IS 蒼き者の生き様 (妖刀)
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序章
暴走1


機動戦鬼のリメイクを書くついでに頭の中で思いついたのを書いていきます。


とある施設

 

 

“ソレ”は全身から赤いオーラを出しながら突き進んでいた。全身は蒼色で全身装甲。そして顔のバイザー部分の奥には、赤い無機質な光が二つ、輝いていた。

そして“ソレ”施設の通路を進んで行き、そしてT字路を右に曲がった時だった。そこには三体のISがいた。

 

「そいつを止めろ!外に出すな!」

 

真ん中にいた女はそう言って、ほかのISたちと一緒にマシンガンを“ソレ”に向けて連射した。“ソレ”は左手に装備してある小型のシールドで防御をし、ふくらはぎからビームサーベルを抜いた。

 

「だめです!装甲が硬すぎて全く受け付けません!」

 

何発かは本体にあたったが“ソレ”は装甲で弾き、そして目の前から消えた。

 

「な……、きゃぁぁぁぁ!?」

 

いきなり消えたため驚いた女だったが、いきなり”ソレ”に首をつかまれてそのまま壁に叩きつけられた。

「む、無駄よ。こっちには絶対防御があるのよ」

 

女は絶対防御があるためニヤリと笑ったが、それは無駄だった。

女はISもろとも袈裟切りによって切り裂かれたのだ。

 

「ぎゃぁぁっぁぁぁぁあぁ!!!!!」

 

女はあまりの痛みに悲鳴を上げてのたうち回っていたが、次第に勢いがなくなり動かなくなった。

 

「あ、あぁぁ……」

 

殺された女の右にいた女は絶対防御が発動してないことに恐怖し、へたり込んで股に染みを作った。そして“ソレ”の“眼”がへたり込んだ女を睨みつけた。

 

「嫌……、来ないで……!」

 

女は後ろへ下がっていくが、“ソレ”は近づいていき、そして女は壁に背中が当たった。

 

「ひっ……!?」

 

そして“ソレ”と目が合った。“ソレ”の“眼”は赤く、血のような色だった。そしてあまりの恐怖に気絶した。

だが“ソレ”は、気絶した女の頭をシールドの先端で叩き潰し、そして周りを見渡すともう一機ISがいたが逃げ出したのか、すでにその通路にはいなかった。

 

「どこだ」

 

“ソレ”から男の声がした。そして“ソレ”は周りを見渡して一つの通路を見つけ、バックパックと脚部スラスターを吹かしてその暗い通路を突き進んでいった。そしてその先で男女関係なく悲鳴が聞こえたのであった……。

 

 

 

 

 

そして“ソレ”は施設の外にいた。施設はあちこちから火が上がっており、生存者はいるか不明だった。

“ソレ”はビームサーベルを収納した後、辺りを見渡した。時間はすでに夜になっており真っ暗で施設の周りは木々でおおわれており、ここがどこなのか分からなかった。

 

「かん……ザし、今から会いニ行くカラ……」

 

“ソレ”は全スラスターを噴射してその場を後にしたのであった……。

 

 

 

 

 

その事件から数日経ち、場所が変わってここはIS学園。

今IS学園は専用機限定タッグマッチが行われている、はずだった……。

 

「お姉ちゃん……!」

 

簪は山嵐をゴーレムⅢに向けて放った。ミサイル群はゴーレムⅢへと向かっていくが、全てビームで落とされた。だが簪は山嵐を攻撃のためにはなったのではなく、攪乱のためにはなったのだ。ゴーレムⅢは落としたミサイルからジャマーが入った煙幕のせいで周りが見えなくなり、簪はその間に戦闘不能になった楯無を回収した。そして煙幕が晴れないうちに簪はアリーナの壁側に退避して楯無を壁に寄りかからせた。

 

「簪……ちゃん……?」

 

楯無はミステリアス・レイディでミストルテインの槍を使い重傷を負っており、まともに動ける状況ではなかった。

 

「お姉ちゃん……、私が……、お姉ちゃんを守るから……」

 

簪はそう言っ後夢現を展開して煙幕が張られている方に向かった。

 

「簪ちゃん……行っちゃダメ……!」

 

楯無はミステリアス・レイディが動かないのを恨みながらも簪の名を呼んだのであった。

 

 

 

 

 

簪は煙幕の中であたりを見渡しているゴーレムⅢを見つけた。

 

「(よし……、このまま気づかれないように近づいて……、春雷を零距離でぶつけたら……!)」

 

だが簪の考えてることを無駄にしてしまう者がいた

 

「楯無さんに手を出すなぁぁぁぁ!」

 

一夏は簪が狙っていたゴーレムⅢに雪羅を放ちながら突っ込んで行った。そもそも彼は他のゴーレムⅢを相手にしていなかったのか?簪は混乱した。だがそこで止まったのがいけなかった。いきなり簪の後ろからもう一機のゴーレムⅢが現れたのだ。

 

「しまっ!?」

 

ゴーレムⅢはブレードを振り下ろしてきたので夢現で防御したが、力の差で簪はアリーナの壁まで吹き飛ばされた。

 

「かはっ!」

 

そして壁に叩きつけられた後ゴーレムⅢがブレードを簪にぶつけてきた。シールドエネルギーがあるからどうにか数発は持つが、ただの気休めにしかなっておらず簪はとても焦っていた。

 

「(うぅ……、お、織斑君のせいで……)」

 

ついに打鉄二式が解除されてしまい、簪は地面に投げ出された。そして大型ブレードを簪に叩きつけようとしたため、簪は目を瞑った。

 

「簪ちゃん!」

 

だが楯無が簪を抱きかかえて、大型ブレードをかわした。

 

「大丈夫?簪ちゃん」

 

「お姉……ちゃん……?どうして……?」

 

このとき楯無は簪をギュッと抱きしめた。

 

「当たり前じゃない。私はたった一人の妹を助けただけ。それに理由なんかある?」

 

「でも……背中が……!」

 

楯無の背中からは大量に血が流れていた。さっき簪を助けたときにブレードが当たってそれで背中を怪我したのだ。

そしてゴーレムⅢが近くに寄ってきた。一夏は助けに行こうとしたが、もう一機のゴーレムⅢに阻まれ助けに行くことができなかった。

 

「助けて……!」

 

簪と楯無は抱き合って目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

管制室では先生たちが慌てふためていた。

 

「織斑先生!新たな所属不明機が二機、こちらに向かってきてます!」

 

「何だと!?(束……、おまえはいったい何がしたいんだ……!)」

 

織斑先生はそう思いながらアリーナが映っているスクリーンを見た。

 

「織斑先生!さらに新たな所属不明機がこちらに接近中!……あ!先程の所属不明機を追い抜いた際に先程の所属不明機の反応が消えました!」

 

「何!?」

 

織斑先生は驚いた。束が作った無人機を一瞬で破壊するのがどこにいる。そしてそれが学園に向かってくるとなるととても危険ではないか!

 

「至急その所属不明機を破壊するように他の教員に伝えろ!」

 

「だめです!間に合いません!」

 

「何だと!?」

 

そしてアリーナに設置されたカメラがその姿をとらえた。

 

 

 

 

楯無と簪はゆっくりと目を開けた。ゴーレムⅢのブレードは楯無の背中にあたる直前で止まっており、ゴーレムⅢは空を見上げていた。

 

「何……?」

 

二人は空を見るが何もなく、いったい何があったのかわからなかった。だが、攻撃してこないため簪は楯無に肩を貸してその場から逃げ出した。

 

「大丈夫ですか!楯無さん!簪!」

 

そして二人がそれなりに離れたときに一夏が二人の元へ寄ってきた。

 

「大丈夫……じゃない。織斑君……、もう一機の所属不明機を相手にしてたよね……?どうしてこっちに来たの……?」

 

簪はキレており、一夏は簪から出てるのか怪しいほどの怒気にたじろいだ。

その時だった。

いきなりアリーナのシールドが打ち破られたのだ。

いきなり轟音がしたため三人は空を見上げると、そしてそこには全身が蒼の機体がいた。

簪はその機体を知っていた。昔のゲームで出てきた機体。その名は

 

「ブルーディスティニー……。蒼い……死神……」

 

“ソレ”……いや、ブルーディスティニーはその場から動かず上空からアリーナを見下していた。

アリーナにいたゴーレムⅢはブルーに向けてビームを連射したが全てかわされた。

 

 

『EXAMsystemスタンバイ……』

 

 

ブルーから無機質な声がした後バイザーの部分が赤くなり、そして全身から赤いオーラをだしてゴーレムⅢ二機のいるところへと突撃した。

ゴーレムⅢ二機はビームを連射するが、それを難なくかわされ、楯無と簪に攻撃しようとしたゴーレムの懐へ一瞬で入り込んだ。そしてゴーレムⅢの腹にあたる部分を右手で殴りつけ、ゴーレムⅢは大きく吹き飛ばした。

ゴーレムⅢは体勢を立て直そうとするがブルーはそんなことをさせる暇を与えず、タックルを決めてバランスを崩させた後に回し蹴りを頭部にぶち当ててそのまま壁まで吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

「何だよ、あいつ……!」

 

一夏はいきなり現れたブルーに困惑しており、どれを攻撃すればいいのか悩んでいた。だがもう一機のゴーレムⅢが攻撃をしてきたため雪羅で牽制した後、雪片二型で切り裂こうとした時だった。

 

「うぉぉぉぉぉ!!……うぉぉぉ!?」

 

切り裂こうとしたゴーレムⅢがいきなり吹き飛んだのだ。一夏は何があったのかの思ったがそれがすぐに判明した。さっきまでブルーと戦っていたゴーレムⅢが一夏と戦っていたゴーレムⅢにぶつかったのだ。

一夏は飛んできた方向を見てみると、そこには何かを投げたかのようなポーズをしたブルーがおり、一夏は冷や汗を流した。

 

「まさか……、あの無人機をここまで投げたのかよ……!」

 

そしてブルーはスラスターを噴射して一気にゴーレムⅢたちに近づいた後、最初に起き上がった、投げられたのが当たった方のゴーレムⅢの頭を右手で鷲掴みした後、左手に装着してあるシールドの先端で胸部を殴り始めた

 

「はは……ふははははは!!!」

 

「この声、まさか……、お姉ちゃん!」

 

「うん……聞こえた。まさか……ね……」

 

そして途中からブルーに載っているパイロットからだろうか、狂気に染まったかのような笑い声が聞こえたが、この声の主を知ってるのか楯無と簪は反応した。

 

 

 

 

 

何回も殴ったせいか、ゴーレムⅢの背中からISコアが弾き飛ばされた。そしてブルーは動かなくなったゴーレムⅢの首を掴み、もう一機のゴーレムⅢの元へと向かった。

もう一機のゴーレムⅢは激突の際に機能が停止してたのか、ブルーが結構近づいたところで反応し、掌の部分からビームを連射するが、ブルーは持っていたゴーレムⅢの残骸を盾にした。

そして残骸はボロボロになっていくが、ブルーはそれを気にせずそのまま突っ込み、そしてゴーレムⅢにゴーレムⅢの残骸を叩きつけるかのようにぶつけた。

ゴーレムⅢは再び壁に叩きつけられ、そして次に見たのはブルーの持っていたシールドの先端だった。

そしてシールドはゴーレムⅢの頭を潰した後、そのままアリーナの壁を穿った。

そしてシールドで頭を潰されたゴーレムⅢはその場で大型ブレードを横に薙ぐが、ブルーはすでに後ろに下がっており、そしてブルーの胸部から二つのミサイルは発射され、そしてゴーレムⅢに二つとも直撃し、大爆発が起きた。

 

 

大爆発が起きて煙が晴れた後、そこにいたのは上半身を失ったゴーレムⅢであった。

 

『なっ……!?』

 

ここのアリーナにいた全員は絶句した。シールドエネルギーがあるはずなのに全く機能していないのだ。

そしてブルーは楯無と簪がいいるとこを見、そしてそこに歩みだした。

簪は楯無の前に立って庇うかのように両手を横にしており、そしてブルーは簪の前に立った。

 

「カン……ざシ、ただ……イ……ま……」

 

その時ブルーから声がした。

 

「やっぱり……、おかえり、蒼也」

 

簪は嬉しさのあまり涙が少し出たが、笑みを浮かべた。

だが

 

「二人に手を出すなぁぁぁ!!!」

 

一夏は更識姉妹が襲われてると思ったのか、ブルー目掛けて雪羅を発射した。

ブルーの後ろに更識姉妹がいるのを忘れて。




原作七巻目の戦いが終わった後に、原作一巻目に入っていきます。


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暴走2

昨日、MGのZZとMGのフルアーマーZZを一気に買った妖刀です。塗装しながら組んでいますが、完成が見えない……。
なお塗装色はトリコロールではなく、3~4色のグレーをベースにしたカラーです。


雪羅を発射した後、一夏はブルーの後ろに更識姉妹がいることを思い出し顔を青くした。だが雪羅は発射してしまい、当たったところは煙が吹き荒れ何も見えない。これでかわされていたら更識姉妹を殺してしまったことになり、一夏はブルーに雪羅が直撃したことを祈った。

 

 

 

 

 

簪は一夏が雪羅を撃ってきたことに恐怖して楯無と抱き合って目を瞑ってた。

だが何も起きず、疑問に思った簪は恐る恐る目を開けてみると、そこには右手を突き出して雪羅を受け止めたブルーの姿があったのだ。簪は改めてブルーを見てみると絶句した。

ブルーの右手は雪羅を受け止めたせいか掌から肘にかけて溶けかけており、動かすたびに関節部が悲鳴を上げていた

 

「織むラいチ夏……、簪二手を出シたな……。潰ス」

 

ブルーは一夏めがけて突っ込もうとしたが、何かに腕を掴まれてその場にとまった。そして振り向くと、そこには涙を流しながらで腕をつかむ簪がいた。

 

「どうシた、かンざし?」

 

「蒼也……、もう戦いは終わったんだから、もうやめよう?」

 

ブルー、いや蒼也は何も言わなかったが、ただ簪の頭を撫でた。

 

「……すマナい……、織斑は許セなイんだ……」

 

蒼也は簪の頭を撫でるのをやめた後、背を向けて一歩一歩歩き出した。そしてスラスターを噴射して一夏の方へ向かった。

 

「だめ……、行かないで……。行ったら……」

 

簪はただ行ってしまう蒼也を見てるしかできなかった……。

 

 

 

 

 

一夏は煙を目を凝らして見ていた。

 

「いったい中はどうなってるんだよ……」

 

煙の中に入って状況を確かめたかったが、闇討ちを避けている一夏にとってはどうすることもできなかった。

その時だった。煙の一部が盛り上がり、ブルーがシールドで突く形で突っ込んできたのだ。

一夏は雪片弐型を構え、零落白夜を発動させて頭を横薙ぎで狙ったが、シールドによって軌道をそれされ、そのまま喉にシールドが突き刺さり一夏は大きく吹き飛ばされた。

 

「ぐはっ!!がはっがはっ、うぅ……喉を狙ってくるとかありかよ……」

 

一夏はのどを抑えながら言い、ブルーを睨みつけた。

 

「……ッタ」

 

「え?」

 

一夏は何を言ったのか聞き取れず、聞き返した。

 

「何故二人ごト俺を狙ッた!」

 

一夏はこの時何か引っかかるものがあった。この声を聞いたことがあるのだ。

 

「答えなイノか!ならばここで果テロ!」

 

一夏が答えないため無視したと判断したブルーは、拳を握って一夏の元へと向かった。

そして一夏に向かってストレート、フック等を繰り出しダメージを与えて行った。

 

「くっ、くそぉぉぉぉ!」

 

一夏はシールドエネルギーが着々と減っていくことに焦ったのか雪片弐型を横に薙いでブルーを撒こうとしたが、ブルーはしゃがんで回避した。

その時一夏の顎に強い衝撃が走った。ブルーが右手でアッパーをしたのだ。一夏はそのまま宙へと舞い上がり、横腹に左フックを叩き込まれそうになったため雪羅を撃とうとしたが

 

「ジャマだ」

 

ブルーはそのまま左フックをして雪羅にシールドを突き刺した。雪羅は荷電粒子砲を放とうとしてたのか溜まっていたエネルギーが暴走し、大爆発が起きた。

 

「うわぁ!?」

 

一夏は爆風によって飛ばされてアリーナの壁まで飛ばされ、アリーナの壁に着地する要領で体勢を整えた。だが前を見るとブルーが目の前に迫っており、ブルーは左手を突き出して一夏に突っ込んだ。

 

「その攻撃は見切った!」

 

一夏はスラスターを吹かして横に回避した後、ブルーはそのまま壁に突っ込んでしまいシールドが壁に刺さってしまい抜けなくなった。

一夏はそれがチャンスと思い、雪片を大きく振りかぶってブルーを切りに行った。その時目が合った。

一夏はスラスターを使って急いで減速し、ブルーから離れようとした。だがブルーに大きく近づいてしまった。

そしてブルーはこの瞬間を待っていたかのようにシールドを一回格納して、右手に再展開し、そのシールドの先の部分に赤いオーラを一点集中させた。

この時一夏は本気でやばいと思いスラスターをさっきより大きく噴射したが、ブルーの右フックを掠めてしまった。

 

「ぐぁぁ!?」

 

この時ISスーツを切り裂き、一夏の腹から胸にかけて少し抉られたかのような傷ができた。そしてそこから血が吹き出し、一夏は地面に落ちた。

 

「どういうことだ……これ……。絶対防御は……?こんなの可笑しいだろ……。痛てぇ……」

 

一夏は切り裂かれた痛みで考えることがままならなくなっており、胸を抑えるが血は止まらず、そして今の体勢が維持できないのか膝をついて、そして肘をついた。

ブルーはそんな一夏を無視して横腹に蹴りを入れて、うつぶせの状態から仰向けの状態にさせて、そして腹を踏みつけた。

 

「がぁぁぁぁ!?」

 

傷口を直接踏まれたせいで一夏の悲痛な悲鳴が上がるが、ブルーはそれを無視してマシンガンを展開した後に眉間に銃口を至近距離で向けた。

一夏はまだ意識があるのかブルーを睨みつけていたが、痛みのせいで顔を苦痛に染めた。

 

「思い出した……お前蒼也、だな……?」

 

この時引き金を引こうとしたブルーの動きが止まった。

 

「ヤット思いダしたカ。ダが、な二が言イタイ」

 

一夏は痛みでうまくしゃべれないがそれでも口を開いた

 

「なんで、こんなことを……するんだ?」

 

この時ブルーは何も言わずに踏む力を強め、一夏は苦痛の表情を上げた。そして口を開いた。

 

「お前ラニタいする復讐だ。オ前らガイルセいで俺は酷イメにアイツづけた。ソレデケ我をしても一切の謝罪がなシ!そしてISが使エル男だからって研究所に連レテ行かれる時も何が『元気でな』だ!ナニモしラぬ者が!俺はオマエラガニクイ!ダカラここに帰ってキタ!ソレノナニガワルイ!オレノイママデノイタミヲシラヌモノガ!ココデオモイシレ!!」

 

声がどんどんとカタコトになっていき、怒気をはらんだ声がただ響き続けた。

そしてブルー、いや蒼也は引き金を引こうとした。

 

『一夏!(さん!、嫁!)』

 

その時蒼也めがけてレーザーなどが飛んできたため、蒼也は一夏を強く踏みつけて後ろへと下がった。この時一夏は痛みのあまり悲鳴を上げたが、蒼也はそれを無視してそして空を見るとそこには他のアリーナにいた無人機を片づけたのだろう、篠ノ之箒、セシリア・オルコット、鳳鈴音、シャルロット。デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒの五人がいた。

全員は自分の得物を構え、蒼也に向けていた。

 

「キサマラカ……」

 

蒼也はそう呟いて空を見ていた。

 

「貴様、何者だ!」

 

箒はそう叫ぶが、ブルーが何も返事をせずイライラしていた。

 

「……いいだろう。この刀の錆にしてやる!」

 

「ちょっと待ってください箒さん!それより一夏さんの救出を!」

 

箒が突っ込もうとするがセシリアによって止められ少し不満そうな顔をしていた。

 

「うむ、セシリアの言うとおりだ。だから私とセシリアと箒があの蒼いやつの気を引き、シャルロットと鈴は一夏の救出を頼む。いいな?」

 

『わかった!(わかりましたわ!)』

 

ラウラが指示を出して全員が返事をした後、ラウラがレールカノンから砲弾を放ちそれを合図に全員が動き出した。

蒼也は砲弾をシールドを使って逸らした後、箒の方へと向かった。

 

「なっ、私だと!?」

 

箒はいきなり自分が狙われるとは思わず、反応するのに遅れた。だがそれが致命的で、蒼也はマシンガンを連射しながら近づいた後、左手に持ってたビームサーベルで切り抜けようとした。

 

「っ!させませんわ!」

 

セシリアはビットからレーザーを放つが、それをすり抜けるかのようにかわして蒼也は箒にビームサーベルを叩き込もうとした。

 

「くっ……!」

 

ビームサーベルが当たろうとした瞬間、箒は無理やり体を捻らせ回避することには成功したが、背部の展開装甲部のほとんどがこの攻撃で抉られたかのように切り裂かれた切り裂かれてしまい、機動力が大幅にダウンした。

そして蒼也は箒の厄介な機動力を落としたことを確認して、次のターゲットに狙いを定めてスラスターを吹かした。

 

「なっ!?とどめを刺さないとは私に対する侮辱か!?」

 

箒がそう叫んでいたが全く関係のない話であり、蒼也は一夏の元へと向かった。

 

「鈴!一夏を任せた!」

 

「え?シャルロット!?」

 

シャルロットは鈴に一夏の救出を任せた後、蒼也の前に立ちふさがり両手にマシンガンを展開して引き金を引いた。

蒼也はシールドを前に構えてそのまま突っ込んだ。銃弾はシールドに直撃していってるが速度は一向に落ちず、距離が着々と詰まってきていた。

その時だった。蒼也がいきなり離れたのだ。シャルロットはなぜ離れたのが分からなかったが、その一秒後にブルーがいたところに砲弾が撃ち込まれたのだ。

蒼也は離れて空を見るとそこにはラウラがおり、大型のレールカノンを放っていたのだ。

 

「なっ!?あの状態で反応するのか!?」

 

「援護しますわ!」

 

そしてセシリアがビットとレーザーライフルを交えた波状攻撃をするが、シールドでふさぐなり、ビームサーベルで切り払ったりして離れた。

この時一夏を抱えた鈴の前には三人が壁になっており、鈴は「すぐ戻るから」と言って急いでピットに入って行った。そしてアリーナにいるのは篠ノ之箒、セシリア・オルコット、シャルロット、デュノア、ラウラボーデヴィッヒ。そして蒼い死神に乗った蒼也の五人だった。

 

「いったいあなたは何者ですの?」

 

セシリアが問いかけるが何も答えず、ただ右手に持ってたマシンガンをセシリアに向けた。

 

「セシリア、こいつに何も言っても無駄だ。早く倒すぞ」

 

ラウラはそう言ってレールカノンを構えた。

そして蒼也は一瞬でシャルロットの目の前に近づき、そして頭を掴んだ後セシリアめがけてシャルロットを投げた。この時セシリアはまさかシャルロットが飛んでくるとは思わず、どうすればいいのかわからず動けなかった。

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

「きゃあ!?」

 

そして二人は激突し、折り重なった状態で伸びた後、マシンガンをラウラ目掛けて引き金を引いた。

 

「無駄だ!」

 

ラウラは右手を突き出しAICを使って銃弾を止めた。だが

 

「あうっ!」

 

この時ラウラの延髄に途轍も撒く強い衝撃が走りラウラは前に飛ばされた。飛ばされた際ラウラは後ろを見ると、そこにはいつの間にか後ろに回り込んで後ろ回し蹴りを叩き込んだ蒼也がいた。

ラウラは空中で体勢を立て直しレールカノンを数発放つが、かわされるかシールドを使って逸らされてばっかりでいた。

そして蒼也は胸部、頭部バルカンを同時に連射し、ラウラはジグザグに動いてかわして行った。そして弾切れ関係なしにバルカンを連射していることにラウラは疑問に思った

 

「(当たると思ってないのに何故こんなに放つ?……まさか!?)」

 

ラウラはハイパーセンサーで後ろを見ると自分に迫ってきている未発のミサイルがあり、自身が誘導されたことを悟った。

 

「くそぉぉぉ!!」

 

ラウラはワイヤーブレードでミサイルを切り、爆風にのまれたがその時に生じた煙の中に隠れた。

蒼也は躊躇なく煙の中に入り込みラウラを探した。

 

「……、……!?」

 

その時だった。いきなり体が動かなくなったのだ。この時蒼也は理解した。これはAIC。それを使えるのは……。

 

「もらったぞ!」

 

そして後ろからラウラがプラズマ手刀を前に突き出そうという体勢で現れた。そしてラウラは、プラズマ手刀を延髄目掛けて突き出した。

 

 




蒼也がしゃべっているときカタコトが混じってるのはEXAMの影響でそうなってます。少し見にくてすみません。

そしてこれを書いていて思ったのが、最初はブルーで表記されてますが、最初から蒼也にした方がよかったのかな?
これでいいか、最初から蒼也にした方がいいか誰か教えてください。




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暴走3

一対多を書くのは難しいな。


ラウラは延髄にプラズマ手刀を突き刺して倒すところまで予想できていた。だが

 

「……ムダダ」

 

蒼也はボソリと言った後、この時一瞬だけ纏っているオーラが大きくなった。そしてAICが効いている中、蒼也が振り向いてラウラと目が合ったのだ。

 

「なっ!?」

 

この時ラウラの背筋にまるで氷柱が張り付くかのような寒気がした。

 

「……っ!?」

 

そして危険を察知して蒼也から離れたとき、ラウラがさっきいたところに裏拳が素振りした。もし下がらなかったら一夏みたいに大怪我、いや大怪我では済まなかっただろう。ラウラは冷や汗を流した。

だが、なぜAICが効かないのかがわからない。だが蒼也の機体の特殊能力がAICを無効化したのはわかった。

 

『シャルロット、セシリア、起きていたら返事をしてくれ』

 

この時プライベートチャンネルで二人に呼びかけたとき、二人はわずかに身じろぎした。

 

『な、何ですのラウラさん……』

 

『ラウラ、どうしたの?』

 

『奴にひたすら射撃をしてくれ。一つだけ気になることがあるのだが』

 

『そうですか……、わかりましたわ』

 

『ぞれじゃあ蒼いのが私たちの方を向いてないときに仕掛けよ……ぅ……』

 

この時シャルロットは冷や汗をだらだら掻いていた。

 

『どうしましたの?』

 

『セシリア……、蒼いのがこっちを向いたまま、他の方を向かないんだけど……』

 

『え……?』

 

セシリアはちらりと蒼也の方を見た。蒼也は動かずにただ二人を見ており、そして一歩一歩歩いて近づいてきた。

シャルロットとセシリアは全く動いてないが汗が止まらず、気付かないでくれと祈った。そして二人の近くまで来た。

 

『ラウラ!助けて!』

 

シャルロットはとりあえず一番動けるラウラに助けを求めた。

 

『わ、わかった!』

 

ラウラは蒼也めがけて数発レールカノンを放ち、気をラウラの方へ逸らした。だが

 

「がふぅ!?」

 

セシリアの頭を思いっきり踏み抜き、セシリアは頭だけ地面に陥没して完全に気を失しなった。

 

「セシリア!?あっ……」

 

シャルロットはセシリアが踏みつけられたことに驚いて起き上がってしまい、蒼也と目が合った。

 

「ど、どうも……」

 

「……」

 

「もぉぉぉぉぉ!!勘弁してよぉぉぉ!!」

 

そして挨拶をしてみるが効果はなく、マシンガンを目に前に付きつけられたため自棄になったシャルロットは、涙目で右手にショットガン、左手にマシンガンを展開して一気に放った。

蒼也はシールドを使いつつ後ろに下がり、そして胸部ミサイルをシャルロットめがけて二発放ってさらに後ろに下がった。

シャルロットは後部ミサイルをかわして反撃に出ようとして立ち上がった。だが

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

後ろでいきなり大爆発が起きて、前に吹き飛ばされた。

何があったのかというと、ミサイルがシャルロットを通り過ぎていきなり自爆したのだ。威力はゴーレムⅢを一気に破壊できるほどの威力のため、爆風が異常ともいえるほどの力でシャルロットを吹き飛ばしたのだ。シャルロットは飛ばされ、地面を数メートル転がった後に何かに当たった。そして当たったものを見てみると色は蒼。恐る恐る上を見上げようとしたが、いきなり頭を地面に叩きつけられ目の前が真っ暗になった。

 

「シャルロット!」

 

ラウラはレールカノンをシャルロットの頭を踏みつけ、そしてうなじらへんにマシンガンを向ける蒼也に向けて放った。砲弾はシールドで弾かれ、そして蒼也がラウラの方を向いてスラスターを吹かした。

 

「よし!こっちだ!こっちに来い!」

 

ラウラは、先程から放たれてくるマシンガンの銃撃をうまく回避しながらレールカノンを放っていた。

 

「シャルロット!いまだ!」

 

その時だった。蒼也の右半身に大量の銃弾が殺到してきた。ラウラはシールドのついてない右半身がシャルロットの方を向くように誘導していたのだ。銃弾は蒼也をしっかりととらえるが、ほとんどが弾かれ、ダメージはそこまで入っていなかった。だが

 

「!?」

 

蒼也は何かの攻撃を受けて大きくのけぞった。この場にいた全員が何があったのかと思い辺りを見渡すと、そこには赤の装甲を纏ったツインテールの女子、鈴がいた。

 

「「鈴!?」」

 

シャルロットとラウラは鈴が現れたことに驚いたが、それより一夏のことが気になった。

 

「鈴、嫁は大丈夫なのか!?」

 

「大丈夫よ。傷はひどいけど命に別状はないみたい」

 

「そ、そうか……。よかった……」

 

一夏の命に別状はないことを知った二人は安堵の息を吐いた。そして鈴は蒼也を睨みつけて、右手に持ってた双天牙月の切っ先を向けた。

 

「あんたを倒して一夏の前で土下座させてあげるんだから、覚悟なさいよね!」

 

「私もいるぞ!」

 

蒼也はこの時、体を少し動かしたら先程いたところに斬撃みたいにエネルギーの刃が飛んできた。そして蒼也は後ろを見た。

 

「「「箒!」」」

 

そこには背中の展開装甲部が破壊された状態ながらも雨月と空裂を構えた箒がいた。

 

「シャルロット、そういえばセシリアは?」

 

鈴はセシリアがいないことに疑問がわき、シャルロットに聞いた。シャルロットはその時、苦い顔をした。

 

「セシリアはあそこに……」

 

鈴はシャルロットが指さした方を見ると顎が外れたかのような顔で絶句した。

 

「いや、頭だけが地面に埋まってるってどういう状況よ!」

 

「いや、あの蒼いのがセシリアの頭を踏んでさ、そしたら頭が地面に埋まったっていうわけなんだよ……」

 

この時鈴は何も言えない顔をした。

 

「そ、そう……。まあそれは置いといて早く蒼いのを倒すわよ!」

 

「「「わかった!(わかりましたわ!)」」」

 

そして四人は蒼也を取り囲むかのように、上空で四方向に分かれて自身の得物を構えた。この時蒼也は足にオーラを多く纏わせた。

そして

 

「きゃあ!?」

 

鈴が首を左手で掴まれ、そのまま地面に叩きつけられた。

 

「「「……え?」」」

 

いきなり何が起きたのかわからなかった。さっきまで地面にいたのに、一瞬で上空に飛んだことが理解できなかった。瞬時加速(イグニッション・ブースト)の類じゃない。それが全員を恐怖に叩き入れた。

そして蒼也が顔を上にいる全員の方へ向けたとき、それを見た全員はとても恐怖した。まるで連続殺人犯にニヤニヤと見られている気がしたのだ。

 

「くっ……、放しなさい……!」

 

この時鈴はジタバタしながら蒼也からの拘束から逃れようとした。先程掴まれた際に青龍刀を手放してしまい、それで近接兵装が無くなっていたのだ。

 

「そ、そうだ、これでもくらいなさい!」

 

鈴は蒼也目掛けて龍砲を数発放つが、怒りを買ったのか首を絞めつける力が先程より強くなり、少しずつ地面にめり込み始めた。

 

「う……ぁ……、やめ……て……」

 

鈴はあまりの絞めつけに白目をむき始め、意識を失いそうになっていた。

 

「鈴を放せ!」

 

箒は二刀を構えて蒼也目掛けて突っ込んだ。

 

「……マタカ」

 

「ぎゃう!?」

 

蒼也は一気に力を入れて鈴を上半身丸ごと地面に陥没させた後、箒の方を向いた。そして箒の二刀流をいなしながら、片手上段になった瞬間、蒼也は足にオーラを集中させて横腹に回し蹴りを決めた。そして箒は吹き飛ばされ壁に激突して地面に落ちた。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

箒は大きく悲鳴を上げた。先程蹴られたとき、肋骨が数本折れたのだ。あまりの痛みに箒は動くことができず、蒼也は箒にとどめを刺そうと突っ込もうとした。

 

「「箒!」」

 

蒼也めがけてラウラはレールカノンを、シャルロットは両手マシンガンをし、蒼也は箒から離れて二人から放たれる銃弾等をかわして行った。

 

 

 

 

 

そのころ簪は楯無を保健室の方へ送った後、再び蒼也のいるアリーナに向かっていた。

 

「(早くしないと……!蒼也が完全にキレてるなら……!)」

 

そしてひたすらアリーナに向かって走って行った。

 

 

 

 

 

そのころアリーナでは……。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

シャルロットが灰色の鱗殻(グレー・スケール)を展開して蒼也めがけて突っ込んだ。蒼也はそれに反応し、マシンガンをシャルロットに向けて引き金を引こうとしたが

 

「やらせん!」

 

「……!?」

 

ラウラがAICを使って動きを止めた。

 

「もらったぁぁぁ!!!」

 

シャルロットはこれがもしかしたら最後のチャンスと思い灰色の鱗殻(グレー・スケール)を構えて蒼也めがけて突っ込んだ。

蒼也は胸部バルカンを連射するが致命傷にならず、そして弾切れが起きた。

 

「これで終わりだぁぁぁぁ!!」

 

そして灰色の鱗殻(グレー・スケール)が胸部に直撃しようとしたとき、胸部ミサイル超至近距離で放たれ蒼也とシャルロット、二人を巻き込んで大爆発を起こした。

 

「シャルロット!?」

 

ラウラはこの時起きた煙のせいでシャルロットがどうなったのかわからなかった。

その時だった。ラウラ目掛けて何かが飛んできた。ラウラはそれをAICで動きを止めたとき言葉を失った。

 

「シャルロット……!」

 

そう、飛んできたのは装甲がボロボロになり、気絶したシャルロットだったのだ。そしてラウラはシャルロットを抱きかかえた。そして煙の中からもう一体の影が見え、ラウラは警戒した。

そして煙の中からあちこちを黒く焦がした蒼の装甲が見えた。胸部バルカンの銃口はひしゃげ、右腕はだらりと垂れさがっており、そしてバイザー部分が砕けながらも中から見える一対の赤い目が満身創痍であることを否定するかのように怪しく輝いていた。

 

「な、あんな状態でまだ戦えるのか!」

 

蒼也はラウラを見つけると、スラスターを吹かしてラウラとの距離を詰めて行った。

 

「(くっ、まずい。シャルロットを抱えてるからうまく戦うことができないぞ……)」

 

ラウラはちらりとシャルロットを見た後、蒼也から距離を取りつつレールカノンを放った。

 

「イイカゲン、ムダダ」

 

蒼也はシールドを砲弾にぶつけてわざと爆発させた。

 

「やったか!?」

 

ラウラは砲弾が直撃して倒したのかと思ったが、それは違った。煙の中から何かが勢いよく飛んできて、それがレールカノンに突き刺さり爆発した。

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

ラウラは爆風で飛ばされた後、煙の中から現れた蒼也に恐怖した。その赤い目はいくら攻撃してもかわし、その腕はまるで鎌のように次々と仲間を刈っていく。そしてあるものが頭に思いついて、無意識にラウラはそれを呟いていた。

 

「蒼い……死神……!」

 

ラウラは急いでスラスターを吹かして距離を取るが、それでも追い付かれそうになり、ラウラの精神をむしばんでいった。

その時だった。

 

「はぁ!」

 

何かが蒼也めがけてブレードで切り裂きに来たのだ。蒼也は体を捻って離れた後その顔を見た。ラウラもいきなり何があったのかわからなかったが援軍であることに安心をし、そしてその顔を見て驚いた。

 

「教官……!」

 

そう、ブリュンヒルデこと織斑千冬が援軍として現れたのだ。そして千冬はラウラを一目見た後、蒼也に近接ブレードの切っ先を向けた。

 

「貴様、いい加減にしてもらおうか。ここまで専用機持ちがやられるとなるとこっちの威信にもかかわるのでな」

 

そして千冬はラウラの方を向いた。

 

「ラウラ、ここに転がっている専用機持ちたちを連れてピットに戻れ。いいな」

 

「ですが教官」

 

「いいな、これは命令だ」

 

ラウラは千冬に食いつこうとしたが、千冬の命令ともあって引き下がった。そしてラウラはほかの専用気持ちを回収してピットの中へと戻って行った。

そしてアリーナの中には蒼也と千冬の二人だけになった。

 




ここまで相手をボコしてますが、EXAMの暴走です。でもEXAMって一対多の時に発動したらまあまあ使えるな。


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暴走4

思いついたことを文にするって難しいな……。

あれ?前に何かで同じことを書いたような気がする。


アリーナの中ではブルーディスティニーを纏った蒼也と打鉄を纏った千冬だけしかおらず、蒼也は左拳を構え、千冬はブレードを構えていた。

 

「お前は何者だ。なぜこんなことをする」

 

誰もが聞いても返事をしない問いを千冬は聞いた。

 

「タダジガニシタガッテルダケ」

 

「この声、黒城(こくじょう)か」

 

この時、初めて蒼也が答えた。そして千冬は声の主を当てた。

 

「貴様、研究所に送られたはずじゃなかったのか?あそこはどうしたんだ」

 

「ミンナコロシタ。カンザシニアイタイ。ソレヲジャマスルヤツ、ミンナコロシタ」

 

「なっ……!?」

 

声の抑揚がどんどんなくなってきており、千冬はまるで機械と話してる感覚に陥って少し気持ち悪くなった。

 

「アンタハイッタ。セイトヲマモルノガシゴトダト。ナノニウラギッタ。シッテルヨ。アンタガケンキュウジョニオクルノヲキョカシタッテ」

 

「そ、そんなことはしてない!」

 

千冬は腕を振って否定した。

 

「ウソダ。オリムラトオレノドチラカヲセイフニワタセッテイワレタトキ、チュウチョナクオレヲエランダッテケンキュジョノヤツラガイッテタ」

 

「そ、それは……」

 

この時千冬は目を逸らし、額から汗を掻いていた。

 

「ナゼオレヲエランダ」

 

「そ、それはお前が織斑より成績が悪かったからだ。お前はラファールを専用機として貸していたのに、他の専用機と戦っても連敗。それだからここにいても無駄だと思って研究所に……あ」

 

思いっきり暴露をしてしまった千冬は手で口を押えたがそれも遅く、蒼也からはとてつもないほどオーラが出ており、それは蒼也の怒りを表しているかのようだった。

 

「ソレガホンネカ」

 

蒼也はそう言い、千冬は目を逸らした。そして向き合って口を開いた。

 

「……そうだ。お前が弱かったから研究所に送った。ただそれだけだ」

 

それを聞いた蒼也は俯いて、何かぼそぼそつぶやいていた。

 

「オレガヨワカッタ……?ウソダ、オリムラニハカテテタ。タテナシヤカンザシノオカゲデソレナリニタタカエテタ。アイツノイッタコトハウソダ」

 

そして蒼也は顔を上げて千冬を睨んだ。この時に出た異常なほどの殺気で千冬は怯み、後ろに二、三歩下がった。

蒼也は間をあけないように一歩一歩前に進んで、間を詰めた。そして右手をだらんとさせたまま左手を後ろに引き、足を開いた。

千冬は左正拳突きが来ると思いブレードを構えた。そして次の瞬間、ブルーが消えた。

 

「っ!?」

 

千冬は一瞬焦ったが、それでも構えを崩さずその場に居続けた。そして

 

「っ!」

 

千冬が一蹴の殺気を感じ頭を左に動かしたら、最初頭があったところにシールドの先端が高速で通過した。この時シールド先端が異常なほどのオーラに包まれていたので、直撃したら頭が吹っ飛んでいただろう。千冬は冷や汗を流した。

そして振り返りざまにブレードを横に薙ぎ蒼也を後ろに下がらせ、千冬は一気に加速して蒼也に近づいた後、ブレードを縦に振り下ろした。蒼也は体を横に逸らしてかわした後、そのままフックを繰り出すが、千冬はしゃがんで回避した。

 

「むっ!」

 

だが顎と脳天を目掛けて左膝蹴りと右肘落としが繰り出され、千冬はブレードを手放して両方を片手で受け止めたが、横顔目掛けてシールドの先端が迫っていた。

 

 

「ちっ!」

 

千冬は後ろに下がって攻撃を回避するが、それを機に蒼也は一気に攻撃を仕掛けた。ストレート、フック、アッパー、回し蹴り、蒼也はいろいろ仕掛けるが千冬は全てをかわすかブレードを使って防御をしていた。だが千冬は殆ど蒼也に反撃することができなかった。

 

「(恐ろしくすばやいが攻撃の防御はできる。だが、こちらの攻撃ができん……。だが下手に仕掛けたら、あの反応速度だ。軽傷ではすまないだろうな。さて、どうするか……)」

 

そして回避等を繰り返していた千冬だったが、背中が何かにあたった。

 

「なっ!?」

 

千冬は焦った。いつの間にかアリーナの壁の方に誘導されていたのだ。そして蒼也の右横蹴りを放ってきたためそれを避けようと右に動くが

 

「がっ……!?」

 

だが左横蹴りが千冬の横腹に直撃し、そのまま一気に吹き飛ばされた。そして飛ばされた先で体勢を立て直すが、いつの間にか迫っていた蒼也が回し蹴りを繰り出してきて再び吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

蒼也はただ見ていた。目の前に映るEXAMの制限時間を。時間はすでに七分を切っており、その間に千冬を倒さなければなかった。そうしなければ、また研究所に戻される。だがなぜ倒すのか?誰のために?自分のために?蒼也にはそれが分からなくなっていた。ただ倒す。システムがそう指示するから、そう動く。

元々簪に会いたいからこの機体に乗ったはずなのに、なぜ戦う羽目になったのか?そうだ、一夏が簪に危害を加えたから攻撃したのだ。そしたら一夏に惚れている女子達が攻撃を繰り出してきた。

ただ怖かった。殺される、それだけが耳に聞こえて攻撃した。だが現れる。自分を攻撃するやつ。

そして蒼也は考えるのをやめた。ただ潰せばいい、それだけを考えてればいい。そして蒼也は千冬を、いや、潰すべき目標を睨みつけた。

 

 

 

 

 

「くっ……!!」

 

千冬は体勢を立て直し、スラスターを使って一回離れることにした。蒼也はそれを追いかけることはなく、その場に若干猫背気味で止まっていた。

 

「さて、どうやって無力化するか……、ん?あれは……」

 

千冬はあることに気付いた。蒼也の右手から大きく紫電が走ってるのだ。この時装甲の右肘から先が溶けかかっており、それを無理に動かしていたせいか右肘から先の装甲の至る所に罅が走ってるのだ。

 

「これは試してみる価値があるな……」

 

千冬はニヤリと笑った後ブレードを両手で構えると、瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使って突っ込んだ。蒼也はただ動かず、千冬が拳の届く届くになっても動かなかった。

千冬がブレードを振り下ろそうとしたとき、蒼也のバイザーが赤く光った。そして振り下ろしたときに蒼也はシールドで受け止め、そして右手で横腹目掛けてフックを繰り出したが千冬に左手で受け止められた。そしてお互い地に足を付けていたが、力の差か、千冬が後ろに押され始めた。

 

「ぐっ……!何だこの異常な力は……!だが、これならどうだ!」

 

千冬は蒼也の右手を引っ張り、前に力を入れていたせいか蒼也は前につんのめった。そしてブレードの柄頭を右腕に直撃させて前腕部の装甲を砕いた。

 

「ッ!!??」

 

砕かれたとき、時蒼也が後ろに下がって蹲った。千冬はやったと思ったが、蒼也の腕を見たとき絶句した。

砕けた装甲の中から蒼也の腕が見えるが、装甲の欠片があちこちに刺さっており、そして骨は折れているのか腕が青黒く変色していた。蒼也は右手を抑えながら千冬を殺さんとするほどの目で睨んでおり、バイザーが怪しく光った。

千冬は元生徒の骨を折ってしまった罪悪感で押しつぶされそうになっていたが、逃げたら自分のプライドが許さないため、千冬はブレードを構えた。

 

 

 

 

 

痛い、痛い、痛い、痛い。

目の前のモニターにはダメージチェックの表示が所狭しと表示されており、一定間隔で鳴るアラームが耳元でなるた、頭がガンガンしていた。蒼也は痛みを我慢しながら指示通りに処理していくが、表示は次々と現れてアラームも止まる気配がなかった。

蒼也は痛みに耐えながら前を見た。目の前には足が若干震えながらも、それでもブレードを構え自身を睨みつける女性、織斑千冬がいた。

なぜ戦える。俺には分からない。だが、もういい。考えるだけ無駄だ。

蒼也はゆっくりと俯いた。

そしてモニターの端に映るEXAM発動の制限時間を見た。残り時間はすでに三分を切っており、EXAMの発動状態の終わりがもうすぐであることを示していた。これが終われば体が動かなくなって自分も終わる。

蒼也は諦めたかのように小さく笑った後、モニターに映る警告表示を無理やり消してモニターにとある項目を出した。それは痛覚神経の伝達停止と書かれており、蒼也はそれを許可した。

 

「行くか……、ブルー……!」

 

 

 

 

 

「(何だ……?やけに静かだ……)」

 

千冬は先程まで自分を睨んでいた蒼也が、全く動かないことに疑問に思った。先程まで出されていた殺気も潜めており、嵐の前の静けさともいえる静けさがアリーナを包んでいた。

だがそこまでだった。蒼也は何事もなかったかのように立ち上がった後、バイザーが赤く光った。

千冬はブレードを両手で持って構えた後、蒼也は左手を引いて最初に見せた正拳突きの構えをした。そしてお互いにに動きが止まった。

そして一分ぐらい経っただろうか。ついにその時が来た。

 

蒼也は先程と違い、まっすぐと千冬目掛けて突っ込んだ。そしてシールドを振りかざして千冬の胸部に叩き込もうとした。

 

「甘い!」

 

千冬は当たる瞬間にしゃがんで、ブレードを腰に当てて居合い切りの体勢になった。そしてブレードを引いて胴の部分を切ろうとしたが、蒼也の折れているはずの右手でのどを掴まれた。ブレードは蒼也の脇腹にあたるが、勢いよく掴まれたため装甲を少し削るだけで終わった。

 

「なっ……!?」

 

千冬は逃げようとしたが、人間では出せないかのような力でのどを掴まれ、そして腹部に強い衝撃が走った。シールドの先で腹を殴られたのだ。

 

「がはっ!?」

 

そして千冬はこの時の衝撃でブレードを落としてしまい、首を絞め上げられた状態でボディーブローをくらった。千冬は格納領域(バススロット)から予備のブレードを展開しようとするが、衝撃と痛みでまともに展開することができなかった。

そして、二発、三発、四発とどんどん殴っていき、千冬は意識が朦朧としだした。そして蒼也は殴るのをやめた後、首を持ったまま背負い投げの要領で、千冬を頭から地面に叩き落とした。

 

「あ、あぁ……」

 

千冬は頭から叩き落されたせいで意識がはっきりしておらず、蒼也は千冬の首を足で抑えつけ、左手にマシンガンを展開した。

 

「オワリダ」

 

そして引き金に指を掛けた。

 

『何者かのハッキングによりエラーが起きました。EXAMを緊急停止します』

 

「ガ、ァ……!?」

 

その時だった。いきなりEXAMが停止したのだ。このせいで蒼也は体全体に走る痛みに襲われ、その場でのたうち回った。

 

「あ、あぁ……、ここは……。っ!くぅ……、首が痛むな……」

 

そして意識が戻ったのか千冬は首を抑えながらゆっくりと起き上った。だが痛みのせいでうまく立ち上がることができず予備のブレードを展開して、それを杖代わりにして立ち上がった。

 

「ガァッァァァ!!!!!」

 

その時大きな断末魔が聞こえ、千冬はその方向を見た。そこには地面をのたうち回る蒼也がいた。

 

「イタイ!イタイ!イタい!痛イ!痛い!痛い!」

 

蒼也の声ははっきりとした声になってきていた。そして

 

「くそ……ぉ……。お、俺は……負ける……わけに……は……」

 

そして蒼也の動きは止まった。千冬は、ただその姿を見ていた。

 

 

 

 

 

簪はアリーナに続く通路を走っていた。

ここを抜ければ一気にアリーナにたどり着く。簪通路を抜ける途中で、打鉄二式を展開してアリーナに出た。そして見たものは

 

「蒼也っ!」

 

簪が見たのは、ブレードを地に刺した満身創痍の千冬と、地に倒れた蒼也の姿だった。

 

「あ、あぁ……、蒼也ぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

そして簪の悲鳴がアリーナで木霊した。




戦場の絆を久しぶりにしました。カードをなくしたので最初からやり直しましたが、面白いですね。あ、軍はジオンです。連邦の機体の小説ばっかり書いてるけどジオン一択です。あぁ~、早くイフリート改使いて~


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暴走 終

どうも、クレーンで吊っていた数百キロある鉄の塊が落ちてきて足を怪我した妖刀です。怪我は軽傷で掠めただけでしたが、なぜか作業着に何もなく、自身の足から血が出てました。とりあえず痛い。


それではどうぞ


それから蒼也からISが格納され、生身の蒼也が地に放り出された。

 

「さて、さっさと回収するか……」

 

千冬は蒼也を掴もうとした。だが、首から下げられていた二つのドッグタグから出たオーラが、その手に触れられるのを拒むかのように打鉄の腕を弾いた。

 

「何っ!?」

 

千冬はそれに驚き、後ろに一回下がって様子を見た。オーラは蒼也を守るかのようにうねうねと蠢いていたが、少し時間が経つと消えて行った。

 

「な、何だ今のは……」

 

千冬は先程の出来事に驚きながらも、再び蒼也に触れようとした。だが再び現れた赤のオーラによって阻まれ、再び後ろに下がった。

「くそっ……、これでは連れて帰ることもできんぞ……」

 

千冬はそうするか悩んでいたが、それを打ち破るものがいた。

 

「ん?何の用だ、更識」

 

簪である。簪は蒼也に打鉄二式を纏ったまま近づくと、首と膝の裏に手を近づけた。この時赤いオーラが現れて、簪の手を弾いた。

この時簪は少し悲しい顔をした。

 

「更識、邪魔だから下がってろ」

 

千冬はそう言って簪をさがらせようとするが、全く動かなかったため苛立ちが募った。

 

「蒼也、怖がらないで……。私が、いるから……」

 

簪がそう言った時、蒼也を護るかのように出ていたオーラが消え、簪は蒼也をお姫様抱っこをしてピットの方へと連れて行った。

 

「何……だと……!?」

 

千冬は簪がいとも簡単に蒼也に触れることができたことに驚いて、その場に立ち尽くしていたのであった。

そしていろいろなことがあった。他の教員が、ブルーディスティニーの待機状態である蒼のドッグタグを生身で触れようとしたら赤いオーラによって指を切られて怪我をしたり、簪が触っても何もなかったから、簪に取らせてそして触れようとしたらやはり怪我をしたり、マジックハンド的なのを使って取ろうとしたら、やはり赤いオーラによってマジックハンドが切り刻まれたり。そんなことがあってブルーは回収されることなく、蒼也の首から垂れ下がってるままだった。

 

 

 

 

 

あれから十数日後

 

ここはIS学園に設置されている病院。とある病室に簪は向かっていた。そこは一般病棟とは違い危険人物等を幽閉するような病棟であり、一般生徒が入れるかのようなところではなかったが楯無に許可を取ってもらい、簪はその病室に向かっていた。

そもそもIS学園に危険人物などいないためほとんど使われることのなかったところだが、数日前の事件でそこに入院することになった人物がいた。

そして病室の前に着いた簪は扉をノックするが返事はなく、小さくため息を吐いた後扉を開けて病室に入った。

病室は個室になっており、白で基調された部屋の奥に一つベッドがあった。そこには一人の男子が腕に点滴を付けた状態で眠っていた。

 

「蒼也……」

 

簪はベッドの近くにあった椅子に座って蒼也の顔を見た。前は肩甲骨ぐらいまで伸びていた髪が無造作に切られてとても短くなっており、あちこちが傷だらけで、左目には連れていかれる前にはつけていなかった眼帯がつけられていた。

簪は蒼也の左手をギュッと握るが何も反応はなく、少し悲しそうな顔をした。

 

「蒼也、あのね、今日お姉ちゃんが退院したんだ。とてもね、嬉しかったよ」

 

この時簪の声が震えており、涙が頬を伝った。

 

「だからね……、蒼也……、早く元気になってよ……、お願い、だから……」

 

簪の声は嗚咽交じりになっていき、そして涙がボロボロと溢れかえってきた。

ただ部屋には、簪の泣き声と心電図の音だけが響いていた……。

この時、蒼也の首から下げられていた蒼のドッグタグと、赤で縁取られた蒼のドッグタグから僅かに赤いオーラがユラリと出たのであった。

 

 

 

 

 

昼休み

 

「織斑先生、聞きたいことがあるのですが」

 

「何だ、更識」

 

楯無は病院を退院した後、最初に向かったのは千冬がいる職員室だった。千冬は楯無の顔を見たとき、一瞬だが嫌そうな顔をした。

 

「織斑先生。単刀直入に聞きますが、蒼也を研究所送りにするか否かの問題ってまだ決まってなかったですよね。どうして決まってないのに無理やり送ったのですか?」

 

それを言った時、周りにいた先生が二人の方を一気に向いた。

 

「更識、その話は応接室でするぞ」

 

千冬はそう言って応接室の方へ向かった。そして二人は備え付けられていたソファーに向かい合うように座った。

 

「では改めて聞きますけど、蒼也を研究所送りにするか否かの問題ってまだ決まってなかったですよね。どうして決まってないのに無理やり送ったのですか?」

 

それを聞いた千冬は、やはりかみたいな顔をして小さくため息を吐いた。

 

「前にも行った筈だ。賛成意見が多かったからさっさと送っただけだとな。どうして今更それを聞く?」

 

「織斑先生、賛成意見が多かったと言いましたが、実際は半々のはずです。そもそも学園長は反対してましたよね。そこはどうなんですか?」

 

この時千冬が一瞬だけ顔をしかめた。

 

「……学園長と黒城は親戚同士だからな、情が働いて反対してるのだろう」

 

それを聞いたとき、楯無はニヤリと笑った。

 

「そういえば織斑先生。話によると織斑君を研究所行きから庇って、蒼也を研究所送りにしたって聞きましたけど?」

 

「な、何だそのデマは!?」

 

この時千冬は大きく狼狽した。それに対して楯無は黒い笑みを浮かべており、目の前にICレコーダーをテーブルの上に置いた。

 

「こ、これは何だ?」

 

「これはですね……」

 

そして楯無は再生ボタンを押した。

 

『アンタハイッタ。セイトヲマモルノガシゴトダト。ナノニウラギッタ。シッテルヨ。アンタガケンキュウジョニオクルノヲキョカシタッテ』

 

この時、ノイズ交じりだが会話が聞こえ、千冬は額から汗が一筋流れた。

 

『そ、そんなことはしてない!』

 

『ウソダ。オリムラトオレノドチラカヲセイフニワタセッテイワレタトキ、チュウチョナクオレヲエランダッテケンキュジョノヤツラガイッテタ』

 

『そ、それは……』

 

そして楯無がストップボタンを押して再生を止めた後、千冬の方を向いた。このとき千冬は冷や汗をだらだら掻いており、何か呟いていた。

 

「さ、更識!何故貴様がそんなのを持っている!」

 

「これですか?あの時のアリーナの通信記録を調べた結果、これが出てきたのでそれをICレコーダーに読み込ませました」

 

この時千冬は奥歯をギリリと鳴らしていたが、そのときだった。

 

 

キーン、コーン、カーン、コーン

 

 

授業が始まる十分前のチャイムが鳴ったのだ。

 

「あ、チャイムが鳴ったから教室に戻りますね」

 

楯無はそう言って席を立ち、扉に手をかけてそこで立ち止まった。

 

「織斑先生」

 

「な、何だ?」

 

「明日もこのことで話し合いましょうか」

 

楯無は笑顔でそう言ったが、一瞬だけ出た殺気に千冬は鳥肌を立たせた。そして楯無が応接室から出て行き、千冬は背もたれに背中を預けるかのようにぐったりとした。

 

「くそっ……、あんなのを持ってたとはな……。通信記録を消していなかったのが誤りだったか……。っと、いかんな。次の授業に遅れる」

 

千冬はそう言って応接室から出て行くのであった。

 

 

 

 

 

チャイムが病室に聞こえたとき、簪はすでに泣き止んでいたが目を赤く腫らしていた。

 

「蒼也、また、来るから……」

 

簪は寂しい笑顔を浮かべて、病室を出ていた。

そして簪が出て行った後、蒼也の手がピクリと動いた。そして目を薄らと開けた後、手を扉の方へと向けた。

 

「待っ……て……、かん……ざ……し……」

 

そして意識を再び失い、蒼也は眠りについた。

そして蒼也は夢を見た。学園に入ってきてから今までの起きた出来事の夢を。

 




次回から原作第一巻の話に入っていきます。多くても20話ほどで終わらせて、この話の続きに入っていきます。


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今まで
始まり


ゲーセンに置いてあった一回200円のISのガチャを2000円分したら更識姉妹が出たから嬉しいが、それ以外全部がラウラってどういうことだ!?

おっと、関係ない話は置いといて、蒼也に何があったのか……、どうぞ!


時は大きく戻り四月のIS学園。

ここ、一年一組の教室は異常なほど静かであった。

 

「はい、私がここの副担任をします山田真耶です。よろしくお願いします」

 

教卓では副担任である真耶が挨拶をしていたが誰も返事をせず、真耶は涙目になっていた。まあ無理はないだろう。この教室にいる二人の男子に全員の目が言っていたのだから。

そのIS男性搭乗者の片割れこと黒城蒼也は暇そうな目で真耶を見ていた。

 

「で、では出席番号順で挨拶おねがいします……」

 

そして出席番号順に自己紹介に入っていた。蒼也は自分の番が先のため、少し眠くなってきたのか少しうつらうつらとしていた

 

「では次は織斑君お願いします」

 

そして蒼也は眠ってしまうのであった。

 

 

パァァァァン

 

 

「ほへぇっ!?」

 

その時だった。いきなりすごい音がしたため蒼也は勢いよく目を覚まして周りを見渡すと、教卓の方で一夏と千冬が何かを言っていたのであった

千冬は溜息を吐いた後、前を向いて生徒全員を視界に入れた後、口を開いた。

 

「諸君、私が織斑千冬だ。私の仕事は諸君を一年で使い物にすることだ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。できないものはできるまで指導してやる。そして逆らってもいいが、私の言うことは聞け。以上だ。」

 

「軍隊かよ」

 

蒼也はボソッとそう呟いた。この時、千冬に睨まれたため蒼也は一瞬で目を逸らした。

そして黄色い悲鳴がいきなりなったため蒼也は耳を塞いだ。収まった後周りにいた女子はいろいろ危ないことを言っており、蒼也はめんどくさそうな目でその光景を見ていた。

 

「では次、黒城蒼也」

 

「はーいっと」

 

千冬に呼ばれたため、蒼也は少しめんどくさそうに返事をし、教卓の近くに立った。

髪は黒色で鎖骨ぐらいに延ばされているが途中で糸で縛られており、若干吊り目で固まった血の色に近い瞳、そして一夏ほどではないが、まあ整った容姿をしていた。首からは二つのドッグタグがぶら下がっており、小さくチャラチャラと音を鳴らしていた。

 

「俺の名前は黒城蒼也。いろいろあってここに入学することになってしまった。趣味はプラモデル製作、特技は特にない。まあISを使える男子だからって何かと期待しないでくれ。以上だ」

 

この時女子達が何か微妙な顔をしたが、おそらくプラモ製作で少し引いたのだろうと思って席に戻っていくのだった。

だが問屋は幕を下ろさなかった。

 

「いっつあ!?」

 

いきなり頭を出席簿で叩かれたのだ。蒼也は怒り心頭で千冬の方を振り向いた。

 

「何をするんですか!?」

 

「そんなつまらない自己紹介をしたから叩いたまでだ」

 

「はぁ!?んなもん知りませんよ!そもそもつまらんじぃ!?」

 

その時、たま頭に出席簿が叩き込まれた。

 

「余計な口出しするな。そして戻れ」

 

蒼也は千冬を睨みながら、小さく舌打ちをして席に戻って行ったのであった。

 

 

 

 

 

それから休み時間、蒼也は廊下にいる女子達を無視しながら小説を読んでいた。

 

「ちょっといいか?」

 

「あ?」

 

蒼也は本にしおりを挟んで閉じた。そして声のした方を向いたら、そこには一夏がいた。

 

「俺は織斑一夏っていうんだけど、黒城蒼也だよな?お互い男子同士、仲良くしていこうぜ」

 

一夏はそう言ってさを差し出した。恐らく握手をしようってことなのだろう。

 

「あっそ。ま、よろしく」

 

蒼也はそう言って手を差し出して握手をした。この時周りから黄色い悲鳴が聞こえたが、蒼也は無視を続けた。

 

「それにしても何を読んでたんだ?」

 

一夏は蒼也が持ってる小説を指さして聞いた。小説はブックカバーで表紙が隠されており、何の小説かわからなくなっていた。

 

「これ?ガンダム系の小説だな」

 

「ガンダムって……、たしか数年前に終わったロボットものだったっけ?俺、エヴァのほうが好きだからさ……」

 

一夏は苦笑いをし、蒼也はそんな一夏を軽く睨みつけていた。

その時だった

 

「ちょっといいか?」

 

そこにいたのは、黒髪をロングに伸ばしてポニーテールにした、一人の女子だった。

 

「箒……か?」

 

一夏がそう言った後、蒼也は小説を開いて二人を無視する方針で行った。

そして二人は屋上へと消えて行き、安心して本を読み始めたが再び人影が見えたため本を閉じてその人を見た。

 

「おぉ~、そーそー、久しぶり~」

 

「お、本音か。久しぶりだな」

 

そして二人は軽くハイタッチをした後、本音は蒼也の前の席に座って鬼一の方を向いた。

 

「それにしても~、すごい自己紹介だったね~」

 

「まあな」

 

蒼也はそう言って少し笑みを浮かべた後、

 

「後ね~、かんちゃんがガンプラを買ったから~、一緒に作ろうだって~」

 

「よくガンプラが売ってる店があったな」

 

蒼也は苦笑いをした。

この時チャイムが鳴ったため、本音は自分の席に戻り、蒼也も教科書類々を出して授業に備えた。

そして千冬と真耶が入ってきて授業が始まろうとした。

 

「だぁぁぁぁ!!」

 

扉から一夏と箒が飛び込んできたのだ。二人は息が上がっており、肩を上下に揺らしてたが、彫琢にいる人物を見て一気に固まった。

 

「遅い!」

 

そして二人の頭に出席簿が叩き込まれ、二人はフラフラになりながら席に戻って行ったのであった。

 

 

 

 

 

「~であるからにして、~というわけですね」

 

真耶が電子黒板に書かれたことを説明してる時、蒼也は板書してわからないところを赤ペンでチェックしていた。この分からないところは後で誰かに教えてもらおうと思い、そして板書の続きをした。

 

「では、ここまででわからないところはありますか?」

 

この時蒼也はチラッと一夏の方を見た。一夏は異常なほどに挙動不審な動きをしており、少し気持ち悪く見えた。

 

「織斑君、どこかわからないところでもありましたか?」

 

「山田先生……。ほとんどわかりません」

 

「え……」

 

この時真耶は固まった。蒼也も板書していた腕の動きが止まり、チラリと一夏の方を見た。分からないからなのか異様にすがすがしい顔をしており、誰かが小さくため息を吐いた。

そしていろいろ何かを話していたが蒼也は板書をすることに集中することにした。

途中で出席簿で音がしたが、気にしないことにした。

 

「ISは機動性、攻撃力と過去の兵器を凌ぐ。そういった『兵器』を深く知らず使えば必ず事故は起こる。そうしないための知識と訓練だ。理解できなくとも覚えろ。そして守れ。規則というものはそういうものだ」

 

この時蒼也は一瞬だけ書くのを止めた。

まあ間違ってない。だが蒼也は自身の意志で来たわけでもないのにこんなに難しい勉強をするのは若干うんざりしていた。まあ来なかったらさっさと研究所に連れて行かれて実験動物(モルモット)になっていただろう。

だが、ここに来ても研究所に行くのが先延ばしされただけなのだ。それを回避するにはここで何か成果を残さなければならない。だがそれができるのだろうか?蒼也は顎に手を当てて考えた。

そして考えてる時に一つ思い出したことがあった。それは昔にしたことがあるゲームで、実験部隊ともいえる隊でその中に一機だけ蒼い機体がいた。あの機体はかっこよかった。確か名前は……。

 

「勉強に集中しろ」

 

この時頭を叩かれたため、蒼也は痛みで頭を抱えながらも千冬を睨んだ。

 

「俺が何をしてたってんだよ」

 

「下らんことを考えてる暇があったら、板書ぐらいしたらどうだ」

 

千冬は電子黒板を指さしたが、蒼也が書いていた所から2~3行ほどしか進んでおらず、蒼也は誰にの聞こえないように小さく舌打ちをするのであった。

 

 

 

 

 

「蒼也、教えてくれ!」

 

「やだ」

 

「そこを頼む!」

 

休み時間、蒼也の所に一夏が勉強を教えてくれと頼み込んできた、蒼也はとてもめんどくさそうな顔をしており、とりあえず小説を一回閉じて一夏の方を向いた。

 

「あのさ、俺だって分からないところがまだあるんだ。それで教えても共倒れで終わるだけなんだよ。わかるか?」

 

「お、おう。すまなかった」

 

蒼也は少しイライラしながら言い、一夏はイラつきを感じ取ったのかおとなしく引き下がることにした。

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「は?」

 

「ん?」

 

その時だった。二人の間に一人の女子が入ってきた。髪は金髪でロールにしており、耳に青のイヤーカフスを付けていた。そして二人を若干見下したかのような目線で見ており、蒼也はこの女子が何を考えてるか一瞬で思いついたのだった。

 

「何の用だ?」

 

蒼也は

 

「まあ何ですの!?このイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットに向けてそのような言葉は!」

 

金髪の女子、セシリアは二人を非難するかのような仕草を取り、蒼也は眉間がピクリと動いた。

 

「あ、ちょっといいか?」

 

その時一夏が手を上げて待ったをかけた。

 

「ふん!下の者の質問に答えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

セシリアは何か偉そうなポーズをとって見下した。

 

「代表候補生って、何だ……?」

 

その時、空気が一瞬で固まった。周りにいた聞き耳を立てていた女子達も固まってしまい、セシリアは唖然としたままだった。蒼也は小さくため息をついた後、小説を取り出し、続きを読むことにした。

そして周りがうるさかったが、蒼也は無視することにしたのであった。

 

「ちょっと!話を聞きなさいですわ!!」

 

その時だった。セシリアが蒼也の机を強く叩いて身を乗り出してきたのだ。蒼也は小説の続きを読みたいのに、それを邪魔するセシリアが鬱陶しく見えた。

 

「全く人の話を聞かないとかどういうことですの!?」

 

「ああ、すまんな」

 

「全くこれだから男は嫌いなのですわ」

 

その時、チャイムが鳴った。

 

「では、また来ますわ」

 

蒼也は『来るな』と舌打ちする代わりに首を動かしてゴキゴキッと鳴らし、そして次の授業に備えたのであった。




これからそれなりの急展開になる予定です。まあ、待っていてください。


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クラス代表決めと再会

インフィニット・ストラトス・センチネルの方はちょっととある準備に入るので、こっちを久しぶりに更新します。


それから授業が始まり、教卓の所には千冬が立っていた。

 

「さて、次の授業を始める……って言いたいところだが今度あるクラス対抗戦の選手を決めてなかったな。それでクラス代表を決めなければならない」

 

この時蒼也は首を傾げた。この時蒼也以外にもわからない奴がいたのか千冬がクラス代表について説明を始めた。

 

「……とういうことだ。ではクラス代表をしたいやつはいるか。自薦でも推薦でもかわまんぞ」

 

この時クラスの大半が挙手をした。

 

「私は織斑君を推薦します!」

 

「私もします!」

 

「私も!」

 

この時一夏に集中したため蒼也は、名前を上げられないように呼吸数を減らして存在感を薄くしていた。そして周りは蒼也のことを忘れてるかのように、一夏の名前を挙げ続けるのであった。

 

「え、俺!?織斑先生!俺は辞退します!」

 

「自薦他薦問わんと言った。推薦された以上事態は許さん。」

 

「そ、そんな!?……なら俺は蒼也を推薦します!」

 

一夏は辞退ができなかったためどうにか逃げようとした結果、蒼也を推薦することにした。

この時蒼也は一夏を親の敵というかのように睨んだが、一夏はそれに全く気付いてなかったのであった。

 

「では推薦されたのは織斑と黒城、この二人を投票して代表を決めるそれでいいな?」

 

この時周りの女子は「はい!」といい返事をした。

 

「織斑先生、ちょっといいですか」

 

「どうした黒城」

 

この時蒼也は挙手して千冬に待ったを掛けて、そして立ち上がった。

 

「あのですね、推薦してくれた女子達には申し訳ないけど自分たち男は全く実力がなくて対抗戦に出ても一回戦で負ける未来しか見えないんですよですから「待ってください!納得いきませんわ!」ん?」

 

蒼也は頑張って辞退できるようにしていたが、突然邪魔が入ったためその声がした方を向いた。そこにいたのはセシリア・オルコットであった。

 

「そのような選出は認められません!そもそも男が代表だなんて恥さらしもいいとこですわ!わたくしに、このセシリアセシリア・オルコットに……」

 

そしてセシリアは自身の自慢から入り、そして日本を乏し始めた。この時周りの日本人は頭に青筋を浮かべてる者や、笑顔だけど目がまったく笑ってない者が多数いた。この時蒼也はとてもどうでもよさそうな顔をしており、ボケーっと天井に着いてる電灯を見ていた。

 

「イギリスだって島国で飯マズ大国じゃねえか」

 

この時一夏が反論をしたため、セシリアは顔を真っ赤にしながら一夏を睨んだ。

 

「なっ!?イギリスを馬鹿にしますの!?」

 

「先に馬鹿にしてきたのはそっちじゃねえか!」

 

「はぁ……」

 

蒼也は二人が罵り合ってるのを見て小さくため息を吐いた後、ノートの一番後ろの方を開いて暇つぶしに落書きを始めた。いや、落書きって言っても何かの設計図だろうか、細かいところまで長さの指定がされており、おそらく材料費と思われる値段がところどころに書かれていた。この時蒼也は何か楽しそうな顔をしており、そして買う日だろうか、ノートの左下に日付を書いて丸を付けていた。

 

「……だろ!そう思うよな、蒼也」

 

この時一夏にいきなり呼ばれて顔を一夏の方へ向けた。

 

「ん?一体何の話だ?」

 

「へ?」

 

この時一夏の顔はキョトンとした顔をしていたが、顔を横に数回振った後蒼也に顔が引っ付くのではないかという勢いで蒼也に詰め寄った。

この時に本当に顔が引っ付くのではないかと思った蒼也は一夏の顔をガシッとつかんだ後、自身の顔から大きく離して一夏の顔から手を離したのであった。

 

「いやいやいや、あんなことを言われたのに聞いてなかったはないぜ!」

 

「いや、何かお互い罵り合ってたからかかわるのがめんどくさいし。そもそもあんなことって何だ?」

 

蒼也がそう言った時一夏は何か絶句した顔をしたが、気を取り直して蒼也に今まであったことを簡潔に話した。

 

「……ふぅん。要するに決闘になってハンデを付けようか?って言ったら思いっきりバカにされたってことか」

 

「ああ、そういうことだ」

 

「まあ、俺はこの試合は勝てる見込みが少ないからハンデがほしいね」

 

そう言った時、一夏は何か何か失望したかのような顔をして蒼也に詰め寄ってきた。

 

「なんでだよ!」

 

「あのさ簡単に言うと、某ポケットなモンスターで最初にもらったうちの一匹が初期設定のまま五人目のジムリーダーに誰が挑むか?まだこっちにISに乗った経験が多くあるならわかるよ?でもさ相手は代表候補生、こっちは初心者。これでハンデをやろうか?って相当な舐めプだろ」

 

一夏は蒼也に何か言い返そうとしても言えないことに少し腹を立てており、蒼也は一夏が何もいい返さないため反論はないと判断して一夏を視界から消して前を向いたが、千冬が見下すように蒼也を睨みつけていた。

 

「……何ですか?」

 

「黒城、この模擬試合はお互いハンデ無しで戦ってもらう。だから勝手なことをぬかすな」

 

「はぁ?いや、ちょっと待ってくださいよ織斑先生。世界最強ならこれがどれぐらい絶望的なことぐらいわかりますよね?」

 

「男ならそれくらいのことを乗り越えて見せろ」

 

千冬がそう言った時本気で言ってるのか?と蒼也の顔は物語っており、千冬はそれを無視して手を軽くたたいて全員の意識をそっちに向けた。

 

「それでは来週の月曜に第三アリーナで三人は総当たり戦をしてもらう。いいな!」

 

「「「はい!(はーい……)」」」

 

蒼也はしぶしぶ返事をしてこの場が終わると思って一息つこうとした時だった。

 

「いっ!?」

 

「何だその返事は!返事をするときはちゃんと返事をしろ!」

 

いきなり千冬に出席簿で頭を叩かれ、蒼也はまさかの不意打ちで頭を抱えて蹲っていた。

 

「うぉぉぉ……、頭が……!」

 

「ちゃんと返事をしないからそうなるのですわ」

 

セシリアにまあ間違っていないこと言われて、自分で頭をさすりながら蒼也はセシリアの方を向いた。

 

「確かに俺がちゃんと返事しなかったのは悪いかもしれないがさ、こっちはこんなムリゲーをしたくないんだよな……」

 

「あら、逃げるんですの?」

 

「逃げるとか言ってねえよ。ムリゲーだからやる気がしないだけだ」

 

「あら、日本男児はどんな逆境でも立ち向かうって聞いたのですが、そうでもないのですね。残念ですわ」

 

「そう言われ「俺は違うぞ!」ん?」

 

「蒼也!お前はそんなことで諦めるのかよ!もっと熱くなれよ!諦めんなよ!努力すればどうにかなるだろ!」

 

一夏はそう熱弁するが、一方蒼也がそんな一夏を冷めた目で見ていた。

 

「無理、俺はお前と違ってそういう時は冷静でいる主義だから」

 

そしてお互いに言い合いをしているうちにチャイムが鳴ったため、千冬によって強制的に終了された後号令をした。

 

 

 

 

 

それから放課後、蒼也は麻耶から一夏と一緒に教室に残っていてくれと言われたため教室に残っていたが、廊下はまだ女子であふれかえっていた。

この時廊下にいた女子達は一夏に熱のこもった視線を送るのと同時に、蒼也にめがけて冷たい視線を向けており、蒼也は「やはりか……」とつぶやいていた。

 

「織斑先生の弟さんってかっこいいね」

 

「そうだね。それに比べてあの男は……」

 

「あれはだめよ。あんな根性無しなんか消えればいいのよ」

 

まあ自分のあの態度がこんな風になるのは予想していたが、おそらくこの学園全員に伝わっていたのだろう。昼休みもトイレ行くときも女子達に睨まれていたため、まさか全生徒にまで広がるのは予想外だったが。

夕日が教室を照らす中、蒼也は窓から海を見ながら溜息を吐いた。

 

「織斑君と黒城君はいますか?」

 

その時だった。ドアの方を向くと真耶が立っており、おそらく今残っている理由なのだろう。蒼也はさっさと済ませてこの視線が苦しい区間から抜け出したかった。

 

「何ですか?」

 

「はい……、二人にはすみませんが今日から学園の寮で生活をしてもらいます……」

 

「「えっ?」」

 

この時蒼也と一夏は声がハモッたが無理もないだろう。学園で寮生活。それは自身の安息の場が無くなるという死刑宣告にもふさわしい言葉だった。

 

「いや、山田先生、ちょっと待ってください。自宅からここに通う予定でしたが」

 

「俺は二週間は自宅から通う予定でしたが……」

 

「え、織斑って寮に入る予定なのか?」

 

「ああ、そうだけど……」

 

女子だらけの寮に入る予定だったていう一夏に蒼也は驚きを隠せないでいた。

 

「すいません……、職員会議で急遽決められたことなので……」

 

「なら俺ら同室ですよね?」

 

蒼也は同室で遭ってくれと思っていたが、現実とは非情なものである。

 

「実は……別室なんです……」

 

「「はぁぁぁぁぁ!?」」

 

「うるさい」

 

「「がふっ!?」」

 

いきなり何かで頭を叩かれたため痛みに悶えながら顔を上にあげると、そこには千冬がおり、手には出席簿が握られていた。

 

「織斑先生、なんで男で同室じゃないんですか?普通ならそうなるはずなんですけど」

 

蒼也の言うことはその通りである。ただでさえ女尊男卑の世の中だというのに、女子と同室ってのは刃物がのどに付きつけられているのと同意なのだ。

 

「私が決めたことではなく上が決めたことだ。だから余計な口出しするな」

 

「それではこれが部屋の鍵です。なくさないでくださいね」

 

そう言われて真耶から渡されたのは蒼也は1020、一夏は1025と書かれた鍵であった。

 

「でも、今日は家に帰っていいですよね?着替えとかもって「織斑と黒城のはここにある。着替えとスマホの充電器があれば十分だろ」あ、ありがとうございます……」

 

そして二人にはリュックが渡された。

一夏は荷物のあまりの少なさに項垂れていたが、蒼也は何か顔が青くなっており、それに気づいたのか一夏は怪訝そうな顔をしていた。

 

「お、織斑先生、俺のがあるってことは……、勝手に家に入ったってことですか?」

 

「入ったのは私ではなく政府の役人だ」

 

それを聞いたとき、蒼也は頭をガシガシと掻いて大きな溜息を吐いた。

 

「おいおい……、政府の人間は偉かったら勝手に人の家に不法侵入してもいいのかよ……」

 

確かに自身の部屋は思春期の男子の部屋とは思えないほど殺風景な部屋であるが、それでも誰かに勝手に入ってもらいたくないものだ。

鍵を新しく変えても無駄だろうと思ってどうするか考えていた蒼也だったが、この時鷹に手を置かれた。

 

「蒼也……ドンマイ」

 

一夏は本当に慰めのつもりで言った言葉だったが、蒼也の精神を逆なでするには十分な言葉だった。

 

「……せえよ」

 

「え……?」

 

「うるせえよ!!!!」

 

この時蒼也が大声で怒鳴ったため、廊下にいた生徒も含めて千冬以外がビクッとしたが、蒼也はそんなのお構いなしに怒鳴り散らした。

 

「お前な、勝手に家に入られたってことはもしかしたら通帳とか貴重品が盗られたのかもしれないんだぞ!確かに今、懐に通帳やカード類は持ってるからよかったぜ!?だけどな、これが盗られたら俺のこれからの生活が一瞬で地獄までまっしぐらになるんだぞ!わかるか!?」

 

「わ、悪かった。何も考えずそんなこと言ってすまなかったから」

 

一夏は謝るが蒼也の怒声は収まるところを知らなかった。

 

「確かに俺の住んでるアパートは1LKの家賃2万の格安訳あり物件だよ!?でもな、こん「落ち着け、この件は私から政府の方へと言っておくから」

 

蒼也の怒号にさすがに疲れたのか千冬はそう言って蒼也を落ち着かせるようにした。

息を切らしたのか蒼也は肩を上下させており、落ち着いたところで少し申し訳ない顔をしていた。

 

「つい怒鳴り散らしてすみません……」

 

「いや、私でもそうなってしまうだろう」

 

千冬は怒鳴り散らしたことを特に咎めず、蒼也を見ていた。

 

「それではまた……」

 

蒼也は疲れたのか、とぼとぼと重い足取りで教室を出て行こうとした。

 

「あ、そうそう、黒城君。学園の大浴場は使えないので、風呂に入るときは自室のシャワーを使ってくださいね」

 

麻耶の忠告を軽く手を振って応えた後教室を出たら、女子がたくさんいたがモーゼの十戒のごとく道ができたため、少し気味悪く感じながらも寮へと足を運ぶのであった。

教室では何か一夏が言ってたが、蒼也には関係ない話だろう。

 

 

 

 

 

それから少し歩いた後、すぐに寮に着いて気付けば自身が入る部屋『1020』室の前に立っていた。

 

「さて、同室相手はどんな人なんだ……?」

 

少し不安を感じるが、蒼也は扉を三回ノックして少し待った。

 

「はい……」

 

そして小さい声で返事が聞こえた後、部屋の扉を開けて出てきたのは……、

 

「どちらさ……ま……」

 

出てきたのは背は蒼也の肩ぐらいしかなく、髪は内側にはねており水色で瞳はルビーみたいな赤色だった。

この時二人はお互いの顔を見た瞬間驚きの表情を見せたが、すぐに極力いつもの表情に戻した。

 

「かん……ざし……か?」

 

「蒼……也……?」

 

「蒼也の、ばかぁ!!」

 

「ぶふっ!?」

 

その時だった。蒼也はいきなり簪に左ビンタを食らったため、少し左に飛ばされたがすぐに体勢を立て直して簪の顔を見た。そしたら簪の目からは涙がボロボロと零れており、歯を食いしばっていた。

蒼也はいきなりぶたれたことに驚いたが、その理由をはっきりわかっていたため申し訳ない顔をした後、顔を左右に動かして廊下に誰もいないかを確認した。

 

「入って……」

 

そして涙声の簪に入るように言われたため、おとなしく部屋に入って再び廊下に誰もいないか確認して扉を閉めた。

そしてベッドに座っていた簪に手招きをされた後、蒼也もベッドの上に正座をして座った後お互いに向き合った。そして最初はお互い無言だったが、簪が少し嗚咽交じりでぽつぽつとしゃべり始めた。

 

「ねえ、蒼也……。この三年間……、今までどこにいたの……?私、寂しかったんだよ……?」

 

「すまなかった。けどな、「わかってるよ……。お父さんが悪いことぐらいわかってるよ……」簪……」

 

「でも……、少しは電話してくれたっていいじゃない……!」

 

「すまなかった……」

 

蒼也は土下座をした。簪を寂しがらせた分、何も連絡しなかった分、その他もろもろの分。これで許してもらえるとは思ってない。何か要求があるならそれに応えよう。蒼也はそう思っていた。

 

「顔を上げて……」

 

蒼也は恐る恐る顔を上げた瞬間だった。

いきなり簪が蒼也の首に手を回すように抱き付いてきたのだ。

 

「か、簪!?」

 

「絶対どこにもやらないんだから……!蒼也は私の隣にずっといてもらうんだから……!」

 

声は震えながらも強い意志を灯しており、簪は抱きしめる力をさっきより強くした。

蒼也はそんな簪を抱き返し、簪の小さな嗚咽が聞こえる中お互いに抱きしめあったのであった……。それは三年間の隙間を埋めようとするかのようで、誰もが入ることのできない空間であった……。

 

 

 

 

 

 

あれからどれくらい経っただろうか。抱き合うのやめたころには時計の針は八時を指しており、食堂はすでに閉まり切っていたので簪が夕食を作ることになった。

二人はすでにシャワーを浴びており、お互い寝間着姿になっていた。

蒼也はグレーの長袖の寝間着いう姿であったが、簪の寝間着の姿はと言うと……。

 

「簪……」

 

「何……?」

 

「なんで、犬の着ぐるみなんか着てるんだ?」

 

そう、犬の着ぐるみ姿なのだ。袖はもともとダボダボだったのだろう、それをゴムでも入れたのか。袖はしっかりと締まっているのに対して、途中から振袖みたいに伸びているのだ。

 

「これ、本音から誕生日プレゼントで渡されて……」

 

「友人思いだな」

 

「それは置いといて、ご飯で来たよ?」

 

簪がそう言った後鍋から皿に食事が盛り付けられる音がしたためベッドで寝転がっていた蒼也はテーブルに座り、そして目の前に食事が出された。

 

「おお、スパゲッティとは。とても美味しそうだ」

 

そして二人向かい合う形で席に着いた後、掌と掌を合わせた。

 

「「いただきます」」

 

そして談笑しながら夕食を食べた後、ベッドに入ったのだが……。

 

「簪、な座俺のベッドの中に?」

 

簪が蒼也のベッドに入り込んで、そして蒼也の右腕に抱き付いてきたのだ。さすがの蒼也もコレはたじたじになってしまったが、

 

「蒼也が逃げないようにするためだもん」

 

「逃げないか「だめ」さようですか……」

 

蒼也はあきらめるかのように溜息を吐いた後、部屋の電気を消すのであった。

そして気付けばお互いを抱き合うかのように眠る二人なのであった……。




ヒロインが登場しました。

今までインフィニット・ストラトス・センチネルの方を更新してばっかだったので、こちらの更新を楽しみにしていてくれた皆様には申し訳ございません。
ですが、センチネルの次話の準備ができるまでこちらを更新していく予定ですのでもうしばらくお待ちください。


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怒りと特訓

最近、駄菓子のココアシガレットをカリカリかじっている妖刀です。未成年だからタバコは駄目だけどココアシガレットなら誰も文句言わないからいいんですよね。

では本編、どうぞ!


翌日、蒼也は簪と一緒に食堂へと向かっていた。

 

「で、刀奈姉とは仲良くしてる?」

 

「うん。お姉ちゃんとは仲はいいけど……、蒼也がいなくなった分、私にベッタリしてくるようになったかな?」

 

「ははは……」

 

「それと、蒼也がいなくなって半年後にお姉ちゃんが楯無を襲名したから」

 

「あ、そうなんだ……。なら今度会った時は刀奈姉じゃなくて楯無姉……、いや楯姉って呼ばないといけないかな……?」

 

「うん、そうなっちゃうね……」

 

そして食堂に着き、お互いに何食べるかさっさと決めてたらいにトレイを受け取った後、どこに座るか探していた。この時周りからは侮蔑にも似た視線が蒼也めがけて飛んでいたが、蒼也は少しこめかみがぴくぴくしながらも涼しい顔を通していた。

 

「箒、そんな顔をするなよ」

 

「私は元からこんな顔だ」

 

その時だった。どこか聞いた声がしたためそちらの方を見てみると、そこには一夏と箒がいた。一夏は昨日何かをしたのか、箒にひたすら謝っており、箒はそんな一夏に目もくれず朝食を食べていた。

蒼也は軽くそれを見てどこかに行こうとしたが、隣のテーブルが空いていたためそこに座ろうと決めたが、とりあえず簪に許可を取ってみた。

 

「簪、織斑の隣の席が空いてるがそこでいいか?」

 

この時簪は露骨に嫌な顔をしたが、ほかに座るところがないと悟ったのか渋々ながらも縦にうなずいたため、二人は一夏たちのいるテーブルの隣のテーブルに座った。

 

「お、蒼也か。おはよう」

 

「おはよう。織斑、お前の隣にいる女子はお前の知り合いか?」

 

「ああ、こいつは篠ノ之箒。俺の幼馴染で同室の相手だよ」

 

蒼也はふーんと軽く言った後、簪と一緒に朝食を食べ始め、二人とも和食セットであったがさっさと食べた後にお茶をコップに注いで一息ついていた。

 

「蒼也、ところでその女子て知り合いなのか?」

 

一夏が聞いてきたため、蒼也はとりあえず紹介しておくかと思って口を開いた。

 

「ああ、そういえば紹介してなかったな。彼女は更識簪。俺の同室の相手で「蒼也の婚約者です」ちょかん『えええええええええええええ!!!!????』ぐわあぁぁぁ!?」

 

この時周りにいた女子達の驚きの声で耳にダメージを受け、頭がフラフラしており、行った張本人である簪もフラフラになっていた。

 

「え、どういうこと!?婚約者!?」

 

「こんなマダオみたいのが婚約者ってかわいそう……」

 

「本当よね~」

 

最初は驚きの声だったのに、どんどんと簪を憐れむというか、同情のまなざしで見る生徒が増えてきたため、二人は誰にも気付かれないように食堂を出て行くのであった。

 

「蒼也、ごめんね……。私があんなこと言ったから……」

 

「えっ」

 

食堂を抜け出してお互いの教室に向かっているとき、蒼也は簪にいきなり謝られたことに戸惑いを隠せなかった。

元々自分が悪いのに簪がなぜ謝るのか……、とりあえず蒼也は簪を慰めながら教室に向かい、そして一組の教室の前で別れた後に中に入ったら、そこには無数の敵意と敵視があった。

 

「なんでこうなったんだっけ?」

 

蒼也のそのつぶやきは、誰にも聞こえることなく消えていくのであった。

 

 

 

 

 

「ところで織斑、お前のISだが準備までもう少し時間がかかる」

 

「へ?」

 

授業の途中のことであった。千冬は一夏に向かってそう言ったため一夏の顔はポカーンとしており、周りもキョトンとした顔をしていた。蒼也もいきなり何のことかぱっと思いつかず、周りと同じのような顔をしていた。

 

「予備機がない、だから少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」

 

この時の一夏は頭に?を浮かべていたが、周りの女子達は察したのか一気に騒めきだした。

 

「せ、専用機!?い、一年のこの時期に!?」

 

「いいなー、織斑君」

 

女子が騒めくなか蒼也はシャーペンの動きが止まっており、額からはチラッと冷や汗が流れていた。

 

「織斑先生、そーやんには専用機はないんですかー?」

 

一夏のことしか言ってなかったことが気になったのか、本音は

 

「ん、黒城には用意はしてあると言えばしてあるが、訓練機のラファールの色違いだから専用機とは呼べないだろうな。そして黒城、放課後にそれを渡すから第三アリーナまで来い」

 

「わかりました」

 

蒼也は簡潔に返事をし、板書を再開するが後ろ側から恨めしいというかさっきにも似た視線が自身を指してきたがとりあえず無視をして、ひたすらノートに電子黒板に書かれたことを板書していくのであった。

 

「あの人は関係ない!」

 

この時誰かが大声を出していたためその方向を向いたら、箒が机をたたいて立っていたたため、かかわらない方がいいと判断した蒼也は前の方を向き直すのであった。

 

 

 

 

 

休み時間、蒼也は再びノートの最後のページに昨日の設計図の続きを書きながら時間を潰していた。

 

「そーやんそーやん、ちょっといいかな~?」

 

「ん、どうした本音?」

 

この時本音が蒼也の元へとやってきたため、手の動きをいったん中断して本音の方を向いた、

 

「あのね~、昼休みに私と生徒会室に来てくれないかな~?」

 

「何故に生徒会室?」

 

まあそうなるのも無理ないだろう。いきなり生徒会室に来いって言われたら自分何かやったのか?って思ってしまうはずだ。

 

「あのね~、生徒会t「ちょっといいかしら?」む~」

 

この時いきなり会話が中断されたため本音の頬は大きく膨れ上がっており、実に不機嫌です!っていう顔をしていた。蒼也はとりあえず声の方をした方を見てみると、そこには先程まで一夏の方にいたセシリア・オルコットが立っており、この時蒼也は少しだけ目を細めた。

 

「何だ?」

 

「あなたも一応専用気持ちになりましたわね。でしょうけど今度の試合でこのわたくし、セシリア・オルコットの勝利は揺らがないでしょう!」

 

「ふーん。ま、初心者がセミプロに勝てるわけがそうそうないしな」

 

蒼也の冷静な態度に調子が狂うのか、セシリアは少しイラついたかのような顔をしていた。

 

「あなた、何でそんな風にいられますの!?」

 

「似たようなことを何回も経験しているとこうなるんだよ」

 

この時の蒼也は何か諦めたかのような目をしており、これがセシリアに怒りを募らせた。

 

「そういえばこの学園にあなたの婚約者がいるという噂をお聞きましたが、その婚約者もかわいそうですわね、こんな何もやる気のない男と結婚するなんて」

 

セシリアはそうぺらぺらとしゃべっているが、この時の本音の眼つきはそれなりに迫力があり、蒼也もセシリアを睨みつけていた。

 

「それともその女性もあなたと似たかのように何もやる気がないのか努力をしない「あぁ?」ひぃ!?な、何ですの!?」

 

セシリアはいきなりドスのきいた声にビビり声のした方を向いてみると、そこには眉間に深いしわを寄せてセシリアを見下す蒼也がいた。

 

「あいつはな、俺と違って偉大な目標のために常に切磋琢磨してんだよ。俺みたいな夢も目標も失って宙ぶらりんな奴といっしょにするなよ……!」

 

この時の静かながらもドスのきいた声で教室の女子達の会話がピタリと止まって蒼也を睨もうとしていたが、蒼也から出る怒気で一瞬で目を逸らす生徒が続出した。

 

「なら言わせてもらう。今度の試合で俺がもし勝ったらそいつに、簪にそのことを謝ってもらうからな。それで負けたら試合の次に日に朝のホームルームの時にでも教室の前で切腹でもして今までの態度でも詫びてやるよ!」

 

「な、ならわたくしが試合で勝って見せますわ!そしてその翌日で地獄を見るといいですわ!」

 

セシリアはそう言って席に戻っていき、そして授業が始まったのであった。

 

 

 

 

 

「何俺ムキになってんだろ……」

 

「そーやんは悪くないよ~」

 

昼休み、蒼也は先程の休み時間の自分を思い返して軽く自己嫌悪に陥っており、本音がそんな蒼也を慰めていた。

 

 

 

そして生徒会室の扉をノックして入ると、そこには

 

「あら蒼也君、お久しぶりね。元気にしてた?」

 

「あ、虚姉……」

 

生徒会室に入って布仏本音の姉、布仏虚である。

 

「えっと、本音からここに来るようにって言われたんだけど……、何があるのさ?」

 

「知りたい?」

 

「えっ……えむ?」

 

いきなり声が後ろからしたため恐る恐る振り返ってみると、頬に何かが当たって蒼也の顔が面白い感じになっていた。それを見た彼女は腹を抱えてケラケラと笑っており、蒼也は軽く呆れたが次第に笑みが出てきた。

 

「刀奈姉……、いや、今は楯姉か……。久しぶり、楯姉」

 

この時蒼也が楯姉と呼んだときに少しだけ悲しそうな顔をしたが、それをごまかすかのように楯無はにっこりとした笑顔を浮かべた。

 

「久しぶりね、蒼也」

 

そう言って楯無は扇子をバッと広げ、そこには『元気にしてた?』と書かれた扇子を見せて、自身の座る席へと向かって行った。

 

「でさ、結局なんで俺をここに呼んだんだ?」

 

部屋に置いてあったソファーに座り、蒼也は一番聞きたいことを楯無に聞いた。

 

「それはね……こ「お姉ちゃん、今来たよ」あ、簪ちゃん」

 

楯無が何か話そうとしたとき、扉が開いてそこから簪が入ってきた。簪は蒼也を見つけるとすぐに、蒼也の座ってるソファーに座る。そして楯無の方を向いた。

 

「これから大事な話をするわ……」

 

この時先程の歓迎ムードはどこに行ったのか、一気に空気が張り詰める。蒼也は自分関連のことだろうと思っているのか、片眉を上げながらも真剣な表情で楯無の言葉に耳を傾けていた。

そして、楯無は口を開いた。

 

「……蒼也、今すぐ生徒会に入りなさい」

 

「はぁ?」

 

いきなりのことで蒼也の動きはとまった。ここまでシリアスの空気にさせておいて生徒会に入れ、訳が分からなさ過ぎて

 

「これはあなたを保護するためでもあるの。噂で聞いたわよ?寡黙すぎるニートとか、いきなり発狂するキチガイとか、死にたがりの怠け者とか」

 

「ちょ、何だよそれ」

 

立った二日でできた訳の分からん噂を聞いた蒼也は軽く笑いが出そうになっていたが、簪は少しずつ機嫌が悪くなってきたのか、目がどんどんジト目になってきていた。

 

「あとクラス代表戦にハンデ無しで参加させられるらしいわね」

 

楯無のその言葉で蒼也は先程の笑いが出そうな顔とは一変して軽く項垂れており、大きなため息を一つ吐いた。

 

「あぁ……、そうなんだよ……。ったく、織斑先生って絶対脳筋だろ。そうでもないとあんなセリフでねえよ」

 

「否定しないわ」

 

「「ぶふっ」」

 

楯無が間を空けず返事をしたため簪と本音が吹き出し、虚は苦笑いを浮かべていた。

 

 

「だから蒼也、私がこの一週間であなたをできるところまで強くして見せるわ」

 

楯無は胸を張ってそう言った。この時簪が、楯無の胸を見てむっすりした顔をしていたが。

簪がそうとしても蒼也には楯無がとても頼もしく見えた。一週間という短い時間しかないがこれならどうにかなる。蒼也には確信めいたものがあった。

 

「あと簪ちゃんは蒼也に座学を教えてやって。同じ部屋だし、恋人同士だし」

 

楯無にウインクされながら言われた後、二人は顔を一瞬だけ見合ってすぐに顔を赤くして逸らした。

 

「それじゃあ今日の放課後に蒼也のISが来るからその時に練習始めようか」

 

「うん、お願いします!」

 

蒼也は威勢のいい返事をして、女子四人にはそんな蒼也を見て微笑んでるのであった。

 

 

 

 

 

 

それから放課後、第三アリーナのピットには蒼也と千冬と麻耶と楯無がいた。

 

「更識、なぜお前がここにいる?生徒会の仕事は?」

 

千冬は若干苛立ちが含まれた言い方だったが、楯無はそれを綺麗に受け流して答えた。

 

「私が蒼也にISの実技を教えることになってのでここにいるんです。織斑先生たちはこの後職員会議ですよね?だからそのあとを私がしますのでご心配なく」

 

「……そうか」

 

そして十分ほど待っただろうか、ピットの中に一つのコンテナが搬入されてきた。そして麻耶が暗証番号を入力すると空気が抜ける音と共に、コンテナの扉が開いて中から一つのISが現れた。

見た目はラファール・リヴァイブそのものだが、色は青より深い青、いや蒼色だ。

 

「ブルー・ラファール・リヴァイブです。この学園にあるラファール・リヴァイブの色違いで、性能は訓練機のラファール・リヴァイブとほぼ変わりません」

 

麻耶がすらすらと説明していくが、蒼也は一つ気になることがあったため挙手して聞いた。

 

「山田先生、なんで訓練機と性能は変わらないのに色が違うんですか?」

 

「ああ、それはですね、部品の発注の時に製作者側が間違えて蒼色で作ってしまったため、一機だけ色違いの貯め倉庫に眠らせていました」

 

蒼也はそれに納得した後、山田先生の主注意等を聞き、そしてついにISに乗るときがやってきた。

この時、もしもの事のために楯無はミステリアス・レイディを纏っており、蒼也はその美しさに少し見とれていたが千冬に「早くしろ」と言われたためラファール・リヴァイブに乗り込んだ。

 

 

「お、おぉ……すげぇ……」

 

まさに感激以外の感情はなかった。

 

「それじゃあアリーナに出てみろ」

 

「はい……って、うお!?」

 

「蒼也!」

 

千冬の指示で蒼也は一歩目を踏み出そうとしたがすぐにバランスを崩し、前のめりに倒れそうになった。だが楯無が受け止めてくれたおかげで片膝を着く程度で収まり、どうにか再び立ち上がった。

 

「二メートル竹馬をやってる時並に難しすぎだろ……」

 

この時どうにか立っておくのがやっとなのかフラフラとしており、千冬はそんな蒼也を見ていてイライラしていた。

 

「何をやってる。それぐらい「織斑先生、もうすぐ職員会議です」……ちっ。更識、どうにか一週間後には戦えるようにしておけよ」

 

麻耶の言葉の後舌打ちした千冬は、楯無にそう指示してピットから麻耶と一緒に出て行き、

 

「……それじゃあ始めようか」

 

「……はい」

 

そして楯無にISの動き方を学んでいった。最初は歩く、走る、それの繰り返しである。

一見それだけのように感じるが初心者にとってはそれでもきつく、最初の三十分で蒼也はこけたりして息が上がって地に大の字で寝そべっていた。

 

「うわぁ……、めちゃきつい……」

 

「まあ、男性だったら超高底のブーツを履いてるような感覚だからね」

 

「……よしっ。再開しよう」

 

「待ってました。それじゃあさっきの復習ね」

 

「へーい」

 

それをひたすら繰り返して時間は午後五時。蒼也がそれなりに走ったりするのに慣れた後、空は夕焼けが空を照らしており、空をよく見たらカラスが飛んでいた。

 

「よし、もうそろそろ次のステップに入ろうか」

 

「次って何?」

 

この時楯無はニコニコとしており、蒼也は首を傾げた。

 

「よし、空を飛んでみようか」

 

「マジで?」

 

「うん、マジで」

 

蒼也は一瞬嬉しそうな顔をしたが、片眉を上げて少し疑問と不安がある表情へと変わっていった。

 

「大丈夫よ、飛ぶって言っても最初は一メートルが目標だから。あと飛ぶときに空を飛ぶイメージが必要だけど……、飛行機とかでいいわ、何か空を飛ぶものをイメージして」

 

そういわれた後、蒼也は目を瞑ってそれをイメージした。ガンダムUCに出てきた、空を駆け回り、ジオン残党に一騎当千する連邦のMSを。

それをイメージしたとき体が浮き上がり、そして予定していた浮き上がるだけでなく空を移動することも成功しており、楯無は少し驚いた顔を見せた。

 

「おお!すげぇ!俺、空飛んでる!」

 

蒼也は子供の様にはしゃぎまわっており、時にはゆっくりながら体を捻らせたりしている。

 

「あの動きって確か、何かのアニメで見たような……」

 

楯無は手を顎に当てて考えるが思い出せず、そんな楯無をよそに蒼也は空を大きく円を描くように飛んでいるのであった。

それから時間は経ち午後六時半。日は大きく傾いてしまい、空は暗くなってきていた。二人は今日の訓練を終わらせピットの中に戻っていた。そして楯無にISの待機状態の仕方を学び、実践して成功したが、

 

「へえ、ISの待機状態ってこんなのになるのか……」

 

蒼也は自身の右腕に付けられてる蒼色の腕輪をまじまじと見ていた。あんなに大きなものが手のひらサイズになると聞いてても、実際になると驚きもするだろう。

 

「そうよ、ちなみに私のISの待機状態はこの扇子ね」

 

そう言って楯無は扇子をスッと見せた後蒼也にISの諸注意等を言い、そしてどこかのゲームの攻略本より分厚いIS関係の説明書を渡されてた蒼也は乾いた笑いがでたそうだ。

それから寮の部屋に戻った後は簪の手料理を食べた後に今日習ったことの復習やこれからの予習をしていき、大体午後九時ほどになってやめてその後はいろいろと雑談をしていた。

 

「蒼也、今までどんな所に住んでたの?」

 

「大体ここから電車で約一時間ほど離れた所にあるアパートでさ、家賃が月二万だったんだよ」

 

「え……、そんなに安いところってあるの……?」

 

「でもさ、すごいわけあり物件でさ……」

 

この時蒼也から乾いた笑いが出ており、いったい何があったのかわからないが逆に気になってしょうがない。簪は興味に負けて聞くことにした。

 

「どんな……、ところだったの……?」

 

「いやさ……、三階建てで俺が住んでたのが三階の部屋だったんだけど屋根から人が歩く音がしたりさ、朝洗面台の鏡を見たら俺の掌よりはるかに小さい掌の跡がたくさんあったりさ」

 

「なんか……すごいところに住んでたんだね……」

 

他にも蒼也のバイトの話をしたり、中学の頃の思い出を話し合ったりしていたら気付けば10時ほどになっていたため二人はベッドに入ったが、

 

「簪、やっぱり一緒に寝るの?」

 

昨日と同じく簪が蒼也の布団の中に入り込んでおり、右腕に抱き付かれた状態になっていた。

 

「だめ……?」

 

「いや、駄目じゃないけどさ、可愛い女の子が男と一緒のベッドで寝るってどうよ?」

 

「私がいいと思ったらいいの……!」

 

そう言って抱きしめる力を強くした簪に、蒼也は小さく肩をすくめた。

 

「もう、これでいいや……」

 

蒼也はこれに関しては諦めておとなしく寝るのであった。

 

 

 

 

 

それから決戦前日までも楯無によるISの特訓と簪の座学により蒼也は最初の頃と比べてそれなりにマシになっていた。時折アリーナにやってくる野次馬達が何か陰口をたたいていたりしてたが、楯無に一瞬だけ睨まれて一気に逃げ出したりしていたのだった。

そして決戦前日、楯無との模擬戦を済ませたて別れた蒼也は、いつものようにピットの近くにある自販機でスポーツドリンクを飲んでいた。

 

「ふぅ……、さて明日か……。刀奈姉があれだけ付き合ってくれたんだから恥じないだけの戦果を見せないとな」

 

そしてもう一口飲もうとした時だった。何かが走って近づいてくる音がするのだ。そして一番近い曲がり角から現れたのは、

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「なっ!?」

 

蒼也の目の前に現れたのは金属製のバットを持った能面を被った女子だった。恐らく女尊男卑思考の女子なのだろう。訳の分からないことを叫びながらバットを振り回す様は、まるで何かに憑りつかれたかのそうな雰囲気であった。

 

「死ねぇぇぇぇぇ!!男がぁぁぁ!!」

 

「あぶねえ!?」

 

蒼也は紙一重で攻撃をかわしていくが、ふり方がめちゃくちゃなため動きが読みにくく、蒼也はとりあえず逃げることにした。男の筋力ならおそらく逃げ切れるだろう。そして縦に振り下ろされた瞬間を見計らって一気に後ろを振り返って蒼也は全速力で逃げ出した。

だが。

 

「おらぁあぁ!!」

 

「がっ!?」

 

最寄りの曲がり角にもう一人バットを持った般若面を被った女子によって側頭部を殴られたのだ。そのまま倒れた蒼也の右側頭部からは血が流れており、女子達はそんな蒼也をボコすかに殴りだした。

 

「おらおらぁ!男なんか不要なのよ!死になさいよ!」

 

「死ねぇ!!」

 

二人の女子達によるバットも用いられたリンチによってあちこちから血を流し、蒼也は小さく呻き声を上げるしかできなかった。

 

「そこ!何やってるの!?」

 

その時だった。楯無が現れたのだ。彼女はピットに忘れ物をしたため回収に向かっていたら、何かを殴る音と小さな悲鳴が聞こえたため急いで駆け付けたのだ。

 

「やばっ、逃げろ!」

 

そう言って女子達はバットを持って電気のついてない通路の中へと逃げて行った。楯無は二人を追いかけようとしたが、その前に蒼也の応急処置と救護班の用意をしていたため二人を取り逃がすという失態を犯してしまった。

そして蒼也はIS学園に併設されている病院であちこち包帯まみれで入院する羽目になってしまったのだった。

 

 

そして試合当日を迎えた。

 




次回予告みたいなもの

謎の二人によって重傷を負ってしまい入院することになってしまった蒼也。セシリアに負けたら切腹すると言ってしまった彼は、そのまま切腹しなければいけないのか!?

続く



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勝者は誰だ

どうも、HGUCのブルー一号機とガンダムEZ8をニコイチしてめっちゃ動くブルーを作ろうと考えている妖刀です。とりあえずなぜか両方売り切れという事態で全くできないことに少し困ってます。

さてこんな話は置いといて本編どうぞ!


ここは第三アリーナ。今アリーナの中では一年一組のクラス代表決定戦が行われており、一夏とセシリアが戦っていた。

 

「ま、まさか……一次移行(ファースト・シフト)!?あ、あなた、今まで初期設定だけの機体で戦ってたとでもいうのですの!?」

 

セシリアはミサイルビットを直撃させたにもかかわらずピンピンしている一夏に驚きを隠せなかった。

一夏の手には雪片二型が握られており、一夏はをそれを見た後何かを呟いてセシリアの方を見た。

 

「いったい何を言ってるのですの?」

 

「俺は、俺は負けるわけにはいかないんだ!」

 

そう言って雪片二型からレーザーサーベルみたいのが出た後、セシリアの前から消えて、セシリアは気付けば雪片二型の殺傷圏内へと入り込んでいた。

 

「なっ、瞬時加速(イグニッション・ブースト)!?初心者であるあなたがなぜ!?」

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

そして一夏は一瞬でセシリアの懐に入り込んだ後、居合いの要領で一気にセシリアを切り上げた。

 

『勝者、織斑一夏』

 

そして観戦席から歓声が響き、一夏は片手を天に突き上げて勝利のポーズともいえることをした後ピットの中へと戻って行った。

 

「一夏、よかったぞ」

 

「箒、ありがとう」

 

一夏はそう言って微笑んだあと、箒は頬を赤く染めて顔をそむけた。一夏はなぜ背けたのかわからず首をかしげたが、わからないと判断してとりあえずベンチに座った。

そしてこの時ピットに千冬が入ってきた。

 

「織斑、次の試合は黒城としてもらう。今から十分後に始めるから用意しておけ」

 

「分かった、千冬姉」

 

「織斑先生だ」

 

そう言って千冬は一夏の頭を出席簿で叩いた。

 

「うごっ!?」

 

一夏は痛みのあまり頭を押さえており、千冬はそんな一夏を見て小さくため息を吐いた。

 

「あと織斑、さっきの戦いはよかったと言いたいが、途中で勝てると気を抜いてただろ。あれだからミサイルが直撃するんだ」

 

「うっ……次は気を付けます……」

 

そして千冬は満足したのか一夏のいるピットから出て行った。

そして千冬は誰もいない通路で小さくつぶやいていた。

 

「ふむ……、一夏が勝ったか……。これでクラス代表は一夏決定だな。黒城は昨日何かで大怪我したらしいからここには現れないだろう……」

 

千冬は選手控室の前を通って管制室へと向かって行った。この時千冬は気付かなかった、いや、気付けなかったと言ってもいいだろう。控え室を通った後、扉が誰も来ていないのに扉が開いたことに……。

 

 

 

 

 

「それじゃあ箒、俺、行ってくるよ」

 

「ああ、次も勝ってこい!」

 

一夏は白式を展開してカタパルトに足を載せた。

 

「織斑一夏、白式、行きます!」

 

一夏の掛け声と共にカタパルトから射出され、一夏はそのままアリーナの真ん中へと向かった。

 

「あれ、蒼也はまだ来てないのか……?」

 

既に試合開始時間になっているが蒼也が一向に現れないため一夏は腕を組んで首をかしげていた。

それから約五分ぐらいたっただろうか。千冬の声がスピーカから聞こえた。

 

『時間が押しているが、黒城が現れないなら織斑、おま「またせた……な……」何?」

 

その時、蒼也の声がしたため一夏は声のした方を向いたが、絶句した。

 

 

 

 

 

この時簪は部屋で力を失ったかのような感じで壁をずっと睨んでいた。

 

「蒼也……」

 

昨日、楯無が蒼也が怪我したこと、守れなかったことを謝りに来て以降ずっとこんな感じなのだ。別に楯無のことを何も悪く思っておらず謝りに来たのを別に怒ってなどいなかったが今日、蒼也が不戦敗したら切腹してしまうのかと思うと

 

その時スマホから一つ着信音が鳴って手に取ってみたら『お姉ちゃん』と出ており、簪は恐る恐る電話に出てみた。

 

「お姉ちゃん……、どうしたの……?」

 

「簪ちゃん、落ち着いてよく聞いて。蒼也が……」

 

「蒼也がどうしたの!?」

 

蒼也に何かあったのだろうか。簪は不安で胸がいっぱいになった。

 

「蒼也が病室から消えたの!」

 

「え!?」

 

それを聞いたとき、簪は急いで制服に着替えて部屋を出て行ったのであった。場所はおそらく第三アリーナ。

 

「いつも、無茶して……!」

 

そう言って簪は第三アリーナへと向かって行ったのであった。

 

 

 

 

 

一夏は現れた蒼也を見て絶句していた。

 

「そ、蒼也……、おまっ……」

 

「織斑……、速く、試合は始めようぜ……!」

 

 

蒼色のラファール・リヴァイブに乗っている蒼也がおり、地面に足を付けていたが問題はそれでなかった。顔は鼻から上がほとんど包帯まみれになっており、唯一右目が露出している状態であった。胴体に限ってはISスーツを着ておらずあちこちが包帯まみれになっており、ISスーツのズボンをちゃんと履いているくらいであった。

この状態でも蒼也は若干かすれた声を上げながら獣のような獰猛な狂気とも言える笑みを浮かべており、一夏は背筋にが凍るかのような感覚に陥った。

観戦席の女子達も例外でなくなぜ包帯まみれなのか、あんな笑みを浮かべてるのか、

 

「そ、蒼也!お前いったい何があったんだよ!」

 

「これ……か?なぁに、この学園にいる女子の誰か二人に金属バットでボコボコに殴られただけ……だ……」

 

それを聞いた一夏はさらに絶句した。

 

「え、嘘!?」

 

「そんな人がいるの?」

 

「嘘よ!あんなのただの演出だわ!」

 

「そ、そうよ!注目を集めるためだけのパフォーマンスだわ!」

 

観戦席の方も大きく騒めいており、一部の女子が狂乱しているのを近くにいた先生に連れていかれる騒ぎまでなっていた。

 

「な、なあ蒼也、ソレ、嘘だよな?嘘であってくれ」

 

一夏は狼狽しながら言うが、蒼也は先程と変わらない笑みで答えた。

 

「なら、見せて、やろうか……?」

 

そして左目の近くにある包帯を掴んで上に少し上げて一夏だけ見せた。この時一夏は恐ろしいものを見たかのような顔をして「もういいから閉じてくれ!」と叫んだ。それを聞いた蒼也は包帯を元に戻した。

 

「そもそもなんでそんな状態でこの試合に参加するんだよ!」

 

「お前も、知ってるだろ?俺がこの、試合に負けたら切腹して……ぐぅっ……!切腹して今までの態度を、詫びるってことを……」

 

蒼也は痛みに耐えながら少しかすれた声で言っている。そう、この噂は学園中に広がっており、これで蒼也が負ける様を女子達は見に来ていたのだ。だがすでに蒼也は満身創痍。だがその目にはあきらめている感じはなかった。

 

「俺はなぁ、正直言うとこの勝負なん、かどうでもいいんだよ。ただ、オルコットにあいつ……、簪のことを馬鹿にしたことを謝ってもらいたい、ただそれだけなんだ……。だから……」

 

そのあと蒼也は何かつぶやいたき右手に粒子が収束し始め、それが固まって姿を見せたときアリーナにいた観戦席の女子も先生も息をのんだ。

蒼也の右手に握られてたもの、それは『全長四メートルほどある大太刀』だった。刃は途中から地に着いており、重さのせいか地面に少しめり込んでいた。

 

「で、でけぇ……」

 

「来い織斑、戦おうぜ」

 

そう言って蒼也は挑発するかのように左手をクイクイと曲げた。だが一夏は動くことができない。まあ怪我人相手に戦うことなんてそうそうできることではないだろう。

 

「そうか……、なら」

 

そう呟いた後蒼也は、

 

「だぁぁらっしゃぁぁぁい!!!!」

 

謎の叫び声とともに肩に担いだ大太刀を一夏目掛けて投げた。

 

「……なぁぁぁぁ!?」

 

一夏はいきなりのことで反応できなかったが、飛んでくるスピードがそこまで速くなかったため横に回避した。大太刀はそのまま一夏の横を通過した後、速度がどんどん落ちていき地面に刺さった。

一夏は大太刀の方を見ていたがそれが命とりである。

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「えっ……、うぉぉぉぉ!?」

 

一夏は叫び声のする方を向いてみると、そこには蒼也が自身より高めの位置におり、そして所の両手に握られていたのは『全長四メートルほどある大太刀』である。そう、ブルー・ラファール・リヴァイブの格納領域(バススロット)には大太刀が二本も入ってるのだ。

 

「に、二本も持ってるのかよ!」

 

一夏の声も無視して蒼也はそのまま大太刀を振り下ろし、一夏はそれを回避せず雪片二型で受けたがあまりの重さと蒼也の押しつぶす力によって白式の推進力をもってしても地に叩きつけられそうになり、一夏はなんとか刃を逸らす形で軌道から逸れて、蒼也はそのままアリーナの地面を叩き割る。

地面を叩き割った時に出た破片はそのまま四方八方へと高速で飛び散り、一夏の方にもその破片がまんべんなく飛んできてガリガリシールドエネルギーを削った。

 

「なっ、こんな攻撃……!?」

 

一夏はまさか飛んできた破片に反応できず大量にくらったがシールドエネルギーはまだ軽く半分以上あり、戦うにはまだ問題ない量だ。そして一夏は地に足を付けた状態の蒼也を発見したためスラスターを吹かして一気に距離を詰め、一夏は雪片二型を振り上げ、そして蒼也めがけて振り下ろした。

蒼也は咄嗟の判断で大太刀を手放して後ろに回避したが、手の甲を掠めた際に零落白夜が発動していたらしくシールドエネルギーが一気に三分の一削られて少し苦い顔をした。

 

「くそっ……、ぐっ……!?」

 

蒼也は毒づいたが急に体に走った痛みに顔を歪め、そしてつま先から着地しようとしていたのが踵からになってしまい、バランスを崩した蒼也はそのまま後ろに高速で転がって最初に投げた大太刀の鎬に頭からぶつかった。そして

一夏は動きが止まった蒼也にとどめを刺そうと零落白夜を発動させた状態で一気に突っ込む。

 

「終わりだぁぁぁぁ!」

 

そして雪片二型を振り下ろそうとした時だった。

 

「がふっ!?」

 

一夏の喉に強い衝撃が走る。一夏は何が起きたのかわからないまま後ろへと吹き飛ばされて背中から墜落した。

 

「ぐぉぉ……、いったい何があったんだ……よ……」

 

一夏は起き上がって蒼也の方を見て自身の目を疑った。蒼也は掌底でカウンターをくらわしたポーズをしていたがそれは問題でなかった。一夏が見たものは……、

 

「はぁぁぁ……」

 

顔の包帯を赤く染めた蒼也の周りには何か赤いオーラらしきものがゆらゆらと出ており、血のように赤かった瞳はまるでルビーのように色が鮮やかになっており、その姿は鬼神を思い当たらせるかのような気迫が出ていた。

 

「俺は……勝つん……だ……」

 

そして蒼也は糸の切れた操り人形のように力尽き、そしてうつ伏せで倒れて意識を失った。

 

『勝者、織斑一夏!』

 

『わ、わぁぁぁぁぁぁ!!』

 

終了のブザーと共に歓声が上がったがそれは観戦席にいた生徒半分以下であり、残りの生徒はあまりの光景に絶句するしかなかった。

 

「……あ、あぁ……。負けちまったか……」

 

周りがうるさかったせいか意識を取り戻した蒼也は体に鞭打つかのように無理やり体を起こした後、自身のピットに向けてゆっくりと浮上して向かっていく。そしてカタパルトの端に足を付けようとしたが痛みでバランスを崩して地面に落ちようとしたが、

 

「蒼也!」

 

落ちることはなかった。蒼也が落ちようとした瞬間、ピットに一足先に到着した簪が未完成の打鉄二式を展開して蒼也の手首を掴んだ。

 

「かん……ざし……」

 

蒼也は小さくか細い声でそう言った後、簪に引き上げられてそのままピットの中へと引っ込んで行った。

 

 

 

 

 

セシリアはこの試合を控室にあるモニターから見ていた。

 

「な、何ですの……、あの方は……?」

 

セシリアは一夏と戦った時に彼のことを本気で知りたく思い、そして今まで自身のしていたことを恥じ、そして蒼也あのときのことを謝ろうと考えていた。だが、セシリアが見たものは、最初っからボロボロながらも一夏に立ち向かう蒼也の姿だった。

 

『確か切腹って調べたら自殺の一種ですのね』

 

蒼也の言った切腹の意味を前調べて、それを思い出したセシリアは一気に顔を真っ青にした。

 

「ど、どうしましょう……。これで私が出て彼が出てきたら戦わなければなりませんの?これで私が勝ったら彼は自殺……、私は一体どう知ればいいですの!?逃げる?いや、それは私のルールに反しますわ。なら彼が出てこないことを祈る?いや、あそこまでボロボロでも出てくるってことはこの勝負に本気になってるってことですわ。そしたらまた出てくる可能性が……。どうすればいいですの!?」

 

セシリアは頭を抱えてどうすればいいか考えたが、名案が思いつかず重い足取りでピットへと向かって行ったのだった。

 

 

 

 

 

「蒼也、頭の傷が……!」

 

簪は焦っていた。蒼也はすでにブルー・ラファール・リヴァイブが解除された状態でベンチもたれかかった状態っでおり、頭の包帯が赤く染まっていることで簪の正常な判断を奪っているのだ。その時簪の頭に、蒼也に手が置かれた。

 

「大、丈夫……だ、問題、ない……」

 

蒼也は簪を安心させようと思ってやったことだろうが、それが死亡フラグと知っていた簪はさらに取り乱す結果となる。

 

「蒼也!大丈夫!?」

 

その時だった。ピットに入ってきたのは楯無で、その手には応急道具が入った箱が持たれていた。それを見た蒼也は何か安心したのかベンチにぱたりと倒れ、簪は大いに焦ったが楯無は応急箱から必要な道具を取り出した。

 

「簪ちゃん、手伝って!」

 

「う、うん!」

 

そして二人は蒼也に応急処置を施していくのであった。

そして応急処置が施した後、蒼也は簪に膝枕された状態で眠っていた。

 

「お姉ちゃん。蒼也、次の試合も辞退しなんだよね……?」

 

「……そうね。彼、昔っから戦い事好きだったし。それでよく怪我とかしてたし……」

 

「だよね……」

 

そう呟いて簪は蒼也の頭を優しく撫で、蒼也はそれに反応するかのように少しもぞもぞ動いている。

 

「ところで、ブルーは?」

 

簪が言ったブルーとはブルー・ラファール・リヴァイブのことだろう。

 

「残念なことに傷があんまりついてないから、エネルギーを補給したらすぐ出れるそうよ」

 

「……そう……」

 

簪は少し悲しそうな返事をし、楯無はそんな簪の頭を優しく撫でていた。

その時だった。

 

『黒城、始まるから用意しておけ』

 

「う、あぁ……、そんな時間、か……」

 

そしてピットに設置されたスピーカーから千冬の声がし、蒼也は若干めんどくさそうに目を覚ました。

 

「蒼也……、行くの……?」

 

「ああ、すまんな。行ってくる」

 

そして蒼也は一歩を踏み出そうとしたが何かに腕を掴まれ、振り返ると簪が蒼也の右腕首を竜手でつかんでいた。

そして神座愛は小さな声で話す。

 

「約束して、必ず帰ってくるって」

 

「……わかった」

 

この時楯無はどこの戦争映画?と思ったが、ここで口にするのも野暮だと思い心ので言うだけにしておいた。

そして蒼也はブルー・ラファール・リヴァイブを展開し、カタパルトに足を載せる。

 

「黒城蒼也、ブルー・ラファール・リヴァイブ、出るぞ」

 

そしてカタパルトから一気に射出されるのであった。

 

 

 

 

 

「だから千冬姉、ほんどぶっ!?」

 

「織斑先生だ」

 

ここは管制室。一夏は箒を連れて千冬の所に訪れていた。

 

「だから言ったはずだ。黒城から赤いオーラなど出ていなかったと。もう一回先程の試合が記録された映像を見るか?」

 

「いや、いい……です」

 

一夏は先程見た蒼也が纏っていた赤いオーラが気になってその映像を見に来たが、確認するとい蒼也がカウンターを決めたシーンで赤いオーラは一切出ておらず、ただ首をひねっていた。

 

「織斑、まさか気迫に押されて幻覚でも見たって言うまいな?」

 

「い、いや、そんなわけ……」

 

「織斑先生、時間です」

 

「うむ」

 

千冬に言い詰められて冷や汗を掻きながら何か言い訳をしようとしたら、近くにいた先生がそう言ったため一夏から離れてマイクを手に取って蒼也にももうすぐ開始であることを伝える。

 

「ん?織斑先生、山田先生は?」

 

一夏は麻耶がいないことが気になって千冬に聞いた。

 

「山田先生は今日は別の仕事でここにはいない」

 

千冬はそう断言し、一夏は何か言おうとしたが千冬に睨まれて何も言えなくなり、そしてアリーナに蒼也とセシリアが出てきたのを確認した。

 

 

 

 

 

アリーナの真ん中では蒼也とセシリアがいた。セシリアが空で浮いているのに対して、蒼也は地に足をつけて上を向いてセシリアを見える片目で睨んでいた。

まだ開始のブザーはなっておらずお互いに得物を展開せずにいるが、

 

「オルコット、お前だけは絶対に……、倒す!」

 

既に蒼也の右手には粒子を纏い始め、戦う気満々になっている。そんな中、セシリアはゆっくりと地上に降りて、蒼也と同じように地表に足を付けた。

 

「……何のつもりだ?」

 

「黒城さん、本当にすみません!」

 

 

セシリアは頭を下げて謝った。

蒼也は包帯まみれで分かりにくいが少し驚いた顔をしており、とりあえずセシリアの言葉に耳を傾けることにしてみた。

 

「私があんな態度を取ってしまい、それでここまで事態が発展するとは思っておりませんでしたわ。ですから勝敗関係なくあなたの婚約者さんに謝らせてください……」

 

そして再び頭を下げたセシリアを見て、蒼也はボチボチ口を開く。

 

「……そうか。なら、どちらにしても俺が勝たないと……、な」

 

痛みで蒼也は痛みで顔を歪め、セシリアはとても不安そうな顔を浮かべる。

 

「黒城さん、『試合、開始」』「うおらぁぁぁぁ!!」きゃあ!?」

 

セシリアは何か言おうとしたが、試合開始のブザーが鳴ったとともに蒼也が野太刀を横薙ぎで振ってきたため、セシリアは急上昇して回避した。

 

「くっ!降参してもらおうと思ったのですが仕方がありませんわね。それなら!」

 

そして腰のパーツが外れたかと思うと、それがいきなり動き出して先端からレーザーを放ちながら蒼也めがけて襲い掛かる。

 

「ファンネルかよ……!」

 

蒼也はどうにか回避しようとするが痛みと機体に完璧になれてないせいで、ピラニアのごとく攻撃してくるビットのレーザーをくらっていた。

途中からマシンガンを展開してビット目掛けて連射するが全く当たらず、シールドエネルギーがどんどん減って言っていく。そして残りが二ケタほどになった時だろうか、蒼也の真上からレーザーが放たれ、蒼也の顔をギリギリで掠めたときに、

 

「あっ」

 

レーザーの熱量で包帯が焼き切れてしまったのだ。そしてどんどん顔を覆っていた府お体が解けていき、顔の全貌があらわになった時アリーナにいた全員がその顔を見て絶句した。

左瞼は酷く腫れ上がって目が開かず、先程の試合で出た必死に拭き取ったのであろう血の跡が顔半分を汚していた。そしてあちこちにまだ塞がったばかりという傷があちこちにあることがショッキングすぎて、セシリアは動くことができずにいた。

 

「なっ……、ぁ……」

 

だが蒼也はこのチャンスを無駄にはしない。

 

「野太刀ぃぃぃ!!」

 

思いっきり叫びながら野太刀を展開して、セシリアめがけて思いっきり投げた。

 

「しまっ!?」

 

セシリアは油断していたせいで刃の部分をほぼ直撃してしまい、スターライトmk-3が破壊されてそのまま地面に墜落した。追撃しようとした蒼也は今ので無茶したのか片膝を着いて動かず、セシリアも今のダメージのせいか動くこともできなかった。

そして先に立ち上がったのは、

 

「ぐ……お……!」

 

蒼也である。今さっきので無茶をしたせいか顔の部分部分から血が出ており、それでなおかつ口角が上がってるものだから狂気が漂ってるようにも感じる。そしてセシリアの前にきてマシンガンを展開し、セシリアの喉元に銃口を当てた。

 

「俺の……勝ちだ……っ!?」

 

その時だった。いきなり後ろからの攻撃に驚き振り返ると、そこには一機のビットがこちらを向いており蒼也はそれをマシンガンで潰すが、

 

「インター・セプター!」

 

その時マシンガンにアーミーナイフが突き刺さる。だが、

 

「終わりだ!」

 

マシンガンの下部に装着されていたグレネード発射口からグレネードが放たれ、二人はその爆発に飲み込まれる。

そして爆炎が晴れた後に残っていたのは、互いに吹き飛ばされて伸びている二人の姿であった。

 

『勝者、無し!』

 

そして引き分けという結末で代表決定戦は幕を閉じるのであった……。




マシンガンはイメージ的にゼーズールが使っていたマシンガンを実体弾使用にした感じで、野太刀は鞘と鍔のついてないガーベラストレートをイメージしてくれると助かります。

さて、過去編は約20話ほどで終わらせないとな……。


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