流れ者のオオカミ (8OROCHI丸)
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”流浪”

なんか、こう、ふと思いついちゃったんだよね。
書こうと思って。


ボクは、誰なんだろう。

気がついたら、何もない荒野を歩いていた。

どうしてここにいるのか、どうやってここまできたのか、何で憶えていないのか、今のボクには何もわからない。

誰か、守りたい、守らなきゃいけない人が居た気がする。だけど、それすら思い出すことは叶わない。

 

ああ、おなか、すいたなぁ。

 

 

「…隊長、あんなところに誰か倒れてやすぜ」

「…あぁん?」

 

部下の声に耳を貸してみるが、誰も見つからねぇ。双眼鏡を取り出してやっとわかったが、たしかに誰か倒れてやがる。よく見つけるもんだ。

 

「おめぇ、この距離で裸眼だっつーのに、よくわかったな」

「…鉱石病(オリパシー)の影響で、視力が異常発達してるんす。だけど、人が倒れてるってこと以外はわかりやせん」

 

…ああ、こいつも、このクソッタレな世界の被害者。俺と同じ穴の狢、か。

 

「まぁいい、取り敢えず保護してやるか」

「…非感染者だった場合、どうすんですかい?」

「ばっかおめー、行き倒れに感染者もクソもねぇだろうが。取り敢えず救ってそっからだ」

 

まぁったく、非感染者にひでぇことされたっつーのはわかるがよ、俺らでその連鎖を広めちゃいけねぇってのに、コイツラわかってねぇなぁ。

 

「…こいつ、だな」

「んー。耳と尻尾からしてループスっすかね?こんな辺鄙な土地で見つけるなんて珍しいもんですが。シラクーザからも遠いし」

「車に載せろ。なるべくそーっとな」

「へいへいっと………。……軽い」

 

ガリガリに痩せ細ったそいつは、もう死んでるんじゃないかと見間違うほどだったが、胸が上下してるあたり、まだ生きてはいるだろう。

 

「基地に戻るぞ。早くしねぇとメフィストのガキから癇癪を受けちまうからな」

「俺あいつ嫌いなんすよねぇー」

「俺もだ、可愛げのねぇガキの相手なんざ真っ平ゴメンだがな、タルラさんの命令がある以上、俺らはあいつの使いっ走りよ。あんな生きてんだか死んでんだかわかんねぇ状況にされるよりかは、まだマシなんだろうがな」

「へへっ、ちげえねぇ」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

目が覚めたとき、ボクは布団の中にいた。

知らない天井だった。

起き上がろうとするけど、うまく力が入らない。

その直後に、ガチャリとドアが開いた。

 

「んお、起きたか。おーい、隊長ー。起きましたぜー」

 

その声とともに、なんだか仮面を被った人が部屋に入ってきた。

ボクはおもわずびくっとしてしまった。

 

「おっと、脅かしちまったか?そいつぁすまねぇな。ほれ、こいつでも食いな」

 

ゴトッ、と目の前に置かれたのは、粥だった。

 

「おめぇさん、随分と痩せ細ってるからな。あんまり一気に食うなよ、じゃねぇと詰まっちまうぜ」

 

きっと、親切な人なのだろう。食べようとするけど、思うように力が出せない。

 

「…もしかして、動けねぇんか?」

 

その言葉に、僅かに首を縦に振ると、深いため息を付かれてしまった。

 

「……ハァー……。思ったよりも衰弱してんな。しゃーねぇ、俺が食わしてやらぁ。ほれ、口開けな」

 

匙で掬った粥をボクの口元まで運んでくれる。なんとか気力を振り絞って、顎を開けようとする。僅かに唇が開いたところで、ちょっとだけ強引に匙を突っ込んできた。

…温かい、柔らかい粥が、流れ込んでくる。それをそのままゆっくりと噛み、少しずつ嚥下する。

 

「強引だろうが悪く思わんでくれな。こうでもしねぇと多分食えそうにねぇと思っちまってな」

 

きっと、この人の言うことは正しい。ボクの口から匙を引き抜くと、また新しい粥を掬う。

 

「急がなくていい。おめぇさんはだいぶ弱ってそうだからな」

 

何回も、何回も。甲斐甲斐しくボクに粥を食べさせてくれた。

そのうちに、段々と、瞼を上げるのが辛くなってくる。

 

「…あ?眠いんか、おめぇさん」

 

その言葉に、肯定の意を示そうと首を縦に振る。

 

「そうかい、ゆっくり休みな。また起こしてやるからさ」

 

…それが、意識があるときに聞いた最後の言葉だった。

 

 

「…起きたと聞いたんだが?」

「粥食わせてる間にまた寝ちまいましたよ。相当衰弱してたみたいでさぁ」

「…そうか」

 

寝息も立てずに目を閉じているこいつは、一体どんな経験をしたんだろうな。本当に死んでるみたいに寝てやがる。

 

「…死んでねぇよな?」

「死んでませんって。さっきまで少ないですけど粥食えてましたし。今のうちに感染検査でもしときますかい?」

「その方が良いだろうな。感染者であればそのままうちで保護したいところだが…」

 

非感染者だった場合、か。ま、なんとかなるだろ。




どう書いていこうか悩みどころ。


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”仁義”

上質な曇らせは書くのが難しい。


「……あー、隊長、検査の結果出ましたぜ」

「お、出たか。どうだった?」

「いやー、それなんですがね……」

 

なんだ、やけに言い淀むじゃねぇか。やっぱり非感染者だったか?

 

「…源石融合率、12%。血液中源石密度、1.27μ/L……。完璧な感染者っすね。にしたってこんな源石含有率の高ぇ数値見たこたぁないですがね」

「…結構な重症だな。ますますあんなところに一人でいた意味がわからんぞ」

「っすねぇー」

 

なにやらきなくせぇ臭いがしやがるぜ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

目が覚めたら、知ってる天井だった。

ああそうだ、ボクは保護されて、それで……。

 

「…起きたか、ボウズ」

「隊長、トシわかんねぇ人間にボウズはどうかと思いますがね」「うるせぇなぁ。俺からしたら皆ケツの青いガキ共よ。もちろんオメェもな」

「うーわひっでぇ。そんなんだからスカルシュレッダーにいい顔されねぇんですよ」

 

……なんだか、賑やかいな。

 

「だーっ!!オメェと漫才やってる暇ねぇんだよ!!話に集中しやがれ!!」

「へいへい、わかりやしたよ」

 

隊長、と呼ばれた人は、まっすぐボクに向き合った。

 

「で、だ。ボウズよ、オメェはどこの誰で、なんであんな場所にいたか、教えてもらえっか?」

 

……ボクが、あそこにいた理由。

 

「…………ごめ、んなさい。なにも、わからない、んです…」

「…わからねぇ?」

「…ボクが、誰なのか。どこから、きたのか。どうして、倒れたのか……。全部、全部思い出せないんです…」

「…こいつぁ参ったな、記憶喪失か……」

「……あー。おめぇさん、自分の名前もわからないクチか?」

 

ボクはゆっくり頷いた。

 

「…隊長、どうしやす?」

「どうもこうもねぇよ。記憶があろうがなかろうが、こいつは感染者だ。だったら、きっちり俺等で面倒見てやるのが仁義だろうよ」

(……仁義)

 

〈……忘れるな。仁義には仁義で、恩義には恩義で……〉

〈……イオ。お前の仁義、私に預け……〉

 

なんだろう。思い、出せない。

 

「しっかし、名前がねぇってなると不便だな。……よっしゃ、いっちょ俺が思い出すまでの仮名をつけてやろう!」

「隊長センスねぇからな、嫌なら嫌って…いっでぇ!!?」

「黙っとれ。今度言ったら一発ぶちかますぞ」

「もうブチかまされたあとなんすけどねぇ!!??」

「…ふふ、ふふふっ」

 

思わず、笑ってしまった。なんだか、面白くて、可笑しくて。

…それでいて、どこか、懐かしさすら感じる、この人たちに。

 

「オメェのせいで笑われちまったじゃねぇか!!どうしてくれんだこの大馬鹿モンがぁ!!」

「今のは俺だけのせいじゃねーでしょうがぁ!!んなこと言ってる間があったら考えてやりなさいや!!」

「それもそうだな」

「急に落ち着くのやめてもらっていいっすか。いつも思うけど慣れねぇんすわ」

 

それからも、ああでもないこうでもないと言い合っていた二人を、少しだけ眺めていた。ボクには、よくわからなかったけど……。だけど、この人たちは、不思議と悪口をいいあっていたはずなのに、なんでか楽しそうだった。

 

「……よし、決めた!!オメェの名前は、リゲル!リゲルだ!!」

「おー、隊長にしちゃ珍しくいい名前っすね。いつももっと珍妙な名前つけるのにっっだぁぁ!!?」

「そうと決まりゃドッグタグ作らなきゃな。おい、手伝え」

「俺の足を踏んづけた謝罪はねーんかよ!!」

「黙らっしゃいや!!黙って聞いてりゃいいたい放題じゃねぇかテメェはよぉ!!あ、リゲル。まだ寝るなら寝てていいからな」

「…はい。ありがとう、ございます」

 

ボクにそう言って、部下の人を連れて出て行っちゃったけど……。本当に面白い人たちだったな。

……やっぱり、まだ、眠いや。しばらく、寝て……………。

 

 

「しっかし隊長、ありゃマジモンの記憶喪失なんすか?どっかの組織から送り込まれてきたスパイとかだったりするんじゃないっすか?」

「いぃや、あいつの記憶喪失は本物だ。間違いねぇ、断言できる。神に誓ってやってもいいぞ、そのまえにこんなクソッタレな世界に産み落としたことを懺悔するまでボッコボコにしてやるがな」

「…そうやって言うってこたぁ、()()()()()()()()()ってことですかい?」

「ああ、俺のアーツが一切の反応を示さなかったからな。あれは演技でできることじゃあねぇ」

「……俺が言うのもなんなんでしょうけど、隊長の『()()()()()()()()』アーツ、使い方が限定的すぎる割に使えるときにゃとことん使えるの、結構有用っすね。呼吸音や心拍音を聞かれてるなんざ夢にも思わねぇでしょうし」

「だからこそアイツは信用できるのさ。理由がどうであれ、記憶喪失が演技じゃねえっていう確証が取れたからな。このまま俺の下に組み込んで、次の作戦に連れて行く」

「…龍門の襲撃、っすか…。正直、あんまり気乗りしないっすね」

「俺もだ。ま、あいつにも花持たせてやりたいしな。取り敢えず体表に源石クラスターは見つかんねぇし、龍門に潜り込ませて偵察でもさせてやろうと思ってるが」

「そういや、アイツってアーツ使えるんすかね?もし有用そうなら使ってほしいもんっすけど」

「さぁな、そこまでは知らねぇよ。……あ、そういや俺らの名前言ってねぇじゃん」

「コイツ渡すついでに自己紹介っすね。部隊の円滑な作戦進行のために……なーんて、俺のガラじゃないっすね」

「…結局、この部隊で生き残ったのは俺とオメェだけだ。あとはみんなチェルノボーグでやられちまったしな…」

「アイツラの分まで、俺らが意志を継がなきゃ駄目なんすよ。俺はそこまで酷くはないっすけど、タルラさん狂信してる奴らも多いっすし」

「誰かがやらなけりゃいけねぇんなら、俺らがやるしかない、か…。はやく、こんな地獄から抜け出してぇもんだな」




血液中源石密度、本家のどのキャラより高いんですよね。
なんででしょうねぇー(棒読み)


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”所属”

PCにエミュを入れて星3以下縛りしてるんですけど
ハゲそうなんすよねー
元々戦略を立てるのがうまくない人間なので苦労します



「俺はグレゴリー、一応小隊長をやってる。こいつは部下のマルカスっつーアホだ」

「ちょいちょいちょいちょい。人の事名指しでアホっつーのはねーんじゃねーですかい?」

「本当の事だからな」

「言っていいことと悪いことがあんだろーがよ!!」

 

起きるなり漫才を披露されて、ボクはまた思わず笑ってしまった。

 

「…話を戻すぞ。俺たちはレユニオン・ムーヴメントという感染者のための組織に属している。……まぁ、最近じゃ感染者のためってよりも、非感染者に対して残虐行為を行う能無しどもになった気がするが」

「隊長。それ、あんまでっかい声で言わんといてくださいよ。マジで」

「ふん、だったらチェルノボーグの暴動はなんだって言うんだ?感染者のためと宣いながら、その実非感染者に対して余計に恐怖を植え付けただけじゃねぇか。何が救済だ」

 

急に怒気を強めたグレゴリーさんに、思わず身体が固くなってしまう。そんなボクを見て、ちょっと困ったような顔をする。

 

「あー、わりぃな。怖がらせるつもりはなかったんだ」

「見た目がこえーから何言っても無駄っすけどねー」

「黙っとけ。…で、だ。リゲル、お前が感染者だってことは、寝てる間の検査でわかってる。一応、俺の部下として迎え入れてやることはできるが、どうする?」

 

…きっと、ボクは幸せものなんだろう。

こうやって、記憶のない厄介者にわざわざ手を差し伸べてくれた、この人たちは。

粗暴で、口が荒いけど、きっと根は優しいんだろうな。そう、思わずにはいられなかった。

 

「…お願い、します…!」

「よっしゃ!歓迎するぜぇ!!」

「んじゃどうします?歓迎会でもしますかい?缶詰くらいしかねぇですけど」

「今日ぐらい良いだろ、どうせこんなご時世だ。いつ死ぬか分からねぇ未来を夢見るくらいなら、今日たらふく喰って明日を凌ぎゃいいんだよ」

 

〈…今日を生きて、明日を凌ごう、オ…〉

 

(…また、か)

 

なんだか、思い出さなきゃいけないことがあったのに。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「さて、早速なんだがな。俺たちゃ斥候だ」

「…斥候?」

「ああ。レユニオンは次に暴動を起こす都市を龍門に定めた。龍門は感染者を徹底的に差別する都市として名高い。スラムにゃ、大量の感染者が怯えながら暮らしてるらしいからな。作戦日時までに都市の地形把握、あとは感染者の勧誘ってとこか」

 

(…この、3人で??)

「リゲル、おめぇさん、今3人でやるのか?って思っただろ」

 

なんてことだ。マルカスは読心術でも持っているのだろうか。そんなことをリゲルが考えていると、

 

「…俺が言うのも何なんだがな。隊長はこう見えても結構実力が高いんだぜ。だから安心しとけ、なんかあったら隊長に全部押し付けりゃいいんだからよ」

「おーい聞こえてんぞアホのマルカス。俺とマルカスは別行動だ。リゲル、お前は体表に源石の結晶が浮き出てねぇから、そのまま商面ゲートから入れ。上手くいきゃそのまま中にいける」

「…が、頑張ります!」

「中に入ったら合流するぞ、地図を渡しておく。大まかな位置しか記載されてねぇが、目印になる施設なんかも粗方印をつけてあるから、なるだけそれを目安に行動しろ」

「は、はい」

 

 

龍門入場ゲートに来たリゲルだったが、なにやら騒がしい。

 

「おい、感染者が暴動を起こしたらしいぞ!!」

「ま、マジか!急いで中に入るぞ!!」

 

どうやら、入場を拒否された感染者が暴徒化したらしく、重厚そうな装備を身に纏った部隊が走り去っていくのがみえる。

 

(…もしかしたら)

 

今なら。直接入れるかもしれない。そう思ったリゲルは歩みを早くした。

結果だけ言えば、無事に龍門の中には入れた。が、もらった地図も限定的な場所しか書かれておらず、現状迷っていた。

 

(……どう、しよう)

 

特に時間は決めてないとはいえ、あまり遅くなっても困る。そう思ったリゲルは、人に聞くしかないと思い、踵を返そうとした。

 

その瞬間、後ろからドサッ。という音が聞こえた。

振り向けば、女性のループスが荷物を落とした音だった。

その姿に、リゲルは違和感を覚えた。

なぜか、目を思いっきり見開きながら、こちらの顔を凝視している。どうしたのか聞こうと口を拓こうとした矢先に、その女性が口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

「……オハ、イオ……!!?」




女性のループス……、一体何サスなんだ…?


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”再会”

自分の作ったクソみたいな文見てるより
他の神作家の作った文章見てる方が楽しいんだよね


「……い、生きてた、のか……!!」

 

ボクに駆け寄ってきた、ループスの女の人。

おんなじような黒髪で、とても綺麗。

 

「私がっ、…どれだけ、心配したとっ…!」

 

ああ、泣いている。哭いている。ボクのせいで、また一人悲しんでいる。

だけど、ごめんなさい。

 

「…ごめん、なさい。貴女は、どなたでしょう」

 

─…手前は、その顔を一生忘れることはできないでしょう。

 

 

私は、やっと見つけた想い人に対して、どんな反応を返せばいいのかわからなくなってしまった。

 

「…冗談、だろう?なぁ…。冗談だと、言ってくれ、オハイオ…!!」

 

…首を横に振る。

 

「本当に、覚えてないのか…!?私だ!テキサスだ!!なぁ、オハイオ、嘘だと言ってくれ…!!」

 

…また、首を横に振る。

 

「…ごめんなさい。貴女の呼ぶオハイオ、という名前。そして貴女のテキサス、という名前…。今のボクには、わからないんです」

 

…私は、立っているのも精一杯だった。

 

「…今、時間はあるか…??」

「……………ええ、少しだけなら」

 

なら、話そう。

きっと、私のことを思い出してくれるように。

 

 

私とオハイオは、かつてシラクーザで同じマフィアに所属していた。私が一員としてであったのに対し、オハイオは傭兵としての所属だった。

ボスは、私の相棒、としてオハイオを付けた。最初は、男のループスにしては細身だったから、少しだけ侮っていたんだろう。

…だけど、オハイオは私の知るどんな人間よりも強かった。他のマフィアとの抗争では、圧倒的な機動力とアーツで凄まじい殲滅力を発揮していた。

オハイオが前線に出れば百戦百勝。いつしか誰が呼び始めたか、常に血を浴びながら戦う姿をとって『鮮血の黒爪(ブラッディ・クロウ)』と呼ばれ始めた。

オハイオは優しかった。たとえ相手がどんな人間であろうと、笑顔を絶やさず親身になっていた。老若男女関係なく、オハイオの人柄に惹きつけられた人間も多かっただろう。

オハイオは冷酷だった。身内にはとことん甘いが、一度敵対したものには、たとえかつての仲間だろうが一切情けをかけなかった。

オハイオは強かった。相手の弱点や行動をすべて知り尽くしたかのような立ち回り、一度指揮を取れば他の追随を許さない作戦立案能力。個人としても、部隊としても群を抜いていた。

 

…そして、[お前]は弱かった。

命令には従えど、その過程で敵の手によって奪われていた幼子の命に、涙を流す人間だったんだ。[お前]は、何時もそれを私に打ち明けてくれていたな。なぁ、オハイオ。

 

〜〜〜

 

ペンギン急便の事務所にオハイオを連れてきた私は、出会ってからの事柄を事細かに話した。

 

「…ある時、シラクーザ中のマフィアが、お前を殺すためだけに徒党を組み奇襲を仕掛けてきた。私達は散り散りになって逃げるしかなかったが、お前だけが、私達を逃がすために最後まで残り続けた。…結局、集合できたのはほぼ半分しかいなかったが、私含め生き残りは一生懸命お前をさがしたさ……」

 

オハイオは、何も言わない。

ただじっと、私を見つめ黙って話を聞いている。

 

「二月ほど経っても、お前の痕跡は何一つ見つけられなかった。その頃、また別の問題に直面して、それどころではなくなった、といったほうが正しいかもしれんが、何れにせよ私達はお前を探すのを諦めた。………諦めて、しまった」

 

…今までずっと、私の心の奥底にあった後悔。

一度堰を切ったように溢れ出てしまっては、もう私自身にも止められない。

 

「…なんで、どうして今になって…!わた、私がっ…!どれほど…!!」

 

嗚咽が漏れる。

ああ、駄目だ。これ以上は駄目だ。

 

「頼む…っ!!お願い、だから…っ。もう、私から、離れないでっ…!!」

 

 

「たっだいのわああああああ!!?!?テキサスはん!!?どなしよったんや!!んん!!?なんやアンタ!!もしかしてアンタのせいかぁ!!?」

 

「い、いや、ボクは…。間違い、ではない、かもしれませんが…」

 

「はぁーっ!!?テキサスはん泣かしておいてなぁにが間違いじゃないや!!お天道様が許してもウチが許さへんで!!天誅ーっっ!!!」

 

クロワッサンは煩いので黙らせておいた。

 

 

☆☆☆

 

 

「ご、ごめんなぁオハイオはん…。ウチの早とちりやったわ…、堪忍してや…」

 

「い、いえ…。実際、疑われても仕方なかった場面ですから…」

 

「…に、しても。テキサスはんのかつての仲間ねぇ。ええやん!感動の再会ってやっちゃろ?何でそんな辛気臭いねん」

 

「…再会、と言われても…。結局のところ、ボクに記憶がないのが、問題なんでしょうけど……」

 

「そこや。そこが問題なんや。原因あらずして記憶喪失になんかならへん。やけど、その原因すら思い出せんっちゅーと、これは結構な難題やで」

 

「…仮に、何かあったとするならば、あの日には違いないんだろうが、今の私には探す術もない。すまない、オハイオ」

 

「いえ、テキサスさんが謝ることでは…」

 

「………テキサス、さん………か、フフフ…」

 

「こーらあかんわ。オハイオはん、あんさんがはやいとこ記憶取り戻さんと、テキサスはんが病んでまう」

 

「き、記憶を失う前のボクは、テキサスさんをなんと呼んでいたのか……」

 

「………いいんだ、オハイオ。これは、見捨てた私に対する罰なんだろう…………ウフ、フフフ…………」

 

「テキサスはーん!!!戻ってこいやぁーー!!!」

 

 

尚、このあとエクシアとソラとすでに振り回されていたバイソン君が戻ってきたことにより、より酷いことになるのはまた別のお話。




見返して( ˙-˙ )ってなる文章しか書けねぇ。
独自設定ばーっかり。


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