インフィニット・オルフェンズ 鉄の華 (狼ルプス)
しおりを挟む

オルフェンズとの出会い

 

 

「っ!ここはいったい…」

 

目が覚めると廃墟のようなところに手足を縛られて居た。

 

 

俺は織斑一夏。第二回IS世界大会《モンド・グロッソ》に出場する姉の織斑千冬を応援するためにドイツに来ていた。

一回目の大会で優勝した千冬姉は当然のように有名になり、俺は周りの人達からいつも姉と比べられ、『出来損ない』やら『凡人』やら罵られ、『織斑千冬の汚物』だの『お前みたいなやつが何故存在しているの?』と言われたこともある。

 

だけど、そんな自分を理解してくれる人は少なからずいた。千冬姉は勿論のこと、数少ない友達の五反田弾やその家族,御手洗数馬.鳳鈴音,IS 《インフィニット・ストラトス》の生みの親である篠ノ乃束だ。

 

この人たちだけがいつも俺を支えてくれた。

 

「(確か俺は、試合が始まるまで余裕があったからトイレに行って……客席に戻ろうと歩いている途中、誰かに布のようなもので口と鼻を抑えられて……)」

 

 

自分の身に何が起きたか確認し、今に至る。

 

 

「気が付いたか、織斑一夏」

 

俺は声がした方に振り向くと数人の男女がこちらを見ていた。

 

「お前達は?」

 

「俺達は織斑千冬の大会二連覇を阻止するためにお前を人質にした」

 

 

男は誘拐の理由について説明したその時、部下と思しき男が目の前の女に近づいた。

 

「織斑千冬が試合を放棄しました」

 

「そうか、それじゃあこいつは用済みだな」

 

女はそう言うと、懐から拳銃を取り出した。

 

「悪く思うなよ、ガキ。目撃者でもあるお前に私達の事をバラされるわけにはいかないからな。恨むんなら非力な自分を恨むんだな」

 

女は銃口を俺に向ける。

 

「(まずい、このままじゃ…)」

 

 

しかし……

 

ピシ、パリン

 

突然何かが割れる音がした。

 

「なんだ?」

 

「なんの音だ?」

 

 

自分を誘拐した仲間の一人が上を見る。俺も上に視線を向けると何もない空間に亀裂が入っていた。

 

「な、何だ、あれ?」

 

ピキ、ベキ、パキ

 

 

「お、オイ、何がどうなってやがるんだ?」

 

亀裂は徐々に広がる。すると、突然、吸い寄せられるほどの強風が吹き、手足を縛られていた俺は、その中にいとも簡単に引き寄せられた。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

一夏が亀裂に飲み込まれた後、空間は元に戻った。

 

「す、吸い込まれやがった…」

 

「お、オイどうするんだ!人質が消えちまったぞ!」

 

「狼狽えるんじゃないよ!消えたのなら寧ろ好都合だ。目的は遂行した。もうこの場所には用はない」

 

その後、誘拐犯は爆薬を辺りに仕掛け、廃墟から離れた。その直後、大きな爆発を起こし、廃墟は跡形もなく消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

織斑一夏は、この誘拐事件により、死亡扱いとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……い……か?……」

 

誰かに呼ばれる声が聞こえる。

 

「おい、お前大丈夫か?」

 

「ん、んん…」

 

目を開けると俺と同じくらいの二人の少年が居た。一人は褐色の肌に銀色の髪をした少年、もう一人は俺と同じ黒髪でサイズの合わないブカブカな服を着てる少年。

 

俺は起き上がると銀髪の少年が安心した様子で話しかけてくる。

 

「やっと起きたか。お前、何があったんだ?手足が縛られていたみたいだし、一応切っておいたが」

 

一夏は手足が自由になっている事にようやく気づき、銀髪の少年が無造作に置かれた縄に指さす。どうやら縄をほどいてくれたみたいだ。

 

俺は周りを見渡すと見た事が無い建物が並んでいた。

 

「ありがとう、それとここは何処だ?俺はドイツにいたはず…」

 

「ドイツ?ここはクリュセ独立自治区だけど?」

 

「クリュセ?ここ、ドイツじゃないのか?」

 

目を覚めたらいきなり知らない場所にいる事に混乱する一夏。

 

「クリュセを知らないのか?」

 

「ああ」

 

「クリュセを知らないって、どこに住んでたんだお前?」

 

「生まれは日本で、俺はドイツの第二回IS世界大会《モンド・グロッソ》の会場に居たんだ。けど変な奴らに攫われてどこかの廃墟に捕らわれてたんだ」

 

 

 

 

そう話すと二人は首をひねる。

 

「にほん?あいえす?もんど・ぐろっそ?なんだそれ?」

 

「え?」

 

ISは世界でも常識的になっており褐色銀髪の少年が言った事に一夏は戸惑う。

 

「ISを知らないのか?」

 

「少なくとも俺は知らねぇな。ミカ、何か知ってるか?」

 

「知らない」

 

「……なあ、少し聞きたい事があるんだけど」

 

一夏はそんな事はあるはずがないと思いながらも褐色の少年に問う。

 

「なんだ?」

 

「この世界の情勢とかを聞いても良いかな?」

 

「え?別に良いけど、俺達が知っているのでいいか?」

 

「ああ、それで良い」

 

少年からこの世界について聞いた。厄祭戦、ギャラルホルン、モビルスーツなど聞きなれない単語に戸惑うが何よりここは火星ってことに心底驚いた。

 

そして話を聞く限りここは自身が居た世界とは違う世界ということが分かった。

 

「…とまあ、こんな感じだけど…分かった?」

 

「うん、大体分かった。ありがとう(もしかしてあの亀裂の入った空間に飲み込まれたからか?入った瞬間の時の記憶が全くない)」

 

一夏はいくら状況整理をしても空間に飲み込まれた以降の記憶が全くなく、どうやってここに辿り着いたのかわからなかった。

 

「それじゃあ次はこっちが聞く番だ。こっちだけ話をしてフェアじゃねぇしな」

 

「わかった。流石に信じられない内容かもしれないと思うけど…話すよ」

 

一夏は自分の事を出来るだけ2人に説明する。2人は最初は信じられなかったが、一夏の表情を見て黙って話を最後まで聞いてくれた。

 

 

 

 

「おいおい、別世界の人間って…地球出身ならまだしも、住んでい

た世界そのものが違うって」

 

「俺はここが火星って言う事実が信じられないよ…俺の世界じゃそのMSやら厄際戦、ギャラルホルンという組織も聞いた事もない」

 

黒髪の少年は話を聞いているだけで、銀髪の少年は考え込む。

話をした後、不安でいっぱいだった。これからどうすれば良いのか。何時、元の世界に帰れるのか。そう考えているとまた銀髪の少年が話しかけて来た

 

「ちょっといいか?」

 

「え?う、うん」

 

「もし良かったら…俺達と一緒に来ないか?」

 

「……え?」

 

予想外の言葉に戸惑う。俺の心を察したのか少年は話を続ける。

 

「どうして?今の話…普通なら信じないだろ?」

 

 

「目を見れば嘘じゃないことくらいわかるよ。それに何かお前、寂しそうな目をしているんだよ。まるで、どこにも居場所が無いみたいにさ」

 

「俺、そんな目してたのか?」

 

「ああ、それでどうする?一緒に行くのか?行かないのか?」

 

一夏は少し考え込み、行き場所もなく、行き当たりばったりするよりは目の前の2人と行動を共にすことが最善と至る。

 

 

「……行くよ。どの道、帰る場所が無いから」

 

「よし、決まりだな!俺はオルガ・イツカ、オルガって呼んでくれ。それで隣に居るのは」

 

「三日月・オーガス、三日月で良いよ。あんたは?」

 

「俺は織斑一夏、名前は後で来るから、一夏って呼んでくれ」

 

「そうか。よろしくな一夏」

 

「よろしく一夏」

 

「ああ、こちらこそよろしく。オルガ、三日月」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

CGSでの一夏

第二話です!

また新しくアンケートもあるのでそちらもよろしくお願いします!




 クリュセ独立自治区の郊外にある丘にある建物民間警備会社クリュセ・ガード・セキュリティ。通称CGS。

 

その動力室には二機のモビルスーツがあり、その下に1人の少年が眠っていた。

 

「やっぱりここにいた。気持ちもわからんでもないけど…」

 

するとそこへ2人の少年が入って来る。1人は呆れながらため息を吐き、もう1人は表情を変えず寝ている人物に声を掛ける。

 

「オルガ」

 

オルガと呼ばれた少年は紫色の髪の少年の呼び声で目が覚める。

 

 

「何だミカ、一夏も」

 

「どうしたんだじゃないよ。全く、またこんな所でさぼって…社長や一軍の人達に見つかったら何されるか……」

 

三日月と呼ばれた少年はオルガに注意する。

 

「分かってるって」

 

「ここは誰も来ないしな、確かにサボるにはうってつけな場所だよな」

 

「だろ?お前もたまにここに来るだろ?」

 

「まぁな、ここ年中暖かいし」

 

「2人ともそんなこと言ってるば「お~い!居たか?三日月、一夏!」あ、おやっさん」

 

3人が話している途中、入口から肌が黒く足が義足になっている中年くらいの男が入って来た。

 

「なんだ?おやっさん」

 

「なんだじゃねえよ。マルバの奴がお前を呼んでるぞ!」

 

「社長が?」

 

オルガがおやっさんに説教されてる中、三日月と一夏は後ろにある二機のMSの内、それぞれ片方を見る。2人はそれを見続けているとオルガの声が響く。

 

 

 

 

 

 

 

「おーい!ミカ、一夏、行くぞー!」

 

「うん、わかった」

 

「今行く!」

 

オルガに呼ばれた一夏はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

辺り一面草木が一本もない荒れた大地で一夏達はモビルワーカーを操り訓練していた。三日月が乗ったモビルワーカーは白、明宏が乗った青、シノが乗ったピンク、ユージンが乗った黄、一夏が乗った灰色のモビルワーカー四機と戦っていた。

 

 

 

「そこぉ!」

 

「もらったぁ!」

 

左右から2機のモビルワーカーが一夏に向けペイント弾を撃つ、それを機体を回転させながら回避し、相手にペイント弾を撃ち込む。

 

「マジかよ!?」

 

「くそ、あいつあんな動きも出来るのかよ!?」

 

一夏の放たれたペイント弾は二機のモビルワーカに命中し、2人は脱落となる。

 

 

「一夏もアイツと同じ化け物ってことか?ちぃ!このタイミングでも躱すのかよ!?三日月・オーガス!」

 

明弘は三日月に食いつくがやがて撃沈した。

 

 

「流石だな、三日月」

 

『そっちこそ』

 

2人は通信越しに互いに称賛し、一夏は三日月に向けてペイント弾を撃つ。

 

「おっと」

 

三日月はそれを回避し、一夏に向けてペイント弾を撃ち始めた。2人は普通ではあり得ない動きで攻防一戦を繰り広げ、周りを回りながら撃ち合うが意外な形で終わった。

 

『ん?…あ、弾切れ』

 

「あれ?こっちもだ」

 

一夏と三日月はいくら引き金を引いても弾は出る様子はなく、装填されていたペイント弾は全て撃ち切ってしまったようだ。

 

『一夏も?』

 

「ああ、今回は引き分けみたいだな」

 

『……そうだね』

 

訓練が終わった一夏達はモビルワーカーをドックに格納した後、昼飯を食いに行った。

 

 

「俺たちがお嬢様の護衛?」

 

模擬戦を終えた三日月、一夏、ユージン、シノの四人がリーダーのオルガと整備班のビスケットと一緒に昼飯を食っている最中に社長のマルバからの仕事を聞いたユージンはオルガに訪ねる。

 

「お嬢様って良い匂いとかしているんだろうな~。な、三日月?」

 

「お嬢様て言っても同じ人間だし。そんなに変わんないだろ」

 

「はぁ~!?」

 

お嬢様という言葉に反応したシノの発言に興味が無い三日月はモグモグと昼飯を食べた。

 

 

「三日月に言っても無駄だよシノ」

 

「お前はどうなんだよ一夏!」

 

「そんな趣味は無いし、興味が無いよ」 

 

「はぁ~!?お前もかよ一夏!」

 

「女に飢えてない三日月さんと一夏さんにそんな事分かるわけ無いっすよ」

 

興奮したシノを一夏と調度水を配りに来た年下の子が宥めようとする。

 

「しかし、あれだな。社長もよ口だけの社員様より結局は俺たちの力を認めてるって事なんじゃねえの?で、これを切っ掛けによ社員の奴らを出し抜いて俺らが一軍になって…」

 

「いくらマルバの親父が推薦したって、使い捨ての駒しかねえ俺らを認めるわけねえだろ」

 

ユージンは自分の話を悲観的に否定するオルガに切れる。

 

「おい…俺ら三番組隊長のお前がそんなんだからいつまでもこんな扱いじゃねえのか!?」

 

「やめなよ、ユージン」

 

「うるせえ!てめえは黙ってろビスケット!だいたいお前は……!」

 

「ストップだユージン」

 

一夏はユージン眼前にスプーンをつきつける。

 

「なんだよ一夏!?」

 

「それ以上はやめとけ、後三日月が不機嫌になってるぞ?」

 

「は?っ痛たたた!」

 

突然、無表情ながら不機嫌な三日月に耳をつねられるユージンは涙目になり悲鳴をあげる。

 

「喧嘩かユージン?俺は嫌だぞ」

 

「痛い、痛い!ちぎれる!ちぎれる!」

 

「別に喧嘩じゃあねえよ。な?」

 

「!ああ」

 

「はは!災難だったなユージン?」

 

「笑ってんじゃねぇよこの色男!」

 

喧嘩じゃないと言われた三日月は耳から手を離し、モグモグと昼飯を再開する。

一夏はそんなユージンに揶揄い気味でユージンを煽る。因みに何故ユージンに一夏が色男と言われたのかは理由がある。よく仕事で買い出しとかに行く最中にスタイル抜群の大人の女性によく話しかけられるからだ。その中でシノは涙を流しながら俺の両肩を掴み前後に揺すられた事もあった。

その後もいろいろ話をしながら昼飯を食べていた。

 

「ねぇ一夏」

 

「ん?」

 

「今どっちが勝ち越してるんだっけ?」

 

「んーそうだなぁ、勝ったり負けたり、引き分けの繰り返しだけど…今は確か三日月が勝ち越してるぞ」

 

「そっか…」

 

「いつまでも勝ち越させると思うなよ三日月?直ぐに追い抜いてやるさ」

 

「簡単に勝ちを譲る気はないよ。けど、一夏は油断できないからね」

 

今の一夏にとっては仲間と一緒に他愛ない話をするのが楽しみの一つであった。三番組の中で三日月と一夏は一番の腕を持ち、この2人に敵う相手はCGSにはいないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、参番組のメンバー、オルガ、ビスケット、ユージン、三日月、一夏の5人が社長室に行く。

 

 

「入れ」

 

オルガ、ビスケット、ユージン、三日月が入室し、綺麗に立ち並ぶ。

 

 

「参番組、オルガ・イツカ以下五名、到着しました」

 

「こいつらが護衛を担当する予定の……ん?」

 

クーデリアが立ち上がり、彼らに挨拶をする。

 

「始めまして!クーデリア・藍那・バーンスタインです」

 

「ご丁寧にどうも…織むって、あれ?」

 

一夏以外は挨拶の習慣がないため、反応する所がなく、沈黙する。

 

「「「「……」」」」

 

「……(地味に恥ずい)」

 

少しだけ恥ずかしい思いをする一夏であった。

 

「はい」

 

「どーもッス!あの……」

 

「テメーら!まともに挨拶もできんのか!ったく……では、改めてこれからの段取りを」

 

マルバが怒鳴り散らしながら呆れたようにぼやき、仕切り直そうとした時、クーデリアが一夏に話しかける。

 

「あなた!」

 

「……俺?」

 

「はい!お名前は?さっき名乗ろうとしてくれましたよね?」

 

「織斑一夏です。俺のはファミリーネームが先に来て、名前が後に来ます」

 

 

「わかりました。それでは一夏、ここを案内してもらえますか?」

 

「はい、構いませんが…隣にいる三日月も一緒に大丈夫ですか?」

 

「なんで俺も?」

 

「いいから」

 

「はい、構いません。えっと、あなたのお名前を聞いてもいいですか?」

 

「三日月・オーガス…です」

 

三日月は敬語が苦手のため少し言葉を詰まらせながらも自己紹介をする。クーデリアは2人に握手を求めるが、三日月は自身の手に一瞬視線を持っていき、一夏は顔を逸らしていた。

 

「クーデリアさん、こちらに…」

 

「早く行くよ、置いていくよ?」

 

「あっ!ちょっと!」

 

「おっ…おま「お気になさらず」は…しかし」

 

「何か、問題でも?」

 

「いや…その…」

 

フミタンの毅然とした態度に、マルバは口をもごもごさせる。クーデリアは一夏と後を追い、部屋から出ていった。オルガとビスケットは、苦笑しながら顔を見合わせる。

 

 

「あの!」

 

 

 

一夏と三日月はクーデリアを施設内を案内をしながら歩いていると突如と2人の前に出る。

 

「どうかしました?」

 

「握手をしましょう」

 

クーデリアは手袋を外し手を前に出す。

 

「………」

 

「ああ…」

 

しかし2人はクーデリアの手を取ることはしなかった。

 

「何故ですか?私はただ、あなた達と対等な立場になりたいと思っ「手が汚れてたから遠慮したんだけど?」あ…す、すみません。気を遣っていただいて、一夏の方は…」

 

「まぁ…握手くらいなら」

 

「はい!では、改めてよろしくお願いします一夏」

 

 

 

 

「ああ、後俺の手…血で汚れてしまってますけど…大丈夫ですか?」

 

「⁈」

 

一夏の言葉にクーデリア手を引く、それを見た2人は

 

「クーデリアさん、さっきあんたは対等な立場になりたいって言ったよな?本当に対等な立場になりたいのなら、さっき三日月と握手してたはずだし、俺から手を引くことなんてなかったはずだ」

 

 

「それってつまりさ、今は対等じゃないって事ですよね?」

 

「!」

 

「……いくぞ三日月、今は仕事をやらないと」

 

「うん」

 

「……」

 

2人はクーデリアの横を通り過ぎ施設の案内を再開する。その際クーデリアが2人に話しかけることは全くなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからいつものようになり、その日の夜、案内を終えた一夏と三日月は一緒に社内の外を走っている。

 

「三日月」

 

「ふっ、ふっ、なに?」

 

「お前はどう思った。クーデリアさんの事」

 

「別に、どうも思わないよ…逆に一夏はどう思ったの?」

 

「あれは多分世間の実態を知ってるようで知らないお嬢様だな。多分気持ちが中途半端で覚悟も出来てないだろう。何かを変えたければ…犠牲も覚悟しないといけないと言う事に、まだ気づいていないんだよ」

 

「フーン」

 

「聞いてきたのお前だろ三日月?」

 

三日月の反応に呆れつつ、会話を交えながら走っていると突如として信号弾が上がった。一夏と三日月はジャケットを着込み急いでモビルワーカーがある倉庫へ戻る。数十秒後に大量のランチャーがCGS を襲う。一夏は三日月と昭弘と一緒にシノの隊と襲撃者達を迎撃をする。

 

「クソ金持ちかよバカスコ打ちやがって、誰か知らねえがこのまま俺達を塩漬けってか」

 

 

「さあな……っ!これは、三日月!」

 

「ああ…来る」

 

すると、爆風により出来た土煙から赤いモビルワーカー隊が現れた。

 

「あれは!!」

 

仲間の一人が敵のモビルワーカーを見て驚く。他の仲間達もそのモビルワーカーを見て驚いた。

 

「ギャラルホルン!?」

 

「何で彼奴らが!?」

 

仲間達は一瞬驚いたが直ぐ様ギャラルホルンのモビルワーカー隊と交戦する。しかし、火力の差があり苦戦を強いられている。

 

「そこ!」

 

一夏はギャラルホルンのモビルワーカーを一機倒すと距離を取る。

 

「悪い、遅れた」

 

「遅いぞオルガ!」

 

「すまねえ。ミカと一夏、昭弘、シノの隊と下がって補給を急げ」

 

シノの野次に謝り、全体の指揮を務めるオルガ。それからオルガの素早い指揮が飛び交うが状況は芳しくない。すると、補給を終えたシノの隊と一緒に出撃したダンテのモビルワーカーが一人で前へ出た。

 

「おい!」

 

「向こうの方が硬いんだ!近づかなきゃ!」

 

シノは注意をしようとするがダンジの頭には入らず前へ進むが地面に着弾した衝撃で体勢が崩れてしまう。

 

「動け!足止めたら死ぬぞ!」

 

シノの言葉通りにギャラルホルンのモビルワーカーがダンジをロックオンした。殺られるとダンテは思った。しかし、ギャラルホルンのモビルワーカーの装甲板に穴が空く。

 

「…ごめん。遅れた」

 

「無事かダンジ?」

 

「三日月さん、一夏さん!!」

 

ダンテにシノの所に戻るように言うと二人は鼠の様に素早く動きギャラルホルンのモビルワーカーを翻弄し倒していく。

 

「お前達ばっかりいい格好させるかよ!」

 

 

そこへ昭弘も混ざり、三人で互いの背中を預けるように戦う。

 

「良し!ミカと一夏、昭弘に食いついた。混戦でならあいつらに勝てる奴はいねえ。宇宙ネズミの本領発揮だ!今のうちに立て直すぞ!負傷者もなるべく下げろ!」

 

 

「でもよ、こんなのは時間稼ぎだ。じり貧なのは変わんね。それより一番隊の奴らはどうした。何時になったらくるんだ?」

 

ユージンは自分達を陽動に使った一番隊の増援があまりにも遅すぎて焦燥感が積もる。その言葉にオルガは自分の中にある悪い方の予感に苦虫を潰したかのようになる。

 

『オルガ!』

 

すると、ビスケットからの通信が入る。

 

「ビスケット!!」

 

『オルガ、悪い方の予感が当たったよ。本隊は今、社長と共に裏口から全速力で戦闘域を離脱中』

 

「ちっ!やっぱり逃げたのか」

 

一夏は通信の内容を聞きながら悪態を付き、ギャラルホルンのモビルワーカを撃破していく。

 

 

「おいおい、どうするんだよオルガ。このままだと俺たち全滅だぞ…」

 

自分達を置き去りにした事を知ったユージンは絶望をした。

 

「大丈夫だ」

 

「なにがだよ!」

 

「それだと筋が通らねえ。そうだろビスケット?」

 

『うんそうだね』

 

 

 

 

 

 

 

 

ビスケットは手に持っていたスイッチを押すと、本隊のモビルワーカーにこっそりと着けていた装置が作動し信号弾が上がる。

 

「あれは…」

 

「どうやら、俺たちのために囮になってくださるそうだ」

 

信号弾に気づいたギャラルホルンのモビルワーカー隊は本隊を逃さないように隊を分けた。それにより数が減り、負担がかなり減った。

 

「さて、反撃といこうか」

 

 

体勢を立て直した別動隊が前に出ようしたその時、砲撃が当たる。

 

「重砲!?どっから……」

 

 

オルガは砲撃が来たと思われる方向を見るとギャラルホルンのMS三機 が現れる。

 

『まったく、この程度の施設制圧に一体何を手間取っている!モビルワーカー隊は全員減給だ!』

 

司令官であろうMS のスピーカーからパイロットの声が戦場に響き渡る。

 

「おいおい嘘だろ」

 

「MS が相手じゃあ」

 

「逃げなきゃ」

 

「逃げるだってどこへ?」

 

「そうだ。どこにも逃げ場なんてねえぞ。はなっからな。…なぁ、ミカ!」

 

「うん。で?次どうすればいいオルガ?」

 

「なにか考えはあるんだろ、オルガ?」

 

2人の問いにオルガは笑みを浮かべる。それに一夏は。

 

 

「わかった。なら指示をくれ…リーダー」

 

 

オルガは三日月にあることを伝え、そのまま基地に戻り、残った者たちはMSに攻撃を開始する。

 

 

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

ギャラルホルンのMS へ攻撃する一夏。しかし、分厚い甲装を貫けるはずがなく豆鉄砲を喰らったかのように平然としている。

それでも諦めずに攻撃を続ける。一夏だけではなくこの場にいる全員が攻撃を続けるがまるで虫を踏み潰すかのように一人、一人とMS に倒されていく。すると、昭弘を狙った重砲が外れ基地へ当たる。

 

「やめろ、基地には俺の仲間が!」

 

「な!?やめろダンジ!!」

 

一夏は慌ててダンジを止めようと呼びかけるが、ダンジのモビルワーカーはMSに空き缶のように蹴り飛ばされる。

 

「ダンジ!!クソッ、ダンジが!」

 

「くっ!落ち着けシノ!今は三日月が来るまで少しでも時間を稼ぐんだ!」

 

「一夏の言う通りだ。みんな、耐えてくれ!!あと少しであと少しで…!」

 

すると、ギャラルホルンのMSがオルガとユージンが乗ったモビルワーカーを見る。

 

『貴様がこの場を指揮をしているのか』

 

 

「まずい、オルガ!!」

 

頭を潰すべくオルガを狙い打つ。スピードは断然モビルスーツの方が上の為追いつかれるのも時間の問題だ。

 

 

「死ぬ死ぬ死ぬ!!」

 

モビルワーカーを操縦しているユージンは攻撃に当たらないように泣きながらトップスピードで駆け回る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「死なねえ!!死んでたまるか!……このままじゃ……こんな所じゃ」

 

オルガのモビルワーカーは後ろに向きモビルスーツと向き合う。

 

 

「終われねえ!!」

 

敵モビルスーツはオルガを仕留めようと斧を振り上げる。

 

「だろ?ミカ!!」

 

突然オルガの目の前の地面が吹き飛び、土煙が舞うその中から一機の白いモビルスーツが現れ、白いモビルスーツは手に持ったメイスで敵モビルスーツのコックピットを叩き潰した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………スッゲェ」

 

その光景に一夏は目を奪われていた。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ガンダムバルバトス

アンケートは次回の投稿と同時に締め切りです


 

 

「まじかよ!本当にやっちまった!」

 

「あれに三日月が……乗ってるっていうのか?」

 

 

 

 

 

仲間たちが驚いてる中、残ったモビルスーツがこっちに向かって来た。

 

『オルガ!みんなを下げてくれ!』

 

「分かった!」

 

 

三日月はスラスターを吹かし、敵モビルワーカー隊に行った。残った敵のMS二機は三日月の乗ってるMSを倒そうとバトルアックスを持ちスラスターを噴かせ接近し、、もう一機はライフルで足止めをしようとする。

 

白いMSは撤退中であるギャラルホルンのモビルワーカー隊へ移動することによってライフルの使用を封じ込める。

 

『き、貴様!モビルワーカーを狙うとはなんて卑怯な!!』

 

「「どの口が言うんだ…」」

 

2人は相手の言葉に怒りを覚えた…今の一夏は右手を強く握る。今は何も出来ず見守ることしか出来なかった。

 

三日月は逆切れした敵にメイスを投げて動きを止める。そして空中に上がったメイスを回収し、敵の左腕を吹き飛ばす。そして敵のもう一人が三日月に斧を振り下ろし、三日月はメイスで受け止める。

 

「どこから持って来たかは知らんが、そんな旧世代のモビルスーツでこのグレイズの相手に務まるとでも?」

 

「もう一人、死んだみたいだけど?」

 

「その声、貴様、まさか…子供、なのか?」

 

「ああ、そうだよ。あんたらが殺しまくったのも、これからあんたらを殺すのも」

 

「ぬうぅ!お、押され…」

 

しばらく鍔競り合いが続き、押し勝とうとした瞬間、片腕を失った敵がライフルを撃つ。三日月はそれを躱し、スラスターを吹かすが直ぐに炎が出て来なくなった。

 

 

「なんだ?動きがおかしい……まさか⁈」

 

「どうした一夏?」

 

「おやっさん、もしかしてあのモビルスーツにガスを補給してないんじゃ……」

 

「……はぁ⁉︎」

 

「嘘だろオイ⁈」

 

一夏の言葉にシノとユージンは驚きを隠せず、オルガに至っては顔を手で押さえ

 

「しっかりしてくれよ……おやっさん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃動力室では……

 

「ああぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

「おやっさん?どうしたんですか?」

 

「ヤマギやべえ!【バルバトス】にスラスターのガス補給するのを忘れたぁ!」

 

「えぇぇ!!?」

 

 

「………」

 

動力室にビスケットに連れられ避難してきたクーデリアはバルバトスがいた場所を見上げていた。

 

 

そしてクーデリアは近くにあるもう一機のMSに目を移す。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘中の三日月は何とか着地し、メイスで土煙による煙幕を作り、姿勢を低くして下からメイスで突き刺そうとするがもう一機に妨害を受け頭部の装甲を吹き飛ばすだけになった。

 

妨害した敵MSは味方を抱え込み離脱した。三日月は追撃しようとするが、気絶したのか、その場から動かなくなってしまった。

 

 

 

 

その後戦闘は終わり、事後処理をする。事後処理をすませ、死んだ仲間達に挨拶をした後ある事をした一夏はみんなの夕食を作ろうと食堂に行く、一夏は家事全般は得意なので偶に食堂で炊事の仕事をする事がよくあるのだ。

すると食堂には三日月の幼馴染の【アトラ・ミクスタ】とビスケットの双子の妹【クッキー、クラッカ】が居た。

 

「あ!一夏だ!」

 

「本当だ!一夏!」

 

「お!クッキー、クラッカ、久しぶり。2人とも元気だったか?」

 

「うん!」

 

「元気いっぱい!」

 

「そっか」

 

俺は二人の頭を撫でる。

 

「一夏さん、お久しぶりです」

 

「久しぶりアトラ。配達お疲れ、三日月には会えたか?」

 

「……はい」

 

「そっか…んで、今から準備するのか?」

 

「あ、はい!」

 

「うし、なら俺も手伝うぞ。あの野菜は使ってもいいんだよな?」

 

「いいんですか!ありがとうございます一夏さん!一夏さんがいれば心強いです!」

 

「クッキー、クラッカー、あそこにある野菜をこっちに持ってきてくれるか?」

 

「「はーい!」」

 

その後、料理に使う食材を運びながら作業していると、クッキー、クラッカーがお尻の形をした野菜を見つけ笑っていた。それをアトラは注意をする。一夏は笑みを浮かべながらその様子を見ていた。

 

「さて、こんなものかな…後は食材を切るだけ…て、あんたは」

 

「あ、あの…」

 

「誰このひとー?」

 

「アトラの友達?」

 

「え?ううん、違うよ」

 

「あ、ごめんなさい。クーデリア・藍那・バーンスタインと言います。話し声が聞こえたので」

 

「あっ!あのニュースによく出てくる人⁉︎」

 

クーデリアの名前を聞いたアトラは有名人と気づき驚いていた。

 

 

「あはは」

 

新鮮な反応にクーデリアは苦笑いを浮かべる。

 

「っで、なんであんたがここにいるんですか?」

 

「そ、それは…」

 

「当てましょうか、三日月に何か言われましたか?」

 

「っ…」

 

一夏はクーデリアの反応を見て大体の事は察し、ため息を吐く。

 

「当たり、みたいですね。まさかと思いますけど…自分のせいで大勢の人が死んだとか言ったんじゃないですか?」

 

「!?」

 

「それは三日月も怒り気味に言いますよ。俺たちとっては仲間を馬鹿にしてるようなものだ」

 

「…っ」

 

「あんたは何も解っちゃいない。あんたのやってる事は確かに立派だ。けどそれを快く思わない連中も沢山いる。クーデリアさん、何かを変えたければ、何かを犠牲にしなきゃいけない。本当にその覚悟があって、この現状を変えようとしてるのか?」

 

「そ、それは…」

 

「俺は死んだ仲間達の死に、意味を作っていく。それが俺たち生きてる者にしか出来ない事です」

 

「一夏さん…」

 

「わ、私は…」

 

「……すまない、つい熱くなった。それと悪いんだけど手伝ってくれるか?猫の手も借りたいくらいだしな…」

 

「ね…猫の手?えっと、一体なにを…」

 

「俺達の事、知りたいんだろ?」

 

「……はい!よろしくお願いします。それで、何をすれば…」

 

「野菜を切って欲しい、クーデリアさん、料理の経験は?」

 

「えっと…ごめんなさい。料理はした事はなくて」

 

「そんな難しい事はさせない、皮を剥いた野菜を一口大に切ってくれれば問題ないんで…包丁の持ち方と切り方は教えるのでしっかり見ててください」

 

「わかりました!」

 

クーデリアは一夏の包丁の持ち方や切り方を教わり、最初はぎこちなく危なかしい包丁の扱いで、大降りカットで一口とはいかないサイズとなったが慣れてくれば一口だいに野菜をカット出来るようになった。

 

 

「よし、後は煮込んでいけば完成だ」

 

一夏は下拵えした食材に調味料を使って味を調えた後、大鍋に入ったスープの味を全体に行き渡るように混ぜていく

 

「……随分手慣れていますね。そ、それとあの野菜も何故入れたのですか⁈とてもじゃないですが人様に出せるようなものでは…」

 

「最初はあんな感じさ…別に問題ないよ。家事が壊滅なうちの姉よりはマシだし、やればきっとクーデリアさんも料理は出来るようになるよ」

 

「え?本当ですか?一夏さん、お姉様が?」

 

「はい、今は訳あって会えませんが。それにクーデリアさんは筋はいいですよ。俺の姉なんて何かの呪いでも掛けられているんじゃないかと思うほど酷かっですよ。何せ簡単に作れるものや俺の手伝いを受けながらでもダークマターとかゲル状の何かとかを生み出すんですから。その分クーデリアさんは飲み込みがいいので比べたら天と地の差だよ」

 

「そ、そうなんですか(か、彼のお姉様は一体…)」

 

遠い目をした一夏の話を聞いたクーデリアは顔を引きつらせていた。

 

 

「一夏!」

 

食堂の外で呼び声がし、振り向くとオルガ立っていた。

 

「オルガ、どうしたんだ?」

 

「ちょっといいか?ちと重要な話だ…」

 

「……わかった。アトラ、後は任せていいか?」

 

「はい!任せてください」

 

一夏は食堂はアトラ達に任せオルガの元へ向かう。

 

「随分と色男になったなオルガ」

 

「ふっ、まぁな…」

 

 

2人はモビルワーカーが収容されている所に移動する。その場にはすでにユージンやビスケット、シノ、昭弘の姿もあった。

 

「俺たちがCGSを!?」

 

「前にお前も言ってただろユージン。ここを乗っ取るてよ」

 

「成る程な、マルバがいないこの好機を利用するわけか」

 

「そうだ」

 

「この状況でか?三番組の仲間が何人も死んでる」

 

「一夏の言う通り、マルバいない今がチャンスである訳だし」

 

「…マルバの奴は相当な屑だったが一軍の奴らはそれ以下だ。あいつらは俺たちの命を撒き餌程度にしか思っていねえ。それにあいつらの頭じゃすぐに商売に行き詰まる。そしたら益々危険な山に手を出す、そうなれば俺たちは確実に殺されるぞ」

 

「かと言ってここを出ても他に仕事なんてないし」

 

「選択はねぇってことか」

 

「現状、それが最善だろうな」 

 

「……お前はどうする明弘?」

 

「俺らはヒューマンデブリだ、自分の意思とは無縁にここにいる。上が誰になろうと従う、それがあいつらだろうとお前らであろうととな」

 

 

「…フン」

 

「うんじゃ、そうと決まれば作戦会議だな」

 

「三日月は呼ばなくていいの?」

 

「おー、忘れてた」

 

「…忘れてたって」

 

「ミカがもし反対するならお前らに悪いが今回は中止だ」

 

「はぁ?」

 

「オルガ?」

 

「それはないだろオルガ、あの三日月だぞ?お前が本気ならそれに必ず応える。そうだろ?」

 

「ふっ、そうだったな」

 

 

密会を終えた後、一夏はアトラにこの事を伝えると、動揺していたが手伝ってくれる事になった。

 

睡眠薬を混ぜたスープを一軍に配り、薬が効いたら両腕を封じ誰も使わない部屋に運び効果が切れるまで放置した。薬の効果が切れた一軍は自分達が目覚めたら違う部屋にいて、両腕を封じられて混乱していた。すると、扉が開き作戦の実行犯のオルガ達が入って来た。

 

「おはようございます。薬入りの飯の味はいかがでしたか?」

 

「薬だ!?」

 

「ガキが何のマネだ!?」

 

「まあ、はっきりさせたいんですよ。誰がここの一番かって事を」

 

「はあ!?」

 

「ガキ共!貴様ら一体誰を相手に「碌な指揮をせず、これだけの被害を出した無能ですよ」ふ、ふざけんな!ッぺ」

 

ハエダの吐いた唾がオルガの前に付く。オルガは右足を下げるとハエダを容赦なく蹴る。

 

「わ、分かった!分かったから、とりあえずこれをとれ。そしたら命だけは助けてやる」

 

「はあ?お前状況分かってんのか。そのセリフを言えるのはお前か俺かどっちだ?」

                             

「無能な指揮のせいで死ななくていいはずの仲間が死んだ。その落とし前はきっちりつけてもらう」

 

オルガの後ろにいた三日月がハエダに近づき、拳銃を突きつける。

 

「は?ま、まて!」

 

なに、と言った次の瞬間、銃声が二回響きハエダの声は消え床に血が流れる。

 

「さて、これからCGSは俺達のものだ。さあ選べ。俺達宇宙鼠の下で働き続けるか、それともここから出ていくか」

 

「コイツ!!」

 

ハエダの取り巻きであるササイがオルガに噛みつこうとするが三日月に射ち殺される。

 

「どっちも嫌ならコイツみたいにここで終わらせてもいいぞ」

 

「こ、この野郎!!」

 

もう1人三日月に噛みつこうとするその瞬間、頭にコンバットナイフが刺さる。

 

「お前は別にやんなくても良かったんだぞ?」

 

「悪い、反射的に」

 

ナイフを投げたのは一夏だった。一夏は相手の頭に刺さったナイフを抜くと地面は血の溜まりが広がる。残った一軍は目の前で殺しが起きたことに恐怖し硬直する。

 

 

 

 

「あのー」

 

そんな中、CGSで数少ないまともな大人と言える人物で、メガネをかけた一軍の一人、デクスター・キュラスターが声を上げる。

 

「お、俺は出ていく方で」

 

デクスターは殺される前に一刻も早くこの場から離れたかった。

 

「あ、確か会計を担当しているデクスター・キュラスターさんですよね?」

 

ビスケットが眼鏡の男性に声を掛ける。

 

「は、はい」

 

「あなたには、ちょっと残ってもらいます」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

この時、デクスターの悲鳴は施設内に響き渡った。




今作の一夏について。

見た目
原作に比べるとかなり鍛えており、髪と目の色は原作通りだが、髪は少し長く、雰囲気もかなり違う。

性格は原作と比べて落ち着いて冷静に対処できるようになっており、状況によっては相手を殺す事に躊躇はない。


三日月と同じく阿頼耶識の手術を三回受けていてその操縦技術は三日月と同等。ただ、今作三日月は自分と張り合える相手が出来た為、操縦技術は原作よりも上がっているが技術は同等


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ASW-G-35

クーデターを成功した三番組達は翌日、一軍や、CGSをやめる三番組に退職金を渡した後、オルガを筆頭に真っ当な仕事をするために色々準備をしていた。

 

そんな中、一夏は動力室に置いてあったもう一機の白とオレンジのかかった赤のモビルスーツを倉庫に移し、おやっさんこと【ナディ・雪之丞・カッサパ】共に修理していた。

 

このMSは一夏が訓練中はぐれてしまった際に、瓦礫の中に空間があり、そこで助けがくるまで待とうと中に入ると、そこは古びてはいたが何かしらの施設で、その中にこのMS一機を発見した。

 

その後一夏は探してくれたオルガにこと事を伝えて3番組や雪之丞を加えて、マルバ達がいない日を狙い極秘裏に運び込んだのだ。

 

 

「やっぱりかなり劣化してますねこのコックピット…厄祭戦当時に使われていたとなると300年前の物ですよね…このモビルスーツ」

 

「おそらくそうだな。しかしこの状態じゃあ他の奴で代用するしかないな」

 

「そうですね…」

 

「三日月のと同じようにモビルワーカーの奴か、鹵獲したモビルスーツの奴か、どっちが良い?」

 

「三日月のと同じのでお願いします」

 

「即答かよ。でもま、そっちの方が良いか」

 

「それじゃあ、俺のモビルワーカーを持って来ますね」

 

「おう、頼む」

 

一夏はMWを取りに倉庫へ向かった。一夏が自分のMWを持ってきて数時間後、古いコックピットをMWのコックピットに代替えした後、修理や調整を済ませ、残りは起動するのみとなった。

 

「とりあえず、コックピットの修理とシステムの調整は終わった。後は動かしてみないと分からないな」

 

「そうですね。けど、今日はここまでにしませんか?もう日が暮れてるし」

 

「そうだな、明日にするか」

 

「さてと、俺は晩飯の準備でもするかな…」

 

「お前の作る飯は美味いからな、楽しみにしとくぜ」

 

「任せてください」

 

おやっさんから期待の言葉をもらい、一夏は道具を置き腕を伸ばしながら背伸びをし、食堂に向かおうとしたその時、突然警報がなった。

 

 

 

「なんだ?」

 

『監視班から報告!ギャラルホルンのモビルスーツ一機が赤い布を持ってこちらに向かっています!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ?あれ」

 

一夏は急いで外に出るとMSの左腕に付けている赤い布を見る。

 

「ありゃあ、決闘の合図だな」

 

「決闘?」

 

おやっさんにその理由を聞こうとした時MSから声が聞こえた。

 

『私はギャラルホルン実働部隊所属クランク・ゼント!そちらの代表との一対一の勝負を望む』

 

 

「勝負ってまじかよ」

 

「厄祭戦の前は大概のもめごとは決闘で白黒つけてたらしいが……まさか本気でやってくる奴がいるとはな」

 

おやっさんの説明が終わるとクランクと名乗った男が決闘の条件を提示した

 

『私が勝利したなら、そちらに鹵獲されたグレイズとクーデリア・藍那・バーンスタインの引き渡しを要求する』

 

「クーデリアさんを⁉︎」

 

 

クランクの目的は鹵獲したMSとクーデリアが目当てみたいだ。

 

 

 

「ほら見ろやっぱりだ!あっちはお嬢さんが目当てなんだ!」

 

トドは兎に角クーデリアを引き渡して金と安全を得たいので、相手からクーデリアの名が出た途端にわめきだした。

 

『勝負がつき、グレイズとクーデリアの引き渡しが無事済めば、そこから先は全て私が預かる。ギャラルホルンとCGSの因縁は、この場で断ち切ると約束しよう』

 

「はあ?なんだその条件は」

 

雪之丞が疑問符を浮かべる。

 

「俺らが負けても、お嬢さん渡すだけで、全部あのオッサンがいいようにしてくれるってか?」

 

ユージンは話の要点をまとめ、キモを押さえる。

 

「でも、そしたらクーデリアさんは」

 

「だ、そうだ。どうする、団長?」

 

「……受けるしかn」

 

「私が行きます!!」

 

そう言ったのは、他でもないクーデリアだった。

 

「でも、そうしたらクーデリアさんは…!」

 

「無意味な戦いは避けるべきです。私が行って全てが済むのなら、それで…」

 

「駄目だ。それじゃあ筋が通らねえ」

 

クーデリアは自分が行くと言って来た。一夏はクーデリアの言っている事に呆れながらも、オルガはそれを却下し決闘を受けることを選ぶ。それを聞いた一夏はオルガの下に行く。

 

「オルガ」

 

「どうした、一夏」

 

「この決闘、俺にやらせてくれないか?」

 

「……あのモビルスーツの修理が終わったのか?」

 

「ああ、終わった。試運転を兼ねてあいつと戦いたいんだけど、良いか?」

 

「……分かった。だが無茶はするなよ?」

 

「分かってる。と言うかあの時だって無茶な内容を三日月に任せてただろ?俺にも、偶には無茶くらいさせてくれよ」

 

「ふっ、そうだったな。ならこの決闘、お前に任せたぞ一夏」

 

「おう、了解だ。リーダー」

 

一夏とオルガは拳を合わせながら了承を得ると、一夏はおやっさんを連れて倉庫に向かった。

 

 

 

 

コックピットに立ち、阿頼耶識をインターフェースに繋げ、問題ない事を確認し体を動かす。

 

 

「いいか一夏、三日月にも同じ事を言ったが、システムの調整が済んだとはいえモビルスーツのフィードバックはモビルワーカーの比じゃねえ、気を付けろよ」

 

「分かってるさ。三日月だって動かしたんだ。俺もやってやるさ。後、スラスターにガスは補給してるよなおやっさん?」

 

「安心しろ、同じヘマしねぇよ」

 

「下手したら三日月やられてたかもしれないのに……まぁいいや。起動させるよ」

 

一夏はシステムを起動させ、システム画面を見る

 

 

 

 

 

GUNDAM FRAME TYPE MARCHOSIAS ASW-G-35

 

 

 

「(これ、この機体の名前か?ガンダムフレームタイプ…)」

 

一夏は画面を見ながら読み上げようとすると突然、体に衝撃が走った。

 

「ぐ!?…がぁ!?」

 

頭に膨大な情報が流れ込み、脳が悲鳴を上げ、鼻から血が吹き出す。

 

「(な、なんだ…頭の中に、何、かが)」

 

一夏はある光景を見ていた。目の前にはMSや戦艦でもない6本の腕を持つ機械の化け物が立っていた。その攻撃を無駄のない動きで躱して倒していく光景が一夏には見え、その後ある情報が流れ込む

 

 

 

 

 

「な、なん、だ…これ」

 

 

「お、おい!大丈夫か!?」

 

「はっ!はあ、はあ、ああ、大丈夫だ。おやっさん、下がってくれ」

 

「……分かった」

 

おやっさんが降りるのを確認すると、一夏は端末を操作し、コックピットのハッチを閉じる。

 

 

「網膜投影…スタート」

 

 

 

一夏は操縦桿を操作し機体を立ち上がらせる。一夏は流れ込んだ情報の中にあったこの機体の名前を言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぞ……マルコシアス !」

 

 

一夏はMS…ガンダムマルコシアスの名を言うと、それに応えるかのようにツインアイが輝く。

 

 

 

 

 

 

 

クランクはCGSの代表を待ってる中、基地から出て来たMSに驚愕していた。

 

「なに⁉︎もう一機居たのと言うのか!?」

 

そのMSは以前、戦ったバルバトスとは違い。白とオレンジよりの赤色で塗装され、大太刀と左腕にはシールドを装備していた。クランクはもしあのMSもでていたらどうなっていたかと思いながらもコックピットに乗り込む。

 

 

「ギャラルホルン火星支部実働部隊所属クランク・ゼント!」

 

いきなりの事で驚くも、直ぐに一夏も直ぐに名乗る。

 

 

 

「CGS参番組、織斑一夏」

 

互いに構えをとり…

 

「「参る!/いくぞ!」」

 

クランクが開始の合図をした瞬間、一夏はマルコシアスのスラスターを吹かし相手と激突する。

 

大太刀を器用に振るい連続で切り付けるがクランクは左手で持った盾を使って防ぐ。

 

 

「なあ、決着はどうする?どっちかが死ねばいいのか?」

 

一夏はクランクに大太刀で切り付けながら通信越しにクランクに勝敗を聞く

 

『その必要は無い!』

 

クランクは斧を振り下ろしながら言い、一夏はそれを受け止める。

 

『コーラル…いや、元々こちらが欲していたのはクーデリアの命だけ。大人の争いに子供が犠牲になる事は無いんだ!』

 

「散々仲間を殺しておいてよくそんなセリフを言えるな…あんた。俺たちのなにがわかるって言うんだ!」

 

 

一夏はクランクを蹴り飛ばし距離を取り、また距離を詰めて振り下ろす。

 

「く、これが子供か!」

 

「言っておくが、俺は犠牲になってない。俺達は生きる為に、ここには人を何人も殺してるやつもいる。俺もその1人だ」

 

「!?」

 

「俺は、生きる為に、大切な仲間を守る為に…手が血塗れになって汚れようが、出来ることを全力でやってるだけだ……けど今は」

 

マルコシアスは大太刀を構え、スラスターを吹かせ突進する。

 

 

 

「あんたの事が気に入らないから……倒す!」

 

それに感応するようにマルコシアスのツインアイが光を増す。

 

 

『ぬうっ⁉︎舐めるなぁ!』

 

一夏はクランクに向けて大太刀を振り下ろすがクランクは盾で防御し、反撃しようと斧を振るう。

 

「っ!」

 

一夏はマルコシアスに装備されているシールドを使い自身に向かっている斧を防ぐ。

 

『なに!?』

 

クランクはあまりの反応速度に驚き硬直する。その隙を見逃す一夏ではなく、狙って大太刀を胴体に突き刺す。刺した大太刀を手放し今度はクローを展開し頭部を殴りカメラ機能を破壊し、地面に叩きつける。

 

一夏は止めを刺そうと、踏みつけて大太刀一度抜き振り上げる。

 

 

「ん?」

 

よく見ると敵MSのコックピットが開いていて、中には血だらけの軍服を着た男性が居た。

 

一夏は念の為に持ってきた拳銃を取り出し、コックピットから出た。

 

「うぐ…ぐ…本当に、子供なんだな」

 

目の前の男、クランクは痛みに耐えながら一夏を見る。

 

「クランク・ゼント、だったか?俺が勝った場合はどうなるんだ?あんたはそれを言ってなかっただろ?」

 

「すまない、馬鹿にした、わけじゃ無いんだ。その選択を俺は持たなかったんだゴホッ…」

 

クランクは吐血しながらも続ける。誰が見ても致命傷で血は流れ続け、失血死するのも時間の問題だろう。

 

「俺は、上官の命令に背いた。何の土産も無く帰れば、俺の行動は部隊全体の責任になってしまう。……だが、ここで俺が終われば、全ての責任を抱えたまま…うぐ!?がはっ!ごほっ!」

 

「……もう良い。喋らなくても」

 

「はあ、はあ、すまんが、手を貸してくれないか?」

 

「え?」

 

「俺はもう、自分で終わる事すら出来ない」

 

「あんたは、それでいいのか?」

 

「ああ、どのみち…もう助かるまい」

 

「……分かった」

 

一夏は銃口を重症のクランクに向ける。

 

 

 

 

「……ありがとう」

 

「……」

 

 

クランクは一夏に礼を言う。その言葉に一瞬撃つのを躊躇う。しかし一夏はクランクの望みを叶える為、そのまま引き金を引き、発砲音が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

「鉄華団」

 

 

「? オルガ、何それ?」

 

三日月の質問に、オルガは笑いながら答える。

 

「俺達の新しい名前だよ。CGSなんてカビ臭え名前を名乗るのは、癪に触るからな」

 

「『てっか』……『鉄の火』ですか?」

 

クーデリアの推測に、オルガは首を横に振る。

 

 

「いいや、鉄の華さ。決して散らない、鉄の華」

 

「いいんじゃない?オルガが決めた事なら」




アンケートの結果マルコシアスに決定しました!アンケートに答えてくださった読者の皆様、ありがとうございます!

今作のマルコシアスについて

本来は鉄血のオルフェンズウルズハントのガンダム・端白星としてラドニッツァ・コロニーの動力部奥に隠されていたモビルスーツだが、今作は一夏が火星で訓練中仲間と逸れた際偶然瓦礫の中から発見した古びた施設の中に放置されていた状態で見つかった。

しかし現在の見た目は厄祭戦当時の姿ではなく、改修されていたのかバックパックは端白星と同じで…肩の装甲も違う形状となっている(その内厄祭戦当時の装甲のマルコシアスとして改修する予定)。

現在使える武器は大太刀とシールド、クローのみ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

出発

クランク・ゼントの決闘から数日、CGS改め鉄華団はクーデリアからの仕事を果たす為、準備を行なっていた。

 

その間一夏、三日月、クーデリア、フミタン、ビスケットはビスケットの祖母のトウモロコシ畑に収穫の手伝いに来ていた。

 

そこでアトラとクッキー、クラッカに、その祖母である桜・プレッツェルが合流。

 

トウモロコシの収穫を行なっていた。

 

「桜さん、これはここに置けばいいですか?」

 

「ああ、構わないよ。しかしこんな作業を時間がある時に手伝いに来るなんて。アンタ変わってるね」

 

桜のその質問に、一夏は少し考えてから答える。

 

「……こう言う機会があんまり無かったんですよよ。それに、体動かすのは好きですし、誰かの為に力になれるならお安い御用ですよ?」

 

「お人好しなこった。でも、こんな買い叩かれるモノの収穫の手伝いより有意義な事は無いのかい?」

 

「俺からしてみれば充分有意義なんですよ」

 

現在の桜も、ビスケットの給料の一部の仕送りが無いと厳しい生活を強いられる。これは何も、桜婆に限った事では無い。火星に住む者達の大半が、桜と同じかそれ以下の境遇にある。

 

「(この世界も情勢も、ある意味俺の世界と似たようなもの…規模はこっちが遥かに上回るけど)」

 

一夏の世界ではISにより女尊男卑の風潮が広がり、ISを使えるから偉いだの、選ばれし存在だのの理由で無実の罪で極刑に処されたり、生まれてきた男の子の子供達が捨てられたり、男性が虐げられる社会となった。しまいにはには男の子の臓器も売られたりやら奴隷のように扱われる国も普通にあった。

 

「(俺の世界にも、クーデリアさんみたいな人がいたら…少しは違っていたのか…)」

 

一夏は首にさげている物を取り出して見つめる。

 

「(千冬姉、束さん…俺はもう後戻りができないところまで来てしまった。束さんも…こんな気持ちだったのかな)」

 

このお守りは束が作ってくれた物で、一夏が元いた世界で過ごした唯一の所持品だ。

 

一夏がそんな事を思っていた時。

 

キキィー、と言うブレーキの音がした。

 

「何だ……って、嘘だろオイ!!」

 

一夏は、その音がした方向に走り出す。その後で、桜も歩いてそちらに向かう。

 

そこには、急ブレーキをしたらしい車が一台。そしてその横で、横たわっているクッキー、クラッカ。

 

状況から推察するに、跳ねられたと思われる。

 

 

「お、おい…お前達、大丈夫か?」

 

車から、紫髪の男が2人の安否を確認しながら出て来る。しかし2人が倒れているのを見た三日月は紫髪の男に近寄り、その首を掴んで持ち上げる。

 

間違い無く、殺しにかかっている。

 

「ぐはッ……お前、何を……!?」

 

「「三日月、違う! 違うの三日月!!」」

 

双子姉妹が声を揃えて、三日月を静止する。

 

「そこまでだ、三日月。その人殺す気か?」

 

 

「いい加減にしないか、この慌て者」

 

一夏が三日月の腕、桜が三日月の頭をそれぞれ叩く。それ故か三日月の腕は紫髪の首を離れ解放する。紫髪の男性は咳き込みながら酸素を取り入れる。

 

「私達が飛び出しちゃって…」

 

「あの車がよけてくれたの」

 

「そうか。でもな2人とも、倒れ伏すのは悪ふざけが過ぎるぞ?危うく三日月があのお兄さんを殺すところだったんだぞ」

 

「「ごめんなさい…」」

 

「分かれば良い、それと…ほんとに何事もなくてよかった。次からは気をつけろよ?」

 

「「はーい!」」

 

一夏は2人の頭を撫でながら満足げにもう一度頷き、車に向き直る。その時、車からもう1人、金髪の男が出て来る。

 

 

「こちらも不注意だった、謝罪しよう」

 

「(っ!あの車の紋章…ギャラルホルン)」

 

助手席に乗っていた金髪の男性も降りてきて謝罪する。それと同時に、ビスケットはフミタンに言ってクーデリアを隠れさせる。

 

「ったく三日月、流石に轢かれたかもしれないとはいえ、直ぐに相手を殺そうとするのは悪い癖だぞ?先ずは2人の安否を確認するのが先だぞ?」

 

 

「ゴメン、一夏…」

 

「謝る相手が違うだろ。ほら、ちゃんと謝罪しないと」

 

一夏に言われ三日月はガエリオの前に行き、少し頭を下げてこう言う。

 

「あの…すいませんでした」

 

「何が『すいません』だ!!」

 

「よせ【ガエリオ】!」

 

金髪の男性の静止に構わず、ガエリオと呼ばれた紫髪の男性は拳を三日月に突き出す。

 

「ストップ、こちらにも非はあるとはいえ…流石に殴ることはないんじゃないですか?」

 

それを一夏は2人の間に入り片腕で容易く受け止める。一瞬にして間に入った一夏にガエリオは驚いていた。

 

「(こいつ、いつの間に⁉︎)っ!…オイ貴様ら、何だその背中の物は!」

 

 

「『阿頼耶織システム』…人の脊髄に埋め込むタイプの、有機デバイスシステムだったか。未だに使われている、と聞いたことはあったが」

 

金髪の男性は、一夏と三日月の背中を見て言う。それを聞いたガエリオはみるみると顔色を悪くする。

 

 

「身体に異物を埋め込むなんて…ウエェッ!」

 

ガエリオは口を押さえ、車の陰に隠れて行く。ビシャっと音が聞こえるが一夏は心配そうにガエリオの様子を見る。

 

「(大丈夫かあの人…当たり前すぎて忘れてたけど、やっぱり一般からすると生理的に受け付けないんだろうな…これ)」

 

一夏は今や日常と化している背中の阿頼耶識に触れながら改めて普通ではない事を認識される。

 

「怖い思いをさせてしまってすまなかったね。こんな物しかないが、お詫びのしるしに受け取ってもらえないだろうか」

 

と、金髪の男性はポケットからお菓子を取り出す。それを見た双子姉妹は、そのつぶらな瞳を輝かせる。

 

「ありがとう!」

 

「ございます!」

 

双子姉妹はお菓子を受け取り、桜の下へ元気良く走って行く。

 

「念の為、医者に診せるといい。何か有れば、ギャラルホルン火星支部まで連絡をくれたまえ。私の名は、【マクギリス・ファリド】だ。ああ、それと。この付近で最近、戦闘が有ったようなのだが…何か気付いた事はないか?」

 

「そう言えば2~3日前、ドンパチやってる音が聞こえてたような…」

 

「近くに民兵の組織が有りますから。そこの訓練か何かじゃないですか?詳しいことはわかりませんけど」

 

ビスケットと一夏はマクギリスの質問に答える。

 

「…成る程。協力、感謝する」

 

すると、マクギリスは三日月と一夏を見てこう言う。

 

「君、さっきは見事な動きだった。そちらの君も何かトレーニングを?」

 

 

「うん。まあ、色々」

 

「俺は剣道を少し…」

 

「(剣道?何故彼が日本の武芸の名を…)そうか。…良い戦士になるな」

 

マクギリスは一夏の口から出た武芸の名前に少し驚き、ガエリオの肩を叩いてから車に乗り込み、そのまま車を走らせて行った。

 

 

 

 

 

 

 

「登録名称は、これで良いんですね?」

 

火星共同宇宙港「方舟」。そこで、デクスターは昭弘に確認を取る。

 

「ああ、団長の命名だ。CGS時代の名前は嫌なんだと」

 

「分かりました。では、これで登録します。『ウィル・オー・ザ・ウィスプ』改め、『イサリビ』と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三日月、交代の時間だ」

 

「わかった」

 

「異常は今の所なさそうか?」

 

「うん」

 

「そうか、後これ…軽く作ってきたけど食べるか?」

 

「うん、食べる。ありがとう一夏、後はよろしくね」

 

「おう、冷めないうちに食べとけよ」

 

一夏は軽く作った軽食を三日月に渡し、受け取った三日月は持ち場から離れていく。

 

一夏は見張りを始め双眼鏡を使いながら辺りを見渡す。

 

 

 

「こんな状況じゃなかったら、星を眺めてたんだけどな……ハズレ」

 

今の空は満天の星空が広がっており、こんな状況でなければ寛ぎながら眺めたいと思う一夏は火星ヤシを一つ食べる。気を抜かず見張りを続ける。

 

 

 

 

 

「一夏?」

 

「?」

 

声のした方を向くとそこにはクーデリアの姿があった。

 

「なんでクーデリアさんがここに?」

 

「眠れなかったので少し夜風に当たっていたら灯りを見つけたので、いつも一夏が見張りを?」

 

「いや、交代でやってる。今はギャラルホルンがいつくるか分からない状況ですし、後これ使ってください。寒いでしょ?」

 

一夏は寒そうにしてるクーデリアに説明しながら防寒着を渡す。

 

「あ、ありがとう」

 

「明日の事が心配ですか?」

 

「……はい」

 

「安心しろ、とはハッキリは言えませんけど、俺はクーデリアさんを必ず地球にまで連れていくと約束する」

 

「はい。私も……私の戦いを頑張ります。それと一つよろしいですか?」

 

「?」

 

「私に対して敬語は大丈夫です。いつも通りに話してもらっても構いません」

 

「いいのか?」

 

「はい、もちろん。それと名前も呼び捨てでも構いませんよ」

 

「……わかった。そうさせてもらうよ。後、あんまり此処にいると風邪を引くから、部屋に戻った方がいいぞ?」

 

「そうですね。一夏も風邪を引かないように」

 

「ああ、明日も早いし、しっかり睡眠は取るように」

 

「ふふっ、そうさせてもらいます。おやすみなさい」

 

「ああ、おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 

火星出発日の朝、朝食を食べているとアトラが荷物を持ってやってきた。

 

「わ、私を!炊事係として鉄華団で雇ってください!おかみさんには事情を説明してお店をやめさせてもらいました!」

 

アトラは緊張した様子でここに来た理由を話す。どうやら鉄華団に入団させて欲しいらしい。

 

「良いんじゃないか?なあミカ、一夏?」

 

「アトラのご飯は美味しいからね」

 

「俺も賛成だ。炊事担当の人材が欲しかったところだし、このままいけば俺が炊事を担当しなくちゃいけなかったしな…」

 

オルガはにやけながら三日月に聞き、三日月は淡々と答え、一夏は大歓迎だった。

 

「あ、ありがとうございます!一生懸命頑張ります!」

 

アトラは勢いよく頭を下げる。

 

「よしお前ら!地球行きは鉄華団最初の大仕事だ!気を引き締めて行くぞぉ!」

 

「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!」」」」

 

オルガの一声で仲間は声を上げる。

 

「たく、浮かれやがって。俺達はギャラルホルンを敵に回してんだぞ?」

 

「そう言う割には嬉しそうだなユージン?」

 

「どこを見てそう思ってんだ一夏?それとなんだその顔は!」

 

「あれ?言ってなかったっけ?」

 

「言ってないわ!!後その顔やめろ!なんか腹立つ!」

 

一夏がユージンをからかっていると、三日月が何が手に持って一夏の元にくる。

 

「ん、どうした三日月?」

 

「これ、俺と一夏にって桜ちゃんがアトラに渡したみたい」

 

「桜さんから?」

 

三日月は手に持った二つの袋の内一つを一夏に渡す。中身を見ると俺と三日月がよく食べている物だった。

 

「火星ヤシ!良かった、丁度切れていた所だったんだ。ありがとう三日月」

 

一夏は受け取った火星ヤシが入った袋を懐に入れる。朝食を食べ終えた後、鉄華団は地球へ行くためクリュセ共同宇宙港へ向かった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

赤い空の先の景色

 

本部出立から数時間が経ち、鉄華団の主要メンバーを乗せたシャトルは宇宙に上がった。

 

「(これが、宇宙か。束さんが見たかった景色…)」

 

その中で一夏は宇宙の景色を窓から覗いていており人知れず感動していた。普通なら一生に一度は見てみたい景色だが、この世界では宇宙進出は当たり前の世界で、一夏の世界からすればあり得ない事だった。

 

「どうしたの一夏?」

 

「いや、俺たち…本当に宇宙にいるんだなと思って…」

 

「そっか、一夏のいた世界じゃ普通じゃなかったんだっけ?」

 

「まぁな…と言うか、覚えてたのかよ」

 

鉄華団の中で一夏の素性を知っているのはオルガと三日月の2人だけで、一夏はまさか三日月が覚えているとは思わず珍しそうに三日月を見ていた。

 

「三日月は地球に行ったら何かしたいとかないのか?」

 

「特にないかな、けど前に一夏が話してくれた三日月は見てみたいな…」

 

「ああ、お前の名前の元になってるやつだもんな…だけど地球から見る月は日が経つに連れ形を変えていくから運次第だな。長期滞在する事があれば確実にみれるが…それも仕事の状況次第だな」

 

 

そんな話をしながら時間を潰していき、この後オルクス商会の低軌道輸送船に拾って貰い、低軌道ステーションに入る予定だ。

 

「あ、あれがオルクスの船じゃないですか?」

 

鉄華団のメンバーの【タカキ・ウノ】が、近付く光を指差す。

 

「予定より少し早いな…! あれは!?」

 

「ギャラルホルンの…モビルスーツ!?」

 

「オイ、その奥にも何かいるぞ!!」

 

シャトルに、ギャラルホルンのMSが4機接近し、その奥には戦艦が2隻。

 

「はあ!? どうなってやがる!」

 

「トド、説明しろ!」

 

「お、俺が知るか!ギャラルホルンなんて聞いてねぇ!おいどけ!俺がオルクスと話を付ける!」

 

トドは通信でオルクスに繋げるが「我々への協力に感謝する」と言って通信を切る。

 

「協力ってどういうことだ!てめえ、俺達を売りやがったな!」

 

それを聞いたシノは怒鳴りながら切れてトドを殴る。

 

「(わかっちゃいたがこのままじゃまずいな)オルガ、どうする?」

 

一夏はこの状況に慌てる事なくオルガに指示を仰ぐ。

 

「入港はいい、そのまま振り切れ!」

 

オルガの指示にシャトルの操縦者は従うが直ぐにMSに囲まれる。

 

「モ、モビルスーツから有線通信!クーデリア・藍那・バーンスタインの身柄を引き渡せって言ってますけどぉ!?」

 

「さ、差し出せ!俺達の命までは取らねえだろ!」

 

「てめえは黙ってろ!」

 

「ほかに方法があるっていうのかよ!?」

 

「うぐ!?それは」

 

「どうすんだ、オルガ!」

 

船内は静寂に包まれる。

 

「私を差し出してください!」

 

「それは無しだ」

 

「ですが!」

 

「俺らの筋が通らねえ」

 

オルガの言葉にトドは反論しようとするがまたシノに殴られる。

 

「ビスケット!」

 

「うん、行くよ!三日月!」

 

ビスケットの言葉に仲間たちは疑問を抱く中、オルガは不敵な笑みを浮かべ一夏はやる事を察する。

 

 

後部貨物室のハッチが開き、そこから煙幕が吹き出して敵MSの視界を奪う。その直後、滑腔砲を装備した三日月のバルバトスがコックピットに砲身を突き付け、そのままゼロ距離で発砲しコックピットを打ち抜き、敵が落としたバトルアックスでワイヤーを切断し飛び出す。

 

 

敵はシャトルを狙うがバルバトスに妨害を受けて標的をバルバトスに向ける。すると今度はオルクスの船がこっちに向けて砲撃を始める。だがその上からもう一隻の船が降りて来た。

 

『待たせたな。団長』

 

通信で昭弘の声が聞こえた。

 

「ナイスタイミング!」

 

「時間通り。良い仕事だ昭弘!」

 

 

 昭弘達が持って来た船イサリビに回収された鉄華団はオルガの指示で一夏、昭弘の2人のMSで三日月の援護の為に出撃することになった。

 

「おやっさん!マルコシアス は?」

 

「おう!もう終わっているぞ!」

 

「そうか、ありがとう!」

 

一夏はパイロットスーツに着替えてマルコシアス に乗り、マルコシアス には三日月が使うメイスが装備されており、そのままMSはイサリビのカタパルトに設置

 

『カタパルトスタンバイ、いつでも出れるぞ』

 

通信が入り後はパイロットの了承を得て出撃するのみとなる。一夏は少しだけわからず考え込んだ

 

「(えっと、こう言う時は確か)織斑一夏……マルコシアス、出撃する!」

 

急激な射出によるGが襲ってくるが一夏は平気そうな顔をしながらイサリビから猛スピードで発進した。それに続き昭弘が乗るグレイズ改もマルコシアスに続き出撃して来た。

 

 

 

「昭弘、阿頼耶識なしのモビルスーツだが、やれるか?」

 

「まだこいつに慣れていないが。まあ、何とかやってみるさ」

 

「そうか、無茶はするなよ?」

 

一夏と昭弘は三日月の下に行くと三日月は敵に攻撃されそうになっていた。

 

「させるか!」

 

一夏はそのまま接近し、昭弘はライフルで撃ち、敵の足を止める。

 

「三日月!」

 

一夏はメイスを三日月に向けて投げる。三日月はメイスを受け取り、一夏と昭弘は三日月の下に行くと三日月は昭弘に滑腔砲を渡し、昭弘は一夏にライフルを渡す。

 

「足の止まったのからやるぞ、援護を頼む」

 

「分かった」

 

「ちょっと待て!俺はまだこいつに慣れてねえんだ!」

 

昭弘は何か言って来るが2人はそれを無視し、マルコシアスは右手に大太刀、左手にライフルを持って敵部隊に向かう。

 

一夏は敵に大太刀で斬りつけるがアックスで防がれ、後ろからもう一機がアックスを振り下ろそうとする。

 

「甘い!」

 

そのまま目の前のグレイズを蹴り飛ばし、背後にいるグレイズを斬り裂き、ライフルで目の前のMSの頭部を破壊する。

 

「次は」

 

一夏はライフルで撃ちながら敵の動きを止め、大太刀で敵に斬りつけ破壊。 

 

後方にまた敵が近づいてくるが昭弘のグレイズが動きを止め、その隙に大太刀で破壊する。

 

「たく、三日月の野郎、こっちには阿頼耶識が無いんだぞ」

 

「サンキューな昭弘、まだいけそうか?」

 

「ああ、問題ない。まだいける」

 

「そうか、それより三日月は?」

 

周りを見渡すと三日月を見つける。見慣れない色のMSとまだ戦闘中だった。

 

「俺はこのまま三日月の援護に向かう。昭弘、後は任せる」

 

「分かった」

 

一夏は昭弘に残りの敵を任せ三日月の下に向かう。

 

「ん?あれは……」

 

一夏は三日月が戦っているMSに眉をひそめる。その敵は今までの奴とは違い一機は紫色に、もう一機は青色に塗装されていた。

 

「今まで見た事が無いタイプ……新型、か?」

 

紫色の敵は左腕のワイヤークローで三日月を拘束した。その2人は通信で三日月に話しかけていた。

 

『大人しく投稿すれば、しかるべき手段で貴様を処罰してやるぞ?」

 

「投降はしない。する理由が無い」

 

『その糞生意気な声、お前、あの時のガキか!』

 

『そういうあんたはチョコレートの隣の人』

 

「(チョコレートの隣の人?)」

 

一夏は通信に越しに聞こえる三日月の相手の呼び方に首を傾げる。

 

『ガエリオ・ボードヴィンだ!』

 

ガエリオと名乗った男はスラスターを吹かし、三日月を引っ張る。

 

『火星人は、火星に帰れぇぇぇぇぇ!!』

 

「(まずい!)やらせるかよ!」

 

 

すぐさま加速し一夏は紫のMSに接近する。

 

「っ!」

 

一夏は少し離れた場所にもう一機の青いMSの攻撃を即座にシールドで弾丸を防ぐ。

 

「ほう、あれを防ぐか。動きにも隙が無い…あの機体も阿頼耶識か」

 

青のMSのパイロットは冷静に分析し、機会を伺う。一夏はもう一機に警戒しながら三日月が交戦している紫のMSにライフルを発砲しながら接近し、三日月を拘束していた左腕を切り落としそのまま蹴り飛ばす。

 

 

『ぐっ!えぇい!そこのクソガキの仲間か?』

 

一夏の通信にも相手のパイロットの声が聞こえ瞬時一夏はパイロットが何者かを気づく。

 

「この声、確かあんた農場で会った…」

 

『その声、貴様もあの時のガキか!』

 

「確か、ガエリオ…って言われていたよな?」

 

『そうだ!そこのガキと違って少しはまともらしいな…』

 

一夏は三日月と背中合わせにし、近くにいる青のMSにも警戒する。目の前と同じタイプのMSだが、一夏は青のMSのパイロットが誰なのかを瞬時に悟る。

 

「と言う事は……あの青のMSのパイロットは、いや…今は後回しだ。三日月、大丈夫か?」

 

『ああ、大丈夫』

 

一夏は三日月の無事を確認するとオルガから通信が入る。

 

『ミカ!一夏!昭弘!この宙域から離脱する!帰投しろ!』

 

「分かった」

 

「了解」

 

「ああ」

 

三日月と一夏、そして明弘はオルガの指示に従いイサリビへ帰投する。

 

 

 

 

その後、オルガから聞いた話によると元一軍のトドが言わずもがな、今回の出来事の元凶らしく、そいつをシノがボコボコにした後、パンツ一枚にしてカプセルに入れ、メッセージを書き宇宙に放り出したとのこと。

 

一夏はトドには同情は無く、「当然の報いだと」内心で思っていたのだった。

 

 

こうして鉄華団を乗せたイサリビは火星を後にした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。