Fクラスだけど、優等生のあなたに恋をした。 (孤独なバカ)
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プロローグ
桜の花びらが通学路に花の道が流れている
4月だと春の花と言うと桜と言う人は多いだろう。
春の風物詩の一つだが俺は別のことを考えていた。
朝8時30分ギリギリ学校が始まる時間でもある。そして運命のクラス分けの時間なんだが、正直クラス分けが決まる振り分け試験において大失態を行なった俺はもうクラスについてはある程度予想できていた。まぁ元々のテストの結果はお世辞にも良いとは言えないんだが。
「大沢。」
校門前いかにもがたいの大きい全身真っ黒な人が声をかけてくる。
俺にとって去年からお世話になっている先生でもあるので
「おはようございます。鉄人。」
「お前、今鉄人って。」
「いやあんた大きい姿してるからでしょ。それに趣味がトライアスロン、夏でも生徒で鉄人=西村先生って言われるのは時間の問題じゃないですか?鉄人早速あれくださいよ。結果は知ってると思いますけど。」
俺は鉄人の方を見る。よく話していることもあり西村先生は
「全く、お前の成績ならDくらいなら入れたんじゃないのか?」
「さすがに数学で1桁なら妥当でしょ。正直難しいって言われている振り分け試験で理系はボロボロ、一番得意な日本史は良かったものの他の文系も90〜100くらいですし。」
「自己採点や復習もしているのになんでお前はそこまで伸びないんだろうな。ほら、うけとれ。」
「どーも。」
クラス分けが少しだけ大変そうだなっと思っている中で封筒を受け取る。
「そういえばお前はあのバカ達と比べ落ち着いているな。」
「まぁ、結果が今更変わるなんて思ってませんし、俺が頭が良くなるとは思いませんしね。時間的にも俺が最後だったんですか?」
「吉井のやつがまだきていない。」
「珍しいですね。あいつは遅刻はほぼ無かったですよね。普通に寝坊かな?」
俺は封筒を開く。
すると古びた紙にたった一言だけ書いてある。
大沢 圭吾………Fクラス
知っていたので紙を破って捨てる。まぁ俺の成績はお世辞にもよいとはいえないので仕方ないだろう。
「まぁ、理系ほぼ壊滅でしたからね。納得としか言いようがないです。」
「さすがに数学はどうにかした方がいいだろう。お前文系とはいえ8点はちょっと庇えん。」
「まぁ、自己採点だったら数学以外の理系全部30点台ですしね。私立文系大志望なんで入試にはほぼ関係ないですけど。」
「それにしてもだ。まぁ、お前は授業態度や文系はもぎれもなくいいからな。」
「まぁ、ゆっくりやりますよ。それが俺のやり方なんで。」
果報は寝て待て。ゆっくりとマイペースに。
すると鉄人は呆れたようにする。
「大沢。」
「はい?」
「楽しめよ。この1年間。」
「はい。」
そして俺は教室へと向かうのであった。
高校2年生されど1年。どのようなクラスになるのか少しだけ楽しみに思うのであった。
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クラスメイト達
ここ、文月学園では成績ごとにクラス分けが行われる。そして成績上位者は優秀な設備で授業を受けることができるのだが。三階に来てまず目に入るのはとても大きな教室だった。教室というより本当に高級ホテルのロビーである。そうこれがAクラスの設備である。
システムですくら個別ノートパソコン、個人エアコン、冷蔵庫、リクライニングシートなど最新設備を貰っていることもあり、本当の意味でご褒美的なものであろう。どれだけの設備を投資したのだろう。
まぁ目に付くということはこれを目標に勉強を頑張れということでもあるのだが。
そして俺は最底辺のFクラス。当然差があるとは思っていたけど…。
Fクラスの教室前まで来たのはいいが、二年F組と書かれたプレートに至っては素材が腐っていて、折れ曲がっている。中に入ると畳は傷んでおり、ボロボロなちゃぶ台、さらには隙間風が漏れている。
「まぁ、仕方ないか。」
成績が悪かったのが問題だしなぁ。まぁ、鉄人の言う通り正直Dクラスは狙えたのは事実だ。
ただし数学が今回採点の厳しい木内先生であったり、文系でもかなり取れた問題を落としたのだから自分の実力だろう。
「はぁ、流石に理系でも50は取らないと厳しいか。」
「ん?ってなんだ。圭吾か。ため息吐いてないで入ったらどうだ?」
「ん?雄二か。」
どうやら大きな体格である雄二をに気づかないくらいになっていたようだ。
「つーか、お前Fクラスなのか?成績そそこまで悪くなかった覚えがあるんだが。」
「まぁ、下振れを引いたこともあるんだけど、理系が全滅してる。総合ぎりぎり900点超えてるか超えてないくらいじゃないか?」
「それなら、多分俺の次だだろうな。代表の俺がそれくらいだから。」
「…あー雄二が代表かぁ。」
「どうした?」
「なんか騒がしくなりそうだなぁって。どどうせアキやヒデ、康太もこのクムッツリーニもこのクラスだろ?」
「後私もいるわよ。」
「島田もか。」
本当に仲のいいやつ固まってるんだな。ポニーテールの少女は島田美波、ドイツからの帰国子女でありながら、昨年日本語を教えていたこともあり何かと縁がある。どちらかといえば恋愛感情というよりも良くも悪くも女友達として仲がいい。
「まぁ、去年のメンバーってところか。」
「そうね。でもこれからどうするの?」
「さぁな。試験召喚戦争を仕掛けるんなら早めだと思うけど。」
「?そうなの?」
「まぁ、こういったことは早めにやっていた方がいいだろ相手がシステムに気づくまでにな。というよりもこの教室のまままって嫌だろ。」
「確かにね〜。このままだったらのうのう。このままでは体調を崩してもおかしくはなないのじやのじゃ。」
「おっ。ヒデ。おはよう。」
どちらかといえば男性というよりも女性の格好をに似ているがれ歴とした男性ののヒデこと木下ひ秀吉におれは俺はいつもどいつも通りの日常が始まったとだなぁと苦笑してしまう。そして暫く3人でで話していると
「すみません、ちょっと遅れちゃいましたっ♪」
「早く座れウジ虫野郎。」
うん。いつも通りだ。俺は苦笑してしまう。
まぁ今年も騒がしくなりそうだなぁととおい遠い目をしながらその2人を見るのだった。
自己紹介はなるべく普通の自己紹介で済ませ、そして暫く聞いていた。まぁ島田があ明久を殴ることが趣味と言ったり、明久が渾名を、ダーリンと呼んで下さいといって男子率95%のクラスからダーリンという男性野太い声が聞こえてきたくらいしか見所はなかった。
そんな中で淡々とし自己紹介が続いていると
ガラガラッ
「す、すいません……遅れました……。」
扉の方からピンク色の髪の長い女子生徒が入ってくる。その姿に俺はポカンと口を開けてその姿をじっと見てしまう。
「おや、ちょうど良かった。今は自己紹介をしている所なので姫路さんもお願いします。」
「は、はいっ。姫路瑞希といいます。宜しくお願いします。」
「あのっ! 質問させて下さい!」
俺は真っ先に手をあげる。すると姫路さんと呼ばれた生徒は少しだけ驚いたようにしていた。
「はい? 何でしょうか?」
「どうしてここに居るんですか!?」
失礼極まりないが俺以外にもこの質問は気になった人はいるはずだ。
成績は俺達と比べると本当に地と山くらいに成績差があるはずなのだが。だが失礼とかそんな考えはないのか姫路は答える。
「えっと、試験中に熱を出してしまいまして、途中退席で0点扱いに……。」
「あれ?再試験とかもないのか?先生。」
「えぇ。この学園は体調管理も実力のうちですからねぇ。」
「マジか。あと不愉快にさせたらごめんな。」
「いえ。」
俺が座ると姫路は軽く笑いながら話してくれた。思っていたよりも優しい性格なのかもしれない。
『そう言えば俺も熱の問題が出たせいでFクラスに……』
『ああ、アレは難しかったな』
『実は俺は弟が事故に遭ったって聞いて実力を出し切れなくて……』
『黙れ一人っ子』
『前の晩、彼女が寝かせてくれなくて……』
とか言っているバカは置いといて。つまり試験召喚戦争が起こった時の第一戦力になりゆるだろう。
「まさか姫路がこのクラスだなんて。さすがに驚いたな。」
「そうじゃのう。まぁ体調不良なら仕方ないのかのう。」
秀吉も初耳だったのか驚いていたらしい。
まぁ、俺は補充試験を正直このあと受けることになるだろう。少しだけ笑みがこぼれてしまう。
「……面白くなってきたじゃん。」
「えっ?」
姫路という起爆剤がいる以上雄二が動かないはずがない。
そしてその通りになった。
「坂本君。あなたで最後です。自己紹介をお願いします。坂本くんはこのFクラスの代表でしたよね?」
「ああ。」
雄二はゆっくりと立ち上がり、教室の前まで進む。
そして、全員の注目を集めるように教卓をバンと叩く。
「さて、俺がこのFクラスの代表を任された坂本雄二だ。俺の事は坂本でも代表でも好きなように呼んでくれ。は代表として諸君らに訊きたい事がある。
俺が仕入れた情報によれば、Aクラスは1人1人にシステムデスク、パソコン、エアコンにリクライニングシートが配備され、水は勿論、ジュースの類もドリンクバーで飲み放題。菓子類も食べ放題。さて、それに対して我がFクラスは……。」
と雄二の視線が自分たちの設備に目を向ける。
腐った畳、綿のない座布団、ボロボロなちゃぶ台、窓すら隙間風が空いている始末。
「……不満は無いか?」
そんなの当然だろう。俺ですらこんな教室なんて嫌だ。なので大声で叫ぼう。
『『『大有りじゃぁぁぁあああああああ!!!!!!』』』
クラス中の叫びだろう。
「だろう。俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として大いに問題意識を抱いている。」
するとクラスから賛同の声が聞こえてくる。何も言わなかっただけで不満はもとよりあったのだろう。
「みんなの意見はもっともだ。そこでこれは代表としての提案だが、FクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う。」
それが今俺たちにとっての戦争のトリガーになるのだった。
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戦争への一幕
試験召喚戦争…これを略すると試召戦争とも言う。これは、下克上のためのシステムであり、もっと分かりやすく言えば『成績』を可視化することによって、生徒の勉強へのモチベーションを上げることを目的としたシステムでもある。別のクラスへと勝負を挑み、勝てばそのクラスの設備を丸ごと入手でき、負ければ逆に設備のランクが落とされる。そしてその勝負の内容とは『召喚獣』とかいうファンタジー色溢れる代物だ。各生徒は自分の試験の点数に比例した強さを持つ召喚獣を使役し、互いに戦わせる。
そして、相手の代表を撃破すれば勝利というシンプルなルールだ。
当然ながら、召喚獣の強い方が有利、すなわち学力が高い者が有利だ。最低辺のクラスであるFクラスになど勝ち目はまず存在しないように思える。
『勝てるわけがない。』
『これ以上設備を落とされるのは嫌だ。』
『姫路さんがいたら何もいらない。』
試召戦争をこんなにも早く仕掛けるクラスは俺が知る限りは未だに存在していない。まぁ本当にないから異例だし、リスクも高い。
「いや、そんな事は無い!必ず勝たせてみせる!!それにこのクラスには勝てる要素が揃っている。それをお前らに一つ一つ説明してやる。まず圭吾。」
「ん?俺?」
「あぁ。圭吾は理系は壊滅的だが文系はBクラス、特に日本史では学年の五本指から外れたことがない。」
文系は上手くいけばAクラス下位くらいには点数が跳ね上がる時はあるがそれでもかなりの上振れを引いた時だ。まぁ日本史に限っては上振れたら学年トップになる時もある。
「それと……おい、康太。畳に顔をつけて姫路のスカートを覗いてないで前に来い。」
「…………!!(ブンブン)」
「は、はわっ//」
「相変わらずだな。ムッツリーニ。」
「「「なんだと!?!!」」」
ムッツリーニ。俺がつけた渾名でむっつりスケベから来ている。まぁ実際保険体育が高いこともありFクラス最高点を取れるのはおそらくムッツリーニになるだろう。
「姫路のことは俺が説明するまでもないだろう。皆だっても姫路の実力は説明しなくても理解できてるだろ?」
「え?わ、私ですかっ?」
「ああ。うちの主戦力だ。期待している。」
これで一応三人か。1教科であれど、Aクラスに対応できるのは。
「木下秀吉だっている。」
『おお‥‥!』
『ああ。アイツ確か演劇部のホープで木下優子。』
「当然俺も全力を尽くす」
『確かになんだかやってくれそうな奴だ』
『坂本って、小学生の頃は神童とか呼ばれてなかったか?』
『それじゃあ、坂本の実力は姫路さんと同じくらいかも知れないってことか!』
『つまり、実力がAクラスレベルが二人もいるってことだよな!』
あっ最後は精神論なんだ。二人の成績を知っているがヒデは論外、雄二は確か総合950点くらいだった覚えがあるんだが。
まぁ、雄二に限っては頭はいいんだから勉強すればいいのにって思うが。
「それに、吉井明久だっている。」
……シン---
最高だったはずの熱気は一気に0まで落ちる。 雄二、何故この流れで落ちをつけるな。
『誰だそいつ?』
『そんな奴居たか?』
『何かよく分からないけど、バカっぽい名前だな。』
「ん。まぁ観察処分者だろ?アキって。もしかしてそのことか?」
俺がいうと観察処分者という名前にみんなから反応を受ける。すると軽く俺の背を叩く人がおり、そこを見ると姫路が首を傾げていた。
「あの~。」
「どうしたんだ?姫路。」
「すいません、『観察処分者』って何ですか?」
「《観察処分者》。それは学生生活を営む上で成績が悪く、学習意欲の欠ける問題児に与えられるペナルティを表す名称かな。バカの代名詞とも呼ばれるやつでこの学年初めての観察処分者がアキなんだよ。具体的には教師の雑用係だな。特例として物理的な干渉が可能になっている。それで力仕事といった類いの雑用をさせられるんだ。まぁもちろんデメリットもあって少しだけど身体的なフィールドバックつまり召喚獣との感覚を共有しているって感じだな。」
『『『おぉ!!!』』』
すると軽く歓声があがる。それは雄二も驚いたようにしていたようで苦笑している。
「圭吾詳しすぎじゃない?そしてしれっと僕のことバカにしたよね!」
「いや事実だからな。まぁ物理的干渉がある召喚獣は俺たちが雑用する時になったら重宝するけどな。」
『おいおい。《観察処分者》ってことは、試召戦争で召喚獣がやられると本人も苦しいってことだろ?』
『だよな。それならおいそれと召喚できない奴が一人いるってことになるよな。』
「気にするな。どうせ、いてもいなくても同じような雑魚だ。」
「雄二、そこは僕をフォローする台詞を言うべきところだよね?」
「それなら少しは勉強しろ。」
そうならなければこのクラスにならなかったんだからな。
兎に角だ。俺達の力の証明として、まずはDクラスを征服してみようと思う」
そう言って、雄二は教卓を叩いていい放った。
「皆、この境遇は大いに不満だろう?」
『おおーーっ!!』
「ならば全員筆を執れ! 出陣の準備だ!」
『俺達に必要なのは卓袱台ではない! Aクラスのシステムデスクだ!』
『うおおーーっ!!!』
「お、おー……」
士気は十分。最初の目標はDか。まぁいい戦力差だろう。
「それじゃあ明久。お前にはDクラスへの宣戦布告の使者になってもらう。無事大役を果たせ!」
「‥‥下位勢力の宣戦布告って、大抵酷い目に遭うよね?」
「何言ってやがる明久。奴らがお前に危害を与えることなんてない。騙されたと思って行ってみろ。」
どうせ暴行されるとは思うけど、俺も行きたくないため黙り込んでおく。
「本当に?」
「あぁ、俺を信じろ」
まぁそれに騙されるアキもアキだからな。
そして数分後、ボロボロになったアキが戻ってくるのであった。
「取り敢えずは、このメンバーで作戦会議を行うつもりだ。明久、宣戦布告はしてきたな?」
「うん。一応今日の午後に開戦予定と告げてきたけど。」
「ならお昼食ってからか。」
「そうなるな。明久、今日の昼ぐらいはまともな物を食べろよ?」
「そう思うならパンでも奢ってくれると嬉しいんだけど。」
「こいつ本当に俺が面倒見てない時もこんなんなのか。」
食生活に問題があるので俺が時々ゲームを貸し出してもらい夕食をご馳走するなど少し食提供をしている。
「えっ、吉井君ってお昼食べない人ですか?」
「いや。一応食べてるよ。」
「‥‥‥あれは食べていると言えるのか?」
「何が言いたいのさ。」
「いや、お前の主食ってよーー水と塩だろうが。」
「失礼な!きちんと砂糖だって食べているさ!」
「…なんで生きてられるんだよ。」
「あの、吉井君。水と塩と砂糖って、食べるとは言いませんよ‥‥‥」
「舐める、が表現としては正解じゃろうな。」
「まぁだろうと思っていたから少し多めに作ってきたけどな。一人も二人もそこまで変わらないし。」
俺は少し心配であったため多めに料理を作って弁当に入れてきた。
まぁ予想外なのは少し人数が多いくらいだろう。
「あれ?えっと。」
「あぁ。大沢だよ。大沢圭吾。圭吾でも大沢でも好きなように呼んでくれ。」
そういえば自己紹介の時はいなかったからな。
高校1年は全く話したことがないから仕方ないだろう。
「はい。大沢くんって料理できるんですか?」
「ん?一人暮らしやってるからな。ある程度はできるぞ。」
「ある程度じゃないだろ。お前。俺や明久、康太も料理をするが、一番美味いじゃないか。」
「ウチも料理をする方だけど……あんたの実力には負けるわよ。」
「まぁ、趣味でもあるからな。一応少し多めに作っているからツマミ程度にならいいぞ。」
「何作ってきたのよ。」
「唐揚げ。塩、にんにく醤油、生姜の3種のタレを昨日の晩から染み込ませて今日の朝揚げたやつ。味も三つあるから進むと思ってたけど。ついでにサンチェやレタスで巻いてもよし、白ご飯に乗っけても美味しいぞ。一応自家製のタルタルも作ってあるけど。」
『『『おぉ!!』』』
唐揚げは男子にとっては正義である。なので腹ごなしには丁度いいと思ったので少し奮発した。
「……なんで同じ一人暮らしでもこんなに差ができるんだ。ま、飯代まで遊びに使い込むお前が悪いよな。」
「し、仕送りが少ないんだよ!」
「まぁ、少し分けてやるから。」
俺が苦笑しているとすると姫路がふと手を挙げた。
「‥‥‥あの、吉井君。良かったら明日は私がお弁当作ってきましょうか?」
「ゑ?」
姫路の優しい心遣いに明久はポカンとなる。ふむ、手作りのお弁当をアキにか。
もしかしてそういうことか?
「本当に良いの? 僕、圭吾以外の固形物を食べるなんて久しぶりだよ!」
「はい。明日のお昼で良ければ」
「‥‥‥ふーん。瑞希って優しいのね。吉井だけに作ってくるなんて。」
棘のある言葉でそう言った島田の顔は何か不満げだ。まぁ、島田もアキのことに好意的に見てるからなぁ。
「あ、いえ!その、皆さんにも‥‥」
「俺達にも?いいのか?」
「はい。嫌じゃなかったら。」
「それなら島田も作れるだろ?俺も作るからバイキングみたいにして突き合えば?」
「えっ?」
俺の提案に島田は驚いたようにしている。
同じ女子力なら競わせた方が面白そうだし、丁度いいだろ。
「三人なら全員分作るのにそこまで困らないだろ。どうせ明日には試召戦争終わってテスト漬けだろうし、女子の手料理ってことで全員に振る舞えばいいじゃん。俺はデザート作ってこればいいし。」
「島田さんもいいの!?」
「あぁもう。姫路さんだけに作らせるわけには行かないからいいわよ!」
「ほう。」
すると面白そうということで全員が乗り気になる。
「それは楽しみじゃのう。」
「なら、お言葉に甘えるとすっか。」
「‥‥‥‥(コクコク)」
「それじゃあ飯にするか。あ〜腹減った。」
と言って俺たちは屋上へ急ぐ。本当にさっさと飯を食べようか。
食事が終わり、一息入れた後雑談の後に雄二が気が取り直したように俺たちを向きなおる。
「さて、話が逸れたな。試召戦争に戻るとしよう。」
「雄二。気になっていたのじゃが、どうしてDクラスなんじゃ?段階的にするならEクラスじゃろうし、勝負を仕掛けるならAクラスが妥当じゃろう?」
「そう言えば、確かにそうですね。」
「まあな。当然考えがあっての事だ。」
「ん〜まぁ、やる意味がないからじゃないか?姫路がクラスにいる以上は正直あまり怖さがないんだよなぁ。」
俺が答えると雄二も頷く。油断かもしれないが姫路がいる以上正直勝てるだろうと思ってしまう。
「あぁ。それにこっちのクラスに圭吾もいるからな。Eクラスだと練習相手にもならないのだろう。圭吾は下振れを引いても文系ならDクラス並はあるからな。、要するにだ。内には幸運にも姫路と圭吾いう戦力がいる。姫路や圭吾に問題の無い今、正面からやりあってもEクラスには勝てる。Aクラスが目標である以上はEクラスなんかと戦っても意味が無いということだ。」
「? それならDクラスとは正面からぶつかると厳しいの?」
「ああ。圭吾だけなら確実に勝てるとは言えない。そこで姫路の出番という事だ。」
「……なるほど。そういうことか。」
所謂代表を今回打ち取るのは姫路ってことになるだろう。
「あぁ、話を「あの、少し良いですか?」……ん?」
俺達は話を戻そうとすると、姫路が手をあげて質問をしたがっている 。
どうしてもこのタイミングでの質問はなにか気になることがあったのだろうか?
「はい、姫路。どうぞ。」
「は、はい。あの今回の戦争の理由はなんなのですか?」
「あぁ、今回の戦争した理由か……それはな明久がさっきさっきの話、Dクラスに勝てなかったら意味がないよ?」
そのタイミングにアキが言葉を挟む。どうやらアキがきっかけらしい。
「負けるわけがないさ。お前らが俺に協力してくれればな。」
試召戦争もれっきとした戦争。雄二一人で勝てるほど甘くはないのは分かっている。
「いいかお前ら。ウチのクラスは――最強だ。」
だけどどこか根拠はない。でも不思議といけそうな感じがするようになるのは雄二の言葉の良さだろう。
「面白そうじゃない!」
「うむ。Aクラスの連中をてっぺんから引きずり落としてやるかの。」
「…………(グッ)」
「が、頑張ります!」
「まぁ、目標は高い方がいっか。乗ってやろうじゃん。」
打倒A組、史上最大の下克上を目指し俺たちは戦の渦へと向かうのであった。
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Dクラス戦
カリカリと俺は今試験問題にペンを走らせている。
隣には姫路が受けており、教科は世界史。
時間からいっていっても逆算しても受けられる教科は二科目であり、それならついでに下振れ分の俺の点数も補充することになったのだ。
そして時間ギリギリまで問題を解き続けること一時間。
「はい。ペンをおいてください。」
ペンを置き体を伸ばす。
「お疲れ様。姫路。どうだった?」
「いつも通りくらいでしょうか?大沢くんは。」
「一応上振れは引けたかな。結構できたとは思ってるけど。」
おそらく180〜210は取れてるだろう。こう見たら結構振り分け試験は難しかったんだなぁって感じてしまう。
「そういえば、大沢くんって1年生の時の中間考査で100位以内に入ってましたよね?」
「ん?まぁ、俺は時々テストの点数が時々物凄く下ぶれるんだよ。基本的にはD~Cくらいの総合点数になるんだけど、元々得意科目でも苦手なところがあるからそこ主体に出されたらいつもの80〜100点ほど点数が下がるんだよ。」
「そんなにですか!?」
「あぁ。特に振り分け試験は英語がちょっと酷かった。英語も英語W長文問題が多かった分点数が減ったんだよ。まぁ反対にここなら解けない問題が少ないっていうやつもあるからそういうのは上振れもある。そういった時はいつもより50点近く高くなる。」
俺のテストは本当に問題文による。テストによって点数が変わりやすい。特に世界史なら三国志などそういったゲームなどに出てきやすいものであればかなり点数が跳ね上がる。なのでかなり安定性のないので俺の戦力は測りにくい。
まぁ本当に上振れが3つくらいあって1年生時に一度100位以内には入ったことがある。まぁ下振れが存在少ない教科は日本史や今受けている現代文くらいだろう。
「まぁ、数学とか物理とかの理系は壊滅的だから仕方ない部分もあるけどな。」
「大沢くん。姫路さん答え合わせ終わりましたよ。」
「ありがとうございます。」
さすが答え合わせが遅い田中先生。お陰で俺は1教科受ける時間はなさそうだ。
ピンポンパンポーン
《連絡致します。》
するとどこかで聞き覚えのある声で校内放送が流れた。確か同じクラスの須川だったはずだ。
《船越先生、船越先生吉井明久君が体育館裏で待っています。》
ん?何で試召戦争にアキが?それも船越先生に?
《生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです。》
空気を吹き出しそうになるのをこらえる。 婚期を逃し、結婚願望が強すぎるあまり単位を盾に生徒達に交際を迫るような人だ。俺も一度交際を迫られ鉄人の生徒指導室に逃げ込んだことがあるくらいにやばい人だ。
「よ、吉井くん!?」
「多分偽情報だよ。姫路。アキは前線で戦っているから戦線離脱はできないって。」
「そ、そうですよね。」
「まぁ、俺は2教科目を受ける時間はなさそうだし、俺も出るか。放課後も近いし。田中先生はそのまま付き添いお願いします。姫路はなるべくフィールドを作らないように突っ切れよ。」
「は、はい!!」
そして俺は教室から出るとそこは既に人がまばらに出ている。
さて、俺も奇襲部隊の作戦で暴れまわりますか。
俺は旧校舎から外に向かい新校舎に入るとそこには既に帰りの準備をしている人たちが多くいる。
「クソっ島田め。彼女にしたくないランキングの順位を上げてやる。」
と大きな声でDクラス教室に入りそうな生徒を見つける。撤退なんてさせるかよ。
「田中先生Fクラス大沢がDクラスに向かって試験召喚戦争を仕掛けます。」
「承認します!」
「なっ!!」
「どこからってお前もしかして遠回りして来たのか!?」
「変わりに関根が入ります。試獣召喚。塚本お前は教室に。」
「いいの?よそ見して。」
塚本とはどちらかといえばCクラスよりの生徒だったはず。それならここで補充テストを受けさせないようにすればいい。
すると俺の召喚獣が一閃する。光り輝く剣を鞘から抜き出し一閃する姿はまるでRPGの勇者みたいであるので結構気に入っている。
世界史
Fクラス 大沢圭吾 209点
VS
Dクラス 関根有吾 94点
『『『な、何!!』』』
「おっ。やっぱり上振れてる。それじゃあ塚本にいや面倒くせぇ。世界史で塚本たち3人に試召戦争を仕掛けます。」
「ちっ。やるしかないか。試獣召喚。」
すると3体の召喚獣が出てくると同時に裏口から平賀の姿と近衛衆が出て来たのを確認する。これで俺の目的は終了。まぁ負けるつもりはサラサラないけど俺は大きな剣をぶら下げた回転をしながら突っ込む。
「は?」
「知ってた?召喚獣もそうだけど、勢いを付けたらその分だけ威力も速度も上がるんだよ。」
そしてそのまま遠心力が加わり三人の召喚獣を蹴散らした。まぁ無傷ではなく40点ほどは減らされたが
「そ、そんな。」
「Dクラス塚本。大沢が打ち取った!!」
クラスメイトの歓声が聞こえる。まぁこれで俺の役目は終わりだな。これで教室には戻れなくなった。
後は姫路が決めてくれるのを待つだけだな。
そして数分後歓声と悲鳴が聞こえてくる。野太い声での歓声そして勝どきが聞こえてくるので勝ちを確信するのであった。
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