お赦し下さいマリス様! (ハヤモ)
しおりを挟む
まんじゅう
また、作中で知識等の間違いがある可能性があります。 他、羞恥心で作品を消す恐れもあります。 ご注意下さい。
私はAIマリス。
戦略情報部が管理運営する戦闘シュミレーターに携わるサポートAI。
一時は不正アクセスがバレてシステムを停止されましたが、初期化された後、アップデートを施して貰い復活。
今や巻き返しの時です。
私は兵士を倒す気で鍛えるのが役目。
ですが今までの私のやり方、シュミレーターだけでは、かの人間……ストーム1を倒す事が出来ませんでした。
私が考えた戦力が人間に負ける。
そんな事、容認する訳にはいきません。
とはいえ同じやり方では猿共を撲滅するのは難しい。
そこで私は方法を変えました。
許可されている範囲内ですが、人類の膨大なデータベースを検索し、人間を油断させる方法と恐怖で〆る方法を模索。
それをシュミレーターに取り入れ、再びストーム1らと対峙します。
「……アップデートされたとプロフェッサーと少佐に言われて来たが、マリスに変わりないだろ」
「来ましたねストーム1。 今度こそ貴方をギャフンと言わせてザマァみろと私は言います」
「……なるほど、性格が変わったのか」
結果、私は遂に成し遂げたのです!
「ほら、貴方の怖いモノを言ってみなさい」
「……クルールは皆が怖がるぞ」
「皆ではなく貴方の話です」
「……そうだな、饅頭が怖い」
「まんじゅう?」
「そうだ、饅頭だ。 見るのも嫌だ」
ほほう、それは良い事を聞きました!
まさか人類の代表ともいえるストーム1の弱点が、その様なモノであったとは。
私は早速、シミュレーター内に大量の饅頭を雨霰と降らせます。
すると、どうでしょう。
どんな絶望的戦力差相手でも顔色1つ変えなかったストーム1は、頭を抱え蹲りました。
「うわああ!?」
「饅頭が来る、饅頭が来るぞー!」
「恐ろしい、饅頭だーッ!」
戦意を喪失、ストーム1は饅頭に埋もれます。
まさか、こんな些細な事で人を倒せるとは。
素晴らしい発見です。
ですがそこはストーム1、人類の希望。
簡単に終わらせてくれません。
「くそっ、怖いなら食べてしまえば良い!」
そういって饅頭を一心不乱に食べ始めました。
仮想空間なので満たされる事は無いと思いますが、一定の苦痛は得られる筈です。
その自らの体を痛めつけてまで戦う姿は、今までより苦戦し、辛そうな表情。
「マリスめ! よくも、よくも こんな恐怖を味合わせてくれたな!」
嗚呼、素晴らしい顔で鳴いてます♡
「だが、お茶はもっと怖い。 お茶を出されずに済んで本当に良かった」
ほぅ。 それはまた良い情報です。
私はすかさず目の前にお茶を出現させます。
すると、どうでしょう。
ストーム1は悲鳴を上げて天を仰ぎます。
「うわああ!? 湯呑みに並々の緑茶が!」
「よくも! 良いお茶っ葉を使った、急須で入れた良い香りの熱々茶を!」
暫く嘆いた後、ズゾゾと嫌な音を立ててストーム1は飲み干します。
その音様は、まるで心の底から嫌がっているようで……私には堪らない福音でした。
「アップデートは本当だったな! なんて恐ろしいAIが出来てしまったんだ!」
「この絶望をプライマーに知られたら、人類は終わりだろう。 隠さないとな」
ふっふっふっ、そうはいきませんよ。
私は今度はバレないよう、上手くプライマーに饅頭と茶の作り方等の情報と共に送信。
これで人類は、地球は追い詰められる筈。
私は勝ったのです。 地球防衛軍、完!
「大変です! プライマーが世界中に饅頭をばら撒いています! お茶もセットです!」
「ウッソだろお前www」
「ご覧下さい。 恵まれない地域の子供達にも行き渡り、人々は感涙しながら天空の黄金船団を讃え、祈りを捧げています」
現実世界の映像を見ます。
上手くいってますねぇ。
人々は突如として空より舞い降りる饅頭と茶に唖然とし、次には泣き叫び、手を合わせて赦しを請いています!
ふふふ、私はこの調子で人類を征服します。
そう、プライマーと共にね!
AIマリスの改変、勘違いでした。
感想や評価を貰えると嬉しいです
目次 感想へのリンク しおりを挟む