Genshin impact journey (如月ねこ)
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序章第一幕「風を捕まえたいかもしれなくもないかもしれない異邦人」
「魚!?」


対戦宜しくお願いします


私は蛍。いなくなったお兄ちゃんを探すために、

その前に今日という日を生きるためにここにいる。

兄が封印され、私も封印されて、気づいたら森の中で寝ていた。

最初の1日中はお兄ちゃんを失ったショックでぐったりしていたけれど、

次の日からは生きていかなきゃ会えないと思って食糧を集めようとした。

魚を捕まえたり、猪を狩ったりしてた。この時ばかりは

いろんな世界を旅した時の経験が役に立った。

しかしここが何処かも分からず、周りに何があるかも分からない。

ずっとここで、ただ生きるばかりだ。

そうして2ヶ月、なんの手掛かりも得られずにここで今、釣りをしている。

 

(今日は何が釣れるかな)

 

昨日はあまり釣れなかった。今日かなり釣っておかないといけない。

 

「あっ」

 

魚が引っかかった。逃げられないように慎重に引き際を見極める。

 

(ここ!)

 

腕に力を込めて一気に釣竿を引く。

 

(重い!?)

 

今までとは比較にならない反動に驚愕する。これは今までにない大物だ。

こっちが引っ張られそうになる。

ギリギリ持ち直して力の限界で引っ張る。

 

その瞬間、いきなり手応えが無くなった。

 

「きゃっ!?」

 

その勢いのまま後ろに倒れてしまった。

ぶつけた背中を擦りつつも釣った獲物を見ると…

 

「グニャー」

 

天使の輪(?)を頭に乗せたそれはかわいい妖精が引っかかっていた

 

(????????????)

思考が停止する。

釣れる物は魚のはずだ。しかしここには妖精が溺れかけている。

 

「プハーッ!苦しかったぜ!」

 

「…」

 

「あれ?どうしたんだ?おーい」

 

「ああごめんあなたは…?」

 

「オイラはパイモン!テイワットを知り尽くすガイドだぜ!

釣ってくれてありがとうな!」

 

いきなり喋り出した。なんだこのちっこいの(キャラ崩壊)

 

「いやいや悪い魔物なんかじゃないぞ!」

 

「悪い人は大体そんなこと言うけど」

 

「まぁ信用してくれよ!こうだから!」

 

空中で土下座しやがった(キャラ崩壊再び)

地面でしか効果ないよね、それ。

まぁ信用してあげようかな。嘘ついてる様ではないし

 

「いいよ、私は蛍、お兄ちゃんを探してる。というかなんで海に?」

 

「お腹が空いているんだけど…食べ物はないか?

もちろんこのガイドの名にかけてテイワットを案内してお兄ちゃん探しを手伝ってやるぞ!」

 

話をはぐらかされた。少し不思議に思ったがお兄ちゃんへの手掛かりがあるなら縋りたい。

 

「いいよここに昨日釣った魚があるから。食べて。話はその後かな」

 

「ありがとうな!じゃあ、いっただっきま〜す!」

 

「あ、ごめんそれ毒フグ」

 

「」

 

「ごめんこっちが食べられるやつ」

 

「最初からそっち出しとけよ!てかなんで毒フグ持ってんだよ!」

 

そう言いながら美味しそうに魚(今度は食べられるやつ)にかぶりつく。

しかしパイモンを眺めてみると何処かで見たことのある様なデザインをしている。

しかし今はお兄ちゃんへの手がかりが優先だ。

もう魚を食べ終わってお腹をさすっているパイモンへ聞く。

 

「お腹は満たせた?」

 

「おう…もう食えないぜ…」

 

苦しそうに、かつ幸せそうに寝転がる。

 

「そういやなんで蛍はお兄ちゃんを探しているんだ?」

 

「じゃあ私の昔話でも」

 

「おう!よろしくな!」

 




ゆっくり更新します

評価、コメントはそっくりそのまま
やる気に変換されるので評価、コメントオナシャス


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「ぶわー」

 

「——————こうして、見知らぬ神が、私の兄、空を連れ去った。

 そして、私も神に封印され、本来の力を失うことになる。

 数多の世界を乗り越えてきた私たちは、ここで囚われの身となった……」

 

「へぇ〜オマエにはそんな過去があったんだな」

 

「そう。それから私はただ生きるだけだった。今日、あなたに会うまでは……」

 

 そう言って目の前に広がる広大な海を眺める。

 

 その表面は彼女の内心とは裏腹に、のどかにゆっくり、波打っている。

 

「そうなのか……でも今からどうするんだ?」

 

「パイモンが私を案内してくれるそうだし、ここから抜け出して

 お兄ちゃんの手がかりを探しにいくかな」

 

「おう! オイラに任せてくれ!」

 

「じゃあ行こうか」

 

 

 重い腰を上げて固まった体をほぐす。決して加齢などではない。

 

「こっちだぞ!」

 

 少し先にパイモンが浮かんで手を振っている。

 少し急いでついて行く。パイモンはこっちのペースを把握して

 ところどころで止まってくれるからありがたい。

 今までは考えもつかなかった道無き道を進んで行くと、

 少し土の表面が見える道の様なものと、手を振るパイモン、

 そして何よりも、チェスのルークにも似た赤く発光するオブジェがあった。

 

「はぁ……はぁ…… パイモン、これって何?」

 

「それか? ワープポイントだぞ」

 

「わーぷぽいんと?」

 

「試しに触れてみろよ!」

 

 恐る恐る「わーぷぽいんと」なるものに触れると、それは青く発光しだし、

 50cmほど上空に浮き、その状態で止まった。

 

「それがワープポイントを解放したってことだぞ! 

 “ここに行きたい”ってワープポインとのことを想像すれば、

 そこにワープできるんだぞ!」

 

「へぇ〜」

 

 そう言いつつ少し離れてみる。

 そして目の前のワープポイントを想像する。

 

 “ここに行きたいっ! ”

 

 すると、自分の体が少し中に浮いた感じがしたと思ったら、

 また足の地面の感覚が戻ってきた。

 恐る恐る目を開けると、そこはさっきいたところではなく、

 想像した通りのワープポイントのの真ん前に移動していた。

 

「なにこれすごい」

 

「そうだろ!」

 

 そうやって少し遊んだ後、見つけた道を進んでゆく。

 

 

 

「あ」

 

 少し先に、少し小さい湖と、その中央に位置する小さい赤い塔があった。

 目の前は崖になっているので、横にある緩やかな下り道からゆっくりと

 降りていく……とでも思ったか! 

 勢いをつけてジャンプし、そのまま湖に飛びこむ! 

 

「あぇ!?」

 

 驚くパイモンを横目に泳いで中央の七天神像のある島まで泳いでいく。

 距離にして10mくらいで、すぐ辿り着くことができた。

 

「おい! ヒヤヒヤしたじゃないか!」

 

 怒るパイモンを尻目に、私は目の前の、赤く光る七天神像にワープポイントと

 同じ様に触れてみる。

 

「うっ」

 

「大丈夫か!?」

 

 手の先、七天神像に触れたところから元素力が流れてくる。

 新しい感覚に少し気持ち悪くなった。

 しかしそれも少ししたら落ち着いて、自分の体の中に

 不思議なエネルギーがある感じだけが残った。

 

「ぶわーって感じがする」

 

「どんな例えだよ!」

 

 パイモン、ナイスツッコミ(微笑み)

 

「というか、それってオマエが元素力を使える様になったってことじゃないのか」

 

 パイモンが言うには、自分の体の中にある元素力を外に放出することによって、

 自分の持つ元素属性の攻撃が打てるようになるらしい。

 試しに自分の手のひらの上に渦巻きができるように、

 体の中から手のひらへ、そして手のひらから空中へスピンを描くように、

 流れを意識して見れば、元素がイメージ通りに流れていく感覚とともに

 手のうえに小さな渦巻きができた

 

「風の元素力が使える様になったみたい」

 

「そうっぽいな! んでこの七天神像っていうのは、ワープポイントみたいに

 ワープできるだけじゃなくて、近くに寄ったら回復もできるんだ!」

 

 確かに歩いてきた疲れは今何故かない。

 

「ほんとだね。疲れが吹き飛んでる。じゃあ今日はもうちょっと行けそうだね」

 

「おう! ここからもう直ぐしたら自由の国モンドの中心、モンド城につけるぞ!」

 

 そう言って今度は割と整備されている森の道を進む。

 

 整備のレベルが上がっていて、モンド城が近くにあることがわかる。

 

「何ッ!?」

 

 そうやって歩いていくと、大きな龍が頭上を通り過ぎた。

 

「うう……怖かったぞ」

 

「パイモンはあれ知らないの?」

 

「知らないぞ」

 

「テイワット一のガイドなのに?」

 

「知らないこともあるんだぞ!」

 

 そうやって道を進む。横目に城のようなものが見えてきて、

 少しペースを上げていたその途中で、

 

 

「ほら、ボクは帰ってきたよ」

 

 

 ー私たちは先ほど頭上を通って行った龍と話している、

 緑の服を着た少年を見つけた。




評価、コメント宜しくお願いします


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「ぎこちない!」

お気に入り登録 φゼル ちいさな魔女 アクルカ さん、ありがとうございますッ!!!!!

UAも500を超して昇天しています。

評価は未だ無いのでね……ね?(チラチラ)


「ほら、ボクは帰ってきたよ」

 

「バルバトス、何故今になって……」

 

「誰も君を見捨ててはいないよ」

 

 少年と龍が何か話している。少年の名前はバルバトスと言うようだ。

 竜と話すとかさてはお前人外かと思いつつ様子を伺う。

 しかし私の服の胸ら辺から変な風元素が出てきた。

 案の定龍に気づかれ、龍には逃げられるし少年にはワープされるし散々だ。

 しかし竜のいた場所には禍々しい赤黒い水晶が浮いていた。

 

「あれ何パイモン?」

 

「う〜ん……? あれか? 知らないぞ!」

 

「」

 

 近づいてよく見てみる。推奨というよりは結晶のようだ。

 中は助けてはいないが、何か負のオーラを感じる。

 

「取り敢えず持っとこっか」

 

 考えもなしにポケットにしまう。

 なんの機能か知らないが私のポケットは凄くて、割と大きいものでも

 いくらでも入るようになっている。取りたいものを想像して

 手を突っ込めばそれが出てくるのだから便利だ。

 ただ、角笛とか、いくら重いものでも片手で引っ張り出さなきゃならないので

 常に片手が筋肉痛になる。そのうち片手だけ筋肉もりもりになってそう。

 

「このまま進んだらすぐモンド城だぞ! 早く行こうぜ!」

 

 パイモンが急かしてくる。道なりに行けば着けそうだね。

 

 ___________________

 

 やはりこの世界は景色がいいと思う。

 右を見れば湖の上に佇むモンド城が見えるし、前を見ればのどかな平野が見える。

 なんかめっっっっっちゃ大きい木が見えるんですけど。早く行きたい。

 

 そう思いながら緩やかに曲がりくねった道を進み、

 少し見晴らしの良い所に着いた。ここまでの長い道のりを呪いながら足を揉む。

 今日明日はモンド城内にある宿に泊まって行かないと筋肉痛で死ぬと思う。

 いや、確実に死ぬね(確信)

 

 足を揉みつつモンド城を流れていると左後方から足音。

 そのまま私の3メートル上くらいに誰かがジャンプしてきて、そのまま私の前に着地した。

 びっくりしたままそれを見ると、あろうことか赤い服を着た茶髪の女の子だった。

 

 思わず頭が痛くなる。この世界には人外しかいないの? 

 竜と喋れるテレポート少年とか単純な力で3メートル飛ぶ少女とか。

 

「どうしたの? 大丈夫?」

 

 赤服の女の子が心配してくる。元々お前が原因じゃい。

 というか心の声が少し外に出ていたようだ。

 

「大丈夫」

 

「ならいいの! 私は西風騎士団の偵察騎士、アンバーよ!」

 

「あなた、モンドの人じゃないよね? 身分の証明はできる?」

 

 痛いとこをつかれた。確かに私はこのテイワットにはなさそうな服を

 着ているし、まぁ怪しくないわけがないだろう。

 

「落ち着いてくれ! オイラたちは怪しいもんじゃないぞ!」

 

「怪しい人は皆そう言うわ」

 

 おい非常食、そんなこと言ったらますます怪しくなるじゃん。

 墓穴を掘り始めるんじゃない。

 

 とりあえず自己紹介で気を逸らすか。

 

「こんにちは、私は蛍」

 

「ここら辺では見ない名前だし、見ない服だけど……どこから来たの? 

 て言うかその……マスコットはなんなn」

「非常食だ」

 

「全然違う! マスコット以下じゃないか!」

 

「美味しいの?」

 

「美味しいと思うよ」

 

「おい! 人の話を聞けぇ〜!」

 

 パイモンが何か言っているが、どうしたら美味しく食べられるのだろうか。

 やはり丸焼きか、いやここは洒落た風に……

 

 しばらく考えていたが、アンバーの

「取り敢えず、蛍ね!」

 と言う声に現実に引き戻された。

 

「近頃、モンド城の周辺で大きな龍が出没しているの。

 早く城の中に入ったほうがいいわ。そうだ! ここから城までは遠くもないし、

 騎士の務めとして城まで送ってあげる! さぁ着いてきて!」

 

 話の展開が早い。呆けていると少し遠くに行ってしまったアンバーが

 こっちに手を振ってくるように言う。

 う、左手にワープポイントがあるのに……

 まぁいいか。少し迂回してワープポイント取っていこう。

 

 アンバーに追いつく。彼女は疲れている様子は無いのに、

 私はもうヘトヘトだ。力を失う前に翼ばっかり使ったことが仇になったか。

 

「そういや何でアンバーはあそこにいたんだ? 任務か?」

 

「それもあるわ。でも安心して、任務しながらでもあなたたちを守ることは

 できるから。それに……怪しい人をほっとくわけにもいかないからね!」

 

 うぐ。まだ全然信用されていないようだ。

 

「信用してないみたい」

 

「う……騎士にあるまじき言動だったね……ごめん……

 その……見知らぬ……尊敬できる……蛍さん……?」

 

「プッ」「ぎこちない!」

 

「『騎士団ガイド』に決められた言葉に不満でもあるの!?」

 

 そう言って城まで一緒に歩いて行く。

 しかしモンド城もそろそろ目の前というところで、なんか半裸の仮変な仮面を

 被った小柄な人がいた。これがモンド人か(すっとぼけ)

 

「違う! これはヒルチャールっていう魔物! 決してモンド人じゃないから!」

 

 そう言いながら弓を構える。

 そうすると矢の先に炎の元素力が溜まり、手を放すとそれは炎の矢となって

 ヒルチャールに飛んでいき、そのままヒルチャールの顔面に刺さった。

 もちろん即死である。

 

 目と鼻の先にヒルチャールの拠点が合わせてあったのでそっちへと

 アンバーは駆けて行った。加勢するかな。

 元素力を腕に溜めつつアンバーの横へ躍り出た私を見てアンバーは

 驚いて目を見開くがすぐにヒルチャールへと視線を戻し弓を構える。

 こっちも頑張らないとね。

 

 アンバーが高台のヒルチャールを担当してくれそうなので私は地上にいる

 棍棒持ちヒルチャールを倒しに行く。

 ヒルチャールは棍棒を振りかぶって殴りかかってきたが、

 数多もの世界を渡り歩いてきた私には効かないんだなコレが。

 無駄無駄無駄ァ! と剣を一閃してヒルチャールを倒す。

 

 アンバーの方も終わったようだ。

 

「ふぅ、楽勝楽勝〜! でもあんたも戦えるのね! で、戦ってどうやった?」

 

「楽勝(ドヤァ」

 

「んで、なんでヒルチャールなんかが現れるんだ? こういうヤツらは普通

 都市からは離れたとこに巣を作るよな?」

 

「そうね、本来だったら荒野にいるはずね。でも最近、城付近に出没するように

 なってキャラバンのルートに影響が出たの」

 

「だからヒルチャールの活動範囲もだんだん城の方に?」

 

「そう。でも今一個巣を壊したから、進展はあったわ」

 

「よかったね」

 

「そうね! さぁ! 私についてきて! モンド上まで送ってあげる!」

 

 モンド城はもう近い。




評価感想よろしくお願いします


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「鳩ォォォォォォォォォォォォォォォオッ!」

評価が……評価が欲しいんだッ…!

timaturi777 エンプティ さん+1(非公開の人)

お気に入り登録ありがとうッ!

次の回でタイトル変えますね。記念じゃないけど

UAも800越してワンダフルワンダフル… 

目標はとりあえず1000やね


 

 

 モンド城の橋の前まで来た。

 

 ここから見ると、モンド城の城壁って意外と高いんだね。

 10mあるじゃん。場内の人々井の中の蛙状態じゃん。

 

「こんな城壁高くて不便じゃないの?」

 

「慣れればなんてことないよ! 景色を見たいなら外に出ればいい話だし、

 結構城外には出やすいからね!」

 

「ふーん」

 

 アンバーに聞いたら納得な答えが返された。納得。

 そう言いながら橋に近づくと横から声をかけられた。

 

「お〜い! そこの旅人さ〜ん!」

 

「何?」

 

「料理は野外生存の基本! 忘れちゃだめよ!」

 

「? あなたは?」

 

 不審者が話しかけてきた。物腰から察するに悪い人ではないだろう。

 いやいきなり野外生存の基本を語り始める時点で不審だけれども。

 

「冒険者協会の“サバイバルプロ”とは私のことよ!」

 

「いや名前」

 

 肩書を聞いてるわけじゃないんだよ。いきなり「冒険者教会の〜」とか

 言われたら普通引くよ。

 

「リンよ。というかアンバーさんもいたのね。いいところに来たわ! 

 ちょっと君! 名前はなんと言うのかしら?」

 

「蛍だけど……」

 

「蛍ちゃんね! じゃあ今から“大根入りの野菜スープ“を作ってもらうわ! 

 レシピはあげるし、材料もあそこのタルに入っているわ!」

 

 いきなり料理試験的なものが始まった。中ば強引に。

 渋々リンさんからレシピを教えてもらい、タルから材料を取り出す。

 幸いレシピ自体はそんなに難しくもないので、簡単に作れた。

 

「オッケー! それじゃあそれを食べさせて!」

 

 そう言って私の手からスープを受け取り、スプーンで掬って少し食べる。

 周りに心音が響く中、リンから下された評価は……

 

「う〜ん! 美味しい! 完璧までとはいかないけど、あなた料理の才能が

 あるんじゃない?」

 

「ありがとう」

 

「才能が勿体無いわね……そうだ! レシピをあげるからいつか食べさせて!」

 

「いいよ」

 

「楽しみにしてるわね〜!」

 

 そう言ってリンのところから離れる。相変わらずリンは釜の前で悩んでいた。

 何に悩んでるんだろ。

 

 少し歩いて、橋に差し掛かる。

 

 

「鳩ォォォォォォォォォォォォォォォオッ!」

 

 

 ダッシュで鳩に切り掛かる。しかし剣は空を斬り、鳩は空へと飛び立ってしまった。

 チッ、久しぶりに鶏肉にありつけると思ったのに……

 

「おい! 鳩が逃げちゃったじゃないか!」

 

「しょうがない、この世界は生きるか死ぬかなんだから(キリッ)……」

 

「意味わからないけどどうしてくれるの!」

 

 少年が叫んできた。ヒステリックかこいつ。

 鳩を殺そうとしたことを怒ってるのではなく、鳩が逃げたことに怒っているらしい。

 逆だろ普通。

 

「ティミーくん、どうしたの?」

 

 おっとここで女神アンバーが降臨なされた! どうやらこの少年はティミーと言う

 らしい。

 

「こいつが鳩を追い払っちゃったんだよ」

 

「う〜ん、そうだね……まぁ鳩が死んじゃったわけでもないし、今日は

 我慢して、明日来るのを待ってみたら? あの人には私が強〜く言っとくから!」

 

「わかったよ……強く言っといてね!」

 

 上手く丸め込んだらしい。流石女神アンバー()。

 というかこれ私が怒られるやつじゃない? アンバーが近づいてくる。

 なんだか悪魔に見えてきた。

 

「今失礼なこと考えたよね?」

 

「イエシリマセン」

 

「絶対考えてた顔だよこれは! ってそれは置いといて、城内の鳩は殺さないように! 

 城内中に鳩の死体が転がっても困るから!」

 

「わかった」

 

「本当に分かってるの?」

 

「ええ分かってますとも」

 

「なんであなたが偉そうにしてるのよ……」

 

 そう言って場内へと入る。門番にかなり怪しまれていたがアンバーの顔パスで通れた。

 

 場内に入ってみると、そこには大きな城ではなく、活発な街の風景が

 広がっていた。目につくのは大きい風車。流石風の国だけある。

 目の前を通る大きな通りの奥には噴水がある広場があり、

 通りを挟んで店が並んでいる。そしてその奥に、大きい人物の像があった。

 

(あれって……)

 

 前あった龍と話していた少年に似ているような気もするけど、多分違うね。

 

 

「改めて紹介させてもらうわ。風と蒲公英の牧歌の城、自由の都……

 西風騎士団に守られて来てやってきた蛍さん達、モンドへようこそ!」

 

「真ん中らへんいらないだろ」

 

「いいの!」

 

「と言うかやっと野宿しないですむな」

 

「そうだね」

 

「え!? ずっと野宿してきたの!?」

 

「そうだよ」

 

「え……野宿して生きてきたの……信じられない……確かにそう言う人がいるとは聞くけど……」

 

 ブツブツ何か言っているアンバーは置いておいて、パイモンがあることに気づいた。

 

「でも、城のみんなはあんま元気じゃなさそうだな」

 

「最近、みんな風魔龍の件で頭を悩ませてるからね〜。

 でも大丈夫! ジンさんがいればきっと全てうまく行く!」

 

「誰なんだ?」

 

「西風騎士団の代理団長———ジン、モンドの守護者だよ! 

 ジンさんがいっしょなら、風魔龍レベルの災害でも、きっと打ち勝てるはず!」

 

「(なんかすごい人みたいだね)」

 

「(そうだな)」

 

「そうだ! 一緒に騎士団本部に行く前に、渡したいものがあるの! 

 さっきヒルチャールの巣を一緒に片付けてくれたお礼だよ!」

 

「オイラにはないのか?」

 

「えっと……パイモンには使えないものだからね……」

 

「おい! 蛍ばっかりずるいぞ!」

 

 喚くパイモンの耳元に近づく。

 

「モラミート」

 

「うっ!」

 

「ホワイトソースポトフ」

 

「ぐぐっ!」

 

「最後に……鳥肉のスイートフラワー漬け焼き」

 

「ぐはぁっ!」

 

「いいの? (圧)」

 

 

 

「ぐぅ……フン! まぁ今回は許してやるぞ!」

 

「オッケー? じゃあとにかく私についてきて! 今から高いところに行きましょう!」

 

 そう言って彼女は脱兎の如く走り始めて向こうまで行ってしまった。まぁ彼女兎っぽいけど。

 兎は空なんて飛ばないけど。

 

 とにかく追いかけたほうがいいかな。見失っちゃう前に追いついちゃおうか。

 




あれ?進み遅くね?

ティミーは救われるべきじゃない()


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