あの時、フリーザが冷静だったならば… (めぐるうさぎ)
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帝王、敗北する

 

 この銀河に存在する無数の惑星。それらに対し、圧倒的な強さで数々の悪行と恐怖の征服を行ってきた事から宇宙の帝王と呼ばれ、恐れられてきた【フリーザ】はたった一人の戦士と戦い、そして…倒れ伏していた。

 帝王に敗北は許されない。そう気力を振り絞り、立ち上がった彼を見下ろしていた金髪の戦士【孫悟空】は無表情を崩さないまま口を開いた。

 

 

「やめだ」

 

「なっ…なんだとっ!?や…やめとはどういうことだっ…!?」

 

「言葉の通りだ。理由は貴様が一番よくわかってるだろう?」

 

 

 言葉が出なかった。その言葉の意味がしばらく理解出来なかった。それと同時にどこかで安堵してしまう自分がいた。

 サイヤ人の伝説【超サイヤ人】に覚醒した孫悟空の力は最強を自負するフルパワーを出した自分でさえも上回るほどのもの。それに対して心の奥底で恐怖心を抱いてしまった。それは間違いない事なのだから。

 だが、そんなものは認められない。認める訳にはいかない。芽生えてしまった恐怖心を振り払うように拳を握り、射殺さんとするばかりに奴を睨みつける。

 

 

「貴様は100パーセントのパワーを使った反動でピークが過ぎ気がどんどん減っている。これ以上闘ってもムダだと俺は思い始めた…」

 

 

 やはり奴には見抜かれていた。フルパワーとなった事で最初こそ伝説と謳われた超サイヤ人と互角の闘いを繰り広げていた。だが、普段から使い慣れていない力を引き出したその反動も凄まじかった。徐々にではあるがパワーもスピードも下がっていた。

 だが、それでも闘いは最後まで何が起こるかわからない。あの地球人が使っていた技。あれは身をもって理解した事だが、格上相手にも通用する必殺の技だ。あれさえ当てる事が出来れば勝てる。そう思っていた。

 

 

「もうオレの気はすんだ。貴様のプライドはすでにズタズタだ。この世でだれも越えるはずのない自分を越える者が現れてしまった…しかもそれはたかがサイヤ人だった…」

 

「くっ!」

 

 

 黙れ。黙れ黙れ黙れ。そう口に出そうとするが上手く出ない。奴はそんな動揺を見透かしたように言葉を続ける。

 

 

「今の怯え始めた貴様を倒しても意味はない。ショックを受けたまま生き続けるがいい。ひっそりとな…」

 

 

 翡翠色の瞳と目が合う。その奥には友を殺された怒りが確かにあった。だが、それを押し殺し、背を向けて…

 

 

「オレは地球へ帰る。今からならギリギリ間に合いそうだ」

 

 

 身に纏っていた黄金のオーラは霧散し、金色に変化していた頭髪も以前の黒髪へ戻る。本当に闘いを終わらせるつもりなのだ。この予想外な展開には思わず絶句してしまう。

 

 

「二度と悪さするんじゃねえぞ。おめえのツラはもう見たくねえ」

 

「………。」

 

 

 そう言って奴は宙へ浮かぶ。背を向けて飛び立つ奴には不意打ちするのは簡単だ。このままあの地球人の技を真似し、放つだけで奴を殺せる。

 

 そして、ここが運命の分岐点であるだろう事は朧気ながら理解している。この不意打ちが決まれば自分は勝ち、宇宙の帝王としてのプライドを保つ事が出来る。

 しかし、もし失敗するような事があれば今のパワーでは確実に負ける。それは冷静さを失って怒りで血が上ったこの頭でも理解出来る。故に…

 

 

「この屈辱は忘れん…絶対に忘れんぞ!孫悟空!!」

 

 

 崩壊まで秒読み段階となったこの星から飛んでいく宇宙船を睨み、そう叫ぶ。大変不本意ではあるが、敗北を認めよう。そして、この敗北を決して忘れぬように胸に刻みつける。いつの日か必ず復讐する事を心に決めて…

 

 

「貴様は…貴様は必ず俺が倒す!!」

 

 

 

 

 

 

………

 

……

 

 

 

 

 

 

 ナメック星は崩壊した。宇宙空間でも生きられるボクはすぐさま脱出して最寄りの支配済みの星へ降り立っていた。そして、メディカルマシーンの培養液に浸かりながらボクは考える。孫悟空の力と闘いの敗因について。

 

 

(忌々しい事だけど超サイヤ人となったアイツの力は完全にボクを超えていた。この傷を癒してすぐに復讐に向かったのでは同じ結果になる)

 

(ボクの敗因…それは自分に適う者など存在しないと慢心し、この最終形態を慣らしていなかった事だ。身体を慣らして持久力を身につけるのは必要だね)

 

 

(だけど、それだけじゃダメだ)

 

 

 突如燃えるような赤い光を放ったかと思えば数秒前からは考えられないような凄まじいパワーとスピードを出したり、仲間のサポートと冷静さを失っていたという事もあったが死をも覚悟させるあの太陽のような技を放ってきた事を思い出す。

 

 

(あのサイヤ人を完膚なきまでに叩き潰すには少し力を上げた程度ではいけない。癪ではあるけど修行をするしかないね)

 

 

 最終形態とフルパワー形態の慣れ。それと地力の底上げ。ざっくりではあるが、その二つを目標としよう。同時に機械音が響く。どうやら治療も終わったようだ。

 

 

 

「ふふふ、孫悟空。ボクを生かしておいた事…後悔させてやる!」

 

 



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帝王、裏切られる

フリーザ軍についてスペシャル要素とブロリー要素あり。映画要素も今話から加えていきますっぴ(ˆ. ̫ .ˆ)


「フリーザ様、ココナツ星の侵略及び制圧完了致しました。もうじき兵が帰ってくるでしょう」

 

「期日よりも三日も早い仕事は大変素晴らしいよ。褒美をあげなきゃね。なんでも好きな物を言うように言っておいてくれるかな。ベリブル」

 

 

 

「フリーザ様、101小隊の攻める星にて戦闘力30000を越える原住民に抵抗され、彼らから救援の要請を受けています」

 

「ふぅん…30000か。確かに彼らでは荷が重い仕事だ。任務続きだけどアボとカドに頑張ってもらおうか」

 

 

 

「フリーザ様、ギニュー特戦隊が攻めていたヤードラット星の件は如何なさいましょうか?」

 

「そうだね…あの星の人間はそれなりの強さでなにやら妙な技を使うと報告にあったね。制圧しておきたかったけど今はひとまず手を引いておこうか」

 

 

 

 傷を癒して完全復活したボクが一番にした事。それは修行…ではなく本拠地にしてある惑星フリーザに戻り、溜まっていた業務をこなす事だった。

 

 ナメック星での闘いで側近二人と多数の部下。さらにはギニュー特戦隊まで失った事でボクの軍は大きくパワーダウンしている。

 さらにどこから広まったのか、あの孫悟空に負けたという噂がこの宇宙に広がっており、それに伴って調子に乗った有象無象の雑魚が歯向かってきたり、軍を裏切ったりする者も現れ始めていた。

 

 帝王として築き上げてきたものが崩れるのは我慢がならない。よって一番にすべきは軍の再興とした。

 

 

 ちなみに最終形態のまま復権したせいか、本拠地では最初こそ戸惑う者も多かった。それどころか信じていない連中が大半だった。何人か身の程知らずに挑んできたバカを潰して力を見せた事。それと古参でこの形態の事を知っていたベリブルの鶴の一声で今では受け入れられている。

 

 

「…それにこれも無駄な時間じゃあないしね」

 

 

 これまで部下の前では第一形態であった。しかし、フルパワーの力に耐える為には最終形態を慣らす必要があるので孫悟空に倒されてから軍を建て直していたこの一週間。力のコントロールを兼ねて最終形態で過ごしていた。それだけじゃない。

 

 

「あのサイヤ人や地球人がしていた戦闘力のコントロール。少しずつだけど出来るようになってきた…」

 

 

 装着した最新のスカウターで自身の戦闘力を計測してみる。ピピピっという電子音の後、戦闘力530000という測定結果が画面に浮かんできた。これはボクの第一形態の時の数値で最終形態でありながらも気を抑える事に成功していた。

 

 

「この技術に慣れておけば少ない時間でフルパワー状態の戦闘力を引き出す事が出来る。いい発見だ」

 

 

 もっともこのボクがあんな奴らの真似をする事になるのは少し気に食わないけど…と一人ゴチる。

 そして、地球の雑魚やベジータはこれに加えて気配を読み、相手の力量を探るという技術も身につけていた。それも覚えておいて損はないだろう。スカウターも必要無くなるし、つまらないブラフに引っかかる事もなくなる。

 

 それらの修行を並行すると共にボクは軍の再興を行っていた。その成果はすぐに現れる事となる。

 

 

「朧気に。だけど気のコントロールは出来るようになってきた。まあ、ボクは天才だ。あんな猿どもに出来てボクに出来ない道理はないよね」

 

 

 目を閉じると気というものの流れが読み取れるようになってきた。この場にある嵐のような大きな気。それとこの部屋に近づいてくるアリのような小さな気。

 これは参謀長のキコノだろうか。なにやら慌てて走ってきているようで厄介ごとの匂いがする。そして、それは正解だったらしい。

 

 

「ふ、フリーザ様!大変です!大変ですぅ!!」

 

 

 一大事と言わんばかりに黄色のカエルの宇宙人であるキコノが飛び込んできた。敬礼をした後に彼はその要件を告げる。

 

 

「まずターレス率いるクラッシャー軍団がう、裏切りました!惑星フリーザの一つを侵略して、ありとあらゆる物を略奪した後に行方がわからなくなっています!」

 

「ふうん、まあさほど驚く事ではないね。予想は出来ていた」

 

 

 クラッシャー軍団を率いるターレス。それはあの孫悟空やベジータと同じ下級戦士のサイヤ人だ。

 以前、サイヤ人を惑星ごと滅ぼした時にベジータ達と同じくたまたま別の星を侵略していた為に生存しており、サイヤ人でありながら礼節をわきまえ、多大な成果を収めていたので見逃していた。

 

 だが、あの瞳の奥は微かに野心を覗かせており、いずれはこうなるだろうと予想はしていた。ただでさえ離反者も増えているのだ。彼らの裏切りも想定内でさほど驚きはない。

 

 

「ふふふ、奴にとっては幸運だったね。報告に来たら消そうと思ってたし」

 

 

 穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって目覚める伝説の戦士【超サイヤ人】にターレスがなれるとは思えないが、このフリーザを越える可能性を秘めているサイヤ人である事は変わりない。

 なにより思い出すだけでイライラするあの孫悟空と瓜二つの顔つき。もはやボクにとって生かす理由もない。

 

 

「楽しみが一つ減ったのは残念だよ…それで?まずというからには報告はまだあるんだろ?」

 

「は、はい!実は…」

 

 

 修行の成果が早速現れたらしい。キコノの言葉と同時に集中しなくてもわかるほどに朧気に強い気配がこの惑星に近づいてきているのがわかった。そんじゃそこらの有象無象とはひと味もふた味も違う。報告は十中八九これの事だろう。

 

 

「スラッグと名乗るナメック星人が猛烈な勢いで惑星クルーザーにて、ここ!わ、惑星フリーザ本拠地に接近中でありまぁす!!」

 

 




ココナツ星…適当
アボとカド…オッス!帰ってきた孫悟空と仲間達に出てくる奴ら。まだ戦闘力は合体しても第一形態フリーザには届かないくらい。でも今のフリーザ軍の雑魚の中では多分最強。
ベリブル…ブロリーで出てきた側近。帝王を譲る前のコルド大王の時代からいる古参で幼いフリーザの世話役でもあった。その為、年齢による事情で隠居していたがやばい状況なので隠居しているのを呼び寄せた。
キコノ…ブロリーで出てきた側近。古参の参謀長でスカウターや戦闘ジャケットなど数々の主力アイテムを生み出してきた有能発明家。年齢で仕事がきつくなり、隠居していたが状況が状況なので急遽呼び寄せた。
ターレス…劇場版BOSS。時期的にちょうどいいかつ、フリーザ軍という設定もあって登場予定。サルヤロー
スラッグ…劇場版BOSS。時期的にちょうどいいかつ、フリーザと同業者という事もあって今回登場。


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帝王VS悪のナメック星人《前編》

「スラッグ様!まもなく目的地に到着します!」

 

 

 ヘルメットを被った魔族が玉座に座る人物へ平伏し、そう告げる。溢れんばかりのパワーに満ち満ちた緑色の肌に目に大きな傷跡を残す彼の名は【スラッグ】でナメック星人である。玉座から立ち上がったスラッグは外を一望出来るガラス窓まで歩き、宇宙の帝王がいる惑星を見下ろす。

 

 

「フリーザ…宇宙の帝王でいられるのは今日で最後だ。俺こそが宇宙を総べる王にふさわしい!」

 

「クックックッ…奴を倒せたら、だがな…」

 

 

 嘲笑うかのようなその声にスラッグは振り返る。するとそこにいたのは肌が黒い事とスカウターや戦闘ジャケットを身につけている事を除けば孫悟空と瓜二つの男。彼はターレス。戦闘民族サイヤ人の生き残りでフリーザを裏切ったクラッシャー軍団を率いている者だ。

 ターレスの登場にスラッグは忌々しそうに鼻を鳴らす。そんな彼を不敵な笑みを浮かべて何かを取り出したターレスはそれをスラッグに向けて投げた。

 

 

「神精樹の実と言ったか、この果実は…これを喰らい尽くした俺に敗北はないわっ!」

 

 

 神精樹の実。それは未熟な神が本来持ち得ない力を得る為に作られた果実である。神のみが口にする事を許されたこの果実を食べた者は戦闘力が大きく向上し、莫大な力を得る事が出来る。だが、その製造には星を吸い尽くす程の栄養が必要であり、神精樹が生えた星は最終的に滅んでしまうのだ。

 

 

「フッ…あとはお前達の問題だ。幸運を祈るぜ?王様」

 

 

 そう言ったターレスはマントを翻してこの場を後にする。その後ろ姿を睨んでいたスラッグは彼がいなくなった後に伝令の魔族に指令を出す。

 

 

「…魔族の精鋭に伝えろ。奴を尾行し、神精樹の実の在処を確認した後に用済みになった奴を始末しろとな」

 

「はっ!」

 

「俺とフリーザの同士討ちを狙っているようだが…馬鹿な奴だ。全盛期を遥かに上回る戦闘力を俺は手にしたのだ!」

 

 

「もはやフリーザも伝説の超サイヤ人とやらも俺の敵ではない!俺こそが宇宙の帝王となるのだ!!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ナメック星人か…やれやれ、もうウンザリしてるんだけどね…」

 

 

 現在ボクがいるのは宇宙空間で後ろには拠点の惑星フリーザがある。迫り来るスラッグは集中せずともわかる程に強い力を持っている。そんな奴との闘いを拠点でする訳にはいかないのでここにいる。

 

 ボクが出ると言った時に部下が着いてこようとしたのだが、戦闘力が10000にも満たない兵士達がいくらいたとて何の役にも立たない。なのでこの場にいるのはボク一人だ。

 

 

「…さて、気を探ってみるか…」

 

 

 腕を組んで静かに目を閉じる。そして、集中して迫り来る気配をより深く正確に読み取っていく。

 

 

「…へぇ…どうやったかは知らないけど本当にボクとやり合うだけの力は身につけているみたいだね」

 

 

 幾多の星を制圧しているスラッグの事は同業者故に情報が入ってきていた。非常に目障りで狡猾な奴だったが、戦闘力にしてみればせいぜい第一形態の半分にも満たない数値だった。

 しかし、今感じられる力はそれよりも遥かに上で以前に戦ったピッコロとかいうナメック星人を越えているだろう。

 

 

「フッフッフッ…どうやら少しは楽しめそうな戦いになりそうだ」

 

 

 そうこうしているとスラッグが乗っている惑星クルーザーが肉眼でも確認出来る位置までやってくる。そして、ボクが待ち構えている事に気がついたのか、スラッグのものであろう気がこちらに近づいてきた。向こうも大将同士の一騎打ちをお望みのようだ。

 

 

「ん?フッ…ずいぶんとつまらない真似をするね…」

 

 

 近づいてくる強い気配はそのままだが、宇宙を漂流するゴミや浮かんでいる岩の間を通ってボクの背後に回った何かが凄まじいスピードで迫ってくる気配を感じた。ボクの後頭部を狙って伸びてくるそれはナメック星人の手でスラッグの奇襲だ。

 

 

「スカウターに感知されないように奇襲を仕掛けてきたようだけど…残念」

 

 

 正確無比に頭を狙う攻撃はほんの少し首を傾けると簡単に回避出来る。虚しく空を切った突きを躱したボクは不意打ちの礼に尻尾でその腕を掴んで引き寄せてやる。そして、身体が引っ張られて急接近するスラッグへ軽く衝撃波を放った。

 それをもう片方の腕で防いでみせた奴は掴まれている自分の腕を切り落とし、すぐさま再生した。再生能力を使ってはいるものの気に大きな変化はない。

 

 

「貴様がフリーザ…か?フハハハハッ!しばらく見ないうちに随分と縮んだものだな?敗北者にはふさわしい姿だ!」

 

「フッフッフッ…君の方こそ無駄に長年生きてきたからかな?ボクの恐ろしさを忘れてしまったようだ。老化というものは怖いね、スラッグ」

 

 

 売り言葉に買い言葉と言うべきか。地味に気にしていた身長の事を言われたボクもムッとなってしまったのでつい毒を吐いてしまう。それはどうやら奴の琴線に触れたらしく、この姿を見て笑っていた彼の眼光が鋭いものとなる。

 

 

「ほう…俺を老人扱いするか。ならばお優しいフリーザ様のお命を頂き、その帝王の椅子を譲ってもらうとしよう!」

 

「君にかい?ふふふ、ボクが優しいのは事実だけど君みたいな低俗でずる賢いだけのゴミに譲るほどじゃないね。ボクに出来るのは老人の夢物語を終わらせる事くらいさ」

 

 

 そう言って腕を組み、小馬鹿にしてやるとみるみる奴の怒りが顔に現れる。先程の腹いせも多少あったが、やはりこの手のタイプは煽りがいがあって面白い。

 とは言っても決して油断はしない。行き過ぎた慢心が身を滅ぼす事は身をもって経験している。

 

 

「さあ、きなよ。せいぜい楽しませてくれよ?ナメック星人」

 

 

 

 帝王は二人といらない。その座を賭けた戦いが今、始まる。

 

 

 




スラッグは老体のままではありますが、神精樹の実により全盛期以上に強化され、実の栄養分の摂取と筋肉増強の結果、弱っていた身体は力が満ち溢れています。


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帝王VS悪のナメック星人《中編》

バトルなのでフリーザ視点から三人称にしました。違和感があるようなら戻しますっぴ。


 この広大な宇宙の片隅で帝王の座を賭けた戦いが始まった。最初に動いたのはスラッグだ。彼は雄叫びを上げながら余裕綽々の様子で腕を組むフリーザへ気功波を放つ。ぐんぐんと伸びていく緑の直線がフリーザの身体に当たろうとしたその瞬間、彼の姿は消える。

 

 

「フン!見えているぞ!!」

 

 

 そう言ったスラッグも姿を消す。その後にバンッと重い衝撃音が聞こえたかと思うと拳で攻撃を仕掛けるスラッグと腕を組んだままそれを足で受け止めるフリーザが姿を見せた。グググッと力が込められる緑の拳にジワジワと押されるフリーザ。

 

 

「へぇ…やるね」

 

 

 押されながらも笑みを絶やす事ない帝王にスラッグは不気味に思いながらも今度は反対の拳を振り上げて殴り掛かる。しかし、それを素早くしゃがんで躱すフリーザ。そして、相手の懐に入り込んだ彼はそのままスラッグの鳩尾へと体重を乗せた肘での強打を打ち込んだ。

 

 

「効かぬわっ!!」

 

「…!?くっ…」

 

 

 完全に攻撃が決まっていたもののダメージはなかったようで驚いたフリーザの両肩を掴み上げたスラッグは真下へ力いっぱい投げ飛ばす。すぐにくるりと一回転し、勢いを殺して受身を取ったフリーザに嘲笑う声が送られる。

 

 

「フハハハハッ!これが帝王の実力か?この程度で宇宙を牛耳っていたとは驚きだ!」

 

「………なるほどね」

 

 

 強襲を仕掛け、拳の連打を続けるスラッグ。それを防戦一方で受け止めていたフリーザ。高笑いして攻撃をするスラッグだったが、不意に片方の拳が受け止められる。先程のように力いっぱい押し込むも今度はそれ以上進む事はなく、驚愕した彼はもう片方の手で攻撃を仕掛ける。だが、それは…

 

 

「な、なんだとぉ!!」

 

 

 振り下ろした拳はもう片方の手のように受け止められた。しかし、今度はフリーザの指一本で。

 

 

「君の実力はだいたいわかったよ。今度はこっちからいかせてもらおうかな!」

 

 

 驚愕するスラッグはその言葉に咄嗟に防御の構えをとるがそれを貫通するほどの鋭い蹴りが彼を襲う。宇宙に浮かぶ岩を突き抜けながら吹き飛ばされるスラッグの背後に超スピードで回り込んだフリーザは慌てて振り返った彼の顔面に裏拳を打ち込む。

 

 

「が…がはっ…」

 

「どうした?ナメック星人、威勢がいいのは最初だけかい?」

 

 

 紫の血を鼻と口から吹き出して後ずさるスラッグに対してフリーザはスッと人差し指を向ける。ポッと指先が輝いたかと思えばビッと光が放たれた。ガードする暇も与えない高速の死の光はスラッグの腹部を貫通する。

 

 

「おぉぉぉぉっ!?な、なんだ…何が起こっているのだ!」

 

 

 痛みに悶え、傷を抑えながらも顔を上げたスラッグだが、フリーザの姿はない。焦った彼は辺りを見渡すもあるのは無数に輝く星々と宙を浮かぶ宇宙船や人工物の残骸のみ。

 

 

「ど、どこに…!?」

 

「やれやれ…少しスピードを上げただけでこのザマとはね…その程度で本当にボクを倒せると思っていたのかい?」

 

「はっ…ぐ、ぐぐっ!黙れぇっ!!」

 

 

 フリーザの声は自身の背後から聞こえてきていた。その返事を裏拳と共に返すが目にも捉えられない高速の動きをするフリーザに当たるはずもなく空を切る。

 

 

(形態変化の負担も変身する為の時間もいらない。確かに便利な技術だよ。これは…)

 

 

 スラッグの視界に映らない程の動きで飛び回るフリーザはそんな事を考えていた。そして、スラッグの力を冷静に分析し始める。何となくでしか感じられなかった力も戦いを通じて完全に把握する事が出来ていた。

 

 

(奴の力は第二形態と第三形態の間。それがわかればこうやって奴の力を上回る気を引き出せばいい)

 

 

 以前ならばまずは第一形態で挑み、相手の強さに合わせて変身をしていったフリーザだが、それでは変身する前に押し切られてしまえば敗北の危険があった。真の強敵が相手ならば力を発揮する前に倒されてしまう。

 

 

(普段から最終形態のまま身体を慣らしておけば下から上までの力をごくごく僅かな時間で引き出す事が出来る。それに力の消耗も少ない…ボクの読み通りだ)

 

「さ、先程までなら俺の方が上回っていた…上回っていたはずなのだ!まさか、貴様!!戦闘力のコントロールを身につけたというのか!?」

 

 

 その問いには答える事なく、フリーザは目にも留まらぬ速さでスラッグの目の前に現れたかと思えば無防備であった顎に鋭いアッパーを繰り出した。脳を揺らす程の強烈な打撃に大きく吹き飛ばされた彼に追いつくとフリーザは両手を組んでその頭へと振り落とす。被っていたヘルメットは簡単に砕け散り、凄まじい勢いでスラッグが下降していく。

 

 

「ごあぁぁっ!?ば、馬鹿な…!馬鹿な!!」

 

 

 帝王の一撃に対して完全に対応出来ておらず、受け身も取れないままスラッグは吹き飛ばされていたが、運良く近くの荒れ果てた荒野の惑星の地面に叩きつけられる。

 まだ立ち上がる力は残っていたようでスラッグは彼を追って降りてきたフリーザを睨みつける。そんな彼を見てフリーザは戦闘力は著しく落ちており、身体も損傷が激しい為、これで終わりだと考えていた。

 

 

「バカだね。ボクから隠れて過ごしていればここで死ぬ事はなかっただろうに…」

 

「ハァ…ハァ…クッ、クハハハハッ!さ、さすがはフリーザ…か…」

 

 

 ニヤリと笑うスラッグは懐からある物を取り出した。それは決戦に挑む前にターレスから渡された神精樹の実。それを知る由もないフリーザは冥土の土産に最後の晩餐をさせてやろうと考えていた。だが、その果実を口にした瞬間。

 

 

「お…おおっ…おぉぉおぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「なんだ…?これは…気が高まっているのか?」

 

 

 スラッグの戦闘力は元に戻るどころか、大きく膨れ上がっていた。咆哮と同時に吹き荒れる気の嵐、突風と激しい気の奔流でフリーザは自身の考えが間違いであった事に気づく。

 

 

「そうか、あの果実…!あれが噂に聞く神精樹の!スラッグの力が高まっていた理由はこれか…!くっ…」

 

 

 気の嵐がやみ、顔を上げたフリーザの目の前にいたのは…ナメック星人特有の能力である巨大化で山のように大きくなったスラッグであった。先程までの攻撃によるダメージも消えている。

 

 

「フハハハハッ!さあ、第2ラウンドだ!!」

 

 




次回決着です。どっちが勝つのかな〜?


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帝王VS悪のナメック星人《後編》

スラッグ編終わり!誤字報告くれた方〜ありがとうございます( *・ ω・)*_ _))ぺこり


 ズシンズシンと重く鈍い音と衝撃が響く。巨大化して大地にそびえる巨山の如き身体となったスラッグ。大きくなったとはいえスピードは落ちておらず、神精樹の実を食べた事によりむしろ上がっていた。

 もしも戦闘力が爆発的に上昇したスラッグのその一撃をまともに受けてしまったならば、いくら戦闘力で上回っていたとしてもダメージは避けられない。凄まじいパワーが込められた暴君の攻撃を回避をし続けるフリーザ。しかし…

 

 

「フハハハハッ!死ねぃ!フリーザ!!!」

 

「っ!?ちぃ…!」

 

 

 巨体を活かした超スピードの体当たりは飛び退いて躱したフリーザであったが、振り返ったスラッグの口から放つ魔口砲には対応しきれずに受けてしまう。

 さらにスラッグは魔口砲が途絶えるタイミングで腕を伸ばし、ガードしていたフリーザを掴みあげた。握り締める手にグググっと力が込められる。

 

 

「ぐっ…うぁぁぁぁっ!!ぎぃぃぃあぁぁぁぁっ!!」

 

「ハッハッハッ!!このまま全身の骨を砕いてやるわっ!!ぬぅぅぅぅん!!」

 

 

 叫ぶフリーザ。そんな帝王の叫びにスラッグは笑い声を上げて力を強めていく。勝利ももう目前だ。そう考えていた暴君の嘲笑う声が最大限にまで達したその時。驚くべき事が起きた。

 

 

「………なんてね」

 

「フハハッ…ハッ?」

 

 

 苦しんでいたはずのフリーザがそう言葉を発した瞬間に彼の身体を握り潰していた手が盛大に弾け飛んだ。いきなり手首から上を失ってしまったスラッグも何が起こったかよくわからない様子。ボトボトと流れ落ちていく紫の血と痛みが高ぶっていた感情を冷静にさせていく。

 

 

「がっ!?うぉぉぉぉおおおぉぉぉっ!?」

 

「フフフ…いい表情だね。その顔が見たかったんだ」

 

 

 絶叫が崩壊したこの星に木霊する。手がない為か腕を交差させて抑える仕草をするスラッグを見て、フリーザは指を口元に当てて笑っていた。そんな彼に血走った目がギロりと向けられる。

 

 

「き、貴様ぁ!?ぐおおぉぉっ!!!」

 

「ふうん…やはりしぶとさはどのナメック星人も共通か」

 

 

 即座に再生してみせたスラッグに対してそう呟くように言いながら彼の息をつかせない連続攻撃を腕を組んで躱すフリーザ。

 残像が残るほどの圧倒的なスピードを前についてこられない攻撃などかすりもしない。パワーはたいしたものではあるものの当たらなければ意味が無いのだ。そして…

 

 

「その自慢のパワーも…」

 

「くらえぇぇぇぇっ!!!」

 

 

 少し距離をとって目を閉じたフリーザは自分に秘められた力を引き出し、一瞬で気を高めていく。そうとも知らず我を忘れて全力の拳を叩き込むスラッグ。その一撃はこれまでで一番力強いものであり、不気味に笑うフリーザへと直撃する。

 星を省みない凄まじい拳の衝撃は半壊していたこの星を伝い、大地と空を吹き飛ばしてしまう。それによりこの荒れ果てた星は完全に崩壊し、場は再び宇宙空間に包まれる。

 

 

「………まあこんなものだろうね」

 

「な、なに…!馬鹿な!馬鹿な!!馬鹿な!!!」

 

 

 全身全霊の渾身の一撃は無防備に立っていたように見えるフリーザに当たった。星を砕く程の威力を込めた拳をまともに受けた帝王は…微動だにしていない。それどころかこんなものかと落胆する始末。

 

 スラッグは今目の前で起こっている悪夢にただただ叫ぶ事しか出来ない。そんな彼に対してフリーザはつまらなさそうに溜め息をついた後にその小さな身体からはとても想像が出来ない程の力で蹴りを放つ。さらに呻き声すら上げられないスラッグの顎にアッパーを繰り出す。

 

 

「ご…ば………し、神精樹の…実を…食べた…こ、この俺は…最強のはずだぁっ…」

 

「取っておきはもうないのかな?まあもう何があってもトドメを刺させてもらうけどね」

 

 

 最初にあった余裕はもうなく、血を吐いて息も絶え絶えなこの状態を見る限り、もう切り札はないのだろう。そう確信したフリーザは一瞬でスラッグの頭の前まで行くとピタリと手を当てた。その手から伝わってくる恐怖と絶望にその口角が吊り上がる。

 

 

「そうそう、冥土の土産に教えてあげようかな。ボクはまだてんで本気じゃないよ?MAXパワーの半分の力も出していないんだから。もっとも…君みたいな虫ケラにはそれも過ぎた力だったけど」

 

「なぁ!?ま、待てっ!!フリー…」

 

 

 宇宙に閃光が走った。

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

「雑魚は片付いた。さて…」

 

 

 宇宙を荒らす暴君の頭は無惨にも消し飛んだ。再生能力とやらが備わっているナメック星人もこんな感じに頭が吹き飛ばされれば即死だ。残ったこの木偶の坊もすぐに元の大きさとなって、この広大な銀河へと消えていった。

 

 

 そして、ボクは親指で背後の何者かに向かってビームを放つ。このフリーザの後ろを取れたなどと思っていたのなら大間違いだ。

 

 

「…流石はフリーザ様だ。気づかれましたか…」

 

「…?お前は…!」

 

 

 挨拶代わりに放ったものだったけど、それはどうやら弾かれてしまったらしい。やれやれと思い振り返ったボクの先にいたのは忘れもしないあの顔。宇宙の帝王として君臨していたボクを倒したあの伝説の戦士と同じ顔だった。

 

 

(いや、違う…あいつじゃない)

 

 

 だが、よく見てみると違う。まず孫悟空はサイヤ人ではあるようだが、宇宙空間では息をする事が出来ないらしいし、肌の色に違いがある。

 そして、気にも種類がある。正義の心とやらを持つ戦士と邪悪で悪の心を持つボク達とでは気の性質というのが見てわかるほどに違う。孫悟空は紛れもなく善性の気を放つはず。しかし、目の前の孫悟空もどきからはボクと同じでドス黒い悪の気を放っていた。

 

 そこでボクはこの戦いの前に聞いたある報告を思い出す。

 

 

「…随分と身の丈に合わない力を身に付けたようだね。【ターレス】」

 

「おやおや…宇宙の帝王フリーザ様からそう言ってもらえるとは。光栄の極みでございます。クックックッ」

 

 

 元部下である為かわざとらしく敬語を使ってマントを翻し、丁寧に礼をするターレス。それに殺意と威圧を放って応える。

 サイヤ人は抹殺すべし。そうでなくとも相手は裏切り者。話など聞く必要もないので即刻始末しようとしたのだが…奴の右腕に見覚えのある果実が握られている事に気がつく。

 

 

「それは…!スラッグが手にしていた神精樹の…」

 

「クックックッ…あの愚かな暴君でも貴方の力を測るのには役に立った」

 

 

 ボクの力を見る為にターレスはスラッグを煽り、けしかけたのだと理解する。スラッグが負けた時は邪魔な存在を消せると共にボクの力が見れ、万が一にでもスラッグが勝った時には疲弊したスラッグをねじ伏せて漁夫の利を狙う。どちらに転ぼうとも奴に得しかない実にずる賢い作戦だ。

 

 

「だけど、ボクの前に現れたのは失敗だったね。君はここで死ぬ。ボクにはわかるよ?あの虫ケラよりかはマシだけど今の君はボクよりも遙かに格下だ」

 

「ほう…スカウターなしでも俺の戦闘力がわかるのですか」

 

 

 奴から感じられる気は先程のスラッグよりも多少大きい程度でたとえ連戦になり、戦いの最中に何個か神精樹の実を食べたとしても本気を出したボクの敵じゃないだろう。

 どうやらそれはターレスもわかっているらしい。冷静に見える奴だが、ボクの力を前に冷や汗をかいているのがわかる。

 

 

「確かに今は敵わないでしょう…だが!!」

 

「っ!?ちっ!!」

 

 

 言葉を待たずに指先を奴に向けてビームを放とうとしたその時。突如としてボクとターレスの間を青白いエネルギー波が遮った。スラッグの乗っていた惑星クルーザーから放たれた一撃でどう見てもターレスを助ける為に発砲していた。

 気を持たない人工物からの邪魔に一瞬呆気に取られたものの、すかさず惑星クルーザーに向けてビームを放って木っ端微塵に破壊した後、ターレスがいた場所に指を向けるが…

 

 

「くっ…逃げ足の速い奴め…!」

 

 

 羽織っていた白いマントだけがヒラヒラとそこに舞うだけで奴には逃げられてしまったらしい。目を閉じると大きな気がとてつもないスピードで離れていくのがわかる。乗り物に乗ったのだろう。ボクが追いかけたとしても追いつける速さではない。

 

 

「ターレスか…フン、忌々しい奴だ」

 

 

 惑星クルーザーに邪魔される前に奴が話していた事を思い出す。邪魔が入ったもののボクの耳には続きの言葉が聞こえていた。それは…

 

 

「いずれお前を倒し、この宇宙を支配してみせる…か、サイヤ人の猿風情が言ってくれるじゃないか」

 

 




スラッグはあっさり。ターレスメインになったね…
ここから宇宙騒乱編的なやつが始まります。今のフリーザ様は第7宇宙全体で見た所5本指には入る強さですかね…

悟空さ、クウラは確実にフリーザ越えです。パパは多分超えてないと思うけど知らん。現段階でフリーザ越えの猛者はこんなもんかな…下記以外に他にいたらコメントで教えて欲しいな♡

ダーブラは暗黒魔界で干渉せず。ブウとボージャックは封印でビルスはウトウトなので除外。界王神は人間に任せましょう!なので論外。ブロリーは…新旧で現段階の強さは異なるので除外。どっちで出すかは投票で決めよう!⤵⤵


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帝王、パパと会う

適当更新だけど一応は一週間に一回のつもり…早まる事はありますが遅くなる事はない!…と思うですはい…
それはそうと評価とか感想とかありがとうございます!モチベ爆上がり⤴︎ ⤴︎でーす\(^o^)/

PS.誤字脱字ヤバすぎてヤバいですので各話直してきました。ヤバヤバ…


 スラッグとの戦いからまた一週間が経過した。この銀河で恐怖の征服を進めていたスラッグを倒したというボクの噂は瞬く間に宇宙全土に響いていた。

 ボクとしてもこの戦いは非常に価値はあったものと言える。忌々しい事にボクがサイヤ人に負けたという悪評は知らない間に宇宙に広がっていた。さらに裏切りや多くの部下の死でフリーザ軍が著しく弱体化しているという噂も同時にね。

 だけど、この銀河でトップクラスの実力を持つスラッグを倒した事によって宇宙の帝王は健在であると反乱を考えていた愚かな者共にも広まり、悪評は覆される結果となった。

 ついでのスラッグの所有していた星々も手中に収める事も出来て勢力も拡大出来たのも大きい。

 

 

「………と、言ったところですね。フリーザ軍の再興も人材の不足という課題こそありますが…おおよそ以前の状態に戻ったとも言えるでしょう」

 

「うん、人材の確保は難しいと思うけど頑張るように伝えてくれ。条件は引き下げて…戦闘力1000以上、もしくは何かに特化した能力を持つ者だ。もし、それ以上の成果を収めた者には褒美を用意するという言葉も一緒にね」

 

 

 窓から見える煌めく星々を見上げながらベリブルの報告を聞いて返事を返す。礼をした後に静かに出ていく彼女の姿が確認などせずとも気配でわかる程に察知能力も上がった。気のコントロールはこういったビジネスの際でもずっと続けている為、今ではもう孫悟空らと比較してもそれほど差がないはずだ。

 

 

「孫悟空に敗れてから二週間…そろそろ本題である戦闘力の底上げに入るのもいいかもしれない」

 

 

 グッと拳を握り、フルパワーの力を発揮する。戦闘力にしてみれば一億と二千万。これを越えるのは超サイヤ人である孫悟空。それと…

 

 

「おっと、そうだった。今日はパパが来るんだった。やれやれ…」

 

 

 時間を確認すると同時に大きな気の接近とこの惑星に我が軍最大の宇宙船が飛来してくるのが見えた。それでとある約束していた事を思い出すのだが…宇宙船の中から感じる大きな気配は何故か二つあった。そして、その大きな気配の内、片方はボクの戦闘力を越えている。

 

 

「アイツもいるのか…ちっ!」

 

 

 思わず舌打ちをしてしまう。孫悟空の他にボクの戦闘力を超えるもう一人の存在は紛れもなくボクの兄【クウラ】だ。

 おそらくサイヤ人に負けたボクを嘲笑いに来たのだろう。先程まで悪くなかったボクの気分も一気に最悪なものになる。

 

 しばらくすると黄色だった顔が蒼白になったキコノとそれに連れられてやってきた二人がこの部屋にやってきた。

 

 

「ふ、フリーザ様…コルド大王様とクウラ様をお連れしました…ではごゆるりと〜!!」

 

「おお!フリーザよ!噂は聞いているぞ?まずは軍の再興ご苦労だったな」

 

 

 パパがボクの側まで来て肩に手をポンと置く。年齢の事もあり、もう隠居しているパパは力こそ全盛期の頃より落ちているがそれでもスラッグよりかはずっと強い。ボクはその手を鼻を鳴らして払い除ける。この仕打ちにパパは特に気にせず笑顔でウンウンと頷いていた。

 

 

「悪評も聞いているぞ?サイヤ人の猿に敗北し、見逃された等という信じ難い噂をな」

 

 

 やはりきたか。パパの後ろで腕を組み、剥き出しにした殺意を滲ませながらボクを睨むクウラが痛い所をついてくる。一族のプライドが強いアイツはそれに泥を塗ったボクの事を強く恨んでいる事だろう。敗北したのは事実なので強くは言えないものの、ボクは鼻を鳴らしてこう言ってやる。

 

 

「フン…そうだね、強かったよアイツは。良かったね、兄さん…ボクより前に孫悟空と戦わなくて」

 

「フッ…敗北した我が一族の恥晒しの言葉と思うとなんとも滑稽で…クックックッ…惨めなものだな」

 

「なあに…パパからの仕事を引き継いだボクはああいった輩と戦う機会に恵まれているからね。気ままに宇宙を回る兄さんが未だに自分が宇宙最強だと自惚れるのも無理はないよ。フッフッフッ」

 

「よさぬか、バカ者共が!…それよりも問題はそのサイヤ人だ。まさか伝説の超サイヤ人が現実のものとなるとはな…」

 

 

 パパの言葉でボクとクウラは顔を背ける。それもそうで今回パパがボクに会いに来たのは世間話をする為などでは無い。

 

 現れてしまった超サイヤ人についてどうするかの話し合いをしにきたのだ。もちろんボクとしては自分で復讐を果たすつもりでいた。だけど、パパの考えは違うらしく、今すぐフリーザ軍全勢力で攻めるべきと言っており、ボクと一緒に復讐しに行きたがっていた。

 

 

(パパがいたとしても孫悟空には勝てない。ましてやこんな軍など邪魔でしかない)

 

 

 これがボクの考えだった。それを一度伝えた所、パパが会ってどうしても話がしたいと言うのでしぶしぶ会う約束をしたのだ。放っておけば一人でも行きかねないし、一応肉親の情というものも僅かにだがある。クウラは知らん。

 

 

「フリーザよ。ここにはこうしてクウラもおる。この三人でかかったとして…それでも超サイヤ人には勝てぬと言うのか?」

 

「…ボクが下らないジョークが嫌いなのは知ってるよね?無理だよ。たとえ兄さんがいたとしても変わらない」

 

 

 脳裏に蘇るのは金髪に染まり黄金に輝く姿。全てを射抜くような鋭い翡翠色の瞳。このフリーザですら圧倒し、恐怖させたとてつもない力。直前にあんなに痛めつけて力も残っていなかった状態であの強さを見せたのだ。もし、孫悟空が万全の状態であったならば…結果は火を見るよりも明らかだ。パパはそれを聞いて唸っていたがクウラは違う。

 

 

「ふん…軟弱者めが!このクウラの力をもってすれば猿など…」

 

「一つ、忠告しておくよ。兄さんがひた隠しにしている力…それを使っても奴には勝てない。絶対にね」

 

「…!?貴様…何故それを…」

 

 

 そう。これはボクが気を読めるようになり、スカウターですら拾えない程の奥底に秘めた力を感じ取れるようになったからわかった事なのだが、クウラはボクの知らない変身を残している。それはこの反応を見て確信した。

 

 

「ほう?クウラよ。ワシも初耳だぞ」

 

「ボクはスカウターに頼らなくても相手の力がある程度はわかるようになった。サイヤ人の性質上、孫悟空もボクとの戦いでさらに戦闘力が増しているはずだ。それを加味すると…」

 

「…くだらん。敗北者の弁など聞く耳持たぬわ」

 

 

 ボクの話を聞かずに後ろに振り返ったアイツはそのまま部屋を出ていこうとする。どうやらボクの言葉がプライドを刺激してしまったようだ。

 

 

「どこに行くのだ、クウラよ」

 

「地球だ。伝説の超サイヤ人などという存在を消し、一族の力を証明してやる」

 

「ふう…ボクは止めたからね?」

 

 

 返事もせずにクウラはこの部屋から出ていった。おそらく地球に向かったのだろう。ボクとしても引き止める理由は無い。

 

 

「ふ〜む…お前がそこまで言うからには相当危険な存在なのだな。以前にワシが忠告した魔人に匹敵する強さであったとするならば…手を出さない方が賢明か?」

 

「そうだね。ボクは現段階では放っておくのがベストだと思うよ。アイツは宇宙では活動出来ないしね」

 

「…あいわかった!ワシも傍観するとしよう。クウラの結果がわかるまでここでいてもよいか?」

 

「好きにしなよ…あっ」

 

 

 この話し合いのような何かが始まる前に考えていた事を思い出す。そして、パパに聞く。

 

 

「滞在するのはいいよ。だけど、働かない者はこのフリーザ軍には必要ない。パパが決めたルールだったよね」

 

「うむ、それはそうだが…ワシに何かしろと言うのか?暇をしてたし構わんぞ」

 

「良かった。じゃあ…」

 

 




パパ死ぬルート回避
クウラ頑張れ

次回でブロリーアンケート打ち切ります。結果はどうなるかな〜?


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帝王、鍛える

ドッカンとかブルアカで忙しくて…待たせちゃってごめんね…(*>∀<)ノ♪ゴメンナサイドステップ

それはそうとたくさんのお気に入りとか評価とかありがとうございます!励みになります!(((o(*゚▽゚*)o)))


待って、今回で決めるって言ってたけどアンケート同数ってどうすればええのかな…ブロリーどっちも人気すぎる!!次見た時に上回ってる方にしよ…


 

 

「コルド大王様。お久しぶりでございます」

 

「むっ!お前はベリブルか!?我が息子の為とはいえ隠居した身だと言うのにすまぬな。だが、お前やキコノがいるなら心強い!」

 

「そう言って頂けるのは長きに渡りお二人を見てきた私としても鼻が高うございます」

 

 

 そう言った会話がありながらもスラッグの持っていた星や入隊希望者の確認。また星を買い取りたいという者とのビジネス等など…言質も取ったボクはパパに溜まっていた仕事を全部押し付けてやる。

 

 全権を握っていた当時よりも軍の規模が大きい故に忙しいはずでパパには普通に断られるかと思っていたのだが、意外にもノリノリでこなしてくれていた。隠居してからというもの随分暇を持て余していたらしく、天下無双の当時の気分が味わえて悪くないのだとか。

 愚かな兄が超サイヤ人と戦い、結果が届くまでここにいるパパはその間に仕事をしてくれるとの事なのでボクは自分の用事が出来る。戦闘力の底上げという自分の用をね。

 

 

「ふうん、やっぱりいい仕事するね。キコノは…」

 

 

 キコノで特注で作らせたトレーニングルームで戦闘力を高める修行をする。彼は参謀長ではあるが、数々のアイテムを生み出してきた有能な発明家でもある。そんなキコノに頼み、ボク専用の修行の為の部屋を作ってもらったのだ。

 宇宙でいちばん硬いとされるカッチン鋼をふんだんに使った一室となっており、ボクが全力を出しても壊れる事がないのだという。

 

 

「…きえぇぇいぃ!!!」

 

 

 それは本当か否か確かめるべくボクはフルパワーの力を発揮して床を殴ってみる。ゴッという鈍い音と殴った拳からは激痛が広がり、思わず呻いてしまうが殴った箇所を見てみる。

 

 

「なるほど…これでいい」

 

 

 ボクがフルパワーで攻撃したというのに傷一つなく、光を吸収する真っ黒な輝きを放っている。これならどれだけ暴れても被害の心配をする必要は無いだろう。

 

 

「さて…修行か…修行…」

 

 

 ここで一つ問題があった。生まれ持った才能と力でこれまで無双してきた為に自らを鍛える修行など一度としてした事がなかった。その為、どうすれば戦闘力を上げられるのか想像がつかないでいた。ここは仕方ない。彼らに聞いてみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、それで俺たちを呼んだわけですか…」

 

「なんかやらかしちまったのかと思ったぜ…」

 

「フフフ、休んでいるところ悪いね。アボ、カド」

 

 

 青い身体で一本の触覚が小さく伸びた異星人【アボ】と赤い身体で二本の触覚が小さく伸びた異星人【カド】が二人同じタイミングでホッと息を撫で下ろす。

 ボクより小さくお世辞にも強そうには見えない彼らだが、こう見えてギニュー特戦隊に並ぶ強さを持つ宇宙でもなかなかいない強者だ。彼らは長いフリーザ軍での下済みを積んでここまでのし上がってきている。

 そんな二人ならば修行法の一つや二つ知っているに違いないと思って呼んだ訳だ。

 

 

「修行ならやっぱり組手ですよ組手!」

 

「俺達はそうやって強くなっていったんですよ!あのいけすかねえザーボンやドドリアなんかよりも!」

 

「組手…ね。果たして今の僕と打ち合える者はこの宇宙にどれだけいるものか」

 

「へっへっへっ!俺達で良ければ…」

 

「やりましょうぜ!フリーザ様!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーっ!はーっ!ぼ、ボコボコだ…」

 

「今何が起きたんだ…見えなかった…」

 

 

 5秒経たないうちにアボとカドは地面に倒れ伏していた。アボとカドの戦闘力は各10万程度。組手をしたらこうなる事は目に見えていた。

 

 

「これじゃ準備運動にもならない。そして、今のフリーザ軍には君たちを上回る戦士はいない。組手はボツだよ」

 

「ま、待って!俺たちの切り札でもう一度やらせてください!」

 

「切り札?」

 

 

 そう言って立ち上がった彼らは横に並び…

 

 

「「合体!!」」

 

 

 青と赤の光が彼らの身体から発せられる。光とともに気が混ざり合い、溶けていく。眩い光が消える頃には彼らは一つとなり、紫色の皮膚を持つ巨漢へと変貌していた。

 

 

「ほう…」

 

「どうですかい?フリーザ様!」

 

 

 合体した事により二人でいる時よりも気が爆発的に上昇していた。足しただけでなくさらに大幅パワーアップしている。その力は第一形態の戦闘力53万を軽く上回り、第二形態ともいい勝負が出来るほど。

 

 

「…フッ、驚いたよ。まさかそんな技を持っていただなんて…」

 

「へっへっへっ!じゃあもう一度仕切り直しといきましょうぜ!合体アカの力見せてやる!」

 

 

 ボクの前にアボとカドの合体アカとやらが立つ。ボクよりも小さかった彼らは合体して第二形態程の身長となっており、ボクとの身長差は二倍程に開いていた。たとえ合体したとはいえ下だと思っていた奴らに抜かれるというのはいい気分ではない。その為…

 

 

「もっとも…ボクの前ではそれは隠し芸に過ぎないよ?」

 

「えっ?なっ!?消えた…」

 

 

 彼が瞬きした瞬間に姿を消してやる。アカの対応しきれない速さで周辺を飛び回り、消えたと錯覚させているのだ。しばらくしてキョロキョロと周囲を見渡している彼の背後に立つ。

 

 

「こっちだ。それっ」

 

「おわっ!?な、なんだ…うごかねねねねね…」

 

 

 足払いをかけてすっ転ばせた後に頭を抑えて起き上がろうとする彼にサイコキネシスでその動きを止める。ジジジッと音を立てて宙へ浮かぶアカはもがく事すら出来ずに身動きが取れない。

 

 

「君に課題をあげよう。その超能力はもちろん加減はしてるけど今の君には破れない力を入れている」

 

「ななななな…どどどどすればばばば」

 

「ボクの力を上回ればその超能力も消える。シンプルでいいだろう?邪魔だからあっちで頼むよ」

 

 

 目を丸にして驚く彼らを隅へと追いやり、ボクはボクの修行をする。あまり効果があるとは思えないが、孫悟空を相手するイメージトレーニングや一人でも出来る筋トレなどなど片っ端からやっていく。

 

 

 最初は初日はこんなものでいい。次来る時に効率的な修行を考えておこうと思ったのだが、すぐに変化に気づく事になる。

 

 

「…気が…僅かに上がっている?」

 

 

 超スピードでのランニングやイメージトレーニングなどでまだ三時間も修行していないというのに自分が強くなった事に気がついた。戦闘力にしてみれば10上がったかどうかなのだが、それでも上昇している事に変わりは無い。

 

 

「フッ、フフフ…やはりボクは天才なのかもしれない」

 

 

 ボクが覚えたのは自分が強くなる喜び。戦いや修行の度に目に見えて強くなっていき、次の戦いを望む戦闘民族サイヤ人の気持ちがわかった気がする。

 

 

「この調子でいけばクウラのやつより強くなれる。孫悟空も越えられる…いや、それだけじゃない。あの目障りでいけ好かない破壊神ビ…「うっ!おぉおぉぉおおおおぉぉっ!!!!」

 

 

 その時、僕の言葉を遮るように雄叫びがこの部屋に響き渡った。それは隅に追いやっていたアカでどうやら超能力から解放されたらしい。

 

 

「や、やったー!やったぞ!フリーザ様!やってみせましたぜー!!ってあれ?いぎゃぁあぁぁあああぁああ!?」

 

 

 彼らも自分の限界を越えたようでそれはいい事ではあるのだが、如何せんタイミングが良くない。なのでもう一度、今度はもう少し強めに超能力を掛けてやった。お手本になるような絶叫が響く。

 

 

「…やれやれ、まあまずはクウラのやつを超える事を目標にするか」

 

 

 そう言ってボクは目をつぶり、幻の孫悟空に拳を振るうのであった。

 

 




フリーザはガチれば3ヶ月でゴルフリ。さらにそこから10年でブラフリとかいう設定が邪魔すぎる事は内緒。
アボとカドの戦闘力は単体10万で合体で100万くらいを想定。ベジータがギニュー特戦隊と並ぶ強さとか言ってたし、これくらいが妥当?宇宙の中では上澄みだけど…トップ見るとねぇ…(´∇`;)


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