眼に入る。それも騎士F90Ⅱの故郷、ブリティス王国に因縁がある者達であった。

 

邪騎士(エビルナイト)ザクエス

「さあ行けッ!あの商隊から物資を奪えッ!!」

 

戦士ハイザック・騎士リックドム

「オォォォーーーッ!!!」

 

ハンターゾゴック

「グオォォォッ!」

 

ヘビィグフ

「オォォォッ!」

 

バットドップ

「パタパタッ!」

 

キラービット

「ブブブブーンッ!」

 

騎士ガンダム達が乗る商隊を襲撃してきたのはザビロニア帝国であった。

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「ザビロニア帝国ッ!?奴らもこの世界に迷い込んだのかッ!」

 

アリアン

「知ってるの?」

 

騎士ガンダム

「簡単に説明すると騎士F90Ⅱのブリティス王国(故郷)と因縁がある相手だッ!来るぞッ!!」

 

騎士ガンダム達は馬車から飛び降りて武器を構えて邪騎士ザクエスが率いる部隊を迎撃に出る。

 

戦士ハイザック

「あれは、ガンダムッ!?」

 

騎士リックドム

「しかも鎧騎士F90もいるぞッ!」

 

邪騎士ザクエス

「狼狽えるな、これは好機だッ!皇騎士(クラウンナイト)に倒された俺達が生き返ったのは憎きガンダム族に復讐する為だったかッ!ならば商隊諸共葬ってしまえッ!!」

 

騎士ガンダム達の姿を見ては戦士ハイザックと騎士リックドムは狼狽えるも、邪騎士ザクエスの号令にモンスター達と一緒に騎士ガンダム達に襲い掛かる。

 

アリアン

「ヤアッ!」

 

戦士ハイザック

「ぐおッ!このエルフ風情がッ!」

 

アリアン

(やっぱり硬いッ!それに・・・)

 

バットドップ

「パタパタッ!」

 

キラービット

「ブブブブーンッ!」

 

アリアン

「数が多過ぎよッ!」

 

アリアンは戦士ハイザックに一撃を与えるが、あの日戦った騎士ジオングよりマシだがMS族の頑丈差と素早いバットドップとキラービット群れに手こずる。

 

騎士リックドム

「鎧騎士F90覚悟ッ!」

 

ハンターゾゴック

「グオォォォッ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「俺は親父じゃないが、襲い掛かるのなら倒すまでだッ!」

 

騎士リックドムとハンターゾゴックの攻撃を受け止め、そう言って押し返した騎士F90Ⅱはハルバートで反撃する。

 

邪騎士ザクエス

「死ねッ!ガンダムッ!!」

 

ヘビィグフ

「オォォォッ!」

 

騎士ガンダム

「簡単に倒されるかッ!」

 

騎士ガンダムは邪騎士ザクエスとヘビィグフの攻撃をいなしながら反撃していく。しかし邪騎士ザクエス側の戦力が多く、数体のバットドップとキラービットに突破されて無防備な商隊に迫る。騎士ガンダム達は追い掛け様とするが、邪騎士ザクエスに阻まれてしまう。その間にもバットドップとキラービットが商隊に襲い掛かる瞬間、突如突風が巻き起こりバットドップとキラービットを吹き飛ばす。

 

邪騎士ザクエス

「何ッ!?」

 

アリアン

「風が魔獣を吹き飛ばした!?もしかしてッ!」

 

騎士ガンダム

「あそこだッ!」

 

何かを見付けた騎士ガンダムが指さした場所を見ると、岩場の天辺に1人のガンダム族がいた。その姿を見た騎士F90Ⅱと邪騎士ザクエス側は眼を見開いて驚く。

 

邪騎士ザクエス

「バカな・・・奴は残党狩り部隊によって死んだ筈だッ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「風を操る騎士はやはり貴方だったかッ!」

 

嵐騎士(ストームナイト)ガンマガンダム

「ザビロニア帝国ッ!我が国のみならずこの異界の地での悪事は許さんッ!」

 

その人物はブリティス王国初代円卓の騎士の1人、嵐騎士ガンマガンダムであった。岩場から飛び降りたガンマガンダムは得物の剣と槍で騎士ガンダム達に加勢する。

 

嵐騎士ガンマガンダム

「タアッ!」

 

バットドップ

「パタパタッ!?」

 

キラービット

「ブブブブーンッ!?」

 

ガンマガンダムが放つ風でアリアンの相手をしていた残りのバットドップとキラービットを引き剥がす。

 

嵐騎士ガンマガンダム

「モンスターは私が相手をする。其方はその戦士をッ!」

 

アリアン

「ありがとうッ!」

 

ガンマガンダムの加勢によって戦況は騎士ガンダム達に一気に傾く。

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「ドりゃあぁあッ!」

 

騎士リックドム

「グオッ!?」

 

ハンターゾゴック

「グオォォォッ!?」

 

騎士F90Ⅱの一撃が騎士リックドムとハンターゾゴックを打ち倒す。

 

アリアン

『炎よ、剣と共に舞い踊れッ!』

 

戦士ハイザック

「ぐぅ、この程度の炎でッ!」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「ならこれでどうだッ!」

 

アリアンの炎に包まれながらも挑んでくる戦士ハイザック。そこへバットドップとキラービットの相手をしていたガンマガンダムが起こした竜巻が炎ダルマの戦士ハイザックを更に包み込むと同時にバットドップとキラービットを巻き込んで倒す。

 

騎士ガンダム

「デヤッ!!」

 

ヘビィグフ

「オォォォッ!?」

 

邪騎士ザクエス

「バカな・・・俺の部隊が全滅だとッ!?」

 

騎士ガンダム

「残るは貴様だけだ。投降しろッ!」

 

そして残った邪騎士ザクエスを騎士ガンダム達が半包囲する。

 

邪騎士ザクエス

「くッ・・・こんな所でやられるかッ!」

 

すると邪騎士ザクエスは煙幕を張って逃亡するが、風を纏ったガンマガンダムに先回りされてる。

 

邪騎士ザクエス

「げッ!?」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「逃がさんッ!」

 

邪騎士ザクエス

「くッ、ウオォォォォッ!!!」

 

邪騎士ザクエスは剣を振りかざしてガンマガンダムに挑むがそれよりも早くガンマガンダムの槍に討たれる。

 

‐数十分後‐

 

騎士ガンダム達はガンマガンダムが何故この世界にいるかを聞くと、本人は。

 

嵐騎士ガンマガンダム

「私は息子達を守る為にザビロニア帝国の残党狩り部隊に特攻して命を落とした時、不思議な光に導かれてこの世界に迷い込んだ以外は分からない。」

 

との事であった。そしてガンマガンダムは騎士F90Ⅱへ顔を向ける。

 

嵐騎士ガンマガンダム

「しかしまだ小さかったF90Ⅱがこんなにも大きくなるとは、顔立ちもF90殿にそっくりだ。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「まさか俺も貴方とこの異界の地で会えるとは思わなかった。積もる話もあるが先ずこの世界の事を話そう。」

 

そして騎士F90Ⅱからこの世界の話を聞いたガンマガンダムは驚くと同時に苦虫を嚙み潰した様な顔をする。

 

嵐騎士ガンマガンダム

「その様な事が・・・騎士ガンダム殿、アリアン殿。私も同行させてもらえないだろうか?話を聞いてしまった以上ほっとける事は出来ないッ!」

 

こうして新たに仲間となった嵐騎士ガンマガンダムと共に騎士ガンダム達は旅を続ける。

 

‐数日後‐

 

商隊護衛を終えて数日、騎士ガンダム達は道中にある村へ休息をしに向かっていた。

 

アリアン

「もう少しでムーン・ムーン村に着くわね。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「漸くか。」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「そこで食糧と水を補充しましょう。」

 

騎士ガンダム

「(また私が知っている名前があるな・・・「きゅんッ!」)ポンタッ!?」

 

すると突然騎士ガンダムの頭上に乗っていたポンタは何かを感じ、飛び降りてムーン・ムーン村の方へ走り出す。騎士ガンダム達は急いで追い掛けていくと目の前には荒れ果てたムーン・ムーン村と大小怪我を負った村人達の姿が広がっていた。

 

騎士ガンダム

「これは一体ッ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「兎に角怪我人の治療だ!」

 

騎士ガンダム達はすぐさま救助と治療を始め、迅速な対応で何とか死人を出さずに済んだ。そしてムーン・ムーン村の巫女である村長に事の顛末を聞く。

 

サラサ

「此度は私達を救っていただき誠に感謝します。私はこの村の村長でルフォイの巫女を務めるサラサ・ムーンです。」

 

騎士ガンダム

(役職は違うけど、この世界での予言者サラサか。)

 

サラサ

「つい昨日の事です。この村に神官マクベ・カッツェとその一団が村にやってきました。そしてこの村の御神体であるルフォイの星を寄越せと言ってきたのです。当然私達はそれを断ると力尽くで奪っていったのです。」

 

ルフォイの星の単語に騎士F90Ⅱとガンマガンダムは眼を見開いて驚く。逆に騎士ガンダムはヤな予感を感じる。

 

アリアン

「そのルフォイの星とはどういう物ですか?」

 

サラサ

「今から200年前、この村が出来始めた時です。私のご先祖様が子供の頃に外で遊んでいる時、天から水晶が振ってきました。それを拾ったご先祖様は大事に持っていました。」

 

騎士ガンダム

「その水晶がルフォイの星なんですね。」

 

サラサ

「はい。ご先祖様がルフォイの星を拾って数ヵ月後に巨大な魔獣が現れ、村は危機に陥りました。そんな時、ご先祖様は強く助けを願った時です。ルフォイの星が光り輝くと共に巨人が現れ、巨大な魔獣を倒して村を救ってくれたのです。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「サラサさん、その巨人の名は?」

 

サラサ

「巨人の名はサイコゴーレムです。名はご先祖様が本人から聞いたそうです。」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「何と・・・」

 

巨人の名を聞いた騎士F90Ⅱとガンマガンダムは驚愕に染まる。一方でそれを見たアリアンは騎士ガンダムに2人が驚く理由を聞く。

 

騎士ガンダム

「サイコゴーレムは天変地異を引き起こせる力を持つスダドアカ・ワールドの伝説の巨人だ。」

 

アリアン

「それで2人は驚いてるのね。ならルフォイの星を奪ったそのマクベって言う神官はその力で!」

 

騎士ガンダム

「あぁ、この世界が大変な事になる。」

 

サラサ

「お願いです、どうかルフォイの星を悪しき者達から取り戻してください。」

 

そして騎士ガンダム達はサラサの願いを聞き、村から離れた位置に神官マクベの一団が潜んでいるであろう廃城に向かう。

 

‐廃城‐

 

特に妨害を受ける事なく廃城に到着した騎士ガンダム達は慎重に周囲を確認して廃城に入るが、見張りを含めて誰も居らず静寂が支配していた。

 

アリアン

「誰もいない・・・?」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「おかしい、静かすぎる。」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「何かあるかもしれん。気を付けろ!」

 

騎士ガンダム

「相手は一体何処へ―――「オーッホッホッホッ!!」ッ!?」

 

すると高笑いが聞こえ、広場の中央で背を合わせて警戒する騎士ガンダム達。そして高笑いの出所である塔を見るとそこには神官マクベ・カッツェと呪術士メッサーラがいた。

 

神官マクベ

「まさか貴様にまた会うとは思わなかったわ騎士ガンダム!大方水晶を取り戻しに来たようだけどそうはさせないわ。さあやっておしまい、お前達ッ!」

 

すると神官マクベの号令と同時に潜んでいた騎士ガルバルディαとβ、騎士マラサイ、戦士アッシマー、戦士デザートザク、戦士デザートドムや魔獣達が現れて襲い掛かる。

 

騎士ガンダム

「魔法で隠れていたかッ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「迎え撃つぞッ!」

 

騎士ガンダムは騎士ガルバルディβに騎士マラサイと剣を交え、騎士ガンダムF90Ⅱは魔獣を。ガンマガンダムは戦士アッシマー、戦士デザートザク、戦士デザートドムを。アリアンは騎士ガルバルディαを相手にする。

 

騎士ガルバルディα

「我が名はガルバルディα!いざ勝負仕るッ!」

 

アリアン

「私はアリアン・グレニス・メープル!望むところッ!」

 

騎士マラサイ

「デヤッ!」

 

騎士ガンダム

「何のッ!」

 

騎士ガルバルディβ

「隙あ―――ドワッ!?

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「ハッ!」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「セイヤッ!」

 

それぞれの戦いが始まるが騎士ガンダム達の実力が上回っており、騎士ガルバルディβ達は押されていく。

 

神官マクベ

「く~!何をやっているッ!?たかが4人相手に手こずっておるのだッ!呪術士メッサーラよ、奴を目覚めさせろッ!!」

 

呪術士メッサーラ

「ハッ!目覚めよ、マッドゴーレムッ!」

 

呪術士メッサーラが魔力を広場の中央に注ぐと地面が揺れ出し、巨人マッドゴーレムが現れる。

 

マッドゴーレム

「マッドォオォォォッ!」

 

アリアン

「あれがサイコゴーレムッ!?」

 

騎士ガンダム

「いや違う。あれはマッドゴーレム、泥の巨人だ!」

 

騎士ガンダム達が驚いている間にもマッドゴーレムの拳が迫る。それを騎士ガンダム達は避けるが、敵味方をとはずにマッドゴーレムの攻撃が続く。

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「コイツ、味方までッ!」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「何て無茶苦茶なッ!」

 

騎士ガンダム

「アリアン火だ!奴は火に弱いッ!」

 

アリアン

「分かったわ!『炎よ、剣と共に舞い踊れ』ッ!」

 

マッドゴーレム

「マッドォオォォォッ!?」

 

マッドゴーレムが拳を振り下ろした瞬間に腕に飛び乗ったアリアンはその額に炎を纏った剣で突き刺すと同時に火達磨になる。これに勝利を確信する騎士ガンダム達だが次の瞬間、炎の中から腕が飛び出す。

 

騎士ガンダム

「アリアン危ないッ!」

 

アリアン

「キャッ!?」

 

騎士ガンダムはアリアンと一緒に伏せて攻撃を躱す。そして顔を向けると炎からマッドゴーレムボーンが現れたッ!

 

マッドゴーレムボーン

「マッドォオォォォッ!」

 

神官マクベ

「オーッホッホッホッ!そのまま成す術も無く潰されてしまえッ!!」

 

騎士ガンダム

「こうなったら、オーノホ・ティムサコ・タラーキーッ!!!」

 

三種の神器を纏ったフルアーマー騎士ガンダムがマッドゴーレムボーンに立ち向かう。

 

アリアン

「ナイトッ!」

 

フルアーマー騎士ガンダム

「これは私が抑える!アリアン達は神官マクベの所へ行くんだッ!!」

 

フルアーマー騎士ガンダムが時間を稼いでいる間にアリアン達は神官マクベと呪術士メッサーラがいる塔へ向かう。

 

神官マクベ

「なッ!呪術士メッサーラよ、あの小娘共を倒すのだッ!」

 

呪術士メッサーラ

「ハッ!」

 

呪術士メッサーラはアリアン達に向けて魔法を放つが、騎士F90Ⅱとガンマガンダムが前に出て防ぐ。

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「行け!アリアンッ!」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「ここは私達がッ!」

 

アリアン

「ありがとうッ!」

 

そして2人を飛び越えたアリアンは神官マクベ達の近くへ着地して斬り捨てる。それと同時に魔力の供給を断たれたマッドゴーレムボーンは崩れ去る。

 

フルアーマー騎士ガンダム

「アリアン達がやったか!」

 

こうして終わったかとフルアーマー騎士ガンダムが思った時、黒く染まったルフォイの星が塔から投げ飛ばされると同時に光り出して真の巨人、サイコゴーレムが出現するッ!

 

サイコゴーレム

「ゴオォォォッ!!!」

 

フルアーマー騎士ガンダム

「何ッ!?」

 

神官マクベ

「フフフ・・・」

 

アリアン

「ッ!まだ生きていたのッ!?」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「一体何をしたッ!」

 

神官マクベ

「ルフォイの星に闇の力を注入して暴走させたのよ、最早誰にもサイコゴーレムを止める事は出来ないわッ!」

 

神官マクベはそう言うと事切れる。そして暴走したサイコゴーレムは破壊行動を開始。廃城を破壊尽くす。フルアーマー騎士ガンダムはアリアンを抱き上げ、ガンマガンダムは騎士F90Ⅱの手を掴んで上空へ避難する。廃城を完全に破壊したサイコゴーレムはムーン・ムーン村の方へと向かう。それを見たフルアーマー騎士ガンダム達はすぐに進路上に降り立ち、迎撃を始める。しかし暴走したサイコゴーレムの力の前に歯が立たずに押される。

 

フルアーマー騎士ガンダム

「くッ!」

 

アリアン

「何て力なのッ!?」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「このままじゃあやられるぞッ!」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「何か倒す手立てがあれば・・・」

 

ガンマガンダムの言葉を聞いたフルアーマー騎士ガンダムはある事を思い出し、アリアン達に廃城に戻ってある物を探す様に言う。

 

アリアン

「でもそれじゃあナイトは・・・」

 

フルアーマー騎士ガンダム

「大丈夫だ、アリアン達が見つけ出すまでは絶対にやられない!さあ急いでくれッ!」

 

最初は渋ったアリアンは聞き入れ、騎士F90Ⅱ達と廃城に向かう。それを見たフルアーマー騎士ガンダムはサイコゴーレムに立ち向かう。

 

‐廃城跡地‐

 

破壊された廃城に付いたアリアン達はマッドゴーレムボーンから剥がれ落ちた泥の山を見付け、その中からフルアーマー騎士ガンダムに頼まれたある物を急いで探す。すると泥の山から光が昇る。アリアン達はそこを掘ると1つの鏡を見付ける。

 

アリアン

「これね!ナイトが言ってた真実の鏡ッ!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「ガンマさん、俺は走っていく。貴方はアリアンを連れて騎士ガンダムの元に行ってくれッ!」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「分かったッ!」

 

そしてアリアンを連れたガンマガンダムは急ぎ向かう。

 

‐フルアーマー騎士ガンダムside‐

 

一方でサイコゴーレムと戦っているフルアーマー騎士ガンダムは三種の神器を長時間使用している事で力の負担が掛かり、徐々に動きが鈍くなる。

 

サイコゴーレム

「ゴオォォォッ!!!」

 

フルアーマー騎士ガンダム

「身体が、重いッ!「ナイトーーーツ!」ッ!アリアンッ!!」

 

アリアン

「受け取ってッ!」

 

そこへ廃城から戻って来たガンマガンダムとアリアン。アリアンは持っていた真実の鏡を投げ渡し、それを受け取ったフルアーマー騎士ガンダムは太陽の光を反射してサイコゴーレムの額にある水晶に当てるとそこから光が飛び出して光の弓と矢が現れてフルアーマー騎士ガンダムの元へ飛んでいき、それを手にしたフルアーマー騎士ガンダムは弓を引く。

 

サイコゴーレム

「ゴオォォォッ!!!」

 

フルアーマー騎士ガンダム

「サイコゴーレムよ、今楽にするぞッ!」

 

そして放った光の矢が額の水晶に直撃するとサイコゴーレムはゆっくりと倒れて消えていき、光の矢とルフォイの星だけが残る。三種の神器を解いた騎士ガンダムはそれを回収し、アリアン達と合流しに向かう時。

 

『ありがとう。』

 

騎士ガンダム

(・・・どういたしまして。)

 

頭の中に聞こえた声にそう答えた後、騎士ガンダム達はムーン・ムーン村へと帰投し、ルフォイの星をサラサに渡した後に一晩村で休む事にした。そして旅立つ時、何とサラサは騎士ガンダムにルフォイの星を渡す。

 

騎士ガンダム

「良いのですか、これはこの村にとって・・・」

 

サラサ

「大丈夫です、サイコゴーレムが皆さんと共に旅をしたいと申しております。どうか連れて行ってください。」

 

騎士ガンダム

「分かりました。大切に預からせて貰います。」

 

こうしてルフォイの星を託された騎士ガンダム達はサイコゴーレムを連れて旅を続ける。

 

第11話END




次回「砂漠で見つけし明日への希望」


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第12話「砂漠で見つけし明日への希望」

お待たせしました。

皆さんのクエストをお待ちしてます。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=291834&uid=345359


前回新たな仲間、嵐騎士ガンマガンダムとサイコゴーレムを加えた騎士ガンダム達。一同は攫われたエルフ族を探してレブラン帝国を目指している頃、リンブルト大公国では騎士ガンダムが助けたユリアーナはリンブルトに嫁いだ姉との再会を果たしていた。

 

‐リンブルト大公国・王宮‐

 

ユリアーナ

「お久しぶりです、メリアお姉様!」

 

メリア

「メロル・・・ッ!」

 

王宮に入ったユリアーナの姿を見た姉のメリアは眼尻に涙を浮かべながらギュッと抱きしめる。

 

メリア

「ローデンで貴女が義弟ダカレスの手で討たれたと知らせで聞いて・・・心臓が止まる思いだったのよ・・・!」

 

ユリアーナ

「お姉さまッ!?それは一体どういう事ですか!?ダカレス兄様が私をッ!?」

 

メリア

「え・・・えぇ、ダカレスは獣人を扇動して王都の混乱もさせていた様だけど・・・セトリオン将軍に討たれたそうな・・・」

 

その言葉を聞いたユリアーナに電流が走る。

 

ユリアーナ

(となると今、時期王位継承権をセクト兄様が所持しているという事に―――セクト兄様が裏で何かを企てているのは分かる・・・私の件も本当にダカレス兄様が絡んでいるか怪しいわ・・・)

 

メリア

「メロル?」

 

ユリアーナ

「・・・メリア姉様。私が生きている事は内密にして下さい。これはきっと武器になります。慎重派のセクト兄様は継承者が自分だけと思っていれば敢えて事を急いだりしない筈・・・ならばその間に私は国に為に自分の使命を果たします。メリア姉様の力をお貸し下さい。エルフ族との未来の為にッ!」

 

瞳の奥に強く輝く光を宿すユリアーナに姉のメリアは強く頷く。騎士ガンダムが予見した通り歴史が動き出す。

 

‐騎士ガンダムパーティーside‐

 

ワイバーン

「ギャアッ!」

 

アリアン

「へー、群れてるなんて珍しいわね。」

 

騎士ガンダム

「アリアン、あれは?」

 

アリアン

「ワイバーンよ。」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「ほぉ、あれがこの世界のワイバーンか。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「ワイバーンドックとは大分見た目が違うな。」

 

一方サボテン等しか生えない荒野と砂漠が広がる大地の崖上で騎士ガンダム達は離れた位置で空を飛ぶ数十匹のワイバーンの群れと道中で遭遇した。

 

アリアン

「囁き鳥が飛びたがらない筈だわ。これじゃあダンカさんに連絡取れないわね。」

 

アリアンは頭上を低空で旋回する囁き鳥を見てそう言う。

 

騎士ガンダム

「普段はあの規模の群れにはならないのか?」

 

アリアン

「えぇ、あの規模の群れは見た事も無いわ・・・」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「なら私の魔法で彼らを「ガンマガンダムさん、ここは私が対処します。」騎士ガンダム殿?」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「何をする気だ?」

 

騎士ガンダム

「少し試したい事がある。皆は離れていてくれ。アリアン、ポンタを頼む。」

 

そう言ってポンタを預け、騎士ガンダムは崖下へ降り立つと同時に魔法を放つ準備をする。

 

ワイバーン群れ

「ギャアギャアッ!」

 

騎士ガンダム

「当てない様に放つから許してくれよ、【雷撃豪雨(ライトニングダンパー)】ッ!!」

 

騎士ガンダムが雷属性の範囲魔法を発動した次の瞬間、空気を切り裂いて耳を劈劈く様な大音響が轟き、空気が震撼する。眼の眩む様な閃光が幾重にも重なり宙を駆け、雷光が雨の様になって上空からワイバーンの群れに降り注ぐ。

 

ワイバーン群れ

「ぴいい!ぴぃいいッ!!」

 

騎士ガンダム

「よし、これなら囁き鳥も飛べるだろう。」

 

突然の落雷に恐慌したワイバーンの群れは散り散りに逃げていくのを確認した騎士ガンダムはそう言って転移で崖上にいるアリアン達の所へ戻ると。

 

アリアン達

「・・・・・・」チーン

 

騎士ガンダム

「えッ!?アリアン!?それに皆もッ!?ま、まさかさっき放った魔法でッ!?」

 

そこには先程の範囲魔法の余波で帯電して倒れたアリアン達の姿があった。そして騎士ガンダムは慌てて回復魔法を掛ける。その様子を少し離れた崖でメモを取る人物に見られていた。

 

‐数時間後 ブランベイナ‐

 

回復魔法でアリアン達が復帰した後、一同は荒野の街ブランベイナにある宿屋の食堂で食事を取っていた。

 

アリアン

「う~まだ耳がキンキンするわ・・・あんな大魔法使うなら先に言ってよね!びっくりしてポンタも帯電しちゃったじゃない!」

 

ポンタ

「きゅんきゅーん!」

 

騎士ガンダム

「すまない、あそこまでの威力とは思わなかった。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「今回は死なずに済んだが、把握してない魔法を使わないでくれ。」

 

騎士ガンダム

「アッハイ。」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「一先ずこれ位にしてこれからの話をしよう。」

 

そして話に区切りを付けた一同はアリアンが広げた地図を見る。

 

アリアン

「ランドバルトはダンカさんが向かって調査と対応。私達はチヨメちゃんの貰った情報で東の神聖レブラン帝国に売られたエルフの調査をする。」

 

騎士ガンダム

「その理解で問題ない。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「だが一番の問題は帝国まで道のりと地理だ。」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「この地図の様に我々にとって未知の地。このまま何も知らずに行けば大幅に時が無駄になる。」

 

4人が話し合いながら見る地図にはローデン王国全土の情報が記載されているが、レブラン帝国側の情報は一切記載されていない。ガンマガンダムの言う通り、時を無駄にすればエルフを救助する時間も無くなる。如何にか情報を集めねばと何かないかと考えている時、アリアンはソワソワと周囲を気にする様に見渡す。

 

騎士ガンダム

「どうかしたのかアリアン?」

 

アリアン

「帝国はこの国(ローデン)の様にエルフ族の捕縛を禁じていないの・・・今まで以上にエルフ族である事(・・・・・・・・)が危険になる。その上道のりもあやふや・・・帝国の近いこの街も既に危険かも知れない・・・流石に緊張するわよ。」

 

騎士ガンダム

「成程、捕縛しようと動く連中が多くなる訳か。だが私達がそんな事はさせないさ。」

 

アリアン

「そうね、頼りにしてるわ。」

 

騎士ガンダム

「任された。」

 

ポンタ

「きゅん♡」

 

???

「話中すまないが、昼間の大魔法を使ったのは君達かい?」

 

すると声を掛けられた騎士ガンダム達は顔を向けるとそこには眼鏡を掛けたエルフ族の男性がいた。

 

カーシー

「僕はカーシー、カーシー・ヘルドだ。よろし・・・「わーーーーーーッ!!」

 

カーシーが言葉を言い切る前にアリアンは慌てて近くにあった空の壺でカーシーの顔を隠す。

 

アリアン

「こんな人族のド真ん中でエルフの耳を晒すなんて何考えてるのよッ!!」

 

騎士ガンダム

「あ、アリアン落ち着いて!!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「騒ぎを起こせば衛兵が来るぞ!」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「最悪街から脱出する事に・・・」

 

女将

「カーシーさん、いつものでいいかい?」

 

カーシー

「はーい、お願いしまーす!」

 

騎士ガンダム達

!?

 

男性客

「よお、カーシーじゃねえか!こっちで一杯やろうぜ!」

 

カーシー

「後で是非。」

 

アリアンを落ち着かせ様と騎士ガンダム達が話す中、宿屋の女将と男性客のグループがカーシーと普通に会話し、他の客も気にする様子もない場面を見て驚く。それから騎士ガンダム達はカーシーと話をすると彼はこの街に肌が合って40年程住んでおり、今ではすっかり街の住人達とは顔馴染みになった事を話す。これにアリアンは仰天する。

 

アリアン

「人の街で40年って、何で・・・」

 

カーシー

「君はエルフ族・・・いやダークエルフかな。何でって言われても困るけどね。そもそも人とエルフが手を取り合う、それこそが当たり前の世界かも知れないよ。」

 

アリアン

「冗談じゃないわ!貴方、人族がエルフに何をしたか分かっているのッ!」

 

カーシーの言葉で癇に障ったアリアンは席から立ち上がってそう言う。

 

カーシー

「確かにね。でもそう言う君だってダークエルフなのにフルアーマーを着ている人族達に精霊獣と旅をしている。随分と珍しい組み合わせだ。」

 

アリアン

「ッ!・・・ナイト達は特別よ・・・」

 

騎士ガンダム

「それでカーシーさん、私達に何用だろうか?」

 

カーシー

「あぁ、実は君達に相談があるんだ。」

 

カーシーはこの街で魔獣の生態調査を生業にしているが調査中の魔獣に手を焼いているので騎士ガンダム達に力を貸してほしく、捕縛か死骸の回収でも構わないとの事であった。

更にレブラン帝国までの精巧な地図と魔獣生態書を報酬にすると言う。これに騎士ガンダム達はカーシーの依頼を受ける事にした。

 

‐宿泊部屋‐

 

カーシーとの話し合いを終えた騎士ガンダム達は今晩泊まる部屋へと別れて入る。

 

アリアン

「エルフと人が手を取り合う、か・・・」

 

騎士ガンダム

「納得しない様だな。」

 

テーブルに突っ伏すアリアンを見た騎士ガンダムは宿代を払った時に女将から貰った小さな酒樽から酒をグラスに注ぎながらそう言う。

 

アリアン

「ちょっとね・・・これまで人がエルフに何をして来たか考えると・・・」

 

騎士ガンダム

「それを考えても答えは出ないさ。おぉ!いい香りだ。」

 

そして騎士ガンダムは自身のグラスに注いだ酒の香りを感じる。

 

アリアン

「・・・結構強そうね。」

 

騎士ガンダム

「無理強いはしないぞ。果実ジュースでも・・・」

 

アリアン

「こっ、子供扱いしないでよ!(ゴクゴク)ん~~~///

 

騎士ガンダムの発言にムキになったアリアンはグラスに注がれた酒を一気に飲み干すと同時に耳がピコピコと可愛く動く。そして2杯目のお替りを頼まれた騎士ガンダムは再びグラスに注ぐとそれもアリアンは飲み干す。それに続いて騎士ガンダムも飲む。

 

騎士ガンダム

(甘みの中に深いコクと果実の風味が広がっていく。たった一口でこの幸福感、ちょっと度数が強いけど美味いッ!)

 

アリアン

「ナイト~~~きいてるのお!?」

 

騎士ガンダム

「うわッ!?あ、アリアンッ!?」

 

アリアン

「早く~~~お~か~わ~り~ッ!!」

 

騎士ガンダム

(完全に酔ってるッ!たった2杯でッ!?)

 

酔ったアリアンに押し倒された騎士ガンダムは頭をグワングワンと揺さぶられる。

 

アリアン

「あれ?お酒は~?」

 

騎士ガンダム

「(これ以上飲ませたら身の危険を感じるッ!)あ、アリアン!大分酔ってるみたいだし、明日は早いから今日はこの辺にして寝ようッ!!」

 

アリアン

「酔ってないわよ~早くお酒ちょうだ~~~いッ!」

 

騎士ガンダム

「いや、だから「むう~~~ッ!風よぉ!」へ?うわぁぁぁッ!?」

 

するとアリアンは酒樽を離さない騎士ガンダムを風魔法で吹き飛ばす。そして酒樽に手を伸ばすが寸での所で騎士ガンダムが回収。そこからドタバタの攻防戦が始まる。

 

アリアン

「そのお酒よこしなさーい!」

 

騎士ガンダム

「絶対に渡さんッ!」

 

‐隣の部屋‐

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「何やってんだアイツ等・・・」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「ハハハ、若いな・・・」

 

隣の部屋で騎士ガンダム達がドタバタしている中、騎士F90Ⅱとガンマガンダムは酒を飲みながらそう呟く。

 

‐翌朝 集合場所‐

 

騎士ガンダム

「遅れてすまない、カーシーさん。」

 

カーシー

「やぁ、おはよう。それじゃあナイト君とアリアン君は僕と先頭の馬車で、F90Ⅱ君にガンマ君は仲間の馬車に乗ってくれ。」

 

翌朝宿から出た騎士ガンダム達は集合場所でカーシーとその仲間と合流し、それぞれ指定された馬車へと乗り込む。

 

カーシー

「それにしても昨晩は激しかったみたいだね。街中に響いてたよ。」

 

アリアン

「斬ろう・・・」

 

騎士ガンダム

「落ち着くんだ!アリアンッ!!」

 

剣の柄を持って引き抜こうとするアリアンを宥めつつ、騎士ガンダム達は出発する。

 

‐数十分後 荒野‐

 

アリアン

「うぅ・・・」

 

騎士ガンダム

「二日酔いに馬車酔いのダブルパンチか・・・」

 

アリアン

「後ろの荷台から何か臭って更に気持ち悪い・・・」

 

騎士ガンダム

「カーシーさん、あの荷台に積んでいるのは?」

 

カーシー

「あー、あれはね・・・ゴブリンの死体さ。撒き餌として使うのさ。」

 

アリアンの背中を摩りながら騎士ガンダムはカーシーに尋ね、カーシーが答える間に気になったポンタが荷台に掛けられた布を捲るとそこには死屍累々のゴブリンの山があった。それを見たポンタは騎士ガンダムに駆け寄って抱き着き、アリアンは吐き出しそうになる。

 

カーシーの仲間

「騎士の旦那、これを。」

 

騎士ガンダム

「おっと、これは?」

 

カーシーの仲間

「酔い止め茶だよ。二日酔いでも馬車酔いにも一発で効くぜ。」

 

騎士ガンダム

「おお、それはありがたい!ほら、アリアン。」

 

渡されたお茶を見詰めるアリアンは作った本人へと眼を向けると彼はニカっと笑う。

 

カーシー

「アハハ、アリアン君はやっぱり人族が苦手かい?」

 

アリアン

「そっ、そういう訳じゃ・・・」

 

カーシー

「彼は見た目は悪者だけどいい人だから安心して。」

 

カーシーの仲間

「ひでぇな!カーシーさん、もう茶葉おろしてやんねーぞ。」

 

カーシー

「ハハハ、ごめんって。」

 

その光景を見ながらアリアンはお茶を飲む。それがとても美味しく、言葉通り一発で酔いが収まる。その間に騎士ガンダムは今回捕縛する魔獣についてカーシーに聞く。

 

カーシー

「サンドワーム。体長は4~5m程で日中は地中深く潜み夕刻から夜にかけて死肉を漁りに活動する。炎に弱く捕獲目的の今回は可能な限り炎による攻撃は避けてほしい。最近分かった事だけどワイバーンの群れの近くにいる場合も多いらしい。」

 

騎士ガンダム

(ならあの時も真下にいたかもしれないな。)

 

それから話し合う2人をアリアンが見ていた時に地面が揺れ始め、それが段々と大きくなっていく。そして後続の馬車と荷台が真下から飛び出た何かに吹き飛ばされる。

だが寸前に騎士F90Ⅱ達はカーシーの仲間と一緒に脱出した為、事なきを得る。真下から後続を襲ったのは30m級のサンドワームであった。

 

アリアン

「どこが4~5mよッ!!」

 

騎士ガンダム

「30mはあるぞッ!!」

 

カーシー

「バカな!あんな巨大な個体は見た事ない!明らかに異質だッ!」

 

騎士ガンダム達が話している間にサンドワームは騎士F90Ⅱ達に向かって動き出す。それを見たアリアンは馬車から飛び出し、炎魔法で攻撃するが動きを一時的に止めただけで決定打にはならなかった。

 

アリアン

(炎が弱点の筈なのに効いていないッ!?)

 

弱点であるはずの炎による攻撃が効かない事に驚愕するアリアン。そして再び動き始めたサンドワームは捕食しようと襲う。だが何時までも捕食される事は無く、不思議に思ったアリアンはサンドワームの後ろを見ると。

 

サイコゴーレム

「ウオオオオ~ンッ!」

 

アリアン

「サイコゴーレムッ!」

 

そこにはサイコゴーレムがおり、その力で抑えていた。その間に駆け付けた騎士ガンダムはアリアンと一緒にその場を離脱。その際に騎士F90Ⅱ達とも合流してカーシーの所まで避難する。

 

騎士ガンダム

「よし、全員避難できた!サイコゴーレム、全力で戦ってくれッ!」

 

サイコゴーレム

「ウオオオオ~ンッ!」

 

それを聞いたサイコゴーレムはサンドワームを投げ飛ばす。投げ飛ばされたサンドワームは地中に潜り、背後から攻撃しようとするが。

 

サイコゴーレム

「ウオオオオ~ンッ!!」

 

サイコゴーレムの張り手を叩き込まれて地面に倒される。その際に黒いリングも消えてなくなる。そしてまだ生きているサンドワームを捕縛して無事カーシーの依頼を達成。街に戻った騎士ガンダム達は報酬の地図と生態書を得る。

 

‐ブランベイナ‐

 

カーシー

「今回の魔獣の異変、やはりおかしい。何かの前兆かもしれない・・・すぐに調べてみよう。良かったら今後君達に情報を送らせてもらうよ。」

 

騎士ガンダム

「それはありがたい。」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「情報のあり無しでリスクは変わるからな。」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「では出発するとしよう。」

 

アリアン

「一つ、いいかしら。何故貴方は人族と暮らしているの?」

 

カーシー

「人族が好きだから・・・かな。里にいた時は僕も人族にいい印象は無かったんだけどね。実際に暮らしてみると全然違っていてね。勿論色々あったけど、今はこう思っているよ。いつか人族とエルフ族が手を取り合う未来がきっと来てくれるってね。」

 

出発する際、アリアンの質問にカーシーは笑顔でそう答えた。

 

‐街道‐

 

そしてカーシーと別れ、その仲間の奥さんから貰った果物を食べながら街道を進んでいるとダンカからの囁き鳥がやって来た。

 

囁き鳥

『単刀直入に言おう。ランドバルトに囚われていたエルフのトレアサだが・・・ランドバルト領主ペトロスと結婚していた。』

 

騎士ガンダム達

「えーーーッ!?」

 

これに騎士ガンダム達は驚き、アリアンに至っては囁き鳥の首を掴んでブンブンと揺らす。それを慌てて止めた騎士ガンダム達は話の続きを聞くと、奴隷として売られる前にペトルスに助けられ、相思相愛の末の結婚へと至ったと話す。

 

囁き鳥

『信じられんのはその後だッたんだが、彼女達は言ったんだ。「エルフ族と人族、両方の関係をより良くする為に私達は頑張ります。」とな。』

 

カーシー

『いつか人族とエルフ族が手を取り合う未来がきっと来てくれるってね。』

 

ダンカの報告を聞いたアリアンの頭にカーシーの言葉が思い浮かぶ。そしてダンカ宛ての報告を囁き鳥に伝えて送り出し、再び歩きだす。

 

アリアン

「ねぇ、ナイト。エルフと人にそんな未来が来るかしら・・・」

 

騎士ガンダム

「来るんじゃない、作るんだ。人とエルフ、他の種族達が笑って暮らせるそんな未来を。今は無理でも少しづつ、一歩ずつで良い。未来を掴み取るのは今を生きる者達の特権だ。それにランドバルト領主とトレアサ氏と同じ様に私達が手を取り合えば、その未来を実現できるさ。」

 

カーシー

『アリアン君。君もきっと分かる筈さ、騎士ガンダム()と仲間達の旅の中で。』

 

そう言って笑顔で答える騎士ガンダムにアリアンはカーシーが言った最後の言葉を思い出しつつ少し頬を赤くする。

 

アリアン

「ナ・・・ナイトは何処からどう見ても人族に見えないから別よ。」

 

騎士ガンダム

「確かにそうだけどちょっと硬いだけで中身は人と変わりないのだが・・・」

 

ポンタ

「きゅんきゅーん。」

 

騎士ガンダム

「そんなポンタまで!?」

 

アリアン

「あはははは!」

 

騎士ガンダムF90Ⅱ

「未来を掴み取るのは今を生きる者達の特権か・・・いい言葉だな。」

 

嵐騎士ガンマガンダム

「あのお二方を見ていると妻との思い出が浮かぶな。」

 

そう話しながら騎士ガンダム達は次の街へと進む。

 

《おまけ》

 

‐翌朝 宿屋‐

 

女将

「おはようございます。昨晩は随分と激しかったね♪」

 

アリアン

「ナイト、私何もしてないわよねッ!?」

 

騎士ガンダム

「大丈夫だ、お互い何も失ってないよ(次アリアンが酔って暴走したらラ○ホーを使おう)・・・」

 

ポンタ

「きゅーん。」

 

集合前、女将の言葉にアリアンは顔を赤くして問いただし、騎士ガンダムは答えながら対処法を考える。その光景を騎士F90Ⅱはヤレヤレと、ガンマガンダムは苦笑いで見詰めていた。

 

第12話END




次回「災いを齎す蛮族の魔獣使いは闇に嗤う」


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