愛の嗚咽 (神鹿)
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第一話 桜道の学生証明書

初めて小説を書きました。温かい目で読んでくださるとありがたいです。週一連載を目指しています。


下校途中。桜の花びらが春風と共に散りゆく中、僕らは出会った。

 

〜第一話 桜道の学生証明書〜

 

僕は大学二年生になった。一浪してやっと入れた大学、僕は全力で夢である警察を目指した。初めて大学生になった時の感触は今でも忘れない。今までの高校生活とはガラッと変わった特別な雰囲気があった。受ける授業も人それぞれで、特別仲がいい友達はできなかった。おそらくそれは僕だけではないだろう。というか、そうであってほしい。うちの大学は大学二年生になってからやっと希望の学部を学校に提出できる。僕は医学部だ。昔からずっと医学部を目指して勉強してきた。周りの友達たちは、皆、眉を顰めて言う。

 

「なんで医学部なんだよ」

 

警察になるために医学部に行く必要はないが、警察になった時医学の知識があればなんらかの役に立つと思い勉強した。

 

「学部希望届を提出しに来ました」

 

事務室の開いているドアをノックしたら、奥の方から自分より背が低い小柄な女の人が今行きますと大きな声で出てきた。彼女は僕の目の前に立ち、紙を見て高く透き通るような声で僕の名前を読み上げた。

 

「西園寺...夕生君だね。ありがとう」

 

事務室の佐藤さんは大学でも優しくて話しやすいと定評がある。肩よりも下に下ろされた茶髪、フローラルな匂い、男子が皆んなメロメロな理由がなんとなくわかる。

 

「おぉ。医学部か。勉強大変だろうけど、西園寺君ならきっとできるよ!!」

 

彼女はそう言い、白い歯をみせ、鼓舞してくれた。

 

「はい。ありがとうございます」

 

確かに典型的な人気のある先生の話し方だった。僕はバックからヘッドフォンを取り出し耳につけ、本を読み始めた。ヘッドフォンは耳栓がわりだ。僕は読書は決して好きではないが、好きな作者がいればその人の作品たちを追うのは結構好きだ。僕が今ハマっている作者は名取だ。彼のストーリーは奥が深く、最初から謎を散りばめる彼の書き方はすごく好きだ。その中でも今読んでいるのは「スナイパーが異世界に転生したようです」という本。なんとも言えない面白さがある。学校を出て、目黒川に沿って歩いてゆくと綺麗な桜が見えてくる。

 

「綺麗だなぁ...」

 

つい独り言を言ってしまった。だがそれぐらい綺麗だった。本を読んでいると人と肩がぶつかった。本が手元から離れ、地面に落ちた。

 

「ごめんなさい!!」

 

女の子だった。彼女は忙しく呼吸をし肩を揺らしていた。彼女はすぐに本を拾い、本を右袖で拭いた。

 

「あ、いやこちらこそごめんなさい」

 

彼女は僕に本を渡し、目を合わせず全速力で走って行ってしまった。

 

「うん?」

 

学生証明書が落ちていた。しかもそこにはうちの大学の名前が記してあった。普通なら運命とか思うのだろうが僕はこの時比較的冷静だった。

 

「明日大学で返そ」

 




ありがとうございました。


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