あまねく奇跡の召喚録 (リメンバー召喚二次)
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シッテムの箱
シッテムの箱1
キヴォトス
人口 | 2億2500万人 |
面積 | 2372090㎢ |
最高指導者 | █████連邦生徒会長(失踪につき不在) 七神リン首席行政官(連邦生徒会長代行) |
政治体制 | 連邦制 |
言語 | キヴォトス語 |
通貨 | 円 |
紀年 | 神暦 |
数千の学園で構成される巨大学園都市。
西ヨーロッパ地域に位置しているが、召喚前の地球との因果関係は不明で、日本の物理学者や宗教学者などの間では並行世界の地球説や終末戦争後の地球説などが唱えられている。
人口の1/5が未成年の生徒をで占めており、キヴォトスや学園自治区の行政に生徒が介入している。
種族は人間・エルフ・獣人・天使・悪魔・鬼・アンドロイドの主要7種族とされている。
政治体制は連邦制で、キヴォトス全体の行政を担う連邦生徒会とは別に各学園には自治権が与えられており行政から治安は各学園独自の物が定められている。
アメリカもびっくりな超銃器社会で、拳銃・自動小銃・機関銃・狙撃銃・携行重火器などの火器が自動車並みに普及しておりその中でも生徒の火器保有率は高く、それに関連する企業も多い。
キヴォトスにおける最大規模の学園はトリニティ総合学園・ゲヘナ学園・ミレニアムサイエンススクールの3校でありこれらの学園は“キヴォトス三大学園”と呼ばれている。
科学技術に関しては土木技術・重力制御技術・高速演算技術・情報技術・ロボット技術の5分野においては日本やクラークリアより優位に立っている。
また、キヴォトスは科学と魔法が別々で成り立っている。
ちなみにキヴォトスはギリシャ語で“方舟”を意味する。
連邦生徒会
キヴォトス全体の行政を担う中央政府に値する組織。連邦生徒会長をトップに統括室と12個の行政委員会によって構成されている。
現生徒会長である█████が突如として失踪し、現在は統括室の首席行政官の七神リンが生徒会長代行を務めてる。
連邦生徒会は現会長の失踪以外の問題を抱えており、生徒会長代行を務めている七神リンの行動を越権行為とし良く思われてなかったり、各学園の問題などに介入する事に消極的な姿勢が仇となり、各学園は連邦生徒会に対して非協力的な姿勢を取られている。
連邦捜査部シャーレ
キヴォトスの行政組織の一つ。連邦生徒会長が失踪する前に設立された超法規的機関。
部活顧問は外界からやってきた先生と呼ばれる“大人”。
各学園の問題などに介入する事に消極的な連邦生徒会に変わり、各学園の問題や事件を解決し生徒からは高く支持され先生は慕われている。
トリニティ総合学園
生徒会 | ティーパーティーあああああああああああ |
生徒会長 | 桐藤ナギサ 百合園セイア 聖園ミカ |
生徒数 | 91万人 |
自治区人口 | 319万人 |
キヴォトス三大学園の1校。
文武両道を範とし、優雅で善良な生徒が多いお嬢様学校。
その裏は生徒との間の陰湿さやドロドロな人間関係などの人間の本性が垣間見れる学校でもある。
パテル・フィリウス・サンクトゥスの3つの学園を中心に救護騎士団の前身派閥やシスターフッドなど大小様々の派閥間の紛争を終わらせて一つの学園となる第一回公会議を経て現在のトリニティ総合学園が形成されたのが成り立ちである。
トリニティの生徒会に値するティーパーティーは先程挙げたパテル・フィリウス・サンクトゥスの分派のトップで構成されており、トップはホストと呼ばれ持ち回りの三頭政治体制を採用している。
ゲヘナ学園
生徒会 | パンデモニウム・ソサエティー(万魔殿) あj |
生徒会長 | 羽沼マコト |
生徒数 | 118万人 |
自治区人口 | 403万人 |
キヴォトス三大学園の1校。
校則違反上等・違反サークルが乱立する自由と混沌が校風の学園。
生徒会の
キヴォトスの自治区で唯一飛び地があり、自治区の面積も広大でレッドウィンターと一二を争うほどである。
また、ゲヘナ自治区内にはキヴォトスの大手航空機製造メーカーであるクロキッド・マリエタ社の本社や製造拠点がある。
ミレニアムサイエンススクール
生徒会 | セミナーあああああああああああああああj |
生徒会長 | 未定 |
生徒数 | 79万人 |
自治区人口 | 234万人 |
キヴォトス三大学園の1校。
科学技術に力を入れてる学園で新興学園ながら短期間の内にキヴォトス三大学園の指に入るまでに急成長。
“千年難題”という今の技術では解けない7つの難題に立ち向かう研究者の集まりをきっかけに現在のミレニアムサイエンススクールが誕生した。
キヴォトスで普及している科学技術の大半はミレニアムが発祥とされている。
生徒会にあたるセミナーの生徒会長調月リオは、横領などの不祥事を起こし生徒会長を辞任し雲隠れし、連邦生徒会長同様ミレニアムは混乱に陥っている。
アビドス高等学校
生徒会 | アビドス廃校対策委員会ああああああああj |
生徒会長 | 小鳥遊ホシノ |
生徒数 | 5人 |
自治区人口 | 1300人 |
キヴォトスの学園の一つ。かつては三大学園に匹敵する規模の学園だったが、数十年前のアビドス自治区で大規模な砂嵐が発生したことにより砂漠化が進み環境が変化。砂漠化対策の資金投入による多額の借金、生徒が他の学園に転校したり住民が他の自治区に移住した事による人口が流出した結果学園と自治区が衰退した。現在はアビドスの復興と借金返済のために設立されたアビドス廃校対策委員会の5人が生徒である。
百鬼夜行連合学院
生徒会 | 陰陽部ああああああああああああああああ |
生徒会長 | 天地ニヤ |
生徒数 | 18万人 |
自治区人口 | 87万人 |
キヴォトスの学園の一つ。独自のルールを定めている部活や委員会が連合を組んだ学園で、正式な生徒会が存在しない珍しい体制を採用している。
陰陽部が実質的な生徒会であるが、争い事を対処するのが百花繚乱紛争調停委員会が担当している。
グルメや温泉などの観光業が盛んで、京都を思わせるような街並みや文化は観光客には好評である。
水資源も豊富で半導体工場群が複数立地しているのも特徴である。
山海経高級中学校
生徒会 | 玄龍門ああああああああああああああああj |
生徒会長 | キサキ |
生徒数 | 13万人 |
自治区人口 | 90万人 |
キヴォトスの学園の一つ。独自の文化と長い伝統を誇り百鬼夜行と同じく観光業が盛んである。
生徒会の玄龍門はキヴォトスで唯一、裏社会との関わりが多いと噂されている。
最近、玄龍門と商人連合の玄武商会とは意見の食い違いで対立している。
レッドウィンター連邦学園
生徒会 | レッドウィンター事務局ああああああああj |
生徒会長 | 連河チェリノ |
生徒数 | 11万人 |
自治区人口 | 31万人 |
キヴォトスの学園の一つ。粛清と革命が日常茶飯事な学園でキヴォトスの僻地に位置し連邦生徒会の影響力が薄い。
雪が年中積もっており、人口は校舎がある周辺に集中している。
学園の規模の割に大型空母などを保有しているが、ほとんど稼働しておらずレッドウィンターが保有する大型兵器の半分は共食い整備や武装や鋼材を外され売り飛ばされている。
ヴァルキューレ警察学校
生徒会 | 警察学校長官官房あああああああああああj |
生徒会長 | |
生徒数 | 22万人 |
自治区人口 | なし |
キヴォトスの治安維持を担う警察機関。防衛室傘下の学園で特定の自治区を有していない。
各学園自治区に拠点が設置されているが、自治権があるが故動きが制限されている。
予算が少ないため財政状況は芳しくなく、D.U.以外の拠点での装備や弾薬の充足率は不足気味。
対テロ戦を担う公安局、通常警備を担う警備局、通常業務を担う生活安全局、サイバー犯罪を担う情報通信局、交通業務を担う交通局、装備の整備を担う整備局の6つの部署に分かれている。
SRT特殊学園
生徒会 | 特別対応本部あああああああああああああ |
生徒会長 | |
生徒数 | 100人 |
自治区人口 | なし |
連邦生徒会長直属の学園。ヴァルキューレ同様特定の自治区を有していない。
Special Response Team の頭文字から取りSRTと呼ばれている。
治安維持を担うヴァルキューレ警察学校では対処できない案件に対して出動し、各学園の自治権を気にせず介入することができる。
選抜基準は厳しく生徒はエリート揃いで、練度や士気も高く武器や装備もキヴォトスでも最高レベルの物がヴァルキューレより優先的に配備されている。
クロノスジャーナリズムスクール
生徒会 | クロノス常務部ああああああああああああj |
生徒会長 | |
生徒数 | 6000人 |
自治区人口 | なし |
キヴォトスの学園の一つ。こちらも特定の自治区を有していない。
報道などのマスメディアに特化した学園で電波・紙・インターネット媒体でメディア展開している。
電波はクロノスチャンネル、紙は月刊キヴォトス、クロノス・インサイト、キヴォトス年鑑シリーズ、インターネットはクロノスチューブなど。
たまに報道熱が加熱し事実を捻じ曲げたり盛ったりする事もある(特にクロノスチャンネル)。
エイギル沿岸警備大学校
生徒会 | 沿岸警備総務部ああああああああああああj |
生徒会長 | |
生徒数 | 12万人 |
自治区人口 | なし |
キヴォトスの治安維持を担う警察組織。防衛室傘下の学園でキヴォトス各地に拠点を置いており特定の自治区を有していない。
ヴァルキューレが地上での警察活動に対して、エイギルは海上での警察活動を主とし、海賊組織の取り締まりや船舶事故の際の救助活動などを任務している。
艦艇による海上警備・海上救難を担う海上警備局、航空機による海上警備・海上救難を担う航空警備局、測量や情報提供を担う海洋情報局、航路制定・港湾業務を担う海上交通局、艦艇や装備技術の開発を担う技術局の5つに分かれている。
ノースポイント学園
生徒会 | 連合生徒艦隊あああああああああああああj |
生徒会長 | 秋城ミカド |
生徒数 | 8万人 |
自治区人口 | 20万人 |
キヴォトスの学園の一つ。バリバリの大艦巨砲主義を掲げる学園で地球基準の超弩級戦艦を40隻以上保有している。
生徒のほとんどは自他共に認める戦艦狂で「戦艦こそが正義!それ以外は二の次!」と言う考えが主流である。
戦艦以外にも戦艦クラスの大砲を載せた軍艦をいくつか保有している。
ノースポイントが保有している戦艦で最大は46cm砲を搭載したタナガー型戦艦5隻で連合生徒艦隊と風紀艦隊に配備されている。
ヘパイストスコンストラクションスクール
生徒会 | 建設本部あああああああああああああああj |
生徒会長 | |
生徒数 | 1万人 |
自治区人口 | 10万人 |
キヴォトスの学園の一つ。
建設や土木に特化しており、キヴォトス最大の鉄道道路併用橋“モーゼ・ゲート・ブリッジ”などの巨大建築物から戸建ての建設を手掛けている。
モーゼ・ゲート・ブリッジ以外にもサンクトゥムタワーやシャーレタワー、アスレチックスタジアムなども同校が関わっている。
自治区面積はキヴォトスで1番の最少面積で限られた面積の中に、校舎があるヘパイストスビル、住民が住むツインタワーや大規模マンション、商業施設や公園やトレーニングジムがある高層利便施設が30棟以上。そこでは生徒や住民が生活基盤を築いて生活している。
オシリスバイオロジースクール
生徒会 | オシリス生徒会ああああああああああああj |
生徒会長 | |
生徒数 | 6000人 |
自治区人口 | 2万人 |
キヴォトスの学園の一つ。
医療・医薬品に特化しており、生物学全般についての研究もしている。
この学園の校舎は半径20km圏内が何もない無人地帯となっている。学園の特性上、生物災害いわゆるバイオハザードが発生する確率が高いため校舎を居住区から隔離させている。過去に何度か生物災害を起こしており、中でも有名なのは栗饅頭が無限に増殖して居住区が飲み込みかけた事がある。ちなみに生物災害が発生した際は風紀委員会と滅菌委員会が出動し対処する。
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シッテムの箱3
11月23日 三瑞・光菱・角友・明日田・富嶽の5大財閥が解体。五大財閥解体を契機に約80社の財閥・コンツェルンが解体される。
警察の対応能力を超えたため、政府は自衛隊に対して武器使用を認めた治安出動が命令される
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Vol.2.5キヴォトス召喚編
キヴォトス召喚
中央暦1651年
西暦にして2029年
日本国が異世界に転移して12年の時が経った。
東京都小笠原諸島から300km離れた海域に3つの島が転移し世界は大騒ぎとなった。
日本国はそれ以上の大騒ぎとなっていた。
何せその2つの島は、イギリス・西ヨーロッパに該当する地域の島だからだ。
転移に巻き込まれたイギリス・西ヨーロッパ出身の外国人はその事を知り故郷に帰れると大歓喜。
日本国政府は航空宇宙自衛隊の情報収集衛星や偵察機で調査した結果、地上にはビルなどの人工物が確認でき何かしらの行政機構がある事が分かった。
しかし、政府首脳部は衛星写真や空中写真を見てある事に気づいた。
転移前のヨーロッパの衛星写真などを見比べた時に明らかな差異があったからだ。
SF作品に出てくるような近未来的なビル、今は亡き京都を思わせるような街並みと言った、到底イギリスや西ヨーロッパには無さそうな街並みがゴチャ混ぜにあったからだ。
さらに西ヨーロッパの境目にあるはずの東ヨーロッパは巨大な湖になっていた。
もしかしたら、異世界と地球では時間の流れ方に差異があり地球では異世界より時間が速く進んでいるかもしれない。
京都を思わせるような街並みは、地球に取り残された日本人や日本が大好きな外国人が、日本の街並を再現した日本人街か新潟にあるようなロシア村と同じ日本村みたいなテーマパークと言う可能性もある。
それはさておき、日本国政府はイギリス・西ヨーロッパ地域の把握と行政機構との接触を図るため、超大型護衛艦“やまと”を旗艦とする護衛艦12隻の第1航空打撃護衛艦隊の派遣を決定し、艦隊は母港の横須賀から出港した。
キヴォトス沖
エイギル沿岸警備大学校所属の大型警備艦“サラミス”がキヴォトス沖を航行していた。
エイギル沿岸警備大学校は、キヴォトスの海を荒らす黒髪海賊団などの海賊組織の取締、沖合での船舶事故の際の救助を行う連邦生徒会防衛室管轄下の学園だ。
ヴァルキューレ警察学校と同じくキヴォトスの各所に拠点がある。
航行しているサラミスは、サラミス級大型警備艦のネームシップであり、彼女は排水量10000トン、全長170mのエイギル最大の大型警備艦だ。
武装に自走榴弾砲の砲塔を流用した52口径155mm単装砲1門・連装ミサイル発射機1基・30mm7連装ガトリング砲2基・12.7mm重機関銃を搭載、更にヘリコプター2機の搭載が可能で、最大装甲厚100mmの重武装・重装甲を施している。
しかし、武装や装甲を載せまくった結果建造費と維持費が高くなったため3隻の建造で打ち切っている。
大型警備艦サラミス 航海艦橋
航海艦橋で作業をしている生徒達は、セーラー服と短パンとオーバーニーソックスを組み合わせた制服を着用し、海に由来するヘイローを浮かせていた。
「ウミヨ委員長〜。レーダーで12隻の船団を探知したよ〜」
レーダー担当の南部アイカレーダー委員長が、赤い学級委員長席に座る東堂ウミヨに報告する。
「それは本当かい?船団の位置は?」
「西に40kmの位置に居るよ〜。どうする〜?」
「海賊かもしれないしな...とりあえず、ヘリを飛ばして確認しよう。飛行委員長、ヘリの発艦準備をしてくれ」
サラミスの飛行甲板から武装偵察ヘリコプターが発艦し謎の船団に向けて飛行した。
海上自衛隊第1航空打撃護衛艦隊
小笠原諸島から20km先の海域に転移してきたイギリス・西ヨーロッパ地域を目指し12隻の護衛艦が航行していた。
旗艦である超大型護衛艦やまとは、先の戦争で敗戦したグラ・バルカス帝国に対しての戦争賠償の1つとして、グレードアトラスター型戦艦の設計図を接収。
設計図を基に少しだけ弄り現代の装甲技術や造船技術を動員した戦後日本・海上自衛隊初の国産戦艦だ。
排水量118000トン、全長314mとグレードアトラスター型戦艦より大型化している。
武装に50口径460mm3連装
機関にN²を燃料としたN²機関を搭載しており無限の航続距離を実現している。
超大型護衛艦やまと 航海艦橋
「対空レーダーに感あり。方位24、速度120ノット、高度2000、距離30、飛行物体が接近中」
レーダーを担当していた船務長が、やまと艦長であり艦隊司令の池田海将補に報告する。
「この速度だとヘリコプターか。IFFに反応は?」
「反応はありません」
「イギリス海軍の物では無いか。と言うことは地球とここじゃ時間が経ってるのか」
艦橋内は浦島太郎の気持ちを味わったような雰囲気になっていた。
「どうします?」
「接触する。全艦に通達、進路そのまま、第3戦速」
To Be Continued......
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キヴォトス沖
アパッチ コクピット内
大型警備艦サラミスの飛行委員部所属の武装偵察ヘリコプター“アパッチ”が、サラミスのレーダーで探知した船団を確認するため飛行していた。
「船団なんて珍しいね」
「でも、今日この海域を通る貨物船の報告なんてないよ」
飛行委員部の生徒の2人は愛機を操縦しながら雑談を交わしていた。
キヴォトスにも海運と言う概念は存在する。
カイザーコーポレーション傘下の“カイザーマリン”などの海運企業、レッドウィンター連邦学園の学園貿易部などの物流部を持っている学園、ブラックマーケットの海上密輸部門など様々だ。
「オデュセイアかノースポイントの船かな?あそこは基本集団行動だし」
オデュッセイア海洋高等学校は複数の船でされている学校、ノースポイント学園は大艦巨砲主義を掲げるキヴォトス辺境の東に位置する学校が、基本的に船団か艦隊で行動する。
この2つの学園以外で船団か艦隊で行動するのは、エイギル沿岸警備大学校とレッドウィンター事務局海上警備委員会、カイザーPMCの水上部隊、黒髪海賊団などの海賊船がある。
「オデュッセイアはミレニアムの港に居るし、ノースポイントは東の辺境の学校だからあり得ないよ。エイギルはサラミス以外の6隻が定期哨戒だで、レッドウィンターもNPと同じ。カイザーのは全部私有の港に居るし、海賊は今別の所で暴れてる所だし」
「この船団って一体どこの物なの?」
大型護衛艦やまと 航海艦橋
『艦橋ウィング、飛行物体を発見!方位24、高度2000、距離30、アパッチです!』
艦橋ウィングで監視を担当していた一等海曹が航海艦橋に方向する。
「アパッチだって!?やっぱりイギリスだったか」
『いえ、機体に
「エイギル沿岸警備大学校?文字が漢字と仮名?」
「そんな学校あったか?」
艦外カメラで確認したところ、確かに青と白のアパッチことAH64D戦闘ヘリコプター“アパッチロングボウ”が飛行していた。
拡大して見ると、機体後部に女性と2匹の魚が入った紋章と“エイギル沿岸警備大学校”と言う文字が確かに書かれていた。
池田達航海艦橋の要員は聞いた事もない学校と日本語で書かれている事に困惑していた。
「コックピットを拡大できるか?」
池田の指示でコックピットをズームをする。
「女性、それも2人か」
「女性ですけど、なんか若く見えますね。高校生ぐらい?」
謎が深まるばかりとなっている。
アパッチ コックピット内
海上自衛隊が困惑していると同時にサラミス飛行委員部所属のアパッチのパイロットも海上自衛隊を発見し困惑していた。
「何あれ、戦艦があるよ!やっぱりノースポイントじゃないの!?」
「しかもレッドウィンターが持っていた空母が1隻!」
辺境の地に居るはずのノースポイントとレッドウィンターの軍艦がいる事に2人は驚いていた。
しばらく驚き冷静さを取り戻し分析に入る。
「あれ、ノースポイントにあんな戦艦いったけ?艦橋の雰囲気はどことなく似てるけど何か違うような」
ノースポイント最大の戦艦タナガーと発見した謎の戦艦は雰囲気は似ているが細かい所を見れば違いがあった。
タナガーより一回り大きく、両舷に配置されている兵装も自動対空砲群ではなく副砲と思わしき物と単装砲、主砲もタナガーの3連装砲3基ではなく3連装砲4基を配置しているのだ。
ノースポイントが最近タナガーを超えるような戦艦を建造したと言うのは聞いたこともない。
「空母もレッドウィンターが持ってる空母のような飛行甲板じゃないし」
レッドウィンターが保有する空母ウィンター・チェリノと船団にいる空母は明らかな差異があった。
アイランドのの大きさや形は似通っているが、飛行甲板の広さに関してはウィンター・チェリノより広く、艦上にあるのはヘリコプターではなく戦闘機だ。
「しかも、戦艦と空母の周囲にいる船も、カイザーのフリゲート艦と似てるような」
周囲にいる船はカイザーPMCのフリゲート艦のように、単装砲が1門から2門と垂直発射装置と思わしきミサイル発射管にステルス性を重視した見た目となっている。
陣形も乱れておらず、高い練度である事が見て伺える。
極め付けは船団の旗である太陽を思わせるような紋章。
キヴォトスにある学校や企業でこのデザインは見たこともない。
「ど、どうする?呼びかける?」
「今、サラミスがこっちに向けて最大戦速で駆けつけてるらしいよ。船団への臨検はサラミスの戦闘委員部がするって」
「帰還する?」
「そうしようか。飛行委員長に帰還する事を伝えといて」
サラミス飛行委員部所属のアパッチは母艦であるサラミスが居る方向へ引き返した。
To Be Continued......
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始発点
超大型護衛艦やまと 艦橋
エイギル沿岸警備大学校と言う文字が書かれていたアパッチが居なくなった数分後に、その学校の船を見つけた海上自衛隊第1航空打撃護衛艦隊一行は、その船を見て困惑していた。
「あれって海保の“あきつしま”でしょうか?」
「確かに似ているが、“あきつしま”は76mm速射砲が載ってるが、目の前の船は速射砲塔がドイツのPzH2000、ミサイル発射機がMk26、CIWSらしき兵装はゴールキーパーのそれだ」
エイギル沿岸警備大学校のであろう船は、船体が海上保安庁のヘリコプター搭載巡視船“あきつしま”にヨーロッパ製とアメリカ製の艦載兵装を搭載している奇妙な見た目をしていた。
「艦長、該当船から通信です。該当船は日本語でエイギル沿岸警備大学校所属大型警備艦サラミスとの事です」
「内容は?」
「臨検を行うので停船を求めています」
「分かった。全艦に通達、機関停止」
海上自衛隊第1航空打撃護衛艦隊はエイギル沿岸警備大学校大型警備艦サラミスによる臨検を受け入れる為停止した。
大型警備艦サラミス 戦闘委員部部室
大型警備艦サラミスは、海上自衛隊と名乗る船団を臨検するために準備をしていた。
臨検を実施するのはサラミスの戦闘委員部の生徒10人。
海賊を鎮圧する際の白兵戦、臨検を担当している。
部屋にサラミスの学級委員長である東堂ウミヨが入る。
生徒達は制服の上に予備のマガジンが入った防弾チョッキと肘と膝に付けるサポーターを装着する。
艦内の武器庫に入っている、エイギル制式小火器と弾薬を手に取る。
白兵戦用のエイギルAR70/90オートマチックライフル、火力支援用のエイギルLMG70/90ライトマシンガン、エイギルHG92ハンドガンだ。
使用弾はいずれも5.56mm弾と9mm弾の2種だ。
「戦闘委員部、準備完了。何時でも行けるよ」
『了解、それじゃあ臨検を頼むよ。安全が確保出来たら僕も行くから』
戦闘委員部の大海キヨミ委員長とウミヨ学級委員長とのやり取りを終え、臨検する海上自衛隊の大型護衛艦“やまと”に乗り込もうとしていた。
大型護衛艦やまと 甲板上
大型護衛艦ヤマトでも、サラミスの臨検隊を迎え入れるため右舷タラップに池田艦長たち数名の隊員と、外務省から出向した女性外交官“小原来乃未”が待機していた。
池田達幹部以外の隊員は、立検隊装備で洋上迷彩服の上の防弾チョッキとサポーターを装着し個人火器の20式小銃を携行していた。
「小原さん、サラミスの臨検隊はタラップを昇っています」
「そろそろかですか、ドキドキしますね」
池田からの報告に小原は、この異世界に来た時のような感覚になっていた。
初めて接触したクワ・トイネの海軍軍人も、こんな気持ちで接触したのかと思うと感慨深かった。
その時は来た。
キヴォトスとのファーストコンタクト。
まだ、誰も知らない災い・因縁・奇跡への始発点が。
To Be Continued......
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予想外の接触
「「「「えっ?」」」」
その場にいた者たちが同時に声を重ねた。
何せ接触した者の容姿が予想外すぎたのだから。
「か、艦長、女の子ですよ。女の子が銃を持ってますよ」
「どうなってるのだ?俺達は夢を見ているのか…」
池田達海上自衛隊側は、臨検で乗り込んできたのが銃を持った年端もない女の子だからだ。
「戦闘委員長、男っすよ。先生と同じ男がたくさん!」
「あっちも銃を持っているし正規軍?」
サラミス戦闘委員部も、海上自衛隊と名乗る船団の人間が先生と同じ男だったからだ。
あまりの予想外の出来事に両者はしばらく固まっていたが、サラミス戦闘委員部は自分達の任務を思い出し任務を遂行する。
「あ、エイギル沿岸警備大学校大型警備艦サラミスの戦闘委員部です。貴方方らは、すでにキヴォトス領海に侵入しているのですが、航海目的を教えて頂きたい」
「我々は海上自衛隊第1航空打撃護衛艦隊です。我々は日本国政府により、この先にある該当地域の把握と現地政府との接触をするため派遣されました」
両者は挙手の敬礼をし一通りの紹介を終えた。
「海上自衛隊第1航空打撃護衛艦隊?日本国政府?聞いた事もありませんね」
「我々もエイギル沿岸警備大学校と言う学校なんて聞いた事もありません。キヴォトスはギリシャ共和国の事ですか?」
池田達が言うキヴォトスは南ヨーロッパのギリシャ共和国グレヴェナ県の村を指す。
だが、ギリシャ共和国も転移してきてないのでありえないはずだが、念の為に確認する。
「ギリシャ共和国?聞いた事ありませんよ。キヴォトスはキヴォトスじゃないのですか?」
両者の認識が一致しない事に戸惑いを隠せなかった。
「とりあえず言える事は、我々は貴女方には敵対する意思はありません」
「それにしても、銃でお出迎えなんて物騒ですね」
「貴女方も中々物騒ですよ。自動小銃ならまだしも臨検隊には過剰な機関銃を携行してますから」
話は平行線のままになりかけてる。
戦闘委員部はあとの対応をウミヨ学級委員長達に任せる事にした。
「私達では埒が明かないので、後の事は学級委員長とお話しましょう。もうしばらくしたら来るのでお待ちを」
「学級委員長?」
「民間船やカイザーのフリゲート艦で言う船長か艦長です」
10分後、戦闘委員部に続きサラミスの学級委員長であるウミヨが他の学級委員メンバーを連れてヤマトに乗り込んだ。
「大型警備艦サラミス学級委員長の東堂ウミヨです」
「海上自衛隊第1航空打撃護衛艦隊旗艦ヤマト艦長の池田拓人です。海将補で海軍少将と同じ階級です」
「日本国外務省より出向しました小原来乃未です」
池田とウミヨがお互い挙手の敬礼をし、小原とウミヨは握手する。
「こんなところで立ち話も何ですから、本艦の士官室で話をしましょう」
池田達はウミヨ達学級委員と戦闘委員部の生徒2人を連れてヤマトの士官室に通した。
大型護衛艦やまと 士官室
幹部自衛官が食事をしたり、寛いだり、部外者を応接をする部屋として機能する。
池田達幹部自衛官とウミヨ達学級委員は士官室の長机を隔て着席していた。
「東堂艦長、日本やギリシャは本当に知らないのですか?」
「聞いた事もありません」
「と言う事はイギリスもフランスもドイツも?」
「はい」
地球の国家を知らないとは一体どういう事なのか謎は深まるばかりだ。
「東堂艦長達が言うキヴォトスは、我々から見ると地球のヨーロッパと言う地域に該当する場所なんですよね。キヴォトスの地図かなにかありませんか?」
「地図だったら、僕のスマホでよろしければ」
ウミヨはそう言い、懐から林檎が実った木のマークのスマホを取り出し、地図アプリを開く。
池田は官給品のタブレットを開き、イギリス・西ヨーロッパ地域の地図を映し出す。
「似てるどころかそのまんまじゃないか」
「ちなみにこれがイギリスです。キヴォトスでは何と呼ばれていますか?」
「ここはトリニティ総合学園とゲヘナ学園がある自治区です。この2つ以外にも中小規模の学園の自治区がいくつかありますけど」
「次にフランスで、こっちがドイツ、ここがベルギーとオランダです」
「そこはミレニアムサイエンススクールの自治区とゲヘナの飛び地で、こっちはレッドウィンターの自治区です」
「ベルギーと呼ばれた場所は、連邦生徒会や複数の学園がある自治区。オランダには百鬼夜行連合学院と山海経高級中学校の自治区があります」
おおよその地域の把握は終わり、小原はさっきから気になっていることを質問しようとする。
「そのさっきから学校の名前が出ているのは何故ですか?いや、それ以前に東堂艦長達は明らかに学生の上、重武装の警備艦を乗り回しているようですけど」
名称が学校の名前である事に疑問を持っていた。
日本やアメリカみたいに国名もしくは県名か州名で呼称する物だ。
それに自治区とは一体どう言う意味なんだ。
「キヴォトスは数千の自治権を持つ学園とキヴォトス全域の行政権を持つ連邦生徒会によって構成されている学園都市です。自治区の運営や行政の運営は基本的に私達生徒がやっています」
キヴォトスは地球で言うアメリカ合衆国と言った連邦制を採用し、日本の学園都市を凌ぐ数の学園で形成された超巨大学園都市だからだ。
「学生が都市の行政を運営するなんて聞いた事もないぞ!?」
あまりの非常識的な答えに1人の幹部自衛官が声をあげ驚いていた。
「えっと、ちなみに我々みたいな“大人”はいないのですか?」
「“大人”は先生かロボットか犬猫ぐらいじゃなかったけ?」
「池田艦長達のような大人は先生ぐらいですね」
池田は今把握した情報を集約してある仮説に辿り着いた。
「東堂艦長、これは私の一個人の意見だが、お互いの正体が分かるかもしれない」
「お互いの正体…」
「池田艦長、分かったのですか?」
東堂達学級委員と小原と幹部自衛官は池田の説明を聞くため部屋は静かになった。
「量子力学における多世界解釈論をご存知ですかな?」
東堂達は量子力学と言う言葉を聞き嫌そうな顔をした。
科学系の勉強は嫌いなようだ。
「ははは、勉強はあんまり好きじゃないようですね。私も勉強あんまり好きじゃないのでわかりますよ」
“微笑ましいな”と思いながらも本題に入る。
「簡単に言ってしまえばパラレルワールド…1つの世界から可能性が分岐し並行して存在する世界の事を指します。私が海自の戦艦の艦長じゃなくただのサラリーマンとして家庭を築いたり、日本が世界を支配する可能性だってあります」
「我々から見ればキヴォトスは可能性が分岐した並行世界の地球、貴女方から見れば我々は可能性が分岐した並行世界のキヴォトスになります」
「つまり、僕達と貴方方は同じ惑星の可能がある並行世界の住民と言う事ですか?」
「これは私個人の意見です。キヴォトスとヨーロッパの地形情報がほぼ一致しているとは言え、宇宙には天文学的な数の惑星があります。低い確率ではありますが、地形や言語形態などが似ている惑星もあり、更に低い確率でこの世界に転移して来たかもしれません」
その可能性も十分に有り得るし既に“グラバルカス帝国”と言うモデルケースが存在しているのだ。
日本とキヴォトスはお互い可能性が分岐した並行世界の同一惑星か、天文学的確率で一致した別惑星の地域となる。
ウミヨ達はお互いの正体は何となく分かったが、あとの細かいところは連邦生徒会かミレニアムスクールの研究者共に押し付けとけば良いだろう。
しかし、ウミヨはある単語に疑問を抱き質問する。
「失礼、この世界に転移して来たと言ってましたが、ここは地球ではないのですか?」
「まだ把握してないのですか?精巧な地図があるので既に人工衛星で把握していたと思っていましたが」
「???」
そういえば、最近人工衛星からの情報更新がなかった事を思い出した。
連邦生徒会は追及する事を許さない程混乱していたから、それが関係しているのだろうか。
「良いですか、落ち着いて聞いてください。キヴォトスは我々と同じく別の惑星へ領土ごと転移したのです」
「つまり?」
「…キヴォトスは魔法と科学が混同する世界“クラークリア”に転移して来たのです」
しばらくの沈黙の後、東堂達は信じられないと言う顔をしたが、池田から航宙自衛隊の情報収集衛星で撮影した今の世界地図を見せられた。
「「「なななな、なっ、何ですってーーーーーー!?」」」
To Be Continued......
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会談準備
キヴォトス
キヴォトス全域の行政を担当する連邦生徒会などの重要機関が置かれている地域。
いわばキヴォトスの首都である。
D.U.には行政機構が入っているサンクトゥムタワー、連邦議会のキヴォトス・キャピトル、カイザーコーポレーションやフォビトフルートなどの大手企業の本社、ヴァルキューレ警察学校のD.U.の治安維持を担当するウトナピシュティムヤード、自治区のある中小規模の学校が複数立地している。
キヴォトスの政治は、行政のトップである連邦生徒会室、統括室、調停室や財務室などの11個の行政委員会、連邦捜査部
そんなキヴォトスでは、トップである連邦生徒会長の不在による政治的空白を埋めるため、首席行政官の七神リンが生徒会長の代行となっている。
その連邦生徒会も学園の課題や学園間の紛争介入に消極的な態度を示しており、そんな連邦生徒会に代わってシャーレの先生が各学園の問題や生徒の悩みを解決するため動き回っている。
生徒会長が行方不明になった時は、行政機構が入っているサンクトゥムタワーの管理は連邦生徒会長にあったため、連邦生徒会の行政制御権が喪失。
数千の学園の自治区で混乱が起き、風力発電所がシャットダウンしたり、連邦矯正局と言う日本で言う刑務所に収容していた生徒が脱走したり、不良達が生徒を襲う頻度が増え自警団の治安維持が難しくなったり、出処不明の兵器が出回ったりしていたが、シャーレの先生により混乱は収束している。
連邦生徒会長の行方不明に次ぐ混乱が2つ起きていた。
キヴォトスの衛星軌道を周回していたGPS衛星、情報収集衛星、気象衛星などの人工衛星がロストしキヴォトスの行政や生活に影響を与えていた事。
次にエイギル沿岸警備大学校の警備艦が正体不明の船団を発見し臨検したところ、正体不明の船団は日本国の海上自衛隊と名乗りキヴォトスとの交流を望んでいると言う事だ。
最初こそは、この混乱を収めるため後回しにし、お帰り願おうと思っていたが、彼らはキヴォトスと同じ言語と文字を使っており今のキヴォトスの混乱の原因を知っていると言うのだ。
この混乱の原因を知っているなら事態収束に繋がると判断し、連邦生徒会は日本国との会談を決定した。
キヴォトス カスメル海峡
D.U.やキヴォトスにある学園の8割が所在しているカスパール島、トリニティ総合学園やゲヘナ学園などの学園が所在しているメルキオール島。
この2つの島の間を隔てる海域にカスメル海峡が位置していた。
そんなカスメル海峡にエイギルの警備艦を先頭に見慣れない灰色の軍艦が着いてきていた。
海上自衛隊第1航空打撃護衛艦隊の護衛艦12隻だ。
キヴォトスの首脳陣と会談をするためD.U.港を目指し航行していた。
天を衝くように向けられた大型護衛艦やまとの460mm3連装電磁加速砲、N²機関搭載航空護衛母艦“ほうしょう”の飛行甲板に、翼を折り畳められ駐機しているF−3B戦闘機とF−2C戦闘攻撃機、ほうしょうを守るように布陣されたミサイル護衛艦と無人護衛艦、水上航行する黒塗りの潜水艦。
付近を航行していたコンテナ船の乗組員やクルーザーに乗っている生徒達が、その光景物珍しげに見ていた。
キヴォトス サンクトゥムタワー
サンクトゥムタワーでは日本国の外交官との会談をするため準備を進めていた。
「会議室の手配は?」
「第7会議室の手配ができています」
「資料の作成は?」
「あとは人数分を印刷するだけです」
首席行政官で連邦生徒会長代行の七神リンが会談の準備を指揮していた。
そんなリンの元にある人物が近づいて来た。
「リンちゃん!来たよ!」
「先生、お疲れ様です。お忙しい中すみません」
彼こそが、連邦捜査部シャーレ顧問の先生だ。
特に名前はないが、キヴォトスの生徒や住民からは先生と呼ばれている。
各学園や生徒の悩みを解決するためキヴォトスのあちこちを動き回っているせいか髪は白髪が混じっている。
「まさか、一国の外交官と会談する事になるとはね」
「はい、今回は先生と同じ“大人”で“キヴォトスの外から来た存在”と会談します。恐らく足元を見てくるかもしれません」
会談する相手は先生と同じ“大人”であり“キヴォトスの外から来た存在”。
対するキヴォトスは行政すらも生徒である“子供”達が運営している。
“子供”だからと舐めかかって接してくるかもしれない。
「“大人”である私が同席して足元を見られないようにして欲しいって事だね」
「それもありますが、相手は私達と国交や交易を望んでいるかもしれません。そのまとめ役もしてほしいのです」
「お安い御用だよ!任せて!」
「先生には仕事を増やしてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします」
会談の準備は着々と進められていく。
To Be Continued......
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第1航空打撃護衛艦隊入港
カスメル海峡
キヴォトスD.U.港を目指し航行している海上自衛隊第1航空打撃護衛艦隊。
カスパール島とメルキオール島を隔てるカスメル海峡の最峡部、モーゼ海峡に差し掛かっていた。
海峡幅34km、水深46mのモーゼ海峡は両島を繋ぐ交通の要所であり、キヴォトス最大の鉄道道路併用橋“モーゼ・ゲート・ブリッジ”がかかっている。
瀬戸大橋と同じ、上に片側3車線の道路と下に高速鉄道2線と在来・貨物鉄道3線の構造だ。
「大きいな...」
ヤマト航海艦橋では池田が双眼鏡越しにモーゼ・ゲート・ブリッジを見て静かに驚嘆する。
「モーゼ・ゲート・ブリッジは陸地にある橋も含めると総延長43kmの鉄道道路併用橋です。コンゴウ建設とヘパイストススクールが共同で建造した物で、建設当時はキヴォトスの最新土木技術を結集した先進的な建築物でした。今もこの記録は破られておりません」
監視兼案内で乗り込んでいるサラミス戦闘委員部の副委員長が説明する。
「地球だとここはドーバー海峡で英仏海峡トンネルが通っているはずなんだが...」
モーゼ海峡と呼ばれている場所は、地球ではイギリスとフランスを隔てるドーバー海峡と呼ばれており、その海底には全長50.45kmの鉄道用海底トンネル“英仏海峡トンネル”が通っている。
「これだけの橋を作るとなる、さぞ大変だったでしょう」
「ええ、まぁ、建設会社がカイザーコンストラクションじゃなかったので不正とかはなかったのですが、建造途中でクレーン船が転覆事故を起こしたり火災が起きたり海賊が邪魔してきたりで、工期が伸びましたが、33年前の神歴1994年11月に開通しました」
「やっぱり、橋が長いと休憩所の1つや2つはありそうだな」
「池田さんの言う通り、橋の上りと下りには幾つかのパーキングエリアがありますね。トイレ以外にエンジェル24って言うコンビニも出店していますよ」
「コンビニがあるのですね。是非とも行ってみたいものです」
すると上空に報道ヘリが飛び交っていた。
どうやら目撃していたコンテナ船の乗組員か生徒がモモッターやモモスタやティックモックなど、のSNSに写真や動画付きで投稿したのが拡散し、それを目にしたクロノススクールなどの報道系の学園や報道企業が報道ヘリでこぞって撮影しているところだ。
「クロノスが暴走しそうですね」
「クロノス?」
「マスメディアに特化した学園でクロノスジャーナリズムスクールって言うんですけど、面白おかしくしようと誇張表現して報道する事があるんですよね。おおかた報道部が原因なんですけど」
そうしている内にあと少しで第1航空打撃護衛艦隊はモーゼ・ゲート・ブリッジを通過しようとする。
近くで見るとその巨大さには圧巻せざるを得なかった。
「大きいですね...あっ、電車が通りましたよ」
「連合艦隊がゴールデン・ゲート・ブリッジを通過する映画を思い出すな」
モーゼ・ゲート・ブリッジは水面からの高さは65mあるが、第1航空打撃護衛艦隊は何ら問題もなく通過する。
サンクトゥムタワー 第7会議室
サンクトゥムタワーでは連邦生徒会の面々が、航行する第1航空打撃護衛艦隊の中継を見ていた。
「みんな!戦艦だよ!デッカい戦艦だよ!痺れる憧れるぅ!」
「戦艦なんてノースポイントに行けば腐るほど見れるのに」
連邦生徒会の由良木モモカが明太子ポテチを食べながら、子供のようにはしゃいでいる先生を見て呆れていた。
「確かにそうなんだけど!キヴォトスの学校やPMC以外の戦艦だよ!戦艦は男の浪漫だよ!うお、空母も大きいし、上に乗ってる戦闘機もかっこいいよ!」
興奮している先生をよそにリン達は第1航空打撃護衛艦隊を観察していた。
「それにしても大きいですね。戦艦はノースポイントのより大きいです」
「空母に至っては300mは超えてそうですし、周りの艦もエイギルのサラミス級より大きいのもありますし」
「潜水艦もキヴォトスにあるのと同じ感じだね」
「あれだけの艦隊を整備するのにどれだけの財源が必要なのかしら」
「あの戦艦と空母には煙突らしき物が見えませんね。動力が気になりますね」
リン達はそれぞれ感想を述べていた。
ノースポイントのような戦艦、レッドウィンターのような空母、カイザーPMCのようなフリゲート艦の軍艦が混ざった第1航空打撃護衛艦隊は異様であった。
「対応したエイギル警備艦の艦長の報告では、キヴォトスが居るのは異世界…別の惑星と海上自衛隊は言ってましたが、本当に異世界なのですね」
「リン行政官、あんな報告信じる気?」
異世界に来たんだと信じるリンに財務室室の扇喜アオイが正気を疑うように問い掛ける。
「アオイ、言いたい事は分かるわ。でも、そんな嘘ついて向こうにメリットなんてあるかしら?」
「確かにそうだけど…」
「まぁまぁ、アオイ先輩。その日本国とやらの言い分とか直接聞いてから判断しても良いんじゃない?それに、いずれ人工衛星打ち上げなくちゃいけないし、それでキヴォトスの現状が分かるかもしれないしさ」
モモカの意見にアオイは納得し一旦引くことにした
すると、連邦生徒会のスタッフがリン達の元に駆け寄る。
「七神首席、間も無く海上自衛隊がD.U.港に入港します!」
To Be Continued......
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非日常は唐突に
「クロノスチャンネルをご覧の皆さん、アイドルレポーターの川流シノンです」
「同じく、風巻マイです。私達は今SNSで拡散し話題になっている謎の船団を実況するため、クロノス所有のヘリ“号外8号”に乗っております」
クロノスジャーナリズムスクール報道部のシノンとマキは黄と黒の報道ヘリ“号外8号”に乗っていた。
号外8号は先日納入されたばかりのヘリで、カイザーコプターの135型多用途ヘリコプターをベースに、クロノススクール放送技術研究部とミレニアム学園“ブラウン部”が共同で研究開発した解像度
そんな新品の号外8号の初の大物は海上自衛隊第1航空打撃護衛艦隊。
シノンとマキは号外8号で第1航空打撃護衛艦隊の上空を対空しながら実況を始める。
「今分かっている情報は、ノースポイントのような戦艦1隻、レッドウィンターのような空母1隻、カイザーPMCのようなフリゲート艦7隻、潜水艦3隻で構成されている船団…と言うよりは艦隊ですねこれ」
「あの空母に至ってはバカに大きすぎてエイギル最大の警備艦が小船にしか見えません!」
大型警備艦サラミスの全長が170mに対し、原子力航空機搭載護衛母艦“ほうしょう”の全長は385mと2倍近く大きい。
「空母の飛行甲板にはキヴォトス文字で“10”と書かれています。あと、戦闘機らしき物が整列しており人がチラホラ居ます。あっ、手を降りました!なかなか気前が良いですね!」
「とは言え、現在この艦隊はどこの所属なのか不明です。もしかしたら、キヴォトスを支配しようとしている勢力が圧倒的な武力で無血開城という可能性もあります。キヴォトスの終焉は近いのでしょうか...はい?勝手に終わらせるな?良いじゃないですか、どうせ終わるならクロノスの裏事情も暴露すれば、デスクが求める視聴率とアクセス数も爆上がり━━」
マイが暴走しそうになるが映像がすぐに途切れる。
《現在現在回線の影響などにより、映像が乱れています。少々お待ちください》
クロノススクール報道部のチャンネルを回している映像機器には自動音声ろナイスボードの映像が流れる。
しばらくして、映像が戻り何事もなかったかのように実況を続ける。
「…映像が乱れている間に、連邦生徒会からの公式声明が発表されました。連邦生徒会によると、SNSで拡散されている艦隊の正体は日本国海上自衛隊所属の艦隊との事です。変な名前ですね」
「キヴォトスへ来た理由はキヴォトス地域の把握とキヴォトスとの接触で、日本国側には外交官が乗っているようです。さらに連邦生徒会はサンクトゥムタワーにて同国との会談を決定。現在、日本国海上自衛隊の艦隊はキヴォトスD.U.港を目指しています━━」
キヴォトスD.U.港 第7埠頭2バース
第1航空打撃護衛艦隊はヤマト以外の護衛艦は沖合に停泊し、指定された第7埠頭にヤマトが接岸した。
タラップから小原達4人の外交官と、護衛の陸上自衛隊幹部自衛官4人がキヴォトスに降り立つ。
「ここが港ね」
「規模は横浜港ぐらいですかね」
「風景は日本とはあんまり変わらないです」
小原達はD.U.港をまじまじと観察していた。
「ロボットも居るしアイロボットの世界かよ…」
「隊長、犬が二足歩行ですよ!しかも作業服とヘルメット着てますよ!」
小原とは対象的に護衛の自衛官は辺りを警戒しながら、日本にはない光景を見て興奮していた。
小原達の前に一昔前の女性警察官の制服とジャケットを羽織った顔が怖いケモ耳娘と自動小銃を持った生徒達が近づいて来た。
「日本国の方ですね?ヴァルキューレ警察学校公安局局長の尾刃カンナです。会談場所と道中までの警護を担当する責任者です」
彼女は対テロ戦特化の公安局の局長でヴァルキューレ警察学校の“狂犬”と恐れられている生徒だ。
「日本国外務省の小原来乃未です。よろしくお願いしますね、尾刃局長」
「はっ、よろしくお願いします。早速ですが、こちらで用意した車に乗って頂きます」
小原達の前にヴァルキューレ警察学校の装甲車が4両止まる。
「どうぞ、乗ってください」
後の扉が開きカンナは乗るように促す。
「装甲車は良いとして、RWSが着いてるぞこれ」
「しかもブローニングM2ですよ。ここの警察学校?は何と戦う気なんでしょうね」
そう言いながら小原達外交官組と自衛官組は2人づつ装甲車2両に分乗する。
自衛官以外にもヴァルキューレ警察学校の生徒が3人づつ乗り込む
カンナは指揮官車に乗り会談場所のサンクトゥムタワーに向け走らせる。
車列はD.U.港のオフィス街に進入する。
歩道には中継を見ていたD.U.の生徒や住民による野次馬が出来ていた。
至る所に歩道に配置された公安局や警備局の生徒、更にはヴァルキューレ所有の装甲車や装輪戦車が警備し、上空には同学校の攻撃ヘリコプターが飛び交っていた。
「警察学校がアパッチとはたまげたなぁ」
「装輪戦車もありますよ。前に隊長が言ってたAMX10に似ていますね」
「警察予備隊みたいな特車とか言ったりしてな」
護衛の自衛官達は港湾に居た時と同じように警戒しながら日本には無いキヴォトスの光景を見ながら花を咲かせていた。
「東堂艦長の言ってた通り男が一切見当たらないわね」
「しかも女性に至っては頭に、輪っかみたいなのが浮いてますよ。まるで天使みたいだ」
小原達はヤマトでの東堂達との会話を思い出しながらキヴォトス市街地の光景を観察していた。
「まさか、魔帝だったりして」
「...魔帝の復活時期からして可能性も無くはないけど、文字形態が大陸共通じゃないのは説明会出来ないわよ?」
「それもそうですよね。彼女と魔帝の光翼人は身体的特徴や民族性が一致しませんし」
小原の答えに部下は納得した。
しばらく走らせてると、銃声が響いた同時にカンナの乗った指揮官車が横転する。
「伏せて!」
自衛官は咄嗟に小原達に伏せるように指示する。
自衛官は携行していたと24式短機関銃を取り出し30発弾倉を装填する。
同乗していたヴァルキューレの生徒達も銃に手をかけ警戒する。
「こちら1班、2班被害は?」
『こちら2班、被害なし!』
後ろの装甲車に乗っている外交官の無事を確認した隊長は状況を把握しようとする。
「何があったんだ...テロか?」
「これ程の警戒体制でテロが起きるなんて...」
横転した指揮官車からカンナ達生徒が出てくる。
「局長、無事ですか!?」
「...私の事は良い。外交官は無事か?」
「確認した所、全員無事との事です」
「そうか...」
カンナは小原達の安否が確認できたので一安心する。
「襲撃した奴らは?」
襲撃者の正体を聞こうとした同時にカンナ達の前に集団が立ちはだかる。
特攻服やセーラー服にロングスカートとミニスカートを着た不良生徒。
一昔前の日本で言うスケバンの集団だった。
「はははっ!キヴォトスが終焉するなら、ヴァルキューレへの恨みを存分に晴らせる!」
「破壊だ!破壊だ!」
不良生徒はミニガンや短機関銃、さらにはブラックマーケットから強奪したであろう戦車で暴れ回る。
To Be Continued......
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D.U.港オフィス街中央通り
「おいおい、なんで不良が戦闘車両持ってるんだよ!」
装甲車から外の状況を双眼鏡で確認していた自衛官はスケバン集団の兵力に驚愕していた。
「しかもあれ、19式多銃身機関銃に似てますよ!てか、なんで私より小柄な子が軽々と使ってるの!?」
19式多銃身機関銃は“ミニガン”や“無痛ガン”と言う愛称で知られている在日米軍のM134をベースに開発した自衛隊の最新機関銃だ。
外見はM134だが、新規格である6.8mmx43mm
とはいえベースとなったM134より低反動や軽量化は実現しているが、それでも反動は強く重量は80kgなので到底1人で運用するような代物なのは変わりはない。
だが、目に映っているスケバンは自衛官の言う通り、自分達より小柄な上1人で扱うような代物ではない武器を軽々と使っている。
しかし、発射速度を意図的に落としているようには見えず、かといって装薬量を減らした弱装弾を使用しているようには思えなかった。
「隊長、艦隊からは!?」
「不足の事態に備えて“ほうしょう”にはオスプレイが待機しているからいつでも出撃可能だ。今は現地政府に許可を要請している途中だが、あっちにもメンツがあるだろうし、一般市民の不安を煽りたくないだろうから渋るだろうな」
「メンツを気にしてたり許可を要請している途中にやられたら元も子もありませんよ!」
「…今は待つしかない。今は俺たちだけで外交官を守るしかない」
自衛官達は不安になりながら今の状況を見守るしかなかった。
一瞬で戦場と化したオフィス街にヴァルキューレとスケバンの銃弾や擲弾が飛び交っていた。
「ヒャッホーウ!!」
「撃って撃って撃ちまくれぇ!」
スケバン達の銃火器からばら撒かれる7.62mm弾や9mm弾がヴァルキューレの生徒に吸い込まれていく。
近距離で5.56mm弾30発分を当てられても気を失うだけの頑丈さを持つ生徒だが、それでも痛いのは変わりない。
ヴァルキューレの生徒に吸い込まれず跳弾した銃弾が、歩道沿いの街路樹や建物の外壁を削り、ガラスが割れていく。
「狙撃班、位置に着き次第援護射撃しろ!」
「突撃班、射撃開始!」
ヴァルキューレ公安局もスケバンを制圧するため、K.S.P.Dの文字が書かれた黒色の防弾シールド越しに自動小銃で応戦する。
地面に三脚で設置された第806号ヴァルキューレ制式重機関銃に12.7mm弾の装填が完了し射撃を開始する。
ヴァルキューレの5.56mm弾や12.7mm弾がスケバンの方に吸い込まれていく。
「第1装甲班、後ろの外交官が乗っている装甲車を守れ!戦車を盾にしろ!」
カンナの指示で第10号ヴァルキューレ制式装甲戦闘警備車2両が道路を塞ぐように停車する。
『局長!撃ちますか!?』
「撃っても良いが、貴重な砲弾だ。よく狙って撃つんだ!戦車を優先的に狙え!」
年々凶悪化する不良に対抗するため予算は少しだけ増えるが、それでも財政状況が芳しくないヴァルキューレにとって戦車の砲弾は貴重である。
一発一発を有効的に使うためため、優先目標を決めて絶対に外さないように撃たなければならない。
装甲戦闘警備車に搭載されている
自動的に目標の位置が割り出され照準が定められる。
48口径105mmライフル砲がオレンジ色の発射炎で輝き、105mm
音速に近い速度で発射されたAPFSDSはCanon.C型戦車に着弾し爆発を起こす。
車内から操縦していたスケバン達が慌てて逃げ出す。
残ったCanon.C型戦車も負けじと反撃するが、装甲戦闘警備車の車体側面に付けられた爆発反応装甲に90mm高速徹甲弾が侵徹し内部の爆薬が起爆するだけで大したダメージが入らなかった。
装甲戦闘警備車は残りのCanon.C型戦車に照準を定め各個撃破していく。
『敵戦車全て撃破!』
「局長、相手が押されています」
「よし、グレネード班、催涙弾用意!」
自動小銃を公安局の生徒が、ピカティニー・レールに装着した第203号ヴァルキューレ制式40mm擲弾発射機に、催涙弾を装填し宙に向けて撃ち込む。
催涙弾はスケバン達の上で炸裂し催涙ガスが立ち込める。
「ぐぎゃあああああ!!」
「目がぁ、目があぁぁ!」
催涙弾の性能が発揮し、皮膚に痛みが走り、目をやられに涙する者が出てきた。
「敵、沈黙!」
「この気を逃すな!突撃班、突撃用意!」
カンナの指示で自動小銃や散弾銃を持った公安局生徒が、丸盾型の透明なライオットシールドに持ち替え突撃準備を整える。
「突撃!」
カンナの号令と同時に公安局生徒は武器とライオットシールドを片手に走り出す。
「やあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「お縄につきやがれぇ!!」
未だに催涙ガスで苦しんでいるスケバンに、公安局生徒は2人ペアで彼女らを取り押さえていく。
「逮捕ぉ!」
スケバンの両手に手錠が掛けられていく。
どう言う訳か手錠をかけられた後に亀甲縛りや乳房縛りなどの緊縛をされ顔を赤くしているものもいた。
「て、テメェら、2人がかりなんてずるいぞ!」
「ズルもクソあるか!大人しく矯正所にぶち込まれとけ!」
「へっ、そんな所すぐに逃げ出してやるからな!」
強がっているスケバンの元にカンナが近寄る。
「はぁ、残念だが、お前らはアルファトラス矯正所行きだ」
アルファトラス矯正所は連邦矯正局が管理する矯正所の一つで、D.U.から20km離れた人工島にある矯正所でキヴォトスで1番脱走不可能な矯正所と言われていた。
矯正所は必要最低限の人員を残し、オートマタやセントリーガンが24時間365日体制で監視している。
矯正所は高さ50mの塀に囲まれ、塀の上には重機関銃が内側に向けられ、屋上や施設周辺には対空ミサイルシステムや沿岸砲が配置されている。
更に塀の外は道路以外の場所には2000個の地雷やトラップが仕掛けられおり、島の沖合には200個の系維機雷が敷設されている。
アルカトラズ刑務所や網走刑務所もびっくりな監視体制である。
「ちょ、おま、嘘だろ!あの“七囚人”がいた場所かよ!?」
「あんまりだあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
彼女が言葉にした“七囚人”は、脱獄不可能なアルファトラスを脱脱走した代表的な囚人7人のを指す。
連邦生徒会長が失踪した時にサンクトゥムタワーの行政制御権が喪失した時に脱走したのだ。
「全く、クロノスの報道を信じるバカが居るとは呆れたものだ」
「うるせぇ!キヴォトスが終わるなら、“お腹壊すまでバニラアイスを食べたり”“シャーレの先生と一晩過ごしたい”とか何かド派手な事をしたいもんだろ!」
「…お前らが襲撃したのは一国家の外交官が乗って居る車列だ。襲撃して外交官に何かあれば重大な外交問題に発展しかねかった。それにキヴォトスが終わってるなら今頃攻撃されてる」
「それに、乗っていた外交官はシャーレの先生と同じ“大人”だ。銃弾を撃ちこもれても気絶するだけで済む私達とは違って1発で致命症になる」
「ぐぬぬぬ...」
スケバンは返す言葉もなく押し黙ってしまう。
「矯正所に行って自分のやった事を反省するんだ。それと、ドラマで見るようか牢屋じゃないから、そこは安心しろ」
矯正所の牢屋は相部屋ではあるが、快適さは日本以上ノルウェー未満なのでそれほど苦では無い。
矯正プログラムが過酷すぎるだけなのだ。
「あと、アルファトラスは入ったら、自分の“大切な物”を失うかもしれないから、そこは気をつけろ」
「た、大切な物?」
「大切な物は大切な物だ...」
カンナの意味深な発言にスケバン達の顔が強ばる。
「あとは任せる。護送車が到着したら、そいつらは乗せろ。後処理は任せる」
「了解しました」
カンナはその場を後にし、本来の自分のすべき任務に戻る。
「銃声が止んだ...」
「催涙弾みたいなのを撃ち込んでましたし、制圧したのでしょうか?」
ヴァルキューレの戦車で視界を塞がれ状況が掴めずにいた自衛官達は固唾を呑んで結果を待っていた。
すると、助手席側のドアが開きカンナが顔を出す。
「日本の皆様方、大変失礼しました。襲撃した不届き者達はヴァルキューレ警察学校が威信をかけて制圧しました」
「カンナ局長、頭に包帯を巻いていますが、大丈夫ですか?」
小原はカンナの頭に巻いている包帯を見て無事なのか確認する。
「小原さん、私のような者はお気になさらず。小原さん達こそお怪我は?」
「私達は大丈夫です」
「それは良かった...」
カンナの顔に見かけによらない安堵の表情が浮かぶのが分かる。
「隊長、ヤマトから外交官保護による自衛隊機の出動許可は下りなかったようです」
「…そう簡単に許可してくれんだろうな」
自衛官は無線で外交官の無事とヴァルキューレによるスケバンの制圧成功を報告する。
To Be Continued......
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絶句1
サンクトゥムタワー 第7会議室
「そう、そうですか。無事で何よりです。会談時間は遅れるのは構いませんが、襲撃されないように徹底して警備に当たってください」
カンナからの事態収拾を知った連邦生徒会では安堵の声が漏れていた。
日本国の外交官達が乗る装甲車の車列にスケバンが襲撃した事を受け、連邦生徒会では混乱に陥っていた。
万全な警備体制を敷いていたのに戦車などで武装して襲撃し、その理由がクロノス名物の暴走報道を信じて事件に至ったのだ。
挙げ句の果てには港に停泊している同国の海上自衛隊からは“外交官保護のための自衛隊機の出動許可”が出される始末に。
自衛隊機の出動許可は出さなかったが、幸いな事に襲撃してきたスケバンは鎮圧できた。
一歩間違えれば外交問題に発展し、今後の交流に影響を与えかねなかった。
「...全く、クロノスのバカ達は。放送権と配信権を取り上げてやろうかしら」
「報道部の報道のあり方は前々から問題でしたし、見直す必要が出てきましたね」
解決すべき問題が出てきたことに連邦生徒会は頭を抱えた。
大型護衛艦“やまと” 航海艦橋
「ほう、鎮圧できたのか。それは良かった」
やまと航海艦橋では、護衛の自衛官からの暴徒鎮圧と外交官の無事の報告が入り池田達は安心していた。
混乱に陥っていたのは連邦生徒会だけじゃなく池田達幹部自衛官もだ。
池田達は道中何事も起きず無事に終わって欲しいと願った矢先にスケバンが襲撃してきた報告が入ったからだ。
不測の事態に備え空母“ほうしょう”の甲板にはオスプレイが、いつでも出動できるように待機し、あとは現地政府である連邦生徒会に出動許可を取るだけだったが、連邦生徒会からは出動許可が下りなかった。
なんとか現地警察が暴徒を鎮圧し、外交官や護衛の自衛官も無事であった。
外交官が死傷すれば、外交問題にもなるし世論がキヴォトスへの報復を望む声が上がっていたかもしれない。
「本国には外交官の無事と会談開始時間が遅くなる事を報告を」
「分かりました」
サンクトゥムタワー前
小原達を乗せた装甲車の車列はスケバンの襲撃以降は何事もなく進み会談場所のサンクトゥムタワーに到着する。
「ここが会談場所か」
「小原さん、この建物浮いてますよ。反重力で浮いてるのか?」
「ミリシアルのパル・キマイラみたいなの浮遊魔法かもしれないわね」
小原達はサンクトゥムタワーが浮いている事に驚きを隠せなかった。
重力制御技術に関してはあちらが上かもしれない。
「どうぞ」
カンナから来るように促される。
「行きましょう」
「ええ、こちらも準備できています」
小原達外交官と自衛官は装甲車から降り、会談場所であるサンクトゥムタワー内部に入る。
小原達はカンナに案内され、白を基調とする青のラインが入った制服を着た連邦生徒会行政官の元に辿り着く。
「私の案内はここまです。あとはこちらの行政官が案内します。次会うのは会談終了後になります」
「案内ありがとうございます、尾刃局長」
「では」と言い、カンナはヴァルキューレ式の敬礼をしその場を後にする。
案内を引き継がれた連邦生徒会行政官が前に出る。
「日本国の方ですか?僕は連邦生徒会行政官の浅瀧トウコです」
金髪クラウンブレイドのトウコは主席行政官兼連邦生徒会長代行の七神リンの部下である。
「日本国外務省の小原来乃未です」
「本当にシャーレの先生と同じですね…失礼、主席行政官は上でお待ちしております。案内しますのでついてきて下さい」
トウコに案内され一行はエレベーターに乗り会談場所である第七会議室がある188階を目指す。
到着までには1分かかる。
「この建物って高さはどれくらいなんですか?」
「サンクトゥムタワーですか?たしか浮遊している場所も含めると15000mはありますね」
予想外の高さに小原達は絶句していた。
世界最大の電波塔である東京スカイツリーの634m、2年後に完成予定の世界最大の高層ビル“エアロポリス1563”の1563m、日本最大の山である富士山の3776m、バブル期に計画されたハイパービルディングである“東京バベルタワー”の10000mより高い。
「土木技術に関してもあっちが上ね」
「ええ、恐るべき技術力です。キヴォトスの地域の特性上、こう言ったハイパービルディングを建てれるのかと思いますが、それにしては高すぎます」
プレートの境が集中し地震が多い日本とは違い、キヴォトスはプレートの境に位置していないヨーロッパ地域に所在している。
地震が少ない事からこう言ったハイパービルディングをこれでもかと建てれるが、それでもサンクトゥムタワーの高さは異常であるのは変わりない。
「あの、僕からもよろしいですか?」
次はトウコのターンだ。
「良いですよ」
「小原さんの国って先生みたいな“大人”の人がいっぱい居るんですか?」
「先生みたいな“大人”?」
トウコの質問に小原の頭にハテナが浮かぶ
「先生は、ある日突然やってきた“大人”で、キヴォトス各地で起きている学園から生徒間の問題を解決してくれる方のことです」
「その、先生とトウコさん達は何か違うんですか?」
「僕達にはヘイローって言う頭の上に浮いている物があるんですけど、先生にはそれがないんです」
トウコは自分の頭に浮かんでいるヘイローに指を指す。
トウコのヘイローは日本の外務省のロゴマークに十字6つの金色のデザインをしていた。
「あ、これヘイローって言うの」
「はい、そうです」
小原はトウコの質問の意味に理解する。
「そうですね、基本的に日本国民全員はトウコさんようなヘイローはありませんね」
「え、じゃあ日本の生徒のみなさんも?」
「ありませんね」
その事実にトウコは絶句する。
キヴォトスの生徒にとってヘイローはアイデンティティでもあり生命の源でもある。
そんなヘイローがない日本の生徒に理解が追いついていけなかった。
両者が互いの常識に絶句している内にエレベーターは目的の階である188階に到着した。
扉が開くと、トウコと同じ連邦生徒会の制服を着たスタッフが立っていた。
「こちらは護衛の方を別室に案内する者です。会談が終わるまで別の場所に待機してもらいますのでご了承ください」
トウコの問いに小原は難色を示した。
「えっと、自分一応三佐...少佐なんですが、ダメですかね?」
隊長である自衛官は三等陸佐の階級を持つ者で幹部である。
「幹部の方でしたら同席は構いません」
了承を得た小原と隊長以外の自衛官は二手に分かれ歩き出す。
「着きました。こちらが第7会議室です」
小原達は連邦生徒会の面々が待つ第7会議室の前に立つ。
トウコがドアをノックすると、中から「どうぞ」と言う声が返ってくる。
「それでは、お入りください」
トウコに促され小原達は第7会議室に入る。
To Be Continued......
すまんな最近調子が乗らないんだ
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絶句2
第7会議室に入った小原達は、連邦生徒会の面々と見つめ合う。
「日本国外務省新興国家局の小原来乃未です」
「キヴォトスへ、ようこそ。私は七神リン、キヴォトスの首席行政官兼連邦生徒会長代行を務めています」
「こんにちは、連邦捜査局シャーレの先生です」
お互い自己紹介を終え席に座る。
「七神さん、連邦生徒会長代行と言うのは」
「キヴォトスのトップ、連邦生徒会長が現在失踪しており、政治的空白を埋めるため主席行政官である私が代行を務めています」
「えっ、失踪!?」
連邦生徒会長の失踪。
日本で言う現職の内閣総理大臣が失踪したのと同等の衝撃的なことである。
「なるほど、状況は把握しました。大変な時に突然来訪してしまって申し訳ありません」
「いえ、今はシャーレの先生が来てからある程度落ち着いてます」
リンは横に座る先生をチラッと見る。
「さて、お互い詳しく知るために情報を共有しましょう」
小原は気を取り直して本題に入る。
日本を紹介するためプレゼン用の紙とホログラム投影機を取り出し起動させる。
ホログラムにはサイバーチックな日本列島の立体映像が映し出される。
「日本国の概要についてです。正式名称日本国。キヴォトスから約1000km離れた島国にあります。人口2億1200万人、国土面積447973㎢で国土の7割が山に囲まれています」
日本列島の上には人口や面積の他にGDPなどの数値が映し出される。
「首都は東京都で東京都には2000万人が住んでおり、東京都周辺の県も含む東京都市圏には6000万人が住んでいます」
首都東京都の人口や面積が映し出される。
「ちょっと待ってよ、首都の面積に対する人口密度おかしくない?」
明太子ポテチを食べていたモモカが現実離れした数値に疑ってくる。
「おかしくありませんよ、事実ですから」
「へ、マジで?」
モモカの口から食べかけのポテチの欠片がポロリと落ちる。
「次に政治体制についてですが、内閣総理大臣を元首とする議員内閣制を採用しております」
それから主要産業や文化や国軍である自衛隊などを簡単に紹介していく。
日本の紹介が終わり、次は七神リン達連邦生徒会の番になる。
「では、キヴォトスについて紹介します」
壁に付けられた200インチのスクリーンにキヴォトスの概要を紹介する映像が映し出される。
「キヴォトスは、ここD.U.と数千の学園自治区で構成されている巨大学園都市です」
「キヴォトスの総人口は2億2500万人、キヴォトス全域の面積は2372090㎢となっています」
「ここD.U.はキヴォトスの行政が集約している中枢部…皆さんからすると首都に相当します。D.U.の人口は1100万人です」
D.U.は地球で言うベルギーに位置している。
そんなベルギーは首都ブリュッセルには、
「政治体制は連邦制を採用しており、キヴォトスの全行政を担う連邦生徒会によって運営されています。それとは別に各学園に自治権が与えられおり各学園は、連邦生徒会が定める連邦校則や行政システムとは別に独自の学園校則や行政システムによって運営しています」
「また、数千の学園の中で最大規模を誇る学園は“キヴォトス三大学園”と呼ばれており、トリニティ総合学園・ゲヘナ学園・ミレニアムサイエンススクールがこの三大学園の指に入ります」
挙げられた学園は生徒数が数十万人以上の巨大マンモス校で自治区の住民も含めると数百万人以上に達する。
また自治区の面積もそれなりに広い。
ちなみに、キヴォトス最大の面積を誇るレッドウィンター連邦学園はゲヘナと一二を争う広大な面積ではあるが、キヴォトスの僻地で一年中積もったり、歴代生徒会トップの理不尽な懲罰や革命で生徒や住民が他の学園に転入したり移住したりした結果、生徒含めて人口は10万人ぽっちでしかおらず“キヴォトス四大学園”にはならなかった。
「次に生徒についてです。キヴォトスは数千の学園で構成されているが故に生徒の数もそれなりにいます。生徒は基本的に頭の上にヘイローを浮かばせています。ちなみに連邦生徒会である我々も生徒なのでヘイローが浮いています」
小原達はエレベーター内でのトウコのやりとりを思い出す。
「ヘイローは全生徒のアイデンティティでもあり生命の源でもあります。所属する学園や部活、本人の性格によってヘイローが形成される場合もあります」
「このヘイローがあることで生徒は簡単には死にませんし、常人以上の体力を持っています。ヘイローは肉体とリンクしています」
「簡単には死なないと言うと?」
小原の疑問に防衛室長のカヤが答える。
「そうですね、例を挙げるなら至近距離で5.56mm弾を30発撃ち込まれても気絶するだけで済みますね。あと砲撃されても気絶しますし、普通に撃たれても痛いぐらいです」
5.56mm弾
召喚前の地球にてNATOにより標準化され5.56mmNATO弾と呼ばれた中間弾薬だ。
自衛隊でも6.8mmGETO弾が制式化する前までは5.56mm NATO弾を採用していた。
5.56mm弾に限らずどんな口径の銃弾を至近距離で撃ち込まれても生身の人間はただでは済まないものだ。
「キヴォトス人は不死身って事ですか?」
「いえ、完全な不死身ではありません。人間が生きてはいけない環境に晒されたり、想定以上の攻撃を食らったら致命的ダメージを受けます。今のところ死亡事例は30件しかありません」
先の銃撃戦が終わった後に傍を通りかかった際、救急車は来なかったし交戦していたヴァルキューレの生徒と不良に大した怪我がなかった事を思い出す。
ヘイローのおかげなんだと理解した。
「小原外交官、キヴォトスは現在別の惑星所謂異世界に居ると言う報告を受け取っていますが、事実でしょうか?」
「はい、キヴォトスは今異世界である“クラークリア”にいます。このクラークリアは現象や技術が科学ではなく魔法若しくは魔導に置き換わっている世界です」
小原は話した。
第1・第2・第3・大東洋文明圏、 ワイバーン、魔法、古の魔法帝国、日本が召喚され歩んで来た歴史や戦争などをホログラム映像を交えながら。
「…その、なんと言うのか信じられませんが、嘘を言ってるようには見えませんね」
「日本以外にも別世界から召喚された国が他にも2カ国もあるなんてね…えっと、どこだっけ?」
「モモカちゃん、ムーとグラバルカス帝国…」
モモカの能天気プリに呆れながらも答える調停室長のアユム
「今回我々がキヴォトスに来たのはキヴォトスの把握は勿論ですが、国交や通商を開設するために来ました」
小原は本題である国交の開設を切り出す。
「国交…つまり我々と交流を望んでるのですね」
「はい、国交の他に通商や技術交流もあります。場合によっては安全保障条約を結ぶ事も可能です」
覇権主義や優勢思想主義を掲げる国があるクラークリア。
この世界で生きていくには他国との連携が必要だ。
「分かりました。国交や技術交流などを含めて検討しましょう。先生、協議するにあたり同席して欲しいのですが、大丈夫でしょうか?」
「リンちゃんのためなら全然大丈夫だよ!それにこう言う重要なのは“大人”である私がやらないとね。口車に乗せられるかもしれないし」
先生の発言に小原は、「外交官の前で失礼だな」と思ったが、ここは“大人”である先生も同席してくれる事に安心感を覚えた。
それから国交開設や日本へ使節団を派遣する協議を3日かけて開催した。
1週間後にキヴォトス使節団が日本に派遣される。
両者の合意を得て正式に日本とキヴォトスとの間に日キ友好条約が締結された。
To Be Continued......
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異世界側の評価
日本とキヴォトスとの間に日キ友好条約が締結されてから、日本に続きクラークリアの国家がこぞってキヴォトスと接触した。
最も近かった大東洋文明圏と第三文明圏の国家が次々と接触し国交を締結。
少し遅れて第二文明圏のムーとヒノマワリ王国さらにグラバルカス帝国が一緒に接触し国交を締結。
この時ムーは最新鋭国産戦艦である戦艦“ラ・オイアワ”を、グラバルカス帝国は戦場伝説を生み出した戦艦“グレードアトラスター”を引き連れて来訪。
先生やたまたまD.U.に寄港していたノースポイントの戦艦タナガーの生徒、ムー統括海軍とグラバルカス帝国海軍の軍人と意気投合。
港には運良く日本の大型護衛艦“やまと”もおり科学文明国家の最新最強戦艦が一堂に介していた。
さらに第一文明圏の神聖ミリシアル帝国も最新鋭魔導戦艦“アルタキアラ”を引き連れて接触し、先生と魔法に興味を持っていたミレニアムサイエンススクールの生徒がD.U.に押しかけ、ミリシアル海軍の軍人に質問攻めをしていた。
キヴォトスとクラークリアの国家とは平和的に接触でき国交を結べたが、キヴォトスに関してある事はわかった。
一つは日本と同等の文明力を持ってる事。
自動車やスマートフォンなどあらゆる分野で日本と似通っていた。
一部ミリシアル帝国やアニュンリール皇国と同等の技術力を持っているが。
一つは科学と魔法が別々で成り立ってる事。
先程挙げた技術は全て科学で成り立っているが、キヴォトスの住民である生徒にはクラークリア由来の魔素とは異なるキヴォトス独自の魔素が検出されている。
この結果を知ったミリシアル8世は、キヴォトス独自の魔素を調査すべく調査チームの結成と各国の有力な魔導師に協力を要請している。
一つはキヴォトスにはクラークリアでは一般的な種族が住んでる事。
連邦生徒会の七神リンをはじめ、キヴォトスにはエルフ・狼・猫・鬼・有翼など外見的特徴のある住民が住んでいる。
中には犬や猫をそのままに直立二足や知能を持った住民、クラークリアには存在しないそれ以外の獣人や悪魔が居たりとクラークリア側の国家は驚かされていた。
一部の国では有翼の生徒を見て“アニュンリール皇国と同じ魔帝の末裔では?”と警戒され国交樹立を見送ってたりしているが。
一つは行政の至る所までか生徒と呼ばれる女子供もによって運営されてる事。
キヴォトスの政治中枢部など至る所に、齢にして15歳から17歳の女子供が一部を除き大人が介入せず運営している事に衝撃を受けていた。
日本などの人権意識が高い国では、「未成年に政治や労働をさせるとは何事か」「キヴォトスの大人は大人としての責任を放棄しているのか」と言った、お叱りの声を挙げる知識人や団体が出る始末になったが。
一つは生身の人間が行けば最悪死ぬかもしれない事。
キヴォトスは銃器社会のアメリカもびっくりな超銃器社会で、キヴォトスのあちこちでは日常的に銃撃戦が発生している。
日本のような自動小銃や機関銃をはじめ、ムーやグラバルカスの狙撃銃や短機関銃、戦車や攻撃ヘリコプターが自動車並みに普及している。
それを使うのは先程言った15から17歳の生徒で、中には1人での運用を想定していない重火器を軽々と使っていたりしている。
生徒は頭の上にヘイローを浮かばせており、ヘイローがある限り銃撃されても怪我するだけで死なない。
そう言う事もあり日本をはじめ数多くの国家はキヴォトスへの渡航は推奨しないし禁止している。
これに関してはキヴォトスも承知している。
キヴォトスは良い意味や悪い意味で話題になり評価されている。
To Be Continued......
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キヴォトスの変革
キヴォトスと日本との間にキ日友好条約が締結されてから、キヴォトス…特に連邦生徒会は過去に見ないほど忙しかった。
クラークリアの国家が立て続けに訪問しては国交を締結し訪問しては国交を締結した。
担当している先生や連邦生徒会の行政官やスタッフは目を血走りながら捌いていた。
連邦生徒会は新たに外交を担う行政委員会の設置が必要と考え外交室の設置を決定。
外交室長に浅瀧トウコが任命された。
しかし、キヴォトスでは他国家との外交経験が無く外交下手である。
そのため、日本国外務省新興国家局の小原達数名がアドバイザーとして派遣されおりキヴォトス外交室を指導している。
更にクラークリアの国家の特性や復活する古の魔法帝国に備え、キヴォトスに降りかかる火の粉を払うため、防衛室傘下の学園や各学園の治安維持組織の指揮系統を統一する学園間軍事同盟“
原因は各学園が連邦生徒会に非協力的な事。
連邦生徒会は各学園の問題などに消去的な姿勢だった事もあり、連邦生徒会に提案に「問題をほったらかしにしておいて協力しろなんて虫が良すぎる」と各学園から一蹴されている。
他にも、古の魔法帝国が侵略してくる事になると、侵略者を殺す必要がある。
身体が頑丈なキヴォトスの生徒とはいえ、人を殺す行為を忌避しており、それで消極的な学園もあったりする。
「あの時積極的に動いてれば…」と連邦生徒会は後悔し、代替え案としてヴァルキューレやエイギルの規模拡大ないし、外的からの脅威を排除する事に特化した学園の設立、カイザーPMCのようなオートマタ部隊の創設、日本との安全保障条約の締結などを模索している。
日本との安全保障条約の締結に関しては当初、締結には消極的で見送っていたが、ウトナピシュティム条約機構軍の設立が頓挫したので条約締結の必要性が急遽高まった。
それ以外に連邦生徒会では議論されていたSRT特殊学園の閉鎖が見送られる事になる。
SRT特殊学園
連邦生徒会長直属の学園で、Special Response Team の頭文字から取りSRTと呼ばれている。
治安維持を担うヴァルキューレ警察学校では、各学園に自治権があるが故動きが制限されたり、対処できない案件に対して即時に出動が許される上各学園自治区を制限なしに行き来できる学園だ。
選抜基準は厳しく生徒はエリート揃い、装備もキヴォトス最高レベル。
しかし、連邦生徒会長が失踪した事によりSRTの責任所在が宙に浮き、進んで責任を取ろうとする者が現れず議論は閉鎖賛成が同然だった。
そこに待ったをかけたのがクラークリアの世界情勢だ。
ウトナピシュティム条約機構の設立が頓挫し、古の魔法帝国や覇権主義国家の脅威に備えるため、少しでも多くの武力が欲しい連邦生徒会にとっては四の五の言ってられない状況になった。
責任の所在に関しては連邦生徒会長代行のリンが覚悟を決め受け継ぐ事になった。
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理想を抱く日本
日本国首都東京 首相官邸閣議室
丸テーブルを囲むように内閣総理大臣をはじめ各省庁の大臣が一堂に会していた。
「一部の技術は我が国を凌駕してるようじゃないかキヴォトスは」
そう口にしたのは第102代内閣総理大臣の村角栄一郎だ。
自由保守党の政治家で、僅か35歳で就任した歴代最年少の内閣総理大臣である。
「ええ、主に土木技術と重力制御技術とスパコンは目を見張るものばかりです。重力制御技術に関しては純粋な科学技術でできています」
ホログラム映像にサンクトゥムタワーやモーゼ・ゲート・ブリッジや要塞都市エリドゥが映し出される。
「このエリドゥは侵入者を撃退するためにビルの位置変える事ができるらしいです。オマケにエリドゥの有する機能を専用のパワードスーツとリンクさせて戦闘もできる、戦略や戦術が効かないのです」
「その演算性能は未来を予知して確定する事が可能。我が国の最新鋭スパコン“道真”はシュミレートを元にした高確率な未来予測が限界です」
友重国防大臣と長岡科学技術大臣がエリドゥの驚くべき性能を熱弁する。
「すごいのは分かったが…俺が不思議だと思うのはキヴォトスには“大人”と呼べる存在が皆無な事だ。しかも男もいない」
「確かに不思議ですね。男がいないのになぜ彼女らは存在してるのか」
人間は男性と女性による生殖行為をしないとできないのが常識である。
調査していく内にキヴォトスには幼少期と言う概念も存在する。
しかし、その前の乳児や胎児がいるはずなのだが、それに関しては不明である。
「まさか、彼女らは人口子宮で生を授かったのか」
「キヴォトスのどこかにそう言った施設があるって事か…なんとまぁ闇深い」
村角らは、女子校の幻想を打ち砕くような現実を知ってしまったような雰囲気になっていた。
「それはそうと、キヴォトスへの渡航に関してだが、現状はレベル2で良いよな?」
「はい、一般人の渡航人数は制限されていますが、渡航する際は各種審査や外務省主催の講習会を受けた上で担当する案内人の指示に従って行動するようにしています」
キヴォトスの超銃器社会を理由にクラークリアの多くの国はキヴォトスへの渡航を禁止している中、日本だけは制限はあるが一般人のキヴォトスへの渡航は許されている。
18歳以上60歳未満の健康な男女、キヴォトスへの渡航人数は1週間に6人まで、観光以外での渡航(政治活動・就労目的など)は禁止、外務省主催のキヴォトス観光の講習会(銃撃戦に巻き込まれた際の守り方など)に必須参加、担当する案内人の指示は絶対で必ず従う事など…
渡航する際の費用は外務省が5割負担するが、それでも気軽に観光できるとは言い難い。
「とは言え、キヴォトスの政情によっては一般人の渡航は禁止しないといけないからな。キヴォトスの政情は随時注視してくれ」
「わかりました」
「ところで、キヴォトス人DNA検査計画はどうなってるんだ?」
村角が言うキヴォトス人DNA検査計画は、キヴォトスの種族とクラークリアの種族の関連性を調査するための計画である。
エモール王国を中心にキヴォトスに対して抱いている疑念…キヴォトスの有翼人とアニュンリール皇国の有翼人との関連性を調査し疑念を払拭する事を目的としている。
もちろん、それ以外にもキヴォトス人のDNAサンプルが単純に欲しいということもあるが。
「主要学園とは現在交渉中です。交渉成立後は各学園の衛生部やカラカサ学園が協力してサンプルを採取します」
「だが、キヴォトスが魔帝の末裔と言うのは理解出来ん。アニュンリールならまだしもキヴォトスに魔帝の要素なんか皆無だろうに」
村角はエモールを中心に唱える“キヴォトスは魔帝の末裔であり警戒すべき”と言う主張に対し理解に苦しんでいた。
「“ヨアディアの悲劇”のような事件もを起こさなければ良いのですが…」
ヨアディアの悲劇
5年前に日本を含む第2次世界連合軍とアニュンリール皇国との間で勃発した大東洋大戦で、アニュンリールの地方都市ヨアディアにあったヨルディア学院の生徒と教職員1200名がエモールの青年騎士らによって虐殺された事件のことである。
この時のアニュンリールは敗戦色が濃厚で首都や主要軍事都市以外の都市での抵抗は皆無で、総司令である日本からは“抵抗の意思がない者には手を出してはならない”と要請されていた。
勿論エモール以外にも民間人を虐殺した国の軍隊は居るが、ヨアディアに関しては規模が大きすぎた。
青年騎士の行動は単なる暴走で、エモール王国全体の意思では無いのは留意するべきだが。
「エモールの動きも充分警戒してくれ」
「分かりました」
「総理、トリニティのティーパーティー、ゲヘナのパンデモニウム、ミレニアムのセミナーのトップとの会合についてですが...」
村角達の会議は続く。
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分析するムー
第2文明圏 ムー
クラークリアで最古参の科学文明国家にして日本と同じ地球からの転移国家である列強国“ムー”。
首都であるオタハイトの官庁街の一角にある白い大理石作りのムー国防省内にある統括軍情報通信情報局情報分析課ではキヴォトスに関する分析報告会が開催されていた。
「発言したい者から手を挙げてくれ」
ブチャラティみたいな髪型をした情報分析課課長で技術士官のマイラスが、席に座る士官達に発言するように促す。
「では陸上班から。キヴォトスは我が国や日本やグラ・バルカスと同じ銃火器や戦車を主としています。しかし、銃火器に関しては日本ような近代的な物から我が国やグラ・バルカスが使ってるような物が自動車並みに普及しております」
「例えるなら我が国の人口の半数が銃を保持していると思ってください。キヴォトスの人口は2億2500万なので人口の1億以上が銃火器を保持している計算になります。公的機関や民間軍事会社や幽霊銃も合わせたらそれ以上はあるかと思われるのでざっと見て2億~3億はあるかと推定されます」
ちなみに銃器社会であるアメリカの銃の保有数は2億7000万挺とされている。
「どこがアメリカもびっくりな超銃器社会なんだいい加減にしろ」と思われるかもしれないが、キヴォトスでは日常的に銃撃戦があちこちで発生している上使える銃火器も拳銃からレールガンなどと幅広いのでアメリカもびっくりな超銃器社会と言えよう。
「戦車についてですが、口径は40mmから105mmと各学園によってバラバラです。こちらがキヴォトスの戦車です」
技術士官はそう言い日本製のデジタルカメラで撮影した写真を出す。
写真に写ってるのはトリニティのクルセイダー、ゲヘナの無敵鉄甲虎丸、ミレニアムの
「口径はもちろんだが形状も何もかもバラバラだな」
その後陸上班は分析結果を報告していく。
「水上班です。こちらもですが、陸戦班と同様各学園が保有する艦艇は形状などバラバラです。例にノースポイントのようなグ帝的な物やエイギルのような日本的な物もあります」
「私も“ラ・オイアワ”に乗ってキヴォトスに行ったから知っていたが、まさかキヴォトスにもグレードアトラスター型が居たのは驚きだったもんだ」
マイラスは、キヴォトスで一堂に会した科学文明国家の最新最強戦艦が集まった光景を思い出す。
「ノースポイント学園でしたっけ?タナガー以外にも相当数の戦艦を保有している学園ですね」
ノースポイントは戦艦タナガー以外にも地球基準の超弩級戦艦を40隻以上保有している。
これは現在のミリシアル帝国海軍やグラバルカス帝国海軍最盛期に匹敵する保有数である。
なぜそんなに戦艦を保有しているのか。
ノースポイントは自他ともに認める戦艦狂の生徒が多く在校しているのが要因である。
「戦艦こそが正義!それ以外は二の次!」と言う考えなので戦艦以外の艦艇の保有数はそれほど多くない。
「ちなみに潜水艦は?」
「潜水艦はチラホラとではありますが保有しています。中でもミレニアムスクールが保有する潜水艦“アンドロメダⅡ”は驚くべき性能です」
ミレニアムサイエンススクールの水上艦は先進的な物が特徴。
ミレニアムのダイエ型大型警備艦やセンチネル型沿海域警備艦はステルス性を重視した見た目である。
アンドロメダⅡも一般的な潜水艦の形状とは違う見た目となっている。
「全長400m、最大排水量125000トン、水中速度は一時的ではありますが、200ノットでの高速航行が可能。高解像度の無線型潜望鏡や、微細動タイルと呼ばれる水流音やソナーの音波を減衰させるシステム、水中光線兵器や防御用水中擲弾やサウンドクラスター魚雷などの水中防御兵装を搭載しています。」
「な!?水中を200ノットで航行なんて水中での抵抗は大きい…」
マイラスはあることを思い出した。
日本から取り寄せた潜水艦に関する書籍の中に200ノットでの航行が可能な魚雷の存在。
「まさか、スーパーキャビテーションか?ジェットエンジンを潜水艦に載せたのか!?」
スーパーキャビテーションは物体の先端に気泡を大量に発生させ、物体全体にを膜を作り水中での抗力を減らす現象を利用した航法。
これを応用したのが旧ソビエト連邦のVA-111シクヴァルやドイツの水中航走体バラクーダなどがある。
「恐らく航空機用のジェットエンジンではなく大出力のロケットエンジンを複数搭載してるかと思われます」
アンドロメダⅡにはミレニアムスクール宇宙部の大型ロケット“アルデバランV”のN1エンジンを15基搭載している。
液体燃料を大量に搭載した結果、潜水艦としては桁違いの大きさと重さになった。
「仮にスーパーキャビテーションを応用したとして、なんでこんな潜水艦を作ったんだ?この技術はどちらかと言えば魚雷に適してるはずなんだが」
このスーパーキャビテーションはその特性が故舵を操舵するのが困難である。
そのため直進でしか進まない魚雷にしか使えないとされている。
「恐らくミレニアムスクールの特性上、興味本位で作ったのかと思われます」
ミレニアムサイエンススクールは千年難題と言う七つの課題を研究したり最先端技術を追求するのが校風である。
だが、どこかの部活では短機関銃をタバスコ発射機に改造したりと変な方向へ追求してしまう事もある。
アンドロメダⅡも「潜水艦にロケットエンジンや静粛性の高い技術を着けたら最強の潜水艦になるのでは?」と言う理由で研究開発された代物である
「純粋な軍事利用が目的ではなく興味本意で作っただけか」
他にも、アンドロメダⅡに搭載されている微細動タイルの静粛性は、海上自衛隊の潜水艦より更に静かで、屈指の潜水艦探知技術を有する海上自衛隊の護衛艦や哨戒機のソナーを使用しても探知できない程だ。
この微細動タイルは、周波数さえ調整すれば音紋を欺瞞させ、他の潜水艦や魚群と誤解させる事もできる。
サウンドクラスター魚雷はスピーカーを内蔵した子弾を拡散させ音波を発振させる事で音の幕を形成させ、音の幕に隠れる事は勿論の事ソナーを撹乱させる事が可能である。
一定時間が過ぎると周波数を変調させ、自艦のソナーや通信の周波数もそれに合わせて周波数を変える。
こう言った新技術も詰め込んだ結果、開発費は高騰。
分かりやすく例えるとアメリカの最新鋭原子力空母ジェラルド・R・フォード級の調達コストが約1兆8000億円なのに対し、専用施設の建設も含めアンドロメダⅡはその2倍の約3兆5000億円に昇る。
これを知ったセミナーの会計担当は口から火が出るほど怒り、開発に携わった部活の次年度予算を5割削減させたのは有名な話である。
そんな裏話を知るはずもなく分析報告会は続く。
To Be Continued......
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熱中するグラ・バルカス
第二文明圏 グラ・バルカス帝国
日本と同じ時期に惑星ユクドから召喚された科学文明国家。
召喚され現地国家との不幸な接触を機に異世界に対して酷い憎悪や偏見を抱き周辺国を侵略し世界中を敵に回した過去を持つ。
米帝プレイを実行する事が可能な国力を持ち、技術では優っていた日本も追い詰められかけていた。
それでも日本には勝てずグラ・バルガス帝国は敗戦した。
軍の規模は最盛期より落ちたが、本土への直接的な打撃は少なかった事もあり国力は健在で、日本資本の企業が進出したことにより経済はもちろんのこと科学技術も進歩し発展した。
その中でも首都である帝都ラグナの発展具合は高く東京に勝るとも劣らないほどの高層ビルが乱立する。
闇夜の中ビルや車から漏れる光で辺りは照らされ、高速道路や高層ビルが建ち並ぶ中に異様な存在感を放つ六角形型のビルが鎮座していた。
古のアニメオタクが見たらどこか既視感を感じさせるようなデザイン。
国軍であるグラ・バルカス帝国軍を統括する帝国防衛庁の庁舎である。
帝国5軍幕僚監部の他に国防先進技術局や造兵局などの内外部局が多数所在している。
その中で情報を取り扱ってる国防情報技術局は、旧情報局情報技術部の後継組織で軍事にも広く関わっていたことから、国防情報技術局として規模が拡大された部署である。
局長室では局長のナグアノは部下が提出したキヴォトスに関する報告書に目を通していた。
机の上にはクロノススクールが刊行する“Kronos‘s all tha Kivotos Aircraft”が置かれていた。
クロノス航空機年鑑と呼ばれており、キヴォトスで運用されている航空機に関する情報が掲載しており、航空機以外にも艦船や戦闘車両や鉄道などシリーズ化され刊行されている。
この本は、地球で言うところのジェーン年鑑に相当する書籍でページ数は1000ページ近くあり1冊93100円と一般人には手が出し難い本である。
国防情報技術局は30分野近いシリーズ本を購入し局内の翻訳係や国内の翻訳家を総動員し翻訳し、つい最近になって航空機に関する年鑑の翻訳が終わったところである。
「結論からキヴォトスの航空技術は日本と同等か…これまたすごいのが召喚されたな」
ナグアノは呆れながらも資料を読み続けた。
キヴォトスの航空技術は日本と同等で、戦闘機は各学園と企業合わせて800機保有している。
輸送機や偵察機や早期警戒機などの支援機も含めて3000機近い軍用機を保有しており、軍用ヘリコプターに至ってはその倍の6000機を保有している。
キヴォトスにステルス機や爆撃機で対応するような敵がいない事から第5世代戦闘機や爆撃機は保有していない。
ナグアノは机の上に置かれた翻訳済みのクロノス航空機年鑑を手に取りページを捲る。
どうやら民間機と軍用機で章が分かれているようだ。
彼は軍用機の章を捲る。
最初に目に飛び込んで来たのはミレニアムサイエンススクールの戦闘機。
名前はシュレディンガーキャットと呼ぶようでミレニアムの主力戦闘機である。
「この形に可変翼…トムキャットにそっくりだな」
ナグアノは日本が召喚される前の世界の同盟国であった国の戦闘機の名前を言う。
「“フランカー”に“フルクラム”、“トーネード”、“グリペン”…“光菱F−1”もあるのか!」
その後ページを捲り続けていく。
「おお、我が軍のエリダヌス型大型飛行艇やグティマウン型爆撃機もあるではないか。む、グティマウンはキヴォトスだと輸送機なのか。しかも速度性能はグディマウンより上、プロペラは二重反転式か」
グラバルカスの輸送機以外にも、日本のC−2輸送機やスーパーギャラクシー、ムリーヤ、ハーキュリーズ、エクラノプランから民間機はB747、A380などナグアノが記憶している航空機の名前が挙がる。
中にはB747の翼を胴体の上に設置した高翼型輸送機、B747を一回り大きくしエンジンを六発化させ翼の付け根からトラス式支柱が生えた旅客機、エリダヌスを双胴・六発化させた飛行艇、
「航空機ですら我が国と日本と似てるのか…興味深いな」
ナグアノは夢中になりながら年鑑を読む。
読み終わった頃には机に突っ伏して寝息を立てていた。
「失礼します。クロノス年鑑5冊の翻訳が終わったのでお持ちしm…あれ局長?」
ナグアノの部下である情報局の女性職員が、上司のナグアノが寝ている事に気付く。
「もう、寝る時は横の簡易ベッドで言ってるのに…仕方ないですね」
彼女は5冊の年鑑をテーブルの上に置き、毛布を取り出しナグアノにそっとかけた。
To Be Continued......
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調査するミリシアル
第一文明圏 神聖ミリシアル帝国
クラークリアで最古の列強にして、日本が召喚されるまではクラークリア最強の国だった。
眠れない魔都である帝都ルーンポリスの中心部に位置する場所、皇帝ミリシアル8世が居城するアルビオン城では会議が開かれていた。
「陛下、キヴォトス由来の魔素の研究について報告があります」
そう言うのはルーングワホ魔導学院の大魔導士。
334歳のエルフの女性であり若くして大魔導士の称号を得た優秀な魔導士である。
「ほぉ何かわかったのか。では早速報告を頼む」
テーブルの中央に座るミリシアル8世が大魔導士に報告を促す。
「結論から申しますと、キヴォトス由来の魔素で我々の魔法を発動させるのは不可能です。また、キヴォトスの魔素は生物の体内に有する体内魔素である事、少量かつ効率的に魔法を発動させる事が可能な事と、人為的な魔素改造がされてることがわかりました」
「人為的な魔素改造だと?」
「はい、おそらく人工魔素かと思われますが、この技術は最近になって確立されたばかりの技術です。そんな人工魔素をキヴォトスが保有しているのは不明ですが、詳しく解析するためには高度な研究施設や人員や予算が欲しいところですね」
ミリシアル8世はしばらく考え込み、財務大臣に臨時予算を組むように指示をする。
「すまん、続けてくれ」
「キヴォトスの魔法は、戦闘時の身体の機能を大幅に強化する身体機能強化、物理防御、貫通、体力回復などの魔法があります。キヴォトスの魔法は戦闘に特化した魔法が主としています。また、これらの魔法はキヴォトスにおいて生徒と呼ばれる者が持っており、生徒によって保有している魔法の効果は個人差があります」
「するとキヴォトスの魔法は戦闘特化型と言うのか?まるでアニュンリールの人造兵士みたいだな」
ミリシアル8世はアニュンリール皇国が作り出した人造兵士を思い出す。
アニュンリールの人造兵士は身体機能の強化はもちろんのこと魔力の量も多く攻撃魔法の威力と連続性が高く、大東洋大戦のアニュンリール本土決戦で投入され各国陸軍部隊を苦しめた忌々しい改造兵器だ。
「しかし、キヴォトスの生徒はアニュンリールの人造兵士より強いです。身体機能は人造兵士の4倍、戦闘力は人造兵士の3倍、更にどれだけの攻撃受けよう死なない頑丈さを持っています」
「それは本当なのか?ハッタリなのではないのかね?」
「私のような超絶優秀な大魔導士が皇帝の前でそんな嘘を付きませんよ?」
大魔導士の自信満々な答えにミリシアル8世を含む首脳部は信じられないと言う顔をしている。
彼女の言う通り皇帝の前でこんな嘘をついて報告するのはデメリットしかない。
「一先ず信じるとしよう。人造兵士以上の強さか…魔帝もアニュンリール同様の人造兵士を配備しているかもしれないし対抗馬になるのではいのかな?」
「お言葉ですが皇帝陛下、キヴォトスは魔帝戦には参戦しないと表明しています。魔帝が侵攻してもキヴォトスを防衛するだけかと」
「なんと、それは誠か。まぁ魔帝戦に参戦しないと表明している国もいるから仕方ないが、惜しいな」
ペクラス外務大臣の言葉にミリシアル8世は残念そうな顔をする。
「その代わりに戦後の復興支援には協力を惜しまないようです」
「その時に我々が残ってればの話だがな」
「陛下、残ってればではありません。残らなければなりません」
シュミールパオ軍務大臣が強く力説する。
「軍務大臣の言う通り、我々は勝たねばならない。すまなかったな」
「いえ、出過ぎた真似をしてしまいました」
「さて、報告を続けてくれ」
ミリシアル8世は気を取り直して報告するように促した。
To Be Continued......
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恐れているエモール
第一文明圏 エモール王国
神聖ミリシアル帝国が属する第一文明圏の列強。
竜人族が治める人口100万人の単一種族国家で、ハイエルフと同等の魔力を有している。
同国の首都である竜都ドラグスマキラ北部の元老院議事堂“ガデリン・ドラグン”では貴族達が集まり議会を開いていた。
議会での議題は今話題の転移都市キヴォトスに関してだった。
キヴォトスには、人間は獣人などの多種多様な種族が住んでいる。
中にはアニュンリールと同じ有翼を持った種族も住んでおり、一部の国では「魔帝の末裔に違いない!」とキヴォトスを恐れられている。
「キヴォトスはアニュンリールと同様、忌まわしき古の魔法帝国の末裔であります」
そう主張するのはエモールの青年女性貴族。
有力なエモール貴族の出自で先祖代々から古の魔法帝国の高度な魔法技術や残虐性を語り継がれながら育った。
「よって、同都市は古の魔法帝国復活を目論んでいると考え、行動を起こされる前にキヴォトスに対して宣戦布告すべきであります」
その結果、彼女は古の魔法帝国の恐ろしさと、先祖をぞんざいに扱われた怒りや屈辱を抱き、「古の魔法帝国が復活したと同時にこの世から抹消せよ」と唱えるようになった。
自身の領地から発掘された古の魔法帝国製の、戦略爆撃型と戦略輸送型天の浮舟や空対空・空対艦誘導魔光弾、果ては空中戦艦“パル・キマイラ”を徹底的に破壊しスクラップにして売り飛ばしたり、世界各地にある古の魔法帝国の遺跡から発掘された物をリバースエンジニアリングし文明を築いた神聖ミリシアル帝国やカルアミーク王国を軽蔑したり、古の魔法帝国の末裔で復活を目論み世界と戦い敗戦したアニュンリール皇国の臣民を奴隷化ないし民族浄化を唱えてたり、彼女の古の魔法帝国に対する嫌悪さは度が過ぎていた。
とりあえず彼女は古の魔法帝国に関連する物全てを嫌悪してると言って良いだろう。
「開戦するにしても、確固たる証拠があるのかね?」
「証拠はキヴォトスの民には実体化した有翼を持った種族がいます。この世界で実体化した有翼を持つ種族は、古の魔法帝国の末裔にして世界の癌であるアニュンリール皇国の有翼人しかいません。これが証拠です」
「うーむ、それが証拠かね?もっと我々が納得できるような証拠を出して欲しかったのだが」
「仮にキヴォトスが魔帝の末裔だとして、なぜ彼女らは魔法を主軸とした文明を築いてないのだ?魔帝の末裔なら今頃魔法文明を築いているだろう?」
彼女が出した証拠に、貴族達の反論が飛び交う。
彼女の証拠もとい主張はただの難癖に過ぎず、当のキヴォトスは知らぬ存ぜぬである。
「もし、奴らが魔帝の末裔でアニュンリールと同様復活を目論んでいたらどうするのですか?」
「そうです、気づいてからでは遅い。その結果がアニュンリールが自国内と世界各国の都市に対するコア魔法攻撃です!合わせて8000万人の死者を出し滅亡した国すらもあるのですよ!」
彼女の主張に賛成する他の青年貴族も負けじと反論する。
「だが、似てるからと言う単純な理由で開戦はやりすぎだ」
「脅威を見過ごせと言うのですか?」
「脅威も何もキヴォトスと魔帝の末裔との関係性は無いに等しいではないか」
次第に議論は熱を増し、乱闘にまで発展し今日の議会は強制的に閉会された。
To Be Continued......
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総理、来訪
D.U.横府航空基地
ヴァルキューレ警察学校とエイギル沿岸警備大学校が共同で運用している航空基地。
ここにはヴァルキューレのヘリコプター部隊やエイギルの哨戒部隊所属機が多数駐機している。
普段はヴァルキューレのヘリがD.U.市内へ出動したり、エイギルの哨戒機が定期哨戒で出動しているが、この日は違った。
大量のヴァルキューレ・エイギル両校の生徒やカイザーPMCのオートマタが基地内を巡回していた。
基地正門は対戦車用のバリゲードが敷かれ、至る所にヴァルキューレの装甲戦闘警備車、ドローンなどが配置に付いていた。
これほどの警備態勢が敷かれているのかと言うと、日本の国家元首である内閣総理大臣がキヴォトスに来訪するからだ。
今日から2週間の間、連邦生徒会との会談をはじめ、3大学園トップとの会合、キヴォトス各地への視察を予定しており、D.U.をはじめキヴォトス各地では各学園の風紀委員会も動員しており、厳重な警備態勢が敷かれている。
風紀委員会の大半は各学園自治区に拠点を構えていたヴァルキューレがD.U.警備や日本首脳部警護の為に割かれており、その穴埋めの為に動員している面が大きいが。
基地体育館
基地の要員が訓練やレクリエーションなどで使用する体育館は特別警備本部が設置されていた
『こちらタンゴ1、基地裏門に向けてトラック2台が接近中。車内には武装したヘルメット団を確認。これより制圧する』
『第2小隊、武装したヘルメット団と交戦中』
『こちら第6小隊、基地付近にてヘルメット団とスケバンの抗争が勃発。制圧したいので応援をお願いします』
「…キヴォトスでも類見ない警備を前に、近づくとは良い度胸してるな」
様子を見守っていた公安局のカンナは、静かに関心していた。
そんな彼女の横に情報通信局局長の報﨑ユキヨが近づく。
「奴らが使ってると思われるネット掲示板を見たところ、この基地はある種のチキンレースの舞台になってるらしいですよ」
「チキンレース?」
ユキヨは自身のタブレットをカンナに見せる。
「なるほど、私達はこいつらの紙以下のプライドの為に弄ばれてるわけか」
カンナは一旦目を閉じる。
目をカッと開き机に置いてあったマイクを手に取る。
「現場の各員に告ぐ。この基地に近づき害を成す輩は容赦するな。ヴァルキューレの意地を奴らに思い知らせてやれ!」
カンナの激励を受けたヴァルキューレの生徒の士気は高揚し、チキレースで基地に近づくヘルメット団やスケバンを次々と撃破・捕縛していく。
キヴォトスから300km地点の上空
機体側面に赤のラインと垂直尾翼に日の丸が入った輸送機が悠々自適に飛行していた。
日本国航宙自衛隊が保有する特別輸送機B747−8IC“ライジンサン・エアフォース1”だった。
ボーニング社のB747の最終モデルをベースに、敵味方識別装置やミサイル警報装置をはじめとした軍用機器を搭載し、チャフ・フレア、EMP防御が施されている。
総理大臣などの政府要人から天皇などの皇族関係者の輸送、在外邦人保護などを任務としている。
ライジングサン・エアフォース1は任務である総理大臣をキヴォトスまで輸送している所だ。
「キヴォトスまで後300kmか…ワクワクするな」
機内の総理執務室では村角栄一が心を躍らせていた。
「今までむさ苦しいおじさんか妙齢な御婦人達を相手にしてたが、今回の会談相手は女子高生だし刺激的だな」
総理補佐官がゴミを見るような目で村角を見ていた。
「総理、遊びで来たわけじゃないですよ。あと、その発言下手すれば週刊誌の格好の餌になりますよ」
「おっと、これは危ない」
「室内からは盗聴器は確認されなかったので大丈夫ですよ」
村角は補佐官に弄ばられてる事に気づき気を取り直した。
「にしても、今やアメリカがやっていた事を我が国が真似る事になるとは、誰が予想した事やら」
「“ツクヨミ”の事ですね」
「そうだ、ツクヨミだ」
ツクヨミと呼ばれたそれは、ライジングサン・エアフォース1に随伴しているE−5国家空中指揮機“ツクヨミ”の事を指す。
航宙自衛隊のC−5J戦略輸送機をベースに、強力な指揮通信能力、長時間滞空可能な飛行能力を有し、有事の際の国家指揮能力の維持や古の魔法帝国による全面戦争により東京が消し飛ばされても残存する海上自衛隊SLBMや戦略ロケット自衛隊に対し打撃を与える事を前提とした航空機である。
E−5はアメリカのE−4空中指揮機ナイトウォッチの、“大統領が外遊する際に随伴する”と言う運用方法も参考にしており今回のキヴォトス来訪にも随伴している。
ちなみにE−5以外にもF−3A戦闘機“ソウクウ”4機が護衛で随伴している。
「あんな物を作ってまで魔帝に勝とうとするなんて、人間の執念は凄まじい物だな」
村角は人間の執念で作り上げられたと言っても良いE−5に軽く恐怖していた。
「あれをキヴォトスで使うような事が起きなければ良いが…」
「神に祈るしかないですね」
机に備え付けられている電話から、“ジリリリリリリン!”と言うベルの音が室内に響く
「俺だ」
『総理、間も無くキヴォトス領空です。準備をお願いします』
「さて、仕事の時間だ」
村角はそう言いクローゼットにかけていたスーツを羽織り仕事の時の顔に変わる。
D.U.横府航空基地
普段はエイギルの哨戒機が発着するのに使う滑走路に、村角を載せたライジングサン・エアフォース1が、ランディングギアから接地し、白い煙とタイヤ痕を残しながら着陸する。
しばらく滑走した後に、自走しながら誘導員の指示に従いローディングエプロンに進入する。
ローディングエプロンでは首席行政官兼連邦生徒会長代行のリンが、村角を迎え入れるため待機していた。
一国の首相を迎えるためか彼女は緊張していた。
「リンちゃん、顔怖いよ?もっと自然に笑って」
そんな彼女に先生が話しかける。
「だ、誰が、リ、リ、リ、リンちゃんですか。見ての通り私は緊張していませんので心配無用です」
(本当に大丈夫なのかな…)
先生の心配を他所に、どこからともなく現れたタラップカーがライジングサン・エアフォース1の機体前部のハッチに横付けする。
ライジングサン・エアフォース1のハッチの手前では村角が待っていた。
「このハッチの向こうには女子高生が待ち構えているのか」
「総理、くれぐれもエロ親父のような鼻の下を伸ばすような事はしないでください。総理のせいで我が国の品位が下がった時は腹切りでは足りませんよ」
総理補佐官が村角にキツいお灸を据える。
「君、相変わらず物騒だな」
総理だろうとその毒舌をお構いなしに振り続ける総理補佐官に村角は関心すら覚えていた。
そうこうしている内にハッチが開き光が漏れる。
村角は外に向け一歩踏み込む。
鼻の下を伸ばしたような顔ではなくキリッとした顔付きで一歩一歩と歩き出す。
「捧げ銃!」
リンと同じく待機していたヴァルキューレ儀仗隊リーダーの号令が響く。
儀仗隊はの格好は普段のラフな感じとは違い、ブラウス風の制服を羽織っており、ヴァルキューレ創設時に使われていた着剣付きスプリングヴァルキューレ銃と儀仗用ライオットシールドを捧げ銃の姿勢で構える。
ヴァルキューレの捧げ銃の姿勢は自衛隊式に儀仗用ライオットシールドを手首に装着している独自の方式を採っている。
村角はヴァルキューレ儀仗隊と言う花道を潜り抜けリンの元に辿り着く。
「ようこそ村角総理。首席行政兼連邦生徒会長代行の七神リンです。遠路はるばるキヴォトスの地へお越しいただきありがとうございます」
「第58代内閣総理大臣の村角栄一です。七神首席行政官、盛大な歓迎ありがとうございます」
村角とリンは互いに手を出し握手する。
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総理、来訪2
首脳会談会場 キヴォトス・セントラル・ホテル
日本の首脳陣とキヴォトスの首脳陣との会談会場として選ばれたキヴォトスの高級ホテル。
両首脳陣との会談は無事に終了し、安全保障条約の取り決め、双方の重要技術の導入と法整備、キヴォトスの異世界での活動に対する支援体制の構築で会談が進んだ。
今はホテルの大会場で、両首脳陣をはじめ連邦議会議員、大企業の重鎮などが出席する食事会が開催されている。
立ち食い式のビュッフェで日本で馴染みのある和洋折衷の料理で村角達は難なく受け入れていた。
「ふぅ、疲れたぜ」
村角は喉の渇きを潤すためコップに注がれていたオレンジジュースを飲み干す。
「まさか安全保障条約の取り決めがここまでスムーズに行くとは思いませんでしたよ」
友重国防大臣が皿に山盛りで盛り付けたチャーハンを頬張りながら村角に話しかける。
「そうだな。俺も正直困惑しかなかったが、自衛隊基地の建設候補地の要望まで呑んでくれるとは思わなかったよ」
「本土に持ち帰って国会での承認と部隊編成などしないとですね。早くても1年以内には全てを完了したいです」
「国会での承認は問題ないだろう。国内は古の魔法帝国復活に恐れて挙国一致状態だ。難なく承認されるはずだ」
村角と友重は話題を膨らませてる所に川野外務大臣や総理補佐官が集まり始める。
「おお、食事会は楽しんでるか?」
「ええ、楽しんでますよ。ただ、キヴォトスは未成年が多い事もあり酒が無いのが不満にありますが」
「ありぇ、酒なら頼めば飲めますよ?聞いてなかっらのれふか〜?」
総理補佐官は酒を飲みすぎたせいなのか、呂律が回らない状態で喋っていた。
「君、飲み過ぎじゃないのか?あと、だらしないぞ。酒に溺れても良いが、身なりは最低限整えてくれよ」
よく見ると彼女の丸メガネは少しズレており、ジャケットスーツは少しはだけていた。
「ふへへへ、良いじゃらないれすか〜こう言う時ぐらいは」
彼女は村角の腕に抱きつき上目遣いで見てくる。
(あ、あれ、普段は真面目で総理だろうと毒舌巻いてくる可愛くないやつだと思っていたが、意外と可愛いな)
村角はあの時の忠告を思い出し彼女を離そうとする。
「こ、こら、離れなさい!我が国の品位だとか言ってたのはどこの誰だったか思い出せ!」
「にゃへへへへ〜」
「ダメだ、こいつ出来上がっている!」と村角達は同じように思い始めた。
そんな彼女の事を置き別の話題で気を晴らそうとする。
「…連邦捜査部シャーレの先生の事についてだが、皆は彼をどう見る?」
村角はシャーレの先生の話題に切り替える。
出迎えから会談の終始まで連邦生徒会側の首脳陣として出席していた人物だ。
「そうですね…温厚そうな好青年と言う印象でしたよ。聞くところによると広大なキヴォトスのあちこちに出回っているほど多忙なようですし」
友重が先生の事を評する意見をする。
「食事会開催前に先生と話す機会があったのですが、「大人とは、子供のために責任を負うもの」と言う彼なりの信条の元、生徒のために動いてるようです。あそこまで真っ直ぐな人間は会った事もありませんよ」
今の所、先生に対する印象は好印象的になっている。
「その件の先生はどこへ行ったのかね?」
「急な呼び出しを受けて“キヴォトスヒカリ”と言う高速鉄道で百鬼夜行連合学院に出張するとか」
「会談が終わった後に出張だって?本当に多忙だな」
先生の人間離れした業務量に村角は目を丸くする。
「失礼、日本の首脳部の方々でしょうか?」
村角達は声のした方向に振り向く。
そこには、チャールトン自動小銃に似た銃にトリニティのティーパーティーメンバーが着ているような制服を着た生徒、StG45突撃小銃に似た銃にゲヘナのパンデモニウムメンバーが着ているような制服を着た生徒、FG42自動小銃に似た銃にミレニアムの制服と白衣を着た生徒が立っていた。
「えっと、貴女方は?」
「私達は連邦議会の議員です。ゲヘナ代表、連邦議会元老議員の西久世アリナと申します」
「同じく鷹司アクアです。トリニティ代表でフィリウス分派から参りました」
「万旗ニミコ。ミレニアムスクール新エネルギー開発部所属。よろしく」
彼女らは、会合を予定しているキヴォトス3大学園出身の連邦議会議員で直接村角達に会いに来たのである。
「貴女方がキヴォトス3大学園出身の生徒さんですか。お会いできて光栄です」
「いえ、こうして村角総理達に会えて、私達も大変嬉しく思っております」
村角と彼女らの社交辞令は早々に先生の話題に切り替わる。
先生に対する生徒の生の声を聞ける絶好のチャンスだ。
「先生ですか?前に些細な事で先生に相談したところ、親身になって寄り添ってくださいました。しかも、人口の3/1を占める生徒の名前をほぼ覚えてくれてますよ」
「え、ウチだと風紀委員の連中共に犬の首輪を付けたり、足舐めたりしてる噂を聞いたんだが…」
「先生は良き理解者。私の趣味に全肯定してくれる仲間」
肯定的に評価するアクア、ゴミを見るような目で評価するアトナ、同族と評価するミニコと先生に対する評価は千差万別。
その中でもアリナの評価は、それまでの好青年で自分の信条を貫き通す事に評価していた所に、冷水をぶっかけられたよう衝撃を受けた村角達であった。
一方その頃…
「なんだろう…また誰かに誤解されてるような気がした」
フランス国鉄のTGVに似た高速鉄道“キヴォトスヒカリ”の普通席で揺られながら、シッテムの箱でゲームに課金していた先生の背中に嫌な汗が流れる感覚を感じたのは別の話。
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トリニティの好景気
トリニティ総合学園
キヴォトスの学園にして三大学園の1校。
キヴォトスのメルキオール島に位置し、生徒数91万人の文武両道を範としたお嬢様学園。
生徒会のティーパーティーはパテル・フィリウス・サンクトゥスの分派から選出されたトップ3人で構成する三頭政治体制によって学園が運営されている。
ティーパーティーの桐藤ナギサと聖園ミカはバルコニーにて机を囲んでお茶をしていた。
バルコニーからはトリニティ大時計塔や高層ビルが一望できるようになっている。
「ふふふ、笑いが止まらないってこの事かしら」
「嬉しそうだけど、何か良いことあった?」
ナギサは目を通していたタブレットをミカに渡す。
「これってウチの自治区内総生産よね?」
タブレットには“トリニティ自治区内総生産報告書”のファイルが開かれていた。
ティーパーティーの会計部門が今年度の自治区内総生産を精査し予想した物である。
「ミカさん、前年度の総生産額と比較してみてください」
「あれ、今年はこれだけ増えるの?」
「これはまだ予想ですが、今の経済成長を見てるとそうなるかと思います」
ナギサはカップの紅茶を優雅に啜る。
「でも、どうしてこれだけ増えるのかな?」
「ミカさん、キヴォトスは異世界に転移したのはご存知ですよね?」
「バカな私でもそれぐらい知ってるよ!」
ミカはそう言い「フフン」とした顔をする。
「この世界にはキヴォトス以外の勢力が数多く存在しています。それらの勢力との交易が始まった事により、キヴォトスの経済活動は内部から外部にまで広がった事が要因ですね」
ナギサの言う通り、キヴォトスは異世界に転移する前までの経済はキヴォトス内で回っていた。
しかし、キヴォトスが異世界に転移し、日本などの国家との交易が活発化した。
その結果、キヴォトスは今までに経験した事もない未曾有の好景気に突入している。
「...わーお、異世界様々だね。茶葉なんて凄い量だよ」
「
トリニティの高温多湿な気候、良質な土壌と水によりダージリンやアッサムなどの茶葉が栽培されており、キヴォトスの紅茶茶葉の8割がトリニティ産を占めている。
中でもトリニティ産の紅茶茶葉の外部への輸出先の大半は日本が占めていた。
日本も異世界転移したことにより、ロシアやイギリスなどの茶葉の輸入先が失ったため、中には二度と嗜む事ができない紅茶もあり1杯飲むだけで数十万は吹き飛ぶ程だ。
しかし、キヴォトスが転移しトリニティで栽培されていた茶葉が驚くほどに似ていたこともあり、日本の飲料メーカーが店頭から姿を消した紅茶飲料の再販に取り掛かかかるため、トリニティ産の茶葉の輸出を開始したのだ。
「モモフレンズ…特にペロロジラが日本とグラ・バルカス帝国で受けているのは驚きですね」
ナギサは若干引きながらMomoTubeに投稿されている動画をタップする。
タップした動画は3Dモデル化したペロロジラが、日本の首都東京を蹂躙し、迎撃しに来たであろう自衛隊の部隊と無人新幹線爆弾が攻撃する内容だった。
この動画は、日本のとあるクリエイターが動画投稿サイトに投稿したのを、キヴォトスの生徒がMomoTubeに無断転載した物だ。
「わーお、無断転載とは言え500万再生越えだね。ペロロジラ関連の動画で一番再生されているよ。無断転載のチャンネルは…社長の面白動画チャンネルね」
「日本だと985万回も再生されているようですね。あっちだとペロロジラの実写映画やアニメ映画の制作の話もあるようで盛り上がってるようですよ」
日本ではとあるアニメ監督がペロロジラのアニメ映画を、グラ・バルカス帝国ではとある戦争映画監督がペロロジラの実写映画の制作が話題になっている。
「…ナギサちゃん、よく知ってるね。案外こう言うの好きだったりして」
「ふふふ、いつもヒフミさんから話を聞いているからでしょうね」
ナギサは冷静を装いながら紅茶を口にする。
トリニティ学生寮12号館3号室
1LDKの部屋には大量のペロロ様グッズで着飾れていた。
トリニティ総合学園の生徒にして覆面水着団のリーダーを自称する阿慈谷ヒフミは、巨大なペロロ様ぬいぐるみを抱きながらある動画を視聴していた。
「あ,あー!ペロロジラが!」
彼女が今見ているのはMomoTubeに投稿されている無断転載のペロロジラの3DCG動画だ。
陸からは10式戦車、90式戦車、99式自走155mm榴弾砲、MLRS、列車砲、AH−64EJがペロロジラに対してペロロジラを攻撃している。
「やめてください!ペロロジラがチクチク痛がってますよ!」
海からは“やまと型超大型護衛艦”5隻の一斉砲撃、その他の護衛艦から撃ち出される巡航ミサイルが雨霰の如くペロロジラに降りかかる。
「ペロロジラにそんな大きな砲弾は痛いです!」
空からはF−2B戦闘機やB−1爆撃機が無誘導爆弾をペロロジラへ投下していく。
「ペロロジラに雨のように爆弾を落とさないでください!」
怒りを露わにしたペロロジラが目やトサカから熱線を発射させ、10式戦車や90式戦車を融解させ、AH−64EJを撃墜させ、“やまと型超大型護衛艦”を一刀両断したり艦上構造物を消し飛ばしたりしていく。
更に熱戦は国会議事堂や東京タワーや東京スカイツリーに直撃し崩壊していった。
「やりました、ペロロジラの勝ちです!」
ヒフミが喜んだのも束の間、高層ビル20棟がペロロジラに向けて倒壊し、大量の爆薬を詰め込んだ無人新幹線や無人在来線がペロロジラに特攻し大量の爆煙に包まれ、最終的にペロロジラが目をバッテンにしてマントルに向けて落ちていく。
日本の勝利である。
「あ、あ、あ、ペ、ペロ、ペロロ…ジラ…」
ペロロジラが負けたと言う衝撃でヒフミは学校を2週間休んだのは言うまでもない。
To Be Continued......
ペロロジラ〜逆襲の人類軍〜
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ゲヘナの目論み
ゲヘナ学園
キヴォトスの学園にして三大学園の1校。
トリニティ総合学園と同じくメルキオール島に位置し、生徒数118万人の校則違反上等・違反サークルが乱立する自由と混沌が校風の学園。
生徒会のパンデモニウム・ソサエティーは生徒会なのに、生徒会としては全く機能してなかったり、ゲヘナの風紀委員会が強すぎたりと、同生徒会に対するゲヘナ生徒の関心度は薄いのだ。
「異世界…聞く所によると文明レベルは我々より低いと聞く」
「ええ、まぁそうですね。一部文明レベルが高い所はありますけど」
パンデモニウムソサエティーのトップである議長の羽沼マコトの問いに、ソファーで寝そべりながら本を読んでいる棗イロハが答える。
「キキキキッ!なら…」
「マコト先輩、世界征服を企ててるなら辞めた方が良いですよ。マコト先輩みたいな考えを持った勢力が舐めてかかって酷い目に遭ってますよ」
「そ、そうなのか!?」
「マコト先輩、連邦生徒会から送られた資料に目を通さなかったのですか?」
「机に置いてあった紙束のあれか?あれはイブキが落書きする雑紙にしてやったが?」
「やっぱり…」と予想していたのかイロハは呆れていた。
ナツメは懐から本を取り出しマコトの方に投げる。
「よっと…“日本の歴史”、“日本と新世界の歩み”?」
マコトが手にしたのは日本の出版会社KIDOKAWAが発刊する学習漫画シリーズの最新刊。
表紙には日本の首都東京をバックにワイバーン、魔王、空中戦艦パル・キマイラ、戦艦グレードアトラスター、海上要塞パルカオンなど異世界を象徴する物が描かれていた。
「日本が異世界に転移してから歩んできた歴史が小学生でも分かるように漫画化した物です。とりあえず、それで把握してください」
「む、スマンな。後で読ませてもらう」
「マコト先輩、くれぐれも軽率な行動は取らないようにしてくださいよ。キヴォトスが滅亡でもしたら私がサボれないので」
「そ、そうだな、滅亡でもしたらイブキを愛でれないからな」
マコトは本を手に取り書斎机に置きに行く。
「マコト先輩、風紀委員会からの予算拡充についてなんですけど」
「あぁ、忌まわしき風紀委員会の件か?なんだ、あの予算は前年度の10倍も求めやがって。パンデモニウムを潰す気か奴らは」
「本気で潰しにかかるかどうかは置いといて、確かに結構な額の拡充要求でしたね」
風紀委員会が要求して来た次年度予算は前年度の10倍以上、その使用用途が最新装備の配備や標準装備の更新など多岐に渡る。
「このゲパルト戦車後継は何だ?主砲が55口径120mm滑腔砲、装甲は複合装甲、サイズはゲパルトより一回り大きいぞ。本気でウチを潰しにかかるんじゃないのか?」
「多分その恐れはないと思いますよ。他の風紀委員会でも同様の事は起きてますし」
イロハが言うようにゲヘナ以外の風紀委員会でも予算拡充祭が起きている。
言わずもがな、キヴォトスが転移した事による脅威が増えた事、有事の際の現在の各学園の風紀委員会の対応能力では不足していると判断されたからだ。
「ふむ、そうなるとウチの戦車も更新はした方が良いかもな。イロハよ、この際だから虎丸も更新しないか?」
パンデモニウムにもイロハの愛車である超無敵鉄甲虎丸の他に標準戦車のサーバルを複数保有している。
目の敵にしている風紀委員会が新しい戦車を配備するならパンデモニウムも、とマコトは考えた。
「あっ、私の虎丸だけは今のままで十分です。」
「お前の腕の良さは知ってるが、虎丸は50年前の代物だぞ。仮に風紀委員会が最新戦車でパンデモニウムに突撃して来たら、虎丸じゃあ太刀打ちできないと思うが」
「虎丸が動かなくなったら考えますよ。とりあえず強化して補うとしますか」
「そ、そうか。イロハがそう言うなら強くは言えんが。早速トラミに最新戦車の設計を命じるとするか」
マコトはそう言い、早速仕事に取り掛かる。
To Be Continued......
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ミレニアムの好奇心
ミレニアムサイエンススクール
キヴォトスの学園にして三大学園の1校。
生徒数79万人、科学技術に力を入れており新興学園ながら短期間の内にキヴォトス三大学園の指に入るまでに急成長を遂げた学園だ。
“千年難題”という難題に立ち向かう研究者の集まりをきっかけに誕生してから、様々な研究室が生まれキヴォトスの科学技術発展に貢献している。
「今度できる新しい部活の事なんだけど…」
「ふむ、気になるけど、今の部活での研究もあるし…」
「ちょうど、刺激的な物を欲していたし入部しようかな」
異世界に転移した事により創作でしか登場しない魔法の存在や、キヴォトスの生徒にも魔法に準ずる物がある事が明らかになり、魔法に関する研究や技術を開発する部活“マギア”の創設が、ミレニアム生徒の間で話題になっている。
「魔導戦艦に魔導戦闘機…どう言う仕組みで動いてるのか気になるな、分解してみたいな、中身見て見たいな」
学園の性なのか魔法と言う現象を追求したい生徒、魔法でキヴォトスの技術革命を起こしたい生徒、己の欲望を満たしたい生徒がマギアへの入部を考えていた。
マギア創設はミレニアム在校生のみならず、興味を持ったミレニアム自治区と他の自治区の中学生の同校への入学者数の増加、魔法に憧れている他校の生徒がこぞってミレニアムへの転入申請が相次ぐ副次効果も生まれた。
とは言え、彼女らは魔法関する知識は無いに等しい。
ミレニアム魔法研究の顧問として、魔法文明国家から魔導士の派遣を要請している最中だ。
その中で神聖ミリシアル帝国、アニュンリール皇国、パーパルディア皇国、パンドーラ大魔法公国、マギカライヒ学院連合、アガルタ法国、中央法王国の7カ国は魔導士の派遣に前向きな姿勢で検討している。
ただし、アニュンリール皇国は半ば強制的に検討させられているが。
他の魔法文明国家は、キヴォトスの世紀末っぷりの治安状況や、一部で囁かれている“キヴォトス魔帝子孫説”を理由に魔導士の派遣は見送られている。
特異現象捜査部
異世界に関連する事なら特異現象捜査部も切っても離されないだろう。
特異現象捜査部は、同校の生徒会であるセミナー傘下の特務組織で「科学的に証明しがたい事象を研究・追求」する事を目的としている。
「ただでさえ、私と部長でデカグラマトンを調査しているのに、キヴォトス転移現象の調査依頼なんて…イライラしてきて暑くなって来た」
部員の和泉元エイミはそばに置いてあったエアコンのリモコンを取る。
「落ちついてください、エイミ。これ以上温度を下げないでください。部室を冷蔵庫にする気ですか?」
部長の明星ヒマリはエイミの行動を止めようと説得する。
「服を脱ごうとしないでください。え、下着はどうかって?」
ヒマリは、エアコンの温度を下げる代わりに、下着になろうとしているエイミに困惑を隠せなかった。
「そうですね…仕方ありません、水着までなら許します」
「良かった、こんな事もあろうかと水着を用意していたんだ。ちょっと待っててね」
エイミはそう言い、その場で制服を脱ぎ始める。
「お待たせ」
「ま、まさか、その下着が水着って言う訳ありませんよね?」
今のエイミはファスナーが付いたブラジャーとパンティの下着姿だった。
「ああ、この下着は水着としての機能も持ち合わせてるの。暑くて水浴びしたい時に一々着替えずに済むし効率的でしょ?」
「何ですか、制服の下にスクール水着を着てすぐに着替えれるような感覚は」
エイミの効率的な行為にヒマリはツッコミが追いついていけなかった。
「それにしても異世界ってすごいね」
「ええ、日本からの情報によれば、この世界は魔法以外にも、デカグラマトンが存在を証明しようとしていた“神の存在”も確認されていますから。この学園に通う生徒にとって、この世界は正に知識の宝庫。自身の知見を広げるまたとない機会ですね」
『神を研究し、その存在を証明できれば…その構造を分析し、再現できるだろう。すなわちこれは、新たな神を創り出す方法である…』と言う仮説を元に作られた対絶対者自律型分析システム。
同校の超高性能演算機関“ハブhub”を0.00000031秒と言う速さでハッキング、特別な空間に隔離されたサーバーを電源なしで掌握するAI離れした技の性能を持つAIだ。
デカグラマトンは自身の本体があった施設を爆発と水流で消し去り、自身の配下である預言者と共に存在証明をやり直す旅路に出た。
「でも、これ大丈夫?デカグラマトンが、この世界の神と接触しようと何かアクションをとって来るんじゃ無い?」
「その可能性は否定できません。預言者の襲撃、ミレニアムで起きたハッキングとは比べ物にならない大規模なハッキングが」
「日本が一番注意すべき。あそこキヴォトスに匹敵する情報社会が築かれてるし、100年前に神と接触して軍隊をこの世界に派遣したから」
「エイミの言う通りですね。後で連絡係にデカグラマトンの資料を渡して日本に送ってもらいましょう」
その後、ヒマリはデカグラマトンに関する資料を連邦生徒会人材資源室から派遣された行政官に渡された日本に提供された。
ゲーム開発部
「イキスギィ!イクイク!ンアーッ!いいよ、こいよ!胸にかけてください!胸に!」
ゲーム開発部の部員天童アリスは、部室内で大声で叫んでいた。
「あ、アリスちゃん…」
「お姉ちゃん、これはどう言う訳?」
「わ,私もさっぱりだよ!」
そんなアリスの奇怪な行動に、花岡ユズ、才刃姉妹は戸惑っていた。
遡る事3日前…
アリスはスマホでレトロゲー実況動画を視聴していた。
下に表示されている関連動画の上位に、日本の動画投稿サイトから無断転載された動画を見つけた。
アリスはそれをタッチした。
Q.【じゃあ、まず年齢を教えてくれるかな?】
A.【24歳です】
Q.【24歳?もう働いてるの?】
A.【学生です】
Q.【学生?あっ…(察し)ふーん】
アリスはその後、投稿されている関連動画を漁り始めた。
「やりますねぇ!銃が効かねぇんですよ!ンアッー!枕がデカすぎます!」
今に至るのだった。
「ちょっと、ゲーム部!他の部活からクレームが来てるんだけど…あ、アリスちゃん?」
そこにセミナーの会計担当の早瀬ユウカが入って来た。
「ゆ、ユウカ…」
「おっ、ユウカ先輩じゃ無いですか、ちっすちっす」
「アリスちゃん…」
「はえ~ユウカの太もも、すっごい大きいです」
「あ、あんた達〜アリスちゃんに何を吹き込んだのかしら?」
ユウカの地雷を踏んでしまったのか、矛先はモモイ達の方に向いた。
「ひぃっ…」
「ユウカ、これは誤解だよ!私達にもさっぱりなんだよ!?」
モモイ達は必死に弁明する。
「おっ、見たけりゃ見せてやりますよ」
アリスは徐に制服を脱ぎ始める。
「アリスちゃん!?」
「アリス、ストップ、ストップ!!」
半裸になったアリスをモモイとミドリは阻止する。
ユズは唐突な出来事にロッカーに退避した。
「アリス、早まらないで!」
「そ、そうだよ!これ以上やったら廃部にされる!」
「おっ、そうですね、それはいけません。アリス脱ぐのやめます。代わりにこれを胸にかけてください」
アリスは懐から練乳チューブを出す。
「アリスちゃん!!!」
「どこでそんな事を...///」
「はい、シャーレに遊びに行った時に先生の机の底から見つけた本で、先生はこういったシチュエーションが好きだと知りました」
アリスは純粋無垢な笑みで答える。
「えっ、先生そう言うの好きなの?」
「何か以外...てっきりむっつりスケベかなと思ってたけど」
「あんた達、何関心してんの!?ど、どうしよう...と、とりあえず先生に」
「えい!」
アリスはキャップを開け練乳をぶちまける。
「「アリスー!!!」」
「アリスチャン!!!」
To Be Continued......
今回は濃い味付けにしてやったゾ
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武器輸出
千葉県習志野市 国防省庁舎C棟
北海道の五稜郭と同等の面積を誇る国防省敷地内のC棟は国防装備庁が入庁している庁舎である。
国防装備庁は、国防装備の開発・調達をはじめ、アメリカなどの旧世界国家の国防装備の調達や共同開発、他国への国防装備の輸出を所管している。
天守建築が融合した12階建てビル内部のある会議室にて、国防装備庁の長である土井洲長官をはじめ幹部自衛官や日本の国防産業を支える企業の常駐社員が一堂に介していた。
「さて、今回諸君が集まったのは他でも無い。キヴォトスへの国防装備の輸出に関しての会議だからな」
遡る事2週間前...
東京都千代田区 首相官邸閣議室
「キヴォトスからの武器輸出要請?」
「はい、在キヴォトス大使館にて浅瀧外交室長から直接要請されました」
「遂に来たか」
岸川外交大臣の答えに村角はようやく来たのかと言う反応をする。
日本とキヴォトスが接触した事により、キヴォトスの情勢は日本国内にもたらされた。
中でもキヴォトスの生徒が銃をスマホを1人1台持つ感覚で、一般生活に溶け込んでいる姿は日本国民に強烈な印象を与えた事だろう。
【この世界みたく我々の常識は通じない】
【未成年でキヴォトスを回せたからすごいのでは?】
【年齢なんて所詮我々人間が付けた概念にすぎない】
【未成年だからと侮らず対等に接すべき】
キヴォトスに対しての好意的な印象、キヴォトスの状況を関心したり、動向を注視したいなどの世論の大半が占めていた。
【キヴォトスと戦争になったら脅威である】
【銃を当たり前に持つような文化を形成させたキヴォトスの大人を許すな】
キヴォトスに対して危険視していたり、逆にキヴォトスの状況を可哀想な目で哀れんでいたりなどの反応も少なからず存在するのも事実だ。
「武器を売るとなると国内の人権団体が黙って無いのでは?」
人権団体は、キヴォトスの未成年銃火器所持を良しと見てなかった。
キヴォトスの治安や未成年への悪影響があるとし、銃火器の所持を規制させるように日本政府がキヴォトスに対して働きかけるべきと主張している。
「人権団体の言い分なんか、キヴォトスからしたら知らんがな、ですよ」
「連中の言ってる事を馬鹿正直に実行したら内政干渉に過ぎん。日本とキヴォトスは互いに対等であるべきと言うスタンスから逸れてる」
人権団体の主張に対する世論の答えは大臣2人と同じ物だった。
「話を戻しましょう。こちらがそのリストです」
岸川は村角らにリスト表が書かれた紙を配る。
「なるほどね。キヴォトス程の文明力なら自衛隊と同等の装備を輸出しても問題ないのんでは無いか?」
「総理もですか。私も問題ありませんね」
2週間後に開かれた国会でキヴォトスに対して国防装備輸出が承認。
日本とキヴォトスとの間で日キ武器輸出協定が結ばれた。
そして今に至るのだ。
「まずは銃火器だな。決まってるか?」
「はい、既に決まっています。リストに載ってある物全部が以上になります」
土井洲はホッチキスでとめられた紙の束を捲る。
64式小銃、89式小銃、20式小銃、21式拳銃、 MINIMI、20式軽機関銃、24式短機関銃、19式多銃身機関銃、9mm機関拳銃など狙撃銃やショットガンも合わせると数十機種が輸出可能対象となっている。
「89式や64式他は倉庫から引っ張ってくる感じか?」
「はい、64式は他国へ輸出したので在庫は少ないですが、89式はまだ十分あります」
64式小銃や89式小銃は20式小銃制式化により順次退役し、異世界国家への輸出若しくは各駐屯地の予備倉庫に眠っている。
「9mm機関拳銃も輸出するのか?あれは使うのに癖が強い銃だが」
9mm機関拳銃は24式短機関銃が制式化する前に自衛隊に配備されていた短機関銃だ。
発射速度は約1200発の連射性を誇るが、照準を安定させ発砲時の反動を抑える銃床が無いため、両腕のみで支える必要があり連射時の命中精度が低い。
使うにはそれなりの体格と体力が必要な故、使うには癖が強いと言われている。
「キヴォトス人の身体能力的に大丈夫じゃないんですかね?恐らく、そんな癖の強い武器を使うのは、一部の物好きか被虐嗜好の強い人でしょうけど」
小柄な体型で対戦車狙撃銃やミニガンを軽々と持つキヴォトスの生徒なら、癖が強い9mm機関拳銃ぐらい余裕で持てるだろう。
「MINIMIとM2はどこ製か?」
「両者共、角友製ですが…」
この答えに同席していた角友重機械工業の社員の背中に変な汗が滴る。
角友重機械工業は日本の重工メーカーの一つで、素材加工、加速器・極低温技術に強く半導体製造装置の国内トップクラスのシェアを誇る企業だ。
角友は日本の国防産業を支える企業であり、主に自衛隊機のジェットエンジンブレードやガスタービン動力護衛艦のタービンブレードの製造を担っている。
機関銃事業も展開していたが、74式車載機関銃、MINIMI軽機関銃、M2重機関銃合わせて約20000丁の試験データを改竄する不祥事を起こした事により国防省から指名停止を喰らう過去を持つ。
その結果、以後の機関銃製造は南部工業が指名され、更にデータが改竄された機関銃全てを正規データの物と交換する為8年と言う時間を要しながら交換する羽目になった。
「君達、キヴォトスをゴミ溜めだと勘違いしてないか?」
「いえ、決してそのような事は思ってもいません」
担当していた担当官は目を横に逸らした。
「おいこら、今目を逸らしただろ」
「あーあー何も聞こえない見えないよー」
担当官は耳を手で塞ぎ目を閉じていた。
我慢できなかったのか角友の社員が血反吐を吐きながら机に突っ伏した。
「え?」
「あー、気にしないでください。しばらくしたら戻ると思うので会議を続けましょう」
別の角友の社員が会議を続けるよう土井洲に促す。
「本当に大丈夫なのか?」と頭の中で思いながら土井洲は会議を続けることにした。
「とりあえず、角友製の奴はリストから外せ。そんなもん渡して何かあったら「日本は不良品を送り付けやがった」と言われて信用を失いかねないからな」
「なんで角友製の在庫があるんだ...完全に廃棄したと思っていたが」
「次は戦車などの大型兵器です」
「確か、キヴォトスが一番欲しがってたな」
銃火器のリストが載ったページを捲る。
「44/55口径120mm滑腔砲?単体か?」
「はい、キヴォトスは特に120mm滑腔砲を強く要望しています」
キヴォトス三大学園をはじめそれなりの規模の学園や企業では第3〜3.5世代相当の主力戦車の開発が活発化している。
古の魔法帝国復活までに配備を終わらせたいが、120mm滑腔砲の開発がそれまでには間に合わないので、トリニティやカイザーインダストリーを除く各学園・企業は日本から120mm滑腔砲の輸出を同意している。
「次のページに各学園と企業が開発中の戦車の要求スペックと完成予想図が載っています。目を通してください」
次のページを捲る。
そこには各学園と企業が開発中の新型戦車の要求スペックや完成予想図がズラリと並べてあった。
「ゲヘナは万魔傅と風紀委員会が別々で開発するのか。まるで旧帝国軍を見てるようだ」
「パンデモニウムはフランスのルクレール、風紀委員会はドイツのレオパルド2A6に似てますね」
「ミレニアムは現行のMS−01の主砲を120mm滑腔砲に換装する感じか」
「このネクゾン重工は韓国陸軍のK2戦車ですね。開発能力がない学園向けの戦車のようで各学園によって仕様変更が可能との事です」
「山海経は解放軍の99式戦車か…いや125mm滑腔砲なんかねぇよ」
「それ言ったらレッドウィンターもだ。こっちなんかオムスクのブラックバードだぜ」
「ヴァルキューレは初の戦車のようです。これなんてイスラエルのメルカヴァMk.4ですよ」
その他にもアリエテ、アージュン、ゾルファガール、M1A2エイブラムスなど地球国家の戦車と似ているキヴォトスの新型戦車が続々と出てくる。
「百鬼夜行に至っては10式そのまんまだぞ。10式を直接輸入した方が良いんじゃないか?」
「そうですね、ここまで似てると輸出しちゃっても良い気がします。光菱重工さん的にどう思いますか?」
光菱重工業は日本の重工メーカーの一つで光菱グループの中核を成す“光菱グループ御三家”の一社である。
“光菱は国家なり”とし国家との結びつきが強く、国防装備は陸海空宇宙全てを網羅しており、国防省への装備納入実績は1位と日本の国防産業の中核を成している。
「神戸製作所の量産ラインはパーパルディア皇国へ輸出予定の19式戦車を生産しているぐらいなので問題ないです」
光菱重工業の社員が答える。
光菱が保有する制作しで戦車の量産ラインがあるのは、北海道の旭川製作所、神奈川県の相模原製作所、兵庫県の神戸製作所、福岡県の北九州製作所の4拠点である。
神戸製作所は輸出向け戦車を製造するラインがあり、東南アジア向けの74式戦車D1型や90式戦車A3型をはじめ、異世界国家向けに新設計された19式戦車を生産している。
「でも10式を生産するなら神戸以外でも問題ないのでは?」
「神戸以外の3拠点は国内向けです。それに製作所は戦車だけ生産してる訳ではありませんよ。16式機動戦闘車や99式自走砲などの生産ラインもこの製作所で生産してるのですから」
「仮に3拠点で百鬼夜行向けの10式戦車を生産するにしても優先度が低下します」
神戸以外の3拠点は絶賛稼働中である。
新規の10式戦車B型をはじめ、最新型の90式戦車A5型や10式戦車B型に移行する為現行車両の改造でラインが埋まっているからだ。
「となれば、百鬼夜行向けへの輸出は10式戦車A型になりますね」
10式戦車A型は44口径120mm滑腔砲を搭載しているB型が登場するまでに配備されていたタイプだ。
現在最新型に移行が進められている10式戦車B型は44口径130mm滑腔砲を搭載している。
「あとは百鬼夜行に提案するだけですね」
その後、各学園が興味を示した01式野外炊具車、高機動車をベースにした軽装甲機動車、エイギルが興味を持ったP−1哨戒機などの国防装備が選定されていた。
ちなみに日本の強みである護衛艦などの戦闘艦艇は、まったく無くジャパンオーシャンユナイテッドや三瑞造船の社員は終始しょんぼり気味だったとか
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カイザーの脅威
「今、何と言った?」
村角が険しい顔で聞き返す。
「え、あ、はい、キヴォトスにて弾道ミサイルの保有が確認されました」
担当の女性自衛官が少し緊張しながら村角達に再度報告する。
「おいおい、村角。怖がってんじゃねぇか。そんなんだと女にモテないぜ」
「余計なお世話だぞ、阿蘇華」
官房長官兼副総理で大学時代からの村角の悪友である阿蘇華麟太郎が茶化す。
「ウチの村角がすまないね」
「あははは…」
「はぁ…コイツの茶化しは置いとこう。弾道ミサイルを保有しているのは連邦生徒会か?それとも3大学園のどれかだ?」
「保有しているのはキヴォトスの重工メーカーでカイザーインダストリー。キヴォトスの巨大企業カイザーコーポレーションの傘下企業です」
「政府ではなく一企業が弾道ミサイルを保有しているのか。何でそんなもんを持ってるんだ、キヴォトスを恐怖で支配したいのか?」
「こちらが連邦生徒会から提供された弾道ミサイルのスペックです」
・カイザーインダストリー社製弾道ミサイル“アークトゥルスCX”
射程距離:4500km
推進方式:二段式液体燃料ロケット
搭載弾頭:単弾式サーモバリック弾頭
「弾頭は“核”じゃなくサーモバリック弾頭だと?」
サーモバリック爆薬は燃料爆薬の代わりに気体爆薬に置き換えた物で、長時間かつ高温・高圧の衝撃波を起こし、重重篤な火傷・内臓破裂・酸素欠乏による窒息が人体に襲いかかる凶悪な兵器だ。
このサーモバリック爆薬は殺傷能力が高すぎて、ヘイローを持つ生徒でさえ耐えれるか不明であるとし、キヴォトスでは生産が禁止されているが、異世界転移した事によりサーモバリック爆薬の生産・所持の規制緩和が検討されている。
噂程度ではあるが、昔倒産した軍需企業が複数の生徒を使ってサーモバリック爆薬の効果を実験したと言う都市伝説があるとか…
「連邦生徒会によるとサーモバリック弾頭搭載弾道ミサイルは、旧型サーモバリック手榴弾改良事業の際に違法に生産された物で試作品との事です。弾頭の威力は押収した研究データから、破壊範囲は半径数キロに達すると予想されています」
「何だそれは、核と同程度の威力じゃないか!?」
「“道真”による皇居の上空で炸裂した際の被害予想は千代田区を含む東京9区のに住む都民約300万人が死傷。東京9区は壊滅し首都機能の大半を喪失、株価暴落による世界恐慌、首都圏全域で交通麻痺による約1000万人の帰宅困難者の発生、日本全国への物流の遅延による産業・医療・国民生活・メディア等への影響が予想されています」
「弾道ミサイルの射程は日本列島全域とロデニウス大陸を収めています。現在は中距離級のアークトゥルスCXしか確認できてませんが、今後大陸間弾道ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイルを開発する可能性もあります」
「保有数に関しては定かではありませんが、企業の規模からして通常弾頭搭載はl10から20発は保有しているかと思われます。サーモバリック弾頭搭載は先程述べた通り押収されたので保有していないかと思われます」
「仮に発射されたとして迎撃はできるか?」
「カイザーが保有する全ての弾道ミサイルを発射したとして、迎撃に関してはは問題ありません。全て迎撃できます」
自衛隊のBMD体制は以下のようになっている。
・航宙自衛隊の早期警戒衛星による24時間365日の監視体制
・弾道ミサイル発射時のRCー1情報集偵察機等による監視体制の構築
・弾道ミサイル発射時の国民保護として、当該地区の住民に対する早期の避難命令
・海上自衛隊が有する数十隻のBMD対応護衛艦と陸上自衛隊のBMD対応基地によるミッドコース段階での迎撃
・航宙自衛隊のTHAADと陸上自衛隊の自走電磁加速砲によるターミナル段階での迎撃。
迎撃網は非常に厚い物になっており、時の首相である田中角栄が唱えた列島改造論にて、整備された国民保護シェルターや個人シェルターの普及により住民の犠牲を最小限に抑えれるようになっている。
「また、キヴォトスから弾道ミサイルによる攻撃された際の報復措置として、常時展開している戦略ロケット自衛隊の第7ロケット旅団の92式中距離弾道ミサイルで発射基地を殲滅します」
「そうか...キヴォトスに弾道ミサイルを撃ち込む事態にならなければ良いが」
「連邦生徒会や各学園は我々に温厚かつ友好的です。敵対するような事はないと思いますが、カイザーコーポレーションの動きには注意すべきです」
「そうだな、これ以上血を流したくない物だ。京都と新潟の様に同じ轍を踏んではならない。隣人を疑いたくないが、キヴォトスへの監視体制を強化しろ。特にカイザーコーポレーションが保有していると思われる施設には目を光らせてくれ」
村角の顔はどこか悲哀に満ちていた。
To Be Continued......
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