八つの魔剣が支配する (mikasa779)
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プロローグ
プロローグ 上


どうも、初めまして主です。
小説を書くこと自体初めてですので暖かい目線で見ていただけると幸いです。

今話は原作のプロローグですので飛ばし読みでも大丈夫です。

主は途中であきらめることが多々ありますので失踪する可能性があります。それでもいいという方は、感想、評価などしてくれるとありがたいです。


では!


 むかし誰かが言った。――明るい星ほど暗い夜に()ちる、と。

 

 彼女がそんなことを思い出したのは、まず、その夜が久しぶりの新月だったから。

 自分を明星(みょうじょう)(たと)えるような自惚れを、彼女は持ち合わせない。が――彼女を知る者たちにとってはそうではない。全ての狩りには相応(ふさわ)しい備えがある。人を狩るにも獣を狩るにもそう。まして相手が星であるなら、必要となる準備は他の獲物の比ではない。

 その原則を踏まえて今夜、彼ら(、、)は事に臨んだ。絶対の成功を期したその布陣を前に、だから彼女も素直に思ったのだ。なるほど確かに――この顔ぶれなら(、、、、、、、、)星のひとつも堕とせよう(、、、、、、、、、、、、)

 

「――くッ――!」

 

 殺意に追われて木立(こだち)を駆け抜ける彼女を、暗闇から生じた巨爪(きょそう)が薙ぎ払う。とっさに身をひるがえして杖剣(じょうけん)で受けるが、流しきれない衝撃に体が浮き上がった。地面と足が離れた無防備な一瞬、追い撃ちの爪撃(そうげき)が風を切って走り、

 

「――ハァァッ!」

 

 強く空中を踏みしめ(、、、、、、、)、彼女はその一撃を両手の刃で迎え撃った。獲物を引き裂く寸前で逆に斬り落とされる巨爪。それで攻勢が途切れた瞬間、彼女はすかさず着地して反撃に移る。

 

「――ッ⁉」

 

 そこへ割り込むように襲いかかる黒い霧。目で見て取るより先に、悪寒(おかん)に押されて彼女は身を(かわ)した。避けきれなかった霧が左の肩を掠めていき、ぞっとするような不快感に全身が粟立(あわだ)つ。――それに気を向けている暇もありはしない。

 

木々は薪に(フォルティス) 融け落ちよ岩土(フランマ) 全き焦熱の内に(マクシーメ)

 

 頭上から紅蓮が落ちた。さながら炎の海より生じた波濤(はとう)、一帯の木々を瞬時に炭化せしめる埒外の大焦熱。その恐るべき奔流を、彼女は両手の杖剣で迎え入れ――ぐるりと掻き混ぜ(、、、、、、、、)散らす(、、、)。一部分のみ熱波が逸れた。灼熱を浴びた地面は溶岩溜まりとなってごぽごぽと沸き立ち、彼女の立つ場所だけが、わずかに浮き島となって残される。

 

「――よく凌ぎなさる。足掻くだけ無駄と分かっていましょうに」

 

 揶揄を込めて響き渡る男の声。彼女が見上げた暗い空を、青白い光が強烈に照らし出す。――新月の晩にあるまじき巨大な月が、そこに浮かんだ。

 むろん、天体ではない。魔法によって造り出された光球だ。それ自体は手習いの子供でも使える初歩の魔法。だからこそ戦慄せずにはいられない――単なる明り取りの術を仮初の月にまで押し上げる、使い手の途方もない力量に。

 偽りの月に照らされて、夜空に六つの影が浮かぶ。ある者はひときわ高い木の上に、ある者は宙に浮かぶ(ほうき)に、ある者は得体の知れない巨大な「何か」の肩に足を置き。星堕としの狩人たちは、それぞれの立ち位置から彼女を見下ろしている。

 

「――ッ――」

 

 途端、彼女の左肩を猛烈なむず痒さが襲った。先ほど黒い霧が掠めた部位。違和感が生じて間もなく、服の内側からげらげらとしゃがれた笑い声が響き――布を嚙み千切って現れたのは、ひどく歪な人の顔(、、、、、、、、)。子供のこぶしほどの大きさの。

 自分の肉体に浮かんだ異形の腫瘍を、彼女は躊躇いなく肩の肉ごと斬り落とす。濡れた音を立てて肉腫が地面に落ち、それを目にした影のひとつが悲しげな声を上げた。

 

「あぁぁぁ――酷いね、削いじゃうなんて。寂しいよ、寂しいよ。君と一緒にいさせてよぅ」

 

 喉が潰れた羊のように不安定な音声。少女のようでいて、老婆のようでいて、泣いているようであり、嗤っているようでもあり――あるいは、そんな区別などとうの昔に失っているかもしれない。辛うじて人語の体を残しているだけの、それはもはや悪霊の譫言と変わらない。

 

「テメェの仕事は灯り持ちか。いいご身分だな、ババア」

 

 戦意を滾らせた女の声が響く。青白い光に切り取られたその(シルエット)は五体の随所、とりわけ肩から先において明らかに人体を逸脱している。異様な発達を遂げた両腕は五つもの関節をそれぞれ有し、指と一体化した巨爪は打ち鍛えられた刃物のように鋭い。先の攻防で斬り落とされた部分さえ、彼女の見る前で瞬く間に生え伸びた。

 

「…………」

 

 挑発的な言葉を投げられた影は、それでも杖を高く掲げた姿勢のまま黙して声を上げない。途方もない魔力の持ち主であることは明白だが、今は光球を浮かべる役割に徹しているようだ。逆光のために表情は窺い知れず、ただ背筋の伸びた佇まいから厳粛な為人(ひととなり)が伝わるのみ。

 

「どうぞご自由に!キャハハハハハハハ!」

 

 童子の無邪気さをもって響き渡る老爺の狂笑。小柄なその影を肩に乗せた「何か」――天を衝く巨躯が軋みを上げながら動き出す。さながら飛蝗(バッタ)を捕まえようとする子供の動作で、それは彼女へ向かって巨大な両手を振り下ろす。

 

「――斬り絶て(グラディオ)!」

 

 その掌を、彼女は真っ向から迎え撃った。刹那に重なる剣閃。彼女を摑もうとしたふたつの掌がばらりと解け、無数の土塊となって地に落ちる。手首から先が失われた長大な腕に、彼女はすかさず跳び乗って走り出した。視線の先に敵をひたと見据え、

 

■■■(とまれ)

 

 びたり、と体が硬直する。どんな呪文をかけられたのとも違う、より根源的な「停止」の命令が彼女を縛めた。それを成した老爺とはまた別の影を、彼女は驚愕をもって見返す。

 

「いい足止めだクソジジイども。――キツいのいくぜ、先輩!」

 

 一瞬の停滞を衝いて異形の影が肉薄する。指と一体化した巨爪が渾身の力で握り込まれ、そうして完成した拳が一切の躊躇なく獲物へ叩き込まれる。肉と骨がひしゃげる鈍い音――耐える術などあろうはずもなく、彼女は地上へと叩き落される。

 

「――がぁぁぁぁぁッ!痛ってぇぞクソがァァァァ!」

 

 それでも黙ってやられはしなかった。異形の影が咆哮し、手から肩口まで寸断された右腕がばらばらと落下する。被弾の瞬間に彼女が残した置き土産だ。

 

「――――ッ!は、ァ――!」

 

 空中を蹴って跳ぶことで溶岩溜まりへの落下を避け、接地と同時に回転して受け身を取る。それで辛うじて命は繋がれた。――が、ダメージは隠しようもなく深刻だった。

 全身の関節がガタつき、目から滴る血で視界が赤く染まる。人面瘡(じんめんそ)を斬り取った肩の傷からは出血が止まらず、他にも体中の負傷を数え上げればキリがない。苦悶を通り越して笑いすらこみ上げた。――自分がまだ生きていること自体、何かの冗談のようだ。

 彼女にも分かっている。この六対一に勝機など絶無。振り切って逃げ(おお)せる希望すら紙のように薄い。だが――諦めなど思いもよらない。絶望的な戦いなら魔法使いとして生きる間にいくらも経験してきた。今回はその中でもとびきりの一戦、ただそれだけのことだ。

 

「――ァァァアア!」

 

 そして何より、決めている。――こんな生き方を自分の代で終わらせると。己のやり残しを次代に押し付けはしまいと。その誓いが彼女に膝を折らせない。猛る魔力が全身を巡り、満身創痍の体をなおも奮い立たせ、

 

こちらです(、、、、、)先輩(、、)!」

 

 彼女のよく知る声が耳に届き、眩い閃光が戦場に割り込む。夜闇を切り裂き視界を白一色に染め上げる強烈な魔法の光――それが保たれているわずかな間に、彼女は何者かに手を引かれて走り始める。

 木立の暗闇をしばらく走り抜けると、地面にぽっかりと空いた穴が彼女を迎え入れた。手を引く相手とともにその中へと飛び込み、なおも足を緩めず奥へとふたりで駆けていく。いくつかの分岐を抜けて、追い立てる狩人たちの気配が遠くなると、彼女らはようやく足を止めた。

 

「…………助かった、よ。まさか、あの地獄から逃れて、一息つけるとは」

 

 切れ切れの声で言いつつ、彼女はそっと周りを見渡す。――洞窟の奥深くまで来たが、所々に置かれた鉱石ランプのおかげで周囲の空間はほの明るい。あらかじめ人の手が入った場所のようだ。

 

「すぐに追撃がない……ということは、この場所は彼らから隠れおおせているんだね。君の用意した抜け道かい?大したものだ、一体どうやって――ッ」

 

 関心を込めて彼女が口にしかけた瞬間。その背中を、鮮やかな熱が貫いた。

 

「――エミ、ィ――?」

 

 震える声で相手を呼ばわり、彼女は呆然と自分の胸元を見下ろす。――刃の切っ先がそこにあった。背中から心臓を貫いた杖剣の、自らの血に濡れたその刀身が。

 

「……ごめんなさい。私にはもう、これしか」

 

 嗚咽混じりの声が背後から響く。彼女もそれで全て理解した。――相手は六人ではなかったのだ。自分を仕留めるために集った星堕としの狩人たち。彼女こそは、その最後にして決定打となるひとり。

 

「でも、安心してください。……彼らに渡しません。あなたの魂の一片たりとも」

 

 力の抜けていく彼女の体が、背中から優しく抱きしめられる。相手に刃を突き立てながら、そこに宿る愛情に一切の偽りはない。そう――だからこそ、彼女も今まで気付けなかった。

 

「ずっとずっと、お慕いしています。――永遠に一緒ですよ、先輩」

 

 そう語る相手の瞳こそ、この暗い夜でもっとも底知れない闇を湛えた深淵。その奥底に――薄れゆく意識に中、彼女は自分の魂が吞まれていくのを感じた。

 




次回更新日は未定ですので気長に待っていただけたら幸いです。
では、また次回の前書きで会いましょう。


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プロローグ 下

どうも主です。
今話に登場するカッコの種類書いときますね。

「」…実際に喋っているときに使う
『』…心の中で喋っているときに使う

それでは、どうぞ楽しんで読んでいってください!


 やあ!突然だが俺は黒田燐、16歳だ。ん?誰に話しけている?だって?さあな、俺にも分からん!何しろ自分が何処にいるのかすらもわかってないんだ。女の子をトラックから庇って意識を失って気づいたらここにいたんだ。

 

「ここは神域じゃよ。勇敢なる魂よ」

 

 誰かの声が響く。

 

『ッ!だれだ!』

 

「お主の居った世界の神じゃよ」

 

『神?』

 

「そうじゃ。突然だがお主は死んでもうた。小さな女の子を庇っての」

 

『ッ!そうだ!あの時の女子は⁉』

 

「大丈夫じゃよ。生きておる。」

 

『ほっ。よかった。』

 

「繰り返すがお主は死んでもうた。だが、若くして、そして勇敢な魂をそうやすやすと見逃すわけにはいかん。

 そこでじゃ、お主転生せんかの?」

 

『いいですよ』

 

「無論無理とは言わn……なんじゃて?」

 

『だからいいですよ』

 

「よいのか?」

 

『えぇ。あの女の子も無事みたいなので。未練はありません。

強いて言えば親孝行できなかったのが悔やまれますね』

 

「しっかりしとんの~。了解じゃ。では転生特典を、3つ選んでくれ。

ちなみに転生する世界は'七つの魔剣が支配する'じゃ」

 

『では、身体能力の向上、完全記憶能力、痛覚耐性、でお願いします』

 

「了解じゃ。ではその特典で転生じゃ。ではの~」

 

 そう言われた途端、目の前が真っ白に光ったと同時に意識が無くなった。

 

 

 

 

――――15年後――――

 

 俺いや私は15歳になった。女の子として。

 ちなみに、弟もいる。

 

 そして、今日は学校の入学式なのだ!この原作を読んだことがある人ならば分かるだろう、あの学校だ。そうキンバリー魔法学校のことだ。

 

 そういえば自己紹介してなかったな、黒田燐改めアリシア・ホーンだ。

 

「ねぇノル」

 

「なに?姉さん」

 

「ついにキンバリーに入学だね」

 

「そうだね。やっと目的を果たせる」

 

 ノルは恨めしそうな目をしながらそう答えた。

 

「だね。それはそうとして、【咲かずのジャック】も見事に咲いたね」

 

「現七年生が優秀なのかな?」

 

「――あらあら!まぁまぁまぁ!」

 

 とそこへ、ひとつの花壇から伸びてきた花弁が、雌しべを震わせてアリシアたちに語りかけた。

 

「そこのあなたたち。とっても緊張しているわね!」

 

「「――そう見える(ますか)?」」

 

「ええ、見えるわ。何が怖いのかまでは知らないけど、もっと力を抜いていいのよ!せっかくの入学式なのだもの、今日くらいは全て楽しむべきじゃない?そう――たとえどんな恐ろしい未来が待ち受けるとしても、せめて今日くらいはね!」

 

「恐縮です。ところでマダム――そろそろ戻らないと、茎がちぎれてしまいますよ」

 

「あら、いけない!」

 

 アリシアたちの歩みに合わせて茎をのばしていた婦花(ダリア)が、自分の伸びすぎに気付いて慌てて花壇に戻っていく。

 

「励ますか怖がらせるか、せめてどっちかにして欲しいわよね」

 

 と、隣から声がかかる。横を見ると、ふんわりとした巻き髪が愛らしい小柄な少女がいた。

 

「……こほん」

 

 初めて言葉を交わす同期生の姿を目に焼き付けつつ、アリシアは言葉を返す。

 

「そうだね。貴女は、驕る植物(プライドプラント)にはなれてるの?」

 

「いいえ、初めてよ、あんなに喋るやつを見るのはね」

 

「はは、婦花の言うことなんて気にすんな。」

 

 会話を始めて間もなくアリシアたちの後ろからまた別の声が聞こえた。

 

「あの手の魔法植物は、根を張った土が含む魔素の質によってがらっと性格が変わんのさ。――で、お三方。世にも貴重な満開のジャック翁を前にして何だが、おれにはそれより気になることがあってよ」

 

 長身の少年がそう言い、視線を列の先に移した。

 

「……あれ、どう思う?」

 

 そうして少年が指差したのは――列の中でもただ一人他と違う衣装を身にまとった少女だった。

 

「……サムライだなぁ」

 

「「サムライね」それも女の子の」

 

「だよな。おれの見間違えじゃねぇよな。だがなんでキンバリーの入学式に東方(エイジア)のサムライが来てるんだ?」

 

「それはまぁ――この列にいるってことは、彼女も新入生なんじゃないか」

 

「制服は?」

 

「急な留学とかで間に合わなかったんじゃない?」

 

「ここ大英魔法国(イエルグランド)を始め、キンバリーは世界から魔法の素質のある者をスカウトしてるし、彼女もそのクチだろう。それに、君も」

 

 と、不意打ち気味に少女に尋ねる。彼女は一瞬固まり、目を丸くした。

 

「あ、あれ――もうばれた?」

 

「AやOの発音に少し訛りが残ってるからね。おそらく湖水国(ファーンランド)辺りじゃないか?」

 

「……うー、当たり。びっくりさせたかったのになぁ……」

 

―――――――――――――――――――――

 

パレードも半ば終盤に差し掛かったころ、それは突然起きた。

 

 

――地を蹴り駆ける(イアース)

 

「――え?」

 

 びり、と巻き毛の少女の両脚に奇妙な痺れが走る。途端――意志とは無関係に、彼女の体は列を外れて一直線に走り出した。

 

「おいッ⁉何やってんだお前!」

 

「君、止まれッ!それ以上パレードに近付くな!」

 

「わ、分かってるっ!分かってるのにっ――足が勝手にっ――!」

うわずった声で叫ぶ少女。異常を悟ったアリシアとオリバー、長身の少年が同時に駆け出した。

少女の背中を追っていると、視界に入ったパレードの光景にギョッと目を剥く。

 

「……!?おい!あのトロール、こっち来てねぇか!?」

 

長身の少年がそう叫ぶ。

 

 




長らくお待たせしました。
不定期更新ですので次回もしばらく開きますが気長にお待ちください
では、次話でお会いしましょー!


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