デリシャスパーティ♡プリキュアVS暴太郎戦隊ドンブラザーズ (テンカイザー)
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プロローグ ことーしおいしーな
皆さんようこそいらっしゃいませ!
ここは、『おいしーなタウン』、おいしいお料理がたくさん集まる町です。
……とは言っても、このお話を読んでいるみなさまはもう知ってますよね?
ゆいちゃんたちがブンドル団をやっつけてから、もう一年が過ぎたんです。時間が流れるのは本当にあっという間……
ゆいちゃんたちも、今じゃすっかり中学3年生。あれからみんなたくさん成長した。
ゆいちゃんは今でもわたしの言葉を大事にしてるけど、ちゃんと自分の思いを大事にして前に進んでいます。
ここねちゃんは前よりも自分の気持ちに正直になって、今ではたくさんのお友だちと楽しく過ごしています。
らんちゃんは前よりもさらに好きなものへの情熱を燃やして、キュアスタでその情熱をたくさんの人に発信しています。
あまねちゃんは今まで以上に清く正しく美しく、生徒会長としてみんなの見本として頑張っています。
たった一年だけれど、あれからみんなこれまで得たたくさんの思い出を胸にたくさん前へ進んでいます。
そんなゆいちゃんたちですが、今日はなんと久しぶりにお友だちのマリちゃんやコメコメたちと久しぶりに会える日なんです。
ゆいちゃんったら、今日のことを何日も前から楽しみにしててずっとそわそわしちゃてて……
さぁて、そんなゆいちゃんたちは今どうしてるでしょうか。
みなさまも一緒に様子を見てみましょう……
△△△△△△△△△
「ハーハッハッハッ!祭りだ!祭りだ!」
その日、世界中の料理が集まる町おいしーなタウンでは、激しい戦いが繰り広げられていた。
たまたま町を訪れていた王女を守護するべく参上した5人のヒーロー。
対するのは、王女を狙う異形の怪物。
「ケンケンケンケーン!」
「はあっ!」
「……えっ、なんだ?この町に来てまでか!?」
ヒーローというには凸凹とした姿が目立つ奇怪な者たちであるが、各々がその体格と技を活かし怪物を追い詰めていく。
そんな中、1人のヒーローは王女の手を取る。
「さぁマイラ王女、早くここを離れましょう!」
「え、いやちょっと待っ––––––」
ヒーローは困惑する王女の言葉を待たずして、王女の手を引っ張り戦線を離脱した。
「みんな、ここは任せた!」
(今の私、凄く王道って感じがするー!)
(あたし、王女さまじゃないんだけどー!?)
その者が本物の王女でないとも知らずに……
△△△△△△△△△
あらあら、何やらとんでもないことになってるみたいね。
さて、なぜこうなったかと言いますと…………
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Chapter1 はじまりハジマリ
今日のおいしーなタウンは一際賑やかであった。それもそのはず、何せ今日は記念すべきお祭りなのだから。
今からおよそ一年前、この世界は大きな危機に陥った。
全ての人が料理とその作り方の記憶を奪われ、飢餓寸前まで追い込まれたのだ。
その危機を救ったのは、世界中の人々が積み重ねて来た料理への思い。そして、その思いを胸に戦った少女たち。
かくして、沢山の人々が積み重ねてきた思いが起こした奇跡により、世界は救われたのだ。
それから、この日は世界を救った記念日としてこの町で毎年お祭りを開催することとなった。町の飲食店は勿論のこと、別の場所から来た料理人たちもがこの町を訪れ店を開き、たくさんの料理を振る舞うのだ。
そしてその世界を救った少女たちはというと、今日この日という日を待ち焦がれていた。
何せ今日は、年に一度のお祭りであり久々に友だちと会える日なのだから。
「あっ、来たよ!」
するとどうやら丁度そのタイミングのようだ。
4人が待っていた所で突然眩い光の輪っかが現れ、その中から見知った影が出てくるのが見える。
「ゆいーっ!」
「わっ、コメコメ久しぶりー!」
「コメー!」
真っ先に飛び出して来たのは、ゆいの最高のパートナー、コメコメ。現在は得意の化ける能力により少女の姿になっている
ゆいを見るや、久しぶりの再会に喜ぶあまりにいきなり彼女に飛びつくコメコメだが、ゆいも持ち前の体力によりコメコメをなんなく受け止めた。
「みんな久しぶりー!元気にしてた?」
「あぁ、わたしたちは相変わらずだ。マリちゃんの方こそ、元気にしてたか?」
「そりゃ勿論よー!むしろどう?前にも増して美しさ特盛になったと思わないー!」
「あはは……。本当相変わらずで何よりだ」
あまねに話しかけるのは、ローズマリー。
現在はクッキングダムにて新手のクックファイターたちの指導を行っている。もっとも、ブンドル団が壊滅してからはクッキングダムは平和そのもの。それ故にレシピ本を狙う輩もいないため、こうして時折休息を貰えているのである。
「ここね!会いたかったパム!」
「パムパム、私も会いたかった……」
「メンメン久しぶりー!元気だった?」
「勿論メン!らんちゃんも元気だったメン?」
「うん、いつでも元気マシマシだよ!」
ここねとらんと楽しそうに話す少女と少年は、パムパムとメンメン。
2人とも一年前の決戦の最中に手に入れた力により、コメコメと同じく人間の姿になっている。
––––––グゥゥゥゥ
みんなが再会を喜ぶ中、突如鳴り響いた音に場が一旦静まる。
それはある意味この面々にとっては馴染みの深いものであった。
「……えへへ、嬉しくなったらお腹空いちゃった」
そう、音の発生源はゆいのお腹であった。
ゆいの食い意地は並大抵のものではなく、事あるごとによくわからない理由でお腹を空かせることがしばしばある。
「もう、本当に相変わらずね」
「だって、今日はみんなでまたおいしいものいっぱい食べれるのが楽しみだったんだもーん!」
すっかり慣れ親しんだ光景とはいえ、みんな呆れを含めた苦笑いを溢す。
だが、その中には今でも変わらない各々への安心もほんのり含まれていたような気がした。
「じゃあ、早速行こっか!折角のお祭りなんだし、たくさん食べなきゃだよ」
「らん、あまりはしゃぎすぎるんじゃないぞ。マリちゃんも、お金はちゃんと計画的に使うようにな」
「大丈夫よ、今日はクッキング様からいただいたお金が特盛ですもの!久しぶりにこの町のおいしいお料理をたくさん食べちゃうわよー!」
「まったく、先が思いやられるな……」
ゆいの腹の音を皮切りにお祭りの巡回を始めることとした一同。
はしゃぐらんとマリちゃんに釘を刺すあまねだが、当の2人はそんなことはものともせず大いにはしゃぐ。そんな2人の様子にあまねはまた苦笑いをこぼしていた。
「でも、私もすっごく楽しみ。またみんなで一緒においしい物たくさん食べられるの」
一同の中でずっと物静かな雰囲気を崩さなかったここねだが、彼女もまた大好きな友だちといっしょにお祭りを楽しめるのを誰よりも楽しみにしていた。
「あぁ、もうあたし本当にはらぺこったよ!早く行こうよ!」
一方で先程盛大にお腹を鳴らしたゆいは、もう待ちきれなくなったようで、彼女特有の「はらぺこった」という口癖を言いながら歩きだした。
「コメコメも行くコメー!」
「まったく、私たちも行くか」
「最初は何食べに行こうか?」
「らんらんはね、やっぱり麺がいいなー。うどんにそばにジャージャー麺に焼きそば、どれから行こうかなー」
「らーん、それ自分の食べたい物ばっかじゃないの」
「ぼくもらんちゃんの行きたいお店、たくさん行きたいメン!」
「パム!?パムパムはここねの行きたいお店が良いパム!」
かくして、ゆいたちは最初に食べるものについて談笑しながら町を巡り始めた。
△△△△△△△△△
ことーし、ことし、あるところに……
4人のお供と、1人の暴太郎がいた。
暴太郎は一度はお供たちの前から姿を消したものの、繋いだ縁が起こした奇跡は、再びお供たちを暴太郎と巡り合わせたのだ。
そして今日も5人は、一致団結し人々に降りかかる悲しみを退治しましたとさ。
「ハーハッハッハッ!ダメだダメだダメだっ!腕が落ちたようだなお供ども!」
タロウがリーダーとして復帰してから数ヶ月。
ドンブラザーズは今日も今日とてヒトツ鬼を退治した。
だが、タロウは未だにジロウがリーダーだった間に落ちた腕が治らないお供たちを不満に思っていたらしく、教育と称して彼らに攻撃を加えていた。
「おいっ!なんでいつもこうも––––––」
「ちょっと待って、ちょっと今日僕腰が––––––」
「逃げろ!つべこべ言う暇があるなら逃げ––––––」
「ハーハッハッハッ!祭りだ祭りだっ!」
彼らはドンブラザーズ。人々を悪鬼から守り幸せをもたらすヒーロー。
そう、例えどの過ぎたパワハラにしか見えないことをしていようとも、彼らはヒーローなのだ……
「もっと王道なヒーローらしいことがやりたぁぁぁぁぁぁい!!!!」
そんなオニシスターの叫び声が戦場にこだました。
という訳で、まずは温度差を味わってもらいました←
これから頑張って濃くしていきます。
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Chapter2 おうどうのあゆみ
これからも色々やりそうだなあの戦隊は……
さて、今回は書きたいこと書いてたらいつのまにやら前回より大分長くなりました()
–––喫茶どんぶら
暗いモノトーンに包まれたノスタルジックな香りが漂うその店は、しがない喫茶店であると同時に、ドンブラザーズの憩いの場でもあった。
そこで彼女、鬼頭はるかは思い悩んでいた。
彼女はドンブラザーズとして戦い続ける傍ら、人気漫画家として活動している。彼女の作品の中でも一年ほど前から連載し始めた「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」は日本漫画家大賞を受賞し、現在も尚根強い人気を誇っている。
だが、彼女は現在ドンブラザーズの執筆において行き詰まっていた。
(やっぱり何か違う、とても王道とは言い難い……)
その理由は、彼女の描きたいヒーロー像を見失いかけていることにあった。
(編集長が変わってからどうも上手くいかない……、ソノザ編集長、どうしちゃったんだよー!)
そう、彼女が行き詰まっている根本的な原因は今の編集長にある。
これまで彼女の編集長はソノザであったのだが、ある時を境にソノザはやさぐれた様になってしまい自宅に籠りっきりになってしまったのだ。そのため、彼女の担当編集長も変更せざるを得ない状況となった。
だが、その後任の編集長が致命的であった。ソノザとは大分違った趣向の持ち主であり、はるかとも馬が合わなかったのだ。
そんな編集長にある時言われてしまったのだ、『もっと王道なヒーローを描け』と。はるかは逆らうことも出来ず渋々了承してしまったのだが、結果はこの通りであった。
「ヒーローの王道と言えば、友情、努力、苦難の末に芽生える仲間たちとの絆……」
ためしにヒーローの王道らしい物を思い浮かべるも、どれも自分たちに当てはまってあるとは思えなかった。
ドンブラザーズはこれまでの彼女の戦士としての軌跡を描いてきた、まさに『鬼頭はるかの真実の物語』であった。だが、彼女のこれまでの軌跡を振り返っても、一般的な王道ヒーローと言えるようなものは一つも思い浮かばなかった。
「なんか王道なヒーローらしい話ないかなぁ……」
ふと憂鬱な言葉を漏らすはるか。
だが彼女の願望に応えるものなどありはしない。
「あるよ」
–––などということはない。
何故ならここは喫茶どんぶら。ここにないものなどありはしない。
△△△△△△△△△
「あーむっ。……デリシャスマイル〜♪」
お祭りを巡回し始めたゆいたちは、食べ歩きを満喫していた。
ゆいの手にはコロッケにケバブにチュロス、柏餅など色んな物が握られている。
「まったく、品田が来るまでにそんなに食べて大丈夫か?」
「大丈夫!拓海が来たあともたくさん食べるもん。あむっ––––」
あまねに釘を刺されるも、ゆいはなんとも無いように次の一口を味わい始める。
彼女たちはこの後、ゆいの幼馴染である品田拓海と合流し一緒に食べ歩きをする予定であった。最初から一緒に回ってもよかったのではという声もあったが、拓海は最初は他の男友だちと一緒にお祭りを巡ってからゆいたちと合流することとなった。曰く、折角の大事な友だちとの時間なのだから自分がそこに入るのは野暮だとのこと。
「でも拓海、なんで最初からあたしたちと一緒じゃないのかな?拓海の友だちともみんなでお祭りを楽しめれば良いのに」
「……それはまあ、品田も色々あるのだろう」
(相変わらず苦労しているようだな)
ゆいにとって拓海も大事な友だちの1人であった。なのにそこに入るのが野暮というのが理解出来なかった。
一方で、あまねは拓海の真意を察していた。恐らく照れ隠しだったのだろうと。このお話を読んでいる皆さまならご存知だろう、拓海が密かに抱いているゆいへの思いを。だが、一年前の戦いで2人の距離は縮まりこそしたものの、鈍感なゆいは未だに拓海の気持ちに気がついていない。それもあって、拓海は上手くゆいとの関係に踏み込むことが出来ずにいた。
「けどもうあれから品田先輩もあまねんも高校生かー。やっぱり高校生活って大変なの?」
「特にそう思ったことはない、あれから私は楽しく過ごしているさ」
拓海の話をしていた中、ふとらんはあまねにそんなことを言い出す。
対してあまねはらんの質問に笑って言葉を返した。
「そっか、あまねんは高校でも楽しくやれてるんだ」
「そういうあなたたちだって、来年にはもう高校生じゃない。本当時間が経つのはあっという間ねぇ」
マリちゃんの言葉を聞いたゆいたちは、ふと自分たちのことを思い返した。彼彼女の言う通り、ゆいたちももう来年には高校生となるのだ。そう思うと、彼女たちの中で様々な感情が膨れ上がった。
「そっかぁ、あたしたち高校生になるんだね」
「私ね、これからもずっとみんなと友だちでいたい。けど、高校生になったら新しい友だちもたくさん作りたい」
「きっと出来るパム。ここねの可愛さなら、きっと学校の全員を虜にしちゃうパムよ」
「もうパムパム、そんな大げさな……」
「らんらんはねぇ、色んなお料理の研究がしたいな。たくさんお料理について詳しくなってたくさんお料理の素晴らしさを知って、それをみんなに伝えたいなぁ」
「らんちゃんのお料理への情熱はやっぱりすごいメン!ぼくもたくさん応援するメン!」
「えへへ、ありがとメンメン」
ここねとらんはそれぞれのやりたいことを口にして未来への思いに馳せる。
そんな中、ゆいはどこか思い悩んだような様子だった。
「ゆいは高校生になったらやりたいことあるコメ?」
「あたし?あたしは……」
考えてみるが、明確な答えは思い浮かばない。
「あたしは、みんなとも友だちでいたいし、おいしいものもたくさん食べたいし、……けどこれって今までと何も変わらないよね?」
「コメ?ゆいは新しいことがしたいコメ?」
「うーん、どうなんだろ?」
ゆいがこれから先したいことは今までとあまり変わらないものばかり。かと言って何か新しいことがしたいのかと言ってもよくわからない。結局の所、ゆいは高校生になっても何がしたいのかわからずにいた。
「まあ、そんなにすぐに答えを出さなくてもいいんじゃない?」
「マリちゃん?」
「ゆいの人生はまだまだ長いもの、やりたいことを見つける機会なんてきっとこれからたくさんあるわよ」
どこか思い悩んでいたゆいに、マリちゃんは優しく励ましの声をかけるのであった。
「それにしてもあなたたち、本当青春してるわねー!」
「青春?」
するとマリちゃんは今度はやや高めのテンションでそう言いだした。
「えぇ、みんなそれぞれが将来への思いを馳せるその姿はまさに青春の王道よ!本当羨ましいわぁ、私も若い頃そんな時期があったわぁ……」
どうやら今のゆいたちの様子を見て過去の自分を思い出したようだ。若かりし頃の思い出に浸るマリちゃんは、何やらやけにニヤニヤしていた。
「……私たちのは本当に王道と言えるのだろうか?」
そんな中、ふとあまねがそんなことを言いだした。
「はにゃ?らんらんたちって王道じゃないの?」
「よく思い返してみろ、私たちは同じ中学に通っていた仲とは言えども、今の私たちの関係があるのはプリキュアとしての戦いがあったからこそだろう?」
確かにあまねの言うことも一理あった。
今の彼女たちがあるのは、プリキュアとしてブンドル団との戦いの中で様々な思いをぶつけ合い、分かち合ったからこそのものであった。
だが、そもそもプリキュアとは彼女たちが選ばれた特別な存在だ。もし彼女たちがプリキュアに選ばれなかったらまた違う未来があったのかもしれない。
「私もあまり実感はないが、私たちプリキュアは選ばれた特別な存在だ。誰もがなれるものではない。そういう意味では、私たちが過ごした日々は王道とは外れるのではないか?」
「……うーん、そうかなー?らんらん別に自分が特別な人生送ってるなんて思ったこと全然ないけどなー」
「私は、みんなとは特別な友だちだと思ってる。けどそんな友だちって、私たちだけじゃないと思う」
「うーん、けどあたしたちが王道かどうかなんてよくわかんないな」
みんなそれぞれの思いを口にする。
確かに彼女たちのようなプリキュアは普通の人とは違う部分もあるかもしれない。だが、それで自分たちが普通ではないかと言われてもやはりピンとこない。
「あっ、でも王道じゃないのも良いじゃん!」
そんな中、ふとらんが何かを思いついたらしくそんなことを言う。
「どういうことらんちゃん?」
「パンダ軒でもね、醤油ラーメンや味噌ラーメンといった王道メニューが人気なんだけど、最近だとイタリアンラーメンやトロピカルラーメンとか色んな新しいメニューがあって––––––」
「–––ゆい!」
らんが急にラーメンの話をし出したかと思えば、突然それを遮るかのように声が響いた。
それにびっくりした一同は、一斉に声の聞こえた方へと首を向けた。
「えっと、あなたは?」
「…………」
目の前に立っていたのは、フードを深く被り顔が見えない格好をした2人組であった。片方は身長がゆいと同じくらいであった。
目の前の人は先ほどゆいの名前を呼んだが、当のゆいには目の前2人に見覚えがない。
すると身長がゆいと同じくらいの方がそっとフードを脱ぎ始めた。
「え?……あ、あなたは!?」
ゆいを始め、一同はその顔を見た途端に驚愕に染まる。その顔は、
だが、一同が驚いたのはゆいと瓜二つだからではない。その者が自分たちの知人であったからだ。
「ま、マイラ王女!?」
–––マイラ・イースキ
イースキ島の王女であり、ある一件により知り合ったゆいたちの友だちだ。
△△△△△△△△△
喫茶どんぶらのマスター『五色田介人』はドンブラザーズの面々を集めていた。何人か足りていないようだが……
「あの、犬塚さんたちがまだ来てないみたいなんですけど……」
雉野つよしはそっとマスターに聞いた。
雉野と犬塚は過去に壮絶ないざこざがあれど、現在はお互いの身を案じ合うほどの仲となっていた。そんな彼と、彼の思い人であるソノニがいないことを雉野は心配していた。
「あの2人は来ないよ。今頃どこかで逃亡生活を送っている」
マスターは無表情のまま雉野の質問に答えた。
そう、あの2人は今でも逃亡生活を送っている。今度は一体何の罪に問われているのか知る由もないが。
「ソノザはどうしたのだ?」
「編集長は、あれから何故か外に出てこなくなっちゃって……」
今度は猿原真一の質問にはるかが答える。
猿原とソノザは当初から歪み合う仲ではあったが、一応いなければ気にはかけるほどの良心は持ち合わせていたようだ。
「それで、俺たちに何の用だ?アンタから俺たちを呼びだすとは随分と珍しいが」
そう言うのは、我らがドンブラザーズのリーダー『桃井タロウ』だ。
揃っていないメンバーなど気にも留めず、彼は早速話の本題へと入ろうとしていた。
「単刀直入に言う。
……君たちドンブラザーズにはおいしーなタウンへ赴き、マイラ王女を護衛してもらいたい」
(王道展開来たー!)
もう、おわかりいただけたでしょうか?
この作品の基本は、デパプリで癒してからドンブラでぶん殴るです←
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Chapter3 助けてゆい…マイラ王女との再会!
「マイラ王女…………って誰?」
マスターから依頼内容を言われたドンブラザーズだが、はるかは護衛対象であるマイラ王女について何も知らなかった。
するとマスターはどこからともなく一枚の写真を取り出し、それをはるかに投げ渡した。
はるかはなんとかそれをキャッチし、写真を見てみる。その裏で、雉野と猿原も覗きこむ。すると写真に写っていたのは、中学生くらいに見えるにっこりと微笑んだ可愛らしい少女であった。
「イースキ島の王女、国民からは『微笑みの王女』として慕われている」
マスターははるかたちにマイラ王女を説明する。
写真に写っている彼女の微笑みは、確かにどこか人を惹きつけるような魅力がある。微笑みの王女と呼ばれるのも納得だ。
「ほお、微笑みの王女か。随分と持て囃されたものだな」
マスターの説明を聞くやいなや、タロウは相変わらずのどこか横暴な態度でマイラを評した。
仮にも王族相手に随分と偉そうな態度を取っているが、これがタロウの平常運転だ。もっとも、タロウもタロウでドン王家の生き残りであるため、同じ王族として分け隔てなく本心で接しようとしてるのだろう。
最も、側から見れば不敬極まりないのだが……
「それで、何故その王女を守る必要がある?」
タロウがマスターに問う。
これまで何度も困った人には手を差し伸べてきたものの、相手は曲がりなりにも王女。守ってくれる人はいくらでもいるはずだ。
それが何故わざわざ自分たちが指名されてまで守らねばならないのか、疑問を感じていた。
「とある伝手からの情報でね、近頃マイラ王女の元に謎の脅迫状が届いたらしい。それから程なくしてマイラ王女は怪物に襲われた、恐らくヒトツ鬼だろう。幸い王女は無事で済んだものの、王女の側近は怪我を負ってしまったらしい。そうして恐怖に駆られたマイラ王女は、使用人と共においしーなタウンへ逃げたそうだ」
(いやアンタどんな伝手持ってんだい!)
心の中ではるかがツッコむ。
このマスターは出会った当初から現在まで全てが謎の存在だ。
普段は喫茶店のマスターを務めながら、ある時はトゥルーヒーロー・フォーエバーヒーローとして慕われ、ある時は秘密の戦士としてドンブラザーズをサポートし、ある時はリアルサンタと旧知の仲であったり、とにかく何から何まで謎でしかないのだ。
そんな彼が、今度は一国の王族とも繋がりを見せてきたのだ。ますます正体が掴めなくなる彼にはるかは頭を抱えるしか無かった。答えを聞こうにも、いつも決まって肝心なことははぐらかされるため尚のことたちが悪い。
「いやでも僕たちはただの一般人で、僕に関してはただの平凡なサラリーマンですよ?そんなのが王女様の護衛だなんてなんか恐れ多いというか……」
「何を言う雉野?私たちも王女にまで名を馳せられる程にまでなったということ、実に光栄ではないか」
卑屈なことを言う雉野に対し、猿原はどこか誇らし気に言う。
普段は風流人を気取って知的な様子を見せる猿原だが、今は自分が大層な依頼を受けたのが余程嬉しいのかどこか浮かれた様子であった。
「良いだろう、その王女が困っていると言うなら助けになってやる。俺は全ての人に幸せを運ぶのが役目だからな」
タロウは相変わらずの大きい態度で今回の依頼を受諾した。
相手が誰であろうとも困っている人は助ける、そうして結ばれた縁はいつしか大きな奇跡となり、世に幸せをもたらす。それがタロウの信条だ。
それに今回の件にヒトツ鬼が絡んでいるのであればそれは自分たちの領分だ、やらない訳にはいかない。
一方で、はるかの方も内心とてもウキウキしていた。
(悪に狙われ恐怖に怯える姫を救うため颯爽と現れるヒーロー、正に王道〜!)
マスターに依頼された内容は、まさに彼女が今求めていたヒーローの王道展開そのもの。これを機に今行き詰まってる漫画の原稿を完成させようと密かに目論むはるかであった。
△△△△△△△△△
突然マイラ王女と鉢合わせたゆいたちは、近くのベンチに座り彼女から話を聞こうとしていた。
ちなみに彼女と共にいた女性は、彼女の使用人で『ムギン・アウラ』であった。
「申し訳ないでございます、ワタクシのせいでみなさまの楽しいお時間に水を刺してしまったようで」
「そんな気にしないで、あたしたちマイラ王女にまた会えてとっても嬉しいよ!」
「だが、そのように変装までして来たということはただ事ではないのでしょう?」
あまねは何かを察したように言う。今のマイラ王女たちは以前来た時とは違い、彼女を知っている者からすれば明らかに自身の身分を隠すかのような目立たない格好をしている。ただ会いにくるだけならこのような格好をする必要はない。となれば、わざわざ身を隠してまで会いに来なければならない事情があったということになる。
「はい……。実は、ワタクシはゆいたちに助けていただきたくて会いに来たのでございます」
「助ける?」
どこか深刻そうな顔でマイラ王女は話し出す。
「数日前、ワタクシの元にあるお手紙が届いたのでございます」
「手紙?」
「はい、ですがその手紙の内容が…………っ」
「マイラ王女!?」
手紙の話をし出した途端、マイラ王女は突然何かに怯えるかのように両手で顔を覆い言葉を止めてしまう。
それを見て、すぐさまムギンは彼女を宥めるべく背中に手を回す。
「だ、大丈夫!?」
「すみません、あのお手紙に書かれていることを思い出したら、とても……」
「王女さま、無理に話さないで下さい」
「ですが……」
どうやら彼女が激しく怯える理由は手紙の内容にあるようだ。彼女をここまで怯えさせるなど、一体どのようなことが書かれていたのであろうか。
「ここからは王女さまに変わり、私がお話しいたしましょう。端的に言えば、その手紙は
『脅迫状!?』
ムギンの言葉を聞き、ゆいたちは一斉に驚いた声をあげる。
「何が書いてあったかは王女さまのお手前故お話しすることは出来ませんが、とても恐ろしい内容でした」
「酷い、一体誰がそんなことを?」
ムギンの話を聞き、ゆいたちは王女を怖がらせた者に憤りを感じる。彼女は非常に国民思いの優しい王女であり、そのために日々公務に励んでいる立派な人だ。そんな彼女にこんな怖い思いをさせるなど許せるはずがない。
「そのことですが、実は……」
「大丈夫でございます、ムギン」
「しかし、王女さま」
「いつまでも怯えてばかりではいけないでございます、ゆいたちにはちゃんと話さなくては」
犯人について何やら言い淀むムギンだったが、なんとか立ち直ったマイラ王女が彼女に変わり話そうとする。
「実は、……とても信じられないかもしれないのですが、脅迫状が届いた次の日ワタクシは
『か、怪物!?』
マイラ王女の言葉にまたしても驚くゆいたち。それもそうであろう、彼女の話はそれほどに恐ろしいものだったのだから。
「ワタクシが公務を行なってる最中に、突然恐ろしい怪物が現れて暴れ出したのでございます。そのせいで、ゲンマさんが怪我をしてしまって……」
再び顔を伏せてしまうマイラ王女。ゲンマとは、彼女が幼い頃から側で仕えてきた側近のことだ。自身の身近にいた人が怪物に襲われ怪我を負ったとなれば、悲しくなるのも無理はないだろう。
「あの怪物はとても我々の手には負えない存在でした。しかし、私たちはなんとしても王女さまをお守りしなければなりません。そんな時––––––「
「ワタクシが言ったのでございます、ゆいたちであればワタクシを助けてくださるのではないかと」
マイラ王女はゆいたちに会いに来た理由を話した。一年前、ゆいはマイラ王女と間違われ誘拐されてしまったことがあった。だが、ゆいは予想だにしない力を発揮し自力で誘拐犯たちを撃退してしまったのだ。そのことから、ゆいはマイラ王女の知る限りで一番強い人間として認知されていた。だからこそ、ゆいであれば自身を助けてくれるのではと思いこうして会いに来たのだ。
「当初は私たちも、いくら王女さまのご友人とは言え一国の一般市民にマイラ王女を任せる訳にはいかないと思いました。しかし、このままでいても王女さまを怯えさせてしまうだけ。それならば、少しでも王女さまを安心させなければと思った次第でして……」
どうやらムギンたち使用人もゆいたちを訪ねるのは渋々了承したようだ。
一方で、マリちゃんたちはマイラ王女が話した怪物について密かに疑念を抱いていた。
「ねぇマリッペ、怪物ってもしかしてブンドル団のことかな?」
「そんなまさか、ブンドル団は一年前にあなたたちが壊滅させてからメンバーは全員クッキングダムの収容所にいるし、もう誰もウバウゾーを生み出せないはずよ」
「それじゃあ、怪物って一体……」
怪物と聞いてブンドル団の存在を疑ったらんたちだが、マリちゃんはそれを否定する。となれば、今回現れた怪物とは一体何なのか。
「わかった、マイラ王女はあたしたちが守ってあげる!」
他の面々が怪物について考えてる一方で、ゆいはマイラ王女の頼みをあっさり受諾した。
「ですが、本当によろしいのでございますか?頼って来てなんですが、一年前のことも含めてゆいにはまた大変な思いをさせるかもしれないのに」
ゆいは一年前自身と間違われたせいで誘拐されてしまった。幸いゆいはなんとも無かったものの、自身のせいで彼女に迷惑がかかったのは事実だ。それなのに自身はまた彼女に迷惑をかけようとしている、図々しいと言われても仕方ないだろう。そのため、断られることも覚悟していた。
だが、ゆいはそんな自身の頼みを何の迷いもなく受け入れてくれた。これにはマイラ王女も戸惑ってしまう。
「だってあたしたち友だちでしょ?だったら困っていたら助けない訳にはいかないよ!それに、折角またこの町に来てくれたんだもん。それならマイラ王女にはそんな悲しい顔をして欲しくない、この町ではみんな笑顔でいて欲しいから!」
「ゆい……、ありがとうでございます!」
おいしーなタウンはみんなが料理で笑顔になれる町。だからこそ、ゆいはマイラ王女にも笑顔でいて欲しかった。
ゆいの真っ直ぐな優しい思いを聞いたマイラ王女も、笑顔が戻り始めた。
「そうね、相手が何にせよ私たちなら守れるわよね」
「友だちが困っているのなら、私は力になってあげたい」
「それに折角またこの町に来てくれたんだもん、また一緒に美味しい物食べてマシマシに元気になってもらわなきゃ!」
「あぁ、私たちで王女さまをお守りしよう!」
「コメ!コメコメたちも一緒に頑張るコメ!」
「パム!」「メン!」
ゆいに感化され、他の者もみんな王女を守る決意をする。
今日はコメコメたちも一緒にいる、相手がどんな怪物であろうとプリキュアの力で戦えるのだから大丈夫だと言う思いがあった。
「
次回、次回こそ出会わせます!ですから、どうか何卒ー!
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Chapter4 ドンと参上!ドンブラザーズ!?
今回から頑張ってドンブラ中毒していきますので、よろしくお願いします←
「じゃーん、また王女さまになっちゃった!」
「…………」
現在ゆいは、普段マイラ王女が着ている豪華なドレスを見に纏っていた。万が一の時のためにムギンが持って来ていたのだ。
一方マイラ王女は、ゆいが先程まで着ていた服を着ている。髪型まで入れ替わっているため、側から見ればどっちが誰だかわからない状態となっていた。
そう、ゆいが言ったアレと言うのは一年前と同じくマイラ王女と服と髪型を入れ替え自身がマイラ王女の身代わりになると言うものであった。
「はにゃあ、ゆいぴょん本当にマイラ王女みたい……」
「王女さまのドレス、やっぱり可愛い……」
らんとここねは、マイラ王女に扮したゆいの姿に見惚れていた。
一年前はよく見れなかったが、ゆいが今着ているドレスは王女の物だけあってそうとう高価なものだ。ゆいと同年代の女の子にとっては憧れの的であった。
「いや、一体何をしているんだ!?」
「へ?だってこうすれば怪物が襲って来てもあたしが狙われるかもしれないじゃん?」
「だからって、王女さまのフリが出来るのか!?」
「一年前は出来てたよ?」
「いや、だからって……」
そんな中、あまねはゆいにツッコミを入れる。
確かに一年前はこのやり方でごまかせていた。それに今回の目的は一年前とは違いマイラ王女の安全の確保だ。ならば確かにゆいが身代わりになれば、マイラ王女は狙われずに済むかもしれない。ゆいが狙われたとしても、プリキュアの力を使えば対処出来るだろう。
だが、一年前あまねはゆいに成り変わったマイラ王女を案内していたため、ゆいが本当にマイラ王女をちゃんと演じられていたのかを知らない。今のどこか能天気そうなゆいを見ると、不安に感じずにはいられなかった。
「……少し失礼します」
「ムギンさん?」
すると突然ムギンはどこへと姿を消してしまう。不思議に思ったマイラ王女は後を追おうとするも、すぐに見えなくなってしまった。
△△△△△△△△△
マイラ王女たちの前から姿を消したムギンは、先程の常時冷静な態度から一変して尋常ではないほどの身震いを起こしていた。
(ヤバい、一般人の服着た王女さまマジカワエェ!ずっと間近で震える王女サマもメッチャ可愛いカッタのにあんなん反則級だロ!アァ、王女サマカワエェ……王女サマ愛デテェ……マイラ……マイラ…………マイラァァァァァァッ!!!)
ムギンの内心は、普段の彼女の様子からは想像出来ないほど荒ぶっていた。
実は彼女は、重度の
そして今回、彼女は滅多にお目にかかれないマイラ王女の姿を見てたことにより彼女のマイラ王女への並みならぬ愛が激しく刺激されてしまった。
やがて自制心の効かなくなった彼女の心は、可愛いマイラ王女をもっと見たい、マイラ王女をもっと愛でたいと言う欲望を制御出来なくなる。その欲望が、
「マイラ……マイラマイラマイラ………………
マイラァァァァァァッ!!!」
次の瞬間、彼女の周りに『繝?Μ繧キ繝」繧ケ繝代?繝?ぅ』の文字が現れ、光と共にその姿を変える。
そこにいたのはムギンではない、禍々しい風貌をした鬼であった。紅い鬼の上半身に様々な料理が歪んだ形で纏わり付いたその姿は、まるで豪華な料理が並ぶ食卓を歪めたかのようだ。
「マイラ……マイラァァァッ!!」
奇声を上げながら、ムギンから変わり果てた鬼––––––食卓鬼は愛しの王女の元へと向かった。
△△△△△△△△△
「ムギンさん、どこへ行かれてしまったのでしょう?」
一方マイラ王女たちは、突然姿を消してしまったムギンを心配していた。
みんなで辺りを探してみるも、彼女の姿はどこにも見当たらない。
「マイラァァァァァァッ!!!」
「キャアッ!!」
「うわっ!?」
刹那、彼女たちの前に食卓鬼がその姿を現す。
「あ、あれは……」
「ほへ!?何アレ……」
突如として現れた食卓鬼に一同は困惑する。一年前のブンドル団との戦いによりこうした事態には多少慣れているものの、目の前の怪物は彼女たちにとって完全に未知の存在だ。困惑せずにはいられなかった。
「マイラァ……マイラァ!」
「くっ、狙いは王女さまか!」
「とすると、アレが件の怪物って訳!?」
時折マイラ王女の名を鳴き声のように叫ぶ様子を見て、あまねは食卓鬼の狙いを察する。それを聞き、マリちゃんは食卓鬼こそがマイラ王女を襲った怪物の正体だと推測していた。
「とにかく、マイラ王女を守らなくちゃ!」
「うん!」
「はにゃ!」
「ああっ!」
相手が何であれ、目の前の存在がマイラ王女を狙っているのならば自分たちが守らなければならない。
ゆいたちは前に出てプリキュアに変身しようとする。
「ハーハッハッハッ!ハーハッハッハッ!」
『……へ?』
変身しようとするや否や、突然聞こえて来た場違いな笑い声に食卓鬼も含めて全員が困惑する。
一体何だと思っていると、すぐさま新しい姿が現れる。まず最初に見えたのは、綺麗な純白の羽衣を着た三人の天女。三人は三方向に散っており、左右の2人は扇子を持ちながら、真ん中のは花弁を撒き散らしながら優雅な舞を披露している。
続いて現れたのは、天女たちの背後に現れた真っ赤な神輿。その下では計6人の担ぎ手たちがわっせわっせと神輿を担いでいる。
さらにその御輿の上にはフロントが鳥の形をした真っ赤な巨大なバイクが乗っており、さらにそのバイクに跨る影がある。その影こそ笑い声の主であった。全身真っ赤な姿に顔には特徴的なサングラス、頭には先が歯車のような形をしたちょんまげ、そして何よりも特徴的なのは額に輝く巨大な桃の飾り。
「やあやあやあ!祭りだ!祭りだ!
袖振り合うのも多少の縁!躓く石も縁の端くれ!
共に踊れば繋がる縁!この世は楽園!
悩みなんざ吹っ飛ばせ!笑え笑え!
ハーハッハッハッ!ハーハッハッハッ!」
『…………は?』
突然現れるや否や圧倒的な存在感を見せつけるその人物に全員が唖然としてしまう。
「さあ、楽しもうぜ…………勝負!勝負っ!」
刹那、赤い人物––––––ドンモモタロウはバイクから飛び降り、手に持った日本刀『ザングラソード』で食卓鬼に切り掛かる。…………バイクを乗せた意味あった?
「–––––っと」
「–––––ふむ」
「–––––おっ、キタキタ!」
「……えっ、なんだ?この町に来てまでか!?」
すると光と共に今度は新たに4人の姿が現れる。それを一言で言うならば、正しく
「よーし、いくぞー!」
現れた4人の内、全身黄色い姿をした鬼の戦士––––––オニシスターは巨大なトゲつき棍棒『フルコン棒』を振り回し、ドンモモタロウに続いて攻撃を繰り出す。
「私たちも行くか、はあっ!」
「よーし、ケンケンケンケーン!」
「あぁもう、さっさと終わらせるぞ!」
他の3人も後から続き戦闘を始める。
全身青い豪腕の戦士––––––サルブラザーは大きく飛び跳ね、食卓鬼の背後を取る。そして自慢の豪腕で強烈な一撃を叩き込み、食卓鬼は前のめりになる。その隙に2頭身の黒い犬の戦士––––––イヌブラザーは手に持った拳銃『ドンブラスター』で銃撃を放ち、更に全身ピンクの異様に脚の長い雉の戦士––––––キジブラザーが追い討ちと言わんばかりにその特徴的な脚で蹴りをお見舞いする。
「ガアッ」
「ハーハッハッハッ!まだまだ生温いぞお供たち!」
懸命に攻撃を繰り出すお供たちに対し、ドンモモタロウは相変わらずの大きい態度で苦言を呈する。だが、お供たちは彼の遠慮もへったくれもない物言いに慣れてるのか特に何も言い返さずに攻撃を続ける。
「––––ん?アレは!」
すると戦闘の最中、オニシスターはたまたま目に入ったものに反応する。先ほどからずっと唖然としていたゆいであった。
ゆいを発見するや否や、食卓鬼をいなしすぐさまゆいの元へと飛び込む。
「やっぱり、マイラ王女!」
「……えっ!?」
するとオニシスターは、どこから共なく取り出した写真を見て、ゆいのことをマイラ王女だと認識し出す。
一方でゆいは自分をマイラ王女と間違えられたことでまたしても困惑する。
「さぁマイラ王女、早くここを離れましょう!」」
「え、いやちょっと待っ––––––」
ゆいが言い切るのを待たずしてオニシスターはゆいの腕を引っ張り出してしまう。
(王道に行くのなら、やはりここは王女さまを安全な場所へ連れて行くのが先決!)
「みんな、ここは任せた!」
「いやだから、あたしは––––––」
そしてオニシスターは、流れを王道路線に持って行くべくマイラ王女(ゆい)を安全な場所へ避難させるべく戦いを丸投げして戦線を離脱し始める。
「––––––勝手に行くな!追うぞお供たち!」
「グハァッ!」
勝手に抜け出そうとするオニシスターを見て、ドンモモタロウは食卓鬼を勢い良く蹴り飛ばしすぐさまオニシスターを追いかけ始める。ちなみに蹴り飛ばされた食卓鬼は一瞬で姿が見えなくなるほど遠くへと飛んで行った。…………いやちゃんと退治しろ。
「むっ、私たちを置いて行くな!」
「あぁ、ま、待ってぇー!」
「おい!何がどうなってるのか説明しろ!」
他のお供たちもすぐさま追いかけ始める。
かくして、先ほどまで戦闘を繰り広げていた者たちは全員姿を消した。
「……なんだったの、今の?」
「可愛い、ワンちゃんがいた……?」
「なんか色とりどりなミックスサラダパーティみたいな人たちだったね……」
「いや、なんだソレは……」
残されたマリちゃんたちは、ただ唖然とするしかなかった。
「おーい!」
すると今度はまた新たに男の声が聞こえてくる。
そこにいたのは、件のゆいの幼馴染である『品田拓海』であった。
「ったく、待ち合わせの時間になっても来ないから探したぞ。一体何やってたんだ……」
どうやら約束の時間になっても待ち合わせ場所に現れないゆいたちを探しに来たようだ。そうして町中探し回ってたまたまここに辿り着いたのである。
「おいどうしたんだよ?みんなダンマリして」
「……あぁ品田、実はその––––––」
「イヤァァァァッ!!!」
『うわぁっ!?』
拓海にどう説明したら良いかあまねが言い淀んでいた中、突如としてマイラ王女が悲痛な叫びを上げる。
「ゆいが…………またワタクシのせいで、ゆいが………!」
「……あぁーっ!!そうだゆいぴょん!連れていかれちゃったじゃん!」
『––––あぁっ!』
「はぁ?」
目の前で起きた訳のわからない状況に困惑するあまり気づくのが遅れたが、マイラ王女の言葉で大事なことに気づいた。そう、ゆいが謎の集団に連れていかれてしまったのである。
一方未だに状況が理解出来ていない拓海は困惑するしかなかった。
「……います」
「マイラ王女?」
するとあまねはまだ何かを言おうとしているマイラ王女に気づいた。
「先日ワタクシの元に現れた怪物は、今の方たちなのでございます!」
いかがでしたか?
これが私流のドンブラ中毒だぁ!←
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