ガルパンRTA 大洗の担い手ルート (京都府南部民)
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キャラクリ~原作1話まで

さぁ、いよいよガルパン オリ主二次創作に手を出してしまいました。
戦車関係の知識は無いけど、私にはwikipedia先生がついているという自信でやっていきます)
アンツィオだってノリと勢いで頑張ってるんだからへーきへーき


人生の大切なものが全て詰まっているシミュレーションゲーム、はっじめーるよー

ニューゲームを選んでタイマースタート!

 

今回プレイするのは戦車道シミュレーションゲーム『ガールズ&パンツァー パンツァーマイソロジー』です。

 

人気アニメ『ガールズ&パンツァー』を舞台にしたゲームで、シミュレーションゲームというよりシューティングゲーじゃないか!というお声が強い今作ですが、今回はそんなゲームのストーリーモードで、リザルト称号「大洗戦車道の担い手」を狙っていきます。

 

「え、結構簡単に獲れる称号じゃないの?」と思った方も多いと思いますが、トロフィー画面の総合ユーザーデータによりますと(アッサム風)

なんと獲得率27%と思ったより低い数値なんです。もっとも、オンラインでつないだプレイヤーだけの数字が反映されているのと、アップデートが入る度にある程度の数値は変わってしまうのですが、おおむね誤差だよ誤差!

恐らく考えられる理由といたしましては、やっぱりみんな大活躍したいという欲求から大洗の導き手称号や、○○(←任意の戦車を入力)無双称号、アンツィオ大好き!称号を得てしまうからでしょう。特に導き手称号の獲得率は42%です。

難易度ハードだとどうしてもプレイヤーが頑張らないといけないのは確かなんでどうしようもないところはあるんですけどね……。

ただ、ノーバグ縛りの八九式戦車で全学校の戦車を撃破した兄貴には戦慄した(小並感

 

ちなみに担い手称号の条件は「各試合総合生存率50%」です。

それだけ?とお思いですが、いざやってみようとすると実は結構これが難しく……即ち、できるだけ原作通りの試合展開にする必要があります。できるだけね、ある程度のオリチャーはご愛嬌

プレイヤー自身は撃破されては生き残ってを繰り返せれば良いのですが、そこはシミュレーションゲームとプレイヤー心理を突いてくる巧妙なガルパンAIですので、RTAを狙う身としてはその辺も踏まえてのプレイをしていきます。

 

まずはキャラクリエイトをしていきます。本ゲームではオリジナルキャラクターを10まで制作する事ができ、それぞれのプレイをクリアする度に各パラメーターに自由に割り振ることができます。強くなってニューゲーム、またはオンラインで世界中のガルパンおじさんたちと戦うことができるのがゲームとしての魅力ですね。

名前は「砲門 愛」。略してホモちゃんですね。愛じゃよ、愛。ラブアンドピース!

顔、髪型や身長、誕生日などはランダムで結構ですが、RTAのキャラクリで重要なのは出身地です。

出身地は47都道府県の各市町村と、各学園艦のモチーフとなっている国から選べるのですが、ここで海外国と本編で出てくる学園艦が母港としている都道府県を選んでしまうと、高確率でその学校との絡みができてしまいます。フリーモードですとかなりの高確率で、そこに進学します。

正直、市町村までは別にどうでも良くない?と思いますが、聖グロ面子がわざわざ横浜出身って明記されてるからですかね。

それ自体は別に構わないのですが、序盤で各学校とのイベントが入ってしまうのはタイムロスになってしまいます。あくまでストーリーを進行させる上で発生するイベントについては問題ありません。

 

なので、ここは現時点で特に学園艦の存在が記されていない京都府、それも内陸の精華町を選択します。

実は京都府と滋賀県と大阪府はRTA的にはオススメの出身地で、まずガルパンほんへに出てくる各学園艦の地方にも被らないので、上記の各学校イベントがそもそも発生しにくいという点があります。

最終章に出てくる青師団学園が和歌山母港らしいので、そことのイベントは出てくるかもしれませんが、本RTAにおいてはむしろ最終章、あるいはスピンオフで登場する学園艦とのつながりのほうがうまあじですので、何気にばっちこいです。

他にも兵庫にワッフル学院、奈良にグレゴール学園ってのもありますが、こちらでも構いません。奈良に学園艦……猿沢池にでも浮かべるのかな?

 

出身地を精華町に決めましたので、次は初期パラメーターを決めます。本作ではパラメーターは100までが上限ですが、アイテムやいくつかイベントを踏むと突破する事も可能ですし、エンド後の大学生、社会人ルートまで遊ぶと青天井になります。

ここでタイプを選びますが車長型、砲手型、操縦手型、装填手型、通信手型とありますが、無難に車長型を選んでおきましょう。ちなみに全タイプでプレイをクリアすると家元型が選択可能になり、エロ同人の出演率が高まります。

 

車長型を選んだ理由ですが、パラメーター自体満遍ないからです。

割り振りポイントは10ポイントで、各タイプを選ぶとそれぞれのパラメーターにポイント全部を割り振っても、そのタイプのものが最高値になります。

車長型の場合は統率値が最も高い数値となります。

 

統率40

砲手18→22

操縦29→33

装填5

通信20

体力100

勉強20

金運5

友情0→2

 

はい、典型的な車長型ですね。割り振りもおおむね問題はないのでこちらで決定いたします。

ちなみに体力は文字通りの意味で1日の行動に必要です。ただ体力が100もあれば8時から21時まで活動可能で、上限突破をしても徹夜が平気になるぐらいです。夜間イベントは特にないので、良いところ殲滅戦か最終章の知波単戦のような長期戦にでもならない限り、体力値あまり重宝しません。

勉強は戦車道で自らが担当する役割の能力値に半分足されます。

次に金運ですが、これはバイトなど資金調達時にプラスされますが、今回は特に使う予定はないので5と言わず0でも構わないぐらいです。強くてニューゲームを繰り返し、金運100になりますとカール自走臼砲が序盤で購入できます。

そして友情ですが、即ち親友の数になります。

実はこの親友というのが劇場版編で必要になってきますので、ここで2人用意しておくことにします。

 

さぁ、いよいよシナリオ選択です。本作では3つのシナリオから選ぶことができ

 

・大洗シナリオ→要するにほんへです

・フリーシナリオ→各学園艦に所属することができます。大洗女子学園にも在籍できますが大洗シナリオほど濃密ではありません。

・オリジナルシナリオ→オリジナルの学園艦戦車道の隊長になって、夏の全国大会制覇を目指します。ちなみにラスボスは大洗固定で負けイベントです。

 

という3つで、もちろん大洗シナリオを選択します。

ここで戦車道経験の有無を問う選択肢がでてきますが、ここは「はい」を選びます。

「はい」を選ぶと、体力勉強金運友情以外のパラメーターがそれぞれ均等に上昇します。

次にどこかの流派に属するかの選択肢が出ますが、西住流であればしほまほみほとの友好度が上がり、島田流を選ぶと千代さんと愛里寿ちゃんとの友好度が上がります。

ただ、選んでしまうとシナリオ開始時点で流派イベントが入ってしまいタイムロスになるので、「どこにも属していない」を選択します。

さて、ここからはランダムイベントなのですが………

 

『私は戦車道経験者。京都府精華町の小学校中学校に通い、そこで戦車道を履修し関西のジュニアチャンピオンになった』

 

おっしゃあ!

地方ジュニアチャンプの台詞があると大幅にパラメーターが上昇します。ウイニングポストでいう新馬戦の後に「重賞~G1も目指せるスピード」レベルです。

ただ、他に挑戦する兄貴たちのためにアドバイスしておくと、別に地方ジュニアチャンプでなくても、都道府県のジュニア選抜に選ばれた、というだけでも相当上がりますので、わざわざ再走する必要はないです。

しかし、これでプラウダまでは特別どのパラメーターを上げるということはしなくて良くなります。強いて言えば勉強値を中心に上げていきましょう。

 

本作で大洗シナリオは原作開始の1年前、1年生からのスタートになります。

これは戦車道経験を無いと選択した方の救済措置の様なもので、1年で各パラメーターを上げるという事ですが、戦車道経験者、それも地方ジュニアチャンプなので特に上げるものはありませんし、パラメーターは上がれば上がる程、上がりにくくなるという使用ですので、ここは日がな一日を過ごしましょう。

 

『今は大洗女子学園に進学して、そこで女子校ライフをエンジョイすることになる』

 

はい、良い感じで一人暮らしです。ここ出身地を大洗町にしておくと、親と一緒に住んでいるかどうかのコマンドが出てロスになります。

 

『さぁ、学園生活!』

 

砲門ちゃんが部屋を出たところから、自由に動かせるようになりますので一旦ステータスを確認

 

統率53

砲手40

操縦50

装填15

通信35

体力102

勉強20

金運5

友情2

 

ヨシ!と言えますが、統率が思いのほか伸びなかったのが気になります。まぁ、〇ッカさんと同じ順位の数なのでこのまま進めましょう。正直60は欲しいですが、それこそ1年間で統率値と勉強値を増やせばへーきへーき。

 

さて、それともう一つ確認しなければならないのが、パッシブスキルの欄です。

キャラクターの特徴といえば伝わりやすくなると思います。『真面目』『大きい声』『放浪癖』など、色々とありますが、どのスキルであっても何気にロスを稼ぐのであまり好ましくはありません。

『浪費家』であれば素寒貧の状態を維持してイベントを強制的に起こさないようにするという手もあるので、それを狙っていますが……

 

はい『健啖家』のパッシブスキルが確保されていました。

これは食べる量が増えるだけでなく、わざわざ食事中に心で思ったことをモノローグ型式で台詞が入るというもので、今回のRTAにとって大幅な足かせになるでしょう(げんなり)

ただパッシブスキルはどれであっても、ロスに繋がるのでこのまま進めます。

 

本作はオープンワールドのシミュレーションゲームなので、極めて自由な行動が可能です。

学校の授業をさぼったりできますし、他の学園艦に潜入する事もOKです。さぼり続けると艦底部へのルートが開けますが、RTA上、あまり意味がないので普通に登校します。

移動コマンドで登校を押すと一発で校門前まで行けるので多用していきます。

教室までは自分の足で行かなければなりませんが

 

『教室には既に生徒が何人かいる』

 

よしよし、ほんへのキャラがいないクラスのようですね。

ここに原作キャラがいればイベントが入ってしまいますが、これで時間短縮になります。イベントといっても自己紹介ぐらいですので再走する程ではありません。

無論、これで友情値を増やす必要性もあるのですが、それは原作開始時点からでも問題無いのでこのまま進めます。

 

『入学式のために体育館へ移動せぇへんと』

 

体育館へと移動しました。まだ生徒会の一役員に過ぎない会長と柚ちゃん、留年生がいますね。

学園生活の紹介シーンはチュートリアルも兼ねているので飛ばせません。てか、学園艦生徒会の権限強すぎィ!

 

『慌ただしい1日やった。今日はどうしよう』

 

はい、ここからですが、もうこの1年間はパターン入ってます。

とにかく図書室で読書と自主勉強コマンドを選びます。

図書室で読書すると統率値が上がり、自主勉は勉強値が上がりますので、もうこれを繰り返します。

あと図書室では歴女集団ことカバさんチームと会合できますが、イベント発生はタイムロスなので会釈する程度で納めておきましょう。

 

戦車倍速中……

 

はい、8月になりました。

戦車道経験者なので、夏の全国大会でみぽりんが赤星救出するシーンをテレビで見なければならない強制イベントが発生します。

 

『黒森峰の副隊長が救出に向かった。私はその行為を……→「優しい人やなと思った」』

                           「厳しい目で見た」

 

これで、西住殿との関係が円滑になります。

ただ、西住殿と仲良くなってもRTA的にはあまりうま味はありません。なる分には構わないのですが、主人公とあってイベントが豊富に実装されており、それらはできるだけ回避しなければなりません。

 

戦車倍速中……

 

原作1日前となりましたので改めてステータスを確認します。変化のあったやつだけを載せます。

 

統率67

砲手45

操縦52

勉強48

 

はい、工事完了です……

これだけあればプラウダ戦まで遊んでいてもOKです。

 

『新学期がはじまり遂に2年生。何や戦車の匂いめっちゃなつかしいけど、これは何かの暗示なんかな』

『授業が終わると生徒会に呼び出された。向かわなければ』

 

お、思いのほか早かったですね。

ここで生徒会室に呼び出され、戦車道の履修を迫られますが即座にはいを選びましょう。

 

『即決、感謝する』

 

まだ知性キャラ扱いだった留年生桃ちゃんかわいいね。無知の知

この後特にイベントは無いので家に帰って寝ます。18時就寝とかはじめて見た……。

 

はい、ほんへ始まりました。今のところ、大きなロスはなく、会長、快調な滑り出しです。

この時点で、まだ諸キャラクターに接触する必要はありません。特になんとなく生活しておけばOKです。

 

『全校生徒に告ぐ! 体育館に集合せよ。体育館に集合せよ』

 

はいこれは無視してOKです。もう戦車道に決めているので(罪悪感は)ないです。

健啖家スキルも発動してしまったので、食堂で海鮮丼特盛を頼みます。

ちなみに、体育館では食券100枚、遅刻見逃し200日、通常授業の3倍の単位を与えるという内容で戦車道が紹介されていますが、愛ちゃんは事前の交渉で食堂フリーパス、遅刻見逃し365日、通常授業4倍の単位が貰えます。まぁ、多少はね?

 

2日経ちました。放課後に車庫の前に招集がかかっていますので、そちらへ行きます。

え、生徒会の勧誘シーン? 名場面? カットです(無慈悲)

 

おぉ、既に何度もプレイしていますが、こうして原作キャラが一堂に会していると圧倒されちゃいますね。

西住殿がⅣ号に触れて、戦車道イケるイケる発言した時点で、いったん終了です。ご視聴ありがとうございました!

 

 

 

 

あ、シナリオ気になる兄貴のために用意しておきますね。

 

 

 

 

大洗女子学園で関西人と言えば、数人いるが、その中に砲門 愛という女子生徒がいるのは間違いない。

かく言うは私自身だからである。

 

「ホームルームは以上です。それじゃ、起立礼おつかれしたー」

 

担任のずぼらな挨拶と同時にクラスメイトたちがどっと教室を後にしたりしなかったり。

私は日課の読書に努めるか、と席を立ったその時であった。

 

―2年普通科、砲門愛。2年普通科砲門愛。至急、生徒会室へ―

 

何事であろうか。

特に何かをやらかした覚えはないはずだが、とにかく行かねば話にならない。

クラスメイトたちの怪しげな、心配の視線を後に生徒会室へと向かう。

 

「砲門です。入ってええですか?」

「ご苦労、そこで待っていてくれ」

「粗茶をどうぞ」

「おぉ、ありがとうございます」

 

広報の河嶋さんと、副会長の小山さんからもてなしを受ける。

粗茶というのを一口すすると、どこか安堵した。

精華町。京都府南部の生まれとしては茶にうるさい方だと自覚しているが、結構なお点前である。

 

「めっちゃ美味い」

「ふふ、ありがとう」

「どこの産地のやつですかね」

「大洗の農協さんがくれたやつなの。まだ試供品なんだけど……」

「は~~~、いや、イケる味ですわ。すんません、良かったらちょっと分けていただけます?」

「うん! ちょっと缶に詰めるから待っててね」

 

生徒会室に備えられているカウンターから缶を取り出して、茶葉を詰め、こちらに渡してくれた。

 

「ありがとうございます」

「いえいえ。砲門さん、お茶好きなの?」

「好き、と言いますか……生まれ育ちが京都府南部なもんで。ちょっと、こう、うるさいとこあるんすよ」

「お茶の名産地だぁ! 毎日、玉露とか飲んでるの?」

「そうですねぇ。どっちかっていうと飲むだけなら麦茶の方が多いんですけど、でも仰るように玉露は常に家にありますんで……」

「へ~、羨ましいなぁ。名産地に住むとそういう特典があって良いよね」

「正直、玉露も良いんですけど、ほうじ茶なんかも結構ええのありますよ。今度、またここに持ってきますんで、良かったら賞味してください」

「本当!? ありがとう~」

 

自分が育った自治体はどちらかというとイチゴが特産であるが、まぁ、ブランド茶葉の入手に困らないのは事実だから、特に否定もしない。

小山副会長と和やかに話していると、河嶋広報に連れて角谷生徒会長が入って来た。

手には好物と噂の干し芋の袋を持っている。

会長席に座られたところで、私は立ち上がり一礼した。

 

「砲門です」

「砲門ちゃん! あぁ、そんなかしこまらないでいーよ」

「座ってくれ」

 

勧められるがままに、もう一度座り直す。

 

「じゃあ、お歴々も揃ったところで……なんか私、やらかしました?」

「うん?」

「いや、何のお話かなぁ思って、心当たりが特にないんですけど」

「あー、そうだったねぇ。河嶋」

「はい。砲門、単刀直入に言う。我が校は戦車道をすることになった。必修選択科目の枠でな」

「戦車道をですか!?」

 

身震い、いや武者震いが瞬く間に駆け抜けた。

かつて研鑽に研鑽を積み上げた少年時代、関西ジュニアチャンプとして君臨した中学時代が、私をつんざいたのである。

 

「ほ、ほんまですか?」

「知っていると思うが、戦車道の世界大会が日本で開催される事に併せて、文科省から全国の高校や大学に、戦車道への協力が要請されているんだ」

「それで我が校もかつて盛んだったみたいだから復活させよう!って話になったんだけど……」

「なんか調べたら砲門ちゃん、関西でジュニアチャンプだったみたいじゃない? それで経験者として是非参加して欲しくてさー」

「いや、いや、もう、是非参加させていただきます!」

「本当!? 話早くて助かるわー」

「いえ、こちらこそ嬉しいぐらいで……あ」

「どうしたの?」

 

舞い上がっているところで、なぜ私が大洗女子学園に通っているのかを思い出した。

戦車道復活は嬉しいお話だが、まずはそれを生徒会にお話しておかないといけない。

 

「すんません、ちょっと参加するにあたってなんですけど、お願いがありまして……」

「お願い?」

「言ってみ」

「はい。えっと、仰るように、ウチは小学校ん時から戦車道やってて、中学で関西ジュニアチャンプ、もっというなら関西選抜ジュニア代表やったんですけど……そのせいか学業のほうがちょっと疎かになってたとこがありまして」

「ほんほん」

「親から、高校は戦車道離れて勉強学業に打ち込めって言われてんすよ。それで戦車道のない大洗女子に来たって経緯なんですけど」

「あー、そうなんだ」

「父は割と自由というか理解ある人なんで大丈夫やと思うんですけど、母がこの辺厳しくて……ちょっと情けない話、生徒会さんから母に話通して欲しいんですよ。それやったら許してくれる思うんで」

「会長」

「うん、いーよ。後で連絡しておく」

「助かります」

 

一抹の不安が取り除かれると、安堵のため息を実感してしまう。

粗茶をもう一啜り嗜んだ。

 

「でも、良かったぁ。快く引き受けてくれて」

「即決、感謝する」

「むしろ、頭下げるんはこっちの方ですわ。やりたい事やれんまま勉強勉強っちゅうんも飽き飽きしてたとこなんで」

「砲門ちゃん、成績良いしねー。小山、特典も説明して」

「はい。砲門さん、戦車道の履修にあたってなんだけど、学校としても大きく力を入れたいと思ってるから、特典をいくつか用意してるの」

「特典」

「うん。まず食券100枚、遅刻見逃し200日、通常授業の3倍の単位をあげようと思っているの」

「おーー、太っ腹」

 

とても魅力的な特典である。力の入れようというか心意気が伺える。

しかし、私は欲張りなもので、少々駄々をこねる事にした。

 

「どうかな?」

「うーーーーん、食券ですけど食堂フリーパス、遅刻見逃し365日、単位は4倍で貰えますか?」

「え!?」

「遅刻はともかく。食券と単位は……会長」

「いーんじゃない? 契約金とか払うよりマシだからね」

「ありがとうございます」

 

ふぅ、だめでもともと行ってみるもので、ゴネ得に勝るものはない。

遅刻と言わず単位はどうでも良かったのだが、大ぐらいな私にとっては食堂フリーパスはとっても重要だ。

 

「でも、それだと他に選択してくれる子たちと不公平になっちゃうんじゃ……」

「関西のジュニアチャンプにやってもらうんだから、そんぐらいは出さないとね」

「分かりました。それでは早速手配してきます」

「よろしくぅ」

 

河嶋先輩が退出したので、私もというところで、なお生徒会長に呼び止められた。

まだ何か話す事があるのだろうか。

 

「砲門ちゃん、ちょっと真面目な話して良い?」

「どうぞ」

「実はもう一人誘おうと思ってる子がいるんだよねー」

「ほう」

「西住みほ、知ってる?」

「……ええ、まぁ」

 

もちろん、知っていた。

去年の全国大会で水没した戦車を助けにいった黒森峰の副隊長。

世間的には色々と賛否が分かれたが、否の声としては「黒森峰の10連覇が無に帰した」というものである。

 

「実は、その子も明日誘おうと思ってんだよねー」

「おぉ、ええ事やと思います」

「そんで聞きたいんだけどさー。砲門ちゃんと、西住ちゃん。どっちが隊長やった方が良いかな?」

「西住さんですね」

「……即答だねぃ」

「引き受けた身として、何より評価していただいてる中で言うのもなんやと思いますけど、ウチには1年以上のブランクがありますし、何と言っても所詮は地方止まりの人間です」

「それでも凄いと思うけど……」

「いえ、小山さん。戦車道というか、競技やってた人間としてはあんまりええ事やと誇れる事ではないんです。世間的にはウケるでしょうけど、こればっかりは個人の心情として」

「……」

「それを考えますと、西住さんは、何と言うても西住流家元のご息女ですし、黒森峰で副隊長やってた実力は、ほんまに実力やと思います。それに……」

「それに?」

「多分、優しい人やと思うんで。初心者の子らにも、よぅ手ほどきしてくれると思うんすよ」

「砲門ちゃんは、どうなの?」

「ウチは、ちょっと……ガラ悪いんで」

 

今でこそ大人しくなったが、それこそ中学の時なんかは恐らく想像しうるところの関西人だったのは間違いない。

それを考えると、西住さんが隊長をやった方が100倍マシであろう。

 

「じゃあ、砲門ちゃんには副隊長やってもらおっか」

「副隊長でっか。まぁ、その方がええ思います」

「うんー、じゃあ、よろしくね! また後日、招集かけるし」

「分かりました。改めて、よろしくお願いします」

 

深くお辞儀してから、恭しく生徒会室を後にした。

退室した瞬間何度も拳を突き出して「ヨシヨシヨシヨシヨシヨシ!」と気合が入ったのは言うまでもない。

 

帰宅してからの事である。

母から電話がかかってきた。

 

「はい、もしもし。ウチやで」

―おー、元気?―

「もう、ばっちばち」

―生徒会長さんから、聞いたわ。戦車道やるんやってな―

「うん、折角誘われたしやろうと思う。……ええやんな?」

―うん、止める事もないし、思いっきりやり―

「ありがとう! や、お母さんにやめろ言われたらどうしようかちょっと悩んでたわ」

―ちゃんと勉強はしなさいよ。中学校の時みたいに、トロフィー賞状と一緒に0点のテスト飾るんは恥ずかしいからね―

「前も言うたけど、ウチ今成績優秀者やで。へーきへーき」

―ほんまに大丈夫なんか心配やわ。あんた好きな事のめり込むタイプやし―

「お母さんに似たんやろな」

―否定はせんけどね……愛―

「ん?」

 

母の声がどことなく、真剣であった

 

―戦車道、きっちりやりや。手抜いたらアカンで―

「お、おぉ」

―ほな、もう夜も遅いし、電話切るね。おやすみ―

「お、お休み」

 

プツっと切れると、無音の空間に悪寒が走った。

ああいう声色を聞くのはジュニアチャンプ前夜以来だが、遠方の娘を心配するあまり思わず強張ったのであろう。

何はともあれ母から許可を得たので、深く考える事もない。

部屋の電気を消して、ゆるやかに枕へと頭を埋めた。

 

 

 

 

 

数分前

 

「~~~~という訳なんです。どうか娘さんの戦車道参加を認めていただけませんでしょうか」

「それは……その」

「お願いします」

 

電話越しに伝わる決意と悲壮感を否定できるほど、愛の母親―灯は酷では無かった。

 

「良いでしょう。娘の事、よろしくお願いします」

「ありがとうございます。では……」

 

もう少し、辞令のやり取りはあって然るべきだが、それ以上に事態の深刻さが灯の脳を駆け巡った。

 

大洗女子学園が廃校になる。

 




誤字脱字などがあればお気軽にご指摘ください。

次話は1月29日の朝6時に投稿予定です


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2話~4話まで

初心者の割には異様に呑み込みが早いスポーツのRTA、はっじまーるよー

 

前回からの続きです。

恐らく、今カメラが引いて学園艦が映ってるところでしょうがRTAは続いていますので、とっとと戦車探しを始めます。

こ↑こ↓では単独行動をとって戦車を探しに行きます。

どれかのチームと一緒に探しに行くと好感度が上がりますが、上がり方がとんでもないほどに跳ね上がってしまいますので回避する必要があります。

 

はい、それで探す戦車と言うのが三式中戦車です。アリクイさんチームが乗ってたやつですね。

ここで探す理由としては、まず駐車場に置いてあるので探索が容易な事、それとアリクイさんチームには原作と違ってできるだけ早く参加してもらいます。

加入イベントはねこにゃーとの好感度上げれば早めに発生させられますし、運が良ければアンツィオ戦までに発生することもあります。

実はアリクイさんチームはとても筋肉ポテンシャルが高いチームですので、早々に参加させて覚醒イベント、もとい筋トレしてもらいます。ぱわー!

 

駐車場に置いてあった。三式中戦車を留年生に報告して、車庫まで戻ります。

チーム決めですが、見つけた戦車に乗るという理由で、愛ちゃんが三式中戦車にというお話になりますが、人数が合わないのと経験者である事を理由に1年生のウサギさんチームと一緒にM3リー中戦車に乗る事になりました。

ここはウサギさんチームと一緒に乗るということがポイントです。

ウサギさんチームはパラメーターの伸びしろがとんでもなくある設定ですので、愛ちゃんと一緒に乗せる事で経験値を稼いでもらいましょう。

 

戦車を洗車しますが(激うまギャグ)、流石に一人で三式中戦車を洗うのは面倒なので、事前に買っておいた高圧洗浄機を使います。これで一気に汚れが落ちるのと、他のチームに貸し出して全体的にスピードを上げます。金運値5での蓄えなら大した出費ではありません。

これでほんへよりも早く15時ぐらいに終わりましたが、それでもこれを一晩で事後処理する自動車部ってやっぱチート過ぎませんかね。

あ、それとこの後アンコウチームと一緒に戦車ショップ行ったり、ご飯作りに行ったりはしません(無慈悲)。さっさと寝ましょう。

 

翌日ですが、年末にビンタしてそうな名前の蝶野教官が来られて模擬戦です。

ウサギさんチームの指導も兼ねて搭乗します。

 

              「ビシバシ教える」

『どのように指導しよう……→「丁寧に教える」』

              「自主的にやらせる」

 

丁寧に教えるを選択する事で、ウサギさんチーム全体の好感度上昇と経験値がわずかに上がります。

ビシバシ教えるとパラメーターは上がるのですが、好感度が上がらず、ひどい場合逃げ出してしまいます。自主的にやらせれば、ほんへ通りなんとなくついていって自滅してしまうので注意が必要です。

 

この模擬戦でも撃破するとパラメーターが上がるのですが、位置的にアヒルさんとカバさんを狙うのは難しく、アンコウチームに挑むのはそもそも無理。となると消去法でカメさんチームを撃破します。

アンコウ以外の全チームを撃破するとウサギさんチームのパラメーターが上がりに上がって、次の聖グロとの練習試合でも逃げ出しませんが、結構手間がかかりますので今回はカメさんチームだけ狙います。

いきなり狙うのもなんですので、桂利奈ちゃんの操縦上げを狙って橋まで向かわせます。

 

『はい、山郷ちゃん大野ちゃん、生徒会チーム狙って……撃て!』

 

カメさんチームを撃破できましたが、喜びに喜んでる隙を突かれてアンコウチームに撃破されます。

結果は狙い通りでしたので、重畳です。

それでは蝶野教官から、模擬戦を総括していただいて、今日は終わりです。

家に帰って寝ましょう。

 

『あ、あの砲門先輩!』

『澤ちゃん、どないしたん?』

『今日は、ありがとうございました!』

 

お、これは友情イベントですね。1両撃破したために澤ちゃんの好感度が上がって発生したのでしょう。

好感度を上げて、親友になると友情値が上がります。

親友については前回申し上げたように劇場版編で必要な2名を確保していますが、増える分には歓迎ですので、ロスとは思わないようにしましょう。

 

翌日の練習ですが、思ったように戦車がカラフルになっています。

それはさておき、練習です。昨日と同じく、どのように練習するか選べますが、今日はビシバシ教えるを選択しましょう。

というのも、先日のカメさんチーム撃破でウサギさんチーム全体の好感度は高く、多少厳しめに教えてもへこたれないどころか進んでやってくれます。

ウサギさんチームで優先的にパラメーターを上げておかないといけないのが、澤ちゃん、桂利奈ちゃんの二名ですので重点的に統率指示と移動訓練を行います。

 

練習が終わりました。ミーティングで聖グロとの練習試合が告げられ、車長だけが呼び出されます。

ここでは、ほんへと違い、西住殿が隊長、愛ちゃんが副隊長と決まっているのでトントン拍子で作戦を決定します。原作と全く変わらないんですけどね。市街戦までをちゃんと含めているってだけで。

ちなみに、戦車道経験者を選択したのは、留年生の作戦説明を聞かなくて済むのでタイムロスを防ぐためでもあります。(と言っても5秒ほど縮むぐらいですが

 

聖グロとの試合日になりました。

聖グロ戦での目標ですが

 

・最終的には撃破される

・何両かは戦車を撃破

 

主にこの2点を守っていれば担い手称号とRTAで必要なパラメーター上げができますので、狙っていきましょう。

 

相手方のチャーチルとマチルダが到着しました。

ダー様が戦車から降りて、煽り込の挨拶に入りますが、やっぱガルパンは太ももの描き方に癖を感じますよね。性癖

 

それぞれの初期位置に配置完了です……

試合が始まりましたが、作戦自体は原作通りです。

待ち伏せからの撤退と市街戦ですね。

 

ウサギさんチームがトランプを始めましたが特に口出しする必要はありません。

そして、皆さまに事前に説明いたしますが、今回の聖グロ戦での目標にある撃破願望ですが、これ自体は簡単です。というのもウサギさんチームが逃げ出すのは間違いないのですが、今までの練習から全員逃げ出すと言うのは考えられません。そして、友情イベントの発生から見るに澤ちゃんは残ってくれるでしょう。

ここで重要なのが、何両撃破できるかですが、個人的にはマチルダを2両撃破したいと思います。

何度も言いますように乗員が逃げてしまうので、撃破したいと言っても容易ではありません。しかし、もし撃破した場合、逃げた乗員分のパラメーターが残った乗員に加算されますので、今回の場合澤ちゃんの大幅なパラメーターアップが期待できますのでやらない手はありません。

 

お、アンコウチームが帰って来ましたね。

原作通り留年生がわめきながら発砲指示を出しますが、それは俺の仕事だろうが!

はい、制止の甲斐なく全員破れかぶれに発砲を始めました。案の定、聖グロが落ち着いて攻めてきて、こちらを圧倒します。

さて、どうなるかですが……

 

『嘘―――!』

『こんなに怖いなんて……!』

『やば』

『みんな、落ち着いて、大丈夫、大丈夫だから』

『桂利奈ちゃん! そんな感じでええから避けて避けて』

『あいーっ!』

 

マ、マジすか

ウサギさんチーム全員残りました。練習で強くし過ぎましたねくぉれは……

いえ、それならそれで結構です!

むしろ、この練習試合が早く終わる可能性がでてきたので大幅な時間短縮になるかもしれません。

そうと分かれば、西住殿が市街戦への移行を合図しますので、ついていきます。

 

ここからの動きですが、とにかく漁夫の利を得ましょう。

ある程度展開は知っているというので、最初に狙うのはルクリリ車です。

お、立体駐車場で炎上していますね。八九式は撃破されてしまったようですが、間髪を入れずに砲撃します。

はい、撃破できました。初の対戦試合でウサギさんチームが盛り上がっていますが、牽制して次の標的を狙いに行きます。

 

そのまま、アンコウチームと合流を目指しに行きますが、覚えのあるようにお店にマチルダが突っ込むのでこれを撃破します。しました。

喜ぶのも束の間、桂利奈ちゃんに指示を出して全速後退しましょう。ダー様に狙われます。

 

2両撃破したので目標は達成しましたが、恐らく狙えるポイントはまだまだありますので、このまま真面目にやります。

ハマっ子ダー様が「イギリス人は恋と戦争で手段は選ばない」とハマっ子格言でアンコウチームを追いつめている時ですね。

38tが間に入って暴投ならぬ暴射した時を見計らい、アンコウチームが牽制弾をチャーチルに放ったのと同じタイミングで、最後のマチルダを撃破します。

よーし、余勢をかって、このままチャーチルまでやっつけちゃいましょう! ほうら、このガチガチしたケツにぃ、大野ちゃん山郷ちゃんぶち込んで楽しんでやってくださいよ!

 

『先輩! チャーチルの砲身こっち向いてます!?』

『進路左にアクセル!』

 

っドォン!

 

『M3リー、走行不能!』

 

はい、負けました。あちゃー、やられちゃいましたか。

ぐやじい、とはならないのが担い手RTA。次のサンダース戦では必ず最後まで残るようにしましょう。

まぁ、後は原作通りアンコウチームがチャーチルの背後を取ろうとして失敗という形です。

 

試合結果リザルトは……マチルダ3両撃破!

経験値が、うん、おいしい!

おー、ウサギさんチームのパラメーターが上がりましたね、他キャラのステータスはここでしか見られないので、この辺も調整する兄貴はメモしておきましょう。

本RTAでそこまでやると一々確認する動作でタイムロスしてしまうので、特に覚えておく必要はありません。澤ちゃんの統率値が40を超えたのは確認しておきます。

 

試合が終わったので、アンコウ踊りをせねばなりませんが、ここで足早にバックレてるとスキップできます。

さっさと家に帰って就寝……

 

『砲門先輩!』

『あなたが、私たちのマチルダを3両撃破した車長さん?』

 

ぐあ゛あ゛あ゛あ゛、ダイムロズだあ゛あ゛あ゛あ゛

聖グロ練習試合で活躍するとダー様のイベントが挟まる事を失念しておりました(ガバ)

これで聖グロノーブルシスターズとの友好値が上がりますが、はっきり言って本RTAではあまり要りません。理由は劇場版編で話します。

さて、ここからが更にタイムロスで、このイベントが挟まるという事は……

 

『砲門ちゃーん! アンコウ踊りやるからよろしくー!』

 

ぐあ゛あ゛あ゛あ゛、ダイムロズだあ゛あ゛あ゛あ゛(本日2回目

いくら自分のガバとは言え、こういうのは避けたいっすね

あー、もう自分への怒りで顔真っ赤だし、愛ちゃんも恥ずかしさで顔真っ赤だよ。

 

はい、それではこれで行ったん切ります。次は戦車道大会のトーナメント抽選からですね。

ご視聴ありがとうございました!

 

 

シナリオ気になる兄貴は次をどうぞ。

 

「……………」

 

いや、思ったより吞み込みの早い子達だな、と感心している。本心である。

西住さんから、1年生たちの指導も兼ねてと三式中戦車ではなく、M3リー中戦車に乗る事になったが、物覚えの良い子達ばっかりで、地元にいた時の毒気が抜けた実感を味わされている。

 

「先輩、もう撃っちゃって良いですか?」

「ダメ、射撃訓練は後で目一杯やるから、今は桂利奈ちゃんの運転指導に付き合ったって」

「はーい」

「あい!」

 

蝶野教官の模擬戦だが、初心者にいきなり撃破を目的とするのは荷が重いと判断したが、この有望な1年生たちならもっと色々と教えておいた方が良いかもしれない。

模擬戦の展開は、Aチーム包囲網といった具合であったが、続々と撃破され遂には生徒会と私たちだけになった。

目の前の38tとⅣ号の砲塔が向き合うが、ここが隙であろう。

 

「はい、山郷ちゃん大野ちゃん、生徒会チーム狙って狙って……撃て!」

「「よっしゃー!!」」

 

待ってましたと言わんばかりに、砲手ペアが見事に命中させる。

白旗が上がったのを見て車内はやったやったと喜び始めるが、目の前のⅣ号が砲をこちらに向けている。マズイ!

 

「桂利奈ちゃん! バック! バック! ぐお!」

 

案の定、Ⅳ号の砲撃がこちらを命中。

シュポ!という音が聴覚に響いた後、蝶野教官からの有効判定を貰ったことが伝わった。

ただ、車内の雰囲気は悪くない。初撃破がとっても嬉しいのは私にしても懐かしい事である。笑顔を後に車内から出るとAチームもAチームで喜びを表現し合っていた。

流石、西住流ということであろうか。

 

その後、車庫の前に集まって、蝶野教官から「グッジョブ、ベリーナイス」とまとめられた。

Aチームが名指しされたのに、どこか私自身も納得し笑みがこぼれてしまう。

練習が終わり、荷物をまとめて帰ろうとしたときである。

 

「あ、あの砲門先輩!」

「澤ちゃん、どないしたん?」

「今日は、ありがとうございました!」

 

澤梓

この1年生チームで車長を務める彼女が、一人感謝の言葉を述べられた。

車長とは何かを教えるに、私は言語を放棄した。『よう見とき』としか言えないのは、あんまり好ましくはないだろう。

でも、この子の何かにもし響くものがあったのだとしたら、それはそれこそ彼女の才能と努力であろう。

 

「明日もがんばろな」

 

はい!と力強い返事。先輩冥利に尽きるこの時は、何度味わっても飽きないものである。

 

 

練習試合には賛成の私も、相手が聖グロとなれば話は別である。

ピンク色のM3リーに「花柄も入れようや」と提案していた先ほどまでの笑顔は今とても張りつめている。

広げた地図を西住隊長と共に見つめる。

 

「相手は聖グロリアーナです。恐らく、正面から撃ち合ったり、待ち伏せをするよりも、大洗市街地へ引きこみ、そこで迎え撃ちたいと思います」

「良いと思います! 大洗は私たちの庭です!」

 

バレー部チーム車長の磯辺さんの言葉に、他の車長もうなずく。

 

「私も同意です。となると、どうやって引きこむかですが………」

「それはⅣ号にやらせてください。まず聖グロリアーナを視認し、砲撃。こちらへ誘引します」

「場所は……ここの丘陵地なんかどうでしょう。開けたとこと、細い道があって、お相手さんの車両にもよりますけど、ウチらとの接触にもええ具合に時間かかると思います」

「うん、私もそれが良いと思う。市街地への道も確保されてるし」

「市街地へ行った後の各車の配置ですけど……」

 

おおむねの作戦が決まると、最後の最後で負けたらアンコウ踊りをさせられると聞いて、西住さんと私を除く面々がげんなりとした。

そんなに酷い踊りなのだろうか、と思いつつもとにかく日曜日を待つしかない。

帰宅して動画サイトでアンコウ踊りを見た私は戦慄のままに、練習試合に手を抜かない事を決意するしかなかった。

 

当日

聖グロリアーナの隊長ダージリンをはじめてみた私はその脚線美に目を奪われた。

戦車道において、プレイにこだわりのない生徒はパンツァージャケットのデザインで決める者も多く、聖グロリアーナ志望が多い理由に何となく納得してしまう。

 

さて、待つ時間というものは暇なもので、1年生たちはトランプゲームで革命をはじめていた。

自分もそれに参加し、澤ちゃんの後ろでニヤニヤと眺めている。

 

「Aチームが戻って来るぞ!」

 

通信が入ると即座に戦車の中へと入り込む。

さぁ、いよいよデビュー戦だ。遅れて乗りこんだ1年生たちの表情はいささか強張っている。

 

「撃て撃てーっ!」

「撃たんでええ! 山郷ちゃん大野ちゃん!」

「はい!」

 

内心「あのドアホ!」と毒を吐くが、砲手ペアを制止したので、これで良い……という訳ではなく、他の車両が撃ち始めてしまっていた。

確かに作戦ではここで数発砲撃、聖グロリアーナに市街戦への誘因を悟らせないためであるが、撃ち込み過ぎてみんなハイになってしまったのであろうか。初心者であれば仕方ないか。

戦車から顔を出すと聖グロリアーナの反応も良好であった。二手にわけてこちらを包囲しようとしている。

マチルダが迫って来た。寸断なく繰り出される砲撃に、車内が揺れに揺れる。

1年生というか初心者にこの容赦のなさは、悪い意味でとてつもないプレッシャーだ。何とかなだめるかと思ったが

 

「嘘―――!」

「こんなに怖いなんて……!」

「やば」

「みんな、落ち着いて、大丈夫、大丈夫だから」

 

澤ちゃんの声は予想外にもしっかりしていた。

その言葉にみんな落ち着きをにわかに取り戻したようで各自の役割に向き合い始める。

やっぱ、この子車長の才能あるわ

 

「桂利奈ちゃん! そんな感じでええから避けて避けて」

「あいーっ!」

『皆さん、砲撃は結構です! このまま市街地へ移動します!』

 

履帯が外れた38tを尻目に、何とかマチルダの攻撃を避け切って、市街地へと向かう。途中、砲撃禁止区域だったこともあってみんな、先ほどよりも安心している。

 

「砲門先輩、ここからどうしますか」

「ウチらからしかけるってのはまず無し。多分、どっかで事態が動くやろうからそん時に動こっか」

 

ひとまず事前に計画していた通り、空き地に配置を完了させる。

ここは壁と建設資材が良い具合に重なっているおかげで、M3リーを隠しつつ周辺を見渡せる絶好の場所だ。

 

「先輩! マチルダ4輌とチャーチル来ました!」

「撃ちますか?」

「や、まだ。今撃っても他の車にやられるだけやわ。ここもじっくり待っとこ。宇津木ちゃん、他のチームに位置だけ連絡しといて」

 

全員からはーい、と返事。良い子達だ。

聖グロリアーナの車両を見過ごして一拍開けた後に一息入れる。

先ほど述べた事態が動くというのは、この直後であった。

 

「こちらCチーム1両撃破!」

「こちらBチーム1両撃破!」

「先輩!」

「桂利奈ちゃん発進! ……Cチームのおった立体駐車場に向かって!」

 

元気の良い掛け声とともに空き地から抜け出した。

向かう先は立体駐車場。見上げると黒煙がうっすらと立ち込めている。ただ想像通りであるならば……

 

「Cチーム走行不能!」

「Bチーム敵撃破失敗! 及び走行不能すみません!」

「よっしゃあ!」

 

通信が終わると同時に立体駐車場へたどり着いた。

八九式とマチルダ双方から火炎と煙が出ており、隙だらけである。

 

「ここは山郷ちゃん! 撃っちゃって!」

「よーし!」

 

主砲75mm砲の音が耳をつんざくが、視界に入ったのは白旗を上げたのはマチルダであった!

 

「やったーー!」

「あゆみすっごーい!」

「Dチーム! ありがとう!」

「Dチーム、マチルダを撃破できました~!」

 

車内と同じくして八九式から顔をのぞかせたバレー部の面々がこちらを激励する。

しかし、浮足立ってばかりも、いや、ここは浮足を立たせに立たせよう。

相手は残り3両、こちらも3両だが、生徒会から復帰の連絡がない以上、実質2両か……上等!

 

「よし! このまま勢い乗るで! Aチーム! 合流したいんやけど、どこがええかな!?」

「RKN地点で合流しましょう! しかし、聖グロリアーナも戦力を集中してると思います。お互いに動く以上、各個撃破を避け、遭遇した場合は無理にこちらへ来なくても大丈夫です」

「了解!」

「RKNって何だろう~」

「旅館やで、旅館。なんかあったやろ。桂利奈ちゃん場所分かる?」

「旅館……あそこだ!」

 

自信満々なあたり、ここは信頼するとしよう。土地勘の上では彼女たちしか頼るものもないし

ふと、聖グロの動きを予想していると、思わず澤ちゃんと目が合った。

ただ、その視線からは偶然以外のものが読み取れる。

 

「澤ちゃん、何か聞きたい事あるんか?」

「えぇ!? いや、そのぅ……砲門先輩、どうしてCチームの方を選んだんですか? まだあの時点だと撃破されたのは勘違いだとは分かっていなかったんじゃ」

「あぁ、それな。いや、八九式の砲でマチルダを撃破できるかなぁ思ってさ。そりゃ、当たりどころ考えたらイケるやろうけど、ちょっと気になってな。そんでCチームの方に向かったんよ」

「そこまで考えてるんだ」

「先輩頭良い」

「褒めろ褒めろ。まぁ、こういうのは半年もやっとったらある程度は分かってくるから、あんまイキり散らかせへんねんけどな」

「砲門先輩! RKN地点見えました!」

「よし、こっちが先か、このまま……停止!」

 

急停止に思わず車内がどよめくが、その判断は間違っていなかった。

建物の合間から、Ⅳ号とそれを追いかけるマチルダが見えたからだ。

 

「今度は大野ちゃん。撃ち方用意」

「は、はい!」

「………おぉ、よし今や! 撃て!」

 

カーブしきれなかったマチルダがそのまま店に突っ込んだ。

ここを撃たない手はない。見事に命中したマチルダから白旗判定が上がると大野ちゃんは大いに喜んだが、そうは問屋が卸さなかった。

 

「桂利奈ちゃん! 後退!」

「え?」

「後続のマチルダとチャーチルが来とる! 早く!」

「あ、あいー!」

 

そのままバックに進めると、予想通りチャーチルとマチルダの砲撃がこちらを掠めた。

だが、本命では無い。牽制弾だ。

向こうの狙いは先ほどまで追いかけていたⅣ号であろう。

もう一度、後を追うよう桂利奈ちゃんに指示を飛ばす。うまくいけばたった2両ながら挟撃が可能になるはずだ。

合流場所だったRKN地点。そこは追い詰められたⅣ号と、聖グロがにらみ合っていた。

 

「参上!」

「こちらも参上!」

 

横から殴り込んだのは黄金色に輝く38t! 履帯を直したのであろう。

2:2:1の挟撃に形成逆転を確信したが……

 

「桃ちゃん、ここで外す……?」

 

そういえば、生徒会チームの砲手は河嶋広報であった。

あらぬ方角に弾は空を往き、マチルダの砲撃によって38tは撃破されてしまった。

が、ちょうど良いかもしれない。これでマチルダは隙だらけだ。

 

「山郷ちゃん大野ちゃん! 今度はダブル砲撃! 一、二の、発射!」

「「いっけーー!」

 

主砲と副砲が見事マチルダに命中した!

初心者チームで3両撃破とは幸先が良い。ハットトリックだ!

 

「よし、このままチャーチルも撃破や! あのパツキンねーちゃんのケツにガンボリ……」

「ごきげんよう?」

「先輩! チャーチルの砲身こっちに向いています!」

「進路左にアクセル!」

 

してやられた! と思ったのは、チャーチルの攻撃を食らって、白旗が立った後である。

しかし、どこか達成感があった。

たった1両で聖グロのマチルダを3両も撃破したのだ。MVP賞もらえへんかな。

 

その後の試合は、ウチらが撃破されたすぐそこの場所でⅣ号とチャーチルの一騎打ちであった。

Aチームのフェイントを入れてからの背後を狙う作戦は実に見事で、その動きに感動すら覚えたが、聖グロの隊長はなるほど実力者で、これを返り討ちにした。

 

結果は敗北である。

しかし、追い込めたのは事実だ。練習試合としてこんなに実りのある結果は無いであろう。

試合が終わると頭の切り替えが早いのが私の長所だ。オンとオフの差は開いておいた方が色々とさっぱりできる。

言い訳はよそう、アンコウ踊りから逃げなければならない。

聖グロの隊長さんが西住さんと何やら話し込んでいるこのタイミングを狙って、このまま適当に喫茶店で時間をつぶすとしよう。

 

「私達、大活躍だったね!」

「これで男子に言い寄られたらどうしよう~~~?」

「いや、うち女子高だから」

「ごめんなさい、あなたがM3の車長かしら」

「え!? い、いえ! 私は車長ですけど、今日指揮したのは……って砲門先輩!」

 

澤ちゃんの声に思わず振り返ってしまう。後悔先に立たず。

しかして、歩み寄ってきたのは聖グロリアーナの隊長さんとお付きの二人であった。

 

「あなたが、私たちのマチルダを3両撃破した車長さん?」

「へぇ、まぁ」

「聖グロリアーナのダージリンです。以後、お見知りおきを」

「こ、こちらこそ。大洗女子の砲門 愛です。よろしゅう」

「砲門? もしかして関西ジュニアチャンプの?」

「何や、ご存知でしたか」

 

何故?と思ったが、聖グロの隊長ともなれば地方チャンプの名前ぐらいは把握していて当然かもしれない。

 

「えぇ、もちろん。第二京阪の主、と称された程の方ですもの。でも、もう少しガサツな方かと思っていましたけど」

「思われてる通りですわ。1年も経てば、色々と毒も抜けますんで」

「毒ですか」

 

後ろに控えるオレンジ色の1年生が苦笑する。

 

「真面目な話、中学の進路相談では聖グロリアーナ行こうと思ってたんですけどね」

「我が校に。良ければ今からでも手続きはこちらで済ませますが」

「いや、お気持ちだけで。鶏口となるも牛後となるなかれ言いますし」

「ふふっ、残念。また、戦いましょう」

「よしなに」

 

一礼を最後にダージリンさんは聖グロの学園艦へと向かった。

ことわざ言った後に、口元がにやけていたが、引っかかるとこでもあったのだろうか。

何にせよ圧の強い人やなぁ、と思った矢先。

 

「砲門ちゃーん!」

 

 

「アンコウ踊りよろしくー!」

「大丈夫、私たちも踊るから」

 

小山先輩何のフォローにもなってませんて、それ

連れ去られるように更衣室へと連れ去られると、ピンクのピチピチスーツを押し付けられる。

室内にはAチームの面々もおり、生徒会以外その表情には影が差している。

 

「会長。もうこの際ですからウチはええけど、1年生の連中はどこ行ったんですか?」

「あぁ、記録用にカメラ持って撮影してもらってるよ」

「え゛!?」

「いやー、アンコウスーツあんまり数揃ってなくてさー。私たちの分しかないんだよねー」

「ちなみに、Cチームは運転と太鼓だ」

「は!? ず、ずるいずるい! ウチも太鼓する!」

「まーまー、そう言わずにさー」

「いやーーーーーーーーー!」

 

いよいよ踊るしかなく、覚悟を決め……いや、決まらない

恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら踊っているが、目につくのはニヤニヤとこちらを撮影している1年生ズだ。

 

「せんぱーい! もっと笑ってくださーい!」

「脚上げて! 脚!」

「ボディライン良いからモテモテになれますよ~」

「目線くださーい!」

「ちょ、ちょっと皆。先輩に対して、ぷふっ」

「…………………」

「自分らは逃げ切れた思って良い気になりやがって! 明日の練習、しごきにしごき倒したるからな! 笑うなぁ!」

 




誤字脱字などがあればご指摘ください。

ウサギさんチーム大幅強化しないと……(使命感

次の投稿は間に合えば金曜日に投稿します。投稿して――――


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5話~6話まで

タグに「パロディ」を追加しました。


家元と一緒に抱き枕デビューした子が登場するRTA、はっじめーるよー

 

ガバガバタイムロスを晒してアンコウ踊りを全世界配信されてしまったとこからスタートです。一生ネットの晒し者

はい、ウサギさんチームが大活躍したせいで全員揃って西住隊長で謝罪するシーンはカットです。あと普通にみぽりんと一緒に作戦立てたので、会長の「これからの作戦は~」もなしです。ここは良い感じに短縮できましたね。

ダー様から紅茶セットを貰って、ここで自動セーブ入ります。

ふぅ、実はここの場面、聖グロ戦で活躍してしまうと、砲門ちゃんにもポットが送られてしまうランダムイベントが発生するのですが、何とか回避できました。

ルクリリちゃんと個別で仲良くなれますので、ルクリリルートを狙う兄貴はどうぞお試しください。

 

次の日曜まではとにかく練習練習練習です。

この練習を活かしてウサギさんチームを大幅強化しておく必要があるのと、同時並行でねこにゃーさんと仲良くなるためにオンラインゲームをはじめておきましょう。

ちなみにねこにゃーさんは、友情値上がりやすく、ゲーム内チャットであれこれやっているだけで済むので非常に楽です。友情値が上がると加入イベントも発生するのですが、この場合西住殿経由で勝手に済ましてくれているのでこちらも楽。RTA向きのキャラクターですので本当に足を向けて寝る事ができません。(盛大にガバをやらかした後なので尚更)

チャット内でなんとなく戦車道履修者だとアピールしておきましょう。

 

日曜日です。

ここは原作で4話から5話にかけての、さいたまスーパーアリーナで開かれる第63回戦車道全国高校生大会のトーナメントが抽選発表されるところですね。

ここで埼玉行きに随行するかどうかを選べますが「はい」を選択します。

RTA的には随行せず、ウサギさんチームや他のチームも指導して強化した方が良いのですが、ここで随行してどうしても確認しなければならないことがあります。

さいたまスーパーアリーナに着きました。はえ~、おっきぃ。

投稿者は砲門ちゃんよろしく関西人なので、あんまり関東に詳しくないんですけど、ゲーム内とはいえ埼玉県が緻密に描かれているのであちこちカメラを向けてしまいます。

 

『大洗女子学園 8番!』

 

原作通りサンダースと当たることになりました。

ここですがセーブ&ロードを繰り返すとたまに別の学校になったりします。

遠くからサンダース生の声が聞こえますが、めちゃくちゃ来てますね。投稿者も高校時代は部活動で色々と大会に行ってたのですが、在学生の多い学校が表彰されるとめちゃくちゃ歓声がデカかったのを思い出します。(有隙自語

 

ここからが重要、というより確認したかったところです。

最初に設定しました友情値2ですが、ここで親友イベントが発生しますので、確認しておく必要があります。

というのも、このタイミングでしか親友が誰であるかを確認する事ができず、今後のチャート形成での行動に大きく左右されるからです。

西住殿たちに友人を探してくるといって戦車喫茶には行かず、辺りをブラブラします。

前も言いましたが、ここでは最終章やスピンオフなどでのキャラクターが出てくれると嬉しいのですが………

 

『安ちゃん!』

『砲門じゃないか!』

 

キ、キターーーーーーーーーーーーー!

出ました! BC自由学園の安藤くんです! 女子という女子を食い散らかしてそうな下品で野犬のような安藤くんです!

いや、これはRTA的に風が来ています。ここでほんへ以外のキャラクターが出てくれる事で、劇場版編で大いに役立ってくれますし、安藤くんの場合……とネタバレは避けますが、劇場版編に突入したらご説明いたしますので、お待ちください。

 

旧交を温めた後は、戦車喫茶に戻ります。

ここで押田くんやマリーさん、祖父江さん砂部さんあたりとも仲良くなれば御の字でしたが、欲をつついてガバが出るような真似は避けたいのでそそくさと進めます。

 

ちょうど戻ってくると、最早ネタとしての要素が強いエリカさんのまだ純粋に強キャラだった時代を見る事ができます。

ここで捨て台詞に口答えできますが、あんまり意味無いので睨みつけるだけにしときましょう。

 

『書いてもないこと、ルール言われても困るんやけどなぁ』

 

あー、もうやっちまったよ。

ストーリーを進行する上で、オリキャラの性格が形成されはじめると、たまに勝手に動いてしまいます。

ただこの程度であればOKです。実はここで何を言うかで長々としたイベントになってしまいます。ガチ反論して逸見さんとレスバすることもできますが、結構なギスギスになるので心が弱い兄貴にはオススメしません(打ち砕かれた人)

 

この後も練習に練習をしておきます。秋山殿と一緒にサンダースに潜入する事もできますが、それ以上にウサギさんチームを強化しておくことの方が大事です。特に澤ちゃん。

西住殿と作戦会議を開いて、いよいよサンダース戦です。

 

会場に着くと、選択肢が表示されます。

 

            サンダースに挨拶をしに行く。

『さて、どうしようか。 ウサギさんチームと整備をする。

            西住隊長に作戦変更を願い出る。

           →「ちょっと息抜きに辺りをぶらつくか」』

 

お、この選択肢は……はぁ~~~~(クソデカため息)

はい、これは親友イベントです。試合開始前の選択肢は主に相手チームへの挨拶、戦車の整備、作戦変更の3つしかないのですが、4つ目の選択肢がある場合親友イベントが発生しています。

そして、このタイミングというかサンダース戦前での親友イベントは、最初に設定した友情値2の内の、もう一人を指しています。

まぁ、おおよその検討はついているのですが

 

『バン』

『後ろから撃つんだ。趣味悪くなったんじゃない?』

 

ナオミさんですね。

う~~~~~ん、ナオミさんかぁ……いえ、これはこのまま進めましょう。

安藤くんが親友というだけでも、チャート上大きな助けになっているので、むしろここでスナイパー枠のナオミさんが親友になるのは、全く問題ないどころか、追い風と言っても良いかもしれません。

このままナオミさんとのイベントを進めて、サンダースのキッチンカーまで行きましょう。

砲門ちゃんのスキル『健啖家』でちょっとタイムロスですが、バクバク食べたところでストップがかかるので微々たるものです。

 

はい、それでは試合開始です。

今回のサンダース戦ですが、生存率50%を達成するためにも、とにかく生き残る必要があります。

特にウサギさんチームは序盤から狙われますので、その為に今まで練習を重ねてきたと言っても過言ではありません。

少なくとも桂利奈ちゃんはもう、立派な操縦手ですので適切な指示を出せばなんとかなるでしょう。

それとですが、通信傍受も最初で教えない方が賢明です。

もし、教えてしまった場合、傍受用の気球を狙って砲撃するのですが、無くなったら無くなったで、おケイさんがガチの優勢火力ドクトリンを繰り出してきて、難易度が跳ね上がってしまいます。

原作通り、卑怯なままでアリサにはタカシへの思いを吐いてもらいましょう。

それと途中でおケイさんが義理人情から車両をセルフで制限しますが、撃破しても良い車両がそれだけあるという事なので経験値稼ぎも狙って何両かは撃破しましょう。

 

要約

・今回はとにかく生き残る

・通信傍受は原作通り

・何両か撃破する

 

以上、この3点で話を進めます。

 

場面は森の中。

既に6両に囲まれたところですが、ちょうど良いので1両撃破しましょう。

はい、森の中から来たシャーマンを撃破しました。多分、おケイさんについてきたやつですね。

多勢に無勢の形には変わらないので、このまま逃げます。

うーん、このままもう1両も撃破したいですが、行進間射撃はまだ難しいと思うので、無駄撃ちは避けましょう。

 

アンコウチームと合流して森から抜けます。

既に2両のシャーマンが先回りしていますが、西住殿から「その中にあいかけよ」と下知が下りましたので進みます。

 

『こんの~、ナメんな!』

 

おぉ、大野ちゃんがすれ違いざまにシャーマン1両撃破しました。

日頃の練習が活きましたね。お見事です。

 

通信傍受がバレました。

携帯で連絡が来た宇津木ちゃんがみんなに伝えて、車内が静かな怒りに満ちています。

ジャンクションへの誘引作戦がはじまりました。原作だと外すところですが、訓練されたウサギさんチーム、特に山郷ちゃんが外す事はありません。

三突と一緒に誘われたシャーマン2両を撃破しました。はい、またもハットトリックですね。

ウサギさんチーム強すぎんか?と思われますが、RTA上原作より強くないと時間短縮できないので……

 

次の作戦も原作通り、おケイさん本隊を128高地に向かわせます。

そろそろアヒルさんと、アリサのシャーマンが遭遇したところでしょう。

アリサがハメられた!って言ってる場面ですね。

西住殿の号令通り、このまま0615地点へ向かいます。

原作通りで見どころありゅ?と思った兄貴がおられると思いますが、サンダース戦は原作通りに進めた方がさくさく行くので仕方がないと思ってください。

先んじて申し上げますとアンツィオ戦も同様です。

3週目ぐらいして金運値上がってたら、もっと良い戦車で無双できるんですけどね。

 

『このタフなシャーマンがやられるわけ無いわ!』

 

しゃあっ! タフって言葉はシャーマンの為にある。タフ語録は戦車道ルールで禁止スよね?

うーん、やっぱりアリサ車は回避性能が高いですね。もっと強化しておけば大野&山郷ペアで仕留められたかもしれませんが、行進間射撃は難しいからね仕方ないね

ですが、そろそろ……

 

『今の音は……!』

『17ポンド砲です!』

 

はい、来ましたね。視認するとファイアフライとシャーマンが4輌来ました。サンダースの全車が揃いましたね。

あー、原作だとフェアプレイで来る数減らしてもらえるんですけど、多分、こちらが4両も先に撃破したのが影響してますね。

ただ、ゲームシステム的には1両あってもあんま変わらないステージなので、大丈夫です。

後方を任されましたので、ファイアフライの狙撃に注意しましょう。

っと、アヒルさんチームが撃破されてしまいました。

このままだと、原作通り撃破されてしまうので、ちょっとアクセントを加えましょう。

 

『大野ちゃんちょっと代わってくれる?』

『え、あ、はい』

 

はい、ここで砲手値を上げておいた効果が出ると思います。

ファイアフライがこちらを狙っているようですので、呼吸と履帯とファイアフライの砲撃音を的確に聞き分けて、飛んでくる砲弾に当てます!

ここでQTE発生! △→R1△!

 

『ウソ』

『先輩、すっごい!』

『砲弾に当てるなんて……』

『ぶはははは! 墓標作戦大成功!』

 

これで撃破を回避できました。

ファインプレイのおかげか、みぽりんから「諦めてはそこで試合終了ですよ」発言が無くとも、全員の気力が回復しましたね。

ここから、アンコウチームが丘の上に行って、ナオミの狙撃を回避しつつ、アリサ車を狙う展開ですが、先ほどの狙撃回避でうまくいけばファイアフライがこのままこちらを狙う可能性があります。そこはガルパンAIの判断なのですが

あー、丘の上、アンコウチームを目指しましたね。

となると、後は原作通りですのでこのまま進めましょう。

大野ちゃんの砲手スキルをもっと伸ばせておけば、ケイ車も狙えたかもしれませんが後の祭りです。

 

『サンダースフラッグ車、走行不能! 大洗女子学園の勝利!』

 

対戦、ありがとうございました。

これでサンダース戦は終了。さて、リザルト画面ですが……

シャーマン3両撃破とファイアフライの砲弾を弾いたのがファインプレイで経験値が加算されます。

今回は砲手の方に経験値が貯まりましたね。結構結構

 

リザルト画面から変わってストーリーが進行します。

ケイさんから「戦争じゃなくて戦車道」発言をいただくところです。名言

この後は特にやる事無いので帰りましょう。

え、麻子のおばぁのお話には付き合わないのか?

付き合いません(無慈悲)

アンコウチームに所属していれば強制イベントなのですが、そうじゃないのでRTA上タイムロスという扱いをさせていただきます。

さー、帰りましょう。何せ健啖家スキルで一々晩御飯でモノローグ語られるのであんまりこういうとこで時間をかけたくな

 

『バン』

『後ろから撃つんか。趣味の悪さが移ったか』

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

そういえば親友が所属する学校と戦うと試合後にイベント入るんでした。

まぁ、これは避けようがないのでロスとは思わないようにしておきましょう。テキストをさくさく進めるだけですので、気にする事ではありません。

はい、終わりました。今度こそ家に帰りましょう。

帰宅して、ご飯食べて、風呂入って歯磨きして就寝。

今日はここまで! ご視聴ありがとうございました!

 

 

 

 

 

シナリオ気になる兄貴は次話をお待ちください。ちょっと容量が大きくなっちゃったので……

 

 




誤字脱字などがあればご報告ください。

文中のQTEですが、2月3日20時に書き加えました。ご査収ください。

次の話は明日の10時に投稿予定です。


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抽選会→サンダース戦前

さいたまスーパーアリーナに来るのは、これが初めてという訳ではないが、そう毎日訪れるところではないので、あちこち見渡してしまう。

本音を言うと、今日は西住隊長に代わって、全チームの練習を監督した方が、強化に繋がるのだが、どうしても現場で会いたい友人がいたからだ。

戦車道をやり始めたと聞いたら、彼女も喜ぶだろうし、それ以上に彼女と出会えることに喜びを抱いている自分がいる。

 

「んーーーー! 終わったぁ! ねぇねぇ、会長たちが帰って来るまでどこかでお茶しない?」

 

武部さんの言う通り、会長たちは連盟の方に赴いて1回戦の会場や諸ルールについての説明を受けに行っている。

こういうものは長くかかるだろうから、どこかで暇をつぶす必要はあるだろう。

 

「あぁ、それなら良いところを知ってますよ! ここからちょっと歩くんですけど、戦車喫茶ルクレールてのがありまして」

 

秋山さんは、無類の戦車好きだそうで、戦車道の界隈についても幅広い知識を有している。

戦車喫茶ルクレールとは懐かしい。こういう戦車道の大会や、イベントがあると多くの学生や愛好家が通う喫茶店で、私も中学生の時、全国ジュニア選抜大会の抽選帰りに通ったものである。

 

「では、そこに行ってみましょう。砲門さんもどうですか?」

「あぁ、すんません。実はちょっと友達もここに来てる筈なんで、挨拶がてらちょっと探してきますわ」

「そうですか……」

「お友達も戦車道やってるんですか?」

「はい、小学生ン時に大会で知り合いまして、中2以来音沙汰ないんですけど、折角やし、会いに行こう思いまして」

「幼馴染かぁ……良いなぁそういうの! それじゃ、うーん、終わったら戦車喫茶で落ち合いませんか。何かあれば連絡しますんで」

「そうしてくれると助かります。ほな」

 

アンコウチームの面々に許可を貰うと、早速会場の周辺を見渡す。

黒森峰、プラウダ、サンダース、知波単……と生徒がごった返しているが、それだけにBC

自由学園の制服はよく目立っていた。

青を基調としたベストの集団はどこか剣吞としているが、こうもライバル校が多いのでは無理からぬことであろう。

 

「なぁなぁ、すんません。安藤さんってここにいます?」

「うん? あんたは?」

「大洗女子の砲門ってもんです。安藤さんとは子供ん時結構仲良くさせてもろてたんですけど……」

「砲門……あぁ! 関西ジュニアチャンプの!」

「安藤からはたまに話を聞いてるよ。でもゴメン、今ウチらも自由時間でさ。どこにいるかって言われると」

「左様ですかぁ……ほんならこの辺りぶらぶら探しときますんで。もし見かけたら『砲門が会いに来た』とだけお伝えください」

「うん、分かった」

 

なるほど、自由時間であったか。

しかし、探すといったもののここは広く、生徒も多い。いくら特徴的な制服を着てると言っても無理がある。

こういったものは巡りあわせだから、致し方ないと思ったその時。

目に入ったのは、日焼けした肌に三白眼。巡りあわせである。

私の友人―――安藤レナであった。

 

「安ちゃん!」

「うん? ……砲門! 砲門じゃないか!」

 

お互い成長した姿に一瞬別人かと思ったが、その声は我が友安藤レナではないか。

制服を着崩して、テレビのディレクターのような恰好をしているが、友人を見間違える事は無かった。

 

「ひっさしぶりやなぁ!」

「こうして会うのは2年ぶりか。お互い中学の時は忙しかったからな」

「ウチは戦車道一辺倒やったし、安ちゃんはそれに加えて受験勉強しとったからなぁ」

「何にせよ、元気そうでよかった。 ……ここにいるって事は戦車道やってるのか?」

「おう、成り行きってやつでな」

 

彼女には年賀状で、高校では戦車道ではなく勉学に励む事を伝えていたので、当然の疑問であろう。

 

「大洗女子か……初参加と聞くが、どうだ、大丈夫なのか?」

「まぁ、そこは気張るところでな。今色々ガンバっとるよ。なぁ、折角やしどっかで飯食いながらあれこれ話せぇへんか? さっき、君んとこの生徒に話聞いたら今自由時間なんやろ?」

「知っていたか。よし……それなら行きたいところがあるんだ。ついてきてくれるか?」

「おぉ、ええでええで」

 

一瞬考え込んだ安ちゃんに連れられて、アリーナ近くにあるチェーン系列の鉄板焼き屋へと足を踏み入れた。

戦車喫茶と同じく、ここも恐らく戦車道女子のたまり場になっているが、どちらかというとOBと思しき年齢のお姉さま方も見える。

案内された席はちょうど二人用で、窓際と中々雰囲気がある。夜景も綺麗に見えるかもしれない。

お互いにあくまで自由時間なので、あれこれとメニューは悩まずに津山風ホルモン焼きそばの超特盛を頼んだ。

 

「なぁ、文句いう訳ちゃう……や、文句言うわ。こういう時ってもうちょっとシャレオツなカフェとか、せめてファストフード店ちゃうんけ」

「それはそうだが、久しぶりにドンと腹に来るものが食べたくてな」

「何や、BC自由学園やったらお嬢様学校やろ。食うには困らんのちゃうんけ」

「それがなぁ」

 

話を聞くにBC自由学園の食事環境はあまり良くないらしい。

良くないわけでは無いのだが、あまりにもお嬢様向けの料理しかなく、受験で入った一般人たちからするとあまりに物足りなく、そして受け入れがたいものなのだそうだ。

その代表例がエスカルゴ定食なるものである。

 

「ああいうのをたまに1回食べるのなら良いんだが、毎日食べるとなるとげんなりしているんだよ」

「うどんと牛丼を求めるってのが相当やな。もっと他にも食うもんあるのに」

「鯖の味噌煮ってどんな味だったっけ」

「キてるなぁ」

 

三白眼が白眼になりかけている

どうやら頭にB級グルメが足りていないようなので、焼けた鉄板にソースを数滴垂らした。

ジュウと鼻孔をくすぐる音に、良い匂いが鼓膜をも刺激する。

 

「お~~、こういうのだよ。こういうの」

「大洗女子で良かったなぁと思ってる」

「お待たせしましたー。津山風ホルモン焼きそば超特盛ですー」

「「おお、美味そう!」」

 

目の前にデン!と盛られた焼きそばは、超特盛の名にふさわしいボリュームで、健啖家を自負する私もこれなら満足、満腹になるだろう。

 

「安ちゃんこんな食べる子やったっけ」

「学園艦に戻ったらしばらく食生活をやり繰りしないといけないから、こういう時に飽きる程食べておくんだ」

「元を取る訳や。よし、そんじゃいただきまーす!」

 

ホルモンを麺で絡めてひとまず一口分を小皿に取り寄せる。

この匂いが堪らない。ソースでブラウンに輝く麺は、いっそ黄金と例える事ができる。

だが、麺ではなくまずはホルモンを食べて、私は攻略にかかる。

……んんんん、ホルモン。カリカリに焼いたホルモンが口の中に脂という脂を広げつつ、浸透強襲戦術を胃袋に向けて敢行している。

 

「ん~~~~~、これこれ! こういうのだよ!」

 

安ちゃんも、久しぶりといった様で、目を輝かせている。

 

「大洗は確かサンダースと当たるんだよな」

「おぉ、そやで」

「1回戦から強豪だな。何か策はあるのか?」

「なーんも考えてへん。そこは隊長の、西住さんとお話することやけど……サンダースかぁ」

 

こちらが5両で精一杯だというのに、向こうは制限の10両編成で、全力で戦いに来るだろうと思うと、このホルモン焼きそばの美味さも忘れる程に思いやられる。

 

「西住って、あの黒森峰の……?」

「妹さんの方や。優しい人でさ。おまけに度胸もあるし、アタリやと思ってるで」

「そこまでの人か。会ってみたいな」

「ええ人やで~。安ちゃんもきっと友達なれるわ。そやそや、そっちは確か聖グロとやんな?」

「あぁ、学校としても打倒の機運は盛り上がっているが……おい、後ろを見ろ。何気なくな」

「ん?」

 

食事中の会話にして、今にボリュームが小さい

何を示しているのか言われたとおり、肩のゴミを払いのけたり、屋内の看板や壁掛けのメニューを見るフリをして、後ろを見る。

 

「右の…そう3番目の席」

「知ってる人らか?」

 

3番目の席には、私たちと同じ年頃の女子が、お好み焼きを切り分け合っていた。

どこの制服を着ているわけでもなく、私服なので地元の女子高生であろうか。

 

「カバンをよく見てみな」

「………おぉ、そう言う事か」

 

この距離からうっすらと見えるポッドを描いたエムブレム

聖グロリアーナの校章である。

 

「あれが、噂に聞く」

「あぁ、噂だがな」

 

聖グロリアーナは独自の、それも専門性の高い情報部を有して、他校に諜報をしかけている。というものである。

いささか都市伝説じみているし、何と言ってもそうだと噂されている情報処理学科はオープンキャンパスでプログラミングだのなんだのをしている姿を見た事がある

しかし、姿を見るというのであれば、目の前でああいうのを見せられると、噂は噂であったとしても身構えるべきであろう。

 

「何やったら店変えよか?」

「いや、対処法はある。適当に話合わせてくれ。     そうだ! 聖グロとの試合だが、私達の編成はな……」

「え、あ…………ルクレールを極秘に持ち込むぅ!?」

 

アドリブに弱いとは言わないで欲しい。

露骨に編成の話を持ち出したかと思うと、後ろにいた3名の聖グロ生がまだ食べている途中だというのに、席を起った。

私達の座る席をわざわざ横切ると、そのままレジで会計を済ませて店を出ていってしまった。

 

「どうやら当たりのようやな」

「あぁ、編成の話をしたら目の色変えやがっ、た!」

「情報だけはダメや、で!」

「勝利も貰い、たい!」

「そうは、いかな、い」

 

ホルモン焼きそばをこれ見よがしに独り占めされそうになったので、ヘラで押さえつけたが、安ちゃんはそれを巧みに巻き取り、ほとんどを自らの小皿に盛り付けた。

 

「安ちゃん、あいつら炙るために、ウチをダシにしたな?」

「ややっ、言ってなかったっけか?」

 

ホルモンを見せびらかすように一口頬張る。

良い笑顔をしたので許すとしよう。

 

 

 

 

「そんじゃ、また」

「あぁ。今度ウチに来いよ。というかなんか持ってきてくれ」

「カップ麺でええか。箱で持って行ったるわ」

「期待しておく。じゃあな」

「聖グロ戦応援してるで~」

 

BC自由学園の生徒がアルピーヌで迎えに来たので、そのままお別れとなった。

BC自由学園は古豪と評判。安藤レナの友人として、聖グロ戦を制してくれると期待しよう。

 

戦車喫茶ルクレールへは秋山さんが言っていたように少々歩かなければならない。

まぁ、ある程度の道は覚えているから、そう時間はかからない。

入店すると、戦車道女子たちが席を占拠していたような状態だった。

しかし、大洗の制服はまぁまぁ目立つので、アンコウチームの面々はすぐに分かったが、いかにも雰囲気が悪い。

あぁそういう、と納得したのは黒森峰の生徒、西住まほがいたからである。それとお付きの人間も

 

「無様な戦い方をして、西住流の名を汚さない事ね」

「何よ、その言い方!」

「あまりにも失礼じゃ」

「あなた達こそ戦車道に失礼じゃないの。無名校のくせに。この大会はね、戦車道のイメージダウンになるような学校は参加しないのが暗黙のルールよ」

 

お名前が分からないので、お付きの人と内心で呼ぼう。

私も長く戦車道をやっているので、プライドの高い人間の存在はよく知っている。

そういった方々は往々にして実力も努力も折り紙付き。彼女もそうなのだろう。

 

ただ、それでも。この私にも、思うところというものがある。

 

「強豪校が有利になるように、示し合わせて作った暗黙のルールとやらで負けたら恥ずかしいな」

「書いてもないこと、ルール言われても困るんやけどなぁ」

 

お付きの人に対して、どうしても目がキツくなってしまう。

武部さんも続いて「絶対に負けないからね!」と宣言したが、彼女は「頑張ってね」と西住まほさんと共に場を後にした。

いけ好かないな、と思ったが、少なくとも彼女たちは

 

「あの! 今の黒森峰は去年の準優勝校ですよ。それまでは9連覇してて……」

 

そう『強い』のだ。

良い戦車を揃えているだけでなく、戦略も練りに練って9連覇という偉業をはたしたのだ。

その事実に驚く武部さんで場が更に重くなる。

 

「ケーキ、もう一つ食べましょうか。砲門さんも戻って来たことですし」

「……おぉ、せやな! ちょっとガツンと食うてきて甘いもん欲しかってん!」

 

空元気を醸し出して場を盛り上げようとするが、当の自分もこの重さを共有していた。

折角のみかんのミルフィーユケーキだったが、味覚はどうにも鈍いままであった。

 

学園艦へ向かう連絡船

私は西住さんとサンダース戦について話し合うつもりだったが、お互いに何を切り出すわけでもなく、ただ甲板上で逢魔が時の空を見つめていた。

ふと、秋山さんがやってくる。彼女は私よりも西住さんと親しい。

気を利かせて、少し場を離れると二人は二人で何かを話し合っているようだったが、生徒会がやってきて、こちらは何か釘を刺すようであった。

 

「砲門ちゃんも、次も、そのまた次も絶対に勝つよう、副隊長としてよろしくねー」

 

言われるまでもない。

あの黒森峰にもプライドがあるように、私にも関西ジュニアチャンプとしての矜持があるのだ。

 

 

その日から、秋山さんが姿を消した。

大仰な言い方をしてしまったが、とにかく欠席だそうだ。

ただでさえ、少数でやっているので、一人の欠席でも気がかりだが、とにかく目の前の事をやるしかない。

 

「秋山さんは今日も来ないのか?」

「もしや出奔」

「上杉謙信だ」

「高杉晋作ぜよ」

「石川数正」

「「「「それ、か………?」

 

カバさんチームは歴史の造詣に詳しいと聞くのでノってみたが、どうにも反応が悪い。

選択肢を誤ったようだ。

 

さて、ここ数日来ていなかった秋山さんだが、今日は練習に参加した。何やら遠方に行っていたようで1年生連中からお土産をせがまれていた。

 

今日は、西住さんと本格的にサンダース戦についての作戦会議をする予定。

相手はサンダース。物量というか、質量共に兼ね備えた学校だ。

唯一、我々にアドバンテージがあるとすれば1回戦の車両数制限で向こうは多くの戦車を投入できるわけではないこと。

ハッキリ言って、アドバンテージにもなりゃしない。

 

「今日は、副隊長と共にサンダース戦の作戦を練り合うので、各自自習とします」

「戦車の塗り直しもやっといてや」

 

個人的にはカラフルなやつは好きなのだが……

作戦会議は防諜も兼ねて車庫の中の小さな部屋で行うことにした。ちょっとした休憩所である。

 

「西住さん、一応サンダースの今までの試合を見ましたけど、まず向こうがどんな車両出してくるかが問題ですわ。戦車の数も種類も豊富ですし……」

「それについてはちょっと、良い資料が……」

 

西住さんが持ち出したのは、記録用小型デバイス。

再生用のディスプレイに差し込むと、画面に映ったのは『実録! 突撃!! サンダース付属高校』である

 

「何ですのん、これ」

「ははは……秋山さんがサンダースに潜入して撮ってきたやつみたいで」

「潜入!? はえ~、すっごい。ここしばらく来てなかったのはそれが原因でしたか」

 

秋山さんの行動力に感銘を受けつつ、映像を見入る。

どうにも懐かしい面子が一人移るが、今は作戦について頭を回転させなくては。

要約すると

 

・ファイアフライが1両、シャーマンが9両(A1-76㎜砲搭載1×75㎜砲搭載8両)

・3両で一小隊の、一個中隊で編成

・フラッグ車は単独行動

 

この3点である。

 

「思いのほか攻めた編成ですけど」

「うん、もうファイアフライを投入するだなんて……」

「フラッグ車は、単独行動というか護衛は付けへんあたり、あんまり前には出てこないって事ですかね」

「そうだと思う。どこかに隠すとして……探索に斥候を出したいんですけど、どの車両が良いかな」

「Ⅳ号と三突は主戦力として採用したいですし、Ⅿ3か38tか八九式が、良いと思います」

「……この会場だと坂も多い。38tの足回りで単独行動は危険かも。八九式とM3を斥候に採用したいと思います」

「分かりました」

「それと斥候の出すタイミングは試合が始まって、展開を見極めてからにしたいと思います」

「最初っから出さないんですか?」

「その場合、向こうもその動きに気づいてフラッグ車の防衛に回すと思うんです。シャーマン3両一小隊と、フラッグ車を合わせて4輌からの攻撃を考えると、最初から出すのではなく、接敵して、相手の意思をこちらに集中させてから出した方が良いと思います」

「なるほど……分かりました。タイミングは隊長に一存します」

「うん、任せてください」

「となると、次は本隊がどう動くかですが……」

「こちらは5両、相手は10両です。戦力の分散を目的として、常に動き続け、優位になったところで三突かⅣ号で撃破したいと思います」

「機動戦ですね……良し悪し問わんから戦車が欲しいですねぇ」

「あはは……今あるもので何とかするしかないですよ」

「そうですね。ボヤいてても始まりませんし」

 

作戦内容が決まって、思わず愚痴を吐いてしまう。

西住さんも思うところがあるだろうが、苦笑で前向きに捉えているようだ。ま、眩しい

何はともあれ練習である。桃色から本来の深緑に戻るM3リーと1年生たちを見て「そういやしごき倒すの忘れてた」とあの辱めを思い出すのであった。

 

 

 

戦車道全国高校生大会『1回戦』

そう書かれた横断幕を見て、来てしまったなぁ、と実感する。

観客席には多くのサンダース生が来ており、チアガールもいるようだ。

 

「砲門先輩、どうかしましたか?」

「ん? あぁ、いや、来てもうたなぁ思って。緊張してる?」

「正直、心臓バクバクです」

「澤ちゃんらしいで。ちょっと辺りぶらついてくるわ。整備よろしく」

「あ、はい、任せてください」

 

1年生連中を育てる意味でも、試合以外のあれこれは彼女らに任せようと思う。

 

会場は森林生い茂る丘陵地帯。起伏の激しい地形で戦車の登坂能力も試されるであろう。

サンドイッチでも持ってこれば良かったと思いながら、風を浴びていると、見知った人間が寝ころんでいた。

そろり、そろり、と近づき、指鉄砲を彼女の頭上に

 

「バン」

「後ろから撃つんだ。趣味、悪くなったんじゃない?」

「ええ性格しとるんよ」

 

ナオミ。彼女はナオミである。

短髪のボーイッシュは相変わらずで、思った通りのイケメン女子になったようだ。

 

「隣ええか」

「ん」

 

座り込むが、何で話を切り出そうか悩んでしまった。

お互いにあれこれ言い合いたいのだろうが、彼女とは、こうして雰囲気を楽しんでいた中学時代を思い出す。

思えば、はじめて中学の全国大会で会った時もこんな感じだったか。

 

「戦車道、やってたんだ」

「成り行きでな。まぁ、充実してるで」

「でも大洗女子か。京滋バイパスの女王様が、えらく燻ぶってるんじゃない?」

「どっちかっていうと燃え滾っとる方やな。今日、勝ちに行くで」

「……本気で言ってるの?」

「最低人気の馬にも、勝つチャンスはあるもんよ」

 

ナオミの疑問は至極もっともで、だからこそ正々堂々と受け応える。

 

「愛。サンダースに来る気ない?」

「試合前に勧誘か」

「うん」

 

お互いに物怖じする性分ではないのが、こうしてウマが合った所以である。

 

「ウチの隊長の指揮、私の射撃、情報収集能力に、愛の指導力……合わせれば百人力だよ」

「気持ちは嬉しいけど、サンダースとかプラウダレベルの大所帯が苦手なん知っとるやろ」

「知ってる。だからジュニアの全国リーグで負けたんでしょ」

「言われてもうた。余計に行けへんな」

 

表情に思わず笑みが浮かび上がる。

こうして直裁にモノを言い合うのは、それこそジュニア全国リーグ以来だからだ。

 

「悪い事は言わない。サンダースに来た方が良い。私が手引きしておく」

「大洗にいんのはさ。親が勉強せぇ言うてたからなんは前も言うたけど、こっちの方が伸び伸びやれてるってとこあるんよ。それに………」

 

「せんぱーい! そろそろ整備終わりまーす!」

 

遠くから澤ちゃんがこちらに声をかけてきた。良いタイミングだ。

 

「大洗女子の戦車道で、楽しんでもうとる」

「……そう」

 

ナオミと共に立ち上がると、風が強く吹いた。

激励されているのか、頭を冷やせと言われているのか。どこか思惑を感じてしまう。

空を見上げると、雲が太陽を隠したところだった。

 

「なぁ、それやったら約束せぇへんか?」

「約束?」

「サンダースが勝ったらそっちに転校したるわ」

「………大洗が勝ったら?」

 

ふと、考え込む。

サンダースに勝つ。大洗が勝つ。となると、どうせだから良い物をねだっても良いだろう。

それこそ戦車なんかを融通してもらうのはどうだろうか。悪くない話だ。

それかナオミに短期転校してもらうという手もある。射撃の腕は私が見てきた中でもピカ一の彼女が来てくれたら、三式中戦車と共に乗り込んで撃破王を名乗ることができる。

あれこれと案が瞬時に思いついたが、その中でも最高の選択肢をナオミに提示した。

 

「ガム1枚ちょーだい」

 




次回は明日の8時に投稿します。
投稿させてくれーっ!


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サンダース戦!

 

「ムシムシする~」

「暑い~」

「血糖値スパイク~」

 

夏を目前に控えた季節

1年生たちの愚痴はおおむね賛同するところであり、とりわけ私などはナオミが奢ってくれるというのでサンダースのキッチンカーでドカ喰いをしてしまったのだ。策士め

 

「砲門先輩いくら食べたんでしたっけ?」

「ケバブ6個、ポテトいっぱい、ハンバーガー2つ、カツサンド5個、ちゃんぽん2人前……」

「聞いてるだけで太りそう」

「どうやってお腹周り押さえてるんですか~?」

「静かに!」

 

澤ちゃんの一声で停車する。

今日の試合から…というよりは、こちらが本来あるべき姿だが、基本的には澤ちゃんに名実ともに車長をやってもらい、私がたまに指示を出すという形である。

蝶野教官よろしく、こういったものは経験を積ませる内に積ませておいた方が良いのだ。

 

「シャーマン3両発見! これからおびき出します」

 

前進しようとしたその時

左方向からの砲撃が周囲に着弾した!

 

「っ! シャーマン6両に包囲されちゃいました!」

「桂利奈ちゃん! 来た道戻って! アンコウチームと合流!」

 

森林の中をとにかく駆ける

6両もこちらに向けるとは、ナオミが言うところの隊長の指揮は看板に偽りなしである。

ただ、こちらもやられてばかりという訳にもいかず、私が何を言うまでもなく大野ちゃんが砲塔を旋回していた。

 

「ちょっとついて来ないでよ~!」

「エッチ!」

「ストーカー!」

「マルチ商法! 大野ちゃん、よう狙い定めてから撃ちや! 向こうの足を一つでも削るんや!」

「了解! これでも……」

 

森林という環境はお互いに擬態という作用をもたらしている。

深緑の色みはⅯ3にしてもそうだが、シャーマンにしても同様である。

それ故、狙撃というのは難しく、まして行進間射撃となれば格別であろう。

身を晒している隊長車にでもかすれば、御の字であるが……

 

「喰らえ!」

 

見事! 

この数日間ビシバシと射撃訓練を行った成果が出た。

大野ちゃんが難なく…いや、この冷や汗を見るに難あって命中したシャーマンから上がった白旗が、この深緑の中でよく輝いている。

 

「あや、すっごい!」

「ふぅ~~~~」

 

「ワーォ! よく当てたわね! なら、こっちも反撃よ!」

 

向こうの隊長、ケイといったか。

剛毅な人とは噂に聞くが、どうやらその通りで、ひるむ事も動じる事もなく、反撃を指示してきた。

折角、盛り上がっていた車内も周囲の着弾に再び恐慌状態に陥ってしまう。

しかし、だからといって萎縮するような子達ではない。

桂利奈ちゃんの運転をとくと見るが良いわ

 

『ウサギさん! このまま停止できますか!?』

 

通信の様子からすると、アンコウチームの方にも3両現れたようである。

サンダースめ、手際が良い!

5両に追われているこちらとしても停止はできないので、このままの勢いで合流して、南南西方面へ逃げる事が告げられる

 

「回り込んできた!」

 

またしても、先手を打たれた。

こっちが必死こいて逃げるので精一杯なのに……やはり戦力があると手足も伸びやすいものか。

西住隊長からは、このまま突っ切るよう指示が入った。

桂利奈ちゃんなどは特に驚く事もなく、それはそれとして焦りながら運転に集中しているが、確かにそれしか手はない。後は度胸だ。

ただ何度も言うように、ウサギさんチームは、思いのほか優秀なのである。

 

「あゆみ、あや。右のシャーマン狙える?」

「梓?」

「撃破できないかな」

「本当に言ってるの!?」

 

澤ちゃんの指示に私も目を丸くした。

「この子、何言ってんの?」かではない。「その手があったか」と感心しているのである。

 

「先輩、どうですか」

「ええと思う! やってみ!」

「はい! あゆみ、右のシャーマンの履帯を狙って! あやはすれ違いざまにトドメ!」

「……よーし!」

「連続撃破だー!」

 

山郷ちゃんにしても、射撃訓練は相当積みに積ませた。

練習の行進間射撃では大野ちゃんに負けるとはいえ、何度か的を当てているのは何度も目にしてきた。

うまく行くだろうか、とは思わない。当ててくれ、とだけ祈れば良いのだ。

 

「ここだっ!」

 

後方からの砲撃を躱すために、じぐざぐに動いているおかげか、前方のシャーマンが射線上に来ることは何度かある。

それにしても、そのタイミングを狙って計って、履帯を狙うと言うのは並ではない精神力と動体視力を伴う。

当ててくれ、当ててくれ、当ててくれ、当ててくれ、当ててくれ、と5回ほど念じたところで

 

「当たった!」

「よし、あや!」

「連続撃破ぁぁぁああーーー!」

 

安堵すべきなのに、思わずゾクゾクとした感情が体中を走った。

履帯を見事狙い撃った、山郷ちゃん

そして今度は大野ちゃんがすれ違いざまにエンジン部分に命中させたのだ。

白旗も確認。サンダース側もそうだが、私としても唖然とする他なかった。

 

「いや、みんな凄いなほんまに」

「先輩の指導のおかげですよ~」

「このままハットトリック目指しまーす!」

「良いなぁ、回転砲塔は」

 

感動そのままに、大洗女子としてはここから仕切り直しである。

向こうの神がかった予測能力に対応も考えなければならない。

何であれ、隊長の指示を待つしかないのだが

 

「あれ?」

 

宇津木ちゃんが何やら携帯を持ち出した。てか、持ち込んでたんか……

中学の時は、先輩方がそういうのに厳しかったから、自然と持ち込む事を思考の外に置いてしまっていた。

 

「これって……みんな聞いて聞いて!」

 

宇津木ちゃんから発せられた諸情報に車内は驚きと、にわかに怒りが満ち溢れた

武部さんからメールで伝えられたというのは『サンダースが通信傍受をしているので、メールをでやり取りしたい。また、傍受を逆手にとって相手をおびき出す』との事であった。

顔を上空に覗かせると、いかにもな気球が見下すように飛んでいる。

 

「あんまりじゃないですか、こういうの」

「いくら何でもズルくない?」

「ルールで禁止されていない以上は、しゃーない。一応は、な。でも」

 

(腹の虫がおさまらん)

 

ガラの悪さが思わず飛び出そうになるが、心中に留めておくのは西住隊長に策があるからなのと、ウサギさんチームを前にそういったものは出したくないからだ。

 

「まぁ、こういうのは出し抜いた時が気持ち良いもんやで。さ、言われたとこに行こか」

 

1回戦からこれというのは、どうにも気が悪いが、とにかく抑えて抑えて

ジャンクションへの誘引が成功し、更にそこへフラッグ車の偽情報を流すと、狙ったかのように2両のシャーマンがやってきた。

こちらに気づいたかどうかは分からないが、時すでに遅し。

三突・Ⅳ号の集中砲火を受けるシャーマン、M3の全砲塔からの集中砲火を受けるシャーマンと、2両から白旗が上がる。

 

「やったーーーーー!」

「ハットトリック成功!」

 

何度も書くが、本当に初心者だろうかと考えさせられる。

呑み込みが早いのは何につけても良い事だが、末恐ろしい限りだ。

 

次の欺瞞作戦は、こちらがファイアフライ狙いで高地に陣取るというものだ。

西住隊長はどうやら相手のフラッグ車の位置に目星が付いているようで、これでサンダースのフラッグ車を除く全車を一か所に、それもこちらが把握している場所に移動する算段だ。

恐らくだが、まだこちらが通信傍受に気づいたとはバレていないはず。

先ほどの撃破も、あくまでフラッグ車を囮に誘いだされたとしか向こうは認識できていないと思う。

 

「連絡! 敵フラッグ車発見、0615地点に集結!」

 

宇津木ちゃんの一言で、M3と言わず全車のスピードが上がる。

フラッグ車をこちらが先に見つけたのだ。

さっさと仕留めれば、大洗女子学園1回戦突破、それだけでなくサンダースに倍の戦力差で勝てたと大きく弾みになる……!

 

「カメさんはウサギさんとカバさんで守ってください!」

 

指定の地点につくと、八九式が姿を現した。ご丁寧に機銃で攻撃を受けているようだ。

 

「あくまでⅣ号が仕留める手筈やから、撃つにしても牽制やで!」

「「はい!」」

 

上手くはいかないもので、煙幕が晴れたシャーマンの意識をこちらに向けて、その横からⅣ号が撃つ作戦だったのだが、フラッグ車を任されるだけあってこの辺の勘は働いたのだろう。すんでのところで避けられてしまった。

長い追撃戦が始まる。

 

「当たんない!」

「避けんのうまいなぁ」

 

数発撃ったところで、隊長から制止が入った。確実に追い詰めてから撃つというのである。

見るに距離も着々と詰めつつある。となると後は時間の問題で……

 

っドォン!

 

「先輩! 今のは!?」

「……17ポンド砲。ファイアフライ」

 

戦車から身を出すと、未だに遠いがサンダースの全戦力がこちらに向かっていた。

お互いに追撃戦をしようというのである。砲撃が周囲に着弾し、土煙が立ち込めた。

 

「フラッグ車防衛のため後方に移ってください~!」

 

盾の役を仰せつかる。

しかし、一拍空いてアヒルさんチームがやられてしまった。

この距離間で流れ弾というのであれば、それはファイアフライ以外にあり得なく

そして流れ弾というのもあり得ない。明らかに狙ったものであった。

 

確信に変わった。ファイアフライにはナオミが乗っている。

 

となると、次に狙われるのはこのM3だ。

ナオミの射撃の腕を信じていればこそ、全力を以って、真心を込めて、相手をしなければならない。

 

「大野ちゃん、ちょっと変わってくれる?」

「え、あ、はい」

「澤ちゃん、ハッチ開けたままにしといて」

「わ、分かりました」

 

昨日見たアニメ映画のインスピレーションから、この作戦を内心で「墓標作戦」と呼ぶことにした。

それにしても、砲手なんて何時ぶりであろうか。

思い出した。中学時代の交流会、自由時間で戯れに行った狙撃勝負で、ナオミに負けた時だ。

ただ、もし車長でなければ、私は砲手か操縦手だったと自負する分には自信がある。

それに加えて、私はこの1年間勉強していたのだ。

数学の授業で培った、距離の計算式と、三角関数がどうのというやつを、脳内で総動員してファイアフライの砲口を見据える。

 

……

………ドォ

 

「今や!」

 

17ポンド砲の発砲音が聞こえたと同時に、M3の副砲が火を噴いた。

 

砲弾と砲弾がぶつかる。37㎜砲と17ポンド砲。砲として威力の差は歴然! しかし!

 

弾 道 は 外 れ た !

 

「ウソ」

「先輩、すっごい!」

「砲弾に当てるなんて……」

「ぶはははは! 墓標作戦大成功!」

 

うまくいった!

喜びが何度も反芻し、わずか雄叫びをあげる。

まぁ、昨日見たアニメ映画のストーリーだと、こっちの弾が押し負けちゃうんだけど。明日からブランド物の白スーツでも着よっかな。

何はともあれ、これで撃破は免れたのだから良しとしよう。

知恵熱を白熱する試合へ変換する。

 

「ウサギさんチームお見事!」

「砲門ちゃんやるね~」

「17ポンド砲を弾いたんですか!?」

 

心なしか、他のチームにも良い影響が出たようで、追撃に沈んでいた雰囲気がにわかに回復する。

 

「こちらアンコウチーム、丘の上から敵フラッグ車を狙撃します! 他のチームはカメさんチームを守ってください!」

「よっしゃあ!」

 

西住隊長が勝負に出た!

確かに、このまま追いかけっこをしていても埒が明かない。

ここで動くしかないだろう。

ただ、それはサンダースとて同じ。

アンコウチームを追いかけたのは……ファイアフライ!

 

「大丈夫かなぁ……」

「あゆみ、外して良いからとにかく撃って! アンコウチームの狙撃を気づかれないように! あやも牽制でとにかく撃って!」

 

依然として、砲声が鳴りやむ事はなかった。

しかし、ここで終わらせなければ、ずるずると向こうのペースに引き込まれてしまう。

それだけは避けなければならない。

気がかりなのはファイアフライ。ナオミがアンコウチームを狙っていると言うのが、この不安を拭うに拭えない。

先ほどと同じく、私はとにかく「当たれ」と念じるしかなかった。

 

「花を活ける時の様に集中して……発射!」

 

奇跡、という言葉がある。

そう簡単にお目にかかれないが、誰もがそれを奇跡と呼んでしまう程に、認識することができるのだ。

丘を回ってカーブに差し掛かったところ

目の前のシャーマンに黒い影が撃ち込まれた!

その瞬間、ここにいる誰もが、時を止められたかのように錯覚した。

 

「………」

 

長い間の末に

 

シュポ!

 

白旗が上がった! 

 

『大洗女子学園の、勝利!』

 

「……よっしゃああああああああああああ!」

「勝ったんだ……私たちが勝ったんだ!」

「西住隊長すっごい!」

「桂利奈ちゃん、お疲れ様―」

「もう手汗だらけ~~」

「あとでハンドクリーム貸してあげるね」

「…………」

 

私はもちろんのこと、1年生たちも大いに喜んでいた。

練習試合の時とは違う、本当の公式試合での勝利の味は格別であろう。

丘の上の西住隊長に向けて、全員が手を振るなり、拳を突き上げるなりをしてその喜びを爆発的に表現している。

 

「礼!」

―ありがとうございました!―

 

大洗・サンダースの両チームが最後に礼をとったことで、観客のボルテージはいよいよピークに達した。

私たちへの惜しみない賛辞をこれでもかと讃え、充実感に身を包まれる。

なつかしい。思えばジュニアの大会もこんな感じだったなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車の簡易的な整備を済ませ、後は帰るだけであったが、まだまだ時間はあるようだ。

ウサギさんチームに先に行くよう伝え、私は試合前にナオミと会った野原に寝ころんだ。

試合後、こうして黄昏ることで、余韻を最後まで味わいたいのである。

空は橙と間に深紫を挟んで黒い夜が迫っていた。

 

「バン」

「後ろから撃つんか。趣味の悪さが移ってもうたな」

「良い性格してるんだよ」

 

ナオミ。

私の友人も思うところがあったようで、ここに来ていた。

遠くから「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」と聞こえるがカラスであろうか

 

「おめでと」

「ありがと」

「隣、いい?」

「ん」

 

試合前より雰囲気が良く感じる。勝ったから、というのもあるが

 

「M3に乗ってたんでしょ」

「あぁ。そっちはファイアフライやろ?」

「うん」

 

ポツポツと会話が進む。独り言のようだ。

 

「一つ聞いても良い?」

「ええで」

「どうやって、私の射撃を狙えたの?」

 

これはナオミなりの賛辞であろう。

砲手と言わず、スナイパーと称される彼女からこの言葉を引き出せて、ようやく私は勝利を実感した。

彼女の疑問に対して、私の答えは極めて簡潔であった。

 

「ナオミが外すわけないからさ」

「何それ」

 

お互いに笑みが零れる。

そう、ナオミの射撃の腕をそもそも信じる事が、あの墓標作戦の基盤だったのだ。

真心を込めるとは、単なる意気込みではなく文字通りの意味である。

ささやかに風が私たちをすり抜けた。

 

「ほい」

「あぁ? 何やそれ」

「忘れたの? 試合前に」

「……そやったな」

 

こちらから持ち掛けたというのに、試合が白熱したあまり、忘れてしまったようだ。

彼女から1枚ガムを頂戴する。

口の中に広がったのは、キシリトール特有の酸味というか透き通るようなさわやかさが、頭部を駆け抜ける。

眠気など一つもないというのに、目が覚めるような気分であった。

ナオミもガムを噛み始める

 

「約束の味だよ」

「沁みるねぇ」

 

夕陽が私たちをつんざく――――――。

 




誤字脱字あればご報告ください。

次話投稿ですが2月は厳しいと思いますぅぅぅぅぅぅぅ……(2月16日追記)


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アンツィオ戦!

先に言っておきますと、シナリオ部分の後半ちょっと冗長になっちゃったところあります。

では、どうぞ。


こんなお姉ちゃんおったら弟の性癖歪むやろ!って学校と戦うRTA、はっじめーるよー

 

はい、続きです。

前回のサンダース戦で見事に勝ち抜いた大洗女子、もとい砲門ちゃんですが、次の試合、すなわちアンツィオ戦では撃破される必要があります。

 

ここで疑問に思った兄貴がいると思うのですが、「試合生存率50%ならアンツィオ戦でわざわざ負けずにプラウダや黒森峰、エキシビジョンや大学選抜で調整すれば良いのでは?」という疑問でしょう。

仰るように生存率50%である以上は確かに調整すれば良いのですが、RTAを考慮いたしますと少々時間がかかってしまいます。

 

と言いますのも、前回ご説明しましたようにサンダース戦アンツィオ戦はショートカットする事がない、ほんへ通りに進める方が早い試合ですので、言い換えますと生き残っても撃破されても問題ない試合なのです。

サンダース戦で言えば、ウサギさんチームをほんへ通りナオミさんのでっかいモノで撃破されるところまで生存させていればOKと言えます。ただ今回のRTAでは経験値稼ぎからウサギさんチームを強化する必要があったので、生存させました。

 

そしてプラウダ戦と黒森峰戦ですが、この両試合はRTAで求められるショートカットが多くありますので、どちらかは確実に生存してタイムロスを防ぎ、どちらかはショートカットを行った上で撃破される必要があります。

 

以上の点から、アンツィオ戦は必ず撃破されないとイケない戦いになった訳であります。

また、とある理由でアンツィオ戦はできるだけ早く終わってくれると嬉しいです。

 

ゲームに戻ります。

原作ですと麻子のおばあをお見舞いに行ってるところですが、戦車道コースは試合後ということで、今日はお休みです。ぐっすり寝ましょう。

 

翌日になりました。

今日も今日とて練習ですが、もうウサギさんチームはアホ程強化されてますので、今回は三式中戦車の試運転をしておきます。

ゲーム内というか、大洗女子の中では割と火力と速力のある戦車として設定されています。

 

『隊長! 次のアンツィオ戦に向けて話し合いたいんですけど』

『交換した方が良い部品のリスト作成も手伝って欲しいんだけど……』

 

アンコウチームにお話がどっと押し寄せるシーンですね。

婚活女子武部沙織が恋愛経験を豊富に語る場面です。かわいいね

 

生徒会室でアンツィオ戦に向けての作戦会議です。

というタイミングで、華さんから戦車関係の資料が見つかったと入ってフェードアウト。

 

また翌日です。

今日は戦車を探す事になりましたが、ここでは誰とつるむでもなく単独で行動しましょう。

三式中戦車見つけてる時点でほんへに出てくる大洗女子の戦車は全部揃いますので。

ちなみにここですが、船底と伝手を持っているとこの時点でMkⅥ、サメさんチームが加入します。

実はゲームの設定として、他にも戦車が眠っていたりします。投稿者が見つけただけでも、例えばカヴェナンターやヴァリアント、T-43、SMK重戦車、M22軽戦車などがありました。

これらの戦車はDLCで追加する事が可能で、投稿者はE-100や、オブイェークト704、SU-100Y、ズリーニィ、ビショップ自走砲などをDLしています。他にも沢山あるので興味を持った兄貴は確認、しよう!

ただし、今回それらは使いません。というか、金運値上がって無いと入手できないので……(悲しみ)

 

話を戻します。単独で行動した理由は2つあります。

誰かとつるむと台詞で時間が取られるからなのと、迷子になった武部さん&ウサギさんチームを迎えに行く必要があるからです。

ここで誰かと一緒に戦車探しすると好感度アップになりますので、ルート入りたい兄貴はお試しください。

 

ママと化した武部沙織&ウサギさんチームは、15時を目途に迎えに行くと良いでしょう。

それと、後ろにポルシェティーガーがいるのもちゃんと確認しておきます。ここ結構見落としがちなので要注意です。(後日、探しに行くことは可能です)

それでは最後にお風呂に入って今日は終了です。ごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごく

 

朝になりました。

今日は作戦会議ですが、アンコウチームと生徒会同伴です。成り行きです。

はい、秋山殿が帰って来ました。アンツィオ高校の映像を見ます。

ペパロニねえさんのウインクにトゥンク……とときめいた姉貴は多いはず。ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!

 

ここですが、西住殿にウサギさんチームから離れる事を提案します。

前回言いましたように、そろそろねこにゃー加入イベが起きるはずなのと、もう充分ウサギさんチームは強くなったからです。

それとイタリア戦車ということでカエサルないしカバさんチームの家に行くかどうかを選択できますが「いいえ」を押しておきましょう。特に見るものはありませんので……

 

はいまた次の日

アンツィオの編成を模した模擬戦と訓練が実施されますが、ここでも三式中戦車を動かしておきましょう。

一人で動かすのは大変時間がかかってあまりよろしくないのですが、これはアリクイさんチーム加入イベを起こすために必要な乱数調整みたいなものです。

練習が終わりました。ほんへでは、武部沙織宅でイタリアンパーティをやる予定ですが、タイムロスなので割愛します。

砲門ちゃんには冷凍餃子を食べてもらいます。

 

『あ、あの西住、さん!』

『猫田さん』

 

はい、来ましたーーーーーー

アリクイさんチーム加入イベです。アンツィオ戦前に起こって良かったーーー

この加入イベは、三式中戦車を入手することで早めに起こす事ができるのでRTA的に必須です。オンラインゲームでもやり取りしていたのは、少しでも確率をあげるためです。

 

『それでは、三式中戦車には砲門さんを車長に猫田さんとももがーさんにぴよたんさんでお願いします』

 

RTA用アリクイさんチームが結成されました。以後はこのチームで物語を進めます。

さて、この日の練習ですが、アンツィオ戦まで日が無いので、ビシバシ教えてもあまり効果はないので「丁寧に教える」を選択。ウサギさんチームとは違ってステータスの伸びのスピードはありませんが、彼女たちは試合を2回経験すると自主的に筋トレをしはじめますので、こうして早めに参加してもらうのがうまあじです。

なお、この筋トレはゲームシステム上、経験値が加算される形として反映されますので、ステータスの伸びのスピードで言えば、大洗女子の中では3番目に位置します。

1番目はアヒルさんチームです。

 

試合当日です。

あぁ~^ ひなたか尊いんじゃ~^

年相応に正々堂々と戦おう!という台詞に反して、投稿者はさぁ、どう撃破されるかを考えるスポーツマンシップのかけらもない思考をしております。

このゲーム、確かに負ける事はできるのですが、あまりに露骨だと好感度が全体的に下がってしまいますので、負け方も重要です。

 

ウサギさんチームと共に偵察指示が入りました。

目の前にセモヴェンテとCV33が現れますが、これはマカロニ作戦のデコイですね。

西住殿の指示があるまで待機しましょう。

はい、来ましたので撃ちます。そーれ!

あぁ、見当違いなとこに当てちゃいましたね。砲手値上げてないとこういうのが頻発しますが、アリクイさんチームは筋トレし始めてからが本番なので、気にしない気にしない

 

『偽物だーーー!』

 

欺瞞作戦を看破しました。

西住殿からアンツィオが包囲作戦を行っていると連絡が入ったので、戦力が分散してる内に撃破、または包囲の完成を妨害するよう指示を受けます。

ウサギさんチームを先導する形で指定の場所に向かいますが……

 

『騙されるもんか!』

『ちょっと!』

 

はい、あやちゃんが勘違いして本物を攻撃してしまいました。

ここでは戦わずにさっさと逃げましょう。現在のアリクイさんチームでは多分撃破は難しいので

 

『ももがーさん! 全速前進! スピード思いっきし上げちゃって!』

『ギア、固、入んない……うぅん! えい!』

『わ、わ、わ! 後ろ行っとる! 入れ直して! ぐえ!』

 

……撃破されちゃいました。

10話よろしくギアかけ間違えて撃破ってのがアリクイさんチームらしいっちゃらしいですね。

ただし、これでRTA的にはうま味です。恐らく、これなら全体の好感度も下がらないと思いますので

 

『先輩!』

『澤ちゃん気にせんと先行き!』

『アリクイさんチーム、怪我は!?』

『全員だいじょーぶや! ごめーーん!』

 

あぁ…澤ちゃんのガチ心配顔と、西住殿のガチ心配ボイスがたまりませんねぇ。これはたまらない

でも、RTAなのでこの程度で罪悪感はありません(鋼の心)

後は原作通りですね。包囲網を敷かせずに、アンチョビが前進して西住殿とバトル。

その途中でアヒルさんチームがCV33を撃破して、ウサギさんチームが…おぉ、丘陵地帯のところで撃破しましたね。練習の成果が出ています。

 

『大洗女子学園の、勝利!』

 

はい、終わりました。

セモヴェンテが来なかったせいなのか、早めに撃破されましたね。

ペパロニのCV33がアンチョビのとこまで到達するかしないかのとこで決着が着きました。

これで10秒は減ります。

 

さーーーーーて、先ほど申し上げました「とある理由でアンツィオ戦はできるだけ早く終わって欲しい」との事ですが

アンツィオ戦後に何が起こったか、ガルパンおじさんと名高き視聴者兄貴ならお気づきかと思いますが……食事会です。

この食事会、普通なら食べに食べておしまいなのですが、砲門ちゃんはスキル『健啖家』を持っています。

もうお分かりですね。はい、ここめっちゃ長いです。

まず選ぶのに時間かかってますし、食べるだけでどうしてそんなに感想の言葉を述べられるの?ってぐらいテキストが凄いです。

あーーーー、これもタイムロスぅぅぅぅうぅぅぅぅ

まぁ、何度も言いますがスキルはどれをとってもタイムロス要因なので、あんまりこだわってもいられないんですけどね

はい、お食事が終わって改めてアンツィオ高校の皆さんにお礼で、今回はここで終わります。ご視聴ありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

 

「………ラグ! ラグ!」

 

戦車道から離れる事になった時、私は未練がましくも無聊の慰みを求めて、おおよそ無難な選択肢としてオンラインの戦車ゲームに興じていた。

それは戦車道をする事になった今でも変わらず、こうして時間を見つけてはプレイしている。

最近のゲームは本当に凄いもので、グラフィックがとにかく凄く、本物を操作しているような気分になれる。あくまで、ような気分だが。

 

「いや、そこで処理落ちしたらアカンやん! 折角MVP獲れると思ってたのにさぁ! オンゲに不向きなPCで無理してるとはいえさぁ!」

 

学校生活を送る上では問題ない程度のPCで、オンラインゲームをする方がバカげているという指摘には、おおむね首肯せざるを得ない。

でも、やりたいんやからしゃーないやん

 

「えぇ、もうまたウチだけ変な挙動してるやん。こういう事したい訳ちゃうのにさぁ、もう」

 

メモリがどうのって表示が毎度出るが、その度に「へーきへーき」と無視しているせいである。

 

「陣地獲られてもうた、どないしょ……」

 

今回は捨てやな、と諦めた時

上部に表示される勢力バーが一気に味方陣営の色に塗り替わった!

この状況で嘘やろ…と思い、参加メンバーを確認

そこには「ねこにゃー」「ももがー」「ぴよたん」の3名が自分と同じチームに所属していた。

助かったぁ! やっぱこの3人やわ。

特にねこにゃーさんは最初のフレンドで何度もお世話になっている。

あ、勝った。

 

「ねこにゃーさん、ももがーさん、ぴよたんさん、ありがとうございました」

「ホーモンさんもお疲れ様ですにゃ」

 

プレイヤーネームを実名にするのはいかがなものかと思ったが、そもそも砲門姓などそういるものではないし、別に身バレしても「関西ジュニアチャンプなら、まぁ」としかならないだろう。

さて、負け逃げは性に会わないのでもう1戦と意気込んだところでアラームが鳴った。

もう23時だ。朝練があるので、今日はこの辺で切り上げよう。

 

「ホーモンさん、もしよかったらもう1戦どうピヨ?」

「24時間徹夜プレイなり!」

「お誘いすんません! 明日戦車道の朝練がありまして今日はもう寝させていただきます~」

「それは仕方がないにゃ……ホーモンさん、僕たちでも今から戦車道って受けられるかな」

 

思いもよらない申し出に眠気を感じた眼が開いた。

そもそも人数がそこまで集まらなかった戦車道コースとしては、願ってもない限りだ。

 

「全然受けられると思います!」

「本当!? じゃあ、明日申し込んでみよっかな」

「私たちも」

「参加して良いピヨ?」

「いや、もうもう大歓迎ですよ! 西住って人が隊長やってはるんで、その人に申し込んでみてください」

 

ゲームから思わぬ輪が広まってしまっていた。嬉しい限りである。

話を伺うにねこにゃーさんと西住隊長はクラスメートだとも言い、世間の狭さを痛感する。

 

 

翌昼頃

三式中戦車を一人寂しく試運転している私の耳に響くのは、アンツィオを想定した模擬戦をする他チームの砲声であった。

 

「ギア、ちょっと固いな。油でも指し直すか」

 

自動車部の方々があれこれと整備してくれているとはいえ、日々の点検や自前でできる整備を疎かにして良いわけではない。

一つ、一つをリストアップしてエンジンをつける。

 

「動力部は問題なさそうやし。後はちゃんと動くかやけど…」

 

流石に一人で縦横無尽に動かすほどの度胸も技量もない。

とにかくわずかに車庫内で動く程度にとどめておく。

 

ウサギさんチームから離れて本格的に三式中戦車に乗り込むことになったからにはできる事をできる内にやるしかない。

先日の作戦会議で私はウサギさんチームからの離脱を提案した。

理由は簡単。もうあの1年生たちは充分な技量を積んだからだ。

聖グロとの練習試合と、サンダース戦でハットトリックを達成したのは、私の指導以上に彼女らの才能と努力が大きいとしか言いようがない。

この事を告げた時、澤ちゃんなどは「自信ないけど…頑張ります!」と不安げな決意を表明したが、2戦叩いただけであそこまで化けられては私の自信が無くなってしまう。

それに我が校はとにかく戦力不足なのだ。

西住隊長は一人で大丈夫ですかと心配してくれたが、今は動くだけでも1両でも必要なのだ。

 

それに、アテがアタリになったのだから、後は待つだけ。

もうそろそろ来ても良いと思うが、もしかして話しかけるのにタイミングを失ってしまったのであろうか

 

「砲門さん、ちょっと良いですか?」

「はい?」

 

戦車を降りた時、西住さんに声をかけられた。

後ろには眼鏡をかけた金髪女子、眼帯女子、幸薄そうな女子が、三式を見てパァと顔を輝かせている。

 

「三式中戦車の乗員なんだけど、この人たちはどうかな、って……」

「お、おぉ、おぉ! もしかしてねこにゃーさん、ももがーさん、ぴよたんさんですか?」

「はいぴよ!」

「てことは!」

「あなたがホーモンさんかにゃ!?」

「はい、そうです! 昨日はお世話になりました」

「お知り合いなんですか?」

「オンラインの戦車ゲームで知り合った仲間です」

 

勧誘というかある程度アドバイスした身として、本当に来てくれて素直に嬉しい。

 

「それでは、三式中戦車には砲門さんを車長に猫田さんとももがーさんにぴよたんさんでお願いします」

「任しとき」

「本当にリアルの戦車を動かせるだなんて」

「思ってもみなかったなり!」

「それでチームの名前なんですけど……アリクイさんチームでどうですか?」

 

西住さんらしいネーミングセンスだが、三式の砲の長さをアリクイの口に見まがうと、腑に落ちてしまったので了承した。

さて、とにかく彼女たちを戦車に慣れてもらわなければ

 

「それじゃあ、リアルの方は私が指導しますんで」

「よろしくだにゃ!」

「ははは、じゃあ、とりあえず慣れてもらいましょか」

 

それぞれの役割分担も恙無く決まり、今日一日は丁寧に教える事にした

 

「わわ! 本当に動いたなり!」

「砲弾重いにゃ!」

「早く撃ちたいピヨ」

「そんじゃあ、ちょっとやってみましょっか。ももがーさん、あのM3のとこまで近づいてください」

 

こういう事は何事も慣れ、いや、慣れというかやってみない事には始まらない。

操縦の勘も操縦桿を握り続けていればどこか分かって来るし、砲弾の重さもその内軽く感じるし、どうすれば狙いをつけられるかも撃ち続ければ分かる。

もし、そこで何をどうすれば、と壁に当たればあれこれと教えればよいだろう。

私にしても、人に教えると言うのは、中学時代から慣れていないのである。

 

「澤ちゃーん! 撃つでー!」

「え、ちょ先輩!?」

「当てるピヨ!」

 

車庫内の黒板には、桂利奈ちゃんの操縦練習とあったから、回避訓練も兼ねて遊んでもらおう。

ぴよたんさんが撃った弾はⅯ3の手前に着弾してしまう。

 

「もう! いきなりはやめてください!」

「ごめんごめん!」

「……あや」

「お返し!」

 

澤ちゃんに怒られてしまった。

大野ちゃんの狙いはこちらの昼飯を正確に狙い、車内が揺れに揺れる。じーん、と

 

「にゃあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!」

「これが昼飯の角度ってやつですわあぁあぁあぁあぁ」

「骨にじんじん響くなりいぃいいぃいいぃ!」

 

それ以降、とにかくⅯ3を相手にあれこれと戦車のあるあるを指南したところで、練習が終了した。

ウサギさんチームほどではないが、彼女たちも物覚えが良く、ゆくゆくは機動力か火力を活かした動きをしたいものである。

 

「お疲れ様でした~。どうでした? 実際にやってみて」

「すっごい楽しかったなり!」

「装填もそうだけど、通信には自信あるから任せて」

「当てた時は感激したぴよ!」

 

ふぅ、どうやら楽しんでくれたようだ。

1日体験して「やめます」というのは中学時代珍しくもなかっただけに心の底から安堵する。

ワンオペ三式は回避できそうだ。

 

「そうだ砲門さん」

「試合っていつやるんだにゃ?」

 

疑問は尤もなことであった。

戦車道はただ戦車に乗って撃ってハイおしまいという競技ではない。

現に彼女たちもサンダース戦の試合を見て、履修を決意してくれたのだろう。

ともすれば、ここで何をぼかすという事もない。

 

「明後日です!」

 

3人の表情が、バグでフリーズしたかのように固まった。

 

 

 

 

 

 

 

アンツィオ高校。

私が中学の頃はあまり戦車道の評判というものは聞かなかった。

というのも、覚えが正しければ参入したのはここ最近だったはずだ。

現在はアンチョビと呼ばれる人が隊長として切り盛りしているそうで、1回戦を勝ち抜いたというのだからその実力は本物であろう。

 

実はアンツィオ高校とは多少ご縁がある。

関西ジュニアチャンプになった頃。同校の理事長?から副隊長にならないかと誘われたのだ。

まぁ、もうその時には高校は勉強一筋と母親と約束していたので断ったが、どこか別のIFの世界では私はあの学校にいたかもしれない。

 

思いを馳せながら、西住隊長と最後の確認している時であった。

 

「たのもーー!」

 

アンチョビさんとお付きの人がこちらへやってきた。

「アンチョビ」という名前にこだわりがあるらしく、チョビ子だの本名を口にした生徒会を何度も注意している。

お付きの人はカバさんチームのカエサルさんとご縁があるようで旧交を温めている。

私と安ちゃん、ナオミのような関係であろう。

 

「そっちの隊長は?」

「おい、西住! 砲門!」

「「はい!」」

「ほーう、あんたたちがあの西住流と関西ジュニアチャンプか」

「西住みほです」

「砲門愛いいます。副隊長です。」

「ふん、相手が西住流だろうが島田流だろうが、阪奈道巧者でも負けない…じゃなかった勝つ! 今日は正々堂々と試合をしよう」

 

些か尊大ではあるが、威風堂々とした気持ちの良い隊長さんだ。

アンツィオのノリと勢いがどこからきているのか何となく分かったような気になる。

 

「それでは皆さん、搭乗してください!」

 

三式中戦車に乗り込む。

車内の雰囲気は悪くないが、張りつめていた。

 

「やっぱり緊張してます?」

「緊張って言うか」

「ボクら大丈夫かなって不安で不安で」

「正直、まだ当てる自信ないピヨ……」

「まぁ、そこは誰しも通る道ですわ。ほな、行きましょか。発進!」

 

さぁ、アリクイさんチームのデビュー戦だ。

私たちの役目はウサギさんチームと共に偵察する事。

一昨日出来たばかりのチームをフラッグ車の防衛に回すのは、むしろ足を引っ張ってしまうと作戦会議で伝えていたので、ならウサギさんチームと一緒に偵察に行って欲しいという事だ。

 

「先輩、そろそろ指定の地点です」

「はい~」

 

澤ちゃんは自信が無いと言っていたが、サンダース戦で見せたウサギさんチームのポテンシャルは最早初心者というべきではない。

そして、もしかしたらこのアリクイさんチームも2戦ほど叩けば化けるかもしれない。

実戦に勝る経験なし、とはよく言ったものである。

 

「アリクイ、ウサギ、指定の地点に着いたで」

「今から偵察はじめます」

「分かりました。くれぐれも交戦は避けてください」

 

試合に話を戻すと、予想外の展開であった。

今、目の前にいるアンツィオ高校はノリと勢いの良さが取り柄の学校。

どこかに陣を構えて、じっくり待ち受けるなど性分に合わない戦術だ。

それとも1回戦でマジノ女学院が誇る防御戦術に感銘でも受けたのであろうか。

 

「カルロベローチェ4輌、セモヴェンテ2輌が陣取ってます」

「……あれ?」

 

先行していたアヒルさんチームも、私たちとは反対方向の十字路付近で偵察をしている。

そこではカルロベローチェ3輌、セモヴェンテ2輌という配置だったのだ。

計11輌。今試合のレギュレーションと数が合わない。

 

「先輩、これって……」

「うーん、通信傍受と違って、台数誤魔化すんは明確なルール違反やからなぁ」

「でもあれは……」

「様子見やな。デコイかもしれんけど。そうじゃなかった時が怖い。指示待ちや」

 

そうあり得ない事なのだ。

アンツィオ高校からすれば、折角の1回戦突破をふいにしてしまうようなもの。

しかも、汚名がついてくる。そんな手段をとるとは考えられない。

となると、あれは恐らくデコイだろうが、どれが本物で、どれが偽物か分からない以上迂闊に手も出せない。

まぁ、交戦は避けるよう厳命されているので、こちらが勝手に仕掛ける訳にはいかないのだが

 

「アヒルさん、ウサギさん、アリクイさん。退路を確保しつつ、目の前の敵を撃ってください」

「分かりました!」

「あや、機銃で良いから」

「ぴよたんさん、出番やで」

 

ぴよたんさんの射撃の腕前だが、2日程度で判断しろというのは些か無理がある。

伸びしろに溢れていたウサギさんチームと違って、正しく初心者であるこのアリクイさんチームはこれから伸びる伸ばそうというチームなので、練習も指導はしたが、現時点で得手不得手を判別するのは、彼女らにしても私にしても酷な事だと思って欲しい。

 

ウサギさんチームと共に息を合わせて撃ちかけると、相手のセモヴェンテ・カルロベローチェはいともたやすく粉々になった。

何と全部デコイの看板だったのだ。

アンツィオ高校らしからぬ戦術と思っていたが、それにしても足止めを食らったのは事実だ。

 

「ウサギさん、アリクイさん、そのまま街道を大きく迂回する形でUターンしてください!」

 

西住殿が察するところだと、ここで我々を釘付けにしておいて背後から本隊フラッグ車を狙うというところであろう。

そうと分かれば話は早い。

 

「澤ちゃん、前はウチらが行くわ」

「はい、後続任せてください」

 

セモヴェンテにしてもカルロベローチェにしても、車高の低さを森林と段差で利用されると待ち伏せ、または背後から撃たれる恐れがある。

ぴよたんさんに行進間射撃で狙わせるわけにもいかないので、M3の副砲を後ろに向けて何とか後背をお願いしよう。

そう思った矢先、セモヴェンテが坂の上で待ち構えていた。

こちらには気づいていないようで、砲身を向けるだとかの気配はない。

よし、このままそろりそろりと近づいて下から……

 

「騙されるもんか!」

 

後続のM3副砲が火を噴いた! えぇ……

命中こそしたものの弾き返されてしまい(当てんのすご)、セモヴェンテが反撃に出る

 

「ももがーさん! 全速前進! スピード思いっきし上げちゃって!」

「ギア、固、入んない……うぅん! えい!」

 

急停止したかと思えば、全速後退を始めてしまった。

油もっとさしときゃ良かった!

 

「わ、わ、わ! 後ろ行っとる! 入れ直して! ぐえ!」

 

ウサギさんチームを庇う形で、撃破されてしまった。

シュポ!と情けない音を出して上がる白旗をアホ面で見上げる。

 

「先輩!」

「澤ちゃん気にせんと先行き!」

「アリクイさんチーム、怪我は!?」

「全員だいじょーぶや! ごめーーん!」

 

西住隊長と澤ちゃんの声がとにかく刺さる。

しかし、撃破されたというのに、悔しさがどこかにある程度で、サッパリしてしまう。

ウサギさんチームが生き残ったのは幸いだった。

彼女たちと他のチームを信頼して、潔くここから回収されよう。

 

「ごめんホーモンさん」

「レバーおかしくなったなり……」

「撃破したかったぴよ……」

「ははははは、これも戦車道の醍醐味ですわ」

 

戦車道は必ず誰かが、撃破できぬうちに撃破されてしまうのだ。

初めて車長を担った日がそうだった。悔しさ涙で枕をわずかに滲ませたことを思い出す。

結局は、考えを切り替えて次に活かすしかない。

幸いにもアリクイさんチームから誰も「辞めたい」という声が出ないのは、ひとまず安堵すべき事であろう。

 

 

「まぁ、一昨日の今日でむしろよう生き残れた方や思いますわ。それにももがーさん、ちゃんとウサギさんチームについていけてたのはもっと自信持ってええ思いますよ。普通やったら1週間たってようやくよちよち歩きみたいなもんですし」

「本当!?」

「ほんとほんと。このままやり続けたら1年後にはタンクレースに出たっておかしないっすよ」

「じゃ、じゃあ、私もいつかスナイパーになれるぴよ?」

「おぉ、おぉ、もちろんもちろん。555m先の硬質ガラスも射貫けますやで」

「僕も装填早くできるかな!」

「できますできます。もうTAS並みの早さなってますで」

 

これはお世辞じゃなくて、本心である。

どこか彼女たちにはポテンシャルを感じているところがあるのだ。

頭の中で何故か「プロテイン」の文字が浮かんでしまうが

 

その後、私たちは回収車に揺られた後、控えに指定された場所で巨大モニターを眺めながら試合を見守った。

色々と展開はあったのだが、いくつかかいつまむと

 

・アンコウチームとアンチョビさん(P40ないしフラッグ車)が接触。

・ウサギさんチームとアヒルさんチームがそれぞれ相手どったことで、予定されていたであろう包囲作戦が不可能に

・アンツィオ側が戦力の結集を図ろうとしたところで、アヒルさんチームがカルロベローチェを、ウサギさんチームがセモヴェンテを撃破!(どちらも凄い)

・最後に崖下でたじろいだアンチョビさんをアンコウチームが撃破

 

という流れであった。

試合が終わり、他チームが帰ってくる。出迎えなければ

 

「おかえり~! 勝ってくれてありがとう~!」

「はい! 勝てました。砲門さんは大丈夫でしたか?」

「全然大丈夫やて。ねこにゃーさんらも、気落ちせんとむしろ意気込んでるし。次の試合までには戦力になる思いますんで」

「良かった……」

 

西住さんも安堵に胸をなでおろす。

心配性なところもあるのだろうが、一人一人を大事にする性分なのだろう。

こういうところが、慕われているのだろうし、事実私も惹かれているんだと思う。

 

 

会場を広く使っていたせいか、戦車の回収に時間がかかったようで、すっかり夕方になってしまっていた。

私などはいつものように夕焼けを見ながら余韻に浸っていたが、チームはそれぞれ話に花を咲かせていたようだ。

アリクイさんチームの面々も、ウサギさんチームと気兼ねなく話をしているようである。

 

「いやぁ~、今年こそは勝てると思っていたのになぁ」

 

アンチョビさんが、腕を広げてやってきた。

礼は終わったが、試合後に改めて健闘を讃えに来たのであろう。

西住さんの手を掴み、頬をすりすりしている。コミュ力おばけやん

 

優勝への誓いを立てると、アンツィオ高校の面々から歓声が上がる。お調子者というよりかは、気持ちの良い人、というのがアンツィオ高校の校風にふさわしい表現なのかもしれない。

そのアンツィオ高校のトラックから、生徒たちが何やら大きな荷物を出し始めた。

キャンプで使いそうな収納ボックスや、テントを建て始める。

 

「試合に関わった選手・スタッフを労う! これがアンツィオの流儀だ!」

 

アンチョビさんが高らかに宣言すると、アンツィオ高校の生徒たちが一斉に調理を始めた。

戦車道と比較してあまりある熱意とスピードに驚嘆すると共に、食欲がわいてきた。

そう言えば、今日試合に夢中で間食の間もなかった。

 

「とっても美味しそうなり!」

「これ、食べても良いのかニャ?」

「本場のピザぴよ」

「おぉ、おぉ、おぉ」

 

アリクイさんチームの感想に同意しながら、腹の音が止まらなくなる。

 

「先輩? 食べすぎちゃダメですよ~?」

「吐くまで食べそう」

「おう、今日はチートデイや。食品ロス0にするで」

「ははは、先輩らしい」

 

宇津木ちゃんの煽りが、いよいよ私の食欲を刺激する。

各自、それぞれのテーブルについたところで「いただきまーす!」の大音声が鳴り響いた。

 

腹が、減った!

 

 

 

『アンツィオ高校戦車道チームのイタリアンバイキングと宇都宮餃子』

 

 

 

 

最初に、何を食べようか。

バイキングの特権だが、多ければ多いほど何もかもが悩ましくなる。

ピザやパスタ、生ハムなどは後に回そう。最初からメインディッシュをいただくわけにはいかない。

戦車に燃料がいるように、まずは前菜を食べなければ。

 

「お? おねーさん、どれか悩んでんの?」

「え、あ、はい。こういっぱいあるとどれから食べた方が良いのか分かんなくて…前菜にこれってやつ、ありますか」

「それだったら……おーい! それとってくれー!」

 

目の前に出されたのは、貝とトマトを盛り合わせたものだった。

 

「アンツィオ隠しメニュー! アサリとトマトのアクアパッツァ!」

「おぉ……」

 

 

《アサリとトマトのアクアパッツァ》

 ・アサリとトマトのシンプルなオリーブオイル炒め

  これぞ正に地中海!

 

 

「いただきます…あむ、おぉ」

 

口の中に広がったのはアサリの弾力ある食感と、鼻孔に突き抜けるオリーブオイルの匂いだった。

魚介類特有の磯の匂いを載せて、オリーブオイルが嗅覚に着弾する。

トマトはどうだろう。うん、こちらも大正解

あんまり炒めるってやった事無かったけど、アサリでキマった口内をフレッシュにしてくれる。これ、良いな。今度家でやってみよう。

 

「ようし」

 

前菜を食べると、胃袋がアガり始めた。

次を、もっと次をとせがんでくる。落ち着け、イタリアンは逃げない。

 

「よし、これとこれとこれと……」

 

いざ、取り始めるとどうにも止まらなくなってしまう。

子供の頃からの悪い癖だが、大人になっても直りそうな気がしない。

いや、食べる内に食べるのが私流。これは癖じゃなくて砲門流食事道の作法だ。

 

「おぉ」

 

改めて見ると、壮観だった。

ピザを丸々2枚。イカとケチャップのパスタを適当に。生ハムと玉ねぎを載せたブルスケッタを10個。

回転寿司とかで豪遊した事はあるけど、イタリアンでここまで食べられるのは初めてだ。

堪能しよう。まずは……

 

 

《マルゲリータ》

 ・とてもシンプルなマルゲリータ

  チーズにトマトソースで基本を思い出そう。

 

 

お、お、チーズが伸びる。

どこまで伸びるのかと子供心が搔き立てられるが、私は女子高生。がつがつとチーズを口で追いかける。

ピザってこんなにおいしかったっけ。宅配ピザで濃いのを何度か食べているだけに、とても新鮮に思えてしまう。

一つ、また一つと食べる内に、2枚完食してしまった。楽しい時間はどうして早く終わってしまうのだろう。

 

いや、まだ私のターンは終わっていない。次は……

 

 

《イカとケチャップ和えパスタ》

 ・イカ墨ではなくケチャップで!

  赤と白のコントラストがこれまたイカす!

 

 

ちょっと冒険しちゃったかな。

いや、でもアンツィオ高校の料理に外れナシ。これもきっと考えられてのものだろう。

よーく、麺とケチャップとイカを絡み合わせて、実食。

ん? ん? んー……

これ良いな。肉の代わりにイカを入れるのはお好み焼きと同じ発想だ。

イカのごろっとした切り身が、トマトに絡む麺の中で堂々と主張している。うんうん、口の中を自由に泳いでいるようだ。

フォークでぐちゃぐちゃとかき混ぜて、箸で一気に掴み食べる。

すする暇なんてない、早く口の中に放り込みたいと、脳が指令を出している。

 

そんな食べ方をしているせいか、案の定、気づいた時には無くなっていた。

口の中が、ピザのチーズとパスタのソースでしつこいぐらいに残ってしまっている。

食後はまだまだ先だが、ここで一つリセットと行こうか。

 

 

《生ハムと玉ねぎのブルスケッタ》

 ・パンは自家製! 生ハムと玉ねぎでシャキシャキ食べよう

 

 

ブルスケッタって、食べるの初めてなんだよな。 家で適当にパンに載せるのとは違うのだろうか。

イタリア料理はまだまだ未知に満ち溢れている。

ブルスケッタくん、いざ

 

サクサクとしたパン、シャキシャキとした玉ねぎ、そしてそれらをつなぎとめるかのように生ハムがしっとりとしているようで噛み応えを抜群にしている。

チーズやソースに塗れた口内を、丁寧に掃除して胃袋へと持ち去っていく。

ブルスケッタ、良い、おすすめ、最高。

家でできないか調べてみよう。

10個と多めに取ったが、あれよあれよと放り込んでしまえば、こっちのものだ。

 

さて、一通りイタリアンを堪能したので、今度はもっとディープな料理が無いか探して……おや?

嗅覚がどこか、イタリアンではないものを突き止めた。これは中華の匂いだ。

匂いをたどると、このバイキングからは少し離れたところで鉄板が広がっている。

その上で焼かれていたのは『餃子』だった。

 

「すみません、あの、これ……」

「ん? あぁ、これは餃子だべ。宇都宮餃子!」

「私ら、イタリアイタリアしてねーからよ。こうしてひっそりとやってんの」

「宇都宮餃子初めて見ました……いただいても良いですか?」

「あぁ、よっぱれ食べてって」

「ご飯もあるべ」

 

そう言えばアンツィオ高校は栃木に本籍を置く学校だった。

イタリアンな彼女らだけでなく、こうした栃木県民もいるのは当然の事だ。

しかし、例に漏れず彼女らもアンツィオ高校の生徒で、これでもかと皿に餃子を盛りつけられる。

数えてはいないが、パッと見ただけでも40個はありそうだ。

ご飯はもちろん大盛。炭水化物がなんだ。私は戦車だ。燃料を求めている一個の戦車なのだ。

 

 

《アンツィオ宇都宮餃子》

 ・野菜たっぷり歯ごたえ餃子。これでもかと食べよう。

 

 

「いただきます」

 

肉汁だけではなく野菜汁とでもいうべきか。

餡から垂れるありとあらゆるエキスが舌にうま味を供給する。

これだけあるなら、いっぺんに2つ食べてもバチは当たるまい。

口をあんぐりと開けているという自覚は戦車道女子に求められる嗜みからかけ離れているが、気にするまい。ええい、ままよと餃子と白米を放り込む。

 

「すげー食いっぷり」

「なんだか嬉しくなっちゃうなぁ」

「はむ、あむぅ、うま、うま」

 

箸が止まらない、という慣用句が今の私にはぴったりだ。

頭の中が「食べる」という事に支配されてるこの多幸感。良いなぁ。

口の中に広がるイタリアと中華の風味は正に無国籍。クセになりそうだ。

 

「あ」

 

もう最後の1個だ。

ペースを上げ過ぎた、と後悔すると共に、腹の中から充実感がこみ上げる。

食いしん坊万歳。何物も恐れず最後の一つを味わった。

 

「ごちそうさまでした」

「もう食べたんだ。早っ」

「いや、本当に美味しくて……止まりませんでした」

「悪い気しないなぁ。そうだ、食後にスイーツもあるから」

「スイーツ……?」

「うん、ほら、あそこのテント貼ってるとこ」

「ありがとうございます。餃子本当に美味しかったです」

「私らいつも学校で出店やってるし、アンツィオに来ることがあったら寄ってってね」

 

アンツィオ高校に餃子あり。覚えておこう。

一歩踏み出すと、私の頭の中はスイーツに支配された。

甘いものは別腹などとは言わない。イタリアンや餃子で満たされた私の腹がスイーツを!とせがんでくる。

 

「お、大洗のおねーさん。ジェラートはどう?」

「じゃあ、このイチゴとバニラでお願いします」

 

シメはやっぱりアイスだなぁ、と納得する。

ジェラートって食べた事無い。どんな食感なんだろう。

 

「はいイチゴにバニラ! イチゴは栃木産のやつベースに使ってるから美味しいよ~!」

 

 

《ジェラート(イチゴ・バニラ)》

  ・ひんやり甘いイタリアスイーツ。食後はやっぱりこれじゃなきゃ

 

 

スーパーやコンビニで買うラクトアイスとは一味違いますって主張を見た目から感じてしまう。

周りを見ていると、アンツィオ高校の懐の広さにみんな思い思いの交流をしている。

ウサギさんチームは写真撮影で忙しいし、アリクイさんチームはアンツィオの生徒と何やらゲームで通信対戦をしている。

ん、あそこにいるのはカバさんチームのカエサルさんと、お友達というアンツィオ高校の生徒だ。

傍から、見てるとどこか甘酸っぱく感じるが、それはこのイチゴのジェラートが原因であろうか。

酸味と甘みが繰り返し、最後にバニラがシメるように食べていく。アイスに食べ方を見出した私。大人だなぁ。

 

「ごちそうさまでした」

 

満足のため息。結構、エンジン入れて食べたからだろう。

 

「せんぱーい! リーダーは集まるようにって河嶋先輩が!」

「今行くわ。ちょい待ってー!」

 

澤ちゃんも楽しみに楽しんだようで何よりだ。

試合後ってギスギスする事の方が経験上多いからなぁ。これからもアンツィオ高校とは試合をしてみたい。

食べ終わると満腹感よりも充実感が胃袋を支配する。まだあと3割は入るな。

いや、そうやってバカみたいに食べて寝ころぶのが苦しくなったことが何度かある。自重しよう。

地中海(ちちゅうかい)の中に中華(ちゅうか)を見出せて、今日は大満足。

 

さぁ、明日からも練習だ。次はどこと試合するのだろう。サンダース、アンツィオと続いて美味しい思いをしているので、どこか期待してしまう。

戦車道でグルメ!ってのも悪くないなぁ……。

 

 

 

 




誤字脱字などがあればご報告ください。

アクアパッツァって前菜で出すことなくね?と後になって思うこの頃

すみません、それと次の投稿ですが、もしかしたら4月5月になると思いますので、ご注意ください。
無論、早まれば早いうちに投稿するつもりです。



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プラウダ戦➀ RTA部分→シナリオ冒頭


なんとか3月中に投稿できました


名場面を一気に削りやがって!って憤りが聞こえるRTAはっじめーるよー

 

続きです。

アンツィオ戦が終わりました。は~、健啖家スキルはこういうところで長くなるのが辛いですが、再走するほどではありません。

 

次はプラウダ戦です。

プラウダ戦は生存を目的に行動しようと思います。

思えば、大洗女子全体の撃破率って大会を通して低いんすよね。ほんまに初心者か君ら(n回目)

今後の予定ですが、生存率50%なので無難に生き残っては撃破されを繰り返してという方針にしたがい、プラウダ戦は生き残る、黒森峰戦は撃破される、エキシビジョンは生き残る、大学選抜戦は撃破される、で行くことになります。

ストーリー的にもそっちの方が原作感ありますしね。

 

シナリオを進めます。

ちょうどⅣ号が長砲身になったところですね。自動車部チームに感謝

 

『今日から新しく参加する事になりました。園みどり子と風紀委員です。よろしくお願いします』

 

原作通りカモさんチームが加入しました。

カモさんチームはステータスが伸びやすいわけではありませんが、ビシバシ教えるコマンドをやっても逃げ出したりしないので、成長速度そのものは早い方です。

愛ちゃんは、アリクイさんチームの指導を担当しているので、原作通り動かし方とかはアンコウチーム(もとい冷泉さん)にお願いしましょう。

 

………あれ? ロード入った?

 

『あぁ、それと自動車部も参加するから』

『皆さん、よろしくお願いします!』

『もうレストア終わったんですか!?』

『うん、ちゃんと丁寧に取り出したからね~』

 

ファっ!?

じ、自動車部、レオポンさんチームが加入しました……

え、なにゆえ? なんで?

想定していなかった事態に、ゲームがコンマ3秒ほど止まってしまいました。

テストプレイではこんな事起きなかったので、初めてのイベントに思わずチャート形成を組み立て直しながらテキストを進めていきます。

 

『西住ちゃん、砲門ちゃん! 後で大事な話があるから生徒会室に来て』

 

桃ンゴの絶対勝利宣言の後に、西住殿と一緒に会長の呼び出しをくらいました。

いや、ですが投稿者の脳内は今それどころではありません。

 

確かに、レオポンさんチームの加入は心強いです。

ナカジマをはじめチーム全員もとからステータス高いので、原作開始時点で速攻ポルシェティーガー見つけて自動車部と仲良くなって初期から加入するプレイをした初心者兄貴たちは多くいると思います。

 

ですが、今回の場合、マジでどうなるか分かりません。

というのも、何か明確なバッドイベントがあるとかではなく、とにかくこの時点でレオポンさんチームが加入するというのが初めての事で、RTA上想定していないイベントが入るのではと危惧しているのです。

まぁ、こうなった理由は、ほんへではアリクイさんチームと同じタイミングで加入していたので、ガルパンAIがその辺を調節したのかもしれませんが……

 

ですが、悩んでばかりもいられません。もうこうなったらオリチャー発動や!

高度な柔軟性を維持して、臨機応変に対処します。(開き直り

 

こ↑こ↓練習がてらポルシェティーガーの紹介を受けていますね。あー、もう想定外過ぎる

プラウダ相手に高火力が手に入ったと喜ぶしかないすね

はい、練習が終わりましたので、西住殿と待ち合わせて生徒会室です。

 

『砲門ちゃん、相変わらずよく食べるね~』

『はむぅ! 唐揚げうま! うま!』

『西住さん、このあんこうは水産科の人達からもらったやつなの』

『いや、あんこうの入手経路は良いですから』

 

ここの西住殿、どこか圧あってちょっぴり怖いんすよね

まぁ、この時点だと生徒会への印象あんま良くないってとこもあると思いますけど

鍋食べ終わったので、このまま帰宅することになりますが、ここで西住殿を家に誘ってプラウダ戦への作戦会議をします。

ここで作戦会議をしておくことで明日、練習に専念できるのでRTA用アリクイさんチームを大幅にというか、できるだけ強化しておく必要があるからです。

筋トレはじめたら、楽になるのですが、それはそれとして搭乗チームのステータスは普通のプレイにおいてもRTAにおいても重要ですので、とにかく練習です。

 

『これ、まぁ、分かってる分だけですけど、プラウダ側の資料ですわ。画面に映しときますね』

『ありがとう愛さん』

 

西住殿が名前呼びしましたね。

あんまりイベント踏んだ覚えはないんですけど、隊長副隊長なので友情値が自動的あがっていたのかもしれません。

必要以上に接触してはいないので、少なくともみほルートに入る事はありませんが、その場合解除実績が「みほと共に」になってしまうので再走です。

 

話し合いでは作戦行動だとか方針だとかについて話し合います。砲門ちゃんはレオポンさんチームと一緒に別動隊で行くことになりました。

ここで強く防寒対策をばっちり伝えておきましょう。理由は、後でお話します。

 

それではプラウダ戦です。

本試合での目標は

 

・基本的には生存

・アリクイさんチーム強化のため、撃破できる車両はとにかく撃破

・カチューシャ車、ノンナ車との交戦は避ける

 

以上の三点になります。

 

まず基本的に生存と言いましても、あくまで基本です。ここで撃破されたとしても次の黒森峰戦で絶対に、何があっても生存するようにすれば、担い手条件の50%は維持されるのでOKです。

次にアリクイさんチーム強化ですが、流石に全車両、または大多数の車両を撃破しようとするとそれはそれでタイムロスになってしまいますので、とりあえず3両としておきましょう。 特にフラッグ車を撃破すると経験値がものすごく上がるので、フラッグ車もこの対象です。

最後に、カチューシャ車、ノンナ車ですが、勝てません(無慈悲)

雪上というステージで彼女たちにはバフがかかっているのと、特にノンナさんが強敵です。

カチューシャを倒したらパワーアップしちゃうので、接敵した場合逃げましょう。

 

試合会場に着きました。

雪合戦に雪像とみんなそれぞれ思い思いの過ごし方をしていますね。雪はテンション上がっちゃうもんね仕方ないね

砲門ちゃんもアリクイさんチームと一緒に三式に座りながら携帯ゲーム機でオンライン対戦しています。

 

『あはははははは! カチューシャを笑わせる為にこんな戦車を用意したのね、ね!』

 

カチューシャが来ましたね。後ろにノンナさんもいます。太ももでっっっっっつっっっっっっか

はい、みんなテンション上がっていけいけどんどんになりました。

澤ちゃんもほんへ通り「ナメてます!」って言ってます。強化してもこの辺の性格までは変わんないのでまぁ当然すかね。初心者兄貴の為に説明しておくと、ある程度イベント踏んで友情値上げるとここで当初の予定通り慎重な作戦で行くことができますが、RTA的には時間がかかるので、さっさと攻めてもらいましょう。

 

前回述べましたプラウダ戦でのショートカットですが、前半でできるだけ多くの戦車を撃破する。後半でフラッグ車をさっさと叩くの2つがポイントです。

前後半の分け方は、大きな建物に逃げ込むところとします。

恐らく砲門ちゃん率いる別動隊は、前半でプラウダ側と接触する事が無いと思います。しかし、接触したとしても1戦叩いたアリクイさんチームと初手からドドドドドドド有能レオポンさんチームがいれば、よほど囲まれない限りは簡単に撃破できます。

むしろ、後半のフラッグ車探しを頑張りましょう。

 

それでは試合開始です! パンツのアホーーー!

 

別動隊の目的ですが、西住殿との作戦会議で先行して集落に待機しているプラウダ側の戦車にちょっかいをかける事です。

まぁ、プラウダ側は偵察を回して本隊の方に戦力を割いていると思いますが……おや

 

『こちら本隊! 相手の車両3両撃破したよ!』

『おぉ、流石!』

 

ほう、アンコウ、カバさん、ウサギさんチームがT34をそれぞれ撃破したようですね。

ウサギさんチームつよすぎぃ! 強くした甲斐がありました。

 

『ウチらも撃破したいなぁ』

『まぁ、出番は待っとりゃ来ますんで、おっと…噂をすれば……』

 

お、こちらにも2両来ましたね。

多分、集落を制圧して周囲を哨戒しに来たのでしょう。

後の包囲網を薄くすればその分本隊が脱出しやすくなるので、ここは容赦せず撃破です!

撃破しました。アリクイさんチームが1両、レオポンさんチームが1両って感じですね。

通信で本隊に戦果を報告すると、各車から激励の声が来ますが、西住殿からは何もなしです。ほんへ通り、うまく行きすぎて警戒しているのでしょう。

言うても、こちらのT34 の2両撃破はプラウダにとって青天の霹靂だと思いますが

 

『よーし、アターック!』

『あぁ、待ってください!』

 

本隊がプラウダ高校に釣られちゃいました。

うーん、フラッグ車撃破は難しいっすね。

たまに、ほんと極たまーに、この時点でフラッグ車を撃破して試合終了!ってなる時あるのでちょっぴり期待してましたが、まぁ仕方が無いでしょう。

西住殿から市街地へ早く行くよう指示が入りました。まぁ、間に合わないんですけどね。

 

一拍空いて、停車の指示が入りました。

お、3時間から2時間に変わっていますね。上々、上々

T34を序盤で5両も撃破したのが効いています。ここは撃破車両数でカチューシャおねんね時間が変動します。

私は頑張っても8両撃破で1時間待ちが限界でしたが、他の方のプレイ動画を見ているとここで11両も撃破して、むしろプラウダ側が大きな建物に立て籠もるものもありました。たまげたなぁ。

 

廃屋の前に戦車を停めて、しばらく様子見。通信機で本隊と連絡を取り合います。

 

『全国大会で優勝しなければ、我が校は廃校になる』

 

はい、ここロード入って、回想シーンです。回想、終わりました。役人の野郎ぅ……

本隊と同じく、別動隊の面々もショックを受けていますね。曇らせ流行らせコラ!

砲門ちゃんはどっしりとしているようですね。西住殿と同じくまだ諦めていないっぽいです。カッコイー!

 

『まだ試合は終わってません』

『同じく!』

 

西住殿の発破に全体の雰囲気が変わりました。

ここからですが、西住殿から作戦会議をしたいから何とかして大きな建物に来てほしいと通信が入ります。

 

『愛さん、大丈夫ですか?』

『→はい       』

  いいえ

  そちらが来て下さい

 

ここは素直に「はい」を選びます。

いいえを選ぶと、即試合再開となりRTA上こちらも悪くない選択肢ですが、フラッグ車の位置がほんへとは別の場所になってしまい、一々探索せねばならず、最悪八九式が撃破されてしまいます。

次に西住殿に来てもらう選択肢ですが、途中でプラウダ生徒に止められて戻ってしまい、ただ無駄になってしまいますので得策ではありません。

大きな建物への移動ですが、これは偵察も兼ねての移動になりますので、秋山殿&ロンメルの雪の進軍を短縮する事ができます。

 

そして移動にあたっての注意点。

今作で試合中、戦車を降りての移動は蛇は2人もいらないって言われたり、なんか輝くリンゴで相手を撃退するスニーキングゲームよろしく、こそこそと移動する要素があります。こそこそ作戦です!

このプラウダ戦はその最たるものであり、兄貴によってはここでつまずく方も多かったと思います。

 

しかし! 本RTAでは、そんな面倒臭いことはしません。

 

実はこのスニーキングミッションですが、別にコソコソ建物の影に隠れたりとかしなくても良いです。

普通に全力疾走したら難なく行けます。ゾンビゲーで一々相手にしなくてよいのと似たような感じです。

そして、このステージのプラウダ生ですが行き帰りで一旦配置がリセットされるので、そこも気にしなくて大丈夫です。

ちなみに、ノンナさんに見つかった場合は別です。めっちゃ早いです。

 

そそくさと市街地を抜けて大きな建物につきました。

お、みんな温かいスープとか携帯暖房器具とか使って暖をとってますね。これでアンコウ踊りはショートカットです。

早速テーブルに広げられた戦況図に戦車を書き込みます。

 

『愛さん、ありがとうございます』

『ええって事よ』

 

視聴者兄貴たちへ、みほ愛の波は来ません(無慈悲)

はい、作戦会議です。終わりました。

ここからの行動ですが、作戦とかはあまり気にせず、とっととフラッグ車狙いましょう。

戻る時も隠れたりする必要はありません。戦車に乗れば試合再開なので、プラウダ生たちが?→!になって追いかけてきますが、追いつかないので無視です。

 

はーい、よーいスタート(2回目)

仕切り直しです。

作戦では原作通り、包囲を破ってこちらのフラッグ車とノンナさんのでっかいモノの鬼ごっこですが、ここ短縮します。

来た道を戻って、プラウダ生たちの視界から離れましょう。そうすればプラウダ生は全員ほんへ通り八九式を狙いに行って、フラッグ車のT34とKV2だけが市街地に残ります。

視界切れましたので、速攻で転身して市街地へ

ちなみにここレオポンさんチームが先に見つけたら撃破しちゃいますので、何が何でもRTA用アリクイさんチームが先に見つける必要があります。

 

どこだぁ~、探すぞ~

 

いました! 行きますよーイクイク

建物を利用して撒こうとしていますが、逃がしはしません

カチューシャから待機命令が出ているはず。この市街地から出るという事は無いと思うので、とにかく追い続けます。

この市街地ですが、KV-2が大洗がさっきまでいた廃屋の前で陣取って、こちらに砲撃をしかけてきます。避けやすい上に装填時間があるとはいえ、一発の威力は建物を貫通してあまりある破壊力ですので、先に仕留めましょう。

 

『あぁ、もう! レオポンさん! 先にKV-2から仕留めるで! 援護よろしく!』

『らじゃー!』

 

ゲームの仕様上、KV-2の防御力は高めに設定されておりますので、ポルシェTとの連携攻撃で撃破を狙います。

連携攻撃の場合攻撃力が上がるので今回の様に強い戦車相手にチームを組んでいる場合は積極的に使っていきましょう。ただし、RTA的にはカットインの時間を短縮したいので多用するつもりはありませんが……

 

ちなみに、連携攻撃は重ねに重ねる事ができますので、CV33を20台ぐらい用意すればカール自走臼砲でも撃破できます。

 

はい、KV-2撃破しました。経験値は半分になっちゃいますが、それはそれとして、うん、おいしい!

 

『フラッグ車囲い込むで! レオポンさんはどこか角ふさいでください!』

『角だって』

『コーナーを攻めるぞ!』

 

お、三式とプラウダのフラッグ車が勝利を目指して、ぐるぐるしている。

レオポンさんチームが住宅区画の角を防いでくれたおかげで、身動きが取れなくなりました。

そこを狙って……撃破!

 

白い旗が上がって試合終了です……リザルト画面ですが

T34とKV-2の連携撃破、フラッグ車を撃破して、アリクイさんチームに経験値がアホほどつきました。やったぜ。

これで次の黒森峰戦ですが、何を気負うことなくショトカが解放できそうです。

試合後、特にイベントはなく感想を述べて終了です。

ご視聴、ありがとうございました!

 

 

 

シナリオ気になる兄貴は以下をご覧ください。

 

 

 

 

春を抜けると、プラウダ高校は雪国であった。

夏の季節、世間一般的に学園艦で生活する生徒たちは、夏の暑さと共に潮風を浴びることが多く、家の中でクーラーや扇風機を出すとはいえ、窓を開けてさざ波の音を愛でる者もいる。

 

しかしながら、寒冷の海域に艦を向けるプラウダ高校にとっては無関係の話だ。

まして次の戦車道の試合は、得意とする雪原での戦いである。

戦車道のメンバーは真面目に練習を重ねているが、その心中に「相手は聞いた事もない学校」「おまげに雪の上なら負けるわげがね」と高を括っているところがあるのは否めない。

 

その急先鋒は隊長のカチューシャであろう。

 

「ただし、妹の方だけれど」

「なんだ……」

 

西住流と聞いて震えあがるも、それが去年の勝因だと分かると安堵する程である。

プラウダ高校を訪問したダージリンであるが、特に目的があってきた訳ではない。

時期からして、準決勝に向けた激励であろうか。

 

「無名の学校をここまで引っ張ってきたの」

「そんな事を言いに、わざわざ来たの? ダージリン」

「まさか、美味しい紅茶を飲みに来ただけですわ」

 

喫茶が目的と、本人がそう言うからにはそうなのだろう。

 

「それと……」

「?」

「砲門 愛。ご存知かしら」

「誰よ。そいつ」

「関西のジュニアチャンプだった方よ。彼女も大洗女子の戦車道に参加してるわ」

「ふーん」

 

カチューシャは、眼中にないといった風であったが、その記憶を辿りに辿ると確かに聞いたことのある名だったのは間違いなかった。

夕方のニュースだったか。関西の戦車道ジュニアチャンプとして紹介され、ニっとした笑顔でトロフィーを抱えていたような、ないようなうろ覚え。

 

「所詮は地方大会止まりの人間でしょ? 私たちが気にかける程じゃないわ」

「まぁ、強気。近畿自動車道の怪物と言われた方ですのに」

「ふん! そんなの街道上の怪物が吹き飛ばしてあげる!」

 

紅茶を一気に飲み干すカチューシャに、ダージリンはただいつものように微笑むばかりであった。

ええ、屈託なく。

 




次は5月ぐらいに投稿すると思います。

誤字脱字があればご報告ください。


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プラウダ戦②

投稿遅れたのはウイニングポストってやつが悪いです。

アリクイさんチームの台詞わかりやすく「にゃ」「もも」「ピヨ」で分けちゃってるの、ちょっと安易かなぁと悩むところ


今日は良い事尽くめだった。

何と言ってもチームが2つも加入したのはとても大きい。

風紀委員さん達―カモさんチームは、戦車道は初心者ながら、チームとしての統率はちゃんと存在しており、日頃の業務がこうして転用できているのは心強い。

そして自動車部―レオポンさんチームは、元からメカニックなところと運転に精通しているとはいえ、西住さんや私が特に重点的に指導をせずとも、戦力として申し分のない動きができていた。ティーガーという抱えるところが多い戦車を、あのように乗り回せるのはとても心強い。

 

何はともあれ、練習後。思いつめたような表情をしていた会長たちに、西住さん共々生徒会室へと呼ばれた。

次の試合の舞台が雪原という事もあって、北上している大洗女子学園は、季節は夏だというのに長袖を着用しなければならない程、寒気の下にあった。

 

「はふぅ、うま、これよ、これ」

「砲門ちゃん、よく食べるねぇ」

「ねぇ、西住さん。このアンコウは水産科の子たちから貰ったやつなの」

「いや、アンコウの入手経路は良いですから」

 

話があるというので来たのだが、いつもの堂々と、そして飄々としている生徒会長のぎこちなさは、私たちに誤魔化しているものがあるかのような振る舞いで、まぁまぁ、という体で鍋も振る舞われた。

うーん、これだ。下手に味付けという味付けをせず、シンプルな調味料たちとアンコウの出汁という出汁で鍋の下地は完璧である。

特にこの唐揚げも最高だ。こうして鍋の汁につけて食べると、うん、大正解。こういうのだよなぁ、と言語野を放棄して味覚を納得させる。

 

「これは有志生徒が各自で好きに配合したアサガオの展覧会。これは全国囲碁サッカーの応援に行った時で……」

「おー、すげー」

 

西住さんも、生徒会の皆さんも箸がそこまで進まなかったようなので、私が完食した後

会長はアルバムを取り出して、私たちに見せた。

一つ、一つの写真には、なるほど思い出が込められており、小山さんや角谷会長、そして河嶋さんの顔には、いつも見せぬ慈しみの表情が見て取れる。

尤も、話を聞きに来たという西住さんは容赦なく「思い出話は良いですから」と、節々で話を切り上げたが、それはそれとしてアルバムのページは進んだ。

 

思い出という思い出を聞かされた私たちはそのまま帰宅の途についていた。

 

「結局、話って何だったんでしょう」

「食事をして、思い出話をしたかったて訳では無さそうでしたもんねぇ」

 

得心が行かぬままであったが、私としては腹いっぱいになれたので、そこまで気にかかることではなかった。

西住さんは頭上に「?」を浮かべているが、確かに生徒会は不審であった。

考えを巡らせ、空を見上げると雪がしんしんと降り続ける。

 

次はいよいよプラウダ校と戦うことになる。誰が何を言おうと去年の優勝校だ。

しかし、昼間の練習で河嶋さんが吠えたように『負ける訳にはいかない』

競技に挑む以上は、その心構えでぶつかるべきであろう。

そうと思えば、ちょうど良いタイミングである。

 

「西住さん」

「はい?」

「折角ですし、ウチに来て作戦会議しまへんか?」

「え、え~~!? い、いいんですか!」

「え、えぇ、まぁ」

 

ここから私の家はそう遠くないので、誘ってみたが思った以上に食いついてくださった。どこか嬉しい反面、その圧に思わず後ずさる。

話を伺うに、西住さんは家元の娘さんという事で、そういった交流がどうにも少ない、いや、無かったそうである。

そうともなれば、こうして舞い上がるのはおかしくない。

 

「さ、どうぞ」

「お、お邪魔、します」

 

誰とて初めて入る家は、借りて来た猫のようになるものだ。

私の部屋は女子高生としては家具やグッズが少ない。そういったものへの興味はあるが、3年間しか住まないと思うと、どうにも荷物は少なくしようと考えてしまう自分がいるからだ。

それだけに、目に入ってしまうものがあるとすれば、それは私が獲得した賞状やトロフィーを飾った棚であろう。

リビングに入った西住さんは自然と棚の前へと興味深そうに近づいた。

 

「わぁ! 砲門さん、これって」

「はい、今まで獲得したもんです。上の段が中学時代、下の段が小学生ン時です」

「凄い、こんなに……」

 

全日本戦車道大会小学生部門敢闘賞、戦車道京都府ジュニア大会優勝、戦車道京都府大会山城リーグ中学生部門優勝、戦車道京都府大会中学生部門優勝、戦車道関西大会京都府代表金賞、戦車道全国大会中学生部門関西大会敢闘賞……その他色々とあるが、先ほどの生徒会のように、どれも思い出がある。まだ十代だというのに、それが懐かしいと思ってしまう程だ。

写真に映える、いたずらに成功したようなクソガキの笑みを浮かべている自分に西住さんは興味津々と見つめている。

……………気恥ずかしい!

 

「西住さん! 私は資料用意しときますんで、冷蔵庫からイチゴ出してください。甘いもんでも食べながらの方が冴える思いますし」

「あ、はい! 分かりました!」

 

ソ連の戦車一覧を描いた本や、戦車道の公式試合の記録などをとにかく本棚から取り出す。

プラウダ高校ともなれば資料はぞろぞろあるもので、こういった事には困らない。

映像記録も豊富にあるだろうし、パソコンとテレビ繋いで大画面で見てやろう。

リビングに戻ると、西住さんが冷蔵庫の前で固まっていた。

 

「ど、どないしましたん?」

「冷蔵庫、イチゴだらけでどれから出せばよいのか分かんなくて」

「あ! あぁあぁあぁあぁ、あの、それ、実家から送られたやつです! や、地元結構イチゴの産地やってるんで、そんでいっぱい送って来よって……病んでるとかじゃないですからね!」

 

あたふたする私を見て、西住さんが笑みを浮かべる。

適当にイチゴをボウルに放り込んで水で洗えばよろしかろう。

テーブルに試合会場の地図を広げ、準備は整った。

 

「言うまでもありませんが、今回は雪原での試合となります」

「はい」

「開始地点はここで、向こうさんは多分この辺やと思います」

「…………」

 

西住さんが地図とにらめっこ。

雪原での試合、私は何度か経験したが、豊富という訳でもない。

 

「戦車はもちろん、今回の場合環境においてプラウダ高校は私たちよりも有利に展開すると思います」

「はい」

「ですので、今回は慎重に動き、焦らず確実に一つ一つの戦車を撃破しようと思うのですが」「分かりました。私も同意です」

「うん、それでプラウダが使う戦車なんですけど……」

「T34のシリーズを中心に持ってくるとして、IS-2、IS-3、KV2なんかが出てくると思います」

「T34で隊を編成して……どこかに誘引して、他の貫通性や火力の高い車両で一気に砲撃ってところかな」

「恐らくは。少なくとも戦力の差からしてプラウダらしくない作戦をとってくるとは思えません」

「うん、でも、それなら……」

 

良い作戦を思いつくには糖分だと言い訳して、イチゴを手づかみで適当に取ったその瞬間。西住さんに閃きが降りたようだ。

 

「えっと…その……あ、愛さん!」

「…え、あ、はい!」

「す、すみません! その…別働隊をお願いしたいんですけど……」

 

思わず名前で呼ばれたが、良い気しかしない。

西住流の家元の娘という以前に、学友としてお近づきになりたいお人なのは間違いないからだ。

でも、名前呼びは、こう、めっちゃ、ゾクゾクする、嬉しい

 

「別動隊ですか。 ……確かに2チームも加わって、以前より手広く展開はできます。しかし、プラウダの誘引作戦を考えますと、戦力は分けず、集中して確実にそれぞれの戦車を撃破する方が良いと思いますが」

「もし、プラウダが私たちをどこかに誘い込むとすれば、囮の車両を何両かこちらに向かわせると思うんです」

「はい」

「その場合、囮、誘引、包囲、という3つの編成で来るはずです。それに対して私たちは本隊が囮と誘引部隊を、そして別動隊が先行して想定したポイントを把握しながら包囲部隊の車両を撃破…うぅん、引き付ける事でプラウダの作戦を逆手に取ります」

「なるほど、良い案やと思います。それなら、別動隊の面子ですが……」

「今回は八九式をフラッグ車にしようと思います。夜間の試合で、この天候なら車体はできるだけ小さい方が良いと思うので。そこで別動隊は、アリクイさん、レオポンチームの小隊編成で行こうと思います」

「了解しました。そこで相手の包囲が想定されるポイントですが、地図を見る限りは主に3つ。この開けた平野部のところと、森林地帯のとこ、そんで集落のとこやと思うのですが」

「……森林地帯はむしろ小さい車体の多い私達の方が有利。平野部で戦うには三突や、ポルシェティーガーの砲は脅威かも。集落群を包囲ポイントだと想定します」

「確かにここならウチらの機動力も火力も制限される……よし、じゃあここですね。そんなら次は本隊の進行ルートですが」

 

西住さんは日頃おどおどとされているが、戦車道のこととなれば矍鑠としておられる。

一つ一つの決定にそう時間はかからず、その論理も明快。

正直、プラウダ相手では意見がぶつかると思ったところがあるのでイチゴも用意したのだが、無用の心配であった。

ボウルを傾けて、飲むようにイチゴを頬張る。

 

「雪、えらく積もって来ましたね」

「うん…そうだ、防寒用に色々と交換しておかないと」

「防寒……そうや、明日練習終わったらみんなで食べモン買いに行きません?」

「え?」

「試合用にです。万が一、長期戦になると胃袋からやる気が取られますんで」

 

私が関西ジュニアチャンプになった試合は、冬場の東近江市であった。相手は兵庫選抜。

鈴鹿山脈や地元の山、田畑に降りしきる雪の中で、戦車道の試合はとてもしんどかった。

手がかじかんで動けないだの、吹雪で前が見えないだのの泥試合だ。

 

「あぁ、それも大事ですよね……う~ん! 美味しい!」

「でしょう! ささ、もっと食べてください。もう仰山ありますんで」

 

作戦の話は大まかに決まった。後は明日、細かいところを詰めておけば良いだろう。

まずは、JK二人。イチゴパーティを楽しもうではないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

プラウダ戦に臨むという事は、準決勝を意味する。

既に試合会場は雪の中。雪こそおさまったが予報ではまた降り出すようだ。

 

「ホーモンさん、お弁当とカップ麺全部入れ終わったよ」

「これ全部食べ切るピヨ?」

「はい。何ぞ良かったら好きに食べていただいて結構ですからね」

「こんなに食べきれないもも!」

 

アリクイさんチームともだいぶ打ち解けて、三式の動かし方も以前よりはるかに上達した。

この試合できっと戦力になってくれるであろう。

おかげで、古いパソコン(コア9とか10800チとか書かれてるやつ)をねこにゃーさんから譲ってくださり私のオンゲ環境も良好になった。家宝としよう

私たちは早速携帯ゲーム機でオンライン対戦を始めるが、これは時間つぶしというよりも試合前の集中にちょうど良いからだ。

 

「これ、準決勝なんだよね……」

「そう思うと緊張してきたもも」

「でも、ホーモンさんはどっしりしてるピヨ」

 

さりとて、アリクイさんチームは未だ初心者である事には変わらない

むしろ、初心者だからこそ準決勝決勝も気兼ねなく動いていただけるかと思っていたが、どうにもアンツィオ戦が応えたようだ。

開始早々の撃破というのは確かに脳裏に残ってしまう。

 

「いや、心臓バクバクですわ。ジュニアじゃイキってましたけど、高校生部門なんなったら、試合のレベルガクンと上がりますし」

「そうなの?」

「全員高校からやり始めるようなら、まだ何とかなる思うんですけど……小学校から初めてなお高校でもやりたいって人が結構いるんで」

 

戦車道と言わず、進学を理由に部活動や習い事をきっぱりやめる人がもちろんいる。

そして戦車道に限って言えば、やはり乙女の嗜みとしてはいささか鉄と油臭いところがあり、試合の遠征も華々しいもので本人はともかく親御さんの方が音を上げる事もお話としては聞いている。

それだけに中学で3年間、いや小学生の時からやっているような者の経験値はどれほどであろうか

そして高校生から始める人達。経験者たち相手にしがみつきながら、時にその才能を開花させる伸びしろと楽しみ方は如何ばかりであろうか

戦車道高校生部門。常にギラ星が輝いていると言えよう。

 

「ウチも1年ブランク空いてるってんで、ここではデカい面させてもろてますけどぶふぉぉ!」

「あ」

「当たっちゃった」

 

したり顔で喋ろうとした顔面に雪玉が直撃した。

犯人は誰と言わないが、ウサギさんチームである。大野ちゃんと、宇津木ちゃんがきょとんとこっち見てるね

まぁ、この積雪は私自身も心楽しむところが無くは無いし、こうして盛り上がるのも仕方がない。

何せ私は彼女らの指導役も兼ねていた身。ここは一つ大人の対応をしようではないか

 

「ねこにゃー! ももがー! ぴよたん! フォーメーションアリクイ! こっちも応戦や!」

「らじゃーだにゃ!」

「先輩怒らせちゃった!」

 

自然とアリクイさんチームとウサギさんチームによる対抗雪合戦となっていた。

やんややんやと投げてるうちに体があったまってくる

雪は降ると言われたら降るけど……という地域で生まれ育った私にとって、目の前の銀世界は興奮冷めやらぬばかりであった。

 

「先輩、あれ」

「あぁ?」

 

澤ちゃんに指を示されて見えたのは、なんかでっかいお車

上に鉄筋みたいなのを4つか5つ以上備えており、牽引車の先頭っぽい

中から降りてきたのはパツキンの小っちゃい子と、タッパのでかいクールビューティ

こちらは知っている。プラウダ高校戦車道と言えば、カチューシャとノンナである。

 

「ぷ、あははははははは! このカチューシャは笑わせる為に、こんな戦車用意したのね、ね!」

 

御大層な挨拶と憤りたいが、目の前の少女は傲岸不遜を許される実力を有している。

それに反論できるほど、大洗女子の保有戦車がいささか特徴的なものばかりなのは、私としても認めている節がある。

 

聞き耳を立てずとも、自信家らしいカチューシャさんは大きな声で我々に堂々と宣戦をなされに来た。

ノンナさんに肩車されているが、いや、ノンナさん脚線美すごいなぁ。

挨拶そのものは会長さんが引き受けていたが、別れ際、西住さんの存在に気づいたようで、去年の優勝について『感謝』の言葉を伝えられた。

カチューシャさん言葉キツ過ぎますて、と思い西住さんの方を見ると、お顔が曇りがかっている。

 

「じゃあね~、ピロシキ~」

「ダスヴィダーニャ」

 

あ、ウチには何も無いんやと安堵するも、2年前のジュニアチャンプなんてそんなものかぁと、ちょっぴりさみしさに包まれる

 

 

 

 

 

試合直前のミーティング

先ほどの宣戦布告もあってか、にわかに浮ついてるような雰囲気が見て取れた。

西住さんが相手の出方を伺うと言ったところで、カエサルさんが申し出る。

 

「ゆっくりも良いが、ここは一気に攻めたらどうだろう」

 

それを皮切りに各チームから積極案を推す声が続出した。日頃は、慎重派な澤ちゃんまで同意している。

カチューシャさんの煽りに思うところがあったのだろう。

プラウダ相手に勢いを武器に臨むのであれば、知波単並みのそれが最低限求められる。

副隊長として、諫めるべきか、ノるべきか

私が悩んでいる間に、西住さんが答えを出した。

 

「分かりました。一気に攻めます」

 

アンコウチームの面々より出た疑問の声に、長期戦になるとプラウダ側が有利になる、みんなが勢いに乗っているならと説明したが、納得したというよりも吹っ切れたような気がしないでもない。

 

「相手は強敵ですが、頑張りましょう!」

 

おぉー!とあがる鬨の声。急な作戦変更も戦車道の醍醐味と思えば、これも楽しまないとね。

すわ、戦車に乗るぞと踵を返して、私を呼び止めたのは西住さんだった。

 

「愛さん」

「うん? どないしました?」

「愛さんは作戦通り、ゆっくり集落群へ直進してください」

「……分かりました」

 

やはり吹っ切れただけのようであった。思惑の程は、後日伺おう

 

「今から準決勝です! 積極的に行きますが、行動自体は作戦通りのルートで行きます! パンツァーフォー!」

「レオポンチームはウチらアリクイについてきてください! 戦車、発進!」

 

準決勝が始まった!

本隊と一拍遅れて、アリクイ&レオポン別動隊が動き始める。

ここで改めて確認。

事前の作戦に置いて、この別動隊の意義は、プラウダが展開するであろう誘引作戦における敵本隊の動向を把握することであり、その本隊の布陣が予想される集落群へ直進し、これを攻撃、誘引作戦そのものの火力を分散させることにある。

 

さて、その場合、我々は本隊と別動隊で常に歩調、進軍速度を合わせなければならないが、西住さんのお考えによると、別動隊はゆっくり行った方が良いようだ。

 

「ねぇ、このスピードで大丈夫なの?」

 

レオポンチームの車長ナカジマさんからの疑問は尤もである。

 

「はい。ウチらはゆっくり行きます」

「え、でもさっき、アグレッシブに行くって……」

「ウチら別動隊は、ここぞというタイミングでプラウダを引っ掻き回す事が重要です。ティーガーの88ミリなんぞ、正に脅威ですし。その為には、何はともあれ安全に集落群へ向かわんとあきません。そこでスピード出して、音ギュンギュン鳴らしながら行ったら、敵に気づかれてまうかもしれませんので」

「なるほど」

「早くスピード出したいなぁ」

「我慢我慢」

 

とりあえずこの説明で良いかな。レオポンチームも納得してくれたようで、別動隊は一路集落群へ向かう。

 

「準決勝、緊張するにゃ」

「今日こそ、初撃破するピヨ!」

「……唐揚げ臭いもも!」

 

アリクイさんチームも意気軒昂で何よりだ。

前回の撃破で沈んでしまわないかと気がかりであったが、杞憂という熟語の意味を思い知らされる。

 

進む風景に変化はなく、そこは雪国であった。

何を思ったのか空を見上げると雪がしんしんと降って来る。どこか意味深げだ。

 

「なんか歌まで聞こえてきたな……うぅ、寒っ」

 

 




誤字脱字などがあればご報告ください。

2023年10月9日追記

まずはガルパン最終章第4話公開おめでとうございます!

さて、本作についてですがご覧のように更新が止まっております……
実はPCが今夏の猛暑に耐えかねて壊れてしまいました(涙
ですので、現在PCの新調に向けて動いており、うまくいけば年内には投稿できます!


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