別伝スーパーロボット大戦α ー偽神の支配者ー (モノアイの駄戦士)
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やあ異世界!早速だが絶望しろ

やあ!みんなぁ!今日はイカれた仲間を紹介するぜ!
まずは俺!モノアイの駄戦士!作者だぜ!
感想をご飯とする半ニート学生なのでモチベ維持のためによろしく頼むぜ!続き書く為に何でもしますからぁ!(必死)

テンションおかしいけど段々落ち着くから許してクレメンス……



 

 

 

 

皆はロボットと聞いて思い浮かぶのはなんだろうか。

大抵の人はガンダムと答えるだろう。

だが、ガンダムと言ってもその人の思い浮かぶガンダムのイメージは違う。

人によってはザクと呼ばれる量産機をガンダムと呼んだり、別作品のガオガイガーやマジンガーZをガンダムと呼ぶ人もいるだろう。

そんなガンダムを作った原作者の監督は、他作品にも大きな影響を与えた作品を作り出していた。

伝説巨神イデオン、アニメ業界に衝撃を与えたアニメはガンダムを深く知るガノタ達にはよく知れ渡る存在である。

とはいえ、この世界では企画で終わってしまっているため関係ないが。

さて、それはさておき我らの主人公、仲居冴月は今日も今日とて民度最低無料ゲーム【バトルオペレーション2】をプレイしていた。

尚、この日は月曜とする。

 

「出たぁ!俺の愛機ィ!マイハニィィ!」

 

朝から騒々しい少年だが、両親は早朝から仕事で迷惑を受けるのは運悪く近くで休んでいた獣達だろう。

画面に映る5回目のジムⅢに歓喜の涙を流す。

 

「このクソッタレ運営めがぁぁぁーーーー!!!」

 

ここまでがルーティーンである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、仲居冴月は愛称仲居さん、呼び名も仲居さんでサヅキと呼ばれることはない。

まあ、そんなことはどうでもよくて冴月は良くも悪くも普通である。

顔もクラスメイトのような周囲の人間のように妙に整った顔立ち等ではなく、肌ケアの努力も虚しくできた薄いそばかすと眼鏡で陰キャ感MAXの少年である。

どこにでもいて、普通にありそうな人生を送って老衰か何かで死ぬような人間である。

このご時世、オタクという存在はまだ悪印象しかなくオタクというだけで虐められることしばしばである。

勿論、クラスメイトにもそんな奴等がいて冴月もそんな小悪党達にウンザリしていた。

同じく同胞……といってもメリハリのない南雲ハジメもまたそんな奴らの餌食になっているが、冴月はあえてオーバーアクション気味にキレ散らかすことで小悪党達を追っ払っている。

何ならイジメの証拠を突きつけて数週間、休学させたこともある。

だが、学校側は甘く見ているのか小悪党達はイジメをやめる気配はない。

そしてクラスのリーダーもまたクソ面倒くさい人間で、端的に言えば自己中。

良く言えば正義のヒーローだろうか?

どのみち話が通じない事は、冴月の母と同じなので冴月は天之河光輝とはあまり関わらないようにしている。

そういう面では、クラスのマドンナである白崎香織に恋心を寄せられているハジメは災難だろう。

どのみち悪評が多い冴月には関係のない事である。

悪評、といってもシンプルに外見の事や普段見る態度などが変なものも引っ付けて広まったような物だが。

 

「よお、キモオタァ?今日もエロゲーやってたんだろぉ?」

 

そして今日もウンザリする学校生活が始まる。

冴月は小悪党のリーダー、檜山に何言ってんだコイツと哀れむような視線を向けてから口を開く。

 

「ヤンキーモドキさんは今日も元気でちゅね〜?いつになったら赤ちゃんから卒業できるんでしゅかね〜?」

 

「なっ!?テメッ…!」

 

煽りに煽る冴月だが、ここで暴力には発展しない。

冴月は面倒くさいと一蹴して鍛えていないが、冴月には柔道の才能がある。

ついでにナイフ投げの才能もあるのだから戦闘面では普通なら負けなしである。

そんなわけでかじった程度の柔道の技でもボコられる檜山らは、冴月からはヤンキーモドキやらヤンキーごっこ等と揶揄されている。

何も言い返せず、素通りする冴月を睨むだけだった檜山だが次に教室に入ったのが南雲だとわかってからはすぐにハジメに狙いを定める。

そこから白崎が挨拶し、天之河が無自覚の嫉妬心を南雲にぶつけ、いつものように八重樫雫が謝罪をする。

女子らしいことをしたい彼女の気持ちを察せない天之河や周りに、冴月は可哀想だなと思いつつ傍観者の立場は崩さない。

二次創作のような主人公なら介入するだろうが、冴月にはそれを為そうとする気もないし、そもそも高校に上がるまで他人であった冴月が介入すれば変ないざこざが生まれる。

それ以前に何故か中学の評判が流れており、遅刻魔だったり平気で嘘をつく人間だのと思われている。

そんな彼が介入?笑えるねぇ?

という感じで冴月は放置していた。

勿論、彼女個人と会話するときなどは普通に会話するし、プライベートでたまたま出会えば挨拶もする。

そこらのコミュ障を拗らせた陰キャと違って冴月は喋れる陰キャ馬鹿なのである。

尚、面倒くさがり屋なのでどのみち印象は悪いが。

自覚している分、余計に質が悪いがその話は別の機会にしよう。

 

「あー…早く終わらんかなぁ……」

 

勉強も特にやる気がなく、時計を見たり脳内でゲームのシミュレーションや空想対決なんかをして時間を潰す冴月。

そんな彼に待ち受ける運命があるとは、誰も想像しないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み、クラスメイト達が弁当を引っ提げてグループが集まり、恋バナやら何かしらの話題やらを話し合う時間になる。

悪印象故に、冴月はボッチで食べるだろうと想像した人達を裏切るかのように友人である清水幸利と共に弁当を食べる。

勿論、内容はバトオペである。

 

「クランマで蛙と当たったなぁ……」

 

「凄いよなぁ……上手い上に動画も面白い。そんな彼に憧れる!痺れる!」

 

「幸利はニコルゥゥゥゥ!!って叫んでりゃ良いんだよ」

 

「フジャケルンジャナイ!」

 

とまあ、馬鹿騒ぎしながら食べていた。

両者共に早食いで完食した直後、運命は来た。

 

「ファッ!?」

 

「なんだこれは」

 

教室の床が輝き、社会科の担当である畑山愛子が「逃げて」と叫ぶも閃光と共に全員その場から消え去った。

生徒の行方不明によって謎の失踪事件として世間を騒がせたが、警察の調査も虚しく次第にその話題は立ち消えた。

だが奇妙な事に、教室の床にはΔを象るようなマークが残されていたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、肝心の冴月だが………

 

「俺はガンダム俺はガンダム俺はガンダム俺はガンダム」

 

「アルミホイルアルミホイルアルミホイルアルミホイル」

 

幸利と共に異様な空気を生み出していた。

冴月は洗脳されないために思考をせっさんにし(失礼極まりない)幸利はシンプルに冴月の毒電波を食らっただけである。

正気に戻ったのは幸利で、その彼からビンタされて正気に戻った冴月は目の前に広がるどこぞの十字架宗教を思わせる壁画がどことなく気持ち悪さを抱かせた。

 

「ようこそ、勇者の皆様。私はイシュタルと申します」

 

状況が理解できないクラスメイト達は、イシュタルと名乗ったいかにも司祭という服装で注目を集める老人に釘付けとなる。

 

「勇者の皆様に、どうかこの世界の危機を救っていただきたい」

 

そう彼らに願うイスカンダルに、クラスメイト達は湧き立つ。

「遂に勇者!?」、「俺も遂に…!」等と浮足立つが冴月だけは冷静であった。

むしろなんでそんなことしなきゃアカンのだと、内心愚痴った。

とはいえ、ここで嫌だなどと叫んでも意味はないので立ち上がろうとする。

 

カシャン………

 

「ん?」

 

立ち上がると何かがズボンのポケットから滑り落ちる。

落ちた物を拾い上げると、それは幼稚園バスを模したかのような玩具である。

 

「なんだこれ?まあいいか」

 

とりあえずズボンに仕舞いつつ、イスカンダルと名乗る老人から得れる情報を聞きつつ今後の展開を想像するのだった。

 

 

 

ちなみに途中で聞き流してエロゲーを想像してたりとはない。

断じてないのだぁぁ!

 

 





読了ありがとナス!
続くかどうかは感想の量なのでどうかおねシャス!
ほら、兄貴が言ってたやん、モチベは感想の数だって(←キモいなぁ……)





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戦争ってマ?

いやぁ、なぁにこれ(前回の自己紹介)
本当にテンションおかしいと変なこと平気でやるよなぁと、またこの歳になって黒歴史を生み出すアンポンタンは私です。

とりあえず、イデオン出るまでは頑張りたい。
ちなみに主人公に行動の一貫性がなかったりするのは一般人故ですかね……そうだと思わない?
本人が飽き性になりやすいとかもあるけど。(ブーメラン)

感想おねしゃす……



 

胡散臭い老人についていくしかない我らの主人公仲居冴月は、考える。

どうして自衛隊とか米軍じゃなくてただの子供をわざわざ異世界に召喚したのたろうか?

魔族との戦争なら添付された多少の才能がある子供よりも、経験や訓練を積んだ軍隊の方が非常に強力だろう。

とはあえ、それはそれで転移の際のエネルギーやらなにやらで無理だったんじゃないかと想像を膨らませる。

が、どのみちこの教会の老人にしろ、きな臭い奴らである。

クラスメイトも乗せられて現実を見据えておらず、もうどうなんのかわっかんねぇなぁ?状態である。

 

「なあ、幸利」

 

「なんだ?」

 

ようやく飯を食う以外の口を開けた冴月は、項垂れるハジメとは別のベランダで体を冷やしていた。

 

「勇者ってなんなんだろうな」

 

「ええぇ………」

 

遂にキレる、狂うにボケが入ったかと幸利はマジかコイツと思ったが質問の意味をよく吟味すると確かにと腑に落ちる。

 

「あー……集団で勇者って呼ばれる意味ってこと?」

 

「お、そうだな」

 

「どっちだよ……」

 

そう突っ込むと冴月は火照った顔をパシンと叩いた。

 

「いやぁ、だって勇者って一人のことを指すよな?そう思うとやっぱり胡散臭いからなぁ……」

 

「はぁ……」

 

「てな訳で俺達は勇者じゃぁない!そして俺達は帰れる保証はなぁい!畜生めぇ!」

 

「うるせぇよ!」

 

どことなくホモォ(笑)な雰囲気に割って入る影。

 

「私の名前はリリアーナと申します。勇者様、お加減いかがでしょうか?」

 

ハイリヒ王国の王女のご登場である。

そんな彼女に対して冴月の対応は素っ気ないものであった。

 

「あ、仲居冴月です。よろしくッス」

 

「は、初めまして!清水幸利です!」

 

冴月は普通にノンケである。

幸利もまたノンケである。

なので、幸利は目の前の年下とはいえ美少女にテンションを上げたし、ちょっと行き過ぎた想像もした。

では何故、冴月は素っ気ないのか。

 

「眠いなぁ……」

 

そう、眠気である。

なんだかんだイカれている冴月だが、異世界転移という余りにも非日常な現象に結局のところは凡人の冴月には普通に疲れる訳で。

 

「寝ちゃった……」

 

「寝ちゃいましたね………」

 

寝落ちした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冴月は奇妙な空間にいた。

 

「なぁーんだぁ?」

 

妙に脳がクリアになり、思考も何となくだが早く感じる。

まるで幽霊になったような感覚に、冴月は戸惑った。

 

「汝、我を見つけよ」

 

突然、脳に響いた言葉に冴月は誰だと周りを見渡すが何もいない。

それどころか脳にインプットされるように、何かの居場所を理解させられる。

 

「こ、これがわからせって奴ですか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな夢を見て冴月はいつの間にか寝かされていたベットから跳ね起きる。

 

「…………ヨシ!」

 

そして何事もなかったかのように二度寝するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これからこのステータスプレートを……」

 

と、以下にも親しみ深い騎士団長のメルド・ロギンスがその手に持つステータスプレートについて解説している中、冴月は隣の幸利に愚痴を聞かされていた。

 

「なぁにが二度寝だよッ!?俺をストレスマッハさせる気か!?」

 

「なぁに、それくらいバトオペで鍛えられた俺達にゃノーマンタイ!」

 

「コイツにジャベリンブチ込みてぇ……」

 

二度寝した冴月を起こすために悪戦苦闘した幸利は、次は起こしてやんねと心に決めるのだった。

さて、そんな小さな口喧嘩も密かに終焉を迎え、ステータスプレートに血を垂らす事になった幸利は、ひえっと針を指に刺す。

 

「つっ……」

 

血を触れさせることで個人情報が現れるなら遺伝子云々が関係しているんだろうか?と、幸利は思いながら隣の冴月を見てみると……

 

「ん」

 

口内をかきまわし、それをステータスプレートに付ける。

すると、ステータスプレートは赤く染まった。

 

「ええ……」

 

痛み損じゃねぇか……と幸利は嘆いた。

だが、小悪党組がまた何か騒ぎ出したので二人共そちらに視線を向ける。

 

「錬成師?ギャーハハ!ありふれた職業とか最弱じゃねぇか!」

 

冴月は「まーた煩い奴等だよ」と呆れたが、流石にステータスプレートを全員に回し始めるのは酷いと思い、クラスメイト達に回される南雲のプレートが冴月の手に来た時に南雲の元にへと放り投げる。

 

「んなっ!?」

 

面白いことを止められた子供のように冴月を睨むが既に冴月の眼中にはなく、自分のステータスを見る。

 

 

 

 

 

仲居冴月 男性 種族/人間

天職【指揮官】 Lv1

 

筋力25 敏捷15 耐久500 耐魔500 魔力150

 

 

技能

不屈Lv2、鉄壁、必中Lv2、幸運、努力、加速、魂、補給、ド根性、直撃、気合、てかげん、信頼、集中、激励、カウンター、底力、魔力効率、投擲術、柔術

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸利のステータスプレートと見比べると珍妙な内容は、どことなくゲームにより近い内容になっていることに冴月は違和感を覚えたが、気にしても仕方ないとその思考を放棄する。

何より、面倒臭いのもあるが。

そういえばと、南雲の方を見れば畑山先生が自分も役に立たないと話していた。

そんな彼女に気になった冴月は彼女に一言かけて見せてもらう。

 

「ほら、私も南雲君と同じ……」

 

「………南無阿弥陀仏」

 

「ええっ!?」

 

冴月は南雲を哀れに思った。

勿論、錬成師であることを哀れんだのではなくシンプルに彼の悲運にである。

まさか自分もと言う教師が農作物系のチート持ちなど、目が死ぬのが当たり前な奴である。

 

「南雲、見ない方がいい……」

 

そう忠告したがやはり気になってしまうのがゲーマーの性か。

見てしまった南雲の目は死んだのだった。

 

 

 

 





スパロボ経験者なら何となく理解できるでしょうが一応、技能について解説コーナーでござるの巻。

【不屈】…一回だけダメージを10に抑える。今作ではちょっと痛いくらい、怪我もほぼしない。オリジナルのLv2では2回となる。重ねがけ不可。

【鉄壁】…1ターンの間、あらゆる攻撃のダメージを四分の一にする。今作では一定時間ダメージの大幅軽減。

【必中】…絶対に攻撃が当たる。Lv2ではクリティカル付与。使い分け可能。

【幸運】…入手できる資金が2倍になる。今作ではシンプルに運が良くなる。重ねがけ不可。

【努力】…入手できる経験値が2倍になる。今作でも一戦闘の度に経験値が2倍される。重ねがけ不可。

【加速】…移動するまで移動力が+3される。今作では敏捷が上がる。重ねがけ不可。

【魂】…一回の攻撃力を2.5倍する。サルファのコマンドを参考に熱血×2を魂に統合。消費魔力は高い。重ねがけ不可。

【補給】…本来はENを全回復する。今作では制限として一日2回まで可能。

【ド根性】…全回復するコマンド。今作では2回までの回数制限。

【直撃】…バリアやサイズ差によるダメージ軽減を無くす。ただし、一部は無効化される。

【気合】…原作では気力という武器使用制限を蓄積解放する為のコマンド。今作では全能力値の10%向上と同時に重ねがけ不可。

【てかげん】…どんな攻撃もHPを1残す。今作でも同じ。

【信頼】…指定した相手のHPを2000回復する。今作では回復魔法と同じ扱い。

【集中】…命中・回避を30%上昇させる。今作では思考速度と反応速度を一定時間上げる。

【激励】…サルファでは味方小隊の気力を5上げる。今作では味方と認識している味方に全能力値5%アップのバフをかける。

【カウンター】…原作にもある技能。今作では時折反撃時に攻撃力アップ。

【底力】…原作ではレベルの高さと体力の減少で補正が上がる。今作では主人公のレベルによって底力の補正も高まる。



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淫夢厨?違うね、俺はガンダムだ!

とりあえず頭を空っぽにして書いています……多分。
頑張って平行作業やんないと………ギュネイ頑張らないと……




 

訓練の日々だ。

ここ最近の事を端的に言えば、訓練漬けである。

南雲は訓練を最低限に知識を得ていたが、それとは別に冴月も訓練後など暇な時間に図書室にやって来ていた。

ちなみに冴月は南雲を訓練から外すように、とか錬成の技術向上をさせてやれ、何てことは言っていない。

それは自分でやるべきことだと、自分のことを棚に上げて他人の責任にしていた。

まあ、どのみち正論でもあるので言い返しにくいのもまた事実だが。

 

「……クッソ主観な歴史書だな」

 

国の歴史を見た感想はそれである。

まるで都合の悪い物をなくそうとしているように書かれている。

実際、事実であるがそれを今の彼が知ることはない。

 

「この玩具みたいな奴も特に情報がなかったなぁ……」

 

そう言って懐から取り出したのは転移時に拾った幼稚園バスをモチーフにした玩具みたいな車。

これに関しての情報が全く無かった事に、冴月はハイリヒ王国の闇の深さを感じ取る。

 

「そういえば、宝物庫にもあったな」

 

もう一つ、宝物庫の脇にチョコンと置かれていた似たカラーリングの玩具があったので、持ってきていた。

恐らく、アーティファクトと呼ばれているステータスプレート等と同じように何かしらの小道具なのだろうと思いつつ、隣にいる少女……リリアーナ王女に視線を向ける。

 

「で、なんでいるんすか」

 

何故か訓練を終えるたびに彼女は誘き寄せられるように冴月の隣に来るのだ。

特にイケメンでもない、どちらかというとブスと価値観の激しい人からはそう言われても仕方ない平凡な顔の冴月だ。

幸利談だが、普通に人を殺してそうな目もしているらしい。

そんな彼に引っ付く理由があるのだろうか?

そう思っていたが、リリアーナ王女はこう言った。

 

「なんだか、昔会ったことのある気がするから……それに貴方からはリリーナと呼んでくれてません!」

 

何とも言えない話である。

だが、冴月も嫌な気持ちにはならなかった。

それはリリアーナが美少女だからか、それともその性格のおかげかは分からない。

だが少なくとも冴月は他の人間とは一線を超えた反応をするのは確かである。

 

「リリーナだと俺が自爆王子になりそうだから却下」

 

「自爆王子って何ですか!?」

 

割とどうでもいい理由であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな戦争中、等と言われる日々で緩やかに過ごす中、ようやく迷宮攻略で腕試しさせろという、上層部からの指令が来た。

冴月は人殺しの練習をしないのかと思ったが、部下思いのメルドだから悩んでいるんだろうと検討をつける。

とは言っても、もう既に馬車に揺られるだけなのだが。

 

「確かオルクス迷宮だっけ?」

 

「お、そうだな」

 

「頼りになるな!」

 

「煽ってんのかテメェ!?」

 

まあ、そんな事なんかあの頭悪そうな老人達には関係ないだろう。

ちなみにバトオペにおける「頼りになるな!」は煽り文句になっている。

この二人はバトオペに毒されて敏感になっているが、ある意味そのおかげでメンタル面では強くなれたのかもしれない。

いや、これは成長と言えるのだろうか…?

そんな彼らを見て呆れるのはクラスのマドンナ達。

そう、白崎香織と八重樫雫である。

 

「今のが煽りになるってどういうことよ……」

 

「い、色々あるんだよ。きっと」

 

八重樫は項垂れ、白崎は彼女を宥めるが何時ものように振る舞う必要性がないことに安堵している八重樫もいた。

 

「そういえば八重樫、前に渡したアイルーのぬいぐるみ大切にしてるか?」

 

「え!?あ、うん、してるわよ!仲居さん!」

 

突然話を振られて狼狽えつつ、猫の人形のことを思い出した八重樫。

冴月が男っぽいし、ちょっと女っ気出してやろうと心を鈍感にして恥ずかしげもなく彼女に渡したアイルー人形。

 

「女っ気ないからやるよ」

 

と言って渡した姿は悪印象として周囲からは捉えられたが、実は八重樫的には好感度アップであった。

やり方はともかく、そのぬいぐるみが可愛いのもありプライベートでほんの少し関係を築くくらいには近付いている。

尚、冴月はそんな彼女にチョロさを感じつつ、それにデレる自分を殴ってたりするが。

 

「そうかぁ……ゲーセンにデフォルメわんわんおのぬいぐるみあったから、誘おうかと思ってたんだがな……」

 

「……お前って陽キャなの?それとも陰キャなの?」

 

幸利は冴月のキャラがブレ過ぎていて、毎度困惑している。

が、それも慣れてしまうと単なるギャグ感覚になり、幸利は割とこの関係が楽しいと感じていた。

 

「そういえば幸利ってこんなもの拾ったりしたか?」

 

また突然、話の見えない事を話し出し、幸利は彼の手に乗せられた幼稚園バスの玩具のような物に若干違和感を持つ。

それは何となく感じる魔力と呼ばれる物。

だがしかし、明確に違うとわかるソレは幸利に既視感を与えた。

 

「あー……ちょっと違うけどこんなのがあったな」

 

そう言って取り出したのは玩具の飛行機。

色合いは似ている2つだが、特に何か変わった様子はなく、二人は首を傾げる。

 

「何か関わりはあるような気がするんだよなぁ……」

 

「まあ、ここでいくら考えても仕方ないだろ」

 

諦観の雰囲気になった二人の間に意外な人物、八重樫が割り込んだ。

 

「えーと……その、私も似たようなのがポケットにあったのよね……」

 

そう言って取り出したのは幸利の物と打って変わって黒い飛行機。

手のひらサイズなのが変わらず、しかし重厚感のある見た目である。

 

「へぇ……何かの証だったりすんだろうかねぇ?」

 

冴月はそう言うが、幸利は肩を竦め「さあ?」と言い、八重樫も分からないといった様子でポケットにしまう。

ちなみに冴月の戦闘服はどのみち当たりゃ死ぬ、当たらなければどうということはないと、赤い彗星の精神で最低限の皮防具とカッコつけに赤マフラーを巻いているだけ。

ぶっちゃけ異世界お○さんファッションである。

 

 

 

 

そして場面は移り変わりオルクス迷宮が存在する町にやって来た。

そこで特に特筆することはないが、次の日に攻略に挑むということで歓迎を受けているのは確かである。

だが冴月は彼らの期待には応えられそうにないと、リーダー格の天之河光輝を見てそう思う。

何故ならコイツは自分の都合のいいようにしか考えないから。

現実を受け入れず、クラスメイトを幻惑させた張本人である。

もし戦いで反戦を唱えていようが、死んでいようが冴月は容赦なく見捨てるつもり満々である。

むしろ、ようやく現実を見て絶望する様を見て笑ってやりたい気持ちでもある。

そんな想いが祟ったのか、夢はあまり良いものではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故だ!何故争う!もう戦いは無意味の筈だ!」

 

変なアフロヘアーの男の後ろで、傍観する冴月。

それを理解も記憶もできない。

だが、それは何かを訴えかけていた。

 

「■■■……俺達は……やるべきことが全て遅かったのかもしれん……」

 

次は瀕死の男。

でも何故かその男は見えない。

そりゃそうだ、その男になりきっているのだから。

そして、閃光が視界を満たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪夢でもみたんかワレ……」

 

汗が凄い事になっている冴月は、流石に二度寝するのをやめて(いやそもそも駄目だが)体を洗いに宿の下に降りる。

風呂なんてもんは、この世界は贅沢品なので井戸から組み上げた水しか体を洗う方法はない。

とはいえ、季節的にそこそこ暖かいので水がクソ冷たい、何てことはなく、丁度いい冷たさで汗を流していく。

まあ、濡らしたタオルで吹くのがメインだが。

 

「ああ〜^生き返るわ〜^」

 

人知れず勝手に生き返る冴月であった。

 

 

 

 

 

 

 

 




感想あると嬉しいです。
いやマジでモチベ上がります(不確定)

ギュネイ執筆にも繋がるかもしれん。まあそんなこと書いてるならとっとと書けって言われそうだけど()



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アトラス当たったのでアトラを愛でます(←は?)

バトオペでな ぜ か 当たったのでその喜びをスパロボにシュゥート!

ちなみに主人公は色々忘れがち。
え?タイトル適当過ぎる?
……割と使うんよね、サブタイトルでも頭…



 

バトオペではチームワークと数が勝敗を決める。

意思疎通が自由にできない野良では、特に数が求められる要素だ。

立ち回りも重要ではあるが、最終的には数である。

そんなわけで迷宮で一対多数の有利を作り出し、戦うのは至って普通の戦いである。

ただ、正々堂々を言いそうな勇者こと天之河光輝が四人組で魔物をリンチにするのだから滑稽で笑ってしまった冴月。

そんな彼らに幸利は劣等感を抱いた。

 

「闇術師の俺には無理だなぁ……クソ…」

 

「……なあ幸利」

 

「ん?」

 

そんな彼に冴月は言った。

 

「派手に活躍できようができなかろうがお前はお前で俺は俺。自分を持つ俺達がそれぞれ主人公なんだからな?俺達は俺達のやり方で良いんだよ」

 

「それはそう……なのか?」

 

ちょっと疑問に残るが、しかし一理ある言葉に幸利は勇者への憧れを思考から外す。

まあ、ちょくちょく引っかかるだろうが……

 

「さて、俺達が呼ばれたみたいだぜ?」

 

冴月のメインウェポンは大盾2枚。

それじゃ盾になる事しかできないか、と言われれば否。

盾とて使い方である。

 

「よっしゃ気分はキャプテン・アメリカや!」

 

「シールド投げはガンダムの十八番だしな」

 

「その例えを忘れていた!」

 

ちなみに冴月という変人と組みたがる人間は勿論いないので、幸利が哀れんで組んでいるという実態である。

後ついでに南雲も。

 

「南雲、短剣は自衛だ。錬成魔法でサポートしてれりゃあいい」

 

「わ、わかった!」

 

「幸利!オンドゥルの魔法が最大の鍵だ!前は俺が守る!」

 

「壁汎頑張れよ!」

 

「好きでドM機体乗ってねぇわ!」

 

壁になる存在は非常に重要である。

勿論、回避できてノーダメージならそれが一番だが天職が指揮官というには少々頼りない冴月の指示は納得できる内容である。

そして率先と仲間の盾になるその姿はメルドとその部下達からは高評価であった。

夢の国のネズミをワイルドにしたようなマッチョネズミの攻撃を盾で防ぎつつ、盾で殴り返す。

 

「切れない、砕けない、だが痛いだるぉ!?」

 

鉄壁の魔法をかけて攻撃を受け止めながら、相手が疲れるのを待つ。

 

「そこっ!」

 

「えいっ」

 

幸利の風の魔法がネズミの体表を切り裂き、南雲の錬成魔法がネズミの動きを制限するべく、壁がそそり立つ。

そして大盾の端を勢いよく突き刺す。

 

「ギュウウ!?」

 

「……おえ」

 

肉を貫く感覚に若干の気持ち悪さを感じるが、しかし殺らなければ殺られると自分を肯定してそれを無視する。

同時に、自分の体がかなり変わったことに苦笑する。

 

「少し前だったらこんなこともできないのになぁ……」

 

そもそも大盾自体持てなかったはずだ。

だが、訓練の結果こうして振り回して突き刺す事ができる。

それに優越感と恐怖を抱いたのは当たり前だろう。

が、クラスメイトは違うようだが。

 

「自分に酔って、現実を見失ったか……」

 

そんな彼らが現実を直視した時、暴れようが絶望しようがどうでもいいや、と思った冴月だったが檜山はこういうときにいらんことをするな、と予想して最悪殺すことも考えないとなと考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚、腹立たしい事にそんな事がすぐに起きるとは思わなかったが。

なんか珍しい鉱石を片想いしている白崎のために取ろうと、迂闊に近寄ったのが原因だが、ポジティブに考えよう。

もしかしたらお宝があるかもしれない。

そうポジティブになろうとした彼は、転移トラップによって転移された先にいたモンスターにジト目になった。

 

「普通にただの罠じゃねぇか……」

 

「バカヤロウ!」

 

幸利も思わず叫ぶ。

メルドもアイツは強すぎると撤退を命令するが、肝心の光輝は撤退を否と断固拒否。

倒せると自惚れている勇者(笑)を無視して周囲を見渡す。

そこにいるのはただの人間、スケルトンに囲まれて恐怖で動けない自分と同じ凡人たち。

クラスメイトに襲いかかるスケルトン達に、冴月はナイフを投げて窮地を助ける。

そして、激励を使用しつつ声を上げる。

 

「ようよう!テメーら元気かぁ!?俺はぁ元気だあ!」

 

コイツ何言ってんだ?と、クラスメイト達は声のする方向を向くと悪評高い変人がいた。

 

「これでわかったろう!?俺達ゃ勇者とか言われようが人間!所詮、相手が強けりゃ死ぬ!舐めてるとこうなんのさ!」

 

だがよ、と更に続ける。

 

「戦え!今度は曇った目ではなく、クリアな目で現実を見ろ!訓練で多少なりともやれるだるぉ!?やれなかったら俺よりバカって事だからなぁ!」

 

煽る、煽りに煽ってクラスメイト達の士気を上げる。

何でもいい、生きる理由になりゃそれでいい。

目の前でわざわざ死なれるのは夢見が悪い。

そんなヤケクソじみたエゴに、クラスメイト達は立て直し始める。

そんな間にも勇者(笑)はベヒーモスと呼ばれた化物を殺したいようで、南雲が説得してようやく前に出る。

が、少々遅く冴月が指揮をこなしていた。

 

「ほら!そこの忍者!とっとと歩け!囲まれてんぞ!」

 

「うるせぇ!」

 

「幸利!そこの隣の川!援護魔法!」

 

「相川だ!」

 

そんな中に、ようやく天之河は「皆、ごめん!待たせた!今道を切り開く!」と叫んで突貫する。

それに更に士気が上がるが、冴月は南雲の姿がないことに気付く。

 

「まさかぁ?」

 

それはヤバいだろ、とその予測を嘘だろと思いつつ後ろを振り返れば………

 

「マジかよ……」

 

南雲が一人で錬成を駆使してベヒーモスを抑え込んでいた。

 

「あー!めんどくせぇ!」

 

面倒臭い、と何度も愚痴りながらスケルトンの群れに突っ込み、更にナイフをベヒーモスの目に正確に投擲し、視界を奪って南雲に話しかける。

 

「おら、とっとと逃げるぞ!」

 

「え?うおっ!?」

 

無理矢理それをやめさせ、南雲を抱えて走る。

 

「ちょっ、ええ!?」

 

南雲は混乱していた。

まだ階段まで撤退するには時間がかかると思っていたし、まだ合図も聞こえない。

だが冴月は叫ぶ。

 

「魔術師がなにイキって前に出てんだよ!後衛は大人しく守られろよ!」

 

そう言って南雲を階段の方に放り投げて、大盾を構える。

ベヒーモスは目を潰された怒りからか、角を赤熱化させていた。

 

「ヒートホークやんけ!」

 

衝突。

グワン、という音と共にシールドと角が激突して衝撃波が生まれる。

不屈と気合をかけてもシールドがぶっ壊され、派手に階段の方へと吹き飛んだ冴月。

南雲の時間稼ぎどころか自分が先に階段に行き着くとか情けなさすぎるだろ!と、情けないと思うが腕の痛みにすぐにそんな考えは消え失せる。

 

「うぎゃぁぁぁっ!?」

 

粉々になった感覚と、腕が爆発したかのような激痛。

腕を見れば力なく垂れ下がり、血まみれの腕がそこにあった。

 

「ど、ド根性ッ!!」

 

あまりにも見ていられないその見た目に、クラスメイト達も吐き気をよもおし、冴月も見ていられずド根性を発動させる。

それによって腕はゴキゴキ、という音と共に戻った。

 

「不屈貫通でもあんのかよ……」

 

本人は必死で気付いていなかったが、彼の魔力は既に尽きかけである。

気合をかけた時点で既に切れていた。

後にそれを気付くわけだが、それよりもショッキングな状況が冴月達に飛び込む。

 

「いやぁぁぁ!!」

 

白崎の悲鳴。

それによって冴月は悟る。

 

「南雲の野郎…!」

 

吹き飛んだ袖によってノースリーブ風になったので、肌寒さを感じつつ崩壊する石橋と共に落ちようとする白崎を抑え込む八重樫の図に、クソッタレとこぼす。

 

「南雲君!なぐm……」

 

そんな有様にメルドは彼女を気絶させることで彼女を黙らせる。

そんな彼に天之河は突っ掛かるが、まあ勿論メルドが正論な訳で。

幸利に状況を聞けば何者かの援護魔法が、南雲に当たったという。

そして、その犯人は檜山であるとも。

 

「確かに見たよ、ニヤケ面してたからな……」

 

ついでに天之河が南雲をもう死んだことにしている台詞も言ってたので、勇者は本当に勇者(笑)だなと冴月は思った。

 

「ひとまず、地上に戻るぞ」

 

メルドの鶴の一声で勇者パーティは地上に戻ることとなった。

その道中、騎士から盾を渡してもらい、疲れた顔をしていた天之河と反対に魔物を喜々として殴り殺す冴月がいたとかいなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そういやぁ埋まってるの忘れてたな」

 

地上に戻る直前、記憶にインプットされていた場所を盾を使って掘る。

そこだけ妙に柔らかく、そこから出たのはまた自分の持つ物と類似性のある物。

そこは地上に戻る道中の小休憩中に見つけた小部屋だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちなみに技能の試験は訓練中や自主練でやってたりする。
まあ、特に明確に書く必要はないかなって思って排除しました。
ちなみに不毛だし面倒臭いのでステータス表記は前回だけです。 技能なんか特に変わらない予定です。


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だってよ……南雲なんだぜ?


サルファのイデオンって普通に使いやすいような、ちょっと使いにくいような、そんな感じ。
でもイデオンガンとかソード好きだから突っ込ませて使う……使うしかないでしょ?
尚、スパロボZも気になっているところさん。

ちなみに主人公は腹をくくって感受性も殺すとラノベ主人公みたいな事もするし、悪役外道もやりこなすやり手です。
なんだ、この都合の良さそうなポンコツ。



 

王都に帰還後、勇者の一人が死んだこと、それが錬成師ハジメであることを聞かせれた上層部は安堵の息をついた。

 

「なんだ、錬成師か」

 

「ならば問題あるまい」

 

そんな姿に白崎の看病をしたいと騒ぐ天之河の代わりに来た冴月は、脳裏に地球連邦のクソ共を思い出す。

これだから前線を知らない老人は……等とは冴月は思わない。

最初から戦争中だというのに、平和ボケしている面々を見てそれを期待する方が頭おかしいだろう。

常に最悪を考える側である冴月にとっては、人の命を軽々しく思っているのに腹立たしいが腐っても権力者。

冴月は勇者(笑)より下位の一介の勇者。

立場をわきまえなければ、この先生き残ることもできない。

最終的に天之河が更に良き勇者として評価され、南雲が死亡した事には変わらなかった。

クラスメイト達も、南雲の死に遅れてショックを受けて引き籠もる者達が多かった。

冴月は感受性が鈍いのか、それともそもそもそれを理解していないのか、特に何かあった事はなかった。

だが、一番生徒達を案じていた畑山先生に南雲のMIAを伝えるのは気が引いた。

それを伝えることになってしまった八重樫の苦労性もまたそれに相乗効果を冴月に与えた。

 

「嘘ですよね…?嘘だと言って下さい!仲居さん…!!」

 

「………」

 

小柄な体故に、小さな少女が冴月に泣きつく図式に見えるようになるがこの場でそんな場違いな事は言わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日から、八重樫はクラスメイト達から相談を良く受けるようになった様子を見ていた。

それを見て、冴月は八重樫を休ませようとした。

 

「八重樫、寝ろ。お前も休め」

 

「で、でも……」

 

「お前だって精神的に疲れているだろう?ここは俺が引き受ける。一人の女子に頼りっきりのバカ共には男子で十分だよ」

 

「……わかった」

 

相談を受けるようになってから数日。

そんな感じで代わり、八重樫の部屋の前に立ち塞ぐ仁王になった。

ちなみに、これはとある画策もあった。

 

「死ぬのが怖い?そりゃ皆当たり前だ。俺の知るアニメの主人公達だって死を恐れてたし、尚且つ俺だって死にたくはない。だけどな、それでも戦うしかこの世界で生きる方法はないんだよ。ガンダム見てりゃすぐにわかる」

 

そう、こんな状況なのにガノタを増やそうとクレイジーな思考の元、布教を始めていた。

 

「ガンダムって何かって?そりゃカッコいい、強い、面白いの三竦みよ」

 

「ガンダムってヲタクの世界?ノンノン、今は浄化されて新規さんにも優しい人は多いゾ?女子にだってガンダムが好きな人がいるしな!」

 

八重樫から見れば本当は自分がやるべき事を任せたせいで、彼が壊れたのではないかと自分を責めた。

だが、時間が立つに連れて次第に恐怖を抱くようになった。

本当に彼は人間なのか?まるで人の形をした別のナニカだ、という感想であった。

でなければ、クラスメイトがああもキているのに仲居冴月だけは何もなかったかのように振る舞っている。

人の死を惜しむことでもないと言い放ちそうなくらい、気味が悪く感じた。

だから、八重樫は問う。

 

「貴方、本当に人間…?」

 

そう聞かれた冴月は答えた。

 

「人間だよ。頭がちょいとイカれた人間の中のポンコツさ」

 

少し、自嘲気味に答えたその姿は八重樫の心に残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで雫の部屋に入れさせてくれないんだ!?」

 

ようやくクラスメイト達が立ち直って来た今日、天之河は雫の部屋に入れないことに苛ついていた。

そんな彼に冴月は若干、声を荒らげながら言う。

 

「テメーの尻拭いと我儘聞いてやってる彼女のことを考えたか?それにクラスメイトの相談も引き受けてた事もあって俺が代わりにやってんだ。疲れてる八重樫にわざわざ話することはないだろう?別に急を要する事でもあるまい?」

 

「もしかしたら自殺するかもしれない!」

 

「……え?」

 

突拍子もなく、そんなことを言い始める光輝に冴月はそのことを理解できず呆ける。

一応、天之河が来ていることは告げており、八重樫も了解の旨を冴月に伝えているのだが………

 

「コイツ、頭がイカれてやがる……」

 

『うん』

 

「どうしたらこうなんだよ……」

 

『我も不思議だ』

 

「我?」

 

隣から奇妙な声が聞こえる、そう思って振り向けば地味そうな美少女が幼稚園児の服をモチーフにしたような衣服で浮かんでいた。

 

「………幻覚か」

 

目の前の事実を誤魔化すかのように目を擦るが、目の前の美少女は消えない。

つまり、事実である。

 

「おまたせ……どうしたの?」

 

外からダダ漏れの会話に、天之河への好感度ダウンが急速に進む中、部屋から出た八重樫の目の前に広がるのは冴月に突っ掛かる光輝と、いない空間を見つめる冴月の図であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に戻った後、浮かぶ少女に質問攻めを開始した。

 

「オメーは誰だ」

 

「我は君の持つ物の意志だ」

 

つまりは、アーティファクトみたいな奴のか、とまあとりあえず納得する。

 

「なんで美少女なんだ」

 

「こちらのような容姿が、男性には喜ばれるらしいからな。それとコミュニケーション能力としてもこれを必要とした」

 

まあ、見た目美少女なら悪印象は持たないだろうからな、と冴月は納得する。

 

「名前は」

 

「………イデ、と呼ばれていた。いや、そうでもある」

 

「どっちやねん」

 

とりあえず名前はイデ、ということがわかった。

 

「お前は何をしに来た?」

 

「……我の願いを叶えるため。そして、君は我のサンプルでもある」

 

「サンプル……気に要らないな」

 

突然、他人からサンプル呼ばわりなど、気持ちのいいものではない。

 

「で、その願いってのは?」

 

「……それはまだ言えぬ」

 

「んじゃ、その時を待ちますか……」

 

かるーくこんな感じで質問攻めは終わった。

とはいえ、他の人には見えない都合上、傍から見れば本当にイカれたのではと思われるような光景でもあるのだが。

そんな折に、ドアがノックされる。

 

「すまない、私だ。八重樫だ」

 

「ん?ああ、どうぞ」

 

そういえばもう夜になってるな、と外の暗い世界を見る。

照明としては頼りない蝋燭の光に浮かぶ八重樫の姿は、そのプロモーションもあって扇情的であった。

 

「ブハッ!?」

 

「なっ……何がおかしい!?」

 

「いやいや、おかしいんじゃなくて普通に刺激強いって!?」

 

ネグリジェを寝巻きにするとかイカれてるだろ!?と、叫びたいがちゃんと外套を纏っている辺りまだマシか、とも思った冴月。

 

「その、今日は、人肌が恋しくて……」

 

「いやなにその理由……」

 

理解はできるけど、とドン引きしながらも付け足すが。

しかし、こんなに不安定さを顕著にした事もないので無碍するほど冴月も非情ではない。

 

「……一緒に寝たいってか」

 

「う、うん。この歳になって、すごく恥ずかしいけど……」

 

なんだ、異世界に来ればこうなるのは必然だとでも言うのか?

だったら現代でもやってくれよ、世界。

元の世界にそう文句を垂れ流したかったが、目の前の彼女がいるので控える。

 

「とりあえず、離れて寝てくれよ?俺だって恥ずかしいからな」

 

「……お前に恥ずかしいという感情があるのか……」

 

「失礼だなぁ!?この野郎!?」

 

そんなふうに、若干騒がしつつ就寝にへと至るのだった。

八重樫の心にある、その燃えるような何かは、お察しできるだろう…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『■■■■■め、そんなことにわざわざ勇気を与えることもなかろうて……あ、ちょ、痛い痛い!?』

 

 

 

 

 

 

 

 





感想欄で全裸待機しているアイツは誰だ?
俺だよ畜生!この野郎!
とまあ茶番はさておき、感想よろしくお願いします。

ちなみに主人公と八重樫はエッな事はしてませんからね?(念押し)


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ボンクラ勇者とポンコツ指揮官

次の日曜から水星の魔女シーズン2ですねぇ……
ガンダムらしい展開に期待大です。

え?百合がみたい?
百合はあるじゃないか(辛辣)
ただの日常で終わるならアナザーガンダムで最もガンダムである必要がなくなる作品になるし……(←何してんだコイツ)



 

勇者達は大きく2つのグループに別れていた。

一つはこのまま変わらず迷宮攻略を続けるグループ。

もう一つは、農業チートを持つ畑山先生の護衛のグループ。

ちなみに王国上層部からはとっとと最前線に投入しろと煩いのだが、それをだまらっしゃい!と声を上げたのが畑山先生である。

そんなわけで、クラスメイト達にも選ぶ権利が与えられたのだが………

 

「畑山先生の護衛は八重樫、俺、幸利、遠藤、辻で十分だ」

 

「は?仲居、お前何様のつもりで……」

 

「仲居さん…!」

 

冴月と畑山先生の護衛の志望者達で口論となっていた。

ちなみに遠藤はちゃんと覚えていてくれる冴月に感涙の涙を流していた。

 

「そもそもお前たちに魔族を、人を殺す覚悟なんかねぇだろ」

 

「ま、守るためならそれくらい…!」

 

「じゃあ、今ここで俺を殺せ。そうしたらその覚悟を認めてやる」

 

「なっ!?意味がわからないぞ!?」

 

少し、いやかなり苛ついた様子でクラスメイトと話し合う冴月に、クラスメイト達もヒートアップしていく。

そもそもの話、冴月が苛つく原因は口論を知らん顔して白崎を顔見している檜山が原因である。

檜山がこの会議の際に謝罪してきたのだ、色々と言い訳を添えて。

それであのボンクラ勇者は許してしまった。

それに流されるようにクラスメイト達も許してしまった。

ソイツが南雲のことを虐めていた事実を忘れて……

ハッキリ言おう、せめて罰は与えると思っていた。

だが、それさえもしないクラスメイトに心底失望した。

もし、本当に誤射だとしても訓練漬けにするなりしばらく軟禁するなり、身の潔白を示すために罰が必要だ。

それさえもしない、そんなクラスメイトに失望した。

いや、期待するだけ無駄だったかもしれないが。

とにかく、まだ比較的マトモな遠藤等がいることに安堵しつつもイラつきは止まらないわけだ。

 

「まず護衛なら人数は関係ない。少数精鋭、魔物と違って策略を使ってくる魔族だ、柔軟に対応できるようにバランスを取らなきゃならん。あと殺す覚悟もな」

 

「それでお前は逃げるのか!?」

 

理由を述べてもなお、食い下がってくる自称愛ちゃん親衛隊(笑)に怒りを顕にする。

 

「どちらにしても死ぬか死なないかの戦いだわ!お前達は身を張って先生を守れんのか!?ええ!?」

 

遂にブチ切れた冴月は、怒鳴り散らかす。

 

「俺より頭が良いはずの皆さーん?それくらいも分からないのかなぁ〜!?」

 

「この野郎ッ!!」

 

煽り散らかす冴月に遂に我慢ができなくなった一人の男子が冴月を掴み殴る。

 

「ぐうぇ!?」

 

そんな様子を静観するイデは溜息をする。

 

『やはり、人は変わらぬか……』

 

乱闘騒ぎが終わるのはメルドが騒ぎを聞きつけて止めるまで、乱闘は終わらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終的に護衛志望者と攻略組志望者で分かれることになった。

幸利と冴月は護衛組に行くことになった。

仲が悪いだろう?と思うだろうが、そもそも嫉妬心でFFかます奴と一緒にいるよりマシである。

 

『戦争か……愚かしい事を……』

 

なんてことを馬車に揺られながら聞かされた冴月は思わず反論する。

 

「愚かしいけど分かり合う過程としての一つだからなぁ?否定するだけじゃ何も良いことなんてねぇぞ?」

 

『だが、命の奪い合いなど知的生命体がすることではないだろう?』

 

「所詮、生き物だぜ?特に人間はその知性故に欲望も生まれる。人間ができるのは欲望を自主的に抑制するくらいしかできんよ」

 

言い返されてパッと反論もできないのでムスッ、と拗ねているイデは嫌がらせにと冴月の膝の上に座るが、昼寝を始めた冴月には無意味であった。

尚、イデが見えない幸利とその他二人はボソボソとなんか喋って勝手に昼寝しているようにしか見えなかった。

ただ、本格的に寝る前に冴月の脳裏には護衛組に行くという彼に、寂しそうな顔をしていた八重樫の姿が印象的であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天職、作農師である畑山愛子の護衛を始めてから一ヶ月近く。

幸利が行方不明となり、警護を強化したりしたが特に仕掛けられることもなく。

冴月は幸利の行方を心配する日々であった。

そんな折である。

とある場所でカレーを食べれるという話でクラスメイト達は久しぶりの日本食に沸き立っていた。

例モドキだとしてもやはり日本に関わりのある物だから湧き立つのも仕方ないのだろう。

 

「うんめぇのぉ…」

 

『むぅ……我も食べてみたい……』

 

明らかに物欲しそうにカレーモドキを見つめるイデに、冴月は問う。

 

「食べれんの?」

 

『いや、あくまで今の我はイメージだ。いや、しかし……』

 

何やら考え込むイデ。

そして何を思ったのか、冴月の中に入る。

 

「ヒェッ」

 

『味覚を共有した。これならば……』

 

声からしてワクワクしているのがわかるが、それでもその行為はビビるからやめてくれと内心思う冴月。

 

『ふむ……この辛さはクセになるな……』

 

等と食レポしている彼女?を早めに出てくんねぇかな、と思いながら新しく来客してきたハーレムやってる主人公みたいな見覚えのある白髪の大男と女性二人を引き連れた3人。

何やらカレーの話をしているらしい。

ん?カレーの話?

 

「南雲君……?」

 

最初に気付いたのは畑山先生。

女性二人も「ハジメ」と呼んでいるし、確定的ではあるが……

 

「いえ、人違いです」

 

来た道を戻るマヌケ面を見せた。

そんな彼に冴月は足を引っ掛けて彼を転ばせる。

 

「んなっ……!?」

 

「とっとと帰るのは良いけどよ、先生に何も話さず帰るのはヤクザでもやんねぇぞ?」

 

「……チッ」

 

舌打ちするのかよ、と再会した南雲の変化に驚きつつ、それを好ましくも思った。

 

 

そんなわけで渋々、南雲がオルクスの地下深くに落ちた後、何があったのかを話した。

義手と義眼の話になるとクラスメイト達は辛そうな顔をするが、冴月は打って変わってへぇ…とその義手に目を輝かせていた。

 

「これが全部です」

 

恐らく、いくつかは端折っているだろうがユエという少女との出会いは確かに彼の心の支えになったのだろう。

ついでに隣にいる兎耳の残念美少女も。

 

「私とハジメさんは相思相愛ですぅ!」

 

「へー。やりますねぇ」

 

そのデッカイツインGNドライヴを物にしたハジメに若干の嫉妬を持ちつつも、自分の事を振り返り独身だろうなぁ……と自分で自虐する。

 

『我に選ばれているサンプルだ。我がヒロインでも良いではないか?』

 

「幽霊にどうして欲情しなきゃならんのよ……」

 

イデは構ってくれなくてムキになるが、適当に流す。

いや、普通にその見た目もあって可愛いのだが………

その後、騎士団の一人が馬鹿やって痛い目見て周囲を脅し付けてその場を去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日。

 

「私達もついていきます!」

 

「ええ……」

 

無駄に人を引き連れた愛ちゃん親衛隊の面々と+冴月。

ハジメパーティは困惑を隠しきれなかった。

そりゃそうだよな、と冴月は呆れているがまあ誰も気づかない。

原因は南雲がとあるボンボンの貴族を救出する依頼を受けることから始まった。

それに連れられるように冴月もまた、護衛の騎士達を置いてこうして山中にやって来た訳であるが………

 

「遠足気分かよ……」

 

ただでさえ幸利がどこに行ったのかわからんのに、と冴月は憂鬱になるがポジティブ思考をするよう心がける。

 

『………』

 

イデは何かを見ているようだが、まあ特に追求しても何も言わないので冴月はイデを放置しつつ畑山先生の前をゆく。

 

「先生、俺が前に出ます。一、二回なら無傷でいられますし」

 

「で、でも…!」

 

「先生が言い始めた事なんです。大人しく守られてください」

 

「へ……あ、はい!」

 

なんだか変な気分になるが、まあいいかと冴月は先を歩く。

親衛隊の面々はカッコつけやがって……などと陰口を叩くが、愛子は冴月に頼もしさを感じた。

が、当然大人としては駄目な事でもあるため、それを自覚した愛子は顔を軽く叩いて正気に戻す。

 

「私ったら……何を考えてるの…」

 

そう甘ったるいような、暗いような、一番前を歩くハジメ達に付いていく中の雰囲気は混沌と言えるだろう。

だが今回は捜索がメインであるため、先に生き残りを見つけた南雲は何やらして彼を目覚めさせるが、イデが何やらモゾモゾとしていた。

 

「どうした?」

 

そう小声で聞くと、イデは答えた。

 

 

『……試練が来るぞ』

 

 

「は?」

 

その直後、黒い何かによって焼かれ、掴まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イデは覚醒した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





読了ありがとうございます。
良かったら感想よろしくお願いします!

ギュネイの方もちょくちょく進めるつもりなので応援よろしくお願いします!


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イデの覚醒

よ う や く イデオン出せたぜ……

そういえばゲッターロボの実写化みたいですね。
ゲッターロボファンの方々、おめでとう!

後は駄作でない事を祈るのみ……




 

冴月にとっては一瞬であった。

いつの間にか不屈が解かれ、そして今肩がかなり痛い中、冴月は現状を理解するのに必死であった。

 

「何がっ!なにがぁ!?」

 

だが、そんな彼に配慮するわけもない黒竜は彼を手放した。

 

「は?」

 

一瞬見えた姿、それはゲーム等で散々見てきた竜で、そして次の瞬間には地面にへと落ちている事実である。

 

「は…………は?」

 

完全にパニック状態になった冴月。

そしてそれを見ていたクラスメイト達と南雲一行は、救出は無理だという雰囲気であった。

 

「良いやつだったが……不運と踊っちまったな」

 

そう、感想を零す南雲だった。

畑山先生は南雲に助けてとお願いするが、距離的に無理という言葉に絶望する。

 

「う、嘘ですよね……?まだ助けられるって、言ってください…!」

 

目の前で生徒が死ぬ。

それは、彼女の教師像では一番見たくない、そして起きてほしくない事であった。

 

「いや……いやぁぁ!」

 

泣き崩れる畑山先生に、南雲は申し訳なく思いながらもせめて死体は回収してやろうと思ったその矢先、不思議な光が点となっていた冴月を包む。

 

「なんだ……?」

 

眼帯型のサーチアーティファクトでも、魔力ではない何かであることしか分からない。

南雲は目の前の現象に、ただただ驚くのみであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、当の冴月はというと………

 

「俺はまだ死にたくねぇんだよぉぉぉッ!!」

 

醜くも生物なら誰もが望む生への渇望。

パニックに陥った彼が最終的に辿り着いた答えはそれであった。

 

『そうだ、我もここで死ぬのは御免被る……』

 

そう呻くように呟いたイデは、力の解放を行う。

 

『装身…』

 

その言葉と共に、冴月が今まで持っていた3つの玩具型のアーティファクトが、ポケットから這い出る。

そして、不思議なバリアが冴月を中心に包み、装身が行われる。

 

「な、なんだ……!?」

 

不可解な事ばっかりで、突然子供が中に入れそうなくらいに大きくなったアーティファクトは最初に顔と腕を象ったような物に変形したアーティファクトが、冴月の顔と腕に嵌る。

 

「うわっぷ!?」

 

次に胴体が冴月の下半身を通り、胴体にまで移動する。

そして、最後のパーツが下半身に入り込む。

その際に、黒竜は炎のブレスを冴月にぶつけたが全く効果はなしで、

叩いてもバリアに弾かれ、黒竜は未知なる状況に大きく動揺する。

そんな竜を気にすることもなく、装身を完了した冴月。

 

『我が名はイデオン……巨神イデオンである…!』

 

そう淡々と告げるイデに、冴月は叫ぶ。

 

「ごめん、何言ってんのか全然わかんない!」

 

『は?』

 

ボソボソと告げるので、何言ってるのか分からない冴月にイデは苛立たしげに今度は大きめで言う。

ちなみに傍から見ればただの幼児が拗ねてるようにしか見えない。

 

『我が名はイデオン!巨神イデオンである!』

 

「イデオン?へー……というかその喋り方恥ずかしくないの?」

 

『黙れ、小僧ッ!!』

 

混乱によって本音と建前が逆になった冴月。

どうしようもない喧嘩をしながら、バイザーが光を放ち、冴月は言い返す。

 

「うるせぇ!テメェは黙ってろ!」

 

『なんで我はこんな奴を選んでしまったんだぁーー!』

 

イデの悲痛な叫びは、誰にも届かない。

 

 

 

 

 

 

 

一方で黒竜は目の前の存在を不思議に思う。

例え、洗脳されていようともその思考は竜人族である。

先程まで、アーティファクトの気配を漂わせていたのに、いつの間にか魔力とは違う何かを感じさせる目の前のダサい鎧はなんなのかと。

 

「くらえやぁ!」

 

ヤケクソ気味に宙に浮きながらパンチを繰り出す鎧を被った男。

人ごときのパンチ、効くはずがないと不敵な笑みで尻尾で叩き落とそうとする。

 

「グギャァッ!?」

 

「え?なんで?」

 

鱗を叩き割ったその拳を疑う冴月と、人の拳では到底破壊することのできない鱗が割れ、身に痛覚を与えられた事に動揺する黒竜。

 

『我の力、お前の本能のままに振るうがいい。それで良いのなら、であるが』

 

何やら意味深な事を言うイデに冴月は疑問を抱くが、しかし疑問は消えてただ言葉を吐き捨てる。

 

「じゃあ、俺ごと死ぬ?」

 

と言うと同時に地に降りる。

何故なら先程の攻撃で地を這うトカゲと化しているからである。

そして、そんな彼の問いにイデはボソリと呟く。

 

『解放されてもなお、ならな……』

 

その言葉を気にする余裕はなく、その言葉をスルーした冴月は目の前の黒竜を見据える。

 

「あの数日で世界を焼き払うイカレドラゴンじゃあねぇんだ。殴ればダメージが入るのなら!」

 

そう言って確かめるように、足底にあるスラスターで黒竜に近付く。

それに黒竜は尻尾による薙ぎ払いを行うが、イデオンのパワーと装甲の硬さではたくように切り払う事で、逆に自分で尻尾を痛める結果となる。

 

「グギャッ!?」

 

「やってやる……やってやるぞぉ!!」

 

見た目からして恐怖を煽るその姿は、恐怖心を殺し切れない。

だが、自分に喝と気合をこめる。

そして、技能【魂】をかけたパンチが目の前の異形の鎧に怯えた黒竜の腹に叩きつけられる。

 

「グ、ガハッ……!?」

 

「うらぁぁぁ!!」

 

追撃に蹴りを苦しみ悶える黒竜の後ろ足にぶつける。

 

「ギャンッ!?」

 

それによって体勢を崩し、顔面から倒れ込んだ黒竜はようやく正気を取り戻した。

 

「ハッ!?妾は何を!?」

 

しかし、そんなことは知らない冴月は追撃を加える。

 

「フハハハ!怯えろ!竦め!そのデカい図体に風穴を開けてやるぜ!」

 

ケツや腹に殴打を加えられながらそんなことを聞かされてはさしもの黒竜もすぐに降伏するしかなかった。

 

「や、やめておくれ!もう妾はに戦意はない!というか風穴を開けるのだけはやめておくれ!」

 

「うるせぇよ!✝悔い改めて✝トットトスピン!」

 

バシィン!という派手な音と共に、黒竜のケツがしばかれる。

 

「アヒィ!?」

 

アレ?コイツドM?、と嫌な予感が過るが、そもそもコイツ話したなぁ?と理解したので一旦手を止める。

だが、この黒竜にやられたことを思うと最後に一発仕返ししたいと思うのは当然だろう。

 

「ほら、見ろよ見ろよ…」

 

「ん?」

 

何やら見ろよと言うので、気になってそこを見る。

冴月が手にしているのは後ろ足の爪であった。

 

「最後に一発くれてやるよ、おらぁ!」

 

「ーッッ!?」

 

そしてその爪を引き抜かれたのであった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー数分後ー

 

 

「ほへ〜おかのした」

 

南雲達とも合流し、ティオと名乗る黒竜から人間の姿に戻ったらしい美女の説明を理解しつつ、先程引き抜いてやった爪を見る。

 

「とりあえずこれはシールドの先に引っ付けてもらおう」

 

「あっ……フヘヘへ」

 

何やら、奇妙な扉を開いてしまった美女に目を付けられてしまったらしいが。

ちなみに南雲達は普通にドン引きしましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーとある異空間にてー

 

 

地上から感じた、小さくも凄まじい力の解放に現地人からはエヒトと呼ばれる魂の存在は、その力の存在に不快感を顕にした。

自分こそがこの世界を、攫ってきた子供達の世界を統べる神となるのに、それに匹敵する力なぞ消えてほしいからである。

でなければ、はるか昔に滅ぼし事実を捻じ曲げた反逆者達を殲滅した意味がない。

 

「………念のために、似たようなのがないか調べるか」

 

自己の安寧と娯楽のために、エヒトは動き始める……

 

 

 

 

 

 

 

 

 





淫夢語録喋るイデオンとか、いやぁ〜ヤバいっす()

感想、よろしくお願いします。モチベに繋がります。


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