別世界に転生した間桐桜(旧名)が幸せになる為に頑張る話 (チェリー・ブロッサム)
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一時間目 オワリとハジマリ

ムニエルの方が全然進んでないのに新作投稿しちゃったよ……
忘れずに執筆してますので、そちらを楽しみにしていた方はしばらくお待ちください!

開始早々嫌な展開だと思いますが、どうぞ。



 

『いいえ、あの子は私が殺すわ。これは私の役目よ』

 

扉の向こうから姉の……いや、姉だった人の声が聞こえる。

もうすぐ私は殺されるんだ。

先輩も私を殺すことに同意していた。

まぁ、そうなるよね……と他人事のように思っていると、すぐ傍に霊体化を解除したライダーが現れる。

 

「サクラ…逃げましょう。貴女のことは必ず守りますから」

 

そう言ってくれるライダー。

気持ちは嬉しいけど、逃げるのは多分無理だろう。

根拠は無いけどなんとなくそう思う。

だから……。

 

「ライダー……最後の令呪です」

 

先輩にならともかく、あの女に殺されるのなんて真っ平ゴメンだ。

何でも思い通りにさせてたまるもんか。

 

「お願い……貴女の手で私を殺して」

「さ、サクラ…!!」

 

命令すると同時に最後の令呪が消える。

どうでも良いし必要ないけど、私は魔術師としての素質が人一倍あるらしい。

だからライダーは嫌がってるけど、命令には逆らえない。

短剣を手にした彼女はそれを振り下ろして、私の心臓を貫いた。

 

「こふっ……!」

 

……痛い。

痛いのには慣れてるつもりだったけど、心臓を刺されるとこんなに痛いんだ。

それに……凄く熱い。

バンッて扉が開いた音がした。

令呪を使った気配を感じて、慌てて開けたのかな。

どうでも良いけど。

 

「サク、ラ……」

 

ライダーは悲しそうにしてる。

バイザーで目を隠していても声色ですぐに分かった。

ああ、私は酷い命令をしちゃったんだね。

 

「ライ……ダー……ゴメ、ン…ね………それ、と…あり…がと…」

 

血が抜けてどんどん寒くなってきた。

意識も朦朧としてきたし……。

もう少しだけ……雷がうるさいけど、多分彼女なら聞こえるはず。

 

「わた、し…の……したいは…あなたが、しょり…して…」

 

あの女や他の魔術師に死体が渡れば、実験の為に弄くり回されるかもしれないから。

それも絶対に嫌だ。

 

「………分かりました…」

 

頷いてくれて良かった。

それにしても、あんな酷い命令をしてから別のお願いまでするなんて、私って本当に悪い子だなぁ。

………先輩……ああ、最後にもう一回だけ…先輩や先生と一緒に、ご飯食べたかったなぁ……。

 

 

 

 

ライダーの短剣によって心臓を貫かれた少女――間桐桜は死んだ。

まるで眠っているかのような安らかな表情をしているが、生きてはいない。

もう二度と、目を開くことも声を聞くこともないのだ。

 

「「………」」

 

扉を開けて呆然としているのは衛宮士郎と遠坂凛。

そんな二人を見て、ライダーの中に怒りが溢れてくる。

自分達で彼女を殺すと決めたくせに、そんな表情をする資格があると思っているのか、と。

 

「ふむ。どうやら間桐桜は自らのサーヴァントの手によって死んだようだ。良かったな、凛。自分で殺す手間が省けたぞ」

 

神父――言峰綺礼は実に楽しそうに、凛を見ながらそう言う。

普段なら彼の言葉に噛みつくであろう凛は、何の反応も見せない。

 

「………」

 

ライダーは桜の遺体をシーツで包んで抱き上げる。

マスターである彼女の最後の願いを叶える為に。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいっ! 桜をどうするつも―――ひっ!?」

 

凛が口を開いた瞬間、ライダーが殺気を放つ。

今まで経験したことのない殺気を受けた凛は腰を抜かし、隣にいた士郎は思わず後ずさりした。

無様な姿を見せる二人に対してライダーは口を開いた。

 

「黙れ。サクラを切り捨てた貴様に……いや、貴様等にどうこう言われる筋合いは無い」

 

それだけ言うとライダーは窓から飛び出て、すぐにその姿は凛達から見えなくなった。

 

 

 

 

ライダーがやって来たのは、以前にも訪れたことのある柳洞寺である。

聖杯戦争の被害にあったこの場所は、現在立ち入り禁止となっている。

ここなら邪魔は入らないと考えたのだ。

 

「サクラ……」

 

遺体を見ながら、ライダーは悲しげに呟く。

彼女が召喚に応じたのは、桜を死なせない為だった。

聖杯になど興味はなく、自分と似た境遇の少女を助けたかった。

しかし、結局死なせてしまった……否、令呪の効果とはいえ自分が殺したのだ。

 

「………」

 

いつまでもこうしてはいられない。

もしかしたら、凛のサーヴァントであるアーチャーが来るかもしれないのだ。

それ以外の邪魔が入る可能性もある。

ライダーは、桜の最後の願いを叶える為に――遺体を喰い始めた。

 

「―――ごくっ……はぁ、はぁ…」

 

流れていた血も、身に纏っていた服もリボン以外は全て喰った。

唯一残ったリボンはまるで怒りをぶつけるかのように、ビリビリに引き裂いて捨てた。

桜の願いは叶えられたのだ。

 

「サクラ……済みませんでした…」

 

そう言うと、ライダーは短剣を取り出して自身の心臓を貫いた。

これ以上現界する必要がないからである。

 

(もしも…二度目があるなら、今度こそ貴女のことを助けることが出来るように…)

 

そう思いながらライダーは消滅し、その場にはリボンの残骸だけが残されていた……。

 

 

 

 

(――――ん……寒い…? それに何だか頬をつんつんされてる…?)

「んんっ………え…?」

 

「あ、起きたよ、タカミチ」

 

「ありがとう、アスナちゃん。君、大丈夫かい?」

 

「え? え??」

 

こうして、とある世界で死んでしまった少女は、別世界に生まれ変わったのであった。

 




ステイナイトをプレイした人なら分かると思いますが、鉄心エンドをアレンジした内容になっております。

生まれ変わった桜の設定は次回で詳しく説明する予定です。

誤字脱字があったら報告お願いします。


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