陰実の世界に転生したら武神だった件 のんびりしたいが姪っ子が活動的で何だかんだ手伝う内に組織で母と慕われるようになった。 (生徒会長月光)
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七陰ストーリー+番外編
陰実の世界に転生したら武神だった件 のんびりしたいが姪っ子が活動的で何だかんだ手伝う内に組織で母と慕われるようになった。短編


衝動的に書いてみました!

反響が良ければもしかしたらシリーズ化するかもです。

それではどうぞごゆっくり!


唐突なのだけれども私はどうやら転生というものをしたらしい。

 

最後の記憶は病院のベッドの上だった。

 

昔から身体の弱かった私は何度も病院に入退院を繰り返し肺炎や喘息を煩い外で遊ぶということが出来なかった。

 

そんな私の唯一の癒しは本だった。

 

農業、建築、料理、小説、童話様々なジャンルを読み漁った。自慢ではないが記憶力は良い方なので父や母からも色んな話し聞いた。

 

両親の愛を受け私は何とか生きてきたが病はそれを許さず20を過ぎてからはベッド暮らし…そしてそれが数年続いて今に至る。

 

身体は小さくなったそれでも元気な身体で動ける。

 

私はいるかも分からない神に感謝した。

 

生まれて数年。

 

どうやら私が転生したのはエルフという種族のようで森との共存というよりは人里から隔絶されるような生活を送っていた。

 

前の世界と違うのは魔力というものがあるということだろう。この魔力というものの特性として自身から離れると急激に減衰していくという特性も持ち合わせている。

 

それもあってか魔力はほぼ身体強化や止血等といった治療にしか使用されないというよりも出来ないといった方が良い。

 

しかし類い稀な魔力制御があれば気配を希薄にするといったコントロールや、断たれた腕をくっつけて繋げるといった治療が可能のようだ。

 

それもあり前世で読んだ漫画の気や波紋のようなものかと考え魔力を伸ばそうと自分の中で練り上げる。

 

練り上げる際も漠然と練るのではなく器の中に魔力を閉じ込め徐々に器を拡大させていく地道な物であったが10を越える頃にはエルフの里で敵うものはいなくなっていた。

 

もっと広い世界を見たいと着の身着のまま外へと飛び出した。妹に止められたがそれでも一年に一回は帰ると約束をして納得してもらった。

 

旅を始めてまずは路銀を集めなければと適当な武術の大会を総なめしてしまい有名になってしまったがそういうのには興味がないので終わったと同時にすぐさま姿を消していた。

 

途中身体がいきなり黒く変色しだし魔力が暴走仕掛けたのには驚いたがそれらを魔力操作で押さえ込んで何となしに身体をリラックスさせていたら治った。

 

路銀を稼いでは新たな地へ行きその文化を知るとやはり自分の知る文明からは程遠い差が存在していた。

 

そういったこともあり整備の整っていない道路などを舗装する知識、作物の安定した収穫、水の浄水施設を作り管理する方法など偶々訪れたミドカル王国という所へ伝授したところ瞬く間に発展していった。

 

ミドカル王国に来てほしいと頼まれたが生憎私は根なし草があっている。…行きたいところへ行って見たいものを見る。

 

この時から教団と名乗る連中から勧誘が来たが断りそしていきなり斬りかかってきたが剣速も遅く体幹もぶれ魔力でただ斬るようだったので私流波紋で体内の魔力を乱してそのまま魔力で叩き斬った。

 

暫く旅をして里へ帰るとなんと妹に子供が出来ていた。

 

これには流石にビックリした。というよりも結婚していたことも知らなかった。

 

妹もサプライズしたかったというらしくこれには私も久々に驚いた。

 

まだ小さい姪っ子の笑顔にやられた…天使が実在したとは…

 

そうしたこともあり三年程留まり姪っ子を構い倒してつたない言葉でおばしゃまと呼んでくれる…前世では子供もいなく死んでしまったがこういうのはとても良いな。

 

たまに集落以外の場所でエルフに会うこともありそこの子供たちとも接する機会があったりと充実していた。

 

暫くして旅を再開した私は芸術を嗜むオリアナ公国へ訪れ昔に書いた絵を寄付したりベガルタ帝国に赴いた際決闘を申し込まれたり等あったが概ね順調だった。

 

自然豊かな地や営みを見るのが好きだった。

 

でも現実は…世界は、残酷で冷たいものだった。

 

初めは悪魔憑きと呼ばれる現象を書物で読んだことだ。昔から伝わるお伽噺で英雄オリヴィエの話しはエルフの里でも聞いていた。

 

そして悪魔憑きと呼ばれる病気は女にしか発症せず、発症した場合助かる見込みはなく教団が引き取り処分をするという。

 

普通に生きてきた少女が掌を返され絶望し亡くなっていく…そんな世界…

 

私はそれが堪らなく嫌だった。

 

だからこそ波紋という技術を用いて悪魔憑きを治そうと思いついた。

 

波紋は確か生命力を譲渡することも出来ることがかかれ治療に使用できる描写も存在していた。

 

だからこそ私は波紋を習得するために魔力と共に鍛えてきた。

 

波紋習得には様々なことがあったが割愛する。

 

そうして私は密かに悪魔憑きのものたちを癒そうと……教団を襲った。

 

その際バレるのも面倒なので目元が分からなくなるような仮面を被り、声も魔力の波長を変えることで変声させた。

 

そして波紋で体内で乱れていた魔力を元の波長へと戻すと化物のような見た目から普通のエルフの外見へと戻った。

 

そうして無事に保護した者たちは私の稼いだ路銀を使い村を興しそこで生活するようにし孤児院のような施設も建てた。

 

私のやっていることなんて偽善なだけ。皆から笑顔を向けられるほど高尚なことなど、していない

 

そんな私に届いたのは…妹の死であった。

 

私は急ぎ里へ戻るが妹は帰らぬ姿となっていた。

 

たった一人の姉妹…その喪失感は計り知れなかった…でも姪っ子はもっと辛いはず…と姪っ子の姿を探すが何処にもいない…

 

里のエルフに聞けば悪魔憑きを発症したため教団へと移送したという。

 

…ふざけるな…私の可愛い姪っ子を…売っただと…

 

殺してやろうかという邪な気持ちが先行するがそんなものよりも姪っ子のが大事だと自分に言い聞かせ妹の葬儀を行いその足で姪っ子を探す。

 

輸送していたものたちのルートは既に聞き出し走る。

 

そうして探し続け一週間。

 

寝る間も惜しみ探しているのに見つからない。

 

最悪の予感がよぎるがその時剣戟の音が聞こえた。更に覚えのある魔力の波長もだ。

 

すぐさまそこへ向かうとそこには少年が盗賊たちを襲っている光景だった。

 

少年が危ないと思い助太刀しようとするが圧倒的な剣で倒していく。その剣技は愚直なまでに綺麗で思わず見惚れる程のもの。

 

全て少年が倒し終わり一息付いている少年に、背後から忍び寄り奇襲しようとする盗賊。

 

流石に不味いと思いその一撃を受け止めると少年は驚いていたようだが私はそんなことは知らず波紋を流し血液を沸騰させブクブクと煮え立つ血液に耐えられず盗賊は息絶えた。

 

少年の無事を確認した私は姪っ子の魔力の残滓を探し檻のようなものがあるのを、確認してそこへ向かうと人型の腐肉塊が閉じ込められていたがすぐに姪っ子だということに気づいた。

 

檻をそのまま手刀で叩き折り苦しむ姪っ子を抱きしめた。誰がなんと言おうとこの娘は私の大事な姪っ子だ

 

そうして苦しむ姪っ子を助けるために私は治療しようとしたがその場にいた少年が治せる可能性があると言い小屋の所へ案内しようとするので私はそれに付いていくことにした。

 

それが私ベアトリクスと後にシャドウガーデンの主となるシャドウとの出会いだった。

 

 

 

それから時は流れ私は両手を捕まれた感触とお腹に乗る重さで目が覚めた。

 

…懐かしい昔のことを夢で見るだなんて。

 

「…叔母様?」

 

「起こしちゃった?まだ寝てて良いのよ」

 

「いいえ。折角叔母様と寝られるのだもの。もう少しこうしてたいわ。それより重くないの?」

 

「慣れよ。それにこの娘も悪気がある訳じゃないから。」

 

「そうやってデルタを甘やかして…キチンと言わないと駄目よ」

 

「その時は貴女が言ってくれるもの。頼りにしてるわ。」

 

「もう…叔母様ったら」

 

「ふふ、膨れるのなんてますますあの娘そっくりな美人になってくわね。」

 

とベアトリクスは姪っ子で今や裏で活動をする地下組織シャドウガーデンの実質的な運営者アルファを抱きしめる。

 

「もう少し寝ようかしらね。貴女も付き合ってくれる?」

 

「…叔母様の誘いなら断る理由はないわ。」

 

ともう一度寝直すアルファ。

 

そうして左手にアルファ、右手にイータ、そしてもう一度お腹にデルタを乗せると再び眠る。

 

彼女の名前はベアトリクス。

 

巷で武神と呼ばれ世界は美しくされど残酷で冷たい現実ならばと孤児院を作りやがて大きな戦いの渦に巻き込まれることになるシャドウガーデンのNo.2で皆からマザーと呼ばれるエルフで転生者なのであった。




あとがき

というわけで勢いで書いてみました。

武神と呼ばれるベアトリクスに転生した前世では病弱だった主人公。

様々なジャンルの本を読み漫画、アニメ、小説など、多岐に渡る知識を持っている。

そんな彼女は里を飛び出し様々な剣術の大会に出ては優勝をかっさらい武神の称号を持つが本人は特に興味もなく色んな場所を旅している。

魔力もシャドウに及ばないにしても膨大な量を保有し魔力操作もピカイチ。更には前世の漫画を参考に波紋のようなものを習得し悪魔憑きを治療している。

趣味は昼寝と姪っ子との時間とシャドウガーデンとの時間。

姪っ子であるアルファを筆頭に慕われて七陰でもガンマやデルタから母のように慕われて他のメンバーも懐いている。

もっぱらの悩みは七陰の皆が事ある毎にシドとお見合いのようなものをさせようとすること。

アルファは自分を助けてくれていつも頼りになりっぱなしだから幸せになってほしいと思っている。

シャドウからは面白い魔力の扱い方で技も凄いと感心されている。時折前世の会話をしたりして陰の叡智というような事を言い始めて詰まったりしたときはフォローしたりガンマが再現しようとしたものをアドバイスなどしていたりする。

原作では武神と呼ばれ出番も少なかった彼女ですがどう関わらせようか迷います。

それでは読んで頂きありがとうございました!


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陰の実力者を目指す少年は武神に出会い更なる強さを求め絶望に沈む金色は伯母の暖かさに光を見た。

そんなわけで続いてみました第2話になります。

今回は幼年期のシドと姪っ子に焦点が当たります。

それではどうぞごゆっくり!


ん?ベータか、一体何の用…

 

あぁベア…ゴホン、マザーとの出会いについて?

 

そうだな、あれは漆黒に輝く星が煌めき月明かりが差した日だったか。

 

とシドはシャドウとして少しキザったく語りだした。

 

それを自身の書き記したシャドウ様戦記に書き記す七陰第二席のベータ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あれは転生してから暫くしたときだったかな。

 

その時の僕は念願だった魔力を手にして前世の記憶を頼りに効率的に肉体を鍛え上げ

 

更に魔力を使って肉体そのものの改造を施して(魔力による身体強化とは別)、魔力を扱うのに適した肉体にするだけでなく下地の身体能力(戦うために最も適した形に筋肉、神経、骨格を変える)にも手を加えて向上させて

 

新兵器としてスライムスーツを完成させてその試運転をしようと日課の盗賊狩りをしていた。

 

盗賊なら何をしようと構わないし日課の陰の実力者ムーブに最適だった。

 

伸縮性もあり思ったように武器を振るい魔力の伝導量も99%と破格であった。

通常の剣で10%、魔力を流しやすいミスリルでさえ50%いけば良い方だ。

 

さてと話しは盗賊狩りに戻って盗賊のモノは僕のモノ、こうして将来陰の実力者になるための資産が増えるのだ。

 

僕はテンションマックスでその宴会に突っ込んだ。不意打ちはしない、練習にならないからね。

 

「ヒャッハー!! てめぇら金目のモノを出せ!!」

 

僕は宴会の中心で叫んだ。

 

「な、なんだぁ、このチビ!」

 

10歳だからチビなのは当然だ。

 

「おらぁ、金出せつってんだろ!」

 

僕をチビ呼ばわりした失礼な男を蹴り飛ばすと、ようやく盗賊たちも武器を手に取った。

 

「おい、あんま舐めてっとガキだからって容赦……!」

 

「おらぁ!」

 

御託を並べる男の首を軽く斬り飛ばす。勿論武器もスライム製、必要な時だけ取り出せる優れものだ。しかもこのスライムソードまだまだ便利機能がある。

 

そうやって試しながら全員斬り終わり一息つく。

 

まだ一人いたけど不意打ちに対処出来るかもテストしたいからあえて残しといた。

 

そうしてさも僕が気付いてないと思ってか上段からの兜割りをしようとするのが見えたので便利機能2を試そうと思ったが

 

突然黒い影が僕を包み込み盗賊の剣をその影が片手の親指人差し指、中指の三本で掴み止めていた。

 

突然のことに盗賊もだけど僕も驚いた。

 

(全く気配を感じなかった?いや…魔力での隠蔽なら僕も気付く筈…ってことは純粋な技能?)

 

この世界で父や姉以外で初めて技らしいものを垣間見た僕はその乱入した影を良く観察する。

 

骨格から女性だということが分かる、魔力…今まで見た父、姉と比べるまでもない程に洗練され凪いだ波のような静かさを感じる。

 

魔力量も今の僕よりも遥かに多い。

 

そして何より技術がある。

 

この世界の流派は魔力任せの暴力的な力で何とかなる傾向が強いのは書物から読み取れた。

 

だが目の前のこの女性は違う。紛れもない強者だ。

 

この間一秒にも満たない高速での思考を完了させたシド。

 

そしてまた驚かせられる。

 

女性からなにやらコォォォォという音がすると身体を黄金のようなオーラが包み込みそのまま剣から盗賊の身体へと伝わるとまるで太陽のような強い力が瞬時に盗賊へと流れ込みその熱い太陽のごとき力に耐えきれず盗賊は呆気なく死んだ

 

(今の力…途轍もない伝導率だ…あれは魔力じゃない、それは分かる。驚くべきは只の剣であそこまでの伝導率を出したことだ。僕でもスライムスーツでなければあそこまで伝導させられない。

 

やはり異世界…魔力以外にもまだ知らないことがあったんだ!

 

今僕がやらなければならないのはこの女性から今の技術を教えてもらうことだ!)

 

「少年君とても綺麗な太刀筋だった。でも最後まで油断はしてはいけないよ。…と言いたいところだけどその顔を見るに気付いてたみたいだね。」

 

「ありがとうございます。お姉さん。所で今の太陽のような強いオーラはいったい?」

 

「それはまた後ででも良いかな…」

 

と女性は金品や美術品に興味を示すことなくまっすぐ何かしらで覆われた檻へと歩みを進める。

 

そして檻の中には腐った肉塊が転がっていた。辛うじて人型は留めているが、性別も年齢もまるで分からなかった。

 

しかし、まだ生きていた。いや、意識もあるのかもしれない。檻を覗き込む女性に肉塊がピクリと震えたのだ。

 

聞いたことがある。悪魔憑きと呼ばれ、教会に処刑される化け物のことを。はじめは普通の人間として産まれ、ある日を境に肉体が腐り出す。

 

放っておけば直に死ぬが、教会は生きた悪魔憑きを買い取り、浄化と称して処刑している。悪魔の浄化、病人を虐殺しているだけだが、それに民衆は喝采し平和が護られたと教会を讃える。まさに中世って感じでテンション上がる。

 

この肉塊も教会に売れば今日の戦利品以上の値がつくだろう。当然、僕には捌けないから無意味だけど。

 

と思っていると女性が頑丈そうな檻をこれまた黄金のようなオーラを身に纏った手刀で叩き折った…折ったというか斬ったというべきだろう。

 

檻の断面図が物凄く綺麗に斬れていて鉄を斬れても手刀でここまで今の僕にも出来ないだろう。

 

そして女性はその肉塊を抱きしめた。

 

もう一度言おう。抱きしめたのだ。

 

「ごめんなさい…ごめんなさい、貴女が一番辛いときにいてあげられなくて…あの娘も亡くなって一人ぼっちでこんなに苦しんで…寂しい思いをさせてごめんなさい…!」

 

肉塊は心なしか震えているように見えた。まるで会いたかった人に会えたそんな感じだ。

 

「すぐに治すわ。もう少しだけ待ってて…絶対助かるから。」

 

「…ねぇお姉さん。この近くに小屋があるけどそこで治療すればいいんじゃないかな?場所なら案内するよ。」

 

「ありがとう少年君。」

 

「少年君じゃなくて…まぁいいや、ほらこっちだよ。」

 

と小屋へと案内した。

 

小屋へと案内した後に後で聞いたんだけど波紋っていうので魔力暴走を止めようとしてたんだけど予想以上に暴走が激しかったみたいだから僕も魔力暴走した際の練習と他人の身体だし多少無茶しても僕にリスクはないと手伝った。

 

そうして魔力暴走が収まった。

 

そこには女性を小さくしたような小さなエルフの娘がいた。

 

魔力暴走を止めて身体を活性させていた波紋…絶対に聞き出して習得してみる!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「それがアルファとの出会いでもありマザーとの運命の出会いだったという訳だ。」

 

「成る程!流石シャドウ様!」

 

「いや、あの時の俺はただ手伝っただけだ。あの黄金のようなオーラで静めたマザーの力が大きい。」

 

「流石武神にして我々エルフの憧れです!」

 

「そういえばベータはマザーに以前に会ったことがあったのだったな。」

 

「はい…何分小さな頃でなにも知らない私は恐れ多くも声をかけてベアトリクス様に頭を撫でてもらいました。」

 

「…コードネーム抜けてるぞ?」

 

「あわわ!?し、失礼致しました!そ、それからシャドウ様はアルファ様とマザー様の感動の再会を見守られたのですね!」

 

「あぁ、だがそれを話すのは無粋というものだ。」

 

「えぇ!?そんなぁ」

 

「アルファにとってそれは宝石のような輝きと思いの結晶なのだ、詳しくは本人に確認すると良い。」

 

「分かりました。シャドウ様本日はありがとうございました!」

 

と僕は華麗に去る。去り方ひとつ決めるのも陰の実力者なのだから。

 

そうして僕は日課になりつつあるコォォォォという呼吸を続けるのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

え?伯母様と再会した時のことを知りたい?

 

ふふそれは内緒よ。

 

側にいたシャドウと伯母様と私だけのことだからねぇ

 

これ以上聞くなら…

 

そう分かれば良いわ。

 

…ふぅベータも好奇心旺盛ね。

 

早いものね。私が伯母様とシャドウに助けられてもうどれぐらい経ったのかしらね。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

私の記憶にある伯母様の顔はとても静かに笑う方で良く私と遊んでくれていた。

 

お母様の姉でとても強い魔剣士で色んなことを知っている物知りで色んな所を旅するちょっと変わった人。

 

お母様と一緒にいる時は森で日向ぼっこしたりお昼寝をしていた。伯母様はぽかぽかする優しい雰囲気も好きだった

 

伯母様が旅に出ると聞いたときは離れたくなくて駄々をこねてしまったけどそれでも伯母様は嫌な顔ひとつせずまた会いに来ると言ってくださったわ。

 

そうして一年に一回帰ってくる伯母様からお話しを聞くのが私の楽しみだった。

 

あの日…お母様が亡くなるまでは…そして私が悪魔憑きと身体が腐り里の皆に迫害されて里を追い出された。

 

お母様がいなくなってしまった。

 

いたい…苦しい…寂しいどうして助けてくれないの…

 

心も身体ももう駄目だった…幸福だったあの時に戻りたいと何度も思った…

 

教団に引き渡される筈だった私は盗賊たちに商人が襲われたことによりいまだに痛みが続いていた。

 

いたい…苦しい…助けて…お母様………伯母様…

 

そう思った時にいきなり覆われた布が取り去られ目の前には…伯母様がいた。

 

私は歓喜したと同時に恐怖に駆られた…里のエルフは私を拒絶した。伯母様ももしかしたら…

 

無意識の内に伯母様から逃げようとその時の私はしたようだけど確かに覚えてる…

 

伯母様に抱きしめられた暖かくてぽかぽかする優しい匂い…

 

どんな姿になっても伯母様は私のことを受け入れてくれた。

 

そうして伯母様とシャドウのお掛けで私は戻れた。

 

あの時伯母様に泣きながら抱きしめられて伯母様の涙を初めて見てそれだけ私のことを想っていることも良く分かり私も伯母様の胸の中で泣いた。

 

その後にシャドウからディアボロス教団のこと英雄オリヴィエの真実を聞いて実は伯母様が既に教団に捕らわれた悪魔憑きを救出して匿っていたことも初めて聞いた。

 

それから私と伯母様でシャドウの作った組織シャドウガーデンを大きくしていった。

 

同じような境遇の者たちとディアボロス教団を滅ぼすために。

 

戦いを、苦手とする娘たちは伯母様の作った孤児院の手伝いをしてもらうようにした。

 

まだまだディアボロス教団の数は減らない…でもいつしかこの冷たく残酷な世界を、穏やかで人と人が助け合えるそんな世界にしたい…!

 

それはそれとして伯母様にも幸せになってもらいたい。強くて優しい人と結ばれてほしい…今のところシャドウしか当てはまらないからあの手この手を使ってるけど上手くいかない。

 

ってデルタ!伯母様のお腹にマーキングしない!

 

ガンマ!貴女も伯母様に抱きつかないってゼータまで!?

 

イプシロンは波紋の練習だから良いとしてイータ、貴女は寝室で寝なさいと…え?伯母様の側が一番眠れる?

 

ベータは資料を作成するとかでいないし

 

伯母様もあまり甘やかさないでください!

 

え?私も一緒に…?

 

も~う!伯母様!

 

と満更でもない笑顔で笑いながらベアトリクスに甘えるアルファなのであった。




今回はここまでになります。

多くの方の投票もありシリーズにすることにしました!

今回は初めてベアトリクスと出会ったときのシドの反応とアルファの反応になります!

シドはベアトリクスより波紋を習うことになり、彼女から吸収するべき技術を習得することに。

魔力の普通の伝導率よりも波紋の伝導率は凄まじいと感じたとのこと。波紋は現時点で七陰全員に教えています。

アルファは幼い頃から伯母であるベアトリクスと共にいて頼れる伯母であるベアトリクスを敬愛していて悪魔憑きとなった自分に変わらず愛を向けてくれていたことが何よりも嬉しいことであった。

そしてベアトリクスに幸せになってもらいたくシャドウとくっ付けようとする姪っ子なもののシャドウは陰の実力者になるために色々と削ぎ落としているのもあり上手くいかない。

そしてベアトリクスに七陰メンバーは懐いていてデルタは母~と突撃しガンマとゼータも甘えてイータは寝不足な時に側で寝ると安心すると抱きつき

イプシロンやベータも良く相談に乗ってもらっている。

アルファも慕っているのでちょっと嫉妬してる部分もあるもののベアトリクスはそれも可愛いと撫でてはアルファも和んでいます。

陰実は二期も制作されているのでそこまで追い付きたいですね。

この場をお借りしてお気に入り登録、感想頂いた皆様ありがとうございました!

これからも投稿していけるようにしたいと思います。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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小説家のメガネっ娘は武神の規格外な武勇伝に狂喜乱舞し後世に残すため本へと記し出版し武神は呑気に抱きついて癒す。

今回は七陰第二席で小説家としても活躍するナツメ・カフカもといベータに焦点が当たります!

それではどうぞごゆっくり!


今回は私でございますね。

 

不肖この私第二席の

 

堅苦しいのは良い?

 

それでは私ベータがベアトリクス様武勇伝を語らせてもらいましょう!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あの方を語る上で欠かせないのはやはり初代武神であることでしょう。

 

その当時のことは記録にもある通り武術大会に突然現れた超新星にしてその当時最強と謳われた鬼神のごとき力を持つことから鬼神と呼ばれた剣士を決勝でその剣を受け止め返す刃で返り討ちにしたことです!

 

そうして武神祭の初代王者となり各国からオファーが沢山来たとありますがベアトリクス様はそのまま姿を消してしまわれた。

 

当時のことを聞いてみると

 

「ん?……あぁあの頃ね。里を飛び出した私は着の身着のままだったから路銀を集めようと思って出たわ。もっと剣技を磨こうと思ってたし一石二鳥と思って。そしたら魔力に頼るばかりで剣の腕は拙くて拍子抜けしたわ。

 

期待してた分ちょっと残念だけど路銀も手に入ったからそのまま後にしたわ。」

 

と言われていました。

 

ベアトリクス様はそういった地位はあまり頓着されない方なのは知ってるので驚きはありません。

 

それから他にも巨大な猪が当時のオリアナ王国を襲いなす術もないと思われた時に颯爽と現れて猪をその剣技で見事退治されたとか

 

更に魔物やその猪によって収穫不良が続いていたオリアナ王国に米というものを持ち込み稲作という当時馴染みのないものを伝授し翌年のオリアナ王国の収穫不良は嘘のように改善しました。

 

さらに猪を干し肉という形での保存から当時有り余って使い道のないと思われていたコショウを使い以前までの肉の保存の仕方に革命を起こし食文化を改革していきました。

 

だからなのかオリアナ王国ではベアトリクス様のことを食文化の母や食神なる名前で呼ばれ芸術にも秀でて彼女が寄付した絵はオリアナ王室に飾られているとローズ会長より聞きます。

 

ミドガル王国でも整備の整っていない道路などを舗装する知識、作物の安定した収穫、水の浄水施設を作り管理する方法をもたらして国と国を行き来しやすく民の暮らしを良くしこれまたミドガル王国へ誘われたと腹黒王女から聞きました。

 

そしてこれは本には書けませんがディアボロス教団からも勧誘され一蹴しそのまま斬りかかった者も気付かぬ早さで切り捨てたと聞きました!

 

流石です!

 

それに留まらず教団から助けたエルフや獣人、人間など保護して村を作り今では町と呼べるまでになっています!

 

だからなのか私たちシャドウガーデンに協力してくれてアルファ様など特に歓迎され昔のベアトリクス様がどうなのかと聞かれることも多々ありますし私の本も面白かったと言ってくれます。

 

私たちエルフにとってとても尊敬できて生きる伝説でそして私がまだ幼い頃に里に訪れた時

 

周りの人が畏れ多く接してるのを不思議に思い話しかけた時も嫌な顔ひとつせず頭を撫でてくれて私が悪魔憑きになってシャドウ様と共に助けられた時も優しく頑張ったねと言われ感極まって抱きついてしまいました!

 

とてもぽかぽかして太陽のように暖かくて安心します。だからなのかデルタは良く抱きついてイータもベアトリクス様に抱き付いているときは徘徊することなく眠っています。

 

それを注意してアルファも一緒に甘えるまでが一種のルーティーンになってます。

 

波紋の方も最初は特殊な呼吸のためとても難しくいきなり出来たガンマとイータに嫉妬を覚えましたがそれでも今では出来るようになり私の場合は特に治療や聴力といった五感を強化するのに適しているようでした。

 

まだまだベアトリクス様の背中は遠いですがいつか追い付いて見せます!

 

ベアトリクス様は私の本も読んでくださって感想を頂くこともありとても参考になります!

 

それにシャドウ様から教えて頂いたお話しに加えてベアトリクス様から教えて頂くお話しはとても素晴らしく特に王族である少年が支配を打破するべく顔を隠し

 

暗躍して組織を結成して立ち向かうお話しはシャドウガーデンを組織したシャドウ様と似ている部分もあって熱心に聞き入りました!

 

ベアトリクス様も人を殺める時は自分も殺められる覚悟を持つべきと言われています。

 

私は今でも人を殺めるのは苦手です。でもベアトリクス様はそれで良いと言われます。

 

戦う者にとって最も大切なものは力ではなく戦いを怖れる心

 

戦いを怖れるからこそ同じく戦いを怖れる者達の為に剣を握り戦える

 

そう言ってくださいました。

 

この言葉は書き記しませんでしたがそれでも言葉ではなく心で理解しました!

 

教団を倒した暁には全ての国にベアトリクス様の銅像を……と相談しましたがそういうのはいらないと言われてしまいました…

 

なので後世に伝わるように私が本にまとめて出版することにしました。名前は武神列伝という名前でだして多くの人が手にとってくれました。

 

ゆくゆくは全ての者の手に渡りベアトリクス様の名前を轟かせるつもりです!

 

なおこの事は本人も知らず良く書けていると誉めて頑張りすぎはいけないと後ろから抱きしめるのでした。

 

余談ではあるが巷でナツメ・カフカはかの武神とコンタクトを取れる人物だと言われているとのことで注目が更に集まっている。




あとがき

今回はベータに焦点を当てました!

ベータは原作でも書いていたシャドウ様戦記の他にもベアトリクスの活躍を纏め武神列伝として世に広めています。

そのお陰か武神の知名度はトップクラスになっていてベアトリクスとコンタクトを取れる小説家と有名になり情報網もベアトリクスに助けられたものたちからも入るので多くの情報が集まる。

幼少の頃に偶々訪れたベアトリクスに話しかけた当時のベータは尊敬出来て暖かい人と印象があり悪魔憑きとなりシャドウ、ベアトリクスに助けられ

幼少の頃のことを覚えていたベアトリクスは安心させようと安らかなになる波紋で落ち着かせました。

人を殺めることに忌避感があり初めて殺めたときは夜一人で震えていたのをベアトリクスは優しく抱擁しその恐怖感を忘れずにすること共にBLEACHの東仙の言葉をオマージュして言い

ベータも心で理解しシャドウガーデンの悲願でもあるディアボロス教団を壊滅させて自身の綴る物語で人を楽しませたいと小説家を目指す切っ掛けの一つになります。

そしてベアトリクスは物語といったものは全て記憶しているのでアニメのことも一言一句覚えているのでそれをベータに話すこともあり

語ったのは悲劇の王子として母を殺され敵地に妹と共に送られ妹の為に世界の敵になりそして優しい世界を作るために戦った撃って良いのは撃たれる覚悟のあるものだけだという名言に始まるキャラクター、ルルーシュのことを聞かせていたりする。

ベアトリクスは前世病弱であった分記憶力はとても良く転生して100年経つ今でも鮮明に覚えていて本人に自覚はないものの完全記憶能力に近いものがある設定です。

そして波紋の方は七陰の中でジョセフ・ジョースターのように初めから使うことの出来たのがガンマとイータの二人であることが判明しました!

取り敢えず今後の方向性としては七陰とベアトリクスの話しを書いて本編もまた書けたら良いなと思っております。

なので暫く時系列などは少し飛びますが多めに見てくださると幸いです。

この場を借りてお気に入り登録、感想を頂きありがとうございます。

なるべく更新していけるようにしますので宜しくお願い致します。

一先ず次話のガンマの話しは12時に投稿します。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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商会のトップは衆前で武神を母と呼び周りを驚愕させ母は自らの名前を使い娘を守る後ろ楯になりのんびり娘を撫でる

今回は七陰第三席のガンマに焦点が当たります。

時系列は無視してるのでご了承ください。

それではごゆっくりどうぞ!


次は私ですね。

 

私の場合は……ってお母様どうして私の足を触って…へ?足の形を取り直すためですか?

 

ありがとうございます。お母様の考案された靴に入れる専用の中敷きもとても好評で女性の方は特に足の形が綺麗になってそれに伴っておしゃれもするようになりました。

 

私も愛用して以前よりも転ぶ回数も減りました。

 

どうやら私は人より足の靭帯が緩くそれでぐらつきやすいみたいでそれを中敷きでぐらつかないようにして安定させてそれに足の本来の動きを出せるように指が上に反るような形になっているのも特徴です。

 

それと定期的に足首を回して固くならないようにしたり足の筋をマッサージしてもらって筋肉が固くならないようにしてます。

 

それでも何回か転んでしまうのですがそれでも以前よりも転ばなくなりました!

 

それとどうしてか私とイータはお母様から教えて頂いた波紋を鍛練なしに使うことが出来てこれにはお母様も驚いていました。

 

それから波紋の使い方を学び一通り使うことが可能になり水などの液体や物に波紋を流すことはお母様から太鼓判をもらいました!

 

身体強化は他の子達に比べるとまだまだですがそれでも向上の余地があるとのことなので引き続き鍛練してます!

 

話しを戻してマッサージはいつもはお付きの娘にしてもらうのですがお母様がいらっしゃる時はお母様がしてくれます!

 

とても繊細にこまめにしてくれて魔力を振動させてとても気持ちよくていつも寝てしまいます。

 

その後にご飯を一緒に食べてこの時もお母様がお作りになられてとても美味しくていつも他の娘たちといっぱい食べます。

 

私たちも知らない調味料の使い方や味噌や塩、醤油それからとうもろこしという穀物の育て方と栽培といった物もお母様は知っていてシャドウ様の陰の叡智に引けを取らない知識…一度お母様に聞いてみたら

 

「そうね…なんと言うか…お母さんの知恵袋?かしらね」

 

とベアトリクスもどういうように言うか迷いお母さんの知恵袋という表現を使うのであった。

 

因みにトウモロコシをスープにしてとろみを加えたコーンスープもミツゴシ商会系列のお店で出して人気になってます。

 

お母様は良く色んな娘に知恵袋からどんどん知恵を教えてくれます。

 

そのお陰で色んな娘に得意なことが生まれて商会の利益に繋がってます!

 

それ故に私は役に立てているのかいつも不安になります…

 

私は七陰の中でも最弱…こうして陰の叡智を再現していますがそれでも他の戦闘の出来る娘とは違います。

 

一度拾ってもらった命…七陰を脱退することも考えました。

 

でもお母様は私を抱きしめてくれて不安に思う私を安心させてくれました。

 

私は母の温もりというものを知りませんでした。でもベアトリクス様は無償の愛を与えてくれました。それからお母様と慕うようになりました。

 

普段はあまり関係性がバレないよう注意しておりますがふとお母様と呼んでしまったことが何度かありました。

 

他の商会の者たちとの会合で対応をしていたのですがドアの隙間から普段の仕事をどうしているのか心配されて覗いていらして思わずお母様といつも通り呼んでしまい

 

他の商会の者も驚いていましたが更に驚くべきことにその商会は以前お母様が助けられた方のようでかの武神の娘であったというように商会のほうで広まって以前にも増して支援関係を築き上げられました。

 

お母様の名前を使うようで気が引けましたがお母様は気にせず牽制になるから逆にどんどん使いなさいと言われました。

 

なのでこちらにお越しになられる時には詳しく話しを聞きたいとオリアナ王国の王女とミドガル王国の王女、ローズさん、アイリスさん、アレクシアさんから言われました。

 

けどお母様との時間を多く取りたいので来られる日を伝えたりせず偶々来た時に伝えています。

 

唯一伝えているのは

 

「やっほールーナ元気にしてる~!って師匠も一緒だったのね!ってことは足の測定ね!師匠私も計って、この間見たらちょっと歪んでる所があったの!」

 

そうシャドウ様の実姉であるクレアである。

 

彼女とはお母様がシャドウ様と出会われてその関係でカゲノー家と接することがありそれからクレア様とも関係が出来てアレクサンドリアへ本拠を移す前、カゲノー家と少し距離があったものの離れて一人訓練していた時に偶然私はクレアと出会いました。

 

その時色々と相談に乗ったり普段のシャドウ様の様子を話されるクレアの様子を偶々見ていたお母様が友達が出来たと喜ばれていました。

 

それもありクレアは師匠とお母様を呼ばれるようになり稽古もつけるようになり学園に通われるようになってからも帰省した時には稽古をつけています。

 

私が王国へ商会を広げるようになった時もどこで聞いたのか遊びに来るようになり交遊は続いています。

 

友達というものがいたことのない私ですがクレアはとても快活でシャドウ様のことも色々と話されるのでとても為になります。

 

元気が良すぎてグイグイ来ますが時々試作品を試してもらいお店の商品のぴーあーるをしてもらうこともあり学園の需要もそのお陰で増えました。

 

このぴーあーるというのもお母様から提案されました。

 

流石お母様です!

 

そうしてお母様が足の測定を終えられて新しい中敷きを作られクレアのも測定して作られ鍛練していきそのまま帰られました。お母様と二人きりになりお母様は私を後ろから抱きしめて頭を撫でてくださいます。

 

お母様特有の暖かい波動と鼓動はとても安心出来てすやすやしてしまいま………zzZ

 

とガンマはそのまま寝てしまいベアトリクスはそんなガンマの頭を撫でながら呑気に大きくなったなぁと思い共に昼寝するのであった。

 

後日その様子をこっそり戻ってきたクレアがイータが作りミツゴシ商会で売り出して人気の紙へ投射することで写真を取れるインスタントカメラで取りガンマへと手渡して額縁に入れて大事に保管するのであった。




今回は七陰第三席ガンマからでした!

ベアトリクスは運動神経皆無なガンマへ様々な試みを試して前世にあって当世になかったインソール技術を駆使して足のぐらつきやすさを改善したりマッサージなどで筋肉を柔らかくし柔軟や身体作りで人並みぐらいまでにはなりました。

それでも転ぶことはあるのでベアトリクスも心配している。ベアトリクスをお母様と呼び慕っている。

そういったこともありイータへ特殊な形状記憶に優れたシリコンのような素材を提案し作り出してくれたのでそれをガンマへ試して見たところ成功しミツゴシ商会の目玉商品となりました!

形状記憶に関してはスライムスーツの例もあり簡単に作れたとのことで七陰及び他のガーデン構成員も全員履いている。

そして驚くべきは波紋を修行せずとも使用できる下地が出来ていたことでこれにはベアトリクスも非常に驚いており自身の半分の年齢になれば追い抜かれると感じているそうだ。

だからなのか七陰の中でも突出した波紋の使い手で水などの液体を含んでウォーターカッターにするや特殊な石鹸水をイータに作成してもらいなんの変哲もないシャボン玉だと油断させ大きなシャボンに閉じ込めて波紋による強化で割れなくして酸欠にさせるなど多岐に渡り元々の頭の良さもあるので機転も利くのでデルタからは波紋ありのガンマは相手にしたくないと珍しく戦いを拒否されている。

ジョセフのように頭がキレるので場数さえ踏めば彼のように臨機応変に戦うことも出来るだろう。

最弱とされているものの魔力ありきな部分もありシャドウから剣を教えられるもののベアトリクスからもっとあった形にしようと様々な暗器から更には波紋の伝導率の高い素材を使用した鞭を主軸に動かずとも戦える手段を身に付けた。

例え近付かれても魔力と波紋による強化の防御を打ち破るのは至難の技でシャドウでも一苦労するとのこと。

近付けば波紋によるウォーターカッターを間近に浴びる羽目になるので決して油断できない。

因みにこれはイータにも言えることであるので研究職だからといって襲いかかろうものなら痛い目をみる。

そして商会を営むガンマを心配してドアから見守る不審な保護者。

商会のものたちはやって来た新参がかつて助けられた恩人である武神の娘であったことに驚愕と何かあれば武神が出てくるという二重の意味で苦労する羽目に。

そういったことでガンマや他のガーデンの娘たちを守る意味合いもあり武神の娘という肩書きも遠慮なく使うようにベアトリクスは言うのでした。

因みに良く商会へ遊びに来たときにはおしゃれなどに無頓着なベアトリクスに新しい洋服を着てもらったりアルファも招いて一緒にプチファッションショーをしたりしています。

そしてシャドウからの陰の叡智の他にもベアトリクスの叡智もといお母さんの知恵袋が登場。

ネーミングセンスは気にしてはいけない。

お母さんの知恵袋から出てくる様々な知識はガンマが陰の叡智を再現するためにも使用され試験的にミツゴシ商会で使われている温度調整の道具(エアコン)や煙の出ない暖房機器(電気ストーブ)など導入され何年かすると家庭に普及しミツゴシ商会は更に大きくなること間違いないですね。

そして一番の変更点はクレアと友人関係を築いていることです。

最初期の拠点から離れた場所で鍛練してたガンマとカゲノー家に来た武神ベアトリクスから師事を受けようとおいかけて迷子になったクレアが出会ったという設定。

その出会いなどもまたいつか書きたいですね。

そういったこともありクレアも原作より実力は上がっており魔力だけなら七陰に迫れる勢いがあります。

因みにクレアが王国でガンマに、会いに行けたのはちょっとした母からのお節介で手紙をもらったからである。

そういったこともありミツゴシ商会の最先端の服を一足先に着たりして街中を歩いて宣伝したり学園での普及もしてくれる。

クレアに関してはまた語れる機会を用意する予定です。

たまにもらったインスタントカメラでベアトリクスを撮影するので写真をガンマに、持ってくと大体コピー(イータが作成したコピー機)してシャドウガーデン内で共有されたりするので

他のナンバーズからも特別視されてたりする。

さて次は順番的にはデルタになりますね。

少し日にちは空きますが投稿していこうと思うので宜しくお願いします!

感想、お気に入り登録ありがとうございます!

引き続き感想もらえると投稿の励みになりますので宜しくお願いします!

今回も、読んで頂きありがとうございました!




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犬娘な四席は今日も元気に母へ抱きつき更にボスの姉に抱き付き可愛いがられ母は成長を見守り料理を振る舞う。

ということで第四席デルタのお話しになります!

そしてまたまた登場なあのキャラクターになります!

それではごゆっくりどうぞ!


なんです?

 

母との出会いですか?

 

がう!母凄いです!

 

デルタに色んなこと教えてくれるです!

 

ボスは偉大な人で群れの長なのです!

 

母は最初見た時強さ分からなかったです。

 

でもアルファ様の叔母?だからアルファ様と同じように強いのかとは思ったです。

 

なので試しに戦ったらデルタの攻撃全く当たらなかったです。

 

避けるだけだと思ったらいつの間にかデルタの背後にいて首が取れたと…狩られたと思ったです。

 

デルタはこの人にも勝てないと恭順したです。

 

母はいつもヘンテコな呼吸をしてるです。

 

10分位息を吸い込んで10分吐いてを繰り返してたのを見てデルタもやってみようと思ったです!

 

一分ぐらいしか吸えなかったです…

 

でも母最初ならそれぐらいと頭を撫でて誉めてくれたです!

 

でも皆で訓練した時デルタよりも皆出来てたです。

 

アルファ様は母の血縁だから出来ても可笑しくないです。

 

でもへなちょこガンマとイータは最初から出来たです。

 

それで暫くしてガンマに勝負を挑んだら負けなかったけど勝てもしなかったです。

 

今まで全然だったのに…このままだとデルタ群れにいられない…捨てられちゃうです…

 

だからデルタ隠れて練習したです。

 

へなちょこガンマがあんなに強くなれたならデルタだってもっと強くなれる!

 

でも全然上手くならない。イライラして狩りも上手く行かない…このままだといらない子になっちゃう…

 

でもどうしたら良いのか分からないです。

 

デルタはいつも一番だったです。

 

狩りをすれば大きな獲物を取って喧嘩も強くて…

 

でも身体が痛くなって群れから追い出されて狩りも出来なくなって飢えて…

 

そんな時にボスとアルファ様と出会ったです。

 

デルタの痛いのを治してくれて…ボスに付いていってボスとアルファ様の群れなのかと思ったら母とボスの群れでした。

 

デルタはいらない…群れにいられないとボスの基地から出たです。

 

でもおっきな獲物を捕まえたら誉めてくれるのかなと匂いの先に向かって行って…でも疲れと普段より冷静じゃないデルタは返り討ちに合ったです…

 

デルタここまでなのかと思ったです。

 

でもその時にデルタを持ち上げて助けてくれた人がいたです。

 

その人はクレアと名乗ったです。

 

デルタも名前を言おうとしたですがあんまり広めちゃダメって母とアルファ様から言われてたの思い出したです。

 

でも助けられたお礼しないと母も怒るです…どうしよう…

 

そしたらクレアの後ろからへなちょこガンマが顔を出したです…

 

「クレアどうしました…!?」

 

「ルーナ、んと、この子魔物と戦って怪我してたから一緒に逃げてきたの。獣人の子って初めてみるけど可愛いのね。って何だか凄い顔してるけど?」

 

「え、えぇ実はこの子マナはお母様の拾った娘の一人なんです。」

 

「師匠の娘だったの!?凄い可愛いわね!って怪我してるからえっと確かハンカチあったわね」

 

「?デル…!」

 

「デルタ今はマナって名乗って、クレアには私たちの活動は言ってないから…貴女もルーナって呼んで。」

 

がぅ、ガンマのクセに…でも母に迷惑掛けたくない…

 

とクレアになされるがままにハンカチを巻かれたデルタ。

 

「どうしてあんな無茶したの?おっきい魔物だし逃げたら良かったじゃない。」

 

「がぅ…何時もなら簡単に仕留められたです…でもここ最近上手くいかないです…皆強くなってるのにマナだけ置いてかれてるです。」

 

「マナ、それは!」

 

「ルーナには分からないです!!どれだけやっても上手くいかないのに簡単に出来たルーナに分からないです!!母に構われてズルいです!マナだって母に構ってもらいたい!もっと役に立ちたいです…でもわからないですぅ…マナ皆より頭良くない…」

 

「マナ…」

 

幼いガンマは波紋をすぐに使えてデルタは使えていない。その事で悩み今も色々な波紋を教わるガンマやイータをデルタは羨ましく思っていた。

 

「なによ、簡単なことじゃないの!」

 

「がぅ?」

 

「分からないなら聞けば良いのよ!師匠から教わってるってなら師匠に教えてもらうなりルーナからコツを聞けば良い、要するに人を頼りなさい!」

 

「でも…マナ一人で…」

 

「師匠の受け売りだけどね!人は一人じゃ生きてけないのよ!支え合って生きて足りないところや補う所を頼って力を貸してもらえば良いのよ!」

 

「がぅ…でもマナ皆に…酷いこと言ったりした…」

 

「なら謝れば良いのよ!謝って教えてもらえば良いの!許してくれなきゃ私がガツンて言ってやるわ!」

 

「く、クレア?無茶はいけないわ…!」

 

「……ご、ごめんなさいなのです…ルーナのことへなちょことか言ったです…」

 

「あぁん(`Δ´)あんたルーナにそんなこと言ったの!表でなさい!」

 

「がぅぅぅ~ご、ごめんなさいなのですぅ」

 

「謝る相手が違うでしょ!」

 

「クレア!?ここはもう外です!それに私は気にしてませんから…!」

 

「ルーナこういうのはしっかり言わないとこの子のためにならないわ!」

 

「マナも今まで生きてきたところは実力至上主義な所もあったみたいなんです。頼ってほしいと言わなかった私も悪いのです。」

 

「まっっっったく!!あんたは優しすぎるわよ。」

 

「ぅぅ」

 

「それでどうすんのルーナは?」

 

「それは勿論許します。それにで…ゴホン、マナは色んな動物を狩ってきてくれるので頼りになります。だからそういった部分を教えてください。私もマナの分かりやすいように伝えるから。」

 

「ありがとうなのですルーナ!」

 

とデルタはガンマにくっつくです。

 

「全く可愛らしい妹じゃないの…家のバカ弟とは大違い…」

 

それからのデルタは皆にまず謝ったです…メス猫に色々言われたです…一杯酷いこと言ったから当然です…でも最後は許してくれたです。

 

母から悩んでたことに気付けず謝られたです…

 

母悲しませちゃったです…

 

デルタ大泣きして母困らせた…でも母優しく抱きしめてくれた…がう!

 

それからデルタは練習してガンマが分かりやすく噛み砕いて教えてくれて半年ぐらいで基礎が出来るようになったです!

 

クレアともありがとうしたくてガンマと一緒に行ったです。クレアのお陰でデルタ強くなれた!

 

後でガンマに聞いたらクレアはボスの姉だったです!

 

流石ボスの姉なのです!

 

ボスの姉どう呼ぼうか迷ったです。

 

だから姉様って呼んでみたのです!

 

「……マナ、もう一回良いかしら?」

 

「がぅ?姉様なのです!」

 

「か……か」

 

「クレア?」

 

「可愛いわ!家に連れ帰って妹にするわ!」

 

「はぅ!?尻尾くすぐったいです~がぅ~♪」

 

「クレア!?マナはお母様の娘ですから駄目ですよ!?」

 

と狂喜乱舞し暴走したクレアを止めるガンマであるがこの時のクレアの謎パワーは凄まじくベアトリクスが来るまで終始圧倒するのであった。

 

この日を境にクレアに会いにいくデルタは度々カゲノー家にもお世話になりシドとも普通に話し人前ではシャドウであることを隠しながら交流し周りからも微笑ましく見守られるのでした。

 

更にクレアが学園に入学した際も王都に立ち寄ることがあればデルタはクレアを探して突撃しクレアを驚かせ親戚の妹分がいると噂されるクレアだったがそんなこと気にせずデルタをもふりミツゴシ商会へ行きガンマを驚かせそのままガンマが引き取る流れが出来ていたのであった。

 

デルタの成長を嬉しく見守りながらベアトリクスはデルタが取ってきた猪を美味しく調理しその日は七陰全員で猪鍋を堪能し

 

オリアナ王国で調達した米を使い猪肉をこれまたベアトリクス特製の焼き肉のたれに付けて半日ほど寝かしておいた物を豪快に焼いていきご飯の上に乗せた猪肉のステーキ丼をデルタへ食べてもらい

 

デルタも凄い美味しそうに食べるので七陰全員と偶々来ていたシャドウもご馳走になりシャドウは久し振りの味わい深い丼物を食べて満足しこの後イータが焼き肉のたれを完全再現し

 

後々のミツゴシ商会展開の丼物のお店で大人気のメニューになるのでした。




今回はここまでになります。

ベアトリクスが波紋の呼吸で常人よりも呼吸の音が違うことに七陰で最初に気付いたのはデルタでした。

その後訓練するものの上手くいかず最初から出来たガンマ、イータに嫉妬し勝負するも魔力と波紋による強化で引き分けという結果に。

このままだとベアトリクスに拾ってもらったのに追い出されてしまうと焦り狩りに行くも返り討ちにあい絶対絶命のところをガンマに会いに来ていたクレアに助けられました。

クレアにガーデン内での名前を言うわけにもいかずその場にいたガンマが咄嗟にマナというように名乗るように言いそのまま治療され今まで溜まっていたものを吐き出してしまうデルタ。

そんなデルタにクレアは真剣に向き合いデルタは今まで失礼な態度を取ってしまった七陰の娘たちに謝り人を頼ることを覚えました。

それもありガンマを筆頭に波紋を教えてもらい基礎を習得することが出来たデルタ。

最終的にベアトリクスといる時を思い浮かべながらやってみたところ成功したとのこと。

それもあり切っ掛けを作ってくれたクレアになつき姉様と慕うと可愛げのない弟よりも可愛い妹分が出来たのでしばしはっちゃけ魔力で強化してるはずのガンマが止められない姉パワーを発揮しベアトリクスの母パワーに静められることに。

カゲノー家にも入り浸りシド=シャドウと接触しても不自然ではない関係を築きました。

クレアが、学園に行く前行っちゃやだと泣いてしまい微笑ましく見守るカゲノー家と、ベアトリクス。

そんなこともありクレアも寂しがるものの何日かした後にひょっこり王都に顔を出してクレアに突撃するデルタをクレアはもふりガンマのところに顔を出してデルタを引き取るガンマの様子はちょっとした王都の日常だったりする。

デルタの悩みを解消してくれたクレアに感謝し様々な鍛練をするベアトリクス。

そのせいか原作よりも高水準のクレアが出来上がります。

そして何だかんだイータが焼き肉のたれを完全再現しミツゴシ商会系列のフードコートで丼物が人気になるのでした。

デルタもベアトリクスから波紋を教わり人に頼ることを覚えたので暴走突撃切り込み隊長から戦略的切り込み隊長になり作戦を考えるガンマと特攻するデルタの組み合わせは破壊的な攻撃力に緻密な作戦が組合わさり最強クラスのタッグに!

娘の成長に涙ぐむお母さんベアトリクス。

そんなデルタも休憩の時はベアトリクスのお腹に抱き付きそのままお昼寝してしまう可愛さもあるのでした。

さて次回はイプシロンですね。

…どういう展開にしようか迷います。

少し、感覚が空きますが宜しくお願いします!

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作曲家でピアニストのひんぬー娘はおしゃれに無頓着な母を連れて買い物しプチファッションショーをする。

毎度恒例ですが今回は七陰第五席になります。

少し間隔が空くと言いましたが早めに出来たので投稿します!

転生ベアトリクスは娘のためなら前世の知識をフル活用して色々と作り出します!後にイータによって増産されるまでがお約束になります。

それではどうぞごゆっくり!


それじゃあ今回は私ね!

 

母さんとの出会いはそうね

 

まず私は良いところのお嬢様だったわ。

 

家柄も良く武術に秀でて美しく、頭も良かった。

 

そういったプライドもあり自信もあった。

 

でもある日悪魔憑きとなり…その全てを失ったわ。

 

生きてる意味なんてないし…でも死ぬ勇気もなくて…

 

あの日腐りゆく肉体を引きずり山道を歩いていた。

 

でも…あの時に運命に…シャドウと母さんに出会ったわ。

 

シャドウの力がほしいかの問いに私は即答した…

 

そうして私を青紫の魔力が包み込んで悪魔憑きを治してもらった。

 

そうして生きる意味を見いだした私だけど…身体はボロボロでそんな私を母さんは優しく抱きしめてくれたわ。

 

自分が汚れようと構わずに私を優しく…母さんの暖かい黄金のようなオーラに私は本当の優しさを知ったわ。

 

そうしてシャドウたちの住処へといって抱きしめてくれた人があの武神であり食神でここ数十年で文明を変えた生きる伝説であるベアトリクス様だったことに驚いて感激したわ。

 

シャドウという崇拝すべき人と武神と名高い人の元にいられる…

 

そうして私は自分の価値を見いだそうとして挫けた…

 

得意だった武芸は、下から二番目だった。

 

この先どうやっても勝てないだろう化物と完璧超人がいた。

 

誇っていた頭脳も、下から二番目だった。

 

頭脳特化と完璧超人に自信をへし折られた。

 

総合力でも完璧超人とそつなくこなす万能型がいた。

 

でも私にはまだ希望があったわ!

 

そうスライムボディスーツ!

 

私がスライムボディスーツを自在に操れるようになるのに三日とかからなかった。

 

制御の練習をするという名目で、その日から常にスライムボディスーツを身に着け、少しずつ、少しずつ盛っていった。

 

少しずつ、疑われないように、しかし成長期だからちょっぴり大胆に。

 

そしてある程度大きくなった時、彼女は気づいた。

 

質感が足りない。

 

スライムはあくまでスライムなのだ。本物とは感触が違う、揺れが違う。イプシロンはその日からベータを目の敵のように観察し、数日でスライムを完璧に制御し揺れと感触を再現するまでに至った。

 

ここにきてイプシロンの魔力制御はアルファも唸るほどにまで極まったのだ。

 

それから暫くして七陰が揃い母さんは私たちに波紋という技能を教えてくれた。

 

これならと意気込んだけど…ガンマとイータは何もせずにいきなり発動することが出来た。

 

母さんが驚いていたのは覚えてるけどまた私は置いてかれた。

 

魔力制御ならアルファ様からも太鼓判を押してくれたけど…中々上手くいかない

 

そうして俯いていてでも前を向こうとしてシャドウ様がピアノというものを引いていた。

 

その音色はとても素晴らしく私の芯にとても響いた…

 

シャドウ様に聞いたところ月光という曲だというのが分かった。

 

見様見真似だけどそれでも私も引きたいと思った。

 

夜な夜な練習をしていた時に母さんに見つかった。

 

私は怒られると思ったけどそんなこともなく母さんは隣に座ったの。

 

「…眠れない?」

 

「…眠りたくないです…1日1日が凄い濃密で、でも私は追い付けない…皆私なんかよりも秀でてる。

 

アルファ様は何でもそつなくこなしてベータも総合的に色々出来てガンマは頭が良くてデルタは戦闘力もずば抜けて昔よりも色んな意見や人を頼るようになってゼータは隠密と諜報が出来てイータは色んな開発が出来る…凡人は私だけ…」

 

「そんなことはないわ。イプシロン貴女は魔力操作に長けて」

 

「でもそれだけ…それだけしか私にはないわ…母さんには分からないわよ…何でも出来て武神で食神って言われて私たちエルフの憧れの完璧超人だもの…私の気持ちなんて」

 

「…私は完璧なんかじゃないわ。」

 

「嘘よ…だって」

 

「完璧だったら妹の死に目に間に合っていたわ…」

 

「…え…?」

 

「あまり話したことがなかったわね。私には妹がいたの。私にはもったいない出来た妹が。私は生まれて10年ぐらいで里のものでは敵わないぐらいになって、でもね他のエルフにとって私は異端だったわ。

 

妹だけは私のことを見てくれたわ。そうして旅に出てでも一年に一度妹に会いに帰って色んな場所を渡り歩いたことをあの娘に話して笑う姿が私は好きだったわ。

 

そうしてまた時は経ち妹に娘が出来てたわ。あの時はとても驚いたわ。それで妹の娘を見て初めて触る赤ちゃんだったから私はしどろもどろになりながらあの娘の手に指を持ってったら

 

私の指を握って微笑んだの…天使だったわ。

 

それから妹と姪っ子に旅の話しをするのが私の癒しになったわ。

 

この時間が続けば良い…でも手紙で妹が亡くなったのを知ったわ…

 

私は妹の死に目に会えず寂しい思いをさせた駄目な姉で姪っ子も悪魔憑きになって教団に送られたと聞いたときにすぐに姪っ子を探して…」

 

「もしかしてそれが…アルファ様?」

 

「そう…私はね…怖いのよ。」

 

「怖い…ですか?」

 

「そう。あの娘に恨まれても仕方のないことをしたの…妹の辛いときにいられず…時々ねあの娘の瞳が妹に重なるの…生きてたあの娘に…妹が私を恨んでるんじゃないかって時々思うのよ…」

 

「…」

 

「それにねイプシロン。完璧っていうのはね、一種の終わりなのよ。」

 

「おわり?」

 

「完成されて隙のない…でもそれだけ。その先がない、発展がなければ成長もしない、成長しなければいずれは世界は静かに鼓動を終えるわ。完璧は確かに目指すものだわ、でも完璧になるのだけは駄目。」

 

「…」

 

「イプシロンはピアノをどう思った?」

 

「えっと…最初はシャドウ様が引いててそれに憧れて…私も人に響くようなものを引きたいって…」

 

「イプシロンが心で感じたことだもの。出来るところまでやってみましょう。」

 

「はい!」

 

「それにしてもピアノね…久しぶりに引いてみようかしら…」

 

とベアトリクスはイプシロンの前で引き始めた。

 

♪~♪~♪~♪

 

そうして最初の躍動感溢れる音にイプシロンは引き込まれた。

 

シャドウのような引き込まれるような感じではなく包み込むような暖かい音色であった。

 

その事もありイプシロンはより一層ピアノに打ち込み作曲家でピアニスト、シロンとしてオリアナ王国なとで賞をもらう程になるのであった。

 

私のピアニストとしての腕はまだまだだわ…いつかシャドウ様のようで母さんみたいな音色を奏でる。それが今の目標よ!

 

それと母さんは完璧って思ってたけどそうじゃないことが分かったわ…だって

 

「ねぇ母さん…どうして何時も同じ格好なの?」

 

「……?服なんて何れも同じだし私が着飾るより貴女たちがおしゃれする方が嬉しいもの。」

 

物凄い服に無頓着なんだもん!

 

アルファ様に聞いてみたら昔からそうみたいで着飾るより自然体な服装で良いってアルファ様も慣れちゃってるわ…

 

母さん顔が整ってて髪もサラサラでくびれもあってセクシーなのに……勿体ないわ!!

 

「い、イプシロン?どうしたの?」

 

「…きます…」

 

「?」

 

「母さんの洋服を買いに行きます!!」

 

と強引に母さんを連れ出して母さんの作った孤児院のある街に赴き洋服を見る。

 

母さんが作ったような街だから全員母さんを知ってるし母さんにおしゃれさせたいといったら街の人たち全員が一致団結してくれたわ!

 

試しに薄い緑のドレスを着てもらったわ!森のイメージをした少し薄手みたいで母さんが珍しく照れてたわ!

 

次は

 

「イプシロン…?」

 

とちょっとドスの聞いた声が後ろから聞こえた…響くわけじゃないけど芯が凍るような錯覚が…

 

「あ、アルファ様!?こ、これはその…」

 

「言い訳は良いわ」

 

「ヒィ!」

 

「叔母様に合う服を選ぶわよ。」

 

「…お、怒らないのですか?」

 

「当たり前でしょ。私も叔母様にはおしゃれしてほしいし可愛い服を着てほしいもの。」

 

とアルファ様も加わり母さんを着飾る。

 

どちらかといえば黒基調の服装が似合いそうだからドレスをきてもらったら漆黒に咲く薔薇のような美しさがあって…店員がぶっ倒れたわ

 

それから胸元の見えるちょっとした寄せるデザインの服を着て前屈みになってもらったら…店の外で見てた人が鼻血をだして幸せそうにこれまたぶっ倒れたわ。

 

流石にその格好は人前じゃ駄目だから私たち七陰にしか見せないようにアルファ様が母さんに言ってたわ。

 

それから暫くファッションショーのように色んな服を見てこれだと思うものを購入したわ。

 

というよりはもらっちゃったわ。

 

母さんに助けられ好きなことを出来るようになって憧れの母さんに着てもらえたことに逆に感謝されてたわ。

 

そうして数ヶ月に一回母さんと服を見るために街に出ていつの間にか一緒にいることの多いアルファ様と母さんを着飾る私であった。

 

余談だけど母さんにスライムボディスーツで盛ってるのが…バレた…

 

というよりも最初からバレてた…うぅ恥ずかしいわ…

 

でも母さんは笑わずに色んなことを教えてくれた

 

身長を伸ばすために牛乳っていうのを接種してカルシウムを取る?のが良いらしい。

 

更にベアトリクスは、転生前の世界での知識を総動員してカルシウム、骨の成長を助けるボーンペッブ、成長ホルモンを促進させるアルギニンの成分を抽出するために卵の卵黄から搾り、牛を畜産し肉やレバーからアルギニン、鉄分を採取し魚などから取れるDHAを混ぜ合わせ最後に味を整えて完成させた成長サプリ。

 

それらを毎日三食の後に飲んでもらい睡眠をしっかり取るようにベアトリクスはイプシロンを布団に連れ込んで優しく抱きしめて安心をさせて眠るのであった。

 

そのかいもあって身長に関しては原作の厚底靴を履いたイプシロンぐらいまで伸びた。

 

…胸?まぁ………スレンダーで可愛いですよね!

 

まぁ胸が全てって訳では

 

………………作者の筆跡はここで途絶えていた。

 

赤い文字でひんぬー恐るべしと書いてあるのであった。

 

ふん!スライムボディスーツがあるもの…

 

で、でも母さんに抱きしめられるのは…悪い気がしないわ

 

それにしてもホント母さんって物知りよね。

 

ガンマとかにも知恵袋から知識を教えてるしシャドウ様のような陰の叡智を躊躇いなく教えてるし…

 

と思っていると母さんも私の秘密を黙ってる代わりに秘密を教えてくれた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

物凄い重大な秘密を知ってしまったわ。

 

それでも母さんは母さんだし自慢の母親だわ!

 

因みに秘密を知ってるのはシャドウ様、アルファ様の他に私だけみたい!

 

……え?イータも知ってる!?

 

まぁ良いわ!

 

私は七陰第五席イプシロンで作曲家シロン!

 

母さんである武神にして食神のベアトリクスの娘として恥ずかしくない生き方をしていくわ!

 

と決意するイプシロンなのであった。




というわけで七陰第五席イプシロンからでした!

原作同様魔力制御にかんして七陰随一のイプシロン。
名家出身な分プライドもあり他の面々に劣る自分にコンプレックスもあり、ベアトリクスは特に完璧といえる人でした。

そんなベアトリクスも完璧ではなく妹のことを引き摺っていてアルファの瞳に見つめられると時々妹を幻視することもあるという。

そして完璧とは目指すものであるがなるべきものではないと語りました。

BLEACHにおけるマユリ様は科学者として何より発展させようという意志が好きですね。サイコな所は置いとくとして。

そしてベアトリクスもピアノを引きイプシロンはその音色を目指そうと決めた。

因みに引いた曲はテイルズオブシンフォニアなどで聴かれるStarry HeavensとAngel Beats!のMy Soul,Your Beats!でした。

この時物陰から聞いていた姪っ子は後日叔母に抱き付いて母は恨んでないと告げて珍しく泣いて姪っ子を抱きしめる叔母の姿があったとかなかったとか…

二つの曲は大きくなったイプシロンが賞を取った時に引き母ベアトリクスが作曲したとしてあの食神の娘だとはと芸術の国で認知されている。

そしてベアトリクスは服に無頓着なためか同じ服を、大量に持っている。

そのためイプシロンは服を見るためにベアトリクスの作った街へ行き服を選ぶことに。

こっそり付いてきていたアルファも叔母の服装を見繕い店員のエルフの女性たちを悩殺するのでした。

そしてこれまた前世の知識を総動員してイプシロンに最適なサプリを調合するために新たな畜産を始め時には海へと赴き魚を取りと忙しく動き完成させた。

お陰で身長は伸びたがイプシロンの胸は…いたたたた先程頭を打って血が出たばかりで思い出せない。

因みにこのサプリ簡単な製造をしたいとイータと相談して、共同でマシンを作り出し製造が簡単になりミツゴシ商会で取り扱いミドガル王国で低身長に悩む人々に希望を与えたそうである。

そのためオリアナ王国を筆頭に各国がミツゴシ商会の支店を造ってほしいと懇願するのでした!

あと転生ベアトリクスは特に転生したことを絶対に隠したいというわけではないのでシャドウは元より姪っ子のアルファにも告げていてイプシロンも、その仲間入りをするのでした。

イータに関して?それはイータ編にて明かされる予定です。

お気に入り登録、感想ありがとうございます!

誤字など多いところありますがこれからも投稿していきます!

次回はゼータになります!

早めに投稿出来るよう頑張ります!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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金豹の獣人の少女は武神であり恩人のために喜ぶものを考え奔走し昔を思い食神と呼ばれし母は奮発して料理を振る舞う 前編

今回は第六席ゼータになります!

長くなったので二つに分けることにしました!

まずは前編からごゆっくりどうぞ!



やぁ今日は私の番みたいだね!

 

そうだね…マザーは私にとって返しきれない大恩ある恩人と呼べる人だね。

 

私の一族は金豹族と呼ばれた由緒正しい獣人の一族だった。

 

私は族長の娘として育ち父と母から愛情を注がれて育った。将来は金豹族の長として生きたい。

 

期待に応えられるように私は努力した。

 

でも私が悪魔憑きを発症し全てが終わったと思った。

 

でも父は私を変わらず愛してくれて治す方法を求めて奔走し母もそれに協力していた。

 

でも教団はそれを見逃さず…私たち一族全てを殺そうと追手を放った…

 

父は私たちを守るために特攻し壮絶な最後を遂げた…

 

どこまで逃げても追われ一人また一人と殺されていく。

 

私のせいで…私が悪魔憑きを発症しなければ…

 

そう後悔しても時は戻る筈もなく理不尽に一族は殺され私は母に弟を託され逃げた。

 

何とか弟だけでもと走った…けど追い付かれて抵抗したけど…目の前で弟を…

 

私の中は復讐心と仲間を殺された怒りと力のない自分を呪った…

 

そこにシャドウ様が現れて力を欲した私の悪魔憑きを治した…生き残ってしまった…私は一族の無念を晴らそうと決意して側にいた弟の亡骸を触る女エルフに気付いて弟の亡骸を辱しめるつもりかと飛びかかり掛けて奇跡を目の当たりにした。

 

黄金のような暖かい息吹きのようなものが女エルフから放出されて弟が息を吹き返した。

 

驚きと共に亡くしてしまったと思った唯一の家族が生き返ったことに私はその女エルフ…後のマザーに縋った。

 

近くにいる仲間を助けてほしいと代わりに何でもすると言って。

 

そうして私は仲間の元へとマザーを連れていった。マザーの仲間が手当てしてくれていてまだ息の有った仲間たち…

 

でも死ぬほどの重症を負っていてもマザーは治してくれた…助けられなかった命もあるけどマザーは同胞のためにマザーの作った街に墓標を建ててくれた。

 

生き残った金豹族の仲間たちはマザーの作った町で共に生活をしている。最初は私達がいることで迷惑を掛けると言ったけどこの街の人たちは元が悪魔憑きで私達一族みたいに守ろうとした人が沢山いてマザーに助けてもらって仕事をくれたみたいでマザーを崇拝している。

 

本人は崇拝しなくていいと言うけどあんな奇跡を目の当たりにしたら崇拝したくなる。現に金豹族の皆は正教の女神ベアートリクスの生まれ変わりなのではと毎日マザーのいる方へお祈りを欠かさずにいる。

 

そして母は息を吹き返したけど後遺症で歩くこともままならない状態だった…

 

でもマザーはそんな母に私では理解できない道具を母に使ってくれた。そのお蔭で今は杖を付きながらでも歩けるまで回復した。

 

金豹族の意思を誇りを守ってくれたマザーに恩返しがしたいのとやはりこんな理不尽にあった一族の仇を討つために七陰に入った…

 

今日はそんなマザーに恩返しをしようと何かプレゼントを考えていた。

 

マザーはあまり着飾るタイプじゃないから何にしようか迷う…

 

髪留め…腕輪…ペンダント…迷う…どうしようかな?

 

とガンマに相談しに行ってみるとそこには主の姉とデルタが一緒にいた。アルファとガンマにも恩がある。魔力で一族の傷を塞いでくれてマザーの治療が間に合った助けられた恩が。

 

この時はルーナとして一緒にいるためそっちの名前で呼ぶようにしてるので私もコードネームではなく本名のリリムを、名乗っている。

 

「あら?どうしたのリリム?」

 

「…?もしかしてこの娘も師匠の?」

 

「やぁ私はリリム。ま…ベア様に助けられてお手伝いしてるんだ。」

 

「あぁ!師匠の言ってた孤児院の娘ね!」

 

(そういうことにしておこう…)

 

「ルーナいつもお世話になってる人に送るものなんだけど何がいいかな?」

 

「そうですね…お母様は何かと派手なものは好きではなさそうですし…う~ん。」

 

「贈り物したいの?それならあれよ!師匠結構な甘党だからクッキーとかが、良いんじゃないかしら?形の残るものの大事だけど結局は思いが大事だから!」

 

「成る程…ありがとうクレア。早速帰って作ろう!」

 

「相変わらず師匠は慕われてるわね。でもそこが師匠の凄い所だし尊敬するわ!」

 

「わーい、姉様遊ぶですー!」

 

と後ろでわいわいしているのを尻目に私は戻り早速クッキーを作る。

 

といってもこういうのは初めてでどうするか…

 

「ゼータどうしましたか?」

 

「ベータ、マザーに日頃のお礼をしようと思ってマザーが前に作ってくれたクッキーを作ろうと思うんだけどやり方が分からなくてね」

 

「良いですね!私も手伝います!」

 

ベータの協力も得られたので早速作っていく。

 

マザーが色々つくった調理室から色々と持ってオーブン?やらを使って温めて…

 

何度かつくったけど焦げてしまった…これじゃあお礼にならないと捨ててしまおうとしたら

 

「二人ともクッキーを焼いてたのね頂くわ。」

 

ひょいぱくとマザーが後ろにいて黒焦げのクッキーを食べていた。

 

「あ!それは失敗作だから」

 

「ん、ちょっと砂糖が入りすぎたみたいね。でも生地の柔らかさは丁度良いから後はオーブンを注意して見てれば美味しいのが作れるわ。」

 

と言いながら失敗作のクッキーを全て平らげたマザー

 

「マザー!黒焦げなんて無理に食べなくても…」

 

「そんなことない。二人が頑張って作ってくれたとても思いの詰まったクッキーだったよ。」

 

とベータと私の頭を撫でてくれるマザー。

 

マザーの手はとても暖かい…この手が弟を皆を助けてくれたと思うと凄い興奮する…

 

少し前を思いだし私の後にイータという娘が入り七陰が揃いある時にマザーが波紋というものを教えてくれた。

 

その波紋こそが私達一族を救ってくれた力だと言われ私は特訓を重ねる。最初は息苦しかったけどでも…マザーや一族の笑顔…その一つ一つに感謝してそうする内になれてきた。

 

ガンマやイータは最初から使えたけどまぁガンマは運動能力が絶望的だから波紋を使えるようになって漸く私達と同じぐらい動けるようになった。

 

イータはどちらかというと研究?するのが本職だからいいかな?

 

私とアルファは結構早く波紋を使えるようになり続いてイプシロンが上達してベータもそれに続いた。

 

バカ犬は全然で魔力だけに頼ってガンマに戦いを挑んで引き分けに終わった。

 

デルタに負け続けていたガンマが波紋を使えて引き分けられるのを考えると私達の上がり幅は凄いだろう。

 

そうやってバカ犬と口論になり飛び出していった。

 

獣人として見てて情けない…

 

でも帰ってきたあいつは素直に謝った。そこで私は今までのことを吐き出してしまったが変わろうとするデルタのこれからを期待して許した。

 

そうして素直になったデルタは人を頼るようになった。

 

波紋は遅かったけどそれでもちゃんと覚えていた。

 

その間私はマザーから幾つかの技を教えてもらった。

 

歩法というもので相手の全知覚と全タイミングから、自分を気付かれない程度にズラす。呼吸、踏み込み、鼓動、聴覚など、小さなズレをいくつも重ねる事で相手からは『見えているのに視えない』状態になる事ができるらしい

 

かける相手のタイミングを理解していなくてはならないらしく赤の他人相手や、複数相手に行うには相当の熟練が必要なんだけどマザーは私達七陰とシャドウ様のいる前で実行して見せた。

 

シャドウ様も凄く驚いていたのは印象的だったけどそのすぐ後に破っていたことを考えると流石シャドウ様。

 

技の特性上、習得は難しいが破るのは簡単でかけられた瞬間呼吸を乱したり、力む事で自分のリズムを狂わせればよい。

 

でも知らなければ唐突に消えたと錯覚させられるこの歩法は諜報においてとても有効だった。

 

マザーの気配の消し方はとても独特だった。風景と同化するように自分の存在強度を薄めるといって森の中でかくれんぼをしたときはシャドウ様ですら探すのに10分ほど掛かった。

 

私とデルタは獣人として鼻が効く筈なのに全然見つけられなかった。

 

どうやら波紋で自然の呼吸と同化するようにして隠れていたらしい。

 

シャドウ様が気付いてそこを見れば最初の場所から動いてすらいなかったのには驚愕した。

 

そして私に千本という武器を教えてくれて人の人体のどこに刺せば気を失わせることや動けなくさせられるツボや気功というものをさせば身体を活性化させられるのかも教えてくれた。

 

私はそっちの方面に才能があったようで今ではマザー程ではないけど気配を感じ取れないようになった。

 

私はマザーのため、一族のために強くなれるように鍛練を続ける!

 

そう決意するゼータであった。




今回は長くなったので二つに分けることにしました!

七陰第六席ゼータは原作では自分以外の一族を殺されて復讐と悲しみの連鎖を断ち切るためにシャドウに永遠の命を献上して自分がその悲しみを全て背負って消えれば良いと考えている節があると作者は思います。

悲しみや憎しみを背負って退場…コードギアスのルルーシュのようなゼロレクイエムのように自分に負の感情を集めさせることはやりそうな気がします。

まぁそれを許す転生ベアトリクスではないのですけれどもその件は次回の後編にてやります。

ゼータ以外の金豹族の命を波紋で生命力を与えて救ったベアトリクス。しかし生き絶えたものたちは大勢いてベアトリクスは自分の街に安らかに眠れるように墓標を建てた。

追手のディアボロス教団はサクッと処理を無表情で行ったベアトリクス。子供まで手に掛けていることを考えると斬り捨てされても文句は言えないでしょうね。

救ってくれたベアトリクスの力になりたいと七陰に本格的に入ったゼータことリリム。

金豹族から崇拝されるようになったベアトリクス。

そんな畏まられてもというベアトリクスに普段はフランクに接するように決めそれ以外はお祈りするなどするようになったという。

そして贈り物をしようとガンマに相談しにいくとクレアがいてそんなクレアからの助言でクッキーをベータと共に焼くことに。

失敗しても想いのこもったクッキーを美味しいと食べたベアトリクス

そして七陰の中でも波紋を特別視し、神聖な力だと感謝し修行に励みベアトリクスからも幾つか技を授けられている。

歩法は終わりのクロニクルという小説にて2ndギアと呼ばれる世界にて伝わるもので対人において有利に進められる技能。

難しいそれを複数同時にやってのける規格外なベアトリクス

シャドウも純粋な技術でやってのけたことに内心狂喜乱舞し習得し弱点も把握しベアトリクスの歩法を破っていた。

やはりシャドウも規格外ですね。

そして波紋による同調での気配の消し方は本当に消えたと錯覚するようでシャドウでも時間がかかるようであるが波紋を扱えれば周りに波紋を流し簡単に分かるでしょう。

そして千本という針状の武器で人間のツボや気功なども教えられますます暗殺者っぽくなるゼータ。

マザーのために強くなろうと決心するのであった。

後編は本日の18時に投稿します!

食事会とゼータの野望とベアトリクスとの話しになります!

お気に入りが100件を越えました!

この場を借りていつも読んでくださる皆様ありがとうございます!

期間空くこともあると思いますが続けていけるように投稿します!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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金豹の獣人の少女は武神であり恩人のために喜ぶものを考え奔走し昔を思い食神と呼ばれし母は奮発して料理を振る舞う 後編

第六席ゼータ後編になります!

長くなったので二つに分けることにしました!

まだ前編を見てない方は一個前も読んで頂けると幸いです!

それでは後編ごゆっくりどうぞ!



少し日にちが経ち今日はマザーが私の弟も一緒に連れてきてくれて何やら料理を作るみたいで外で待っている。丁度シャドウ様も一緒に来ていた。

 

弟も幼いながらも金豹族として成長していて見ていて嬉しい限りだ。

 

偶にデルタが狩りの仕方を教えているけどまだ危ないことはさせないでほしいけどガンマも一緒に付いてるなら大丈夫かと思いながらマザーの料理を待つ。

 

するとマザーは大きな木の器のような所に炊けた米を入れていた。

 

そして何だが酸っぱい匂いのするものを混ぜたみたいでデルタもちょっと顔をしかめている。私と弟も少しきつい匂いはするものの金豹族たるもの落ち着かないと。

 

と思っているとシャドウ様が成る程と呟いた。

 

もしかしてマザーの作る料理に気付いたのだろうか…?なんという洞察力!少しの準備だけで全てを見通すなんて、流石私達の主…!

 

シドはただ単に酢飯にしているのを見てあの料理が食べれるのかと感慨深くなっているだけである

 

そうしてマザーは米を握って上に白い何かを乗せて私達の前に出した。

 

「これは…鯛なのかマザー?」

 

「えぇ、シャドウ。偶々海に行って素潜りしたらいたから捌いたの。」

 

「フム、淡白な味わいから出すとは…分かってるなマザー!」

 

「皆食べて頂戴。シャドウみたいにそこの醤油をつけて食べると美味しいわよ。」

 

と恐る恐るシャドウ様のように付けてみて口の中に入れる

 

口の中にさっぱりした魚の味と少し酸っぱい米の味、それに醤油の味が見事に加わった…美味しい…!

 

「美味しいみたいで良かったわ。」

 

次にマザーは赤色の丸い粒々のものが乗ってて何かで巻いたようなものを出してくれた。

 

「いくらもあったのか!?」

 

「えぇ鮭っぽいのが川を上がってきたから丁度良く捕獲できてね。」

 

「うむ…一粒一粒の食感…旨いな。」

 

シャドウ様も唸る美味しさ…かくいう私もその美味しさを堪能している。

 

次に何やら尻尾の付いたのが出てきた。

 

「マザーは分かっているな、脂の乗ってる海老…うん!」

 

とシャドウは少し醤油に付けて食べて尻尾はそのままにしていた。

 

私達もそれを見て食べてみる。

 

甘い味わいに醤油の濃さが合わさって美味しい…!

 

「マザーわさびないのかい?」

 

「当然あるわよ。」

 

「これがあるのとないのとじゃ雲泥の差になる。」

 

そうしてもう一つ何かを付けたので私も少しだけ上に乗っけてみる。

 

!?鼻がツーンとするような感触が来たけどその辛さが味を更に引き立ててる!

 

「はうっ!?鼻が~」

 

「ガンマわさびは慣れてないと凄い辛いから無理しなくていいのよ。はいお水よ。」

 

「マザー、玉子をもらえるかな?」

 

「察しが良いわね。丁度出来てるわ!」

 

と黄色い平ぺったいのを出してシャドウが食べるので私たちもたべる

 

これは凄く甘くてさっぱり…食べやすい!

 

「マザー大トロ、寒ぱち、ウニ、蛸はあるか?」

 

「勿論あるわ。さぁどうぞ」

 

とどんどん出てくる!

 

脂身ののった味の濃いものが凄い美味しくていっぱい食べれる!

 

デルタも弟も同じように玉子と赤い脂ののったマグロ?を食べている。

 

途中シャドウがヘンテコな見た目のを食べたときは私達皆固まったけど食べたら案外美味しかった!

 

蛸である。吸盤を残しちょっとしたコリッという食感を嗜むシャドウだが元々日本人な二人は蛸のことを気にしてないがここは異世界であるので七陰は未知の食べ物に当たったと思うもののマザーの出したものならと食べて意外に美味しくて食べ進めていた。

 

「マザーのり巻き…かっぱとネギトロはあるか?」

 

「勿論。はい」

 

「…きゅうりのさっぱり感と海苔のパリッとした歯ごたえ…旨い!ネギトロもこのパリッとした新鮮さは格別だ!」

 

「こんなにパリパリしててふわっとした味わい…美味しいわ。」

 

「このきゅうりというの醤油に浸けるとご飯と更に馴染みます!」

 

「この食感を…これを何処にでも出せるようにしたら…それにしてもこのマグロ美味しい…他にも何かで使えるかしら…」

 

「がぅ~沢山食べるです~」

 

「サーモン、いくら、赤貝、海老、えんがわ、それと蛸…母さんが、言ってたコラーゲンとか身体に良い物が色々と含まれてる…でも食べ過ぎないように気を付けないと。」

 

「自然の豊かな味が広がって口の中が芳醇になってくね」

 

「……美味…!」

 

そうして私達はマザーから聞いた寿司というものをお腹いっぱいに食べた。

 

久し振りに弟との時間を過ごした。街の人たちが優しくいろんな仕事を体験していること、金豹族としての振る舞い方も母から教わっているみたいだ。

 

マザーは弟を送り届けるといって街の方へと向かい私は一人空を見上げる。

 

綺麗な星空でとても眩い景色だ。

 

…マザーは私に色々与えてくれた。私もマザーに恩返ししたい…そうだ!マザーにディアボロス教団を滅ぼした後この宝石箱のような世界を治めてもらえば良いんだ!

 

マザーのような優しい人が管理すれば争いも悲しみも生まれない…シャドウ様と共に治めてもらえば安心する…そのためには永遠の命を献上して世界を管理してもらえば…ディアボロス教団は永遠の命について研究してると聞く。

 

そう考えるゼータの横にマザーが座った。

 

「ただいま。どうしたのリリム?」

 

「ねぇマザー…マザーはディアボロス教団を滅ぼした後世界をどうしたいの?」

 

「…そうね。教団を滅ぼしても第2、第3の教団が現れないとは言い切れないからそれに対抗できるようにまず国と宗教を切り離させる。

 

宗教に左右されない国家の礎があれば国は大丈夫。後は磐石になったら他の国との貿易や街を統括する長同士の連携。

 

魔剣士という戦力をどの国がどの程度保有するか取り決めして、でも一国が戦力を持ちすぎても行けないから第三者の立場を決めてそこで管理をさせるか

 

あとはこれは最も重要かしら」

 

「最も!?それは?」

 

マザーが最も大事っていった程のこと…やっぱり永遠の命を

 

「ご飯を美味しく食べれるようにする事ね。」

 

「…………え?」

 

「人は何処までも貪欲だわ。あらゆることに手を伸ばしてでも足りないから欲してまた足りないから欲すの繰り返し、そんなことしてても欲求は満たされないし余計拗らせる。

 

でもお腹が膨れていれば人は満たされる。満たされたことにより笑顔が溢れて人と人との繋がりが生まれる。人が人に優しく手を伸ばしあえる世界…私は武力ではなくそういった食で優しい世界を作れていけば良いと思うの。」

 

「…それならマザーは永遠の命が欲しいんじゃない?永遠の命があればどれだけ時間が掛かっても成し遂げられるよ!」

 

と私はストレートに聞いた。

 

「いらないわ。私が欲しいものはもう貴女たちがくれたもの。」

 

「えっ!?私達まだ何も…」

 

「貴女たちの笑顔で生きてくれている姿…それだけで私は満足だわ。それに今を生きる一瞬、一秒が愛おしいもので例え私が死んだとしても…私の意思は消えないわ。」

 

「意思…」

 

「リリム、人が死ぬ時は忘れられた時だと私は思うわ。」

 

「忘れられた時…」

 

「リリム貴女の中でお父さんの意思は生きている。その意思を忘れない限りお父さんは死なない。」

 

「…!うん」

 

そうか…父の意思はまだ私に…弟に、母に他の金豹族のなかで生きてる…なら私は父が正しかったと証明して見せる。父の意思を無駄にしないためにも私から次代の金豹族へと伝えていこう。

 

それならマザーの意思も後世に残さなければならないものだ。アルファ様がいるからエルフは良いとしても人間もベータが本にして伝える…それなら獣人へ伝えていけるのは私しかいない!

 

マザーの意思を途絶えさせないために伝記と言い伝えというように後の世代に受け継いでいく。

 

私は…マザーの意思を永遠のものにするとこの時誓った。

 

マザー…ありがとう。私を…私達を助けてくれて…だから今度は私達がマザーに恩返しする番だ!

 

と覚悟を決めたゼータ/リリムであった。

 

因みに寿司の方はイータが全自動シャリ握りマシンにて簡単に量産出来るようにしてミツゴシブランドとして他のお店で出したところ途轍もない人気になるのであった。

 

装置を作ったイータはVVとアピールしていたのであった。




ゼータ編これにて終了です。

七陰全員とシャドウ、ゼータの弟に寿司を振る舞った転生ベアトリクス。

シャドウも久しぶりに食べた寿司を味わい無駄に洗練された動きで食べ口元を優雅に拭き取る様をベータが、シャドウ様戦記に記していたようである。

そうして全員食べ終わり、ゼータは弟との時間を大切にしてマザーは街へと送り届けた。

様々なものを与えてくれたマザーに恩返ししたくてゼータは原作シャドウと同じように永遠の命を献上しようとします。

原作シャドウだと設定に付き合ってくれていると勘違いするわ背信行為に躊躇いなく走ってしまうやらあります。

その後に転生ベアトリクスとディアボロス教団を滅ぼした後のことを話します。

デカイ組織程第2、第3な組織が現れても可笑しくないと思いますので政教分離をして第三者組織としての立場での魔剣士の組織を作るべきだと言い

そして何より貧しさで餓えるようなことがないようにしお腹いっぱいに食べれるような世界にしたいとゼータに語った。

そしてどストレートに永遠の命について聞いたゼータ。

それに対してはっきりいらないとそして望むものはもうもらっていると語り人の意思が続く限り死なないと言いゼータは金豹族の意思を正しかったと証明しようとする。

そして転生ベアトリクスの意思を獣人たちへと伝えたいと伝記のように後の世代に受け継がせ永遠の存在にしたいと行動をするのでした。

そして寿司はかげじつ!にて寿司は開発されてたものの先取りした感じになりイータが簡単に作れるようにと開発し回転寿司も後々に出来上がることに。

そして次回はそんなイータに焦点が当たります。

イータに関してはアニメ、カゲマスでしか出てこなくて過去やらが不明なのでそこはオリジナル設定で出していくことになりそう。

お気に入り登録、感想ありがとうございます!

それでは今回も読んで頂きありがとうございました!


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のんびりすやすや娘の研究日和 母のように慕う人の知恵袋をもっと知りたいので解剖する!?のは不味いので発明品で記憶を垣間見る。

最後のトリ七陰第七席イータになります!

イータの過去はオリジナルになるのでどうか御容赦ください!そして七陰に加入した理由もありラストに少し不穏な空気に…

それではどうぞごゆっくり!


…………………最後…私…?

 

……眠い…zzZ

 

おやおやどうやら日々の研究の疲れからか寝ているようだ。

 

偶々発見したベアトリクスはイータに膝枕をして出会った当時を思い出す。

 

それはシャドウがまだシャドウガーデンを作るよりも以前

 

ベアトリクスが密かに教団から悪魔憑きを保護して匿っていたときのことだ。

 

街を作るとなると色々な問題が出てくる。水路を引くこと、食料を自給自足で賄うこと、感染症、衛生上の問題、防衛、現状の問題は上げればキリがなかった。

 

そうして様々なことを紙に記して問題の解決策のパターンも出し何が足りないのかを、明確にして幾つか作っておくと便利なものを書面に写して研究部屋へと置いていた。

 

そんなある日に村を3日離れていたベアトリクスが戻ると書面にしか写していなかった水車や井戸の水汲み機が既に完成し使われているのを見つけ驚いた。

 

研究部屋へと戻ると見慣れない赤みのある黒色のかなり長い髪の毛をして片目が隠れている幼いエルフの娘がいた。

 

熱心に図面を見ては何やら試験管を振っている姿は似合っていると感じた。

 

「………あ…ベアト様…」

 

「貴女は確か助けた時の?」

 

「…うん…ベアト様に…助けてもらった…名前…ない…これ…」

 

とエルフの娘は設計図に記した物を指差す。

 

「…この…冷蔵庫…?って冷やすやつ…どうして冷やすの?…冬の時に食料腐りにくいのと関係ある?」

 

「それは食べ物の中で発生する微生物を繁殖させないための環境に適してるからなの。微生物は30℃前後が繁殖しやすいから温度を冷やす、水分を失くす、酸素を失くすといった方法を使えば食べ物をより安全に安心して保存できるの。」

 

「…ベアト様凄い…!他になにかある?」

 

「他はね。」

 

とベアトリクスは幼エルフに前世の知識を教えていく。

 

味噌、醤油、塩、コショウなどの調味料も協力して作り出せた。それに伴い村はどんどん大きくなり他の国への輸出業も出来るようになってきた。

 

ベアトリクスはこの幼エルフのなんでも吸収する知識欲にビックリしていた。

 

「ベアト様の言ったように豆を通常よりも長く放置してみたら発酵って現象が起きた…!こんなやり方があったの…良く気付けた…味噌の独特な味…美味…!」

 

「貴女のお陰でこの村も段々活気づいてきたわ。…いつまでも貴女呼びも変ね。」

 

「ベアト様名前付けて欲しい…!」

 

「良いの?」

 

「ベアト様が良い!」

 

「そうね…何でも吸収する…イート…イートゥ…イータ…うん!イータなんてどうかしら?」

 

「うん…!ありがとう!ベアト母様…!」

 

とイータと呼ばれるようになったエルフは色々な研究をしていくことになり偶に出かけるベアトリクスを追い掛けて他の七陰の面々とは出会った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ベアト母様いつも何処かに行く…研究…忙しい…けど…気になる…

 

とイータはお手製のベアト追跡装置を起動するとそのままベアトのいる方へと向かっていった。

 

…こっち…?…何人か大きい波長…ある…もしかして…私と同じ?

 

と思うイータは好奇心に駆られて進んでいくとログハウスのようなものが見えてきた。

 

…ベアト母様の気配ここら辺……疲れた…zzZ

 

とイータは誰もいなかったログハウスに入るとそのまま木のソファー(クッション付き)に横になり寝てしまった。

 

 

「…これはどういうことなのかしら?」

 

「…う~んこの娘中々起きませんね。」

 

「それよりもなぜシャドウガーデンの拠点に…まさかスパイ?」

 

「がう?スパイ?悪いやつ?悪いやつデルタギタギタにするです!」

 

「いや待ちなさいよ。この娘にも事情があるかもしれないのよ…?」

 

「にしても起きないね、危機管理が抜けてるというか…?」

 

何だがうるさいので起き上がってみる。

 

「………?」

 

「首をかしげられても私達も困るわ。貴女は何者?ここには何のようで来たの?」

 

「…ベアト母様に会いに来た…でもいない…zzZ」

 

「また寝てしまいました!?」

 

「取り敢えず伯母様に用事があるのは確かね。それにしても伯母様はまた引っ掛けてきたのね…」

 

「………………伯母様…?…もしかしてベアト母様の姪っ子さん?」

 

「え?えぇそうよ。」

 

「ベアト母様良く自慢してた…凄く可愛くて天使で舌足らずにおばしゃまと、言ったり…」

 

「貴女何が目的かしら!?ほら言ってみなさい!」

 

と大慌てで口を塞ぐアルファ。

 

「…街からいなくなるとき…ベアト母様いつも何処か行くから気になった…!」

 

「伯母様は色々なところに行くから場所は分からないわ。」

 

「…そう…」

 

しゅんとなってしまったのでアルファは話題を変えようとする。

 

「要は寂しくて追い掛けてきたってことじゃないの?」

 

と同じ金豹族のいる街から来たのなら送ろうとしているゼータに向かって

 

「…寂しい……良く分からない…?」

 

「そうなのですか?」

 

「うん…私物心付く前から一人だった。周りの人優しかった…でも良く分からない……でも何かしたくて研究して物を作ったりしてた。

 

でも身体が腐りはじめて…教団が私と他のエルフ、獣人、人間たちを捕まえて……痛かった……そこをベアト母様が私達を助けてくれて…ベアト母様にお礼言おうと思って…

 

家忍び込んで…そしたら私が研究してることの何倍も先のことやってた…図面のこと詳しく書いてあって作ったら凄い便利…それからベアト母様と研究一緒にした……それで名前くれた……凄い人…!」

 

「もしかしてたまに持ってくる発明品とかって!」

 

「…あ…夜ランタンとかの火じゃなくて昼間に太陽の光を吸収してそれを夜に効率良く放出するスタンド君5号…!」

 

「1から4までは何処にいったのかな?」

 

「…ベアト母様良く…言ってる…失敗は…成功の…母…」

 

「もしやそれはお母様の知恵袋の知識!?」

 

「?ベアト母様の娘……ライ…バル…?」

 

「ライバルというか、義理の姉妹?」

 

「………?姉さん?」

 

とアルファに向かって言うイータ

 

「えっ!?ま、まぁそうね。宜しくね。」

 

と照れて言うアルファ。

 

そうして発明品も少し持ってきていたイータはそれらを置いておく。

 

「…がぅ?これなんです?」

 

「それ…良い香りする…リラックス効果?…で心落ち着く…」

 

「…この大掛かりの装置は?」

 

「それ……汚い水を綺麗にするために…水をろ過させて不純物取り除いて…飲めるようにしたやつ…王都にベアト母様が設計したの…ある…!」

 

「…これは!画期的です!水中に含まれる汚濁物質を物理的にきれいにすること出来るんですね!個体(汚濁物質・異物)を含む液体や気体を、細かな孔が空いたろ過材に通すことで、孔よりも大きな個体の粒子を分離して水を綺麗にしてるなんて!」

 

「そうね。貧しい村では特に水にも困っているからこれがあるだけで例え泥水であっても何回かやれば飲めるようになる…革命的ね!」

 

とガンマ、アルファは冷静に分析する。

 

「…話し分かる人…!流石ベアト母様の娘…!」

 

「何やら騒がしいけど…ってイータ?どうしてここに?」

 

「新たな同胞か?」

 

と鍛練から帰ってきたベアトリクスとシャドウの二人。

 

「ベアト母様…!」

 

とベアトリクスに抱き付くイータ。

 

「マザーの娘だったか。」

 

「………?だれ?」

 

「我が名はシャドウ…陰に潜み陰を狩るもの…」

 

「………宜しく…?」

 

「母~これ凄いのです!良い匂いがするのです!」

 

「幾つか持ってきていたのね。」

 

「…これはろ過装置か…見事だ、これがあれば水にも困らなくなるだろう…」

 

「ベアト母様…もっと大きいの作った…頑張ってもっと大きくする…!」

 

「ふむ…イータか…丁度良いか」

 

と最後の方ボソッと言うシャドウ

 

「イータよ。我らと共に世界の深淵を探求」

 

「…ベアト母様といられるなら…良い…!」

 

とシャドウの言葉の途中だったもののにべもなくOKするイータ。

 

こうして七陰が揃うことになった。

 

イータは末っ子気質のためか良く構われイプシロンがお節介を焼いたりデルタも寝て徘徊するイータを見つけるとアルファかガンマのところへと送り届ける。

 

アルファはベアト母様に似た雰囲気と言いながらそのままアルファに抱き付きながら寝たりもする。

 

ベータやゼータは色んな発明にこんなのは作れるかと提案してくれるアイディアを持ってきてくれる。

 

ガンマも頭が良いのでイータの発明がどれ程凄いのか理解できるので話しが弾むことが多い。

 

シャドウもベアト母様並みに色々引き出しの多い陰の叡智に興味を示して何回か解剖してみようとするもののいずれも失敗に終わっている。

 

イータ曰く刃が通らなかったとのこと。流石に解剖するのは止しなさいとベアトリクスから止められ一応止めたものの隙あれば丈夫な刃で解剖しようとするイータ。

 

その暫くした後に波紋を教えるベアトリクス。

 

苦戦する中でガンマとイータは最初から出来ていた。

 

ガンマは元から下地があった天然であったがイータはベアトリクスが波紋で助けた際、元々あった才能とベアトリクスの波紋に触れたことにより開花した理由がある。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

と思い返すマザー。

 

大きくなったイータの頭を撫でながらある意味でイータとは共犯者のような間柄かなと呑気に考えながら頭を撫でるベアトリクスであった。

 

 

…むにゃむにゃ…私…イータ。

 

ベアト母様の…娘…

 

ベアト母様色々教えてくれる……研究…行き詰まった時に…相談しに行く…今までの発想と違って…新しい…

 

ベアト母様のこと…もっと知りたい…でも解剖はダメ…元に戻せるけど……シャドウなら…気にしないけど…ベアト母様は……嫌…

 

だから…ちょっとした偶然で…出来た…読み取り君…で

 

ベアト母様の記憶……見てみる…知恵袋の知識…欲しい…

 

…それで…読み取り君で見てみた…この後シャドウから言われた言葉を理解した。

 

深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだという言葉を…

 

気軽に見るべき物ではなかった…後悔した………




というわけでイータ編まだ続きます!

イータはベアトリクスがシャドウガーデンで活動するよりも前に助けたエルフの一人で孤児で優しい人たちに拾われたもののどう接するのが良いか分からずでも役に立ちたいと研究していたが悪魔憑きになり教団に捕まってしまったもののベアトリクスに助けられた。

そのままお礼をしようと忍び込んだら今までにない素晴らしい物が置いてあり作ってみたところ思ったのが出来て帰ってきたベアトリクスに師事することになりそのまま名前をもらいました。

ベアトリクスがふらっといなくなることがあったので追跡装置を起動して追い掛けてログハウスがありそこで休んでみたところに他の七陰六人と邂逅することに

ベアトリクスから姪っ子がいると聞いていたので問いかけると自らの幼少の頃の恥ずかしいエピソードが出てきて焦ったアルファ…可愛い…

そうして仲良くなりベアトリクスと一緒にいられる時間が増えるならと七陰入りすることになりました。

波紋はベアトリクスが波紋で助けた際に彼女の中で眠っていた才能と触れ合い開花。

身体強化が抜群でどうしても戦闘しなければならない時に実力を、発揮し爆発力は七陰随一といえる。

そして最後のシーン…

そこは次回へと続いていきます。

七陰全員の話しをやった後本編行くかクレア編も書こうと迷うところです。

お気に入り、感想して頂いた皆さまありがとうございます!UAも10000を越えました!

これからも投稿して行くので宜しくお願いします!

今回も読んで頂きありがとうございました!



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のんびりすやすや娘は母の在りし日の記憶に触れ母の共犯者になることを決め人知れず母を越えることを目標にする。

前回に引き続きイータ編でベアトリクスの記憶追体験になります!

そしてイータ魔改造して準最強となります!

少し長くなりましたがごゆっくりどうぞ!


…私はベアト母様の記憶を見ようと隣でぐっすり寝てるベアト母様に読み取り君を使用した………

 

ふと意識が浮上した…最初に見えたのは白い天井?だった。

 

「ここ…どこだろう…?ベアト母様の記憶の中だと思うけど…」

 

とイータは呟きソファーの様なところで寝ている幼い少女がいたのに気付く。

 

「ゲホッゲホッ…はぁはぁ…苦し…い」

 

と少女は何かしらのボタンを押すと白衣をした人間たちがぞろぞろと押し寄せてきた。

 

記憶の体験のため触れないものの専門的なことを言っているのはわかった…

 

どうやら人の身体の肺という場所と喉が弱くて走り回れば心臓に酸素がいかなくなって呼吸を可笑しくしてしまうらしい。

 

「ベアト母様の記憶の筈なのに…ベアト母様がいない?…どうして?」

 

そうして場面は代わり白い天井から木の色をした建物へ変わっていた。

 

そこでイータは少し大きくなった少女が本のようなものを見ているのに気付いた。

 

そしてそこに書いてある本にはベアト母様が自分に教えてくれた知識が書いてあったのに驚いた。

 

砂糖、塩、コショウの成り立ち…そして歴史というものもありその中の人の辿った歩みが記されていた。

 

コショウも船旅をするものたちが肉を保存するために使用したり高額な値段で取引されたり鉄砲というものが剣での戦いをどんどん変えていったこと。

 

飢饉というものが人を裕福なものたちへの怒りを火種に一揆と呼ばれる騒動へと発展したり水質汚染というのを見たときベアト母様が水質を何回も浄化していた理由がわかった。

 

田んぼや農業の稲作から動物の飼育方法、その全てが自分のいる世界よりも高水準に整備されている…

 

 

そして…恐ろしい核と呼ばれる存在を知った。

 

(なに…これ…?どうしてこんな酷いこと出来る…の…)

 

教科書を読んだ少女が当時のビデオを手に入れられそれを見たイータは恐ろしい兵器というものを知った…

 

人体に影響しそして浴びれば中毒になり人を蝕む…

 

イータはこんなものだけは作らないように決意するが自然の毒のようなものから身を守れる防護衣のようなものは作ろうと感じた。

 

炊飯器…掃除機…IHヒーター…電気…車…鉄の乗り物電車…パソコン…消火器…医療機器…バイク…人を着飾るメイク…特に温泉というものには魅力を感じた。

 

今まで知らなかった世界がそこには広がっていた。

 

途中少女の買ったふわふわモコモコの枕は是非とも再現したいと強く思った。

 

これ程高度な文明があったなんて…

 

更には少女の集めていた本…漫画というのは素晴らしい娯楽だ…

 

一つ一つの仕草を書くまでのその人の努力と楽しませたいという意欲…職人というものなのかとイータは感じた。

 

普通記憶の世界というものは触れられたとしてもその本の中身まで記憶していることは稀だ。

 

しかしベアトリクスは今までのことを全て鮮明に記憶している。だからこそイータが手にとってその中身まで見れたのだろう。

 

手に取った中でジョ○ョの奇妙な○険というものが目に入り読んでみると…波紋のことが書いてあった。

 

その、習得方法から派生…吸血鬼となった者を倒しその孫が柱の男という吸血鬼たちと戦う話し…その後のスタンド?というものは良く分からなかったけど波紋のことはわかった。

 

他にもドラゴン○ールや鬼○の刃、ワン○ース、NARU○O、こ○亀、色んなシリーズが沢山読めた。ポケ○ンというタイトルの攻略本?、というのも読んでいて沢山のポケ○ンという生物の絵一つ一つに細かいものを感じた。

 

昔の伏線がこんなところで回収されるのかとはらはらドキドキしこ○亀はこんなことしてるのに皆から愛されてるんだと主人公のおおらかな気質に感心した。

 

暫く読み進めていき全て読み終わり一段落し次の場面へと移っていた。

 

私が移動しようとすると進むのかな?

 

次の場面は…また白い天井の部屋で少女には変な機械の管のようなものが巻き付いていた…

 

PIーPIーPIーPI

 

規則的な音が響くその部屋で液体のようなものを投与されて…髪が抜けて…副作用というものらしい…必死になって生きようとしている姿は私や他の悪魔憑きに似ていると思った。

 

それから何度も何度も何度も…少女は大人になるにつれて白い部屋にいることが多くなっていた。

 

その間も文明は進化して遠くの人とも話せる携帯というものが進化したり誰も考え付かないような宇宙と呼ばれる空の遥か彼方の星の観測…

 

真新しいことが増えても少女の病気は治らない……そして

 

いつしか白い部屋から外へと出ることがなくなってしまった。

 

少女の両親が必死に呼び掛けているのがわかるけど…少女は呼び掛けに答えられない……

 

そうして世界は…………一瞬にして暗く閉ざされた。

 

……何も…何も…何も見えない………どこまでいっても真っ暗…

 

私は怖くなった……いつまでこれが続くのかと…

 

そして風景が突然変わった…

 

森のような場所が写し出され

 

「ベアト母様…!まだ小さい……さっきの少女は…なんだった…?」

 

と疑問に思っていると

 

「まさか転生するなんて思わなかったわ…健康な身体…こんなに動けるのなんて初めて…!」

 

という幼いベアトリクスの声を聞きイータは理解する。

 

「さっきの少女が…ベアト母様の…前世?」

 

それから幼ベアトリクスは10才の頃に里を出た。そして一年に一回帰る約束をしていたアルファ様に似た人がいた。多分アルファ様の母様だ。

 

それからベアト母様はいろんな所を巡っていた。当時の武神祭に飛び入りで参加してそのまま優勝。

 

その後にお金をもらってそそくさといなくなっていたのにはベアト母様らしいと思いいろんな技術を教えたりと文明を発展させる手伝いをしていた。

 

そして教団のこと…ベアトリクスの苦悩…助けなければならない命を選別してしまうような偽善…

 

そうした葛藤を抱えながら私達を助けてくれた優しいエルフ…

 

そうして場面は現在まで進みそこで終わった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「………あれ…もどって…きた?」

 

夢から覚めたイータ。

 

「イータ?どうしたの?」

 

「…!ベ、ベアト母様…その……」

 

「この装置確か?」

 

「ご…ごめんなさい…私…私…」

 

「そう…見えたのね…幻滅したでしょう?…知ってる知識は皆前の世界で覚えていただけのこと私が凄いわけじゃないわ。」

 

「そんなこと…」

 

「…一度死んだのもあってね…苦しいっていうのが分かるの…死ぬほど痛い…ずっとそれが続くのは…地獄だわ…イータみたいに助けることの出来た子もいた…でも同じぐらい死なせてしまった子もいる。だから私は偽善と分かってても…」

 

「…そんなこと…ない!…ベアト母様は私も…皆助けてくれた!…死んじゃった子もいるけど…でもベアト母様は街に墓標を皆建てて毎日…その子達を弔ってる…だからベアト母様は間違ってない…!」

 

とイータは泣きながらベアトリクスに抱き付く…

 

「私の方が…酷いこと…した…私…勝手に…グスン……」

 

「良いのよ。好奇心が強いのは悪いことではないもの。でも次やる時は許可を取るのよ。じゃないと怒っちゃうからね。」

 

「グスン…ごめんなさい…ベアト母様…ありがとう…大好き…」

 

「私もよイータ。よしよし泣かなくて良いの。」

 

その夜イータはずっとベアトリクスに抱き付き泣いていた。

 

ベアトリクスも少しだけ心が軽くなり娘のことを優しく抱擁するのであった。

 

その日からイータはいつかベアトリクスのことを追い越せるようにしたいと考えた…

 

考えて目に身体強化を特化させてシャドウを観察してみると魔力がまるで爆発するかのように体内で魔力を圧縮と爆発を高速に繰り返して蓄積する事で高魔力を生成しているのが分かった…

 

流石にこれをやろうにも体内の器官がおかしくなってしまうので没にする。

 

それならベアト母様のように魔力の器を広げようと思うけどベアト母様は100年掛けて今の到達点にいる。

 

私が100年やっても更に差は開いてしまう…

 

とあることを思い付く。しかし危険を伴うやり方で生きるか死ぬかの賭けに近い……でもそれぐらいしないと…今のままじゃ追い越せない…!

 

そうしてイータはあることをするためにベアトリクスとシャドウの二人にあることを持ち掛けた。

 

当然危険なためベアトリクスは猛反対した。しかしシャドウは危険なことを承知しているのかを聞きイータも覚悟の上と言う。

 

その目を見たときシャドウは自身の陰の実力者になるというそんな自分と同等の覚悟を見た。

 

だからこそ

 

「マザー、お前の娘をもっと信じてやれ。死ぬ可能性がある?そんなもの俺と武神たるマザーがいればいらぬ心配だ。必要なのは覚悟だ!」

 

とシャドウも説得に加わった。

 

最終的に折れたベアトリクスはイータと約束をする。

 

「絶対に死なないと約束をして。」

 

「…うん…!」

 

カゲノー家にシドを数日借りると言いシドを連れ出し準備は出来た。

 

そうしてイータは悪魔憑きとして膨大な魔力をシャドウのように爆発と圧縮を一度にして魔力という器を一度破壊して再構成しそれを繰り返し魔力を蓄えられる量、質を高めようとする。

 

まず魔力暴走させれば悪魔憑きとなりそのまま死ぬしかないが魔力を爆発させるので許容量を遥かに越えるそれは身体が爆発四散するほうが高い。

 

だからこそシャドウとベアトリクスは外部からそれを制御する。更にベアトリクスが波紋で体内の魔力を循環させ安定、シャドウは器官内部の臓器の保護をする。

 

そんな危険なことなどさせたくないが…だがイータは決めたのだ。共犯者として世界を救い…ベアトリクスを越えると。

 

そうしてイータは覚悟を決めて魔力を最大まで引き出し

 

バリンっ!!!!!!

 

と甲高い音ともに全身が爆発したのではないかという激痛が走るがシャドウがすぐに制御しベアトリクスは波紋を流す…絶対に死なせないように…

 

シャドウとしてもイータの全てを掛けて辿り着きたいという思いに共感し本気の魔力制御で魔力爆発を押さえていく。

 

ベアトリクスも娘の苦しむ姿に涙を流しながらそれでもイータを信じて波紋を流す…

 

そうして数日…寝る間も惜しみ未だにやむ気配のない魔力爆発に疲労の色を隠せずともそれでも一心に魔力を制御するシャドウとベアトリクス…

 

激痛に意識が半ば飛んでいるイータ…しかしそれでも

 

「死ぬんじゃないぞイータ、貴様の野望…を成し遂げるのだろう!」

 

「イータ…お願い…生きて…お願い…!」

 

(ベアト…母様…シャドウ…声が聞こえる…私を…信じてくれる…こんなところで…死ねない…死んでたまるか……!!)

 

そうして二人の声が届いたのか徐々に収束していく魔力爆発…後少しだと気を緩めることなく続けるシャドウたち。

 

そして…完全に収束し……イータは生き残った。

 

魔力の爆発で服は全損してしまったイータにベアトリクスはマントを羽織らせ

 

「おかえり…!イータ…本当によかった!」

 

「イータ貴様の野望はまだ道半ば…故に漸くスタート地点に立てたことを忘れるな。」

 

「…ありがとう…ベアト母様…シャドウ…もありがとう!」

 

「俺は当然のことをしただけだ…」

 

とよろけるシャドウ。

 

無理もない数日も魔力爆発の制御をしていたのだ。しかしそのお陰か彼の魔力制御は飛躍的進歩を遂げた。

 

「二人とも温泉に入りましょう…そこまで連れていくわ。」

 

と二人を抱えるベアトリクス。

 

彼女も限界だが年長者としての意地で立っている。

 

そうして波紋で回復効能を最大限まで高めた温泉に入り疲労感が抜けた。

 

イータの魔力量は100年もの間高め続けていたベアトリクスへ迫るほどの量へとなっていた。

 

そうしてシャドウは疲れから部屋へもどるとすぐに夢の世界へと旅立つ。

 

ベアトリクスも用意していた自家製の布団へとイータを寝かし限界だったのかそのまま横になった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

夜二人が寝静まる中でまどろみから少し覚醒したイータは横で眠る母を思う。

 

(ベアト母様…なんだろう…ベアト母様見てるとドキドキする…まだ魔力収まってないのかな……)

 

と胸が高鳴っているイータはベアトリクスに抱き付く。

 

ベアト母様…信じてくれてありがとう…

 

研究も鍛練も頑張って…ベアト母様を追い越したい。

 

そしたら誉めてくれるかな…?

 

まだ青い若葉の秘めたる思いに気付くのは先のことであろう。

 

イータはベアトリクスの頬に口付けしてそのまままどろみに誘われるのであった。

 

後日シャドウにもお礼をしようと何か希望を聞いてみたところ重りがあると便利と聞き個室に20Gまで重力を弄れる機械を設置した所好評であったとのこと。

 

陰の実力者が疲労困憊まで追い詰められるイメージを付けられたとのことであった。

 

そうしたこともありシャドウと悪友のようになりたまに無茶振りされるもののイータは大体作れ陰の叡智もベアトリクスと同じようなものかと聞いてシャドウも同じだったことで気軽に話せる仲になったのはまた別の話し




というわけでイータ編ラストになります!

イータは転生ベアトリクスの過去を全て追体験しました。

見てしまったイータにベアトリクスは今までの知識がそうした本の知識であり大したことはしてないと言うもののイータにとって恩人で母であることに変わりはないとイータは泣きながら抱き付きベアトリクスも勝手に記憶を覗くのはいけないと注意するのでした。

そしてイータはベアトリクスを越えるために危険な賭けをすることに。

通常であれば爆発四散する可能性9割ですがシャドウとベアトリクスが滅茶苦茶頑張りました。

シャドウが主人公に見えてきましたね…命懸けで成し遂げたいという思いに共感したようです。

そして魔力爆発を押さえ込んで新生したイータの魔力はベアトリクスに迫るほどのものになりました。

ここから研究と隠れて鍛練もするのでシャドウガーデンの隠れた実力者として三番目に強くなってく予定です。

シャドウも魔力制御が更に磨かれて効率良く扱えるように。

そして親愛以上の想いが芽生え始めたイータ…果たしていつ頃気付くか…

因みにこの時まだクレア誘拐よりも前なので時間を掛けて強くなっていけます。

イータの目標としてドラゴンボールのポイポイカプセルを作れるようにしたいとのこと。

重力室もまだ弱いものの完成し研究室にも動員して普段でもトレーニング出来るようにしていく予定で日々シドがもう少し重力を強くしてほしいとイータの元へ通うかもしれません。

他のss等みてると転生者やアウロラ以外そういう話せる相手がいないのでイータにその役割が回ってくるので出番は多めになると思います。

後々イータによる漫画といったものが出版されるかも?但しアクション系よりも恋愛学園もの系ニセコイや五等分の花嫁、こち亀のようなものは世に出してワンピースなどはシャドウガーデン内のみでの閲覧に限り原作者の名前そのままでイータはただ刷るだけの予定。

サイン会などはシャドウに報酬渡して変装してもらって開催するかもしれません。

イータとシャドウの絡みなどはまたどこかでやりたいものです。

次回はアンケートでクレア編が多いのでそちらを先に予定してます。アンケートご協力ありがとうございました!

感想、評価、お気に入りありがとうございます!

次回も早めに投稿出来るようにしていきます!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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陰に潜み陰を狩る弟を持つ姉は武神と呼ばれる師をいつか越えようと師事を受け物語は加速していく。

今回はクレア編となります。

原作とは違いガンマ、デルタ、ゼータと出会っているので強さは増しています。

それではどうぞごゆっくり!


それで今度は私ってことね。

 

ただで語るつもりはないわよ…ん?

 

これは!?

 

シドの上半身裸な写真…シドの剣を振るう姿、寝ぼけ眼なシドの姿の写真。

 

仕方ないわね!!

 

決して報酬が魅力的だった訳じゃないわ!えぇそうよ!

 

まず師匠との出会いね…あれは思い出してもびっくりするわ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ある日の青空が冴えて太陽の木漏れ日が心地良い時だったわ。

 

その日私はシドを連れて盗賊退治に出掛けていたわ。

 

将来的に統治する領土で彷徨く奴らを野放しに出来なかったし剣には自信があった。

 

弟も守れるって若干自惚れていたのよ。

 

本当に今思い出しても恥ずかしいわ。

 

まだ小さい子供の戯れ言だった。現実も知らない師匠の言葉を借りるなら井の中の蛙ってやつね。

 

盗賊の溜まり場になっていた廃墟を見付けてそれで斬り付けて全員倒し安堵した。が最後に倒したやつが捕まえていた魔物を放つまでの話し。

 

大型の魔物は木々をなぎ倒しながら突進してきて何とか回避が間に合ったけど…土は抉れ酷い有り様であった。

 

逃げなければいけないのに足がすくんで動かない…そして弟を…シドを連れてきてしまった自分を責めた。

 

しかし魔物はそんなクレアを嘲笑うように今度はシドに狙いをつける。

 

クレアはシドを守ろうとぎゅっと抱きしめて目を瞑った…

 

衝撃は何時まで経ってもこなかった…

 

目を開くとそこには魔物を片手で受け止めたエルフの女性が立っていた。

 

「…弟を守ろうとしたお姉ちゃん、もう大丈夫よ。」

 

というとその人物…ベアトリクスは波紋によって強化された身体能力と魔力の身体強化で魔物を持ち上げそのまま剣を一閃し魔物は息絶えた。

 

目にも見えない速さで振るわれたその一閃は子供のクレアから見えず剣に手を置いていつの間にか剣を納刀していた姿であった。

 

「怪我はない…?」

 

「は、はい!ありがとうございます!弟も助けていただいて!」

 

「………ここは危ないから送るわ。」

 

とその時ベアトリクスは盗賊たちを見て再度幼いクレア、シドの姉弟を見た。

 

そのままカゲノー家へと送ることにしたベアトリクスを見ながらクレアは綺麗な人だと感じた。

 

実は密かにシドと待ち合わせしていたベアトリクスが偶々クレアたちを発見し助けただけである。

 

波紋の特訓と組手が主でありシドも楽しく斬り合いが出来て嬉しく新しいことを学べる一石二鳥の状態…

 

そうしてカゲノー男爵家に辿り着き姉弟を心配したオトン・カゲノーとオカン・カゲノーに抱きしめられ無事を喜ばれそしてベアトリクスの姿を見て仰天する。

 

何故なら彼女こそ武神の名を冠する剣聖と呼ばれる最強の魔剣士なのだから。

 

片田舎といえ武神の名を知らぬものはおらずカゲノー男爵も幼い頃に一度だけ武術会で見掛け対戦相手を打ち負かす姿に憧れを持った一人であったためすぐにわかった。

 

(この人が…剣聖?…全然見えない…)

 

と当時の私は思ったわ。だって師匠物凄い自然体なんだもの。もっとこう強者のオーラとかこいつ強いって波動があると思うのに師匠は逆物凄い自然でそういうのを感じさせなかった。

 

でも私はこの目でちゃんと魔物を倒す姿を見ていた。

 

それからお礼としてカゲノー家でお世話になったベアトリクス。

 

その次の日に武神に剣を学べば更に強くなれると教えを乞おうとした。

 

でもそう簡単な話しではなかった。

 

「クレア…貴女が剣を振るう理由は…なに?」

 

「えっ?それは弟を守れるように…」

 

「そう、今はそれでも良い…でもこれだけは答えて昨日盗賊を殺してどう思った?」

 

「それは…悪い人を懲らしめたっていうか…盗賊は悪い奴らだから殺したって問題…」

 

「今のままなら私は剣を教えたくないわ。」

 

とそのままベアトリクスはカゲノー家に背を向けて

 

「私は数日はこの辺にいるわ。だから考えなさい」

 

とそのまま去っていった。

 

「…どうして?盗賊に人権なんてないのに…」

 

とクレアは呟く。

 

そうして数日考えるが答えは出ず悶々とした日々を過ごす。

 

そんなある日一人森を歩いていると…迷った。

 

「ここどこかしら?…う~ん、歩いてれば何かあるかしら?」

 

とそのまま歩いているとゴンとド派手に転ぶような音がした。

 

そこへ向かってみると黒髪の女の子が顔面から地面に激突している姿であった。

 

「ちょっ!?貴女大丈夫?」

 

「へ!?だ、大丈夫です…へぶっ!」

 

とこれまた盛大に転んだ。

 

流石に放っておくことも出来ずハンカチで拭いてあげるクレア。

 

「すみません…ありがとうございます。」

 

「良いのよ。それより何をしてたの?」

 

「えっとその…訓練してたんです…私その運動が出来なくて…でもお母様の役に立ちたいので…でも上手く行かず…」

 

「そうだったのね…じゃあ手伝ってあげるわ!」

 

「良いんですか?」

 

「良いわよ!頑張ってるんだから応援したくなるもの!」

 

「ありがとうございます!私はルーナと言います。」

 

「そうルーナね。私はクレア!クレア・カゲノーよ!」

 

それがルーナと出会った時ね。

 

その後のルーナを見てたんどけどこれがまた凄くて3歩歩いたら転んで、剣を振るったらすっぽ抜けて魔物に直撃したり、自分の足につまずいたり…色々あったわ…

 

シドに何度か頑張れと叱咤して稽古を付けたりしてる私でも流石にこれはどうしようもないのではと思い休憩を挟むことにした。

 

「その…ルーナ?はっきり言ってあまり向いてないと思うわ。」

 

「あぅ…そ、それは自分でも分かってはいるのですけど…でも向いてないと言ってやらないのは諦めるのと同じだと思うのです。」

 

「そう、はぁ…シドにもルーナぐらいやる気があれば良いのに。」

 

「シド?」

 

「弟なの…可愛いくて目に入れても痛くないぐらい好きだもの。この間は盗賊退治に連れ出しちゃって魔物にやられかけたけど武神様に助けて頂いたの。武神様に剣を習おうとしたんだけど断られちゃって…盗賊退治のことで何が問題なのか良く分からなくて…」

 

「クレア?盗賊退治って殺してるの?」

 

「だって盗賊なんて捕まれば死刑だし田舎じゃ殺したって問題ないもの。」

 

「……クレア、それは違うわ。」

 

「えっ?」

 

「盗賊だって生きてるのよ。確かに盗賊なんて悪いことよ。でも命を奪って良いわけでも、まして殺して問題ないなんて間違ってる。」

 

「だってあいつらは!」

 

「じゃあもしシド君が盗賊になったら?」

 

「え?」

 

「最愛の人が盗賊になったらどうするの?」

 

「そんなこと絶対ないわ!シドがそんなことする筈ないわ!」

 

「そこにならざるを得ない理由があったら?」

 

「っ!それは…」

 

「クレア別に殺すななんて言わないわ。領土で発生する問題に率先して動くのは良いわ。でもその行動には責任が伴う。

 

殺して当然じゃない…殺すっていうのはその人の可能性を全て奪うことなの。更正するかもしれない未来…父親になるかも母親になるかもしれない未来…クレアにはある?

 

奪われる覚悟?」

 

「!………それは……」

 

今まで考えたことがなかった…悪人は殺して当然…領土を守るためなら当たり前のこと…そう教わってきた…だから覚悟なんてなかった…

 

だから危険なところだろうと自分なら平気って思って…シドを危険に晒した……

 

…そっか…私…は私に必要だったのは…覚悟だったのね…奪われること、守るために人を殺すこと…それらを背負う覚悟…

 

「どうやら…答えは出たみたいね。」

 

「武神様!」

 

と隠れて様子を見ていたベアトリクスが姿を現す。

 

「改めて聞かせてちょうだい。」

 

「…私…考えたことなかった…でも…盗賊だって生きてる…生きるために必死で奪うことしか知らずに…でも私たちは領土のためにって正当化してた。

 

本来あってはならないというのに…

 

でも…弟のために…これからのカゲノー家のために…私は背負う…殺した者たちの分も…これから歩む筈だった者たちの未来を…!背負う覚悟を!」

 

「……そう。それなら良いわ。私が教えるのは道楽や遊びじゃない…人を殺せる技、容易く命を奪えるものというのだけは忘れないで。明日からビシバシやるわよ。」

 

とベアトリクスはクレアへと言う。

 

「!ありがとうございます!師匠!」

 

「良かったですねクレア。」

 

「ううん、ルーナが気付かせてくれたからよ!そうだ!ルーナ私の友達になってほしいわ!」

 

「い、良いんですか?私運動なんて全く出来ないし…」

 

「でもルーナ色んなこと知ってるじゃない!運動出来なくても私が守るわ!だから、ルーナも色んなこと教えてね!」

 

「ありがとうクレア。」

 

「良かったわねルーナ。」

 

「はい!お母様!」

 

「………ぇええええええ!?武神様の娘だったの!?」

 

とルーナが師匠の娘って聞いた時は凄い驚いたわ。

 

ルーナは相変わらず運動が出来ないけど凄い頭が良くて今じゃミツゴシ商会って有名になった所の経営者だもんね。

 

その関係で服とか便利なおしゃれグッズを融通してくれたりもする。私はそれを宣伝?する街を新しい格好で歩いたりしてミツゴシ商会にお客さんを呼び込んだりしてる。

 

そうそう師匠に弟子入りした後だったわね。

 

それから師匠に魔力を最小限にでも最大限のパフォーマンスを出来るように指先に一点集中させて岩を貫通させることや足さばきや剛の剣だけでなく柔の剣といった型に縛られない柔軟な思考力を鍛えられた。

 

最初の指で岩を貫通させるって言った師匠に何言ってるの?と怪訝な目をしたらその場で岩に指を貫通させてたからびっくり。

 

最初は柔らかそうな布から始めて木、岩と難易度を上げていった。

 

剣さばきなど教わり強くなっても師匠にはまだ勝ててなくていつか師匠を越えられるようにしたいと思う!

 

そうそうその時ぐらいにマナに出会って姉様って慕ってくれるようになったのよね。

 

マナったら凄い勢いで飛んできて抱き付くからお陰で踏ん張りと腹筋に魔力を集中させるのに慣れちゃったわ。

 

それとリリムさんって師匠が作った孤児院のお手伝いさんで気配の消し方が上手でいまだに気配が分からないけど色々とそういった気配の消し方とか教わってる。

 

師匠のお陰で強くなれているだからシドも誘ってるけど一向に来なかったり鍛練サボったりしてるし全く何をしてるのか

 

シドは昼間は波紋の呼吸の特訓、寝静まった夜中にベアトリクスとの組手をしている。剣の間合いや足さばきなど参考になるものが多いと絶賛している。

 

学園に通うようになってからも帰省した時とか修行を見てもらったりアドバイスをもらうってたりする。

 

でもマナが学園の休みの日で外で歩いてる時にいきなり突撃してきたのは驚いたわ。ルーナも王国にいたから親交も続いてる。

 

マナの尻尾ってふさふさしてて気持ちいいのよね。

 

前に誘拐された時はマナが担いで助けてくれたし本当に素直で良い子だわ。

 

と学園に来る前に起こったこと。そしてその後に師匠に色々と説明されて安静にしていた何日間で魔力の引き出し方や魔力を拡張するやり方とか教わったわね…あの時の師匠はスパルタだったわ…うん。

 

そして師匠がしていること。悪魔憑きの子を保護して治療して匿っていることを聞いた時は悪魔憑きを治せることと助けた人たちの町があるのを聞いて驚いて流石師匠っ!て言ってたわね。

 

まぁそんなところね。

 

今年からシドも、入学してくるし特待生とまでいかなくてもそれなりの成績を出してほしいものね。それか私が鍛えてあげようかしら?

 

クレアは今年学園に入学してくる弟を思いながら剣を振る日課と座禅で己の魔力を感じとり体内で効率良く早く流せるように日々研鑽を重ねるのであった。

 

余談であるが師匠を越えようとする人とイータからライバル視されていたりもするクレアなのであった。




クレア編になります!

最初期の出会いと有名人なベアトリクスを知ってたオトン・カゲノーが、家に招いてお礼をしました。

そしてクレアとガンマの出会いとクレアの決意、決意表明を聞いたベアトリクスは様々なことを教えるのであった。

デルタが抱き付きに来るからか受け止めるために腹筋、体幹を鍛えて踏ん張りも聞くようになり受け止めていて受け止める時の音がむぎゅではなくドガンというド派手な音だったしてシドが入学する頃には名物になってたりします。

因みにガンマ、デルタ、ゼータがシャドウガーデンに入っているのはクレアは知りません。ベアトリクスはあくまで自分のしている活動のことしか伝えていません。

そして本編での誘拐騒ぎの時捕まったところを最後デルタに担がれながら家へと帰宅。

そして、ベアトリクスから様々なことを告げられるのでした。そして短いスパンで魔力操作の仕方を本格的に教えたりとスパルタになったのは御愛嬌。

そして物語はシドが、入学することで加速していくことになります!

密かにイータからライバル視されることになり大変なクレアでした。

さて次回は本編の内容へ入りたいと思います。クレア誘拐の話しをやってシドの学園入学へスムーズに行きたいですね。

時折小話を挟みながら進めていこうと思うので宜しくお願いします!

お気に入り、感想、ありがとうございます!

少し期間は開くかと思いますが宜しくお願いします。

今回も読んで頂きありがとうございました!



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本編開始
拐われた姉を助けに向かう弟と弟子を救出に七陰を伴い出陣する師匠。オーバーキルは程々に 前編


というわけで本編のクレア誘拐事件となります!

原作只でさえ蹂躙してたのがそこにベアトリクスと魔改造イータがいるので大分オーバーキルとなります!

それではどうぞごゆっくり!

あとがきを追加致しました、


シドがベアトリクスとアルファに出会いかれこれ3年経とうとしていた。

 

シドとアルファは13歳になりクレアは15歳になり貴族は王国の学園へ15歳から通う義務があり何日かしたら王都へと旅立つ予定であった。

 

「がぅ~姉様いっちゃやです~!!」

 

「ほらマナ、クレアも困ってるからそれに貴族の義務だから断れないのよ」

 

「そんなの知らないです~」

 

「ありがとうマナ。シドもこれぐらい寂しがってくれて良いのよ?」

 

「わー姉さんがいないのは寂しいなー」

 

「そうよね!」

 

(シャドウ様棒読み過ぎです!?クレアも気付いてないけど…!)

 

とその日は1日マナを宥めるのに費やされることになった。

 

そして深夜に事件が起きた。

 

「俺が部屋に入った時には既にこの有様だ」

 

ダンディな声で親父が言う。顔も悪くない。

 

「争った痕跡はないが、窓が外からこじ開けられている。クレアも俺も気づけなかった、相当な手練れだな」

 

ダンディ親父は窓枠に手を添えて遠くの空を見る。片手にウィスキーとか似合いそうだ。

 

「で?」

 

凍えるような声がかけられた。

 

「相当な手練れだから仕方ない、そういうことかい?」

 

母さんだ。

 

「そ、そういう訳じゃなくてね、ただ事実を述べたまでで……」

 

頬に冷や汗を流しながら親父が答える。

 

次の瞬間

 

「このハゲェェェエエエーーーー!!!」

 

「ひぃ、す、すいません、すいません!!」

 

そんなやり取りを見ていたシドは部屋へと引き返すと側で控えていたベータを呼び話しを聞く。

 

「犯人はやはりディアボロス教団の者です。それもおそらく幹部クラス」

 

「幹部クラスか……。それで、教団はなぜ姉さんを?」

 

「クレア様に『英雄の子』の疑いをかけていたのかと」

 

「ふん、勘のいい奴らめ……」

 

(まぁマザーが師匠だからなぁ特別強いこの世界の強者から師事した姉さんを拐うのには頷ける…)

 

「久し振りに血が騒ぐ…それでマザーはどうしてる?」

 

「はい、マザー様はデルタが今にも飛び出そうとしていたので大人しくさせています。これはガンマにも言えることではあるのですが…」

 

「無理もない…デルタは姉さんに特別懐いているからな。安心させるためにも…そして…誰の家族に手を出したか思い知るだろう…!」

 

「それでは!」

 

「勿論出るとも…マザーにもそう伝えてくれ。」

 

「はい!マザー様も今拠点を探していて地点は絞れていますがまだ特定が…」

 

と言うので取り敢えず無駄に洗練された動きでスライムボディスーツをナイフに変えて突き刺す。

 

「…そこだ。そこに姉さんはいる。」

 

「えっ!?でもそこには何も……あっ!これは…隠しアジト!流石ですシャドウ様、膨大な資料と暗号を瞬時に解くなんて!」

 

「これからも精進せよ。今夜中に決着を付けよう。でないとデルタが無差別破壊しかねん。」

 

「はい!マザー様にも報告致します!」

 

とベータはキラキラした目で去っていく。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

そうして報告を受けたベアトリクスは弟子を救うべく突入の体勢を整えていた。

 

「デルタまだ待って。クレアなら平気だから。」

 

「だってだって姉様拐われたです!拐った奴ら皆殺しなのです!」

 

「デルタ、教団関係者は良いけど悪魔憑きの子達を保護するのを忘れちゃダメよ。」

 

「がぅ~」

 

「マザー様!突入準備完了致しました!」

 

「なら行きましょう…シャドウは……我慢できなくて先に行ったのね。」

 

「流石シャドウ。自分の姉が拐われてすぐに行動に移すなんて」

 

「感服致します…」

 

「それなら行きましょう…デルタは正面突破イプシロン、ガンマ、ゼータはそのフォローをアルファ、ベータ、イータは私と行くわ。」

 

そうしてベアトリクスは正面からデルタを突っ込ませて討ち漏らしのないようにかつデルタが必要以上に破壊しないよう見張りのためにガンマ、イプシロン、ゼータを付けた。

 

正面の者たちは全て教団の手の者と判明しているのでベアトリクス、アルファ、ベータ、イータは施設内で実験されている他の悪魔憑きの保護に向かい研究者たちをベアトリクスがそのまま滅殺する。その後に悪魔憑きの少女たちを波紋で治す。

 

ベアトリクスがバックアップで控えていた者たちへと託しクレアの捜索へシフトし中央の広場へと向かうと一人の男が大慌てで出てきたのが見てとれた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

クレアを誘拐した教団の30半ばを過ぎたくらいの年齢、鍛えられた体躯に鋭い眼差し、灰色の髪をオールバックに纏めた男は異様に静かになった雰囲気に嫌な予感がした。

 

彼はこのアジトの責任者であり、元は王都の近衛兵を担当し栄誉あるブシン祭の決勝大会にまで出たオルバ子爵。

 

彼は英雄の子であろう娘で悪魔憑きの疑いのあるクレア・カゲノーに目を付け誘拐を敢行した。

 

かの武神ベアトリクスに師事を受けていると密偵から報告もあり慎重に慎重を重ねた計画は実行に移されそのクレア・カゲノーも牢へと繋いだ。

 

流石に自らの肉を削ぐといったことをただの腕力で成して反撃してきたことには驚いたがそれでも魔封じの拘束をした小娘だ。

 

気絶させたところ襲撃を受けていることを報告され出ればそこには血塗れの団員たちの姿があった。

 

代わりに黒装束の者たち4人が不気味に立っていてその内の血濡れの少女は、血濡れのマスクの下でただ嗤った。

 

狩られる……!

 

オルバがそう思ったと同時、

 

「デルタストップよ。」

 

との声が天井付近から放たれ新たに四人降りてきた。

 

オルバは戦慄した…自身に匹敵するものが7人とそれを優に越えるまさに超越者が現れたのだから。

 

「キサマら何が目的だ!」

 

「目的は……ディアボロス教団の壊滅と悪魔憑きの保護」

 

そしていつの間にか手にしていた黒い刀で女は空を薙払った。

 

夜が斬れた。空を覆う雲が霧散しされどそれ以外には影響を与えず、風圧が、剣圧が、オルバを威嚇し、恫喝した。

 

どうやってこれほどの実力を得ることが出来たのか。

 

嫉妬と戦慄に震えた。

 

だが、しかし、それ以上に驚愕すべきは彼女の口から語られた言葉だ。

 

「貴様……どこでその名を知った?」

 

ディアボロス教団。その名はこの施設でもオルバを含めた研究者たちしか知らない名だった。

 

「私たちはは総てを知っている。魔人ディアボロス、ディアボロスの呪い、英雄の子孫、悪魔憑きの真実そしてそれに対する様々な人体実験の数々…上げれば切りはないけどね。」

 

「な、何故それを……」

 

ベアトリクスが言った言葉の中には、オルバですら最近知らされた内容もあった。外部に漏れるはずのない、決して漏れてはいけない極秘事項だった。

 

「ディアボロスの呪いを追っているのがあなた達だけだと思う?」

 

「くっ……!」

 

情報漏洩は許されない。

 

しかし自身と同等もしくはそれ以上の者たちと明らかに上の実力者…今自身がしなくてはならないことは生き残り情報を持ち帰ること。

 

「それで、どうする?もう貴方一人だけだけれど」

 

オルバは答えない。

 

確かにこのままでは生き残ることも出来ないだろう…故に人を止めることになろうとも…生きて帰らねば…娘は一人になってしまう…決意を込め無理やり口元に笑みを浮かべ……何かを飲みこんだ。

 

「何をして……なっ!?」

 

そういうアルファを尻目に突然、オルバの肉体が一回り膨張した。肌は浅黒く、筋肉は張り目が赤く光った。

 

そして、何より、魔力の量が爆発的に増えていた。これには他の七陰も驚き

 

「っ……!」

 

予備動作なく薙払われたオルバの剛剣がベアトリクスに迫りアルファは伯母を心配するが、

 

「…ドーピングの類い…魔力が増えて普通なら暴走するのに理性で押さえている…敵ながら見事と言いましょう…私でなければ通用してた…」

 

ベアトリクスはスライムソードで防ぎながら返す刃で胴を斬り裂いた。

 

ベアトリクスにとってみればシャドウの剣速に比べればまだまだなため防ぐことなど容易いことであった。

 

死合えば死ぬ…オルバの研ぎ澄まされた直感は、本能へ逃走の一手を激しく命じた。

 

「グゥオオオオッ!!!」

 

立っていた地面を剣でくり抜き、下へと落下する。この支部の最高責任者なだけあり、隠し通路への入口はしっかりと記憶していたらしい。

 

わざとらしく巻き上げられた土煙が消えると、オルバの姿も消えていた。思惑通り、見事逃走することに成功したのだ。

 

逃げた先で──悪魔に出会うとも知らずに。

 

「マザー様追い掛けます!」

 

「大丈夫…その先にはあの子がいるもの。」

 

「…!成る程流石ね。伯母様も人が悪いです…逃げた先に地獄が待ってると知ってそちらへ誘導するなんて。」

 

「あとはシャドウに任せましょう。それよりクレアは見つかった?」

 

「いえ、牢屋の場所が図面でも読み取れず中々」

 

「!姉様こっちなのです!こっちから匂いがするのです!」

 

とデルタが勢い良く壁へ突撃すると隠れた通路が現れた。

 

「…無事でいてクレア!」

 

そうしてクレアの元へと急ぐ。

 

その前にベアトリクスはイータへと目配りしそれに続いた。




長くなったので一旦ここまでになります!

というわけでクレア誘拐事件です!

クレアが学園に入学することになり遠くへと行ってしまうのでデルタはクレアに抱き付きそんなデルタをクレアは優しく宥めながら撫でました。

シドは相変わらずの棒読みにガンマが突っ込みクレアにちょっと呆れてましたが一時の別れを惜しみました。

そんな夜中にクレア誘拐事件が発生。


悪魔憑きの自覚症状は描写してませんでしたが

理由としてはクレアが少し魔力が練りづらくなったということを鍛練中に聞いたベアトリクスが波紋で何事もなかったように治療しているためです!

それでも拐われたのはやはり武神ベアトリクスの弟子という注目される理由があったためですね。

そんな報せを受け真っ先にクレアを探しに行こうとするデルタをベアトリクスは止めてアジトを突き止めるために動き…毎度お馴染みのシャドウの投げた場所が丁度誘拐場所と一致するミラクルを起こしそちらへと急行するベアトリクス。

正面から殲滅し囚われた悪魔憑きを治療しベアトリクスの助けた者たちで編成されたバックアップチームへと引き渡しオルバと対面。

ベアトリクスはオルバ子爵について調べてもいて悪魔憑きになった娘を治すために教団へと入った世界を敵に回しても娘を助けたいと願う心優しき親だと感じてます。

だからといってオルバ子爵が犯した悪魔憑きへの実験は許されぬものでありベアトリクスは覚悟を決め対峙。

スライムボディスーツを身に纏い魔力と波紋の伝導率が合わさり空を裂きました。

ドーピングを決行したオルバを物ともせずされど彼の逃走を見逃しクレアを探しに先行したデルタを追い掛ける。

次回はそんなオルバ子爵がシャドウと出会う所へと移っていきます。

番外編で異世界食堂へと迷い混む話しを作成しようと思っているのでベアトリクスが食べるのに合いそうなものがあれば感想宜しくお願いします!

お気に入り登録、感想、評価ありがとうございます!

次回も遅くならないよう投稿していく予定です!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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拐われた姉を助けに向かう弟と弟子を救出に七陰を伴い出陣する師匠。オーバーキルは程々に 後編

クレア誘拐事件後編になります!

少し短いですが宜しくお願いします。

シャドウが圧倒的すぎて戦闘シーンが難しいものです…

それではどうぞごゆっくり!


前回ベアトリクスから全力で逃走を図ったオルバ子爵。

 

果たしてその先には?

 

「…う~ん迷った。ここはどこかな?」

 

意気揚々と乗り込んだアジトらしき場所にいた悪魔憑きを拐う教団員たちを返り討ちにしていたシャドウ。

 

しかし雑魚ばかりで張り合いがないと詰まらない。

 

それにしてもすごい大掛かりな施設だな

 

悪魔憑きに残虐非道な実験を続けるために作られたといっても過言ではなさそうだ。

 

流石に悪の組織的なディアボロス教団がいるとは思えなかったけど世界を旅していたマザーが悪魔憑きを拐い残虐非道な実験を繰り返し続ける武装集団を相手に戦っていると聞き

 

これを陰から解決し続けてれば陰の実力者に一歩近づけると僕は思いその活動を支援する組織としてシャドウガーデンを組織した。そこからの手腕は流石マザーと思ったね。

 

それにマザーも転生者って聞いたときには驚きもあったけど同時に納得もした。そりゃあ百年生きて魔力を高めて技量も高めてれば強くなるわけだ。

 

教えてもらった波紋もとても馴染む。早くこの力を試してみたいものだ。

 

そうして迷っていたところ地下道の先から誰かが駆けてくる気配を感じた。

 

少し遅れて向こうも気づいたようだ。僕と距離を置いて立ち止まった。

 

「先回りされていたか……」

 

男は筋肉ムキムキでなぜか目が赤く光っている。なにそれ、かっこいい。目からビームとか撃てたりするんだろうか。

 

「1人なら容易い」

 

そして、歪んだ笑みを浮かべた次の瞬間、赤眼の男が消えた。いや、常人では消えたと錯覚するほどの速さで動いた。

 

しかし。

 

僕は赤眼の剣を片手で止める。

 

来る場所が分かれば速さなんてそれ程脅威ではないし、力だって使い方次第だ。マザー程の実力者だったら流石にヤバイけどこの程度なら問題ないな。

 

そうして何度か斬り付けて来る…確かに魔力だけで見るならイータを除いた他の七陰を越えるけど…使い方がなっちゃいない。

 

暴力だけの力に何の意味があるのか?そこに技といった技量と相応しい実力がなければただの力の持ち腐れだ。

 

そうして、幾度か剣閃を挟むのだが間合いも剣筋もお粗末としかいえないものだとシャドウは感じる。

 

だがオルバが弱いわけではない。シャドウが異常に強いだけなのだが強者の基準が如何せんベアトリクスなためか感覚が麻痺しているシャドウ。

 

…やはり物足りない…早く戻ってマザーと組手するか

 

とシャドウは目にも止まらぬ速さで剣を振るいオルバ子爵を斬り刻む。

 

血を流しされどドーピングの影響から早々に死ねないオルバ子爵は問いかける。

 

「なぜ…なぜ邪魔をする…私は…ただ…」

 

助けたかっただけだというのに…自らの立場など名誉などいらなかった…ただ…ただ娘が生きていてくれれば…自分が死んでしまってはどうなるかわからない…

 

どうして強い…なぜ抗える…なぜ…私はこんなに弱いのだ…

 

「我は陰に潜み、陰を狩る。我等はただそのために在る」

 

深く、どこか哀しみを帯びた声が答える

 

オルバはそれだけで、この漆黒の少年の在り方を理解した。

 

「貴様、あれに抗う気か……」

 

世界には法では裁けない者がいる。オルバはそれを知っているし、自身もその末端にいると思っている。

 

利権、特権階級、そして裏の顔。

 

法の光は世界の端まで届かない。

 

オルバはその恩恵を得ながらも、さらなる上位者に踏みにじられ、砕かれた。

 

だからオルバは娘を助けるために力を求め……そして敗れた。

 

「たとえ貴様が、貴様等が、どれほど強くとも勝てはしない。世界の闇は……貴様が考えるより遥かに深い」

 

「ならば潜ろう、どこまでも…それにどれ程深くとも求めれば闇に沈む真実を見付けられると知っている…」

 

少年の声には気負いもなく、気迫もない。ただ絶対の自信と、揺るぎない覚悟を感じた。

 

「容易くほざくな、小僧」

 

認められない。

 

絶対に認められないだからこそオルバは持って数刻の命を使い少年に教えることにした。

 

魔力が収束し肉体が壊れるのがわかる…しかし膨大な再生力で治る…

 

「成る程…全力の一撃か…良かろう。」

 

コォォォォという呼吸音が響き渡りシャドウから深淵のような深き波動に黄金が加わる

 

オルバはその神秘的な光景を見つつも最大まで魔力を貯める。

 

小細工無用の一撃……

 

そうしてぶつかり合う二つの斬撃…

 

パリンと剣が中ほどから折れて身体から鮮血が迸る。

 

オルバ子爵の剣はシャドウには届かなかった。

 

だがオルバは思う…この少年ならば…教団を…娘を…

 

「す……ま…ない……ミリ……ア」

青い宝石の入った短剣に手を伸ばしそうしてオルバの意識は闇へと閉ざされた。

 

「……観察はもういいのかい?…イータ?」

 

と先程からの一連のやり取りを観察していたイータへと声をかけた。

 

「うん…シャドウの動き…勉強になる…足さばき…身体の使い方…効率的な魔力の運用…上げればきりがない…」

 

「イータはわかってるね…それで姉さんは?」

 

「今頃ベアト母様が救出してデルタに担いで戻らせる予定…シャドウも早く…戻った方がいい…いないのバレると…面倒…ここの処理はやっとくから…早く」

 

「それもそうか…じゃあ戻るよ。それとマザーにまた組手お願いって言っておいてね!」

 

とシャドウはその場から去った。

 

残ったイータは動かなくなったオルバ子爵を見て側にある青い宝石の入った短剣を手に取りその宝石の中に写った少女の姿を見て

 

「…この施設にいた…悪魔憑きにしていたことを思うと…許すことは出来ない…でも貴方は娘のために戦い続けていた……そこだけは…敬意を……」

 

そうして手を合わせるイータ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

こうして一連の誘拐事件は幕を閉じた。

 

ベアトリクスは掃討を終え後始末をある程度すると言いデルタに治療したクレアを背負ってもらいカゲノー家へと急がせた。

 

心配していたデルタだからこそカゲノー家についてもクレアのことを心配してベアトリクスから任されて運んだことも信憑性が増す。

 

後は大人同士のやり取りだけだ。そこは任せてもらう。

 

ベアトリクスは今日も戦い続ける。

 

ディアボロス教団が殲滅されるまで続いていくシャドウガーデンの闘争が始まったのであった。




クレア誘拐事件の終幕になります。

ベアトリクスによる強化によるせいか大抵の強者も寄せ付けない強さを身に付けているシャドウ。

自身の設定のディアボロス教団などいないと思っているもののベアトリクスが説明した悪魔憑きに残虐非道な実験を繰り返し続ける武装集団と戦いだということ

人間の可能性を信じる者と、閉ざそうとする者との戦いだというように説明した所先頭に立つベアトリクスとそれを陰ながら時には共闘し解決していけば陰の実力者として近づけるに違いないと一応認識している。

そしてオルバ子爵…彼もまた娘を助けたいという思いがあり手を取る相手を間違えなければ共闘する未来もあったかもしれませんね

イータもそういうところを感じ娘を案じた父親として敬意を評しました。

そしてクレアはデルタに運ばれカゲノー家へと帰還。

カゲノー男爵へはベアトリクスが誘拐した盗賊たちを殲滅したというように説明をし納得するのでした。

次回は一夜明けたクレアのお話しの予定です。

この場を借りお気に入り登録、感想、評価していただいた皆様ありがとうございます!

なるべく期間の開かないよう投稿をしていく予定です。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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誘拐事件から一夜明け 少女は悪魔憑きの真実を知り弟を守るため更なる鍛練を積む

誘拐事件から一夜明けたクレアのお話し。

そしてクレアは世界の闇の一端に足を踏み入れることに

それではどうぞごゆっくり!


部屋のベッドで目覚めたクレアは昨日の夜のことが夢だったのではと思ったが手首には治療された後があり夢ではなかったことを如実に表していた。

 

クレアは昨日のオルバ子爵の言葉を思い出す。

 

悪魔憑き…英雄の子…ハッ!シド!そうだ、あいつシドのことを!

 

と起き上がろうとしたクレアは身体に何か乗っかっていることに気付いた…

 

ふさふさの尻尾に黒髪のケモ耳……マナだった…

 

「スピー…がぅ?……姉様!大丈夫です!?怪我痛くないですか?どこも悪くないです!?」

 

と物凄い心配するマナを見てクレアは落ち着いた。

 

「えぇ大丈夫よ。私は確か捕まって…」

 

「がぅ!母が助けたです!悪い奴らをギタギタにしたです!それで姉様を運んだです!」

 

デルタも教団員を倒していたので言葉的には間違っていない。

 

「師匠が助けてくれたのね…マナも運んでくれてありがとう。」

 

とクレアはマナの頭を撫でる。

 

ガチャとドアが開きベアトリクスが入ってきた。

 

「無事で良かったわ。身体の具合は大丈夫?」

 

「はい…すいません師匠…私…」

 

「それ以上は良いわ。私の弟子だから狙われたっていうのもあるし…色々ゴタゴタしてて取り敢えず学園に行くのを10日程伸ばしてもらったわ。」

 

「…師匠…悪魔憑きって…本当に治らないの…?」

 

「どうしたの急に…?」

 

「昨日…オルバ子爵がやけに悪魔憑きのことを聞いてきたの…それで思い出したの…噂で彼の娘が悪魔憑きになったって…私のことを英雄の子って…師匠に一時期魔力を練りづらくなったって言って…その後普段通りになった…何か師匠は知ってるの?」

 

「それはオルバ子爵のこと?それとも悪魔憑き?」

 

「…全部よ。」

 

「…マナ悪いけどシドの所へ行っててくれる?」

 

「がぅ…分かったのです…姉様また後でです」

 

とマナが退出し二人きりになった。

 

「クレアは悪魔憑きのことをどれぐらい知ってる?」

 

「えっとある日、体の一部に突然痣が現れ、やがてその痣は全身に広がり肉体は腐り落ちてしまうという症状で発症したら治らない不治の病…家族から見捨てられて教会で浄化されるってこと……そういえば師匠に相談したとき…痣が……!?」

 

「えぇそうよ。貴女の思っている通りよ。」

 

「で、でも私どこも悪く…」

 

「悪魔憑きとはね膨大な魔力保有量の多さからやそれが制御不能になり暴走したことから発現する症状のこと…ならもしその魔力の暴走を制御出来たら?」

 

「そんなの不可能だわ!魔力が練れないなら制御もなにも…」

 

「一人だけならほぼ無理ね。外部から並外れた魔力制御ができるものがいれば別だけど。」

 

「…師匠がそうってことなんでしょ。私のことを治してくれたのも…」

 

「えぇ。でも全てを助けられるわけではないの。そういう方法がなければ皆教会で殺されるか人体実験……でもそれでも見捨てない家族もいるの。そういう人たちは教会に異端認定されれば殺され、治したいと藁をもすがる思いで手を取り…利用され抜け出せなくなってしまう。」

 

「…それがオルバ子爵……じゃあ娘さんを治そうと…師匠…オルバ子爵はどうなったの…?」

 

「子爵はもういないわ…」

 

「そう…じゃあ英雄の子っていったい何なの…?」

 

「………おとぎ話は知ってるかしら?」

 

「それって遥か昔、魔人ディアボロスによって世界は崩壊の危機に曝されていて

 

でも人間、エルフ、獣人から立ち上がった3人の勇者によってディアボロスは倒され世界は守られたって話しよね…でもあんなの荒唐無稽な話しだし…」

 

「そう…そうやって歴史は抹消されてきた…クレア、毒を以て毒を制すという言葉があるように昔魔人にダメージを与えられないと…なら魔人の細胞を取り込んだ。それによって倒すことができた。」

 

「でも師匠どうしてそんなおとぎ話を…?」

 

「ならその魔人の細胞はどうなったと思う…それは子孫へと引き継がれていった。細胞を持つものは膨大な魔力を持つ…でもそれは制御出来ればの話し。そうして悪魔憑きというものが生まれた。」

 

「じゃ…じゃあオルバ子爵の言ってた英雄の子ってのはその三人の末裔の誰かの血を引いてるからってこと…」

 

「そしてそれは世代交代をしていくごとに薄れていく。それはエルフ、獣人、人間という順に発症率が高い理由。」

 

「私は師匠に助けられたけど他に生きてる人なんているの…?」

 

「貴女はもうその目で見ている筈よ。」

 

「!?まさか……ルーナとマナ、リリムさんも同じって…師匠の孤児院って」

 

「保護した元悪魔憑きのための安心できる場所を作ったそれだけよ。私がしたことなんてたいしたしたことではないわ。」

 

「師匠それって物凄い偉業です!!世間に公開したら皆希望を!」

 

「そうならないのが世界の冷たいところ…今公表しても奴らに揉み消されるだけ。この世界を文字通り支配する奴らはこの事実が知られることを恐れ徹底的に排除してきた。だから水面下にしか動くことが出来ないの。

 

でも私は戦い続ける…これは可能性を信じる者と、閉ざそうとする者との戦いでもあるの。」

 

「師匠のいう奴らって…」

 

「それは……教えることは出来ないわ。」

 

「どうして!」

 

「貴女がまだ子供だからというのもある。それでも知りたいのなら学園に通って知識を…実力を高めなさい。そのための手伝いはするわ。だから10日という時間を取ったのだから。」

 

「…私強くなるわ…強くなって師匠のことを追い越して胸を張って生きていく!」

 

「その意気よ。早速やりましょうか」

 

「…え?し、師匠私まだ」

 

「時間は待ってくれないわ。それともまだ弱いままで良いの?奴らは姑息…それこそシドに危害を加えようとしても可笑しくはないわ。」

 

「!…やるわ!やってやろうじゃないの!」

 

とクレアは起き上がったのでそのまま庭で鍛練に時間を費やすのであった。

 

病み上がりゆえに止めようとした者もクレアの鬼気迫る気迫に押されそのまま続ける。

 

クレアの中で渦巻く魔力を上手く練り上げられるように座禅し自分の魔力を理解する。

 

そして魔力の器を拡張させるために器の中に魔力を閉じ込め徐々に大きくするベアトリクスが昔にした手法を取る。

 

後はひたすらに組手をした。人と人との戦い方。剣だけでなく近接でのインファイト、足さばき、剣に魔力を込め間合いを少しだけ広げて狂わせるやり方。これは魔力が霧散しやすい性質もあるのでここぞという時に使うようにとクレアは教わる。

 

魔剣士として邪道なものもあれど教団に対して卑怯もへったくれもない。生き残るための術を教えていくベアトリクス。

 

そうしてあっという間に10日が過ぎクレアは学園へと旅立つことになった。

 

「姉様いっちゃやです~」

 

何か数話前に同じやり取りをしたような……

 

「ほらマナ、泣いちゃダメよ、どうせなら笑顔で送り出してあげましょう。」

 

「ありがとうルーナ…マナもありがとうね。」

 

「身体に気を付けて。風邪引かないように…後、お母様から言われた」

 

「ルーナったら大丈夫よ。」

 

「がぅ~…姉様…」

 

「うん?」

 

「いってらっしゃいです。」

 

「行ってくるわね。マナも風邪引かないようにね。」

 

「はいです!」

 

「ルーナ、」

 

「はい。」

 

「ルーナやマナの過去に何があったのかは私は知らない…でも…それでも離れていても友だちだから!」

 

「…!…ありがとうクレア。いってらっしゃい。」

 

「あぁ間に合ったみたいだね。クレアこれ!あっちに行くまでに食べてね。」

 

「リリムさん…!これって?」

 

「ベア様から習ったゼリーって食べ物だよ。行くまで暇だろうし食べて。」

 

「リリムさんもありがとう!」

 

と三人と握手し最後シドにも行ってくると言いクレアは王都へと旅立つのであった。

 

「行ったか。」

 

「がぅ~」

 

「ほら行くよワンちゃん、鍛練してもっと強くなってクレアを守るんでしょ?」

 

「がう!頑張るです!」

 

「さて僕も戻るかな。」

 

「そうですね。戻りましょう。」

 

こうしてクレアは王都へ向かい七陰は鍛練を続けディアボロス教団との戦いに備えるのであった。




今回はここまでになります。

クレアは教団の名前は教えてもらえませんでしたがそういった地下組織があることを知りました。

そして悪魔憑きを残虐非道な実験を繰り返し続ける組織と戦うベアトリクスが不治の病とされた悪魔憑きを治せることを知り世間に公表すればというがそれをすれば本格的にディアボロス教団が揉み消そうとするので密かに助けていることを伝えました。

そして自身が三英雄の子孫であったこと、悪魔憑きになりかけたことも理解し10日という期間ベアトリクスからスパルタな鍛練を受けることになりました。

転生ベアトリクスの近接での間合い、空手、テコンドー、ボクシングなどを複合させたインファイトなど様々なものを教えられたクレア。

クレアは学園でもベアトリクスから教わったことを復習し世界的情勢なども勉強し知識を高める予定。

そして見送りにデルタ、ガンマが来て何があろうと友だちだと言いゼータも見送りにきてベアトリクスから教わったゼリーを持たせ旅立ちました。

さて次回は七陰が各地へと散らばる話しになるかと思います。原作ではごっこ遊びからの卒業だと思ってたシド…

果たしてどうなるのか!

感想、評価、お気に入り登録ありがとうございます!

UA20000も越えることが出来ました!

これからも早めに投稿出来るようにしていきます!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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七陰は世界各地へと飛び回る決意をシャドウへと伝えシャドウはそれを見送り鍛練へ身を費やそうとするがのんびり娘の逆鱗に触れ死闘へと発展する

七陰たちの旅立ちとなります!

そして今回はキャラ崩壊注意と言っときます。

簡単にいうとイータが若干ぶちギレます。


それではごゆっくりどうぞ!


クレアが旅立ち数日。

 

あれから特に変わったこともなく平穏に日々が過ぎていく。

 

マザーも少し忙しいみたいで良く遊びに来るのはデルタぐらいかな?

 

数週間前僕は陰の実力者ムーブをやり遂げた。

 

それから二年後には僕も王都へと向かう。

 

この世界有数の大都市ミドガル王国、国として唯一の100万人都市。絶対主人公ポジションのキャラがいるはずだし、ラスボス的キャラもいるかもしれない。そしてこんな地方では起こり得ない事件、陰謀、抗争、そしてそこに乱入する陰の実力者……

 

ああ、それを思えば今の僕なんて所詮盗賊ボコってイキってるだけの蛙だ。僕の物語はまだ序章すら始まっていないのだ。

 

マザーも王国で動くことが増えるかもしれないと聞いているのでその時は是非僕も参加するとしよう

 

大義名分はこっちにあるし何しろ極悪非道で残虐な実験を繰り返す武装集団なんだ。王都ならではの設備と巨大な戦力もあるだろう。

 

そう期待を膨らませる僕をアルファたち七陰が呼んでいた。そうして向かうと皆揃っていたようでどうやらこれまでの武装集団の調査と悪魔憑きについての報告のようだ。

 

どうやら悪魔憑きは女性にしか発症しないようでそれは大昔の魔人ディアボロスと戦った英雄が女性だったからということ。

 

マザーがそこに女性だから適応できた現状何かしらのホルモンの作用があるのかもしれないと言っていた。

 

研究には興味がないし僕の考えた設定的にそこまで凝ったものではないんだけどマザーが言ってるからなぁ…

 

かれこれ100年生きてる人がその半数を戦いに費やしてるぐらいだからまぁ100歩譲って女性しか悪魔憑きがいないのは認めよう。

 

でもだからって三英雄が女性だったっていうのは安直じゃないかと思う。

 

そしてマザーの戦う武装集団はとてつもない規模の組織だったみたいで七陰の皆も他の虐げられる悪魔憑きを助けるために各地へと散りローテーションで一人残り他はマザーの手伝いをするみたいだ。

 

何だか寂しいけど…っていうかマザーのいう武装集団どんだけ行動範囲が広いんだか、でもそれぐらい大きくないとマザーがこんなに手間取る筈もないしな。

 

当面は相手方の戦力を削ぐこと、悪魔憑きの救出が主になるみたいで大規模作戦の時は連絡するといってくれたからイベントに乗り遅れるということはなさそうで安心だ。

 

と思っていると報告が終わったらしい。マザーも姉さんが帰省する時はこちらに戻ると言っていたので鍛練の時間は少し短くなりそうだけどそこは盗賊退治で色々と陰の実力者ムーブに必要な資金集めが出来るから良いとしよう。その前にイータに重力装置の出力を上げられるか聞いとこうと思い僕は彼女らを見送るとしよう。

 

そうして七陰たちも拠点へと戻る中でイータを呼び止める

 

「イータ、悪いんだけど重力装置の出力って上げられるかな?筋トレとか更に負荷を掛けたいんだけど?」

 

「…じゃあ…30Gぐらいまで調整…しとく…」

 

「悪いねイータ、ありがとう。」

 

と一度部屋へと戻りそこで機械を調整するイータ。

 

「それとシャドウ…さっきの話し…途中で飽きて聞いてなかったでしょ?」

 

「……何のことかな?」

 

ヤバい話し半分に聞いてたのがバレてたか?

 

「シャドウ途中から…目が上の方を向いてた…そういう時は何か別のこと考えてるってベアト母様言ってた。」

 

「う~んまいったな、マザーにもバレてたか。」

 

「シャドウはディアボロス教団との戦いに興味ない?」

 

「そんなことないよ、武装集団が悪魔憑きを残虐非道に悪逆に利用していくのは陰の実力者としても見過ごせないよ。」

 

「武装集団…?………????」

 

イータは何だがシャドウとこちらの認識がズレているように感じた。研究の方が主なのに何で武装集団?を強調してるのだろうか?………まさか?ディアボロス教団を信じてない?

 

いや、でもベアト母様やアルファ様に語ったらしいし……知らない訳が…いやなんでも頭ごなしに否定するものじゃない。

 

科学だってそう決めつけたらそこから先の変化がない…

 

なら発想を変えてみよう…

 

1 シャドウの語ったディアボロス教団はもしかしたら前世とかの組織でそういう組織があったからそれっぽいことを言った?

 

2 もしくは自分で物語を作ってそれを語った。

 

3 当てずっぽうで言った組織がまさかの大当たりだった

 

…なんだろうシャドウだから物凄い3が当てはまりそうなんだけど…まさかそんなわけ…取り敢えず確認してみよう。

 

「シャドウは…ベアト母様と同じように…前世っていうのがあるんでしょ?その…そこにも教団みたい…なのはいたの?」

 

いるからこそ語ったならまだ分かる…うん…

 

「いや、テロとかそういうのがあって武装集団といたけどそういう教団はいなかったかな?いたらニュースになるだろうし」

 

…どうやら1ではないようだ。なら

 

「シャドウは…執筆とかしたことある?…ベータに語ったような物語とか…?」

 

「いや僕はもっぱらピアノは習ってたけど後は身体を鍛えてたね。魔力とかなかったからかなりハードに鍛えてたね。」

 

……………プツン

 

「じゃあ何…当てずっぽうで言ったのがたまたまあってたってこと………」

 

「え?ディアボロス教団なんてないでしょ?でもないと思ってたけど似たような武装集団がいたとは思わなかったかな?」

 

………………

 

「…イータ?どうした……」

 

シドは思わず後退った…何かイータの後ろから凄まじい迫力をした阿修羅のような物が見えたからだ。

 

「…シャドウ…表でなさい…」

 

「イータ…?模擬戦なら」

 

「いいから…出ろ」

 

ギロッと鋭い目付きと化した阿修羅の一睨みに流石のシドも従い夜となった庭で立ち会う二人。

 

「イータさんや…僕…何かしちゃったっぽい?」

 

「あんたがどれだけ…人に興味がないか…良く分かった」

 

「いや興味は」

 

「自分の利益になればでしょ。私の…勘違いならそれでいい…というよりもそうであってほしいと願ってる…

 

アルファ様を助けようとした…ベアト母様の波紋を最初に目当てにして近付いた。魔力で…補佐もしたんだろうけどそれは価値観的な良心に基づいて…で、

 

その後もあんたはベータたちを助けた。助けたところを見るとそういった意識はある…でもそれからのことはベアト母様が大体やってる。

 

それ以外もやってたけどそれにしては関り合いが薄い…

 

それを考えると淡白な一面…と共感能力がどこかズレてる。

 

そういったこともあるから言ったの……話しの終着点が噛み合わない…こともそうだけど…どこまで人間性を削いでるの…?」

 

ただ単純な疑問をぶつける。

 

「まぁそうだね。僕は色々と削ぎ落としてきたね。僕はさ…陰の実力者になりたいんだよ。主人公でも、ラスボスでもない、物語に陰ながら介入し実力を見せつけて征く存在であるそんな陰の実力者に

 

僕は自分にとって大切なものと、そうでないものとを明確に分けるようにして。そうして捨てていって、その中で僅かに捨てられないものが残り、それの為に生きているんだ。

 

でもどうでもいいものにも好き嫌いがある…それだけなんだよ。」

 

およそ人に理解できる範囲を越えている…しかし分かったこともあった。

 

「あんたはあんたなりに夢に向かって走ってるってことね…私も…人のこと言えないけどどっちも無茶な目標ね。」

 

「それでも叶えたい…だから鍛えるのさ。」

 

「…ねぇシャドウ…勝負しない?シャドウが勝ったらその陰の実力者…無償で手伝うわ。」

 

「ふ~ん成る程それも良いね。じゃあ僕が負けたら?」

 

「ちょっとでも良い…アルファ様たちともっと話してほしい…分かろうとする努力をしてほしい。」

 

「…いいよ。それじゃあどっちか倒れるか参ったっていうまでで」

 

とシャドウはある程度間合いを離す。

 

既にシャドウの間合いに入っているのはイータも分かっていた。だからこそ

 

キィンという剣同士のぶつかる音が響く。

 

首を狙った自然な一撃を難なく防ぐ

 

「…良く分かったね。」

 

「ベアト母様から良く言われてる…不意打ちとか卑怯とか関係ない勝負って言った時点で戦いは始まってる…それに実戦じゃ卑怯、不意打ちなんて当たり前。」

 

「ふふ良く分かってるね。今の他の七陰だったら寸止めしないといけなかったかもしれないね。」

 

「アルファ様やベータはまだそういうのに触れてないから…正々堂々しすぎ…逆にデルタは野生の勘でゼータはそういうのに慣れてそう。イプシロンは要勉強。ガンマは後方支援のが向いてる。」

 

「それは言えてるね。」

 

とお互いに離れる。

 

「それじゃあ…やろうか…!」

 

そうしてぶつかり合うこととなった二人。

 

果たしてどうなるのか…




今回はここまでになります。

原作通り七陰を見送るシャドウ。

原作と違うのはベアトリクスの戦う組織と戦うためというのは分かっているが何処か他人事のように思うシャドウ。

そしてイータは何だか齟齬があると話しを聞きシャドウの人への無関心さに気付き…プッツンしました。そしてシャドウへと勝負を持ち掛けました。

普通の実力者なら最初の首狩りで終わるもののイータはそういうのはベアトリクスからの鍛練でなれているので普通に防ぎ攻防戦が始まりました。

陰の実力者になるためにあらゆる物を削ぎ落としてきたシャドウと母ベアトリクスを越えるためにあらゆる物を身に付けて糧にしてきたイータ

二人の勝負は次回へと持ち越しになります。書いてたら7000いきそうだったので…(汗)

いや最初は穏便にいこうと思ってたのですが執筆してて久しぶりに邪神ちゃんドロップキックみてたらゆりねに触発されてて気付いたらこんなことに…

まぁ何はともあれオッズは8:2といったところですかね。

少年期のシャドウも割りと容赦ないですので波紋込みの魔改造イータでも苦戦は必須…

勝敗は次回にて!

それが終わったら少し番外編でも挟んで学園編へ行こうかと思います。

この場を借りて感想、お気に入り、評価していただいた皆様ありがとうございます。

次回も遅くならないよう投稿していきます。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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意地と意地とのぶつかり合い 陰の実力者を目指す者と母を越えたいのんびり娘その死闘の果てに待つものは…

シャドウVS魔改造イータの剣戟となります。

果たして勝負の行方はいかに…

それではどうぞごゆっくり!


シャドウとイータは何度目かの斬撃を打ちながら斬り結ぶ。

 

イータは言葉よりも剣で語ろうとした。下手な言葉よりもこっちの方が分かりやすいと思ったからだ。

 

シドとしてもその方がありがたかった。

 

シドとしては闘いとは、対話であると思っている。

 

剣先の揺れ、視線の向き、足の位置、些細なことすべてに意味があり、その意味を読み取り適切な対処をすることが闘いなのだ。

 

些細なアクションから意味を読み取る力、そしてそれに対してよりよい回答を用意する力こそが、闘いにおける強さであるといっても過言ではない。

 

だから、闘いとは対話なのだ。

 

互いの対話能力が高ければ高いほど、先を察し、それに対処し、さらにそれを察し、さらにそれに対処する、そうやって終わりなき対話が繰り返される

 

シャドウの機動力を奪うべく放たれた一閃をイータは受け流しそのまま手首に狙いを定めたそれをシャドウは更に反らし突きを放つ。

 

面よりも点での攻撃の方が攻撃する部分は狭くなるが速く何より次に繋げやすい。それを敢えて突きに飛び込み余計な間合いを狭くするが魔力で強化したシャドウの左ストレートが迫る中でイータも魔力と波紋で強化した膝で受け止める。

 

その威力に顔をしかめるイータだがそれでも負けられない思いを背負い頭突きを繰り出す。

 

それも避けて一度離れる二人

 

気付けばカゲノーの庭よりも離れた場所におり木はなぎ倒され二人の周りは更地のように広く広がっていた。

 

「マザー以外でここまで滾るのは初めてだな…こうして対話できるのは楽しいね。」

 

「良くいうわよ…付いていくのでこっちは精一杯よ。全く…あんた…こうやって対話できる相手いなかったわけね。拗らせる…う~ん…吐き出せなかったのが正しいかしら…?」

 

「…そうだね、陰の実力者なんて前の世界じゃ狂人…悪の組織なんて常識的に考えて存在するわけない、そう何度も思いそれを奥に隠して鍛練に集中した。

 

そしてこの世界で魔力を知った。なら今度こそ…なれるんじゃないか…でもね、悪の組織なんてそんな陳腐な物が本当に存在しているのか?まぁマザーのいうような武装集団はいるみたいだけど

 

それだってマザーの敵ってだけで僕が過度に関与するのも無粋じゃないか?

 

僕は僕の誇りのために陰の実力者になることを譲れない…譲ることはできないんだ。」

 

「シャドウ…あんた」

 

「それは間違ってるわよ。」

 

イータが言い放つと音が死んだ…………

 

「…それは僕の陰の実力者が間違っていると…そう言いたいのか…!」

 

その言葉を皮切りにシャドウの剣戟は更に苛烈になっていく。いや苛烈という言葉も正しくはない。何故ならシャドウの剣からは予備動作がなく殺意も、淀みも、力もなく、ただ自然のままに振るわれるのだから。

 

対話すら放棄した殺意も気配も感じさせぬ自然な一撃をイータが避けられたのは奇跡といえる。

 

前にベアトリクスからある意味究極の体系の一つと言われ体感してなかったら首と胴が離れていただろう。

 

「容赦ない…ってよりも本気になったってこと…良いわ…それでこそよ…あんたを倒せるぐらいにならないとベアト母様は越えられない…越えられなきゃ死んだ方がマシ…!」

 

イータはその自然から放たれる無の挙動を敢えて受ける。

 

身体の重要な部分を魔力でコーティングして強靭にしてなおシャドウの剣はイータを斬り裂く。

 

肩から鮮血が…脇腹に鮮血が…頬から鮮血が…胸から…足…太もも…腕…

 

全身から出血をおこしボロボロになりながらもそれでも倒れない。むしろどんどん感覚が研ぎ澄まされていく…

 

もう何度目かの一閃をキィンと防いだイータ。

 

イータはシャドウとの死闘で急速に成長していた。

 

無駄に動く必要はない…胴を狙った一撃を防ぐ

 

目で追う必要もない… 眼前に迫ったものを防ぐ

 

自然な動作…でも今のシャドウからは怒りを…感じる

 

ザシュ…とシャドウの頬からスーッと血が流れた。

 

「…まさか…これに対応できるというのか!?」

 

そうして全く反応できなかったイータの剣がまたシャドウの剣を捉え対話し始める…

 

疲れ…腕が上がらなくなってきた…足元も…

 

だがその代償にイータは限界へと近付きつつあった。波紋で止血していても流し失われた血は戻っていない。

 

…まだ倒れられない…これは譲れない…それに…この大馬鹿に伝えてない…!

 

イータは気力を振り絞りそして更に集中する。

 

そして視力を一時的に閉じ意識を更に使わない器官を閉じた…まだ、未熟な波紋を主要器官へと流した。

 

そうすると見えていない筈なのに…シャドウの一個一個の行動が見え始めた…

 

筋肉が…血管がまるで……透き通るように…

 

イータはベアトリクスの記憶で読んだ本を思い出した…それは透き通る世界と呼ばれるもの…

 

本来ならまだ未熟なイータが辿り着くにはまだ時間の掛かる筈のそれはシャドウとの剣戟でのやり取り…イータの背負う思い、感覚を超集中させた偶然によって到達したもの

 

長くはないとイータも理解しシャドウの剣戟を掻い潜る。まさか自身の剣戟を平常の道を歩くようにかわし続けるとは流石のシャドウでも驚きを禁じ得ず一瞬思考が遅れた。

 

その遅れを見逃さずにイータは剣閃を浴びせる。

 

あまりの一撃にお互いのスライムソードが形を崩すがイータはそのまま拳をシャドウへと叩き込む。

 

「これは七陰皆の分!」

 

と顔へと炸裂する

 

「これは…ベアト母様の分!」

 

すぐさま体勢を立て直すシャドウだがその一撃はどの攻撃よりも重かった…

 

「そして…これは…自分で自分を否定する…大馬鹿の分よ!!!」

 

と吹き飛ぶシド、対してイータは満身創痍で透き通る世界も解除され呼吸も乱れているためか波紋で止血していた傷も開き始めた。

 

吹き飛んだシドだが傷らしい傷も先ほどの殴られたことや斬り傷も大したものではなくまだ戦闘することが出来た…

 

だが

 

「どうして立てる…さっきの僕の攻撃を掻い潜ったものももう使えない…全身から出血している波紋だって乱れている…なのにどうして…そんな強い目が出来る!」

 

優勢なのはシャドウの筈だ。それはまちがいないそれでもイータは諦める気配がない。

 

「簡単なこと…私は私の譲れないもののために戦ってる…アルファ様たちの…思いも全部背負ってる…」

 

「それなら僕だって…!」

 

「あんたの夢が間違ってるなんて言わない…でもあんた自身分からなくなってるでしょ…そうじゃなきゃ誇りのためになりたいなんて言わないでしょ…」

 

「……」

 

「譲れないから誇りっていうんじゃないの?陰の実力者になりたいっていう譲れないもののために修行してるんでしょ?」

 

シドは気付く。いつの間にか自分は誇りのために陰の実力者を目指そうとしていたのか…

 

違うそうじゃない…僕がなりたいのは…カッコいいと思った…主人公でもないラスボスでもない…そんな憧れのために目指していたのではないのか…

 

 

明確なこれだっていうのは確かにない…でもいつしか自分だけの憧れる陰の実力者になりたい…!!

 

「まずい…全身の力が入らない…でも…負けられない…」

 

「…イータ…僕は…間違ってたのか?」

 

突然の問いかけにしかし重要なことだと思いイータも答える。

 

「…少なくとも他の七陰を救ったのは間違ってない…でももっと関心を持つべきだった…」

 

「…陰の実力者って何だろうね…」

 

「…さぁ?でも…そんな不確かでもなりたいって決めたんでしょ?」

 

「…なれるのかな?…僕に…間違ってしまったというのに」

 

「…ベアト母様も良く言うけど間違っててもそれを間違いと認めて活かすんだったら問題ないでしょ…それに…もし間違っても…こうやって…殴ってでも止める…何度だって…」

 

「…正直ディアボロス教団とか眉唾物だと思ってるし三英雄とか悪魔憑きとかも何でそうなるのとか全然分からないし…言うほど僕は頭は良くない…悪いわけでもないけどアルファやガンマには及ばない…幻滅させちゃわないかな…」

 

「少なくとも幻滅なんてしない…だって助けてくれたその思いは本当だし…頼ってくれるってすごい嬉しいことなんだよ…」

 

「…こんな僕でも…付いてきてくれるのかな…?」

 

「それはこれからのあんた次第でしょ…でも付いていってあげる…私の夢を手伝ってくれたお礼もあるし…」

 

「はははっ……そうか…」

 

「まずは削ぎ落としていったものを少し拾い集めてみたら?…そうすればもっと陰の実力者に近付けるでしょ…」

 

「…僕は僕の言うディアボロス教団を信じることは…出来ない…」

 

「あんた!」

 

「でも!…それでも…君が言うディアボロス教団を信じてみたい…不甲斐ないし普通とかあんまり分からない…それでも…イータが…理解者としていてくれると…助かる…」

 

「そう…それでどうするの勝負…?」

 

「そうだね。参った…僕の負けだよ。」

 

「…はぁぁぁぁ~」

 

とイータはその場に仰向けに倒れる。

 

「私ももう動けないし…引き分けってことにしない…?」

 

「なら賭けはどうする?」

 

「それならあんたの夢を手伝うから他の七陰にもっと歩み寄って…彼女たちはあんたのこと好きらしいし。」

 

「う~ん恋愛感情とかあんまり良く分かってないんだよね。」

 

「それならそれも含めて拾いなさい…ケホッ…身体痛い…」

 

「全く…二人とも激しく喧嘩したわね…」

 

「ベアト母様…!?」

 

「…マザー…その」

 

「良いのよ。私もシドにあまり深く踏み込めなかったのもあるから…それで吐き出してみてどう?」

 

「そうだね…なんていうか…スッキリしたのかな?」

 

「なら良いわ。それにしてもイータは透き通る世界に入ったみたいね…」

 

「やっぱりそうだったんだ…でも身体ボロボロ…」

 

「極限状態だったのもあるからかもね。」

 

「透き通る世界…?それが僕の剣戟を凌いだやつなのかい?」

 

「えぇ、多分シドと同じ領域に踏み込んだのでしょうね。」

 

そうして動けないイータにシドは自分のできる限りの波紋を用いて傷を塞ぐ。

 

「ごめんイータ…かっとなったとはいえこんなに…」

 

「ホントよ…まったく…傷残ったら…どうするの?」

 

「傷が残らないようにするよ…でも残ったら…責任取ろうか?」

 

「別にいらないし取らなくていいから…まったく…もう」

 

「それじゃあ戻りましょうか」

 

「イータありがとう…それとこれからも宜しく!」

 

「まったく…仕方ないわね…」

 

そうしてシドとイータの喧嘩は終わった。

 

後日怪我などベアトリクスの波紋とイータ自身の波紋で治り深かったお腹あたりのものはうっすら残ったものの良く見なければ分からず服で隠せるからと気にしていないイータ。

 

それ以降シドは交代で来る七陰たちと少しスキンシップを取るようにし分からないことなどあったら無駄にスタイリッシュに細かく書いたメモをイータに見せて助言をしてもらうようになり

 

呆れて普通に本人に聞きなさいと言うものの彼女らのイメージを壊したくないと言うシドをジト目で見ながらもイータはちゃんと教えるのであった。

 

イータとはなんだかんだ言い合える悪友のようになり時々彼女の研究に協力したり手伝いで漫画を出版し影武者としてサイン会でサインをする仕事をして給料をもらったりと持ちつ持たれつな関係を気に入ってる。

 

時々彼女が男と話しているとその場から遠ざけさせたりしているが本人としては悪友との時間を知らないやつに取られるのも気分が悪いとのこと。

 

陰の実力者は改めてこの世界のことを知ろうとし自分の思うディアボロス教団ではないものが存在していることを認識し彼だけの…真の陰の実力者へと至るための修行が始まるのであった。

 

そうして二年後のミドガル王国で物語は進んでいくのであった。




というわけでシドとイータの勝負は引き分けという形になります!

何度もシドとの対話を試み放棄しようが関係ないとばかりに再度対話に持ち込みました。何度斬り刻まれようとも痛みを堪え前へと進むイータ。

目標のためなら死ねるといえる辺り狂っていると捉えられますね。

まぁ満身創痍なイータと余力のあるシドですがそれでも彼の中のディアボロス教団の存在ともっと人と関わるようになろうと変わろうと決意させたことを考えるとイータの勝ちでしょうかね。

二人の戦いを影から見守っていたベアトリクス

危なくなれば介入しようと思っていたもののその必要もなく更にイータは透き通る世界へと入門をしたことを嬉しく思うのでした。

子供の成長は早いものだと感慨深くなりました。

そしてシドはシャドウとしてのアルファたちからのイメージをなるべく壊さないように分からないことなどスタイリッシュにメモして後程イータに聞くようになりました。

そういうことは早めにアルファたちへ言ったらいいんじゃないかと思いつつもイータはシャドウへと教えるのであった。

シドが学園へ行くまでにイータの仕事の手伝いで漫画家の先生のフリをしてサイン会などして報酬をもらったり盗賊退治などは引き続きしている模様。

イータへの感情は信頼しているパートナー兼悪友…悪友に寄り付く虫は悪即斬する気迫で追い払っている。

イータが転生ベアトリクスの記憶を元に作った漫画などは陰の実力者に不要と切り捨てていたのでいい機会に読むことにして戦闘系の漫画などにすぐに嵌まった。

そのせいか漫画のカッコいい台詞をどう決めようか迷ってたりとイータも頭を悩ましている。

こち亀など見てなんでこれで生きてられるんだやどんだけ借金してもめげずに金を集めるがめついところなど参考になるなと思っている。

配役として両さんがシャドウで部長がイータとかですかね…イータにシャドウのバカはどこに行ったとかでラストのオチをやらせてみたい…

ジョジョとか見てジョジョ立ちとか無駄にカッコいいと思って事件の際にやりそうだなと思いました。

それでは次回は……番外編挟んで学園編へと向かいたいですね。アンケートボンゴレスパゲッティとストロベリータルト拮抗してるので二つとも出そうと思います!

少し番外編は時間掛かると思いますが宜しくお願いします。

感想、評価、お気に入りありがとうございます!

それでは今回も読んで頂きありがとうございました!


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番外編 ボンゴレ風スパゲッティ&ストロベリータルト

今回は番外編なので時系列は多少無視してます!

とある人物たちが異世界食堂へと迷い混むことに…

少し長くなりましたがよろしくお願いします!

それではどうぞごゆっくり!


ディアボロス教団との戦いに明け暮れるシャドウガーデン。

 

その盟主シャドウとして君臨するシド・カゲノーは悪友で理解者でもあるイータに会いに彼女のラボを訪れていた。

 

「やぁイータ、新しい漫画の続きはある?」

 

「…シャドウ…会って早々にそれ?もっとなにかないの?」

 

「まぁいいじゃん、それより…それは何をしているんだ?」

 

「…これは…新しくミツゴシ商会のチェーン店で出そうと思ってるやつ…でベアト母様の世界の貝類の料理の研究中…でも中々難しい…」

 

「貝類か…う~んそうだね、貝はちゃんと下ごしらえしないとじゃりってするから難しいよね。」

 

「何か実物を見れれば良いんだけど…難しい…」

 

「ムニエルとかパエリアとかは?」

 

「熱の処理が難しいみたいで…実用までに至らない。」

 

「なるほど…前世で食べてたものもこっちじゃ難しいものだね。こっちで再現しようとしてる努力が物凄いね。」

 

「商売はガンマに任せてるからガンマのお陰なところもある…私一人じゃそういうのは無理…」

 

「ガンマもホント凄いよね。この間冗談で10万ゼニー貸してって言ったら1億ゼニー用意しようとして焦ったよ…」

 

「そういうお金の話しはガンマの前では止めときなよ。…いや…シャドウ今度ガンマに1000万ゼニー頼んどいて…研究費用にするから…!」

 

「いやいやそれもダメでしょ」

 

「チッ、使えないね…」

 

「イータ僕と居ると口悪くなるよね、まったく…」

 

そう言いつつシャドウはこち亀をあさる…こち亀のようにこの前たい焼きで一儲けしようとイータが作ったたい焼きマシンで丸儲けしてたら教団に絡まれたから教団のアジトをアトミックで吹き飛ばしたらその施設の重要なサンプルまで吹き飛ばしてしまったらしくイータがスライムボディスーツをマシンガンに変えて魔力を纏った銃弾にして追いかけてきたけどまぁ楽しかったしで済ませるシド。

 

暫く漫画を読みジョ○ョも四部まで読み進め三部の主人公のスタンドが細マッチョになってるのを見て…あれ?弱体化!?と思うが時止めは健在なのでそういう風に魅せてるだけかと四部主人公のリーゼントに拘る姿勢は陰の実力者に拘る自分と似ているなと思っていると突然…

 

感じたことのない魔力が発せられた。

 

突然のことであるがここにいる二人はシャドウガーデンのトップと七陰最強の存在。

 

慌てることなく現れた物を冷静に観察をする。

 

「…扉だね。何の変哲もないただの扉だ。イータはどう思う?」

 

「…普通の扉だけどなんでいきなり?…いやこの鈴…アーティファクトそれも凄い高位の…それとこの文字って…確かベアト母様の世界の…?」

 

「洋食のねこや?食べ物屋さんみたいだね。」

 

「でもなんで食べ物屋のドアが…?しかもシャドウたちの世界の文字で?」

 

「…分からないなら入ってみればいいさ。」

 

「それもそう…」

 

普通なら躊躇うものだがこの二人好奇心に突き動かされるので逆に入ってみたいと思っていた。

 

チリンチリン…

 

ドアを開けるとそのはどうやら地下の一室を切り開いて作った部屋らしく、窓は無い。

 

だが、天井に取り付けられた、光…魔力の光とは違う、灯りをを放つ球…電球が煌々と辺りを照らしているので非常に明るい。

 

並べられたテーブルや椅子は良く手入れがされており、艶やかな光沢を放っている。

 

そのテーブルの上に並べられているのは、かなり高価であると予想される、整った形の透き通ったガラス瓶や陶磁器の小さな水差し。

 

明らかな高級店でも無い限りありえぬ内装だが、それにしては使用人が出てくる様子も無い。

 

「…かなり高価?」

 

「いや多分だけど普通のことだろうね。それに料理屋だから衛生面も行き届いてるだろうし良いお店だねここは」

 

「あ!いらっしゃいませ!ようこそ、洋食のねこやへ!」

 

と給仕だろう少女が出迎えてくれた普通のウェイトレスだと思ったがただ一つ違うのは

 

「……ツノ?」

 

「ツノもそうだけど洋食のねこやねぇ…?」

 

取り敢えずカウンターの席へと移動する二人。

 

そのままツノの給仕が水を持ってくる。

 

「…?水は頼んでない…」

 

「イータ、このお水はサービスだから無料だと思うよ。」

 

「…これでタダ?凄い…この容器に入ってる氷も凄い純度が高い…それに入ってるこの黄色のは?」

 

「これはレモン…成る程レモン水なのか、香りによるリラックス効果もあるから最初に来たお客を心身ともに落ち着かせるのもあるね。」

 

「…まるで別世界…この光も人工的だけど私の作った…スタンド君325号よりも安定してる。」

 

「イータ、また改良してたんだね…」

 

そうしていると店主だろうコック帽をかぶった男性が話しかけてきた。

 

「改めていらっしゃいませ。ようこそ「異世界食堂」へ」

 

ここの事を異世界食堂とも言った。

 

「異世界…」

 

「食堂…?」

 

「ええ。先程彼女が言った通り、ここは異世界にある料理屋、洋食屋です」

 

「異世界にある料理屋…。通りで私達の知ってる…お店とは雰囲気…が違う。このテーブルもだけどガラスの透明加減…凄い…」

 

「うちからしたら普通なんですけどね。お客さんからしたら変わってるってよく言われます。お二人とも見たところ学生さん?」

 

「僕はそうだね、ミドガル王国魔剣士学園所属のシド、こっちは悪友で発明家兼建築家のイータ。」

 

「宜しく…」

 

「店主さん…何か頼んでいっても良い?実はお腹すいちゃって、出来れば何か貝を使った料理とかないかな?」

 

「貝を使った料理か…かしこまりました。」

 

「それと他の料理も見たいからメニューもお願い出来ます?」

 

「えぇ、お客さん東大陸語は読めますか?」

 

「…東大陸語?」

 

「う~ん僕たちの国の言葉じゃなさそう…おっ!そうだ!店主さん日本語のメニューとかはある?」

 

「えっ?お客さん日本語読めるんですか?」

 

「まぁその荒唐無稽な話しなんだけど」

 

「簡潔にいうとこの人前世があってそこは日本ってところで日本語っていうのが公用語だったらしい」

 

「何の因果か二度目の人生を歩んでるんだ。」

 

「成る程、お客さんも苦労してるんだな、じゃあメニュー持ってきますんで、少々お待ちください。」

 

と店主は一度席を外す。

 

「店主さん…あんまり驚いてなかった…」

 

「まぁ多分ここはいろんな所に繋がるからそういうのに慣れてるんじゃないかな?」

 

「成る程…」

 

とレモン水を一口飲むイータ。

 

柔らかい水で酸っぱさで口の中がさっぱりする。

 

「それにしてもこの容器……今度作って系列のお店で試してみようかな?」

 

「それは良いかもしれないね。容器一つを借りられるような感じにして提供して水を沢山頼むより格安で人気も出そうだね。」

 

「シャドウ…グッドアイディア…成功したら分け前少し上げる。」

 

「それは良いことを聞いたね。」

 

(こちらメニューになります…)

 

と頭の中に直接響くような声が聞こえる。

 

そちらを見ると黒髪の給仕がメニューを持ってきていた。

 

のだが二人は給仕…クロの尋常ではないスケールに驚いていた。

 

「あ、ありがとう。」

 

(それではどうぞごゆっくり…)

 

「…シャドウ…あんた問題起こさないでよ…あれはヤバい…霧の龍なんて目じゃない…」

 

「そうだね。戦いたいと思うけど…手を出して無事でいられる保証はないね…マザーと3人がかり…いやシャドウガーデンの総力で挑んでも返り討ちになる未来がみえる。」

 

と話し今は料理だとメニューを見る。

 

そこには多種多様な料理の名前がありどれも美味しそうだ。

 

「…お!ポテトにコーラもある!これは頼んでおこう…」

 

「コーラ?」

 

「何て言うかな?シュワシュワする面白い飲み物だよ」

 

「私もそれ、」

 

「あとは…」

 

「!シャドウ…このハンバーガーっていうの頼んで!」

 

「どうし…あぁ成る程マグロナルドの改良も、視野にして牛肉に手を伸ばそうとしてたんだっけ?」

 

「そう…どんなのが合うか実験中…異世界のハンバーガー…食べてみたい」

 

「よし、店員さん」

 

「はーい!」

 

「追加でハンバーガー二つもポテトとコーラ二つお願い」

 

「かしこまりました!」

 

とツノの給仕が下がりイータはカウンターの隙間から店主の料理を観察する。

 

どうやら貝の下ごしらえをしているようで成る程…そういう手順で…と見ながらも手元のメモを素早く書いている。

 

僕にとっては前世の当たり前のようなもの……いやあまりこういうのは行ったことがなかったなそういえば…過去一度だけ入ってみてそういうのがあるとは分かってたけど…

 

こうして気の知れた悪友と来るっていうのはなかったな

 

と物思いにふけっていると料理が来た。

 

(お待たせ致しました。貝を使ったボンゴレスパゲッティになります。)

 

「おぉ!」

 

(他の料理もお持ちいたします…ごゆっくりどうぞ)

 

「貝を使った料理…この細いのは……ベアト母様が前に作ったうどんに似てる?」

 

「これはパスタだね。うどんとは小麦を使うのもあるから似てるのは当然だ。」

 

「冷める前に…食べる…!」

 

そうしてフォークとスプーンを使い器用貝の実をとりパスタと一緒に口の中へ…

 

「美味しい…!」

 

「これは中々…にんにくの風味と…白ワインの味付けがあさりに染み渡って味わいを更に深くしている……む?これは…成る程、少しの辛みを加えて食の進みを良くしている…コショウのちょっとしたパンチもアクセントになっている…」

 

「貝のジャリっとした感触もなく…生臭さもない…凄い」

 

そうして二人はどんどん食べ進めていきあっという間に完食する。

 

そうしてイータは食べた物の味の詳細…分かる範囲の具材を書き記していきちょうど書き終わった段階で

 

「お待たせ致しました!ハンバーガーとポテトそれからコーラです!」

 

「おぉ!待ってました!」

 

「これが異世界のハンバーガー…!マグロバーガーを牛肉にしたバージョン…!?凄いこんなに濃厚なチーズが…!トマトと玉ねぎにこのソース…は?」

 

「どちらかというとチリソースに似てるかな?」

 

「ゴクン……ハム……!チーズの濃厚な味に牛肉の味とトマトの酸味と玉ねぎのしゃっきりが合わさって…美味しい…!」

 

「…うん、この塩加減良いね。ポテトのカリッとした食感にコーラを飲む…美味しい」

 

「ゴクン…!凄い口の中で弾ける…コーラ…美味!」

 

瞬く間にポテトはなくなりハンバーガーも完食した。

 

「ハンバーガー…これも再現したい…!」

 

「トマトや玉ねぎはあるとして濃厚なチーズと程よいパンズだね。」

 

「肉は固めたようなもの…どう調合するか…」

 

「あとは上げたトンカツみたいな肉にするか…チキンとかかな?」

 

「帰って試作…!」

 

「そうだね。おっ!デザートもあるのか?」

 

「…甘いもの?…」

 

「…どれにする?」

 

「…このストロベリータルトにする。」

 

「よし!すいません!ストロベリータルトも追加で!」

 

「はーい!」

 

そうして異世界ハンバーガーのレシピを考えつつ最後のデザートを待つ。

 

「お待たせ致しました!食後のデザート…ストロベリータルトです!」

 

「こ、これは!?」

 

「ふんだんにイチゴを使ってるね…そして生クリームにビスケット生地の下地…」

 

もはや言葉をかわすよりも食べるという欲求に駆られた二人はストロベリータルトに貪りつく。

 

「この果実の少し酸味の効いた甘味と白いクリームっていうのにビスケットのサクサクが加わった…口の中が幸せ…!」

 

「…そうか…僕が削ぎ落としていたこれは…何かを食べる喜びだったんだ…一つのものを大勢で食べ共有する…」

 

一つ食べ終える頃にはまだ食べたいという欲求に駆り立てられもう二皿注文する二人。

 

そうして食べ終わった二人。

 

「気に入ったようで何よりです。」

 

「店主さん美味しい料理…ありがとうございました!」

 

「…凄い…美味だった…!」

 

「それは良かった、それとここは7日に一度のドヨウの日に繋がります。良ければまた今度来てください。先程頼まれていたハンバーガーの他にもライスバーガーというのもあるので」

 

「!米を使ったバーガー!?…是非!」

 

「それとこれをどうぞ」

 

「これは?」

 

「とても良い食べっぷりだったから用意してたんです。お土産にどうぞ。」

 

と箱のなかにはストロベリータルトが合わせて20個入っていた。

 

「こんなに沢山!」

 

「果実は痛みやすいのでなるべくお早めに召し上がってください。それに久々にストロベリータルトを頼んでくれて懐かしかったもんで。」

 

「ありがとう…また絶対に来ます!」

 

「懐かしかったって?」

 

「昔によく来てくれた女性がいてね、じいさんの代から来てくれてて作ってたんだ。でも昔から身体が弱かったらしくて…晩年は病院からも出ることが出来なかったそうなんだ。もう一度作ってやりたかったな…すみませんなんだか湿っぽくしちゃって」

 

二人は顔を見合わせてそして

 

「いえとんでもない!今度は三人で来ます!」

 

「うん…もう一人絶対に…連れてきます!」

 

そう言い扉を出るのであった。

 

そうして戻ってきた二人。

 

「扉が消えた…ってことは7日たったらもう一度現れるってことか」

 

「それよりシャドウ…これ七陰の皆と…ベアト母様の所へ持っていきましょ」

 

ミツゴシ商会の屋上にて作戦を練っているベアトリクスとイータを除く七陰たち。

 

今日は珍しく諜報から帰ってきていたゼータも一緒だった。

 

「やぁ皆元気そうだね!」

 

「シャドウ…!会いに来てくれたのね。」

 

「シャドウ様お久し振りです!」

 

「主様ご健勝のようで良かったです!」

 

「ボス~久し振りです!狩りにいくです~」

 

「シャドウ様!これから一緒に紅茶でもどうですか?」

 

「シャドウ…丁度帰ってこれたから今日はラッキーだね。」

 

「二人揃ってどうしたの?」

 

「実は…お土産…持ってきた。シャドウから…皆に…」

 

「!シャドウ…私たちのために…」

 

「日頃から頑張ってくれてるからね、皆で食べようと思ってさ。」

 

とねこやでもらったものを広げるシャドウ。

 

「これは?果実を使った…お菓子かしら?」

 

「とても綺麗ですね…」

 

「まるで赤い宝石のようですね…」

 

「美味しそうです!」

 

「紅茶も淹れたのでたべられます!」

 

「少し酸っぱそうな匂いだけど甘い良い香りだね。」

 

「…これは…」

 

そうして全員に配り一口食べる。

 

「…!これは甘いクリームに果実のほんのり酸っぱい味が口の中で広がる…!それに焼き菓子が加わって美味しいわ!」

 

「凄い…これいくつでも食べられますね!」

 

「紅茶とともに食べると味わい深さが伝わります…」

 

「がう~美味し~いで~す!」

 

「これは上流貴族の間で絶対に人気が出ますね!」

 

「サクサクの所にクリームを付けて味の変化が何回も楽しめる…美味しい!」

 

「シャドウ…ありがとうこんなに美味しいものを持ってきてくれて……伯母様?どうされたんですか?」

 

「ベアト母様?」

 

「マザー…?どうし…!」

 

一口食べたベアトリクスは涙を流していた。

 

「ど、どどどどどどどうしたですか母!」

 

「伯母様…何かダメだった…」

 

「違う…違うの…とても…とても懐かしくて…幸せの味を思い出しちゃって……」

 

泣きながらも食べるのを止めないベアトリクスを見てやはりそうなのかとシャドウ、イータは確信した。

 

持ってきたもの全てを平らげた七陰を前にシャドウとイータは今日体験したことを話す。

 

全員が驚いた顔をしてベアトリクスも大層驚き…そして納得した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そうしてまたドヨウの日がきた。

 

イータのラボにはまた扉が出現しておりシャドウとイータ、そしてベアトリクスの姿があった。

 

他の七陰たちはまたの機会にすると言っていた。

 

「…!これは…やっぱり………」

 

「ベアト母様…」

 

「マザー大丈夫かい?」

 

「えぇ…行きましょう…」

 

そうして扉を開けた。

 

チリンチリン

 

「おっ!この間の!今日もきてくれて………」

 

店主が迎えてくれそして会ったことがないはずなのにどうしてか懐かしい感じがした。

 

「あの…すいません…ストロベリータルトを8つお願い出来ますか?」

 

その注文の仕方を聞いてそういうことなのかと理解し温かく出迎える。

 

「あぁ、成る程な……

 

いつもの出来てるよ…いらっしゃい

 

…いやおかえり!」




異世界食堂とのコラボでした!

皆さんアンケートのご協力ありがとうございました!

ベアトリクスが食べるならということのアンケートでしたが迷い混むとは言ってない…のでシドとイータの二人が迷い混む話しでした。

時系列はシドが入学してからでイータのラボに漫画を借りに来たシド。

こち亀よろしくたい焼きを、売り捌いていたところ教団が絡んできたため腹いせにアトミックで吹き飛ばしたところ重要サンプルまで吹き飛ばしてしまったため、

シャドウのバカはどこだ!と怒りながらスライムスーツをマシンガンにして追いかけっこをすることに。

そして突如現れた扉を警戒はするものの二人とも最強クラスの実力者。

慌てずに入るとそこは異世界であった。

そこで店主に料理を作ってもらい堪能した二人。このことで完成品がみえたと貝類のパスタやマカロニを作り販売したところ好評であったとのこと。

そして店主がストロベリータルトを食べる二人を見て昔を懐かしみシャドウとイータはまさかと思い…そして持って帰ったものを食べたベアトリクスは感極まって泣いてしまいました。

もう食べることが出来ないと思っていたものをもう一度味わえたのですから。

転生ベアトリクスのいた世界にあった癒しでありストロベリータルトを食べて頑張ろうという気持ちにしてくれたねこや…

そしてベアトリクスはシド、イータと共に足を踏み入れ店主は察して言葉を掛けるのでした。その後にちゃんとボンゴレ風スパゲッティを戴いておりました。

そうして行ける日はイータのラボへ行きストロベリータルトを食べる親娘二人を見守る店主と他の娘たちもクロの巨大な存在感に圧倒されるものの打ち解け、他のお客とも仲良くなるそんな続きがあるとかないとか…

霧の龍など非にならないほどの強さは異世界食堂最強クラスのクロならではですね。

マグロナルドもポテトの味わいがより一層深まり、ゆくゆくライスバーガーも出してバカ売れすること間違いなし。

さて次回は漸く学園へ入っていけそうです。

本日は用事があるため明日の投稿が難しいと思うので早くて明後日になりそうです。

お気に入り、評価、感想ありがとうございます!沢山の方に読んで頂きとても嬉しく思います!

これからも応援よろしくお願いします!

それでは今回も読んで頂きありがとうございました!


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陰の実力者を目指す少年は王国の魔剣士学園へ入学しいきなり問題を起こし理解者は頭を悩ませる。

今回から学園編へと入っていきます。

オリキャラ今回でますのでご注意ください。

それではどうぞごゆっくり。


シドとイータの世紀の一戦から早二年。

 

15歳になったシドはミドガル王国の魔剣士学園へお入学することとなった。

 

この二年の間に様々なことがあったがそれはまた時間のある時に…

 

シャドウガーデンの規模は日々拡大し七陰も大きく動いている中での入学…王国周辺なら手伝うことも出来るだろうと悪友に言われたシド。

 

着々と組織が大きくなっている…と感じつつも学園生活を満喫しなさいとベアトリクスから言われ彼はミドガル王国へ向かう列車へと乗っていた。

 

「ふふふふ…夢にまでみた王都…主役っぽいキャラとかいるだろうな、そしてイータの言った近々、教団が王国で暴れる可能性があるという報告…ククク…精々この一時を楽しむと良い…漆黒に潜む我らがキサマらを喰い尽くすその時を楽しみにな……」

 

「あんた…端から見ると変人…というか…頭の可笑しい…学園生にしか見えない…」

 

「失礼だな…僕は何処にでもいるモブだよ。そのために成績だって中の中にしといたんだから、ホントは中の下ぐらいのが良かったけど…」

 

「全く…平凡な一般人を装い、裏では物事に介入し、実力者として力を発揮する…って下手したら…バレて普通の実力者になる…」

 

 

「そこは僕が編み出したモブ式四十八手の使い処さ!」

 

「全く…」

 

「それよりイータの設計した列車…凄いよね。それにまさか僕もタダで乗れるなんて。」

 

「ベアト母様と一緒に共同開発した…お陰で収入はウハウハ…列車代も永年無料。私の関係者ならそのパス見せれば…平気。」

 

そう、シドの横には七陰第七席であり悪友にして理解者たる成長したイータの姿があった。

 

二年前までは馬車での移動などで時間がとても掛かっていたが革命的な発明で線路が敷かれ列車が走るようになり今までの移動手段が大幅に変わった。

 

それもあの武神ベアトリクスと稀代の天才発明家にして建築家のイータ・ロイド・ライトのお陰だと人々は口々に言う。

 

そしてイータは王国に作ったラボへ行くついでにシドの分も列車代を出したのである。しかもフリーパスなので何処へいくでも無料なものである。

 

「それとシャドウ…頼まれてたやつ…」

 

とイータはシドへとあるものを手渡す。

 

「ベアト母様の世界の携帯電話…はまだ作れない…でも特定の相手とのやり取りが出来る…繋がる君111号何とか…間に合った」

 

「ホント助かるよ。アルファたちの話し難しいことあるからメモしてるけどイータに聞くことが沢山有りすぎて困る時あるからね。これなら何時でも聞けるよ。」

 

「繋がる君に搭載した極小のスライムに魔力の波長を登録してあってシャドウの魔力も登録してあるから魔力流せばこっちのもう一個の方に連絡来るようにした…スライムの伝導率が成せるものだから大量生産には向いてないけどゆくゆくはシャドウガーデンで七陰と他のものたちとで連携のスムーズ化して」

 

「取り敢えず凄い発明ってことだね。」

 

とシドはイータの説明をぶった切る。

 

「…そう…凄い…もっと褒める…」

 

「流石イータそこに痺れる憧れる~!」

 

「テンションがうざい…却下。」

 

「まったく…」

 

「それと…シャドウと同じ学年でミドガル第二王女もいる…」

 

「確かアレクシア王女だったっけ?名前ぐらいなら僕だって知ってるよ。」

 

「その婚約者のゼノン・グリフィ…調べ途中だけど真っ黒らしい…王女に関わると…面倒…」

 

「真っ黒ね…黒よりの白だったりは?」

 

「逆…白よりの黒…」

 

「イータがいうならそうなんだろうね…」

 

「出来ればこいつの授業を…見てみて報告して…どれぐらいの戦力なのか…」

 

「大分難しいんじゃないかな?ブシン流って物凄く人気って聞くよ。」

 

「出来ればだから…あんまり期待してない…」

 

「酷いな。じゃあ上手くいったら?」

 

「出来高しだい…最高は100」

 

「乗った!」

 

とイータが言いきる前に即答するシド。

 

こういうイータの思いきりの良さは好きなシド。

 

「まったく…それと…多分報告で…ベータが行くことある…ちゃんと聞きなさい…よ。」

 

「分かってるよ。ベータの説明は中々難しいときあるからね…」

 

「その時は連絡…して…」

 

「分かってるよ…それにしてもこのチョコ美味しいね。」

 

「それはそうよ…ガンマたちが物凄い頑張った…今やミツゴシイチオシの商品。」

 

「元の世界のチョコを食べれるとは思わなかったよ。」

 

「…あんたの説明で…逆に良く作れたと思う…」

 

「マザーが補足してくれてたのもあるね…うん自分でも良くガンマたちが作れたと思うよ。苦い豆に砂糖をぶっ混むだけの説明だったのに…それにアレクサンドリアにカカオとかコーヒー豆があるなんて思わなかったし。」

 

「生産ライン…整えるの大変だった…でも莫大な利益…」

 

「確かに上流階級にも広まってるらしいね。」

 

「話題に事欠かない…」

 

「成る程ね。これを機に僕も何か商売してみようかな?」

 

「…シャドウが…やると…最初儲け出ても後から何かで全部パァになる…」

 

「これも全部教団が悪い!」

 

「じゃあ潰さないと……ね」

 

そうして話しているとミドガル王国へと辿り着きそのまま学園へとシドは向かい、イータはラボへ向かう。

 

それからの2ヶ月程はディアボロス教団に特に変わった動きはなくイータはミツゴシ商会からの建築依頼を受けながら鍛練と睡眠に精を出していた。

 

「コンコン♪お掃除お掃除~」

 

「上機嫌そうね。」

 

「はい!ご主人様!良いお天気でお布団を干す絶好の天気です!」

 

「まぁそうね。」

 

「ご主人様、ベアト様からお手紙です!どうやらアレクサンドリアでの新人を鍛えてらっしゃるようです!近々王都へいらっしゃるようです!」

 

「まぁベアト母様のしごきはキツいけどちゃんとしてれば平気よ。」

 

「それとまた漫画を持ち出そうとした大うつけ者がいたようでぼや騒ぎが起きたみたいで新しい既刊を今度来た時にお願いしたいそうです。」

 

「まぁ、あれ持ち出した瞬間…燃えるように…見えないぐらいに加工したスライムカバーを装着してるし…まったく…」

 

「コンコン!ご主人様のお手を煩わす人は許せません!」

 

「別にそれぐらいなら平気…それで仕事は慣れたのイナリ。」

 

「はい!とても楽しくてもっとご主人様のお役に立ちたいです!」

 

「程々に…頑張んなさい。身体を壊したら…元もこもないわ」

 

とイータが雇ったキツネの獣人で妖狐族の生き残りの4尾の狐のイナリ。彼女の村は一晩で滅ぼされ生き延びる過程で彼女は悪魔憑きとなり教団へ移送されそうになったところをベアトリクスとイータに助けられイータに懐きご主人様と呼んでいる。

 

彼女もシャドウガーデンに入団しているもののイータの側近として彼女の身の回りのサポートをするのが主である。それでも彼女もナンバーズ並みの力を持っているので十分強い。

 

彼女本人の気質なのか尽くしたい奉仕精神に溢れイータもそれを受け入れている。

 

「それにしても…シド様は今頃学園生活を満喫しているでしょうか?」

 

「まぁ満喫してるでしょ…余程の面倒事を起こさなきゃ良いわ。こっちに皺寄せ…がくるなんて…ない」

 

と言っているイータの手元の通信機スライムが震える

 

「ねぇ…イナリ…嫌な予感満載なんだけど…でなきゃダメ…」

 

「でもご主人様、でないとそれはそれで厄介なことを持ってくるかもしれません!」

 

「はぁ……もしもし…なにか」

 

「た、大変だイータ!罰ゲームでアレクシア王女に告白して無様に振られようとしたらOKされた!なんでラブコメ主人公ルート入ってんだぁぁぁぁぁ」

 

「……はぁぁぁぁぁぁぁぁ…厄介事持ってきた…しかも…よりによって王女案件とか……」

 

とその後のシドの話しなどまるで頭の中に入らずイータはこれから起こるだろう七陰の中でのあれやこれ特にベータ、イプシロンあとはアルファもだろうが

 

色々と波乱が起こるだろうと悩みの種を持ち込みやがったこのクソヤロウをどうしてやろうかと思いながらイナリの尻尾に顔をうずくまりながらイータは考えを纏めるのであった。




今回はここまでになります。

二年後の二人のやり取りでシドもシャドウガーデンでの情報を共有しイータはスライムを応用した小型通信機を発明しシドへ手渡していました。

アニメ版と漫画版での移動手段が馬車だったり列車だったり違うのでここではイータと転生ベアトリクスが開発したことにして列車を開通させました。

そして通信機の凄さを凄い発明の一言で終わらせるシド。

密かに教団と繋がりがある疑いのゼノンを調査するように言われる。

ミツゴシ印の商品を見てチョコなど良く再現出来たなと思いながら食べる二人。

原作などでも苦い豆に砂糖をぶっ混むで良く作れたと思います。こちらでは転生ベアトリクスもいるのでどういう感じなのかをちゃんと言うことで完成が早くなっています。

そして唐突にオリキャラ登場。

妖狐族の生き残りでイナリです。自分の住む里が襲われ必死に逃げて愛玩動物として慰み者にされそうになりそこで悪魔憑きが発症…暴行などのストレス解消にされそのまま教会へ移されようとした時に転生ベアトリクスとイータの二人が通りがかり一瞬で鎮圧。

傷が癒えるまで二人が寄り添いイナリの尻尾などブラッシングしたり美味しいご飯を食べさせたりなど二人の温かさに触れイータは特に熱心に看病してくれたのもありイータをご主人と呼びベアトリクスのことも慕うように。

彼女もベアトリクスから様々なことを教えられているのでナンバーズクラスの実力は持っている。

王都へ拠点を構えることになりイナリにも手伝いをしてもらおうと準備をしている。

イナリはベアトリクスやイータ以外でシャドウの素を知っている一人で良くイータと言い合っている姿を見て仲がよろしいですぅと良く観察している。

そして原作でもあった罰ゲームで告白するイベントをかましたシド。

たまらずイータに連絡するも頭痛の種を持ってきたと怒りのメーターが上がり始めるイータ。

イナリの尻尾をもふりながらどうするかを考えることに。

そしてUAも三万越えとてもありがたいことです。

お気に入り、感想、評価もとても嬉しいです。

次回も遅くならない内に投稿出来るようにしていきます。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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悩みの種を持ってきたバカタレに制裁を下すべくのんびり娘は刃を研ぐ。

今回はシドが罰ゲームで告白してからになります。

七陰内でもプチパニック状態な中でシドがイータのお店に姿を現します。

それではどうぞごゆっくり!


シャドウのバカタレが罰ゲームで告白してOKされ悩みの種を増やされた…

 

それから一週間程。

 

七陰内でもこの事に関心が集まっており誰しも何かしらの思惑を持って行動に移したと思われているシド…

 

だがイータとイナリは知っている。彼が罰ゲームで告白してまさかのOKを出されて本人が困惑していたことを。

 

「イナリ…そっちの手紙…」

 

「は、はい!ベータ様からあの女どうしてやろうかと書きなぐった痕があります…こ、こちらはイプシロン様からでどんな女なのか確かめてくれる!と怒ったような文字で…あ、アルファ様は件のゼノンの報告書でどうやらこちらはフェンリル派に所属しているようですね。」

 

「そう。確かミドガルで……良く聞く派閥だったわね。」

 

「はい、それでどうやらアレクシア王女の身柄を狙っているそうです。王族の血を欲してさすれば第十二席に座らせるとのことです」

 

「相変わらず……アルファ様は…仕事が早くて…的確…」

 

「そこが一通目でそこから三枚ほどシド様の現状、アレクシア王女とのきっかけ、ベアト様とのことでどうやら思案されているようです…コンコン」

 

「…アルファ様…シャドウとベアト母様くっつけようとしてるから…今回のことは…寝耳に水…だから…うん…」

 

「それとベアト様からで……どうやら探し人がこの王都にいるとのことです。」

 

「…そう…なのね。」

 

「確か…オルバ子爵の娘で」

 

「ミリア…って名前…手掛かりがなくて探すのに時間かかったけど…漸く見つけたヒント…」

 

「早く見つかれば良いのですが」

 

「そうね。早いところ救い出さないと…教団は悪辣で残虐…どんな実験をしてるか…分かったものじゃない…」

 

とイータは引き出しに入れてある青い宝石の入ったナイフを見つめる。

 

「…それで…ガンマのところへの出荷は……平気?」

 

「はい!順調にいってます!ガンマ様から大好評なのでもう少し欲しいとも言ってました!」

 

「女性ならいくらでも…良い香りの…香水や化粧品は……欲しいでしょうからね。」

 

「そして今度の目玉商品の化粧水は凄いです!私も肌が綺麗になりました!」

 

「洗顔の時に…使えて保湿成分……高めだから効果も長続き…売れたらまた研究に使える…」

 

「ガンマ様が研究費用の使いすぎは程々にしてくださいとのことで使いすぎはダメだそうです。」

 

「善処するって書いておいて」

 

「コンコン!?それは気にしないと言ってるようなものです!?」

 

「さてと取り敢えず…これも研いだし…少し裏に行ってる…」

 

とイータが裏へと入る。そこには丁寧に研がれた武器があった。

 

「…あわあわあわ…ご主人様がお怒りなのです…このままシド様が来られた場合…た、大変なことになってしまいます!」

 

とイナリが心配しているとその大変なことが的中する可能性が出てきてしまった。

 

その日は学園の生徒が休みの日のため初めての王都を堪能するものたちやこれからの三年間をどう過ごそうかとちらほらと学園生たちが多くいた。

 

そうその中によりによってシドがいたのである。そしてシャドウガーデンで渦中の栗なアレクシア王女まで一緒である。

 

店に一直線で来ているのですぐさまイナリはシドの元へと向かうのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

時は少し遡り。

 

一方のそんなことを知るよしもないシドは告白してしまい付き合うことになってしまったアレクシアに1日付き合わされることになってしまった。

 

それはこの間の学食の際に超金持ち貴族コースを奢られてしまい泣く泣く休日を過ごさなければならなくなった。

 

その後に一枚辺り10万相当の価値の金貨を10枚ちょいもらったからではない…うん!

 

まぁ悪いことばかりではない。アレクシア王女のお陰でブシン流の授業の合間だがイータから頼まれたゼノンの剣筋も見れたし僕の体感だけど七陰ならまず負ける要素がない。

 

場合によってはナンバーズでも勝てるんじゃないかな?

 

とシドの知らないところで七陰の下にナンバーズと呼ばれる形態が出来ていたことには驚いたものの良いセンスだと思っているシド。

 

そのゼノンがアレクシアは嫌いでどうにか婚約破棄させたいらしく僕に時間稼ぎの良い当て馬になって欲しく僕としてはごめん被りたいが罰ゲームで告白したのもバレていたようでそこを性悪王女に利用されることになった。

 

それと自分としてはアレクシア王女の剣は好感が持てる。凡人の剣とは言うが無駄を省いた努力の剣筋で僕としては好きだが彼女はどうにも自分の剣が嫌いらしい。

 

そういえば王都に店を構えてるんだっけとイータの所へ行こうと思い立ったシドは何とかアレクシアをその方向へと誘導していた。

 

この前通信したとき何だか鋭い音がしていたけどまぁ何か作っていたのだろうとシドは一人納得していた。

 

それが地獄への片道切符に近いのを知らないまま…

 

そうして街へと出たアレクシアとシド。途中彼女が寄る店で配達などを頼みながら買い物を続けるのを見続けるシドはどんだけ買う気なんだと戦々恐々としあの金貨があれば陰の実力者グッズをどれ程買えるのかと思案している。

 

「それにしても……ミツゴシ製の化粧水失くなってたわね」

 

「まぁどうやら人気過ぎて供給が追い付かないぐらいって言われてるから仕方ないよ。」

 

「良くないわ…貴族の間でも流行っているものだし王女たるもの使っている姿を見せないといけないわ。」

 

「ふーんそういうものなんだね。」

 

「ほらポチ」

 

「ワン!」

 

と金貨を投げるので反射的に拾ってしまうシド。

 

「良くできました…はぁ何処かにミツゴシ製の化粧水売ってるところはないのかしら?」

 

「そうだね。これから知り合いのところ行こうと思うけどそこならもしかしたら?」

 

「あらそれは良いことを聞いたわ。ポチの知り合いがどんなやつなのかじっくり見させてもらうわ!」

 

「まぁ良いけど。」

 

とそのお店へ辿り着こうとしたところ見知った顔が飛び出してきた。

 

「コンコ~ン!シド様!急いでお逃げください!」

 

「やぁイナリ、そんなに慌ててどうしたの?」

 

「あら可愛い…獣人…狐?この娘が知り合い?」

 

「この間のことでご主人様がお怒りなのです!」

 

「この間の…あぁ!あれか、それなら良い報告を持ってきたんだ。」

 

と告白騒動のことよりも頼まれたゼノンの良い報告を持ってきたお礼を考えているシド。

 

「そんなことを言ってる場合ではないです!早くしないと」

 

と言っている間に一本のナイフがシドの足元へ刺さる。その鋭利さにとなりのアレクシアは勿論シドも冗談抜きで怒っていることに今さら気付いた。

 

「まっていた……ここに姿を現すのを…首を長くして待っていた…」

 

じゃらじゃらと何かを引きずるイータは何処から出しているのか分からないほどのド低音の声を出す。

 

「ポ、ポチ!?あんた何したらあんなに怒らせられるの!?あんなに怒ってるなんて異常よ!?」

 

「う~ん…そんなに怒らせるようなことはしてない筈…」

 

「こんこ~ん!この間ので物凄く忙しかったのです!それでご主人様寝られてないのでイライラされてるのもあるのです!」

 

「分かったのなら大人しく斬られなさい…!」

 

と振りかぶったそれを良く見るとイータの身長よりも大きなハルバードと呼ばれる両刃の付いた斧のような武器だった。

 

ズォンと地面を破壊しながらシドへと迫るイータ。

 

「お、おおおおお落ち着いてイータ、は、話せば分かる!」

 

「話しなど無用…アンタは死ぬ…そしてその身体で実験する…一石二鳥…」

 

「あわわわわわわわわ」

 

「…まぁポチの知り合いだろうしそんな酷いことにはならないでしょ…ねぇ貴女、このお店って何を置いているの?」

 

とアレクシアはシドを放置することになった。あれほど喧嘩できるなら決して悪いようにはならないだろうという判断しイナリにどんなものがあるのかを聞く。

 

「良ければ見ていってください!新作の化粧水も置いてます!」

 

「ホントに!それじゃあ見させてもらうわ!」

 

とお店へ避難することにしたアレクシアとイナリであった。

 

そうして最小限の破壊をしながらも追いかけ追いかけられを繰り返し裏道でハルバードの柄が首に突きつけられシドを捕まえるイータ。

 

「……ふぅ…行ったわね。」

 

「あ、やっぱり演技だったんだね。」

 

「怒ってた…理由はホント。それで良い報告って…?」

 

とイナリとの会話を遠くから聞いていたイータはアレクシアに聞かれないようにシドと離れさせた。

 

「まずゼノンだけど太刀筋とか実力を計るに準ナンバーズぐらいかな?」

 

「成る程…それなら他の七陰でも対処可能ね…いやドーピングも加味するなら七陰とナンバーズの二人体制のが良い…?」

 

「多分デルタなら一人で問題ないね。ガンマはナンバーズと一緒のが良いかな?といっても彼女は指揮を取る方だから心配いらないね。

 

それとおうにょだけどどうもゼノンの完璧さが逆に怪しいって言ってたね。

 

僕としては念入りに証拠を消しているようにも見える臆病者だと思うけど」

 

「同意見ね。なら現行犯で捕らえるかそれとも…わざと隙を見せてこちらで処理するか…」

 

チラッと丁度良さそうな生け贄を見ながらイータは考える。

 

「イータ?何する気?」

 

「シャドウ…あんた…拷問される気…ある?」

 

と何をとち狂ったのかイータはシドへと問いかけるのであった。




今回はここまでになります。

というわけでシャドウがアレクシア王女に告白をしたことでシャドウガーデン内で噂になっていてベータ、イプシロンは特に顕著で大変なことになってるもののアルファはしっかりと報告を上げていた。

のだがアルファも動揺しているのかシャドウに関することを報告して欲しいことを書いてました。

因みにイータの方へ報告が来ていたのはミツゴシ商会の方へ色々な報告書が来ていてそれをイナリが手伝うとガンマの仕事を持って帰ってきたためです。

そしてイータ開発の化粧水などバカ売れしているので増産することに。そして研究費を使い込むなどは一度ガンマの雷が落ちているもののイータは懲りずに開発費などを活動資金から少し拝借していたりする。

そのすぐ後にちゃんと儲けを出して返してたりする。

それでも拝借はダメである。

そしてイータがとあるもの…ハルバードを研いで刃を鋭利にしていました。

流石に主人を人殺しにしてしまうのはいけないとお店に丁度良く来てしまったシドを逃がそうとするものの失敗。

あわやハルバードの餌食になるかに思われたものの間一髪かわしあんなに怒らせたシドが悪いとそのままお店に入るアレクシアと案内するイナリ。

その後に怒りは本当だったもののじゃれあいのようなものでありアレクシアから引き剥がし情報を共有する二人。シドはアレクシアをおうにょと比喩ってますが本人にはちゃんと名前呼びしています。

そしてイータの思い付いた策に対してシドはどうするのかそれはまた次回で

次は店に入ったアレクシアとイナリのやり取りなどから入ります。

感想、評価、お気に入りありがとうございます!

お気に入りも400を越えとても嬉しいことです。

次回も遅くならない内に投稿出来るようにしていきます!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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従業員な狐娘は自分の作った商品を紹介し腹黒王女は色んな商品を物色し尻尾をもふもふしのんびり娘はお節介を焼く。

アレクシア王女にイナリが商品を紹介します。

そしてイータがアレクシアにとある物を紹介し最後にまさかの出来事が

それではどうぞごゆっくり!


シドがイータから情報交換を行っている間にお店に入ったイナリとアレクシア。

 

「ねぇここのお店って何を置いてるの?」

 

「色んな物を置いてます!さっき言った化粧水や試作品が主ですがとても良い物が揃ってます!コンコン!」

 

「これは…!凄いわ。王都の流行りの化粧水…色んなお店で売りきれが続出してるのに…!」

 

「ここで作ってますので…色々融通は」

 

「ここで作ってる!?ホントに!」

 

「はい!なので市場で出回ってない香りの香水や化粧水も置いてますよ!」

 

「もらうわ!あるだけ持ってきて!」

 

「ありがとうございます~!」

 

「あら?これは…ハーブのにおい?」

 

「はい!そちらはハーブの香りで安らぎ効果があって睡眠時など使うととてもいい気分で寝られるものです!」

 

「これは?」

 

「お日様のにおいというフレーズでとてもポカポカする陽気を再現したもので凄い安心するんです!」

 

「そうなのね!…あらもしかしてこのビンのやつも今みたいな香り系のものかしら?」

 

「あっ!?それは香りが強すぎて刺激臭に苦しんでしまう激辛ハーブですのでお気を付けください!」

 

「うぇ!?そうなのね…試作品って言ってたからそういうのもあるのね。これは?」

 

「それは自信作でアロマの香りを再現したもので効き目も一月ほど持つように作ってみたんです!まだ市場には出てないものなんでこれからミツゴシ商会へ持っていく予定なんです!」

 

「ねぇこれももらえる?お金はあるだけ払うわ!」

 

「いえ試作品なのでお金はいりません。ただ使い心地を聞かせてくれると嬉しいです!」

 

「ありがとう。この隣のも同じやつかしら?」

 

「あわわわわ!?それは失敗作でアロマ成分を強めようとしたら物凄い強くなってしまって30分程たつと酸化して空気中に漂って…火とかに近付けると爆発してしまうのです!」

 

「危険物!?どうしてこんなところに置いてるのよ!?」

 

「まだ試験中だったのもあるのですいません。」

 

「いいわ、それならこれは?」

 

「それは水に溶かすタイプのものでご主人様が言うには炭酸というものがブクブクと出て身体の疲れを取ってくれるんです!」

 

「お風呂で使えるものもあるのね。」

 

「因みに…その隣の軽石と……混ぜると…大爆発するわ」

 

「だから何で爆発するのよ!?このお店爆発物ばかりじゃない!!商売じゃなくて爆弾屋か何かか!」

 

とイータとシドも情報交換もとい言い合いが終わり入ってきた。

 

「芸術は爆発……良くいう…それにその炭酸……のやつは表面のたくさんの気孔が……炭酸の泡を大量に作り、一気に圧力が高まることで……噴き出してしまうから…」

 

「へぇそうなのね…って貴女…まさか蒸気機関の列車を作り出したあの天才発明家のイータ・ロイド・ライト!?武神にして食神たるベアトリクス様との共同で開発した蒸気機関の母!?」

 

「イータ、そんな風に言われてるんだね。」

 

「当たり前よ!今までの物流の根本を変えたのよ!ベガルタ帝国の方にも開通してあっちの海の新鮮な物がこっちに入ってくるようになったし国と国との行き来がずっとしやすくなったんだから!

 

っていうかポチとどんな関係よ!」

 

「まぁあれだよ、悪友って感じかな?」

 

「こいつに…迷惑かけられっぱなし。この間送った…試作掃除機早速壊した……後はドライヤー試作品も…」

 

「いやだからそれは悪かったって。」

 

「天才発明家と知りあいってポチの交友関係どうなってるのよ。…?それとこれは?」

 

とアレクシアは薄い衝撃材のようなものを指差す。

 

「それは靴に入れるための中敷きというもの…ミツゴシで展開してるやつはここで作ってるやつだから。」

 

「中敷き?」

 

「試してみる?じゃあ…脱いで…」

 

「脱ぐ!?露出の趣味なんてないわよ!」

 

「?……靴を脱いで欲しい…」

 

「アレクシアなに想像したの?」

 

「うるさいわよ!ポチのくせに!」

 

とそのまま靴下を脱いだアレクシアの足を測定し始めるイータ。

 

「これなんの意味があるの?」

 

「これは…足の形取って……それを靴の中に入れる…王都の靴…出来は良いけど…機能性はそんなにない…足を痛める…原因は靴だけじゃない…足の踵…」

 

「?踵がどうして関係するのかしら?」

 

「人の足は徐々に歪んでく…踵は特に魔剣士は踏み込むから衝撃も凄い…それが積み重なると痛みと踵の骨が歪んで…歩けなくなる…でもこれは踵を包むような設計…だから平べったく潰れないで足の形を保ってくれる…足のアーチも貴族だと踵の高い靴履く…そうするとこの部分…」

 

とイータはアレクシアの足の土踏まず辺りを触る

 

「この部分が高くなる…そうすると普通の靴履くと…高くなった部分のアーチで足が余計に疲れる…つま先も…足本来の役目を果たせない…これはそのアーチを矯正してつま先も上向きにするから…足の本来の力を使うことが出来る…」

 

と計り終えたのかそのまま一度裏へ下がるイータ。

 

「…何て言うか変わってるのね…天才発明家っていうからどんな陰険根倉女が発明したのかと思ってたわ。知識もちゃんとあってそれを説明出来る…発明家として優秀なのね。」

 

「コンコ~ン!自慢のご主人様なのです!でもご主人様時々寝るのも忘れて実験などされるので唐突に倒れることもありびっくりしますが慣れました!」

 

「寝る間も惜しんで研究って…」

 

「まぁイータだからね。僕も何だかんだなれたね。」

 

「そういえばさっきの掃除機っていうのは何かしら?」

 

「それはこちらのお掃除セットです!太陽の発熱を利用して電気というもので動くそうなんです!埃を吸い取って内臓されてるパックに埃をを入れてカーペットなど凄い掃除がしやすいのです!」

 

「要は掃除に便利な物ってことね…ん?それを壊したポチは何をしたの?」

 

「いや~試しに使うなって言われてた最強吸引モードっていうのを試したら熱がこもりすぎて爆発したんだよね…」

 

「コンコン!?それはダメってご主人様何度も説明されてましたよ!」

 

「それでこのチューブみたいのって?」

 

「それは確か…洗顔クリームってやつじゃなかったっけ?」

 

「そうです!お風呂上がりなどにお肌に付けるとぷるぷるモチモチ肌をキープしてくれるのです!お陰で私のお肌もプルプルなんです!」

 

「成る程だからこんなにぷるぷるなのね。」

 

むにゅーんとアレクシアはイナリの頬っぺたを触りちょっと伸ばしてみる。

 

「そうそう…イナリの肌伸びるんだよね」

 

と言いながらもう片方の頬っぺたを伸ばすシド。

 

「ヒドしゃま~アレクシニァしゃまぁつままにゃいでくださひゃい~」

 

「…可愛いわ…家に持ち帰って家宝にするわ!!あ!あと尻尾も触って良いかしら?」

 

「良いですよ~」

 

「…なにこのふさふさ感!?毛並みもそうだけどいい匂いがするわ!最高級の枕よりも抱き心地が良いわ!ねぇ貴女家に来ない?最高級のもてなしを」

 

「しないでちょうだい…ウチの大事な従業員で…マスコットなんだから…それにその尻尾は私…専用よ…」

 

「コンコン!ご主人様!」

 

「出来たから…さっさと試着する…」

 

と出来上がった中敷きを履いていた靴へと入れ込むイータ。

 

そうして履いてみた感想は

 

「…何かしら?なんだか違和感が強いというか…?」

 

「少しハイアーチ気味……だったからそれに合うように作った。貴族同士の繋がりでヒールの高いのとか履いてたから若干土踏まず高かった…最初違和感あるけど…暫くすれば慣れる…どうせなら裏で剣…振るう?」

 

「これぐらいで変わるなら苦労しないわ…でもそうね少し振るわせてくれるかしら?」

 

アレクシアを伴い裏庭へと案内をする。

 

「…そこ踏んで静電気起きたら…そこの薬品に引火して爆発する…から気を付けて…」

 

「だから何で一々爆発するのよ!?」

 

と言われながらそのまま歩いていく。

 

「試し斬りようの刃を潰したやつ…だから重量は本物と遜色…ない。」

 

「ありがとう…しっくり来るわね…」

 

とアレクシアはそのまま素振りをする。

 

「…何となく…何時もより振りやすい?」

 

「上手く体重を乗せられる分…剣自体にも重みがある……シドの好きそうな剣ね…」

 

「分かる?凡人の剣なんて言われてるけど無駄を削ぎ落として努力し続けているのが分かるからさ。でも実戦だと雑念が入る…自分の剣が嫌いなんだって」

 

「そっ……はぁ…ったく仕方ない…」

 

「ふっ!はっ!やぁ!」

 

「ねぇ試しに実戦で…振ってみる?」

 

「そうね。凄い気持ち良く振れるからちょっと試してみたいわね。じゃあ」

 

「はい」

 

とそのまま刃を潰した物を一度預り学園で良く見られる剣を渡す。

 

「ちょっと!?これ普通の…」

 

「実戦なんだから刃を…潰してたら意味がない。ほら早く構えなさい…」

 

とイータは背中からアレクシアに渡した剣よりも細くアレクシアからして見たこともない物だった。

 

「それ…剣なの?」

 

「普通の剣よりは違うわね。これは日本刀…余計な装飾は付けなかった…」

 

と白鞘から刃を抜き放つイータ。

 

「それで…来ないの?」

 

「怪我しない程度に手加減」

 

するわと言いきる前にアレクシアの真横に一閃の細い剣の後が生まれていた。

 

「実戦じゃ合図…なんてないわよ、本気で来なさい…じゃなきゃ…」

 

「死ぬわよ?」

 

とやけに耳に残る声で言われアレクシアは悟る。目の前にいるこの女は自分よりも強いと。

 

「良いわよ!やってやろうじゃない!後で泣きべそかいて謝ろうが知らないわよ!!」

 

それでもアレクシアはこいつの泣き顔見てやるとイータへと斬りかかるのであった。




今回はここまでになります。

イータたちの話し合いの間にイナリはアレクシアに商品を紹介し化粧水他、市場に出していない洗顔クリームやアロマに入浴剤などを紹介してました。

そのとなりに何故か爆発するものが沢山置いてありましたが。参考にしたのはこのすばのウィズのお店でのやり取り。

そして王女に中敷きを作って上げるイータ。

アレクシアも天才発明家として知れ渡るイータを間近で見て変わった人物だと思いました。まさか爆発するものが多量にあるとは思わなかったようですが。

そしてイナリのことをアレクシアは気に入り自室に連れ帰ろうと思いますがイータからストップが入りました。

連れてかれたら癒しがなくなってしまいますからね。

そして中敷きも完成し裏庭で試しに剣を振るうことに。中々に馴染んでいるようで何時もより降りやすいとのこと。

そんな彼女の剣を振るう姿を見てアレクシアの剣が努力の剣だということに気付いてシドが気に入りそうなものと言いシドも肯定する。

しかし実戦で雑念が入ると言うシドにイータはアレクシアに実戦で振るうかと聞きそのままミドガルで良く使われる剣へと持ち替えさせ自身も背中から日本刃を取り出しそのまま剣を交えることに。

元にしたデザインは斬鉄剣ですがあれよりは常識的な切れ味なので宇宙の人工衛星やらステルス戦闘機を斬れたりはしませんが普通に斬撃を飛ばすくらいなら出来ます。

魔力を伴わない斬撃は純粋な技量なので霧散する心配もないですね。

次回アレクシアVSイータからになります。

この小説を読んで頂いている皆様、感想、お気に入り、評価ありがとうございます!

次回も遅くならない内に投稿していこうと思います!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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周りから凡人の剣故に認められず自らの剣を嫌う雛鳥に道を示すお節介焼きなのんびり娘

今回はアレクシア王女とイータの試合となります。

イータがアレクシアに様々な動きを教えていき昼食にてアレクシアは食の感動に震えます。

それではどうぞごゆっくり!




アレクシア・ミドガルという少女の人生はいつも姉と比べられてきた。

 

姉のアイリス・ミドガルは王国最強の魔剣士と言われ妹私から見ても天才だった。

 

それでも私は誇りに思っていた……

 

追い付けなくても良い…自分に出来ることをしよう

 

そうして剣を振るい無駄を極力なくして自身を高めてきた…

 

でも初めて出たブシンの初戦で私は無様に負けた…姉様は…私の剣を好きと言った…冗談じゃない…私の剣なんて…天才の姉様に分かるはずない…

 

凡人の剣じゃ…天才に敵いっこない…私は自分の剣が…大嫌いだ…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「クッ、何で」

 

「なに?」

 

「何でかわしてばかりなのよ!私をおちょくってるの!」

 

「別に?ただ見るのと体感するのは…大きな違いだから」

 

「余裕ぶっこくんじゃないわよ!!」

 

そうしてアレクシアは剣を振るうがイータは身を横にするだけでかわす。

 

かれこれ10分程やっているがアレクシアの剣はイータに掠りもしない…

 

「コンコン、アレクシア様段々大振りになってきてます」

 

「冷静さを欠いてるね。何時ものアレクシアならイータをあそこから動かすことぐらいは出来るだろうに。」

 

「確かにご主人様円を描くようににしてあの場から一切動いてないですね。」

 

イータは先程からその場で円を描くような足さばきでアレクシアを寄せ付けていない。

 

「息も上がってきてるね。…まぁ本気のイータは僕でも中々に苦戦するし何でも利用するから厄介だ。」

 

そうして幾度か振るい呼吸を整えようとアレクシアは間合いを取る。

 

「どういうこと…なんで…当たらないのよ…」

 

「それは…貴女が冷静じゃないから…戦場ではカッとなった方が死ぬわ…心は熱くなっても良い…でも思考はクールに…」

 

「思考は…クールに…」

 

(癪だけど確かにさっきの私は…冷静じゃなかった…なら考えないと…こいつにまず一太刀…いえその場から動かす!)

 

「どうやら冷静になったみたいね…でどうするの?」

 

「こうするのよ!」

 

アレクシアは突きを繰り出してイータは同じようにかわすがアレクシアは突き出した足とは逆の足で足払いをする。

 

「あら?動かないんじゃなかったの?」

 

「それで良い。正道ばかりじゃダメ…もっと視野を広く」

 

とイータはかわすばかりではなく今度は攻勢に出る。

 

「…そい…てい…はっ…」

 

「やる気のない掛け声なのに…上手い…!」

 

とアレクシアは防戦一方になる。

 

「イータ結構手加減してるね。」

 

「そうですね。アレクシア様より少し上の実力で相手してます。」

 

(振るうスピードも…軌道も見えてるのに…どうして重いの…!?)

 

「なんで重いと…思ってる?」

 

「!?」

 

「貴女の剣はとても無駄が少ない…でもキレが少し足りない。」

 

「キレって…そんなことで」

 

「貴女の今の剣は…こう…でももっとこう…腰の回転と…身体の捻転を混ぜ合わせる」

 

とイータは先程のアレクシアの剣筋と同じように繰り出し次に今言った言葉の通りに振るう。それを受け止めるアレクシアは一撃目と二撃目の重さの違いに驚く。

 

「…さぁ…打ってきて…」

 

「え…えぇ」

 

と困惑するアレクシアだが試しに言われた通りに振ってみる。と今まで振るっていた剣に手応えのようなものが宿り始める。

 

「…そう…そんな感じ…次は足さばき…力強く…でも軽やかに…水面を走るように素早く…」

 

手本を見せるようにイータはアレクシアへと語りかける。

 

「えぇっとこ、こうっととと!?」

 

「力が入りすぎてる…一回ジャンプして力を適度に流して…もう一回…」

 

今までアレクシアは指南役はいたもののほぼ独学でやっていたのもあるがそれでもイータの教え方が上手いのかどんどん吸収していく。

 

「…うん…それならその足さばきで…キレのある動きを足してみて。」

 

「…やぁ!」

 

キィンと今までのアレクシアの攻撃よりも鋭く重い一撃を繰り出せた。更にそこから連続して軽やかに攻撃でき先程よりも洗練されていた。

 

「成る程アレクシアの動きの細かいところを見てそこに身体のキレ、足さばきを加えてアレクシアの剣はそのままに身体の使い方を覚えさせたことで今までよりも鋭い剣戟を出せるようにしたんだね。」

 

「流石ご主人様です!」

 

そうして打ち合うこと数分。

 

「そろそろ終わりに…する。」

 

「はぁはぁ…あんなに動いてるのにどうして息切れ一つないのよ。」

 

「そこは経験の差。貴女ももっと場数を踏めば強くなれる。」

 

「ホントかしら…まともにさっきから攻撃当たってないのに…」

 

「それは目線で…次の攻撃の箇所が分かりやすいから…もっと目だけじゃなくて……触覚も鍛えて空気の流れで何処に攻撃がくるかを予測しないと」

 

「そんなこと凡人の私になんて」

 

「自分を乏し過ぎれば…実力なんて発揮できない…やるかやらないのかのどっちか…出来るまで……繰り返しやれば良い…少なくとも私はそうしてきた……」

 

(一見綺麗そうに見えた手だけど相当なたこの潰れた後が…!)

 

「まぁ…お手本が…あった方が早い」

 

とイータはそのまま剣を納刀する。

 

「そのまま斬りかかって…」

 

「無抵抗なのに斬りかかるなんてって言いたいけど…行くわよ!」

 

とそのまま踏み込んだアレクシア。

 

「…右からの上段…途中で払いに変更…突き…足払い…左払い…斜め上段…」

 

そうして打ち込む間に息が乱れてきたアレクシアに最後にイータは目にも止まらぬ速さでまず踵を少し強く踏むと先端に隠してあった鋭利な刃物が飛び出てそのまま、少量の魔力を纏わせたまわし蹴りを顔の目の前で寸止めする。

 

「動きが見えてればカウンターで逆転できる。それと魔力の配分がまだまだ…余分な魔力を剣に乗せるより…身体強化へまわして手数で攻める…あとで練習出来るようなもの…渡す…」

 

とイータはそのまま息一つ乱さずに裏庭から去る。

 

「アレクシアどうだった?イータの講座?」

 

「そう…ね…あんなに息一つ乱さずにあしらわれたのは…初めてかも…しれない…わ…」

 

と仰向けの大の字でいうアレクシア。

 

「まぁイータも目標としているものがあるから途轍もない努力を重ねてる…それこそ死にかけるような目にも有った。それでも諦めない…アレクシアに伝えたかったのは卑下して自分自身の可能性を潰すなってことだと僕は感じた。」

 

「そう………」

 

暫く沈黙が続いたもののそれでも

 

「なんか初めてね…こういうのは、指南役はいつも私の剣に文句付けて…アイリス姉様と比べて…凡人だの何だの…うざったいったらありゃしない…

 

剣技に磨きを掛けようとしても…私に合わなくて結局独学で…剣をどう振るしか考えてなかった…

 

でもさっきのは私も気付かなかった身体の使い方…魔力の使い方も少量であんなに爆発力のある速さで蹴れた…

 

少量でちゃんとしたパフォーマンスを発揮する…それに私に合わせてくれてたんでしょ?」

 

「まぁそうだね。何時も僕なんて見えてないからね。」

 

(まぁ嘘だけど…そこは言わないでおくのもモブの優しさというもの…)

 

「あのぐらいの速さなら…少しすれば追い付ける…身体の使い方も革新的…あれで発明家なんて詐欺も良いところよ!」

 

「発明家が強くないなんて決まりはありませんので!コンコン!」

 

「…ねぇイナリ、あいつの目指してるのって誰なの?」

 

「それは私の口からは言えません。詳しくはご主人様から聞いた方が早いです!」

 

「それより多分イータご飯作ってくれていると思うから行かないと…立てる?」

 

「えぇ、って料理作れるの?」

 

「はい!ご主人様のご飯美味しいんです!」

 

「イナリ、早く手伝いなさい!あれ作るから」

 

「は~い!」

 

とイナリもイータの元へと向かう。

 

「ご飯も作るって…良いわよ…私の舌を満足させられるかしらね!」

 

「まぁご期待に沿えるものだと思うよ。」

 

そうして昼食がまだだったためシドとアレクシアはイータの厚意に甘えることにした。

 

商店に戻るとイータは人数のおせちなどで使うような四角い器を出していた。

 

その横でイナリが器用に生地を両手で回しながら広げていた。

 

「イナリのは分かりやすいね。イータは何を作るんだい?」

 

「それは後の楽しみ……」

 

とイータは言う。

 

先に出来上がったのはイナリの作っていたピザでシンプルにトマトソースにあらびきソーセージとチーズを乗せた物と新鮮なプチトマトと薄く切ったブロッコリーを乗せたピザである。

 

初めて見る料理に興味津々でアレクシアはシドが食べたようにそのままピザを手に取り口へと運ぶ。

 

「ハム……美味しい!トマトの酸味と野菜のコリコリした感触…贅沢に使ったチーズも絶品だわ!」

 

「こっちのソーセージもコショウのパンチとチーズの濃厚さが堪らないね!」

 

「お口に合ってよかったですぅ~」

 

「ふふん…こんなに美味しいものの次に出すだなんて可愛そうね…」

 

と揶揄するアレクシアであるが次の瞬間香ばしい香りが漂う…

 

「…成る程ね。イータはあれを作ってたのか…納得した」

 

「…ちょ…ちょっとポチ…この鼻を突き抜けるような暴力的な匂いは何なの!?凄いお腹を刺激するわ…!」

 

「…お待たせ…特製…うな重…完成…」

 

「良い具合のたれに程よくご飯に乗せられたうなぎ…イータこれはベガルタうなぎかな?」

 

「良く分かったわね…そうベガルタから仕入れたやつ…脂身の乗ったプリプリのうなぎを秘伝の付け足しタレをかけたもの。貴女も食べたら?」

 

「…と、当然よ!王女であるこの私を満足させられると思ったら…おお…間違い…」

 

パクっと一口食べたアレクシア…その瞬間口の中へ広がる旨味の暴力!脂ののった身はふっくらとさらにタレで深い味を出しそのタレの掛かったご飯を口へと運び弾ける!

 

ご飯の甘味にあまじょっぱいタレが合わさり至高の逸品へと昇華する!

 

今まさにアレクシア・ミドガルという一人の少女はうな重のあまりの美味しさに自分という殻を破られ旨味の極致へと誘われたのである!!!!

 

己を縛る物を脱ぎ捨てるかのようにアレクシアは勢い良く食べ進める。

 

空になったところで次のおかわり用のものをイナリが取り換えるとまた食べ進める。

 

「なんだろう、アレクシアの食べっぷりを見てると僕もお代わりが欲しくなるな…イナリ僕も良いかな?」

 

「は~い!!」

 

そうして二人は気付けば5杯分のうな重を平らげていた。

 

「………美味しさのあまり…我を失ってしまうなんて…」

 

「良い味だったよ」

 

「……強くて料理も完璧なんて…やっぱり天才なんじゃないの…」

 

とイータの規格外さにズーンとなっているのだが良く後ろを見てみるとイータが何かしらの機械から料理を取り出していた。

 

「イータ後ろの発明品はなに?」

 

「これは米を……美味しく炊き上がらせることに…特化した美味しく炊けるスイハンジャー7号と……うなぎを最適な温度で焼き上げらるやつで……作業はタレを塗るだけな、おどれうなぎ君サード。」

 

先程までの感動が一気に吹き飛んだアレクシア。

 

「あ、あんたが作ってた訳じゃないのか!!さっきまでの私の感動を返しなさいよ!!!!」

 

「…?機械で作った方が確実……ブイ」

 

とイータが言うのだがそのままぐわんぐわんとイータの肩を揺らすアレクシア。

 

さっきまでの完璧イメージが崩れ去っていた。

 

「まぁイータ料理するとは言ってたけど何も自分で作るとは言ってなかったし…って聞いてないね…」

 

「あはは、シド様デザートのアップルパイです」

 

「ありがとう…うん、サクサクしてリンゴの味も濃厚に出てて美味しいね!」

 

「ポチあんたばっかりズルいわよ!!」

 

「アレクシア様もどうぞ~」

 

「頂くわ!!」

 

と一通り言い終わったアレクシアもイータもアップルパイに舌鼓をうちアップルパイの美味しさにイナリを再びスカウトしようとするアレクシアなのであった。




今回はここまでになります。

イータのアレクシアおうにょ育成計画が始まるのか…な展開でした。

独学で振っていた分最適な動きなどがまだまだなためイータが実際に動きそれを身体で覚えさせたことでアレクシアも少し上達していくことに

イータも実力を合わせているとはいえ、攻撃も視線など透き通る世界で何処の筋肉が動いてなど見えるのでアレクシアの攻撃は一切当たらず。

アレクシアもイータがバカにしているのではなく何かを教えようとしていることに困惑しながら自分の剣が上達していることに驚きを禁じ得なかった。

そして圧倒的な実力差であったものの何やら鼓舞されているのは分かったのでもう少し頑張ろうと決意。それでもまだ自分の剣は嫌いなまま。

そこはシャドウが何とかするでしょう

そして昼ご飯をごちそうになりピザとうな重を出された。

中々に重いですがアレクシアおうにょは立場も忘れ夢中で食べ進め料理も完璧なんてと思ったものの後ろの機械で作っていると聞き感動が引っ込んだ。

そしてアップルパイを頬張るのでした。

さてそろそろ物語も動き出し行きます。

果たしてどうなるのか…

皆様のお陰でUA40000を越えました!

お気に入り、感想、評価も沢山ありがとうございます!

これからも精進していきますので宜しくお願いします!

明日の投稿ですが予定があるため多分厳しそうなので明後日になると思われます。

それでは今回も読んで頂きありがとうございました!


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アレクシアを襲う変事…王国を揺るがすブレリュートは静かに奏でられる。

物語が加速していきます。

予定より早めに仕上がったので投稿しました!

色々とお節介を焼くイータ。

そしてシドと何やら計画を練るイータ。

そして物語は急展開を迎えます。

それではどうぞごゆっくり!


アレクシア王女とシドにご飯を振る舞ったイータとイナリ。

 

アレクシアはもう少しだけ見ると言うと店内を物色する。

 

「そういえばイータ報酬のこと」

 

「あぁ…忘れてた…はい」

 

とイータは……100ゼニーを渡した。

 

「…………………………イータ?確かゼノンの調査最高100万ゼニーって話じゃなかったっけ?」

 

「誰も…100万なんて言ってない…」

 

「いやいや確かに100」

 

「話しを最後まで……聞かなかったから…100で良いのかと…」

 

陰の実力者を目指す少年は王国の魔剣士学園へ入学しいきなり問題を起こし理解者は頭を悩ませる。にて最高100と言ってシドがそこで話を切ったことを例に上げるイータ。

 

「し、しまった…いやそれだけじゃないでしょ!?」

 

「あとは迷惑料…私がどんだけ苦労したか…事が終わったら私以外の七陰とデートしなさい…それでチャラにするわ」

 

とそのまま一枚10万ゼニーの金貨10枚と何やら紙ををシドへ手渡す。

 

「分かったよ。イータ何時もありがとう。」

 

「全く程々にしなさいよ…気を付けなさい…闇はすぐそこまで来てるわ。」

 

「…成る程…漆黒の衣を纏う時は…近い」

 

そして二人はこれからの計画をそのまま話し込む。

 

「ねぇイナリ、これはなにかしら?何かの本?」

 

「本?あわわわわ!?それは非売品なのです!」

 

「え?そうなの?…えっと落○騎士の…なに?」

 

「お!それはキャバルリィじゃないか、新しいの出したんだね。」

 

「あぁそれね…世に出す気はないわよ。」

 

「ふ~ん……」

 

ぱらぱらと読み進めていくアレクシア。

 

…それは劣等生と呼ばれた学園生がとある国の天才王女を降していくのを皮切りに様々な困難に立ち向かっていくそんな話しだ。

 

「ねぇ!これの続きないの?」

 

「二巻ならその上にある。」

 

とそのまま次の刊も読んでいき

 

「どうしてこれを出さないの?絶対出したら今話題のナツメ・カフカなんて目じゃないのに。」

 

「それで儲ける気はないわ…それに悪用されでもしたら困るから。」

 

「悪用ってそんなことする輩なんて」

 

「何処にだっているものよ。裏で暗躍する奴らなんてね」

 

「そう…それでこれ貸し出しはしてないの?」

 

「してない…けどここに来て読む分には別に良い…それとこれ」

 

とイータは何やら黒い石のようなものを手渡す。

 

「それは…魔力を込める……量によって色が変わる…弱くて白<青<赤<紫になる。最初は継続的に白を…そうね…30分ぐらいそのままに…出きるようにしなさい…強すぎても弱すぎてもいけない…自分の中で…これだという感覚を持つこと…」

 

「これ希少なものなんじゃないの?良いの?」

 

「別に趣味だから良い……それよりちゃんと強くなること…」

 

「分かったわ!また今度来るわ!その時には今度こそ一撃入れてやるんだから!覚悟して待ってなさい!それとあんたの越えたい人ってのも教えてもらうんだから!」

 

「気長に待ってる……頑張んなさい」

 

そうしてアレクシアはシドと共に学園へと帰っていくのであった。

 

「コンコ~ン、ご主人様…取り敢えずこれでOKですか?」

 

とイナリは小型の注射器をいくつかイータへ差し出す。

 

「えぇ流石ねイナリ。警戒心を抱かせず痛みも感じさせないで採血するのは貴女にしか出来ないわね。」

 

「…それでは」

 

「えぇ、近いでしょうね、彼女が浚われるのは…」

 

二人はこれから始まるであろう彼女を取り巻くものが変わっていくことを感じていた。

 

それからまた一週間

 

今日も僕は王女と一緒に僕らは夕暮れの林道をひたすらゆっくり歩く。普通に歩けば10分そこそこで抜ける道に平気で30分以上かける。暗くなって星が見えた日もあったが我慢だ。もう壁に向かって話してろよと思った日もあったがひたすら我慢だ。

 

我慢、我慢、ただ我慢。

 

しかし流石の僕も一言、言いたくなってくる。

 

「あー、ちょっといいっすか?」

 

「何よポチ」

 

アレクシアはお気に入りの切り株に腰かけて足を組む。

 

座ってんじゃねぇさっさと歩け、とは言えず僕も仕方なく隣に座る。

 

「結局ゼノン先生の何が嫌なんだ? 客観的に見て結婚相手としてはかなり優良物件だと思うんだけど」

 

「あなたねぇ、私の話聞いてなかったの?」

 

少し不機嫌そうなアレクシア。

 

「全部よ全部、あいつの存在全てが嫌なの」

 

「イケメンで剣術指南役で地位も名誉も金もあって公私を弁えたいい人に見えるけどね。実際女子からの人気も高いし」

 

僕の言葉をアレクシアは鼻で笑った。

 

「上辺だけはね。上辺なんていくらでも取り繕えるわ。私みたいにね」

 

「なるほど説得力のある言葉だ」

 

そういえばアレクシアも人気は高い。吐き気がするほど猫を被っているからな。

 

「だから私は人を上辺で判断しない」

 

「ならどこで判断するのさ」

 

「欠点よ」

 

アレクシアはドヤ顔で言った。

 

「なかなかネガティブな判断だ。君にぴったり」

 

「あら、ありがとう。ちなみに私、欠点ばかりでろくに美点のないあなたのこと嫌いじゃないわ」

 

「ありがとう、こんなに嬉しくないほめ言葉は初めてだ」

 

「だからよ。欠点が無い人間なんていないのよ。もしいたとすればそれは大嘘つきか頭がおかしいかのどちらかね…この間のあんたの悪友だって物凄い強いけど料理とかからくり頼りだし研究に没頭してイナリに迷惑掛けたりとか完璧じゃないわ」

 

「なるほど、独断と偏見に満ちた回答をありがとう。イータも昔よりは寝相は良くなった方だよ。昔は寝ながら徘徊してたし」

 

「逆にどうやったら徘徊出来るのよ…まぁ良いわ…どういたしまして、欠点まみれのポチ。ほーら取ってこーい」

 

そしてアレクシアは1枚の金貨を放り投げ、僕は全力ダッシュでキャッチする。

 

よっしゃ10万ゼニーゲットだぜ。

 

僕は金貨をポッケに入れて、手を叩いて喜ぶアレクシアの下に戻った。

 

「よーしよし」

 

頭を撫でられる。我慢だ。

 

「嫌がってる嫌がってる」

 

わちゃわちゃと撫でられながら僕は改めてこいつろくな人間じゃねぇと思った。

 

「顔に出てるわよ」

 

「出してるんだ」

 

フフ、と笑ってアレクシアは立ち上がった。

 

「さて、帰りましょう」

 

「はいはい」

 

と帰る中で途中まで一緒に帰り別れた僕たち…

 

しかし何やら嫌な予感がしたので来た道を引き返す。

 

するとなんということだろうか

 

今にも連れ去られそうなアレクシアの姿が!

 

「アレクシア!!」

 

「だめ…!?ポチ…逃げなさい…!」

 

「アレクシアを離せぇぇぇ」

 

とシドはそのまま大振りで剣を構えアレクシアを浚おうとしている黒服の集団に斬りかかるのだが多勢に無勢。

 

シドは取り押さえられてしまいその場に誰も来ないのを良いことに拷問を受けることに。

 

両手、両足の爪を全て剥がされ全身に切り傷を入れられ骨も何本か折られていた。

 

悲鳴を上げようにも口に何かを詰められ叫ぶことも出来ずただ痛みに耐えるしかない。

 

「やめなさい!あんたら……私が目的…なんでしょ!そいつを離しなさい!!」

 

「………」

 

なおも拷問する黒服集団はひとしきりシドをなぶると当初の目的であるアレクシアを浚う。

 

「ま……て…アレ……クシアを……はな…」

 

と黒服はシドのしつこさにうんざりしたのかそのままシドを吹き飛ばす。

 

「あ…ぁそんな………シド…シドーーーー」

 

そんなアレクシアの叫びが木霊したからかざわざわと何があったのかと人が集まろうとして来た。

 

慌てたような黒服たちはそのままアレクシアを薬で眠らせるとその場を立ち去る。

 

後日王国を駆け巡るニュース

 

それはミドガル第二王女アレクシア・ミドガルが誘拐されたこと。それを阻止しようとしたシド・カゲノーという生徒が意識不明の重体だということであった。




今回はここまでになります!

思ったより早めに出来たので投稿できました!

イータから色々とお節介を焼かれ魔力を込める量によって色が変わる石を手渡されるアレクシア。

弱すぎても強すぎてもいけない魔力を流す良い特訓になるでしょう。

そしてシドへの報酬……最初に100ゼニー渡したイータ。

途中で言葉を切ったシドが悪い…ちゃんと人の話しは最後まで聞こうということを知ったシドなのでした。

そして二人はこれからのことを話す。

そしてアレクシアが、見つけた本…まぁあれです。魔力量はそんなでも最強クラスの身体強化と相手の剣技を模倣できる落第騎士の物語。

貸すこと、売りに出すことはないものの来たら読んでも良いとアレクシアに伝えました。

身体強化と剣技と不屈の精神力のみで勝ち上がったようなトンでも存在。

…アレクシアに一刀修羅とかやらせたら面白そう…

そして密かにアレクシアの血を採血していたイナリ。

純真無垢な笑顔と柔らかい対応で警戒させずそしてこっそり痛みを感じさせませんでした。

イータは受け取った物を培養しオリジナルの方はちゃっかり研究用にすることに。

そして二人はこれから起こるだろうことを予感しました。

アレクシアの独白とシドとの話し合いとなりその後に誘拐されることに…

原作と違いアレクシアが誘拐される場面に遭遇したシドはそのまま勇猛果敢に挑み王女を浚われそうになった場面に格好良く参上し無様に負けるモブを演じることに…

いやいやそこは助けようと思いますがまぁ実力バレするのも面倒かつ動き出した者たちの尻尾を掴むために一芝居打つことに。

シドへの感情移入がアレクシア…はすごくなりそう??

さて今回誘拐騒動が発生し当初はシドを犯人にしようとしていた何処かしらの教団は意識不明にしてしまったので犯人に仕立て上げようとすると不自然になります。

次回はそんな目覚めないシドをお見舞いにくる久し振りの登場をするクレア姉さんを出したいですね。

感想、評価、お気に入りありがとうございます!

皆様のおかげでお気に入りも500を突破しとても励みになります!

これからもどうぞ宜しくお願いします!

今回も読んで頂きありがとうございました!

































???

全く…あの子も無茶をするわ…

まさか……

マザー様王都へ集結させられる者たちの選定完了致しました!

ありがとうラムダ…

それじゃあ向かいましょう…

夜闇に潜む陰の集団は今…動き出す。


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意識の戻らぬ弟を心配する姉は変わらぬ優しさに涙し漆黒の園の主は王都に潜む闇を裁くため始動する。

今回はクレアが久々の登場になります。

アイリス王女側とシド側で分かれ話しが進んでいきます!

それではどうぞごゆっくり!


アレクシア王女誘拐事件より4日

 

姉であり第一王女アイリス・ミドガルは行方の分からなくなった妹の捜索を騎士団と共に行うも未だに発見に至らず妹アレクシアを守ろうとした学園生シド・カゲノーも目を覚ましていなかった…

 

アレクシアの婚約者でもあり剣術指南役の金髪の男ゼノンへアイリスは言う。

 

「ゼノン侯爵、今回は協力感謝します」

 

「学園の敷地内で起きた事件です。私にも責任はありますし、何よりアレクシア様の身が心配で……」

 

ゼノンは目を伏せて悔しそうに唇を噛む。

 

「あなたには剣術指南役の仕事もあります。あなた個人の非を問う者はいないでしょう。今は誰が悪かったかではなく、アレクシアを無事救う事を考えましょう」

 

「そうですね……」

 

「それで」

 

とアイリスは一度言葉を切り捜査資料を閉じた。

 

「シド・カゲノーという学生の意識はまだ戻らないと聞きます。」

 

「状況的に彼が目を覚ましてくれれば犯人の特定に格段と近付くのは事実です。しかし彼のあの怪我の度合いからして起きても錯乱状態になりかねないと医師の判断があります。

 

実力的にまた人数的に勝てぬ相手にも関わらず彼は最後までアレクシア様を助けようとしたことは…間違いないでしょう。」

 

「…アレクシアにも良い友人が出来ていた…とても喜ばしいことです…彼の無事と目撃したものを話せれば…」

 

「彼の無事を祈るばかりなのがもどかしい…」

 

「彼は今王立病院に?」

 

「はい。彼の姉のクレア・カゲノーが付きっきりで看病してます。」

 

「姉弟姉妹を思う気持ちは…同じですね…アレクシア…どうか無事でいて…」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ここは王国でも指折りの治療院…

 

シド・カゲノーはボロボロになりながらも最後までアレクシア王女を守ろうと戦い傷付いた。

 

アイリス王女はそんな彼に最高の治療をするために個室を手配した。

 

意識不明になり4日

 

その4日の間姉のクレアはずっと付きっきりで看病していた。夜更けにアイリス王女もお見舞いに来たりとして少し驚いたものの目を覚まさない弟の心配をしてくれている優しい方なのは分かった。

 

「…寝ていると…ほんと寝顔が可愛い子……どうして」

 

クレアは何故こうなったのか…どうして弟がこんな目に合わなければならないのか

 

「どうして逃げなかったの…何時もシドは弱虫で私の後ろに隠れてたのに…痛かった筈なのに…それでも…シドは戦おうとして…どうしてこんなに優しい子がこんな目に合わなければならないのよ!!!」

 

ポロポロとシドの顔にクレアの涙が滴り落ちる。

 

ガラガラガラ

 

「がぅ…姉様…」

 

「マナ…」

 

「クレア少し休みなさい。目のクマが凄いわ。それに腫れてるし…」

 

「ルーナ…ありがとう…商会で忙しい筈なのに…でもシドの事が心配で…眠れないの…」

 

と親友でありシドとも交遊のあるルーナとマナも看病に来ていた。

 

「がぅ…シド様…だ、大丈夫です!シド様は強いです!絶対に目を覚ますです!だから姉様泣かないで」

 

とマナはクレアを励ます。

 

「クレア…はい、飲み物飲んで一息つきましょう。」

 

「ありがとうルーナ…ゴク 温かい…それに凄い…やす…ら…………」

 

と眠り込んでしまうクレア。

 

「ごめんなさいクレア…こうでもしないと休んでくれないから。」

 

とルーナ…いやシャドウガーデン七陰第三席ガンマは無味無臭の睡眠薬を含んだものをクレアへ飲ませそう言う。

 

「がぅ…姉様…泣かせた…許さないです。教団は皆殺しなのです…!」

 

とマナは…いやシャドウガーデン七陰第四席デルタも言う。

 

「そうね…まさかこんなことに出るだなんて教団側のシナリオも少し狂ったのかもしれないわ…そうですよね……シャドウ様」

 

と語り掛けるとむくりと起き上がるシド。

 

「ふぅん…この4日寝るしかやることのなかったとはいえ退屈であった。イータのシナリオでは騎士団に囚われて拷問されるかと思っていたが、なまじ人間の嫉妬深さとバカさには驚かされる…だが予定の範囲内だ。」

 

実際シドは既に意識も覚醒していたものの厄介事もあるので意識が戻っていない風を装っていたのだ。

 

彼もまさか拷問紛いのことをあの場でやるとは思っていなかったがそれでも彼は上手いこと自分に容疑が掛からないように動くことで教団側に焦りを生ませた。

 

「姉さんには心配をかけてしまったな…後で埋め合わせしないと…ガンマこれが終わった後でミツゴシのおすすめスポットを教えてくれ。」

 

と素直にガンマに頼るシャドウ。

 

「お任せください。最高級に良い場所を確保致します。」

 

「ボス!教団壊してボスと姉様悲しませたの倒すです!」

 

「焦るなデルタ。まずは話しを聞かなければならない…そうだろうアルファ。」

 

「えぇシャドウ。」

 

と窓際に佇むアルファ。二年前よりもスタイルも良くなりますます伯母ベアトリクスに似てきた。

 

今回の治療院も王国ご用達であるもののミツゴシが経営している治療院のため商会のトップ、ルーナが来ていたとしても視察という名目がたつ

 

「それよりお腹空いたでしょ?まずはマグロバーガー買ってきたから食べて。」

 

とミツゴシ系列のマグロナルドにて購入したマグロバーガー、月見マグロ、ヅケマグロバーガーなどを手渡される

 

「うん…良い具合にミドガルマグロの味を損なわずそれでいてパンに合うように調合されて低価格で実現し顧客を掴む…これはガンマだからこそ成功したのだろうな。」

 

「勿体なきお言葉…これからも精進致します。」

 

「それでアルファ報告は?」

 

「えぇまず王国側の動きとしては最初に貴方を犯人に仕立て上げようとしたものの意識不明の重体故にそんな嫌疑を掛けることも出来ず目撃者を消そうにも王立の治療院でそんなことをすれば怪しまれる…

 

あなたが意識を取り戻したら理由をつけて学園に戻らせてそこで始末して情報操作し貴方が犯人であるようにする段取りみたいね。」

 

「どれだけガバガバなんだか。」

 

「本当ね。余計な嫉妬深さが己の首を絞めるだなんて思いもしなかった…いえ思い至らなかったのでしょう」

 

「成る程…さてここからならイータのプランCでいけるな」

 

とボソッと呟くシャドウ。

 

「ならば駒を進めるとしよう。確かアイリス・ミドガルがもう少しで来るのだろう。この4日ほぼ同じ時間に来ているからな。そこで目を覚ましたようにし誰がやったかを口走る。そうすれば調べるだろう教団という国に巣くった病巣に…」

 

「それで余計なことを喋られないように早期退院で動き出す。」

 

「そこを逆に強襲しアジトを潰す…シンプルだけど分かりやすくて良いわね。」

 

「そしたらプレリュードへの招待状でも届くだろう…あとはデルタ。」

 

「はいです!」

 

「ド派手にやれ、だが建物の破壊は最小限に抑えるのだ。後でイータにどやされてしまうからな。」

 

「分かったです!」

 

「後の段取りは任せる…というよりもマザーも来るのだろう?」

 

「えぇ伯母様もシャドウガーデン構成員を連れて付近にて潜伏してるわ。全体指揮はガンマに現場指揮は伯母様と私の二人。後方支援はイプシロン。ベータは私かシャドウの補佐かしらね。」

 

「磐石の布陣だな。」

 

「えぇ問題はないわ。それとイナリから伝言よ。王国の秘宝は無事だそうよ。」

 

「そうか…ならばよし。そのまま任せるとしよう。」

 

「あの娘はナンバーズと同等の実力だから問題ないもの。今度あったら尻尾をもふもふしようかしら?」

 

「イータにどやされてしまうぞ?私のだって」

 

「冗談よ。シャドウ…あなたがなぜ王女様とロマンス繰り広げていたか知らないけれど」

 

アルファが半眼で僕を睨む。

 

「ロマンスは繰り広げていないかな…?」

 

「何か理由があるのよね。私たちに言えない何かが」

 

僕の瞳を覗き込むアルファから逃げるように視線を逸らす。

 

僕は沈黙した。当然、大した理由なんてない罰ゲームで告白したことはイータとイナリしか知らない事情だから

 

「わかっているわ。あなたが何か大きなものを抱えているってことぐらい」

 

特に何も抱えていない場合はどうしたらいいのだろう。

 

「でももう少し私たちを信頼して。今回だって事前に知らせてくれればこんな大事にはならなかっしあの娘の負担も減らせた。そうでしょ?」

 

「まぁそうだね。確かに悪いと思ってる…アルファ。」  

 

「なにかしら?」

 

「これが終わったら時間を開けておいてくれるかな?」

 

「!えぇ…良いわよ。その時は色々と奢ってもらうわよ」

 

「勿論。」

 

イータのプランに沿ってとは心の中に留めておく。

 

「シャドウまたね…」

 

とアルファは窓から出ていった。

 

「それではシャドウ様我々もこれで…クレアはどうしますか?」

 

「この様子からして二日は起きないだろう…デルタ重要任務だ。」

 

「がぅ!任務!ボス直々です!」

 

「姉さんを寮まで無事に送り届けるんだ。そして作戦までは付きっきりでいてやってくれ。」

 

「分かったです!」

 

「頼んだぞ。」

 

とガンマとデルタはクレアを背負い退出した。

 

「さて…イータの言った5つのプランの一つが機能して良かった…さて夜闇に潜む愚か者たちは知るだろう…何に手を出したのかを…」

 

月を見るその顔に不敵な笑みを浮かべるシドであった。




今回はここまでになります!

というわけでアイリス王女も登場し、いよいよ決戦が始まります。

剣術指南役も拐うことを決行した人間の低俗生にうんざりしどうしたものかと頭を悩ませることに。

実際にここから犯人扱いしたらガバガバですが教団がこれまで隠蔽出来ていたので大丈夫と過信している。

その過信が命取りになるとも知れずに。

そして見舞いに来ていたクレア。

心配でガンマとデルタも見に来てクレアを強力な睡眠薬で眠らせてデルタが寮に送り届けることに。

そしてアルファが現状を報告しシャドウは前々からイータと話していた内の一つのプランを言いそのまま作戦を決行する予定。

作戦が終わったあとにアルファたち七陰とクレアにお詫びのデートする予定なシド。

リア充ですね…

次回はアイリス王女へ目を覚まし目撃したことを言う大根役者なシドから始まる予定です。

沢山のお気に入り、評価、感想頂きありがとうございます!

これからも精進していきますのでどうぞ宜しくお願いします!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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姉王女は目覚めた妹王女の友人から事の顛末を知り調べ始め病巣の者たちは焦りを加速させ暗躍する者たちの掌で踊る。

今回はアイリス王女がお見舞いに来るところからになります。

そして暗躍タイムの始まりになります。

それではどうぞごゆっくり!

ラストに驚きの展開が待ち受けております。


私はここ数日日課になりつつある妹の友人の病室へと歩みを進めていた。

 

(アレクシアの手掛かりもなく…ただ時間が過ぎていく…騎士団もこの事件を何やら打ち切ろうと働きかけしようとしている…何やらキナ臭い…この王国で何が起きようとしているの…)

 

そうして彼女はお見舞いに訪れると静かに眠るシド・カゲノーの姿がある。

 

「…アレクシアを守ろうとして守れなかった貴方の無念…それは私では計り知れないものものなのでしょう…アレクシア…こんなことになるのならもっと話しをしておけば…」

 

「ん……んん…こ…ここは…」

 

「!気が付きましたか!!」

 

「僕は…たしか…そ、そうだアレクシア…アレクシアは!?」

 

「落ち着いて。貴方は四日間眠っていたのです…」

 

「あ…ぁぁぁああ僕はそうだ…ご、拷問されて…うぁぁあああ!!」

 

「大丈夫…大丈夫です。」

 

とアイリスはシドを抱きしめ宥める。

 

ある程度落ち着いたであろうシドにアイリスは医者を呼ぼうとする。

 

「とにかく医者を!」

 

「あ、あの…貴女は…?」

 

「私はアイリス・ミドガル。アレクシアの姉です。」

 

「アレクシアの!アレクシアは無事なんですか!?」

 

「…いえ正体不明の者たちに拐われたことしかわからず…」

 

「アイリス王女…!ぼ、僕を…拷問していた奴らが…」

 

と震えながらアイリスへ言葉を紡ごうとするシド。

 

「良いのです。拷問されて気が気ではないでしょう。今は身体を休めて」

 

「アレクシアの血が…王家の血が必要だって…そのために拐うって…」

 

「本当ですか!?」

 

「それで…去り際に…組織の名前なのか…ディアボロス教団って名乗って……」

 

「ディアボロス教団…!それがアレクシアを拐った奴ら…!シド君…大変な目に遭ったというのに貴方は拐われたアレクシアを思ってくれていたのですね…ありがとう。貴方の言葉…無駄にはしません!」

 

とアイリスは部屋を出て医師を呼びに行く。

 

「……ふむ。切羽詰まっているということか…騎士団にもやはり奴らの手の者がいるのは間違いない…ゼノン・グリフィの手先といったところか。」

 

とシドは冷静に分析し第一王女はまずディアボロス教団自体を知らないということが分かった。

 

「さて奴らはこれで焦りこちらを消そうとするだろうな…だがその程度は織り込み済みだ…あとは蒔いた餌に掛かるのを待つだけだな。」

 

そうしてシドはその日の内に検査を受けて異常はないそうなのでそのまま退院ということとなった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「退院!?何故ですか!まだ彼は安静にしているべきでしょう!精神的にも身体的にもまだ治りきっていない筈です!」

 

「しかしこれは既に騎士団にて決定したことなのです…」

 

「だとしても彼はアレクシアを拐った者たちのことを私に必死に伝えようとしてくれました!それを無下にすることなど私には!」

 

「とにかくこれは既に決定したことです。アイリス王女もアレクシア王女の捜索へお戻りください。」

 

アイリスは騎士団の決定に異を唱えるものの既に決定したことだと言われてしまう。

 

シド・カゲノーが目撃したこと、口にしたことを話した途端の決定にアイリスは内心騎士団にシドの言ったディアボロス教団と関り合いのあるものがいるのであろうかと感じた。

 

「ともかく…彼の貴重な証言を無駄にしないためにも…私が信頼出来る者で調べなければ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

そうして5日振りに寮へと戻ってきたシドは部屋へ戻るなり寮の自室で自慢の陰の実力者コレクションから使えそうなものをピックアップしていた。

 

今夜にベータが来る筈だから少しは見栄を張りたい。

 

葉巻は……まだ似合う歳じゃない。

 

ヴィンテージワイン……フレンチ南西部ポルトーの逸品90万ゼニーだ。いいね、月の隠れた今夜にぴったりだ。

 

ならば最高のグラスをこれに合わせて……これもフレンチで統一、ビトンのグラス45万ゼニーだ。

 

他にもアンティークランプにそれから偶然拾った幻の絵画『モンクの叫び』を壁に掛けて……素晴らしい。

 

ああ、心が満たされる。

 

盗賊狩りしたのも這いつくばって金貨を拾ったのも全てはこの為。

 

僕は選び抜かれたコレクションから出来上がった自室に感涙する。

 

後はこれにドアの間に挟まった届いたばかりの招待状をセットして、時を待つだけだ。

 

僕はその瞬間を待った。

 

ここまでは順調だ…イータから予め説明はされている。

 

「作戦は王都に点在するディアボロス教団フェンリル派アジトの同時襲撃…襲撃と同時にアレクシア王女……の捜索と救出…まぁこれは平気だろう。なんせ…おっと誰が聞いているか分からないからな…

 

さてイナリにはかなり負担を掛けてしまったからな…今度何かしら差し入れをしないと。

 

それにしても後なんだっけか…ロキ、ヨルムンガンド、ヘルの派閥がミドガルではあるんだっけ…何で全部北欧神話の神や怪物の名前なんだ?

 

フェンリルもそうだし…まぁ別に良いか…どうせ全部マザーは潰すつもりだろうし…もしかしたら既に潰してそうな気もするけど…う~んなら若い世代の育成…

 

ならアイリス、アレクシア王女の二人は…王族だし今後の未来を担うだろうから彼女らを矢面にしてその裏でこっそり解決する陰の実力者っての捨てがたい……マザーも姉さんや他の七陰や全体のメンバーの育成をしてたし…そういうのもありか?」

 

と未来に思いを馳せる。

 

「まぁなんにせよ………時は満ちた、今宵は陰の世界…」

 

と丁度入ってきたベータへそう問いかける僕であった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

敬愛するシャドウ様に呼ばれ私は部屋へと入る。

 

それが、シャドウの下に訪れたベータを迎えた言葉だった。

 

シャドウはベータに背を向けたまま足を組み椅子に座っている。

 

無防備な背中、だがその背中が何よりも遠いことをベータは知っている。

 

その手にはワイングラスがアンティークランプに照らされて輝いている。そして何気なく呑んでいるワインの銘柄は、酒に疎いベータにでも知っている一流のものだった。

 

部屋を彩る一級品の数々、そして壁に掛かった絵画を見つけてベータは驚愕した。

 

幻の名画『モンクの叫び』だ。

 

いくら財を積んでも決して手には入らないまさに幻の一品だ。

 

一体どうやって手に入れたのか、ベータは思わず尋ねそうになるが、そんな事に意味はないと気づく。

 

彼だから手に入れられたのだ。

 

その一言で全ての説明が付いてしまう。

 

彼が『モンクの叫び』を所持していることはただ当然の結果なのだ。むしろ彼以外に相応しい主など、世界中どこを探しても見つからないだろう。

 

「陰の世界。月の隠れた今宵は正に我等に相応しい世界ですね」

 

ベータは言った。

 

シャドウはベータを一瞥し、ただグラスに口を付ける。

 

「準備が調いました」

 

「そうか」

 

何もかも知っている。そう錯覚してしまうほど、見透かした声。

 

いや、事実これから語るベータの言葉は、ほぼすべて見透かされているのだろう。

 

それでもベータは続けた。それが、彼女の使命だから。

 

「マザー様の命により近場の動かせる人員は全て王都に集結させました。その数216名」

 

「ほぅそれ程の数…マザーの本気度が分かるな…」

 

「はっ!マザー様はこれを機に他の潰せるアジトも共に襲撃をするとのことです。」

 

「流石だな。」

 

その言葉だけでとても至福になれる…

 

いつかその隣に立ち、その全てを支えたいと思う気持ちをベータは抑えきれないでいた。

 

いつか、その日の為に。

 

ベータは胸の内を隠して言葉を続けた。

 

「作戦は王都に点在するディアボロス教団フェンリル派アジトの同時襲撃です。襲撃と同時に索敵とそれから…救出なのですが…本当に必要なのか疑問が尽きません。」

 

「ベータよ。イータとイナリからその件は聞き及んでいるな」

 

「はい…なので本当に必要なのかと…」

 

「これからの未来…陰に潜むならば正しき光もまた必要だ。その新時代の光となり得る可能性を持っている…いまだ磨かれぬ原石ならば我らで研ぎ光輝く宝石へとすれば良い。」

 

「流石シャドウ様…先を見る先見性…感服致します…では」

 

「あぁ赴くとしよう。そして」

 

「はい作戦の全体指揮はガンマが、現場指揮はマザー様、アルファ様が取り僭越ながら私はシャドウ様の補佐を。

 

イプシロンは後方支援を担当、デルタが先陣を切り作戦開始の合図とします。部隊ごとの構成は……」

 

「そこは任せよう。信頼できる仲間たちなのだ。問題ない…だが油断はするな。相手はディアボロス教団…何をしてきても可笑しくない準備を怠らぬよう伝達せよ。そして」

 

彼のその手には一枚の手紙。

 

「招待状だ」

 

投げられたその手紙を受け取ったベータは、促されるままに中を読む。

 

「これは……」

 

そこに書かれた余りに拙い誘いに、ベータは呆れと同時に怒りを抱いた。

 

「デルタにも言ったが……プレリュードは僕が奏でよう」

 

「はい、そのように手配を」

 

「付いてこいベータ!」

 

彼はそう言って振り返る。

 

「今宵、世界は我等を知る……」

 

ベータは共に戦える歓喜に震えた。

 

いよいよ動き出したシャドウたちシャドウガーデンの面々。

 

王都にて始まる闇に潜むものたちと陰に潜み陰を狩るものたち。

 

その開始は刻一刻と迫っていた




今回はここまでになります。

というわけでシドの三文芝居に騙されるアイリス王女でした。

そして騎士団に報告をすればゼノン派の者たちは血相を変えすぐさまシドを始末しなければと強引に退院させるものの全てはシャドウの掌。

アイリスに騎士団への不信感を植え付け自身も難なく標的を探せるようになりました。

そして原作同様の部屋へ飾り付けしベータに見栄を張りイータから事前に聞いていた情報を整理していました。

フェンリル派閥のみならず他の派閥も攻撃の対象にしている辺りマザーの徹底具合が分かりますね。

なので人数も原作より増し増しになっています。

若い王族であるアイリス、アレクシアというこれからの世界で必要な人物たちに王国に巣食う者たちを認識し新しく改革が出来るようにしたいとシドは考えてたりする模様。

シャドウはイナリにもなにやら任務を与えているようですがいったい?

それはまた機会のあるときに

次回は囚われているアレクシア………?サイドになります。

皆様お気に入り、感想、評価ありがとうございます!

次回も遅くならない内に投稿していこうと思います。

今回も読んで頂きありがとうございました!



























































イナリサイド

コンコン、私はあることを仰せつかっています。

なのでシャドウガーデンの方で今夜動き出すのですが私はまだ動けません。

アルファ様へは用件を伝えられたのでシャドウガーデン全体に広がっているとは思います。

それにしても可笑しいことです。

巷ではアレクシア様が誘拐されてシド様も意識不明…

でもシド様は既に退院されてらっしゃいます。

それにどうしてアレクシア様が誘拐されてなんて言われてるのか…噂とは宛になりません…だって

「ねぇイナリ…本当にこれで強くなれるの?」

「コンコ~ン間違いないです!ご主人様もそれをお使いになって強くなられました。私もそうですので安心してください!」

「そう…折角の機会ですもの…それにしてもいったいどういう事なのかしらね。」

「王国で何かが起こっているのは確かです…今はまだ身を隠していた方が宜しいと思います…!」

「それしかないわね。ホント見付けてくれたのが貴女で良かったわ。」

「精一杯お世話させて頂きます!…アレクシア様」

だって拐われたアレクシア様はここにいるのに…


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囚われの王女…?と匿われた王女。匿われた王女は強くなるために鍛練し狐娘にお世話され囚われの王女は機を待つ

今回はラストにて何故かイナリに匿われていた王女とディアボロス教団に囚われた王女の話しになります。

分かりにくくてすいません!

それではどうぞごゆっくり!


目を覚ますと、そこは薄暗い室内だった。

 

窓はなく、蝋燭1本が唯一の灯り。

 

壁は石造りで、頑丈そうな扉が正面にある。

 

「ここは……」

 

身体を動かすとガチャ、と金属の擦れる音が響いた。

 

見ると、彼女の四肢は台座に固定されていた。

 

「魔封の拘束具……」

 

魔力は練れない。自力での脱出は困難だろう。

 

と普通なら考えるだろう。

 

しかし彼女にとってみれば高々魔力を封じられただけ。

 

そして計画が上手くいっている証拠でもあった。

 

(我ながら上手くいったものね…先んじてこちらで王女を眠らせて入れ替わって代わりに誘拐される…うん、それに上手く機能しているようで何より…)

 

アレクシア?はそう内心ほくそ笑みまるで囚われ人のように今は大人しくしている。

 

冷静に周りを見渡す。

 

石壁、鉄扉、燭台、そして……黒い塊。

 

その塊はアレクシアの隣で、何故か鎖に繋がっていた。

 

アレクシア?は注意深く見つめていると、それは少し動いているようだ。

 

呼吸している。

 

それはぼろ衣を着た生物だった。

 

「…悪魔憑きね…」

 

(やはり悪魔憑きが囚われてた…ならあとは襲撃を合図にここを出るだけ…この娘も一緒に連れていって治療…しないと)

 

そうしている内に何やら白衣を着た男が入ってきて王族の血が必要だということを言う。

 

「そう…なら出来るだけ優しく取ってちょうだい。」

 

そうしてぶにょりと刺さり注射器に吸われていく血液。

 

(…取れるだけ取ると良いわ…でも王族の血でも10倍に希釈されてるものだから…どこまで誤魔化せるかしら…)

 

そうしてアレクシア?はシャドウが動き出す5日目までゆっくりと眠ることにしたのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

時はアレクシア王女誘拐の時まで遡る。

 

彼女…アレクシア・ミドガルはつい最近に見たような場所で目を覚ました。

 

「…私…確か…ダメね…ポチと別れてからの記憶がないわ。」

 

(いったいここはどこかしら?…まさか拐われた?王位継承権はないけど私自身の価値というものは分かっているつもり。幸い手足は縛られていないようだし、隙を見てここから…というかこの布団柔らかいわ…)

 

と考えていると足音が聞こえた。

 

アレクシアは臨戦態勢を取る。

 

ガラガラガラ

 

「こん?アレクシア様!お気付きになられたのですね!良かったです~」

 

「貴女…イナリ!?まさか私を拐ったのが貴女だなんて」

 

「ち、違います~学園に用事があってその帰り道に喧騒が聞こえてきて…そしたらアレクシア様が誘拐されたって…話しが聞こえて取り敢えずその真偽を確かめようと思って

 

隠れて近づいたら丁度そこにアレクシア様がおられて…誘拐されたっていうからここにアレクシアがいたら狙われてしまうのではと思って…お運びしたんです!」

 

真摯な対応に必死に弁明しようとして腕をブンブンと上下に揺らし後ろの方で尻尾がなにやら面白いぐらいに荒ぶっているのを見て毒気を抜かれたアレクシア。

 

「分かったわ…貴女は私を助けてくれたのね。そして私のことを思って連れてきてくれた…ありがとうイナリ。」

 

「コンコ~ン、良かったです!あ!そうだ!アレクシア様ご飯食べましょう!美味しいそーめんを作ったんです!」

 

「そーめん?」

 

「はい!いきなり起きて食べるならすすりやすいですので!」

 

「…ねぇあいつはいないの?」

 

「ご主人様ですか?ご主人様はお出掛けしてまして一週間しない内に戻るとのことでお留守番しているのです!」

 

ふんすと握りこぶしを作るイナリの様子が可愛らしい。

 

そうしてそーめんを美味しく食べたアレクシア。

 

そして今の情勢を聞くとアレクシアが誘拐されシド・カゲノーは意識不明の重体…

 

「さてどうしたものかしら?巷じゃ私は誘拐されたことになってるし…かといってノコノコ出ていったら助けてくれたイナリが極刑になって不味いでしょうし…ポチの様子も分からないわね。」

 

「それでしたら暫くここにいるのはどうでしょうか!ご主人様が作った地下鍛練場もありますので隠れるにはもってこいですよ!シド様はクレア様がお見舞いに行っているそうです。」

 

「鍛練場?…そこで鍛練って何をしているの?」

 

「行ってみれば分かります!さぁどうぞ!」

 

と地下へと案内するイナリ。

 

そうして付いていくアレクシア。

 

ふとイナリの佇まいを見て

 

(何だろう…隙だらけに見えるけど…本当にそうなのかしら?)

 

「到着です!」

 

と地下に広大に作られた施設があった。

 

その施設の真ん中には大きな機械がありこんな広い部屋で何をしていたのか気になるアレクシア。

 

「ねぇイナリ見たところあの機械以外何もないわよ?どうやって鍛練するの?」

 

「実はこの真ん中の装置はご主人様が開発した重力発生装置なんです!自分にかかる重力を調整できるので身体に合った重力で鍛練して慣れてきたらまた上げての繰り返しですね!」

 

「そうなの?あんまりピンとこないわね。」

 

「それじゃあまずは…う~ん3Gぐらいにしましょう!」

 

と機械を弄ると…いきなり身体が重くなった。幸いアレクシアは地面に身体が叩きつけられることはなくそれでも立ち上がるのに苦労していた。

 

「な、なにこれ…こんなにキツいの…?」

 

「こんな風に重力を掛けられることなんて滅多にないことですから慣れないのは当然です!」

 

「イナリは平気なの?」

 

「はい!私で自己ベストが126Gぐらいですかね?」

 

「こ、これの42倍!?」

 

「まずは慣れることが肝心です!さぁ!アレクシア様レッツトライです~♪」

 

(こ、この娘物凄いこと言ってるわよ!?)

 

とイナリはそのままアレクシアの身体を伸ばしたりして身体を慣れさせようとする。

 

最初は生まれたての小鹿のようにプルプル震えていたが立ち上がる。

 

「こ、この程度…どどどどうってこと…ないわ!」

 

と言うので

 

「流石アレクシア様です~では5Gに上げてみま」

 

「ごめんなさい、嘘言ったわ…だからまだ上げるのは待ってちょうだい!?」

 

「こ~ん?」

 

(イナリに冗談が通じないわ!?見栄張ると大変なことになる…えぇと…取り敢えず今の私には三倍の重力がかかっているってことは…この前計ったときは…いくつだっけ…44、5ぐらいだったかしら…三倍ってことは…135キロの負担が掛かってる…まずはこの重力に慣れないと…)

 

「アレクシア様、まずは体内の魔力に集中をしてください!」

 

「え、えぇ…」

 

と体内の魔力に集中する。

 

「それを体内でポンプのように絶えず循環させてください。その時の魔力の量は多すぎず少なすぎず丁度良い案配を覚えてください。」

 

「ちょっ!?この重力でやるの!?」

 

「はい!いつも良いコンディションでいれるわけではないのです。なのでこういう逆境でやるのが良いとご主人様も言ってました!」

 

注イータは確かに言いましたが何も重力下でやれとは一言も言っていない。

 

「ポンプってどうやって循環させろって」

 

「ん~あ!そうです!アレクシア様手を繋ぎましょう!私がお手本で流してみるのでその感覚を覚えましょう!」

 

とイナリはアレクシアの手を握る。

 

イナリの手はぷにぷにと柔らかく何だか落ち着くアレクシア。

 

「それでは行きますね~」

 

と少量ずつ流していくイナリ。

 

身体中に回っていく魔力のお陰か先程よりも身体は軽くなってきた。そして何よりとても純度の高い魔力にアレクシアは驚きを禁じ得ない。

 

「今の感覚のようにご自身の魔力を巡らせましょう!」

 

「えぇ…」

 

(集中…身体に魔力を血液のように巡らせて…)

 

そうして拙いながらもアレクシアは段々魔力の扱い方に慣れていく。

 

「それじゃあアレクシア様このまま模擬戦をしましょう!」

 

とアレクシアへ剣を手渡すイナリ。

 

「あれ?イナリあんたの武器ってなんなの?」

 

「そうですね~剣も使えるのですが私的に一番合ってるのは~これですぅ♪」

 

とドスンと下ろしたのはこの前イータがシドに振りかぶっていた両刃のハルバードであった。

 

「……えっ!?」

 

「この間ご主人様が研いでくれたので切れ味は確かなので申し分ないです!さぁアレクシア様行きますよ~」

 

と振りかぶるイナリ。

 

「うぇっ!?」

 

この間シドが追いかけられた時に地面を破壊していたのを思い出し命の危機を感じたアレクシアは何とか避けるがズガンとやはり地面が抉れていた。

 

「やりますね!まだまだ行きますよ~」

 

アレクシアはこの時のことをこう振り替える

 

「悪意のない善意ほど怖いものはないって思い知らされたわ…あいつのやり方ってスパルタだけどこっちのことを考えてたし配慮があったけどイナリの場合私なら避けれるって信頼してるからなのか

 

全力なのかは分からないけど…滅茶苦茶心臓に悪かったわ…まぁお陰で三倍の重力に慣れるのに時間はそう掛からなかったわ…だって慣れないとイナリに真っ二つにされてしまうから…」

 

と遠い目をするアレクシア。

 

これが二日、三日と続いていき今では五倍の重力までは普通に動けるようになっていた。

 

「連日修行してるけど…ホントに強くなれてるのかしら…?」

 

「では試しに通常の重力に戻しますね!」

 

と重力を戻したイナリ。

 

「さぁ行きますよ!」

 

とイナリは振りかぶる。数日前のアレクシアなら間違いなく避けらない速さで仕掛けたがアレクシアは難なくかわす。

 

「身体が…軽い!?それに前まで見えなかったイナリの攻撃も見えるようになってきた!」

 

「それは全身に魔力を行き渡らせた結果目の方も強化されたからです!今のアレクシアさんは前よりも1.5倍ぐらいは魔力効率も良くなっている筈です!」

 

「そうなのね。こんな風に魔力を使うなんて知らなかったわ…」

 

「今日はゆっくり休みましょう!」

 

とお風呂も作られているのでアレクシアはそちらへと入る。

 

「はぁ…何だろう…誘拐されたと思ったらイナリに助けてもらって修行まで付けてもらった…学園だけじゃ分からないことばかりね。イナリには感謝しかないわ…」

 

一方のイナリはシャドウガーデン構成員へと定期連絡をしていた。

 

「はい…順調です。はい…えぇ。アレクシア様も良い感じで強くなってますね。あ!皆様とあと、シド様にもお伝えください。王国の秘宝は無事です。と」

 

そうして一通り報告し終えたイナリもお風呂へと入ることにした。

 

「こ~んアレクシア様お背中流します~」

 

「ごめんなさいねイナリお世話になってるっていうのに」

 

「いえこういうお世話するのが好きなので」

 

「…ねぇイナリはどうしてあいつといるの?エルフと獣人って関係があまりなさそうに思えるのだけど?」

 

「そうですね…私はご主人様とその母君に助けられました。そうしてご主人様と過ごす内にご主人様を放っておけないと思い一緒にいるんです。」

 

「助けられた…?」

 

「……私たち妖狐族は一夜にして…私以外滅ぼされたのです…」




今回で王女が二人いる状態が判明致しました!

囚われの王女?は今の状況を分析し機を待ちます。

そして匿われた王女はイナリに保護され更に強くなるために重力室にて鍛練を始めました。

見栄で3Gが平気というとイナリが容赦なくというか流石アレクシア様と更に上げようとしたので必死に止めました。

悪意のない善意は怖いものですね。

そしてイナリとの模擬戦ですが重力下でイナリは普通に動けてアレクシアは慣れない環境で苦戦…鬼畜ですね。

そうして慣れていく内に5Gなら普通に動けるようになったアレクシア。

魔力を隅々まで行き渡らせることも覚えあとは魔力配分ですね。

そしてお風呂へと入ることにしたアレクシアとシャドウガーデンへと報告するイナリ。

そう王国の秘宝とは匿ったアレクシア王女のことでした。

イナリもお風呂へと入りイータやベアトリクスとの出会いをアレクシアへ語ろうとするところで今回は終わりです。

イナリは妖狐族の生き残りが自分しかいないと思っています。原作、漫画など見てる方は察していると思いますが出会ったら感動のあまり泣きじゃくると思います。

次回はイナリの昔話やらから入ると思います。

そしてFGOでは遂にアーケードコラボが開催!

ティアマトは引けましたがドラコーは10連まわしてピック2が来るかもなので一度待ちですね。

明日は用事もあり投稿が厳しいと思うので多分土曜日になると思います。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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狐娘は昔を思い返し匿われた王女は決意し王国は一夜にして動乱へ

イナリの昔話と襲撃へと移っていきます。

それではどうぞごゆっくり!


私は妖狐族という獣人の村に産まれ落ちました。

 

獣人の里の多くは当時、大英雄シヴァが倒れたばかりで、獣人の国は戦乱の世だった。力のある部族は他の部族を侵略し、次の大英雄にならんと力を求めていた。

 

そんな中、同盟をより強固なものにしようとする動きが出るのは当然でした。

 

当時の私は尻尾は一本しかなくて…ひ弱でいつも襲撃に怯えていました…

 

そんな私にも友人というか敬愛するお人がいました。

 

村唯一の三本尻尾の狐様の娘であるユキメ様で私にとって憧れの人でした。

 

ユキメ様は同じ妖狐の私に色んなことを教えてくださいました…とても綺麗で優しくて尊敬する方でした。

 

ある時同盟の強化ということで村唯一の三本尻尾の娘であるユキメ様と、大狼族という獣人の族長の息子である月丹様が婚約することになりました。

 

月丹様とユキメ様はとても仲の良くて月丹様も遊びに来る私に良くしてくれました…

 

お二人と一緒にいられる時間は至福の一時でした。

 

でもそんな時間は一夜にして終わりを告げました…

 

妖狐族と大狼族の村は、たった一夜にして滅ぼされたのです。

 

村は血で染まり、焼き尽くされた。

 

私はその時咄嗟に深い池に飛び込んで深い水底の丁度空洞になる部分に逃げ込みました。

 

父と母は私を庇って亡くなりました。母に生きてと最後の言葉を掛けられた私は生きなければと必死でした…

 

1日程たち私は水底から出ると村にはもう…何もありませんでした。

 

周りを見ても沢山の妖狐族と大狼族の亡骸ばかりで…ユキメ様の母君も…帰らぬ人となっていました…

 

ユキメ様と月丹様のことも必死で探しましたが何処にもおらず…私は一人ぼっちになりました。

 

それからの私は母からの生きてという言葉だけを支えにして遠く…遠くへと逃げました…

 

でも…ひ弱な子供に生きていくための術など持ち合わせている筈もなく…

 

私は弱ったところを奴隷商に捕らえられ…売り物にされるところでした。

 

私は…一人ぼっちなら死のうと何度も考えました。でもその度に母の言葉を思い出します…

 

そしてあるところへ引き渡されることの決まった私。

 

寒くて…暗くて…怖くて…どうしてこんなに冷たいんだろうって呪いました…

 

そんな時でした…ご主人様とご主人様の母君に助けられたのは。

 

なんの関係もない私をお二人は助けてくれて…温かいご飯と温かいお風呂…温かい寝床を私に無償で与えてくれました。

 

ご主人様は特に私の尻尾を撫でたり頭を撫でてくれました…私を安心させようとしてくれてたんです。

 

それから私は…助けてくれたご主人様のお役に立ちたいと今までの自分を変えようとご主人様の母君から色んな武器の扱い方などを学びました。

 

一緒に暮らす内にご主人様のことも分かってきて…人の生活を良くしようと研究を続けている優しい方で、でも研究に熱中して倒れたり…とお世話する内に打ち解けられて今に至ります。

 

ご主人様は私にとって恩人なのです。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「所々はしょっている所もありますがこんなところです。」

 

「あんた苦労したのね…グスン…あいつ滅茶苦茶良いやつじゃないの…それにあいつの母親から教わったのね物凄い努力したのね…ズビィ」

 

とアレクシアは感激したのか凄い泣いている。

 

「あはは…頑張ってこれたのもご主人様たちのお陰なんです。ベアト様にも良くして頂いて…」

 

「そうなのね。ベアト様……え?ベアト様?………ねぇイナリ…そのベアト様ってまさか…武神にして食神でもう一人の蒸気機関の母って呼ばれてる人じゃないわよね?」

 

「………」

 

「………」

 

二人とも暫く固まってしまい数秒の沈黙が辺りを支配した。

 

「そ、そそそそそんなことはああああありせんよよよよよよよ!?」

 

「いや動揺しすぎよ。何だが落ち着いちゃったわ。あの武神に娘がいてそれが天才発明家になったのね。武神の娘として厳しい訓練を積んできたのでしょうね。私なんかじゃ想像も出来ないぐらいに…」

 

「えっと…アレクシア様、ご主人様には内緒にしてください…言ったことを言われてしまうと…」

 

「言われてしまうと?」

 

「尻尾を油揚げにされちゃいます~」

 

(んなあほなことあるわけ…いや発明家だからホントにやりかねないわね…)

 

「分かったわ。言わないで上げるわ。だからもう少し修行に付き合って頂戴。」

 

「はいです!」

 

とアレクシアはそのまま風呂上がりに重力室にて座禅というものをする。

 

イナリ曰くこうすると己の内と向き合うことが出来るかららしい。

 

余計なことを考えているとなにやらはたき棒のようなもので肩を叩かれる。

 

雑念を抜いて己と向き合う…

 

段々と流れるような感覚が分かってきた。

 

今は王女だとかそういう考えは捨てる…この流れを…掴まないと…

 

そうして数時間同じ体勢でいたところにパァンと手拍子が

 

「アレクシア様今日はここまでにしましょう。」

 

「イナリもう少しだけ…」

 

というアレクシアだが体勢がふらふらであった。

 

「慣れないことをするといつもより身体は疲れてしまいます…ベアト様やご主人様も良く動き、良く学び、良く遊び、良く食べて、良く休む。そうした日々の積み重ねが己を作ると言っていました。」

 

「武神様の言葉…」

 

「それに身体を休ませることも修行の一つだとご主人様は言います。ただ身体を闇雲に酷使し続ければ何処かで限界というものは来てしまいます。

 

だからこそ休ませて身体のケアをする。そうしてまた修行して身体を休ませる。その繰り返しなんです。」

 

「……」

 

「アレクシア様はどなたか勝ちたい人がいますね。」

 

「えぇ憧れて…いつか越えたい人がいるわ…でも私に」

 

「アレクシア様、敵に勝つことというのは実はそんなに難しいことではありません。だって極論その人より強ければ良いだけです。

 

重要なのは己に負けないこと…」

 

「己に…負けない…」

 

「自分の中にある弱い気持ち…恐れ、不安…様々な物が自分を蝕みます。それにどれだけ耐えて向き合い付き合っていくか。

 

それが自分との戦いです。それは死ぬまで終わりはありません。

 

だからこうして雑念を払い心をスッキリさせるのはとても良いことです。

 

今のアレクシア様…前よりも輝いて見えます!」

 

「…ありがとうイナリ…今までの私って難しく考えて色んなことを抱えて…自分の気持ちに向き合ってなかったのね…がむしゃらに前にだけ進んで立ち止まらずに…

 

今まで意地張って…私は私…アレクシア・ミドガル。姉を越えてミドガルの…王国の行く末を見届けたい…!」

 

「その意気です!」

 

「ふぅ…イナリ、明日は休むわ。ここから出られないから何か暇を潰せるかしら?」

 

「でしたらご主人様が置いていった漫画などをどうぞ!」

 

「読ませてもらうわ。」

 

とアレクシアは次の日を休むことにした。

 

彼女の魔力は酷使され続けていたが休んだことで修行前よりも新鮮な魔力が身体に循環され始めて修行前と比べて2割程魔力が増えたようである。

 

そうしてアレクシアは前回来たときの続きの漫画を読むことにした。

 

各々の人が抱える苦悩…人柄、歓喜…それらが詰まっていた。ふと横にあったもう一冊に目を奪われた。

 

それは少し考えられない人と神との戦い…人の武術が神々を越えるようなこと。

 

そして史上最強の敗者(ルーザー)と呼ばれる一人の剣士の生き様。決して才能があるわけではなくそれでも諦めず剣の道を歩く先達…凡人であっても神の領域へ到達出来ることを示唆されているようだった。

 

「アレクシア様?ご飯ですよ~」

 

「え?あぁイナリ。もうそんな時間だった?」

 

と熱中して見ていたアレクシアはイナリの声で我に返る。

 

「はい、本日はスタミナステーキ丼とデザートにマジックタルトを用意しております!」

 

「ありがとう、頂くわ。」

 

そうしてイナリの作った料理を食して体調、コンディション共にベストな状態となったアレクシア。

 

そうしてまた1日が過ぎようとしていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

シドは無粋な招待状を片手に中庭へと来ていた。

 

そこには騎士団の服を着た者たちがいた。

 

「へっへっへお前も運がねぇな。折角助かったっつうのに殺されちまうなんてな!」

 

「てめぇがどこで名前を知ったかなんて些細なこと…!」

 

「悪く思うな小僧…これも我ら教団の」

 

ためにという言葉が言い終わらぬ内にその者の首と胴は分かれていた。

 

「ヒッ!?な、なん」

 

「耳障りだ。」

 

そうしてシドは男へと近づく。

 

「夜が明ければ……騎士たちの死体が見つかる」

 

「そ、そうだ、夜が明ければてめぇは終わりだッ……!」

 

男は地を這い、シドは血の跡を歩く。

 

「だが何も心配する事はない」

 

それは一瞬。

 

気づくと、男の背後にシドがいた。

 

「ひぃッ!」

 

シドは右足を一閃。

 

「夜が明ければ……総ては終わっているのだから」

 

男の首が宙を飛んだ。

 

血の飛沫が舞う中で、シドが振り返る。

 

学生服姿のシドはそこに居なかった。

 

そこに居たのは全身に漆黒を纏ったシャドウ。

 

漆黒のボディスーツに漆黒のブーツ、その手には漆黒の刀を携えて、漆黒のロングコートが風になびく。

 

コートのフードを深く被り、顔の上半分は影に隠れ下半分だけが光に当たる。

 

その顔も奇術師の仮面に覆われて、素顔が覗くのは仮面の奥の赤い瞳だけ。 

 

ベータは凛々しくも美しいその姿に気絶しかけ、慌てて胸の谷間から自筆の『シャドウ様戦記』メモを取り出しシュババババっとスケッチする。

 

スケッチの隣に本日のシャドウ様語録を付け加え完成。その間、僅か5秒。

 

そしてド派手な破砕音が鳴り響く。

 

「賽は投げられた…ベータ、王国の秘宝を頂きに行く。」

 

「はいっ!」

 

そうしてシャドウとベータの二人は襲撃の最中ある目的のために匿われている王女のいる方向へと向かうのであった




今回はここまでになります。

イナリの昔話…原作、漫画にて登場する白き塔の支配者で無法都市と呼ばれる場所の主に色町をしているユキメのことを慕いユキメと決別する前の月丹のことも慕っていた。

故に彼女は己の故郷を滅ぼしたのが月丹を発端とすることを知らずディアボロス教団が関わっていることだけは知っている。

再会した時どうなるかですね。

逃げるイナリは身体に痣が浮かび悪魔憑きとして捕まり教会へ移送されそうだったところをたまたまベアトリクスとイータに助けられた。

ユキメのところの詳しい年代が分かりませんが今作のイータはベアトリクスに七陰の中で最初に助けられているので一緒に行動してる分には可笑しくないと思ってます。

イータは怖がるイナリを抱きしめたりと安心させようとして、イナリもそんなイータになつきご主人様と呼ぶように。

そうしてベアトリクスの元で修行していく内に尻尾も四本に増えてまだまだ強くなっています。

そしてアレクシアにベアトリクスが師匠であることやその関連でイータも娘だとバレてしまいましたがアレクシアは秘密にするとのこと。

そしてアレクシアも徐々に強くなっていき鍛練ばかりなアレクシアをイータは休むのも修行の一つだと諭しました。

実際ドラゴンボールの亀仙流の教えを受けた悟空などは強くなっているので参考にしてます。

そしてアレクシアは落第騎士の続きを読み込んでいるとふと気になった本がありそれを見ると終末のワルキューレであり神vs人のガチンコバトルで全13回戦ある中の第三バトルの佐々木小次郎という史上最強のルーザーの存在を知りました。

剣士として彼ほど負け続けても尚前へ進み続けた者はいないのではないですかね?

負け続けたという意味ではめだかボックスの球磨川も当てはまりますね。

そうして体調。魔力が万全となったアレクシア。

そしてシドの方は呼び出したシドを拷問した奴らと監督するディアボロス教団の者を瞬殺。

そうして襲撃は始まりシャドウたちはイータのお店へと向かうのでした。

次回はそんなシャドウの話しになります。

お気に入り、評価、感想いつもありがとうございます。

今後とも遅くならないよう更新していきます。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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王国に潜む病巣を陰の実力者は見せるために王国の秘宝を伴い王女?は脱出し本性剥き出した者を圧倒する。

シャドウたちが本格的に動き出します。

アレクシア?も動き出し本格的な戦闘は次回に持ち越しとなります!

それではどうぞごゆっくり!


王国に破砕音が鳴り響き町の者たちは何が起きたか分からず戸惑う中で屋根を駆ける二人の影

 

その二つの影は天才発明家イータの店へと降り立った。

 

「シャドウ様、ここは私が…」

 

「いや僕がやろう。幸いイナリならばこちらの事情も知っている。スムーズに事も進む。」

 

そう言いながらガチャと開ける。

 

「こん?どちら様ですか?今日の営業は終了してます~」

 

と此方へと来るイナリ。

 

「イナリ、時は来た…」

 

シャドウは自信たっぷりに言うのだがこの時のシャドウはあることを失念していた。

 

「?…………新聞勧誘は間に合ってますぅ~」

 

とそのままシャドウが開けたドアを閉めてしまうイナリ。

 

「……………………way!?待て待て待てイナリ僕だ!僕だぞ!?」

 

とまた扉を開けるシャドウ

 

「はい…?僕僕詐欺も間に合ってますぅ~」

 

と寝ぼけ眼で言うイナリ。そうシャドウはイナリが若干うっかりなことを忘れていたのだ。

 

この時のシャドウは仮面もしていたのでイナリも分からずにいたようであったのだが予想外過ぎてシャドウも焦る。

 

「イナリどうしたの…?」

 

とアレクシアはイナリを心配して奥から出てきた。

 

「ふむ…アレクシア王女よ。突然だが共に来てもらえるか?」

 

仕切り直しにアレクシアへ語り掛けるシャドウ。

 

「誰よあんた?新手の勧誘?今時流行らないわよ。」

 

「違いますアレクシア様~僕僕詐欺さんです~」

 

「詐欺師ではない。我々は陰に潜み陰を狩るもの。」

 

「アレクシア王女…貴女は王国で起きていることに疑問をお持ちではありませんか?」

 

とベータは少し声を変えてアレクシアへと語り掛ける。

 

「そうね。何だが私は誘拐されたことになってるし…良く分からない事が連続しているわね。」

 

「そうだ。王国の次代を担うだろう貴殿に見せたいのだよ。この国…いやこの世界が隠してきた闇へと葬られてしまった真実の一端を。それに貴殿にとっても悪いことではない。」

 

「…どう言うことよ。」

 

「既に分かっていることでしょう。このままここにいたとしてバレてしまえばそこの狐の娘は王女誘拐の疑いで極刑となってしまう。しかし我々と来ればその娘が拐ったという事実は有耶無耶に出来る。例え拐っていなかったとしてもです。」

 

そうアレクシアがいくら誘拐されていないと言い張ろうとも首謀者も見つからない状態ではイナリが拐ったということになってしまう。

 

故にシャドウとベータはアレクシアの良心を利用する。

 

 

「確かにそうね。いくら天才発明家イータ・ロイド・ライトの助手だとしてもイナリの身が危ない…

 

良いわ。付いていってやろうじゃない。

 

くだらないことなら只じゃおかないわ!それとイナリの身の安全も誓いなさい!」

 

「良かろう。武神にして食神たる偉大な功績を持つベアトリクスに誓おう。」

 

「?どうして武神の名前に誓うのよ。」

 

「それは彼女が成したあることが関係している。それはこれから行くところで説明しよう。」

 

「あ、あのアレクシア様…」

 

「良いのよイナリ。そろそろ出ないと行けないって思ってたから。それに色々ともてなしてくれた貴女が極刑になるなんてあってはならないわ。」

 

「あ、あの!僕僕詐欺さん!」

 

「違う…我が名はシャドウ。陰に潜み陰を狩るもの…そしてシャドウガーデンを治める者。そして彼女は我が組織の幹部七陰の一人堅実のベータ。」

 

「七陰…幹部が7人いるってことね…大々的な組織ね。隠れていたのならどうして今頃表に出てきたのよ。」

 

「時代とは常に変動するもの。何故貴殿が狙われたのか?奴らは濃い英雄の血…即ち王族の血が狙い」

 

「血って吸血鬼じゃないんだからそんなもので」

 

「そんなものこそが奴らにとって必要不可欠なものなのだ。」

 

「取り敢えずこれ以上聞けば戻れなくなってしまうので早々に行きましょう。巻き込みたくなければ…」

 

「…!…そうね。」

 

「アレクシア様…!」

 

「いいの。大丈夫よ。全部終わったら必ずまた来るから。」

 

「…はい…!美味しいご飯でもてなします!」

 

「ふふ…ここはご飯屋じゃないでしょ。でもありがとう。」

 

そうして轟音鳴り響く中アレクシア王女を担ぎ上げシャドウとベータは魔力を辿り向かう。

 

「…ご武運を…では私も向かわないと…」

 

そうしてイナリはアレクシアが去りスライムボディスーツに身を包み闇夜を駆ける。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

破砕音の響く中で…アレクシア?は目を覚ます。

 

「ふぁぁ~漸くね。待ちくたびれたわ。」

 

「ちくしょう、ちくしょう!!」

 

白衣の男が勢いよく扉を開けて入ってきた。

 

「ごきげんよう」

 

「あと少し、もう少しなのに!!」

 

明らかに楽しんでいる様子のアレクシア?の挨拶を白衣の男は無視する。

 

「や、奴らが、奴らが来やがった!! お、お終いだ、もうお終いだ……!」

 

「諦めなさい、抵抗は無駄よ。私の拘束解いてくれれば、あなたの命を助けてもらえるよう頼んでみるわ」

 

とアレクシア?は優しく微笑む。。

 

「や、奴らが、見逃すものか……!!み、皆殺し……皆殺しだっ!!」

 

「…えぇそうよ。皆殺しするに決まっているでしょう?命を冒涜して悪魔憑きの娘たちにしてきたことを思えば。因果応報というやつよ。」

 

「は?」

 

バリンという音を立ててアレクシア?を拘束する魔封じの錠は簡単に外れた。いや弾けとんだというべきだろう。

 

「な、何故だ!?魔力は封じてた」

 

言葉を言い終わらぬ内に研究者の意識は永遠に閉じた。

 

「全く…良く眠れたわ…ホントこれでやっかいごとが増えてたらどうしたものか。まずは」

 

と身体をバキバキと伸ばす。

 

そしてそのまま手刀で檻を叩き折り隣の部屋に拘束されている悪魔憑きの少女の元へ行く。

 

「待っててちょうだい。今助けるわ。」

 

そうしてそのまま魔力が悪魔憑きと化した少女を包み込み

 

そこに黄金のような波動も共に放出され彼女に投与されていた薬剤なども分離しそして数分するとそこには灰色っぽい髪の少女の姿が。

 

アレクシア?は少し驚くがまずはここを出ることが先決と背中に背負い、

 

「いたぞ!脱獄しているぞ!逃がすな!」

 

と看守がいたので遠くから看守の首をなぞらえるように素早く動かす

 

すると次の瞬間看守の首と胴は分かれていた。

 

そのままミスリルソードを拝借するアレクシア?

 

「…まぁアレクシア王女の振りをもう少ししておきましょう…」

 

と気軽に言うと次々にやってくるディアボロス教団の研究者たちを一太刀で葬っていくアレクシア?

 

そうしてあらかた葬り終わりそのまま出ようとするとコツコツという音が響き渡りそして

 

「勝手に逃げられては困るな。」

 

飛んで火に入る夏の虫が来た。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

一方のシャドウたちは驚異的な速さでディアボロス教団のアジトへと辿り着いていた。

 

途中あまりの速さにアレクシアが悲鳴を上げたがシャドウは気にせずスピードを緩めることはなかった。

 

「あ、あんた!?どれだけの速さよ!少しは私の安全も考えなさいよ!」

 

「善処する。」

 

「善処ってちょっと!」

 

「ここですシャドウ様」

 

「無視すんな!って…なにここ」

 

とアレクシアは大小ある檻のある場所だということに気が付いた。

 

そしてそこから覗く怯えを含んだ眼差し…

 

「ば、化物…?」

 

「否、化物ではない、彼女らは列記とした一つの命だ。」

 

「どう言うことよ。」

 

「アレクシア王女、貴女は悪魔憑きのことをどれぐらい知ってますか?」

 

そうベータはアレクシアへ問い掛ける。

 

「悪魔憑きって不治の病である日、体の一部に突然と痣が現れ、やがてその痣は全身に広がり肉体は腐り落ちてしまうというのが悪魔憑きと言われて発症したら

 

金銭を見返りとして直接教会に差し出されるか、商人に売られてそれを経由して教会に差し出されるって聞いたことがあるわ。」

 

「だがそれは表向きだ。奴らは悪魔憑きを実験と称してあらゆる拷問、薬の投与、人体実験に使用しその力を我が物に使用とする者たちの集まりだ。」

 

「…それが本当だとしても悪魔憑きをどうにかする方法なんてないでしょう。治療する術があれば不治の病なんて言われないわ。」

 

至極全うな意見を言うアレクシア。

 

「その通り。昔とある方法を試せないかと一人のエルフの魔剣士が立ち上がった。」

 

「何を言って…」

 

話しが脱線したように話すシャドウに困惑するアレクシア。

 

「そのエルフは奴らのアジトへと侵入し次々と悪魔憑きを保護していった。」

 

「保護したって…そんなことしたって悪魔憑きの」

 

「そして保護した悪魔憑きを…見事に治療して見せたのだよ。」

 

「……あり得ないわ。不治の病を直したっていうの?」

 

にわかには信じられない話しだ。

 

「あり得ないことなんてない。」

 

とベータは檻の中に閉じ込められた悪魔憑きの元へと近寄り辺りに眩い光が溢れる。

 

その光景をじっと見守るアレクシア。

 

「だってこうして悪魔憑きの娘たちを…救えるのだから。」

 

そうして暫くするとそこには小さな幼子の姿が

 

「…うそ…」

 

「これは現実だ。そしてエルフの魔剣士はその技術を他の者へと教え今も奴らと一人戦い続けている。」

 

「…だ、誰なの…そのエルフって」

 

「…それこそが現代のエルフの憧れであり人は彼女を武神にして食神と呼ぶ偉大なお方。」

 

「武神…ベアトリクス…!」

 

「そうだそれこそが彼女の秘匿された偉大な功績。彼女は悪魔憑きたちの希望なのだ。闇に葬られ深く深く沈み込んだ絶望に浸る者たちに光を与える者…聖教の女神に祈ろうとも助けられることなどない…ならば武神にこそ祈りを捧げるべきなのだ。」

 

そう言っている間にベータ以外の者たちが現れ次々と悪魔憑きを保護していく。

 

「…保護した娘たちは…どうするの?」

 

「それを聞いてどうするという。貴殿には力がない。人を動かす力、財力、純粋な力…それらがなければ立ち向かうことなど出来はしない。」

 

「それは…」

 

言い返すことなどアレクシアには出来なかった。今まで王族として生きてきて政治といったものなどは多少出来ても力は姉に及ばない。

 

「奴らは自分達にとって不都合な真実を全て闇に沈め我が物のように世界は自分達を中心に動いていると思っている。

 

だが我々はこの世界を生きている。それぞれが己を中心として生活し今を必死に…生きているのだ。

 

それでも奴らは光の生活を脅かす!」

 

アレクシアはいつの間にかシャドウの言葉に引き込まれていた。彼の言う奴らというのがどれだけ大きいのか分かっていてそれでも宣言している

 

「だが闇に沈む真実もあれば光指す真実もある。真実を闇に沈め続けるというのは相当体力がいる。

 

奴らも全ての真実を沈めきれない。何故なら悪魔憑きを、治す方法を我らは得たのだ。

 

その一瞬でも浮かび上がった真実を逃さず、白日の下に引きずり出す!!!それが我らシャドウガーデンのやるべきことだ。」

 

そう力強い言葉を投げるシャドウ。

 

ベータはその言葉を一言一句シャドウ様戦記へと書き記している。

 

「…今よりも強くなれるのかしら…」

 

「アレクシア王女…貴殿は真実を知った。その上でどうする?」

 

「私は…」

 

「…焦り答えたものなどより熟考した己の願いを見つけるが良い。そのブレない信念が出来たとき我々との繋がりは出来よう。」

 

そうしてシャドウは再び歩きだしベータもそれに続く。

 

そうしてアレクシアもその後に付いていくと剣閃の激しい音が響き渡る。

 

そうして辿り着いた先には幾度も剣戟をぶつけ合いながら吹き飛び息も絶え絶えなゼノン・グリフィを…少女を背負いながらもアレクシア王女そっくりの何者かが不敵な顔で見下ろす姿であった。




今回はここまでになります。

シャドウたちは、イナリの元へ参上したものの、イナリは若干寝ぼけていたせいかシャドウだと気付かずに扉を閉めてしまいました。

イナリのうっかりのことを忘れていたシャドウだったもののアレクシア王女が話し掛けてくれたお陰でそのまま会話しともに連れていくことに。

このままアレクシアがイナリの所へいると誘拐容疑が掛けられてしまうので丁度良さそうに去りました。

目がしゃっきりしたイナリもスライムボディスーツを身に纏い何処かへと向かう。

そしてアレクシア?も動き出し研究者の男を一撃で仕留め魔力封じの枷も破壊して隣の部屋の悪魔憑きの少女を助け出しました。

なので少し顛末が変わることに。

なので代わりの敵を用意致します!

詳細は次回以降に。

そして飛んで火に入る夏の虫が登場。

シャドウはアレクシアに悪魔憑きの実態を見せ教団の所業を見せました。

武神ベアトリクスの偉大な功績を明かしましたが彼女とシャドウガーデンの直接的な繋がりはないように気を遣っています。

実際は関与どころか運営してますからね。

アレクシアへと語り掛けたシャドウはアレクシア?の待つ場所へと向かいアレクシアと共に見たのは息も絶え絶えなゼノンとそれを見下ろすアレクシア?の姿でした。

次回は飛んで火に入る夏の虫が登場したところになりそうです。

そしてマザーこと、転生ベアトリクスにも久しぶりにスポットを当てようと思います。

いよいよクライマックスも近付いてきた王女誘拐編。

結末をお楽しみに!

感想、お気に入り、評価ありがとうございます!

お気に入りも600を越えてとても嬉しいことです。これからも精進していきます!

次回も遅くならない内に投稿出来るようにします!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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アレクシア?は圧倒的実力で飛んで火に入る夏の虫を翻弄し陰の実力者はその剣で王女の道を指し示す。そして地上に現れたるは毒蛇の名を関する十二席の1つ

アレクシア?の元へとやって来た飛んで火に入る夏の虫との戦いになります。

そしてオリジナルのナイツ・オブ・ラウンズを登場させます!

それではどうぞごゆっくり!




「逃げられては困るな。」

 

と歩いてきたのはミドガル王国の剣術指南役なゼノン・グリフィであった。

 

「なぜって顔だね。それはここが私の施設だからだよ。私があの男に投資した。それだけのことさ」

 

金髪に端正な顔立ち、自信に満ちあふれた笑みを浮かべるが

 

「飛んで火に入る夏の虫とはこの事ね……ノコノコとやって来てくれて助かるわ」

 

アレクシア?は不敵に笑みを浮かべながら言った。

 

ゼノンの背後に階段がある。おそらく外への道のそれをアレクシア?は

 

剣を一閃することで破壊した。

 

「……は?」

 

あまりの出来事にゼノンは呆けてしまう。

 

「さてこれで逃げれなくなったわね…引導を渡して上げるわ。」

 

「引導だって…ふははははは…いきなり階段が壊れたことには驚いたが君のような凡人が私に勝てるとでも?」

 

「実力を測れないような愚物に何を言われようが痛くも痒くもないわ。」

 

「そうかな。どうでもいいさ。私は君の血と、研究があればラウンズの第12席に内定する。剣術指南役などというくだらない地位ともおさらばだ」

 

「そう…でもそれは…ここを…生きて帰ることが出来ればの話し…王族の血も持って帰れず研究もご破算。大人しく剣術指南役でいれば良かったものを…」

 

「君程度に遅れをとる私ではない。それにそんな足手まといを背負った状態で私から逃げれるとでも」

 

「御託はいいわ。それに…」

 

アレクシア?は剣を振り上げるとそのまま振り抜く。

 

あまりの鋭い一撃をゼノンは回避した。

 

「貴方程度に…遅れを取る程…弱くないもの」

 

とアレクシア?はミリアを背負いながら言う。

 

ゼノンは言い知れない何かを放つアレクシアに恐れを抱くがそれをプライドは認めずアレクシアを捕らえるために斬りかかるのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

一方の王都同時襲撃はフェンリル派のみならず他の派閥のアジトも強襲している。

 

そこに囚われている悪魔憑きの保護が最優先。次にそこで進められているだろう研究そのものを消すこと。

 

それらは順調に進んでおり前線指揮を取るベアトリクス…否シャドウガーデンNo.2マザーは油断なく作戦に当たる。

 

「伯母様、フェンリル派のアジトはあらかた潰し終えたそうよ。それと報告にあったヨルムンガンド派、ロキ派のアジトも捜索し拠点の爆破と保護も完了したわ。」

 

「そう。保護した娘たちは全員運び出しましょう。」

 

「えぇ。伯母様の所へ全員運ぶ手筈は整ってるわ。」

 

「流石ね。それとあの娘たちは平気かしら…?」

 

「シャドウもいるから平気よ。後は情報によれば教団幹部の一人がいると思われるわ。」

 

「ディアボロス教団の最高幹部で全部で12人いるナイツ・オブ・ラウンズ席次が若いほど教団内で大きな発言力を有すると聞くわ。今は第十二席が抜けているから11人。」

 

「出来ることならここで戦力を削りたいわ…」

 

そんな会話をしていると突然障気のようなものが溢れだしているのが見えた。

 

「!アルファ行きましょう!」

 

「はい!」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

襲撃に混乱する王都である中で騎士団は率先して動き出し避難誘導を進めていた。

 

そんな中で突如として放たれた何かを吸い込んだ団員たちは次々に倒れていく。

 

現場へ駆けつけたアイリスはその異様な光景に戦慄を覚えた。

 

「ヒッヒッヒ…教団に逆らう奴らは皆殺し…だ…」

 

その中心には男が不気味に立っており手にする剣からは毒々しい煙が蔓延していた。

 

「これは!?」

 

「アイリス様お下がりください!奴の放つ毒を吸い込むと…たちまち動けなくなり…呼吸も困難になります!既に…10人が…」

 

「遺体を回収しようにもこれでは…!」

 

「しかし下がれば無辜の民が犠牲になります!なんとしても」

 

「しっかし運がねぇな…てめぇらは…大人しく俺らに従ってりゃ命拾いしたっつうのによ…やっぱ殺戮は楽しいよなぁ!!」

 

更に障気は勢いを増していく。

 

「いけない!全員退避!」

 

とアイリスは言うものの遅くアイリスたちも障気に

 

包まれることはなかった。

 

「!?いったい何が!」

 

「そこの子達無事?」

 

と前を向くと黒いスーツに身を包んだ長身の女性らしき人物が立っていた。

 

「何者です!」

 

「我々が何者かそれは些細なこと…」

 

とそれに追随するようにもう一人現れた。

 

「アルファはここら一帯を封鎖して。でないと巻き込まれるものが増える。無益な殺生ほど無意味なものはないわ。」

 

「分かったわ、マザー。」

 

「待ちなさ!」

 

そうしている間にマザーは大きく剣を振りかぶり大気中の障気を一瞬でなぎ払った。

 

「これで動けるはずよ。今の内に行きなさい。アルファたちは息のあるものに治療を…ここは戦場になるわ。」

 

そうしている間にも黒ずくめの者たちは増えていて騎士団の遺体、まだ息のあるものたちを抱えて退避する。

 

「早く行って…でないと助けられる命も助けられなくなるわ。」

 

その言葉にアイリスは一瞬悩むが

 

「貴女が何者かは分かりません…しかし私たちを助けようとしているのは分かります。こんなことを言うのは王女として相応しくないかもしれません…ご武運を。」

 

とアイリスは騎士団を連れて遠くへと退避する。

 

「その漆黒の装束……てめぇらが俺らに刃向かう奴等か

 

なぶり殺し甲斐があるぜ。」

 

「1つ聞くわ…なぜ関係ないものを巻き込んだの。」

 

そう先程まで騎士団のみならず野次馬と化した民衆にまで毒を振り撒いていたのだ。

 

「俺はナイツ・オブ・ラウンズの第8席ニーズヘッグ。役割は裏切り者の処刑と反乱分子になり得る者たちの殺戮。てめぇらが大暴れしたからなぁ

 

それを見た奴等もいた奴等も全て根絶やしだ!王国がどうとか関係ねぇ。

 

ディアボロス教団に逆らう奴らは皆殺しなんだよ!」

 

と殺戮を楽しむような外道がよりによってナイツ・オブ・ラウンズであり

 

数多の戦場での殺し、反乱分子の討伐といったディアボロス教団にとって不穏分子の討滅といった貢献とその殺戮能力の高さを買われラウンズ入りをしたニーズヘッグ。

 

「そう…なら言葉は不要ね。ここでその一角を崩させてもらうわ。」

 

とマザーはスライムソードを携えニーズヘッグを見据える。

 

その様子を離れた場所から見るアイリス。

 

「もっと距離を取りなさい。でないと巻き込まれるわ。」

 

「例えそうだとしても…私はこの国の王女です。何が起きているのか…あの男の言う教団がこのような事態を引き起こしたのならば裁かなければならない。」

 

「例え捕まえたとしてもすぐに釈放されてしまうわよ。貴女にも覚えがあるのではなくて?」

 

「…思えばアレクシアが拐われそれを救おうとしたシド・カゲノーは意識不明の怪我を負い目を覚まし私に告げてくれたディアボロス教団という組織の犯行…そして騎士団の強引な手続き…上げればキリがない…まるで」

 

「まるで教団から圧力がかかったみたい?」

 

「………」

 

「アルファ様!治療完了致しました!」

 

「ご苦労様。」

 

「しかし…10名程は…間に合いませんでした…」

 

「…アイリス王女。手厚く葬って上げなさい。それがせめてもの手向けになるでしょうから。皆退避していてちょうだい。」

 

「ハッ!」

 

と黒ずくめの集団はアルファを除き姿を消す。

 

「騎士団の者たちを治療してもらったこと感謝します。」

 

「私たちは貴女からしたら得たいの知れない集団よ。」

 

「それでも命を助けられたお礼はするべきです。」

 

「そう。受け取っておくわ。」

 

そう話している間もニーズヘッグとマザーの戦いは続く。

 

ニーズヘッグはナイツ・オブ・ラウンズなだけはあり上手く攻撃を避けるか痛覚がないのかこちらの攻撃を恐れずに接近してくる。

 

既に胴、手足の腱を切り裂いているにも関わらずすぐに再生する。

 

「再生しているのですか!?いくらなんでも無茶苦茶です!」

 

「そういうような改造を受けているのでしょうね。マザーが繰り出す攻撃を恐れず特攻する。

 

しかも自身の毒による影響もないとなると面倒な相手ね。」

 

と言うもののマザーなら大丈夫という確信をもち見守るアルファ。

 

(今戦っているマザーという人物…少なくとも私よりも強い…隣のこのアルファという人物もそれに近い実力者…状況的に敵対はしてないのが幸いです…)

 

ニーズヘッグは魔剣から大量の毒の霧を何度も繰り返し出しては動きを止めようとするもののその度にマザーはスライムソードを振るった風圧で吹き飛ばすが毒を無差別に辺りへと撒き散らすために中々近付けず決定打が入らず硬直状態が続く。

 

「…成る程魔剣…それも高位の物で毒を生み出す…普通の魔剣士では近付けないせいでダメージが入らない…相性が悪いわね。」

 

「こいつは俺の意思1つで限りなく毒を出せるんだよ!俺に近付くことは不可能!」

 

そうして更に毒を撒き散らしていく中でマザーは

 

「2つ分かったことがあるわ。この霧は風で吹き飛ばせる…そして…」

 

波紋の力を自分の中で循環させ身体が黄金に光始める。

 

光に触れた瞬間毒は瞬く間に消え始める。

 

「太陽…日の光に弱い。それさえ分かれば…」

 

とマザーは懐へと一気に入り込みそして波紋の力を練り込み一気に解放する。

 

山吹き色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)!!」

 

その一撃はニーズヘッグの心臓へと届く

 

「グッグゲゲゲゲき、キサマな、なにをしたただ」

 

と明らかに様子が可笑しいニーズヘッグ

 

「貴方は魔剣を使いすぎて魔剣と同化してしまっている。魔剣の弱点であると同時に自分もそれに強く引っ張られている。そして今太陽と同等の高濃度の生命エネルギーを注入したことにより身体の機能が停止つつあるということ。」

 

それは遠くから見ていたアイリスたちからしても決着が着いたように見えた。

 

「…生命活動が弱まっているわね。」

 

「あの毒…我々が対峙していたら多くの犠牲者を出していたところでした。あれならば…」

 

「グァ…ここまで…か…ならてめぇらも道ずれにしてやる!!!」

 

と魔剣を自分自身に突き刺し液体のようなものを飲み込んだ。

 

変化は唐突に訪れた…

 

身体が肥大化し始めゴキバキと関節があらゆる方向からぐちゃぐちゃと音を立てる。

 

さらに魔剣の影響からか身体中が毒で覆われ最終的に30メートルを越える毒の巨体へと変貌する。

 

「な、なんです…か…あれは!?」

 

「ドーピング…しかも魔剣の特徴まで取り込んだのね。あれはもう人ではないわ…毒の悪魔のような怪物…ポイズンデビル」

 

そうしてニーズヘッグが変貌したポイズンデビルが一歩踏み出すと周りの建物が溶け出した。

 

「高濃度の毒…建物まで侵食している。波紋で相殺出来るけど…次から次へとキリがない…」

 

更にはさながらドラゴンのブレスのように毒を広範囲へと撒き散らしていくのを回避するマザー。

 

建物は愚か周りがどんどん腐食していく。

 

「…!」

 

アルファはおもむろに隣にいたアイリス王女を急いで担ぎ上げると遠くの建物へと退避する。

 

「い、いったい何を!?」

 

というアイリスは先程までいた場所が毒によって侵されているのが見えた。

 

「このまま放置すれば…例え倒せても王都に住めなくなってしまう…ミドガルという国の根幹を揺るがし兼ねないわね。」

 

「…我々にはあの毒に対する有効打がありません…でも貴女の顔には焦りがない…なにかあるのですか?この状況を打破するものが?」

 

「そうね。斬り裂くことなら私でも行けるけど跡形もなく…それでいて周辺を巻き込まないよう出来るのは…彼女だけよ。」

 

とマザーは懐からとあるものを出し己の中で魔力を圧縮し始める。

 

「…市街地で使うには不味いから…上空でやるしかない……」

 

とニーズヘッグだった者を見上げマザーは自身の持つ最強を持って討滅することを決意するのであった。




今回はここまでになります。

アレクシア?がゼノンと接触し逃がさないように出口を塞ぎ背中に悪魔憑きの少女を背負いながらも不敵な笑みで挑発しゼノンVSアレクシア?の戦いが勃発。

そして舞台は代わり地上でも動きがありシャドウガーデンによる襲撃に対してオリジナルラウンズのニーズヘッグが殺戮を開始。

巻き込まれそうになるアイリス王女たちでしたがマザーが助けに入りアルファは他の構成員たちに毒に侵された者たちを担ぎ退避し治療するものの何人かは毒の周りが早く犠牲者が出る。

アイリス王女も突然現れたマザーたちを警戒するものの自分達を守ってくれたこと少なくとも敵対するわけではないと静観することに。

ニーズヘッグの持つ魔剣が意のままに広範囲に毒を放出するタイプのため普通の魔剣士では接近しただけで御陀仏になるものの相手はシャドウガーデンNo.2マザー。

何度か斬り合う内に弱点を把握し渾身のサンライトイエローオーバードライブでノックアウト寸前まで持っていくもののディアボロスの雫及び魔剣と本格的に同化することで怪物と化しました。

原作よりも多大な被害が出始めた王都。

そうしてマザーは自身の持つ最強をもって対処しようとします。

次回はアレクシア?とゼノンの戦いに区切りを着け前回ラストから進めていく予定です。

沢山のお気に入り、感想、評価ありがとうございます!

UAも60000を越え沢山の方に読んで頂け嬉しいです。

次回も遅くならない内に投稿していきます!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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力のために全てを捨てた者は守るために力を得た者に完膚なきまでにやられ次代を担う王女は自らの進むべき道のために過去と向き合う。

ゼノンVSアレクシア?になります。

そしてもうそろそろアレクシア?の正体を明かそうと思います。

まぁ分かっている人が大多数だと思いますがこの人です。

ゼノンとの決着まで書いてたら結構長くなりました。

それではどうぞごゆっくり!


キィン!キィン!ガキィーン!

 

もう何度斬り合ったことだろう。

 

ゼノン・グリフィは目の前にいるアレクシア?の剣戟を幾線とくらい服はボロボロになり少なくない量の血を流していた。

 

(何故だ…先程から押しているのは私だ。アレクシア王女は防戦一方の筈だ。なのに何故…いつ私は攻撃を食らったのだ…)

 

そうゼノンの激しい剣閃をアレクシア?は片手でいなし意識の隙間を縫うように攻撃を加えることによりいつ振るったか気づけないのだ。

 

王道ブシン流の剣術指南としてディアボロス教団ラウンズ候補として今まで貢献したきたはずなのに

 

「こんな…こんな小娘ごときにぃぃぃぃぃぃぃぃ」

 

「それはそうでしょう…だって貴方…全てを捨てたのでしょう。教える立場としての自分、慕い教わってきた生徒も今まで積み上げてきた物を…

 

生憎私は全てを背負ってきた…命を…人との繋がりを…そして今も苦しみ光を奪われたこの娘たちのことを!

 

今まで好き勝手してきたんでしょう…なら当然…覚悟は出来てるわよね

 

今まで散々弄んできた…報いを受けなさい…!」

 

そうして放たれた神速と呼ぶべき速さで一瞬の内に七度振るわれた剣戟はゼノンを斬り裂き後ろに有った通路をも斬り裂く。

 

「ガハッ…ハァハァなんだ…なんだって言うんだ…アレクシア王女がこんなに強いはずがない…誰なんだ!?」

 

「あら?そんな細かいこと…どちらでも…良いことでしょう。ここが墓場だというのに。」

 

と不敵な笑みで言うアレクシア?

 

「苦労を掛けたな。」

 

と第三者の声が響き渡りそちらを見ると漆黒の装束の二人組と

 

「アレクシア王女が二人だと!?」

 

「シャドウじゃないの…遅かったわね。ベータ首尾はどう?」

 

「えぇ、貴女のお陰で囚われていた娘たちは全員保護出来ました。」

 

「ど、どういうことだ!何故」

 

「簡単なこと……貴方たちディアボロス教団側の狙いなんて丸分かりなのよ…アレクシア王女の周りがキナ臭いから私自身を囮にしたのよ…あらかじめアレクシア王女を眠らせ入れ替わり…逆に拐われる…ウチには魔力に長けている者が多いから簡単に逆探知できる。

 

まぁでもシド・カゲノーには悪いことをしたわ。だから手回しして治療しておいたから一先ずは大丈夫でしょう。」

 

「あ、貴女はいったい?」

 

「お初にお目に掛かるわ…私は………」

 

「彼女は我がシャドウガーデンの構成員にして七陰の一人…ミストだ。」

 

「シャドウ様?」

 

「…えぇそうね。確かに忘れてたわ。私は…ミストよ。シャドウのボンクラの部下みたいなものよ。」

 

「ボンクラって…なんか口悪いわね。こんなのが部下って大丈夫なの?」

 

「問題ない。彼女は」

 

「私を…無視するなぁぁぁぁぁぁ」

 

とゼノンはアレクシア?…否ミストへと迫るがそれをいなしそのまま胴へ一閃する。

 

「まったく話し途中なのに斬り掛かるなんて無粋ね。」

 

「す、すごい…見えなかった…って貴女背中の娘を背負いながら…!?」

 

「この娘も囚われていたから助けたわ。」

 

「背中に一人背負いながらゼノンを一蹴するって…」

 

アレクシア王女は王道ブシン流を良く知っているからこそ剣術指南役としてのゼノンの実力は知っている。

 

だからこそ驚いていた。

 

驚いていたのはベータもであった。

 

(今の…流れるように剣に負担を掛けずにゼノン・グリフィの意識の外を、突くようにカウンターを…それも人一人背負いながらやってのけて無傷で…スライムスーツがあるなら私でも行けるけど…それもせずにただの剣でやってのけるなんて…!)

 

「ゲホッ…くそ!」

 

「…ねぇ私に任せてくれないかしら…?」

 

「何故?このままなにもしなければ別に」

 

「確かにそうだけどでもケジメを付けたいの。昔の自分との。」

 

「…そう。なら頑張ってやってみなさい…死ぬ前に助けて上げるわ。」

 

そうしてミストは下がりアレクシアが前に出る。

 

「大丈夫なんですか?アレクシア王女では勝てないと思いますけど…」

 

「別に良いじゃない…本人のケジメよ…好きにさせれば良い」

 

「というかミストってなんですか!?初めて聞きましたよ!」

 

「本名で名乗る羽目になると不味いから咄嗟にシャドウが考えたのよ。」

 

「あ!?」

 

「そういうことだ。5日間ご苦労。」

 

「別に…何時もより眠れたし……ふぁぁ…眠い…」

 

「5日も寝ておいてそれですか!」

 

「計画通り進んだのだ。流石だな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イータよ。」

 

「そりゃそうよ…どれだけ考えたことやら。」

 

そうアレクシア?は七陰第七席イータが化けていたのだ。

 

イータが魔力で形を変えられるスライムを更に改良して波紋で形状を変えられる波紋スライムで色も様々で自身の身体に張り付けるようにして顔すらも変えイナリに採取させた血液を培養し波紋スライムの中で循環させるように流して更に培養するという荒業を使っていた。

 

だからこそ魔力封じも波紋の前では意味をなさずすぐに拘束を抜け出すことができた。

 

しかし血液が薄まってしまう可能性もあったが幸い気付かれずに済んだ。

 

イータの計画はまずアレクシアを眠らせ入れ替わり数日中に誘拐されその間に魔力をイプシロンに辿らせ場所を特定。

 

その後にシドが拷問を受けて騎士団の動きを見て怪しい者の排除、そして襲撃と同時に悪魔憑きの保護。というのが一連の動き。

 

ベアトリクスにも手紙を出し無茶だけはしないようにと言われていたイータ。

 

唯一の誤算は入れ替わってすぐに誘拐されシドがその場で拷問されたことぐらいだろう。

 

アドリブが大変だったとのこと。そしてアレクシアを回収する役目はイナリに任せ自身は一週間ほど不在ということにしてその間に鍛えておくようにとも言っておいた。

 

まぁアレクシアに名乗りを上げようとしてそこを失念していたものの咄嗟のシャドウのお陰で助かった。

 

と小声で話す三人を他所に本物のアレクシアはゼノンと向き合う。

 

「私、あなたのこと頭おかしいんじゃないかってずっと思ってたのよ。やっぱりおかしかったのね」

 

「ふふふふ、本物ならば造作でもない…先程の偽物はあれだが君程度なら問題ない…君の血と研究成果を持ち逃げ切れば私は晴れてラウンズに上がれる…!」

 

「どうでもいいけど、いい加減血の話はうんざりよ。貴方は…いえ貴方たちは今までもこんなことを続けてきたの?」

 

「そうだとも…これも全ては教団の…ディアボロス教団でナイツ・オブ・ラウンズに入るためさ!」

 

と歪んだ笑顔を見せるゼノン。

 

「そう、今の貴方前の胡散臭い笑顔よりは好きよ。」

 

「ふふふ…私は付いている…本当はアイリス王女の方が良かったが、君で我慢するさ」

 

前までのアレクシアならばキレていただろう。

 

「バカね。アイリス姉様に勝てるわけないでしょ。姉様は姉様…私は私よ。それに私だって成長するのよ。」

 

と冷静にアレクシアは剣を構える。

 

「所詮はアイリス王女の二番煎じ…取るに足らない!」

 

とゼノンはアレクシアへと襲いかかる。

 

ゼノンの普段の剣ならばアレクシアではとてもかなわないだろう。

 

だがアレクシアはイータから様々なことを教わり約一週間イナリに鍛えられてきた。

 

(腕の動き…足の動き…無理やりつばぜり合いする必要はない…流れるように受け流す…)

 

キィン!とゼノンの剣を自身の剣のはらで受け流し返す刃で左腕を斬る。

 

自身がアレクシアごときに斬られたとゼノンは信じられない顔で驚愕するがその隙を見逃さずアレクシアは斜めから剣を身体の回転と足の踏み込みで勢いを付け斬り掛かる。

 

ゼノンは咄嗟に受け止めるが以前のアレクシアからは考えられない重さに再度驚愕する。

 

「ば、バカな!?君の凡人の剣が私を圧倒しているだなんて…馬鹿げている!」

 

「あんた今冷静じゃないでしょ…だから私に攻撃を当てられない…それに凡人の剣だろうと私自身を見てくれる人はいるわ!」

 

アレクシアはイナリとの鍛練でとても綺麗な太刀筋であると純粋な気持ちで誉めてくれたイナリを思う。

 

そうして数度打ち合いアレクシアは魔力を剣と身体へと込める。

 

「私が凡人かどうか…そんなことは関係ない…今私の放てる全てを込める!」

 

「ふふ良い顔付きになったわね…イナリに任せて正解だったわ。」

 

「無論だ。あの頑固な王女の心を解きほぐし共に鍛練したのだ。流石イナリだ。…だかうっかりでドアを開けて閉められたのには驚いたな。」

 

「イータから聞いてましたがイナリちゃんうっかり過ぎです。まぁ警戒心が高いと思っておきましょう。それにしても万全ではないラウンズ相手にここまで戦えるようになってるのには驚きですね。」

 

「本人の実力はまだまだよ……冷静さを欠いていること…イナリのお陰で万全の状態で挑んだこと…それらの要因があの娘に…有利に働いているだけ。」

 

「そろそろ決着か…」

 

「やぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

と上段から渾身の一撃を振り下ろすアレクシア。

 

「ふっ勝負を焦ったね。そんな見え見えの一撃を食らう筈がない…やはり君は凡人だ!」

 

とそれをかわしアレクシア目掛けて突き放とうとする。

 

慣性の法則により振り下ろされた剣の急停止など出来よう筈はない……だが

 

アレクシアがイータとイナリに教わった…魔力の操作方法…爆発的な瞬発力…そして腕、足、全ての部位に今持てる全ての魔力をもって強化したが故に!

 

その一撃は放たれた!

 

下まで振り下ろされた剣を極限までの身体強化で急停止させそこからアレクシアはありったけの魔力による更なる強化で死角から振り上げられ放たれた返す刃での一撃は

 

ゼノンの無防備な胴を斬り裂いた。

 

信じられない顔をしてそのまま倒れるゼノン。

 

「なんて一撃!?物体は勢い良く下がれば急に止めることなんて不可能…それを自分の身体を魔力でコーティングし無理やり止めて振り上げるなんて…!」

 

「見事な一撃であった!しかし今の技は…?」

 

「…はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……イナリ…あんなにあれは人に読ませるなって言ったのに…帰ったらお仕置きね…」

 

とイータは今の一撃を見てイナリが読ませたこと知りため息を付く。

 

「イータは知っているのか?」

 

「あれは秘剣燕返し。上段から振り下ろされた剣を急停止させ振り上げるシンプルだけど途轍もない身体能力を必要とする。」

 

「成る程…燕返し…確か東洋の剣豪と呼ばれるものが使用したと言われるものだったな。」

 

「おぉ!シャドウ様も絶賛される剣士…会ってみたいですね!」

 

(イータ後でその漫画読ませてくれるかい?)

 

(良いわよ。中々面白いわよ。でも神を崇拝している連中に見せたら異端物まっしぐらだから気を付けなさい。)

 

「ふむ。それだけ難しい故に今のアレクシア王女にとっては諸刃の剣と言えるものだな。」

 

「!あれは」

 

とベータがアレクシアを見ると腕はうっ血し魔力も殆ど残っていないのが分かる。

 

「単純に強化仕切れる範囲を越えた一撃だった…ということだ。だが芯のこもった良い一撃であった。」

 

とイータはアレクシアに近付きそのままある程度の治療を、始める。

 

「まったく無茶をするものね。下手したら神経やら靭帯を切るわよ。幸い見た感じそこまでは大丈夫そうだけど」  

 

と波紋と魔力を流し回復能力を高めて自己治癒を始めた。

 

「悪いわね。今の私が放てる一撃を放ちたかったのよ。それにしてももうここまで治るなんて…!」

 

とある程度治療が終わり前を見ると

 

「まだだ…まだ終わってないぞ!」

 

執念深く倒れ伏すゼノンは懐から何やら錠剤を取り出し服用する。

 

「この錠剤によって、人は人を超えた覚醒者となる。しかし常人ではその力を扱いきれず、やがて自滅し死に至る。だがラウンズは違う。その圧倒的な力を制御できる者だけが、ラウンズになる権利を得るのだ」

 

ゼノンは錠剤を一気に飲み込んだ。

 

魔力が暴風となって吹き荒れた。

 

一瞬にしてゼノンの傷が治っていく。

 

筋肉は締まり、瞳は充血し、毛細血管が浮き出る。

 

「覚醒者3rd」

 

圧倒的なまでの力の重圧に押し潰されそうになる。

 

そんな錯覚を覚えるがアレクシアの心はとても澄んでいた

 

ここ数日のイナリとの鍛練そしてシャドウガーデンという悪魔憑きを、助けるために王国に巣食う闇と戦うといった覚悟を見た。

 

「アレクシア王女が魅せたのだ。ならば今度は我の番だな」

 

とシャドウが立ち塞がる。

 

「最強の力を見せてやろう」

 

余裕の笑みを取り戻したゼノンが言う。

 

「最強って物凄い自惚れてるわね。」

 

「己がどれ程愁傷な存在なのか理解していないなんて哀れですね。」

 

ベータとイータは揃って言う。

 

ゼノンは負け惜しみと捉えシャドウに向かって剣撃を放つ。

 

だが

 

「…軽いな。」

 

シャドウは難なく受け止める。

 

「舐めるなァァァァァァァアッ!!」

 

咆哮と共に剣を薙ぐ。

 

疾風の如く剣を突く。

 

烈火の如く連撃を繰り出した。

 

しかし。

 

その総てが通じない。

 

「アアアアァァァァァァァアッ!!」

 

気合いの咆哮が虚しく聞こえた。

 

まるで大人と子供の稽古だった。

 

アレクシアはその戦いを衝撃と共に見ていた。

 

未だかつて、ゼノンがこのような姿を曝すことがあっただろうか。余裕の笑みも人格者の仮面も脱ぎ捨てて、それでも尚まるで届かない。アレクシアの知る最強の存在は姉だった。その姉ですら、ゼノン相手にこれほど圧倒出来るとは思えなかった。

 

漆黒の刃に魅入られて、目が離せないでいた。

 

なぜなら、それは……。

 

「凡人の剣……」

 

アレクシアの剣の、その先にある姿だったから。

 

幼い頃、アレクシアが考え抜いた理想の剣の完成形。それは才能でも、力でも、速さでもなく、ただ基本の積み重ねによって辿り着ける持たざる者の剣だった。

 

「あいつの剣は愚直なまでに努力を重ね続けてきた剣。天才でもなく決して才能があるなんて言えないけどそれでも彼もまた天才の領域にいる。

 

アレクシア王女努力を続けるのもある種の才能なのよ。そういう点は貴女も似たようなものでしょうね。」

 

とイータは言う。

 

凡人の剣が今、ゼノン・グリフィという天才を圧倒していた。

 

「凄い……」

 

アレクシアはこの剣が好きだ。

 

剣を見れば、その人の歩んできた道が見える。

 

この剣はひたむきに、まっすぐに、積み重ねた剣だ。

 

「何故だ!私は次期ラウンズだぞ!それがこんな小僧どもに!」

 

「醜い……」

 

「醜いな……」

 

アレクシアとシャドウの声が重なった。

 

2人の目指す剣は同じ。ならば抱く思いも同じ。

 

「醜いだと……?」

 

笑みを消してゼノンが問う。

 

「その程度で最強を騙るな。それは最強への冒涜だ」

 

「貴様ッ」

 

「借り物の力で最強に至る道はない」

 

そう言いシャドウの魔力がこの日初めて高まった。これまでシャドウは殆どその魔力を使っていなかったのだ。

 

シャドウの魔力は緻密。あまりに緻密で、その存在を知覚できないほどに。

 

その高まった魔力は青紫の線となって姿を現した。

 

細い、細い、幾筋もの線。それが稲妻のように、血管のように、シャドウを取り巻き、美しき光の紋様を描いていた。

 

「綺麗……」

 

アレクシアはその光景に見惚れた。光の美しさにではない、その緻密に練られた魔力の美しさに見惚れ、憧れた。

 

「何だ、これは……」

 

「ちょっとシャドウもっと範囲を絞って頂戴。後で面倒なことになるから」

 

「ふぅ良かろう。」

 

と範囲が狭まりシャドウの真後ろとゼノンの真後ろの狭い範囲となる。

 

だが範囲を狭めたことで更に圧縮された魔力は更に増大する。更にシャドウ自身が黄金のように輝いていた。

 

「真の最強とは何か……その眼に刻め」

 

漆黒の刃に魔力が集い紋様を刻む。

 

それは螺旋を描きながら力を集約させていく。

 

まるで、総てがその螺旋に吸い込まれていくように。

 

凄まじい力が漆黒の刃に込められた。

 

「これが我が最強」

 

コォォォォォとアレクシアの耳に呼吸音のようなものが聞こえる。

 

「アイ・アム…アトミック…サンライズオーバードライブ」

 

音が消えた。

 

光の奔流がゼノンを飲み込んだ。

 

壁も、大地も、総てを貫き、飲み込み、遙か夜空の彼方へ。

 

そして、爆ぜた。

 

その日王都の一部にて極小の大爆発が巻き起こった。

 

夜空に光の紋様が刻まれ、王都が青紫に染まった。

 

遙か遠くから……爆風が遅れて王都に届き、雨雲を吹き飛ばし、家屋を揺らし、大地を揺らし、通り過ぎた。

 

後に残るのは美しい星空と満月だけであった。




今回はここまでになります。

アレクシア?の正体はイータでした。

伏線は結構あり一週間不在やら会話でもイータが一切話していない、アレクシアの血を採取させていたなどという形でした。

そして七陰として名乗ろうとした時本名だとバレることに気付きどうするかと考えシャドウがミストという偽名で切り抜ける。

そしてアレクシア王女は終ワルの佐々木小次郎渾身の一撃を魔力で身体強化し再現しました。

しかし諸刃の剣で使えば腕の筋肉の断裂、脱臼、など身体が壊れるという。

今回はイータによる波紋と魔力の治療で事なきを得ましたがそう何度も使える技ではないですね。

そしてアレクシアにシャドウの剣技を見せたので完全に自分の中のコンプレックスが解消されたアレクシア王女。

そして遂にシャドウが必殺のアトミックを発動!

波紋も組み合わせオーバードライブしたせいで原作よりも範囲を絞った筈が結果的に原作よりも建物やらを消滅させているという始末。

イータが言わなかったら更に被害は拡大していたことでしょう。

あまりに高密度な魔力のため後日魔力汚染されていないか調査するイータであった。

こうしてゼノンとの決着は付いた王都襲撃編。

次回は転生ベアトリクスの方も決着を付ける予定です。

お気に入り、感想、評価ありがとうございます。

今後とも更新続けていけるようにしていきます。

FGOではそろそろコラボイベントストーリーが最終までいくのでドラコーの三臨が楽しみです。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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王国に巣食い王都を侵す毒の怪物を討伐するため母なる者は圧倒的な爆発を起こし王都の危機を救い姉妹を隔てる陰を月の光が照らし晴らす

今回でラウンズとの戦いは終わりとなりアレクシア誘拐編はエピローグへと向かえていきます!

マザー最大火力をどうぞお楽しみに!

それではどうぞごゆっくり!


時は少しだけ遡る。

 

ナイツ・オブ・ラウンズ八席が奥の手を出し毒の怪物、ポイズンデビルと化し王都を毒の猛威が襲いシャドウガーデンNo.2マザーは切り札の一つを切ることにした。

 

「ポイズンデビルがどんどん王国に迫っている…」

 

「あの巨体が歩くだけで王都はダメージを負っていく。幸いなことにまだ水源に毒が混じっていないことね。」

 

「野放しに出来ない…けれども…私たち騎士団はあれに対抗できる手段が悔しいですがありません。」

 

「マザーならばどうとでもなるわ。さてちょっと気を引き付けないといけないわね。」

 

「何処へ行くんですか?」

 

「少し引き付けて動きを止めるわ。でないと更に被害は出るでしょう。」

 

とアルファはアイリスを置いてポイズンデビルへと向かう。

 

一方のマザーは魔力を限界以上に取り出した大きめの弾丸に込める。

 

暴発しかねないほどの密量をマザーは更に込める。

 

その間に進軍するポイズンデビルを遠距離からスライムソードを鞭へと変えて足払いさせ転倒させる。

 

「ありがとうアルファ。あと…一分お願い。」

 

「任せてちょうだい」

 

と短くも長い一分が始まる。

 

アルファに気付いたポイズンデビルは本能からか手近な者へと攻撃をし始めアルファは毒という液体のためスライムボディスーツと混ざると危険だと認識しかわし続けアルファは己の波紋を高めて

 

緋色の波紋疾走(スカーレットオーバードライブ)!!」

 

炎の性質を持つ波紋疾走をそのまま鞭へと注ぎ込み毒が引火する性質だったようで爆発を巻き起こす。

 

残り40秒…

 

しかしそれでもポイズンデビルの歩みは止まらず更に毒を散布する。

 

それら全てに緋色の波紋疾走による引火で爆発させ視界を一時的に奪う。

 

残り30秒…

 

ポイズンデビルは腐蝕液による酸を吐き出し建物を尽く破壊していく。あまりの毒性の強さゆえに土壌にも汚染し始める。

 

そんな中で子供が逃げ遅れているのがアルファの目に映り込む。

 

今にも腐蝕毒が襲い掛かろうとしているのが目に入りアルファは全速力で子供を守ろうと間へ入りスライムスーツを咄嗟に壁とすることで毒を防ぐが追撃とばかりに大量に降り注ぐ。

 

子供に覆い被さり少しでも子供に毒を浴びせないようにアルファは庇う。

 

がそれをアイリス王女が自身のコートを盾にして防ぐ

 

数瞬しか持たなかったがアルファにとって数瞬あれば充分

 

アイリス王女と子供をその間に救出する。

 

「アイリス王女無茶をするものではないわ。下手をすれば死んでいたわよ!」

 

「私は王女です。国民の生活を守る義務もありますし…何より我が国の民を助けようとする者を見て見ぬふりをして助けないなど私はしたくありません。」

 

「そう。ならこの子をお願いするわ。もうすぐ準備も出来るでしょうから。」

 

残り10秒…

 

そのままアイリスは近くの騎士団員へ子供を預け戻る

 

5秒…

 

アルファは目の部分を狙い波紋を幾度となく流し込む

 

3秒…

 

眼球を焼かれる痛みで動きが鈍る。

 

1…

 

「ありがとうアルファ…アイリス王女も…決着を着けましょう。」

 

そういうマザー手の内に莫大な魔力を込めた弾丸が生成されていた。

 

マザーはポイズンデビルへと近付いていく。

 

そして己の中で波紋を練り上げ魔力で身体特に足の骨格を極限までコーティングする。

 

その時マザーたちの後ろで極小の大爆発が巻き起こった。

 

夜空に光の紋様が刻まれ、王都が青紫に染まった。

 

遙か遠くから……爆風が遅れて王都に届き、雨雲を吹き飛ばし、家屋を揺らし、大地を揺らし、通り過ぎた。

 

その威力にポイズンデビルも釘付けになり収まった瞬間に出来た隙をマザーは見逃さずポイズンデビルの真下へと加速し

 

「…往生しなさい…!!!」

 

と弾丸を一度蹴り上げポイズンデビルの体内へと打ち込み緋色の波紋疾走を足へと集中させて最大威力で再度蹴り上げる!!

 

「す、凄い!あの巨体を打ち上げるだなんて!?」

 

「アイリス王女!衝撃が来るわよ!何かに掴まりなさい!」

 

そうして上空高くまで打ち上げられていくポイズンデビル。

 

その様子は今しがたアイ・アム・アトミックサンライズオーバードライブを放ったシャドウ、アレクシア、ベータ、イータも吹き抜けとなった跡地で見えていた。

 

「あれは…マザーか?」

 

「何か飛んでいっているようですね…?」

 

「え?…本当ね?どうして」

 

「全員対衝撃体勢取りなさい!それか何かに掴まるのよ!」

 

目に身体強化を集中させていたイータは飛んで行く物体の体内にある莫大な魔力の弾丸があることが分かりそれが母ベアトリクスに聞き周りで唯一それの威力を目撃したことがあったためこの後に起こることを理解していた。

 

「い…ミスト?何をいって?」

 

「母様の…マテリアル・バーストよ!!」

 

「マザーの切り札の一つか!?」

 

と慌てて何かに掴まるイータたち。シャドウもマザーから切り札として持っているものというのは聞きイータの慌てようから尋常ではないものだと判断した。

 

そうして空高く登っていくなかで体内へと打ち込まれた弾丸に込められた魔力が一斉に分解を起こしていき…弾丸という質量が純粋なエネルギーへと分解…変換されていき…

 

音が消え上空は朝になったのではないかという錯覚を起こしかねない程の閃光と轟音が響き渡った。

 

遥か上空で発生した衝撃波が遅れて王都へと届く。

 

「…な、なんという!?もし王都の中心で放たれていれば…」

 

とアイリスは血の気が引くような思いをする。

 

「だからこそマザーは遥か上空へとあれを蹴り飛ばしたの。王都を自身の力で壊滅させないようにと。」

 

そうして閃光が収まる頃には王都を襲った怪物は跡形もなく消滅し王都は救われた。

 

「終わったわね…」

 

「えぇ…流石だったわ。シャドウも目的を達成したみたいだし…後は貴女たちに任せるわ。」

 

とアイリスへと話し二人はその場を去ろうとする。

 

「ま、待ちなさい!貴女たちは何者なのですか!」

 

「我らはシャドウガーデン。陰に潜み陰を狩るもの…そして闇に沈む真実を拾いあげる者。」

 

「シャドウガーデン…私たち騎士団にとって不明瞭な組織です…しかし…王都を救っていただいたこと感謝します。」

 

「成り行きというもの…気にしなくて良いわ。」

 

「これだけは教えてほしい…貴女方は…王国に仇をなすものでしょうか?」

 

「それは貴女が決めること、私たちは悪を許さず理不尽に苦しむものを少しでも減らすべく戦う者…それだけよ。」

 

「アイリス王女…先程の爆発の方へ行くと良いわ。多分貴女の探しものが見つかるでしょう。失う前に行って上げなさい。そして良く話しをすることよ。」

 

とマザーとアルファは今度こそ姿を消すのであった。

 

「探し者…アレクシア!待ってて今行くわ!」

 

とアイリスも先程の爆発の方へと走り出す。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「マザーの切り札…途轍もないな。何を起こしたのかは後で聞くとしよう。」

 

「王都で放たれたらこの国全てが吹き飛ぶから相当な威力よ。昔に海上で使って津波が押し寄せて大変だったのだから。」

 

「太陽のように眩く光る天上の光…流石です!」

 

「…それであんたらはどうするのよ。」

 

「言ったであろう。我らは陰に潜み陰を狩るもの。陰に消えるのだとも。」

 

「そう…何だか色々あった一週間だったわ。でも…少しだけ…楽しかったのも事実…ねぇ貴方たちはこれからも戦い続けるの?」

 

「無論だ。この世に光を脅かす者がいる限り我らの戦いは終わらぬ。だがそれでも我らは前へと進む。」

 

「案外真っ直ぐなのね…ほらさっさと行きなさい。騎士団来たら捕まるわよ。一応恩人だから今回は見なかったことにするわ。」

 

「さっさと帰るとしましょう……色々とやらないといけないことは山積みだもの。」

 

「…というか貴女はいつまで私の格好してるのよ」

 

「細かいことは良いのよ……これからも精進なさい。貴女の剣の完成形は見たのでしょうから……後は目指して自分だけの剣を極めなさい。剣の道に終わりはない…挫けそうになったら初心を思い出しなさい。」

 

とミスト…もといイータはアレクシアの頭を撫でながら言う。

 

「こ、子供扱いしないでちょうだい…!」

 

端から見ると妹を励ます姉のような感じだ。

 

「では行きましょう…シャドウ様」

 

「また我らの道が交差するのならば相見舞えることもあろう。ではまた…因果の交差する彼方で」

 

そうしてその場にアレクシアを残しシャドウたちは跡形もなく消えるのであった。

 

「本当に陰のように消えた…悪魔憑き…ゼノンの言ったディアボロス教団…闇に沈む真実を光に晒す…シャドウガーデン…シャドウに七陰…それに…」

 

アレクシアはシャドウの剣を思い出す。

 

とても綺麗で愚直なまでに鍛練してきただろう剣

 

アレクシアは思い出すように剣を振るう。

 

いつかその剣筋へと至れるように…

 

幸いどうやらあのミストが言うには私は努力の天才らしい…ならこれからも地道に積み重ねていこう。そしていつか私だけの真実を見つける。

 

「アレクシア…っ…アレクシア…」

 

自分を遠くから呼ぶ声が聞こえた。そして

 

「アレクシア!」

 

「アイリス姉様…!」

 

ここ最近ずっと話しをしていなかった姉妹は

 

「ごめんなさい…アレクシア。遅くなってしまって…」

 

「姉様…ご心配お掛けしました…」

 

「貴女が無事で本当に良かった…良かった……!」

 

「姉様…ただいま…」

 

「おかえりなさい…アレクシア。」

 

と姉妹二人を隔ていた陰のわだかまりを月の光が照らすように晴れるのであった。




今回で王女誘拐編は終了になります!

転生ベアトリクスの切り札の参考にしたのは魔法科高校の劣等生でのマテリアル・バーストを参考に開発した物。

本来のマテリアル・バーストは質量を消し去って、そこに「質量相当の高エネルギーが存在する」空間を出現させる。この膨張する空間に触れた物質は激しく振動し、加速され、燃焼、融解、蒸発、崩壊、爆発などの変化をもたらす。

これをベアトリクスは魔力というエネルギーを無理矢理弾丸へと注ぎ込み莫大な質量にしその圧縮された魔力が元に戻ろうとする動きが発生することにより擬似的なマテリアル・バーストを再現した。

弾丸も特注で魔力の伝導率が驚くべき90%伝えることが出来るからこそ出来る芸当。

シャドウのアトミックと違う点は少しタメが必要になること。しかし何もこれが弾丸でなければならないという理由はなく魔力伝導率の高い剣でも良い。

そして原作よりもアイリス王女のシャドウガーデンを見る目が好意的です。

まぁ目の前で死にそうな子供を庇ったり騎士団を治療したり王国を救うなどしているのもありますからね。

そしてアレクシアも自身の目指す剣の完成形を見て決意を固めそんなアレクシアにエールを送るアレクシアに変装したままなイータ。

何だがもう一人姉が出来たみたいだったと後にアレクシアは語るのであった。

少しオリジナルを挟みましたがアニメ5話ぐらいまでは進めてこられました。

そして次回は後日談を挟み学園襲撃編へと移ります。

原作でのシェリーのこともあるので今作はある程度どういくかの路線は決めてるので何とか続けて書いていこうと思います。

今回もお気に入り、感想頂きありがとうございます!

これからも遅くならない内に投稿していこうと思います。

FGOではイベントもエピローグを迎えドラコーの姿をやザビーが出てきたりとても良かった!

それでは今回も読んで頂きありがとうございました!


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誘拐事件の後日談…終わる関係と新しく始まる関係、狐娘のうっかりにお仕置きするのんびり娘。

王女誘拐事件の後日談となります!

事の顛末をシドへ説明しアレクシアは関係を続けたいと言う。

果たしてシドの答えとは?

今回は少し短めになってます。

それではどうぞごゆっくり!


誘拐事件より数日…

 

誘拐されていたとされるアレクシアは様々な検査を受け治療院を退院した。そうして歩いていると偶々シドと出会った。

 

「…あら?」

 

「やぁ無事で何より」

 

「貴方も大変だったわね…傷は平気なの?」 

 

「まぁね。君のお姉さんのお陰でちゃんとした治療も受けられたから。」

 

まぁ実際は普通に自己治癒力で治しただけなのである。

 

「……良かったわ…」

 

「それでゼノン先生だけど残念だったね。」

 

「あいつ事件の首謀者だったらしいから今度のブシン流の授業は激減するでしょうね。あいつに同情はしないけど慕っていた生徒には残念なことね。」

 

ここ数日の事件の犯人であったゼノンはアレクシアを拐った犯人であることなどが公表され受け持っていた学科と騎士団の顔に泥を塗った存在とされている。

 

「まぁ今回のでこの関係も終わりってことだね。」

 

「…そうね。」

 

残念そうに言うアレクシア。

 

「二点、言っておきたい事があって」

 

「ここで?」

 

と人気の少なくなった場所で言うシド

 

「ここでよ。」

 

少女は目を細めて青い空を見上げた。

 

「一点目、一応感謝の言葉を言っておこうと思って。前に私の剣が好きって言ってくれたでしょ。遅くなったけど、ありがとう」

 

「いいよ、別に」

 

「ようやく自分の剣が好きになれたの。切っ掛けはあれだけどイナリやあいつに会わせてもらったこともあるからね。」

 

「それなら良かったよ。イナリも喜ぶだろうしね。」

 

「もう1点…今回のことでゼノンは死んだじゃない…」

 

少女はどこか言い辛そうに言葉を探す。

 

「もし、あなたさえ良ければ……」

 

 少女の赤い瞳がキョロキョロする。

 

「もう少しこの関係を続けてみないかなって」

 

 少しだけ、小さな声で少女は言った

 

………

 

(ふむ困ったな…ここで中指を立てお断りだというのは簡単だ。だがこれから先の教団との戦いの時などを考えるとぶっつんと縁を切るというのもな…

 

前世とかは陰の実力者になろうと余分なものを削ぎ落とした…だが悪友であるイータから言われた拾い集めるという行為……ん、友?)

 

「アレクシア。元はといえば僕の間違った行動から始まった関係…そういった間違いで続く関係は何処かで破綻する。色々と飛ばしすぎたのもあるし…だから君の答えに対して僕はNoと言おう。」

 

「…そう、とても残念」

 

「そんな僕からも一つ、君にお願いがある。」

 

「なによ、いま振ったばかりでしょうに」

 

「僕はカゲノー男爵家長男、シド・カゲノー…アレクシア・ミドガルさん、僕と友人になってくれますか?」

 

とシドは間違いでなった関係を今度は新しく始めたいと願った。

 

「…」

 

アレクシアはその誠実な態度に驚くものの

 

「フフッ貴方、不器用って言われるでしょ」

 

「失礼な僕は器用だよ。」

 

「そういうことじゃないわ。全く…」

 

だからこそアレクシアも返事を返した。

 

「良いわよ。ミドガル王国第二王女、アレクシア・ミドガル。宜しくね、シド。」

 

そうしてシドとアレクシアの関係は一度清算されまた新しい関係を紡ぎ出すのであった。

 

「あらプロポーズし直したら振られて友人にって言われた王女と王女に罰ゲームで告白したアホ男じゃない。何やってるのよ。店の外で」

 

とガチャりと扉を開けてイータは言う。

 

「なっ!?何言ってるのよ!振られてないわよ!」

 

「というかいつの間にイータの店の前に来てたのか」

 

とイータは店の外でやられても仕方ないと中へ通す。

 

「ふぇぇぇん~ご主人しゃまぁぁぁぁぁ~ごめんなしゃ~い」

 

「全くこのうっかり狐娘は……お仕置きよ。暫くそうしてなさい。」

 

「ちょちょちょ!?あんたイナリに何してるの!?」

 

と言うアレクシアの前にはドラム缶のような物にイータがイナリを浸からせている風景だった。

 

「なにって帰ってきたらこれが出しっぱなしになってたからイナリを問い詰めたらアレクシア王女が読んだと言うじゃない。

 

これが聖教のやつらに見つかったらこの子自身にも被害が行くの

 

だからこれは身内以外閲覧禁止にしてるやつなのよ。部外者に見せたからこれからイナリで出汁をとって完成した尻尾を油揚げに出来るマシンで余すとこなく食べるだけよ。」

 

と終末のワ○キューレの本を手にしながら言うイータ。

 

「待ちなさい!それは私が置きっぱなしにしてあったのを読んだだけでイナリは関係ないわ!」

 

「部外者が入ってこないでちょうだい。」

 

「部外者じゃないわ!!その子は私の友だちよ!」

 

と恐れずにイータに言うアレクシア。

 

「…ん?これって入浴剤の新しいやつ?ってことはイータまたイナリに試しに浸からせてたね。

 

しかもこれ30種類はあるしイナリ因みにそれで幾つ目?」

 

「15個目ですぅ~」

 

「うわ鬼畜…!一つ10分だとしてかれこれ二時間半ドラム缶に入りっぱなしはキツいね。」

 

というイナリとシドの会話から何か勘違いしていたことに気付いたアレクシアと

 

「ふふっバカね。イナリを食べるなんてしないわよ。家族なんだから…まぁ今言ったことも間違いじゃないから新しく作った入浴剤責めで勘弁してあげてるのよ。

 

貴方を試させてもらったのよ…ふふふふっ」

 

「………え?」

 

アレクシアを試したイータ。

 

「いやぁ凄かったねアレクシア、イータに啖呵切って友人って言うのは。」

 

「イナリにも友だちが出来たことは嬉しいことだわ。今日は狐うどんね。」

 

からかわれたことに気付いたアレクシアは顔を真っ赤にして

 

「この性悪コンビーーー!!!!」

 

と剣を抜き放ちシドとイータはそのまま中庭へと出てアレクシアはそれを追いかけて斬りかかりイータは涼しげにかわしてシドも転ぶ振りやらわざとらしい避け方でかわすのであった。

 

「ご主人さまぁぁぁいつまで続くんですか~ー」




今回はここまでになります!

後日談で原作では学園でシドに報告するアレクシアでしたがこちらでは治療院から出てきたところでシドに遭遇し原作でも言った台詞をシドへ伝えるアレクシア。

最初断ろうとしたシドでしたが自身の削ぎ落とした物を今度は手にしてみようと新しい関係をスタートしたシドとそんな不器用なシドに微笑みながら受け入れるアレクシア。

おもいっきりイータの店の前でやっていたのでイータがからかい中へ入るとイナリがドラム缶に浸かっているという衝撃な姿に驚きイータへ啖呵を切るアレクシア

その実、単に入浴剤のテストをぶっ続けでやっていただけなのでアレクシアを試すために言った冗談でありからかわれたと知ったアレクシアは顔を真っ赤にして二人を追いかけて中庭で剣を振るいイータは軽々避けて駄目な点を指摘したりシドも不自然なぐらいに転んだりスタイリッシュな避け方をしてからかいました。

その後にイナリを一旦上げて狐うどんを食べた四人。

出汁…?さてなんのことやら…

次回からシャドウガーデンの偽物やらシェリーの話しへと繋がっていく予定です。

感想、評価、お気に入りありがとうございます。

次回も遅くならない内に投稿していこうと思います!

今回も読んで頂きありがとうございました!

次回も読んで頂けると幸いです!


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陰の園は現状を報告し偽物の園の断罪を決め狐娘は無自覚に成果を上げ囚われていた娘の見たものは…

今回はシャドウガーデン側の話しになります。

イナリのファインプレーとそしてミリアのことにも触れていきます。

それではどうぞごゆっくり!


王都に於けるシャドウガーデンの拠点ともなっているミツゴシ商会。

 

建物の最上階には幹部である七陰の内、第一席であるアルファを始め五人のメンバーとNo.2マザーことベアトリクスが集まっていた。

 

「アレクシア王女に化けてイータが捕えられていた教団施設はその機能をイータが尽く破壊して壊滅。ゼノン・グリフィは跡形もなく蒸発しました。そして最高幹部ナイツ・オブ・ラウンズの一人、毒蛇のニーズヘッグはベアトリクス様が撃破し木っ端微塵となりました。」

 

先日の事件について説明したのは第二席・ベータ。シャドウの活躍に頬を赤く染め、少しだけ息が上がっている。

 

「ボスと母は最強なのです〜」

 

「本当に……美しい光でした」

 

第四席・デルタ、第五席・イプシロン。二人もシャドウとマザーに対して深く感動しているらしく、目を閉じて主の素晴らしさに浸っていた。 

 

「奴等も思い知ったことでしょう。自分達が、狩られる側の存在であることを」

 

第三席・ガンマ、シャドウガーデン一の頭脳を持つ彼女は、ミツゴシ商会の会長も務めている。戦闘に関して波紋を使わなければ最弱と呼ばれるメンバーだが、頭と波紋を使わせれば右に出る者は居ない。

 

「いずれ敵の全てが……あの光に消える」

 

美しくも悪い顔でアルファが笑った。王都での初陣に見事勝利したことで、組織の士気は高まっている。

 

「皆…肝に銘じて。ディアボロス教団を殲滅するのは良いわ…でも私たちの目的は悪魔憑きの娘たちの保護が最優先事項よ。」

 

「えぇそうね、伯母様。今回保護した子達はどうなの?」

 

「皆幼子だから街で傷が癒えるまで皆にお願いしたわ。」

 

「母の街…でっかくなってきたです!」

 

「いつかは国と呼べるほどの規模へなります…それも全てベアトリクス様の手腕のお陰。」

 

「私ではないわ。みんなのお陰だもの。それとガンマこの間のお店繁盛しているみたいね。」

 

「はい。イータが開発して改良を加えたスイハンジャー6号とおどれうなぎ君サードのお陰で売上は順調です。

 

それとイータ考案の立ったまま素早く食べれる立ち食い蕎麦というのも試験的に導入したところ冒険者たちに人気が出ております。」

 

「順調そうで良かったわ。これからもお願いね。」

 

「はい!」

 

「それと報告でゼータから目標を発見し調査に入るとのことです。」

 

「そう。吉報を待ちましょう。」

 

「イータからは研究も順調との報告です。そしてベアトリクス様との共同での列車事業は大成功で本数を増やし利用客は依然増えております。」

 

「都市部の交通は完全に握れているわね。」

 

「それとイータから気になる報告が。」

 

「気になる?」

 

「はい。どうも強欲の瞳と呼ばれるものが紛失したという情報があったそうです。国に依頼をしたのは魔剣士学園副理事長のルスラン・バーネットで危険なものということで預けたのだそうです。」

 

「そして更に今回学園に持ち込まれたというアーティファクト…キナ臭いと。」

 

何か一連の動きに関わりがあると睨むベータ。

 

「えぇどうやらアイリス王女の設立した紅の騎士団がその解析を依頼したとイナリ経由でアレクシア王女から聞き出したそうです。」

 

「確かその解析を頼まれたのが学園随一の秀才シェリー・バーネット。学生ながら優秀な研究者でもあるわ。」

 

「……シェリー?」

 

「?伯母様?」

 

ベアトリクスが反応したことにアルファは何か接点があるのかと思う。

 

「気にしないで続けて。」

 

「はい、しかも強欲の瞳は彼女の母ルクレイアが生前研究していたものだそうで彼女も強盗の手に掛かり…」

 

「そうルクレイアの…やっぱりシェリーなのね…」

 

「伯母様はシェリー・バーネットを知っているの?」

 

「えぇといってもあの娘がまだ赤ん坊の時だったわ…ルクレイアの件は強盗ではなく教団が関与してると思ってるわ…しかも強欲の瞳…調査が必要ね。何とかシェリーとコンタクトを取りたいものだけど…」

 

「それは何とかするわ。」

 

「それからイータの救出したオルバ子爵の娘のミリア…彼女は」

 

「イータにお願いしてあるわ。だから大丈夫。」

 

「はい…!」

 

「…オルバ子爵のことはシャドウが最後戦いそしてイータが看取ったのだもの…」

 

「…そうね子爵はもういないもの。」

 

「…え?」

 

とアルファはベアトリクスの引っ掛かる言い方に疑問を覚えるが取り敢えず置いておく。

 

「それと近今の問題は…」

 

「これのことね。」

 

とアルファは乾いた血の付いた紙を取り出す。

 

そこにはシャドウガーデンが死の裁きをと書かれていた。

 

「教団側が仕掛けてきたことでしょう。此方の印象を悪くした上での誘い…」

 

「上手く痕跡を消しているようですが…我らから逃げることは出来ない…」

 

コンコンと控えめなノックが響く。

 

「この控えめなノック…イナリね。入って良いわよ」

 

「失礼します…すみません会議中に…」

 

と荷物を風呂敷に包み首に掛けてイナリが入ってきた。

 

「良いのよイナリ。久し振りね元気にしてた?」

 

といつの間にか移動したベアトリクスがイナリの頭を撫でる。

 

「ベアト様お久し振りですぅ~」

 

「何かあったの?」

 

「ご主人様から試作品の魔力阻害防御の試作アーティファクトが完成したので皆さんに持ってきたのですぅ」

 

「イータは仕事が早いのね。」

 

「ただまだ試作品なので効力は30分ぐらいしか持たないって言ってました。」

 

「30分…長時間の探索の時は厳しいものがあるわね。」

 

「改良は続けていくって言ってましたですぅ」

 

「がぅ久し振りのイナリの尻尾です~」

 

「コン!?デルタ様~」

 

「いやデルタ貴方自分の尻尾あるでしょ」

 

「イナリのは柔らかいのです!クンクン…イナリ色んな匂いがするのです…」

 

「え~と多分ご主人様の実験で入浴剤に浸かりすぎたからだと思います。」

 

「どれどれ…あらこっちはバラの匂いかしら?」

 

「こっちの尻尾はアロマの匂いね。」

 

「此方は森の匂いがするわね。」

 

と七陰たちとその場に控えていた構成員も揃ってイナリの尻尾をもふりだす。

 

「あわわわわわ…あ、あと何ですけど」

 

「まだ何かあるの?」

 

「ここに来るまでに近道しようと暗い小道を通ってきたのですがいきなり四人ぐらいの黒マントの人に襲われましてしかもシャドウガーデンってぶつぶつ呟いてて

 

シャドウ様以外に確か男の人っていなかったと思ったので取り敢えずハルバードでゴツンとして捕縛して連れてきたんですけど…」

 

とイナリのその言葉に一瞬固まる彼女たちだったがアルファが彼女が立て掛けたハルバードに返り血が付いていたのに気付きドアを開けて外を見るとイナリの言ったその四人が頭から血を流し目を回していた。

 

「…?も、もしかして違いましたか!?」

 

「…お手柄よイナリ。イータもだけど貴女も仕事が早いわ。」

 

「えへへ。誉められたです~」

 

「流石ウチのマスコットね。可愛いだけじゃなくて仕事も的確なんて素晴らしいわ。」

 

「どっちかというと巻き込まれてるだけな気もするわ。」

 

「まぁイナリちゃんですからね。イータに付き従うだけ凄いことですから的確……イプシロンはイータの剣の腕前って見たことありますか?」

 

「あんまりないわね。昔母さんと訓練してた時にやったところぐらいかしら。」

 

「…そうでしたか。」

 

「何かあったの?」

 

「この間の作戦時イータはスライムソードではなく数打ちの安物の剣で教団とゼノン・グリフィを相手取りました。一切の傷も負わずしかも背中にミリアさんを背負いながらです。」

 

「嘘でしょ!?私らだってスライムボディスーツがあるなら問題ないけど普通の剣でって」

 

「変装用の波紋スライムをしっかり制御した上での戦闘は私たちでも厳しいものがあります。」

 

「イータは昔から人に努力を見せない娘だから。」

 

「ベアトリクス様はご存知だったのですか?」

 

「えぇあの娘は色んな発明品を作り自分の鍛練に役立ててるから。」

 

「そうだったのですね。」

 

「ではこの四人から情報を抜き出しましょう……ニューお願いね。」

 

「はい、ガンマ様!」

 

「今頃イータは着いているかしらね。」

 

「伯母様…さっきのことだけど…ミリアにはもう身寄りはいないのよね?」

 

「?言ってなかった?」

 

とベアトリクスは言い続けて言葉を紡ぎその場にいた一同は驚くのであった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

ここはベアトリクスが作った村が人が増え街となった場所。

 

イータは元々ここに住んでいたので顔馴染みも多く久し振りに戻ってきたので歓迎された。

 

「…あ、あの…イータさん…」

 

と背中に背負われたミリアはイータに尋ねる。

 

「…父は…私を治すために…教団に入ってしまった…それで…貴女たちが戦って………もう…いないのですよね…私が捕まっていた時…研究者が…オルバはもういないって……」

 

「それは私の口から…言うのは…だから自分の目で確かめなさい…」

 

とイータはまだ足元の覚束ないミリアを連れてとある場所へと向かう。

 

段々人気が少なくなり…そして墓標のようなものが見えてきた。

 

ミリアはそこへ向かっていること…やはり父は…

 

そうして歩き進めていき漸くイータが止まった。

 

「ここで良いわね……」

 

そうしてミリアを下ろすイータ。

 

ミリアは伏せていた目を上げる…例えどんな残酷なことでも…目を反らしちゃいけないと…

 

そして目の前には

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………記憶の中にある父よりも、老けた姿があった。

 

「お父………様?」

 

「ミリア…」

 

「…ヒッグ…おとうさま…お父様ーー」

 

ミリアはただ一人の肉親に会えた喜びが溢れだしオルバへと抱きつく。

 

「済まなかった……私は…お前を助けようと……非道な実験にも手を貸した…そんな私が…今更…父親としての…資格など」

 

「父親としての資格どうこうじゃないでしょう……たった一人の娘で助けたかったのでしょう?…なら抱きしめてあげなさい。贖罪はその後でも出来るわ。」

 

「…ありがとう…私だけではなく…娘のことも…本当に…」

 

「別に…助けられるところにいたから…助けただけよ。」

 

そう二年前瀕死のオルバ子爵をイータが命を繋ぎ止めベアトリクスに治療され保護されていた。

 

その後はベアトリクスの街で悪魔憑きたち幼子などに教鞭を取り悪魔憑きとなる要因のディアボロス細胞の研究もしている。

 

子爵としてのオルバは死にここにいるのはただのオルバなのでベアトリクスも子爵は死んだという風にしか言わなかったのである。

 

オルバはミリアを抱きしめこうして数年振りに親子は再会したのであった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

事情を知った七陰たち

 

「伯母様も人が悪いわ。生きてるなら言ってくれれば良かったのに…」

 

「ごめんなさいね。いつか言おうとは思ってたの。」

 

「イータも関わってたなんて」

 

「でも当時から波紋を使えたイータなら確かに…」

 

「私も当時使えたけど…クレアのこともあったから…」

 

「がぅ!母は凄いのです!」

 

アルファが不貞腐れてしまいベアトリクスは姪の頭を撫でご機嫌を取り後日買い物に付き合うことで機嫌も治るのであった。




今回はここまでになります。

シャドウガーデン側の情報共有と実は生前のシェリーの母ルクレイアと知り合いだったベアトリクス。

無意識にベアトリクスの逆鱗に触れている教団…

そしてイナリが入ってきて魔力阻害を防御するアーティファクトをイータが作り出しそれを届け次いでにシャドウガーデンを騙る輩も成敗しました。

か弱いと思って襲ったはずが返り討ちにされるとは思わなかったでしょうね。

そして早速情報を引き出すために今作初の出番のニュー

イータの剣技に驚くベータとイプシロン。

まぁ透き通る世界に入門して重力修行もしてたりなのでまだまだ強くなります。

そしてイータはベアトリクスの街へと行きミリアを送り届けなんとオルバが生きていました!

作中でもオルバが死んだとは一度も明記してませんでしたしベアトリクスは子爵は死んだとしか言わずただのオルバとして生きていました。

感動の親子の再会でイータも暖かく見守りました。

ベアトリクスから事情を聞きアルファは言ってくれても良かったとちょっとふくれてベアトリクスはそんな姪の可愛い姿にほっこりして後日買い物に付き合うのでした。

次回はミツゴシ商会へ来店するシドを予定しております。

お気に入り、感想、評価してくださりありがとうございます!

お気に入りも700を越える勢いでとても嬉しいことです!

次回も遅くならない内に投稿していこうと思います!

今回も読んでくださりありがとうございました!



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陰の園の主は人気のある流行りのミツゴシ商会へ行き巷を騒がす偽物の陰の話しを聞き姉へのお詫びを込めて依頼をする。

シドがミツゴシ商会へと顔を出します。

そして辻斬り騒動のことも動いていきます。

それではどうぞごゆっくり!


シドは最近流行りに流行っているミツゴシ商会へと来ていた。

 

というのも気分転換も兼ねてである。 

 

アレクシア王女との関係やら深く切り込もうとして挙げ句に嫉妬なのかブシン祭の選抜トーナメントにヒョロ、ガリに勝手に登録されてしまい取り消しにいったものの既に締め切ってしまい仕方なしに出ることにしたシド。

 

勿論二人には恐ろしく早い腹パンをくれてやったシド。

 

近頃アレクシアは姉のアイリスが設立した紅の騎士団の仮メンバーとして活動をしているようだ。

 

メンバーは八人と少ない…まだディアボロス教団の手の者が入っていないことはイータの調べから分かっている。

 

そして何やら学園に来ていたが…また今度イータに聞いてみるとしよう。

 

そんなシドはヒョロ、ガリに誘われて来たというのが経緯だ。次いでに王女誘拐事件の際に心配させたクレア姉さんに何か買おうと思っている。

 

この間はイータと任務中のゼータ以外の七陰メンバーたちと出掛けたりはしたからなぁ

 

そびえ立つ新築の豪華建築物。しかもセンスがよくどこかモダンな雰囲気さえある。なんというか、前世で一流ブランドのショップに訪れた時に感じたような場違い感がマックスだ。

 

そして入口には長蛇の列。並んでいる客も全て貴族かその関係者。一目でわかる上客ばかりだ。最後尾にはプラカードを持った制服姿のお姉さんが立っている。現在80分待ちらしい。

 

「80分待ちだってよ」

 

僕は言った。

 

「寮の門限には何とか間に合いそうですが」

 

とジャガ。

 

「ここまで来たんだし並ぼうぜ」

 

とヒョロ。

 

「でも最近は人斬りが出るって噂ですよ。あんまり遅くなるのは……」

 

「バーカ、こっちには魔剣士が3人もいるんだ。返り討ちにしてやるよ」

 

ヒョロは腰の剣をポンポンと叩いた。

 

「そ、そうですね」

 

「ねぇ、人斬りって?」

 

 話を遮って僕は尋ねる。

 

「最近王都の夜には人斬りが出るらしいんですよ。何でもかなりの腕前で、ついに騎士団にも犠牲者が出たとか……」

 

ジャガは声を潜めて言った。

 

「ふーん。」

 

あれかイータの言ってた偽シャドウガーデン。珍しくイータが怒ってたからな。偽物には合掌しよう。

 

取り敢えず早速プラカードを持つお姉さんに声をかけるヒョロだったが、百戦錬磨の微笑みで軽く流される。

 

そしてなぜかお姉さんはニッコリ笑顔で僕を見つめた。

 

「お客様、失礼ですが少しお時間を頂けますか?」

 

ダークブラウンの髪に同色の瞳、落ち着いた上品な顔立ちのかなりの美人だ。

 

紺色のシンプルなミニワンピースに商会のロゴが入った制服を着ている。どこか前世のキャビンアテンダントを思い出す姿だ。

 

「え、僕?」

 

自分を指差して言う。

 

「はい、すぐに済みますので。アンケートにご協力お願いします」

 

良く良く見ると見知った顔だった。こういう時は何かしらの報告がある顔かな?

 

「いいですけど……」

 

「ありがとうごさいます」

 

僕はお姉さんに腕を組まれ、長い列の脇を通り抜けて店内に入る。

 

僕はお姉さんに腕を組まれ、長い列の脇を通り抜けて店内に入る。

 

最後に振り返ると、ヒョロとジャガが絶望の顔で僕を見ていた。 ザマァない。

 

表面的な華やかさは抑え目で、かわりに細部までこだわり抜き落ち着いた雰囲気を出している。素人目にもセンスの良さがわかる、やはりモダンな雰囲気を感じた。

 

売場を通り従業員用の扉まで案内されるが、ちらりと見た商品がヤバかった。

 

イータの開発した石鹸や珈琲などは前世で見た限りだ。

 

さらには服やアクセサリーや靴や下着までデザインが全て洗練されていて目新しくも美しい、

 

特に足の測定や中敷きの考案などは貴族にも人気で列を成している。

 

この世界でこれがあったらそりゃ売れるでしょって僕ですら分かるものがずらりと並んでいるのだ。

 

流石の頭脳と商才というしかない。

 

一般の人が立ち入れないようになってきたので僕は彼女に声をかける。

 

「久し振りだねニュー。元気かい?」

 

「はい、シャドウ様もお変わりないようで安心致しました。」

 

「何かの報告かい?」

 

「その通りでございます。流石シャドウ様…既にご存知だと思われますが此方での報告をさせて頂きます。」

 

ニューに連れられて従業員用の扉を抜けて廊下を進むと豪華客船映画で見たような凄い階段が現れ、それを上るとレッドカーペットの広く明るい廊下が続き、そして突き当たりには優美な彫刻の掘られた光り輝く巨大な扉があった。

 

「此方でございます。」

 

と開けると椅子の隣に、藍色の髪の美しいエルフがいた。モデルのようなスタイルに、妖艶な黒いドレス姿の洗練された女性。

 

久し振り…といってもクレア姉さん経由でちょくちょく会っていたしこの前も会ったのでそれほどではない。

 

「永らくお待ちしておりました、主様」

 

まるで女優のように跪く彼女は。

 

「ガンマ久し振りだね。最近はどう?無理はしてないかい?」

 

「はい…!お店も軌道に乗りましてそれにイータが便利な物や機械など作ってくれるので助かっております。」

 

「流石だね、イータもだけどガンマだからこそ出来たことなんだ。もっと胸を張っていい。」

 

「勿体なきお言葉です。」

 

そうして僕はガンマ促されるままに部屋の最奥にある巨大な椅子へと座った。

 

因みに最初椅子の横にいたガンマはちゃんと階段を降りることが出来ていた。

 

これもマザーの中敷きや努力の成果だと思うと感慨深い…

 

座る前にガンマの肩周りの血流が悪くなっていたようなので軽く魔力を流しておいた。

 

そしてその右掌に青紫の魔力を集め、天に放った。

 

青紫の光はそのまま天井近くまで打上がり、そこから無数に分裂し室内へ降り注ぐ。

 

 

「褒美だ、受け取れ……」

 

それは光の雨。

 

雨は跪く彼女達に当たり、その身体を一時青紫に染めた。

 

まあ、疲労回復とか、魔力の巡りが良くなったりとか、軽い傷を治したりとか、その程度の効果しかないんだけどね。

 

「今日という日を、生涯の宝に致します」

 

震える声で言うのは、傍らに跪くガンマ。

 

しかし、震えているのはガンマだけではなかった。カーペットの脇に跪く美女達も、漏れなく身体を震わせ、中には涙を零す者もいる。案内してくれたお姉さんはグスグスと音を立てて泣いている。

 

う~ん忠誠心が重い…期待が重い…しかし陰の実力者たるものこの程度で臆すことはない。

 

「ガンマ。ミツゴシの軌道は乗ったが油断はするな。バブルというものは唐突に弾けるものだ。覚えておくんだ。」

 

「…!…流石主様。もうそこまで見通されていらっしゃるのですね。」

 

(……何だかガンマの中で僕の評価がうなぎ登りしている…あとでそれとなくイータに聞こう…)

 

「そういえばガンマ最近うなぎ屋も始めたのだな。」

 

「はい…!イータが作ったスイハンジャー6号とおどれうなぎ君サードのお陰で貴族問わず人気となっております。」

 

「そうか………ガンマ頼みがある。」

 

「シャドウ様直々の!何なりとお申し付けください!」

 

「…最上の席を予約したい…二人分をな。」

 

「二人分とするともしやクレアとですか?」

 

「うむ、姉さんには迷惑を掛けたからな。その詫びを…頼めるか?」

 

「お任せください!最上級のおもてなしと席をご用意いたします!」

 

「任せたぞガンマ。」

 

「ガンマ様…クレア様が此方へと向かっているそうです。どうやらシャドウ様が心配だったようで」

 

「あ~成る程…」

 

「今はデルタ様が何時ものようにじゃれに行っておりますので時間は稼げるかと」

 

「ガンマ他に報告は?」

 

「現在王都で発生しているシャドウガーデンの偽物による辻斬り騒動で」

 

「イータから聞いている我らの名を騙るなど断じて許せんことだ。」

 

「おっしゃる通りです。既にイナリちゃんが数人捕らえたのですがどうやら使い捨ての人員…チルドレン3rdだったようです。」

 

「教団お得意の洗脳による精神破壊…か」

 

(イナリが捕まえたって初耳なんだけど)

 

「それと連絡と雑用などあればニューをお使いください。」

 

「用が出来れば呼ぶ。さて姉さんにバレない内に退散するとしよう。それとガンマ安物で良いチョコレートをもらえるかな?」

 

「最高級の物をご用意いたします!」

 

「いやそこまでは…まぁ良いか。」

 

そうして最高級のチョコレートを包んでもらったシドはヒョロ、ガリの元へと戻るのであった。




今回はここまでになります。

知らず知らずの内にブシン祭の選抜トーナメントにエントリーしていたシド。

原作でも思いますが良く二人と関係を保っていられると思います。

そしてミツゴシ商会へと顔を出したシドは変装したニューに連れられてガンマの元へ

このシドはちゃんと構成員の名前ぐらいは把握しているのでニューのこともちゃんと知っていました。

そして久し振りにガンマと出会いガンマにクレアとの食事会をしたいとお店を予約しガンマは張り切って用意するのでした。

クレアはシドがミツゴシにいると聞き突撃するもののデルタがクレアの元へと突撃してきたのでシドとは結局会えず仕舞い。

後日ちゃんとクレアを誘うシドです。

そして辻斬り騒動に関してはイータから聞いていたので詳細は分かっていたもののイナリが捕まえていたことは初耳だったとのこと。

此方のシドはちゃんとイータなどから報酬をもらっているので金貨に手は出しておりません。

そして最高級のチョコレートを持ち普段のモブ生活へと戻るシド。

次回は帰り道のシドとアレクシアに迫る聞きになります。

お気に入り、感想、評価ありがとうございます!

お気に入りも700を越えとても嬉しいことです!

次回もしかしたら時間空くかも知れませんが投稿していきますので宜しくお願いします!

今回も読んでくださりありがとうございました!


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陰の園の主は王女を襲う刺客を返り討ちにする。そして翌日に彼の身の回りで流行る噂を受け一度距離を取ろうと決めるのであった。

ミツゴシ商会からの帰り道になります!

アレクシアを襲う刺客。

その時彼女を助けたのは!

それではどうぞごゆっくり!


ミツゴシ商会でのガンマからの報告を聞きシドはヒョロ、ガリと寮へと戻っていた。

 

かなり時間を押していて急ぎ目に走ってもギリギリな時間帯だ。

 

「ヤバイって、門限間に合わねーぞ!」

 

「シド君が遅いからですよ!」

 

「悪かったって、チョコレートあげたじゃん」

 

そうして走っていると

 

「なぁ、何か聞こえなかったか?」

 

「自分は何も」

 

前を走るヒョロとジャガが話す。

 

2人にはちゃんと聞き取れなかったようだが、僕ははっきりとその音を聞き取っていた。

 

それは剣と剣がぶつかる音。

 

遠くで、誰かが戦っているのだ。もしかしたら辻斬り騒動と何かしら関係があるかもしれない…仕方ない…か

 

僕は足を止めた。

 

「おい、どうした!?」

 

「門限過ぎちゃいますよ!」

 

少し遅れてヒョロとジャガが止まる。

 

「まずい…は、腹が…!さ、先に行ってくれ!」

 

と僕は腹痛がヤバイと路地裏を指差して言う。

 

「それは、たしかに大事だな」

 

「門限か尊厳かの問題ですね」

 

2人は真剣な顔になった。

 

「僕を置いて先に行け。誰にも見られたくないんだ……」

 

「ッ! 分かった、お前が野グソして遅れたことは誰にも話さねぇ!」

 

「シド君の選択は、誰が何と言おうと正しかった……自分はそう思います!」

 

「もうもたないッ、早く……早く行ってくれッ!」

 

「シドッ……お前のことは忘れねぇ!」

 

「シド君ッ……たとえ野グソしてもずっと友達ですよ!」

 

「行け、行くんだああぁぁぁぁぁあ!!」

 

2人は踵を返して走り出した。

 

何をやっているのだろうかこの三文芝居…

 

そして二人が駆け出して見えなくなった頃合いを見計らいシドは剣の音のする方へと向かう。

 

走り続けているヒョロ、ガリはシドのことを言う気満々であった…

 

「ふっふっふシド君も明日から人気者ですね。」

 

「違いない…それもこれもアレクシア王女と仲良くしてるし…俺らもモテてぇ」

 

と言っていたがそんな彼らの後頭部を何か重いものでゴツンと襲われ二人は気を失うのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

アレクシアは最近王都を賑わせている辻斬り騒動を紅の騎士団として調査するために一人調査をし暗い小道を歩いていたところいきなり襲われた。

 

そんな襲撃者に対してアレクシアは応戦する。

 

(剣の腕は私の方が上…動きもそこまで速いものではない…これならイナリやあいつの方が速い…でも情報を出来る限り取るためにも生け捕りにしないと。それに)

 

「我らはシャドウガーデン…」

 

「いいえ違うわ。貴方はシャドウガーデンではない…彼らがそんなことするわけないわ…なら考えられるのは模倣犯…もう一度聞くわ!どこの者!」

 

先程からシャドウガーデンとしか呟かないこの男…シャドウや七陰といった面々と話した私だから分かる…彼らはこんな無意味な殺戮は絶対にしない。

 

それでも襲撃者はシャドウガーデンと呟く。

 

「なら話しは騎士団の方で聞かせてもらうわ。これで終わりよ!」 

 

アレクシアは男の剣を弾き飛ばした。

 

カラン、と。

 

石畳に落ちた剣が鳴った。

 

その時。

 

「……ッ!」

 

突然背後から繰り出された斬撃を、アレクシアは転がって避けた。

 

さらなる追撃を咄嗟に防ぎ、そのまま相手の腹を蹴って距離を取る。

 

少し乱れた息を整えながら、アレクシアは新たな敵を見据えた。

 

魔剣士が4人、増えていた。いずれも黒ずくめの男だ。

 

さらに最初の男が剣を拾うのを見て、アレクシアは舌打ちした。

 

これで5人。

 

それも実力者だ。

 

1人なら勝てる。

 

2人でも負けはしない。

しかし3人以上の相手は……。

 

「か弱い乙女相手に3対1なんてひどいわ」

 

会話につき合ってくれればいいが。

 

「そうだ、1対1を5回やりましょうよ。ダメ?」

 

じりじりと囲まれていく。

 

アレクシアは立ち位置をずらしながら、背後だけは取られないように動く。

 

「ほら後ろを見て、お月様があんなに綺麗」

 

背後に回ろうとする敵を視線だけで牽制する。

 

剣を細かに動かし、互いにさぐり合う。

 

「あら、見ないの?でも見た方がいいわ」

 

アレクシアは微笑む。

 

月光の下、彼女の赤い瞳が輝いた。

 

「後ろに姉様がいるもの」

 

「ッ……!」

 

釣れた。

 

即座に、アレクシアは動いた。

 

無様に背後を見た敵の背を、白刃が切り裂く。

 

黒い外套を斬り、鮮血が舞う。

 

だが、まだ浅い。

 

もう一撃、とどめを……。

 

その瞬間、アレクシアの左腕と腹部を衝撃と斬撃が貫いた。

 

「ァグゥッ……!」

 

脇腹に、黒いブーツがめり込み斬り裂かれた。

 

バキバキと肋骨の折れる音が聞こえた。

 

アレクシアは血を吐きながら剣を振り、黒いブーツに突き刺す。

 

しかしそれもかわされ戦況は瞬く間に悪化した。

 

一人は傷を負っているがそれでも動けて対して自分は左腕と脇腹に裂傷…肋骨も折れてる手負い…このままだと…何も出来ずに…

 

懸命に剣を構えるアレクシア。

 

重い空気が漂う中で唐突に後ろにいた襲撃者の首が物理的に飛んだ。

 

驚きにふためく襲撃者の一人の頭上から何者かが剣を突き刺す。

 

両者に驚きが生まれるがアレクシアはその姿に覚えがあった。

 

「シャドウ!?」

 

「我が園の名を騙る愚者よ。その罪命で償うがよい。」

 

そう言う間にもまた一人首が飛ぶ。そうして闇夜に月の光が照らされコツコツと歩いてくる姿が見えた。

 

「…えぇそうね。万死に値するわ…私たちが殺戮集団なんてホントに…フザケルナ。母様をシャドウガーデンを侮辱した……その罪…死を持って償いなさい…!」

 

残りの者も瞬く間に気絶させられ襲撃者は殲滅させられた。

 

「貴女は!?ミスト!」

 

そう襲撃者たちを皆殺しにしたのはミストことイータであった。

 

母の活動を…シャドウガーデンという名前を使い侮辱したので物凄いキレている。

 

襲撃者の首をピアノ線のように細くアンカー状にした極小のスライムを瞬時に飛ばし切断したのである。

 

ミストは今回も変装してアレクシアに扮していた。

 

「アレクシア王女貴女も災難ね……また怪我して…」

 

「た、助けてくれてありがとう…ねぇこいつらは何なの?貴女たち組織の名前をぶつぶつ呟いてたんだけど正気には見えないし…」

 

「その通りよ。正気を喪っている…いえ精神を壊されていると言った方が良いわね……ディアボロス教団による洗脳教育…魔力の高い孤児などを集めて行われる…

 

適応できないものは精神を壊され言いなりの駒となり……正気を保てるものは2ndそしてその2ndの中でも……強大な力を持つものは1stと呼ばれる…それがディアボロスチルドレン…」

 

「ディアボロスチルドレン…」

 

「今回のは陽動……何かから注意を引きたいのね。例えば……学園に持ち込まれた……物とか?」

 

「!古代文字の書かれたアーティファクト!なら警備を厳重に!」

 

「しようとしても上から圧力が掛かるでしょうね。騎士団以外の貴族…から…紅の騎士団…まだ8人だけなのでしょう?」

 

「それは……」

 

「それならいつ来ても良いように……連絡を密にしておきなさい。」

 

「…」

 

「案ずることはない…我々はシャドウガーデン…陰に潜み陰を狩るもの。闇に消えた真実を白日の元へ晒そう……例えそれが残酷な真実だとしても…」

 

「え?」

 

「ミスト後は頼むぞ。」

 

「任されたわ。」

 

とミストはそのままアレクシア王女を背負い治療院まで連れていく。

 

「…ニュー」

 

「ここに!」

 

「イナリの捕まえた者たちと同じだろうが頼む。」

 

「仰せの通りに。」

 

そうしてシャドウは闇へと消えるのであった。

 

「…流石シャドウ様とイータ様…見事な手腕…感服致しました。」

 

そうしてアレクシアは背負われながらも治療院へと運ばれ怪我もイータが波紋で治療していたこともあり数日大人しくしていれば治るとのこと。

 

そして翌朝

 

とある噂が広がっていた…それは

 

「どうして俺たちがこんな目に!?」

 

「シド君、君からも何か弁明を!」

 

「…いやぁ怖いよね~必死に弁明するほど怪しく見えるし…それで何回したんだって?」

 

「ご、誤解だってシド!」

 

ひそひそ

 

五回もしただって!

 

モテないからってまさか…

 

でもいつも一緒にいるし…

 

それでカゲノー君も狙ってるんでしょう…

 

カゲノー君も災難ね。

 

(何故かは知らないけど翌朝ヒョロ、ガリは昨日の夜学園を抜け出して淫行に及んだという噂が広まっていた。というのも昨日の夜門番の人が見回りをしていたときに二人を見つけたそうだがどうやら二人ともパンツ一丁になって折り重なって気絶していたのだそうだ。

 

しかも程よく汗もかいていたようで瞬く間に噂が広がった。

 

モテないからって二人はお互いに淫行に及び今度は僕をその魔の手に掛けようとしているという噂……ちょっと二人から距離を取ろうかな。)

 

とシドは考え取り敢えず適当にチョコレートを桃色した学園生にあげると言いクールに去るのであった。




今回はここまでになります。

帰り道にアレクシアと交戦するディアボロスチルドレンをシャドウとイータが殲滅。

原作より多く投入されているのは次の作戦を成功させ強大な力を手に入れるために動いているようだ。

アレクシアはそのままアレクシアに扮したイータに連れられ治療院へと連れていかれ治療を受けて連絡を受けたアイリスに心配されるのでした。

そして翌日に広がる噂はシドではなくヒョロ、ガリが夜抜け出してぐんずほぐれずしていたということ。

門番が発見したのは気絶させられ二人が折り重なっていた状況で程よく汗はかいてるわとまぁそんな状況のため魔剣士学園とはいえ噂好きな学生たちの間で広まり必死の弁明をするほどやはりとなり

シドは何があったか知らずそう言う趣味があったのかと驚きつつも暖かく遠くから見守ることにしたそうです。

さて今回でアレクシアがディアボロスチルドレンのことを知りアイリスに学園に預けられたアーティファクトに関して報告するでしょう。

次回はそんな学園から話しが展開していくでしょう。

沢山のお気に入り、感想、ありがとうございます!

次回は少し時間が掛かるかもしれませんが投稿していきますので宜しくお願いします!

今回も読んでくださりありがとうございました!



















































時はシドがヒョロ、ガリと別れたとき

「こんこ~ん、このままではシド様が道端で漏らしてしまった人として噂になってしまいます~こ、こうなれば!」

ととある物を卸しに言った帰りのイナリはシドたちのやり取りを見ていてシド様の尊厳はイナリが守ります!と気合いを入れて

二人の背後をとりハルバードとスライムで擬態させたスライムハルバードで二人の頭をゴツンと殴り気絶させた上で学園近くまで運び服を取り敢えず脱がして

何故か持っていた海水入りのビンを適度に振りかけ磯の香りのする二人が出来上がりイナリはそのまま立ち去るのでした。

後日シャドウガーデン内でイナリの行動は称賛されイータから特性の洗顔クリーム五選をもらい受けるのであった。


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王女姉妹は陰の園からの情報を精査し警護を考え武神は姪と月見酒をし残酷な事実が少女の人生を変えてしまうと危惧しのんびり娘と狐娘は和気あいあいする。

アレクシアサイドとベアトリクスとアルファ、イータとイナリのお話しになります。

少し短めですがどうぞごゆっくり!


「それにしても怪我も大したことがなくて良かったわ。」

 

治療院へと連れていかれたアレクシアは駆け付けたアイリスから心配されていた。

 

「心配しすぎよ姉様。」

 

「そんなことありません。肋骨が折れて左腕の傷に脇腹も浅くない傷だったと聞きました。」

 

「我ながら運が良い……と言えるのでしょうね。」

 

「医者も驚異的な回復力と言っておりました。」

 

「多分…ミストが何かしたんだと思います。彼女はあの夜も傷を負った私を治療してくれましたから。」

 

「…貴女に変装したシャドウガーデンの幹部の一人…そして今回の人斬り騒動は全てディアボロス教団が絡んでいてシャドウガーデンは隠れ蓑にされたということね。」

 

「シャドウもそのように言っていました。」

 

「…シャドウにミスト、それにベータと呼ばれた者たちは貴女を助け、マザー、アルファと呼ばれた者たちは王都を救った。謎多き組織ではあるけれども

 

それでも彼女らがこういった無差別なことをするのは考えられない…アレクシアが聞いた彼らの理念…闇に沈む真実を光へと晒す…そして……悪魔憑きのこと」

 

「はい…彼らは悪魔憑きを治す術を持っていた…そしてそれらをもたらしたのがかの武神にして食神と呼ばれる」

 

「ベアトリクス様、彼女が何かしら関わっていると考えて良いと思います。彼女は神出鬼没…何処にいるのか分かりません。何かしらコンタクトを取ることが出来れば…」

 

「…彼らはベアトリクス様に敬意を払っているように思えました。そこに深い関係があるかもしれない…」

 

「そこは今は置いておきましょう、問題は学園に預けたアーティファクト…護衛を増やしたいけど…」

 

「紅の騎士団は今のところ8名…しかも予算も降りていない…これでは規模も大きく出来ない…」

 

「それでも今の騎士団は可笑しい…カゲノー君のこともだけど剣術指南役のゼノンがディアボロス教団の者だった。内通者がいる…なら独自に調べていくしかないわ。」

 

「ディアボロス教団は洗脳教育を孤児たちに施し手駒にする。それなら孤児院などを精査するのが良いかもしれません。」

 

「まずは王国周辺から調べてみましょう。」

 

そうしてアイリスはアレクシアに大人しくしているように言い部屋を出る。

 

「ディアボロス教団とシャドウガーデン。シャドウガーデンは教団が沈めた真実を白日の元へと晒す。教団はいったい何を隠しているのだろう…?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

月も昇りきった真夜中…

 

ミツゴシ商会の上に建てられた七陰も良く集まる場所…

 

屋上から王都を見下ろせる所に腰掛けるのは武神にして食神と呼ばれるエルフたちの憧れベアトリクス。

 

その傍らにはアルファも一緒に腰掛けていた。

 

「…ナイツ・オブ・ラウンズの一角を落として悪魔憑きの娘も保護できた…でもまだまだ教団は闇に溶け込んで光の生活を脅かしている。」

 

「…そうね。悪魔憑きの娘たちは未だに苦しんでいる…私たちの戦いは続くわ。」

 

そう言いながらベアトリクスは自家製の80年物のワインを綺麗に削った氷で冷えたグラスに入れ一口飲む。

 

「そして教団の被害者は何も光の住人だけではないわ。否応にも闇に身を落とさなければならなかったものたちだっている…無法都市と呼ばれる所もそうして出来た背景があるわ。」

 

「…闇に身を堕とさなければ生きていけない…辛い現実ね」

 

「そう辛くて冷たい現実…そして残酷な真実も世の中にはある。」

 

「それはさっき話してたシェリーのこと…?」

 

「えぇ。状況から見てルクレイアは無抵抗だった…それを考えるに親しい仲の者…そして剣術に詳しいもの…そして…研究に詳しかった者…それらを合わせると一人の人物が浮かび上がる。」

 

「…それが彼女にとって…残酷な真実ということね。」

 

「彼女の生活の根幹を覆すことになるでしょう。」

 

「…辛いことね…伯母様はずっとこうやって戦ってきたのね…」

 

とアルファはベアトリクスの肩に頭を寄せる。

 

「世界は残酷で冷たい現実ばかり…ホントにどうしてだろうってことばかり…だから…私は貴女たちを守るわ。大切な娘たちで…家族なんだから。」

 

とアルファの頭を撫でるベアトリクス。

 

「貴女も無理だけはしないでね…」

 

「えぇ…伯母様を残して行くことはないわ…お母様が見届けられなかった分…私が見届けるのだもの。」

 

「…ありがとう……」

 

そうして二人は共にワインを飲む。

 

奇しくもそのワインはアルファの母と共にいつか飲もうとしていたものでありベアトリクスは姪と飲める嬉しさからアルファは愛おしく大好きな伯母と共に過ごす。

 

金と白の揺らめきは王都の風になびくのであった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「イナリ。」

 

「はい!」

 

「明日以降に行くところへ行くわよ……準備しておきなさい。」

 

「分かりました!因みにどちらへ?」

 

「決まっているわ。魔剣士学園よ……貴女はあれも持っていきなさい…今の暑くなってきたこの時期なら……結構売れるだろうから。」

 

「成る程!それを足掛かりに件のアーティファクトを見るのですね!」

 

「そう。あわよくばシェリー・バーネットに……コンタクトを取ることが……出来ればとね。」

 

と言いながらイナリの尻尾に体を埋めるイータ。

 

「ご主人様?」

 

「最近動きっぱなしで疲れた……ラウンズが無茶苦茶にした建物とかの……修理やらシャドウのアトミックが……魔力汚染してないか調べたり…はぁ」

 

疲れからか愚痴を溢すイータ。

 

こうして愚痴を吐いてくれることもまた信頼されている証拠だろう。

 

「ご主人様今日は休まれた方が良いですよ!」

 

「そうするわ……イナリの尻尾は暖かいわね…やっぱり…心が暖かいかしら………zzZ」

 

そうしてイータは、そのままイナリの尻尾で眠ってしまう。

 

「ご主人様…私はご主人様とベアト様に拾って頂けなければ死んでました…ご主人様の優しさのお陰です…コンコン…お休みですご主人様…」

 

とイナリはそのまま起こさないように器用にイータを尻尾に乗せて布団を敷く。

 

そのままイータを一度布団へと寝かせて支度をして入ると背後から尻尾ごと抱き付かれるイナリ

 

寝ている時も波紋を流しているイータはとても暖かく太陽のようでイナリもそんな大好きなイータに包まれながら夢の世界へと旅立つのであった。




今回はここまでになります。

各々の陣営の動きとなりました。

アレクシアはアイリスへと今回の件を報告しイータからの情報で学園に解析を依頼したアーティファクトをディアボロス教団が狙っていることを伝えました。

アイリスも目の前でシャドウガーデンの者であるマザーとアルファの行動を見ていたのでそこまで敵意はなくディアボロス教団側を探ろうとしております。

そしてシャドウからアレクシアへと伝えられた悪魔憑きの治療…そしてそれを授けた武神ベアトリクスと何とか接触を図りたいと考える二人でした。

そんなベアトリクスはミツゴシ商会の屋上にてアルファと共に月を見ながら晩酌していてシェリーにとって残酷な真実があることを憂いシャドウガーデンという家族と姪を守ろうと決意を新たにしアルファもそんなベアトリクスの力になりたいと思っているのでした。

イータはイナリと共に魔剣士学園へ赴きアーティファクトを確認しようとする。

自信のネームバリューと発明家という面からそれほど警戒されないだろうという思惑がある。因みにイナリに持たせようとしているものはとある夏の風物詩といえる物。

それはまた次回にて

そしてイナリの尻尾に体を埋めてそのまま寝入るイータ。

イータの言葉にイナリも嬉しく布団に入った後も抱き付かれたもののイータの波紋の心地よさにイナリもぐっすり夢の中へと旅立ちました。

三者三様の様相を見せながら物語は進みます。

そして既にシドがとある桃色した髪の少女にフラグを建てているとはこの時誰も思わないことでした。

お気に入り、感想、評価頂きありがとうございました!

更新ペース少し落ちるかもしれませんがお付き合い頂けると幸いです。

それでは今回も読んでくださりありがとうございました!


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突撃隣の魔剣士学園!狐娘は迷子になり陰の園の主の姉に助けられのんびり娘は桃色娘にエンカウントする

今回イータたちが学園へと向かいます!

そして学園で行われている選抜大会を偶然見ることに。

そして今シドのモブ式奥義が炸裂する!

それではどうぞごゆっくり


魔剣士学園ではブシン祭の選抜大会が行われていた。

 

武神祭とは2年に一度ある剣のでかい大会。国内は当然として、国外からも名のある剣士が集まるのだ。そして武神祭には学園枠がありその枠を決めるのが選抜大会なのだ。

 

シドはヒョロ、ガリが勝手に登録してしまったために出場することになってしまった。

 

目立つのは好きではないものな既に登録されてしまっているのなら出場しないわけにはいかず適当に一回戦で負ければ良いと思いながら目の前に立つ対戦相手ローズ・オリアナにどう負けようかと考えを張り巡らせるシド。

 

芸術の国オリアナ王国からの留学生であり、オリアナ王ラファエロ・オリアナの娘である。

 

オリアナ王国はミドガル王国の同盟国であり、彼女の留学は予定されていたものだったが、芸術の国のお姫様がまさかミドガル魔剣士学園の絶対王者となり得るとは誰も想像すらしなかった。

 

蜂蜜色の髪を優雅に巻いて、ファッショナブルな戦闘服を着て、細めの剣を構えている。

 

顔立ちは柔らかく、スタイルも一級品で、とにかくいちいちオシャレだ。

 

さすが芸術の国である。

 

だがぼくはこの日のためにモブ式奥義四十八手を極めたのだ。

 

『ローズ・オリアナ対シド・カゲノー!』

 

審判が僕らの名を読み上げる。

 

ローズの蜂蜜色の瞳と、僕のモブ瞳が火花を散らす。

 

ローズ・オリアナよ。

 

君はついてこれるかな?

 

極限に辿り着いた……モブの戦いにッ!

 

『試合開始!!』

 

そうしてゴングは鳴り響いた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

一方のイータとイナリは学園へと足を運びとある商品を学園で取り扱えるかの交渉に来ていた。

 

そんな中でブシン祭の選抜大会があるのを聞き見学へと来ていた。

 

大勢のいる中で瞬く間に勝ち星を上げていっていたのは…

 

「まぁベアト母様の弟子なら簡単に勝ってもらわないと困るわよね。」

 

「流石シド様のお姉さんです~」

 

とクレアの活躍を見ていた。

 

彼女は一撃も攻撃を受けておらず悠々とブシン祭への切符を手にしていた。

 

相手の剣を敢えて受けその勢いを流し返す刃で一閃し華麗な足さばきで翻弄し力強い剣撃、効率的な魔力強化は目を見張るものがある。

 

「これであれを覚えたらナンバーズ……いやもしかしたら私らにも届き得るかもしれないわね。」

 

「う~んでも魔力効率ならご主人様とシド様が一番ではないですか?」

 

「ありがとイナリ。さて、無理に参加させられたアイツは………………」

 

「ご、ご主人様…その…なんて答えれば?」

 

「…知らないわ…」

 

「へ?」

 

「私にあんな変態的な動きで剣を受けてきりもみ回転しながら吹き飛んでスマートに血糊をぶちまけては何度も何度もゾンビのように立ち上がる変態血塗れゾンビ男なんて知らないわ。」

 

「あはは、シド様なりに考えたのでしょうが私たちにもご相談されてくれれば良かったのに。そうすれば…えと…こんなことには…」

 

「まぁ良いわ。さて行くとしましょう。」

 

と歩きだしたイータ。

 

イナリは試合を見ていて夢中になりイータに気付かず結果的に…

 

「あれ!?ご主人様~何処ですか~」

 

「…ん?イナリがいない………まぁ良いでしょう…その内……見付かる……ふぁぁぁぁぁ」

 

とベンチにそのまま寝転がり寝るのであった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

結果から言おう。当初の予定どおり僕はローズ会長に負けることが出来た。

 

しかしモブ式奥義を全て出すことは出来ず残念な結果に終わってしまった。

 

傷らしい傷は残っていないので一瞬の隙をついて医務室行きを免れた。

 

そうして僕は宛もなく歩こうとしていたところこの間チョコを渡した桃色の髪の娘、シェリー・バーネットからこの前のお返しをもらい友だちになった。

 

その時にルスラン副学園長もいてシェリーがぼっちだということで宜しく頼むと言ってきた。

 

う~んモブじゃない子は無理です……と言える雰囲気ではない。

 

話してみた印象は普通の女の子だったけど、なんでも騎士団から依頼を受けて貴重なアーティファクトの研究とかやっているらしい。

 

それで思い出した。確かイータの言っていた娘がシェリーだったのか。

 

ということはこれからこの娘には大変な事が待っている。イータも残酷な真実と言ってたぐらいだからな。

 

と思いつつ近くのベンチにシェリーが腰掛ける。

 

むぎゅうと何だが柔らかい感触があるベンチだとシェリーは思っていると

 

「はわ!?す、すみませんすみません!」

 

と謝っていたので何だと思うと…何故かイータが寝転がっていた。

 

「…何かしら……丁度寝てたんだけど………あら…変態血塗れゾンビ男のシドじゃない。」

 

「その言い方はないでしょイータ。」

 

「さっきの試合見てたけど……あんた逆に目立ってたわよ」

 

「いやそんなことはないはず!」

 

「普通のモブなら二、三撃受けたら吹き飛んで気絶するで良い筈……なのに何度も起き上がって……

 

不死身性をアピールしたら努力していてあのオリアナ王国のローズ会長に……最後まで諦めずに挑んだ勇敢な奴ってなってるわよあんた。」

 

「し、しまった!?鮮血のマーライオンはやりすぎだったか!?」

 

「いやその前の何だっけ……モブ式奥義・きりもみ回転受身もいらなかったわね。というかモブ式奥義なのにモブらしくないと思う…この後の学園生活注目されるでしょうね。」

 

「…す、過ぎたことはもうどうしようもない…それでイータは何でここに?」

 

「学園に用事があったのよ。それでブシン祭の選抜をやってるって言うから興味深く見てたのよ。」

 

「成る程ね。」

 

「それと母様の弟子の様子も見に来た。」

 

「それが絶対おおよその目的だよね。」

 

「まぁあれは教わってないけど剣技に関しては中々見事だったわ。」

 

「シド君こちらの人は?」

 

「あぁ聞いたことない?イータ・ロイド・ライト天才発明家で蒸気機関の母って」

 

「ふぇ!?今までの物流の根本を変えた偉人さんですか!?スゴいです!さ、サインください!」

 

とシェリーは学園の本をそのまま渡す。

 

「…それ学園の私物でしょう…ほら上げるわ。」

 

とイータは適当に持っていた紙にサインを描いて渡す。

 

「ありがとうございます!」

 

「それで何をしていたの?」

 

「えと…この間シド君にチョコレートを頂いてそのお礼をしたかったんです!それにとても格好良かったので…!イータさんはシド君とどういった関係なんですか?」

 

「腐れ縁の悪友よ。」

 

「悪友?」

 

「友だちみたいなものよ。」

 

「それでイータがいるってことはイナリはどうしたんだい?」

 

「……あの娘いつの間にかいなかったのよね。」

 

「あ~迷子になったってことね。」

 

「全くあの娘は…取り敢えず…副学園長に会いに行って……許可を取らないといけないのよね。」

 

「許可って何のでしょうか?」

 

「これよ。」

 

とイータは持っていたとあるビンを出す。

 

「何か液体が入ってますね?」

 

「普通の飲み物よ。ラムネって言うのよ。」

 

「完成したんだね!ということは夏場に備えて売り出す予定ってことだね。」

 

「そう。目玉商品になること間違いなし…学園生で試してみて今度ある大きい催しの女神の試練で店頭販売して儲ける。そしてまた研究費用に充てる。」

 

「研究費用ってイータさん国からの援助は受けてないんですか?凄い研究ならそれだけ支援も!」

 

「それすると国の命令を……聞かなきゃいけなくなるから…却下よ。ロクでもないものを……作らされるのは……真っ平御免よ。」

 

「話しは置いといて取り敢えずイナリを探さないとね。」

 

と三人はイナリを探すことにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方のイナリ。

 

「ご主人様~何処ですか~」

 

と絶賛迷子なイナリは宛もなく歩いていた。

 

道中物珍しく声を掛けられるもののイータを探すために断り続けていた。

 

「う~試合に集中しすぎてしまって見失っちゃいました~取り敢えず副学園長さんに会いに行く筈ですけどここは何処でしょうか…?」

 

と迷って取り敢えず学園の門のところへいると、

 

「ねぇ貴女どうしたの?学園の外の人よね?」

 

と声を掛けられた。

 

「は、はい…ご主人様とはぐれてしまって」

 

その方向を見るとブシン祭出場を決めたクレアの姿があった。

 

「ご主人様?ってことは貴女は従者?にしても獣人の娘を従者にするって中々ないことよね…?貴女弱みを握られてたりしないわよね!大丈夫?」

 

と心配するクレア。

 

「そ、そんなことありません!ご主人様は私を助けてくれた恩人ですし色んなことを教えてくれる人なのです!」

 

「そうなのね。ごめんなさい、私も知り合いに獣人の娘がいるから気になって。」

 

「そうなんですね!」

 

と言っていると

 

「がぅ~姉様ですーー!!」

 

物凄い勢いを付けてマナもといデルタがクレアへと突撃する。

 

「ふん!!」

 

ドシンという音と共に魔力を腹部に集中させ受け止めたクレア。

 

「久しぶりねマナ。今日はどうしたの?」

 

「偶々姉様が見えたから来たです!」

 

と物凄い音がしたのでこちらを見る者たちだがクレアとマナの姿を見るとあぁいつものあれかと散々になる。そうしていつも通り撫でられるマナはイナリの姿を確認すると

 

「がぅイナリです~」

 

とイナリの尻尾に抱き付く。

 

「もしかしてマナの知り合いだったの?」

 

「そうなのです!イナリはイータと一緒に働いているのです!母もイナリの尻尾はお気に入りです!」

 

「へぇそうなのね。少し触らせてもらっても良いかしら?」

 

「良いですよ~」

 

「おぉこれは…良いわね!…って母ってことは師匠の知り合いでもあったのね。それにイータって確かルーナのところに商品を卸してる人で蒸気機関も師匠と一緒に作った人ね。」

 

「そうです!ご主人様は凄い人なのです!」

 

そうして三人は近くのベンチで座ってお喋りをすることにした。

 

奇しくもそれはイータたちのいる方向を目指しているのであった




今回はここまでになります。

大変長らくお待たせ致しました。

ここ最近執筆時間が取れない日が多く更新遅くなり申し訳ありません。

学園へとやってきたイータとイナリは丁度ブシン祭出場を掛けた選抜大会をやっていたので見学をし丁度クレアの試合も見ていました。

ベアトリクスに鍛えられているだけあって学園生ではクレアへ傷一つ付けることは叶いません。

アニメ版はクレアがアイリス王女へと直談判する際登場しましたが此方では起きていないので本編初登場です。

クレア本人は絶対王者など興味がなく生徒会長とか面倒ということでやらずそういうこともあり二年生以下の学園生はローズが最強と思っているものの三年はクレア自身の強さと交友の広さを知っているのでもしかしたら優勝出来るのではと思っています。

そしてシドの戦いを見て若干の現実逃避をしつつ目立っていると感じ順当に負けるだろうとイータは歩きだしたもののイナリは最後まで見ていたからかはぐれてしまう。

そんなイータはベンチで居眠りしていると偶然通りかかり座ろうとしたシェリーとシドとエンカウントすることに。

そして学園で売ろうとしていたのはラムネでした!

暑くなっていく時にラムネは中々良い出し物だろうと思い交渉に来ていました。

大半のラムネはイナリが抱えております。

実際ビー玉など透明なガラス細工で綺麗な球体なので貴族系からも評価は高そうに感じます!

シェリーと既にコンタクトを取っていたシドに感心しつつイナリを探しに行く三人。

シェリーも有名な発明家である超新星なイータに目をキラキラと光らせ色んなことを質問することでしょう。

そしてイナリもイータを探しに歩いているとクレアとエンカウントし話すことに。

デルタことマナのこともあり友好的に接するクレア。

そんなクレアに偶々校門で見掛けたので勢い良く抱き付きに行くデルタを受け止めるクレア。

周りにいたのは三年たちでこの光景は日常茶飯事なことなのでスルーしました。

そして師匠ベアトリクスの知り合いなことに気付いたクレアは探し人であるイータを探すことにしました。

次回はそんなイータたちとクレアたちが合流するところから入る予定です。

沢山のお気に入り、感想、評価ありがとうございます!

更新頻度は少し下がると思いますが出来次第投稿していくのでどうぞ宜しくお願い致します!

FGOではアーケードコラボもいよいよ大詰めとなります。

ドラコーは宝具3までいけたので更に重ねるか迷うところです…

次回も遅くならない内に投稿していきます!

それでは今回も読んで頂きありがとうございました!


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のんびり娘は母の弟子を試し副学園長に許可を取り学園内で発売すると瞬く間に売り切れ続出し好調な売れ行きになると感じるのであった。

今回はイータとクレアが出会います。

二人は何だかんだカゲノー家に帰省するタイミングなど合わなかったりイータはアレクサンドリアへ行ってたりなどあり初対面です。

それではどうぞごゆっくり!


シドはシェリーと合流したイータと共にイナリを探す。

 

その間にシェリーはイータに色んなことを尋ねる。

 

「イータさんこの浄化装置っていうのはどういう原理なんですか?」

 

「それは水中に含まれる……汚濁物質を物理的にきれいにすることが出来るもの……個体(汚濁物質・異物)を含む……液体や気体を……細かな孔が空いたろ過材に通すことで……孔よりも大きな個体の粒子を……分離して水を綺麗にすることが出来るわ……ミドガルにある巨大な浄化装置は誰が設計したかは知っているでしょう?」

 

「はい!武神様がミドガル王国へと知識を授けてくださったことです!ミドガルの歴史書にもその名は刻まれています!」

 

「それは…流石に……知らなかったわ…」

 

「でもイータさんの名前も近々載ると聞いてます!」

 

「そう。」

 

「私もイータさんみたいに色んな成果を上げていきたいなぁ」

 

「チャンスっていうのは……何処に転がっているのか……分からないもの…だからもし……自分にとってやりたいことで……それが来たのなら迷わずに飛び込みなさい……」

 

「はい!」

 

「うんうん、イータにも妹分が出来たみたいだね。」

 

「全く…シド…あんた…姉に…あったら大変…じゃないの?」

 

「………忘れてた…」

 

「今度お詫びするって……言ってたけど…怪我の治療ってことにして……休むつもりなら……行ってきなさい…」

 

「まぁそうだね。学園来てから姉さん避けてるし…うんそうしよう。」

 

と歩いていると

 

「がぅ!シド様ですーー!」

 

とデルタが物凄い勢いで飛び込んで来たのでシドは取り敢えずデルタがシドに抱き付いたと同時にクルクル回転して勢いを殺してそのまま元の位置に戻る。

 

「久し振りだねマナ。元気だった?」

 

「マナはいつも元気です!」

 

「それなら良かった。姉さんも久し振りだね」

 

「久し振りね。シド…あんた…」

 

というとクレアはおもむろにシドの服を捲る

 

「……この間の怪我…ちょっと痕が残ってる…今度師匠に見てもらうわよ。良いわね!」

 

「あはは、分かったよ。」

 

「それでシド、あんたローズ会長と戦ったでしょ。というか選抜大会出てるのも知らなかったわよ?」

 

「う~ん姉さんなら良いかな?実は友人が面白がって無理矢理にね。まぁでも結果は負けちゃったけど。」

 

 

「でも健闘してたって聞いたわ。流石私の弟。これなら二年後は絶対ブシン祭に出れるわ!そうだ久し振りに稽古付けてあげるわ!」

 

「いや僕病み上がり…」

 

「何言ってるのよ。こういうのは早い内の方が感覚も忘れないし貴方の身になるわ………!」

 

というクレアは帯刀していた剣を背後に構えるとキィンという音が響く。

 

背後にいたのは白鞘から白刀を抜いたイータであった。

 

シドは気付いていたがその他の周りにいた人物たちは気配すら感じずいつの間にかイータがクレアに斬りかかっていたように感じた。

 

「…いきなりの挨拶にしては物騒じゃないかしら?」

 

「これぐらい防げなかったら……ベアト母様の顔に……泥塗る行為…それにしても……成る程ね…貴女入り掛けているのね…

 

相当の鍛練といつも剣戟を受けてるからかしら…?流石ベアト母様の弟子と言っておきましょう。」

 

そう今イータは透き通る世界で気配を感じさせずクレアへと斬りかかったのである。

 

クレアは何かを感じとり咄嗟に防御したもののまるで己の師匠のような感覚を感じ取りその言葉を聞き納得した。

 

「母様ってことはマナやルーナ、リリムさんと同じような感じってこと?」

 

「…あぁそういうこと…この場では……ノーコメントって……言っとくわ……」

 

クレアはルーナやマナ、リリムと同じように師匠に助けられた人で悪魔憑きだったのかと聞くもののイータはこの場で答えることは出来ないと発した。

 

「事情を聞きたいなら……ルーナにでも……家のラボの場所を…聞きなさい…私としては…貴女の実力を見れたから…良い…」

 

チャキンと納刀したイータは

 

「ほらイナリ行くわよ。さっさと用事を終わらせましょう。」

 

とイナリに言う。

 

「は~い!」

 

「……あぁそうだ…マナ…」

 

「何です?」

 

「これ飲んで良いわよ……完成したし」

 

とイータはバックからラムネを取り出す。

 

「がぅ?どう飲むですか?」

 

「これはね……付属で付けたこの栓を……」

 

と袋とじしてあるパッケージを破り栓を上から外して栓が誤って下にいかないようにしたストッパーを外し平らなベンチに置くと

 

「こうやって……上から押す…」

 

と両手でスポンと栓の役割をしていた中に入ったガラス玉を落とす。泡が吹き零れそうになるものの上手くやったのか吹き零れずに済む。

 

「…これで良し…マナこの突起のところを…下に向けて飲みなさい……」

 

「がぅ…何だかシュワってしてる気がします…それに甘い匂いもするです…!」

 

と勢い良く飲むマナ。

 

「がぅ!?シュワってなったです!それにこれ冷たくて美味しいですぅーー!!」

 

「マナがこんなに喜ぶなんて…!」

 

「はい…貴女にも…さっきいきなり…襲いかかった……お詫びよ。」

 

とクレアにも手渡すイータ。

 

「あ、ありがとう。」

 

「ほら貴方たちも」

 

とシドとシェリーにも放るイータ。

 

キュポンという音と共に

 

「って凄い吹き出てるんだけど!?」

 

「開け方に……コツがいるのよ」

 

「そうだね。すぐ離すと気泡が全部出ちゃうから押さえるのがポイントだからね。」

 

と慣れた手付きで開けるシド

 

「この中の…この硝子細工凄い!こんなに透明で透き通ってて…それがこんなにいっぱいのビンに入ってるなんて!?」

 

「増産に……成功したから……そんなに手間じゃないわ。」

 

「ふ~ん?透明なビンってだけでも高そうに見えるわ。これいくら?」

 

「大体150から……200ゼニーで……売るつもりよ。」

 

「これでそんなに安いの!?それって儲け出るの?」

 

「増産コスト的には…利益は…ちゃんと出るから…問題ない…」

 

「これは確かに人気が出そうね。硝子の透明度も凄いから貴族にバカ売れするだろうし…この中に入ってる球体も凄いわね。こんな綺麗な球体は始めてみたわ。」 

 

「そういうわけ…だから……学園でまず……売ってみる…」

 

「ご主人様でなければ出来なかったことです!コンコン!」

 

そうして二人は副学園長の元を訪ねるために去っていく。

 

「それでシドはどうするの?」

 

「まぁ落ち着いて療養しとくよ。あぁ姉さん明日の夜とか空いてる?」

 

「えぇ明日なら平気よ。何かあるの?」

 

「それはお楽しみさ。それじゃあまた明日。」

 

とシドもシェリーと一緒に学園を探索に戻る。

 

「お楽しみって何かしら…?」

 

「姉様?」

 

「なんでもないわ。ルーナのところまで送るわ。」

 

「がぅ~♪」

 

とクレアもマナを送り届けるべくミツゴシ商会へと足を進める。

 

「それにしてもイータ・ロイド・ライトも師匠の娘で発明家なんてね。まだまだ有名な人で師匠の娘っていそうな気がするわ。」

 

「イータのお陰で色んな建物が出来てるのです!ルーナのところの建築?もイータが、やったです!」

 

「そうだったのね。今度訪ねてみようかしら?」

 

とクレアはマナと会話しながら歩く。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その後イータは無事に許可を取り学園内でラムネを取り扱うことにしその日は持ってきていたラムネ100本程度が瞬く間に売りきれた。

 

その際にルスラン副学園長から解析しているアーティファクトを見せてもらう機会があり形などを確かめルスランの注意を惹き付けイナリに素早く撮影させ後でどういう形状かをガーデン内で共有することに。

 

更に無駄な装飾のないシンプルなビンにビンの中にある硝子細工も人気で持ち帰りたいとの声も多数ありビンだけ回収し中の硝子細工はそのまま渡した。

 

そうして硝子細工…ビー玉は学園内で人気に火が付いた瞬間であった




今回はここまでになります。

シェリーはイータに色んなことを、学園の外の世界のコトなど聞きました。

世間知らずなところのあるシェリーにイータは優しく教え妹分が出来たようでした。

そしてシドを見つけたデルタが飛び込みました。

シドもいつも通り受け流してキャッチしクレアは以前のシドの傷など見て師匠のベアトリクスに見てもらおうと言いました。

そしてイータはベアトリクスに鍛えられたクレアの実力を見るべく透き通る世界で気配を全く感じさせずに斬りかかったものの寸前で反応したクレアは受け止めました。

クレアも大分ベアトリクスに鍛えられているので何かしら切っ掛けがあれば透き通る世界へ入門することでしょう。

そしてその場にいた者たちにラムネを手渡し飲んでもらい好評でした。

価格も美味しさにビンの透明さや中のビー玉の美しさを考えると200円ぐらいは相当安いと思われるでしょう。

まぁ容器など再利用可能な上にスライムによる製造工場のお陰かコストは最低限にしちゃんと利益を出しているイータでした。

そういった利益は研究へ回しシェリーは国から援助を受ければいいと言うもののディアボロス教団の魔の手が何処まで伸びている可能性を考えると無理矢理にでも何かしらの兵器を作らされるのを考えると信用できないイータ。

そしてシドは兼ねてから考えていたクレアへの心配を掛けたお詫びをしようとクレアを、誘いました。

あのシドが!誘いました。

クレアもシドが珍しく誘ってくれたこともあり張り切ってそのままミツゴシ商会へとデルタを送り届けこれまた張り切ったガンマがドレスなど用意する姿が目に浮かびます。

そしてしれっとルスランにアーティファクトを見せてもらいつつ注意を惹き付けて写真を取り後日シャドウガーデンにて共有されることに。

さて次回は学園襲撃編へと入るか幕間で翌日のクレアとシドの話しにしようか迷いますね。

最近は暑さも厳しくなってきているので皆様も体調にはお気をつけください。

感想、評価、お気に入りありがとうございます!

なるべく遅くならない内に投稿していけるようにしていきます!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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姉弟は学園での生活を話し将来について思いを馳せ武神は姉弟へ料理を振る舞い弟子へと打ち明ける準備ととある場所へと来るように言い夜は更ける。

今回はシドのクレアのデート回ならぬお詫び回となります。

その前にシドの前に報告に現れたのは…!

そして料理しに現れたのは!

少し長くなりましたが

それではどうぞごゆっくり!


前日シェリーと友人となったシド。

 

今日はクレアと約束しガンマに押さえてもらった超一流のうなぎ屋を予約していた。

 

「さて服装は…面倒だから制服で良いか。そうだ場所とか知らないからガンマに聞きに行かないとな。」

 

と用意をしつつ気配を消しながら学園を歩いていると後ろから見知った気配を感じ取った。

 

「……ニューか?何かしら成果があったとみえる…」

 

「…流石です。シャドウ様」

 

とニューが地味な変装と制服を着ていた。

 

「そこのベンチで話そう。」

 

とシドはニューへと言いニューも共に付いていく。

 

「それでこの間の連中は何か分かったかい?…って言っても難しいか。」

 

「申し訳ありません。チルドレン3rdは精神も壊されていて情報を抜き取ることは叶いませんでした…」

 

「いや仕方ない。正気を失ったものを使い捨てにする奴らの常套手段…ニューはなにも悪くない。」

 

「ありがたきお言葉…それと別件で…どうやら王都でネームドチルドレンが確認されたようです。」

 

「というとチルドレン1stか。」

 

「はい。反逆遊戯レックスが確認されています。」

 

「自我を壊されずに済んだものでラウンズへの登竜門…だが逆にチャンスと言える。生け捕り出来ればかなり情報を抜き出せる…」

 

「ナンバーズひいては七陰の皆様なら倒せると思いますが」

 

「ニュー、慢心はいけない。何時いかなる時も最悪を想定するものだ。例えば奴らが自分たちに有利なフィールドを作り出す可能性もある。」

 

「!確かに…それであれば…」

 

「不利な状況を想定し備える。それは戦いの前提だ。ニュー、確かイータが作成したというあれは分かるな。」

 

「あれ…というと魔力阻害防御の試作アーティファクトでしょうか。」

 

「そうだ。ナンバーズたちと七陰全員に持つように通達をしてくれ。30分という短い時間だがそれでも遅れを取ることはない。

 

外との連絡手段がなければ撤退も視野に入れるように。

 

マザーも僕も君たちのことが大切だ。

 

だから命大事に…忘れないように。」

 

「シャドウ様…!やはり貴方は慈悲深く偉大な方です…!」

 

と大分ボスとしての自覚も出てきたシド。

 

「あとはそうだな…やっぱり懐かしいかい学園は?」

 

「!……お分かりになられますか…悪魔憑きとならなかったら私は二学年として学園に通っていたでしょう。」

 

この平和な学園の片隅に、まだ彼女の居場所が残っている。そんな愚かな夢を見たかったのだ。

 

ニューは笑った。

 

世界の表に居場所がなくとも、彼女には同じ志を持つ仲間たちがいる。

 

そして……隣には敬愛する主がいる。

 

彼はマザー様とたった二人で戦いを始めた。

 

そして最後の一人になっても戦い続けるのだろう。

 

二人の存在がシャドウガーデンを支えているのだ。

 

人は誰もが弱いから、絶対の存在に縋りたくなる。

 

世界にとっての絶対が神ならば、シャドウガーデンにとっての絶対がお二人なのだ。

 

でも、神よりずっといい。

 

目を開けばそこにいて、手を伸ばせば触れるのだから。

 

「昔を懐かしむのは悪いことじゃない…色々な出来事があって今の君がいる。君は一人ではない。我らシャドウガーデンがいるのだから。」

 

「勿体なきお言葉です。シャドウ様」

 

「それじゃあ行くとしよう。」

 

「シャドウ様、ガンマ様から伝言で予約されたお店が完成したのでそちらの席をお取りしているとのことです。」

 

「そうか、わかっ………ん?完成した?」

 

「はい、ガンマ様が建物の骨格は出来ていたのでイータ様と共同で一週間で完成させました。元の骨格は出来ていたので工事としては約二週間掛かったような形にしてありますのでご心配はいりません。」

 

(ガンマやりすぎ…!僕はお店の予約を頼んだのにいつの間にか新しい建物が出来上がってたんだけど…というかイータも知ってたなら教えてくれれば良いのに。いやイータならサプライズとか言いかねないか…)

 

と流石のシドも驚いた。いつの間にか立派な建物が出来て高級感満載なことになりかねないと戦慄するが顔に出さずにいた。

 

「それとガンマ様より此方を着用してほしいとお預かりしております。」

 

とニューはガンマより預かってきたいかにも高そうなスーツをシドへと手渡す。

 

「スーツの方もオーダーメイドでマザー様の町で作って頂き、イータ様作成の柔らかく伸縮性のある布により動きを妨げない最高の逸品になっております。」

 

「おぉ中々に良い生地にスタイリッシュ…見事な仕事だ!どれぐらい掛かった怖いけど…」

 

最後はボソッと言うシド

 

「王都でも売り出せば100万ゼニーはくだらないでしょう。オーダーメイドで最高品質のものであれば貴族もこぞって買うのが目に見えますね。」

 

「…そ、そうだな…」

 

(金銭感覚が狂いかねないな…うん。)

 

「それじゃあ時間までミツゴシで色々と見させてもらおうかな…」

 

とシドは立ち上がりニューへ手を伸ばす。

 

「エスコートさせて頂けますかレディ?」

 

とイータのところでついこの間見た漫画での紳士のようにニューを誘うシド。

 

「!?み、身に余る光栄でございます…!」

 

とニューはシドの手を取り二人より添ってそのまま歩き出す。

 

二人で恋人みたいにおしゃべりして学園生活を送る。そんなあったかもしれない未来を堪能できてニューは幸せの絶頂に浸るのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方の此方はクレア。

 

シドに久方ぶりに出逢えたのに加え空いている時間があるかと言われテンションが上がっていた。

 

それはもうすごくミツゴシ商会で親友のガンマもといルーナへと嬉々として語っていることからわかる。

 

「それでね!あの子勇ましく挑んでいってね!」

 

「そうね。シド君も逞しくされてますからね。所でクレア?もしかしてその格好で行くの?」

 

とクレアの学生服を見ながら言うルーナ。

 

「何か可笑しいかしら?」

 

キョトンとするクレアにルーナが手を叩くと瞬く間に様々なドレスが出てきた。

 

「流石にその格好はダメとは言わないけど折角だからドレスで行きましょう!」

 

とそこからファッションショーへと早変わりし様々なドレスを着せ替えられるクレア。

 

最終的にネイビーブルーを基調としたドレスへと落ち着いた。

 

「付き合わせちゃって悪いわねルーナ。」

 

「いえ、クレアも楽しんできて。シド君とのデートなんだから。」

 

「そうね。折角シドが誘ってくれたんだもの!楽しむわ!ありがとうルーナ!行ってくるわ!」

 

「行ってらっしゃいクレア……さてと…シャドウ様がいるから心配ないと思うけどお店に着くまでお願いね。」

 

とガンマとして、ミツゴシにて作業している構成員へとクレアの護衛の指示を出す。

 

「ふふ…シャドウ様もクレアも喜んでくれるかしら?貸切で最上階のテラス席だから眺めは最高ですしこの時のために高級食材と最高に活きの良いうなぎも捕まえて池州に入れたし…」

 

とシャドウと親友のためにと色々と奔走しまくったガンマなのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

夕方になりシドは少し早めにお店へと辿り着いていた。

 

(あの後ニューとミツゴシ商会へ行って姉さんに何かしら買おうと選んだけど…というかニューもそうだけど他の娘たちも練度が上がっていたな。

 

マザーの手腕のお陰だろうけど皆の努力があってこそだし…今度イータと模擬戦しようかな?…いやそれなら七陰の誰かも誘うか…?マザーがいるなら一番良いけど…忙しそうだしな。)

 

「シド早かったのね。待った?」

 

と姉さんの声が聞こえたのでそちらを向くと制服ではなくドレスを着ていた。

 

「いや今来たところだよ…うん。似合ってるよ姉さん。」

 

「そう?ただちょっと胸元がスースーする気がして慣れないわ。ルーナは良いって言ってたけど。」

 

「ルーナが言うなら間違いないよ。」

 

と僕は姉さんを護衛しようとミツゴシから付いてきているシャドウガーデンメンバーに大丈夫と姉さんから見えない位置でサインを送りそのまま戻っていった。

 

「それはそうとシドにしてはお洒落なお店を知ってたわね?」

 

「ルーナから聞いてね。ここを取ってほしいって頼んだんだ。」

 

「ルーナ知ってたのね!…まぁサプライズ好きそうだし」

 

「それじゃあ入ろうか。」

 

とそのままシドはクレアを伴い入店し屋上のテラス席へと案内される。

 

「凄い眺めの良い所ね!」

 

「うん、そうだね。」

 

(いやちょっと待った…あの置物とかテーブル…最近になってイータが加工に成功したって言った大理石だよね!?

 

それに椅子の柔らかさとか…これ中に程よくクッションを入れて疲れないように配慮している。

 

それと水槽のようなものにうなぎや他の魚をを泳がせて活きの良い物を提供するのは新鮮だね。

 

観賞しても良し、食べて良しっていうのは凄いな。)

 

「さてとどんなメニューが良いのかしらね?」

 

「ルーナから聞いた話しだとうなぎが美味しいって言ってたよ。」

 

「うなぎって確か今王都で流行り始めている魚みたいな料理でしょう?今イチ味の想像が出来ないのよね。」

 

「それじゃあ頼んでみよう。すいません!鰻重特上を2つ!」

 

「かしこまりました!」

 

と言い調理が始まるかと思ったら何だが見覚えのあるエルフがハチマキをして水槽へ近付いているのが見えた。

 

というか

 

「師匠/ベアトさん!?」

 

うんマザーがいた。

 

「久し振りねクレア。シドも元気そうね。」

 

「ど、どうして師匠が!?」

 

「シドがクレアをデートに誘ったというから記念に作ろうと思って。ルーナに内緒で来ちゃったわ」

 

「あはは、さ、流石師匠。」

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「えぇぇぇぇ!?お母様が!?」

 

「はい。なんでもシャドウ様とクレア様の記念なので張り切ると仰っておりました。あと私たちにと」

 

ベアトリクスはミツゴシ商会にいる構成員全員にご飯を作った後に言ったことを告げる。

 

「…お母様の作った料理…皆で食べましょう!」

 

とガンマはミツゴシにいる者たちで夕食を食べるのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そしてベアトリクスが作っている様子を間近で見せていた。

 

「何だかヌメヌメしてるけど調理出来るの?」

 

「これは釘を使ってねこうしてこうするの」

 

と素早く手際よくうなぎを卸していくベアトリクス。

 

そのままタレに付け備え付けの七輪で焼いていき更に二度付けして焼いていくと香ばしい匂いが辺りへと広がる。

 

そして

 

「さぁ完成。特製鰻重よ。」

 

と二人の前に出された鰻重。

 

既に匂いでお腹を刺激されていたからか二人とも

 

「「いただきます!」」

 

と言い食べていく。

 

そのまま食べ進めていき食べ終わると

 

「おかわりも良いわよ?」

 

「「おかわり!!」」

 

と二人ともおかわりしていく。

 

そうして二人とも三杯ほど食べていた。

 

「デザートもあるわ。アップルパイよ。」

 

「りんごを使ったデザート?」

 

「サクサクした生地がたまらないよ姉さん。」

 

とそのままアップルパイにかじりつく二人。

 

「サクサクしてりんごの程よい甘さが口に広がる!」

 

「うん、食後のデザートも美味しいね。」

 

そうして味わい尽くした二人。

 

「あ~、その、この間は心配かけてごめん。」

 

「……心配したわ。ホントにシドがいなくなっちゃうんじゃないかって…でもちゃんと無事に帰ってきてくれたから安心した…シド無茶だけはしないで、

 

何かあればお姉ちゃんを頼りなさい。」

 

「姉さんに迷惑はかけないようにするから大丈夫。」

 

「まったく…迷惑なんていくらでも掛けて良いわよ。だって私は貴方のお姉ちゃんなんだから。弟より先に生まれたのは後から生まれた貴方を守るためなんだと思う。

 

だから頼ってほしいわ。」

 

「姉さんには敵わないな。分かったよ。どうしようもなくなったら頼るよ。それとこれ。」

 

とシドはクレアへと箱を渡す。

 

「これは?」

 

「まぁ僕なりに考えてさ。開けてみてよ。」

 

とクレアは開けると中には髪止めと簪が入っていた。シドはミツゴシ商会にてニューにアドバイスをもらいながら選んだものであった

 

「姉さん髪を縛るのとか持ってなさそうだから合いそうなやつを選んでみたんだけどどうかな?」

 

というシドの側へ移動してぎゅっと抱きしめるクレア。

 

「ありがとうシド!お姉ちゃん嬉しいわ。大事に飾るわ!末代までの家宝にしないと!」

 

「いやちゃんと付けてよ。」

 

「ふふ、姉弟仲良く過ごせてるようで安心だわ。ちゃんと離さないようにしなさいクレア。」

 

「はい師匠!」

 

「それとクレア、女神の試練は知っているわね。」

 

「えぇ聖地リンドブルムで行われる催しで女神の試練は一年に一度、聖域の扉が開かれる日に行われる戦いで聖域から古代の戦士の記憶を呼び覚まし、

 

挑戦者はその記憶の戦士と戦うの。事前に申請すれば魔剣士なら誰でも参加できるけど古代の戦士がそれに応えるとは限らなくて。

 

毎年数百人の魔剣士が参加するけれど、実際に戦えるのは十人程度って話し…

 

ってもしかして参加したらってこと師匠?」

 

「いえ参加ではないわ。でもリンドブルムへ来てほしいのよ。」

 

「どうして?」

 

「……話す時が来たから。」

 

「!!もしかして、二年前の…」

 

「詳しくはリンドブルムで話すわ。覚悟があるなら来て。日時はまた連絡するわ。」

 

と言うとベアトリクスはそのままテラス席から姿を消した。

 

「姉さん、二年前って…あの時の?」

 

「…そうね。それに関係があるわ…取り敢えずそれはまた考えるわ。」

 

とクレアは言うのでそこで話しを終わらせるシド。

 

(マザーは姉さんにどこまで打ち明けるつもりなんだ?ディアボロス教団のこと…なのか、シャドウガーデンのことなのか?

 

…まぁなるようになるか)

 

とシャドウは呑気に考えそのまま支払いへと行くとシャドウ様からお代は頂けないと言われてしまった。

 

う~ん、お言葉に甘えることにしよう

 

そうしてシドとクレアのデートは終わりを迎えるのであった。

 

この数日後に学園を揺るがす事件が起こることになろうとはこの時のシドは思いもよらないものであった。




今回はここまでになります。

学園の寮から雑に気配を消していたシドの前に報告に現れたニューはディアボロスチルドレンの1stレックスが確認されたことを報告しシドもある程度は教団のことはイータからちゃんと聞いているので理解しています。

生け捕りして情報を抜き取られることが確定したレックス。

そして警戒するために以前イナリが七陰の元へと届けていた魔力阻害防御のアーティファクトを持つように言うシド

ちゃんと人を気遣えるようになっているシド。

これもベアトリクスとイータのお陰ですね。

そしてニューから予約した店を聞いたものの一から作ったというので驚愕しイータもシドには黙っていました。

そしてスーツをオーダーメイドで作りシドへと手渡し実は100万ゼニーはするものと再度驚愕。

そしてその前にクレアへとプレゼントを選ぼうとニューを伴いミツゴシ商会へ

イータのところで見た漫画のようなエスコートをしようとしてニューのハートをぎゅっと掴んでいたシャドウ。

そしてガンマは来ていたクレアへドレスを見繕いそのままプレゼントしました。

此方もまた100万はするだろうものですがクレアに値段は伝えなかったガンマ。

心配性なガンマはクレアに護衛を付けクレアも気付いていたものの心配性なルーナと思うだけでした。

そして案内されたところへ行くと師匠であるベアトリクスがいたという。

サプライズでガンマにも内緒で来たということガンマも驚きますがミツゴシで働く構成員全員にご飯を作っていたので皆で美味しく頂きました。

そして食事をしプレゼントを渡したシドを抱きしめるクレア。

そんなクレアへベアトリクスは女神の試練をする聖地リンドブルムへと来るように言いそこで二年前のことを話すときが来たと言いました。

なので次章でもクレアは登場がこのSSでは決まりました。

はたしてそこでベアトリクスはどこまで話すのか…

それはまた次章にて

次話は学園襲撃編へと突入していきます!

感想、お気に入り、評価ありがとうございます!

次も遅くならない内に投稿していく予定です!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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学園を襲う変事、シャドウガーデンを騙る者たちの来襲に陰の園の主は裏から解決へと走りだす。

学園襲撃編開始になります!

投稿遅くなり申し訳ありません。

今回はシドサイドのお話しになります。

それではどうぞごゆっくり!


(さてとんだ厄日だな…)

 

と学園の教室にて血の海に沈みながらも傷を波紋と魔力を細かく練り上げ治癒力をあげながら思い返すシド。

 

あれは武神祭選抜大会から6日

 

既にシドも復帰し授業を受けていた。

 

そんな復帰した翌日、午前中最後の授業が少し早めに終わった。

 

「今から生徒会選挙の候補者と応援の生徒会長の演説があるので、みんなまだ席を立たないように」

 

先生が先走る生徒たちに言った。

 

「どうでもいいけど三年って今どこ行ってんだ」

 

「さぁ」

 

隣のヒョロの適当な問いに、僕はあくびしながら答えた。

 

「三年生はですねぇ、今週は課外活動で……」 

 

と前の席のジャガが振り返って話しはじめたとき、教室の扉が開いて二人の女生徒が入ってきた。入れ替わりで先生が出ていく。

 

そのうち一人は知っている顔、先日僕が戦ったローズ・オリアナ生徒会長である。

 

普通の制服姿なのにオシャレな人が着ると謎のオシャレオーラが出るのは何なのだろう、と僕は常々疑問に思っている。

 

「えっと、本日は先生に貴重な時間をいただきまして、生徒会選挙の……」

 

まだ慣れていない感じの一年の女の子が、少し硬い声で話し出す。

 

そんな風に聞き流しながらスライムを握力グリップにして魔力を練りバレないように握力も鍛えているとその魔力が突然練れなくなったのだ。

 

 

魔力の流れを何かが阻害しているような感覚。強引にこじ開けるか、さらに細くすれば練れるかも。

 

と呑気に考えながら取り敢えず意味深に来るッと言ってみる。

 

するとその瞬間、凄まじい爆音が轟いた。

 

教室の扉が吹き飛び、クラスは騒然とする。

 

直後、抜剣した黒ずくめの男たちが乗り込んできた。

 

「全員動くな!我らはシャドウガーデン、この学園を占拠するッ!」

 

彼らはそう叫んで、出口を固める。

 

「嘘だろ……」

 

僕のつぶやきは、周囲のどよめきにかき消された。

 

動ける生徒はいなかった。

 

これが訓練なのか、いたずらなのか、それともまさか……本気なのか。

 

魔剣士学園が襲撃されるという現実を、ほとんどの生徒が正しく把握できないでいたのだ。

 

ただ僕だけが唯一、この現実を完全に把握していた。

 

彼らが本気だということも、魔力が阻害されているということも、他のクラスで同じことが起こっているであろうことも。

 

そしてこのまま行けばシャドウガーデンがテロ組織認定されかねないということを。

 

(……昔の僕なら…

 

念願の僕らの青春妄想の一ページを飾った『アレ』を。

 

学園がテロリストに襲撃される『アレ』を本当にやりやがったのだ!

 

感動に震えいったい何度この状況を妄想しただろう。

 

数百、数千……数億。

 

数え切れないほどのパターンを妄想し、夢見た瞬間がついに訪れたのだって思うんだろうな…

 

ただ……思った以上に………不愉快だ。

 

狙いは以前イータの話した学園に持ち込まれたアーティファクト…それの効力はまだわからない…だが奴らが狙う以上何かある筈。

 

そうすると教団はその解析をしているシェリー先輩を捕らえ有効活用したい

 

こちらの勝利条件は

 

まず第一に学園での死者を可能な限り出さないこと。抵抗する者なんかはいるからそこは自己責任…だが学園生で死んだら未来ある者を殺すシャドウガーデン許すまじとなる。

 

出来ればこれは避けたい。

 

第二にシェリー先輩を保護すること。あわよくばこの状況を打破する一因になる。

 

第三にこの騒動がシャドウガーデンの物ではないと証明すること。僕たちシャドウガーデンという組織を危険視されるのは避けたい。

 

水面下の謎の組織の方がまだやりやすい…それにマザーの活動の妨げにはなりたくないしな。

 

大雑把にいえばこのぐらい…いやあとは紅の騎士団…だったかな?の人数を減らさないようにしないと…今のところアイリス王女はシャドウガーデンを謎の組織としてるけどマザーたちが王都を救ったことやアレクシアを救ったことはあちらも分かっている。

 

ならば真に気を付けなければならないのは紅の騎士団を操りたい教団側の回し者……

 

教団からのマインドコントロールは洒落にならない…

 

やることが多いな。

 

まぁ僕一人でやる必要はない…何かしらの連絡手段を確保すればガーデンには情報は行くだろうしガンマ、イータが王都にいるから対処は可能…

 

さてまずは自由に動けるようにしないと…だが後であいつがいないなんて言われて騒いで状況悪化は避けたい…何かいい方法はないものか…)

 

因みにこの間たったの3秒で脳内で纏めているシド。

 

そうこうしている間にローズ会長が突入してきた者たちに対峙していた。

 

本来なら魔剣士学園を襲うなんて馬鹿げている。だが学園生など魔力が使えなければただの子供同然。

 

ローズ会長は魔力を練れないことに気付いていない。

 

「ようやく気付いたようだな」

 

黒ずくめの男が仮面の奥で笑った。

 

まずい、まずい、このままだと。

 

「だがもう遅い」

 

黒ずくめの剣が、ローズに振り下ろされる。

 

魔力の込められたその剣を、魔力を封じられた彼女に防ぐすべはない。

 

僕は椅子を蹴飛ばし駆けた。

 

ローズ会長とは一度試合しただけだが学園生でオリアナ王国の王女が死んだとなればオリアナ王国にシャドウガーデンを滅ぼせる大義名分を与えることになる。

 

それは避けなければならない事態だ。

 

それに便乗して同盟国のミドガルだけでなくディアボロス教団からも狙われると面倒だ。

 

組織の力というものはバカにならないのだから。

 

ならばやることは1つ!

 

それにこれが成功すれば先程のあいついないという事態を避けられる。

 

血糊良し、斬られる覚悟良し。

 

…あ、姉さんに怒られる覚悟は出来てないや

 

……だ、黙ってれば大丈夫か…?

 

な、何とかイータに取り次いでもらうとしよう、そうしよう、こうなったらイータも巻添えにする。

 

そしてシドはローズを突飛ばしその凶刃を受ける。

 

ザシュッという肉を裂き血潮がその場に飛び散る。

 

斬られる瞬間心臓に波紋を撃ち込み一時的に心停止状態へなるようにし致命傷を避けるように間接をずらして心臓の位置をずらした。

 

あぁローズ会長取り敢えず怪我してなきゃ良いけど…これで後で怪我してた慰謝料ってならないと良いけど

 

とちょっと場違いなことを考えるシド。

 

「シド・カゲノー君……」

 

ローズの呟きに、シドは取り敢えず薄っすらと瞳を開ける。

 

「バカ。なぜ私をかばったりしたの……?」

 

本当に、最近知ったばかりの間柄だ。まだまともに話したことすらない。

 

命を懸けてまで助けられる理由なんてないはずだったのにとローズは思う。

 

シドは口を開き何かを言おうとするように口を開いてあらかじめ用意していた口に入れていた血糊を歯で破き

 

「ゲホッ、ゴホッ!」

 

大量の血を吐いたように見せ掛ける。

 

「シド君ッ!」

 

ローズの白い頬に少年の吐血がかかる。

 

シドは血濡れの顔で微笑んで……そのまま息を引き取ったように見せかける。

 

その死顔は、やり遂げた男の顔だった。

 

(ミッションコンプリート……取り敢えずは魔力で脳内の血流を停めないように……)

 

そうしてローズ会長たちを黒ずくめたちは講堂へと集めるように移動させる。

 

名残惜しく自分を守るために命を掛け犠牲となったシドの思いを無駄にしないようにローズは従う。

 

命を掛ける熱い思いを受けたことのなかったローズは永遠に叶わなくなってしまったシドの守ってくれた命…

 

そうして全員が移動し終わり教室を静寂が支配するが

 

心臓を止めたシドは血流の行き届いた右手に魔力を込めまた心臓へと撃ち込み心臓の鼓動を再開させ

 

「カハッ…ケホッケホッ…ふぅ、ふぅ…」

 

これぞモブ式奥義、十分間の臨死体験(ハート・ブレイク・モブ)である。

 

心停止から微細な魔力により脳血流を保ち、通常ではありえない長時間の心停止状態を後遺症なく達成する奥義である。心臓が動かなければお陀仏となるためあまりやらないようにしようと心掛けたシド。

 

そうして波紋を再開し傷を動くのに支障のないように最低限治す。ある程度残っていないと後程奇跡的な生還みたいにはいかないためであった。

 

そうして冒頭へ戻る。

 

「取り敢えず様子を見るためにも高いところで状況確認…それからシェリー先輩の確保だな。やることは多いけどやるしかない。」

 

そうして裏から事件解決を図る陰の実力者は駆け出すのであった。




今回はここまでになります。

投稿遅くなり申し訳ありませんでした!

冒頭の部分が中々思い付きませんでした。

気を取り直して今回から学園襲撃編となり原作とあまり変わらない展開ですがシドがわいわいすることなくただディアボロス教団を不愉快と断じる。

マザーの苦労や七陰たちの頑張りをちゃんと理解しているので冷静に見えて内心ちゃんと怒っています。

そして事態の収束を図りシャドウガーデンへと着せられかねない冤罪を晴らし学園生の死者を出さないように行動しようと考えていたところでローズが動いていたので

シドは庇う形で自然とフェードアウトすることに成功。

実際この時庇わなければオリアナ王国はディアボロス教団にほぼ乗っ取りを受けているのでローズ死亡→オリアナ王国はシャドウガーデンへと報復の矛先を向けディアボロス教団もそれに力を入れる、ミドガル王国も同盟国として動くなどシャドウガーデンにとって不都合が多いと思います。

シドはシャドウガーデンを守るためにそのついでにローズを助けた形になりますがフラグが立ちましたね。

まぁそんなシドとクレアに怒られる覚悟は出来てなかったのだイータを巻き込むことにしました。

心臓を波紋で強引に止め、魔力で心臓を動かすという芸当は転生ベアトリクスでも中々出来ないことだろうと思います。

心臓が止まれば自然と呼吸も止まるので波紋が途切れてしまいますがシドはそこを魔力でカバーしております。

波紋も使える今作シドは魔力を細かく練り上げつつ波紋をベースに学園襲撃事件を解決するべく裏から行動していくことに。

次回はシェリーにスポットを当てようかシャドウガーデン側の動きを書こうか迷いますね。

FGOでは果心居士が登場。BOXイベントで恒常鯖なので引こうか迷いますね。

感想、評価、お気に入りありがとうございます!

UAも90000を突破しこれも読んでくださる皆様のお陰です。

次回も遅くならない内に投稿していく予定です。

それでは今回も読んで頂きありがとうございました!


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偽物を狩るべくのんびり娘は躍動しうっかり狐娘は女の敵をハルバードの錆びにする。

学園襲撃編二話目です。

シェリーへと迫る危機

果たしてどうなるのか

それではどうぞごゆっくり!


学園をシャドウガーデンの名を騙るディアボロス教団が襲撃し魔力の使えない状況に瞬く間に学園は敵の手に落ちる。

 

それはペンダント型のアーティファクトを解析していたシェリーにも影響を与えていた。

 

彼女が解析していたものの正体に気付いたがそこに窓を割り賊が侵入してきた。

 

シェリー自身そういった争い事とは無縁であり…いきなりのことに固まってしまうものの紅の騎士団の二人に逃がされ懸命に走り逃げていた。

 

しかし彼女は戦闘のせの字も知らない素人。

 

故に周りにいた数多くのディアボロスチルドレン3rd、2nd呆気ないほど早く見つかる。

 

必死に逃げる彼女だが壁際にまで追い詰められ2ndの一人に組伏せられてしまう。

 

「いや!離して!」

 

「ギヒヒ、これを手に入れれば俺たちも上がれるよなぁ」

 

「痩騎士様がラウンズへと返り咲けば俺らも豪遊できるってもんだ!」

 

「そういや痩騎士様はこいつの身柄は好きにして良いって言ってたな。」

 

そう言いながら自我のない3rdに見張らせ教室に連れ込もうとする。

 

「叫ばないように塞いどけ」

 

「んんんんんぅぅぅ」

 

「おいおい、お前だけ楽しむんじゃねぇ」

 

「あぁ分かってるって」

 

(助けて…お義父様……シド君……だれか…)

 

孤立無援なシェリーを助けるものはいない。

 

しかし

 

ザシュッ

 

と見張りをしようとしていた3rdの胴が切り裂かれた。

 

「な!?なん」

 

「コンコ~ン!女の子を無理矢理手篭めにしようと飽きたらずよってたかって襲う女の子の敵に容赦しません!」

 

と突然現れたイナリは愛用しているハルバードで一気に二人を斬り払う。

 

直ぐ様反撃しようとする2ndの者たちだがイナリの尻尾に握られたイータ特製のクナイがその胸に突き刺さりクナイに塗られた麻痺薬で身体の自由を奪われその間にハルバードが斬り裂く。

 

そうしてシェリーを襲おうとした者たちはイナリにより壊滅した。

 

コォォォという音が聞こえる中で

 

「大丈夫ですか?何処か怪我はしてませんか?」

 

「は、はい…あ、ありがとうございます…」

 

「良かったですぅ、なんとか間に合って~」

 

「貴方は…イータさんの助手さん…?」

 

「はい!学園に用事があり来たら何だか騒ぎがあったので見付からないようにしていてそしたらシェリーさんがいました!」

 

「そ、そうだ、アーティファクト!」

 

「というとこれですか?」

 

とイナリはシェリーへペンダント型のアーティファクトを見せる。

 

「はい、このままだと…学園が…とんでもないことになってしまいます!魔力の使えなくなるこの現象はきっと…原因はアレです!」

 

「心当たりがあるのですか?」

 

「はい…でもそれには副学園長室にいかないといけなくて…」

 

「任せてください!そこまで送りましょう!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

とシェリーを護衛するためにイナリはその手にハルバードを持つ。

 

「そ、そういえばイナリさん今魔力が使えないですよね…?それなのに重そうな武器を振り回せるなんて」

 

「まぁ私は獣人ですから力持ちでもありますから!」

 

えっへんとイナリは言う。

 

本当は魔力ではなく波紋を使い自らの身体能力を引き上げているがそれをシェリーに言う必要はないので誤魔化したイナリ。

 

そうしてシェリーとイナリは副学園長室に急ぐ。

 

イナリがいるということは…つまり

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

紅の騎士団の副団長グレンとマルコは突然現れたレックスと名乗る賊と交戦していた。

 

しかし魔力も使えない状況下で相手だけ魔力を使えるという最悪の状況を覆すことの出来ない戦力差となっていた。

 

最初にマルコを庇いグレンが斬られそのまま胴を斬り裂かれる致命傷を負う。

 

「副団長ォォォォ」

 

「この程度かよ、まっこの反逆遊戯のレックス様に会ったてめえの不運を呪うことだぜ」

 

「クソォォォォォォォォ」

 

と斬り掛かるマルコだが軽くあしらわれレックスに斬り裂かれる。

 

間一髪剣を盾としたことで致命傷は避けたものの傷は深く意識は朦朧としていた。

 

「チッ歯応えねぇなぁおい!こんなんが騎士だなんて笑いしかでねぇな。」

 

そうして広間にて戦闘……いや一方的な蹂躙劇を終えたレックスは再度捜索へと繰り出そうとして

 

「まったく……面倒なことをしてくれるわね…襲撃に…ウチの名前を騙るは…」

 

その背後に突如として現れた存在に驚愕する。

 

(なんだ!?いつの間にいやがった…いやそれよりもこいつ…第二王女か…だが第二王女は療養で学園外へ行っている筈…いや戻ってきて騒ぎに気付いて無謀にも飛び込んだってところか)

 

「あ、アレク…シアおう…じょ…お、おにげくださ…い」

 

「まだ息はありそうね……そっちのは……ギリギリね。ならさっさと終わらせて……運び出しましょう。」

 

と波紋スライムでアレクシアへと変装したイータはレックスへと向き直る。

 

「はん、第二王女だっていうなら実力不足にも程があるぜ。凡人の剣、魔力もつかえねぇんじゃあ俺を斬ることなんて不可能。てめえの安っぽい正義感で出てきたみてぇだが実力もしらねぇなんてとんだ三流…」

 

ザシュ……

 

そんな会話をしていたレックスの右腕は半ばから斬り落とされていた。イータは何も武器を持っていないというのに

 

「ゴタゴタうるさい……実力を計れない…三流がどっちかわからない…?…分からないんでしょうね。」

 

とイータは言うとそのままジリジリと距離を詰めていく。

 

「バカな!?魔力はつかえねぇ筈だ!!てめえ、さてはアーティファクトか!身体能力をあげる類いの!」

 

「そんなもの入らないわ…そもそもなんでもかんでもアーティファクトの……力だなんて…考え方が古い…自分よりも格上が相手だった…実力不足を…アーティファクトのせいにする……だから…あんたは負けるのよ。」

 

そう言いながらイータは懐から自身の開発した道具であるいわゆるスタンガンを取り出す。

 

まだまだ使用回数など改善が必要であるが魔力を溜め込める性質の魔石を人為的に製作し魔力の性質に指向性を与え波紋のエネルギーを更に閉じ込めることにより擬似的に電気を再現することに成功するなどイータでなければ開発が出来なかった代物だ。

 

魔力の使えない空間だというのに目の前にいるのは本当に第二王女なのか…そしてレックスは思い出す。

 

報告にあったアレクシア王女に変装した存在のことを

 

「てめえがシャドウガーデンの」

 

「気付くのが遅かったわね…」

 

とイータは首筋にスタンガンを押し当てそのまま電流を流す。

 

バリバリという音と共にレックスを沈黙させた。

 

「さてとこんなもんで良いわね。あとは」

 

とイータは二人の騎士の容態を見る。

 

さっきまでは反応のあったマルコだが血を流しすぎたこともあり気絶していた。

 

「こっちの副団長…だったかしら?血管から流れる血を……止血しないといけないわね」

 

とイータは持ち合わせの救急キットから針と熱消毒してある魔力の通りの良い糸で術後は魔力と溶け合い縫ったのもわからないようになる優れものを使い素早く縫い合わせる。

 

そして波紋で失った生命力をある程度補充し応急処置が完了する。

 

「……そこにいるわねニュー。」

 

「はっ!」

 

「魔力の制限されているから……私が作った魔力阻害防御のアーティファクトを……工房から…人数分持っていきなさい…それとこいつの…尋問もお願い。」

 

とレックスを指差して言う。

 

「流石イータ様ネームドのチルドレン1stを簡単に…」

 

「魔力を使えないってこと、油断、私をアレクシア王女と見間違えたこと色々なことが重なったから……それはそうと懐かしい?」

 

というイータ。

 

「…そうですね。イータ様はお見通しですね。マルコは以前の私の婚約者でした。実力も高く正義感の強い人で昔の私は彼をアクセサリーのように連れ回していました。

 

正直忘れたい昔の話しです。」

 

「別に…良いんじゃない…?だってそれがあって…今の貴女がいる……大事なのはどうありたいか……なんだから」

 

「イータ様…ありがとうございます。」

 

「周辺にガーデンの子達は待機してる?」

 

「はい。指示があればすぐにでも動けます。表では騎士団が到着しておりますが」

 

「なら確実性をとってアーティファクトを取りに行ってからね……でもまだ動くのは早いわ。シャドウも……動いているだろうし……イナリがシェリーを探しに行ってる……この騒動を引き起こして魔力を使えなくしたアーティファクト…それを奪取したいわね……」

 

「成る程。これだけの効力なら我々で確保できれば教団側にも使えますね。」

 

「それもあるわ…それに魔力を……ストックしていられる特徴があるなら…その特徴だけ抜き出して……従来の蒸気機関に応用も出来るし…生活にも応用出来るわ。

 

まずはこれの無効化が先ね。まぁ掛かっても日が落ちる頃には分かるでしょうし

 

このアーティファクトの……正体は検討ついてるし」

 

(既に原因に辿り着いて無効化する方法まで…ガンマ様が知力という分野での天才ならばイータ様はアーティファクト関連の開発、研究の天才!)

 

「王国で管理されて盗まれたっていう強欲の瞳、そしてこんな騒動を起こしたということはペンダント型のアーティファクトが制御装置かなんかだったのでしょうね……それに関わり殺されたシェリーの母親のルクレイア……

 

その資料を見た限りね……防御痕がなかったのよ」

 

「防御した痕跡ですか?」

 

「そう。そうなると強盗に殺されたというなら抵抗した後がなければ無理があるのよ……そこから導き出されるのは彼女は親しかった者に殺された…そしてそれの価値を知っていて剣に覚えのある者は一人だけ……」

 

「…まさか!?ではシェリー・バーネットは」

 

「利用されたのかはたまた良心の呵責なのか…それは本人に聞かなければ分からないことよ。

 

それとニュー、貴女に最も大事な仕事を任せるわ」

 

「はい!」

 

そうしてイータは解析に必要なものを纏めてポーチへと入れ込むとニューへと、とあるものを渡しそのままレックスに魔力封じを嵌め込みレックスを抱え一度戻らせた。

 

「さてとまずはこの二人ね。」

 

と言うとグレンとマルコを担ぎ上げ騎士団のいるであろう方向へと向かうのであった




今回はここまでになります。

学園襲撃の目的であるアーティファクト奪取のためにシェリーの前に現れたチルドレン1st反逆遊戯レックス。

シェリーを逃がすべく紅の騎士団の副団長グレンとマルコの二人は殿を務めシェリーは逃げるものの敢えなくディアボロス教団に見付かってしまいます。

原作ではシドに陰ながら助けられていましたがその前に見つかり危うくエロ同人誌のようになるところでしたが颯爽とシャドウガーデンのマスコットでイータの助手のイナリがハルバード片手に一刀両断して助け出しました。

イナリもまたベアトリクスから波紋を教わり使いこなせているので魔力が使えない状況でも遅れを取らずに活動出来ています。

そしてシェリーはこの現象に心当たりがあり副学園長室にイナリと共に急ぐ

そして、場面はグレンたちの方へと移り致命傷を受けるグレンと重症のマルコ。

その前に現れたのはイータで顔バレしないようこれまたアレクシアに変装しました。

波紋スライム自体魔力ではなく波紋を用いるため魔力の使えない状況でも十全な働きをしてくれる優れもの。

そして、攻撃にも転用できイータは見えない程に細くした波紋スライムをワイヤーのように飛ばしレックスの右腕を吹き飛ばしお手製スタンガンで捕獲。

レックスは拷問or読み取り君による記憶を見られて情報を搾り取られることが確定しました。

そしてその場にきていたニューへ頼みごとをするイータ。

ニューもまた波紋を用いることが出来るものの他の構成員はまだ未熟なのもあるのでイータ特製のアーティファクトを取りに行くことに。

ナンバーズはある一定の練度の波紋を操ることがなる条件でもある設定です。

そしてイータはグレン、マルコを担ぎ上げると騎士団の元へと向かいます。

次回は外にいる騎士団の様子からになると思います。

そして陰実の二期の放送が10月に決定しました!

無法都市での活躍や一期以上に動くクレアが見れたりするのは嬉しいです。

吸血鬼編へと追い付けるように投稿していきたいですね。動くユキメの姿ももっと見れると思うと感激です。

感想、評価、お気に入り登録していただきありがとうございます!

次回も遅くならない内に投稿していこうと思います。

今回も読んでくださりありがとうございました!


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バラバラの騎士団を纏めるべく第一王女は陰の園の霧と秘密裏に手を結び事件の解明へと動きだす!

今回は外で待機している騎士団サイドになります。

アイリス、アレクシアが待機しているとそこに現れたのは驚きの人物だった。

それではどうぞごゆっくり!




学園の襲撃の報を受けて直ぐ様駆け付けた騎士団であったものの学園へと入ろうとしたものの魔力が使えないという驚愕の事実が分かり騎士団は魔力の使える場所まで後退し様子を見ているしかなかった。

 

紅の騎士団を組織しているアイリス・ミドガルと療養で出払っていたアレクシア共々駆け付けたものの従来の騎士団とは話が合わず現場の指揮系統の統一すらされていない状況にアレクシアはため息を吐きたくなった。

 

「どうしてこういう時に言い争うのかしら…魔剣士学園の襲撃っていう前代未聞の事件…しかもタレ込みでシャドウガーデンが主犯なんてきてるし…どう考えても可笑しい。」

 

そうして騒いでいる騎士団と姉であるアイリスを見ていると学園の門から誰かが飛び降りてきた。

 

しかし喧騒のせいかアレクシア以外気付いておらずその飛び降りてきた最近見た顔というか自身そっくりに変装している人物の姿と担がれているシェリーの護衛をしていた筈の紅の騎士団の二人の姿があった。

 

「姉様!」

 

「アレクシア今はそれどころでは……!?グレン!マルコ!」

 

そうしてアイリスたちも振り返ると

 

「あ、アレクシア様が二人!?」

 

「ねぇ…どうでもいいけど……早いところ治療院に運ばないと……危ないわよ。特にこっちの髭の男性…かなりの出血で輸血も必要だし…まぁ怪我したところは応急処置で塞いだから早くしなさい……」

 

「!急いで二人を治療院へ!早く!」

 

そうして慌ただしく二人を運んでいく騎士団たち。

 

そしてその場にアイリスとアレクシア、イータが顔を会わせる。

 

「貴女がアレクシアから報告のあった…シャドウガーデンの幹部…ミストですね。私は」

 

「自己紹介はいらないわ。知ってるから。ミドガル第一王女アイリス。」

 

「ミストどういうことよ!シャドウガーデンが学園を襲撃したって!」

 

「ふーんそんな風に言われているのね。でも実際は違うわよ。ディアボロス教団によるペンダント型のアーティファクトを奪取するために起こされたものよ」

 

「なんですって!?」

 

「…貴女は持ち込まれたアーティファクトが何なのか知っているのですか。」

 

「えぇ知っているわ。でもタダで教えるわけにはいかないわね。」

 

「非常時に何を!」

 

「対価はなんなの?」

 

「アレクシア王女は分かっているわね……簡単なことよ。今回の事件の解決したのを貴女たち紅の騎士団にする……要は手柄を譲るから私たちがしたことではないと……世論に広めてほしいということ。」

 

「手柄がいらないって…」

 

「私たちは殺戮集団ではないのよ……それを誓うのならある程度の情報を融通しても良いわよ。」

 

「…」

 

「姉様受けるべきです。彼女は私たちが欲しがっている情報を持っている。そして示した対価は私たちにとっても損があるわけではない。」

 

「それに今の内に紅の騎士団の実績を上げたいでしょう?予算…下りてないんじゃない?」

 

「しかし…」

 

「アイリス・ミドガル、このまま部下二人を無様に負傷させたって責められるか勇敢に戦った部下二人の活躍を無駄にせずに事件を解決したと言われるか…選択は二つに一つよ。悩んでいる時間はない」

 

暫くの葛藤の末にアイリスは決断した。

 

「分かりました。貴女の言ったこと必ずやり遂げましょう!」

 

「宜しく頼むわ…今回持ち込まれたアーティファクトは強欲の瞳というアーティファクトの制御装置よ。」

 

「強欲の瞳!?たしかルスラン副学園長が国に管理を依頼したものの筈。」

 

「そしてつい最近盗まれた。しかしそれを騎士団は隠蔽した。管理責任を問われたくないからでしょうね。」

 

「なんということを!」

 

「そして強欲の瞳の効力は周囲の魔力を吸収しそれを溜め込むこと。そのため強欲の瞳が発動するとその周辺は魔力の錬成が困難になる。」

 

「だから魔力を使えなくなっていたって訳ね!」

 

「そしてディアボロス教団の者たちはあらかじめ『強欲の瞳』に魔力の波長を覚えさせたのでしょう…登録した魔力は吸収しないことを確認済みだというシェリー・バーネットの報告書にあるわ…でも抜け道もあって他にも極めて微細な魔力や、強い勢いを持った魔力などは吸収し辛いから一部の例外を除けば無理でしょうね…」

 

「…だからグレンたちが賊に遅れを取ってしまったということ…」

 

「これだけでも厄介なアーティファクトだけど……強欲の瞳は溜め込んだ魔力を利用することもできる……本来の目的は魔力の利用にあったと思われるけど……長期間の魔力保存が困難だったために欠陥アーティファクトだと考察されていた…」

 

「でもその前提が覆ったということですね。」

 

「そう…それこそが貴女たちが持ち込んだ強欲の瞳の制御装置…強欲の瞳はそもそも単体ではなく……その制御装置と組み合わせて使うことを考えられていた。

 

そうなると…魔力を長期保存できない欠陥アーティファクトという立ち位置も変わってくる…」

 

「いつでも好きなときに魔力を取り出せる……そんなものが敵の手に渡ったら!」

 

「魔剣士にとって致命的なことになります!」

 

「幸いあの二人が……シェリー・バーネットを逃がしたお陰で最悪の事態は免れている…制御装置なら逆に……強欲の瞳そのものを停止させることも出来るでしょう。」

 

「つまり…シェリーさんが解析し、その制御を一時的にでも無効化出来れば学園の生徒たちを避難させることも可能ということですね。」

 

「そういうこと……まぁ彼女なら日が落ちる頃までには……解析できるでしょう。何も妨害がなければだけどね。」

 

「敵が大勢の中でしかも素人のシェリー先輩が頼みの綱って心配だらけね。捕まる可能性のが高いじゃない。」

 

「そういえばさっき狐の娘を見たわね……最近学園で始めたっていう……天才研究家の助手だったかしら?偶々商品の運搬で来ていたのでしょうね。」

 

「イナリが!?…いやあの娘なら平気か…うっかりだけど実力は私が魔力で強化してても素の状態で強かったし…」

 

「味方がいるなら良いことよ……さて私は戻るとしようかしら」

 

とイータはそのまま学園に戻ろうとする。

 

「ちょっと!貴女も魔力が練れないでしょうに!そんな行っても!」

 

「言ったでしょう。強欲の瞳に魔力を吸い取られない方法を。魔力を細かく練り上げること………そして…もう一つ……膨大な魔力を吸い取れないこと…」

 

イータは二人から見えないように手首に付けている普段から自分自身の魔力を喰わせる改造したスライムである魔力喰いを一瞬……ほんの一瞬外した。

 

その瞬間大気が揺れた…

 

そう錯覚を起こすかのような膨大な圧迫感に陥るほどの魔力が解き放たれた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それは離れた場所で待機しているシャドウガーデンメンバーにも伝わり全体指揮をしているガンマにも届いた。

 

「い、今の魔力……イータ?でもあの娘の魔力は私たちと変わらない物の筈……気のせい?…あとで聞かないといけないわね。」

 

「ガンマ様!イータ様から工房よりアーティファクトを持っていくようにとのことです!」

 

「分かったわ。工房へ行くのは普段から行っているミツゴシの子達に行かせましょう。ニュー、イータはなんて?」

 

「この現象が強欲の瞳というアーティファクトによって引き起こされたこと、その制御装置が学園に持ち込まれたアーティファクトでそれを奪取するのが目的とのことです。

 

イータ様が日が落ちる頃までには解析できるとのことでした。」

 

「そう…なら待ちましょう。それにシャドウ様もいらっしゃいますしイナリちゃんもいるなら平気でしょう。それにイータがいるなら磐石です。

 

三人とも波紋を使いこなせてシャドウ様、イータはその中でも波紋の扱いはトップクラス…魔力の阻害は殆ど無意味。」

 

「はい!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして間近で魔力の奔流を浴びたアイリスたち以外の者たちは膝を付いていた。

 

「二人以外情けないわね。ほんのちょっと解放したぐらいで膝を付いて…」

 

(なんて魔力なの…!?まるで押し潰されるかのような重圧感…こんなの魔剣士一人が出せる魔力量じゃないわよ!)

 

「途轍もない…貴女程の者で幹部だというならばボスはそれ以上の規格外…いやマザーと名乗った者を含めればそれ以上のものが少なくとも二人いるということ……」

 

アイリスとアレクシアは以前マザーとシャドウの放った規格外の一撃を体感していたこともあり膝を付かなかった。

 

「今のは強欲の瞳が溜め込んだであろう学園の生徒の魔力とよりちょっとしたぐらいよ。黒幕と対峙したとき動けないようじゃ指揮は無理ね。

 

そこにいるアイリス・ミドガル以外は…」

 

アイリスとアレクシアはミストの言葉にハッとしこの場の指揮権を奪えということだと理解しイータはそのままアイリスに紙を押し付けその場から消える。

 

「消えた!?」

 

「蜃気楼のように揺らめいて消えた…まさにミストの名を表しているわね……」

 

さっとアイリスは手渡された紙を見やる。

 

「では現場の指揮は私が取らせてもらいます!!」

 

「何を言いますか!現場の指揮は」

 

「今膝を付いていた者たちではとてもではないですが黒幕と対峙など出来はしません!

 

そして私が貴方たちがしたことを知らないとでも思いますか?」

 

「な、なにをいって!」

 

「無法都市の色町への出入り、それらを出張と称した経費の無断使用。

 

貴重なアーティファクトの管理不足による怠慢!

 

王宮の名を騙り好き放題する者がいる始末!」

 

その言葉を受け青ざめていく騎士団。

 

「まだ上げればキリがありませんがこれ以上言われたいですか?」

 

「うぐ…ググググググ」

 

「よって指揮は私が取ります!異論は認めません!!!」

 

そうしてその場における指揮権を掌握したアイリス。

 

イータから渡された紙には不正の証拠がこれでもかと載っていてそれをその場で追及することにより第一王女として不正を許さないという姿勢を見せることにより周りに集まり始めていた国民へのアピールもするようにと助言が書いてあった。

 

(ミストの目的が本当に事態の収束ならば利用されましょう。しかし私もこの状況を利用させてもらいます…あまりこういったことは得意ではありませんが…それでも!私はミドガル王国の第一王女として!事態を収束させねばなりません!そして……これに書かれた資料を取り寄せなければ…)

 

こうしてアイリスは指揮権を統一したことにより騎士団は纏まりを見せた。

 

そしてアイリスは昔の事件であるルクレイアの資料を持ってくるように命じる。

 

そこに犯人に至る鍵があるというミストよりもたらされた情報を確かめるために。

 

前代未聞の学園の襲撃という事件を解決するためにアイリスは一時的にミストと手を組む形になった。

 

アイリスは事件を解決させることが出来るのであろうか!




何とか早めに投稿することが出来ました!

今回学園の外に待機している騎士団の元へとグレン、マルコを担いでやって来たイータ。

アレクシアそっくりな人物に騎士団は混乱するもののグレン、マルコを搬送するためにてんやわんやとしている最中でアレクシア、アイリスへと事のあらましを伝え

手柄を譲る代わりにシャドウガーデンへの風評被害を押さえるようにと依頼し情報を与えました。

アレクシアは新しく学園で商売を始めるとイナリが言っていたことを思い出しつつ事件に巻き込まれるなと思いつつもイナリの魔力なしの強さを知っている分信頼しています。

そしてイータの本来の魔力の片鱗を出しました。

シャドウ、転生ベアトリクス協力の元魔改造されたイータの魔力量は100年鍛え続けているベアトリクスに迫るほどであり今の七陰の魔力を足してもまだ足りない程。

周りを威圧しないようにとスライムを改造し魔力を喰うタイプにして手首にアクセサリーのように変形させて魔力を押さえています。

常時高純度に魔力を生産し続けなければ魔力がなくなり常人ならば三分と持たず干からびかねない代物。

ようするにBLEACHの剣八の眼帯の霊圧を喰らうものをスライムで応用したもの。

しかしそれでもまだ実力的には戦闘経験などもありシャドウ、ベアトリクスには届いていない準最強。

アイリス、アレクシアは以前の事件でのマテリアル・バースト、アトミックを体感していたお陰か膝を付かずそれを利用する形でアイリスは指揮権を掌握しに掛かり

学園に集まり出していた国民へと聞こえるように不正の証拠を突き付け清廉潔白を主張し現場の指揮をもぎ取りました。

そして事件解明につながるルクレイアの事件の詳細を取り寄せることに。

そこに秘められた真実に驚愕を隠せないでしょうね。

次回は少し時間を遡りシドの話しからになると思います!

感想、評価してくださる皆様ありがとうございます!

とても励みになります!

お気に入り登録も800間近へとなっていてとても嬉しいことです!

次回も遅くならない内に投稿をしていけるように頑張ります!

今回も読んでくださりありがとうございました!


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陰の園の盟主はドジっ娘桃色娘とうっかり狐娘を陰からフォローするがうっかりとドジの度合いを超えていると戦慄し事態の解決へとのんびり娘も合流し収束へと向けて準備する。

少し時間を遡りシドサイドになります。

イータとも合流しアーティファクトの解析へと移っていきます。

そして最後に痩騎士にとっての死神が迫ってきます。

それではどうぞごゆっくり!


イータがアイリス王女、アレクシア王女へと協力を取り付けるより時は遡り。

 

シドは一先ず学園で高いところへと登り状況を確認していた。

 

大講堂に拘束された学園関係者が集められているのが見える。大講堂は全校生徒余裕で入るでっかいホールだ。入学式とかそこでするし、たまに演劇とか見たり有名人の講演とかやったりする。

 

学園の外には騒ぎを聞きつけた騎士団が集まってきている。しかし、ある一定の距離からは近づこうとしない。そこが魔力を阻害する何かの境目なのだろう。

 

校舎内にはもうほとんど人の気配がないようだ。黒ずくめの男たちが隠れている生徒がいないか探し回っているだけだ。

 

「ふむ…まずは状況を整理しよう。

 

まずシャドウガーデンを騙る者たちが学園を襲撃した。

 

襲撃の目的は間違いなく学園に持ち込まれたアーティファクト。

 

そして風評被害によるシャドウガーデンの活動を妨害すること。

 

アーティファクトのことならシェリーか後はイータがいれば簡単に終わる…

 

ならまずは敵の数を減らしていくとしようか…」

 

と僕はスライムスーツから親指サイズにスライムを切り取った。

 

それを丸めて魔力を込め、屋上に伏せて手の中で弾けるような簡易的な弓矢を生成し構える。

 

丁度見回りをしようとする黒ずく目の二人組を狙い、弾いた。

 

ピシュンッ、と。

 

空気を切り裂く音を残して、スライム弾が黒ずくめの男の頭を貫通したしそのまま二人目の男の心臓も貫いた。

 

まさかの二枚抜きである。

 

「よし…この調子でスナイパーの真似事でもしようか」

 

とシドはそのまま外に出てきて見回りをするチルドレン3rd、2ndの頭、心臓を次々に撃ち抜いていく。

 

銃撃というのは世間的に広まっているものの魔力を纏える魔剣士たちからすれば驚異ではない。

 

しかしシドのように魔力を込めたスライムによる狙撃は次々にディアボロス教団を屠っていく。

 

見えない敵に狙われる恐怖に自我のある2ndの者たちは発狂寸前である。

 

しかしその前にシドに撃ち抜かれていく。

 

「君たちはディアボロス教団に利用されていたんだろう…でも同情できる部分というのも僕以外ならあるのかもしれない…

 

けどシャドウガーデンを騙り殺戮を繰り広げるのなら話しは別…君たちは敵だ。」

 

そうしてあらかた片付けたシドは廊下を歩く。

 

すると前からペタペタ音がするので見ていると

 

シェリーとイナリの二人がいて廊下でディアボロス教団の構成員と交戦中であった。

 

シェリーを守りながら戦うイナリを見つつ背後からシェリーを狙おうとする者をこれまた狙撃によって倒す。

 

イナリ側も一段落してまた進むのだが

 

(イナリまたうっかりしてるね…シェリーの足音で敵に居場所バレてるんだが…いやそれでどうにかなるからイナリも気付いてないし…シェリーも足音を立ててないと思ってるし…)

 

これは何とかするべきか…いやイナリたちを囮にして敵をおびき寄せて倒すのも……変なところでイナリのうっかりが発動しかねないと思い声をかけることにしたシド。

 

だったのだが…

 

シェリーが転びかけそれを受け止めようとしたイナリの手から一瞬離れたハルバードが通路と通路の死角になっているところから現れた敵を一刀両断したり

 

イナリの死角を突いたとばかりに三人が強襲するもののイナリのポケットから地面に落ちた二つの薬品が化学反応を起こし眩い光を放ち目をやられた三人をシドがそのまま気付かれないように処理をする。

 

因みにイナリとシェリーの後ろでの発光のためか二人とも気付いていない。

 

そんなことが三度も続くので

 

(普通に声を掛けよう。そうした方がハプニングは少なそうだ…というかうっかりにドジが合わさるとトンでもないことになるとは……まぁ味方に被害がいかなければ何でも良いか。)

 

「そこなお二人さん色々と言いたいことがあるけど取り敢えず止まろうか?」

 

「ほえ?…シド様!」

 

「シド君…!酷い怪我!」

 

「ん…まぁあれだよ、九死に一生を得たかな。致命傷ではないから一先ず安心して。それとシェリー先輩、まずそのペタペタ音のなるローファーを脱ごうか?あとイナリさっきポケットから色々と落ちては化学反応起こしてたよ。」

 

「あ!?ほ、本当です!色々な薬品がないですぅ」

 

「まぁ無事で良かったよ。取り敢えずどこに向かうところ?」

 

「シェリーさんが心当たりがあるとのことで副学園長室へと向かってます!」

 

「よし行こうか!」

 

と合流を果たしたシド

 

そして一瞬膨大な魔力の波を感じたが直ぐ様止んだ。

 

「これは…成る程ね。外にはアイリス王女もいるのか…それで指揮系統を奪うために…」

 

「そうみたいです。あれを外すことは稀ですので。」

 

「???」

 

「あぁ大丈夫何でもない。」

 

外にいる騎士団にイータがホンの一瞬魔力を解放したのをシャドウとイナリは感じ取り大体の思惑が分かりそのまま向かう途中うじゃうじゃと出てきたディアボロス教団な者たちを始末していく。

 

そうして漸く副学園長室へと辿り着いた。

 

ガチャっと開くとそこには

 

「あれ!?アレクシア王女どうしてここに?」

 

とシェリーは言う。

 

勿論アレクシアではなくイータが変装しているのだが

 

「あっ!ごしゅ」

 

ばっ!と勢いを付けてイナリの口を塞ぐシド。

 

ここでご主人など言おうものなら正体がバレてしまうのでうっかり狐娘に気を付ける陰の実力者……

 

敵より味方に注意することになるとはと思いつつフォローする。

 

「シェリー先輩、多分その人アレクシアじゃないと思うよ。」

 

「え?でも」

 

「よく分かったわね。私はシャドウガーデン幹部の一人ミストとでも呼んで頂戴。」

 

「はい!…それでミストさんはどうしてここに?」

 

と襲撃しているものたちの正体を知らないシェリーは呑気に尋ねる。

 

「今起こってる現象を止めるためによ。今回のことは強欲の瞳が起こしているから。」

 

「やっぱり!」

 

「「強欲の瞳?」」

 

と?を浮かべるシドとイナリ。

 

シェリーは強欲の瞳の危険性を伝える。

 

それは前回アイリス王女たちへと説明した内容と同じで更には魔力が解放されれば学園が消し飛ぶ可能性があるということであった。

 

「一先ず解析に必要なものはこれでいいでしょう?」

 

とイータは回収していた代物を手渡す。

 

「ありがとうございます!あとはアーティファクトの解読が済ませて

 

この制御装置で強欲の瞳の機能を一時的に停止させることができればその間に大講堂を解放することができるはずです!」

 

「いいね、そのアーティファクトは具体的にどうすればいいのかな?」

 

「解読したら、起動したアーティファクトを強欲の瞳に近づけます」

 

「どうやって?」

 

「えっと……地上は警戒されているので、まずは地下から大講堂に近づこうかと」

 

シェリーは少し困ったように微笑んだ。

 

「地下から?」

 

「はい」

 

シェリーは壁に並んだ本棚から本を数冊抜き取った。すると本棚が回転し、奥に地下への階段が現れたのだ。

 

「すごいね」

 

「学園の施設には脱出用の隠し通路がいくつか残されているんです。でも、この通路はしばらく使われていませんね」

 

シェリーの瞳に悲しみの色が浮かんだ。

 

「階段に埃が積もったまま……足跡がついていません。お義父様がここから脱出してくれていればよかったのに」

 

「ルスラン副学園長か。義親だっけ」

 

「もともと母の研究を支援してくれていたんです。ずっとお世話になっていて、母が死んだあとも身寄りのない私を引き取って育ててくれたんです。

 

後は…これはお義父様には内緒なんですけど差出人は分からないんですけど文通をしてて…色んなことを教えてくれる人のお陰で寂しくなかったです。」

 

「いい人たちだね。…若干差出人不明は怪しいと思うけど…まぁいいか」

 

と最後はボソッと言うシド。

 

「はい、とても。ずっと助けられてばかりだったから……だから今回は私が助けるんです」

 

「無事だといいね。それで、地下から近づいた後は?」

 

「あ、えっと……地下から近づいて、起動したアーティファクトを大講堂に投げ入れます」

 

「壊されたりしない?」

 

「壊されても一時的に機能は奪えるので大丈夫です。それで、後は魔剣士の皆さんに頑張ってもらえれば……」

 

最後が少し弱いけど、僕がシャドウになって暴れれば問題ないかな。あとは他のシャドウガーデンメンバーと一緒に襲撃者を倒す。

 

「それで行こう。捕まっている人たちもいるから早期解決しないとね。解析はお願いするね。」

 

「はい!」

 

そうして解析に集中し始めるシェリー。

 

シドは彼女の邪魔をしないように先程から隅っこでコソコソとイナリを叱っているイータに近寄る。

 

「イナリ……この姿の時に呼ぶのはあれ程……気を付けなさいと言ったでしょう…?」

 

「しゅみませんご主人様~」

 

「ほらイータ、そこまで。イナリがうっかりなのは今に始まったことじゃないんだから。」

 

「全く…イナリ次は…気を付けなさい」

 

「それでイータどこまで掴んでる?」

 

「大体の所まで。」

 

「僕的に物凄い怪しんでいる人が一人いるんだよね。」

 

「そうね。今回の事件と強欲の瞳を研究していた彼女の母ルクレイアの死は繋がっている。

 

当時ルクレイアのことを支援していたものたちはそれなりにいたわ…でもその中で特に親しかった者で剣に長けた者は一人だけよ。」

 

「……そのことを彼女は?」

 

「知っている筈がないでしょう。更に外部の情報を制限されていた。都合よく利用するため…世間知らずとは言うけどそのやり口はシドも心当たりがあるでしょう。」

 

「まぁね。」

 

「それとこれも伝えておくわ。彼女の母は……ベアト母様の友人だったのだそうよ。」

 

「…それなら動きとしてはあれかい?」

 

「えぇプランBで行きましょう。」

 

「悪事を暴いてトンズラ大作戦だね。」

 

「はぁ…シド……その作戦名は…ダサい。」

 

シェリーが解析作業を進める間大まかな動きを決める三人。

 

学園を解放するべく動き出す。




今回はここまでになります!

シドが学園のディアボロス教団員たちを殲滅していたところイナリとシェリーを発見。

ドジとうっかりによる化学反応に戦慄しつつ合流を果たして副学園長室へと向かっているとイータが魔力を解放したことを悟り副学園長室へと入るとイータが先回りしていました。

この時のシェリーは襲撃してきたものが誰なのか知らないのでスムーズにいきました。

そうして道具を回収していたイータは手渡しイナリのうっかりを叱りシドへと情報を共有しました。

そして正式名称、作戦名ディアボロス教団の悪事を暴いてシャドウガーデンは無実を証明してトンズラするを決行へと移すシド。

長い作戦名とネーミングセンスにダサいと溢すイータなのでした。

さて結末が近付いて来ました!

大まかな流れは決めているのでサクサク進めていきたいですね。

いつもお気に入り登録、感想、評価くださっている皆様ありがとうございます。

皆様のお陰でこのSSも遂に10万UAへと到達します。

これからも精進していきますのでどうぞ宜しくお願いします!

今回も読んで頂きありがとうございました!























































???

学園が襲撃されたという報を受けて急いで学園へと向かっている人影……

その人影は大事にしている写真の一枚を見やる。

そこにはアホ毛の女性が赤ん坊を抱きしめその横に移る自身の姿があった。

風の噂で死んでしまったことを知り密かにその娘と文通を重ねていた。

どういったことがあったのか近況を知らせたりもしていた…

そして事件を調べ上げわかった事実……

今度は絶対に助ける…

それがあの娘にとって辛いことだとしても…

そうして学園へと銀の髪をなびかせ急ぐ…ベアトリクスなのであった。


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解析された制御装置は魔力を解き放ち囚われた学生たちを奮起させ陰の園は全てを終わらせるべく動き出す。

いよいよ学園襲撃編がクライマックスへと突き進んでいきます!

今回はアイリス、アレクシアが事件の黒幕に気付き

シェリーが解析を終えます。

それではどうぞごゆっくり!


未だに膠着状態が続いている陽が落ちた魔剣士学園。

 

騎士団は再編成されとある資料が取り寄せられた。

 

「アイリス王女!言われた資料持ってきました!」

 

「ご苦労様。下がって良いわ。」

 

そしてアイリスは資料を広げる。

 

「ミストの言う鍵…でもどうして昔の事件を…しかもシェリー先輩の母親の…」

 

「……アレクシア。この事件こそが今回の騒動の前触れなのだとしたら?シェリーさんのお母様が研究していた強欲の瞳。そして亡くなった後その娘のシェリーさんが受け継いだ。見方によっては亡き母親の研究を完成させたって見えるわ。」

 

「えぇ。それからルスラン副学園長が国へ提出した」

 

「そこなんですよ。国へと提出されている…しかし真実は隠蔽され当時の本当の記録を見ると実際には提出されていないのだそうです。」

 

「そんなはすが!…まさか!?」

 

そう当時の記録は改竄されたものばかりであった。それを知れたのはミストよりもたらされた情報のお陰。

 

「これも、また隠蔽されていたのでしょう。ミストからの資料を見るとそれが、分かるわ。そしてこの事件の全容も大きく変わる。」

 

「それは…?」

 

アイリスは防御痕のないこと、即ち抵抗した後がないことから親しい者の犯行であり短絡的に起こしてしまったことを上げ言う。

 

「アレクシアこうも考えられないかしら?シェリーさんのお母様を殺した者は研究が未完成であった…

 

犯人は大いに焦ったでしょう。

 

代わりに研究するものが優秀で疑わない者は当時いなかった…だから自身の手で用意した。

 

そして利用して研究を完成させ魔剣士の多い場所即ちこの魔剣士学園で事を起こした。

 

本来はもっと慎重にする筈が私たちによりその制御装置が持ち込まれた。

 

それを好機として犯行に及んだ。その情報を知れたのはたった一人だけ。」

 

「じゃあ犯人は!」

 

「えぇ信じられないことだけどそういうことなのでしょう。」

 

真実へと辿り着いた二人は信じたくない結論を見つけていた。

 

「……後はミストからの合図を待つしかないわ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

シェリーが解析を進め時折イータが手助けをすることにより制御装置はその効力を発揮しようとしていた。

 

「もうすぐ終わりそうね……」

 

「憂鬱ってところかな?」

 

「そうね。これが終わった後の直すための依頼は来るだろうし面倒ってのもあるけど。」

 

「一番はシェリー先輩のことか。」

 

「えぇ。」

 

「でも時を戻すことなんて僕らには出来ない。出来るのは進んでいくことだけ…結末がどうなろうとシェリー先輩は進むしかない…僕らに出来るのは見守ることぐらいじゃないかな?」

 

「まったく…呑気で良いわねあんたは」

 

「それ誉めてる?」

 

「能天気なことに……呆れてるだけよ。」

 

「皆さんお茶入ったのでどうぞです~」

 

「……イナリはいつも通りだね。」

 

「だからこそ日常のありがたみが分かるのだもの。それがあの娘の良いところ。本当なら裏に関わらせたくないのよ。」

 

「分かってるよ。」

 

「で、出来ました!」

 

とシェリーの手の中には淡い光を放つ制御装置が。

 

「これで皆さんを助けられます!捕まっているお義父様も…」

 

「じゃあイナリはシェリーの護衛をして地下室を通って行って。」

 

「シド君はどうするのですか?」

 

「傷が傷だから医務室へ私が放り込んでおくわ。だから貴女たち二人で行きなさい。」

 

「分かりました!シェリーさん行きましょう!」

 

「は、はい!シド君気を付けて」

 

「シェリー先輩も気を付けて……そうだ最後に一つ。文通をやり取りしてた相手の名前は知らないんだよね?」

 

「はい…でも凄い武勇伝の数々をお持ちらしく一番凄いと思ったのが巨大な猪がオリアナ王国を襲いなす術もないと思われた時に猪を剣技で退治したお話しです!

 

それから色んな所の食べ物の話しも凄かったです!」

 

その話しを聞きシドは何処かで聞いたことのある話しだと感じイータはピンときた。

 

「それからいつも母が好きだったハーブを送ってくれててとても安心する気持ちになれました。

 

名前は分からないですけど…とても優しい人なんだって思います…」

 

「そうなのね………さぁ早いところ行ってあげなさい。」

 

「はい!お二人ともお気を付けて!」

 

「イナリ、シェリー先輩のこと宜しく。」

 

「お任せください!」

 

と二人はそのまま地下を慎重に潜っていく。

 

「さてとシドあんたにも動いてもらうわよ。」

 

「分かってるよ。」

 

「シャドウガーデンの命運を……背負う……覚悟は出来てる?」

 

「それぐらいの覚悟とうに出来ている。」

 

そう言いシドをスライムボディスーツを身に纏う。

 

「我らは闇に沈む真実を光へと還す…でなければ死したものたちが報われぬのだからな。」

 

「そうね。例えそれが目を背けたくなる真実でも……前に進むには必要なこと……世界はままならないことばかりね。」

 

「だから仲間がいる。同じ志を持つ我らの同士がいる限り…歩みは止まらない。」

 

そうして歩き出すシャドウとなったシドの後ろ姿を見てイータもそれに続いていく。

 

「陰に潜み陰を狩る…今一度それを刻ませてやろう。」

 

シャドウが歩いていくと一人また一人とその背に続いていく。シャドウガーデンが今動き出した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

シェリーとイナリは湿っぽい階段を下りきる。

 

暗い地下通路をランプの灯りだけが照らす。

 

通路は入り組んでおり、一つ間違えば目的地にはたどり着けない。

 

「えっと……」

 

シェリーは地図を広げて大講堂への道を確認する。

 

「真っすぐ行って三本目を左で……」

 

最初はおっかなびっくり進んでいく。

 

「大丈夫ですよシェリーさん!ゆっくり一歩一歩進みましょう。」

 

とイナリが励ましながらシェリーを勇気付ける。

 

シェリーにかつて義父と一緒にこの地下通路を歩いた記憶が蘇る。仕事中の義父に無理を言って遊んでもらったのだ。それはシェリーにとって忘れられない大切な思い出だった。

 

彼女に父の記憶はない。父は彼女が生まれてすぐに亡くなった。

 

母の記憶も薄れている。母はシェリーが九歳になった夜に強盗に殺された。

 

あの夜、クローゼットの隙間から見た黒い影をシェリーは覚えている。母の叫びと、不気味なあの哄笑は今でも夢の中でシェリーを苦しめる。

 

それでも亡くなる前に話してくれた冒険記はとてもワクワクしながら聞いていた記憶がある。

 

事件のあと数年間、シェリーは声を出すことができなかった。周囲を拒絶し、ただ母の残したアーティファクトに取りつかれた。そして母の跡を辿るかのように研究に没頭した。

 

そんな時彼女の元に一通の手紙が届いたのだ。

 

最初破り捨ててしまおうとしたがそれでも…懐かしい母の匂いがした。

 

そうして手紙に差出人の名前はなかったがそれでも色んな外のことを教えてくれて相談事にも乗ってくれる優しい人で母がもう一人いたらこんな感じなのかなと思っていた。

 

更に転機は続き彼女を救ってくれたのが義父だった。

 

シェリーを引き取って、研究を支援してくれて、家族の愛を注いでくれて、ようやく彼女は声を取り戻すことができた。

 

シェリーにとって家族の記憶とはそのほとんどが義父とその手紙の人のモノだった。

 

ずっと義父に支えられてきた。その恩を返す日が来たのだ。

 

「がんばらなきゃ」

 

シェリーは暗い道を進んでいく。

 

その足取りにはもう、恐れはなかった。

 

途中で転び掛けた時などイナリがフォローしたりして、暫くして辿り着く。

 

「ここが大講堂の下だ……」

 

道はいくつも分かれている。

 

一階へ向かう道、そこから中央へ、さらに二階へ……。

 

地図と道を見比べながら、シェリーとイナリは進んでいく。

 

「ぁ……!」

 

そして、見つけた。

 

そこは二階と三階の間にある小さな通気口だった。

 

人の出入りは無理だが、ペンダントを投げ込むには十分だ。

 

シェリーは通気口からこっそりと中の様子をうかがう。

 

気配を消すのに大切なのは力を抜くことだ、と。シドは言っていた。

 

力を抜いて、ゆっくりと呼吸する。

 

大講堂には沢山の生徒が座っていた。教師も少ないがいる。

 

そして黒ずくめの数はそれほど多くない。魔力が解放されればすぐに逃げ出せるだろうとシェリーは思った。

 

「それではシェリーさんお願いします。」

 

「はい!」

 

とシェリーは通気口から離れ、ペンダントを取り出す。

 

それに用意した魔石をペンダントに組み込むと、白い光と文字が浮かび上がった。

 

光り輝くペンダントを握りしめたシェリーは、迷わず通気口から大講堂へ投げ入れた。

 

大講堂は眩い光に包まれたのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

大講堂に集められた学園生たちはロープなどの拘束こそされていなかったものの魔力を使えず抵抗した教師も惨殺されるのを目の当たりにしなす術がなかった。

 

シドに助けられたローズ・オリアナも魔力さえ使えればと思いしかしシドに救われた命を無駄にしてはいけないと反撃の機を待つ。

 

しかし徐々に魔力を吸われているからか体調を崩す生徒も出始め時間はないことを悟る。

 

そして、その瞬間は唐突に訪れた。

 

突如として、大講堂が白く眩い光に照らされた。

 

それが何なのかはわからない。しかしローズは考えるより速く動いていた。

 

その光が何だっていい。ただ、これが最後の機会であることを本能で感じ取った。

 

眩い光に誰もが目を奪われる中、ローズは目を細めて身近な黒ずくめの男へと駆けた。

 

その隙だらけの首に手をかける瞬間、ローズは気づいた。

 

魔力が使えるッ!

 

ローズの手刀が男の首を一瞬で断ち切った。

 

なぜ魔力が使えるようになったかはわからない。それこそどうでもいい。

 

ただ、ローズは首から上を失くした男の腰から剣を奪い、それを天に掲げて吠えた。

 

「魔力は解放された!!立ち上がれ、反撃の時だッ!!」

 

そうしてローズは黒ずくめの男目掛けて剣を振るう。

 

一人また一人と剣を取り応戦していく。

 

しかし魔力を吸いとられ続けていた弊害でローズの放った一撃は黒ずくめに当たるが浅かった。

 

(しまった…!やはり魔力が…一人一人が手練れ…!このままでは…)

 

そうして4人に囲まれたローズだが最後の力を振り絞り斬り払う。

 

背後からの凶刃がローズへと迫り

 

(ごめんなさい…シド君…貴方に助けられた命…ここまでのようです…)

 

ローズは目を瞑るが衝撃は来ず目を開くと

 

「見事だ、美しき剣を振るう者よ……」

 

その深淵から届くような声はローズに向けられ、彼女へ迫った凶刃を返り討ちにした。

 

それは先のローズの剣を称えた言葉なのだろう。だがローズはそんな言葉では表せないほどの衝撃を受けていた。

 

「我が名はシャドウ。陰に潜み陰を狩る者…偽りの園を名乗ったこと…後悔するが良い。」

 

ローズの窮地に現れたシャドウ。

 

占拠された学園を救うべくシャドウガーデンは偽物を狩る




今回はここまでになります!

アイリス王女たちは取り寄せた資料とイータからもたらされた情報を見比べ恐ろしい真実へと辿り着きました。

遂に解析できたアーティファクトを片手にシェリーはイナリと共に地下通路を突き進みそれを見送りシドはシャドウへと姿を変えそんなシャドウの右後ろからイータは付いていきガーデンメンバーはシャドウの後ろへと集結していきます。

イータは極力イナリを裏へは関わらせたくないけれども本人の意思を尊重しています。

そして差出人不明の人を心拠り所としていたシェリー。

世間知らずな彼女はその武勇伝の数々がとある作家により約二年前に世に出ていることを知らない

そして話しを聞きイータは差出人にピンときていました。

そして制御装置により魔力を解放されたローズたちの反撃。

しかしディアボロスチルドレン3rd、2ndの力量は学生よりも高く魔力も万全ではない彼女らにこのままだと勝機はありません。

ローズへ迫った凶刃を颯爽と現れたシャドウが防ぎディアボロス教団の掃討が始まるのでした。

次回は黒幕との対峙などを予定しております。

いつも感謝、評価、お気に入り登録ありがとうございます。

皆様のお陰でUA10万を越えました!

これからも投稿続けていけるよう精進致します。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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学園解放 黒幕と対峙する陰はその真意を問い七年前に起こった事件の全容が明かされそして悪事は暴かれた。

シャドウたちが学園を解放します。

そして黒幕が副学園長室へと向かいそれを追った者は…

暴かれるルクレイアの事件と今回事件!

それではどうぞごゆっくり!


ローズ・オリアナを襲おうとした凶刃から守ったシャドウ。

 

「あ、貴方はいったい…?」

 

「我が名はシャドウ」

 

シャドウと名乗るこの男の剣は……ただ、凄まじかった。

 

「わ、私はローズ。ローズ・オリアナ……です」

 

衝撃から立ち直れずに、震える声でローズは言った。

 

シャドウの剣は遥か高みにあった。幾多もの技術が融合され、淘汰され、研ぎ澄まされた、弛みない修練の先にある剣。 ローズはそこに悠久の時を感じた。

 

それは未だかつてローズが見たことのないほど完成された剣だった。

 

「来たれ……漆黒に付き従う我が同志たちよ……」

 

シャドウが青紫の魔力を天に放つ。その光を浴びながら、黒装束の一団が大講堂に飛び込んできた。

 

まさか、新手が……?

 

ローズの不安は杞憂に終わった。

 

黒装束の一団は華麗に着地し、即座に黒ずくめの男たちと戦いだしたのだ。

 

仲間割れ……という雰囲気ではない。騎士団の人間にも見えない。

 

よく見ると黒装束の一団は全員が女性だ。そして。

 

「強い……」

 

その誰もが強い。ただ純粋に強かった。

 

黒ずくめの男たちは瞬く間に数を減らしていく。

 

彼女たちの剣はみなシャドウの剣と同じだ。この猛者たちを従えているのがシャドウなのだ。

 

「シャドウ様、ご無事で何よりです」

 

「ニューか」

 

シャドウの傍らに黒装束の女性が跪いていた。

 

「首謀者は学園に火を放ち逃亡しておりミスト様が追っています。」

 

「そうか。ならば問題ない。彼女から逃げることなど不可能なのだから。」

 

シャドウは低く嗤った。そしてロングコートを翻し、付近にいた黒ずくめの男たちもまとめて肉塊に変え、たった一太刀で大講堂の扉を切り刻む。

 

「魔剣士学園の者たちよ!!アイリス・ミドガル率いる騎士団を目指せ!生きるために最善のことをせよ!」

 

それは少しローズの剣に似せていた。彼はまるでその剣を見せつけるかのように薙ぎ払い、学園生たちを激励しそのまま悠揚と夜の闇に姿を消していった。

 

学園生たちは次々に脱出をしイータが送った合図を皮切りに突入していた騎士団たちが保護する。

 

彼の動きすべてが、ローズにとって最高の手本だった。

 

「無事か?」

 

 ニューと呼ばれた女性が、ローズに声をかけた。

 

「はい……」

 

「素晴らしい剣だった」

 

彼女はそう言って、漆黒の刀を構え戦いに加わった。

 

しかし、ニューの剣もまた尋常ではなかった。黒ずくめの男たちが一方的に切り伏せられていく。

 

ローズの常識が、いや魔剣士の常識が壊れていくような感覚。

 

そうしてあっという間に殲滅された黒ずくめたち。

 

静けさが支配する空間を思いながらローズはシャドウの剣の美しさと先程の集団の統率された動きに魅せられたのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

夜の副学園長室を遠くの火が薄く染めていた。

 

薄暗いその室内で人の影が動いている。

 

影は本棚から数冊の本を抜き取ると、それを床に捨てて火を放った。

 

小さな火が次第に本を侵食し、室内を明るく照らしていく。

 

浮かび上がった影は痩せた黒ずくめの男だった。

 

「そんな恰好で何をしているのかしら……ルスラン・バーネット副学園長」

 

痩せた男の影が震えた。一人きりしかいなかった室内に、いつの間にかもう一人少女がいた。

 

少女はソファーに座り脚を組み本を読んでいた。

 

ワインレッドの長髪の少女はただ男の影にも広がる炎にも目もくれず、分厚い本に向けられている。ページを捲る音がやけに大きく響いた。

 

「よく、気づいた」

 

黒ずくめの男が言った。そして顔を隠していた仮面をとると、初老の男性の顔が現れた。

 

白髪の混じった髪をオールバックにした彼は、ルスラン副学園長だった。

 

ルスランは仮面を火の中へ投げ入れ、黒ずくめの装束も脱いで燃やす。

 

室内が一段と明るさを増していく。

 

「参考までになぜわかったか聞いてもいいかな、イータ・ロイド・ライト殿」

 

ルスランはイータの向かいに腰かけて聞いた。

 

「見れば分かるわ…とても鼻に付くし」

 

イータはルスランを一瞥し、すぐに本へと視線を戻した。

 

「見ればわかる、か。歩き方か、あるいは姿勢か……どちらにせよ研究者にしては、いい目をしているな」

 

ルスランはイータを見て、イータは本を閉じルスランを見ていた。

 

炎に照らされた室内で二人の影が揺れていた。

 

「私も……聞いてもいいかしら?」

 

炎が舞う室内だというのに変わらない表情でイータはのんびり尋ねる。

 

ルスランは無言で先を促した。

 

「なぜこんなことを…したのかしら?あなたが……こういうことに……興味があるようには……見えなかった。国内でも大規模な……魔剣士学園の副学園長なんて地位は……決して安いものではないでしょうに。」

 

「なぜ、か……そうだな、少し昔の話になる」

 

ルスランは腕を組み呟いた。

 

「かつて私は頂点に立った。君が生まれる前の話だ。」

 

「ブシン祭で優勝したってことよね。名誉なこと……普通なら…でもあんたの言う頂点とは違う…12の騎士の一席でしょう?」

 

「驚いたな。まさかそれを知っているとは…!そうブシン祭など、頂点には程遠い。本当の頂点はずっと先にあるものだ。君のいう12の席を一度取ったのだよ。」

 

ルスランは笑った。そこに嘲りの色はなく、どこか疲れたような笑いだった。

 

「しかし私は頂点に立ってすぐ病にかかってね、一線を退いた。

 

苦労して上り詰めた私の栄光は一瞬で終わった。

 

それから私は病を治すすべを探し求め、ルクレイアというアーティファクトの研究者にその可能性を見出したのだ」

 

「シェリーの母親のことね。」

 

「そうルクレイアはシェリーの母だ。賢すぎて学界に嫌われた不幸な女だ。だが研究者としては最高峰の知識を持っていて、彼女の立場は私にとって都合のいいものだった。私は彼女の研究を支援し、数々のアーティファクトを集めた。

 

ルクレイアは研究に集中し、私は彼女の研究を利用する。彼女は富も栄誉も興味がなかったから、いい関係だったよ。そして私は『強欲の瞳』に出会った。私が探し求めたアーティファクトだ。

 

だがね、ルクレイアは……あの愚かな女は『強欲の瞳』が危険だと言って国に管理してもらうよう申請を出そうとした。だから殺してやった。身体の先から中心へ突いていき、最後は心臓を突き刺し捻った」

 

「やっぱり……事件当時の状況から……抵抗がなかったから…身内の犯行であること……剣に覚えのある者が……関わっていたこと……そして騎士団の隠蔽……この間の……ゼノンも含めて騎士団は…腐敗だらけね。私個人で調べただけでもこんなに不祥事が出てくるのだもの。」

 

「あの当時の騎士団に金を握らせ揉み消しに協力をさせた…まぁ今も腐敗しているがね。そして強欲の瞳は私の手に残ったがまだ研究は途中だった。だが私はすぐに都合のいい研究者に出会ったよ。

 

ルクレイアの娘、シェリーだ。彼女は何も知らず、何も疑わず、私に尽くしてくれた。

 

私が仇だとも知らずにね。可愛い可愛い、愚かな娘だ。

 

母娘二人のおかげで強欲の瞳は完成した。あとは魔力を集める舞台を整えてちょうどいい隠れ蓑を用意するだけで済んだよ。今日は……私の願いが叶う最高の一日だった」

 

「幾つか質問しましょう。一つ貴方はシェリーが解析していた制御装置が必要だった。だから制御装置を奪おうとした。シェリーを亡き者にしようとして。」

 

「そのとおり、制御装置さえ手に入れば私は以前と同じ…否以前よりも大きな力を手にする。しかし制御装置を解析出来る者がいては私の地盤が揺るぎかねないからね。」

 

「もう一つ貴方はルクレイアを不幸な女と呼んだけれど少なくとも彼女自身はそうは思わなかったでしょう。娘と過ごし騙されたとはいえ貴方という理解者がいた。しかしそれを貴方は裏切った。それだけじゃなく……シェリーの心も弄んだ。」

 

「若いな…私も昔はがむしゃらに剣を極めようとした。それだけではどうにもならないことがこの世の中にはあるのだよ。イータ・ロイド・ライト殿どうかね?

 

私が返り咲けばそれ相応の地位を用意するが?君は賢い…ルクレイアに匹敵…あるいはそれ以上に。でなければ蒸気機関という革命的な物が出来ることはなかっただろう。

 

世界を変える発明…それを我々の組織で存分に奮わないかね?」

 

とルスランはイータをディアボロス教団へと勧誘しようとする。

 

世界の変革を成し得る可能性を秘めたイータの発明は注目を集めている良くも悪くもだ。

 

ディアボロス教団にとって停滞の見える一年に12粒しか生産できないとあるものを更に改良出来るのではと噂されていた。

 

だが勿論イータの答えは決まっている。

 

「その勧誘に対する返答はノーよ。世界の根幹を歪ませ続けている奴らに協力する義理もないわ。そういうのが嫌で私は国に属さないのよ。」

 

「残念だ。君は聡明だと思っていたのだがね。」

 

「今回のことを起こして貴方……ただで済むと思ってる?」

 

「一連の事件はすべてシャドウガーデンの仕業になるよう手はずを整えている。証拠も、証言も、全て用意してある。戦いでいくら強かろうとも、どうにもならんよ。」

 

「そう……貴方は力に固執してしまったのね。そしてただの悪でもなくなった。」

 

「力のない正義など無力に他ならないのだよ。そして今の私は悪を超越した」

 

 

 

「吐き気を催す邪悪ね。」

 

その声は嫌にルスランの耳に残った…

 

「私が邪悪だと?」

 

「それもとびっきりのよ。いえあんたらの組織がって言った方が良いのかしらね。

 

吐き気をもよおす『邪悪』とは

 

なにも知らぬ……無知なる者を利用する事よ……!!

 

自分の利益だけのために…利用する事…

 

父親がなにも知らぬ娘をその母を…!!

 

あんただけの都合でッ!その人生を狂わせた!

 

あんたを許さない…それだけよ。」

 

「今の君に何が出来ると言うんだね。私はシャドウガーデンに殺されたように見せかけ姿を消す。私を裁くことなど不可能なことだ。」

 

「一個人として至極簡単なことよ…これなんだと思う?」

 

とイータは小型のマイクのようなものを取り出した。

 

「そんな小さいものがどうしたと」

 

「これは声を離れた機材へと反響させ……響かせることの出来るアーティファクト……そしてここに来るまでに……設置に協力してくれた……本物の奴らが学園のあらゆる場所へと…設置し学園の半径3キロにまで響き渡るように…ね…全て聞こえてるんじゃないかしらね…アイリス王女や野次馬根性のある付近の国民には…」

 

「き、キサマァーーーーーーーー!!!」

 

その声はルスラン副学園長の悪事はシャドウガーデンがあらゆる場所へと設置したアーティファクトにより学園に轟いていた。

 

今までの悪事が全て筒抜けとなり真実が暴かれ響き渡る魔剣士学園…

 

イータは不適に笑うのであった。




今回はここまでになります!

シャドウが捕らわれた魔剣士学園の生徒たちを解放しました!

ローズの振るう努力の剣はシャドウも認めた程素晴らしい剣でありナンバーズであるニューから見ても良い剣でした。

そしてマスターオブガーデンではどうやらニューの元の名前など判明したようですね。

うーんどう絡ませようか。

副学園長室には原作ではシドでしたがイータがいて正体を現したルスランに色々と質問しました。

まぁ原作同様…それ以上にルクレイア及びシェリーを利用し役目が終われば処分しようと中々の外道っぷり。

イータをディアボロス教団へと誘うものの当然のごとくノーを叩きつけました。

それだけイータが優秀だということですね。

イータがルスランに見せたものそれは音響関連のアーティファクトでありニューたちに学園全体に設置してもらったスピーカーによりルスランの悪事が学園全体及び野次馬化した国民たちへ露呈することとなりました。

これに対してシェリーはどう思うのかはまた次回にて。

構想はハガレンフルメタルアルケミストで最初のリオールの町での神父による悪事をエドとアルフォンスが暴いた時とし同じような感じですね。

そして吐き気を催す邪悪をシャドウガーデンはいったいどうするのかも次回へ続きます。

まぁ娘を消して自分に繋がる証拠を消したいディアポロと娘だけでなくその母すら利用したルスランですからね。

さて梅雨入りもしてきた今日この頃。

皆様土砂降りの雨などには気をつけてください。

次回は騎士団の様子とシャドウの現在地からになります。

お気に入り、感想、評価していただいた皆様ありがとうございます!

今後とも遅くならない内に投稿していきますので宜しくお願いします!

それでは今回も読んで頂きありがとうございました!


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響き渡る悪事!少女の心を抉る真実の刃…そして少女を守るべく遂に姿を現す母親の親友

一方の騎士団サイドになります。

アイリスたちの救助活動の最中に現れたのは…

そして真実を知ったシェリーはどうなるのか…

ルスランの前に現れる死神の正体…

それではどうぞごゆっくり!


外で救助活動にあたっていた騎士団たちは響き渡る声を聞きルスラン捕縛のための行動を起こそうとしていた。

 

「やはりルスラン副学園長が犯人…!」

 

「信じられないけど…でもさっきの響いてきた声は間違いなくルスラン副学園長だったわ。そして彼がシャドウガーデンに罪を着せて逃げようとしていたことも…貴方はこれを我々に聞かせようとしていたのね…シャドウ。」

 

「いかにも。我等シャドウガーデンは殺戮組織ではないのでな。」

 

アイリス王女たちの前にはなんとシャドウがいた。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

少し時間を遡り

 

アイリスたちは騎士団総出で学園生たちの保護を行っていた。

 

しかし炎の勢いを増していく中での救助は困難を極めていた。

 

そんな彼女らの前に漆黒が舞い降りた。

 

「何をもたついている。」

 

「シャドウ!?」

 

騎士団の中で唯一面識のあるアレクシアが彼の名を呼んだ。

 

「シャドウガーデンの…頭目…何のようですか!事と次第によっては」

 

「炎が邪魔をするなら消せば良いことだろう。夜闇に明々と付いているものではないのだ。」

 

「そんな簡単に出来れば!」

 

と言う声が響く前に学園の上層から大量の水が噴き出した。

 

「出来ぬのであれば他所から持ってくれば良い…簡単なことだ。」

 

シャドウは炎の広がる学園の上層へニューたち構成員を投入しイータ開発の強力な消火用のスライムポンプを学園の浄化槽へと接続、起動させ上から一気に消火を始めていた。

 

「す、凄い!炎が瞬く間に消えていく…!」

 

「魔剣士学園を水浸しするが学園のものたちの命に比べれば安いものであろう。」

 

「…シャドウ、協力感謝する…しかし貴方たちは私たちにとって未知の組織…騎士団的に拘束しなければならない今までのアレクシアを救ったこと、王都を救ったこと、今回のこと。悪いようにはしないと誓うわ。」

 

「腐敗した組織に身を置くことなど愚かなことだ。例えキサマのようなものがいてもだ。」

 

シャドウは騎士団の腐敗のことを言いしかしアイリス自身はそうではないとハッキリ言った。

 

「我等シャドウガーデンは闇に沈む真実を…浮かび上がった真実を逃さず、白日の下に引きずり出すことだ。」

 

「…その真実はまさか…シェリー・バーネットの母ルクレイアのことですか…そのことは」

 

「例え残酷な真実であろうとも…明かされなければ死者が報われん…その真実を知らないでいるのは確かに幸福なのだろう…だが無知を理由に逃げて良い程この世界は甘くない。ならばその真実をどう乗り越えるか…それが重要なのだ。」

 

「…あんたたちは最初から知っていたのね…あの時私を偽物から助けたときから…じゃないと残酷な事実なんて言わないもの。」

 

そうして話している内にシャドウは懐からとあるアーティファクトを取り出した。

 

「それはいったい…?」

 

「天才発明家と呼ばれる者から有無を言わさずに押し付けられた物だ。どうやら彼女は聡明なだけでなく行動力もあるようでな。」

 

とシャドウはそのまま小型のアーティファクトを起動する。

 

するとどうだろうか

 

あちらこちらから声が響きだしたではないか。

 

それもルスラン・バーネットという魔剣士学園の副学園長が自身が主犯でありシェリーを利用していたこと、ルクレイアを利用し殺害したことも認めた。

 

途中途中音声が一瞬途切れるものの声を聞いたことのあるアレクシアにはイータがルスランと対峙していることが分かった。

 

そしてルクレイアの事件さえも騎士団は隠蔽していたことが分かりアイリスの握る拳からは血が出るほどであった。

 

「…これは…もはや騎士団は腐敗しきっていることが丸分かりですね…再編成…いえ新しく作り直さなければ…」

 

「早期に新しく己が組織した騎士団をもった聡明な王女よ。これからどうする?」

 

「今回のことが公になれば騎士団の信用は失墜します。ならば父上は…紅の騎士団を矢面にし生まれ変わらせるというようにするでしょう。優秀な者で件の組織の息のかかっていないものたちを探さなくては…ですが…まず我々がすべきはこの事件を起こしたルスラン・バーネットを拘束することです!

 

強欲の瞳のアーティファクトで学園全体の者たちから奪った魔力を使用できようとも必ず…!」

 

「そうか…だがその決意も無駄になろう。」

 

「私では勝てない…そう言いたいのでしょう…そんなこと!」

 

とアイリスは強欲の瞳で集められた大量の魔力を持つ今のルスランに勝てるか分からないものの王女としてやるべきことをしようとするがシャドウは止めた何故なら

 

「否。既に奴に引導を渡すものは決まっている。奴にとっての死神はすぐそこに来ている。故に貴様らは確保することだけを考えることだ。かの御仁の怒りの地雷源を踏み抜いてしまったのだからな。」

 

「え?」

 

「ルクレイアを不幸な女とルスランは言ったがそれは大間違いだ。彼女には心から信頼する友人が一人だけいた。その彼女はルクレイアの死後も娘であったシェリーに正体を隠し手紙でやり取りをしていた。

 

そしてそんな彼女へ我々は接触し真実を話した。我々にとっては恩を返す意味合いもあったのでな」

 

「…!?まさか…それって!」

 

アレクシアは以前悪魔憑きを治す術をある人物から教わったとシャドウから聞いたことを思いだし大きいズガンという音と共に学園全体を強大な魔力が覆い尽くす。

 

「……離れた方が良い。巻き添えを食らいたくなければな。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「まぁそういうことよ……観念して捕まるかしときなさい……」

 

とイータはスイッチを一度切った。

 

「こんなことをしてタダで済むと思っているのか!私だけでなく貴様もディアボロス教団に狙われるのだぞ!」

 

「あんたが私に関することを……言った所だけ音声切ってたから…私の声を知らない者なら誰かを……勧誘していたとしか思わないわ。それにね……」

 

「来るなら容赦はしない…それだけよ。」

 

「クッだが!この力を持ち帰りさえすれば表にいられずとも!」

 

「……お義父様……」

 

と副学園長室へ入ってきたのは制御装置で強欲の瞳を一時的に無力化したシェリーとイナリだった。

 

「嘘…ですよね…お義父様かお母さんを殺したって…だってあんなに仲良くして…笑顔で」

 

シェリーは嘘であってほしいと願いながら養父へ問い掛ける。

 

「シェリーか…そうだね。仲良くしていたとも、私が力を手にするために必要だったから。だから君のような愚鈍な世間知らずとも仲良くしていたのだとも…」

 

「じゃあ…今までのことは…私を気に掛けてくれたのも…愛してくれたのも…全部…全部嘘だったの…?」

 

「シェリー…愚かな娘よ。この世の中は力こそが全てなのだ。力のないものは利用されるだけの世界。ルクレイアもシェリーも私という力を欲する者の礎なだけの存在だ。

 

愛していた?そんなものただのまやかしだとも。

 

いつも君の愚図なところにイライラさせられていたものだ。

 

この機会に抹殺しようとしたのだが…まぁ良い…

 

君たち母娘のお陰でこの強欲の瞳を完全に手中に納められたのだからな。

 

君たちがこれを解析しなければ今回の学園の死傷者も出なかったものを…

 

この事態を引き起こす手伝いをしたようなものだからな。

 

ありがとう愚かで可愛い娘よ。」

 

ルスランの悪意のある言葉は…シェリーを繋ぎ止めていた心を…完全に砕くに至るに充分なものだった。

 

「あああああああああああ…かえして…かえしてよ…お母さんを…かえして!!」

 

「シェリーちゃん!!ダメ…!!」

 

とルスランへ飛びかかろうとしたシェリーにルスランは無慈悲に剣を振り下ろす。済んでの所でイナリのハルバードが間に入ったものの不安定な体勢なため二人揃って吹き飛ばされる。

 

「ふん…無駄なことを…力の差の分からぬ愚図が…」

 

「…外道が…!」

 

「まぁ良い…私の悪事がバレようが私を捕まえることなど不可能なことだ。私は究極の力を手に入れたのだからな!全ては結果だ!力という結果が私を高みへと上げるのだ!この世には結果だけを残したものが頂点に立つのだ!!」

 

ルスランはそう言うと懐から赤い錠剤を取り出し飲み込んだ。

 

さらに強欲の瞳とその制御装置を取り出す。

 

「強欲の瞳の真価は二つ合わせて発揮されるものだ。こうやってな」

 

カチリ、と音がして二つのアーティファクトが組み合った。

 

途端、二つのアーティファクトは眩い光を放ち、白い光の古代文字がアーティファクトを中心に広がる。

 

部屋の中に古代文字の螺旋が舞い、ルスランは嗤いながら自身の胸にアーティファクトを押し付けた。

 

「今ここで、私は生まれ変わる」

 

ルスランの胸にアーティファクトが埋まっていく。

 

まるで水の中に落ちるがごとく、服も肌も通り抜けていく。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォッ!!」

 

ルスランは胸をかきむしり咆哮を上げた。

 

光の古代文字がルスランに集い、その身体に刻み込まれていく。

 

ひときわ眩い光が部屋を白く染め上げた。

 

そして。

 

光が収まったそこに、片膝をついたルスランがいた。

 

白い煙を上げながらゆっくりとルスランが立ち上がる。前を向いたその顔には、細かな光の文字が刺青のように刻まれていた。

 

「素晴らしい……素晴らしいぞ……力が戻る、病が癒える……!」

 

ルスランを中心に吹き荒れる魔力が炎を揺らす。

 

よく見ると彼の顔だけではなく、首や手にも光の文字が刻まれている。

 

「わかるか、この荒れ狂う力が!人間の限界を遥かに超えた魔力がッ!」

 

そして、ルスランは嗤った。

 

「まずは私の計画を邪魔をした貴様からだ。そしてシェリーも含め目撃者を殺し私は返り咲くのだ!」

 

「結果だけに取り憑かれ……それまでの過程を全て捨て去るなんて…愚かね。」

 

「過程に何の意味がある!この世に残るのは絶対的な力という結果のみだ!」

 

「結果というものは過程があるからこそ生まれるもの…発明だってそう…

 

何百、何千、何万の失敗を繰り返しながらのトライ&エラーを経て完成する。そしてその過程は一見失敗だと思ってもあらゆる可能性へ続いている……結果だけを求めてはいけない…

 

だからわたしは「結果」だけを求めてはいない。

 

「結果」だけを求めていると…人は近道をしたがるものよ…………

 

貴方も最初は……まっとうな手段で治そうとしたのでしょう…でも治せない…だから魔力を頼り近道をした。

 

そうして近道した時……真実を見失うかもしれない……やる気だって次第に失せていく。

 

まっとうに治す手段を貴方は諦めてしまった……次第に取り憑かれたようにアーティファクトをあさり……見つけては解析を任せた。

 

でもね大切なのは『真実に向かおうとする意志』よ…!

 

向かおうとする意志さえあれば…たとえ今回は犯人が逃げたとしても…

 

いつかはたどり着くわ。だって向かっているわけだから……………………

 

だから貴方へと辿り着いた。七年という歳月を経ても諦めずにいたから……

 

裁くのは私ではない…今話題のシャドウガーデンでもない…唯一裁けるとしたら彼女と親交があった人物。

 

貴方はシェリーが文通していたことを知らなかったみたいね。」

 

とイータはルスランへ言葉を掛ける。

 

「それが何だというのだね。たかが文通ごとき」

 

「貴方たちを…刺激してしまえばシェリーの身が危ない…だから不器用に文通という手段で

 

彼女を支えていた…貴方は外のことを知られないように…こういうのをシェリーに見せなかったみたいね…」

 

とイータは武神列伝という最近流行りのとある作家の本を取り出した。

 

「それが何の関係が…」

 

「でもシェリーはこの本の中身を知っていた……何故なら手紙でのやり取りで知っていたから…」

 

遠くから風を切るようにマントがはためく

 

「どうして私があんたと話をしていたのか…それはあんたを逃がさないため…そして時間を稼ぎたかった……到着するまで時間が少し掛かりそうだから…そしてその必要も…なくなった。」

 

その影は漆黒を切り裂き剣を振りかぶる。

 

「真実を追い続けそれが今追い付いたわ……!ルクレイアの友人でありシェリーと文通をしていた……」

 

ズガンっ!という音と共に副学園長室の壁面が崩れる。

 

土ほこりが舞いそしてシェリーの目の前へと立つ。

 

「…大きく…なったわね。ルクレイアそっくりの髪色…あの娘と同じアホ毛…目もそっくり」

 

「ぇ?…この匂い…送ってくれたハーブの…お母さんの好きな匂い…?」

 

顔を伏せていたシェリーは懐かしい母の好きだったハーブの匂いを感じ取った…

 

「ごめんなさい…貴女の安全を優先して迎えにいけなくて…いえこれは言い訳ね…

 

私はあの時あの娘を守れなかった。だからこそ今度は守って見せる…」

 

そうして煙が晴れそこにいたのは

 

「武神にして食神…そして蒸気機関の母…ベアトリクス…ルクレイアの唯一無二の親友でシェリーの文通相手よ。」

 

親友の娘であるシェリーを背にしてベアトリクスがそこに立っていた。

 

今ここに親友の娘を守るべく武神が姿を現した




今回はここまでになります。

炎に包まれた学園で救助をしていたアイリスたちの前にシャドウが現れ学園に放たれた炎を全て消火しました。

なので副学園長室の炎も直に消えるでしょう。

そしてシャドウはイータから押し付けられたという体で通信装置をアイリスたちの前に持っていき真実を明らかにしました。

そしてアイリスが相討ちになろうともルスランを拘束する気持ちでいるとシャドウよりルスランにとっての死神は既にいると言いました。

真実を知ったシェリーはそれでも養父を信じたく問い掛けるもののルスランから真実だといわれ今までのことは全て偽りだったと言い放ちシェリーの養父への思いは砕かれ母を奪ったルスランへ迫るものの剣を振るわれ何とか間に入ったイナリのお陰で助かったものの悲しみが胸中に溢れるシェリー。

原作では何も知らずアニメでは悪堕ちするかのような姿が描かれたシェリー。

こちらではどうするか…少なくとも養父の件は響くので悪くて対人恐怖症になるだろうし…

そこは学園襲撃編の後日談になると思います。

そして強欲の瞳と制御装置を自分に取り込み莫大な力を得たルスラン。

結果だけに取り憑かれたルスランへイータは発明家として結果だけでなく過程も必要と言います。

まぁ実際発明するのに何度もトライ&エラーを繰り返すイータだからこそ結果のみに囚われないと言えること。

そしてジョジョ5部にてアバッキオの同僚の言った言葉を引用しそしてルクレイアを殺した犯人を追い続けたベアトリクスが遂に到着しました。

因みにこの時の言葉は実はシャドウガーデンの方の通信機では音を拾えてるので構成員含めイータに尊敬の眼差しを送ることになるでしょう。

次回は魔剣士学園の魔力を集めたルスランVSベアトリクスになります。

学園襲撃編が終われば最近出番の少ないベアトリクスに視点が大きく移っていくことになるでしょう。

中々学園編だとベアトリクスが絡ませづらいのもありそこは作者の力不足です。

展開など結構行き当たりばったりが多いのでそこは寛容に読んでくださると助かります。

いつもお気に入り、感想、評価頂きありがとうございます!

FGOでは18日に遂にオーディールコール奏章1が開催。

レフが出てきたのに全部持ってかれましたね。どう関わるのか楽しみです。

次回も遅くならない内に投稿していきます。

今回も読んでくださりありがとうございました!


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その刃に込められた意味…闇夜に煌めく武神の一撃 事件の終わりと少女の慟哭

今回で学園襲撃編終結となります。

投稿遅くなり失礼致しました!

ベアトリクスの回想と襲撃事件が終了となります。

終わりまで書いていたら結構長くなりました。

それではどうぞごゆっくり!


ベアトリクスはシェリーを見ながら彼女の母ルクレイアと出会った時を思い出していた。

 

あれは十数年前ぐらいだったかしら…

 

気侭に旅をして魔力と波紋を鍛えていてふと王都へ立ち寄った時にまだ少女だった本を持ったルクレイアとぶつかったのが出会いだったわ。

 

地位や名誉よりも研究に没頭したあの娘と不思議と気が合い偶に差し入れするハーブティーをあの娘は気に入りそれを探しに一人で王都の外へ飛び出したときは肝を冷やしたわ。

 

そうして月日が経ち少女は大人になりやがて結婚し子宝に恵まれた。

 

まだ赤ちゃんのシェリーを抱き上げた時とても可愛かったわ…

 

ルクレイアの旦那でシェリーの父親は子供の姿を見る前に亡くなってしまったがそれでもあの娘はシェリーのために親として愛情を注いでいた。

 

研究も順調にいっていて幸せに過ごすと思っていた。

 

それはルクレイアの訃報によって崩れ去った…

 

彼女は強盗に殺されたと騎士団は発表したが違和感がありすぎて自身で調べ始めた。

 

当時のアリバイ…剣に覚えのあるもの…そして抵抗した痕がないことから親しかった人物…

 

そうして真犯人へと行き着いたがその犯人はあろうことかシェリーを養子に迎え入れていた…

 

何かしら行動を起こせば今度はシェリーまで失ってしまう…

 

だから私は敢えて宛名を書かず彼女と文通をし始めた。

 

世間からの情報を意図的に与えないようにされていることを考え少しずつ外のことを教えある時はアーティファクトの研究で行き詰まったと聞き無理をしないようにと生前ルクレイアの好きだったハーブを贈ったり等していた。

 

そして今回の事件を聞き急いでアレクサンドリアから此方へと戻ってきた。

 

強化した身体能力でイータがルスランの悪事を暴露するのが聞こえた。

 

そうして私は今度は間に合った…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ルスランは思ってもいなかった人物の介入に驚きを禁じ得なかった。

 

しかもそれがシェリーが自身に秘密にしていた文通相手などとは夢にも思わなかった。

 

「バカな!?武神だと!!」

 

「あんたはルクレイアの…交友関係をロクに調べなかった…入念に調べていれば……分かったこと…」

 

「だが例え武神であろうと今の私は数百人の魔力を取り込んだのだ!

 

負けるはずなど」

 

ないと言いきる前に音を置き去りにする程の速さで放たれた蹴り。

 

ベアトリクスの魔力による身体強化及び足の骨格を魔力でコーティングした波紋を乗せた威力で蹴った本人の足はまるで燃えるように明々としていた。

 

そうして蹴りを受け止めきれず容易くルスランを広場へと叩き落とした。

 

「…あわあわあわあわ、べ、ベアト様怒ってらっしゃいますぅ~」

 

「それはそうよ…ベアト母様にとって仲の良かった人らしいから…それに資料見た限り苦しませて殺した…怒りなんてもので済まない……」

 

「イータ、ありがとう。あの娘の無念も少しは晴れるでしょう…」

 

とベアトリクスはイータの頭を撫でる。

 

大好きな母の暖かさを堪能しつつも決着をつけるべくイータは話しを続ける。

 

「ベアト母様…どうするの?あれ?」

 

「そうね。二度と悪さが出来ないようにする…それだけよ…」

 

「あ、あの…」

 

シェリーは恐る恐るベアトリクスへ声を掛ける。

 

「お母さんの……友人…だったのですか?」

 

「えぇ…ルクレイアは会った時いつも貴女のことを話していたわ。自慢の娘で宝だって…」

 

「……」

 

「色々なことが起きすぎて飲み込むのに時間は掛かるでしょう…でも見届ける覚悟があるのなら来ると良いわ。」

 

そう言い残しベアトリクスは先程ルスランを蹴った先へと飛ぶ。

 

「それで……どうするの?ここで終わるまで待つ?それとも…見届ける?」

 

「…私は…何も知りませんでした………いいえ、知ろうとしなかった…あの人に言われるままに研究をして…でもそんな人でも…私は…」

 

考えの纏まらないシェリー。そんな時シェリーを後ろから抱きしめたイナリ

 

「シェリーちゃん…今は難しく考えなくて良いんです…貴女がどうしたいのか…その心に素直に従えば良いんですよ。」

 

「心に……イナリさん…イータさん、お願いします…私を連れていってください!」

 

「そう…分かったわ。」

 

とイータとシェリーをおんぶしたイナリはそのままベアトリクスの元へと向かう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方の吹き飛ばされたルスラン。

 

吹き飛ばされた先はアイリス王女たちとシャドウのいる場所であった。

 

「ルスラン副学園長!?」

 

「なんて魔力…いえそれよりももう一つ…凄い魔力…でもなにかしら…安心するような…」

 

「自ら踏み抜いてはならぬ者の地雷を踏み抜いたのだ。同情する気もおきん」

 

魔力でベアトリクスに蹴られた箇所を治すルスラン

 

(あばらを三本…庇った左腕まで折られた…だと!あり得ん!)

 

そして目の前にいた人物たちを見て驚く。

 

「な!き、キサマら!?王女二人に…その黒ずく目…シャドウガーデンか!」

 

「如何にも。貴様が罪を擦り付けようとした組織の頭目だ。だが既に勝敗は決した。

 

我々がすることは見守ることのみだ。」

 

「私の計画は完璧だった…私は魔力を手に入れ病を癒しラウンズへ返り咲く筈だったのだ!

 

それを貴様らは!」

 

「やりたいようにやったところで無駄だったようだな。

 

散々好きに人の人生を弄んだのだ。ここが貴様の墓場だ。」

 

その言葉と同時に彼ら彼女らの前に降り立った影が一つ。

 

その姿にアイリスは驚きを隠せなかった。

 

「ぶ、武神ベアトリクス様!?なぜここに!」

 

「ルクレイアの友人が武神だった…そういうことなんでしょう?シャドウ。」

 

「そうだ。かの武神にとってルクレイアは大事な友人の一人だった…それを理不尽に奪われた…何より母と過ごす筈だった娘のシェリーとの時間を未来永劫奪ったのだ。」

 

「……」

 

「先程は油断しただけだ。強欲の瞳を手に入れ絶大な力を手に入れた私が負けるなどあってはならんのだ!」

 

「御託は良いわ…何かを犠牲にした力に負けないもの。」

 

そう言いベアトリクスはゆっくりと腰に下げた白鞘から剣を抜き放つ!

 

アイリスとアレクシアは不謹慎ではあったが武神と名高いかの伝説を間近に見れることに目が離せないでいた。

 

そうして最初に動き出したのはルスラン。

 

彼は膨大な魔力を使いベアトリクスの後ろへと回り込み剣を振るう。

 

その一瞬の出来事にアイリスたちは驚くが

 

キィンと大気を振るわす音が響く。

 

「ほう、よく防いだ」

 

見ると、ベアトリクスは後ろを向いたまま、白銀の刀でルスランの剣を止めていたのだ。

 

ルスランが剣を押し込もうとするが、白銀の刀は微動だにしない。

 

「武神とはいえ少し見くびっていたようだな。これはどうだ」

 

またしてもルスランの姿が消えた。

 

今度は連続して甲高い音が響く。

 

一つ、二つ、三つ。

 

音が鳴るたびに、ベアトリクスの刀は小さく動く。ほんの少し最小限の動きだ。

 

アイリス、アレクシアはあまりの速さに視力を魔力で強化してギリギリ見えるかというところである。

 

他の騎士団は見えてすらいなかった。

 

そして四つ目の音が鳴ると、ルスランがベアトリクスの前に姿を現した。

 

「これも防ぐとはな。流石武神の名を持つだけはある。」

 

そして余裕が戻ってきたからか笑いベアトリクスを見据える。

 

「その強さに敬意を表して、私も本気を出そう」

 

ルスランの構えが変わった。

 

剣を上段に構え、膨大な魔力をそこに集める。剣が白く輝き、魔力の渦が生じる。

 

その一撃に思わず助太刀に入ろうとしたアイリスをシャドウが制止させた。

 

「何をするのですか!?早くしないと!」

 

「狼狽えるな。あの程度で武神がどうこうできると思ったら大間違いだ。」

 

「私に本気を出させたことをあの世で誇るといい」

 

その一撃は、凄まじい威力と速度をもってベアトリクスに襲い掛かった。

 

しかし。

 

剣を持たない左手でそれすら容易く受け止めた。

 

「何ッ!素手で受け止めただとッ!?」

「嘘っ!?」

 

あまりの光景にその場にいた者たちは驚愕する。

 

途轍もない魔力を持った剣を素手で受け止めたのだ。

 

剣を素手で止める技量、更には手に纏わせた魔力の絶大なコントロール…

 

驚くなと言う方が無理がある。

 

その場にいるシャドウを除けばの話しだが

 

「……い」

 

「なに?」

 

「軽いと言ったのよ。」

 

その言葉は透き通り辺りに良く響いた。

 

「軽いだと!ふざけるな!絶大な魔力を得た私の剣は強い!」

 

「貴方は何を思って剣を降る?

 

力?富?名声?…そんなもののために何人犠牲にした。」

 

「私の糧となれたのだ。本望であろう!」

 

「剣とは命を奪えるもの…その一振が何をもたらし何を守るために振るうのか…故に剣を持つのならば常に覚悟をしなければならない…己の斬った者の縁者に恨まれる覚悟を…命を奪うという行為を…ただ強いだけの剣に重みは宿らない…覚悟を決めた者の剣は何よりも重みがある…それだけよ。」

 

そうして剣を離したベアトリクス。

 

そのベアトリクスの言葉はアイリス、アレクシア共に考えさせられるものであった。

 

至近距離で二人は睨みあった。

 

「ぐッ……まだ、これからだ!」

 

ルスランの剣が加速する。

 

白い残像が宙に美しい軌跡を残し舞い踊る。

 

「ウオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォッ!!」 

 

雄叫びと共に繰り出される白い剣撃は、しかしそのすべてが白銀の刃によって弾かれた。

 

「アアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッ!!」

 

白い斬撃と白銀の刃が衝突し、幾度も剣の音が鳴り響く。

 

その音はまるで一つの曲のように、この宵闇に色を添えた。

 

しかしそれも終わりを迎える。

 

白銀の刃が振り抜かれ、ルスランが弾き飛ばされた。

 

「私は最強の力を手に入れたのだぞ!!何故だ…何故だ何故だ何故だ何故だ何故だぁぁぁぁぁ」

 

「最強…それに何の意味があるの?その力に驕り、周りを見ようとしないで駒として見た…」

 

ベアトリクスは剣を納刀し構えた。

 

ルスランは己の剣技の尽くを破るベアトリクスに半狂乱気味に全ての魔力を剣へと集約する。

 

「貴様ごときに…貴様ごときにぃぃぃーーーー

 

私はルスラン・バーネット、ラウンズへ返り咲き世界を思いのままにする男だぁぁぁぁぁ」

 

そのままの勢いで剣を振り下ろしたルスラン

 

「世界なんて大層なものはいらないのよ。身近な幸せを取りこぼさないように生きる。それだけでも立派なこと…

 

それを壊そうとする者を…何でもない毎日を送る人々を脅かすことを…私は許しはしない…」

 

ベアトリクスはルスランの振り下ろした剣へと納刀した状態から一気に抜き放った。

 

弧を描きながらその一撃はまるで闇夜に煌めく雫のように綺麗であった。

 

パリーーンという甲高い音が響き渡る。

 

そしてひらひらと舞いザクッと地面へと突き刺さる破片。

 

「ば、バカな…私が…まけた…?」

 

「一刀流居合い 流水…」

 

「い、今のはいったい…?」

 

「己の鞘に納めた剣を間合いに入ったルスランの剣へと一息に解き放った居合い…勢いとそして洗練された魔力の絶技」

 

「これが…武神…なんて綺麗な剣…そして圧倒的な…実力…!」

 

そしてベアトリクスは呆然とするルスランへと近付き胸に埋め込まれた強欲の瞳へと手を向けて…

 

膨大な魔力を流し込む。

 

すると強欲の瞳は吸収を始めたが突然機能が落ちたかのようにルスランを覆っていた幾何学的な紋様が消え眩い光を放った。

 

突然の閃光に目を伏せたアイリスたち。

 

そうして光が止みベアトリクスの方へと目を向けるとルスランの中にあった強欲の瞳とその制御装置がベアトリクスの手の中にあった。

 

そしてルスランは身体が以前軽くなったままなことに気付き喜び掛けるが途端に絶望へと変わった。

 

「ま、魔力が練れない…な、何故…何故だ!?」

 

「膨大な魔力を受け止めようと身近な所から魔力を吸い上げた…

 

それを利用し私は貴方の魔力の器その物を破損させた。

 

もう二度と貴方は魔力を練ることは出来ない。魔剣士として歩む人生を殺したわ。」

 

言葉の出なくなったルスランへ容赦なく言うベアトリクス。

 

以前イータがやった魔力を受け皿にする器を再構成するというのはかなりの博打で殆ど不可能に近い芸当である。

 

それを高齢のルスランがすることは出来ないしイータの時はベアトリクスとシャドウという魔力操作と波紋に長けた者がいてもギリギリだったのだ。

 

「貴方は死ぬまで魔力を練ることは出来ない…病も強欲の瞳で治った今病気でも死ねない。

 

これから先今まで奪った命に対して懺悔しなさい…ルクレイアの道を奪いシェリーの生きる道をねじ曲げようとしたこと…私は赦さない…」

 

呆然としていたアイリスたちは我に返るとすぐさまルスランを拘束しようと動くがその前にベアトリクスへと確認を取る。

 

「あ、あの…此方で拘束しても宜しいでしょうかベアトリクス様?」

 

「えぇ、クラウスの娘なら任せられるわ。あの子元気にしてるかしら?」

 

「へ?お、お父様を知ってるの!?」

 

「昔にね。あの子の子供の頃に少し剣を教えたのよ。何でもかんでも確実に…自分の大切なものを守るために敢えて関わらせないようにするのは昔から変わらないわね。」

 

そうしてルスランを連れていく騎士団…

 

「あの…!」

 

その前にシェリーが現れる。

 

「シェリーさん…」

 

「少しだけ…時間をもらえますか…」

 

「しかし」

 

「ケジメを…付けるためにも…そんなに時間は…取らない…良いでしょ」

 

「分かりました。」

 

そうしてシェリーはルスランへ近付く。

 

「はははは…無様な私を笑いに来たのかね…何もかもを捨て結果全てを亡くした哀れな男に…」

 

「…正直今でも嘘なんじゃないかと思ってます…寝て起きたら…優しいお義父様と過ごして…でも…でもそんなことはない…

 

お母さんを奪った貴方を恨みたいのに…でもお義父様に育てられた恩もあって…

 

お母さんを奪ったことは赦せません…でも…ここまで育ててくれたこと…ありがとうございました。」

 

シェリーは母を奪ったルスランを赦さないと言ったがそれでも自身を育ててくれた養父へ感謝をした。

 

その言葉を言える人間がどれだけいるだろうか?

 

ルスランはその言葉にフッと笑う

 

「やはりお前は愚かだシェリー。君の母を奪った私を恨まなければいけないというのに……

 

イータ・ロイド・ライト殿。」

 

「何かしら…?」

 

「こんなことを言うのは筋違いだというのは分かっている…だがシェリーに広い世界を…発明家として研究家の先達として教えてあげてほしい…養父として出来る…最後の頼みを…どうか」

 

「……そうね…その選択をするのは…彼女次第…でも良いわよ…養父としての貴方の願い承ったわ」

 

「ありがとう。」

 

そう言いルスランはアイリスの信頼する騎士団に拘束されるのであった…

 

「…良いの?恨みこと…いっぱいあるんじゃないの?」

 

「良いんです…私は、」

 

そう言う彼女をベアトリクスは静かに抱きしめた。

 

「良いのよシェリー。泣きたいこと…言いたいこと色んなことがあった…全部吐き出して良いの。」

 

「……どうして…どうしてお義父様は…知りたくなかった…お母さんを奪ったのがお義父様だなんて…どうして…どうしてお母さんを助けてくれなかったの…そんなに強いのに…なんで…!どうしてこんなに世界は冷たいの…

 

うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「ごめんなさい…貴女の言う通り私は間に合わなかった」

 

シェリーを抱きしめるベアトリクスとシェリーの慟哭に目を伏せるアイリスたち

 

「…ねぇシャドウ…本当にこれで良かったのかしら…?ルスラン副学園長の悪事を暴いた…でもシェリー先輩にとってそれは」

 

「世界とは総じて冷たいものだ…理不尽に奪われ、突然目の前から幸せが消える…美しくも残酷な現実だ」

 

シャドウは漆黒の装束をはためかせ背を向ける

 

「だが例え残酷な現実だろうと我々は進んでいくしかないのだ。乗り越えていけると信じ我らは仲間と共に歩む。いつか穏やかで人と人が素直に助け合えるそんな世界にするためにも…」

 

そうしてシャドウはその場を去ろうとしイータはシャドウ目掛けて何かを投げた。

 

「忘れ物よ…ちゃんと持っていきなさい…」

 

それを受け取ったシャドウは一瞬驚くもののすぐに

 

「良かろう。後日纏めて送ろう。」

 

と今度こそ闇と共に去っていくのであった。

 

「ねぇあんた最後のは」

 

「請求書よ…学園を水浸しにした…水抜くのだって…お金かかるし」

 

「ぶれないっていうか…ったく。まぁ良いわ。悪いけど事情聴取受けてもらうからね」

 

「わ、私たち何も悪いことはしてないですぅ!?」

 

「ただの事実確認だけだから大丈夫よ。」

 

こうして学園を巻き込んだ襲撃事件は一人の少女の心に傷を残し幕を閉じたのであった。




今回はここまでになります。

投稿遅くなり申し訳ありませんでした!

今回で襲撃事件は終了となります!

次回は後日談を書き聖地リンドブルム編へと移っていきます!

ベアトリクスのルクレイアとの出会い、そして驚異的な力でベアトリクスはルスランを吹き飛ばしました。

骨格にも魔力を通して密度を上げ魔力で更に硬くなった足技は強化されたルスランのあばら骨と庇った左腕が折れる程の威力。

そしてさりげなくイータの頭を撫でるベアトリクス。

蹴った先でのシャドウとの邂逅するもののベアトリクスを怒らせているので何もせず静観するシャドウ。

繰り広げられる剣閃を見ながらアイリス、アレクシアはその技量の高さに驚愕しルスランをあしらい剣を破壊し決着しました。

そして強欲の瞳とその制御装置を取り出し魔力を吸収する機能逆手に取り本来覚えさせた者以外の魔力を吸わない強欲の瞳にルスランの魔力を全て吸わせ魔力の器をも破壊しました。

イータのような再構成して芸当はシャドウとベアトリクスの二人がいて初めて出来ることなので魔剣士としてのルスランは死にました。

そして拘束するアイリスたち。

アイリスは伺いをたてベアトリクスもミドガル王の娘ならと引き渡しました。

彼女たちの父クラウスとは子供の頃に剣を少し教えた関係でありました。その他にもありますがそれはまたいつか。

連行される前にシェリーはルスランへと複雑な心もあったものの育ててくれた恩に対してお礼をしました。

ルスランはその言葉に愚かだとは思いつつも研究家として先達でもあるイータへとお願いしイータもそれを受諾しルスランはそのまま連行されました。

そしてシェリーはベアトリクスへと思いの丈をぶつけそれを抱きしめたベアトリクスでした。

最後のイータの請求書云々は投げた請求書ともう一枚ありそこには請求金額はイータの方で出すというある意味自作自演。

こうしておけば律儀に払うシャドウガーデンというアイリスからの信頼度もアップするという作戦でした。

原作でのシェリーは何も知らずにシャドウへの復讐心が燃え上がっていましたが此方では真実を全て知り傷付きながらも前を向いて行くことでしょう。

さてFGOでは奏章が始まりビーマとドゥリーヨダナが登場!

ガチャ回そうかどうか迷いますね。他にもカーマもガチャきたのでピック2が楽しみです。

感想、評価、お気に入り登録いつもありがとうございます!

これからも遅くならない内に投稿していきます。

今回も読んでくださりありがとうございました!


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後日談 少女は世界を知るためにその一歩を踏み出す。

後日談となります。

シェリーの決断。

彼女の進むべき道とは?

学園襲撃編堂々の完結です。

それでは少し長くなりましたがどうぞごゆっくり!


魔剣士学園が襲撃された世紀の大事件より数日

 

あれからシドは急ぎ医務室へと運ばれた体を装い九死に一生を得たことになっていた。

 

事件の主犯はルスラン・バーネットでありしかも騎士団が汚職から横領といった腐敗が明かされ従来の騎士団はイータよりもたらされた物をアイリスが活用しどんどん汚職を暴いていき国民から支持されていて彼女の組織した紅の騎士団は予算も降り経営も良くなってきたとか。

 

そうしてシドは療養ということで治療され事情聴取を受けた。

 

「漸く解放されたよ…にしてもベアトリクスさんまた強くなってたな…僕も負けてられないな。それにしても骨格を魔力で強化か…今度試してみよう。」

 

「あ!シド君!お怪我は平気ですか!」

 

「シェリー先輩…まぁあの後治療してくれたみたいで元気だよ。あの時の人には感謝だね。

 

お義父さんのこと残念だったね…もう良いの?」

 

「…正直まだ…でも…進まないと行けない。お母さんが見たかった先を…どうしてお義父様があんなことをしたのか知らなければいけない…」

 

「そう。確か学術都市ラワガスへ留学の話しがあったよね?留学するってこと?」

 

「その話しは断りました…それと一度学園を休学しようと思います…自分を見つめ直すためにも…世界を知るために…これからある人の所へ行ってきます!」

 

「そうなんだ。頑張ってシェリー先輩。」

 

「はい!シド君も!って多分すぐに会えると思います…」

 

「?どういう」

 

「シド君!また会いましょう!」

 

そう言ってシェリー先輩は意味深なことを言い残し去っていった。

 

「空元気というか無理に前に進もうとしてる気がするな…まぁ進むって決めたんなら僕が干渉することでもないね。…さて姉さんになんて言うか…」

 

とシドは今回の大怪我のことに対するクレアへの言い訳を考えるのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

シェリーはあの事件の後ベアトリクスに思いの丈をぶつけ自室で目を覚ました。

 

ベアトリクスの姿はなかったもののハーブと書き置きが残されていた。

 

そうしてシェリーは最低限の荷物を纏めて学園を出た。

 

養父が起こした事件は多くの学園生を危険に晒し教師たちも何人も亡くなった。

 

多くは自分に対して同情的な眼差しが多かった…

 

でも私が強欲の瞳を解析しなかったら…制御装置を解析しなかったら…

 

考えたらキリがなかった。

 

あの後お母さんの友人だったベアトリクスさんが強欲の瞳と制御装置を預かることになった。

 

下手に国に預けるよりは武神様に預けた方が良いとアイリス様は判断したみたいです。

 

…騎士団もどうも腐敗があり内側から改革をするとアイリス様は張り切っていました…

 

私も変わらないといけない…でも一人で探そうにも私にはそういった伝手はありません…

 

ラワガスならと思ったけどそれでも異国の地で一人闇雲に研究して…もしまた利用されたらと思うと怖かった。

 

ここ数日あまり眠れてなくて考えもどんどん後ろ向きになって…

 

そんな時あの人の最後のお願いをしていた人を思い出しました。

 

国からの援助を受けず一人発明家として名を残している…

 

ベアトリクスさんの娘さん…

 

私は学校を一度休学することにしました…

 

申請はすぐに通りその前に助けてくれたシド君へ挨拶をしました。

 

トランクを片手に以前ベアトリクスさんからもらった地図を頼りに私は王都のあるお店の前に辿り着きました。

 

「ここが……よし」

 

とドアを開くと

 

「ほらイナリ……そっちの薬草取ってちょうだい……あとそこのも…早くしないと爆発……する」

 

「ふぇぇぇぇぇぇぇ!?数が多いですぅ~」

 

「なんのために…尻尾が四本あるの…」

 

「流石に寸胴鍋を4つ既に持ってるので空いてないですぅ~」

 

「後腕が二本あれば………あら?」

 

とイータは漸くシェリーが入ってきたことに気付いた。

 

「あ、あの私」

 

「ちょうど良い…手伝いなさい…」

 

と有無を言わせずシェリーを手伝わせるイータ。

 

突然のことに思わず返事をしてしまったのが運のツキ。

 

そのままシェリーはトランクを奥の方へ置くとそのままイータに色々と持たされる。

 

「そこの薬草を絞って頂戴…エキスはこのフラスコに絞り終わったら……今度はこっちのを絞って36度のぬるま湯に付けておいて……じゃないと効能が薄まるから。10分したらさっき絞った二つを混ぜて…今度は80度の高温の熱湯に…5分きっかり付けて5分たったら……最後はそこに置いてある冷蔵の一番下の所へ入れておいて。」

 

「あ、あの~」

 

「返事…」

 

「はひぃ!?」

 

とそのまま手伝わされることになってしまったシェリー。

 

イータが作製している薬は市販で出回っている風邪薬の二倍は効果のあるタイプで副作用も少なく効き目が抜群である。

 

更に学園でイナリが無駄に消費した分も作り無法都市へ供給する品物も作りそれと平行してベアトリクスから預かった強欲の瞳を簡易版強欲の瞳へと作ることで大量生産を急いでいた。

 

オリジナルがあるのとないのとでは効率が違うのか数もどんどん増えていっている。

 

それプラス今度は山椒の風味を加えたより深い味を出せるようになったおどれうなぎ君フォースを開発していた。

 

スイハンジャー8号はベアトリクスから聞いた日本という所の土鍋を作り出す作業だが少し難航している。

 

ベアトリクスから聞いたのはふっくらと炊けて更におこげという少し焦げた部分がこれまた絶品ということでありイータはベアトリクスの懐かしそうな顔をみて作りたいと思っていた。

 

「あのイータさん?これって…お鍋ですか?」

 

「鍋は鍋でも…スイハンジャーに…合わせた物よ……開発が少し難航していてね……それもまた発明の楽しみ…」

 

「そうなんですね~…あれ?これってもう少し中を深くしたら良いんじゃ?」

 

「?………!そういうことね…そうすれば下手に空気が籠らないで均等に焼ける……!」

 

「あれ?」

 

「あ~シェリーちゃんちょっと休憩しましょう。あぁなったご主人様は没頭しちゃうんで。」

 

とイナリに案内されるままに居間に通されたシェリー。

 

「シェリーちゃん貴女がここに来たということはもしや?」

 

「はい…今の私に後ろ楯やそういう伝手はありません…だからその…イータさんを頼りたいと思って…ベアトリクスさんからここの住所を教えて頂きました。」

 

「成る程!う~ん。シェリーちゃんはどうしたいですか?ご主人様の元で勉強したいのですか?それならラワガスの方が色々と学べる機会も豊富ですよ?」

 

「…私は多分怖いんだと思います…今までお義父様を信頼して…でも何が正しくて間違いなのか…分からなくて…強欲の瞳だって私が研究を引き継がなければ…あんなことには…」

 

「それは使う者が……悪かった…それだけよ。強欲の瞳の吸収する性質を……電気に応用できれば長時間持つバッテリーになる……それだけでも人の生活は豊かになる…今の太陽光だけだとまだまだ進歩が足りない…力っていうのは使い方次第…今回は悪い方へ繋がったけど…正しく使えば良い…」

 

と作業が一段落したイータはシェリーへ言う。

 

「……」

 

「今の貴女は何が正しく…何が間違っているか分からないって……顔…そして国からの援助を受けず自分の判断で研究している…私は正しいと思っている……」

 

「…はい。」

 

「私は別に正しくなんて…ない。自分が研究したいもののために研究しているだけ…研究に邪魔だから国からの援助も断ってる……」

 

「で、でも…それなら…正しいってなんですか…」

 

とシェリーは消え入りそうな声で…縋るようにイータへと問い掛ける。

 

「この世に絶対に正しいものなんて…ないのよ。正しいも間違っているも…決めるのは私たち生きている者……なら自分の中でこれだけはって……譲れないものが…自分の正しい物だって信じる……それだけ…」

 

「譲れないもの…………」

 

「今すぐ決めろなんて……言わない……でも貴女にとって……掛け替えのない物は……変わらないんじゃないかしら?」

 

「ありがとうございますイータさん。」

 

「別に…アイディアをもらったお返し…気にしないで……」

 

「あの…イータさんの…譲れないものって?」

 

「そうね……こういうのかしら……」

 

とイータは色鮮やかな海鮮のどんぶりを三人分出した。

 

「?」

 

「取り敢えず食べなさい……貴女少なくとも今日……何も食べてないでしょ…」

 

「どうしてそれを!?」

 

「シェリーちゃんその~先程からお腹がなってます…こんこん」

 

「…へ!?」

 

時折お腹のなる音がしていたのでイータは昼食を作っていた。

 

「す、すいません…い、頂きます…」

 

とシェリーは食べた。

 

口の中で溶けるように柔らかい味が広がりそこへご飯が加わりご飯の程よい甘さが引き立てる。

 

赤い宝石のようにきらびやかな粒のコリコリを楽しみ時には淡白な味わいにほんのりわさびを乗せ同じものなのに違う味を引き立てる…ご飯は二重の層のようになっていて下の方のお酢の聞いたご飯もまた上の海鮮ととても合う…気付けばシェリーは海鮮丼を全て食していた。

 

「美味しかったです!御馳走様でした。」

 

「お粗末様…少しは良い顔に……なったみたいね」

 

と先程まで思い詰めていたシェリーの顔が笑顔になっていた。

 

「さっきの……答え……これ」

 

「ご主人様は皆がご飯を美味しく食べれるようにしたいんです!」

 

「美味しく?」

 

「今の世の中王国から外れた村は……貧しい生活を強いられていたりする……そうした不満…他国との軋轢…資源の奪い合い…色々ある…でも美味しいという共通のもので満たされると幸せが広がる……そうした小さな積み重ねが…今よりも未来で実現出来たら……人が人に優しく手を取り合えるようになる…そう信じてる……ベアト母様の理念で私もそう思ってる…だから私なりに……研究をしてる…」

 

その言葉にシェリーは

 

「凄い…(やっぱり私…)」

 

感銘を受けていた。

 

「イータさん…いえイータ師匠!お願いします!ここで働かせてください!」

 

「うん…良いわよ…」

 

「まだ私…未熟ですけど一生懸命働きます!」

 

「良いって言ってるんだけど?」

 

「………い、良いんですか!?」

 

「なんで貴女が……驚いてるの?」

 

「研究の邪魔になるからとかダメなのかと思ってて…」

 

「別に…シェリーの考え方は……中々面白い…今後の研究で…役立つ…」

 

「もうご主人様それだけじゃないですよね!シェリーちゃんが心配でベアト様からも頼まれてるのですから! 」

 

「ベアトさんも?」

 

「えぇ…それでどうするの?」

 

「宜しくお願いします!」

 

「そう。それで荷物はさっき……持ってきたやつで良いのね…」

 

「はい!家も引き払ったので下宿させてください!」

 

なんとシェリーは休学届けを出したと同時に今まで住んでいたルスラン邸を引き払っていたのだ。

 

いつか学園に復帰したら学生寮に住まおうと考えたシェリー。

 

「…………そう…それぐらいの覚悟をもってきたってこと…じゃあ二階の……イナリの隣の部屋が空いてたわね…私は…無法都市へ持ってくやつを作るから…」

 

「無法都市って危ないところじゃないですか!もしかして人体実験…?」

 

「そんなわけないでしょ……あれよ…色街の方に窓口にしてる娘がいるから……その娘へ渡して全体に行き渡るようにするの……否応なくそういうのの相手をする商売でもあるから病気の予防のために必要な道具や避妊の薬を渡すだけ…」

 

色街に辿り着く者たちは自分の身体を売り生きている者たちばかり。イータとしてはそういうところも改善しないといけないと始め色街の娘たちはイータにとても感謝していた。それに風邪に効く薬など無法都市では法外な値段で取引されていることもしばしばあり効能さえ不明な物が多い中イータの薬は信用があり価格も手頃なのも慕われている理由だ。

 

「ご主人様が放っておけないって始めて最初はお金も取らないでやってたんですけど次第にお金を払わないと申し訳ないってなので相場の半分のお値段で取引することになったんです!」

 

「そういう娘たちがあるのも……教団が暗躍しているのもあるからよ……」

 

「あの師匠…教団って…?」

 

「…貴女は全てを聞く覚悟はある?…貴女の養父ルスランがいた組織であり世界の裏で暗躍する者たち…聞けば後戻りは出来なくなるわ…ここで自分の…スキルを上げるか…真実を知った上で進むのか…それは貴女次第…」

 

「…私は…どうして母が…養父があんな風になってしまったのか…知らなければいけないと思います。全て知って…いつかお母さんに立派になったって報告を出来るようにしたいです!師匠お願いします!私は全てを知りたいです。」

 

「そう……それが貴女の選択ね……良いわよ…教えましょう…その前に一度荷物を置いてきなさい…イナリ案内…宜しく、それと何着か服を見繕ってきてあげて…お金はそこにあるから…」

 

「コンコ~ン分かりました!シェリーちゃんこっちですよ」

 

とシェリーを案内するイナリ。

 

そしてふぅとため息をついて自身の作った手頃なソファに身体を埋めちょっとした違和感を感じた。

 

「…ベアト母様?」

 

いつの間にかいたベアトリクスはイータの頭を膝に乗せ膝枕していた。

 

「ありがとうイータ。シェリーのこと…それにイータなりに頑張って私を手伝ってくれてること…」

 

「…私が好きで…やってること…それに…ベアト母様のお陰で…私は今を生きられてる………恩返しもしたい…」

 

「最近の貴女は頑張りすぎよ。だから今は休んで。」

 

「そうする………スゥ」

 

とイータはベアトリクスの膝で眠りに付く。

 

「時代の移り変わりは案外早いものね。そして次の女神の試練…聖地と呼ばれた場所にあるものがなにか…そしてあの娘にも話さないとね。」

 

そうして荷物を運び終わりイナリとシェリーの二人が見たものは仲睦まじく寄り添う二人の姿であり

 

イナリはイータを休ませたいとシェリーを伴いミツゴシ商会へと歩みを進めシェリーに似合う服を購入しミツゴシ系列のマグロナルドでテイクアウトし夕方過ぎに戻った二人。

 

幾分かスッキリした様子のイータとベアトリクスの姿を確認しテイクアウトしたマグロナルドを食べその後にシェリーへ教団のことをベアトリクスとイータが教えるのであった。




今回はここまでになります。

ちょっと長くなりましたが学園襲撃編完結です。

後日談でシドがシェリーと出会うのは原作と同じでしたが彼女はラワガスへの留学を断りベアトリクスから渡された住所を頼りイータの元へ。

発明家として研究家として独自のスタンスを持ち国からの援助を受けずにいるイータ。

そういう面からシェリーは国に左右されず正しいことを選べる人間だとも考え会いに向かったところ忙しなく動くイータとイナリ。

イータはイナリに無茶振りしながらも手が足りないと思ってたところにシェリーが現れたのでそのまま巻き込みました。

シェリーも突然のことに思わず返事をしたのが運のツキ。

そうして手伝い今まで一人で研究していたシェリーでしたが他の人とする研究も楽しいと思える時間でした。

そしてイータはスイハンジャーを改良しようと悩んでいたところシェリーのアイディアで改良案が進みある程度形になりましたので近々更に改良を加えたスイハンジャー9号が完成し今までよりもふっくらと炊けてモードを選ぶとおこげも楽しめる逸品へと仕上がる予定です。

そしてイータへと正しいとは何かを聞くシェリー。

イータとしては正しいや間違いは人が決めること。自分の中で譲れないものを作ることと諭します。

そしてお腹の虫のなるシェリーへご飯を食べさせイータはベアトリクスの目指す美味しいを広め人が人に優しく出来る世界を目指したいと語りました。

そんなイータを尊敬の眼差しで見つめシェリーは弟子入りを志願しイータはあっさりOKを出しました。

そして自宅を引き払いシェリーなりの覚悟を決めてきたのだと悟りイナリと共にミツゴシ商会へ服を買いに行かせました。

今回無法都市でも商売をしていることが発覚したイータ。

色街を管理する白の塔の支配者からも一目置かれていることはイータも知らないこと。中世辺りの世界観な影実世界。
そんな治安もへったくれもない無法都市でしかも色街なので生活するためとはいえ女性は性病に怯え誰とも知らない人との子供を孕まされるというのは日常茶飯事なこと。

そうした背景までは考えてなかったイータが読み取り君にて見たベアトリクスの記憶の中での保険の教科書を見てそういうのがあるのかと避妊具や独自の製法で出来た避妊薬を物は試しと実験場として選んだのが色街で曇った顔をした娼婦を捕まえ効能を聞こうと渡したモノは今までなかったもので客としてきた者に使い暫く。

病気になりずらく避妊薬のお陰もあり今までよりも苦しくなくなりイータへと感謝し自ら窓口になった娼婦はそれからもイータの品を自ら培った人脈を通して色街へと広げその話しは白の塔の支配者であるとある妖狐の耳にも入り無法都市にもイータの発明品が轟くこととなった。

実はそれ以外にも色々としているもののそれはまた別の時に。

イータは一段落しソファに座ると気配を消していたベアトリクスに膝枕されていました。

頑張る娘を膝枕する母。

イータは久し振りに快眠できベアトリクスは娘たちの成長が早いと黄昏れそして聖地で行われる女神の試練に思いを馳せました。

その後マグロナルドで夕食を買い四人で食べた後にベアトリクスが主導して教団の真実をシェリーへと語りました。

後日お店でシドと顔を合わせたシェリーは決意に満ちた顔をしていたとシドは発言していました。

ディアボロス教団の説明の時のシェリーの様子はまたどこかでいれたいですね。

次回は1話幕間をいれるかそのまま本編へ進むかすると思います。

感想、評価、お気に入りありがとうございます!

これからも遅くならないよう投稿していきます

今回も読んで頂きありがとうございました!


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陰の一席と三席は今後の行く道を話し合い試作バーガーを食し王女姉妹は武神への手掛かりを求め聖地へ行くことを決意する。

アルファ、ガンマのシャドウガーデンサイドとアイリス、アレクシアの王女姉妹サイドの話しになります。

今回も少し長くなりました。

それではどうぞごゆっくり!


学園襲撃事件より数日経ったある夜のミツゴシ商会の拠点でありシャドウガーデンの拠点

 

そこにはミツゴシ商会代表としての顔を持つガンマとアルファの姿があった。

 

「王国を揺るがす世紀の大事件を解決した第一王女。そして腐敗した騎士団の再編…魔剣士学園副学園長の凶行……ルスランの用意した策は全て失敗に終わりシャドウガーデンは地下組織として噂されるだけに留まったわね。」

 

「はい。イータが情報を渡しアイリス王女を誘導し解決へと導かせた。今や彼女は王国の未来を担う傑物と呼ばれているようですね。」

 

「それにしてもイータも無茶をするわ。ルスランの悪事を周りへ周知させる…一歩間違えれば自分の正体がバレていたというのに…」

 

「あの娘は何だかんだシャドウガーデンを家族と思ってくれてますから多少の危険にも突っ走ってしまいますのでそこは見守って上げればと思います。」

 

「そうね。真実に向かおうとする意志…ね。」

 

「イータの言葉ですね…とても良い響きです。」

 

「本当ね。私たちシャドウガーデンが向かおうとする意志が途切れることはない…いずれは真実に辿り着ける…伯母様がそれを証明したのだもの…私たちにも出来る筈よ。」

 

「はい。それと」

 

「シェリー・バーネットのことね。まさかイータに弟子入りするなんてね」

 

「イナリちゃんが連れてきた時にはびっくりしましたわ。それとイータはどうやらお母様に甘えられているようですし」

 

「イータは最近頑張りすぎだから少し休ませた方が良いものね。」

 

「そのシェリー・バーネットはどうやら邸宅も引き払ったようですので本格的にイータのところで学ぼうとし養父であるルスランの…真実を追い掛けるのだと思います。」

 

「そう。そういえばイータが捕獲したチルドレン1stはどうかしら?」

 

「ニューが張り切って尋問しています。その情報の中で聖地のことが」

 

「大昔ディアボロスの左腕を英雄オリヴィエが斬り落とした地…」

 

「どうやら聖域にそのディアボロスの左腕が核として封じられていること。魔力を限りなく吸い取る場所のようです。」

 

「ということはイータの発明した魔力阻害防御のアーティファクトの出番ね。」

 

「強欲の瞳を解析したことで大幅なアップグレードが出来たようで聖域であろうと2時間は持つとイータは言ってました。戦闘を考慮すると1時間30分程を見た方が良いかと。」

 

「流石イータね。あの娘の発明のお陰でシャドウガーデンのフロント企業の多くの良質な食品で貴族たちからの援助も多くなってるわ。」

 

強欲の瞳を解析して数日であるがイータは既に改良した自身のアーティファクトへその機能を追加していた。

 

「それと一つ気掛かりというよりも疑念が…」

 

「学園で確認された莫大な魔力…ね。」

 

「はい。あの時私とイータ以外の七陰の皆様は任務で遠くへ行っておりお母様も到着したのはかなり後の事。何より魔力の波長は…イータの物でした。」

 

「でも私たちがいつも感じているイータの魔力からすれば可笑しいわ。」

 

それは学園襲撃の際に膨大な魔力が観測されたことであり状況からしてイータの魔力に違いはなかったが

 

「あれ程の膨大な魔力…下手をすればお母様に届くほど…」

 

「…イータが私たちに隠している理由は分からないけど…でもあの娘はそんなことをする娘ではないってことは分かってる…自然と言ってくれるのを待ちましょう。」

 

と二人して大事のように言っているものの実は誰からも聞かれないので言ってないだけのイータなのである。

 

「そういえば新しく完成したって言っていたスイハンジャー9号かしら?」

 

「はい。今までよりもふっくらと炊けてモードを選ぶとおこげも楽しめる逸品とのことでした。人によっては少し固めにしたいという人もいると思うのでこれもまた売れると思います。それとおこげの部分を見てイータと話したのですがマグロバーガーのパンの部分をこのおこげのような部分で挟めば」

 

「新しい食感になるってことね。新規の客層を呼び込めるわ。すぐに準備を」

 

「と言われると思ったので試作品を幾つか持ってきました。」

 

「これは…カニクリームコロッケを使った炭水化物バーガーのパンをご飯にしたのね。こっちは…肉にさっぱりしたソースをかけて野菜と挟んだものね。」

 

ガンマがアルファへと見せたのは炭水化物バーガーとして世に出しているご飯バージョンと焼き肉をしゃっきりしたキャベツと共にご飯で挟んだもの。

 

「イータは焼き肉ライスバーガーという名前を付けました。どちらとも挟むご飯に風味として醤油を薄く塗り込んで焼いたそうです。」

 

「頂くわ…なるほどコロッケの味と口の中でお米の甘さと甘じょっぱい味ががちょうど良く合わさって良いわね。」

 

「焼き肉ライスバーガーもお肉とご飯が元々合って手頃に食べられるものになってます。手を汚さずライスを食べれるのは革新的だと思います。」

 

「マグロナルドで出すべきね。」

 

「イータが挟むご飯専用の物で幾つも用意できるものを既に開発しました。まずはリンドブルムでとイータは言ってました。その後に各地の支店へと配置する流れです。」

 

リンドブルムでの女神の試練では各地から人が来るのでその反響で各地へ宣伝し更に売上を伸ばそうという魂胆だ。

 

「えぇ彼方の子達にお願いしましょう。」

 

その後リンドブルムでの作戦のために七陰を招集するアルファとガンマなのであった。

 

余談だが集まったゼータ、イータ以外の七陰にもライスバーガーはとても好評であった。

 

マグロナルドで働く構成員たちにとって新作を持ってきてくれるのが楽しみで美味しいものばかりなのでイータへの尊敬の念は絶えないのであった。

 

なお食べ過ぎて訓練で身体を動かすまでがワンセットなのはご愛嬌である。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

事件の終息で忙しなく動いていたアイリス・ミドガルは漸くまとまった休みを取っていた。

 

「ふぅ…漸く落ち着いてきたわ。」

 

「姉様お疲れ様です。」

 

「アレクシアもそろそろ休みなさい。お肌に悪いわよ。」

 

「そうはいっても…学園の再建もあってか早い夏休みに入ったので手伝えることは手伝いたいわ。」

 

そうルスランの起こした襲撃により学園は所々修繕の必要な部分が多いため学園の生徒には早めの夏休みが言い渡されていた。

 

「えぇ…にしてもどれだけ騎士団が腐っていたのか…」

 

「ミストの資料のお陰でどんどん芋づる式に不祥事が暴かれて今やアイリス姉様は王国を立て直す救世主扱いだもの。妹としても鼻が高いわ。」

 

「紅の騎士団を主軸とした新しい騎士団の編成…公正潔白な組織というのは難しいものね。」

 

イータの目論み通りアイリスがどんどん不正を暴くことにより表での発言は大きくなっていっているアイリス。

 

「でも風通しが良くなれば救える命も増えるわ。」

 

「そのためにも何人か学園からもスカウトしたいわね。」

 

とアイリスが見ている資料を見るアレクシア。

 

「これってシドの姉のクレア先輩?」

 

「えぇ、彼女の実力は同学年で追随を許さないほど。それに弟思いの良い人物です。しかし騎士団への印象は悪いので中々難しいものです。」

 

「そういえば噂で獣人の妹のように可愛がっている娘がいるって有名な話があるわ。」

 

「そういった偏見を持たない面もスカウトしたい理由です。」

 

獣人にも偏見を持たず大切な物のために動けるクレアを評価しているアイリス。

 

「…それでルスランの方は?」

 

「表向きには騎士たちへ口を閉ざしていて何も喋っていないことになってるわ。」

 

「ってことは?」

 

「私の時は話してくれてるけど時間はあまり取れてないわ。彼もその組織に消されないようにでもこちらへ何とか情報を渡そうとしてくれている…その中で直近のことは…聖教がディアボロス教団と関係があるということ。女神の試練にも介入している節があるようなの」

 

ルスランは表向きには黙秘し教団に不利な情報を喋っていないとされ教団側から排除される心配を防ぎつつアイリスが来たときは手短にされど情報を渡せるようにしていた。

 

今のところはアイリス以外には情報も漏れていない

 

「それなら今度の女神の試練の時に聖教に監査を」

 

「けれども慎重に行わなければ証拠を揉み消されてしまう…なるべく早く許可を取らなければ…」

 

「…今度の女神の試練でもシャドウガーデンは来るのかしら…ここ最近の大きな事件に関わりがあるのならあるいは…」

 

「アレクシアあくまでもこの前は同じ目的があったようなもの。いつも協力体制が取れるとは思わない方がいいわ。依然組織的に正体が分かっていないのだから。グレンとマルコを治してくれたことは感謝しなければだけど」

 

あの後治療院に運ばれたグレンとマルコは一命を取り留め無事騎士団の公務へ復帰していた。

 

「でも姉様。シャドウやミストたちは」

 

「アレクシア…その話はあまりしてはいけないわ。何処で誰が聞いているのか分からないことだもの。」

 

とアレクシアがシャドウたちが悪魔憑きを治していることを言おうとしてアイリスに止められた。

 

悪魔憑きを治療出来るのであれば今までの聖教の根本を変えかねない諸刃の剣でもあるからだ。

 

「聖教は様々な国へ影響力を持っている…これが漏れればミドガルは他の国々から非難に晒される。只でさえ騎士団の再編をしているのです。戦力は十全ではありません。味方に付ければ良いですが敵になれば厄介極まりない…」

 

「ホント面倒ね。まぁ出来ることをしないといけないわね」

 

と聖教の厄介さに頭を抱えるアイリスとアレクシア。

 

「そういえばアレクシアは明日出掛けるのですね。行き先は?」

 

「野暮用というか、まぁ…友達と出掛けるの」

 

「アレクシアにも気の於ける友人が出来たのですね………もしやシド君ですか?」

 

「あ、あいつは関係ないわ!?」

 

「その反応は関係あるということですね。まぁ身分というものはありますが彼ならばアレクシアを思ってくれるのは分かります…あんなに一生懸命心配してくれてましたから…がくれぐれも健全な付き合いを心掛けるのですよ。」

 

アイリスは以前の事件の時のシドの誠実さからそう言う。本当は誰よりも利己的で目標に向かって爆進しているシャドウガーデンの頭目とは夢にも思うまい。

 

「それは大丈夫よ。案外ヘタレっていうか不器用だし。」

 

「不器用だからこそそういう行動を」

 

「わかったってば。それに行くのはあいつの悪友のところだし」

 

「悪友?」

 

「イータ・ロイド・ライト。あいつの悪友だって。研究者だけど少なくとも私よりも剣の腕はあるし魔力の使い方も上ね。なんかお節介みたいで稽古を付けてくれるのよ。助手のイナリも強いし。」

 

とイータの所で稽古を受ける気満々なアレクシア。後はイナリにもアドバイスをもらう予定だ。

 

「天才発明家で蒸気機関の母の一人…あの事件の時ルスランと話をしていたというのは本当ですか?」

 

「えぇ、他の騎士団はわからないって顔だけどあの声は間違いなくそうだわ。」

 

アレクシアはイータと会話したこともありあの時ルスランと話をしていたのが分かっていた。

 

「だとしたら彼女ならそのディアボロス教団についても何かしら知っているのかもしれない。」

 

「でも簡単には喋らないでしょうからある程度仲良くなってから聞き出して見せるわ。」

 

「そちらの方は貴女に任せます。話は戻りますが近々アレクシアに査察に行ってもらうと思うけどそれともう一つ」

 

アイリスはイータより渡された資料の最後に注目する。

 

「武神様と連絡を取ることの出来る現状唯一の存在…新進気鋭の天才作家…ナツメ・カフカに接触しコンタクトを取れるかです。」

 

「盲点だったわ。あの武神列伝がベアトリクス様の活躍を書いた本だったなんて。」

 

「これはお父様も目を通してどうやら確認できる限り真実を書いているそうです。あの慎重な人が断言したほど…」

 

「珍しい…普段は慎重過ぎて確実な証拠なしに動かないのに…」

 

ミストことイータの渡した資料の最後に書かれたこと…それはナツメ・カフカが武神ベアトリクスとのホットラインを持っているということであった。

 

それは彼女の小説を掲載しているミドガル王国最古の情報ギルドであり、リンドブルムに拠点を置くよみにち新聞会の本社の人間の限られた極一部の者しか知らない情報であった。

 

「これが事実ならば武神様に会うことも可能になります」

 

「あの事件の後すぐ何処かに行ってしまわれ結局なにも聞けませんでした。」

 

「しかしせっかく得られたチャンス…無駄には出来ません。どうやら年代はアレクシアに近く女神の試練の貴賓として招かれると思います。

 

そこであわよくば…」

 

「そうね…天才作家ね……」

 

アレクシアはイータのラボで読んだ本を思い浮かべながら件のナツメはそれぐらい面白い物を書ける人物なのか…分かっているのは天才と称される者はクセの強い者ばかりなことだ。

 

そうして新たに再編される騎士団の将来を…ミドガル王国の未来を案じる二人なのであった




今回はここまでになります。

事件収束後のアルファとガンマの会話で原作のような王国始まって以来の大悪党シャドウと名前も手配されていたアルファでしたがこちらではそんなことにはなりませんでした。

アイリスが矢面に立つことは予想通りでそんな光の裏で暗躍する闇(ディアボロス教団)を陰(シャドウガーデン)が刈り取る構図になりますね。

そしてイータの無茶を憂いながらもシェリーのことや今度の聖地での作戦といった大事な話しと新作の発売を話し合う世間話が展開されました。

イータの魔力は自分たちと同等と思っているアルファたちはいつか明かしてくれることを願いますが案外聞かれたらすぐに答えるだろうイータでした。

そしてスイハンジャー9号のお陰でライスバーガーが実現できるようになり今度の聖地ではバカ売れすること間違いなしでしょう。

そしてアイリスたちサイドはイータからもたらされた資料で騎士団の再編に努めルスランからの情報を吟味しアレクシアは原作同様聖地へと監査へ行くことに。

そしてイータがディアボロス教団のことで何かしら知っているだろうと確信するもののそう簡単に喋らないとも思っているので慎重に交流することに。

そしてイータからナツメ・カフカもといベータの情報をもらい接触を頼んだアイリス。

イータとしてはアレクシアのあれやこれを抑制出来るだろうということもありベータもそれを承諾し情報を渡していました。

邂逅の時は近いですね。

FGOで11連でドゥルガーとドゥリーヨダナが来てくれて歓喜致しました作者。

いつも感想、評価、お気に入りしていただきありがとうございます。

今後とも遅くならないよう投稿していきます。

番外編での異世界食堂の話しでアルファの話しを企画はしているもののどんな料理がいいか迷いますね。

一応果物関係かシャーベットを考えていますね。

こちらは気長にお待ち頂けると助かります。

今回も読んで頂きありがとうございました。


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陰の盟主は姉と共に聖地へ向かい、隣国の王女と友人の王女とうっかりキツネ娘と鉢合わせする。

聖地へと向かうシドとクレアたち。

その車内には見知った顔がチラホラと

それではどうぞごゆっくり!




あの学園の事件から数日。

 

あの後学園は所々焼失してしまった箇所も多く少し早めの夏休みへと突入していた。

 

僕は新たなモブ式奥義を開発しようと思っていたのだが…

 

「早く行くわよシド!師匠もあっちで待ってるみたいだから急がないと!」

 

「姉さん…急がないと行けないって言うけど列車は運行通りにしか動かないから発車時刻に間に合えば良いんだよ。」

 

「そうだけど漸く師匠が話してくれるってことは少し認められたってことよ!」

 

姉さんに拉致…ゲフン 拘束…ンン…連れられて聖地リンドブルムへと向かっていた。

 

それは学園の事件の前に姉さんと一緒に食事した時マザーが言っていたことが関係していてあれから姉さんの方へ連絡がいき女神の試練に合わせて来てほしいと姉さんの方へフリーパスと共に送られてきたそうだ。

 

それで姉さんは折角だからと僕も誘ったそうだがいきなり部屋へ来て準備しなさいと言われ、そのまま連れ出されたのだ。

 

いつもの僕なら姉さんを回避出来たのだろうが此方にもアルファから聖地へ来てほしいと手紙が来て女神の試練に思いを馳せている中での姉さんの来襲だ。

 

「それと聞いたわよ。あんたまた大怪我して…尚更師匠に治してもらわないといけないわ。」

 

「その節は心配を掛けまして」

 

「でもそれで人を助けたんでしょ。それは立派なことだから誇りなさい。でも自分の身もちゃんと守って。約束よ。」

 

「善処するよ。」

 

そうしてマザーから送られたフリーパスを姉さんは使い、僕の分は姉さんが自腹で出そうとしたのでイータから貰っているフリーパスを見せたので普通に乗れた。

 

「あんたもフリーパス持ってたのね?」

 

「まぁイータからね。便利に使わせてもらってるよ。」

 

「あの発明家で…師匠の娘だからね。確か私がいない間に知り合ったのよね。」

 

「姉さんが学園に入学してからだから二年くらいかな。」

 

「まぁ良いわ。ルーナ、マナ、リリムさんだって師匠の娘やお手伝いしてるから今更驚かないわ。それにしてもルーナのアイディアでこんなに温かいお弁当を食べられるのはホント凄いわ!私も負けないように頑張らなくちゃ!」

 

そうして僕らは駅で売っていた焼き肉弁当や鰻重を買い列車へと乗り込む。

 

お弁当は紐を引っ張ると温まる仕組みになっていてガンマが原理を見つけイータが開発したものである。

 

前世でいう酸化カルシウム(別名:生石灰)」と、袋詰めした「水」が入っていて紐を引っ張ると、容器の中の水袋が破れ、酸化カルシウムと水が化学反応を起こして発熱。

 

ブクブクと音を立てながら熱々の蒸気が発生し、お弁当を温めていくものだ。

 

これのお陰か長距離の移動の際に温かい物を食べられると大変人気が出て列車での遠出のお客が購入し売上は好調だとイータは確か言ってたっけ

 

そうこうしていると列車が走り出した。

 

周りの景色を追い越していく。

 

つい最近までは長距離の移動は馬車が主流だったが今では列車へと移り変わっている。

 

しかしイータは馬車が廃れないよう列車では行き来出来ない場所を馬車に任せるようにし相互で協力関係を築き良好な関係を続けている。

 

「こうやって窓を開けると風が気持ちいいわね」

 

「姉さんあんまり窓から身を乗り出すと危ないよ。」

 

「平気よ。幾つか駅を跨ぐまではスピードも緩やかなんだし町で乗客を乗せきるまでは問題ないわ。」

 

列車は多くの乗客を乗せある程度駅を跨いだらそこからはリンドブルムまでノンストップで動き2日半で着く。

 

それまでは車中泊と娯楽用のトランプなど購入でき車両で調理した熱々の料理を楽しむのが一般的だ。

 

そうしてクレアがはしゃいでいると

 

「シド君?」

 

と声が聞こえるとそこにはなんとオリアナ王国王女ローズがいた。

 

彼女は女神の試練にて来賓として招かれており移動中であったがまさかシドたちと同じ列車に乗っているとは。

 

「先の事件…本当にありがとうございました。それにシド君のような勇敢な心を持つ青年が、あのような事件で命を落とすなんてあってはならないことです。」

 

となんだが恍惚とした表情で言われてるのだが打算とシャドウガーデンのために動いただけなのでシドとしては困惑している。

 

(っていうか姉さん機嫌悪くなるんじゃないか?折角姉弟二人の時間をとか言い出しかねない。)

 

「ローズも分かっているわね!シドはホント勇敢だし普段はあれだけどやるときはやる子だから。」

 

(やべ同調しちゃったよ…どうしたものか)

 

とクレアはそのままローズを招き入れてシド談義を始めてしまう始末。

 

シドは一度手洗いに行くと言いその場を離れる。

 

「参ったな。夢中になってたから暫くは戻らないようにしよう。」

 

と避難したシドは車内を少し彷徨くことにした。

 

(しかし女神の試練…たしか英雄オリヴィエが魔人の左腕を斬り落とした伝説がある地が聖地…イータやマザーはその女神の試練で開く扉が目当てって言ってたけど。今回イータは余程の非常事態じゃない限り王都にいるって言ってたな。)

 

そうして歩いていると突然ドアから手が伸びてきてシドを掴み室内へと引きずり込まれる。

 

「まったくいきなり過ぎてビックリしたけど…アレクシア。」

 

「良いじゃないの。こんな美人に引きずり込まれたのよ。頭を地面に擦り付けてむせび泣きなさい。」

 

「美人でも性格悪いのはお断りじゃないか?」

 

「まぁ良いわ。退屈な列車旅だと思ってたけどシドがいるなら幾分かましね。あなた一人?」

 

「姉さんとだけど偶然ローズ先輩も乗ってたみたいで今は二人で話してるんじゃないかな?」

 

「そう。今暇なのね。これなんだけど」

 

とアレクシアが出したのは以前イータが渡した魔力を込めると色の変わる魔力石。

 

「一応30分以上青を継続できたんだけど赤にするほどやると安定しなくて…あいつの悪友なら何か聞いてない?」

 

「そうだね。確か一度に大量に魔力を込めるんじゃなくて少量の魔力をどんどん大きくしていってそれを維持するのが良いって言ってたね。」

 

「これが赤くなるまでは結構魔力を使うんだし一度に大量に込めた方が良いんじゃ…?」

 

とアレクシアが言った時シドの変なスイッチが入ってしまった。

 

「それはナンセンスだ。良いかい?魔力を使って人は身体や武器を強化して戦うわけだ。そこは良いかい?」

 

「魔剣士なんだからそれは当たり前じゃない。」

 

とアレクシアは当然のように言う。

 

「けど魔力を扱うときそこにはどうしてもロスが出る。例えば普通の鉄の剣に魔力を100流しても実際に伝わるのは10程度だ。実に9割の魔力が無駄になる。

 

魔力を流しやすいミスリルの剣でも100流して50伝われば高級品と言われるぐらい、極めてロスが多い。」

 

「えっ!?そんなに…?じゃあ無駄に魔力を消費しているだけってことじゃない!」

 

と驚くアレクシア。

 

「だから質が良くて少量の魔力を注ぎ込んで最大の効力を発揮させれば無駄にしている20%ぐらいは取り戻せる。魔力を込めすぎて武器が壊れるなんてあるけどあれだって少ない量で最大限のパフォーマンスが出来れば壊れることなんてないんだから。」

 

シドの言葉にアレクシアはアイリスのことを思い浮かべる。ブシン祭の時も何本も剣が壊れるといった現象を起こしていたのを間近で見ていたアレクシア。

 

「なる程ね………ってなんであんたそんなことを知ってるのよ。」

 

「イータの実験に付き合ってると自然に身に付くからね。」

 

「なら丁度良いわ。もう少し詳しく聞かせてちょうだい……そこにいる娘も合わせて。」

 

とアレクシアは先程から此方を窺う見覚えのある耳を見て扉を開けて外を確認する。

 

「はわわわわわ、アレクシア様!?」

 

「イナリあんた何してるの?さっきからドアの上で耳がピョコピョコ動いてるから気付くわよ?」

 

「シド様が引きずり込まれたので心配でそれで見たらアレクシア様だったのでどんな話しをしているのか気になりまして。」

 

と先程の一部始終を見ていたイナリ。

 

「イナリ。イータから何か頼まれ事?」

 

「はい!品物を届けるのと観光して良いと言われました!」

 

とイータからリンドブルムへとお使いを頼まれたイナリ。

 

(観光…シャドウガーデンの仕事じゃないのか…ってイータならイナリに観光してこいって言う可能性は高いな。何だかんだイナリに甘いし。)

 

と一人自己完結したシドはイナリも交えて魔力談義に花を咲かせるのであった。




今回はここまでになります。

いよいよシドがリンドブルムへと旅立ちます。

それに伴いベアトリクスから呼ばれたクレアも参戦。

二人してベアトリクス、イータにフリーパスをもらっていたのでタダで一番良い席に乗車出来ました。

そうして駅弁を買いこれまたガンマ、イータの力作の駅弁に欠かせないといっても過言ではない温め方式を生み出しこれまた売上が上がりウハウハ状態に。

そんな中でのローズとの邂逅。これは原作では馬車でアニメ版では列車になってたりとありますが概ねその通りになっております。

助けられた恩義もありシドを慕うローズと弟大好きお姉ちゃんはシド談義で盛り上がりました。

そうして避難した先には今度はアレクシアがいました。

前話から数日経っているので視察へ向かうために乗車しておりました。

アニメでもあったミツゴシ紹介でのやり取りなどは次回に回想といった形で出そうと思います。

そしてイータから修行として渡されていた魔力を込めると色の変わる魔力石への魔力の込め方などをよりにもよって魔力に関して変態的な深い探求心があり魔力に関してはシドの右に出るものはいないので

以前考察していた魔力に関することを伝えると驚愕と納得のいく説明にアレクシアは聞き入りました。

まぁあくまでもイータから聞いたことと言う体でいくシドとイータから教わったとはいえ分かりやすい説明に改めて見直したアレクシア。

そして窓からピョンとでたキツネ耳を見て外を見るとそこにはイナリが。

イータからお使いを頼まれ後は観光してきなさいと言われたイナリ。

イータとしては普段から何かと苦労を掛けるイナリを労う意味もありました。

因みにこの時シェリーはミツゴシ商会にて研修を受けていて商品の知識などを教え込まれています。

そこなども次回少し触れていければと思います。

FGOでは巡礼の儀にて水着ジャンヌオルタ、スカサハ、葛飾北斎が登場。

8周年記念だれが来るのかとても楽しみなのと新たなイベントも今か今かと待ち遠しいです。

いつもお気に入り、感想、評価頂きありがとうございます。

次回も遅くならないよう投稿していきます。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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聖地へのぶらり旅、王女は話題の商会でのことを思いだし友人と語り合う。しかし不穏な影が忍び寄る…

アレクシアの回想が入りミツゴシ商会での話しと車内での様相になります!

ラストに不穏な影が…

それではどうぞごゆっくり!




アレクシアはシドとイナリと話しをしている。

 

アレクシアは紅の騎士団として査察で黒い噂のある聖教を調べる予定だ。

 

その旅支度でミツゴシ商会で商品を購入したりしていた。

 

とその時の一部始終を思い出すアレクシア

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私はリンドブルムへと向かうための旅支度のためアイリス姉様と一緒に最近のブームを席巻するミツゴシ商会へと来ていた。

 

「アレクシア遊びに行くわけではないのですからもっと節度を持って」

 

「良いじゃないの。折角の聖地だし査察といってもお忍びに近いんですし姉様が行くよりも私が行った方が警戒されにくいわ。」

 

「確かにそうですけど。」

 

と帽子を選んでいるアレクシアとアイリス。

 

そんな二人の元に一人の女性が現れた。

 

「いつもご利用ありがとうございます。私代表のルーナと申します。」

 

とても綺麗な人だと思ったわ。スラッと伸びた足に長い黒髪に黒いドレスを纏う姿は…成る程、上に立つ者としての風格を感じさせるとアレクシアは思った。

 

それから旅支度のために幾つか品物を見繕ってもらい今話題の下着というものも購入したわ。

 

その際姉様が色々と早いだの何だの言ったけどまぁそこは説得したわ。

 

下着だって誰彼見せるわけではないもの…まぁあいつが見たいと言うのなら吝かではないけどそんな

 

とアレクシアが悶々として試着していると

 

「あら?アレクシア様その中敷き…」

 

とガンマはアレクシアが試着した際に脱いだ靴の中に入っている中敷きを見て言う。

 

「アレクシアいつの間にそのようなものを?」

 

「えっ?あぁこれ。あいつがなんか作ってくれてそれで履いてるの。」

 

「あいつって」

 

「イータですね。このデザインは特注でクッション力がありウチで作っているのを除けばあの娘だけですね。より頑丈で魔剣士の方が履くのに適している素材でオーダーメイドですのでその人だけの中敷きになるんです。」

 

「ルーナさんはあいつを知ってるの…ってそういえばミツゴシ商会に商品を卸してるって言ってたような。」

 

「えぇ。イータの発明品のお陰で様々なニーズに対応したものを作ってくれて助かるんです。」

 

「流石発明家…色んなものを作っておられるのですね。」

 

「良ければアイリス様も中敷き如何ですか?立ち仕事なども中敷きがあるだけでとても変わります。私も愛用しておりますので効能はバッチリです。」

 

「ではお言葉に甘えて。」

 

とアイリスにも中敷きを勧めたルーナ。アイリスもとても気に入りそのまま仕事用、プライベート様の二つを購入することにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そうして数日後に列車に乗り込んで今に至る。

 

「ねぇイナリ。あいつって普段研究以外何をしてるの?」

 

「ご主人様ですか?う~ん鍛練以外なら…寝てますね。」

 

「…寝てる?」

 

「イータって睡眠が趣味だから寝心地の良い枕を使って寝たいから材料から何から全部厳選して調達して自分用にしてるんだ。より厳選しているから他人が使ってもとても寝心地が良いんだ。」

 

「そういうのも含めてルーナ様がそのノウハウを使って貴族様方に売り出してとても売行きが好調と聞きます~」

 

「成る程ね。」

 

(睡眠が趣味…ね。なら王国の伝手で最高品質の枕を…)

 

「でもこの間見掛けたオリアナ王国の最高品質の枕は枕自体高さが高すぎるのと無駄に反発しないから良くないって言ってました。」

 

(送るのはよそう。それで機嫌が悪くなったら本末転倒だわ。)

 

とアレクシアはどうにかイータとのコミュニケーションを取るためにも外堀であるイナリに色々と聞く。

 

次いでシドもだ。

 

「昔のイータは僕もあまり知っていることは少ないんだよね。精々がベアトさんから様々な知識を吸収してそれを形にして改良を加えていることぐらいかな?」

 

「…ってシド、あんたなんで武神様を知ってるのよ。」

 

「あれ?言ってなかったっけ?姉さんがベアトさんの弟子で僕も色々と教わったんだよ。」

 

シドの発言に固まるアレクシア。

 

「ベアト様はクレア様とシド様が幼い時に助けて頂いたご縁でお知り合いになられたんです。コンコン」

 

「そうだね。ベアトさんに姉さんは鍛えられてたから他の魔剣士より柔軟な思考が出来るし魔力効率も良い感じだからね。」

 

(ちょっと待ちなさい…シドもそうだけどクレアさんも武神様を知っててしかも弟子!?…尚更彼女を紅の騎士団に勧誘したい理由が増えたわ。

 

でもいくら騎士団が変わったからと言ってもゼノンの件でクレアさんの騎士団のイメージは最悪の筈…どうにかして払拭したいわね。)

 

「武神様から教わってるならやっぱりクレアさんの目標としてはブシン祭の優勝よね。」

 

「一先ずはそうかな。まぁ最終的にはベアトさんを越えたいみたいだからね。」

 

「ご主人様と同じですぅ」

 

そうして三人の語らいは夜まで続いた。

 

この後帰ってこないシドを探しに来たクレアとローズも加わりイナリがイータから渡されたトランプでババ抜きに大富豪、スピード、ポーカーをやり

 

「私に勝とうなんて10年早いわよ!」

 

ババ抜きはアレクシアが機敏に表情の変化を見抜き一抜けし

 

「ふっふっふ僕の手札には8のカードとJ Q K 2のカードがある…流石にこれで負けは」

 

「コンコン!弱いカードしかありませんがクレアさんが教えてくれた革命です~」

 

「………」

 

と先に上がっていたクレアがイナリの手札を見ると34567のカードが集中していたので流石にと思いアドバイスをしていた。

 

 

大富豪ではイナリによる革命で強い札しかなかったシドが無言で燃え尽き大貧民になり

 

ビュンッビュンッ

 

「やるじゃないのローズ!もっと上げてくわよ!」

 

「クレアさんも流石ですね!望むところです!」

 

スピードではクレアとローズの魔力ありの素早い一戦となりクレアが辛勝した。

 

途中カードが風切り音と共に舞ったりしていたものの部屋は無傷であった。

 

「はい、ストレート!」

 

「やりますねシド君。」

 

とローズのスリーカードに対してストレートで勝利するシド。

 

「絵柄揃ったからフラッシュってやつね!ほら早いところ見せなさいシド!まぁ私の勝ちだと思うけど。」

 

「悪いねアレクシア。フルハウス。僕の勝ちだね。」

 

「なぁんですってぇ!?」

 

続けてアレクシアのフラッシュにはフルハウスで対応するシド。

 

「ふっふっふシド…本当に勝負で良いのかしら?私の手札は強いわよ?」

 

「ダウト…その顔は恐らく揃ってない顔だね。姉さんの表情の違いに関しては分かるから。と言うわけでスリーカード。」

 

「負けたぁ~…でもシドがお姉ちゃんのことを分かってくれて嬉しいわ!」

 

とクレアのハッタリは長年弟として見ていたのですぐ分かりやすく見破るもののクレアはシドが自分を分かってくれているとその後に頭を撫でる流れに。

 

何故ここまで勝てているのか簡単なことである。

 

シドが自身の袖に隠したカードと入れ替えストレートやフラッシュを繰り出していたからだ。

 

クレアの時の3カードは単純に普通に揃えていただけだが。

 

最後にイナリと対戦するシド。

 

(ふっふっふイナリなら純粋だからロイヤルストレートフラッシュでも疑わない筈…よし)

 

とシドはこれまた無駄にスタイリッシュにカードを瞬時に入れ替え手札を揃える。

 

この時間僅か0.1秒の刹那の時間で揃えている。

 

そしてイナリは三枚カードを入れ替えた。

 

「じゃあ行くね。はい!」

 

「!これはまさか!」

 

「たしか最強の役で」

 

「しかも確率は4/2598960!やっぱりシドはやれば出来る子ね!」

 

「いやクレアさんやれば出来るでロイヤルストレートフラッシュを揃えられたら苦労しないわよ!?」

 

「あぅ~どういうのかが分からないです…コンコ~ン」

 

「どれどれ………ヴェ!?」

 

「クレアさんどうし……おぉ~」

 

「これはまたすごいわね。まさか…ロイヤルストレートフラッシュをイナリも出すなんて。」

 

そうなんとイナリは素でロイヤルストレートフラッシュを揃えてしまったのだ。

 

流石のシドもこれは予想しておらず取り敢えずもう一戦する前に夕飯の時間が近いと伝え切り上げることにした。

 

イナリが素でロイヤルストレートフラッシュを揃え引き分けに終わり他の三人もロイヤルストレートフラッシュが二人とも出る場面に遭遇しビックリするのでした。

 

夜は車内に取り付けられたコンロに鍋を乗せしゃぶしゃぶを楽しむ。

 

イナリはミドガルマグロをしゃぶしゃぶしだし全員がそれを真似るととても身が引き締まり味わいが変わるからか食が進む。

 

そうして夜は各々が部屋へと戻る中でアレクシアはイナリを呼び寄せその尻尾を抱きしめイナリも満更でもなく就寝するのであった。

 

穏やかにリンドブルムへと向かっている一行。

 

しかし車内にて悪意は着実に牙を剥こうとしていた。

 

PiPiPiPi

 

ある部屋から不穏な音を響き渡らせながら一人笑う人影の姿があった。

 

果たして何を企んでいると言うのだろうか…




今回はここまでになります。

アレクシアが列車に乗った際に準備をした場面にてミツゴシ商会へとアイリスと共に訪れ代表としての顔を持つガンマが応対しその際お菓子など新作を試食してもらいアニメと同様寮へと送るように言っていたアレクシアの場面は少しカットしました。

そして今作ではシドと友人関係を築いているので意識させたい年頃なアレクシアは下着を選ぶが少し過激ではないかと言うアイリスを説得し購入。

その際に靴を覗き込んだガンマはその中敷きがイータの作成した特注品だということに気付きました。

その事もありアイリスにも試しに作ったところ好評で二つ買っていくことに。

通常タイプと休日に足の負担を和らげられるようにクッション力の強いタイプを選びました。

そしてアレクシアはイータのことを聞こうとイナリに訊ねたらなんとシドとクレアがベアトリクスと知り合いでしかもクレアが弟子だったことが判明。

紅の騎士団に入団してほしい逸材だと再認識しました。

そしてトランプで遊ぶことになり結果は作中の通り。

シドのイカサマはD.Gray-manでのアレンのイカサマポーカーが元です。

まぁ本人も流石にロイヤルストレートフラッシュを分けられるとは思わずビックリしボロが出ないように切り上げました。

そして最後に不穏な陰が…これが次回以降トンでもない事態へと発展していくことに。

さて話は変わりFGOでは久しぶりな塔イベントが発生しセイバーのメドゥーサが…8周年が迫るので引こうか迷います。

いつも感想、お気に入り、評価頂きありがとうございます!お陰様でお気に入りも900件を越えました!これも読んでくださる皆様のお陰です。

番外編な異世界食堂アルファ編はまだ進んでおりませんが上げられるようにしたいです。

一応主な登場人物はかげじつ側はアルファとベアトリクス、イータ、シドを予定しております。

次回も遅くならないよう投稿していけるようにします!

それでは今回も読んでくださりありがとうございました!


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王女を狙う教団は周りを巻き込み事態はとんでもないことに発展していきのんびり娘はとある物を駆り救援へ向かう。

前回ラストで不穏な輩が今回行動に移しとんでもないことになり急展開へと移っていきます。

そしてイータも動き出すことに…

ご都合主義も多いので気に入らなければブラウザバック推奨です。

それではどうぞごゆっくり!


リンドブルムへと走り続けている列車。

 

ぐっすり眠れたシドは起き上がろうとしたがクレアがいつの間にかシドに抱き付いていたため身動きが取れなかったが己の関節をいそいそと外しまるで軟体生物のようにうねうねと動きまた関節を元通りにして事なきを得た。

 

「それにしても快適な列車旅っていうのも偶には良いものだ。走るよりは殺風景でもない…食事も彩りが生まれたようだ。余計なものを削ぎ落とし続けてきた僕には新鮮なものだ。」

 

そうして若干黄昏れるシド。

 

そうして前に進む内にイナリの部屋が見えてきたのでお邪魔しようと扉を開け……ソッと閉めた。

 

「うん。だらしない顔でイナリの尻尾に抱き付くアレクシアは見なかったことにしよう。そうしよう。」

 

とシドはそのまま部屋へと戻るのだが

 

途中フードを被った男とすれ違う。

 

その男が持つ何かからpipipiという音を拾うシド。

 

しかもその男は機関室へと歩いている。

 

「ねぇ君。そっちには客室はないけどどこに行くの?」

 

その問いに答えることなくブツブツと言いながら歩く怪しい男。

 

そうして唐突に

 

「教団に栄光あれ!!!!」

 

と言うとそのまま魔力を爆発させ更に持っていた荷物の爆弾も起爆する。

 

咄嗟にシドはスライムボディスーツを身に纏い自分への爆発の余波を受け流しつつ床と壁をスライムで補強し爆発の衝撃を上へと逃がす。

 

ドガァァァァァァァン

 

という激しい衝撃に列車が揺れるがシドが補強したお陰で列車自体が脱線するという最悪の事態は回避された。

 

衝撃が収まりシドはすぐにスライムを収納しバタンという音と共にアレクシアとイナリ、続いてクレア、ローズが出てきた。

 

「シド!今の音はいったい!?」

 

「それもだけど今の衝撃もよ!」

 

「どうやら話題の教団の仕業みたいだ。怪しいのに声を掛けたらいきなり爆発したんだ。教団に栄光あれって…咄嗟に隠れたから僕は平気だよ。」

 

そう言いながらシドはふと目に留まったノートのような紙切れを見つけ手に取る。

 

「…これは」

 

「シド貸して!……なによこれ……!」

 

アレクシアが見るとそこには意味不明な文字の羅列…

 

辛うじて読めたのは…

 

「教団に楯突く王女たちに鉄鎚を…成る程狙いはアイリス王女とアレクシア…いやこれを見るとローズも標的になってても可笑しくないのかしら?」

 

「そうね。姉様が聖教を怪しんでいるのが何処からか洩れて…」

 

「多分ですがアイリス様の今の勢いを止めるための布石…アイリス様にとってのアキレス腱はアレクシア様です。だからアレクシア様を狙って…」

 

「まぁでも爆発したけどアレクシアは殺せなかったんだし一先ずは……ってなんかさっきより加速してない?」

 

「…本当ね。さっきより流れる景色が早く…」

 

と前方を見ると爆発の余波で吹き飛んだドアの下敷きになっている車掌と運転手の姿が…

 

すぐさま横に寝かせるクレア。

 

「取り敢えず軽傷であとは気絶してるだけみたいね…」

 

「不味いです!運転手がいなければ列車が制御不能に!?」

 

「そうなったら…リンドブルムに着く前に乗ってる乗客が!」

 

というアレクシアの前を通り過ぎイナリが運転席へ

 

「大丈夫ですアレクシア様!ご主人様から運転のことは教わってます!なのでここからは私が運転します!コンコン!」

 

と運転を代わるイナリはブレーキを掛けるのだが

 

「あ、あれ?ブレーキの調子が…?」

 

なんとブレーキシステムに異常が発生していた。

 

「そんなことが!」

 

ブレーキシステムは内熱機関とは少し離れた場所に設置されている。

 

そう丁度爆発のあった部屋の真下に設置され爆発の衝撃でシステム異常が発生しブレーキも微々たるものしか掛からなくなってしまった。

 

外側からの攻撃などは耐久テストで並大抵の魔剣士では傷を付けることは出来ないことは証明出来ていたが内側を爆薬と魔力を爆発させる自爆特攻は想定していなかった…

 

シドが防御していなければ完全に破壊され大惨事に繋がっていただろう。

 

「ブレーキが効かないって…じゃあリンドブルムに着けても停まれないんじゃ!?」

 

「リンドブルムにいる大勢の者が犠牲になってしまいます!」

 

彼女たちだけならば魔力を全身に込め飛び降りれば多少の怪我はしようが生き残れる。だがそれは魔剣士だから出来ることだ。

 

他の乗客は一般人でありアレクシアの性格からして国民を見捨てるようなこともしない。

 

「イナリ、なんとかブレーキを直すことは出来ないかしら?」

 

「ブレーキシステムはご主人様が設計されて私も分からないんです…共同で開発されていたベアト様なら……」

 

「一先ず乗客にさっきのことをぼかしながら説明しよう…パニックになれば列車から飛び降りようとして余計な犠牲者を出しかねない…」

 

とシドは一度操縦席から離れる…

 

「そうね。まずは乗客を落ち着かせなきゃ…」

 

「ねぇイナリ。このまま行くとどれぐらいでリンドブルムに着くの?」

 

「…えっと普通だとあと1日半ですが……スピードが落とせず途中の駅にも停まれないとなると多く見積もって残りは18~20時間程だと思います…」

 

「その間に何とかしないといけない…例え脱出出来ても列車を停められなければ被害は出る…」

 

「まずは乗ってる乗客を安全に避難させないと…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「皆今頃乗客を避難させるための案を考えてるところかな…ディアボロス教団の目的を考えるにアイリス王女の躍進に歯止めを掛けようとアレクシアを狙い列車を脱線させる…そしてその責任はアイリス王女へ追及する。

 

そうして求心力を落としてあらゆる事件の犯人を僕たちシャドウガーデンへ押し付ける…そんなところか。」

 

とシドは皆から見つからないよう車両の上に乗りながら考えを巡らせる。事前に車両にスライムをワイヤー状に張り巡らせていることと身体強化で風圧はどうにかしている。

 

確かにこの状況例えアレクシアが助かっても今度は生き残った彼女へ批判は殺到する。

 

国民を見捨て自分だけ助かったとかいくらでも批判は出る。アイリス王女が庇えばそれもまた彼女の躍進に歯止めを掛ける。

 

ならば簡単なことだとシドはイータへと通信機で繋げる。

 

「あぁイータ。緊急事態だ。ディアボロス教団が列車を脱線させようとしてる。力を貸してくれるかな?」

 

そうして話していきとある方法を取ることを伝えられたシド。

 

「分かった。ならこっちは何とかなるか…あとは他の駅への通達は操縦席のイナリから連絡させるよ。」

 

「えぇそうしてちょうだい…私の方も準備するわ。それとシド。平気だろうけど一応言っとくわ。死ぬんじゃないわよ?」

 

「分かってる。死ぬ気は更々ないよ。だってまだ陰の実力者になってないからね。ありがとうイータ。そっちも宜しく。」

 

と通信機を閉じたシドは車両へと戻る。

 

他の皆が一度操縦席から離れ第2車両にて話をするなかでイナリへ話し掛ける。

 

「イナリ。イータからで他の駅にも知らせられるその非常事態ボタンを押して。あとは車両同士の連結部分を前の5両は固くするようにして」

 

「シド様…分かりました!でもどうして前の5両だけ?」

 

「作戦としては通り過ぎる最後の駅付近で5両目から後ろを切り離す。その切り離した方に誰かが残って乗客を駅に避難させて車両をどかす。その後はイータが何とかするって言ってるから平気さ。」

 

「誰か後ろの車両に残るって…いったい誰を?」

 

「そこはアレクシアかローズ会長だろうね。」

 

「でもシド様列車は車両の連結部分の取り外しは車庫で特別な処置をしないと外れない仕組みに…」

 

「そこは姉さんに頑張ってもらうよ。出来なければ僕がシャドウとして斬り離せばいいさ。」

 

そうシドは5両目から後ろを斬り離し乗客の安全をまず確保しようという作戦を取ろうとしていた。

 

これならば後は列車をどうにかすれば事は済むのだ。

 

だが斬り離せばいいと言ってもそれは中々難しいことだ。

 

連結部分は鉄で出来ている。少なくとも残鉄出来それも斬る力も後ろの車両に負担の掛からないようにしなければならないのだ。

 

「でも僕は姉さんを信じてる。なんたってマザーの弟子で僕の姉さんだからね。」

 

列車はスピードを落とすことが出来なくなり制御不能状態に。果たしてシドたちは乗客を救い列車を停めることが出来るのだろうか?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「まったく…あいつは簡単に言ってくれるわね…まぁ出来なくはないからやるけど」

 

とシドとの通信を終えたイータは自身のラボにcloseの看板を掲げてミツゴシ商会へと急ぐ。

 

「まさか……あれが役に立つなんて……」

 

とそのままミツゴシ商会へと入り従業員用の部屋へ入り執務室にいたガンマを見つけると

 

「悪いけどガンマ。5人程借りるわよ。」

 

「イータ?いったい何事ですか?いきなりウチの子を借りるって」

 

「簡単にいうと………ディアボロス教団が…アイリス王女の躍進に歯止めを掛けようとして……列車を脱線させようとしてしてる……そこにシド、イナリが偶々乗り合わせていた…でもブレーキシステムに異常があるから停まれない……ブレーキシステムに異常が出る衝撃……確実にアレクシアを葬るために……ディアボロス教団ならもう一つぐらい……爆弾があっても可笑しくないわ…」

 

「なんですって!?」

 

「シドが言うには…最後の駅で……乗客は列車を斬り離して……避難させるみたい……」

 

「分かりました!ニュー!技術面におけるメンバー五人をイータに付けます。その選定を急いでしてちょうだい!」

 

「承知しました!」

 

そうしてニューは急ぎメンバーを募る。

 

「それとガンマ……悪いけどシェリーのことを……頼むわ。」

 

「任せて。シェリーちゃんにはその間に色々と覚えてもらうから。…所でイータ。どうしてそんなに詳しく状況を知れたのかしら?」

 

「…まだ完成ではないから…言わなかったけど……シドのやつに通信機渡してるのよ……」

 

「通信機…って確かお母様の知恵袋の遠くの人と連絡が出来るっていう!」

 

「高価な魔道具なら……通信できるけどそういうのは…数も少ないし重要で……主要な国が持ってるだけしかない……だからスライムを改良して…特定の魔力反応を飛ばすことで……その人たちだけで通信できるようにした…現状の開発品はシドのやつと私の持ってるもの……それと七陰用に開発してる……」

 

「シャドウ様とのホットライン!…イータずるいじゃないの…って言ってる場合じゃないわね。今は」

 

「列車を停めることが先決……だからあれを引っ張り出す」

 

「…まさか!?」

 

「そう。試作型である意味欠陥品の…ロケットマンよ。」

 

イータはそう言うとそのまま試作機を置いてある倉庫へと急ぎ足で向かう。

 

ガンマも急ぎ指示を出し今出ている列車を即座に退避線へと移すように命じる。

 

事態を解決するために動き出したイータたちシャドウガーデンであった




今回はここまでになります。

投稿遅くなり申し訳ありません。

少し加筆致しました。

資格を取るために久方振りに勉強をしつつ執筆していました。

なので次回も投稿に時間が掛かると思います。

8月後半になれば多少落ち着きますのでお待ちいただけると嬉しいです。

さて今回ちょっと急展開ですが前回の不審者が爆発しました。本来なら脱線する程の威力ですがそこはシドが寸でのところで何とか阻止しました。

しかし列車は制御不能に。

シドはイータへと連絡しイータも動き出しました。

列車の斬り離しは緋弾のアリア小説にて新幹線の連結部分を両断したとある武装巫女からアイディアを取っております。両断役はクレアが担当することになるでしょう…しかしディアボロス教団としては爆弾が一つというのも可笑しなはなし…爆弾が一つとは言ってないですしね。

シドなりにクレアを信じているのもありますね。

そしてイータが言ってガンマが戦慄したロケットマンとは?

そしてイータ特製のスライム通信機は徐々に出来上がりつつあります。

波紋スライムも材料に含めて魔力が不安定な所でも使えるようにしているので一先ずリンドブルムにいる七陰三人分…一人使い方が理解できるか不安な娘がいますのでベアトリクスの分ですね。

さていったいどうなるのか?

さてFGOでは8周年に突入しました!

福袋は六人目のアルクェイド、ディスティニーは高杉社長が来てくれました。

周年のトネリコも来たのでこの勢いで水着キャストリアを当てたい所です!

投稿するまでの間お気に入り登録、感想、評価などありがとうございます。

低評価が付いてしまい気落ちしましたが万人受けするわけないのが二次創作なので気に入りましたら評価や感想、お気に入りしていただけると励みになります。

気に入らなければブラウザバック推奨です。

次回も遅くならない内に投稿出来たらします!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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ノンストップ!?列車に仕掛けられし爆弾は時を刻み聖地へと進みのんびり娘は暴走列車を駆り救出へ向かう!

列車を停めるために一致団結するシドたち列車に乗る者たちサイドとイータたち王国にいる者たちサイドの話しになります

それではどうぞごゆっくり!


ブレーキの効かない列車をどうにかする前に乗客をどうにか下ろすために案を出そうとするアレクシアやローズたち。

 

しかし魔力のない一般人の多くがいる列車から無傷で下ろすための策を捻り出せずにいた。

 

「乗客をどうにか安全に下ろさなくてはならないというのに…」

 

「このスピードじゃあ不可能に近いわよ…」

 

「列車もどうにかしないといけないのにこれだとね。」

 

と言っていると後ろの客車が騒がしくなっていることに気付く。

 

「いったいなにかしら?」

 

後ろの客車では黒ずくめの人間が広めに作られた食堂車で叫んでいた。

 

「くそっ役立たずが…お陰で俺まで動かなくちゃいけなくなったじゃねぇか!大人しくしやがれ!じゃねぇとこの列車を炸裂爆弾ボマー様が吹き飛ばすぞ!」

 

と人質を取りながら起爆装置のようなものを手に籠城しているディアボロス教団チルドレン1st炸裂爆弾ボマー。

 

本来ならば最初の爆発で列車を脱線させその後にアレクシアの生死を確認する役割があったがその爆発をシドが防ぎ未遂に終わったため行動を起こすことに。

 

「あんた何をしてるの!」

 

とアレクシアとローズの二人は急いで駆け付けた。

 

「王女様方ではありませんか!早速だが死んじゃくれませんかね?」

 

「あんた頭可笑しいんじゃないの?」

 

「そんなこと言って良いのか?でないとこいつら全員あの世に行くぜ?まぁどっちにしろこの列車がアレクサンドリアに無事にたどり着くわけねぇしな。運転室の後ろにも俺特性の爆弾を設置してるんだからよぉ。」

 

人質をとりアレクシアたちを脅すボマー

 

どうやら人質を取っている場所の他にも運転室の後ろに爆弾を設置したようだ。

 

「卑怯な!乗客を解放しなさい!」

 

「…あんたの目的は私でしょう?なんで大勢の乗客を巻き込むの?」

 

「目的はテメェだがおれは爆発が好きでな、派手に打ち上がり儚く散るのが堪らなく良い…それを俺の手でやるのは特になぁ!」

 

「外道が!」

 

「そんなこと言って良いのか?天下の王女が国民を見捨ててよぉ」

 

「クッ!」

 

「5分やるその間に選べ。」

 

そう言いながら迫る選択だが実質一択である…

 

アレクシアとローズはどうにか助けようと必死に頭を絞る

 

そのアレクシアたちの後ろで静かに息を潜めるクレア。

 

彼女はどうにか無力化しようとする策を考える。

 

自身の強化した身体能力で即座に無力化する

 

それをした場合咄嗟に人質を盾にする可能性がある…

 

アレクシアを囮にする。

 

狭い車内では囮の意味があまりない

 

ならば取れる手段は一つ…不意を突き一瞬で行動不能に追い込むこと…

 

でなければ手遅れになるとクレアは人質を見て決意しそうしてもう一度アレクシアたちの方を見ると奥に続く開け放たれた車両からシドが顔を出していた。

 

内心シドに驚くが視力を強化してシドの口の動きをベアトリクスから教わった読唇術で読み取る。

 

隙を作る…あとはよろしく…とのことだ。

 

(全く…無茶をする子ね…でも私の弟だもの。なら信じるわ。)

 

とクレアはベアトリクスからシドと共に教わったハンドサインでやり取りをしそして

 

「う、うわー爆発するだってーー」

 

とわざとらしく棒読みで言いながらしかし足音を殺した無音移動でボマーの背後を取るとそのまま背中を押し体勢を崩させる。

 

突然のことにボマーは前のめりになりながら反転しようとして…

 

アレクシアたちの方からこれまたベアトリクスに教わった無音移動でクレアが接近し顎に向けて魔力強化した掌底を放つ。

 

脳を揺らされ脳震盪を起こしながらも爆弾の起動スイッチを押そうとするがそれよりも早くクレアは右の拳に全体重を乗せ

 

「師匠直伝…秋水!」

 

ボマーの腹部へと炸裂させた。

 

起動スイッチを手放しそのスイッチはシドがキャッチし、その身体は衝撃で開け放たれたドアを通過し一車両分飛び意識を手放した。

 

「す、すごい…」

 

「今の身体の使いこなし…技の当てるタイミング…途轍もないわね…」

 

とローズとアレクシアが感心している中でクレアは人質になっていた具合の悪そうな一人の女性に急いで駆け寄る。

 

「貴女見たところお腹に赤ちゃんがいるわね。」

 

「えぇ!?」

 

「私は医者じゃないから難しいことは分からないけど臨月間近って所かしら…そうなら手を握れる?」

 

というと弱々しくも手を握る女性。

 

「多分だけどストレス…今の緊迫した状況で陣痛がきてしまった可能性はあるね。」

 

「この状況で陣痛って…不味いわね。安全に避難もだけどお腹の赤ちゃんが耐えられるか…」

 

「姉さん最後の駅付近で5両目から後ろを斬り離すことが出来れば助けられるよ。」

 

とシドは提案をする。

 

「切り離すってさっきイナリは切り離すには専用のやつでって言ってなかったかしら?」

 

「ん?あぁ、アレクシア斬り離すっていうのは姉さんが車両の連結部分を斬り裂いて避難させるってことだ。」

 

「はぁ!?何言ってるの!?猛スピードで走る列車のそれも連結部分だけを斬り裂くって…そんなのできるわけが」

 

「そう。なら早いところ他の乗客を後ろに避難させましょう。ちょっと失礼するわね。」

 

とクレアは妊婦を優しく抱き上げて後ろの車両へと向かうい座席を倒し女性を楽な姿勢で寝かせ戻ってきたクレア。

 

「クレアさん!斬り離すってそんなことできるわけ」

 

「やらなきゃ後ろの乗客たちは死ぬわ。それに私たちが混乱したら乗客はパニックになるわ。それにシドは私なら出来るって思ってるんでしょう?」

 

「勿論!」

 

「なら弟の期待に応えないわけにはいかないわ。取り敢えずさっきの変態は拘束しておきましょう。」

 

と即決したクレアはシドが何処からともなく取り出した魔封じの手錠を受け取りボマーを拘束する。

 

その時に動かれても面倒臭いとクレアは四肢の関節を纏めて外す。

 

ゴキリと嫌な音が響いたがクレアは気にせず動けないように羽交い締めにロープで更に拘束する。

 

そうして爆弾魔を乗客と一緒にするわけにはいかないので前の車両へと持ってくる。

 

列車は尚もスピードが落ちず駅を通りすぎていき遂にリンドブルムの前に止まる前の最後の駅に差し掛かろうとしていた。

 

「それで後ろの車両には誰が残るの?」

 

「そうね。ここはローズに頼むわ。乗客も田舎貴族よりも王女の方が言うことを聞くでしょうからね。私はそいつが暴れた時にもう一回制圧しないといけないからこっちに残るわ。本当ならシドもローズと一緒に降りてほしいけど」

 

「そうするとイナリがパニくっちゃうからね。僕も残るよ。出来ればアレクシアも降りた方がいいけど」

 

「冗談じゃないわ。こいつから根こそぎ聞き出さないといけないことが山程あるのだもの。私も残るわ。」

 

「でしたら乗客の方はお任せください。」

 

「ローズ会長、斬り離した後もしスピードが出過ぎて停まれそうになかったら最後尾の車両で地面に魔力強化した剣を突き刺して頑張って耐えてください。」

 

「分かりました。シド君も気を付けて。」

 

そうして各々が役割を決め列車を斬り離す準備に入るのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方ミドガル王国では王室に脅迫状が届き騒然となっていた。

 

それはアイリスの権力を剥奪しなければ列車に乗るアレクシアを亡きものにするというもの。

 

アイリスは父でありミドガル王クラウスの静止を振り切りリンドブルムへと向かう列車へ飛び乗ろうとするものの

 

「どうして列車が全て線路から外されているのですか!!これでは…」

 

と駅員に掴み掛からんとする勢いで言うアイリス。

 

「アイリス王女様、我々鉄道を預かる者たちは信念があります。お客様を目的地に安全に送り届けるという使命が…

 

そしてどうやらリンドブルムへと向かう列車の一つでテロが起こった模様…全列車は安全のために待避線へ避難させました。」

 

「それではアレクシアが!」

 

「そして…残念ながら我々には止める手段はありません…しかし危険を犯してでもあの方が対応すると決められたのです。」

 

と言っていると何処からともなく汽笛のなる音がしホームに突然先端の尖った列車…いや列車というよりも装甲の付いたと表現出来るものが入ってきた。

 

そしてその後ろにブレーキ車が4台接続される。

 

「イータ様!連結完了しました!」

 

「ブレーキシステム正常稼動、オールグリーン!」

 

「いつでも行けます!」

 

とその先頭車両からイータが出てきた。

 

「悪いわね……駅員長他の駅には…通達届いているかしら?」

 

「は!問題なく全て待避させたと報告がありました!」

 

「ご苦労様…」

 

「イータ殿…御武運を…!」

 

「えぇそれじゃあ」

 

「待ってください!」

 

「今話題の……アイリス王女じゃない……何してるの?」

 

「王室に脅迫状が届いたのです…私を排除するためにアレクシアを亡き者にすると…ですからリンドブルムへ行く列車に乗り込もうとしたのです…」

 

「悪いけど構っていられる時間は…ないから、行くわ……どうやらイナリが…アレクシア王女共々…乗り合わせて…事件に巻き込まれた、みたいだから…」

 

とイータは発車させようとするが

 

アイリスは

 

「お願いします!私も乗せてください…!アレクシアを…助けたいのです!」

 

「…危険よ…コイツに乗るっていうのは……正直命の保証は…出来ないわよ…?」

 

「それでも…私にとってアレクシアは私の命と同じぐらい大事なんです…命を掛けることぐらい覚悟の上です!」

 

と頭を下げていると

 

「アイリス…王族が軽々しく頭を下げるものじゃない。イータ・ロイド・ライト。希代の天才発明家にして我らミドガル王国大恩あるベアトリクスの義娘よ。」

 

アイリスに似た髭を生やした男性がホームへと入ってきた。

 

「お父様!?どうして!」

 

「大馬鹿者。直情に駆られ行動するのはお前の悪い癖だ。周りを良く見よ。お前の行動は正しいものではない。」

 

「ねぇ…要件…早くしてくれないかしら…」

 

「そうであったな…イータ・ロイド・ライト。貴殿に娘のことを助ける依頼をしたい。」

 

「…それで見返りは?」

 

「我ら王室に伝わる秘蔵の書庫を解放する…そこにはこの国の成り立ちや表に出せないことも載っている…無論そなたの母の探し求める物もあるだろう。」

 

「そう…ベアト母様と…どんな関係?」

 

「なに、若造の調子に乗っていた私を叩きのめし挙げ句弟子にされてな。以来付き合いは長い方だ。ここ数年はまともな連絡を取っていないが義娘を取ったという報告は受けていたのでな。発明の得意な娘自慢ばかりしていた。そして君の出てきた時期を考えると自然と分かる。」

 

「ふーん…良いわよ…ちゃんと助けるわ…」

 

「そして条件としてアイリスも共に連れていってほしい。」

 

「仕方ないわね。良いわよ。さっさと乗りなさい。」

 

「お父様!?」

 

「アイリス物事には全て順序がある。それを抜かせば何処かで歯車が狂い取り返しの付かぬ事が起こる。正しいことをしたとしてもそれが大衆から分からなければ愚かなことと断じられてしまう…お前の直情に駆られ行動する癖が抜ければ王へと近付くだろう。

 

そしてリンドブルムへ辿り着き次第アレクシア共に聖教へ監査を行い女神の試練が終わり次第帰還せよ。これは王命である。」

 

「はい!」

 

「では頼んだぞ。」

 

とミドガル王に見送られイータはアイリスを乗せるとそのままロケットマンは出発した。

 

「イータ殿申し訳ありません…」

 

「別に…妹が心配なんでしょう…さっさと追い付いて…止めるわよ…それと…魔力を身体に張り巡らせなさい。」

 

「はい…しかしいったいどういう?」

 

「このロケットマンは欠陥品なのよ…他の列車はスピードを統一するために……安全装置を組み込んである…でも…これは初期型だから……それらがないのよ…だから必要以上に、スピードが出る…でも追い付くためには……こいつしかないのよ。」

 

という間にどんどんスピードが上がっていき瞬く間に駅を通りすぎていく。

 

「発進し出したら……どんどんスピードが上がって……更に魔力を送り込めばもっとスピードが上がる。

 

車体に無理をさせれば…時速で800キロ以上のスピードが出るわ…」

 

ぎょっとするアイリスだが既に乗り込んだ後。

 

「掴まってなさいよ。じゃないと大変なことになるから」

 

どんどん加速していき遂には400キロ近いスピードが出始めたロケットマン。

 

曲がり角に差し掛かるとロケットマンの装甲が一瞬変形し強引にカーブを曲がりきる。

 

そう。ロケットマンの装甲にはスライムボディスーツの技術を応用しスライムの変幻自在の形態で普通なら不可能な走行を可能としている。

 

最もこれはその土地の地形を完全に理解していて尚且つスライムに造詣深いイータだからこそ出来る芸当だ。故にロケットマンは封印されていたのだ。

 

こうしてイータはミドガル王からの依頼という形でアイリス王女を伴いイナリたちの元へと急ぐのであった。




今回はここまでになります。

アレクシアたちの考えている間になんとディアボロスチルドレン1stが潜んでいて人質を取りアレクシアを抹殺しようとしておりました。

更に運転室…つまりイナリのすぐ後ろに特製の爆弾が設置してあるという。

爆発に快楽を覚える外道に対してシド、クレアの二人が姉弟ならではのコンビネーションで撃退。

ベアトリクスからハンドサインや読唇術も学んでいたクレアと陰の実力者としてのスキルで覚えていたシドだからこそ出来た技です。

棒読みながら歩く仕草は無音移動というちぐはぐさ加減はあるものの見事に隙を作りクレアが魔力を込めた掌底で意識をほぼ奪い止めにベアトリクスから教わった速さはそこまでではないものの自身の全体重を乗せた拳をお見舞いしノックアウトしました。

秋水の元ネタは緋弾のアリアの主人公遠山キンジの遠山家に伝わる奥義の一つでベアトリクスが打撃の重さという点でこれ以上ないぐらいに実戦向きだったので習得しクレアへと教えていました。

そしてクレアはすぐさま具合の悪そうな女性に駆け寄りお腹に赤ちゃんがいることに気付きアレクシアたちは余計安全性を取らねばという前にシドがクレアに作戦を提案しすぐさま承諾。

弟が自分を信じてくれたのだから後はやるだけと覚悟を決めました。

そして一方の王国では脅迫状が届き王室は騒然とすることに。

いてもたってもいられずアイリスは駅へと向かうものの全線待避線に避難しているためにどうにもならない状態だったもののイータがロケットマンをホームへと入れその間にブレーキをを4台ドッキングさせミツゴシもといシャドウガーデンから選ばれた5人が帯同することに。

アイリスはイータに頼み込むがイータは構わず発進しようとするもののそこになんとミドガル王が現れる。

ベアトリクスとも知り合いでありイータがその義娘だということも知っていたミドガル王はイータへアレクシア救出を依頼し彼女へ王国の秘蔵の書庫を解放するという対価を示しイータは承諾しアイリスも帯同させることを条件に出しました。

このミドガル王昔にベアトリクスと出会い色々なことを教えられたのもあり親しい友人でありました。

その関係もあり娘自慢をするベアトリクスの話を覚えていたためかすぐにイータがベアトリクスの娘と分かりました。

そしてベアトリクスが昔から裏でこそこそしているのも知っていて更にミドガル王国に潜むディアボロス教団のことも独自の捜査網で既に分かっていて聖教との癒着を暴くことでミドガル王国を有利にしたいという思惑もあります。

原作ではことなかれ主義であるものの主にベアトリクスのせいでそうもいってられないかもしれないですね。

そしてロケットマンはワンピースがモデルですね。

安全装置もない暴走列車で装甲にはスライムボディスーツの技術を応用しスライムの変幻自在の形態で風圧耐圧その他諸々耐久性は万全な代物。

アルファやイプシロン、シドなら魔力装甲を操ることが出来るものの走行させることが出来るのはイータただ一人。

シャドウガーデンから5人の技術スタッフも帯同し爆走し始めたロケットマン。

因みにアイリスは声なき悲鳴を上げることに。

後日イータは可愛らしい叫び声だったと言っている。

さてFGOではサーヴァントサマーフェスティバルが18時から開幕!

バーサーカーなアルトリアキャスターがどんな性能なのか楽しみですね。

そしてピック2では妖精騎士三人が登場するのでそちらに石が割けるかですね。

感想、評価、お気に入り登録いつもありがとうございます。感想頂けると少し投稿ペースも上げられる励みになります!

次回間隔が開いてしまうと思いますが宜しくお願いします

今回も読んで頂きありがとうございました!


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その一刀で姉は乗客を救いのんびり娘は暴走列車で追い掛ける。

リンドブルム行きの列車を今回で斬り離しに掛かるクレア。

果たして乗客を救うことが出来るのか!

それではごゆっくりどうぞ!


列車の乗客を避難させるアレクシアたち。

 

そしてシドはイナリの方へと行き運転席の後ろを見るとそこには何やら機械的に動く怪しげなモノが…

 

「成る程これがさっきのが言ってたモノ…専門家じゃないけどこのありったけの爆薬を無理矢理詰めたような後が見受けられる…下手したら前の三両は大破って所かな?」

 

「コンコ~ン!?シド様!そんな呑気に言ってる場合じゃないですぅ~私たちは平気でもクレアさんたちは大丈夫じゃないですよ。」

 

とイナリは言う。確かにその程度の爆発であればシドはおろかイナリでもスライムを変形させ防ぐことは可能である。しかしそれはあくまでも個人ではという前提である。

 

「まぁそこはイータが何とかするみたいだから心配ないさ。悪いけどイナリもう暫く運転頼むよ。」

 

「お任せください!」

 

「これが終わったらイータに褒美を与えるように言っておくよ。」

 

「で、でしたら…ご主人様と一緒に街を見て回りたいですぅ」

 

「分かった。掛け合ってみるよ。」

 

そうして乗客全員が避難し終わりいよいよ最後の駅が目前となってきた。

 

クレアは切断する車両と車両の連結部分に立っていた。

 

それを心配そうに見るアレクシアとその向かい側にローズがいる。

 

「クレアさん…すいません…本来ならば我々王族が対処しなければならない問題なのに」

 

「良いのよ気にしないでちょうだい。私がやるって決めたんだから…それに私だって田舎貴族だけど領主の娘なんだもの。そこに住まう人を守るのだってやらなくちゃいけない。でも大丈夫」

 

「大丈夫って何を根拠に」

 

「シドが私を信じてくれるから…シドは昔から私を頼ろうとすることが少なかった…それは師匠に師事を受けた後もそう。隠すのが上手いのよ色々と。」

 

「隠すって?」

 

「それは分からないわ…でもシドは大きなことをする…そんな予感があるの。そんなシドが信じると言ったのだもの。私は姉の尊厳にかけて…そして無辜の民を救うために力を振るう…それにシドもそうだけどルーナも心配だからこんなところで死ねないわ。」

 

「えっ!?ルーナってミツゴシ商会のルーナ会長のこと!?」

 

「えぇ幼馴染みだし。ルーナってば昔ほど転ばなくなったけど運動音痴だから心配なのよね。三歩歩いたら自分の足につまずいて転んだり足をグキッて捻ったり見てるこっちが心配するのよね。普段は凛々しくて美人だけどたまにそういうドジな所が出るのよ。」

 

「いつもミツゴシ商会の最先端ブランドを着てると思ったらそんな関係が…!」

 

(というかクレアさんどんな人脈してるのよ!?ミツゴシ商会のトップと幼馴染みで武神の弟子でしかも妹のように可愛がってる獣人の娘もいるし………それもあるけどシドもこんな凄い人と比べられて大変だったでしょうに……ってそういえばあいつはあいつで天才発明家と知り合いだしカゲノー家って何なのかしら?)

 

とある種の共感をしているアレクシアだがシドは嬉々として陰の実力者を目指す隠れ蓑にしていた時期もあるのでそんなことはない…というよりもシドはそこら辺は気にしていない。

 

とクレアも少し緊張していたが良い感じで脱力しコンディションは万全に整った。

 

「姉さん、タイミングはこっちで計るから合図したら頼むね。」

 

「任せなさいシド…!でも何か一言欲しいわね…」

 

「うーん……頑張って世界一格好良い姉さん…!」

 

「勿論よ!!!愛してるわシド!私に任せなさい!!」

 

とクレアのボルテージがフルスロットルとなった。シドなりの励ましでクレアにエールを送った。

 

なおその様子を見ていたアレクシア、ローズは改めてクレアのブラコンを目の当たりにして人って単純なんだなと思ったり思わなかったり……

 

そして列車の走る音が響く中でクレアは自らの剣に魔力を乗せる…それも刀身の斬る箇所のみに一点集中する。

 

その魔力操作の力量に驚く二人。

 

そしてシドからの合図が届き…

 

パキンという甲高い音と遅れて鈍いザンという音が響き渡りその瞬間に5両目から後ろが斬り離された!!

 

すかさずローズは身体強化と剣に魔力をありったけ込めて地面に突き刺して減速を試みる。

 

減速したもののスピードはまだ出ているが駅員が素早くレールを本線から待避線へと切り替える。

 

そうして予めイータより指示があり衝撃緩衝材を設置していたということ、ローズが減速させたことにより無事に乗客全員を救出することが出来た!

 

「はぁはぁ…良かった……こんなことしてる場合じゃない。」

 

とローズは列車から降りると近付いてきた駅員へ

 

「すいません。すぐに医者の方を!乗客に妊娠されている方がいます!」

 

と指示を受け迅速に医者を連れてくる駅員。

 

こうして無事に乗客を救うことが出来たが列車は未だに止まらず走り続けている。

 

ローズはシドたちの無事を祈るのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そうして無事に斬り離され今も進む車両では

 

「ふぅ…何とか出来たわね…」

 

「凄い…剣全体じゃなくて一点に集中させた刀身で斬るだなんて…」

 

「まだまだ未熟よ。だってほら」

 

とクレアはアレクシアに刀身を見せる。

 

「これって!」

 

クレアの剣は刀身の一部が無くなっていた。

 

「折れてそこに刺さっているわ。師匠だったら刀身にヒビも入らず涼しげにやってのけたでしょう。まだまだ道は遠いわね。でもいつか必ず追い付いてみせる!」

 

その向上心にアレクシアは感心と驚嘆を禁じ得なかった。

 

(凄いわね…今まで武神に憧れを抱いて目標にする人たちは沢山見てきたけど…でもこんなに越えたいって人は二人目ね。)

 

とイータの顔を思い出しながらアレクシアはクレアと共にイナリの所へと向かう。

 

「イナリ大丈夫?」

 

「アレクシア様!私は大丈夫です…でもやっぱり列車を斬り離したからか少しスピードが上がっています…コ~ン」

 

「後はこの爆弾が何なのか聞き出さないとだね。」

 

「それもそうだけどこの列車を止めないといけないわよ」

 

「そうね。ねぇイナリどこかしら線路と隣り合ってるような湖とかはないかしら?もしあればそこに列車を突っ込ませてその間に私たちは脱出とか行けると思うけど」

 

「コ~ン…リンドブルムへと進む道は山々を切り崩したりした影響もありそういったところがないんです」

 

「そう…どうしたものかね。爆弾だけでも何とかしたいけど」

 

「まぁそっちはイータが何とかしてくれるだろうしコッチのを優先するかな?」

 

とシドは捕まえたチルドレン1stのボマーを見て言う

 

「尋問というか背後関係を洗わないとね。」

 

とクレアも意気揚々と言う。

 

「そうね。私が聖教に監査に行く話を知ってるのは姉様を含めてもそんなにいなかった筈だから問い詰めないと。」

 

そうして背後関係を確認することになった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方のロケットマンにて爆走し追い掛けるイータとアイリスたち

 

スピードは既に500キロを越え凄まじい風を感じるがスライムスーツを応用した変形機構にて相殺し続けている。

 

あれからアイリスは凄まじい速度に悲鳴を上げていたが徐々に慣れ始めたのが高速で過ぎていく風景を見ながらイータの運転技術を見る。

 

(何という反応速度…そして判断能力の速さと見極め…お父様の言った武神様の娘というのも頷ける…)

 

「アイリス様体調は如何でしょうか?」

 

とガンマの選んだ技術に優れた精鋭の内それらを統括している女性がアイリスへ声をかける。

 

「えぇ大丈夫です。少し慣れましたから…貴女方はたしかミツゴシ商会の…?」

 

「はい、我々はイータ様に技術を伝授されました、主に機械運搬、修理の得意な精鋭で御座います。私は我が商会で取り扱っている物の修理を代表する部門の統括を任されておりますテトラで御座います」

 

「テトラ殿、この列車は…間に合うのでしょうか…?凄まじい速度で走っているのは分かっております。しかしアレクシアたちの乗る列車も動きリンドブルムへと向かっています…どうしても不安を拭いきれないのです…」

 

「妹であるアレクシア様が危険に晒されていることを考えればそのお気持ちは我々には計りきれません…しかしイータ様ならばそのような不安も大丈夫です。必ず追い付きます。そこ!バルブの固定が甘い!もっとしっかり閉めなさい!」

 

そう言いながら忙しなく動く他の者たちに指示を出すテトラ

 

「分かりました…信じます。あの私に出来ることは…?」

 

「今現状出来ることは限られております。追い付いたときにどうにかアレクシア様やクレア様たちを救助するためにも準備をしております。アイリス様はそれまで待機を。」

 

ロケットマンは更に加速して550キロを越え始めた…

 

アイリスはアレクシアの無事を祈りながらその時を待つのであった。




今回はここまでになります。

待っててくれた方々お待たせ致しました。

少し一段落しましたので投稿出来ました!

不定期になると思いますがどんどん投稿していけるようにします!

今回でクレアが列車を無事に斬り離すことに成功しました!

その代わり剣は折れてしまいましたが乗客は救出に成功しクレアはまだまだ未熟だとより一層の鍛練を積むことでしょう。

そしてクレアの交友関係に驚くアレクシア、ローズの二人

最近頭角を表しはじめたミツゴシ商会のトップと幼馴染みというトンでも情報にアレクシアは戦慄しシドに同情するもののそんなシドも天才発明家なイータと交友があるのでカゲノー家ってある意味魔境ではと思い始めていますね。

そしてガンマは己の知らないところで運動音痴なことを暴露されていることに。

そしてクレアはシドが何かしら隠していることに気付いているものの本人が口にしないなら追及しなスタンス。

そんなシドが信頼し託してくれたプラス応援もありボルテージはMAXに。

救助した乗客もローズが医者を呼び無事に保護されました。

そして次回はチルドレン1stへの簡単な尋問になるかと思います。

イータたちも着々と近付きつつあり乗り込んだアイリスは不安なもののイータ信じ待つことに。

そしてオリジナルキャラで今回乗り込んだシャドウガーデン構成員兼ミツゴシ商会の機械運搬、修理部門の統括長のテトラ。

彼女はエルフでありながら閉鎖的なエルフの里から出てきた変わり者で悪魔憑きの症状が出るまでは馬車での運送を担う会社を経営していた過去を持ち

発症後は会社を追われ川に写る自身の変わり果てた姿に絶望し入水自殺を計ろうとしたところをたまたま新たな資源を求めて遠出していたベアトリクス、ガンマ、イータに助けられその場で悪魔憑きを治療された。

ガンマはその会社を経営していたノウハウを活かしてもらうべくスカウトし機械運搬、修理といった技術面は主にベアトリクス、イータから学び

エルフの憧れでありそして自身に生きる意味を与えてくれた三人に忠誠を誓い波紋と戦いを学び彼女はテトラの名を授かった。

ナンバーズとは違う指揮系統で特にベアトリクス、ガンマ、イータの元に付いている者たちで彼女たちはギリシャ数字の名を授かっているものたちの集まりであり彼女らはアビスナンバーズとも呼ばれている。

ギリシャ数字において4を意味するテトラ。彼女はベアトリクス、ガンマ、イータの三人を支えたいという誓いと授かった名を胸に生きております。

珍しいシャドウに心頭していない比較的常識人の彼女はミツゴシ商会にて普段は働き休日はイータの研究材料を探しに奔走し自身より幼いながらも頑張るガンマを他の者たちと共に支えております。

イータ関連で良くイナリとは会話をし彼女のほんわかした雰囲気に和まされながら頭を撫でたりとアニマルセラピーのように癒されていたりする。

話しは変わりFGOでは夏イベントが終わりハンティングクエストが開始されました。過疎ぎみな素材や種火もついでにもらえるので逃さずやりたいものです。

いつも感想、評価、お気に入り登録していただきありがとうございます。

これからもなるべく早めに投稿出来るようにしていきます!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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クレアとアレクシアの飴と鞭コンビは真相を聞き出すために拷問し陰の園の盟主とマスコットは悪友で主人なのんびり娘を信じる。

今回はアレクシアを抹殺しようとしたチルドレン1stの尋問になります。

飴と鞭を使い分け情報を抜き出すアレクシアとクレアです

少し短いですがごゆっくりどうぞ!


無事に列車を斬り離し乗客を避難させたクレアたち。

 

彼女らは捕らえた賊から情報を得ようとする。

 

「こいつが何者なのかって疑問と王国にいる不安分子が送り込んだ刺客しか予想が付かないわね。一番有力なのは聖教からの刺客で調べられたら困る代物があるからかしら?ねぇそこのところどうなのかしら?」

 

とアレクシアは目を覚ましたボマーへ問い掛けるがボマーは黙秘する。

 

当然だろう。つい最近同じ1stのレックスが行方不明となり元ラウンズのルスランが捕まったのだ…これ以上の失態をしたとバレれば自身は終わるのだ。

 

「喋らないということはそれだけ自分の組織に不利なことを知っているって所かしら?早いところ吐いたほうが良いわよ。」

 

とアレクシアが言った瞬間ボマーのすぐ横まで移動していたクレアがボマーの小指をボキッ折りと鈍い音が響く。

 

うめき声が聞こえるがクレアは無視して話し掛ける。

 

「知ってる?人の骨って成人だと大体200弱近くあるのよ。子供の時は300くらいらしいけど色々と統合されていったりするとそれぐらいになるそうよ。」

 

「…何が言いたい…?」

 

と初めて問い掛けに答えるボマー

 

「心臓を守る肋骨、頭を守る頭蓋骨はとても重要な場所…でもねそれ以外の場所って折れてある程度支障はないの…」

 

そう言いながらクレアは今度は薬指に手を添える。

 

「だから今からあんたの骨という骨を一本ずつ折っていく。喋りたくなるまで順番に見えるように…痛みを感じる間は平気よ。

 

だって生きているなら痛みを感じるのだから…」

 

ボキッとまた折るクレア。

 

彼女からしたら弟のシドも巻き添えになりかねないことをしたということ、何の関係もない一般人を巻き込んだこともあり冷酷に対処する。

 

チルドレン1stは薬剤投与などの苦痛を厳しい訓練を耐えきり成った者たちだ。

 

だがボマーは得たいの知れない恐怖を感じていた。

 

先程から話しているクレアの表情は…無表情なのだ。

 

淡々と事実を言い実行する。

 

こいつには凄みがある…そう感じる頃には中指が折られていた。

 

「面倒だけど喋らないから仕方ないわ。いつまで持つのかしらね?」

 

そうして両手、両足の指を全て折ったクレア。

 

じわじわとした鈍痛がボマーを蝕んでいく…言えば教団から粛清され言わなければ目の前の女に殺される…どちらをとっても地獄だった。

 

「クレアさんストップ。」

 

「貴女もやりたくなった?」

 

「いや違うわよ。普通に話をさせてほしいのよ。」

 

「ふーん…良いわ。」

 

とクレアは下がる。

 

「ねぇあんたどうしてこんなことをしたのかしら?王族を狙うって相当頭の可笑しい奴らか…王国よりも強大な組織ぐらいじゃない?例えば聖教…いや教団かしら?」

 

と核心を付くようにアレクシアは言うとボマーは動揺する。

 

なぜ王女が我々を知っている…!?と

 

「悪魔憑きを浄化と称して実験し果ては処分…そして今の反応で基本的に情報を共有し合っていないと分かるわ。あんたらの上の奴らがどうかは知らないけど…」

 

「き、キサマなぜ我々のことを!それにナイツオブラウンズのことまで!」

 

「そうあんたらの上の奴らはナイツオブラウンズって言うのね。」

 

しまったと思うがもう遅い。

 

「今回の件ルスラン元副学園長が先立って起こした学園襲撃で手駒だった騎士団が解体されて力を落として姉様の発言力、新たな騎士団の創立で好き勝手出来なくなるから私を暗殺して姉様の発言力か士気を落とそうとしたのでしょうね。

 

でも誤算だったのは最初の爆発で列車を爆発させられなかったこと、貴方が敗れるということ。残念だったわね。」

 

アレクシアだけならば計画は成功していたであろう。しかし最初の爆発はシドが最小限に防ぎ、ボマーは乗り合わせたクレアに敗れ人質もクレアが列車を斬り離し救出。

 

ボマーの敗因は一つ、カゲノー姉弟がいたことであろう。

 

「でもそうね。貴方が素直に吐いてくれたら便宜は図ってあげられるわ。教団がルスランを殺していないのはそういうことだもの。選択肢は2つ痛みに耐えて助けてくれるかも分からない教団の助けを待つか?私たちに全てを話し、保護されるか?」

 

アレクシアの後ろではクレアが指を鳴らしながら待機しいつでも拷問を再開できるようにしている。

 

そんな飴と鞭にボマーは自身の持つ情報を喋るのであった。

 

「姉さんたち張りきってるね。姉さんが鞭でアレクシアが飴を与えて効率的に落としたから良いか。」

 

「でもシド様、多分ですけど。」

 

「まぁ十中八九シャドウガーデンであいつの身柄をぶんどってニュー辺りが改めて拷問するんじゃないかな?この間みたくまた張りきるだろうしね。」

 

「コンコン、御愁傷様ですぅ。でも今までやってきたこともあるので同情は出来ません~」

 

とこっちはこっちで物騒な話をするシャドウガーデンの頭目と七陰側近兼マスコット。

 

そしてイナリは重大なことに気付く。

 

「シド様後ろの車両を切り離したからかさっきよりスピードが出てるですぅ!?」

 

「まぁ自然なことだね。そりゃあ重量が軽くなったんだからそれに比例して速度も上がるからね。まぁ大丈夫。イータが何とかするだろうから。」

 

「確かにご主人様なら何とかしてくれそうですけど~」

 

とイータに絶大な信頼を寄せるシドとイータならなんとかなると自身の主人を思いそれはそれと大好きな主人が取られてしまうのではと危機感を募らせるうっかり娘。

 

そうしている間に拷問という名の話し合いを一時的に済ませたアレクシアとクレアが戻ってくる。

 

「もうクレアさんやり過ぎよ!あれだと恐がらせるばかりでなにも分からないわ。」

 

「でも喋ったでしょ。私が鞭で貴女が飴。こういうのは適材適所。甘すぎてもいけないもの。」

 

「それで姉さん、アレクシア何か分かったの?」

 

とシドが聞くと

 

「やっぱり教団の奴らの仕業ね。姑息な手ばっかり使って…しかも今回も無関係な人を巻き込んだ。許せることじゃないわ。」

 

「それってこの間の襲撃の時の集団?懲りない奴らなのね。聞いた話だと師匠が最後駆けつけて解決したんでしょ?」

 

「えぇ…それとシャドウガーデンの人たちも助けてくれたわ。学園も焼けずに済んだし後日リーダーのシャドウが修復のためってお金も送ってきたらしいし、教団と対立しているのは明白ね。

 

それとやっぱり教団と聖教には繋がりがあるみたい。私が監査に来ることを察知してこんなことをしてくるのだもの。」

 

とアレクシアはクレアと共に尋問したことで得た情報を言う。

 

「アレクシアも人気になったってことじゃない?」

 

「嬉しくない人気よ。」

 

「さてと…後はどうやって停めるかよね。」

 

「聞き出した感じ停まったらセンサーのようなものが作動して密閉されたこれに空気が入って爆発するらしいわ。一度作動したら本人でも解除出来ない代物らしいし。」

 

どうやら空気中の酸素と化合することで爆発するタイプの代物であったことがアレクシアのお陰で分かった。

 

「ならイータが来るのを待つとしよう。やるって言ったらやってくれるし。」

 

「あんたね。いくら天才発明家だって暴走する列車に追い付くなんて出来るわけないでしょ。」

 

「まぁシドが言うなら信じましょう。」

 

とシドを信じるクレア。

 

ブラコンだなと思ったが口には出さずアレクシアも取り敢えず信じることにした。

 

列車は更にスピードをあげるがそこにいる面々の顔はどうにかなるといった表情であった。




今回はここまでになります。

ボマーを拷問するクレア。まぁ弟に危害を加えようとしたらまぁ無表情にもなりますね。

因みにクレアはベアトリクスから骨の数を教えられていたりするものの取り敢えず何となくの数字だけは覚えていたようで次々に折っていきます。
ぶっちゃけ調べても具体的な本数は変動するようなので取り敢えず大雑把ですが200弱ということにしております!


そんな得たいの知れないクレアにボマーは恐怖する中でアレクシアは逆に優しく?話し掛け常にアドバンテージを活かし教団の仕業で聖教と教団がやはり繋がっていることを知りました

次いでにその組織の上のナイツオブラウンズの名前も一足先に知りました。イータからも学園襲撃前にディアボロスチルドレンのことも聞き原作より多くのことを知り得たアレクシア。

果たしてどうなっていくのか。

そしてイータへ全幅の信頼を寄せるシドとイナリ。

果たして間に合うのか?

いつもお気に入り登録、感想、評価ありがとうございます。

感想、評価もらえるとモチベーションも上がり投稿スピードも少し上がると思います。

陰実二期も新たにPVが発表されオリアナ王国編までやるような形なので必死に追い付けるようにしたいです。

今回も読んで頂きありがとうございました!

次回も読んでくださると幸いです。


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迫るリンドブルム…暴走する列車を暴走列車が追い付き目的地へと辿り着いた一行は英気を養う。

何とか早めに投稿出来ました!

今回で列車事件は幕を閉じいよいよリンドブルムへと入っていきます!

果たしてロケットマンは間に合うのだろうか?

若干タイトルでネタバレしてますがごゆっくりどうぞ!




あれからどれぐらいの時間が経ったのか…

 

今なお走る列車にアレクシアは焦りを覚える。

 

だというのに目の前にいる男は焦り一つない様子でミツゴシ商会で最近出し始めたコーヒーを煎じて飲んでいるのだがカップを持つ手が振るえているので内心ビビりまくっていると思うことにした。

 

シドとしては落ち着きあり余裕のある風を装い滅茶苦茶動揺しているモブを演じているつもりだ。

 

クレアはそんな弟をなだめようと後ろから抱きしめておりイナリは集中して運転している。

 

下手に速度を落とせば爆発してしまう…ならばいったいどうすれば停められるのか…爆弾なんてものの知識はそれこそ爆発するぐらいしか分からないアレクシア。

 

ここに研究者の一人でも入ればと思わずにはいられない。

 

「列車を停めずに爆弾だけ取り除くったってどうすれば良いのかしらね。」

 

と呟くアレクシアにイナリは

 

「一番は真空出来る管のようなもので爆弾そのものを包み込んでしまうのが良いのですが専用の容器じゃないと難しいですぅ…でも空気に触れると爆発してしまうのなら真空状態なら爆発はしないはずです。」

 

と答える。

 

「いずれにしろそんなものここには積んでないでしょう…何処かで列車を安全に脱線させて…」

 

「でもそれをすれば鉄道自体の信用が失われてミドガルだけじゃなく他の物流にも影響が出るんじゃないかな?」

 

「…言われてみればそうね。」

 

「イナリあとどれぐらいで着きそう?」

 

「多分ですが1時間弱でリンドブルムに着くかと思われます…」

 

「成る程ね。ならそろそろじゃないかな?」

 

「そろそろって」

 

いったい?と聞こうとしたアレクシアたちに遠くからの汽笛が聞こえてきた。それも乗っている列車とはまったく音が違った。

 

「汽笛…?」

 

とイナリは自身の視力を魔力で強化すると猛スピードで接近する物体を視認した。

 

「あわあわあわあわ!?」

 

「イナリ?」

 

「ろ…」

 

「ろ?」

 

「ロケットマンですぅぅぅぅぅぅ!?」

 

「「ロケットマン?」」

 

「成る程ね。イータはロケットマンを引っ張り出したのか。」

 

「ちょっとシドロケットマンってなによ!」

 

と訊ねるアレクシア。

 

「ロケットマンはイータの発明で列車を作る際に作った謂わばプロトタイプだよ。今の列車と違って安全装置なんて付いてない暴走列車。速度も600~800キロ近く出るからイータにしか運転できない代物だよ。」

 

そうして話している内にどんどん近付いてくるロケットマン。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「漸く…追い付いたわ…」

 

とイータはロケットマンを操縦し驚異的なスピードを前を走る列車に合わせていく。

 

「アレクシア待っていてください!今いきます!」

 

「アイリス王女…貴女は…あっちの列車に飛び乗って…連結部分が…しっかり固定されているか……見てちょうだい。悪いけど……テトラ頼むわよ」

 

「お任せください!」

 

とイータが言いテトラが中心となり何やら準備をする。

 

そうして前の列車に近付いてきたところにテトラ含む二人がロケットマンの側面に器用にたちアンカーガンを放つ

 

発射されたアンカーはピンポイントに斬り離された車両の側面へと吸い込まれ固定された。その隙にアイリスは前の列車に乗り込む。

 

「姉様!?」

 

とアレクシアは姉がまさか来るとは思っておらず驚愕した。そうしてテトラたちも乗り込む。

 

「貴女…確かルーナの所の?」

 

「お久し振りでございますクレア様。色々とお話しされることはありますが今はまずこれを。」

 

とテトラは爆弾の設置された運転席の後ろを確認する。

 

「テトラさんがきてくれたんですね!心強いです~」

 

「どういうこと?」

 

「テトラさんはミツゴシ商会の技術スタッフで機械運搬から修理まで幅広くやっている部門の統括長なんです!」

 

「イナリちゃんまだ気を抜かないで。話しはこれを停めたあとでも出来るのだから。」

 

「は~い!」

 

そしてテトラは爆弾の形状を確認し作業に入る。

 

爆弾の種類がなんであれ対処できるよう様々な道具を持ってきていたイータたち。

 

そこには真空管も当然ありそれを慎重に入れていく。少しでも手元が狂えば爆発してしまうの代物を揺れる車内でするというのは無謀に思えるがテトラは変わらぬ手付きで慎重にし舞い込んでいく。

 

その手際の良さにアレクシアたちは驚嘆する。

 

そうして爆弾全てを真空管へと移し空気を全て抜き終える。

 

ホッと一息するクレアたちだがリンドブルムがすぐそこにまで迫っていた。

 

アイリスたちが列車の連結部分を固くしめてテトラがイータへ合図する。

 

それと同時にロケットマンによる全力のブレーキが掛かる

 

火花をチラシながら急激なブレーキによる衝撃が襲う。

 

アイリスはアレクシアを抱き寄せクレアもシドを抱きしめ衝撃に耐える。

 

猛烈な火花を散らしリンドブルムのホームが間近に迫る。

 

キィィィィィィィィィィィィィ…………

 

衝撃が収まった車内。

 

衝撃を緩和させるためしゃがんでいたクレアたちは身を起こすと完全に停車した列車かはリンドブルムのホームが見えた。

 

「停まった…?」

 

「はぅ~良かったです~」

 

張り積めた緊張が解けたのかぐでんとなるイナリ。

 

今までノンストップで運転し続けていたのだ。無理もないだろう。

 

「一先ず……………無事みたいね…」

 

とイータもロケットマンから降りてくるが此方も魔力を相当使ったからか普段よりもだるそうにしている。

 

「イータ殿ありがとうございました!貴女のお陰で大惨事を未然に防げました!」

 

「…乗客の避難やら……落ち着かせたのはアレクシア王女たちのお陰……私は…自分の発明が悪用されようとしたのが……気に食わないから……力を貸した……それだけよ……」

 

とイータは言う。

 

それからは慌ただしくリンドブルムの方にある治療院へと連れられるアレクシアたち。

 

その間に列車とロケットマンはリンドブルムにある整備工場へと運ばれ修理されることになり通常ダイヤに大幅な遅れが出てしまったので今回の件でのお詫びとして列車代を通常価格の半分の料金にすることとし今回の件は収まった。

 

そして治療院で一応の検査を受け一通り問題はなかったシドたち。

 

宿の方へ行こうとしたアレクシアたちだがアイリスは着の身着のままにできてしまったのと元々来る予定ではなかったので宿の予約も取れていなかった。

 

なので

 

「仕方ない………じゃあ…こっちに…くる…?」

 

途中で歩くのが面倒になりシドに担がれたイータが言う。

 

因みにイナリは治療院で見てもらっている途中疲労から寝てしまったので現在テトラに担がれている。

 

クレアたちの宿はベアトリクスから話を聞いていたガンマが手配していたのでミツゴシ系列の宿舎なため簡単に宿を取ることが出来た。

 

各々疲れを取るために部屋へと入る。

 

シドは窓から隣のイータたちの部屋へと移る。

 

「お邪魔するよ。」

 

「邪魔をするならお帰りください。」

 

「失礼しま…いやいやいやちょっと待った!」

 

とコントのようなやり取りをするシドとイータとイナリを介抱するテトラ。

 

「どうされましたか?今イータ様を介抱しイナリちゃんを愛でるのに忙しいので後にしてください。」

 

「ホントアビスでも君ぐらいじゃない?組織のボスをそんなに邪険にするの。」

 

「私が忠誠を誓ったのはマザー様とガンマ様、イータ様にです。それに比べればシャドウ殿は優先度は低めですので。」

 

「まぁいいか。それで二人ともぐっすり寝てる?」

 

「えぇ。イータ様はロケットマンをずっと走らせイナリちゃんは後ろにいつ爆発しても可笑しくない爆弾がある中での運転でしたので疲労は溜まっています。」

 

「無茶なお願いしちゃったからね。」

 

「しかしそれが最善でした。アレクシア王女含め乗客を守りそして迅速な対応は民衆から更に支持を得られるでしょう。」

 

「まぁそうだね。女神の試練どうする?」

 

「そうですね。我々は裏方になりそうです。」

 

「まぁ本来イータは関わらない予定だったし今回は休んでいてもらおうかな?」

 

「2、3日休めば問題ないと思いますがあまりイータ様を振り回さないでくださいね。」

 

「そうするよ。目を覚ましたらありがとうって言っておいてほしい。」

 

と言うとシドは窓から自分の部屋へと戻る。

 

そして数時間後に夕食になりアイリス、アレクシアには鰻重にあさりの味噌汁、クレアとシドには新鮮な海の幸で取れたてのマグロ、サーモン、海老、うに、いくらがこれでもかと乗った海鮮丼が出てきた。そこに更にレモンのハチミツ漬けが出た。

 

アレクシアはイータのところで食べた鰻重をもう一度食べれると嬉しがりアイリスは最近噂のあの食べ物かと感心し二人して鰻重に没頭しあさりの味噌汁も口に広がる海のような深い味に食がどんどん進む。

 

「やっぱりこのうなぎ何回食べても美味しいわね!」

 

「とても上品な味…これは確かに噂になりますね。それにこのあさりという貝…」

 

「えぇ最初食べないのにどうして入れるのかと思ったけどこの貝で取った出汁が口の中で広がるともっと進むわ!」

 

一方のクレア、シドは

 

「海の幸がふんだんに使われていて凄いわね。それにご飯を酢飯にしたから更に醤油とあって美味しいわ」

 

「このいくらの粒々とうにの濃厚な味わいは良いね。脂身の乗ったぷりぷりのマグロも美味しい。」

 

そうして舌鼓をうちながら言っていると何やら忙しなく動いている厨房が見えるというか現在進行形で四人の席と離れた場所に料理が運ばれてくる。

 

「………おかわり…」

 

「はい!」

 

と既にイータの前には300グラムの分厚いステーキのが乗っていた皿が7枚を越えていた。

 

「コンコ~ン、美味しいです~♪」

 

とイナリは油揚げで包まれたお稲荷さんを食べて幸せそうにしている。既に20個は完食し更に食べている。

 

「イナリたちものすごく食べてるわね…」

 

「魔力を回復させるなら食事と睡眠が一番だからね。」

 

「イータ殿もそうですが狐の娘もとても食べる娘なのですね。」

 

「余程嬉しいのか尻尾がぶんぶんしてるわね。っていうかテトラさんはイナリの尻尾をもふもふしながら配膳してるし…」

 

イータはその後追加でステーキを20皿食べ満足したのかハチミツ漬けをそのまま食し身体の健康を心配するテトラに止められるのであった

 

そうして各々英気を養い部屋へ戻るとぐっすり眠り疲れを取るのであった。

 

余談だがチルドレン1stのボマーはリンドブルムに駐屯している騎士団に引き渡されたが実は引き渡しに参加したのはシャドウガーデンの構成員でありそのまま連れ去られその姿をその後見たものはいなかったという。




列車事件が終了致しました!

今回は早めに投稿でき何とか列車事件は終幕しました。

爆弾は空気に触れると爆発するので真空にして空気に触れないように処理し列車もロケットマンによるブレーキで事なきを得ました。

ミツゴシ系列の宿舎でシドは窓から入り二人の様子を確認して相変わらずなテトラの様子に安堵しながら二人を任せるのでした。

一応テトラもシャドウには敬意はあるのですがそれでもベアトリクス、ガンマ、イータのが優先度は高いです。

そして大量の魔力を消費したイータはステーキを食しどんどん魔力に還元しイナリは幸せそうに好物を食べておりました。

そんな様子をほんわかしつつ見守りもふるテトラと再度鰻重に舌鼓をうつアレクシアと噂の鰻重を食べれて満足なアイリス。

クレアはまた豪華にしてとルーナもといガンマの過保護を思いつつシドは純粋に食事を楽しみました。

オリジナルをやろうとすると中々難しいものですね。

漸くのリンドブルム編であり女神の試練…果たしてどうなるのか。

原作と違いアイリス、クレア、イータが参戦しているのでそこら辺の展開も上手く表現していきたいですね。

今のところ女神の試練では三陣営に別れる形になりそうです。

お気に入り登録、感想、評価ありがとうございます!

UAも15万を越えこれも一重に皆様のお陰です。

出来る限り楽しんで読んでもらえるようにしていきたいので色々な感想や評価など頂けると励みになります。

次回以降久し振りにベアトリクスの方にも視点は移っていくのでどうぞ宜しくお願いします!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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番外編 おまかせサンドイッチ&抹茶バームクーヘン

異世界食堂編第2弾

アンケートで多かったアルファ編になります!

ちょっと本編が詰まったので先に番外編になります!

上手く異世界食堂側のキャラを表現できていたら幸いです。

それではごゆっくりどうぞ!

それは不思議な出会い


ディアボロス教団との戦いに明け暮れるシャドウガーデン。

 

その第一席にして癖の強い七陰を纏めるリーダーでありシャドウガーデンを巨大組織へと拡大させNo.2であるマザーことベアトリクスの姪であるアルファは

 

ミドガル王国にて展開している同じ七陰の一人で天才発明家兼建築家と言われたイータの元へと来ていた。

 

「この間頼んだものが出来たなんてやっぱり仕事が早いわね。」

 

「ん……結構面白かった……ベアト母様のいうカイロ……袋から開けたら……周りの空気の酸素と化合して温かくなる…それに合わせて肌触りの良い羽毛布団も……出来た。デルタが素材……取ってきてくれる…楽…」

 

もうじき冬に差し掛かるため何かしら暖かいものを用意できないかとイータに相談しベアトリクスが以前言っていたカイロを作ろうと素材を集め形となった。

 

更に動物の皮をなめしたり羽毛布団の材料をデルタが採ってきたものを活用しイータはその見返りに美味しくお肉を調理し働いた分のお金を手渡している。

 

デルタも美味しく食べれてクレアと一緒に食べたり買い物が出来るのを理解すると積極的に狩ったものを持ってくるようになりお金もガンマに預かってもらうようにし必要な分を手渡ししている。

 

「そうね。あの娘は美味しく肉が食べれるって喜んでたわ。それに貴女からもらったお金もクレアと一緒に何か食べるって貯めているのよ。」

 

「そう…なら良かった……」

 

「そういえばイータ。今日イナリとシェリーはどうしたのかしら?」

 

「あの娘は……アレクシア王女のところへ……遊びに行ってる…どうにも…誘われたらしい…シェリーはガンマのところ……商売の勉強してる……」

 

「成る程、イナリも仕事が早いわね。アレクシア王女の動向を探るのと王族周りの調査も兼ねて行ったのね。シェリーは将来の自分の研究を悪用されないようにといったところかしら。」

 

「…………そうじゃないけど……まぁいいか…」

 

と一部勘違いしているものの訂正するのも面倒だとイータは特に否定しなかった。

 

「それでイータ、血の女王の血液に関してどうなの?」

 

「…ん…」

 

「悪魔憑きとの関係性はかなり高いと貴女の研究結果から分かっているわ。私たちにもその力の一端を行使する事が出来れば」

 

「ん~……」

 

「イータ?」

 

「ん…?」

 

「なんだか落ち着きがないというか話を聞いてないわね」

 

「ん…そろそろだから…」

 

「そろそろ?」

 

と言っているとベアトリクスもやってきた。

 

「イータ…とアルファもいるわね。」

 

「伯母様!?今日はどうしたの?」

 

「今日は7日に1度のドヨウの日だからね。」

 

「…うん。お金も持ったし…ベアト母様との食事…楽しみ…アルファ様も…行く?」

 

「もしかしていつかにシャドウと一緒に持ってきたあの料理のこと?」

 

アルファは考える。今のところ火急の用事はなく小腹も空いている。それに久し振りの伯母様との食事……

 

「私も行くわ。」

 

「それなら戸締まりをしましょう。」

 

とイータがそのまま店をオープンからクローズへと変え白衣を着る。

 

そうしてイータの研究室の地下へと進んでいくとそこには

 

「…扉?しかもあんな真ん中に…」

 

「それじゃあ行きましょう。」

 

とベアトリクスは扉を開く

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

カランカラン

 

「いらっしゃいませ~」

 

「久し振りねアレッタ。」

 

「ベアトリクスさんお久し振りです!あっ!イータさんも!」

 

「うん…久し振り…最初にこの間言った…パエリアを…!」

 

ジュルリとイータは新たな貝料理を食べたいと言う。

 

「はい!店長も朝から準備していたみたいですから大丈夫です!…とそちらの方は?何だがベアトリクスさんに似てるような?」

 

「えぇ姪のアルファよ。都合があったから一緒に来たの。」

 

「そうだったんですね!」

 

「角?…というよりもこの内装…とても綺麗ね。椅子も凝ったもので上の飾り付けも簡素だけど味のある…」

 

「それが……異世界食堂…ここは私たちの世界とは違う所…インテリアとか…参考になる…」

 

「異世界食堂…」

 

その響きは自然と府に落ちたアルファ。

 

(いらっしゃいませ。)

 

と頭のなかに声が響きそちらを向くと刹那途轍もない悪寒を感じたアルファ。

 

「久し振り…ねぇ少しだけ血とかもらえない?」

 

(ダメ。血の一滴でも人間やエルフにとっては猛毒になりかねない。)

 

「残念…」

 

とイータは言う。

 

「ちょっ…イータ!」

 

「大丈夫。此方の人はこのお店を守る…守護神みたいな人、まぁ気配は霧の龍なんて目じゃないけどね。」

 

「伯母様が言うなら…」

 

「(戦いになったらとてもじゃないけど敵いそうにない…逃げるのでも命懸け…七陰でも半数生き残れるか…シャドウでも…)」

 

「流石にあれには…勝てない……それになにもしなければとても良い人…シャドウとベアト母様でも無理…」

 

とアルファの心中を当てるイータ。

 

「いらっしゃい…あぁ久し振り。」

 

「うん久し振り店長。ちょっと老けた?」

 

「はっはそんな数週間じゃ変わらないさ。っとそっちの娘はもしかして?」

 

「えぇ姪よ。私にとっては娘同然。」

 

「アルファよ。貴方が店主?」

 

「あぁ。成る程目元がそっくりだ。元気にしてて良かった。」

 

「イータ。伯母様嬉しそうだけど…」

 

「色々…あって…ベアト母様にとって特別な人…でも恋愛感情というより…親愛の方…」

 

ベアトリクスにとっては懐かしくとても安らぐ場所で生前より親交がある分特別感は強い。

 

「それより席に座りましょう。いつまでも立ってたら迷惑だもの。」

 

と三人は席に着く。

 

「メニューです!」

 

「ありがとう。」

 

そうしてアルファはメニューを開くと見慣れた文字ではなく

 

「これって…伯母様のいたところの文字…よね?」

 

とアルファはベアトリクスから習っていた日本語という文字だと気付いた。

 

「そうよ。色んな物があるしとても美味しいわ。」

 

「アレッタパエリアと…あとこの…シーフードフライをお願い…」

 

「かしこまりました!」

 

「それなら私は…焼そばとシーフードチャーハンを」

 

とベアトリクスとイータは決めた。

 

「(異世界…ということは私たちの世界にはないものが様々あるということ…)」

 

とアルファの目に止まったメニュー。

 

「このお任せサンドイッチというのは?」

 

「それですね。店長のおすすめをパンに挟んだ物で色んなサンドイッチを楽しめる物でこの間メニュー入りしたんです!」

 

「店長のおすすめ…ということは味は保証できる…それでお願いするわ。」

 

「かしこまりました!あとお水もどうぞ!」

 

「?水は頼んで」

 

「ねこやはお水はタダなのよ。」

 

「そう。凄いわね…」

 

「ごゆっくりどうぞ!」

 

とアレッタは下がる。

 

そうして待っている間にどんどん客が入ってくる。

 

とかげの亜人に羽の生えた小さな生物にライオンの亜人に自分達と同じエルフ、伯母様から聞いた物語でいう魔法使いのような人に剣を持ったとても強い雰囲気の剣客。

 

(色んな人種が入ってきて…敵対することなく食事を…それに皆笑顔だわ…)

 

いまだに自分達の世界では差別などがあり人やエルフ、獣人…が争いあっている…

 

「ここは…私たちが目指す目標に近いのね。」

 

「そうね。美味しい料理は人の心を豊かにする…そこに人種は関係ないもの。」

 

「それに……異世界の料理…美味…私たちの世界でも実現出来るもの多い……」

 

そう言いながら少しすると料理が運ばれてくる。

 

「お待たせ致しました!おまかせサンドイッチです!」

 

そこに出てきたのは色取り取りの具材が挟まれたサンドイッチ。

 

ソースの香る麺の挟まったパンにフルーツを挟んだもの、チキンの挟まったサンドイッチなど様々だ。

 

「漸く来たわね…!」

 

「それじゃあいただきます。」

 

「「いただきます」」

 

(ごゆっくりどうぞ)

 

「凄いわね…サンドイッチは私たちの世界にもあるけどこんなに豪華なものは…」

 

そう言いながらアルファはまずはソースの香る麺…ヤキソバを挟んだサンドイッチを食す。

 

「…これは…!パンと味の濃い麺が合わさって…程よい味わい…」

 

今度はテリヤキチキンの挟まったサンドイッチ

 

「柔らかい…!少し噛んだだけでこんなにも肉汁が溢れてしかも甘辛いタレをたっぷりつけたテリヤキチキンの薄切りとキューレの薄切り。

 

そして生の新鮮なオラニエを挟まれて、それがバターと辛子を塗ったパンと良く合うわ!」

 

成る程これは確かに異世界だ。こんなにも味わい深い料理は伯母様以外では初めてだ。

 

そうしてフルーツサンドにも手を伸ばしこれまた果実の甘い味わいと少し酸味の効いたフルーツも更に食欲を掻き立てる。

 

気付けばアルファはもう一皿頼み今度はメンチカツサンド、エビフライサンド、イチゴサンドが来てそれらも美味しく頂いた。

 

「こんなにも美味しい料理は伯母様以外では初めてだわ…なんて美味しいのかしら。」

 

「とても美味しい……!」

 

「いつも変わらない味わい…心が落ち着くわ。」

 

「どうだった?」

 

「えぇいつもありがとう。」

 

「美味しかった…!」

 

「優しい味わいで美味しかったわ。」

 

「あとはいつものだな。少し待っててくれ。今用意する。っとそうだ、実はな」

 

と店主は翼の生えた子犬マークの箱を取り出した。

 

「これって…もしかしてフライングパビーの?」

 

「覚えててくれたんだな。そうだ。あいつにも新しい世界で元気にやってるって伝えたらこいつを渡されてな。」

 

猫屋ビル1階…洋食のねこやの真上にある翼の生えた子犬の看板が目印のケーキショップ『フライングパピー』

 

その店の店長であり、店主の幼馴染であり生前ベアトリクスも何度かお世話になっていた場所である。

 

そうして箱から出されたのはバームクーヘンだが通常のバームクーヘンと違い少し緑がかったものだった。

 

「これってもしかして!」

 

「ケーキ……?に似てる?」

 

「どちらかといえばお菓子にも見えるわね。甘い匂いだけじゃなく上品な香りも…?」

 

「抹茶バームクーヘン。あいつの力作だ。お代はいらないから食べてやってくれ。」

 

と店主は言いストロベリータルトの持ち帰りを詰めるため一度下がる。

 

「それじゃあ折角だもの頂きましょう。」

 

「抹茶…というとあの……ちょっと苦めなやつ……?」

 

「伯母様が育てていた茶畑の…緑茶のように苦いのかしら…?」

 

アルファは苦いものが苦手でありベアトリクスの作る緑茶だけは苦手であった。しかし折角の好意を蔑ろにする訳にはいかない…意を決してアルファは口の中へと運んだ。

 

それを食べた瞬間アルファの中の抹茶という概念が変わった。口のなかで甘さと仄かな苦味が広がりしかしその苦味も上品なされど甘さを邪魔することなくそれでいて甘さを引き立てるスパイスのような例えるならばマグロバーガーのようなジャストマッチする具材を合わせて全くの未知の味わい。

 

「これが…異世界…!」

 

「アルファ様……いつの間に…抹茶バームクーヘン恐るべし…」

 

抹茶バームクーヘンは気付けばアルファの口の中へ全て吸い込まれていた。それほどまでの衝撃。

 

「美味しかったみたいね。」

 

「…意外なアルファ様の顔…ゲット……」

 

そしてアルファは厨房の方にいるだろう店主の方へいきチラッと顔を覗かせる。

 

「あの」

 

「おぉどうしたんだ?」

 

「その…さっきのってまだあるかしら…?出来れば7…8つ程頂きたいのだけれど。」

 

その言い方はやはり似ているなと店主は思い微笑みながら

 

「わかった。丁度あるから用意するさ。その前にもう一箱いるかい?」

 

そうして満足そうにアルファは抹茶バームクーヘンを食べ代金をしっかりと払いベアトリクスはストロベリータルトをアルファは抹茶バームクーヘンを大事に抱えねこやを後にするのであった。

 

そうして戻ってきたベアトリクスたち。

 

「扉が消えた?」

 

「あそこには7日に1度行けるの。その行ける日はあちらの世界のドヨウで来週また扉は現れるわ。」

 

「…凄い美味しかった……ベアト母様ストロベリータルト冷蔵庫にしまう…?」

 

「そうしましょう。ゆっくり味わって食べるわ。」

 

「私もそうするわ。抹茶バームクーヘン…なんて美味しいものなのかしら…こんなに美味しい物を二人していやシャドウを含めると三人で食べていたなんてずるいわ伯母様」

 

と膨れて言うアルファをベアトリクスは指先でツンとする。

 

「ごめんなさいね。中々ドヨウの日に予定が合わなくて…今度も一緒に行きましょう。」

 

「…うん…そうする…」

 

と機嫌を直したアルファだがふと気付く。

 

「イータ。貴女前から行ってたのよね。それっていつから?」

 

「扉を…発見して……何回行ったっけ…?」

 

「シャドウも一緒だった?」

 

「何回かは…でもベアト母様と一緒のが多い……シャドウは邪魔だし…ボソ」

 

と何回か行っていて大好きなベアトリクスと二人きりで食事をするのを密かな楽しみにしているイータはシャドウを邪魔者扱いしていたり学園が丁度休みになるときは仕方なく…仕方なくシャドウも連れていっている。本当に仕方なく。

 

「イータ…まさか伯母様を独占しようとわざと声を掛けなかったなんて無いわよね…?」

 

とアルファはイータへと笑顔でしかし目が笑っていなかった顔で詰め寄られる。

 

「………………………バレた…残念…」

 

「イ~~~タ~~~!!ずるいわよ!私だって最近伯母様と二人で食事していないのに!次からは私も連れていくこと…分かったわね!」

 

「…不覚…」

 

とアルファはイータの両頬をつまみながら言いイータは残念そうに言いその姿を見て微笑ましく笑うベアトリクスなのであった。

 

その後異世界食堂には帰り際ストロベリータルトを頼むエルフの女性に抹茶バームクーヘンを頼む姪っ子エルフが追加されるのであった。




番外編はここまでになります!

アンケートで断トツだったアルファが異世界食堂へとベアトリクスとイータと行くお話でした!

時期的には無法都市での一件の後ぐらいかそれぐらい…

異世界食堂でエルフならハーフエルフのヴィクトリアやファルダニアも絡ませやすいしそういった試みも今後試していけたらと思います。

マスターオブガーデンでのプロフィールにて苦手なものが苦いものなアルファですが抹茶バームクーヘンはとても美味しく今までの常識を壊され異世界食堂に来て最後には伯母のベアトリクスと同じような注文の仕方で大量に買っていき保存しつつ味わいながら食べて

デルタが良い匂いとつまみ食いしてはアルファが怒る未来が見えます。

そんな異世界食堂編次回作るなら次に多いデルタになりそうですが一人で行くと不安なので保護者にクレアとガンマが付いていくことになりそうですね。

これ以降アルファも異世界食堂へくるようになれば他の常連客からは抹茶バームのお嬢さんと呼ばれそうですね。ベアトリクスならイチゴタルト、イータは貝料理を主に食べたりするから貝料理のお嬢さんですかね。

そして実はイータが密かにベアトリクスと二人きりで食べれると秘密にしていたもののアルファにバレました。

そんなアルファは嫉妬しつつも自分も連れていくようにしっかりと言いイータはイータで伝え忘れたと惚けそうですので7日に1度伺うようになることでしょう。

さてとそろそろ10月へ差し掛かりいよいよ陰実も二期が迫ります。血の女王を巡る無法都市での一件、その先のオリアナ編も気になるところですね。

FGOではワンジナが早い登場!夏のイベントからそんなに経ってないのにすぐ実装されるとは思いませんでした。

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今回も読んで頂きありがとうございました!

次回も読んでくださると幸いです。


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親友たちの話を聞く悪友の姉とのんびり娘は怠惰に湯に浸かり疲れを癒す。

リンドブルム編閑話になります。

今回はクレアとイータが温泉に浸かります。

そしてアニメ二期がついに始まりました!

二期放送後初投稿…

それではごゆっくりどうぞ!


列車事件の夜寝静まった頃

 

ミツゴシ御用達の宿舎には温泉も存在している。

 

朝早くから夜遅くまで入れるようになっていて開放的な露天風呂は人気があり温泉目当ての者も入れる仕組みだ。

 

そんな温泉に浸かる人影があった。

 

「ふぅ~良いお湯ね…目が覚めちゃってどうしようかと考えたけどこういうのも良いわね。」

 

今回の立役者でもあるクレアである。

 

「ここもルーナが経営している所の一つらしいしホント気付けば遠くに行ってるわね。リリムさんも師匠の手伝いをしてるみたいだしマナは………狩りをしてるのかしら…?

 

そういえばマナだけ具体的に何してるか聞いたことがなかったような…?」

 

「そうね…その狩った物は毛皮とかは……ミツゴシでなめしたりして……財布や良品質のコート…キバとかの素材もミツゴシ経由で

 

武器屋に卸したり…工芸品の一部にしてるから……結構貢献しているわ。」

 

「姉として鼻が高いわ…って誰!」

突然のことにバシャッと勢い良く立ち上がるクレア。

 

そのクレアの独り言に呟き返している人影は

 

「温泉ぐらい…静かに浸からせなさい…他にいたら……迷惑」

 

「あんたは発明家の…?」

 

「スヤ…」

 

「って寝たら危ないでしょ!?」

 

と眠りかけて湯船に沈みそうなイータをすかさず引き寄せるクレア。

 

「なんで貴女温泉に浸かってるのよ?」

 

「それは…お互い様…」

 

「だとしてもそんなに眠いなら入んなくても」

 

「…そうやって面倒で何日間か入らなかったら……ベアト母様に怒られた…ずっと気を張り積めてても良いこと…ない…効率が悪くなるって…湯に浸かれば…心も洗われる…」

 

「師匠なら確かに言うわね。私との修行も効率的な魔力操作と魔力の押さえ方とかも習ったし…そういえば聞きたかったけど師匠の娘ってことは…貴女もその悪魔憑きだったの…」

 

とクレアは溺れないようイータを抱えながら何処に目があるか分からないのもあり小声で問い掛ける。

 

「…そう、ベアト母様に助けられた……多分私が最初…それから…ルーナ、マナ、リリムって順番……」

 

と他の七陰のことは少しぼかしながら言うイータ。

 

七陰内での席次はシャドウガーデンに入った順番であるが最初にベアトリクスに波紋で助けられたのはイータであり、それから暫くしてアルファはシャドウと共に助け後は席次順である。

 

「貴女もだけどルーナたちは…師匠の手伝いをしてるんでしょ?それっていったい…」

 

「それは私の口からは……言えない…でも貴女もベアト母様から色々と教わってる…」

 

「そうね…師匠って一見完璧に見えるけど意外と私服がダサかったり抜けてる時があって色んな豆知識を知ってる人だわ。」

 

とクレアはベアトリクスのこれまでのことを思い浮かべる。

 

「…ベアト母様…いつも同じ服着てる…」

 

「そういえば何時も会うとき同じような格好ね。」

 

「動きやすいからって……同じやつを…何着も持ってて…着回してる…」

 

「嘘でしょ!?でも師匠ならあり得る…」

 

とあまり服装に拘らない人だということはクレアも分かっていた。

 

「何でもかんでも私たちを優先してるから…おしゃれ…あんまりしない…だから…ルーナはそういうのもあって洋服を作ったりしてる……私たちからの贈り物なら絶対着てくれるから…」

 

「あの娘らしいわね。」

 

「もう一人の娘が服を選んでる…センスは一番良いから…」

 

そう服を作ったりはガンマが行い選ぶのは社交界やらで芸術の国オリアナへ行くことの多いイプシロンが見繕っている。

 

「あとマナは元気にして…してるわね。」

 

「…元気は人一倍ある……大物を狩りに行って…素材も沢山持ってくる…私的に…買い取る…」

 

「…それって大丈夫なの?そのマナってそういうこと苦手じゃない?」

 

とお金のやり取りなどのお金の計算は大人でも難しい時がある。それをマナが出来るとはクレアも思えず思わず尋ねてしまう。

 

「そこはガン……ゴホンルーナが代わりに管理してる……あの娘貴女と買い物して食べ歩くって…貯めてるのよ…」

 

と眠たいイータはうっかりガンマ呼びしそうになるものの訂正しマナの現状を言う。

 

「流石マナね!シドにもそれぐらい愛想があれば良いのに…」

 

「あれにそんなもの…求めても…時間の無駄……」

 

「って貴女ウチの弟に対して物凄く言うわね。この前も思ったけどシドといる時だけ口悪くなるわね。あの子の何が不満」

 

「発明品色々と壊された…普通に使えば壊れないはずの物からカゲノーのおじさんたちにプレゼントした洗濯機試作1号もどれだけ回るかって魔力を込めすぎて爆発させてお風呂場も広く改装した

 

そしたら景観をダメ出しされムカついたから爆破してカゲノーおばさ…ゴホン…お姉さんに反発性のあるマットレスプレゼントして…勝手に寝心地を確かめようとジャンプしたら壊されて

 

お礼参りにあいつのマットレスを爆破してカゲノー家に送った魔道コンロももっと火力をとかで魔力を込めすぎて爆発させて…」

 

「あの子が迷惑掛けてたのね…まったくシドってば」

 

と普段の口調が何処にいったと思える程の早口かつノンブレスで言いまだまだ言い足りないイータを止めたクレア。

 

そして実はクレアが学園へ行ってから度々カゲノー家へとお邪魔していたイータはベアトリクスの娘というのもありカゲノー夫妻から歓迎されそのお礼とばかりに色々と改造して住みやすい住居になり

 

更にカゲノー男爵へ試作の育毛剤を上げて数ミリだが髪が復活した男爵はイータに感謝し夫人へは日焼け止めや香水、石鹸、化粧水など様々な贈り物をしてもう一人の娘のように可愛がっていた。

 

最初におばさんといったら無言の圧力を感じたためお姉さんというようになったイータ。

 

シドとのやり取りも微笑ましく見守り本当に娘にしようとシドとの縁談など外堀を埋めようとしてたりするのはイータも知らぬこと。

 

「まぁあの子は昔からそうだものね。強いのにそれを隠そうとするし…本当はあの子は誰よりも強いっていうのに」

 

「あれは…性分…だから仕方ない…」

 

「仕方ないで済ませたらあの子はどこか遠くに行ってしまう…そんな気がするのよ。」

 

「ふーん…」

 

(意外に見てる…あいつ的には陰の実力者になりたい…だから普段の実力は……普通の魔剣士程度に押さえてる…と思ってる…アレクシア王女からどう見られてるか気付いてない…

 

普通の魔剣士なら私や…ベアト母様みたいな繋がりはない……そして学園襲撃でのローズ王女の件は……まぁ外交問題ひいてはシャドウガーデンの評判に……関わるから仕方なかったとはいえ目立ってしまった……

 

そうするとクレア的には弟はこんなに凄いというような評判を流しかねない…それはあいつがなりたい陰の実力者像とは違う…ここは助け船を出しておこう…)

 

「まぁそれなら…それで良いでしょ…あいつが凄いって誉められなれてないし……見守ってやりなさい…取り敢えずベアト母様の用件のが重要だし…」

 

「そういえば師匠からリンドブルムに来てって言われたけど待ち合わせ場所を決めてないわ!?」

 

「当日になったら……ここの従業員が教えてくれるわ……」

 

そう言いながら湯に浸かるイータ。

 

「それなら良いけど…って貴女いつまで寄りかかってる積もり?」

 

と先程からクレアに寄りかかってるイータ。

 

「楽だから…駄目?」

 

「まったくしょうがないわね。」

 

と姉属性なクレアは末っ子属性のイータを放っておけずそのまま温泉で寛ぐ。

 

(それにしても…師匠もこの娘もだけど不思議な呼吸をしてるのよね…そういえばルーナとマナとリリムさんも同じような…シドは…何時も不思議なことしてるから正直分からないわね。

 

ってそういえば母さんもこの娘気に入ってるのよね…それにシドも満更でもないみたいだし、何処の馬の骨とも知れない令嬢なんかより発明家として名声を得てるこの娘なら任せられそうだし

 

…うん。今度の休みの時に聞いてみましょう。そうなると義妹になるのよね……ありね!)

 

「ってあら?貴女この傷どうしたの?」

 

とクレアはイータの脇腹にうっすらとした傷があることに気付く。見れば他にも傷が見受けられた。それはシドと共犯になると誓い改めて陰の実力者となろうと決めた日の名誉の傷…なのだが

 

「…これ?…色々あってあいつに傷物にされた…まぁ和解してるから…平気」

 

というイータなのだがクレアからしたら女の子に傷をしかも師匠の娘に付けたとなれば一大事だ。

 

「あ、あのバカシド!!女の子を傷物にするなんて!!!大丈夫よ!シドが何かしてきたら言ってちょうだい!私が制裁するから!」

 

「え?いや…別に」

 

「こんなにして…あいつに責任取らせないと!」

 

「別にあいついらないし…気にしない」

 

「気にするわ!未来の義妹だもの!帰ったら家族会議しないと!お姉ちゃんに任せなさい!」

 

「…面倒…だから…シドに放り投げよう………」

 

といつの間にか義妹判定でOKが出てしまったイータ。

 

更に二年前にシドと命を掛けた戦いで付いた傷を見てそれをしたのが弟だったことを聞きクレアの姉パワーに火を付けてしまい外堀を埋めようと実家に帰ったら家族会議が決まってしまい面倒くさくなったイータは日頃の恨みを込めシドに放り投げることにしたのであった。

 

そんな一幕を経て夜は更けていくのであった。




今回はここまでになります。

温泉に入っていたクレアはイータに遭遇しました。

何だかんだこの二人同年代なんですよね。

そして普段のガンマやデルタのことを話し、流石というクレア。

誰もいない場所なのでクレアは思いきってイータへ悪魔憑きだったかを訪ね肯定するイータ。

クレアからしても師匠たるベアトリクスは尊敬する存在であり完璧ではないがとても強く色んなことを知っている人であります。

そしてデルタの金銭事情はガンマがしっかりと管理しているので安心するクレア。

マスターオブガーデンでのハロウィンイベントにてミツゴシ商会の信用もありツケ払いをしてとんでもない金額になってしまうこともなさそう……いやお金が足りなくなったらガンマにツケといてと言いそうな気がしてきます…

そしてイータのシドに対する愚痴が…

まぁ発明品の数々を壊されたりしてますからね。

そしてオトン・カゲノーとオカン・カゲノーにも気に入られているイータ。

オカンからはシドのお嫁さんにと本気で外堀を埋めようと頑張っていてオトンは育毛剤パワーもありいつでもウェルカムという感じですね。

住居も改造して賊に攻められても防衛システムで撃退出来るほど。

そして姉属性なクレアは末っ子属性のイータを可愛がり…二年前に死闘を繰り広げた傷を見て責任を取らせると言われるわお姉ちゃんに任せなさいなど姉を名乗る不審者になりかねないクレア。

そしてイータは、考えることを止めてシドに放り投げることにしました。

何時もイータに放り投げているバチが当たりました。

さて陰実二期無法都市編が始まり七陰とのやり取りやジャガーノートやユキメの動く姿も凄い良かったです!

次の話が楽しみです。

感想、評価、お気に入り登録、皆さまありがとうございます!

なるべくスラスラ進められるようにしていきます!

感想くるとモチベーション上がって少し投稿スピード上がると思うのでどんどんお願いします。

今回も読んで頂きありが

「ちょっと作者?」

あれクレアさん?どうされ

「あんたのせいで妹が傷物にされたっていうからそのお礼参りよ。」

いやあれはSS上、仕方なくでして

「仕方なくで妹を傷物にしたですって!!許さないわ!」

というか貴女イータの姉じゃないでしょ!

「私はお姉ちゃんよ!!」

うわっ姉を名乗る不審者!

ちょっまっ斬撃やら無音で迫ってこないでくださいよ!?

「うるさい!さっさと斬り刻まれなさい!」

死んでたまるかぁぁぁぁぁぁぁ

「全力でお姉ちゃんを遂行するわ!」

と作者を追いかけていってしまったクレア。

「まったく…仕方ないわね…何時も見てくれてる読者の人…ありがとう…こんな作品だけどこれからも…宜しく…」

代わりに終わりの挨拶をしてスヤと布団を敷き眠るイータであった。


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陰の園の盟主は昔したツケでピンチに陥るが何とか退け第2王女と共に聖地を観光する。

列車事件から一夜明けた翌日になります。

シドにとってある意味今まで生きてた中での一番のピンチ到来。

それではごゆっくりどうぞ!


シドの目覚めはとても良いものだった。

 

温泉に入り湯に浸かる……

 

僕は昔にイータにも言ったことがあるがどうでも良い好きなものと嫌いなものを分けてそれ以外は切り捨ててきた。

 

イータに言われそういった切り捨ててきたものも自分なりに拾っていくなかでどうでも良い好きなものの中にも僕にとって必要で好きなものを見出だせた。

 

それが温泉に浸かるということだ。

 

前世の僕には余裕のない日々があった。風呂に入るのも時間の無駄だとしかしモブとして臭うなんて目立つことは避け最低限シャワーは浴びていた。

 

右ストレートで核を弾き飛ばすなんてことをバカ真面目に考えて幾度となく壁にぶち当たった…

 

種としての限界…そう感じるしかなく停滞の日々を送った。それを救ってくれたのは無駄と切り捨てた湯に浸かるということであった。

 

そうだ。無駄と切り捨てたものにも大事なものはあった。それに気付けたのはきっとイータのお陰なんだろう。

 

湯に浸かっているとガラガラという音がするが気にせず浸かる。

 

入ってきたのはアレクシアだったようでそういえば朝の時間帯は混浴にしていたんだということを今思い出した。

 

まぁ別段問題ないと思う。

 

ってそういえば友人関係もイータのお陰なんだろうな。

 

「貸しきりと思ってたけどシドも入ってたのね。」

 

「まぁね。温泉は好きだよ。心が洗われて気持ちを整理しやすくなるし余裕が生まれる。」

 

「確かにそうね。ただのお湯なのにこうした風景がまた良いものね。シドは予定とかどうするの?」

 

「そうだね。取り敢えず今日はぶらぶらするよ。アレクシアは?」

 

「私は明後日が監査だから今のうちに巡れるところを巡るわ。」

 

「監査?」

 

「聖教のことでね。教団が癒着している可能性も含めて姉様と一緒に行くわ。」

 

「大変だね。」

 

「貴方さえ良ければ紅の騎士団に入ってほしいけど?」

 

「遠慮しておくよ。田舎貴族には重いよ。」

 

「それを言ったらクレアさんはどうなるのよ」

 

「姉さんはまぁベアトさんから師事を受けてるしね。」

 

「というかそれを言ったら貴方も師事してたんじゃ?」

 

「色々あって向いてなかったから辞めたよ。」

 

と適当に誤魔化すシド。

 

「勿体ないわね。武神様から直接師事できるなんて夢のまた夢なのに。」

 

そうしてアレクシアと少し話し込みシドは温泉から上がる。

 

そして風呂上がりに牛乳を一気飲みし朝食へと向かう。

 

風呂上がりの牛乳のくだりを見ていたアレクシアは真似をしてみて意外に気に入った模様。

 

優雅に朝食を楽しみその後ふらふらする…

 

「そんな風に思ってた時期があったな~」

 

とシドは目の前の般若を見てそう言う。

 

「シド…あんた師匠の娘のイータになんてことしてるの!!!しかも女の子を傷物にして責任を取らないなんて姉として恥ずかしいわ!!」

 

般若クレアは前日の夜にイータから聞いた話で既にヒートアップしていて手が付けられそうにない状態だ。

 

「ひゃわっ!?は、は、般若ですぅ~~~」

 

とイナリも驚きアイリスの後ろに隠れる。

 

肝心のイータはクレアに抱えられてしまい身動きが取れない。

 

「クレアさん!?お、落ち着いて」

 

「アイリス様私は落ち着いています!これは妹を傷つけた弟への説教です!」

 

「いや……妹じゃ…ない…」

 

「姉さん、話を聞い」

 

「あんたが悪い!」

 

「いやまぁそうなんだけど」

 

と埒が明かないと判断したシドは180度回転して逃走を開始。ついでに延長にいるアレクシアを抱える。

 

「ちょっ!?シドなんで私まで!」

 

「あぁなった姉さんの相手はめんど…だる…疲れるから」

 

「本音駄々漏れじゃないの!?」

 

「待ちなさい!今度という今度は許さな」

 

「………………仕方ない…クレア姉さん…?」

 

「何かしらッ?」

 

とイータは静止の意を込めて言うと先程までの般若が引っ込み綺麗な笑顔を見せるクレア。

 

「と、止まりましたね…」

 

「なんだかご主人様と急激に仲良くなってますぅ」

 

とアイリスの後ろに隠れているイナリの尻尾をみてアイリスは触りたくなる衝動を抑える…のだが

 

「コン?アイリス様どうされました?」

 

きょとんとするイナリ…

 

「か、可愛い…!イナリさん触って良いかしら?」

 

「良いですよ~」

 

とアイリスはイナリの尻尾をもふり幸せな気持ちになるのでした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方のクレアから逃走したシドはアレクシアを途中で下ろしリンドブルムを歩いていた。

 

「まったくいきなりで驚いたじゃないの!」

 

「ごめんごめん、お詫びに何か奢るよ。」

 

「一番美味しいのを頼むわ。まったく…でも悪くなかったわ…」

 

と最後の方はボソッと呟いたアレクシア。

 

そうしてふらりと歩いているとあるものが目に入り

 

「それならアレクシアあれなんてどうかな?」

 

「なにかしら?」

 

とそのままそのお店へと入り込む。

 

「ミツゴシ系列で良かったよ。」

 

そこはミツゴシが新たに展開した蕎麦屋であった。

 

「ここお蕎麦屋よね。普通のお蕎麦なら私だって食べたことあるわよ。」

 

「ミツゴシのはコシがあってのど越しも良いそして極めつけはなんと言っても!っとこれは後のお楽しみにしておこう。」

 

「勿体ぶるわね。いいわ。そこまで言うなら食べましょう!」

 

とシドは天ぷら蕎麦を注文しアレクシアも同じものを頼む。

 

リンドブルムに来ることは知っていたがまさかシャドウ様が自分のお店にきて一番自信のあるメニューを頼まれた!

 

と全身全霊を込めてリンドブルムで店長を任されたシャドウガーデン構成員たる店長は己の命を掛けるつもりで渾身の力で蕎麦を打ち天ぷらは今朝取れたばかりの新鮮な魚にちくわ、山菜、さつまいも天、海老天を最適な温度で揚げる!

 

その気迫は店内にも伝わっているようで

 

「なんというか気迫が違うというかやっぱりミツゴシは品質にこだわりを持ってるわよね。」

 

「彼女らはプロだからね。他のお店に負けないものを持っているのさ。」

 

そうして数分経ち

 

「お待たせ致しました!店長渾身!冷やし天ぷら蕎麦でございます!」

 

「ありがとう。これは…凄いわね。衣が黄金に輝いているような上品さが伝わるわ。それにこの蕎麦…まるでこの世の全てを詰めたと言わんばかりの凄みがあるわ。」

 

「それじゃあ食べようか。」

 

「「いただきます。」」

 

と従業員一同見守る中で蕎麦を啜る音だけが響く…

 

「!美味しい!このお蕎麦コシがあるのに喉をつるんと通るすべらかさ…それにこの汁もお蕎麦の味を引き立てているようだわ!」

 

「コシがあり風味があり、そしてこの喉を通る極楽…うまい。」

 

後ろで従業員たちがハイタッチして喜びを分かち合っている。

 

「あとは天ぷらよね。」

 

「アレクシアまずはそこの塩で試してみな。」

 

「ただの塩じゃないの。」

 

「騙されたと思って。」

 

「仕方ないわね。」

 

と塩を掛けまずはさつまいもを一口。

 

サクッ!

 

「これは!衣に閉じ込められた味わいが口で一気に広がった!?それにさっぱりする味わい…そうか!塩だわ!塩が天ぷらの味を更に引き上げているんだわ!」

 

「その後に汁を潜らせてみな。」

 

とアレクシアはシドの言う通りにする。

 

「!汁の濃い味とさっぱりした塩っけと濃い汁に負けない天ぷらの味!これは味の三段打ちだわ!!」

 

「うん…美味しいね。最初に塩のさっぱり感を味わい、天ぷらそのままの味を楽しみ、最後に汁に潜らせ濃い味との兼ね合い…見事だね。」

 

と前世でも蕎麦は食べていたがここまで美味しかったかと聞かれればNOと答えるだろうシド。

 

そうして最後の一口まで楽しみ食事を終えた会計するシド。

 

「先に外、出ててアレクシア。」

 

「分かったわ。ご馳走さま。とても美味しかったわ!」

 

と笑顔のアレクシア。

 

そうして扉を閉めて

 

「店長はいるかい?」

 

と尋ねたシド

 

すぐさま現れる店長

 

「い、如何でしたでしょうか!?」

 

「そんな緊張しなくて良いよ。」

 

と言うシド。

 

「とても…とても美味しかったよ。僕が食べた蕎麦の中で一番良い味だった。」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

「現状に満足せずさらに励むと良い。期待しているぞ。」

 

「しゃ、シャドウ様お代は!」

 

盟主からお金は受け取れないと言う店長だが

 

「あのうまい蕎麦に金を払わぬなどそれはその研鑽に対する侮辱となる。食と真摯に向き合いこの味を引き出したのだ。もうお前は無能ではない…胸を張れ!誇りを胸に精進するのだ。」

 

とシャドウモードで従業員を褒めたシドはお店を後にする。

 

その間従業員たちは深く頭を下げ続けるのであった。

 

「遅かったじゃない?」

 

「まぁ色々あってね。」

 

「それじゃあ他のところを観光しましょうか。」

 

「そうだね…それにしても大輪の花が咲いたものだ。」

 

とアレクシアはシドを伴いリンドブルムの町へと再び繰り出すのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ある構成員の独白

 

私はリンドブルムでのシャドウガーデンの数ある拠点の一つでミツゴシ支店を任された。

 

私は昔から何をやっても優秀な兄と比較され両親から見向きもされずいないものとされ無能と呼ばれ続けてきた。

 

そんな私が悪魔憑きを発症し最後ぐらい役に立てと教会へ売り払われた…

 

私の人生って…なんだったんだろう…

 

何もかも諦めた…でも私は武神様とシャドウ様に救われた。

 

でも…私なんかに何が出来るのだろう…

 

助けられた恩返し一つ出来ない私をそれでもシャドウ様と武神様は見捨てず私みたいな悪魔憑きの娘がいる町で匿ってくれた…

 

だから私はシャドウ様や武神様に恩返しをしたくて…唯一自信のあった料理を頑張った。

 

武神様は食神とも呼ばれた方で色んな料理を教わった…

 

そのお陰で私は七陰のガンマ様よりリンドブルムのお店を任せられることになった。

 

とても不安だったけどでも私みたいな無能にも任せてくれた…期待を裏切りたくない…

 

その一心で料理を作ってたらシャドウ様がアレクシア王女と来店されました。

 

私は一心不乱に料理を作りました。

 

そしてシャドウ様から期待していると…美味しかったと無能ではないと仰ってくれた…

 

私はその言葉に涙が止まらなかった………

 

あぁ…ここまで頑張ってきて良かった…

 

こうして無能と呼ばれ続けてきた少女…否リンドブルムミツゴシ支店店長は誇りを胸に更なる研鑽を積むのであった




今回はここまでになります。

シドの温泉に対する独白などは原作とそこまで変わらないもののどうでも良い好きなものではなく好きなものに昇格しております。

そして温泉上がりの牛乳を飲み朝食へと向かいアレクシアも興味本位で備え付けのイータ特製の透明な冷蔵庫から牛乳を取り出し飲むととても美味しく感激しました。

そした優雅に朝食…と思いきや先日の夜に発覚した弟のやらかしに激おこな般若もといクレア。

過去にやらかしたとはいえイータを傷つけたことに変わりはないので何も言い返せないシド

イータを抱えながら怒るのでイータの助力を得られないと見るや一目散に逃げ、運悪くその後ろにいたアレクシアが巻き込まれました。

仕方なく機嫌を取るイータと可愛い物好きなアイリスはイナリの尻尾をもふります。

そしてリンドブルムを楽しみシド、アレクシアの二人。

原作ローズの役割になってますね。

朝食を抜いていた二人はミツゴシ系列のお店へと入り蕎麦を食べました。

その美味しさにアレクシアは感激しシドは店長を褒めました。シドは店長として頑張る少女のことを覚えており構成員のこともしっかり見ております。

これも切り捨てたものを拾うようにしてきたお陰かシドが助けてきた構成員のことはしっかり覚えています。

店長な少女は悪魔憑きになる前家族の誰にも見向きされず無能と呼ばれ悪魔憑き発症後は売り払われるという壮絶な人生を送ってました。

それをシャドウ、ベアトリクスに救われしかし戦闘などはしたこともないので非戦闘員としてベアトリクスの町にいました。

そして唯一自信のあった料理を頑張りそれがガンマの目に留まりリンドブルムのお店を任されました。

因みに店にはしっかり戦闘の出来る構成員が10人程配置されております。

そんな無能と呼ばれた少女はシャドウからの言葉を胸に研鑽を積んでいくのでした。

次回は原作ではローズと共に邂逅する筈のとある作家のサイン会になると思います。

この時点での接触…果たしてどうなるか

お気に入り、評価、感想いつもありがとうございます。

とても励みになります。

次回もなるべく早めに投稿できるようにします。

今回も読んで頂きありがとうございました!

ではそろそろこの辺で…

実はまだ振りきれていなく

「作者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

やべ!?気付かれた!

三十六計逃げるに如かず!

「まてぇぇぇぇぇぇ!!妹傷付けた責任取らせてやるわ!!」

それは勘弁を!

「コンコン、クレア様お怒りですぅ…ハッ!そうでした。今回は私がしますね~

いつも見てくださってありがとうございますぅ。

アニメではユキメ様も活躍されますので是非ご覧になってください!

これからも宜しくお願いします!コンコン♪」


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小説家のメガネっ娘とミドガル王女は出会い、リンドブルムで蠢く闇を掴むべくシャドウガーデンは暗躍する。

原作ではローズと一緒にサイン会に並びましたが今作ではアレクシアと並ぶことになるシド。

そして監査前日に教会では一騒動起きた模様。

それではどうぞごゆっくり!


アレクシアとシドは朝食を取り街中を歩いていた。

 

「やっぱり女神の試練を見に来るから賑わってるね。」

 

「それはそうよ。二年に一度の行事だし、何より女神の試練で認められればそれだけ魔剣士としての地位は揺るぎないものになるわ。」

 

「たしか古代の記憶に認められれば古代の戦士が出てきてそれに打ち勝てば試練を突破した証のメダルが貰えるだったっけ?」

 

「そうよ。それだけ箔の付くものだけど参加費で20万ゼニーするからホントに自信がある人か参加したという箔を付けたいという参加記念ね。」

 

参加記念でそんなに払うってある意味悪徳商法…いや聖教での実験をするのにそれだけの金が動いていて女神の試練はもしかしたらディアボロス教団の資金源の一つなのではと思うシド。

 

途中剣に巻き付いた左腕のアクセサリーがあったので一つ購入する。

 

「貴方意外とそういうの好きなの?」

 

「ロマンみたいなもんだよ。左腕に剣か」

 

「おとぎ話でこの地で英雄オリヴィエがディアボロスの左腕を封じたって話しから来てるみたいよ。まぁそんな眉唾物を信じるのなんていないだろうけど。」

 

「眉唾物…ね。」

 

それが本当ならどれだけ良かったことやら。アルファが昔から調べ最近になって分かったことは本当にディアボロスの左腕がこの地に眠っていてそれがあるのが聖域っていう特別な場所らしい。

 

いかにも何か隠してますって雰囲気の名前だし聖域って名前も僕からしたらいいセンスだと思う。

 

その聖域へいく方法は明日の女神の試練で何かしらあるようなのでそこは任せている。

 

そうしていると何やら人だかりが出来ているのが確認できた。

 

「何かしら?」

 

周りの声を聞くとどうやら最近人気の作家のサイン会をしているようだ。

 

「作家……!シド並ぶわよ!」

 

とアレクシアは何かに気付き最後尾へと並ぶのでシドも並ぶことにした。

 

「アレクシアはこの作家知ってる?」

 

「いやまったく…たまたま読んでるのがこいつの執筆だっただけよ。」

 

「そうなんだ。」

 

「武神列伝…一冊だけしか知らないけどでも読む人を虜にするのは癪だけど認めるしかないわね。」

 

「武神列伝って思いきった名前だね。」

 

(武神列伝といえばベアトさんの軌跡を書いた本だってそういえば言ってたっけ?)

 

とシドはシャドウガーデンでも人気の一冊のことを思い返す。

 

そして並んでいる書籍を手に取る。

 

「なになに…我輩はドラゴンである…名前はまだない………」

 

いやまぁ待とう。まだパクリと決めつけるのは良くない…偶々同じような感性の者が書いただけかもしれない…

 

『ロメオとジュリエッタ』

 

丸パクだこりゃ…他にも

 

『シンデレーラ』

 

『紅ずきん』

 

『スとスライムの神隠し』

 

思った以上にそのまま過ぎてビックリするんだが!?

 

いや確かに僕は昔に文学が好きだということで色々な物語を聞かせたりしたんだがそれでももうちょい捻るということはしなかったのかとツッコミたい。

 

因みに書いた本人はシャドウ様の語ってくれた物語を改編など出来るわけがないと供述している。

 

(イータはイータでベアトさんの前世の漫画を再現してるけど作家名はちゃんと前世のままにしてただ出版してるだけだから悪くはない……もっとオリジナリティを出さない…まぁ武神列伝とか出してるから良いのか…)

 

とイータの印刷している漫画はベアトリクスの見ていた物が大半でそれをイータが読み取り君印刷バージョンで刷新して翻訳している。

 

僕は別に翻訳せずとも読めるので一番先に読めるからラッキーだ。前世では漫画などといったものはパラパラとしか読んでいなかったが案外参考になることも多いと最近は思う。

 

空中を魔力なしで縦横無尽に掛けたり純粋な斬撃を飛ばしたりと挑戦している。

 

斬撃の方は魔力を乗せないだけだから簡単に出来たし空気を蹴ることも出来るようになってきたからまずまずだね。

 

だからそういう自由な発想がディアボロス教団へ渡ると不味いからリンドブルムで保管して持ち出せば発火して証拠を残さないようにしているしイータのは厳重にラボに保管されている。

 

ラボから持ち出されたらこれもまた発火するらしい。

 

アレクシアがそれを見たから柔軟な発想が出来てこの間見た終末○ワ○キューレの技を再現していた。

 

僕も見たけど史上最強の敗者(ルーザー)…カッコいいね。

 

出来れば手合わせ願いたいものだ。剣の技量…学ぶところが多いからね。

 

と考えていると順番になったようでアレクシア共々件の作家の前に立つ。

 

美しい銀色の髪を肩ぐらいの長さで切りそろえ、青色の猫みたいな瞳に泣きぼくろ。胸元の開いたブラウスからは深い胸の谷間が覗いている。

 

予想した通りの人物…

 

七陰第二席…堅実のベータの表の顔、ナツメ・カフカの姿があった。

 

「さぁ次の方こちらへどうぞ!」

 

とこちらに気付いたようでにこやかにシドへ挨拶する。

 

「あんたがナツメ・カフカね。」

 

「そういう貴女様はアレクシア王女ですね。王族の方にも読んでいただけて嬉しいですね。」

 

「一冊しか読んだことないけど武神列伝……確かに面白かったわ。」

 

「ありがとうございます。好評のようで」

 

どこか火花の散っているような幻想が見えるやり取り。アレクシアは単刀直入に尋ねることにした。

 

「長ったらしいのはなしにするわ。貴女武神様とコンタクト取れるでしょ?」

 

「なんのことでしょうか?私はしがない作家。雲の上のような武神様にコンタクトが出来るなんて夢のようなことではありませんか?」

 

(その武神様滅茶苦茶会う頻度高いけどな。)

 

とシドは心の中で突っ込む。

 

「惚けても無駄よ。武神列伝には本来誰も知らないようなことまで書き記されてる。当時のミドガルの様相、オリアナ王国のこと…当事者に聞いたとしか思えない内容よ。」

 

「そうですか。私はその当時の者に取材しただけのことですよ。」

 

と笑いながらいや目が笑っていないナツメはアレクシアの言の葉をかわす。

 

「まぁ今日のところは良いわ。他にも人がいるから…後日また聞かせてもらうから首洗って待ってなさい!ほらシド行くわよ!」

 

とシドの腕を抱き寄せてくっ付けるアレクシア。

 

ピキと額に怒りマークが見えかねない程いらっときたナツメ

 

(下賎な…この女…シャドウ様にくっつくだなんて…!!シャドウ様と触れあうだなんて100年早いわよ…なんの躊躇いもなく躰を預ける性欲の化身…

 

王族でなければ真っ先に消していたわ…いえ落ち着くのよ。私は堅実のベータ…そうこれはあくまでも王女との面識を作るためよ。

 

精々夜道に気を付けることね…)

 

と物騒なことを考えているベータ。

 

「じゃあナツメも頑張ってね。色々大変だろうから身体に気をつけてね。」

 

「はい!」

 

と先程までとは打って変わってにこやかに微笑むベータ。

 

「ってあんたこいつとも知り合いだったの!?」

 

「イータ経由でね。イナリとも仲がいいよ。」

 

「そういえばイナリちゃんは元気にしてますか?」

 

「まぁうっかりすることもあるけど元気でやってるよ。イナリもこっちに来てるし色々予定外なことがあってイータも来てるけどね。女神の試練も見ていくみたいだし彼女は自由に動くかな。」

 

「成る程。」

 

(昨日報告はありましたがまさか列車を乗っ取るなんて強行手段を取るなんて…イータが被害を防いでくれたから良かったけど油断は出来ません。

 

シャドウ様もイータは自由に動けるよう要員として組み込みいざとなればサポートしてくれる…流石シャドウ様です!先の先まで見通す慧眼…感服致します!)

 

と若干勘違いするベータとそんなこととは知らずにただ現状の予定を言ったシド。

 

「イナリの友人ですって!?というかイナリのうっかりって頻繁にあるのね。」

 

「「まぁそれなりに。」」

 

と二人揃って口にする。

 

噂の元のうっかり狐娘のくしゃみする音が聞こえそうである。

 

素早くサインしシドへと手渡したベータは計画を本の中へと書いたことをシドにだけ分かるように言いその場を離れる。

 

「全くあんたの人脈はどうなってるのよ?」

 

「まぁイータのお陰かな?いろんな発明を取材して特集するのに仲介してるみたいだからね。」

 

「それでサインなんてもらってどうするのよ」

 

とアレクシアはシドがもらったサインを良く見ると

 

「これって?」

 

古代文字を崩した文字が書かれているがアレクシアも専門ではないので何が書いてあるのかは分からなかった。

 

「ロマンだとも。こういうの格好良いよねって言ったら書くようになってね。」

 

「そうなのね。」

 

と引き下がったアレクシア。

 

勿論シドも読めないのでイータに後で解読してもらう予定である。

 

そうしてリンドブルムでの一日が過ぎていく。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その夜…

 

リンドブルムより程近いアレクサンドリアにて

 

女神の試練まで残り二日となり各員準備を進めている。そんなところへ突然の報告が。

 

「マザー様大変です!」

 

「…何かあったのね。聞かせて」

 

「ハッ!先程教会へと潜入されていたアルファ様より至急報告をと……大司教ドレイクが何者かに暗殺されたようです。」

 

「あちらの方が一手速かった…そういうことね。それなら用意していたサブプランへと切り替えるわ。

 

アルファに引き続き潜伏を、イプシロンは当初の手筈通り会場へ一般として参加、

 

ベータは貴賓席へと招かれる。そこにはローズ、アレクシア、アイリス王女も共に招かれるでしょうから最悪鉢合わせたら彼女らの密かな護衛をしてもらいましょう。

 

突入班は証拠を持ち帰るためイータの開発した映写機を必ず持つように。当日はアルファの指示に従いなさい。」

 

「ハッ!」

 

「私は予定どおり別行動となるわ。何かあればすぐに撤退するように。貴女たちの命の方が大事だから…」

 

「ありがとうございますマザー様!」

 

と報告をした構成員は直ぐ様アルファの元へと帰還する。

 

「証拠隠滅…監査が入る前に口封じした…そんなところ」

 

「マザーは別行動でクレアを連れて行くんだよね。」

 

「えぇ。そのつもりよ。そして大司教が死んだとなれば代理として出てくるのはラウンズの疑いがあるネルソン。

 

聖域への突入できる方法を持っている筈だからそれを奪うまたは彼自身が鍵ならば拉致してそのまま突入。」

 

「突入は七陰はアルファ様、デルタ、イプシロン、ナンバーズもカイ、オメガを筆頭に行く。魔力阻害防御の装置もイータが間に合わせてくれたから全員携帯してる。」

 

「でも絶対ではないわ。だから私たちは確認できている中でも高確率で現れる扉へと別行動で入り込む。その時は宜しくねリリム。」

 

「マザーあまり公私混同は」

 

「この部屋には今私たちしかいないのだから良いわ。」

 

「わかったよベア様。」

 

とベアトリクスはゼータことリリムを膝枕しその頭を撫でる。

 

リリムもリラックスしながら尊敬するベアトリクスの膝を堪能する。

 

リンドブルムで蠢き続ける闇を追い掛けその実態を掴むべくベアトリクスたちは入念な準備をするのであった。




今回はここまでになります。

原作ではローズと共に邂逅したベータでしたがこちらではアレクシアとなりました。

聖地でのおとぎ話が真実だと知るシドは女神の試練がディアボロス教団の資金源の一つになっているのではと疑うのでした。

実際20万という大金と大勢の参加者となるとその金額は計り知れないものと作者は思います。

ナツメことベータと邂逅したアレクシアは武神列伝を読みその正確な情報から単刀直入にベアトリクスと連絡が取れるかと聞きベータはそれを有耶無耶にしかわします。

まぁこんなところであるなんて言えば誰が聞いているか分からないのもあるのではぐらかすしかないですね。

それはアレクシアも分かっているので駄目で元々と思ってました。

シドは読み聞かせた物語が本になっているのでまぁバクリだなとは思いつつ別に自分の作品ではないからと気にしてない様子。

というよりは読み聞かせた物語をここまで本に纏めるのはそれはそれでスゴいと内心思っております。

原作ではなんて金にがめついなんて考えておりましたがイータ、ベアトリクスのお陰もありそこは少し変わっております。

そしてイータの漫画の印刷方法がまさかの読み取り君からの印刷という頭の中のものを印刷できるというある意味とんでも技術!?

イータはある意味偶然出来上がったものらしく同じものを作るとなると2.3年は掛かるとのこと。

それでも作れるのでイータも規格外ですね。

ベータのアレクシアへの同族嫌悪と嫉妬。

アレクシアは実はナツメと知り合いだったシドに驚きを隠せませんのでイータの伝手でと誤魔化しました。

そしてアレクサンドリアではベアトリクスたちが女神の試練に備え準備する中で大司教が暗殺されたと報告が届く。

本来なら大司教を拉致、聖地へ続く扉を案内させようとしていた中で当初の計画が潰えたものの計画を変更しそれを伝達させました。

イータの作り出した魔力阻害防御装置があるので聖地の魔力吸収を防げます。

そして確証はないもののラウンズの疑いがあるネルソンを拉致することにし当日はアルファたちが本隊、別動隊としてベアトリクス、ゼータとクレアという組み合わせにする予定。

流石に実質的なトップが護衛もなしにだと心配だからという理由ですね。クレアとも面識があるゼータにしか出来ないことです。

さて第二話もメアリーとクレアの吸血シーンは濃厚でしたね。何よりシャドウの有無を云わさぬアトミックは良かったです。

早くも来週が楽しみですね!

そして思ったのがシャドウガーデン、構成員たち含めて波紋を会得してるとなると無法都市編の時結構有利になるということですかね。

次回は女神の試練の始まるまで時間を飛ばそうかと考えております。

お気に入り登録、評価、感想ありがとうございます。

お気に入りも1000を越えました!これも皆様のお陰です。

これからも遅くならない内に投稿できるようにしていきます!感想など頂けると励みになります。

それでは今回も読んで頂きありがとうございました!

「作者…」

はい?あぁイータさんどうしました?

「捕まえた…」

ガシッとイータの操作するスライムに捕まえられる作者。

ちょっ!?まさかの手を組んだ!?

「こういうのは…早めに終わらせる…さっさと捕まって…解剖出来るし…」

滅茶苦茶物騒!?

「ありがとうイータ!さぁ観念しなさい作者!」

あんまりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ


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女神の試練開始なのだがミドガル第一王女は心労からうっかり狐娘の尻尾で癒されようとし妹王女とメガネっ娘小説家ももふる。そして武神は弟子と金豹の娘と共に聖域を目指す

いよいよ始まる女神の試練。

なのですがある意味嵐の前の静けさとばかりなほのぼの回となります。

それではどうぞごゆっくり!


女神の試練当日…

 

集まった観客は今か今かと祭典に心踊ろさせていた。

 

聖域の扉が開かれる日に行われる戦い。

 

それは聖域から古代の戦士の記憶を呼び覚まし、挑戦者はその記憶の戦士と戦うの。事前に申請すれば魔剣士なら誰でも参加できる

 

しかし古代の戦士がそれに応えるとは限らず毎年数百人の魔剣士が参加するが実際に戦えるのは十人程度。

 

古代の戦士はどれも手強く勝てばメダルを授与され何処の騎士団でも実力を認められるだろう。

 

そんな中でアイリス、アレクシアは貴賓席へと招かれていた。

 

彼女らは聖教を監査する筈であった教会で事件が起こった。

 

そう大司教が何者かに殺されたという。

 

そして監査対象が死亡したのだからこの話は終わりだと、大司教代理ネルソンが寝ぼけたことをぬかしたのが事の始まりだ。

 

普通対象が死亡したからこそさらに調査の必要性が増すだろボケ、とアレクシアはオブラートに包んで言ったのだが、ネルソンは調査するなら再度許可を取れの一点張りだった。

 

アイリスもまるでこちらが監査しては不都合なことばかりで口封じされたのではと疑うが聖教と事を構えるのは良くないと引き下がるしかなかった。

 

再度監査するにしても急いで戻って王都まで三日、それから許可をとるのに早くて一週間、リンドブルムに戻るのに三日、そして許可証をネルソンが受理するのに何日かかかる。

 

そこは彼の気分次第だが一週間は待たされるだろうとアイリスは見ている。当然そんな時間をかけていては重要な証拠は闇の中だ。

 

(このままではお父様が送り出してくれた意味がない…何とかならないものか…ならばもう一つのことは達成しないと)

 

とアイリスは横目でアレクシアの隣に立つ少女へ目を向ける。

 

もふもふ

 

(ナツメ・カフカ…彼女から武神様への連絡手段を聞く。そうすれば何かしらの突破口を開くことが出来るかもしれない…問題なのは…アレクシアとあまり相性が良くないということ…上手く行けば良いのだけれど。)

 

とアイリスは会場で挨拶をするネルソン大司教代理を見やる。

 

(やはり聖教は何かを隠しているそれを暴かない限り悲劇を止められない…そんな気がしてならないわ…)

 

もふもふもふもふ…

 

(ミドガルだけではなく…オリアナ王国も最近はキナ臭い動きが見て取れる。)

 

とアイリスは左に座るローズを見る。

 

(彼女の留学は異例だった…お父様から聞いたけれどもラファエロ王からの直々の頼みだった…そして彼女の婚約者には黒いうわさが絶えない…)

 

もふもふもふもふもふもふ

 

「考えなければならないことが多いものね。」

 

隣り合って火花を散らしていたアレクシアとナツメは流石に気になったので問いかける。

 

「…あの姉様…」

 

「アレクシア。いろんな方が見てらっしゃるのだからだらしない格好は駄目ですよ。」

 

「いやアイリス王女?その膝に乗せてる…」

 

「はい?何か問題でも?」

 

「コ~ン♪アイリスさま~」

 

「いや姉様こそ自重してください!?イナリの尻尾や耳を撫でまくってるじゃないの!」

 

先程から椅子に座りながらアイリスはイナリの尻尾をもふっていた。

 

「…仕方ないでしょう…張り切った査察が空振りに終わり大見栄きって来たのになにも出来ずに終わりそうで……イナリさんの尻尾で癒されないとやってられないんです!」

 

アイリスの膝に座るイナリは最初ラムネの差し入れをしようと四人のところへと出向き

 

ミツゴシで売り始めたイータ作のラムネを観客席で売ろうと立ち上がったのだがそのままアイリスの膝に乗せられ尻尾を撫で気持ちを落ちつかせようと触っていたアイリス。

 

(これは流石に予定外でした…まさかイナリちゃんがアイリス王女にこんなに懐かれるとは!?)

 

「姉様、イナリを離して一度落ち着いてください。」

 

と言いつつアレクシアはヒョイとイナリをアイリスの膝から自分の上に乗せ変え自身もモフリだした。

 

周りの観客からも見えているがそんなことは関係ないとばかりに撫でているアレクシア。

 

「ズルいですよアレクシア王女!次は私ですよ!」

(何をなされてるのですか!アレクシア王女も周りを気にしてください!)

 

と本音と建前が逆転しているナツメ。

 

これまたイナリを抱えるナツメ。

 

イナリの尻尾を巡り火花が散るが

 

「…イナリが帰ってこないと思ったら…何してるのよ…」

 

ヒョイとイナリはナツメの膝から浮いたと思えばいつまでも帰ってこないと心配したイータに後ろから抱きしめられていた。

 

「ご主人様!」

 

「あんたたち……仮にも王女と……巷を騒がす人気小説家…なんだから…もっと自覚を持ちなさい…それとこの娘は私の家族よ…ぞんざいな扱いは…許さない…」

 

とイータの迫力の前に流石に自身が悪いと三人は反省するのであった。

 

とイータが姿を現した途端アレクシア、ナツメ、アイリスの時の歓声を遥かに越える歓声が響き渡る。

 

「って私たちの時より大きい歓声ね。」

 

とアレクシアはいきなり歓声がはね上がったことを不思議に思いナツメが補足する。

 

「それは当然のことですよアレクシア王女。イータの作り出したものは人々の生活のこれまでをガラリと変えたんです。

 

今まで手間だったものがとても楽になり他のことに時間を使えるようになった。

 

だから彼女は天才発明家として民衆からとても人気なのですよ。

 

それは私や王女様方よりも」

 

「私はただ発明しただけ…それを売れるようにしたのは…ルーナたちミツゴシの努力の賜物…どんなに良い発明でも……使うものが悪ならそれは悪いものになる…」

 

イータの実感のこもった言葉にアイリスたちは息を飲む。

 

(イータのお陰で主導権を握れそうですね。これならば)

 

「それじゃ…私は観客席に…目立つのは面倒……」

 

と踵を返すイータの後をイナリは付いていく。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方のクレアは女神の試練の開催される場所から程近い場所へ来ていた。

 

「確かここよね。」

 

と彼女は喫茶店の屋外テラスの席へと付いていた。

 

ベアトリクスから指定された場所だが人もまばらにいるのでこんな場所で話をするのかと疑問に思うクレア。

 

そんな時に

 

「闇に葬られ深く深く沈み込んだ絶望に浸る者たちに与えるものは?」

 

と後ろから問い掛けられたクレアはベアトリクスから伝えられた合言葉を言う。

 

「光よ。」

 

「久し振りかなクレア。また一段と綺麗になったね。」

 

と振り向いた先にはサングラスを頭にかけラフな格好をしたゼータことリリムの姿があった。

 

「リリムさん!?どうしてここに?」

 

「今回の件の手伝いだよ。最初はベア様だけでしようとしてたから流石に何かあった時のことを考えてね。まぁそうそうないと思うけど。」

 

「よく来てくれたわクレア。」

 

「師匠!?い、いつの間に…?」

 

「まだまだね。気配察知をもう少し鍛えないといけないわ。」

 

「いやベア様の気配は自然すぎて私たちも分からないときあるよ?」

 

と気配を消しながらクレアの目の前に座っていたベアトリクスに、七陰メンバーでもベアトリクスの隠密を簡単に見破れるものはそういない。

 

例外はアルファ、イータだけでいつも先に気付いている。

 

「それで師匠…話してくれるんでしょ?」

 

「えぇそのつもりよ。でもその前に」

 

とベアトリクスは喫茶店のメニューを開き

 

「まずはコーヒーとサンドイッチを食べましょう。」

 

と何時ものマイペースっぷりにクレアも肩の力を抜きリリムもそれに同席する。

 

 

~武神コーヒーブレイク中~

 

「そういえばこの間はお手柄だったわねクレア。乗客を救い列車事件解決の功労者といっても過言ではない功績ね。」

 

「いやあれはシドも手伝ってくれたし最終的にはイータが解決してくれて」

 

「イータとも仲良くなってたの?」

 

とリリムはイータと接点があったことを不思議に思い尋ねる。

 

「列車事件の夜に温泉で語り合って…あ!そのすいません師匠!イータは師匠の娘なのにシドが傷付けてしまって」

 

「いやあれは二人も納得してるから良いのよ。」

 

一応シドから話を聞いて納得はしたもののやはり気にするクレア。

 

「それでも女の子に消えない傷を残したんです!シドには責任を取らせないと!」

 

と白熱しているのだが実は二年前のシドとイータの決闘は当事者であったベアトリクスのみが知っている出来事な訳で寝耳に水なことにリリムは尋ね返すこととなる。

 

「シド様は何をやったの?」

 

「イータと喧嘩して斬り合いになるぐらいの騒動になったって聞いたのよ。」

 

(えっ!?なにそれ私聞いてない…マザー?)

 

(色々と彼も溜まっていてそれが少し爆発したの。それで二人は激しい剣戟を繰り広げたの。)

 

とアイコンタクトで会話するベアトリクスとリリム。

 

「それでどっちが勝ったの?シド様?」

 

「う~んそれがシドはイータが勝ったって言うしイータはあれは引き分けに近い自分の負けって言ってるのよね。」

 

「そ、そうなんだね。」

 

(当時の主は私たち程度の実力なら簡単にあしらえた…でもイータは食らい付いてしかも主が負けを認めてるって…それにしてもどうしてそんなことになったのか…

 

マザーは知ってるみたいだけど二人だけの問題とかで話さないだろうし…まぁそれは後でそれとなく聞いてみよう。)

 

「それで師匠…二年前のあれのこと」

 

「そうね。まだ時間もあることだし少し散歩して目的地に向かいましょう。」

 

とベアトリクスは立ち上がり会計を済ませ歩き出す。

 

人混みの入り組む中でベアトリクスは話し出す。

 

「あなたにとっては二年前…リリムたちにとっては4年以上前のことが転機になった。」

 

「そうだね。」

 

「あの時のことは衝撃的だったもの、忘れるわけないわ」

 

「…一族の運命も転機だった……」

 

歩くうちにどんどん人がいなくなっていく。

 

「そして共通するのは…悪魔憑きという不治の病とされた現象…そして魔人ディアボロス。」

 

人がいなくなり暗い道へと差し掛かる。

 

「その真実への手懸かりが聖地にある。まだ引き返せるわクレア。本当に良いのね?」

 

「私は…師匠に助けられたわ。だから今度は師匠の力になりたいの!何も知らないでいられるのも幸せなことなんだと思う。それでも私は知りたい…ルーナ、マナ、リリムさん、それにイータの力になりたい!私は私のためにあの日のことを知りたい!」

 

「…分かったわ。それなら行きましょう。オリヴィエがディアボロスの左腕を斬り落とした地へ続く道へ」

 

そうしてベアトリクス、リリム、クレアは聖地へと続く扉の出現する場所へと向かうのであった。




今回はここまでになります。

何とかクレアには女神の試練が終わった後の番外編でクレア他何名かの異世界食堂編を出すことで許してもらいました月光です。

女神の試練が開幕し来賓として原作ではいなかったアイリスも招かれました。

監査の日に大司教は殺され証拠隠滅に図るネルソン。

アイリスは何としてもナツメとの接点を作りベアトリクスとコンタクトをしようとするも色々なこともあり内心は荒れており偶々差し入れに来たイナリが来たのでアニマルセラピーとイナリをもふる展開となりました。

注意するアレクシアでしたが自分もイナリをもふり隣のベータことナツメも本音と建前が逆転していることに気付かずイナリをもふりイータが止めには入りました。

イータの姿を見れた観客は熱狂に包まれました。

民衆の生活を良くし鉄道で遠くへと赴け働ける場所の選択肢も広がったこともありそれだけ注目を浴びるイータはアイリスたちに忠告のようなことを残し観客席へ

行くと見せかけ参加者名簿を見に行くことに。

そして何故か名前のある悪友をどうするか考えることになるのでした。

クレアの方は待ち合わせの場所へと行き本物かどうかの確認をされそこにいたのはゼータことリリムでした。

ベアトリクスは気配を消し既に椅子に座っており気配察知がまだまだというものの七陰でも本気のベアトリクスの隠密を破れるかと言われれば難しいことであります。

例外はアルファ、イータの二人ですかね。

アルファは姪故の察知能力、イータは好きな人だから当然とのこと。

そしてイータのことを話すクレアなのですが二年前のあれは七陰たちは誰も知らないのでまさに寝耳に水。

どうしてそうなったかは聞けば答えるだろうイータに尋ねようとゼータは思考を切り替えました。

そしてクレアにとっては二年前…リリムたち金豹族にとっては4年以上前に訪れた転機…

その発端になった悪魔憑きという症状とディアボロス細胞、魔人ディアボロスから連なる連鎖。

聖地で眠るそれを求めて歩きだしクレアも決意と共に向かいます。

果たしてどうなるか…?

次回は一方のシドサイドからになると思います。

そして本日は陰実、無法都市三話。

エリザベートとの決戦とクレアがアウロラと…

そしてシャドウと対峙するエリザベートの戦闘が気になるところです。

こちらでもそろそろアウロラが出るので早めに投稿できるようにしていきます。

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今回も読んで頂きありがとうございました!

次回も読んで頂けると幸いです。





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女神の試練を眺める陰の園の盟主は悪友からもたらされた情報に頭を抱えるものの決意を胸に壇上へと上がりのんびり娘は悪友の夢のために協力する。そして陰の実力者は災厄と謳われた魔女と対面する

観客席にいるシドサイドになります。

イータが準備してイプシロンへと作戦の変更を伝えられいよいよ本格的にシドが動き出します。

それではごゆっくりどうぞ!


さて舞台裏で進行する計画を他所にシドは観客席に腰掛けている。

 

(計画をプランBに切り替えるって来たのは良いけど僕自身自由に動くって言った手前どうしたものか)

 

と前日に路地裏を徘徊していた時に怪しい人影を見つけ降り立つと丁度イプシロンもいたようで計画をプランBにすると言われた。

 

確かにベータから書き記された暗号をイータに見せて内容は把握してたけどプランBに関してはまったく身に覚えがないがまぁ彼女たちが立てた計画だから大丈夫だろうと信頼し任せたシド。

 

因みに簡略的に分かりやすくイータがかい詰まんで教えてくれたのは当初は大司教を誘拐し女神の試練に乗じて聖域へと至ろうと考えてたらしい。

 

(にしても女神の試練…なんかぱっとしないよな。現れるのは本人より少し強いのか同等程度の分身のようなもの。やる分には面白そうだけど見てる側としては退屈だ。

 

参加しようにも本人の技量を把握して分身が出るから力量バレする。

 

出れば一瞬で僕の目指すモブ街道が遠退くし祭りの終わりまでのんびりしてるか)

 

と思っているシドであったが

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ちょっと不味いわね………」

 

「ご、ご主人様…」

 

とイータはイナリを伴い出場者の名簿を見ていた。

 

特に厳重に保管されていたわけではなく警備がいるだけだったので気配を消し侵入した二人はあり得ない名前を見つけてしまった。

 

「ひとまずここから出ましょう……どこの誰だが知らないけど……こっちの予定外のことをしてくれたわね…」

 

と二人は一度部屋を後にした。

 

名簿の最後にあった名前が悪友の名前だったのだから。目立つのを嫌う彼が出る筈がない。だから勝手にエントリーされてしまったと見るべき。

 

「ご主人様どうしましょう!?シド様は目立つことを嫌っているというのにこれではあんまりです!」

 

「分かってるわよ…あいつにとって……目立つのは自身の夢から逆に遠退くことになるし…まずシドに報告…それから他のガーデンに連絡…ベアト母様に相談…は多分この時間だと無理……」

 

「シド様が目立たず作戦もどうにか成功する方法はないんですかご主人様~」

 

「……!いっそのこと…目立たせるのが良い…?よしなら」

 

とシドの座っている場所まで辿り着いたイータ、イナリ。

 

彼女らはシドが目指すものを知っている。だからこそ下手なことをしてそれが瓦解するのはいらっとくるものがある。それに約束をしたのだ。

 

「ちょっと…面貸しなさい…」

 

その夢を手伝うと。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「イータ?ちょっと言葉がキツくない?イライラしてる?」

 

「そうね…少し…かなり…激おこ…?」

 

「僕に聞かれても分からないけど普段より怒ってる雰囲気だよ。」

 

とシドはイータの僅かな変化に気付く。

 

取り敢えずと席を離れるシドは人気のない場所へと向かう。

 

「簡潔に…言うわ…あんた…女神の試練への挑戦者の名簿に名前あったわ…」

 

「………は?」

 

「確認だけどエントリーは?」

 

「してないよ。なんでそんな面倒なことしなきゃいけないのさ。」

 

「そうですよね!シド様は目立つのはお嫌いですもんね!コン♪」

 

「ありがとうイナリ。」

 

とシドはイナリの頭を撫でる。

 

「名簿に名前があるから人数は把握されてしまっている……どうにか書き変えることは…出来るけど…ここは奇策に出るわ…」

 

「奇策?」

 

「貴方が目立たず更に…教団が動かざるを得ない…衝撃的なことをすればいい…」

 

「成る程。それなら観客の目もそっちに行くから僕が出るといった痕跡も有耶無耶に出来るというわけだね。」

 

「それに成功すれば…シドの夢に少し近付ける…」

 

「詳しく聞こう!」

 

と食い気味に言うシド。

 

「噂でしか知らない…謎の組織…そんな謎に包まれた組織の頭目が…突然現れ女神の試練を攻略……表の実力者も裏の実力者もこぞって…あいつは何者だ?って一目置かれるような実力はあるけど謎のヴェールに包まれた……そんな存在……陰の実力者に………」

 

「良いね…さいっこうに良いじゃないか!」

 

「あはは、シドさまハイテンションですぅ~」

 

「それじゃあ決まりね……私も準備する……その間に登場の仕方とか考えておいて…イナリと一緒に…」

 

とイータは作戦の変更を伝えるために会場内のイプシロンの元へと向かう。

 

「シド様シド様!こう派手に登場されるのはどうですか!ドバーンって!」

 

「そうだね。確かに多少派手さは必要だね。でもあまり派手すぎても目立ちたがり屋の自意識過剰野郎になっても困るから静かだけど威圧感を醸し出して必要なことだけしゃべった方がミステリアスだろうね。」

 

「成る程!奥が深いですぅ~でしたらシド様良く七陰の皆さまにやる魔力の雨みたいな演出をしてそれを切り裂いて登場されて聖域で未だに流るる雫を払いに来たとかどうですか?」

 

「おぉ!その言い回し良さそうだね!少し参考にして」

 

とシドはイナリと共に登場シーンを凝ろうと試行錯誤するのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…かくかくしかじか…というわけで計画変更…だから宜しく…」

 

「ちょっと待ってイータ。かくかくしかじかじゃ分からないわよ!?」

 

と会場に潜入しているイプシロンはイータのいい加減な説明に突っ込みを入れる。

 

「…シャドウなら分かる……イプシロンどうして分からない?」

 

「主様は私たちと違って聡明な御方だからでしょう!」

 

(いや…ただそれっぽいことを…言ってるだけ…それが絶望的に…いや奇跡的に噛み合ってるだけだけど…言わないでおこう…)

 

「とにかく…女神の試練のラストで合図を出す…その後のことは…任せた…」

 

「まったくイータの無茶振りは今に始まったことじゃないけど意味のないことはしないものね。任せなさい。」

 

「それと…これ。」

 

とイータはイプシロンに液状の何かを手渡した。

 

「これは?」

 

「形状記憶スライム…物の形を覚えさせてあるから……魔力を込めたら記憶したものになる仕組み…何となくそれが…必要になる筈…と思う…」

 

「分かったわ。」

 

「それと全員魔力阻害防御装置持ってるかもう一度確認して……アルファ様にも渡してあるけど……一応イプシロンにも…予備を渡しとく…」

 

とイータは持ってきていた魔力阻害防御装置をイプシロンへと予備で5人分程渡す。

 

「流石にいらないんじゃないの?ウチの子達は全員持ってるだろうし」

 

「何かがあって故障したら?時間を過ぎてしまったら?壊されたらどうするの?」

 

「そんな心配しなくても」

 

「ねぇイプシロン…私たちは…何をしているの?」

 

「それは…戦いだけど。」

 

「そう戦い…負けたら…死ぬのよ」

 

その言葉はとても重い。

 

「ベアト母様は命大事にって言ってる…でもベアト母様だって予想外なことはある…誰にだって起こり得ること…そのもしをなくすことが私たちがすること…

 

死なないために…死ぬほど準備をする…それは当たり前のこと…今回は七陰、ナンバーズの子達に何かあれば…撤退が出来なくなる…

 

最悪捕まって解剖されるなんて…あるかもしれない…慎重すぎるのは良くない…

 

でも用意した策が駄目なら次に…千ある用意の中で一つ使えて他のが駄目になってもそれは次に繋げられる……用意しすぎなんてことは…ない」

 

そのイータの言葉にイプシロンは作戦におけるイータの心構えを見た。

 

「それじゃあ私も……準備に入る…お互い生きて会いましょう……」

 

とイータはまた準備するために去っていった。

 

「…そうね。母さんだって完璧じゃない…本人だって言ってたわね。気を抜かないようにしないと!」

 

と張り切るイプシロンはふと手の中に先程まではなかった感触を感じる。

 

「なにかしら?」

 

と開くと

 

P.S.張り切るのは悪くないけどもっと肩の力を抜くように…甘いもの食べて…美容に良いチョコ作れた…

 

と書かれた紙とチョコであった。

 

「イータったら…ありがたくもらうわ…って美味しい!?なにこれ!?帰ったらイータにまだあるか聞かないと!」

 

と美容に関しては妥協しないイプシロンであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

女神の試練が始まり数時間…

 

日も暮れて参加者も残り僅かになってきた。

 

「そろそろ最後かしらね。」

 

「そうですね…何事もなく終わりそうな雰囲気ですね。」

 

(そろそろ動き出す頃ですね…イプシロンから計画変更の合図を見ましたがいったい…?)

 

「女神の試練…とても盛況で終われそうですね。

(最後はシド君の名前を入れておきました。わざわざ此方に来られたのは女神の試練で功績を残し私とお付き合いする…

 

シド君のお考えはお見通しです…エントリーを忘れていたようなので代わりにしておきました。)」

↑一連の計画の変更しなければならなくなった元凶

 

と各々構えていると

 

「さて次は!もご!?もごもご…」

 

と中継が一瞬途切れたことを不自然に思う会場

 

「失礼致しました……それでは本日のラストを飾るのは!」

 

その言葉と共に女神の試練のフィールドにシトシトと雨が降り始めた。

 

会場には降らずその不自然な降雨に何事かと視線が集中する。

 

「始まりから謎にして王国で発生した事件を皮切りに姿を現し始めた…」

 

女神の試練を遠くより観戦していたアルファは相変わらずだと薄く笑い隣にいるデルタ無邪気に今か今かと待ちわびる。

 

「その瞳は何を写すのか!」

 

会場に待機しているイプシロンはその姿を納めようとイータ特製のカメラを構え他の構成員もそれぞれの角度から盟主の姿を今か今かと待ち望む。

 

「その謎のヴェールを脱ぎ去りここに推参!!!」

 

瞬間フィールドに降り注いだ雨が切り裂かれ重い威圧を出しながらそれは現れた。

 

「真の最強をその目に刻め!シャドウガーデン盟主……

 

シャドウぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

その言葉にシャドウを知っているアレクシア、アイリス、ローズは一斉に警戒をする。

 

「シャドウ!?なぜここに!」

 

「…でもシャドウが現れたってことはやっぱり何かあるんだわ…この地に…」

 

「まさか女神の試練に乱入するなんて!?」

 

(あぁ滴る魔力の雨がシャドウ様を更に引き立ててるわ!これは修めなければ!)

 

とナツメは胸元からシャドウ様戦記スケッチを取り出してスケッチする。

 

「我が名はシャドウ…これは聖域に眠り…囚われし魂たちの嘆き…今宵我らは古代の記憶を解き放ち、古来の因縁を断ち切ろう…」

 

そう言いはなったシャドウ。

 

すると光が輝きフィールドを覆い尽くす。

 

「ばかな!?儂はなにもしていないぞ!?」

 

(やはりある程度の操作は可能……)

 

そうして浮かび上がった紋章より古代の戦士が現れる。

 

「この文字は…アウ……ロラ?」

 

「まさか!?奴は選ばれたと言うのか!?災厄の魔女アウロラに!」

 

「ほう…」

 

(これは嬉しい誤算だ…彼女の佇まい…強者のそれだ。久しいな…マザーやイータたち波紋と魔力全部を使った七陰以来だ…仮称ヴァイオレットさんとしよう。)

 

そうして上空に現れたのは麗人。

 

今ここに世界を破壊と混乱に陥れたとされる災厄の魔女と陰の実力者のバトルが勃発する!

 

果たして勝敗はどうなる!!!




今回はここまでになります。

シドは原作通り観客席で観戦していてそこへイータとイナリが到着しまさかの自身のエントリーがあったという寝耳に水な展開。

ローズが勝手にエントリーしていた事実は知らないところですがまぁタイミングが悪いですね。

シドの夢を知ってる二人は何とかしようと考えイータが思い付いたのはシャドウとして女神の試練へ乱入すること。

原作では指名手配を受けていたシャドウですがこちらではそんなことはなくシャドウガーデンも地下組織として裏でも表でも注目されている謎の組織。

その盟主が、いきなり現れれば驚き試練を突破すれば目的はなんだと騒がれる…シドとしては陰の実力者ムーブが出来るので乗らない手はなくイナリと一生懸命登場の仕方を考えることに。

そしてイプシロンに計画を少し変えることを伝えたイータ。

念のために魔力阻害防御装置を予備で渡しました。

そして死なないために準備するイータの姿勢に気を引き締め直したイプシロンはそんなイータが最近開発したコラーゲンたっぷりのチョコをプレゼント。

そして女神の試練も大詰めとなる中で突然の乱入者。

因みに実況も入れ替わっていてシャドウの紹介は実は変声機を使いバレないようにテンションを無理やり上げているイータがやっております。

そしてシャドウとして出た先で対峙するのは災厄の魔女アウロラ。

次回はそんな二人の対峙とバトルが開幕します。

さて二期三話でアトミック使おうとして身体が耐えられないと失敗したクレアに憑依したアウロラとベータのやり取りは面白かったですね。

無事に無法都市編も終わり次はミツゴシ商会で巻き起こる事態になりますね。

感想、評価、お気に入り登録いつもありがとうございます!

今後とも投稿遅くならないように頑張っていきます!

いつか異世界食堂編でエリザベートなど登場させたいですね。安息の地を探して偶々扉を見付けて色んな種族が笑う異世界食堂はエリザベートたちにとってとても良い感じになりそう。

今回も読んで頂きありがとうございました!

次回も読んでくださると幸いです。


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陰の盟主は災厄の魔女と踊りを繰り広げ終演を迎えるとそこに開くは聖域への扉

シャドウVSアウロラ開演から終幕です!

決着が付くとそこに現れたものそれはいったい?

それではごゆっくりどうぞ!


僕はヴァイオレットさんが降り立つのを待つ。

 

イータにも昔語ったが戦いとは会話であると。

 

剣先の揺れ、視線の向き、足の位置、些細なことすべてに意味があり、その意味を読み取り適切な対処をすることが闘いなのだ。

 

些細なアクションから意味を読み取る力、そしてそれに対してよりよい回答を用意する力こそが、闘いにおける強さであるといっても過言ではない。

 

だから、闘いとは対話なのだ。

 

互いの対話能力が高ければ高いほど、先を察し、それに対処し、さらにそれを察し、さらにそれに対処する、そうやって終わりなき対話が繰り返される。

 

そしてヴァイオレットさんは遠距離で戦うスタイルというのが見受けられる。

 

僕は本来相手に合わせて戦うタイプだ。

 

故に…レディファーストというわけではないが先手を譲る。

 

直後その足跡から赤い槍のようなものが突き出た。

 

足を狙うとは、合理的だ。

 

機動力を削ぎ落とし動けなくなったところを遠距離で仕留める。中々に戦闘を分かっている…

 

僕はそのまま半歩下がる。まさか初手が地中からの攻撃とは思わなかったが良い意味で予想外だ。

 

これは楽しめそうだ。

 

赤い槍は二股に分かれ、左右から挟み込むように僕を追う。

 

僕の初手は、様子見。

 

赤い槍の速さと、威力と、機動力を観察する。

 

だから左からの槍は避け、右からの槍を刀で弾いた。手ごたえは重い。死ぬには十分だ。

 

避けた槍がさらに分裂した。針金が鋭く尖ったような赤い線が千はあるだろうか。

 

僕の周囲から一斉に、それが迫る。

 

一つに絡み取られれば連鎖的に巻き込まれ致命傷になる…

 

たがそれは当たればの話しだ。

 

僕は刀に魔力を込め薙ぎ払い、赤い槍を一掃した。

 

「蚊が群れても、獅子は殺せぬ」

 

ヴァイオレットさんは優雅に微笑んだ。僕らはまた少し見つめ合った。

 

対話能力が高いほど、少しの対話で互いの力を察する。そして相手の事情もなんとなく分かってしまう。

 

解説席を乗っ取っているイータも遠巻きながらそれを察した。

 

「ホントに……惜しいわね。」

 

とマイクを切った状態で呟く。

 

「練り上げた魔力……合理的な戦術…柔軟な発想…どれをとっても…この世界の最高峰…でもそれだけに…勿体ない…」

 

戦闘も佳境に入りシャドウを捕らえようと縦横無尽、三次元的な血のように赤い槍は迫りそれらを見極め最小限の動きでかわしていく。

 

それを意に介さずまるで踊るかのようにアウロラは魔力の槍を殺到させる。

 

今舞台の外にいるものたちからは自在に動く槍がシャドウを捕らえる檻のように見えていた。

 

「何をしている!早く殺さんか魔女め!」

 

(確かに凄い…魔力をこうも柔軟に外に放出出来るなんて…普通なら霧散したって可笑しくない。なのに今も残り続けている!)

 

(シャドウはまだ仕掛けていない様子見…それにあの回避術…完全に動きを見切って最小限にかわしている…所々剣でなぎ払っている…あの剣は学びがいがあるわ…!)

 

(凄い…ここまで高度な技術…あの魔力の雨のようなことはできないけれど…シャドウの動き…目線や魔力の動きを捉える洞察力…なんて美しい…!)

 

(流石災厄の魔女…我々でも魔力を霧散させないようにするのは難しい…斬撃を飛ばすのだってイプシロンのように緻密な魔力操作が必要…でもシャドウ様が負けるはずがないわ…まだ仕掛けてすらいないのだから…あのハゲ親父ぶっコロ)

 

と各々その戦闘に釘付けとなり時折ベータのスケッチブックが高速に動く以外は順調な貴賓席。

 

徐々に魔力の槍は範囲を狭めシャドウの逃げ道を塞いでいく。

 

シャドウは魔力の槍を足場にし波紋を高めていく。

 

「心踊る…故に残念だ…本気の君と戦いたかったよ…」

 

そうして足場にした魔力から一気に加速し物理法則を無視するかのような三次元的動きで瞬く間にアウロラの元へ辿り着きアウロラは魔力で大鎌を作り出しニコリと笑う。

 

その笑みは申し訳なさそうであった。

 

「これは手向けだ…受け取るが良い…

サンシャインオーバードライブ…!!」

 

と自らの波紋をスライムソードへと流し込みアウロラを一閃した。

 

と同時に崩れる虚像のアウロラはその太陽のような煌めきを愛おしそうに受け入れ消滅するのであった。

 

魔力の槍が崩れ勝者の姿が浮かび上がる。

 

「勝者!シャドウォォォォ!!!」

 

「ワァァァァァァァァァァ」

 

と一斉に歓声が響く。

 

その大半はミツゴシ社員でもありシャドウガーデン構成員たちであり盟主の姿、戦闘を見て興奮に包まれていた。

 

「シャドウが…勝った…!」

 

「バカな!ありえん!あの女が負けただと!」

 

そうして役目を終えたと言わんばかりにシャドウはコートをはためかせる。

 

「騎士たち何をしておる!早く奴を捕らえろ!」

 

その時眩い光が舞台を照らし出した。

 

舞台中央に扉が現れたのだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そしてそれはもう一ヶ所でも…

 

「これって!?」

 

「扉が現れてそして開いた…それにこの波紋…あの子ね。」

 

「流石主だね。」

 

と聖域への扉を探していたベアトリクス、ゼータ、クレアの目の前にも扉が出現した。

 

「さぁ行きましょう…聖域に隠された真実を暴きに」

 

とベアトリクスはそのまま扉へと入っていき

 

「漸く知ることができるのね…よし!」

 

と決意を新たにするクレアとゼータもベアトリクスの後へと付いていき静かに扉は閉まるのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

突然現れた扉に困惑するアイリスたちは知ってそうな者からの説明を聞こうとする。

 

「あれは一体なんでしょうか?ネルソン大司教代理?」

 

「まさか……聖域が応えたというのか……?」

 

ネルソンが呆然と呟いた。

 

「聖域が応えたとは……?」

 

「ご存知の通り今日は一年に一度、聖域の扉が開かれる日です」

 

「聖域の扉は聖教会にあると聞きました」

 

「ええ。聖教会にあります。しかし扉は一つだけではないのです。聖域はその扉を叩いた者によって迎える扉を変えるのです。招かざる扉、招集の扉、そして歓迎の扉……。あの扉が何なのかは入ってみるまで分かりません」

 

ネルソンは白き扉を見たままローズの問いに答えた。

 

確かに聖域の扉は正教会にもあるがそれが本物ではないということは一部のものしか知らないことである。

 

故にベアトリクスたちの前に現れた扉こそ本物であり、目の前の現れた扉も本物であった。 

 

「こうなっては女神の試練を続けることはできません。観客を外へ出しなさい」

 

ネルソンの指示を受け係の者が観客を外へ誘導していく。来賓客も順に席を立つ。

 

シド、イータの目論み通り女神の試練を有耶無耶にすることが出来た。そしてその騒ぎのためシャドウの姿が解説席にいたイータの姿が既にいないことを気にするものはいなかった。

 

その間も少しずつ扉は開かれていく。

 

「誰も扉に近づけさせないように!」

 

ネルソンが指示を飛ばす。

 

そして扉が一人分ほど開いたところで、アイリスたちにも声がかかった。

 

「皆様にも退出お願いします」

 

ネルソンがそう言った。

 

その瞬間、アイリスとローズは剣を抜いた。それと同時にアレクシアも剣を抜き三人はネルソンの背後の存在に向き合う合ように構えた。

 

「なにを…?」

 

「悪いけれど扉が閉まるまでの間、大人しくしていて頂戴」

 

鈴が鳴ったかのような美しい声が聞こえた。

 

いつの間にかアイリスたちは黒い装束の集団に囲まれていた。先程まで一切の気配を感じさせずにだ。

 

そこ現れた人影にアイリスは見覚えがあった。

 

「貴女は!?」

 

「久しぶりね。アイリス王女、少し見ない間に躍進を続けているようね。」

 

「もしかして王都を守ってくれたシャドウガーデンの!」

 

「シャドウガーデンがなんのようだ!?」

 

とアレクシアとネルソンは言うがそれを無視するように黒いボディースーツの集団の中でも異彩を放つアルファは優雅に扉へと歩いていく。

 

その視線が一瞬、ローズとアレクシアを見た。

 

一目見て強いことが見て取れた。

 

下手をすれば王国最強と言われるアイリスよりも…

 

「貴女方が何の意味もなくこんなことをするとは思えません…王都でのこと、学園であったことを考えるにここになにがあるのです?」

 

「それは言えないわ。聡明な貴女なら分かるでしょう。言えば周りを更に巻き込むことになるわ。」

 

「それは…!」

 

つい先日アレクシアが巻き込まれたことを思い出すアイリス。

 

「イプシロン、後は任せたわ。アイリス王女たちおとなしくしていてちょうだいね。」

 

「了解いたしました、アルファ様」

 

とイプシロンへ言うと貴賓席からデルタを伴いジャンプする

 

「待て、聖域に入るんじゃない!!」

 

ネルソンの絶叫を無視して、アルファたちは光の扉の奥に姿を消した。

 

シャドウにより古代の記憶は呼び覚まされ遂に聖域の扉が開かれた。

 

聖域の奥に潜む悪意が今解き明かされようとしていた。




今回はここまでになります。

シャドウVSアウロラはシャドウへと軍配があがりましたがアウロラは聖域から呼び出された記憶であり全盛期からは程遠い実力なため戦ったシャドウとその様子を見ていたイータは勿体ないと呟きました。

そして手向けとしてシャドウは己の波紋による一撃にてアウロラを撃破しました。

記憶とはいえ波紋の生命エネルギー、しかもシャドウ程の濃密な波紋…それを記憶とはいえまともにくらったアウロラ。

それは聖域編が終わる頃に明らかになるでしょう。

聖域への扉が現れて女神の試練は中止となりシャドウとイータの思惑通りとなりました。

流石に扉の出現は二人とも予想外でありますが。

この時既にシャドウは離脱しイータもそれを追い掛けて会場からいなくなっております。

ではイナリは何処かと言うとそれも次回にて。

アルファが登場し原作と違ってそこまで敵対していないアイリスはアルファへ問いかけるもののはぐらかされてしまいます。

そしてアルファたちは聖域へと突入しました。

更に別の場所でもベアトリクスたちの前に扉が現れたので三人も聖域へと入ります。

聖域に隠された闇とは何なのか徐々に明かされていくことでしょう。

アニメ二期ジョン・スミス他デルタも良かったです。

そして次回は遂にガンマの戦闘シーンが見れますね。

今小説でも何処かでガンマの戦闘シーンを入れたいものですね。

来月末まで少し不定期更新になると思います。

遅くとも投稿していけるように頑張りますので宜しくお願いします。

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次回も見て頂けると幸いです。

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第五席は油断なく戦況を見据え王女たちは聖域へと突入し陰の盟主は悪友と共に我が道を往かん!

聖域へと入っていったアルファたちに場を任されたイプシロン。

そんなイプシロンの活躍とシドたち方面の話になります。

それではごゆっくりどうぞ!


シャドウとアウロラの戦いに決着が着いた刹那、聖域へと続く道が開かれた。

 

そこへ先陣としてアルファ、デルタたちが飛び込み、残ったイプシロンはハゲ親父ことネルソンを睨み付けながらアイリスたちを監視する。

 

(王都での戦闘を見てアルファの強さは分かっています…この場に残ったのは彼女程ではないけど…それでも今の私では5分と持たない…それに非戦闘員であるナツメ先生もいる分此方が不利…幸い彼女らは無闇に傷付けようとすることはないはず…ここは様子見がいいわね。)

 

とアイリスは結論付ける。

 

「聖域でいったい何をするつもりなの?」

 

とアレクシアはイプシロンへと訪ねる。

 

イプシロンとしては主であるシャドウと一時的とはいえ恋仲になった面白くない相手ではあるが努力家な面は評価している。そして報告よりも実力を上げているのもやはりイナリやイータたちとの鍛練の賜物といったところだろう。

 

「何をする…というよりも何があるかといった方が正しいわね。大人しくしていれば危害は加えないわ。」

 

とイプシロンは言う。

 

(シャドウやミストのことしか知らないけど姉様が強いと認めるアルファ…その人と対等に話せるということは彼女も相当な使い手…聖域…もしかしたら教団を知ることの出来る千載一遇のチャンスなんじゃ…隙を見て突入を)

 

「動くとこの女がどうなっても知らないぞ」

 

ローズと、そしてアレクシアの動きを読み取ったかのようにイプシロンが言った。

 

彼女の視線の先には、黒ずくめの女に捕らわれたナツメの姿があった。

 

「ナツメ先生!」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

申し訳なさそうに目を伏せるナツメ。

 

まぁ身内同士の茶番なのでジト目になりつつも目的を達そうとするイプシロン。

 

涙をこらえるナツメの姿に、ローズは胸が締め付けられるような思いだった。

 

反撃の芽は摘み取られた……かに思えたが。

 

「胡散臭いわね。見捨てても良いような気がするわ。」

 

「アレクシア!?」

 

「駄目ですッ!!」

 

(分かるわ…胡散臭いというか演技が下手というか…仕方ない…ここは友好関係を築いているあの娘の出番ね。)

 

と小声で言っているのだが波紋で身体能力を上げている関係でその会話もイプシロンには丸聞こえでありあまり人質としての役割に適していなさそうなのでイプシロンは

 

「会って数時間の相手では感情も動かない…では此方はどうかな?」

 

と指した先には

 

「アレクシア様~アイリス様~助けてくださ~い~」

 

「イナリ!?あんたたちイナリに何かしたらタダじゃ!」

 

「あまり動かないことだ…でなければ…」

 

「な、何をするというのです!」

 

「この娘の尻尾を毛繕いして尻尾の毛をふかふかの枕にし、肌を綺麗にして主人の所へ帰すだけだ。」

 

「な、何てことを!」

 

とローズには尻尾の毛をふかふかの枕にしての部分しか聞こえていなかったようであるがアイリス、アレクシアの二人にはバッチリ聞こえていたので

 

(…いやそれはむしろ良いことでは?)

 

(ちゃんとあいつの元に帰すっていってる時点で悪い奴らじゃないことは分かるのよね。)

 

とイプシロンたちと事を構えるのはよそうと構えを解く。

 

それにナツメの方は首筋に剣を当てられているのに対してイナリには何もしておらずむしろ落ち着かせようとしているように思える。

 

因みにイナリがいるのはイータから取り敢えず合流してほしいと言われ向かったところで丁度良いから人質役をとアルファから頼まれたためである。

 

そんなやり取りをしている間に聖域の扉の光は明々としていたのが段々と輝きを失っていく。

 

ゆっくりと、ゆっくりと。

 

シャドウガーデンの構成員たちは続々と扉の中へと入ってゆき、捕らえられたナツメとイナリそしてネルソン大司教代理も扉の方へ歩かされる。

 

アイリス、ローズ、アレクシアはそれをただ見ているだけしかできなかった。

 

一人一人の隙がない。

 

黒ずくめの集団は一人一人が強く、そして統率が取れていた。彼女たちは三人一組のチームで互いをフォローしていた。 ほんの僅かな隙を突いても、即座にカバーされることが容易に予想できる。極めて洗練された集団行動だった。

 

光がどんどん弱くなっていく。

 

「やめて、乱暴しないで!」

 

強引に扉へと押し込まれるナツメ先生が悲痛な声で抵抗する。

 

「ナツメ先生ッ!!」

 

「わ、私は大丈夫です、だから心配しないでください!」

 

ナツメは震える声で健気に叫び、扉の中へ連れ去られた。

 

「ほわわわわ何処へ行くのですか~」

 

「大丈夫。我々が守るので大人しくしていてください。」

 

と反対にイナリは丁寧に連れられて扉の先へと連れてかれた。

 

そして残りはイプシロンとハゲ親父ことネルソンだけとなる。

 

「一緒にきてもらう。」

 

「そんなに行きたければ行くといい…あの世へな!処刑人!」

 

とネルソンの、言葉を皮切りに部下である処刑人ヴェノムの大剣がイプシロンへと横凪に振り下ろされる。

 

(殺った…最高のタイミング…かわすことなど出来まい!)

 

とネルソンも処刑人も完璧なタイミングでの奇襲に手応えを感じていた。

 

それを見ていたアイリスたちも斬られると思った。

 

 

しかしガキンと金属音が響き渡る。

 

それは

 

「まさか油断している…とでも思っていたか?」

 

イプシロンは胸元から小刀取り出していてそれにスライムボディスーツを纏わせ受け止めていた。

 

色も本物のナイフのように偽装をすることでスライムボディスーツのことを隠すことに成功していた。

 

「あんな小さな剣で受け止めた!?」

 

「奇襲があるなんて分からないというのにそれすらも警戒していた…なんて腕前…!」

 

「剛の剣…それをあんな小さな剣で受け止めた…言うなれば柔の剣…力だけでなく技もある…!」

 

各々が戦慄している中で

 

「処刑人ヴェノム…昔に女神の試練でオリヴィエを呼び出した戦士…それが今では教団の傀儡…今まで望まぬ殺人をしてきたのでしょう…その呪縛を解き放ちましょう…」

 

そう言いながらイプシロンの持つ小刀から銀色の波紋が溢れそして

 

銀色の波紋疾走(メタルシルバーオーバードライブ)!!」

 

と銀色の波紋がナイフから放たれ斬撃となり処刑人ヴェノムを一刀両断した。

 

ヴェノムは最後に小さくありがとうと言葉を残し逝った。

 

「ば、バカな!?処刑人が殺られただと!」

 

ネルソンからしてみればいきなりヴェノムが血を吹き出し倒れたようにしか見えなかった。

 

しかしアイリスたちにはしっかりと見えていた。その神業のような魔力操作を

 

(魔力とは本来自分から離れれば霧散してしまう…だから身体強化といったことに使われたり魔力を流して怪我を早く治すというのが普通…女神の試練で呼び出されたアウロラという人物の魔力の操り方は異常だった。古代の力だからとそう納得出来るでも…違う!)

 

(見たところ私たちと変わらないぐらいの年齢…でも分かる…どれだけの鍛練を…努力をしてきたのか…!)

 

アレクシアと、ローズはそう思いながらアルファとは違う強さを持つイプシロンに興味を持つ。

 

「魔力を切り離した斬撃…!それに…あれだけの魔力なら剣が自壊しても可笑しくないのに…そんな様子もない…あれだけの伝導率はいったい?」

 

とアイリスは自身の魔力を込めた剣は魔力に耐えきれず自壊してしまうことが度々あった。ミスリル製であってもその伝導率はシド曰く5割ほどだ。

 

それを無駄なく伝えているイプシロンの技量に戦慄する三人を他所にイプシロンはネルソンの首根っこを掴み扉へと消える。

 

閉じ掛ける扉を見据えてアレクシアは決意したかのように飛び出しそれを追ってアイリス、ローズも共に飛び込みそして扉は消失するのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方の会場を本気ダッシュで抜け出したシドはリンドブルムを見渡せるところまで来ていた。

 

「さて今頃会場はシャドウの話で持ちきりだろうし後はアルファたちがやるだろうから僕は温泉でも入りながら結果を待つかな。」

 

「全く…あんたって奴は……それでも…組織の長?」

 

とシドを追いかけてきたイータも合流した。

 

「やぁイータ!登場前の凄い良い実況だったよ。」

 

「…忘れなさい…」

 

「いやでもいつもとのギャップが」

 

「…忘れろ…!」

 

とイータは恥ずかしいのでシドへタイキックをお見舞いするがシドは軽々とかわす。

 

「分かったよ。それとイータ。」

 

「なに…?」

 

「ありがとう。」

 

と素直に感謝したシドにイータはため息を吐きながらもどういたしましてと返した。

 

「取り敢えず離れ……これは…?」

 

「ん?」

 

と二人の前に現れたのは赤い紋章の扉のようなもの。

 

「……イータさんや、聞いてた聖域の扉の特徴にそっくりじゃないか?」

 

「…まさにミラクル…流石シド…トラブルに愛されてるわね…」

 

「まぁでも僕がそんな簡単に入るとでも…」

 

と全力で移動して振り切ろうと移動しイータも涼しい顔でそれに付いていく。

 

しかし何度やっても振り切れず扉はシドから離れない。

 

「これは…入るしかない…」

 

「まぁ仕方ないか。アルファたちと会えるかな?」

 

と呑気に言いながらもシドとイータの二人はその扉を潜るのであった。

 

三ヶ所で開いた扉に各々が飛び込み聖域へと向かうこととなった。

 

聖域での真実が暴かれるときが来たのであった。




今回はここまでになります。

イプシロンは原作、漫画、アニメでは胸元を斬り裂かれスライムで盛った胸が露出してしまいかけましたがイータからの忠告もありしっかりと防御してディアボロス教団に操られた処刑人ヴェノムを慈悲の元に倒しました。

イプシロンはスライムの操作での色彩もコントロールできるのでアイリスたちからしたらただのナイフで魔力を飛ばした相当な技量の持ち主だと感じさせました。

その際の魔力の伝導率、操作性をアイリスたちは目の当たりにし驚愕と共にアレクシアは聖域の秘密をアイリス、ローズはアレクシアを心配し飛び込みました。

アイリスからしたら魔力を飛ばすほどに注ぎ込まれた剣が自壊しないことはある意味彼女の目標とするところでもあるからかそれも突入に躊躇いがなかった理由になりますかね。

原作と違いアイリスもいるのでディアボロス教団の所業を知ることになるので闇落ちフラグはぼっきり折れていますね。

シドは会場から離れてイータもそれに付いていきました。

シドはイータの実況を絶賛したものの恥ずかしいのでイータは照れ隠しにタイキックするものの避けるシド。

そんなシドも素直にイータへ感謝を述べていた時にまさかの二人の前に聖域へと続く扉が現れました。

シドは面倒ごとと思い振り切ろうとするものの全力で付いてくるので仕方なくイータと共に入ることにしました。

これで三つの扉に三組が分かれて入ることとなりました。

次回はシド、イータの方の話になるかと思います。

二期もいよいよ第六話まできてジョンスミスもといシャドウのデルタ、アルファとの戦闘シーンはとても楽しみですね!こちら予約投稿なのでその勇姿をしっかり見て次の話を書きます!

そしてマスターオブガーデンでは一周年を迎えてリカバリーアトミックのシャドウやアニバーサリーキャンペーンなど目白押しです!

感想、評価、お気に入りいつもありがとうございます!

11月は少し不定期になると思いますが投稿していけるようにします!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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陰の盟主は悪友と共に聖域へ誘われそこで災厄の魔女と再会し仲間に加え聖域の最奥へ進む

悪友コンビが災厄の魔女と再会します。

そして協力な仲間を加えて二人は先へと進んでいきます!

それではどうぞごゆっくり!


シドとイータの二人は目の前に現れた聖域へと続く扉を潜り抜けたその先は殺風景な部屋だった。

 

扉が一つとそして四肢を鎖で椅子に貼り付けられた女性が一人。

 

先程まで戦っていたヴァイオレットさんがいた。

 

「やあ」

 

シドは彼女に声をかけた。彼女はシドの方を見て、驚いたように目を見開いた。

 

そして「……やあ」とシドを真似るように言った。

 

 

「さっきぶりね」

 

「だね。もしかして君が僕を呼んだのかな」

 

「呼んだ……?そんなつもりはないけど。ただ、楽しかったわ」

 

「僕もだよ」

 

「私の記憶は不完全だけど、覚えている中ではあなたが一番強かった。私の時代に、あなたがいてくれればよかったのに……」

 

「光栄だね」

 

二人は先程までの戦いの感想を言い合う。アウロラは己を凌駕するシドにシドは全盛期はベアトリクスに匹敵する程の実力ないし凌駕していたのではと思う。

 

「それで、あなたはどうしてここに?」

 

彼女は不思議そうにシドを見つめた。

 

「突然扉が現れて中に入ったらここだったんだ。走っても付いてくるから仕方なくね。」

 

「よくわからないわ」

 

「僕もだよ。ちなみにここから出る方法とか分かる?」

 

「どうかしら。私も出た記憶がないのよ。」

 

「さっき出てたけど?」

 

「気付いたらあそこにいたのよ。」

 

「気付いたら…ということは…記憶が呼び出されて……聖域に魂を留めるシステム…?それなら辻褄は合う…」

 

とイータは考える。

 

「ゲームのセーブデータみたいなものかな?」

 

「ゲーム…確かベアト母様の世界の…でも確かに呼び出すっていうなら……その例えがもしかしたら的を射ているかもね…」

 

シドの例え方は強ち間違いではないだろう。

 

聖域から呼び出される記憶は毎回同じだ。セーブされた個体が強さによって引き出されるのだから。

 

「そちらの彼女は…もしかして婚約者さん?」

 

とアウロラは親しそうに話す二人へと興味ありげに尋ねる。

 

「こいつとそんなのになったら…今より苦労するから御免よ…ただの共犯者で悪友よ…貴女が…アウロラで…合ってる?」

 

「そうよ。それにしても貴女…凄い魔力ね。でも少し器が歪な形…?まるで内側から弾けて再構成したみたい。それと何かしらのアーティファクトで魔力を抑えているのかしら?」

 

とアウロラはイータの魔力の器を一度破壊して再構成した故の歪さを見抜き更にアーティファクトで魔力を吸わせていることも見抜いた。その事にイータは驚きつつもやはり災厄の魔女と言われるだけのことはあると思った。

 

「そんなことまで分かるのね……昔の魔剣士のが……魔力を扱う技術は発展…してた?」

 

「一部…と言えるのかしらね。私クラスはいなかったけどそれでも、優秀な者はそれなりにいたからアーティファクトの開発に勤しんでいたわね。」

 

「…古代のアーティファクト…解析が難しいのが幾つかある…やっぱり…教団が技術を独占してた……」

 

「技術独占とどんなに有益でも教団が不要と見なせば切り捨てられるといったところか。ここ100年で技術を発展させられたのはやっぱりマザーあってのことだね。

 

作物を育てる方法だって近年マザーが、もたらした物。

 

だから貧しく餓える人も百年前に比べると少なくなっているって歴史書に書いてあるぐらいだ。」

 

「流石ベアト母様…!」

 

「未来ではそうなったいるのね。私はもうここに閉じ込められて1000年は経つのかしら」

 

少し感慨深そうに言うアウロラにシドは脱出のための方法を尋ねる。

 

「因みにここから出る方法とか分かる?」

 

「どうかしら。私も出た記憶がないのよ」

 

「ふ~む。やっぱりセーブ機能であそこに飛ばされるだけってことなんだな。」

 

「そうね、気づいたらあそこにいたの。あんなことって初めてよ。覚えている限りね」

 

「そうなんだ。困ったな。」

 

シドはどうしようか頭を捻って考えた。

 

「じゃあ…あっちの扉に進めばいい…進んでいけばベアト母様かアルファ様に合流出来るかも…?」

 

とイータは扉を指しまずは先に進んでみようとシドが決めた時、アウロラは唇を尖らせて僕を呼んだ。

 

「あなたたちの目の前に四肢を拘束された美女がいます」

 

アウロラがそう言った。シドは椅子に拘束された彼女を見て頷いた。

 

「いるね」

 

「そうだった…戦力が一人違うだけでもラクになる…」

 

とイータも話しに夢中でその事に気付くのが遅れた。

 

「とりあえず、助けてみませんか」

 

シドは少し首を傾げて、それからどうやら思い違いをしていたことに気づいた。

 

「ああ、ごめん。修行中かと思った」

 

「なぜ?」「なんで?」

 

とアウロラとイータの声が重なる。

 

「昔そうやって修業したんだ。」

 

「それ…何か役に経ったの…?」

 

「まぁ…………あれだよ。忍耐力が上がったかな?」

 

と当時のことを思い出しながらも誤魔化したシドはスライムソードを作ろうとするも上手く魔力を練れず仕方なしと自前の剣で拘束している鎖を断ち切る。

 

「ありがとう。ん、ん~~1000年ぶりの自由だわ。」

 

「千年ってことは相当おとし」

 

「それより…進みましょう。」

 

とシドが失礼なことをいう前にイータは先へ進もうと促す。

 

「そうね。さてと」

 

アウロラは拘束具のようなものからシドと戦った時のドレスへと変わり薄いローブの乱れを整えて、艶やかな黒髪を右耳に掛けた。それが彼女のスタイルのようだ。

 

「さて、私たちの目的は一致している」

 

彼女は涼しい顔をして言った。

 

「まぁそうだね。」

 

「私は解放、あなたたちは脱出。そうでしょ?」

 

「ああ、そうだね。」

 

「それとここの調査…は他の子達がしてる…」

 

「それなら協力しましょうか」

 

「いいけど、脱出の方法は分かるの?」

 

「分からないわ。でも解放の方法は分かる。聖域は記憶の牢獄よ。聖域の中心に魔力の核があるの。それを壊せば私は解放されるわ」

 

「君だけ?」

 

彼女は横目で僕を見て、いたずらっぽく微笑んだ。

 

「何もかもすべて。あなたたちも出られるはずよ」

 

「聖域なくならない?」

 

「いいじゃない、無くなっても。あなたたち困るの?」

 

シドはアウロラの問いを頭の中で反芻し考えた。

 

「よく考えたら困らないかな。それでいいや。」

 

「その核になってるのに…用があるからそれさえあれば……聖域がどうなっても良いし…むしろ教団側にダメージを与えられる…」

 

イータも特に問題ないと思い核となるものが無事ならば良いかと返答する。

 

「決まりね。あと気づいていると思うけど、魔力は使えないわ。ここは聖域の中心に近いの。魔力を練るとすぐに聖域の核に吸い取られるわ」

 

「みたいだね。」

 

以前のテロリスト襲撃事件よりもずっと強力なやつだ。魔力を練るとすぐに消えてなくなる。色々試しているけど、これは少し時間がかかりそうだ。

 

「まぁ普通ならそうよね。」

 

とイータは魔力でスライムを変幻自在に伸ばしながら言う。

 

・・・・・・・・・・

 

「貴女どうして魔力を普通に練れるの!?」

 

アウロラの驚きにイータは懐からある装置を取り出した。

 

「こんなこともあろうと……魔力阻害防御装置を開発してた…これがあれば2時間は魔力を吸われない…戦闘を考慮すると1時間30分ぐらい…の効力…」

 

「流石イータ頼りになるよ。」

 

「取り敢えず予備でまだ5つ持ってる…シドと…アウロラも」

 

と二人へと渡したイータ。

 

「…凄いわね。本当に聖域に魔力を吸われないわ!ここまでのアーティファクトなんて私の時代でも作れるか分からないほど…」

 

「まぁでも例え魔力が使えなくても波紋があるから問題ないけど油断大敵か。」

 

とシドは言うとアウロラは興味を持ったようで

 

「波紋って貴方が最後に攻撃したあれのこと?」

 

「そうだよ。波紋はまぁ簡単にいえば特殊な呼吸法で体を流れる血液の流れをコントロールして血液に波紋を起こして太陽光の波と同じ波長の生命エネルギーを生み出す秘法ってところ。

 

僕も極めたといえないからね。マザーの波紋に比べればまだまださ。」

 

と説明した。

 

「呼吸法…だから貴方たちの呼吸が独特なのね。魔力を生み出すのとはまた違う方法ね。」

 

「これを使えるのは…世界で私たちの組織ぐらい…それもベアト母様が教えてくれたお陰…」

 

「ますますその人が気になるわね。」

 

「人というかエルフなんだけどね。」

 

そしてアウロラはシドたちを先導するように進み、迷いなく扉を開ける。

 

「ねえ、君は解放されたらどうするんだい」

 

僕はヴァイオレットさんの背中に問いかけた。

 

「消えてなくなるわ。ただの記憶だもの」

 

彼女は振り返らなかった。

 

(記憶…ね…むしろ魂と言えるんじゃ…ならもしかしたら…)

 

とイータは考えながらシドと共にアウロラに付いていくのであった。




今回はここまでになります。

まずはシド、イータがアウロラと邂逅しアウロラが一時的にパーティに加入しました。

原作と違うのはイータ特製の魔力阻害防御装置のお陰で聖域に魔力を取られないということ。

アウロラにも渡したので中々バランスの良い組み合わせになりました。

近接はシド、近、中距離がイータ、遠距離はアウロラ担当と良い案配です。

アウロラは一目見てイータが魔力の器を一度破壊して再構成した故の歪さや魔力を押さえ込んでいると見抜きました。

まぁ災厄の魔女と呼ばれた陰実世界の最強格の一人ならこれぐらいは見抜くだろうと思います。

そしてシドたち二人の関係性を見て婚約者かと問いかければイータは即否定しました。

まぁまだただの悪友ですからね。

そしてシドの前世でのトンチキ修行の一部が判明。

セルフ十字架振り付けは色々不味いですからね。

というかどうやって自分を縛り付けたのか謎ですね。

そして魔力が使えない説明をしたアウロラはイータが普通に魔力を練るので驚きました。

そしてイータのこんなこともあろうとという便利な道具を取り出しました。

マスターオブガーデンでイータがシャドウに尋ねて言ってみたい言葉にも入っていた言葉でした。

万全なシドと魔力の使えるアウロラ、イータだけでもオーバーキルな気はしますが更にベアトリクスたち、アルファたちもいるので教団は泣いても良い…慈悲はありませんけれども。

アウロラは波紋にも興味を示し独特な呼吸での生命エネルギーの活性化という未知のものを生み出したベアトリクスに驚きを露にしました。

そしてアウロラの最後の言葉になにやら考えているイータでした。

アニメではミツゴシ動乱編も終わりオリアナ王国編かと思えばオリジナル話で水着姿な七陰が見れると思うと楽しみが止まらないです!

お気に入り、感想、評価いつもありがとうございます!

次回も遅くならないよう投稿していけたらと思います。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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クリスマス番外編 武神は姪っ子たちにクリスマスプレゼントを渡すために奮闘し教官たるエルフはその様子を見守りサポートする。

クリスマスは過ぎてしまいましたがクリスマスのお話になります!

これはまだ七陰が幼く悪魔憑きもまだ数名の時のシャドウガーデンでのある日の出来事。



ベアトリクスはシャドウガーデンの仮拠点にて頭を悩ませていた。

 

「どうしたものかしら…」

 

「あれは…ベアトリクス様?頭を抱えられて…もしや何か重大なことが!?」

 

その様子を見かね最近イプシロンにより悪魔憑きを治されシャドウガーデンとして所属することになったラムダが声をかけた。

 

「ベアトリクス様どうされましたか!何かしら緊急のことが!」

 

「ラムダ…えぇこれは由々しきことだわ…シャドウガーデン始まって以来の…」

 

「なんと!?」

 

「良ければ貴女の知恵も借りたいわ。」

 

「私ごときの知識いくらでもお使いください!」

 

とラムダは張り切って言う。

 

かの武神に頼られるのはエルフとしてとても誇りあることと考えるラムダ。そうしてベアトリクスはラムダへと告げる。

 

「………決まらないの」

 

「決まらないとはもしや教団のアジトへの侵入路のことでしょうか?」

 

「………あの娘たちへのクリスマスプレゼントが…」

 

「………………………なんと?」

 

「アルファたちへのクリスマスプレゼントよ。」

 

と大真面目に言うベアトリクス。

 

「その…ベアトリクス様。クリスマスプレゼントとはいったい?」

 

「そうだったわね。クリスマスという文化はまだ他には根付いていないものね。」

 

そうしてベアトリクスはラムダへとクリスマスについて説明をした。

 

「成る程。大きな木に装飾を施し、ケーキやターキーというものを食べる。そして最後にサンタなるものがこどもたちへプレゼントを贈るのですね。」

 

「簡単に言うとそう。プレゼント以外は既に作ったり手配もしている。問題は」

 

「アルファ様たち七陰の皆様の欲しいものですね。」

 

「えぇ。私が聞くともう貰っているからや欲しいものはないと言われてしまうのよ。」

 

(ベアトリクス様は姪であるアルファ様にはこの間寒いからと手袋を手編みで作られていた…

 

ベータ様は物語の書物を直接お渡しされていた。

 

ガンマ様には様々な知識の詰まった書物に道具

 

デルタ様は狩りで捕った獲物をその場で捌いて調理され

 

イプシロン様は美容機器といったもの、さぷり?なるものをお渡しされた。

 

ゼータ様には弟君と共にミドガルに近い海で共謀で毎年死者を出しているというミドガルシャークを調理されていた。

 

私も一口食べたがあれは格別であった。

 

イータ様は……実験器具のアイディアとベアトリクス様と一緒にいられていたな。

 

…うむ。ベアトリクス様は七陰の皆様へ色々贈ってらっしゃるな。

 

これでは確かに欲しいものはなくなってしまう。)

 

とラムダはベアトリクスからのここ最近の七陰へのプレゼントを思い浮かべる。

 

(しかしベアトリクス様が頼ってくださったのだ!何かしら力になりたいがどうしたものか?)

 

「ラムダには重要な任務を任せるわ。」

 

「!サー!イエッサー!」

 

「クリスマスまで残り3日…どうにかあの娘たちの欲しいものを聞き出してちょうだい。」

 

「はい!?」

 

「私は村の飾り付けと追加のターキーの確保、村の子供たちのプレゼントを用意するから頼んだわ。」

 

とベアトリクスは自身の作った村でのクリスマスを祝うために出掛けてしまうのであった。

 

「い、行ってしまわれた…自然に聞くのは平気だろうが果たして欲しいものがあるのか…?」

 

しかし一度引き受けたからには全うしようとラムダは七陰の元へと歩みを進めるのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それから二日後

 

いよいよ明日に迫ったクリスマスなのだが

 

「ま、まずい…まだ七陰の皆様から聞き出せていないというのに明日が期限になってしまった!」

 

ラムダは七陰たちに何が欲しいかそれとなく聞こうと奮闘していたのだが

 

アルファからは

 

「伯母様からもう充分過ぎるほど貰ってる…伯母様がいれはそれ以上望むものはないもの。」

 

ベータは

 

「贈られた書物もそうですがベアトリクス様との思い出は掛け替えのないものです。充分過ぎるほど貰ってます。」

 

ガンマも

 

「私は両親から邪魔扱いされ愛されませんでした。でもお母様はこんな私を愛してくれた。それだけで私は満足です。そういえばクレアに今度何を贈ろうかしら?」

 

デルタは

 

「がぅ?母と狩り行ったです!いつも狩り行くからデルタは満足なのです!今度姉様にあげるのです!」

 

イプシロンからは

 

「母さんからサプリや美容に良いものも貰ってるし私のために調薬してくれたのもあるしいらないわ。それより母さんよ!またこの間も同じ服を着てたし…ブツブツ」

 

ゼータは

 

「ベア様から一族を、掛け替えのないものを救ってもらったんだ。貰うより何かしら上げたいね。そういえば母さんがこの前良い魚を手に入れたって言ってたっけ」

 

イータの場合は

 

「zzzzZ…ううん…昔から…ベアト母様…に貰ってるから今更これだって…ない…それよりベアト母様…ちゃんと休めてる…?お休み上げないと…倒れちゃう…そうだ…!このヤスメール君二号を飲んで貰えば…でも実験してない…ラムダ実験台に…なって」

 

と実験台となったラムダだが副作用はなく疲れも吹き飛んだので太鼓判を押した。

 

「あと一日で聞き出すというのは…しかし何とかしなければ!」

 

「ねぇラムダ。」

 

「アルファ様!?どうされましたか?」

 

「先程から声をかけていたのだけど何か悩み事?」

 

「いえ大したことではないのでお構い無く。」

 

ここはいっそ直接聞いてみようかとラムダは思うその前に

 

「そう。それなら手伝ってもらいたいことがあるの。」

 

「それはいったい?」

 

アルファの相談事を聞いたラムダは快く承諾するのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

クリスマス当日

 

ベアトリクスは村の飾り付けを手伝いアルファたちの元へと急いで戻っていた。そこで村人たちから日頃のお礼と色々と祝われてしまい遅くなってしまった。

 

「皆に引き留められて少し遅くなっちゃったわね。急いで準備しないと。」

 

そうして拠点へ戻ると

 

「伯母様おかえりなさい。パーティーの準備出来てるわ。」

 

とアルファに向かい入れられて入ると飾り付けが終わりクリスマスツリーも立派に立てられていた。

 

「伯母様が用意してくれてたから皆で飾り付けをしたの。高いところはラムダに手伝ってもらったわ。」

 

「そうだったのね。皆ありがとう。料理も豪勢に作るわ。」

 

ベアトリクスは協力して飾り付けを手伝った七陰やラムダに感謝し何時もよりも豪華に作る。

 

ターキーにじゃがいもをふかし更にホワイトシチュー、ピザ、グラタン、ポテト、サラダや前もって用意していたケーキを出した。

 

そうして用意が終わり

 

「皆飾り付けありがとう。今日はいっぱい用意したから食べてちょうだい。メリークリスマス!」

 

全員が食べ始める。

 

「伯母様これ私が作ったの、食べてくれる?」

 

「勿論よ。うん、良い味だわ。ありがとうアルファ。」

 

「ベアトリクス様このグラタン美味しいです!」

 

「お母様このグラタンのレシピを教えてください!」

 

「良いわよガンマ。ベータも火傷しないように気をつけてね。」

 

「母~この肉ちょっと辛いけど美味しいです!」

 

「これはスパイスとコショウの絶妙なバランスが出せる味だわ!ホワイトシチューも凄く濃厚でコクがあって美味しい!」

 

「デルタもイプシロンもありがとう。」

 

「ベア様このじゃがいも凄いね。そこにバターと塩とマヨネーズを掛けると美味しい。今度皆に教えて上げよう。」

 

「ピザ…美味……これを量産できれば…良い」

 

「ゼータもイータも楽しんでくれて良かったわ。」

 

「ベアトリクス様。」

 

「ラムダもありがとう。皆の手伝いをしてくれて。」

 

「いえ、アルファ様から頼まれたのもありましたので。それと此方を。」

 

とラムダはベアトリクスへと紙を手渡した。

 

「七陰の皆様から聞いた欲しいものです。後程ご確認をお願いします。」

 

「ホントにありがとう、これでプレゼントを渡せるわ。ラムダも楽しんでちょうだい。」

 

「軍人としての責務で食事を楽しむ余裕があまりなかったですがこれは格別です。ありがたくいただきます。」

 

(七陰の皆様の欲しいものは共通されていた。これもベアトリクス様の人徳の為せること。食事も美味しい。

 

この前もベアトリクス様から食事を楽しめば笑顔が増えると仰られていた。笑顔が増えれば争いも自然と少なくなる。我々も精進せねば。)

 

そうして用意されたものを全て平らげベアトリクスはラムダから受け取ったものを確認するため一度席を外した。

 

「皆が欲しいものは何かしらね。」

 

とベアトリクスは一枚目を見る。

 

そこには

 

伯母様と一緒にいられますように

 

と書かれていた。

 

続けて読んでいくベアトリクス。

 

ベアトリクス様と一緒に過ごせますように

 

お母様と一緒にいられますように

 

ははとげんきにかりができるようにです

 

母さんとこれからも一緒にいられるように

 

ベア様と共にいられますように

 

ベアト母様がほしい

 

とそれぞれ皆がベアトリクスと一緒にいられるようにと書かれていた。何だか一人だけ具体的に書きすぎだと思うが気にしてはいけない

 

「まったく皆欲しいものをっていうのに、お年寄りを泣かせるわね、もう。」

 

涙ながらにそれを見たベアトリクスをラムダたち構成員たちは見守る。

 

(ベアトリクス様喜んでいらっしゃる。七陰の皆様はベアトリクス様といたいという願いであった。ベアトリクス様は皆様にとって母なのです。)

 

そうして戻ったベアトリクスは七陰たちをぎゅっと抱きしめ七陰全員その温もりを堪能し、そのまま布団を敷いているところまで行きベアトリクスは壁に寄りかかり七陰全員がベアトリクスに抱き付き静かにクリスマスの夜は過ぎていくのであった。

 

余談であるがカゲノー家に忍び込みクレアの枕元に剣術書と美容に関する書物を置いておきシドとは本気の斬り合いに興じることとなったのである。

 

シドの場合クリスマスプレゼントなのかは分からないが本人は満足していたので良しとしよう




今回はここまでになります。

クリスマスはもう三日程過ぎてしまいましたがクリスマス番外編になります。
ここ一ヶ月程投稿できず申し訳ありません。

色々と忙しく筆も進まず番外編の方を取り掛からせてもらいました。

本編はもうしばらくお待ちください。

今回は構成員もまだ少ない時期の幼い七陰たちにクリスマスプレゼントを悩むベアトリクスとそんなベアトリクスからプレゼントの内容を聞き出すように言われたラムダ。

色々と過保護なベアトリクスは七陰たちへ日頃からプレゼントをしていたのもあり難航しました。

クリスマス当日になりベアトリクスが今まで救った人たちの村で飾り付けを手伝いシャドウガーデン仮拠点へ行くと皆が飾り付けをしておりました。

料理を堪能しラムダから欲しいものを書いた紙を見ると七陰全員ベアトリクスと一緒に入られるようにとのことでした。

そんな涙ながらに紙を見ているベアトリクスをラムダたち構成員は見守り、ベアトリクスは七陰全員を抱きしめ一緒に寝るのでした。

カゲノー家では寝て起きてプレゼントが置いてあったことにクレアはビックリしベアトリクスから聞いていたサンタが来たと確信し魔剣士学園へ入学してからもサンタの存在を信じているのでした。

実際はベアトリクスが気付かれないように枕元にプレゼントを置いているだけである。

シドはそういったものよりも斬り合いを選び色々な技術を吸収するのでした。

マスターオブガーデンでサンタベアトリクスが登場したりととても良かったです。

アニメも二期が終わったかと思えば劇場化決定はとても楽しみですね。

更新は不定期になりますがしっかり投稿していきます。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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武神は弟子へと世界の闇を語り金豹の娘はその非道を語る。弟子は進むべき道を考え最奥にて聖域に囚われた亡霊と対峙する。

今回はベアトリクス側に焦点が当たります。

改めてのゼータの過去の話をクレアが聞きベアトリクスから世界で暗躍するディアボロス教団のことが語られます。

そして奥へ進むとそこにいたのは…

それではどうぞごゆっくり。


シドたちがアウロラと共に進んで行くのとは別の場所にて

 

ベアトリクス、クレア、ゼータの飛び込んだ先は研究施設のような場所であった。

 

「ここは…かなり古い遺跡?」

 

「遺跡に近いと言えるわね。古くなっているけどそれでも古代のアーティファクトが稼働していた痕跡がある…」

 

「血痕…かなり昔のものだけどそれでもむせ返るような臭いだ。濃厚な…死のにおい」

 

ベアトリクスを先頭にその後ろに付いていく二人。

 

「師匠…ここはいったい…それに私に見せようとしてるものって…?」

 

「昔に話したわね。クレアの悪魔憑きを治した時、悪魔憑きがどういう扱いを受けるか。」

 

「えぇ。教会に引き渡されて浄化っていう…ようするに殺されるって。それを師匠は治して匿ってるって。」

 

「えぇ。教会は遥か昔からそういうようにやってきた。でもそれだけではないわ。悪魔憑きは英雄の子孫が発症する。寿命的にエルフ、獣人、人間というようにどんどん発症数は減少している。」

 

「それって世代交代が遅いってこと?エルフは聞くところによると300年ぐらい生きるし獣人もエルフ程ではないけど長生きだし…人間は100年も生きられないから。」

 

「それで合ってるわ。そして教会…いえやつらは直系の英雄の子孫の血を発している。人間では王族の血筋は血統が良い。

 

この間のアレクシア王女の誘拐はまさにそれが目的よ。」

 

「アレクシアも!?…ってことは彼女も将来悪魔憑きを発症する…?」

 

「それは分からない。発症せずに終わる娘だっているから。そして獣人の場合はとある一族が直系の子孫って言われてる…文献は残ってないから確認できないけど代々族長に伝承で伝えられて…私の父が最後に託してくれた…だから信憑性は高いよ。」

 

「父ってもしかしてリリムさんがその直系の子孫ってこと?」

 

「そうだよ。私は族長の娘として所謂姫として色々な教育を受けてたんだ。でもある日悪魔憑きになった。

 

私は自身を火炙りにして事を納める様に嘆願したんだ。一族の中から悪魔憑きが出た、それも長の娘がなったんだ。それぐらいしないと周りに示しも付かないと思って。

 

でも父は悪魔憑きになった私を救うべく隠匿し奔走したんだ。母も弟も…一族の人たちは私のことをそれでも仲間だって言ってくれたんだ。」

 

「…とても素敵な人たち。」

 

クレアは感嘆した。人を思いやれる素晴らしい一族なのだと…だが次のリリムの言葉にクレアは言葉を失う。

 

「でもそれは唐突に崩れ去った。分家のものたちが奴らへ密告して追手が放たれて…父は一族を逃がすために…守るために…戦死した…」

 

「そんな!?」

 

「そうして追われることになった私たちだけど執拗な追撃に疲弊し一人また一人命を落とした。

 

母も私と弟を逃がそうと…でも悪魔憑きを発症してた私はロクに魔力も練れず目の前で弟を殺された…」

 

「ッ!」

 

リリムの話を聞きクレアはもしシドが目の前で殺された場面を想像してしまう。

 

リリムの話しはクレアにとってあり得たかもしれない話なのだから。下級貴族なら取り潰され一族を殺される可能性はゼロではない。

 

「でもそんな時にベア様たちが私の悪魔憑きと…目の前で殺された筈の弟を助けてくれた…死にかけてた母と一族の人たちの命を救ってくれた……

 

母は後遺症で歩くこともままならなかったけどベア様のお陰で杖を付いて歩けるまで回復した。」

 

リリムは主であるシャドウのことは少しぼかしなからクレアへと語った。

 

「でも私たちのような者がまだいるかもしれない…だから私はベア様の手伝いをしてるんだ。」

 

「…師匠とリリムさんの言う奴らって…何が目的なの?研究って?私たちのような悪魔憑きをどうしたいわけ…」

 

「奴らの目的……それは不老不死の実現と絶対の力を手に入れること、言うなれば第二の魔人となることでしょう。

 

二つ目の方は憶測でしかないけど不老不死の方は間違いないわ。」

 

「あり得ないわ!不老不死なんて、そんな荒唐無稽な」

 

「それを可能とし得るものがここにあるとしたら?」

 

とベアトリクスはクレアへと告げる。それは世界の真実

 

「この聖地で英雄オリヴィエはディアボロスの左腕を斬り落とした。その斬り落とされた左腕は意思を持ち古代のアーティファクトで押さえ付け研究された。

 

その過程で莫大な力と不老を得ることになった。」

 

「それだけの生命力と力が一部分とはいえ残ってた。更に悪魔憑きはディアボロス細胞を持つものが発症する…純度が高ければよりオリジナルに近づく。」

 

「それが奴らの…ディアボロス教団の目的。」

 

「ディアボロス教団…それが師匠が戦っている相手…」

 

クレアは二年前に自身を襲った者たちの正体を知った。

 

「教団はあらゆる組織の陰で暗躍してきた。ベガルタ帝国が統一された出来事を初めとして、オリアナ王国、ミドガル王国…上げれば切りがないわ。

 

そして自分達に都合が悪ければ抹消し歴史の闇へと葬ってきた。古代より今の文明が劣ってしまっている理由にもなるわ。」

 

「でもベア様のお陰でここ百年で文明のレベルは物凄い高くなった。私たちもその手伝いをして悪魔憑きを保護してる。」

 

「師匠の言ってた匿った子達の街よね。」

 

「皆ベア様を敬愛してるし一族はベア様を聖教の女神ベアートリクス様の生まれ変わりだった信仰してるよ。」

 

「信仰って……流石師匠!」

 

「私はそんな信仰される者ではないわ。ただの自己満足のエゴなのだから。」

 

「でもそれで助けられた人たちは皆幸せ者だよ。」

 

そうして歩くとポツンと置かれた書物のようなものを見つけた。

 

「これは…」

 

ベアトリクスは手に取るとぱらぱらとめくっていく。

そうして全て速読すると

 

「師匠?」

 

「あまり気分の良いものじゃないわ…」

 

ベアトリクスは二人へと手渡した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

実験×××日

 

今日も適合できず。実験体は山ほどいるがどれも欠陥品も良いところだ。毎回牢屋を掃除する此方の身になってもらいたいものだ。

 

唯一はあのエルフの実験体のみだ。

それ以外の人間と獣人はあれには及ばない。

だがやつだけでは裏切る可能性もある。幾つかスペアを用意しておかなければ。

 

実験×××日

 

ディアボロスの左腕の研究は順調だ。これさえあればやつを滅ぼすことも可能だろう。この細胞…ディアボロス細胞は魔力を増大させ適合できれば莫大な力を得られる。

 

実験×××日

 

どうやらディアボロスの左腕から抽出出来た雫には不老をもたらす力がある。

 

だが未完成であり一年に一度摂取しなければ効果はなくなる。ならばディアボロスのように凶暴ではなく我らに従順な僕となる第2のディアボロスを作れれば永遠の命も目ではない。

 

だが実験体のエルフがどうやら逃げたらしい。追撃の部隊を派遣したらしく時期に捕まるだろう。

 

実験×××日

 

実験体のエルフを追い込んだが済んでのところで逃げられたらしい。逃げられたといっても断崖絶壁の崖から落ちたということだ。それに奴の左足を切断したという。

 

死体は見つかっていないようだが左足から取れた遺伝子でクローンを作り出そう。二度と歯向かわない人形として。

 

しかし実験体のエルフの落ちた崖の近くではディアボロスの左足の痕跡があったというが眉唾であろうものなので報告はしていない。

 

崖のある場所は鬼が山と呼ばれ鬼が住んでいると村民は言うが誰もその姿を見たこともないという。

 

実験×××日

 

ダメだ。どうしても作れない。これも先代の11席が資料を消したせいだ。

 

あぁ口惜しい……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

パタンとクレアは日記を閉じた。

 

そこに書かれていたのは実験体とされた無数の悪魔憑きの末路でありそして

 

「この実験体のエルフってまさかオリヴィエのこと?」

 

「かもしれないわ。彼女も最初はディアボロスを倒そうと教団の言いなりになっていた。でも教団は私利私欲のために第2のディアボロスを作ろうとした。」

 

「でも先代の11席?が資料を消したってことはそいつは少なくともまだ良心があったのかしら?」

 

「それは分からないわね。どのみち教団にいたのだから何かしらのことに関わっていたのは確実。」

 

日記に書かれていたことに驚きと実験の凄惨さが伝わってくるベアトリクスたち。

 

「それにしても気になるのはオリヴィエの行方だよ。これを見る限り左足をなくしているし断崖絶壁から生還出来たとは思えない…でも」

 

「えぇそれだと辻褄が合わなくなるのよ。」

 

「師匠それはどういう?だってオリヴィエ以外にも悪魔憑きを適合して子孫がいるかもしれないじゃない。」

 

「確かにそうだわ。でもね、私たちが調べた所オリヴィエは私の姪と瓜二つの姿をしているのよ。」

 

「師匠…姪がいたこと始めて聞いたけどそれだとオリヴィエは生きていたってこと?でも左足もなくてしかも断崖絶壁から生還するなんて考えられないわ。」

 

「これは考えたってしょうがないことだわ。」

 

そう言い三人は奥の部屋へと歩き出す。

 

日記はゼータが持ち後程アレクサンドリアで研究チームへと託そうと考える。

 

奥の部屋へと歩いていく毎に牢屋や研究で使われたと思わしき機械などが目に入っていく。

 

いずれも老朽化しているがそれでも規模のでかさから大掛かりなことが窺える。

 

クレアはベアトリクスが戦う組織の強大かつ規模の大きさから確かに二年前の自分ではどうにもならないことがわかった。

 

そうして進んでいくと明らかに雰囲気の変わる場所へと辿り着いた。

 

「変なところに出たわね。」

 

「これは…」

 

「そうね。クレア、構えなさい。それとこれも持ってて。」

 

「わかったわ!師匠これは?」

 

「聖域は魔力を吸われる場所。ここだと通常魔力を練ろうとした傍から吸われるから使えないけどその魔力阻害防御装置を持ってれば1時間30分は吸われないの。イータの自信作の一つよ。」

 

「イータの!?凄い発明だわ。」

そうして部屋の中心に黒い靄が集まっていき威圧感を増していく。

 

「魔力が集まって形を成していく…魔力の集合体だね。教団が魔力の鎖で制御するような怨霊とは比べ物にならない迫力があるね。」

 

とゼータは分析する。

 

それは聖域で実験されたものたちの末路であり無念であり怨念の集合体。

 

「聖域で散ったものたちの無念と憎悪が渦巻いてここまで成長したのでしょうね。しかも聖域の侵入者もこの怨霊が排除している。排除したら吸収して大きくなる。

 

魂すら逃がさない執念を感じるわね。

 

でもそれは今日までの話。クレア、リリム。この子たちを解放するわ!」

 

「勿論!ベア様援護は任せて!」

 

「師匠の足手まといにならないわ!」

 

そうして三人の聖域に渦巻く怨念鎮め弔うための戦いが始まった!




今回はここまでになります。

新年一発目の投稿です!

クレアはベアトリクスから遂にディアボロス教団の名を知りました。断片的だったことを明かされていくクレア。

ゼータの昔話を聞かされシドがそうなったらどうなるかと考えることに。

ベアトリクスたちが進んだ先に研究者が残したとされる日記がありそこにはディアボロス細胞を埋め込まれ適合できず散ったものたちのことが断片的に書かれていた。

オリヴィエのその後などはまだ原作でも明かされていないので脱走したものの、教団からの追手により左足を失い崖から落ちたことにします。

そして先代の11席ナイツオブラウンズはとある存在でありその後にネルソンが後任として着いた形です。

マスターオブガーデンでは後任がネルソンと言う形で登場しその研究データもそこにありマスターオブガーデンではイベントにてゼータ、イータの二人が訪れることに。

オリヴィエの行方の分からなくなった場所ではある二つの噂があったものの眉唾だと研究者は報告しなかった。

噂だったそこには心優しき鬼がいたと言うのに

奥へ進むと聖域で散ったものたちの怨念などの集合体が現れこれを解放するために三人は戦うことに。

次回はアルファたちの視点へ移ります。

感想、お気に入り、評価いつもありがとうございます。
次回も遅くならない内に投稿していきます。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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聖域へと飛び込んだ王女たち。緻密から強くなるためのヒントをもらい教団の闇へと触れていく。

今回は聖域へと飛び込んだアイリス王女たち、アルファたち視点になります。

飛び込んだ先に待つものとはいったい?

それではどうぞごゆっくり!


聖域へと飛び込んだアルファたちは聖域は思ったよりも広大なため班を幾つかに分け先行させ資料室のような場所を発見。

 

イータ作成の映像記録装置を使い重要な部分を撮影していく。

 

ベータも他の構成員へ指示を出し先程までのおろおろした間はそこにはない。

 

流石にイプシロンがネルソンを連れてきたところで囚われている振りはすることにした。

 

「ベータ様私は何をしたら良いですか?」

 

「そうですね。イナリちゃんは本当ならバカンスの予定でしたのでそれなら」

 

と二人ともネルソンには聞こえないよう小声で話すのだがベータの上に聖域への扉が閉まりきる寸前に入ってきたアレクシア、ローズ、アイリスが落下してきた。

 

いきなりのこととまさか聖域へと飛び込んで来るとは思わず一瞬呆けてしまい避けられないと思われたベータ。

 

ポフンと柔らかい感触に落ちてきた三人は驚く。

 

「このふかふか感と柔らかさは…」

 

「とても柔らかいですね。それにいい匂いも」

 

「もしかして…イナリ!?」

 

「コンコ~ン、皆様ご無事ですか~」

 

イナリがすかさずベータの前に出て尻尾をクッションにして三人を受け止め事なきを得た。ベータの無事も合わせてイナリは怪我がないか聞く。

 

「それはこっちのセリフよ!怪我はないかしら?尻尾を油揚げにされてない?」

 

「いやアレクシア王女尻尾を油揚げになんて何の冗談…」

 

「コ~ン、ご主人様に尻尾を油揚げにされかけたことはありますが私は大丈夫ですよ~」

 

「イナリちゃん!?それは初耳ですよ!」

 

(イータ、イナリちゃんに何をしているのですか!?)

 

とベータは心の中でツッコミを入れる。

 

「アレクシア、ローズさん気を引き締めなさい。私たちの知らない何かがここにはあるのだから。そうなのでしょう?」

 

とアイリスはアルファへ問い掛ける。

 

「あまり動き回らなければ付いてきて良いわ。それに貴女たちも知っていた方がいいでしょう。」

 

と言いながら歩き出す。

 

ネルソンはイプシロンから引き継いだデルタが拘束している。

 

イプシロンも他の構成員を連れ歩き出すのだが

 

「そっちのあんた、さっきのどうやったの?アーティファクトじゃないでしょ。」

 

「魔力を飛ばした斬撃ですよね。どのような方法で魔力を込めているのですか?あれだけのことをしたにも関わらず剣は壊れずにいられるようにするにはどうすれば?」

 

とアレクシア、アイリスから小声で詰め寄られる。

 

あまりにも真剣な表情に困るイプシロンはアルファの方をチラリと見るも微笑むだけでベータに助けを求めようとすれば関係性を疑われるので却下。

 

その隣のイナリはキラキラした顔でイプシロンを見る。

 

「はぁ全く…少しは自分で考えたらどうなの?人から教えられてはいそうですかって納得してってプライドはないの?」

 

「そんなのはイナリのうっかりでもう吹っ飛んでるもの。強くなれるチャンスを己のプライドでふいにしたくないわ。」

 

(そういえばイナリが一週間とはいえ見ていたのよね。イータから聞いた話しだけど重力室でまだ慣れてないアレクシア王女に稽古を付けたって…苦労したんでしょうね。)

 

「恥ずかしながら私はこの前まで王国一の実力者と持て囃されていました。しかしこの前のアレクシアのこと学園のこと。いずれも貴女方やベアトリクス様がいなければ最悪の事態となっていました。

 

私自身強くなりたい…私には技術的なものが足りない。魔力は人よりあってもその運用があまりにも杜撰…

 

学園襲撃の際にベアトリクス様の剣技と魔力の使い方を見てそう思いました。今までと同じようではいけない。

 

しかし今の王国でそれを教えられるものがいない。そう思っていた中に先程の高度な技術を持っているものがいた。」

 

「はぁ……わかったわよ。ヒントぐらいは出してあげるわ。でもそこからは自分で考えて。」

 

とイプシロンは強くなるのに誠実な姿勢に好感が持てることゆくゆくの自分たちの計画に有利になるようにヒントを出すことにした。

 

「そもそも魔力は自分から離れれば霧散してしまう。それに剣に纏わせようとしても込める魔力が大きすぎれば剣の容量を超えて自壊するわ。」

 

「私が良い例ですね。」

 

「だから効率を良くするために魔力の感覚を掴まないといけない。どれだけの魔力でどんなことが出来るのか。剣に込めた10とした魔力の内1、2しか魔力が働かないのが今の魔剣士。

 

強者と言われる者でも5割発揮できれば良い方でしょうね。例えるならどんなに良い楽器でも使い手の技量が足りなければ良い音色、そして性能を引き出せないようなものよ。」

 

イプシロンはシドから教わったことを分かりやすい例えを出しながら説明する。

 

その話でアレクシアは以前列車でシドと会話したときのことを思い出す。

 

「それって剣によっても伝導率は変わるものよね。姉様の使うミスリルのものも5割いくかいかないかぐらいって聞いたし。」

 

アレクシアの言葉に少し感心するイプシロン。

 

「良くわかったわね。ミスリルでさえそれぐらいしか魔力が伝わらない。だからこそ魔力の純度を上げるのが良いのよ。純度を上げれば10の魔力で20の仕事をさせられる。そうじゃなきゃ魔力を飛ばせないもの。」

 

イプシロンは懐から石を取り出す。

 

「こういった魔力を込めれば色の変わる特殊な鉱石を使えば訓練にもなるし基準も分かりやすいわ。」

 

「それって!」

 

とアレクシアは同じような鉱石を取り出した。

 

「貴女も持っていたのね。としたら天才発明家のあの娘からかしら?」

 

「コ~ン、ご主人様がアレクシア様に渡されていました」

 

アレクシアはイータから渡されていたものと同じものを取り出したイプシロンに驚く。

 

「余り出回っていないものだけど…貴女に上げるわ。」

 

とアイリスへと手渡すイプシロン。

 

「込め方の説明は貴女の妹が受けているでしょうしそれでも分からなければキツネの娘に聞けば良いわ。

 

それとアレクシア王女の度合いは分からないけど薄皮一枚に透明な膜をするように魔力を張り巡らせるのも修行になるわ。

 

言っておくけど寝てる間もよ。それぐらい無意識に魔力を扱えるようにならないと魔力を飛ばすなんて夢のまた夢。

 

慣れていけば魔力の扱いは格段に上がるしなにより他にも治療出来る手段が増える…私たちのようなものを救えるほどにね。」

 

イプシロンは魔力を極めれば悪魔憑きでも治せると暗に示しそれだけ言うと歩みを促す。

 

アイリスたちはまだ聞きたいこともあったが進むことを選んだ。

 

「こんなことをして、何のつもりだ?」

 

デルタに拘束されたネルソンがアルファを睨み上げた。

 

アルファは仮面の奥で微笑んだようだ。

 

「かつて、この地で英雄オリヴィエが魔人ディアボロスの左腕を斬り落とし封印したと伝えられている。」

 

「それがどうした。左腕でも探しに来たか?」

 

ネルソンは嗤った。

 

「それもあるけれど……我々が知りたいのはそんなことじゃないの。我々が知りたいのはディアボロス教団のことよ」

 

アイリスとアレクシアがディアボロス教団という言葉に反応した。視線を厳しくするアイリスたちをローズは横目で見ていた。

 

「なんの話だ……?」

 

「答えられないのはわかっているわ。だから直接見に来たの。最初から全て、歴史の闇に葬られた真実を探しに」

 

そう言いながら女性の像へと歩いていく。

 

「英雄オリヴィエ…彼女もまた歴史に翻弄された一人。」

 

「彼女?オリヴィエは男性では?」

 

「我々はおおよその事は理解している。しかしまだ確信を持てずにいる。歴史の真実も、教団の真の目的も、そして……」

 

アルファは英雄像に手を伸ばし、その頬にそっと触れた。

 

「なぜ英雄オリヴィエが私と同じ顔をしているのかも」

 

そして振り返る。その顔にあった仮面が消えていた。

 

「エルフ…?」

 

とローズは呟く。

 

アイリスもアレクシアも驚くのだが何より彼女の顔を見て像と瓜二つなことよりもふと何処かで最近見掛けた顔に朧気ながら似ているような気がしていた。

 

「まさか、貴様はエルフの……だが悪魔憑きになって死んだはず……」

 

「やはり、あなたは知っているのね」

 

「ッ……!」

 

ネルソンは慌てて口を閉ざした。

 

「我らは悪魔憑きの真実も知っている。秩序を制御したい教団にとっては、さぞかし邪魔でしょうね…といっても貴女たち二人も知っていることでしょうけど」

 

とアルファはアイリス、アレクシアの二人を見ながら言う。

 

「なんだと!?何故一介の王女程度がそれを!」

 

「我等…正確には頭目とベータが実際に貴女に見せたから…そうよねアレクシア王女。」

 

「そうよ。私は騒動があった日シャドウとベータって幹部に教えられたわ。それを伝授した人についても。」

 

その言葉を聞きながらアルファは像へと魔力を込めていく。魔力の高まりにローズは戦慄するがアイリスとアレクシアはやはり感じたことのある魔力に安心感を覚える。

 

「かつて、この地で大きな戦いがあった。英雄が魔人を封印し、幾多の命が散った。

 

魔人の魔力と、戦士たちの魔力がこの地で渦巻きその魔力の渦に行き場を失くした記憶と魂が閉じ込められた。ここは古の記憶と魔人の怨念が眠る墓場。」

 

そう言いながら辺り一面が光輝いていく。

 

アルファの横には一人の人物が立っていた。

 

「オリヴィエ…!」

 

「さぁお伽噺の世界へ旅立ちましょう。」

 

そうして光が世界を塗りつぶした




今回はここまでになります。

投稿遅くなり申し訳ありません!
色々と忙しく筆が乗らず遅くなってしまいました。

アルファたちサイドで原作通りアレクシアたちプラスアイリスがベータの上に降ってきましたがイナリが尻尾でキャッチして事なきを得ました。

そして原作より拗れていないアイリスはアルファに問い掛けつつアルファも知る権利はあると放置することに。

そんな中女神の試練の場で見せた魔力を飛ばした斬撃について質問責めに合うイプシロン。

アレクシアの方はイナリに訓練を付けてもらいその様子を聞いていたイプシロンはヒントを与えアレクシアへとイータが手渡したものと同じものをアイリスへと渡しました。

稀少なものということで余り出回っていないと入手元は明かさずにイータとの繋がりはぼかしつつ話したイプシロン

そして原作通りアルファはフードを脱ぎ仮面を外しました。個人的に漫画版のドレス風な方が好みですね。

ローズの印象は石像と同じ顔立ち、アイリス、アレクシアもそうですがやはり間近でベアトリクスと会っているからか何処か見覚えがあると思っております。

そして光が世界を包み昔の出来事を映し出すところで終了です。

段々教団についての真実を知っていくアイリスたち。

果たして光の先に待ち受ける真実とは?

さて話しは代わりFGOではバレンタインイベントが開催!

新規鯖のアンドロメダ良いビジュアルに引こうか迷うところですね。

コロンブスのイラストも変わったりしてるのでまだの方はイベントへ急ぎましょう!

感想、評価、お気に入り登録してくださった方ありがとうございます!

次回も遅くならない内に投稿していけるように頑張るので宜しくお願いします。

今回も読んでくださりありがとうございました!


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のんびり娘は小さい災厄の魔女を餌付けし陰の盟主はいつものことかと呑気に構え災厄の魔女は驚愕しつつも聖域の中心へと誘う。

今回はシドたちサイドで聖域の中心へと向かいます。

その道中はまさかの出来事の連発で退屈しないこと間違いないでしょう。

主にイータが色々とやらかすというか…

それではどうぞごゆっくり!


アルファたちが聖域の記憶を垣間見ているより少し前。

 

シドたちは扉を開けた先は早朝の森だった。陽の光が木々の隙間から降り注ぎ、朝露に濡れた草が輝いた。

 

そこは僕には見覚えのない場所で、辺りを見回した。

 

「記憶の中よ」

 

ヴァイオレットさんが言った。

 

「君の記憶?」

 

「見覚えはあるわ」

 

「記憶の世界を見るのは…二人目…余程記憶に…残っている風景ってことなのかしら…?」

 

「記憶の世界を見たことがあるなんてどんな体験をしたの?まぁいいわ。付いてきて」

 

アウロラは先に進んでいく。シドとイータは置いて行かれないように後に続いた。

 

静かな森の中をしばらく進むと、突然視界が開けた。朝日がさんさんと降り注ぐその広場に、小さな女の子が膝を抱えて座っていた。

 

黒髪の女の子だった。

 

「泣いているみたいだね」

 

「そうね」

 

僕らは女の子に近づいた。

 

屈んで顔を覗くと紫色の瞳から涙が溢れていた。

 

「昔の君?」

 

「そっくりさんよ。」

 

「なんで泣いてるのか覚えてたりは?」

 

「さぁ?昔のこと過ぎて覚えてないわ。」

 

とシドとアウロラが言っている間にイータは

 

「…うん、触れている感覚はある…涙の温かさもある…やっぱり記憶というよりは魂の解離…分身…?そこはまだ未知なこと…興味深い…」

 

と女の子の頬を触ったりと感触の違いを観察していた。

 

「貴方のガールフレンドさん積極的ね。」

 

「ガールフレンドではないよ。悪友さ。イータは興味のあることはとことん追求する発明家なんだ。」

 

触ったりしているイータだったがずっと泣いてばかりだった少女がいつの間にか顔を上げてイータを見つめていた。

 

良く見ると少女の肌には青アザが目立っていた。

 

「記憶の世界とはいえ胸くそ悪いわね…」

 

そう言いながらイータはスライムを少女の肌へと纏わせる。

 

数十秒してスライムを離すと不思議なことが起こった。

 

「これは…!」

 

「イータが改造したスライム。スライムの補食本能を改造して傷や痣といった部分の傷んだ細胞を吸い付くして新しく健康な細胞をスライム内で増殖、培養して移し変えることで傷を治せる優れものだよ。」

 

先程まで泣いていた少女は傷がないことに驚き泣き止んでいた。

 

「記憶の世界の存在が……食べれるか分からないけど…いる?」

 

本当なら夜食分で用意していた自分用のおむすびを取り出して一つ差し出してみるイータ。

 

少女は恐る恐るといった感じでそれを掴む。

 

「記憶なのに掴めるんだね。どういう理屈なんだろうか?ヴァイオレットさん分かる?」

 

「流石に分からないわ。普通記憶だから触れない筈なのにいったい全体どうなっているのか…それともあの娘が特別なのかしら…」

 

と思考の波に入るアウロラ。

 

アウロラも聖域の中心の核となっているものを壊せば良いことは分かっているがそれ以外は分かっていないことが多いのだ。

 

だが一つ言えるのは今のところ聖域に拒絶されていないことだろう。

 

そうして口に含んでみた少女。

 

その味はとても温かいもので感じたことのないような気持ちだ。そうしてペロリと平らげた少女。

 

「美味しかった…?」

 

コクンと頷いた少女はニコッとイータに微笑むと世界がパリンと割れ暗闇が辺り一面に広がった。

 

「これって次に進めるっぽい?」

 

「何回驚けばいいのかしら。本来なら世界を終わらせなければ進めない筈なのに。」

 

とアウロラはイータの行動に何度目かの驚愕を露にする。

 

「終わるにしても…痛い思いで…終わるより…幸福に終わった方が…良いものもあるわ…さっきのは食べたものが素晴らしくて夢から覚めた…ってところ?」

 

「何はともあれ先へ進みましょう。」

 

再び歩きだす三人。

 

シドは上下感覚のない場所ならと反対に立って歩いてみることにした。

 

「何してるの…シド。」

 

「何って逆さまになって歩いてるのさ重力に逆らって歩くのもロマンだよね。」

 

「確か前に…シドが話してた宇宙…は重力がないんだったわね…」

 

「そもそも重力だって惑星の引力によるものだからそれがなくなれば重力はそもそも働かないからね。」

 

「重力って?そもそも惑星ってなにかしら?」

 

「惑星は僕らの生きているこの地面の着いた大地のこと。重力は地面に向かっている力みたいなものかな?」

 

「厳密には惑星で物体が…地面に近寄っていく現象や…それを引き起こすとされる力…

人々が日々物を持った時に……感じている…重さを作り出す原因となる力…

物体が他の物体に…引きよせられる現象って…ベアト母様は言ってた…

 

惑星はシドの言った通り…私たちの住んでるこの大地のこと……でも空を見上げれば星があるようにもっと大きな世界が空の先…宇宙にはある…

 

それは私が生きている間に解き明かせないほどに膨大なもの…ディアボロス教団を壊滅させたら宇宙のことを調べたい…」

 

「…貴女たち二人を見ていると時の流れを感じるわね。昔は人もエルフもいがみ合っていたというのに。時代の移り変わりは早いのね。」

 

アウロラは二人の話しに感心しながら先へと進んでいく。

 

「確かに時代が進むのは良いこと…でもそのために…過去を切り捨てるべきではない…過去のことがあるから…今があって…今があるから未来がある…特に教団が歴史をねじ曲げたせいで……過去のことを知るものはいない…アウロラさえ良ければウチにくる…?失われた魔法技術の復興に……大助かりなんだけど…」

 

「考えておくわ。」

 

と嬉しげに話すアウロラ。

 

そうして歩き続けていると漸く景色が変わった。

 

頭から落下しそうになって、僕は咄嗟に受け身をとった。

 

「遊んでいるからよ」

 

ヴァイオレットさんが地面に転がった僕を見下ろし、手を伸ばした。

 

「どうも」

 

僕はその冷たい手を掴んで立ち上がる。

 

そこは、夕日に染まった戦場だった。血のように赤い太陽が、地平線の上で輝いている。

 

「今度は戦場みたいだね。」

 

「えぇ、昔はどこもこんな雰囲気だったのよ…いきましょう。」

 

とアウロラは歩きだしそれに連れてシドも歩きだした。

 

そうして歩いていくと無数の屍の上に座り込んでいる先ほどの少女の姿があった。顔は隠れていて分からないがきっとそうだろう。

 

「また泣いてるね。」

 

「昔は泣き虫だったのよ…泣いたって何も変わらないのに…今楽にしてあげるわ。」

 

アウロラは魔力を操作して血を固め鎌へと変形させる。本来なら魔力を練れない環境だがこれもイータの魔力阻害防御装置のお陰である。

 

そうして呆気なく少女を貫いたのだが一向に景色が変わる気配がない。

 

「可笑しいわね。しっかりと刺した筈なのに…」

 

「ねぇヴァイオレットさん、それ…偽物じゃないかな?」

 

「え?」

 

とアウロラが刺した筈の己を見ると顔にへのへのもへじと書かれたダミーが

 

「やられたわ…!まさか聖域がここまで拒んでいるなんて。本物を探すのも一苦労ね。」

 

「案外近くにいたりして。」

 

「そう願いたい………ねぇあの娘は?」

 

「そういえばイータがいないね。」

 

と一先ず来た道を引き返すことにした二人。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

肝心のイータはというと

 

「…ん…まだあるからゆっくり…食べると良い…温かい…飲み物もある…」

 

ミニアウロラと座りながらおむすびを食べていた。

 

何故こうなったかというと先を歩いていくアウロラたちにイータも続こうとしてどこからか袖を引っ張られたのでそちらを見ると

 

「あら…?どうしてここに…」

 

袖を引っ張ったのは小さいアウロラであった。

 

ミニアウロラはイータをキラキラした目で見つめながら歩きだす。

 

「取り敢えず…付いていく…」

 

ミニアウロラに付いていくイータ。

 

それほど歩いたわけではないが目的地に着いたからかミニアウロラが止まる。

 

「もしかして…ここが中心…?」

 

これまた良い笑顔で頷くミニアウロラはイータに手を伸ばす。

 

「…成程…道案内した対価に…またおむすびが…欲しいのね…もしかして…気に入ったの…?」

 

コクンと頷くミニアウロラ。

 

「それじゃあ…一緒に食べましょう…」

 

スライムを敷物に変形させイータが座ったのを見てミニアウロラも座る。持っていた包みを広げイータはミニアウロラに聞いてみる。

 

「どれにする?さっき食べたしゃけ…魚の味のするやつかおかか…カツオの魚肉を煮熟してから乾燥させたものか……焼おにぎ…焼きおむすび…醤油を塗って炙ったものか…明太子…梅干し…はまだ早いでしょうからそんなところ…

 

の前にちょっとまって…」

 

イータは特製の少し大きめの保温タイプの水筒を取り出しカップに中身を注いでいく。その間に持ち歩いているお手製のマイクロ波発生装置を簡易的な電子レンジのようにしておむすびを温める。

 

「食べる前に少し飲んで…温まる…」

 

カップを受け取りミニアウロラは始めてみるそれを飲んでみる。

 

それはとても濃厚で深い味だ。

 

温め終わったおむすびを再び広げすかさず悩みながらもミニアウロラはおかかを指したので別に持ってきていた真空パックにいれたのりを巻き手渡しそれを一口。

 

パリッとしたのりの感触に中のおかかの味がマッチしたそれにミニアウロラの表情は微笑ましい笑顔を浮かべる。

 

もう一度カップをイータは手渡して飲むと米がほどけ一粒一粒の味が楽しくなってくる。

 

イータもその笑顔に癒されながら二つ目を差し出す。

 

二つ目に焼きおむすびは直接食べその外側のカリっとした感触と中のふっくら感、醤油の少ししょっぱさと中の甘さに口が楽しいミニアウロラ。

 

「漸く見つけたわ!…って何をしてるの!?」

 

「いないと思ったらミニヴァイオレットさんと食べてたんだ。イータしゃけまだある?少し小腹空いちゃった。」

 

「まだある…はい」

 

と合流したアウロラとシドたちは散々探した幼少のアウロラが餌付けされている光景になんとも言えない表情をするが疲れていたので取り敢えず座りイータにしゃけをリクエストし受けとるシド。

 

「アウロラも…オーソドックスにしゃけ…のが良い…」

 

「なんだが予想外のことで疲れたからなんでも良いわ…」

 

「イータ分かってるね。のりはパリパリじゃないと。それに味噌汁もあるならもらうね。」

 

そうして二人も食べ始めるが

 

「何これ!?海の味にこのほんのりとした塩加減と甘さ!この汁物が更に味を引き立てているわ!」

 

「焼おにぎりも良い味してるね。醤油を作ったのはベアトさんだったっけ?」

 

「そう…ベアト母様から教わった…調味料…美味…」

 

「モグモグ…グッ!」

 

全員から大絶賛され持ってきたものを全て平らげた一同。

 

「それにしてもどうして貴女の前に現れたのかしらね。最初に見つけたのはダミーだったもの。」

 

「多分最初におにぎりを手渡したからじゃないかな?美味しくてもう一度食べたいからイータの前には素直に現れたんじゃないかな?」

 

と予想するシド。

大体合っている。そう、ミニアウロラは最初に優しく接して食べ物を分けてくれたのでもう一度食べたいとイータの前に姿を現したのである。

 

そしてまた風景が割れる。

 

今度こそ彼らは聖域の中枢へと辿り着いた。

 

「どうやら辿り着いたみたいね。ってどうして消えずにいるのかしら?」

 

「…さぁ…?まぁ良いんじゃない…後は脱出するだけ…」

 

ミニアウロラが消えずにイータに抱きついているのを見ながらも目の前にそれらしい扉を発見する。

 

「この鎖を斬れば開きそうだね。」

 

「そうね。その後ろにある如何にもな剣で斬ればいけるでしょう。」

 

と台座に刺さった剣を見て言うアウロラ。

 

「(さてこういうのはお約束で)…!やっぱり…これは選ばれし者にしか抜けない…」

 

「そんな…!?これは…聖剣は英雄の直系にしか抜けない……確かに書いてあるわ。よくあの一瞬で暗号化された魔術文字を読み取ったわね」

 

と台座に書かれた古代文字を見ながら言うアウロラ。

 

「フッ……テンプレはすべて網羅しているからね……」

 

「魔術文字の暗号パターンをテンプレ化し網羅していた……そういうことね」

 

「きっとそういうことだ」

 

(また当てずっぽうで言ったわね…というかこういうのシドのいた世界では物語的に多いのね…直系というとアルファ様だけど別行動してるから…ものは試し…)

 

途方に暮れ台座に座り込むシドとアウロラを尻目にイータはスライムスーツの中に仕舞っていた血液パックを取り出す。

 

スライムを擬態させ肌へと張り付けていき指紋も完璧に真似ていき血液パックの血液を注いでいく。

 

「…出来た…アルファ様なりきりセット腕だけバージョン…よいしょっ…」

 

と気の抜けた声とは裏腹に台座に刺さった剣はすぽんと簡単に抜けた。

 

その光景を見ていた二人は口を開けてポカンとしミニアウロラは拍手する。

 

「案外セキュリティが甘いのね…!」

 

と剣を扉に二振りする鎖は全て砕け散った。

 

「なんで普通に引き抜けて…!まさか彼女は直系の子孫?」

 

「成程、スライムスーツでアルファそっくりの指紋にして更にアルファの血液を注いだまさにアルファなりきりセット腕だけバージョンだね。

 

生体コードみたいなものを掛けてたんだろうけどそれも手からの認証だから本物と遜色ないものなら突破出来ちゃうってことか。確かにガバガバセキュリティだね。」

 

「扉の先のやつ…回収してるから…少し休んでいてちょうだい…」

 

とイータは扉の先に剣を持ちながら歩いていきミニアウロラもそれに付いていく。

 

「ホント規格外過ぎるわよ。ここまでぶっ飛んだ人たちが来るなんて聖域も思っていなかったでしょうね。一人は魔力を扱うプロフェッショナル…もう一人は幼い私を餌付けして科学的に聖剣を引き抜くし…今の時代の者たちはこんな感じなのかしら?」

 

アウロラさんや、それはこの二人が規格外なだけなので今の人類皆化物ではないですよ。

 

「まぁ運が悪かったってことだね。さてここを出たら温泉入って牛乳飲んで寝て起きたらスタミナ丼を食べるかな。君はどうなるの?」

 

「そうね。消えるでしょうね、聖域と共に。」

 

「良いの?」

 

「少し惜しいかしら……あんなに美味しいもの食べたことないし貴方の言う温泉やあの娘の発明したもの、見たいものは多いけど…仕方のないことだもの。」

 

「まぁそこはイータが、なんとかするよ。だからヴァイオレットさんは外に出た時に何するか今の内に考えておきなよ。」

 

とシドは言いイータの作業が終わるまで待つことにしたのであった




今回はここまでになります。

シドたちサイドでアウロラの記憶の中を見ています。

原作では森の中、戦場にいたミニアウロラを引っ張たく、刺し貫くなどで進んでいました。

しかしここではイータが興味本意で触ったり物を食べれるか試したりしたせいか最初の段階は美味しい物をくれたので夢から覚め次はアウロラ、シドたちの前にはダミーが現れるがイータの前には素直に姿を現し聖域の中枢らしきところへ案内し、その対価におむすびをねだりました。

なんだこの可愛い生物…

イータも悲しい終わりよりも楽しい終わり方のが良いかと本来夜食で、食べる予定だった物をミニアウロラと共に食べました。

伸縮自在の改造した収納スライムの中には色々と入るので様々なものが入っております。

そうして幸せ一杯に頬張るミニアウロラを眺めつつ合流した、二人も一緒に食事し英気を養うことに。

物を食べれるのは聖域の不思議パワーという名のご都合主義なので突っ込み満載ですが御容赦ください。

そして中枢に辿り着き原作同様抜けない聖剣ですがまさかのイータの掟破りの行動であっさりと抜けました。

実際生体コードでの、認証ならスライムで擬態させればいける気がします。

そうして扉を開けてイータがディアボロスの左腕と対面することに。

アウロラに、シドはどうしたいか尋ねつつ細かいことはイータが何とかすると信頼しているシド。

果たしてどうなっていくことやら

さて意外にも早く書けたことに作者自身驚いております。

やっぱりシドサイドの方が書きやすい気がしますね。

さて次回はアルファたちの方にするかベアトリクスの方か迷いますね。

マスターオブガーデンではエリザベートがアタッカーで登場し七陰列伝も更新されました。

ウィクトーリアはこのSSではどうしようか迷いますね。
主に助けられ方が…ベアトリクスに助けられたら聖教の女神の生まれ変わりと狂信的になるか原作同様シャドウ崇拝か…

そこはまた未来の自分がどうにかすると信じましょう。

いつもお気に入り登録、感想、評価ありがとうございます。

次回も遅くならないよう投稿していきたいと思います。

今回も読んでくださりありがとうございました!


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記憶の世界で映し出される過去。大司教代理はオリヴィエの子孫でもある武神を侮辱し犬娘な四席は母を侮辱したハゲを粛清する!

アルファたちサイドの記憶の世界での出来事になります。

ハゲの粛清される理由はある人を実験動物扱いしたことによるもの。

それではどうぞごゆっくり!


聖域を光が照らしそれが晴れると先程まで居た場所とは違う風景が映し出された。

 

アレクシアたちは白い廊下のような場所に立っていた。

 

そこかしこに牢屋があり覗き込むと左右の牢にはいつの間にか小さな子供たちが入っていた。男の子、女の子、人間、エルフ、獣人、幼いという以外に共通点はなかった。

 

「子供たちはここである実験の被験者となった。」

 

アルファの足が一つの牢で止まった。

 

牢の中に女の子がいた。

 

女の子は正気を失くした様子で、牢の中で暴れていた。

それは苦痛から逃れているように見えた。

頭を打ち付け、壁をひっかき、床を転がる。

 

「惨い…どうしてこんなことが…!」

 

アイリスはその惨状に憤りを隠せずにいた。

それはアレクシアもアイリスもそうでありアルファたちも何度も見てきた光景だ。

 

そこでイプシロンはあることに気付く。それはアイリス、アレクシア、ローズ、ベータより後ろにいたイナリの様子だ。

 

目を凝らして良く見ると震えているのだ…

 

その様子を見てイプシロンはイータから聞いたイナリがベアトリクスとイータに拾われた時の状況が似ていてそれを思い出しているのではと他の者たちに気付かれないようイナリの手を握る。

 

(イプシロン様…?)

 

(大丈夫よイナリ。貴女はもう一人ではないもの。辛かったら手を握ってなさい。イータ程安心させてあげられないだろうけどね。)

 

(…イプシロン様…ありがとうございます…)

 

とイナリはさっきまでの不安な気持ちが少し和らぎイプシロンに感謝を述べる。

 

それを見ていたが立場上今自分が心配するのはイナリがシャドウガーデンとの繋がりを疑われてしまうと思っていたアルファはイプシロンがフォローしてくれていたことに安堵し歩き出す。

 

次の牢には血濡れの女の子がいた。しかしその血は自傷によるものだけでなかった。肉体の異様な変異によって裂けた肌から血が滴り落ちていた。

 

その黒く腐り落ちるような様に、アレクシアは見覚えがあった。

 

「これって…悪魔憑き…?」

 

「そうよ。適合出来なければ死に生き残っても教団の尖兵になるしかない。でもそれに適合出来たのはほんの一握り…」

 

牢で息絶えまた牢に入れられ息絶える。その繰り返しが続く。共通するのは男の子はそのままの姿で息絶え、女の子は悪魔憑きとなり醜い姿で息絶えることだ。

 

それを小さいオリヴィエはじっと見続けていた。

 

「どうしてこんな酷いことを…!」

 

「どうしてなのかしらネルソン大司教代理?」

 

「あの当時魔人ディアボロスにより甚大な被害が出ていた…対抗するための力が必要だったのだ。」

 

「それが教団の言い分。でも実際にそれに適合出来たからこそディアボロスの左腕をオリヴィエは斬り落とすことが出来た。」

 

「アルファ殿先程から言うそれとはいったい?」

 

「ディアボロス細胞…魔人から採れた細胞を移植し同等の力を得るために教団は子供たちを集めた。そのために犠牲になった者たちの数は計り知れない…」

 

大きくなり少女となったオリヴィエは剣を取った。

 

「彼女の心境がどうだったのか…それは本人ではないからわからない…これだって彼女の記憶だから本人にとって都合の良いように改変されている可能性もある。

 

でも平和を願っていたと私たちは考えているわ。でも教団は違った。」

 

そうしてまた場面が切り替わる。

 

そこには斬り落とされた巨大な左腕のようなものがあった。

 

「教団は更なるディアボロス細胞の採取が目的だった。」

 

「デタラメを言うな!」

 

と光輝く頭のハ…ネルソンは言うがデルタがすぐさま黙らせる。

 

左腕から細胞を採取しようとした教団の一人が左腕から伸びた血のようなものに刺し貫かれる。

 

「斬り落とされた左腕は驚異的な生命力を有していた。斬り落とされてなお生きていた。それを古代のアーティファクトでどうにか封じ込めた。でも完全に封じ込めることは出来ず空間は歪み聖域が出来た。」

 

またもや場面が変わると研究者たちが集まりディアボロスの左腕が収められた巨大なケースを伝い試験管のようなものから何かを取り出そうとしていた。

 

「キサマ!よりによってここを暴くつもりか!実験体の末裔ごときが!見るんじゃない!」

 

すぐ傍では悪魔憑きの者たちの悲鳴が聞こえるが研究者たちには聞こえていないようだ。そうして試験管から一粒の雫が滴り落ちた。

 

研究者はその雫を自ら取り込み完成した代物を喜んだ。

 

「ディアボロスの左腕を研究したことにより人間を強化する薬も開発された。それは男性にも使える代物で…こういうものよ。」

 

とアルファは懐から錠剤のようなものを取り出した。

 

アレクシアにはそれが以前ゼノンが変貌する前に飲んだものと同じものとわかった。

 

「でも教団の目的としたものは左腕の驚異的な生命力…つまるところ彼らは不老不死を目論んだ。そしてその成果は私たちの目の前にいる。」

 

アイリスたちは研究者の顔を良く見ると髪は違うが顔の輪郭から何までそっくりな大司教代理の姿があった。

 

「当事者なら色々知ってそうね。今の物体の名前は?」

 

とアルファは訊ねるが頭を輝かせながらも口ごもるネルソンをデルタが締め上げると簡単に喋る。

 

「雫…ディアボロスの雫だ!」

 

「そう。でも雫には欠点があった。」

 

「なるほど…それなら私にも分かるわ!どうしても老いてしまう部分はあるってことね。昔のコイツには髪があって今のコイツはハゲてるもの!」

 

「違うわーー!!髪が抜けたのはストレスだ!どうせ死なんからとどいつもこいつもワシに面倒事を押し付けよって!普段仲が悪いのに押し付けるときだけ団結しおって!」

 

と敵ながら同情するアイリス、アレクシアとそっと目を背けるローズ。イナリも大変なんですね~と呑気に考えながらも周囲を警戒する。

 

「欠点は二つある。まず定期的に接種しなければならないこと…因みにどうなのかしら?見立てだと一年に一回だと推測するけど?」

 

「……その通りだ。」

 

「もう一つは短期間に作れる個数に限りがある。一年に作れる個数は?」

 

「一年で12粒だ。」

 

「そういえば最高幹部のナイツ・オブ・ラウンズの数も丁度12だったわね。第12席は空席で実質11人…この間ミドガルでマザーが第八席を始末したから10人ね。」

 

「あの時の男が教団の最高幹部の一人!」

 

「そういえば…ゼノンのやつもラウンズとかって言ってた…あれはそういうことだったのね。」

 

アイリスはその場に居合わせていたこと、アレクシアはゼノンの言っていたことを漸く理解する。

 

「第8席ニーズヘッグは剣の扱いはフェンリル程ではないが残虐性は教団一だ!処刑人として幾度も仕事をこなしたのが死んだときいた時は耳を疑ったわ!!」

 

以前王国で猛威を振るった第八席のことを忌まわしく思いながらもネルソンは言う。

 

「あなたたちはディアボロスの雫を完全なものに出来ていない…完成させるためには封印されている左腕のようにディアボロス細胞が沢山いること…そして私のように英雄オリヴィエの血を継いだ英雄の子孫のそれも濃い血が必要。違うかしら…第11席殿?」

 

アルファから問われたネルソンは薄ら笑いを浮かべながら言い放つ…彼女らにとって大事な存在を侮辱することを…

 

「クク…私の正体に辿り着くとは…それだけは誉めてやろう!英雄の子孫の血の捜索など極めて困難…だかそもそも今確認できている中で最も血が濃いのは武神と呼ばれたエルフだ!

 

奴に勧誘を掛けたがあろうことか奴は使者を斬り捨てた!我ら教団の礎となれる誉れあることを拒絶しおって!実験体の子孫が手間取らせてくれる!

 

追手を放っても神出鬼没で何処にいるかもその時々で代わりこの間ミドガルに現れたかと思えばベガルタにいるだと!

 

実験体の末裔ならば我らがどうこうしようと我らの所有物…大人しく飼い殺しにされれば良い。

 

歴史に名を残し武の神と讃えられるなど烏滸がましい…

 

だがより色濃い子孫がいるのならば奴に拘る必要などない…

 

キサマらは生きて帰さん!特にそこのエルフは貴重…丁重に扱ってやろう…毛の一本無駄に出来んしな

 

誇るが良い!私が第11席強欲のネルソン!教団の研究を纏める者…………はっ?」

 

殺気立つガーデンの者たちを見ながらも教団に生み出された者をどうこうしようが教団の自由と傲慢に言うネルソンは強欲の名を持つ通りアルファを手中に納める発言をするが途中で言葉が止まる。

 

ネルソンが違和感を覚え視線を下に落とすと己の心の蔵が目の前にあるではないか…

 

そこで漸くネルソンは自身の心臓が…いや自身が貫かれていることに気付いた…

 

「ガルルルル…お前侮辱した!!!デルタたちの恩人!許さない!!!!」

 

ベアトリクスを侮辱されたガーデンの者たちは情報を抜き出すまでは殺さないが皆一様に殺気を己の中で滲ませていた…だがデルタには我慢出来なかった…

 

自分を受け入れてくれた母を…アルファを教団の礎としようとすることを…!

 

「デルタ頭悪いから難しい話しはわかんないです!そんなデルタでも!!お前は悪い奴だって分かるです!

 

血生臭い、ゲロ以下のにおいがプンプンするです!!!こんな悪に出会ったことがない…そんなのがデルタたちの恩人を!バカにするなーー!!」

 

デルタはスライムスーツを鉤爪へと変形させそのままネルソンの心臓を握り潰し頭をはねる。

 

その一連の行動に驚きつつもアレクシアはシャドウから以前言われた武神が恩人だということ、恩義を越えたものを見た。アイリスもアレクシアから聞いていた通りなのだと感じた。

 

「デルタ!殺すのは情報を絞り出してからだって!」

 

「でもこいつ!アルファ様侮辱した!!それに、は」

はと言おうとしたデルタに

 

「デルタ!!」

 

とアルファは被せるように語気を強めて言う。恩人=母となるとベアトリクスに結び付いてしまう。

 

それはアイリスたちがいる中で決して知られてはならないこと。

 

アルファの一喝にデルタは萎縮してしまう。

 

予め決めていたことを破ってしまったことにデルタも漸く気付き近付いてきたアルファに怒られるとしゃがもうとするデルタであったが

 

「…がぅ?アルファ様?」

 

「全く…デルタってばいつも言ってるけど先走りはダメよ。でも…ありがとう。デルタは優しい娘ね…」

 

とデルタを抱きしめるアルファ。デルタがやらねば自分がそれをしていただろうことにデルタを撫でるアルファ。

 

「がぅ~」

 

尻尾をブンブンさせながらアルファに抱き付くデルタ。

 

「ねぇイプシロン…だったわよね?貴女たちにとって武神様は恩人以上の存在なの?」

 

「…そうよ。だってあの人は……!アルファ様!」

 

「そうね。デルタ構えなさい。どうやらまだ終わりではないみたいね。」

 

そう言うとネルソンの死体がひび割れたかのように砕け散る。

 

「これは!」

 

そこは白い風景が辺り一面に広がっていた。

 

「どうやら分断されたようね。」

 

アルファがそう言うと先程までいたイプシロンたちの姿がなくアイリス、アレクシア、ローズ、ベータ、イナリ、そしてデルタとアルファしかいなかった。

 

「もう少し近付いてから仕掛けたかったがこの辺りでも充分…!」

 

と言ったネルソンは魔力でスライムソードを伸ばしたアルファによってそのまま倒れ伏す。

 

またネルソンが出てくるがその顔は驚愕しかなかった。

 

「ば、バカな!?聖域の影響を受けていないだと!?」

 

「世の中には貴方以上の科学者はいるのよ。」

 

とイータのことを仄めかすアルファ。どんどん増えてくるネルソンを見てアルファは

 

「ゴキブリのように沸いてくるわね…さて鏖殺の時間よ。あの世であの人を侮辱したことを後悔することね。」

 

伯母であるベアトリクスの尊厳を意思を汚した愚物にブチギレていたのであった。




今回はここまでになります。

オリヴィエの記憶にある世界での出来事。

アレクシアを除くアイリスたちは悪魔憑きの者たちの末路を見てアレクシアはその悪魔憑きを治した現場を見ていたもののその光景に憤りを感じています。

そしてイナリは昔の自分の状況に似ていたこともありベアトリクス、イータに助けられなければこうなっていたのではとトラウマを刺激されました。

すぐにイプシロンがフォローしイナリも落ち着きました。

原作同様聖域に封じられた左腕、ディアボロスの雫のことを暴いたアルファ。

本性を露にしたハゲソンはよりによってベアトリクスのことを実験動物扱いしシャドウガーデン全体に喧嘩を売りました。

ベアトリクスの功績は判明しているだけでも鉄道開通、農作物の安定した収穫、食革命、下水道処理施設の建築、武神祭優勝、と多岐に渡ります。

更に七陰たちへ知識を授けたことによりイータの建築や発明、悪魔憑きの保護、治療、イプシロンの音楽といった芸術を広げたこと、ガンマのミツゴシ商会の運営、ベータの小説活動での知識の普及と上げれば切りがない程。

そんなベアトリクスを侮辱したネルソンは原作同様デルタに粛清されることに。

デルタは頭は残念ですがそれでも母とアルファをバカにしたことを許せませんでした。

原作では腹を貫かれ、漫画では頭をカチ割られこのSSではハートキャッチ物理をされハートブレイクされ首を斬られるということに。

デルタは感情のままにイプシロンにアルファと母をバカにしたと言い掛けたもののアルファに静止され怒られるかと思われたもののアルファもハラワタが煮えかえる程に激怒していたのでデルタを誉める結果に。

アレクシアはイプシロンに恩人以上の人なのかと聞きイプシロンが答えようとしたところ聖域の防衛反応で生きていたネルソンが仕切り直しとイプシロンたちと分断しました。

アルファたちはイータの魔力阻害防御装置のお陰で魔力を吸われることもなくネルソンの分身をアルファが貫き

大切で大好きな伯母を侮辱したネルソンにブチギレ次回に続きます。

さてFGOでは奏章第2が3月後半に待っているのが楽しみです。

次回はブチギレアルファによるネルソン蹂躙回になることでしょう。デルタもネルソンを撃退する予定。

ベアトリクスの方にも触れていく予定です。

次回も遅くならない内に投稿していきます。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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ブチギレた第一席は伯母を侮辱した愚者を蹂躙することに決め王女たちはその事実に驚愕を現す。そして現れる神話の英雄との対峙…

引き続きアルファサイドでアルファがブチギレています。

聖域での戦いが勃発していきます。

それではどうぞごゆっくり!


オリヴィエの記憶を垣間見たアルファたちは正体を現したネルソンと対峙。

 

イプシロンたちと分断されたものの聖域の防衛反応で魔力を吸われるのはイータの発明で阻止され伯母を侮辱したネルソンにアルファはキレていた。

 

「先程おまえはあの人のことを教団の礎にするなんて言ったわね…冗談じゃないわ…あの人のことを知らない有象無象が妄想を垂れ流して侮辱するなど聖教の女神が許そうが私は許さない…

 

あの人がどんな思いで戦っているかも知らないで…」

 

語気は強いもののその顔は能面のように無表情で道端のゴミを見るような目でネルソンを睨むアルファ。

 

「お前に分かる?悪魔憑きを救い…名前のない怪物になった私たちに居場所を与え普通の暮らしを送らせてくれた。今もあの人がどんなに苦悩して一人戦い続けているか…

 

…だから私たちは彼女の元を飛び出した…少しでも力になりたくて…

 

こんな残酷で冷たい世界を変えたいと…穏やかで人と人が助け合える世界にしたいという願いのために戦う伯母様のために。」

 

アルファは嘘と本当を混ぜながら言いベアトリクス=マザーということを誤魔化すのだがキレているためかポロリと言ってしまった最後の言葉にその場にいた者たちは衝撃を受ける。

 

「おば……さま…!?」

 

「アルファ殿が…武神様の血縁者!!通りで見覚えがあるわけです!」

 

「アイリス様どういうことですか?」

 

「学園襲撃の際私とアレクシアは武神様の剣を…魔力を肌で感じました…ここにきてから彼女の魔力に覚えがあると…そして顔付きも誰かに似ていると感じていました。」

 

「武神様のそれも姪なら似ているわけね。…ってことはまさか!?」

 

アレクシアはそこであることに気が付く…それは自分を鍛えてくれている武神の義娘で天才発明家である人物。もしかしたら繋がりがあるのではないかという疑念…そこから連鎖するのは隣にいるイナリのことだ。

 

「イナリ…もしかして貴女アルファのこと」

 

「うぇぇぇぇぇ!?そうだったんですかぁぁぁ!?」

 

「あっ、これは知らない反応みたいね。」

 

あまりのイナリの驚きっぷりにアレクシアはこれは知らないパターンだなとすぐに切り捨てる。

 

イナリが驚いているのはアルファのベアトリクスの元を飛び出してという言葉でそんなのはイナリも初耳なためこんな反応になっていた。

 

イナリの反応を良い意味で間違えたアレクシア。

 

ベアトリクスを侮辱されアルファはブチギレていた。それは彼女を良く知るベータ、デルタ、イナリから見ても未だ嘗てない程にだ。

 

(ま、不味いです。アルファ様普段は完璧に様々なことをこなしますが…ベアトリクス様のことに関してだけは沸点が低いのに…あのハゲ地雷原の上でタップダンスしやがったわ!)

 

(が…がぅ~アルファ様怒ってるです。母侮辱したやつ終わったです…アルファ様の蹂躙劇です。)

 

(あわあわあわアルファ様、ベアト様のことを悪くいわれて滅茶苦茶怒ってますぅ!ご主人様も、そうですがアルファ様もベアト様に対する悪口には過敏に反応するですぅ~)

 

アルファの怒気に怯むネルソンだが数の利を活かしてアルファを取り囲む。

 

「まさか奴の血縁とはな…ますます研究しがいがあるというもの。さぁ大人しく」

 

「大人しく…なにかしら?」

 

アルファがそういう内に囲んでいたネルソンは炎を上げながら塵となる。

 

「あれはあの時の!」

 

「知っているのですかアイリス様!」

 

「王都を襲撃した件のナイツ・オブ・ラウンズの一人との交戦の際に彼女は炎を操っていました。恐らく視認できない程の速さで炎を纏わせネルソン大司教代理を斬り刻んだ。」

 

波紋を知らないアイリスは推測を立てて話す。

 

実際は緋色の波紋疾走(スカーレットオーバードライブ)による熱で燃やしているように見えているだけである。

 

「でもそんな芸当が出来るの?炎を出すなんてそんなの魔力を外に放出する関係上出来るわけが…」

 

「分かりません…しかし魔剣の類いで炎を出すものはミドガルにもあります。もしかしたらその原理を彼女は解き明かし応用している…のかも」

 

(王女様たちには分かりっこないわ。だってそれはベアトリクス様が我らへお与えになられた至高なる御業。魔剣などと一緒にされるのは心外ですね。

 

あのハゲを掃討すればアルファ様も大分落ち着く筈…)

 

アイリスたちの推測を横で聞くベータはベアトリクスから教わった波紋によるもので見当違いのことを思っていると見つつ成り行きを見守ることにした。

 

そうして大量のネルソンを淡々と作業をこなすように屠っていくアルファ。

 

「がぅ!アルファ様だけずるい!デルタも狩る!」

 

「えぇ勿論よ。さっさと狩りましょう。」

 

そこにデルタも参戦することで今まで以上にネルソンの分身体の消えていくスピードが上がる。

 

その光景に唖然とするネルソン。

 

デルタの戦い振りを見ていた一同は荒々しいまるで暴力の嵐のように吹き飛んでいくネルソンに同情しながら野性味溢れる動きで翻弄し狩る姿に唖然とする。

 

「アルファだけでなく…デルタ?という娘も凄まじいですね。」

 

「獲物を狩るっていうのもあながち間違いではなさそう。というか本当にシャドウの仲間…なのよね?剣の腕というかなんというか型が滅茶苦茶過ぎるしあんなんで良いのかしら?」

 

「でもアレクシア様あちらの方は一見デタラメな動きですが狩猟という観点から見れば結構合理的ですよ。」

 

イナリの言葉にハテナを浮かべながら質問するアレクシア。

 

「どういうことイナリ?」

 

「先程から頭、心臓、胴体から上といった場所…つまり人体にとっての急所を的確に撃ち抜いています。」

 

「え?」

 

「そ、そういえばそうですね。圧倒的すぎてそこまで目がいかなかったですが弱点を突いている!」

 

「狩るということは彼女はシャドウガーデンでの食料調達などを担当しているのではないでしょうか?であるのならば多くの魔物などを仕留める時に急所を突くようにしている筈です。」

 

「どうしてそう言えるの?」

 

「ご主人様もおっしゃっていましたが動物の急所を外してしまうと身がダメになってしまうこともあるみたいなんです。

 

傷付けた身から細菌が入り込んで食べれる箇所が少なくなる…

 

だからなるべく急所を狙うそうなんです。」

 

ある程度ぼかしながらデルタのことを説明するイナリ。

 

「成る程…じゃあデルタって娘はシャドウガーデンの補給を担っている可能性があるというわけね。獣人としての直感と戦闘センスがあれば急所を狙うだけで倒せるし技術も確かにいらなそう…」

 

「まぁそうですね。急所さえ突いてしまえば動物も人間も死ぬことには変わりないですからね。」

 

(デルタの相手が務まるのはシャドウ様、ベアトリクス様を除けばアルファ様と波紋有りのガンマと多分イータもですかね。

 

アルファ様は単純に実力で、ガンマは波紋による強化を合わせると難攻不落の城塞になるからデルタの攻撃が通らなくなる。

 

イータは…そういえばデルタから聞いた話しか知らないからどうデルタを宥めたのか知らないのよね。分かっているのはデルタがもう二度と戦いたくないと愚痴ってたぐらいです…)

 

そうベータが考察している間もデルタはネルソンを狩り続けアルファもネルソンを処理していたところパリンという音が響き渡ると元いた場所に戻ってきていた。

 

「なぜだ、なぜこうも簡単に……」

 

「あなたはきっと研究者だったのね」

 

どこか憐れむように、アルファは言った。

 

「コピーがいくら増えても、頭脳は1つ。人間は複数の身体を制御できるほど優れた頭脳はもっていない。それが100体にもなれば、ただの案山子ね」

 

そしてデルタが最後のコピーを倒し、尻尾を振りながら歩いていく。

 

「あと一匹ぃ……」

 

その顔は凶悪に嗤っていた。まるで血に飢えた獣だ。

 

「ひっ……!」

 

ネルソンが後退る。

 

「無限にコピーを生み出せるというわけでもなさそうね」

 

その様子を見てアルファが淡々と述べる。

 

事実、ネルソンにコピーを生み出す力はもうなかった。

 

だがまだ余裕の表情を浮かべている。

 

「ま、まだだ。私にはまだあれがある!」

 

とコンソールらしきものが出現し何かを打ち込んでいくネルソン。

 

「聖域で飼っている怨念の集合体だ!貴様ら程度葬ってくれるわ!」

 

「怨念ですって!?」

 

「行き場を失い浄化されずに囚われた魂たちを利用しているということね。外道が…」

 

「教団のために役立てる。名誉なことだ!さぁ来るが良い!」

 

とネルソンはかっこつけて言うが一向に現れる気配がない。

 

「どういうことだ!なぜ起動せん!」

 

怨念の保管されている場所をすぐさま映すネルソン。

 

ネルソンの目論みは破綻していた。何故ならそこには映っていたのは

 

「ばっバカな!あれが圧倒されているだと!?」

 

「あれってまさか!」

 

「あの人も聖域へ乗り込んでいただなんて!」

 

それは怨念の集合体らしきものから放たれる鎖や術を全てかわし黄金のような息吹を出しながら圧倒するベアトリクスの姿があった。

 

話していた人物がまさか聖域に入り込んでいたとは夢にも思わなかったネルソン。

 

怨念の集合体も宛に出来ない状態になりいよいよ追い詰められたネルソン。彼は聖域を守る最後の番人を呼び出した。

 

「来い、早く来いぃ……!オリヴィエぇぇぇぇ!」

 

その情けない声に応えて、空間が裂けた。

 

そこから光が零れ出し、それは一人の女性の姿を形作る。そのアルファにそっくりの女性は……。

 

「オリヴィエ……」

 

アレクシアが呟いた。

 

それは、英雄オリヴィエだった。しかしその瞳に力がない。ガラス玉のような空虚な瞳が、どこか悲しかった。

 

彼女はネルソンを護るかのようにアルファ、デルタの前に立ち塞がった。

 

(確かイータが前に言ってたクローンというものね。生物体の細胞から無性生殖的に増殖し、それと全く等しい形質と遺伝子組成を受け継ぐ別の個体…そして)

 

「人道から外れた禁忌にも手を染めている…やはり教団はこの世から消し去らないと。」

 

「英雄オリヴィエ…!」

 

「なんてプレッシャーなの!」

 

「実力は確かにそうかもしれませんが…可哀想です、コンコン」

 

「可哀想?」

 

イナリの言葉に疑問を覚えたアレクシアは聞き返す。

 

「あのオリヴィエさんには意志がありません。ただ命令を聞くだけの人形で、命令されたことに忠実になるようにプログラミングされて生み出されたもの。

 

教団に従わなかったオリヴィエさんに対して教団はただ教団の命令に従うためにオリヴィエさんとまったく同一の存在を造りだした。

 

…ご主人様も人間のクローン技術だけは人の尊厳を著しく侵害する禁忌と嫌悪されていました。」

 

イナリはイータから聞いていたことも合わせて話した。

 

「まったくの同一の存在を生み出す!?教団はどこまで腐ってるのよ!」

 

そう言い放つアレクシア。

 

クローンオリヴィエを前にしてデルタも静かに隙を伺う。無闇に飛び出さないのもやはり相手が強敵であると認識しているためだろう。

 

びーびーびーびー!!!!

 

そこへいきなりサイレンのようなものが鳴り響く。

 

「これはいったい?」

 

「どうやら彼方にとっても予想外の事が起きたと見えるわね。」

 

「ま、まさか!聖域の中枢に異常が!」 

 

ネルソンが何かを弄ると一人だったオリヴィエが4人に増えていた。

 

「至急行かなくては…お前たち!そこのエルフは捕らえろ!他は殺しても構わん!」

 

そう言い放つと4人のオリヴィエの内一人を従え逃走する。

 

「追いたいけど素直に通してくれそうにないわね。」

 

アルファ、デルタの前に一人。

 

アイリスたちの前にも一人立ち塞がるクローンオリヴィエ。

 

アイリスたちの実力ではクローンとはいえオリヴィエに敵わないと心配するが

 

「アルファ様!」

 

「イプシロン丁度良かったわ。悪いけどそっちのをお願いね。」

 

分断されていたイプシロンが合流したことにより心配する必要がなくなり目の前のオリヴィエに集中することが出来る。

 

三人のオリヴィエとアルファ、デルタ、イプシロンの戦いが始まるのであった。

 

ネルソンは逃げながらも保身を考えていた。聖域の中枢でオリヴィエを起動させ物量で押せばどうにでもなると高を括っていた。

 

だがその先にいるのは陰の実力者を目指す少年と現在進行形でディアボロスの左腕を持ち帰ろうとしているのんびり娘と災厄の魔女と恐れられた魔女がいる。

 

アルファたちの方よりも絶望的な状況へ自ら歩みだしたネルソンであった。




今回はここまでになります。

伯母を侮辱され原作よりも荒ぶっているアルファ。

思わずポロリとベアトリクスとの関係を吐露してしまうがベアトリクスの元を出奔しているということにしているためベアトリクス=マザーということは誤魔化せています。

そして原作よりも100人のネルソンを倒すのが速く用意していた怨念の集合体はベアトリクス、クレア、ゼータが相手しているためオリヴィエを原作通り呼び出したネルソン。

続けて聖域の異常が発生したためオリヴィエを更に呼び出しアルファとデルタ、そして合流したイプシロンで三人のオリヴィエを相手取ることに。

ネルソンの行き先はシドたちがいるのでどう足掻いても絶望なネルソンに同情はしません。

次回はベアトリクスたちの方を触れつつシドたちサイドを予定しております。

聖域編もそろそろ完結に向かって行く事になるでしょう。

お気に入り、感想、評価いつもありがとうございます。

次回も遅くならない内に投稿していく予定です。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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武神は聖域に囚われた魂の解放を目指し陰の園の盟主とのんびり娘はやって来たハゲヅラと過去の英雄と対峙する。

前回ネルソンはアルファたちを撃退しようと聖域の怨念の集合体を召喚しようとしたがベアトリクスが相手をしていたため断念し聖域の中枢の異変に気付きオリヴィエクローン三体をアルファたちの方へ向かわせもう一体のオリヴィエクローンと共に中枢へ逃げました。

今回はベアトリクスサイドとシドたちのお話し。

それではどうぞごゆっくり!


時は少し遡り

 

ベアトリクスたちが怨念の集合体と戦い始めた。

 

怨念の塊は呪詛を吐き出しながら三人へ迫る。

 

それをかわしながらゼータがスライムを変形させたナイフとワイヤーを集合体の周りに配置しそのままワイヤーを操りながら攻撃を加えていく。

 

クレアも接近し魔力を込めて斬り掛かりベアトリクスも自身の剣で切り裂いていく。

 

しかし

 

「再生した!?」

 

「ベア様こいつ魔力を吸いとってるみたいだ。切り裂くのに使った魔力も己の力に変えてる感じかな。」

 

「そうみたいね。クレアと私の剣に纏わせた魔力がごっそり持ってかれたわ。となると実質魔力は身体強化に回すしかないけど魔剣士にとって相性最悪みたいね。」

 

そう言っている間にもゼータはナイフ、千本とスライムを変形させるがどれもいまひとつ効いている様子がない。

 

「師匠どうするの?逃げるなんてしたくないけどこのままだとジリ貧よ!」

 

「魔力が効かないなら他の方法を取るだけよ。」

 

「そういうことだね!じゃあイータの作った波紋スライムの出番だね。」

 

ゼータが取り出したのは通常のスライムではなく波紋を最大限に使うことを想定し改造されたイータ特製の波紋スライムだ。

 

通常のスライムは魔力でその形を伸縮自在に変える。その特製に加えて波紋スライムは波紋を流し込むことに特化している。

 

そうしてベアトリクスとゼータの二人は普段の波紋の呼吸から戦闘用に切り替える。

 

「師匠、リリムさん!?なんか輝いてるけど大丈夫なの!」

 

「大丈夫。それじゃあ改めてやろうか!」

 

ゼータは獣人特有の脚力を活かしてチャクラムのような形へ変形させた波紋スライムで斬り掛かると

 

グォォォォォォォォォォォ

 

怨念の集合体は苦しみだした。

 

「効いてる!?リリムさんのあれは…魔力じゃないと思うけど…」

 

「これは波紋というものよ。特殊な呼吸法により、体を流れる血液の流れをコントロールして血液に波紋を起こし、太陽光の波と同じ波長の生命エネルギーを生み出す秘法」

 

「特殊な呼吸ってもしかして師匠やリリムさんから聞こえてたコォォって感じの?」

 

「そうだよ。波紋の強い生命エネルギーは死後間もない命も救うことが出来る…ベア様が私たち一族を助けてくれた崇高なる絶技。」

 

「波紋を流せる技術を波紋疾走といって物を伝達させて効果を発揮させることが出来る。」

 

そう言いながらベアトリクスも怨念へ近付き怨念の呪詛を剣に波紋を乗せ銀色の波紋疾走で迎撃する。

 

「今のは金属に流す波紋でメタルシルバー・オーバードライブ。武器による攻撃、防御とカウンター効果の両方を兼ねた技。」

 

今度は無数の呪詛を塊として飛ばしてくるが懐から取り出した波紋スライムを鞭へと変形させ迎撃し炎によるダメージを与えていく。

 

「今度のは熱を発生させる炎の波紋。スカーレット・オーバードライブ。生命エネルギーを炎へと変えて呪詛を燃やし尽くしたんだ。」

 

「神秘的で幻想的な光景ね。師匠にいつも魔力は絶対じゃないって言われてきたけど納得できる光景だわ。」

 

「他にも波紋疾走に種類はあるけどそこは少し割愛するよ。クレアも波紋を扱う下地はベア様との特訓で身に付いていると思うから案外使いこなすのは早いかもね。」

 

「そうなのかしら…そういえば師匠の修行に肺活量を鍛えたり10分息を吸って10分息をはき続けるのもやったわね。まだ9分しか出来てないからまだまだ修行しないといけないわね。」

 

「まぁそれはおいおいとしてあの集合体もじきに倒せるだろうから心配はいらないかな?」

 

と言いリリムも波紋によるワイヤーの包囲網で集合体の動きを制限しながらベアトリクスをサポートする。

 

そうしてある程度弱まり出すと集合体から一つ一つ声が聞こえてくる。

 

どうしてこんな目に合うのか、苦しい、助けて、死にたくない…

 

ただ生きたかっただけなのに教団はそれすらも許さず悪魔憑きたちの人生を弄んだ。

 

「……」

 

「師匠、早くトドメを刺したほうがいいんじゃない?これ以上苦しませないためにも。」

 

クレアは集合体の慟哭のような叫びに早く楽にしてあげた方がいいと考えた。

 

「そうだね。普通ならそうすべきだと思う。」

 

リリムは自分たちとベアトリクスやシャドウに救われなければこうなっていたのではないかと思う。でも心優しいベアトリクスならばきっと救うだろう。

 

「それではここに囚われたまま。助けてあげたい。せめて終わりは安らかに。」

 

そう言うベアトリクスにリリムもクレアも覚悟を決める。

 

「なら決まりだね。この子達をここから解放しよう。」

 

「出来ることをやりきりましょう。」

 

そうしてベアトリクスたちは悪魔憑きたちの魂を聖域から解放するために戦いを続ける。

 

苦しみ救われぬ魂に救済を与えるために。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方聖域の中枢ではシドとアウロラがイータの帰りを世間話をしながら待っていた。時折何やらキュィィンという何かを削る音やら金属の擦れる音が響いているが呑気にしている二人。

 

「この間イータの研究で保温瓶の耐久テストをしてたんだけど中々形にするのが大変だったんだよね。

 

まぁでも試作品を今冒険者ギルドとかに提供してウケが良ければそのままミツゴシで出すって言ってたよ。」

 

「魔法も使わずに鮮度を保てるなんて夢のようね。それに保温ということは寒い場所でも温かいものを食べたり飲めたりする。

 

画期的だし冒険者からしたらモチベーションの向上にもなるから死亡率も下がるでしょう。」

 

「アイディアを出したからイータから分け前も貰えるし良いこと尽くめだよ。取り分は6:4にして貰ったしね。」

 

勿論6はイータ4はシドである。

 

シドの話しはどれもアウロラからしたら新鮮なものでイータの発明品を語るシドは生き生きとしている。

 

「シドはイータのこと気に入ってるのね。」

 

「それはそうさ。彼女は僕の理解者で共犯者でもあるかし悪友ってところかな。」

 

「…ねぇシド、仮に彼女が結婚したり貴方から離れることがあったらどう思う?」

 

「そうだね。」

 

チクリとその言葉はシドに入る。今まで考えたこともなかったことだ。

 

「正直あんまり考えたこともなかった。いるのが当たり前だし…仮にそんなことがあったらその時は祝福するし仕方ないことって割り切るかな。」

 

本当に?と自分自身からの問いを無視しシドはアウロラへと言う。

 

「成る程。自覚はあんまりない感じというわけね。シドお節介だけど長生きしている私から一つだけ。後悔しない生き方をした方が良いわ。

 

後になってこうしておけば良かったなんていくらでもあるから。」

 

「それは経験談?」

 

「そうよ。」

 

「肝に命じておくよ。」

 

そうしていると扉の奥からイータが戻ってきた。

 

「まったく……面倒だった…」

 

と言いながらもその両腕に持つ保存容器にはディアボロスの左腕が漬かっていた。

 

ミニアウロラは相変わらずイータにおんぶされながら楽しそうにしている。

 

「取り敢えず…これは回収出来たから…後は…脱出するだけ…」

 

「それじゃあさっさと」

 

脱出しようかと言う前に空間に歪みが出来そこから

 

「ハゲたおっさんとエルフの美女?…事案だね。」

 

「犯罪臭漂う光景…」

 

「誰がハゲたおっさんだ!」

 

「貴方以外に…いない…ゆくゆくのシドの未来の頭…」

 

突然現れたネルソンとオリヴィエクローンに対してネルソンの頭を見ながらシドへそういうイータ。

 

「イータ。僕は禿げないからね。」

 

「でも…遺伝的に…シドはハゲる…?」

 

「…怖いこと言わないでくれる?陰の実力者が実はハゲでしたなんて本末転倒でしょ!?」

 

「ハゲないために…この間オトンさんに渡した育毛剤…今のうちに使うことを…勧めとく…」

 

「後でストック含めて5つくらいはもらうよ。」

 

小声で言い争いながらも敢えてネルソンにも聞こえるようにハゲという部分は強調して聞こえるように言う二人。

 

シドの父、オトン・カゲノーは禿げている。頭の煌めきは太陽の反射を受けいつも輝いている。

 

最近はイータの育毛剤でほんの少しだけ毛髪が戻ってきた…後ろの方だけ。

 

遺伝的にハゲやすいと聞いたことがあったシドはイータからの育毛剤で今から対策しておこうと思うことにした。

 

「キサマら揃いに揃って同じことを言いおって!」

 

そしてネルソンは側にアウロラがいたことに気付く。

 

「アウロラを連れ出していたとは…だか小僧ども残念だったな。キサマらにそのとびら……!?」

 

ネルソンが目にしたのはイータが抱えていたディアボロスの左腕に聖剣である。

 

「バカな!?扉を開いたと言うのか!そこの小僧は違う…ならば!キサマか小娘!あれは純血統のオリヴィエの子孫にしか抜けぬもの。今日は運が良い。

 

オリヴィエ!小僧は始末しろ!小娘は五体満足に捕らえろ!」

 

そう言いながらオリヴィエが一歩前に出る。

 

その行為だけで臨戦態勢を整えるシドとイータ。

 

「戦ってはダメ!逃げましょう!」

 

アウロラの記憶は所々朧気でオリヴィエのことを知らないがそれでも本能が彼女を敵に回すべきではないと訴えていた。

 

それはミニアウロラもそうでイータの背中で震えていた。

 

「生憎逃がしてくれそうにないからね。」

 

「それに…ここにいるってことは…教団のお偉いさん…ラウンズの一人に違いないわ…」

 

「ほうそこまで知っておるとは。如何にも私こそが第十一席、強欲のネルソン!」

 

「聞いてもいないのに名乗ったね。」

 

「聞く手間が…省けた…」

 

「やれ、オリヴィエ!」

 

命じられたオリヴィエはネルソン、アウロラたちに見えない速度でシドへと接近しその首を跳ねようと剣を滑らせる。次の瞬間オリヴィエはネルソンの後方へと弾き飛ばされていた。

 

「中々のスピード、魔力の量、能力スペックは僕より上…でもそれだけだね。対話が、心がないから簡単に対処出来る。」

 

魔力を迸りながらシドはそう感想を述べる。

 

「オリヴィエ……ということはクローン…?教団も悪趣味なことをするわね…反吐が出るわ。尊厳を冒涜してる…」

 

「バカな!?聖域で魔力を使えるだと!だかそれより!何をしているオリヴィエ!キサマは最強なのだぞ!そんな小僧に手間取るな!

 

いや…まずは小娘から左腕を取り戻せ!」

 

と今度はイータに標的を定めるオリヴィエクローン。

 

背中に抱き付いているミニアウロラは言葉にしないものの逃げようと訴えている。

 

「大丈夫よ…それよりしっかり掴まっていて…」

 

とディアボロスの左腕の入ったケースを背後に起き聖剣も地面に突き刺しスライムを剣へ変形させるイータ。

 

「バカめ!先程の小僧はまぐれであろうが二度もそんな奇跡は続かん!」

 

ネルソンがそういう間にもオリヴィエクローンはイータの方へ高速で近付く。

 

その姿をイータは己が透き通る世界でその骨格、力の伝達、腕の角度、魔力の質、全てを見て

 

「…スペックは似せられても…この程度ね…本物はどれだけ強かったのか…気になるものね…

 

何にしても…私と…シド相手に…役不足も良いところ…」

 

イータはオリヴィエの剣先をスライムソードで切断しオリヴィエは壁に叩き付けられる。

 

「今のはいったい?オリヴィエっていう娘があの娘に斬りかかって逆に壁に叩き付けられた?どういうことなの?」

 

「な、何が起こっておる…?オリヴィエが負ける筈がない!」

 

「ねぇ…奇跡は二度も続かないって言ったけど……二度続いたら何になるのかしらね…?」

 

「それは実力なんじゃないかな?」

 

イータに背負われているミニアウロラは安心した眼差しで見る。

 

「何をしているオリヴィエ!さっさと始末しろ!」

 

「……ねぇシド…試してみたいことがあるんだけど…」

 

「良いよ。どうする?」

 

イータからの頼みに即答するシド。

 

「取り敢えずそのオリヴィエを足止めしとして…殺さないように…」

 

「まぁいいけど何するつもり?」

 

シドがイータに問いかけイータは背中のミニアウロラへ目を向ける。

 

「ちょっとしたことを…この娘に聞くだけ…同意したら…声を掛ける…」

 

「詳しくは聞かないけどそれは必要なこと?」

 

「必要なことよ…」

 

「わかった。じゃあ任せて」

 

そうしてシドは再度斬りかかってきたオリヴィエクローンの剣をスライムソードで受け止め激しい剣戟の応酬を繰り広げる。

 

オリヴィエクローンは殺すつもりだがシドにとってみれば魔力も波紋も使える状況下であるため余裕を持って対処する。

 

そんな中でイータはミニアウロラを下ろしまっすぐその瞳を見つめ

 

「貴女は…ここから外に出てみたい…?」

 

そう問い掛けるのであった。




今回はここまでになります。

ベアトリクスサイドでは悪魔憑きたちの怨念の集合体と戦いを繰り広げ悪魔憑きたちの魂を解放すべく行動し始めました。

そんな中でクレアはベアトリクスやゼータの使う波紋を知り知らない中でも波紋を使うための基礎的なことはベアトリクスから修行で教わっていました。

ゆくゆくはクレアも波紋戦士になることでしょう。

ベアトリクスならば怨念の集合体を無に帰すことは簡単ですが聖域に囚われた魂を解放するために少しハード目なしようにもなっています。

そしてシドたちサイドではアウロラとシドの世間話で主にイータの発明のことをはなしアウロラはシドのイータへの感情は恋心とまではいってないがそれでも大事な人であることを見抜き経験則からのアドバイスを送りました。

イータはディアボロスの左腕を無事に捕獲もとい奪取することに成功しました。

そして異変に気付いたネルソンとオリヴィエクローンが突撃してきてネルソンのハゲ具合を見てシドに対してイータは遺伝的にハゲるのではと言い

シドはハゲた実力者は御免だと育毛剤を頼むことに。

ネルソンはアウロラを連れ出したことに驚きつつも扉を開けないと言おうとしたところ扉は開いていてディアボロスの左腕が奪われていることに驚き

イータが聖剣を持っていたのでイータもオリヴィエの子孫と勘違いをしオリヴィエクローンに命令してシドを襲うが原作と違って魔力万全、更に波紋も使えるシドにとってはイージー過ぎました。

続けてイータも襲うもののミニロラを背負いながら透き通る世界で見て迎撃しました。

そして何かに気付き試してみようとシドにオリヴィエクローンを足止めするように言いミニロラへと問い掛けるのでした。

次回はそんなイータとミニロラ、アウロラたちとのやり取りからになる予定です。

FGOでは奏章2が始まりマリーオルタの登場にあのクハハマンも登場とアヴェンジャーたちの物語。

見逃せませんね。

お気に入り、感想、評価してくださる皆さまありがとうございます。

次回も遅くならない内に投稿していけるようにします。

今回も読んでくださりありがとうございました!


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陰の盟主とのんびり娘は奇跡を起こす…?否、奇跡とは待つものではなく掴み取るもの!陰の園の盟主として幕を引くために決意を固める!

シドたちサイドのお話しになります。

中々ご都合主義でありますがそこは目を瞑ってもらえると幸いです。

最後にシドの決意を込めた言葉に注目です。

それではどうぞごゆっくり!


前回ラストにてイータがミニアウロラへと外に出たいかと聞いた。

 

その言葉にミニアウロラは……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

外に出る…

 

ミニアウロラはその言葉に戸惑う。

 

今まで何度も考えた…でも私は何処に行くことも出来ない…どんなに望んでも焦がれても…望みが叶うことなんてない…

 

だからいつも一人で泣いていた。

何も出来ない自分に…何処に行くことも出来ない自分に…勇気の出ない自分に…それに誰も助けてくれる人なんていなかった…

 

優しさなんて知らない…傷つけることしか出来ない…

戦争に勝つために殺した…生き残るために…自分の手が赤くて…どんなに洗っても落ちなくて…また泣いた…

 

こんな地獄のような生活嫌だ…

 

でもどうすれば良いのか分からなかった…

 

気付けば私は…ここにずっといる…

 

大人の私が囚われてるから…でも大人になんてなりたくない…あんな苦しい/寂しい、思いはしたくない…

 

でも私の前に大人の私が来てしまった…

 

大人の私はメソメソ泣いてる私が嫌いに違いない…ここを進むのに大人の私は自らの弱い心でもある私を殺すだろう

 

でも一緒にいた女の人が私に触ってきた…

 

とても温かい感触に顔を上げたら眠たげなお姉ちゃんがいた。私の痣は魂にこびり付いたもの…治る筈なんてないのに…気付けば痛いのが取れてた…

 

目の前のお姉ちゃんが治してくれたんだと思うと何かを差し出してきた…

 

恐る恐る手に取るそれは食べ物だった…一口食べると今までの口にしてきた食べ物なんかと比べ物にならない…食べたことのない味と感じたことのない暖かいものが胸に入ってきた…

 

これが優しさなんだ……お姉ちゃんにありがとうって顔をしたら風景が変わってた…

 

また大人の私が私を殺そうとするだろうから偽物の私を何処かに置いておいた…

 

それから男の人と大人の私がお姉ちゃんから離れて行ったのが見えたからお姉ちゃんの袖を引っ張った。

 

驚いてたけど私の目線と同じになるようにしゃがんでどうしたのか聞いてきた…

 

だから私はここの中心へとお姉ちゃんを案内した。

 

さっきの食べたもの…もう一回食べたいなと手を伸ばしてみる…

 

お姉ちゃんはさっきの丸いものを幾つも出してくれて…

 

大人の私もきたけどお姉ちゃんの持ってきたのを食べて…

 

そうしてまた景色が変わって開かない扉のある部屋に来た…

 

この部屋は開かない…どうしても鎖が斬れないし台座に刺さっている剣なら斬れるけど…大人の私がいうには選ばれた人にしか抜けないもの…でもお姉ちゃんが何かしたらスポンと簡単に抜けて鎖も斬れた…!

 

それでお姉ちゃんが扉に入るから私も付いていって……

 

そこには大人の私の左腕が封じられていた…

 

良く分からないけどお姉ちゃんは絡み付いた鎖を斬ってケースみたいなものに入れてた…

 

そうして一緒に出たら私に酷いことをした研究者みたいな人と怖いエルフがいた…

 

お姉ちゃんの背中で震えるしかなくお姉ちゃんに逃げようと伝えようとしたけどそれより早くエルフの人が襲ってきた…

 

でもお姉ちゃんはまるで全てが見えてるみたいに避けて怖いエルフが飛んでいった…

 

それで男の人が怖いエルフを相手にしてくれて…見ていて余裕があるみたいだし…

 

お姉ちゃんも信頼してるみたい…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「でても…良いの…?」

 

初めてミニアウロラの声を聞いたイータ。その言葉には怯えが含まれていた。

 

「それを決めるのは…貴女…私が良いって言うことじゃない…貴女がどうしたいか…」

 

「ねぇイータ。言っていなかったけど私たちはここに縛られている存在。だから出ようとしても出られないし…ここが消滅すれば私たちは消滅するの。だから」

 

「そんなことはどうでも良いわ…最初から諦めるの…?出来ないと決めつけたら出来ないに決まってる…出来るようにするのが…発明家として研究者としてのやるべきこと…昔は悪魔憑きにとって残酷で冷たい世界だったのかも知れない…でも今は違う…私たちやベアト母様もいる…後はどうしたいかだけ…」

 

その言葉にアウロラも無意識に聖域が消滅しない限り出れないと思っていた。

 

「それに…魔力っていうのはイメージが大事って…シドも言ってた…イメージが出来れば何でも出来る…そのことを証明しているのをあいつの側にいる私たちが良く知ってる…」

 

戸惑うミニアウロラだが

 

「私…外に出てみたい…お姉ちゃんが食べさせてくれた物も色んなことを見てみたい…でも私は色んな人を殺してきた…生きるために…私の手は紅く染まってる…そんな私が…手を取るなんて」

 

「キサマらっ!アウロラを外に出すと言うのがどういうことか分かっておるのか!また世界に再び災厄を広めると言うのが分からんのか!」

 

これに関してはネルソンが正しいだろう。昔猛威を振るった災厄の魔女…否魔人ディアボロスの魂を解き放つということは人類にとって災いを撒き散らす行為そのものにしかならない。だが

 

「関係ないわ…別に人類がどうなろうと構わないし…いやベアト母様は気にするわね……まぁ科学的視点からすれば貴方は正しいのでしょう…でもね…数字だけが全てじゃない…アウロラが昔に何をしたのか…私たちは全てを知っているわけではない…でも大事なのは現在よ…」

 

イータは過去ではなく現在を見据えて言う。

 

「バカなことを言うでない!左腕だけの状態であの再生力なのだ!これを研究し続ければ我々は不老不死を得られるのだ!

 

ここで研究出来るのは左腕だけだがまだ見つからぬ心臓や足といった部分を見つけられれば教団は力を得て世界を牛耳れるのだ!

 

それをここから解き放つということはまた何処かで魔人が生まれるかもしれんということだ!そんな制御出来ん化物を」

 

「その化物を生み出したのは…人間であり私たち生きるものたちの責任…!アウロラは意思のある人間…彼女の遺体を利用し…辱しめる行為は許されない…」

 

イータはミニアウロラに手を伸ばす。

 

「例え手が汚れていようとも気にしない…誰にだって生きる権利があるのだから…」

 

その言葉にミニアウロラは決心したようにイータの手を取る。

 

「お願い…お姉ちゃん!私外に出たい!」

 

「分かったわ…シド!!」

 

「はいはい…!一応聞いてたけどどうやって外に連れていくの?」

 

イータが話している間オリヴィエクローンの攻撃を余裕で捌くシドが声をかける。

 

「今この娘に必要なのは器になる身体…それも飛びっきりのもの…幸いそれは今シドの目の前にいる…」

 

「イータ、倫理観って知ってる?クローンの再利用ってどうなの?」

 

「意思がなく魂のないままに利用される…それよりは良いでしょ…」

 

「まぁそれもそうか。それじゃあ…終わらせよう。」

 

剣戟を繰り広げていたシドは魔力を足に集中しその場から消えたように移動しオリヴィエクローンの首に手刀を落とし意識を刈り取りイータの前へ連れてくる。

 

「それでこれからどうする?」

 

「やり方は簡単よ…元々この娘は魂だけの存在…なら魔力でオリヴィエクローンの身体に定着させればいい…膨大な魔力と魔力操作があればいける………かも?」

 

「そこは未知数ってところか。まぁなんとかなるよ。」

 

そう言いながらシドの魔力が高まり更に

 

「行き当たりばったりだけど…まぁシドらしいわね…私も…たまにはそうしてみるかしら…」

 

イータは自らの魔力を喰わせる改造したスライムの魔力喰いを外し魔力を解放した。

 

「な、なんじゃ!?この魔力はあり得んぞ!?いくら英雄の子孫といえどこんな馬鹿げたことが!?」

 

「なんて魔力なの…」

 

「それじゃあ始めるわ…貴女も良い?」

 

「うん…!」

 

あまりの魔力にネルソンは喚き攻撃することも忘れアウロラはその魔力に驚きミニアウロラは決意を込めてイータに全てを託す。

 

オリヴィエクローンの周りを幾何学的な魔方陣が取り囲みミニアウロラの身体が光出す。

 

イータの魔力がミニアウロラを包み込みそれをシドが指向性を持たせ身体へと馴染ませるべく行使する。

 

オリヴィエクローンの身体とミニアウロラの身体が輝きを増していく。

 

眩い光が聖域を揺らしそれは聖域の他の場所で戦う者たちにも伝わる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「師匠!この魔力って!」

 

「イータの魔力…!だけどこんな膨大な量はいったい?」

 

「自分の枷を外したのね。」

 

「師匠何か知ってるの?」

 

「それはここを出てからよ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「この魔力!?」

 

「がうぅぅ!?」

 

「とんでもない魔力ね…でも今ので!」

 

三人のオリヴィエクローンを相手するアルファたちはイータの魔力が爆発的に増えたことに気付き驚きつつもオリヴィエクローンの注意もそちらに向いたことで隙が出来た。

 

それにより三人のオリヴィエクローンをそのまま斬り捨てることに成功するのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

光が収まってくるとミニアウロラの魔力体は消滅し先程までオリヴィエクローンになかった意思が宿った瞳と鼓動がそこにはあった。

 

「………なんか小さくなってる…?」

 

「それに髪の色がさっきは金髪だったのにイータに似た色になったね。」

 

先程までの少女だった身体はミニアウロラと同じ小さめになっていた。

 

「多分だけど魂に身体が引っ張られたのでしょうね。そして髪の色はイータの魔力を込めたからその色に染まったのでしょう。うっすらシドの髪色も混ざっているわね。まるで貴女たち二人の娘ね。」

 

「…ありがとう…お母さん、お父さん…!」

 

ミニアウロラはイータへと抱きつく。

 

「新たに生まれ直した…なら名前も新しく…ヴィオラ…ってどう?」

 

「うん!ありがとうお母さん!」

 

ミニアウロラ改めヴィオラは満面の笑顔でイータの身体に顔を埋めるのであった。

 

「ばっバカな…ありえん…奇跡が起きたとでもいうのか!」

 

「奇跡なんて待つものじゃないでしょ。自分から行動をして掴み取るものじゃないかな?小さいヴァイオレットさんの想いが願いが起こしたものだよ。どんなことがあろうとその願いを否定することは誰にも出来ない。」

 

そうしてシドはスライムボディスーツを身に纏いながら宣言する。

 

「そして僕、シド・カゲノーには夢がある!その夢のためにここで止まっている時間はない…」

 

「ま、まさか!?キサマがシャドウか!」

 

「いかにも。我はシャドウ。シャドウガーデン盟主でありそしてイータの悪友でお前たちディアボロス教団の…敵だ!」




今回はここまでになります。

最初にミニアウロラの独白から始まりミニアウロラの願いを聞いたイータは自身の魔力を解放しシドがサポートすることでオリヴィエクローンの身体にミニアウロラの魂を定着させました。

新生したミニアウロラ改めてヴィオラ。

ラテン語での紫の読み方の一つウィオラーケウムからもじりました。

ヴィオラは守ってくれるイータやシドのようになりたいと想いながら新生したためかシドとイータの特徴が色濃く出ています。

まさかのイータが子持ちになるとは…ということはベアトリクスはおばあちゃんになる感じですね。

災厄の魔女を外に出すのが危険だと言う至極真っ当なことをいうネルソン。確かに行いは外道ですが制御出来ない魔人ディアボロスの脅威を知っているだけに説得力はあります。

イータは別に人類がどうなろうが関係ないと無関心ですがベアトリクスが悲しむからと思っています。

イータ自身自分の周りが悲しまなければあとはどうでも良いとちょっと振り切れてます。

そしてイータの魔力を感じた聖域にいた全員。

それによりオリヴィエクローンに隙が出来アルファたちは打倒することが出来ました。

アレクシアたちなどの反応はまた次回以降になるでしょう。

そして覚悟の決まったシドはシャドウとしての姿を現しジョジョ第5部主人公ジョルノの言葉を言いながらジョジョ立ちしてディアボロス教団の敵として聖域の戦いを終わらせることを宣言しました。

さてマスターオブガーデンでは500日記念で青アタッカーのシャドウがピックアップ中!漸く手に入れられたので育成を頑張りたいところです。

お気に入り、感想、評価皆様ありがとうございます!

感想など参考になるのでもらえると嬉しいです。

これからも遅くならない内に投稿していけるようにします。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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娘を守るため漆黒の装束を身に纏い円舞する二人。そうして魔女は悪魔と契約し第十一席の舞台は終演を告げる。

シドとイータがネルソンに引導を渡すことになります。最後の方に若干グロテスクシーンあるかもなので注意です。

イータの必殺技の詳細が明らかになりアウロラとあることをします。
ご都合主義もあったりしますがそこはスルーお願いします。
少し長くなりましたがどうぞごゆっくり!


外に出たがっていたミニアウロラはイータの魔力解放した魔力とシドの指向性を持たせた精密な魔力操作により新生し名をヴィオラと名付けられた。

 

そしてシドはネルソンの前に立ち覚悟の決まった表情でスライムボディスーツを身に纏い背後にゴゴゴと付いているかのような迫力を持ち対峙していた。

 

「さて…本格的に…やりましょう…」

 

イータはそう言いながら自身もスライムボディスーツを身に纏う。

 

「ふ、フン!高々出来の悪いオリヴィエを倒したぐらいでいい気になりおって!聖域には計り知れない魔力が眠っている。だからこういうことも、可能なのだ!!」

 

そう言いながらネルソンは腕を振るい聖域が光ると数えきれない程のオリヴィエクローンが出現する。

 

「流石にこの量は不味いわ…二人とも幼い私を連れて脱出して!時間はどれだけ稼げるか分からないけど…それでも」

 

アウロラは魔力で作り出した槍のように長い鎌をネルソンに向けながらシドたちへ言う。

 

「有象無象程度恐るるに足らず…何より我は一人ではない。そうだろう悪友よ。」

 

「まぁ…シャドウの言う通りね…本物のオリヴィエなら勝ち目が薄いだろうけど…クローン体で決められた動きしか…出来ないなら…二人でも充分すぎるぐらい…」

 

そうしてシャドウとイータはオリヴィエの大軍を見やり

 

「残念だけどアウロラに…合いそうな娘はいないわね…これだとさっきの方法が使えないけど…そういえば…これって貴女の左腕なのよね?」

 

とディアボロスの左腕を見ながら言うイータ。

 

「え、えぇ形は変わってるけど間違いないわ。」

 

「なら左腕から…細胞を培養して…身体を作れば…器が完成する…」

 

アウロラの魂を入れられそうなオリヴィエクローンの身体はないためそれならばと丁度手に入れたディアボロスの左腕を元にした再生療法プラス魔力が暴走しないようにする処置も必要と考えるイータ。

 

「それと…アウロラも…外に出るってことで良いのよね…」

 

「私は…そうね。幼い私とは違うけどそれでも外に興味はあるわ。でも私は聖域が消滅すれば消える存在…契約でもしない限りは何処にいくことも…」

 

「なら…その契約みたいなことする…?そうすれば私が…宿主になるし…肉体が完成したらそちらに移れば良い…」

 

「キサマ正気か!魔女と契約など気が狂っておるのか!そいつは破滅をもたらす災厄の魔女!そんなものと」

 

「それでどうするアウロラよ。ここで聖域と共に消えるのか…それとも我等の手を取り共に未来を歩むか?」

 

ネルソンの言葉を無視してシドはアウロラへ問う。

 

「…イータ。契約をすれば貴女は私を知る全ての者から狙われることになるわ…人類が貴女の敵になるかもしれない…それでも契約する?」

 

「今さらのこと…アウロラが狙われるならヴィオラだって狙われかねない…なら徹底的に戦うだけ…」

 

「…貴女は裏切らない?」

 

最後の確認をするようにアウロラはイータへ問う。悲壮感漂うその言葉に

 

「アウロラが裏切らない限り…私は貴女を…守るわ…それとアウロラ貴女は災厄の魔女と言われたけど…私は悪魔憑きだった…だからこう言いましょう…あくまと相乗りする勇気…貴女にはあるかしら?」

 

「ふふふふ、イータ…貴女やっぱり変わってるわね。」

 

「それは…自分が一番…知ってる」

 

「でも…誰かの側に一緒にいてくれる安心感があって優しい心の持ち主…」

 

そう言ったアウロラとイータの下には何やら魔方陣のようなものが浮かび上がっていた。

 

「誓いをここに…汝求めるは世界を災厄へ落とす混沌の力…世界を意のままに操る…魔女の力を欲するか?」

 

「えぇ…でも世界を意のままに操るためじゃない…私たちが求めるのは…人が人に優しく出来て…世界に少し笑顔を増やす…そんな些細な願い…そのためにも力を貸してほしい…仲間として」

 

そうしてイータの左腕に幾何学的な紋章が刻まれ

 

「契約はここに為された…これから末永く宜しくね。」

 

イータとアウロラの間に契約が結ばれた。その現実に今ここで二人を消さなければならないとネルソンは張り裂けるほどの声量でオリヴィエクローンへ命じる

 

「奴らを殺せぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

その言葉と共に一斉に飛び掛かるオリヴィエクローン。

 

シャドウはスライムボディスーツに魔力を乗せマントを肥大化させることでオリヴィエクローンたちをあしらう。

 

イータはスライムを武器へと変換していき自分の周りに浮かせ肉体を波紋で強化し向かってくるオリヴィエクローンたちへ接近。

 

「動きが単調……数が多すぎて連携も出来てない…」

 

四方から降り注ぐ剣閃をイータは浮かべた武器を手に取りながら透き通る世界で急所を正確に見てそのまま貫いていく。

 

「質より量…確かに良い手…でも相手が悪かったわね…シャドウは極限まで質を高めた最強格…いくら聖域が魔力を溜め込んでクローンを召喚したとしても…相手にならない」

 

「空の人形など片腹痛い…我等を倒すなら覚悟を見せることだ。」

 

そう言いながらシャドウは自身の波紋を剣へ流し向かってきたオリヴィエクローンをメタルシルバー・オーバードライブで葬っていく。

 

「だがそれで我等を倒せるかは別であるがな。」

 

オリヴィエクローンを刺し貫いていくシャドウとイータ。

 

その光景をアウロラとヴィオラは離れた場所で見ていた。

 

「凄いものね。普通ならあの大軍だけで一国を滅ぼせる存在だというのに彼らは立ち向かっている。それに…」

 

アウロラは時折シャドウがイータの背後のオリヴィエクローンに向かって攻撃する姿やイータが離れたシャドウに向かってスライムを変形させた武器を飛ばしそれを上手いことキャッチしそのままオリヴィエクローンを斬り進んでいく。

 

オリヴィエクローンたちはネルソンの命ずるままに二人へ殺到し斬り伏せられていく中で一人だけ何やら違和感を覚えた二人だが気にすることなく魔力とオーバードライブを駆使して戦う。

 

そんな息のあったコンビネーションを見せる二人を見てアウロラは二人だけの舞踏会のようだと感じた。それはヴィオラも同様で仲が良いんだということを認識する。

 

迫る剣を捌き、時に利用し他のクローンへ誘導し自滅させ、武器を奪い斬り捨てる。

 

「何なんだ…貴様らはいったい…何なんだ!!」

 

ネルソンはそのあまりの光景に何度目かの絶叫をする。

 

「我はシャドウ…陰に潜み、陰を狩るもの。」

 

「ディアボロス教団を壊滅させ…ベアト母様が…また気侭に旅できるようにしたいから…教団は潰す…」

 

大量にいたオリヴィエクローンの数は瞬く間に減っていき両の手で数えられるぐらいまで減っていた。

 

「失敗作共め!役に立たんではないか!!わざわざオリヴィエの左足の細胞から生み出してやったというのに。使えん!」

 

ネルソンは悪態をつきオリヴィエを失敗と断じる…しかし

 

「失敗作……そもそもが間違い…オリヴィエが強かったから…その細胞から作られたクローンも同じぐらい強い…そんな訳がない…オリヴィエは生きていた…考えて相手の動きを読んで次に繋げる…クローンは何もない空虚で……プログラミングされたことしか出来ない…そうしたのはお前たち…」

 

イータはオリヴィエという考え、意思のある一生命体だからこそ強かったと言い

 

「お前たちは失敗というものを履き違えている。

真の『失敗』とはッ!開拓の心を忘れ!

困難に挑戦する事に無縁のところにいる者たちの事をいうのだッ!

 

お前たちはディアボロスという強大な力を得たことで堕落した。堕落とは己の可能性を捨てることに等しいこと。

 

だが堕落から学び再起するものたちがいることもまた事実!!

 

削ぎ落としてしまったものを拾い集め形にする…どんなに困難があろうとも…我等は挑戦する心を失わん。」

 

シャドウはネルソンへ言い放つ。

 

そうしてシャドウは残ったオリヴィエクローンへ剣閃を振るい

 

残ったのは一人…

 

「眠れ…」

 

シャドウは最後の一人を斬り伏せようと首に剣をあて振り抜こうとしたが今まで感じていた違和感に漸く気付き剣を下ろした。

 

「シャドウ…?」

 

シャドウの行動に何事かと事態の推移を見守ることにしたイータ。

 

「イータ。漸く違和感に気付いた。このクローンだけ…我等の攻撃を回避し逃げていた。他のクローンは殺せという命令に従っていたのにだ。」

 

シャドウの感じていた違和感…それは他のクローンは傷付いても向かってきたのに対してこの個体だけはシャドウとイータの攻撃を避けていたということ。範囲攻撃をしたときでさえこの個体は点の動きで無傷で掻い潜っていた。そこまで動けるということは攻撃されていたらさしもの二人でも手傷を負っていただろう。しかしついぞ攻撃を仕掛けてはこなかった。

 

「命令に…背いた…?」

 

「アウロラの魂を縛るように聖域には分からないことが多い。だが分かることもある。このオリヴィエは…生きている。でなければこんなに震えることなどないだろう。」

 

オリヴィエクローンの持つ剣がカタカタと震えている。それは根本的な死の恐怖によるものか定かではない。それでも

 

「…もう……戦いたくなんて……な…い」

 

空虚な瞳ではなく涙を溢しながら掠れた声に嘘はなかった。

 

「まさか!?オリヴィエ自身の魂か!おぉ、私は付いている…!!あの忌々しいベアトリクスにオリヴィエ直系の子孫の覚醒体にオリヴィエ自身の魂と…これだけあれば私の立場はより磐石なものになる!クローン共を作った甲斐があった!命令に忠実ならばもう貴様らに要はない!ここを失うのは惜しいがオリヴィエ自身の魂があるならば何度でもやり直せる!今度はより完璧なクローンを作りベアトリクスを捕らえより優秀な個体を生み出し…!?」

 

「お前に次はない…!」

 

そうイータが告げるとその影からスライムが飛び出しネルソンに纏わり付く。今までのスライムと違い色合いが禍々しい赤色をしていた。

 

「グォォォオオオオ!!?な、なんだ!身体が焼けて……!オリヴィエ!オリヴィエぇぇぇぇぇぇぇぇ!な、何故、何故呼び掛けに応じんのだ!」

 

「どんなに呼び掛けても…無駄…今貴方が握っていた……聖域のコントロールを喰って奪い取ったのだから…」

 

「喰っただと!?なにを言っておる!」

 

「私はベアト母様やシャドウみたいに……範囲攻撃の必殺技を…持っていない…だから自分だけの技を身に付けようとした…必ず殺すとかいて必殺…そこで…私はスライムの捕食に目を付けた…捕食という一点に特化したスライム…名を…グラトニー…相手の魔力を奪えるし…能力も一部奪える…強欲の瞳を解析して…より詳しいデータが集まったことで…漸く完成した…」

 

グラトニースライムとイータの間にある魔力リンクによりそれらを自分の物にすることが可能だということを説明する間にもどんどんネルソンの身体を覆っていくグラトニースライム。

 

「わ、私を誰だと思っておる!ラウンズ十一席で雫を生産出来る唯一の者だ!他の有象無象とは違うのだぞ!それが損なわれるのが世界にとってどれだけの損失だと!」

 

「それは…ディアボロス教団にとっての話し……世界からお前が消えれば…教団に苦しめられる者も…減る…むしろ良いことだらけ…それに…」

 

イータはネルソンに近づくと普段眠たげな瞳をカッと見開き

 

「お前はベアト母様を侮辱しアルファ様も実験台にしようとした…家族に手を出すなら容赦はしない。お前のその口を開けば人を傷付ける害悪でしかない身体はいらない…知識のみをもらう。」

 

怒りを感じさせない無表情で淡々と告げる。ネルソンはその感情の篭らないまるで道端の石を退けるような抑揚のない言葉に怖気が走るが今さら遅い。そうしてグラトニーはネルソンを覆い尽くした。口の聞けなくなったネルソンは生きたまま身体を溶かされその悲鳴すらもグラトニーは喰らい尽くす。

 

「そういえば何者か知りたがってたわよね。冥土の土産に教えておくわ。名前のない怪物に…ベアト母様は名前をくれた…イータという大切な名前を…お前たちディアボロス教団を…ベアト母様の敵を捕食するシャドウガーデン第七席、暴食のイータよ。」

 

そうしてネルソンは…いやネルソンだった者は知識の大元である脳を残しその全てをイータに捕食されるのであった。

 

「これで幹部もあと…9人…」

 

「そうだな。王都でマザーの倒した八席、そして第十二席は空席で昔に葬った第十席が補充されたという噂もあるから9人だろう。それにしてもスライムにはこんな可能性もあったのだな。…イータ。」

 

「駄目よ…この子は私のもの…」

 

「今は諦めよう。」

 

「さて…後は」

 

イータは震えるオリヴィエクローンの元へ歩きネルソンの末路を見ていたクローンは怯えながらすぐさまシャドウの後ろに隠れた。

 

「シャドウそのまま…動かないで」

 

「いやイータ、今の君大分危ない顔してるんだけど?」

 

「そんなことない…そうよね?」

 

「ヒッ!」

 

イータは声を掛けるが見事に怯えられている。

 

「恐がられてるけど?」

 

「私は…その娘に掛けられてる聖域の制御を外そうとしてるだけ……まぁここまで近付けば簡単に外せるけどね…」

 

とイータは何かをするとパキンという音が響き渡る。

 

オリヴィエクローンは安心したようにシャドウに寄りかかりながら気を失う。

 

「さて後はここを粉微塵にするだけ……」

 

イータはネルソンから奪った聖域の機能を使い全体を見渡す。

 

「…ベアト母様の方に…聖域に囚われた魂たちの集合体がいるみたい…」

 

「我が奥義でここら一体を吹き飛ばせるが…それは最終手段だろう…何より彼女は救いたいだろうからな。」

 

「…この聖域には負の連鎖によって命を落とした者たちが魔力で縛られている…ならそれを正の力で浄化出来れば……」

 

「方法を考えるとするか……響くものといえば音だが…」

 

その言葉に閃いたイータ。

 

「シャドウ…一つ思い付いた…」

 

「ならやってみる価値はあるな。」

 

「うん…その為にも…いつまでそこに隠れてるの…?」

 

と声を掛けるとそこにいたのは

 

「隠れてた訳じゃないのよ?ただ入るタイミングを図ってたというかなんというかその……」

 

イプシロンであった。オリヴィエクローンを片付けたアルファたちはネルソンが向かった場所へ向かおうとしてアイリスたちに何かあっても大事だとイプシロンが先行して様子を見ようと中枢へ来てみると主であるシャドウとイータが激戦を繰り広げていてその光景に唖然として様々な疑問を抱いた。

 

「イプシロン、その様子だとそちらも片付いたようだな。」

 

シャドウは聖域の調査が終わったと思いそう声を掛けた。

 

「流石主様!私たちがオリヴィエのクローン体と戦闘したことをご存知とは!その未来を見通す慧眼…感服致します。」

 

イプシロンはオリヴィエクローンと遭遇し倒しここまで来たことを予知していたと勘違いしていた。

 

「え?………あぁそうだな。そうだとも。」

 

何のことか分からないものの取り敢えず返事しておいたシャドウ。それを見て適当に返事したなこいつとイータは、毎度のことながらため息を吐く。

 

「それよりイータ!さっきの魔力は何なの!いつもの魔力なんて比じゃないぐらいだし母さんに迫る魔力量もそうだしさっきのスライムも気になるけど一番は!その子供のことよ!」

 

イプシロンは一息に言うとビシッとイータの背中にいつの間にか抱き付いているヴィオラを指差しながらそう言う。

 

「お母さん…お父さん…この人誰?」

 

「お母さんですって!?イータいつの間に子持ちに!それにこの娘から感じる魔力…シャドウ様の魔力も混じってるし…ってお父さん…?ま、まさか!?シャドウ様の娘様!?いつの間にイータとの間に!!」

 

情報量の過多でプチパニックを起こしているイプシロン。

 

「取り敢えず落ち着きましょう。ほら息をゆっくり吸って」

 

「ふぅ~ありがとう…って女神の試練でシャドウ様と戦った魔女アウロラ!?」

 

「一先ず説明はあと…イプシロン渡した形状記憶スライム…持ってるわね…」

 

「えぇ持ってるけど。」

 

「それを持ってもう一度…アルファ様たちの方に戻って…シャドウもそっちに向かいつつここへ行ってちょうだい。作戦名は…」

 

「リュミエール・デスポワール…希望の光だ。」

 

「希望…」

 

「聖域に囚われた魂は何処へ行くことも出来ず彷徨っている…それを希望という光が解放する…これはイプシロンにしか出来ないことだ。やれるな。」

 

「お任せください!この緻密のイプシロン!必ずや成功させます!」

 

「詳細は…こう。」

 

とイータはイプシロンとシャドウへ説明する。

 

「さっさとやりましょう…」

 

「ってイータさっきの質問に全然答えてないんだけど!」

 

「今言えるのは…この娘…ヴィオラは私の娘になった…後のことはここを出たときに聞いてくれれば説明する…」

 

「必ずよ!」

 

こうしてナイツ・オブ・ラウンズ第十一席を葬ったイータとシャドウ。

 

今なお戦うベアトリクスたちのために最後の作戦に取り掛かるのであった。




今回はここまでになります。

アウロラと契約したイータ。原作でのクレアとの契約で浮かんだ紋章がイータに刻まれることに。…まぁ日常生活ではスライムを肌色に擬態させるので見た目はいくらでも誤魔化せます。

悪魔憑きだったイータが魔女であるアウロラと契約するある意味悪魔契約みたいなこと。これによりイータを宿主として共に行動することが出来るようになりました。

そうして大量のオリヴィエクローンたちとの戦闘は魔力万全、波紋全開のシャドウと透き通る世界全開のイータにより壊滅寸前。

オリヴィエを失敗作と呼んだネルソンにシャドウは失敗とは何かを声高らかに言います。

ジョジョ第七部スティール・オブ・ランにてスティーブンスティールのいった言葉ですね。

最後のオリヴィエを斬ろうとしてシャドウは他のクローンと何か違うと直感しネルソンはオリジナルのオリヴィエの魂が入っているようなことを仄めかしますが

そのネルソンは生きたまま身体をグラトニースライムに溶かされ脳を残し喰われました。後にアレクサンドリアで読み取り君によりその知識を全て見られることになります。

シャドウのアトミック、ベアトリクスのマテリアル・バーストに比べると目立たないですがイータの魔力よりも少なければ捕食され溶かされ養分にされるという恐ろしい代物。

基本的にイータの操作しか受け付けないのでイータも最新の注意を払ってグラトニースライムを管理しています。

強欲の瞳の吸収するメカニズムを解明したことにより漸く完成に漕ぎ着けた逸品。

完全な初見殺しなので、一度見せれば警戒されるしシャドウならスライム自体を己の魔力を爆発させて吹き飛ばせる、ベアトリクスも波紋で焼き尽くすか魔力でレジスト出来ます。

そしてオリヴィエクローンに怯えられるイータ。

まぁネルソンの最期を見てる分仕方ないことでしょう。

そんなイータはオリヴィエクローンの聖域に掛けられた枷を全て外すことに成功。

気を失ったオリヴィエはシャドウの背中でスヤスヤ眠っています。何故か?それはネルソンが失敗といった自分達のことをシャドウは否定し認めくれたと感じたから。

シャドウたちが戦いだしたところを実は見ていたイプシロン。

シャドウの戦いを間近で見れて感動しつつもイータの動きに驚愕したりしていました。

そしてイータへ質問を投げ掛け色んなことがありすぎてプチパニックになりアウロラが落ち着かせました。

聖域での戦いが終わったあとにイプシロンに問い詰められることになることが半ば確定したイータ。なんならここにゼータも加わることでしょう。

アルファやベータ、ガンマは話してくれるまで待ちましょうスタンスに対してイプシロン、ゼータは聞いてみてどうするか考えるタイプかと個人的に思います。デルタはそんなの気にしないでしょうね。

そしてベアトリクスの戦いを終わらせられるよう動き出しました。

その作戦は次回に明かされる予定です。

さてマスターオブガーデンでは七陰列伝第二章が完結!次はどうやら獣人の国のことらしいのでどんな物語になるか気になりますね。

そして七陰列伝で判明したシャドウによって第十席が討ち取られていたこと。詳しくは七陰列伝を見てみましょう!1.5周年でどんなキャラが来るのか楽しみです。

個人的に新たなシャドウが来るのではと戦々恐々しています。

感想、評価、お気に入りして頂いた皆様ありがとうございます!

とても励みになります。なるべく早く返信出来るようにしますので感想あればどんどんお願いします。

次回も遅くならない内に投稿出来るようにしていきます。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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陰の園は教団により犠牲になりし者たちの魂を救済するべく動き第五席の緻密は盟主と母と共に音色で聖域を染め上げる。

聖域編も残り少なくなってきました。

今回もまたご都合主義満載ですがご容赦を。

聖域に囚われた魂を、解放するべく動くシャドウたち。

果たしてどうなるか

それではどうぞごゆっくり!


ネルソンを倒したシャドウとイータ。聖域の機能の一部を手に入れたイータはベアトリクスが聖域に囚われた魂たちを解放しようとしていることを知り合流したイプシロンも加わり作戦を立てるのであった。

 

ネルソンの残したオリヴィエクローンを倒したアルファたち。

 

消えたネルソンを追いイプシロンが追跡し少し経つ。

 

「イプシロン遅いです!のんびりすぎなのです!」

 

「デルタ、まだイプシロンが追いかけて少ししか経ってないわ。もう少し待ちましょう。」

 

帰ってこないイプシロンをデルタなりに心配しアルファも無理に追撃せず何かあればすぐに戻ってくるようには言ってある。

 

それでも教団の最高幹部が相手なのだ。一筋縄ではいかないことは分かっている。

 

「…アルファ殿。この前の時といい教団は各国の心臓部に巣くっている…そう考えて良いのですね。だから貴女方は秘密裏に動いている…」

 

「えぇ、ミドガルでは主にフェンリル派という派閥が躍動している…この間の襲撃でそちらは力を削いだ。統一される前のベガルタに教団は仲介する形で統一し貴族たちも戦乱極めるベガルタを統一したこともあり邪険に出来ず協力している。

 

そしてオリアナ王国も。」

 

「オリアナも!」

 

「えぇ。詳細は分からないけど何かしらのことが起きてオリアナは教団に逆らえなくなり武力を取り上げられ芸術の国となった。」

 

「そんなことが……!」

 

「そんな強大な権力をもって戦力もあるのが少なくともあと11人もいるなんて…!」

 

「いえ、教団の第十二席は空席になっているわ。下の者たちにチャンスがあると思わせて競わせ戦力を整える…だから残るは」

 

「残るは9人だ。」

 

イプシロンの追っていった方から低い声が聞こえた。

 

それほど大きな声でもないのにやけに響き徐々に靴音が近くなってくる。

 

「シャドウ!!」

 

「ボス~~!」

 

アルファはイプシロンを伴い現れたシャドウに少し驚きデルタはそのままシャドウへと抱き付く。

 

「シャドウもいたのですね…シャドウガーデンが動くなら盟主の貴方も動く…そして先程の言葉は!」

 

「先程ミストと共に討伐した。故に残りは9人だ。」

 

「ミストもいたのね…ってあいついないけど?」

 

肝心のミストもといイータがいないことにアレクシアは疑問に思う。

 

「ミストには重要なことを頼んである。先程のラウンズから聖域の機能の一部を奪った。武神もここに来ているようだ。」

 

(イータが何をしたのか聞きたいけどここで聞くのもね…取り敢えず前の学園襲撃の時は聞けなかったけど今回はちゃんと聞くようにしましょう。)

 

「ネルソン大司教代理も武神様がここに来ていると言っておりましたが彼女は何を…?」

 

「この地に縛られし悪魔憑きたちの魂を解放するべく戦っているのだ。故に少しの助力をする。」

 

シャドウガーデン側では何をしているか把握しているがアイリス、アレクシア、ローズには分からないため簡潔に説明をする。

 

「ねぇシャドウ、アルファは武神様の姪なのよね。」

 

アレクシアの言葉にシャドウはアルファを見るが少しバツが悪い顔でアルファは

 

「伯母様を侮辱されて…その…ね。」

 

「まぁ仕方ない。アルファにとって第二の母でもある彼女を侮辱した方が悪い。」

 

「それは悪魔憑きになってしまって」

 

彼女も家族から捨てられたのかと続けようとした言葉に被せるように

 

「否、悪魔憑きとなっても彼女の母は死ぬその時までアルファを案じていた。流行り病だったそうだ。その後にエルフの里から売られ教団へ移送される寸前であったところを偶々居合わせた我と里から売られたと聞きその足で姪を一週間寝ずに探し回っていた武神とで保護したのだ。」

 

そう言うシャドウ。

 

「素敵なお母さんだったのですね…」

 

「えぇ、母はとても優しい人だったわ。」

 

「ボス、ボス!ここ吹き飛ばすですか!」

 

シリアスな雰囲気を吹き飛ばすようにデルタがそう言う。

 

「デルタ聞いてなかったの?武神様の手助けをするってこと。ここを破壊するのはその後よ。」

 

「そうであったな。」

 

「作戦は?」

 

「この聖域に囚われた者たちは長年縛られ怨念と化し憎悪を募らせている。負の魔力に侵されていると言える。ならばそれを正の魔力で相殺することにより呪縛から解かれるであろう。」

 

「正の魔力ってそんなの聞いたことがないわよ。」

 

波紋を知らないアレクシアへ

 

「極東にある国では陰と陽といった力を駆使する陰陽師と呼ばれる者たちがいる。陰と陽…二律背反、静と動、地と天…そして月と太陽」

 

「もしかしてあの時の太陽みたいな魔力で!」

 

シャドウは最もらしいことを並べ立て波紋のことをそう解釈させるよう誘導した。

 

「王国で起きたマザー殿とは違う爆発は貴方だったのですか…それにしてもそれほどの知識…一体どこで。」

 

「そんなものはどうでも良い。今必要なことはそれをどうこの聖域へ広げるかということだ。その手段を我らは持っている。イプシロン」

 

「ハッ!」

 

「ここは任せる。我は武神のところへ行き手段を伝える。赤い石のように血みどろな聖域を終わらせるために…」

 

そう言いながら立ち去ろうとするシャドウなのだが

 

「所でシャドウ…さっきから気になってたのだけど…どうして貴方はオリヴィエのクローンを背負っているのかしら?」

 

流石にアルファが気になり訊ねた。

 

話している間ずっと背中にオリヴィエを背負ったままだったシャドウ。

 

「先までのクローンには意思がなかった…だがこのオリヴィエだけは違った。恐怖し戦いたくないと言ったのだ。ラウンズの死に際に言ったオリヴィエ自身の魂というのも気になるから保護したのだ。」

 

「だったらミストのところにいた方が…」

 

「そう考えたのだがな。ミストがラウンズに引導を渡した際に……絵面に出来んことをしたのが不味かったからか怯えてしまってな。」

 

「ミストが倒したの!?てっきり貴方が倒したとばかり。」

 

「ミストもそうだが我らは常に止まらず歩み続けている。歩み続けている限りその強さはとどまるところを知らぬ。」

 

そう言い放つシャドウは今度こそその場を去るのであった。

 

「相変わらず不思議な奴ね。」

 

「しかし組織の治める長としての貫禄…カリスマは比べ物にならない程。敵でなくて良かったです。」

 

「それでイプシロン殿でしたよね。いったいシャドウは何を?」

 

とローズが問う間にイプシロンの前にはピアノがあった。

 

「簡単に言えば調律させるのよ。怨念となった者たちにも響くようにね。」

 

「成る程…そう言うことね。確かにそれはイプシロンにしか出来ないこと…」

 

とアルファが言いシャドウが歩いていった先を目を凝らし見て納得した。

 

シャドウたちの考えた作戦。それは波紋による生命エネルギーで聖域内を満たしそれをもって憎悪を調律するということ。

 

その為にスライムを極小の糸へ変化させ聖域の建物へくっ付け、ピアノの音色による振動を乗せた波紋で伝導させる。波紋を聖域の中枢を介してベアトリクスたちのいる場所へ伝達させるべく途中作戦を伝えたオメガとカイたちも聖域を奔走している。

 

「どうしてピアノなの?」

 

最もな疑問を浮かべるアレクシアに

 

「音楽っていうのは心に響くものよ。観客を魅了し心に語り掛ける。人類に絶望しこの世を去った魂たちに安寧を願うための鎮魂歌(レクイエム)を奏でる…それが私に出来る唯一の弔い。」

 

イプシロンはそう言う。

 

各々準備する中で実はイータからのメッセージをシャドウはイナリにだけ伝わるように言っており、イプシロンのピアノへこっそりと地面を伝うようにスライムを伸ばし接続した。

 

(…ご主人様…あれをする気なのですね。であれば私のやることは演奏が終わったあとですね。)

 

とイナリは後ろ手にイータから渡されているあるものを握りしめながらイータの無事を祈るのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ベアトリクスたちは怨霊を相手にしながら何か手がないか探るが一向に纏まらずにいた。

 

「ベア様…残念だけどこれ以上は苦しめるだけだよ。」

 

「師匠、苦しまずに送るしかないわ。」

 

ゼータとクレアはベアトリクスにそう言う。

 

「…」

 

ベアトリクス一人では聖域に囚われた魂を解放することが出来ない…そう実感する…だが彼女は一人ではない。

 

「御待たせしましたベアトリクス様!」

 

「えっ!?テトラさん!どうしてルーナの所の人が」

 

「クレア様それについてはまた後程。」

 

「テトラ何か策があるの?」

 

「はい、リリム様。波紋による調和で相殺させ生命エネルギーを呪いの源にぶつけることで成仏させるとシャドウ、イータ様立案の作戦です。」

 

「もしかしてテトラの持ってるそれと関係がある?」

 

「その通りでございます。波紋だけでなく調和の三重奏で心を震わせ魂へ響くようにと形状記憶スライムを変形させております!弾くのはシャドウ、イプシロン様、ベアトリクス様が好ましいです。」

 

テトラは形状記憶スライムをピアノへしたものを持ちながらそう言う。

 

「そういうこと…なら皆の力を借りましょう。」

 

そうしてピアノの前に行きスライムを椅子に変形させ座るベアトリクス。

 

シャドウも配置に付きオリヴィエは途中合流したカイ、オメガに預ける。

 

イプシロンも緊張しながらもシャドウからの言葉を胸に作曲家で演奏家でもある自分にしか出来ないことをするよう精神統一し波紋を練り上げていく。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そうして…シャドウが最初に音色を弾き始めた。

 

それに合わせイプシロン、ベアトリクスも共に弾いていく。

 

♪~~~~

 

御伽話(フェアリーテイル)はさっき死んだみたい

 

それはディアボロス教団が今まで伏せてきて隠蔽していた真実。それをアイリスたちは知った。

 

煉瓦の病棟でうまく歌えなくて 霧に煙る夜 浮かべ赤い月

 

ほらみて 私を 目を逸らさないで

 

悪魔憑きたちの受けてきた仕打ち。今まで目を逸らし続けてきたそれを武神は目を背けずに助けてきた。それがどんなに困難なことで周りから称賛されることのないことでも…悪魔憑きとなり全てを失った者たちに光を与えた。

 

黒い鉄格子の中で 私は生まれてきたんだ

 

悪意の代償を願え 望むがままにお前に

 

悪意のままに迫害を受け全てを失くした。でも見捨てずにいてくれた人がいた。その人のために自分達が出来ることを

 

さあ与えよう正義を 壊して 壊される前に

 

因果の代償を払い 共に行こう 名前のない怪物

 

悪魔憑きとなり名前のない怪物となった自分たちを拾い上げてくれた…母のような抱擁で寄り添ってくれた人に報いたい。

 

その音色に全てを込めて弾いていき聖域は黄金に躍動する。

 

「なんて…なんて純粋な音色…」

 

「イプシロン殿の音色…シャドウの奏でる音色と武神様の音色を繋ぐよう…」

 

「それでいて…歌詞に込められた言葉…悪魔憑きだった。だからこそ…重みのある言葉になる。それは…この地に囚われた魂もそうです。」

 

ナツメ扮するベータもイプシロンの奏でる音色に引き込まれる。

 

そうして最高潮のままに最後の方へ差し掛かる。

 

黒い雨 降らせこの空 私は望まれないもの

 

ひび割れたノイローゼ 愛す同罪の傍観者達に

 

望む望まない関係なくなかったことにされ、それを見ていただけの傍観者たち。今この瞬間アイリスたちは当事者となった。

 

さあ今ふるえ正義を 消せない傷を抱きしめて

 

この身体を受け入れ 共に行こう 名前のない怪物

 

捨てられ全てに絶望した。でも共に歩もうと手を伸ばしてくれたシャドウとベアトリクスのためにアルファたちは今一度決意する。人が人に優しくできる穏やかな世界を作ろうと

 

聖域で集まる波紋の生命エネルギー。ベアトリクスたちの方にいる怨霊にも響いている。だがまだ足りない…故にもう一曲弾くことにする。

 

それは自分達を象徴とする曲…

 

かつてシャドウは孤高とは孤独な道であると思っていた。誰にも共感されず理解されぬもの。己の力だけで成し遂げる道だと。

 

だがそれは違うと示した者がいた。

 

いつの間にか誇りのためになりたいと勘違いしたそれを彼女は身体を張り踏み外した足を元の道へ…いや漸くスタート地点に立てたのだろう。

 

己の余分なものを削いできたがそれを少しずつ拾い集め形を新たにする。

 

これは一人の道ではなく…仲間と歩む新たな形。

 

影野実には辿り着けずシド・カゲノーだからこそ辿り着いた極致。

 

高揚と共にシャドウは二曲目に更に波紋を込めて弾く。

 

躍動する聖域の中枢でそれを見ているイータはとあるものを握りしめながらベアトリクスたちの方へと波紋のエネルギーを送り続けるのであった。




今回はここまでになります。

アイリスたちに教団の影響力が及ぼしている国を挙げるアルファ。

その中にはオリアナ王国の名前もありローズが驚愕する。
次章で嫌でもそれを痛感してしまうでしょう。

そしてシャドウと邂逅しラウンズを片付けたことを言い、いまだ戦うベアトリクスたちの助力をしにいくことに。

波紋による生命エネルギーというプラスの力で負の力が高まる魔力を打ち消す作戦。

それらを伝えるために形状記憶スライムでのピアノ形態で演奏することに。

糸を伝って波紋を聖域に流し込む作業のため待機していたガーデンメンバーは奔走することに。

名前のない怪物となった悪魔憑きのための演奏。

故にこの選曲になりました。

そうして次回へと続きます。

さてマスターオブガーデンではHIGHEST DREAM2が開幕!

最初に学生デルタが来たので来週の学生イータが来るときまで石を貯めておきたいですね。

そしてFGOでは魔法使いの夜とのコラボが決定!

人間ミサイルランチャーたる魔法使いの登場が待ち遠しいです!

感想、評価、お気に入り登録いつもありがとうございます!感想もらえると意欲も湧くので気軽に貰えると嬉しいです。

次回も遅くならないよう投稿していくので宜しくお願いします。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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聖域に囚われた魂は輪廻へ旅立ちのんびり娘は聖域の尽くを破壊し尽くす。そしてのんびり娘は武神の説教が確定するのであった。

聖域に囚われた魂が旅立ちます。

そして聖域という場所は自然へ還ることに。

最初はリンドブルムでの話が少し出てきます。

それではどうぞごゆっくり!


聖域で奏でられる音響は光となり黄金に輝いている。

 

更に本来秘匿されるべき筈の聖域が

 

「なんだあれは!?」

 

「輝いている…だと!?」

 

「神々しい…」

 

「女神ベアートリクス様の降臨の前触れでは!」

 

と騒ぎになっていた。

 

騒ぎになっているのを確認しているシャドウガーデン構成員たちは外の野次馬たちが聖教へ押し寄せているのを宥めている間に裏工作を図る

 

「そこの証拠は目につく場所へ。それは自然な形で書類に紛れ込ませなさい。違法薬物の代物は成分解析と共に回収してイータ様の私室へ。その書類は整理して後程合流するアルファ様へ渡しなさい。

 

今回のことを嗅ぎ付けてテンプラーが出てくる確率は高いでしょうが暗殺部隊である以上目立ちたくない。この一件は聖教の中でも二分するでしょう。

 

純粋に女神を信仰する教団と関係ない者たちとそうでない者たち。それらを排除すれば」

 

恍惚そうな笑顔で

 

「我らの神が真にこの世界を統治する日が近付かれる!女神ベアートリクスの再誕であるあの方が!慈愛を!無償の愛を!博愛を!真に統治するべくはディアボロス教団などではない…我らガーデンの母なのだから!」

 

その光景にまたかと思いながらも手を止めない他の構成員たち。

 

「ウィクトーリアちゃんそれはあ・と・よ。今は裏工作しないと。じゃないとマザーちゃんに怒られるわよ。」

 

「そうでしたね。ありがとうございますノナ様。」

 

「良いのよ。ウィクトーリアちゃんが頑張り屋なのは皆知っているもの。あっちで頑張ってる子達のためにもおばちゃん頑張るわよ。」

 

559番ことウィクトーリアとアビスメンバーの一人でありベアトリクスと最初期から共に活動している人物であるノナ

 

ウィクトーリアが教団の異端者を排除する暗殺部隊の長から離れベアトリクスの元へ来たとき、先達であり物知りなノナが生まれたときから教団に縛られ世間知らずのウィクトーリアの世話をしたからか懐いている。

 

「さぁってとやることやったら皆で打ち上げよ!色んな料理を用意するってマザーちゃんも言ってわよ。」

 

「!それは何よりの至宝です!皆様やりますよ!」

 

他の者たちと手を動かしながら頑張るウィクトーリアなのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

聖域の中では音色が反響して尚も黄金に輝いている。

 

シャドウが弾き始めた二曲目にイプシロン、ベアトリクスも合わせていく。

 

この全て今賭けて ただ理想に届くまで この手 伸ばして

 

陰の実力者になるために不必要なものは全て削いできた。己の理想のために。

 

目の前に伸びる選択肢

善と悪との歯車は行く ただ一つだけの結末へ

 

目の前に伸びた陰の実力者になるための道へ一人で向かっていく。

 

何もかも偶然のChoice そしてまた次への合図

 

可能性の限界まで その行く先を見つめて

 

前世にはなかった魔力のある世界に生まれ直した偶然。己の限界を超えるために改造してきた身体を。その道筋が見えないままに歩いていた。

 

Only one 他には要らない To the one だけ見据えてたい

 

譲れはしない信念と決意 この胸に秘めて

 

なりたいものがならなければならないものへ変質してしまっていた…だがそれを間違いだと止めてくれ共に歩むと言ってくれた。

 

Highest, highest, I’m going on 真実より真相の 陰を行け

 

Highest, highest, I’ll carry on

是が非でもさあ 望むなら 孤高に貫け

 

世界にはありふれた悪意など星の数だけある。真実など簡単に闇に埋もれる。だからこそ闇に埋もれる真相を光へ還す。残酷な真実でもそれが未来を照らす一つの真相へ繋がると信じ。

 

僕は孤高だが孤独ではない。共に歩む仲間達がいる。望んで目指す道があるのだから

 

波紋を込めたピアノも黄金に輝きそれを傍で見ているカイ、オメガたち。

 

「シャドウ様なんだか生き生きしている気がする。」

 

「死んでしまって未練ある悪魔憑きたちへの手向け。我らだって道が一つ違えばそうなっていたと思うと…な。」

 

ベアトリクスたちの方も怨念となった者たちへ波紋が注がれ悪意にまみれた魂たちが徐々に浄化されている。

 

「暖かい…心に染みる音だわ。」

 

「ベア様の優しさ、主の慈しみ、イプシロンの人を思いやれる心、その三人の演奏なんだ。悪魔憑きのための演奏。」

 

あんなに長いと思われた演奏も後少しとなった。

 

目の前に伸びる選択肢

迷わずに今 歯車は行く 望んだ通りの結末へ

 

陰の実力者になるための道は長く果てしない。だがもう迷いはしない。

 

I’ll keep trying for my belief 例え何が起きようと揺るがない

 

Highest, highest, I’m going on 真実より真相の 陰を行け

 

Highest, highest, I’ll carry on

是が非でもさあ 望むなら 孤高に貫け

 

 

仲間がいる、理解者がいる。それだけで強くあれるのだ。人は一人では生けていけない。生きるとは何かを思いやり日々を一生懸命歩むことだ。

 

それを害するならば僕らはそれを排除しよう。シャドウガーデンのシャドウとしてカゲノー男爵家、シド・カゲノーとして歩む陰の実力者を目指すために。

 

そうして演奏はおわった。

 

光は最高潮に高まり怨念たちを包み込む。

 

「これって…!」

 

「もう大丈夫そうだ。」

 

「助けられずごめんなさい。どうか安らかに…またこの世界に生まれる時は…人が人に優しく出来る世界にする…だから来世があるなら何処かで会いましょう…」

 

ベアトリクス本人が転生したように来世はある。

 

ーありがとう。優しさを暖かさをくれて…さようなら。

 

優しいひとたち…

 

怨念は聖域から解放され空へ旅立った。

 

光へ還り輪廻の道に乗れることを祈りながらベアトリクスたちは祈るのであった。

 

「彼方も終わったみたいね。」

 

「無事に聖域から解放された…」

 

それらを感じたアルファたちも終わりを感じながら感慨に更ける。

 

「教団はどれだけ人の命を弄んだのでしょうか」

 

「これからどうすべきか…なんてもう決まってるわね。」

 

「そうです。ネルソン大司教代理のいない今聖教は混乱しているでしょう。混乱に乗じて監査に入る。そこで証拠を差し押さえなければ。二度とこんなことが起こらないように!」

 

「期待しているわアイリス王女。」

 

「今頃外では少し騒ぎになっているかもしれないわね。」

 

「聖域での光の現象は外に漏れているとしたらそうでしょうね。明日の新聞にも載りそうです。」

 

「アルファ殿提案なのですが」

 

とアイリスが言ったその時

 

「ほにゃ!?」

 

と可愛らしい声が響き渡り全員がそちらを向くとイナリが尻餅を付いていた。

 

「イナリ大丈夫!?」

 

「色々あって疲れているでしょうからイナリちゃんも帰ったら休みましょう。」

 

そう言っているとアルファたちのすぐ傍で再度光が強くなってきた。

 

何倍にも膨れ上がったエネルギーは聖域という大地に眠っていたものを呼び起こした。

 

亀裂が入りそこから

 

「なにこれ!!」

 

「アレクシア王女離れなさい!それに触れたら焼けるじゃ済まないわ!」

 

「ほわわわ!?マグマですぅ~」

 

「マグマって確か火山のやつじゃないの!」

 

「どうして聖域でそんなものが!」

 

「…まさか今までディアボロスの左腕がそれらの活動を妨げていた?それがなくなって更に今の生命エネルギーの奔流で活動が活発化したということなの?」

 

「ともかく脱出しなければ!」

 

「それなら武神様の方も」

 

「今は自分の身だけ考えなさい!」

 

「アルファ様彼方に裂け目が!恐らく出口です!」

 

慌てながらも的確に指示を出しながらアルファたち一行は聖域から脱出をするのであった。

 

その際

 

「がう?なんだがキラキラしてるのです!」

 

イナリの近くにあった何やら砕けた赤い石の破片をデルタが拾うのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

シャドウたちの方も噴火の予兆が近いことを悟りながら脱出し外へ避難していた。

 

「しかしどうしてマグマが?聖域が火山だなんて報告はなかったというのに。」

 

「波紋によるエネルギーが火山を刺激したのだ。我がアトミックで吹き飛ばしても良かったが自然現象の方が何かと都合が良い。女神ベアートリクスの怒りを聖教が買い天罰が下ったとな。」

 

「そこまで考えておられたとは流石です。」

 

「シャドウ様、オリヴィエのクローンはどういたしましょう?」

 

「…ひとまずアレクサンドリアで検査をし…それが済んだらマザーの町へ移す。アレクサンドリアでは訓練とはいえ戦いを見させることだ。戦いたくないと言うのに見させるのはコクだ。それならば様々な種族が暮らすマザーの町の方が心を癒せるだろう。」

 

「承知!」

 

(まぁ波紋によるエネルギーが火山活動を刺激したのは本当だけど普通の波紋ではそこまで出来ない。ならどうするかそれはこの増幅器が関係している。)

 

と懐から取り出したのは…イータが人工的に作り出した代物で不純物を可能な限り取り除いた…人工的なエイジャの赤石であった。

 

(イータがフル稼働させた機械で三日三晩絶えず見張り配合を少しでも間違えればクズ石になってしまう工程で今のイータでも作れたのは10にも満たないけどその威力は絶大だ。ざっと見積もってアトミック1.5発に匹敵するエネルギー量だろう。)

 

ここで一人でそれだけのエネルギー量を放てる規格外にツッコミをいれてはいけない。

 

(僕の方で一つ、中枢のイータが一つ、マザーの方でテトラが一つ、そしてアルファたちの方ではイナリが持っているので計4つ。怨念を浄化しまだ強く残っている波紋をスライムを通じて伝導させ赤石へ照射し地下へと放出。

 

そうして火山は産声を上げた。イナリの持っていたのはそろそろ廃棄を検討していたものだから使ったら壊すようにイータが言っていた。)

 

そうイナリはいつものようにうっかり転んだわけではなかった。接続したスライムに波紋を流し地下へと放出したあとうっかり何かに足を取られたかのように尻餅を付き赤石を壊したのだ。

 

そこまでは良かったがまさかデルタが綺麗だからと拾う予想は出来ていなかったのでそこはやはりうっかり狐であった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ベアトリクスたちの方も火山活動を感じとり聖域の外へと避難していた。

 

「それにしてもいきなりマグマが噴き出すなんて。教団の日頃の行いに自然も怒ってたのかしら?」

 

「波紋によるエネルギーが火山活動を刺激したんだろうけどそこまでのエネルギーは普通波紋にはない筈…」

 

「テトラ、それってイータが作ったの?」

 

「はい。イータ様が今回の聖域での作戦に際し持っているようにと仰られたのです。」

 

そう言いながら赤石を見せるテトラ。

 

「…管理体制は?」

 

「厳重に保管しアレクサンドリアで守っています。」

 

「なら良いわ。イータには後でお説教ね。」

 

と一歩間違えれば大変危険な代物を作ったイータ。

 

ベアトリクスによるお説教が確定。

 

「師匠はあんなことをする奴らと戦ってたのね。資金面とかはもしかしてルーナが?」

 

「そうよ。資金面はルーナ。諜報といった隠密はリリムがイータは発明品で少しでもディアボロス教団により険しい暮らしを強いられている者たちの助けをしているわ。」

 

「師匠、私にも出来ることってある!悪魔憑きになってしまった子達のために私も戦うわ!」

 

「あまり推奨できないわ。いつ命を落とすかも分からないことが多いわ。」

 

「そうかもだけどルーナたちの頑張りを部外者のまま見ていたくないの!ルーナは運動音痴だからなおさら刺客に狙われたら撃退なんて出来ないだろうし。」

 

リリムとテトラは顔を見合わせる。

 

(まぁ知らないからそう思われても仕方ないか。)

 

(普段のガンマ様は波紋を使って身体能力を上げていてもまだ転びますしね。戦闘も自分から動かずに遠距離からの波紋の鞭攻撃とあれも駆使するのと近付いてきたら高い魔力の放出

 

攻撃しても魔力と波紋で強化された防御を貫くにはシャドウ、ベアトリクス様、イータ様といった波紋に詳しく貫通力がなければならない。)

 

原作では最弱と呼ばれたがここではベアトリクスによる強化のお陰でこう称される。

 

城塞のガンマと。

 

城のように、後方で構え仲間の居住となり敵から味方を守る役目はガンマに合っていた。

 

「決意は固いみたいね。なら今度ある場所へ案内するわ。そこで鍛えること。それが条件よ。」

 

「分かったわ!夏休み中だし今すぐにでも行くわ!」

 

「それじゃあ合流ポイントへ行きましょう。私たちの仲間も紹介するわ。」

 

そう言いながらベアトリクスたちは予め決めていたアルファたちとの合流ポイントへ向かうのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして聖域の中枢であった場所。今なお噴き出るマグマにより聖域の全てがマグマの下に埋もれることとなった。例えマグマが冷えたとしても研究施設は全て壊滅し二度と機能しない。

 

「波紋の生命エネルギーによる…火山の活性化…火山の主なメカニズムの解明に役立ちそう…劣化エイジャの赤石の……効果も改めて確認できた…あとはレポートに纏めよう…」

 

「突然地面に石を置いたらこれまた突然マグマが噴き出してビックリの連続だわ。」

 

「ここの機能で…聖域を区切る結界を使って…被害は聖教外の一部にしか出ないようにした…だからリンドブルムの人々は…聖教に天罰が下ったと思う…」

 

「成る程。民衆を使い教団を動きづらくする。その間に不正の証拠を握って周辺諸国へばらまく。」

 

「少なくとも…ミドガル王国は…それで動き始める…そこからは…情報戦になるだろうし…私たちの情報をあちらに渡さないように…立ち回らないと…いけない…」

 

「やること沢山ね。それにしてもとても便利ねそのスライムは。」

 

そう火山のマグマの中にいても何ともないイータと精神体のアウロラとヴィオラ。

 

「元々シャドウが遊び半分に…火山に潜れるか…チャレンジして…何故か成功したから…それを理論にして…纏めておいたのが…項を制した…何が繋がるか…わからない…これも研究の…醍醐味…」

 

昔にシャドウが火山でマシュマロを焼きたいなどと言う戯れ言に付き合いわざわざ火山へ同行したイータ。

 

結果はスライムスーツがマグマにも耐えうることが分かっただけであった。マシュマロは火山へかざしても灰にしかならず灰にならないようスライムで包んで食べたらスライムの味しかせず草臥れ儲けの骨折り損となったのでその後帰ってからベアトリクスのご飯に舌鼓をうった二人。

 

「?お母さんがすごいってこと?」

 

「そういう解釈で良いと思うわ。それでこれからどうするの?」

 

「まずは……うっかり助手狐を回収する…それから宿に帰って……寝てご飯を食べる…」

 

「ご飯!ジュルリ」

 

「私の小さいときってこんなに食い意地が張ってたかしら?まぁいいけど。私の左腕はどうするの?」

 

アウロラはそう訪ねる。

 

「…取り敢えず…スライムに収容しておく…聖剣と一緒に後で…合流する人たちに一度…預ける…つもり…」

 

「そうイータの信用する人なら良いわ。それじゃあその狐ちゃんを回収しに行きましょう。」

 

「漸く長い夜が終わりそうね。」

 

「そうね。私たちにとっては始まりになる朝が来るわ。」

 

そうしてイータはヴィオラを背中に乗せアウロラと共に発信器をを付けといたイナリの元へ行くのであった。

 

こうして、聖域を巡る戦いはシャドウガーデンが勝利することとなった。

 

教団は最大量雫を作れるディアボロスの左腕を喪い、聖域までも失った。

 

雫を作れなければ効力は切れ弱体化を余儀なくされる。

 

大々的な工場の聖域が失われた原因のシャドウガーデンにいよいよ教団も本腰を入れてくるだろう。

 

だがそれでもシャドウガーデンは進む

 

明日を生きるものたちの平穏を陰から守るために!




今回はここまでになります。

聖域での物語が漸く終わりとなりました。

リンドブルムでは559番ことウィクトーリアが他の構成員と共に裏工作しておりました。

元々聖教で聖女として更にカゲマスで判明しているテンプラーという教団の暗殺部隊の長であったので聖教については詳しくどんな場所に証拠を隠すかも熟知しておりました。

原作での狂信者っぷりが再現できてるか不安です。まぁこちらだと制御が幾分か効いてる感じですかね。

そしてアビスナンバーズの一人でギリシャ数字9の名前を名乗るノナが登場。

ベアトリクスと共に最初期から活動する人間で齢40へ突入するだろうベテラン。

実はベアトリクスと出会う前のイータを拾い育てていた人物の一人。

イータもノナに育てられたのもあり里帰りで出会ったら発明品を寄与したり直したりと無償でやる。

世話焼きで他の七陰も何かと世話になったり悩みを聞いてもらうこともしばしば。

ウィクトーリアも世間知らずだった自身に色々なことを教えてくれたのもあり懐いている。

そして聖域に縛られた魂たちは無事に解放され天へ召されました。

余韻に浸っていると聖域からマグマが噴き出してアルファたちは慌てて脱出しシャドウはイータから何をするか聞かされていたためカイ、オメガたちを伴い外へ避難しベアトリクスたちもテトラに誘導され外へ出ていました。

本当ならシャドウがアルファたちへ伝える筈でしたが…単純にシャドウ自身忘れていたという凡ミス。

まぁ無事に出れたので結果オーライということで。

イータが実は赤石を作っていたというまさかの出来事。

それでもジョジョのスーパーエイジャ程純度の高いものではないです。

それでも4つを波紋を使って地下へと放出し火山活動を誘発させられたのは純度の高い波紋だったことも起因でしょう。

イータは聖域の外にあまり被害を出さないために中枢で結界を張り巡らしマグマの影響はスライムスーツでやり過ごしました。

マグマ関連の話はしゃどーがいでん5巻にてシドがマシュマロを火山で焼きたいなどトチ狂ったことを言いやろうとしたことに因んでます。

聖教の施設には被害がありそれでも人的被害は出していないため余計天罰めいたことになったりしてるので後日聖教は大変なことになるでしょう。

次回はアイリスたちとアルファたちの話しとうっかり助手狐を回収にくるのんびり娘になるでしょう。

アルファたちはのんびり娘が娘をとったりやら聖剣やら左腕やらツッコミきれないことが多くのしかかるでしょう。

さてカゲマスも木曜日ぐらいには制服イータが来ると思うのでとても楽しみです。

感想、評価、お気に入りいつもありがとうございます。感想もらえると執筆の励みになります!

次回も遅くならない内に投稿していけるようにします。

今回も読んで頂きありがとうございました!


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聖域の消滅。平穏な明日を求めるために陰の園は次へ向かい王女たちは一致団結しうっかり助手狐はのんびり戦犯娘に引きずられリンドブルムへ帰還する。

聖域の消滅後のお話になります。

まずはアレクシアサイドとイータが合流しつつリンドブルムへと帰還します。

今回イータが色々と暴露することに!

それではどうぞごゆっくり!


無事に聖域を脱出できたアルファたち。

 

途中アイリスをアルファがアレクシアをイプシロンがローズをデルタが背負い駆け抜けることで事なきを得た。

 

ベータは偽装のためある程度実力を知られているイナリに背負われていた。

 

そうしてマグマのエネルギーの噴流を眺めながらも冷静にアルファは分析した。

 

「もしかして…ミストが残ったのはこういうことだった?」

 

「アルファ殿?」

 

「聖域の機能を奪ったのは…シャドウではなくミストでその機能を使って周辺へ被害がでないよう結界を敷いた。」

 

「!だから被害が少ないわけね。それじゃあミストはまだ中に!」

 

アレクシアはもっともなことを言う。

 

「それなら戻らないと!」

 

「必要ないわ。以前火山での耐久テストで問題ない物をミストは仕込んでいるもの。」

 

(あぁあの時のベータの火山でマシュマロってそういう)

 

(思い出させないでくださいイプシロン!)

 

とアイコンタクトで会話する二人。

 

「それよりもう貴女たちも戻った方がいいわ。王国からの監査官も心配するだろうしね。」

 

そう言いながらアルファたちは撤収に入る。

 

「アルファ殿!先程言えなかったことですが!協力関係を結びたいのです!」

 

「姉様!?自分が何を言っているのか分かってますか!」

 

「分かってます。彼女たちが謎の組織なのは…でも彼女らには信念がありそれは人々のためを思い行動しているのです。」

 

「悪いけど王国は信用出来ないわ。貴族関連でも教団の繋がりがゴマンとあるのだから。」

 

「でしたら私アイリス・ミドガルと個人的な協力を結んで頂きたい!」

 

「たかが王女の貴女に何が出来るの?」

 

「確かにそうです…私一人では何も出来ない。今の地位だって元を正せばミスト殿のお陰です。」

 

「そこまで分かっているなら」

 

「でも一人の人間として見過ごすことなんて出来ません!一人でも多くの人を助けるために力を貸して頂きたいのです!」

 

頭を下げるアイリス。

 

「………覚悟はあるみたいね。なら一つだけ。それが出来たら個人的に協力を結びましょう。」

 

「ありがとうございます!」

 

「混乱する聖教に監査に入って証拠を押さえミドガル王国へ持ち帰ること。道中敵に奪われないようにしてちょうだい。」

 

「分かりました!必ず持ち帰ります。この命に変えても。」

 

「重いからそこまではいらないわ。それじゃあまた会いましょう。」

 

そう言いアルファたちは姿を消した。

 

「…行っちゃったわね。ホントいつも唐突に現れては消えて忙しいそうだわ。」

 

「コンコン長い夜でしたね~」

 

「というかイナリ貴女大丈夫なの?あいつ心配してるんじゃ?」

 

「大丈夫です!事情を話せばご主人様も分かってくれます!」

 

「…だと良いけど…(イナリちゃんのさっきの転び方…何か違和感が…気のせい…よね。)」

 

「全くシャドウガーデンは色々知ってるしその割に私たちは彼らから教えられてばっかり……ねぇ私たちで組まない?」

 

「組むとは?」

 

「だって何だか悔しいじゃないの。何も知らないなんて…だから私たちは王女としての権力、作家としての人脈、発明家の助手としての発想力を合わせて共有しましょう!」

 

「私は素晴らしい考えだと思います。」

 

「まぁこれも何かの縁ですし(アルファ様から色々見張るようには言われてるし…)」

 

「良いですね~」

 

アイリス、アレクシアが手を合わせローズとナツメもそこに手を置く。

 

そうしていよいよイナリの番で

 

「何だか秘密を抱えるみたいで楽しいですね~」 

 

「…私に…秘密にするのね……」

 

「はい!ご主人様にも秘密なんてワクワクしますぅ~」

 

「い、イナリ…う、後ろ」

 

とアレクシアが言う。

 

「へ?アレクシア様私を怖がらせようとしても無理ですよ。それこそご主人様ぐらいしか」

 

「呑気に喋って…どれだけ探したと…思ってるのかしら…見つけたと思えば…私に隠し事をしようとしているし…」

 

「わ、わわわわわ」

 

イナリの後ろの迫力にローズは言葉を失う。

 

恐る恐るイナリは振り抜いてみる…すると

 

「イ~~ナ~~~リ~~~!!」

 

とスライムを般若の仮面に変形させたイータが立っていた。

 

「ひゃわ~~~~~~!?ご主人様~~~!?」

 

「何処に行ってたの…このうっかり助手狐…!」

 

「しゅみましぇぇ~~~ん~~~」

 

イナリの頬を両方からつまむイータ。

 

「ちょっ!な、何とかしなさいアンタ!」

 

「無理でしょう!?私もあそこまで怒ったイータは見たことないのよ!」

 

若干口調が崩れるベータ。イータは命じていたことはちゃんとやっていたものの最後に秘密にしようとしたことでイナリに怒っていた。

 

「疲れが溜まってるし……モチモチ肌が台無しじゃないの…!さっさと帰るわよ…!」

 

とイナリを引っ張りリンドブルムへと帰り出そうとするイータ。

 

「ちょっと!いきなり来て何言って!」

 

「イナリは私の家族よ…私の見てない間に…危険な目に合うなんて…容認できるわけ…ないでしょ…」

 

「ウグッ、それは…」

 

イータの言葉に確かにそうだと論破される。

 

「でもご主人様皆さん困ってますし何か力になりたく」

 

「私と危険なこと…どっちが大事なの…?」

 

「それは勿論ご主人様です!」

 

「じゃあ帰るわよ…」

 

そのまま丸め込まれたイナリは元気に返事をしながらイータの後ろを付いていこうとする。

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

「私に用はない…」

 

「こっちにはあるのよ!あんたアルファのこと知ってるわよね。武神様の姪なら娘の貴女が知らないわけないでしょ。」

 

アルファがベアトリクスの姪だったことと以前イナリから聞いたイータが娘だということを誰の目もない今確認しようとするアレクシア。

 

「アレクシア、不確定のことを尋ねるのはイータ殿に失礼ですよ。」

 

(アレクシア王女はイータがベアトリクス様の義娘だということを知っているんでしたか…どうしましょうかね。各なる上は…)

 

「イナリは…知らないけど私は…知ってる…それが?」

 

「「「「え?」」」」

 

まさか素直に知っていると喋るとは思っておらずその場にいた全員が驚く。然り気無くイナリは知らないとあくまでも無関係というスタンスを取る。

 

「ベアト母様から聞いてるし…昔の小さい頃のこととか…あと共に修行した仲だし…彼女には彼女の信念がある…」

 

「アルファがシャドウガーデンだってこともまさか?」

 

「知ってるわよ…むしろ誘われたし…私は私でやることあるって言ったけど…」

 

「ハアッ!?」

 

次々に暴露していくイータに驚くアレクシア。

 

イータはイータでシャドウガーデンに誘われやることがあると言っただけで断ったとも言わなかった。というか自分がその件のミストで幹部の七陰なのだから。

 

流石のこの暴露はベータも予想していなかったもので

 

(何を考えているのイータ!そんな如何にも知ってますなんて言ったら)

 

「じゃあ悪魔憑きを治せるってことも知ってるの!」

 

「…?知ってるも何も…私はベアト母様に……助けられた…悪魔憑きだったし」

 

今度こそ絶句したアレクシア、アイリス、ローズ。

 

ベータはなぜそこまで詳しく言ってしまうのかイータを見ながら考える。

 

「悪魔憑きだったのですか!?ホントに…後遺症などは」

 

「ない…ベアト母様が…悪魔憑きを…治してくれた…その最初が私だった…それから…ベアト母様から…色んな技術を…教わった…私は物心付く前に…両親はいなかったから…母の愛はベアト母様からもらった…

 

ベアト母様の手伝いを出来るように…私は発明家として…皆が穏やかに暮らせるように…発明してる…

 

貴女たちみたいに…興味本位や悔しいからって…わけじゃない…

 

アルファもそう…ベアト母様が昔みたいに…自由に旅を出来るように…頑張ってる…」

 

そう言いながらアレクシアへ近寄り

 

「生半可な強さじゃラウンズはおろか…チルドレン1stにも勝てない…今の貴女たちは良くてチルドレン2ndあたり…」

 

「チルドレンってディアボロスチルドレンってやつよね。ミストが言ってたわ。それでも」

 

「チルドレン1stは力もそうだけど…卑怯、卑劣なことも躊躇いなく…やるわよ…この間の列車の事件もそう…あれだってクレアがいなかったら大惨事になってた…」

 

「あの爆弾魔がチルドレン1st…クレアさんは武神様の弟子だから対等に渡り合えたってことよね。」

 

「それだけ厳しい…修行をしてきてる…ディアボロス教団に関わるなら…せめて魔力制御が…完全に出来るようになってからに……しなさい…指一本に魔力を集中して鉄板を貫けるぐらいに…」

 

「いや指一本でってそんなの出来るわけ」

 

と言った瞬間イータは持っていた金属盤を空中に投げると魔力を指一本に収束させ貫いた。

 

「これぐらい普通に出来る…出来なきゃ…辞めときなさい…無駄死にするだけよ…」

 

そう言いながら去ろうとするイータに

 

「…それなら!力を付けるために鍛えるわ!」

 

「闇雲に…やったって」

 

「確かにそうね。だから貴女に鍛えてもらうわ!」

 

アレクシアは今まで受けた師事の中で一番手応えがあって身近に強いイータを頼ろうとする。

 

「私にメリットがない…」

 

「王女だから許されている禁書の書物を渡すわ!」

 

「それはもう…ミドガル王から見せてもらう…予定…」

 

「えぇ!?」

 

そうリンドブルムへ列車でアレクシアたちを救出に向かった際にミドガル王から報酬で見せてもらうことを約束していたイータ。

 

「私がリンドブルムへ向かうときにお父様がイータ殿へ報酬で見せると言ってました。」

 

「じゃ、じゃあ!王族ゆかりの物とか融通出来るわ!」

 

「…ルーナに言って…そう言うのは融通してもらえる…」

 

「嘘でしょ!?」

 

王族にしかない伝手を駆使してと思うがミツゴシ経由で入手出来るから没になる。

 

「ないならもう行くわ…」

 

何かないかと考えるアレクシア。そこで

 

「な、ならあんたとイナリが学園に来たとき学食とか全部奢るわ!」

 

「アレクシア。いい加減に」

 

流石にそれは無理だろうと思うアイリスだが

 

「じゃあそれで…良いわよ…」

 

「本当に!」

 

「条件として…無闇に動かないこと…動くにしても一言言うこと…守らないならそこまで…」

 

「分かったわ!」

 

そうして条件を付け加えることで本格的にアレクシアを鍛えることになったイータ。

 

(成る程イータの狙いはアレクシア王女が勝手に動かないようにすることでしたか…こちらが情報を持っているならアレクシア王女は確認のためイータを頼る…

 

その動きを牽制しながら私たちへ連絡して鉢合わせないようにする…上手い手ね。)

 

「帰ってから…始めましょう……そうだ…帰るまではこれをしてなさい…」

 

とイータはお手製の筋トレ道具をアレクシアに返事を聞く前に無断で両手両足に装着する。

 

「?これってぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

とアレクシアの両手が地面に沈んだ。更に体も沈むように重くなりうつ伏せの状態になる。

 

「お手軽重力セット…イナリに聞いて…5Gまでは耐えられるって…聞いてるから…今の設定で8にしてある…それに慣れるように……魔力を巡らせなさい…慣れたら今度は調節レバーを…10にするように…帰ってから…ウチに来たらはずしてあげる…」

 

シドに昔頼まれた重力室を簡易的で持ち運び出来るようにした筋トレ魔道具。その効力は王国のイータの地下部屋と同じである。

 

「イータ殿私も出来ればそう言うものを頂けますか?」

 

「良いわよ…アイリス王女は…2から始めて行きましょう…調節レバーで6まで弄れるけど…無闇に弄らないこと…」

 

「いやそれより私の方は重いまま!?」

 

「?…教団相手にするなら…それぐらい…やりなさい……監査の時は切れるようにしとくわ…行くわよイナリ…」

 

「はい!アレクシア様頑張ってください!そういえばご主人様こちらの娘はいったい?」

 

イナリは先程からイータの背中に乗りながら自分をジッと見る小さい子供が気になり尋ねた。

 

「娘よ…」

 

「成る程~!宜しくですぅ~」

 

二つ返事で納得したイナリ。受け入れてくれたのが嬉しいのかヴィオラはキラキラした目で

 

「狐さん…イイ人!」

 

そう言いながら歩き去っていく三人。

 

去っていく背中を見ながらアレクシアは何とか立ち上がろうと魔力を巡らせる。

 

「あの腹黒女!いつか仕返ししてやるんだから!」

 

「まぁアレクシア、強くなれるのなら頑張りましょう。それにしてもイータ殿の背中にいた娘…娘って言ってましたね?」

 

「そういえばさっきシャドウ見たときと状況が同じだったわね…じゃああいつも聖域にいてそこで拾ったってこと!?」

 

シャドウの時と同じように背中に背負いながらそのまま去っていく姿にデジャヴを感じながらも気にしないことにした。

 

「それはまた後日聞きましょう。今は帰りますよ。」

 

(………娘?それにあの魔力は聖域の試練で倒したアウロラのもの…でもイータの魔力とシャドウ様の魔力が混じってたような……帰ったら説明してもらうわよイータ!)

 

「負けてたまるもんですか!!」

 

とアレクシアは魔力を体に張り巡らせそれでも持ち上がらないので足へ集中させることで何とか立つことに成功した。

 

生まれたての小鹿のようにプルプルさせながら歩くアレクシアにベータは

 

「あらあらアレクシア様足が震えてますよ?」

 

「五月蝿いわね!それならあんたもやってみなさいよ!」

 

「私は作家ですからペンより重いものは持てませんので。えい。」

 

震えるアレクシアの足を指でつつくと体勢を崩すアレクシア。

 

「ちょっと!あんた洒落にならないから止めなさい!」

 

(フフフフこれはこれで面白そうですね…重力室での鍛練がお手軽に出来るのは便利です。今度私も作ってもらおうかしら…昔に七陰の皆でで修行した時は200G程で後は自己鍛練でしたし

 

イータも面白いことをします…王女のあられもない姿を取っておけば後々良い揺さぶりに使えそう…となればストレスはっさ…ゴホン、ちょっかいを掛けてみましょう。)

 

そうしてまた立ち上がったアレクシアにそっと近付いて耳元に

 

「…フゥ」

 

息を吹きかけると

 

「ヒャァ!?」

 

と力が抜けたように崩れ落ちるアレクシア。

 

そんなアレクシアにまた近付くと今度は耳元で

 

「どぉしたんですかぁ?まさかぁ、王女ともあろう方がぁ腰を抜かしてしまった…なぁんて言いませんよねぇ」

 

力が抜けるようなささやく声で話し掛ける。

 

「こ、このドS作家めぇぇぇ!!」

 

「…この二人案外相性が良いのでは?」

 

アイリスはアレクシアとナツメのじゃれる姿を見てそう言う。

 

余談だがリンドブルムへ戻るまでに数十回程こんなやり取りをして宿へ戻ったアレクシアは肉体、及び精神的にも疲労困憊でベッドに入り込みベータはホクホク顔で執筆に精を出すのであった。

 

イータと共に歩いて帰っているイナリ。

 

「……………あれ、娘?ご主人様の娘って言いました?」

 

「そう…言ったわよ…」

 

「狐ちゃんもしかしてあんまり深く考えてなかった感じかしら?」

 

今更になってどういうことか理解し始めたイナリ。

 

「ほぇぇぇぇぇ!?ご主人様いつの間にシド様とお子さまを!?帰ったらお赤飯ですぅぅ!!」

 

「シドと…ヤってないわよ…!」

 

「でも魔力を合わせたから実際そんな感じじゃないの?」

 

「お赤飯?美味しいの?」

 

「とても美味しいですよ!おめでたいですぅ!」

 

「イナリは…少し落ち着きなさい…」

 

「感情豊かそうな娘ね。」

 

そうしてイータたちもリンドブルムへ帰る。

 

因みに聖剣やディアボロスの左腕はアレクシアたちに会う前にアルファたちに会えたのでアルファにお土産と聖剣を手渡してイプシロンにディアボロスの左腕を包んだ魔力遮断スライムを渡して魔力操作で中身が漏れ出さないようにと注意を言い処理落ちしているアルファたちをおいてアレクシアたちの方へ行ったのであった。




今回はここまでになります。

アイリスとの個人的な協力関係に前向きなアルファ。

高まる人気に確かな証拠が揃えばそれだけ影響力は大きくなりやがては無視できないものへなることへ期待して結ぼうと考えたアルファ。

漫画、小説の方でもオリアナ王国編後ローズと国家間で教団と戦うための協力を求めていたので一足先にアイリスを味方に付けました。

原作でのアレクシア、ローズ、ナツメの三人の協力関係にアイリスが入りイナリもと思いきやイナリの後ろからスライムを般若に変形させたイータが私怒ってますとばかりにイナリをしかりそのままフェードアウト。

アレクシアはアルファとの関係を聞こうと誰の目もない場所で聞くとあっさりと白状しました。

更に自身が悪魔憑きだったことまで…

イータ的に色々な場所で探られるよりも知っている自身へ聞いた方がアレクシア側からの情報漏洩が防げると判断してのことです。

アレクシアからイータの方が実力者だということは知っているのでその彼女が言う良くてチルドレン2ndという言葉は身に染みている。

以前3rdと交戦したアレクシアからすればイヤ程に。

本格的にイータに鍛えてもらおうと頼み込んだアレクシアは何とか鍛えてもらえることに。

そんな彼女に早速イータは重力を可変させられる便利な筋トレ魔道具を装着させ、アイリスにも装着させることに。

いきなりのこと過ぎてアレクシアは立ち上がれず何とか立ってもベータがイタズラして何度も地面に倒れ込むことに。

耳元での囁きにスゥーっと背中を撫でられたり注意を逸らしたり次第に楽しくなっているベータ。

ASMRで是非聞いてみたい甘い囁き…流石七陰で発育の良い組…

普段強気なアレクシアも押してみれば実は?

ドMなアレクシアとドSなベータ…いやいや流石に…と思いつつありそうな関係。

イータはアレクシアたちに会う前にアルファたちに会いいきなり聖剣を渡されたアルファとディアボロスの左腕を包んだ魔力遮断スライムを渡されたイプシロン。

何が何やら分からない状況でそのまま立ち去ってしまったイータ。

次回はそんなアルファたちとベアトリクスたちとの合流へ焦点を合わせていきます。

なので必然的にデルタ=マナということがクレアに伝わることでしょう。

さてカゲマスではいよいよ制服イータが実装!

性能はどうなのかよりもイータなので是非引き当てたいところ。

お気に入り、感想、評価いつもありがとうございます!

気軽に感想もらえるとやる気が出て執筆も少し速くなると思います。

次回も遅くならない内に投稿していけるようにします!

今回も読んで頂きありがとうございました!


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