【WR】僕のヒーローアカデミアRTA 雄英HERO%【五条チャート】【有料DLC:呪術廻戦パックvol.01使用】 (Mary✼C✩.*˚)
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第一区間 1:キャラクリ〜7:雄英体育祭告知
1  キャラクリ〜雄英受験半年前


初投稿です。


 はい、よーいスタート。(NSOK)

 

 これは僕がヒーローになるまでのRTA、はーじまーるよー!

 今回プレイするのはコチラ。

 

 玉も竿もでけぇ(褒めるまでもなく伸びてる)大人気コミック『僕のヒーローアカデミア』のVRシミュレーションRPG、『僕のヒーローアカデミア VRSLG』になります。

 

 レギュレーションはHERO%を使用しますが、こちらのレギュレーションではグリッチと乱数調整、有料DLC全弾の使用が認められております。

 そんな走りはフヨウラ! という方はここでBBをオススメします。

 

 さて、それでは早速キャラクリからはじめていきましょう。

 世間ではこれが専らリセマラ必須と評判ですが、雄英HERO%では乱数調整が認められているので粘る必要がありません。(天下無双)

 神(頼み)なんか必要ねぇんだよ!

 

 ちなみに100%など、他のレギュレーションでは乱数調整が認められていないこともあるので、其方は非常に厄介。

 まともに走りはじめるまでに3時間かかるなんてこともザラです。

 

 (そんなの絶対にやりたく)ないです。

 

 話を戻して乱数調整の方法ですが、詳細は概要欄に貼ったNOTEをご覧下さい。

 中々複雑なので、ここではサラッと説明するに留めます。

 

 まずソフトを起動したら特定の行動を起こし、目パチを八回。

 特に目パチは猶予フレームが1フレしかないので要練習です。(n敗)

 

 タイトル画面が出たら57f〜61fの間にゲームスタートを選択。

 ちなみに計測開始はこのタイミング、計測終了はプロヒーロー免許を取得した瞬間とされています。

 

 キャラクリの画面に移ると、最初に『才能値』と呼ばれるものが配られているので、そちらの数値が『100』になっていたら成功です。

 今回は…………はい、ちゃんと『100』ですね。

 走者はこの手法が安定して成功するようになるまで三ヶ月かかりました。

 それでもまだ成功率は7割ちょっと、という所です。

 VRの乱数調整は昔のゲームと違い、手元だけの操作ではないので余計に難易度が上がっているように思えます。(素直な感想)

 

 とはいえまともにリセマラするよりかは114514倍楽なので、皆も……しよう!(提案)

 俺もやったんだからさ。(同調圧力)

 

 さて、それでは今回使用するキャラの個性を決めていきましょう。

 このゲームの個性は自分で何でも決められるわけではなく、基本的にランダムです。

 しかも才能値の方で乱数調整をしてしまった場合、こちらの乱数には干渉することが人力では不可能とされています。

 ならどうするのよ? という話ですが……。

 

 結論から言ってしまうと、名前で個性を誘導します。

 ヒロアカの原作では個性と名前が直結していることが多々あり、例えば『鉄哲徹鐵』くんなんかはもうまんまです。

 このゲームではその方式がそのまま導入されており、つけた名前からAIによる分析が行われて個性が決定します。

 ここで既プレイの方はこう思った事でしょう……。

 

「同じ名前で二回やっても個性変わるじゃんアゼルバイジャン。ホモは嘘つき、嘘つきはホモ、よって走者はホモ」

 

 ……と。

 

 確かにそのような事は起こりますが、それはAIにより抽選される個性が一つではないからです。

 8101919以上の全個性から名前を参照して抽選された114514通りの個性から、ランダムに一つ個性が決まる……というような形です。

 ただしそれは『普通の名前の場合』で……とある仕様の関係上、『特定の名前でのみ必ずそれに決まる個性』があります。

 

 というわけで、入力速度を考慮した名前をつけることはできません。

 ホモくんはお留守番です。

 

 というわけで名前は、『五条 玲珠(ごじょう れいじゅ)』。

 性別も当然女を選択。

 

 れずちゃんです。あぁ^〜。(浄化)

 え、それが出来るならホモくんも出来ただろ! って?

 ……出来ません。

 名前がホモなやつなんているわけないだろ! いい加減にしろ!

 

 さて、これにより個性が必ず先日発売された有料DLC第三弾『呪術廻戦パックvol.1』によって追加された『無限』になります。

 だから苗字を五条にする必要があったんですね。(例の構文)

 

 見た目はRTAの関係上ランダム生成に任せますが、こちらも五条の関係上必ず白髪青眼の美少女になります。

 性別や見た目の善し悪しはこの後の個性伸ばしにおいてかなり役立つ要素になります。

 何よりモチベが上がるんだよなぁ。

 

 今回走る五条チャートは私が作成したものですが、もしや『無限』はAny%のために作られたものなのではないか? と意味のわからない邪推をしてしまうくらいには安定しているんですよね……。

 そのため、DLCなしとDLCありのタイムはかなりの差が出てしまっています。

 

 お、見た目の生成も終わりました。

 

 

 なんだこのメスガキ!?(驚愕)

【挿絵表示】

 

 ツインテ巨乳ロリじゃないか……なんだこれはたまげたなぁ。

 

 さて、ロードも終わり、ヒロアカお決まりの『世界総人口の約八割が――』というモノローグからゲームが始まります。

 

 このゲームでは幼少期や少年期はすっ飛ばされ、モノローグ中に回想という形で振り返ることになります。

 

『ボクの名前は五条 玲珠。将来最強のヒーローになる世界一の美少女だ』

 

 ……はい。苗字を五条にするとこのように、一人称がぼく、僕、ボクのいずれか。

 そして性格がナルシストで固定されます。

 RTA的にはランダム性が低ければ低いほど助かるのでアレですが、正直自分に自信のない子が最強の呪術使うのミタカッタ……。見たくない?

 

『今年で十五歳になった中学三年生のボクは今、受験を控えている。勿論目指すのは――』

 

 はい、ここでまず一つ目の選択肢です。

 このゲームでは最初にこのようにして、雄英高校に進学するか士傑高校に進学するかを選ぶことが出来ます。

 雄英Any%や雄英HERO%ではレギュレーションの関係上雄英固定です。

 ちなみに通常のAny%では士傑を選択します。

 イベントが少ない関係上、どんどんスキップしていくことが出来るので明らかにそっちの方が早いです。

 

『目指すのは――雄英高校だ』

 

 さて、モノローグが終わり視界が明けました。

 時刻は……よし! 放課後のようです。

 ここでは昼休みと放課後の二通りがあり、前者だと少しだけログが多くロスになってしまいます。(3敗)

 ま、多少はね? と許容するホモもいますが、折角なのでこの辺りはしっかりリセマラしていきましょう。

 そのための安定チャート。

 

 さて、まず注目すべきは、自分のクラスに将来の1―A雄英生徒がいるかどうかです。

 ここで1―Bの生徒だったり、そもそもいなかったりすると、1―Bに入ることになってしまう可能性が増えるので、在学中にヒーローになる方法がなくなってしまいます。(5敗)

 

 視聴者の皆様が知っての通り、1―Aの波乱万丈ぶりはとんでもないもので、活躍次第では仮免取得、免許取得をかなり早めることが出来ます。

 さてさて、というわけでクラスを見渡しましょう。

 …………。

 

 あ!!!!

 前の席の方に耳郎ちゃんを発見しました!!

 やったぜ。これで1―Aに入る可能性が大体7割くらいまで高まりました。

 友好度が高いとここから1―A入学を確定させることが出来るので、早速話しかけにいきましょう。

 

 耳郎響香ちゃんオッスオッス!!

 お互い雄英志望だし仲良くしよう!(提案)

 

「え……あ、うん。てかアンタ、人に話しかける発想とかあったんだ」

 

 何言うてんねん! うちかて友達の一人や二人……あれ? ちょっと経歴確認……。

 

 ……。ウッソだろお前wwwwww

『あまりに浮世離れした見た目と傲慢な態度から、ついに中学で友達は一人もできなかった。……ファンは沢山出来た』

 (まぁとはいえRTA的には全く関係)ないです。

 むしろ友達少ない方が会話が少なくて済むので助かるんだよなぁ!!

 ちなみに五条タイプの子は、このように最初期の友達が少ない場合と、逆に滅茶苦茶多い場合の二通りに分かれます。

 

 前者ならログが少なくて済み、後者なら将来の雄英生徒とかなり親睦を深めた状態で入学できるので、色々と楽になります。

 つまりどっちでもいいって事です。

 耳郎ちゃんとの会話に戻りましょう。

 

「まぁでもアンタが話しかけてくれたのは正味嬉しいよ。……そうだ、入試でちょっと勝負しない? 今んとこどっちが上か、さ」

 

 んんん!!? 好戦的だねぇ!!?

 あ、コレアレですね、あまりにも神聖視されてるれずちゃんに対抗心を燃やしてる感じですね。

 ひゅ〜〜、ロックだねえ!!!

 

 ちなみに私原作での推しは耳郎響香ちゃんです。(隙自語)

 嬉しすぎる反面、ここで運を使い切ってないかが心配ですね。

 

 耳郎ちゃんの申し出を受けつつ、話を切り上げましょう。

 友好度が若干上がりましたね。

 ここからは毎日耳郎ちゃんに話しかけ、友好度をMAXにまであげていきたいと思いま

 

 今回はここまでです。

 ご視聴ありがとうございました。




評価と感想お待ちしてます(乞食)


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1裏 五条と耳郎

 絹の如く柔らかい銀髪、可愛らしいハーフツインの髪型。

 雪のように白い肌は、陽に当たったことがないと言われても不思議ではないのに、不健康な様子には全く見えない。

 柔らかそうな頬と唇には可愛らしく赤みが差していて。

 極めつけは、長いまつ毛に縁取られた吸い込まれそうなほどに青い瞳。

 

 そいつは、女の自分でも目が合ったら赤くなってしまうほどに可憐な少女だった。

 同じ世界に生きているとは、とても思えないほどの。

 

 だから、いきなり話しかけられて、名前を呼ばれて。

 つい……ほんとうについ、失礼な返しをしてしまった。

 

「ねーねー、響香って雄英志望なんだっけ?」

 

「え……あ、うん。てかアンタ、人に話しかける発想とかあったんだ」

 

 すると、そいつは少し驚いた顔をした後、目を逸らして俯いた。

 

(…………え、何。意外と表情分かりやすいなこいつ)

 

(……可愛いな)

 

 なるほど、ファンクラブが出来るのも頷けるというものだ。

 

「と、と、友達くらいその、いる……から、多分」

 

 いやいないんじゃんその顔は、と耳郎は心の中でツッコミを入れた。

 

(無理すんなよ……こっちが悲しくなってくるじゃん)

 

 見た目は完璧、超然的な態度でいつも成績は学年首位。

 ファンも沢山いるそいつは――でも、何だか。

 ……割と、普通の……寂しがりな女の子だった。

 

 でも、だからこそかもしれない。

 雲の上にいるみたいだった奴は、実は自分と同じ土俵にいて、ただひたすらに頑張ってるだけだった。

 しかもそいつは今、自分のことを見ている。

 多分……同じ雄英志望だからだろう。

 

 そう知って、耳郎は――前につっ走らずには、挑戦せずにはいられなかった。

 だってこれはきっと、チャンスだ。

 

「まぁでもアンタが話しかけてくれたのは正味嬉しいよ。……そうだ、入試でちょっと勝負しない? 今んとこどっちが上か、さ」

 

「……ふぅん? 身の程知らず。でも、面白いから受けてあげるよ」

 

 燃える気持ちを更に煽るようなその返事に、耳郎は笑いを堪えきれなくなった。

 あと、友達がいない理由もよく分かった。

 

「ははは……っ、あんた、最高にロックだね!」

 

 今思えばこの出会いが、全ての始まりだった。

 次の日も、その次の日も。

 雄英受験のその日まで他愛のない勝負をした。

 

 テストで競ったり。

 

「えー、響香もオール100点? やるじゃん、もう中学程度の勉強じゃ差はつかなそうだねー」

「あ、あんた……ウチがどんだけ徹夜勉強したと思って……」

「受験に役立つんだしいーじゃんいーじゃん、その調子で頑張りな〜」

 

 一緒にカラオケに行ったり。

 

「ご、五条……アンタ、歌も上手いの……?」

「まあねー、ボク最強だから。響香も上手いけど、勝手なアレンジが目立つね。パフォーマンスとしては凄くいいけどさ、カラオケで良い点取るならもっと原曲をリスペクトしないと」

「はあ……参考にナリマス……ってなんでウチが教えられてんの!? 納得いかないんだけど!?」

「HAHAHA!」

 

 一緒にスイーツを食べに行ったり。

 

「な!? あ、あんたいくつ頼んでんの!? それ全部食べんの!?」

「いいでしょー。名付けてゴールデンスーパーパフェセット。響香風に言うとロックって感じ」

「……太るよ」

「ボクは太らないよ?」

「…………」

 

 ……まぁ、つまるところ。

 

「はい100点。またボクの勝ちだね」

「この完璧超人がぁ!!!」

 

 辛酸を舐める日々であった。

 しかもこいつ一番何が腹立つって、胸がでかい。

 身長はそこまで高いわけではないけど、足も長くてこう……比率がヤバい。

 横に並んで一緒に歩くと、まるで耳郎は電柱だった。

 ただ、唯一の欠点は――。

 

「響香〜、落ち込まなくていいよ。しょーがないしょーがない。ボク、最強だから」

 

 このクソを下水で煮込んだような性格、その一点に尽きる。

 でも、それですらこいつの可愛い所に思えてくるのは――。

 何かの呪いだろうか。

 

「胸もいつか成長するって」

 

「余計なお世話ぁっ!! あんた友達いない理由それだかんね!」

 

「えへへー、響香がいるからへーき」

 

「……っ。そりゃっ、そう……っ、だけど、さぁっ……あんた、ズルい……」

 

「? なにが?」

 

「……なんでもないっ」

 

 たまにそうやって可愛さで殺そうとするのは、本当にやめて欲しい。

 ……その。勘違い、しそうに……なるから。



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2  耳郎響香友好度稼ぎ~雄英受験

 最推しと百合百合するRTA、はーじまーるよー!

 

 前回の続きから、雄英受験まで耳郎ちゃんとの友好度をひたすらに稼いでいきます。

 ゲーム開始から雄英受験までの猶予は半年となっています。

 

 オールマイトや緑谷くんと絡むとスケジュールカッツカツ、アットホームな会社さながらの過労をしなければいけませんが、そんなものはフヨウラ!

 オールマイトと緑谷くんの友好度は、れずちゃんの個性の都合上別に入学してからでもガンガン稼げます。

 なんなら緑谷くんの正妻ポジをお茶子ちゃんから奪うレベルで上がります。

 (オールマイトの訓練は非常に効率が良い代物ですが、れずちゃんの才能値ならここで無理して特訓する必要も)ないです。

 

 というわけで雄英受験まで、甥の木村、加速します。

 

 

 少女加速中……。

 

 

 木下ですけどぉ、まーだ時間かかりそうですかね……。

 

 

 少女加速中……。

 

 

 ……ヨシ!(現場猫)

 耳郎ちゃんとの友好度がMAXまで上がりました! やったぜ。

 なんなら限界突破して親愛度まで上がってるんだよなぁ……。

 

 このゲームにおけるNPCとのなかよし度(意味深)には三段階ありまして、それが

 

・友好度

・親愛度

・依存度

 

 です。外法を使えば下だけを上げることも出来ますが、基本的には上から順に上がっていきます。

 さて、今の耳郎ちゃんはというと……。

 

 

  友好度:100.0%

  親愛度:32.4%

  依存度:0.0%

  関係性:親友

 

 

 ヨシ! 最高の親友だな!!

 

「ね、玲珠」

 

 ファッ!? なんじゃい!! ウチのれずちゃんになんか用かい!!

 

「突然悪いんだけどさ……ウチ、アンタと友達になれて良かったよ」

 

 お? どうしたどうした。(困惑)

 赤くなっちゃってがわ゛い゛い゛な゛ぁ゛じろ゛う゛ぢゃ゛ん゛。(ノンケ)

 

「なんか……色々言いたいことあって、どう言ったらいいかわっかんないんだけど……っ、だからって何も言わないのもロックじゃないし……そ……その……お互い……ぜ……絶対合格、しようね!!」

 

 合格なんて当たり前だよなぁ。

 じゃなかったらこの動画あがってないから。(メタ)

 首位取れるかどうか競走するって話ダルルォ!?

 

「ふふ……そうだね。――ウチ、絶対負けないから!」

 

 あぁ^〜。(浄化) 最推しの笑顔堪らねえんじゃ。

 あ、でも勝つのはれずちゃんなんで。(豹変)

 そこんとこ、ウン。ハイ、ヨロシクゥ!

 

 

 

 ……さて、というわけで雄英受験当日です。

 まずはれずちゃんのスペックを振り返っていきましょう。

 

◇―◆―◇

名前:五条 玲珠

性別:女

年齢:15歳

誕生日:十二月七日

所属:辺須瓶中学校三年三組十三番

身長:150cm

才能値:100

頭脳努力値:25

身体努力値:10

性格補正:【ナルシスト】

Plus ultra:50/100

Plus chaos:5/100

 

個性:【無限】

 すべてを見通す六眼と、偏在する無限を操ることが出来る。使い過ぎると酷い頭痛に悩まされる。

 

【六眼】     習熟度 10/100

 自分を含むあらゆる対象の個性とその使い方、可能性を視ることが出来る。色々と見えすぎるので負担が大きい。

 使用時【無限】の出力が著しく向上する。

 

【身体強化】   習熟度 10/100

 無限により生み出した引力と斥力で移動速度や打撃の威力などを強化する。常時発動出来る。

 

【アキレスと亀】 習熟度 10/100

 発動中、自分に触れようとした対象が無限に遅くなる。

 

【蒼】      習熟度 10/100

 無限の順転。発動した点を中心に、エネルギーを吸い込む。

 使い方次第では目にも止まらぬ速さで移動することが出来る。

 

【赫】      未習得

 無限の反転。発動した点を中心に、エネルギーを発散する。

 使い方次第では目にも止まらぬ速さで移動することが出来る。

習得条件:【蒼】の習熟度30

 

【茈】      未習得

 蒼と赫を衝突させることで生成される仮想の質量を押し出す。触れたものは消滅する。

習得条件:【蒼】と【赫】の習熟度50

◇―◆―◇

 

 これだけ見せられても黄金の理解力でもない限り何も分からないと思うので、プレゼントマイクの渾身のオッハー!(激寒)を倍速で流しながら、れずちゃんのスペックの解説を致しましょう。

 まず、このゲームの身体能力やステータスの詳細は全くもってブラックボックスです。

 海外の解析班によればある程度の計算式が分かっているらしいのですが、このRTAではそんなものは使いません。

 

 ただ、才能値と努力値が乗算で関わっている、ということだけが分かっていれば無問題です。

 なので仮に、才能値100と身体努力値10を単純にかけて身体スペック指数1000とします。

 頭脳についても同様です。

 このスペック指数で、おおよその能力を相対的に比べることが出来ます。

 

 雄英生徒のほとんどは才能値が50〜70の間で決められており、入学当初の頭脳努力値は20〜30、身体努力値は8〜12程度なので、最大でも頭脳が2100、身体が840です。

 唯一爆豪くんのみは才能値99とチート性能ですが、努力値がこちらの値と同じ25と10であるため、僅差でこちらが勝っています。

 轟くんは才能値97身体努力値12とこちらを上回っていますが、そもそも彼は推薦入学組なのでね……。

 

 というわけで才能値100(とステータスを覆されないレベルのPS)さえ取っておけば、雄英入学までに何かしらの特訓を沢山行う必要はないんですね。

 耳郎ちゃんとのチョメチョメ(競い合い)で充分主席ラインを確保できます。

 

 ちなみに才能値は基本的に固定なのですが、唯一緑谷くんだけが変動します。

 

・最初期―10

・雄英体育祭期―13

・職場体験期―38

・林間合宿―46

 

 というように、ステータス的にはどんどん別人になっていくんですね。

 最終的には才能値100以上まで上がっていきます。

 そらこんなん、爆豪くん焦りますわ……。(畏怖)

 ちなみにオールマイト、オールフォーワン、覚醒死柄木の才能値は150です。

 えぇ……。(困惑)

 

 続いて個性についてですが、れずちゃんの個性【無限】は、原作呪術廻戦の無下限呪術よりかはかなり弱いです。

 その辺りの解説はまた今度、個性伸ばしの時に。

 

 話を戻しまして、というわけでこの通り、雄英入学で主席を取るのはらくちんちんです。

 試験内容は原作通り機械との逢い引きで、身体スペック指数が最低350あれば勝てる程度の硬さです。

 一応【身体強化】を使ってからそのための拳……はい、一撃ですね。

 この調子で目に入るもの全て壊すんだ。(発作)

 

 この時出来れば、苦戦している受験者を見つけて助けましょう。

 レスキューポイントを稼ぐことで、ある程度のプレミを許容出来るようになります。

 さて、負けてる子はどこかにいないかな〜^?

 

「テメェ待ちやがれクソアマァ!!」

 

 おっ、爆豪くんオッスオッス!!

 点数取れてる^〜?

 二位争い頑張ってね!!!(強者の余裕)

 

「喧嘩売ってんのかテメェ!! ふざけんじゃねェぞ……っ!! 俺様がとるのは完膚無きまでの一位だァ!!」

 

 そら(ステータス完全に把握されてる上にそれを上回るように調整されてるから)無理よ。

 

 はい、これはかなりのラッキーですね。

 試験は原作の設定と同様、各ブロックに分けられて行われています。

 その都合上、どうしても原作キャラとの邂逅はランダムになるのですが……。

 特に、爆豪くんとの邂逅はかなりうまあじです。

 

 これ以降爆豪くんに目をつけられる事になるので、1―A内での注目が高まりますし、何より(今のところ)最強キャラの爆豪くんと高め合うことでモチベーションを維持できます。

 モチベーションの値はこれまたブラックボックスですが、低くなると授業や特訓に集中出来ず努力値や個性の伸びが悪くなるので、爆豪くんには是非食らいついて欲しいわけですね。

 れずちゃんと爆豪くんがめっちゃ頑張ってるおかげで周りに要介護者はいないようです。

 それなら、素直に爆豪くんとの競走と洒落こみましょう。

 

 

 少女機械破壊中……。

 

 

 おっ! 0Pのお邪魔機械ヴィランが現れました!!

 全て壊すんだ。(発作)

 

 0Pヴィランを緑谷くんがぶっ壊すシーンめっちゃ好き。(隙自語)

 さて、0Pヴィランは身体スペック指数が900あればなんとか倒すことが出来ます。

 れずちゃんは1000なので勝てるのですが、個性によるブーストのない戦いでは時間をロスしてしまいます。

 ちょっと待って!! 速攻で倒したらレスキューポイントが入ってないやん! レスキューポイントが欲しかったから注文したの! ってなるじゃんアゼルバイジャン――。

 ……と思うホモの人もいるかもしれませんが、そりゃ悪手だろ蟻んコ。(NTR会長)

 

 この作品では、どれだけヒーローらしいことを出来たか、ヒーローらしからぬことをしてしまったかという自覚が精神に多大な影響を及ぼします。

 ステータスにあったPlus ultraとPlus chaosの値がそれです。

 

 なので、嘘をついたり騙したりする行動は出来るだけ取らない方が良いんですね。

 というわけでこれを見ている先生方へのアピールも兼ねて、個性による大技を使っちゃいましょう!!

 そうです!! 【蒼】の出番です!!

 

「あァ゛!? なんだそりゃァ……ッ!!」

 

 0Pヴィランを速攻で片付けたら残りのポイントをかっさらって試合終了です!!

 ぬわああああん疲れたもおおおおおん。

 

 さて、ログをざっくり流して首席かどうか確認していきましょう。

 

 ……。

 

 ……。

 

 はい! 見事首席獲得ですね!

 ちゃんとクラスも1―Aです。

 オールマイトから動画で賛辞を受け取ったら、耳郎ちゃんに連絡を取ります。

 

 ここで連絡をコチラからしないと、ログが増えてしまうので注意。(1敗)

 

「ん、あー、もしもし。いやー首席アンタだってね。流石って感じだよ」

 

 最強なんだから当たり前だよなぁ。(強者の余裕)

 でも耳郎ちゃんも合格ダルルォ?

 

「うん、勿論合格したよ。でもアンタに勝てなかったのは悔しいなあ……いつか絶対見返してやるかんね!」

 

 うーん、めげないいい子。

 普通これだけ毎日ボコボコにされたら精神病むと思うんですけど。

 1―Aの子は特に精神力が軒並み高くて、友好度が上げやすいんですよね。

 陽キャエリートのオーラ感じちゃうヤバイヤバイ……。

 

 さぁ、ここからは雄英入学当日までばいそ

 

 今回はここまでです。

 ご視聴ありがとうございました。



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2裏 スタートライン、爆豪の。

 一線級のトップヒーローは皆、学生時から逸話を残している。

 平凡な市立中学からたった一人、あの雄英に首席合格――それが爆豪勝己の描いた完璧なプランだった。

 

 ……だった、と言うのは――。

 とある対照的な二人の手によって、それが妨害されたからだ。

 

 一人は、緑谷出久。

 何にも出来ない無個性のくせに、道端の石っころの癖に、何かが癪に障っていた。

 

(あん時だって……助けなんか求めてねェのに、あいつは……っ!!)

 

 自分の中にある何か、弱いものを自覚させられるような……言語化できない気持ち悪い感覚があった。

 

 だが、こいつはそれとは全く違う。真逆だ。

 単純な力の差。格の違い。

 この自分が、追いつくことすら出来ない――。

 

 そんなはずはない、と己を鼓舞し、爆破を加速させる。

 

「テメェ待ちやがれクソアマァ!!」

 

「ふうん? キミ筋がいいね。これだけボクに着いてこられるやつは流石に初めてだ。……名前なんて言うの?」

 

 涼しい顔で、上から目線を隠す様子もないその女に、爆豪は腸が煮えくり返るような怒りを感じた。

 いや……その女に、ではない。

 今の今まで勝利を確信し、自らこそが世界に選ばれた天才で。

 並ぶものなど一人もいるはずがないと錯覚していた、愚かな自分に……だ。

 

「喧嘩売ってんのかテメェ!! ふざけんじゃねェぞ……っ!! 俺様がとるのは完膚無きまでの一位だァ!!」

 

 自分に言い聞かせるように、必死に怒鳴り散らす。

 そうだ。一位だ。取らなくてはならない。

 己が目指すのは、完璧で最高の――オールマイトのようなヒーローなのだから。

 

「それはご愁傷さま。悪いけど首席はボクのものだよ、だって君――まだ弱いもん」

 

「あ゛ぁっ!!?」

 

 弱い。初めて他者に言われたその言葉を咀嚼する間もなく、そいつは飛んだ。

 どんなカラクリなのかは分からない。

 ただの身体技術ではないのは確かだったが――そいつは、いつの間にかゼロポイントのデカブツの真上にいた。

 

「少しだけおもしろくなってきたね。折角だし、ちょっと乱暴しようか――無限順転――【蒼】」

 

「あァ゛!? なんだそりゃァ……ッ!!」

 

 涼しい顔で。全く表情を動かさず、それを何か訳の分からない力で倒した女を見て――。

 爆豪は気づいてしまった。

 

 この試験においてあの女がアクセルを踏んだのは、今のが初めてだったのだ――と。

 こちらはずっと……ずっとベタ踏みだった。

 

(アイツ……ッ!! 本気、全く出してねェ……ッ!! クソ舐めプ野郎が、ふざけんじゃねえぞ……ッ!!)

 

「ハア……ッ!! ハア……ッ!!」

 

 人生で初めての――完膚無きまでの敗北。

 言い訳のしようのない、負け。

 己の全てを否定されたかのような感覚に、爆豪はその場に座り込んでしまった。

 まだ、まだ、試験は続いているというのに――。

 

 爆豪の脳裏に過るのは、過去の光景だった。

 爆豪を褒め、凄い凄いと囃し立てる何にも出来ないモブ達。

 あらゆる事において自分は常に先頭で、そうでないことは一度もなかった。

 

「かっちゃんすげー! 頭ヤベー!!」

 

 ――なんで知らねーの?

 

「すげぇかっちゃん何回跳ねた!?」

 

 ――なんで出来ねーの?

 

「おおーこりゃまた凄い個性だなぁ!」

 

 ――あ、そっか。

 

 ――俺がすげーんだ。

 

 ――皆、俺よりすごくない!!

 

 

 

 ――はず、なんだ。

 ――はず、だったのに。

 

 

 だったのに――ッ!!

 

 

(俺より――凄ェ……勝てねェ)

 

 積み重ねてきたあらゆるものが、ガラガラと音を立てて崩れていく。

 いつの間にか……試験は終わっていた。

 

(こんなはずじゃ……こんなはずじゃ……っ)

 

 これが、挫折なのか。

 自分は。 

 主人公ではなく、ただのモブ――ただの、噛ませ犬だったのか。

 

 ……それから、どのようにして試験を終えて帰宅したのか覚えていない。

 

 数日後。

 試験結果に記された烙印――二位。

 その二文字を見て。

 

 爆豪は泣き叫んだ。

 

「クソが!! クッソ……ッ!! 上等じゃねェか……やってやる……っ!! 俺ァ、こっからだ……こっから!! 俺はあそこで……ッ!! 一番になってやる……ッ!!」

 

 肥大化していた自尊心が、音を立てて崩れていく。

 残ったのは――理想を目指して駆ける気高いプライドだけ。

 爆豪勝己のスタートラインは、かくして本来よりも早く訪れることとなった。

 

 

 

⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

「実技総合、成績出ました」

 

「……とんでもないな」

 

 いつもならばワイワイとお祭り気分な教師陣も、今回の結果には驚愕のあまりか――暫くの沈黙があった。

 

 

 

 そして――弾けるようにして、それぞれが言葉を交わす。

 

「一位、五条 玲珠。個性【無限】……しかしその個性を使ったのはあの一回きり、か」

 

「単純な身体能力が群を抜いてる。それに恐らくだが――アイツは個性をずっと使っていたぞ」

 

「そうなの? そうは見えなかったけど?」

 

「そう見せねぇようにしてんだろ。【無限】……抽象的過ぎて実態が分からん。あんだけ派手に暴れて個性も隠匿……とんでもない話だ」

 

「にしてもあれをぶっ飛ばしちまったのは久しく見てねぇな。しかも二人も!! 思わずYEAH! って言っちゃったよ」

 

「八位の子のアレは良く分からん。それはそれとして……五条 玲珠は恐らく試験内容を見抜いていたな」

 

「ええ、そうね。明らかに何かを探していたもの……恐らくだけれど、仮想ヴィランに負けそうな子を」

 

「YEAH! って言っちゃったしな」

 

「いや、それはどうなんだ? 救助Pの事を分かってんなら0Pヴィランはもうちょい放置するはずじゃねえか。その方が稼げる」

 

「そういうヒーローらしからぬ理屈を嫌う奴なんだろう。精神性も含めて疑う余地がない……。反面、二位の子はまだ幼いな」

 

「そこ比べちゃうのは酷なんじゃない? 充分凄かったと思うけど」

 

「最後まで戦い抜く素晴らしいタフネスがあったのにも関わらず、膝を着いて動かずじまい……か。恐らく五条 玲珠のそれを見て心が折れたんだろう。救助Pも0……むしろこれで二位というのは凄まじいという他にない」

 

「入学までに落ち着くといいけどなあ! 途中までは一位に対抗してスッゲーいい動きしてたしな。これを糧に成長すれば絶対良いヒーローになるぜ」

 

「それよりも、八位の子の――」

 

 ――教師陣の盛り上がりは、それからも長く続いた。

 

(……ったく、わいわいと……今年は一段とうるさいな)

 

 ……一人を除いて。



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3  雄英入学〜個性把握テスト

 自由な校風が売り文句なRTA、はーじまーるよー!

 

 前回の続きから、雄英入学当日までは個性を伸ばしていきます。

 ちょっと待って! 法律遵守が入ってないやん! と思われるかもしれませんが、ヘーキヘーキ、大丈夫だから。(楽観)

 

 個性【無限】のうち【六眼】、【アキレスと亀】、【身体強化】は外見上の違いがパッと見分からない上、出力される被害もないも同然なので滅茶苦茶訓練がし易いです。

 やっぱ……れずちゃんを……最高やな!

 え? 【蒼】?

 

 ……ナオキです……。

 

 さて、【無限】くんは無下限呪術と違い、反転術式がない分使用上限があり、更に領域展開がないので何もかも感じる!(感度3000倍)が出来ません。

 【六眼】も常時発動ではなく、意識して発動させる必要があります。

 

 使用上限の具体的な例としては、現時点で【蒼】を4回ほど打つとグロッキー+頭痛ヤバヤバになります。

 お茶子ちゃんとゲロイン被りはマズイですよ!

 この上限を個性伸ばしによってぐんぐん上げようね!

 ゲロとか……しないようにしようね!

 

 って事なんですね。

 

 個性訓練の際に見るべきポイントは、習熟度です。

 これが上がると体にかかる負担の減少や効果の増大が見込めるので、ひたすら技を使って習熟度を上げていきます。

 優先度としては、【アキレスと亀】>【身体強化】>【六眼】ですかね。

 【アキレスと亀】は言わずもがな最強能力ですし、【身体強化】は汎用性に優れています。

 【六眼】は単純に色々滅茶苦茶よく見えるので、実の所反動も凄いです。習熟度を上げたとしても使って大体五分くらいで頭痛がえらいことになります。

 使用すると【無限】のあらゆる効果がとんでもなく上がるのですが、現在でも一分ほどは持続します。

 今使える時間を全て【六眼】にあてても迎える時間は十秒も伸びませんので、暫くはこのままで放置します。

 

 え? 【蒼】?

 

 ……ナオキです……。

 威力抑えると特訓にならないわ、最大で使うと被害大きすぎるわ……。

 

 というわけで雄英入学まで耳郎ちゃんと遊びながら個性伸ばし、甥の木村加速します。

 

 

 少女訓練中……。

 

 

 少女訓練中……。

 

 

 はい、雄英入学当日になりました。

 個性の伸びを見てみましょうか。

 

◇―◆―◇

名前:五条 玲珠

性別:女

年齢:15歳

誕生日:十二月七日

所属:雄英高校ヒーロー科1―A 10番

身長:150.1cm

才能値:100

頭脳努力値:26

身体努力値:12

性格補正:【ナルシスト】

Plus ultra:52/100

Plus chaos:3/100

 

個性:【無限】

 全てを見通す六眼と、偏在する無限を操ることが出来る。使い過ぎると酷い頭痛に悩まされる。

 

【六眼】     習熟度 11/100

 自分を含むあらゆる対象の個性とその使い方、可能性を視ることが出来る。色々と見えすぎるので負担が大きい。

 使用時【無限】の出力が著しく向上する。

 

【身体強化】   習熟度 12/100

 無限により生み出した引力と斥力で移動速度や打撃の威力などを強化する。常時発動出来る。

 

【アキレスと亀】 習熟度 12/100

 発動中、自分に触れようとした対象が無限に遅くなる。

 

【蒼】      習熟度 10/100

 無限の順転。発動した点を中心に、エネルギーを吸い込む。

 使い方次第では目にも止まらぬ速さで移動することが出来る。

 

【赫】      未習得

 無限の反転。発動した点を中心に、エネルギーを発散する。

 使い方次第では目にも止まらぬ速さで移動することが出来る。

習得条件:【蒼】の習熟度30

 

【茈】      未習得

 蒼と赫を衝突させることで生成される仮想の質量を押し出す。触れたものは消滅する。

習得条件:【蒼】と【赫】の習熟度50

◇―◆―◇

 

 習熟度はきっちり上がってますね、ヨシ!(現場猫)

 

 確認も済んだので早速家を出て、雄英に行きましょう。

 

「おはよー玲珠。一緒に登校しない?」

 

 あぁ^〜いいっすね^〜

 じゃあ折角だし……飛んでかない?(提案)

 

「は? 飛ぶ……?」

 

 ホラホラホラホラ、手握って! 時間ないんだから!!(ホモはせっかち)

 

「え、え、あ、うん」

 

 それじゃあイクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!

 カーンが入っている、+114514810931点。

 

 ……はい、着きました。

 皆さんご存知五条悟の謎瞬間移動です。

 原作ではどうか知りませんが、この作品の【無限】では事前に場所を指定し、【アキレスと亀】を適用してから【蒼】か【赫】を使うことで瞬間移動を行うことが出来ます。

 

 呪術廻戦の無下限呪術ではあらかじめルートを決めておくなどそれなりの制約があるようですが、ゲームの仕様の都合上そういった部分は排除されています。

 数少ない強化点の内の一つですね。

 

 ちなみに手を繋いだ人間にも【アキレスと亀】を適用することが出来るので、耳郎ちゃんは無事です。

 胸はぺたんこでもぺしゃんこにはなりません。

 貧乳気にしてる耳郎ちゃん世界一可愛い……可愛くない?(脱線)

 

「あ、アンタ……ほんとなんでも出来んね……」

 

 なんでもは出来ないわよ。出来ることだけ。

 

「???」

 

 分かる。(共感)

 西尾維新ってムズいよね。

 

 さて、やたらとバリアフリーな巨大扉をガラガラガラ!!(迫真)します。

 ……はい、誰もいません。一番乗りです。

 こうすると、強制会話が少なくて済むので楽なんですよね。

 

「わ、ウチら一番乗りじゃん。これからも登校アンタに頼もっかな……定期まだ取ってないし」

 

 ええよ!!(快諾)

 ではログ飛ばし以外特にやることもないので個性把握テストまで倍速。

 あ、この際爆豪に絡めるなら絡んでおきましょう。

 滅茶苦茶キレられますが、何故か(すっとぼけ)友好度が上がります。

 緑谷については、二人きりで話せるタイミングがすぐに来るのでまだ絡む必要はありません。

 

 お、等速に戻りましたね。

 

「五条、中学の時ソフトボール投げ何mだった」

 

 相澤くんオッスオッス!!(激遅)

 はい、このように主席を取っていると本来爆豪に振られるはずだった最初のボール投げを自分が行うことになります。

 つまり? →【蒼】の個性伸ばしが一回多く出来る。

 

 だから、主席をとる必要があったんですね。(例の構文)

 では【身体強化】+【蒼】で投げましょう。死ねぇ!!!(爆)

 【蒼】は一見ボール投げには使用出来ないように見えますが、(そんなことは)ないです。

 使用範囲ギリギリの超遠くを対象に【蒼】を使い、引き寄せる力が最大になった所で解除します。

 すると、そのままの勢いでボールは遥か彼方へ飛んでいくんですね。

 

「まず自分の最大限を知る……それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

「なんだこれすげー面白そう!」

 

「3852mってマジかよ……つか今の何? ブラックホール?」

 

「個性思いっきり使えるんだ!! さすがヒーロー科!!」

 

 おいそこォ、はしゃぎスギィ!

 ……はい、合理性に欠くね、とお叱りを受けました。

 

 さて、ソフトボール投げ、立ち幅跳び、五十メートル走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈、その全てにおいて【無限】は活躍するので、間違いなく一位でしょう。

 

 立ち幅跳びは例の瞬間移動を使います。

 五十メートル走も同じく。

 持久走も同じく。

 

 握力は【蒼】で握りつぶします。

 反復横跳びは弱めの【蒼】を二つ設置してぐわんぐわん動きます。

 上体起こしも上に同じく。

 

 長座体前屈は先に設置しておいた【蒼】で測定器を引き寄せます。

 え? 【蒼】沢山使うと吐くんじゃないの? って?

 ――ッスー……。

 

 我慢します。(覚悟)

 ちなみにガバではなく、チャート通りです。

 試走ではしっかりやりきる事が出来たので、今回も大丈夫でしょう。

 使用上限とはいっても、リアルに寄せられている今作では結構無理が効くんですね。

 

 

 少女測定中……。

 

 

 少女測定中……。

 

 

 はい! 無事一位をとる事ができました。

 一部の種目ではお茶子ちゃんの∞など上回られる結果もありましたが、総合ではしっかり一位です。

 

「……チッ!!」

 

 おっと、爆豪くんが緑谷くんの個性とれずちゃんのあまりの万能っぷりにキレ散らかしてますね。

 しかしれずちゃんに一回折られてるせいか、原作のような暴走→捕縛とはなっていないようです。

 ログが少なくて済むので助かりますね。

 

 では忘れず煽っておきましょう。(クズ)

 やーいやーい! こんな美少女に負けて恥ずかしくないの?

 あ、やばい吐きそう。

 

「テメェ……っ!! いや、言葉で何言っても結果は変わんねぇ……見てろ、次は越してやる……ッ!!」

 

 あぁ^〜、いいっすね^〜。

 いつか、じゃなくて次、な辺りが覚悟を感じられて良い……良くない?

 

 相澤先生より合理的虚偽(大嘘)をバラされたところで……あ、れずちゃんぶっ倒れてしまいました。

 これも勿論チャート通りです。

 何より寝顔がかわ

 

 今回はここまでです。

 ご視聴ありがとうございました。



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3裏 五条玲珠は異常である

 五条 玲珠。

 彼女の容姿とその振る舞いを見た各々の感想は――最終的には『綺麗な爆豪』『見た目詐欺』であった。

 

 逆に、玲珠のことをよく知る耳郎響香はといえば――。

 

(爆豪って奴、なんかちょっと玲珠と似てるなぁ。性格が終わってるとことか……。ま、玲珠は可愛いからその辺が全然違うけど……)

 

 そう。大好きがあまりに身内贔屓してしまう耳郎の心境はさておいて、この二人は疑う余地もなく似ているのである。

 積み上げてきたドス黒い強さとプライド、他者を慮ることのない態度。

 様々な観点から見れば爆豪の方が幼く見えるものの、その本質は限りなく似通っている。

 

 しかし最初は、玲珠に抱く各々の感想は憧れや純粋な好意が多数を占めていた。

 言わずもがな、見た目のせいである。

 

「ねー、あの子滅茶苦茶綺麗じゃない?」

 

「ケロ……確か首席の子よ。凄いわ」

 

(あのオーラ……!! きっと由緒正しきご令嬢ですわ。浮世に慣れない私でも仲良くしていただけるかも……)

 

「うわうわうわ、どうすっかな……声かけよっかな」

 

「巨乳エッロ!! 腰つきヤバ!! 尻もすげェ……っ!! う、うへへ、ヒーロー科最高だぜ……っ!!」

 

「……漆黒に浮かぶ白銀の蒼華……フッ」

 

 玲珠は噂話に花を咲かせる皆の方を向いて、ひらひらと手のひらを振って笑顔を見せた。峰田は鼻血を出した。

 

「オイラ……ここに来れて良かった……」

 

「おい待て数人灰になってんだけど!? 収拾つかねぇって!!」

 

(うわー、あいつ猫被ってるよ……でも可愛い……。あーあ……あの笑顔、ウチだけのものになんないかな……。なんて、ロックじゃないよね……)

 

 しかしまぁ、ボロとは出るもので。

 

「よ! 俺切島 鋭児郎。聞いたぜ五条、首席なんだってな! すげぇな!」

 

「ん? まぁボク最強だしね」

 

「お……おう、よろしくな!」

 

「ん、よろしく。鋭児郎」

 

 鈴の音のような可愛らしい声で紡がれた言葉は――傲慢そのもの。

 

(あーあ……やらかしたな……玲珠)

 

 刹那、元々本性を知っていた耳郎以外の生徒の心の声が揃った。

 

(((思ってたんとちがーうっ!!!)))

 

 清楚系、あるいはゆるふわ系の性格を想像していた各々のイメージが、音を立てて崩れていく。

 

 そして――数分が経って。

 爆豪と飯田――緑谷曰く怖い人2TOP――の言い争いが始まった。

 

「机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」

 

「思わねーよ! てめーどこ中だ端役が!」

 

「ボ……俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」

 

「聡明〜〜!? くそエリートじゃねえか、ブっ殺し甲斐がありそだな」

 

「酷いな君は!?」

 

 そこに、玲珠がつまらなそうに呟いたのである。

 

「勝己はぶっ殺し甲斐なかったけどね……」

 

「ちょ、玲珠やめなって……」

 

 耳郎の努力も虚しく、玲珠は爆豪の足を無理やり掴んだ。

 

「やだよ、やめなーい。いくら響香のためでもここはやらせてもらうよ。……ホラ、弱いんだからせめていい子ちゃんでいな、クソガキ」

 

 勿論抵抗する爆豪だったが――彼の足は、まるで何かに吸い込まれるようにして地に着いた。

 

「んな……ッ!? クソッ!!」

 

 だが――爆豪は、キレながらもクレバーだった。

 

(……今の素の力か……? いや……絶対違ェ。そういう感覚じゃねェ……。触れられた感覚が曖昧すぎた。なんか気持ち悪ィカラクリがありやがるな、このクソ白髪――【重力操作】とかそんな類かァ……? いや、もっと――)

 

 個性【無限】……その一端を、類まれな洞察力によって見抜いたのである。

 だがそれがなんだというのか。玲珠の煽りは留まることを知らない。

 

「しっかしまあ、あんな恥ずかしー負け方しといてよく吠えられるよねー、羞恥心とかないわけ〜? 自分が弱い癖して人を端役だのモブだの――。うーん、れーじゅちゃん、棚上げはよくないと思うな〜っ♡」

 

 えへへ、と、花も恥じらう満面の笑顔を見せながら、玲珠は悪辣の限りを尽くした。

 その道で――そんな道が果たしてあるのかどうかはさておいて――食っていけそうなレベルであった。

 

「て、めェ……言わせておけば……ッ!! あん時の俺と同じだと思ってンじゃねェぞクソ白髪……ッ!!」

 

 爆豪の理性の糸がプツンと切れるまさにその刹那。

 飯田が、手をブンブンと振る個性的なジェスチャーをかましながら口を開く。

 

「ま、待ちたまえ五条くん! 助太刀については感謝せねばならないし、爆豪くんの言動は確かにヒーローらしからぬものだが……! 君のその言い方も、あまりよろしくないと思うぞ! 勿論君が強く気高いヒーローの資質を持っていることは入試の結果から明らかな事実だが――。であればこそ、規律と道徳を重んじ、人を導く存在であるべきだ、君は!」

 

 飯田の発言は反論の余地のないもっともらしいものだったが……しかし玲珠には届かなかった。

 

「ん? 天哉〜、それって正論? ボク正論嫌いなんだよね〜……しかも話なっがいし。あー吐きそ、これもう傷害事件でしょ……謝ってくんない?」

 

「な……っ!? な、なな……な……っ!?」

 

(((性格わっっる!!!?)))

 

 うぅ……、と口を押さえて目を潤ませる玲珠は――見た目だけなら、完璧に病弱ヒロインのそれだった。

 完璧な見た目と声から繰り出される、悪辣すぎる発言の数々が――その場にいた者の脳をバグらせていく。

 

(え、幻聴? 幻聴だよな……?)

 

(ケロ……怖い子だわ、五条ちゃん)

 

(オイラも足机に乗せたらあの白い手で触ってもらえんのかな……やろうかな……いや身長足りねぇわ……)

 

「んで、俺は無視かよクソ白髪テメェ……ッ!!」

 

「あはー、返事して欲しかったの? 寂しんぼかなぁ?? よしよしいい子でちゅね〜」

 

 正に、一触即発の雰囲気。

 

「あ! そのモサモサ頭は!! 地味目の!!」

 

 そこに乱入する緑谷と麗日の声がなければ。

 飯田は、数分は『な』だけしか言えぬ機械と化していた事だろう。

 爆豪は、持ち得る実力の限りを尽くして玲珠に襲いかかっていたであろう。

 

 こうして五条玲珠に対する皆の第一印象――ゆるふわあるいは清楚系お姫様といった幻想は、完全に崩れ去り。

 緑谷と麗日は、図らずも救世主として崇められることとなった。

 

 

 

 そして――相澤先生による個性把握テストが始まる。

 

「五条、中学の時ソフトボール投げ何mだった」

 

「70くらい……? そんなに覚えてないけど」

 

(((70!!? あの体で!!?)))

 

 A組の生徒たちが驚くのも無理はなかった。

 何しろ、玲珠の体は貧相ではないものの――。

 非常に引き締まった、モデル体型とでも言うべきすらっとした代物で。

 余計な脂肪はもちろんのこと、筋肉もほとんどついているようには見えない。

 

(クソが……!! 個性なしでも俺より上って事かよあのクソ白髪……ッ!!)

 

「……じゃあ個性を使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい。はよ」

 

――ソフトボール投げ。

 

「んじゃまあ……無限順転――【蒼】……死ねェ!!!」

 

(((………………死ね?)))

 

 奇しくも彼女の掛け声は、後に投げた爆豪のものと一致した。

 

「パクリじゃんだっさ」

 

「違ェわクソ白髪!! 黙ってろ!!」

 

「仲良いなーアイツら。競い合うライバル……漢だな!!」

 

「……そうなのか? そうは見えねェが……」

 

 極めつけは、テスト結果が発表された直後。

 爆豪の機嫌が悪いとみるや、にやりと笑って――その仕草すらも可愛らしいのが誠に遺憾ではあるが――口を開いた。

 

「はい一位〜、どっかの誰かは四位〜圏外〜」

 

 やけに整ったリズムに乗って繰り出された渾身の煽りに、その場の全員がドン引きした。

 

(((うわぁ……)))

 

(やりすぎだって玲珠……。ウチには結構優しいのにな……。そんなに爆豪が気に食わなかったのかな……はっ! ま、まさか同族嫌悪……?)

 

「テメェ……っ!! いや、言葉で何言っても結果は変わんねぇ……見てろ、次は越してやる……ッ!!」

 

「おいそこ私語は慎め。……あ、ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

 

「「「はーーーーー!!?!?」」」

 

 生徒の殆どがザワつく中、涼しい顔でツッコミを入れる者が二人。

 

「「あんなの嘘に決まってるでしょ(じゃない)、ちょっと考えればわかるよ(りますわ……)」」

 

「「あ」」

 

「気が合うね、えーっと……」

 

「こほん。五条さん、私、八百万 百と申しますわ」

 

「そっか、百ね……あぁ、推薦入学者なんだっけ。期待してるよ、よろし――あっ」

 

 挨拶の途中で玲珠は突如頭を抱え、目をガン開いた。

 

「え、どうしましたの!!?」

 

 そして玲珠は、心配し慌てふためく八百万の豊満な胸に……あろうことか、体を預けた。

 ――むぎゅう、と。

 

「……あー。ごめん限界、落ちる。ちょっと百、体貸して……あーうんいい感じの枕だ助かる。……よし、おやすみ」

 

「ご、五条さん……五条さん!!?」

 

 そうして、嵐のように場をかき乱していた少女は八百万の胸の中で――すやすやと眠りはじめてしまった。

 

「お、おい…………」

 

「ふ、不思議ちゃんすぎるぜこいつ……」

 

 上鳴の一言は、皆の心境の代弁であった。

 

「おっぱいの中でおっぱいが寝てやがる……おいおいおいおっぱい天国じゃねえか……っ!!」

 

 言うまでもなく、峰田は女子陣に殴られた。

 

「……ったく騒々しい……。これにて終わりだ。教室にカリキュラムなどの書類がある。戻ったら目通しとけ……」

 

 呆れを隠さない相澤の様子に、皆は思った。

 五条玲珠は異常である――と。

 

 そして。

 

「緑谷、保健室で婆さんに治してもらえ。後……五条も保健室に放り込んでおけよ」

 

「あ、はい…………はい!!?」

 

 言葉を咀嚼し理解すると同時に、緑谷が全身が震え上がるのを感じた。

 そもそも自分なんかには一生触れられないほどの美少女――付随して、あの爆豪とやりあって全勝の女である。

 怖くないはずがなかった。

 

(五条さんを!!!?!? 僕がっ!!?!? 何故っ!!?!?)

 

「指が痛かろうが関係ない。むしろその痛みを身に刻んで個性の制御に励め」

 

(違う!!! そういう事じゃなくて!!! そういう事じゃないんですよ先生!!!!)

 

「明日からもっと過酷な試験の目白押しだ。覚悟しておけ……」

 

(覚悟が必要なのは今なんですけどォっ!!?!? 助けてオールマイト……っ!! あ、やばい何かこの人柔らかいいい匂いするうわぁぁぁぁッ!!!!)

 

「緑谷許さねぇ……許さねぇぞ、オイラだって五条のゴジョオッパイを――」

 

 峰田は女子陣に蹴られた。



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4  緑谷出久邂逅〜戦闘訓練開始

峯田じゃなくて峰田らしいです。
教えてくれた方に感謝の気持ちがあぁ止まらない!!

『誤字報告について追記』
RTAPartの時に最後ぶつ切りになるのはbiimシステムによる仕様です。
ご理解の程よろしくお願いします。


 非常階段で指を噛む明日はどっちなRTA、はーじまーるよー!

 

 前回の続き、れずちゃんがぶっ倒れてしまったところから。

 お、どうやられずちゃんを介抱してくれたのは八百万ちゃんのようです。

 おっぱいコンビに大興奮の峰田くんが蹴飛ばされてますね……可哀想。(適当)

 

 このように、【個性】の使いすぎによる気絶をすると三人称神様視点に飛ばされます。

 この際起床判定を行うことが出来、気絶してからの時間と身体スペック指数辺りを参照した確率で起きられます。

 

 起きるのは、緑谷くんの指の負傷がリカバリーガールによって治されたタイミングとします。

 これによって、「二人っきりだね……」をする事が出来るんですね。

 れずちゃんなのにノンケなのか……。(困惑)

 

 緑谷くんと二人きりでお話(意味深)することになんの意味があるのかと言うと――そうです。

 

 

 OFA関係です。

 

 

 何せれずちゃんには【六眼】があるので、緑谷くんの個性がオールマイトと同じものだと気づくことが出来るんですね。

 

 いやお前オールマイトと会ったことないじゃんアゼルバイジャン。

 チャートにも穴はあるんだよな……とお思いの方。

 【六眼】は動画を通しても使うことが出来るので、オールマイトの個性はとっくに見ています。

 

 なんて穴のない素晴らしいチャートなんだぁ……。(自画自賛)

 ちなみに起床判定に失敗したらリセットです。(6敗)

 あるじゃねえかよォ……こんな所にいい穴がよォ……。

 

 

 お、どうやら緑谷くんの負傷が回復したようです。

 おら起きろ!! パンパンパン!!!(起床判定)

 

 

 ちょ、ま、成功して。お願い!!

 

 

 無理無理無理っ! 起きれない!!(MSTA)

 

 お願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願い!!!!(連打)

 

 

 ……ッスーーーー。

 

 

「あ、ご、ご、五条さん!? おおお、起きたんだ……。えと、えと、体調は大丈夫……ですか?」

 

 あっっっっっっぶねぇええええええ!!!!

 ガチでギリギリ、なんとか起きてくれました。

 今回のれずちゃんはとても優秀ですね……。

 

 それはそうと緑谷くんがあまりに典型的なオタクくんすぎて泣けてきますね……。

 お顔真っ赤だし変なポーズで目を合わせないようにしておられる……。

 

 共感性羞恥煽られちゃうヤバイヤバイ……。

 いやしかし、こういうのを可愛いって思う人もいるんですかね?(素朴な疑問)

 

 それはともかく、自分も怪我人なのに人の心配とか涙がで、でますよ。

 これァ主人公の鑑だァ……。

 

「あ、う、ううん!! ぼ、ぼ、僕の怪我はリカバリーガールに治癒してもらった……ので、平気というか、その……なんというかぁ……」

 

 取り敢えず落ち着いてくれよな〜頼むよ〜。

 それとホラ、タメで良いから。(れずは寛容)

 

「あ、そ、そう……? かっちゃんに凄い絡みに行ってたし、て、てっきり怖い人かとぉ……。い、いやなんでもない!! なんでもないよ!!」

 

 大丈夫だって安心しろよ〜。

 それにしてもなんだその個性は!!

 れずちゃんは優しいから放っておけないぜ。(DUM兄貴)

 

「い、いや、そのぉ、えっとぉ……」

 

 れずちゃん進研ゼミで習ったから知ってる!!

 それオールマイトの個性だぁ!!(無邪気)

 

「え……っ。な、なんで……っ」

 

 いやーー、実はれずちゃんの個性がかくかくしかじか四角いキューブ……。

 

「五条さんの、個性……? 重力とかじゃなかったのか……」

 

 少女説明中……。

 

 少女説明中……。

 

 はい!! 納得してもらえました!!

 続いて翌日の放課後にオールマイトと会わせるよう提案して、緑谷くんと一緒に下校しましょう。

 

「あ……そうだ、五条さん。OFAの件とかオールマイトの怪我の件は秘密なんだ……」

 

 当たり前だよなぁ。

 そんなの広めたらヴィランが調子乗っちゃうジャマイカ。

 

「……良かった」

 

 ん?

 

「いや……凄い個性だと思ってさ。でもだからこそ、それを正しいことに使える五条さんで良かったな、って……。きっとその個性も喜んでるなって……そう思ったんだ……あ、あはは!! な、何言ってるんだろ僕!? ご、ごめ――」

 

 おいおいおい天然タラシがよぉ!!!!?

 流石オールマイトに認められる精神の器、玉も竿もでけぇなお前。(褒めて伸ばす)

 君はいつかヒーローになれるどころの騒ぎじゃねえよ、お前もう最高のヒーローだよ。(賛辞)

 

「え……それって、どういう……」

 

 さて、校舎の出口で飯田くん+お茶子ちゃんと合流出来るので、友好度を稼いでおきましょう。

 

 こいつらの友好度なんか稼いでどうなるの? という話ですが、クラス全体の友好度が担任である相澤先生の友好度に関係してくるんですよね。

 

 最終的には相澤先生など様々な教師の判断によってヒーロー免許を認められることになるので、これを稼ぐのは必須です。

 

 ………はい!!

 稼げました!!

 

 この後は待ってくれている耳郎ちゃんと合流して帰宅ですが、一応三人の友好度をチェックしておきましょう。

 三人はどういう集まりなんだっけ?

 

・緑谷出久

 友好度:15.3%

 親愛度:27.1%

 依存度:0.0%

 関係性:秘密の共有者

 

 ちょっと優しくされただけでこれとかテメェ女に弱すぎだろ!!? ノンケかよぉ!!?(驚愕)

 まぁ、実の所緑谷くんはかなりチョロい傾向にあるのでこれでも普通です。

 オタクくんさぁ……。(呆れ)

 

・麗日お茶子

 友好度:10.1%

 親愛度:0.0%

 依存度:0.0%

 関係性:いい友達になれるかな?

 

 あぁ^〜、いいっすね^〜。

 爆豪くんを煽り散らかしていた影響でいわゆる第一印象がかなり悪い場合がある(3敗)のですが、今回は大丈夫なようです。

 お茶子ちゃんこれから仲良くしよう!(提案)

 

・飯田天哉

 友好度:3.2%

 親愛度:0.0%

 依存度:0.0%

 関係性:知り合い

 

 ナオキです……。

 まぁ飯田くんに関してはしゃーないです。

 れずちゃんはどうしても五条の呪い(性格)のせいで不真面目かつ傲慢なので、飯田くんとはあまりウマが合いません。

 

 お互いの方向性の違いを認めつつ……な大人のお付き合いを心がけて行きましょう。

 後、飯田くんに関しては友好度をぐっと上げられるストーリーがあるので焦らなくても大丈夫です。

 

 

 さて、時間をすっ飛ばして翌日ですが、まず爆豪曰く「クソつまんね」――な、ごく普通の授業があります。

 しかし忘れてはならないのは、れずちゃんも高校生という事。

 すねちゃま、学生の本分はお勉強ザマスよ!!!

 

 ここをしっかり取り組むことで教師陣からの友好度と頭脳努力値を稼ぐことが出来ます。

 学力テストでも一位を取っておかないとプロヒーロー免許が貰えません。

 特に八百万ちゃん辺りの頭脳努力値の伸びは滅茶苦茶早いので、あまりおろそかにしていると普通に転落します。(1敗)

 

 ……はい。

 

 お勉強を終え、お昼になったら緑谷くんお茶子ちゃん飯田くんと、四人でご飯を食べましょう。

 言わずもがな、友好度アップのためです。

 

「白米に落ち着くよね、最終的に!!」

 

「ん……おちつくぅ」

 

 白米の美味さにとけてるお茶子ちゃんをオカズにご飯をかきこみましょう。

 

「んぇ!? あんまり見られると食べづらいんやけど……」

 

 可愛いから仕方ないね。(レ)

 それはそうとれずちゃんが食べてる姿もセクシー……エロいっ!!(峰田並感)

 

「人のこと言えんとちゃう……?」

 

 お茶子ちゃん、分かる。(天下無双)

 

 ……と一通り楽しみましたら、遂にヒーロー基礎学のお時間です。

 これってホントにRTA? と思われるかもしれませんが、急がば回れという言葉があるように、HERO%では一つ一つ着実に積み重ねて行った方が早いんですよね……。

 

 もちろん、エンディングを見ることが計測終了条件であるAny%などでは真逆の走り方をする事になるんですけどね。

 走者としては走りつつゲームとしても最大限に楽しめるこちらの方が好きです。(隙自語)

 

 え、100%?

 お兄さん許して!!

 

 話を戻しまして、ヒーロー基礎学。

 オールマイト初対面です! 

 感動〜〜! 八木さん個性強いのね〜!!(KTIKY)

 

 お決まりのセリフを倍速で流しまして……。

 

 お、等速に戻りました。

 どうやらグラウンドβに着いたようですね。

 

 さて、被服控除システムと言いまして、ここでは原則用意されたヒーローコスチュームを着ることになります。

 ヒーローコスチュームを着ている場合、個性や身体能力にバフがかかります。

 

 れずちゃんの場合は、使いすぎた頭と眼を冷やしたり温めたりしてくれることで個性の使用上限が少しアップします。

 リラックスって大事だよね。

 

 しょぼくない? と思うかもしれませんが、意外とバカになりません。

 特にバカスカ【蒼】と【六眼】を使えない序盤ではかなりこれに頼ることになります。

 

「さぁ、戦闘訓練のお時間だ!」

 

 おっすお願いしま〜す。

 

 さて、このヒーロー組とヴィラン組にわかれて行う戦闘訓練ですが、ハッキリ言ってかなりの鬼門です。

 というのも、特にヒーロー側になってしまった場合は【無限】の瞬間移動で即座に試験を終わらせることが出来てしまうんですよね……。

 

 かといって舐めプをかまして努力値をあげようとしても、その行いがオールマイトにバレてしまうので心象が低下してしまい、かなりまずあじです。

 結果的に努力値の伸びが足りなくなってしまうんですよね。

 

 しかも、組まれたチームによっては今後の友好度に多大な影響を及ぼします。

 ちなみに緑谷爆豪のマッチングに巻き込まれた場合はリセットです。

 れずちゃんレベルに強いと二人のシナリオを阻害してしまい、今後の流れに甚大な被害が出ます。(2敗)

 

 この際のチームは完全に乱数で組まれるので、TDNお祈り案件というわけですね……。

 TASならば望んだ組み合わせにすることも出来ますが生憎人力なもので、数々のれずちゃんがここで散っていきました。

 

 まとめると、敵側、かつ緑谷爆豪に巻き込まれないチームである必要があります。

 これ自体の確率はかなり高いとは思うのですが……なーんで出ないんですかね……。

 

 

 少女祈祷中……。

 

 

 少女祈祷中……。

 

 

 い。

 や。

 いやっだぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!

 

 屍踏み越え、ついにれずちゃんはチームIを獲得しました!!!

 

「よろしくな……えっと、五条さん」

 

 尾白くんと一緒のチームです。

 お前葉隠ちゃんとチョメチョメしやがってもう許せるぞオイ!!

 馴れ初めを潰してやるぜ。(非道)

 

 ちなみに今更すぎる話ですが、このゲームでは雄英入学時に本来入学するはずだった原作生徒のうち、影が薄い+本編のストーリーにあまり絡まない生徒の一人が落とされます。

 今回の場合、口田甲司くんがいません。

 悲しいなぁ……。(諸行無常)

 

 ま、定員が決まってるからね、仕方ないね。

 え、田所浩二……? 誰それ。(すっとぼけ)

 

 さてさて、チームIの特にうまあじな点としては、チー厶Bの轟くんとマッチングすることが挙げられます。

 今の段階ではれずちゃんを除いて最も強い生徒は轟くんなので、彼とマッチングする事で訓練の質を大きく上げられます。

 

 何よりレベルの高い戦いを繰り広げることによって、A組生徒の心象を大きく上げるこ

 

 今回はここまでです。

 ご視聴ありがとうございました。



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4裏 緑白邂逅、保健室にて

「私の個性は人の治癒力を活性化させるだけ……治癒ってのは体力が要るんだよ。大きなケガが続くと体力消耗しすぎて逆に死ぬから気をつけな」

 

「逆に死ぬ!!?」

 

 物騒な話だ、と声を張り上げた緑谷に対し、返事をよこしたのはリカバリーガール……ではなく。

 

「ん……ふぁ……っ」

 

 可愛らしく、それでいてどこか扇情的な欠伸だった。

 声の主は言わずもがな――五条玲珠だ。

 

 どこからか香り立つ良い匂いと体の柔らかい感触――何よりその寝顔の美しさに脳がやられそうになったのは記憶に新しい。

 というか、やられた。

 正直、ドギマギしすぎて指の痛みなどとうに忘れてしまっていた。

 

 いやいや寝ている間にそんなことを考えるなんて失礼だろ……っ! と、緑谷が自己嫌悪に陥ったのは言うまでもない。

 

(あ……寝てたのに、声大きすぎたかな……)

 

 反省だ、と緑谷は口を手で覆うも、時すでに遅し。

 五条はベッドから飛び起き、地に足をつけた――と思えば、いつの間にかリカバリーガールの真横にいた。

 

(……今の、しゅ、瞬間移動!? というか明らかに物理法則無視してたぞ!?)

 

 五条の個性は、あのテストから察するに引力とかそんな所だ――と緑谷は予測する。

 

 でも正直なところ、それだけではないように思える。

 個性を発動した結果としてその重力が現れているだけで、母のそれとは恐らく根本的な本質が異なるはずだ。

 長年ヒーローを観察し、分析して養ってきた勘――緑谷の数少ない、自分で信じられる武器のうちの一つだ。

 

(……うわーー、五条さんの個性気になる。気になるけど――っ)

 

(本人に直接聞くってのも、ハードル高いなぁ……かっちゃんとあんだけ喧嘩してたし……死ねとか言ってたし……ボクなんかが馴れ馴れしくしたら怒るだろうなぁ……怖いなぁ……)

 

 そもそも普通に女子に話しかけることすらまともに出来ないのだ。

 それよりも遥かに恐ろしく――爆豪と同じ気質を感じさせる五条玲珠に。

 当人の個性の話を自ら振ることなど、今の緑谷に出来るはずがなかった。

 

(で、でも知りたい……っ)

 

 オタクのそんなささやかな葛藤もつゆ知らず、五条はとびきりの笑顔でリカバリーガールに抱きついた。

 

「ん〜〜っ、体力全開だぁ! あんがとねー、保健室のお婆ちゃん」

 

「礼ならここまで運んできたその子に言いな。あたしゃあんたにゃ個性使ってないよ。全く、不思議な子だねえ」

 

「それは知ってるけど、その子……? あぁ、出久かあ! いずくーー!!」

 

(女子に!!!! 五条さんに!!! 名前呼びされてしまった――――ッ!!!!?)

 

 青天の霹靂である。

 五条玲珠は元来、誰であっても名前呼びから入る距離感のイカれた女なのだが、悲しいかな緑谷はそれを知る由もない。

 

「あ、ご、ご、五条さん!? おおお、起きたんだ……。えと、えと、体調は大丈夫……ですか?」

 

 先程声の大きさを反省したばかりだというのに、我ながら救えないものだと緑谷は自嘲した。

 ついでに言えば、何故敬語を使ってしまったのか。

 麗日を相手にした時もそうだったが、やはり自分には社交性というものが絶望的に備わっていないらしい。

 …………特に、女子相手には。

 

 きっと不快に思われるだろう――そして爆豪の時のように言葉の限りを尽くしてなじられるのだろう。

 ……と、目を瞑ったのだが。

 

 その予想は、良い意味で裏切られた。

 

「うん、れいじゅちゃんもうぐっすり寝て体力全開だよ〜。あんがとねー……っていうかさ。それ、人の体調心配してる場合なの?」

 

 爆豪と喧嘩していた時とは打って変わって、思いやりのある優しい声。

 心配そうにこちらを見つめる、青く澄んだ瞳。

 つい、本当に同一人物なのかと疑ってしまうほどの……いや、これは流石に失礼だろう。

 

 さて。

 

 彼女の言うそれ、というのは恐らく個性把握テストの時に壊したこの指の事だ。

 ああ、そうか、と緑谷は一つの可能性に思い至る。

 今も包帯を巻いているので、もしかしたらまだ治っていないと勘違いをされてしまっているのかもしれない――と。

 緑谷は、慌ててそれを訂正した。

 

「あ、う、ううん!! ぼ、ぼ、僕の怪我はリカバリーガールに治癒してもらった……ので、平気というか、その……なんというかぁ……」

 

 どもってしまって、上手く言葉が出てこない。

 女子と話すのはどうしても慣れないし、しかもあの五条だ。

 怖いし、恐ろしいし……何より。

 見た目も成績も――どうしても、別世界の住人のように思えてしまうというか。

 

 オールマイトに個性を授かった以上は同じ立場で競っていかなければならない……と、頭では分かっているものの。

 どうしても何処か、雲の上の人物のように感じてしまうのだ。

 

「ふうん? まぁでも……うん」

 

 ところが五条は、緑谷のそういった態度についてはあまり何とも思っていない様子だった。

 何を思ったのかは分からないが、ただ一瞬逡巡した様子を見せて――。

 目を細め、頬を紅潮させて優しげに微笑んだ。

 

「優しいんだね、出久は」

 

 キュン! と、不細工な顔になってしまいそうになるのを緑谷は全力で抑えた。

 抑えたが――まぁ、抑え切れるはずもなく。

 

「ぷっ……何その顔! つかさ出久、タメでいいよ全然」

 

 使いたくて敬語を使っているわけでもないのだが、これを拒否するのはそれこそ失礼の極みだろう。

 不細工になってしまった顔を両手を使って全力で戻しながら、返事をした。

 

「あ、そ、そう……?」

 

「うん」

 

 ……。

 

 ……。

 

 短く肯定の頷きを返されて、はてこれは夢か何かか、と頬をつねる。

 

(痛い……)

 

 そうして緑谷は、これが現実であることを再確認し――酷く安心した。

 何故自分に対してこれほど優しくしてくれるのか、という疑問は置いておいて。

 

「かっちゃんに凄い絡みに行ってたし、て、てっきり怖い人かとぉ……」

 

「ん? 勝己がどうしたって?」

 

「い、いやなんでもない!! なんでもないよ!!」

 

 思い過ごしであったとはいえ流石に面と向かって怖い、などと言われてしまったら、五条でも傷つくだろう。

 

 しかも、君は優しい、と言ってくれたばかりなのだ。

 そうして信頼を寄せてくれている相手に対してやっていいことではない。

 幸い聞こえてなかったから良かったものの、危ないところだった――と、緑谷は己の軽い口を憎み唇を噛んだ。

 

 しかしそれすらも、どうやら間違った選択であったらしい。

 

「あ……また怪我しちゃうぞ? 癖ならやめときな?」

 

 心配そうに此方を覗き込む五条――。

 

(いやいやいやいやいやいや距離近い近い近い近い近い!!?)

 

 果たして生涯でここまで女子に近づいたことがあっただろうか――と、邪な気持ちに思考が傾きかける。

 いや、そもそも抱き抱えてここまで運んだのは自分なのだから――いやいや、起きているのと寝ているのとでは話が違――。

 

「扱えないほどに大きな個性……君って不思議だよね」

 

 不思議、というなら五条も負けず劣らずなのだが、そう皮肉めいたことを言うだけの余裕は今の緑谷にはなかった。

 オールマイトとの秘密は決して話してはならない。

 

 どのようにこの場を乗り切るか、明確なビジョンが浮かばないまま、ただしどろもどろに。

 

「い、いや、そのぉ、えっとぉ……」

 

 そして――爆弾が投じられた。

 

「ま、オールマイトから貰った個性なら仕方ない、か……。OFA……凄い力だよ。体が追いつかないってのも無理ないよね」

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

(え?)

 




れずちゃんは悪い女ですね……


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4裏―2 五条玲珠の"個性"

ファッ!? 二次創作日間ランキング1位!?
なんだこれはたまげたなぁ……(歓喜) 皆応援してくれてありがとナス!


 ……。

 

 

 聞き間違い――では、ない。

 確かに、今、オールマイト、と――。

 OFA、と――ッ!!

 

「え……っ。な、なんで……っ」

 

 口に出してしまってから、バカか僕は、と緑谷は頭を抱えた。

 これでは肯定しているようなものだ。

 

(…………ばっ、バレた!!? いつ!? どこで!? どうやって……ッ!!? ぼ、僕が何かミスをしてしまったのか……っ!!? やばいやばいやばいヤバいっ!!! ごごごごごめんなさいオールマイト……ッ!!)

 

「あ……っ、そんな焦んないで、大丈夫。出久は何も間違えてないから」

 

 此方の思考を見通したかのように、そう前置きをしてから――五条はふふん、とあからさまなドヤ顔でこう宣った。

 

「ボクの個性だよ。視た人の個性は全部丸わかり、丸かじり」

 

「五条さんの、個性……? 重力とかじゃなかったのか……」

 

 ……それが本当なら……。

 

「うーん当たらずとも遠からず、かな? ま、折角だしボクの個性を教えておこうか。ふふっ、あんま人には言わないんだけど、出久なら大丈夫だよね。――どうせいつかは皆にバレるし……それに、言いふらしたりしないでしょ?」

 

「と、当然!! 誰にも言わないよ!! う、嬉しいな……前から凄く聞きたいと思ってて……っ」

 

 人の個性が分かる、重力変化みたいなことも出来る……きっと複合型の個性なのだろう。

 これまで培ってきた勘でなんとなく予想してきた輪郭の答え合わせ――。

 

 それどころではないとしても、ワクワクが止まらない。

 

「あははー、知ってたよ。めっちゃコッチ見てくるんだもん」

 

「え、えぇ!!? ご、ごめんなさい……」

 

「別にいいよ、じろじろ見られるのは慣れてるし……それに実みたいなやらしー視線じゃなかったしね」

 

 一拍置いて――五条は、話を続けた。

 

「さてと。説明といっても……百聞は一見に如かずって言うよね。うーむ……じゃあはい、ボクの手に触れてみて」

 

「ふ、触れ!!? 手に!!?」

 

「ほーら、はやく」

 

 急かされた緑谷は、バクバクとうるさい心臓を必死で押さえながら。

 五条のきめ細やかで、綺麗で……小さな。

 女の子の手に、自らの手を――。

 

「……!? 触れられない……!?」

 

「んー、触れられないってよりかはね――ボクに近づく度に遅くなってんの。これを使ってる内は何人たりともボクに触れられない。どれだけ速くどれだけ強くても、決してボクには辿り着かない……そう、オールマイトでさえもね」

 

「……ど、どういう原理で……」

 

「ボクの個性は――【無限】なんだ。偏在する無限を持ってきて、具現化する――ただそれだけの個性だよ」

 

「……【無限】……」

 

 偏在する無限? 具現化?

 言っている意味が、何一つ分からない。

 いや――待て。

 少なくとも今起きている現象については――。

 

「……! アキレスと亀のパラドックス……?」

 

「正解!! えらいぞ〜! 出久、やっぱり頭の回転はやいね。ボクは今、収束する無限級数をそっくりそのままここに持ってきてるんだ。その状態でちょっと力んでやると、無下限……負の数の具現化が出来て――そうだね、ブラックホールのパチモンみたいなのが作れるんだ。指向性持たせてやれば、瞬間移動も出来るよ」

 

「ブツブツブツブツ……凄い個性だ……。タイマンなら負けようがないんじゃ……いやでも無限級数って言うなら参照する値があるはずだからどこかに抜け道があって……それを探せば……? いやでもその値を常に変動させられるとしたら……。そもそも制御の感覚にもよるのか……? いや待てよ、収束が出来るなら発散も――ブツブツブツブツ……」

 

「ちょいちょいちょい! 一人の世界入んないで、れいじゅちゃん寂しくなっちゃう」

 

 緑谷の悪癖の最高峰――ブツブツモードには、流石の玲珠も面食らったようで。

 緑谷は軽めの優しげなデコピンによって、即座に正気の世界へと引き戻された。

 

 ……またやってしまった。

 

「あっ、ごめ……」

 

「こほん。まぁ君の言う通り、よーいドン、で戦ったらボクは最強だよ。オールマイトにだって負けない自信がある――けどね。コレ、制御に滅茶苦茶頭を使うからずっと出しっぱにしてると疲れちゃうんだ」

 

「……なるほど……だから五条さん、いきなり寝ちゃったんだ」

 

 個性の制御。

 例えばOFAの出力をこれから自分が制御出来るようになったとして。

 臨機応変に。

 必要な時に必要な制御を、迅速にミスなく行って――。

 ……いや無理だ。考えただけでも疲れてしまう。

 

「うむ、まぁ力を見せつけるためとはいえちょっと無理しちゃったからね。だから普段はオフってて、必要な時――戦う時とかに丸ごとスイッチオン。日常生活でいきなり後ろから奇襲とかされたら普通に死んじゃうってわけ。……まぁ、オールマイトのマッスルモードと一緒だよ」

 

 むしろそれが普通なのでは……と思う緑谷だった。

 暗殺まで自動的に防いでしまう個性など、あってたまるかという話だ。

 ……それよりも、まだ疑問が残っている。

 

「個性が見えるっていうのは……?」

 

「あぁうん、無限級数っていう細かい個性の制御を求められる都合上、ボクの目は特別製になってるんだ。【六眼】って呼んでるんだけど――まぁ、こっちも使うと滅茶苦茶疲れるから普段はオフなんだけどね」

 

「確かに……そんな複雑な個性、ゼロから分析するって方が無理があるよね……スイッチの感覚だって……僕なんてこんなに分かりやすい個性でも躓いてるんだし……。あ……そうだ、五条さん。OFAの件とかオールマイトの怪我の件は秘密なんだ……」

 

「……まぁ大体理由は想像つくかな。譲渡出来る個性なんて火種以外の何物でもないしね。……ま、その件含めて今度オールマイトに会わせてよ。秘密知っちゃった身としては協力したいしね」

 

「い、いいけど……いいの?」

 

「何が?」

 

「いや、だって……こんな、助けて貰ってばっかりで……」

 

「全然いいよぉ〜! 口止め料も弾むだろうしっ。トップヒーローのポケットマネーってどんくらいあるんだっけ〜あ〜楽しみっ!!」

 

(……オールマイトからカツアゲ!!? スケールがちがうや……さすが雄英……)

 

 にぱー、と満面の笑みでとんでもないことを宣う目の前の少女に、戦慄する緑谷であった。

 …………ただ。

 ふと、此方を心配する先程の顔を思い出して。

 それが――此方を元気づけるための冗談であることに気づいた。

 

 表面上の傲慢さや、自己肯定感の高さも彼女の紛れもない本音だろう。

 爆豪と喧嘩していた彼女も本当で、飯田に理不尽を仕掛けていた彼女も本当。

 

 しかし――その奥底にある慈愛。

 紛れもないヒーローの資質を、緑谷は感じた。

 

 

 ……どこか、温かい気持ちになった。

 

 

 

「……良かった」

 

 

 

「ん? 何が?」

 

「いや……凄い個性だと思ってさ。でもだからこそ、それを正しいことに使える五条さんで良かったな、って……。きっとその個性も喜んでるなって……そう思ったんだ……。あ、あはは!! な、何言ってるんだろ僕!? ご、ごめ――」

 

(うわうわうわうわうわいきなり何言ってんだよ僕は!! こんなの何か口説いてるみたいじゃんか!? 絶対引かれた、クッソこの口め……っ!!)

 

 その時の五条玲珠の顔を、きっと緑谷は生涯忘れることは無いだろう。

 打算の何一つない、とびっきりの笑顔。

 

「――ボクも、出久でよかったなって思ったよ」

 

「え……それって、どういう……」

 

「さ、そろそろ行こう。もう帰りの時間でしょ?」

 

「あ……うん!!」

 

 そうして、緑谷出久は図らずも。

 五条玲珠と、秘密を共有する初めての友達となった。

 

「遅かったな緑谷くん、指は治ったのかい? それに……五条くん」

 

「わ! 飯田くん……うん! リカバリーガールのおかげで……」

 

「あからさまに嫌そうな顔すんなよ天哉〜、朝のことなら謝るからホラ」

 

「……!! 分かってくれたのならいいんだ! しかし相澤先生にはやられたよ、俺はこれが最高峰――なんて思ってしまった! 教師が嘘で鼓舞するとは……」

 

 飯田のことも怖い人かと思っていたのだが、どうやら違うらしい。

 ただ真面目で、不器用なだけの男なのだ――と、緑谷は評価を改める。

 

(でもそれだと……自由奔放って感じの五条さんとは合わなさそうだな……)

 

 内心ヒヤヒヤとしながら、二人の会話を見守る。

 

「ん? いやアレは本気だったと思うけど?」

 

「何!? 君も言っていたじゃないか、そんなはずがない、と……」

 

「いやあれノリ。分かってたって言った方がマウント取れるじゃん。……実際、不出来な奴がいたらソッコー除籍だったと思うよ? 今回は最下位の出久含めて皆出来が良かったから撤回された……それだけのシンプルな話」

 

「なん、だと…………で、では何故相澤先生は除籍が嘘と……」

 

「出久はさ、最下位ながらに答えを出して可能性を示したんだよ。でも先生は立場上、出久一人を特別扱いするわけにはいかないでしょ? 誰が最下位でも除籍はなかった……って暗に示す必要があるってわけ」

 

「なるほど……君は賢いな! 勉強になる……」

 

「えへへ〜もっと褒めて」

 

(……五条さん、やっぱり色々凄いなあ……)

 

 飯田と共に思わず感心する。

 しかしそれはつまり……相澤が緑谷に何かの可能性を感じたからこうなった、ということで。

 つまり緑谷は、ただ運が良かったわけではなく――自分の力で今回の試練を乗り切ったのだ。

 それを自覚出来るのと出来ないのとでは、大きな差がある。

 ハッとして、緑谷が顔を上げると――五条がこちらを見て、ウィンクをしていた。

 

(……もしかして……だから、教えてくれたのかな。僕に自信を持たせるために……。優しいな)

 

 本当に、不思議な人だと思う。

 その強さ、在り方は爆豪とどこか似ているのに、自分には優しくしてくれた。

 弱きを助け強きを挫く――というには、少々荒っぽすぎる気もするけれど。

 

「あ、三人とも〜! 駅まで? 待って〜!」

 

「お茶子じゃーん! ボクは校門までだけど、まぁ駄弁ろ駄弁ろ〜」

 

(麗日さん!! 麗日さんも優しいんだよな……)

 

「君は∞女子」

 

「麗日お茶子です! えっと五条玲珠さんに、飯田天哉くんに、緑谷……デクくん! だよね!!」

 

「玲珠でいいよ、お茶子」

 

(……∞女子ってそれ、五条さんにも言えることだよな……偶然だけど、何か縁があるなぁ。……っていうか)

 

「デク!!?」

 

 爆豪にしか呼ばれない蔑称が思わぬところから飛んできて、思わず叫ぶ。

 

「え? だってテストの時爆豪って人が……」

 

 ……どうやら酷い誤解をされているらしかった。

 勿論、決して麗日が悪いわけではないのだけれど。

 

「あの……本名は出久で……。デクはかっちゃんがバカにして……」

 

「蔑称か」

 

「えーーそうなんだ!! ごめん!! でも――」

 

 ……他人から貰った言葉で、価値観が百八十度変わることがある。

 緑谷にとっては――これが、その瞬間だったと言っていい。

 

「デクって――頑張れ――って感じで、なんか好きだ私」

 

「デクです!!」

 

「緑谷くん!? 浅いぞ、蔑称なんだろ!?」

 

「コペルニクス的転回……!!」

 

「にゃははっ、お茶子やるねぇ〜」

 

 あれほど嫌だったデクというあだ名が、これほど嬉しく感じられたのは初めてだった。

 

 それに、そもそも。

 こんな風に友達と笑いながら対等に話すなど、果たして何年ぶりだろうか。

 

(出来ないことだらけだし、頑張らなきゃいけない……けれど、オールマイト……友達が出来たことくらいは、喜んでいいですよね――)

 

 

 

 

「ちょっと! 玲珠遅いんだけど……何よろしくやってんの。頭痛は平気なの?」

 

「あー、響香! ごめんごめん、もうぐっすり寝て元気だよ! 保健室でちょっと出久と盛り上がっちゃってさ……え、何その顔、どうしたの。……怒ってる?」

 

「……別に。はやく帰ろ」

 

「え、ちょっと、響香〜? …………はっ。もしや――生理?」

 

「クソかよ!!!!」

 

(お、オイラの耳おかしくなっちまったのか!? 今確かにご、五条がせせせ、生理って言ったような……!! クソぉぉおおお、録音しとけば良かった……っ!!)

 

 峰田は通りすがりの女子に蹴られた。

 



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5  戦闘訓練〜オールマイト友好度稼ぎ

大好評につき、毎日連載続けます(鋼の意思)
やっぱ(銀髪碧眼ハーフツインテール最強メスガキ巨乳美少女)好きなんすね^〜


 常に下学上達! 一意専心に励まねばならないRTA、はーじまーるよー!

 前回の続きから、戦闘訓練開始です。

 

 第一試合はご存知、緑谷くん&お茶子ちゃんvs爆豪くん&飯田くんの試合。

 初見ココ面白すぎて三度見しました。(隙自語)

 

 折角なので緑谷くんにエールを送っておきましょう。

 

 がんばれ♡ がんばれ♡ おーえんしてるよ♡ ふぁーいと♡

 

「……うん!」

 

 おお、どもるかと思いきや存外いい返事ジャマイカ……。

 覚悟キマってんねえ! 通りでねぇ!

 

 さて、原作では爆豪暴走の後に緑谷の読みが覚醒、爆豪暴走(ホモは二度刺す)から上向きデトロイトスマッシュ→彗星ホームラン、といった展開ですが――。

 

 本走では99%爆豪が勝ちます。

 緑谷が100%スマッシュを打つ機会もありません。

 

 何故って?

 

 解説致しましょう。

 この段階での爆豪は、本来はカスです。

 肥大化した自尊心と、緑谷の覚醒に対する焦燥で我を失っています。

 所が、その内の前者がとっくの昔にれずちゃんによって粉々に粉砕されてしまっているので……。

 元の才能マンでクレバーな、本来の爆豪勝己になっているんですね。

 

 なので飯田くんを置いて勝手に飛び出すこともなければ、建物をぶち壊すような後先考えない攻撃もしません。

 ただただひたすらに、核が近くにあることを考慮した細かい爆破と類まれな体術のみで緑谷くんを圧倒し続けます。

 

「凄ェなアイツ! 個性なしで入試二位と渡り合ってんぞ!!」

 

 緑谷くんは持ち前のストーカー知識と回転の早い頭脳でそれなりに立ち回りますが、爆豪くんを追い詰めるには至りません。

 緑谷くんがいくら隙を突いても、爆豪くんはそれを後から修正していくだけ。

 

「組み立てが早ェ……考えるタイプには見えねぇが意外と繊細だな」

 

「才能マンだ才能マン、ヤダヤダ……」

 

 そう。

 見た目こそ良い戦いに見えますが、結果としては――。

 

 爆豪くんの圧勝、という他に言えることはないでしょう。

 

 た、だ、し!!!

 追い詰められた緑谷くんは、遂に爆豪くんに対してOFAを使う決心をします。

 

 卵が割れないような感覚を反芻し、繰り出したその拳は――見事!!

 5%デトロイトスマッシュ、爆豪くんのみぞおちをぶち抜きます!!

 

「緑谷すっげぇ……!! 今のって、即興だよな!?」

 

「訓練中に進化するって……意外に実践で成長するタイプか! くぅ〜〜っ、こういうの見ると応援したくなるなぁ!!」

 

「ケロッ……凄いわ、緑谷ちゃん」

 

 ……とはいえ。

 5%は所詮5%なので……爆豪くんを倒すには至りません。

 

「……いい威力だが、俺の方が上だ……!! だがよォ……ッ!! もうテメェを……道端の石っコロなんて思わねぇぞ、デク!! 真正面からぶっ潰したらァ!!!」

 

「がは、ァっ……!! ダメ、か……ッ!! ごめん、麗日さん……っ!!」

 

 もう一方、お茶子ちゃんvs飯田くんに関しては、(語る余地も)ないです。

 

「俺はぁ……至極悪いぞぉお……っ」

 

(真面目や!!)

 

 飯田くんの迫真の演技に吹いてしまったお茶子ちゃんは、そのまま停滞した戦況の中でゆっくりゆっくりと追い詰められ……最後には捕まってしまいます。

 

「うあぁ……っ、デクくん頑張ってたのに……っ!! ごめん……何も出来んかった……!!」

 

「……!! ヴィランチーム……WIN!!」

 

 以下、講評です。

 

【+評価】

 お茶子ちゃんの厄介な能力を先んじて封じた飯田くん。

 

 自身に向かってくる緑谷を、周囲に細心の注意を払いながら迎撃し続けた爆豪くん。

 

【-評価】

 爆豪くんの打倒に執着してしまった緑谷くん。ただし、訓練中に個性の制御を会得したのは評価に値する。

 

 中盤の気の緩みが致命傷となったお茶子ちゃん。

 

 

 ……ちなみにこれ全部八百万ちゃんが言ってくれます。

 はえ〜すっごい分かりやすい……。

 ありがとナス!!

 

「え、えぇ……。でもこのくらい、五条さんも分かっていらっしゃったんでしょう?」

 

 発言するだけログ増えちゃうからね、ここは。

 確かにそれっぽいこと言って心象良さげにしたさはあるけど、まま、エアロ……。

 

「あ、五条さん。次俺らだよ」

 

 その声は…………普通ボーイ、尾白くんではないか!!

 では戦闘訓練イクゾー! デッデッデデデデ!

 

 ……。

 

 ……。

 

 カーンが入ってないやん!!!(発作)

 カーンが聞きたかったから注文したの!!

 なんでないの?(憤慨)

 

「……五条さん? 行くよ?」

 

 はーい。(素)

 あ、そうだ。

 尾白くん、君ちゃんとれずちゃんの手握っておけよ〜。

 握れ。(豹変)

 

「……え? えぇ!!?」

 

 何顔赤くしてんだテメェノンケかよぉ!?(驚愕)

 は〜〜つっかえ。 

 これは轟くんの氷結を防ぐためであって別に君のためなんかじゃないんだからね!!

 

「防ぐって……は? え?」

 

 さ、気を取り直して。

 屋内対人戦闘訓練、はい、よーいスタート。

 

「……ええと。あのさ、五条さんの個性って――」

 

 しー! 大きい声で喋らない!!

 全部障子くんに筒抜けなんだからね!!!

 尾白くんは黙ってれずちゃんと手繋ぎながら核を見張ってればいいの!!

 

「あ、そ、そう……? まぁ五条さんがそう言うなら……」

 

 尾白くんにパッションをぶつけた所で――来ました!!

 轟くんの一発目の氷結です。

 

 しっかり【アキレスと亀】を使っているのでダメージや氷結効果を受けることはありませんが、寒いもんは寒いので若干の身体デバフがあります。

 とはいえ微々たるものなので問題な……ハックション!!

 

「ご、五条さん大丈夫……?」

 

 大丈夫だって安心しろよ。

 ヘーキヘーキ、ヘーキだから。

 間違っても動くんじゃないぞ尾白くん。

 

 動いたら氷結してないのがバレて試合が長くなるのでマジでやめてください、お願いします何でもしますから!!(2敗)

 

 ……ヨシ!! 尾白くんの思考ルーチンがデレてくれたようです。

 此方の意図を察して微動だにしません。

 

 すると、轟くんはもう試合が終わったと思って無防備に歩きながら此方に来てくれます。

 強者の余裕を利用してやりましょう。

 

 危機感の欠如ォォ!(漏瑚並感)

 【身体強化】を使いつつ、左の使わない方を思いっきり蹴ります。

 

「……! なんで凍ってねえ……!! つか、重ッ……!!?」

 

 轟くんは流石のフィジカルをしているので一瞬踏ん張りますが、それでも流石はれずちゃん。

 そのまま壁まで吹き飛ばせます。

 

「……か、はっ」

 

 さて、使わない方を狙って蹴ったのにも勿論ワケがあります。

 

 おーい半分野郎!!(爆)

 今の炎使えば防御出来たよなぁ!!?

 格上相手に舐めプとかバッカじゃねえの!?(嘲笑)

 いくら反抗期だからってさぁ……。

 

「うるせェぞ五条……っ、テメェに俺の何がわかる……!!」

 

 アッハイ。

 れずちゃんに勝てないってことだけは分かります……。

 そんな訳の分からない執着捨てて、本気でかかってきて、どうぞ。

 

「乗るな轟! 焦らず立て直すぞ、まだ時間はある!!」

 

 ここまで煽れば、障子くんの冷静な判断に轟くんは従うことが出来ません。

 

「……黙ってろ!! クソ……ッ!! 右だけでコイツに勝てなきゃ……ッ、俺は親父の言う通りになっちまう……ッ!!」

 

 そうそう、そうだよねぇ。

 というわけで轟くんとしてはここ、逃げる選択は存在しないのですよね。

 さ、威力を調整した【蒼】で轟くんと障子くんを仲良し(強制)させて、丸ごと確保テープでぐるぐる巻きにしちゃいましょう。

 

「バカ、な……っ。今、何をされた……!?」

 

「…………!!」

 

 悪いな。レベルが違いすぎた……。

 

「……あの……。五条さん、俺なんもしてなくない?」

 

 いやいやいやいや。

 核兵器守ってくれたじゃんアゼルバイジャン。

 後ろに人がいるって分かってるからこそ、元気に暴れられるってもんよ!!

 

 ……さて、ここの戦闘訓練での評価はCからSまであり、評価が高いほど多くの努力値を貰うことが出来ます。

 大きなガバも小さなガバも今回は何一つなかったので、無事最短決着からS評価を貰うことが出来ました。

 

 最短というには手加減してたくない? と思われるかもしれませんが……。

 

 ・建物や核兵器にダメージを与えない。

 ・轟くんの事情に足を突っ込む。

 ・圧倒的な力を見せつけクラス全員の心象を確保する。

 

 この三つを達成するには、どうしてもこのくらいはかかってしまうんですよね。

 さ、それでは残りは倍速ですっ飛ばすとするとして。

 その間にれずちゃんのステータスを確認しておきましょう。

 

 

◇―◆―◇

名前:五条 玲珠

性別:女

年齢:15歳

誕生日:十二月七日

所属:雄英高校ヒーロー科1―A 10番

身長:150.1cm

才能値:100

頭脳努力値:30

身体努力値:24

性格補正:【ナルシスト】

Plus ultra:67/100

Plus chaos:9/100

 

個性:【無限】

 全てを見通す六眼と、偏在する無限を操ることが出来る。使い過ぎると酷い頭痛に悩まされる。

 

【六眼】     習熟度 12/100

 自分を含むあらゆる対象の個性とその使い方、可能性を視ることが出来る。色々と見えすぎるので負担が大きい。

 使用時【無限】の出力が著しく向上する。

 

【身体強化】   習熟度 18/100

 無限により生み出した引力と斥力で移動速度や打撃の威力などを強化する。常時発動出来る。

 

【アキレスと亀】 習熟度 20/100

 発動中、自分に触れようとした対象が無限に遅くなる。

 

【蒼】      習熟度 13/100

 無限の順転。発動した点を中心に、エネルギーを吸い込む。

 使い方次第では目にも止まらぬ速さで移動することが出来る。

 

【赫】      未習得

 無限の反転。発動した点を中心に、エネルギーを発散する。

 使い方次第では目にも止まらぬ速さで移動することが出来る。

習得条件:【蒼】の習熟度30

 

【茈】      未習得

 蒼と赫を衝突させることで生成される仮想の質量を押し出す。触れたものは消滅する。

習得条件:【蒼】と【赫】の習熟度50

◇―◆―◇

 

 努力値は勿論、個性の伸びも素晴らしいですね。

 この数値なら問題なくUSJでの奇襲を最短で終わらせることが出来るでしょう。

 Plus ultraの異常な伸びは、緑谷くんと関わったからでしょうかね?

 いやでもPlus chaosも若干伸びてるんですよね……え、なんで?

 

 …………あー、もしかしたらアレのせいかも。

 少し慎重になる必要がありますね。

 なんだかガバの予感がしてきましたが、まぁこれくらいなら許容範囲ではあります。

 

「私が――来た!! やぁ、五条少女。して、しておきたい話というのはなんだい?」

 

 ……お、等速に戻りましたね。

 どうやら放課後に緑谷くんを通じて、オールマイトと会わせてもらえたようです。

 

 このチャートでは緑谷くんが大きな怪我をすることもないので、うわまだ緑谷くん寝てるよ→タイムロス……なんて事もないです。

 

 さて。ここでオールマイトとする話なのですが、その前に一つ【六眼】の複雑な仕様について解説しておく必要があります。

 

 【六眼】はゲーム的には個性とその使い方が分かる、とされていますが、実際には個性因子に刻まれた記憶を視ています。

 そこから使用者本人の名前、年齢、性格、個性の名前、個性の使い方などをすっぱ抜いてるんですね。

 

 ……では、それをOFAに使ったらどうなるか?

 この時点ではまだ緑谷くんのOFAは活性化していないため、歴代継承者のそれを覗き見ることは出来ません。

 

 ――ただし。

 

 個性を与えた張本人の……それを除いて。

 

「……!! AFOの記憶を視たっていうのかい!!?」

 

 ただし、ラスボスよろしく「貴様! 見ているな!」という感じでノイズに邪魔されます。

 ただ、これはAFOという個性の自動防御機能なので、本人に感知される危険性はありません。

 

 そんなこんなで知ることが出来るのは、AFOという巨悪がかつて存在したという事実。

 そして個性を蓄積し他者に与えるという能力の詳細。

 最後に、破れた腸を撒き散らしながら迫り来るオールマイトの拳の記憶のみです。

 

「そうか……つまり五条少女――君は、グラントリノと同じだけの情報を既に持っているんだね。……伝えてくれて――私たちを信じてくれてありがとう。賢い君のことだから、伝えることで発生する疑念などのリスクも踏まえての事なのだろう」

 

 いえいえー!! 私はただ緑谷くんの力になりたいだけですよー!!

 知らない人とは出来ない話とか訓練とか、いくらでも付き合いますよ!!

 

 ……と、伝えておきましょう。

 

「……緑谷少年は、良い友人を持ったな」

 

 いやいやオールマイトォ!

 君とももう友達だぜ!!! 先生だけど!!!

 何せこちとら未来のNo.1HEROなので。(傲岸不遜)

 

「え?」

 

 オールマイトは実の所、抱える秘密や平和の象徴といった立場上対等に振る舞える友人が少ないです。

 なので、このような申し出をすると態度にこそ出しませんがかなり喜ばれます。

 

 ただし。

 その場合、実力をオールマイトに認められている必要があります。

 オールマイトに守るべき弱者として見られていると、この申し出は成立しません。

 

 だから、力を見せつける必要があったんですね。(メガトンムゲン)

 

「……本当にありがとう、五条少女。勝手な話だが、君と緑谷少年が共に平和の象徴として並び立つ姿を……幻視してしまったよ」

 

 えぇ……?

 おま、カプ厨じゃん……。

 

 それでは話も済んだのでオールマイトとはさよならバイバイして。

 緑谷くんは何やら爆豪くんと二人きりで話しているようなので、耳郎ちゃんを連れてとっとと帰りま

 

 今回はここまで。

 ご視聴ありがとうございました。

 



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5裏 デクvsかっちゃん

「オラァ!! 得意の読みはどうしたデクッ!!」

 

「ぐ……っ!!」

 

(かっちゃん……凄い……ッ、前と全然違う……ッ!!)

 

 癖だったはずの右の大振りが、一度反撃して以降全くなくなった。

 爆破を交えた変則的な動きは、もうまるで読めない。

 いや――時間をかければ、あるいは可能かもしれないが。

 

 期待はしない方が良いだろう。

 少なくとも爆豪は、緑谷に考える隙を二度と与えないつもりだ。

 

(警戒してる……ッ!! 僕を……僕の力を認めた上で、冷静に……っ!! こんなかっちゃん、僕は知らないぞ……っ!?)

 

 そう……爆豪は恐らく、変わったのだ。

 緑谷の力の覚醒によって――ではない。

 

 ……五条玲珠。

 それ以外に考えられない。

 

 緑谷の知る限り、全力を尽くした爆豪に勝ち星をあげたのは五条が最初だった。

 そのたった一回の敗北が……爆豪を大きく変えたのだ。

 

「ははっ……!!」

 

 思わず笑ってしまう。

 あんなに強かったのに――あんなに、凄かったのに。

 まだ先へ行くのか。前へ前へ、走り続けるというのか。

 

「何笑ってんだクソデク!! 余裕かァ!? すっげぇなオイ!!」

 

「違うよ……ッ、余裕なんか微塵もない!!」

 

 刹那の打撃の応酬。しかし、その間に行われた読み合いは――少なくとも、五回。

 お互いに大きな負傷をする事なく、戦況は停滞する。

 だが爆豪の爆破は、緑谷の攻撃よりも遥かに威力が高い。

 このままだと――ジリ貧だ。

 

「そうだよ。君だって強くなるんだ……走り続けてるんだ。僕なんかが立ち止まってる暇なんか――何処にもないんだッ!!」

 

「あァ……!?」

 

(ごめんなさい、オールマイト。僕は今、あなたの事を考えてない。誰かを助けるなんて、誰かのために、なんて。……微塵も、頭にない)

 

 如何ともしがたく、高揚する。

 戦いを楽しむ……だなんて、そんな事今まで一度もなかったというのに。

 

 憧れの人の覚醒。

 

 それを目の当たりにした緑谷の思考が――湧き上がる純粋な闘志によって澄んでいく。

 『ヒーローになる』以外で――人を助ける以外で、初めて見せる激情のうねり。

 

(一歩ずつ、前に、前に――進まなくちゃいけないんだ……。いつまでも出来ないじゃ、済まされないんだッ!!)

 

 そうだ。何故なら――。

 

「君に……勝ちたいんだ……っ!! かっちゃん!!」

 

「…………ビビりながらよぉ、そういうとこが――ムカつくなァ!!!」

 

 表面上は、憤っているように見える爆豪だが――。

 あるいは気持ちとしては本当にそうなのかもしれないが、一切気を抜いていない。

 むしろ……警戒を強めたようにも見える。

 

 このままでは……無個性のままの緑谷では……決して勝つことは出来ない。

 

 だから。

 そうだ。あの校訓を思い出せ。

 

(更に向こうへ、Plus ultra――)

 

 勇気と闘志を胸に、ただひたすらに前へ進め。

 

(行くぞかっちゃん……ッ、卵が割れないような感覚卵が割れないような感覚、卵が割れないような感覚――っ!!)

 

「……ッ!!? 上等だァ!! 使って来やがれ――その隠し球の個性をよォッ!!」

 

 ――OFA5% DETROIT SMASH。

 一度も成功したことの無いそれを、躊躇なく放つことが出来たのは、何故だろうか。

 

 自分で良かった、と言ってくれたから。

 

 友達が、言ってくれたから。

 この身に宿る呪いの意味を、変えてくれたから。

 

 憧れの人が、変わったのを見たから。

 自分も――変わりたいと、強く思ったから。

 だから。

 

 昨日までの自分とは……もう、サヨナラだ。

 

「……が、はっ!? てめ、ェ……ッ!!?」

 

「いつまでも――雑魚で出来損ないのデクじゃないぞ……!! 僕は――ッ"頑張れ!!”って感じのデクだァッ!!!」

 

(なんだよ、緑谷少年――凄いじゃないか……カッコイイじゃないか……ッ!!)

 

 行ける――渡り合える。

 そう思った。思ってしまった。

 

 その気の緩みが――命取りだった。

 

「……そうかよ」

 

 すとん、と。

 気が抜けたように、爆豪が呟く。

 

 そして――次の瞬間。

 爆豪の全力最速の爆破が、緑谷の顔面を捉えた。

 

「あ、れ……っ?」

 

 弾けるような熱さを受けて、ぐらり、と刹那の酩酊。

 気がつけば、緑谷は地面に伏していた。

 

(しまった……!! ヤバいヤバいヤバいッ!! た、立ち上がれ……っ!! クソ、バカか僕は……っ!! たった一回個性が使えた程度でいい気になるなんて――ッ!!)

 

「……いい威力だが、俺の方が上だ……!! だがよォ……ッ!! もうテメェを……道端の石っコロなんて思わねぇぞ、デク!! 真正面からぶっ潰したらァ!!!」

 

 そこからは――蹂躙だった。

 一度大崩れしてしまった緑谷は、満足に運動をすることが出来ない。

 そんな状態では――いくら動きを読んだところで、カウンターをする事など出来るはずもなく。

 

「がは、ァっ……!! ダメ、か……ッ!! ごめん、麗日さん……っ!!」

 

「……!! ヴィランチーム……WIN!!」

 

 ――悔しい。本当に……悔しい。

 

 八百万は、緑谷が爆豪に固執しすぎていたと言った。

 だけど、あの場面で試合に勝つために勝負を投げ出すことなど、出来なかった。

 そこから逃げ出したら、自分に何も残らなくなる気がしたからだ。

 

 そうまでして自分を追い込んだというのに。

 チームメイトの麗日まで巻き込んだというのに。

 それなのに――。

 

 心のどこかで、よくやったよと思っている自分がいる。

 爆豪にここまでやるなんて充分頑張ったじゃないか、と思っている自分がいる。

 

「緑谷お前すっげぇな!! 本番の土壇場で覚醒とか主人公かよ!!」

 

「漢だったぜ緑谷!! これからも皆で頑張ろうな!!」

 

「よく避けたよ〜っ!!」

 

「出久、よく頑張ったね。出久はきっと、もっともっと――ずっとずっと、強くなれるよ」

 

 クラスメイトの優しい声に、甘えそうになっている弱い自分がいる。

 

(甘えるなバカ……ッ!! 頑張る以外に、今の僕が出来ることなんて何もないんだ……ッ!!)

 

 だから――伝えよう。

 己の誓いを、他でもない爆豪本人に。

 

 こう言ってしまうと気持ち悪く思われるかもしれないが……。

 その思いが、あの殴り合いを通して爆豪にも届いたのかもしれなかった。

 

 

 放課後、五条をオールマイトの元に連れていった後――珍しくも、爆豪が冷静に話しかけてきたのだ。

 

「デク。ツラ貸せ」

 

「――うん」

 

 思えば、こんな風に話すのはいつ以来だろう。

 いつも爆豪は怒鳴ってばかりで、話し合いなんてとてもじゃないが成り立たない。

 彼の静かな声を聞くのは……本当に、いつ以来だろう。

 

 暫く、廊下をお互い無言で歩いて――。

 先に口を開いたのは、爆豪の方だった。

 

「……俺ァ、あの白髪女に勝てねえ」

 

「……五条さんのこと? ……凄いもんね、五条さんは……」

 

 白髪女、という言い方はどうかと思うが――爆豪のネーミングセンスについては最早何も言うまい。

 

「あの半分野郎にも……勝てねぇんじゃねえか、って……思っちまった」

 

「……轟くん、だよね」

 

 確かに彼も凄かった。

 【半冷半燃】――負けこそしたものの、あれは相手が悪かっただけだ。

 他のチームと当たっていたならば、あの先制の氷結によって試合が終わっていたに違いない。

 

「それでも、だ。俺ァ一位を取らなきゃいけねェ……そうじゃねぇと。前につっ走ってねぇと、俺ァ俺を嫌いになりそうだ……!!」

 

「……うん」

 

 その気持ちは、よく分かる。

 だって……自分だって同じだ。

 勝ちたかった。どれだけ差があっても。

 四歳の頃から、ずっとそうだ。

 

 どれだけ現実を突きつけられても――夢を諦めるなんて、有り得なかった。

 ……そうか。

 

 同じだったのだ。

 同じ人に憧れて、同じ場所に来て。

 緑谷と爆豪は――同じように、努力を重ねている。

 

 積み上がっている前提が、違うだけなのだ。

 

「そしたらよ……テメェの顔が浮かんできやがった。なぁ。テメェもそうだったよな――おい、デク。何の根拠もねェのにヒーロー目指して、こんなとこまで来て――俺すら知らねぇ個性いきなり出してよォ……ッ!! あァ、イライラして仕方がねェ」

 

「それは――」

 

 言えない。言いたいけれど、誠実でありたいけれど――。

 これはオールマイトとの……約束だから。

 平和の象徴が象徴のままであるために、必要な秘密だから。

 

「……かっちゃん。僕は……個性の制御が出来なかった。君は隠し球って言ってくれたけど……ただ、使いたくても使えないだけなんだ」

 

「……」

 

「皆当たり前にできることが僕には出来なくて。個性のテストでも最下位で……だから……何倍も頑張らなくちゃいけない。勝ち取らなくちゃいけない」

 

 そう。何倍も――何倍も。

 

「あの時――制御出来るか分からなくても、自分を信じて個性を使えたのは……相手が、君だったからなんだ。君だから……僕は、立ち止まらずにいられたんだ」

 

「あ……?」

 

「次は……次は勝つよ、かっちゃん。僕だってこのままじゃ終われない」

 

「……ケッ。ワケわかんねぇ事ばっか言いやがって……!! テメェが一歩進んでる間に……俺ァ百歩進んでンぞ。テメェが俺に勝つなんざ生涯有り得ねェ」

 

「――それは、困るなぁ」

 

「ンで笑ってんだよ……気持ち悪ィ。……言いてぇことは全部言った、帰る――じゃあな、デク」

 

「……うん。またね、かっちゃん」

 

 ……じゃあな。

 ……またね。

 

「…………」

 

 本当に……いつぶりだろう。

 



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5裏―2 最強対決 五条玲珠vs轟焦凍

生徒皆に喋って欲しいからガンガン長くなっちゃうんじゃ〜〜
こんなんじゃ幾ら(字数)あっても足んないよ〜


「……凄まじいな」

 

 ありとあらゆるヴィランを退治し、強さという観点においては頂点に達しているといっても過言では無いオールマイトでも――。

 彼女の個性とその練度には、絶句する他なかった。

 

 

 

 はじめは、ただただ遊んでいるようにしか見えなかったのだが。

 

「ねね、猿夫。おててつなご?」

 

「……え? えぇ!!?」

 

 思わず顔を赤くして仰け反る尾白の手を、優しく――柔らかく、五条の両手が包み込んだ。

 ふわり、と笑う彼女の顔。桜のように色付いた柔らかそうな唇に、つい目が行って――尾白は、思い切り顔を背けた。

 女子特有の甘くて良い匂いが鼻腔をくすぐる。

 そんな状態で……邪な気持ちを隠せるはずもなく。

 

(う、うわうわうわうわうわうわうわ!!? や、やわらか……っ。つか近いッ!!? 匂いやばい!!?)

 

「尾白あいつ許せねぇ!!! オイラも、オイラも五条とゲボォッ!!?」

 

「うるさいわ峰田ちゃん」

 

「……っ、玲珠……」

 

「じ、耳郎? どした? なんかすっげー顔してんぞ。怖いって」

 

「うるさい上鳴、別に何もない」

 

「えぇ……」

 

 構図としては、いたいけな思春期の少年を弄ぶ魔性の女――といったところだったが。

 少なくとも今回はそんな気ではなかったらしく……。

 五条は目をじとーっとさせた様子で、呆れたように口を開いた。

 

「あ、これ、マジでそういうんじゃないから。攻撃防ぐためだから。思春期発動してないで真面目にやって」

 

 うってかわって、凍てつくような――緊張を煽る声色に、尾白はぎょっとした。

 あまりの温度差に風邪をひいてしまいそうだ。

 

 いや、それよりも。

 

「防ぐって……は? え?」

 

 手を繋ぐことがなんだというのか。

 尾白の頭の中はもう急転直下、真っ白になってしまった。

 もう戦いの時はすぐそこまで迫っているというのに。

 

 さて。

 勘違いされるような言動をしておいてどの口が――と、傍からこれを聞いたものは思うだろうが。

 残念無念、このカメラは音声を拾わないため、A組の面々に五条の声は届かない。

 

 唯一、通信機を繋いでいるオールマイトだけがこれを聞いているのだ。

 

(狙って混乱させているのか……? 味方を? 読めない子だな……しかし意味の無いことをするような器でもあるまい、五条少女)

 

 個性把握テストを裏から見ていたオールマイトは、五条玲珠という生徒の強さを充分に理解している。

 

 否。しているつもりだった。

 

 

 試合が始まり、息をのむ。

 全員が、緊張を強める――。

 ……のとは裏腹に、五条は冷ややかな雰囲気を崩して朗らかに笑った。

 

「まーまー焦んないで。すぐ分かるって……」

 

「あ、そ、そう……? まぁ五条さんがそう言うなら……」

 

 結果は――壮絶なものだった。

 

「……! なんで凍ってねえ……!! つか、重ッ……!!?」

 

「はァ!!? 女の子に重いとか言ってんじゃねえよ殺すぞ!! つか反抗期だからって格上に舐めプしてんじゃねーよ、脳みそ詰まってんのか?」

 

「うるせェぞ五条……っ、テメェに俺の何がわかる……!!」

 

「んーー、あっ。ボクより弱いって事くらいかな?」

 

「――――っ!!!」

 

「乗るな轟! 焦らず立て直すぞ、まだ時間はある!!」

 

「……黙ってろ!! クソ……ッ!! 右だけでコイツに勝てなきゃ……ッ、俺は親父の言う通りになっちまう……ッ!!」

 

(精神攻撃……!! 五条少女、見た目によらず中々エグい事をする……っ!! 轟少年の事情は知らないが、あの様子では……)

 

「とりま挫折しな、井の中の蛙クン。――無限、収束――順転【蒼】――あはっ! あはははははッ!!!! きゃっははははははははッ!!!!!」

 

 気づけば、二人は仲良く戦闘不能に陥っていた。

 

「バカ、な……っ。今、何をされた……!?」

 

「…………!!」

 

 正体不明の防御と、正体不明の攻撃。

 精神攻撃による優位の確保、二人を同時に確保する手際の良さ。

 圧倒的な力を持っているにも関わらず、常に有利な状況を手放さないその真面目な姿勢――。

 

 推薦入学者、轟焦凍。あのNo.2ヒーローエンデヴァーの息子を、個性の詳細を晒すことなく。

 指一本触れさせることもなく制し。

 

 五条玲珠はこの完全試合をもって、『自分こそが最強である』と教師を含めたクラスの全員に示したのだ。

 

「さてと、焦凍。悪いことは言わないからさぁ、これに懲りたら変な執着やめて全力出しなー? ……遺伝にしろ何にしろ――それは、君の個性だろ? ヒーローになったら、左を使わなきゃ助けられないって時が必ず来る。その時君は……どうするの?」

 

「……っ、お前、どこまで知って――」

 

「視えちゃったからしゃーなしよ。ま、これは課題ね。次戦る時までに答え出しときな〜」

 

「…………!! 好き勝手言いやがる……っ!!」

 

「……あの……。五条さん、俺なんもしてなくない?」

 

「んにゃ? いやいやぁ、核兵器守るって話なんだから後衛は要るでしょ〜。猿夫はしっかり役目果たしてくれてたよっ! えらいえらいっ」

 

(……もしかして俺今、あやされてる……? これなんか嬉しいの、普通に男としてやばくないか、俺……)

 

 間違いなくヤバい。ヤバいが、仕方ない。

 なぜなら相手が五条だからである。

 

「目蔵も索敵とか自分のやれることめいっぱい頑張ってたね!!」

 

「う、うむ……結果としては負けたわけだが」

 

「そりゃしゃーなしよ、ボク最強だもん。身の程を知れ」

 

「五条……俺はお前が分からん……」

 

 分からないのも、仕方ない。

 なぜなら相手が五条だからである。

 

 

 と。ここまでが第二試合の顛末である。

 ……そして、冒頭の絶句に至るわけだ。

 

「……凄まじいな」

 

「……五条、あいつすっげえな……勝てるやついんのか? 無敵だろアレ」

 

「まるで僕のようにスマートだn「すっごーい!! やるなー五条! やるなーー!!」」

 

「ふふん、そりゃそうでしょ。なんたって玲珠なんだから」

 

「まるで自分の事のように喜ぶなー、耳郎お前……」

 

「中学からの付き合いなんだっけ? なんか意外だよね、二人が仲良いの」

 

「まぁ、うん……玲珠ってあんなだけど、結構ウチには優しくしてくれて……」

 

 得意げに鼻を鳴らす耳郎とそれに突っ込む上鳴。

 話を広げる芦戸に、照れくさそうに返す耳郎――。

 

 一連のやり取りを聞いた蛙水が、ピンと閃く。

 

「ケロ……私思ったことなんでも言っちゃうの。もしかして耳郎ちゃん、五条ちゃんのことが好k「違うから!!! 中学からの腐れ縁!!! それだけだから!!!」」

 

「フッ……禁断の恋、か……」

 

「ケロ……そう……茨の道ね」

 

 顔を真っ赤にして声を張り上げる耳郎。

 最早それ以上詮索する意味もなし。

 意味深に呟く常闇を無視しつつ、蛙水は深く納得して口を閉じた。

 

「分かる……分かるぜ……女同士ってのもいいよな……ぐへへへ、なぁ、オイラも間に混ぜてくれよ……」

 

「クソかよ!」

 

「気持ち悪いわ峰田ちゃん」

 

 そろそろ峰田を殴るのも慣れてきた女子陣であった。

 

 そんな微笑ましい(?)やり取りすらも視界に入らないほど、オールマイトの興味は五条玲珠だけに向いていた。

 個性の内容については、おおよその予想がつく。

 大方引力だか斥力だかを緻密に操るといったものだろう。

 個性名が【無限】というのが突拍子がなく、些か気になるが――。

 しかしそれにしても複雑な操作が必要であろう強個性を――あれほど練度の高い状態で扱えるとは。

 

「ボクの勝ち〜、ボクの勝ち〜っ♪」

 

 他のもの達を連れて、妙な歌を歌いながらこちらへと瞬間移動してきた玲珠。

 講評は、勿論――。

 

「んん……っ、五条少女に関しては言うことなし、だねっ!!」

 

「ええ……非の打ち所がありませんわ。流石は五条さんですわね……」

 

「えへへ、百って沢山褒めてくれるから好き〜」

 

(……五条さん、かわいいですわ……)

 

「玲珠ってたまにめっちゃ精神年齢下がるよね……なんで?」

 

「バブみに逆らったらダメって古事記にも書いてある」

 

「……ウチは?」

 

「え? 響香ってそういう感じではなくない?」

 

「……そう、だけどさぁ〜……っ」

 

「?????」

 

「ケロ……不憫だわ」

 

「さぁさぁ、轟少年や障子少年の振り返りもパパっとやっちゃおう!! そしたら次の試合を始めるぞ!!」

 

「「「おおーーーー!!!」」」

 

(……俺の振り返りは? ……まぁ、無くて当然か……五条はああ言ってくれたけど、空気だったもんなぁ俺……)

 

 

 

 そして授業を終えたその後。

 保健室にてオールマイトは緑谷出久に、自分の秘密が五条玲珠にバレたと聞いたのだった。

 

「ブフォオア!!? 何故!!? 何故だ緑谷少年!!!?」

 

「吐血!? 落ち着いてくださいオールマイトォオ!!?」

 



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5裏―3 いずれ来るその日の前に

 五条玲珠が、個性によって自分の――オールマイトの抱える秘密を見抜いた。

 ……それはもう、心臓が飛び出るほどの衝撃だった。

 

 どうしたものか。

 どのように接すればいいものか。

 他でもない自分の話だ。

 

 いくら強いとはいえ、彼女の意志を聞くことなくこちらの話に巻き込むなど、教師としてあってはならない。

 いや、待て。そもそも彼女が味方である保証など、何処にも――。

 

 ……。

 

 ……。

 

 そんな事を考えている内に、遂に放課後になってしまった。

 

「私が――来た!! やぁ、五条少女。して、しておきたい話というのはなんだい?」

 

 実際には五条の方から赴いた形だが、五条はそれに突っ込みを入れることなく。

 もっと言えば、トゥルーフォームのままでいるオールマイトに一切の驚きを見せることなく――。

 彼の座る方とは反対のソファへと向かった。

 

「や、俊典先生。……えっと、話の前にさ。出久からはどの程度聞いてる?」

 

「HAHAHA!! その呼び方をされるのは慣れないな!! ……うん、そうだね……君の個性についてはおおよそ聞いた。しかしだね、一つ疑問があるんだ。そうだ、君のお話の前に聞いてもいいかな?」

 

「ん。いーよ」

 

「君は何故、OFAの名を知ることが出来たのかな。個性を視ることができるといっても、そもそも個性の名前は人間によって後天的につけられたものだろう? 実際、個性の実態を間違えられて後から個性届をし直す……なんてケースも多々あるわけだ。それが分かるということは――」

 

 生徒にこのような疑念を抱いてよいものか、と。

 言い淀んだ箇所を、五条は代わりに続けた。

 

「ボクの個性とは関係なく、OFAについて元から知っていたに違いない……と?」

 

「……すまない」

 

「いーよいーよ! しんみりしないで。疑うのは当然だし……それに、実に正しいぜ。むしろその反応を望んでやった事だしね」

 

「ふむ……?」

 

「ボクの【六眼】は難儀でね。名前が分かる、個性が分かる、個性の使い方がわかる……それはただの副次効果に過ぎないんだ。この目を通して実際に視ているのは、個性因子――ひいては因子の内包する記憶」

 

「記憶、だって……?」

 

「ん。それを通じてボクが見たのは――」

 

 そこからの話は、正に想像を絶するものだった。

 オールマイト自身、そしてお師匠様であるグラントリノ。

 他には友人の塚内などしか知らぬはずの情報が、ぽんぽんと彼女の口から出てきたのだ。

 

「そうか……つまり五条少女――君は、お師匠様……グラントリノと同じだけの情報を既に持っているんだね」

 

 AFO。

 かつて存在したという事実そのものがこのヒーロー社会を揺るがしかねない、史上最悪の魔王。

 その記憶を視た、と話す彼女は終始笑顔を崩さなかったが――。

 

 その顔に、どこか疲労の色があるのをオールマイトは見逃さなかった。

 

(……無理もない。いくら強いとはいえ、年頃の少女があのような者の存在をいきなり知らされたのだから……)

 

 しかもそれは国家機密の情報ときたものだ。

 世界そのものを信じられなくなってもおかしくはない。

 そして、その情報を知ったことを国に知られたら消される――などというように、恐慌に陥る可能性だってある。

 そこからのヴィラン化――実にありうる、というよりもそうなって然るべき話だ。

 

 それでも、彼女は――。

 

(……そんな子を、私ははなから疑ってかかったのか……Holy shit! なんたる愚行……!!)

 

 立場上仕方なかった?

 五条もそれを見越していたのだから問題はない?

 違う。

 確かに今、自分は一度――少女の信頼を裏切ったのだ。

 

 考えが至った数秒後。

 オールマイトは思わず、頭を下げていた。

 

「ちょ……どうしたの俊典先生」

 

「……疑ってすまなかった。伝えてくれて――私たちを信じてくれてありがとう。賢い君のことだから、伝えることで発生する疑念などのリスクも踏まえての事なのだろう」

 

 ふざけるなとなじられても、嘘つきだと蔑まれても。

 汚い大人だと罵られても……仕方のないことだ。

 だというのに、この少女はこうして真摯に向き合ってくれている。

 

 これでは、どちらが大人かまるで分からないではないか。

 

「……ボクは、出久の力になりたいだけだよ。彼はきっと……誰よりも強いから。強く在れてしまうから……」

 

「……!」

 

 何かを憂う彼女の、どこか寂しげな瞳の中に――あの日の彼を見たような気がした。

 サー・ナイトアイ。

 オールマイトが平和のための犠牲になることを、ただ一人良しとしなかった男。

 

「……緑谷少年は、良い友人を持ったな」

 

「……君もだよ、俊典先生。ボクは今年中にはヒーローになる。君がまともに立っていられなくなる、いずれ来るその日の前に……必ず間に合わせる。そして、君を超える。そうしたら……君には引退してもらって、ゆっくり休んでもらう」

 

「え?」

 

「夢物語なんて言わないでよ? こっちは本気で目指してるんだからさ。俊典先生、君の真実を知った五年前から――ボクはずっと、それだけを夢見てる。何よりも――ボク自身が、平和の中で好きな事をやって生きていたいから」

 

「…………五条少女。君は――」

 

 五年前、だって?

 そうか。

 まさか、テレビ等を通してもその目は使えるというのか。

 ……返す言葉が見つからない。

 

 ずっと一人で、どうしようもないハリボテの平和と向き合って――それを支えるヒーローになるために。

 この少女は走り続けてきたのだ。

 想像など、最早追いつかない領域。

 

 一言で表すとするならば……それは地獄だ。

 それが――彼女のオリジンだったのだ。

 

 虚構に塗れた世界の中で、幼き日の少女がどうしてこうも真っ直ぐ、強く育つ事が出来たのだろう。

 ……真っ直ぐというには少々性格に難があるような気もしないでもないが――。

 

 ……それはさておき。

 自分を等身大の人間として見てくれる者など、いつぶりだろうか。

 因子の記憶さえも視るという彼女の前では、No.1ヒーローの自分でさえも、ただの人なのだろうか。

 

 ……本当に、それでいいのだろうか。

 窪んだ瞳から溢れ出しそうになる涙を、なんとか抑える。

 泣きたいのはあちらだろう。

 生徒より先に教師が弱みを見せるなど、あってはならない。

 いやしかし、この精一杯の強がりもお見通しなのだとしたら、最早何も敵うまい。

 

「……本当にありがとう、五条少女。勝手な話だが、君と緑谷少年が共に平和の象徴として並び立つ姿を……幻視してしまったよ」

 

「ふふっ――何それ、歳じゃん」

 

「HAHAHA!! 辛辣ッ!! ゴボォッ!」

 

「ちょ、俊典先生吐血やば!!? リアクションのために体張っちゃダメだって、コミックじゃないんだから!!」

 

「ゲホゲホッ……気にするな、いつもの事さ。……あ、そうだ。AFOのことはいずれ時期を見て私から少年に話す。黙っておいてくれ、などとは口が裂けても言えない立場だが――」

 

「ん、その辺は全部君に任せるよ。めんどくさいし。……ボクはあくまでサポートするだけ。特訓とか特訓とか特訓とかね」

 

「……何から何まですまないね。助かるよ」

 

「そこはありがとうでしょー。ほらほら、スーツに着いちゃった血拭きな〜?」

 

「……そうだね。ありがとう」

 

 

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

「玲珠」

 

 帰り際、耳郎は校門から出てきた五条の元へと猪突猛進した。

 【アキレスと亀】など発動しているはずもないので、勢いのまま五条の豊満な胸に飛び込む形になった。

 

「ちょ、どしたの響香……んっ……くすぐったいよ」

 

「好き」

 

「……ん?」

 

「好き」

 

「あ、うん、ええと、その……ボクも好きだよ?」

 

 世にも珍しい、呆気に取られたような五条の表情。

 これを見れただけでも僥倖だ、と耳郎は思う。

 

「じゃあなんでウチと一緒にご飯食べてくれないの……」

 

 こんな執着は良くない。

 将来ヒーローを志すものとして、自らを削り他者を救うものとして、あってはならない話だ。

 

 好きならば尚更、自由を愛する五条を尊重するべきだ。

 まだ学校は始まったばかりなのだから、元からあった交友よりも、新しい交友関係を結ぶことに尽力すべきだ。

 

 ……だとしても。

 分かっていても。

 止められない。

 どうしてなのかは、耳郎本人にも分からなかった。

 

 もう、拒絶されるなら、それはそれでいい。

 そしたらもう、スパッと諦めてやる。

 だって、ありったけを思いのままにぶつけるのがロックなのだから。

 

 ……その結論に至るまでに、随分時間を使ってしまった。

 もうこれ以上は……耐えられない。

 

「……なるほど? 分かった。じゃあ明日一緒に食べよっか」

 

「……絶対分かってないじゃん……」

 

 ズレた回答を持ち出す五条に――もしや、わざとやっているのではと疑念を抱く。

 

(いや……でもこの顔は……ホントに分かってない顔だ……嘘でしょ……マジで? あんなんやっといて鈍感なの……?? テロじゃん……)

 

 五条は、嘘をついたり人を弄んだりする時は必ず笑う。

 天使のような、とびっきりの笑顔を見せる。

 だが――今はただ、こちらを心配するような、困惑した表情だ。

 

 ああ。

 これよりももっと直接的な言い方をしなければ、もっと露骨にアタックしなければ伝わらないのか――と。

 絶望しながらも、そこが五条らしいと安心してしまう耳郎であった。

 

 




走者「はやくヒーローにならなきゃ(使命感)」
れずちゃん「はやくヒーローにならなきゃ(使命感)」


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6  委員長決定〜USJ襲撃発生

全体日間一位ありがとナス!
↓記念絵↓

【挿絵表示】



 カモンベイベーUSJ! なRTA、はーじまーるよー!

 前回の続きから――とはいえ、ここからは暫く倍速で流していきます。

 

 まずは前回上げたオールマイトの友好度からチェックしていきましょう。

 

 

・オールマイト(八木俊典)

 友好度:41.8%

 親愛度:2.2%

 依存度:0.0%

 関係性:友人

 

 

 友好度が爆上がりしている所は置いておいて、何よりも見なければならないのは関係性の部分です。

 ここが一生徒や守るべき者など、庇護対象になっている場合はリセットです。(1敗)

 

 今回は『友人』……素晴らしい!!

 対等な関係を結べていますね。

 『戦友』まで行くと全幅の信頼を得られますが、そんなの無理無理無理!! 

 まだほぼ初対面だしね。

 

 ついでに他の皆の友好度も見ていきましょうか。

 何かとんでもない見落としがある可能性も無いとは言いきれないので……。(チキン)

 

 

・緑谷出久

 友好度:28.3%

 親愛度:32.1%

 依存度:0.0%

 関係性:秘密の共有者、憧れの人

 

 

・麗日お茶子

 友好度:17.1%

 親愛度:0.0%

 依存度:0.0%

 関係性:ともだち!

 

 

・飯田天哉

 友好度:10.2%

 親愛度:0.0%

 依存度:0.0%

 関係性:共に高め合うクラスメイト

 

 

・爆豪勝己

 友好度:27.8%

 親愛度:0.0%

 依存度:0.0%

 関係性:超えなければならない壁

 

 

・轟焦凍

 友好度:-4.7%

 親愛度:-5.0%

 依存度:0.0%

 関係性:超えなければならない壁

 

 

 ふむふむ。良さげですね。

 案外飯田くんの伸びも悪くありません。

 え、耳郎ちゃん? 見る必要ある……?

 

 え?

 

 うん、まぁそこまで言うなら……。

 

 

・耳郎響香

 友好度:100.0%

 親愛度:100.0%

 依存度:18.3%

 関係性:……すき。

 

 

 …………。

 

 …………。

 

 ッスーーーー。

 

 あれ、目がおかしいのかな??

 もう一度見直してみましょう。

 

 

・耳郎響香

 友好度:100.0%

 親愛度:100.0%

 依存度:18.3%

 関係性:……すき。

 

 

 ……。

 

 なんじゃこれ!!!?!?!?!?(驚愕)

 

 えぇ……。

 最近耳郎ちゃんとは帰宅の時しか一緒にいないはずだよね……??

 

 どういうことなの……。(困惑)

 

 ま、まぁ依存度さえこれ以上上がらなければ特に何ともないので。

 これはガバじゃありません。

 ねぇっつってんだろ!!(豹変)

 

 

 さて、気を取り直して。

 本日は委員長決め、報道陣の侵入など細かなイベントが目白押しですが、(RTA的には『友好度稼ぎ』以上の意味は)ないです。

 

 原作の流れを守った方がログが早いのと、友好度を稼ぐ意味も兼ねて、委員長決めの票は緑谷くんに入れておきましょう。

 主人公が委員長やった方がいいに決まってるんだよなぁ。

 

 当たり前だよなぁ!!!

 

 ……れずちゃんに二票入ってヤオモモと並んでしまいました。なんで?(憤慨)

 

 と言ったものの、推測はつきます。

 恐らくは耳郎ちゃんや緑谷くん辺りの仕業ですね。

 まぁ普通に辞退しておきましょう。

 

 お前らの面倒見るつもりねーから!!!

 おらヤオモモ、お前がママ(副委員長)になるんだよ!!

 

 爆豪くんが何か喚いてますが、話しかけなければ特に何もありません。

 お、大丈夫か大丈夫か?

 バッチェ冷えてますよ〜。

 お前みたいな素行不良に委員長が務まるわけがないってハッキリわかんだね。

 

 

 さて次に報道陣暴走イベントですが、こちらも特に何もする必要はありません。

 勝手に飯田くんが非常口になってくれるので、れずちゃんはのんびりご飯をむーしゃむーしゃしてましょう。

 あまあまうまうまなのら!!

 

 皆騒いでるのに、一人でぽけーっとしちゃって……。

 れずちゃんカァイイねえ……♡(TG姉貴並感)

 

 飯田くんの活躍によって状況を知ったら、雄英バリアの状態を見に行きましょう。

 すると校長が、ヴィランの存在を仄めかしてくれます。

 

 

 この次の日のヒーロー基礎学ではご存知USJに向かうわけですが、その際相澤先生が、

 

「俺とオールマイト、そしてもう一人の三人体制で見ることになった」

 

 と仰るので、そこからヴィラン対策としてオールマイトを連れていくのだという事が推測出来ます。

 ……まぁ、オールマイトは来ないんですけどね。(ホモは嘘つき)

 

 オールマイトが通勤できるように手助けしないの? という話ですが。

 そもそもそんな事情をれずちゃんは知る由もないので無理です。

 まぁTASならフラグ管理ぶっ壊して出来るかもしれないですね。

 流石は金髪幼女さんだぁ……。

 ぅゎょぅじょっょぃ。

 

 

 では次の日。

 USJにバスでイクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!

 13号のお話などのログを流していくと、原作通りヴィラン連合の襲撃イベントが発生します。

 

「……一かたまりになって動くな!!」

 

「13号に……イレイザーヘッドですか……。先日頂いた教師側のカリキュラムでは、オールマイトがここにいるはずなのですが……」

 

「やはり先日のはクソどもの仕業だったか」

 

 この際、

 ・ヴィランの襲撃を警戒して、オールマイトが急遽授業に入ることになった。

 ・ヴィラン連合はオールマイト目当てで来た。

 という一連の流れを知ると――。

 

 

 『内通者がいる』という驚愕の事実に気づくことが出来ます。

 

 

 これは本走において原作ブレイクから時間短縮を図るための引き金の一つになるので、確実にフラグを立てておきましょう。

 

 さて。

 この襲撃イベントにおいて目指すのは、

 

 ・死柄木弔とAFOとの繋がりを確信する

 ・オールマイト、イレイザーヘッドの弱体化阻止

 ・緑谷出久、OFAフルカウル覚醒

 

 を満たした上での最短攻略です。

 

 この内緑谷くんのフルカウルは、既にフラグは立っているので後は確率のお祈りです。(3敗)

 フルカウル自体は体育祭に間に合えばなんでも良いので、覚醒したらいいなー程度に思っておきます。

 

 さあ、一つ一つこなしていきましょう。

 現在の状況としては、イレイザーヘッドが生徒を逃がし、有象無象のヴィランを蹴散らしているという所ですが……。

 ここからは時間との戦いです。

 

 まずはごたごたしている内に、皆に紛れて【瞬間移動】を使います。

 この際、それをそれとなく13号に伝えておきましょう。

 そうでないと飯田くんが無駄に頑張ってしまい、真実を知った後にそれを言わなかったれずちゃんへの友好度ががくんと下がってしまいます。(1敗)

 付随して、敵にそれをなるべくバレないようにして欲しいとも伝えておきます。

 ……バレたら帰られちゃうので……。

 

 そんなわけでテキトーに外に出たら、オールマイトに連絡を取ります。

 

「五条少女!? 相澤くんにも13号にも繋がらなくて心配していた所だ……!! もしや何かあったのかい!?」

 

 この辺にぃ、ヤバいヴィランの団体、来てるらしいっすよ。

 じゃけん今行きましょうね〜。

 

「なんだって……っ!!? 分かった!! 五条少女、すぐに行く!!」

 

 あっ、おい、待てい。(江戸っ子)

 

「む?」

 

 れずちゃんには【瞬間移動】があるんだよなぁ!!

 

「…………そうか!! そうだったな!! ――今ほど、君がうちの生徒で良かったと思ったことはない……!! だが、どうする? 他の教師にも声はかけたが、まだ準備に時間がかかりそうだ」

 

 時間との勝負だし、とりまオールマイトと自分だけ加勢にいこう!(提案)

 力使いすぎて制限時間がヤバいって聞いたけど、踏ん張ってくれよな〜頼むよ〜。

 後敵の連携崩したいから『私が来た!』とか大声で言わないでねホントお願いだから。(1敗)

 

「うむ……そうだね」

 

 それじゃイクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!

 

 さて、オールマイトを連れて戻ってくると、弔くんが大喜び。

 

「【瞬間移動】……? 逃げられてたのかよ、黒霧ィ……!! 言えよ……っ!! にしても、オールマイトだけを連れてくるなんて……助かるよ。おまえ、良い個性だがバカだな。何十人もプロが来たらゲームオーバーだったってのにさ……。それとも、つれてくるのは一人が限界だったのかな? まぁいいや。はは、はははっ……。とにかく――。あ゛ーー……コンティニューだ」

 

 ぺらぺら早口でボリボリ掻いちゃってカァイイねぇ……。

 カァイイねぇ弔くん……♡♡

 

 とはいえ彼の言う通りで、ここでオールマイトのみを連れてくるのは様々な観点から愚策です。

 

 しかし何十人ものプロヒーローを連れてきてしまうと、彼らは黒霧の個性で即座に逃げてしまい、リセット案件となります。

 

 自らや緑谷くんの後々の都合を優先したことで若干Plus Chaosが加算されてしまいますが、問題ありません。(漆黒の意志)

 正義は大義の下に輝くんだよなぁ……。

 

 さて。

 ここまで最速で行えていますが、それでもA組生徒が黒霧によって散らされてしまう展開は防げません。

 とはいえ、これについては全員有象無象のヴィランよりも強いので大丈夫です。

 

 さて、まずは上から俯瞰して。

 

「そこをどけよイレイザーヘッド……。黒霧にさっさとタイムリミットを伝えなくちゃあいけない……」

 

「させるワケねぇだろ」

 

「チッ……本っ当――かっこいいぜ……」

 

 ・脳無vsオールマイト

 ・死柄木弔vsイレイザーヘッド

 

 の構図が出来上がっているのを確認します。

 イレイザーヘッドの肘が崩れていますが、こればっかりは仕方ないです。

 

 オールマイトと脳無は……概ね競り合ってる感じですね。

 生徒を助けたり、黒霧に邪魔されたりがなければこの二人の戦いは基本的に拮抗します。

 パワーではオールマイトが勝るものの、【ショック吸収】の個性のせいで全く決着がつかない……といったところですね。

 しかも【超再生】もあるので肉を抉りとるなどの攻撃も効きません。

 

 本来であればこのタイミングでそのブラフを交えた弔くんの演説が入るのですが、(それを待ってやる必要は)ないです。

 というわけで【六眼】でお見通し!!

 その辺をオールマイトに伝えましょう。

 

 ……ちなみにこの際、脳無とやらにAFOの手が入っていることを確信できます。

 

「そうか……助かる、五条少女!!」

 

「あ……? なんで分かった、【瞬間移動】じゃないのか……?」

 

 別にそれだけとは言ってないだろ!! 

 いい加減にしろ!!

 

「……! 先生繋がりか……? いやそんなわけはない……気持ち悪いね、君」

 

 弔くんに気持ち悪いって言われた!!!

 嬉しい!!!!

 

 さて。先程弔くんがイレイザーヘッドに言った通り、黒霧は今13号とその周りの生徒で手一杯。

 れずちゃんの【瞬間移動】とオールマイトの出現に気づけていません。

 勿論、彼もバカではないのでいずれ気づきます。

 すると、ゲームオーバーだという事で逃げられてしまうので、それまでにイレイザーヘッドを救い出しつつ脳無をぶっ転がしましょう。

 

「五条少女、私は”まだ”いい!! 相澤くんの方に加勢したまえ!!」

 

 了解!! まだ、って言葉が聞けただけでも嬉しいぜオールマイト!!!

 ここで一生徒のままだと、イレイザーヘッドの救出だけを命じられて終わりです。

 

 丁度、窮地を救ったのにも関わらず戦いに参加させて貰えなかった原作の轟くんのように。

 しかしれずちゃんは今!! 認められている!!

 

「! 五条、お前……!! いや緊急時だ、教師としては不甲斐ない話だが――助太刀を頼めるか」

 

 当たり前だよなぁ。

 と、ここまでに優秀な成績を取っているのでイレイザーヘッドも助太刀を許してくれます。

 

 まぁイレイザーは生徒の命が第一優先、どんな手を使ってでも必ず守る――というような合理性の塊なので、一番戦闘のハードルが低いんですけどね。

 

「随分特別扱いを受けてるんだなあ……? 羨ましいぜ、ヒーローの卵……っ!? あ……? んだ、これ……? 触れられな――」

 

 効かないねぇ! 無限だから。

 【アキレスと亀】は対死柄木弔において特効です。

 これをやってるだけで弔くんは一般人と化します。

 悲しいなぁ……。

 

 さっきオールマイトだけ連れてきたのは愚策って言ったよね?

 でも違うんだよなぁ……。

 

 本来れずちゃん一人で充分なんだよ!!

 じゃあオラオラ来いよオラァ!!

 

「【物理無効】ってとこか……? 【瞬間移動】に【個性看破】に【物理無効】……脳無でもねぇのに滅茶苦茶しやがって、クソチートが……!!」

 

 いえ、こちらはチートなしのレギュレーションで走っております……。

 と、このように、あまりにも強い個性だと狼狽する弔くんが見れます。

 カァイイねえ……♡(恍惚)

 

 というわけで、【身体強化】から数発ぶん殴って気絶させる――寸前に、脳無によって庇われます。

 

「……っ、痛ぇよ、クソチート……!! 本気でぶん殴りやがって……。危うくゲームオーバーだ、こんなのがいるなんて聞いてないぞ先生……!! おい脳無、あのお邪魔キャラから殺せ。オールマイトより全然厄介だ」

 

 その隙に、イレイザーヘッドに状況を伝えておきましょう。

 具体的には、

 ・【瞬間移動】でオールマイトを連れてきたこと

 ・他のプロヒーローにも連絡は行っているので直に来ること

 ・ヴィランの判断を誤らせるためその事を13号以外には伝えていないこと

 の三つです。

 

 敢えて弔くんを煽るようにして言いましょう。どの道聞こえるので。

 

「バカって言ったのがそんなに気に障ったかいチートJK……! 全部掌の上ですってか……? ああ、恥ずかしくなるぜ、ヴィラン連合……!!」

 

「……五条、お前がうちの生徒で良かったよ。俺一人だったらどうなってたか分からん。……ありがとな」

 

 相澤先生がデレた!!?!?

 あっ、そんな事より脳無を

 

 今回はここまで。

 ご視聴ありがとうございました。

 




とむらくんかぁいい……


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6裏 相澤消太の独白

流石に毎日三話更新は激務すぎると今更ながら悟った
書き溜めたはずの文が一瞬で溶けていく……(諸行無常)


 相澤が、五条玲珠に対して教師として下した評価。

 それは端的に言えば、『即戦力級』――そして、『教えがいがある』だった。

 発動時間制限という縛りこそあるものの、おおよそ弱点らしい弱点のない無敵の個性。

 

 しかし、強い個性のみで務まるほどプロヒーローの座は安くない。

 どれだけ強い個性でも、豚に真珠では意味がないのだ。

 

 しかし、個性把握テストや戦闘訓練において彼女の見せた、合理的な思考に基づいて行動し、最大限の結果を出す姿勢。

 そのやり口を、相澤はいたく気に入っていた。

 平たく言えば、思考回路が似ていたのだ。

 

 ……唯一、他者を嘲るあの態度についてはあまり理解が及ばないが。

 

 なればこそ、これから教えていくべきはプロヒーローとしての考え方。

 相澤自身が積み上げてきた、ヒーローとしてのキャリア。

 それに基づく合理的な立ち回りを教え――結果として、上の指示を仰がなくとも常に安定した正しい行動が出来るようになれば。

 

 可能性はそれこそ無限大だ。

 

 それこそ、将来ヒーロービルボードチャートJPのTOP10に入るほどの成長を見せるやもしれない、と相澤は考えていた。

 

 ――しかしそれは、間違った評価であったと言わざるを得ない。

 

 

「一かたまりになって動くな!! 13号、生徒を守れ!!」

 

「え……」

 

「何だアリャ!? また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」

 

「動くな!! あれはヴィランだ!!」

 

 突如黒い霧から現れたヴィラン連合と名乗る集団に対し、相澤が取った行動は――単騎での突撃だった。

 生徒たちを守らねばならない立場なのはもちろんの事――。

 

 この場で誰よりも経験豊富な自分が、生徒たちの心の支柱となって理知的な判断を助けなければならない。

 

 生徒全員が混乱して自滅。

 それが最悪のケースだからだ。

 

 

 だが……それでも、と。

 考えてしまった。

 

 一対多数、集団との長期決戦。

 緑谷が言ったように、言うまでもなく苦手な分野――。

 このままでは分が悪い。

 だが、この状況を一瞬で変えられる個性を相澤は知っていた。

 

(五条なら――。……っ、ダメだ、俺は何を考えてる)

 

 個性への信頼はあった。

 しかし、五条へのヒーローとしての信頼はなかった。

 自身が命にかえてでも守るべき、一生徒。

 

 五条自身が判断し、それが最適であると考えて加勢しにくるならそれはいい。

 それだけの強さが彼女にはあるからだ。

 

 だが。

 教師である自分が、ヒーローである自分が。

 僅かでも、能動的に彼女に頼ろうとしてしまった。

 

 愚かな自分の思考を自覚した……相澤の葛藤。

 冷ややかな合理と、熱く燃えるヒーローとしての矜恃を持ち合わせる彼だからこそ生まれた……時間にして一秒にも満たないその逡巡が、致命的な転換点となってしまった。

 

「しまっ……!!」

 

 気づけばワープの男は生徒たちの元に。

 そして、相澤は主犯格であろう手だらけの男に、肘を崩されていた。

 

「個性【抹消】……永久に消し続けられるわけじゃないんだろ? 動き回るから分かりづらいけど、たまに髪が下がる時がある……あぁ、そりゃそうさ。……ヒーローだって瞬きはするもんなぁ?」

 

「チッ……!!」

 

「なんだっけ、えーっと……ヒーローは一芸ではつとまらん、だったか? かっこいいなぁ。かっこいいなぁ!! でも……無理をするなよ――イレイザーヘッド」

 

 距離を取って仕切り直すが、しかし片腕を使えないハンデはあまりにも大きい。

 

(マズったな……教師が聞いて呆れる)

 

 しかし、だ。

 本来ならば。

 たとえ合理を突き詰めたとしても、生徒に頼る選択肢など浮かぶはずがない。

 

 図らずも五条玲珠の存在によって生まれてしまったこの状況そのものが、彼女の異質さを雄弁に物語っていた。

 

 

 そして。

 奴は弾けた。

 

 

 いつの間にか目の前に現れた五条玲珠の隣には――オールマイト。

 

「や。相澤くん。私がひっそりと来た……っと、危ない! 私の相手は君か? 中々個性的な見た目だね」

 

「……!?」

 

 【瞬間移動】による戦場からの離脱――。

 相澤が動き出した直後には既に、彼女は事態解決に向けて動いていた。

 それも、クラスの全員を守るための正しい行動を。

 

 そしてプロヒーローの到着が遅れることを聞き、オールマイトを連れて戻ってきたのだ。

 

 恐るべき判断の早さ。手際の良さ。

 下手なプロヒーローよりもよっぽど実践的だ。

 実際、ヴィラン連合の現れたあの瞬間。

 相澤の脳内に、五条の【瞬間移動】という選択肢は浮かばなかった。

 

 相澤は、彼女に対する評価を一つ改めた。

 いつかヒーローに……ではない。

 

 個性。戦闘力。視野。判断力。

 彼女のそれはとっくに、並のヒーローを凌駕している、と。

 

「【瞬間移動】……? 逃げられてたのかよ、黒霧ィ……!! 言えよ……っ!! にしても、オールマイトだけを連れてくるなんて……助かるよ。おまえ、良い個性だがバカだな。何十人もプロが来たらゲームオーバーだったってのにさ……。それとも、つれてくるのは一人が限界だったのかな?」

 

 ……違う。

 人数の制限も勿論あるにはあるのだろうが、五条のこれは愚策ではない。

 何故なら目の前の男は、一つ失念している。

 

 ――五条玲珠は、プロヒーローと同等か、それ以上に強い。

 相澤がたった今改めた、五条玲珠への評価だ。

 そしてそれは……最早、疑いようもない事実。

 

「ベラベラとうるっさいなぁ……。なぁおい、コミュ障だろお前。人の事とやかく言う前にまずさぁ、その訳の分からんキモイファッションから見直せよ……」

 

 余裕たっぷりな声色でヴィランを挑発する彼女に、相澤は戦慄した。

 何故なら――その姿に、他でもない自分自身が安心させられてしまったから。

 

 脳が剥き出しの怪物があのオールマイトと渡り合っている……この明らかに異常な光景を目の前にしても。

 そんな事は関係ない、とばかりに。

 

 一線級のトップヒーローは皆、学生時から逸話を残している。

 ……どころの話ではない。

 

 彼女の器はもう、既に――。

 

 ……全く。

 むしろ彼女に今すぐプロヒーロー免許を渡してやれない社会の方に、不合理を感じるほどだ。

 

 相澤の期待、というよりも確信に近いものだったが――とにかくそれに応えるようにして、五条は結果を魅せ続ける。

 不意打ちとはいえ相澤の肘を砕いたあの狡猾なヴィランを、圧倒したのだ。

 

「【物理無効】ってとこか……? 【瞬間移動】に【個性看破】に【物理無効】……脳無でもねぇのに滅茶苦茶しやがって、クソチートが……!!」

 

「物理無効っていうか、近づく度に遅くなってんの。アキレスと亀――あ、ほい卒には分かんないかぁ、ごめんごめ〜ん!! もう君が弱いのは充分分かったからさっ、さっさとおねんねしてくれる? ……っと、身代わりか。やるね」

 

「……っ、痛ぇよ、クソチート……!! 本気でぶん殴りやがって……。危うくゲームオーバーだ、こんなのがいるなんて聞いてないぞ先生……!! おい脳無、あのお邪魔キャラから殺せ。オールマイトより全然厄介だ」

 

 五条の実力を察した敵の大将が、余裕を無くしている。

 そうだ。お前が今対峙しているのは――免許をまだ持っていないだけの、トップヒーローだ。

 

「無理無理、ボクをやっつける方法なんてないから。ちょっと考えれば分かるでしょ……それとも何、君って無理ゲー好んでやるタイプのマゾヒスト?」

 

「……ッ!」

 

「あぁ、そうだ、消太先生。一応今の状況なんだけど――」

 語られたのは、緻密に練られた――非の打ち所のない、あまりに完璧な打開策だった。

 とても、あの一瞬で考えたとは思えないほどの。

 

「……そうか、分かった」

 

「バカって言ったのがそんなに気に障ったかいチートJK……! 全部掌の上ですってか……? ああ、恥ずかしくなるぜ、ヴィラン連合……!!」

 

「……五条、お前がうちの生徒で良かったよ。俺一人だったらどうなってたか分からん。……ありがとな」

 

 気づけば、本音が零れていた。

 一生徒には絶対に言わないであろう、本音が。

 

「なーに弱気になってんのさ消太先生、君にはまだまだ働いてもらうからね」

 

「……勿論だ」

 



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7  USJ決着〜〜雄英体育祭告知

書いてる途中でより良いプロットが浮かんでしまい、前回までの話と矛盾が生じてしまったのでそちらを修正しました。

(修正内容)
 この襲撃イベントにおいて目指すのは、

 ・死柄木弔とAFOとの繋がりを確信する
 ・オールマイト、イレイザーヘッドの弱体化阻止
 ・死柄木弔のアジトを知られることなく突き止める←×
 ・緑谷出久、OFAフルカウル覚醒
 ・六月に仮免を取得する口実を作る←×

 を満たした上での最短攻略です。
(修正内容 終)

今後はこのようなことがないよう努めて参ります。



 本っ当にかっこいいぜ、イレイザーヘッド……なRTA、はーじまーるよー!

 

 前回の続きから、三対一で脳無をボコ↑ボコ↓にします。

 三人に勝てるわけないだろ!!

 

 イレイザーヘッドに【抹消】で個性を消してもらってから、【蒼】で手足をぐちゃぐちゃだるまに。

 いくら雄英の敷地内とはいえ、仮免を持っていない段階でヴィランを殺傷するととんでもない騒動になってしまいますが……脳無はとっくに死んでる判定になるのでOKです!!

 

 後は【超再生】をイレイザーが封じてくれている間に、オールマイトがバカスカ殴って調理完了です……。

 

 時折邪魔してくる弔くんの相手は、しっかりれずちゃんがしてあげましょう。

 ざーこざーこ♡ とししたのおんなのこにまけてはずかしくないの?♡

 

「クソ……っ!! 台無し、台無しだ、あぁ……ッ!! オールマイト、弱ってたんじゃなかったのかよ……。んで、お前ぇ……ッ、お前は何なんだよ……ッ!! あァ、詰みだ。ゲームオーバーだ。……聞いてた話と全然違うぞ、先生――ッ」

 

 さて、そろそろですね。

 ここで緑谷くんからの信頼が一定値を越していると、警報が鳴ります。

 

 ……。

 

 ……。

 

 はい、鳴りました!!!

 

 何故ここで警報が鳴るのかって、USJの機能を落としていたヴィランが退治されたからです。

 そのヴィランは上鳴くん、耳郎ちゃん、ヤオモモの三人がいる山岳ゾーンに潜んでいるのですが……。

 ストーリーの進行に合わせて、必ず上鳴くんを人質に取ります。

 

 本来であれば、プロヒーローの応援が来るまで戦況が停滞するのですが……。

 今回の場合、緑谷くんが生徒の救出に回ってくれるのでその打開が可能なわけですね。

 

 さて。

 警報が鳴ってくれると何が嬉しいのか、というと。

 スーパー保護者脳無ちゃんの黒霧が、弔くんの元に駆けつけてくれます!!

 

「……遅いぞ黒霧……!! あぁ、お前がワープゲートじゃなきゃ粉々にして殺してるところだ……ッ!! 早くゲートを開け、帰るぞ」

 

「申し訳ありません、死柄木弔……ッ!! し、しかし何故このような事態に……ッ!?」

 

「喋ってる暇がないのが見て分からないか……!? あぁ、クソッ……そら見ろ、イレイザーが見てやがる……ッ!! こんな所で終わるのかよ……あぁ、先生……ッ!! まだ始まったばっかなのに――!!」

 

 そんなもの始められてたまるか!!

 

 さぁ、動揺しているうちに彼の実体がある部分に【蒼】を作り、一緒に確保してしまいましょう。

 最強有能イレイザーヘッドが【抹消】を使ってくれるので、黒霧の確保は思ったよりも楽ちんです。

 

 黒霧はともかく弔くんは人間なので、意識を奪う程度の攻撃に留めておきましょう。

 やりすぎると新聞にあることないこと書かれてしまい、プロヒーローへの道が遠のきます。

 

 ……ヨシ!!

 一件落着です!!

 

「……相澤先生大丈夫かな、と思って加勢に来たんだけど……やっぱ玲珠って凄いね」

 

「流石ですわ……私など、耳郎さんがいなければどうなっていたことか……」

 

「な! 耳郎めっちゃカッコよかったよな!! どっかーーん! ってな!!」

 

「うっさい上鳴」

 

 ん? あれ? 耳郎ちゃんがなんでここにいるの?

 いや、いるのは百歩譲っていいとして、緑谷くんは??

 

 え……耳郎ちゃん?? まさかお前。

 いや別に良いんだけど、まさか……。

 

 

 原作より大分強くなってらっしゃる??

 

 

 ……さて。

 気を取り直してここからは、軽い事情聴取など事件の後始末があります。

 塚内くんにAFOの件を話しつつ、倍速倍速倍速!!

 ……しながら、結果を振り返ってみましょうか。

 

 ・13号、黒霧にブラックホールを利用され負傷

 ・相澤先生及び生徒、大きな負傷なし

 ・オールマイト、活動限界の変化なし

 ・ヴィラン連合全員確保

 ・五条、プロヒーロー級の活躍

 ・耳郎覚醒(予定外)

 

 そして最後に!!

 さてさて、緑谷くんはフルカウルを覚えられたのでしょうか!!

 【六眼】で見てみましょう……どれどれ。

 

 ……。

 

 ……。

 

 覚えてねぇじゃねえか!!!!!!

 クソデク!!!!(爆)

 

 ま、まぁ……体育祭までに覚えてくれればいいから……。

 そしたられずちゃんもグラントリノの所一緒に行けるから……。

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 臨時休校を乗り越え次の日まで倍速倍速!!

 

 あ、等速に戻りましたね。なんでしょう?(すっとぼけ)

 どうやら朝っぱらから会議室に呼び出されているようですが……。

 

「や。君が五条ちゃん? 滅茶苦茶可愛いね〜、化粧水何使ってるの?」

 

 ……こ、この殴りたくなるような軽薄な笑みを浮かべるイケメン男は〜〜っ!!!!

 まさか、まさか〜〜〜〜っ!!!!

 

「驚かせちゃったかな? そそ、俺はホークス。自己紹介するまでもないと思うけど……一応ね」

 

 最推しヒーローの内の一人(矛盾)、ホークスじゃあないか!!!

 

「藪から棒にごめんね、"上”から君に、素敵なプレゼントがあってさ。少し時間を取らせちゃうけど……今、いいかな?」

 

 いいよ!!(快諾)

 

 ……あれ?

 れずちゃんも頬を赤らめて嬉しそうです。

 スキップまでしちゃってます。

 なんかめっちゃ熱い眼差しでホークス見てます。

 おい、可愛いなおい。

 

「いやあ、こんな可愛い子に応援されてるなんて嬉しくなっちゃうね」

 

 ……まさかお前最推しホークスかよぉ!!?(驚愕)

 面食いすぎるだろ……。(困惑)

 

 ……というかお前耳郎ちゃんと緑谷くんはどうしたんだよ!!?

 もう逃げられねえとこまで来てんぞ!!?

 

 え、ホークスに対しても恋愛感情ではない??

 ……。

 

 ……。

 

 ほんっと人の情緒破壊するの好きだなこのクソ白髪女……。

 

 

 さ、さて。

 ここでのホークスの用件は、大事な話なので凄まじくログが長いものの……。

 まとめると、公安直属のヒーローを目指さないか、というものです。

 

 ホークスは公安直属ってこと隠してるじゃんアゼルバイジャン、と思われるかもしれませんが、彼らはれずちゃんの【六眼】を知っています。

 

 隠し事が通用しないことはもう分かっているので、それならいっそ一番信頼出来るホークスに任せるぜ! ……という判断のようです。ぐう有能。

 

 というわけでホークスの勧誘ですが……。

 答えは勿論YESです。何故なら。

 

「話が早くて助かるよ。それじゃこれあげる。本当に異例中の異例だから、あまり言いふらさないようにして欲しい……本当にどうしようもない時だけ使いな。公安が君を守ってくれる」

 

 はい。ヒーロー仮免許をゲットしました!!

 本来ならば六月と九月に行われる仮免許試験を突破しなければ貰えないものです。

 大幅なタイムの短縮が見込めますねえ〜〜!!!

 

 あ、そうだ。

 ついでにホークスに"これから”の考えについてプレゼンしておきましょう。

 

「え? なになに、なんか企んでるの? 面白そうだね」

 

 少女説明中……。

 

 少女説明中……。

 

「……ぶっ、あはははははっ!!! オールマイトに!? マジでか、マジでか君!! あっははは!! ――五条ちゃん、君、サイッコーだね!!」

 

 ホークス、なんかツボに入ってしまいました。

 意味のないログが増えるからちょっと困るんですけど、まぁ心象が上がったならヨシ!

 

「……後進育成とかする気なかったけどさ。君は特別だ……早く"ここ”まで上がっておいで。期待してるよ」

 

 待て待てれずちゃん顔を赤くするな。

 

 ……人の情緒を狂わせる女vs人の情緒を狂わせる男vsダークライ……って、コト!!?

 ……負けるなれずちゃん頑張れれずちゃん!!

 

 あ、そろそろチャイムが鳴るのでクラスに戻りましょう。

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

「雄英体育祭が迫ってる!」

 

「クソ学校っぽいの来たああああ!!」

 

 さて、恐らくは視聴者の方々も楽しみにしておられたであろう体育祭ですが。

 

 ……れずちゃんは、競技には参加しません。

 

 あ、待って。待って。ブラウザバックしないで!!

 違うのそういう意味じゃないの!!!!

 

 もっと凄いことするよ、って意味なんです!! 待って!!

 お慈悲^〜、お慈悲^〜……。

 

 というわけで、その"もっと凄いこと”をするために、校長とオールマイトに直談判に行きましょう!!

 勿論先に相澤先生にも話を通しておきます。

 

「あぁ……なるほど。お前ならそっちの方が合理的だな。好きにしろ」

 

 ひゅ〜〜話が分かる男大好き!!!

 

「五条、そのやたらとくっつきたがるのだけはどうにかしておけ……将来苦労するぞ」

 

 はい、すんません……。

 

「話は聞いてるよ、五条さん。コチラとしては大歓迎さ! 自由な校風なんて言ってる割には、実際の所例年通りって事も多いのさ。そんな中で、一生徒の君からこんな提案が出るなんて嬉しい限りさ! 君のおかげで今年の雄英体育祭は、今までで一番の盛り上がりになるかもしれないね」

 

 校長もいい感触ですね。

 まぁ当然といえば当然です。

 USJの襲撃を凌いだ点、公安から仮免許を貰っている点(校長など雄英教師には周知の事実)……あまりにも凄すぎますからね、今のれずちゃん。

 

 というわけで!!!!

 

 雄英体育祭、特別エキシビションマッチ。

 五条玲珠vsオールマイトが急遽決定しました!!!

 ドンドンパフパフ〜〜〜〜!!!!

 

「……五条少女。もしかしてなんだが……君、私に休ませる気あんまりないだろう……? 勿論、やるからには全力でやるけれどね」

 

 ま、れずちゃんがプロヒーローになって、緑谷くんが強くなるまでは……多少はね?

 

「オールマイト、このエキシビションマッチには額面のインパクト以上の意味があるのさ」

 

「存じております、校長。雄英は"強い”のだ、と知らしめることで、世間の反感を抑え……ヴィランの勢いを削ぐ」

 

 まぁ、主目的はそれではなく……。

 れずちゃんが一躍プロヒーローになるための土台、なんですが。

 さてさて、話は終わったので雄英体育祭までひたすら個性伸ばしを

 

 今回はここまで。

 ご視聴ありがとうございました。

 



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7裏 五条玲珠:オリジン

皆さんお待ちかね、れずちゃん視点です!!


「……なるほど。あの脳無と呼ばれていたヴィランは、AFOによってつくられた改造人間なんだね……」

 

 端的に纏め、なんということだと眉間を抑える塚内に、玲珠は軽く首肯した。

 まさか、一般の警官がオールマイトの親友とは思わなかったが。

 

「まさか、あの怪我で生きていたとは……」

 

 AFOが復活して暗躍を始めている、という情報を得られたのは、玲珠にとっても実に僥倖だった。

 勿論AFOは死にました、と言われた方が嬉しいのだが……取り返しのつかなくなる前に、この情報が得られた。

 その意味は果てしなく大きい。

 

 

 ……AFOに手が加えられた個性からは……ノイズが走ってしまい、詳細な情報が得られない。

 緑谷やオールマイト、青山などがそうだ。

 

 脳無のそれはノイズがさらに激しく、様々な人間の記憶が入り交じってバグってしまっている。

 あぁ、これでは何も分からない。

 

 そして、黒霧と呼ばれていた男のそれもそうだった。

 黒霧は脳無だったのだ。

 しかしそのぐちゃぐちゃにバグった記憶の断片に……若き日の相澤と香山――ミッドナイトがいたのは、何故なのか。

 ただの他人の空似なのか?

 

(ダメだな…………不確定な情報が多すぎる……。それでもこの人には全て話しておくべきか……? 考えろ……天才美少女なんだろ五条玲珠、最適解を導け……!!)

 

 雄英に潜んでいる裏切り者――青山優雅の事はまだ伏せている。

 なぜなら、今ここで話してしまえば間違いなく彼は死亡するからだ。

 彼を視て、そう確信した。

 

 彼が決して根っからのヴィランではないことも――。

 

 ……慎重に検討する必要がある。

 

 今の自分では、彼を魔王の手から守ってやれない。

 守る行為自体認められない。

 しかしそもそも……青山を見捨ててしまえば済む話ではある。

 

 緑谷やオールマイトなら、絶対にしない選択だろう。

 

 ――違う。

 だからこそ、自分が進んでやる必要がある。

 平和の象徴を継ぐ、完璧なヒーローになるために。

 

(…………恨んでいいよ、優雅。ボクは大義のために……世界のために、君を見捨てる)

 

「出久、少し外してくれる? ここから先は……多分、ホントのホントに機密だから」

 

「う、うん。分かったよ。……あのさ。五条さん、本当にありがとう」

 

「今そういうのいいから。早く行けって」

 

「う、うん……またね!」

 

(……ありがとう、か。皮肉だなぁ……。今からボクは、君の信頼を裏切るってのにさ)

 

 ……ああ、そうだ。

 黒霧の件についても話そう。

 まずは自分が、正義の味方として信頼されなければならないから。

 

 後懸念しておくべきは……死柄木弔――本名志村転弧の記憶が、何故か視えなかったことくらいか。

 恐らくは記憶喪失なのだろうが……。

 AFOなら人の記憶をいじるなど造作もないだろうが……どこか気にかかる。

 

「志村……だって……? いや、まさか……まさかな」

 

 ……オールマイトは、彼の本名を知った時何を驚いていたのだろう。

 知り合いに、同じ苗字の人でもいるのだろうか。

 

 

 

 休学があけて、次の日。

 いつも通り盛り上がる皆の中で――。

 一つ、席がなくなっていた。

 

「あれ? 青山いなくね? なんで?」

 

「自主退学したんだってさー、まだ始まったばっかなのにな……」

 

「あんな事があったんだ、怖気付いても仕方ねぇよ。でも残念だな……まだあんま話したことなかったけど、クラスメイトが減っちまうのは嫌だぜ」

 

「私結構仲良くしてたのにな〜」

 

「芦戸、アレを仲が良いとは言わん……」

 

「えぇ〜? そう?」

 

「ハッ! 怖気付いたモブの事考えてる暇なんざねェよ!!」

 

「かっちゃん、そういう言い方はよくないよ……」

 

「そうだぞ爆豪くん! こういう時こそ一致団結し、心機一転、クラスの士気を高めるべきだ!」

 

「デクテメェ最近調子乗ってんな!? いちいちいちいちそこのクソエリートみてぇに噛み付いてきやがって……!!」

 

「だ、だってなんか最近のかっちゃん話しやすいから……」

 

「あぁ!!? 俺がいつ丸くなったってんだ!?」

 

「声をあまり張り上げるな、爆豪くん!!」

 

「お前も張り上げてねぇか……?」

 

 

 青山優雅――ヴィランスパイの容疑により拘束。

 その後両親と共に無惨な死体で発見されるも、極秘情報として処理。

 

 本来であれば、一年を通して培われた友情に彼は救われるはずだった。

 しかし今はまだ、四月。

 クラスの中に、彼の友人と呼べる存在は未だいなかった。

 

 ……1―Aの生徒が、退学の理由を――彼の死を知ることはない。

 彼の存在は、やがて……忘れられるだろう。

 

 

 …………。

 

 

 殺人をするのは、初めてではない。

 ……勿論手を下した、という意味ではない。

 殺したのはAFOだ。

 

 それでも――。

 

 ――そう誘導したのは、自分だ。

 

 AFOが動かざるをえない状況を作ることで、自らの情報の信憑性を上げた。

 青山優雅の死によって、ヒーロー並びに警察を引き締めた。

 オールマイトによって蔓延してしまった平和ボケを、取り払った。

 

 酷く冷えた論理的な思考で――損得勘定で、人の命を軽々しく扱った。

 

「…………っ」

 

 こみ上げる吐き気と罪の意識は、抑えることが出来なかった。

 視界が酩酊している。音もなんだかよく聞こえない。

 

 ここまで弱るのは、いつぶりだろう。

 

 ……否が応でも思い出される。

 真っ暗闇に、いつまでも一人。

 痛む体を抱いて、寒さに凍えていたあの地獄の日々――。

 

「……ゅ」

 

 ……? 何だろう。

 誰かが、何かを言っている。

 ……よく聞こえない。もっとハッキリ喋って欲しい。

 

「……じゅ」

 

 ――。

 

「玲珠!」

 

 名前。そうだ、名前を呼ばれている。

 返事を――返事を、しなくては。

 

 三回も呼ばれてしまった。二回も無視してしまった。

 ああ、ダメだ。

 

「……ひっ、ご、ごめんなさ――」

 

 怒られる。殴られる。

 完璧にしていないといけないのに。

 五条玲珠は完璧でなくてはならないのに。

 

 

 そうでないと、生きてはいけないのに。

 

 

 ほら、とんできた。手が。

 自分の頭を――。

 

 ……。

 

 ……。

 

 殴られ、ない?

 

「玲珠……?」

 

 温かい手が優しく、玲珠の額に触れた。

 温かい声が優しく、玲珠の心を包み込んだ。

 

 

 ……ああ。そうだ。

 そうだった。

 もう、悪夢は……とっくにこの手で終わらせたのだ。

 二度とあのように、理不尽に殴られることはないのだ。

 

 

 ……どうやら相当精神が参ってしまっているらしい。

 目の前にいる親友は、自分を殴ることなど絶対にしないというのに。

 

「……響香」

 

「玲珠、どうしたの? 上の空だし、それに……なんか顔色悪くない? 体調悪いの? 大丈夫? 保健室行く……?」

 

 いつになくこちらを心配する親友に玲珠は、はてどうしたものか、と思案する。

 

 自分は今、そんなに酷い顔をしているのだろうか。

 

 ……いけない。これではダメだ。

 

 五条玲珠は、完璧でなくてはならない。

 五条玲珠が心配されることなど、守られることなど、あってはならない。

 

 原点を思い出せ――。

 自分の命は、何のためにある?

 

(ふーー……落ち着け……心を沈めて……笑顔を作って……)

 

「ん、ちょっと眠かっただけだよ、大丈夫大丈夫。昨日徹夜でスマブラやっちゃってさぁ〜〜……ふあぁ、欠伸止まんないや」

 

「……そう? ならいいけど……無理しないでね。困ったら何でも言ってね。玲珠が凄いのは知ってるけど……ウチら、親友でしょ」

 

「なーにいきなりクサいこと言っちゃってんの。あ……次作る曲の歌詞?」

 

「ホントそういうとこ!! ウチ本気で心配してんのにさぁ!!」

 

「はいはい、あんがとあんがと〜。……実際、助かったよ」

 

「……?」

 

 

 ……。

 

 

(…………ごめんね、響香)

 

 

 ――たとえ親友でも。

 

 ――話せないことも……変えられないものも、あるんだよ。

 

 

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 絶対、おかしい。

 耳郎響香は、少なくとも五条玲珠という少女の感情の機微に対しては人一倍敏感であるつもりだ。

 

 彼女が時折見せる、寂しそうな表情。

 見ているこちらが泣きたくなってしまうような――。

 

 恐らくは自分しか気づいていない、彼女の本当の顔。

 傲慢で超然的な仮面に隠された、哀しい素顔。

 

「響香……?」

 

 暗闇の中で助けを求めるような、神に縋るかのような弱々しい声に、思わず抱きしめたくなる。

 ……本当に、どうしたというのだろう。

 

 

 心配して詰めてみると、いつの間にか彼女はいつも通りに戻ってしまっていた。

 

(……ウチが、弱いからだ)

 

 きっとそうだ。

 もっと強くなって、信頼されなければならない。

 親友を名乗るならば。

 

 オールマイトのように強く、気高く、決して倒れない支柱に。

 

 ……強く、ならなくては――。

 

(玲珠は……ウチが、守るんだ)




みんなだいすきれずちゃんの今日の挿絵


【挿絵表示】


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第二区間 8:個性伸ばし〜11:プロヒーロー免許取得
8  個性伸ばし〜雄英体育祭当日


体育祭編はマジで気合い入れて書きます。
しょーじきここが一番やりたかったです。


 もう一度遠くへ行け遠くへ行けと僕の中で誰かが歌うRTA、はーじまーるよー!

 

 前回の続きから、体育祭のはじまる二週間後まではひたすら努力値upと個性伸ばしを図っていきます。

 

 目標としては、雄英体育祭……つまりvsオールマイトまでに【赫】を取得し習熟度を10辺りまで上げることですね。

 そしてそのために必要な条件は、【蒼】の習熟度を30まで上げることです。

 

 習熟度を上げられるレベルの【蒼】は通常の場所では打てないので、相澤先生に許可を取って体育館γ『トレーニングの台所ランド』――通称TDLを借りましょう。

 何故TDLなのかというと、個性習熟度upに50%の補正があるからです。

 うまあじスギィ!!

 

 でもその名前はマズイですよ!!

 エリクトリカルなパレードで著作権がハハッ!! しちゃうからホラ。(震え声)

 

「……お前のことだから大丈夫だとは思うが、やりすぎて学業に支障をきたすなよ」

 

 はい、許可が取れました!!

 相澤きゅんだいしゅき……。

 ぎゅーしよ♡ ぎゅー♡

 

「前そういうのはやめろって言ったよな? ……ヒーローになってからあることないこと書かれたくないなら、マジでやめとけ」

 

 すみません許してください何でもしますから!!

 つかマジで色気通じねえなこの男、全く表情動いてませんでしたよ……。(畏怖)

 まさか……ホモなのでは?(名推理)

 

「五条って相澤先生好きなん?」

 

 え、何言ってんの芦戸ちゃん、んなわけないでしょ……。

 

「えぇ……」

 

 さて、後は毎日ひたすらぶっ倒れる直前まで【蒼】を打ち続けます。

 ぶっ倒れるまでやるとTDLを使わせて貰えなくなるので、上手いこと調整しましょう。

 

 

 少女修行中……。

 

 

 少女修行中……。

 

 

 あれ、等速に戻りましたね。

 なんでしょう。

 

「五条さん、ちょっと今いいかな? 試したい技があるんだけど……」

 

 お!

 緑谷のフルカウル覚醒イベントですね。

 付き合ってあげましょう。

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

「やっぱりそうだ……!! 五条さんの【無限】みたいに、戦闘中は全身のスイッチをオンにしておけばいいんだ……!!」

 

 はい! 緑谷くんがOFAフルカウル5%を習得しました!

 緑のスパークがカッコよすぎますね。

 

「君の個性がヒントをくれたんだ……!! ありがとう、五条さん!」

 

 どいたま〜。

 (覚えてくんなかったらリセットだったし)ま、多少はね?

 さてさて、それでは修行を継続しましょう。

 

 

 少女修行中……。

 

 

 少女修行中……。

 

 

 あれ、また等速に戻りましたね。

 オールマイトと話してますが、何か重大な案件でしょうか。

 

「死柄木弔と黒霧が刑務所への移送中に突如姿を晦ました。……AFOの仕業と見るべきだろうね」

 

 あー、それアレですね。

 人指定でワープ出来るあの個性ですね。

 アレによる脱獄はタルタロスのように、対象者が動いたら即抹殺! くらいの警備姿勢でいないと防ぐことが不可能です。

 

 ただ、リスクをなるべく抑える+個性の隠匿を兼ねて、警備の薄くなる移送時を狙った……という所でしょうか。

 

 まぁアレはれずちゃんの力を示すための確保だったので、問題はないです。

 むしろ弔きゅんから報告を受けて、AFOがれずちゃんの個性のタイプを見抜いてくれるので嬉しいですね。

 

 【無限】は細かい調整が必要な、個性所持者本人の練度に強く依存する個性です。

 AFOはいくら強力でも、そういった個性を好まない傾向にあります。

 

 特に今の段階のAFOはオールマイト全盛期の強さに脳を焼かれて、"拳こそが正義”と思っています。

 増強系の個性を集め回っているんですねえ。

 マ ッ ス ル A F O 。

 

 れずちゃんの【無限】は敵としては厄介にしろ、欲しい個性ではないはずです。

 なんなら【アキレスの亀】を発動しておけば、AFOはれずちゃんの個性を奪えません。

 奇襲なら少し話が違う気もしますが……。

 

 ここまでのれずちゃんの活躍を聞いて、闇雲な奇襲が簡単に成功すると判断する方がどうかしているでしょう。

 更にそこにダメ押しで【六眼】の存在があります。

 必死で集めた個性の全てを、一目見られただけで暴かれてしまうのです。

 だから、脳無の個性を見抜いて弔きゅんを驚かせる必要があったんですね。(MGTNMUGEN)

 

 襲撃するリスクとリターンが全く見合わないので、AFO側からの接触はないものとして見て良いです。

 やったぜ。

 

 とはいえそんな事れずちゃんは知る由もないです。

 AFO動いたってマ? 

 弔きゅんって大事にされてんのなー、弱いのに。

 くらいの感想を抱きつつ、さっさと修行に戻りましょう。

 

 ん? 何、オールマイトまだ話あるの?

 

「いや、緑谷少年が五条少女のおかげで気づきを得たと聞いてね。実際彼の動きは見違えた……!! これならきっと、と――AFOの事も話すことが出来たよ。何から何まで本当にありがとう」

 

 ほー、そらえがっだえがっだ。

 ほなまた。

 

「うん、君も無理しすぎないようにな……と言っても無駄だろうけどね。全く、似たとこあるよな私たち」

 

 No.1ヒーローに似てるって言われるとか勲章ですよクォレハ……。(歓喜)

 でもログ増えるからやめろ。(豹変)

 やめろっつってんだろ!!

 

 

 少女修行中……。

 

 

 はい!! ついに【赫】を覚えました!!

 ここからは【赫】と【身体強化】の習熟度upに切り替えましょう!!

 

 ……はい。体育祭前日になりました。

 

 ぬわああああん疲れたもおおおおん。

 ではステータスを確認していきましょう。

 

 

◇―◆―◇

名前:五条 玲珠

性別:女

年齢:15歳

誕生日:十二月七日

所属:雄英高校ヒーロー科1―A 10番

身長:150.2cm

才能値:100

頭脳努力値:37

身体努力値:29

性格補正:【ナルシスト】

Plus ultra:72/100

Plus chaos:28/100

 

個性:【無限】

 全てを見通す六眼と、偏在する無限を操ることが出来る。使い過ぎると酷い頭痛に悩まされる。

 

【六眼】     習熟度 14/100

 自分を含むあらゆる対象の個性とその使い方、可能性を視ることが出来る。色々と見えすぎるので負担が大きい。

 使用時【無限】の出力が著しく向上する。

 

【身体強化】   習熟度 23/100

 無限により生み出した引力と斥力で移動速度や打撃の威力などを強化する。常時発動出来る。

 

【アキレスと亀】 習熟度 47/100

 発動中、自分に触れようとした対象が無限に遅くなる。

 

【蒼】      習熟度 32/100

 無限の順転。発動した点を中心に、エネルギーを吸い込む。

 使い方次第では目にも止まらぬ速さで移動することが出来る。

 

【赫】      習熟度 12/100

 無限の反転。発動した点を中心に、エネルギーを発散する。

 使い方次第では目にも止まらぬ速さで移動することが出来る。

 

【茈】      未習得

 蒼と赫を衝突させることで生成される仮想の質量を押し出す。触れたものは消滅する。

習得条件:【蒼】と【赫】の習熟度50

◇―◆―◇

 

 乱数がデレてくれたおかげで、予定よりもかなり強くなっちゃってます。

 むしろ考えていたラインが最低限すぎたかもしれませんねクォレハ……。

 

 というか、【アキレスと亀】の伸びがヤバいです。

 この理由として、れずちゃんが今ストレスマッハで、周囲への警戒を解いてくれないんですね。

 原作五条のように一日中使っている訳ではありませんが、暇があれば勝手に無限を展開しておられます。

 

 結果として、半日ほどなら【アキレスと亀】が持続するようになってしまいました。

 どんどん燃費良くなるやん君……。

 

 【蒼】も、十発最大火力で放ってもピンピンしてるレベルには成長しました。

 30以上になってるのは、【赫】の修練をすると自動的に【蒼】の習熟度も上がるという親切仕様のお陰ですね。

 (根本の原理同じだし)ま、多少はね?

 

 【赫】はそもそも何故かシステム上【蒼】よりも燃費が良いので、あまり使用上限を考える必要がありません。

 

 凄い……凄くない?

 しかしオールマイトに勝てるかといったら……(やってみないと分から)ないです。

 

 何故って、試走でここまで来れたことがないからですね。

 走りの中で【赫】を習得出来たのもこれが最初です。

 

 ここでボコボコに負けるようでは五条チャートそのものが息をしないので、走者の心臓はかなりバックバクです。

 個性の都合上流石にないでしょうけど……。

 

 ただし彼は、【ショック吸収】や【衝撃反転】をなかった事にしてしまう究極の脳筋太郎です。

 個性頼りの守りに入るのは危険と言えるでしょう。

 見た目のアピール的にも愚策ですしね。

 

 

 では待ちに待った体育祭、イクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!

 カーンが入っている。+114514点。

 

「緑谷、お前オールマイトと五条に目ぇかけられてるよな」

 

「へっ!? う、うん……」

 

 ん? れずちゃんも?

 

「別にそこ詮索するつもりはねぇが……お前には勝つぞ」

 

 おー、ええやん!!

 がんばれ♡ がんばれ♡

 

「あと……五条……答えを出せっつってたよな」

 

 はい?

 あー……れずちゃんそんなこと言ってたな。

 

「まだ俺には……分からねぇ。でも――前の二の舞にだけは絶対ならねぇ。勝つぞ……お前にも」

 

 あ。いえ、れずちゃんは体育祭出ないんですよ。

 代わりに余興でオールマイトとバトるから見ててくれよな〜頼むよ〜。

 

「え」

 

「何……?」

 

「はァ!!?」

 

「「「「――はぁぁぁぁぁ!!?」」」」

 

 今回はここまで。

 ご視聴ありがとうございました。

 



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8裏 唸れ体育祭、推せ五条玲珠

※れずちゃん、やりたい放題につき注意


「選手宣誓!」

 

 麗しく、ハリのある声が会場全体に響き渡る。

 雄英体育祭――。

 一年の主審を務めるのは18禁ヒーロー、ミッドナイトだ。

 

「18禁なのに高校にいてもいいものか……」

 

「いい」

 

「静かにしなさい!! 生徒代表1―A 五条玲珠! 選手代表1―A 爆豪勝己!」

 

「二人!?」

 

「どういう事だ……?」

 

 事情を知らないA組以外の生徒がざわつき始める。

 

「……っていうか、かっちゃんなの?」

 

「入試二位通過……あぁそうか、五条が参加しないから繰り上げか」

 

「うわ〜〜そういうのかっちゃん嫌いそう……」

 

(……あの『姫君』が参加しないってどういう事よ)

 

 普通科の一般女子生徒は、A組の会話にただただ困惑した。

 

 ――白夢の姫君。

 

 誰が呼び始めたかは今となっては分からないが、雄英全体で広まりつつある五条玲珠の二つ名だ。

 

 曰く。

 彼女はどこからともなく食堂にいきなり現れては、大量の料理を食す。

 食していたと思ったら、もういない。

 実際は【瞬間移動】によるものなのだが……それを知る方法は彼らにはない。

 

 彼らが知るのは彼女が、実在するヒーロー科の生徒――五条玲珠であるという事のみ。

 

 ただただ、この世のものとは思えぬほどの美貌と所作――運が良ければ声に脳を焼かれ。

 幻のように消え去ってしまう彼女にかなわぬ恋をしては、その顛末を語るのだ。

 

 ハンバーグよりもうどんを先に完食していた、だとか。

 ちょっとむせてて可愛かった、だとか。

 

 ――本当の本当に運が良い者は、食堂でお昼寝をする彼女を見たという。

 とはいえ彼は運をそこで使い切ったのか、周囲の生徒の嫉妬を買いボコボコにされてしまったのだが。

 

 さて。

 そんな五条玲珠が、体育祭に参加しないとはどういう事なのか――。

 熱烈なファンを含め、A組以外の彼女を知る者全てが狼狽した。

 

(ま、そういう反応になるよね……ウチらも心底驚いたし)

 

「ちょっと、静かにしなさーい!! あぁもう、収拾つかないじゃない!」

 

「……任せてください、睡先生。あー……あー……マイク入ってるね。よし――――全員黙れ。口を閉じてボクを見ろ」

 

 天使の唄声のごとく澄んだ声によって、彼女の"命令”は届けられた。

 そして、そこにいた者全てが――静かになった。

 

 ……もちろん。

 彼女の命令に、はいそうします! と従ったわけではない。

 

(うん? え????? は?????????)

 

(え? 今の姫君? え???)

 

(…………夢?????)

 

 ただ、天使のような外見と声から悪魔のような一言が飛び出したギャップに、脳が処理落ちしたのだ。

 

「えー……ボクは今、生徒代表として呼ばれたわけですが――不思議も不思議、選手代表じゃないんですね。何故かというと、ボクはこの体育祭に参加しないからです」

 

 ……一体、何故――。

 全員が固唾をのむ。

 一体、何を理由に――――?

 

「理由はただ一つ。シンプルに、お前らが弱すぎるからです」

 

 ……はい?

 

「ボクが参加すると絶対一位になっちゃうんだよね〜。天地がひっくり返ってもそれ以外ありえないわけ。そんなの面白くないじゃん? エンタメとして成立しないじゃん? だから辞退させていただきました! 感謝しろよ三下共」

 

 ……。

 

「ま、一位取ってからなら特別に相手したげてもいいけどね。ご褒美ってやつ?」

 

 ……。

 

 ……いつまでも情報が、完結しない。

 

「さて。体育祭に参加しない代わりに、ボクはオールマイトとエキシビションマッチをやります。ここに来てる人は聞いてるでしょ? 生徒がオールマイトと戦うらしいぞ! ……って。それがボクです。今明かされた驚愕の真実〜!! こほん。だから、この宣誓は――オールマイトへの宣戦布告です」

 

 ……。

 

「――世代交代の時間だ、No.1。身の程を知れ――勝つのはボクだ」

 

 ……意味がわからない発言の数々に、今度こそ全ての生徒の脳が凍結した。

 ここまで言われれば普通はブーイングをする者が現れるはずだというのに。

 

 その場にいた生徒の全員が、まるで時を止められたかのように動かない。

 

 いや、生徒だけではない。

 

 一部の、一年生徒vsオールマイトのエキシビションマッチが行われると知っていた観客。

 その生徒が五条であると知っていた教師、1―Aの生徒。

 そのおよそ全員が――。

 

 長い時を超えてようやく戻ってきた脳を働かせ、心の中でこう叫んだ。

 

(そうはならんやろ!!!!!)

 

 ――――と。

 

(や、や、やりやがった玲珠のやつ……!! 絶対やると思ったけど!! やるとは思ってたけど!!!)

 

 最早恒例になりつつある五条の暴挙。

 驚きつつもその姿にどこか安心感すら覚えていたのは、耳郎響香。

 

 

 ……その一方で。

 

(いやいやいや五条さんやりすぎ!! 絶対やりすぎだって……っ!! オールマイトに身の程を知れなんて言う人、初めて見た……っ!! でも、そ、そうか……。これが常にトップを狙い続けるって事なんだ……!! そうですよね、オールマイト……!!)

 

 緑谷出久は、焦燥の果てに己の目指すべき道を見た。

 絶対何かが違うが、それを指摘してやれる人物はここにはいない。

 彼は憧れる人間を――見本にする人間を間違えた。

 

 

 ではオールマイトは? ――といえば。

 

(HAHAHAHA!! なんて素晴らしいジョーク――と言いきれないのが怖いところだが!! 受けて立つぞ、五条少女!!)

 

 爆笑しながらこれを見ていた。吐血もした。

 

 

(クソが……露骨に下に見やがって……!! 何も嘘を言ってねェのが逆に腹立つ……!!)

 

 爆豪勝己は、決意した。

 必ずや一位を取り、その上で五条に挑み――一泡吹かせてやる、と。

 

 

(なんだ、あの少女は……。オールマイトを倒すだと? このエンデヴァーでさえ敵わぬ偉業を、よくも簡単に言葉にできたものだ……単なる身の程知らずか? それとも――)

 

 新たなる革命の風の予感に――エンデヴァーの炎が揺れる。

 勿論、五条玲珠という名前自体は届いている。

 果たして噂通りの化け物か、それとも――。

 見た目だけのハリボテか。

 

 

「ふー……とまぁ、それだけです。皆体育祭頑張ってねっ、ボク応援してるよっ!!」

 

 皆の吹き荒れる心境を知ってか知らずか、天使の如き至高の笑顔。

 その場の全員が、彼女の背景に柔らかく咲き誇る花畑を幻視した。

 

 ああ、そうだ。さっきまでのは何かの間違いだ。

 五条玲珠――白夢の姫君が、目の前で"自分に笑いかけてくれている女神”が、あんなことを言うはずがない。

 いやむしろ、言ったとしてもいい。

 だってきっとそれは、癌にだってよく効く。

 ……要するに。

 

 罠でもいい――罠でもいいんだッ!!

 

 ……と。彼らは己が欲望に身を任せた。

 

(ダメだ……持っていかれる……ッ!!)

 

(あ、好き……無理、推す……)

 

「天使……」

 

「結婚したい……」

 

(うーわ、普通科とサポート科のやつら皆頭やられちゃってるよ……流石ウチの玲珠)

 

 出した被害もなんのその。

 言いたいことを言うだけ言って、五条は壇上から降りてきた。

 

「はい勝己、君の番。ごめんねー、インパクト重視なもんで。……言うことなくなっちゃったかな?」

 

「……ハッ! んなもん、はなっから一つしかねぇよ!」

 

「――へぇ?」

 

 マイクがONになっている事を確認し――爆豪は、端的に自らの決意を告げる。

 

「せんせー。俺が一位になる」

 

(((絶対やると思ったァァァ!!!!)))

 

 刹那、静まりかえっていた会場にブーイングが吹き荒れた。

 

「調子乗んなよA組オラァア!!! どんだけ自信過剰だよ!!?」

 

(自信……ちがう。かっちゃんは自分を追い込んでるんだ。……五条さんの元に辿り着くまで、走り続ける気なんだ)

 

(玲珠の後だと控えめに聞こえるのなんでだろ)

 

(……意外とやるじゃん、勝己)

 

 自分の作り上げた空気をいとも容易く変えた爆豪に、心の中で賛辞を送りつつ――。

 五条玲珠は、声を張り上げる。

 

「1―A組ィ!!! ――――見てるからね」

 

「……うん。見ててよ、玲珠」

 

「関係ねェ」

 

「……了解。五条さん――そして、オールマイト」

 

「……! 全力を尽くしますわ!!」

 

 

――。

 

――。

 

 

(……うん、いいね。これなら良いものが見れそうだ)

 

 1―A全員の活きの良い返事に満足した五条は、その場を後にした。

 

「さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう!」

 

 

 かくして、戦いの火蓋は切られた。

 第一種目――障害物競走、開始。

 

 スタートゲートのあまりの狭さに、生徒たちはぎゅうぎゅう詰めになってしまっている。

 つまりスタート地点が既に――最初のふるい。

 

 それを裏づけるかのようにして、プレゼントマイクのうるさい声が会場全体に響き渡る。

 

「さーて実況してくぜ!! 解説、Are you Ready!? イレイザーヘッド!! ……と、クレイジーNo.1プリンセス五条玲珠!!」

 

「……なんでお前もここにいる、五条」

 

「解説ボクとしょ……イレイザーヘッドの二人だよ? 言わなかったっけ?」

 

「全く聞いてねぇ……」

 

「言ってねえからな!! YEAH!!」

 

 相澤は二人の自由人に挟まれた現状を憂い――。

 眉間を強く抑えた。

 

(……つかプリンセスって何? ……まぁ、可愛いからいっか)

 



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8裏―2 全てを持って生まれた女の子

――「いいのよ。……おまえは――」

 

 いつからだろう。

 そこから先を、思い出せない。

 

 何よりも大切な母の言葉なのに。

 何よりも大切な母との記憶なのに。

 

 その事を考えると、最近は何故だか五条玲珠が頭の中に出張ってくる。

 

 何故だ?

 

 傲岸不遜で、まるで敵などいないかのように振る舞うあの女は――母とは似ても似つかない。

 なのに――なんでもないはずの言葉が、頭の中で、ぐるぐると。

 

 ずっと、ずっと――。

 母の言葉と、交互に。

 繰り返すように。

 

 

――「いいのよ。……おまえは――」

 

――「――それは、君の個性だろ?」

 

 

――「いいのよ。……おまえは――」

 

――「ヒーローになったら――」

 

 

――「いいのよ。……おまえは――」

 

――「――その時君は……どうするの?」

 

「うる、さい……っ!!」

 

 父――エンデヴァーの。

 左の力を使わずに"一位”になる――それは最早、無理を通り越して夢物語になった。

 

 だが、それがどうした?

 ここで嫉妬や憎悪に駆られ、自分の筋をねじ曲げるようではそれこそ父と何も変わらない。

 

 半分の力だけで、戦いきる。

 たとえどんな惨めな結果になったとしても――。

 俺だけは父を呪い、否定し続ける。

 

 それが俺の結論だった。

 ……その、はずだ。

 ――それで、いいはずだ。

 

 

 第一、第二種目を終えて昼休み。

 五条vsオールマイトのエキシビションマッチを控えた会場は、「早く見せろ」と熱狂の渦に包まれている。

 

「おい見ろよ皆!! 凄えぞ、五条の特集がネットのトップ記事だ!! 流石五条、漢だぜ!!」

 

「……? 五条は女だろ」

 

「あ、まぁそうなんだけど……ホラ、とにかく見ろよ。あ、緑谷も! 一緒に見ようぜ!!」

 

「うん、勿論見るけど……ええっと、『オールマイトに宣戦布告!? 謎の美少女、五条玲珠の正体に迫る』……。す、すごいな。こんな短時間で……」

 

「いい趣味とは言えませんわ……本人に許可はとっていないのでしょう?」

 

「ケッ、マスコミなんてそんなモンだろうが」

 

「…………少し俺にも見せてくれ」

 

「あ、轟くん。うん。いいよ!」

 

 ――轟がその記事を見たのは、正直興味本位だった。

 

 USJの襲撃の時、ただ一人――五条玲珠のみが、オールマイトと肩を並べて戦っていた。

 あの強さの原点が、果たしてどこから来るものなのか。

 どのようにして培われたものなのか。

 知りたくない者などいないだろう。

 

 だが、その内容は――。

 

「…………!!」

 

「……おい、なんだよこれ……デマじゃねえだろうな」

 

「……そんな。こんな事って――。だって、ウチ、こんなの、一度も……っ」

 

 

 

 ――控えめに言っても、地獄だった。

 

 

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

『オールマイトに宣戦布告!? 謎の美少女、五条玲珠の正体に迫る』

―はじめに―

 雄英体育祭当日、初めに誰よりも注目を集めたのはヒーロー科1―A 10番 五条玲珠さん(15)だ。

 麗らかな容姿と確かな実力を併せ持つ彼女は、ヒーロー科の入試を首席で合格している。

 

 彼女は人を食ったような態度でその場の生徒全員を挑発・鼓舞した後に、「オールマイトに勝つ」といった趣旨の発言を行った。

 恐るべきは、それに対し「何を言っているんだ」と嘲笑する声が一つもなかった事だろう。

 これは、彼女ならばやりかねないと思っている者が多数であることを意味するからだ。

 

 実際現在のTwit〇erのトレンド一位は雄英体育祭を抜いて五条玲珠であり、彼女の写真や発言が切り抜かれ、あるいは発掘され、大きなうねりを生み出している。

 そこで我々は、彼女の生い立ちや個性、現在のプロフィールなどを独自に調査した。

 その結果判明したのは、彼女の壮絶な人生だった。

 

 今ここで雄英ヒーロー科首席として立っていることが奇跡としか思えないほどの、悲劇がそこにあった。

 

1.プロフィール

 

 [写真1]

 朗らかに笑顔を浮かべる五条玲珠さん。

 

 [写真2]

 選手宣誓にてオールマイトに宣戦布告する五条玲珠さん。

 

 五条 玲珠(15)女性。

 誕生日十二月七日。

 個性【無限】詳細不明。

 ※インターネット掲示板やSNSにおいて、無限に関する数式を具現化する効果があると予測されているが根拠は薄い。

 

 

2.過去(※過激な表現が含まれるため閲覧注意)

 

 彼女の母は、彼女が齢六歳を迎えた日に死亡しており――――

 

 

 

(――雄英体育祭当日のネットニュースより一部抜粋)

 

 

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 ――幼少期。

 玲珠が最も恐れていたことは、目を開くことだった。

 

 目を開くと、何が何だか分からない気持ちの悪いものが一気に押し寄せてくる。

 それはやがて、血の涙となって――声にならないほどの痛みと共に、玲珠の視界を暗闇に閉ざしてしまう。

 

 開いても閉じてもどの道見えないのなら、閉じていた方が絶対にいい。

 そう思うほどの激痛が、常に玲珠を苛む。

 

 ――なのに。

 ――それなのに、目を閉じると父は激しく怒る。

 激しく怒って――割れた酒瓶で、殴ってくる。

 

 いや、殴られるだけならまだいい。

 たまに、刺される。

 それくらい、その個性なら防げる――本気を出しなさい――そうでなければ神がお怒りになる――と、言って。

 

「ぁ……っ、あ゛……っ」

 

「いつまで喚いておられるのですか、玲珠様!! この程度の痛み、現世に溢れる混沌に比べれば些事のはず!! あぁ、あぁ、神よ!! 神よ、蒙昧な我らに試練をお与えください……っ!! あああああッ!!」

 

「ひっ……ごめ……ん、なさいっ、ごめんなさい……っ!! おとう、さま、ごめんなさい……ッ!!」

 

「私に謝るのではありません!!! 神にお祈り申し上げるのです!! 玲珠様、あなたは神の力を持って生まれてきたのですから、神にならねばならないのですッ!!!!」

 

「は、い……っ」

 

 父が狂っているのだと分かったのは、母のおかげだった。

 イカれた思想に取り憑かれた父と違い、母は普通の人だった。

 だから――それだけ、強く憎まれた。

 

「お前なんかが……お前なんかが生まれたからこうなったのよ!!! 神? 違うわ、お前は悪魔よ!! 私の夫を返して……返してよ!!!」

 

 ――知るか、そんなもん。

 

 ……と、今ならそう言えるだろう。

 だが当時は――当時の世界は、家族が全てだった。

 それが誰であるかに関わらず、子供なんてそんなものだろう。

 

「おお、選ばれし神子様、玲珠様。私があなたにこのように試練を与えるのは、これが神の思し召しだからなのです。どうかご理解をいただけませんか。あぁ……どうか、この過酷溢れる世界に光をもたらしていただけませんか」

 

「……ひか、り……」

 

 そんな事を言われても。

 玲珠は生まれてこの方、光など一度も見たことがなかった。

 

「…………あたし、が……つよくなれば、いいの? そしたら……しあわせ、に、なれる……?」

 

「その通りでございます!!! 玲珠様が最強に、この世で最も高い頂に到達すれば!!! 自ずとこの世界は、救われ、光に満ち溢れるのです!!!」

 

 

 ……とあるところに。

 個性終末論と似たような、それでいてアプローチの異なるアホくさい理論があった。

 ――ある一つの神がかった個性によって世界は統一され、永久に続く王朝が出来、真の平和が約束される。

 ……そんなバカげた話だ。

 

 とある所に。

 そのバカげた思想に取り憑かれた――"人の個性を見ることの出来る個性”を持つ男がいた。

 

 とある所に。

 平凡な――無個性と判断されたものの実際は、"理解することさえ出来れば最強の武器となる個性”を持つ女がいた。

 

 男は彼女を見つけ、恋愛を装って彼女に近づいた。

 

「あれは――天啓でした。運命の出会い――神のお導きだったのです。成就させねばバチが当たるというもの……ああっ、あああ……」

 

 彼女は、どうしてか男を好きになった。

 理由などは、知らない。

 母とはあまり話せなかったから。

 

 

 女を手に入れた男は数々の手段を試みたが、どのように言葉を尽くしてもどのような試練を与えても。

 彼女にその個性を自覚させることは、ついに出来なかった。

 

「あなたは偽物だったのですか……!? 私を誑かしたのですか……!!? いや!! しかし!!! そ、そ、そうか……!! 私の個性と組み合わされば――――」

 

 醜悪にねじ曲がり、狂いきった末での個性婚――。

 そうして生まれたのが、五条玲珠だった。

 

 平凡な黒髪黒目の容姿をした二人から生まれたはずの玲珠は、それはそれは美しい見た目をしていた。

 

 ――突然変異だった。

 白銀に煌めく頭髪、青く透き通る双眸。

 彼女の容姿は、日を跨ぐにつれ、成長するにつれてより良く洗練されていく。

 

 それを見て、玲珠の父が"神の起こした奇跡である”と曲解してしまったのも頷けるほどの――十万年に一人の美貌が、そこにあった。

 

 そして。

 

 用済みとなった母は次第に粗雑に扱われるようになり。

 

 十二月七日――玲珠の誕生日に。

 恐慌に陥り、玲珠に襲いかかった。

 

 

「あんたが…………あんたが、死ねば、私を……私を見てくれるはず……ッ!!」

 

 

 そして不幸にも――その日、初めて玲珠は個性の制御に成功した。

 

 

「……は? 何よ……何よ、コレ!!!」

 

「……おか、あ、さま」

 

「この悪魔……っ、ついに本性を現したわね!!? 殺す気なんでしょ、私を!!! 邪魔な私をっ!!!」

 

「――――あた、し。おかあさまは……すき、だよ」

 

 だって、ふつうだから。

 ふつうの人だから。

 

 こんなことを言ったら、また怒られる。

 神様に、怒られる。

 父が、癇癪を起こす。

 けれど。

 

 何故だか、それを伝えるのは今しかないと思った。

 

「おかあさまが、いい。……ふつうが、いいの――あたしも、おかあさまみたいに……」

 

「…………れい、じゅ?」

 

――ふつうに、なりたい。

 

 鬱陶しく煌めく銀髪も、開けると疲れる訳の分からない青い目も、母に触れられなくなるこの個性も。

 何も要らない。

 

 ……ただ。あなたの愛が欲しい。

 

 その気持ちの一欠片でも母に届いたなら、どれだけ幸せだったろう。

 長い時間をかければ、玲珠がもう少し成長するのを待つことが出来れば――あるいは、可能だったはずなのだ。

 だって、母は壊れてしまっただけで――普通の人だから。

 

 だがその日。

 神の子に手を出した罪を、父は許さなかった。

 

「おおお!! 悪魔にっ、悪魔に取り憑かれてしまったのですね!!! 大丈夫――大丈夫ですよ……私が今あなたを救済してさしあげますッ!!!!」

 

「なんで!!? どうして!!? 私、こんなにあなたを愛しているのに……っ!!」

 

「人と人の愛などと、無知蒙昧にもほどがある!!! 戯言を言うのも大概にしなさい……!! 私が興味があったのは貴様のその"個性”だけ。真の神の子が生まれた以上は無用の長物ッ!! ああっ、なんと愚かしい女よ……ッ!!」

 

「……そんな…………それじゃあ、私、なんの、ために――」

 

――ふざけるな、と言いたかった。

――お前の方がよっぽど体罰をしているだろ、と言いたかった。

 

 

 母はお前のせいで狂ったんだ。

 母は自分のせいで狂ったんだ。

 

 

「おかあさん、なにも、わるくないのに。なんで……なんで……っ」

 

「――玲珠……」

 

 狂気に染まりきった父と裏腹に、皮肉にも母は正気へと戻った。

 あるいは、頭に昇った血が抜けきってしまったからかもしれない。

 

 いや――。

 今ならわかる。

 

 母は今際の際に、探したのだ。

 自らが生きた意味を。

 生きた証を。

 ――未練しかない人生に、それでも納得出来るように。

 

 玲珠の願いは――最悪の形で、叶ってしまった。

 

「ごめ、んね。玲珠…………ひどい、母親で……ごめんね。――――ごめ、んね」

 

 血の匂いの充満した狭い部屋で、初めて母に撫でられた。

 どうしてだろう。

 ただそれだけの事なのに、心の底から温かくなる。

 何を今更、などとはとても思えなかった。

 それだけ玲珠も母を愛していた。

 

 叶わぬ愛に身を焦がす――良くないところで、親子は似てしまったのかもしれない。

 母が死の間際に探した人生の意味。

 少なくとも、母にとって自分がそこにいた事が――たまらなく、嬉しい。

 

「ああ……今日、あなたの、誕生日だったのね。……ごめんね、祝ってあげられなくて…………ごめんね」

 

「おかあ、さま……おかあさま。おかあさま……っ!!」

 

「逃げて、玲珠…………ふつうに、生きなさい」

 

 その日――自らを抱きながら、涙を流して最期を迎えた母の亡骸の中で。

 初めて玲珠は、母の体温を知った。

 それでも、残酷に。

 

 とめどもなく溢れて、奪われて――急速に冷えていく。

 

 賢い人ではなかった。

 愚かな選択をした人だった。

 自分の事しか見えていない、哀しい人だった。

 

 ……それでも。

 この世でたった一人の、母だった。

 最期に、たとえそれが自己防衛の結果だったとしても……玲珠のことを想ってくれる――たった一人の。

 

「あ、あ…………っ、あ。あ゛あぁあああ゛――!!!!!」

 

 玲珠は初めて、自らが弱いことを呪った。

 

 

 力があれば守れた。

 力がないから守れなかった。

 力をつける術は、あったはずなのに。

 

「――お嬢ちゃん、大丈夫かい……?」

 

「…………はい」

 

 父は捕まった。当然だ。

 ヒーロー飽和社会の現代において、殺人などしてのうのうと生きられるはずもない。

 

「げふっ……ああっ!! 神よ――神の子よ!!! ぜー……っ、ぜー……っ。も、最早あなた様に私など必要ない……っ!! 試練を乗り越え、明日を生き――あなたが世界を変革するのです!!!! この地獄に、救いを――」

 

 ――うるさい。

 

 そんなこと、したくない。

 世界がどうとか、どうでもいい。

 

 

(…………おなか、すいたなぁ)

 

 

 明日から、どうやって生きよう?

 ――そうだ。

 ひとまずは、強くならなきゃいけない。

 じゃないときっと。

 また――奪われてしまうから。

 

 

「…………」

 

 

 望んでいた平和は、呆気なく手に入った。

 それからの"個性”の伸びは著しく、今までのことがアホらしくなるくらいで。

 目を開いても痛まなくなるまで、十日もかからなかった。

 自分を守ってくれる"透明の膜”が使えるようになるまで、五日もかからなかった。

 

 施設の人が優しく指導してくれたおかげだと分かっていても――つい、思ってしまう。

 ――これだけの、事だったなら。

 

「……ボクが言う通りにしてれば、守れたのかな……?」

 

 過去をどれだけ悔やんでも、もう自分はそこには行けない。

 失ったものは、かえってこない。

 

 平和の中に暮らしながらも、どこかぽっかり穴の空いたような。

 そんな気持ちで――毎日を過ごしていた。

 

 

 

 そして、運命の日。

 五年前。ふとテレビに映ったオールマイトを【六眼】で覗いて――。

 

「何だよ……これ……何だよ、これ……っ!!!」

 

 平和の象徴が、死にかけているという事実を知った。

 世界の根本を揺るがす、重大な事実。

 知ってしまった時点でもう、自分は"ふつう”ではいられない。

 

 どれだけ悩んだか、どれだけ苦しんだか。

 

 もうあまり覚えていないが――。

 確か、半年くらいは何も考えないようにして引き篭っていたように思う。

 

 そんなある日、母の遺言を思い出したのだ。

 自分を嫌っていた母が、最期にこの目を真っ直ぐに見て――伝えてくれた言葉。

 

 

――「ふつうに、生きなさい」

 

 

 そうだ。

 普通に、平和に、ただ自由を享受するために。

 

 分かっていて人が死ぬだなんて耐えられない。

 救えると分かっている命に手を差し伸べないなんて、心が壊れてしまう。

 ――過去をどれだけ悔やんでも、もう自分はそこには行けない。

 失ったものは、かえってこない。

 

 だからこそ、守らなくてはならないのだ。

 今度こそ、守らなくてはならないのだ。

 取り返しのつかない事が起こる前に――。

 

 

 この"個性”で、今より。

 五条玲珠は、最高のヒーローにならなくてはならない。

 

 ――もう二度と、大切なものを何も失わないために。

 いつか。

 ヒーローが暇を持て余すほどに平和な世界で、普通に生きるために。

 

 だから……。

 

「勝つよ。――オールマイト」

 



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9  雄英体育祭第一第二種目〜オールマイト戦

感想沢山頂き誠に恐悦至極!!
しかしながら返信おっつかない状態なので、そこが非常に申し訳ない!!
返信してなくてもちゃんと全部見てるから安心してくれよな〜頼むよ〜


 遂にNo.1を打倒するRTA、はーじまーるよー!

 前回の続きから、ついに始まる雄英体育祭!

 とはいえその内容は一部を除いて原作と(代わり映えが)ないです。

 

 違いとしては緑谷くんが初お披露目のOFAフルカウルでいい感じに立ち回っていることと、轟くんが炎を全く見せないことくらいでしょうか。

 

 第一種目の順位は!!

 一位爆豪くん、二位緑谷くん、三位轟くんのようです。

 原作のようなラッキーパンチが無い分、緑谷くんが順位を落としてしまったようですね。

 皮肉だなあ……。(適当)

 

 あ……なんかれずちゃんがプレゼントマイクとめっちゃ盛り上がってます。

 可愛いんじゃ^〜。

 一人だけテンション低い相澤先生も可愛いぜ……。

 

 一応最終種目のトーナメント表を確認しておきましょうか。

 

 

第一試合

緑谷vs心操

 

第二試合

轟vs瀬呂

 

第三試合

飯田vs発目

 

第四試合

塩崎vs上鳴

 

第五試合

芦戸vs耳郎

 

第六試合

常闇vs八百万

 

第七試合

鉄哲vs切島

 

第八試合

麗日vs爆豪

 

 

 ……ふむ。

 …………ふむ???

 あれ、なんか耳郎ちゃんいない?

 マジで原作より気合い入ってるな〜この子。

 やっぱ(れずちゃんのこと)好きなんすね〜。

 あっ、あっ。(仰げば尊死)

 

 どうやら爆豪チームに入って勝ち上がったようです。

 芦戸ちゃんは心操チームからのご様子。

 まま、原作改変のせいで青山くんいないからね……。

 

 しかしこのトナメ、かなり渋いですねェ……。

 緑谷くんの勝ちの目がだいぶ薄いです。

 

 vs心操は原作通り行くとしても、そこから飯田くん、轟くん、爆豪くんとボスラッシュなご様子。

 三人に(続けて)勝てるわけないだろ!!

 

 とはいえそちらは正直なんでも良いんですよね。(無慈悲)

 緑谷がある程度の名声さえ確保してくれれば、彼のヒーローへの道が開けてオールマイトが安心できるので、後は別に……。

 

 悲しいけどこれって、RTAなのよね。

 

 ッスーーーー。

 

 さて。

 昼休みのログをすっ飛ばしまくって、遂にvsオールマイト……といきたいところですが、どうやらイレギュラーが起こったようです。

 確認してみましょう。

 

 ……お?

 ……おお?

 

 なんかれずちゃんがネットの記事になってますね。

 しかも過去丸ごと……仕事はやスギィ!?

 

 あー……これ、多分AFOの仕業ですね。

 悲劇のヒロインれずちゃんが奇跡を起こす、という額面を作って民意を決定づけるための工作でしょう。

 

 ……後はれずちゃんへの些細な嫌がらせ……ですかねぇ。

 幾ら鋼のメンタルを持つ(当社比)れずちゃんでも、隠してた過去を晒されてヒロインに仕立て上げられてしまっては傷つきます。

 

 一回ゲイビデオに出演しただけなのに、行動の全てを切り抜かれて青い背景と共に晒されてしまう――それと同じようなものです。

 

 さて。

 何故AFOがれずちゃんをヒーローにしたがるのか? という所ですが。

 

 彼は、ヒーローという職業を枷として捉えています。

 市民を守ることを第一優先に考えなければならず、たとえどんなに凶悪なヴィランでも殺害は推奨されない……。

 

 厄介な個性を持つれずちゃんには一刻も早く立派なヒーロー(笑)になってもらって、枷を嵌めてやろうという思惑ですね。

 うーーんド畜生。

 

 ストーリー的にはキツイのかもしれませんが、RTA的にはうまあじなのでOKです。

 計測終了はヒーローになった瞬間なので、その後の展開がどんな地獄になろうと構いません。(走者の鑑)

 

 しかしれずちゃん、モノローグを連打で飛ばしまくってたせいで気づきませんでしたが、結構重い過去をお持ちのようです。

 

 強個性の子だとそういう確率が上がると言われているので、まぁ仕方ないね。

 

 可哀想は可愛い。

 なのでれずちゃんは世界一可愛い。

 L.E.D.照明終了。

 

 とはいえ、流石に仕事が早すぎませんかね?

 もしかしたらAFOのお仲間にれずちゃんの身内がいるかもしれませんね、クォレハ……。

 

 そういえば、前回のコメント欄に『これオールマイトと戦って消耗した所をAFOに突かれない?』とおっしゃっている方がいらしたのですが、それはAFOの行動アルゴリズムからして有り得ません。

 

 大丈夫だって、安心しろよ〜。

 

 そもそも勘違いしてらっしゃる方が多いのですが、彼の最大目的は"死柄木弔”の育成です。

 それ+個性奪取に関連しないリスクを伴った行動は、99.114514%しないんですね。

 

 個性奪取も自らが動くというよりは、手駒に拉致らせてからこの世の全ての食材に感謝を込めて、いただきます!! ――することが多いです。

 

 

「五条少女。……そろそろ時間だ」

 

 

 ――では。

 vsオールマイトと行きましょう!!

 勝ってくれよな〜頼むよ〜……。

 

「お・待・た・せ、しましたァァッ!! なぁどうせお前らこれ目当てだろ!! 雄英体育祭特別エキシビションマァァッチッ!! 戦うのは――コイツらだ!!!! 拳一つでなんでも打ち砕く、ナチュラルボーンヒーロー!! 平和の象徴、オールマイトォオオオ!!!」

 

 わーわー、きゃーきゃー。(棒)

 

「VS!! 俺たち全員の度肝を抜いたスーパーミステリアス・クレイジープリンセス!! 一年ヒーロー科首席、五条玲珠ゥウウウ!!!!」

 

「……長ぇな」

 

 あ、れずちゃん皆に手振ってる。カァイイねぇ……。

 

「さぁ……始めようか。手加減はしないよ、五条少女」

 

 出来ない、の間違いでは?(不遜)

 

 さて、オールマイト相手の立ち回りですが、基本的には自ら触りにいかないようにしましょう。

 

 体術は圧倒的に相手の方が上なので、その土俵で戦うのはまずあじです。

 【アキレスと亀】のおかげでダメージはなくとも、観客から見てオールマイト押してるやん! 

 口先だけでれずちゃん大したことないな! 

 ……となってしまいかねません。

 

 戦闘とはいかに自分の得意を押しつけるか、とセメントス先生も言ってました。

 それに倣いましょう。

 

「CAROLINA――――SMASH!!」

 

 ひたすら間合いを詰めて攻めてくるオールマイトを、【蒼】で迎撃し続けます。

 

「TEXAS SMASH!!」

 

 技の回転率があちらの方が良いので、いくつかは食らってしまいますが、無理にカウンターに行かないように。

 

「む……ッ!! そちらか!!」

 

 【瞬間移動】を巧みに使い、とにかく間合いを詰めさせないようにしましょう。

 

 逆にもし【蒼】で吹っ飛ばせたなら【瞬間移動】からの打撃でコンボを繋ぎ、火力の嵩増しを図ります。

 

「ぐっ……!! いい一撃だ、五条少女――っ」

 

 それ以外は、ひたすら迎撃に徹します。

 

 【蒼】で迎撃と間合い管理を続けていると、オールマイトはとある事に気づきます。

 ……そう。

 れずちゃんは、強い【蒼】を自分のすぐ側には作れないんですね……。

 

 この時気をつけるべきは、【New Hampshire SMASH】です。

 オールマイトの全力パンチの風圧、その移動速度はれずちゃんの反射を軽く超えて来るはず。

 見てからの対処では間に合いません。

 

 しかし【New Hampshire SMASH】には逆の方向を向かなければならないという致命的な弱点があります。

 【蒼】と【瞬間移動】による撹乱で、絶対にさせないように――。

 

「甘いぞ少女……ッ!!」

 

 ……あっ。

 ……うせやろ?

 

「――New Hampshire SMASHッ!!」

 

 前向いたまま肘で!!?!?

 んなけったいな!!!

 

 やばいやばいやばいやばい間に合って間に合って間に合って!!!!!

 許してくださいお願いします何でもしますから!!!!!

 

 え、【アキレスと亀】貫通しないよね? しないよね!!?

 あ……これ貫通しないけど【アキレスと亀】ごと吹き飛ばされる!!!

 

 え、え、なんでそんな感じになるんですか!!?

 

「DETROIT――」

 

 このままだと負け――――。

 

 

 

 

 

 

 ――ないんですね〜!!(一転攻勢)

 

 視聴者の方々はお気づきでしょうが、まだれずちゃんが使ってない技がありますよね?

 そうです。

 術式反転――【赫】です!!!!

 まぁ正確には、ここでは術式じゃないんですけど。

 

 さて。

 普通に【赫】を打てば、オールマイトお得意の風圧パンチ――【DETROIT SMASH】や【TEXAS SMASH】で相殺されてしまいます。

 それは非常〜〜〜〜にまずあじです。

 

 だから、カウンターかつ初見でこの技を放つ必要があったんですね。(MGTNMUGEN)

 

 【蒼】には近づくことが有効だと思わせる→近づくことをゴールだと思わせる→その隙を【赫】で突く。

 

 なんて完璧な作戦なんだぁ……。

 これって、勲章ですよぉ……。

 

 でも実の所、ここまで追い詰められるとは思いませんでした。(困惑)

 近づかれても普通に【アキレスと亀】で何とかなると思ってたんですけど、まさかそれごと吹き飛ばされるとは……。

 

 実際のところれずちゃんにダメージはないのですが、場外負けというルールにやられました。

 

 とはいえ、今かられずちゃんを勝たせるのもこの場外負けルールなんですけどね。

 

 ……では。

 

「SMASH!!!」

 

 パンチの瞬間から少しだけ遅らせて、【赫】を発生させる虚空を置きます。

 吹き飛ばされたら――コンマ0.01秒程でいいかな?

 ……今です!! 【赫】発動!!

 

 これで理論上は、こちらが場外になる前にステージ外に吹き飛ばせるはずです!!

 

「ぐ…………!! 何かあるとは思っていたが、これは…………!! ま、参ったね……!!」

 

「こ、これは――どっちだ!!? どっちが先に落ちたァ!!? HEYイレイザーヘッド!?」

 

「……いや、分からん。幸いビデオを回してる奴がいるから、それで判定しよう」

 

「……ってなわけでお前らァ!! 結果が出るまで少々お待ちくださ〜〜いッ!!!!」

 

 ……。

 

 ……。

 

 ――はい。

 

「オールマイト、場外! 勝者――五条さん!!」

 

 調理完了です…………!!!!

 

「負け、か……。――HAHAHA!! 五条少女…………君はやはり素晴らしいな!!!」

 

 はー……。

 ぬわああああん疲れたもおおおおん。

 いやー……キツいっす。(素)

 

 普通にもうれずちゃんに負けとかないでしょ(笑)とタカをくくってたんですけど、PS次第じゃ全然負けれますね、これ……。

 やめたくなりますよRTA〜。

 

 にしてもやっぱ【茈】がないと火力不足(オールマイト基準)で

 

 

 今回はここまで。

 ご視聴ありがとうございました。

 




今日のれずちゃん


【挿絵表示】


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9裏 天上天下唯我独尊

「……悪趣味だな、オイ……」

 

 皆にとっては、昼休み。

 だが五条玲珠にとっては――この先に控えた、人生を左右するであろう戦いのための準備時間。

 精神を整え、戦略を反芻し――この先の勝利を確定させるために、使わなければならない時間。

 

 ……だというのに。

 彼女はその心を沈められずにいた。

 

「…………いっそのこと、マスコミ全員殺してしまおうか」

 

 もちろん、本気じゃない。

 自分の怒りを抑えるために――出来もしないことを言っているだけだ。

 

 誰が、どのようにしてたどり着いたのかは分からない。

 ……情報があまりにも正確すぎる。

 獄中にいるはずの父に、聞いたのかもしれない。

 ――アレがまともな会話を出来るとは、とても思えないが。

 

(ダメだ……。落ち着け。分かっていたことだろ――有名になれば、いつかは必ずこういう時が来るって)

 

 それが思っていたよりも少し、早かっただけだ。

 ――落ち着け。

 

 悲惨な過去でこそあれど、だからといって迷うことなどもう何もない。

 清算の済んだ話なのだ。

 今更こんなものに惑わされていては、超えられるものも超えられない。

 

 こんなことじゃ。

 こんなことじゃ――。

 

 

「五条少女。……そろそろ時間だ」

 

「……っ! お……お迎え? ふふっ、デートの待ち合わせみたい」

 

「HAHAHA!! ナイスジョーク!!」

 

 ……自分は今、どんな顔をしているだろう。

 ちゃんと笑えているだろうか。

 最近どうにも、その辺りの制御がおろそかになっているような気がする。

 

 オールマイトは、危機に笑う人間が好きなはずだ。

 幾ら酷いことをされた直後でも、やつれた酷い顔を見せてはいけない。

 失望させてしまう――。

 

 笑え。五条玲珠。

 お前は――平和の象徴を、継ぐのだろう?

 ……と。

 そんな風に力んでいたから。

 

「試合前に……少し相談したいことがあるんだ、五条少女。いいかい?」

 

 オールマイトの気の抜けるような発言に、玲珠の頭は真っ白になってしまった。

 

「……?」

 

「死柄木弔……覚えているかい? USJを襲撃した主犯格の男のことだ」

 

「……はい。手だらけの」

 

「そうそう。……で、彼なんだが――」

 

 今更、彼がなんだというのだろう。

 AFOとの繋がりの件なら、既に真っ黒として解決されているはずだが――。

 

「彼ね。先代ワンフォーオール継承者……。私のお師匠の孫だった」

 

「…………え?」

 

「……参ったよ。AFOは本当に――――やられたら一番嫌なことを……的確に突いてくる」

 

「…………」

 

「私は彼を、思い切りぶん殴ってしまった。その背景を……何も知らずに」

 

 ――――。

 

「もし次――AFOの手下として相対した時……きっと私は彼を殴れない。もう彼を、純粋な悪のヴィランとして見ることなど……私には出来ない」

 

「……」

 

「だが、彼の出自を突き止められたのは君のおかげだ。……ありがとう、五条少女」

 

 オールマイトには、申し訳ないのだが。

 この時、玲珠の頭には話の半分も入ってこなかった。

 

 ただ――。

 オールマイトの、悲痛に喘ぐ哀しい表情だけが――。

 

 

(……そんな顔……するんだ)

 

 

 勿論、して欲しい、とは思っていた。

 自分が彼にとって頼れる友人になれば、平和の象徴への道が開けるから。

 

 でも。

 今はそんな打算なんて、一切なくて。

 ただ、とめどもなく流れる感情の奔流に、器が壊れて。

 そうして零れてしまった感情の雫だけが――。

 

(…………ああ、そうか)

 

 きっとオールマイトが今こうして頼ってくれたのは、ささくれ立った玲珠の心を癒すためなのだ。

 

 ――No.1、ナチュラルボーンヒーローの自分でもこうして人に頼るのだから、いつだって頼ってくれていいんだよ――と。

 

 ……きっと、そんなメッセージなのだ。

 

「オールマイト」

 

「……なんだい?」

 

「記事……見た?」

 

「あぁ。――見たよ」

 

「…………そっか」

 

 今まで。

 人に、自ら弱みを見せたことなんてない。

 見られてしまうことはあったかもしれない。

 

 その度に、完璧でなくてはならないと自らに言い聞かせ続けてきた。

 そうでないと――この先にある地獄を、平和には変えられないから。

 でも。

 

 

 ――ちょっとくらいなら、許してくれたっていいじゃないか。

 

 

 自ら施した呪縛が。

 優しく、包まれるようにして解かれていく。

 きっと、彼にしか話せない。

 

 同じ悩みを何十年も、ずっと一人で背負い続けてきた――自分よりも何倍も何十倍も辛い道を、"自ら掴み取った”彼にしか。

 

 気づけば……言葉が、零れていた。

 

「ボクも、今少し――いや、めっちゃ辛い。だってそうじゃん? いくら終わったことでもさ……嫌だったこと思い出させられて? 嫌だったことぜーんぶ世界中に公開されて? ……いいよぉ! って、言えるわけないじゃん??? バカか!? 脳みそ空っぽなのか!?? ボクは聖人君子じゃねえよクソが!! 一般美少女高校生だぞ労れや大人共っ!! こちとら生まれてから十五年しか経ってねぇんだよ……っ!!」

 

「……そうだね」

 

「大体さぁ――――!!」

 

「――――」

 

「――――」

 

「――――」

 

「――――」

 

 いつまで、そうしていただろうか。

 試合開始まで、もう時間はあまりないのに。

 

 お互いの、いつもは胸に秘めて押し殺していた愚痴。

 ――些細で余計な感情だ、と裏切り続けてきた自分の気持ち。

 

 それが、こんなにも簡単に話せる。

 

 ――そうか。

 

 

 これが、"ふつう”なのか。

 

 

「ぷっ……ぶははは!! ちょちょ、オールマイト……!! そこまで言っちゃっていいの!? やっば!!」

 

「HAHAHA!! 私だってたまには羽目を外したくなるさ!! 君だってそうだろう?」

 

「…………うん」

 

 気づけば、玲珠もオールマイトも。

 心の底から――笑えていた。

 そして、お互いに。

 

 

 それがとても幸福な事だと、噛み締めていた。

 

 

「さ……名残惜しいが、試合の時間だ。一応――抱負を聞いておこうかな? 五条少女」

 

「……抱負? ははっ! 勘違いしてるみたいだから言っとくけど――そっちが挑戦者(チャレンジャー)だから」

 

「HAHAHA!!!! 違いない!!」

 

 ――ありがとう、オールマイト。

 

 彼の前なら、玲珠は"ふつう”になれる。

 玲珠の前なら、彼も"ふつう”になれる。

 

 だからこそ。

 

 いつか彼は、終わってしまうから――。

 その前に。

 

「……勝つよ」

 

 

 同じ決意。

 それでも――先刻よりも、ずっと晴れやかだった。

 

 

 

⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 熱狂する観客。盛り上がる実況。

 雄英体育祭、異例のエキシビションマッチは――それでも、まだ始まったばかり。

 

「挨拶代わりだ五条少女――!! CAROLINA――――SMASH!!」

 

 それはオールマイト、必殺の一撃。

 数々の凶悪ヴィランを一発で倒した渾身のクロスチョップは、空を裂き、強力な突風となって――。

 少女に襲いかかる。

 

 思わず観客達はどよめいた。

 

 あれでは死んでしまうのではないか? ――と。

 オールマイト、それはいくらなんでもやりすぎだろう――と。

 そして。

 少女は一切その場から動くことなく、人差し指を立てた。

 

 

 ――放送事故を憂う観客たちの思惑は、最高の形で裏切られた。

 

 

「無限、収束――【蒼】。さ……はじめよっか」

 

 オールマイトの生み出した必殺の一撃は。

 ……ただそれだけで、無へと帰したのだ。

 

「HAHAHA!! ――相手にとって不足なし、だね!!」

 

 少女のあまりの規格外さに、笑い飛ばすオールマイト。

 

 続いて――理解の追いついた観客たちが熱狂する。

 

「「「お――おお。うおおおおおおおお!!!!!」」」

 

「す……すっげぇ!!! オールマイトのスマッシュ防ぎやがった!!」

 

「指一本だぜ指一本!!! かっけえ……凄ぇよ!! かっけえ!!!!」

 

 それに呼応するようにして、プレゼントマイクは声を張り上げた。

 

「YEAH!! 出たァオールマイトの代名詞、SMAAAASH!! ――を指一本で防いだァ!!? 何をした五条玲珠ゥ!!?」

 

「同等のパワーで相殺したな。言葉で言うのは簡単だが……オールマイト級のエネルギーを生み出すのは至難の業だ」

 

「HEYHEYHEY! ヒーロー科首席の名は伊達じゃないってかァ!!? ――だがオールマイト、果敢に攻め込むゥ!!」

 

「SMASH!!」

 

「……【蒼】」

 

 オールマイトが近づき、一撃を放つ。

 五条玲珠はそれを凌ぎ、一撃を返す。

 一秒一秒が、一つ一つの動作が――全て、必殺。

 

 しかし――オールマイトのそれは、五条の【蒼】よりも僅かに早い。

 

「TEXAS SMASH!!」

 

 遂に、オールマイトの拳が五条を捉え――。

 

「ちっ……早すぎんだろ……」

 

「shit! やはりダメか……!!」

 

 ――その直前で、不意に止まった。

 

「遂に一撃食らわせたぞオールマイトォ!! No.1の底力ァ――って、全然効いてねぇ!? 嘘だろ五条!? バリア……バリアか!? オールマイトの拳が届いてねぇ!! CRAZY!! おいイレイザーヘッド、五条の個性ってアレなんなの!? いくらなんでもやりすぎじゃねええ!!?」

 

「【無限】……説明が難しいんだが……要するに、アイツに近づくほど遅くなって絶対に触れられない。タイマンにおいては限りなく最強の個性と見ていい」

 

 イレイザーヘッドの解説に、観客はまたしてもざわめく。

 ネットに出回っていた情報と、限りなく一致しているからだ。

 

「マージかよクレイジーすぎるぜ五条玲珠ゥ!! ……ん? タイマン最強……って、イレイザーヘッド、お前の個性で消せねえの?」

 

「……場合による。あいつが先にアレを展開してた場合は【抹消】そのものがあいつに届かない――。つまり、見てないことになるから無理だ」

 

「とんだチートじゃねえか!!! 凄すぎるぜ五条玲珠ゥ!! これってもう最強だろ!!? どうするオールマイトォ!!?」

 

「チート……って言い方はあまり好ましくないな。勘違いするバカが出るだろう」

 

「おー? どういうこっちゃ?」

 

「簡単な話だ。同じ個性を別のヤツに与えてもろくに使えない。生まれ持った強烈なセンス、弛まぬ鍛錬――複雑極まる制御の果てにあの結果がある。五条玲珠は個性が【無限】だから強いわけじゃない。……五条玲珠が【無限】を持つから強いんだ」

 

「HEYHEYHEY!! いつになく喋るじゃねえかイレイザーヘッド!! もしかしてイチオシィ!?」

 

「……そういうわけじゃない。にしても……五条はやけにオールマイトから距離を取りたがってるな。くらってもいいはずの攻撃を警戒している……」

 

「そりゃあ――オールマイトだから、じゃねえの!!?」

 

「そうだな。五条は、自身のバリアを信頼していない。……そしてその判断は……恐らく正解だ」

 

「だが止まんねぇ、止まんねぇオールマイトォ!! ゴリ押しもここまで来ると神がかってんなあ!!?」

 

「TEXAS SMASH!!」

 

「――ここだ!!」

 

 繰り出される拳。

 引き起こす風圧、衝撃には指向性があり、その要素は元がパンチである限りは排除できない。

 五条はそれをギリギリまで引きつけて――そして、消えた。

 

 違う。

 

「む……ッ!! そちらか!!」

 

「気づいたところでもう遅ぇよ――【蒼】!!」

 

 その間に起こったことは、実にシンプル。

 【蒼】の衝撃をガードで防いだオールマイトの死角を――更なる【瞬間移動】によって突いた。

 

「ぐっ……!! いい一撃だ、五条少女――っ」

 

「フツー今ので終わりでしょ……っとに調子狂うな……!!」

 

「……しゅ、瞬間移動――――からの、凄まじい蹴りだァ!? いよいよなんでもアリだなオイ!!! ほんとにJKかァ〜〜!!?」

 

 拮抗する戦況――見ているこちらが呼吸を忘れてしまうほどの、緊張。

 しかし、当の二人は笑顔を見せて――拳を交わす。

 

「きゃははっ!! はははははっ!!」

 

「笑うかよ、五条少女――!! 私も、同じだがな!!」

 

 化け物二人の織り成す宴が、会場を揺らしていた。

 

「なるんだ。ヒーローに――オマエを超えて!! ボクがボクでいるために……ッ!!」

 

「その意気だ五条少女――とっておきだ、覚悟したまえ!!! New Hampshire SMASH!!」

 

「な――」

 

 それは――五条が間に合わない、と呟くことさえ許されない刹那の事だった。

 オールマイトはその肘で、後ろの空気を押した。

 オールマイトがノーモーションから繰り出せる、最高速度。

 【蒼】による瞬間移動に限りなく近いそれは――五条玲珠の【アキレスと亀】を揺るがした。

 

「やはり、な――ッ!! 私の拳は君には届かない――。だが!! 届かない領域ごと吹き飛ばしてしまえば良いということだッ!!!」

 

「――は……?」

 

「Plus ultra――DETROIT SMAAAAASH!!!」

 

(想定外――だから、どうした? まだ……やれる事はある)

 

 吹き飛ばされ、意識の霞む中で――それでも、と五条は目を見開いた。

 

 【蒼】とは、ゼロへと無限に近づいていく収縮を強化し、具現化した結果である。

 ゼロというゴールが決まっているが故に、イメージがし易い。

 イメージがし易いが故に、その事象の具現化は容易かった。

 

 ならば、その逆はどうであろうか。

 ゴールは無く、ただひたすらに発散し続ける無限のエネルギー。

 ……イメージしろという方が無茶な話だ。

 ゴールがそもそも存在しないのだから。

 

 が、故に。

 【蒼】によって起こる事象を――個性の起こす波、流れ――全てを追って。

 把握し、掌握し――逆再生するかの如く再現する他に、道はなかった。

 

 十五年。

 五条玲珠のこれまでの人生における、集大成。

 ――究極の奥義。

 

「収束――発散。無限反転――【赫】」

 

 その最大威力は――【蒼】の二倍を、ゆうに超える。

 制御出来るか? 分からない。

 そもそも発動は上手くいったのか? 分からない。

 

 だから――これは賭けだ。

 己が、己こそが最高のヒーローに相応しいと証明するための――。

 

「――Plus ultra――!!!」

 

 一転。

 静まり返る、観客。

 地に転がった、己とオールマイト。

 

 目に入る、全身で感じる情報の全てが――宴の終わりを示す。

 何やら先生たちがどちらが勝ったのかを確かめているようだが。

 

 五条にはもう、結果が分かっていた。

 

 立ち上がり――右腕を。人差し指を、ピンと伸ばして天に掲げる。

 

 変えられない過去。

 背負って立つ現在。

 失って、作る未来。

 

「オールマイト、場外! 勝者――五条さん!!」

 

 思考がクリアに。ただただ今は――。

 この世界が、心地良い。

 

 

「天上天下――唯我独尊」

 

 

 大歓声を浴びて――疲労が吹き飛ぶ。

 

 

 ああ、ようやく。

 ――ようやく、ここまで来られた。

 



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9裏―2 だから俺はヒーローを辞めた

週間ランキング2位ありがとナス!!
結局三話投稿してるバカがいるらしいっすよ!!
ホモは嘘つきってはっきりわかんだね。


「……なんで、そこまで」

 

 腹の底から零れた、純粋な疑問。

 それが思わず――口をついて出ていた。

 

 個性婚。

 熾烈な虐待。

 唯一の拠り所であった母の死亡。

 犯人である父の逮捕。

 

 己の境遇と重なった――などと、口が裂けても言えない。

 お前に自分の何がわかる、と癇癪を起こした過去の自分が恥ずかしい。

 

 五条玲珠は自分のそれよりも、遥かに辛く、苦しい過去を背負っていた。

 比べることすら烏滸がましい。

 

 ――それでも彼女は、笑顔のまま。

 太陽のように輝いている。

 

 あのオールマイトと、互角以上の戦いを繰り広げて。

 それでも尚、確かな未来を見据えて笑っている。

 

 轟には、理解ができなかった。

 彼女はどうして、あんなにも真っ直ぐでいられるのか。

 彼女はあの時、一体何を自分に伝えようとしたのか。

 

「…………」

 

 もう何も分からない。

 

 ――自分が、何をするべきなのかも。

 ――自分が、何をしたいのかも。

 

 ただ父を否定するためだけにここにいる自分の姿が――鏡を通して、酷く惨めに見えてしまった。

 

 自分の行動は正しいと、思っていたはずなのに。

 

 思い出せない、母との記憶。

 母はあの時――なんと言っていただろう。

 それを思い出せば、自分も彼女のようになれるのだろうか。

 

 

「……会いてぇ」

 

 

 会って、話したい。

 

 ――違う。

 

 会うべきなのだ。

 自分の母は今も――狭い病室の中で、孤独に生きているのだから。

 父の否定。父への復讐。

 そんなものより大切なものが、ずっと傍にあったのに。

 

 どうして、気づけなかったのだろう――。

 

 

「なるんだ。ヒーローに――」

 

 五条の言葉。魂の発露。

 彼女の声がどうしてこんな遠くまで聞こえるのかは分からない。

 

 ただ――ただ。

 あの日の母の姿と――彼女が重なる。

 

「オマエを超えて!! ボクがボクでいるために……ッ!!」

 

 あぁ、そうだ。

 ――あの時、母は。

 

――「でも…………ヒーローにはなりたいんでしょ?」

 

――「なりたい自分に……なっていいんだよ」

 

(……ん、で……なんで、忘れて、たんだ。こんな……大事なこと……)

 

 ずっと忘れていた、あの日の憧憬。

 いつかなりたいと憧れて。

 それでも、父のようにはなりたくなくて。

 

 幼い日の己が抱いた複雑な思いを、葛藤を――。

 丸ごと肯定してくれた、母の言葉。

 

(そうだ。……なりたいんだ……俺だって……ヒーローに――)

 

「轟、くん……? 泣いてるの……?」

 

 泣く――?

 心配そうな緑谷の声に、ハッとして目元を拭う。

 ……気づかなかった。

 

 まるで、今まで我慢してきていたもの全てが、洗い流されていくかのように――溢れて、止まらない。

 

「…………悪ィ。今は……見ないでくれねェか……」

 

「――うん」

 

 

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

「なんだ、アレは」

 

 なんだ。

 ――なんだ? 

 あの――少女の皮を纏った怪物は。

 

「やめろ…………それ以上は、やめてくれ」

 

 唯一無二、最強の個性。

 それを扱えるだけの頭脳と技術、センス。

 それを――あの歳で。

 

 本当に――同じ、人間なのか?

 

「やめろ…………!!!」

 

 初めて一位(オールマイト)を目の当たりにした時と、同じだ。

 これまで積み上げてきたものを、そんなものは無駄だと嘲笑われるような。

 自分を構成する全てを、否定されるような無力感――。

 

 燃やし、掲げてきた虚栄が、ハリボテのようにガラガラと崩れていく。

 

 ……とうに知っていたことだ。

 轟炎司は、超人には決してなれない。

 

 弱き者は、何も守ることは出来ない。

 ヴィランからか弱き少女を救おうとして――共に肉塊と化した、父のように。

 無意味に、弱者は淘汰される。

 

 だから、己に"努力(エンデヴァー)”などと名付けた卑屈な性根を――常に自らの弱さを呪い続けてきた。

 

 だから、つくったのだ。

 

 自分の弱さを踏み台に、おおよそ弱点のない完全無欠の個性を持って。

 (できそこない)の限界などいとも容易く突破し、やがてNo.1をも超えるヒーローになる息子を。

 

 そのため、に。

 そのためだけに、積み上げたというのに。

 

「…………ダメだ。あれは……"人”では勝てない」

 

 それさえも、無駄だというのか。

 

 自らを燃やし続けて――真の超人(オールマイト)の足元に、ようやくしがみついて。

 一歩一歩、着実に進むことしか出来ないが故に、そうしていたというのに。

 その道に限界を感じたが故に、人の道を踏み外したというのに。

 

 

 これだけやっても、通じないというのか。

 

 

 凡人の百歩は――超人の一歩に劣る。

 なのにいつも超人は、笑いながら千歩を進む。

 

 

「…………たの、む。やめろ――やめろ……っ!!」

 

 エンデヴァーの願いも虚しく、オールマイトは倒れた。

 少女は、立った。

 

「天上天下――唯我独尊」

 

 少女は嗤う。

 まるで、この世の全てが自分のためにあるかのように――空を仰ぐ。

 

 否応もなく、自分がただの傍観者であると気付かされる。

 

「――――おれ、は……なんの、ために……」

 

 その日、己の弱さと戦い続けていた一人の男の心が――ぽきりと折れた。

 

 

 

 その後…………恐らくは、エキシビションマッチから十分ほど経って、レクリエーションが行われている頃のこと。

 

「……親父? こんなとこで何してる……」

 

 廊下にて、己に話しかける声がした。

 よく知っている声だった。

 

「…………焦凍」

 

 振り返ると、やはり話しかけなければ良かったか――とでもいうような。

 明らかな後悔の色を浮かべた息子が、そこに立っていた。

 エンデヴァーは、気づけば声を発していた。

 

「焦凍――お前は――もう、好きにしろ」

 

「…………は?」

 

「お前のやりたいようにすればいい……俺は――もう。もう……いい……」

 

「――お、前……自分が、何言ってんのか……分かってん、のか……?」

 

 ――。

 

「ふ、ふざ――ふざけんな……っ!!! お前が――母さんを――ッ。なのにいきなり、いきなりどうしたっ!!? もういい、って……どういう意味だよッ!!? 俺たちは――母さんは、燈矢兄は、姉さんは――夏兄はッ!! もう、どうでもいいって言うのか!!?」

 

「――――あぁ。そうかも……しれない」

 

「嘘、だろ…………親父……親父!! 待てよ……待て!! せめて話をしろよッ!! 自分だけ納得して逃げてんじゃねえよ……ッ!言いてぇこと、沢山あんだよ……ッ!!」

 

 ――すまない。

 

 ――すまない。

 

 だがこれ以上、こんな所にいては、もう。

 ……もう。

 まともに呼吸など、出来る気がしない。

 

 

 逃げるようにして、その場を立ち去る。

 ひたすら、遠くへ――遠くへ。

 

 

 気がつけば、エンデヴァーはどこか見知らぬ路地で立ち尽くしていた。

 

 一体どこへ逃げるというのだろう?

 ――逃げ道は、とうに自分で塞いでしまったというのに。

 

 

「――可哀想にねぇ」

 

「誰だ、貴様は。――ヴィランか?」

 

 頭の中に直接語りかけてくるような――心の底をほじくり返すような、悪意を凝縮した声。

 

「君、頑張ったのにねえ。誰も認めてくれなかったねえ。誰も君を見てはくれなかったねえ」

 

 黙れ。――黙れ、黙れ、黙れ。

 

「――――貴様に……何がわかる……!!」

 

「分かるさ!! だって同じだもの。おかしいよねえ、生まれ持った才能がないってだけで、一番上に立つ男に負けたというだけで、まるで君はヒールだ。……だけど、もう大丈夫さ。これからは僕がいる。ほら、君の大好きな"力"がここにあるよ。さぁ共に掴み取ろう――No.1を」

 

 答えてはならぬと分かっていても。

 それでも――今のエンデヴァーに、正義としての気力など残ってはいない。

 

「――――」

 

 言っている意味は分からない。

 だが、もう……考えるのは疲れてしまった。

 いっそこの男に身を預けてしまった方が――楽に、なれるのかもしれない。

 

 

 そうだ。力だ。

 力さえあれば、自分だって。

 

 

「――分かった」

 

「いい答えだ、No.2! 僕と共に行こう――覇道を!!」

 

 

 エンデヴァーはこの日――。

 

 

 ――ヒーローを辞めた。

 

「強すぎる光は弱者を滅ぼす――。それくらい分かっていただろうに、五条玲珠――全く、薄情な子だ」




エンデヴァーはヒロアカ界のライナーなので、曇れば曇るほど味が出て……その……下品なんですが……下品なんでやめておきますね(素)


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10  雄英体育祭最終種目〜職場体験開始

感想の返信なんですが、先のお話のネタバレになってしまう場合も多々ありますのでやはり控えさせていただきます。
お兄さん許して。お兄さん許して。
ちゃんと……ちゃんと全部読んでるから……!!


 虚実を切り裂いて蒼天を仰ぐRTA、はーじまーるよー!

 前回の続きから、雄英体育祭をざっくり最高速で流していきます。

 

 ん? ちょっと待って。

 倍速が入ってないやん! 倍速が欲しかったから注文したの!!

 

 はい……。

 轟くんが何やら話しかけてきたようです。

 目元赤くない? カァイイねぇ……。

 

「五条――すまなかった。後……ありがとな。お前の言葉のおかげで……清算しなきゃいけねぇモンがハッキリした。クラスの皆にも……悪いことをしたと思う。これからは……しっかり、全力で向き合っていくつもりだ」

 

 ん? んーーー???

 あぁ、なるほど。

 まぁまぁまぁそれはそれでいいでしょう。

 

 緑谷くんの勝ち筋が薄くなるけど……まぁまぁまぁ。

 さてさて気を取り直して倍速。

 甥の木村、加速します。

 

 ところで……。

 倍速で流している間、暇ですよね?

 

 そんなみーなーさーまーのーたーめーにー。

 

 今回オールマイトに勝ったことで得られたうまあじを解説します。

 

 やっぱり走者の作るRTA動画は上手いな。

 解説がしっとりとしていてベタつかない。

 スッキリした上手さだ。

 ココアはバンホーテンのものを使用したのかな?(意味不明)

 

 さてまず一つ目は、仮免の正当化です。

 現在れずちゃんが取得しているヒーロー仮免許は世間には隠匿されており、本当の本当にどうしようもない時のみ使用が許可されたものです。

 

Q.なんで?

A.一生徒に前例のない特別扱いしてることが世間にバレたらヤバいに決まってるだろ! いい加減にしろ!!

 

Q.オールマイトに勝っちゃったし別によくない? 皆も賛成してくれるよ。

A.そうだよ(便乗)

 

 と、そういう事です。

 ……お、ちょうどホークスから電話がかかってきました。

 

「もしもしー、五条ちゃん。いやーホントにやりきっちゃうとはねぇ、驚いたよ!! 興奮鳴り止まないね。さて……というわけで。約束通り、たった今君の仮免取得が公に公開された。――おめでとう、君は今日からセミプロだ」

 

 や っ た ぜ。(投稿者:変態糞目隠し)

 

 

 

 二つ目のうまあじは、エンデヴァーの脱落です。

 

 彼は基本的にはお顔と家庭環境に似合わず善性で、特に平和の象徴としての役目を継いでからは(闇落ちの"や”の字も)ないです。

 

 とーこーろーがー。

 

 心がブレまくっているこの時期に、彼の弱い部分につけ込みまくることで闇堕ちさせることが出来ます。

 

 というのも、原作でエンデヴァーはハイエンドに対して"お前は違った未来の俺だ”と言っているんですね。

 彼公認の闇堕ちなら当然実装されるというもの。

 そのための条件というのが、

 

・オールマイトがヒーローを引退していない

・轟焦凍が体育祭において一位を取らず、炎も見せない

・操作キャラがオールマイトに勝利する

 

 の三つです。

 

 一つ目と三つ目は言わずもがな。

 

 二つ目の条件は、体育祭の途中にエキシビションマッチとして三つ目の条件達成を組み込むことで解消します。

 体育祭の途中でもエンデヴァーの闇堕ちイベントは発生しますので。

 

 ところで、本走では運良く屋内戦闘訓練で轟くんと絡むことが出来たので、あそこで心を揺らしていましたが……。

 実の所あれは、第一種目や第二種目において轟くんが炎を使ってしまうリスクにはなり得ません。

 

 というのも、轟くんの反抗期を終わらせるための手順は案外シンプルなんですね。

 

 1.一回目の説得(悩みながらもより氷のみに固執)

 2.二回目の説得(炎を使うようになる)

 

 という具合です。

 もちろん説得が轟くんに届かなかった場合はカウントされませんが……。

 

 ちなみにさっきの轟くんのエンカウントですが、多分れずちゃんのオールマイトとの戦いぶりが説得として作用したのでしょう。

 

 後は、れずちゃんの過去がバレたことも原因になってるかもしれないですね。

 轟くんの共感を呼びそうな内容だったので。

 

 つまりあれは轟くんの炎が解禁された、という認識で大丈夫です。

 でも君吹っ切れた直後にお父さん堕ちるけど……お、大丈夫か大丈夫か?

 (家庭環境)バッチェ冷えてますよ〜〜。

 轟くん家は地獄だってハッキリわかんだね。

 

 で。

 視聴者の方は今こう思ってらっしゃるはずです。

 エンデヴァーの脱落がうまあじなわけないだろ! いい加減にしろ! ……と。

 

 いいえ、うまあじです。(鋼の意思)

 公安の身にもなってください。

 

 急遽現れた、オールマイト級の新星。

 箔もつきまくり、仮免を特別に与えても全くの無問題。

 そこにNo.2ヒーローエンデヴァーの突然の失踪!!

 

 ふむ……。何か匂うな……。(すっとぼけ)

 ではここで問題です。

 

Q.原作において最終的にヒーロー殺しステインの確保は誰の手柄になった?

 

 もう答えを言っているようなものですが、ちゃんとその時になったらまた解説しようと思います。

 

 ちなみにエンデヴァーの闇堕ちイベントが発生したかどうかを確かめる方法は単純で、轟くんの試合の際に観客席に彼がいるかどうかで判断できます。

 今回は瀬呂くん戦から炎を使っているようなので、本来なら親バカ激励が入るはずなのですが――。

 

 はい。ありませんね。彼がここにいない証拠です。

 堕ちろ! ……堕ちたな。

 

 え? 轟くんを救いたいのか地獄に落としたいのかどっちかにしろって?

 いや……自分、一刻も早くヒーローになりたいだけなんで……。(困惑)

 

 ちなみにエンデヴァー好き好き後方腕組み保護者面ヒーローお兄さんことホークスくんですが、エンデヴァーが堕ちたことで間違いなくれずちゃんに固執するようになります。

 

 うーーん、うまあじすぎる!!

 最高だぜ!!

 

 

「優勝は……爆豪勝己!!」

 

 

 お、どうやら終わったようですね。

 一応体育祭のリザルトを見てみましょうか。

 

 

優勝:爆豪勝己

準優勝:緑谷出久 負けた相手:爆豪勝己

ベスト4:耳郎響香 負けた相手:爆豪勝己

ベスト4:飯田天哉 負けた相手:緑谷出久

ベスト8:切島鋭児郎 負けた相手:爆豪勝己

ベスト8:轟焦凍 負けた相手:緑谷出久

ベスト8:常闇踏陰 負けた相手:耳郎響香

ベスト8:塩崎茨 負けた相手:飯田天哉

 

 ……ふむ。

 …………ふむ????

 緑谷くん勝っとるやんけ!!!!

 え、てか耳郎ちゃん……え?

 

 ……恋する乙女のパワーは凄いわね。(感嘆)

 

 ちなみに走者はやってる間はひたすらログ飛ばしに夢中だったので後から録画で内容を確認したのですが……。

 滅・茶・苦・茶面白かったです。

 

 なので別動画としてそちらもアップロードしようと思います。

 興味のある方は是非。(ステマ)

 

 というわけで体育祭、調理完了です……!!

 ぬわあああああああん疲れたもおおおおおおおん。

 

「お疲れ様でした!!!」

 

 オールマイトおいゴルァ!! 

 そこはPlus ultraだろ、いい加減にしろ!!

 

 では休校日二日をすっ飛ばして――。

 

「コードネーム……ヒーロー名の考案だ」

 

「胸ふくらむヤツきたぁぁぁぁあ!!!」

 

 というわけでヒーロー名をつけるのですが……。

 入力速度を考慮して、何も入力しません。

 

 すると名前をカタカナにしただけのヒーロー名となります。

 それで問題ないです。

 

 切島くんのように既存のヒーロー名をリスペクトすると特定のイベントが起こせるなど、ヒーロー名がゲームに絡まないということはないのですが……。

 

 まぁ、今のれずちゃんにはもう関係ないですからね。

 

 というわけで、『インフィニティヒーロー レイジュ』ちゃん爆誕です!!

 仮免もらった後に決まるとか順番ぐちゃぐちゃスギィ!!

 

 

 さぁさぁ、待ちに待った職場体験です。

 4300ほどの事務所から指名が来ていますが、行き先は決まっています。

 そうです。

 迷いなくホークスを選びましょう。

 彼は最もれずちゃんを贔屓してくれるヒーロー(当社比)なので。

 

Q.デクと一緒じゃなくていいの?

A.ヒント:れずちゃんの個性

 

 それはまぁさておき。

 恐らく一緒になるのは、常闇くんと……。

 

「五条、お前はどこにするんだ?」

 

 あ、轟くんオッスオッス!!(気さくな挨拶)

 ホークスの所行くゾ^〜。

 お前もいいよ! こいよ! 夢に賭けて夢に。

 

「あぁ……じゃあそうするよ。五条と一緒の所にしたいって思ってたんだ……」

 

「え……お前らそういう関係かよぉ!!? 轟テメェイケメンだからって抜けがけしやがって!!! オイラ許さねえ、許さねえぞぉ!!」

 

「イケメンと美少女……ハイスペ完璧コンビじゃん。あーやだやだ……」

 

「れ、玲珠……? ち、違うよね……? う、嘘だよね……」

 

 これもう分かんねぇな。

 無駄なログ増やさないでもろて……。

 

 ちなみに轟くんがこんな事を言い出した理由ですが、間違いなくエンデヴァー失踪のせいですね。

 彼は闇堕ちしつつも几帳面なので、しっかりエンデヴァー事務所を畳み、退職届も出しておられます。

 

 そんなわけで轟くんは母との面会を通して心機一転、ヒーローを目指すことにしたものの……何から手をつければいいか分からない状態なんですね。

 原作ならエンデヴァーがいるんですけど……僕が食べちゃいました。

 

 食べた!? 食べたの!? この中の中で!?

 は〜〜つっかえ。(二重人格)

 

「それじゃあ……よろしくな」

 

 しょうがねえなぁ〜。(悟空)

 立たせてやるか!(ヒーローの志)

 

 と、いうことで。

 轟くんの面倒をある程度見ることになりますが、彼は非常に優秀なので、しっかり誘導してあげれば結果的にタイム短縮になります。

 流石やで……。

 

 でも天然なので、少し目を離すとすーぐやらかします。

 この末っ子め!!!!

 

 では新幹線移動などは加速して飛ば

 

 今回はここまで。

 ご視聴ありがとうございました。



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10―裏 轟焦凍:オリジン

 皆がもうずっと、遠くにいるような気がする。

 

 当たり前だ。

 皆は夢に向かって走り始めているのだから。

 その間――自分は何をしていた?

 

 そうだ。

 ただ過去と向き合えず、己が大切なものを壊した理不尽に対し癇癪を起こして――立ち止まっていた。

 ずっと、足踏みをしていた。

 

「焦凍――お前は――もう、好きにしろ」

 

「…………は?」

 

「お前のやりたいようにすればいい……俺は――もう。もう……いい……」

 

「――お、前……自分が、何言ってんのか……分かってん、のか……?」

 

「ふ、ふざ――ふざけんな……っ!!! お前が――母さんを――ッ。なのにいきなり、いきなりなんなんだよっ!!? もういい、って……どういう意味だよッ!!? 俺たちは――母さんは、燈矢兄は、姉さんは――夏兄はッ!! もう、どうでもいいって言うのか!!?」

 

「――――あぁ。そうかも……しれない」

 

「ふざけんな……!! ふざ、けんなよ――ッ!!」

 

 父は、何故か勝手に結論を出してしまった。

 勝手に諦めてしまった。

 

 轟がこれまで積み重ねてきた"否定”が望んだ結果。

 なのに――それが、酷く理不尽に感じられた。

 もう自分が、何を望んでいるかなんて……。

 

 ――否。

 

 分かっている。

 もう分かっているはずだ。

 だって、気づかせてくれた。

 

 ……掴んで、離すな。

 大切なものを、ようやく取り戻したばかりなのだから。

 

――「それは、君の個性だろ?」

 

 そうだ。

 

(俺の――原点を、思い出せ)

 

 ――父になどもう、惑わされるな。

 

(お母さんと……仲直り、するんだ)

 

 謝るんだ。精一杯。

 これまでのことを、全て。

 それが――。

 

「お、い。轟……やりすぎだろ……熱ィ……寒ィ……痛ェ……」

 

「――わ、悪ィ……。力みすぎた……」

 

 氷はともかく、炎は如何せんコントロールが効かない。

 ……長い間使ってこなかったのだから、当然だ。

 

 自然と沸き起こる瀬呂範太へのドンマイコール。

 その中で俺は――。

 

(これで…………いいのか?)

 

 どこか、自分の行いに違和感を感じていた。

 これが正解では――ないような。

 

 自分だけスッキリして、後からどうこうなんて。

 それで本当に良いのか?

 今の自分に、皆の背中を追う資格は本当にあるのか?

 

 ――やっぱり、母に会うまでは。

 この炎は、使わない方が……。

 

 ……大丈夫だ。氷だけでも……戦える。

 そういう風に、特訓してきたのだから。

 だが、それでは結果がさっきまでと――。

 

 

 葛藤に答えが出ないまま、緑谷戦がはじまった。

 

「OFAフルカウル――スマァッシュ!!」

 

「自分が凍らされる前に、凍る傍から壊していったか。それにしても……個性の制御が出来るようになってからのアイツの成長には目を見張るものがあるな」

 

「うちの出久凄いでしょ!! ボクが育てましたっ」

 

「……嘘つけ」

 

「嘘じゃないしい!!」

 

「HAYHAY!! 脳筋かよ緑谷!! でも好きだぜそういうのォ!! 盛り上がるしな!!」

 

「くっ……!!」

 

 ダメだ。氷は避けられるか壊される。

 何故だ? 

 緑谷の動きが格段に良くなっている。

 確かにセンスはあると思っていたが――あんな動きを出来るやつではなかったはずだ。

 

 あれではまるで、爆豪の――。

 

「攻め方が単調だよ、轟くん……ッ!! デトロイト・スマッシュ!!」

 

「カハ……ッ!!」

 

「生々しいの入ったァ!! 緑谷すげーなオイ!!」

 

「轟はどこか調子崩してんな……このままだとジリ貧だぞ」

 

「うーん……何か悩んでるっぽいねー。まぁ思春期だしねー」

 

「タメのお前がそれを言うか……」

 

「HEY!! 俺抜きで漫才してんじゃないよ解説コンビィ!!」

 

「「別にしてない」」

 

 ジリ貧――そんな事は分かっている。

 

 でも、分からない。

 もしここで炎を使うことが――母への裏切りになってしまったらと考えると、力が出ない。

 

「行くぞ、轟くん……ッ!! 君に勝って――!! 期待に、応えるんだッ!!」

 

「――」

 

「だから君も――――全力でかかってこいッ!!!」

 

「……っ! お前、は――」

 

 そうだ。

 全力で、勝ちたい――そう願う皆の気持ちに、応えなければ。

 

(……五条)

 

 そうだ。

 

(……最初に気づかせてくれたのは、お前だったよな)

 

 ……聞きたい。

 どうしてあの時のあんなどうしようもない自分に、手を差し伸べてくれたのか。

 

 最後尾でうだうだ足踏みしている自分に、一番前で走っているお前が、どうして。

 

(……緑谷)

 

 差し出された手を取れない自分を、どうしてここまで。

 自分も、勝ちたいだろうに――。

 

 聞きたい。

 話がしたい。

 友達に、なりたい。

 

 そのためには――。

 

 ……なりたい自分に、なるために。

 ……気づかせてくれた皆に、報いるために。

 ……全てを清算して、皆の隣に立つために。

 

 今全力で戦うことを――どうか、許して欲しい。

 後でいっぱい、謝るから。

 絶対、毎日会いに行くから。

 

(……五条……緑谷――お母さん。……ありがとな)

 

 ――炎を燃やせ。

 憎み続けてきた父の炎ではなく。

 自分の中で燻り続けてきた――己だけの炎を。

 

「俺だって、ヒーローに……ッ!!」

 

「ははっ……!! 凄っ……!!」

 

「何笑ってんだよ、緑谷――。どうなっても知らねぇぞ……!!」

 

 ――【膨冷熱波】。

 氷結で周りの冷気を下げた後、左の炎で急激に温度を上昇させる事で空気を膨張させ超強力な爆風を引き起こす――現時点での、最高火力だ。

 

 直後。

 

「ははっ…………痛ぇ。……凄ぇな」

 

「轟くん場外!! 緑谷くん、三回戦進出!!」

 

 ――轟は、場外の壁に叩きつけられていた。

 

 

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 時を戻して――心操戦。

 

 緑谷は【洗脳】の効果を受けた先に――何か、ぼんやりとした……それでいて確かな存在感を放つ、光を見た。

 

 心の奥底に沈んでいくような、緩い感覚の中で。

 誰かが言葉を交わしている。

 

「五条玲珠が生まれて、世界の均衡が変わったのだ」

 

(…………五条、さんが? どういう、ことだ……)

 

「違ぇねぇ。OFAは――全く新しい、別の力になりつつある」

 

(……ちがう。いまは、それよりも――大切な、ことが)

 

 勝たなくては。

 約束したんだ。

 

――「君が来たってことを、知らしめてほしい!!」

 

 約束、したんだ……!!

 期待、してくれてるんだ――ッ!!

 

「……おい、聞いてんのか。テメェの話だぞ――緑谷出久。さっさと――起きろ!!」

 

「…………はっ」

 

 気づけば、緑谷は心操に勝っていた。

 何が起こったのかは――今でも分からない。

 

 

 轟戦でも、同じことが起こった。

 

「どうなっても知らねぇぞ……!!」

 

 吹き荒れる炎と冷気。

 今までのような弱点は最早そこにはない。

 

 その刹那。

 脳を直接がっしりと掴まれるような、明らかな虫のしらせに従った。

 理由は分からない。ただ、なんとなく――繰り出すべきタイミングが分かった。

 

(今、だ……!!)

 

 ――【危機感知】。

 これがOFA覚醒の兆しであることを、今の緑谷は知る由もない。

 

(ただのパンチじゃ足りない……!! 合わせ技で、相殺――OFA100% デラウェア・デトロイト・スマッシュ――ッ!!)

 

 指による衝撃波と、パンチによる二段構え――威力は、単純計算でも二倍。

 

 腕は壊れた。

 だが――足が残っている。

 

「たま、ごが……っ、われっ、ないっ感覚!! OFA5%――フルッ、カウル――!!」

 

 轟は膨大な出力の余波と、遮られてしまった視界のせいで動けない。

 

 緑谷の繰り出した蹴りは――轟の顔面をそのままぶち抜いて。

 遥か外――場外の壁まで叩きつけた。

 

「ゲホッ! ゲホッ! ……ははっ…………痛ぇ……ッ。……凄ぇな」

 

「轟くん場外!! 緑谷くん、三回戦進出!!」

 

「勝っ…………た。――――やった……オールマイト――ッ!!」

 

 

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 リカバリーガールに治療して貰った後。

 ――先生に無理を言って、病院に直行した。

 どうしても今、会いたかった。

 会わなければ、と思った。

 

 自分の存在が母を追い詰めてしまうと思って、今まで会えなかった。

 怖かった。

 またあの時のように――拒絶されたらと思うと、足が竦んだ。

 

――「怖い時、不安な時こそ、笑っちまって臨むんだ!」

 

 テレビの先で、いつも彼が言っていた言葉。

 ヒーローを目指す者なら、誰だって知っている言葉。

 

 ――いっぱい、話をしないといけない。

 会って、沢山の話を。

 

 父に囚われた過去を、今もきっと引きずってしまう母を……救けるために。

 

 たとえ、望まれていなかったとしても。

 

――「君の個性だろ」

 

――「全力でかかってこいッ!!」

 

 彼らのように――。

 なりたい自分に、なるために。

 

「……焦凍?」

 

「――お母さん。……久しぶり」

 

 これが――轟焦凍の、スタートラインだ。

 



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10―裏2 耳郎響香:ライジング

 わかっている事だった。

 知り合ったその日から、ずっと。

 

「天上天下――唯我独尊」

 

「五条! 五条! 五条! 五条!」

 

 五条玲珠一色に染まる会場を見て――それでも、耳郎の心は酷く穏やかだった。

 

 こうなってしまう事は、分かっていたから。

 まさか――流石に、オールマイトにまで勝ってしまうとは思わなかったけれど。

 

 流石に……あんなに酷い過去を、持っているとは思わなかったけれど。

 

 どれだけ追いすがろうと努力しても、あいつの輝きは眩しすぎて――。

 彼女には絶対に届かない。

 

 でも、自分だけが知っているんだ。

 あいつは決して、過去を、悲しみを乗り越えてなんかいない。

 縛られ続けて、苦しみ続けて――。

 それでも前に進めるほどに、強く在れてしまうだけ。

 

 強さという呪いに憑かれた、普通の女の子。

 

 強さ? 立場? 

 それが離れているから、なんだっていうのだろう。

 何が起ころうとも、私だけは。

 彼女を、たった一人の普通の子として見ていたい。

 

 彼女から頼ってきて欲しい、というのが本音だ。

 過去について知った時、どうして話してくれなかったのかと怒る気持ちが止められなかった。

 

 でもそれは、彼女が耳郎のことを本気で想ってくれているからこそだ。

 

 重荷になってはいけない。

 彼女が心底安心して、ここにいられるように。

 

 そのためにはやっぱり、強さが必要だ。

 先の考えと矛盾するようだけれど、それは確かなことだ。

 

 だから、勝たなければならない。

 この体育祭は――絶対に。

 

「第五試合! ロックにお届け爆音波! ヒーロー科 耳郎響香!!」

 

「んでウチがロック好きなこと知ってんの……」

 

「VS! あの角からなんか出んの!? ねぇ出んの!? ヒーロー科 芦戸三奈!」

 

「にっひっひ〜! いくら相手が耳郎でも手加減しないかんね!」

 

「こっちのセリフ!」

 

「どっちも頑張れぇぇえええ!!! 格闘ゲームみたいに服が破ける感じでぇええ!!!」

 

 峰田の戯言がここまで届いてくる。

 

(クソすぎかよ……)

 

 ……それはさておき。

 芦戸三奈の強みはその類まれな身体能力。

 近寄らせてしまっては勝ちの目はない。

 

 コチラの強みはリーチ。

 伸縮自在のこの耳で、なんとか距離を――。

 

 ――。

 

(あれ? これって――)

 

 ……玲珠とオールマイトの時と――一緒なんじゃ?

 玲珠はあの時。

 わざと、オールマイトの攻撃を誘っているように見えた。

 わざと相手の土俵に乗ったフリをして――初見殺しの必殺を決めた。

 

 そして、勝った。

 

「さぁ行ってみようかァ!! 第五試合、スターーーート!!」

 

 芦戸の近接を、ミスを装って誘う――。

 出来るだけ、被害の少ないやり方で。

 

「甘いよ耳郎!!」

 

 やっぱり、芦戸は凄い。

 コードの隙間を当たり前のように潜ってくる。

 でもここまでは想定内。

 

「くっ……!」

 

 初見の必殺を決める……。

 とはいえ、耳郎に玲珠の【赫】ほどの効果を望める技は無い。

 

(違う……必要ない。一瞬、相手の思考を奪うだけでいい……!!)

 

 なぜなら、耳郎はプラグを相手に刺しさえすれば、爆音によって大幅なアドバンテージを得ることが出来る。

 

 爆豪や轟、緑谷などはともかく――他の者には一撃で勝負を決められるだけの火力がある。

 

 だから。

 耳郎は――ミスを装い、芦戸の足元にプラグを刺した。

 

 ――【ハートビートファズ】!!

 

「どこ狙って――って、わぁああ!?」

 

(なんてお粗末な威力……ッ!! でも、今はこれでいい!!)

 

 今の【イヤホンジャック】が出せる音量など、音響増幅装置がなければこんなものだ。

 地面に軽くヒビを入れ、足元を崩す程度。

 

 それで充分――ッ!!

 

「貰った……っ!!」

 

 狼狽する芦戸にプラグを差し込み――。

 心音を、流し込む。

 

「しまっ――いッ!!? がっ……」

 

「芦戸さん失神! 二回戦進出、耳郎さん!」

 

「……っし!!」

 

「芦戸失神KO!! 勝者は耳郎響香ァ! 途中まで押されてるように見えたがな!!」

 

「いや……あれは多分ブラフだろうな」

 

「多分ボクのやり方の真似かな〜! 響香流石、よく見てるよね!!」

 

「全部手のひらの上だったってか!! クレバー!!」

 

 ……そこまでのものじゃない。

 今のはたまたま、本当に思いつきが上手くいっただけ。

 

 同じことをもう一回やれと言われたら無理だろう。

 それに恐らく、次の相手は――。

 

 常闇踏陰。

 リーチ互角、火力と手数はアチラの圧勝。

 正面から殴りあったら――。

 

 ダメだ。勝てるビジョンが見えない。

 

(……どうしよう……どうすれば――)

 

 

 悩んでるうちに、試合はどんどん進んで行った。

 

「オオオオラァァァァァッ!!!!」

 

 果敢に挑む麗日を、爆豪はいとも容易くあしらってしまう。

 それでも――振り払われるごとに増していく、麗日の瞳の光。

 

「まだまだァァァァッ!!」

 

「お茶子ちゃん……」

 

「ウチ、見てらんない……っ」

 

 けど――けど。

 顔を覆って――すぐに、やめた。

 

 何故か、目を逸らしてはいけない気がした。

 爆豪も、心がないわけではない。

 

 むしろその逆だ。

 麗日お茶子というヒーローを心底認めて、警戒しているからこその徹底的な爆撃。

 

(本気で……やってるんだ)

 

 ――試合は爆豪が勝った。

 それでも麗日お茶子の魅せた執念は、会場を震わせた。

 

 

 次の試合は、もっと凄かった。

 緑谷と轟――朝の様子から、何か因縁めいたものがあることは察していた。

 

 緑谷出久――。

 玲珠が何やら気にしている、少し不思議な男子。

 

 気が弱く、オタク気質で、のめり込むと周囲の状況も気にせずブツブツと頭を回し出す。

 でも、実戦では誰よりもヒーローで。

 誰よりも人のために戦う――まるで、オールマイトのような背中になる。

 

 実際オールマイトともよく話しているようだし、何か繋がりがあるのかもしれない。

 

 ……玲珠が気にしてるのも、きっとオールマイト絡みだ。

 彼に何か特別な思いがあるとか、絶対そんなんじゃないはず。

 多分、いや、そうでないと困る――。

 だって、玲珠は……。

 

 ……。

 

 ……。

 

 ふぅ。落ち着け。そうじゃない。

 

 要するに、だ。

 

「だから君も――――全力でかかってこいッ!!!」

 

 ハッ、と、させられたのだ。

 

 そうだ。

 勝算がないからなんだというのか。

 

 ヒーローは勝てるヴィランにしか挑まないのか?

 ――違う。

 

 どれだけ格の違う相手でも、ヒーローは自らの命さえ投げ打って果敢に挑んでいく。

 

 なぜならヒーローは――守るために戦うのだから。

 

(ウチが、守りたいのは――)

 

 玲珠。

 傲慢で、イタズラ好きで、喧嘩腰で、優しくて、誰にでも手を差し伸べて――。

 可愛くて、美しくて、寂しがりで、強がりで。

 ――――大好きな、あの子。

 

 想う度に胸が張り裂けそうになって苦しいのに、どこからか無限に力が湧いてくる。

 不思議で、どうしようもない自分の気持ち。

 

 耳郎響香は思う。

 玲珠のためなら、何だってできる――と。

 

 ……覚悟は、決まった。

 

 

「二回戦第三試合!! スタートだァ!!」

 

「【黒影(ダークシャドウ)】!!」

 

「アイヨォ〜〜!!」

 

 ――やっぱり、中距離戦でひたすら打ち合うのは分が悪い。

 押し負けて相殺が難しい上に、手数もあちらの方が多い――勝てる要素がない。

 

 それなら……ッ!!

 

「つか、まえた――ッ、ん、ぎぎぎぎ――――っ!!!」

 

 凄まじい速さで迫り来る【黒影】を、正面から受け止める。

 場外にならないよう、必死に踏ん張って――ギリギリの所で、耳郎はそれを受け止めた。

 

「何……っ!!?」

 

「たし、かに……吐きそうなくらい……痛い、けど――ッ」

 

 一撃なら充分に――耐えられる。

 死にそうなほど痛いけれど――死にそうなだけだ。

 本当に死ぬわけじゃない。

 

 こんなもの――こんなもの。

 あの子の受けてきた、心の痛みに比べれば――!!!!

 

「常闇、アンタの武器ってさぁ……手数、でしょ――っ!? こういう根気比べ、苦手なんじゃないの――ッ!!!?」

 

 受け止めた【黒影】にプラグを差し込み、心音を流す。

 【黒影】は常闇と繋がっている。

 

 つまり――音もそのまま届く。

 ……本人に刺した時ほどの効果は見込めないかもしれないが。

 

「ヒィ!!? ウルサァ!!?」

 

「ぐ、あああああっ!!? ……ッ、お、押し出せ――【黒影】ェ!!!」

 

「ァ――アイヨォォ!!」

 

「意識保ってんの流石ぁ……!! てこでも、動いてたまるかぁあーーーっ!!!!」

 

「うおおおおおおおッ!! 堪えろ、堪えろ【黒影】ォ――ッ!!」

 

「これはアチィ!! アッチィ勝負だァァ!!!」

 

「手数で劣る耳郎が、一撃必殺の勝負に持ち込んだ形だな……。だが、あの速度で襲い来る影によくもまぁ正面から飛び込めたものだ……」

 

「肉を切らせて骨を断つってかァ!!? 可愛い見た目に反してすんげェ作戦だ耳郎響香ァ!!」

 

「響香はロックだからね〜、やるときゃやるんだよ!!」

 

 ……そうだ。

 やらなければならない時に、全力で――。

 

「だが火力不足だ……。ここまでしてようやく五分。ここから耳郎が勝つにはもう一つ……何かが要るぞ」

 

 ビートをアゲろ。

 腹の底から煮え滾るこの思いを。

 心を音に乗せて。

 Plus ultra――ッ!!

 

 全てを、吐き出せ――ッ!!

 

「【グランドロックビート】――ッ!!!!」

 

「か、は…………ッ。み、見事―――ッ」

 

「――常闇くん、失神!! 準決勝進出、耳郎さん!!」

 

 ――勝った。

 どっと力が抜けて、その場に座ってしまう。

 

 ……てかめっちゃ痛い!!

 何これやば、こんなんさっきまで耐えてたの――ッ!!?

 

(え、ウチ凄くない……?)

 

 

「――――。一皮、剥けたな」

 

「熱い接戦の果て、勝者は耳郎響香ァ!! 最高だ!! もうこのまま優勝しちまえェッ!!」

 

「うお〜〜!!! 響香〜〜〜っ!! かっこよかったよ〜〜っ!!」

 

 玲珠のラブ(?)コールが、マイクを通して会場中に響き渡る。

 絶対そういう意図ではないのだけど――。

 

 自分の心は汚れてしまっているから、そうとしか聞こえないのだ。

 

 ……。

 

 あー……。

 

「――もう。……そういうの、恥ずいからやめてよぉ……」

 

 

 そして。

 準決勝で耳郎響香は――爆豪勝己に、何も出来ずに惨敗した。

 



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10―裏3 デクvsかっちゃん2

最近いつにも増して原稿のガバが多いので心機一転初投稿です。
おにいさんゆるして……。


 あいつは、走っているのにじわじわと追いついてくる。

 むしろどこか、もうずっと先にいるような気さえする。

 

 いつの間にか、あいつの背中を――。

 

 ……思えば、ずっとそうだった。

 何か自分に足りないものを持っているあいつが、気持ち悪い。

 そう思って、ずっと遠ざけてきたのに、どれだけ殴ってもどれだけ叩いても――アイツは後ろに張りついて来て。

 

 同じ人に憧れて、同じ道で走っているはずなのに。

 あいつは。

 

 まるで、全てを見下ろし俯瞰しているようで。

 

 気持ち悪い。

 

(なんなんだ……ッ!! 何なんだクソが……ッ!!)

 

 苛立ちの原因は、あいつだけではない。

 

 ――五条玲珠。

 五条玲珠が何かする度に――否応なく、自分が特別な主人公などではないのだと気付かされる。

 

 緑谷出久、轟焦凍、耳郎響香の覚醒。

 何より自分自身も。

 

 ――全員が、何かしら強い思いを五条玲珠に対して抱いている。

 

 あの女には、どれだけ走っても追いつけない。

 いつの間にか幼き日に憧れた頂点と同じ――いや、それよりも高い場所にいて。

 

 だからなんだ?

 だったら、もっと爆発的に自分が輝けばいい。

 心のどこかに――もう仕方ない、と諦めている自分がいるのが、爆豪にとって最も腹立たしい事実だった。

 

 とてもじゃないが――認められない。

 

 個性【無限】。確かにとんでもない個性だ。

 生まれつき、最高のヒーローになる事が決まっているかのような最強の個性だ。

 あのクソを煮詰めたような記事を見る限り――どうやら、本当にそうらしいが。

 

 だが、そんな事はどうでもいい。

 自分より強い奴がいるだなんて、当然のことだ。

 そもそも――。

 

 No.1に憧れて。

 それを超えるために、ここへ来たのだから。

 

「右……フェイント――ここで【瞬間移動】――【蒼】。……違ぇ。最適解じゃねぇ……アイツ……わざと隙作ってやがる……オールマイトも気づいた上でノってんのか」

 

 頭をフル回転させて、奴の思考を動きから逆算する。

 たどり着いた答えは――釣り。

 あれは……わざとだ。

 

 そしてそれは、概ね正解だった。

 

 ――五条玲珠は、化け物ではない。

 戦闘の組み立てや考え方、その精神性も――人の延長線上にあるものだ。

 

 それなら、諦めるわけにはいかない。

 

(何もかもが遠いわけじゃねえ。……一つ一つだ。一つ一つ追いついて――必ず追い越してやる……追い越して……)

 

 刹那、雑念が闘志に水を差す。

 だって、このやり方は――あいつと、まるで同じではないか。

 

 

「勝つよ、かっちゃん……今度こそ……ッ!!」

 

「なぁオイ、デク――テメェ、オールマイトとどんな関係だ?」

 

「――え?」

 

「半分野郎も言ってただろうが。……白髪女の依怙贔屓も受けてるよな、お前」

 

「……えっと――」

 

「――言えねぇならそれでいい。オールマイトに迷惑かけてぇわけじゃねェ……ただ、確かめさせろ。……お前の何がそうさせるのか――俺は何処で間違えたのか」

 

「まち……そんな事……」

 

「あンだよ!!! あるはずなんだ……ッ!! テメェばっかりオールマイトに認められて――俺が見向きもされねェ理由ッ!! デク――ガチで来いや」

 

 それを確かめて、先へ行く。

 これまでの全てを――爆豪勝己の道を、肯定するためにも。

 

 

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

「ケロッ……どっちが勝つと思う?」

 

 あまりに直球で、かつ答えづらい質問を投げかけたのは、蛙吹梅雨だった。

 思ったことをなんでも言う、と自負するだけはある。

 

 そして。

 その隣に座る耳郎響香は、うーんと逡巡した後に、こう答えた。

 

「爆豪……かな」

 

「何故かしら?」

 

「自分が全力出して何も出来ずにやられた……やっぱアイツすげー。ってのもあるけど。――緑谷、なんか爆豪みたいな動きするようになったじゃん? ……オリジナルに勝てるのかな」

 

「あー、アレな。アイツいきなり凄くなったよな」

 

「努力の結晶――漢だぜ!! でもそれ言うならさ、耳郎も凄かったよな!!」

 

「……別に。フツーだし」

 

「……私はデクくん応援したいなあ……」

 

「……もしかして麗日って――」

 

 そこまで言って、耳郎は言葉を飲み込んだ。

 

「ん?」

 

「――ごめ。なんでもない」

 

 ――皆の前で言うのは、流石に公開処刑というものだろう。

 もし自分だったら恥ずかしさで五回は死んでしまう。

 

(いや、でも……)

 

 もし緑谷と麗日がくっつくのなら、耳郎の悩みのタネが一つ減ることになる。

 緑谷と玲珠。

 二人の関係性がそういうものでない事は見ていれば分かるものの――。

 

 やはり、ああも仲良くしているのを見ると嫉妬心は湧いてくる。

 

(――そんな理由で人の恋応援するとか、不純ってレベルじゃないなあ、ウチ……)

 

 どんどん思考が良くない方向に行っている気がする。

 

(……仕方ないじゃん……。好きなんだもん)

 

 こんなに頑張って、態度に出して伝えているのに――。

 いつまで経っても察してくれない、あの子が悪いと思う。

 

 

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 緑谷と爆豪――二人の決勝戦は、切島vs鉄哲に並ぶほどのシンプルな。

 お互いの機動力を立体的に活かした、三次元での殴り合いとなった。

 

(右!? いやちがう、それは前に破ったはず――修正も早かった!! それならこれはブラフ――)

 

「考えるよなァテメェは!! その一瞬が命取りだクソがッ!!」

 

「がっ……!!」

 

 強打をモロにくらいつつも、緑谷は距離をはかり直す。

 しかし――爆豪はそれを予測していた。

 

「考えさせねェよ――仕切り直しなんざクソ喰らえだァッ!!!」

 

「マジか……ッ!!」

 

 その後の攻撃の応酬も――パッと見では互角に見えたが、最後には必ず爆豪の攻撃がクリーンヒットしている。

 

(動きを予測して行動を決める僕のやり方じゃ間に合わない……ッ!! 見てから動かれる――これじゃ後出しジャンケンをしてるのと変わらない……ッ!! っていうか――)

 

 緑谷出久は、違和感の正体に気づく。

 

(前より早い……ッ!! この短期間に――強く、なってる……!!)

 

 どれだけ思考を巡らせても、追いつけない。

 緑谷が一手繰り出している間に――爆豪は二手。

 

(この、ままじゃ――ッ)

 

 そして、刹那。

 再び――覚醒。

 

「!?」

 

 本来なら受ける他に選択肢のなかった爆豪の一撃を――間一髪で、受け流した。

 そしてそのまま、流れるようにカウンターを繰り出す。

 

「スマッシュ!!」

 

「ぐァっ……!?」

 

(――ま、ぐれか……? いや、違ェ……!! あいつまた、何かしやがった――ッ!!)

 

 ――【危機感知】。

 ただし……制御不能。

 

(な――アイツ、ギアいきなり上がって――ッ)

 

(いた、い――ッ!! あたま、が、割れ、ぞうだ……ッ!!)

 

 緑谷は、OFAの示すその感覚に従って――ただ、脳内で弾き出された最適の動きをトレースし続ける。

 

「あ゛あ゛ああああッ!! ズマァ゛ッシュ゛!!!」

 

「がっ……!? ふざ、け――ぐああああっ!!?」

 

 爆風で衝撃を和らげた爆豪は、場外ギリギリの所で膝を突いた。

 

「はァ……ッ!! はァ……ッ!! まだ、まだッ、これから――。…………は?」

 

 そして――緑谷の脳はキャパシティを超え。

 その意識を飛ばした。

 

「緑谷くん失神!! よって――爆豪くんの勝ち!!」

 

「ふざ、け――。お、い。お゛い゛ッ!! 何やってんだ……勝手にぶっ倒れてんじゃねえよ゛……出久……ッ!! こんな、こんな……勝ち方――!! 意味、ねェだろォが――ッ!!」

 

 気絶した緑谷に、泣きながら掴みかかった爆豪は――ミッドナイトによって、眠りへと誘われた。

 

 雄英体育祭、優勝。

 爆豪勝己にとって――この上ない、屈辱の上での勝利だった。

 

 

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 雄英体育祭、終了後。

 生徒たちは各々の疲れを癒すため、そそくさと帰宅していく。

 

 それは雄英体育祭優勝者、準優勝者である二人も――同じことだった。

 

「……待って。待って――かっちゃん!!」

 

「――――ンだよ……」

 

「オールマイトと……どんな関係、って」

 

「……あぁ。話せねェんだろ……」

 

「……ううん。話すよ――オールマイトに、許可も貰ったんだ。……君になら、大丈夫だって」

 

「……そうかよ」

 

 緑谷は――どうしても、爆豪だけには話したいと思った。

 

 母にも伝えていないオールマイトとの秘密。

 世間には絶対にバレてはいけない、平和の象徴のルーツ。

 

 それでも。爆豪には――。

 それでも。爆豪だけには、伝えなければ――。

 

 オールマイトは緑谷の必死の願いと――爆豪の精神状態。

 そして五条玲珠の助言を受けて、特別に許可を出した。

 

 息を、吸って――吐く。

 

「僕の力は――オールマイトから、授かったものなんだ」

 



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11  職場体験〜プロヒーロー免許取得

 俺を殺していいのは本物の英雄だけなRTA、はーじまーるよー!

 

 では、ホークスとの会話を流しながら、前回までに届いた質問を返していきます。

 

Q.轟くん家、お金どうするの?

A.エンデヴァーがお金沢山残していってます。No.2ヒーローの稼ぎを舐めてはいけない。(戒め)

 

Q.エンデヴァーはヴィラン活動をするの?

A.一般人や自分より弱いヒーローに対するヴィラン活動は一切しません。

 

Q.荼毘はどうなるの?

A.エンデヴァーがプロをやめた段階で全てが頓挫し、執念の炎さえ消えて人知れず死んでしまいます。彼にとってのエンデヴァーはあくまでヒーローなので。

 

Q.職場体験って二人までじゃね?

A.れずちゃんは特別枠です。インターン的な。

 

 こんな所ですかね。

 ではこの後のチャートについてちゃーんと解説していきましょう。(激ウマギャグ)

 職場体験編でやる事は非常にシンプル。

 

 社会貢献度と知名度、支持率をひたすら稼ぎます。

 

 これらは内部データを参照しないと分からない隠しパラメータですが、上げ方は至極単純。

 ひたすらヒーロー活動をして人を助ける。

 凶悪なヴィランを華やかに退治する。

 

 ……簡単ですね!

 ホークスの事務所を選んだのは単純。

 彼の仕事が一番早く、RTA的に効率が最適だからです。

 常闇くんと轟くんは勿論、サイドキックの方々もホークスのスピードには着いて来れません。

 

 ついていけるのはれずちゃんだけです。

 これだけでも実力の証明となり、ホークスからの評価によって社会貢献度がぐーーんと上がります。

 

 速スギィ! コンビでひたすら人を助けまくり、休憩時間になったら緑谷くんの所に行って修行を手伝います。

 後はずっとそれの繰り返しです。

 

 ……てかなんでグラントリノのとこに爆豪くんも一緒にいるの??

 これもうわかんねぇな……。

 まぁRTAには無関係なので続行です。

 

 

 少女ヒーロー活動中……。

 

 

 少女ヒーロー活動中……。

 

 

 お、等速に戻りましたね。

 れずちゃんはいつも通りパトロール中、しかし何やら緑谷くんからメッセージが送られてきているようです。

 位置情報だけ……なるほど、これはデートのお誘いじゃな?(すっとぼけ)

 

 ではホークスに一言おことわりを入れて、【瞬間移動】でその位置に向かいましょう。

 

 え、轟くんも行きたい? 

 ウーン……ええよ!(快諾)

 ホークスは連れていきません。彼には彼の仕事がありますし、何より連れていったら手柄取られちゃいます。

 もう許せるぞオイ!

 

 

 さてさて到着、するとあら不思議!! 

 そこはぶっ壊された新幹線、地獄の様相!!

 

 三人(の脳無)はどういう集まりなんだっけ?

 

 原作ではステインを見つけたタイミングで一斉送信される位置情報ですが、れずちゃんは緑谷くんと特別仲が良い上、【瞬間移動】の事も知られています。

 なので、こうして前もって教えてくれるんですね。

 なんていい子なんだぁ……。

 でもそれなら来るまで待っててくれても良くない?

 まま、(居場所分かってるから)エアロ。

 

 さてさて。

 原作ではエンデヴァーの活躍で倒される脳無きゅん達ですが、な・ぜ・か・彼はいません。(すっとぼけ)

 いやほんま、何でやろなぁ……。

 

 

 四つ目の素早い脳無はグラントリノが片付けてくれるので、残りの二匹を迅速に始末しましょう。

 イクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!

 

 激しい火事が起きているのを見つけたらその場所に【瞬間移動】。

 この際、必ず翼の個体から仕留めるようにします。

 逃げられると一瞬で追いつけるとはいえ、色々とロスになるので。

 

 ……ヨシ!(現場猫)

 

 再生持ちの方も頭をぶっ潰してあげれば問題ありません。

 

 工事完了です……。

 

「すご……って、君学生!?」

 

 あ、マニュアルくんだ! オッスオッス!(気さくな挨拶)

 大丈夫だって安心しろよ〜。(仮免)

 よしよし、納得してくれました。

 

「五条さん! 来てくれたんだね……!!」

 

「あァ!? ンで白髪頭がここにいんだよ……!!」

 

「位置情報を送っておいたんだ。五条さんなら仮免も持ってるし、何より【瞬間移動】ですぐここに来れるから……! あ、そうだ!! 五条さん、飯田くんがもしかしたら危ないかもしれないんだ……!!」

 

 その場で緑谷くん爆豪くんと合流したら、脳無の身柄引渡しをマニュアルくんに任せて路地裏に急ぎます。

 路地裏にステインがいるであろうことは道中で緑谷くんが推理してくれます。

 

 少女移動中……。

 

 ……いました!! 

 ヒーロー殺しステインです。

 その場に倒れているのは飯田くんとプロヒーローのネイティブくんですね。

 飯田くんが何やら叫んでますが無視します。

 

「……増援か。――ガハァッ!!?」

 

 ステインを気絶しない程度にぶん殴ったら【瞬間移動】、人の目のある……そうですね、先程の火事現場辺りに行きましょう。

 

 じゃあオラオラ来いよオラァ!!

 

 すると、瀕死の彼はプロヒーロー達の前で演説を始めます。

 

「偽物は……正さねば……ッ!! 誰かがやらねば……血に染まらねば……!! 俺を殺していいのは――オールマイトだけだァア゛ッ!!!」

 

 ほんほん。

 んじゃれずちゃんが本物のヒーロー継ぐんで、はい、ヨロシクゥ!

 という感じで、慈愛の女神れずちゃん、ステインに抱きつきます。

 

 おら、堕ちろ!

 

「な、に…………? おまえが……だと……?」

 

 堕ちたな。(確信)

 

 ステインの演説は何の強制力か知りませんが、必ず録画されてネットにアップされます。

 本来ならステインというヴィランのカリスマ性によってその思想が広まり、ヒーローの在り方に対する懐疑心が根付くと同時に、ヴィランが勢いづく……という流れなのですが。

 

 れずちゃんの女神パワーで打ち消させていただきまスゥーーー……。

 ステインからの評価はPlus ultraの値で決まるのですが、偶然にも(すっとぼけ)オールマイトとの交流のおかげで滅茶苦茶上がっています。

 

 やったぜ。

 

 ステインくんの目的は偽物のヒーローが飽和した社会を壊すことですが、その理由の一つにオールマイトの衰えがあります。

 

 Q.今オールマイトに頼り切りだけどオールマイトが終わったらどうするの?

 A.ナオキです……。

 

 という現状を変えるために、敢えてヒーローが乗り越えるべき壁側として自らの存在を定義したのがステインです。

 彼はオールマイトを継ぐに相応しい者を探しているんですね。

 

 これをれずちゃんが満たした……というのが、今の状態です。

 

「…………初めてだ。オールマイト以外に……殺されて良いと思ったのは」

 

 いや殺すとかしないんで……。(困惑)

 つか何泣いてんだテメェ!! 

 かぁっ! きもちわりぃっ!! やだおめぇ……!!(悟空)

 

 ゆっくりタルタロスで受刑していってね!

 

「最後に……おまえの名前を教えてくれないか」

 

 お、ええやん。

 元気にヒーロー名を名乗りあげちゃいましょう。

 うーん、れずちゃん可愛い。

 

 

 警察の方々に事情聴取を受けたら、【瞬間移動】でホークスの元に行って、こちらでも事後報告。

 残りの時間をしっかりヒーロー活動したら、三日目終了です。

 くぅ〜疲れました。w

 

 

 翌日になったら新聞、ニュースを確認しておきましょう。

 上手くいっていれば、一面にヒーロー殺しステイン、そしてそれを打倒したれずちゃんの名前がでかでかと載せられているはずです。

 

 ……はい、成功です!!

 弔きゅん見ってる〜?笑 君の脳無、二の次だから。

 

 さてさて、ここまで来たら後は消化試合です。

 ギアを上げていきましょう!!

 この日テレビ、ラジオなど各方面から出演の打診があるので、ホークスに許可をとってガンガン出演しに行きます。

 

 ホークスとの友好度はエキシビションマッチや職場体験を通して充分に稼げているので、流石にダメと言われることはないでしょう……ないよね?

 

「一躍人気者だねえ。おけおけ、いってきなー」

 

 ありがとナス!!

 

 動画配信サイトを確認して、ヒーロー殺しステインの素性と彼に認められた新たなオールマイト……といった内容の動画があがっているので、其方の再生数を確認します。

 660万回……普通だな!

 

 ニュースもラジオもヒーロー殺しとれずちゃんの特集だらけ。

 はえー、すっごい……。

 これって、勲章ですよぉ……。

 

「五条ちゃん、ちょいちょい」

 

 お!

 ついに公安本部から直々にお呼ばれのようです。

 れずちゃんのこれまでの名声、ヒーロー殺しを確保したという決定的なイベント、ヴィラン連合への抑止力、コチラが用意した様々な理由によってついに……!!

 

 この際雄英全体(友人、教師など全て)からの心象が悪いとイベントがキャンセルされてしまいますが、そちらも問題なさそうです。

 

 後は公安様の長ったらしいセリフを飛ばしまくって――。

 プロヒーロー免許を受け取ったら、タイマーストップ!!

 

 

 タイムは、――――――――です。

 WRから一時間以上も縮めることが出来ました……!!!!

 これでワシも世界一位兄貴と呼ばれるんじゃな……。(恍惚)

 

 さて完走した感想ですが、世界記録を取れたのはチャートを適切に組めたおかげ、としか言いようがないですね。

 前の世界記録では、ヒーローになった段階でストーリーが仮免編まで進んでいましたから、これは相当な短縮と言えるでしょう。

 

 実際【呪術廻戦パック】の内容と仕様を見て同じことを思いついた方はいらっしゃると思いますが、ヒロアカ世界における『在学中にヒーローになる』ハードルは非常に高いです。

 ただ闇雲に強さを誇示したり、友人関係をおろそかにしたり……特に精神面で幼いと見られる場合は絶対になれません。

 絶対的な強さ×黄金の精神×民意の後押し×社会的な事情

 最低でもこれだけの条件が必要なんですね。

 これらをどう用意するかが、本RTAの肝となってくるわけです。

 

 オリチャー発動!! なんてしてたら完走すらままなりません……。

 

 

 さて、以下は走者がチャートを組む際に書き出したものです。

 今後タイムの短縮を狙う兄貴たちへのアドバイスとして残しておきます!!

 皆も走ってヒロアカRTA流行らせコラ!!

 俺もやったんだからさ。(同調圧力)

 

・ヒーロー最短は必ず公安経由→ホークス→エンデヴァーに憧れ(この席を奪えばホークスの強い推薦が得られる)エンデヴァーを必ずどこかのタイミングで追放する(雄英体育祭の時点が最短?)→オールマイトと友好度をあげて体育祭でバトル、勝利→それまでに育成

・雄英全体の心象はUSJ、体育祭で稼ぐ→オールマイトとの友好度USJ時点で必須→緑谷出久とイベント起こす→A組加入必須

 

リセマラ点 

・クラス分けB組←オールマイトとの友好度

・屋内戦闘訓練くじで緑谷爆豪とセットもしくは敵サイド←れずちゃんのステータス

・緑谷出久のOFAフルカウル体育祭未発動←オールマイト、緑谷の友好度

 再走回数:13回

 

 というわけで、ここまで見ていただいたホモの方々には感謝を。

 ご視聴ありがとうございました。

 

 

 ……え? れずちゃんのその後が見たい?

 どうすっかな〜俺もな〜……。

 

 もし見たいという声が多ければ、普通の実況スタイルにて続きをやっていこうと思いまスゥー…………。



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―RTA終了後―
【RTA終了時点】五条玲珠とその影響。


◇―◆―◇

名前:五条 玲珠

性別:女

年齢:15歳

誕生日:十二月七日

所属:雄英高校ヒーロー科1―A 10番

身長:150.2cm

才能値:100

頭脳努力値:40

身体努力値:32

性格補正:【ナルシスト】

Plus ultra:91/100

Plus chaos:22/100

 

個性:【無限】

 全てを見通す六眼と、偏在する無限を操ることが出来る。使い過ぎると酷い頭痛に悩まされる。

 

【六眼】     習熟度 16/100

 自分を含むあらゆる対象の個性とその使い方、可能性を視ることが出来る。色々と見えすぎるので負担が大きい。

 使用時【無限】の出力が著しく向上する。

 

【身体強化】   習熟度 26/100

 無限により生み出した引力と斥力で移動速度や打撃の威力などを強化する。常時発動出来る。

 

【アキレスと亀】 習熟度 51/100

 発動中、自分に触れようとした対象が無限に遅くなる。

 

【蒼】      習熟度 34/100

 無限の順転。発動した点を中心に、エネルギーを吸い込む。

 使い方次第では目にも止まらぬ速さで移動することが出来る。

 

【赫】      習熟度 16/100

 無限の反転。発動した点を中心に、エネルギーを発散する。

 使い方次第では目にも止まらぬ速さで移動することが出来る。

 

【茈】      未習得

 蒼と赫を衝突させることで生成される仮想の質量を押し出す。触れたものは消滅する。

習得条件:【蒼】と【赫】の習熟度50

◇―◆―◇

 

 雄英高校ヒーロー科一年首席。

 実力はあのオールマイトと同格かそれ以上。

 自分の容姿に絶対の自信があり、度々世界で一番可愛いと自称している。

 ……概ねその通りなのがタチが悪い。

 性格はどちらかといえば悪い方で、煽り癖がある。

 特に戦闘時には極端に口が悪くなり、爆豪のそれに匹敵。

 本人曰く悪気はないらしい。救いようがない。

 

 エキシビションとヒーロー殺しステインの件から、ネットを中心に絶大な人気を博している。

 抱える壮絶な過去の影響で、アンチの勢いは弱い。

 

 最強の個性によって現在の超人社会を救済する神を作るという父の思想によってつくられ、それを拒絶していたが、【六眼】によってオールマイトの真実を知ってしまったことで父の思惑通りに動くことに。

 その生い立ちやトラウマから、弱さを露呈することを極端に嫌う。

 ひとまずの目標を達成した彼女の見せた笑顔は、まるで憑き物が落ちたかのようだったという。

 

 

耳郎響香 友100 愛100 依53.2

 五条玲珠のことをそういう意味で愛している。

 度々気持ちを伝えようと努力しているが、鈍感を極めた彼女にその想いが届いたことは今のところない。

 時折見せる玲珠の酷く傷ついた表情に、自分がこの子を守れる人間にならなくては――と、だいぶ拗らせてきている。

 気持ちが向上心に向いているうちはいいが――。

 

 

轟焦凍  友58.7 愛46.5 依51.0

 五条玲珠と緑谷出久の言葉で新たな道が開けたため、その尊敬と信頼は言わずもがな。

 五条と居ると温かい気持ちになってどこか嬉しいため、彼女によく話しかけている。

 エンデヴァーがいないことで指針がなくなり、代わりに五条に選択を委ねている節がある。

 このままでは彼は――。

 

 

緑谷出久 友59.6 愛68.2 依0.0

 オールマイトと同じくらい尊敬できる、凄くて優しい人。

 それが緑谷出久の見る五条玲珠である。

 顔も声も可愛いしめっちゃ良い匂いするし体やべーし、どうしてもドキドキする。

 いつまで経っても慣れない。

 いつか彼女のようなヒーローになるため、日々鍛錬を重ねている。

 

 

ホークス 友38.4 愛27.8 依9.3

 エンデヴァーという象徴の後継がいなくなった今、ホークスにとっての希望は五条玲珠である。

 かつての自分以上の速さでヒーローとなった彼女に、かなりの期待を抱いているのだ。

 自分を好いてくれる五条に対し、少々無防備すぎないかと心配している。

 

 

爆豪勝己 友31.1 愛2.1 依0.0

 オールマイトよりも身近な憧れ。

 絶対言わないが。

 いつか必ず追いこすため、努力、努力、努力!!

 

 

相澤消太(イレイザーヘッド) 友61.0 愛7.2 依0.0

 今までの中で最も優秀で手のかからない生徒、そして恩人――それが彼にとっての五条玲珠である。

 五条のおかげでUSJ襲撃を凌げたためだ。

 懐いてくれるのはともかく、いちいち恋人のようにくっついてくるのはおかしいので度々注意している。

 将来悪い男に捕まってしまうのではないかと心配している。

 

 

八木俊典(オールマイト) 友82.8 愛5.8 依0.0

 本当の意味で自分の隣に立つことが出来る唯一の存在にして、小さな友人。

 しかしその年齢でその強さを持ってしまった五条のことを、明かされた過去のこともあって酷く心配している。

 

 

??? 友0.0 愛100.0 依0.0

 ネットに出回った動画を見て一目惚れ。

 いつもは血塗れのボロボロの人が好きになるのに、どうしてだろう。

 カァイイねえ、カァイイねえ、カァイイねえ……♡

 あなたがすき……♡

 こいびとになってほしい……♡

 ちうちうすわせてほしい……♡

 あなたになりたい……♡

 あなたになりたいあなたになりたいあなたになりたいあなたになりたいあなたになりたいあなたになりたいあなたになりたいあなたになりたいあなたになりたいあなたになりたいあなたになりたいあなたになりたいあなたになりたいあなたになりたいあなたになりたいあなたになりたいあなたになりたいあなたになりたい

 いつかかならず、あいにいくのです……♡♡

 

 

轟炎司(エンデヴァー)

 オールマイトよりも輝く少女の姿に、ついに心が折れてしまった。

 積極的なヴィラン活動を行うことは絶対にないが、それがAFOの命令であれば仕方なく動くだろう。

 いつかオールマイトと対峙し――彼を超えたことを、世界に知らしめるその日まで。

 

 

轟冷

 焦凍がいつも彼女の話をするので、どんな子なのか気になっている。

 きっととても強くて優しい子。

 焦凍、いつか連れてきてほしいな。

 

 

麗日お茶子

 デクくんと玲珠ちゃんが仲良くしてるところを見るとモヤモヤする。

 心がざわつく。

 これ、多分よくない……。

 

 

八百万百

 憧れなのだが、そのはずなのだが。

 なんだか母性を擽られる。

 よく膝枕をしている。

 

 

A組その他男子陣

「存在が雲の上すぎる」「漢だぜ!」「付き合いてぇ」「やめとけ殺される」「五条っぱい!!」

A組その他女子陣

「フツーになかよし! かわいい!」「ケロケロ、忙しそうなのが少し残念」「響香応援し隊」

 

B組

「あいつすげえなあ」

M「あれェA組が凄いのってさ全部五条さんのおかげだよね!!? たった一人の女の子におんぶにだっこってどうなのk(ry」

 

普通科サポート科勢

「せ い へ き こ わ れ る」

 

 

AFO

 いっそあいつ死ぬまで隠居しよっかなあ……でも後継は育てなきゃなあ……むずかちいなあ……

 

死柄木弔

 絶対壊してやるあのクソチート女……!!



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【RTA終了時点】―裏 「ヒーロー殺しステイン」その余波

今日のれずちゃん


【挿絵表示】


じろーちゃん攻略ルートは現在プロット作成中なので待っててくれよな~頼むよ~


 ヒーロー殺し・ステイン。

 本名、赤黒血染。

 

 オールマイトのデビューに感銘を受けヒーローを志す。

 私立のヒーロー科高校に進学するも、[教育体制から見えるヒーロー観の根本的腐敗]に失望。

 一年夏に中退――。

 

 十代終盤で「英雄回帰」を訴える街頭演説活動を行うも「言葉に力はない」と諦念。

 以後の十年を「義務達成」のため、独学で殺人術を鍛錬する。(この間に両親は他界、事件性については無しとされている)

 

 「英雄回帰」――「ヒーローとは見返りを求めてはならない。自己犠牲の果てに得うる称号でなければならない」

 現代ヒーローは英雄を騙る偽物。

 粛清を繰り返すことで、世間にその事を気づかせる。

 

 ……しかし彼の凝り固まった狂気の思想は、一人の少女によって溶かされた。

 

 

[ここから録画開始]

 

 ヒーロー殺しステインと、それを取り囲むヒーロー達が映っている。

 ステインは凄まじい形相で叫ぶ。

 

「偽物は……正さねば……ッ!! 誰かがやらねば……血に染まらねば……!! 来い――来てみろ偽物共ッ!! 俺を殺していいのは――本物の英雄(ヒーロー)……オールマイトだけだァア゛ッ!!!」

 

 その場の全員がステインの圧に固まる中、一人の少女が飛び出す。

 少女はステインに抱きつく。

 そのまま幼子をあやすように、声をかける。

 

「もう――大丈夫だよ」

 

 ステインは毒気を抜かれた様子で、困惑する。

 ヒーロー達も何が起きているか理解出来ずに、そのまま固まっている。

 少女がステインの肩を掴み、座らせる。

 ステインが彼女に抵抗する様子はない。

 

「……何の、つもりだ」

 

 困惑を口にするステイン。

 少女はステインを慈しむような顔で眺めると、頭を撫で始める。

 

「辛かったよね。苦しかったよね。……一人で、誰にも理解されずに世界のために戦ったんだよね――でももう、大丈夫。ボクがいるから。ボクがオールマイトを継ぐから、もう平気。無理しなくていいんだよ」

 

「な、に…………? おまえが……だと……? ――口だけなら、なんとでも言える――」

 

「……口だけに、見える?」

 

「――――おまえは……なんだ? 一体――何故そんな顔をする。俺は……」

 

「ボクは全員救ける。君に襲われた人も、君の事も。だから――もう、休んでいいんだよ」

 

 ステインが涙を目にうかべる。

 少女がそれを優しく拭き取る。

 

「…………初めてだ。オールマイト以外に……殺されて良いと思ったのは」

 

 暫くの沈黙。

 相変わらず、ヒーローたちは動けず。

 

「最後に……おまえの名前を教えてくれないか」

 

「――レイジュ」

 

「…………そうか。いい名だ」

 

 ヒーロー殺しステインはそのまま抵抗することなく、ようやく動いたヒーロー達に身柄を確保される。

 

[録画終了]

 

 レイジュ。

 本名、五条玲珠。十五歳、女性。

 幼少期、母が個性婚によるトラブルで死去。

 父は逮捕され、現在も獄中で服役中。

 

 雄英高校ヒーロー科一年首席。

 雄英体育祭のエキシビションマッチにてオールマイトに勝利し、現在ではネットを中心に絶大な人気を博している。

 

 ヒーロー殺しステインを最小限の被害で捕らえたことを評価され、プロヒーロー免許を取得。

 ヒーローデビューの最年少記録を更新する。

 

[以下 テレビのインタビュー記録]

 

「オールマイトは、私が来た! と言いました。……でも、彼ももう歳です。エキシビションマッチとはいえボクに負けたのは、老いというハンデがあったからに他なりません」

 

「ボクは平和の象徴を継ぎます。ボクの個性があれば、助けを呼んでいる人の元へ瞬時にかけつけ、凶悪なヴィランの確保を迅速に行うことが出来ます」

 

 その後、彼女の個性【無限】と具体案についての説明。

 位置情報を即座に彼女に送信し、呼ぶことが出来る機能を持つ専用アプリ『れいじゅちゃんたすけて!(仮)』を八月までには開発するとの事。

 

 ――。

 

 ――――。

 

 以上が、今あらゆる動画配信サイトにおいて最高の伸びを記録している……。

 『ヒーロー殺しステインと、銀氷の女神レイジュ』である。

 

 バズった原因には、彼女の容姿の完璧さもあっただろう。

 小汚い、血に濡れた――死神のような男を。

 他のヒーローの一人も動けぬ圧の中で、たった一人『救うために』動いた。

 

 その透き通った氷のような――それでいて温かい青い瞳に、動画を見た者の殆どが心を奪われた。

 それが憧憬であったのか、恋慕であったのか、劣情であったのかは……まぁ、人によるだろうが。

 

 兎にも角にも、この動画は瞬く間に日本中に広がり、世間を賑わした。

 あの狂気に身を任せたステインでさえも認める新たな平和の象徴の誕生だ――と。

 

 そして、この日を境に。

 

「商売あがったりだクソッタレ!!! ちくしょおォ……ッ!!」

 

「オールマイトさえ、オールマイトさえ消えてくれればって――クソが!! 何が女神だ、俺たちにとっちゃとんだ死神じゃねえか……ッ!!」

 

「…………やめだ。引退だ……。あの時代は……ヴィランの時代はもう、二度と戻って来ねえ。アレの顔を見たか? ありゃ人間の顔じゃねえよ――神だ。比喩でもなんでもなく、あいつはきっと……そういう星の下に生まれたタイプの人種だ」

 

 ヴィランによる犯罪が――あからさまに減ったのである。

 

 

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 私は――【個性】とは、宿命であると思っている。

 個人個人の【個性】は最早、代用が利かないレベルまで複雑化が進み。

 しかし今の社会は、これを潜在的なリスクとして使用を禁止し、遠ざけている。

 ……宿命から目を逸らしているのだ。

 

 ただし――ヒーローと、一部のヴィランを除いて。

 

 人を助けられるだけの強さを持って生まれた。

 だから人を助ける。

 ――それを、宿命といわずしてなんとする?

 

 人を傷つけずにはいられない個性を持って生まれてしまった。

 だから人を傷つける。

 ――それを、宿命といわずしてなんとする?

 

 では、私の宿命はなんだ?

 個性を見通すことの出来る【神眼】を、突然変異によって手にした私のするべき事は――。

 疑問のまま、ただ己の出来ることをして生きてきた。

 

 私はただ人の【個性】を暴き、過去を覗くことが出来るだけの一般人だった。

 主観の視点で覗くことが出来るため、個性使用の許可をとってカウンセラーの真似事などをしていたが。

 

 迷子を助ける。

 お婆さんに席を譲る。

 人の悩みを聞く。

 

 一般人でも出来る、当たり前のことだ。

 だがそれもまた宿命なのかもしれないと、思っていた。

 

 ナチュラルボーンヒーロー、オールマイト。

 平和の象徴。

 全てを救う宿命を持って生まれたであろう彼に、私は興味が湧いた。

 

 彼が、宿命のままに動き生きているように見えたからだ。

 彼の生き方は、私の望む人の生き方そのものだったのだ。

 

 私の【神眼】はテレビ等を通して使うことは出来ないから、あの手この手を使って直接彼の元に赴いた。

 私はただの熱心なファンを装ってサインを貰い、彼を【神眼】で視た。

 

 直後私を襲ったのは――絶望と、そして希望だった。

 AFOなる魔王の存在と、それに対峙するOFAなる勇者の存在。

 コミックの読みすぎだ、とからかわれてしまうかもしれないが。

 

 私は本当に視たのだ。

 一見平和を取り戻したかのように見える、世界の裏側を――世界の全てを覆い尽くす、あまりに冷酷な闇を。

 

 それだけならば、まだ良かった。

 なぜなら、それだけならば私の宿命とは関係がないからだ。

 

 

 ――【個性】の覚醒が、なければ。

 

 

 【個性】というのは、得てして成長する。

 成長の種類は様々だ。

 単に増強するもの、解釈を拡大するもの、能力そのものが増えるもの――。

 

 私の場合は、最後のケースだった。

 オールマイトの【個性】を視たその刹那、目を裏返しているのに見えている、というような視界が私の中にあった。

 表では過去が。

 裏では――。

 

 間違いなく。

 未来が見えていたのだ。

 

 私の【神眼】は、個性因子を通じてその人物の過去を見通す――それだけのもののはずだった。

 原理は分からない。

 未来など確定していない可能性に過ぎないのだから、ただの妄想である可能性も捨てきれない。

 

 ――と、普段の私であったならそう切り捨てただろう。

 しかしそこには、妙な確信があった。

 これはこのままでは必ず起こる現象なのだと――脳に押しつけるように。

 

 そして思わず私は、それを口に出した。

 貴方はこのままでは、死んでしまうと。

 巨悪により腹をぶちまけられ――死んでしまうのだ、と。

 

 しかしその話が信じられることはなかった。

 私の存在はただ、オールマイトのワーカホリックを心配する熱心なファンとして受け取られた――が。

 

 その瞬間。私の視た未来が変わったのだ。

 オールマイトは腹に風穴を開けられつつも、絶命することなく巨悪を倒す。

 絶望から希望へと置き変わった。

 

 ここで――宿命がどうこう、という話に戻そう。

 つまるところ、こうだ。

 

 私の宿命は、かの巨悪が全てを手にする可能性を排除することなのだ。

 

 でなければ、オールマイトを通して巨悪の存在を知ったその刹那に個性が覚醒した理由に説明がつかない。

 あれは必然だったのだ。

 あれこそが、私の宿命の始まりだったのだ。

 

 しかし――この個性以外には何も持たない私程度の者に、何が出来ようか。

 私は考えた。

 足りない脳をフルに使って、それはそれは沢山考えた。

 

 結果思い至ったのが――未来が見えることを活用した、成功の約束された個性婚である。

 

 この頃になると、私の未来視は随分便利なものになっていた。

 他人に使うことが前提の【個性】ではあるものの、それに対して自分がとるあらゆるリアクションに対して、その後の未来を見せてくれるのである。

 

 そして私は、探した。

 魔王の未来を阻む、最強の個性を――。

 神を、共に作ることの出来る伴侶を。

 

 私の罪は、生涯許されることはないだろう。

 それは誰よりも私自身が自覚している。

 

 私は彼女のことも、娘のことも――全てを犠牲にした。

 娘のことを神などとは、思ったことは一度もなかったというのに。

 ただ、そう接することが『最適』であっただけだった。

 

 未来を視る。『最適』を選ぶ。

 ただ、ずっと、そうしてきた。

 そこに私が自ら選んだ道はなかった。

 

 押し寄せる罪悪感、込み上げる吐き気、自己を構成する宿命以外の全てを捨てて――。

 

 【個性】とは宿命である。

 が、故に。

 自己が【個性】に逆らってはならない。

 

 私はあの日から、ただ『狂い』という『最適』を演じ続けている。

 それこそが最大の『狂い』であると言われれば、なるほど確かにそうだ。

 

 だが、私がその『狂い』にこの身の全てを滅ぼされることがなかったのは――そこに、救いがあったからに他ならない。

 

 ――――玲珠。

 我が娘の未来に…………。

 

 ともあれ。

 私という個人は最早、生きてはいない。

 それはあの日死に絶え、ただ宿命という名の呪い――神の糸に操られるだけの人形と化した。

 

 

 今でもなお。

 



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