革命機ヴァルヴレイヴ 現代に欲望のまま生きる自分本位の鬼達 (怪物怪人怪獣さん)
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第0話 俺達はガ○ダムを見た………

鬼……悪魔……神……竜……人は歴史の中に実在しない生き物を考え創造していた。

 

 

時は大正……

【べべん。】

とある異空間にて琵琶の音が数回鳴る。幾つ物の和風の壁や天井が縦横無尽に動く中、広がる畳の上で突然連れてこられた一匹の鬼。

「……」

目の前に立つ全ての鬼の王が、目の前の自分に失望したように言う。鬼の王の後ろには、従者のように同期で上弦の壱になった知り合いがいる。そして無駄のない身体付きの拳の鬼の姿も……

「失望したぞ。」

(嫌、まんま口に出たよ。)

「仮にも元鬼滅隊の剣士にその体たらく………貴様の血鬼術は強力で万能の癖に血鬼術に比べられないそのやる気の無さ……不愉快だ。貴様の下弦の壱の称号を……十二鬼月の称号を……剥奪する。」

「……わかりました……」

(何時も思うけど……………人を喰らい強くなる原理が良くわからない………俺は人を喰らわずに、此処まで来たんだ。)

目の前の王は俺は勿論、俺以外の鬼の心を読める………長く鬼をしているも、俺は人間に対して食欲は起こらない。只、剥奪されると言う事は、もう簡単にはアイツらと鍛練?は出来ないのが不満だ………童磨の奴と話す必要が無いと思えば少しはマシだ。

童磨は俺の後輩で顔が良くて腹立つ口と中身がバラバラな二枚目の宗教の若き?教祖様だ。自慢の血鬼術で一気に俺と対峙して此方が童磨の血鬼術を全て会得すると同時に、俺の後輩は俺より上の序列に立ってしまった。普通なら喜ぶ事なに童磨の人柄のせいで、素直に喜べない。

あの口と顔と中身が一致しない辺り我らの王は人選が良くわからないのがある。

俺は普通の鬼とは違う……一つ人間だった部分が大き過ぎるも、人生を謳歌していないのが現状………収集癖がある。と言っても、やれ人の顔や皮膚を天井やら壁に張り付かせて悲鳴の音楽を奏でるとか、目玉や手足や内臓を集めている訳ではない。剥製もしない標本も花とか最低限な奴だ。

「私と話しをして余計な思考する余裕があるとは不愉快だな。何度めだ?」

「誠に本当に……心よりすいません………」

平謝りする俺………

「…何か申し開きはあるか?」

平謝りをやめて俺は満面な笑みで答える。

「………貴方を不愉快にした数と失望させた数なら多分後から来るどの鬼達よりも俺が一番ですね。耳に花札を着けた剣士と何度も互角に対峙して仕留める機会がなかったり、後輩の血鬼術を全て会得したり、月の呼吸は……基礎を覚えた程度だし……」

 

思えば、俺は……あの夜、先輩剣士である"継国緑壱が"日の呼吸"で無惨様を圧倒したあの光景"を見た瞬間………俺の中の俺、剣士として極めたいと思った……自身の勝手に編み出した"鬼の呼吸"等中途半端にして、同期の黒死牢に数十年の間跳んで回転して土下座をして

しぶしぶ基礎を教えて………技は全然教えて貰ってないんですけど!!!?

 

「まっ………色々と弁明の言葉を用意しても結果が全てのこの世界………一思いにやって下さい。無惨様。」

「………………………」

無惨様は覚悟を決めた俺を見て直ぐに剥奪せずに静かに俺を見る。その紅い目は珍しく俺自身を見ているのだ。この人は、俺達を個人として見るも、"何か"動揺のような物を感じたのは、気のせいであると思いたい………

「………………残念だ……炎竜鬼。否、闘牙丸よ。そなたに闘志があれば……」

同期の黒死牢が物思いに言うも……コイツ鬼になったら目が6つになったから普通に怖いよ。もっと外見を童磨並みに気にしろよ。全く……上弦の鬼は二枚目じゃないと許されない規則であるんじゃ………二枚目半の俺には、無用な悩みだけどな(慟哭)

「………無惨様。こんな使えない剣士を鬼にしてくれた事を感謝します。」

この時だけは、普通に感謝の言葉が口に出た………

「 ……。」

無惨様は小さく何かを呟いたが何を言ったのかは良く聞き取れなかった。

それから俺は称号を剥奪されて……其処らの有象無象の鬼達と仲間になった………それから色々と会ったしつこい童磨の煽りに耐えて、その後も後輩達の能力を会得して行き……そして……無惨様と鬼狩り達の長い戦いが終わり………

「何だ貴様?」

これから長い付き合いになる口の悪い兪史郎の奴と出会って………数百年の歳月が流れた。

 

 

 

鬼の自分に取って時間は無限にある。だが世間は時代の流れに変わる。人の有り様も変わり、侍の名前も魂も今や過去の物となった………鬼が数万の人間を喰おうとも数千の剣士を殺そうとも、数百の鬼が殺されても………自分勝手に時代は変わる………兪史郎が大正時代に仲の良い鬼狩りの葬式に参加していたのを遠くから見ていた。名字は違うも"耳に花札を着けた剣士の葬式だ"

無惨様を倒した男でもある………沢山の孫や親戚が沢山棺の前で泣いていた。普段の兪史郎の性格を知っているからこそ………あの日兪史郎が泣いたのを俺は初めて見た………

 

沢山の人間がいた。人生があった………其れから兪史郎は花札の剣士の知り合いの葬式には必ず参加する。

そして……それらは過去となる。鬼狩り達は創作物の一部となり、鬼は絵巻の悪役になった。鬼が死ぬと灰になる。そこに誰がいたのかすらわからない。俺の生きた思い出の全てが過去になった国

 

『和』の中立国ジオールそれが今のこの国の名前だ。

そのジオールの首都にその二人の隠れ家はあった

喪服を着て隠れ家に帰ってきた15歳くらいの外見の少年。

 

「帰って来たぞ。闘牙。」

「おう。お帰り。茶々丸。愈史郎。」

清めの塩を頭に掛けて喪服を片付ける愈史郎。

その時、視線を広間の方に向けると何時もと違う事に気付く。

綺麗に整理整頓された洋室の部屋に置かれた壺。それに気付き血相を変えて走る愈史郎。

「貴様、俺の珠世様コレクションを壺なんかに放り込むな!?」

べべん。べべべべん。大正の時代を思い出させる部屋の中で、琵琶を鳴らす一人の鬼。

 

時間がある………それだけで、趣味は勿論、後輩達の血鬼術を本人レベルまで兎に角、鍛練させ学び己の趣味に使う。アニメマンガゲームドラマシネマ万歳!!

壺は故上弦の伍……玉壺の貰い物だ。年期が入ったら売り出そうと思っていたが愈史郎との壮絶な神々の熱き第72次コレクション大戦で壺の一部が欠けてしまい現在は、値打ちが下がった只の壺である。

「……お前のコレクションは無事何だから良いだろう……」

 

愈史郎は経緯は特殊でも俺の他に生き残ってしまった鬼の仲間で、腐れ縁である。

画家として現在活動しているも中々気難しい奴で、インタビューに来た記者達に対して猟銃をぶっ放なす等、普通に自称弟子見習いの俺がフォローをする毎日だ。

最近は画家友達の愈史郎に触発されて芸術家の真似事をしている。描いてる絵は風景画だ。最もこの数百年間は絵画以外にも手を出して………かなりマルチで活動している。俺が出会った鬼狩りや鬼達を主役にした物語とか

只……人間が好きかと聞かれたら、俺は好きとは言わずに苦手と答える。故に目立つのは避けて地味な方面で活躍している。鬼狩りが活躍していた戦国の時代、そうやって俺は生きていた。しかしここ数年、より正確には15から16年前後に妙な"連中"が俺達の周りに彷徨き始めた………普通と同じなら兎も角、普通とは違う存在……鬼とは違う異質な存在に……

「うん?」

「どうした?闘牙。」

「俺の食事の時間だ………」

愈史郎は怒るのをやめて悲しそうな顔をする。

「男か?」

「女だよ。」

鬼の俺は人も鬼の肉を喰らいはしない。そして人間の血も吸う必要もない。飲料水に乾燥させた血漿と滋養分が混ざったカプセルの乾燥血漿を溶かして飲めば良い。

さっき兪史郎に答えた"女だよ"の発言は、時折見掛ける存在……奴ら自らを"マギウス"と言っていた………

マギウス共はまるで肉体を持たない霞みか霧のような存在で地球で生きて行く為に、動物や人間の身体に憑依しているらしい……それに『和』の中立国も気な臭い……

「世間は平和その物に見えるが……マギウスの連中らが言うには、その平和も後暫くしたら、壊れるらしいぜ。愈史郎。」

鬼は立ち上がり、玄関に歩みながら……兪史郎と背中合わせになる。

「また戦争か……人間とは、呆れた物だな。」

長く生きていれば、戦争経験もする。嫌な思い出も辛い思い出も全て戦争のせいになる。

ここ15、6年の間、捕まえた日の光を浴びても問題のないマギウス共を鬼流の尋問で集めた結果、ジオールは安全じゃないらしい……しかしも何人かは眉唾物なのかジオールは軍事兵器として秘密裏に開発した巨大な人型兵器の存在を口にした。嘘を言っているように聞こえないが兵器場所がわからない。だからこうして地道に尋ねている。

上弦の伍の壺から壺に移動する能力は使えるも、前提に壺があってとあの特徴的な肉体構造の2つで初めて成立するから、俺は上弦の肆 半天狗の真似で身体を物理的に分裂させて捜索している。色々と面倒臭い物も……重宝している。

戦争は嫌いだ。鬼狩り達の掴んだ平和を簡単壊す。そして戦争が始まると娯楽のアニメマンガゲームドラマシネマが見れなくなる。絶対に……人知れず阻止しなくては……

隠れ家を出て夜風に己の身を晒して、"己の血鬼術"を使用する。花札の日の呼吸の剣士と互角に何度も戦えたのは、運も含めて……己の血鬼術のおかげだ。結局勝負は有耶無耶の内に終わったが、動くとしようか……

 

普通の人間の姿から紅い…紅い…西洋の竜と人を合わせたような異形の姿に変わる。人間の柔らかな皮膚が金属を余裕で越える硬さに変化し硬質の鱗状になって剥がれないように熱で溶接し硬い鱗と鱗を叩き不純物を極力除く作業を全身にして、

両肘から炎を思わせる刃を作り、両爪は金色に鋭く尖らせて背中には深紅の竜翼を生やして、両足にも炎を思わせる刃を膝先から脛まで生やして、頭部は後ろから四本の鬼の角を生やす。

【血鬼術 竜人外装 炎竜人】

数千度の熱を硬質化させて遠距離近距離の距離を関係なく熱光刃で相手の身体を焼くと斬るを同時に使える。

しかも熱エネルギーを利用して飛行が可能。

炎……熱エネルギーその物を武器にする竜鬼が産まれた。

 

子供の頃、日の光を初め暖かい物が好きだった………

鬼化がしても……否鬼になったからこそ余計に太陽が恋しくなるも、自分は日の光に耐性が出来るも克服には程遠かった……

「色々とお話しを聞かせて貰うぜ。マギウス……」

「待て。」

後ろから呼び止められてふと視線を背後にいる者に向けようとすると、数枚の呪符が独りでに炎竜鬼の手に渡る。

「うん?」

「そいつは俺の血鬼術 紙目だ……俺が貴様を補助をする。戦争になったら、オチオチ珠世様の絵も描けん。」

珍しく愈史郎が俺の行動を手助けしてくれる。

何時もは俺が手助けしているのに………

「……また山の中に埋めて戦争が終わったら掘り起こすやり方をしたら良いんじゃないか?元医者よ。」

「お前のコレクションは、山の土砂崩れで行方不明になっただろ。却下だ!?珠世様のお美しい絵を汚い土がある山に二度も埋めてたまるか!?」

「……お前の愛もそこまでくると崇拝する危ない奴だな……」

「恋も愛を知らない貴様にはわかるまい。」

「お前も人間の女と付き合った事ないだろう……」

ジト目で互いに見つめながら無言で互いに拳を打ち合わせる。

俺達は仲間か友人かそんな大層な良い物ではない。

「目立つ真似は避けろよ。」

「マギウスって連中の数がどのくらいいるかもわからないから……慎重に勇猛果敢に動かして貰うよ。互いに数百歳だからな。狡猾な老将のように動こう。」

紅い熱の鱗を周囲の風景に合わせて俺の姿を消す。

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ジオールの夜の街を鬼の身体能力をフルに使い走る中……考える……俺は人間の味方ではない。人間が作る作品が好きなだけだ。そして世間の情勢にも詳しくない。昔の有名漫画家のアシスタントとかやってその作品が有名になるも人はずっとはソレを続けてはいない。

人は年を取り老いる…肉体の変化……感情の変化………思考の変化………これは鬼の俺達にも該当する。

数百年の刻の中に生きて居れば肉体は全盛期でも、精神は立派は年寄りだ。だがまだまだ俺の欲望は尽きてはいないがな……毎秒毎分毎時間毎日毎月毎年……新しい楽しい物は今も世界に生まれている……だが人間に取って老いるのは寂しい物らしい……特に作り手達に取っては……作品を作り続けられなくなるからだ。何人かは、俺に自分の作品を受け継いで続けてくれと頼まれた事もあるが、俺は漫画家先生の思考を読めなくても、その人の生き様を奪いたくない。その作品は俺が手伝っていただけで、作ったのは漫画家先生達やクリエイター達の皆さんだ。普通に誠心誠意で断わらせて貰った………ガッカリした人が殆どだった……

無限の時間……人によっては、羨ましいと思うが、別の視点から見れば憐れな緩やかな生き地獄とも言える。

どれだけ沢山の人達と仲良くなっても、最後は死に別れが待っている。事故事件病気……寿命………人の当たり前の死を知らぬ不老の俺は……何処かで何かの出会いを求めていた。

 

 

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それから更に数年の月日が経った………俺、炎竜鬼こと

操真闘牙と口の悪い愈史郎こと、山本愈史郎を改めて山藤攻介は地球上ではない場所にいた。

 

真暦71年。技術の革新は人を空気の無い外宇宙にまで進出して宇宙開発を加速させ、今や生活圏の約7割は宇宙と言うまるでアニメのような現実を俺は遠い目で見ていた。宇宙と言ってもSF小説やアニメの舞台でもある月や火星に暮らしているのではない。個人的にはガッカリは半端ない物も地球の環境を人工的に再現した巨大な建造物………

宇宙空間に浮かぶ球状のコロニー、通称『ダイソンスフィア』に人類の約7割は住んでいるのだ。

「まさか、空よりも高い場所に生きて行く事になろうとは………鬼生まだまだわからない物だな……」

「それよりも闘牙マーク4。調べ物の時間だぞ。」

「へいへい。本体も情報収集しているんだから俺も仕事しますか。」

自分達の時間と娯楽を守る為に二人で活動を初めて数年

人工太陽複合体と呼ばれる人工の恒星を核としたそのスフィアの外殻には、支柱によって蜂の巣構造に連結していて六角形…ヘキサゴンの形をした生活空間『モジュール』が並んでいる。

黄色く透明なガラスのモジュールを覆うは只のガラスとは違い特殊な素材の複合体だ。内側は天気の映像を映すモニターになっていて只のモニターだけに留まらず、熱を遮断する断熱機能に偏光、電磁気シールドと色々と便利な特殊ガラスらしい……時代は進んでるのぅ……

その天蓋はスフィアの中心である人工太陽の方を向いており、周囲を囲む重力の輪……重力リングは名前の通り人工の重力を発生させる事が出来てせっかく宇宙に出れると思って風呂場で無重力の鍛練をしたのに人工に発生する重力でモジュールの中に住む人々はボールの内側を立つような形で暮らしている。

「せっかくガ○ダムシリーズで宇宙での生活を学習したのに……解せぬ!?」愈史郎は小さな怒りを口にする

「"コ○ニー落とし"をされるよりマシだと思えば良いんじゃないか?」

スフィアのモジュールを作るのは金と労力と時間が兎に角掛かる……スフィアの誕生すると人口過密問題の解決を初め色々と良いメリットが発生しているようだが、

この時代、保有するスフィアの数で国力が決まるらしく

『和』の中立国のジオールは一つのみ、残りの全ては二つの大国の物だ。

「しかし一つだけなら、ジオンがサイド7を攻めたように、仮にここを落としたら、ジオールはモジュールを全て失う事になるんだな。」

「サイド7はフィクションでもこの第77番モジュールに例の人型がある時点で、狙われる理由には充分にならないか?」

俺達はジオールが保有する第77番モジュールの"咲森学園に学生として身分で秘密裏に潜入を開始。兪史郎は外見状問題なかったが、俺は少し無理やり身体を十代後半に変える必要があった。

監視カメラの位置をいち早く把握して数百年の間に身に付けた隠密潜入の賜物を存分に使い俺達は遂にガ○ダムに邂逅した。

【血鬼術 強制昏倒睡眠の囁き】

「眠れ…」

白衣を着た連中と中立国の軍人達に気付かれないように

故下弦の壱の魘夢の血鬼術で強制昏倒睡眠の囁きを使い眠らせて……白い装甲に赤いラインが入った巨大人型ロボットを愈史郎と俺が見た最初の感想は只一つ。

「何か違くないか?」

「……何でガン○ャノンとガン○ンクがいないんだよ。

俺はアッチが好きなのに……」

愈史朗は好きなガ○ダム機体の名前を口にしながら見上げる。

監視カメラの全ての電源は落として見張りは全て夢の中

「火人……ヒトね。もっとネーミングセンスをシンプルにしたら良いのに……」

手袋を着けた状態で白衣達の資料に目を通しながら、鬼は構造を理解する。………こういう機械は、必要な要点が予め決まっている物だ。

 

「さて………かねがね理解した。結論を言うと滅茶苦茶………厄介な代物だ。」

「どうする?お前の血鬼術で壊すか?コイツ欲しさに大国同士がデカイ戦争を起こさせるのは、阻止したいんだろ?」

無言で両腕を紅い竜人の腕に変えて熱の刃を両肘先から出現させる。

「アムロはガ○ダムを乗った事で出会い別れを繰り返した悲しい人生を送った………だが、その根幹にあったのは、アムロなりに現状を打破する力と切っ掛けを欲していたからだ……このガ○ダムに罪はあるにしても無いにしても………守る為の力は必要だ……」

「……本当にそう思っているのか?」

「………お前が珠世様に鬼にさせて貰ってなかったら、あの最後の闘いは無惨様が勝っていた……お前が鬼でなかったら、鬼狩りは全滅していた。」

「物を作る人間……手入れをする人間……使う人間……人間側がしっかりとしているなら、コイツは俺達の力にも味方にもなる。会ってみるか?」

愈史郎は首を傾げる

「誰にだ?」

「このロボットの中にいる存在に……」

俺達はこの日……ガ○ダムを見た。

「会ってどうする?」

「今後の方針を決める。ジオンがサイド7を攻撃する理由があるのは避けらないなら、どう立ち回るで、俺達の今後が掛かっている可能性があるからな。」

愈史郎はやる気の無い表情をしている俺に言う。

「珍しくやる気だな……」

「やる気があるなし関係なくジオンは待ってはくれないよ。明確な敵を決めて、味方を決める。そして目標を幾つも作る………目標を用意すれば、後は目標達成に努力すれば良い……悪いが、"あの激動の頃"並みに互いに本気になる時は来たんだよ。」

「………やむを得ない。」

互いに身体を鳴らした音を地下格納庫に響かせて、

ロボットの操縦席に入り込むと目の前こんそーるモニター可愛いらしいキャラクターが現れた。

「闘牙。コイツは何だ?」

「おい愈史郎。………俺はアニメを全て見て記憶している訳じゃないぞ。鬱アニメとか見てて嫌な気分になる物には手を出さない。脳が物理的に壊れなくても精神にダメージは入るからな。」

「だが人と知れず、そういう人に言えないようなアニメや漫画を見ていると思うじゃないか?」

「………お前が俺をゲスな作品ばかり見る鬼と勝手に決めつけるな。エヴ○は、名作と騙されたわ。」

「俺は作品を見る前に基本情報をwikiで調べてから見る事にしている。」

「出たよ。wikiとかでキャラクター達の身に起こるネタバレ見る人………でもショックな出来事を映像より文字で知った方が破壊力が何割か減るもんな。」

 

コンソールモニターから〔ニンゲンヤメマスカ?YES/NO〕と怪しいメッセージが現れて俺と兪史郎は互いに視線を交わして同時に答える。

「「そもそも俺達鬼なんだが…」」

「……どうする押すか?」

「………闘牙。貴様はどうせ何されても死なないだろ。」

凄く嫌な答えが帰ってきたよ。嫌な予感を覚える闘牙は反論を言う前に彼は勝手にYESを押す。

「あっ、愈史郎。てめぇ。」

兪史郎は躊躇なく俺を使って人体実験を開始した。

コックピットシートの首元にあるギミックが起動して、

「愈史郎。ジャンプ!?」

瞬時に片手で兪史郎の首を掴み一瞬で操縦席の外に投げ飛ばしギミックが闘牙の首を挟み込む。

「っ!?」

首筋にちくりと鬼の皮膚を刺して痛みを感じる。針が飛び出るギミックが刺さり、軽く血が流れるも、それ以上に愈史郎の安否も確認する暇もない程の自分の肉体の中に異物が入っているのを感じる。

(凄まじい速さでに"何か"が俺の全ての細胞を変化させていやがる……無理に抗うと、毒に変わるような感覚だ。)

体内の鬼の再生能力と破壊能力がぶつかり合っている……同時に血と細胞の中に紛れて機体の基本情報を頭に刻み込んでやがる。

(実地訓練は勿論だがマニュアルを読まずにガ○ダムを乗せる手段としては薬物投与に近い……脳に無理やり情報を入れやがって!?設計思考が極端だよ!?アムロ!?)

「無事か?闘牙!?」

兪史郎がこちらの様子を緊張の表情で見る。俺は苦痛に耐えながらも怒りを露にした表情で答える。

「後で…覚えと……け…よ……この野郎…」

(無理に抗うな。人間並みに細胞の勢いを操り受け流せ………力と力のぶつかり合いなら力の強い方が勝つ。)

「鬼を……甘く……見るなよ……」

細胞が破壊されて新たに作られる度に何故壊されるのか、どういう条件で破壊の対象になるのかを直ぐに把握する。

「藤の花の毒か?」

苦痛に歪む表情をする俺に対して俺に効果がある弱点の名前を口にする兪史郎の疑問に俺は答える

「……違うな。このモジュールに俺達以外の鬼がいるとは思えない……細胞をコイツ好みに作り変えている。これでどうだ………」

約10分間に及ぶ数百億通りの細胞配列を変えて当たりを見つけて、針のギミックが解除される。

「っ!?」

「どうした?愈史郎。」

「ガ○ダムが黒くなった。」

どうやら操縦席の外側では白い装甲が黒い装甲に色を変えたらしい。

無言で操縦席から出て愈史郎と向き合い。暫しの沈黙が両者を支配する中

「………帰って寝る。」

何もせずに戻る。

「身体は大丈夫なのか?」

「経過観測で確かめるしかない。鬼の俺が直ぐに元に戻る感覚を覚えないとは………俺の肉体に何か変化が起きたのかかもな。」

兪史郎は呪符を地下格納庫のあちこちに密かに張り、

「これで、ここの連中にはあのガ○ダムは白い装甲に見える筈だ。うん?」

「どうした?」

「お前、そんなに肌の血色が良かったか?」

鬼特有の青白い肌ではなく、何処にでもいるような普通の人間のような肌色になっているのを愈史郎は闘牙を見て気づいた………

「何を訳のわからない事を……とっととずらかるぞ。」

二匹の鬼が"物語"の流れに何を与えるかはわからないが、既に物語は始まっていた。

 

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夜の学園内部を愈史郎と闘牙分身体は歩く。

「アムロを探そう。」

「突然何を言っているんだ?お前は……」

歩きながら目的地の人気のない誰も使われていない教室の中に入り秘密基地のテントに目指す二人

見た目は市販のアウトドアのテントでも中は【血鬼術 無限城】に広がっている。地球の隠れ家での私物は全て持ち込んだ。趣味の自由時間を過ごすまさに秘密基地で自分達の城だ。

………ネックなのは、隣にいつの間にか謎のダンボールハウスが建ててあり、顔も名前も性別も知らない隣人がいるらしい。

「アムロを探せって、具体的にどういう条件でだ?」

「顔でコイツなら巨大人型兵器ガ○ダムに搭乗しそうな面でまず判断しよう。」

「待て待て……俺はアムロに詳しくないんだ。そもそもアムロってどういう奴だ?」

「熱血漢や正義漢が主流の1970年前半のロボットアニメ主人公にリアル差を求めた等身大……否、只の…根暗の引きこもりだ。」

「只の碇シンジじゃないか。」

身も蓋も無い言い方をするが、ガ○ダム乗る前のアムロって手先が器用だけど寂しさの余りハロを作る暗い少年だもん。ガ○ダム以前のロボットアニメの主人公達が、覚悟極り過ぎるんだよ。皆さん何なの?あの殺る気……

「結論は、主人公っぽい顔してる奴を探すか?引きこもりを探すかの二択だ。」

「引きこもりがそもそもこの咲森学園にいるのか?それこそ可能性が低いだろう……」

「確かに……自分で言ってなんだが凄く確率がどっちも低い……まずハロを作る引きこもりを探そう。」

絶対にいなさそうな人間をイメージしながら会話する二人。

「……私を夜の闇に包んでくれ……」

「何処の帝国の皇帝だ。」

二人の歩く通路にも監視カメラが独りでに動くも、監視カメラを見ている人間に大した脅威を覚えない。

現在炎竜鬼本体は無限城の用意した作業室に籠っている。

炎竜鬼こと闘牙丸は元々戦国時代。鬼殺隊が使用する日輪刀を作る刀鍛冶の里出身であり、普通じゃない変わった刀や海外の武具や防具に興味を持っていた。儀式用の剣や刀は勿論、火縄銃から派生した重火器の数々に詳しく自身も機会を見てはそういう物を作りたいと、夢を見て……実際の鬼にどれだけ効果があるのか……鬼殺隊に入隊したは良い物の……周りの鬼を憎み鬼を殺す彼らの鬼に家族や友人や恋人を殺された鬼殺隊の面々と一緒に仕事をして、すっかりとやる気が無くなり……理由を付けて辞める途中で、無惨様に遭遇する。無惨様は俺を殺すつもりで攻撃したのだが、運が良いのか、無惨様曰く"規格外品"と呼ばれる特殊な鬼になったらしくて、貴重な鬼として無惨様の血を貰う機会がそこそこ多かった……しかし、里の家族に会いたい気持ちが強くなり、鬼になった俺は自ら刀鍛冶の里を目指すも、里に到着する前に実の両親と遭遇……最悪な家族の再会となる。

両親が人間ではなく鬼となった俺に言った全ての罵詈雑言が俺の記憶に……焼き尽くしている………味方等いない。信じれるのは己のみ、守る人…そんな者……何処にもありはしない……当たり前の世界が変わった………世界の全てが敵に変わった。厳しく優しい両親から優しさは消えて、怯えた目で恐怖に遭遇した顔で俺を見る。

太陽が俺の敵となった。普通の食べ物が、普通の生活が全て変わった………守ってくれた大人や友達は誰もいなかった……俺は世界に嫌われていた。何もかもどうでも良くなった……鬼殺隊の誇りも、刀鍛冶の掟も、何もかも……脆い砂上の城のようにあっさりと全てが崩れさった。

無気力の塊になり、それでも無惨様が鬼狩り達に敗れる日まで、やる気が全然湧かなかった。

 

 

自分の欲望の為に動く。自分の欲望を満たす為だけに……生きる。そうするしか、己を保てなかった。

乾燥血漿も趣味で作った食事の一つだ。

現実に目を背けて心に巨大な壁を幾つも造り壁の目の前で色々とダベて数百年の時を過ごす。

何てサイコーなんだ………しかしたまに…………………普通の人間の生き方に憧れてしまう事もある……人間の部分を多く持つ鬼が負けると聞いた事があるが、そもそも鬼である前に皆色々と紆余曲折はあったが一応は人間だったのだ。

あの最強の上弦の壱ですら結局は弟の影を追っていて素直な感情を表に出さなかった…出せなかった可哀想な人だったのだから……

兪史郎は持参した連絡用通信機を起動して闘牙本体に連絡する。

「どうだ闘牙?何かわかったか?」

《……中立とは名ばかりの兵器の開発している事か?相変わらず人間って、建前と本音がちぐはぐした生き物だな……》

趣味と興味で初めたクラッキングでジオールの隠していた物を見る闘牙。

分身体と本体は視界を共有できる為、任意で欲しい情報を手に入れられる。

「どうする?闘牙。俺達がすべき事はなんだ?」

《前に捕まえて尋問した年寄りのマギウス共は、餌を人間の記憶や情報をエネルギー……食い物にしているって言ってたな。つまり鬼と系統は違うもの宇宙から来た吸血鬼……スペースバンパイアの一種と過程する。》

「他者の身体に乗り換え……乗り移りも可能とも言っていたな。」

《記憶や情報を食われると只の記憶喪失とは違い肉体の細胞全てに刻まれている生命活動に必要な情報も忘れて生命活動の停止……死に至る。》

「思い出しも無いのオマケ付きでな。まるで【盗まれた街】だ。」

SFホラーの小説のタイトルを口にする愈史郎。周りの人間がどんどん知らない誰かと入れ替わる恐怖を描いた作品で確認しているだけで約4回もリメイクの映画として取り上げられている作品だ。

《餌は人間、数も無惨様の鬼より多分多い……メリットはどうやら奴らの身体能力は乗り移った対象に引っ張られる……つまり俺達レベルのマギウスはいないのは、確かだろ。》

闘牙は敵の分析……自分らの娯楽を邪魔する存在を徹底的に分析している。自分本位も此処まで来ると頼もしいと感じる兪史郎。

「もしいたらどうする?」

《勝つ。只それだけだ。》

「ロボットを見つけて薄々と感じたこのモジュール77の疑問が色々と見えてきたな。」

《愈史郎。お前は城に戻ってろ。俺は趣味の琵琶の演奏をしてくる。》

「わかったよ。気を付けろよ。」

 

兪史郎は連絡を切り咲森学園の窓からモジュール77の学園の外の景色を見てここ数日の調べ物をして

「鼻が痛い程にキナ臭いがどんどん強くなって行く。これは、遅かれ早かれ来るか……ドルシア軍事連邦。」

嫌悪感を露にしながら戻る

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【べべん。】

夜の誰もいない場所に一つの琵琶の音と共に一匹の鬼がお手製の琵琶を片手に姿を現す。

「……」

(あのガ○ダム、スポンサーは恐らく軍。首相も恐らくグルと見て間違いはない。)

シンプルな黒いジャージ服にゴーグルを着けた少年が、無言で感情を込めながら琵琶を鳴らす。

(基本、ジオールは先守防衛のみ許された国で、軍事力を持つ事は諸外国から良い印象を受け入れられない。)

激しくも数百年間も続けていたお蔭か琵琶の腕もあの"琵琶の君"に負けていない位まで腕が上がった。

(………恐らく、あのガ○ダムの基本コンセプトは、コストを度外視した量より圧倒的な"質"………ロボットアニメの量産型を破壊して、戦場を単機で殲滅出来る機体……そしてこのモジュールは研究施設と開発施設に運用施設をカモフラージュした実験場……)

手を休める事もなく俺は琵琶を鳴らしながら思考する。

(破壊するか?それも一つの手段……)

「……」

「っ!?」

視線を感じて琵琶の音色を止める。

「あなた……確かショーコのクラスの操真君だっけ?」

「お前は……のび太。」

目の前にいる自分を見上げている平均に比べて身長が低い事を実は気にしている俺と同じクラスにいる指南ショーコの友達の…

「…マリエだよ。野火マリエ。グータラのび太じゃないよ。」

 

目の前の黒髪の彼女を見た瞬間、今日の調査で白衣達の記録に彼女の写真と名前があった事、ガ○ダムのテストパイロットだった事が書かれていたのを思い出した。

 

何かアレについて知っているのかも知れない。

「あのロボットは何だ?」

「???ロボット?何を言っているの?」

「………………………」

互いに向き合い沈黙が続く中、俺は彼女と目線を合わせる。

「嘘は言っている様子はないな……質問を変えよう。こんな夜の時間に祠に何ようか?」

「……たまに夜の祠から楽器の音が聞こえるって噂になっているから、興味本位に来てみたら君が楽器を弾いていたのを見物させて貰っていたんだよ。お金いる?」

マリエはマイペースな理由で硬貨を見せる。

「路上ミュージシャンじゃないから安心しろ、野比マリオ。」

「マリエだよ。後、漢字の名字も違う。演奏聞いても良い?」

鋭いツッコミが帰ってくる中、闘牙は再び琵琶を鳴らし、

「勝手にしろ。マスターノービワン。」

「そうするよ。私は何時からジェダイマスターマリエ~になったのかな?」

俺の前にしゃがみ琵琶の演奏を静かに聞く野火マリエ。

冗談を言う俺もそうだが返す彼女も変わっているよな。

「早速だが、お前の知り合いに巨大ロボットを操縦しそうな面してる奴はいるか?」

「むむむ。面白い質問だね……その質問の意味は?」

「そう遠くない内に必要になるからだ。」

「う~~ん。時縞ハルトならワンチャン?」

「よし。わかった……」

そいつには、絶対にガ○ダムを乗せないようにしよう。

調べる事も考える事は山積みだ。普通の平和な学園かと思ったら軍の実験施設に巨大ロボット。生徒達も絶対に無関係じゃない。俺の勘が告げている。必ず、巨大ロボット欲しさに敵が来る。

「野火さん。」

「何?操真君。」

「野火さんは、友達と買い物や遊びに出掛けている時に、街を歩いてふと疑問に思った事はないか?」

「………何を?」

彼女は琵琶の音色に耳を傾けてくれながら俺との会話をしてくれている。

「自分より小さな10歳前後の子供……又は赤ん坊とかは一度でも見た事はあるか?」

俺も兪史郎もこのモジュール77に来てから街を歩いて気付いた事だ。人口の約7割が宇宙進出する中、兪史郎も俺も此処に来て大人の人達は色々と見掛けるが一度も高校生より下の年齢……15歳以下の人間を見ていないんだ。

「っ!?」

どうやら彼女もその事実に気付いたようだ。驚愕した目で俺を見ている。

「このモジュール77……普通とは違うみたいですね。」

「……君は何を知っているの?」

「少し、頭が痛くなりそうな秘密を幾つか………知りたいですか?」

彼女は暫く考えてさっきと同じ…否真剣な様子で俺を見て答える。

「教えて…」



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第00話アムロよ。お前は何処にいるんだ。まさか此処にいないなんてないよな……但しハルトてめぇは駄目だ。

炎竜鬼の強さ、やる気があれば上弦クラス……でも、やる気は無い……十二鬼月を剥奪されてから柱達と交戦が結構多い物も、誰一人仕留められず、仕留め切れなかった経験あり、後ドジが本当に多い……
思い出の一つに玉壺と堕姫と妓太郎を除いた上弦のメンバーで花火が見える夏祭り花火を橋の上から見物した思い出がある。
その時、上弦の鬼達に夢について語り合った……猗窩座と本当に仲が良く。最後の無限城戦では、自分も参戦する予定で動くも、上弦の三人に置いてかれ彼らの最後を心の底から悲しんだ経歴を持つ。家族との縁を失い。鬼の仲間達を失い。鬼狩り達を殺そうと動くも、虚しくなり、引退した音柱に『……一人で生きても仕方がないからもう……殺してくれよ……』懇願するも、『お前がソイツらを覚えていれば、ソイツらは死なない』天元に見逃された経験がある。




「録画はOKか?よし。じゃあ、経過観察記録映像09始めるぞ。」

「自分で言うのもなんだがやっぱり今回の実験は辞めた方が良いんじゃないか?今回のは余りにリスクが大きいぞ。」

兪史郎の心配する声に、視線を向けながらも俺は真剣な表情で言う。

「……これで俺が死んだのなら、所詮俺は……その程度の男だっただけだ……それに、肉体の変化を一番知るにはこれが手っ取り早い。」

「しかし……」

「この実験結果によっては、俺の活動時間が増えるひいては趣味の園芸と畑作りに挑戦出来る可能性がある………夜勤以外でも労働も可能になる。」

「貴様の趣味に対する欲望が凄いよ。本当に…………」

「話は終わりだ。俺に何か会ったら取り敢えず、考えられるだけの今後起きる予想とその対象法についての奴を書いたから読めよ。後、時縞ハルトとかにはガ○ダムに乗せるな。」

そう言うと俺は外に己の身を投げ出して視線を空に映る景色に向ける。

朝の時間、夜は終わり日の出が現れる時間、俺は兪史郎と共に数日前にガ○ダムを乗った際に押した変なメッセージの後の肉体変化について観察記録をしていた。

既にあれから数日が経過している。俺達二人は出来るだけの実験をしていた。

俺は今、日の下で己の身を晒している。鬼にとっての弱点……藤の花と太陽……。普通の鬼ならば、全身の細胞が一つ残らず燃え焼ける物も、………"俺の身体は燃え上がってはいない"

 

(藤の花はまだ俺の弱点だ。しかし、日の光は……)

「………無効になっているわけではないのだな。」

冷静に己の肉体の変化を確かめる。

朝日………日の光を浴びて、普通の人間と同じようになったと勝手に夢見たが実際は、耐性が出来ただけだ。

闇属性の鬼に光属性が効果てきめんには変わらなくても、一方的な光属性相手の有利な場面でも今の俺は、一応勝負出来るレベルには肉体は変化したらしい。

皮膚に水ぶくれや火傷を被うような事はなくても、ヒリヒリする。細胞に耐性は出来ても、もう普通の人間ではない事実を数百年経っても実感するな。

 

(日向ぼっこをして何時間までなら耐えられるか実験するのも良いが、)

朝になったら学生は必ず行かないといけない場所にある……学園にだ。

《此方兪史郎。どうぞ?生きてるか?》

連絡用通信機から兪史郎の声が聞こえて……

「結論を先に言うと………実験の結果は、半分成功に半分失敗って感じだ………吸血鬼ハンターDのダンピールって奴に近いな。」

兪史郎に分かるイメージを口にする。

《あのバンパイアと人間のハーフの種類の奴か?なら余り日の光を浴び過ぎると陽光症にでもなるんじゃないか?》

「…かもな………お前が言っていた竈門兄妹のように太陽を克服したと言うのには、馴れなかったようだ………」

《あれが、異例の中の異例だ。あんなケースがホイホイと会って堪るか。》

兪史郎の鬼狩り達の話を聞いて驚いた事は、太陽を克服した鬼の娘と無惨様によって最後に鬼にされた鬼狩りの花札の少年は、日の光を克服出来た鬼らしい………どちらも人間に戻れたから良かった物も……突然変異の鬼はやはり稀に存在していた事実に闘牙は世界の広さを知る。

録画をストップして記録映像用のカメラをしまい眠気に苛まれながら身体を解して鞄を持つ。

「………俺はこのまま学園に通うから、お前は大人しく仮病を言って夜間に通えよ。」

《了解。》

連絡が切れて俺は、琵琶を使って……琵琶をしまい。

「歩くか……」

咲森学園……このモジュール77の学園の一つで俺が通う場所……そして俺の"今の居場所"だ。

寮から学年問わずに学生達が登校して行く。色々な年頃の悩みを抱えて……何も知らないと普通の麗らかな朝の光景その物に見える。だが……実際は違う。

咲森学園の地下には巨大人型兵器が隠されていて、中には妙な物までいる始末だ。

「おはよう。」

後ろから声を掛けられて俺は声のある方向に振り向くと

数日ぶりマスターマリエ~と再会する。

「何だ。野火先輩か。俺の渡した要点だけの資料は読んだか?」

「……一応。」

改めてモジュール77を見回るとやはり普通と違いおかしい点は幾つも見つかる。今自分達が通う咲森学園の学園指導要綱のコピーと、ジオールの複数の高校の教育カリキュラムのコピーを見比べてやはり"仕組まれた学園"感は否めない。

「……そっちから話掛けて来たと言う事は、俺の手の込んだ悪戯と見抜いたのか?」

「悪戯じゃないんでしょ?それに君は言ったよね。」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

夜の祠にて俺は、自分の見解を野火マリエさん……野火"先輩"に言う。

『このモジュールが軍の実験場……』

驚愕した表情をする彼女に対してやる気の無い表情をする俺。

『……一見何処のモジュールにも学園にも変わらなく見えるが、まず咲森学園の学生全体の身体能力面で軒並み中立国の学園にしては、平均的に水準が高いんだ。ホレ。』

俺は今回のガ○ダム発見まで自分なりに、調査した"俺"を除く学生達身体測定の記録と、ジオールのスポーツ推薦に強い高校の能力測定の記録の資料を彼女に見せる。

『此処の学園に通うやる気の無い……文化系統の部活動をする連中でさえ地球のスポーツ推薦の高校生よりあるって流石に、おかしくないか?悪戯でオタク達から採血もしたけど、』

『採っ、採血……』

資料に目を通しながら怖い単語が出て来て驚く野火マリエ。

『野火マリエさん。貴女も身体能力だけなら、甲子園の出場高の常連チームのメンバー並みなのは、"過去"に単にトレーニングばかりしただけなのか?』

『っ!?』

過去と言う単語に彼女は目を見開かせる。

『後、皆意識して無いから気付け難いかも知れないが、習熟が異常に早い……』

『習熟?』

『まるで、必要なソレを手足のように、自分の物にするなんて。そう遺伝子に覚えられるように調整されたかと思う程だ。』

彼女は無言で資料を見続ける。

『調整……』

『決定的な物……証拠と証言が欲しいが、視点を意識して変えて見ると、ユートピアがディストピアに見えるのと同じだ。』

資料から目を離して……彼女は真剣な目付きで俺に聞く

『……ロボットってさっき言ってたよね。操真君は私がロボットに関係しているって……』

『……これ以上の真実が知りたいなら、俺に話を掛けろ。何分、頭の痛い真実や問題が多くて趣味の一つの琵琶を演奏してしまう程だ。その資料は破くなり捨てるなり燃やすなり好きにしろ。』

 

そう言うと俺は琵琶を鳴らして彼女の前から姿を消す

 

『真実……私の過去に繋がる物……ロボット……』

消える直前に彼女のそんな声が聞こえた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「あるの?」

彼女は有無を言わせずに此方に尋ねる。何がとは愚問だ。

「……ある。だが今は別件で忙しい……それに、知らない方が良かったと思うかも知れないからな。」

「学園の何処で待ち合わせ?」

視線を俺の方に向ける野火に対して俺は、間髪入れずに答える。

「学園青春ドラマの定番。夕方の屋上だ。」

「……待ちぼうけは勘弁だよ。」

そう言うと彼女は俺の前を歩き学園の方に向かう。

彼女は彼女なりに友人に恵まれているのを確認して

「女性を見るとうなじや喉を見る習性は残っているんだな……」

別に喉を見る事でドキドキを覚えるとかではない。鬼に特有の目で喉を見ると頸動脈……血管が透けて見えるのだ真っ赤な血液のな。

「………七海先生には、会わないように立ち回ろう。」

独り誰にも聞こえないように答えると、

別にその先生が悪い先生とかではない。普通に良い人だし、人間だった頃の俺が会ったらドキドキする美人の先生だ。

只今は……

「不味いな。」

………"稀血"の匂い………

「おはよう。皆。良い朝だねっ!?」

鬼の今の俺にとっては別の意味でドキドキするわぁっ!?

七海リオン……大学四年生の教育実習生で、普通に良い人……少しドジな所も会って男子女子に人気はある教育実習生だ。

「あっ、おはよう。操真君。珍しいね。朝から登校なんて……」

何時もは、曇り空や雨の日を狙って登校しているからか

俺が登校するのに声を掛ける七海先生。

………距離感がたまに近くて、教師に見えず、近所のお姉さんなのは、七海先生の日頃の行いのせいと勝手に決めつける。

「おはようございます。では……」

そそくさに早歩きで、七海先生から離脱するのが、安全だ。……稀血の香りは鬼の俺には、劇薬過ぎる。何で年下に気を遣う必要があるんだ。

口の中の歯が犬歯に変化して行くのを必死に堪えながら学園に入る。

 

「おっ珍しい。よう。闘牙。」

気さくに俺に話を掛けるのは、金持ちを目指す高校三年生の犬塚キューマ。

「何すか。ヘタレ先輩。」

一年生の櫻井アイナに告白もしないヘタレ先輩である。

「否、厳しくね。俺に対する物が。」

「変わった下の名前ですね。」

「闘牙っても変わっているだろう。」

「先輩って、"此処は俺に任せて早く行けって言って"死亡フラグを回収するオーラが出ているんですよ。」

「否、本当に俺に対するの色々と厳しいだろっ!?」

ツッコミをする先輩を無視する俺。

別に嫌いではない……面白い人と思っている物も、何回か俺の趣味で作った作品をネットオークションで売った事のあるバイヤーポジションに勝手にいた先輩なんだ。

次いでに取り分は俺が6先輩が4。

「俺と協力すれば、世界一のお金持ちになる事も夢ではない。」

先輩は格好良くジョジョの顔つきになってジョジョ立ちをしながら言っているも、

「卒業したら真面目に就職活動に励んだら良いのでは?」と夢も無い言葉を口にする数百歳の鬼。

「夢の無い言葉は言うなよ。世の中お金が無いと色々と困るだろ。」

「それは……まぁそうですね。」

先輩のそれは正論だ。摂理の一つ。俺が生まれるより前の古代の時代から貨幣や紙幣の歴史はある。そして宇宙進出の現代でもそれは変わらない。

「何か売る物あるか?」

普通の人がこの発言を聞くとタカるかゆすられているか誤解するが、俺と先輩との会話にそんな上下関係はない。壺を試しに造り過ぎた処分も面倒の際に先輩のネットオークションの話を知り話に乗っただけである。

「数年前は壺作りにはまっていましたが、飽きましてね。」

「……その壺はまだあるか?」

「ちゃんと、観賞用とかのしっかりした壺ですから変な値段にせずに適正価格が条件ですよ。」

図書館とかの貴重な陶芸品の歴史資料で始めた趣味の一つだ。

「金持ちに吹っ掛けても問題なく無いか?」

芸術に疎い犬塚から見ても操真が作る壺はちゃんとしているのを知っている信頼の言葉が帰ってくる。

「金持ちを不幸にする為に、俺は壺を作っている訳じゃないですよ。金持ちの夢を持つ犬塚先輩。趣味の一つで、本業の人達には負けているのは確かなんですから……」

「たまに思うけど、お前って欲がないな。」

「失礼な。咲森学園一番、ひいてはモジュール77一番の欲望を持っていると自負していますよ。」

「……の割に、浮いた話も無いがな。」

「学生の本文は勉強ですよ。さぁ教室に言ってください。バイヤー先輩。」

「転売はしてないからな!?」

俺は先輩と別れて自分の教室に行く。

それぞれがそれぞれの教室に向かう中、

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「であるからして……」

無言で闘牙は、自分の教室の授業を受けながら視線を二人の同級生に向ける。

一人は茶髪の大人しそう争い事が嫌いな面をした草食男子って感じの少年。

『時縞ハルト』

良い言い方をするなら平和主義で優しさの塊のような人間だが、悪い言い方をするなら、普通の人間よりも得る物が多い割に失った事を知らない恵まれ過ぎた人間だ。

普段やる気の無い俺でも"やる気"が有れば目的の為ならどんな手段でも使うのに……っと俺のケースは置いといて………………

『時縞ソウイチ』の息子。ガ○ダムの開発計画責任者の子供………普通じゃないモジュールに、普通じゃない学園………スポンサー軍関係………ガ○ダム開発者のテム・レイ宜しく。ロクな親父じゃないだろう。

ガ○ダムの妙なヤバいシステムに妙なギミック。

(鬼の俺の細胞を一斉に造り変えようとした妙な異物も気になるが………野火マリエ~が言う通り、開発責任者の息子が乗せるとロクな事にならないな。断言しよう。)

俺の鬼としての数百年間培った勘が告げる。この草食男子を絶対に乗せるなと………

そして時折時縞ハルトが授業の最中に視線を向けるのは、学校の人気者も一人。指南ショーコ。明るい奴……

俺を除いた誰とでも友達に馴れる凄い奴。父親はジオール総理大臣…………イカれガ○ダム開発を許可した可能性のある奴の娘。時縞の奴とは幼なじみらしい………もの凄く敗北する香りがするのは、俺の気のせいか………

そして、俺に変な柄のTシャツをくれる人間でもある。

凄くすれ違い感ある二人だな………別々の人と結婚する未来すら勝手に夢想してしまうわ。

『ド派手に行くぜっ!?』

大正時代で対峙したあの嫁三人いた柱の奴を思い出したわ。本当に数百年に経っても記憶に残る柱だった………

記憶に残る戦いでもあったし、ずっと続けたいとすら思ってしまった戦いでもあった……

 

無惨様から"規格外品"と呼ばれる由縁をそろそろ言っておこう。俺は他の鬼の血鬼術……異能の鬼の技を使える。そしてそれ以上に………俺は鬼だが鬼の気配がしないのだ………伝書カラス達は勿論、鼻や耳や触覚や視覚が鋭い剣士達の感知にすら引っ掛からない。

日の光と藤の花が弱点には違いないが、夜限定で人間達がいる街に居ても気付かれる事はない。無惨様に血を注がれても、気配は増す事がなかった………人への擬態……自慢ではないが人のフリならば、上弦のあの堕姫や童磨より上だ。

人間社会に紛れて根無しの風来坊として日本の諸国を旅した事もある。俳聖松尾芭蕉の弟子にもなったり、日本地図を作った妙な人の同行者になったり、色々と己の興味の赴くままに動いていた。

 

何回か、人魚の肉を食べた者と勝手に誤解されて物も、

『ソレは無いで御座る』と答えてやり過ごした事もある。

 

そうこうしている内に授業が終わる。

戦国時代では寺でお坊さんに読み書きの礼法を習ったが、あれから数百年立つと当然だが、学ぶ事も多くなる。俺はこの時間は嫌いではない。

 

「見つけたぞっ!?操真っ!?」

授業終了のチャイムと共にオレンジリーゼントをした男が俺達の教室に姿を現す。

「………サンダ君が何用だ。」

山田雷蔵………自称サンダー。…………山田(ヤマダをサンダと読んで)と呼ばれたリーゼントは俺に向かって

好戦的に挑もうとする。

「今日こそ、決着を着けてやらっ!?後、サンダじゃない。『サンダー』だっ!?せめて伸ばせよ!?」

「今日もガイラはいないのか?」

「否、誰だよガイラって!?じゃないて何時かの勝負をしようじゃないか!?」

勝負と聞くと喧嘩や暴力を連想するかも知れないが、心配ご無用、コイツごときに本気で挑む俺ではない。

勝負の内容は簡単…………サイコロゲームだ

「運命のダイスロール!?」

コップの中にサイコロを6つ入れてシャッフルして音を鳴らして山田は俺にサイコロの出目を見せる。

サイコロ6つの内出目が6のが3つ残りは4、2、3

合計27点。

「さぁ、操真っ。お前の番だぞ!?」

コップとサイコロを渡して確かめる闘牙。

「心配しなくても勝負に変な細工はしていないぞ。」

目の前の彼は好戦的な性格だが悪い奴ではない。寧ろ人間的には良い奴に当たる。

「……気にするな。癖なんだ。」

(戦国時代のサイコロに藤の花の毒を染み込ませた音柱との丁半勝負を思い出したよ。)

「ダイスロール。」

ダイスをコップの中でシャッフルさせて山田雷蔵の前に見せる。6の出目が4つそして残りの二つのサイコロの出目は1と5……合計30点。

「嘘だろ~~」驚く山田に俺はつい嬉しい表情をする

「今回も俺の勝ちだな。山田サンダ。」

「覚えておけよ~~」

そう捨て台詞を吐いて彼は俺の教室から逃げるように去って行く。

「おい。サイコロとコップ。」

 

「操真君って本当にそういうゲームが強いよね。ハルトとは大違いだよ。」勝負を見守って……只の見学をしていた指南ショーコが近づいてくる。

「運が良かっただけだよ。」

「勝者のご褒美にこのTシャツを進呈しよう。」

「それは、良いから時縞に告白したらヘタレー子。」

 

「余計なお世話だよ。」

そう。この友達以上恋人未満の関係を壊したくないオーラを全身から出す指南から凄く負けヒロインの香りがするのは、気のせいだと思いたい。

「次の授業が始まるぞ。準備しよう。」

 

そうして全ての授業を一段落して俺は約束の屋上に向かう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「…………」

屋上に黒い長髪のボッチの先客がいた。100人中90人が美人と答えるだろうが、纏う雰囲気は他者に他人を信用しない感じの女だ。こういうの人間は過去に信じた者に裏切られ翻弄され絶望を経験した人間にある傾向だ。

名前は……はて?何処かで見た事あるが、ここ数年は、ジオールのあちこちを転々と暗躍していた事もあるからな。

「……何かようですか?」

視線に気付いたのか彼女はクールな目線で俺を見る。

明るい指南ショーコに比べると本当に真逆な雰囲気の人間だ。

「別に?…………少し知人と此処で待ち合わせしているから屋上に先客が居て驚いただけだ。」

向こうもクラスが違うのか、俺に興味を無くして視線を自分の携帯電話を見る事に集中する。

 

俺も彼女から離れた位置に座り視線を下に向けて屋上の床…………地下格納庫にあるあのガ○ダムについて考える。

(二つの大国に比べて国力の無いジオールにモジュールは一つ。そしてその一つには、曰く付きのガ○ダム。恐らく地下格納庫には、ガ○ダムの武装も隠されている筈だ。全校生徒の人間からあのガ○ダムに乗る可能性を持っているのは、個人の主観を含めて約20人…………第一。)

闘牙は沈む夕方が見える方向に視線を向けて自身の身体の変化を確かめる。

(あの無惨様ですら、日の光の前では焼けるのみだったのに……何故俺の鬼の身体に日の光の耐性が出来た……あのロボットの中には何がある……)鞄から琵琶を取り出して、

離れた彼女の視線を感じながらも、無言で琵琶の音色を鳴らす。

使う機会が少なかった日向対策の黒い旅用帽子を出現させて被る闘牙。そしてとある色々と物を入れたリュックサックを背中に背負い

(俺の鬼の身体に何が起きた…鬼でない連中があのガ○ダムに搭乗したらどうなる……何が起きる………)

(…………あのガ○ダムは何の為に存在する……軍事兵器の基本は国の防衛の為……)

感情を込めた琵琶の音色が屋上に鳴る。

(国家の最大の使命は国民の安全を守る事……)

「…………」

(何処の国も主権の差に先進国と途上国の差は有れど、軍と警察は存在する……だが表向きは兵器メーカーの無いこの国のモジュールにあのガ○ダムに使われた素材やシステムやプログラムは何処から来た…………本国の政は何故黙っていた………)

何処からあのガ○ダムに関する技術が来た?機動戦士ガ○ダムは鹵獲したザクⅡをベースにコ○ファイター、ガ○タンク、ガ○キャノンとゆっくりと試験開発してガ○ダムが開発された。

(ドルシア軍事盟約連邦にも環大西洋合衆国ARUSにも似たモチーフは存在しなかった…………)

重戦術兵器『イデアール』ドルシアの独立戦艦の異名を持つアレですら、ガ○ダムとは別物だ…………

(あの時縞にも指南にもガ○ダムについて訪ねなくても知らないと答えは帰ってくるだろう……知っている人間は恐らく大人…………)

このモジュールの街の住民、港の人間、そして学園の教師達…………

 

「お待たせ~」

屋上の出入り口から声を掛けられると視線を上げる。

「待ったぞ。ノービ~。」

「いやいや、質の悪い勧誘か友達と相談してね。」

「勧誘なんてするか。」

「言っておくが、此処から先はイベントシーン宜しくセーブもロードも無しだからな。行くぞ。」

琵琶を持って野火マリエと共に屋上を離れる。

「そういえば、先輩。あの冷めた性格のザ・ボッチの黒髪の女子。誰だか知ってますか?」

「??あれは流木野さんだよ。流木野サキ。君の同級生で、子役とか女優とか歌手とか人気アイドルって奴だよ…………知らなかったの?」知らないそっちの方に驚く野火マリエの視線を無視して

「先輩。俺は知らない事は知らない奴ですよ。……でもああいうタイプの女性は結婚して母親になったら子供が引くレベルで親バカ兼バカップル化しそうです。」

「わかるよ~高校時代はクールな雰囲気なのに、結婚したらいってらっしゃいのキスを絶対に毎日朝はせがむ感じのが想像出来るよ。愛してるとか一休さんの曲並みに好きの連呼してそうだもん。」

 

「勝手に人の未来を想像しないで下さいよ。」

仏頂面のボッチが話を掛けてくる。

「落ち着け、ザ・スター・オブ・ボッチ。俺達はお前を馬鹿にした言い方も陰口は一切言っていないぜ…」

「友達くらい私にだって居るわよ。」

「…………携帯電話と勇気だけが友達じゃないぜ。」

「ちょっと、私、貴方にどんだけ友達いない風に思われているの!?」

「まぁ~~俺は余り、人の人生に首を突っ込むつもりもないから安心しろ。ボッチキング。」

「ぶっ飛ばしてやるわよ。」

「ボッチレジーナが良かったか?」

流木野は躊躇無く闘牙に目掛けて自分の膝を叩き込んだ……膝は吸い込まれるように腹部に直撃して

(!!何この固さ……)

そして相手の腹部の固さに驚く。

「痛いなぁ……まぁ、後輩の真似をした俺が悪い……本当にすいませんでした……」

(童磨の野郎……やっぱりアイツ仲良くする手段が駄目過ぎる。)

『ちょっとした軽口の掛け合いから人は人との仲を深める物さぁ☆。』

童磨のムカつく面を思い出した余り流木野の目の前で、

闘牙の両の目が人から鬼の目付きに変わる。

「っ!?」

(抑えろ!?炎竜鬼!?)

彼女の瞬きをする瞬間には目の錯覚かと感じる速さで元の人の目付きに戻る。

「行きましょ。野火先輩。」

「うん。ウチの闘牙が失礼な事を言ってゴメンね。」

そうして流木野から離れて行く二人。

 

「今の……何?」

しかし彼女はしっかりと見ていたのだ。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

前と同じ方法でガ○ダムがある場所に到着する闘牙。

白衣も見張りの連中を眠らせて野火マリエと共に巨大なガ○ダムの存在を見る。

「…………」

「何かコイツについて知ってますか?」

野火マリエはゆっくりとガ○ダムの周りを見回して、

俺と向き合い静かに首を左右に振る。

「…………御免なさい。私の記憶には覚えていない。でも……」

「でも?」

「既視感を感じているって事は、私は前にコレを見た事があるんだね。」

「普通のモジュールとは違うって話は…」

「…………信じるしかないよ……こんな証拠が目の前にあるのだから……」

「貴方の友達の指南ショーコの父親がコイツの開発に関わっているのは、確かですよ。」

「指南総理が…」

中立国の治安の良い国のトップが、この兵器開発に関わっている。

「君は私に見せてコレをどうするの?」

やる気の無い顔になり軽く身体を解して言う。

「良くわからない…………コイツは無いなら無いで良いが、あって困る物でもない。実際は保留が現実的だ。俺は必要以外なら暴れないのが基本だからさ。」

 

「…………でも何時かコレ欲しさに大国が此処に攻めて来る可能性は否めないな。」

「やっぱり、宇宙に捨てる?」

「俺は俺の為に俺の好きな時間を過ごす為、好きな事をする為に戦いますよ。それは昔も今も今後も変わらない…………」

「君って自分本位なんだ……」

「他人を守れるなら守る……俺は神様じゃない。神様からは…………程遠い存在なんですからね。」

琵琶を鳴らしてその場から二人は姿を消す。

「先輩。今日見た事は他言無用にして下さい。…………

バレるとロクな目に合わないと考えてね。」

「わかった……秘密。」

そう言い彼女は思い出したかのように聞く。

「ところで、さっきの瞬間移動みたいな物はどうやってやったの?」

「それも他言無用です。後、さっきのは只のマジックです。種も仕掛けもありません。後、他言無用でも念のため今日の記録を日記に書いておいて下さい」

そう言いたい事を言い彼女の目の前から姿を消す鬼。

「マジックには見えないから聞いたのに……」

 

過去に繋がる懐かしさと既視感をあのロボットに感じた事実に野火マリエは自分の過去の記憶の無い謎はあのロボットにあると思い今回を日記に書くつもりだ。

「日記……そういえば、一度も書いた事がなかったな…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

深夜、何時も人の気配のしない教室の通路を歩き目指すと、

「……っ」

やはり監視カメラが意図的に俺の方を向いている。

(軍の連中か?覗かれるのは趣味じゃないな。)

黙っていたが、秘密基地のテントの横にダンボールハウスが出来た辺りから監視カメラが俺の方を見ている。

「またか…」

人のワイヤードに《RAINBOW》と言う謎の人物から勝手にメールが来る。

(軍人か?確かにモジュールの大人全員を【強制昏倒睡眠の囁き】は使っていないが………)

「何故、俺はこのアドレスの奴に興味を覚えるんだ?」

普通ならメールを開けば良いのに……過去にそれをやって端末データを盗られた事がある為、知り合いの兪史朗以外は極力電話で会話するようにしている。

 

闘牙達のアウトドアテントの横にあるダンボールハウスの内部にて菓子やらゴミやらがある無頓着な部屋の中に、ハウスの中心に複数のディスプレイ付きのPCの前に一人の人間がいた。その人間は、外の日の光の世界と人間を恐れていた。日の光が入らない洞窟に隠れ住む鬼のように"その少女"はそこに確かに生きていた。

 

「…………」

外の様子は監視カメラを操作してクラッキングしてシステムを動かして知る事が出来る。

少年は、テントの中に入り、何時も通り琵琶の音色を鳴らして"その少女"ごと無限城に帰還した。

「へっ?」

景色が『和』の赴きを感じる異空間に突然飛ばされて

身体が僅かな宙に浮く感じと共に『和』の異空間に自由落下して行くその赤髪の少女の名前は、連坊小路アキラ。生徒会長の妹とは炎竜鬼も知らない……

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア~~」

ガ○ダムのパイロット達はまだ己のこの先に起きる運命を誰一人知らなかった……



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第000話鬼と小さい魔女の邂逅

白怒火が好きなキャラクターはベンさん。
闘牙が好きなキャラクターは斎藤さん。

最初の作品の主人公。望まず宇宙人に殺されて憑依されて怪獣と戦うバディ物?
次の作品は神様転生で特典を貰っているのに苦労するし死にそうな目にもなるし、何か闇が蠢いているし大変……
三作目のこの作品は、無限の時間を持つ主人公が自分の為に動いている作品。
この三つの共通点は狙ってないけど、異種族と人間との向き合い方の模索……全主人公は最初は一応人間だったのも共通している。
…………何でもっとこう明るいコメディな感じの話が創れないんだ俺は、書いてる自分の精神状態を疑うわ。


無限城……炎竜鬼と兪史朗の現在の拠点であり、故上弦の肆 鳴女の血鬼術の異空間である。『和』への赴きを表したその城の内部には、戦国時代、江戸時代、明治時代、大正時代の各日本名所を模したかの有名な神宮やら塔やら城やら山やら河やらも存在しており、巨大な箱庭その物である。

……そしてその各炎竜鬼が作った名所には、炎竜鬼の分裂した個体達が配置されており、無限城への侵入者や敵への対処もしているのだ……

「「?」」

人間の気配を感じ各分裂体はそれぞれ動き出して………場面はある城に移る。

その無限城の中にある日の光すら入らない夜の時間のみ出現する幻の骨の城 白骨城。その城の天守閣内に無数の式神を従わせて『囲碁』をするその炎竜鬼の分裂体がいた。その個体は分裂体一の探知探索能力の使い手で雅を愛する戦略家。その名、骸野捨麿(むくろの すてまろ)額に2本の鬼の角を生やしたシャレコウベのお面を着け仏教の大僧正の服装をしているも公家ような都言葉を使う。

「おやっこれは…これは……珍しい……麻呂達がおるこの無限城へ侵入する人間とは、数百年ぶりでおじゃる。…………悪い……これは…悪い……とても悪い……閻魔も裁けぬ極悪人なら頭蓋骨を生きたまま海老の殻を剥くように剥いで頂きたい………城の天守閣の中央に髑髏を飾りたいのぅ……」

お気に入りの極悪人の骨で作った笏(シャク…元の読みはコツ)を片手に趣味の『碁』を目の前の炎竜鬼の分裂体の一人に言う。

【コーーン。】

狐の奇声を鳴るのはメカメカしい妖狐の面で素顔を隠したその分裂体。白色と銀色を合わせた陰陽師の服装をしていてその名前は九荷(くなり)主に血鬼術に別の術を混ぜ合わせる事への関する研究をしている分裂体であり、現代機械への知識も凄い。

彼ら二人は、ガ○ダム発見による解析と分析に、今後大国が攻めて来るならどう対処するべきか囲碁をしながら対話をしていた。

分裂体の捨麿は故上弦の弐の童麿への影響を強く受けた鬼故に、童麿の血鬼術を最も使いこなせる。

九荷は総合的に世界各地の伝承に残る魔術や錬金術、法力、妖術、忍術をベースにした新しい血鬼術の応用をガ○ダムに使えないか研究している。

 

その二人の前に、突風と雷が合わさった一撃と共に天守閣の骨の屋根をぶち抜いて姿を現す分裂体。その面は黄金と黒の2色を合わせた狼の面を着けた袖無しの虎縞模様の軽装と桜の花びらが刺繍された赤い袴を着けて草履を履き。両腕には色違いの手甲が左右に巻かれており右の青い手甲には『雷神』左の緑色の手甲には『風神』と習字で書かれて分裂体は二人に言う。

 

「何をしている……九荷。捨麿。侵入者だぞ。仕留めるぞ。」

「…………麻呂の城が…………早とちりするなでおじゃる。金剛阿修羅仁王風雷天 狼牙丸(こんごうあしゅらにおうふうらいてん ろうがまる)…………御主がやるべき事はまず……天守閣の修理が先だ。それから人喰いの極悪人のマギウスどもの人間の骨を集めてこい…………」

この乱入者の名前は金剛阿修羅仁王風雷天狼牙丸。故上弦の参の猗窩座の鍛練相手として誕生した格闘家の分裂体。

主な仕事は要人護衛……護衛対象がいない場合は、勝手に無限城の自宅警備員をしている。こらそこっニートって言うな。

炎竜鬼の古参の分裂体であり、数百年経過しても世界総合格闘技術の鍛練に余念がない。わざわざ無限城内に闘技場を造る程、戦いが好きな分裂体である。しかし護衛の腕は本物で……勝手に無惨様の周りに常にいた。

嗅覚聴覚視覚が優れ透視能力持ちで防御力が高く……そして、格闘家の分裂体の癖に………しかし技の殆どは、遠距離、中距離が多い……阿修羅、金剛仁王に風神雷神を初め多芸な能力を持つ。

常に無駄なやる気はある炎竜鬼の分裂体である。阿修羅の名前故に異形の鬼特有の肉体変化に余念はない。

「捨麿。何故、侵入者を追わぬ?」

名前を略した狼牙丸が問う。

「…………既に我ら分裂体最強の"朱天大将"が動いているのだ。御主以上に遥かに恐ろしい我らの鬼の中の鬼が……くくくっ……」

「「!?」」

【コーーン】

その名を口にした瞬間、狼牙丸と九荷は無意識に、武器を取り出して警戒する。狼牙丸は全身の各所と両の手の甲から鋭い金属の鬼爪を伸ばして、緑色の炎を全身から吹き出し黄金の電撃と緑色の嵐を吹き荒し白骨城の天守閣の屋根と壁を吹き飛ばす。九荷も十字槍が先端に付いた錫杖を両手から出現させてそれぞれの後ろの端をくっ付けて、長双槍を作り上げ身体の後ろから九本の尾を出現させる。紫の炎を全身から吹き出す。

「ほっほっほっ…………あんたさんお二方、落ち着きなさいでおじゃる。…………鞍馬ノ白怒火飛勇鶴(くらまのしらぬいひゆうかく)が、我らの本体と兪史朗殿の元に報告しておるでおじゃる。侵入者は朱天大将には勝てぬ…………我が本体がどれだけ、鬼から外れた規格外品であろうと……鬼としてのサガは消せない……じゃが人間としてサガも無くせない……ほっほっほっ……誠に愉快愉快……無限城に客が来てくれて麻呂は嬉しいでおじゃる。」

骨の笏を置き代わり禍々しい扇子を持ち開き扇子には《千客万来》と血文字で書かれていて捨麿の全身から幾つ物無駄に笑顔の恵比寿顔の火の玉を出現させ青い炎を燃やし髑髏の面の公家は、愉快に嗤う……骨の城に3つの色の炎が照らす。

白い狐のお面……黄金の闇狼の面……血の色をした髑髏の面……それぞれが素顔が同じで違う面を着けても、彼らは『鬼』その物であった……

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

景色を見る暇も無く少女は悲鳴を上げながら何処までもその身を自由に落下する。

どのくらいの高さから墜ちて行くのか、どのくらい高さから己は落ちてるのか考える余裕もない。

少女は必死に何とかしようするも、翼や羽もない人間は只、成すすべ無く落下するのみ……

一体どうしてこんな事に……と黄昏る余裕すら今の彼女には無い……咲森学園の屋上より遥かに高くから自分が落ちている自覚はするも、何がどうなってこんな事になったかすらわからない……一体自分が何をした……

何処までも続き落ちて行く感覚は、あの世の地獄に続いているのでは、と在りもしない妄想すら生まれる。

視界に見えるのは、ジオールの古き良き豪華絢爛の『和』の通路やら襖やら障子やら空間だが、其処に近付く余裕すら今の彼女には無い……

(奈落…………何処までも落ちて行く。)

下を一度見たら底が未だに見えない暗闇……しかし周りの構造の設計が余りにも"おかしい"……建物の構造とかに詳しくない少女から見ても、こんな長高層な建物、モジュール77の監視カメラで外の様子を見ている自分なら直ぐに気付くのに…………鉄臭い香りが少女の鼻に入ると同時に

「何っ!?あれ……………」

落下している内に襖や障子や和式の壁が消えて代わりに彼女の視界に映るのは、血と同じくらいの色をした真っ赤な池だ……

「知らない…………あんなのモジュール77の何処にあったのっ!?」

続いて見えたのは、暗闇の殺風景に聳える大量の針の山である。

「っ!?」

昔何気なく調べたジオールのあの世の地獄について記述を思い出す少女。悪い事をした亡者達がこの世の罪を血の池地獄と針地獄の話しを……

 

続いて見えたのは、何処までも続く巨大な砂漠に色とりどりの鳥居の道………鳥居の先には真っ赤な血の色をした巨大なピラミッドとパリの凱旋門と巨大な独楽の姿を確認した少女。立て看板には墨汁で力強く『サンシャイン!!!?』と書かれていた。

「???」

あんな地獄なんてあったかな?と自分は地獄にいると勝手思い初めた彼女に疑問を与える。

 

続いて見えたのは、絶えまく炎が吹き上げる祠。熱気が此処まで届き少女の額に汗を掻く。

その次に彼女が見たのは普通の池に朱色の『和』の橋がかけられた寺院。更に、下に落下すると某電波塔並みに長い和風の塔と長い坂が彼女の視界に映る。

「??」

長い塔へ続く坂の途中には巨大な赤い達磨が置かれており、余計彼女の頭に疑問を生む。

更に下に落下すると、ナイアガラの滝を思わせる巨大な水路が見えて彼女はその水の飛沫を浴びてずぶ濡れになる。

次に見えたのは、巨大古墳である。

ますます彼女は混乱する。自分は一体何処に向かっているのか……彼女は不安な気持ちを顔に出しながら落下していった…………

……その彼女がいる場所に黄金の光と共にある"鬼"が到着した。

「……見つけたで御座る…人間……若い女……」

"鬼"は小さく呟くと鬼面の小さく牙が並んだ口元から涎が滝のように零れ落ちる。

「人の味……一体、どのような物か……食べてみたい………食べたい……食べたい………食べたい!?……喰う!?」

その姿は戦国の剣豪のような……或いは武人のような隙も無駄の無い出で立ちをしており、きらびやかな純白と金と銀を合わせた陣羽織の衣を纏い朱色な『和』の戦国甲冑を身に纏っていた。

首には中央に万物の理を創る五行を司る色の勾玉を額に埋められた五つの髑髏の首飾りを首につけて

特徴的なのは、朱色の双角の恐ろしい鬼面と後立に禍々しい火の輪が付いた戦国兜を着けパッと見は戦国の鎧武者と思わせる風貌だった。だが……武人に剣豪には違いないが、それ以上に遥かに無惨の鬼で在り………炎竜鬼の鬼としての闘争本能とサガを一番強く持っていた分裂体であった……

周りからは朱天大将……名は朱天ノ炎魔紅蓮丸(しゅてんのえんまぐれんまる)

その鬼は落下する少女を見下ろしながら朱色の戦国武人は全身から黄金の炎を燃え上がらせて追いかける。

「…ふぅ……」

呼吸すると"鬼"はその速度を上げる。瞬きする合間に

その速さは雷光と見違える程に変わる……しかしその鬼面の表情は見る者を全て恐怖させる程恐ろしい鬼の面をしていた。

「……死ね…」

左腰の黒曜石の色をした日輪刀を抜刀と共に刀身に己の血を燃やして赤く……赤く……燃え上がらせ……

「"鬼の呼吸" 壱の型……鬼神斬牙……」

朱色の鬼の"牙"が少女に迫る。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

作業室にて、

「えっ?人間がこの無限城へ?」

「そうで御座る。」

兪史朗……否、アイツはそもそも人を自宅に招くのを嫌う奴だ。えっ?もしかして……

「……不味いな。朱天の野郎が、狙ってやがる……」

(もしかして……俺のせいか~~~!?)

「本体がいつも癖で琵琶で移動したのに巻き込まれたんで御座る。あれっ?」

黒い和服を身に纏った少年が、此方が何を考えているか丸分かりなのか先に原因を口にする。

そして自分が見てるテレビの下のHDDを起動して録画した番組を見ようとするも……

「えっ?設定中……なっ!?馬鹿なっ!?馬鹿なっ!?……嘘で御座る……あり得ない…………タ○ガー&バ○ー2の第6話が録画出来てないで御座るっ!?」

数十年ぶり伝説の名作アニメが再放送されると意気込むも、まさかの予約出来ませんでしたのお知らせメールが届き、この世の終わりの表情をするのは、鞍馬ノ白怒火飛勇鶴……その人である。

「ネットフリックスで観たら良いのでは?」

「拙者は企業ロゴ無しバージョンが見たいんで御座るよ!?キッド&キャット回がっ~~!?」

「お前、変わってるなっ!?どう見ても折紙サイクロンの系統みたい忍び装束してる癖に……好きなヒーローは?」

「ワイルドタイガーとバーナビーとゴールデンライアンで御座る。」間髪言わずに答える分裂体。

「そこ一応、炎竜鬼だからドラゴン繋がりでドラゴンキッドが好きなんじゃないのか?」

「本体だって好きなヒーローは、スカイハイとロックバイソンで御座るじゃないですか?」

「俺は装甲タイプに弱いんだよ。メタルヒーローはリメイクロボコンまで観てるんだぜ。」

「あの"恋する汁無しタンタンメン"観るくらい好きですよね。本体の好みってたまにわからなくなるで御座る。」

「時代と共に変化するんで……って雑談してる場合じゃない!?」

琵琶を使い本体こと炎竜鬼は移動する。

「頑張るで御座る………………」

力尽きた引きこもりのような姿で片手を振り血涙を流す分裂体を無視して本体は姿を消す

「泣いたって番組が録画される事は無いんだぞ、諦めろ……」

「そんな残酷な事を言わないで欲しいで御座る!?」

(今度、何か白怒火の欲しい物でも買ってやろう……)

消える前でもこんな会話をするくらい仲は良いのが、分裂体の本体の関係だ。

(…………悔しいのは貴様だけではない……だが叫んでも時は戻らない……)

訂正……本体も結構な……相当な……物凄いショックを受けていた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【ベベん。】

「っ!?」

人間に迫る鬼神斬牙の一撃を真横から出現した炎竜鬼は

得意の蹴りの放ち斬撃を真正面から防ぎ、衝撃と炎が両者を包む。

「珍しいのぅ……御主自らから儂の前に現れるとは……」

物珍しそうな声を仮面ごしに言う分裂体。

「あの子は敵じゃない。攻撃するな。迷い込んだんだ……」

「久しく……113年ぶりに、手合わせお願い出来ますで御座ろうか?儂の右の角を折られた因縁もありますし…」

人間の少女に興味を無くして目の前の"獲物"に向かって刀を向ける。

「やむを得ない……」

朱色の2本角がある鬼面を着けた朱天大将の額には昔は中央に一本、左右にそれぞれ一本ずつ鬼の角が生えていたが、113年前の手合わせで、"本気"となった炎竜鬼との死闘の末、右の角を折られた経験を持つ

【血鬼術 竜人外装 炎竜】

「右の角の件は悪かったよ。左右非対称にしてしまって……でももう互いに水に流そうよ、もう結構昔の話だろう……」

己の姿を戦闘特化の炎の竜の鬼に変えて…

「たった113年前の出来事であろぅ……儂にとっても水に流したいが、無惨様の鬼としての誇りがある!?"朱天大将"いざ参る。」

両者戦闘開始。

「えっ?」

少女は物音と共に上に視線を見上げる。

異なる色の光と光がぶつかり合い、"何か"が上にいる事実を少女に与える。

「ひっ!?」

対人恐怖症の少女に取ってその事実は恐怖であり、防衛本能で悲鳴の叫びを上げようにも……それを上げる暇もない程の幾つ物の斬撃音が鳴り響き紅蓮の炎の中から朱色の鬼面を着けた鎧武者と紅の炎を燃やす竜鬼が空中でダイナミックに落下しながら対峙する。

異なる色の炎と硬い熱刃が幾つもぶつかり合い火花が美しい花火のように舞う……だが両者はそんな火花に見とれる暇等ない。

「「やはり……コイツ強い……」」

無惨様が亡くなり……鬼狩りの柱も上弦の鬼達もいなくなり数百年……自身が今日まで、ドルシアやらARUSやら変な事に巻き込まれて近代兵器や現代兵器に囲まれても、今日まで生き延びれたのは、目の前のコイツの存在が大きい……俺が持つ鬼のとしてのサガを全て持つ朱天大将が居たから俺は今日まで鍛練を続けられていたんだ。

俺の首を斬り裂こうと日輪刀を振るうも、大将の胸当てを蹴り飛ばして距離を取る。

「……少し休憩しないか?今日は腰が……」

(ヤベっ!?今のは普通に冷や汗が出た……)

「断る…」

本体に向かって躊躇無く斬り掛かるのは、コイツだけだじゃない。でももう少し……遠慮を覚えて欲しい物だ。否、本体の俺が自分本位だからそれは自己否定になるな……

鬼同士の闘い意味等無い……日輪刀を持っているコイツを除いて……四肢を竜の鱗状に変化させて日輪刀の一撃を片肘から放つ熱刃で防ぎ、落下しながら得意の斬脚技を繰り出す。

掠るだけで相手の身体を焼いて斬る事が出来る蹴り技を、朱天大将は刀身で蹴りを受け流して、空いた片手の指で俺の腹を刺して臓物を引き摺り出そうとするが、俺は片手に紅の熱刃を出して、朱天大将の片腕を焼き斬るも、直ぐに片腕を生やし再生させて俺の顔面を殴り付ける。

「グオッ!?」

余裕で生身の人間の五体をバラバラする手加減無しの一撃で吹き飛ばされそうになるも熱エネルギーで落下の勢いを止めるも、相手は逆に落下の勢いを付けた追撃の回転斬りを放ち咄嗟に両腕で防ぎ両腕の鱗に火花が雨のように舞う。

「ちょっちょっ!?止めろコラッ!?」

俺は両腕で斬撃を防ぎながら両手の指先から紅色の熱線を連射して、朱天大将は意気揚々に、熱線を日輪刀で弾き接近し、落下しながら斬り付ける。

「鬼かっ!?この野郎!?」

「鬼だろ…」

「そうだな…俺達は鬼だったな……」

何て馬鹿な質問をしているだ俺は……と勝手に自虐的になるも両者一歩引かずに接近戦に移行する。

 

肘からの熱刃の一撃を日輪刀で防ぎ、すかさず刃を弾き返して斬り付けようとするが、変幻自在の竜の尾のように両足を動かし迫る日輪刀を足の硬くした鱗で弾く。

足先に勢い良く炎を噴射してその勢い利用した膝蹴りを朱天大将の腹部に叩き付けくの字に相手の身体を折り曲げて、追撃に相手の真横に向かって蹴りを放つも

「鬼の呼吸……肆の型……鬼氣烈砲斬!!」

(不味いっ!?)

巨大な硬い物を斬り裂く為に編み出した型の技……全身の一撃を溜めて放つ斬撃破に熱刃が纏った蹴り技の攻撃動作その物が止められて、逆に真正面からその一撃を喰らい、硬い鱗の両腕が切断されるも、直ぐに再生させて両手の指で手の平を傷付けて血を流して手の平に血で円を書き

【血鬼術 炎竜焔車輪】

血は小型の紅色の熱刃の光輪に姿を変えて光輪を無数に作り出して手裏剣の要領で朱天大将目掛けて投擲する。光輪の回転数を上げる事により速く切れ味も無限に増す事が出来て、並みの相手を必ずバラバラにする術なのだが、朱天大将の前では小細工すら斬り捨てられる。

「あっもう~~チキショー!?」

本当に強いから勘弁してくれ……

火花と共に両者全力で落下し絶え間なく日輪刀の刃と熱刃が交差しぶつかりその攻撃の余波で四方の壁や柱を傷つけながら両者は落ちる……

「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!?」」

幾つ物の炎が、鋭い竜爪が、日輪刀が、熱刃が、拳が、蹴りが、呼吸が、技が、炎と光が眩しくぶつかり合い、両者の身体を傷付けは再生してを繰り返す。並みの人間ならこの攻防だけで4桁は死んでいるレベルの激しい熱戦だ。

【血鬼術 爆血 】

互いに同時に血を燃やして攻防一体の格闘術……鬼闘術で応戦するも朱天大将は俺を殺す気で傷つけようとする。

(相変わらず……俺の鬼としての一面を最も持つ分裂体だ……)

斬撃と打撃に光の軌跡を作り出して鬼の肉体を限界まで使う……独自に考えた拙い変な呼吸も、数百年の間に朱天大将の努力によって精練されて、"激動の時代"の鬼狩り達が使う呼吸に匹敵するレベルにまではねあがる。

更にこっちは下に落下している人間にも意識を向けないといけない……

 

「聞こえるか?捨麿っ!?九荷っ!?白怒火っ!?大将を止めろっ!?」

(((御意。)))

【ベベん。】

「っ!?」

琵琶の音と共に分裂体達が、朱天大将の周りを囲むように出現して、

【コーーン】

狐の鳴き声と共に大将ごと、狼牙丸が造った闘技場に分裂体を飛ばす。

(あのまま、勝負を続けていたら、あの人間が巻き添えになっていた。)

人間の姿に戻り……少女の元に急いで落下する。だが考えが足りなかった為、それ今回一番の悪手だったのを身を持って闘牙は知る。

「おいっ俺の声が聞こえるか!?おいっ!?」

誰……知らない人…………ヒトっ!?人……嫌っ、嫌っ、助けてっ、やだっ、やだっ、私の世界に人が私の世界を……壊す……

「はっ、はっ、はっ、はっ、」

少女の呼吸が乱れて全身から冷や汗を掻き、過去のトラウマが…恐怖が一瞬で甦る……互いに目線を合わせ至近距離に"知らない人"が出現した為、恐怖の余り彼女の中にある感情が爆発。

「ひっ!?あぅ、いやぁっ、いやぁあああああああああっ!」

「おいっ、助けに来た。俺に掴ま…って痛い痛い痛いちょっと目の中に爪を入れないで、眼球の中に爪を入れないで!?取れちゃう!?」

「ああああああああああっ!?」

来るな!?やめろ!?私の世界に!?私の居場所に!?私の理想郷を壊すなっ!?

どうしてこんな事に……"何時も通りの日常を"私の時間を過ごしていただけなのに……こんな事を…望んでなんかいない!?

来るな!?いや

目の前に突然現れた人間にビックリする少女は、一気に顔色を悪くして炎竜鬼が知らない"トラウマ"が再発して錯乱状態になる。

「ちょっとストップ!?顔の皮は流石に怖いからやめて!?ちょっと落ち着いて!?ベヘリットみたく叫ばないで……ゴッドハンドを降臨させるのはやめて!?アガガ……」

助けに来たのに、目の前の赤髪の少女は、涙を流しながら悲鳴を上げ…癇癪を起こしたように目の前の闘牙を兎に角…両手の爪で暴れて傷付ける……

『バケモノっ!?』

「っ!?」

悲鳴の上げ必死に抵抗する目の前の涙を流す少女の姿が、鬼の姿を見て悲鳴を上げた実の両親の姿と重なった………

「……………………………………」

(眠らせて…………何だ?この違和感……)

今も尚怯え必死に暴れる少女を大人しくする為に咄嗟に少女に向かって魘夢の血鬼術を使用して夢の世界に飛ばすつもりだったが、目の前に暴れる少女が暴れるのは、鬼である俺を恐れているのかと僅かな疑問が生まれたせいだ。

自分本位の鬼である俺は他者との関係を必要最低限にしている……それは兪史朗を除くと全て刻の流れと共に変わりいなくなる存在だからだ……故に親密な関係になればなる程、鬼である秘密や人間でない一面を知るはめになり、人間関係は自然と消滅してしまう。

良い人間も殺したい人間も全て時間が解決させてしまう。

自分本位だからこそ、目の前の少女の行動は、己の身を守る行動は……鬼を恐れるソレではなく……まるで同族その物を……

「!?」

その疑問の答えに闘牙はたどり着く

(…ヒト………人その物を恐怖しているのか…………この少女は…………)

見た目は一見普通に見えるも、此処まで自分以外の人間を恐怖するとは、一体どんな経験をしたら……冷たい物が首の後ろに当たり冷えた感覚を覚えた俺は、静かに目の前で恐怖に怯える少女を見て

「…………」

(今の俺にこの少女を助ける資格は無い……心すら救えない俺にどうしてこの少女を助ける資格がある………………俺は鬼だ……)

彼女から敢えて離れて落下する四方のから写る景色を見る……

止まぬ猛吹雪が吹く雪山だ……エベレストやヒマラヤ山脈を合わせた雄大な氷の山脈……アレンジに山頂の左右に巨大な2本の雪で作った角が在り。『無惨山』と言う。狼牙丸が造った闘技場がある場所だ。猛吹雪の闘技場から巨大な昇竜の模した炎の竜巻が火柱となって天に昇る。

その光景を見た瞬間、目の前に怯える少女に向かって小さく反省した表情でこう呟くのだ。

「ごめん…」

「……っ」

そう言い闘牙は琵琶を鳴らして彼女が元にいた居場所に返す。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

自分の城であるダンボールハウスに戻って来たアキラは周囲を必死に見渡し、漸く自分が帰ってきた事を知り安堵する……

外はやはり怖い…………ここが私の世界……そう彼女は己に言い聞かせるも、視界に捉えた無数の謎の光景と、

血に染まった己の両手を見て、あれが幻じゃない事実を知る……

「……っ!?」

『ごめん…』

人間はやっぱり嫌いだ……外に出るくらいなら、死んだ方がマシだ……

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

朱色の木造橋の上で池で意味もなく泳ぐ金魚達を見ながら故上弦の陸の妓夫太郎と堕姫を奉る朱色の寺院へ力無く歩く闘牙……

今の無限城内にある建造物や迷宮は全て死体も名も残らない鬼達を供養する墓でもある。

美しい京の都の平等院をモチーフに建てた場所で、ジオールの職人達から匠の技をふんだんに使って作った自慢の名所だ。兪史朗が本気で誉めた寺院でもあり、池からは河童が出ても良いように作ってある。

……河童なんて一度も見た事なんてないけどな……

少女が暴れて出来た傷は既に完治している物の涙と悲鳴の少女の叫びが炎竜鬼の耳に残る……池に住む金魚達も、故上弦の伍の玉壺の壺から出す使い魔的な奴らしく……餌は不要だ……後頭に壺を乗せたムキムキ魚達は橋から離している。ビジュアル的から見ても気持ち悪いしね。

 

 

心に傷や痛みを負うなんて生きていれば、誰にでもある……だが世界はいちいち個人個人の立ち直りに待ってはくれない。それ以上に世界は昔も今も残酷で容赦無く……美しく……素晴らしく……つまらない…………

「あの子の居場所は本当にあるのか……」

アムロを探していたら岩倉レインに遭遇した気分だ。あの人間を放っておく事が正解じゃないのはわかっているけど……結局、本人が決めて行動しない限り意味がない……俺が彼女に手を差し伸べるのは、他に方法が無い場合だ……嫌がる相手を無理して連れて行っても良い事なんて何もない……

「???俺が他人に興味を持っているのか?………………愚かな……」

偶然による事故でもあんな精神状態の人間がモジュールにいる事実を知った瞬間、

モジュールに攻めてくるかもしれない大国相手に、やはりあの"ガ○ダム"が戦いの鍵を握る……大国が攻めるなら攻め込み名文は間違いなく中立国のジオールが軍事兵器を作った事に対するのが、理由だろう……

 

「……犬塚先輩の為に壺でも作るか……」

静かに考えるより何かしながら考えた方が生産的だし、

それしかする事がない……

「ガ○ダム……お前は何の為に生まれた……何の為に生きる……戦う……お前は何の為に存在する……」

 

得体の知れない何かがモジュールに迫る感覚を覚えながら……今の鬼の俺には答えは見つからなかった……

 

最悪な出会いをした鬼と小さな魔女……互いが互いに自分の為に動く者の為……互いが互いの事を本当に知るのはもう少し先の話になる……

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

宇宙にて軍事盟約連邦ドルシアのバァールキート級宇宙重巡洋艦『ランメルスベルグ』。

パーフェクトアーミーの通り名を持つドルシア軍特務機関……カルルスタイン機関がいる『ランメルスベルグ』は人知れず闘牙達がいるモジュール77に狙いを定めていた。

そしてその『ランメルスベルグ』その特務部隊に5人の少年の姿があった……彼らは少年ではない。カルルスタイン機関が選抜したエリートであり、エージェントであった……

その彼らの上官から特務が通達される。

中立国ジオールに秘匿施設の情報在り、軍事兵器が開発されている模様……君達カルルスタイン機関は速やかにモジュール77に潜入して兵器を出撃をさせないようにせよ。

兵器名称は『ヴァルヴレイヴ』

恐ろしく冷たい目をした少年は言う。

「ブリッツゥン・デーゲン!」

 

役者達が集まる……




次で漸く原作だ……さてどうオリジナル主人公達を立ち回らせるか……この原作、隙間が少ないからオリジナル主人公を動かし難い……暫く更新出来ません。


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第1話集う有象無象……とりあえずハルト……お前は気持ち悪い奴を超えてるよ。

お久しぶりです。長らくお待たせしました……出来るだけ失踪しません。……本当はアニメ第1話まで執筆したかったんですが、とりあえず此処まで載せます、


 

【べべん。】

異空間の無限城 きらびやかな豪華絢爛の……では無く、質実剛健を表した実用的な……闘牙丸の広間では、

各分裂体と兪史朗を集結させて、毎日の如く評定(ひょうじょう)をして対大国に対するモジュール77防衛について話し合っていた。

「……やる気が無くなりそうだ……」

いつものやる気の無さを全身から放出するくらい状況把握して休憩用な自分の畳んだ布団に寝転がる闘牙は、分裂体の意見を聞きながらも、"詰み"同然の戦局をどうするか悩んでいた。

「…………」

天井に描いた青空の風景画を見ながら闘牙は、物思いにふける。

 

あの対人恐怖症の少女との出会いから数日が経過し…………やはりどんだけ毎日俺と分裂体達と兪史朗で評定をしても、大国と戦うのは、どう頑張って考えても避けられそうにない……結果になった……代案を幾つか思い浮かぶも実現するのは、難しいし、結果が乏しくない可能性がどれも高い。

評定の広間にて、幾つ物作業台を並べて作業台の上にはモジュール77内部を精巧に再現したレゴシティが配置させており、中央に咲森学園を模した学園のレゴブロックを最重要防衛拠点として定めて、周囲の市街地のレゴブロックの街を配置させて、プラモデルのガ○ダムを学園の横に置く。相手方は勿論ス○ープドック。

「結局、こっちの戦力が少な過ぎるのが、ネックなんだな……」モジュール77は勿論、ジオールは先守防衛が基本、民間人は銃の所持も禁止されている徹底ぶりだ。

世界で一番治安の良い国、平和な国、ドルシアの連中から平和ボケの国とも言われている。一応、あれから色々と調べた結果、一応先守防衛用の対空機銃やらジオール軍の『スプライサーZ』っと言う戦闘機もあるが、申し訳程度……このスプライサーZも腕が良い乗り手じゃないと直ぐに墜ちる機体性能だ。

「ほっほっほっ国力の差を覆す事が可能のガ○ダムでも、たった一機しかないなら、犠牲を出してでも防衛拠点から引き離せば良いだけでおじゃる。」

捨麿とつい昨日、白骨城の天守閣の修理を完了させた狼牙丸も九荷も評定に参加してそれぞれの意見を言う。

「その間、防衛拠点を落とせば相手の勝利、しかも学生を人質にすれば、此方の動きを封じ込める事も可能だ……」

「…違いない……何よりあのモジュールには、軍人の大人共を除けば、一般人ばかりの15から18の子供ばかり……戦場も知らない平和な国出身の楽観的な連中だ。」

48の邪悪な禍々しい仏様を彫刻しながら会話する狼牙丸。

「ったく、此方には頼れる軍人が仲間にいるかいないかでこんなにも面倒とは……」

実は色々と割合はするが、ドルシア軍、ARUS、ジオール軍に軽く仕官した経験を持つ。っと言っても声、仕草、外見、名前、性格、経歴を全て変えてだ。大きな戦場にはいる事は無く、どの軍でも小さな防衛基地の小さな部隊の新兵程度で……せいぜいドルシア軍の時に、『バッフェ』有人機を操縦してARUSの連中相手に軽く暴れたくらいだ。鬼に故に日が出てない夜の時間限定勤務をしていて……退職金代わりに『バッフェ』を無限城に拝借した……ドルシア軍では帰還の途中行方不明として片付けられている。そしてジオール軍の時は平和その物で、趣味に時間を使っていた。

色々と武器やら備品やら横領したが鬼の俺には些細な事だ。

「籠城戦にも不向きな街作り……結局初動が肝心だな……危機意識の差は勿論、どうガ○ダムを使うかに俺達の今後の活動に影響がある。」

白怒火が敵の侵攻のやり方の何十通りのシュミレーションをレゴシティの盤面で眺めながら口にする

「やっぱり、大国のエリートか軍人のプロを味方にする方法を考えた方が無難だな……」

自分は文官よりでも結局は武官……武将よりの性格だ。

戦略家や策略家ではない。そういう仕事は、視線を一瞬捨麿に向けて、自分は暴れるのが良い。

「俺達が暴れるのは?」

彫刻をしながら狼牙は尋ねる。

「ほっほっほっ。我らが動くのは、動く必要がある場合のみ…それぞれの面で素顔を隠すも、面の奥にある素顔は皆、本体と同じ面。」

捨麿は愉快そうに仮面ごしに笑う。

笑う捨麿だが、伊達に戦略家を名乗っているわけではない。測り知れない機体性能を持つ単機で、敵をどう封じ込めるか、有効な策を素早く頭を回転させながら作っている。

目的の為なら手段は選ばない……本体の一面を分裂体は知っている為、余り咲森学園の人間達には申し訳ないがいざとなったら、恐ろしい"朱天大将"を無限城の"外"に放つのも一つの戦略。

(指揮系統を考えるとやはり……最短で闘いを終わらすなら、敵の大将がいるであろう戦艦を落とす事……しかし敵も馬鹿ではあるまいでおじゃる。大将を失わない陣形を当然築くし、如何なる犠牲を払ってでも守るだろう……)

大将を落とし、指揮系統を破壊する方法はシンプルだが、効果的だ。指揮系統を回復させる暇……隊長クラスの敵を狙って倒せば、敵は敗残の有象無象に変わる。

(攻めて、ガ○ダムの同型は贅沢でも下位のジ○が小隊レベルでいるなら連携や戦略に幅が出る物も……)

捨麿は己の探知探索の能力でモジュールの最下層には、派生機が複数存在しているのを確認した。

だが派生機は全て偏っており、戦略家の自分としては、

"コレじゃない"である。欲しいのはアニメや漫画の特殊能力チームじゃないのだ。簡素なガ○ダムを主軸として

量産機による連携だ。

(…………無い物をねだっても仕方あるまい……有る物でどうにかするのが戦略家の仕事でおじゃる。)

ジオールの科学者連中はやはり何処かイカれている事実に捨麿は頭痛を覚えた……どんなに凄い性能を持っても単機のみでは本当に出来る事が少ない……

「6つ子の設定は?」白怒火が、もしも学園が占領されて奪還する時の言い訳を口にする。

「……本体を含めると7人だぞ……」

珠世の絵を描きながら分裂体同士の会話に意見を言う兪史朗。

朱天大将、狼牙丸、捨麿、九荷、白怒火の五人。そして6人目の分裂体は現在、別行動の最中。合流は難しいとの事。

俺の分裂体が沢山いれば良いと考えているが、実はそうでもない。増える分……リソースが分かれる為、弱体化するのだ。とはいえやる気有りで6つに分かれて上弦の鬼に匹敵する異常の強さ……

(半天狗を馬鹿に出来ないな……)

「結局…………俺自身はどうしたいかによるんだよな。」

咲森学園の連中は悪い奴は少ない良い奴が多いかも知れない……だがソイツらの為に鬼である自分は戦えるのか?

「……俺に少し……考える時間をくれ。今日の評定は終わりだ。各自自由時間だ。」

そう言うと各分裂体を無限城の各迷宮に戻す。

一人になった広間で布団に寝転がり力無く天井を見上げる。

俺は自分の為にしか力を使わない……"鬼"である俺は、結局は、人間の縄張りにいる事は許されないからだ。

ウサギの群れの中に、ライオンや狼がいるのと同じ、人は自分とは違う物を恐れる……結局は皆怖いんだ………

脳裏に掠めるのは、あの赤髪の少女の人に怯えた表情…

……

「"鬼"が伝承の存在となっても、人は結局……己らで"鬼"を作るんだな……人間って言うのは……度しがたい………………」

気分転換に琵琶を片手に、モジュール77の方に一人向かう闘牙丸。

 

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夜の人の気配が少ない咲森学園の屋上に現れた闘牙は、平和なモジュール77を静かに眺めていた……前言撤回する。これから始まるであろう巨大な嵐の前の静けさに、鬼として感覚が鋭くなっている。

俺が敵と戦うのは、俺の趣味に使う自由時間を奪われない為、そこに"人間"は含まれるのか、否かは、時と場合に寄る……

「"高飛びする"事も一つの手かもな……」

ガ○ダムに関連する物を全て無限城に入れて、このモジュールから兪史朗と共に姿を消す。そうすれば、大国が攻めてきても、望みの物がない為相手の計画が頓挫するかも知れない……

「そうしたら、ここの生徒や教師達はどうなるんだ?」

占領された領国の扱いは色々とあるが、どれも明るくないし、末端の兵士によっては捕虜を…………

「俺は俺の為にしか戦えない……」

顔も名前も知らない他人の為に命を掛ける程立派な物を持ってないのは、人間の頃から変わらない……

「皆、死ぬのか?」

教導カリキュラムから見たら、ここの学園その物が仕組まれていた物で……本国の科学者達の子供の生徒達は人質でもある。

 

日の光に死ぬ事は無く耐える事は出来ても…

鬼としての本能は、消えて等いない……けして抗えない鬼の性が、今も俺の中に確かに疼いている。

たまに考える……昔の事、鬼としての本能に任せていたら、俺はどうなっていたのか?死んでいた可能性はあるけど……こんな己の本能と理性のぶつかり合い精神を鍛える必要なんかなかった気がする。

でも死んでいたら楽しい事や凄い物を知る事もなかったんだな……

「闘牙丸よ。俺はこの場所にいる人間達の為に、命を掛けられるのか?鬼に成りきれず、人間に成りきれない何処までも半端者の俺が……ここにいる生きた連中達を守る資格が……」

 

答えなど返ってくる筈がない。戦える理由は既に持っているのに、"詰み"同然の劣勢なのに……頭では分かっているのに……どうして自分の頭で考えた現状に激しく抵抗しているんだ。俺は……

考えなくても考えても遅かれ早かれ敵は必ずここに攻めてくる。初動が肝心とあの場で狼牙丸が述べていたが、やり直しが効かない現実でどう立ち回る。

 

「俺にここにいる連中の命を背負えるのか……」

夜の屋上を離れて校舎の中を歩く……夜の校舎は昼の校舎の様子とは違い不気味さを感じる物の長い刻の中夜を活動時間にする鬼の俺にとっては、昼と変わらない……

肉体的な疲労も出ていないのも理由の一つなのかも知れない。

ゆっくりと夜の校舎内を探検すると、明かりが点いているのを見付かる。

眼鏡を掛けた男性で担当は物理。貴生川先生だ。

「うん?操真。こんな時間に何やってるんだ?」

「学校の教室に忘れ物をして職員室に向かっていたんです。」

息を吸うように嘘を吐く俺。

「待ってろ。職員室まで案内する。」

「お願いします。?先生、誰か転入するんですか?」

先生が持っているのは、新品の色々な科目の教科書だ。

「おっ。気付いたか。食いしん坊め。」

「戸棚のお菓子を見つけた感じに言わないで下さい。」

「そっ、"珍しい事"にこの咲森学園に転入してくる連中用だ。色々とわからない事があったら教えてやってやれよ。」

「ソイツが"良い奴"なら……不良とかヤバい奴なら先生に任せます。」

「ははっ、言うか。」

この教師との仲は普通だ。"普通に被験者の監視をしている物の"人となりを見てこの教師は良い人間だ。でも何か俺ら……咲森学園の生徒に負い目を感じているようで……明るく真面目に振る舞うも、やはり何処か申し訳なさはある。

「平和ですね?」

「何だ?突然?」

「世界はドルシア、ARUSの大国同士が小競り合いをして領土を取り合う中、中立国のジオールに生まれた人間は、普通の暮らしが出来る……」

「……」

貴生川先生は俺の言葉に真面目に聞いている。

「この学園も平和なのは、先生達のような教師が生徒達を守ってくれるから、…………感謝してますよ。先生。」

「操真……」

「(゜ロ゜;あっ、操真君!?どうして此処に!?」

職員室の方から知っている稀血の香りと共に七海先生が顔を出す。

本能的に七海先生を守る為に距離を離す闘牙。

「えっ?」

「あっ、……すいません。」

端から見ると七海先生を怖がっているように見えて、七海先生は少ししょんぼりしている。

貴生川先生が操真の方に向かい。

「お前、まだ七海ちゃんが苦手なのか?意外に可愛い所あるんじゃないか?」

「先生……」

ジト目でスゥーと勝手に誤解する貴生川先生を見る闘牙。

「うぅ……操真君。どうして先生を避けるの?」

生徒との距離を感じて少し泣きそうになるも教師だからと言う理由で泣かないように頑張る七海先生。

仕方ないので七海先生に接近して頭を優しく撫でる闘牙。

「俺、先生の事キライじゃないですから安心して下さい。」

(耐えろ!?炎竜鬼!?)

七海先生の前でドキドキするがこれは嬉しいソレとかグラマラスな女性の前で緊張してとかソレじゃない。

稀血の香りを間近に感じても手を出しては行けない忍耐が試されている修行の感覚だ。

(朱天の奴なら躊躇しないんだろうな。)

目の前に極上の餌があるのに何故我慢する必要がある。

無意識に左手を握り潰す勢いで握り締める。自壊も覚悟の上だ。七海リオン先生……鬼を狂わす恐ろしい教育実習生である。そして結構好みタイプなのだが……今は余計な事は考えずに、先生に励まそう。

 

忘れ物らしい物を回収して、咲森学園の夜の校門の外で夜風に当たる闘牙は只一つ。

(耐えたぞ。こんチキショー。星が美しい……)

晴れ晴れとした達成感を夜風と共に全身で感じていた。

何アホな事をしているんだコイツと思うかも知れないが、本人は至って真面目に動いていたんだ。

あれから自分の教室に二人とも着いてくる為、色々と精神力が試されて大変だったのだ。

そして静かに星を眺めながら思う……

「あの教師達も、大国が攻めてきたら……怪我とかするしヘタをしたら死…」

先の事は予測は出来るが予知は出来ない。

「………………そんなの…………嫌だな……」

頭では利口に考えても内なる胸に秘めた本心は俺にこう言っている。

護れよ。炎の竜の鬼よ。

あんなに良い人なのに……まだ若いのに……これじゃ、生徒を守って死ぬ為に産まれたのと同じじゃないか……

咲森学園の生徒の連中は何の為に産まれたんだ…………

 

 

「覚悟なら"此処に"来る前に出来ているだろ……」

やはり皆を守るのに必要だ。視野が広く悪魔のように冷酷で目的の為なら手段を選ばない頭脳明晰の戦術・戦略家の軍人が……モジュール77にそんな奴がいないのは、分かっている……なら"外"から引き込むしかない。

引き抜きや寝返りは戦国時代以降も続く手段……何処かに存在する筈だ。

大国の中で大国を不満を持つ忠誠心は無い軍人が………

「いたら奇跡だな……」

大国相手に大立ち回り出来る奴なんて2年前の風の噂で聞いた"一人旅団"くらいしか思い浮かばない……その噂も結構誇張されているし……稲葉山城を奪った竹中半兵衛かよ。

確か、名前は……誰だっけ……クソっこんな事になるなら、普通に上官達に訪ねれば良かった!?

でも例え引き抜き出来てもソイツにはメリットは少ないよな……凄い性能のガ○ダムが数機を除けば、後は頼りない15から18の遺伝子調整された一般人ばかり……

皆、強○装甲ガ○バーの獣化兵じゃなさそうだし……えっ?俺ってもしかしてアプ○ム?戦闘生物ポジション?

速水さんに助けられて友情に答える為にオメガブラストに進化するの?あの格好良い外見に……って話は脱線しまくったな。時間は掛かった物のなんちゃってモジュールの全てのシステムは大体把握した。只、監視カメラは『タイマンハッキング』で連敗しまくって、えっ?『裏番長』がこの学園に居た事実に驚いたが、

「……そっか。」

とっくに俺はココが気に入っていたんだ。

だから悩むんだ。迷うんだ。無くしたくないんだ。今のこの日常を……

 

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【チャリン】

朝。何気ない朝の光が男とモジュールを照らす。

男こと俺は愛馬『鬼風』に颯爽と跨がり咲森学園に向かう。

ついでに黒い像のような馬では無く俺のママチャリ自転車の名前だ。

「右手ハンド君。お前は『裏番』にこの"プレゼント"を渡して話し掛けてくれ。左手ハンドは有事に備えて待機。」

さっき呼んだのは俺の使い魔では無く俺の分離した"お手て"その物……状況によっては俺より優秀であるが、

見た目は完全に人の手である左手は人をビックリさせてしまう困ったさんに比べて俺が一から製作した熟練の職人技をふんだんに使って芸術なデザインに開発した可変変形ギミックが付きの右手は蝙蝠モードに変形して飛行。"監視カメラ"を支配する『裏番長』に俺が開発した"ドローン"を贈り物に協力関係を築こうとする。

正体不明の存在『RAINBOW』……これから起きる出来事に協力関係を築いた方が後々ここの連中の手助けになる。

(きっと知的な諸葛公明や竹中半兵衛や黒田官兵衛や山本勘助のような人間なんだろう……あるいはコードギ○スのルルーシュ。)

イメージの人物が昔の武将や軍師なのは、昔の時代に生まれた弊害と思ってくれてもアニメキャラクターをイメージするのは流石に高望みしすぎか……

「さぁ、駆けろ!?鬼風っ!?」

必死にお手てに指示を出して俺は去年漸く乗れた自転車を必死に漕ぐ。

素晴らしい朝の平和な日常がまた始まる。

 

 

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ココは私の居るべき場所じゃない……最初の頃周りは私を珍しい芸能人と思って話し掛けてくる。素直になれない私は無視や無関心や冷めた性格が災いして、今じゃ櫻井さん以外必要以外話し掛けなくなった。私はクラスで孤立している。別にソレで良い……私は、望んでココを受験して面接して来た訳ではない。

『私は有名になりたい……』

周りの嫌な大人達に消されたくない。生きた自分の存在を世界に残したい……ロクな"幸せ"が無いのにその私から"幸せ"を"取り立てる"醜い大人達が嫌い。

家庭科部に入部したのも、新陳代謝が激しい運動部が嫌なだけなのと自分を売り込む際の家庭的な一面を持っているアピールポイントに実生活にも生かせるのが強みという俗物的な理由だ。

「はぁ~」

所属事務所との契約が解除通告を貰い現在フリーの元人気アイドルの高校生……早めに復帰するにも、信頼出来るコネも実績もこのモジュール77には無い……

(何で私はココに通っているんだっけ……)

普通とは程遠い毒親に生まれて、必死耐えて……耐えて……少しでも自分の"幸せ"を掴む為に行動して地道に周りに馬鹿にされても頑張って信頼出来る人も出来たのに……

「切っ掛けさえあれば……」

私は"誰かに期待するのは辞めたのだ"期待すればする程その期間外れに自分が堪えられないからだ。ココに通う前まで唯一の家族以外の"姉"同然のアノ人すら私を助けてもくれなかった……人は裏切る者……信頼出来るのは、自分の力だけ……

 

「三千世界を駆けろ!?鬼風っ!?」

バカみたいな声と共に私の前を凄い風と共に何かが通り過ぎて周りの女子のスカートが捲れ上がるも、風を起こしたソレは自転車置き場に直撃して……大破して、私の足元に自転車の前輪が転がって来る。

「よう。長篠さん。良い朝だな。そして良くも俺の鬼風を!?」爽やかに私に挨拶してからまるで仇を見つけたかのように声を低くして恨みを込めたように言うコイツ

「……流木野よ。私関係ないでしょ!?」

最近、他人に興味のない私が興味を持つ事がある。それは目の前の二枚目半のコイツ…顔はギリギリ及第点。性格でマイナスだから実質プラマイゼロ…名前は、操真闘牙と言う変な名前の一つ歳上のコイツだ。別にコイツに異性のソレを感じるとかでは無い。しかし普通の奴らとは何かが違う雰囲気を何処と無く感じるのだ。

以前、コイツの腹部に膝蹴りを放った感触、あれは……明らかに其処らの男子のソレとはレベルが違っていたしかも目の前で目付きが明らかに人間のソレとは違う物になったのも興味を持った理由の一つだ。

普通の黒い瞳の色から真紅のルビーに匹敵する鋭く真っ赤な目に変わったのは、私の記憶に新しい……

「何だ。人の眼球をじろじろと覗くなんて、きゃっ戸松さんのエッチ!?」

裸体を見られた恥じらう乙女のように自分の両目を隠す闘牙。

「流木野よ!?誰がエッチよ!?」

(落ち着け…流木野サキ。コイツのペースに乗ってはいけない。)

一見、普通に見えるが、コイツ相手だと会話の主導権を取られて…面倒臭くなる。

(私も結構な自分優先の人間だけど、コイツは私以上に自分本位に動いているから、会話していると弱みが出る危険がある。)

他人に弱みは見せてはソコをつけこまれる隙になる。

今日まで大人達に利用され翻弄された私は貝や亀のように必要以外は自分については喋らないように務めている。

 

「……あんたは、深く考えずに青春を謳歌して毎日楽しそうで良いわね。」つい自虐的にそう答える程に…………私はコイツ程自分本位で楽しそうにしている奴を他に知らない……羨ましいを越えてに最早憎憎しい程に…………コイツは自分のままに、心のままに、動いている。

「???お前がガチガチになっているのは、大変だが、人生そんな言い方していると後で辛くなるよ。」

「……っ私の事を知らない奴が偉そうに説教しないで!?」

「…………何に苛立ちを募らせいるのかは知らないが、俺は、お前を普通に見るぞ。」

私は目をカッと見開き目の前の無神経の男の頬を全力で叩く!?

【バシンっ!?】

「大きなお世話よ!?」

人の心の奥に必死に守っている物にドサドサと土足で踏み込んだ男に一撃を入れて私はずかずかと校舎に入って行く。

 

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「…………鬼より鬼みたいな女だな。」

軽く口の中を切ったのか血が流れるも、舌を使い血を掬い舐めて、大破した鬼風だった物を一ヵ所に集めて置いておく。

「あの、」

自転車のパーツを集めていると後ろから声を掛けられて

振り替えると、茶髪ツインテの眼鏡っ子が自転車のベルの部分を俺に手渡して来た。

「櫻井だっけ?犬塚ヘタレ先輩が好きな女子の……」

名前は櫻井アイナ、普通に良い子オーラを出す女の子だ。部活は確か放送部だった筈……

意中の男の名前を呼ばれて顔を赤くなる様子もまた可愛い物だ……

「あのっ!?さっきは流木野さんが」

どうやらさっきの一連の出来事を見ていたらしい

「あははっ気にしてないから心配するなよ。これでも俺もあの女程じゃないが色々な人間を見て来てたからさ。ああいう子は、時間と切っ掛けがあれば普通に接してくれる良い人間だよ……それに俺はわざと避けなかったんだよ。」

気にしてない陽気なオーラを出しながら、徐々に真剣な目になる闘牙。童磨との人の神経を逆たてる役に立たないコミュニケーション術も、たまには使えるんだな。

「それより、桜ってあのボッチと同じクラスか?」

「櫻井です。何で名前をわざと間違えているんですか?ボッチって流木野さんの事ですか?」

「なら少し人が優しい犬塚が好きな桜島に頼んで欲しい事がある。」

「櫻井ですって……頼み事?」

「心配するな。難しいとか変な奴とか嫌な内容じゃない。」

(戦いが始まれば、あの女も目の前のコイツも死ぬ可能性が出るのか……)

「ここ数日で構わないから出来る事なら流木野の奴の近くに居てくれないか?」

「??そんなんで良いんですか?」

首を傾げる様子も可愛い物だ。

「ああいう子には、同性のあんたみたいな奴が必要だ。俺だと、どうしても変な言い方で反抗的にさせてしまう。」

「……私に話し掛けている時みたいにすれば良いのでは?」

「…………冷たいクールな女程、笑顔が素敵で可愛いのは、相場が決まっている。アイツは俺が悲惨な目に会うと絶対腹立つくらい嬉しそうに笑うぞ。断言する。」

「あれっ?何でこの人自分が悲惨な目にあうと嬉しそうなの?それって流木野さんへの陰口?それとも褒めてるの?」

「とにかくここ数日の内に、モジュールに"何か"が起きたならアイツを助けてやれよ。自分一人で何でも出来るとかしなきゃいけないとか考えている人間は、"特殊"な奴を除いて一人も存在しないんだからさ。」

何処から持ってきたビニールシートに『鬼風』だったを覆い隠し

露骨にやる気の無い顔になり校舎の方に歩く……

途中、流木野に軽く余計なお世話と含まれた鋭い視線に睨まれるも、気にする気も起きずに、自分の教室に向かう。

(他人が嫌いで結構。でも人は一人では生きていけない生き物なんだぞ。現実逃避も程々にな。)

 

自分の教室に到着すると、まだ授業前なのか生徒は疎らであった。

「おはよう~」

「おはよう。ノービサン~」

同じクラスの小柄の同級生野火マリエ"先輩"に挨拶する俺。

「相変わらず凄くやる気の無い顔ですな~」

「野火さんがそれ言うのか?」

机に突っ伏して脱力感全開の野火さんにそれを言う。

「今日の予定は?」

俺は聞く。深い意味は意味によってはある……

「水泳の部活動…………見に来る?」

視線をこっちに向ける。

「…………大変魅力的なお誘いですが、多分野火先輩が部活に参加するって事は七海先生が…」

「当然…」脱力感でドヤッ顔をするマリエに、呆れる闘牙。

「あんまりセクハラしているとその内痛い目にあいますよ。」

「闘牙は七海先生を避けているね。普通の男子なら避ける処か砂糖に群がる蟻のように逆に接近しようと考えるのに……男の人が好きなの?其ともスクール水着の先生のあの…」

「おいっ、コラ。本人が聞いてないからって親父臭い言い方辞めろ。後、俺はおなごが好きだよ。」

何て恐ろしい事を想像させているんだ。

「きゃ~~善き計らえ~~(棒)」リラックスした熊やパンダのような顔で言うマリエ。

「悪夢を見させるぞ。後、先生に変なセクハラ紛いの事するな。」

「失敬な、私は必死に抵抗しているが私の意志とは違う私の中の何かが"触れ"と命じているのだ……本当は羨ましい癖に……」

「何処の絶対遵守のギアスだよ。あの人の近くにいると"食べてしまいそうになる"の抑える大変なんですよ。」

(本当は凄く羨ましい……だが教師と生徒の関係をぶち壊すのは、フィクションで充分だよ。)

「おおぉ……君の内なる欲望の炎の獣を解き放つのかい?教育実習生と生徒の禁断の…」

(何で嬉しそうなんだ?この人は…)

「いえ、物理的に食べてしまう危険性があるから避けているんですよ。嫌ですよ。あんな良い教師をスプラッター&グロテスクな目に合わせるの。」

「私の慎ましい身体を見て空気抵抗が少ない奴と言った言葉は絶対に忘れないからね。」

「でもプールの飛び込み台から飛び込むのは得意ですよね。」

「高い所から真下に落下してしている途中で女子達のあの素晴らしい身体を合法的に…」

「少しは感心した俺の心を返してくれ。」

なんつうセクハラマリエだよ。

「ふっ、世の中は戻らない物ばかりさ。時間しかり、

命しかり、タイミングしかり、」

「確かに……」

「……真面目な話、七海先生を異性として見るならどうなの?」

「………………」

「嫌いじゃないですよ……」

自分がもし普通の人間で現代に生まれていたのなら、もっと照れ臭く言うだろうが、人の生き死に沢山見てきた俺は余裕を持って答える。

「ほほぅ。今の言葉を本人に伝えよう……カード○ャプター○くらの主人公の両親も父親は教師。母親は生徒だったからね。」

「辞めて下さい野火さん。教育実習生は、季節と同じでイベント行事と同じなんですよ。何れは咲森学園でお別れ会をして、生徒達には思い出として先生とっては経験として別の高校の教師として先生は行くんですから……」

「なら今の内に沢山揉むか……」

「おいっ話し聞けよ。淫獣。真面目な話しを振ったのソッチだろ。」

彼女は窓の方に視線を向けて言う。

「君は一応、『真暦における文化思想研究ならびに討論部』に所属しているけどさ。」

「男子文化部ですね。霊屋ユウスケ部長の」

通称オタク部。

「どうして、ソコにしたの?私から見ても顔は悪くはないし、身体能力も高いから陸上部とかもイケると思うのに……」

自分を連れてガ○ダムがある場所に向かった時の運動神経の高さを思い出すマリエ。文字通り壁を物理的な走って移動した様子は凄いの一言だ。

「1つ。俺はつい最近まで日の光の下をガチの意味で歩けなかった。2つ。真面目に運動部の部活動をしている奴らの為に辞めた。3つ。霊屋部長のように名前だけでも部活に参加しても良いと言う部活が少なかったから……4つ。この学園に入学したのは、アレがあるとわかっていたからだ。部活動とか青春とかが目的じゃない……」

「…………もったいないね。女の子にモテるのに…」

「昔……ある人間に憧れた事があるんです。耳に花札の日輪の耳飾りを付けて優しくて真面目で余り喋らない人でした。」

「ほぅほぅ……」

「……憧れの余り……その人を模した"腕六本のカラクリ武者"を沢山製作したんですよ。」

「えっ?」

何か不穏な話になって来たな。

「贈り物に彼が普段持っている物を模した物を魂込めて打って作ったのは良いんですけど……良く見比べたら色々とやっぱり似てない所ばかりに目がいって。"滅"の一文字を刻んだまで良かったですけど……やっぱり渡すのが恥ずかしくなってカラクリ武者の一体の中に隠したんですよ。」

「えぇ……渡さなかったの?せっかくの贈り物を……」

「恥ずかしい思い出です。誰にもバレずに願わくは錆びだらけになって朽ち果ててくれれば良い……」

「………………ヘタレ……」

マリエはジト目で鋭い事を言う。ついでにマリエは闘牙の憧れの人物を女性と思っているが、実際は男である事実をマリエは知らない……

「どうしてこんなムダな話しを……」

「…………凄く思い詰めた顔をしていたから……」

俺はそこ迄顔に出ていたのか……

「何があったの?」

「…………この咲森学園……全校生徒は約480人……

その生徒達を、護れるか不安なんですよ。」

「……来るの?」

何がとは聞かないのは優しさか……

「長い永い戦いに巻き込まれるかも知れない……」

「そう悲観的になさんな……自分に出来る事を全力でやれば良い……例えその結果がどんなに悪い物でもさ。」

野火さんは席を立ち闘牙の頭を優しく撫でる。

「っ!?」

誰かに最後に頭を撫でられたのは、何れくらい昔だろうか……

「…………元気出た?」

「はい。凄く……」

「そう。良かった……七海先生には抱き締めて二度と離さない程先生の事は嫌いじゃないって、伝えるね。」

「ついでに二度と罪の無い女性にセクハラしないように恐怖の悪夢をプレゼントしますよ。さぁ遠慮なく……」

「お戯れを……あれら全ては私の意思ではない。この学園の女子のレベルが高いからこの『手』がめ勝手に……」半天狗の顔芸をするマリエは両手をやらしい手付きで、まるで故上弦の肆の半天狗のような弁明をする。

「何て気持ち良く清々しい程の邪悪……これが法に裁けぬ悪か……」

励ましてくれた瞬間通常運転ですもん。このセクハラ先輩。

「うん?」

彼女がスマートフォンからメールが届き視線を向ける。

「どうしましたか?」

心無しかやる気の無い顔にキリリとした目付きに変わったマリエは、静かに言う……

「運動部男子達がグラウンド使用優先権に色々と裏工作をしていたらしい……匿名でタレコミが来た。陸上部のショーコの方にも送ったらしい……」

マリエのメール内容を見ると『RAINBOW』と書かれている。

 

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無限城内部とある名所『半天狗楼』

高さは東京タワー程の高さがある『和』の赴きを持つ塔で、モチーフはジオールの京の都にある法観寺……五重塔である。

何処までなら建てて倒れないか色々としている内に、恐ろしい程長い塔になってしまい。物見櫓の代わりに使われる。

狼牙丸が良く居る場所で……現在その狼牙丸は、

【ドンドン。ドドン。ドンドン。ドドン。ドンドン。ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッド……】

天空まで伸びていると錯覚させる超高層の塔の最上階で、激しく止む事なく鳴るは緑色の嵐と黄金の雷の雨あられ……鳴り響くはジオールの太鼓達、宮太鼓、平太鼓、締太鼓、桶胴太鼓。嵐舞の如くその複数の太鼓を叩くのは、身体から幾つ物の腕を生やした鬼。使われる用途が違う太鼓達の隙間無く鳴らして、己の中に沸々と沸き上がる戦の高揚感を音楽で表現している。季節、湿度気温、その日の天候に左右される繊細な楽器を楽しそうに鳴らす鬼は、激しく太鼓を鳴らす。

「…………珍しいな。お前が太鼓を叩くとは、」

五月蝿く鳴る演奏の中、兪史郎が防音用ヘッドホンを装備して『半天狗楼』に上がって来る。

バリアフリーを考慮して携帯用酸素ボンベと手動エレベーターや手動エスカレーターがある親切設計。……手動

だから人力だ。体力ある人は東京タワーを階段で登れる人が最低レベル。鬼の兪史郎は余裕で手動エレベーター移動が出来る。

来客が来た為に太鼓を鳴らすのを一旦止める狼牙丸。

「…………来るぞ。」

その一言を聞き、兪史郎はゆっくりとため息を吐き

「こんな事なら、ととっとアレを完封なきまで壊していれば良かった…………」

「…………例えマ○ンガーを破壊しても、大国が攻めて国力の差で俺達のジオールは敗戦国で従属国にさせられて、自由を失う。魔女狩りのように、怪しい奴や、国に不満や不穏な事を考えている奴を秘密警察に売る疑心暗鬼のジオールになるだけだ……おちおち好きな漫画やアニメやテレビドラマも見れやしない。」

「珠世様の絵も描けないか……」

「やはり……譲れないなら闘う他ない……」

「どうしてこんな面倒な事に……」

「マギウスとか言う奴らの衰退が理由なのかもな……」

ここ数十年で宇宙進出が瞬く間に発展していったのは、人嫌いの兪史郎も知っている。

狼牙丸なりに考えを言う。

「奴ら、不慮の事故で帰れなくなった宇宙人達で近くに地球があって、肉体が必要だった……人間の情報やら記憶やら食って何とか長く生き永らえていたみたいだが、それも限界だった……」

「数がどんどん減る中で、生きている内に故郷の星に帰る為に、自分達の技術を人間達に渡して俺達の本体がいるダイソンスフィアとか完成させたまでは良かったが、

数がどんどん減る一方で、数年前最後に捕まえて聞いたマギウスがこう言っていた。」

『我らマギウスの最後の希望はヴァルヴレイヴ』

「……最後の希望……」

「国家最大機密同然の秘密をどうやって大国が知り得たのかは、まだわからないが、発想を過大妄想や空想を踏まえると……」

「何だ?言ってみろ。」

見た目は真面目な武術家のような癖に、ただの脳筋ではなく。それ以上に状況変化に適応する能力が強い狼牙丸は、伊達にどんな状況でも人質救出やら要人護衛を始め守りに関して頭の回転が早い。

「ジオールのマ○ンガーを開発する途中でマギウス達を利用し、そのマギウスに逃げられた……そして逃げたマギウスが大国に潜むマギウス達と合流して、マ○ンガーの情報を得た?」

「可能なのか?」

「肉体を持たないエネルギー生命体の一種と言う妄想を前提にするなら、目に見える幽霊に近い。捕まえたマギウス達は人間の身体に入っていた個体が殆どだが、最初から肉体有りの種族なら、人の身体に入る必要が無いからな。」

「…………」

「さっきのはあくまでも推測であり予測だ。これまでの総合を考えてな。ジオールのマ○ンガーの開発者メンバーが偶然大国のマギウスにチクったのが現実的だな。少なくとも今まで表立って動いていないのは、関係者達への準備が時間を掛けたのか……俺達を一網打尽にする策でも用意しているか……」

「やっぱりアレは壊しておけば良かった……」

「今更悔やんでも時間は1秒も戻らん。俺達の自由の為に闘うぞ。」

兪史郎は、これから起きるで在ろう人間同士の戦争に、渋い表情で達観する事に決めた。

 

 

『半天狗楼』……楼と書いてある為、封じ込められている牢屋の役割もあり、

「……」

朱天大将は極悪人の頭蓋骨の盃に乾燥血漿を溶かした物を口に運びながら満開の紅桜が咲く桜の樹の傍で酒盛りの真似ごとをしていた。

「……デカイ戦が始まるな……」

楼に閉じ込めている儂を外に出す程の戦いの音がゆっくりと近づいているのを感じる。

「所詮この世は全て仮初めの物ばかり……肴やツマミを何れは手に入れる機会も近いのぅ……」

人間の肉を食べた事のない炎竜鬼の鬼としての本能が、燃え上がる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

昼休み……何気なく乾燥血漿を混ぜた何時も飲み物で食事を終えて、退屈そうに、しかし監視するように目の前に映る景色を見ていた。

 

哺乳類が持つ歯……それは牙と呼ばれて……地球の生物が食べ物を食べる際に使う代物であり、野生動物が相手の獲物を仕留め喰い千切る時に使う代物だ。

哺乳類の人間だった現、鬼の俺ですら持つ物……犬歯……八重歯を持つ人間はいるが、流石に俺程鋭く尖った牙を持つ奴は、この咲森学園にはガチギレした時の兪史郎を除くと皆無だ。アイツのは良くて八重歯レベル。

視線を教室の先生が座る机に飾られた花瓶の花びらに向けて、闘牙は静かに口を開き、ガッキンっと音を立てて閉じる。

花瓶の花びらの一枚が何かに喰い千切られたように散る。

(普通の人間にはこんな芸当はまず出来ない。)

【鬼闘術 牙刃鬼】

歯を鳴らし牙の斬撃破を放ち長距離の獲物を文字通り喰い千切る技。見た目に似合わず範囲も威力も調整可能で、其処らの金属すら喰い千切れる為、結構重宝している。

(にしても……人間って奴は、たまにわからない事をする生き物だな……)

視線を再びさっきの景色に向ける闘牙。

人間が持つ犬歯は、動物の狩りをする犬歯に比べて当然だが退化している。動物で有りながら退化したのは、獲物を仕留めるのに歯を使う事を辞めたからだ。首の長い生き物であるキリンが、生きる為に首を伸ばし進化したのとは逆だな。

音を立てて……少女の上の歯と下の歯がぶつかった。

俺は視線を向けて人間同士がやっているグラウンド争奪噛み付き決戦を見物していた。

少女は指南ショーコで、対戦相手は、目に見えて勝利への執念を欠片も感じ取れない時縞ハルト。

(……恵まれ過ぎた人間は、ある物を失うのに嫌がる傾向が多いが……俺、時縞ハルトが苦手だな……)

年寄りの戯れ言とは違うが、俺の生まれた戦国の世は、人の命が軽い時代で、有名な名のある城を建てた職人が他の武家に城の構造を教えないようにする為なら一族郎党皆殺しも、その職人達に関わった連中すらも口封じに殺す嫌な時代だった……そんな嫌な時代から今日日まで生きていた分、平和な時代に生まれた人間を羨ましいと感じるし、憎いとすら思う……争い事が嫌いな性格か…人間だった頃の俺もそうだった……鬼が人を襲うのに、人間は生まれた国が違うだけで、争い天下取りに明け暮れて鬼の存在を"伝承の存在"と勝手に決めつけて、危機感を持ってなくて、幾つ物の武家が鬼達によって滅んだか……

……平和主義者が悪とは言わない……現状に満足している証拠だし、多くを求めないお人好しの性格で良く今日まで生きてこられたなと、寧ろ感心する……本当に失う恐怖も知らずに今日まで恵まれ過ぎた人間だよ……時縞ハルト……

 

「争奪戦の勝負の行方はどう?"後輩"」

同じクラスの小柄な少女の同級生のマリエから勝負の進行具合を尋ねられる。

「勝つ気のない少年が、負けないように立ち回るが、結局現状維持に徹し過ぎて動きが鈍い。少女の方は幼なじみの性格を知っているから……少年を両腕を疲れさせて勝負に出るつもりだ。わざと少年の腕を使わせるように噛み付いている。」

「成る程成る程……"後輩"ならどう勝つ?」

「……勝負とは多少の差はあれど、土俵が同じで始めて成り立つ物ですよ。そして戦いは勝負が始まる前の準備で決まる物です……指南が苦手な勝負内容にまず誘導させる事から始めます。」

「戦いの鬼だね……」

敗北が死の時代に生まれた人間故に生き死にの勝利への執着はこのモジュールで一番と自負している炎竜鬼。

「……鬼ですからね……結論を言うと時縞ハルトは幼なじみの異性の手を噛み付く度胸がないで終わります。」

「ヘタレだね……」

「単純に優し過ぎるですよ………その内、本当に大事な物を失うぞ。」

『優しさは力だと』言う言葉があるが、あれは優しさを含めた力と言う意味で有り、結局は最後は勝ちたい意欲がある奴、諦めない奴が勝つ。勝つのを諦めた人間は、負ける……簡単な話だ。

 

「いっ、て━━━━━━!!」

少年 時縞ハルトが、噛み付かれてたまらず叫び声を上げた。

「いえーい!」

少女 指南ショーコが、天に指を振り上げ勝利の声を上げる。

そうこう会話している内に、勝負は勿論指南ショーコの勝利に終わる。グラウンド使用権を獲得を失った男子達へのガッカリ声と獲得した女子達への喜びの声で落差が良く分かる。

「何か……社会の縮図を見た気分です。」

「生徒会や運動部の人達も見ているのに……」

マリエの一言で視線をその人達の方に向ける。

金髪碧眼の連坊小路サトミ……女の子みたいな下の名前だが立派な三年生の男子だ。実務力は高く生徒会は勿論、生徒達に人望があるのは勿論、生徒への信頼も高い

生徒達には立派な生徒会長ではあるが普段は余り見える機会が少ないが実は気が弱い所があるらしく。

「何時も思うけど、何であの生徒会長は尊大に振る舞っているんだろうね。」

どうやらマリエも生徒会長の本質は知っているらしく疑問を口にする。

「…………良いんじゃないか?見栄の一つ二つを張るのも人間の武器の一つだ。」

「実は私には過去の記憶がない!?」ドヤっとして鼻息を吹くマリエ。

「それは見栄じゃないレベルだから……聞いてる人が心配しちゃうレベルだから余り口にしないように……」

「にしても二宮タカヒ先輩。…………良い物持ってますわ……」

やらしい両手で金髪の碧眼の高飛車そうな…実際に高飛車な性格の先輩の身体を見るマリエ。

「いやらしい視線とその手を辞めんか!?」

俺の声とマリエの視線に気付いたのか此方を見上げ見るタカヒ先輩に気付かれる前にマリエは低い身長を利用して闘牙の後ろに隠れる。

「あっ、コラっ」

タカヒ先輩と暫し視線が合うも、改めて先輩の顔を見る

……運動部女子リーダーで0Gバレエ部所属2年連続で"ミス咲森"に選ばれたのは伊達ではない金髪縦ロールの美人な先輩だ。常に他人を見下す口調が基本の高飛車でお嬢様な性格の為か生徒会のメンバーとの評判は良くないが、運動部女子のリーダーの為か生徒会と関わるのが多い。取り巻きの二人と一緒にいる。

「やっぱりこの学園の女子のレベルは高いよね。」

後ろでマリエが何か言っているが、気にする物じゃない……こうしてこの学園を日が出てる時間に通うと分かる…後ろのマリエはガ○ダムのテストパイロットで、あの尊大なフリをして本質が気が弱い生徒会長も、時縞ハルトも指南ショーコもボッチも、ヘタレ先輩もサンダも

櫻井アイナも、今俺がいる方に視線を向けている二宮先輩も全員"ガ○ダム"に乗る可能性がある20人の人達の一部なんだよな……

あの機体のギミック的に乗る人間は絶対にあの変な質問ボタンのYESを押して首に針を入れられて"何か"を体内に入れられる……480人の普通の人達より明らかに高い身体能力と習熟能力の高さ……間違いなく、ロボットアニメの強化兵士の類い……遺伝子調整……あるいは、各学校に必ずある健康診断やら定期予防接種以前……産まれるより前の段階で"何か"されている可能性が高い……そしてここの生徒達は、それを知らない……

ガ○ダムを造るから生徒達の身体を弄ったのか…………もし産まれる前に"何か"するなら、母胎……母親と父親もこの妙な国家最大機密計画に巻き込まれた可能性もある。

「悲しいね……」

俺は自分は無実を視線で訴えると信じてくれたのか、先輩は取り巻きの二人を連れて移動していった。

「ふぅ、危ない危ない……」

マリエの頭にハリセンで叩くのは、当然の帰結。

 

「ぶいっ! あはははははは!」

上機嫌で指南はVサインをハルトに突き付ける。

しかめっ面のハルトは今回の勝負内容を嫌な気持ちぼやく。

「……だから僕はイヤだって言ったのに……」

ババ抜きやサイコロ果てはジャンケンすら負けまくり勝負事に絶望的に弱い為、賭ける時は反対側に危険なく全部賭けても勝てる安全仕様だ。

「仕方ないだろ、ジャンケンに負けたんだから」

不満をぼやくハルトの肩を叩くのは、櫻井アイナに告白しないヘタレ先輩事、犬塚先輩。ハルトと犬塚先輩は親しい関係でたまに兄弟にも見える。

「代表決めのジャンケンで負け、勝負内容を決めるジャンケンに負け、勝負自体にも余裕でそらっ完璧に負け…………相変わらず惚れ惚れする程の負けっぷりだな」

 

 

「後輩。ハルトの勝負事の弱さは?」

「……全ては因果の中に……覇王の卵……真紅のベヘリットを使い5人目の守護天使に転生する為のお布施かな……」

「……それ途中でハルトは1年間拷問されて舌も切られて…包帯だらけの痩せた芋虫同然になるって事?」

「その頃には、指南への愛も失って人間達への復讐に燃えてそうだな……」

「まさにベ○セルク……」

窓からマリエと漫画談義をしながら二人の様子を見る。

 

 

「そもそも勝負方法がおかしいんですよ……先に噛みついた方が勝ちって、女の子相手にそんな事出来る訳ないじゃないですか……」

「何負けた後でぐちぐち言ってるの。男らしくないわよ」

 

「俺もそう思う。」

「闘牙ってハルトに厳しいね?何で?」

二人仲良くクラスの窓から下の様子見る中で聞く。

「……俺もあんな心優しい奴になりたかった…………」

羨望……人間は手に入らない物程欲する生き物だ。目に見えた物である物は勿論、曖昧な形無き物すら人は渇望する。お金、名、権力、海賊のあの漫画すら富、名声、力を求め一繋ぎの大秘宝を求めた……そして幸せ、平和、知識、愛、夢、希望、才能、皆、醜く浅ましく欲望の炎を煩悩の炎を絶えずに燃やしている。

 

「…………後輩は充分、心優しいよ……」

「……先輩は"本当の俺"を知らないから普通に接する事が出来るんです。……先輩が想像する以上に醜い物、汚い物、地獄を見て生きたせいで、皆と同じで普通に過ごす事すら今の俺には出来ない……」

「本当の俺?」

「……言えば、皆俺から離れて行く……現実を逃げ続ければ、今が嘘になってくれるなんて思った事もある……」

闘牙の脳裏には、無限城に迷い込んでしまい俺の姿を見て怯えていた赤い髪の少女を思い出す。

突然、見知らぬ場所で、過去に恐ろしい目にあって人その物に恐怖を覚えた彼女のあの恐怖に染まった顔が、忘れられない…鬼である姿を見たら、皆あの少女にみたいに恐怖の顔になるのは、分かりきっている。

「………………」

「でも逃げたって今は嘘なんかにならない。」

「それでも……俺は…俺達は………生きなきゃいけない……」

「本当はココから逃げたいの?」

「…………俺は何処でも部外者で居場所なんてない…………だから自分で自分の居場所くらい作りたいし、守りたい……っと最近思うようになってきた……」

「……闘牙…」

「先輩に見せた普通とは違うこのモジュールの闇をココの奴らが知った時、アイツらは何を考えて何を決めるか……それが今は一番心配なんですよ……」

 

噛みつかれた左の手首を恨めしそうに撫でながら、ぼそぼそと文句を言い続けるハルトをからかうように、ショーコがハルトに笑顔で近づきその笑顔に頬を赤くして胸をどきりと高鳴らせるも、それを笑顔を向ける幼なじみに気付かれたくなくて、ハルトは精一杯の軽口を叩く。

「いつもこんな勝負でグラウンドを取り合ってるの?はしたないよ、ショーコ。」

「そ、そんな訳ないでしょ!ハルトが相手だから、負けても言い訳のきく勝負にしてあげたんじゃない。感謝してよね。」

耳元で幼なじみの小さな声と共に吐息のせいで顔を余計に赤くするハルトを見て。

 

「リア充は嫌いだって思う事は悪かな?先輩。」

「ショーコに負けない女子と付き合ってみたら?」

「俺のような変わり物を好きになる人間は絶対居ませんよ。賭けても良い。」

「大丈夫。世界に一人くらいはいる筈よ。希望は捨てちゃいけない。望みはある。世界くらい相手にするレベルで……」

「もう90代のおばあちゃんでも良いよ。」

「それはもう介護。」

 

「でもちょっと強く噛みすぎたね……ごめんねハルト」

左の手首には幼なじみの歯形がくっきりと残っており、内出血の痕は暫らく消えそうにない。

「ああ、いや、それは、大丈夫」

そしてまんざらでもない笑顔で幼なじみに気弱な笑顔を向ける光景を見て……

「「ちょっと怖い……」」

二人は身も蓋もない感想を口にするのだ。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

生徒会立ち入り禁止の教室へ。

暗い暗い影の世界にキーボードが幾つも打つ音が成り響く。

「……」

スナック菓子を片手で摘まみ口に運びながら私はネットの世界を悠々自適に過ごしている。ここが自分のいるべき場所。自分の居場所……人間の友達なんていらず邪魔する奴も人を馬鹿にする嫌な奴もいないクリーンでジャスティスな私の世界……

今日もモジュールの監視カメラを操作して外の様子を…

「???」

小さくて見慣れない物が空を飛び監視カメラに映り、通り過ぎる。

付近の監視カメラを操作しながら通り過ぎたソレを何なのか見ようとするが、動きが速いのか見切れてしまう。

「っ!?」

……何だか凄く負けた気分になり……複数の監視カメラを更にハッキングして不埒な怪しい未確認飛行物体の正体を突き止めようと少女は凄くどうでも良い事に全力を出す。自慢じゃないが、私はこの学園の日常については大体詳しい……どのクラスとどのクラスの誰々が何の話をしていたのか、それらの全ては私に筒抜けだ。だから目の前の監視カメラを異をかさずに飛ぶソレは、私のまだ知らない情報で、暇を持て余す私の興味を持たせるのに充分だった。

見慣れないソレは、華麗にカメラから見切れて何処かを目指している。

ならば、目指している場所を先に見つければ、ソヤツの正体が分かると私はハッキングで未確認飛行物体の目的地のルートを探す。未確認飛行物体は生徒達が気付くより早く移動して少しずつ生徒が少ない方に向かっている……そしてソヤツは、生徒会の立ち入り禁止エリアに悠々自適に飛行して行き……

「へっ?」

空を飛ぶソヤツは、自分がいる場所に真っ直ぐ向かっている事に気付いたアキラは慌てて後ろの小さな出入り口の方を見ると、飛行音と共にソレは私のクリーンなジャスティスな世界に無断に侵入して行った。

「!?」

歪な金属のソヤツは蝙蝠を連想した姿をしており私の前に小さなダンボール箱を置き。私はビックリするも、蝙蝠のように逆さまになりそのまま両目を閉じる。私はゆっくりと逆さまで目を閉じているソヤツをまじまじと見る。

クラッキングやハッキングは得意な物のこういう珍しい

存在は生まれて始めて見た。

左右非対称のバランスの悪さに関わらず此処まで飛行して来たのだから、飛行その物に支障は無いらしい………

金属でも武骨や無機質なイメージではなく寧ろ左右非対称の歪な癖に高価な芸術品のように、細かく造り込まれている。

「綺麗……」

右手君改めて『飛燕』正式名称は『飛之燕魔(ひのえんま)』光学迷彩を使って策敵能力と偵察能力を持ち通話機能や遠距離銃やらハッキングツールにもなる炎竜鬼が兪史郎と何時もいる茶茶丸をベースに開発した多目的ロボット。普通の機械以外に血鬼術等も使用している代物で、使い魔の蝙蝠の姿に変形する機能を使い移動する。

 

予め肉眼では捕捉不可能な『RAINBOW』が使用するネット回線を狼牙丸の目玉の能力を使い"見て"そこの大元を辿るように動いた飛燕はダンボールハウスの小さな出入り口に侵入して主からのプレゼントが入った小さなダンボール箱を目の前の人物の前に置く。

「…………」

目の前の人物は飛燕の姿に驚くも、興味津々な様子で飛燕の外見をじっくりと見続ける。

【パチリ】

飛燕の目が開き、目の前の人物と視線が合う物も、片翼を器用に動かして、ダンボール箱を指差す。

人物は視線をダンボール箱に移すと箱には1枚のメモが書いてある。

【咲森学園の裏番RAINBOW様。貴方に届け物です。中身には不快な物も危険な物もありません。】

「裏番?アホくさ。」

小さい頃にされた苛めのパターンの変化球か……私はダンボール箱に入っている怪しい物への興味を無くし目の前のソヤツに視線を戻す。

目の前でソヤツ蝙蝠から変形して右手の形に変形する。

「っ!?」

素直にビビる私を無視して独りで指を蜘蛛みたいにあるいはゴキブリのようにシャカシャカ動かして私のクリーンでジャスティスな世界を移動して、ダンボール箱の2枚目のメモを私に見せる。

【突然過ぎてすいません。俺の名前は炎竜鬼……目の前の飛燕を開発した存在で、貴方にハッキングで連敗されまくった男です。】

「炎竜…鬼……飛燕」

視線を動く金属の右手に向けると、Vサインしてから、狐の手芸をして、狐のように【コーーン】と音を鳴らす。

右手は、三枚目のメモをダンボール箱から剥がして私に見せる。

【その飛燕は良い子です。飛燕のスペック説明は3時間は余裕で越えるので、本題に移らせて頂きますね。】

そして右手は4枚目のメモを私に手渡して

【箱を開け…】

とシンプルに書いてあるだけだった。

飛燕は面倒臭いのか私のクッションにダイブしてクッションの心地を心行くまで勝手にゴロゴロと堪能している。

「………………」

顔も名前も知らない奴に色々と言われるのは、シャクだが、暇を持て余しているのは、事実だ。

私はダンボール箱をしぶしぶ開く。

中には通信機器と見たことの無い機械が一つ。そして手紙と取り扱い説明書だ。手紙にはこう書かれている。

【1連絡用通信機器。2遠隔操作タイプ超小型空撮用無人飛行機3その飛行機の取り扱い説明書4鬼の映像記録が集まったUSBメモリこれを見たら後戻りは出来ないから見るな(怒)…………その機械なら監視カメラの無い場所も飛燕のように移動しながら見えますよ。好きに使って下さい。貴方へのささやかな贈り物です。……本題は、協力関係……】

「協力関係…」

ポッキー菓子を口に咥え頬張りながら続きを読む。

【近々、ジオールに大国が攻め込んで戦争が始まる可能性が極めて高いです。当然ジオールの所有であるこのモジュール77も狙われます。兪史郎達の予想だと攻め来るのは、十中八九ドルシア軍事盟約連邦……】

極めて内容はキナ臭い内容の手紙だ。危ない思想の奴の手紙と言っても言い。

……だが遊びやふざけでこんな手の込んだ事をするだろうか……私はゆっくりと視線を下に向けてクッションにゴロゴロと寝転がる飛燕とやらを見る。

【此方も色々と準備をしているも、個人じゃ限界があるかと言って国会議事堂に電話する馬鹿な事はしない。もし炎竜鬼の話を信じてくれるなら同封された連絡用通信機に連絡を入れて欲しい……信じてくれなくても自分の身を守る為なら、出来る限り安全な場所にいて欲しい…協力関係をするには、お互いに名前しか知らない間柄だ。だが危険が確実に迫っているんだ。……俺を信じてくれなくても構わないから、出来る限りの備えていろ………ドルシアの連中は俺が追い出す……】

「………………戦争…………」

手紙に伝わる真摯に危険を知らせる内容。筆跡から見て恐らく男。私は飛燕に視線を向けると飛燕は突然起き上がり、私の世界から出ていった……何かがこのモジュールで起きようとしている。

でも……今の私に何が出来る……

無言で連絡用通信機をじっと見るも、私はソレの電源を使う事なく自分のPCに向き合う。向き合う直前、箱の底にも一枚のメモ用紙が貼ってあり……

「……」

メモ用紙を引き剥がし内容を見ると

【俺がどういう"人間"か人となりや内面が知りたいなら災いと地獄のUSBメモリを見ろ……そこに映ったのは、全て実際にあった映像だ……俺の全てが其処に映っている。文字通り……マル秘映像だよ。】

「……」

そのメモ用紙を見た瞬間、無意識に悪寒が身体に走り、只のダンボール箱が恐ろしく禍々しい物に見えるようになった

そして……私はそのUSBメモリに興味を持ってしまった……まるで悪魔の誘惑に引き寄せられるみたいに……

(災い……地獄……俺の全て……)

どんな映像が映っているのか……地獄の日々を体験したアキラは興味を持つ……

(パンドラの箱……)

この世の全ての厄災と絶望が詰まった箱……地獄への扉が其処にある。

その誘惑に抗う程、アキラは忍耐強くはなかった………

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「ドルシアとARUSとの二国のパワーバランスで決まっている訳だ……この両国の特徴は他国籍環状枠が拡大したという事だな……」

昼休みが終わり睡魔が忍び寄る午後の授業をしながら闘牙はどう動くべきか最終確認する。

【がたん、】

有事に備えてジオールのガ○ダムがある場所に、人知れず待機しているのが正解だろう。だが白衣の研究者達と警備の軍人達を毎回眠らすのが、正直言ってメンドい……だが"何か"が起きてから動くのでは遅い……やはり、出来るだけあの地下にいた方が……

「ぶっふぅ!?」

(鬼が真面目に考えているのに……オノレは!?)

凄い眼力で授業の最中突然吹き出した少年……ハルトを睨む闘牙。

大方、あのヘタレ先輩から幼なじみに関するタイムリーなメール内容を貰って吹き出したんだろ。

俺のスマートフォンのワイヤードからメールが届く。

相手は【野火マリエ~】からだ

《ハルトがショーコの口元ばかり見ていたら、突然吹き出したけどどうしたの?》

あのガ○ダムの探索の時にメールアドレスを交換したのだ。

《罪深い行いをしていたら咎められたとかそんなんでしょ……》

実は闘牙の予想はそんなに外れていない。

ハルトは先の噛み付き勝負で気になる幼なじみ唇が、自分の手首を噛んでいるから思春期特有の奴で、自分の唇を幼なじみの歯形に寄せようとしていたら、犬塚先輩からのメールで中断されたと言う聞く人によっては気持ち悪い事をしようとしていたのは、本人以外知らない。

ハルトの吹き出しでクラスの集中力が切れたのか教師はクラスの時計を見上げてぱんと教科書を閉じる。

「少し早いけど、今日はこの辺にするか。残りの時間は自習。次のテストに向けて、何の教科でもいいから勉強してろ。騒ぐなよ。」

ざわざわと騒ぐクラス。俺も賭博黙示録カ○ジの主人公の顔真似をしながら口でざわざわざわざわと言う。

(後輩が人生一発大逆転するかしないかの切羽詰まった顔をしている。)

(噂の裏番の『RAINBOW』からの連絡は来ない……やはりアプローチをモットへりくだった内容にすれば良かった……)

 

 

《おいハルト、オマエさ、ショーコに告白しねーの?》

先程の犬塚のメール内容と噛み付き勝負の事もあり、ハルトはショーコの気になってチラチラと視線を向けている。そこへ再びキューマからのメッセージがワイヤードに届いた。

《誰かにとられてから泣いても、遅いならな》

その内容にハルトの胸の奥で危機感のような音がきゅう、と鳴く。

(とられる、なんて……)

ある訳がない……とは確信を持っても言えない。いつか自分じゃない誰かが本当にショーコに告白してショーコが応じる日が来ても、全然おかしくない。もしそうなった時、自分は素直に祝福出来るのか?素直に諦められるのか?それとも未練がましく二人の仲を引き裂くように動くのか?

「ねえ」

「うわっ!?な、何してるんだよ、ショーコ……」

突然間近から聞こえた知ってる声に驚いて顔を向けると、ショーコがいつの間にか、こっそり床を這ってハルトの近くに接近していた。

「さっきからこっち見てたじゃない。何かある」

机の陰から顔だけを出し、ジト目で問い詰めてくる。慌ててスマートフォンを隠そうとすると、それを悟った手がスマートフォンを狙ってきた。

「見せて」

「何もない、ないから……」

スマートフォンの争奪戦が白熱する横で闘牙は、コード○アスの追い詰めらたルルーシュの顔真似をしながら思考する

(くっ、やはり生徒会長を始め生徒会にアプローチを掛けてそれから運動部の男女のリーダーと段階を踏むべきだったか!?だが教師が普通の教師じゃない可能性が充分にある!?特に連坊小治サトミ生徒会長は、気弱な本質の為に必ず大人に判断を委ねる傾向が強い……)

鋭いルルーシュの似た視線を寝ているであろう教師に向ける。

(後輩がブリタニアをぶち壊してやる反逆の皇子みたいな顔をして教師を鋭く睨んでいる。そしてアドリブで予定が狂って混乱しているようにも……っとショーコったらしょうがないな。)

親友が必死に幼なじみのスマートフォンを奪い取ろうと動いているからマリエも親友に加勢する事にする。

必死にショーコの手から逃れようと、右手を後方へ反らすハルト。

(チャンス。)

その手の中のスマートフォンをハルトの後ろの席のマリエがするりと奪い撮った。

「あ!ちょっと……」

「敵は前以外もいる…パス」

意味深な言葉を口に出してスマートフォンを親友に向かって投擲する。

「ナイス」

ハルトが後ろを振り向いた時には既に、スマートフォンは流れるような連携でショーコの手の中へ。ハルトが後ろにいる同級生を見ると無表情でVサインをするマリエの姿だった。高校生とは思えないほど幼い外見のマリエは、しごく真面目な無表情な顔で積極的に悪ふざけに参加するので性質が悪い。

「日記の内容には変化は必要……大人しく私の楽しい思い出となれ……フハハハ……」

無表情で変な事を言っているのは腹が立つけど今は、それよりも、ショーコに渡ったスマートフォンだ。

「かっ、返せ!返さなかったら絶交だからな!」

小学生か、あっコイツ高2だったわ……っと呆れたようなマリエの声を聞きながら、ショーコは人質のようにスマートフォンを掲げ、真正面からハルトを見つめる。

「じゃあ答えてよ。どうしてこっち見てたの?」

「そ……それは……」

真面目に詰め寄るショーコ。ハルトはついついショーコの唇を凝視してしまい、先程の自らの行いを思い出させる。それにショーコから良い香りもして来てハルトは心拍数が上昇して無言で頬を赤く染めて行く。

「何?急に赤くなって?どうしたの?」

「ドキドキドキドキドキドキドキドキ」

「……何で先輩が口でドキドキ言っているんですか?」

「後輩。ドキドキと言っておくと何か胸が高まる感覚を覚えないか?私は女性のスンバラシ~~」

「それは只の興奮ですよ。鼻の穴から鼻息をフンスし過ぎです。」

「所で後輩……何でジョ○ョの奇妙な冒険ダイ○モンドは砕けないのキャラクターの顔になっているか教えてくれ……」

「それはそっと流してくれ……」

 

「黙っていれば、かわいいのにな、って」

ハルトはショーコの前で何も考えずに口に出す。だがその一言でショーコの目はきょとんとして目が丸くなり顔がだんだん赤く染まっていく。

「な……なななな」

 

「後輩?ニセコ○で好きな女性キャラは誰?私は万里花のお母さんと宮元るり……」

「あっ、すいません。先輩。俺ラブコメ系統は基本読まないんですよ。…………あれ?今、誰かのお母さんって言った?」

「シンパシーを感じているのだよ。大丈夫……君もラブコメの本の魔力に取り憑かれてしまうから、ショーコは小野寺のお母さんが好きらしい。」

「……何でヒロインじゃなくてヒロインの母親?ヒロインは?」

「何か戦わずに負けるオーラが全身から溢れていた幼なじみキャラだったらしいよ……後主人公がムカつく……小野寺の妹を道化にして……」

声に怒りを混ぜた会話をする。

「うわぁ……うわぁ……そんな泥沼のラブコメ漫画は観たくないわ。うわぁ……」ドン引きする闘牙。

「大丈夫。君も私と同じ女の子のパラダイスを知るが良い……全巻貸すから見てちょ。心配するな……此処じゃ深く言えないが良い本が揃っているから」

「えぇ……何か怖い……」セクハラ先輩が言う良い本って多分ちょっと………王道から過激になったラブコメの可能性が高い……

「気にならない……男の子でしょ。」

「…………………………」

(興味がある……だがそれは俺の本能……欲望の炎を余計に燃やす油だ……今は優先すべきは)

「遠慮させて頂きます……」

「…………そんな血の涙を流しながら言わなくても……ちゃんととっておくからさ……」

「この闘牙に流す涙は一滴すら身体にはないから血が涙の代わりなんです。」

(マリエ先輩のせいで話の腰を折れたが大国と戦う時には、いざというときには禁じ手の姿になる必要もある……あの日本神話やインド神話に出るとされる"神の姿"に近い姿……神鬼龍魔皇天(じんきりゅうまおうてん)を姿に……)

脳裏に過る一番、自分と本質との相性は良くないが本気となった自分の姿が浮かぶ。

(……鬼は鬼にであらなくてならない……)

数百年の間の自分の欲望の本質を全て"削いだ"あの姿は嫌いだ。

一方では

「いや、あくまで黙っていたらだから!限定って言うか……」

「ダメなの!?喋ったら!?」

「いや、ダメじゃない、けど」

「じゃあ……喋ってても、か、かわいい?」

「そ……それは、その……」

エスカレートしていく二人のやり取りは、既に教室中の注目の的になっている……そう、教室中の。

「お二人さん」

時間切れをさす言葉を口にしてショーコとハルトのやり取りに割って入るマリエ。

目を向ける。反対側を指差すマリエ。その指先を辿って首を回す。そこには、仁王立ちで二人を見下ろす、騒ぎによって眠りから覚めた教師がいた。凍り付く二人を、両手の上に顎を載せたマリエが冷めた目で見つめている。

「……青春だねぇ」

もちろん、その言葉は教師に叱られる二人には届いていなかった。

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咲森学園の寮に宅配便が大量に届く。

「ありがとうございます。」

応対するのは、山本藤介改めて……兪史郎だ。日の光が完全に遮断する遮光カーテンやら色々と対策をしている自分の部屋の前で届け物のダンボールを業者の人達と一緒に部屋の中に入れる。

(ギリギリ間に合ったか……)

大国との大きな戦争になった場合に不足すると困る物を事前に大量に購入したのだ。

……骸野捨麿曰く……ジオールは先守防衛だが単純に軍事力がない為、無条件降伏の可能性も高く……そうなった場合は、貨幣価値が無くなる……可能性も高くなる…

今の内に使える物……雑貨の品やら医薬品や避難生活用の保存食とか……だが兪史郎は疑問に思う。

(人間の食べ物をこんなに買う必要はあるのか?)

購入する物は、評定で連日して吟味の吟味をして決めた物だが、闘牙は人間の食べ物も"嗜好品"扱いで大量購入するようにお願いしていたのだ。……鬼である自分らには無用の物なのだが……

(咲森学園の生徒や教師の連中の為か?或いは…………)

兪史郎は闘牙の肉体に起きた現象に考える……あのロボットのギミックを受けてからアイツの肉体は変化した…日の光に耐性が生まれて肉体が燃えて灰にならなくなったように……あの馬鹿は現在、俺と同じく血で栄養補給は出来ているが……もしかしたら……

(だとしたらやはりあのロボットの内部にあったギミックの成分はなんだ?)

鬼の肉体すら変化させる謎の異物……あれからバカは経過観察記録を作っているのも、いつでも肉体に謎の拒否反応や現象が起きても良いように考えているからだろう。

「……」

やはりバカも言っていたがあのロボットが謎だ……本当に人間が作った物なのか?大昔の地球に来た宇宙人か今の文明より優れていた地球の先人類達が作った方がまだ納得する。それだけ……おかしいロボットだ。

兪史郎は嵐の前の静けさをひしひしと感じていた。

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異空間 無限城

幾つ物の色とりどりの鳥居が並ぶ神社『童磨神社』

狐の面をつけた九荷は自分の監視カメラに映る景色を静かに見ていた。

モジュール77内には、当然だが治安安全の為に其処らかしこに監視カメラが存在する。だが監視カメラの大半は『RAINBOW』に支配されている。……だが市販用の監視カメラを気付かせないように配置させて、外敵が何処から来ても良いように、見張っていた。

「……」

「首尾はどうだ?九荷。」

白怒火が背後から着地して九荷は振り向かずに、ハンドサインのジェスチャーで応じる。

九荷は基本喋らない……古参の狼牙丸や捨麿ですら、喋らせようとしたが、駄目だった個体だ……

しかし、口は喋らないが仲間への想いは強い……縁の下の力持ちの印象を受ける。

そして……数百年前は筆談で会話していたが、現在はスマートフォンのメール機能を使い会話する。

「……っ!?」

「どうした?お前がそんな反応をするなんて……」

白怒火は珍しく動揺する九荷を見て九荷は視線を一つの監視カメラに向ける。宇宙港のドックに仕掛けた監視カメラの映像だ。

 

 

 

 

 

学生として、そして初モジュールへの移動をする為に地球を離れたのは、兪史郎と共に約2年前。皮膚の特殊な病気持ちを理由に朝日が出る時間には外出せず必要最低限の出席日数を稼いでいた闘牙は、宇宙港は勿論、地球からモジュールに向かうシャトルすら新鮮な気持ちであった。子どもが新しい物に喜びはしゃぐと同じで、モジュール77の一部を除き全てが楽しい物と勝手に思って

無重力を必死に泳いでいたのは、懐かしい思い出だ。

……勝手に思っていた分、直ぐに違和感に気付く。モジュールに来ると必ず出迎える存在の入国管理官……一見普通に見えた彼ら彼女らの佇まい。普通の咲森学園の生徒は気付く事はなかったが……指と手にある拳銃を長く使った人間に出来るタコ。服の胸元が小さく膨らむ拳銃を入れるポケット。

そして……笑顔に隠れた学生達を見る目……普通の奴らには、普通の目に見えるだろうが、あれは監視する目、

最初に楽しいと思った気持ちは一気に萎えて、国の隠していたヤバい場所に来た感覚を覚えた。

最初のこの時点で兪史郎と俺の孤独な戦いは始まっていた。覚悟はしても慣れない物だ。人の視線には"俺達"は敏感なのもあった。小さな違和感が一つ見つければ後はそれに似た物を探せば良い……街に出れば面白いくらいに大人の人がいて……皆普通の仕事のフリをしていた人間と気付くのに時間はそんなに掛からなかった。

やっぱり本職や本業の人達と違いを良く見ていれば、違和感が生まれる……仕事意識と言った物ですらね。

軍人なのに花屋の店員のフリをするならやっぱり本家の花屋に比べて店の商品の花に対する気持ちと言った物も違う。咲森学園の480人と教育実習生の七海リオン先生以外は全部偽物……全部紛い物……それがモジュール77の実態だ。

七海リオン先生と会話するとわかる……この人も生徒達と同じく何も知らない"普通に本物の教育実習生だって"

だから意外かも知れないが、先生との会話は楽しい……隠す物が無い天然もあるかも知れないが、息が詰まりそうな時には、結構助かっている。

 

だからこそ偽物ばかりの質の悪い模造品の街にモジュール77に来た咲森学園の"5人の転入生"の目付きを見て白怒火と九荷は確信する。

(コイツらは"知っている"このモジュールに隠しているあの機体に……)

警戒心を最大限に上げて白怒火は本体を含めた仲間らに報告する。

九荷も札を用意して無限城内部に無数の式神の札が飛ばす。

【サイド7にジオン来る】っと

 

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数分前

そのモジュール77宇宙港のドックへ、一機のシャトルが接舷した。

入港目的は咲森学園への転入生二人の送致となっている。シャトルのハッチにタラップが接続され、モジュール77の入国管理官が二人、転入生を迎える為にその中を進む。

「珍しくです、転入生なんて」

「そうだな……訳ありか、それともよほど適性の高い生徒でも見つかったのか……おっと」

二人のこの一連の発言で既にこの咲森学園は予め謎の適性を持つ人間を基本とした生徒が入学すると決まっていて、一部の例外を除くと全て訳ありの人間しかいないと言っているような物………

やがてハッチが開くと、管理官は聞かれては不味いとばかりに口をつぐみ、シャトルから出てくる学生服の少年達に歓迎の笑顔を作って向けた。

……ここに来る学生達は自分達の秘密も正体なぞ知らない警戒心も無く素直な普通の何処にでもいる少年少女ばかりと思った事を勝手に決めて………………………

その判断をした時点で相手を甘く見てナメていた。

「ようこそ、ジオールモジュール77へ。本日のモジュールは天候も良く……」

その言葉が、疑問に止まる。

「あれっ?転入生は二人って……」

シャトルから現れた学生服の少年は全部で五人。伝達事項と違う。

「えっ?」

管理官達の混乱を気にかけた様子もなく、学生服の少年達は無重力の中を泳いでくる。そして、タラップ内部に赤い鮮血が飛び散った。

五人の少年達の先頭にいる。恐ろしく冷たい刃のような目をした銀髪の少年。

その少年が袖口に隠していたナイフで切り裂いた、管理官の首から噴き出した血だった。

タラップさん内に浮かんだ二つの死体の間を、銀髪の少年と仲間達は顔色一つ変えずに通り過ぎる。

「つくづく平和ボケした国だな…ジオールって国は……」

余りの警備体制の無さに髪を逆立てた軽薄そうなムードメーカーの少年は口から中立国の在り方に呆れた言葉を口にする。冷たい少年は管理官が持っていたタブレットを払いのけて前へ進みそのタブレットは三つ編みの髪型をした少年が何気なく受け取り、映っていた"二人の学生写真"を見て軽く笑みを浮かべる。

タブレットには自分達のチームの冷たい少年と『杉山ジロウ』と言う偽の名前で載っていた黄色いヘアバンドに赤い髪の少年が映っていた。

目指すは只一つヴァルヴレイヴ……

 

教室にて

「どうしたの?闘牙……凄く顔色が悪いよ……」

「遂に……来てしまったか……」

(あの銀髪ショートのファイティングコンピューターのウォーズマン……ありゃ……滅茶苦茶冗談言わない真面目人間だ……)

【俺と契約してドルシアを裏切ってくれないかな】

(これは滅茶苦茶、難易度高いぞ……)

尋問もせずに感情も躊躇も無く相手の命を奪うその姿に……咲森学園の生徒達とは完全に育ちが違う奴と分裂体の目から相手を見る。

(さようなら……平和な学園生活……)

自転車に乗り朝に感じた素晴らしい朝はもうこないと闘牙は悟る。

 

 

 

 

何処かのクラスの誰かが誰かにワイヤードでメールをする勿論、教師の目を盗んでだ。

《試験の範囲教えて?》

《それ出来てまだ三年の学校だしね……》

《地球に戻るのも億劫だし……》

《この学校"キレイ"じゃん》

《ワイヤードのブログ登録ってさ》

《伝説の祠の話って聞いた?》

《知っている……絶対に両想いになれるって……》

体育館では一年生達が授業していた。男子はバスケ女子はバレー。闘牙と朝話していた櫻井アイナも授業に出ていて、闘牙に平手打ちをかました流木野サキは近寄り難い雰囲気を全身から出しながら体調がすぐれないのを理由に見学をしていた。

「……」

(どうして私はここにいるんだっけ……)

場面は変わり

闘牙が所属するオタク部の部長の霊屋は教師の目を盗んで学園の掲示板に情報を刺激的な流していた。

《それより聞いたか?ドルシア連邦が領海侵犯だって…》

《どうせ、こっちがお金払ってすますんだろ?》

《えぇ~~またかよ!?あぁ~~情けない……》

更に場面は変わり

咲森学園の外で堂々と授業をサボっている不良達の中に

山田ライゾウ……サンダーもいた。黄色いリーゼント頭が特徴で幽霊部員だが実は茶道部に所属している彼は空を仰ぎ見る。

「………」

(ここは俺の本当にいたい場所なのか?)

慕ってくれるダチもいるし楽しい事もある。なのに自分は何故か現状がもどかしくて不満だ。

只空を眺めていた山田は、何かの憤りを心に募らせていた。

 

テントの隣のダンボールハウスでは……

PC画面に映る映像は炎だ……真っ赤な燃える炎の波が、

空気も大地も木々も、そこにある兵器を全て燃やし尽くしてしまう。

「……………………」

ワイヤードのネットワークを片隅に、ハウスの主は、

今日突如自分の前に贈られた荷物にあったUSBメモリに映る映像……"鬼"についての映像を両の目を見開きながら見ていた。その表情は驚愕の一言のみ……

 

《良いんじゃない。軍隊持つよりは安上がりでしょ。》

《そういう事言っているからこの国は駄目なんだよ。》

 

 

流れるメール内容をどうでもするような、まさに"毒"を

意味する内容……映像に映る人物は仮面で隠れて良くわからないが、明らかに人間とは違う生物……マギウスと呼ばれる奴らとの十数年における闘いの映像だ。

マギウス達はスプライサーやバッフェと言う軍用兵器を使うも、赤い炎の竜の鬼は、アニメや漫画のように真紅の熱光線を縦横無尽に雨のように放ちその全てを完膚なきに蹂躙する……映像は全て日が完全に沈んだ夜……その圧倒的な身体能力と熱を使った能力で全て蹴散らせて、マギウスと呼ばれる奴は死んでいく。

(私は……一体…………何を見ているの……)

軽はずみだった……抗えない興味もあった……自分と似た境遇の人間かも知れないと思った……嫌な思い出を誘発する映像なら直ぐに切ろうと思った……色々と思ったが結局、私は……その映像を見てしまった……

最初は、顔をパーティーグッズのシマウマの被り物をした男がいた。いわゆるオタクの男性みたいな……色々な趣味に手を出してハマっている男性だ。映像では全て被り物をして素顔は見ていなかったが、直ぐに異常に気付く。

夜の時間になった瞬間、まるでアニメや漫画の超人のように、全身の姿を変えて異形の竜の鬼に変わり姿を透明にして、普通の人間と人間じゃない奴を"見抜き"人知れず"狩り"をする……殺人鬼と最初は考えたが、獲物のマギウスが人間に良い者か悪い者か尋問して判断して仕留めているマギウスは全て人間を餌として見ている連中と分かる。

《そんなに不死が自慢なら俺の不死の能力どっちが上か試そうじゃないか!!!!!?》

《アギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!》

《ようは再生する力が働く気が失せる程燃やせば良い話だ。骨も再生出来ずに灰となれぇぇぇぇ!?》

相手の首を掴み相手を炎で燃やし尽くして文字通りに灰に変える。

もう一人のマギウスが炎竜鬼の首筋に噛み付くも、歯が鬼の皮膚に通らず驚愕する。

《……噛み付く攻撃とはこうするのだ。【血鬼術 牙刃鬼乱舞】!!》

一瞬でガッキンと歯を複数鳴らして、もう一人のマギウスを瞬きの合間に全身大小穴だらけにして穿ち……仕留める。

《……コイツらに皮膚から噛まれると一発アウトなのは、他の人間が噛み付かれているのを見て知っているつもりだ……対策して正解だな……兪史郎。》

《お前は……吸血鬼を狩る吸血鬼ハンターか?》

もう一人の少年は姿を晒して異形の炎竜鬼に気さくにも呆れも含めて話し掛けている。この二人の関係性は友人関係だと思うが、

《……世界の裏側に在る者なのは勝手だが……生憎様、お前ら以上に俺たちは長生きして夜の時間を味方にしているんですよ。》

続いて映った映像にはマギウス達の、情報について映っていた。

《大昔……不時着して故郷に帰れない奴ら地球にいる為に他者の生き物を憑依して生きていたらしい……ここまでなら、別に狩りをする必要も殺す必要もなかったが、奴らは他者の記憶や生命を餌にするなら、マジもんの吸血鬼や悪魔らと変わらないだろ……》

《ここ十数年で良く調べたな……》狼の面を着けた虎縞模様の服を着た男が感心したように聞く。

《一枚岩じゃない組織……個人ではなく想像よりもデカイ組織があるな……世界の有権者や権力者という人形を裏から操作する人形使い達が……》

《向こうは俺を"マギウスの領域を荒らす者"と言っているが、生憎……先に鬼の領域にとっくに土足で滅茶苦茶に荒らしてくれたのは……奴らの方だ……》

《独特な価値観を持った連中だな……》

《コミュニケーションなんて元から星の数より多いんだ。なら俺は俺のコミュニケーション方法でマギウスの連中と戦うよ。……俺の欲望の為にな。》

再び映像が変わりモジュール77の夜の咲森学園の屋上から生徒達の様子を眺めている様子が映る。そして物思いにサングラスと白いマスクでモジュールの街を見る。

《…………戦争が起きるな。ジオールの秘匿された軍事兵器って奴を欲しがる為に……あの寮にいる奴らも、以前、人に恐怖していた赤い髪の女の子も……》

「……!?」

彼のその一言で、私は炎竜鬼の素顔が誰かわかってしまった……

《理由はどうあれ…………止めれないなら……戦うだけだ……とはいえ全員を守るのは流石に虫が良すぎるか…》

《……でもまっ、俺、知っているつもりだから……平和を謳歌した国が侵略者に突然侵略される様子は……》

「………」

《…………アイツらを死なせたくない……これじゃ、侵攻で殺される為に生まれたような物じゃないか……そんなのよ。あんまりだろ……》

《気掛かりなのは、色々あるよ……どいつもこいつも、

面白い奴らで……えっ?何か遺言の映像みたいって?違うよ。…………だってさ、もし何かの拍子で俺の秘密が暴露されて友達達に裏切られ拒絶させられたら、凄く凹むだろ………デビルマンの原作みたいに皆まとめて炎に還すなんて凶行をしない為にもさ。俺は結構繊細なんだぞ……えっ?自己PRが間違っている?否本当、俺繊細な男なんだから……だから今の内に……凹んだ自分を再び立ち上がらせる用の思い出の映像を……えっ?黒歴史の映像……なら、ちゃんとしっかりとした思い出映像を……》

《あれっ?闘牙君?》

《ヤバい!?リオン先生だ!?逃げよう!?》

男は屋上から躊躇なく落下して映像は途切れる。

 

「………」

グダグダである。何か……後半はグダグダ過ぎる………

すると再び映像が付き、

《カメラと持参したメンココレクションを生徒会の気弱生徒会長に没収されたのを回収するのに時間が掛かってしまった。己!?生徒会長!?ありゃ、絶対将来嫁に尻を敷かれるぞ……》

「ぶっ!?」

思わずギャグ漫画の顔芸をする男にアキラは吹き出す。

《とりあえず、俺は、人間ではない"鬼"だ。鬼について詳しく知りたい人は、昔書いた漫画の『鬼滅の刃』をチェック!?それが嫌なら簡単な概要……吸血鬼に近い物の吸血鬼とは異なる個体だ。藤の花の香りとかと日の光が弱い。……真水に付けるとその部分が硬直するとかは弱点じゃないからな。…………えっ?説明が雑?なら、もっとちゃんと考えて発言しろって……あのな……わかったよ。下準備とリハーサルとかロケ地とか企画とか考えてから録画するよ。とりあえず……この映像は全部、消しておいて?恥ずかしい黒歴史だから……NGしかないんだから……》

「あれ?」

これがNGなら消していない事となる。映っているのは、素顔は知っている人が素顔を隠してグダグダになりながら色々とヒントや新しい単語とか教えてくれる謎の映像だ。文化祭の映像ですらもう少しちゃんとしているのに

アキラはふと映像に映る喜怒哀楽を素直に見せる男に申し訳ない気持ちがこみ上げて来た。

「…………」

あの日の両手に着いた彼の血は、自分が彼の顔を躊躇なく恐怖から逃げる為に引っ掻いてしまった物だ…

自分が自分の身を守る為に他者を傷つけた……その事実にアキラは自分はどうしようもない奴と自分を自虐した……

「……力になる資格なんて私にはないじゃない……」

見慣れた自分の暗い暗いクリーンでジャスティスの世界は今だけは酷く醜い場所に見えた…

 

 

 

無限城の『童磨神社』

「あっ、『RAIEBOW』に渡す映像をNG版の奴にしてしまった……」

ヨーヨー片手に白怒火は、してしまった顔をして漸く気付くと飛燕が戻って来て右手でサムズアップをする。

「何やってんだお前……」

けん玉片手に呆れて言うのは、我らの狼牙丸。

「どうしよう……凄くどうしよう……今からでもきっちりとした奴送るべきだよね。」

ヨーヨーで超電磁ヨーヨーの真似をしながら言う白怒火

「それより、白怒火。お前も城を出て咲森学園に現れた5人の"転入生"の追跡をした方が良いぞ。……そこらの軍人よりは手練れのようだし、ガチの殺しも躊躇ない奴らのようだ。」

【サイド7にジオン来る】

白怒火はヨーヨーをしまい。

「本体は部活動に専念している最中だしな。とりあえず、本体と親しい連中の近くに俺はいるよ。」

予備の咲森学園の学生服を素早く早着替えして、琵琶を取り出して鳴らす。

【べべん。】

白怒火はこの分裂体達の中で一番の最年少、そして基本、お面を着けない事が多く性格も炎竜鬼と殆ど変わらない為、影武者ポジションでアリバイ作りに動いている。

 

モジュールの天蓋に投影された空が、定刻を迎えて夕暮れの空に切り替わり始める。

授業を終えて寮に帰宅する生徒や補習をする生徒達の時間だ……そしてその時間は部活動の時間でもあり、

闘牙も部活動に参加していた。

『真歴における文化思想研究ならびに討論部』と言う立派な名前を持っているもその正体は只の男子文化部……オタクの部活である。

 

「これが昭和の頃に博物館に展示するようにお願いしたのを親戚が断った大正時代の貨幣と紙幣だ。勿論、現物だぞ。」

ご丁寧に強固な箱にあった物の中身を部員に見せるのは闘牙だ。

「凄っ本物かよ!?」

「今だと幾らくらいの価値があるんだ?」

「そうだな……今のジオールの値段から考えてだいたい……」

 

部長の霊屋リョウスケは、ここ最近、部活動に参加し始めた部員の闘牙のコレクションを驚いていた。勿論、10前半の男子にとって闘牙のコレクションは、様々な種類もあるし本当の意味でレア物ばかりだ。

だがコレジャナイ感もするのだ。当然貴重な品だし、テレビの年季のある金庫に入ってそうな物と思うが、オタクの私物にしては、マニア過ぎる。歴史愛好家関係の……ここがそれだ。

「闘牙。お前のコレクションは良くわかった……次は、俺たちのコレクションを見せてやるよ。今回はお前も喜ぶ物だ……」

最初は曇りとか雨の時とかにしか部活動に参加しない顔が良いからかなりムカついたが、本当に多種多様のオタクグッズに詳しくて部活動に参加してくれると楽しいのだ。

「お願いします。部長!?」

オタクに対する偏見がない……周りの奴らは、オタクと聞いて変な奴とか気持ち悪い奴とか思っているし、実際にそういう奴もいる事を知っている……でもコイツは……闘牙は本当に楽しそうに……部活動を楽しんでいる。

只……まぁ、女子更衣室の覗きは全て闘牙が仕掛けた謎の仕掛け付きの罠で阻止されているのは、不満だ。

『流石に女子達が可哀想だから……』

との事でそのお蔭のせいか闘牙は女子に結構感謝されているのは、多い。

でもそんなに嫌な奴じゃないのは、わかった……だって俺が、コイツがいて心の底から楽しめているんだもん。

 

同時刻

場所は文化部から夕暮れの天蓋の空模様の元へ変わり

「……こんな感じにすれば、また一儲け出来ると思うんだよな」

「ふふっ。犬塚先輩ってお金の話ばっかり……」

闘牙の先輩の三年生の犬塚キューマと並んで歩いているのは、一年生の櫻井アイナだ。ハルト達2年の愉快な奴らと仲の良い後輩で、人当たりの良い性格やおっとりした雰囲気はいるだけで周囲を和ませる……闘牙がたまに孫に小遣い与える雰囲気を与える凄い後輩……ついでに平手打ちをした流木野サキも根が良い子と分かるから深い意味はなく小遣いを渡したくなる……本当に二人は良い子だよ~。

「いずれ、世界一の金持ちになるつもりだからな」

ここ数日後輩の闘牙に、通貨の価値が無くなった事を想定して現物の貴金属を収集しといたら……と縁起でもない事を言われても実行しないヘタレ先輩は夢のアイナとの時間を楽しんでいた……

「夢は大きく、ですね」

アイナが眼鏡の奥で目を細めてクスクスと笑うと、2つ結いの明るい髪が揺れる。キューマはその柔らかい物腰や優しい笑顔が好きで、よくこうやって言葉を交わす。なんでもない、いつも通りの小さな幸せ……

(うわっ、甘い空間作ってやがるよ……モゲロ!!)

気配を完全に消して風景と一体化した炎竜鬼の分裂体…

白怒火はキューマとアイナの桃色の甘々ラブラブ空間に凄く苦い食べ物が無性に食いたくなったが、鬼ゆえにそれは無理と悟り静かに見守る……

そんな風にのんびりと中庭を歩く二人に突然声が掛けられた。

(ぬっ、奴らか……)

九荷が見せた"転入生"の一人が彼女に話し掛ける。

「お嬢さん、よろしいですか?」

アイナとキューマが足を止めて振り向くと、そこには咲森学園の制服を着た、しかし見慣れない男子生徒が5人。声をかけてきたのは、微笑みながらも何処か相手を見下しているように感じさせる眼差しの髪を逆立てた男。

(……軽薄チャラ男と言うよりムードメイカー

続いて別の一人である眼鏡をかけた長身の男がアイナに話し掛ける。

(……インテリ眼鏡か……以下にも理詰めで堅実な地味で効率的な戦い方をしそうな面しているな)

白怒火の身も蓋もない言い方だがあながち間違えていないのは、仕草、喋り方、歩く癖等でまとめて観察して、

(生まれと育ちは悪いが何処かの軍学校で真面目に勉強したんだな……優等生というより、優等生になろうと努力した人間にあるタイプだ。……育ちが悪い時に良い出会いがあったんだな……)

(……有象無象が集まってきたな……)

あの奥にいる銀髪ショートのウォーズマンは咲森学園の校舎の方を何かを観察するように確認する。

白怒火は、相手の分析力と観察力がそこらの軍人より鋭い事を瞬時に理解して……小さくため息をするのだ……



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第2話 何か機動戦士ガ○ダムWか00の世界からやって来た転入生達との遭遇。そしてハルトよ……君はまず喧嘩を覚えなさい。君はサッカーボールを人間の頭に見える不動明か?

話が全然進まない……たった30分アニメの第1話をやるのに何故こんな時間が掛かる……そしてタイトルのサッカーボールの奴は、永井豪さんが書いた外伝の内容で体育の授業を休むデビルマンになる前の不動と飛鳥の会話のやり取りの事である。サッカーボールが可哀想で、人の頭に見えると答えた不動に、サッカーとは人間の暴力や闘争を象徴するスポーツとサタン様が出ている感じに答える飛鳥とのやり取りで、僅かな会話で両者の人間性が表れている。


時は江戸時代……人が立ち寄らない茶室のある山小屋に

二人の男達の姿があった……

『青い彼岸花?それが無惨様を鬼になった切っ掛けだったんですか?』

『そうだ…あのヤブ医者……何処で私の身体の構造を変えた薬の材料を用意したのか……今だに数百年掛けて探しているのに見つからない……何故だ?』

凄くやる気のない顔と雰囲気を全身から出す部下に殺気を込めた鋭い目を向けるも本人は蘭学の本を片手に読書をしていた。

『知らないですよ。平安の時代なら京の都の役人が唐と貿易をしていた記録はあるらしいですけど……』

『……実際どう思う?』

『……俺はまだ香草学に自体に詳しくありませんが、平安のそのヤブ医者の記述に書いてあるから、東洋の医の

医書も時代によっては……維持しているのは、多分あるかも知れないし、ないかも知れないし……』

『はっきりいえ……』

『知りません……』

(あっ、オナラ出る……)

俺はオナラを音も無く無惨様に放つ。

『………………ふんっ!?』

無言で無惨様が血を俺の身体に突き刺す注入する……

『……はっきり言ってこれで御座る?』

普通の鬼なら激痛で顔が歪むのに、この炎竜鬼は、平気そうな顔をして蘭学の本を熟読する。

『すかしっぺしただろう……鉄臭いぞ……』

『血しか摂取してない仕方ないでしょう……にして我々は何処に向かうのか、我々は何者なのか……』

『愚問だな……我々こそ永遠の存在だ……』

(歳に関係無くそういう言葉言えるこの人は面白いな……)

『おっと、すまん。手が滑った……』

別の方向から無惨は自らの血を躊躇なく炎竜鬼に注入する

『部下は大切にした方が良いですよ……』

『いちいち不愉快な反論を私にするな……その減らず口は治した方が良いぞ?』

『性分なんですよ……あらっよっと……』

余剰の無惨の血を炎のように硬質させて質を更に上げる炎竜鬼。

『………………私の血を与えて"錬成"させるとは、本当に……変わった鬼だな……』

『其処らの飯は腹いっぱい食べる奴と違って俺は鍛冶の腕もありますからね……同期の黒死牟の奴に殺されないようにするには、こうやって破壊不可能……金剛石よりも硬くを基本に目指さないと……この時代の鬼狩りに狙われますからな……』

小さく手のひらから熱の刃を回転させて空に向かって打ち出す。

『幸い……術と技の数は今も増えていますから……無惨様が言う弱い鬼と言うのなら多分俺は弾かれていますよ……』

『貴様は……やる気のない鬼から外れていないぞ。』

『やる気があって青い彼岸花が見付かるなら、もう見付かっていますよ……』

『だが確実に存在する……私をこの身体に作り変えた材料だ……』

『永遠の時を生きる鬼が発見出来ない……普通の其処らの花とは違うかも知れないですね?』

『普通の花なら当の昔に手に入れている……』

(人間の頃……年に数回だけ咲く"つくし"の外見のした花の噂を……継国殿と稽古していた時に話していたな……)

 

『あっ、無惨様。そう言えば前言っていたあの人やっぱり頭の奴カツラでしたよ。』

『やはりか……私は一目で怪しいと思っていたんだ…』

自信満々に答える無惨に炎竜鬼は言う。

『人間って見栄を張る生き物なんですね……』

『其奴は髭も付け髭だから……滑稽だぞ……』

その時を思い出して笑みを浮かべる無惨。

『本当っすね…』

遠い昔の思い出の一面

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「よければ道案内をお願いしたいのですが」

「えっとあの……」

「そのスカート、かわいいね。」

「邪魔をするな。私が話している」

(イケメンパラダイスだな……櫻井アイナ。全員顔だけはイイ。)

白怒火は程良い距離から事の状況を見ていた……勿論、有事の際は直ぐに行動しようと考えていた連中も動く様子はない。

(銀髪ショートのウォーズマンも必要以外は無駄に相手の命を奪わないタイプらしい……)

逆に言うなら目的達成の為なら、女子供にも老い先短い年寄りすら殺すと言う事だ……危険人物なのには変わりない。寧ろより危険度が増した気がする……

 

戸惑うアイナに軽薄そうに近づいた、髪を逆立てた男は、眼鏡の男に冷たく窘められてこれ見よがしに肩をそびやかす。その動きに眼鏡が男は何も言わないのは、逆立て男の性格を良く知っている間柄なのだろう……パッと見て直ぐにはわからないが、二人は戦友と見た………鬼の時には見た事はないが、鬼殺隊の時に似た感じの人間関係を見た……

「固いんだよお前は。舞踏会にでも誘うのか」

「どんな時でも礼儀は忘れない主義だ」

(イケメンどもがぁ!?舞踏会で何人の女性の心を盗んだんだ!?モテる男共が!?)

全くのお門違いの事にキレている白怒火。

道を訪ねる為に話し掛けておきながらアイナを無視して言葉を交わす二人。

(あっ、コイツら目の前の女性を無視してるよ……普通に相手に失礼だろ……うわっ……)

その後ろでは、ニットのヘアバンドを額に巻いた背の低い少年が、頭の後ろで両手を組んで眺めている。

(……銀髪ショートのウォーズマンの仲間が普通の仲間である筈がない……あのヘアバンドリトルボーイの奴も戦闘狂の香りがする…………否、そもそも全員不気味な転校生オーラ出まくりだ……)ふとそのボーイと視線が合い軽く無惨様のように睨み付ける白怒火。

「!?」

ビックリしたのか、ボーイは顔を別方向に向けて白怒火も明後日の方向に顔を向ける。

(あっ、あの雲……シルベスター・ス○ローンそっくりだ……)

脳内に○ッキーのテーマソングを流す白怒火。その様子はまさに他人事である……嘘、本当は顔見知りの危険に何時でも対処できるように、ポケットの中から、金属製のチャクラムを用意しておく。

(なんだこいつら……道案内だと……?学園生じゃないのか……?)

五人の男子生徒からそこはかと無い不気味な気配を感じ取り、キューマはアイナを庇うように前に出て、男達を睨みつける。

「おい、お前達……」

キューマが勇ましく怪しい転入生達に話掛けようとする

面倒くさく凄くやる気のない顔をしながらしっかりと5人組の観察をしている白怒火。

「ちょっと、ヘタレ先輩。そんな怖い顔を転入生達に見せなくても良いんじゃないか?」

だが、数的な事を考えて白怒火はキューマの話掛けるを一旦止める。

「っ!?」

キューマは突然聞こえた知り合いの後輩の声がある方向に視線を向けると、麦わら帽子にアロハシャツを学生服の上から羽織、ハート型のサングラスを掛けてウクレレを持っている生徒を見つけて、

「なんつう格好しているんだよ!?ハワイかよ!?」

とても切れの良いノリツッコミをするのである。

「気分だけでも南国を味わいたい年頃なんだ……先輩も俺と同じくらいの年には一度は地球の海でナンパ目当てに行っただろう?」

「俺は去年も今年もこのモジュールで過ごしていたよ!?でもナンパ目当てに街を出歩いたのは分かるよ。」

「先輩……」

「うわっ、ヘタレ先輩がゲロったぞ。桜餅さん。」

「櫻井です。」

「ってかコイツらが転入生なのか?」

「感じ悪いですってよ。聞いたホウキ頭君。」

「えっ?ホウキ頭って俺か?」

「( ´,_ゝ`)ぶっ!?」

白怒火はすかさず髪を逆立てた男に話掛ける。ヘアバンド赤い髪の少年と眼鏡を掛けた少年はその一言で小さく吹き出して、

「おい。今誰か笑ったか?」酷く素の反応で後ろにいる二人の方に向くホウキ頭君。

「まさか、」

「笑うような声が聞こえた?」

「正直いえやコラ。」素の返し

「我々を疑うのか?」

「友達を信用していないなんて酷いよ。」

「正直に言ったら怒らないからさ。」

"転入生"達が何やら色々と意見を言い合うもとい疑心暗鬼に仲間割れしてる間に白怒火はキューマ達に合流する。

 

「おい。闘牙。本当にあいつら転入生なのか?」

「じゃあ、先輩は学園生の服を堂々と着た不審者5人組だと思うんですか?」

「だってよ……どう見てもジオールの人間には見えないんだよ……」

「外国からの留学生でしょうか?ホームルームでそういう話は聞こえてなかったんですけど…」

「怪しいと言う意見なら、ヘタレバスケ先輩と同じです。」

「おい。ヘタレバスケだとバスケがヘタみたいだからヤメロよな。」

自分の入っている部活動が否定されているようで意見を言うキューマ。

「じゃあ、金の亡者先輩で。」

「いや、ソレもあながち間違いじゃないけど、的を得ているけど【こ○亀】の両さんと同じになるようで何か嫌だ。」

「良いじゃないでしょうか。とても先輩らしい渾名だと思います。」

「えっ!!?」

まさかの想い人の鶴の一言に何とも言えない顔をする金の亡者先輩。

(この子、意外に相手の急所を抉るタイプの子だ。)

「てかお前、男子文化部に行くってスキップしながら言ってなかったか?途中で人気アイドルの流木野さんに真横から膝蹴り食らっている所を見たぞ。」

「あっ、うん。……それは不運な事故の積み重ねの結果かな……」

(……野火マリエが流木野サキを補習に参加させようと競泳水着を両手に持って彼女を追いかけていたら、本体とぶつかって……彼女の名誉の為に深くは語らないでおこう……)

確かなのは、色々あって流木野サキは、俺の本体に蹴りを放つような行動を移す程の出来事があったと言うだけだ。一昔前のラブコメかよ?駄目だよ。全く……

 

「よし、俺がアイツらについて何気なく聞いて見るよ。おい、お前達……」

「住民との接触は最低限にするべきだ。」

キューマの言葉を遮ったのは、右目の横で小さな三つ編みを作っているボブカットの男。

三つ編みの男は、キューマ達に絡む仲間をさっさと歩いて行く。

「待てよ。道、わかんのか」

軽薄そうな逆立てホウキ頭の男が三つ編みの背に問いかける。

(あのウォーズマンはさっきから校舎をじっと見ているな………………………っ!!………まさかっ!?)

銀髪のファイティングコンピューターウォーズマンは、会話に参加せずに観察するように咲森学園の建造物を見ていた。

白怒火は、男が只普通の目線で校舎を見ている訳ではないのに気付く。

何故なら、炎竜鬼も分裂体達も、校舎の地下にガ○ダムがあると知っているからだ……

すると、それまで全てのやり取りに興味を持っていなかったようにマイペースで歩を進めていた、酷く爪目をした男が、ぽつりと呟いた。

「スプリンクラーだ。」

「え?なんだって?」

(???)

突然ウォーズマンは前触れ無しに変な単語……勿論意味は知っているが独り呟やき始める。さすがに白怒火もホウキ頭もキョトンとする。

「13メートル単位で並べられたスプリンクラーが、あの建造物の手前だけ12・5メートル単位に変わっている。窓から見える教室の座席数は40。収容できる生徒数は480名」

(コ、コイツ何を言ってやがる……)

その歩みは止めないまま、この場にいる誰に話掛ける訳にも教える訳にもなく、独り言のように男は続ける。それを見たキューマはさっきまでの転入生の中で目の前に見える酷く冷たい目をした男に一際不気味さを覚えた。

(鬼狩りの柱レベルではないだが………………油断したら、首を斬られる……そう錯覚させるくらいの数の人間をあのウォーズマンは殺しているな……頭もかなり良い……)

殺気はないが機械のように……作業のように命を奪う事に躊躇はないウォーズマンに、警戒心を更に無意識に上げる白怒火。

「しかし、建造物は一般的な積層工法で建てられている。加重の問題から、余剰の施設人員が入る余地はない。導き出される結論は、建造物の地下」

「……流石だな」

三つ編みの男が、口元に小さな笑みを浮かべる。こいつの言う事なら間違いはない、そんな全幅の信頼を寄せているようだった。眼鏡の男もヘアバンドの男も、既にアイナ達には興味をなくしたようで三つ編みの男達について行く。軽薄そうな男だけが、アイナに向かって手を振った。律儀に手を振り返すアイナを横目に、キューマは厳しい視線のまま。

「なんなんだ、あいつら……」

「アテナの聖闘士でしょうか?」至極当然のようにボケを言う白怒火。

「否、あんな聖闘○星矢の青銅一軍嫌だよ。誰があの男の子のが嫌がるアンドロメダのあのピンクの聖衣を着るの!?」

「あるいは、アスガルドの神闘士?」

「どっちにしろ聖○士星矢!!」【聖闘○星矢ーー!!(SEとエコーは忘れず)】

「それか諜報機関から送り込まれたスパイチーム」

「有りか無しなら有りだけどそれこそ映画とかアニメやライトノベルの世界の住民じゃないか?」

アイナなりの大喜利参加に驚くもツッコミは忘れられないヘタレ先輩。

「超獣化兵五人衆?」

「○イバー!!○イバーなのか!?」

「マーレの戦士が妥当ですかね?」

「あっ、桜岡は○撃の巨人知っているんだ。随分昔の作品なのに……」

「怖い物みたさで読んでハマリました。後、櫻井です。……やっぱり普通の……転入生なのかな?」

「まっ機動戦士○ンダムWに似た面子に見えなくもないかな……○ンダムデスサイスはホウキ頭が乗るのは確定して……」

突然現れて去っていった5人の背中をぼんやりと眺めながら、呑気に首を傾げるアイナ。

「……嫌な感じだぜ」

この時、キューマが本能的に抱いた忌避感は結果として正しいものとなる。

 

 

「俺、ちょっとチョッカイ掛けてきます。」

「あっ、闘牙!!」

白怒火は二人の安全を確保出来た為、二人の元へ離れて別方向に向かう。先周りをするのだ。

否、寧ろ探し物が見つかったと喜びの心の声を上げる鬼がいた。

あの冷たい目をした男は確信していた。勘という曖昧な物ではない……校舎を見ただけで……建造物の地下が怪しいと第1印象から……それこそ写真一枚だけでもあの男は地下に探し物があると知ったんだ。

 

普通なら近寄らない人間に近寄るのは、鬼が持つ人より優れた再生能力と身体能力と血鬼術……そして分裂体だからこその余裕である。警戒心を上げているが油断は一切しない……しかし相手の出方や本質や習性を知るには、此方から歩み寄る必要がある……

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

その頃、男子文化部通称オタク部では闘牙が用意した【鉄の竜騎兵】という30分アニメを見ていた。

「否、何でこのアニメ!!」

部長 霊屋リョウスケは闘牙にツッコミの言葉を出す。

「【機動戦士ガンダムの○ケットの戦争】と【装甲騎兵○トムス ザ・ラストレッドショルダー】は女性と一緒に見る物だし……重いアニメとか見ていて精神が病むアニメや人が酷い目に合うアニメは好きじゃないんですよ。」

闘牙は全う?な意見を口にするも、

「否、その二つは女性と一緒に見るラインナップじゃないだろう……(・_・)と表情するわ!!【鉄の竜騎兵】も充分重い内容のアニメだと思うけどな……他にないの?」

 

「では【風が吹くとき】はどうでしょうか?【スノーマン】の原作者が書いた絵本ですよ。」

「何か嫌や予感がするけど……とりあえず今度は男受けするアニメを用意してくれよ。」

「【ト○とジェリー】?」

「否、男受けするかと…………いや、この重い内容のアニメ見た後なら寧ろ見たいかも……次はト○ジェリね。」

危機が迫っているのにマイペースの鬼の本体であった。

しかし……白怒火の勝手な行動を知り……ため息を吐き

「部長。すいません今日はもう俺帰ります。」

(あ~~面倒くさい……)

「えっ?急にどうしたの?」

「野暮用があったのをすっかり忘れてました。では……」

そう言い闘牙は持参した荷物を持って部室を出る……

 

 

「さて、白怒火。悪いがチョッカイを掛けるのは俺だ……」

いたずらっ子な顔をして琵琶を両手から出現させて持ち軽く鳴らせる。

 

 

無限城……

先周りしようと動いていた白怒火の足元から襖が出現して左右に開き白怒火を無限城に強制送還させる

「ありゃ?帰されたか。」

 

狼牙丸の目の前に落下して、

「しばらくは準備して待機してろとの本体からの命令だ。俺達が動くのはそんなに遅くはないぞ。」

「…………なら、俺もスパークリングをして身体を温めましょうかね。」

自分の居る迷宮に向かう白怒火の後ろ姿を見て……

「心がざわざわしているな……いや寧ろこれは……興奮しているのか?どちらにしても……忘れられない戦いが始まるな……」

狼牙丸も己の拳を打ち付けて闘志を昂らせるのだ。

 

白怒火を城に帰して炎竜鬼は、凄く気の抜けたやる気の無い顔で目的の人間の匂いをたどり時縞と指南がいる所に歩く。

(数百年経っても人の匂いや血の匂いに敏感に反応するのは、慣れない物だ……自分が人間じゃないとわからされる……)

「やはり……奴ら…ガ○ダムが狙いか……美男子達にモテモテで凄く羨ましいよ……」

皮肉を口にしつつ移動する。

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先の授業中、ハルトとショーコの騒ぎで目を覚ましてしまった教師によって、真面目に自習をしていなかった罰として、二人は学園の裏山にある祠の清掃を命じられていた。

「ハルトはさ、気持ちが足りないんだよ」

廊下の倉庫から掃除用具を取り出しながら、前振もなくショーコが言った。

「何が?」

「昼休みの対決。本気で勝とうって思ってなかったでしょ」

まさか今その話をされるとは思っていなかったハルト。意表を突かれて言葉に詰まり、しかし、ゆっくりと自分の思いを口する。

「そんな事、ないよ。ただ……僕は、勝ったり負けたり、そういうのがない世界がいいな」

(いたいた…………砂糖よりも甘い考えを口にしてるよ、流石は草食男子。)

闘牙はひょっこりと二人の前に姿を見せる。だが二人は闘牙が近くにいるのに気がつかない。静かに闘牙はハルト達の話を耳を傾ける。

気弱そうに目を伏せ、そして優しそうに小さく笑って、ハルトはぽつり、ぽつりと言う。廊下の奥でエレベーターを待っている、見慣れる五人の男子生徒の事など気にも留めず。

「グラウンドだって、みんな半分こで使えばいいのに」

ハルトの言葉を聞いてショーコが「全くもう」と言うように苦笑する。

(ハルトらしいな……)

苦笑しつつもショーコはハルトを愛しい目で見ながらこの時間がずっと続けばいいのにと乙女な考えを心の中に浮かべるも……いつまで経っても告白してこないハルトに不満を覚える自分がいる。

(……尊いな)

闘牙は気配を消して二人のやり取りを耳に傾ける。

其処にあるのは何気ない高校生特有の日常の会話だ。15から18の思春期の会話……世界の事とか政治の事とかよりも子供から大人になる大切な時間を受験や勉強や好きな部活動や夢や友達や気になる人と過ごす時間だ……この会話をしている間は、心にゆとりがあり"幸せ"な時間でもある。だがその時間はある日突然前触れも無しに終わる事もある……

そして、聞くとはなしにその言葉を聞いていた五人の男子生徒の中の一人が、突然その冷たい目を憎々しげに歪め、ハルトを睨みつけた。

(あっ、ハルトが地雷踏んだ……ハルトってトラブルに愛されているよな……それともトラブルがハルトに構って欲しいのか……)っと至極どうでもいい事を考えながら、二人の顛末を見届ける闘牙。

 

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「みんなで欲しいものは、みんなで分ければいいんだよ。そうすれば……」

……誰も傷つく事も苦しむ事もなく争いなんて起こらないんだからさ……と自分の意見を言おうしたハルトだったが、

「おい」

突然横から声を掛けられ、ハルトは驚いて自分の意見を頭の彼方に飛ばしてしまい顔を上げる。

同じ制服を着た。しかし見た事のない、おそろしく冷たい目をした男。その鋭い視線が自分に向けられている事に気付き、戸惑うハルト。

戸惑っているのは見慣れぬ男子生徒達も同じのようで、各々がその顔に驚きを湛えている。

(……転入生達は普段動く事のない事に動いたのがそんなに驚く事みたいだな………そして、やはりハルトが喧嘩した噂とかもないからこういう事への対処も一般人……)

人によっては経験で危機感や警戒心等を覚えて素早く判断行動を移せるが、この状況で、優先順位の指南の安全を確保しない限り……本当にガラの悪い奴らと遭遇して逃げた事もないんだな……呆れを通り越して最早心配になる……

(どんな環境で育ったらこんな温厚な草食男子になるんだろう……最早原作デビル○ンの不動明か?)

「エルエルフ、どうした?」

多分転入生達のまとめ役をしている三つ編みの男が、冷たい目をしたウォーズマンの名前を呼ぶ。

(エルエルフ……11番目のLって意味か?人に付ける名前じゃないな……コードネームか?)

しかし冷たい目のウォーズマンは三つ編みの言葉に耳を傾けず、ハルトを睨みつけたままショーコに指を突き付け、言った。

「その女を俺によこせ」

(異議有り!!!……逆転裁○の検事に通用するビジュアルだな……この五人の転入生達……後声が強い……全員……主役級だ。)

変な事を考えながら事のこの話の流れを観客気分で見る闘牙……敢えて言おう。コイツ最低だ。

 

 

 

 



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第3話 革命の転校生と在校生

次の話で漸く初巨大ロボットバトル……
兪史朗が嫌いなキャラは勿論キリト。女性関係が少し酷いからだとか……
闘牙が嫌いなキャラは……実は作品を一つも見たことなく実際に良く知らない……キリトと言うキャラも栗色の女性キャラの名前と思っている……その作品が出ている頃は海外ドラマ……アメリカと韓国ドラマの吹き替え版にハマっていた。


【革命】被支配階級が、支配階級を倒して権力を握り、国家や社会の組織を根本的に変える事……

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「その女を俺によこせ」

普通の生活や日常を過ごして余り聞かない台詞を聞いたハルトやショーコ達……テレビアニメや漫画の世界では戦いの切っ掛けになる単語の一種だ…ソースは○斗の拳…あれもヒロインを兄弟同然に育った強敵に奪われ……イヤ、良く思い出したら、彼女は自分から主人公を助ける為に強敵の元へ向かったのだ……そして強敵はヒロインの姑に匹敵するキツい小言に耐えながら主人公のケンシロウを待っていた。あれ?何か違うって?でも大体こんなんで合ってるよ。

そしてその言葉は、鬼の俺にとっては、宣戦布告に聞こえた。

最初はワクワク観客気分で見物していたが……内心は……

(はぁ?)

自分の中にドス黒い物がある事を知った……ハルトは良い奴だ。やや優し過ぎるけど……彼ならショーコが好きになるのも納得する……だがまるでガラの悪い男のような発言をする銀髪ウォーズマンに、俺は自分の中にある黒いの部分を抑えるのに必死だった。数百歳なんだからもう少し思慮深くしろよ……うん。無理……

 

「え?」

ハルトも言われた事が、咄嗟に理解出来ないようだ。

勿論脈々もない言葉に俺や指南ショーコも理解など出来る筈はない。

「聞こえなかったか?その女を、俺によこせ」

「……………………………………」

(よし殺そう…………いかんいかん……何面倒くさい男になっている……あの小僧の思考を読め……脈々もなく何故言った……)

 

無言で銀髪の面を見て……ハルトを見て……

(………いやアレはないな……コイツ…ショーコを見ているようでハルトに向けて何かを問おうとしている……脈はないな……はっ、まさか奴はハルトの方が好きなタイプなのか……)

闘牙は、目を見開き口に手を当てる。戦国時代や江戸時代に兄弟の関係とか衆道と呼ばれるのは、存在していたが……新撰組らのように男同士深い仲とか…………

(イヤ普通に気持ち悪いし素直に怖いわー。俺はまだおなごが好きだ。)

 

尊い時間は終わり何故か緊迫感を覚えるやり取りが始まる中で ハルトはどう答える。

此処で出る答えによっては、指南ショーコと俺の中にある人物評価と好感度に影響が生まれる。勿論、ハルトの性格を知っているのなら大体の返事は予想はつく。しかし、そのどの予想から外れた返事が帰ってきたら、同級生としてどう対応するべきか考えないといけないな。

(さぁ、どう答える……時縞ハルト。………………ハルトを信じ切れていない自分はやはり醜いな……)

(ハルト……)

心無しか指南は助けを呼ぶ為に動くべきか迷っている様子だ。

そして俺自身は、咲森学園の仲間達を心の底から信じ切れていない……自分自身にバレたら終わりの隠し事をしているせいもあるだろう。顔に極力出さないも内心人の視線や会話にビビっている……根の良い人間を本気で良い奴と見ていないのは、永い時間を生きる鬼として人を騙す醜い人間達を見すぎた弊害だ。

(頼むから指南の気持ちを裏切るような事はしないでくれよハルト……)

それでも仲間を信じ切れなくても、仲間を信じるしかない事もある……

 

目の前の相手が誰なのか。何故いきなりそんな事を言い出したのか。ハルトは理解は出来ない……出来ないが…

「ちょっと……」

見かねて口を挟もうとしたショーコを、ハルトが手を伸ばして止める。

そして、冷たい鋭い男の目をハルトなりに精一杯の本気で睨み返し、言った。

「い……いやだ」

 

 

「い……いやだ」

ハルトの返事を聞いた刹那、ショーコが大きく目を見開いて、ハルトの横顔を見つめる。

ショーコとその後ろに気配無くいる俺はその様子を静かに見る。只……感想は違う

(ハルト……)

(チワワが狼達に必死に威嚇しているように見える……)

嫌、充分本人なりに反抗の意志を見せているんだが、いかんせん実戦とかで自分より強い相手に怯まない不屈の闘志なんてこのご時世持っている奴は一部の連中だけ、

(アニメとかだと最初の殺されるタイプなんだよな。ハルト……優しいけど切っ掛け一つで感情的になって直ぐ動きが雑になって袋叩きになって殺される。)

ハルトは相手の動きとか外見を見る観察力は平均的だ。

相手から指摘して始めて気付く場合が良くある。

闘牙は冷静に銀髪の……袖の部分を観察する。

(……銀髪の手首の中に何か固い物がある……左胸ポケットの少し膨らみ……手首の中には暗器……ポケットには……恐らく標準装備のハンドガン。)

わざわざ学園の生徒の服でこの学園に来たんだ彼らの装備は、基本軽装……スタンガンやワイヤーや針といったのもあると過程しても、サブマシンガンやPDW銃のような嵩張る銃は背中にも無い……人体の内部に何か武器を仕込んでいるかも知れないが……その時は、無効化すればいい。

(だが……油断できない相手には違うまい。)

息を吸うように人の命を奪うタイプは、根本的に人を人として見るより、より客観的に目的の障害になると判断して抹殺するタイプか単純に人がもがき苦しむのが好きなイカレた殺人鬼が多い……ついでに俺は皮肉にも目の前の銀髪と同じ前者……人を喰らうより、目的の為に殺める事ばかりだ……極がつく悪人や救いようのない屑以外は……痛みも感じさせず苦しまずに一瞬で終わらせてやるくらい慈悲はある……あれっ?良く良く振り返って見たら……俺の生き方ってまんまケンシロウじゃね?世紀末救世主っぽい事を良くしていた気がする…………怖っ!?……やっぱり無いな……俺には、強敵と言う友は……居たよ……みんな天に帰りやがったよ……ユリアもマミヤはいないけど、……やべっ何か泣けて来た……

 

 

冷たい目の男は、ハルトの精一杯の搾りに搾り出した気迫に些かも怯んだ様子はない。

「なら半分こにするか?」

「…………え?」

「ハムエッグの黄身も、愛した女も、お前はナイフで半分に切り分けるのか?」

「…………そんな事…」

ハルトが男の言葉に何か返事を返すより先にハルトの肩越しに男がショーコに向かって手を伸ばした。

「っ!」

咄嗟に、状況反射的に、男に向かって両手を突き出すハルト。

(女が危ないと分かると何も考えずに動くか……罠がある事も警戒しない……)

冷たい目の男はハルトの勇気ある行動をただただ冷めた目で観察し呆れていた。人質の姿が見えたら地雷に掛かる新兵と同じだ。人質の姿をしているのに、それが本当に救出する対象の人質かと合っているか?生きているかすら警戒しない……簡単に罠に掛かり周りに迷惑を掛ける……評価にすら値しない。

男は最小限に身をひねってその突き出す行動をかわし、ハルトの片足を軽く引っ掛ける。

つんのめってうつ伏せに倒れたハルトが身を起こそうとすると、男はハルトの肩を蹴飛ばして転がし、仰向けにしてその前に立ち塞がった。

「ちょっと!何やって、」

「ダメだ!」

ハルトに駆け寄ろうとしたショーコを、ハルトが鋭く制する。

「来るな、ショーコ」

その視線は、男の袖口に仕込まれたナイフの光に注がれている。

冷たい目をした男は、鋭く袖口のナイフ顔負けに憎々しげにハルトを睨みつけ激情の視線を向けていた。

「本当に大事な物は、半分こになんて出来ない」

しかし、その激情の視線はハルトなどではなく、何処かずっと遠くの別の誰かに向けられているようにも見えた。

(……思ったより、訳アリな男のようだ……)

闘牙は静かに冷たい目をした男を観察する。只の殺人マシーンではなく何かを必死に得ようとして……みっともなく下り坂に登る事が出来ず転がり落ちた人間がする目……そして諦めず必死に登る途中の男の目……ハルトが経験した事のない経験をした男の目だ。

「子供の理想などこの世界には通じない。お前が戦いたくなくても、向こうから殴ってきたらどうする。ヘラヘラ笑って、大事な物を譲るのか?」

この男の言葉に、ハルトもショーコも何も言い返せない。特にハルトにとってその言葉は今まで、頑なに目を逸らし続けてきた、残酷な世界の真実だ。

「譲れないなら、戦うしかない。」

(……同感。)

世の中結局パイの取り合いだ……全てを平等にするならまさに理想郷の中のルールだろう。貧富は時間や環境と共に生まれては差が付き、更に世界は国境線と言う領土を大義名分や理由を付けては取り合う。まさに時代は群雄割拠の戦国乱世~~と千葉ボイスがあちこちに水面下で聴こえる始末。世界の裏側には得体の知れない連中が沢山居て……俺は満足にオタクアニメや映画や昼ドラ朝ドラが観られない。

 

(そう言えば、【おそ松○ん】に【笑点】と【純情キラリ】の再放送を録画しないとな……テレビの録画予約は分裂体達による熾烈な戦い……誰も譲り合いの精神はない。だが!?こんな事もあろうかと……無限城以外にこの咲森学園の視聴覚室には既にHDDと録画ディスクはセット済みだ。)

学園がヤバい学園と知った日から私物を各教室にそれとなく持ち込んでいる鬼……己の欲望に妥協はしない……それがオレだ!?

 

(全ては知らないが、俺はこの時……あの男とは仲良くなれる気がする……何故なら俺も色々と失って色々と得た…否、俺は本当の意味では……何も手に入れていないのだから……)

(世の中は譲れない物ばかり……だから戦う事には賛成だ……平和な時代になったらなったで……次の紛争や戦争までの下準備の時間でしかない……そしてそれはこのジオールもそう。)

 

男のその言葉を聞いた瞬間ハルトの脳裏に、キューマから届いたメッセージが蘇る。

『誰かとられてから泣いても、遅いからな』

 

分かっている。いつかは、戦わなければならない。いつまでも、目を逸らし続けてはいられない。ハルトはせめて、自分を覆いかぶさる謎の男から目を逸らさず、睨み返す。

男もまた、そんなハルトを睨み返す。

「はい。そこまでだ……お二人さん。」

睨み合う二人の間に鬼がチョッカイと言う名の仲裁をする。

「っ!?」

(馬鹿なっ!?コイツ何時の間に……)

冷たい目をした男……エルエルフのナイフを隠し持った袖口を気配も音も無く掴み二人に声を掛ける。気付くのが遅れたのだ。仲間達が近くいながら……

「あれっ?闘牙?何時いたの?」

ショーコも突然姿を現し……否、普通に気配を消しただけの存在が気配を見せた事に驚いている様子だ。

「闘牙。っダメだ!?ソイツから離れて!?」

「大丈夫大丈夫。それよか立てるか。ハルト?」

エルエルフの袖口を掴んだまま闘牙は片手を差し出して

ハルトは男を睨むのをやめて闘牙を心配する。

エルエルフは直ぐに空いた右手を使い掴む闘牙の片手を振り払おうとするが、

「っ!?」

(……身体がっ!?…動かない…)

突然身体が……指先一つすら動かなくなりハルトを無視して闘牙を激しく睨みつけるエルエルフ。

「そんな視線だけで人を殺すような怖い顔をするなよ。お兄さん。あんたの現実主義の言葉はハルトには少し理解するのに時間が掛かるんだ。」

闘牙はハルトを何とか立ち上がらせてエルエルフに威圧を止める……

無惨様や上弦の鬼達が無意識にする異次元の強さを見せる威圧……常人を優に越えた存在……鬼を越えた存在に対する恐怖心を利用した威圧をエルエルフと呼ばれる少年はまともにくらい身動きを軽く封じ込めたのだ。

 

「っ!?」

身体が自由になったエルエルフは鋭い目を闘牙に向ける。袖口に仕込んだナイフを使おうと考えるも……

「そう。ビリビリ警戒するなよ。別に取って食いはしないんだから……でも袖の中にある物を使わないでくれるかな?」

ハルトをショーコの元に駆け寄らせた状態で、笑顔で対話する……

「……貴様は何者だ……」

ハルトやショーコの事なんかよりも目の前の気配を感じない男に問い掛ける……

「……お前が会った事のない存在だ……」

(さて……得体の知れない奴と遭遇した人間は幾つかの行動をする……パァートォワァン生存率を高める為に抵抗する。うん。彼はするタイプだ。パァートォツゥー逃げる……うんコイツは合理的な判断でそれを選択しそうだ……判断が出来るならだけど……パァートォスリィー対話する……こっちが会話出来るなら少しでも情報収集をして有利を取る。パァートォフォー何もせず興味が無くなるのを待つ……これも俺には効果的……俺は殺戮が好きじゃない。後始末が大変だから……)

「…………」

「…………」

鬼と男の間の空気がどんどん張り詰めていく……緊迫感が辺りに漂い始める空間の中で闘牙が出した結論は……

結論……今は見逃そう……まだ男と戦う時ではない。

仮に此処で戦闘開始となれば、勝利は可能でも……出来るだけ俺自身は、普段通りしたい。にしても……めっちゃ親の敵の如く睨んでいるよ。凄く睨んでいるよ。やめてよね。こんな凄い鬼闘術や血鬼術を持っていても、やる気はないサボりや楽な方向が好きな駄目な奴なんだから……

【…………………………………………………………】

エレベーターが到着するまで鬼と男は無言で向かい合っていた……そしてその重苦しく張り詰めた空気に胃をやられそうになるハルトとショーコの二人だった……そして闘牙本人は、凄くシリアスな顔を冷たい目をした男に向けながら……○斗の拳2の挿入歌【kill THE fight】を熱唱していた。

「…………………………」

「…………………………」

【…………………………………………………………】

本人の中ではやる気はゼロでも何時でも掛かってこいっと戦闘準備事態の覚悟完了しているのだ……

此方から戦う動きはしないが向こうから来たなら心の臓に静かに鳴るのを待つ戦いのゴングは大きく鳴り響きであろう。

(…これも鬼の宿命か……)

冷静に相手の動きや服装から来る攻撃パターンを予測する闘牙。向こうの方が頭は良い……こっちの取り柄は常人の何十倍の身体能力と不死の肉体……自分で考えた効果あるかわからない変に下らない術の山とかだけ………

 

両者見詰め合ったまま間合いを維持しつつエレベーターがある方向にゆっくりと向かい。相手の動きに注意しつつ近くで両足を止めて向かい合う。

エレベーターが到着するとエレベーターの扉が開く。

冷たい目をした男は仲間達と共にエレベーターに乗り込むも、扉が締まる直前まで俺の姿を見ていた。

 

 

 

転入生達が姿がいなくなると……闘牙は口の中でグツグツと貯めていた白い空気を一気に吐き出すと共に脱力感をぐにゃぐにゃと全身に出す。その場であぐらをかく始末だ。

(物凄く真面目すぎる人に向かい合って緊張した感じのソレ……何で俺がこんな目に……こういうの別の奴がやる事だろう……)

「闘牙!」

二人はぐにゃぐにゃになった闘牙に直ぐに駆け寄る。

「あっ二人ともストップ。俺今腰が抜けて力入らないの……殺されるかと勝手に緊張しちまった。」

(否、死なないだろうが、気迫や気持ちだけなら殺されるかと錯覚を覚えてしまったわ。………………えっ?アイツを仲間にするの?○ッターロボの原作のキチガイの神 隼人を仲間にするくらいハードルが高くない?)

先行きの不安を隠せず真っ青な顔に冷や汗を全身から出す闘牙……

(俺は流 竜馬じゃない……こ○すばサトウカズマポジションの駄目駄目な鬼だぞ~~)

最早逃げられない……筈もないのだが本人は気付いていない~~

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「……住民との接触は、最低限のはずだ」

三つ編みの言葉に、冷たい目の男はやはり答えない。こういう事はこれまでも昔からもあった事だから仲間内から特に言う事はない。だがエルエルフは静かに心苦しそうに……ぼそっと言う。

「……すまん。」

「「!?」」

たった一言……たった一言だが自分達が知っている男なら言わない詫びる言葉がエレベーターの中で広がる……

降下してゆく冷たい金属のエレベーターの中その言葉を言ってた冷たい目の本人は……エルエルフは、最初は自らの未熟を恥じていた。平和ボケしたジオール人の口から、大切な思い出の言葉が出てきた事。その言葉に記憶を重ねてしまった事。思わず逆上してしまった事。その全てが、悔しかった。

「…………くっ、」

だが…だがそれ以上に悔しかった事は、平和ボケしたジオール人の"仲間の男"を見て俺はカルルスタイン機関で学んだ全てを使っても避けらない"確実な死を覚悟した"

(……奴は俺を敵とすら見なしていなかった……)その事実が余計己が未熟と感じて悔しかった…さっきの返事も生き残れた安心感が無意識に口と共に出たと言う事を本人は知らない……

…そんな彼の内心を、他の四人は知る由もない。

「……うん?」

眼鏡の男は昇降ボタンの方に視線を向けてある事に気付く。

「どうした、イクス。」

髪を逆立てた男は友人が一瞬動きを止めた事に疑問を抱く。

「何か問題があったか?」

銀髪の三つ編みの男も尋ねるも眼鏡の男は振り向く事なく片手で静止のサインを見せて仲間を止める。

「いや、何の障害でもない。」

(ボタンの下のパネルが少なくとも2回……開かれた跡がある……整備の為にパネルを開けたにしては、少し雑だな……)

眼鏡の男は知らない……既に炎竜鬼がパネルを開けたと言う事実を……

 

銀髪の三つ編みの男アードライは疑念を抱く。

アードライは、彼を自分のライバルだと、同時に唯一の友人(残りの三人は友人と言うより同じ所属する部隊の仲間……プライベートで付き合う機会少ないだけだ……うん。そうだ。そうに決まっている……)

同じ夢のために、今はただ心を殺して任務を果たす戦闘機械。自分と同じだと、そう思っていた。

だからこそ先程、彼が取るに足りないジオール人に対して激情を見せた事が、決して小さくない違和感を胸中に生じてさせた。

そして、あの後から来てエルエルフに気付かれずに現れたもう一人のジオール人の姿を見た瞬間……全身が言い知れぬ圧に包まれた……普通の人間とは違う得体の知れない感じが……

 

青髪の眼鏡の男イクスアインは、困惑を抱く。イクスアインは、彼をエルエルフを評価している。冷静な判断力で、冷徹に遂行するその姿は、安心して状況を任せるに足るものだと思っている。だからこそ、ジオールの民間人に暴挙は理解出来なかった。

 

背の低いヘアバンドを着けた赤い髪の少年クーフィアは、さっきのエルエルフの激情する様子に興味を抱く。エルエルフはつまらない。彼はいつも任務の時は眉一つ動かさずに人を殺す。あんな楽しそうな事をしておいてちっとも楽しそうじゃないエルエルフは心底つまらない。クーフィアはいつもそう思っている。だからこそ、彼が初めて強い感情を見せた事を面白いと思った。

 

髪を逆立てた男……闘牙にホウキ頭と呼ばれて仲間と友人に笑われた男……ハーノインは、やや不満を抱く。

自分が学園の眼鏡の掛けた可愛い女生徒に声をかけた時、アードライもイクスアインも、自分に対して否定的な態度を見せた。それが彼の時は、二人とも強く言わない。

しかしまぁ、そんなものか。……とハーノインはそれ以上気にする事を止めた。……って止められるか!?エルエルフについてはそれまでで良い。仲間にも色々あるんだ。しかしあの変な麦わら帽子にアロハシャツやウクレレを持った変なサングラスを掛けた奴にからかわれてたの思い出した。アイツ今度会ったら覚えてろよ!!

 

「━━通った」

イクスアインが言った。乗ったエレベーターの昇降ボタンの下にあるパネルを外し、持参した端末を繋いで試みていたハッキングが成功したのだ。

それぞれが色々と考えていながらこれからする行動の準備を各自する。

「~~♪~♪~~~♪」

クーフィアは口笛を吹きながら楽しそうに銃の状態を確認する。これから楽しい時間が始まるのが待ち切れない子供のようだ。

「…………はぁ…」

ハーノインも一度ため息を吐き軽薄そうな雰囲気は成りを潜めて任務をする軍人の顔になる。

「ハーノ。コンディションの状態はどうだ?」

イクスアインは振り向く事なく銃の安全装置を外して尋ねる。

「そっちは?」

「お前よりは万全だ。」

「なら俺はそのお前より万全だよ。イクス。」

「ふっ、そういう事にしておいてやるよ。」

互いに信頼しきった軽口の発言は長い間紡がれた信頼の証。

「エルエルフ。準備は出来ているか?」

アードライは問う。

「問題ない。」

エルエルフは簡潔に言う。今が任務中である事に思い出し、自責の念を押し殺すエルエルフ。

その一言は両者の信頼関係を表すのに充分なやり取りだ。

「フォーメーションはどうすんの?」

クーフィアは簡潔に聞く。ポジションによっては楽しい楽しい戦いが出来ない可能性もあるからだ。

「ハーノが先頭にすると先走って孤立する可能性がある。」

「コラ。イクス。敵の観察に集中してお前は少し初動が遅いだろ。」

「……俺が先頭に出る。」無言で袖口に仕込んだナイフを手元に出して言う。

「決まりだな……」

「開くぞ」

本来止まらないはずの階層にエレベーターが止まり、本来開かないはずの扉が開くと、その先では学校の施設としては考えられない程の重厚な隔壁が行く手を更に塞いでいる。その隔壁が一枚ずつ、上下に、左右に、斜めにゆっくりと開いていく。そしてついに、廊下が開けた。

「イクス。隔壁が多いな。」

「その数の多さの分、ジオールの秘匿した物が重要って事だろう……ハーノ。」

「全員私語は一旦止めるぞ。」

それはつまり━━━軍事盟約連邦ドルシアの特殊部隊である五人が、中立国ジオールの秘匿施設への侵入に成功したという事だった。

隔壁の向こうに立っていたジオールの兵士二人を、飛び出したエルエルフが一瞬で切り伏せ、ナイフに付着した兵士の血を振り落としながら言った。

「ランメルスベルグへ通信を送れ。『コウモリ ハ クモリゾラヲ トブ』」

その符丁が意味する事は、すなわち━━『侵攻を開始せよ。』

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咲森学園には伝説の祠がある。

学園の裏山にある小さな祠の前で告白すると必ず両想いなれるという、ありがちと言えばありがちなものだ。

つーか、創立三年目の学園で一体誰が何の為にそんな伝説を作ったのか?それは誰にもわからない……

今、その祠にはハルト、ショーコ、キューマ、アイナ……そしてサトウカズマじゃなくて操真闘牙こと炎の竜鬼の五人が集まっていて、箒で落ち葉を掃いている。

ハルトとショーコは授業中に騒いでいた罰だが、キューマとアイナはそれを聞いての善意の手伝いだった。

えっ?俺は?成り行きだよ……てか帰って録画した【宇宙戦艦ヤマト2202】のアニメを観ないと

「四人もいるならこっちは大丈夫だろ?俺は祠の裏の方の落ち葉"狩り"をしてくるよ。」

「狩りゲームみたいに言うなよ。」

「じゃあ、お願いしますね。」

 

そそくさとねずみ男ヨロシクな動きで祠の裏に回り━━

「さてっ手早く片付けるか……」

箒を日輪刀のように両手で持ち、真剣な刃のような眼差しで祠の裏側に散らばる落ち葉を見て、

「流石に数が多いが……どおりゃあ!!ジョイアー!!」

鬼の力を込めた箒で祠の裏側の落ち葉を凪ぎ払い全て舞い上がらせて制服の両の袖口から無数の『帯』を出して裏側の落ち葉を一つも残さずに回収する。

「まっ、落ち葉や枯れ葉集めは此れが一番だな……」

袖口に"堕姫"の帯を戻して一ヶ所に集めてる闘牙。

「…………それどうやって出したの?」

自分以外の声が自分の耳に聞こえて恐怖の表情をする闘牙。

「ヽ(ヽ゚ロ゚)ヒイィィィ!おっ、お前は!?」

「……何その無駄なリアクション……」

祠の裏側に座り込み、壁に背中を預けてスマートフォンをいじっている後輩……もとい少し前ラッキーな激突してわしつがみしまった流木野サキと遭遇する。彼女は俺の血鬼術を目撃して戸惑いの気持ちと呆れた気持ちを混ぜた感じの表情で俺を見る。

「……手品だよ。」

血鬼術の事を答えられない為、闘牙は嘘を口にする。

「にしては着物の帯が生き物みたいに動いていたけど……」

(何と言う鋭い切り口……節穴の海のリハクの目を持ってしても見抜けなかった。祠の裏側に人がいるなんて……)

「……視線が溺れていますよ。ライフセーバーが急いで助けに来るくらいに……」

「さぁて掃除掃除~~ランランララララ~ン♪」

答えると墓穴を掘りそうだから……闘牙は彼女に背を向けて既に集まった落ち葉をゴミ袋に入れる作業をする。

「っ!?……その歌、知っているの?」

後ろからサキが何やら聞いてきた。

「うん?あぁ…まぁ、3、4年前の流行っていた歌らしい……誰が歌っていたのか俺も実は良く知らないんだ。夜のバイト先の先輩が口ずさんでいたからさ。深い興味もないし……」

「……そう…。」

酷く淋しそうな悲しげな返事が聞こえて闘牙は軽く真面目に彼女の方に視線を向ける。

「君もこの歌を聞いた事あるの?」

「……」

彼女は何も答えず、複雑そうな視線を俺に向けて一言だけ答える。

「先輩ってそういう真剣な雰囲気の顔も出来るんですね。意外でした……」

「……ふざける時は全力でふざけるだけだよ。まっ、何かこの歌で嫌な思い出があるならもう君の前では「その歌の歌手私なんです…」……えっ?」

何か大事な物を諦めた笑顔否……とても哀しげな目をする彼女は静かに闘牙ではなくスマートフォンに視線を向ける。

「……色々な思い出が詰まっているんです。辛くても楽しい……未来があったとか夢があったとか……輝いていた頃とか……一言では表せない色々な思い出が……」

「……そうか…」

そう答えて闘牙はサキから背を向けて落ち葉をゴミ袋に詰める作業に戻る。

「…………いつか、」

作業を続けながら闘牙はサキに聞く。

「えっ?」

「…いつか、お前の気持ちの整理がつけたなら……いつか……お前の心が洗われたのなら、その思い出を話してくれるか?」

「……随分先になるかも知れないですよ。」

スマートフォンから目を離して闘牙の後ろ姿を見て答える。

「……問題無い。俺の時間なら沢山ある。……腐る程沢山な。」

「……そうですか。」

互いに言葉は此れ以上交わさずにそれぞれ思い思いの行動をする。

だが互いに少しだけ相手の事を知る。只のふざけたばかりの先輩ではない事、只の無愛想仏頂面の後輩ではない事……先ずはそれだけ知れば充分だ。

「……そうは問屋が卸しませんよ。どうやって制服の中に着物の帯を仕込んでいるのか説明して下さい……」

「……ちょっと良い感じで終わる話しだったのに水を差すなよ。そっと流してくれよ。」

前言撤回、世の中やっぱり思い通りにはいかない。

 

祠の表側では

「あーもう、なんなのよ!悪いけど、ハムエッグは白身から食べる方だから。そもそもハムエッグの主役はハムでしょ!」

冷たい目の男、エルエルフとの一件があってから不気味な沈黙を保っていたショーコだったが、ここに来てついに我慢の限界を迎えたらしい。この分では告白などというロマンチックな雰囲気とは程遠いようだ。

「うん、ハムは大事だ」

いきり立つショーコと真面目な顔で頷くハルトを見て、キューマがアイナに囁く。

「押し倒されたのは、ハルトなんだよな。」

「その、はずですけど……」

実質的に被害も被っていないショーコは、それでも箒を振り回してながら憤慨している。

「ハルトは良い事言ったのに!間違ってないのにーっ!」

レレレのおじさん並みに箒を振るうも、あらっ不思議、落ち葉は彼女の箒の周りにはない。

 

祠の裏側side

「いや、そもそも俺は何で祠の落ち葉の掃除なんてしているんだろう……」

「知りませんよ。」

「もっとこう俺がしないといけない事が沢山あるというのに……そうだ。富野。代わりに落ち葉「嫌です」晩御飯高級フレンチレストランで奢るから「嫌です」其処を何とか!」

「私、補習サボっているだけで此処にいるんですから……」

「……此処が嫌いなのか?」

「っ!?」

「……お前と会話する度に、冷めた目と冷めた心で此処を見ているからさ。此処じゃない何処かに思いを馳せているみたいに俺には感じた…」

「…だったらどうなんですか?」

少し苛立ちが混ざった声に、自分の世界を変える為に外との繋がりを欲するけど、その繋がりには自分の世界を壊す危険も知っているから拒絶もしている相反する"矛盾"を抱えた頃の自分と流木野を重ね見た自分がいる。

(……居たんだな。でも自分から離れた……)

「……別に…少し昔の自分に見えただけだ。」

俺が俺を保っていたのは、周りにある人から見たらガラクタとも言えるゴミとも言える物で孤独の寂しさを紛らわせるのと。

『貴様っ!?貴様が描く珠世様の絵には珠世様の想いがこれっぽっちも入っておらん!!』

『イヤこんな物だろ。』

『大体お前が描く絵は何かお前の願望が見え隠れるんだよ!!何か……こうっ!?説明しずらい何かが!!』

口が悪い同居人と色々と喧嘩もしながらも時代に取り残された者同士。何だかんだ欲望まみれで生きていたからかな?

ある時は

『ドラゴンクエストⅤクリアしたぞ!!』

『えっ!?』

『何だ、その反応は?っ!まさか貴様既に……』

『兪史朗は凄いな~~(棒)。』

ある時は

『いい加減結婚したい……』

『鬼の俺達には無用な悩みだろ……』

『フランケンシュタインの"怪物"もこういう寂しさと戦ったんだな……』

『いや……お前はまず女性が好ましいと思える部屋じゃないだろ。物が多過ぎて普通にゴミ屋敷だろ。昭和の頃の家電のグッズとか倉庫か蔵にしまえ。』

『この暴走族の服装とかもか?』

『せめて髪型とか服装は普通にオシャレしろ。』

『兪史朗はしないのか?』

『人間の女に俺が興味あると思うか?』

『お前……』

『何残念そうな顔しているんだ。』

とまぁ色々と変な事もあるけど割かしまだ俺の場合は今は寂しくないよ。

「なぁ、流木野?」

「……何ですか?」

「この学園は楽しいか?」

何気ない確認だ。その質問に彼女はスマートフォンを動かす指を止めてたった一言だけ小さく答える。彼女の脳裏に入学してからの日々を思い出して

「……そんなの私に……わかるわけないじゃないですか…」

ゴミ袋の口を綺麗に縛り闘牙は彼女の方に視線を向け

「そりゃあ……それもそうだな……」

15、16の女の子に何て質問しているんだと軽く後悔した顔で複雑そうに答えた……

祠の裏側sideout

祠の表側side

「落ち着け!」

キューマがアイナを庇いつつ荒ぶるショーコを窘める。しかしショーコの怒りは収まる様子を見せない。

「だって犬塚先輩!」

頬を空気で小さく膨らませて怒りのアピールをするがハルトからすればそれすら可愛いと答えるだろう。

「ありがとう、ショーコ」

「え?」

唐突に聞こえた感謝の声は、ハルトのものだった。ショーコだけでなく、キューマとアイナも疑問の視線を返す。

「僕の代わりに、怒ってくれてるんだろ。おかげですっとしたよ」

お世辞ではなく、本当に嬉しそうなハルトの微笑み。ショーコは頬を赤らめて、照れ臭さを取り繕うように早口で言う。

「そ、そりゃあ、友達だもん。ハルトが怒らないからだよ」

「あははは……友達か……うん、ありがとう」

「あっ、ゴメン。何か私不味い事言っちゃった?」

「うん。大丈夫だよ」

慌てるショーコを見ながらやっぱり良い子だな、と破顔するハルト。そんな優しい目で見られてショーコはますます照れ臭そうに俯いてしまう。なんだか良い雰囲気になってきた二人を見て、キューマはニヤニヤと笑いながら静かに距離を取る。アイナもそれに倣って祠の裏手へ回り━━

「━━あれ、流木野さん?」

祠の裏に座り込み、壁に背中を預けてスマートフォンをいじっている同級生を見つけた。

そしてその流木野と向かい合うように同じくタブレット

をいじっている闘牙がいた。

「うん?ヘタレバスケ先輩。表側の掃除完了しましたか?」

タブレットで何やら操作しつつ闘牙は犬塚先輩に話掛ける。

「いや、表側ハルト達に任せているんだ。にしてもこっちは綺麗だな。」

「手品を使って掃除しましたからね。」

「袖口から着物の帯を沢山出して掃除していましたよ。」

ボソッと答える流木野に面倒くさい顔をする闘牙。

「あっチクるな。」

「?」

「操真先輩。流木野さんと仲良くなったんですか?」

「否、コイツとの仲良し度は他の奴らと違ってゼロだ!?」

優しく言うと思ったら何処からともなくコード○アスのゼロっぽい仮面を被り格好良く答える闘牙。

「その仮面何時作った?」

「少し前、顔を隠して目立ちたい時期が俺にもあって……○きのタクトの変な怪しい人達の仮面を参考にしたらコード○アスの仮面になっただけだ。」

「……」

俺と犬塚先輩の変なやり取りを軽く見て彼女は……流木野は視線を直ぐにスマートフォンに戻す

野火マリエ先輩から何気なく教えられたあの日から軽く先輩に教えられた……流木野サキ。咲森学園の一年生で、幼い頃から子役を務め、中学では女優に歌手と華々しい活躍をしていたが、なぜか芸能活動の一切を休止して咲森学園へ入学したという珍しい経歴の持ち主だ。それが災いし、男子生徒の好奇と情念、女子生徒の羨望と嫉妬に晒され、それら全てに無視を貫き通し、現在のところ学園では孤立している。……っとまぁ、咲森学園の美人や美少女に詳しい野火先輩なりの分析だ……

『彼女には中々凄いポテンシャルを秘めている……ジュルリ……グヘヘヘ……』

何のポテンシャルとか何にグヘヘヘついてからはどうでも良いが……

(休止の理由は……まず本人の望んだ事ではないな……)

仕事が過密スケジュール過ぎた芸能人は私生活が疎かになるとかはある。だが先輩や本人から聞いたり見たりしている限り……

(大体、望んで活動を休止した学生なら学園生活を心から楽しんでいる筈だ…………考えられる可能性は沢山あるが……)

("普通"の芸能人の望まぬ芸能活動の休止……芸能界に詳しくなくてもゴシップ関連なら幾らでも出てくる………普通ならな……)

彼女はこの学園に入学した……入学させられた時点で、

彼女と同じ世代否、完全にガ○ダムの計画に備える為に…政府か軍が動いたのが一番の可能性だな……

(この事は早い内に教えてやった方が良いな。)

実際冷めた性格と言うよりも大人びたって答えた方が良いのか……同世代の通る基本のレールからことごとく外れた泥だらけの凸凹の道を彼女なりに努力して作り歩いていたのに強制的に自分の道からひかれたレール乗せられてレールにいる事がただただ苦痛なのだろう……ある意味被害者の一人だ……否、そもそもこの学園に入学した生徒は例外の俺と兪四郎を除くと全員被害者だ。

「何してるの? こんなとこで」

「別に」

櫻井に対してにべもない返事。実際には見つかりにくい場所で補習をサボっているだけである。

「何か面白いもの見てるの?」

しかしアイナは、そんなサキの人を寄せつけない雰囲気を気にもせず、隣に並んで座り込んだ。サキは闘牙にも見せた仏頂面のまま、それでも闘牙と違ってアイナを拒絶する事はなく、スマートフォンのゲームの画面を見せる。

「あ、これ私もやった事あるよ。難しいよね」

「そう?簡単だと思うけど」

発言とは裏腹に、サキの声音には親しみが含まれているのを闘牙は気付き

(あっ声音が俺の時と違って親しみがある……何よ!?そんな女が好みなの!?悔しくなんかないやい!?)

好感度の高い人物に対しての対応の違いという変な理由で白いハンカチを噛んでキーっと悔しがる。

(……せっかく櫻井さんと話せる話題なのに……言い方もまだ私固いな…)

仏頂面で、言い方も少し上から目線でアイナと話しをしているのに、アイナの心証が悪くしていないかサキは、気にしていた。

実際は心証が悪いとかそんな事はないのだが、サキには心の中を読めるとかはないので確認しようがない。

でももう少し素直な……有りのままの自分をアイナに見せたいとは、思っているくらい同級生の中で大切にしているのだ。それこそ…実の両親達以上に……

サキを色眼鏡越しにしか見ない同級生達の中で、唯一、過去の芸能活動など関係なく普通に接したのが、アイナだった。それ以来サキは、アイナには少しだけ、心を開いている。それを本人に言った事はないが、いつか素直に言えたらいいな、なんて事を思っているサキだった。

 

そんなささやかな交流を他所に

 

「もうヘタレ先輩!?あんな無駄に充実したリア充なんか無視して俺達野郎だけでカラオケとしゃれこみましょう!?ほれっ連れの案山子も一緒だよ。」

「いや、何だよ。俺をその変な一味のメンバーにするな。てかこの案山子。何に使うの?烏とかの鳥獣対策?」

お手製の藁で出来た案山子を犬塚先輩に手渡して

「呪う時に用意したけどよくよく考えたらカンガルーに

据え置きゲーム機本体の中にあったラ○ザのアトリエ3を破壊された理由に使うのおかしいと思ってそのまま蔵にしまっていた縁起の良い案山子だよ。中に鉄板が入っているのが特徴さ。」

「わっ重っ!?呪物になる予定の藁人形じゃねえか!?しかも2メートル……こんなデカイ藁人形を良く伝説の祠に置いておいたな!?てかカンガルーに据え置きゲーム機を破壊されたってどんな状況!?」

「説明するには今から約3年前の話になります……そうあれは……」

「否、今は良いよ。鉄板の重さで持てないから取り出せ。」

にべもなく話を切られる闘牙。

「ガーン!持っているだけで両腕が発達するのに」

「その前に疲れるわ!?」

 

「……男ってバカばっかりよね。」

「あははは……でも、心の底から楽しんでいるよ。」

「そう?只のガキなだけよ。何でもかんでも興味もって……」

冷めた目の仏頂面が闘牙を見据えて喜怒哀楽が分かりやすい……道化師かとツッコむ程だ。

「私は闘牙先輩の事羨ましいと思うけど……」

「そう?」

「だって下らない事で全力を出せる人は肝心な時でも決める時には決めれる凄い人って事だから……」

闘牙の変顔にキューマとアイナが小さく吹き出す。

「…そうには見えないな……」

視線を闘牙に向けながら藁人形の中に手を突っ込み鉄板を取り出す光景を見て考える。

二人程操真闘牙の事を知らないサキは、変な名前の自転車で爆走したりして自転車がバラバラに壊れたり、私に過去の芸能活動関係なく……どちらかというと私の事を知らないのかも知れないが、普段通り?に接してくれる?

「うん。やっぱり良くわからない先輩だ……」

小さくそう自分の中で完結させて

「……流木野さん?」

「どうしたの?」

「ゲームオーバーしちゃっているよ。」

「嘘っ!?」

【GAMEOVER】

四人がそれぞれの思い思いの事をしている合間にハルトは真面目に祠の表側を掃除を続けていた。

無心に地面を掃いていると一枚の絵馬を落としてしまった。

「あ」

落ちた絵馬を拾おうと身を屈めるハルト。それに気付いたショーコが小走りで寄ってくる。拾った絵馬に書かれている願い事を見て、ハルトの動きがピタリと止まった。

『この恋が叶いますように!!』

女の子らしい可愛い文字で書かれたそのお願いをハルト

はじっと見つめる。

「ハルトもお願いするの?」

「えっ!いや……」

突然隣から聞こえたショーコの声に、ハルトの心臓が飛び上がる。横を見ると、肩が触れ合いそうな距離でこちらを見つめているショーコ。その無防備な距離感に、ハルトはいつも一喜一憂させられる。

「ここで告白すると、絶対両想いになれるらしいよ、伝説の祠なんだって」

ハルトから絵馬を取り上げ、何処か愛おしそうにその願いを手でなぞる。

 

「ああいうので男子って勘違いを覚えるんですよね。」

「失礼な事を言うなよ。凄くピュアだろ。」

「清水寺レベルで?」

「何で清水寺!?どういうピュアの基準!?」

「本当にピュアな人は自分で声高らかにえげつない程ピュアだって叫ぶ人です。」

「そんな事言う人いるのかよ!?」

「後両目に星椎茸入れていら人。」

「確かに!?そういうキャラクターたまに見るけど……」

犬塚先輩と変なやり取りしながら二人のやり取りを凄い形相で見る。

夕日に照らされたショーコのその表情は、まるで恋に憧れる少女のようで。

不意に、ハルトの脳裏に、キューマのメッセージが、そして冷たい目の男の言葉が蘇る。

━━今しかない。

自然と、ハルトはそう思った。

「出来て三年の学校に伝説はないよねー」

元通りに絵馬をかけ直し、冗談めかして笑いながら振り向くショーコ。そんなショーコを、ハルトは真剣な表情で見つめていた。

「ショーコ……」

「え?」

不意を突かれて戸惑うショーコ。ハルトは真剣な表情で一歩近づく。

「どうしたの?」

小首を傾げるショーコ。ハルトの一世一代の決心など欠片も伝わっていない。

「君に、言いたい事があるんだ」

「言いたい事?何よ、あらたま……って……」

自分を真っ直ぐ見つめるハルトの顔に、ショーコの言葉がゆっくりと萎んでいく。そして、気付く。此処が何処なのか。今、自分が何の話をしていたのか。

「ショーコ。僕は、」

「えっ……あっ……ま、待って、ちょっと待って!」

「えっ?」

「お願い、ちょ、ちょっとだけ待ってよ!」

「……うん」

「え……だ、だって……そんな……」

 

「流石にテンパってるな。ショーコの奴。」

「当然だろ。一世一代の本気の大勝負だ……勝負事にとことん弱いアイツが文字通り己の全てを懸けたな……」

「コレショーコが告白する側の方が面白いんじゃないか?」

「……そっちも見てみたいが、これで満足しろ。」

 

「……。」

「何だ、お前も興味あるのか?新野。お前も色々とあるけど乙女何だな」

「別に……。」

【GAMEOVER】

「流木野さん。また……」

なんだかんだ言いながら四人とも祠の裏側から二人の様子を見る。

 

熱を帯びる自分の頬を両手で覆い、ショーコは取り乱す。そんなショーコを、ハルトは自分でも不思議なほど落ち着いて見ている。もし、自分の想いをショーコに伝える事があれば。その時はきっと、みっともないほど舞い上がっているんだろうな、そんな事を思っていた。しかし今、それをしようとしている自分の心は、うるさいほど心臓が高鳴っているものの、揺れてはいなかった。むしろ、自分の代わりに取り乱しているようなショーコの姿を見て、愛しさを募らせているくらいだった。

そんな真っ直ぐな瞳をしたハルトを見て少しずつショーコもまた、覚悟を決めた。これは、ハルトが初めて自分

から何かを求めて挑む勝負なのだという事に気付き、これから何かが予感への不安と期待と恥ずかしさを飲み込み、ハルトに向き直った。

「ど……どうぞ」

「う……うん」

再び開いていた二人の距離を、ハルトが踏み出して縮める。

思わず後ずさろうとして、ショーコは懸命に堪える。至近距離で見つめ合う、二人の瞳。

 

「うん?………………」

(ガ○ダム開発計画の責任者の息子とその開発を命じた総理大臣の娘……幼馴染の関係も果たして何処まで……)

美しい光景なのに、何故か俺の目には、造られた関係にも見えてしまい純粋に喜べなかった。

「どうしたの」

闘牙の持つタブレットに一つのメッセージが届き内容を見る。

メッセージの内容を静かに見てやる気の無い表情をしていた闘牙の雰囲気が変わり出してサキ達は自分達の知らない一面を知る。

闘牙な素早くメールを送りため息を吐き

「……もう少し……この先を見たかったな……甘くて……バカみたいに下らないが……だからこそかけがえのない……この美しくも尊い……平和な一時を……アイツらの幸福な未来を……」

優しそうなそして哀しそうな瞳でハルトとショーコの二人を見る目はそんなに歳に違いはないのに酷く大人のような感じがした。闘牙は静かに目を閉じて……

 

「ショーコ。僕は、君が……」

胸に手を当てるショーコ。大きく息を吸うハルト。一瞬の間を挟み、再びハルトが口を開く。絶対に変な所で噛まないように、絶対に聞き逃さないように……この瞬間は永遠に感じた……その瞬間。轟音と共に、大地が揺れた。

「……来やがったな……」

「来たって何が?」

「…敵だよ。俺達のな……」

やる気のない顔から引き締めた顔に変化し目を見開き言う。

「お前ら安全な場所に移動するぞ。ハルト。ショーコ。」

「闘牙この揺れは一体……」

「説明は色々後だ。まずはここを離れるぞ。こんな場所奴らから見たら何時でも狙える分かりやすい場所だからな……」

二人に声に掛けて祠から離れる。

「奴らって……」

流木野と犬塚が闘牙に聞く。

「……ドルシア軍だよ。さぁ走るぞ。」

その単語を聞き状況が直ぐに理解するサキとキューマは

アイナ達を連れて動き出す。

ハルトは祠に離れる際に一度祠の方に振り替える。

「何しているの。ハルト。行こう!?」

「う、うん。」

ショーコに手を掴まれて走るハルト……

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

外部からの激しい砲撃により天蓋の一部が砕け散り、モジュール内の空気が勢い良く漏れ出ていく。

そして自己修復を始めるガラスの隙間から壁のような大型盾を両肩に装備した量産型戦闘機、ドルシア軍の『バッフェ』が次々となだれ込んできた。

頭付きの有人機が二機、頭のない無人機バッフェをそれぞれ二機ずつ従えて、合計六機のバッフェがモジュール内部を飛び回る。

「何あれ?」

「低くない?」

「ちっ、うるせいな。」

「演習とかじゃん。」

「何処の奴?」

「バッフェっぽくない?ドルシアの」

「ぶつかりそう!」

それらを迎え撃つべく、ジオール軍の戦闘機『スプライサーZ』が作られた人工の海面を裂いて現れた。Zタイプの主兵装である左右二門のビームライフルから、圧縮された荷電粒子が打ち出される。しかし小さなハエのように飛び回るバッフェには掠りもせず、大気中で減衰して消える。やがてバッフェの自由自在な機動に死角を取られ、実弾兵器の連射を浴びて爆散する。敵のいなくなっバッフェ達は、悠々とモジュール上空を飛び回る。そしてバッフェらやがて咲森学園の方向に飛ぶ。

マリエが現在いるプール場でもその光景が見えていた。

「きゃあああああ!?」

「何処向かっているの!?」

「何なのあれ!?」

平穏の日常を壊す存在に競泳水着を着た学生達は悲鳴の声を上げる。

「……闘牙…」

やる気の無さそうな顔を普段する彼と以前、彼が見せた巨大ロボットの存在を脳裏に過るマリエは此処にはいない彼を一人心配する……

 

また別の方では空を飛ぶバッフェにスマートフォンのカメラ持ち走る霊屋達の姿もあった。

「ドルシアの型式番号Nw507Beバッフェ有人機たたたたたたっ」

地下から対空機銃が出現してバッフェ達に攻撃するも、

両肩のアイゼン・ガストで防御されてその防御力を突破出来ず逆バッフェら破壊さられる始末。

 

地下にあるジオール軍作戦司令室内では、突然の事態に何とか対処しようと怒号が飛び交っている。その間も、宇宙からドルシア艦隊の侵略と攻撃が続けられる。

そして遂にらドルシア戦艦の主砲かみ大地を抉り、怒号が飛び交っている作戦司令部に直撃した。

モニターが、コンソールが、壁が、天井が、そして中にいた軍人達が、無慈悲な破壊の前に成す術もなく引き千切られ吹き飛ばされる。

 

学園の寮にて

「糞っ!?珠世様の美しい絵を描いている最中に遂に現れたドルシアども!!!?」

遮光カーテンのほんの隙間から飛び交うバッフェらが見えて遂に恐れていた最悪な未来が現実となり怒りの表情を露にする兪史朗。

【べべん。】

「迎えに来たぞ!?兪史朗!?」

「白怒火か!?部屋の物ごと頼む!!」

「承知!」

琵琶を片手に姿を現した分裂体は琵琶を鳴らして兪史朗と購入した物をまとめて無限城に移動させる。

無限城 大広間

「っち、流石はドルシア軍。やり方がムカつくくらい効率良く無駄がない……」

無限城に避難した兪史朗は己の血鬼術『紙目』を使いジオール軍作戦司令室内の様子を見てその司令部の最後を目撃する。

「……もう暫くジオール軍には頑張って欲しかったが……何分、先守防衛が基本のせいか。モジュール77が狙われた場合の対処方法がセオリー通り過ぎて簡単にくたばったよ。」

狼牙丸が兪史朗と九荷ともに集まり監視カメラから咲森学園の教師達がドルシアの軍人達と銃撃戦をして次々と撃ち殺されている様子を見る。

「流石に練度の違いだな……ドルシア軍の方の立ち回りが上手い。」

「市街地の方でもあちこち銃撃戦闘を展開している様子だ。九荷。」

【コーーン!】

咲森学園の生徒達はモジュールの上空を飛び回るバッフェに気を取られて市街地で街の人間のフリをしたジオールの軍人達の市街地戦闘に気付いていない様子だ。

「こりゃ、ジオール軍人達が全滅するのも時間の問題だな……」

「!!闘牙のバカはどうした?」

兪史朗が戻ってこない闘牙を思い出して狼牙丸達に訪ねる。

「くたばってはいないが、同級生らと移動している最中だ。あっ、ガ○ダムは敵に奪われたか?」

白怒火もドルシア達のこのモジュールに侵攻した理由を思い出す。

「否、だがもう時間の問題だ……」

かつて自分と闘牙が使ったエレベーターで地下格納庫まで移動した五人の咲森学園の"転入生"を見る。

「どうする?俺らの誰かが乗り込むか?」

バッフェをどうにかするのにモジュール内部に使える物はあるが、ジオールのガ○ダムが敵に奪われたら反撃出来ずに咲森学園の連中達は最悪の場合全滅する。そうなる前に撹乱なり撃墜なりするために鬼達は動こうと考えるが、

 

「麿達は待機でおじゃる。」

鶴の一声を出す骸野捨丸が髑髏の牛車と共に姿を見せる。

「捨麿!?外にいる奴らが全員死ぬまで隠れているつもりか!?」

狼牙丸が捨丸の判断に怒りの声を上げる。

両の籠手から爪を生やして捨丸に目で追えぬ速さで接近するも、

「本体が既に向かっているでおじゃる!!」

「何。」

髑髏の仮面に拳が直撃する直前に捨麿は答えて持っていた扇子で、帯雷の打撃を弾く。弾かれて捨麿から間合いを取りながら空中から身を低くして着地して狼牙丸は捨丸に問う。

「どういう事だ?」

「我々はいわば伏兵……切るべき機会に切る鬼札……伏兵が最も効果的なのは相手が油断している瞬間……」

予めガ○ダムの存在を知っている炎竜鬼は、この侵攻が始まった瞬間からいの一番に機体のある場所に向かっていたのだ。

「もし自分が何らかの形で学園生徒達の近くにいない場合は麿達が学園生らを守る必要がある。そしてその出陣の機会を決める役割は……兪史朗殿が我々に命令をするのでおじゃる。」

「俺が……」

「そして今回の初陣は本体が自分に任せて欲しいと決めていた事……我々が動くのは次……」

はっきりした声が広間に響き鬼達の耳に渡る。

白怒火は静か狼牙丸の肩を叩き……

「俺達の本体を信じよう。本体もやる気があると凄いのは知っているだろう……」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

司令部より更に地下の奥にある地下格納庫では、白衣の男達が絶望に頭を抱えていた。

「どうしてドルシア軍が!?」

「本国とは連絡が取れないのか!?」

「爆撃されてるって……」

「何で……ジオールは中立国なのに!」

現状を理解出来ず、ただ狼狽するばかり白衣達……その様子は外にいる学生達と違いはなく。此処が狙われるとは露程も思っていないという証拠だった。

そんな中、一人の男が、モジュールに起きているこの現状を解決する最善の手を意を決したように言った。

「━━ヴァルヴレイヴを、使いましょう」

途端、沈黙が辺りを包んだ。…ヴァルヴレイヴを使う。

……それが一体、どういう事なのか。

「しかし、あれはまだ」

「RM-011ならいけるでしょう。ちょうど出力テストが終わったところです」

「『火人』か……だがパイロットはどうする?」

当初の予定ではもっと時間を掛けた計画の為咲森学園にいる生徒達は全員パイロット候補であり被験者兼人質だ……ジオール政府と軍の命令でヴァルヴレイヴを開発する為に必要な科学者達を無理矢理でも集めると言う人がするべき論理に反した罪人達……

「責任が取れるのかよ」

「そんなの、上にいくらでもいるじゃないですか!」

「お前……」

別の白衣が何か言いかけ━━その胸に、銃弾が撃ち込まれた。

「っ!?」

倒れる白衣の一人。他の白衣の一人が直ぐに振り向き、やはり胸に凶弾を受ける。残りこ白衣達が慌てて逃げ出そうとするがもう遅い。

腕に、足に、腹に、胸に、頭に。薄く開いた扉から音もなく覗いた銃身が無差別に吐き出す死の塊を食らい、白衣達は次々と動かなくなる。やがて扉が完全に開いた時、室内には動く者はいなかった。

「さすがだねぇ」

中に入ってきたハーノインが軽薄に口を開く。

「また独り占め……」

転がる死体に駆け寄りながら、幼い子供のように口を尖らせるクーフィア。

イクスアインとアードライは油断なく室内に目を配り、エルエルフは他の何者にも興味がないと言うように、無造作に死体を避けて格納庫の奥へと向かう。そして、その最奥に━━それは、いた。

「……………………………………………………」

無言でそれを見上げるエルエルフ。まるで拘束された巨人のように、ケージに収まる巨大な人型のシルエット。剥き出しになった背面内部に見える謎の球体には無数のコードが繋がれており、まるで呼吸しているかの如く不気味な明滅をゆっくりと繰り返す。フレームに刻まれた、三本の足を持つ烏……ヤタガラスをなぞった意匠と『火人』の文字。ジオール独特のそれらの意味を、エルエルフは理解出来ない。

しかし、そんな事は今はどうでもいい。今回の目的は、モジュールが占領されるまでこの鹵獲した機体を出撃させない事。占領が確実になるまでこの格納庫で待機。この機体は特殊な適性がなければうごかせない、上官のカインにそう聞いている。パイロットが現れたら殺す━━そう考えていた時、突然機械の駆動音が響き、足元から煙が噴き出した。

「しまった!」

次の瞬間、機体を格納しているケージが上昇し、天井に開いた射出口から打ち出された。エルエルフの声が、直後に閉じられたハッチにぶつかって四散する。

格納庫の表の方では、最後の力を振り絞って機体の緊急射出スイッチを押した白衣の男を、クーフィアが見つけたところだった。

「生きてた……!ちょっと待ってて。苦しまずに今楽にしてあげるからね。」

それまでずっとつまらなそうにしていたクーフィアの表情に、初めて笑みが浮かんだ。

「ヒっ」

やっと、傷つけられる相手が、苦しめられる相手が、殺せる相手が、見つかった。その事を心の底から喜ぶ、狂気の笑みを浮かべる。

「まずは全身の麻酔から……麻酔ーー!!」

「ぎゃああああああああああああああああああ……」

「うわぁ……鬼畜……いっそヘッドショットで楽にしてやれよ。」

「やだよ。一撃で終わるなんてつまらないじゃん。」

ハーノインはクーフィアの麻酔の様子を見てドン引きしており、相手が簡単に死なないように、手足の先から銃弾を撃ち込んでいくクーフィアを横目にアードライとイクスアインが格納庫の奥へと走る。

そこではエルエルフが、自らの落ち度により特一級戦略目標を逃してしまった事を悔いる表情で、機体が射出されたハッチを見上げていた。ぎり、と歯を食いしばる音が、アードライ達にも聞こえる程だった。

「ったくお前ら。急いで追うぞ。」

もし射出先で機体のパイロットが居たのなら現在モジュールを侵攻しているバッフェ隊が危ない。

「よし。治療完了。」

赤黒いモザイクと化した物から目を離して弾を再装填してハーノインの後をイクスアインと共に追う。

「………………」

アードライが駆け寄り、らしくないミスをした友に声を掛ける

「……エルエルフ。」

「……わかっている。」

任務で失敗したなら任務で取り返す。

エルエルフはアードライと共に格納庫を後にする。

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生徒会の立ち入り禁止の空き教室にあるダンボールハウス内部では……数時間前に届いたダンボール箱に書かれたメモの内容通り……ドルシア軍による侵攻が始まった映像を防犯カメラから見ていた…………

しかしこのハウスの主……連坊小路アキラは対人恐怖症の引きこもりの為……何より……何より……メモの内容を改めて目を通す。

「……何で私が……」

はっきり言って私に出来る事はない……協力関係を持ち掛けられる資格はない……外に私を助けくれる人なんていない……私が助けたい人間もいない……

「人は嫌い……」

【コーーン】

嫌な思い出を思い出しているた左右非対称の飛燕が戻ってきて無言で私を軽くつぶらな瞳で見上げる。

【………………】

「…そんな目をしても助けにならないよ。私は人が嫌いなの。」

飛燕は左右に首を振り歪な翼の先をメモの一つにコンコンと叩く。

「否、鬼は嫌いなのかとか……そもそも鬼を良く知らないし……」

そう言いつつも興味はあるのか電子書籍の鬼滅の刃に目を通して……自分なりに鬼の協力者の事を知ろうと地道に頑張っている。

「…だって……相手は男の子だし……年上だし……良く知らないし……」

知らない人間が自分の力を必要としているのは、分かるけど、簡単に協力は出来ない……彼が自分を助けて欲しい時に見捨てる可能性も充分あるから……そんなしょんぼりするアキラを見た飛燕はアキラに近づき今回戻ってきた理由なのか一枚の写真を見せる。

「何?………………/////////////////」

心の先から平和のピースサインをする満面な笑みを浮かべる闘牙の写真だ……全裸の……

「///////否、違うの!?知らないからって……これが知りたかった訳じゃない///////っ…60センチ……」

思わぬ不意討ちの写真に対して両手で目を隠すも所々隙間を開けて鍛え抜かれた細マッチョの肉体とか腹の下部分の写真を凄く血走った両目で吟味する引きこもり……

「本人は一体何の目的で……」

(あれ?これを見た事を知ったら……本人凄く怒るんじゃ……)あのNGバージョンのパターンを知っている為、何か凄く悪い事をしてしまった罪悪感が生まれてしまう。実の兄の中学受験の時でさえ此処までの罪悪感は覚えなかったのに……そもそも何故この右手はこの写真を私に見せた?

「……/////もしかして……私を買収するつもり/////?」

飛燕は無言で首を縦に振る。

「……こんな写真で私を動かそうだなんて甘いわね。」

口でそう言いつつ飛燕から写真を肉眼で捉えらない速さで掠め取る。

「…でもその考えは私嫌いじゃない…これは賄賂として貰って…おく…。」

無言でしょんぼりする飛燕に対して真っ赤な顔したアキラは手を差し出して

「取り敢えず……顔見知りから始めよう……宜しくお願いします。」

飛燕は右手に可変変形して握手をする。銀河に轟く小さな協力関係がこうして小さなダンボールハウスに始まる

これが後の歴史に【リトル・ウィッチとダンボールハウスへの誓い】と呼ばれる出来事だ。闘牙の黒歴史の写真の一枚が無限城から消えた神隠しの事件の始まりでもある。

「っでこの状況で私はまずどうしたら?」

飛燕はアキラから離れて前に持ってきた連絡用通信機器を指差す。そしてそこにはドローンと言った物も……

「あっ、」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「何よあれ!?」

学園の地下から対空機銃が出現してバッフェと戦う光景を見る補習授業に参加する学生達。

「皆っ!?早く校舎に入って!?早く!?」

状況が良くわからない七海リオンだが教育者として生徒達の安全を第一に校舎に逃げるように大きく声を出して避難を呼び掛ける。

 

「悪い。俺は少し離れる。」

「ちょっと、闘牙。」

情け容赦なく飛来する実弾兵器の雨の中を必死に走るハルト達に混じった闘牙は、いの一番に

夜を迎えつつある咲森学園は、突然過ぎる出来事で誰も彼もパニック状態に陥っていた……それもそうだ。中立国であるジオールは先守防衛……戦争や紛争事は全て他所の国の出来事で、ここにいる殆どが戦争の経験などはしていないのだから……

それでも冷静さを失わなかった一部の教員達の指示に従い、生徒達が我先にと校舎内へ逃げていく。

校舎内部には突然の攻撃に何が起きたのかわからないまま死んでいる生徒達も既にいて、その近くに起き上がる連坊小路サトミ、取り巻きの二人を守るように隠れる二宮タカヒと言った無事な生徒達もいるが、この状況で冷静で対応出来る人間は誰一人としていなかった……

 

モジュールの人工の地面を割って現れた無数の対空機銃がバッフェを牽制するのを横目で見ながら、ハルト達も走っている。

「何かあったらスマートフォンで連絡しろ。以上。」

「危ないよ!?」

「ちょっとっ!!うへぇ!!闘牙の奴陸上部の奴らよりずっと速いじゃねえか!!」

「わかった!?」

心配するハルト、最後尾にいた闘牙がもう必死に走る自分達より先を走り去るのを見て驚くキューマ。唯一指南ショーコだけが闘牙の言葉に返事を返して闘牙は鬼の身体能力を使い単独行動する。

 

 

「サンダ。無事か。」

「おい。ノブ!?しっかりしろ!?おい!?おい!?」

移動する目的地の途中の校舎付近を見ていると見慣れた色のリーゼントの強面の同級生を見掛けて闘牙は直ぐにその場に走る。

そして気付く……

山田は自分の事よりも目の前に倒れている眼鏡を掛けた男の方に意識を向けているのを、

「あっ、おい…闘牙……ノブの奴がよ。目を開けないんだよ……血だって止まらないだよ……急いで病院に「サンダー!!」っ!?」

闘牙は無言で風本ノブハルの喉元に手を当てて確かめる……そして……

「……もう…手遅れだ……」

「っ!?…なんだよ……何なんだよ!!」

親友の物言わぬ躯を抱き締めて漢は目から止めとなく涙を流す。そして空を縦横無尽に飛び回るバッフェに声を上げて叫ぶ。

「何なんだよ!?チキショー!?」

訳もわからないまま自分の友は理不尽に巻き込まれて殺された。確かに喧嘩に明け暮れて育ちのいい連中達には

危ない奴らと呼ばれていたが……呼ばれた居たけどよ……

「こんな簡単に、あっさりとゴミみたいに殺される言われはねぇぞ!」

涙を流す山田雷蔵に闘牙は無言で肩を優しく叩き、

「……残念だがお前の友を弔うのは後だ……この状況で何処が安全かはわからないが今は校舎に移動しろ。」

「闘牙……お前は………何で、人が死んでるのにそんな平気な顔出来るんだよ。」

「……身体中の水分を涙に替えて流しても……死んだ人間が甦らないと知っているからだ……随分と冷たい男で悪いな……」

何だよ。目の前にいるコイツは、沢山人が死んでるのに、恐怖を露にした顔せず、淡々として……それが酷く得体の知れない恐怖を覚えてしまう。

「ふざけるな!?俺はノブの仇を討つ!?お前のような人が死んで顔色一つも変えない冷てぇ野郎はとっとと尻尾を巻いて避難しろ!?」

自分の知らない一面を目の前に見せるコイツの冷たい一面を知り、自分は違うと言い聞かせながら軽く怪我をした箇所を抑えながら山田は、ゆっくりと立ち上がり闘牙と向き直る。

「……死ぬぞ。」

「…ダチを殺されて黙っていられる俺様じゃない。」

「知っている……だから最初に言っておく……加減は充分する。」

山田の顎に闘牙はノーモーションで鋭い蹴りを放ち顎に直撃して、勢い良く倒れ込むが、倒れ込む前に闘牙が素早く胸ぐらを掴み至近距離で山田を睨みつける。

「……俺程度の攻撃も避ける事も防ぐ事出来ないお前は自分の命も守れない……」

「ぐっ、さっきのは不意討ちだしまぐれだ。次は…「さっきの蹴りが拳銃の銃弾ならお前に次なんかはない。」っ!」

「この程度なんだよ……人の命なんて……一発の銃弾であっさりと消える程度の命なんだよ……」

胸ぐらを掴まれた状態でも山田は諦めず闘牙に殴り掛かるもその全てを避けられて防がれて……

「それでも……それでも…俺は…!?」

山田は闘牙に胸ぐらを掴まれ持ち上げられながら自分なり睨みつけて答える。

「こんな所で死ねば、仇は討てずに終わるだけだぞ。」

「っ!?」

「仇が討ちたいのならまずは頭を冷やして生き残る事を考えろ!?」

「理不尽に屈しろとは言わない……だが、一時の感情で自己満足で暴れて…死ぬ事はお前の親友も俺も許さない……」

山田を地面に下ろして校舎内に無理やり入れる。

「みっともなくで良いから親友の分まで生きろ!?」

「闘牙……」

「悪いが、俺は先に行く所がある……」

山田を後にして闘牙は走る。その様子をドローンは見ていた。

市街地のとある貸ビルの一つに闘牙の貴重なコレクションはあった。そう……ガンプラ含めたプラモデルである。勿論精巧なジオラマつきで場面再現も欠かせない。

放送当時の奴から貴重なコラボ限定品といったコレクションらがあって博物館にも展示出来る程保存状態が良い物ばかりだ……純金製と言ったり人と同じ大きさの巨大プラモデルとかもこの貸ビルにひっそりと置かれている更にその地下には今は誰もやらない程の古いアーケードゲーム機達が所狭しと並べてあり最早ゲームセンターと呼ばれても過言でない。ゲーム機の修理に必要な部品工場まで働き部品の名前から材料と製造方法まで調べて無限城で部品の製造機を造る始末だ。

 

闘牙はVRMMOよりPCゲームとテレビゲーム派でアプリゲームは滅多にやらない……そんな彼の夜の娯楽がゲームセンターのゲーム機達である。

その貸ビルにバッフェの実弾兵器が直撃する。

「へっ……旧ザク、ザ○Ⅱ、シャア専用ザ○!?○ウォーリアー、ズ○ッグ!!(ボスボロットカラー)アッ○イ!!(ドラえもんカラー)ド○トローペン。○ラ・ズール!!シャア専用ゲ○ルグ!!Z○、フリー○ム、○ャイニ○グ、バ○バドス、○イング○ロ!!○ブルオー!!○ンブ!!ジ○ーガン!!Ζガ○ダム!!ビキニ○グ○ンダムうううううううっ!!?安土城おおおおおおおおお!?大阪城おおおおおおおおお完成途中の姫路城おおおおおおおお!!!!!まだ未開封の江戸城おおおおおおおおお」

 

「っ!?」

目の前で瓦礫の山と化す貸ビルを目撃する闘牙……そして瓦礫の山の前で両の膝を叩き落とし、拳はアスファルトを砕き両の目から血の涙が大地に流れ堕ちる

OTLのポーズをして……絶望の叫びを上げる。

「何故だ!?神よおぅ!!何故俺からコレクションを奪った!!一体何の権利に!?何故だぁ!!何故なんだぁ!!神を!!!?」

【推奨挿入歌 小田和正 言葉にできない】の曲が脳裏に激しくリフレインして走馬灯と共に闘牙の中の何かを全て焼き切った。そして彼の身体は眩い黄金の光に輝き始める……

市街地を離れて行くバッフェ達の後ろ姿を血の色になった両の目が捉える

「この…め…」

余りの怒りの果てに全ての歯が噛み砕けて再生し、両の拳は流れる血に耐えられるず血管と皮膚を破り両の手を赤く染めて憎き敵のいない夜空を睨み付ける。空の果てにある地球にあるドルシアを見て……怒りが、哀しみが、憎しみが、怨みが、ありとあらゆる負の感情が爆発する!!

「……この悪魔め…赦さねえぞ!!!?てめぇら……てめぇら!!」

「てめぇらの血は何色だあああああああああああああああああああ!?」

闘牙 覚醒のハイパーモード。文字通り哀しみを怒りに変えて力にする。そしてその様子をドローンは見ていた。

「超…サ○ヤ人……」

自分は一体何を目撃しているのであろうと連坊小路アキラは何とも言えない表情で見ていた。

 

一方

「どーなってんだよこれぇ!?」

キューマの叫びに答えるのはアイナだ。アイナは流木野の手を繋ぎながら上空で戦闘を繰り広げるバッフェとスプライサーを見上げて答える

「操真先輩が何か言ってましたよね。ドルシア軍とか何とかって……」

「じゃあアイツはこの状況に心辺りがあるって事か!?」

「とにかく皆校舎まで走れ!?そこなら外より安全だ!?」

「…戦争……?」

ハルトも呆然と今の状況に思い当たる確実な言葉を呟く。

「とにかく逃げるよ!」

今は細かい事を考えている暇などない。避難するため、第一校舎へ向かって全力で走る。

「流木野さん。大丈夫!?」

「櫻井さんこそ……」

放送部と家庭科部で全力疾走がそこまで得意ではない両者。互いに心配しながらも走るしかない。

「あ、」

見ると、軍による攻撃で抉れた地面の底に車が止まっており、ショーコが一人でそこへ向かって走っていく。

「あの車、中に人がいる!」

「ショーコ!戻れ!」

「大丈夫!先に行って!」

ショーコはハルトの制止に耳を貸さない。あの予感が、ハルトの胸の中で、爆発的に膨らんだ。ショーコの優しさが、強さが。

いつか、ショーコを何処向かってか遠くにつれていってしまいそうな。

「駄目だショーコ。行くなあああ!」

そこへ、ドルシア軍のバッフェが飛んできた。それを迎撃するため、ジオール軍のスプライサーが突っ込んでいく。急制動をかけてスプライサーをやり過ごすバッフェ。そひて離れていくスプライサーの横っ腹を目掛けて発射されたミサイルは狙いを外し━━ショーコが扉を開けている車の直ぐ傍へ、着弾した。

「ショーコおおおおおおおおお」

爆音がハルトの絶叫をかき消し、衝撃波が辺り一面を吹き飛ばす。

その場にいる全員が、各々の身を守るために大地に伏せて身を固める。

「流木野さん!」

「っ!」

櫻井は咄嗟にサキを守るように覆い被り神様に祈る。今日の朝、闘牙にお願いされた事もあるが、それ以上に自分の事より仲の良い友達を守りたいという気持ちが彼女を無意識に行動させたのだ。

やがて、視界を覆い尽くす砂塵が晴れた時、

「流木野さん。犬塚先輩。ハルトさん。無事ですか?」

アイナの安否確認に、キューマは直ぐに答える。

「俺は大丈夫だ。流木野さんは?」

「……ありがとう。」

「…………ショーコ………」

ショーコのいた辺りは、車さえ跡形もなく、数メートルのクレーターと化していた。

何かの破片がぶつかり骨折したらしい左腕を押さえながろ、ハルトが呆然とそこに駆け寄る。

「おい、ショーコ。」

クレーターに足を踏み入れ、やけに緩慢な動作で辺りを見回しながら、ハルトは呟く。

「隠れんぼなんて、やってる場合じゃないだろ!?」

その目はうまく焦点を結んでいない。爆発の影響もあるが、何より現実に焦点を合わせたくない、そんな思いがハルトの視界をぼやけたものにする。

「そんな……ショーコさん……?」

サキと身を寄せ合いながら、アイナも泣き出しそうな声でショーコの名前を呼ぶ。

もしかしたら、爆風で飛ばされただけなのではないか━━そう考えて諦めずに周囲を見回していたキューマも、なおも獲物を探すように飛んでいる頭上のバッフェの銃口がこちらを向くのを見て、顔を青ざめさせる。

「出てこいよ。なぁ、ショーコ。ショーコ」

「……行こう、ハルト……俺達もやられちまうぞ……」

「行けませんよ! だって!」

「やめなさい!」

肩に置かれたキューマの手を振り払ったハルトに、サキの凛とした声が突き刺さる。

「受け入れるしかないでしょ!?彼女は、死んだの!」

「━━っ」

小さな頃から演技や歌で人の心を動かしてきたサキの声は、現実を拒絶しようとするハルトの耳にも容赦なく滑り込んだ。膝を落とし、拳を震わせ、欠けてしまいそうな程に自身の歯を食い縛るハルト。

何故。何故、ショーコが。どうして。勇気を出して筈だった。もう少しの筈だった。勿論ショーコの答えはわからないけど、少なくとも自分の気持ちは伝えられた筈だった。取られる前に。奪われる前に。半分こじゃなく。自分だけのものにしたいと。初めて、言える、筈だった。━━なのに、どうして?誰が、何の権利があって、ショーコを?悲しいに、怒りに、後悔に、憎しみに打ち震えるハルトを嘲笑うかのように、上空を飛び回るバッフェ。

そのアイセンサーが放つ毒々しい赤い光が、ハルト

その時近くに何かが着弾して全員軽く吹き飛ぶ!?の中の何かを焼き切った。

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

ハルトは、地面に落ちていた瓦礫を拾い上げて、バッフェに向かって投げ付ける。

「ショーコを!」「俺のコレクションを!」「ショーコを返せえええええっ!」「返せえええええっ!もう何処の国も売ってないんだぞ!!ネットオークションにも売ってないんだぞおおおおおおおおおっ!!最早オーパーツ扱いなんだぞおおおおおおおおおっ!!」

半狂乱になるハルトをキューマが押さえようとするが、ハルトはそれに抗い、骨折した左腕の痛みも忘れてなお瓦礫を投げ付ける。だが、当たるどころか届きもしない。バッフェはそんなハルトを挑発するかのように頭上を旋回している。

(ちくしょう……何か、アイツらに届く、何か……!)

「……弱い鬼狩りの奴らやバカな童磨もあの無惨様ですら!?俺のコレクションは壊しはしなかった……貴様らは初めて俺を本気に……最も本気に怒らせたんだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!?」

「何だ!?」

黄金の光と共に何かがハルト達に落下してその衝撃波で

全員バラバラに離れ倒れて何とか起き上がり地面に亀裂を作った存在を見る。

「皆生きているか?」

全身を黄金の光に眩しく輝かせた操真闘牙がスーパーヒーロー着地でキューマ達と再会する。

「これって膝に良くないのに皆何故かやるのよね……実に無益に意味の無い行動だ……」

ブツブツと答えながら闘牙はニヤリと笑い……怒りの頂点に達した彼は早口になり自分を落ち着かせようしていた。

「"だがそれがいい"それこそがこの俺の生き方よ。」

桜を始め様々な季節に問わず豪華絢爛の華々が描かれた扇子を開き嬉しそうに答える。激おこプンプン丸だが…

「ええっ!先輩。何か凄く光ってませんか!?」

「そうだな……イライラで覚醒した超地球人だ。思えば昔親にお前は光る物があるって良く言われた物だ。」

「いえ物理的に……現在まさに眩しく金色に全身光っていますよ。」

「確かに俺ってどちらかと答える夜型人間だけどサタデーナイトフィーバーみたいお祭り大好きじゃあないぞ。」

アイナ達の質問を答えている内に怒りが収まり始めてきた闘牙。

「きゃあああああああああああっ!」

その時、知っている声の悲鳴が聞こえてその方向を見るとさっきの着地の衝撃波でサキは鉄火場のど真ん中に吹き飛ばされた様子だ。対空機銃とバッフェのドンパチに晒される。

「もう…もうアイツは駄目だな……諦めよう。」

間髪入れず答える。その速さ最早0.05秒。

「間髪入れずに言うな!?まだ希望はあるわよ!?」

直撃は避けている物のいつまでも無事とは限らない。

「 俺達が逃げる時間を稼ぐ為の尊い犠牲になったという事で……ちゃんとお墓も作ってあげますから…………大丈夫。牧野はこれからもずっと生きるんだよ。」

「……俺達と一緒さ。そう。鷹野は俺達の心の中で永遠のアイドルになったんだ。……お前の事は忘れないさ。ずっと一緒だ。さぁっ皆、志野の分まで生きるぞ!?」

「「生きてるよ!?勝手に殺してやるな!?」」

闘牙の躊躇なく切り捨てる発言に犬塚先輩とガチキレる流木野。当然である。

「おりゃあああっ!?シバくぞぉ!?おんどりゃあああっ!!化けて出てやるぞぉ!!てか名前くらいちゃんと呼べえええ!!」

普段の彼女なら絶対言わない暴言を吐くのはそれだけ彼女は生きたいと言う証だ。

「流木野さん生きているよ!?諦めるのは早いよ!!助けてあげましょうよ。」

「えっ?どうしても人に助けて求めて欲しいなら両膝をひざまづかせて頭と両の手の平を大地につけるべきではないか!!」

「この洒落にならないヤバい状況で何、人気アイドルの女子高校生に土下座を強要させようとしてんだおんどりゃあああああ!!」

「何だか知らないがチャンスだ。アイツが自ら切り開いた退路を無駄にするな。大丈夫!あの声のタイプは意外にしぶとい……」

「きゃああああ!!早く助けてぇぇ!!」

彼女がいる所に着弾はしなくても危ない状況には変わりない。

「……………あっそうか………きっとアイツは流れ星の精霊だったんだ。いかに美しく眩しく輝く光を放っても落ちる運命の……帰るべき所に帰っただけだ。きっと北斗七星の横の死兆星が見えていたんだよ。なので涙を流すのは、この状況を打破してからにしてやろう。」

「変な設定を作って流木野さんを助けるのを諦めないで!?もっと粘って!?」

 

「……仕方ないな。おい。流木野!?俺に助けられたらさっきの漫才のやり取りは冗談と笑い飛ばしてくれよ!!ってか忘れろ。記憶全て忘れろ。」

アイナ達の地道な説得で漸く助けに行く気になった闘牙。鉄火場の中を駆け巡りながら

「絶対に忘れてたまるかあ!!覚えていろよ!!」

「さっきは本当にすまなかったよ!?イヤすまない!?本当にすいませんでしたああああ!!」

鬼の身体能力で瞬く間にサキの元に到着して

「……にしても流石は元人気アイドル……敵の集中攻撃に狙われているな……」

闘牙はサキをおんぶして犬塚達がいる場所まで急いで移動する。

「元って言うな!?今も人気アイドルよ!?」

「流木野。今なら一度は言ってみたい台詞上位に通ずるあの台詞を言うチャンスだぞ?」

急に前触れなく真面目なシリアスボイスに代わり流木野は(・_・)きょとんとした顔をする。

「へっ?」

「【此処は危ない!?早く私を置いて先に行け】…っと……格好良い台詞だなクゥー!チクショウ!!」

「誰が言うか!?あんたが言えよ!?」

「くそっ、どうせ助けるなら……黒髪ストレートロングの年上女性を助けたかった!?何でお前年下なんだよ!!ニート!?」

「現実逃避も性癖暴露もやめてよね!?ってちょっとコラっ!?今なんつった!?ニートって言ったか?」

「働いていないアイドルをニートと呼んで何が悪い……」

「き…貴様を殺す!!!!」

「掛かってこい!?」

「私はニートじゃない!?強いて答えるなら求職者だ!?」

「いや。求職者の時点でアイドルでも何でもないよ。この子はもう……」

「イヤ普通に素を出すな。真面目に答えるな!?」

 

「今の私は無垢な赤子と変わんないのよ……先輩も少しくらい女の子を守ってやるって言う男の甲斐性を見せてみなさい。」

両腕を両足を伸ばして子どもみたいにバタバタする流木野。

「それ以上、馬鹿な発言をしているとわしゃツッコミをやめるぜよ!?」

「何で土佐弁。首締めるわよ!?」

「ふっ無様だな矢野よ。」

「流木野よ。鼻で笑つな。」

「まっ、罪の重さに潰れるよりはマシか。」

「先輩……」

「櫻井達が…」

「あんたが罪の重さに感じろ!?人気アイドルが死んだらファンに殺されるわよ!?」

「本当にろくでもないなぁ……ドルシア共とお前は……」

「何でモジュールを攻撃している侵略者と同レベルに貶されているのよ私は!?」

「反応が滅茶苦茶面白いから……」

「生きた心地がしないのよ!?好きな女の子にイタズラする男子か!?」

「えっ!何勝手に自分は人気者って誤解しているの?怖っ!?」

「根倉日陰のオタクに言われたくないわ!?顔だけは無駄に良い癖に!?」

「実は……俺女性アレルギーで近くに女性がいると、じんましんと呼吸困難が起きる……はぁ…はぁ……」

「聞いた事ないアレルギー作るな!?」

「元気あるな……ティグルかキリトかウィスパーに助けに来て貰えよ。」

「何処にキリトがいるのよ!?あの主人公っ何時もヒロインが居て欲しい時に限って別の後輩やら義妹やらとイチャイチャしていて彼女の扱いが普通に荒くて酷いわよ!?」

「兪史朗の奴が言っていたけど、その二人を恋仲になるなら200話くらい友達以上を続けておくべきだったって……吊り橋効果って怖いし、もう少し曖昧な関係を楽しんだ方が良かったんじゃないかって……」

「私達が今まさに生き残りを掛けたデスゲームの真っ只中にいるわよ!?」

「まさにこの世からGAMEOVERだな……」

「誰が上手い事言えって言った。」

「危ない流木野!?」

「ちょっ、きゃあ!」

二人の近くにミサイルが着弾しそうになって咄嗟に彼女を持ち上げて犬塚先輩達がいる所に放り投げる。

そして放り投げられた流木野は犬塚達に受け止められて三人の目の前で、闘牙がいた場所は数メートルのクレーターに変わり果てていた。

「っ!?」

「「闘牙ッーーーー!!!」」

犬塚先輩達は流木野も含めて"四"人は叫ぶ。

ハルトは気絶しているから叫ぶ事はなくとも犬塚先輩、普通に自分を助けてくれた先輩に涙を流す流木野、櫻井、闘牙は力の限り叫ぶ……あれ?

「?????」

三人とも叫ぶ闘牙の方を凄い目で凝視して沈黙が辺りを包み闘牙本人と目が合い。

「実はコンティニューで生きてたりして……」

「「どうなってんの!?」」

「じゃあこっちは何!?」

三人はクレーターでドラ○ンボールのヤムチャなポーズをしたお尻丸出しの闘牙?を見てツッコミを入れる。

「増えたんじゃね?」

特に意味も考えずに答える闘牙。

「何でもありか!?」

「流木野……お前のツッコミ……楽しかったぜ……」

「どういう感情で受け取ればいいのよ!!私今色々な事で頭パンクしそうよ!!」

「闘牙ッーーー!」

倒れた闘牙にガチ泣きする闘牙。

「闘牙はあんただろ!?もうこれ以上ぐちゃぐちゃにするな!?」

「アイルビーバック……」

ターミネーターの格好をして親指を高く上げている途中で

「わぁあ!?緑色のドロドロの変な汁になった!?」

「うわぁ!?気持ち悪!?」

「否、お前自分に辛辣だな!?」

「きっと彼は闇の中に生きる妖怪人間だったんだよ。」

「知らないネタを入れるな。ツッコミ出来るか!?」

「あれ?○梨和也がドラマの主演をやってたり映画やアニメとか色々と人気あるのに……悲しいのぅ……」

「「出ろーー!!勇者王マジ○ガーガ○ダムVF-28号!!!?」」

「凄く変なダサい名前で何言っているんだ。遂に頭おかしくなったのか!?」

 

高らかな声と共に右手の指先を大きくパッチンして音を大きく鳴らすとプールの水面をモーゼの十戒の如く割って出現……拘束された巨人が闘牙達の前に姿を現す。

「なんだ、これ……」

「ロボット……」

気絶から回復したハルトはキューマの後ろから巨人を見る。そして、誘われるように……その視線が黒と赤い装甲の人型兵器ヴァルヴレイヴに引き寄せられた。半ば無意識の内に、ハルトプールの中央で頭を垂れているヴァルヴレイヴに手を必死に伸ばして愛する人の名を力の限り叫ぶ。

「ブッド・キャ○アーみたいなのはないのか……あの蓮の花の蕾の形からMFが出る演出は好きなのに…」

「ショーコおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!「喧しい!?」ぐへらっ!?」

【ゴキッ】

(恐ろしく速い手刀……私じゃなきゃ見逃してしまうわね。)

闘牙の加減した鋭いチョップを首の後ろに直撃してぐへっ再び気絶するハルト。その一部始終をサキは間近で目撃して戦慄する。

「なっ、おいハルト。おい闘牙!?今ハルトの首にヤバい音が「それ……俺の手首の音だ……」否、お前のかよ!?」

「安心しろ。峰打ちだ……」

「チョップで峰打ちって……」

闘牙は首と両手を軽く鳴らしてステップを踏み臨戦態勢を完了する。

「じゃあ、お前らはとっとと校舎の視聴覚室に行って笑点でも見ておけ。」

「あっ、おい。お前はどうする気だ!?」

「知れた事!?化け物共に目に物見せてやるぜ。弁慶!?お別れだ。」

「否俺は弁慶じゃあねぇぞキューマだよ!?てか何その凶悪な顔芸!」

「てか闘牙!ヤバいって!大人が来るまで待とうぜ!」

石川賢キャラの顔をする闘牙は笑い。

「良くも俺の酢昆布プラモデルコレクションを……許さない、絶対に許さないぞ!?ドルシア軍!?只では殺さん!?引き摺りまわして細切れにしてシュレッダーに掛けてフードプロセッサーにミンチにして崖の上から海に投げ捨ててやる!!!」

「否、普通に怖いわ!?酢昆布のプラモデルを壊されたペナルティーが」

「そして最後は元人気アイドルによる肝心な所を噛み噛みなスピーチをお届けしてやる!?」

「ねぇ、その噛みまくるスピーチって私がやるの。何の目的で……」

「駆けよ!?鬼風!?三千世界を駆け抜けて全てを飲み込む嵐と成れ!!」

「否、先輩の自転車。大破してますよ!?」

【ヒヒーーン!!】

闘牙の質滅裂な掛け合いと共に何処からか動物の嘶く声が聞こえると同時に何もない空間から無数の障子が出現して障子が全て開く。

「へっ!」

「ヒヒーン!!」

象に匹敵する大きさの巨大な灰色の馬が出現し、キューマ達の前に姿を現す。

「えっ。」

だがサキは気付く。気付いてしまう。

巨大な馬には不自然な自転車用の買い物カゴと7速切り替えスイッチがついている事に……

そして校舎……正確には自転車置き場にある大破した自転車がある方向を見ている事に……その目は哀しみを背負った何とも言えない目でその方向を凝視していた事に……

(え?…何っ……修羅場?)

女の勘で馬と馬の主との関係を一目に気付いてしまったサキは凄く気まずい顔をする。こう…約束した友達の家に遊びに来たら彼氏と別れ話を切り出される友達に遭遇したような感覚を覚える……

馬は無言で闘牙に近づき巨大な蹄で闘牙の頭を何度も踏みつける。

「あ痛っ!?何をする!!」

地面に蹄の跡がつくも踏ん張りながら払いのけて馬の背に乗る闘牙。

「ふん。」

鬼風と呼ばれる馬は、背に乗せた闘牙と共に駆け出して

高く跳躍して巨大なロボットの頭部に乗っかり、闘牙はコックピットに無様に搭乗して鬼風はその搭乗口に頭を入れる。

「否、お前はどう頑張ってもサイズ的に入れないだろ!?」

「ヒヒーーン。」

「そんな悲しい事を言うなよ。でもお前だって止まらないやめらないのは知っているんだから。」

「何の話をしているんだ!」

「Calbeeのカッパえびせん!!

「この状況でお菓子の話をしているんじゃねぇ。」

「遊馬。指揮車は貸すから何か見つけたら報告連絡相談するように!さぁ、アイツらを頼むぞ。鬼風。」

馬の頭を優しく撫でて鬼風は嘶きロボットから離れて

鬼風が犬塚先輩達の前に着地する。馬に見つめられてから数分後……

「コイツはすげぇや!!風より速い~~」

巨大な馬に跨がる三人。そして馬の口に咥えられヨダレまみれになる気絶したハルト。

「……あの、犬塚先輩。凄くハルト先輩の扱いが可哀…「仕方ないだろ!この馬、身体が大きいが四人も乗せるように安定した訓練おおっと、ヤベっ!」……」

「仕方ないのよ。櫻井さん。時縞先輩は気絶しているし……そう!これは仕方ない事なの!?」

全員馬に乗った事がない為、振り落とされないようにしがみつくので精一杯の状態で馬の手綱を引く。ロボットから離れる中、サキはロボットの方を振り替えて見る。

「………。」

冷めた日常の中に突然起きた平穏の学園が壊される中に何処からともなく非日常の象徴のロボットが出現してそれに乗る学生……サキの目にはその一連の光景は、自分の中の酷く濁ったつまらない世界に変化を与えるには、充分過ぎる程の物だった……

サキは興奮の余り鳥肌を覚えその瞳からは普段の冷めた物は消えて興奮を隠し切れない子どものような眩しく光り輝いていた。それは何か凄い物が始まる瞬間を……キラキラした物を見る目でロボットを見る。自分の中の闇を全てかき消す激しい光を……

(私はその夜……とても…とても……とても!!眩しい星を見た……)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「コイツ。動くぞ。動きますぞ!?」

 

「行くよ。激おこプンプン丸!!」

機体のコードネーム 激おこプンプン丸に決定。




闘牙にとってコレクションを失う事は大切な人を失うと同じくらいショックが大きい事なんです。物を大事にすると同時にその物に関する思い出も大切な物だから……でも兪史朗に片付けろよとか、数を減らせとかは良く小言を言われています。


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第4話 夜の空に舞う竜鬼

うん。今年最後の投稿。来年も宜しくお願いします。


無理やり搭乗口に乗り込んだ闘牙。

センサーがパイロットの搭乗を確認し、中央のコンソールパネルが自動的に闘牙の方にせり上がってくる。

目についたセンターコンソール中央の赤いカバーを開けて、中にあったスイッチを押すと、コンソールモニタにアニメチックな美少女の3Dキャラクターが現れた。

「よっ、妖精さん。お久しぶり。元気にしてたか?」

機体の中に住んでいる存在に気さくに声を掛ける闘牙。

「アナタ?ニンゲン?」

「否、鬼だ。何だ?鬼は乗っていけないのか?なら降りるけど……」

【………………………………………………………】

キャラクターは無言で俺を見つめて暫しの沈黙が互いの間に流れてキャラクターはモニタ内を住んでいるかのように動き回り直ぐに戻ってきて。満面な笑顔を闘牙に向けて

「イイヨ♪」

「いいんかい!……まぁ、出戻りなんかしたら犬塚先輩達に格好付けて搭乗した意味が無くなるからある意味安心したけどさ。」

関西のお笑い芸人のノリツッコミをモニタにして、

「アナタカワッテイルネ?」

「それ良く言われてるよ。」

(昔からね。)を心の中に付け加える闘牙。キャラクターと会話しながら機体の各部から、駆動音と小さな振動が生じてコックピットに伝わってくる。

「こいつか?あっこれか!間に合えよ。左よし。右よし。」

数秒後独りでにコックピット内部の全方位スクリーンが、外の景色を映し出す。

「ほえ~~こういうタイプね。」

剥き出しだった背中に繋がっていたコードが音と共に弾け跳び、開放されていたハッチが閉じ、ケージのストッパーが稼働して、機体の四肢を拘束から解き放つ。

巨大な金属の掌が大地を叩き地面をめり込ませそのまま上体を起こそうとし、ケージに阻まれるも、震えながら腕を伸ばして、力任せに支柱をへし折っていく。

「……後で本国に請求されない事を祈ろう……」

スクリーン越しに壊れて行く支柱を何とも言えない表情で見ながらもっと壊れ難い素材で造れよ。心の中で思うも壊れてしまったのは仕方がない。それだけこの機体のマニピューレーターの基本性能が高いと言う証拠だ。

(否、軍の機密がてんこ盛りの機体に一回でも乗ったんだ。最悪精密検査と言う名の実験場のモルモットはゴメンだ。)

【結論……勝っても負けてもロクな目に合わない……】

機体は残されていたケージを怪獣映画の怪獣のようにケージの骨組みを肩で破壊し、今度は膝を立てようとする。ほぼ残骸と化したケージの外枠に手をかけ、まるで赤ん坊のように頼りなく、ゆっくりと、しかし確実に、その身を起こしていく。

「コイツ。動くぞ。動きますぞ!?」

動力部のアクチュエーターの唸りを聞きながら、コックピットの内部で周りの様子を確認する闘牙。やがて、スクリーンに映る風景が、完全に安定する。

割れた天蓋の隙間から、天使の梯子のように夜を裂く人工太陽系の光。その鮮烈な光芒が立ち上がった血のような染まった赤と夜を現す黒の装甲を煌めかせる。

そしてその様子はジオール製のスプライサーを破壊したバッフェ達の目にも止まる

「人型?隊長!特一級戦略目標です!」

「失敗したのか……若造どもめ!だから!?」

学園に潜入した5人の任務失敗に声を上げるバッフェ部隊の隊長に、

「パイロットだけを引き摺り出します!……ちょっとだけ待ってな……」

 

 

 

「あっ、霊屋部長?今生きてますか?……えっ俺?ちょっと狭い場所に隠れているから大丈夫です。この通話が最後のやり取りにならないように何処か安全な所に避難して下さいよ。外はとにかく危ないみたいですからね!」

男子文化部の部長へ連絡をし終えながら、闘牙は機体の表面に己の鬼の血を黙々と流す作業をしていた。

外だと搭乗口を中心に赤と黒の機体に毛細血管、又は神経系統のように走り機体の全身を巡回して行く。自分の異能の血鬼術を機体越しにも使えるようにする為だ。

(まずはプラン1……機体に乗り込むは達成……プラン2…武装確認……)

 

ヴァルヴレイヴ。それは、今回のドルシア軍の侵攻の中で特一級戦略目標とされる、ジオールにとってジョーカーである。ヴァルヴレイヴを確保して出撃させない事が、エルエルフ達の最重要任務だった。だがその機体が学園内に起動しているのを見て、任務の失敗を悟ったドルシア軍のバッフェ達が、次々とヴァルヴレイヴの方に寄ってくる。

その状況下にあっても、ヴァルヴレイヴは走るでもなく飛ぶでもなく、武器を構えるでもなく……ただ突っ立っている。

「…良い子だから……出来る限り急いで動けよ!動け!」

 

ガ○ダムですらビームサーベルが付属してあったんだ丸腰で戦うのは構わないが、っと色々とコンソールモニタ内を調べていると東洋の刀を模した白兵戦用武器『ジー・エッジ』と左右胸部に収納された小鎌の『フォルド・シックル』見つける。

 

「俺って…本当に……つくづく刀とかに縁のある人生だな……だが鬼の俺らしい得物だ。ってぐおお!!」

そうこうしてる内に一体のバッフェが正面に取り付き、コックピットから闘牙を引き摺り出すべく直接攻撃を開始した。

「さぁて!?敵は……し、正面だ!」

いざ応戦しようするがその時、闘牙のスマートフォンから明るいメロディが流れる

「こんな時に!?もしもし!!」

そしてそれに応対するのが闘牙だ。

《もしもし……闘牙。今何処にいるの?生きてる?》

「ノービ・ワン!生きてるYO!?」

まさかのバッドタイミングで野火マリエからの電話だ…

「俺が何処にいるかって?此処にはない何処か!」

《迎えにこようか?》

「来るなよ!絶対に来るんじゃねぇぞ!フリじゃないからな!」

《……焦っている?》

「今外がヤバい状況なんだよ!」

《知ってる……》

「近くに犬塚先輩と櫻井とボッチとハルトの馬鹿は見てないか?」

《ちょっと待ってて……》

トテトテと移動する音だけ残して………

「えっ!ちょっと!?マリエ?おい!?」

その間、マニピューレーターを装備したバッフェの腕が、一発、二発、三発と機体の顔面を遠慮無しに殴打する。

「ちょっと~~まだこっち戦闘開始もしていないのに!?第一鹵獲対象を損傷させるなんて脳ミソ筋肉で出来ているんじゃないんか!」

その度にコックピット内にスクリーンにノイズが走り、伝わる衝撃が闘牙に伝わる。

「おい!脆くないよな!柔くないよな!?」

バッフェの一方的な打撃が機体の外部装甲にぶつかる音だけが響きバッフェは右腕の爪の形をしたマニピューレーターでヴァルヴレイヴの首根っこを押さえ、左腕のビームガトリングを腹部に連射する。

「いやぁああああああああああああああ!!【三元鎮守】(さんげんちんじゅ)!!」

女のような情けない悲鳴を上げながら機体の周りに3つの咒札を発射して機体の前方に回転する三角形のエネルギーの盾を発生させてバッフェのビームガトリングの弾の雨を全て防ぐ。

「ぜぇ……ぜぇ……さすが○ッグだ、何ともないぜ!」

滅茶苦茶焦った顔をしてからドヤ顔をするとコンソールモニタ内から野火マリエ?が姿と見せる。

「御主はその機体の真の力を使いこなしていない」

「否、あんた何その格好!何その風景!そんなの準備する為にこっち色々とノーガード戦法を強要されていたの!」

聖徳太子の服装をし巨大なアイスの木の棒を両手に持つ野火マリエに似た人にツッコミを入れる闘牙!

「私は野火マリエの先祖……野火ノ真理麿(のびのまりまろ)……」

「へぇ……そうなんだ…マリエのご先祖って!否、嘘つけ!何でマリエのご先祖様が未来のロボットのモニタ内に姿見せるんだよ!色々とおかしいだろ!」

「私に問答している刻があるのかの?」

「否、ないけど………ご免なさいね。マリエのご先祖様。今凄く切羽詰まる状況なのや!」

「助言は一つ……」

「……。」

「心のままに己の鬼を使いこなせ。」

そう答えるとマリエのご先祖はモニタから姿を消す。

「否、あの!もっとこう具体的な助言を!!」

《闘牙…お待たせ。体育館にはハルト達は見てないって……》

「そうか……」

犬塚先輩達はまだ校舎の外にいるようだ。

《あれ?何か疲れている?》

「……色々疲れた………また掛け直すよ。」

《私は死ぬ最後まで七海先生のおっぱいを一回でも多く揉んでおくよ……シーユーネクストコナンズヒント!?》

「この淫獣が!?」

マリエからの変な宣言に逆キレ気味なツッコミを返すと電話が切れる。

そして再びスマートフォンが鳴る。

「今度は誰だ!?トキか!?ラオウか!?」

【warning!warning!】

スマートフォンの画面に無数のエラーを知らせるアラームが鳴り……

「ハッキングされた!一体誰が!っ!?(/´△`\)やめてえええええええええええええええ個人情報とか恥ずかしい履歴の数々を覗かないでえええええええええええええええ」

メール画面に強制的に移動させられてメールの送り主の名前に闘牙は視線を向ける。

『RAINBOW』っと

「裏番かっ!?」

顔を真っ赤にさせながらクラッキングした主犯の名を叫ぶ!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

モジュール77には、至る所に防犯カメラが設置されている。学園周辺のカメラはそのほとんどがドルシア軍の攻撃の余波で壊れていたが、無事だったカメラの一つが、まるで生きているようにぐりんと動いてヴァルヴレイヴの方を向いた。その映像は、学園校舎にある立ち入り禁止の空き教室の一室、その片隅にある段ボールハウスの中に設置されたハイスペックなPCのディスプレイに表示されている。如何なる方法か、そのPCの持ち主がカメラを動かしているのだ。

段ボールで囲まれたその部屋には、食べ物や飲み物、本に玩具に布団に服などが乱雑に放置されており、部屋の持ち主の無頓着振りを如実に現している。

この段ボールハウスこそ偶然無限城に迷い込んでしまった小さな魔女の通り名を持つ少女こと━━咲森学園二年生の連坊小路アキラの居城である。

 

周りが何を言おうと此処が彼女の絶対なる領域であり、何人足りとも侵入させて欲しくない聖域である。

 

しかし、今日その城に城主の無許可に上がり込む行儀の悪い客人に軽く視線を向ける。

「………。」

左右非対称の蝙蝠の外見をした機械『飛燕』は、右手の形に変形して器用に城主の部屋を掃除している。

燃えるゴミと燃えないゴミのそれぞれの袋に分別しながら入れては塵取りを置きプラスチック製の箒を持ってゴミ掃除を城主の周りに無許可でしている。

ゴミ袋を縛るのは片手では足りないのかたまに城主に手伝わせてる……勿論、断固拒否……するには、流石に何か申し訳なく感じた為に渋々……ゴミ袋を縛る作業をアキラはしていた。

縛ったゴミ袋は『飛燕』は片手で悠々と持ち上げて何処かのゴミ捨て場に運んでいる。

「あっ、それは捨てないで!!」

時折、捨てられると困る物をゴミ袋に入れようとする為に取り合いになるも、人ではないし……喋らないから叱りもしない。服や下着も何処かへ運んでしまうのも止める為……引きこもりの敵【オカン】と呼んでしまいそうになる。否、私の実の母親より母親みが強い…自分も動く機械相手に何やっているんだろうとふと己を振り返ってしまう……

「……いっそ、私専用に改造しようかな……ってそれ私のブラジャー!!」

私の結論は、居ても邪魔な感じである……不満があるなら飛燕と同じ腕がもう1つ欲しいくらいだ。

「……っと、忘れてた……」

飛燕からブラジャーを何とか取り返して自分の用意したPC端末を操作に戻り同時に覗き込んでいるのは、ワイヤードお呼ばれる世界的にメジャーなSNSの画面だ。

今から数十年前。とある科学者が、量子もつれ状態における非局所性を示す『EPR相関』という現象を利用した、それまでSFの中のフィクションでしかなかった超光速通信技術を確立させた。今現在その技術はモジュール━地球間やでの通信の基礎となっており、遠く離れた場所ともタイムラグなし通信する事が可能である。SNS『ワイヤード』も多分に漏れない。ワイヤードは書き込まれた言語を自動で使用者個人が設定している言語に翻訳する機能もついており、宇宙のあらゆる場所で会員を増やし続けている。オープンメッセージの書き込み、プライベートメッセージのやり取り、音声通話や動画通話に加え、画像、映像、音楽などの各種ファイルの共有も容な、今や生活に欠かせないほどのツールである。そしてアキラはそのワイヤードを利用して、とある動画を全世界に発信しようとしていた。

《ドルシア軍によるジオール奇襲については未だ情報が錯綜し政府が対応に追われています。》

モジュールとジオールが奇襲されているニュースを見ながらアキラは言う。

「これで……拡散」呟き、リターンキーを押したその途端。テレビに。パソコンに。スマートフォンに。街頭モニターに。世界中のありとあらゆる情報端末画面に、アキラが用意した画面が映し出された。

【やられてるじゃねえか】

【何見てるの?】

【軍は何してるんだよ!】

【助けてたすけて!】

【援護いるだろ!】

【母さんにつながらない!】

【軍は何してるんだよ!】

【やられちゃってるじゃん!】

【避難所行け!避難所】

勿論普通は不可能な事。だが、それが出来るのが連坊小路アキラという人間なのだ。突然現れた謎の画面に道行き人達やテレビのニュースを見ていた人。スマートフォンで動画を見ていた人。パソコンで調べ物をしている人や仕事をしている人々は戸惑いながらも、黙って動画を見る。それが今まさにニュースで流れていた、ドルシア軍によるジオール奇襲のライブ映像である事に人々が気付くと、ワイヤードには世界中からのメッセージが爆発的に溢れた。世界各国の言語で書き込まれたメッセージは瞬時に使用者の設定言語に翻訳される。目まぐるしく流れていくそれらメッセージの横で動画の中のヴァルヴレイヴは相変わらずバッフェの一方的な蹂躙を許している。

【ジオールの機体か?】

【ふざけんなよ!】

【知らないよ。私】

【さっきのロボでしょ?】

【支援要望】

【熱い熱い熱い!】

【緊急コール誰かしろよ!】

【何だよ これ】

【戦争?】

【じゃあお前がやればいいだろ】

【ドルシア軍のバッフェだろArmy,s WaffeWEAPON】

【お前がやればいいだろ】

【じゃあ、こっちはジオールの?】

【学校から出たって見たヤツがいるぞ】

【足があるよ】

バッフェはヴァルヴレイヴのコックピットユニットを直接引き剥がすため、胸部ユニットをマニピューレーターの爪で挟み込む。

するとヴァルヴレイヴから五枚の紙が飛んできて☆の形になってヴァルヴレイヴを包み込み機体は点滅し初めバッフェは爪を更に突き立てるも弾かれてしまう。それでも諦めずに爪で何度も挟み込もうとするもヴァルヴレイヴはやはり動かず、メッセージはだんだんとジオール本国やその友好国からのものが占める割合を増してゆく。

【他の画像、ミニコミュに上がってる】

【勝てるわけないじゃん】

【リアルタイム?】

【じゃ誰が乗ってるんだ!】

【やられるぞ あれー!】

【左きてるぞ、左ー!】

【立って殴れ!それまで持ちこたえろ!】

【攻めてきてる!】

【誰でも良いから助けて!】

【やられちゃってるじゃん!】

【味方なの!】

「………あっ、メールしないと……」

アキラは闘牙にメールのやり取りを初める。

 

【裏番!今俺取り込み中!】

【知っている……飛燕の持ち主よ。】

【何の用だ。要件は飛燕に贈った贈り物の段ボールの箱の中にあった連絡用通信機器で連絡してくれても?】

【……否、これは試験だよ。炎竜鬼。】

「試験?」

九荷が用意した咒符(じゅふ)を五枚使った【五芒醒力】で30秒間強化無敵モードになって機体と自分を守りながらメールのやり取りをする闘牙。

【どういう意味だ?】

【……私は基本外が嫌いで表側に出ない人間だ。私と協力関係になるにはある条件を絶対にのんでもらう。でなければ協力は無しだ。】

【その条件とは?】

(外が嫌いで表側に出ない人間……どうやら『RAINBOW』は目立ちたがりの人間ではようだ。つまり……文官タイプだ。)

【……私の存在を誰にも言わない事だ…】

「……。」

この条件は一見簡単そうに見えて実はかなり危険な条件だ。相手はいつでもこちらの隠したい個人情報を全て知る事が出来るがこっちは逆に情報が筒抜けになる危険性が付きまといクラッキング能力を持つハッカーと協力関係になる……そして俺のクラッキング能力では情報の争奪戦では勝てない……敵に回すと危険過ぎる……情報と言う面で向こうは鬼の俺を封じ込めて王手を掛けているんだ。

(……すげえ…)

だが危険とわかっているのに、俺の心を支配したのは、『RAINBOW』のハッカーとしての腕だ。人のスマートフォンを躊躇なくクラッキングした実力……敵なら危険だが味方なら頼もしい仲間になる……

直ぐに返信しようとしたら

【ブツン。】

充電0%を知らせる数字……真っ黒なるスマートフォン。

「あっ、えっ?ちょっえっ!?…………」リアルタッチで何とも言えない悲しい顔をする闘牙。

(充電しとけば良かったあああああああああ!!)

コックピット内で両手で頭を抱える闘牙。その表情は絶望の表情だ。

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああおい!マジかよ。相手が返事を待ってこの始末!?どう考えても相手に俺への印象最悪だろ!」

悲鳴を上げ恐怖し最早RAINBOWに俺の個人情報がネットに拡散される絶望で俺は芋虫みたいに無限城の中にあるこたつに引きこもりたいのに、周りがそれを許してくれない。

俯き何かもう色々と心がボロボロになるも情けない顔でも正面にいるバッフェを睨み付けて……

「……でもここにまだ生きている連中の皆の命は……」

その時、脳裏に過ったのは酷く冷たい目をしたウォーズマンがハルトの言った燃えるように熱い一言だ。

『譲れないなら、戦うしかない』

「同感だ!?端から譲るつもりはない!?行くよ。激おこプンプン丸!!」

苦しくても悲しくても辛くても人はいつかは立ち上がり前を歩まないといけない……

半分逆ギレの啖呵と共に牙を持つ鬼が低く唸り声と共にアイセンサーを禍々しく光らせ正面のバッフェ達を鋭く睨み付け霊長兵器ヴァルヴレイヴが戦闘開始する。機体の各部から薄緑色の光を光らせる。

「この機体。動力はゲッ○ー線か!?この、バッフェめ!」

頭部に内蔵されたバリアブル・バルカンを発射して、

正面のバッフェ達を狙うも、突然の奇襲にも対応するとは流石は世界併合を掲げる国の軍人。バッフェ達はバルカン攻撃を回避したり大盾型のアイゼン・ガイストで防御しながらヴァルヴレイヴに一旦離れるも直ぐに接近してくる。

「くそ、やってやるぞ!プラモデルとアーケードゲームと殺された連中達の弔い合戦だ!?」

己を鼓舞して怒りの炎を燃やし自分の本来の能力を使う……機体の両肘部分から揺らめく炎を思わせる熱光刃を生やして

「……死ね。」

両腕で正面の有人式バッフェの装甲をΧ状に両断して、金色の爪を生やした両手で相手のコックピットを掴み。「燃えろ。」

両手の平から放つ金属を融解させる数千度の熱波、更に金色の爪から直線型の紅い熱線を発射してバッフェに向けて直に直撃させる。

「何だこの機体は!?あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

鬼の異能の力に恐怖の断末魔を上げたドルシアの軍人は勿論、機体の計器すらドロドロの赤熱に溶かして、大地に落とす。泥のようにグチャと潰れ煙を上げ……

追従した無人機は指示信号をロスト、でたらめな軌道を描いて人工海の方に落ちて行く……

「……。」

無言で首を動かし無人機達の方向を見据えると、ヴァルヴレイヴは右拳を握り締め腕を一気に引き、落ちて行く2機の無人機に向かって全集中の呼吸。闘牙の口から呼吸音と共に鬼の呼吸の基礎を発動する。

「シィィィィィ……っ火速(かそく)!!」

機体の全身を通る紅い光が両足部分と両拳に集中して深紅の雷とも稲光とも言える閃光と共に機体の重さを忘れる程の瞬く間に無人機に向かって距離を詰めて……同時に腕の先、籠手の先端に取り付けられた『クリア・フォッシル』が紅く光る右拳の表面に赤い硬質残光を集め硬くさせて鈍器に変える、更に揺らめく炎の形状をした熱が無数の螺旋を描きドリル基"機巧槍"の形に変えて……

(…偶然なのかは、……必然なのかは知らないが機体の特性が俺の戦い方に近いのは、素直にありがたい……)

鬼の呼吸と共に放たれた【鬼闘術 螺旋槍】と呼ばれる貫通技が無人機達の装甲を瞬く間に削り穿ち無人機達爆発四散させ機体は格好良く爆炎を背にして勢い余って海にボッシュート。

「いかん。また加減出来ずに落ちた……」

さっきの技は足場がちゃんとないと高所からまっ逆さまになる諸刃の技……欠陥と隙が大きい技なのだ。

海に落ちたヴァルヴレイヴは平泳ぎしながら、残りの敵の攻撃を避ける。

「平泳ぎじゃ駄目だな……」

クロールに泳ぎ方を変えてヴァルヴレイヴは、泳ぎながら状況を確認する。

そうこうしている内に再びモジュール内部が激しく揺れて天蓋を壊して無数のバッフェ隊が侵入してくる。

すぐさま異常に気付いたバッフェの別働隊がやってきた。無人機と有人式バッフェらに残ったバッフェ達を合わせて海中を移動するヴァルヴレイヴに向かって一斉射。VLCポリマーという強化合成樹脂素材に掠れさせないようにクロールで移動しつつ。バッフェ達はひたすら追撃する。

「増援か……数は約20……9機のド○をアムロは3分足らずで全滅させたけど……5分も有れば充分だな……」

学園には生徒や先生達が避難している。極力学園から離れて戦う必要がある。あんだけいるなら学園や市街地を火の海と瓦礫の山に変えてもおかしくない。

バッフェ隊はヴァルヴレイヴの有効射程範囲外からの遠距離射撃を繰り返す。相手は所詮足つき、空を飛んでいる自分達には手も足も出ないと高を括る……

 

「……出し惜しみしている場合じゃないな。バァァルカン!!」

機体の首を動かして飛来するバッフェ達に向かって頭部に内蔵されたバリアブル・バルカンを発射。反撃に出る。

こちらに接近する有人式バッフェ一機と無人機一機に命中して穴だらけに破壊成功するも、息を尽かさず………

「よし。あっ、やべっ!」

バッフェ隊達の虎の子のビーム砲『デュケノワ・キャノン』の集中砲火で慌てて敵の攻撃をやり過ごす為、機体を海中に深くに沈めると両手足を纏っている紅い炎の揺らめきが弱くなっていき海の中では炎竜の竜人外装の能力は半分以下に下がる。

「なら……【血鬼術 竜人外装 海竜】!!」

全身を纏っていた炎状の異能の力が完全に消えて代わりの物を両の手の甲に出現させる。

「ふっ、連中に目に物見せてやる。」

血のような鬼の赤い両目をONE PIECEのド○ラミンゴの特徴的なグラサンを掛けて隠しニヤリと嗤う闘牙。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

海上から突然飛び出るのは水で出来た鋭い鰭が生やした触手が空を飛び回るバッフェ達を串刺しにして人工の海に叩きつける。海に叩き付けられた有人式バッフェはひしゃげて爆発四散する。

更に触手は鞭のように無人機の一つに巻き付けて引っ張り切断する。

「次っ!」

「何なんだ!?あの触手はっ!?」

突然前触れもなく人工の海から出現した二本の触手にうろたえる有人式バッフェの胴体を捕まえて海に引き摺り込む。

突然海中深くに引き摺り込まれたパイロットが最後に見たのは、自分の機体に肉迫し拳に抜き放つ戦略特級兵器ヴァルヴレイヴの姿であった……

 

水中から『クリア・フォッシル』のレイヴ・エネルギーによる硬質残光を集めて、光の投げナイフの形状にして、空を飛び回るバッフェ達に投擲する。

有人式は回避して無人機達に次々と直撃し撃墜させて、

海中の中で機体のアイセンサーが光る。

姿勢を低くしながら両の触手で再び有人式バッフェを海中深くに引き摺り込むと

「大雪山おろしィィィィィィ!?」

両手の甲から生やした伸縮自在の鋭利な鰭付き両触手を使い人工の海に水竜巻を発生させて竜巻状の空間で掴んだバッフェに高速回転を加えてダイナミックに投げ飛ばす。

「あっ、」

投げ飛ばされたバッフェは咲森学園の体育館の方向に向かっているのに気付き、触手でバッフェを串刺しにして体育館から引き離す。

「この技は意外に使えないな。」

モジュールの海が意志を持ったかのように独りでに激しく動き出し沸き上がる。巨大な水柱を出現させてその勢いを利用して地上に戻るヴァルヴレイヴ。

水で出来た触手を引っ込めて残りの相手を見据えながら両肩から全身を覆う内側を深紅に外側を漆黒の黒い貴公子が身に付ける大きな襟の立ったマントを羽織る。

【血鬼術 竜人外装 炎竜】

「…ヴァンパイア……」

誰かが体育館の二階の窓から見たヴァルヴレイヴをそう言った。

咲森学園の窓から見ている生徒達から見るとその姿は…夜の時間に美しい女の血を求めて現れる夜の貴公子……『ドラキュラ』その物に見えるのであった。

「戦争を知らない軍隊なぞに!?」

バッフェ部隊の隊長は声を上げて地上にいるヴァルヴレイヴを一斉射するも闘牙は声を上げて言う。

「そういう事を言う馬鹿なヤツ程、あっさり死ぬんだよ!!」

日の光と熱を遮断するマントでマントの形状で有りながら蝙蝠のように飛行可能の皮膜付き翼になる。更に腰から二対四枚の昆虫の羽のように展開された『センシズ・ナーブ』と言うセンサーだ。そしてその勢いで大地を蹴りバッフェ達のいる空へ駆け上がり、突然の飛翔に一瞬硬直したバッフェへ肉迫し

「ヒッ!」

「鬼狩りでもないのに夜の鬼に戦いを挑んだ事、後悔してから地獄に墜ちろ!!」

機体側胸部に収納された『フォルド・シックル』を展開。

小型の死神の鎌を両手に装備してマントを巨大な蝙蝠の翼のように大きく展開して両腕を動かして深く意識せず片腕を振るい黒いマントで硬直したバッフェを両断する。

「ああああああああああああ!!」

爆散した相手を無視して瞬く間他のバッフェ達に急接近し死神の鎌を振るうもバッフェ達はその散開して地上から飛んできたヴァルヴレイヴの攻撃を回避する。

「逃がさん!!【血鬼術 血鎌】からの【血鬼術 飛び血鎌】!!」

蝙蝠の翼を持つ悪魔の如く夜の空舞う機体の両手を赤い血に染め上げてフォルド・シックルの刃に滴らせて、鎌を禍々しくコーティングさせて散開したバッフェ達に無数にその場から放つ。『血鎌』に薄い刃のような血の斬撃を飛ばし無人機バッフェも有人式バッフェも飛来し追尾してくる無数の猛毒の深紅の血の刃に切り刻まれ爆発し墜落して行く。

「他所の国の機密たっぷりなこの機体をお手軽なデリバリー宜しくなお持ち帰り等させるか!!新手のナンパじゃあるまいし!そうは問屋は卸さない!!」

数機追尾してくる血の刃を利用して俺に向かってくるも、

(ん。)

自身の血で放った刃だから自身の意のままに操作可能。

ギリギリまで引き寄せて俺に血の刃をぶつけようとするも、刃は全てヴァルヴレイヴを避けてバッフェ達に追撃して撃破する。更に次々とバッフェに接近して遠慮なく血鎌を振るい次々と破壊する……

 

尚も俺の乗る機体を破壊しようとするバッフェ達の一斉射に対し同時に、腕の先、手首に取り付けられた『クリア・フォッシル』が赤く発光し。それは、ヴァルヴレイヴの背後に収納された動力源『レイヴ』から供給されるレイヴ・エネルギーの余剰分を排出するためのユニットであるをヴァルヴレイヴは素早く腕を振るうと、その腕の動きに合わせてクリア・フォッシルから放たれた残光が硬質化し、飛んでくる一斉射の銃弾の全て弾き散らした。クリア・フォッシルから排出されて硬質化レイヴ・エネルギーは、攻撃や防御に利用する事が出来る。バッフェには決して不可能か、ヴァルヴレイヴだけの特性。

残光を光の幕にして防ぎ、光の幕でバッフェ達の視界を封じて、有人式の一機に狙いを定めて蝙蝠のように夜の空高く勢いつけて舞い上がり真上から相手の頭上に目掛けて膝から揺らめく炎状の熱光刃を生やしてニードロップを叩き付けると同時に熱光刃で両断する。有人式バッフェが左右に切り裂かれるその隙間から緑色のアイセンサーを光らせ左右の足の裏を近くにいた無人機に見せると同時に裏から深紅の直線型の熱線を放射。熱光線が無人機を穿ち力無く墜落する様を見て……

「学園の敷地に落とさないようにしなきゃ……」

墜落する2機の無人機バッフェを両手の血鎌に突き刺して敵目掛けて勢い良く投擲する。

散らばった敵の奴ら投擲されたバッフェとぶつかり、

2本の血鎌を左手に持ち右手をバッフェ達に向け

機体のマニピューレーターに覆うように生えた赤い生体組織の先端にある金色の爪の部分を赤く発光させて拡散熱光線と手甲部分の対人用レーザー『ハンド・レイ』を発射してバッフェ達を塵も残さず焼き尽くす。更に反対側に向き直り反対側にいるバッフェ達に向けて左右両手の5本の金の爪と爪の間から高熱を帯びた赤い光の糸を形成し何処かの作品の糸使いの構えをして

「考えるな!感じろ!そして俺の家の前に腐ったイカを置いたのは、貴様らか!!【血鬼術 炎竜ノ髭】」

誰が何と言おうと濡れ衣である……でも相手は確実な侵略者……何を言おうと問題無いである!!

バッフェ達をまとめて熱刃の糸に巻き付け縛り上げると同時、焼き切り裂く……

【血鬼術 焔鎌】

ヴァルヴレイヴは遠距離攻撃する際に地面に落ちた血鎌を拾い刃に高熱の炎を宿して一種のヒート・サイスを作り出す。

白いモニタ内に映る35/100が激しく90近くまで上がっては10以下まで減少を繰り返すが……この数字が熱に関連する数字とは知ってるが、炎竜鬼の特性の一つ……外部から熱を吸収して血鬼術による炎の攻撃に排熱の手助けをしているとは、まだ誰も知らない……

機体の頭部、肩、胸から廃熱の煙が一つも出ないも、炎竜鬼が貯めて居ては次々と放つ血鬼術のおかげである。

両の手に高熱を帯びた血鎌を持ち自分に迫るバッフェ達を次々と両断、爆散。切り裂き、燃え上がらせる。

両肩に装備されている盾『アイゼン・ガイスト』を構えて近づいてきたもう1機のバッフェも、弾幕の間隙を縫って素早く回り込み、

「シックルブーメラン!!」

左手に持っていた焔鎌を回転するブーメランの如く投擲して風を切り裂きながら相手の正面に突き刺して、その隙に後ろに回り込み残った右手の焔鎌で背後から焼き切り裂き、爆風を背に投擲した血鎌を回収して更に上空にいる敵達目指して高く飛ぶ。

「はい。ステップ、ターン、んでのアクセル。」

なおも撃ってくるバッフェの攻撃を空中高く身をひねって回避してからの勢いを着けた飛び蹴りでバッフェの頭部を蹴り潰しその機体を足場代わりにして空中に跳び近くにいた別の機体にターンキックに速度を上げてからの追撃のハイキック。

空中で飛び交う残りのバッフェ達に硬質残光を拳に集めて打撃で叩き潰し別のバッフェのアイゼン・ガイストで防御する状態のまま金の爪を赤く光らせて軌跡と共にバッフェの装甲を引っ掻き焼き裂く。赤と黒の装甲の機体に爪と肘に膝から揺らめき燃える炎状の熱光刃が軌跡を描きながら夜の空を紅い流星が次々とバッフェ達を蹴散らす。

空中でターン。そのバッフェ目掛けて突っ込んでゆき、勢いに任せて空気を引っ掻くように金の爪で指先を振るう。

「鬼闘術 炎竜爆火爪!」

硬質残光の帯が光の爪となってバッフェを襲い、よろけたところに更に本命の高熱を帯びた爪でバッフェを一気に貫ら抜きそのまま引き裂く。

 

咲森学園の夜の空を縦横無尽にマントを蝙蝠の翼に変えて飛び回るロボットを私は憧れのアイドルを見るように羨望の眼差しで見てしまった…子供の頃……酒を飲んで親が寝てる合間に音を消してテレビに映った眩しい過ぎる綺麗な存在……孤独で惨めな日々の中で、死んだ私の目に光と輝きを与え小さな心臓にドキドキを教え、テレビの向こう側とテレビから離れて見る自分との違いに驚き音の無いにも関わらず楽しそうに、目に星の輝きがあると思ってしまうくらいテレビの向こう側の彼女は踊り歌う様子に私は向こうと自分の境遇の違いに悔しさを覚え酷く腫れた頬の痛みも合わせて声を押し殺し小さく涙を流しながら服の中に隠れた痛む身体で拳を握りながら………自分の世界を変える存在とその日出会った……その忘れられない日に匹敵する光景が私の目の前で繰り広げている。

「……。」

純然足る……圧倒的な……力が其処にあった……何もかも、自分を押さえ付ける世界の全ての障害を打ち砕く……自由に出来る力……その力が私にも有れば………冷たく氷の牢獄のようなこの日常を変えられる!孤独な無期懲役の日々が終わる事が出来る!私の名を世界に刻みつける事が出来る……世界に消されない……有名になれる!諦めた夢がまた叶えられる。誰も助けてくれない見向きもされない……存在しないも同然の者から開放される!皆が当たり前のように持っている……私が持っていない……何よりも本当に欲しい物だって……

「……手に入れられる。」

私の目はかつてない程のやる気に満ち溢れていた………大きな物語が始まる……そんな予感がしていた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

協力相手になる人物からのメールの返信が来ない中……

「……。」

この暗く狭い1人だけの世界の中で私は画面に映るソレに興味はうっすらとあった……近くの布団の上に乗っているのは、掃除を一段落しての休憩中に直ぐ近くで私のお気に入りのキモカワぬいぐるみと遊ぶ飛燕君?飛燕ちゃん?飛燕殿?飛燕様?飛燕さん……と色々と呼び方を考えるが、決まらないこの機械の持ち主の操真闘牙と言う高校二年生?アキラは得意のクラッキングで彼に関する事を自分なり調べていたが、まず夜に活動する……朝から昼間……日の出る時間に基本姿を見せない…何だか引きこもりの香り……同族の匂いがするよ。

学園への登校は基本1日中曇りや雨が降っている日。保健体育は基本サボっている……社交性は平均的で、所属している部活はオタクの集まる男子文化部……最近まで顔も出さなかった幽霊部員。何やら色々なガラクタとも呼べる妙な物を集めている収集家の一面もあり、夜の伝説の祠で1人趣味の琵琶を弾いている習慣がある。こうして見ると連れの人間と色々と暗躍しているようだ。

夜空を紅い光の軌跡を描きながら飛ぶ吸血鬼の映像に視線を戻し

(……にしても、滅茶苦茶強いな……)

ドルシアの兵器その物には詳しくないが、操真闘牙が現在操縦しているロボットの方が相手の数の有利を物ともしない圧倒的な質と手札の数……普段余り周りの物事に感心を覚えない引きこもり私ですらある種の爽快感を覚えてしまう。自分が開発したWIREDもお祭り騒ぎだ…

「ヒュ~~♪」

思わず口笛が出る程だ。そうこうしてる内に残りのバッフェが1機だけになる。

 

 

「何なのだあの光は!?」

有人式バッフェは、下部に取り付けられた虎の子のビーム砲『デュケノワ・キャノン』を放つが、ヴァルヴレイヴはバック転のような動きでこれを回避。手首と同じく踵にも装備されているクリア・フォッシルからレイヴ・エネルギーが放出され、その残光は硬質化してだんだんと大きくなり、バッフェへ撃ち出される。慌ててアイゼン・ガイストを眼前に構えて防御するが、ヴァルヴレイヴは踵から光の帯を引いたままバッフェの周りを縦横無尽に飛び回る。その残光は端から硬質化し、バッフェがビームガトリングで破壊するよりも速く移動、早く硬質残光が生まれる

「速すぎる……何だ!?何の光なんだ!?」

瞬く間に光の繭と黒いマントの隙間から無数に放たれる堕姫の帯がバッフェを包みこむ……

「……あれって!?」

流木野は見覚えがある着物の柄の帯がロボットが纏う黒いマントの隙間から出現したのを見て目を見開き驚き表情をする。

『種の仕掛けのない手品だよ……』

落ち葉拾いに落ち葉を一纏めに使っていた人はそう答えていたが、どんな手品を使えば、ドルシアの兵器を包むサイズを用意出来る……

「勝敗は常に機体の顔で決まる!戦争アニメ代表作のガ○ダム第1話を見なかったのが貴様の敗因だっ!?」

ソレに包まれたバッフェは、自らの培う経験が全て意味を成さない未知の現象に恐怖し、ビームガトリングを闇雲に連射し乱射する。

「来るな!来るな!何なのだ!何なのだ!あの機体は!?あの性能は!この帯は!」

光の繭と帯の中、ヴァルヴレイヴのアイセンサーの瞳が激しく光る。

「貴様が最後に見るには贅沢過ぎる美しい光と帯の光景だ………地獄に行く覚悟と準備は済んだか?済まなくても強制的に連れってやろう!!」

狂乱する有人式バッフェを前に鬼が舞う!

「シィィィィィ……火速っ!?全集中 鬼の呼吸 弐の型 鬼流舞爪斬(きりゅうぶそうざん)!?」

全集中 常中 で更に速度を上げたヴァルヴレイヴは左腰に帯びた太刀型装備『ジー・エッジ』と名付けられた片刃の東洋の刀を抜刀。

カタナに紅い血を流し込んだ瞬間、燃える爆血刀となったカタナを両手で握り締め失ったプラモデル達のモビルスーツやアメイン達の顔とさっき見た山田サンダーの親友のノブの顔が横切りながら振り向き、流れに身を委ねて怒りを込めた怒涛の高速の斬撃を燃える己の血と共に次々と叩き付ける。バッフェの背後から両断、更に勢いのまま回転し、切り上げの一太刀。そして更に、真一文字に胴を凪ぐ。無数の怒りが込められた鬼の燃える斬撃にバッフェの爆炎と、光の繭に照らされ、桜吹雪のように舞い上がる火の粉に蝙蝠の翼のように空を舞うヴァルヴレイヴの異形の姿が赤黒く一瞬美しく煌いた。そしてそれは……一つの小さな戦いの終わりを告げて……大きな戦いの始まりでもあった……

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

人工の海にその身を一度投げてからヴァルヴレイヴはゆっくりと飛び出て学園近くの浜辺へ着地した。

「……。」

やる気のない顔で敵の確認を終えて一度機体のコックピットのハッチを手動で開こうとする。

 

大きな騒ぎが終わり咲森学園の生徒達は窓から見える人型機体は動きを止めコックピットのハッチが開いて

「出てくるぞ。」

中から出てきたのは、ペンギンと白クマとパンダ……そして高○健の顔芸をする謎の年寄りと十字架に張り付けにされた凄くやる気の無いナマケモノの着ぐるみを着てアントニ○猪木の顔芸をする闘牙。

「えっ?何あれ?」

何やら会話をしているも生徒達は、一瞬戸惑うも守ってくれた助けてくれた存在にお礼の言葉を窓から次々と口にだす。

闘牙の顔を見せた映像は、やはり全世界に中継されていた。ワイヤードでその中継をずっと見ていた全世界の人間達と、学園校舎の窓から顔を出す学園生徒達。現実とネット、その両方でハルトに対する歓声が爆発した。

【ドッキリ】

【サイコー!!!!】

【やった!】

【すげえぞ】

【ネットのニュース見た?】

【あの子カッコいい】

【マジすげーよあいつ!】

【助かったって事だろう】

【怖かったよ……】

【最高だよ!】

【軍人相手にだろ!】

【フレンドしとく】

【ありがとう!】

【性能さってやつか】

【あのロボットって結局誰のなんだ】

【それマジ】

【アップされてるって】

【何あのロボット~~】

【ロボットという言い方は正確ではない】

【写真アップしといたぞ】

【ジオールの機密兵器じゃん】

その中には勿論、マリエにアイナやキューマもいて、アイナ等は涙目になりながら「良かった」と闘牙の無事を喜んでいる。キューマ達と一緒に逃げてきたサキも、自分のスマートフォンでワイヤードに流れる書き込みを追っている。

【ウソだろ!】

【乗ってるの、子供じゃん】

【軍人じゃないの?】

【誰だよアイツ】

世界中の人々の反応を見てサキは何かを企んでいるかのように笑い、学園に登録されている闘牙のプロフィールにワイヤードアカウントもつけて拡散した。

(これで、種は蒔かれた……)

これは切っ掛けだ……かつてない程の大きな……あの頃のように…否、下手すればあの頃以上に自分の願いが叶うかも……

(次はまたあの変わり者の先輩に会いに行かないと……)

会うのは、正直悩むが、これは紛れもないチャンスだ。リスクを恐れては私の願いは叶わない……

(私の願いの為に利用させて貰うわよ。私の名字を間違いまくる操真闘牙先輩……)

聞きたい事が正直多過ぎる……夕方祠で見た帯も前に見た瞳の色が真紅のルビーのように変わる様も……あの謎の機体に迷う事なく乗って乗りこなす事も……

【高校生!?】

【何でロボット乗ってんだ?】

【かわいくない?】

【フレンド登録しようよ】

 

体育館では……

「撮影とかじゃなくて?」

「後で色々と聞かないと……」

(やっぱり乗っていたんだね闘牙。)

何やらあの通話の時に聞こえた焦りようからもしやと思っていたが……マリエは色々と考えながら隣で一緒に動画を見る七海先生の乳を無意識に触るのだ。

「おう……グレイト……」

何にだ……

「あいつ俺の友達だぜ!」

「でも良かった……」

でも男友達の無事の姿を見て素直に安堵の表情をするのだ。

 

「おおぅ……」

ワイヤードを見ていたアキラはとりあえず、連絡がなかった協力相手が無事だった事に安心して笑みを小さく浮かべる。何故かナマケモノの着ぐるみを着ているのは謎だが

猪木の顔芸をやめて張り付けされていたナマケモノの着ぐるみを着た闘牙は金属製の十字架を力技で根元から破壊してパンダやペンギン達を握手してキャベツ等を手渡して謎の高○健の顔芸をする年寄りにハリセンで顔を思い切り打たれて彼らを機体の片手に乗せてゆっくりと下ろして滅茶苦茶号泣しながら別れる一部始終を見ていた闘牙は無言でコックピットに戻り機体を大の字に寝かせて『RAINBOW』について頭を思い切り抱えて悩むのだ。

 

「どうしよう……」

充電器にまずはスマートフォンを繋ぐ事から初めないと……

キテレツ大百科のキテレツのあのサンバイザータイプの帽子を頭に被りながら闘牙は考える。

 

スマートフォンが真っ黒の状態の為に世間が自分を注目しているとは知らない闘牙。だが……

「っ!」

そして無意識に感じる敵意に闘牙は顔を上げて無言でコックピットから出て機体から跳び近くに着地して少し天蓋が投影する星空の下を歩きその足をぴたりと止める。自分の目の前に酷く冷たい目した銀髪男が立っていた。

「……。」

「……。」

【……………………………………………………………】

運命の邂逅……互いに無言で歩み出して……近づくが

闘牙は無言でジョジョの主人公の空○承太郎の顔芸をするのだ……

「??」

冷たい目をしたエルエルフは一瞬、歩みを止めてしまうだ。




注意、この小説は原作崩壊です。カオスです。何でもアリです。だからこの小説を見る前に皆さんはYouTubeで《マリグナントバリエーション》と検索して動画を見て下さい。


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第5話ヴァルヴァルの奇妙な冒険……サンバイザーは砕けない……

エルエルフと闘牙の初戦。変な機体に乗ったせいで望まない流れに巻き込まれる鬼。


キテレ○大百科の木手英一のサンバイザーを着けて○ョジョの空条承太郎の顔で、目の前に現れた男を見る。

(……野郎の纏う気配で分かる……コイツはぁ……殺気だぁ~)妙なイントネーションを心の中で呟きながら目の前の冷たい目をした男が一瞬足を止めた。

【…………………………………………………………………………………………………………………………】

「オメェの言う通り、勝ち負けのない平和な世界なんて、夢幻だったな……まぁ、ハルトじゃないが、甘い絵空事や理想を見てたのは、俺もおんなじか…………」

「……」

男はゆっくりと近づいてくる。何も言わずに、何も興味もなさそうな……真面目に冷たい目をしている。

「だが、そんな夢くらい見てなきゃ厳しい現実と向き合えられない奴らも一部はいるんだよ。」

(奴は軍人……狙いはガン○ム…なら奴が俺にする事は自ずと……)

【音の鳴らない心のゴングが鳴る……】

表情を一つも変えずに男は袖口から隠していたナイフを取り出し、闘牙に向かってナイフを刺し貫こうとする。

だが……

「!!」

一陣の風が吹くと同時に男の目の前にいた闘牙は、空中高く跳躍して男に背後に回り込み無言の男に対して答える。

「俺もそんな夢を見てる男の一人なんだよな……だからこそこの平和を奪った貴様らをプッツンさせてやる!!」ジョジョ立ちしながら殺そうと来る男に戦いを挑む。

「っ!?」

男は驚愕に目を見開き、直ぐに闘牙の放たれた蹴りをしゃがんで回避すると同時に懐から素早く銃を取り出し躊躇なく闘牙に向けて発砲。一発の銃声が海辺に響く。

「っ!?」

「おいおい……そんなにビックリする表情をするな……色々とお前の想定外な事に混乱するのは分かるが……」

一発の銃弾を指と指の間で受け止め血のような両目を男に向けて闘牙は答える……

「…お前は何者だ……」

「俺?……只の地上最強の生物だ……」

不敵に笑い構えて赤い闘気と熱気を纏い闘牙は答えるのだ……

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

(危ねぇぇぇぇぇぇえええええええええええ!!)突然の銃弾に驚くも指で受け止めた闘牙は冷や汗を蒸発させてポーカーフェイスをする炎竜鬼……普通の交渉をしようと考えたなら、この始末!?躊躇なくウォーズマンは俺を殺しに来やがった!?

(ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああもう!?どうしてこんな事に!?俺はウォーズマンのスクリュードライバーに大人しく殺されてウォーズマンスマイルで頭をごくごく飲まれる選択肢しかないのか!?いいや!?諦めるな!?俺の自由を取り戻し守る為に、目の前に立ち塞がる連中は全て排除する!!自由の翼は此処にある!?そうですよね!?エルヴィンさん)

脳内に○撃の巨人のメインテーマを流しながら

「お前はドルシアの軍人か?」

「…答えるつもりはない。」

「そりゃそうだ……真面目な顔してるもんな。お前……」

男は持った鋭いナイフを闘牙の喉元に振るうも、闘牙は一歩後ろに下がり、ナイフの刃を回避されて、直ぐ銃を向けるも、撃つより早くに闘牙は二歩前に進み男の銃を持つ手首を掴み発砲を封じる。

(あんまり相手への印象を悪くするのは、避けたい……だが、話が通じそうな感じはしない。)

再び男のナイフが迫るも、闘牙は敢えて男の手首を離して距離を取り鋭い蹴りの一撃で男の銃を蹴り飛ばし……海辺に落ちる。

男は一瞬、落ちた銃に視線を向けるも闘牙は焦らないフリをしてめっさ焦る。

(あのナイフ……当然だが日輪刀ではないが……だが観察力と分析力が高いウォーズマンと長期戦は避けたい……男は直ぐに銃を拾い使う……)

太陽が沈む鬼の有利な夜……藤の花の毒も日輪刀もないモジュール77……はっきり言って俺に有利過ぎる……だからこそ、俺は目の前の男に手が抜けないのだ……人間に油断して死んだ鬼達を知っているから……過去に日輪刀ではない刃物等で日の出まで足掻かれて消滅した鬼達を知っているからだ……

 

(敢えて銃を拾わせる!)

男から更に距離を離す闘牙。その隙に男は銃を拾い発砲。

今度は余裕に銃弾を見てから回避する闘牙は再び男に接近する。

(殺す事は余裕で出来る…何時もように………だが、この男は殺すなっ!?と己の中にいる人間だった己が言う!)

距離が近くなってから銃で俺の関節を撃ち動きを止めてからヘッドショットや心臓を狙うのがセオリーだろう。

さてさて……そろそろ鬼として俺を見せるか?

目の前の男には、出来る限り俺の特徴を教えた方が良い……今後の事を……咲森学園にいるアイツらの事を考えたなら俺が取るべき選択肢は……

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「……。」

接近しながら纏う空気が重く"変質"する……

瞬きをした瞬間、咲森学園の制服を着たジオール人の拳を抜き放つ!その一撃を近接格闘訓練で培ったドルシア人は紙一重に回避し、ナイフを振るう。

(予想より行動するスピードが早い……否、スピードだけではない……)

さっきと違い"全部"変わった……エルエルフは本能的に目の前のジオール人に警戒心を上げる。

(特殊な薬物か、あるいは違法な人体改造しているのか、どちらにしろ中立国の平和ボケの国にしては似合わない事をしている……)

二つの大国に怪しまれないように人型兵器を開発し、特殊な適性を持った人間しか乗れないようにした。恐らく機体が鹵獲されても良いように防犯システムに反応するのだろう。そして目の前のこのジオール人は、ヴァルヴレイヴに乗った……

ジオール人の拳の速度がどんどん速くなる。だがギリギリだが回避出来る……距離を離すと奴の蹴りがとぶ。

「貴様はジオール軍人か?」

少しでも相手の注意を散漫させる為にエルエルフは質問する。

「……答えてやる。」

相手は簡単に俺の誘いの言葉に乗った……質問しながら俺はナイフを振るい、ジオール人も攻撃しながら答えるつもりのようだ。

「まず、俺は人間ではない……」

その一言にエルエルフは、一瞬変な目をジオール人に向ける。

「どういう意味だ?」

(生体組織のほとんどが機械化されたサイボーグと言う意味か?または薬物で人体が強化されているという意味か。)

「……こういう意味だよ。オラオラオラオラオラオラ!!裁くのは俺の血鬼術(スタンド)だ!!」

ワケわからない言葉を口にしてジョジョ顔で急接近してくるジオール人に対してエルエルフは…

 

【パァン!】

再び銃声が海辺に響き渡る……

仰向けに倒れた闘牙の眉間に銃弾に撃たれた跡がある。

(……ふざけた事を言うジオール人だった……)

一発。更に一発。びくん、びくんと闘牙の体が跳ねる。

完全に血だまりに動かなくなった闘牙の身体を見下ろし、ここにはいない誰かへ語りかけるように、エルエルフは口を開いた。

「俺は、また勝ったよ……リーゼロッテ……」

自分にとって何よりも神聖なその名を呟き、目的の物を見上げる。ヴァルヴレイヴ。

(どうやって引きずり出してやろうかと思っていたが……手間が省けたな。戦闘はまだ終わっていないのに、わざわざ降りてくるとは……ジオール人、間抜けなやつだ)

ボロ雑巾ようになった……否、(へへへ旦那。あっしは其処らにいる只のボロ雑巾でやんすよ)と黒いマジックが書かれた雑巾の着ぐるみを着た闘牙には目もくれず、エルエルフは、ヴァルヴレイヴの下へと歩いていき、コックピットの中を調べようと近づくと

 

「伏せ(リバース)カードオープン!死者蘇生!」

すると背後から感じた異質な気配に背後に銃を向けるも

最初に視界に捉えたのは、血のような赤いルビー色の瞳をした殺した筈のジオール人の姿だった……そして気付く。

「っ!!」

(撃った銃弾の方が"潰れている")

ジオール人の眉間に直撃した俺が撃った弾が硬い何かに直撃して弾く暇もなく潰れてジオール人の眉間から落ちる。

「このサンバイザーを砕くだと……はっ、嘗められた物だな……言った筈だ……裁くのは俺の血鬼術(スタンド)だ!」

「何を言っている!お前は…」

至極当然のツッコミをするエルエルフは再び闘牙に向かって発砲するも金属の銃弾の方が闘牙の皮膚の硬さの前に潰れてその事実に驚愕は隠せない。

「ATフィールドは心の壁!貴様と俺には心の溝と壁が存在しているから貴様の攻撃は俺には通じない。お前友達いないだキャウン!!」

ジオール人の変な発言に何か普通にイラついたので普通に殴りかかったエルエルフ。

(犬みたいな鳴き声でふざけて倒れたぞ。コイツ。)

「ぬのハンカチバリア!!」

『ぬぬぬぬぬぬぬ』……しか書いていない奇妙なハンカチで接近して殴り掛かるエルエルフの拳とナイフをガードする闘牙。

「何故貴様は死なない……確かに殺した筈だ……」

「そして太陽拳!?」

エルエルフの質問を答えずに額から眩い閃光を放ちエルエルフの視界を一度を封じる。

「ぐあああああああああ!!」

 

「ちっ、奴は……」

「おえっ!」

離れた所でエルエルフに撃たれた銃弾数発を汚い血共に吐き出す闘牙。そして……口元の血を片手で拭い腕を高く上げて構える。

 

 

「せいやああああああああああ!!居合い斬りボンバー!」

視界が一時的に封じられて聴覚を使い相手の位置を知ろうとする後ろから聞こえた声に振り返りナイフを振るうも闘牙は助走を着けてからの全速力で接近し己の二の腕を使ったラリアットでエルエルフの首元を強打させて砂浜に転がす。

「あぁ……疲れた……」

転がっているエルエルフは起き上がらない……ぐったりと砂浜に座り込む闘牙は倒れたエルエルフに視線を向け話し掛ける。

「……とっくに視界は回復した筈だ。」

「……。」

血だまりは独りでに動き血鎌に形を変えて闘牙の元へ戻る。

「……俺を殺す算段がつかないのは、俺に関する事を何も知らないからだ……」

無言で砂浜から起き上がるエルエルフ。

「俺は人間じゃないって言っただろう……これでも昔は人間だったんだよ。」

やる気のない無気力な表情でエルエルフの方を見る闘牙

その目には凄く面倒くさい雰囲気が込められていて、それでもエルエルフは、彼を殺す為に動く。

「……。お前って…想像力や発想力は意外に乏しいんだな……」

ぐったりと座り込み夜空を見上げるジオール人に向かって弾を装填して発砲。再び闘牙の姿は肉体は空へ透けるように消えて次の瞬間エルエルフの首を掴み無理やり押さえつけ血鎌をエルフエルの顔に向け言う。

「……身体能力、反射神経……手札の数……その全部に負けてるんだよ。ドルシア軍人。」

エルエルフは尚も動こうとするがビクともしない。

「この血鎌は人の命を奪える毒が付着している……うっかり指先一つでも掠ったら死ぬぞ。お前なんて何時でも始末出来るんだよ。」

「…………。」

エルエルフはナイフを突き立てるも、刃が闘牙の皮膚を傷つかずしかし別の箇所にもナイフを振るう。やがて押さえつけられながらナイフを振るうのに疲れたのかナイフを振るうのを辞めて

(……抵抗を辞めた……いや違う。今も思考しているんだ。この危機的状況でどう俺を倒してガン○ムを手に入れるのか…)

「……何か俺、お前に殺されそうになっているのを必死に抵抗しているのに、俺が悪者みたいだな……」

そして押さえつけられたエルエルフは近く砂を片手で掴み闘牙の顔に向かって投げる。

「ぐおっ!!目がああああああああああああ!?」

天空の城ラ○ュタのム○カ大佐の格好をして苦しむ闘牙を払いのけて起き上がり素早く発砲。

「北斗神拳究極奥義 無想転生の前では死ある」

【ドボン。】

発砲された弾を直ぐに肉体を空に消えて回避したと思ったら海に落ちる。犬神家の逆さまのアレになる闘牙。

(勝手に落ちたぞ。)

「ゴボゴボゴボゴボゴボゴボスターゴボゴボプラチナ・ザ・ワールド!!ゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボ……そしてゴボゴボ時はゴボゴボ止まゴボゴボるゴボゴボ!!」

【ドーーン!!】

逆さまに綺麗に溺れながら知り合いの悪霊(スタンド)の力を借りる闘牙。

世界は白黒に変わり全ての物体の動きは停止して作者公認の最強スタンド スタープラチナが何処からか出現し、

「あの、すいません。呼んでそうそう悪いんですけどスタープラチナさん。助けてくれませんか?」

「……………」

「否、stardriver輝き○タクトのゼロ時間担当って言ったのは謝りますから……てっ脇や膝の裏をこちょこちょしないで、数十年前何気なく言った言葉気にしているんですか。あっ、変なところ小突くのをやめて……今時間停止45秒しか持たないんだから……」

「…………」

「……人が逆さまで溺れている様を見て暢気にジュースとスルメイカ食べながら寛がないでよ。そのスルメイカタクミ先生の賄賂なのに!?」

43秒後……

「むっ、奴は何処へいった」

「ここさ!」

声のする方向に銃を向けると何やら頭に変な人参の被り物を被りと木の枝を片手に持った闘牙は自信満々に言う。

「最初に言っておく、お前は俺の魔法の前に敗れる……」

「??何言ってるんだ?」至極正論を口にする軍人。

「スイーツ。」

木の枝の短い杖をエルエルフに向けて呪文を唱える。

「…うっ!なっ、……」

突然エルエルフは猛烈に甘い物が食べたくなった。

「ふっ、今貴様は任務中に限らずに甘い物を猛烈に食べたいと思っただろ!?しかしここは只の海辺!そして貴様も俺も甘い物は持ってはいない!貴様は猛烈に甘い物を食べたいのに甘い物がない苦しみを味わうが良い!?ワッハハハハハハハハハハハハ……」

「くっ!」

極悪非道な邪悪な高笑いをする闘牙の杖を瞬時に撃ち抜き破壊するエルエルフは甘い物を凄く食べたい気持ちと任務に集中しなければないない理性がせめぎ合う。

「野郎!!よくもユニーバーサルスタジオジャパンのお土産の杖を!!キエエエエエエエエエエエ!?」

いちいちリアクションが激しい闘牙は怪鳥の叫び声を上げエルエルフに襲いかかる。

(何なんだ!コイツは……)

銃を撃つ事なく蹴りを放ち闘牙に直撃すると同時にレタスの着ぐるみをきた姿になる。

「バギャン!」

怪獣の名前のような悲鳴を上げる闘牙にエルエルフは、家畜を見る冷めた目で相手を見る。

(何故このジオール人はレタスの着ぐるみを来ている……いつの間に?一体何の為に……)

(強い……間違いなく……俺が出会った鬼狩り達の歴代の柱や剣士らを除いて間違いなく最強の人間だ……コイツは……コイツは……)

「燃えてきたぜ!?」

真島ヒロ作品の主役の顔芸をして答えるもレタスの着ぐるみを着てるせいでイマイチ格好がつかない……勝手に強敵認定されたりエルエルフは可哀想……

しかしエルエルフは冷静に相手に向かって銃撃を続ける

「華麗に脱出!?」

レタスの着ぐるみから脱出して銃撃を回避して着ぐるみを盾にしてエルエルフに接近する。

(着ぐるみで俺の視界を封じて接近……)

着ぐるみの影では肉眼では見えないスタンド スター・プラチナとジョジョ顔をする闘牙が拳を握り構える。

そして……

「オラ、オラ、オラオラ!?オラオラオラオラ!?」

柔らか分厚い重いレタス着ぐるみの後ろ越しに鋭く早く重い打撃の叩きつける。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!?」

着ぐるみ越しの向こう側にいるエルエルフは闘牙が放つ連続ラッシュ技の衝撃の雨に晒されて海辺に倒れ込む……

(着ぐるみ越しでこの威力……何故直接それで攻撃しない……ふざけてるのか?)

衝撃は来るも思った以上に痛みがなく只派手に吹き飛ばされただけのエルエルフ。

そして……エルエルフに接近しすかさず黄金の光に輝く抜刀する闘牙。

「焼き芋カリバァアアアアアアアアアアーーーーーー!!?」

(焼き芋カリバーだと……何だそれは?)

上からサツマイモの8割の皮を取った黄金の聖剣を振るうも、外は程好いサクサク中はホカホカの熱々のお芋がエルエルフに直撃して……あっさりと折れる。

「「甘い物!!」」

同時に叫ぶエルエルフは闘牙の二の腕を片腕で挟み甘い物を欲する謎の状態異常を解く為、薩摩芋カリバーを喰らう。

「ああ……俺の薩摩芋カリバーを良くも!?……味はどんな感じだ?」

「甘い……」

何だかんだ味の感想を教えてくれてホカホカの焼き芋も咀嚼し飲み込み答えるエルエルフは再びに闘牙に挑む。

「受け取れえええええええ!?炭酸を抜いたコーラ。」

ペットボトルのコーラを投げて片手で掴みそして

「いらん。」

海辺に落とす。

「ならば残りの芋とこのレッ○ブルはどうだ?」

素早くさっきの焼き芋を投擲して受け取り無言で食べるエルエルフ。

丁寧に食べながら彼は思う。

(俺は何故、このジオール人の前で焼いた芋を食べているんだろう……にしても甘いな……苦いコーヒーが欲しくなる。)

そして芋を食べ終えてレッ○ブルの缶を開きゆっくりと飲む。

「っ!?」

飲んだ瞬間目をカッと見開くエルエルフ。

「どうだ!?背中に翼を感じるか?」

「確かに背中に翼が生えたように感じるが……だからどうした?」

「そうか……ならとっととケリつけるか。」

ジョジョ顔で空条承太郎の面をした闘牙は後ろから再びスター・プラチナを背後から出現させ

「さっきから貴様の後ろに見えるソイツは何だ?」

「只の知らない人だよ。」

全く持って変なやり取りをする……だが次の瞬間、闘牙の姿が消え

「な━━━っ!?」

そして闘牙の口内には、まるで吸血鬼のような牙が生えていた。そしてその一瞬でエルエルフの背後に周り込み自分の動きを完全に止めてそのまま闘牙の牙が、エルエルフの首筋に深く突き刺さった。

「う……ああああああああああああああ!!」

単純な痛みだけではなく。噛まれた傷口から、目に見えない"何か"が体内に侵入ってきて精神を侵されてしまうような、得体の知れない恐怖を感じながら、エルエルフの意識は闇へと落ちていった

その光景をスター・プラチナはうんうんと勝手に理解した雰囲気を出して姿をモジュール77から霞みのように消して行くを




だんだんと滅茶苦茶になります。まぁ既に原作から既に離れ始めているな……


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第6話 後生だよ皆!?命懸けで戦場で戦い抜いた俺に吉野家やマックやケンタッキーや餃子の王将に行っても良いだろう!!数百年間たっても食べたい物がいっぱいあるんだよ!!ビバっジャンクフード!!?

全然話が進まないな。皆久しぶり……削除した閑話を読んだ人達は少し待っていて、プロットがしっかり出来たらその内、投稿するから……今は普通に本編を少しずつ進めないといけない時……


ヴァルヴレイヴがバッフェを撃墜し、そのコックピットから闘牙が変な連中と外へ出た事を中継で確認したキューマ達は、誰よりも早くその場へ駆けつけた。

「いた!あそこだ!」

「二人いますよ!?」

跪くヴァルヴレイヴの足元に色々と散乱しているも、二人の人影を見つけ、駆け寄るキューマ達。一人はジョジョ顔をしている闘牙。そしてもう一人はジョジョをしているが誰なのかわからない。

その顔を覗き込み、キューマとアイナは記憶を呼び起こす。

「……何でこの人もジョジョの顔してるの?変顔でも流行っているの?」

サキはどういう状況だったか考察するもジョジョ顔をして気絶している二人に疑問を持つ。

「スタンド同士のラッシュバトルでもしたんでしょうか?」

「櫻井さん。取り敢えずジョジョから離れ………………あぁ、もう!?。何処向いてもジョジョ顔がどうしても目に移っちゃう!何かと目を惹くからジョジョの○妙な冒険は苦手よ……瞳孔滅茶開くな!その顔で気絶しないで!?ちょっとこっち向くな。」

サキはジョジョ顔で瞳孔を見開き気絶した闘牙の顔を砂に埋める。

「気絶してる人の顔を砂に埋める流木野さんの方が怖いよ……」

「こいつ……昼間、俺達に道を聞いてきた顔だけは良い五人組の一人か?」

「ヒイロ ○イ、フェニックス一○ 刹那ポジションの人です。」

間髪入れずに勝手に決めたポジションの名前を口にするアイナ

「まだ青銅一軍のネタ引っ張ってんの!?」

警戒しながらも、どうやら完全に気を失っているらしいと分かると、ひとまず闘牙の傍らへ膝をつく。うつ伏せていた身体を仰向けにすると、制服の胸元がケチャップまみれになっていた。一同は目を見張り……そして疑問の表情をする。

「コイツ何でケチャップまみれなのよ。」

「……理由無きケチャップが手に沢山ついたよ。畜生!?」

「闘牙さん。怪我はしてないんですか?」

キューマは出来る限り冷静に、、闘牙の体に触れて状態を確認する。

「……大丈夫、脈はある」

「でも、こんなにケチャップだらけ……!」

「体に傷はない。本当にどうしてケチャップまみれ何だよ。」

闘牙の事を気にするあまり、誰も隣に倒れている男が小さく呻いた事に気付かない。

「学校に運ぼう。とりあえず、保険の先生に━━」

突如、銃声が鳴り響いた。その銃声にキューマ達が驚いて目に向けると、そこにはいつの間にかドルシア軍特務部隊の四人が立っていた。銃声は、アードライが手に持つ拳銃が発した音だ。

道を聞いてきた無駄に顔と声の良い五人組の残りの奴だ。とキューマに続いてアイナも思い出す。

「ヴァルヴレイヴから離れてもらおう」

「ヴァル……ヴ……?」

「その笑っちゃうロボットの名前だよ。君達ジオール人が名づけたんだろ?」

(凄くダサい名前……)

サキは口に出さずロボットの名前に辛口評価をする。

馬鹿にしたように笑うクーフィアの言葉にサキは反応する。

「ジオール人。咲森学園の生徒じゃないの?」

「残念でした~~ドルシアの軍人だっての。間抜けなジオール人。」

狂気的な笑みを浮かべ、クーフィアがサキに銃口を向ける。

「っ!?」

「流木野さん!!」

アイナの口から悲鳴が上がる。

クーフィアはそのまま引き金を引き━━

再び、一発の銃声が海辺に響き渡る。

放たれた弾丸は狙いを違えず、クーフィアの銃を正確に弾き飛ばした。その場にいる全ての人間が、完全に予想していなかった弾丸の飛んできた方向を見る。

「無事か?ボッチ。」

「ボッチじゃないわよ!?……えっ?」

状況反射的にサキは反論の言葉を口にするが……

「撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ……名言だな。……あれ?何か声が変だぞ?この歳で声変わり?」

「っ!?」

「……口の中が甘い……喉渇いた……くそっ身体のあちこちが痛い……あっ、あっーーー。寝覚めが悪い事を寝てる人の目の前にするんじゃないって親に教わらなかったか?」

「エルエルフ……!?」

アードライは驚愕に声を震わせる。

先程までジョジョ顔で倒れていたエルエルフが目を覚まし、クーフィアの拳銃を撃ったのだ。

驚いたのはキューマ達も一緒だ。この男は四人の仲間の筈だ。だが今の銃弾は、明らかに自分達を守るものだった。裏切った?何故?考えても答えは出ない。

「ねぇ、あんたもしかして……」

誰もが理解不能といった顔をする中、サキは何か気付き驚きの表情をしてエルエルフに視線を向けエルエルフは鋭い視線をアードライ達から逸らさぬまま、キューマ達に向かって小さく呟く。

「向こうに換気口があるから……死にたくないならとっとと行け。」

「行くわよ!櫻井さん!」

「わっ!」

「チキショー!一体何がどうなってんだよ!?」

一体何が起きているのか、キューマとアイナには全く理解出来ない。だが、サキの行動は早かった。その呟きを聞いた瞬間、意を決したように息を吸い、アイナの手を取って換気口に向かって走り出す。慌ててキューマもその後に続いた。

キューマ達を守るように銃を構えているエルエルフは、傍らに砂まみれで倒れている闘牙の身体を見て眉をひそめて一言。

「……少し見てない間に一体何があった?……えっ?幽体離脱?」

「どういうつもりだ、エルエルフ!何故銃を向ける!」

アードライの言葉は至極当然の物だ。何故仲間である自分達に拳銃を向けさせ、敵であるジオール人を逃がすのか。

(エルエルフ?何言っているだ?コイツら……機体に乗るには、少し距離があるな……)

状況が良くわからないのは……エルエルフ自身も同じだ。だから今優先するは、さっきの先輩達の安全と状況整理の為に此処から一度離れる事だ。機体は勿論惜しいが、必ず取り返すと決意して……

「すまないが、お前らとは少し別れ道を歩ませて貰おう。」

「っ!?裏切るつもりか!?」

ハーノインとイクスアイン達はエルエルフの行動と発言に裏切りを

「誰にでも独りで考え悩める時間は必要だ。……そしてお前ら問答無用に追ってくるだろう。」

クーフィアは素早く弾き飛ばされた拳銃を拾いエルエルフに向かって発砲する。

「っ!?」

エルエルフはクーフィアの銃弾を素早く避けて、距離のあるクーフィアよりも銃を向けていた一番狙える位置にいたアードライに向かって問答無用に引き金を引いた。

「ぐぁぁぁぁぁぁっ!」

予備動作に気付き咄嗟に身をひねったものの、その銃弾はアードライの左の眼球を掠める。

(ほう……判断は悪くない。)

「アードライ!くそっ!」

もはや躊躇している余地なし、とハーノインとクーフィアが撃ち返す。その銃弾が裏切り者の右肩を掠め、衣服と血を散らせる。

だが、エルエルフは顔をしかめる事をすらせず拳銃で数発発砲しつつ素早く後退し、キューマ達が逃げ込んだ換気口の中にひらりと飛び込んだ。

周囲を警戒する頬に弾丸を掠らせて血を流すクーフィア。左肩を片手で押さえつつ止血をしながら本部に連絡を取るハーノイン。どちらもエルエルフの銃撃で衣服の一部を赤く染めらせるも、アードライ程重傷ではない。至って軽傷だ。

そして、唯一無傷のイクスアインに介抱されながらアードライは流血の止まらない左目を押さえ、臓腑を絞るような咆哮を海辺の空に上げる。

「エルエルフ……エルエルフゥゥゥゥアアアアアッ!!」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

咲森学園

「……。」

(致命傷は回避された……連中良い反射速度だ……人数自体は減らせなかったか………だが奴らにもそれなりにダメージは与えたから直ぐに追いかけては来れないな……)

換気口をアクション映画のスタントマンのように伝って

校舎の地下に出たサキ、アイナ、キューマ、キューマが背負ったベトベトで気絶したハルトの四人は、その後をスタイリッシュに追って転がり出てきたエルエルフに、訝しげな視線を向ける。

「お前……どうして俺達を助けた……お前、いったい何者なんだ

?」

キューマがエルエルフを問い詰める。アイナも戸惑った表情だ。

「取り敢えず……全員無事で良かった……所で誰か鏡持っていないか?何かさっきに比べて色々と違和感を感じるんだ。声とか身体付きとか……」

「???」

エルエルフはサキ達を見渡して安否確認を終えると目の前で軽く拳銃でクルクルとガンスピンをして学園生の制服の懐にしまい。海辺に着いた砂を軽く払いながら訪ねる。

気絶したハルトを除く三人は言葉の真偽が判断出来ず困ったように一度顔を見合せるも……

「……。」

「あっ、流木野さん。」

ゆっくりとサキは疑う表情をしながらエルエルフに近付き……自分のコンパクトミラーを開き鏡をエルエルフの顔に向ける。

「これで良いかしら?……闘牙先輩。」

核心になる物ははっきり言って何も無い……寧ろ相手の演技の可能性もある。闘牙の事を良く知らないし、ましてや目の前の銀髪の男子も良く知らない……だが…本当に何となく…只、自分の直感に従って目の前の銀髪の男子を何時も喜怒哀楽激しい先輩の名前で呼ぶ。

 

「何か……顔全然違くね。」

「別人ですね?闘牙先輩。」

 

「「何じゃこりゃあああああああああああああああああ!!?」」

リアクション芸人のような松田優作の顔芸をするエルエルフ(闘牙)は漸く自分の身に起きた現状を理解する。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「それも先輩が言っていた種も仕掛けの無い手品何ですか?」

体育座りをしてしょんぼりするエルエルフ(闘牙)にサキは普段通りに接する。

「イヤ違うよ!?何処の世界にド○ゴンボールのギュニー特戦隊のギュニーのチェンジ能力があるんだよ!?」

「知りませんよ。ド○ゴンボール見てないんですから。」

ギュニーの特戦隊のアノ変なポーズをしながら言うエルエルフ(闘牙)を冷めた目で見るサキ。

「お前……巨匠鳥山明の名作を読んでないなんて人生損しているぞ。今度文庫の方とアニメ両方貸すから見ろ!?べジータやピッコロが悪い奴から良い奴になったらお前だって絶対に感動の余り泣くからな。」

「本当に……闘牙先輩何ですか?」

「……闘牙なのか?お前……ってかこんな時に布教活動するなよ!?」

 

「にしても、俺の顔が砂まみれになっていたの誰か知らないか?」

「知らないわ。」闘牙の質問にサキは即答し

「えっ!?」その返答にビックリした表情をする二人。

「そうか。所で犬塚先輩は何で両手ケチャップまみれとベトベトまみれ何ですか?」

「……俺が色々聞きたいよ。本当に……操真闘牙なのか?」

「じゃあ、俺だと認識されるには、色々と判断材料が足りないか……」

「いえ、もう何か先輩らしい変な言動や行動で先輩と納得しました。」

「ジャカジャン♪皆が知っている操真闘牙についてのQ&Aコーナー♪」

「クイズ大会!?こんな非常時に!?」

「イヤだって、俺が俺と皆に証明する為には、やっぱり

必要だと思うんだ……」

「でも私先輩の事そもそも知らないです。」

「あっ、すいません。私も……」

「えっ!?」驚愕な表情をするエルエルフ(闘牙)

「このクイズ大会……そもそも良くてお前と同じ部活動しているか、同じクラスになった事のある奴らじゃないとわからないだろ……俺はそもそもお前の一つ上の先輩で櫻井達は後輩だし……」

「ガーーーーン!!」

OTLのポーズをするエルエルフ(闘牙)

「酷いわ!?あんまりよ!?そうやって何も知らない女の心を弄んでこの獣!?」

「オネェ口調やめてくれ。後何の話だよ!?」

犬塚先輩の鋭いツッコミ……

 

「取り敢えず……この姿になっちまったきっかけがわからない……俺、お前達が来る前にコイツと軽く戦っていたんだぞ。」

「先輩の手品は?」

「俺の手品に身体を入れ替えるチェンジは無い。ぐっ、」

「おい。大丈夫か?」

顔色が少し悪くなるエルエルフ。

「……気にするな。俺自身が攻撃を良いのをコイツに与えただけだ……まさかこんな形でドラゴ○ボールのギュニーにチェンジさせられた悟空の気持ちを知るはめになるとは……あちこち痛……」

 

「まだ少し、信じられないな……」

「俺だってそうですけど……実際にはそうなんだから、信じるしか……」

犬塚も疑問はもっとも出し、闘牙本人も色々と思うが信じきれていないようだ。

「でもよ。知らない奴が自分の後輩だって言うんだぜ。」

「今日ドルシアがモジュールを攻めて来るのも信じられないまま死んだ連中も先輩と同じ気持ちだったでしょうね。」

「…………。」

 

「先輩と銀髪の男子生徒の意識が入れ替わっているって事ですか?」

「入れ替わったと言うよりどちらかと言うと憑依かも知れない……仮に入れ替わったなら、普通にヤバい……」

鬼の術と身体能力があのウォーズマンが手に入れたと言う事だ。弱点を知っている物の……脅威になる。

「でもお前、銃なんて撃てたっけ?」

「銃の扱いなら一通りは習った……元々興味自体は会ったんだ。でもこんな非常時に役に立つとは考えていなかったけどな。」

懐に入れた銃の残弾数を確認してしまうエルエルフ(闘牙)

「習った?お前……一体……まさかハワ…「ハワイは関係ないです。」ならどうして……」

「記憶喪失と一緒ね。記憶を失っても、言葉を喋ったり電話をかけたりは出来るでしょ?」

サキの言う通り、身体能力は体に準拠するという事だ。それなら、鮮やかに自分達を守ったエルエルフの動きが普段の闘牙と余りにかけ離れている事にも一応の納得がいく。

「まぁ、大体そんな感じだな……俺が拳銃が扱えても、この身体の持ち主が素人の場合、巧く扱え切れない可能性も充分あったから……」

 

「先輩……隠し事があるなら私は怒りませんよ。」

「……女性が『怒りません』を言う時は怒っているって恋愛マニュアルで読んだぞ。」

「……先輩もそういうの読むんですか?」

サキは意外な表情でエルエルフ(闘牙)を見る。

「オタクの俺が読んじゃ駄目なのかよ。…………さてと、これからどうするか?現地解散する?」

 

「何処の飲み会の終わりよ……確かに……これからどうするの?」

「闘牙さんの体を取り返しましょう。」

「えぇ…………滅茶苦茶めんどくさい。今日はもうやる気満々エネルギーも切れたよ。明日にしよ?」

「自分の身体でしょ。もっと執着しなさいよ。」

「イヤだって、確かに俺の身体調べられると普通に色々ヤバいけどさ。めんどくさい~~~~」

「シャキッとする!!」

「……そうだな。このままじゃ落ち着かないし……なぁ闘牙。」

サキ、アイナ、キューマが口々に言う元に戻れるかは分からないが、戻れるという前提で体を取り返した方がいいだろう。一応自分達を守ってくれた闘牙を気遣っての事だったのだが。

「お気に為さらず。」

暢気な表情で断りの言葉を口にするも、サキは闘牙のやる気の無さに素直に怒りを覚えて叫ぶ。

「どんだけめんどくさがり屋よ!!」

「久しぶりに俺シリアスな感じで活躍したから良いだろ?金ちゃんだって24時間テレビでマラソン走らせて内心イライラしていたんだから。」

「とにかくまだ根本的な事は何も解決していないのよ!?現地解散は無し!!」

 

「……前提条件が俺の身体ありきだったからいきなり立てた作戦全て変わっちまった。」

「??ちょっと待って……私重大な事に気付いたんですけど……」

「何だよ、羽野?」

「流木野よ。……先輩。祠の時に突然、ここを攻めてきたのがドルシアだって何でわかったんですか?ですかそれにあのロボットの事も先輩はまるで前から知っていたように…搭乗して行きましたよね。」

「言われてみれば……」

三人は闘牙の行動の幾つかは、まるで戦う相手と手段を知っていないと出来ない事に気付く。

 

「……それは、ドルシアの連中をモジュールから追い出したら話す。」

「私は今話して欲しいんです。」

疑心の眼差しをエルエルフに向けるサキ。だがそんな疑心の眼差しをエルエルフは物ともせずに真剣な表情をする。

「……咲森学園のお前達も無関係な話じゃないんだ。心の準備がいるんだよ。お前らも……俺も……」

この学園の秘密……あのロボットの事……そしてその学園に通う生徒達……モジュールの秘密。

「わかりました。後で必ず教えてくださいね。」

「櫻井さん!?」

「闘牙先輩は私達を守ってくれました。それに二度も……だから私は待ちます。」

「でも闘牙は、私達に何か重要な事を隠しているのよ。」

「大丈夫です!?」

「どうして!?」

「私は先輩の事は良く知りません……でも先輩が良い人だって知っているつもりです。」

アイナのはっきりした一言に闘牙を含めたサキ達は普通に驚き、只一人、櫻井アイナは、エルエルフ(闘牙)の言葉を信じようとする。

「この子……良い子過ぎてちょっと心配……」

エルエルフは感動の余り軽く涙目になるも、涙を吹いて

「体を取り返す案には賛成だが……それだけじゃ駄目だな……」

「え?」

「あのガ○ダムを取り返して、あいつらを……ドルシア軍を、叩き出すぞ」

「闘牙先輩……?」

攻めてきたのがドルシアの軍隊である事は、先程の特務部隊員の言葉で分かった。

「奴ら、俺から沢山の大切な物(プラモデルやアーケードゲーム台)を奪ったんだ。」

何時もふざけた感じが成りを潜めて闘牙……力強い、しかし鬼気迫る様子にアイナの瞳が怯えて揺れる。

「大切な者……」

今日の襲撃で闘牙の知り合い達の何人が無事で何人が死んでいるのか……理不尽に奪われた命に……その怒りが彼をこんな風にさせていると思うと何も言えなくなる三人。

「体を取り返したくらいじゃ……俺が失ったものと、全然釣り合わないから」

握り締めた拳を震わせ血を流しながら、闘牙はありったけの憎しみを言葉に乗せる。キューマとサキが、それを黙って聞いている。

「あいつら、絶対に許さないぞ!!」

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校舎の地下通路を四人は歩く。

「何処へ向かうの?」

先頭を歩くエルエルフ(闘牙)にサキは聞く。

「視聴覚室だ。そこに忘れ物を取りに行く。」

「何かの装備か?」

「いや録画したHDDだ。【おそ松○ん】とか【笑点】や【純情キラリ】を録画したから観ないと。」

「「「後にして/しろ/して下さい!?」」」

後ろから聞こえたツッコミに……エルエルフ(闘牙)

「わっ!?凄く嫌そうな顔!?」

「ったく人間って奴は娯楽の有り難みを知らない…………うん?」

自分の口にしたある単語に引っ掛かりを覚える闘牙。

(……人間。)

「どうした?闘牙。」

「なぁ、」

突然エルエルフは立ち止まり後ろにいた三人も立ち止まる。

「ちょっと!?急に立ち止まるなら止まれとか言って頂戴よ。」

「俺、今……人間だよな?」

「何当たり前の発言をしているんですか?」

「そう…か……そうか……そうか……俺、今人間なんだ……そうか!?」

エルエルフ(闘牙)は突然走り出す。

「ちょっと!?」

「闘牙!?置いて行くなよ!?」

三人も慌ててエルエルフの後を追い掛ける。

「ちょっと、急にどうしたの!?」

サキは先頭を走るエルエルフに並び質問する。

「食べてみたい!?」

「へ?」

「マックのハンバーガー!?吉野家の牛丼!?餃子の王将の中華料理!?ケンタッキーのフライドチキン!?」

「なっ!?」

サキはエルエルフの顔を見て驚愕する。エルエルフ(闘牙)は口から大量の涎が出ている状態で走っているのだ。

「数百年たって旨そうな食べ物が滅茶苦茶増えたんだ!?」

「はっ!?数百年って……」

「ビバッ!ジャンクフード!!」

エルエルフ(闘牙)は己の欲望……食欲に望むがままに走る……

「行かせないわよ!?学園の皆はどうするの!?」

だがサキはエルエルフの背後に回り込み無理やり羽交い締めにする。

「俺の背中にその2つの柔らかい物を押し付けるな!?」

「なっ!?/////どうせこの非常時に何処のお店はやってないわよ!?」指摘されて一瞬顔を赤くするも、何とか押さえるサキ。

「俺が調理する!?こう見えても夜や深夜の飲食店バイトは結構していたからバイト戦士の経験者なんだ!?」

「行かせないわよ!?」

「なぁ、後生だよ!?命懸けで戦場を戦い抜いた俺に普通の飯を食わせてくれ!?」

だが譲れないのは、エルエルフ(闘牙)も同じだ。羽交い締めをされながら必死に抵抗する普段やる気のない男。

どうなる咲森学園。どうなる。モジュール77。どうなるヴァルヴレイヴ。

「てか今までずっと言うの我慢していたけどお前ら、凄く獣臭い。」

「誰のせいよ!?あんたの馬のせいでしょ!?」

どうなる。闘牙!?

「臭い!?臭い!?滅茶苦茶獣臭い!!」

「人気アイドルに向かって一番言っていけない事を言ったわね!?絶対に離さないわよ!?」

「だから柔らかい胸を押し付けるな!?クソッ待っていろ!?ジャンクフゥゥゥゥド!!」

必死に地上にあるであろうフードコートにあるジャンクフードのお店を夢見て手を伸ばすエルエルフ(闘牙)達の明日はどっちだ。




次回、獣臭いサキ達を風呂のある無限城に連れて行く話。


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