やはり人を見かけで判断するのはまちがっている。 (復活のマサニキ)
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人を見かけで判断してはいけない

人は見かけによらない、とはよく言ったものだと思う。

まさに俺にぴったりな言葉だ。

根暗だとか引きこもりだとかよく陰で言われてるけどな、失礼なやつらめ。

 

それは置いておいて…俺はそれなりに高いポテンシャルを持ってると自負している、だって国語は学年で3位だし、一色の手伝い散々やったおかげか事務処理能力も高い方だ。

 

前々から言ってる通り、他と比べたら高スペックなんだぞっ!

あれ?これで社畜適正とかもあったら負けじゃね?

もっと手を抜いて生きねば。

 

人は見かけによらない、それはもちろん他の人間にも当てはまる事で…

俺の身の回りにいるやつらって、かなり意外な面を持ってるんだよなぁ。

 

あーしさんや川なんとかさんとかは、たまに女子高生とは思えないほどのオカン性能発揮する。

一色は男惑わすくらいしか出来ないと思いきや、責任感が強くなんだかんだ言って生徒会長としての責務を果たしてる。

 

由比ヶ浜は今どきの女子高生でビッ◯ぽいが、素直で誰よりも優しい。何度も助けられたな…

そして雪ノ下は…

 

 

 

「え〜!?ゆきのん抱き枕がないと寝れないの!?」

 

「…えぇ」プイッ

 

「……もぉ〜!ゆきのんかわいすぎ!!」ギュー

 

「ちょっ…由比ヶ浜さん苦し…」

 

「(やだなにこの子可愛いかよ)」

 

いつも通りに部室で過ごしていた時、由比ヶ浜が眠そうにしている雪ノ下を気にかけたことから始まった。

 

なにやら長年使っていた抱き枕が潰れてしまったそうで…てか長年使えば潰れるものなの?あの非力な雪ノ下が?何に使ってんだよ…

だから一応は眠れるが、眠りが浅いから放課後になって限界が近づいてきたらしい。

 

あの雪ノ下がねぇ…まぁパンさんや猫大好きってのもあるし、特別驚きはしないが…意外ちゃ意外だ。

 

「じゃあ千葉村の時とかどうしてたの?」

 

「小さめの抱き枕を持ってきていたの。それも少し前に潰れてしまって…」

 

「そうなんだ…なら新しい抱き枕買わなきゃだね、もう決まってるの?」

 

「それが…色々と探しているのだけれど、これといった物が見つからなくて…」

 

「そっか…因みにどんなのがいいとかある?」

 

「そうね、ねk…ンンッ抱きやすい事が最優先ね」

 

いま猫って言おうとしたろ、眠すぎて欲望丸出しだぞ雪ノ下。

そんなに猫好きなんだから飼えばいいのに、そういえばなんで猫飼っていんだ?

ペット禁止の住居も増えてるからそれのせいなのだろうか。

 

「抱きやすいかぁ…でもあたし抱き枕持ってないからどんなのが丁度いいか分からない…」

 

「そういえば小町が抱き枕持ってるとか言ってたな。小町に聞きゃ良さそうなの見つけてくれんじゃねぇか?」

 

「小町ちゃんも持ってるんだ…」

 

「流石に雪ノ下ほどではないと思うがな」

 

「…何か言いたい事があって?」キッ

 

「ナンデモナイデス…」

 

ちょっと俺だけ扱い酷くない?いつもの事だけどさ。

別に恥ずかしいことじゃねぇだろ、抱きが着いてても枕に変わりねぇんだし。

よう分からん…

 

「では…小町さんにも聞いてみましょう」

 

「だねー、じゃあゆきのん!今度一緒に抱き枕見に行こ!」

 

「い、いえ…ひとりで探しに…」

 

「あたしも欲しくなっちゃったの!ねーゆきのん行こー!」

 

「わかった…わかったから由比ヶ浜さん揺らさないで…」

 

最近、由比ヶ浜さん雪ノ下の扱いが上手くなったというよりか、ただ駄々をこねる子供になってないか?

それに渋々了承するママのん…なにこれひどい。

 

 

 

〜数日後〜

 

「やっはろ〜!」

 

「うっす」

 

「こんにちは2人とも」ツヤツヤ

 

「「………」」

 

え?なんか雪ノ下の肌めっちゃツヤツヤしてない?いつもよりなんかハキハキしてるし…何があったん?スキンケア?

 

「ゆ、ゆきのん?どうしたの?」

 

「どうしたの…とはどういう意味かしら?」

 

「いや…なんていうか肌が凄いツヤツヤしてるからさ…」

 

「これは…あ、新しい抱き枕のおかげよ」

 

「あー、この前一緒に見に行った時は見つからなかったもんね…あの後いいの見つけたんだ?」

 

「見つけた…というよりか貰ったと言った方が正しいわね」

 

「貰った?陽乃さんとか?」

 

「いえ…その、小町さんに」

 

「ん?」

 

小町に貰った?ここ最近、雪ノ下とは会ってないはずだし…もしかして一昨日小町に郵便出してこいと言われたやつか?

なら手渡しで良かったろ…お金払ったのお兄ちゃんなんだぞ!

あとでお説教だな。

 

「へ〜、どんなの貰ったの?」

 

「い、言えないわ」

 

「言えない?どんなものなの…」

 

「そ、その…」チラッ

 

何故恥じらいながらこっちを見る…俺は関係ないぞ、ただ持って行けと言われただけだ!

てか恥じらうものってどんなのだよ、そんなにヤバいやつなんですか!?

ローリエちゃんの抱き枕ほしい。

 

しかし、だとしたら見かけによらなすぎだろ…ゆきのんヤバすぎ、略してヤバのん。原型留めてねぇわ。

あとで説教と一緒に何送ったか問い詰めておこう。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「小町、前に俺が持ってった小包、あれ雪ノ下宛だったのか?」

 

「およ?お兄ちゃん知ってたの?」

 

「いや、今日そんな風なのを雪ノ下が話しててな、抱き枕送ったんだって?てかわざわざ郵送にする意味なかったろ、お兄ちゃんの財布すっからかんなの分かっててやったな…」

 

「ごめんってお兄ちゃ〜ん。で?で?雪乃さんどうだった?」

 

「軽いやつだな…なんかめっちゃ肌がツヤってたな、あとはいつもより元気そうだった」

 

「ほうほう…なるほど〜、他には?」

 

「他にはって言われても…あとは恥ずかしそうにしてたくらいか?」

 

「あー、雪乃さんまだ耐性なさそうだもんなぁ」

 

「お前どんなの送ったんだよ…変なのじゃないだろうな?」

 

「変なのじゃないよ〜、ちゃんとした抱き枕だよ?」

 

それであの雪ノ下?耐性がないとか色々と不可解なんだが…

 

「まー、それだけ聞ければ十分かな。じゃ小町はお仕事があるので部屋に戻りまーす。入ってきちゃダメだよ?」

 

「何だよ仕事って…別に入る用なんてねーよ」

 

最近小町ちゃんが何してるか分かりません…

もう兄離れする前触れなのかなぁ…お兄ちゃん泣きそう、小町抱いて寝たい。卑猥な意味ではなくてね?

今日は1人寂しく泣いて寝よう…

 

ーーーーーーーーーーーー

また数日後

 

「……さて、朝から気になって仕方がなかったんだが」

 

「………」ツヤツヤ

 

「………」ツヤツヤ

 

「由比ヶ浜よ、お前なんかめっちゃツヤツヤしてね?」

 

「う、うん…///」

 

えー、初っ端恥ずかしがりますか…ツヤツヤする事って恥ずかしいこと?アヤナミになっちまうよ。

もしかしてコイツもか?でも今回は運び屋やってないしなぁ…

 

「由比ヶ浜も抱き枕か?」

 

「そ、そう!」

 

「…小町から?」

 

「そ、そう…///」

 

いや顔赤…えぇーもう小町が怖くなってきた。

この2人赤面させる抱き枕って何よ、怖いわ。

 

「その抱き枕さ…どんなのなんだよ」

 

「ヒ、ヒッキーの変態!」

 

「女性にプライベートな事を聞いてくるなんて、プライバシー侵害という言葉を知っていて?卑猥谷くん」

 

「ちょっと待て、ただの抱き枕如きでそこまで言うか?俺の知ってる常識って間違ってたの?泣きそうなんだが」

 

なんなのこの子たち…仮称抱き枕に毒されてる感すごいんだけど。

まさか次は…俺か!?

そんな怖い抱き枕なんていらんぞ!

 

ガラガラッ

 

「失礼しま〜す!ちょっとお聞きしたい事が〜…ってどうしたんです?お二人とも顔めっちゃ赤いですけど…先輩なにしたんですか…」ヒキ

 

「待て待て待て俺は何もしていない、全くの無実だ!てかどうしてこのタイミングで来るんだよ…もっとややこしくなるじゃねぇか」

 

「まーそんな事はどうでもいいんで。雪乃先輩、先輩の抱き枕を持ってるって聞いたんですけど、ホントですか?」

 

「「………」」ピクッ

 

「………ん?」

 

学年3位のこの俺が、今の日本語理解できなかったぞ?

雪乃先輩、先輩のって言ったよな…

聞き間違えか?

 

「………」プルプル

 

「ちょ…いろはちゃんストップ!」

 

「え?結衣先輩も持ってるんですか?ずるいわたしも欲しいですぅ!」

 

「わかったから!一旦ストップ!」

 

「先輩もなんでわたしにはくれないんですか〜!仲間はずれはよくないですよぉ!」

 

「は?なんで俺に言うんだよ、関係ないだろ」

 

「だってカバーに写ってるの先輩らしいじゃないですか、だから言ってるんですぅ!」

 

「……は?」

 

は?いろはすなんて?カバーに俺が?写ってる?

待ってどういうこと?

 

「……先輩って?」

 

「先輩は先輩ですよ、何言ってるんですか?」

 

「……うん、そうですよね」

 

まじか、いやまじか。

じゃああれか、こいつらが顔赤くしてたのもツヤツヤしてたのもその抱き枕抱いて寝てたからと…

 

「……マジかおまえら」ギギギギ

 

「ち、違うのよ。抱き枕が見つからなくて、そんな時に小町さんからアレが送られてきて…嫌だったけれど貰い物なのだし、寝不足もあったから仕方なく、仕方なく使って寝たのよ」

 

「あ、あたしも仕方なくだし!それに使ってみたらすごい抱きやすかったし…ウツッテルノヒッキーダシ…」

 

一気に言い訳じみたこと捲し立ててきたけど、もう頭がショート寸前で何言ってるか聞こえねぇわ。

これ喜ぶとこ?いや普通に引くんだが…

 

「お前ら…今日中にそれ捨てろ…」

 

「「なっ!」」

 

「いや当たり前だわ!そんなん聞いて喜ぶやつがいるか!こっちまで恥ずかしくなる…」

 

「ちょ、先輩!わたしの分は!」

 

「やかましい!てか何でお前も欲しがってんだよ怖えよ!」

 

人のこと写してある抱き枕使うとか、こいつらにこんな一面があるとは…なんて趣味を持ってやがる。

意外なんて可愛いもんじゃねぇわ。

いやキツ、ちょっと距離おこ…

あと小町はお仕置き確定だな。

俺と一緒に寝てもらおう。

 

「用事が出来たから帰る、あと暫く休むから。それじゃ」

 

「ま、待ちなさい!」

 

「話を聞いてヒッキー!」

 

「わーたーしーのー!」

 

 

やはり人は見かけで判断するのはまちがっている。



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彼女たちはまちがい続ける

前回のあらすじ





俺の抱き枕が作られてた






以上



これから話すのは、後に「ヒキガヤくん騒動」と呼ばれたとか呼ばれなかったとか…

まぁそんな事の顛末である。

 

俺が知らない間に、俺が写ってる抱き枕カバーを小町が製作したらしく…雪ノ下と由比ヶ浜がそれを貰ってしまったってのが始まりだ。

 

犯人(小町)は受験勉強の隙間時間に少しずつ作ってたらしい。

もちろん現場は差し押さえ、製作途中の物品も押収・処分した。

 

抱き枕カバーはアイツらが貰ったもんだけだったみたいだが、まだ2.3個もなんか作っててビビったわ。

抱き枕カバー以外にも作ろうとしてたなんて…てか勉強の合間にやる事じゃないよね?

君そんな器用だったっけ小町ちゃん…

 

アイツらに渡ってしまった物もちゃんと回収した。

回収して驚いたのが、カバーと枕が一体化してた事だ。

元は小包サイズだったのに、余計な事を…

おかげ様で持ち帰るとき小さく出来なくて、顔の部分だけ隠して帰ったわ。

 

しかしアイツら凄え落ち込んでたけど、あれはどういう意味だったんだろうか…

聞いてしまったら最後、取り返しがつかなそうなので止めておいた。

触らぬ神に祟りなし…

 

宣言通り、回収後暫く部活を休んで様子を見ていたが、案外大人しくしてるみたいだったから2.3日で戻って来たが…後で楽観視していた事を深く後悔するのだった。

 

 

 

翌日

 

ガラッ

「よう」

 

「あ、ヒッキー!やっと来た〜」

 

「あら、久しぶりねサボり谷くん。今まで何をしていたのかしら?」

 

「いや来なかったのは君たちが原因だからね?てか雪ノ下、何もなかったかのようにして俺が悪いことしたみたいな言い方はやめろ」

 

「…?何の事かさっぱりだわ」

 

「コイツやべぇな、抱き枕取り上げられて記憶飛んでんぞ」

 

「あ、あはは…まぁゆきのんは抱き枕がないとダメっていうのは本当なんだし」

 

「そういえばそうか、あれからちゃんとした抱き枕買ったのか?」

 

「えぇ、姉さんが丁度いいのを持って来てくれたの」

 

「へぇ…」

 

返事をしながら椅子に座り、鞄から読みかけの本を取り出していつもの体勢になる。

しかし雪ノ下さんが持って来てくれたか…

あの人の事だからタダでって訳じゃなさそうだから怖いけど、あの人のやっぱシスコンだな。

 

「あ、ゆきのんゆきのん。新しいぬいぐるみが完成しそうってさっき連絡あったよ」

 

「あら、早かったわね」

 

「ぬいぐるみ?またパンさんか、本当好きだな」

 

「女子の会話に聞き耳を立てるのはどうかと思うわよ、潰されたいの?」

 

「ちょ、怖い怖い、怖いよ雪ノ下さんすみませんでした…」

 

あんまり強い言葉を使うなよ、泣いちゃうぞ。

てか潰すってどこをだよ怖すぎんだろ。

同じ空間に居るんだから聞こえちゃうのは仕方のないことでは?

もしかしてそんなに抱き枕取り上げられた事恨んでるんですか…?

 

「今度は着せ替えが出来るって言うし、楽しみだね〜」

 

「えぇ、とても待ち遠しいわ」

 

パンさんの着せ替えぬいぐるみとかどこに需要あんだよ…あ、目の前にいたわ。

 

「てか、由比ヶ浜もパンさんハマったのか?」

 

「え、あー、うん、そんな感じ!」

 

なんか歯切れの悪い返事だな…

まぁ雪ノ下が悪徳セールスマンみたく推したから話でも合わせてるのか。

 

コンコン

 

「…どうぞ」

 

「失礼するよ…って比企谷!?」

 

来訪者は川なんとかさん…もとい川崎だった、なんか悩みでもあんのか?

 

「おう…なに、俺お邪魔?なんかごめんね?」

 

「い、いや、そういう訳じゃないんだけど…」

 

えーその反応やっぱお邪魔じゃないですかー

泣きそう、何で俺の周りにいる奴は酷いやつばっかなんだ!

 

「川崎さん」

 

現実に打ちひしがれていたら、急に雪ノ下が雰囲気を変え真面目な口調で川崎の名を呼ぶ。

 

「貴女が来たという事は…」

 

「…あぁ、出来たよ」

 

「…そう、丁度良かったわ」

 

なんかアニメの1シーンみたいやり取りしてるけど、話が見えて来ない。

俺が来なかった間に相談でもあったんか?

でも出来たとか言ったな、なんだ?

 

「なぁ、何か相談でもされてたのか?」

 

「いえ、今回はこちらが川崎さんに相談したのよ」

 

雪ノ下が川崎に相談?

不思議な組み合わせだが…

 

「相談ってなんn…」

 

「今日はここまでにするわ。比企谷くん、私たちはこれから用事があるから鍵をお願い出来るかしら?」

 

「お、おう…」

 

チャリ

 

相談内容を聞こうと思ったら雪ノ下に遮られてしまった。

しかもめっちゃ早口だし…どしたの雪ノ下さん。

 

「では行きましょうか。比企谷くん、また明日」

 

「ちょ、ゆきのん!またねヒッキー!」

 

「………じゃ」

 

ガラッ ガララッ トン

 

嵐のように帰っていった3人。

部室にポツンと取り残された俺は、急な事で理解が追いつかず動けなかった

 

「…………俺も帰るか」

 

抱き枕の件もあるから少し怪しいが、考えすぎだな…

読もうと思ってた本を鞄にしまい、帰宅の準備を始めた。

 

 

翌日、休み時間に戸塚との会話の中で最近耳にした単語を聞いた。

 

「ぬいぐるみが好きなのか」

 

「う、うん…笑わないでね?」

 

昨日の部活での話をしたところ、どうやら戸塚はぬいぐるみが好きみたいで。

ぬいぐるみを手に取り遊ぶ戸塚…想像しただけでもう、最高です。

 

「好きなもんなんて人それぞれだし、他人がどうこう言う立場なんてねぇよ。それに戸塚なら似合うから安心しろ」

 

「もうっ八幡!それって僕が女の子っぽいって事?」

 

怒った顔も可愛いです…おっとこれ以上はいけない

 

『トツハチィ!』

 

『ちょ海老名!?』

 

外野がちとうるさいが無視だ、関わってはいけない。

あの人何にでも反応すんじゃん、なんかもう慣れたわ。

 

「そ、そんな事ないぞ戸塚。それよりさっきの話の続きでな、由比ヶ浜が新しいぬいぐるみがどうとか言ってたからアイツなら可愛いの知ってるんじゃないか?」

 

「由比ヶ浜さんが?そうなんだ、後で聞いてみようかな」

 

…なんか前にもこんな感じの会話があったような…デジャブってやつだな、まぁいいや

もしぬいぐるみ買ったらその時は1枚写真撮らせてください…

 

ジー…

 

「ん?」

 

周囲から視線を感じ、戸塚から外してその方向を見ると…

 

「……………」ジー

 

川なんとかさんがめっちゃガン飛ばして来てた

えぇ…怖

俺アイツに何かしたかな…

 

「…!!」プイッ

 

あ、気付いた。

何やってんだアイツ…

昨日もちょっと挙動おかしかったし。

 

この時はあまり気にしてなかったが、それを境に妙な事が起こり続けた。

ある日は…

 

「比企谷くん、貴方普段どんな服を着るのかしら」

 

「あ?服?」

 

「そうよ、あまり派手なのは性格上着ないわよね?」

 

「あー、まぁそうだな。派手すぎず地味すぎず、普通のやつだ」

 

「そう…(ならこれは少し違うわね)」

 

なんか小声で言ってるけど…急にどうしたコイツ

ブツブツ言いながらノートに書いてるし…

その質問なんか意味あったの?

またある日は…

 

「ね、ねぇヒッキー。この雑誌の中で着てみたい服ってある?」

 

「お前もか」

 

着てみたい服なんて聞かれてもなぁ。

見せて来たのはメンズ物の服が沢山載っている雑誌だった。

普段、外出はあまりしないから服には無頓着だしなぁ、適当でいいか。

 

「あー、これとかじゃね?」

 

「…ふぅん、分かった!」

 

「おう?」

 

なにが分かったなのなのだろうか

そしてまたある日は…

 

「お兄ちゃん!ちょーっとこれ着てみて」

 

「なにこれ、俺の?」

 

この服どっから持って来たの、しかもサイズピッタリだし…

 

パシャリ

 

パシャリ?

 

「よし」

 

「よしじゃない、なぜ撮った」

 

「研究〜」

 

「おい待て」

 

コイツは前科があるからな、また何か企んでやがるな。

勉強しなさいって言ったでしょ!

 

「次は何するつもりだ、変な事はさせんぞ」

 

「次はってなにさ!違うよ!小町は雪乃さんに頼まれたの、だから小町じゃなくて雪乃さんに聞いてよ」

 

雪ノ下?

なんでまたアイツが出てくるんだ、しかも頼まれたとか…

考えるより聞いた方が早いな…ってアイツの連絡先知らんかったわ、今度聞くか。

 

___________________________________________________________

 

周囲が謎の行動をし始めてから翌週、小町の口から雪ノ下の名前が出たので問い詰めてみるか…

と、思っていた矢先、放課後平塚先生に捕まり時間を食ってしまった。

 

余計な仕事を押し付けられておかげで疲弊し、しおれ顔のピカチュウよろしくトボトボと部室へ向かっていると、部室の扉が少し開いていた。

 

普段、いかなる時も閉めっぱなしなので少し気になった。

話し声は聞こえるので二人はいるのだろう、なんで閉めてないのか。

ドアに手を掛け、開けようとした瞬間…

 

「さすがヒキガヤくんね」

 

ピクッ

え?俺?

急に名前呼ばれたから驚いたわ、なに流石って…

 

「うん、何着せても似合いそうなんだけどねー」

 

「比企谷の妹から聞いた話とかも組み合わせて作ったから、変じゃないはず」

 

また川崎も来てるのか。

てか何の話だ…先週の服の話か?

ふむ、話が見えてこねぇ…取り敢えず入るか。

 

ガラッ

「うっs…」

 

ガタガタンッ!

 

「こ、こんにちは比企谷くん」

 

「や、やっはろーヒッキー!」

 

「………….」

 

なんだその慌てっぷりは、てか雪ノ下いま何か隠したな。

怪しい…前のことがあるから余計に怪しい。

 

「……雪ノ下」

 

「な、なにかしら」

 

「…なにしてたんだ?」

 

「なにも隠してなんてないわよ」

 

うわコイツ自滅しやがった。

ポンコツすぎるぞ雪ノ下

 

「…………」ジー

 

「…………」ダラダラ

 

しかし無理矢理ってのも絵面がちょっとマズイ、上手いこと誘導出来ないだろうか…

あ、そうだ。

 

「……猫」ボソッ

 

「…!」ピクッ

 

「猫カフェでも、うちのカマクラでもいい。好きなだけ触れ合えるようにしてやる。だからその隠したものを出しなさい」

 

「……っ、……くっ!」

 

なに女騎士みたいな事言ってんだ

めっちゃ苦悩してるぞ、あの猫大好きフリスキーなコイツが。

猫と同じくらい好きなもの…パンさん?

でもそれは知ってるし、隠すほどのものではないはず…

 

「……分かったわ」

 

観念したのか、隠したものをテーブルの上に出してきた。

なんだただのぬいぐるみじゃないか、話は知ってるし隠さなくても……

ん?

 

「……なんか、見たこと、あるような」

 

いや、見たことあるっていうか。

俺じゃね?

毎朝鏡の前で洗顔してるから自分の顔ってのはすぐ分かった、しかしだ。

 

だからこそ謎、なぜそのぬいぐるみがデフォルメされた俺みたいなのか

つい最近経験したなぁ…この感じ。

 

「はぁ…またかお前ら!」

 

コイツら懲りずになにしてやがる!

カバーの次はぬいぐるみか!

ていうかなんで俺なんだよ!

 

「仕方ないじゃない。可愛かったんだもの、ヒキガヤくん」

 

「何言っちゃってんの!?」

 

開き直った上におかしな事言い出しやがった

これ可愛いとかお前…お前ぇ、俺だぞ!?

 

「えー可愛いと思うよ、ひきぐるみ」

 

由比ヶ浜お前もか、てか変な名前つけるな。

なんだひきぐるみって。

 

「…あたしもいいと思う、服作ったのあたしだし」

 

川崎さん?君も何してるの?

だから最近よくここに来てたのか。

てか服作ったって…まさか

 

「前に着せ替えとか服関係のこと聞いてきたのって…」

 

「このためよ」

 

「因みに、あんたの妹から聞いて色んな服作ってみたから」

 

なんてこった…俺が着せ替え人形になっいまった…

川崎こんなところまで才能発揮してんじゃねぇよ…

てかお前はなんでめっちゃ堂々としてるのん?

また没収ですよ?

 

「構わないわ、またすぐ手に入るもの」

 

「ええい心を読むな!そうだ、これどこで作りやがった!小町はあれから何か作ってる感じはない…」

 

「姉さんよ」

 

あの人かー!

チクショウ最悪だ、バックに魔王がいるなんて…

あの人暇人かよ、本当なにしてんの?

 

『作っちゃった☆』

 

やべぇよコイツら…

 

コンコン

 

「どうぞ」

 

「こんな状況で入れるなよ!」

 

ガラッ

 

「失礼するよ」

 

入ってきたのは葉山だった、なぜお前がここに…

てか今来るんじゃない!

 

「何か用かしら、葉山くん」

 

「あぁ、陽乃さんからアレの試作品が出来たって聞いてね。雪ノ下さんが持ってるそうだから見にきたんだ…っと、比企谷もいたのか」

 

は?アレって…これ?

 

「おま…お前も知ってたのか!?」

 

「あぁ、まぁね。陽乃さんに少し協力したんだ」

 

「馬鹿野郎なんで止めない!」

 

「あの人を止められる訳ないだろ?というかなんでそんなに慌ててるんだ?」

 

逆になんでお前は冷静なんだよ!

え、これ俺がおかしいの?

もう八幡わからないよ。

 

「…もしかしてこれの事知らなかったのか?」

 

「知ってたらこんなことになってねぇよ…」

 

「あー、ご愁傷様」

 

ぶっ飛ばしてやろうかこのやろう

他人事みたいに言いやがって。

 

「これって俺の分もあるのかい?」

 

「えぇ、そのはずよ」

 

なんだって?

お前いまなんて言いやがった

 

「そうか、なら良かった」

 

「なら良かった、じゃねぇよ!馬鹿かお前は、絵面考えろ!」

 

俺のぬいぐるみを持っている葉山…

オエッ…想像しただけで気持ち悪い。

それ見て喜ぶのあの腐女子くらいだぞチクショウ。

 

「…雪ノ下、これ知ってるやつあとどれくらい居る」

 

「そうね、少なくとも戸塚くんや一色さんなどは知ってるわね」

 

戸塚も知ってるのか…しかし俺のぬいぐるみを抱いて微笑む戸塚…

うん…最高!

 

とびきり気持ち悪い笑顔を見せて、俺は考えるのをやめた。

 

比企谷八幡の脳内処理が追いつかず、ショートした事によりその日は終わった。

その後、平塚先生やルミルミなどにも知れ渡り、知り合いの殆どがヒキガヤくんを持っている状態になり手に負えなくなっていた。

 

そしてそれだけに留まらず、キーホルダーまで製作される始末。

雪ノ下さんはなんでも出来るんですね(白目)

まぁ、そんなこんなで俺関係のグッズが製作された訳だが…

 

「これ似合いそうじゃない?」

 

「いいわね」

 

「可愛い〜!」

 

「案外派手なのも似合うじゃないか、比企谷」

 

「うっせほっとけ」

 

約1名変なのもいるが、コイツらが楽しそうにしてるならそれも悪くないと、ほんの少しだけ思えてくるのは俺も毒されてるって事なのだろうか。

 

にこやかにしているコイツらと、俺をぬいぐるみを抱きしめている戸塚を撮った写真を見て、それはそう思った。

 

 

やはり人を見かけで判断するのはまちがっている。続



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