天之河勇者伝 (大トロ)
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プロローグ 現実は突然に
思いついたので投稿しました
性格改変光輝が好きなので彼が主役の小説にしてみました
時刻は早朝
まだ朝日は登ったばかりで校舎には生徒も教員もほとんど居ない時
毎日の日課である鍛錬を終えた彼は朝食を食べ、誰よりも速くに登校した
月曜日。それは一週間の内で最も憂鬱ゆううつな始まりの日。きっと大多数の人が、これからの一週間に溜息を吐き、前日までの天国を想ってしまう
それは彼も例外ではなかった
最も彼の場合学校に居れば面倒事やらストレスやらで疲れることでの憂鬱さにあった
???「……はぁ…また今週も始まってしまったか……」
彼はため息を吐きながら教室の扉に手をかけ開けた
ドーンンンンンン!!!!!!
その瞬間教室が爆発し彼の顔面に爆煙が飛んでくる
普通の者ならこの時点で大慌てになるか悲鳴を上げるだろう……しかし彼はそんな大きなリアクションをしなかった
なぜならこれを受けるのは初めてではないからだ
なにより
ハジメ「あ……おはようございます天之河君」
爆発の元凶を知っているからだ
光輝「またお前か南雲!!いつも言ってるよな!?教室で実験開発するなって!!」
ハジメ「いや〜昨日は親の仕事がなくて速く寝たらそれが朝の5時でさ、どうせなら速く学校行ってこっそり理科室の薬品拝借してちょっと作ってみたいもの作ろうかなってやったらちょっと混ぜる薬品の量ミスって」
光輝「だとしてもここでやるバカがどこにいる!?」
ハジメ「ここにいる」
光輝「……一応聞くが…なに作ろうとしていた?」
ハジメ「ニトログリセリン」
光輝「そんなもん学校で作るな!!とにかくさっさと薬品片付けろ!!教師達にバレたら退学もんだろ!!」
ハジメ「あ、やば…」
光輝「……お前の知的好奇心は良いところでもあるがもう少し考えて行動してくれ頼むから…」
ハジメ「うん……善処するよ」
光輝「いやそこは嘘でもわかったって言ってくれないか!?そしてなんで答えるのに間があった!!(あああ…また今週も胃痛の日々が…)」
正義感が強く、いずれは祖父のような誰かを救うヒーローの様な存在になりたいと夢見ている
そのためか何かと色んな人と関わることが多かった
そんな彼が叱ったクラスメイトである
しかし、彼の好奇心は時に他人を巻き込むことがあり、それによりこのクラスでも問題児の一人として数えられているがこのクラスには他にも問題児がおり、彼自身は別に悪い奴ではなく誰とでも関わることのでき、暗い印象がなくこのクラスで彼を嫌う者は一人もいない
無論それはハジメを含めた問題児たちを止めたり叱ったりし、そのストレスで胃痛を起こしてしまうことが度々ある光輝ですらそうだった
光輝「はあ〜…」
午前の授業を終え、昼食時間となりクラスにいる生徒達は思い思いに昼食休憩をとっていた
そんな中光輝はというと朝のハジメの起こした実験による爆発がバレないか気が気じゃなかったため、授業中も落ち着かなかった(なお当のハジメは特に気にせず授業を受けていた)
その為彼は昼食時間になっても弁当を食べる手を止め疲れていた
そんな彼の横で
香織「ダメだよ、南雲君!ちゃんと食べないと! 私のお弁当、分けてあげるね!」
彼の幼馴染であり、ハジメに匹敵するほど自身にストレスを与える問題児で二大女神と呼ばれている美少女
そんな彼女はハジメの事を好いており、ハジメもまた満更でもなかったりする
しかし彼女、ハジメが好き過ぎるあまり少々問題を起こしたり犯罪ギリギリなことをしでかし、その度に光輝と彼女の親友に叱られることが度々ある
しかも本人に悪気がないのがタチが悪く、光輝の胃痛の種の一つだ
ハジメ「いや〜でも悪いよ白崎さん。せっかくの弁当僕に分けちゃって」
香織「いいの!私が南雲君に食べてもらいたいって思ってるから!」
オタクであり問題児でもあるハジメがクラスでもカースト上位に位置する彼女にここまで手厚く扱われるなど、他のクラスなら侮蔑な目で見られても可笑しくないのだが、このクラスでこの光景は特に珍しくなく、むしろ周りは面白そうに見ていた
光輝「……(あれで付き合ってないって……冗談だろ?……ていうか当事者でもない俺が気にして心労になってるっていうのに肝心の本人は平然としてるのは解せぬ)」
そう思っていた光輝だったが
龍太郎「どうした光輝。そんな湿気たツラしてよ」
光輝「脳筋にはわからない悩みだよ」
龍太郎「グォ!」
そこへ光輝の親友であり短く刈り上げた髪に鋭さと陽気さを合わせたような瞳、百九十センチメートルの身長に熊の如き大柄な体格を持つ
見た目に反さず細かいことは気にしない脳筋タイプである彼もまた光輝に怒られる事がある一人である
そして
???「大丈夫なの光輝?……またなにか疲れることでもあったの?」
最後に声を掛けてきたのは香織の親友であり、二大女神の一人にして光輝、龍太郎の幼馴染、
実家は八重樫流という剣術道場を営んでおり、雫自身、小学生の頃から剣道の大会で負けなしという猛者である。現代に現れた美少女剣士として雑誌の取材を受けることもしばしばあり、熱狂的なファンがいるらしい
ポニーテールにした長い黒髪がトレードマークである。切れ長の目は鋭く、しかしその奥には柔らかさも感じられるため、冷たいというよりカッコイイという印象を与えるがその実他の誰よりも女の子らしくありたいと思っており、このクラスで唯一光輝の理解者もとい苦労人でもある(主に香織のせいで)
光輝「まあ…あったけど…それはもう終わったことだから……」
雫「そ、そうなの……ねえ…光輝って…まだ食べれる?」
光輝「?」
雫「じ///実はね…今日作った弁当なんだけど…少し多めに作って来ちゃって食べ切れないから…もし食べれるなら……食べてくれないかしら?……あ///でも食べれないなら」
光輝「いや?全然食べれるよ。それに雫の弁当は美味いからいつでも食べられるよ」
雫「!!そ、そう…うん…わかったわ…」
そう言うと雫は弁当を取りに自分の机に戻っていった
光輝「……なあ龍太郎」
龍太郎「なんだ光輝?」
光輝「雫……今日も可愛くて綺麗だったなあ…」
龍太郎「……そう思うならさっさと本人に伝えろ」
光輝「そんなことしたら、俺が恥ずかしさで死んでしまう」
龍太郎「……お前っていつになったら告るつもりなんだ?」
光輝「い、いや…もっとちゃんと言葉とか考えてから伝えたいから」
龍太郎「……このヘタレめ」
天之河光輝は八重樫雫の事が異性として好いているが、勇気を出して言い出せないヘタレだった
小学生の頃、いじめられていた雫を救い出し、当時女の子らしくしたいのに出来ないでいた雫の背中を押した結果、雫は自分の思うがままに生きることができ、周りの女の子よりも女の子らしくなったのだった
その時にこれまで女の子らしくない言われていた雫の女の子らしくオシャレした姿を見て、それまで異性に対し心からカワイイと思ったことがなかった少年天之河光輝の心に衝撃が走った
『あんた女だったのだって?どこがだ!!そこらの女の子よりも女の子らしいし誰よりもカワイイじゃないか!!』
こうして少年天之河光輝は八重樫雫に初恋を募らせたのだった
その一方で
雫「(ああ///言ったわ///言っちゃったわ///香織みたいに積極的にするのが苦手だったからあんな言い方が限界だけど言っちゃったわ///)」
八重樫雫
彼女もまた天之河光輝を異性として好いているのだった
小学生の頃、道場の家に生まれたことで幼い頃から剣道をしていたが、そんなとき当時から周りの同性異性から注目を浴びていた光輝が入門してきた
光輝が来たとき、雫は王子様がやって来たと思ったほど浮かれていた
しかし、そんな雫はまわりの女の子達から影でいじめられていた
女の癖に竹刀を振り、髪は短く、服装は地味で、女の子らしい話題にも付いていけない雫が光輝と一緒にいたことが女の子達には我慢ならなかった
時には物を隠される
時にはトイレで罵声を浴びせられる
特にひどかったのは『あんた女だったの?』と言われたことだった
雫だって他の女の子のように可愛いものに触れ、綺麗なものを身に着けたり、当時小学生の女子たちがやっているような遊びだってしたかった
そう思っていたが、親や祖父からの期待の気持ちを裏切りたくないと、本心を抑えつけていた!
そしてついに雫は光輝に頼ることにした
すると光輝は
『わかった…俺に任せておいて』
そう言い翌日には亡くなった祖父が生前使ってきたボイスレコーダーを持ってきて、これをランドセルの中に入れるように言い、やがて雫をいじめていた面々達の声を収め、それをそれぞれの家に手紙とともに送り『もしこれ以上いじめるなら出すべきところに出す』と脅した
それからしばらくして、雫をいじめていた面々は雫に謝罪し二度といじめてくることがなくなった
後日雫は光輝にお礼を言ったがその際
『雫って、なんで周りの目を気にしてるんだ?自分の人生なんだから自分の好きにやればいいよ』
そう言われ、雫は親や祖父に自分の本心を打ち明け、それ以来、自分の思うがままに生きることが出来るようになった
そして、そんな自分を救い、女の子にしてくれた光輝の事が異性として好意を抱くようになった
しかし光輝も雫もヘタレだったためどちらも告白できずにいた
余談だが彼らの幼馴染達、そしてこのクラスの生徒達はそんなふたりの関係をまるで推しのアイドルでも見るかのような目でふたりの恋愛模様を楽しんでいる
その時だった
突如光輝の足元から光り輝く円環と幾何学きかがく模様の魔法陣が浮かび上がり、教室全体を満たすほどの大きさに拡大した
たまたまクラスにいた社会科の先生である畑山愛子咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
そして気が付くとクラス全員は異世界『トータス』に異世界転移したのだった
周りは突然の事態に驚くが約2名
光輝「(雫の手作り弁当食べられるチャンスがああああああ!!!)」
雫「(光輝に私の弁当食べてもらうチャンスがああああああ!!!)」
全く関係ないことを心の中で叫んでいたのだった
《キャラクターズファイル》
天之河光輝
本作の主人公であり原作と違い正義について様々な考え方が存在し、どれもが正しいわけでもなく間違っているわけでもないと理解している
かなりの苦労人気質でありクラスの問題児達をまとめ上げるカリスマと面倒見の良さから担任から丸投げされており光輝から内心で給料泥棒と罵倒されている
原作と違い決断力があり、思慮深くクラスメイト達からリーダー扱いされている
幼馴染である八重樫雫のことが好きで告白したいと思っているが告白する勇気が無く龍太郎からヘタレと呼ばれている
思いつきでやったので次はいつ投稿するかわかりません
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第一話 世界の命か身近の命
愛子「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」
クラスメイトから愛ちゃんの愛称で親しまれている畑山愛子がイシュタルに怒鳴り込む
なぜこのような状況になっているのかと言うと
このイシュタルという男は語る
曰く、このトータスには人間族、魔人族、亜人族の大きく分けた3種族が存在し、 人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きており、人間族と魔人族は何百年も戦争を続けている。 魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗して戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしいが、最近になって魔人族側の力が増しておりこのまま行けば人間族は滅びの危機を迎える
そこで人間族が崇める神『エヒト』が人間族を救うために他世界からの勇者一行を召喚という名の誘拐をした
早い話が、『私達滅びそうだから他世界の者達よ、戦争に参加して我らをすくい給え』ということになる
そして愛子の言葉へ繋がる
イシュタル「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」
愛子「そ、そんな……」
愛子が脱力したようにストンと椅子に腰を落とす
周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた
「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」
「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」
「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」
「なんで、なんで、なんで……」
パニックになる生徒達
そんな中光輝が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた
その音にビクッとなり注目する生徒達
光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた
光輝「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」
イシュタル 「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」
光輝「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」
イシュタル 「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」
光輝「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!俺がみんなを守る!!」
その言葉により光輝のカリスマは遺憾なく効果を発揮し、絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ
龍太郎「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」
雫「そうね…今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」
香織「え、えっと、雫ちゃん達がやるなら私も頑張るよ!」
いつものメンバーが光輝に賛同する。後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。愛子はオロオロとした様子で「ダメですよ~」と涙目で訴えているが光輝の作った流れの前では無力だった。 結局、全員で戦争に参加することになってしまった。おそらく、クラスメイト達は本当の意味で戦争をするということがどういうことか理解してはいないだろう
光輝「よし、全員集まったな。これより『第一回トータス円卓集会』を始める」
トータスへ来たその日の夜
光輝に呼ばれたクラスメイト達全員が一室に集まった
香織「ね、ねえ光輝君。なんで龍太郎君と永山君は部屋の外にいるの?」
光輝「あのふたりは見張りだ。どこかで俺達の話を盗み聞きされるかわからないから念の為だ。一応ふたりには先に話しておいたし意見も聞いてきた……そして本題なんだがその前に……すまない……皆を戦争参加に巻き込んで…」
遠藤「な、何言ってんだよ天之河!!」
クラスメイトの一人にして影が薄……気配遮断が得意な遠藤浩介が口を開く
光輝「……真面目な話……この中で戦争に参加することが、どういうことかわかるやつ……手を上げてくれないか?」
光輝がそう言うと数名が手を上げてきた
光輝「……なら恵里……戦争参加する事がどういうことか言ってくれないか、変に言葉を選ばず正直に…」
クラスメイトの一人、中村恵里が口を開いた
恵里「……戦争に参加するってことは…僕たちが人を殺すことになるしこっちが死ぬかもしれない」
恵里の言葉にクラスメイト達の間で動揺が走る
遠藤「ま、待てよ!それじゃあ…天之河はそれをわかっていたのに戦争参加するって言ったのか!?なんでだ!!」
清水「……そうする他無かったからだろ?」
クラスメイトの一人であり、ハジメに匹敵するオタクである清水幸利が口を開いた
光輝「ああ…あのとき、俺達に戦争参加しないなんて選択……あってないようなものだった……お前らがさっき地球へ帰れないことでパニックになってたとき、イシュタルがどんなツラでこっちを見てたか気付いた奴いるか?まるで『エヒト様に選ばれておいてなぜ喜べないのか』とでも言いたそうな侮蔑な表情を浮かべていた……仮に戦争参加しないなんて選択した場合の最悪はなにか言ってみろ南雲」
ハジメ「それは……『エヒト様に選ばれておいて我々を救うという使命を放棄した愚か者共』として罰せられることかな?」
光輝「そうだ…そして俺が想定した最悪は『異端者として処刑』されることだ…まだ王国から追放されるとかだったらまだマシだが、俺達はこの世界の事を全く知らない。おまけにこの世界の人々よりも強いなんて言われたが俺達は自分がどの程度強く、どの程度やれるかの把握すらも出来ていない……今の現状で教会や王国に協力しない姿勢でいるのは危険だった。だからあのとき、パニックになっていたときに無理矢理協力する意思を見せてとりあえずこちらの信用を見せた……それと俺達を召喚してみせたエヒトって神のことにも疑惑がある……本当にこの世界の人々を救う意志があるならわざわざ俺達を召喚なんてせず直接自らの手で乱世を収めるんじゃないか?仮に理由があって直接的に干渉できずに異世界の住人である俺達に頼らざるを得ないにしても、前もって了承すらもせず、誘拐同然に異世界召喚するような神……俺は信用できないが……どう思う?」
光輝がそう言うとクラスメイト達も改めて思い返し疑心の表情を浮かべた
光輝「イシュタルの前じゃ協力する姿勢を見せるためにああ言ったが本音を言うと、俺はこの世界を救うつもりはない。誘拐同然に召喚し、俺たちに謝罪もしない。挙げ句の果ては俺達を戦争に勝つための道具くらいにしか見てない連中の為に戦うほど俺は善人じゃない……あらためて聞く……この中で、この世界の為に命を掛けたい、人々を救いたいと思う奴……手を上げてくれないか?」
光輝はそう言うが、誰も手を挙げなかった
光輝「……そうか…なら…これがこのクラスの総意ってことでいいな……それじゃあ今後の方針だ……俺達は戦争に参加し教会や王国に協力する……ただしそれは表向きだ……最終目的は地球への帰還……その為の方法を見つける……手に入り次第、さっさと帰る……その為には皆がそれぞれ協力する必要がある。でも無理にできないことをするんじゃない……皆がそれぞれできることをやっていけばいい。できないものがあればそれを他の誰かがフォローすればいい……明日になれば俺達に適性のある天職?って奴が判明するから、その時に役割分担しようか……そして最後に」
光輝は皆の前に立つと全員に頭を下げた
光輝「俺の考える最悪を回避するためとはいえ、皆を戦争に巻き込んでしまって、本当にすまなかった」
そんな光輝の姿にクラスメイト達は頭を上げるようにいう
香織「や、やめてよ光輝君!光輝君のせいじゃないから!!」
園部「そ、そうよ!天之河がああ言わなかったら私たちはどうなっていたか」
光輝「それでも!……俺が巻き込んでしまったことには変わりない………戦争に参加すれば……ここにいる誰かは死ぬかもしれない……もしかしたら…帰れないかもしれない……」
クラスメイト達「「「………」」」
光輝「絶対大丈夫……なんて簡単には言えない…でも…これだけは約束する………俺は
この世界の人々を見殺しにすることになったとしても、皆を……誰一人欠けることなく地球へ帰還させるまで、戦い続ける!!だから皆も、希望を捨てず、生き抜いて欲しい!!この残酷な世界を!!俺と一緒に!!」
光輝の演説を聞き、クラスメイト達から歓声とともに賛同の声が並ぶ
清水「異世界を救う為でなく帰還するための一致団結か……世界見捨てることになるけど全員がそうなら怖く無いな」
鈴「エリリン!やろうよ一緒に!!」
恵里「うん!」
香織「光輝君!!頑張ろう!ハジメ君も!!地球に帰るために!」
ハジメ「うん!そうと決まれば張り切ってこの世界で色々と制作するか!!あ、この世界ならニトログリセリンよりも強力な爆薬作れるかもしれない」
光輝「いや南雲!お前は自重してくれ!!多少はっちゃけるのは許すが目をつけられない程度で抑えてくれ!」
こうして、彼らは戦争に参加しつつも地球へ帰るための方法を見つける為一致団結するのだった
《部屋のベランダ》
光輝「……」
無事集会を終えたその日の夜
光輝が眠れずにベランダで月を眺めていた
光輝「……(戦争に参加する以上……人を斬る機会も殺す機会も当然ある……でも……できることならクラスメイト達に人殺しをさせたくない……いざとなれば…)」
雫「光輝?」
そこへ、隣の部屋のあるベランダから雫が顔を出す
雫「……眠れないの?」
光輝「ん……ちょっとな……今後のことを考えると、眠るに眠れないからさ……雫のほうは?」
雫「うん…私もね……ねえ……そっち、来てもいい?」
光輝「……ご自由に」
光輝がそう言うと雫がベランダの間を超えて、光輝の隣りに降り立った
光輝「……多分この先…地球にいた時みたいに俺が皆を率いるリーダーになるだろうな……あのときのイシュタルも俺がクラスに大きく影響の与える存在って見抜いていたみたいだしな」
雫「……そうなるかもね……」
光輝「……そうなって来ると…俺一人でクラス全体をまとめ上げるのはきつくなるから……雫……女子の方は君に任せてもいいかな?」
雫「ええ……任せて……」
光輝「…ありがとう……君は本当に頼りになるな…」
雫「フフッ…貴方には負けるわ………ねえ光輝」
光輝「なに…」
雫「何でもかんでも……一人で背負わないで……私も居る……香織に龍太郎も南雲君に他の皆だって居るのよ………これから辛いことや大変な事があって、苦しむことがあるかも知れない……それでも……頼って欲しいわ……私は付き合うわ……愚痴でもなんでもね…」
光輝「……うん……わかった………それじゃあ雫に一つお願いしてもいいかな?」
雫「なに?光輝」
光輝「その……膝枕…」
雫「!!///」
光輝「い、いや…その…なんていうか……今日色々あって疲れてるんだけど眠れなくて……人肌が恋しいっていうか……多分やってくれれば……眠れそうだから………ああごめん!!変なこと言って!!今の忘れてくれしず!?」
最後まで言い切る前に雫が光輝の頭を両手で包み込むとそのまま膝に寝かしつけた
雫「こ///これでいい?///」
雫が頬を赤くしながら光輝に膝枕をした
光輝「ご、ごめん雫!!君に嫌な事させちゃって」
雫「嫌じゃないから!!」
光輝「!?」
雫「そ///その///光輝にこういうことするの……私嫌じゃないから///そ、それに///
どんな形でアレ……貴方の役に立てるなら私が嬉しいから……」
光輝「……」
そこからはふたりともに無言になった
光輝は目を瞑りながら心臓がバクバクとしていたが雫が頭を優しく撫でていき、徐々に眠りへと誘っていった
光輝「(……俺は……皆を……そして…君のことも……守り…抜くためなら………)」
そしてしばらくして…光輝が眠りにつき、そんな光輝の寝顔を見て雫は
雫「おやすみなさい……光輝」
そう言って部屋に戻ろうとしたが光輝が動かなかったのでしばらく待とうと思ったが、やがて雫も眠くなり、光輝の頬に手を添える形で眠りについたのだった
翌日
光輝のことを起こしに来た龍太郎と香織が部屋に入るとベランダで眠るふたりに驚きの声を上げそれによりふたりは飛び起き、龍太郎から
龍太郎「え?お前らいつの間にデキていたのか!?」
と言われ、誤解を解くのにしばらく掛かったふたりであった
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第二話 天職
翌日から早速訓練と座学が始まった
まず、集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。 騎士団長が訓練に付きっきりでいいのかとも思ったが、対外的にも対内的にも勇者様一行を半端な者に預けるわけにはいかないということらしい。 メルド団長本人も、「むしろ面倒な雑事を副長(副団長のこと)に押し付ける理由ができて助かった!」と豪快に笑っていたくらいだから大丈夫なのだろう
そのプレート……ステータスプレートは神代のアーティファクトであり、今現在存在する唯一の代物であり、アーティファクトとは現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具でまだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている物を指す
このステータスプレートは身分証明になり、更にはその人物の潜在的な能力値や技能を表すもの
技能=才能である以上、先天的なものなので増えたりはせず
唯一の例外が〝派生技能〟
これは一つの技能を長年磨き続けた末に、いわゆる〝壁を越える〟に至った者が取得する後天的技能である。簡単に言えば今まで出来なかったことが、ある日突然、コツを掴んで猛烈な勢いで熟練度を増すということだ
クラスメイト達はそれぞれステータスプレートを受け取ると自らの実力と天職を確認した
例を上げると龍太郎は拳士、雫は剣士、香織は治療師といった具合に各々の才能を表した天職が表示されていた
ハジメ「メルドさん…この錬成師っていうのは?」
メルド「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」
メルドは言いづらそうにしながら答えた
曰く非戦闘職でありこの世界ではありふれた職業であるらしい
しかもステータスもこの世界の平均とさして変わらず、言い方が悪いが平凡だという
普通なら落ち込んだりする場面ではあるが
この男
南雲ハジメは違っていた
ハジメ「……つまり…制作系統の職業というわけなんですよね!?」
落ち込むどころか喜んでいた
それもそのはず、彼は地球にいた頃から好奇心と手先の器用さで様々な物の制作に携わっていた
一番の例が本物の拳銃そっくりに作ったモデルガン、これをクラスの4馬鹿であるミリオタに制作費と報酬込みで放課後に売り捌いていた(後に作っていくうちに気分が乗って本物の銃と同じ威力になるほどにまで改造した事実を知り光輝から説教された)←唯の武器の密売
そんな彼にとってものづくりができる天職の才能があるということは、どんなレア天職になれるよりも嬉しいことだった
そして光輝はというと
光輝「……嘘……だろ…?」
すごい落ち込みを見せていた
周りは自分の天職と才能に驚きの声や喜びの声を上げる中彼だけはステータスプレートを両手に地面に膝をつけていた
雫「ど、どうしたの光輝…」
龍太郎「お、おい…大丈夫かよ」
そんな光輝に近づく雫達
光輝「……これ…」
光輝は持っていたステータスプレートを雫に渡してみせた
そこには以下の物が表示されていた
天之河光輝 17歳 男 レベル:1 天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
レベル1でステータスが3桁だけでなく技能も普通2、3つであるはずなのだが光輝は才能の塊だった
ちなみにメルドのレベルは62。ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。それをレベル1の時点で3分の1相当の実力を持っていた
龍太郎「す、すげえじゃねえかよ!!しかも勇者ってお前!こんなすげえ天職にステータスでなんで落ち込んでんだよ!!」
光輝「……雫……君が王族や教会の立場なら俺みたいに高いステータスとこの勇者っていうまさに人類の救世主みたいな天職を持った奴をどうするかい?」
雫「え、ええっと……目をつけて持ち上げるわね…それと下手なことされないために見られるわね」
光輝「そう…つまり俺はこれから教会共から目をつけられて俺自身の行動の制限やら期待の意識を向けられる!つまりこの先些細なミスやらこっちの成果が芳しくなかったらそのしわ寄せや苦言言われたり人類の希望っていう重圧が押し寄せられるのは俺!!最悪だ!一応このクラスのまとめ役の俺としてはリーダーだがあまり目立たない職業で有りたかったっていうのにこれで余計俺に目が行く!!」
雫/龍太郎「「ああ……」」
ただでさえクラスメイト達の問題行動に頭を悩ませストレスで胃痛を起こすこともある光輝だが、この勇者という職業とステータスで余計な注目を浴び、重圧や期待で更にストレスを感じざるを得なくなると予想し落ちこんだ
光輝「……まあでも考えようによっては…これは使えるかも知れないな…」
龍太郎「?」
光輝「俺にそれだけの注目と期待を向けられればその分他の面々……言い方が悪いがありふれた職業を持ったクラスメイト達は目が向けられなくなって行動しやすくなるな……俺はクラスメイト達が動きやすくするための囮か……もうなんでもやってやるよ畜生が…」
そうヤケクソ気味に嘆く光輝だった
光輝「それで…ここで何やっている南雲……」
ハジメ「い、いや〜、図書館で清水君と調べ物してたから武器制作しようって思って銃を作ろうとしたらよくよく考えたら本物を作ったことないし自分の技能の使い勝手とか試す意味で銃作る前の肩慣らしでこれ作ってから使い勝手試していたんだよ……使い勝手を確かめるのとついでに材料集めの一石二鳥になるかなあって思って」
光輝「そうか……だが聞いていいか?
拳銃作る肩慣らしがチェンソーってなんだ!?なんで拳銃と全く関連性のないチェンソーで肩慣らししてるんだ!?それと檜山、中野に斎藤と近藤!!お前達もお前達でなに南雲と一緒にチェンソーで森林伐採している!!」
訓練が開始された3日後
王宮の中庭では、ハジメ達により森林伐採がされており、それに怒る光輝と光輝にひざまずきをされているハジメとクラスで四馬鹿と呼ばれている檜山大介、中野信治、斎藤良樹、近藤礼一の5名がチェンソー片手に中庭の木々を伐採しており、たまたま城内を見て回っていた光輝に見つかり説教を受けていた
この四馬鹿と呼ばれている面々達はクラス内に存在するグループの一つであり、一応リーダー格である檜山を中心としているが、4人ともミリオタであり釣り好きという共通点でつるむ面々である
同じくミリオタであるハジメとも仲がよく、ハジメに制作費を出してでも本物そっくりのモデルガン制作を頼み込むほどだ
また度々ハジメの実験や制作に手を貸すが、ハジメのやらかす問題に関与することも度々あり、その度に光輝から怒られるがハジメ共々懲りないでいる
曰く楽しいらしい
檜山「いやな?南雲がよ、自作のチェンソーの出来を確かめたいからって俺たちにも使わせてよ」
斎藤「最初はさ、ちょっとやったら終わろうとしたんだがよ」
中野「チェンソーで切っていくうちにだんだん楽しくなっていってさ」
近藤「気付いたらかなり切ってた」
光輝「そうか……つまり何が言いたい?」
五馬鹿共「「「「「環境破壊は気持イイZOY☆」」」」」
光輝「……ちなみに、ここの森林伐採について王宮から許可は貰ったか?」
五馬鹿共「「「「「………」」」」」
光輝「よしお前ら全員そこ並べ。一人残らず始末してやる」
そう光輝が殺気だてながら言うと
檜山「やばい勇者がお怒りだ!逃げろ!!」
四馬鹿共「「「「散!!」」」」
五馬鹿共は全員四方八方に別れ逃げ出し、それを怒りの形相で追いかける勇者という謎の構図が出来上がった
余談だがそれからしばらくして夜の城内でアイスホッケーマスクを被りチェンソーを持った5人組の姿が目撃されるようになり、それを光輝は目撃者たちに『もし見かけても近付かず離れててください』と言い、クラスメイト達には『見かけたら俺に伝えてほしい。後片付けしておくから』と言うのだった
ハジメ「以上が、僕と清水君が調べたこの世界の宗教についての報告書だよ」
光輝「ん、ご苦労さん…」
その日の夜
光輝の部屋に訪れたハジメは光輝から言い渡された『この世界のしくみや宗教、更には神について地球での知識やオタク知識を交えた考察とまとめ』を記述した報告書を渡してきた
天職が判明したあと、光輝はクラスメイト達に役割を言い渡した
この先なにかあったときのための資金集めをする面々や前線に出て戦う面々、この世界の事を調べる面々といった具合に分け、ハジメや清水といったオタク達には地球に居たときに見ていた異世界転生や異世界転移などのラノベ知識を元にこの世界の知識とともに調べるよう言い渡した
光輝はハジメから渡された報告書を読んでいくうちに表情が険しくなっていった
光輝「……読めば読むほど余計きな臭くなってくるなこの世界や神に対して…」
ハジメ「うん。それに信仰する神がエヒトだけって言うのもね」
光輝「絶対的一神教って奴だな。俺達のいた地球でもそういう宗教的な理由で争いがあったな……」
ハジメ「でも地球じゃ色んな神の存在や考えの違いがたくさんあったしこの世界と違って人間すべてが神に対して強い信仰心持ってるわけじゃないこともあって世界規模の争いになってなかった……でもこの世界じゃ」
光輝「信仰する神が一人…それゆえ他の神の存在を認めないことによる争い……信仰する神が一つしかないってことはそれを信仰する人間たちの意識の統一もとい考え方も皆同じようになる……この世界の人達が信仰する神はエヒトのみ……余計な思考を放棄させエヒト神を信仰する教会とエヒトに従う存在になる……」
ハジメ「しかもそれ以外の考えは認められず異端者扱いされるし、エヒトを崇める人達が多すぎて中にはエヒトや教会が正しいと思う人達も多くいるだろうね」
光輝「……改めて…俺達はとんでもないところに呼ばれたな……」
ハジメ「……全くだね」
《キャラクターズファイル》
檜山大介
中野信治
斎藤良樹
近藤礼一
クラスで四馬鹿と呼ばれる面々であり、皆釣り好きでありミリオタの集まり出できたグループ
原作と違い小悪党では無くなり、ハジメとも仲がよく、ハジメの実験に付き合ったり悪ふざけに乗ったりしており、その度に光輝から叱られるがハジメ共々全く懲りないでいる。
ちなみに檜山は香織のことをちょっといいなと思っていたが香織のハジメが好きなあまり見せた犯罪ギリギリの行為にドン引きし冷めた
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第三話 実戦演習
詠唱はめんどくさいので本作では詠唱部分はカットします。
光輝「なあ?今何時だかわかってるか南雲?俺もう眠りかけてたんだが?明日から『オルクス大迷宮』に演習しに行くってわかってるはずだよな?それでも俺を起こしに来るってことはそれ相応の理由なんだよな?」
真夜中に起こされ不機嫌な様子の光輝
ハジメ「あ、あはは…その…なんていうか……」
ハジメはチラッと部屋の外の方へ顔を向け、思わず光輝もそちらへ顔を向けると
香織「こ、こんばんわ光輝君ー…」
純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの格好をした香織がなぜか両手に縄をくくりつけられ、まるでなにか犯罪を犯した罪人みたいになっていた
光輝は香織の手を握りハジメから少し距離を取って香織と話をした
光輝「……香織……いくら関係が進展しないからって寄りによって実戦演習の前日に夜這いって」
香織「ち!違うの光輝君!!こ、これにはわけがあって…」
曰く、さっきまで眠っていたらしいがそこでハジメが出てくる夢を見て、声を掛けても全然気がついてくれず……走っても追いつけず、最後には消滅する
そんな不吉な夢を見て、思わず起きてハジメの部屋まで行き大迷宮には行かないように言ったが、ハジメはそれに意に返さなかった
それどころか大迷宮に行き貴重な鉱物を見つけ採取しさらなる物を制作したいと考えていたようで、余計参加するつもりでいた
光輝としては非戦闘職である彼には参加しないでほしかったのだが彼も彼で作った武器や錬成師の技能を戦闘に応用できないか試したがっていた
光輝「……そうか…そしてあわよくば南雲と一線超えたいと…?」
香織「そ、それはその………」
光輝「…(思ってたんかい…)……はぁ…とにかく。俺としてもあいつには参加して欲しくないが言って聞くやつじゃないのはこれまでの付き合いでわかってる……最悪ここに留まらせても後で一人で大迷宮潜りそうな勢いだからな……それなら大勢と一緒に行ったほうがまだマシだ。まあ安心しろ…非戦闘職である南雲はよほどのことがない限り前線にはまわさないから心配するな」
香織「う、うん…」
光輝「それはそうと南雲…お前明日早いからさっさと寝て来い。俺は俺でこれから雫と一緒に香織とオハナシがあるから」
ハジメ「あはい…」
そう言うとハジメはその場を去り、香織は怯えた様子で光輝を見る
香織「こ、光輝君?な、何をするつもりなのかな?」
光輝「なに、こんな夜更けにそんな露出の激しい格好で思春期の男の部屋に行ったハレンチな幼馴染とちょっとオハナシをするだけさ…あ、もちろん俺だけじゃなく雫も交えてな」
香織「ヒィッ!!ご、ごめんなさい光輝君!!それだけは!それだけはやめて!!ふたり共怒ったらすごく怖いからやめて!!反省したから!!もうあんな格好で南雲君には近づかないから!!今度からは露出の少ない格好で夜這いするから!!」
光輝「いや君全然反省してないだろ。やっぱり雫と交えて2対1で話し合おうか」
香織「いやーー!!」
その後、香織と同室の雫の部屋まで香織を連行し、雫と共に香織にお説教をしたのだった
余談だが、地球にいた頃から好きな人が絡むと暴走する香織の悪癖に光輝と雫は何度も叱って止め、その姿を見たクラスメイト達は口を揃えて『まるで悪いことをした娘を叱る父と母みたい』と言うのだった
またこれ以外にもふたりはクラスメイト達が問題を起こしたときに止めたり叱ったりするので裏でクラスメイト達から『─組のお父さんとお母さん』と呼ばれるふたりであった
そして翌日
メルドを含めた騎士団とクラスメイト達とともにこの世界で『七大大迷宮』と呼ばれるダンジョンの一つであるオルクス大迷宮に実戦演習に訪れた
クラスメイト達は皆順調に迫りくる魔物を倒し、マッピングも進めている
意外だったのはこの中で唯一の非戦闘職であるハジメが思いもよらない活躍と戦闘職にも負けず劣らずの戦いぶりを見せたのだった
錬成師の技能で迫りくる魔物の足元の地面を錬成し落とし穴を作り落としたり魔物と自身の間に土の壁を作りぶつけさせたりなどメルドが感心するほどの技能の応用力を見せた
更には自前の拳銃や手榴弾モドキや閃光手榴弾モドキと言った物まで作り、そのうち手榴弾類をクラスメイト達に配った
それだけでなく、もう一つあるものを完成させた
光輝を含めたクラスメイト達全員の右手には腕時計のようなものを身に着けているが、これはハジメが制作したとある代物
曰くステータスプレートの血を垂らすことで能力や名前に種族年齢などといった個人情報を示す様に、この腕時計(名はクロノス)にはダイヤルを回すことでクラスメイト全員の出席番号が表示され、クロノスを付けるメンバー全てと連動しており、数字の色と点滅などでそのクラスメイトの状態を表す(特に何事もないなら数字は青く表示され、点滅なら命の危機に瀕しており、死ねば数字から色がなくなる)
ハジメはなんとなくで作ったようだが、これはこの世界には存在していない物であり、アーティファクトにも匹敵する代物だ
なんせ付けてるだけで離れてる仲間の状態や生死の判別ができるなんてものは、戦場において重宝される
光輝「(やっぱりこいつは凄いな…あの好奇心とやりたいことに実直なその姿勢……もし何事もなく地球にいたら将来的に何かを成すだろうなああいう男は)」
そして道中何事もなく進んでいき、何時間か経った時だった
メルド「まさか……ベヒモス……なのか!?」
65階層を降りたその時
大きな橋の上に巨大な魔物と魔法陣から骸骨兵士が現れ、一同を襲いかかった
メルド「アラン! 生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ! カイル、イヴァン、ベイル! 全力で障壁を張れ! ヤツを食い止めるぞ! 光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」
光輝 「待って下さい、メルドさん! 俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も……」
メルド「馬鹿野郎! あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ! ヤツは六十五階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ! さっさと行け! 私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」
そう言われた光輝だったがその内心ではこう考えていた
光輝「(あのベヒモス…たしかにこれまで見た魔物の中でも強力だ……だが……今の俺達でも勝てないこともない……そんなふうに思える……今の俺一人で真っ向からは勝てない……だが……なにも真っ向から戦って勝つ必要はない……逃げようにもまわりの敵が多すぎて逃げられない……なら)」
光輝「怯むな皆!!落ち着いて円陣を組め!!数は多いが所詮はザコだ!消耗を抑えて粘ればいずれはこっちが勝てる!!隣同士でカバーしあえ!!」
光輝はすぐにクラスメイト達に指示を出した
すると狼狽えていたクラスメイト達は落ち着きを取り戻し円陣を組み魔物たちと戦う
光輝「龍太郎はクラスメイト達のカバーを!!そして南雲!!」
光輝はハジメの方へ向くと
光輝「アイツに錬成で地面にめり込ませることはできるか?」
ハジメ「え?で、できると思うけど……まさか!?アイツを倒すつもり!?」
光輝「まあな…正直今すぐにでも撤退したい所だがそれをあのベヒモスが逃してくれるとは思えない……それに魔物の数も多い……なによりこの先生き抜いていくならあの程度の魔物くらいには勝てなきゃ話にならないからな……なに、別に馬鹿正直に戦って勝たなきゃ行けないわけじゃない……どんな形であれ…勝ちは勝ちなんだからな………いいか?俺の作戦をよく聞いてくれ」
光輝はハジメに指示を出した
ハジメ「え?そんなやり方でいいんだ…」
光輝「やれるか?」
ハジメ「正直危険だと思うけど……ま、僕そう言う危険事は慣れてるから問題ないよ♪」
光輝「(……あの危険な実験でこういう恐怖に対して耐性が出来てるな……)頼むぞ!!」
そう言うと光輝はベヒモスを抑えている騎士団のそばまで近寄ると技能を発動させる
光輝「(俺は全属性魔法に適性がある…更にそこに王宮から与えられた聖剣を合わせることでとてつもない力で戦うことができるが……その力に過信して挑むのは賢くないな……このベヒモス…騎士団達の攻撃に対してダメージを受けてない…恐らく彼らに匹敵するステータスの俺が攻撃してもあまり効果ない……なら攻撃を与えて絶命させて倒す方法は通じない……よって俺の考えた攻略法は!)」
光輝「『雷轟』!!」
光輝は聖剣から雷の斬撃をベヒモスの足元に命中させ、更にそこへ
雫「『刃風・千刃』!!」
雫が剣を何度も降ることで風の刃の雨を降らせた
光輝「!雫!!」
雫「光輝!貴方の考えが読めたわ!!」
雫は光輝の意図を察し、光輝とともに斬撃を飛ばす
光輝「ついでにこれも食らっておけ!!」
そこへ光輝は持っていた手榴弾モドキを全てベヒモスの足元に投げそのまま爆発した
するとベヒモスが足の痛みによりうずくまり動かなくなった
メルド「!ま、まさか、光輝」
ここでメルドはなぜ光輝が足元を狙った攻撃をしたのかわかった
光輝「いくら硬い身体でも、一箇所を重点的に狙えば流石にダメージになる……加えて!」
光輝はそこまで言うとその横をハジメが走り抜きベヒもすの眼の前まで来ると
ハジメ「『錬成』!」
ベヒモスの立っていた地面がハジメの錬成により1メートル程沈む
ハジメ「『錬成』『錬成』『錬成』『錬成』『錬成』!!」
連続の錬成により徐々に沈むベヒモス
やがて身体の半分近くが落とし穴に固定され動けなくなった
光輝「これで完全に動き回れなくなったな。ナイスだ南雲!!そしてこれで!」
ハジメが錬成で沈めている間に光輝は長い詠唱を終え、その聖剣には強い光が収束しており、光輝はベヒモスの眼の前まで来て大きく飛び上がり
光輝「ジ・エンドだ!『神威』!!」
今の光輝が放てる最強の技をベヒモスに振り下ろした
放たれた光属性の砲撃は、轟音と共にベヒモスに直撃した。光が辺りを満たし白く塗りつぶす
メルド「や、やったか?」
雫「あ、それフラグ」
先ほどの攻撃は文字通り、光輝の切り札だ。残存魔力のほとんどが持っていかれた
そんな中、徐々に光が収まり、舞う埃が吹き払われる。 その先には……
無傷のベヒモスがいた。 低い唸り声を上げ、光輝を射殺さんばかりに睨んでいる
メルド「ま、まずい!!逃げろお前達!!」
メルドは慌てた様子で光輝達にそう言うがそれに反して光輝達の表情は特に慌てた様子を見せなかった
光輝「逃げろだってメルドさん?いいえ…問題ないですよ。だってこいつは今の攻撃で負けが確定したのですから」
メルド「は?」
その瞬間それまでベヒモスが沈んでいた地面にヒビが入り出したかと思うとやがて亀裂は全体に広がりついには
ベヒモス「GAOOOOO!!!」
橋が崩壊しそのまま奈落の底へ落ちて行った
メルド「!ま、まさか光輝……お前が今放った攻撃……アレはベヒモスを狙ったのではなく!!」
光輝「ええ…橋を狙ったんですよ……今の俺達ではヤツにまともなダメージを与えられず絶命させることができない……ならどうすればいいか?……答えは単純。それ以外のやり方で倒せばいい」
メルド「!(こいつ…本当につい先日まで戦いを知らない学生なのか!?あの土壇場で冷静に物事を見定め、自身と相手との力の差を理解した上で、勝つ方法を見出した…)」
龍太郎「おーい光輝!!こっちは終わったぞ!!」
光輝「こっちも今終わったところだよ……それでメルドさん…これからどうしますか?」
メルド「あ、ああ…今回予期せぬ事態に見舞われたが…どうにか切り抜けた……とはいえこれ以上の演習は危険だな……今日のところはここらで終いにしよう」
光輝「そうですか…わかりました……おーい皆!帰還するぞ!!」
ハジメ「えー!!せっかくこれからもっと鉱物掘り当てられそうだったっていうのに!!」
光輝「我慢してくれ。流石にこれ以上先へ進むのは危険すぎる。それに、橋は壊れている…他の道を探さざるを得ない……俺が壊しておいてなんだけどな」
そう言い光輝が皆のところに行こうとした
ハジメ「じゃあ先へ進む手段があったら進んでいいんだよね?」
光輝「あったらな。まあ、橋が壊れた以上他の道を進むか奈落へ飛び降りて先へ進むかしか手段がないが流石に飛び降りたりなんかしないよな南雲!?」
そこで光輝がハジメの方を向くとハジメが何かを背負って奈落へ飛び込んだ
光輝を含めたクラスメイト達/騎士団「「「「えええええええええ!!??」」」」
まさかの出来事に驚く一同
そして更に
香織「待って南雲くーん!!」
ハジメに続いて香織も飛び降り、下でハジメの身体に抱き着きながら落ちて行く
光輝「ちょ!?ま!!」
雫「か、香織!?南雲君!?」
龍太郎「嘘だろおい!!??」
まさか目の前でクラスメイト2名が奈落へ飛び降り驚く一同
光輝「ん?」
ふと足元を見ると紙切れが落ちておりそれを拾う光輝
そこには日本語で以下の内容が綴られていた
『天之河君へ
この手紙を読んでいるということはきっと僕は抑えきれない好奇心のまま先へ進んでいる頃だろう。心配しないで、食料や道具に自作のパラシュートなど便利グッズはあらかた持っているから安心してよ。なあに、必ず成果上げてそのうち戻ってくるからさ
それまでクラスメイトの皆をよろしくね
by南雲ハジメ
ps:風呂上がりに耳掃除すると湿っている』
光輝「……」
雫「こ、光輝…これ…」
手紙の内容に絶句していた光輝だったがそこへ雫も日本語で書かれた紙切れを持ってきた
どうやら香織が通り過ぎざまに置いていったものらしい
『雫ちゃんへ
この手紙を読んでいるということは私は南雲君と一緒に先へ進んでるってことでしょう。昨日南雲君がこっそり先へ進む為の道具整理をするのをチラッと見てたからこれは彼と一緒になるチャンスだと思ったの!!
私のことは大丈夫だから雫ちゃん達も頑張ってね
by白崎香織
ps:あわよくば彼と一線超えればいいなと思っています』
ふたりの手紙の内容に…一同は絶句した
片や抑えきれない好奇心から先走った問題児、片や想い人についていきたい一心で飛び込んだ問題児
光輝「……フッ…フフフ」
雫「こ、光輝?」
突然笑い出した光輝に雫達は少し恐怖を感じつつ冷静を保った
光輝「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!
ふぅ………………よし
あいつら戻ってきたらただじゃおかない。ふたりまとめて折檻してやる」
その光輝の表情は笑顔だったが身体からは魔力と怒りと殺意が流れ一同は恐怖に怯えるのだった
ハジメ/香織「「!?」」
一方、下の階層まで来ていたハジメと香織はどこからか向けられた殺気に悪寒を感じるのだった
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第四話 問題児筆頭達がいない日々①
ハジメと香織が旅立った奈落ダイブ事変からの数日後
問題児達(ハジメと香織)が離脱したが光輝達は変わらず訓練や大迷宮に潜り実戦演習をする
ハジメ達のことは一応攻略のために他よりも一足先に探索の為離脱していると王宮に伝えた
生徒達は確実に強くなっているがその中でも飛び抜けて強くなっているのが光輝だった
元々才能においては生徒たちの中でも飛び抜いており、加えてハジメ達が居なくなった後、毎日自分を追い込むほど厳しく鍛え続けた結果、己のステータスを一時的に倍増する『限界突破』の派生技能である『不屈の前進』を発現させた
その効果は発現者が何があろうと歩みを止めず進み続ける限りステータス上昇に限界が来ないと言う物
つまり鍛えることをやめない限り成長し続けるレアスキルである
その結果現在では
光輝「『天翔閃』!」
神威の下位互換の技を放ち、ベヒモスと同程度の強さを持つ巨大の魔物を瞬殺した
光輝「悪いが…お前ら雑魚に構ってる暇はない。邪魔するなら狩り尽くすだけだ」
現在の光輝のステータスはというと
天之河光輝 17歳 男 レベル:32 天職:勇者
筋力:1450
体力:1680
耐性:1380
敏捷:1680
魔力:1960
魔耐:1480
技能:全属性適正[+光属性効果上昇][+発動速度上昇]・全属性耐性[+光属性効果上昇]・物理耐性[+治癒力上昇][+衝撃緩和]・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破[+不屈の前進][+全人前進]・言語理解
もう既にこの世界でも最高峰の実力を身に着けており、もはや王宮でも光輝を止めきれる実力者は居ない
この世界の人類の中でもトップクラスの実力者であるメルドすらもたった2日足らずで超えてしまうほど強くなりすぎていた
なお強くなっているのは光輝だけではなかった
雫「『風刃・鎌鼬』!」
雫が剣を振るうと見えない風の刃が飛び出し十数メートル先の魔物の体を切り裂く
雫もまた強くなっていた
というのも光輝が発現した『不屈の前進』以外にも派生技能が生まれており、その名も『全人前進』
その効果は光輝が仲間と認め共に戦い、鍛え続けることで他の面々にも成長補正が掛かるレアスキル
その為現在オルクス大迷宮で戦っている生徒たちは皆光輝ほどではないにしろステータスの伸び率が極めて高い
例えば光輝の次に高いステータスと実力を持つ雫はというと
八重樫雫 17歳 女 レベル:32 天職:剣士
筋力:1020
体力:1020
耐性:1020
敏捷:1680
魔力:960
魔耐:980
技能:剣術[+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇]・縮地[+重縮地][+震脚][+無拍子]・先読・気配感知・隠業[+幻撃]・言語理解
素早さは光輝と同等であり、それ以外もかなり高い
また龍太郎はというと
坂上龍太郎 17歳 男 レベル:72 天職:拳士
筋力:1280
体力:1280
耐性:850
敏捷:960
魔力:760
魔耐:760
技能:格闘術[+身体強化][+部分強化][+集中強化][+浸透破壊]・縮地・物理耐性[+金剛]・全属性耐性・言語理解
その他の面々達も何人かは一部ステータスが4桁を超えている者もいる
光輝が特に高いのは他の面々よりも鍛えてる時間が長いのと
待ってろよ南雲…そして香織……必ず見つけ出して折檻してやる
問題児2名を見つけ出して折檻するという執念が彼を強くさせた
というか周りからは光輝の背後から炎の幻影が見えた
雫「(うわ……またふたりへの怒りの炎が燃えたわ)」
その後も魔物相手に演習が進み、やがて70階層へ到達したところで一同は地上へ引き返すのだった
ハジメ/香織「「!?」」
???「ん…?どうかしたの?」
ハジメ「い、いや…また悪寒が」
香織「これで何度目だろうね…」
余談だが
オルクス大迷宮の奈落の底の底にいるハジメと香織は時々自分達に向けてくる殺気に悪寒を感じるのだった
それから少しして
光輝達はオルクス大迷宮のあるホルアドの町から王宮へ戻ることとなった
王宮まで戻る必要があったのは、迎えが来たからである。何でも、ヘルシャー帝国から勇者一行に会いに使者が来るのだという。 何故、このタイミングなのかというと
元々、エヒト神による〝神託〟がなされてから光輝達が召喚されるまでほとんど間がなかった。そのため、同盟国である帝国に知らせが行く前に勇者召喚が行われてしまい、召喚直後の顔合わせができなかったのだ。 もっとも、仮に勇者召喚の知らせがあっても帝国は動かなかったと考えられる
なぜなら、帝国は三百年前にとある名を馳せた傭兵が建国した国であり、冒険者や傭兵の聖地とも言うべき完全実力主義の国だからである。 突然現れ、人間族を率いる勇者と言われても納得はできないだろう。聖教教会は帝国にもあり、帝国民も例外なく信徒であるが、王国民に比べれば信仰度は低い。大多数の民が傭兵か傭兵業からの成り上がり者で占められていることから信仰よりも実益を取りたがる者が多いのだ。もっとも、あくまでどちらかといえばという話であり、熱心な信者であることに変わりはないのだが。 そんな訳で、召喚されたばかりの頃の光輝達と顔合わせをしても軽んじられる可能性があった。もちろん、教会を前に、神の使徒に対してあからさまな態度は取らないだろうが
王国が顔合わせを引き伸ばすのを幸いに、帝国側、特に皇帝陛下は興味を持っていなかったので、今まで関わることがなかったのである。 しかし、今回の【オルクス大迷宮】攻略で、歴史上の最高記録である六十五層が突破されたという事実をもって帝国側も光輝達に興味を持つに至った。帝国側から是非会ってみたいという知らせが来たのだ。王国側も聖教教会も、いい時期だと了承したのである。 そんな話を帰りの馬車の中でツラツラと教えられながら、光輝達は王宮に到着した
光輝「(帝国か……たしかあそこは亜人奴隷の風習が強く、力がモノを言う国だと、南雲の報告書に書いてあった……いざとなったらここを捨てて帝国に行くのもありかも知れない…)」
馬車が王宮に入り、全員が降車すると王宮の方から一人の少年が駆けて来るのが見えた。十歳位の金髪碧眼の美少年である。光輝と似た雰囲気を持つが、ずっとやんちゃそうだ。その正体はハイリヒ王国王子ランデル・S・B・ハイリヒである
ランデル「香織は!?香織は見つけたのか!?」
皆実戦演習で疲れているというのにねぎらいの言葉すらかけずに香織を探すランデル
実は、召喚された翌日から、ランデル殿下は香織に猛アプローチを掛けていた。と言っても、彼は十歳。香織から見れば小さい子に懐かれている程度の認識であり、その思いが実る気配は微塵もない。生来の面倒見の良さから、弟のようには可愛く思ってはいるようだが
光輝「お久しぶりです。ランデル殿下…香織も南雲も依然見つかっていません」
ランデル「その南雲とやらなどどうでもいい!!それよりも香織の事が心配だ!何をしておる!!それでもお前達は神の使徒かこの役立たず共が!!なぜ未だに香織を見つけておらん!!」
実際は相当甘やかされて育ったのか中々のクソガキとなっており、香織以外は眼中になく、態度もでかい
クラスメイト達の何名かは『このガキ…表面上とはいえ俺達が誰のために戦ってると思ってやがる』と思っており、光輝も内心では苛ついてはいるが決して表情には出さず落ち着いた態度で接する
光輝「殿下、彼も俺達の仲間です。蔑ろになんてできません。見つかってはいませんがどちらも一応生きています。安心して下さい。彼らは必ず見つけ出しますから…」
ランデル「必ずだぞ!そして香織と共にいる南雲とかいう者は帰還後極刑にしてやる!!香織を誑かし、あんな危険な所へ連れて行くなど言語道断だ!」
光輝「……香織が南雲についていったのは彼女の意思だと報告したはずですが…」
ランデル「うるさい!!余から香織を引き離した事自体が罪だ!!大体彼女にはあんな死ぬかもしれないを危険な所へ行かす事自体反対だったのだ!余の侍女や医療院などといった安全な仕事をさせたかった!!大迷宮などと行った危険極まりない場所などお前達だけが行けばよかったのだ!!」
それはつまり香織以外の命はどうでもいいと発言していることになる
ランデルの言葉にクラスメイト達は皆拳を握りランデルを睨む
それに気づかないランデルの発言はヒートアップした
それでも光輝はそれを冷静に受け流そうとした
ランデル「錬成師などという
その瞬間、光輝から冷たい殺気が放たれ、ランデルは驚き言葉を止める
光輝「……ランデル殿下……貴方はこんなんでも一応王族であり…まだ10歳の子供です……ですので貴方に気を使って優しく言ったつもりですが……………
流石に今のは聞き捨てなりませんね?」
ランデル「ヒッ!?」
光輝は笑顔で近づくが目は全くと言っていいほど笑っておらず、更に殺気を向けてくるので怯えるランデル
光輝「貴方に良いこと教えましょう。俺達はですね…人類を救うために戦ってはいますが……別にこの国に所属して戦うことにこだわる必要とかないんですよ。魔人族と戦うならこの国以外に所属して戦うとかも全然ありなんですよね。貴方方王族や教会が俺達をこの国専属で戦わせる理由の一つに神の使徒たる俺達がいることで他国に対して力を見せつけたり政治的影響を与えることにあると思ってます。俺達を自分達の国力や政治に利用するのは別に構いませんよ……ですが…これだけは言っておきます」
そう言いランデルの肩に手を置き、耳元に近づき
お前今度俺の幼馴染を物扱いしたりうちのクラスメイトを役立たずだとか極刑にするとか言ってみろ。この国のお前を含めた王族や上層部を皆殺しにしたあとこの国見捨てて他の国へ渡り歩くからな?そしてお前如きが南雲を語るな。わかったら今後は口に気をつけろこのガキ
特に声を小さくするわけでも無く周りにも聞こえるトーンでランデルに圧をかけた
これにはランデルは涙目になり声を震わせながら地面に両膝つけて怯えた
光輝「そういうわけですので、これからは考えて物を言いましょうか?貴方はまだ10歳ですが次期国王ですので、下手なことを言って敵を増やさないよう学習しましょうね殿下?」ニコッ
と、さっきまでとは打って変わって殺気を無くし笑顔で優しい口調で話し出した光輝
だが一度光輝に恐怖を植え付けられたランデルは頭をなりふり構わず頭を上下に揺らし頷くと逃げるようにしてこの場を去った
雫「光輝…」
光輝「ふう……ごめん皆。もしかしたらこの国に居られなくなるかもしれない」
光輝は申し訳無さそうに後ろにいる龍太郎達に謝る
龍太郎「謝るな光輝。むしろよく怒ってくれたって思ったぞ」
檜山「ああ。今のはスカッとした」
近藤「ガキとはいえ王族だからあまり強く言えなかったから変わりにいってくれて助かったぜ」
辻「ああいう子は誰かが言わなきゃつけ上がらせるだけだから言ってよかったわよ」
鈴「うんうん。鈴達のことをどうでもいい発言されたときはイラッとしたけど変わりに怒ってくれてありがとうね」
光輝「いや…確かにあいつの言ったことにイラッとしたのは事実なんだが……10歳相手に少し大人気なかった感あったし…一時に身を任せた発言して皆に迷惑掛けちゃったりするのが嫌だったっていうのに…」
龍太郎「安心しろ、万が一この国に居られなくなったとしても俺達は喜んでお前に付いていくぞ」
斎藤「だな。俺たちにだって選ぶ権利があるはずだしな」
中野「全くだ。てかあんなふうに言われたんだし、むしろ俺としては今すぐ出て行っても構わねえし」
遠藤「そうそう。てか俺達既にこの国の兵士よりも強くなってるし、いざとなればクーデター起こしてこの国乗っ取ったほうが良いかもしれないな」
清水「おいおい遠藤。それは流石にやばいだろwww」
光輝「……クーデターか……それも悪くないかもな」
リリアーナ「それはやめて下さい!!」
そこへランデルの姉であるリリアーナが会話に入ってきた
現在十四歳の才媛であり、その容姿も非常に優れていており国民にも大変人気のある金髪碧眼の美少女である
性格は真面目で温和、しかし、硬すぎるということもない。TPOをわきまえつつも使用人達とも気さくに接する人当たりの良さを持っている。 光輝達召喚された者にも、王女としての立場だけでなく一個人としても心を砕いてくれている。彼等を関係ない自分達の世界の問題に巻き込んでしまったと罪悪感もあるようだ。 そんな訳で、率先して生徒達と関わるリリアーナと彼等が親しくなるのに時間はかからなかった。特に同年代の香織や雫達との関係は非常に良好で、今では愛称と呼び捨て、タメ口で言葉を交わす仲である
光輝「ただいまリリィ。もしかしてさっきまでのヤツ聞いてたりしたかな?」
リリアーナ「は、はい。さっきはランデルが皆さんに大変無礼な事を言ってしまい、弟に変わり謝罪します。あの子は少々暴走してしまうことがありまして…何分次期国王ですので結構甘く育てられましたので…」
光輝「うん。あんまり赤の他人の俺がこういうのも何だけど、姉なら弟のこと、しっかりと躾けなきゃ駄目だよ。ああいう態度じゃ王様になったとき周りに敵作って最悪反乱起きちゃうかも知れないからね」
リリアーナ「は、はい…肝に銘じておきます…それよりも……改めて、お帰りなさいませ、皆様。無事のご帰還、心から嬉しく思いますわ」
リリアーナはそう言うと、ふわりと微笑んだ。香織や雫といった美少女が身近にいるクラスメイト達だが、その笑顔を見てこぞって頬を染めた。リリアーナの美しさには二人にない洗練された王族としての気品や優雅さというものがあり、多少の美少女耐性で太刀打ちできるものではなかった。 現に、永山組や小悪党組の男子は顔を真っ赤にしてボーと心を奪われているし、女子メンバーですら頬をうっすら染めている。異世界で出会った本物のお姫様オーラに現代の一般生徒が普通に接しろという方が無茶なのである。昔からの親友のように接することができる香織達の方がおかしいのだ
光輝「うん、ありがとう、リリィ。それはそうと帝国の使者はまだこっちには?」
リリアーナ「はい。帝国からの使者様が来られるには未だ数日は掛かりますから、お気になさらず。皆さん方もお休みになられてください」
そう言い歩き出したリリアーナに付いていく一同
リリアーナ「フフッ…それにしましても光輝さん…貴方は大変友達思いなお方ですね」
光輝「ん?」
リリアーナ「いえ…先程の弟の言い分にすごい殺気を放ってまで怒っていたのを見てましたので…こう言ってはなんですが、王族相手にあそこまで言えた方は私初めてでしたので…」
雫「フフッ。そうよリリィ。光輝ったら香織や南雲君が先に行ってからかなり怒ってたし『折檻する』ってなんやかんや言ってるけど本当は物凄く心配しているのよね」
光輝「し、雫……あまりそういうこと言わないでくれ」
雫「だって本当のことでしょ?でなきゃ訓練中や演習の時何度もクロノスでふたりの安否確認なんかしないわよ。というか心配し過ぎで最近眠れてないでしょ?」
光輝「う、ううん……居ても居なくても俺の胃痛の種だからな…」
雫「そ///そんなに眠れないなら///ま///また私の膝を貸すから今日眠る時ベランダに来て///」
光輝「え?///」
最初はリリアーナに光輝の事を話していた雫だったが眠れないでいるという光輝の話題に変わると頬を赤くしながら光輝が眠れるよう誘う
雫「リ///リーダーの貴方に倒れられたら私達が困るから///そ///それに貴方の負担を少しでも減らすことが私の役目だから///」
光輝「え///ええっと///じ///じゃあ///またお願いしても///い///良いかな?///」
それに対し光輝も頬を赤くしながら頼む
雫「!え///ええ///わかったわ///」
そんなふたりのやり取りを見ていたクラスメイト達とリリアーナ達は小声で話していた
リリアーナ「は///はわわ///とても甘酸っぱいです///見ていてこっちも恥ずかしくなります///」
恵里「うちのクラスじゃよく見る光景だよ」
鈴「くうー!!やっぱり美男美女は絵になっていいわ!!」
檜山「信じられるか?あれで付き合ってないんだぜ?」
遠藤「もうアレ実質カップルみたいなもんだろ」
龍太郎「頼むからホントさっさとくっついてくれ俺の親友たち」
その後一同はそれぞれ食事をしたりマッサージをしたり眠ったりなどをし大迷宮での疲れを癒やすのだった
ちなみに光輝は再び雫の膝枕で安眠し、雫も光輝の寝顔を見て安心して一緒に眠りにつき
翌日一緒に眠ってる姿を他のクラスメイト達に見られ冷やかされるのだった
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第五話 問題児筆頭達が居ない日々②
帝国からの使者が来るのを待つこと数日
帝国から来た5名の使者と対面することとなった光輝達
そこで使者の一人が光輝の力を確かめたいと模擬戦を開催することになる
光輝と対戦する使者は、なんとも平凡そうな男だった。高すぎず低すぎない身長、特徴という特徴がなく、人ごみに紛れたらすぐ見失ってしまいそうな平凡な顔。一見すると全く強そうに見えない。 刃引きした大型の剣をだらんと無造作にぶら下げており。構えらしい構えもとっていなかった
一見ナメているようにしか見えないそれに光輝達の戦いを見ようと集まってきた王国の貴族や使用人達は不快感を感じざるを得なかった
「はじめ!!」
模擬戦開始の合図が下され、両者ともに動き出すが
光輝「遅い!」
相手が一歩踏み出す直前に一瞬で背後にまわった光輝が持っている聖剣を首に当たる直前で寸止した
光輝「貴方は最初手を抜いて隙だらけを装って俺が馬鹿正直に真っ直ぐ来るよう誘導させつつそこで本気を出してカウンターを狙ってたんでしょうが……生憎貴方に本気を出させるつもりなんかありませんよ?……ヘルシャーの皇帝陛下様?」
使者「!?」
一瞬で勝負をつけた光輝に驚く一同だったが続けて光輝が言った言葉に更に驚くのだった
使者「……へっ!」
使者は右の耳にしていたイヤリングを取った
すると、まるで霧がかかったように護衛の周囲の空気が白くボヤけ始め、それが晴れる頃には、全くの別人が現れた。 四十代位の野性味溢れる男だ。短く切り上げた銀髪に狼を連想させる鋭い碧眼、スマートでありながらその体は極限まで引き絞られたかのように筋肉がミッシリと詰まっているのが服越しでもわかる。 その姿を見た瞬間、周囲が一斉に喧騒に包まれた
「ガ、ガハルド殿!?」
「皇帝陛下!?」
そう、この男、何を隠そうヘルシャー帝国現皇帝ガハルド・D・ヘルシャーその人である。まさかの事態に国王エリヒドが眉間を揉みほぐしながら尋ねた
エリヒド「どういうおつもりですかな、ガハルド殿」
ガハルド「これは、これはエリヒド殿。ろくな挨拶もせず済まなかった。ただな、どうせなら自分で確認した方が早いだろうと一芝居打たせてもらったのよ。今後の戦争に関わる重要なことだ。無礼は許して頂きたい」
謝罪すると言いながら、全く反省の色がないガハルド皇帝。それに溜息を吐きながら「もう良い」とかぶりを振るエリヒド陛下
ガハルド「いや!まさか勇者の実力がこれほどとは思っても見なかったぞ!!それにしても、なぜ俺の正体がわかった?これでも変装の魔導具を使っていたというのに」
光輝「そんなに難しい理由じゃないですよ?強いて言えば、貴方…ただの使者の割に強すぎなんですよ」
ガハルド「なに?」
光輝「これでもこの国で指折りの騎士団長に鍛えてもらいましたし対戦することも何度もありましたので、ある程度見ただけで相手の強さがわかるんですよ。他4名の使者と比べても貴方は数段ほど強かった……それとヘルシャー帝国は力がモノを言う国と聞いてます…なら当然そこを治める皇帝陛下も強いのは当然だと思ったまでです。ついでに言うとうちの仲間には情報通(ハジメ/清水)がいますので貴方がフットワークが物凄く軽い方と聞いてましたので実は紛れてるのではと想像しました」
ガハルド「……くっくくく…お前、中々面白い男だな…どうだ?お前さえ良ければ我がヘルシャー帝国に来ないか?」
光輝「こんな公の場で引き抜きとは、フットワークが軽いの次元が超えてますね……謹んでお断りします」
ガハルド「フッ、まあ焦らんさ。来る気になればいつでも待っているぞ勇者」
なし崩しで模擬戦も終わってしまい、その後に予定されていた晩餐で帝国からも勇者を認めるとの言質をとることができ、一応、今回の訪問の目的は達成された
光輝「はあ〜…」
その夜、王宮の中にベンチに腰掛けため息を吐く光輝…
というのもあのあとも皇帝からしつこく勧誘され続けたり、王国の上層部から成果の聞き出しや今なお見つかってない香織のことなどを言われた
香織の治療師としての才覚はこの世界でもトップクラスであるため最優先で見つけるよう言われている
が、ここでもハジメの事を蔑む発言を言われ、思わず上層部全体を包み込むほどの殺気を浴びせたりなどがあり疲れていた
光輝「こんなことに時間を裂きたくないっていうのに……さっさとオルクスに戻って力つけながら南雲達を見つけたいところだっていうのに…」
そう呟きながら目を瞑る光輝
それから少しの間静寂があたりを包んでいた
光輝「………足音立てない程度で君の存在がわからない俺じゃないよ雫」
雫「あら、バレちゃった」
そこへ足音を消して近づいてきた雫に声を掛けた
そして雫は当たり前のように光輝の隣に座り、そこからは光輝とふたりで話し合った
ふたりだけで話す
これは地球に居たときからやってきたことであり、一日の終りに携帯電話のチャット通話で香織や龍太郎、そしてクラスメイト達と雑談(課題やゲーム、食事中に垂れ流して)をして過ごすのは日課だったが、いつも皆がチャットから抜けたあとにふたりっきりでほんの数分話していた
ふたりだけで過ごすその数分間をふたりは大切にしており、また香織や龍太郎と言った幼馴染達やクラスメイト達は空気を読んでわざわざふたりだけにするよう働きかけていた(なお後日それぞれ(光輝は男子生徒、雫は女子生徒達)に何を話していたのか聞かれる)
それはトータスに来たあとも変わりなく、寝る前の十数分はこうしてふたりだけになり今日あった事を振り返ったりそれぞれ(光輝は男子組を、雫は女子組)何があったのかを話していた
雫「ねえ光輝…」
光輝「ん?」
雫「…さっきはありがとうね……」
雫が光輝にお礼を言ったのには理由があった
何回目かの勧誘の時にたまたま目に写った雫を気に入ったガハルドが妾にならないかと言って来たが光輝が笑顔で優しい口調で『生憎ですが、彼女は既に意中の相手が居ますので、ほかを当たってくれませんか?』と嘘を言った
しかしガハルドにはその時の光輝の口調が別のものに聞こえた(さっさと消え失せろこのピー野郎)上、冷たい殺気を当てられ、ガハルドは逃げるようにその場を去った
ガハルドから自身を守ってくれた光輝にお礼を言った
光輝「いや…それよりごめんね。あんなこと言って…ああいう輩には既に先約がいますからみたいに言わなきゃしつこく絡んでくるだろうなって思ったからつい…」
雫「それは大丈夫……嘘ってわけじゃないし…」
光輝「ん?」
雫「あ!な、何でもないわ!!」
光輝「そ、そうか………(居るんだ……好きな人…誰だろ……俺の知ってるやつか?)」
雫「そ、それより…光輝って…好きな人いるの…?」
光輝「!?」
雫「い、言いたくなかったら言わなくてもいいから!!(もし居るなら怖いけど聞きたいわ……)」
光輝「(言うべきか?……いや…この逃げ場もない異世界で告白するのは違う気がする……告白するとしたら地球に帰ってからだ……決して臆したわけじゃないぞ龍太郎←言い訳)……いる…けど……今は言えないな」
雫「!!そ、そう…」
光輝「でも!必ず言うよ!地球に帰ったら必ず雫にいの一番に言うよ!!」
雫「///!?」
光輝はベンチから勢いよく立ち上がり雫の両手を掴みながら言うと雫が頬を赤くしながらうろたえた
その姿はまるで意中の相手にプロポーズでもするかの如く押していた
雫「う///うん///」
光輝「あ、ご、ごめん………」
直後に光輝は自分のした行動に驚き思わず謝る
光輝「……それはそうと…雫」
雫「……ええ…わかっているわ…」
そう言いふたりは立ち上がると大声を上げた
光輝「お前ら!俺達の事を見ているのは気付いているぞ!!俺達は見世物じゃない!さっさと散れ!特に檜山!!お前の気配あまり隠れきれてない!!」
檜山「やばいバレた逃げろ!!」
近藤「大介!お前隠れるの下手!」
恵里「こんなんじゃまだまだ遠藤レベルは程遠いよ」
鈴「あれは異次元の影の薄さだから比べられないよエリリン!!」
清水「やっぱ遠藤師匠の気配隠しは桁違いだ。またレクチャー受けてこよ」
玉井「あいつもう自分の影の薄さに関して開き直ってたな」
光輝がそう言うとまわりで気配を隠して光輝達の会話を盗み聞きしていた面々が一斉に逃げ出した
光輝「はあ…またか……暇なのかあいつら」
雫「本当ね…私達の会話の何が面白いのかしら……」
こんなことが毎晩毎晩続いていくと徐々に生徒たちの気配遮断能力が向上し、逆に光輝と雫の気配感知能力が上がっていったのだった
お互い他人からの好意や悪意には敏感のくせにそれぞれ意中の相手からの好意には鈍感
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