~呉鎮守府所属新海上自衛隊第零護衛隊群物語~「全てを魔改造し、全ての運命を変えろ!」(艦これいつ海二次創作) (提督兼指揮官兼トレーナー)
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第1話「集められた戦力外だった者達」




というわけで、本作恒例の転生者達による艦娘の魔改造物語です。


本作は、艦娘との馴れ初めも簡単に触れていきたいと思います。





 

 

1944年 8月某日

 

 

呉鎮守府某所

 

 

プレハブ製の建物に6人の艦娘が集められた。彼女たちの陣容は以下の通り

 

 

鳳翔(呉鎮守府より)

響(台湾で応急処置を受け帰投)

酒匂(佐世保鎮守府より、尚建造途中)

神風(函館より)

占守(佐世保鎮守府より)

伊58(艤装は建造途中)

 

 

 

はっきり言って、戦力としては微妙というよりほぼ戦力外である。まともに動けるのが鳳翔と神風と占守のみである上、建造途中の2隻、修復中の響なども含めて一体何をするのか?、彼女たち自身すら謎に思っていた。

 

 

 

「鳳翔さん、私たち一体これからどうなるんでしょうか?」

 

 

「さぁ……、私にもさっぱりです……」

 

神風の質問に鳳翔もはっきりとした答えを出せないまましばらくたち……

 

 

 

ガチャ

 

 

 

扉が開き、1人の男が入ってくる。

 

 

 

見慣れない顔だ。どこの所属だろうか

 

 

 

 

中央に来たところで、男は止まり、一旦艦娘達を見回すと、話し始めた。

 

 

 

「おはよう、諸君。そしてようこそ新海上自衛隊第零護衛隊群へ。私はこの新海上自衛隊の幕僚長を務めることになった多元 実准将だ。本日付で貴官らの上官、提督となる。よろしく。」

 

 

 

全員鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。

 

 

 

「突然のことで申し訳ないのですが、新海上自衛隊とは一体どういう組織なんですか?、大日本帝国海軍とは何が違うんですか?」

 

 

これは鳳翔の質問だ。

 

 

「そうだな、突然言われたところで皆困惑していると思う。順を追って説明しよう。」

 

 

 

そう言って、多元はいきなり本題を言う。

 

 

 

「結論から言わせてもらおう。呉鎮守府所属として結成された我が組織に<この世界の住人は一切存在しない、強いて言うなら未来から来た>」

 

 

 

はっ?、との表情をする艦娘達。

 

 

「まぁ、まずはこいつを見てくれ。」

 

 

 

そう言ってとある物を置く多元。

 

 

「これは?」

 

「計算機だ。」

 

「これが!?」

 

「その通りだ、こうやって使う。」

 

 

 

そう言って多元は黒板に3ケタ×3ケタの計算を書きながら……

 

 

「こうすれば1発で出る。」

 

 

 

我々には当たり前の光景でも、1940年代の彼女たちにしてみれば脅威の性能だ。

 

 

 

「これは……」

 

「驚異的な技術ですね……」

 

 

 

 

 

 

その後、多元達(つまり我々の世界)についてある程度説明したところで本題に入る。

 

 

 

 

 

 

 

「では、新海上自衛隊について説明する。先程説明した通り、海上自衛隊は我々の世界における日本の防衛に当たる組織だ。我々の中にはそこの幹部学校を卒業してきた人間もいる。」

 

 

 

俺がそうだな、と言いつつ説明を続ける。

 

 

 

「新海上自衛隊は呉鎮守府に本部を置き、私のように違う世界からやってきた人間、或いは元は人間だった者たちで構成された新組織だ。肩書きの上では呉鎮守府所属となっているが、事実上の遊撃部隊として独自に作戦行動を立案し、行動することとなっている。」

 

 

 

そして……、1呼吸置いて、多元が新海上自衛隊最初の任務を言い渡す。

 

 

 

「新海上自衛隊最初の任務は<レイテ沖に展開する全艦娘部隊を無事に連れ戻すことだ>」

 

 

 

ざわ…ざわ…

 

 

 

6人の艦娘達が驚き次々に言葉を漏らす

 

 

 

 

 

 

不可能だよ……、

 

 

主力じゃない私達に何が出来るの……

 

 

 

さっきから胡散臭い話ばっかりさせて……

 

 

 

 

 

 

 

 

「静粛に」

 

 

 

いつの間にか入ってきていた呉鎮守府の提督が、艦娘達を静かにさせる。

 

 

 

 

「多元准将、続けてくれ。」

 

「わかりました。」

 

 

 

そう言って多元は再び話し始めた

 

 

 

「無論、君たちのその武装では何の力にもなることは無い。だが、我々は少なくとも君たちの艤装に使われる技術より70年は進んだ技術を持ち、あらゆる手段を用いてことにあたる。そのためには君たちの存在が不可欠だ。どうか我々に力を貸してほしい。」

 

 

 

そう言って頭を下げた多元。

 

 

 

「そう仰られても、具体的にどうするのかが分からなければ、私たちとしてもどうしようもありません。私たちと何をどうするのか具体的な説明をお願いします。」

 

 

 

鳳翔の質問に多元はすぐに答える。

 

 

 

「君たちの艤装を改造する。」

 

「と言うと?」

 

「さっきも言った通り、我々には少なくとも70年先の技術がある。それを使って君たちを世界一の艦隊に仕立て上げる。ちなみに、その間は我々が開発した特殊な設備で訓練してもらう。」

 

 

 

パタン。

 

 

 

その言葉の後に、手元に薄い冊子が渡される。

 

 

 

机にはいつの間にか、背筋を伸ばして立っている妖精がいた。

 

 

 

 

 

 

 

          秘匿

 

 

 

 

    新海上自衛隊  艦隊予想図

 

 

 

 

 

 

 

 

表紙にそう書かれたその冊子をめくると、中にはとても綺麗に描かれ、見たこともない艤装を使用する自分たちの絵があった。

 

 

 

 

 

航空母艦 鳳翔

 

改造内容        改造後

機関の交換 COGAG

速力の向上 30ノット以上

甲板の改良 耐熱化、スキージャンプ設置(尚、発艦は従来通りのため見た目以外に変化は無い)

艦載機の更新 F35JB改×15機、SH60K×2機、MV-22オスプレイ(早期警戒機型)×1

武装の更新 57mm速射砲×2基、Mk41mod.22 VLS×2基、ファランクスCIWS×2基、SeaRAM×2基、24連装RAM×2基、12.7mm重機関銃複数装備

レーダー類の更新 いずも、ひゅうが、あさひなどをベースに設計

 

 

 

 

 

F35JB改

F35Bに93式対艦ミサイルなどの兵器搭載を可能にし、クラウドシューティングなどに対応させたF35Bの第5.5~6世代モデル。航続距離も多少延長することに成功している。

 

 

 

 

 

 

 

軽巡洋艦 酒匂

 

改造内容        改造後

機関の更新 COGAG

速力の見直し 30ノット以上

武装の変更 155mm砲×2基、57mm速射砲×4基、複合CIWS×2基、Mk41mod.0×1基、対艦ミサイル専用VLS(64セル)×1基、533mm5連装両用魚雷発射器×2基、12.7mm重機関銃複数装備

艦載機の搭載 SH60K×1機

レーダー類の更新 ズムウォルト、まや型、アーレイ・バーク級最新型を元に設計。

 

 

 

複合CIWS

コルーチクの西側版、ゴールキーパーとRAMを組み合わせている。

 

 

対艦ミサイル専用VLS

17式SSM改(クラウドシューティングに対応させた17式の改良型)を発射可能なVLS

 

 

 

533mm両用魚雷発射器

18式魚雷と12式魚雷の両方に対応し、対水上目標にも対潜水艦にも使えるもの

 

 

155mm砲

AGSを参考に開発された主砲、どちらかと言うと5インチ砲の拡大型とも取れる見た目だが、毎分15発程度の発射速度とレーザー誘導砲弾によって達成される120kmの射程、開発中止となってしまった各種砲弾の使用を可能としている。

(通常砲弾では45km)

 

 

 

駆逐艦 響

 

改造内容        改造後

機関の更新 COGAG

速力の見直し 37ノット

武装の変更 62口径5インチ砲改×1基、57mm速射砲×2基、Mk41mod.20VLS×1基、対艦ミサイル専用VLS(48セル)×1基、複合CIWS×2基、533mm5連装両用魚雷発射器×2基、12.7mm重機関銃複数装備

艦載機の搭載 SH60K×1機

レーダー類 あきづき型、あさひ型をベースに設計

 

 

62口径5インチ砲改

発射レートを毎分30発に改良し、FCSの改良などによって有効射程を延長したタイプ。最大射程は38kmを誇る。

 

 

 

 

 

駆逐艦 神風

 

改造内容        改造後

機関の更新 COGAG

速力の見直し 33ノット

武装の変更 62口径5インチ砲改×1基、30mm機関砲×1基、57mm速射砲×1基、Mk41mod.12VLS×1基、対艦ミサイル専用VLS(32セル)×1基、複合CIWS×2基、533mm5連装両用魚雷発射器×2基、12.7mm重機関銃複数装備

 

 

 

 

海防艦 占守

 

改造内容        改造後

機関の変更 COGAG

速力の見直し 30ノット

武装の変更 62口径5インチ砲改×1基、30mm機関砲×2基、Mk41mod.29VLS×1基、対艦ミサイル専用VLS(32セル)×1基、複合CIWS×2基、533mm5連装両用魚雷発射器×2基、12.7mm重機関銃複数装備

艦載機の搭載 SH60K×1機

レーダー類 もがみ型をベースにあきづき型や、あさひ型などの能力を付与

 

 

 

*尚、全てのVLSは最も大型の物になっている。

 

 

 

 

 

潜水艦 伊58

 

改造内容        改造後

機関方式の変更 ディーゼルエレクトリック方式(たいげい型4番艦以降と同様)

服の変更(一部) 全身を包む形の水着を採用

速力 20ノット以上

武装の変更 18式魚雷、対地・対艦ミサイルを装備

レーダー類、ソナー類の変更 たいげい型と同じ

 

 

 

 

 

 

 

 

「武装が少ない気がするのですが?」

 

 

 

鳳翔の主張に全員が頷く。

 

 

 

確かに、2次大戦目線からだと武装が少なく見えてしまうのだろう。

 

 

 

そもそもVLSや対艦ミサイルの概念すら無い彼女たちにとっては何がなんだかよく分からない改造を施されることに不安を覚える。

 

 

 

そんな彼女たちを見透かしたように多元はさらに説明を続ける。

 

 

 

「まずは見てもらうのが早いな、演習場にていくつかの兵器の実射を行う。ついてきたまえ。」

 

 

 

 

 

 

 

百聞は一見にしかず、まずは彼女たちを納得させるために演習場に全員を招いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

演習場にて……

 

 

 

90式SSMの模擬弾と、妖精サイズのトラック数両が置かれている。

 

 

 

「左から12式SSM、03式中SAMだ、君たちに積んでもらう予定の武装とは少し異なるが、おおよそイメージを掴んでもらうのにはちょうどいいものだ。」

 

 

 

鳳翔さん、訓練機を出して貰えるかな?、との多元の問いかけに、素直に応じる鳳翔。

 

 

艦娘の演習で使われるオレンジ色の機体は、実機同様の動きをするものの、実弾演習でも損失することの無い不思議な存在。歴戦ではあるものの、旧式である鳳翔は、艦娘達への訓練相手としてしばしばこの装備を持っていた。

 

 

 

「数は?」

 

「いくらでも」

 

「想定は?」

 

「敵陣地の破壊」

 

「砲台の数は?」

 

「1台」

 

「2機で十分です」

 

「4機で頼む」

 

「……わかりました。」

 

 

 

明らかに過剰だと思っていた鳳翔だが、この後驚愕することになる。

 

 

 

 

「何kmまで離れますか?」

 

「40km」

 

「遠すぎませんか?」

 

「十分だ。」

 

 

 

怪訝そうな顔をする鳳翔。

 

 

 

発艦し、目標の砲台(実際は03式)に向かう訓練機をレーダー車が補足した。

 

 

 

 

 

「レーダー探知、数2」

 

「目標補足、ミサイル発射用意よし」

 

「距離40、発射!」

 

 

 

えっ!?、との声が上がる。当然だ、戦艦の主砲のほぼ最大射程で発射したからだ。

 

 

 

そして、発射されたものを見てさらに驚く。

 

 

 

「ロケット弾……」

 

 

しかも向きを変えつつ、高度を上げて訓練機に向けて突っ込んでいく。

 

 

 

訓練機は必死に回避するが、低空を這うように進む巡航ミサイルすら撃ち落とせる03式の前には無駄な足掻きにしかならない。

 

 

 

 

あっという間に全機撃墜となった。

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

 

「次は対艦ミサイルだ。」

 

 

 

 

口を開けている艦娘達を他所に、さっさと対艦ミサイルの発射体制に移行する新海上自衛隊の面々と多元。この後艦娘達は目の前の光景にさらに驚くこととなる。

 

 

 

 

「SSM1、撃てぇ!」

 

 

内容が多少違うが、とりあえず対艦ミサイルが発射され、ジグザグ航行中の実寸大深海棲艦目標に向けて飛翔する。

 

 

 

 

着弾の衝撃は戦艦の砲撃のそれを思わせる程の強力な一撃であり、模型とはいえ、実寸大の、それも動いている目標を文字通り消滅させる攻撃に艦娘達は確信した。

 

 

 

 

<これなら勝てる>

 

 

 

 

新海上自衛隊第零護衛隊群配属となった6人の艦娘達は、この後から2ヶ月後のレイテ沖海戦に備えて全力で訓練することとなる。

 

 

 

 







電卓ってネジ巻きかなんかだと既にあったらしいですね、戦前とかだと。なんで1番技術的な発展がわかりやすいんじゃないでしょうか。


一応3話までは一気にあげる予定です。



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第2話「新装備と艦娘達(~空母、潜水艦編~)



というわけで、魔改造と訓練です。


いきなりT型フォードから、プリウスはなかなかきついはずなので、まぁ割と無視されがちな面(自分も他作で結構無視してますが………)に触れていきたいと思います。







 

 

 

 

衝撃的な兵器の実射から一晩、再びプレハブ建ての建物に集められた第零護衛隊群の面々。

 

 

その表情からは、懐疑的な表情は消え、レイテ沖海戦に参加する艦娘達を助けるという目的のために努力したいという熱い想いに満ちていた。

 

 

 

「おはよう諸君。昨日はぐっすり眠れたかい?」

 

「はい、とてもよく眠れました。」

 

 

酒匂の答えに全員が頷く。

 

 

 

それもそのはずだ、第零護衛隊群の宿舎となっているプレハブは、プレハブと言えど冷暖房などの各種設備を(2020年代基準で)整えており、その快適さは急ごしらえとは思えぬものだった。

 

 

 

「あんな宿舎は初めてだよ、提督、ありがとう。」

 

「何、部下達の環境を整えることも上官としての俺の努めだ。」

 

 

 

なんのことはないように対応する多元。

 

 

 

「提督、それで今後私たちはどのようにして訓練を進めていくのですか?」

 

 

鳳翔の指摘は尤もだ。

 

 

 

現在、第零護衛隊群所属艦娘の艤装の状態は次のようになっている。

 

 

 

 

・鳳翔▶︎完全ではあるが、改装中

・酒匂▶︎そもそも建造中だったものを引き取り改装中

・響▶︎損傷中で、応急処置の後、引き取り改装中

・神風▶︎一応完全だが、改装中の所を引き取り再度改装中

・占守▶︎完全ではあるが、改装中

・伊58▶︎建造中を引き取り改装中

 

 

 

つまり、出撃はおろか、訓練すら出来ない有様なのである。

 

 

 

「それについては問題ない。」

 

「というと?」

 

「昨日も言った通り、特殊な訓練装置を使うことになっている。」

 

 

 

ついてきなさい、との言葉の後に部屋を出て別の部屋に向かう一行。

 

 

 

 

 

      仮想空間利用型演習室

 

 

 

 

と書かれた部屋に入ると、彼女たちの新しい艤装を模した設備と、ヘッドギアなどが置かれていた

 

 

 

 

「この部屋自体が仮想空間利用全天候全条件想定型演習装置となっていて、妖精、艦娘問わずあらゆる状況を想定した訓練が可能だ。」

 

 

尚、これでも正式名称では無く正式名称は

 

 

「仮想空間を利用した艦娘及び妖精への多種多様な状況想定、対応可能かつ、当該艦娘や妖精の艤装並び搭乗機を一切使用することなく戦場を再現することを目的とした演習用装置」

 

 

 

である(くそ長ぇ、役所かよ)

 

 

 

 

「つまり?」

 

「艤装が無くても演習はできる。」

 

「なるほど。」

 

「では早速装着してもらおう。」

 

 

 

 

こうして、多元の指示の元、仮想空間を利用した第零護衛隊群の演習が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

「(これは……、思ったより本格的ですね)」

 

 

提督から手渡されたヘッドギアを装着し、訓練装置を装備した鳳翔は、その再現度の高さに驚いていた。

 

 

目の前に広がるのは晴天の海、波も風も無く、穏やかな状態で、足元に目を向けると、艤装を装着している自分の姿が映る。

 

 

 

<<では、演習を始める。まずは航行訓練、これまでの艤装よりも応答性が高い、気をつけないとバランスを崩す>>

 

 

そう言われ、少し抑え気味に前へ進もうとする鳳翔だが、早速新しい艤装の洗礼を受ける。

 

 

 

「(思ったよりずっと加速が速いですね)」

 

 

いつもより抑えたつもりだが、もうそれなりの速度に達している。いつもの調子でやっていたらバランスを崩していただろう。

 

 

 

実質初めての艤装なのに多少のぐらつき程度で抑えられるのはさすが古参の空母艦娘といったところであろうか。

 

 

 

そのまま航行訓練は一通り終え、次に艦載機の発艦訓練に移行する。

 

 

 

「風向き良し、

 

 

航空部隊、発艦!!」

 

 

 

ここだけは変わらなかった弓に新しい矢をつがえていつものように発艦させる。

 

 

 

 

矢はしばらく飛んだ後、4機のF35JB改になる。

 

 

 

最初こそ、その速度はレシプロ並に見えたが、そこから先の加速は、打って変わってレシプロとは一線を画す加速をみせる。

 

 

 

「とても速い機体ですね。」

 

 

<<最高速度はマッハ1.6、約2000km/h。零戦のだいたい3.5倍くらいだからな>>

 

 

ちなみに、この戦闘機は妖精が操縦するものではなく、妖精達は別の装置で訓練をしている。

 

 

 

そのまま着艦訓練を行う。

 

 

 

リフトファンエンジンを使い、ホバリングしながら甲板の所定位置に移動し、着艦。

 

 

甲板作業員妖精達は初めてながらも着艦する機体の誘導を見事にこなし、鳳翔乗組員妖精の練度の高さを示した。

 

 

 

 

 

<<よし、次は対空戦闘訓練だ。>>

 

 

 

 

鳳翔の持つ防空火力は以下の通り

 

 

・57mm速射砲×2基(中距離防空、水雷艇対策)

・Mk41mod.22 VLS×2基(中距離防空、対潜)

・ファランクスCIWS×2基(近接防空)

・SeaRAM×2基(近接防空)

・24連装RAM×2基(近距離防空)

・12.7mm重機関銃複数装備(魚雷艇対策)

 

 

このうち、SeaRAMとファランクスについては自動迎撃が可能であるため、特に訓練の必要は無い

 

 

(とはいえ、とくにファランクスに関しては魚雷艇対策のため一応訓練が必要ではあるが)

 

 

 

問題はそれ以外の兵装であった。

 

 

12.7mmや、57mmは進化こそしているものの、根本的な部分に関してはそのまま(なんならM2なんか初期設計第1次だからね、それに派生型を日本軍も使っていたからまぁ大丈夫でしょ)の部分も多いため、問題無かったが、特にミサイルについては武装関係の妖精達が全員頭を抱えた。

 

 

 

「いーえすえすえむ?、なんじゃこれ……、とりあえず射程は……、え?、最大50km!?」

 

 

「あくてぃぶれーだーほーみんぐ?、何それ…、えっ?、電探で目標捉えて追いかける!?」

 

 

「速度まっは3?、マッハって何……?、あ、説明あったな。音の速さね、それの3倍ってこと……、はっ?、何それ有り得んくらい速くね?、俺の声の3倍も速えの?」

 

 

 

 

似たような話は潜水艦でもあった。

 

 

 

 

 

「潜行深度600って何かの見間違えでちよね?」

 

「いえ、本当にそうみたいです。」

 

「ワケワカンナイデチ!!」

 

 

軽く卒倒しかけるゴーヤを他所に、妖精達の雑談が続く。

 

 

 

「水中速度も上がってますねコレ……」

 

「20ノットってどんなお化け……、201潜並ですよこれ、てかこれが当たり前の世界って何?」

 

「でも水上速度はむしろ下がってる??」

 

「いや、違う、水上なんか空気入れる以外で浮かぶ必要なんか無いってことだろ。」

 

「対空兵器が無いのも、浮上する必要がほとんど無いから必要ないって事なのかな……」

 

「というか、対艦ミサイルって何?、あー、昨日見せてもらったあれか……。はっ?、水中からもあんなの撃てるの?、もう無敵じゃん。」

 

「射程最大248kmとかそんなのもう空母いらないじゃん」

 

「誘導魚雷って何よそれ、もう潜望鏡覗かなくても魚雷当たるの……」

 

「誘導魚雷か……、射程は?………、最大50kmってなにかの間違いだよね?、93式の倍じゃん」

 

「てか、ソナー性能良すぎ、どんなに静かなやつでも絶対捉えられる。」

 

 

 

そんなわけで、いざ鳳翔航空隊のヘリとの対潜訓練を行った時には、両者共に慣れない戦場で五分五分の勝負になってしまった。

 

 

 

一方、航空隊も大変な目にあっていた。

 

 

 

「うわっ、速すぎ!、また突っ込んだ。」

 

「音の1.5倍ってどうすればいいんだよ……」

 

「隊長、撃墜しました。」

 

「はっ?、チャフ撒いてたぞ!」

 

 

 

 

 

(撃ったのはサイドワインダーです。)

 

 

 

 

 

 

「なんで俺が対艦攻撃に……、戦闘機乗りだぞ」

 

「俺は元艦攻乗りだぜ……、空戦なんか無理」

 

「お前らはいいよな、まだ飛行機なんだから、こっちなんかよく分からん回転翼機だぜ。」

 

「こっちは両方だよ……(オスプレイ搭乗員)」

 

 

 

 

 

が、妖精も艦娘もこれだけははっきりとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

     <これなら戦える>

 

 

 

 

 

 

現在の深海棲艦の主力なんぞ相手にもならない武器を扱うことが出来れば、きっと作戦は成功する

 

 

 

 

そのためにも訓練を続ける必要がある。

 

 

 

 

 

 

<<鳳翔航空隊、2番機、演習機に敗北!>>

 

「もう1回お願いします!」

 

<<了解した、演習再開>>

 

 

 

<<砲雷長、ミサイルの発射が遅い!、その角度と速度では撃墜は出来んぞ!>>

 

「了解!」

 

 

<<鳳翔!、魚雷回避が早い!、それだと相手に進路を読まれる!>>

 

「くっ……、もう一度お願いします!!」

 

 

 

「急速潜航!」

 

<<遅い!>>

 

「えっ、……うわぁ!」

 

<<伊58、撃沈判定!>>

 

「悔しいでち!、もう1回!!」

 

<<難易度を上げるぞ、演習再開!!>>

 

「望むところでち!!」

 

 

 

 

なれない艤装で演習をするため、失敗が多いが、彼女たちの必死の努力は報われる。

 

 

 

 

 

 

「敵機撃墜!」

 

<<よくやった、レシプロ相手とはいえ10機以上の撃墜は戦場で大きく影響するぞ!>>

 

「対艦攻撃訓練もお願いします。」

 

<<ミサイルの扱いは上手いが、爆撃はまだまだなところがある。タイミングと機体のコンピュータの性能を信じろ!>>

 

「了解!」

 

 

 

 

 

 

 

「敵艦隊の全滅を確認!」

 

<<艦隊の数を増やす、いけるか?>>

 

「望むところです。」

 

 

 

 

 

 

 

「敵の潜水艦を撃沈!」

 

<<爆雷の投下タイミングは完璧だ、後は起爆深度を微調整しろ>>

 

「了解!」

 

 

 

 

 

 

 

「対艦誘導弾の発射深度まで浮上」

 

「対艦誘導弾発射用意良し!」

 

「発射でち!」

 

 

 

水面から白い槍が伸びて、目標へと突き刺さる。

 

 

 

<<敵艦の撃沈を確認。さすがだ、これで対艦誘導弾の扱いは完璧だ。>>

 

「やったでち!」

 

 

 

 

 

「目標敵水雷艇、艦載機はそのまま敵主力の攻撃を続行してください、57mm撃ち方始め!」

 

 

 

ドンドンドンドンドンドン!

 

 

「さらに接近!」

 

「CIWS、12.7mm、撃ち方始め!」

 

 

 

ズババババババババババババババババババ!

 

 

<<水雷艇群の全滅を確認、さすが歴戦の空母艦娘だけあって砲術も上手い>>

 

「いえ、まだまだです。防空訓練を!」

 

<<了解した、防空訓練開始!>>

 

 

 

敵編隊が高度を上げてやってくる。

 

 

 

「対空戦闘用意!、ESSM攻撃始め!」

 

 

ESSMが命中し、撃墜される敵機。

 

 

「さらに低空より接近!」

 

「57mm、応戦を!」

 

 

ドンドンドンドンドンドン!

 

 

「さらに接近!」

 

「RAM対応を」

 

 

低空からの機体に対応しつつも別の敵が来る。

 

 

「57mmの死角より接近!」

 

「ESSMは……間に合いませんね、RAMとCIWSで対応してください!」

 

 

 

襲いかかる敵をたたき落とす鳳翔

 

 

 

「12.7mmも用意してください!」

 

「了解だ!」

 

 

 

敵が魚雷を投下する。

 

 

「ここです!」

 

 

一気に舵を切り、そのまま回避する。

 

 

 

 

<<状況終了、お疲れ様。>>

 

「実際には撃ってないのに、疲れますね……」

 

 

 

 

 

この後、鳳翔は休憩して、再度訓練を行うこととなるのである。

 

 

 

 

 







VRをやったことないからあんまりこういうの書きにくいというか……、VRって疲れるんですかね、やっぱり。



もう1話だけ連続投稿します。







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第3話 「新装備と艦娘達(~駆逐艦、巡洋艦編~)」




前回は潜水艦と空母なんで、今度は護衛艦ですね。



でもあんまりそっちは触れてなくて、基本的に基地航空隊の話になります。



ではどうぞ









 

 

 

さて、同じ部屋では同護衛隊群所属の響、酒匂、神風、占守が訓練を受けていた。

 

 

 

 

「対空戦闘用意!、前甲板VLS1番から32番、艦対空誘導弾、SM-6、発射用意良し!」

 

「目標補足、撃てぇ!」

 

 

 

ヘッドギアに映された映像でSM-6が放たれる様子が映される。

 

 

 

 

艦娘達の中でも駆逐艦などの艦娘は、装備の変更とともに艤装の大きさも変わったため、彼女達に求められる技量もそれ相応のものとなる。

 

 

 

 

「敵機急速接近中!」

 

「57mmの射程を考え、よく狙え!」

 

「撃てぇ!」

 

 

 

 

砲の性能もあってか、撃墜する。

 

 

 

 

「次、魚雷艇対策。」

 

 

 

高速で多方向から、同時に接近する魚雷艇をどれから叩くのか正確に判断させる。

 

 

 

「SM-6で迎撃します。」

 

「いい判断だ、実戦ならそれでいい。だが、今回はミサイルは無しだ、砲撃とCIWSで対応」

 

「近いものから迎撃!、主砲撃てぇ!」

 

 

 

魚雷艇が次々に撃沈されていく。

 

 

 

「CIWS、対水上モード、撃てぇ!」

 

 

 

 

ズバババババババババババババババババ!

 

 

 

 

「迎撃成功、数と向きを増やす。」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

厳しい訓練だが、必死に耐える艦娘達。

 

 

 

 

「爆弾後部に命中!」

 

「消火と救助急いで!、ダメージコントロール!」

 

 

 

 

当然だが、ダメージコントロールなどの訓練も欠かさずこなさせる。

 

 

 

 

 

 

 

一方、その間、忙しく動く男たちがいる。

 

 

 

 

「人間の体に戻れたとしても、元の世界とは限らないってマジですか………」

 

「ぼやくな平河君。俺もまた提督とは思わなかったんだよなぁ……」

 

「それにしても……、基地航空隊くらいは開発しておかないと、深海棲艦からの空襲で、即実戦とかヤバいですよ。」

 

「それは俺もわかっているんだが……、戦闘機どうするかなぁ……」

 

「F-15改二(対艦ミサイルなどを運用可能になった機体、EXに近い)で良くないですか?」

 

「それがな、彼女たちの魔改造に資材使いすぎちまって時間的問題で作れねぇ」

 

「じゃあファントム?」

 

「ダメ、第四世代にしたい。」

 

「レシプロ相手に何考えてるんですか。」

 

「第三世代だと、同時対処が難しいのよ。滑走路の強化とかも考えなくちゃいけないし……」

 

「じゃあいっそ東側なら……」

 

「ん?、いや待てよ……、もう1回要求仕様を確認してみるか………」

 

 

 

 

 

 

・航続距離

 

・対艦ミサイル運用可能

 

・優秀な格闘性能

 

・同時対処能力

 

・なるべく安価(ぶっちゃけ無視していい)

 

 

 

 

「ステルス性はいらないんですか?」

 

「いらん、時間が無い。P-1BとMQ-4Dに開発リソース割かれてる状況下でアウトレンジが出来る相手に対して作る必要は無い。」

 

 

 

P-1Bとは、通常対艦ミサイル8発搭載という設計そのまま、12トンまでの爆撃能力と、当たり前のようにポン付けした空中給油能力と、クラウドシューティングへの対応をさせた上、主だった性能そのまま航続距離を12000kmに伸ばし、最高速度1020km/hまで高めた代物である

 

 

 

 

 

 

ちなみに、空中給油機型と早期警戒管制機型と、空中作戦指揮機型と、電子戦機型、限界まで色々詰め込んだ空中巡洋艦型がある。

 

 

 

空中巡洋艦型以外はまあいい。電子戦機型以外なら性能的には航続距離とかが伸びてるとか(だいたい15000kmくらいかな?)、空中作戦指揮機型の場合はマニューバ出来るとか、電子戦機型なら対レーダーミサイル撃てるとかぐらいだから。

 

 

 

 

 

 

問題は空中巡洋艦型、こいつ何者?

 

 

 

 

 

かつて、Tu22Mの攻撃に怯えた日本が、船団護衛とかその他もろもろに用いるために、P3CにE2Cのレーダー積んで、AIM-54フェニックス積むとかいうキチガイレベルの代物を考え出したことがあったが、ロマンに実用性をつけてしまう幌筵泊地は一味違う。

 

 

 

 

 

 

 

その名も

 

 

 

 

「AAS(Air-Arsenal-Ship 空中弾薬庫艦)構想」

 

 

 

 

P-1対潜哨戒機から取り外せるものをどんどん外して原型レベルしかとどめなくした上で、機首下部と機体後部に、飛行性能とかに影響出ないように工夫した対空レーザーを付けて、ウェポンベイとかハードポイントとかつけまくってあれこれ魔改造した挙句、P-1Bと基本スペックは落とすなという無茶ぶりを達成させたどうしてこうなったという代物。

 

 

 

 

その驚くべきスペックは次の通り

 

 

全長 40m

全幅 36m

全高 12m

出力 1万kg×4

速力 1020km/h

航続距離 12000km

兵装搭載能力 18t(基本スペック維持)

固定武装 対空レーザー二基

 

 

 

 

 

 

こんなの対潜哨戒機じゃないわ!、見かけ騙しの爆撃機よ!

 

 

 

だったら(対潜哨戒装備)載せればいいだろ!!

 

 

 

(一応載る。一応)

 

 

 

 

そのスペックは凄まじいもので、対艦ミサイル12発以上を搭載しての艦隊殲滅攻撃から、味方航空機のミサイルキャリアー、高速爆撃機など様々な形に運用できる。

 

 

 

 

結果として個性豊かなP-1Bファミリーが完成

 

 

 

 

P-1B(基本型)

K/C-1(空中給油機型)

E-1(早期警戒管制機型)

SC-1(Sky-commander、空中作戦指揮機型)

E/A-1(電子戦機型)

AAS-1(空中弾薬庫艦型)

 

 

 

(川崎重工その他もろもろ大歓喜??)

 

 

 

 

何故こうもP-1にこだわるかって?

 

 

 

 

 

 

 

 

   中 の 人 が 好 き だ か ら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニュージーランドにイギリスめ!、採用しなかったこと恨んでるからな!!

 

 

 

 

 

 

(現実で不遇な装備を活躍させることも拙作の使命であります!!)

 

 

 

 

 

 

ちょっと脱線したので、残ったMQ-4Dについて触れておこう。

 

 

 

 

短魚雷2発または対潜爆弾2発を積める無人対潜哨戒機である。

 

 

 

 

以上、話すこと無し。(雑ぅー)

 

 

 

 

 

 

あ、本作から私の作品ご覧になってる方に遅ればせながら説明させていただきますと、この作品に出てくる一部の人間(さっきチラッと出てきた多元とか平河とか)は、2030年代の日本で様々な分野のトップクラスの実力を持ちながらも、様々な理由で不遇な扱いを受けた転生者達である。

 

 

 

 

 

元々、1947年に深海棲艦と戦う世界線の幌筵泊地に突如として転生した後、F15作ったり、艦娘をイージス艦に魔改造したりして、深海棲艦をフルボッコにしてたら、なんか気に食わない連中が、とある手段で再び様々な世界線に吹っ飛ばしたというのがことの真相である。

 

 

 

 

 

 

以上説明終わり

 

 

 

 

 

 

 

「戦闘機どうしよう………」

 

「素直にF-15にすればいいじゃないですか」

 

「あっ」

 

「どうしたんです?」

 

「クラウドシューティングとか、その他もろもろへの対応が第四世代じゃ無理じゃん。」

 

「近代化改修すれば良いのでは?」

 

「機体どこに電子機器置くのか1から考える必要があるんだが、時間がねぇ」

 

 

 

タッタッタッ!

 

 

 

誰かが走ってくる。

 

 

 

 

「先輩!、ありました!、会社で使ってたパソコンの機密共有ファイルの中にATD-Xの戦闘機化用設計図が入ってました!!」

 

「良くやった腰掘!!」

 

 

 

 

実は、F35導入時に、導入遅延の懸念から、多元達の居た重工メーカーでは、既に初飛行していたATD-Xをベースにした国産ステルス戦闘機の設計図を作成していたのだ。

 

 

 

「結局ステルス機じゃないですか!」

 

「うるせぇ、作れればいいんだ作れれば!」

 

 

 

 

で、結論。基地航空隊はこうなった。

 

 

 

 

 

・噴式艦上戦闘機「雷華」(ATD-Xの戦闘機化)

 

・P-1Bファミリー

 

 

 

 

「なんで艦載機にしたんですか?」

 

「多分そのうち使う。」

 

「えぇ……」

 

 

 

雷華の性能は以下の通り

 

 

 

全長 15m

全幅 10m

全高 4.5m

エンジン F9-1「轟」エンジン

出力 ドライ出力115kN  アフターバーナー使用155kN

速度 スーパークルーズ時 M1.2        

   アフターバーナー時 M1.8

航続距離 3500km+

兵装搭載量 10t

固定武装 20mmバルカン砲×1

空対空ミサイル AAM-4、AAM-5、その他西側ミサイル

空対艦ミサイル ASM-2、ASM-3(翼下パイロンのみ)、他各種西側ミサイル

空対地ミサイル 12式地対艦誘導弾改良型空対地ミサイル、AGM-65マーベリック他各種西側ミサイル

爆弾 JDAM他各種西側爆弾

 

 

 

 

「アビオニクスは?」

 

「鳳翔に載せるF35Bの発展型」

 

「急造品ですよね?」

 

「そうだが?」

 

「なんでラプターとかライトニングとかSu57とか圧倒できそうなやつがただの急造品になるんですかねぇ……」

 

「平河君の艦娘魔改造も大概だと思うが?」

 

「あれぐらいは基本です。」

 

「えぇ……」

 

 

 

 

(どっちも大概バケモノ)

 

 

 

 

「とにかく、です。我々が考える必要があるのはどの艦隊を支援するかということです。」

 

 

 

レイテ湾突入において、複数の艦隊が参加することとなるが、当然、どの艦隊を支援するかは重要な内容である。

 

 

 

「決まってる、通称1YB3H、正式名称第1遊撃部隊第3部隊、その援護に当たる。この艦隊が現状最も危険かつ、生存の可能性が薄い。」

 

 

 

 

 

 

彼女たちを死なせる訳にはいかない。特に、扶桑と山城に関しては、佐世保鎮守府の提督からの頼みでもあり、彼の尽力無しでこの艦隊は成立しなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

(そのため、当初は佐世保鎮守府に部隊を置く予定だったのだが、設備工事の都合で近場の呉鎮守府に変更になった。)

 

 

 

 

 

 

 

 

「史実における西村艦隊の悲劇を繰り返す訳には行きませんね。我々としても最大限の努力を行うつもりです。」

 

「その通り。並行作戦として、黒背2号作戦の発動の許可を取り付けた。必ず、全ての艦娘を生きて帰すんだ!」

 

「了解!」

 

 

 

 

 

 

 

 

この数日後、艤装が完成し、実戦演習の後、艦隊は出撃することとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 







P-1かっこいいよね?(脳死)


少し間を空けます。申し訳ないです。





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第4話 出撃!、第零護衛隊群!






というわけで遂に出撃となります第零護衛隊群ですが、ちょっとまだ準備が必要みたいです。


果たしてどんな準備をするのやら……


高評価とコメントお待ちしています。









 

 

 

 

訓練開始から数週間。

 

 

 

 

 

「では、これより各自艤装を装着する。特に我々の艤装は替えが効かないので慎重に扱うように」

 

 

 

 

全員分の艤装が運ばれてくる。

 

 

 

 

 

「凄い……もう出来てる!」

 

「ピカピカだ。」

 

「これが噂の対艦ミサイルでちね!、魚雷よりも細いでちけど、強そうでち!」

 

 

 

 

全員のスペックは第1話で紹介した通りで、全員が2020年代の戦闘能力を備えている。

 

 

 

 

 

「では、これより作戦を説明する。」

 

 

 

一通り、艤装に目を通させた後で、作戦の説明に入ることにする。

 

 

 

 

「我が第零護衛隊群は、レイテ湾突入において特定の艦隊の支援に当たることとなる。この際、最も生存性の低い艦隊。囮となることとなる第一遊撃部隊第3部隊の援護が我々の任務だ。」

 

「囮?、扶桑さん達は囮なんですか!?」

 

「残念だが、そういう事だ。」

 

「いくら作戦成功のためとはいえ、貴重な艦娘を捨て駒にするなんて………」

 

 

 

 

古参クラスで、かつ練習空母としても長い鳳翔が同じく練習艦だった彼女達を思いやる。

 

 

 

 

 

「ああそうだ、いくらなんでも艦娘の命を犠牲にさせる訳にはいかない。彼女たちも俺たちと同じように生きているのだから。だからこそ、我々第零護衛隊群の総力を挙げて彼女たちを援護しなければならないんだ。」

 

 

 

 

そのために………、と多元は続ける

 

 

 

「そのために、今回我々が組んだ作戦をこれから説明する」

 

 

 

 

・第零護衛隊群は作戦発動時、援護対象の第一遊撃部隊第3部隊を追いかける形でスリガオ海峡に突入する。

 

・鳳翔艦載機は上空哨戒機を除いてフル装備で、第3部隊援護に回る。

 

・敵機動部隊からの空襲に対処する間、伊58は事前情報を元に、機動部隊を可能な限り捜索、場合によっては攻撃し、これを撃破せよ。

 

・スリガオ海峡突入時は、魚雷艇による攻撃などが予想されるため、日没前に艦載機の装備変更、ローテーションの構成などを行った上でレーダーを活用して攻撃に対処せよ。

 

・敵主力は、他艦隊との連携を行うが、最悪の事態に備えて基地航空隊による長距離攻撃が行われることが決定しているため、敵味方の識別情報を随時送信すること。

 

 

 

 

 

グダグダ条件を述べてはいるが、要は

 

 

 

 

・第3部隊を死なせるな

・出来れば機動部隊を殺れ

・魚雷艇はいっぱい来るから工夫して殺れ

・敵の主力を他艦隊と協力して叩け

・基地航空隊送るけど誤射しないように情報送れ

 

 

 

 

 

「基地航空隊はどれくらいいるのですか?」

 

「ざっとこれくらいだ。生産と訓練が間に合わないから多くは無いぞ。」

 

 

 

・噴式艦上戦闘機「雷華」32機

・P-1B(通常型)×16機

・AAS-1(空中弾薬庫艦)×4機

・E/A-1(電子戦機型)×2機

・KC-1(空中給油機型)×8機

・SC-1(空中作戦指揮機型)×1機

・E-1(早期警戒管制機型)×1機

 

 

「多くないって言ってますけど……、攻撃機20機は普通に多いと思いますが………」

 

「えっ?、普通50機ぐらい攻撃機用意するものでしょうが、この時代なら。」

 

「あの……、一応私達も提督の兵器について学んでいるので、どれだけ凄いことなのかは理解したつもり何ですが…………」

 

 

 

 

 

単純な対艦ミサイルの本数だけだと

 

 

 

 

 

 

32×4=128

16×8=128

12×4=48

 

 

合計304発≒撃沈可能な艦艇数

 

 

 

 

 

「戦艦もいるみたいだからある程度用意しておくべきだと思ったんだ。」

 

「むしろ戦艦以外は何とかなるのが怖い……」

 

 

 

響の感想が全員の代弁である。

 

 

 

 

「まぁ、何はともあれ、艤装が君たちの手元に渡ったということは、いよいよ実戦を想定した訓練を艤装を用いて行うこととなる。さらに厳しい演習となるが気を引き締めてくれ。」

 

 

「はい!」

 

 

 

 

 

そして、この日からさらに実戦に向けた演習を行うこととなる。

 

 

 

 

 

 

「上空直掩機は、2機しか飛ばない!、しかもデータリンクと滞空時間延長の都合上、フル兵装はほぼ不可能だ!、艦隊の防空戦闘力を信じて耐え抜くんだ!」

 

 

「はい!!」

 

 

「酒匂!、防空指揮艦として、海域全体をリンクした情報を元に俯瞰するんだ!、お前が一箇所しか見てないと、周りが混乱する!」

 

 

「ぴゃい!!」

 

 

 

「伊58、魚雷と対艦ミサイルを信じろ。」

 

 

「はいでち!」

 

 

 

 

「響!、雷撃機だけを見すぎるな!、爆撃機も周りにはいるんだ。機銃掃射してくる戦闘機にも十分警戒を!」

 

 

「わかった。」

 

 

 

 

厳しい訓練は基地航空隊にも……

 

 

 

 

「空中給油無しで鹿屋航空基地からなら往復出来はするが、滑走路の補強が間に合わない。空中給油が必須となる。」

 

 

 

基地航空隊は一式陸攻、96陸攻、零戦などからの機種転換を終え、ジェット機への対応訓練がようやく終わり、機体なれもそこそこで訓練を行う。

 

 

 

思わぬ横風などを警戒する空中給油には、皆慎重でありながら、時間的制約を乗り切るため、必死になって取り組む。

 

 

 

 

 

 

その一方、多元達は別の課題に取り組んでいた。

 

 

 

 

「他の基地航空隊向けの戦闘機、どうするか。」

 

「F-3で良くないんですか?」

 

「いや、多くの滑走路が舗装されてない上、ジェット機にとっては短すぎる。」

 

「先輩、グリペンなんかどうでしょう?」

 

「あれはダメだ、国土上空での戦闘を前提とした単発機だから、海上でのトラブル時、特にエンジントラブルに対処しずらい。それに、グリペンはSTOL性能はあれど舗装路での運用が前提となっているから、この時代の滑走路では運用できる泊地や基地が限られてしまう。」

 

「じゃあいっそジャギュアとか……」

 

「俺らとのデータリンクもしっかりできる機体の方が戦いやすい。ジャギュアだとそのためのアビオニクスが載らない可能性がある。」

 

 

 

と言いつつ、実は何か心当たりがありそうな顔をする多元。

 

 

 

「提督、何か思いついてますね?」

 

「ああ、俺たちは採用しなかったが、うってつけの機体がある。アビオニクスさえ変更出来れば今の条件をクリア出来る機体がな。」

 

 

 

 

そして、その機体は西側対応のアビオニクス搭載が行われそうになったこともある………

 

 

 

 

 

 

「Mig-29、或いはその発展型のMig-35を開発するのがいいだろう。」

 

「アビオニクスは先輩が改修する感じですか?」

 

「ああ、素材もちょっと変えればさらなる性能向上だって見込めるだろう。」

 

「ホークアイと連動させますかね?」

 

「そうだな、あとPS-1の改良型を効払君に作ってもらうように言っておいてくれ。」

 

「了解。」

 

 

 

 

 

 

これでまた1つ、方針が決まった。

 

 

 

 

 

 

大規模泊地、鎮守府向け基地航空隊パッケージ

 

 

・Mig-29 ×16機

・E-2C ×2機

・PS-1改 ×8機

・C-160 ×4機

 

 

 

 

中規模泊地向け基地航空隊パッケージ

 

 

 

・Mig-29 ×16機

・E-2C ×2機

・PS-1改 ×4機

・C-160 ×2機

 

 

 

 

小規模泊地向け基地航空隊パッケージ

 

 

 

・Mig-29 ×8機

・E-2C ×1機

・PS-1改 ×4機

・C-160 ×1機

 

 

 

 

 

 

尚、各基地の状況に合わせて変更可

 

 

 

 

出身国がここまでバラバラの基地航空隊が過去に実現しただろうか?、いや無い。

 

 

 

 

 

とはいえ、これが成立するのはこの戦いに勝てたらの話である。

 

 

 

 

 

 

勝てなければそもそもが意味が無いのだ。

 

 

 

 

 

また、この戦いで結果を出せなければ、新海上自衛隊も存続が危うい。

 

 

 

 

強力とはいえ資源を大量に消費する新海上自衛隊は結果が出なければ役立たず扱いなのである。

 

 

 

 

 

「小玉さん、レイテ沖海戦の米機動部隊の資料をお願いします。」

 

「こちらですね」

 

 

 

彼女たちのかつての在りし姿であった頃のレイテ沖海戦を元に、多元達は戦略を組み直す。

 

 

 

 

 

 

 

そして、ついに……

 

 

 

 

 

「第零護衛隊群!、出撃せよ!」

 

 

 

 

 

多元の指示で艦娘達が出撃する。

 

 

 

 

 

「第零護衛隊群旗艦、航空母艦鳳翔、出撃します!」

 

「第零護衛隊群防空指揮艦、酒匂、出撃します!」

 

「第零護衛隊群対潜指揮艦、響、抜錨」

 

「第零護衛隊群護衛艦、神風、出撃します!」

 

「同じく第零護衛隊群護衛艦、占守、出撃するっしゅ!」

 

「第零護衛隊群潜水艦、伊58、出撃するでち!」

 

 

 

 

 

転生者によって魔改造され、新たな力を手にした艦娘達が、スリガオ海峡を目指し、一路太平洋を南下する。

 

 

 

 

「直掩機、発艦!」

 

 

 

新しくなった鳳翔の弓に鳳翔が矢を番え、よく引いて放つ。

 

 

 

P&W社製F135ターボファンエンジンが唸り、ライトニングの名に恥じぬ雷鳴のような轟を太平洋の空にひびき渡らせる。

 

 

 

 

 

「続けて哨戒ヘリ、早期警戒機発艦!!」

 

 

 

SH60Kが既に潜航した伊58を除く各艦娘のヘリ甲板と飛行甲板から発艦する。

 

 

 

 

「ソナー、磁気探知に感無し。」

 

「レーダーにも異常無し。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「全艦、スリガオ海峡へ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第零護衛隊群の出撃に遅れること数時間

 

 

 

 

「第1遊撃部隊、第3部隊、抜錨!」

 

 

 

 

戦艦山城を旗艦とし、戦隊扶桑、航空巡洋艦最上と駆逐艦時雨、満潮、朝雲、山雲の7隻で編成された1YB3H。

 

 

 

 

「……これは……、佐世保より入電。第1遊撃部隊第3部隊は現地にて第零護衛隊群の援護を受けることとなる。現地到着後の連絡を密にとの事。」

 

「第零護衛隊群?」

 

「姉様、これは一体………」

 

「分からない……」

 

「増援部隊ってことかな?、僕達のための」

 

「だとしても今まで聞いたことも無い艦隊よ、本当に来るの?」

 

「僕もそう思うよ、だって僕達は……」

 

 

 

 

続く言葉を飲み込む時雨。

 

 

 

 

「まぁいいわ、増援部隊が来るならいいことよ、みんな姉様をしっかり守るのよ。」

 

 

 

(提督が出撃するまで言わない程の部隊が増援なんて、余程の秘匿性のある部隊か、或いは……)

 

 

 

「山城?」

 

「大丈夫です。姉様、増援が居ようと居まいと、私たちがやることは変わりません。」

 

 

 

 

 

そう言うと、山城は、全員に指示を出す。

 

 

 

 

「全艦、進路をスリガオ海峡へ!」

 

 







ちょっと短めですが、今回はキリがいいのでここまでとします。


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第5話「第零護衛隊群、戦闘開始」



というわけで、いよいよ第零護衛隊群が第3部隊救援へと動きます。



ちょっと短いです。


 

 

 

 

 

 

 

 

出撃からしばらく経ち……

 

 

 

 

 

「早期警戒機より報告!、第1遊撃部隊、第3部隊らしき艦隊を補足!、座標を送ります!」

 

「了解、直掩機を除き、全機空対空兵装を満載にして全機発艦!」

 

「風上に進路を向けます!」

 

 

 

 

艦隊は進路を風上に変え、中央の鳳翔は、矢を番えて発艦体制に入る。

 

 

 

 

「風向き、良し、航空部隊、発艦!!」

 

 

 

 

矢が放たれ、空対空誘導弾で武装したF35JB改が飛び立つ。

 

 

 

 

「上空支援部隊、発艦完了!」

 

「引き続き、対空戦闘用意!」

 

「全艦ジグザグ航行!」

 

 

 

 

艦隊はジグザグ航行を始め、来る敵機の来襲に備えつつ、合流を目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、第一遊撃部隊第3部隊はと言うと……

 

 

 

 

 

「敵攻撃隊を確認!」

 

「対空戦闘用意!、最上は艦載機を!」

 

「了解!、出来るだけ上げる!」

 

 

 

 

 

瑞雲と強風の発艦体制に移る最上だが、突如としてここで通信が入る。

 

 

 

 

 

<<第一遊撃部隊第3部隊、聞こえるか!、こちらは第零護衛隊群、空母<鳳翔>所属の航空隊だ、これより加勢する!>>

 

 

 

「航空隊!?、時雨、どこにいるかわかる?」

 

「あそこ!」

 

 

 

見ると、後方から轟音を立てて飛んでくる。

 

 

 

 

「なんなのあれ……」

 

 

 

 

鏃のような戦闘機がいっせいに何かを放った。

 

 

 

 

と、次の瞬間!

 

 

 

 

 

 

ボンッ!、ボンッ!、ボンッ!、ボンッ!

 

 

 

 

 

「敵攻撃機、撃墜!」

 

「嘘っ!、何があったの?」

 

 

 

 

 

第零護衛隊群から発艦したF35JB改は、護衛対象との交信を行うと、直ちにAIM-120 AMRAAMを発射し、次々に深海棲艦機をたたき落とす。

 

 

 

 

 

 

「第1小隊と第2小隊はこのまま敵攻撃隊との空戦に入れ!、第3小隊は艦隊防空だ。」

 

「了解!、第3小隊全機へ、第一遊撃部隊第3部隊の上空直掩に入れ!」

 

 

 

 

轟音を立てながら、第3小隊4機は、2機ずつの編隊を組んで艦隊上空を飛び回る。

 

 

 

 

一方、第1小隊、第2小隊の9機は………

 

 

 

 

「第二斉射、中距離空対空誘導弾発射!」

 

 

 

 

ウェポンベイが開き、再びAMRAAMが飛翔して深海棲艦機が落とされる。

 

 

 

 

ざっと50機は超える敵機だが、次々にAMRAAMに食われて撃墜される。

 

 

 

 

「格闘戦だ、各機誘導弾を近距離のものへ!」

 

「機関砲攻撃用意よし!」

 

 

 

 

残る敵機はあとわずか

 

 

 

 

「近距離空対空誘導弾発射!」

 

 

 

AIM-9Xが放たれ、獰猛な蛇のごとく食らいつく。

 

 

 

 

何度も改修を受けて、実戦経験もあるサイドワインダーからまともな回避行動で逃れる術は無い。

 

 

 

 

 

 

結果として、鳳翔航空隊は、損害0で敵攻撃隊を見事に撃退する。

 

 

 

 

「あ、あなたたちは一体………」

 

 

戸惑う山城に今度は第3小隊隊長が答える。

 

 

<<こちらは呉鎮守府所属、新海上自衛隊第零護衛隊群旗艦<鳳翔>航空隊。艦隊到着まで艦隊防空を行う。安心されたし>>

 

 

 

「すごい!、あんな数の艦載機をたった13機で片付けちゃうなんて!!」

 

「うちの瑞雲と強風でもキツイなぁ……」

 

 

 

 

口々に強さを口にする第一遊撃部隊第3部隊の艦娘達。

 

 

 

 

「それにしても、あんたたち、第零護衛隊群とか言ってたけど艦隊はどこにいるの?」

 

 

<<貴艦隊の後方80kmにいます。まもなく合流できる模様>>

 

 

「姉様、どうします?」

 

「味方が増えるのはいいことだわ。彼らを信じてここは待ちましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらく経ち

 

 

 

 

「じゃあ、鳳翔さん含め、任務で居ない伊58を含めた全6人がこの第零護衛隊群なんですか?」

 

「なんか、すごい洗練されたデザインで、見ていてこっちが気を引き締められるよ。」

 

「それで……、スリガオ海峡の敵艦隊は?」

 

「今、早期警戒機が探していますが、少なくとも魚雷艇や、駆逐艦などが多数遊弋する危険地帯であることは間違いありません。」

 

「やっぱり………」

 

 

 

 

 

現在、早期警戒機と、最上触接機が発見した目標が以下の通り。

 

 

 

 

・魚雷艇40隻以上

 

・駆逐艦20隻以上

 

・戦艦複数

 

・揚陸艦、輸送船多数

 

 

 

 

「随分と多いですね………」

 

 

 

 

鳳翔含め、その場にいた何人かが、顔を顰めたその時だった……

 

 

 

 

「早期警戒機より入電!、敵攻撃隊300機がこちらに向かっているとの事!」

 

「300機!、いくらなんでも多すぎる!」

 

「どうして!、私たちなんか狙うより他を狙った方が……」

 

 

 

満潮がそう思うのも無理は無い。

 

 

 

深海棲艦側は、この第1遊撃部隊第3部隊へ向かわせた艦載機が全滅したことを受け、これを主力と完全に誤解。

 

 

 

日が暮れる前に、すぐに集めた攻撃隊で全力攻撃を行おうとしたのだ。

 

 

 

 

 

結果、これにより、囮部隊を務めていた瑞鶴や、瑞鳳などを主軸とする史実で言うところの小沢艦隊や、別部隊の武蔵などが離脱に成功し、鎮守府側を驚かせたのである。

 

 

 

 

「対空戦闘用意!」

 

「鳳翔さん、艦載機は?」

 

「直ぐに出せるのは5機です。頑張って8機にしかなりません。」

 

「艦対空誘導弾も全艦合わせて230発くらいしか無いです。」

 

 

 

酒匂の発言に表情が厳しくなる鳳翔

 

 

 

「近接防空を行った場合は?」

 

「それでギリギリです。」

 

「わかりました………、第3部隊の皆さん。下がってください、私たちが守ります。」

 

「でも鳳翔さ…「お願いします!」

 

 

 

 

山城の声を遮って鳳翔が頼み込む。

 

 

 

 

「鳳翔さん………、ご武運を……」

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「風向き、よし、航空部隊、発艦!!」

 

 

 

 

鳳翔から5機のF35JB改が発艦する。

 

 

 

 

夜間の攻撃のため、鳳翔の艦載機で直ぐに空対空装備に切り替えられたのは、休憩中だった第1小隊しかおらず、その数は5機。

 

 

 

 

「全機、できる限り敵を落とせ!、間違っても落とされるな!、ここはただの通過点だ!」

 

 

 

 

 

高度を上げ迎撃体制を取る航空隊。

 

 

 

 

艦対空ミサイル230発全弾を使わせる訳にはいかないため、如何にここで減らせるかが重要なポイントとなる。

 

 

 

 

「任せてください隊長!、なんのために全部近距離仕様にしたんですか!」

 

 

 

F35JB改は最大15箇所の内外のステーションを利用可能で、これを最大限活用すべく、武装を全てAIM-9Xサイドワインダーに切り替えたのだ。

 

 

 

 

「そうだな……、全機確実に目標を狙え!、攻撃開始だ!」

 

 

 

パイロンからサイドワインダーが離れ、ロケットモーターに点火し一斉に襲いかかる。

 

 

 

敵攻撃隊の、それも爆撃隊を中心に狙った攻撃に対応しようとする深海棲艦機だが、そうするには相手が最悪すぎた。

 

 

 

 

相手は遥か未来のテクノロジーで生み出されたジェット艦上S/VTOL戦闘機、最高速度、武装とあらゆる面で劣る深海棲艦機に勝てる要素は無い。

 

 

 

 

 

 

ボンッ!、ボンッ!、ボンッ!、ボンッ!

 

 

 

 

瞬く間に落とされる深海棲艦機

 

 

 

 

サイドワインダーですらアウトレンジ攻撃になるこの空戦で、第1小隊の1機あたりのキルスコアは簡単に15機に達した。

 

 

 

 

 

更に………

 

 

 

 

「機関砲掃射!」

 

 

 

 

 

ブーーーーーーーーーーン!

 

 

 

 

25mm機関砲の雨が深海棲艦機をミンチにする。

 

 

 

 

機関砲の攻撃だけでも更に15機を失う深海棲艦機だったが、更に数にものを言わせて押し込む。

 

 

 

 

 

「艦対空誘導弾攻撃始め!」

 

 

 

 

酒匂からSM-6が発射される。

 

 

 

 

対空、対艦、弾道ミサイル迎撃にも使えるこの艦対空誘導弾を酒匂は今回100発搭載しており、うち80発を迎撃に回す。

 

 

 

「誘導弾発射完了!、中間誘導を艦載機に切り替えます!」

 

 

クラウドシューティング能力を持つF35JB改がその後の誘導を引き継ぐ。

 

 

 

 

 

「敵攻撃隊命中まで後5秒!、3、2、1、弾着!」

 

 

 

 

ボンッ!、ボンッ!、ボンッ!、ボンッ……!

 

 

 

 

一瞬で、ヲ級一隻分の航空戦力が溶けていく。

 

 

 

 

 

およそ半分を失った攻撃隊だが、数にものを言わせて突っ込んでくる。

 

 

 

 

「艦対空誘導弾、攻撃始め!」

 

 

 

続けて、酒匂以外の全ての艦から艦対空ミサイル合計100発が放たれる。

 

 

 

 

近距離防空を担当するESSMの迎撃からレシプロ機が逃れるすべはない。

 

 

 

 

 

「敵機残り30!、近接防空で対応!」

 

「主砲攻撃用意!」

 

「近接防空誘導弾、攻撃用意良し!」

 

「敵機、20kmまで接近!」

 

「主砲撃てぇ!」

 

 

 

 

ドンッ!、ドンッ!、ドンッ!、ドンッ!、ドンッ!、ドンッ!、ドンッ!………!

 

 

 

 

圧倒的レートで1機ずつ確実に落としていく。

 

 

 

FCSの連携が生み出す必中の砲弾は、深海棲艦機に絶望を与える。

 

 

 

「敵機、さらに接近!」

 

「近接防空誘導弾発射!」

 

 

 

 

バシュ!バシュ!バシュ!………!

 

 

 

複合CIWSや、RAMから近接防空ミサイルが放たれ敵機をさらに落とす。

 

 

 

 

 

 

いつの間にか、空が赤くなり、夕日が水平線に沈もうとする頃、ついに防空戦に決着が着いた。

 

 

 

 

 

 

「全機撃墜!!」

 

「やったぁ!!」

 

「すごい……、本当に全部撃墜しちゃった……」

 

 

 

 

第零護衛隊群は、CIWSの対応圏内に入られることにはなったが、かろうじて全機撃墜した。

 

 

 

 

 

 

 

 






というわけで、次回はトラウマ確定だった海峡夜戦の前半です。


魔改造の成果は如何に


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第6話 夜間戦闘




というわけでアニメにおける魚雷艇との交戦です。


第零護衛隊群はどう対処するのか……


 

 

 

 

 

 

「妖精さん、艦載機への武装は?」

 

「魚雷艇を想定して空対地誘導弾にしました、炸薬は多少減りますが、近距離空対空誘導弾を2発積んだ状態で、全部で13発積むこと出来ます。」

 

 

 

この空対地誘導弾とは、世界的ベストセラーになっている空対地ミサイルAGM-65マーベリックのことであり、F35JB改には13発搭載できるようになっている。

 

 

 

「水雷艇程度の防御なら機銃でもいけますな。」

 

「我々としても早期警戒機と連携して全力で叩きますが、油断は禁物。レーダーの目をかいくぐった敵がいるかもしれません。」

 

「わかってます。それと、瑞雲との連携も」

 

「了解でっさー!」

 

 

 

 

 

一方、第1遊撃部隊第3部隊最上でも……

 

 

 

 

「夜間攻撃隊発艦準備!」

 

 

 

ロケット弾と爆弾で武装した瑞雲が発艦し、敵魚雷艇に打撃を与えるべく発艦体制にはいる。

 

 

 

 

「艦隊前衛に酒匂さんを、左翼に響さんを、右翼には神風さんを、後方には占守さんを配置して、中央に私が入ります。」

 

 

 

 

そう言うと、鳳翔は、山城と扶桑の近くに移動。

 

 

 

 

「風向き、よし、航空部隊、発艦!」

 

 

 

第2小隊に第4分隊の1機を加えた5機が飛び立ち水雷艇に対処する。

 

 

 

 

 

「鳳翔さん達は先程から弾薬を消費していますが大丈夫ですか?」

 

「ええ、大丈夫です。それに、敵の主力の時には一緒に戦って貰いますよ?」

 

「そうですね、私たちも扶桑型戦艦として、守って貰う訳にはいきませんからね。」

 

「姉様……、鳳翔さん……」

 

 

 

 

 

日が暮れる中で、これからの激戦を思い、不安を隠せない山城。

 

 

 

 

「時雨、あんたもしっかり姉様を守るのよ」

 

 

 

 

 

時雨に言い聞かせつつ、夜に備える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

「敵魚雷艇を確認!、数4!」

 

「第2小隊2番機、任せた!」

 

「了解!、空対地誘導弾発射!」

 

 

 

F35JB改の主翼付け根付近のパイロンと、翼下パイロンからAGM-65マーベリックが放たれる。

 

 

 

マルチロックオン(多目標同時対処)能力を持たせたこの機体なら対地目標なら6個まで対処可能であるため、4隻など朝飯前だ。

 

 

 

 

「撃破確認!」

 

「早期警戒機より第2目標、数3!」

 

「俺が行く!」

 

「了解!、隊長、お気をつけて!」

 

 

 

魚雷艇にとって、突然降ってくるミサイルは恐怖以外の何物でもない。

 

 

 

「魚雷艇撃破」

 

 

 

「環礁地帯に隠れていた魚雷艇が艦隊に向かうところを早期警戒機が捉えました!、対応を!」

 

「数は?」

 

「20隻!」

 

「3、5番機を向かわせろ!」

 

「了解!」

 

 

 

 

機体を傾け、方角を変更する2機のF35JB改

 

 

 

「目標を捉えた!」

 

「空対地誘導弾発射!」

 

 

 

まずは翼下に取り付けられた4発、続けてウェンポンベイの中にある6発を発射し、あっという間に片付ける。

 

 

 

「敵魚雷艇撃沈!」

 

<<戻ってください。この先には駆逐艦が待ち構えている恐れがあります>>

 

「了解、隊長機達と合流して帰投します。」

 

 

 

 

この後、瑞雲隊も敵魚雷艇6隻を撃破し、残る魚雷艇を早期警戒機で捜索させていた。

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

「これより着艦する。」

 

 

 

鳳翔の持つ飛行甲板に垂直で着陸するF35JB改

 

 

 

「早期警戒機からの情報では、この先敵水上戦闘艦隊が待ち構えているとの事。艦載機は空対艦誘導弾に切り替えて、駆逐艦や、巡洋艦に対応し、この先現れる魚雷艇は、艦隊で対処します。」

 

「戦艦の相手は戦艦、ここまで守られてばっかでしたが、私たちとて戦艦、相手に不足は無いわ、鳳翔さん、戦艦の相手は任せてください。」

 

「お願いします。」

 

 

 

「……っ!、レーダーに感!、敵魚雷艇各方向より多数接近中!」

 

「対水上戦闘用意!」

 

「魚雷艇に攻撃を!」

 

 

 

山城と鳳翔の指示で両艦隊が各方面からやってくる魚雷艇を迎撃する。

 

 

 

「主砲攻撃始め!」

 

 

 

ズドンッ!、ズドンッ!、ズドンッ……!

 

 

 

この時代の高角砲並みのレートで127mm砲弾が放たれ、魚雷艇を駆逐する。

 

 

 

 

 

「第零護衛隊群の皆、初弾からほとんど外してなくない!?」

 

「嘘でしょ、そんなことある訳……えっ!?」

 

「僕達と同じ口径のはずなのに、命中精度と射程が全然違う!」

 

 

 

 

 

第3部隊が納得いかないのも道理。第零護衛隊群の持つFCSは、艦娘自身の練度も相まって、非常に高い命中精度を叩き出す。

 

 

 

 

 

「76mm砲撃開始!」

 

「砲撃開始!」

 

 

 

ここで、第零護衛隊群全艦の持つ艦砲が有効射程に収まったため、一斉に砲撃を行う。

 

 

 

 

「艦載機の皆さん!、用意は良いですか?」

 

「鳳翔さん!?、一体何を考えてるんですか!」

 

「早期警戒機の報告だと、この先に駆逐艦が待ち構えています!、ここで飛ばさないと会敵に間に合いません!」

 

 

 

 

砲術妖精が砲撃を行う間に、鳳翔は矢を番え、発艦体制に入る。

 

 

 

「航空部隊、発艦!」

 

 

 

重い93式空対艦誘導弾を積んだF35JB改が休憩中の5機を除いた10機、飛び立つ。

 

 

 

 

 

 

「近接防御!、短魚雷発射用意!」

 

「12.7粍重機関銃、射撃開始!」

 

 

 

 

 

さらに接近してきた魚雷艇に、CIWSが弾幕を張って応戦し、夜戦前に設置した12.7mm重機関銃と合わせて応戦する。

 

 

 

 

「敵魚雷艇撃破!」

 

「ソナー、目視で魚雷は確認されていません!」

 

「油断しないでください、駆逐艦はもう近くにいるはずです。」

 

<<敵駆逐艦を補足!、4方向より接近!>>

 

「艦載機の皆さん、対応を!」

 

<<そうは言ってもお艦、こっちは20発しか空対艦誘導弾を積んでいない!、対して相手は24隻、4隻は撃ち漏らす!、対応を!>>

 

「鳳翔さん、敵艦隊の正確な位置は?」

 

「分かります。」

 

「姉様、ここは私が!」

 

「山城、<私たち>が、よ」

 

「姉様……」

 

「扶桑さん、山城さん、右翼の敵を任せます。酒匂さん、援護を!」

 

「了解!」

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目標、敵深海棲艦駆逐艦4隻、各一発ずつ空対艦誘導弾を振り分けた。目標補足、発射!」

 

 

 

 

翼下パイロンとウェンポンベイから93式空対艦誘導弾がいっせいに発射される。

 

 

 

この対艦ミサイルは、熱源を辿り、相手の甲板上の構造物を正確に狙うことができる。

 

 

 

それは深海棲艦相手でも変わらず、敵駆逐艦の魚雷発射管目掛けて一心不乱に突撃する。

 

 

 

 

やがて一発一発が深海棲艦達に命中する。

 

 

 

 

「爆ぜろ深海棲艦!、けっ、汚ぇ花火だ」

 

「口悪いですって隊長……」

 

 

 

 

魚雷発射管に確実にヒットしたためか、激しい爆発をして炎上する深海棲艦。

 

 

 

「戻りますよ、まだまだ敵は居ますからね。」

 

 

 

 

 

 

やる事やったらさっさと戻る。

 

 

 

 

この先敵艦隊中枢を叩くためにも、まだまだ気は抜けない。

 

 

 

扶桑と山城が残りの駆逐艦を叩いてくれると信じて戻る鳳翔航空隊であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、残る駆逐艦4隻も、味方艦への先程の対艦ミサイル命中によって大きく混乱し、しっちゃかめっちゃかな動きをしていた。

 

 

 

 

「敵の動きを止めます!、誘導砲弾撃てぇ!」

 

 

酒匂の155ミリ砲の誘導砲弾の砲撃が行われる中で鳳翔の早期警戒機から、鳳翔を通じて駆逐艦の正確な位置が伝わる。

 

 

「早期警戒機からの情報を参考に必中の砲撃をお願いします。」

 

「扶桑型としての意地を見せるときです。姉様、合わせますよ!」

 

「距離○○○、風向き***、風速☓☓☓、山城さんもう少し下げて」

 

「わかりました。」

 

 

 

 

 

空母鳳翔の艦内には、気象情報や、敵情報を元に適切な作戦指揮を行うために最新のスーパーコンピューターが設置されており、これを転用することで扶桑山城両名に正確な射撃をしてもらうという考えだ。

 

 

 

「誘導砲弾命中!、目標の移動速度低下!」

 

「扶桑さん、山城さん、お願いします。」

 

 

 

 

 

「「撃てぇ!!」」

 

 

 

 

闇夜の海に41センチ砲の砲声が轟く。

 

 

 

 

限界まで引き上げられた砲手の練度と、最新鋭のコンピューターによる演算が組み合わさる時、その砲撃に女神が宿る。

 

 

 

 

 

 

「全弾命中!、すごい!」

 

「観測妖精、ホント?」

 

「はい!、こんなことがあるんですね!」

 

 

 

 

思わず確認したくなるほどの正確性。

 

 

 

 

 

扶桑、山城両名の放った41cm砲弾は残った4隻の駆逐艦に見事に命中し、これらを撃沈せしめた

 

 

 

 

 

だが、さらなる敵が彼女たちを待ち受ける。

 

 

 

 

「敵重巡洋艦4隻確認!」

 

「艦対艦誘導弾、攻撃始め!」

 

「響、攻撃開始」

 

 

 

 

響に備えられた対艦ミサイル用VLSから一斉に対艦ミサイルが放たれる。

 

 

 

 

見敵必殺。

 

 

 

 

まさに第零護衛隊群のために用意された言葉であるかのように、目に映る敵は片っ端から片付ける

 

 

 

 

 

「敵重巡洋艦の撃沈を確認!」

 

「すごい……ここまで無傷で来られた……」

 

「鳳翔さん……、皆さん……、感謝します。」

 

「いえ……、まだです………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早期警戒機より報告、敵侵攻部隊、中枢と見られる超大型の敵反応を確認、周辺にはル級や、そのほかの艦艇も多数確認との事………。」

 

 

 

 

 

 

 

そう、ここまでは単なる通過点に過ぎない、敵の主力である侵攻部隊は未だその圧倒的戦力で、艦娘達をひねり潰そうとしている。

 

 

 

 

 

 

「第1遊撃部隊第3部隊、攻撃用意!」

 

「第零護衛隊群、対艦誘導弾飽和攻撃用意!」

 

 

 

 

 

 

 

攻撃態勢を整える両艦隊だが、深海棲艦の攻撃が先に降り注ぐ

 

 

 

 

 

 

「敵弾来ます!、山城さんに着弾の恐れ!、面舵30に最大戦速!」

 

 

 

「了解!」

 

 

 

レーダーで敵弾を確認しつつ、第3部隊に指示を出していく第零護衛隊群。

 

 

 

 

 

 

 

「味方艦艇、来ます!」

 

 

「第1遊撃部隊第1部隊旗艦大和戦闘海域に到達、これより戦闘を開始します!」

 

 

 

 

「第3部隊と、第零護衛隊群へ、安心して、極秘命令書は受け取っているわ。」

 

 

 

 

史実栗田艦隊等の合流に成功した、第零護衛隊群と第3部隊。このまま鎮守府総戦力が、侵攻部隊との最終決戦へと向かう。

 

 

 

 

 

 







さて、第3部隊に大きな被害なく遂に海峡夜棲姫まで辿り着けました。ここからの戦いはどうなるのやら………


次回もお楽しみに!




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第7話 新航空自衛隊、戦闘開始




というわけで、タイトルにもあるように航空攻撃です。


言うことは後書きに書くので前では端折ります。







 

 

 

 

 

 

時間帯は、第零護衛隊群の面々がスリガオ海峡突入より少し手前

 

 

 

 

 

呉鎮守府から少し離れたところにコンクリート製の妖精向けの3000メートル級の滑走路、それも現代的なものが新たに敷かれていた。

 

 

 

 

 

そして、ここに新たに航空部隊が置かれる。

 

 

 

 

 

新航空自衛隊

 

第1航空団

第991飛行隊 噴式艦上戦闘機「雷華」×16機

第992飛行隊 噴式艦上戦闘機「雷華」×16機

 

第11航空団

第1000飛行隊 空中弾薬庫艦AAS-1×4機

第1001飛行隊 電子戦機 E/A-1×2機

 

第21航空団

第2000飛行隊 早期警戒管制機E/P-1×4機並びに空中作戦指揮機SC-1×1機

第2001飛行隊 空中給油機 K/C-1×8機

 

 

新海上自衛隊

 

第9000飛行隊 P-1B×16機

 

 

 

 

 

また、現在訓練中のMig-29が8機ほど居る。

 

 

 

今回は、新航空自衛隊、新海上自衛隊の航空部隊のフル出撃であり、新航空自衛隊の防空部隊と、訓練中のミグが防空を担当する。

 

 

 

 

「艦娘達は今この瞬間も戦い続けている!、速やかに出撃せよ!」

 

 

 

 

多元の言葉の後、作戦参加機64機が順番に、速やかに離陸し、レイテ湾へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第零護衛隊群、作戦を第2段階に移行します。航空部隊による対艦攻撃に備え、周辺の艦娘と深海棲艦との識別を急いでください。」

 

「了解!、あっ……、敵に変化あり!」

 

 

 

 

その様子はその場にいた全ての艦娘が見ていた。

 

 

 

 

海峡夜棲姫が、周辺の深海棲艦を吸収……

 

 

 

 

 

 

いや、

 

 

 

 

 

 

 

「食ってる………」

 

 

 

 

 

 

誰かの漏らした言葉が全てだった。

 

 

 

 

 

大和や、扶桑、山城、さらに水雷戦隊などの攻撃によってダメージを受け続けていたはずの海峡夜棲姫が突如として、周辺の深海棲艦を喰らったことで成長し、海峡夜棲姫・ 壊へと進化した。

 

 

 

 

 

 

「全艦対艦誘導弾発射用意!」

 

「用意良し!」

 

「攻撃始め!」

 

 

 

 

 

だが、姿形は変わってもやることは変わらない。

 

 

 

 

第零護衛隊群の役目は、スリガオ海峡に展開する全ての艦娘の援護と救援。

 

 

 

 

残った深海棲艦と、海峡夜棲姫に向けて、対艦ミサイルをロックオン、一斉発射する。

 

 

 

 

「航空部隊、発艦!」

 

 

 

鳳翔も全艦載機を発艦させ、対艦攻撃を行う。

 

 

 

 

 

「主砲、撃ち方始め!」

 

 

 

155mm、127mmがさらに海峡夜棲姫に向けられ砲撃を行う。

 

 

 

「海峡夜棲姫、発砲!、時雨を狙ってる!」

 

「ぴゃあ!、迎撃!」

 

 

 

 

レーダー妖精からの報告で、酒匂のVLSが開き、中からSM-6が飛び出し、迎撃する。

 

 

 

 

 

 

「砲弾を……、ロケットで落とすなんて……」

 

「あれが呉鎮守府で準備していた部隊なのね」

 

 

 

 

その場で戦闘参加していた第零護衛隊群以外の艦娘達が彼女たちの戦いを戦いながら見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このままなら勝てる

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、海峡夜棲姫はしぶとい。

 

 

 

 

 

 

「オノレ、イマイマシイ艦娘共め!!」

 

 

 

対艦ミサイルの一斉射撃、大和含めた戦艦による砲撃を受けてもなおも沈まない海峡夜棲姫。

 

 

 

 

「時雨、私を援護しなさい!」

 

「山城……、わかった」

 

 

 

 

その様子を見た山城が、時雨とともに動く。

 

 

 

 

 

 

「時雨、2人だけの陣形を組みましょう」

 

「えっ?、ないよそんなの……」

 

「いいから」

 

 

 

「山城さん、時雨さん、援護します」

 

 

 

 

鳳翔が艦載機で2人を援護する。

 

 

 

<<機関砲掃射!>>

 

 

 

魚雷を機関砲で破壊し、進路をこじ開ける。

 

 

 

「当たれ!」

 

 

 

時雨が残った魚雷を叩き込み、海峡夜棲姫にダメージを与える。

 

 

 

 

 

「時雨!」

 

「山城!!」

 

 

 

 

山城が時雨の手を足場に飛び上がり、海峡夜棲姫の上に回り込む。

 

 

 

 

「撃てぇ!」

 

 

 

 

命中する直前、海峡夜棲姫が自らに残された数少ない艤装で、防いだため、海峡夜棲姫撃沈には至らなかったものの、最早瀕死である。

 

 

 

「扶桑さん!、落下地点が近くです。山城さんを受け止めてください!」

 

「わかったわ」

 

 

 

扶桑が落下地点に移動し、山城を受け止める。

 

 

 

 

「姉……様……」

 

「山城、大丈夫?」

 

「はい………、姉様は?」

 

「何とかね、第零護衛隊群と………、あの子たちのおかげでね」

 

 

 

山城を受け止めた扶桑の周りには、第3部隊の艦娘達が集まっていた。

 

 

 

 

「みんな………、ありがとう」

 

 

 

その時、山城はハッとしたように周りを見渡すと

 

 

 

「時雨は?」

 

 

第3部隊の面々の中に居ない時雨。

 

 

 

 

「時雨ならここに」

 

 

 

 

 

響がそう言うと、肩を組んでいた時雨の方を見る

 

 

 

 

「山城が扶桑に受け止められるまで、ずっとそばを離れなかったんだ、ちょっと被弾は多かったけど大丈夫だよ」

 

 

 

 

そう言うと、時雨は目を開けて、山城の方を見る

 

 

 

 

「山城………」

 

「時雨、良くやったわ」

 

「山城は……、大丈夫なの?」

 

「あんたねぇ……、自分のことは棚に上げて……、無事よ、あんたこそ大丈夫なの?」

 

「大丈夫だよ」

 

「ホントでしょうね?」

 

「ホントだって!」

 

 

 

少々無理をしてもムキになって反論する時雨を見て無事を確信したのか、山城は表情を和らげる。

 

 

 

 

「まぁ、よく頑張ったわ。後は他のみんなに任せましょうね」

 

「うん」

 

 

 

ここで、海峡夜棲姫との戦いで被弾の多い艦娘達を撤収させて、後の戦いに影響が出ないように第零護衛隊群が誘導する。

 

 

 

 

「鳳翔さん、海峡夜棲姫はどうしますか?」

 

 

 

大和が鳳翔に近づき、対応を尋ねる。

 

 

 

「このまま残存艦艇で攻撃するにしても弾薬が不足しているため、困難です。私の46センチ砲も弾薬が心もとないですし………」

 

「ええ、確かに私たちだけではこのまま海峡夜棲姫を倒すことは困難です。先程の山城さんの一撃は効果的でしたが、あと少しのところで防がれてしまいましたし………」

 

 

 

 

と、その時、海峡夜棲姫から艦載機が発艦。

 

 

 

「大和さん、こちらで対応します」

 

 

 

<<お艦、任せてくれや!>>

 

 

 

対艦ミサイルを撃ち終えた鳳翔航空隊が、やってくる戦闘機をたたき落とす。

 

 

 

 

「全機撃墜……、しかし依然として海峡夜棲姫はその力を未だ残しています」

 

「大丈夫です。相手は最早死に体です」

 

「でも弾薬が………」

 

 

 

 

そう大和が言った時、鳳翔に無線が入る。

 

 

 

 

「特殊暗号<大垣夜行は名古屋を通過>を受信しました!」

 

 

 

 

 

それを聞いた鳳翔は次の行動に移る。

 

 

 

 

 

「鳳翔より作戦参加中の全艦娘へ!、深海棲艦との距離を直ちに取ってください!、第零護衛隊群所属艦娘は今一度データリンクの確認を!」

 

「了解!」

 

 

 

 

それを聞いた第零護衛隊群所属艦娘が一斉に艦娘達を退避させる。

 

 

 

 

「大和さんも早く!、新航空自衛隊と新海上自衛隊の航空部隊による航空攻撃が始まります!」

 

「こ、航空攻撃ですか!?、どこから飛ばしてきたんですか?」

 

「本土からですよ」

 

「本土から!?」

 

「ええ、私たちの提督は少々特殊ですから」

 

 

 

 

 

そう言ってニコリと笑う鳳翔。

 

 

 

 

 

<<鳳翔さん!、艦娘の退避完了しました!>>

 

<<お艦!、残った艦娘は居ないぜ、深海棲艦の奴ら何をしたいのか理解出来ずに立ち止まっていやがるな>>

 

 

「わかりました。通信妖精は特殊暗号の送信を行ってください」

 

「了解!、特殊暗号<客車は側線に移り、大垣夜行の大垣駅進入良し>を送信!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その通信を受けて、航空部隊が動き出す………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新航空自衛隊第21航空団所属、P-1対潜哨戒機改造型空中指揮管制機SC-1

 

 

 

 

 

「鳳翔より特殊暗号入電!<客車は側線に移り、大垣夜行の大垣駅進入良し>です!」

 

「了解した。早期警戒管制機、レーダーによる深海棲艦の艦艇捕捉はどうだ?」

 

<<終わっているが……、それにしてもおびただしい数だな>>

 

「そうか……、水上艦5隻だけであの数の深海棲艦と周りの艦娘の援護はキツイよな、新航空自衛隊並びに新海上自衛隊航空部隊、動きます。全機作戦開始!」

 

 

 

 

 

指示を受けた各機体が動く。

 

 

 

 

 

「12式改型空対艦誘導弾、発射!」

 

 

 

 

ステルス性なんか気にすることなく、雷華の翼下パイロンから12式を改良した長射程空対艦ミサイルが放たれる。

 

 

 

その数1機辺り4発、切り離された後、ジェットエンジンに点火して翼を広げて飛翔する。

 

 

 

 

 

「空対艦誘導弾、発射!」

 

 

 

 

P-1や、その改良型、電子戦機型も今回は12式改型空対艦ミサイルを積んでの攻撃に参加する。

 

 

 

 

 

 

対艦ミサイルの飽和攻撃だ。

 

 

 

 

 

 

「攻撃完了、雷華と早期警戒管制機、電子戦機を除いて帰投せよ」

 

 

 

全弾発射した後、空中弾薬庫艦と、支援任務を行う1機を除いた電子戦機は離脱。雷華は接近してウェポンベイの中にまだ残した対艦ミサイルを用意する。

 

 

 

 

 

「鳳翔に送信、<お客さんは出し終えた、寝ている人はどうされるか?>」

 

 

 

 

 

 

特殊暗号を送りつつ、雷華と支援機は敵艦隊に接近していった……

 

 

 

 

 

 

 

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「弾着、今!」

 

 

 

 

鳳翔航空隊の観測担当が、放たれた対艦ミサイルの弾着を観測する

 

 

 

 

 

 

夜間の視認は絶望的なまでな低く、レーダーによる探知も難しい12式改型空対艦ミサイル。

 

 

 

 

 

現時点の新自衛隊の航空戦力の大半を結集して放たれたその槍は、スリガオ海峡に居座る深海棲艦共を次々に屠っていく。

 

 

 

 

「ネ級、爆沈、駆逐艦全滅、戦艦は既に全滅、輸送船にも撃沈相次ぐ。海峡夜棲姫・壊は撃沈、追加攻撃の必要なし」

 

 

 

 

 

 

 

 

史実では、多くの軍艦が沈み、原作でも多くの艦娘が退役せざるを得なかったスリガオ海峡夜戦。

 

 

 

 

 

新自衛隊所属部隊は、絶望的状況を見事にひっくり返したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 






というわけで、圧倒的対艦ミサイル飽和攻撃でねじふせました(作風的にこれになることは多いんですよね………)




本作は現在放送中の艦これ2期を元に作っているんですが………



とりあえず、ネタバレとかもあるんで感想については何も言いません。


まぁ、ポジティブイメージが無かった時点でお察しというか……、まぁここで愚痴り続けても意味は無いですね。



本作は、いつ海をリスペクトしつつ、私の作風に合わせた解釈で今後も作っていく方針です。



なので、もしかしたら、原作の情報を元に、内容を少し膨らませるかもしれません。



いずれにせよ、続けてまいりますので、お付き合い頂けたらなぁ、と思っています。


感想、コメントお待ちしております。



















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第8話 佐世保出張所




というわけで、原作における「佐世保鎮守府」あたりの話です。


新キャラ登場します。


 

 

 

 

 

 

 

激戦から1夜明け、海峡夜棲姫を撃沈させられたことで一時後退する機動部隊。

 

 

 

 

 

「オノレ……、忌々シキ艦娘共メ………」

 

 

 

 

恨みを募らせる空母棲姫だが、海面下に潜むハンターが居ることを知らない。

 

 

 

 

 

「……ッ!、敵襲!」

 

 

 

 

何かが突然飛んできた後、空母棲姫に着弾。

 

 

 

 

大爆発と共に爆沈する。

 

 

 

 

 

 

 

「うーみの中からこんにちは~、ゴーヤだよぉ」

 

「またそれですか……、それにしてもすごい爆発音ですねぇ……」

 

「潜水艦発射型艦対艦誘導弾でちね、すごい威力でちよねぇ……」

 

「これで空母棲姫があっさり沈むんですから怖いもんですよ……」

 

「護衛艦も焦ってるでちねぇ……、妖精さん、魚雷は装填してあるでちね?」

 

「ええ、全弾発射可能です」

 

「行くでちよ!、18式魚雷発射!」

 

 

 

 

 

第二次世界大戦レベルの潜水艦からすれば恐ろしく小さな音の魚雷発射音と共に、18式魚雷が放たれて残った護衛艦に襲いかかる。

 

 

 

 

 

 

艦底部で起爆した魚雷は、深海棲艦の竜骨相当の場所を叩き折り、巨大な水柱と共に深海棲艦を蹴散らしていく。

 

 

 

 

 

 

新海上自衛隊第零護衛隊群所属、潜水艦伊58は、フィリピン沖合にて遊弋していた深海棲艦の空母機動部隊を補足、対艦ミサイルと魚雷で沈めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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それから数日して、呉鎮守府新海上自衛隊本部

 

 

 

「えっ?、異動?」

 

「そうだ、佐世保に新たに出張所を作る。そこのトップとして、君を派遣したい」

 

「でも、今回の作戦成功で、呉鎮守府からも改装を頼まれてますよ?、そっちは……」

 

「真多に回してくれ、さすがに今回はオーパーツを作る余裕は無い、だが、各々が別世界で学んできた技術で、より省資源化をお願いしたい」

 

「まさか僕は佐世保の方の魔改造ですか?」

 

「そうなる。我々としては特に扶桑型の2人のアーセナルシップへの変更を任せたい、長崎にて療養中の武蔵への対応は医療部がやっている」

 

 

 

 

 

 

新海上自衛隊のメンバー……、つまるところ拙作毎度おなじみの転生者が持ち込んだ技術は軍事だけでなく、医療、インフラ、食料生産などの幅広い分野に及ぶ

 

 

 

 

艦娘への治療もそのひとつで、多くの艦娘が一命を取り留めた。

 

 

 

「佐世保に向かった後、まずは第二水雷戦隊への改装を優先して行って欲しい。これは佐世保鎮守府の提督からの要望だ、とりあえず先程言った扶桑型への大規模改装はとりあえず後回しだ」

 

「優先順位は?」

 

「佐世保提督からの要請だと、時雨、雪風、矢矧を優先、武蔵は体の方がまだダメらしいから当面ダメかもな」

 

「深海棲艦の動向は?」

 

「海峡夜棲姫を失い、一部機動部隊も伊58がやってくれたおかげで、深海棲艦といえど大きなダメージを負った。ここに大垣夜行を送り込めば輸送部隊も崩壊する」

 

 

 

 

大垣夜行とは、P-1Bの高速性と航続距離を活かした夜間攻撃隊による夜間攻撃のことである。

 

 

 

既に今日の夜には出撃を行い、援護を失った輸送部隊を攻撃する手筈となっている。

 

 

 

 

 

「ちなみに時雨等への改装要項は?」

 

「対空優先、量産性を上げてくれ」

 

「となるとせいぜい和製イージス止まりですね」

 

「ミサイルは?」

 

「ESSMでは多分厳しいです。03式の改良型か、XRIM-4を積みます、というか、ブラックボックスをいちいち調べ直すのがめんど………、ゲフンゲフン……、アフターケア考えると国産ですかね」

 

「まだ完全な意味での和製イージスは無理か」

 

「アドバンス・イージス(オリジナルシステム、対処能力をイージスシステムより上げた)は作るのにそれなりの資源と時間がかかります、本土決戦すら視野に入れる必要のあるこの世界では作る余裕がありません、和製イージスも能力を上げるにはそれなりに時間がかかります」

 

「本土決戦か……、そういえば小玉さんが新陸上自衛隊の発足について陸軍と協議していたな、61式戦車改とパンツァーファウスト、84mm無反動砲の供与を中心に行うとか、ここ呉鎮守府とその周辺はおそらく地盤改良が間に合うから、10式戦車だけじゃなくて、130mm滑腔砲とか、152mmとか155mmクラスの大口径砲を有した本格的な機甲師団を用意するとか言っていたな……」

 

「話が逸れましたが、私の異動は何時で?」

 

「1週間後だ、佐世保に展開予定の噴式航空団の配置とともに君もオスプレイで向かって欲しい、満州で新自衛隊資源部が見つけた油田のおかげで燃料事情も改善する見込みだ」

 

「なるほど、わかりました、それでは私はこれで失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「時雨、提督が呼んでいるわよ」

 

「わかったよ、初霜」

 

 

 

 

初霜が第3部隊の部屋を訪れたのは、新海上自衛隊技術部の平河の異動を伝えられた時間とほぼ同じ頃だった。

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します、時雨、入ります」

 

「入れ」

 

 

 

 

執務室に向かった時雨は、大淀と提督に出迎えられて中のソファーに座り、大淀から入れてもらったお茶を飲む。

 

 

 

 

「新海上自衛隊と新航空自衛隊の協力のおかげで我々は投入戦力を失うことなく防衛に成功した」

 

 

 

 

提督の言葉に頷く時雨

 

 

 

「だが、敵は未だ空母機動部隊を主軸とした主力を多数有しており、フィリピンを狙う素振りを崩さずにその力を再度蓄えようとしている」

 

 

 

 

現に、輸送部隊は健在であるものの、喪失部隊は無いにせよ、多数の損傷艦の出た鎮守府側は反攻の手を欠く有様である

 

 

 

 

「だが、彼ら新海上自衛隊はそれすら叩く力を有しているという」

 

「えっ」

 

「どうやら一型哨戒機という機体(P-1のこと)で輸送艦を夜間に叩くらしい」

 

「哨戒機で?」

 

「詳しくは知らないが、対艦用の誘導弾を用いた一撃離脱戦法らしい」

 

「対艦用の誘導弾……、響達が使っていたものと同じものなのかな?」

 

「多分そうだろう、それで、この佐世保所属の艦娘にも新海上自衛隊の所属艦娘のような改装を施すらしい。そこでだ………

 

 

 

 

 

白露型駆逐艦、時雨」

 

「はい」

 

「君も含めた大規模なものになるが……、まずは君に半舷上陸の許可を出す、まずは来る大改装に備えてまずは休め」

 

「はい、時雨、半舷上陸します」

 

 

 

 

 

 

 

 

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私服に着替えた時雨は、佐世保鎮守府を出る

 

 

 

 

「うわぁ……、すごい……」

 

 

 

途中佐世保出張所の近くを通ると、新自衛隊による重機を使った作業を見て、時雨は驚いた。

 

 

 

 

 

 

<新海上自衛隊佐世保出張所、新航空自衛隊佐世保基地建設中、関係者以外立ち入り禁止>

 

 

 

 

 

 

街中を通りながら、八百屋でみかんを購入し、バスに揺られて温泉旅館に辿り着く。

 

 

 

 

 

チェックインを済ませ、露天風呂に行くと、既に先客がいた。

 

 

 

 

 

「私呉の雪風」

 

「僕は佐世保の時雨」

 

 

 

2人で風呂に入っていると、轟音を立てて何かが飛んで行った。

 

 

 

「なんだろうアレ」

 

「さぁ……、もしかして新海上自衛隊の新型機なのかもね」

 

 

 

 

新海上自衛隊所属のP-1対潜哨戒機が温泉旅館上空を通過して佐世保出張所に向かう。

 

 

 

 

 

「なんか、すごいことになりそう」

 

「僕もそう思う」

 

 

 

 

 

 

P-1が向かう様子を見た後、2人は風呂から出た。

 

 

 

 

 

(原作を見た方ならこの後の展開について知っていると思いますが、さすがにここはカットさせていただきます。分からない方は原作をどうぞ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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新海上自衛隊本部にて

 

 

 

 

 

「第2次大規模改装ですか?」

 

「そうだ。現在この国に残る空母艦娘は全部で5人だが(伊吹等の未成艦、公式で艦娘化していない海鷹は除くものとする)、前回の作戦成功により、可能な限り資源を我が新海上自衛隊に回すことが決定され、その第1段階として、第二水雷戦隊と龍鳳含めた複数の艦娘への大規模改装が行われることとなった」

 

「その大規模改装の対象に私が?」

 

「いや、鳳翔さんにお願いしたいのは両用戦闘艦としての試験艦兼、再建中の機動部隊代打としての役割だ」

 

 

 

 

そのまま多元が説明する。

 

 

 

 

「第二水雷戦隊は現在佐世保を拠点としており、1週間後には平河君が出張所所長として赴任することで本格的な改装を行う、第二水雷戦隊への大規模改装は彼に一任してあるが、問題は龍鳳だ」

 

「私の大規模改装が必要なほどですか?」

 

「うむ、というのも龍鳳はこの後にフィリピン防衛のための輸送任務が入っている。改装するなら早くしなければならない。一から艦載機を作っている余裕は無い」

 

 

 

 

そこまで来ると、鳳翔にも内容が掴めてきた。

 

 

 

「つまり、私の艦載機を龍鳳さんに引き渡すついでとして、再建中の機動部隊の代わりと新たな装備の試験のために改装を施すということですね」

 

「そうだ。新たに搭載する艦載機については、航続距離に制約のある短距離離陸/垂直着陸法式の機体では無く、射出機を必要とする艦載機だ」

 

「現状、新海上自衛隊と新航空自衛隊の保有する戦闘機で条件に合致するのは雷華ですが、あれを艦載するのですか?」

 

「そうだ、ほかにも両用戦向けの装備を積むことになるが、そのことはおって知らせる」

 

「もうひとつよろしいですか?」

 

「なんだい?」

 

「その改装対象には大和さんも含まれているのではありませんか?」

 

 

 

 

そう言われると多元は頭を搔く

 

 

 

「隠し事はできないな、今はうちの物部咲の元で改装が行われている」

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

呉鎮守府並びに新海上自衛隊本部地下ドック

 

 

 

 

「大和さん、改装にあたって何か要望等があったら教えてください」

 

 

 

地下ドックで改装中の艦娘は大和。

 

 

 

「対空能力の強化をお願いします」

 

「他には何かありますか?、気になるところは徹底的に改修出来ますよ、主砲の命中率向上、威力向上から抗堪性の上昇、電探の大幅強化や航空戦力の増強や、汎用性の向上。オマケに機動力の向上もいけます」

 

「全部やったら資源が………」

 

「大丈夫です。全部やってもこれくらいです」

 

 

 

 

そう言って物部は資料を見せる

 

 

 

 

「すごい……、本当に全部できるの?」

 

「ええ、この力でみんなを守れます」

 

「わかりました。あなたに託します」

 

「任せれました!」

 

 

 

 

おりゃー!、と言いながらものすごい勢いで電算機に諸元を入力していく物部。

 

 

 

 

 

出来上がったものがこちらになる

 

 

 

 

 

 

機関 COGAG

速力 35ノット

防御 戦艦用複合装甲+均質圧延装甲

レーダー あきづき型とあさひ型の合体、発展版

武装 51cm三連装砲×3基、155mm単装砲×4基、汎用VLS×360セル、24連装RAM×4基、76mmスーパーラピッド×6基、57mm速射砲×8基、20mm給弾機付きファランクス×32基、魚雷発射管×8門

艦載機 F-35JB改×16機、EV-22×1機

特徴 スラスター多数保持

 

 

 

 

 

機関を切り替えたことで、低燃費になり、さらに速力も上げた。また、スラスターを装備したことによって、艦艇の常識を覆す機動力を持ち、容易に攻撃を当てさせない。

 

 

 

また、なんとか当てたとしても、最新のテクノロジーにものを言わせた新型複合装甲が容易に貫徹を許さない。

 

 

 

チタン、セラミック、均質圧延装甲、さらに居住性の悪化を最新のテクノロジーでカバー出来たことによって実現した空間装甲、高分子ポリマーやコンクリートまで利用した複合装甲は、同口径のレールガンはおろか、水爆の直撃すら悠々と耐え凌ぐ性能を持つ。

 

 

 

 

魚雷の直下爆発も、竜骨の強靭化や、装甲配置の見直しなどで致命傷にはなりえず、瞬く間に反撃を喰らう。

 

 

 

 

レーダー類はその特性上外に出すが、複数の予備回路が存在し、多少の被弾でミサイルが使えなくなることは無い。

 

 

 

また、仮にレーダー機能を喪失したとしても、各所に設けられたセンサー類を活用して、短距離ミサイルなどに限定されるものの、対空戦闘を継続することが可能となる。

 

 

 

 

まさに殴り込み前提の大和。

 

 

 

 

艦載機もネットワーク戦闘を前提としたF-35の改良型であるため、通信機器が破壊されない限り、レーダー類が機能しなくても、データリンクで対空戦闘を継続可能である。

 

 

 

 

兵装も強力だ。

 

 

 

 

51cm三連装砲は、自動装填装置と砲弾薬莢一体型の新型弾薬の採用により、毎分6発のレートをどの向きでも出せる。なんなら旋回中も行ける。

 

 

 

 

SHSや、ロケット推進アシスト砲弾、更には直射用の戦艦向けAPFSDSなんて言うキチガイものまでなんでも撃てるし、対空戦闘のために指向性電探探知式対空砲弾も撃てる。

 

 

 

155mm単装砲は酒匂にあったものを大和向けに再改造したものであり、装甲などもしっかり張られている一方で、旋回速度も速いため、取り回しは大変よく、戦艦以外ならどうとでもなる。

 

 

 

 

VLSは平河がMk41代替として考えていた対艦ミサイルをそのまま運用できるVLSで、ESSMなら6発積めるスグレモノ。

 

 

 

24連装RAM、76mmスーパーラピッドと57mm速射砲は割愛、一層の誘爆防止対策が取られている以外に第零護衛隊群のものと差は無い。

 

 

 

 

20mm給弾機付きファランクスは、給弾機能と冷却機能を持たせて大型化の引き換えに、長時間の連射が可能になっている。

 

 

 

デカイのはそこそこ問題だが、積むのは世界最大の戦艦の艦娘である大和、問題無い。

 

 

 

 

F35JBは特殊改造が施され、ZLTO方式の発艦に対応しており、ゼロ距離離陸を行える。

 

 

 

 

これは滞空時間を増やすための措置であり、ロケットは使い捨てである。

 

 

 

 

ところで……、スーパーセイバーですら最大離陸重量は15t程度なのに30t近い重量をゼロ距離離陸に成功させるロケットが簡単に使い捨てにできることについて、新海上自衛隊は明確な回答をしないこととしている。

 

 

 

 

尚、既に戦艦には不要とされる魚雷発射管だが、大和には魚雷迎撃のための魚雷が搭載され、命中コースの魚雷の迎撃に使う。

 

 

 

(尚、やたら硬いことで知られる深海棲艦の姫級潜水艦に対して核魚雷が検討されたが、通常対潜魚雷で対処可能として却下された)

 

 

 

ここまで大和改装にこだわる理由は、転生者一同が懸念していた沖縄特攻である。

 

 

 

400機以上の戦闘機と、6隻の戦艦、50隻以上の大小様々な艦艇に対応するには、これくらいでもまだ足りないと見ていた一部では大テクノロジアに留学転移していた真多と田城を主軸に、某有名アニメ同様に魔改造する計画すら持ち上がった。

 

 

 

 

さすがに非現実的として却下されたが、転生者達が最悪の事態を想定していたのは事実だろう。

 

 

 

 

 

転生者達の奮闘は続く。

 

 

 

 

 

 






物部咲


新自衛隊を通して、多元以外でまともに指揮を執って戦える人間で、多元なみの汎用性を見せる。モデルは無いが、物部咲をよく見てみると、物部▶︎者部、咲▶︎作で、間の部を抜いて逆さにすると作者……、つまるところ大和を救うために作者が送り込んだのである。なんでかって?、そりゃあ……ねぇ……





次回は二水戦の魔改造です




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第9話 第二水雷戦隊、魔改造開始!




新生活が始まって更新が………


とりあえず始めていきます。


 

 

 

 

 

雪風と時雨の百合百合しい1夜から少し経った佐世保鎮守府では、第二水雷戦隊と佐世保提督、大淀が集まっていた。

 

 

 

「諸君、我々はこの戦いの中で突破口を見出しつつある。呉に本拠地を置く新自衛隊と、第零護衛隊群により、前回のレイテでは、参加部隊の大半が無傷で帰ってきた」

 

 

 

提督は続ける。

 

 

 

「我々はこの勢いを逃すことなく戦いを次に進めていきたい。だが、深海棲艦はその物量を余すことなく活かしており、残念ながら今の段階での効果的な反攻作戦は難しく、補給路の維持が精一杯となっている」

 

 

 

この言葉を聞いて、全体に重苦しい雰囲気が漂うようになる部屋だが、ここで矢矧が口を開く

 

 

 

 

「だが、我々二水戦はここに健在だ、あまたの先代たち、神通、そして阿賀野姉が維持してきたこの第二水雷戦隊はこの先、より一層重要性が増してきている」

 

 

ここに提督が付け加える

 

 

「そして、新自衛隊もまた、この第二水雷戦隊に対して、新たな力を持たせ、この先の戦いを推し進めることにしたそうだ」

 

 

 

 

1人の男がスタスタと入ってくる

 

 

 

 

「新海上自衛隊、新航空自衛隊、佐世保出張所所長の平河結弦です。君たち第二水雷戦隊の大規模改装を担当します」

 

「第二水雷戦隊旗艦矢矧です」

 

 

 

両者敬礼を交わして平河が前に出る

 

 

 

「提督、ここからは私が」

 

「頼む」

 

 

 

 

そう言うと、平河は持ってきたプロジェクターを起動して、全員に改装内容を一から説明する。

 

 

 

 

「今回、皆さんが受けてもらう改装の大前提としてあるのは1人なら100、2人なら400、3人なら900というように、仲間が増えれば増えるほど、戦力を表す数字が指数関数的に上昇していくということです。つまり、個人的な技能と同じか、それ以上に協力することが求められています」

 

 

 

 

 

共同交戦能力と書かれたスライドを流す。

 

 

 

「これまで、防空射撃は、直接捕捉するか、電探で直接補足しない限り当てられず、例えば、他者が補足した機体を落とすのは至難の業でした」

 

 

 

と、説明し平河が続ける

 

 

 

「ですが、今回装備することとなる共同交戦能力によって、その常識が覆ります」

 

 

 

そう言いながらスライドを動かす

 

 

 

「例えば、甲に向かう敵を乙が補足して、丙が迎撃するという流れが簡単に出来るのです」

 

 

 

甲と書かれた人型のモデルに向かう深海棲艦艦載機を乙がレーダーを模した図形で覆い、丙がミサイルを放って撃墜する。

 

 

 

 

「今回、改装の内容として、第二水雷戦隊を三組に分けます」

 

 

 

 

・矢矧

 

・涼月、冬月

 

・それ以外

 

 

 

「それぞれ微妙な差があるので、これらを短期間で習得し、来る作戦に備えてもらいます」

 

「との事だ、皆、しっかりやるように」

 

 

 

 

「「「「はい!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、早速改装に入っていく

 

 

 

 

とはいえ、矢矧に関しては第零護衛隊群とさして変わる訳では無いので、割愛。冬月と涼月はイージスシステム搭載以外は変更がないのでこちらも割愛する。よって、前回不穏な空気を漂わせることとなったそのほかの艦娘達の魔改造を開始することとなる。

 

 

 

 

「まぁ……、こんなところで僕のADD計画が拾われるとは誰も想像つかないよなぁ………」

 

 

 

 

ADD計画(advanced defense destroyer:発展型護衛艦計画)とは、平河が元の世界にいた頃、全護衛艦のイージス艦化(もがみ型等は除く)を狙った護衛艦建造計画で、その実態は………

 

 

 

 

・あきづき型、あさひ型のFCSの発展型で、防空能力などを向上させたFCS-4の搭載

 

・全誘導弾の国産化

 

・もがみ型のデータを活用した省人力化と、ステルス性の向上

 

 

 

 

 

であり、正しく和製イージス艦と言ってもいいレベルまで仕立てあげようとしていた。

 

 

 

 

まぁ、これは後に対空ミサイルや、イージス艦が売れなくなることを警戒したアメリカによって潰されることとなったんだが、今回は割愛。

 

 

 

んでだ、とりあえずステルス性はいらないので、その辺省きつつ、開発を行うこととした平河。

 

 

 

 

「対潜ロケットは、07式として、近距離防空のためのミサイルは……03式改良型、中距離以上が必要かはわからないけど……、99式改良型も載せる必要があるよね……」

 

 

 

 

また、前回の戦いで12式改良型SSMが効かなかったことも影響した。

 

 

 

「VLSを増やすからそのまま12式改良型も載せるとしても、貫徹させるのが魚雷だけだとキツい、やっぱりあれも必要だな……」

 

 

 

 

そう言うと、平河は無線担当を呼んで多元を呼んでもらう。

 

 

 

「提督、ASM-3の艦載版が必要です」

 

「わかった、各艦艇に何発必要だ?」

 

「急所直撃でも2発なので、8発は必要です」

 

「載せられるか?」

 

「行けます。大きめの発射筒を作れば後はそんなに大変なことではありません」

 

「わかった、任せる」

 

 

 

 

これにて武装は決まった。

 

 

 

 

が、もう1つ必要なことがある。

 

 

 

 

「艦載機、載せないと不味いな……、でもヘリだとまあまあ危険だからな……、この際一気に更新してもらうとして………、あ、提督、S/VTOLの汎用機の開発をお願いします」

 

「わかった、ちょうど第零護衛隊群向けに開発していたものがあるから、そいつを積んでくれ」

 

「わかりました。後は大丈夫そうですね」

 

「頼む、こっちは首都防空のために機種転換しやすい機体を頼まれてる、F-5辺りなのか………」

 

「そこは私は門外漢なので提督の方で……」

 

「そうだな、そっちは任せたぞ」

 

 

 

 

 

というわけで、材料は手に入った

 

 

 

 

 

「さて、魔改造開始!」

 

 

 

 

 

 

 

出来上がったものがこちら

 

 

 

機関 COGAG

主砲 5inch単装砲改×1

副砲 57mm速射砲×2

CIWS 複合CIWS×2

セル数 96セル

対艦ミサイル発射筒 8本

魚雷発射管 4門×2

対潜弾投射機 4門×2

その他 12.7mmRWS×4基

艦載機 垂直/短距離離陸機×1

 

 

 

 

主砲と副砲について置いておくとして、今回搭載する複合CIWSについては、ゴールキーパーの代わりにファランクスに切り替え、給弾機能も盛り込むことで長時間の連射を可能にした。

 

 

 

VLSからは12式改良型SSM、03式改良型SAM、99式改良型SAM、07式ロケットを搭載し、発射することとなる。

 

 

 

 

12式改良型SSMについては、威力不足が指摘されたとはいえ、その他の艦艇や長射程性能は間違いないため、そのまま搭載されることとなった。

 

 

 

 

 

そして、対装甲目標に対する攻撃手段として考えられていたのがASM-3の艦艇運用型である。

 

 

 

 

こちらは時間に余裕が無い為、対艦ミサイル発射筒を用意して、その中に搭載することにした。

 

 

 

 

 

(尚、12式改良型SSMや、17式対艦ミサイルを専用VLSから発射する第零護衛隊群は対艦ミサイル専用VLSに入るようにASM-3を改良した。)

 

 

 

 

第二水雷戦隊と第零護衛隊群で対応が違うが、第零護衛隊群が使用する対艦ミサイル専用VLSは、最悪の場合戦術核を搭載した大型対艦ミサイルの運用が視野に入れられていたということもありやむを得ない事情だった。

 

 

 

 

 

 

この他、新たに用意されたのが、魚雷等に対応するために投射型静止式ジャマーや、ボフォースロケットランチャーを組み合わせつつ新規開発した対潜弾投射機である。

 

 

 

 

魚雷迎撃のための対潜弾や、撹乱に用いるための音響兵器などを投射できるこの装備は、平河が危惧していた時雨のこの後に起こる悲劇を回避するためだった。

 

 

 

 

 

[時雨はこの後、桜花を積んだ龍鳳の護衛の最中に潜水艦によって轟沈している]

 

 

 

 

この史実の流れを回避するべく、平河は潜水艦の排除を念頭に置いた装備の拡充を行っており、特に海防艦への魔改造実施を急いで行っていた。

 

 

 

 

これにより、御蔵、屋代、四号海防艦、倉橋他、択捉、対馬、日振、大東、第三〇号海防艦等の海防艦の対潜装備が現代艦艇と同じものとなり、補給事情は大きく改善。

 

 

 

深海棲艦はこれ以上の犠牲を抑えるために本土近海より潜水艦を撤収、フィリピン奪取を主眼に置くようになった。

 

 

 

 

これを受けた佐世保鎮守府は龍鳳と第二水雷戦隊に加えて、佐世保出張所に陸軍支援のための装備の輸送を指示

 

 

 

これを受けて、佐世保で改装を受けていた龍鳳には艦載機の代わりに新自衛隊の協力で開発に成功した新型戦闘機「雷雲」(一撃離脱戦法前提のマルチロール戦闘機、日本版コルセアのようなもの)とその整備機材を搭載して輸送することとなった。

 

 

 

 

 

 

 

その護衛には浜風、磯風、時雨、雪風を当てることとして、佐世保出張所からは対潜哨戒機を出すこととした。

 

 

 

 

(尚、雪風は本人の体調不良が艤装にも影響し、改装途中で病院送りとなった)

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

出撃の日

 

 

 

 

「磯風、出撃する」

 

「浜風、出撃します」

 

「時雨、出るよ」

 

「龍鳳、出撃します」

 

 

 

 

艦隊は輪形陣を採り、進軍する

 

 

 

 

 

「対潜哨戒機、発艦」

 

 

 

運搬する機体を載せた龍鳳を除く3人が対潜哨戒機としてMV-100 チョウゲンボウ、佐世保鎮守府呼称零式垂直離着陸哨戒機が発艦する。

 

 

 

 

 

 

MV-100

ジェットエンジンのオスプレイみたいな感じ、モデルはCODモバイルのバトルロワイヤルに出てくる航空機、対潜、対空、対艦、索敵、早期警戒、あらゆる任務をこなす多目的機

 

 

 

 

 

 

「進路前方に雨雲」

 

 

 

 

穏やかだった海域はやがて荒れだし、黒い雲が空を覆うと、やがてポツポツと降り始めた。

 

 

 

 

「来る……、各艦対潜警戒を厳となせ!」

 

「浜風、了解!」

 

「時雨、了解!」

 

 

 

 

 

 

対潜哨戒機も磁気探知機などを駆使しながら、敵潜水艦を探す………

 

 

 

 

 

<<磁気探知機に反応あり!、潜水艦です!>>

 

「見つけた!?」

 

 

 

 

時雨搭載の対潜哨戒機からの報告を受けた時雨

 

 

 

 

「時雨、どうした?」

 

「僕の対潜哨戒機が潜水艦を見つけたって!」

 

「やはり来たか………、対潜戦闘用意!」

 

「浜風艦首聴音機にも感あり!、潜水艦です、注水音探知!」

 

「回避行動!、時雨は龍鳳の護衛、浜風は私と一緒に潜水艦の排除だ!、浜風、佐世保出張所と迎えの海防艦艦隊は?」

 

「対潜哨戒機部隊には既に情報を共有済み、付近を飛行中とのことで、20分以内には本海域に到達する見込み!、海防艦艦隊も向かっています!」

 

「わかった、垂直発射型対潜墳進弾発射用意!」

 

<<情報転送します!>>

 

「こちら浜風、座標情報入力完了」

 

「良し、行くぞ!」

 

「「垂直発射型対潜墳進弾、撃てぇ!」」

 

 

 

 

 

 

現在までに捉えた潜水艦は全部で4隻、浜風、磯風からそれぞれ2発ずつ発射され、上空でパラシュートを開いて着水、予め転送したデータを元に潜水艦に襲いかかる

 

 

 

 

 

 

ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!

 

 

 

 

 

 

 

水中から断末魔の叫びが聞こえてくる。

 

 

 

 

 

「敵潜水艦撃沈!」

 

「良し、このままいくぞ、新しく見つけた潜水艦は哨戒機が攻撃しろ!」

 

<<了解、対潜魚雷投下!>>

 

 

 

 

翼下パイロンから対潜魚雷が切り離され、着水すると共に新たに発見した潜水艦に襲いかかる。

 

 

 

 

 

ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!

 

 

 

 

 

<<敵潜水艦撃沈!>>

 

 

 

 

「それにしても数が多い……、浜風、まだ対潜兵器は残っているな?」

 

「ええ、垂直発射装置にも、魚雷発射管にも、対潜弾投射機にもまだまだあります」

 

「良し、このままこちらに敵を………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<<こちら時雨!、潜水艦多数発見!>>

 

 

 

 

 

 

順調なはずの対潜戦闘に突然ヒビが入る

 

 

 

 

「何!、こっちは囮か!」

 

「どうします磯風、今から向かわないと!」

 

「いや、このまま向かっても混乱するだけだ、哨戒機を先に向かわせて索敵の目を増やす。そのうえで我々も対潜墳進弾の射程まで移動して援護、佐世保出張所と海防艦達は時雨の方へ向かわせるように連絡するんだ!」

 

「了解!」

 

 

 

 

 

 

次回「異界で開花する海上自衛隊魂」

 

 

 

 

 

 







次回はなるべく早く投稿できるようにします


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第10話 異世界で開花する海上自衛隊魂




さて、前回と間が空いてしまいましたが、今回は時雨の対潜戦闘と、その後の鎮守府の対応です。








 

 

 

浜風達と別れた時雨達……

 

 

 

「時雨……、大丈夫なのかな?」

 

「大丈夫だよ、龍鳳、僕が必ず守るから」

 

 

 

そう言いつつも、意識はソナーに向けていた。

 

 

(こっちに来ないとも限らない、そもそもあの攻撃が僕たちと磯風達を分離するための囮の可能性だってある)

 

 

幾多の戦場をくぐり抜け、呉の雪風とも並ぶ幸運艦と呼ばれた佐世保の時雨。

 

 

それゆえの勘のようなものが彼女の脳内に警告を送っていた。

 

 

不意に、何回も聞いたことのある音がする。

 

 

(注水音……、やっぱり!)

 

 

「潜水艦!、龍鳳、最大戦速!」

 

「えっ!?、そんな……、浜風達のところだけじゃなかったの!?」

 

「大丈夫、必ず守るから!、対潜戦闘、諸元入力はじめ!」

 

 

 

VLSが開き、発射体制を整える。

 

 

「データ入力完了、いつでもいけます!」

 

「撃てぇ!」

 

 

 

妖精からの報告を受け取って、すぐさま発射命令を出す時雨。

 

 

彼女の持つ艤装のVLSから対潜ロケットが発射され、目標付近で着水、潜水艦に直撃する。

 

 

 

<<哨戒機より時雨、魚雷が来ます!>>

 

 

見れば、放射状に魚雷が来る。

 

 

どうやら他のやつも居たらしい。

 

 

(やっぱりこっちが本命か!)

 

 

「龍鳳面舵!、魚雷同士の隙間に入って!」

 

「わかった!」

 

「対潜弾発射用意!」

 

<<こちら哨戒機、目標を補足!>>

 

「そっちは任せた!」

 

<<了解、攻撃開始!>>

 

哨戒機から対潜爆弾が投下され、潜水艦を撃沈する。

 

 

「やっぱり随分あっさりしてるなぁ……」

 

 

今までのソナーと爆雷だけの戦闘とは全く異なり、いともあっさりと済んでしまう戦闘に拍子抜けしてしまう時雨。

 

 

と、哨戒機が別の目標を発見したようだ、しかし遠い。

 

 

向こうの有効射程に入る前に叩ける。

 

 

「よし、これなら……」

 

「時雨!、右舷!、魚雷!」

 

「えっ!?」

 

「対潜弾投射機攻撃開始!」

 

 

 

時雨の指示を受けることなく、時雨の対潜弾妖精が攻撃を行う。

 

 

 

ソナー妖精は魚雷を探知しており、指定座標に向けて対潜弾が投下される。

 

 

 

 

「なんでそっちに来るのさ!」

 

 

 

まるでかつての記憶……、軍艦だった頃に沈む原因となった魚雷のコースそのまま向かってくる魚雷をなんとか迎撃しつつ、言葉を漏らす時雨。

 

 

 

「この近くの海水温が急激に変化していたみたいです!、捕捉するのが遅れました」

 

<<こちら哨戒機!、潜水艦は推定10隻以上!、こちらの装備だけでは殲滅不能!>>

 

<<なんとか対応して!、浜風、磯風、こっちに援護を!>>

 

<<そうしたいのは山々だが、こっちも新たな潜水艦が見つかった!>>

 

<<嘘っ……でしょ……>>

 

 

 

時雨達は知る由もないのだが、この時、あまりにも多くの被害を出しすぎた深海棲艦は、艦娘達が通ると見られていた航路に大量の潜水艦を配置し、待ち構えていた。

 

 

 

その数の暴力がウルフパックを複数発動できるほどの数となり、時雨たちに襲いかかってきた。

 

 

 

「左舷雷跡多数!、直撃コース複数!」

 

「回避して!、時雨!」

 

「対潜弾と主砲は迎撃急いで!」

 

 

 

 

幸い、機動力は上げてある上に、迎撃手段もあるので被弾には至っていないが、このまま続けば、こちらの弾が尽きてしまう。

 

 

 

「えっ!?、この雨の中で大型機!?、数複数!」

 

 

 

突然のレーダー妖精からの報告に驚く時雨。

 

 

 

「時雨、敵なの?、どっちなの?」

 

「わ、分からない……、こういう時ってどうすれば良かったんだっけ?」

 

 

<<た、確か敵味方識別装置があったはずなんで、それで敵か味方かわかるはず……>>

 

 

 

恐る恐る敵味方識別装置から送られてきた情報を元にレーダー上に映し出された三角マークの色は………

 

 

 

「緑……、って事は!?」

 

 

 

 

 

<<こちら新海上自衛隊佐世保出張所所属、対潜哨戒部隊一型対潜哨戒機1号機、これより龍鳳以下出撃部隊の援護に回る!>>

 

 

 

水色の塗装が施された4発機が次々と雨の中を飛んでくる。

 

 

「ソノブイ投下!」

 

 

潜水艦捜索用のソノブイが時雨の周りにばら撒かれる。

 

 

 

 

「潜水艦探知!」

 

「対潜魚雷、攻撃始め!」

 

 

続けて、P-1の爆弾槽から対潜魚雷が放たれ、周囲の潜水艦を一網打尽にしていく。

 

 

 

「海防艦隊、推参、御味方します!」

 

 

 

同時に、海防艦艦娘が現場海域に到着、対潜魚雷を撃ち込み、潜水艦の駆逐を行う。

 

 

 

海防艦が、発射し、着水した対潜魚雷の近くで大爆発が起こる

 

 

そのさまたるや、まるでダイ○マン

 

 

<<敵潜水艦多数撃沈、まだまだ殺るぞ!>>

 

<<対潜魚雷、追加投下!>>

 

 

P-1対潜哨戒機は、あちこちを飛び回り、次々に対潜魚雷を投下して、潜水艦を片っ端から沈めていく。

 

 

(間に合ったんだ……、良かった………)

 

 

そう思いながら、空を見ると、いつの間にか雨が止んでいた。

 

 

 

(やまない雨はない……、だね)

 

「ソナーに感あり!、恐らくこれが最後です!」

 

(残り一隻!、終わらせる!)

 

「短魚雷攻撃始め!」

 

 

ソナー妖精の言葉によって現実に引き戻された時雨は、そのまま短魚雷で残った潜水艦を殺る。

 

 

 

「敵潜水艦全ての撃沈を確認!」

 

<<こちら磯風、こっちも対処完了だ>>

 

 

 

 

危ない場面もあったが、時雨以下4名は、対潜哨戒機と海防艦からの支援を受けつつ何とか潜水艦との戦いを切り抜け、無事にフィリピンに到達することができた。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

数日後、呉鎮守府、新自衛隊司令部にて

 

「提督、どこに行くの?」

 

 

出かけようとする多元に酒匂が声をかける。

 

 

「ああ、佐世保の提督と呉の提督との会議だよ、少し空けるから留守番よろしくね」

 

「はーい」

 

 

 

オスプレイに乗り込んだ多元は佐世保に向かう。

 

 

 

 

佐世保鎮守府にて……

 

 

「では、龍鳳達は無事に着いたと」

 

「ああ、既に航空隊は、深海棲艦に対して熾烈な反撃を行い、友軍支援を行っているとのことだ。整備性も良いから評判はいい」

 

「これでフィリピン戦線はとりあえず安定……、資源の供給も順調に進むな、完部隊も無事帰還、資源は貯まるな」

 

「多元のところの士官が大陸の資源確保を進めたおかげで、ある程度資源に余裕が生まれた、それに大垣夜行のおかげで深海棲艦は日に日にフィリピンでの抵抗を弱めている」

 

「となれば今後はフィリピン戦線が主軸に?」

 

「いや、そうもいかない」

 

「やはりですか……」

 

 

 

呉、佐世保、新自衛隊の各司令官が合流して佐世保にて行われた作戦会議では、現状の戦線と、敵情の情報交換が行われていた。

 

 

 

「南西諸島に向けて深海棲艦が大規模な侵攻を計画中のようだ、既に海域の変色などの変化も起きてる」

 

「残存機動部隊を主力とした機動部隊に、上陸部隊や、水上打撃艦隊や補給部隊を伴った大規模な艦隊が大村などの偵察部隊の情報で明らかになっている」

 

 

 

その件については多元も大垣夜行組の1部の偵察によって把握していた

 

 

 

「我々の機動部隊は再建途上……、とはいえ相手はそれを待ってはくれない……」

 

 

 

厳密には、鳳翔以下の新海上自衛隊メンバーによって構成された機動部隊があるのだが、どうみたってF-3が16機では常時滞空できる機体が足りないし、龍鳳もF-35Bを運用可能だが、こちらも数が居ない。

 

 

 

と、ここで何かを思いついた多元。

 

 

「成田提督(佐世保提督)、よろしいでしょうか?」

 

「どうした?」

 

「葛城を引き渡して欲しいです」

 

「葛城を?、改装する気か?」

 

「ええ、葛城が改装出来れば、こちらの空母は3隻、それも1隻は中型空母クラスまで戦力が引き上げられます。」

 

「艦載機は?」

 

「量産可能な機体を急ピッチで検討、量産体制に入らせようとしています」

 

「護衛艦は?」

 

「それに関しては呉鎮守府や、現在損傷中の艦娘の復旧によって賄う予定です」

 

「なるほど……、確かに新自衛隊ならできるな」

 

「それともうひとつ……」

 

「どうした?」

 

「佐世保にて改装中、療養中の武蔵についてなのですが、改装がまもなく終了するため、終了後直ちに彼女を横須賀に回して欲しいです」

 

「例の誘導弾運用特化構想に基づく修理兼大規模改装対象艦娘だったな、理由を聞かせてもらおうか」

 

 

 

ここで一旦間を置いた多元。前世……、というより別世界の事象を知っているかもしれない彼らには、必ずこのことを伝えなくてはならない。

 

 

 

「2ヶ月以内に、横須賀……、東京に大規模な空襲の可能性があると思われます」

 

 

 

それを聞いたその場にいる2人の提督が固まった。

 

 

 

勘のいい読者は察したかもしれないが、時雨轟沈は1945年1月24日、今回はそれを回避し、現在は2月に入る手前……

 

 

 

そう、忘れてはならぬ惨禍、東京大空襲である。

 

 

 

「万が一東京が空襲を受けた場合、その被害は甚大で、民間人に11万人以上の死者を生み出す恐れがあります」

 

「しかし……、それは横須賀鎮守府や、基地航空隊、陸軍が……」

 

「いえ、既に本土の防空については新自衛隊に任せるとの事となっています。それに、この時期から準備しても横須賀だけでは防ぎきれません。現在基地航空隊向けの航空隊パッケージと共に、帝都防衛の数的有利を持たせるため、軽量戦闘機の配備も進められていますが、侵入する爆撃機の数と、その護衛機を考えれば、防空担当艦の派遣を行うべきです。現に、我が新自衛隊からも航空部門から腰堀、船舶部門から田城、陸上部門から小玉を派遣して技術指導を行っています」

 

 

 

尚、防空担当艦となった武蔵は、主砲をほとんど撤去し(爆撃されなかったもののみ搭載)、VLSを満載し、レーダーを搭載したイージスシステム搭載艦のような運用を想定されている。

 

 

「そういえば、他の誘導弾運用特化艦娘についてはどうなっているんだ?」

 

「扶桑と山城については実戦配備がまもなく終了します。扶桑は海防艦の護衛の元、海上航路の対空監視任務を、山城は前線復帰した山雲や、朝雲と共に本土防空のための海上早期警戒艦隊を結成してもらいます」

 

「防空については呉鎮守府は新自衛隊に一任します。ですが、いずれにせよ機動部隊を再編するにしても、それまでの間南西諸島を放置する訳にもいかない」

 

「その通りだ、そこで我が佐世保鎮守府では、海上遊撃戦を行うことにしたい」

 

「海上遊撃戦……」

 

「多元、最上の再就役はまもなくだな?」

 

「はい、そちらの判断でいつでも編入可能です」

 

「新自衛隊から供与された新兵器(対艦ミサイルのこと)を用いた大規模な飽和攻撃を行い、後方の補給部隊を一網打尽にする。そしてこれを夜間に行う」

 

「せめて瑞鶴もこちらに回ってくれば……」

 

「それは無理だろう、あの戦いで囮を務めた機動部隊の空母は全て帝都並びに北方方面にまわされているからな」

 

「瑞鳳は護衛空母になりましたね」

 

 

つまり、もう新自衛隊が改装可能な空母は葛城以外無いのだ。

 

 

「とにかくだ、新自衛隊には葛城を回す。空母機動部隊が出来上がれば、戦況に間違いなく変化をもたらすことになる。この難局を乗り切るしかない」

 

「佐世保、呉の艦娘はなるべく早く改装を終わらせるよう、士官一同奮闘します。お2人にはそのための資源確保をお願いします」

 

 

 

ここで、原作(運命)とは海上遊撃戦の目的が少し変わった。

 

 

 

このままいけば、綱渡りの海上遊撃戦を行うことになり、やがて絶望的な艦隊決戦を挑むことになるが、新自衛隊の干渉によって、単なる侵攻部隊の弱体化を目指した海上遊撃戦から、空母機動部隊の完成までの時間稼ぎという明確な時間が設定されたのだ。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

佐世保鎮守府にて

 

 

「我が第二水雷戦隊は最上を加えて海上遊撃戦を行う」

 

「我が方の機動部隊は、現在新海上自衛隊によって編成が進んではいるが、それを敵は待ってくれない。呉の大和以下の決戦部隊はすぐにでも動けるよう編成が進められてはいるが、その間に敵を弱体化させ、足止めさせるために海上遊撃戦を展開し、補給部隊へ一撃を加える」

 

「最上、航空隊の状況は?」

 

「新海上自衛隊佐世保出張所の所長、平河結弦所長から直々に改装してもらって色々変わったよ、平行しておやっさんも技術を習得したからこれで後方支援は万端だね」

 

 

 

最上の現在の戦力が以下の通り

 

 

・主砲は装填速度を高めた203mm連装自動砲を二門

・航空艤装はアングルド・デッキ化し、S/VTOL機の運用を強化

・対空戦闘のためにMk41 VLSを装備、対空戦闘能力はおおよそ時雨並に

・F-35Bを6機搭載出来るが、対潜哨戒機を載せるため4機として、対潜哨戒機を2機に増やす

・対艦攻撃能力として飛行甲板右側に対艦ミサイル発射器、そのほか魚雷発射管を装備

・CIWS、魚雷迎撃用装備の保有

 

 

「わかった、皆、心して戦って欲しい。艦隊抜錨!、これより矢矧以下第二水雷戦隊は夜間を突いて敵深海棲艦に海上遊撃戦を行う。目標敵補給部隊!」

 

 

ビシッ!

 

 

一同綺麗な敬礼をした第二水雷戦隊。

 

 

敵は補給部隊、闇に乗じて敵を討て。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







さて、次回は原作だと端折られてしまった空襲とか海上遊撃戦です。


ここはチートの見せ所となるので頑張りたいと思います



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第11話 海上遊撃戦と極超音速兵器






思ったより空襲パートが大きくなったので、海上遊撃戦と空襲は分けます。







 

 

 

「第二水雷戦隊、抜錨!」

 

 

矢矧の言葉で進路を敵補給部隊に向ける第二水雷戦隊。

 

 

「直掩機は敵艦隊に近づくまで上げられないね、気づかれないように接近したいね」

 

「既に本土の制空権については我が方が握っている。レイテ前の本土事情とは違い、対潜哨戒についても佐世保、呉、新田原、鹿屋の4箇所から哨戒機を飛ばしていて、南西方面については本州近海に限っては民間船単体でも航行可能レベルまで安全性は担保されたらしい」

 

「ほんと、新自衛隊様様だよねぇ、まさか瑞雲より強くて僕みたいな甲板で運用出来る機体が現れるとは思わなかったよ」

 

「その代わり武装は少なくなるらしいわね」

 

「航続距離が現実的な値じゃ無くなるかららしいね。まぁ、いちいちクレーンで回収するよりは楽だね」

 

「それはそうと、呉鎮守府も海上遊撃戦を展開することになるなんて思わなかったね」

 

 

最上と矢矧の会話に時雨も割って入る。

 

 

「北上と青葉を軸とした高速雷撃艦隊ね、雷撃とはいえ実際には誘導弾を使っているらしいけど」

 

「駆逐艦だろうが巡洋艦だろうが、一発で仕留められるあんなものをたくさん撃てるなんて恐ろしいね………」

 

 

 

 

北上への改装は以下の通り

 

 

・基本は酒匂に準ずる

・対艦ミサイル用のVLSを倍に増やす

 

 

青葉へも似たような改装が行われたことにより、北上と青葉は曙などとともに高速雷撃艦隊を結成。第二水雷戦隊と共に深海棲艦南西諸島侵攻部隊の後方への攻撃を担当することとなる。

 

 

 

「新自衛隊から報告!、補給部隊は艦隊より南方100km地点に存在!諸元入力完了!」

 

「やるぞ!、第二水雷戦隊、艦対艦誘導弾一斉射!」

 

 

 

第二水雷戦隊所属の艦娘達が一斉に構え、同時に艤装のVLSが開かれる。

 

 

 

「撃てぇ!」

 

 

 

対艦ミサイルが次々と飛翔し始める。

 

 

12式を改良しながら作られた新型対艦ミサイルは、西側標準のVLSとなっているMk41からも発射出来るように改良されており、発射後は翼を広げて巡航することが出来る。転生者の1部からは和製トマホークとも言われているが、ステルス性が高い上に、トマホークよりも巡航速度が高いため、上位互換である。

 

 

 

「全艦砲撃戦用意!、こちらの射程を活かしてアウトレンジを行う。右砲戦!」

 

「艦載機発艦!」

 

 

最上から対地ミサイル(対艦ミサイルは重すぎて積めなかった)を搭載したF-35Bが飛び立つ。艦隊は警戒陣から単縦陣に切り替え右舷に主砲を向ける。

 

 

距離、30km。

 

 

5inch砲の射程ギリギリだが、精鋭たる第二水雷戦隊は驚異の命中精度で深海棲艦を撃沈していく。

 

 

 

「砲撃止め!、撤退する。最上航空隊は足止めを行うように」

 

「了解!、航空隊、攻撃開始!」

 

 

 

対地ミサイルを抱えたF-35Bが撤退する第二水雷戦隊援護のために追っ手の駆逐艦を撃沈する。

 

 

 

「本土航空隊の即時援護可能圏内までの撤収成功を確認する符牒を受信!」

 

「作戦通りね、被弾も無し、弾薬と燃料を補給したらすぐに出撃ね……」

 

「矢矧……、いつまで続けるの?」

 

「そうね……、呉にいる新自衛隊による空母機動部隊の編成が終わる頃には……ってところかしら」

 

「空母機動部隊!?、瑞鶴を呼ぶの?」

 

「いえ、彼女は帝都防衛のための切り札。こちらに回せる余裕はないわ」

 

「だったら誰を?」

 

「佐世保にいる葛城が今度の改装対象よ、負傷した艦娘の前線復帰、これと鳳翔さんを組み合わせれば機動部隊が戻って来るということよ」

 

「そうなんだ……」

 

「艦影、2時の方向、友軍だ」

 

 

 

最上の報告で一旦終わった会話。

 

 

見ると、山城と満潮、山風の所に北上と青葉、曙等がいる。

 

 

 

「山城!!」

 

「あら、時雨、随分と元気そうね、そっちは作戦から戻ってきたところ?」

 

「うん!、山城は?」

 

「今、この海域のデータを北上達に渡すついでに補給を受けていたの、全く呉の新自衛隊のあの提督、人使いが荒いったらありゃしない」

 

「山城??、主砲は?」

 

「下ろしたわ、もう私は前線に出ても的になるだけよ」

 

「そんな事無いよ!」

 

「違うわ、私は別の手段でみんなを護るのよ」

 

 

 

そう言って、山城はVLSを見せる。

 

 

 

「凄い……、僕たちのよりずっと多い」

 

「姉様も持ってるわ、でもあの呉の新自衛隊の提督が……」

 

 

 

またも愚痴を言う山城。

 

 

 

「まあ、あんたもしっかりやんなさい。本土に向かう敵機はこの私からは逃れられないでしょうからね」

 

「うん、山城も気をつけて」

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

同日、北海道、現旭川駐屯地付近にて

 

 

「しかしまぁ……、こんな代物をこの世界の、この時代で使うとはねぇ……」

 

「深海棲艦の本拠地ってのがどうやらハワイだって軌道往還機で発覚したからな、奴らの本拠地や、後方地帯を破壊し尽くすことで、一気にケリをつけるって考えさ」

 

 

軌道往還機は、アメリカのベンチャースターのような見た目をしており、軌道爆撃や、高高度偵察に用いられる。

 

 

開発者は波動エンジンすら作れるポテンシャルを持つ真多ではなく、多元である

 

 

「極超音速滑空弾利用火力投射精密攻撃システム……、正式名称45式地対地極超音速滑空弾……、よくこんな短期間で開発出来ましたね」

 

「小玉さんと……、あと黒騎さんだっけ?、そういうの得意な人」

 

「黒騎魈、防衛装備庁で極超音速兵器の研究開発、その効果的な戦術の研究をやっていた人だね、他にもなんか色々やってたらしいよ、メーザー兵器とか、冷凍兵器とか」

 

「うーんこのゲテモノ感……」

 

「じゃなきゃ提督に誘われて新型機搭載予定のミサイル開発のために出向してこないよ」

 

「ちなみにこの中の弾頭って何ですか?」

 

「対深海棲艦細胞停止薬、極超音速兵器で通常型は威力だけで死に至るけど、それ以外……、つまるところ陸上型とか普通じゃないやつ……、まあ鬼級姫級だね、そいつらには体の奥深くまで食い込んだ弾丸が、体内でバラバラになることでばら撒かれ、生命維持能力を完全に破壊することが出来る。深海棲艦が生物の構造を持つが故の弱点を突いた形だよ、この世界の技術では当然再現不可能、医療系の連中と、富嶽による解析、真多くんのアドバイスで完成した代物だからね、元の世界でもかなり厳しいんじゃないかな?」

 

 

 

(俺の作品大概のやべぇ兵器に真多くんの影)

 

 

 

「まぁ、これをここ旭川と、新田原、あと呉にも長射程兵器があるからね」

 

「深海棲艦からしたら恐怖でしょうね」

 

「そういうこった、そろそろおっぱじめるぞ」

 

 

 

重装輪でも無ければ運べないような大型の機材が直立し、極超音速滑空弾の発射体制に入る。

 

 

 

「極超音速滑空弾、発射!!」

 

 

 

上部の蓋が開き、巨大なブースターの付いた極超音速滑空弾が発射される。

 

 

 

本来の射程なら3000km程度なので全く足りてないのだが、転生者の奮闘によって射程を7000kmまで伸ばすことに成功、実態は最早ICBMだ。

 

 

 

 

一方その頃、呉にて

 

 

「物部さん、これってなんですか?」

 

「ああ、これ?、機動式極超音速地対地巡航誘導弾だよ、発射台のモデルはスカッド」

 

「スカッ??、あっ、ラムネ飲みます?」

 

「うん?、ああ、飲む飲む!」

 

 

瓶を受け取る物部

 

 

「そうそう、こういうのはスカッと爽やか……って違う!!、そっちじゃない!!」

 

 

これがノリツッコミである。

 

 

 

「あー、でもこの子達湾岸戦争知らないもんね……」

 

 

てめぇもリアルタイムだと知らねぇだろ(by転生者一同)

 

 

「撃ったら気持ちいいとかそういう次元じゃねぇーぞこれ!、街一つ吹っ飛ぶ代物だからなぁ!、えっ?、更地になってスッキリ??、やかましい!」

 

「物部さん??」

 

 

さすがにいくら推しの前だからってテンパっているとはいえいつまでもやるのは醜いから止めろ

 

 

「ま、とりあえずだ、フィリピンにいる深海棲艦共を爆砕する必要があるからな、攻撃開始」

 

 

ボタンを押す。

 

 

おびただしい煙を放出しながら、ミサイルはフィリピンに向けて飛翔して行った。

 

 

 

 

この後、新田原からも攻撃が開始され、南西方面……、マリアナ等の地域にも長射程兵器が降り注ぎ、対深海棲艦戦闘が集結した1945年8月15日までに推定1万発以上が放たれた。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

それから数日後

 

 

呉鎮守府内、新自衛隊地下司令部にて

 

 

「で、こっちからの攻撃は順調だと」

 

「ええ、我々の誘導兵器による攻撃戦果は軌道往還機によって確認されていますが、最も攻撃の激しいハワイでは、既に多数の深海棲艦が絶命しており、残存勢力はハワイを捨てて南下しています」

 

「アリューシャン列島とかにいる奴らは?」

 

「ハワイ陥落後、旭川の部隊はそっちの攻撃に回っています。既に政府は米国との連絡回路を確保出来たとか」

 

「ま、奴らからすればいきなり空からマッハ8程度の兵器が降ってきて、当たれば死ぬからな、逃げ惑うことも無理はねぇな」

 

「残された連中がゲリラ化する恐れはないんでしょうか?」

 

「それもないな、奴らが海から来たとはいえ、組織的な反抗をするには土地が必要だ、いわゆるはぐれの連中だけだと長くは持たない」

 

「太平洋はただでさえ島が少ない、限られていますからね」

 

「太平洋諸島ならフィリピンとかに部隊移動させれば済む上、米国も温存していた艦娘で反抗を始めてるからな、まぁ核投下もやる気って話もあるらしいが……」

 

「せっかく追っ払っても汚染された海が残るってのは勘弁ですよ」

 

「そりゃそうだ」

 

 

 

まぁ、先ずは目の前の敵を片付けることさ、と多元は言う。

 

 

 

「大垣夜行は?」

 

「現在は12式を積んでフィリピンの援護です」

 

「フィリピンは何時取れる?、出来ませんでは良心がない……、とは言わんが、さすがに目安が欲しい」

 

「既に組織的反抗は終わったとの事、やはり組織的反抗を打ち砕いたのは長射程兵器で、姫級にはかなり致命的だったそうです」

 

「じゃあ、物部に撃たせてるやつは……」

 

「対艦ミサイルに切り替えて鹿屋行きですか?」

 

「そうだな」

 

 

そういえば……、と多元は思い出したように言い出す

 

 

「例の航空隊、どうなった?」

 

「防空戦闘機計画と戦術打撃航空機計画ですか?、両方とも配備完了です」

 

「名前は?」

 

「防空戦闘機が<蒼隼>、戦術打撃航空機が<宙虎>となりました」

 

「空母機動部隊の編成は?」

 

「最終的に鳳翔と葛城の2人を中核とします」

 

「よし、それでいい、こっちが持てる唯一の機動部隊だ、これで坊ノ岬沖海戦の筋書きは大きく変わる。この話を急いで呉と佐世保に伝える。時間が無い。来月には東京大空襲と呉空襲がある」

 

 

 

現在2月15日である。

 

 

 

空襲まであと一月程度……

 

 

「腰堀からなにか連絡は?」

 

「東京の各種学校の卒業式をずらす、或いは疎開先で行わせることを政府と交渉したそうです」

 

「で、結果は?」

 

「疎開先で行うことになりました」

 

「よし、それでいい、あの時も卒業式だからって戻ってきた子供たちがあの惨禍に巻き込まれていたからな」

 

 

 

東京大空襲は時期的にも最悪のタイミングだった。

 

 

子供たち……、特に卒業を控えた小学生等が巻き込まれ、多数の被害を出したのだ。

 

 

 

「絶対に阻止してみせる」

 

 

 

転生者たちの意地が光る。

 

 

 

 







次回、本土大空襲


ネタが一気に湧いてでたのでこの作品は今月中に完結する予定です。


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第12話 本土大空襲





さて、本土防空戦1945(ver1.14)

開幕です。

なんか混ざりますが、まぁ、問題無いです。











 

 

 

1945年3月10日、東京

 

 

 

「レーダーに感!、敵爆撃機と見られる大編隊が本土に向け接近中!」

 

「対空戦闘!、迎撃機は直ちに出撃せよ!」

 

「東京湾待機中の艦艇は対空戦闘用意!、対空陣地要員は配置につけ!」

 

 

 

史実の東京大空襲同様に、深海棲艦の爆撃機編隊が東京めがけ飛んでくる。

 

 

 

迎え撃つは、新自衛隊より基地航空隊パッケージとして引き渡されたMig-29や、数的優位を取るために大量生産されたF-5E

 

 

さらに、新型機として、新自衛隊からも増援が来ていた。

 

 

「宙隼隊、発進!」

 

 

双発デルタ翼、単垂直尾翼で翼付け根に大口径機関砲を取り付け、エアインテークがF-107のように機体上部に付いた軽量戦闘機が離陸する。

 

 

2次元ノズルの付いた機体は瞬く間に上昇を終え、防空隊として待機する。

 

 

 

05式防空噴式戦闘機「宙隼」

 

転生者によって開発された戦闘機で、機関砲を多数搭載するかつてのレシプロ機のような設計思想と、高機動性を両立させた新型機。ミサイルと機関砲で爆撃機だけでなく接近する艦艇への攻撃も行う。

 

 

 

<<機種転換終わって早々の出撃だが、一機でも見逃せば東京が火の海になる。必ず叩き落とせ!>>

 

<<了解!、でも今回は宙虎は来ないんですね>>

 

<<あいつは爆撃機というより艦隊攻撃の方が向いてるからな、一足先に鹿屋に向かったらしい>>

 

<<俺達もこれが終わったら鹿屋ですか、忙しいですね>>

 

<<ぼやくな、まともに空母が残っていない以上、俺達基地航空隊が最後の切り札なんだからな>>

 

<<宙虎も攻撃機型作られてますしね>>

 

<<そういうこった、味方も上がってきたぞ>>

 

 

 

現在の百里基地に所属していた宙隼、横田基地に居たMig-29、厚木から飛んできたF-5Eの合計64機が編隊を組んで東京湾上空で待機する。

 

 

 

 

「対空戦闘!、この武蔵の力を見せてやる!」

 

「中SAM、短SAM、87、バルカン砲発射用意良し!」

 

「敵編隊の詳細を確認!、爆撃機325機!、護衛機含め400機!」

 

「対空戦闘、航空隊は直ちに迎撃せよ!」

 

 

 

陸上、海上の部隊も配置完了したところで、航空隊による第1撃が行われる。

 

 

 

<<中距離ミサイルは護衛機を狙え、ミサイル第1斉射、始め!>>

 

<<了解、全機ミサイル発射!>>

 

 

Mig-29、05式からそれぞれ64発の中距離ミサイルが放たれる。

 

 

マッハ4で迫り来るミサイルに、レシプロ程度の速度の深海棲艦機は為す術なく落とされる。

 

 

<<護衛機64機撃墜!>>

 

<<そのまま護衛機を壊滅させろ、第2射から爆撃機への攻撃を許可する>>

 

<<了解、第2射、攻撃開始!>>

 

 

再び64発の中距離ミサイルが放たれ、護衛機を全滅させ爆撃機にも被害を与える。

 

 

<<護衛機全滅、こちらの中距離ミサイル発射完了>>

 

<<了解、近距離戦を許可する、ただし迎撃中、並び帰投中の東京湾侵入は厳禁とし、それより外側で迎撃せよ>>

 

<<了解した、全機接近戦に移行せよ、命ではなく敵を落とせ!>>

 

 

 

高度をされに上げて、爆撃機の遥か上方に位置取る迎撃隊。

 

 

 

<<全機ブレイク!、花火の中に突っ込むぞ!>>

 

 

 

ここまで出番の無かったF-5Eが奮って参加する近距離での迎撃戦。

 

 

搭載されたサイドワインダーと機関砲を駆使して爆撃機を喰らう。

 

 

タイガー(虎)の名前に相応しい獰猛っぷりは、深海棲艦の爆撃機に絶望と死を与える。

 

 

 

<<厚木の連中、派手にかましてやがるぜ>>

 

<<俺達も負けてられないな>>

 

 

Mig-29も30ミリ機関砲や、赤外線誘導式ミサイルなどで敵を屠り、爆撃機の数を減らす。

 

 

 

<<防空戦闘機の本領発揮だ!>>

 

<<俺たちに喧嘩を売ったことを後悔させてやる>>

 

 

大口径機関砲と通常の機銃による弾幕とミサイルを駆使した蒼隼の迎撃は効果的で、爆撃機はたちまち溶けていく。

 

 

だが、深海棲艦は数にものを言わせて強引に東京を目指す。

 

 

<<司令部より武蔵へ、攻撃開始、繰り返す、攻撃開始>>

 

<<任された、この武蔵の力、伊達では無いぞ!>>

 

 

 

 

武蔵に大量設置されたVLSが一斉に開き、VLSを発射する。

 

 

 

武蔵の体が煙で覆われる程の大量のミサイルを見て、中SAMの隊員達はこう言った

 

 

「こりゃ俺たちの出番ねぇな」

 

 

 

実際、出番は無かった。

 

 

 

<<爆撃機隊の全滅を確認!>>

 

 

数分後に発せられたこの無線に、各方面の隊員達は狂喜乱舞した。

 

 

別世界でミーティングハウス2号作戦とされ、東京大空襲で最も大きな被害を出したとされるこの空襲。

 

 

 

転生者達の技術により、この結末を見事に覆したのだ。

 

 

 

 

だが、深海棲艦の爆撃機が狙ったのは東京だけでは無かった。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

1945年3月19日、呉にて

 

 

「早期警戒管制機より入電!、<我、呉に向かう爆撃機編隊を確認する!、その数950!、尚、空母機動部隊も確認済み!」

 

「来たか……、向こうがミーティングハウス2号作戦なら、こっちは呉軍港空襲か!、しかしそれにしても数が多い!、これじゃまるで第2回目の方じゃないか!!、だがこっちも対応済みだ!、防空隊はどうなってる?」

 

「鳳翔航空隊並びに基地航空隊、葛城航空隊、呉鎮守府航空隊、並びに伊勢、日向から航空機が出ます!」

 

「よし、空中弾薬庫艦は上空待機済みだな?、艦隊に対空戦闘を下令、訓練中の大和や青葉、榛名も出るように伝えろ!」

 

 

 

多元の指示で妖精達や転生者が慌ただしく動く。

 

 

こちらは襲いかかる敵の数も多いが、発進する迎撃機もその分多く、

 

 

鳳翔航空隊F-3×16機

基地航空隊F-3×16機

葛城航空隊F/A18E×32機

呉鎮守府航空隊Mig-29×16機

伊勢航空隊Yak-141×16機

日向航空隊Yak-141×16機

空中弾薬庫艦×8機

合計120機

 

となる

 

 

 

 

 

仮想空間にて……

 

 

1人の超弩級戦艦の艦娘が演習を行っている。

 

 

「戦艦用装弾筒ちゅき……、あっ、物部さんすみません……噛んじゃいました……」

 

「あぁ、まぁ気にしないで、とりあえず手前からもう1回始めるよ。(嗚呼、可愛い……!!、やっぱり大和好き!!)」

 

 

なんか括弧内ちょっと色々漏れているが、まあお察しの通り大和が仮想空間を利用して演習中だった。

 

 

と、ここで無線を聞く物部。

 

 

「ん?、なんだって!?、こうしちゃおれん、大和、演習は中止だ!、深海棲艦の大編隊が確認された。すぐに対空戦闘に入れ」

 

「はい!」

 

 

大和や、他で演習していた榛名、青葉なども引き連れ、急いで出撃させる。

 

 

「テッパチどこ行った!?」

 

「おい物部!、こんなところでしくじるなよ!」

 

「当たり前だろ!、まだこちらとら色々やり残したことがあるんだからよ!」

 

「じゃあさっさとこれ付けて地下司令部に行け!」

 

 

他の転生者にドヤされながら物部()も地下司令部に行く。

 

 

「演習中の艦娘の展開も完了!」

 

「ご苦労、艦娘の方の指揮は任せた」

 

「了解」

 

 

 

既にスクリーンにはこちらへ向かう深海棲艦とこちらの迎撃機の様子がレーダーにアップされている。

 

 

 

「司令部より航空部隊へ、攻撃を許可」

 

<<了解、攻撃を開始する>>

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

呉鎮守府上空、空中弾薬庫艦

 

 

 

「早期警戒管制機からのデータ入力完了、ミサイル全弾発射!」

 

 

 

P-1を超が付くほど魔改造した空中弾薬庫艦が攻撃を開始する。

 

 

パイロンから、爆弾槽からミサイルが続々と空対空ミサイル落とされ、飛翔する。

 

 

 

<<こっちも攻撃開始だ!>>

 

<<おう!、数的優位が戦力の決定的要素ではないということを思い知らせてやる>>

 

<<やって見せろよ!、ライノ!>>

 

<<なんとでもなるはずだ!!>>

 

<<第4世代だと!?>>

 

<<日向航空隊、行きます!>>

 

 

 

こちらも中射程ミサイルを持つ戦闘機からいっせいにミサイルが発射される。

 

 

 

なんかモビルスーツに乗ってるやつ多くね?

 

 

 

更に、本土向けの早期警戒艦隊として、護衛艦と共に一緒に行動していた山城も戦闘に参加する。

 

 

「全く……、新自衛隊の司令官も人使いが荒いわね、姉様と離れ離れにした上で、こんなところで待機させているのだから……、まぁ、いいわ、みんなを守るためにもここでしっかり戦うわ……、対空戦闘。垂直発射器、目標敵編隊並びに敵機動部隊。艦対空誘導弾並びに艦対艦誘導弾発射!」

 

 

 

山城に搭載されたVLSは大和のそれと同じで、セル数は脅威の320セル。

 

 

 

アーセナルシップでも容易に実現できない数を実現して尚、まともな対艦対空戦闘をこなすことができてしまうこのやべぇ魔改造は当然深海棲艦にとっては何をやってるか理解できない。

 

 

 

だが、理解できない故に放置していた彼女は、最大の脅威となって襲いかかる。

 

 

 

まずは対艦攻撃。

 

 

 

空母機動部隊推定100隻に対して、対艦ミサイル160発を発射。超音速で迫る対艦ミサイル兼用の対空ミサイルSM-6によってあっという間に返り討ちにしてしまった。

 

 

 

この時点で母艦を失った攻撃隊だが、悲劇はさらに続く。

 

 

 

この同じ数の対空ミサイルをそっくりそのまま敵編隊にぶつける。

 

 

 

 

「誘導弾全弾命中、随分と呆気ないものね」

 

 

 

時雨同様の感触を味わいながら、護衛艦と共に退避する。

 

 

 

「残りおよそ800機!」

 

「まもなく防空隊のミサイル第1波が命中」

 

 

 

赤く表示された敵編隊と、ミサイルが同じ円の中で重なった。

 

 

 

「敵機撃墜!、残りおよそ500機!」

 

「速やかに第2射へ、発射完了後に空中弾薬庫艦は佐世保へ退避」

 

<<了解!、第2射、攻撃開始!>>

 

 

再び中距離ミサイルが放たれる。

 

 

 

深海棲艦が物量でごり押すなら、こちらは物量を打ち消す現代兵器の空対空ミサイルによる応戦である。

 

 

 

「敵編隊、200機程度まで減少」

 

「この機を逃すな、防空隊全機、格闘戦に移行、空中弾薬庫艦は予定通り佐世保へ退避」

 

<<了解、空中弾薬庫艦全機へ、佐世保へ退避!>>

 

<<鳳翔航空隊より各航空隊へ、高度8000へ上昇し敵編隊上空から襲撃しろ!!>>

 

「物部より呉鎮守府艦隊へ、対空戦闘用意!、防空隊が撃ち漏らした機体を撃ち落とせ!」

 

<<おい物部!、俺達が撃ち漏らすとでも思ってるのか?>>

 

「私語禁止!、口より機体を動かせ!」

 

 

 

若干の注意が挟まれていたが、彼らの練度は本物だ。

 

 

 

この世界で始めて誘導弾を持つジェット戦闘機を保有することになった鳳翔航空隊。

 

 

その練度は元のレシプロ時代からなんら劣ることはなく、機動部隊が壊滅状態になった現在、唯一の打撃力と機動性を兼ね備えた海上航空戦力としてレイテでは大奮闘した。

 

 

 

その力はF-35BからF-3に移っても健在であり、であるからにして今回の空襲の防空隊の先陣を切っているのだ。

 

 

 

「全機、短距離空対空誘導弾発射!!」

 

 

 

AAM-5がいっせいに発射される。

 

 

 

たかが2倍程度に増えた程度で本土を爆撃出来るわけが無い。

 

 

 

 

逃げようにも、母艦は既に山城からの飽和攻撃で全滅している。

 

 

 

 

仮に運良く防空隊を潜り抜けても、イージスシステム他防空システムがそれを逃がさない。

 

 

 

まさに死の領域。

 

 

 

呉軍港を襲撃した深海棲艦艦載機並びに空母機動部隊は、新自衛隊と呉鎮守府の基地航空隊、早期警戒艦隊によって全滅させられた。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

「………というわけで、今後も各地に基地航空隊を展開することによって、本土防空は一定の解決が試みられる予定です」

 

「国民が空襲を忘れて眠ることができる日も近いな」

 

「はい、そして成田提督……」

 

「どうした?」

 

「海上遊撃戦の状況を聞かせてもらいたいです」

 

「結構。現在我が方は第二水雷戦隊を連日投入し、戦闘を繰り広げた。結果としてこちらの損害無しで補給部隊は壊滅状態、呉鎮守府も加わったおかげでスムーズに進んでいる」

 

「こっちも北上達が連日戦闘を続けてくれたおかげで助かっている。補給部隊を失った侵攻部隊の一部はマリアナやサイパン、硫黄島への撤退を行ったが、こちらも貴殿らの攻撃に巻き込まれただろうな」

 

「前線への補給圧迫と、後方への戦略爆撃。奴らもいい加減痺れを切らしてくるだろう、無謀な突撃を行うかもしれん」

 

「そこを我々で叩くというわけだ」

 

 

呉提督と佐世保提督がどんどん話を進めていく。

 

 

「それにしても……、つい半年前までには我々が敵を追い詰めているとは考えられなかったなぁ……」

 

「新自衛隊諸君らの働きは間違いなく大きい。多元くんは元帥職も有り得るかもな」

 

 

 

( ´∀`)ハハハ、と笑顔で会話する両提督。

 

 

ガチャリ

 

 

「多元提督、軌道往還機部隊より入電です」

 

「軌道往還機部隊から?、なんだ」

 

 

これを……、と言って渡された紙を見る多元。

 

 

 

「これは………!」

 

 

 

<<欧州、インド洋、東太平洋より深海棲艦撤退を確認、撤退した部隊は、本土を目指して進軍中、北極点を越え北海道を目指して南下中の部隊有り、マリアナ、サイパン、太平洋諸島等からも深海棲艦撤退、本土に向かう以下予想進路と到達予定時刻……………>>

 

 

 

「両提督!、緊急事態です。全世界の深海棲艦が我が国を狙って攻勢をかけるつもりです!」

 

 

両名から笑顔が消える。

 

 

「相手の目的は北海道、帝都、南西諸島に別れており、このうち北海道には海上部隊では阻止できないレベルです」

 

「なんだって!?、奴らとうとう気でも狂ったか!?」

 

「恐らく生物としての本能でしょう、仲間が多数葬られているこの日本をまっさきに落とさなければ後がないことに気づいたんです」

 

「どうする……、南西諸島はともかく、帝都と北海道は防衛できるか……」

 

「舞鶴や横須賀、それ以外を足し合わせても全世界に散らばっていた全ての深海棲艦と戦うなんて無理だ!!」

 

「しかも、時間的余裕もないからこちらから新たに戦力を生み出すことも出来ない……」

 

 

 

 

さっきまでの楽観的な雰囲気から一転、あまりにも絶望的状況で暗くなる部屋の中だが、ただ1人、冷静に事態を見つめている男がいた。

 

 

 

そう、多元実、その人である。

 

 

 

ひたすら頭の中で無数のシュミレーションを組み、何としてもこの国を守るために策を練る。

 

 

 

 

(鹿屋と新田原の連中を……、ダメだおそらく最大勢力となるのが南西諸島だ、ここにはフルで航空戦力が必要になる。首都の守りは多分大丈夫だ、F-5戦闘機への緊急改造とペンギン対艦ミサイルのフル生産で間に合わせる。問題はIFFを積まない連中への誤射の危険性だが、これについては先に制空権を取るしかない。空母をとにかく潰すんだ。北海道はさらに危険だ、このままいけば間違いなく海上戦力が全滅する。となれば彼女たちは退避させるべきで、その代わりとしてスカッドをそっちに回す……、ダメだ大きすぎる。北海道に向けて移動させている装備もある中でこいつを回せるだけの方法がない、貨物で運べればいいが……、その前に到達されるか??、いや、間に合うはずだ、そもそも射程もかなり延ばした都合、東北地方まで回せればなんとかなるな、問題は牽引機……電化されてないところも多いが、地盤的にはDF200が使えるか?、多分行けるはずだ、本線級なら地盤はそれなりに硬いはずだからな、後は機甲師団だが、幸い北海道の防衛のために呉から移動させたやつがいる。こいつを使おう。北海道は人口が少ない、予想上陸地点は根室とされているが、この辺の住民の避難さえ出来ればなんとかなる。12式はどうするか……、帝都防衛だな、千歳には今あの戦闘機がいる、制空はなんとかなるだろう、だが対地攻撃は……、無誘導爆弾でも積ませるしかない。そして、おそらく俺たちの手が最も加わらないのが皮肉にも1番防御が硬い帝都だ、もし帝都を攻めた連中が、万が一上陸したら……、61式の配備は間に合ってるはずだ、それでもダメな時に備えてジャベリンも生産させ、遅滞戦術を取ってもらおう、大丈夫、史実沖縄戦が起きていない上、他のところから優れた将校がいる。守りに徹する必要性を理解した人達だ、陛下についても松代に退避してもらう………。手が……、震える……何処かの戦線が崩れるだけで危うくなる、こんな不安な戦いは今まで転生してきた世界でも少ないな……。人の配置も決めよう。物部は北海道、腰堀と田城は帝都、俺は呉、平河は佐世保、新田原には黒騎だ。北海道からなら往還機も打ち上げられるはずだから、往還機による軌道爆撃も含めて全力でやるしかない、頼む、間に合ってくれ……)

 

 

 

 

考えた、考えに考え抜いた、これがベストだと判断した多元は自らのアイディアをまとめあげ、その場にいた2人と暗号通信で全国に散らばる転生者と、各方面への通達文を作って回す。

 

 

 

「この戦い、負けられないな」

 

「寡兵は一撃にかける、だからこそ、その一撃で全てを終わらせよう」

 

「もしも来年があれば、自衛隊に予算は回らんでしょうね、尤も、来年を確約させるのは我々の働きしだいです」

 

 

 

最後に軽くジョークを混ぜつつ、会話を終えた多元。

 

 

 

「白旗上げるにはまだ早い、まだやれることがあるはずだ」

 

 

 

 

転生者たちの、鎮守府の、日本の、世界の

 

 

 

運命を賭けた一戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 








次回、最終話

「転生者達は艦これいつ海の全滅エンドに納得いかないようです」


転生者、オールウェポンズフリー



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最終話 転生者たちは艦これいつ海の全滅エンドに納得がいかないようです




僕の書いた作品の中で、初の完結する作品となります。



なんか某ニコニコの動画、その他もろもろのネタマシマシですが、最終話なので気楽に見てってください






 

 

 

1945年3月下旬、新自衛隊呉整備工場

 

 

 

「はい黒騎ですが?」

 

 

多元からの通達が来る。

 

 

「わかりました、やってみます」

 

即答した黒騎。

 

<<君は躊躇いは無いのかね?>>

 

<<自分の仕事は兵器を開発するか、敵を倒すかの2択です。そこに躊躇いはありません>>

 

<<そうか……、苦しい戦いになる。頼んだ>>

 

 

電話を切った多元。

 

 

「俺よりもよっぽど肝が座っているな、次行くぞ」

 

 

今度は新自衛隊百里基地にかける。

 

 

 

 

新自衛隊百里基地

 

 

「もしもし、腰堀です」

 

こちらにも多元からの通達が来る。

 

「いざとなったら徹底的にやれ、必ず帝都侵入前に駆逐せよと……、了解」

 

 

電話を切り、仕事中の他の技術者達に檄を飛ばす。

 

 

「深海棲艦の大艦隊が迫ってくるぞ!、緊急増産だ!、ASM-2とペンギン対艦ミサイルをじゃんじゃん量産しろ!、対空ミサイルもだ!、残った資材をかき集められるだけかき集めろ!、

 

 

 

いいな!、

 

 

 

出し惜しみは無しだ!、何としても目標を潰す!」

 

バキッ

 

持っていた鉛筆が折れると同時に全員が起立して腰堀の方を向く。

 

「了解!」

 

 

百里基地にいた蒼隼はもう居ないが、腰堀はこの短期間に新たに1個飛行隊の航空機をこの百里基地に配備していた。

 

 

 

「対艦番長の異名を見せてやれ」

 

 

 

腰堀がそう言いながら、滑走路を見ると、洋上迷彩の施された単発の戦闘攻撃機が居た。

 

 

 

 

そう、アイツ……

 

 

平成のゼロである。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

新自衛隊横須賀出張所

 

 

「えっ?、何ですって!?、わかりました。こちらも魔改造できる船をやれるだけやります」

 

「どうした?、真多よ」

 

「緊急事態だ、深海棲艦の大艦隊が向かっている」

 

「なっ!」

 

「いいか、今から積めるだけの対艦ミサイルを積む、具体的には……」

 

「いや、真多、いい、私は姉さんほど物分りが良くない、簡潔に頼む」

 

「皆殺しだ」

 

 

それだけで彼女には十分だった。

 

 

「おう、

 

この武蔵、伊達ではないぞ!」

 

 

動き始める真多。

 

 

 

「近日中に12式も展開完了するらしい……、どこに置くか……、やっぱり朝霞に置いてもらうのがベターだ、多分腰堀さんもすぐにこっち来て戦闘機への改造を話し合うかもしれないからね、急がないと」

 

「真多!、横須賀提督が来たぞ」

 

 

 

スタスタと歩いてくる横須賀提督。

 

 

 

「真多くん、新自衛隊はどう対抗する?」

 

「まだ確定はしていないのでなんとも言えませんが、初手で敵の航空戦力を潰します。そこから横須賀鎮守府などと合同で艦隊攻撃を行い、殲滅します」

 

「上陸部隊は?」

 

「陸軍近衛師団含めた防衛部隊との共同作戦です」

 

「わかった、艦隊の配置について話し合いたい、帝都防衛の担当者を集めて欲しい」

 

「わかりました、あと、参加艦艇と航空機にこれをお願いします」

 

 

 

そう言って取り出したのはIFF。

 

 

「これでこちらからの誤射を防ぐつもりです」

 

「わかった、すぐに量産を頼む」

 

「はっ!」

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

新自衛隊呉司令部飛行場

 

 

「物部はどこだ!」

 

「俺ならここだよ」

 

 

北海道に向かう輸送機から手を振る物部。

 

 

「行先……、わかっているのか?」

 

「ああ、南西諸島方面は多元、帝都は合同作戦になるが、一応指揮は出来るようになった腰堀と真多。他転生者もそれぞれ配置した、俺だって多元程じゃないとは思うが腰堀よりかは指揮は取れる。となれば北海道配置が妥当だろ」

 

「陸戦で、1番キツイぞ?」

 

「大和だって戦っているんだ、俺が逃げてどうする」

 

「別に俺が行ってもいいんだぞ?」

 

 

エンジンが唸りを上げる中、無線機を使いながら会話する両名。

 

 

「……メ…」

 

「ん?」

 

「ダメだ、大和も出撃していて、北海道のヤツらが巻き込まれていて、さっさと引きこもるなんて、出来るわけが無い!!」

 

 

エンジンが離陸のためにより一層出力を上げる。

 

 

「離陸しろ!、

 

 

C-2、千歳基地へ!」

 

 

その言葉を聞いて、何か言わなくてはいけないと感じた多元。

 

 

「ご武運を、物部!」

 

 

その言葉を合図に、護衛のF-15と共にC-2輸送機が上がる。

 

 

 

「………、うーむやっぱりここでクラッシックのあれ流すべきじゃね?」

 

「イーグルにアフターバーナー使わせないでくださいよ」

 

「後の時代で、この様子を記録していたコメント欄には赤字が……」

 

「後の時代があればですけどね」

 

「そういうこった、せっかくラピッドドラゴン開発しておいたんだから、しっかり使いこなさないとな」

 

「後はあれだな、F-16、あれも一応用意しておいた」

 

「へぇー、F-16を?」

 

「そうそう……、んでここで重要なのは……、自衛隊はこのタイプのF-16は運用していないってことだ」

 

「元ネタ通りのやつでも作ったんですか?」

 

「STOL持たせたかったからね」

 

「F-16改は前線飛行場へ、F-15と早期警戒管制機は千歳基地だ、前者は8機しかいないし、後者も18機だ。初手の打撃が肝心になる。陸軍はなんて言ってきてる?」

 

「戦闘地域の住民避難完了、地雷と柵の構築を始めているとの事」

 

「結構、せっかく多元から機甲師団預かってるんだ、こっちもやるぞ」

 

「地盤は大丈夫なんですか?」

 

「問題無い、試験済みだ」

 

 

 

 

新自衛隊は、陸上部隊として6つの防空部隊とそれを護衛する普通科を入れた3個旅団、対艦ミサイル、長射程兵器を運用する2個師団。そして、司令部を守る即応機動連隊を有する1個師団。そして、最後に本土決戦を前提として編成されていた1個機甲戦闘軍がいる。

 

 

このうち、最も司令部のある呉から遠い北海道には、最初から長射程兵器を有する1個師団と、1個旅団がおり、即応機動連隊編成完了と共に機甲戦闘軍を北海道に移転した。

 

 

 

北海道は陸戦、帝都は防衛戦、南西諸島は艦隊決戦となるこの戦い。

 

 

勝てば深海棲艦は文字通り壊滅状態となり、海は再び穏やかな場所となる。

 

 

負けてしまえば言うまでもあるまい。

 

 

 

「まもなく千歳基地到着!」

 

 

物部を運んだC-2と護衛のF-15は千歳基地に向かっていった。

 

 

 

 

後の日本大戦の幕開けである。

 

 

 

 

○日本大戦主要参加部隊一覧

 

 

・北海道戦線

 

 

*新自衛隊

 

 

 

航空戦力 新航空自衛隊第996飛行隊F-15×18

           第997飛行隊F-16改×8

           第2001飛行隊E/P-1×2

           第2002飛行隊C-2×1

     新陸上自衛隊第9000飛行隊45式特殊生物対応重戦闘攻撃機

 

陸上戦力 新陸上自衛隊901、902旅団

03式、11式、87式、及び96式、軽装甲機動車と中距離多目的誘導弾を保有する普通科部隊

     新陸上自衛隊904師団

12式、極超音速滑空弾、長射程兵器、MLRS、自走砲を保有する特科部隊

     新陸上自衛隊第907機甲戦闘軍

10式戦車によって構成された中戦車連隊、45式重戦車によって構成された重戦車大隊、89式と10式で構成された偵察中隊、89式で構成された機械化歩兵連隊、99式で構成された野戦特科連隊。15式軽戦車で構成された軽戦車中隊。CV90で構成された装甲機械化歩兵連隊。中距離多目的誘導弾や対戦車火器を保有する対戦車大隊を保有する防御型機甲部隊

 

 

 

*大日本帝国軍

 

航空戦力 大日本帝国陸軍航空隊疾風×32

     大日本帝国海軍航空隊97艦攻×48

 

陸上戦力 大日本帝国陸軍第7師団(61式戦車装備)

     大日本帝国海軍陸戦隊(60式自走無反動砲装備)

 

 

 

45式重戦車 某モビルスーツ作品の連装砲戦車を参考に単装にした上で、油気圧サスペンションを装備した重戦車

 

 

 

 

 

 

・帝都防衛線

 

 

 

*新自衛隊

 

 

航空戦力 新航空自衛隊第995飛行隊F-2×16

     新航空自衛隊第2001飛行隊E/P-1×2

 

陸上戦力 新陸上自衛隊第903旅団(百里基地)

901と同様防空部隊である

     新陸上自衛隊第905師団(12式のみ)

904と同様特科部隊である

 

 

*大日本帝国軍

 

 

航空戦力 大日本帝国海軍横須賀鎮守府所属横田基地航空隊(現在は海軍が使用しているが元は陸軍である)Mig-29×16

     大日本帝国海軍横須賀鎮守府所属厚木基地航空隊F-5E×32

     大日本帝国海軍木更津飛行場噴式航空隊橘花改二(エンジン出力改善等を行った戦闘爆撃機型)×16

     大日本帝国海軍横須賀航空隊一式陸攻×16、紫電改×16機

     大日本帝国陸軍航空隊横田飛行場火龍×16

     大日本帝国陸軍航空隊横田飛行場噴式飛龍×16(ジェットエンジン換装型)

     大日本帝国陸軍航空隊横田飛行場疾風、飛燕、隼、月光、飛龍合わせて72機

 

陸上戦力 大日本帝国陸軍近衛師団等4個師団

     大日本帝国海軍陸戦隊

     (装備は北海道のものと同じ)

 

海上戦力 大日本帝国海軍

     長門、瑞鶴、千歳、瑞鳳、千代田を含めた転生者より魔改造を受けずにレイテ直前まで残っていた艦娘(レイテでは被害は出たものの、損失は無いため)、武蔵

     甲標的×32隻分

 

 

 

 

・南西諸島戦線

 

 

*新自衛隊

 

 

航空戦力 新航空自衛隊第991飛行隊F-3×16

     新航空自衛隊第992飛行隊F-2×16(元いた機体は鳳翔航空隊に移動した)

     新航空自衛隊第993飛行隊05式防空戦闘機「蒼隼」×16

     新航空自衛隊第994飛行隊戦術打撃航空機「宙虎」×16

     新航空自衛隊第1000飛行隊AAS-1×8

     新航空自衛隊第1001飛行隊E/A-1×4

     新航空自衛隊第2000飛行隊E/P-1×2

    

(新航空自衛隊は最終的に新田原に移動)

 

     新海上自衛隊第9000飛行隊P-1B対潜哨戒機×20

(こちらは鹿屋に所属)

 

 

陸上戦力 新陸上自衛隊残存戦力

 

海上戦力 新海上自衛隊第零護衛隊群

 

 

 

*大日本帝国軍

 

 

航空戦力 佐世保、呉鎮守府基地航空隊Mig-29×32

 

海上戦力 第二水雷戦隊+大和+龍鳳、高速雷撃艦隊、航空水上打撃艦隊(伊勢、日向、利根、最上+護衛艦で編成)、他の魔改造済みの艦艇

 

 

 

各部隊の詳細な兵器は後ほど紹介。

 

 

 

 

深海棲艦北海道侵攻部隊

 

姫級推定200体

鬼級推定500体

姫鬼除く陸上型深海棲艦大小合わせて推定50000体(輸送船に格納されていると見られ、推定のみ)

 

 

 

艦艇型推定480体(未確認の大型輸送船タイプあり)

陸上型最大52000体

 

 

 

帝都侵攻部隊

 

 

姫級8体

鬼級16体

通常型4000体

 

 

 

南西諸島侵攻部隊

 

総計30000体

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

1945年4月6日午前0時

 

 

先手を取ったのは日本側だった。

 

 

「航空隊、全力出撃!、向こうの空母は少ない、必ず全滅させろ!」

 

「全機出撃!、空母を全力で叩け!」

 

「ミサイル飽和攻撃用意!、敵の航空戦力を根こそぎ奪う!」

 

 

北海道、帝都、南西諸島方面のそれぞれに展開中の新自衛隊の部隊が一斉に行動を開始、航空隊や、各種長射程兵器で洋上航空戦力を叩く。

 

 

 

北海道では、12式や極超音速滑空弾とF-15からLRASM、F-16改からハープーン、珍しいところだとMLRSから短距離弾道ミサイルが放たれ、帝都防衛線ではF-2から93式、F-5Eからペンギン、12式や、Mig-29からも対艦ミサイルが放たれ空母棲姫やヲ級などに命中する。

 

 

 

南西諸島はさらに多くのミサイルが、様々なプラットフォームから放たれ、空はミサイルが覆っていた。

 

 

それもそのはず、今回参加した機体は128機に上り、対艦ミサイルの本数は雷華が6発、F-2が4発、蒼隼が6発、宙虎が8発、AAS-1が12発、E/A-1、P-1がそれぞれ8発、Mig-29が4発であり、その合計は800発に上る。

 

 

とはいえ、30000隻を撃沈するには全く足りておらず、12式やそのほかのミサイル部隊も全力で攻撃を続ける。

 

 

 

「一隻見逃すだけで1000人単位で人が死ぬぞ!、だが焦るな!、こっちにはあの小玉さんの開発した重戦車大隊もいる!、陸戦になることは織り込み済みだ!、奴らの頭をぶち抜いてやれ!!」

 

 

 

特に、北海道戦線では、一体見逃せば新自衛隊はともかく、大日本帝国軍に甚大な影響が出る。

 

 

 

 

ちなみに。LRASMや、ラピッドドラゴンに使用されるミサイルの中には滑空弾程では無いが内部に対深海棲艦細胞停止薬が含まれており、2発撃ち込むことで姫級鬼級を死に至らしめることが出来る。

 

 

 

北海道の航空隊は壊滅状態だとタカをくくっていたのか、専門の連中は少ない。

 

 

 

「空母棲姫、及び正規空母系の連中は20隻居ない!、全て潰せ!」

 

「それ以外の連中を潰しやすくするためにも全力で叩くんだ!」

 

 

 

12式はヲ級に、短距離弾道ミサイルは離島棲鬼に、ハープーンは護衛艦に、対深海棲艦細胞停止薬持ちのミサイルは全て空母棲姫や、航空機運用能力の高い姫鬼級に集中している。

 

 

 

「波状攻撃は上陸地点到達まで何回できる!?」

 

「3回です!」

 

「陸軍にその旨伝えろ」

 

 

 

 

根室付近、大日本帝国陸軍戦車隊

 

 

「新自衛隊より報告、空母棲姫の掃討を確認、尚、一部に欧州棲姫なども確認されている模様」

 

「奴らの陸上戦力がどれほどのものかはフィリピンの連中から聞いている。だが、こちらも新自衛隊の協力の元、攻撃力は上げている。海軍陸戦隊の連中は?」

 

「陣地転換場所の確認だそうです」

 

「航空隊は?」

 

「用意完了との事」

 

「そうか………、さて、何人生き残れることやら……」

 

 

 

塹壕に隠れつつ、海を睨む戦車隊。

 

 

 

戦いは近い。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

帝都防衛線

 

 

<<こちら航空隊、攻撃成功なるも、姫級中心に依然として侵攻継続中!>>

 

<<防空能力の高いやつを叩け、第3防衛ラインでは大日本帝国軍のレシプロ機や、初期ジェットも参戦する>>

 

 

F-2、F-5E、Mig-29が参加している帝都防衛線の超音速ジェット機部隊による攻撃は、防空能力の高いものから順に攻撃を開始し、これまでに鬼級なども含めた100体単位で撃沈している。

 

 

「帝都が少ない理由ってのはなんだ!」

 

 

腰堀は専門の軍人ではないが、必死に頭を回転させて帝都に固執しない深海棲艦の思考を読もうとする。

 

 

「本土決戦……、オリンピック作戦……、違う、もっとだ、もっと考えろ………」

 

 

その間にも、12式が攻撃を続行し、再出撃の早いF-5Eがペンギンミサイルで護衛を叩く。

 

 

 

「はっ!、長期戦……、前線基地の構築か!!」

 

 

 

南西諸島を攻略し、補給を潰す。

 

 

それと同時に北海道を占拠し、前線基地として帝都攻撃の足がかりにする。

 

 

 

「となれば、不味い。これを終えたら速攻で部隊を回さないと!」

 

「腰堀司令!、F-2再出撃完了!」

 

「厄介なやつを先に潰せ!、艦隊決戦の時に動かれたら厄介だ!」

 

「爆撃機の出撃を確認!」

 

「近寄らせるな!、03式は攻撃開始!」

 

「帰投中のMig-29、自衛用短距離空対空ミサイルで迎撃に入りました」

 

 

 

爆撃機は数が少なく、すぐに壊滅する。

 

 

 

「帝都防衛艦隊は?」

 

「配置につきました!」

 

「真多くんと連絡回線開いて!」

 

 

ここで横須賀に待機していた真多を呼ぶ

 

 

<<真多くん、艦隊の改装は!>>

 

<<瑞鶴に艦載機型のドラケンを積み、千歳と千代田には烈風、瑞鳳には紫電改四搭載、攻撃機は全機流星改。長門には電探とCIWSと携行対空ミサイルと装甲ボックスランチャーを装備!、それ以外の艦艇も改装済み!>>

 

<<紫電や烈風はともかく艦載機型ドラケンって!、真多くんテストは!?>>

 

<<そんな暇あるか!!>>

 

<<ほかは!>>

 

<<武蔵には限界までミサイルを積んだ。多分これで上陸はできないと思う>>

 

<<真多くん!、北海道や南西諸島に救援を回すとして何時間かかる?>>

 

<<2日はかかる、安全を見たら5日以上の可能性もある>>

 

<<南西諸島はともかく北海道は不味い!>>

 

<<なんとか持ちこたえることを信じよう>>

 

 

「F-2対艦攻撃完了、帰投します」

 

ふたりが連絡を取っている間にも攻撃は続く。

 

「次は総力を挙げた航空攻撃だ!、大日本帝国軍に通達しろ!」

 

「了解!」

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

南西諸島戦線

 

 

「空母中心に多数の敵艦撃沈を認めるもさらに接近中!」

 

「想定範囲だ、ミサイルの補給を急がせろ」

 

<<こちら平河、補給艦サザンクロス。出撃完了、予定地点にて待機します>>

 

「了解した、気をつけろ」

 

<<こちら第零護衛隊群旗艦鳳翔、現在太平洋上にて遊弋中です。追加の指示を>>

 

「高速雷撃艦隊と航空水上打撃艦隊、扶桑山城両名の攻撃が終わり次第艦載機発艦、敵空母を叩け」

 

<<了解>>

 

 

 

この間も地対艦ミサイルが攻撃を続行、深海棲艦に打撃を与えていく。

 

 

「対艦ミサイルの積み替え急げ!」

 

「慌てる必要は無いが、一隻逃せば味方が吹き飛ぶリスクが跳ね上がる。積み終わり次第、直ちに発射!」

 

 

鹿屋にて射撃中の12式地対艦ミサイル連隊は作戦開始以来ずっと連続攻撃を行っていた。

 

 

 

「空対艦ミサイルの方はどうなってる?」

 

「再装填中、あと2回は行けます」

 

「爆撃機接近中、数16」

 

「戦闘機隊は忙しい、中SAM、叩き落とせ!」

 

「潜水艦隊は?」

 

「まもなく攻撃態勢に入ります」

 

 

 

南西諸島沖、深海棲艦艦隊前方深度600m

 

 

 

「今日は決めゼリフは言わないでち!、魚雷、対艦ミサイル発射!!」

 

 

 

残存潜水艦娘を集め、魔改造を施した潜水艦隊がいっせいに襲いかかる。

 

 

 

89式魚雷、ハープーンがいっせいに放たれ、全弾命中する。

 

 

「撤退でち、サザンクロスへ」

 

 

 

全弾命中させたゴーヤ達は速やかに撤退し、サザンクロスにて補給を行う

 

 

 

「潜水艦隊、サザンクロスに向け後退」

 

「高速雷撃艦隊、攻撃態勢に入ります」

 

「航空水上打撃艦隊、同じく攻撃態勢に入ります」

 

 

航空水上打撃艦隊には伊勢と日向、利根と最上と護衛艦として海防艦が組み込まれている。

 

 

 

「12式対艦巡航誘導弾って何気にワビサビよね」

 

「榛名、全力で参ります!」

 

 

榛名もVLSが増設されたことで、飽和攻撃戦艦に改造されており、誘導砲弾と組みあわせてアウトレンジ攻撃を担当する。

 

 

 

「今は瑞雲よりこの機体だな」

 

「航空隊、発艦!」

 

「カタパルトが不調でもこれならなんとかなる」

 

「その気になれば対艦ミサイルも積めちゃうんだね、つくづく転生者ってすごいよ」

 

 

 

航空水上打撃艦隊の中核を担う伊勢、日向、利根、筑摩は瑞雲ではなくF-35Bを搭載して航空攻撃を行う。

 

 

尚、フル武装での離陸が難しいとされていた航巡からのF-35B発艦はRATOによって解決している。

 

 

 

「艦対艦誘導弾一斉射撃用意!!」

 

 

高速雷撃艦隊程では無いが、対艦ミサイルを豊富に搭載する航空水上打撃艦隊が艦載機発艦の後に一斉に対艦ミサイルを発射する。

 

 

「撃てぇ!」

 

 

高速雷撃艦隊と同時に対艦ミサイルを発射。

 

 

生産性優先で亜音速だが、これでも普通に脅威となる。

 

 

「弾着………、今!」

 

 

レーダー上の円が重なると、ミサイルが命中した深海棲艦が消える。

 

 

「全弾命中!」

 

「誘導砲弾、攻撃開始!」

 

 

続けて高速雷撃艦隊の榛名や、航空水上打撃艦隊の伊勢、日向。他の護衛艦が誘導砲弾や射程延長弾を利用したアウトレンジ射撃を試みる。

 

 

この際、小さくて当てずらい通常型は狙わず、的がでかい姫級鬼級を優先して狙う。

 

 

 

一方、別の場所でも………

 

 

「姉様、行きますよ」

 

「ええ、山城。時雨達をしっかり援護してあげましょうね」

 

「誘導弾、攻撃開始!」

 

 

使い捨てにした対艦ミサイル発射筒も設置して一艦あたり360発の対艦ミサイルを撃ち込む。

 

 

こちらはやたら数の多い通常型を目標にしてある。

 

 

「攻撃終了……ね、なんだか呆気ないわね」

 

「補給を終えたらもう一度行います。サザンクロスに向かいますよ、姉様」

 

 

一方、航空水上打撃艦隊や、高速雷撃艦隊も攻撃が終了していた。

 

 

「攻撃終了、サザンクロスに後退」

 

「航空水上打撃艦隊より第零護衛隊群へ、航空攻撃を要請」

 

<<了解です、これより航空攻撃を実施します>>

 

 

 

航空水上打撃艦隊より50km東の地点にて

 

 

 

「風向き、良し!、航空部隊発艦!」

 

「18式艦上戦闘攻撃機発艦!」

 

 

F/A18EとF-3が葛城と鳳翔から発艦して、対艦攻撃を実行する。

 

 

既に陽は昇り、深海棲艦は大東島沖合200km地点にまで接近していた。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

呉新自衛隊司令部

 

 

「第零護衛隊群攻撃を開始しました」

 

「基地航空隊、追加攻撃に入ります」

 

「黒騎を呼べ」

 

 

<<はい、黒騎ですが?>>

 

<<例のアレを出せ、北海道に回す。真多と物部が弾薬を用意してくれているから厚木で補給、千歳基地から反復出撃するように>>

 

<<わかりました、やってみます>>

 

 

 

黒騎が革ジャンを着て、外に出る。

 

「スーパーXⅢ改は?」

 

「ただいま離陸準備中」

 

「わかった、到着する頃には陸戦が始まっているかもしれない。迅速に進めろ」

 

「はっ!」

 

 

 

帽子をかぶり、格納庫に向かう黒騎。

 

 

 

「黒騎さん、こっちです」

 

「ああ、わかっている」

 

 

装甲化された機体に入る黒騎以下3名。

 

 

「搭乗完了、発進体制へ」

 

 

格納庫がせり上がり、地上に出る。

 

 

<<滑走路展開>>

 

 

格納庫の扉が開くと共に、滑走路と、後部にジェットブラストディフレクターが展開され、発進体制に入る。

 

 

<<離陸準備完了、電磁カタパルト射出準備良し>>

 

<<スーパーXⅢ改へ、離陸準備完了>>

 

「スーパーXⅢ改、テイクオフ」

 

 

 

搭載されたエンジンが唸りを上げ、同時にカタパルトから射出される。

 

 

 

「スーパーXⅢ、離陸完了」

 

<<了解、そのまま高高度巡航で厚木へ向かえ>>

 

「了解」

 

 

 

新陸上自衛隊第9000飛行隊

 

深海棲艦という特殊な存在に対抗し、姫級鬼級を確実に倒すことを目的に設立された新陸上自衛隊唯一の航空機運用部隊。保有機は45式特殊生物対応重戦闘攻撃機だけだが、単機で大艦隊すら殲滅しうるポテンシャルを持つ同機体を効果的に運用できる部隊として結成が急がれており、新自衛隊が開設した初期の頃から計画はあったが、乗組員の錬成の問題で今作戦には最初から参加することが出来なかった。

 

 

45式特殊生物対応重戦闘攻撃機

 

通常攻撃が効かないとされる深海棲艦の中でも特に頑丈で脅威度の高い姫級鬼級に対抗するために黒騎魈が中心となって開発を進めていた秘匿兵器。機首のメーザー砲は通常型なら一撃撃沈、致命傷になる威力で、例え姫級や鬼級に命中したとしても、無視できないレベルの被害をもたらす。主翼にはミサイルを多数携行可能で、LRASMなどの長射程兵器を運用する。また、機体上部の専用ポッドから発射されるkadomiumu弾は深海棲艦の生命活動を数分以内で死滅させる能力を持つ。飛行に関しては核融合炉を使った推進機関でマッハ2.5以上の速度をだして飛ぶことができる。開発は黒騎魈、対深海棲艦用兵器の集大成である。

 

 

 

kadomiumu弾

 

正式名称無害性細胞停止破壊即死特殊弾と呼ばれるこちらの弾薬は、弾頭に仕込まれた薬品の特徴を示す英文の特定の文字<Kill And Destroy Organ , death in MInUte harMless, Unique(英語は苦手なんだ、すまぬ)>を取ってこう名付けられた。命中すると姫級でも数分以内に細胞の活動停止または、破壊が行われ、死に至る。深海棲艦が地球上の生物との類似点を持たないことから、深海棲艦のみに効果がある弾薬として対深海棲艦細胞停止薬を改良して作られた。当然人体には無害である。

 

 

 

スーパーXⅢ改は、マッハ1.8で超音速巡航して厚木に向かって行った。

 

 

 

 

 

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北海道戦線

 

 

「空母系を優先して撃沈するも、依然として多数の敵が接近中!」

 

 

ガンッ!、机を叩く音がする。

 

 

「だめだ!、この程度の攻撃では埒が明かない!!」

 

「沿岸部への機雷敷設は?」

 

「完了しています。N2爆雷はどうします?」

 

「そいつは最終手段だ、第3防衛ラインを割られた時に使う」

 

 

今回最も厳しい戦いとなるとみられていたのが新自衛隊の司令部、大日本帝国軍司令部から最も遠い北海道だ。

 

 

もとより北海道というより北方方面全体に言えることだったが、基本的に深海棲艦の侵攻が少なく、そのこともあって主戦力は南方へと転換され、航空部隊もさして多くはなかった。

 

 

転機となったのは史実なら1945年7月あったはずの北海道大空襲だ。

 

 

恐らくレイテで大敗北を喫したことがトリガーとなり(少なくとも大日本帝国軍と新自衛隊の認識はそうなっている)防衛戦力を分散させるなどの意味合いを込めて、北海道に深海棲艦による大規模な空襲が行われたのだ。

 

 

当然、対応が遅れた北海道の防衛部隊は壊滅、特に航空部隊は甚大な被害を受けた。

 

 

これを受けて、新自衛隊と大日本帝国軍は急遽予定を変更、上記の部隊を速やかに向かわせたのだ。

 

 

しかし、どうみたって数は足りないため、航空部隊や艦娘部隊による迎撃では対応不可能とし、ある程度の攻撃を加えた後、陸戦によって決着をつけることが決定された。

 

 

陸戦における防衛ラインは以下の通り。

 

 

 

第1防衛ライン

 

根室市近郊(放棄前提)

大日本帝国軍主体

 

 

第2防衛ライン

 

浜中町、別海町付近(主戦場)

機甲軍+大日本帝国軍

 

 

第3防衛ライン

 

釧路市、中標津町付近(航空部隊に撤退命令の可能性)

全部隊(撤収体制を確保)

 

 

 

このうち、第3防衛ラインが破られた場合、上記の市町村及びその周辺全体にN2爆雷攻撃が行われることとなる。

 

 

 

 

「目標、根室市に向け上陸体制に入ります」

 

「連中はこちらの脅威を知っている。千島列島や、北方領土に乗り込むことはしないはずだ」

 

 

島に上陸すれば極超音速兵器による大規模な空襲があることを知っている深海棲艦は上陸前に拠点を作るということはせず、一心不乱に根室市を目指す。

 

 

 

「未確認の輸送船含む艦艇型400隻と姫級鬼級が根室市にまもなく上陸!」

 

「機雷原に突っ込むぞ!」

 

 

誰しもが機雷原で見事に爆散する深海棲艦を想像した次の瞬間………

 

 

「こ、これは……」

 

 

軌道往還機からの情報を見た物部以下司令部は言葉を失った

 

 

「自爆……」

 

「正気じゃねぇぞ!、なんでこんなところで!!」

 

 

先行していた艦艇型深海棲艦が濃密な機雷原を前に突如として自爆。

 

 

当然その爆発の余波で機雷原に進路が生まれる。

 

 

少しでも陸上戦力を減らしたいがために機雷原を大量に用意していた防衛部隊だったが、艦艇型が完全な盾となって機雷原を処理し始めたのだ。

 

 

「海軍陸戦隊に連絡!、根室上陸部隊は相当数になる模様、後退体勢を整えつつ、各部隊水際作戦を実施せよ!」

 

<<こちら大日本帝国海軍陸戦隊!、了解した航空支援を頼む>>

 

 

予想外の方法で機雷原を突破した深海棲艦により、当初よりも数多くの部隊が上陸することとなった北海道戦線。

 

 

その地獄の陸戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

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帝都戦線

 

 

「航空隊、発艦!」

 

「アウトレンジ、決めます!」

 

「ビック7の力、侮るなよ」

 

 

 

遂に帝都防衛艦隊の海戦予定ラインに迫った深海棲艦に対して、僅かながらでも改装を受けた横須賀、舞鶴の残存艦艇、南方や北方の各泊地から撤退してきた部隊によって戦闘が展開される。

 

 

 

「F-2、航空攻撃開始!」

 

「F-5E、対艦ミサイル発射」

 

「Mig-29、弾薬補給のため後退」

 

 

超音速機も対応を行うが、今回の数的主力は彼らでは無い

 

 

「いくぞ、陸軍航空隊、攻撃開始!」

 

「横空の実力を見せてやる!」

 

 

橘花、火竜、ジェット化した飛龍。一式陸攻なども加わり、熾烈な航空攻撃が行われる。

 

 

「陸攻が半分以上撃墜されています!」

 

「橘花、敵対空砲の直撃を受け、炎上、突っ込みます」

 

 

新自衛隊のように圧倒できる訳では無いため、速度の遅い機体を中心に被害が続出するが、それでも帝都を守るべく、決死の攻撃を続ける。

 

 

「噴式飛龍が誘導爆弾を旗艦に命中させました!」

 

「敵空母、一式陸攻の雷撃を受けて爆沈!」

 

「橘花、爆弾投弾後に敵機を撃墜!」

 

 

それでも、防空能力の高い深海棲艦を優先して新自衛隊が叩いたこともあり、着実に戦果が挙げられる。

 

 

「誘導弾、発射!」

 

「流星改は旗艦を叩いて!」

 

 

更に艦娘部隊による攻撃も行われ、陸海空のあらゆる場所から攻撃を喰らい続ける。

 

 

「この武蔵の誘導弾攻撃を喰らえ!!」

 

 

更に、限界までミサイルを積んだ武蔵が640発の対艦ミサイルを発射。この攻撃が見事命中し、深海棲艦の残存艦艇は一気に1000を下回った。

 

 

「このまま押し込む、甲標的を出せ」

 

 

横須賀鎮守府の提督の指示で甲標的が艦隊に向け突撃。

 

 

肉薄攻撃を仕掛ける。

 

 

対潜警戒はしていたとはいえ、肉薄してからの一斉雷撃は回避を困難なものとし、空や海上を見ていた深海棲艦にとってはさらなる厄介者の登場に混乱を極めていた。

 

 

 

気がつけば、深夜から始まった戦闘は昼を過ぎてもなおも続き、最早日が傾く頃まで進んでいた。

 

 

 

「残り姫級3、鬼級4、通常型100!」

 

「この気を逃すな!、姫級と鬼級にASM-3をぶち込む。F-2の帰投後直ちに換装せよ!」

 

 

ここで、かろうじてまとまった数の揃ったASM-3を撃つために艦娘部隊へ真多から目標の変更が告げられる。

 

 

「艦娘部隊は通常型に目標を変更せよ!」

 

<<わかった、この長門の主砲で通常型を一掃してみせる!>>

 

<<姫級なんかに比べたら遥かにマシよ!、噴式航空隊、全機発艦!>>

 

<<こちらスーパーXⅢ改、厚木への着陸許可を>>

 

「許可する」

 

 

 

次いで、北海道に向け移動中のスーパーXⅢ改が補給のために厚木に着陸。陸戦が始まる北海道での作戦支援を行うために急いで補給を行う。

 

 

着陸後、補給の確認のために降り立った黒騎に対して真多が駆け寄る。

 

 

「黒騎くん、南西諸島はどうなった?」

 

「まもなく第二水雷戦隊が攻撃を開始します」

 

 

 

 

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南西諸島戦線

 

 

「佐世保鎮守府より入電!、まもなく第二水雷戦隊が敵艦隊に向けて突入するとのこと!」

 

「第零護衛隊群は航空支援に入れ!、F-2はどうした?」

 

「まもなく攻撃体制に入ります」

 

 

レーダー上にプロットされたF-2を示す青いマークが高度を維持しつつ敵艦隊に向かう。

 

 

一方、佐世保鎮守府から出撃した第二水雷戦隊は、ここまで相手から一切補足されることなく、接近に成功していた。

 

 

「大和、電探に反応は?」

 

「無いわ、矢矧。第零護衛隊群や、他の諸艦隊、航空隊のおかげね」

 

「時雨、雪風、先陣は任せた」

 

「任せて矢矧」

 

「雪風は沈みません!」

 

 

初撃は対艦ミサイルの一斉射撃。次は龍鳳と大和の艦載機による航空攻撃。その間にも他艦隊からの攻撃は続くが、最終的には大和、矢矧、雪風、時雨、涼月、冬月が突撃隊として艦隊に向け突入。龍鳳以下護衛艦はその場に留まり突撃隊突入後は大和艦載機も一時的に収容しつつ、護衛されながら近接航空支援を行う。

 

 

「上空艦対艦誘導弾、扶桑山城両名からのものです」

 

「すごい数だ……」

 

 

扶桑と山城はサザンクロスでの補給を終えると、再びミサイルを発射。

 

 

時雨たちが突入するギリギリ手前で再度行った飽和攻撃により、3万いた深海棲艦は半分を割って12000隻まで減っていた。

 

 

 

だが、まだ数のある深海棲艦は力でのゴリ押しをやめない。

 

 

「突入!、各艦は各自の判断で自由回避を許可します」

 

 

そう言うと、大和は自分の主砲を敵艦隊に向け、砲撃戦を始める。

 

 

「早期警戒管制機からのデータ入力完了……、第1第2主砲、斉射、始め!」

 

轟音とともに日の落ちた南西諸島沖の海に世界最強の超弩級戦艦の主砲が火を噴く。

 

 

 

51サンチ誘導砲弾

 

ロケット推進と、早期警戒管制機をはじめとする外部からのデータリンクによって、上空で軌道を調整することが可能な誘導砲弾。最早ミサイルと言っても差支えのない砲弾で、大和は各主砲の10斉射分は保有している。

 

 

「艦対艦誘導弾、発射!!」

 

 

ついで矢矧らと共に、対艦ミサイルを一斉射撃する。

 

 

命中し、漆黒の海を赤く染めて燃え上がる敵艦を横目に艦隊はさらに接近する。

 

 

「全艦砲撃戦用意!」

 

 

その言葉を聞いて各艦の主砲が一斉に敵艦を指向する。

 

 

「射程延長弾装填完了!」

 

「誘導爆弾発射準備完了!」

 

「大重量砲弾、切り替え完了!」

 

 

そして、再び海に轟音が響く。

 

 

「撃てぇ!」

 

 

大和の合図で一斉に砲撃を開始する第二水雷戦隊突撃隊。

 

 

砲撃戦……、いや砲激戦とも言える南西諸島沖の夜戦は初手のジャブからのフックの連打によって始められた。

 

 

この時点で、敵艦隊との距離は40km程だが、大和以下の艦娘は正確な射撃で、確実にダメージを与えていった。

 

 

「忌々シイ艦娘共メ、沈メ!!」

 

 

深海棲艦の中にも僅かながら51センチ砲持ちが居るようで反撃されるが、たかが1945年レベルの射撃管制システムでは、ものによっては22世紀に片足突っ込んでいる転生者達の開発した最新鋭のFCSに勝てるわけが無い。

 

 

「敵の砲弾、いずれも遠弾です」

 

「友軍に当たりそうなものは?」

 

「ありません。ぶっちゃけ見当違いの方向です」

 

「結構です。今後も監視を強めてください」

 

「はっ!」

 

 

こちらが最大射程で命中させ続けていることもあってか、深海棲艦による砲撃が命中しないまま、砲撃戦が開始されてから早数時間が経過していた。

 

 

 

「F-2、ASM-3発射!、51cm砲持ちを破壊しろ!!」

 

「哨戒機部隊は重巡や、軽巡を狙え、ついで駆逐艦の姫級や鬼級だ、残すと魚雷を喰らう!」

 

「我が基地航空隊は残存している空母、または夜戦の邪魔になる駆逐艦等を狙え、この誘導弾の弾頭では戦艦は殺れない」

 

「鳳翔航空隊は敵の艦艇をとにかく減らしてください!」

 

「葛城航空隊は装備換装急いで!」

 

「平河さん、再出撃にはあとどれ位?」

 

「20分待ってくれ」

 

「おやっさん、こっちの燃料補給は?」

 

「もう終わっておる。お前さんは少し休め」

 

「みんな、行くでちよ!」

 

 

 

南西諸島戦線は、西日本艦娘部隊の総力を挙げた戦いとなっていた。

 

 

鹿屋から飛び立った蒼隼が機関砲でヲ級の頭を破壊して、Mig-29の放った対艦ミサイルが命中して爆散。

 

 

F-2から放たれたASM-3で空いた風穴にP-1からの対艦ミサイルが命中して大爆発など、対艦ミサイルと兵器の質に物を言わせた物量作戦が展開される。

 

 

数は多くとも、最新鋭のテクノロジーで武装した南西諸島戦線は人類側が優位に立ち回っており、大和以下突撃隊が大和のAPFSDSを発射する段階までには8000隻を下回るようになっていた。

 

 

帝都戦線も、数は少なくとも、参戦していた新自衛隊とその技術力によって底上げされた部隊が、大日本帝国軍の精鋭達と協力して、1mmたりとも本土上陸させない体制を築き上げていた。

 

 

 

だが、唯一劣勢となっていた戦線がある。

 

 

 

 

 

物部以下陸上部隊による陸戦となっていた北海道戦線だ。

 

 

 

 

 

 

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「海軍陸戦隊第4対戦車小隊との通信途絶!!」

 

「浜辺からは後退しろ!、見通しのいい浜辺では的になる!、市街地戦を行いつつ第2防衛ラインまで交代するように伝えろ!」

 

「一部が釧路市近郊に向かう模様!、別地点より上陸する気です!」

 

「行かせるな!、12式はそっちを狙え!、ATACMSを侵攻中の部隊に照準!!」

 

 

 

陸戦の始まった北海道戦線は厳しい戦いを強いられていた。

 

 

 

「航空機の発艦を確認!」

 

「陸軍航空隊を呼べ!、こっちじゃ対処しきれん!!」

 

「根室市近郊の地雷原突破されました!!」

 

「第6対戦車小隊へ!、地雷原を突破した部隊が来る!、陣地転換をして接近に備えろ!」

 

「F-16による航空攻撃開始!」

 

「F-15への補給はあと何分だ!」

 

「8分です!」

 

「急げ、一分遅れれば味方が消し飛ぶぞ!」

 

 

予定よりも多くの深海棲艦が上陸した根室市では、海軍陸戦隊による水際作戦を早々に切り上げ、根室市市街地まで一気に後退。市街地戦を行うことにした。

 

 

<<目標敵多脚戦車、無反動砲、撃てぇ!>>

 

<<上空敵機!!、突っ込んでくる!!>>

 

 

まるで蜘蛛や百足、蟹のような見た目をしながらもこの世のものとは思えない不気味な見た目をした深海棲艦戦車。

 

 

60式の隠れ撃ちや、パンツァーファウストを携行した歩兵部隊による熾烈な市街地戦は深夜になってもその勢いは衰えず、後退しつつも高い火力で攻撃の手を緩めない対戦車小隊と、それを潰すためにあらゆる手を用いる深海棲艦との間の戦闘で町はさながら第二次世界大戦のドイツやフランス、その他紛争地域のような地獄の様相を呈していた。

 

 

 

<<陸軍砲兵部隊より海軍陸戦隊へ!、これより根室市東部に向けた効力射を実施する!、直ちに指定地域から撤退せよ!>>

 

<<その必要は無い!、指定地域にいた味方はたった今全滅した!>>

 

<<なっ……、これより効力射を開始する!!>>

 

 

上陸部隊との激戦をすることになった海軍陸戦隊対戦車部隊は部隊の3分の1が全滅、つまるところ組織としては壊滅状態に等しいことになりながらも、遅滞戦術を駆使して敵に出血を与えてきた。

 

 

「新陸自の航空機はいつ来る!」

 

「現在東北地方を通過!、まもなく根室市上空に向かいます!」

 

「東北地方の弾道ミサイルは何をやってる!」

 

「根室市近郊の浜辺を攻撃していますが、命中精度の都合上、市街地は狙えません!」

 

「嗚呼もう!、敵が多すぎるんだよ!!」

 

<<こちら海軍陸戦隊!、まもなく第2防衛ラインまで後退する!>>

 

<<了解した、後退完了後直ちに所定地域に攻撃を開始する。速やかに退避せよ!>>

 

 

60式や、ジープが次々と後退を始める。

 

 

皮肉なことに、機雷原突破のために多数の艦艇型を犠牲にしたためか、撤退中の追撃に艦砲射撃はほとんど無かった。

 

 

 

「海軍陸戦隊撤退完了」

 

「新自衛隊はなんと言ってきてる?」

 

「いつでも良いと」

 

「うむ、全車前進!、深海棲艦を叩く!!」

 

 

北海道の精鋭第7師団。

 

 

61式戦車へと転換が進められたこの師団は、新自衛隊の機甲軍と協力して、北海道東部の広大な平原で戦闘することとなる。

 

 

「目標捕捉!」

 

「撃てぇ!」

 

 

61式戦車の90ミリライフル砲が一斉に射撃を開始する。

 

 

如何に深海棲艦が硬いとはいえ、戦後MBTは伊達では無い。

 

 

「命中!、多脚戦車沈黙!」

 

「良し!、このまま押すぞ!」

 

「上空より敵機!」

 

「何!?」

 

 

突っ込んできた敵機。

 

 

「衝撃に備えろ!」

 

 

身構えた兵士たちだが、<その時>は訪れなかった。

 

 

<<こちら新航空自衛隊所属F-15戦闘機、これより航空支援に入る>>

 

 

LRASMを撃ち終えたF-15が残っていた空対空ミサイルで敵機を撃墜する。

 

 

「た、助かった……」

 

「上は自衛隊が抑えてくれている!、今は目の前の敵を倒すぞ!」

 

「了解!」

 

 

61式戦車は、その機動性を活かし、多脚戦車を中心に撃破を重ねていく。

 

 

 

新自衛隊北海道司令部

 

「61式戦車交戦中、戦況はここに来てやや劣勢まで持ち直しました」

 

「機甲軍を投入、重戦車大隊を姫鬼級へ向けろ、中戦車はその支援に迎え、軽戦車隊は戦場を動き回り火力支援を、対戦車部隊は海軍陸戦隊の救出に当たれ」

 

<<重戦車大隊了解!、全車前進!!>>

 

<<中戦車連隊了解!、油圧サスペンション始動!、精密射撃開始!!>>

 

<<軽戦車隊、全車散開、分隊毎に支援要請のあった場所に支援に入れ!>>

 

<<こちら対戦車部隊、司令内容確認、目標味方追撃中の多脚戦車、攻撃開始!>>

 

 

 

堂々たる陣容を誇る新自衛隊最強の機甲部隊、第907機甲戦闘軍。

 

 

その一番槍は対戦車部隊だった。

 

 

中距離多目的誘導弾と言えば高機動車に載っかった物を思い浮かべるかもしれない。

 

 

だが、舗装率も低く、悪路の多い場所では装輪式ではかえって機動力を損なうため、新型を用意していた。

 

 

それが44式自走対戦車特車である。

 

 

特車と言われれば戦車を誤魔化すための言葉だと思われるが、明確な名称が付けられなかったこの車両にはむしろよく合っており。10式を流用した車体に、中距離多目的誘導弾の発射機と再装填装置を装備した対戦車車両であり、これに20mmバルカン砲を装備した対戦車、対装甲目標向けの専用車両となっている。

 

 

この44式特車は当然ながら10式のようにサスペンションで上下することができるため、隠密性、攻撃力共に高い水準となっている。

 

 

「隊長!、追っ手が!」

 

「おぉ……、自衛隊だ!、自衛隊が来たぞ!!」

 

 

破壊された多脚戦車を見て、対戦車部隊の隊長は自衛隊の支援と判断。そのまま後退し続け、なんとか味方陣地まで引き上げた。

 

 

「半数以上の損失と引き換えに多数の敵を葬り去ったのはいいが……、失われた命は戻らない……」

 

「隊長……」

 

「だが、これで戦いは終わった訳では無い。万が一に備えて再び準備せよ!」

 

「了解!」

 

 

海軍陸戦隊は、深海棲艦艦載機の自爆特攻や、多脚戦車による砲撃、その他各種の対地攻撃により、所属部隊の半数を損失する大損害を被ったものの、なんとか離脱に成功した。

 

 

 

そして、別の場所では、姫鬼級が悲鳴を上げていた。

 

 

 

「155mm、目標捕捉!」

 

「第1小隊全車連動!、足元を狙って撃てぇ!」

 

 

自走砲並の口径を持ちながらも、10式と遜色ないレベルの機動性を見せつけて離島棲鬼達を相手取っているのは、戦後はその存在意義が薄れたことによって消えていった重戦車大隊所属の45式重戦車。

 

 

とはいえ、さすがに硬い陸上型の姫鬼級深海棲艦を倒すには少々無理があるので、高い火力を活かして移動不能、活動不能に追い込み、後方からの火力支援をもって撃破していく。

 

 

「ヤ゛メ゛ロ゛!!、来ルナ!」

 

「バケモノメ!!」

 

 

深海棲艦側からすれば、柔らかい所を狙って砲撃し、痛みを与えてから空から猛烈な火力を喰らうこの戦術は恐怖でしかなく、先程まで海軍陸戦隊を追い詰めていた様子はどこへ行ったという有様である。

 

 

 

そして、やや劣勢だった61式部隊にも支援が来る。

 

 

「多脚戦車爆散!、味方の砲撃です!」

 

「どこからだ!?」

 

<<こちら中戦車連隊、10式戦車。こちらは長射程精密射撃で支援する。まもなく軽戦車隊も到達されるため辛抱されたし>>

 

「軽戦車!?、来ても的になるだけだぞ?」

 

<<心配無用、こちらの軽戦車は105mm砲搭載である>>

 

「お前のような軽戦車がいるか!」

 

 

とはいえ、そうしている間にも、塹壕などの物陰をサスペンションを使って上手く隠れつつ、精密射撃を行う10式戦車によって次第に戦況は好転していった。

 

 

 

<<軽戦車隊、突撃!>>

 

 

さらにここで15式軽戦車が突入。10式のデータリンクによって敵の位置を明らかにされた15式は、そのまま105mmライフル砲を用いて敵を撃破する。

 

 

 

だが、15式軽戦車隊は予想以上に大きな多脚戦車に困惑する

 

 

「嘘だろ……、なんてデカいんだバケモノめ!!」

 

 

(お前の方がバケモノだよ)

 

 

 

<<こちら第2戦車小隊、負傷者の出た味方を退避させようとしている。新自衛隊側に支援を求む>>

 

<<了解した、第2中戦車小隊は直ちに向かえ>>

 

<<了解、セイバー6より全戦車に告ぐ、前進!!>>

 

そう言って塹壕から飛び出てくる10式戦車。

 

 

「あそこです!、3500m前方!」

 

 

見ると多脚戦車が襲いかかろうとしている

 

 

「殺ろうぜ!」

 

「慌てるなまだ射程外だ」

 

 

冷静な車長はそのまま狙いを定めるように言う。

 

 

多脚戦車側もこちらに気づいたか砲を撃ち込むが、3.5世代戦車標準装備の複合装甲に容易く防がれる。

 

 

「1500m接近中!、こちら砲撃準備完了!」

 

「FIRE!」

 

「待ってました!!」

 

 

日本製鋼所44口径120mm滑腔砲が火を噴き、APFSDSが多脚戦車の頭部らしき部分から胴体までを貫き爆発させる。

 

 

「いいぞ!、いえーい!いえーい!」

 

「興奮するのはまだだ、次のターゲットを探してくれ」

 

「装填、確認!」

 

「良し!」

 

「FIRE!」

 

 

再びAPFSDSが放たれ爆散する多脚戦車。

 

 

「FIRE!」

 

 

立て続けに放たれた砲撃で多脚戦車は後退、その間に61式は撤退していった。

 

 

 

 

 

自走砲陣地

 

 

「FIRE」

 

「FIRE!」

 

「FIRE!!」

 

 

99式自走155mm榴弾砲が一斉射撃を行う。

 

 

TOT、Time On Targetをいとも容易く行うことの出来る自走砲部隊は、姫級や鬼級のいる場所に手当り次第山ほどの弾薬を撃ち込む。

 

 

「目標の爆散を確認!」

 

<<こちら61式戦車小隊

 

 

 

ありがとう!>>

 

<<お易い御用さ>>

 

 

 

1時はかなり劣勢に追い込まれた北海道戦線だが、陸自航空機到着前になんとか体勢を建て直すことができた。

 

 

 

 

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物量作戦となった今回の戦い。

 

 

最初に決着が着いたのは帝都戦線だった

 

 

「Target echo 1-1」

 

「Target echo 1-1」

 

「FIRE!」

 

 

真多が装甲ボックスランチャーの予備で作った自走トマホーク発射機で攻撃に入る。

 

 

 

「命中、撃沈!」

 

「良し!」

 

 

F-2などによる度重なる波状攻撃、艦娘による艦隊決戦、陸地からの対艦ミサイル攻撃を一手に受け続けた深海棲艦帝都侵攻部隊。

 

 

「残るは旗艦のみ!」

 

 

残った敵に全力を差し向ける帝都防衛部隊。

 

 

「ASM-3、攻撃開始!」

 

「主砲、撃てぇ!」

 

「SSM-1(2)、撃てぇ!」

 

 

陸海空全てから大火力を差し向ける。

 

 

 

「何故ダ……、何故ダァァァァァァァ!!」

 

 

 

空からASM-3 32発

海から41cm砲 8発他各種砲熕

陸よりトマホーク他対艦ミサイル 12発

 

 

 

オーバーキルという言葉がまさに相応しい大火力を喰らった帝都侵攻部隊旗艦中枢棲姫は欠片すら残さず吹き飛んだ。

 

 

 

「はぁ……、はぁ……」

 

 

最後に41センチ砲を叩き込んだ長門。

 

 

「殺った……のか?」

 

「多分……ね」

 

「良し……、やったぞ!!」

 

 

 

うぉぉぉぉ!、と盛り上がる艦娘達。

 

 

 

「倒した!、倒したぞ!!」

 

 

やったー!、大日本帝国バンザイ!、天皇陛下バンザイ!と声を上げる大日本帝国軍関係者。

 

 

「良し……、ここは何とかなった……」

 

<<ああ、今は信じよう、南西諸島戦線は提督が何とかしてくれる。北方には黒騎も行った。ここで焦ってしまっては元も子もない>>

 

「………準備だけはしておこう」

 

<<その通りだ>>

 

 

負傷者救出のために発進する捜索機のために滑走路を空けながら、夜が明けていく様子を眺めていた。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

一方、大和以下突撃隊突入後の南西諸島戦線

 

 

「大重量砲弾射撃終了、戦艦用装弾筒付翼安定徹甲弾発射用意!」

 

「敵弾来ます!」

 

 

大和、ここで賭けに出る。

 

 

「水中墳進錨を下ろしなさい!」

 

「えっ?」

 

「錨を下ろしなさい!」

 

 

錨を担当する妖精が錨を下ろす。

 

 

「大和!?、何やってるの!?、みんな死ぬよ!!」

 

 

ガガガガガ、と音を立てて錨が海の中に入っていく中で突然の暴挙に矢矧が声をかける。

 

 

「死は避けられない、矢矧さんだって死ぬし、私だって死ぬ。

 

みんないつか死ぬ。

 

 

 

でも今日じゃない!!」

 

 

 

ガキンッ!

 

 

「操舵用補助動力装置始動!、回ります!、同時に錨上げて!!」

 

 

大和の大きな艤装が一気にターンする。

 

 

「敵弾回避!、砲撃用意完了!、

 

 

痛いのをぶっ喰らわせてやれ!!」

 

 

初老の砲術長妖精が照準を合わせて双眼鏡を覗き込みながら声を上げる。

 

 

「撃てぇ!」

 

 

大和搭載の51cm三連装砲3基9門が一斉に火を噴き、硬い装甲に覆われた深海棲艦の姫級を軽々とぶち抜いて内部で炸薬が炸裂。

 

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」

 

 

悲鳴をあげる深海棲艦だが、物部によって魔改造された大和の恐ろしさはこんなものでは無い。

 

 

「多目標同時照準!」

 

「多目標同時照準良し!、姫級3、鬼級2、その他深海棲艦を捕捉、砲撃準備完了!」

 

「撃てぇ!」

 

 

51cm砲が一門ごとに違う目標を指向し、そのほかの副砲も異なる目標を同時に捕捉して発砲した。

 

 

所謂マルチロックオンと呼ばれるタイプのこれは、多対一を強いられる大和に向けて開発された装備の1つである。

 

 

 

命中精度についても言わずもがなというわけで、見事にほとんどの目標に命中させてしまった。

 

 

 

「姫級2、鬼級2、その他深海棲艦10隻以上を撃沈!」

 

「矢矧さん、時雨さん、雪風さん、冬月さん、涼月さん。大丈夫ですか?」

 

「平気よ、大和」

 

「上空航空機、味方機だ!」

 

 

見れば葛城のF/A18Eスーパーホーネットが対艦ミサイルを放って敵を仕留めている。

 

 

「残存勢力は?」

 

「姫級鬼級含め残り300!」

 

「ここで決めましょう……。さあ、やるわ!、砲雷撃戦用意!!」

 

「魚雷戦用意!」

 

「新自衛隊より入電、最後の航空攻撃を始めるよ!」

 

 

 

P-1対潜哨戒機とF-2がASM-3を発射し離脱する。

 

 

 

ASM-3は88発で、ここにゴーヤも攻撃に参加する。

 

 

「魚雷、誘導弾発射!」

 

 

対艦ミサイルと魚雷が放たれ、ASM-3と共に命中する。

 

 

 

<<大和、援護するわ、時雨、しっかりやんなさい>>

 

「山城……」

 

 

山城が対艦ミサイルを発射、高速雷撃艦隊なども対艦ミサイルを発射し、突撃隊を援護する。

 

 

最後の飽和攻撃によって、あと残すところは中枢棲姫。

 

 

再び闇夜が明るくなり、まもなく朝日が差し込んでくる。

 

 

「目標、正面!、中枢棲姫!」

 

 

時雨と雪風が中枢棲姫の攻撃を躱しながら懐に潜り込む。

 

 

「ゆき!」

 

「ぐれ!」

 

 

魚雷を同時に発射し、中枢棲姫を攻撃する。

 

 

「矢矧さん!」

 

「ええ、撃ち方用意!、涼月、冬月!」

 

「「了解!、撃てぇ!」」

 

 

矢矧以下涼月、冬月も攻撃を開始、高い火力で相手を追い詰める。

 

 

「オノレ……!、コンナハズデハ……」

 

 

恨み節を上げる中枢棲姫。

 

 

その矛先は艦娘か、人類か、はたまた転生者か、それは誰にもわかることは無い。

 

 

 

「砲術長妖精、装弾筒付翼安定徹甲弾の残弾は?」

 

「一斉射分あります!」

 

「装填してください射撃します」

 

「了解!、あ、大和航空隊からデータリンクです」

 

 

送られてきたデータは中枢棲姫の正確な座標だ。

 

 

そこに込められた航空隊の想いを受け取った大和。

 

 

「そうか……、それなら……、やるしかないわね!」

 

 

大和の51cm砲が中枢棲姫をしっかり捉える。

 

 

「夾叉無しで直撃させます!」

 

 

大和がこの海戦一番の集中力を発揮する。

 

 

「撃てぇ!」

 

 

1度目を閉じ、カッと見開いて主砲を放つ。

 

 

 

発射された砲弾は途中で分離し、槍のような細長い物体へと変化する。

 

 

                ・・

従来の砲弾に比べ、明らかに高速なソレは中枢棲姫に命中するとマッシュルーム状に変形し、中枢棲姫の体内で炸裂する。

 

 

体内では、身につけていた装備が貫徹された際の破片や、弾そのものの破片、そして大きな衝撃波が中枢棲姫を襲う。

 

 

当然耐えられるものではなく、体全体から泡のように膨れ上がった何かが体を覆い尽くし、やがて大爆発を起こした。

 

 

最後、絶叫すら残さずに逝ったのは、APFSDSの速度と加害の速さ故か、それとも別の何かかは誰も分からない。

 

 

「勝った……」

 

「ええ、勝ちました。私達の……、いえ、人類の勝利です」

 

 

矢矧と大和が喜びを静かながらも漏らす。

 

 

 

やったぁ!、と時雨に抱きつく雪風。

 

 

「すごい……、本当に勝てたんだ……」

 

 

未だに何が起きたのか分からず立ち尽くす時雨。

 

 

涼月と冬月は共に抱き合っている。

 

 

 

喜んでいたのは第零護衛隊群、高速雷撃艦隊、航空水上打撃艦隊、佐世保、呉も同じだった。

 

 

だが、多元は、転生者達はまだ緊張感を保ったまま、司令部から出てこない。

 

 

 

北海道ではまだ戦いは続いていたのだから。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

北海道戦線

 

 

「機甲軍上空に大型機!」

 

「来たか!」

 

 

10式から送られてきた映像を見れば濃緑色の有翼の機体が旋回しつつ、敵を攻撃していた。

 

 

<<作戦参加中の全部隊へ!、この期を逃すな!、深海棲艦へのクソ野郎共に総攻撃だ!>>

 

<<''了解''>>

 

 

塹壕で精密射撃をしていた10式が塹壕から出てスラローム射撃を行う。

 

 

89式が、CV90が機関砲と対戦車ミサイルで多脚戦車を撃破しつつ、味方を援護する。

 

 

「kadomiumu弾、発射」

 

 

黒騎が指揮するスーパーXⅢがkadomiumu弾を撃ち、姫級深海棲艦を倒す。

 

 

 

「俺達も行くぞ!」

 

 

砲撃を受けて撃破された味方を乗り越え、大日本帝国陸軍の61式が射撃する。

 

 

「海軍陸戦隊の意地を見せてやる!」

 

 

ここまで一番の被害を出してきた海軍陸戦隊も無反動砲で攻撃を行う。

 

 

 

15式軽戦車の軽快な機動力が敵を翻弄し、105mmライフル砲で確実に仕留める。

 

 

45式の火力が多脚戦車を形すら残さずに消し飛ばす。

 

 

第2防衛ラインまで後退していた陸上部隊が押し返しを図ると共に、航空隊も動き出す。

 

 

「LRASM発射!!」

 

「マーベリック発射!」

 

 

追加で航空攻撃も加わり、次第に深海棲艦は追い込まれていく

 

 

「メーザー照射!」

 

 

強力なメーザーを喰らった姫級が全身を燃え上がらせ、焼け死んでいく。

 

 

 

 

遂に深海棲艦は根室市市街地に立てこもることとなった。

 

 

 

「この期を逃すな!、全長射程兵器攻撃開始!」

 

 

99式、MLRS、12式、極超音速滑空弾、東北地方まで移動してきていたスカッド改良型ミサイルが一斉に立てこもった深海棲艦に対して攻撃する。

 

 

 

雨嵐のように降り注ぐ攻撃に耐えかねて飛び出してきた敵を確実に倒しながら、包囲網を形成。

 

 

 

延べ20000発以上の砲弾を叩き込んだ根室市市街地は最早更地同然となったが、一体逃すだけで再び人類の脅威になりかねない。

 

 

 

「撃てぇ!」

 

「発射!」

 

「攻撃開始!!」

 

 

 

残ったのは欧州棲姫。

 

 

 

機甲軍、陸軍、海軍陸戦隊の総力を結集して撃破にあたる。

 

 

 

「オノレ……、ジエイタイメ……、貴様ラガ居ナケレバ……」

 

 

禍々しい声が戦場に響く。

 

 

「うるせぇ!、さっさと逝け!」

 

 

容赦のない機甲軍は砲撃を続行。

 

 

 

「F-15、あれを落とせ」

 

<<了解、バンカーバスター投下>>

 

 

トドメとばかりにバンカーバスターを2発投下。

 

 

 

地下のコンクリート製の建物を破壊できるこの爆弾が、欧州棲姫を貫く形で爆発。声すら出せずに消し飛ばした。

 

 

 

 

「赤外線、光学カメラ、各種センサー及び目視で確認できる敵の存在を確認できず!、我々の勝利です!!」

 

「うぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

最後は10式戦車の連隊長が報告したことで、北海道司令部に北海道戦線での人類の勝利が伝えられ、日本大戦は集結した。

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

1964年、10月

 

 

「東京オリンピック、開幕です!」

 

 

 

世界中の青空を全て東京に持ってきたような素晴らしい天気の中で平和の祭典が開かれる。

 

 

[開催を記念しまして、<ほうしょう>航空隊による五輪マークです!]

 

 

電光掲示板と会場のアナウンスに同じ内容が流れる。

 

 

見れば、戦闘機に特別処置を施した5機が国立競技場の上空に大きな五輪をカラースモークで描いている。

 

 

 

「こら!、<しぐれ>!!、あんたどこ行ってたのさ!」

 

「ごめん、<やましろ>、ちょっと飲み物買ってた」

 

「あんたねぇ…」

 

「<やましろ>、あんまり責めてはダメよ」

 

「姉様……、ま、いいわ、せっかくのオリンピックなんだから楽しまなくちゃいけないわね」

 

 

 

深海棲艦の猛攻を日本が退けて19年。

 

 

 

長らく中止されていたオリンピックがようやく東京で開かれることとなった。

 

 

 

 

 

市ヶ谷、防衛省

 

 

<<さぁ、各選手スタートの構えを取った!………>>

 

 

テレビ中継を部屋で見ている多元の元に物部が入ってくる。

 

 

「よぉ多元、仕事サボってオリンピック観戦か?」

 

「おい、物部、てめぇ上官に対する口がなってねぇな?」

 

「おっとこれは失礼、多元統合幕僚長」

 

「全く……、こんな奴が陸幕とか陸自は大丈夫か?」

 

「空幕長と兼任の方が何をおっしゃるか」

 

「人が居ないんだよ」

 

「腰堀くんとかならどうなんです?」

 

「ダメ、あいつ今新三菱」

 

「あー、なるほど……」

 

 

多少のタメ語くらいなら許す多元である。

 

 

「あれから19年か……」

 

「海自は未だに忙しいらしいんですな」

 

「そうだな……、成田が嘆いていたよ」

 

 

 

主力を撃滅したとはいえ、それなりの規模が生き残っていたこともあり、まともに終結宣言が出せたのは日本大戦が終わった1945年4月から4ヶ月も経った8月15日だった。

 

 

当然、姫級などにも生き残りがいたため、新自衛隊は引っ張りだこであり、目が回るほど忙しいこともあった。

 

 

そして、国内でも深海棲艦を倒したとはいえ、それまでの財閥経済は完全に崩壊し、改革の必要性に迫られた。

 

 

そして、そんな中で、戦後のGHQ改革のような内容を日本主導で行うこととなる。

 

 

同時に憲法の再制定に伴い大日本帝国軍は自衛隊へと変更され、その要職は一部を転生者達が占める形となる。

 

 

艦娘達は自衛隊に引き継がれて名前も自衛隊のようにひらがなに改訂されており、新規建造された軍艦と共に第零護衛隊群から第五護衛隊群の6個護衛隊群が再編成された。

 

 

そして、しばらくは海上輸送の護衛を行い、深海棲艦の脅威が少なくなってきた現在は他国の海軍再建支援を行っている。

 

 

未だにまともな海軍が日米英独くらいしか残っていないこともあり、各地で再建を進める海軍の指導に海自は引っ張りだこだ。

 

 

「三八寒波の時は陸自も大変だったんですけどねぇ」

 

「あん時はご苦労さま、戦車まで持ち出して除雪したらしいじゃないか」

 

「ジェットエンジン使って除雪するわけにもいかんでしょうよ」

 

「あの後国鉄が借りに来た時は驚いたよ」

 

「まぁ、新幹線も開通して、史実より色々進んだのは良かったですね」

 

 

この世界では東海道・山陽新幹線の他に上越新幹線、東北新幹線が盛岡まで開通している。

 

 

「上越は開通急がせて正解だったな」

 

「あれで三八寒波は乗り切ったようなものですよ」

 

「お前さん今日から休みだろ?」

 

「ええ」

 

「どうせなら乗ればいいんじゃないか?」

 

「いえ、今回僕は山陽に乗りますよ、呉の<やまと>に久しぶりに会いに行かないと」

 

「500系のデビューに合わせた感じか?」

 

「もちろんです」

 

「ドライブデートでもするのか?」

 

「ちょ!、統幕長!!」

 

 

アハハハ、と笑う多元。

 

 

「高速道路も開通してるからな、のんびりするといい」

 

 

 

 

これにて会話は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

海上自衛隊、呉基地

 

 

 

「<やまと>、待たせてごめん」

 

「いえ、私も今来たばかりですから、気になさらず」

 

「そっか、じゃあ行こうか」

 

 

 

海岸線を歩く2人。

 

 

「東京からここまで5時間足らず、やっぱり新幹線はいいなぁ」

 

「本当に便利な時代になりましたね」

 

 

夕日は美しく、海面をオレンジ色に染め上げている。

 

 

「<やまと>は国外行かないのか?」

 

「これからは航空機の時代ですから」

 

 

その言葉が全てを物語っていた。

 

 

航空戦力主体となった現在、戦艦は急速にその価値を失い、<やまと>は近いうちに予備役入りする予定となっている。

 

 

「予備役入りしたら、どうする?」

 

「とりあえず、ゆっくりしたいですね」

 

「そうか……」

 

 

世界最強の戦艦としてその名を轟かせてきた<やまと>と誘導弾運用構想の元に運用されてきた<むさし>

 

 

日本大戦で南西諸島戦線を支えた<ふそう>、<やましろ>

 

 

最後まで象徴としてあり続けた<ながと>

 

 

彼女たちが予備役入りするということは、1つの時代が終わったことを表すのかもしれない。

 

 

 

「ゆっくりして……、それから……」

 

「それから?」

 

 

 

物部が問うと同時に物部の前に出る<やまと>

 

 

「あなたについていきますよ」

 

 

 

夕陽の沈む瀬戸内海をバックに彼女はそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





転生者達のその後


多元 実 航空自衛隊初代幕僚長を務め、その後統合幕僚長を兼任するようになる

腰堀 二郎 新自衛隊を退任後、新三菱重工に相談役として入社、以降自衛隊機の製造に携わる

平河 結弦 新自衛隊を退任後、現実世界におけるJMUを設立。自衛隊艦艇の建造を担当する

小玉 義雄 新自衛隊退任後、腰堀と共に新三菱重工に入社し、戦車開発に関する相談役となる

真多 獅郎 新自衛隊退任後、新たに設立された科学技術庁の長官になる

物部 咲 陸上自衛隊初代幕僚長となり、三八寒波では災害派遣で指揮を執る。


各鎮守府提督のその後

横須賀提督 大日本帝国海軍最後の海軍大臣となり、自衛隊との架け橋を担当する。その後は退役

呉提督 自衛隊最初の完全軍人艦隊である第4護衛隊群の群司令となる。

成田提督 海上自衛隊初代幕僚長になり各国の海軍再建に尽力する。


これにて今作は終了となります。


補足事項がありましたらまたこちらに記入させていただきますが、今後とも私の作品をどうぞよろしくお願いします。




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