横島inハイスクールD×D (雪夏)
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横島inハイスクールD×D その1

連載の息抜き。続くかは未定。タイトルは仮。
あと、本作の横島はYOKOSHIMAとなります。

2015/09/21 ちょこちょこ修正


 

 

 

 

「タダオ様」

 

 突如背後から声をかけられた男が振り返ると、そこにはメイド服に身を包んだ女性が。顔見知りだったのか、男は朗らかに女性に話しかける。

 

「お、グレイフィア。どうした? 次にこっちに来るのは、来週じゃなかったか? あ、とうとうサーゼクスの野郎に愛想を尽かした? じゃ、ミリキャスと一緒にウチに……」

 

「まさか」

 

「そんなすぐ否定せんでも……。で、用件は? オレに会いたかったとか?」

 

 男がメイド服の美女――グレイフィア――に用件を尋ねると、彼女は深々と一礼してから用件を口にするのであった。

 

「サーゼクス・ルシファー様が、タダオ様を屋敷にお招きしたいとのことです」

 

「へ~、アイツの屋敷に招待なんて珍しい。いつもは用があればアイツの方が来るってのに。用件とか聞いてる?」

 

「いいえ。ですが、他の魔王様方もお集まりになるようですから、何かの会議ではないでしょうか」

 

「会議かー。それ、オレが行く意味ある? ほら、サーゼクスたちはアレでも魔王だけど、オレは違うし。そもそも、アイツ等と違ってオレは先祖代々悪魔って訳でもないし」

 

 何とか回避しようと言葉を並べる男だったが、グレイフィアの冷たい視線に次第と口数が減っていく。その後、完全に沈黙するとグレイフィアから視線をそらすのであった。

 

「では、参りましょうか」

 

「……はい」

 

 結局、男はグレイフィアに連れられサーゼクスたちが待つ屋敷へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

「やー、よく来たね。我が友、忠夫」

 

「おー、来てやったぞ。ったく、何が悲しゅうてヤローに会いに来なければならんのだ。どうせお呼ばれするなら、美女からの方がいい」

 

「ハハハ、相変わらずだね。っと、このまま友人として君と語らいたいところだが、その前に用事を済ませてしまうとしよう」

 

「あ~、皆揃ってんだろ? 会議でもすんのか?」

 

「いや、会議はさっき終わったよ。皆も君に会いたがっていたが、私を含め彼らも忙しい身。忠夫に用件を伝える役を賭けた激しいじゃんけん大会に勝利した私に、呪詛の言葉を吐きながら、泣く泣く帰っていったよ」

 

 朗らかに笑いながら語る紅髪の美青年。名をサーゼクス・ルシファー。冥界に君臨する四人の魔王の一人である。

 そして、彼が言う皆とは同じく冥界に君臨する他の三人の魔王たちのことである。

 

「お前らって、本当はオレよりバカなんじゃね?」

 

「ハハハ、真面目な場できちんとやれればいいのさ。で、早速だが本題に移ろうか。あ、今日はウチに泊まってくれ。ミリキャスも喜ぶだろう」

 

「おう、そうだと思ってウチのヤツ等には泊まるって言ってきた。アイツ等、お前んとこだとすんなり許可すんだよな。何でだろ?」

 

(そりゃ、ウチに泊まる時はミリキャスの遊び相手ばかりで、誰かを口説いたり、夜遊びに出かけることがないからね~。それにこっちにはグレイフィアもいるしね)

 

 首をかしげながら呟く男に、内心で答えながらサーゼクスは彼を部屋へと通すのであった。

 

 

 

 

 

「で、何の用なんだ? 会議の内容なんて、オレが知らなくても問題ないだろ?」

 

「大部分はそうかな。だから、今から君に伝えるのは君に関係することだけさ」

 

 そう言うと、サーゼクスは男に箱を差し出す。受け取った男は、それを眺めると目線でサーゼクスに中身を尋ねる。

 

「“悪魔の駒(イーヴィル・ピース)”さ。君はまだ持っていなかっただろ? アジュカによれば、君の素質を考えるとほぼ“変異の駒(ミューテーション・ピース)”になるらしい。うん、流石は常識が通用しない男だね」

 

「お前が言うなっ!! で、“悪魔の駒”を渡す為だけに呼んだのか?」

 

「まさか。それだけだったら、アジュカが直接持っていくさ。で、本題なんだが……そろそろ君にも表舞台に上がってもらおうと思ってね」

 

「はぁ?」

 

 意味が分からないと首を傾げる男に、サーゼクスは真剣な眼で語る。

 

「知っての通り、今の魔王たちは血筋ではなくその実力によって襲名している。ルシファー、ベルゼブブ、レヴィアタン、アスモデウスの四つの名がそうだ」

 

「それくらい知ってるって。だから、お前の子供のミリキャスが継ぐのは実家であるグレモリーなんだろ? あ、その前にリアスちゃんが継ぐのか?」

 

「そこはグレモリーの現当主である父上次第だろう。個人的には、リーアたんにはグレモリーに縛られずに……とは思うけどね。っと、話しを戻すが魔王の名は現在四つ。そして、その全員が“元72柱”の出身だ」

 

「そうだっけ」

 

 首を傾げる男。興味がなくなってきたのか、先程受け取った“悪魔の駒”が入ったケースをイジっている。

 

「まぁ、そう言う訳で我々は思った訳だ。このままでは、血統主義の年寄りたちのような悪魔が増えるのではないかと。これからの冥界は、ますます転生悪魔たちが増えてくる。そんな時に、血統主義は邪魔でしかない」

 

「あ~、それがオレとどう関係があるんだ? オレも分類的には転生悪魔だから気をつけろってことか?」

 

「そうじゃないさ。確かに、君は元人間なのかもしれないが、元人間の悪魔というよりは、君の力を核とした新種の悪魔って感じだね。うん、流石は忠夫だね」

 

 うんうんと頷くサーゼクスに、男は呆れ顔で続きを促す。

 

「で?」

 

「ああ、つまり君には古くからの血統なんてないわけだ。君が始祖になるんだから当然だね。そんな君が、魔王と肩を並べる存在になったら……血統主義なんてのは廃れるとは思わないかい?」

 

「あ~、表舞台云々ってのは、つまり、そういう事?」

 

「そう。そのための“悪魔の駒”さ。君の力を示す為に、レーティングゲームに参加して欲しいんだ。そこで君が活躍すれば、名門出身以外の悪魔たちの希望になるからね。名門なんて関係ないんだって。そして、魔王並だと冥界全体から認められれば、血統主義者たちも廃れる筈さ」

 

「そう簡単に行くか? 仮にオレが活躍したって、何も変わらないんじゃないか?」

 

「かもしれない。でも、今のまま名門ばかりが活躍するよりマシだとは思う。それに、最近のレーティングゲームは上位が固定されてきて、面白くないからね。君がかき回してくれると助かる」

 

「かき回すって……。そもそも、オレが活躍とか出来る訳ないっての。まぁ、レーティングゲームは一対一って訳じゃないから、眷属次第じゃいけるのか?」

 

 男が脳裏に何人かの眷属候補の姿を思い起こしていると、サーゼクスが口を挟む。

 

「そうそう。眷属を集める為に、人間界にいってみるのもいいんじゃないかな。悪魔は神器を持たないしね。ついでに、リーアたんやソーナちゃんたちの様子も見てきて欲しい。大丈夫、拠点はこっちで用意するさ。リーアたんの隣りがいいかい? それとも、ソーナちゃん?」

 

「リアスちゃんの方が会った回数は多いから、そっちがいいかな? まぁ、向こうが覚えてるかは分からんが」

 

「ハハハ、大丈夫。二人とも覚えているよ。君みたいな常識外の生き物のことを忘れる方が難しいからね」

 

 高笑いを続けるサーゼクスに、殺意が湧いてくるが藁人形による呪いが効かないことを知っている男は、あとでグレイフィアにサーゼクスのお宝の在り処を告げ口し、処分してもらうことに決めるのであった。

 

 

 

 

 ようやく高笑いをやめたサーゼクスは、男に向き直ると改めて頼み込むのであった。

 

 

 

 

「頼んだよ。我が親友、横島忠夫。古のアシュタロスの魂を継ぐ者よ」

 

 

「我々の娯楽……もとい、我々悪魔の未来の為に!!」

 

「おい! 今、娯楽って言ったろ!」

 

「ハハハ、何のことかな~。それより、ミリキャスと遊ぶ時間だ! 忠夫行くぞ!」

 

 

 

 




あとがき
続きは未定。横島くん「王」ルートです。
取り敢えず、横島はYOKOSHIMA化しています。つまり、そういう事です。

拙作内では、アスタロト家とアシュタロスは起源を同じくするが別物になっています。

タイトルの(仮)がとれるのか、次回が投稿されるのかは未定。いいネタが出ればって感じですね。


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横島inハイスクールD×D その2

続きました。いいタイトルが思い浮かばない。早速原作崩壊。

2015/09/21 ちょこっと修正


 

 

「やってきました、駒王町ってか」

 

 そう呟くのは、横島忠夫。魔神アシュタロスの魂を継ぐ者と一部で噂される男である。

 

「にゃ~」

 

「早速、リアスちゃんとこに挨拶行くか。確か、駒王学園ってところにいるんだよな~」

 

「にゃ!」

 

「そうだな、白音ちゃんにも会っていこうな」

 

 地図を片手に頭の上に乗せた黒猫と会話しながら歩く彼は、駒王学園へと足を向けるのであった。

 

 

 

 

 

「やってきました、駒王学園! いやー、立派な学園だな。何より、美少女がいっぱいなとこがいい!」

 

「……にゃ」

 

「え? そんな顔してると、警備員呼ばれるって?」

 

 黒猫の指摘に、だらしない顔を引き締める横島。慌てて周囲を見回すが、特に注目を浴びていると言う訳ではなさそうである。

 

「……大丈夫そうだな。さて、リアスちゃんとは暫く会ってないが……きっと、ヴェネラナさんに似た美女に成長しているに違いない! じゃ、早速会いに行きますか!」

 

 握り拳を振り上げ力説する横島に、頭上の黒猫が呆れたように鳴くが本人は全く気にしていないようで、鼻息を荒くしている。悪魔としてこの世界に現れてから、様々な経験を積んでいるとしても、横島は所詮横島と言うことであろう。

 

 

 気合を入れて横島が学園で待っているであろうリアスの元へと一歩を踏み出す。呼び止められることもなく、容易に学園内に入る事が出来た。

 

「何か簡単に入れたな。警備員とかいないのか?」

 

『待て~』

 

「ヤバッ!?」

 

 拍子抜けといった感じで学園内を歩いていた横島だったが、学園内を歩くブルマ姿の女生徒に鼻の下を伸ばしている時に聞こえた声に周囲を見渡す横島。しかし、横島に向かってかけられた声ではなかったようである。

 

『待て~! エロ兵藤~! 性懲りもなく覗きやがって!』

『ちょ、何でオレだけ! 松田と元浜だって……って、いねぇ!!』

 

 どうやら男子生徒が何人かで覗きを行ったらしいが、他のメンバーに裏切られた男子生徒が追いかけられているらしい。

 

「いや~、懐かしいな。オレもよく追いかけられたっけ。これも、青春ってやつだな」

 

「にゃー」

 

「違うって? 男子学生の青春なんてのはそういうものなんだって。ま、猫魈(ねこしょう)のお前には分からんだろうがな」

 

「姉さまにデタラメを教えないでください」

 

 カラカラと笑う横島に、背後から声がかかる。それに驚くこともなく、横島は振り向くと話しかけてきた少女に笑いかける。

 

「デタラメじゃないんだけどな~。ま、いいや。久しぶりだね、白音ちゃん」

 

「にゃ~」

 

「はい、お久しぶりです。忠夫さん。姉さまも」

 

 

 

 

 

 その後、少女に案内され横島たちはリアスがいるオカルト研究部へと向かう。

 

「では、忠夫さんはサーゼクス様の命令で?」

 

「うん、まぁそういう事。リアスちゃんの方にもグレイフィアから連絡あったんじゃないかな。何せ、隣人になるんだし」

 

「にゃ!」

 

「姉さまも一緒なんですか……ところで、何で姉さまはその姿なんですか?」

 

「そりゃ、黒歌は目立つからさ。美人ってだけでも目立つのに、服装がアレだからなぁ。ま、オレだけなら目の保養ってことで構わんが。むしろ、もっとやれ?」

 

「ふにゃ~」

 

 横島の言葉が嬉しかったのか、横島の肩に降り横島の頬に顔を擦り付け甘える猫――黒歌。そんな姉の姿を若干羨ましく思いながらも、少女は案内を続ける。やがて、オカルト研究部の前につくと少女は扉を開く。

 

「ようこそ、オカルト研究部へ」

 

 

 

 部屋の中へと入ると、学園の一室とは思えない空間が広がっていた。

 

「ほー、燭台に絵画にソファーとは……本当に学園かよ」

 

「全部、リアスの趣味ですわ。全く、珍しくリアスがそわそわしているなと思ったら……こう言う訳だったのね。ふふ、あとでお仕置きしないと」

 

「お、おう」

 

 部屋に入るなり、話しかけてきた美女に若干引いてしまう横島。何せ、女性が浮かべていたのは()()()に見た黒い笑みにそっくりだったのである。

 そんな横島に気がついていないのか、女性は朗らかに挨拶をする。

 

「お久しぶりですね、忠夫さん。最後にお会いしたのは、一昨年の夏頃にグレモリー邸でサーゼクス様主催のパーティがあった時でしたね?」

 

「たった三年なの? いや~、すっかり綺麗になって。一瞬、誰か分からなかったよ。……久しぶりだね、朱乃ちゃん」

 

「にゃ!」

 

「黒歌さんもお久しぶりです。さ、こちらへどうぞ。リアスもそろそろ来る頃ですから」

 

 横島の軽口に薄く頬を染めながら、横島をソファーへと促す朱乃。横島が腰掛けると、朱乃がその隣りにすぐに腰掛ける。

 

「それで、何故こちらに? 普段は、サーゼクス様の命で冥界を飛び回っているアナタが来るなんて余程のことだと思いますが」

 

「いや、別に冥界を飛び回ったなんてないけど?」

 

「あら、そうなんですか? この三年、お屋敷を不在にされていたり、パーティーでお見かけにならなかったのは、そのせいだと伺っていたのですが……」

 

「いや、居ない時もあったが、基本は屋敷に居たぞ? パーティーに関しちゃ、そもそもパーティーに呼ばれてないんだが……? 何でだ?」

 

 首を傾げた横島が、白音の膝上に移動していた黒歌に知っているかと問いかける。その視線を受けた黒歌は、関係者しか居ないと言うことで人語で語り始める。

 

「それはリアスたちが人間界に行ったからにゃ。忠夫が来ると、せっかく帰ってきたリアスたちが忠夫に取られてしまう。それが嫌だから、アイツ等はリアスたちに忠夫は居ないって嘘をついてたにゃ」

 

「姉さま……。姉さまも忠夫さんは仕事でいないって、いつも言ってませんでしたか?」

 

「それは、忠夫を取られたくない……もとい、白音を取られたくない姉心がそうさせたにゃ」

 

 ジト目を向けてくる妹に耐えられなくなったのか、黒歌は横島の膝に飛び移ると早口で弁解を始める。

 

「ほ、他にも理由はあるにゃ! 忠夫の存在は、身内とごく一部の人以外には伏せられてた。だから、身内以外がたくさんいるパーティーには出席させないようにと言われてたにゃ。あと、サーゼクスのヤツ等が出るようなパーティーは堅苦しいのが多いから、忠夫に窮屈な思いをさせないようにと言う気遣いにゃ」

 

「確かに、堅苦しいのは嫌いだが……。絶対、美女たちのドレス姿をオレに見せたくなかっただけだぜ?」

 

 あんにゃろうと呟く横島だったが、横に座る朱乃が横島の腕を抱き寄せたことで顔をだらしなく崩す。そんな横島の反応に気を良くしたのか、朱乃は更に力を込め胸を押し付けていく。

 それを止めたのは、扉を開けて部屋へと入ってきた紅髪の美女であった。

 

「あら、朱乃。忠夫を誘惑するのは、あとにしてくれないかしら?」

 

「あら、リアス。遅かったわね。そうそう、良くも私に忠夫さんのことを秘密にしてくれたわね」

 

「そ、それは……ほら、アレよ。サプライズよ、サプライズ。決して、嬉しくて言うのを忘れていた訳じゃないわ。ええ……って、それはいいから離れなさい! ソーナもいるのよ!」

 

 朱乃の言葉に視線を逸らしていた美女――リアス・グレモリー――は、一緒に部屋にやって来た美女――ソーナ・シトリー――を指差し朱乃に告げる。指を差されたソーナは、少し不快そうに眉をひそめたが何事もなかったかのように横島に挨拶する。

 

「お久しぶりです。忠夫。姉が押しかけた際はご迷惑をおかけしました」

 

「ソーナちゃんも美人になったなぁ~。セラたんのことは別に迷惑じゃないよ」

 

「でしたらいいのですが」

 

 横島の言葉に安心したのか、頬を緩めるソーナ。そんなソーナの様子に、横島は内心で奔放な姉に苦労しているんだなぁと同情する。

 そんな横島に、朱乃との言い合いを中断したリアスが話しかける。

 

「ひ、久しぶりね、忠夫。ようこそ、我がオカルト研究部に」

 

「おう、リアスちゃんも久しぶり。いや~、予想通り美人に成長して。うん、絶世の美女ってのはリアスちゃんの為にある言葉やな。勿論、ソーナちゃんと朱乃ちゃんも、リアスちゃんに負けてないぞ」

 

「あ、ありがと」

 

 横島の言葉に照れるリアス。そんなリアスの様子を、付き合いの長い朱乃とソーナは不審に思う。その容姿から褒め言葉を聞きなれているリアスが、横島の言葉でそこまで照れるとは思えなかったのである。

 ソーナがリアスにそのことを尋ねようと口を開いた瞬間、リアスが先に口を開く。

 

「忠夫……いえ、旦那様。不束者ですが、末永く宜しくお願いします」

 

「「「「へ?」」」」

 

 

 

 

 




あとがき

色々、原作無視。小猫ではなく、白音なのは理由がありますが何れ本編で登場すると思います。
 因みに、一誠はまだ純粋な人間です。


 ご意見、ご感想お待ちしております。感想いただけるとモチベーションあがります。


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横島inハイスクールD×D その3

もうタイトルはこのままでいいかな。

2015/09/21 ちょこちょこ修正


 

 

 

 

 

「あ、朱乃? 何で私は正座をしているのかしら……?」

 

 リアスの衝撃の発言から数分後、朱乃に正座をさせられたリアスの発言である。最初は抗議していたリアスも、にこやかに笑いながら告げてくる朱乃には逆らえず大人しく正座をしている。

 もう一人の当事者である横島は、黒歌たちに詰め寄られていたが、横島もリアスの発言に混乱している様子を見せたことから早々に解放されている。

 

「それは、アナタがいきなり忠夫さんに旦那様なんてふざけたことを言ったからよ」

 

「別にふざけてないわ。お兄様が忠夫とパートナーになって、一緒に暮らすようにって……。これって、妻となってサポートしろってことでしょう?」

 

 そのリアスの発言に、リアスに向けられていた視線は一気に横島へと集中する。目は口程に物を言うとはよく言ったもので、横島に向けられた視線のどれもが、どういうことなのか説明しろと雄弁に語っていた。

 そんな視線に晒された横島は、思い当たる節を必死に探るが、何も思い当たらないようで、その旨を正直に一同に伝える。

 

「いや、オレは知らんぞ? 大体、リアスちゃんを溺愛しとるあのシスコン野郎が、オレなんかをリアスちゃんの婿にするなんて冗談でも言うとは思えんのだが。いや、マジで」

 

 横島の発言に、サーゼクスの普段の姿を知る一同は確かにと納得する。そうなると、自然に視線は再びリアスへと向くことになる。その視線は、リアスの言葉を疑っていると雄弁に語っていた。

 その視線を向けられたリアスは、うろたえながらも言葉を紡ぐ。

 

「う、嘘じゃないわよ!? 大体、私はグレイフィアに聞いたのよ?」

 

「私がどうかしましたか? リアス様」

 

「グレイフィア!?」

 

 突如、部屋の入り口からかけられた声に驚いた一同が振り向くと、そこにはメイド服に身を包んだグレイフィアの姿があった。

 

 

 

 

 

 いきなりの登場に驚いた一同であったが、真相を知るであろう人物が登場したことでリアスへの詰問は一時中断となる。

 グレイフィアを迎えた一同は、早速真相を究明しようと質問をし始める。

 

「まず、確認させて頂戴。忠夫が人間界に来たのは、お兄様の差金なのよね? それで、私と一緒に住むことになった。これは間違いないわよね?」

 

「? ええ。その通りですが?」

 

 そうグレイフィアが肯定すると、リアスは喜び、他の面々が肩を落とす。そんな一同を疑問に思いながら、グレイフィアは来訪した目的を果たす為に言葉を紡ぐ。

 

「ちょうど皆様お揃いのようですので、改めて此度のことについて説明させて頂きます」

 

「あ、あのシトリー家の私がいても問題ないのでしょうか?」

 

「構いません。と言うより、ソーナ様も関係者ですから」

 

「私も?」

 

 ソーナが首を傾げるが、それを無視して淡々とグレイフィアは説明する。

 

 

「順を追って説明しますと、まずタダオ様が人間界に来たのはサーゼクス様の頼みを果たす為です。その際の生活拠点をこの駒王町と定め、彼と生活を共にし公私共にサポートする人材としてリアス様とソーナ様が候補として上がりました」

 

「ソーナも?」

 

「ええ。ソーナ様も候補でした。しかし、タダオ様はリアス様を選ばれました。その為、まずリアス様に此処までを説明し、この場所に関係者を集めて頂きました」

 

 横島に選ばれたとの言葉で喜ぶリアスと、選ばれなかったことで落ち込むソーナ。そんな両極端な二人を見た横島は、軽い気持ちで選んだことが自身の思っていたより大事になっていることに驚くと同時に、いつ同居という話になったのかを考えていた。

 

「ここからは、皆様全員に関係することであり、タダオ様も知らないことです。まず、ソーナ様ですが……」

 

「はい、なんでしょうか」

 

「お声に元気がありませんが、具合でも悪いのですか?」

 

「いえ、大丈夫ですので続けてください」

 

「そうですか……では、続けます。ソーナ様に関しては、セラフォルー様の“リアスちゃんだけずるい”との一言でソーナ様もタダオ様たちと同居と言うことになりました」

 

 その言葉に驚く一同。グレイフィアに問いただそうとリアスが口を開くが、グレイフィアに制される。

 

「質問は全て説明した後でお願い致します。続けますが、それならいっそのこと眷属にも希望を聞き、希望者全員で一緒に暮らせばよいとサーゼクス様が提案し、セラフォルー様も了承されました。そのような訳で、お二人はどうされますか?」

 

 既に他のグレモリー眷属は辞退したことも告げるグレイフィア。問いかけられた二人――朱乃と白音――は、考える素振りもみせず了承する。

 

「ふふふ、これでリアスのアドバンテージも消えましたわ。どうやら、サポートと言うのも“妻”としてサポートという訳ではなさそうですし」

 

「これで私も忠夫さんと暮らせる。これまで何度姉さまを羨んだことか……早速、準備を……」

 

「わ、私と忠夫だけの生活が……」

 

 

 

 それぞれ思うところがあるようであるが、そのようなこと関係ないとばかりにグレイフィアは淡々と説明続けていく。

 

「シトリー眷属については、ソーナ様から希望者を確認してください。返答は、明日リアス様にお伝えください」

 

「分かりました。ですが、私の眷属は忠夫とは面識がありませんので、おそらく希望する者はいないかと」

 

「そうですか。では、希望される方がいましたらご連絡ください。いない場合は、結構です。では、次にサーゼクス様とセラフォルー様からリアス様とソーナ様に伝言が……」

 

 グレイフィアから伝言の内容を聞いていくリアスとソーナ。二人とも時折、頭を抱え込んでいることから、いつも通りはっちゃけた内容なのであろう。

 

 そんなやり取りを見ながら、複数の美少女と同棲(同居)することになった横島は、膝の上に白音、頭上に猫の姿の黒歌、隣りには腕を抱き込むように座る朱乃と言う体勢に頬をだらしなく緩ませながら、彼女たちと会話していた。

 

「何か、瞬く間に同居者が増えてくな~。ま、全員美少女だからオレはいいけどさ」

 

「私も美少女ですか?」

 

「当然! 白音ちゃんが美少女じゃなかったら、世界に美少女はいなくなるって。な、黒歌?」

 

「その通りにゃ!」

 

「ありがとうございます……にゃん♪」

 

「私は?」

 

「朱乃ちゃんも綺麗だよ。それに柔らか……んんっ、スタイルもいいし」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 伝言が終わると、横島の体勢を見たリアスが文句を言ってきたが、朱乃とは横島を挟んで反対側に座るとすぐさま腕を抱き込むことで機嫌を直していた。

 

「で、オレは結局どこに住めば?」

 

「新居がまだ建築途中ですので、タダオ様には当分ホテルに滞在していただきます。ああ、内部空間の調整だけですので、あと二日と言ったところでしょうか。荷物の搬送は私がしておきます」

 

「で、その後はサーゼクスの言ったとおりにすりゃいいのか?」

 

「そうなります。サーゼクス様の希望としては、二ヶ月後に一度経過を見たいそうです」

 

「二ヶ月か~。ちょっと短くない? 焦ってやるもんでもないだろうに」

 

「その通りです。サーゼクス様も急がせるつもりはありません。ただ、二ヶ月に一度は冥界に戻ってきて欲しいそうです。それくらいが限度だろうからと」

 

「あ~、何となく理由は分かりました」

 

 横島の脳裏には、人間界に行く前に寄った二人の魔王がサーゼクスに文句を言っている姿が浮かんでいた。

 

(あ~、アジュカのヤツはオレの駒に興味あったみたいだし、セラたんは……セラたんだしなぁ。あと、ミリキャスとも遊ぶ約束してるし)

 

 ミリキャスとの約束を思い出した所でグレイフィアの様子を伺うと、目が会った瞬間に微笑みを向けられる。普段なら、その微笑みに安心するのだが、今の横島には裏を感じさせるものであった。

 

 横島がグレイフィアの微笑みに怯えているとは知らないリアスは、グレイフィアに横島が頼まれたことが何なのかを尋ねる。サポートするにしても、何をサポートすれば分からないのだから当然である。

 

「リアス様とソーナ様には学校生活のサポートをお願い致します。これから、タダオ様は駒王学園(ここ)に生徒として通うことになりますので。あとは、その時々で必要だと思うことをしてください。本当は私がお世話出来ればよかったのですが、サーゼクス様とミリキャス様のお世話がありますので」

 

 あっさりと告げられた言葉に驚愕するリアスたち。何故横島が生徒になる必要があるのかと理由を問うと、これまたあっさりとグレイフィアは答える。

 

「リアス様たちと学園内で接触しやすくする為です。教師では自由になる時間が少ないですし、何よりタダオ様に教師をさせるのは一般の生徒たちが可哀想ですから。それに、下手に空き時間を作るとすぐに覗きをしようとしますからね」

 

 その言葉に、それなら仕方がないと納得する一同。今度は、どの学年に転入するかをグレイフィアに確認している。

 そんな中、横島はゆっくりと自身を指差しポツリと呟くのであった。

 

 

「え、オレ学生やんの?」

 

 

 




 続きました。
 取り敢えず、横島が羨ましいことに。必然的に、原作一誠の羨ましい展開はなくなります。


 ご意見、ご感想お待ちしております。感想いただけるとモチベーションあがります。


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横島inハイスクールD×D その4

横島眷属はまだ悩み中。



 

 

 

 

「では、タダオ様は二学年に編入という事でよろしいですね?」

 

 協議の結果、横島が編入する学年は二学年と決定した。これには、リアス、ソーナ、朱乃、白音が自分のクラス(学年)に編入すべきだと主張した結果、二学年なら不公平とならないだろうと言うグレイフィアの一言によるものである。

 

「二年に編入するのなら、木場様と同じクラスの方が都合が良いでしょうか?」

 

「あ~、祐斗か~。アイツ、イケメンだからな~。モテモテくんと一緒のクラスはちょっと……」

 

「それでしたら、違うクラスにしましょう。編入の時期は……そうですね、二週間後くらいで如何でしょうか? まずは、こっちの暮らしに慣れて頂かなければいけませんし」

 

「学生か~。ま、是が非にでも卒業しなきゃいけないって訳じゃないし、勉強は適当にやるとして……荷物は新しい家が完成してからでいいか。そういや、お前はどうすんだ? オレと一緒に学生やるか?」

 

「お断りにゃ!」

 

 横島の問いかけに即座に首を横に振る黒歌。そんな黒歌にグレイフィアが教師はどうかと尋ねるが、それもすぐに断る。彼女は学園生活には興味がない為、横島が学園にいる間は昼寝などをして過ごすつもりであった。

 

「まぁ、アタシのことはいいにゃ。それより、あの娘たちはどうするにゃ? 新居にリアスたちも住むなら、二人くらいこっちに呼んだ方が良くないかにゃ?」

 

「まぁ、そうだな。でも、あの娘たちは人界には来たくないんじゃないか? こっちに来る時だって、屋敷の管理があるからって着いて来なかったし」

 

「それなら心配いらないにゃ。忠夫には言っていなかったけど、あの娘たちは一ヶ月単位で交代でこっちに来る予定だったのにゃ。何でも屋敷では中々忠夫の世話を一人で出来ないから、一ヶ月交代でそれを満喫することに決めたと言っていたにゃ。だから、別に人界が嫌と言う訳ではにゃいし、それにあの娘たちは忠夫が必要としていると言えば、例え人界が嫌だったとしてもすぐに来ると思うにゃ」

 

 黒歌の言葉に安心した横島だったが、急な呼び出しに本当に応じるのだろうかと心配しているようである。

 

「ご心配には及びません。あの娘たちには人手がいることは既に連絡済みです。今頃は、全員で荷造りをしている筈ですので、タダオ様が心配されている事態にはなりませんよ」

 

「あ、全員こっち来るんだ……」

 

「ええ。冥界の屋敷の管理の問題はありますが、これから眷属が増えれば同居人が増えるでしょうし、向こうの屋敷は交代で管理すればいいので。ひとまず全員で来るようにと伝えました」

 

 グレイフィアの言葉に納得する横島。元々、反対することでもないので、あっさりとしたものである。

 

「あの娘たちには、新居やその他色々について説明しておきたいので二日程お借りしますが構いませんか?」

 

「ああ、いいっすよ」

 

「ありがとうございます。新居に移れるようになるまでは、こちらで用意したホテルにご宿泊ください」

 

 そう言うと、横島にホテルについて書かれた紙を渡すグレイフィア。彼女は、大人しく話を聞いていたリアスたちに向き直ると、今後の予定について話を始める。

 

「リアス様たちは新居に持っていく荷物を整理しておいてください。新居となる屋敷が完成した後、順次連絡しますので。基本的には、当面の衣服や身の回りの物でしょうか。家具については備え付けのものがありますので。家具が気に入らない、もしくは私物を持ち込みたい場合は先程お渡ししたリストに記入しておいてください」

 

 グレイフィアの言葉に心此処にあらずと言う様子で頷くリアスたち。彼女たちの内心は、既に同居生活及び学園生活のことでいっぱいのようである。

 

(忠夫と一つ屋根の下……朱乃たちもいるし、楽しくなりそうね)

 

(リアスと黒歌さんが手ごわいですが、このチャンスを活かせば……)

 

(姉さまも一緒……忠夫さんの膝は渡さない)

 

(忠夫と一つ屋根の下……バレないように気を付けないと)

 

 

 

 

 

「それでは、私はこれからあの娘たちと合流しますが、皆様は解散なさって結構です。それとタダオ様……」

 

「うん?」

 

「来週のことですが、色々と立て込んでいますので二ヶ月後冥界に戻られた時という事で……」

 

「おう、分かった」

 

「それでは、失礼します」

 

 そう告げると一礼しグレイフィアは、転移していく。それを黙って見送ったリアスたちであったが、グレイフィアと横島のやり取りが気になり、そのことについて尋ねるのであった。

 

「来週がどうとかって、何の話?」

 

「あー、リアスちゃんたちは知らなかったけ? グレイフィアに定期的に世話になってるんだよ。あの娘たちの教育とか、屋敷の掃除とかさ」

 

 リアスたちに答える横島。その視線は右往左往しており落ち着かない。明らかに何かを隠してますと分かる横島の態度に、追求すべきかと口を開こうとしたその時、部室の扉が開く。

 扉を開いたのは、木場祐斗。リアス・グレモリーの眷属にして騎士(ナイト)の駒を持つ剣士であった。

 

「お、祐斗じゃねーか」

 

「あれ、忠夫さん来てたんですか? それに、会長まで……一体、何をしていたんですか?」

 

 事情が飲み込めない木場に、横島は逃げ道を見つけたとばかりに事情を説明していく。その様子にこれ以上の追求は不可能と判断したリアスたちは、横島の無茶苦茶な説明に混乱する木場に、一から事情を説明していくのであった。

 

 

 

 

 木場への説明が一段落すると、ソーナは眷属たちに一応同居について聞く為に退出する。その際、新入りの眷属の顔合わせについても約束していく。

 

「ソーナも着々と眷属を集めているわね。若手悪魔の会合も近いし、私も眷属を増やさないと……」

 

「リアスちゃんは兵士(ポーン)がまだ全然いないんだっけ?」

 

「ええ。状況次第では最強の駒になり得るだけに、慎重にって考えていたから」

 

「そうですね。兵士の駒は全部で8個。最大8人の兵士を揃えるか、複数の駒を消費して2人から3人の精鋭を揃えるか。悩みどころですね」

 

 朱乃の言葉に、そう言う考え方もあるのかと関心する横島。レーティングゲームに参加することは決まっているが、どのように眷属を集めるかばかりに気がいって、駒の特性や戦略についてまで考えていなかったのである。

 

(よく考えれば、オレってレーティングゲームを見たこともないし、暫くはリアスちゃんやソーナちゃんの眷属集めを見学してた方がいいか?)

 

 そんな横島の内心など知らず、リアスたちは今後の眷属について語り合う。

 

「私としては、そろそろ男性の眷属を増やすべきかと」

 

「同性の眷属がいた方が僕も助かりますね。個人的には、もう一つの騎士の駒が埋まれば鍛錬もしやすくなりますし、連携の練習も出来ていいとは思います。兵士は、そう都合よく何個も駒を消費するような人を眷属に出来るとも限らないので、焦らず流れに任せるのがいいのでは?」

 

「……男の子が増えると、木場先輩も楽だと思います」

 

「……白音と朱乃は、本音を隠してない? 例えば……ライバルが…「「いいえ」」…なら、いいわ」

 

 リアスの言葉を食い気味に否定する二人。リアスも内心ライバルが増えることを憂慮している部分があるので、二人を深く追求することはしない。……一応、意見は述べていることだし。

 

「まぁ、祐斗の言う通り焦らずいきましょうか。その内、兵士を8個消費するような拾い物に出会えるかもしれないしね」

 

「それは流石にないわよ、リアス」

 

「そうですよ、部長。それこそ、神滅具《ロンギヌス》持ちとかになっちゃいますよ」

 

「そうね、流石に8個全部はないわね」

 

 

 

 ……彼女たちは後に知ることとなる。自分たちがフラグを立てていたのだと。

 

 

 

 




 続きました。
 あの娘たちについては、メイド3人組とだけ明かしておきます。今後出てこない可能性もありますが、横島は家のことは彼女たちに任せています。

 リアスが兵士の駒を使用しいていない理由。
 これらは作中設定です。

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横島inハイスクールD×D その5

原作売ってしまった。あと、短いです。


 

 

 結局、ソーナの眷属たちに関しては、女性陣が男と同居と言う点で難色を示した為、ソーナのみの入居となった。ちなみに男性眷属である少年はまだ眷属になって間もないので話すら回ってこず、狼男の方は自分から辞退している。

 ソーナの相談役として彼女の女王が入居するという話もあったが、リアスと言う相談相手がいることから不要とソーナに告げられ辞退していた。

 

 そこからの二週間はあっと言う間に過ぎていった。

 

 最初の一週間は新居への入居などで慌しく過ぎていった。横島と黒歌以外は学校がある為、持ち込む荷物の整理等に時間を取られていたからである。入居は、横島の侍女三人とグレイフィアが主導しリアスとソーナから順番に入居していったのだが、部屋割りについては事前に話し合いが行われた。

 その際、横島の部屋の隣室をどちらにするかで多少揉めごとがあった。右隣は何故かグレイフィアの部屋として押さえられていた為、残る一部屋――左隣の部屋――をばば抜きで決定するという壮絶な戦いがあったりしたのだが特に語ることではないだろう。ちなみに勝者はリアスである。

 また、同居する上でのルールを決めたりもした。大半は学生寮などで制定されている食事や風呂の時間、ごみだし等のルールであったが、そこは悪魔。夜間の外出、門限はない。その他として、横島にのみ知らされていないルールも存在するが、それは追々明らかとなるだろう。

 

 残る一週間は横島の転入準備に追われた。

 

 何せ横島が最後に学校に通っていたのは遥か昔のことでなのである。基礎知識を思い出すのに()を使い、当時と違うところについてはリアスたちに教わったりしていた。もともと勉強嫌いなところがあった横島だったが、美女、美少女に囲まれての勉強は彼の学習意欲を向上させることに成功し、わずか三日で駒王学園の平均程度の学力を身に着けることに成功するのであった。

 残りの四日間、リアスたちは各々自由に過ごしていたが横島には食事時以外会う事はなかった。これは横島が制服の採寸や日常品の買出し等に時間を割かれていたからである。当初、これにもリアスたちは付き合う気満々であったが、学校に通っている間に行うと言われては断念せざるをえなかった。

 

 そして、今日。ようやく横島は全ての準備を終えたのである。

 

 

 

「それで、忠夫が転入するクラスはどこなの?」

 

「えっと、Bだな。2-B」

 

 リビングでリアスの問いに答える横島。その膝には、当然のように白音が座っている。すると、リアスとチェスで勝負していたソーナが口を開く。

 

「2-Bですか。私の眷属はいませんね」

 

「当然、私の眷属もね。祐斗とは違うクラスにしたのだから当然だけど、ソーナのところもいないとなると忠夫のフォローが出来ないわね」

 

「気にしなくていいって。久しぶりの学校生活を楽しむからさ」

 

 気楽に言う横島に対し、どうしたものかと頭を悩ます二人。授業面でのフォローは、これまでの勉強の結果を見るに不要だろうが、生活面に関しては心配でしかない。横島の性格上男子と喧嘩になることはないだろうが、女子生徒に対しては信用できない。嫌われるのならまだいいが、ライバルを増やすのだけはやめて欲しいとその場にいる全員が思うのであった。

 

「取り合えず、困ったことが会ったら オカルト研究部(ウチ)か生徒会室に来なさい。忠夫のサポートが私たちの任務なんだから」

 

「了解っと。そういや、ソーナちゃんのとこの眷属って何組なの? 祐斗はCだろ?」

 

「匙という最近眷属にした男の子がG組ですね。他は教えません」

 

「何で!?」

 

 ソーナの言葉に突っ込みをいれるも無視された横島は、膝上の白音を抱きしめながら、いじける。嬉しそうな白音ではあるが、リアスたちの視線が怖いのか冷や汗がとまらない。それでも退く気はないようで、背後から回された横島の腕に手を添えて満足そうである。

 しばらく白音を見つめていたリアスであったが、先のソーナの言葉を思い出し眷属の顔合わせを何時にするか問いかける。

 

「そういえば、新しい眷属というのがその匙って男の子?」

 

「ええ。もう一人紹介していない子で、仁村留流子という子もいます。どちらも今年から悪魔になった子ですね」

 

「そう。私の眷属で顔合わせしてないのは、ギャスパーだけ?」

 

「そうですね。まぁ、現状ではどうしようもないことですが」

 

「あの子ってまだ制御できてないのか?」

 

 横島の脳裏に浮かんだのは、段ボールに入った吸血鬼の姿。直接会った回数は少ないが、かなりインパクトのある姿だったのでよく覚えていた。

 

「ええ。そういえば、ヴァレリーはどうしているの? あの子の意識が戻らないのも影響していると思うのよ」

 

「あ~。ごめん」

 

 横島の謝罪に首を傾げる一同。リアスが何に対しての謝罪なのか確認しようとすると、先に横島が答える。

 

「あの子――ヴァレリーの意識はとっくに戻ってる。今は、うちで漫画読んでるんじゃないかな」

 

 

 

 

 




 引越しの際に原作売ってしまっていたので、確認が思うように行きません。
 友達もいないし。あ、原作持っている友達がって意味ですよ?(必死)

 ところで、一誠たちのクラスってどこか分かります?
 取り合えず、一誠、横島(2-B)、木場(2-C)、匙(2-G)としています。他のシトリー眷属は考えてません。

 一誠たちのクラス。匙と留流子の眷属入りの時期。ギャスパー、ヴァレリー関連。
 これらは作中設定です。

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横島inハイスクールD×D その6

原作が近づいてきました。
そして、どうしてこうなった。


 

 

 

 

「ヴァレリーの意識が戻らなかったのは、神器を抜かれたからだ。それでも生きていたのは、神器が三つで一つっていう亜種だったから。ここまでは知ってるよな?」

 

 リアスたちに問い詰められ、ヴァレリーについて説明する横島。始める前に、ギャスパーを無駄に悲しませていたとして、白音にわき腹に一発貰い痙攣してたりしたが、今は関係ないことだろう。

 

「ええ。そこで忠夫が抜かれた神器の一つを取り返して、あの娘に。でも、三つ揃っていないから意識は戻らなかった。それでギャスパーひどく落ち込んだもの」

 

「で、考えたわけだ。あの娘の神器は聖杯。なら、かつて砕けた聖杯の欠片を使えばってな。探すのに時間はかかったが、結果は成功。ただ、目覚めたばかりだからオレの屋敷でリハビリ中。精神の方もようやく安定してきたって感じだな」

 

 実際は、横島の切り札の一つ文珠で神器の一つを『複』『製』したものである。最も、長い時を経た横島でも神器の複製は完璧ではなく、ヴァレリーの神器が神滅具ということもあり、未使用の状態でひと月が限界であった。その為、定期的に横島がヴァレリーに文珠を使用する必要がある。また、複製した神器は使用すると、効果の発動と同時に消え去る為、ヴァレリーの神器は使用に著しく制限が課された状態である。

 そのことが逆にヴァレリーの精神を安定させているのだから、物事は予測できないものである。

 

「と言うわけで、当分は屋敷から出すわけにはいかないけど、意識は戻ったというわけだ」

 

 横島の説明に考え込む一同。すぐに教えてくれなかったのには腹が立つが、横島のした苦労を思えば安易に怒ったのは間違いだったのではないだろうかと思うと同時に、精神が安定してきたばかりの彼女のことをギャスパーに知らせたものだろうかと悩む。

 ハーフで親交があったとは言えギャスパーは吸血鬼なのである。彼女が同族である吸血鬼にされたことを思えば、精神が安定した来たばかりの彼女にギャスパーを会わせるのはまだ早いのではないだろうか。会う事が出来ないのに、ギャスパーに意識が戻ったと知らせるのは酷ではないか。そういう考えが頭にあるのである。

 

 そんな彼女たちの悩みなんて知りませんとばかりに、横島は問いかける。

 

「で、早く知らせんでいいのか?」

 

「ギャスパーは今、封印されているのよ? 知らせたところで会いにいけないんじゃ、可哀想じゃない。それに伝えても、信じてくれないかもしれないし」

 

 リアスの言うとおり、ギャスパーに伝えたとしてもヴァレリー本人と会えないのでは、最初は信じても次第に会えないのは本当は意識が戻っていないからではと思い込まれる可能性もある。今そういったことを心配しても仕方がないのだが、双方が会えるようになるまで黙っておくことにしたようである。

 ギャスパーの場合、封印解除の条件の一つがリアス次第な所がある為、二人を再会させる為に一層の努力を誓うリアスであった。

 

 

 

 

 ギャスパーに対する方針が決まった翌日。横島は駒王学園高等部の二年B組の扉の前に立っていた。編入生として、紹介されるのをまっているのである。

 

「あー、やっべー。緊張してきた。黒歌のやつはいいよなー。オレたちが出るまで寝てたし」

 

 黒歌の自由さを改めて羨む横島だったが、クラス担任の入室を促す声に従い教室へと足を踏み入れるのであった。

 

 

 

 

 編入生を迎え入れたクラスは、静かであった。それに対し、美少女じゃないんだしこんなものかと横島は思ったが、大半の生徒は横島の額に注目していた。

 

(バンダナ……? 制服に?)

 

 どうやら、制服にバンダナと言う組み合わせに注目しているようである。そんな中、違うところに注目している女生徒が一人。彼女の名前は桐生藍華。眼鏡を通して男性のアレを数値化できるという謎の能力を持つ人物である。

 

(な、何アレ……。通常時で、あのサイズだと言うの……?)

 

 そんな注目を浴びているとは知らない横島は教室を見回す。クラスに知り合いはいないが、駒王学園に初めて来たときに青春していた男子生徒三名と、それを咎めていた女子生徒が数人いた。あっちの男たちと仲良くなれば、覗きに誘ってくれるかなと考えた所で、自己紹介を始める。

 

「初めまして、大阪からやって来た横島忠夫です。好きな食べ物はハンバーグ、嫌いな食べ物はたまねぎとヤモリです。宜しくお願いします」

 

 教師と生徒たちにヤモリ……? と疑問を与えながらも、自己紹介を終える横島。その後、質問タイムに移るのかと身構えていた横島だったが、そんなことはなく一番後ろの席に座らされ、HRが終了する。

 何処か拍子抜けしていた横島だったが、HRの終了と同時に生徒たちが押し寄せてくる。

 

「オレは松田。なぁ、お前は何処が好きなんだ? 胸か? 脚か? 尻か?」

 

「オレ、元浜。そっちがイッセーな。イッセーは極度の胸派なんだが……」

 

「お前は人の性癖をばらしてんじゃねぇ! 大体、お前はどうなんだよ!」

 

 席が近い三人が真っ先に質問してきたが、すぐに話題がそれて仲間内で変態会話をしていく。それを若いなぁと思いながら見ていた横島だったが、他の生徒に話しかけられる。

 

「大丈夫?」

 

「何が?」

 

「いや……あの変態男子のノリについていけなかったのかなって」

 

 どうやら黙ったままの横島に、三人組みのノリの引いていたのだと認識されたようである。

 

「いや、そんなことはないぞ? ただ、若いなぁって」

 

「あんたも十分若いって。まぁ、それだけのものを持ってれば、そんな風にもなるかもね。間違いなく横島が学年……いや、学園ナンバーワンだよ」

 

 その言葉にクラスの空気が固まる。それを不思議に思った横島が周囲を見回すと、女子はうっすらとほほを染め、男子は落ち込んだり驚愕したりと様々である。

 一体どうしたのだろうかと考えていた横島の元に先ほどの三人組みが戻ってくる。

 

「「「兄貴と呼ばせてくだせぇ!!」」」

 

「は?」

 

 かつてのクラスメイトたち並に濃いかもしれない。横島はそう思うと同時に、今の自分がこのノリについていけるのか若干心配になるのであった。

 

 

 

 




 横島が兄貴になりました。どうしてこうなった。

 一誠たちのクラス。ギャスパー、ヴァレリー関連。聖杯の欠片。
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横島inハイスクールD×D その7

原作さんいらっしゃい。


 

 

 

 

 横島が編入して数日。順調に学生生活を送っていた横島だったが、中でも一番仲が良くなったのが変態三人組みだった。席も近く、彼らの変態性に理解があり、悪ノリが通じるとなればそれは当然の帰結ともいえた。

 その代償として、数名の女生徒からは距離を置かれることとなったが、桐生藍華を含む大半の女生徒はノリが良い横島を好意的に受け入れていた。時折、変態共と話しては大盛り上がりしている姿も、関西人のノリ故と見なされているらしい。

 

 そんな横島たちが放課後の剣道場で何をしているのかと言えば、松田が見つけた剣道場の小さな穴から覗きを敢行しようとしているところであった。

 

「兄貴、こっちですぜ」

 

「いいのか?」

 

「同じ男じゃないですか。編入祝いと言うことで受け取ってください」

 

「いや、何か間違ってないか? って、オレにも見せろ!」

 

 兵藤一誠。編入祝いが覗きということに、疑問を抱いた少年はこれから先、自身に波乱の人生が待っているとは思いもせず、ただ欲望の赴くままに叫ぶのであった。

 

 

 

「あー、酷い目にあった。っていうか、横島は逃げ足速すぎだろ」

 

「はっはっは、あの程度の連中から逃げるなど楽勝、楽勝。この横島忠夫が覗きで培った逃走術を舐めるなよ?」

 

「流石は兄貴!」

 

「褒めるとこか……? いや、逃走術は教えて欲しいけどさ」

 

 横島の言葉に何やら感動している松田たちに、少々呆れた目を向ける一誠。一誠の声で覗きがバレた彼らは、旧校舎付近の草陰に隠れていた。逃走の際は横島が先導した為、誰もつかまることなく逃走することに成功したのである。

 そんな中、一誠がふと旧校舎を見上げると、開いた窓からリアスがこちらを見ていることに気づく。彼女は、一誠たちに微笑むと部屋の中へと姿を消すのであった。

 

「今、オレに微笑んだぞ! 脈アリか?」

 

「ないない」

 

「いいよなー、あの赤い髪」

 

「リアス・グレモリー。三年生、スリーサイズは99-58-90。北欧出身って噂だな」

 

「へー」

 

 元浜の言葉に感心する横島。一誠たちはリアスのスタイルについて、感嘆の声をあげたのだと判断していたが、実際は元浜の観察力に感心していたのである。

 

(中々良い目を持っているな。少しの誤差もなくリアスちゃんのスリーサイズを当てるとは……くぅー、いい体になったよな、本当)

 

 

 

 横島たちが盛り上がっている中、リアスは部室の中で朱乃と散歩していた黒歌と紅茶を飲んでいた。

 

「忠夫ったら、覗きをしていたみたいよ?」

 

「あらあら、これはお仕置きですかね?」

 

「実際に手を出したわけじゃないんだから、放っておいていいんじゃないかしら」

 

「それもそうですね」

 

 一般の人間とは倫理観が違う悪魔だからなのか、横島の行為をスルーするリアスたち。

 

「ところで、忠夫と一緒にいた坊主……」

 

「ええ。忠夫が言うとおりでしょうね。まだ目覚めてはいないようだけど、神器を持っているわね」

 

 横島と一緒にいた男子生徒を思い浮かべながら答えるリアス。リアスには神器を持っている可能性しか分からなかったが、横島が言うのだから間違いはないだろう。リアスの言葉に同意した朱乃が、リアスに問いかける。

 

「では、勧誘しますか?」

 

「そうね。取りあえず、仕込みくらいはしましょうか。全ては彼の気持ち次第。ただ、本音を言えば兵士になってくれると助かるわね」

 

「ま、あの坊主は欲深そうだから、勧誘は簡単そうにゃ」

 

 その言葉に同意するリアスと朱乃。彼らと面識はないが、噂はよく耳にしていたからである。

 

「男って、何でああなのかしら?」

 

「忠夫さんもスケベですしね」

 

「あれでも落ち着いた方らしいわよ? 昔は命懸けで覗きしていたそうだし」

 

 グレイフィアを覗いたときは大変だったと、サーゼクスから聞いた話を思い浮かべるリアス。その頃に比べれば、今日の覗きなど横島にとっては、子供の遊戯に付き合った程度の気分なのかもしれない。そう考えると、覗かれた女子には悪いが目くじらを立てることでもないような気がするリアスであった。

 

 

 

 横島たちが覗きを敢行した翌日。2-Bの教室は騒然となる。

 

「イッセーに彼女が出来た!?」

 

「この裏切り者め! 写真見せろ!」

 

「同じ年らしいわよ? 脅迫かしら……?」

 

 そう、変態三人組みの一人、兵藤一誠に彼女が出来たのである。一誠と仲の良い男子は真実かどうか罪を犯していないかを尋問し、遠巻きに眺める女子は物好きがいたものだと囁いたり、警察に通報するかを検討していた。

 そんな中、横島が教室へと入ってくる。

 

「おはよーって、何じゃこの騒ぎは!?」

 

「ああ、兵藤に彼女が出来たらしいわ」

 

「へー。そりゃ良かったな」

 

 戸惑う横島に藍華が一誠の件を伝えると、藍華の予想とは違い冷静に受け止める横島。昔の横島ならともかく、現在進行形で複数の美女、美少女に囲まれた生活を送っている横島にとって、友達に彼女が一人出来たくらいでは嫉妬の対象にはならないのである。

 それを余裕と受け取った藍華は、横島の耳元でこっそり囁く。

 

「グレモリー先輩、屋上」

 

 その言葉にびくっと反応する横島。その反応を見た藍華は、次々と名前を挙げて行く。

 

「姫島先輩」

「支取先輩」

「一年の塔城ちゃん」

 

 だらだらと汗を流す横島に、藍華は更にキーワードを告げる。

 

「お弁当」

「膝」

「食べさせあい」

 

 誰にも見られていない筈の光景を想起させる言葉に、横島の鼓動はどんどんと早くなる。一誠とは違い付き合っているわけではないのだが、バラされると同等かそれ以上に吊るし上げられるのは間違いない。どうにかして口止めをと横島が必死になって考えていると、横島の正面に回った藍華が悪戯っぽく微笑む。

 

「大丈夫、バラしはしないわ。ちょっと、からかっただけ。それより、兵藤の彼女について何かしらない?」

 

「あー、今初めて知ったからな。何も知らない」

 

「あ、そう。ま、恐らく他校の生徒でしょうね。学園の生徒で、噂を知ってて付き合おうって娘はいないだろうし」

 

 藍華はそういうと、横島に手を振って追求組に加わっていく。そんな彼女を見送った横島は、自分も一誠の彼女の話を聞く為に輪に加わるのであった。

 

 

 

 

 

 それから数時間後。噴水のある公園で、背中から槍で串刺しにされる一誠の姿があった。

 

 

 

 

 




 原作とは少々違う点がありますが、おおむね流れは一緒でしたね。

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横島inハイスクールD×D その8

原作さん……。


 

 

 

 

 

 

 横島が登校すると一誠が騒いでいた。何を騒いでいるのか、周囲のクラスメイトに尋ねると、彼女が出来たとか、彼女のことを誰も覚えていないとか意味の分からないことを言っているとのことであった。

 

「きっと夢でも見たのよ」

 

「お、藍華ちゃん」

 

「ちゃん付けはやめて」

 

 横島がクラスメイトから話を聞いていると、藍華がやってくる。彼女も一誠の言葉を戯言と切り捨てているようで、一誠のことを冷たい目で見ている。

 そんな彼女に横島は腕組みをしながら重い口調で、言葉を紡ぐ。

 

「いや、もしかしたら……」

 

「もしかしたら?」

 

「化かされたのかもしれんぞ?」

 

「はぁ? あと、その格好似合わない」

 

 大体、何に化かされたというのだと思うと同時に、何か知っているのかも知れないと感じる藍華。そんな藍華に構わず、横島は一誠のところへと歩いていく。

 

「よぉ、一誠!」

 

「あ、兄貴! 聞いてくださいよ! イッセーのやつが」

 

「だから、夕麻ちゃんは確かに居たんだよ! デートもしたし、彼女と公園で別れたこともはっきりと覚えている!」

 

「イッセー……」

 

 その一誠の言葉に、元浜らと一緒に騒いでいたクラスメイトたちが急に同情した声をあげる。その反応に一誠が戸惑っていると、代表として横島が口を開く。

 

「お前、夢でも振られ」

 

「違う! 別れたってのは、サヨナラしたってことで!」

 

「やっぱり……」

 

「うおぉー! どう説明したらいいんだー!!」

 

 頭を抱える一誠。その内、教師がやって来て淡々と進めていくのであった。

 

 

 

 休み時間の度にからかわれ続けていた一誠は、昼休みになるなり横島と松田、元浜の三人を連れて人気のない場所で昼食をとっていた。

 

「ったく、皆してオレを可哀相なものを見る目で見やがって」

 

「まぁ、実際夢の話をされてもなぁ」

 

「だから、夢じゃないって。ちゃんと、写真とアドレスも携帯に……えっ?」

 

 携帯を操作していた一誠の手がとまる。

 

「……ない? オレが消した? まさか……」

 

「そりゃ、ないだろうよ。夢なんだから」

 

 その言葉に、青い顔になる一誠。一誠としても、昨日体験したことは夢のような出来事だったことは確かだが、現実として認識している。それなのに、これでは本当に夢を見ていたようではないか。今、自分が立っている場所が現実なのかどうかも定かではない。そんな感覚に一誠は陥っていた。

 そんな一誠に、横島がスッと近寄ると一誠にだけ聞こえるような声で囁く。

 

「放課後。迎えが来る」

 

 その言葉に横島の顔を見ると、横島は何もなかったかのように元浜が持ってきていた雑誌で盛り上がっていた。

 

 

 

 それから問題の放課後になるまで上の空状態であった一誠だったが、放課後になると横島の言う迎えが現れるのを待った。本当は横島に問い詰めたかったのだが、横島が早退した為にそれは出来なかった。

 落ち着きがない一誠の様子に、クラスメイトの視線が集中するがそれにも一誠は気がついていない。そんな時、ドアから一人の生徒が入ってくる。彼は女生徒の視線を一身に浴びながら、一誠に向かって歩いていくと、彼の目の前で手を差し出す。

 

「兵藤一誠君だよね? 迎えに来たよ」

 

 事態を飲み込めない一誠に、彼――木場祐斗――は、一つウインクをすると口の動きで”横島忠夫”と告げるのであった

 

 

 

「木場が横島の言ってた迎えなのか?」

 

 あの後、クラスであがった驚きの声(一部歓声)に驚く一誠を強引に立ち上がらせ、祐斗は一誠を先導していた。道中、様々な声が聞こえてきていたが全て無視する祐斗の背中に、質問すら出来ず流されるままであった一誠は、旧校舎に入り人目がなくなったことでようやく口を開いたのであった。

 

「そうだね。忠夫さんに言われて迎えに来たよ。本当は忠夫さんが連れてきても良かったんだけど、キミと早く話をしたくてね。ボクに譲ってくれるよう頼んだんだ」

 

「話をしたかった? どういうことだ?」

 

「それは時期に分かるよ。さぁ、ここだ」

 

「”オカルト研究部”?」

 

 一誠の目の前にはオカルト研究部という文字が。旧校舎で活動している部活があることを知らなかった一誠は、全く事態についていけない。そんな一誠を無視して祐斗はドアを開ける。

 目に飛び込んできた燭台に異様な雰囲気を感じていた一誠であったが、ソファーに腰掛ける少女を見つけると、途端に目を輝かせる。

 

「ああ、彼女は一年生の塔城白音さん。こちら、兵藤一誠君」

 

「どうも」

 

 一誠を一瞥した白音は、彼らの他に人がいないことを確認すると少し肩を落とし、再び羊羹にかじりつく。そんな無愛想な態度に怒る所か、興奮している様子の一誠。そこに、更に一誠を興奮させる出来事が。部屋の奥から水が流れる音。誰かがシャワーを浴びている。それを瞬時に悟った一誠は、その方向を凝視する。シャワーカーテンが厚いのか、影さえも見えないが一誠の勘が女性だと判断する。

 

「部長、これを」

 

 シャワーを浴びていると思われる女性の他に、もう一人いる。一誠がそれに集中していると、微かに衣擦れの音が聞こえてくる。どうやら、着替えているようだと一誠が、その様子を想像するが、誰か分からない状態ではイマイチイメージが固まらないようで苦悶の表情を浮かべている。そうしている内に、女性がカーテンをあけて出てくる。

 

「リ、リアス=グレモリー先輩! それに姫島朱乃先輩まで!」

 

 我が高の二大お姉さまが何故ここにと呆然と呟く一誠に、リアスと朱乃は微笑むと自己紹介を始める。

 

「初めまして、姫島朱乃と申します。以後、お見知りおきを」

 

「リアス=グレモリーよ」

 

「横島忠夫だ!」

 

「いや、横島は知ってる……って、何時の間に!」

 

 背後から聞こえた声に一誠が驚いて振り向くと、何時の間に来たのか白音を膝に乗せて羊羹を摘んでいる横島がいた。

 

 

 

「粗茶です」

 

「あっ、どうも」

 

 ソファーに座る朱乃が淹れたお茶を手に、彼女が横島の横に座るのを目で追いかける一誠。一誠の横には、木場が座り、横島の横にはリアス。膝上の白音も含め、羨ましい状況についに一誠の感情が爆発する。

 

「何で、横島が学園二大お姉さまと仲良さそうにしてんだ! っていうか、何で一年のマスコット――通称”小猫ちゃん”を膝に乗せてんだよっ!」

 

「何でだろうな?」

 

「忠夫さんの膝が居心地いいのがいけません」

 

「だそうよ?」

 

 首を傾げる横島に、淡々と理由になっていない理由を語る白音。リアスの言葉もダメージになっているようで、一誠は胸を押さえている。

 

「オレの横はいけ好かないイケメンだってのに……」

 

 呪詛を吐くように呟く一誠。今すぐ横島をどうにかしたい一誠であったが、先に目的を果たそうと横島に鋭い視線を向ける。

 

「横島。お前、夕麻ちゃんのこと覚えてるんだな?」

 

「ああ。ま、そのことを話す前にリアスちゃんからお前に話があるんだ」

 

「先輩から? っていうか、先輩をリアスちゃんって呼ぶな!」

 

「いいのよ。それで、話だけど……兵藤一誠君」

 

「は、はい」

 

 リアスの真面目な声に、緊張した返事をする一誠。そんな一誠に、リアスは本題を告げるのであった。

 

 

 

「あなた、悪魔にならない?」

 

 

 

 




 原作とは違う点がありますが、流れは一緒でしたね? ね?

 本編とは関係ないですが、”落ち着きがない”を誤字って、”お乳付きがない”ってなったときはびっくりしました。
 

 関連活動報告は【HY】と記載します。
 ご意見、ご感想お待ちしております。感想いただけるとモチベーションあがります。


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横島inハイスクールD×D その9

原作さん……(遠い目。


 

 

 

 

 

 ――あなた、悪魔にならない?

 

 この言葉を聞いた一誠の反応は、ただただ呆然とするだけであった。その反応にそりゃそうだよなと頷く横島。そんな彼らの反応を他所に、リアスは話を続ける。

 

「兵藤一誠君。あなたも悪魔は知っているわよね?」

 

「そりゃ、知ってますけど……あれはゲームとか神話の、架空の話でしょ?」

 

「それが違うのよ。悪魔は実在しているわ」

 

「冗談きついっすよ、先輩。幾らここがオカルト研究部だからって……」

 

 一向に信じる気配がない一誠に、どうすればいいのか思案するリアス。横で朱乃が横島に羊羹を食べさせていることも気になって仕方がない。後で自分もしようと、リアスは決心する。

 

「天野夕麻…・…彼女もあなたの言う架空の存在だわ」

 

「ち、違う! 夕麻ちゃんは確かに存在してた! アンタたちの妄想なんかと違う! 横島も何とか言ってくれ!」

 

 からかわれ続けていた話題だけに、敏感に反応する一誠。横島にも話を向けるが、横島は白音に羊羹を食べさせるのに忙しいとばかりに、ただ一言を一誠に告げる。

 

「最後まで話を聞け、一誠」

 

「最後って……」

 

「いいから」

 

 横島に言われしぶしぶ言葉を聞く体勢になる一誠。それを確認したリアスは、言い方が悪かったわと謝ると続きを告げる。

 

「確かに彼女は存在していた。でも、人間としてじゃない。彼女はあなたが架空と言った悪魔と同じ存在――堕天使よ」

 

「だ、堕天使……?」

 

 一誠の脳裏に中二病という言葉が浮かぶ。己の設定に酔っているのではないだろうかと疑う一誠に、リアスは一枚の写真を見せる。

 

「この娘が天野夕麻……でしょ? 彼女は、昨日あなたが()()()()()あと、仲間と一緒に自分の存在を念入りに消去した。周囲の記憶は消したのに、あなたの記憶を消さなかったのは、あなたが死んだと思ってその必要がないと判断したから」

 

 自分が死にかけた。本来なら怒ってもいい筈の言葉に、心の何処かで納得をする一誠。今朝夢で見たことは現実だったのだと。

 

「あなたは天野夕麻の仲間の堕天使に、背後から槍で刺された。そして、あなたが死んだと思った堕天使たちは、自らの形跡を消してその場を後にしたわ。その後、死の寸前だったあなたを私たちが助け、部屋へと送り届けた。これが昨日あなたの身に起きたことよ」

 

「助けた……?」

 

「そうよ。()()()()()を使ってね。で、ここからが本題。私たちがあなたを助けたのも、堕天使たちがあなたを殺そうとしたのも、同じ理由」

 

 その言葉に身を乗り出す一誠。死にかけたのも、生かされたのも同じ理由だと聞いて、気にならない訳がなかった。

 

神器(セイクリッド・ギア)。人間に宿る規格外の力。中には、私たち悪魔や堕天使たちに通じる力を持つものもある。それが、あなたの中にある。だからこそ、私たちはあなたを生かし、こうして勧誘しているの。悪魔にならないかってね」

 

「神器……。それが、オレの中に……?」

 

 一誠にとっては何処かで聞き覚えがある言葉であった。薄れいく意識の中、天野夕麻が男と言い争っているのを聞いたときに、耳にしたのだと一誠は思った。同時に、何故意識が薄れていったのかを思い出そうとする。

 

「オレは……腹から槍がっ!」

 

 慌てて立ち上がり、腹を確認する一誠。そこには、普段通りのそこそこ腹筋のついたお腹があった。

 

「確かに貫通してたのに……」

 

「だから助けたと言っただろうが。あと、汚い腹を隠せ。白音ちゃんの教育に悪い」

 

「あ、悪い。って、汚くないわ!」

 

 そこそこ腹筋もあると呟きながら、服を着なおす一誠。それを確認した横島は、白音の目を塞いでいた手を離すとリアスに続きを促す。

 

「ようやく自分の身に起こったことを信じる気になったようね」

 

「あ、はい」

 

「じゃあ、続けるわ。私たち悪魔は自分たちの力を得る為に、人間と契約を結ぶ。それとは別に、仲間として力を持つ人間を迎えいれることがある。私たちがあなたに持ちかけているのは後者」

 

「じゃ、何で堕天使はオレを殺そうと……」

 

 ようやく理解が追いついてきた一誠が、質問をする。その言葉にリアスは少し考え込んだあと、口を開く。

 

「運が悪かったのかもしれないわ。堕天使と悪魔は敵対関係にある。だから、神器所持者を悪魔に渡さない為に、殺害という強引な手を使った……だと思うわ。でも、普通なら神器所持者は堕天使にとっても貴重な戦力となるから、勧誘を先にする筈なの」

 

「オレ、勧誘された覚えないっす」

 

「だから、運が悪かったのかもしれないわ。恐らく、天野夕麻は勧誘前にあなたが本当に神器所持者なのかを確かめる為に、接近したと思うの。でも、仲間が過激派だった為に先走って殺してしまった。天野夕麻はあなたを殺した堕天使と言い争っていたと報告がきているし」

 

 天野夕麻が殺害目的で接触してきたのではないとのリアスの予想に、安心する一誠。最初から殺害目的だったら、重度の女性不信に陥っていたところだと一誠は思う。やがて、一誠はリアスの言葉に不審な点があることに気がつく。

 

「報告って、誰かがオレたちのこと見てたんすか?」

 

「勧誘する為にあなたにつけていた使い魔がね。戦闘する力がないから、あなたを助けることは出来なかったけど、おかげで治療が間に合ったわ」

 

 使い魔をつけたのは昨日からと聞いて、たまたま生きているのだとの思いを強くする一誠であった。

 

 

 

「さて、いろいろ納得して貰えたようだけど、どうするの?」

 

「どうするって?」

 

「悪魔になるのかって聞いてるの。いいわよ、悪魔」

 

 リアスの勧誘の仕方に軽いなぁと感想を抱く一誠であったが、悪魔になって何のメリットがあるのだろうと考える。

 

「あの、メリットとかあるんですか?」

 

「そうね、取りあえず堕天使たちから身を守れるように鍛えてあげるわ。あなたが生きていると知ったら、殺しにくると思うし。私の眷属悪魔ってことなら、不用意に襲ってくることも少ないでしょうね。それに、私たちがあなたの危機に駆けつけるってことも出来るし。大丈夫、これでも力のある悪魔なのよ、私」

 

「他には?」

 

「寿命が長くなるでしょ? あとは、視力とかの身体能力も人間の時よりあがるわね。病気もしにくくなるし……大抵の怪我は治るわね。あと、私の眷属ってことで領地もあげるわ」

 

 命の危機が遠ざかるのはいいが、悪魔になるには決め手にかけるなと一誠が思っていると、リアスがそれとと言葉を続ける。

 

「悪魔の力比べをするゲームがあるんだけど、それで活躍すれば人気者になれるわ。それに悪魔は一夫一婦制って訳じゃないから、複数の妻を持つことも可能ね」

 

「なります! オレ、悪魔になってハーレム作ります!」

 

 

 




 原作とは違う点いっぱいでしたね。
 あと、活動報告にてアンケート実施しております。ご協力お願い致します。

 一誠周辺の出来事。 
 これらは作中設定です。

 関連活動報告は【HY】と記載します。
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横島inハイスクールD×D その10

一誠くん悪魔化。


 

 

 

 

 

 元気いっぱいに悪魔になることを宣言した一誠に、リアスは笑顔となると早速とある物体を取り出す。

 

「それは?」

 

「これは悪魔の駒(イーヴィル・ピース)。チェスの駒を参考に作られたもので、生物を悪魔に転生させることが出来るの。同時に、転生にしようした駒によって特性を付加されるわ」

 

「特性……ですか?」

 

「そう。転生悪魔の主、つまり私ね。私を『(キング)』として、王はチェス同様に『兵士(ポーン)』『僧侶(ビショップ)』『騎士(ナイト)』『戦車(ルーク)』そして、『女王(クイーン)』の駒を所有しているわ。所有する数も、兵士が八、僧侶、騎士、戦車が二つずつ。女王が一つとチェスと一緒。この駒を使って転生した悪魔は、基本的には王の下僕となるの」

 

「げ、下僕っすか」

 

 それはいやだと顔に書いてある一誠に、リアスが安心させるように説明を続ける。

 

「昔は違ったんだけど、今は下僕として転生した後、実力次第では爵位を持つことが出来るようになったの。さっきも言ったけどゲームでの活躍次第では主より人気になることもあるわ。それに爵位持ちになれば今度は自分が、下僕を持つことも出来るわ」

 

「つ、つまり、オレがハーレムを作るにはゲームで活躍して、人気者になって嫁を見つけていけばいいんすね!? しかも、下僕も作れる!?」

 

 瞬間、下卑た顔をする一誠。おそらく、ハーレムを作ったときのことを考えているのであろう。人様に見せられないその顔に、横島は自分にもこんな頃があったなぁと思いながら、再び白音の目を塞ぐと見ちゃいけませんと注意する。

 

「話を戻すけど、駒には特性があるわ。イッセーはチェスの駒のモデルが何か知っている?」

 

「まぁ、多少は」

 

「悪魔の駒が与える特性は、チェスのそれと通ずるものがあるわ。例えばこの僧侶の駒。これを使って転生した悪魔は、魔力が底上げされるわ。魔法使いとかと相性がいい駒ね」

 

「魔法使いもいるんすか……」

 

 次々と自分の常識が崩れていくのを感じる一誠。そんな一誠に構わず、リアスは話を続ける。

 

「騎士の駒はスピードが速くなるし。戦車はシンプルに体が頑強になるわ。あと、王と位置を入れ替えるキャスリングが可能となる。そして、女王。兵士、僧侶、騎士、戦車の全てを兼ね備えた最強の駒ね」

 

「へぇー。ってことは、ここにいる皆も何かしらの駒の特性を持ってるわけだ」

 

 改めて周囲を見回す一誠。朱乃と白音、横島は変わらず羊羹に夢中で、目を合わしてくれたのが祐斗だけだったことに肩を落とす一誠であった。

 

「ボクは騎士の駒を部長から貰ったんだ。今度、騎士の速さを見せてあげるよ」

 

「私がリアスの女王ですわ。白音ちゃんは戦車。とても、力が強いんですのよ」

 

「先輩には負けません」

 

「へぇー。じゃ、忠夫は何の駒なんすか? 兵士?」

 

 純粋な疑問をぶつける一誠に、横島は笑って否定する。

 

「オレはリアスちゃんの眷属じゃない。ま、リアスちゃんの下僕ってのは心惹かれるけどな」

 

 その言葉に同意しかけた一誠だったが、決してお姉さまの下僕になりたくて悪魔になるわけではなく、ハーレムの為なのだと自分に言い聞かせる。そのうち、一誠は横島が何故ここにいるのかが気になる。てっきり、リアスの眷属だと思っていたのが否定されたからである。

 

「じゃ、何で横島はここにいるんだ? お前も悪魔にスカウトされたのか?」

 

「違うわ。忠夫も悪魔よ。今はお兄様の命で人間界に来ているの」

 

 リアスの言葉に、リアスの兄の眷属なのだと判断した一誠は、自分の駒が何になるのかをリアスに尋ねる。

 

「で、オレは何の駒を貰えるんすか? 今いない僧侶ですか?」

 

「僧侶は一人いるわ。イッセーに与える駒はこれ」

 

「……兵士っすか。これって何の特性があるんですか?」

 

「特に何も」

 

 その言葉に愕然とする一誠。ハーレムへの道が一気に閉ざされた気分となる。そんな一誠に、リアスは続ける。

 

「但し、私が敵の陣地だと認めた場所に限れば、最強の駒となるわ。王の許可を経て、全ての駒の特性を得ることが出来るのだから」

 

「それって、つまり……女王にもなれるってことっすか?」

 

「ええ」

 

 その瞬間、雄たけびをあげる一誠。一誠の中で先ほどまで暗く閉ざされていたハーレムへの道が、明るく照らされたからである。

 

「きたー! オレのハーレムへの道が今開けた! で、リアス先輩、オレはどうすれば?」

 

「これからは部長と呼びなさい。イッセーは何もしなくていいわ。ただ、駒を受け入れるだけ。大丈夫、痛くないわ」

 

「あ、心なしかエロい響き……」

 

 馬鹿なことを呟きながら、目を閉じて受け入れる体勢になる一誠。別に目を閉じる必要はないのだが、いちいち指摘しても仕方ないと思ったリアスは兵士の駒を一つ一誠に押し当てる。すると、駒は一誠の体内へと消えていく。しかし、リアスの表情は優れない。

 

「……ダメみたいね。まだ足りないのかしら」

 

 一つでダメならと、数を増やしていくリアス。だんだんと増えていく数に、部室にいた全員が注目している。

 

「おお、六個でもダメか」

 

「凄いですね。相当神器が強いのか、一誠君が凄いのか」

 

「神器だと思います」

 

「私も」

 

 祐斗の言葉に即効神器が凄いのではと意見を述べる朱乃と白音。正直、一誠の噂を知っている祐斗としても、否定は出来ない。そうこうしている内に、駒の数は最後の一つとなっていた。

 

「これで最後ね。忠夫が薦めるわけだわ。いい子が見つかったみたい」

 

 呟いたリアスが最後の一つを押し当てると、静かに消えていく駒。次の瞬間、一誠から一際強い光が放たれたかと思うと、彼の背中にある変化が起こっていた。

 

「うん。成功したようね。駒八個か……前言っていたことが本当になったのかもしれないわね」

 

 そういって頷くリアスたちを他所に、一誠は自分の身に起こった変化に気を取られていた。

 

「は、羽!?」

 

 一誠の背中から、コウモリのような一対の翼が出現していた。

 

「そう。悪魔の羽よ。ようこそ、悪魔の世界へ。歓迎するわ」

 

 そういって立ち上がると、自身も翼を広げて一誠に見せるリアスたち。その様子に、本当に不思議な世界に足を踏み入れたのだと改めて感じる一誠だった。

 

 

 

「で、横島は何をしているんだ?」

 

 ソファーから立ち上がり、息んでいる横島に疑問の声をあげる一誠。リアスたちも疑問に思っているようで、黙ってやりとりを見守っている。

 

「くっ……、羽が出らん。大分、長いこと出しとらんかったから、出し方が分からん」

 

 その言葉にずっこける一誠。それに構わず、息んでいた横島が一際強く息を吐いたその瞬間、ばさっという音を立てて横島の翼が現れる。

 

「おおー、やっと出た。どうだ? オレの翼」

 

 自慢気に見せる横島の背中には、()()()()の翼が生えていた。言葉を出さない一同を不審に思った横島が周囲を見渡し、自分の翼に注目が集まっていることを確認すると自分も翼を確認する。

 

「あちゃー、久しぶりだったからちょっと力が漏れちゃったか。よっと」

 

 軽い横島の掛け声と共に、二対四枚だった翼はリアスたちと同じ一対二枚へと数を減らす。それに云々と頷いた横島は、再度一同に問い掛ける。

 

「どうよ、オレの翼。久しぶりに出したけど、似合ってるか?」

 

「え、今、四枚……?」

 

「一誠。知っているか?」

 

「何を」

 

「秘密が男を魅力的にするってな。秘密が多い、ミステリアスな男ほどモテるってことさ」

 

「あ、兄貴……」

 

 人差し指を立てて適当なことを言う横島に、何やら感動しているらしい一誠。そんな二人のやり取りに追求するタイミングを逃したリアスたちは、いつか追求すると心にとめて今日のところは解散するのであった。

 

 

 




 活動報告のアンケの結果、一誠くんのヒロインはレイナーレのみに決定しました。他のアンケ結果もまとめて活動報告に記載しています。

 アニメと原作でいろいろとタイミングが違った気がしますが、記憶がはっきりしません。多分、拙作は原作準拠で進んでいるはず。

 悪魔の駒適用の方法。 
 これらは作中設定です。

 関連活動報告は【HY】と記載します。
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横島inハイスクールD×D その11

裏側系。


 

 

 

 

「そうだ、ソーナちゃん」

 

「何でしょう?」

 

 一誠と祐斗と別れ帰宅した横島は、先に帰宅していたソーナに話しかける。横島から学生鞄を受け取りながら、首を傾げるソーナの姿には新妻のような初々しさがあった。

 

「くっ、他の人がやっていると何か悔しいわね」

 

「あらあら、リアスったら。でも、本当ね」

 

「リアスも朱乃も何を言っているのですか。それで、忠夫は何のようなのですか? あなたのサポートは私の任務なのですから遠慮せずに言ってください」

 

 嫉妬するリアスと朱乃に勝者の笑みを向けながら、忠夫の言葉を待つソーナ。帰宅後のやり取りでソーナが出遅れたときは、逆にリアスたちがその笑みを浮かべるのだから仕返しのつもりなのだろう。

 

「前に言ってた堕天使に襲われた男子学生。リアスちゃんの眷属になったんだけどさ……ソーナちゃんも狙ってた?」

 

「いいえ。忠夫の言葉通り、神器持ちなら魅力的だったのは確かです。でも、私の眷属は生徒会を拠点に活動することになりますから、生徒会の一員として認識させる必要があります。彼は普段の行動が行動なので、認識させようにも手間がかかりますし、私の眷属としてあまり相応しいとはいえないので」

 

「あー、なるほど。リアスちゃんのとこは活動拠点がオカルト研究部とかいう怪しい部活だもんな」

 

 怪しい部活との忠夫の言葉に落ち込むリアスであったが、気を取り直しソーナに話しかける。

 

「でも、あの子は強くなるわよ。神器はまだ確認していないけど、おそらく神滅具(ロンギヌス)だわ。兵士の駒を八個消費したんだもの」

 

「八個ですか……うちの匙が四個ですから、その可能性もありますね」

 

 仲がよく親友同士でもある二人だが、レーティングゲームにおいてはライバル。相手に強力な眷族が出来ることは喜ばしい反面、警戒もしなければならない為、内心は複雑である。

 そんなソーナの心境を感じ取ったリアスが、話題を変える。

 

「そう言えば、あなたの眷属にはきちんと教えたの?」

 

「ええ。神器を狙い堕天使の過激派が入り込んでいるとは。幸い、私の眷属たちは遭遇していないようですが。リアスの方はどうだったんですか?」

 

「私のとこも直接見たのはいないわね。使い魔が目撃はしたけど、すぐ離れていったし。この街を出て行ったのかも分からないわ。取りあえず、三日くらいは用心して頂戴。ま、こっちの方が遭遇はしやすかもしれないわね。イッセーを消したと思っている筈だから、イッセーが生きていると知れば動くだろうし」

 

「その彼は大丈夫なのですか? 過激派なら家族もまとめて始末する奴もいるのでは?」

 

 一誠の家族が襲撃されるのではないだろうかとのソーナの心配に、笑って答える横島。

 

「それは大丈夫だ。父親の方は黒歌に監視させてるし、母親の方はうちのメイドたちとお茶してたからな」

 

「お茶?」

 

「そ。何せ、お隣さんだからな」

 

 その言葉に、驚愕するソーナとリアスたち。ソーナはリアスたちが驚いていることにも驚いている。

 

「何で、リアスが知らないんですか! 昨日彼を自宅に送ったのでは!?」

 

「だって、忠夫が任せろって抱えていったし。やけに早く帰ってくるなとは思っていたけど、隣だったの」

 

「そういうこと。引越し蕎麦も配ったんだぞ?」

 

 このあたりの感覚は生粋の悪魔でお嬢様である二人にはないものだろう。横島は元人間であるから、ご近所付合いなどという考えが浮かんだのである。

 

 

 

 その後、くつろいでいた横島たちの目の前に転移魔方陣が広がる。紋章はアスタロトとグレモリー、シトリーの特徴を混ぜたようなものである。その見たこともなり紋章に、リアスたちは警戒するが横島と黒歌、メイドたちは気にしていない。やがて、魔方陣から現れたのはリアスたちの良く知る二人の人物であった。

 

「やー、リーアたん。忠夫とは宜しくやってるかな?」

 

「タダオ様、グレイフィア到着しました」

 

 現れたのは、魔王サーゼクス・ルシファーとグレイフィアの二人。気楽に話しかけるサーゼクスに対し、リアスたちは驚愕で固まっていたが、やがてリアスが話しかける。

 

「何故、お兄様がここに? 魔王の仕事はいいのですか?」

 

「当然、終わらせて来た……と言いたいところだが、これも仕事でね。な、忠夫」

 

「仕事を言い訳に遊びに来たんだろ? 連絡ならグレイフィアだけで十分だろうが」

 

 横島の指摘に、そっぽを向いて笑うサーゼクス。図星であったらしい。そんなサーゼクスに呆れた視線を向けていたリアスだが、先ほどの紋章のことを思い出し尋ねる。

 

「お兄様、先ほどの魔方陣の紋章は一体? グレモリー家とアスタロト家、シトリー家のものにも似ている気がしましたが」

 

「それも、仕事の一つさ。まず、リアス・グレモリー」

 

 砕けた雰囲気から、真面目な雰囲気に変わったサーゼクスに、リアスたちも横島と黒歌を除いて身を正す。

 

「駒王町の管理者である君には、この町に潜伏しているはぐれ悪魔、バイパーの討伐を眷属とともに行ってもらう。これは大公からの命令だ」

 

「謹んでお受けいたします」

 

「次に、ソーナ・シトリー。君には駒王学園における結界の構築作業の調査を頼む。まだ計画の段階なので何時になるかは分からないが、駒王学園にてあるイベントを行う可能性がある。その為の準備だ。効率よく結界を張るポイントをグレイフィアと共に調査してくれ。期間や細かい注意事項はグレイフィアに聞いてくれ」

 

「宜しくお願いします、ソーナ様」

 

「謹んでお受けいたします。グレイフィアさん、宜しくお願いします」

 

 頭を下げあう二人を確認したサーゼクスは、横島に向き直ると先ほどの紋章を紙に浮かび上がらせる。

 

「そして、忠夫。いや、古の魔神アシュタロスを継ぐ者よ。これが君の紋章だ。今まで紋章を不要と持たなかった君だけど、これからはそうもいかないからね。眷属に刻むといい」

 

「へー。何かアジュカが昔使っていた紋章に似ているな? あと、リアスちゃん家にソーナちゃん家」

 

「それはそうさ。先ほどリーアたんが言ったように、グレモリー家とアスタロト家、シトリー家の紋章を参考に作っているからね。魔神アシュタロスの紋章は残ってないからね。どんな紋章にするかと考えていたら、アジュカがアスタロトの紋章をあげると言いだしてね。流石にそれはダメだろうとセラフォルーと口を出していたら、そんな形になったよ」

 

「ま、こだわりなんてないから、どうでもいいか。で、あっちの方は?」

 

 紋章を受け取り見つめていた横島が、どうでもよさそうな顔で、受け取った紋章をメイドたちに手渡し続きを促す。メイドたちは紋章を手に、部屋を後にしたが展開についてこれていないリアスたちは、後で横島を問い詰めてやると決意しながら事態を見守っている。

 

「堕天使だね。確認したが、総督殿の意思ではないらしい。いや、神器を集めていることは否定しなかったが、駒王町への立ち入りは認めていないが正確かな。こっちの裁量に任せるとさ」

 

「これで、オレらが原因で全面戦争に突入ってシナリオはなくなった訳だ。にしても、堕天使側でアイツらを引き上げさせてくれればいいのに」

 

「まぁ、下級堕天使のようだしね。それに神器所有者を狙って、こっちの領土に侵入してきたが、まだ悪魔と決定的に敵対した訳ではないからね。何が起きても上層部は関与しないと言質を取れただけマシさ」

 

「ま、正当防衛を主張できるだけマシか」

 

 うんうんと頷く横島に、リアスが食って掛かる。

 

「ちょっと、私たちが原因で全面戦争って何なの!?」

 

「まぁ、さっきもソーナちゃんが言ってたが、一誠が襲われるかもしれんだろ? で、今んとこ三勢力の争いは休戦状態な訳。そこで、眷属を守る為とはいえ魔王の妹が堕天使をとかなったら……」

 

「それを言い分に、再び戦争状態へと発展するということですか?」

 

「逆に、堕天使に魔王の妹が傷つけられたりとかもな。人間界でその二勢力が争ったから、天使が介入ってのもありえる」

 

 朱乃の言葉にそう返す横島。言いがかりに近いが、リアスの立場というのはそういうものなのである。そして、それはソーナも同じである。

 

「そんな先のことを考えて、お兄様に連絡したの?」

 

「それもあるけど、こういうのは組織のトップに告げ口するのがいいんだ。相手に対する弱みを握れるかもしれんからな。今回だって、それで何をしても正当防衛ってなったし」

 

「そ、そう」

 

 告げ口と言う言い方に引っかかりを覚えたが、それらが有効なことは理解できたリアスたちはそれ以上、この件について質問することはしなかった。

 その代わり、先ほど追求しなかった件について尋ねる。

 

「で、紋章のことなんだけど、魔神アシュタロスってどういうこと? アスタロト家とは違うの?」

 

「何て言えばいいかなぁ。簡単に言うとだな。オレは魔神アシュタロスってのを倒したことで、悪魔となったんだ。魔神アシュタロスの後釜として。で、アスタロト家は魔神アシュタロスの家系って感じかな」

 

 思いのほか上手く説明できたと頷いている横島を他所に、サーゼクスが言った継ぐ者とはそういう意味だったのかと納得するリアスたち。彼女たちは現魔王と旧魔王のような関係なのだと理解する。

 

「では、眷属とはどういう意味なのですか? 忠夫はサーゼクス様の眷属なのでは?」

 

 ソーナの言葉に頷くリアスたち。それに対して、サーゼクスとグレイフィア、横島、黒歌の四人は首を傾げる。

 

「何を言ってるにゃ。忠夫は眷属じゃないにゃ」

 

「え?」

 

「で、でも、サーゼクス様の領地に屋敷を構えていますよね?」

 

「そ、それに、お兄様の命で任務に出かけてたし」

 

「パーティもサーゼクス様の眷属の方と一緒に……。ミリキャス様や、教育係のグレイフィア様とも仲が良いですし」

 

 黒歌の言葉に、驚愕するリアスたちはそれぞれ横島がサーゼクスの眷属と思われる行動を取っていたと告げる。だが、それに対して否定が帰ってくる。

 

「屋敷は私が忠夫に与えたが、それは単純にあの屋敷が余っていたからだ。家賃代わりに任務を受けてもらっていたしね。パーティは知り合いのところに固まっていただけだし、ミリキャスは生まれた頃から知っているからね。仲が良いのも当然さ。それに、グレイフィアは……」

 

「私は元々、タダオ様の専属メイドです。今は、教育係としてミリキャス様のお世話をしていますが、タダオ様が眷属を集めることになった以上、夏にはタダオ様の傍に参ります」

 

「私は、忠夫のペットにゃ」

 

 黒歌の戯言はスルーして、改めて状況を整理していくリアスたち。

 

「と言うことは、忠夫もレーティングゲームに出るの?」

 

「それが、サーゼクスからの依頼だからな。で、眷属集めとレーティングゲームの勉強の為に、こっちに来たって訳」

 

「サポートと言うのは、眷族集めのことだったのですね」

 

「そうだけど……言ってなかったっけ?」

 

「「「言ってません!!」」」

 

 口を揃えて言うリアスたちに、横島がたじろいでいると朱乃が思いついたと言うように、リアスに提案する。

 

「リアス、トレードを……」

 

「しません!」

 

「部長」

 

「しません!」

 

 そんな三人を他所に何を思ったのか、ソーナが横島に提案する。

 

「忠夫。あなた私の眷属になりませんか?」

 

「あ、ずるい、ソーナ! 私の眷属にならない!?」

 

 そんな二人に、サーゼクスがそれは無理だろうと告げる。

 

「ははは、それは無理だろうと思うよ。私の女王の駒でも眷属に出来なかったんだから。リーアたんやソーナちゃんが眷属になることは可能だとは思うけどね」

 

 その言葉に考え込む二人。それを笑って見ていたサーゼクスだったが、グレイフィアが時間ですと告げると、考え込む二人に声をかける。

 

「では、私は冥界に戻るよ。リアス。はぐれ討伐をしっかりと果たしてくれ。ソーナちゃんも結界の方は頼むよ。今日はグレイフィアは置いていくけど、夏までは基本的にミリキャスの方を優先するから、今のうちにしっかり打ち合わせをしてくれ。忠夫は、次に戻ってくる時は、一人くらい眷属を紹介してくれ。それじゃ」

 

 そういうと、今度は自分の転移魔方陣で転移していくサーゼクス。それを見送ったリアスたちは、各々思うところを胸に抱えたまま、それぞれの役目を果たしに行くのであった。

 

 

 




 横島(アシュタロス)の紋章については、各自脳内で保管しておいてください。グレモリーの紋章さえどんな形だか忘れてしまったので、皆様のセンスにお任せします。作中では、登場する際は、文中に横島またはアシュタロスの紋章と書きますので、あれかと思ってください。

 今回は、下準備回でした。リアスとソーナが同居している関係で起きたことと、ソーナたちに役目を与えておこうと言う回。あと、彼女たちを生存させる為の下準備。因みに駒王学園のイベントは会談ではなく、授業参観です。横島もいるので、魔王たちが突入する気満々という。

 横島たちの屋敷が一誠宅の隣。横島(アシュタロス)の紋章。レイナーレたち教会の堕天使の処遇。 
 これらは作中設定です。

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横島inハイスクールD×D その12

ちょっと更新間隔が空きました。


 

 

 

 

 サーゼクスの依頼から一夜明け。一誠は祐斗と一緒に放課後の旧校舎を訪れていた。

 

「ったく、また横島は早退しやがって……。きっと、部室でサボってんだぜ」

 

「それはないよ。忠夫さんは学校生活が楽しいって言ってたし、ここには任務で来ている筈だからね。サボるとしても何か理由があるんだよ」

 

「そうかぁ?」

 

 一誠の疑問を否定する祐斗であったが、一誠はそれを取り合わない。転校してきてからの短い付合いだが、横島が真面目に任務を果たすような人間とは思えなかった。

 

(いや、人間じゃなくて悪魔だったか。ていうか、オレも悪魔になったんだよな。あんま実感ねぇや)

 

 昨日自身の背に羽が生えた辺りを眺める一誠。帰宅して両親とのいつものやり取りや、学校での悪友たちとのやり取りは、彼が人間ではなくなったことに対する忌避感を与えなかった。しかし、同時に一誠は昨日までのことが現実だったのかと疑念を抱いていた。

 そんな一誠の様子に何を思ったのか、祐斗は明るく話しかける。

 

「一誠君。大丈夫だよ」

 

「何がだよ」

 

「ボクがいるから。女性ばかりの眷属だから、最初は肩身が狭いとは思うけど皆いい人たちだよ。それに何かあったらボクを頼ってくれよ。同じ男として、助けになるからさ。うん、同じ男として」

 

「お、おう」

 

 微笑みながら告げる祐斗に、少々引き気味に答える一誠。やたらと祐斗からの好感度が高いのを不思議に思うが、男の同属が出来たことが嬉しいのだろうと納得する一誠であった。

 

 

 

「討伐依頼……ですか?」

 

「そうよ。昨夜、大公から直々の命令があってね。大方の居場所の見当はつけたから、今夜討伐に行くわ。ということで、夜に部室に集合。あと、これを渡しておくわね」

 

「これは……?」

 

「それは召喚の魔法陣が仕込まれたチラシよ。今時、悪魔を召喚するのに自分で魔法陣をなんて人間はいないわ。そこで、それの出番よ。それを使って人間は悪魔を召喚し、願いを告げ代価を払う契約を結ぶの」

 

 一誠は手元にはチラシの束が。その内の一枚を手に取ると、リアスは説明を続ける。

 

「そして、この紋章が”グレモリー”の紋章よ。グレモリー家に連なる悪魔の証ね。これでどこの悪魔を召喚するかが決まるわ。因みに、忠夫の紋章はこれ。似ているけど、違うものだから間違えないようにね」

 

 そういうと一枚の紙を見せるリアス。そこには、グレモリーの紋章に似ている紋章が刻まれていた。

 

「何で部長が横島の紋章を持っているんですか?」

 

「まぁ、事情があってね。持っていないと不便なのよ。ま、それはどうでもいいでしょ。今夜は討伐依頼で出かけるけど、明日からは毎晩そのチラシを配ってもらうわ。これは祐斗や白音、朱乃もやったことなの。悪魔の仕事を知る為の最初の一歩ってところね」

 

 リアスに誤魔化された一誠であったが、次に告げられた言葉に衝撃を受ける一誠。悪魔の第一歩がチラシ配りとは、想像もしていなかったのだから仕方がない。そんな一誠の肩に優しく手を置くと祐斗は、明るく告げる。

 

「分からないことがあったら、ボクに聞いてくれ。それに依頼がないときはボクも付き合うからさ」

 

「なら、祐斗に詳しい説明は任せましょうか。眷族同士の親睦を深めるのにもいいだろうし」

 

 リアスの言葉に任せてくださいと答える祐斗。その横で、一誠はどうせなら女性陣の方がと言い掛けて口を閉じる。祐斗が凄い勢いで迫ってきたのも理由の一つだが、横島が肩に黒猫を乗せて、銀髪のメイドと部室に入ってきたからである。

 

「忠夫! どうしたの? 今日は調査で来れないんじゃ? それに黒歌だけならともかくグレイフィアまで連れて」

 

 リアスの疑問は全員の疑問でもあったようで、全員の視線が横島たちに集中している。それに狼狽えた横島であったが、それに気づいたグレイフィアに背中を抓られたことで、すぐに気を取り直す。未だ背中に当てられたままのグレイフィアの手を気にしながら、横島はここに来た理由を話し始める。

 

「グレイフィアと黒歌を一誠に紹介しようと思ってな。これから顔を合わせることも多いだろうしな」

 

 その言葉に納得したのか、リアスたちは三人をソファーに案内する。グレイフィアはソファーに腰掛けず、横島の背後に控えているのは彼女がメイドであるからであろう。

 

「まずは、改めて自己紹介だな。アシュタロス家当主の横島忠夫だ。といっても、爵位や領地を持っている訳ではないから、一誠と同じ駆け出しの悪魔って扱いになるのか?」

 

「タダオ様。一応、爵位は公爵ということになっております。悪魔の駒(イービル・ピース)を特例で持つのですから、それくらいは当然だとサーゼクス様が用意されました」

 

「そうなの?」

 

 自身のことなのに把握していない横島に、メイドを侍らせてることと一緒に突っ込みたくなった一誠であったが、話を遮らないようにと自重する。そんな中、リアスは横島の爵位について考えていた。

 

(グレモリーと同格の公爵……お兄様たちのお気に入りだからという理由だけでは、説明がつかないわね。でも、爵位のない悪魔の眷属になるのは体裁からして許されないと思っていたけど、同格なら……)

 

 そんなリアスの思案を遮るように、グレイフィアが前に進みでる。

 

「初めまして、一誠様。私はグレイフィアと申します。タダオ様のメイドであり、アシュタロス家の侍従長も務めております」

 

「あ、どうも。……って、横島のメイド!?」

 

「そうよ。忠夫は一誠の目指す道の先輩ってことになるわね。新たに爵位を得て、自分の眷属を作るのだから」

 

「そ、そうか……爵位があればメイドも雇えるのか。兄貴、是非とも私に爵位を得る方法を……」

 

 横島は頼み込んでくる一誠の姿に、かつての自分の姿を思い出し何かアドバイスは出来ないかと考える。特別何かをした覚えはない横島が、どうにかひねり出したのアドバイスは次のようなものであった。

 

「まぁ、簡単なのはアレだな。上層部に恩を売るってのと、弱みを……」

 

「タダオ様、紹介がまだ途中です。黒歌?」

 

「あ、はい」

 

 グレイフィアの冷たい視線に、横島だけではなく一誠たちも背筋が伸びる。そんな中、自己紹介をしなくてはならなくなった黒歌は、横島を一度恨めしげに見た後、口を開く。

 

「黒歌にゃ。白音の姉で、忠夫の眷属。たまにこの辺をぶらぶらしてるけど、見かけても話かけないで欲しいにゃ。まぁ、話しかけてきても猫に話しかける痛い人と周りに思われるだけ……やっぱり、積極的に話しかけるにゃ」

 

「それを聞いて話しかけるかっ!? って、小猫ちゃんの姉?」

 

「そうにゃ。ほら」

 

 黒歌が人の姿を取ると、一誠は白音と黒歌の間で視線を行ったり来たりさせる。はじめはその視線の意味が分からず首を傾げていた白音であったが、一誠の視線が何処に向けられているのかを理解した瞬間、小さく低い声で呟く。

 

「最低」

 

 その声を聞いた黒歌は一誠を睨みつけ、威嚇するように告げる。

 

「白音を泣かせたら……」

 

「は、はい! 申し訳ありませんでした! つい見比べてしまっただけで他意はないのであります! 以後、気をつけますので許してください!」

 

 黒歌の声音から本気だと悟った一誠は、続きを言われる前に頭を下げる。同時に白音に対しても謝罪をするが、機嫌を損ねた白音はそっぽを向いて取り合わない。困った一誠が、黒歌の視線を背に周囲を見渡すと、かつての自分を見たようで見かねた横島が助け舟を出す。

 

「ほら、一誠も謝ってるんだし許してやれって。白音ちゃんも、気にするなとは言わないけどさ。今回は許してやろうよ。ほら、一誠は女性を胸で判断する可哀想な奴……」

 

「忠夫さんは小さいのは嫌いですか?」

 

「いや、そんなことはないぞ? 若い頃は大きい方がと思っていたが、今は真理を悟ったからな。乳は乳というだけで、素晴らしいものだとな」

 

 若い頃って何時だよとか、それは悟るものなのかと突っ込みたかった一誠であったが、白音の機嫌が多少回復してきた現状をわざわざこわすつもりはなかった。

 一段落ついたと思ったのか、リアスが横島たちに話しかける。

 

「それで、黒歌は何の駒を貰ったの?」

 

「白音と同じ戦車にゃ。本当は女王が良かったんだけど、それはグレイフィアに譲ったにゃ」

 

「あれは譲ったというのでしょうか?」

 

 昨夜、横島がグレイフィアに女王の駒を差し出した瞬間、飛び掛ってきた黒歌のことを思い出すグレイフィア。グレイフィアの強さを知ると、すぐに戦闘を止めたが。グレイフィアの実力を知らない黒歌が、女王の駒に相応しいのかを見極めようとしたのだろうとグレイフィアと横島は思っている。

 因みに、黒歌がすぐに止めなければ、序列を叩き込むいい機会として利用する気満々だったのは、グレイフィアだけの秘密である。

 

「グレイフィアが女王なの?」

 

「はい。断ろうかとも思いましたが、タダオ様のご要望でしたから。未熟な身ではありますが、タダオ様の女王を勤めさせて頂くことになりました」

 

「何が未熟にゃ」

 

「何か?」

 

「なんでもないにゃ」

 

 短い時間とは言え、直接戦った黒歌には分かっていた。あの時、グレイフィアには欠片も辞退する気がなかったことを。他の悪魔が女王になろうと手を挙げようものなら、即座に叩き潰していただろうことも。

 

(旧魔王派では大して目立ってなかったと聞いたのに、あの実力……。あの時代の悪魔は現魔王たちといい化け物ばかりなのかにゃ)

 

 黒歌たちは知らない。グレイフィアが目立った戦績を残さなかったのは、横島と戦っていたからであると。それがなければ、最強の女悪魔の座を巡って戦っていただろうと噂されていることも。

 

 

 

 その後、横島たちが退出し、祐斗が一誠に神器の発現方法をレクチャーして、見事初めての神器発動を果たしたりしたのだが、リアスたちの記憶にはグレイフィアと黒歌の横島眷属入りが大きく刻まれるのであった。

 

 

 

 

 




 ここだけの話、木場君が気がついたら病んでます。その度に修正しますが、何故なんでしょう。
 作中で横島がアシュタロス家を名乗っていますが、横島が初代となります。アスタロト家とは関わりがない、新興の家という形です。

 少々更新間隔が空いていますが、一時的なものです。某動画サイトで色々な一挙放送を見ていて筆が止まっていました。
 
 横島がアシュタロス家当主。
 これらは作中設定です。

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横島inハイスクールD×D その13

原作一巻もあと少し(二度目)


 

 

 

 

 一誠の悪魔ライフは概ね順調であった。はぐれ悪魔討伐についていったり、魔方陣に反応しないことが判明したり、召喚者と仲良くなったりと普通の悪魔とは少し違う点もあったが概ね順調であった。

 その一誠が今何をしているのかと言えば、オカルト研究部でリアスたちと雑談していた。

 

「へ~。横島って、部長たちと小さい頃から知り合いなんですか」

 

「ええ。白音や朱乃と知り合ったのは忠夫が連れてきたからなの。あの頃、忠夫は人間界や冥界のあちこちを飛び回っていたから、お兄様に面倒を見てくれないかって」

 

「そうでしたわね。あの頃の私は両親から離れた方が安全ということで、忠夫さん経由でグレモリーに預けられました。その内、リアスと仲良くなり眷属となりましたが、その前はただの遊び友達でしたわ」

 

「私もそうです。姉さまはぐうたらしたいとかで眷属入りを断っていましたが。今思えば、何れ忠夫さんの眷属になるつもりだったのでしょう。姉さまは最初からサーゼクス様の眷属ではないと知っていたようですし」

 

 忌々しそうに言う白音。自身が勘違いしただけと言われればその通りだが、あの姉のことだから勘違いに気づきながら訂正しなかったに違いないと白音は確信していた。

 

「祐斗やもう一人の子が眷属になった経緯は忠夫とは直接関係ないわ。どちらも個人の事情があるから詳しく知りたければ当人に聞いて頂戴。それにしても、祐斗遅いわね? 何か聞いてない? イッセー」

 

「いや、何も聞いてないっすけど。というか、何でオレに木場のことを聞くんすか?」

 

 クラスも違うしと呟く一誠。その言葉に首を傾げるリアスたちであったが、暫くしてからそうだったと気づいたようである。

 

「そういえばそうだったわね。ごめんなさい、イッセー。最近、祐斗があなたと一緒だから勘違いしていたわ」

 

「そんな謝らなくても……。オレも最近、木場と一緒に行動すること多いとは思ってましたから。まぁ、神器を使いこなす為ですから文句は言えませんが」

 

「それで、神滅具(ロンギヌス)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』は使いこなせそうなの?」

 

 どうせなら部長が見てくれればいいのにと訴える一誠であったが、その訴えは黙殺されたようである。訴えることを諦めた一誠は、リアスの問いに答える。

 

「まだ何とも。木場との訓練で分かったことと言えば、頑丈な籠手ってことだけです。本当に部長の言う神滅具なんですかね? これ」

 

「兵士とは言え、駒を八個消費したんだから間違いないと思うわ。祐斗は何か言ってた?」

 

「疑うな、だそうです。赤龍帝の籠手を信じれば、神器の方から力を貸してくれると。神器は所有者の意思に反応するとも言ってました」

 

「そう。何かいいアドバイスをしてあげたい所だけど……私たちは神器を持っていないから。祐斗を信じてとしかいえないわ。ごめんなさい」

 

「そんな! 部長が謝らないでください! オレちょっと弱気になってたみたいです。はぐれ悪魔の討伐の時、皆凄くて。オレ驚くばかりで何も出来ませんでしたから。それで、自信を失くして。木場にも申し訳なくて」

 

 最後の方は俯きながら告げる一誠の頭をリアスは優しく撫でる。

 

「焦ることはないわ、一誠。あなたはきっと強くなる。それまで、私たちが守ってあげるから。それに、力というのはふとした拍子に目覚めることもあるわ。だから、今はその時ではないと考えなさい。そうすれば、必要以上に落ち込むこともないから」

 

「……分かりました」

 

 リアスの言葉を聞きながら大人しく頭を撫でられていた一誠であったが、ふと顔をあげると目の前にリアスの豊満な果実がぶら下がっている。自然とそれに手を伸ばしていく一誠であったが、急にそれが遠ざかっていく。眼前から消えた果実を慌てて追いかける一誠であったが、部室の扉を開き中に入ってきた男のせいで中断を余儀なくされる。

 

「オッス! オラ、忠夫! オメェ弱いんだって?」

 

「その挨拶は色々ダメだ!」

 

 横島の登場の言葉に、何かを感じ取った一誠が突っ込む。そんな一誠を放って、横島はリアスに問い掛ける。

 

「リアスちゃんに質問なんだけどさ」

 

「何かしら?」

 

「この地図の教会分かる? それとここって神父とかいたっけ?」

 

「ええ。分かるわよ。そこは以前は、神父がいたけどここ数年は無人ね」

 

 何故そんな話をするのだろうかと首を傾げる一同であったが、横島はどうしようかと悩んでいるようである。

 

「その教会がどうかしたの?」

 

「う~ん、実はさ……」

 

 

 

 話は一誠たちが部室で雑談をしていた頃に遡る。横島は町をぶらつきながら、堕天使たちについて調査していた。そんな彼の視界に、一人の金髪美少女の姿が目に入る。どうやら、転んだようで立ち上がる途中のようあった。横島は近寄ると、声をかけながら手を差し伸べる。

 

『お嬢さん、大丈夫ですか?』

 

『あ、はい。大丈夫です。ありがとうございます』

 

 横島の手を取りながら立ち上がる。シスター服の彼女の傍らには、転んだ拍子に落ちたであろうヴェールが。横島はそれを拾い上げると、汚れを叩き落として彼女に手渡す。

 

『あ、ありがとうございます。私、この町に赴任してきたシスターで、アーシア。アーシア・アルジェントと言います! アーシアと呼んでください!』

 

『アーシアね。オレは横島忠夫。好きに呼んでいいよ。それで、アーシアはここで何を?』

 

『それが……道に迷ってしまいまして。こちらの教会なのですが、分かりますか?』

 

 そう言うとアーシアは地図を横島に見せる。

 

『ああ、ここだったら分かるよ。案内しようか』

 

『本当ですか!? これも主のお導きのおかげですね!』

 

『ああ、うん。オレ、悪魔だけどね』

 

 思わず小さな声で突っ込みを入れる横島であったが、アーシアは気づいていないようでにこやかに笑っている。そんなアーシアの様子に癒されながら、横島は地図を片手に教会へと歩き出す。

 

 

 

 

 

「それで、シスターを教会に案内したの?」

 

「そういうこと。それと、途中で怪我した坊主に回復系の神器を使ってた」

 

 軽く言う横島に頭を抱えるリアス。それも当然だろうと一誠は思う。つい先日、悪魔について勉強している中で、教会、神社に近づいてはダメだと教わったばかりなのである。悪魔としては先輩である横島が知らない訳がないのだ。

 

「一誠は可愛い子がいたからって、教会に近づいてはダメよ? 教会は敵地なのだから。いきなり光の槍が飛んできても、文句は言えないわ」

 

「あ、はい」

 

「それにしても、神器を持っているなら、その子は悪魔払いの可能性もあるわね。でも、あの教会に神父はいない筈だし、そのシスターの子が責任者になるにしても回復系の神器だなんて私たちと争うつもりはないのかしら? それとも既に他の神父も派遣されている? 一応、調査する必要があるわね」

 

「あ、それは大丈夫。オレの方で調査するから。他の悪魔払いがいるかいないか、そいつらが堕天使側、天使側かに関わらず過激派の堕天使が神器目当てに良からぬことをする可能性は高いからな。一誠の時みたいに」

 

 横島の言うとおり、一口に教会の関係者と言っても天使側と堕天使側に分かれている。天使の力を使う正規の悪魔払いたちが天使側、そこから追放されたはぐれ悪魔払いが堕天使側となる。アーシアがどちらの側かまでは分かっていないが、一誠を殺害しようとしたように堕天使の過激派に狙われる可能性は高い。

 

「そんな! なら、早く助けないと!」

 

「慌てんなって。当分は大丈夫さ。教会は見張っているし、アーシアにはお守りを渡しているからな」

 

「お守り?」

 

「そ。とっておきのお守りさ」

 

 慌てる一誠に、横島は安心させるように言う。横島のとっておきが何なのかは分からない一誠であったが、リアスたちが何も言わないことから大丈夫なのだろうと考える。

 一誠が落ち着いたのを確認した横島が、話を続けようとした時、部室内にアシュタロス家の紋章が刻まれた魔方陣が浮かび上がる。やがて、一人の少女が魔方陣から現れる。

 

「予想以上に早かったな~。保険のつもりだったんだけど」

 

 事態についていけない一誠たちを置いて、横島はその少女――アーシアに話しかける。

 

「さっきぶり、アーシア!」

 

「タ、タダオ……さん?」

 

「そ、横島忠夫だ。アーシアがここに来たということは、助けて欲しい事態が起こったんだな?」

 

 戸惑っている様子のアーシアだったが、横島の言葉を聞いた直後横島に縋り付き、叫ぶのであった。

 

「た、助けてください! レイナーレ様を! このままでは彼女が殺されてしまいます!」

 

 

 

 




 原作一巻終了まであと少し。多分。 あと原作とは違う展開。
 因みにアーシアが転移してきたのは、悪魔を呼ぶ召喚魔方陣の効果を文珠で『反』『転』させ、人間を悪魔の前に召喚するようにした魔方陣と、『護』の文珠をアーシアに持たせていたからです。
 
 
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横島inハイスクールD×D その14

原作一巻もあと少し(三度目)


 

 

 アーシアが横島たちの元に逆召喚された頃、昼に横島がアーシアを案内した教会では一人の堕天使の女性――レイナーレ――の命が奪われようとしていた。教会の床に倒れ伏す彼女は、両手両足の腱を切られ起き上がることも出来ず、今の今まで仲間だと信じていた部下――ドーナシークとカワラーナ――を睨みつけることしか出来ない。

 そんな彼女に睨まれている二人はと言えば、ゆったりと椅子に腰掛けて話をしていた。

 

「全く、貴様が遊んでいるからあの女に逃げられたではないか」

 

「仕方ないだろう。『追放されてしまいましたが、私は今までと変わらず神の僕です』と言い切ったシスターだぞ? そんなヤツが悪魔の召喚術式で転移するなんて予想出来るか?」

 

「確かにオレも思わなかったな。しかし、あのシスターの神器が手に入らないのは痛いな。あれを手土産に合流すると決めたからこそ、仕方なくレイナーレを切り捨てたと言うのに」

 

「よく言う。最初から利用する計画だっただろうが。大体そうでもなければ、アザゼル様~とか言ってる女の部下なんて我慢出来る訳がないだろうが」

 

 その言葉にレイナーレが反応し無理やり体を動かそう力を入れるが、手足は勿論翼を動かすことも出来ない。幾らレイナーレが堕天使であるとはいっても、人間なら即座に死亡してもおかしくない怪我を負っている状態では意識を失わないようにするのが精一杯なようである。

 それが分かっているからこそ、ドーナシークとカラワーナの二人は止めを刺すこともせず悠長に会話をしているのである。

 

「しかし、あの紋章はどこの悪魔のだ? この地に居座るグレモリーのものかとも思ったが……」

 

「さぁ。どちらにせよ、悪魔に神器を奪われたことに変わりはない。それに何処の悪魔だとしてもだ。あのシスターのことだ。召喚先の悪魔にソイツを助けてと契約するかも知れない。堕天使と知りながら助ける悪魔がいるかは分からんが、万が一契約が成立すればここに乗り込んでくる可能性もある」

 

「その可能性はあるな。何せ、悪魔を癒したことで追放された“堕ちた聖女”様だからな。ふむ、ここはあのイカレタ神父を連れて行くことを手土産とするか。堕ちた聖女抹殺の為とかで集まった雑魚はどうする?」

 

 椅子から立ち上がりドーナシークは、カラワーナに尋ねる。ドーナシークが言う雑魚とは、正規のエクソシストの中でも過激派に分類される者たちのことで、現在この教会に十数人集まってきていた。それとは別にイカレタと評されるはぐれエクソシストもいるが、そちらは連れて行くつもりのようである。

 

「あの男以外は使えん。ミッテルト共々ここに残していく。そうだな、レイナーレは地下で儀式に集中していると伝えればいい。アイツはレイナーレを慕っているからな。シスターと契約した悪魔共がやってくれば、レイナーレのために悪魔共と争ってくれるだろう。まぁ、計画を多少前倒しする結果になるが、あの方もお許し下さるだろう。何せ、この地に火種を灯すことが出来るのだから」

 

「悪魔が来ない場合は?」

 

「レイナーレが出てこないことを不審に思ったやつが、地下でレイナーレを発見する。それだけだ。その頃には、私たちはこの場にいない。それに、その時レイナーレが生きていようが死んでいようが、私たちにとって気にすることではない。その程度であの方の計画に支障が出よう筈もないからな」

 

「そうだな。レイナーレが生きて上層部に私たちのことを伝えたとしても、所詮は過激派内のいざこざと取られるだけか。もし、上層部がオレたちを探したとしても……」

 

「計画実行の日まで身を隠しておけばいいだけのこと。表立って動かない限り、私たちが見つかることは絶対に有り得ないからな」

 

 そのカラワーナの言葉に頷いたドーナシークは、意識を保てなくなったのかドーナシークたちを睨みつけることさえ出来ず、顔を床に伏せているレイナーレに近づくと彼女の首を掴んで無造作に持ち上げる。その際、小さく呻くような声がレイナーレからあがる。

 

「それをどうするのだ?」

 

「悪魔とミッテルトのどちらが先に見つけるかは分からんが、折角の景品だ。景品らしく飾ってやろうと思ってな。景品を飾るのにおあつらえ向きなものもあるしな」

 

 そう告げるとドーナシークは大きな十字架の形をしたオブジェに、レイナーレを磔にしていく。本来、アーシアの神器を取り出す為の儀式に使うものであったが、今はドーナシークの手によって景品(レイナーレ)を飾るオブジェと化していた。

 

「どうだ?」

 

「いいんじゃないか? 悲劇のヒロインみたいで……ああ、そういえばお前が殺した男」

 

「ああ、レイナーレが人間に化けて接触していたヤツか。戯れで殺したら、大層怒っていたな。まぁ、アザゼルからの命令だと伝えたら大人しくなったが。そいつがどうかしたか?」

 

「その男をかなり気に入っていたみたいでな。ふふっ、思い出したら笑えてくる! たった数時間過ごしただけだと言うのに、その男のことをシスターに懺悔してやがった! 堕天使の癖に! 堕天使の私が接触したせいでっ……てな。あの時のレイナーレは、まるで私こそが悲劇のヒロインと言わんばかりだったぞ」

 

 そう言うと大きく笑い声をあげるカラワーナ。更に彼女は続ける。

 

「そして今だ! 絆されたのかシスターから神器を抜くことを戸惑い、儀式を中断しようとした! 結果、仲間と思っていたヤツに攻撃され、磔にされている。どうだ! まるで神話や伝承……漫画やアニメの一場面ではないか!」

 

「そうだな。敵方女幹部系ヒロインの典型と言ってもいいな。これで、その男がレイナーレを助けに来れば完璧だ」

 

 相槌を打つドーナシークに気を良くしたのか、笑いながらカラワーナはレイナーレの傍まで歩み寄り耳元に口を寄せる。

 

「物語と違う所は、お前のヒーローが助けに来ることがないという点だな。何せ、お前のヒーローは既に死んでいるのだからな。なぁ、レイナーレ。お前のせいで死んだヒーローはなんて言ったっけな」

 

「……ッセー……く……」

 

 カラワーナの言葉に反応したのか、朦朧とした意識の中で無意識に彼を呼んだのか。そのレイナーレのかすかな声を、カラワーナは聞いていた。

 

「そうだ、イッセーだったな。お前のヒーローは。レイナーレ、精々イッセーが助けにくるのを夢見ているんだな。尤も、永遠にそんなことは起こり得ないがな」

 

 最後にそう告げると満足したのか、カラワーナはドーナシークと共にその場を後にする。残されたのは、磔にされたレイナーレと彼女が時折あげる呻き声。そして――

 

「イッセー……くん」

 

 

 ――彼女のヒーローの名を呼ぶ声だけであった。

 

 

 

 

 

 

 




あとがき
 久方ぶりの更新なのに、横島たちの出番がないです。横島たちの殴りこみを期待していた方には申し訳ありません。
 完全レイナーレ、ドーナシーク、カラワーナの三人が別人に。ミッテルトも別人になる可能性が。ほら、出番少ないから……。ドーナシークとカラワーナの口調や性格とか覚えてないです。……すみません、レイナーレも怪しいです。ミッテルトは「~ッス」とか乱暴な口調だったのを辛うじて覚えてますが。まぁ、原作で見た記憶はないのですが。アニメだけでしったけ。
 また、一巻とは大分乖離していますが、ほぼイッセーの為です。イッセー関連のイベントが潰れるので、そのフォローといいますか。

 
 堕天使たちの関係。イッセーが刺された理由。
 これらは作中設定です。

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横島inハイスクールD×D その15

原作一巻もあと少し(二日ぶり四度目)


 

 

「た、助けてください! レイナーレ様を! このままでは彼女が殺されてしまいます!」

 

 アシュタロス家の魔方陣から出現するなり、横島に助けを求めるアーシア。殺されるという言葉に驚く一誠や縋り付くアーシアを他所に、横島は軽い感じで言葉を返す。

 

「じゃ、契約する? アーシアちゃんの命を助けるくらいだったら、無償で構わないんだけどさ。オレ一応悪魔だしさ」

 

「な、何言ってんだよ横島! レイナーレって人が殺されるかもしれないって時に! 契約なんてどうでもいいだろ! 助けに行こうぜ!」

 

「ダメよ、イッセー!」

 

「何故ですか、部長!」

 

 横島に食って掛かろうとした一誠の手を掴み止めに入るリアス。そのことに対し、一誠は何故だと今度はリアスに食って掛かる。見ず知らずの人の命を優先し、行動しようとすることは素晴らしいことだと思うが、リアスはそれを許す訳には行かなかった。

 

「理由はいくつかあるわ。まず、大きな理由は私たちが悪魔であり、あの娘がアシュタロス家の悪魔召喚を行ったこと。通常は悪魔が召喚されるけど、契約者を悪魔の居る場所に召喚することもないわけではないわ。今回はそれが適用されてるの。忠夫が言ったように、あの娘の命を“忠夫が勝手に”救う程度なら気まぐれと言うことで無償で処理も出来るけど……あの娘は魔方陣の中で、魔方陣の主に願いを口にしたの」

 

「と言うことは……オレたちの仕事ん時と一緒ってことですか」

 

「そうよ。契約を結び対価を決める。その必要がある」

 

「でも、命がかかってるんですよ! 契約なんて破棄して……」

 

 尚も言い募ろうとする一誠に対し、今度は朱乃が一誠に向かって口を開く。

 

「そうですね。()()()()()()()()()()で、()()()()()()()()()であれば忠夫さんも契約に拘らないで助けに行くでしょう。ですが、今回はおそらく違います。忠夫さんはあの娘がいた教会に見張りをつけたといっていました。そして、()()()を渡したとも」

 

「それが何だって言うんですか」

 

「忠夫さんのお守りや召喚魔法は、ただの人間に襲われたくらいでは発動しません。そして、見張りから連絡がないことから考えて、それは教会の中で起こったのでしょう。それらをあわせて考えると、彼女とレイナーレと言う人物は神父または堕天使に襲われた可能性が高い。私たちが介入すると、私たちが積極的に攻撃したとして三陣営の微妙なバランスを崩しかねないんです」

 

「それじゃあ、黙って見捨てろってことですか……!!」

 

 拳を強く握り締める一誠に、白音が呆れたように一誠に告げる。

 

「誰もそうは言っていないです。だから、忠夫さんはあのシスターと契約を結ぼうとしています」

 

「契約したって……」

 

「悪魔にとって契約とは重要な意味を持ちます。そして、契約の名の下ならば敵対勢力どころか同属と敵対することになっても、仕方ないというのが共通の認識なんです」

 

「つまり……?」

 

「つまり、こういうことよイッセー」

 

 一誠に説明していた面々は一度顔を見合わせると、口を揃えて告げた。

 

「「「契約という形さえあれば、堕天使だろうが神父だろうが攻撃し放題」」」

 

 

 

 

 

 一誠がリアスたちから説明を受けている間、横島はと言うと何故契約するかについてアーシアに説明をしていた。概ねは一誠が受けた説明と同じであったが、一誠と違いアーシアが途中で遮ることはなかったのでスムーズに進んでいる。

 

「と言う訳で、これが契約書ね。要約すると、アーシアちゃんは悪魔……と言うかオレに、堕天使レイナーレの救出を依頼。で、対価はアーシアちゃんが決める。本当は便利ツールが願いに応じて適切な対価を提示するらしいけど、オレは持ってないからそういうことで。対価自体は今決める必要はないよ。無事、そのレイナーレって堕天使の姉ちゃんを救出したら、改めて決めようか」

 

「はい。わかりました」

 

「でも、本当にいいの? 聞く限りじゃ、レイナーレって堕天使はアーシアちゃんの神器を狙ってたんでしょ? 天使だとか偽って。まぁ、仲間に背後からズブってのは可哀想だけど」

 

 横島の問い掛けに、アーシアは祈りの体勢をとり答え始める。丁度、一誠への説明が終わった為、リアスたちも一緒に聞いている。

 

「確かに、レイナーレ様は天使様を騙り私をこの地に呼び寄せました。しかし、今日再会した時、彼女は何かをとても後悔されていました。そこで、懺悔をされたのです。自分は敬愛する上司を妄信するあまり、取り返しのつかないことをしたのではないかと。好ましいと思った男性を、間接的に手にかけてしまったと」

 

 そこまで言うと、アーシアは俯かせていた頭を上げ、横島の目を真っ直ぐ見つめる。

 

「彼女は確かに堕天使です。ですが、ただ欲望に溺れた存在ではないのです。苦悩や後悔することもあります。人と過ごすことで喜びや愛を感じることもあります。その心は何ら人と変わらないのです。それを知った私が、彼女の生を望まない理由があるでしょうか?」

 

 そう力強く告げるアーシアの言葉に、聞いていたリアスたちが息を飲む。そんな中、横島は最後の確認を行う。

 

「アーシアちゃんが願う理由は分かった。じゃ、これが最後の確認だ。アーシアちゃんが悪魔と契約する意味と、その結果を分かった上でこの契約を行うかだけど……」

 

「契約します。私が悪魔と契約すれば私は教会から追われ、異端として命を狙われることでしょう。ですが、それは今と変わりありません。それにこうも思います。契約する悪魔がタダオさんで良かったと」

 

 微笑みながら告げるアーシアに、視線だけで何故かと問う横島。

 

「優しい悪魔がいることを知ることが出来たからです。教会では悪魔はただ悪しきものとしか教わりません。堕天使も同じです。ですが、教会を追われたことで私は悪魔も堕天使も人間も変わりないと知りました。大事なのは種族ではなく、その心です。その心が告げるのです。タダオさんは信じられると。レイナーレ様を必ず助けてくれると。心無い悪魔ならば、私の願いを捻じ曲げ対価のみを受け取るでしょう。そもそも、契約しないかもしれません。でも、タダオさんは正しくレイナーレ様を助けてくれるでしょう?」

 

「参ったな~。美少女の依頼ってことで、断る気はなかったけど……こんなにいい女の願いなら、何が何でも叶えないといけなくなっちまったな。ただ、対価については一つ提案させてもらってもいい? 勿論、最終的な決定はアーシアちゃんに任せるからさ」

 

 頭を掻きながら努めて軽く告げる横島に、アーシアが頷く。

 

「構いません。宜しくお願いします」

 

「じゃ、これにサインを……あ、ここに名前をフルネームで……連絡先と現住所の欄は空白でいいよ」

 

 

 

 

 

 契約書に必要事項を記載していくアーシアを見守っていた一誠に、横島が視線を向ける。先程、話の途中で食って掛かったことを怒られるかと身構える一誠に、横島はお前はどうすると尋ねる。

 

「は? これはお前の依頼だろ? それにレイナーレって人を助けるのに、堕天使がいるとこに行くんだろ? 木場ならともかく、オレじゃ足手まといだ」

 

「まぁ、転生したばかりのお前に期待はしてないんだが……お前も男だしな」

 

「意味が分からん」

 

 本当に意味が分からないようで、首を傾げる一誠にアーシアから契約書を受け取った横島が続ける。

 

「レイナーレ……多分、お前が探していた女だ」

 

「それって……」

 

「ああ、レイナーレが人間に化けた姿。それこそが天野夕麻だろう。良かったな、一誠」

 

 ――彼女、お前のこと気に入ってたってさ

 

 そう横島が一誠に告げた時、一誠の脳裏にはっきりと背後から光の槍を刺された時の記憶が浮かび上がっていた。

 

 

 

『何で、殺した!』

 

『戯れ……と言えば、満足ですかな?』

 

『貴様っ……!! そんな理由で彼を……イッセーくんを……』

 

『冗談ですよ。実は上層部からの命令でして。彼の持つ神器は危険だから、取り込み等考えず早急に始末せよと』

 

『そ、そんなアザゼル様が……』

 

『分かって貰えたようですね。それでは私は記憶の消去がありますので……』

 

『……イッセーくん。定番のデートコースばっかりで、ちょっと馬鹿にしてたけど……楽しかったよ。……ごめん。私が、私が堕天使だったから……私があなたを仲間にしようと思ったから……思ってしまったから……』

 

 

 

 堕天使の姿に戻り、飛び立つ前に一度振り返った夕麻の表情を思い出した一誠。彼は、夕麻かもしれない堕天使――レイナーレを救出しに向かう横島に、同行を願い出るのであった。

 

 

 




あとがき
 前話の横島たちバージョンです。後は、殴りこんで、その後処理で一巻相当が終了です。

 レイナーレ。
 これらは作中設定です。

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横島inハイスクールD×D その16

原作一巻もあと少し(ごめんなさい)


 

 

 

 

 

 教会の前に集まったのは、横島の他にアーシアとその護衛を買って出た白音。教会を見張っていた横島の眷属である黒歌。そして、レイナーレに思うところがある一誠と、一誠から連絡を受けて駆けつけた一誠の親友(予定)の木場の六人である。

 

「悪いな、木場は関係ないってのに」

 

「いいんだよ。イッセーくんが心配だってのもあるけど、僕としても教会の神父どもがこの町にいつまでも居座っているのは気分が良くないからね。シスターアルジェントには悪いけど、教会関係者は昔から嫌いなんだよ。タダオさんの手伝いという建前がある今なら、遠慮なくヤツらを叩き斬れるからね」

 

 そう言うと、黒い笑みを浮かべる木場に顔を引きつらせる一誠。そんな一誠に気がついた木場は、黒い笑みを消し一誠に告げる。

 

「安心してくれ。何も本当に叩き斬る訳じゃないよ。自主的に手伝っている僕が殺してしまうと、忠夫さんに迷惑が掛かるかもしれないからね。死なない程度に上手くやるから」

 

「そういう心配してんじゃねーよっ!? ……まぁ、木場が神父っていうか教会関係者が嫌いってのは分かったけどよ……アーシアや堕天使はどうなんだよ?」

 

「救出対象の堕天使の女性に関しては、イッセーくんには悪いけど正直どうでもいいかな。その堕天使のやろうとしたことは許せないけど、シスターアルジェントに関しては未遂だし、その彼女が助けて欲しいと願うなら助けてもいいと思うよ。何より、イッセーくんを襲ったのとは別の堕天使だしね」

 

 その木場の言葉に安心したように息を吐く一誠。それを見ることなく木場は、横島と黒歌と話しているアーシアを見ながら話を続ける。

 

「シスターアルジェントに関しては、特に嫌いとかはないかな。彼女は忠夫さんと契約を結んだから、教会に追われる立場になる訳だしね。それに、個人的にも彼女の境遇には共感を覚えないわけでもないし……」

 

 それと、と一誠に向き直り木場は続ける。

 

「忠夫さんに関係する女性……特に容姿が優れている女性や、忠夫さんの身内に対して、敵意を向けたり怪我をさせたりしようものなら、僕が忠夫さんにお仕置きされてしまうよ。ああ、忠夫さんが身内と扱っている女性には部長たちも含まれるからね。イッセーくんも気をつけなよ? 忠夫さんは女性に関してはかなり沸点が低いからね。怪我以外にも偶然着替えを見たってだけで、お仕置きの対象になる可能性があるから」

 

「まぁ、別に進んで女の子を怪我させるつもりはないが、たかがお仕置きだろ?」

 

 大丈夫だと笑う一誠に、木場は過去に遭遇したお仕置き現場を思い出し遠い目をする。

 

(イッセーくんは知らないからね。イッセーくんも部長の眷属だから、軽いお仕置きで済むとは思うけど身内であるグレモリー卿でアレだったからな……。フェニックス卿の方も軽いお仕置きとは言ってたけど……)

 

 遠い目で何かを思い出してしまった木場を放って、一誠は横島たちの方に歩み寄る。一誠に気づいた横島は、黒歌の報告を踏まえた現状の説明を行う。

 

「黒歌が言うには、教会に入ったのを確認した堕天使の数は四。男一人に女が三人。その内、入り口から出て行ったのが男女一人ずつの計二人。アーシアちゃんから聞いたレイナーレを襲った堕天使と特徴が一致するから、単純に考えると救出作戦の邪魔者が減ったってことだな」

 

「単純に?」

 

「数だけ見れば減っているが、仲間……それもトップを襲ったヤツらが堂々と出て来た。ということは、そうしても問題ない状態にあるってことだ。つまり、レイナーレや教会の神父たち、もう一人の堕天使に追われたり攻撃されることを気にしなくていい状態だな」

 

 横島の言葉に考え込む一誠。悪魔になったとは言っても、それまでは平凡な人生を送っていた一誠にとって、横島の言葉では中の状態を推測するのは困難であった。

 そこに、教会の中の状態を()()()()()()()()木場が合流し、一誠に説明する。

 

「考えられるパターンは大きく分けて三つかな。一つは、教会の神父たちや残っている堕天使も彼女――レイナーレを裏切っている。つまり、出て行った堕天使たちの仲間。当然、堂々と出入りできる。二つ目は、レイナーレを裏切ったという状況を神父たちが知らない場合。シスターアルジェントの話では、彼女たちが襲われたという地下室に他の人たちは居なかったそうだから、襲ったことさえ知られなければ、何らかの理由をつけて教会を出ることは簡単だろう」

 

 そして、と木場は説明を続ける。

 

「三つ目だ。この場合、女性陣には教会に入ることを遠慮して貰いたいかな」

 

「どういうことだよ」

 

「教会の中に()()()()()ということだよ」

 

「誰もいないなら、さっさと救出すればいい話だろ? 何で女性陣を遠ざけるんだよ?」

 

 一誠の質問に答えず、木場は猫の姿になり横島の頭上でくつろいでいる黒歌へと問い掛ける。

 

「黒歌さん。教会の中にいた神父たちは、出てきましたか?」

 

「一人、白髪のヤツがさっき言った堕天使たちと一緒に出て行ったにゃ。他の奴らは外には一歩も出ていないにゃ」

 

「じゃあ、誰もいないってパターンは違うってことだな」

 

「いいや、教会に誰もいない可能性はあるんだよ。扉から誰も出ていなくても……ね」

 

「分かった。魔方陣での転移だろ。それなら、扉関係なく外に……」

 

 その一誠の言葉に、木場は寂しそうに小さく笑う。人から悪魔になったり、はぐれ悪魔の消滅を目の辺りにしても変わらなかった一誠が、この想定通りのことが中で行われていた場合、()()()()()()それまでの自分と変わってしまうかもしれない。今までの明るい一誠とは会えなくなるかもしれない、と木場は想像したのである。

 それでも、木場は説明を続けることを選ぶ。一誠が一誠であることは変わらないからと。

 

「その可能性もゼロではないけど、そういうことじゃないんだ。そうだね。遠回しに言うのは、やめるよ。一つ目、二つ目のパターンのどちらでもない。且つ出て行く堕天使たちを止める者が教会に誰もいない。その状況が指し示す三つ目のパターン。つまり……」

 

 そこで木場は一誠をまっすぐに見つめる。見つめられた一誠は、覚悟を問われている気がしていた。そして、同時に木場の瞳の奥に微かな喜びが秘められているのを感じるのであった。

 

「教会の中に“生者”がいない。皆、死んでいるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶句する一誠を他所に、横島は明るくアーシアに話しかける。

 

「ま、祐斗が言ったように大まかに三つのパターンがあるんだけど、三つ目はないから」

 

「な、何故ですか……?」

 

 木場の言葉で想像してしまったのだろう。アーシアの言葉は震えている。そんな彼女に、横島は大丈夫だと彼女の頭を撫でながら説明する。

 

「うちの黒歌は仙術を使えるからね。気配を探ることは得意なんだよ。な?」

 

「だからと言って、監視に駆り出されるのはちょっと不満にゃ。こんな結界が解除された教会なら、白音でも十分だったにゃ」

 

「後で何か買ってやるからさ。大体、白音ちゃんはリアスちゃんの眷属だろ。お前はオレの眷属なんだからさ。頼むよ」

 

「まぁ、私は白音と違って忠夫の眷属だから、主の頼みを聞いてやるにゃ」

 

 黒歌が白音を横目で見ながら告げた言葉に、傍で聞いていた白音の眉が少し上がるが、空気の読める白音はスルーする。但し、終わった後に絶対に仕返しすると内心で誓っているが。

 そんな二人の静かなやり取りをスルーし、横島は黒歌に肝心なことを尋ねる。

 

「で、黒歌。教会の中に何人居る?」

 

「一階に二十人。その内、力の強いのが一人。多分、こいつが残りの堕天使にゃ。それで、地下に弱い反応が一つ。他に気配はないから、こいつが救出対象のレオタードだと思うにゃ」

 

「レイナーレな。と言う訳で、中には十九人の神父と二人の堕天使がいるってわけ。勿論、生きて」

 

 その言葉に安心するアーシアと一誠。一誠は悪戯に不安を煽ってくれた木場に何か言いたそうだったが、横島が話を続けた為に口には出さなかった。

 

「祐斗が言ったように、三つのパターンが考えられた訳だが最後のパターンは消えた。で、一つ目と二つ目……つまり、レイナーレ以外が全員グルだったパターンと、裏切りを知らないパターンのどっちって話なんだけど。まず、どっちの場合にせよレイナーレは地下で動けない状態にあると見ていい。どっちも自由にする理由がないからな」

 

 その言葉に頷く一誠たち。それを見た横島が続ける。

 

「アーシアちゃんがオレのところに召喚されてから、裏切った堕天使たちが出てくるまでそんなに時間が経っていないことから、地下に大掛かりな罠が仕掛けられている可能性は低い。侵入を防ぐ為に出入り口に仕掛けるならともかく、潜伏先の地下に前々から罠を用意していたとは考えにくいからな」

 

「じゃ、一階にいる神父たちと残りの堕天使をどうにかすればいいのか」

 

「そういうことだな。で、オレたちがどうやって救出するかだけど。全員グルでも、騙されていた場合でも、オレたちがやることは変わらないんだな、これが。オレらの一部が一階の敵と戦闘している間に、残りが地下に突入。レイナーレを救助したら、速やかに合流して一階の奴らの手伝い」

 

「何でだよ? 一つ目なら全員敵だから分かるけど、二つ目ならレイナーレを助けたいって言えば戦闘しなくても……」

 

 一誠の言葉を遮る横島。大きくため息を吐き、全身で呆れましたと表現している。

 

「忘れたのか? 連中の元々の目的はアーシアちゃんの神器だ。それに、悪魔(オレたち)が今から突入するのは堕天使たち(あっち)が潜伏している場所だぞ? 敵対しているヤツが来たら、即戦闘だっての。向こうがこっちを信じるとも限らないしな。何せあっちがやってんのは敵地でのスパイ活動みたいなもんだ。当然、オレたちが自分たちを捕まえに来たと思うだろうしな」

 

「まぁ、実際に悪魔の統治する町に侵入して、こそこそやってるんだから捕縛されとしても言い訳できないよね」

 

 木場の言葉に確かにと頷く一誠。他に疑問はないようだと判断した横島は、レイナーレ救出の作戦を話し始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

「シスターアルジェントはここかな?」

 

 教会の扉を蹴り飛ばし、爽快に告げる木場。その傍らには、大胆に着物を肌蹴た黒歌の姿もある。

 教会内にいた神父たちは彼らの突然の登場に驚くが、アーシアの名が出たことで神器奪取の計画が露呈したと判断し戦闘体制に入る。 

 その彼らの先頭に、教会に残っていた堕天使の少女――ミッテルトが降り立つと木場たちに向けて問い掛ける。

 

「何のことっすか? と、惚けるのは無理みたいっすね。何処のヤツらかは知らないっすが、レイナーレ姉さまの邪魔はさせねぇっす」

 

 そう言って、光の槍を手にするミッテルト。一触即発といった状況の中で、黒歌は前に進み出る。

 

「じゃ、予定通り私はあの堕天使を貰うにゃ。神父たちは好きにするといいにゃ」

 

「分かりました」

 

 黒歌の言葉に、自身の神器である魔剣創造(ソード・バース)で創り出した魔剣を手に答える木場。

 二人は事前に決めた通り、黒歌が堕天使を、木場が神父たちを相手取り戦闘を開始するのであった。

 

 

 

「さっきの女の子の口ぶりからして、裏切ったのは二人の堕天使だけみたいだな」

 

「そうみたいだな……それにしても、アーシアを抱き抱えてよくそんな早く走れるな」

 

 木場たちを囮に裏口から侵入し、地下に続く階段を駆け下りる横島たちの言葉である。一誠の言うように、アーシアは横島に所謂お姫様抱っこで抱き上げられており、横島を先頭に横島たちを羨ましそうに見る一誠と白音が続く。無論、一誠が羨んでいるのは美少女を抱いている横島であり、白音が羨んでいるのが横島に抱かれているアーシアであることは言うまでもない。

 

「しかし、ここまで特に罠もないとは……レイナーレを確実に殺すわけでもなく、地下に入ったやつを害する罠もない。ということは、レイナーレの殺害や彼女を使って罠を仕掛けるのが目的じゃない」

 

 そう呟くと、腕に抱えているアーシアに視線を向ける。彼女は横島の走るスピードに驚いているようで、ぎゅっと横島の首に回している手に力を入れている。そんな彼女を安心させるように、抱きかかえる腕に力を込めながら横島は考える。

 

(レイナーレを裏切ったのは、自分たちがこの娘の神器を手に入れる為。それも、堕天使の上層部――グリゴリだっけ? 確か、監視するとかそんな感じの意味だった筈。そこ以外の組織に持っていく為か、私的に利用する為。ま、アーシアちゃんを探す素振りも見せず出て行ったってことは、神器は諦めたみたいだけど)

 

「ま、堕天使のごたごたはオレたちには関係ないか。……お、もうすぐ広いとこに出るな。って、どうした一誠?」

 

「いや、木場たちに任せて良かったのかなって。一応、オレも使いこなせてはないけど神器は使える訳だし、残った方が良かったかなって。木場の強さは知っているけど数が数だし……。それに黒歌さんってあまり強くなさそうだし」

 

 一誠の言葉に白音と顔を見合わせた横島が笑う。その反応に納得がいかない一誠に、白音が説明する。

 

「木場先輩なら、教会から聖剣を与えられた神父や神器持ちがいない限り、あの程度の数は余裕です。光対策もありますし。それに姉さまの心配は更に不要です。姉さまはただの猫又ではありません。猫又の中でも特に力の強い猫魈という妖怪です。更に、仙術の使い手でもあります。例え先輩が束になったとしても瞬殺です。相手取るのが堕天使だとしても、上層部から好きにしていいと言われる程度の奴なら余裕ですね」

 

「そ、そんなに?」

 

「まぁ、黒歌は所謂ウィザードタイプだから、接近戦で挑まれたら辛いかもしれんが……今のアイツは『戦車』の駒を与えたからな。元々、猫の妖怪だから素早いし、攻撃は仙術で十分。難点だった防御力も、『戦車』で素の耐久力があがってるから心配ないだろ。うん、今の一誠じゃ百人いても無理だな」

 

 明るく笑う横島に、落ち込む一誠であったが慰める者のいないまま一行は階段の先の広場へと走る。広場に出ると、中心に位置する祭壇の上を見たアーシアが、横島に抱かれたままそれを指差す。

 

「あれをっ! あそこにレイナーレ様がっ!」

 

「夕麻ちゃん!」

 

 そこには、十字架に磔にされたレイナーレの姿があった。それを見た横島たちは、彼女を下ろすべく祭壇へと駆け寄る。

 しかし、その足は彼女まであと数メートルの地点で止められることとなる。

 

「止まれ!」

 

「何でだよ、横島っ! 早く夕麻ちゃんをっ! って、何じゃありゃ!」

 

「……石像? ゴーレムって奴ですか?」

 

 横島たちの眼前に現れたのは、白音の言うような動く石像。三メートルを超す高さを持つ人型のそれが、行く手を遮ったのである。

 

「いや、アレはゴーレムじゃないな。本物はもっとデカイし、ゴツイからな。堕天使の総督が遊びで造った粗悪品の一つに、あんなのがあった筈だ。低コストで造ったから、性能もそこまで高くなかった……筈」

 

 落ち着いてゴーレムではないと告げる横島。それを聞いた白音とアーシアはゴーレムではないことに安心したが、堕天使の総督が造った物だと聞いて、警戒する。

 そんな中、立ち止まった横島たちの脇を猛スピードで駆け抜ける影が。

 

 

 

「邪魔だーー!!」

 

 

 

 それは自身の神器の真の姿――神滅具(ロンギヌス)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)」――を発動した一誠であった。

 

 

 横島に部室で問い掛けられた時、一誠は夕暮れの公園で薄れ行く意識の中、最後に見た涙を思い出した。それと同時に、悪魔となった時に切り捨てた彼女――天野夕麻――が好きだという“想い”も。

 だからこそ、彼女かも知れない堕天使レイナーレの救出作戦に参加しなくてはと一誠は名乗り出た。

 

 しかし、時間が経つに連れ、彼は内心で悩み始めていた。アーシアはレイナーレを許し、自身を代償に手を差し伸べることを願ったが、自分とアーシアの二人の人生を狂わせた堕天使を本当に救出していいのかと。

 

 その為一誠は、横島が受けた依頼だから、と積極的に作戦の立案等に関わることはしなかった。地下への突入班に加えられた時も、一階で堕天使や神父たちを相手取るよりは安全だからと、自身の安全を理由に同意した。

 そんな悩みは、磔にされ血を流すレイナーレ――天野夕麻――を見た瞬間に吹き飛んでいた。彼女を救う。ただ純粋にそのことのみを心に決めた時、真に神滅具を発動させることに彼は成功したのである。

 

 

 

 

 

 振りかぶった左腕。そこに召喚された神滅具「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)」。

 

 『Boost(ブースト)!』

 

 ――殴る。

 

 石像がよろめく。ただ邪魔者を排除する為に、腕を振りかぶる。

 

 ――殴る。殴る。

 

 まだ石像は砕けない。構わず腕を振りかぶる。

 

 『Boost(ブースト)!』

 

 ――殴る。殴る。殴る。

 

 殴った箇所が欠けては、修復していく。構わず、続ける。

 

 『Boost(ブースト)!』

 

 ――殴る。殴る。殴る。殴る。

 

 心なしか一発の威力が増したように感じる。石像の修復も追いついていない。

 

 『Boost(ブースト)!』

 

 ――殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。

 

「オレと夕麻ちゃんの間に……立ち塞がるんじゃねーーー!!」

 

 『Explosion(エクスプロージョン)!!』

 

 ――殴る!!

 

 

 

 

 

「悪魔に転生したばっかりの一誠が、力技で破壊しやがった。人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて何とやらってか」

 

 砕け散る石像と、レイナーレに向かって祭壇を駆け上がる一誠を見ながら横島は呟く。

 

「さて、白音ちゃんとアーシアちゃんは先にレイナーレのとこに。アーシアちゃんの神器ならレイナーレの怪我程度なら治せる筈だからさ。白音ちゃんは、一応レイナーレが目を覚まして暴れないように見張って」

 

「はい! 行きましょう、白音さん! って、タダオさんは?」

 

「オレ? オレはちょっとね」

 

 そう告げると、横島は砕けた石像のところへと歩き出す。それを不思議そうに眺めていたアーシアであったが、白音に促されたことでレイナーレの元へと走る。

 

 

 

 

 石像が砕けた場所にやって来た横島は、石が徐所に集まっていく箇所を発見すると無造作に手を突き入れる。

 

「折角、一誠が女の為に頑張ったんだ。後始末くらいはしないとな」

 

 そう呟くと同時に手を引き抜く横島。その手には、ソフトボール大の球が。それを持つ手に”栄光の手”を発現させた横島は、そのまま一気に握りつぶすのであった。

 

 

 




あとがき
 終わりませんでした。あとは後処理で今度こそ終わりです。
 あと木場が思った以上に出張ってきました。何故でしょう。それと、木場のアーシアの呼び方は、すぐに原作の呼び名に変わります。原作では木場が直接会話したのはアーシアが悪魔となった後だったと思いますが、拙作では追放された教会関係者です。教会関係者に恨みをバリバリ持っている為、多少距離を取っている感じですね。

 木場のアーシアの呼び方。アザゼル製ゴーレム(粗悪品)。
 これらは作中設定です。

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横島inハイスクールD×D その17

原作一巻終了。投稿遅れて申し訳ありません。


 

 

 

 

 

 教会での出来事があってから四日。それは同時に一誠がレイナーレと会えなかった日数でもある。

 

「今日も、夕麻ちゃん……というか、レイナーレとは話せねーのかな? もう四日だぜ? レイナーレたちは横島の屋敷にいるし、横島や部長は毎日会ってんだぜ?」

 

「まぁ、忠夫さんや部長は今回の責任者になる訳だしね。それに、そこに住んでいる訳だから会う機会があるのは仕方ないよ」

 

 放課後の人のいない旧校舎を歩きながら、一誠は木場にレイナーレに会えないことについて不満を漏らしていた。

 

「オレが会って話してもいいじゃないかよ……会って話さないと、オレがどうしたいのか分からないじゃないか」

 

「一誠君……」

 

 俯き加減で呟く一誠に、木場はかける言葉が見つからない。あの日、レイナーレを救出しに教会に向かった日。早々に堕天使を捕縛した黒歌が眺める中、木場は十数名の神父たち相手に、大立ち回りを繰り広げていた。特に窮地に陥ることもなく全員の捕縛が終了した頃、一誠たちが地下から戻ってきたので一誠の激昂を直接見た訳ではない。

 木場や教会に行かなかったリアスたちは、横島や白音、アーシアにその時の一誠の様子を聞かされただけ。それでも、一誠が神滅具「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)」に覚醒した時の状況を聞かされれば、レイナーレに対する一誠の想いが何に起因するの検討はついた。しかし、当の本人は赤龍帝の籠手を発動した時のことをよく覚えておらず、未だ自分の感情を整理出来ていないのである。

 

 そんな感じでこの四日間を普段より大人しく過ごしていた一誠であったが、クラスメイトや両親からは病気かと疑われたり、横島に話しかけては落ち込み、木場に慰められるという場面が多く目撃されていたことで、ある噂が立ったりしたがそれも次第に消えていくことになる。

 

 何故なら、この日以降一誠の傍にある転校生の姿が見られるからである。

 

 

 

 

 

「部長っ! 横島っ!」

 

 オカルト研究部の扉を勢い良く開け放った一誠が中に入ると、白音、朱乃とリアスの眷属たちの姿はあったが、主であるリアスや横島と彼の眷属である黒歌の姿はない。その代わりではないが、ここ数日よく顔を合わせる少女の姿があった。

 

「あ、イッセーさん。祐斗さんも」

 

「やぁ、アーシアさん。新しい生活にはなれたかい?」

 

「はい。皆さん優しくて、楽しいです。ただ、お祈りには気を使いますが」

 

 木場の問い掛けに笑みと共に答えるアーシア。彼女は現在リアスと暮らしており、悪魔である一誠たちの前でお祈りをしないように気をつけているのだと一誠は思っている。

 

「部長と横島が何処にいるか知らないか? 今日は部室に顔出すって言ってたんだけどさ。というか、授業サボりすぎじゃないか? アイツ」

 

「ああ、それならそろそろ来る頃かと。リアスから連絡が来ましたし」

 

「部長から?」

 

「ええ。今日は忠夫さんと一緒に行動していますから。全く、女王である私を連れて行かないなんて酷い王様だと思いませんか?」

 

 そう言って一誠に笑いかける朱乃。瞳の奥が笑っていないと感じた一誠は、朱乃から視線をそらし同意だけしてソファーに座り込む。そんな一誠の前に木場が紅茶を差し出す。受け取った一誠が述べた感謝の言葉に、微笑みを返す様は決まっており、イケメンめと内心で湧き上がってくる恨み言を紅茶と共に飲み込む。

 一誠がそんなことを思っているとは知らない木場は、微笑みから真剣な表情になると朱乃に尋ねる。

 

「女王である先輩を連れずに、部長が忠夫さんと行動しているということは……」

 

「ええ。処分が決定したので、その処理ですね。堕天使たちの処分については早々に決まっていたのですが……神父たちの方が時間がかかって。先程、全て終わったと」

 

「……先輩。神父たちはどんな処分を?」

 

 堕天使の処分について先に聞きたかった一誠だったが、木場の言葉とその瞳を見てタイミングを逃してしまう。木場の瞳の奥に、普段は感じない暗い何かを見たからである。

 そんな一誠に構わず、朱乃は木場の問いに答える。

 

「先に言っておきますが、処分を決めたのは忠夫さんです。グレモリーは眷属の貸与と言う形で間接的に関与しましたが、契約を結んだのが忠夫さんであり、彼らの拘束は契約遂行上の行為だからです。当然、契約の過程で起こったことなので決定権は忠夫さん、または契約相手であるアーシアさんにあります。何より、リアスが堕天使と神父の処分に関わるのは避けなければならない。その理由を木場君は分かっていますね?」

 

 頷く木場に、どういうことかと視線で尋ねる一誠。そんな彼に、木場が説明する。

 

「部長は悪魔の中では所謂上流階級……貴族なんだよ。そんな家の令嬢が、敵対関係にある組織の一員を処分する。ね? 問題ありそうだろ? 忠夫さんなら全く問題ないって訳じゃないけど、契約中のことだからである程度は黙らせることが出来るんだよ」

 

「まぁ、今回はこの町に堕天使がいるということで事前に根回しはしてありましたので、堕天使だけならリアスが関わっても問題になる可能性は低かったんですが。神父たちが少し面倒でしたね。そのせいで処分まで時間が掛かりましたし。それで、処分なのですが……」

 

 そこで言葉を切ると、今一度木場に忠夫が決めたことだと前置きする朱乃。それに木場が頷くのを確認してから、続きを話す。

 

「結論から言うと、堕天使たちは私たちの元で”労働刑”です。そして神父たちですが……忠夫さんの”むさ苦しいおっさんなんていらん、解放”の言葉で、解放となりました。先程、リアスとグレイフィアさんが転移魔方陣で転移させたそうです」

 

 

 

 

 

「さて、木場君も兵藤君も白音ちゃんの華麗なツッコミで落ち着いたことですし、もう少し詳しく話をするとして……アーシアちゃん、白音ちゃんと忠夫さんを迎えに行って貰えますか? 場所は屋敷の地下ですので。兵藤君お待ちかねのレイナーレさんも一緒にいますので、連れてきてください」

 

「それは構いませんが……屋敷でしたら、私一人でも行けますよ?」

 

「私が一緒は嫌ですか?」

 

「そ、そんなことありません! 一緒に行きましょう!!」

 

 そう言って、白音の手を握って部室を後にするアーシアを微笑ましそうに見送っていた朱乃だったが、白音のツッコミという名の拳を受け呻いている一誠たちに向き直ると苦笑しながら話し出す。

 

「これ以上のことは、アーシアちゃんや白音ちゃんは聞かなくていいことですから。さて、私は先程神父たちが少し面倒だったといいましたね?」

 

「はい、確かに言ってました」

 

「堕天使は兵藤君のおかげで、事前に存在を確認していましたので、根回しが出来ていました。駒王町で堕天使と何があっても、堕天使の上層部は関与しないという内容で。つまり、今回の捕縛も堕天使との全面戦争のきっかけになる可能性はゼロだったわけです」

 

 ここまでは理解できましたかと、一誠に尋ねる朱乃。一誠と木場が頷くと、朱乃は話を続ける。

 

「ですが、捕縛した神父たちが問題でした。事前に意識を取り戻していたレイナーレさんや、一緒に捕縛した堕天使のミッテルトさんが言うには、彼らは教会を追放された神父たち。非正規の悪魔祓いと異端審問官の集まりだそうです。しかし、堕天使たちがそう思っているだけで、実際は違うという可能性もあります。本当に追放された神父なのか。それを確認するのに、これまで時間が掛かりました」

 

「確認って、何でそんなこと確認するんですか?」

 

「彼らの中に、非正規の悪魔祓い集団を取り締まる為、堕天使の組織に潜入している本物の神父がいる可能性がゼロとは言えなかったからです。実際、彼らの中にはこっそり正規の神父で、潜入していたと告げる者が数人いましたから。敵対組織に潜入する場合、捕まればどうなるか分かりません。ですので、色々と覚悟をしている筈です。そんな彼らが自ら進んで正体を明かすことは、普通有り得ないのですが……。今回は捕まえたのが悪魔であり、潜入していたのが悪魔にとっても敵対する組織ですからね。身分を明かし一時的に協力体制を取ることは不可能ではないと判断したと言われれば、まず間違いなく嘘だと思っても、万が一を考えて確認しない訳には行きません。時間は掛かりますが、確認せずに駒王町で正規の神父を処分するリスクの方が高いですからね。まぁ、結果的に全員追放さていたのですが……」

 

「確かに、オレでも嘘じゃないかって疑いますね。しかし、何でそんなことを」

 

「通常、悪魔が教会に問い合わせても、すぐに確認が取れる可能性は低いですからね。様々なやり取りを間に挟むことになるので、窓口に問い合わせた後、回答まで一週間で済めば短い方です。その間は処分を進めるわけにもいきませんし、捕虜として扱う必要がありますから、不当な扱いは出来ません。それと、兵藤君たちが教会に侵入する前に逃げた堕天使と神父がいましたよね? 彼らが助けに来ることも期待してたようです」

 

 人間同士でも違う国でのことを確認するのに時間がかかるのと一緒かと、テレビで見た内容を思い出し納得する一誠。しかし、朱乃の言葉に引っかりを覚え、問い掛ける。

 

「でも、一週間も経っていませんよ? 最低でも一週間じゃなかったんですか? それとも拷問で聞き出したとか?」

 

「通常のルートで問い合わせる場合は……です。一応、問い合わせ以外の手段で確認する方法もありますが、それを記憶を探るという方法です。拷問なんて、滅多に出来ることではありませんから。はぐれ悪魔なら、楽しく拷問出来るのですが……。因みに記憶を防ぐ術なんかもありますし、過去には対抗術を掛けた者以外が解除しようとすると、脳が破壊される術式が組み込まれている例もあったので、記憶を探る方法も今回は取れません。今回、回答が早かったのは忠夫さんが、特殊な外交ルートを使ったからですよ」

 

 横島の使った特殊な外交ルートとは、各教会が設けている問い合わせ窓口ではなく魔王から天界という直通ルートである。横島はよりによって魔王の一柱であり主に外交を担当しているセラフォルー・レヴィアタンに直接天界に問い合わせてくれと頼んだのである。そこで、セラフォルーが部下に任せれば問題なかったのに、横島の頼みならと魔王自ら問い合わせてしまったのである。

 当然、魔王からの直接連絡なので相手もそれなりの地位についている者であり、雲の上と言ってもいい者から尋ねられた神父たちはたまったものではなかっただろうと同情してしまうと同時に、今回の一件は駒王町で起こったことである為、領主であるリアス・グレモリーの名にどのような影響があるのかを考えると、頭が痛くなる朱乃であった。

 

 また、朱乃は知らないことだが、セラフォルーがついでとばかりにアシュタロス家の頼みだと話した為、冥界では未だ新興の家の一つとしか認識されていないアシュタロス家が、いきなり天界で魔王と懇意であり慎重に扱うべき家として衝撃のデビューを果たしていたりする。

 

 

 

「と言う訳で要らぬ面倒を掛けてくれた癖に、結局追放されていたというオチを付けてくれた神父たちですが……。追放された経緯がアーシアちゃんとは違います」

 

「経緯が……ですか? アーシアは確か……悪魔を治療したことで魔女とされたんですよね?」

 

 節々に神父たちに対する恨みを滲ませる朱乃に、少々ビクつきながら聞き返す一誠。

 

「そうです。アーシアちゃんは敬虔なシスターでありながら、神器で悪魔を治癒しました。悪魔を治癒する精神、治癒した事実。これらが教会の信仰に反する為に、略式の異端審問で即刻異端だと糾弾され魔女と呼ばれることになりました。堕ちた聖女として追放されましたが、教会の関係者も彼女の人格が善良であることは否定しないでしょうね」

 

 その言葉に頷く一誠と木場。接して時間は短いが、彼女が善良であることを疑ったことはない。

 

「ですが、彼らは違います。悪魔と契約した人間を家族全員惨殺する。悪魔を殺すことを愉しむ。生き物を傷つけることを好む。暴力的な言動が目立つ。このような行き過ぎた行為や、神父として外れた振る舞いを教会の警告を無視し繰り返し行っていた為に、教会から追放されたエクソシストたち。それが彼らです。彼らの中には、異端狩りと称して、異端と認定された人たちを襲っていた者さえいました。神の名を免罪符に自身の行為を肯定する彼らは、解放すると告げた忠夫さんに自慢するようにこれらの行為を言ったそうです」

 

「そんな奴を追放するだけで野放しにするなんて。これだから、教会は……」

 

 吐き捨てる木場に、黙り込む一誠。そんな二人に構わず、朱乃は続ける。

 

「アーシアちゃんは、彼らがそういう人たちだと知りませんでした。レイナーレさんが彼らをコントロールしていたから、アーシアちゃんがレイナーレさんの所に来た時には、彼らは命令以外で誰かを襲ったりはしていなかったらしいわ。レイナーレさんとミッテルトさんが知る限り……ですが」

 

「アーシアを遠ざける理由が分かりましたよ。そんな奴らと一緒にいたなんて、知らない方がいいですよね。でも、横島も何でそんな奴らを解放なんて……」

 

「アーシアちゃんに頼まれたからです。彼らを解放して欲しいと。彼女に対する行いは未遂ですし、自身にされたことで誰かを恨み処罰を望む娘ではありませんから。ですから、忠夫さんは解放するとアーシアちゃんに言いました」

 

「それがアーシアを遠ざけた本当の理由ですか。自分の願いで、そんな奴らを野放しにするなんて知ったら……」

 

 知ればアーシアが悲しむだろうと俯く一誠に、一誠より横島を知る木場が朱乃に尋ねる。

 

「忠夫さんは確かに女の人に弱いけど……頼まれたからと、そんな奴らをただ解放するとは思えないんですが」

 

「解放はしますよ? ただ、彼らが追放された後に所属していた堕天使の組織は既に存在しません。レイナーレさんともう一人はこちらにいますからね。レイナーレさんを裏切った堕天使は、彼らを不要と連れて行かなかったようですから合流しないでしょうし。そんな彼らを解放したところで、彼らだけで集まって迷惑な集団になることは目に見えています。ですので、そのまま町の外なんて近いところに解放することはしません。その為の、転移魔方陣での転移です」

 

「それって、適当に遠いとこに放り出したってことですか?」

 

 尋ねる一誠に、朱乃は黙って上を指差す。その仕草に釣られ上を向く一誠と木場に、朱乃は淡々と告げる。

 

「最初、ゴミの棄て場所に困っていた忠夫さんに下はどうかってリアスが提案したんですけどね? 冥界や地球に棄てると、ゴミから変な成分が出て困るかもしれないでしょう? そう言ったら、忠夫さんが折角なら未知との遭遇を目指して貰おうと言い出して。本当、子供みたいな人ですよね? リアスとグレイフィアさんと忠夫さんと四人で、一生懸命転移魔方陣を作ったんですよ。ゴミは上に、神父はヒマラヤの何処かに転移するように。それなのに、リアスは私にその成果を見せてくれなかったんですよ。二日もかけたというのに」

 

「せ、先輩? そのゴミって……神父たちのことですか? それに、ヒマラヤって」

 

「神父は解放しましたよ、少し自然環境が厳しいかもしれませんが。ただ、一緒にゴミを地球外に棄てただけです。何がゴミかは教えませんが」

 

 あ、ここでした話はアーシアちゃんと白音ちゃんには内緒ですよ? と告げる朱乃に、頷く一誠と木場の二人であった。

 

 

 

 

 

「でさ、神器の方なんだけどさ。赤龍帝の籠手って名前と能力を教えてもらったんだけど、元の能力を倍加していくってことで体力強化しろって言われたんだけど……」

 

「ああ、いいよ。僕に付き合えってことだね?」

 

「付き合えって言うか、色々教えてくれないかって思ってさ」

 

「うん、いいよ」

 

 そこで会話が途切れると、立ち上がったり座ったりを繰り返す一誠。朱乃の説明が終わった後から、次第にそわそわし始め、木場と会話しては繰り返すこと四度目だったりする。

 

「落ち着きなよ。もうすぐ戻ってくるって」

 

「でも、何か緊張してきたっていうか。まともに会話するの久しぶりだし」

 

「まぁ、刺された日から今日までですから、十日くらいですか? 教会ではすぐにレイナーレさんが気を失ったから、まともに話をしていないんですよね。レイナーレさんも、合わせる顔がないとか、昨夜からうだうだとやってましたね」

 

 紅茶を飲みながら告げる朱乃に、中々部室にやってこないのはレイナーレが嫌がっているからではと、考え込む一誠。そんな一誠に声をかけようとした木場の耳に、話し声が聞こえてくる。

 

「来たみたいだよ、一誠君。ほら、声が聞こえるだろ?」

 

「お、おう」

 

 その言葉に扉に意識を集中する一誠。あまりにも集中し過ぎて、彼の背後に現れた人物に気づくことはなかった。

 

「よう、一誠」

 

「ほわっ!?」

 

 それは一人窓から入ってきた横島であった。一誠の反応が満足行くものだったようで、深く頷いている。

 

「いいリアクションだ。さて、緊張はほぐれたか? 女の前では、余裕を見せないと行かんぞ? 緊張でガチガチの男は敬遠されるからな。ま、それが可愛いと受ける場合もあるんだが……」

 

「いや、唐突に語られても……」

 

「おお、悪い。さて、大丈夫みたいだし、さっさと御対面と行くか。まず、家で働いてもらうことになった……」

 

 一誠の顔を見て大丈夫そうだと判断した横島は、扉の前に立ち勢いよく開け放つ。

 

「堕天使のミッテルトちゃんだっ!」

 

「誰だー!!」

 

 レイナーレのことにしか頭になかった一誠が、大声で突っ込む。それに気を悪くしたミッテルトが、横島に顔を向けて文句を言う。 

 

「ご主人、アイツ失礼っす」

 

「まぁまぁ、一誠はレイナーレのことで頭がいっぱいなんだ。許してやれ」

 

「はぁ。アレが赤龍帝……ね。レイナーレ様も何処がいいのやら。ミッテルトっす。ご主人の家で雇われメイドすることになったので、よろしくお願いするっす」

 

 メイドにしては荒い口調で告げるミッテルトに、木場が挨拶する。一誠も自己紹介をするが、ミッテルトよりもリアスの後ろにいる彼女を気にしているのが丸分かりである。

 そんな一誠の態度に、焦らされたせいで会いたい気持ちが高まっているのだろうと横島は苦笑する。結局、事前にあれこれ考えたって仕方ないのだと。

 

「それで……こっちが」

 

「私の眷属として働いてもらうことになったレイナーレよ」

 

 リアスが横に退くと、彼女の全体像が露になる。その姿は、かつて一誠がデートした少女――天野夕麻であった。何故か以前の他校の制服ではなく、駒王学園の制服を着ていることを微かに疑問に思ったが、それらを無視して彼女に集中する一誠。

 そんな一誠の視線に微かに頬を染めたレイナーレが口を開く。

 

 

「……レイナーレです。グレモリー眷属、『僧侶』です。よろしくお願いします」

 

「兵藤一誠。グレモリー眷属、『兵士』。……会いたかったよ、夕麻ちゃ……いや、レイナーレ」

 

「イッセーくん……」

 

 

 

 

 

 

 

「感動の再会みたいな雰囲気を出してるとこに悪いけど、レイナーレは明日から天野夕麻って名前で一誠のクラスに転入するから」

 

「ええーー!!」

 

 

 




あとがき
 一巻相当が終了しました。次話から二巻相当の内容になる筈です。あと、呼称表が欲しい今日このごろ。一誠から誰かへの呼び方は大体覚えていますが、その他が曖昧です。間違っていたら、指摘頂けると幸いです。
 また、アーシア関係の話は意図的に薄くしております。その辺りは、次話以降に入れる予定です。

 
 教会問い合わせ窓口。異端審問及び異端狩り。
 これらは作中設定です。

 関連活動報告は【HY】と記載します。
 ご意見、ご感想お待ちしております。感想いただけるとモチベーションあがります。


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横島inハイスクールD×D その18

ガールズトーク回。

今年も宜しくお願いします。



 

 

 

 一誠とレイナーレの対面から数日後。横島たちが暮らす屋敷のリビングに、横島とメイドたちを除いた同居する面々と、普段はいないグレイフィアとが揃っていた。

 一同は、複数のお菓子をテーブルいっぱいに広げ、それぞれ手に飲み物を持ち号令を待っている。

 

「では、明日からのレイナーレさんと兵藤君の同棲を記念して」

 

 

 

「「「「カンパーイ!!」」」」

 

 

 

 

 

「っと、一緒になって乾杯までしておいて何なのですが……同棲ではなく居候では? ご両親もいることですし」

 

「確かにそうね。ノリで乾杯したけれど、本来はイッセーの家で頑張ってねって話だったわよね?」

 

 朱乃の号令に疑問を抱いたソーナとリアスの二人であったが、当の朱乃はアーシアと一緒になってレイナーレに絡んでおり、黒歌と白音はそれを眺めている。グレイフィアは未だメイドモードな為、飲み物やお菓子の補充をしており気にする素振りも見せない。

 そんな彼女たちを見ながらリアスは、以前一誠の不在時にレイナーレを連れて挨拶した時のことを思い出す。

 

「まぁ、イッセーの両親も嬉しそうだから良かったわ。一応、軽く暗示で思考誘導はしたけど、娘が出来たと大喜びだったもの」

 

 イッセーの両親にはレイナーレを、親戚の家に下宿し駒王学園に転入する予定が、親戚の急な転勤で不可能になり、寮も既に満室状態であり下宿先を探していた所をイッセーに冗談めかして誘われたと説明していた。冗談だとは分かっていたが他に当てがなく、ダメ元で相談に来たのだと。

 当初は冗談で誘う息子に怒っていた二人だが、レイナーレが一誠について一生懸命フォローする様を見て落ち着き、娘が出来たと喜んで受け入れることになる。小声で嫁とか呟いていたので、一誠のフォローをするレイナーレを見て彼女の気持ちを悟ったのかもしれないとリアスは考えている。

 

「あのご両親なら、レイナーレとも上手くやるでしょうね。いい人たちだったし。イッセーにドラゴンが宿っている以上、親族をガードする意味でも、二人の仲を応援する意味でも同居は望ましいものね」

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)……ですか。レイナーレさんも大変かもしれませんね。うちの匙もそうですが、龍は宿す者は異性を引き付けるところがありますからね。神器の覚醒を機に、そちらの方に影響が出るかもしれませんよ?」

 

「そこが心配なのよね。イッセーはハーレム志望だし……幸い、レイナーレは元堕天使だから、本心はどうあれハーレムについての理解はあるってことかしら。殺傷沙汰にならないなら、私は別にイッセーがハーレム作っても構わないのだけど……忠夫がねぇ」

 

 リアスの言葉に、今頃イッセーの部屋でお泊り会を実施している男の姿を思い浮かべるソーナ。相思相愛の男女――カップルや夫婦――には寛容になったと言っていた彼は、きっとイッセーのことも応援しているだろう。しかし、モテ男は別である。

 かつて、パーティー会場で女を侍らせ自慢するかのように振舞った男が急に倒れたことがあった。その時、彼は仏罰が下ったのだろうと悪魔にあるまじき発言をしていたが、それ以降横島がパーティーに出席しなくなった為、横島が原因なのだとソーナは理解している。つまり、一誠や匙が横島の目の前で女性に囲まれるようなことがあれば……

 

「……匙……ではなく、彼女たちに注意しておきましょう。兵藤君の方は……」

 

「まだ異性を引き付けると確定した訳ではないわ。互いに引き付けあう運命のかの龍を始めに、力あるモノばかり引き付けるかもしれないし。まぁ、私もレイナーレに忠告しておくわ」

 

 もしそうなれば、横島は間違いなく()()。二人はそう確信していた。

 

 

 

 

「そういえば……皆さんはどうやってタダオさんと知り合ったのですか? 私とレイナーレさんは、あの時でしたが皆さんは知り合ってから長いんですよね?」

 

 カップを手に小首を傾げながら問うアーシア。レイナーレも気になるらしく、菓子に伸ばした手が途中で止まっている。

 

「まぁ、アーシアと比べれば長いけど……私とソーナが忠夫に初めて会ったのは生まれた時になる訳だし。でも、グレイフィアに比べたらかなり短いわよ?」

 

「そうですね。私とリアスの次に長いのは……」

 

 ソーナの言葉を遮るように、朱乃が続く。

 

「私ですね。グレモリー家に行く前に、忠夫さんとは少しの間暮らしていましたので、お二人よりトータルの時間は長いかもしれませんが」

 

 横島と暮らしていたことを強調して告げる朱乃に、多少ムッとするリアスたち。親元から離れるしかなかった朱乃の境遇を思えば嫉妬することではないと分かっているが、そう簡単に割り切れないのが乙女心である。

 そんなリアスとソーナの心を、白音の言葉がさらに刺激する。

 

「私と姉さまも、グレモリーに預けられる前は忠夫さんにお世話になりました」

 

「まぁ、出逢ってからの時間なんてグレイフィアに比べれば大したことないにゃ。それに、付き合いの長さなんて気にしても意味がないにゃ。眷属である私たちは、これからずっと忠夫と一緒なんだから」

 

 その黒歌の言葉に、自身の胸に手をあてるアーシア。確かに感じる横島との繋がりに、暫く笑みを浮かべるアーシアだったが、そうではないと言葉を紡ぐ。

 

「あの、付き合いの長さを気にしている訳では……。私はただ、どのような出逢いだったのか気になっただけで……。あと、私の知らない忠夫さんを知りたいなぁって……」

 

「でしたら、順番に話をしていくのは如何ですか? よくよく考えれば、リアス様とソーナ様はご幼少の頃から知っていますが、朱乃様と黒歌、白音様がどう出逢ったのか詳しくは知りませんから」

 

「にゃ? 忠夫から聞いてないのにゃ?」

 

「聞きましたが、大雑把な説明くらいでした。まぁ、大筋は分かりましたから詳しく聞かなくても問題はなかったのですが、この機会に聞くのもアリかと。リアス様とソーナ様の場合は……そうですね、男として意識したきっかけを話すということで」

 

 グレイフィアの言葉に飲んでいた紅茶を噴き出すリアスとソーナ。そんな二人の様子に、不思議そうに首を傾げるグレイフィア。

 

「何をそんなに動揺しているのですか? お二人がタダオ様に好意を抱いているのは、皆様ご存知だというのに」

 

「確かに隠していた訳じゃないけど……いきなりだったから。ね? ソーナ?」

 

「……ええ、まぁ」

 

 頬が真っ赤に染めたリアスの言葉に、同じく頬を染めたソーナが言葉少なく同意する。そんな二人をにこやかに見つめていたアーシアに、グレイフィアが話しかける。

 

「アーシア様は何を話しますか? やはり、ここは”悪魔の駒”で転生することを選んだ経緯でしょうか? レイナーレ様は他に選択肢がほぼない状況でしたが、アーシア様は別の対価にする選択肢もあったのですから」

 

「えっと、それは……」

 

 全員の視線を受けたアーシアは、空のカップを口元に運んだりと落ち着きが無い。口を開いては閉じを繰り返すこと数度。意を決し、彼女は答えを口にする。

 

「そ、それは……その……生きたいなぁって」

 

「生きたいから……ですか。まぁ、時間はたっぷりありますし、最初はアーシア様のお話を聞くとしましょう。その後は、その場のノリで」

 

 グレイフィアの提案に、アーシアを除く全員が頷く。話を聞かせてもらう立場から、話をする立場に変わったアーシアは予期せぬ展開に動揺しながらも、少しずつ話を始めるのであった。

 

 

 




あとがき
 今年も宜しくお願いします。
 さて、ガールズトーク導入回です。以後、アーシア⇒ソーナ、リアス⇒黒歌、白音⇒朱乃⇒グレイフィアの順で話を進める予定です。まぁ、アーシア以外の順番は予定なので、前後することもありますが。

 朱乃、白音がリアスに初めてあった時期。
 これらは作中設定です。

 関連活動報告は【HY】と記載します。
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