ようこそ間違いだらけのルームシェアリングへ (いろはす@)
しおりを挟む

第1話:堀北鈴音

高度育成高等学校をAクラスで卒業したオレは大学へ進み、生活費を節約するため、元クラスメートの堀北鈴音とルームシェアリングを始めた。(無謀)

 

 

事前の触れ込み通り、希望する進路は叶えられたものの、発生する諸費用はすべて自己負担。もはや、毎月1日にポイントが振り込まれることもない。そしてここに、晴れて苦学生としての日々が始まったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい」

 

 

出迎えてくれたのは、薄いピンク色のエプロンを付けた堀北だった。流れるような黒髪に、すらりとした肢体。どこから見ても、初々しい新妻そのものである。

 

 

「夕ご飯出来てるわよ。お風呂も沸いてるわ・・・それとも、わ、私にする?」ボソッ

 

 

最後は何を言ってるのか良く聞こえなかったが、経験上、敢えて触れない方がいいだろう。

 

 

「そうか・・・ありがとう。堀北は良い奥さんになりそうだな」

 

 

「・・・っ?!?」

 

 

ルームシェアということで、家事全般も交代制にしているのだが、やはり彼女は有能だった。ある1点を除いて、だが。全てをそつなく高いレベルでこなす姿は、さすが生徒会長を務めてAクラスで卒業しただけのことはある。次の当番では、オレも少しは本気を出さないとな・・・

 

 

そんなことを考えながら、なぜか玄関口で悶えている堀北を避けて中へ入ろうとしたのだが・・・

 

 

「待ちなさい」

 

 

「たうわっ?!」

 

 

豹変した堀北に襟元を掴まれ、引き摺り戻される。

 

 

「ゲホゲホ!ど、どうした?」

 

 

「女性の匂いがするわ」

 

 

「へ?」

 

 

予想外の言葉に、間抜けな声が出てしまった。

 

 

はぁ・・・単なるルームメイトでしかない堀北に、とやかく言われる筋合いは無いのだが・・・誤解は早めに解いておかないと、面倒な未来しか見えない。さすがにもう、コンパスが出てくることはないだろうが・・・(巨大フラグ)

 

 

「別に言い訳するようなことでもないが、心当たりは無いぞ。だいたい、お前に何の関係が有るんd・・・」

 

 

「いいからそこに立ちなさい!!」

 

 

「ハイ、スミマセン」

 

 

わざわざ言う通りにする必要もないのだが、下手に抗うと彼女は一切家事をしなくなるので、結局困るのはこっちなのである。(経験済み)

 

 

仕方なく直立不動の姿勢をとったオレの身体を、隅々まで嗅ぎ回る堀北。完全に変態だ。そして・・・

 

 

「この香りは・・・やっぱり・・・!!」

 

 

何がやっぱりなのかはさっぱりだが、かわいらしいピンクエプロンのポッケから、何やら取り出す鈴音さん・・・ってまじかよ?!

 

 

「あっぶな・・・!!」

 

 

鼻先を掠めたのは、特大サイズの製図用コンパス。おいちょっと待て!さすがにそれは冗談にならないぞ!?

 

 

「今のを躱すとはいい動きね。何か習っていたのかしら?」

 

 

「習字とピアノを少々・・・とか言ってる場合じゃないよな、これ」

 

 

鈍い銀色に光るコンパスを手に、無表情で立ち尽くすルームメイト(堀北鈴音)。完全にハイライトが消えている。どうしてこうなった?何だか、浮気がバレて問い詰められている気分だ・・・

 

 

そう、完璧美人の堀北鈴音は、とても嫉妬深いのである。高校3年間で目覚ましい成長を遂げた彼女だったが、この点ばかりはむしろ退化したと言わざるを得ない。

 

 

さっきも言った通り、堀北自身は良い奥さんになるだろうが、たかがルームメイト相手にこれでは、将来の結婚相手(パートナー)はさぞ苦労するだろうな。まあ、オレには関係ない話か・・・

 

 

 

 

 

 

 

そう思う綾小路であったが、その結婚相手として自分が既にロックオンされていることには、終ぞ気付かないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

(おわり)




【次回第2話:一之瀬帆波】

にゃ?!わ、私が綾小路君と・・・にゃははは・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話:一之瀬帆波

高度育成高等学校をAクラスで卒業したオレは大学へ進み、生活費を節約するため、元同級生の一之瀬帆波とルームシェアリングを始めた。(激甘)

 

 

事前の触れ込み通り、希望する進路は叶えられたものの、発生する諸費用はすべて自己負担。もはや、毎月1日にポイントが振り込まれることもない・・・(以下省略)

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりにゃさい」

 

 

出迎えてくれたのは、薄いピンク色のエプロンを付けた一之瀬だった。輝くようなストロベリーブロンドの髪に、その存在を主張する胸部装甲。どこから見ても、初々しい新妻である。

 

 

「お夕飯出来てるから、一緒に食べにゃい?」

 

 

「そうか・・・ありがとう。一之瀬は良い奥さんになりそうだな」

 

 

「にゃにゃん?!?」

 

 

ルームシェアということで、家事全般も交代制にしているのだが、やはり彼女は有能だった。ある1点を除いて、だが。全てをそつなく高いレベルでこなす姿は、さすが最後までAクラス争いをしたライバルだけのことはある。次の当番では、オレも少しは本気を出さないとな・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どう?美味しいかにゃ?」

 

 

上目遣いで不安そうに聞いてくる一之瀬。

 

 

「ああ、とっても美味いぞ。特にこの味噌汁なんか、毎日作ってもらいたいくらいだ」

 

 

オレは素直に感想を伝えた。わざわざ時間を割いて料理をしてくれた彼女に対する、最低限の礼儀だ。

 

 

「にゃにゃにゃん?!?そ、それって・・・お嫁さんにしてくれるってことだよね?」ボソッ

 

 

「ん?一之瀬?」

 

 

最後は何を言ってるのか良く聞こえなかったが、経験上、敢えて触れない方がいいだろう。

 

 

「ううん、にゃんでもないにゃんでもない!!にゃはは・・・」

 

 

いい加減、そろそろ補足説明(ツッコミ)が必要か。そう、ルームシェアして初めて知ったことなのだが、どうやら彼女、家の中では無意識に例の口調で喋ってしまうらしいのだ。初めはこちらも戸惑ったが、一度慣れてしまえばどうと言うことはない・・・と思う。たぶん、メイビー。

 

 

 

すると・・・

 

 

 

ピンポーン♪

 

 

「お届け物で〜す」

 

 

「にゃーい!」

 

 

玄関へ駆けてゆく一之瀬。いや待て、さすがにその口調で応対に出るのは痛すぎるだろ・・・

 

 

「ご苦労様です。受け取り印は此処でいいですか?はい、ありがとうございました」

 

 

が、一瞬で余所行きモードに切り替わる一之瀬。オレの心配は杞憂に終わった。無関係な第三者とのやり取りは、至極まともなのだ。解せない。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・」

 

 

後片付けを終え、ひと息つく。さっきから一之瀬が、もじもじしながらこっちに視線を送っている。ああ、なるほど、トイレか・・・ルームシェアリングでは、こういった何気ない気遣いも大切だ。

 

 

さて、じゃあそろそろ寝るか・・・

 

 

自然な素振りで席を立ち、寝室へ向かおうとして振り返る。耳まで赤く染めた一之瀬が、オレの袖を掴んでいたからだ。ん?トイレじゃなかったのか。

 

 

「どうした?何か用か?」

 

 

そして投下される特大サイズの爆弾発言。

 

 

「あ、綾小路君さえよければ、その・・・今夜、()()()()()()、したいにゃん?」 

 

 

「たうわっ?!」

 

 

まさかとは思ったが、聞き違いではないようだ。確かこういう時、女性に恥をかかせてはいけないとYahoo!知恵袋に書いてあったな・・・

 

 

そう判断したオレは、瞬時に最適解を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Yesだにゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(おわり)




【次回第3話:櫛田桔梗】

綾小路君と一緒、嬉しいなっ (腹黒)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話:櫛田桔梗

高度育成高等学校をAクラスで卒業したオレは大学へ進み、生活費を節約するため、元クラスメートの櫛田桔梗とルームシェアリングを始めた。(社会貢献)

 

 

事前の触れ込み通り、希望する進路は叶えられたものの、当然諸費用はすべて自己負担。もはや、毎月1日に・・・(以下同文)

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい」

 

 

出迎えてくれたのは、薄いピンク色のエプロンを付けた櫛田だった。ナチュラルメイクに、抜群の破壊力を持つ胸部装甲。どこから見ても、初々しい新妻である。

 

 

「夕ご飯作っておいたよ綾小路君!一緒に食べようっ♪」

 

 

オレの手を取り、花が咲いたような微笑みを浮かべる櫛田。裏の顔を知らなければ、誰しも天使が降臨したと勘違いするだろう。今後、この笑顔に騙されることになるであろう男子諸兄を思うと、同情を禁じ得ない。

 

 

「そうか・・・ありがとう。櫛田は良い奥さんになりそうだな」

 

 

「・・・っ?!?あ、綾小路君にそう言ってもらえると嬉しいなっ♬・・・超優良物件ゲットだぜ。ざまあみろ、堀北に軽井沢。最初っから、てめぇらみたいなのはお呼びじゃねぇんだよ!」ボソッ

 

 

最後はセリフが長すぎて何を言ってるのか良く聞こえなかったが、経験上、敢えて触れない方がいいだろう。

 

 

ルームシェアということで、家事全般も交代制にしているのだが、やはり彼女は有能だった。ある1点を除いて、だが。全てをそつなく高いレベルでこなす姿は、さすが共にAクラスで卒業しただけのことはある。次の当番では、オレも少しは本気を出さないとな・・・

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 

ふたりで夕食を終える。やはり櫛田の味は一級品だった。いや、深い意味はないからな。

 

 

「ふぅ・・・」

 

 

後片付けを済ませ、一息ついた櫛田がゆっくりとピンクのエプロンを外した。その下は当然、一糸まとわぬ姿・・・のはずはなかったが、裸エプロンというジャンルが有るのだと、山内や外村が熱弁を振るっていたのを思い出す。そして・・・

 

 

「あーウザい」

 

 

がっちりとオレに抱き付いた裏櫛田が、低い声で毒づいた。そう、彼女はストレスが溜まると、オレをサンドバッグにして大暴れするのである。高校在学中から時々愚痴を聞かされてはいたのだが、ルームシェアするようになってからは、その内容がどんどん過激化しているような気がする。

 

 

「大学でもバイト先でも、ウザいしキモいんだよ!どいつもこいつも、あたしをエロい目で見やがって!!」

 

 

一度このモードに入ったが最後、彼女が満足するまで延々と罵詈雑言に付き合わされるのだ。

 

 

「こっちがおとなしくしてるからって、調子に乗ってんじゃねぇぞ?!・・・って聞いてんのかよ清隆ぁ!」

 

 

あーウザい・・・(絶対声には出せないが)

 

 

「あ、あぁ、もちろんだ。それより櫛田、トイレに行きたいんだが・・・」

 

 

「ああん?トイレだぁ?ここからが本番なんだから、行かせる訳ねぇだろ!だいたいそんな暇があるんだったら、いい加減あたしを押し倒してみろよ、このヘタレ×××!!」(自主規制)

 

 

そして最後は、泣きながら眠ってしまうのだ。正直、オレの手には負えない。ホワイトルームでも、絡んでくる美少女のあやし方なんて、カリキュラムに無かったしな・・・

 

 

ようやく泣き疲れて静かになった櫛田を引き剥がし、ベッドに運んで寝かしつける。オレはコイツの母親なのか?

 

 

「う・・・ん・・・清隆君、逃がさない・・・既成事実・・・できちゃった婚・・・ぐへへ・・・むにゃむにゃ」

 

 

この時、精神的に疲労していたオレは、不覚にも危険極まりない不穏な単語の数々を聞き漏らしてしまった。(痛恨)

 

 

さっきも言った通り、櫛田自身は良い奥さんになるだろうが、アレを聞かされることになる結婚相手(パートナー)は苦労するだろうな。まあ、オレには関係ない話か・・・

 

 

 

 

 

 

 

そう思う綾小路だったが、その結婚相手として自分が既にロックオンされていることには、やはり終ぞ気付かないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

(おわり)




【次回第4話:椎名ひより】

私と推理小説、どちらが大切ですか?(真顔)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話:椎名ひより

高度育成高等学校をAクラスで卒業したオレは大学へ進み、生活費を節約するため、元同級生にして読書仲間の椎名ひよりとルームシェアリングを始めた。(癒し系)

 

 

事前の触れ込み通り、希望する進路は叶えられたものの・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

 

玄関で声を掛けるも反応がない。室内に入ると、薄いピンク色のエプロンを付けた椎名が読書をしていた。うつむき加減の整った顔に、ゆっくりとページを捲る繊細な白い指先。どこから見ても、その姿は1枚の名画のようである。

 

 

「あ、おかえりなさい。気が付きませんでした」

 

 

顔を上げた拍子に揺れる、豊かな銀髪。高校3年間、この笑顔にどれだけ癒やされたことだろう。図書館で共に過ごした時間は、なぜかいまもなお、オレの中で益々輝きを増しつつある。

 

 

「夕ご飯を作っておきましたよ、綾小路君・・・と言ってもコンビニのお弁当をチンしただけなんですが・・・」ボソッ

 

 

最後は何を言ってるのか良く聞こえなかったが、経験上、敢えて触れない方がいいだろう。

 

 

「そうか・・・ありがとう。椎名は良い奥さんになりそうだな」

 

 

「・・・っ?!?そ、そう言えば駅前のブックセンターに新刊が入ったんですよ!!いまから見に行きませんか?!」

 

 

いまから、か?正直疲れてるし、早く夕食にしたかったのだが、キラキラした上目遣いを見ると・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大漁でしたね」

 

 

「ああ・・・そうだな」

 

 

両手に食い込む紙袋の重さにぐったりしつつ、オレは引き攣った笑いを浮かべた。あのあと、駅前のブックセンターで椎名の本選びに付き合い、文字通り大漁(大量)の新刊を購入した帰り道だ。正直、ネットで頼めば一発だと思うのだが、彼女は本屋に行くことにこだわりがあるらしい。

 

 

「あの・・・ご迷惑、でしたか?」

 

 

不安そうに瞳を揺らすルームメイト(椎名ひより)

 

 

「いや、全然そんなことないぞ。オレも読みたい本があったからな」

 

 

そんな心にもない言葉がすんなりと出てくるあたり、オレも少しは『感情』というものを理解出来るようになったと言えるのだろうか。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

そして翌朝。オレは見事に寝過ごした。昨夜は新刊を読みふける椎名に付き合わされ、ほとんど徹夜だったのだ。そんな日に限って、1限目から授業がある。今朝は朝食抜きになりそうだな・・・

 

 

「綾小路君が寝坊とは、珍しいですね」

 

 

一緒に仲良く寝過ごした椎名が、パジャマのままで微笑む。天然か・・・いや、そもそも誰のせいでこうなった?

 

 

矮小なもうひとりのオレが心の中で叫ぶが、それでも結局許せてしまうのは『かわいいは正義』だからだろう。(完敗)

 

 

「行ってらっしゃい。私は今日、休講なので、家事は任せて下さいね」

 

 

「ありがとう。済まないが任せた」

 

 

「はい」

 

 

見惚れるような笑顔に送られて、オレは家を飛び出した。一抹の不安を覚えながら。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

 

大学から帰宅し玄関で声を掛けるも、反応がない。室内に入ると、薄いピンク色のエプロンを付けた椎名が読書をしていた。ゆっくりとページを捲る繊細な白い指先に、美しい銀髪。その姿はまさしく、1枚の絵画のようなのだが・・・

 

 

「あ、おかえりなさい。気が付きませんでした」

 

 

「いや、気にしないでくれ」

 

 

答えながらキッチンを覗くと、今朝のまま山積みされた食器が見えた。洗面所では、洗濯機の中に洗濯物が生乾きで放置されている。

 

 

やはりな・・・

 

 

そう、親友でもある文学少女は、家事能力がゼロなのである。彼女の場合、労力のほぼ全てを読書に費やしていると言ってもよい。もしかして、ルームメイトとしてはハズレなんじゃないか?これ。

 

 

「椎名、台所はオレがやるから洗濯を頼めるか?」

 

 

不都合な真実から目を逸らしつつ呼び掛けるも、返事はない。またもや本の世界に没頭してしまったようだ。はぁ、仕方ないか。そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「椎名、夕飯が出来t・・・」

 

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

パタンと本を閉じて即答するひよりさん。こういう時だけは、やけに反応が早いんだよな・・・

 

 

「わあ!すごく美味しそうです。綾小路君は良い主夫になりそうですね」

 

 

食卓を見て目を輝かせる椎名。果たして素直に喜んでいいものなのだろうか。今の時代、男性が家事をこなすのは当たり前であるが、最近の家事分担はオレが炊事洗濯掃除にごみ出し、椎名が読書・・・あれ?これって分担と言える・・・のか?(混乱)

 

 

さっきも言った通り、彼女自身は良い奥さんになるだろうが、結婚相手(パートナー)は本に関する知識に加え、ハイスペックな家事能力も求められるんだろうな。まあ、オレには関係ない話か・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思う綾小路だったが、その結婚相手として自分が既にロックオンされていることには、やはりと言うべきか、終ぞ気付くことはないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

てか、椎名は何のためにエプロンしてたんだ?

 

 

勘のいい綾小路君は嫌いです。ボソッ

 

 

 

 

 

 

 

 

(おわり)




【次回第5話:坂柳有栖】

ふふふ・・・今夜は寝かせませんよ?綾小路君。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話:坂柳有栖

高度育成高等学校をAクラスで卒業したオレは大学へ進み、生活費を節約するため、元同級生の坂柳有栖とルームシェアリングを始めた。(天才 × 天才)

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい」

 

 

出迎えてくれたのは、薄いピンク色のエプロンを付けた坂柳だった。輝く銀髪に小柄な身体。どこから見ても、初々しい幼な妻である。(通報案件)

 

 

「夕ご飯を作っておきましたよ、綾小路君。ふふふ・・・」

 

 

オレの手を取り、上品な微笑みを浮かべる坂柳。その好戦的な一面を知らなければ、誰しも儚げな超絶美少女だと勘違いすることだろう。今後、この笑顔の裏で()()()()にされるであろう男子諸兄を思うと、同情を禁じ得ない。

 

 

「そうか・・・ありがとう。坂柳は良い奥さんになりそうだな」

 

 

「・・・っ?!?あ、綾小路君にそう言って頂けると嬉しいです・・・」

 

 

俯いて恥じらう姿を見て、去年の出来事を思い出す。そう、卒業を間近に控えた高3の秋、坂柳有栖は先天性疾患に打ち勝ったのである。しかも、彼女の治療に成功したメディカルチームのメンバーは全員、高度育成高等学校の出身者だったらしい。その事実を聞いたとき、オレは初めてあの学校の実力至上主義に感謝した・・・

 

 

 

 

 

 

 

さて、ルームシェアということで家事全般も交代制にしているのだが、やはり彼女は有能だった。ある1点を除いて、だが。全てをそつなく高いレベルでこなす姿は、さすが生まれながらの天才と自負するだけのことはある。次の当番では、オレも少しは本気を出さないとな・・・

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 

ふたりで夕食を終える。やはり坂柳の味は一級品だった。いや、深い意味合いはないから、そこでスマホを取り出すのは止めてくれ。

 

 

そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・」

 

 

後片付けを済ませ、一息ついた坂柳がゆっくりとピンクのエプロンを外した。その下は当然・・・

 

 

「たうわっ?!」

 

 

思わず目を奪われ・・・いや、疑った。有栖さん?ここはお風呂場ではないんだが。

 

 

「やっとこの時が来ました」

 

 

胸の前で両手を合わせ、感無量といった表情で呟く坂柳。

 

 

「惹かれ合う男女がひとつ屋根の下。この状況で成すべきことなど、もはやひとつしかあり得ません。幸い、成人年齢も引き下げられたことですし」

 

 

微妙にツッコミどころ満載だが、その言わんとするところは明白だ。確かこういう時、女性に恥をかかせてはいけないと、某まとめサイトにも書いてあったな。だが、湧き上がるこの背徳感は何だ・・・?やはり、お酒と健全な交際は、諸々もっと()()()なってから・・・ひょ?!

 

 

「いま何か、とてつもなく失礼なことを考えていませんでしたか?綾小路君」

 

 

鼻先を掠めたハイキックに、思わず変な声が漏れてしまった。まぁ、元気なことは良いことだ。と、居住まいを正した坂柳が、大きな瞳で真っ直ぐにこちらを見詰めながら言った。

 

 

「いまのわたくしなら、あなたに『敗北』を与えることが出来ます」

 

 

「なっ・・・?!」

 

 

敗北。それは、高校3年間で遂に知ることが叶わなかったもの。堀北に龍園、一之瀬、南雲、そしてホワイトルームの刺客たち。誰ひとりとして、オレを上回るヤツは居なかった。だからこそ・・・

 

 

「わかった。オレに敗北というものを教えてくれ、坂柳」

 

 

オレは敢えて、彼女の申し出を受ける。ちなみに、疚しい気持ちは全く無い・・・と思う。たぶん。メイビー。

 

 

「承知しました。これで心置きなく、綾小路君と(物理的に)ぶつかり合うことが出来ますね」

 

 

「ああ、楽しみにしている」

 

 

「ふふふ・・・作られた天才が、生まれながらの天才に勝つことは出来ませんよ?」

 

 

ホワイトルームでの一方的な出逢いから、はや10数年。ここにオレたちは、遂に雌雄を決する時を迎えたのである。(隠喩)

 

 

 

 

 

 

 

(CM放送中)             

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・♡」

 

 

「た、たうわ・・・」

 

 

満足げなため息をつく少女に、思わずオレは呻いた。もう限界だ。

 

 

「そ、そろそろお開きにしないか?坂柳・・・明日は1限目から授業なんだが・・・」

 

 

「ふふふ・・・ご冗談を。いまのはまだ、単なる準備運動ですよ?」

 

 

「たうわっ??!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、解き放たれし彼女は、最強の肉食系だったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(おわり)




【次回第6話:雪ノ下雪乃】

HACHIMANって知ってるかしら?綾小路君。

それってまさか、オレより強いとかいう設定になってる、例のアイツのことか?(大炎上確定)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話:雪ノ下雪乃+α

高度育成高等学校をAクラスで卒業したオレは大学へ進み、生活費を節約するためにひとり暮らしを始めた・・・はずだったのだが。(誤算)

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい」

 

 

出迎えてくれたのは、薄いピンク色のエプロンを付けた雪ノ下雪乃だった。雪のように白い肌と、艷やかな黒髪。どこから見ても、初々しい新妻である。この際、どうやって家の中に入ったのかは取り敢えず置いておこう。

 

 

「で、なんの用だ?」

 

 

「えっと・・・うちの比企谷君が、いつも貴方に迷惑ばかりかけていることを謝りに来たの」

 

 

「はぁ・・・?」

 

 

いまいち話が読めない。

 

 

「ことある度に高度育成高等学校に現れては、原作をかき乱してごめんなさい」

 

 

そういうことか。

 

 

「いや、二次創作だからオレは別に構わないが・・・」

 

 

「そうはいかないわ。近頃の彼は、些か調子に乗りすぎているの。捻デレボッチとか言っておきながら、実際はHACHIMANでやりたい放題。さすがに目に余る所業よ」

 

 

・・・確かに最近、随所でヤツと絡む機会が増えてきたような気がする。オレは率直な感想を口にした。

 

 

「まぁ正直なところ、ヤツがオレよりも優秀とかいう設定ばかりで、うんざりしているのは事実だな」

 

 

いくらご都合主義の結果とはいえ、あんな文化系の腐り目一般人が、ホワイトルームの最高傑作と呼ばれたオレより強いわけがない。ましてや・・・いや、これ以上はやめておこう。

 

 

「でしょう?しかも、そちら(よう実)のヒロインを次々落としておきながら本人は一切無自覚とか、もはや痛すぎて見ていられないわ。材木座君が書いたボツ小説の方が、まだましよ」

 

 

容赦ないな。大炎上待ったなしだな。

 

 

「そう言えば、雪ノ下たちはいつも酷い扱いをされているみたいだな」

 

 

歯に衣着せぬ彼女の物言いに、こちらも思わず本音が溢れる。ヤツの居るところ、必ずや旧知の敵役で雪ノ下一味あり、というのはもはや様式美と言っても過言ではない。目の前の雪ノ下雪乃はもちろん、葉山隼人もひたすらヤツを誹謗中傷するばかりだし、由比ヶ浜由衣に至っては、幼児レベルの悪口をリピートするだけの壊れたスピーカーだ。

 

 

「そ、そうなのよ!いつも見るに堪えないアンチ役ばかり・・・こちら(俺ガイル)では私たちがメインヒロインなのにっ!!」

 

 

一瞬、辺りの空気が凍る。これが氷の女王・・・

 

 

「お、落ち着け。それで、いったいどんな用件なんだ?」

 

 

「はっ?!熱くなりすぎたわ、ごめんなさい」

 

 

オレの言葉で我に返った雪ノ下は、ようやく本題に入った。

 

 

「用件は他でもないわ。そう、今日から私たちがルームメイトとして、貴方のお世話をすることになったの。家事全般から、その、よ、夜のお世話まで・・・そうね、五等分の花嫁とでも思ってちょうだい」

 

 

「・・・は??」

 

 

さすがにオレの頭脳でも、全く理解が追い付かない。

 

 

「お詫びの印と思ってくれて構わないわ。ちなみに、これはもう決定事項よ」

 

 

「一応聞くが、拒否権は・・・?」

 

 

「あるわけ無いでしょう?」

 

 

優しく微笑む雪ノ下に気圧されつつも、なんとか逃げ道を探して会話を繋ぐ。押しかけ美少女とひとつ屋根の下とか、オレはまだ、こんな形で『敗北』を知りたくはない・・・(切実)ん?

 

 

「いま、私たちって言わなかったか?」

 

 

「ええ、そうよ」

 

 

彼女の返答と同時に、奥からぞろぞろと新手の美少女たちが現れた。いや、若干1名、おかしいのが混じっていたような・・・てか、ここってオレの部屋だよな??

 

 

「ゆきのんが言う通りだよ。ヒッキーがあやぽんに迷惑かけてるんだから、私たちが謝るのは当然だし!」

 

 

あやぽんってのは斬新だな。

 

 

「そうですよ!せんぱいがご迷惑をおかけしているなら、かわいい後輩としてそのフォローを・・・はっ?!無表情のイケメンとか非常に気になりますけどやっぱりムリですごめんなさい」

 

 

自分でかわいいとか口走るあたり、あざとさもここまで来ると、むしろ清々しいものがある。櫛田と勝負させてみたら見ものだろう。

 

 

「どもども!うちのゴミぃちゃんがご迷惑をおかけしているみたいで、すみません。妹として、心よりお詫び申し上げます。あ!今の小町的に超ポイント高い♪」

 

 

確かヤツは重度のシスコンだったはず。その妹と同居するってことは・・・(恐怖)

 

 

ん?五等分・・・ひとり足りないぞ?

 

 

「安心したまえ。奉仕部顧問の私が色々とお世話してやろう」

 

 

頼もしい笑顔を見せる白衣姿の黒髪ロング・・・やはり俺のルームシェアリングはまちがっている。これじゃ、四等分の花嫁とその付添人(bridesmaid)だろ・・・

 

 

「たうわっ!?」

 

 

「きみ、いま何か大変失礼なことを考えていなかったか?」

 

 

「ハテ?ナンノコトヤラ・・・」

 

 

「・・・次はないからな?」

 

 

鼻先へ突き付けられた拳に、思わず冷や汗が背中をつたう。正直に告白しよう。いまのパンチ、相手が寸止めしていなければ確実に食らっていた。このおばさn・・・オネエサン、まさかホワイトルームからの刺客なのか?いや、いくらなんでも、それだと年齢的に計算が合わない・・・たうわっ?!

 

 

「・・・次はないと言ったよな?」

 

 

振るった拳を撫でながらうそぶく、アラサー独身女性教師。オレは敢えて、無表情で応じた。

 

 

「まったく・・・君はサエやチエから聞いていた通りだな・・・去年、私の教え子にも君にそっくりなヤツが居てね・・・」

 

 

「それは漢字(八幡)ローマ字(HACHIMAN)、どっちの『ヤツ』でしょうか?」

 

 

「なっ?!」

 

 

一瞬、目を見開く平塚教諭。

 

 

「ふははっ・・・本当に君ってヤツは・・・一度、朝までとことん飲み明かしたいものだな」

 

 

たとえ彼女がどれほどの酒豪だとしても、最後にオレが勝っていれば良い・・・いや、ムリだな、それは。(悪寒)

 

 

 

 

 

 

ちなみに彼女は高校時代の同級生たちと、いまでも互いにサエちゃん、チエちゃん、シズちゃんと呼び合う仲であるらしい。そして、かつて高育三人娘とまで呼ばれた美少女たちは、歪な実力至上主義の教室で揉まれた結果、いまや全員が残念美人となり果てたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

誰か、3人纏めてもらってやってくれ・・・たうわっ?!(一撃轟沈)

 

 

 

 

 

 

 

 

(おわり)




【次回最終話:茶柱佐枝?】

あっぶな・・・?!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

最終話:茶柱佐枝+α

【その1 茶柱佐枝】

 

高度育成高等学校をAクラスで卒業したオレは大学へ進み、生活費を節約するため、元担任の茶柱佐枝とルームシェアリングを始めた。(理解不能)

 

 

 

 

 

 

「お、おかえり、綾小路」

 

 

「たうわっ?!」

 

 

出迎えてくれたのは、メイド服姿で恥じらう茶柱だった。まさか、例の文化祭で味を占めたのか・・・いやでもそれ、メイドって言うよりメイド長だろ・・・

 

 

(おわり)

 

 

 

 

 

 

 

 

【その2 星之宮知恵】

 

 

高度育成高等学校をAクラスで卒業したオレは大学へ進み、生活費を節約するため、星之宮知恵とルームシェアリングを始めた。(なぜだ)

 

 

 

 

 

「たらいま〜呑み過ぎひゃったよぉ〜♪清隆く〜ん、お水ちょうら〜い・・・うっ!?」

 

 

「たうわっ!?」

 

 

(おわり)

 

 

 

 

 

 

 

 

【その3 平田洋介】

 

 

高度育成高等学校をAクラスで卒業したオレは大学へ進み、生活費を節約するため、元クラスメートの平田洋介とルームシェアリングを始めた。(きよ × すけ、キマシタワ〜!)

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい、清隆君!」

 

 

「たうわっ!?」

 

 

出迎えてくれたのは、薄いピンク色の裸エプロンを付けた平田だった。サッカーで適度に鍛えられた肉体を、惜しげもなく晒すイケメン。その姿は、どこから見ても初々しい新・・・いや待て待て待て!

 

 

「夕食を作っておいたよ。お風呂も沸かしてある。それとも、ぼ、僕にするかい?」ボソッ

 

 

(おわり)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【その4 龍園 翔】

 

 

高度育成高等学校をAクラスで卒業したオレは大学へ進み、生活費を節約するため、元同級生の龍園翔とルームシェアリングを始めた。(一触即発)

 

 

 

 

 

「おう、帰ったか、綾小路」

 

 

「たうわっ!?」

 

 

出迎えてくれたのは、薄いピンク色の裸エプロンを付けた龍園だった。イヤな冷や汗が背中をつたう。

 

 

「ククク・・・夕飯を作っておいたぜ?風呂も沸かしてある。それとも、お、俺にするか?」ボソッ

 

 

何を言ったのか最後まではっきりと聞こえたが、経験上、絶対に触れない方がいいだろう。いや、触れちゃダメだ。オレはまだ、こんな形で敗北を知りたくはない。

 

 

反応しないオレを見て、なぜかしゅんとする龍園・・・え?

 

 

「そうか・・・クククッ・・・いいぜ、アルベルト!お前をご指名だとよ」

 

 

「Yes , Boss.」

 

 

進み出てきたのは、薄いピンク色のエプロンを付けたアルベルトだった。いや、だからなんでそうなる?エプロンに描かれたりんごのイラストは、分厚い胸板で引き伸ばされ、まるでスライムみたいだ。その姿はどこから見ても、初々しい新・・・

 

 

いかん。さすがのオレも、新生活でかなり疲れが溜まっているようだ。ていうか、あんなサイズのエプロンってあるんだな・・・

 

 

いや待て待て待て!なんで顔が赤いんだアルベルト?ひょ?く、来るなぁ〜!!たうわっ?!

 

 

(おわり)




最後までお読み頂き、有難うございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。