真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -ロストキリギリス- (名無しの骸骨)
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人狩りと冥府の神
つんざくような悲鳴が空間に響き渡った。
悲鳴を発し、絶命したのは豚のような邪鬼の悪魔。それ以外にも複数の叫びが空間を満たして、数秒後にそれは収まった。倒した悪魔からドロップ品を手早く回収して、暗い異界の中を見渡す。
此処は人為的に作られた異界であり、用途は攫ってきた人間を監禁及び“資源”として利用・取引するというもの。GPの上昇により凡そ淘汰されたマンハンター、ただそれも全てが消え去ったという訳ではない。マンハンター同士の共食い・同盟、世界に馴染んでいない漂流者を狙い撃って誘拐、阿修羅会等の大組織に取り入る。母数こそ明確に減ってはいるが、マンハンターは各々の方法で生存しており、その一つがこの異界である。
この異界を作った奴はそれらの融合型とされ、大組織には所属していないが何らかの繋がりを保持。自身に従わないマンハンターを潰して、従う者は配下として置きながらマンハントを続けている。こちらが掴んでいる情報だと旧ファントムソサエティのダークサマナーというのが有力だ。
異界内部は地下に向けて蟻の巣のように膨らんでいく迷宮であり、トラップも多彩で数も多い。出てくる悪魔も平均で約50レベル。複数のチームにおける攻略でなければ苦戦は必至なのは間違いない
現在この異界を攻略しているチームは合計で4部隊。そのうち一人は僕の身内であり、隠密をしながら単独で動いている。残り2チームはそれぞれ別経路から侵入し、それぞれ異界中枢への到達を目的に行動中。そして、僕に与えられた役目は正面からの異界制圧。囮役も兼ねているが、正規の入り口から分かり易く真っ直ぐに異界の奥を目指すのが役割。異界の階層の状況に関しては仲魔であるフレスベルグの<虚空の眼界>*1にて把握し、破壊可能なトラップは破壊。道中の悪魔も時間を掛けずに排除して、最短経路で異界深部を目指す。
異界深部に到達してまず見えたのは大量の屍鬼に、それを喰らうか犯している悪魔。屍鬼達の中には漂流者と思われる人間が大半であり、行方不明となったデビルバスターも存在している。死亡してから大分年月が経っているのか、身体の一部が欠損或いはスライム化しており、全員が手遅れだった。対する悪魔は邪鬼や悪霊、幽鬼が多く、冥界・冥府等の死後の世界関連の悪魔が多い。異界の主の性質に寄るものだろうか
「ごめん。助けてあげられなくて」
無抵抗の屍鬼達をそれぞれ破魔で昇天させて、残った悪魔を殺して回る。この辺りは生活区域なのか、これまで潜って来たような迷路もトラップもなく出現する悪魔も弱い。COMPにて状況を一度他のチームに伝え、深部に到達していた時から警戒していた場所に目を向ける。
地下深くへと続く暗闇に包まれた大きな階段。<スキャニングゼロ>や暗視ゴーグルで確認しても見通す事が出来ない。手持ちの解析用COMPで解析した所、暗闇の正体は毒ガス・神経ガス・魔界・怨念の複合
「毒…いや、疫病か…?」
異界自体が冥府・冥界に近く、この暗闇の性質が毒に近いのならばある程度異界の主の正体を推察する事は出来る。当然これが異界の主が正体を悟らせない為に用意したフェイクの可能性もある為に確定したとは言えない。だが、奥には異界の主とそのサマナーが居るのは間違いないだろう。
懸念点はこの暗闇と敵の目的。安直だがこの暗闇に乗じて奇襲を仕掛けられるのが一番可能性は高い。そうなるとそれ前提で戦力も考えなければならないが、今の戦力は僕一人と仲魔3体のみで正直大分心もとない。しかし、他チームとは距離が大分離れており、ここに来るルートも発見できていない。それにこれ以上時間を掛けるのは不味いような気がしている。
ここに来るまでに明確に強い悪魔とは対峙せず、戦ったのは自然発生した悪魔のみ。それにこの異界を維持する為に必要であろうあの屍鬼と悪魔をあまりに無造作に置き去りにされていた。あれらの数を処理するだけでもかなりの時間が掛かっている。それで足を止めさせるのが恐らく目的だろう。明確な時間稼ぎ……この暗闇の先で何かしら不味い事が起こっている可能性は高く、やはり今行くしかない。敵の強さ次第ではあるが、不測の事態も考慮した上で大体の相手に勝算はある構成にはしている。後は此方の勝ち筋を通せればだが、そこは出たとこ勝負で何とかするしかない。
「タリ報、百太郎、後諸々オッケー……装備も問題なし。いこっか」
――時々、どうしてこうなってしまったんだろうと思う事がある。
旧ファントムソサエティ……今は滅びているが、あそこにいた時はよかった。ファントムソサリティに入ったきっかけはとある筋から悪魔召喚プログラムを手に入れ、ダークサマナーとしてあれこれやってたらそのままスカウト、まぁよくある流れだ。俺は魔法なんかは使えなかったが悪魔5体の使役が可能でMAG生産・供給も安定していたし、頭もそれなりに回った。そんなもんだから、数年位組織で活動して居れば約40レベル程度にはなれて、問題なく仕事も熟せた。今思えば天狗にもなっていたが、それも当時ファントム最強だったフィネガンに鼻というか顔事叩き潰された、今でも恨んでる、許せねぇ。そんな事や悪魔との付き合いに難儀したりもしたが間違いなく俺の絶頂期はあの時期で、それもあの忌々しいクズノハキョウジとスプーキーズが現れて全部終わった。
まずヤタガラスのクズノハキョウジによってシド・デイビスを筆頭にファントムソサエティの幹部が次々と討ち取られた。活動に大きな制限がつけられた組織は『パラダイムX』を用いて再起を図るもスプーキーズによってそれも防がれ、ファントムソサエティの未来は其処で凡そ無くなった。ファントムソサエティは徐々に縮小、組織も分裂して、俺も逃げるようにファントムソサエティから逃亡した。そこから逃げた俺を追跡する者はおらず、正しい選択をしたという安心感よりエリートにまで登り詰めた組織がこうまで零落れた事実に心底がっかりした。
そこからは他の裏組織に媚を売りつつ、フリーのダークサマナーとしてちびちびと活動してしていた。阿修羅会や新設したファントムソサエティにも誘われたりしたが、大組織に所属するのは懲り懲りだった。上からの命令でクズノハキョウジの足止めをしろ、とか言われたくない。その時はしょんべん漏らしながら悪魔を切り捨てて何とか生き延びたが……もう御免被る、色々と。
フリーの活動において幸いといっていいのが、とある異界にて強力な悪魔と契約出来た事。悪魔の名はネルガル。メソポタミア神話の冥界神であり、強力なスキルも持っていた。奴は俺に神としての力を取り戻させる事を求め、俺は奴に自身の仲魔になる事を求めた。お互いの将来性や能力、方針、それらを鑑みて契約は成立。丁度ネルガルと契約した頃は世界の滅亡うんたらかんたらと悪魔業界も騒がれていた。その事自体にさして興味を示していなかったが、多くの悪魔業界関係者が異界やシェルターに籠りだしている点に俺は注目した。
大半の悪魔関係者は穴熊に籠って消え去り、悪魔業界は極度の人材不足に陥る。それらの状況を踏まえて俺は成り上がる為に、ネルガルを用いた計画を進めた。まずは異界を構築し、ネルガルに王として君臨してもらう。そこからは目立たないように人を狩った。特に身の程知らずのアホなカジュアルはシェルターや異界には籠れない、それを重点に狙って攫う。それらを供物に、ネルガルを強化。契約者である俺も、それに応じて力を得て、大組織に悟られないように慎重に慎重に、媚も売って、マンハントを続ける。カジュアルや女子供を攫っては悪魔に犯させて異界を強化。壊れたらネルガルの死霊にすれば無駄もない。そうして多くの屍を積み上げていく。
それを危惧したヤタガラスなんかのマンハント狩りが始まれば、他のマンハントチームをスケープゴートに差し出す様にして注意を逸らした。そこから空港に突如現れたとされる九頭竜の出現による異界の崩壊も防いだ。セプテントリオンという化物達に与えられた被害も軽微だ。唯一気掛かりなのは、それらを打倒したという、キリギリスという連中。調べてみればまぁ与太話にしか思えないような話ばかりで、信用度に欠けた。ただのオタク集団という奴も居れば、世界を牛耳る大組織という奴だったり、世界を救済する為に天より遣わされた神の一団とか、どう考えても頭がイッちまってる事をほざいてる奴も居た。
奴らのはっきりとした手掛かりは奴らが使っている掲示板であるらしく早速確認してみたら、パスワード代わりに色々と問題を出された。出てくるのは漫画やアニメ等の凡そサブカルチャーばかり。なんだよガンダム顔なら全部ガンダムじゃないのかよ……。まぁとにかく空いた時間を使って、何とかそれらの知識を蓄えて掲示板に侵入。そこから出てくる情報は……無駄に有益だったし、明らかに秘伝の術なんかも流れていた。分かった事としてこいつらは各々の趣味や生活を守る為に本気で世界を救おうとしている事、恐らくこいつらに一度目を付けられたら死ぬまで追っかけられそうな事。なによりこいつらが俺の計画の最大の障害になるだろう、という事である。それからというもののキリギリス及びそれに関わる組織達の警戒度を上げながら、標的をカジュアルからマンハンターとこの世界に現れ始めたドリフターとかいう奴らに絞った。カジュアルも自然淘汰されて、今現役で残っているのは足切りライン50を超えた奴とレルムに籠るなりで裏方に徹する奴、或いは一芸を持ってる奴のみで標的にするにはリスキー過ぎた為である。改めて考えると足切りライン50ってなんだ?
ドリフターやマンハンター狩りは多少効率は減ったものの上手くいったが、懸念点が幾つもあった。まず1つ目がこのマンハンター・ドリフター狩りは必ず露見するという事。マンハンターの母数が減り、その数を俺の手でさらに消していっているというのはどうやって隠蔽しても何らかの形でバレるのは明らかだった。2つ目に此方が懇意にしていた大組織やカルトがこの時期になると大幅に減っていた。メシアでさえ、最近は数が少なくなっている。端的に言うと俺達は孤立しかけていた。
以前は結んでいたマンハンターの連合もマンハンター狩りによってパー。だからといって、ドリフターやマンハンターを狩らなければ異界の維持・拡張が厳しく、ネルガルとの契約を反故にする形になり、何よりネルガルに全賭けしてる以上は俺ももう後がない。だから自力で必死に戦力は集めた。使えるマンハンター、ドリフターに関してはネルガルの拡張された権能による支配によって手駒に。異界内部を拡張して、異界そのものを冥界へと近づけた。その結果として異界と魔界との距離は縮まっており、ネルガルの権能を大幅に拡張している。
ここまでやって、ネルガルのLVは約80。このレベルではヤタガラス・キリギリスの上位層が来れば、問題なく狩られる。そんなことは分かっているから、魔界への深度をさらに深めようとした。最悪、魔界に堕ちたって良い。既に俺達の存在は露見し、俺に付き従った手駒達は全滅した。そしてこの異界に、もうキリギリスの奴らはやってきている。
各侵入経路から推定Lv60以上のデビルバスターが複数。データを確認しただけでも異界走破を得意とする異界ジェノサイダー、宮本明、エクス・アルビオ、その他多数のキリギリス内でも目立っているデビルバスターが多い。この時点でもう正直俺は萎えてきた。幸いなのが異界内の数十にもなる迷路のような階層がちゃんと機能しているという点。これに加えて、各地には通りすがりにMAG生産用の人間牧場がある。既に屍になっている個体は多いものの、足を止めてはくれる筈だ多分。
そこから時間さえ稼げれば、
『契約者よ』
3mを超える緑の巨体、その皮膚に張り付くように映るのは虚ろな死者の顔。
黄金の兜を被り、ナイフを携えた冥府の神であるネルガルが俺を見下ろした。
「分かってるよ。そろそろこんな異界を真正面から突破してきた化物が到達するんだろ?この戦いでどうなろうと、もう俺達には足掻いて生き延びる選択肢しかない。お互い外道を働いてきた身だし、最後まで精々好きにやろう」
『……いざとなれば私はお前を切り捨てる。死にたくなければ最期まで足掻け』
「へいへい」
ネルガルとの会話はそれで終わり。契約した時からこいつとの関係は変わっていない。互いにビジネスライクで冷めた関係、だがそれが一番俺にとっては心地よかった。
\カカカッ/
サマナー | 久遠フェイ | LV80 | 耐性不明 |
女神 | ラクシュミ | LV78 | 耐性不明 |
神獣 | バロン | LV77 | 耐性不明 |
凶鳥 | フレスベルグ | LV76 | 耐性不明 |
ネルガルの言っていた敵を見据えた。奴らはネルガルが構築した暗闇を意にも返さずに異界最深部へと到達しようとしている。数は悪魔召喚師が一人、その仲魔が3体でどれも70後半。ただ、サマナーの方は見覚えがあった。あの長い金髪に蒼瞳、150cmにも満たない少女のような華奢な体格……レベルは桁違いに成長しているがやはり、そうだ
「……ファントムソサエティに居た奴が俺の最後の相手になりそうなのも因果なのかね」
あれはファントムソサエティの性奴隷だった。MAGは豊富ではあったが、覚醒はしていない悪魔交じりの何かであり、ガイア組織からこちらに寝返って来た奴の実験体として運び込まれたのは覚えている。
「ま、それも今はどうでもいいか。殺せればよし、殺せずに倒せれば身柄を確保すりゃいい」
自分が負けた場合など考える必要もない。あれがどういった経緯であの強さを手に入れたのか、それは及びもつかないが俺にはもうどうせ戦う以外に道はない。接敵するまで後数十秒、暗闇に乗じて奇襲を仕掛けて……そこからが勝負だ。
真っ暗闇の階段を下る。視界は不明瞭……というよりテクスチャが黒に塗りつぶされた様な不自然な色で、踏み入れた僕達だけが明確に映るような、そんな景色。凡そこれ以上望めないレベルの眼を持っているフレスベルグでもその全てを見通せない程の闇で、何処まで続いているかも分からない。もうかれこれ、20分以上は歩いている。
『サマナー、敵ガイル』
フレスベルグが声を発して止まり、僕も素早くCOMPを確認した。エネミーソナーも真っ赤に。タリ報*2や百太郎*3も反応している。やはり姿は見えないが……囲まれている。
「皆、来るよ」
スピードスター | D2出典。悪魔のバトルスピードへの影響が50%増加する。 |
ベノンザッパー | 敵全体にクリティカル率30%の物理属性の大ダメージを与える。攻撃成功時、ヒットした敵を基礎確率30%で毒状態にする |
準物理貫通 | D2出典。物理貫通(D2仕様)を得る。物理貫通時に敵の物理属性が「無効」「反射」「吸収」の場合、与えるダメージが70%減少する |
仲魔達に声を掛けたと同時に凄まじいスピードで此方に接近する骸骨頭の凶鳥。悪魔の中でもトップクラスのスピードを誇るであろうフレスベルグの速度すら追い抜いて、邪毒を纏った爪で僕達を切り裂いていく。準物理貫通を持っている影響で此方の防具の相性も貫通されながらダメージを受ける。思ったよりも打点が高い、【タルカオート】*4持ちも恐らく居るのだろう。
「フレスベルグ、マーキングを」
敵が動いたのなら《虚空の眼界》を持つフレスベルグには敵の配置が見えている筈。大きく翼を羽ばたかせながら【マハブフダイン】*5を発動。空間の全域に凡そ冷気が奔らせ、それによって僕も敵の配置を把握する事が出来たが暗闇の奥より強力なプレッシャーを放つ魔王を視認した。
『さぁ、蝕まれよ』
バビロニアの疫病 | D2出典。敵全体のバリア状態を解除した後、敵全体を基礎確率100%で虚弱状態・毒状態にする。 |
魔王の手から放たれた病魔が僕達に降り注がれ――
メスラムタエア | D2出典_ネルガル専用。物理命中率が20%増加し、敵が毒状態になったとき、連動効果が発動「味方全体を会心状態にする。」。 |
黒い夜の霧 | D2出典_チェルノボグ専用。敵が虚弱状態になったとき、3ターンの間、敵全体の回避と命中率を20%減少させ、敵全体を基礎確率100%で毒状態にする。 |
ヤクシャの凶爪 | D2出典_グルル専用。敵が毒状態になったとき、次の連動効果が発動。「ランダムな敵に3回、物理属性の小ダメージ(35)を与える。攻撃成功時、ヒットした敵を基礎確率30%で緊縛状態にする。」 |
ネルガル_思念融合*6 | 1,物理属性で与えるダメージが15%増加。状態異常にする確率が20%増加。 2,敵が虚弱状態のとき、与えるダメージが25%増加する。 3,物理貫通(D2仕様)を得る。自身が会心状態のとき、物理命中率が20%増加する。 4,敵が毒状態になったとき、連動効果が発動「敵全体に物理属性の打撃型ダメージを威力70で与える。」(1ターン中1回まで) |
フレスベルグが毒・虚弱状態になった事で敵は
獣の眼光 | 補助スキル。このターン、追加の1アクションを得る。1ターンに1回しか使用できない。ボス専用 |
冥界破 | 敵全体に物理属性の大ダメージを与える。 |
さらに踏み込んで、赤黒い瘴気を纏いながら吹き飛ばされている僕らを跳ね飛ばす。暗闇が徐々にだが晴れていき、その奥で屍鬼の群れに囲まれた敵のサマナーがほくそ笑むのが見えた気がした。
「けどまぁ、まだ死んではやれないね……起きて、フレスベルグ」
電気ショックⅢ | 即時効果。味方一人が即死またはDEADになるのを防ぐ。但しHPが0以下になる場合は1とする。ランクⅢの為に1シナリオ(一連のダンジョンクリアやボス撃破等を指標にする)3回まで使用可能。 |
僕とバロンとラクシュミは何とか耐えて、最後の冥界破で倒れたフレスベルグは【電気ショック】にて瞬間的に蘇生させる。暗闇に入ってから定期的に【魔法の輪】*8を掛けていたのが功を奏した。なければ今頃全滅が見えていただろう。走馬灯も若干見えたし、敵の脅威度も見誤っていたと反省もするが……そこはそれとして、今は加速する思考の中でアナライズを行うと共に状況を整理する。
\カカカッ/
ダークサマナー | ベリーニ | Lv74 | 耐性不明 |
\カカカッ/
ガンスリンガー | エリヤ | Lv64 | 耐性不明 |
\カカカッ/
魔王 | ネルガル | Lv85 | 耐性不明 |
\カカカッ/
凶鳥 | グルル | Lv78 | 物理全般に強く、衝撃反射*9 |
\カカカッ/
死神 | チェルノボグ | Lv76 | 物理全般に強く、精神・魔力・緊縛・神経無効。破魔・呪殺反射*10 |
\カカカッ/
軍勢 | バビロニアの群れ | Lv69 | 物理耐性・銃・破魔・呪殺無効。毒・風邪無効*11 |
\カカカッ/
軍勢 | 死者の群れ | Lv47 | 呪殺無効。毒・混乱・睡眠・緊縛・風邪無効*12 |
まず敵の配置はネルガル・チェルノボグ・グルル・バビロニアの群れが前衛。ダークサマナーとガンスリンガーが後衛である。死者の群れは恐らく厳密には奴らのPTではなく、ネルガルの権能で呼び出された屍達でそこまで詳細な指示を与えられるようには見えない。出来るとしたら僕達への無造作な攻撃か、僕達の攻撃に対するカバー要因程度。とはいえ数が尋常ではなく軍勢単位でも十数軍団は下らない数に囲まれている。ネルガルは異界の主故にレベルが高く、どうも霊格とMAGが膨張し続けているように見える……時間稼ぎの正体は恐らくこれであり、時間を掛け過ぎるのは不味い。グルル・チェルノボグ・バビロニアの群れは此方にあるデータより数段レベルが高い。悪魔達が纏っているMAGから恐らく異界限定のレベル増強なのだろう。そしてそれらのサマナーである赤いスーツ姿の男、ベリーニは死者の群れを護衛に手元に置きながら【ガード】*13をしている。あれを落とすには死者の群れを先に落とす必要がある。
そして、僕が一番警戒しているのはエリヤと表示されたガンスリンガーの方だ。全身を防具で固めて顔は見えないが、立ち振る舞いから恐らく女性。震えながら此方に銃を構えており、興奮状態であることが伺える。これまでの異界攻略で何度か出くわした薬物投与及び洗脳術によって戦闘員としてコントロール化に置かれたドリフターかデビルバスターの可能性が高い。また、唯一彼女だけが死者として用いられていない点に違和感を持った。ネルガルの特性を考えるなら死者にする方が洗脳も管理も耐性も遥かに楽であり、死者にしないという事は余程の理由があるという事。それこそ不安定な技術を用いてでも彼女が今持つ何かを用いようとしているのかもしれない。
以上が敵陣の状況であるが、こちらは実質フレスベルグは切り捨てる形にならざるを得ない。フレスベルグの耐性に状態異常に関わる物は存在せず、ネルガルのあの毒・虚弱に関しては恐らく必ずかかるといってもいい。対して僕と他の仲魔は全員、BS事態を無効化する耐性を持っている為にあの状態異常は通さないが、フレスベルグさえ掛かってしまえばまたあのコンボが始動してしまう。故にフレスベルグの状態異常を治す事は出来ない。バッドステータスに強い悪魔は他に居るものの無効化でない限りはネルガルのあの状態異常に対抗するのは難しい。手数も負けてる以上は此方も殲滅優先で動くしかない。後はフレスベルグがどこまで生存できるか、敵の切り札はどれ程あるかに掛かってくるだろう。
「はー……ほんとしんどいや。ラクシュミ、まだ舞える?」
『勿論で御座います』
「じゃあ、仕返ししてやろうか」
少なくとも氷結無効は居ない。万能に対してもそれを反射する物は張られずに、耐性持ちも居ない。仲魔に目配せをして、ラクシュミの舞と共に詠唱を始める
天上の舞 | NINE出典。3ターンの間、味方全員の魔法攻撃力と魔法防御力を2倍にする。 |
『サマナー』
「おっけー……吹き飛ばす!」
ワイルドハント | 覚醒篇におけるウィッチの最終魔法。敵全体に相性:-(万能相性処理)のダメージを与える。威力は加護(運)×2となり、ステ振りが運魔特化の為にメギドラオン以上の特大ダメージを与える。 |
周囲に満ちた暗闇と冷気、それを塗り替える様にして発現するのは
北端の凍てつく風 | D2出典_フレスベルグ専用。敵が死亡したとき、次の連動効果が発動。「敵全体に氷結属性の中ダメージを与える」 |
間を置かず、フレスベルグの冷風で追撃する。カバーに入る隙もなかったのか、全ての敵に冷気が襲い掛かった。とはいえダメージとしては低く、支援があろうとこれが決定打にはならない。
「
高速詠唱Ⅲ | 200X出典。補助スキル。 手番中、使用者は追加で1アクション分の魔法攻撃か支援魔法を行う事が出来る。 但し、HPを回復する効果のあるスキルは使用できない。1シナリオに3回まで使用可能。 使用する度にコストとして現在HPの半分を消費する。このスキルは本来1つの手番に複数回使用できるが、不完全な習得である為にそれは封じられている。 |
高速詠唱。獣の眼光等と酷似した魔法の行使回数を増やす、魔術師にとっての奥義。僕では不完全な習得しか出来なかったが、それでも十分。再び【ワイルドハント】を発動させ、敵全体を吹き飛ばしながら倒れた者が出現したことによって再び、フレスベルグの追撃*15が敵陣に再び冷風を叩きつける。バビロニアの群れがそれぞれグルルとチェルノボグを【カバー】に入り、その身を妖精達によって群れを霧散させる。ガードしているサマナーと
万能無効、という訳ではない。一瞬見ただけだが、あれの概要を少し理解できた。
■■ | 即時効果。自分に対する攻撃のダメージと追加効果を完全に打ち消す。 1シナリオ■回まで使用可能 |
幻視、ESPのようなものだろうか。それによって瞬時に必ず命中しない場所を判断し、なければ己の技術で防ぎ切る状況を作り出す能力。ダメージこそ喰らっていないがこちらの魔法とフレスベルグの冷風、その二つを防いだ影響で疲弊しているのは確認できた。恐らく後使えて1~2回程度だろう。
メディアラハン | 真3出典。味方全体のHPを全快させる。 |
そして、それまで待機していたバロンがこちらのPTを全快させる。現状打つべき手は全て打てた。まだあちらの手番は終わっていない。
『Aaaaaaaaaaa!』
剣を携えた死神、チェルノボグが剣風を纏わせて【デスバウンド】*16を振るう。グルルの事も踏まえると奴も恐らく準物理貫通を持っており、無効化する事は出来ない。加えてネルガルの能力によって会心状態。耐性がなく、多段攻撃で上振れが起きた場合は死亡するリスクがある。
スプリガンベスト | デビサマ出典。多くの物理属性を反射する。通常攻撃は反射しない |
観音神符 | 200X出典。アイテムを消費する事で受ける攻撃のダメージがクリティカルだった場合、それを通常の成功に変更する |
近接攻撃は当然だが間合いに居る相手にしか届くことはない。あのデスバウンドは間合いのに居る前列の対象に攻撃する物であり、前列に出ているのは僕とバロン、後衛にはラクシュミとフレスベルグが居る。バロンか僕かの2択で、そこからさらに僕はチェルノボグにそのまま体当たりする寸前まで近づいて攻撃の対象をさらに絞らせた。準物理貫通は反射も貫通するが、無効以上は7割近く威力が減衰される。加えて会心状態も観音神符で凌げば、最大ヒットでも問題なく耐え切る事は出来る。とはいえ今回当たったのは4回だけ。運が良かった。その間にガンスリンガーは宝玉輪*17を使用。お互いにHPだけは振出しに戻った。
何とか、勝負の出来る範囲にまで盤面を持ち込めたが懸念点は多い。まずネルガルのレベルが戦闘開始時は実は83だった。それが85と上昇しており、今も恐らく上昇し続けている。【ワイルドハント】で暗闇は吹き飛ばしたが、それも徐々に戻りつつあり、依然として時間は敵の味方だ。次にやはりあのガンスリンガーが問題となる。まだ見せた手札はあれだけで何をしてくるか分からない。レベルは一番低いが、ネルガルの次に面倒なのは彼女であると僕の勘が告げている。とはいえ敵のサマナー、ベリーニの顔色も左程良くはない。あれほど派手にぶっ放せばああもなるが、若干の余裕は感じられる。警戒対象も……恐らく先の二つで間違いない筈だ。
そして、
「バステ無効に化物染みた魔法出力、こっちのメタは完全に取られてる訳だが……有利なのがこっちなのは変わらんだろ?」
虚勢か本当に余裕があるかは分からない
「フレスベルグ、最後に---」
「させねぇよ!エリヤ!」
ガンスリンガー、エリヤはベリーニの言葉に頷きもせずに銃を構え、【クイックリロードⅢ】*18を発動。
イレイザー | IMAGINE出典。驚異的な集中力でより多くの射撃を繰り出す特技。 1度の詠唱で6発分の装填を行い、敵1体に対して、射撃攻撃力に依存した物理ダメージを与える。 |
神経弾 | 真1出典_特殊弾。相性無視の弾丸。追加効果でSLEEPを与える |
虚弱状態 | D2出典。虚弱状態の際に他の状態異常を与えられると必ず状態異常になる |
フレスベルグの放たれる神速の6連弾。銃そのものは弱かった為に死亡こそしなかったが、虚弱状態であった為にSLEEP状態となって行動不能。フレスベルグは次で死ぬ。
『まずは一つ』
獣の眼光 | 補助スキル。このターン、追加の1アクションを得る。1ターンに1回しか使用できない。ボス専用スキル。 |
冥界破 | 敵全体に物理属性の大ダメージを与える。 |
群れ集い | 他の悪魔を召喚する |
再び魔王の一撃が大地を震わせ、此方に襲い掛かる。フレスベルグは死亡。他の面子はもう1発位なら耐えられそうだが、ネルガルはこちらの全体攻撃を警戒してか【死者の群れ】を軍勢単位で4つ召喚した。こちらの行動を強制されているようで癪だがどうあれ死者の群れ諸共、また敵を吹き飛ばすしかない。
天上の舞 | NINE出典。3ターンの間、味方全員の魔法攻撃力と魔法防御力を2倍にする。 |
ワイルドハント | 覚醒篇におけるウィッチの最終魔法。敵全体に相性:-(万能相性処理)のダメージを与える。威力は加護(運)×2となり、ステ振りが運魔特化の為にメギドラオン以上の特大ダメージを与える。 |
再び荒れ狂う、【ワイルドハント】。死者の群れはそれぞれベリーニ、エリヤ。グルル・チェルノボグをカバーして吹き飛ばされる。2発目
高速詠唱Ⅲ | 200X出典。補助スキル。 手番中、使用者は追加で1アクション分の魔法攻撃か支援魔法を行う事が出来る。 但し、HPを回復する効果のあるスキルは使用できない。1シナリオに3回まで使用可能。 使用する度にコストとして現在HPの半分を消費する。このスキルは本来1つの手番に複数回使用できるが、不完全な習得である為にそれは封じられている。 |
ワイルドハント | 覚醒篇におけるウィッチの最終魔法。敵全体に相性:-(万能相性処理)のダメージを与える。威力は加護(運)×2となり、ステ振りが運魔特化の為にメギドラオン以上の特大ダメージを与える。 |
「エリヤぁ!」
迫り来る魔法と相対しながらベリーニが吼える。
援護射撃Ⅲ | 即時効果。銃器を装備中に使用者以外の味方一人が攻撃を受けた時に使用可能。対象は回避・防御・反撃の判定に+40%の修正を得る。 この効果は1シナリオに3回まで使用可能。 |
幸運Ⅲ | 即時効果。自分に対する攻撃のダメージと追加効果を完全に打ち消す。 1シナリオ3回まで使用可能。 |
エリヤは空中を跳ね、【ワイルドハント】を躱しながら魔法そのものを一部撃ち落とす。その合間を縫ってベリーニは【ワイルドハント】の射程外にまで到達し、回避に成功してしまう。回避に成功したのは此方の命中・回避が1段階下がっている影響も大きかったのだろう。これを消せなかった現状がやはり痛い。グルルとチェルノボグは耐え切り、ネルガルも健在だ。
混沌の海 | D2出典。敵全体に万能属性の大ダメージを与え、3ターンの間、敵全体の防御力を20%減少させる。 |
チェルノボグから放たれる黒い波のような魔力の奔流が此方に叩き付けられる。HP自体は先に攻撃が来ると踏んで、待機させていたバロンを即座に【メディアラハン】を放たせる。何となくだが、相手の考えている事は分かった……ネルガルのレベルももう少しで90に達する。相手は必ず勝負に出てくる。
再び
ベリーニが【瞬間増強の札】*19をネルガルに、エリヤが【宝玉輪】を使用。グルルは【フォッグブレス】を放ち、此方の命中・回避減少段階は3段階目。
「殺せ、ネルガル!」
『……いいだろう。これで終わらせてやる』
龍の眼光 | 補助スキル。このターン、追加の3アクションを得る。1ターンに1回しか使用できない。ボス専用スキル。 |
冥界破 | 敵全体に物理属性の大ダメージを与える。 |
冥界破 | 敵全体に物理属性の大ダメージを与える。 |
冥界破 | 敵全体に物理属性の大ダメージを与える。 |
冥界破 | 敵全体に物理属性の大ダメージを与える。 |
荒れ狂うネルガルの巨腕。周囲の屍すら吸収して放たれる、此方の空間全域を叩き潰す全体貫通物理四連撃。下がり切った回避では避けることは出来ない。テトラカーンでも、あれは反射できない。ならば―――
「真正面から受ける……!」
ネルガルの巨腕が僕達を叩き潰すが、バロンも含め1撃目は何とか耐えた。再度振るわれる2撃目の巨腕。僕は【鋼靭の闘魂】*20、ラクシュミは【物理耐性】*21、バロンは【食いしばり】*22で耐え抜いた。
『後はお願いしますね、サマナー』
三撃目。ネルガルの口から冥界の瘴気が放たれ、ラクシュミが僕を【カバー】して死亡。バロンは2回目の【電気ショック】を発動させて、何とか命を繋ぐ
『まだ生き足掻くか…!』
あのネルガルも急速な自己強化に恐らく身体が付いてきていない。苦悶の表情を浮かべながら、最後の一撃に両腕を僕達に振り下ろす。僕はバロンの前に飛び出して、【カバー】。肉体は過剰なダメージに破裂し、骨の大半は粉々になりながら最後の【電気ショック】を発動。自分自身の命を保たせる
「おいおい、マジかよお前ら……けど残念だったな。やれ、チェルノボグ」
相手のHPは全快。ネルガルは先程の行動で疲弊したのか、レベルが徐々に下がりつつあるが最早他の悪魔と自分だけで蹂躙できる程の戦力差。僕達だけならもう勝てない。
「そう、僕達だけなら……バロン。御願い」
「援軍?あの二つのPTならまだ……いや、一人見失って……まさか……チェルノボグ、早くそいつら殺「もう、遅い」」
勇奮の舞 | NINE出典。3ターンの間、味方全員の物理攻撃力と物理防御力を2倍にする。 |
バロンが最後の力で【勇奮の舞】を踊る。その直後に突如僕の後ろから姿を現して敵陣に駆け出した彼女……由奈は手に持つ太刀を構え――
「死ね」
豪傑の転心 | ライドウ超力兵団出典。約50%の確率で物理攻撃の威力を100%上昇させる |
チャージ | 真4出典。次に行う物理・銃撃攻撃力が2.5倍になる。 |
煌天の会心Ⅲ | 200X出典。補助効果。格闘攻撃をクリティカルに変更する。 200Xにおいてクリティカルはダメージ2倍である為にそのように裁定。1シナリオ3回まで使用可能。 |
大地震動Ⅲ | 200X出典。補助効果。このターン、使用者が次に行う攻撃1回の威力に使用者の<レベル×2>を加え、クリティカル時の効果を「ダメージ2倍」から「ダメージ3倍」に変更する。 1シナリオ3回まで使用可能だが、1回の戦闘では1回しか使用できない。 |
物理貫通Ⅲ | ソルハカ2出典。武器COMP改造。物理属性で攻撃時、耐性・無効・吸収を無視してダメージを与えられる |
血祭り | DDSAT1出典。敵全体に物理属性の中ダメージを与える。クリティカル率が高い。 |
ネルガルのそれを上回る程の、圧倒的な斬撃乱舞が敵全体を斬り潰す。
『お…ぉ…ッ!!!』
唯一、食いしばる事の出来たネルガルが唯一捥がれなかった片腕を此方に向ける。
「ふぅ……もう、無駄だよ。サマナーが健在ならともかく、その深傷でもう君に注がれるMAGはない。チェックメイトだ」
他部隊も屍の群れを突破し、既にMAGを供給する施設の破壊には成功している。ネルガルがここまで急激に進化し続けられたのはそれとサマナーであるベリーニのお陰。ベリーニも既に死んだ今となっては最早ネルガルには破滅しかなく、徐々に体がスライムと化してきている。
『こ、んな……所で……』
ネルガルが喚いている間にこちらは仲魔を蘇生させて態勢を整えた。念の為に悪足掻きがないか確認はしたけれど、それもなくその言葉を最後に呆気なくネルガルはスライムとなって消失した。
「ごめん、ほんとに助かったよ由奈」
「……礼には及びません。そもそも囮役をやってもらったのですから、もっと早く来れなかった私に不備があります」
「本当はもっと早く来たのに待機するよう指示出したのは僕だからさ。何にせよ上手くいってよかった」
\カカカッ/
デビルバスター | 久遠 由奈 | Lv88 |
僕の身内のデビルバスター……久遠 由奈は実は戦いを始めてから
彼女を直ぐに戦闘に駆り出さなかったのはネルガルの切り札を出し切らせて僕達だけで受け切りたかったというのと彼女がチャージする時間を稼ぎたかったというのが主な理由。正直一撃で倒さないと何されるか分かったもんじゃなかった、という事で色々賭けに出た。実際早期に乱入させた場合はベリーニはあそこまで攻撃的に動く事はなかっただろうし、死者召喚で時間を稼がれてお互い泥仕合になっていた可能性が高い
「異界の主はこれにて討滅。主犯であるベリーニは……ああ、既に石化も麻痺も与えていましたか。ならそのまま運び出しましょう、もう間もなくこの異界は崩壊しますから」
「あー……それと一応彼女もこっちで連れ帰るよ。多分他じゃ厳しそうだから」
「彼女?」
僕が指差したのはガンスリンガーとして相対したエリヤと呼ばれていた女性。サマリカームをした後に同じようにBSを与えて無力化している。
「色々聞きたい事もあるし、多分今回の敵対も本意ではなかったと思うよ。こっちに従わないようならそれこそ他の預かりになっちゃうけどさ」
「……依頼主への報告事項は増えますが、やむを得ませんね。運び出しましょうか」
これにてマンハンター、ベリーニ及びそれに連なるマンハントチームは全滅及び確保と相成った。とはいえ、今回の事件は飽く迄これまでの世界の延長線上の戦い。それも行き場を無くした敗残者の処理でしかない。メシアにガイア、それに掲示板で話されている三つの侵略勢力。戦いが激化するのは多分これからなんだろう。それらの戦いでどこまで生き続けられるのかは正直分からないし、死ぬ可能性の方が間違いなく高いだろう。だけど
「守っていきたい物は頑張って守るよ。僕自身の為にさ」
確かな幸福な未来を掴む為にこれからも進み続ける。僕だってキリギリスの一員なのだから。
・銃器を装備していなくても即座に銃器を準備できる。
必要ならば装備している武器を地面に落としてもいい
・手番中、銃器で攻撃した後に即座に銃器にホルスター等にしまう事ができ、別の武器を構えてもよい。
<キャラ紹介>
・久遠 フェイ <悪魔召喚師><ウィッチ><???> LV80
キリギリスの一員であるデビルサマナー兼ウィッチな本作主人公。
金髪蒼瞳、身長150cm未満。ロリータ着れば大体アリス。
そんな感じの男の娘。本人は男物を着たいが、絶対的に女物が似合う為にその事実に打ちひしがれている。あれこれ起こる前は大体30~40程度のレベルだったが、初期のキリギリスからあれこれ起こって、何度か死にかけていった結果としてこんなレベルになってしまった。召喚可能悪魔は3体の機械式。本人はウィッカ(覚醒篇)の魔法を主力にしながら様々な魔術技法と僧自身の内に存在するとある妖精のスキルを用いる。
・久遠 由奈 <剣士><退魔僧><???> Lv88
キリギリスの一員であるデビルバスター。
茶髪ポニテ、身長180cm以上の男装が似合うタイプのキリっとした女性。
紆余曲折あってフェイの保護者的な立場に居る。こちらもあれこれ起こる前は
50レベル程度だったがあれこれ起こってこんなレベルに。戦闘方式は
最新式の武器COMPを用いた近接術にカルトマジック、マントラを取り入れたもの。
またとある悪魔の血が流れており、その関係もあってフェイと共に行動している。
・デビルバスターチーム×2
推定Lv60以上のキリギリスメンバーで構成されたチーム×2。只管道中に居た屍鬼や悪魔を千切っては投げ、千切っては投げていた。ネルガルの配置した強力な悪魔も居たがジャイアントキリングはお手の物である為に割とサクサク狩られてしまい、奥にあったMAG生産所こと人間牧場も難なく破壊。結果的にLv92となったネルガルが一発でガス欠になってしまう一因を作っている。
・エリヤ <ガンスリンガー><幻視者?><???> lv64
異界内の決戦で相対したガンスリンガー。
銃と即時スキルを用いる戦闘方式であり、ESPを用いた幻視者ではないかとフェイからは疑われている。その正体はまた後日に。
・ベリーニ <ダークサマナー> Lv74
今回のやられ役。特に薄暗い過去もなくただの元ファントムソサエティのマンハンター。本当はもっと軽い話にしたかったけど、1話にインパクトがあった方が良いと思ったのと戦闘の流れとして、マンハンターにしては異様に強い存在になってしまっている(大体ネルガルのお陰ではある)。チンピラからファントムソサリティの一流サマナークラスに登り詰めた腕は確かであり、ネルガルと出会ってさえすれば他の周回でも多少良い所までいってるかもしれない。根回しや生存術、隠蔽技術等、裏社会で生き残るのに確かなものは持っていたが、戦闘で頭を回すのがあんまり得意という訳ではなく高速詠唱ワイルドハントの万能二連打コンボで戦闘に意識を釘付けにされて、隠密行動をしだした由奈のマークを外してしまったのが敗因となっている。でも正直作者暫くお前以上の敵は書けない(エネミー作成のカロリー的にも)と思ってるから、そういう意味では作者にとっては最大の壁はこいつです。
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顛末と契約
事の顛末を話そう。異界脱出から数分経たずに異界は崩壊。異界に囚われた犠牲者は優に数百人を超え、他2チームで何とか確保できたのは辛うじて息があった覚醒者、十数名のみ。その生存者も屍鬼化の症状、肉体の壊死、精神崩壊等の問題を抱えており、それぞれの病状状態や漂流者であるかそうではないかにより状態に合った回復施設に送られる手筈となった。ネルガルは完全消滅、そのサマナーであるベリーニは今回の依頼主である四国ヤタガラスに預けられた。そういう訳で僕が受けた依頼に関してはこれにて一件落着となったのだが……
「やっぱ、そっちは大変?」
『大変も大変よ。バイオハザードかって位、異界跡地に死霊が湧いてるわ』
四国ヤタガラスはそうもいかなかったらしく電話で話しているヤタガラスの巫女、神城 真澄も苦言を零していた。
『あのダークサマナーはただ、四国がそういう冥界と近しい場所という事で異界作ったんでしょうけど、後処理するこっちの立場からしてみれば溜まったもんじゃない。それに異界深度の影響で四国と魔界が近づき過ぎてる』
「GPは?」
『上がってない。というか元が高すぎるから結果的に変わってないだけかも。数自体はさっき言った通りね』
「………やっぱり僕達も残ったほうが良かったんじゃ」
異界の主が冥府の神であると想定した時点で今回の惨事はある程度予想が出来ていた。だから四国に残り、ヤタガラスの後処理に付き合うという申し出もしたが問題はないと言われてしまったが為に僕と由奈はそのまま自分達の拠点がある東京に戻っていた。
『時間は掛かるけど、本当に大丈夫よ。四国がこんなことになるってのは昔よくあったみたいだから対策はしてあるみたい。後は須田さんだったり宮本さん辺りは率先して残るって言ってたから、これ以上キリギリスの人達に頼むのは色々とヤタガラスの沽券に関わっちゃうし、ここだけに集中させるほど人材に余裕がある訳じゃないしね。1カ月は様子見て……また、それでも収まらなかったらまた御願いはするかもしれないけど、当分は問題ないから安心して』
「ならいいんだけど…」
『何?心配してくれるの?』
「心配はいつもしてるよ。世話になってるし、今回の件を除いても色々とまだ借りがあるからね」
彼女との付き合いはかなり長くなるが、色々と訳アリな僕達がヤタガラスの依頼を受けられるのも凡そ彼女のお陰である。また、僕らが使っている符*1も彼女との取引で手に入れている関係で正直色んな意味で頭が上がらない。それでも僕が敬語を使ってないのは彼女に普段通りに話してほしいと頼まれたからだ
『んふふっ……じゃあ、そうね。もし貴方がヤタガラス……私の元に来てくれるなら、それも全部ちゃらにしてあげるわよ?』
…彼女は偶にこういう困った事を聞いてくる。だから少しだけ気まずい。嫌いではないけれど
「……前も言ったけど、それだけはやっぱ出来ないかな。由奈は置いていけないし」
『私なら置いていって良いの?』
「………」
『冗談よ、意地悪言ってごめんなさい。話を戻しましょうか……さっきの通り、こっちは大丈夫。貴方は貴方の仕事に専念すればいいわ。私もこっちの案件が片付いたら東京に行く手筈になってるから、その時にまた会ってくれると嬉しいわね。出来れば二人きりで』
「それ位ならいいよ」
『ありがとう。それじゃ、元気で……ああ、それとこっちに来てほしいのは本当だから。もしその気ならいつでも連絡してね』
その言葉を最後にぷつりと電話が切れた。ふぅーっと息を吐いて、少しだけ溜息も零す。世話になっているのは事実だし、好意を持ってくれているのは間違いない。間違いないのだが……正直ちょっと怖い、主に目が
「んーまぁ、それは今は良いとして……そろそろいこっかな」
背伸びをして、自室を退室しながら拠点に備え付けられた地下室を目指す。僕達の拠点は東京内に幾つかあるが、現在いる拠点は普段使いの拠点であり施設も最も充実している。とはいえ個人で用意しているものである為に地下室の増設に最低限の検査・医療装置を設置とかそんなものである。
そして現在此方で身柄を確保しているエリヤ……先の異界の戦いでガンスリンガーとして立ち塞がった彼女はその医務室の一室にて安置。現在は由奈が彼女の監視をしている。
「由奈、彼女1度でも起きた?」
「起きてないですね。まだ一度も」
「そっか」
由奈に返事をして、エリヤが寝ているベッドに近づく。エリヤはあの戦いの後、僕達が懇意にしている魔界医師の元に預けられ、僕と共同でその容態の確認及び回復を執り行った。その上ではっきりしたことが幾つかある。
一つはこのエリヤという女性は何度か人体改造をされていた。最も古い物は肉体が大きく変化している物のようで魂・精神の状態から判断するに彼女は元は男だった、という可能性が高い。加えて、その変化が起こった原因は人と悪魔を合体させる……この場合は天使合体の結果といった方がいいかもしれない。半天使或いは天使人、穏健派のメシアも使うような術でありこれは主に戦力の増強を目的として行われる。しかし、彼女の合体は不完全な形で終了しており、スキルは得ているが羽根も生えておらず人間のままであった。半魔擬き……僕或いは由奈もそのような状態であるから、直感でそういう存在であるとある程度理解は出来た。
そして、その次に行われたと思われるのが……あまり言いたくはないが母胎の強度を高める改造。腹部及び陰部、皮膚の状態から数えきれない程の出産の跡が検出された。生み出されたのも恐らく人ではなく天使擬き、それらを何体も生み出せば幾ら半魔であるとしてもただでは済まないが、半端な天使化がプラスに働いてしまったのか人間としての人体改造する余地が残ってしまっていた。子宮を含む内臓及び骨組織の強度を底上げし、胸は牛のように膨らんでいる。その他の部位もより女性らしく凹凸が整って、それでいて筋肉だけは削ぎ落されていた。ここまでは彼女が所属或いは捕えられていたとされるメシア教によるものなのだろうが、真の問題は次にあった。
感覚鋭敏化 | オリジナル。常に『体験の香(IMAGINE出典。経験値獲得率+20%)』を得る。 死亡時のレベルペナルティの効果が2倍になり、即時効果を持つスキルを取得しやすくなる。 |
香を使う事でしか取得できない筈のソウル活性化の術。それを恒常化させた上で感覚鋭敏化の効果をさらに増幅させ、疑似的な幻視の力すら与えてしまう
「戦闘時の記録を確認しましたが……戦闘方式も含めて、クウガのペガサスフォームのようなものですね」
「一番分かり易いのはそれかな。あそこまでの物かは分からないけど……戦闘時のあの興奮状態は事前に興奮剤か何か渡されてアドレナリンで誤魔化してたんだと思う」
「成程……これ、治す事は?」
「この施術事態をどうにかするというのはカドゥケウスでも難しいとファウスト先生は言っていた。現代医術じゃ無理に手を出せば、死ぬ可能性が高いとね……ただ、出来る事はしたつもりだよ」
この施術も含めてそれらの改造を治す事はもうできない。ただ、緩和させコントロールさせる事は出来る。彼女自身に鋭敏化のオンオフ及びMAGコントロールによる感度の鎮静化、それを覚えてもらうのが手っ取り早いがそれだけでは足りないし、そもそもできるかが分からない。故に外付けでそういう操作を行う必要性が出てきた。
「昔からそういうMAGの調律みたいな事は得意だったからね。睡眠化でならMAGの鎮静化は行えたし、彼女が覚醒した後の施術をどうすればいいかも分かった。問題はあるけど、其処に書いてある方法が一番確実性は高いと思う」
諸々書いてある書類を渡し、由奈は黙々と1枚ずつそれを確認していった。ページが進む毎に表情が移り変わり、心中穏やかではなさそうな百面相を見せながら最後に書類をテーブルの上に置く
「…この方法、やっぱり貴方しか出来ないんですか?」
「うん。知り合いにそういう事できる人も居ないし、知り合いの伝手を辿る時間も惜しいしね」
「はぁー……分かりましたよ。後日、埋め合わせしてください」
「うん」
確実性はあるが色々と問題がある方法を取らざるを得なかった為に由奈は項垂れてしまったが、何とか承諾は得れた。最近こういう事ばっかだな
ともあれ、これで確認すべき事項は以上でありエリヤのバイタルも安定している。この部屋の隣、マジックミラー越しという形だが読心術*2のスキルを持ったランダを待機させている。準備は整った
「起こすよ」
彼女が寝ている間に外部からの能動的なMAGのコントロールはある程度行えるようになっていた。沈静化は当然としてその逆も可能であり、感覚の鋭敏化をなるべく抑える為に此方でコントロールをしながらその眠りを解いた。彼女はゆっくりと瞼を開き、少しの間ぼーっと天井を見て、その後に此方の存在に気付き視線を向ける。
「ぁー……みず……」
「ゆっくり飲みなよ」
一気飲みしても問題ないように少量の水が入ったコップを差し出して、彼女はそれを一息の飲み終わる。
「ぁ、あっ…ふぅーっ……お前達は……あの時の、か」
「うん」
彼女の第一印象は僕と似ていると思った。金糸を編んだような長い金髪に、澄んだ蒼い両眼。身長は約160前後、僕は150あるかないか位だから丁度並び立てば姉弟*3のように見えるかもしれない。由奈も驚いている。
「……俺に聞きたい事があるなら何でも話そう。身体の調子もいい」
「まだ何も説明してないけど……随分協力的だね」
「少し考えれば分かる事だ」
見た目通りの少女のような声の高さ、それに反比例したかのようなぶっきらぼうな男口調で彼女は上半身を起こす。
「理屈はよく分からないが、これだけ身体を動かしても脳に杭が撃ち込まれたかのような痛みは発生していない。俺にとってはその行為だけでも腹割って話す価値はある。痛みを抑えているのがお前達という事なら猶更な」
バイタル面も安定して、彼女もこちらに対して好意的。恐らく余程今まで人扱いされなかったのだろう。
「貴方の身体状態に関しては後程説明させて貰う。幾つか質問があるから答えてほしい」
「構わない」
そうして暫くの間、質問とその回答が繰り返される。
彼女が居た世界は<東京大破壊>*4と呼ばれるICBMがアメリカの手により東京に投下された事をきっかけとした、簡潔に言ってしまえば世紀末ヒャッハーな所だった。そこで彼女……この時点では男だったらしいがメシア教によって孤児からクレリックに育て上げられて、戦い続けていたという。しかし、激化する資源の奪い合い・ガイア教との衝突やそれらに属さないレジスタンスの出現。メシア教はさらなる戦力を求めて、テンプルナイト達の天使人化を計画。彼女もそれを受けたようだが、結果は失敗。レベルは大幅に下がり、身体は女体へと変貌。メシア上層部はこの事を他のメシアンに知らせない為に彼女の存在を隠蔽。加えて戦力に活かせないならばと、さらに人体改造を重ねた上に天使を生み出す為の生体部品にされていた。
「それで、俺もそう時が経たずに死ぬと思ってたんだが……奴らが現れた」
荒廃した世界、ガイア教を文字通り壊滅させた上でその世界に姿を現したのは<ガイア再生機構>という組織。かの組織は人類再建を謳って弱者救済を掲げた上で落ち目となっていたメシア教を吸収。レジスタンスに関しても内部分裂が起こった後に残存した幾つかのメンバーも吸収され、東京の大勢力はガイア再生機構のみとなった。肝心のエリヤはメシア教が吸収される際に再生機構に提供され、不完全な天使化とそれによる生命力に目を付けられ引き続き実験体として利用され続けたらしい。その結果があの感覚鋭敏化であり、実験のデータを取り終わった後に戦闘力を確認する為に彼女は悪魔との戦いに一兵卒として駆り出された。
「ま、データを取り終えれば所詮は捨て駒。あいつらは気づけば完全にいなくなって、その直後に超高レベルの悪魔が出てきて東京は吹っ飛んだ。俺は核シェルターに逃げ込んで、何とか生き延びようとして……目を覚ましてみたらベリーニに囚われていた訳だ」
「ガイア再生機構の情報……何でも構わない。他に何かない?」
「さっきの通り、俺はただの実験体で一兵卒だったからあまり情報は持っていない」
ただ、と彼女は呟いて自身の手を開きながらそこに視線を移した
「……俺はプロトタイプだった。その実験データを利用・改良して奴らは俺のような兵士を抱えていたらしい。それこそ、俺が持っている疑似的なESPではなく本当の超能力に目覚めた奴も居るという噂はあった。確定した情報ではないが、これはどうだ?」
「レベルも上がり易く、超能力も使えるような兵士の量産……本当だったら厄介だなぁ。教えてくれてありがとう」
この情報は信頼できる知り合いに教えて、情報の拡散に関しても掲示板に流すのは暫く止した方がいいだろう。まだそういう時期じゃない。僕の知りたい情報も凡そ入手できたし
「じゃ、質問は以上で……今後の話をしようか。由奈」
「はい」
由奈の手によってエリヤに渡されたのは労働契約書。雇い主は勿論僕で、戦力としての雇用となる。とはいえ純粋な労働契約書という訳ではなく、漂流者という立場からの戸籍やその他役所手続きの手配、鋭敏化の鎮静化と治療etc。その対価として求めるのがデビルバスターとして働いてもらう事で要するに衣食住の手配をする代わりに戦力になってくれと、そう御願いする契約書になっている。一応文字が読めなければ口頭で伝えようかと思っていたが彼女はすらすらと読んでいき、文字を丁寧に一つ一つ追っていきながら、契約書を読み終わる。
「幾つか質問がある。まず何で俺にここまでする?俺にそこまでの価値があるとは思えない」
「それに関してはこっちとそっちの社会・文明の差も大きいと思うけど、何より戦力が足りてないんだよこの世界は。それにその感覚の鋭敏化、緩和させられる人は多くないからさ、俺が勧誘した方が手っ取り早いというか都合がいいんだよ」
彼女を勧誘する理由は戦力目的というのもやはり大きい。現在の彼女のレベルは56。異界での戦闘が原因でレベルは下がっているが、それでも足切りラインを超えた貴重な漂流者。さらに言えば彼女は疑似的な幻視者であり、恐らく
「仮にこの契約、蹴ったとしたら俺はどうなる?」
「……多分ヤタガラスとかの管轄の病院預かりになるんじゃないかな。でも恐らく他でその身体状況の緩和を目指すとなると暫く寝たきりになると思うよ」
彼女のような性質……ガイア再生機構に何かしら実験体として利用されていた漂流者はハッキリ言って多くない。彼女は滅びる世界に置き去りにされて、核シェルター内で偶然この世界に現れた訳であり、それ自体は漂流者では類似した移動方法ではある。しかしガイア再生機構の実験体と限定すれば途端に数は少なくなってしまう。その為に少数であるガイア再生機構の実験情報を欲しがる者も多く、彼女もまた治療を名目にした症状の緩和や実験内容の詳細な調査が行われる事になるだろう。そして、そういった扱いを受けるのであれば絶対安静が必須であり、加えてエリヤの場合はMAGの鎮静化の為にも睡眠状態で居るのが大半とならざるを得なくなる。
「詰まるところ、ある程度の自由を引き換えに戦うか、完全な保護を引き換えに身動きが取れなくなるか。そういう事か」
「ごめん、もうちょっと良い案を提示できれば良かったんだけど、君の状態も含めるとそうなってしまうんだ」
「いや、いい。俺が居た組織の中でも比べる事が烏滸がましい位には人道的な2択だよ」
クソメシアやイカレガイアに比べれば、とやや自嘲気味に彼女は笑って、僕を見た。
「……外部からの症状緩和、MAGコントロールといった方がいいか。これをやるのはお前か?」
「そうだよ」
「なら問題ない。男なら、色々と問題があったんだが」
「僕、男だけど」
「……?」
首を傾げるエリヤ。同じように首を傾げる僕。気まずそうな顔をする由奈。
「おい、由奈……であってたか。こいつ女だろ」
「男ですよ。アナライズするとウィッチ*5表記されますけど」
「うそだろ……」
「由奈、後任せていい?ちょっと横になってくるからさ……」
「駄目です。というか初対面の人に女扱いされるのは貴方の常なんですから、いい加減慣れましょうよ」
おかしい。髪は束ねてロングヘアの男性ならしてそうなポニテに、服装も医療用の服に白衣*6してきたのに、これで男に見られないのはおかしい。何かがあったに違いない。
「え、じゃあ何……僕の服装見た時、どう思った……?」
「無駄に衣服だけ医者っぽい、服に着られてる綺麗な女子供」
「やっぱちょっと横になってくるね……」
「駄目って言っ……床に横になろうとしないでください!髪が汚れるでしょう!」
椅子から転げ寝そうになった所を由奈にキャッチされて、伸びる猫のような態勢になる。解せない。折角気合い入れて服装整えてきたのに、これはあんまりだ。由奈は呆れの視線、エリヤは呆れと興味が混ざった視線を僕に向けているが、そんな目で見られても僕は全然納得いっていない
「じゃあその長い金髪切ればマシになるんじゃないか?」
「そうだよ!エリヤがこう言ってるしさ!試しにばっさりベリーショートにしてみ「駄目です」……本当に駄「本当に駄目」そっかぁ」
どうしてか分からないが由奈は僕の髪に異様に執着している。僕の髪の手入れをしているのも大体由奈だし、何なら服もそうだし妙に女物が多い。あれ?これ全部由奈が原因なん「どうかしましたか?」いや、これ以上あんまり深く考えない方がいいね。うん、そうしよう!
「えーこほん。話を戻そっか……男性を忌避しているのは、そういう恐怖症とかって事?」
「情けない話ではあるが、そういう事だ。理由もお前達が想像している物で凡そ合っているだろう」
そう語るエリヤは無表情ではあったが、確かな根強い恐怖の感情が彼女から垣間見えた。恐らく数年間に当たる母胎、肉袋としての扱い、それに加えて実験体としての経験。ガイア再生機構の兵卒として駆り出された時も恐らくその見た目から手を出されて、身体を汚された経験があるだろう。そこまでされれば男その物が無理になったとしても不思議ではないし、むしろ此処まで理性を保てているその精神力は驚嘆に値する。
「……ただ、お前からはあんまりそういう忌避感は湧いてこない、その見た目のせいかは分からないが」
「まぁこの見た目がプラスに働くなら僕も全然構わないよ。後はそうだね、暫くの間はもしエリヤが外に出る様な機会があったら必ず僕か由奈が同行するよ。慣れれるかも分からないから、ずっとそんな感じになるかもだけど」
「ありがとう……正直ここまでされて契約を交わさないという気はさらさらないが、可能ならもう一つ条件を付けたい」
「いいよ。聞かせて?」
「ガイア再生機構には俺の妹が居る筈なんだ」
孤児であるエリヤにも一人、家族と呼べる存在が居たらしい。曰く、妹だったとの事でアンナとメシア教から名付けられた彼女は戦う才能自体は全く持ち合わせず単なる教会のシスターとして過ごしており、その生活を守る為にエリヤはクレリックになったという。エリヤがメシア教の肉袋となった後は安否すら確かめる事が出来なかったが、ガイア再生機構に移動して暫く過ごしていたある時に一度だけアンナを見かけた事があったらしい、同じ実験体として
「見た目はあいつだった、それは間違いない。……そして可能なら、ガイア再生機構の手からアンナを取り戻したいと俺は思っている。その為のアンナの捜索の協力を条件に加えたい」
「……正直僕からすると今も生きているとは断言できないし、最低でもガイア再生機構によってマインドコントロール或いは従わざるを得ない状態にはなっていると思う。それでも、という事でいい?」
「死んでいるならそれで、いい。諦めきれる。ただ、生きているなら何とかしてやりたいんだ」
たった一人の妹だから、と藁にも縋るようなそんな印象を今のエリヤからは感じた。実際無事である可能性は低い。もしエリヤのようにガイア再生機構から離された状態で生存できているなら、話は変わってくるがエリヤのようなレアケースが早々発生しているとは思えない。ハッキリ言って希望は薄い。
「捜索は協力できますが、もしそのアンナという女性が完全にあちら側だった場合は私は容赦なく切り捨てますよ。手加減できる相手でもないでしょうし」
「……分かった、そこが妥協点だな。だが、もし助けられそうだったら」
「その時は何とかしてみせるよ、これでも僕と由奈はちょっとだけ強いからね」
僕個人としてもエリヤに恩を売れるし、助けられた方が気持ちも楽だし、何より僕達はキリギリス。世界を救うなんて勝手なお題目を掲げている以上は目の前の人間位は助けてやらないといけない。
「なら、その契約条件を全て飲もう。何もできないまま過ごす位なら、死ぬ可能性がどれ程あったとしても俺は戦っていたい」
「ん、わかった。ありがとう……じゃあ改めて、僕の名前は久遠 フェイ。そっちは久遠 由奈。
「分かった……エリヤだ。
お互いに契約の決まり文句を告げて、ここに契約は結ばれた。
「じゃあ早速だけど今後の予定詰めていかないとね。今日から一週間は身体の安定化の為に安静に過ごしてもらって、其処からは装備を整えた上で戦い方や連携の練習とレベル上げ、後お香マラソンもかな」
「それで一週間の間は……これで情勢の確認をしておいてください」
由奈の手によってエリヤにタブレットが渡される。ネットには繋がらない仕様にはなってるが、一般社会における常識や諸々手続き内容・キリギリスの活動や現在の悪魔との戦い方・主な悪魔のデータや耐性、注意すべきスキルetc。知人からデータを渡されて、それを此方で手直しした物ではあるがこの世界に来たばかりの漂流者がこの世界で生きていく為の情報が全てこのタブレットには詰まっている。
「もし、困った事があったら僕に言ってね。僕は基本的に居ると思うけど、居ない時は代わりに由奈がいるからそっちに頼んで」
「……これ1週間で全部確認するのか?とんでもない量の情報なんだが」
「これでも削った方だから、まぁその、頑張ってね。衣食住とかその他諸々の世話はその間全部するから」
「oh……」
僕も正直ここまで一気に詰め込みたくはなかったが、恐らくもう時間がない。ウィッカに存在する水晶によって未来を予知する術*7。多くの幻視者や未来を見る悪魔が弱体化したのようにこの魔法も凡そそこまでの精度ではなくなったが、何度もやっても水晶に浮かぶのは凶兆を示す言葉ばかりであり、それもここ最近さらに強まっているように感じている。契約を結び、共に戦う事が決まったのなら一刻も早く、彼女に戦えるようになって貰わなければならない。僕達の為にも、彼女の為にも
<キャラ紹介>
・エリヤ <ガンスリンガー><半天使擬き><幻視者擬き> LV56
前回フェイと相対したガンスリンガーであり、今回仲間になった漂流者。
身長160cm前後の金髪蒼瞳なTS娘。容姿がフェイに似ている。
元はクレリックな男で、メシアの手によって(ほぼ事故だけど)TS化。色々よく思わなかったメシア教の手によって天使擬き製造機にされる。その後もガイア再生機構ことエデンに感度数十倍にされた挙句に利用するだけ利用された後に一兵卒として切り捨てられている。色々あって保護され、鋭敏化に関してもフェイの手によってある程度コントロールが可能な状態となる。但し、今後のインフレの為に病み上がりにも関わらずアホみたいな量の資料を読み込む羽目に。頑張ってエリヤ!貴方にはまだ装備集めもお香マラソンも連携訓練もレベル上げもその他諸々一杯やるべきことが残ってるんだから!
・神城 真澄 <???><符術師> LV??
冒頭にフェイと電話をしていたヤタガラスの巫女。
過去に由奈やフェイとあれこれがあり、何かとつけてフェイだけをヤタガラスに勧誘しようとしている。現在は四国ヤタガラスに居るが特別何処か固定のヤタガラスに所属しているという訳ではなく、西日本を中心に各地を飛び回っている。
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【運って】運の能力値主軸に上げてる奴いる?【よく分からん】
Pi>【運って】運の能力値主軸に上げてる奴いる?【よく分からん】
【最早】四国の異界跡地の屍鬼の数がエグすぎる件【死国】
【レルムが】レルムに現れたあの化物について【ヤバい】
【とにかく】知り合いの男の娘に好かれる方法【好かれたい】
1:【名無しさん@LV上げ中】
上げてる奴見たことないからどういう効果あるのかいまいちわからん
2:【名無しさん@LV上げ中】
運の香を偶に拾ったら使ってあげる程度よね。普通は
3:【名無しさん@LV上げ中】
まーでも大体はクリティカル入れやすくなったり、BS与える確率上がったりBS受ける確率減ったりじゃないか?具体的にどうかとかまでは分からん
4:【名無しさん@LV上げ中】
先制攻撃だったりバックアタックの確率、あーあと命中・回避もちょっとだけ上がるとか何とか
5:【名無しさん@LV上げ中】
なんというか、一番不明瞭だよな。上げてる奴事態も少ないし
6:【名無しさん@LV上げ中】
他と比べて恩恵が感じにくいのがやっぱ大きいわ。後、力とか魔と違ってダメージに関わりも少ない
7:【名無しさん@LV上げ中】
クリティカルとか状態異常とかやる場合はまぁ普通にそういうパッシブ*1つけるわな
8:【YO☆@仲間育て中】
運の話と聞いて
9:【名無しさん@LV上げ中】
あっ、滅茶苦茶似合わない男装してる修羅勢だ
10:【名無しさん@LV上げ中】
そういえばこの人、運の香滅茶苦茶集めてたな……
11:【名無しさん@LV上げ中】
代わりに何処から流れたか知らんが女装写真が大量流出した時はお祭り騒ぎになったけどな。実際見てないけど、滅茶苦茶可愛かったらしい。画像データくれない?
12:【YO☆@仲間育て中】
13:【YO☆@仲間育て中】
というか男だから男装じゃない!それは兎も角として、運についてだったね
14:【名無しさん@LV上げ中】
偶々業魔殿行ったときに相手方に有利な条件で運の香のトレードやってた所は目撃したな
15:【YO☆@仲間育て中】
まー、それだけ必要だったから必死に集めてたよ。カルト・マジックで使うの魔力じゃなくて運だからさ
16:【名無しさん@LV上げ中】
17:【名無しさん@LV上げ中】
嫌な予感してきたわ
18:【名無しさん@LV上げ中】
うん?運が魔力の代用になるの?
19:【名無しさん@LV上げ中】
厳密には加護かな、運の表記揺れみたいなもんだけど。僕のウィッカとか相方のマントラとかは運が必要になる。それに魔法防御力も上がるし*2
20:【名無しさん@LV上げ中】
?????????
21:【名無しさん@LV上げ中】
わァ…ァ…!
22:【名無しさん@LV上げ中】
泣いちゃった!
23:【名無しさん@LV上げ中】
それソースあるんか?
24:【YO☆@仲間育て中】
シロエwikiには検証データが乗ってると思う。カルトマジックに関しては、ちょっと別の話になっちゃうからまた話すときは別のスレ立てるよ
25:【YO☆@仲間育て中】
ちなみに他の能力値の効果も個人個人によって若干違うらしいし、人によっては器用さ・直観・知力・精神力・魅力等*3の能力値が存在する事もある
26:【名無しさん@LV上げ中】
27:【名無しさん@LV上げ中】
28:【名無しさん@LV上げ中】
29:【名無しさん@LV上げ中】
30:【YO☆@仲間育て中】
静かに……なっちゃったね……
31:【名無しさん@LV上げ中】
お前のせいだ!お前の!
32:【名無しさん@LV上げ中】
そうだー!責任として女装写真ばら撒けー!
33:【名無しさん@LV上げ中】
ああ、これマジっぽいな。検証データがwikiに乗ってる。ペルソナ使いも確か能力値違うんだったか
34:【YO☆@仲間育て中】
35:【YO☆@仲間育て中】
>>33 一部のペルソナ使い*4の事だね。ただあれは魔の置き換えみたいなものだからそこまで差異はないかな
36:【YO☆@仲間育て中】
詳しくはシロエさんだったり検証班が検証中。大分稀なケースだからレアケースでもあるし、ソースが明確に欲しければそっち見た方がいいんだけど僕からの説明聞きたい人いる?
37:【名無しさん@LV上げ中】
ノ
38:【名無しさん@LV上げ中】
俺は聞きたいかな。詳しく知りたいし
39:【名無しさん@LV上げ中】
情報は多い方がいいよ。検証班とすり合わせすんでるなら確度は高いだろうし
40:【名無しさん@LV上げ中】
というか私達を混乱の渦に叩き落とした責任を取ってほしい
41:【YO☆@仲間育て中】
それはごめんね!こっちも思ったより周知されてなくてびっくりしちゃった。じゃあこれからそれぞれの能力値に関して説明するよ。また言うまでもないと思うんだけど、これらの情報はまだ検証中で不確定な物であり、場合によって違ったり或いは新しい要素が発見される等で変わってしまう可能性もある点を各々留意してほしい。
42:【YO☆@仲間育て中】
まずは力・魔・耐・速・運。これらが一番メジャーな能力値だね。場合によっては技や知力も入るけどそれはまた後で
43:【YO☆@仲間育て中】
力は見ての通りって感じで近接攻撃系に関わるステータス。通常攻撃・力依存・HP消費攻撃が主に関わってくる。後は一部の銃器を扱うのにこれが必要だったり、物理防御力に作用する事もある。多分これが一番単純。
44:【YO☆@仲間育て中】
次に魔は文字通り魔法に関わるステータス。魔法攻撃力・魔依存の攻撃・回復効果・MP最大値、後は魔法防御力にも関わってくる。カルトマジックを除く多くの魔法、大体が魔界魔法だけどそれらの成功率にも作用するね。
45:【YO☆@仲間育て中】
耐も文字通り、HP最大値だったり防御力が関わってくる。後はこれも魔法防御力を少しだけ上昇させたりするらしいし、一部のBSに抵抗できるか或いは掛かった後の自動回復速度にも関わってくる。
46:【YO☆@仲間育て中】
速は命中力・回避力。それに行動順・移動速度・先制率・逃走率にも関わってくる。一説には防御力なんかにも関わってくるという話もあるんだけど、そこまで行くと本当に埒が明かなくなるから取り敢えず置いておくね。
47:【YO☆@仲間育て中】
運はドロップ率・クリティカル率・BS抵抗・BS付着率や命中・回避率・魔法防御力の上昇。正直運が絡むなら大体の要素に何らかの形で入っていると思われる。さっき言った通り、カルトマジックに用いられる事が多い。
48:【YO☆@仲間育て中】
でもって、次に知力。これは結構メジャー寄りな能力値で、場合によっては魔力と同様の能力である事もある*5。魔力の次辺りに魔法全般の効果に作用する事が多くて、特に魔法効果と魔法成功率に関わってくるかな。後はサマナーなんかは悪魔との取引で知力が必要になるケースもあるね。他にもサマナーはCOMP操作・ハッキング等にもこの能力は関わってくるとされている*6
49:【YO☆@仲間育て中】
次に技。これも結構限定的な能力なんだけど銃の攻撃や銃属性のダメージに関わってくる。それ以外は多分特にないかな。運を同時進行で上げる事で神経弾なんかの状態異常率を上げるのは結構メジャーだとは思う。
50:【YO☆@仲間育て中】
ここまでは現状把握してるメジャーな部類の能力値になるかな。ここまでで何か質問とかある?
51:【名無しさん@LV上げ中】
最後まで聞いてから何聞くか判断するわ。続けてくれ
52:【YO☆@仲間育て中】
おっけー。じゃあ器用さ・直観・精神力・魅力に関して
53:【YO☆@仲間育て中】
器用さは技と似てるかな。射撃命中や射撃系の技能の条件、後は近接武器を選ぶ際に必要になってくるかな。後は器用さって名前通りに器用さが求められる様々な事柄に必要になる
54:【YO☆@仲間育て中】
直観は射撃回避力や一部の超能力*7を使用する為に使われる。直観的な能力を求められる何かしらにも必要。ここら辺はどの能力も変わらないから以下は省略するね。
55:【YO☆@仲間育て中】
精神力は魔法に対する回避率や一部のBSの抵抗・MP最大値に関わってくる。後は一部の超能力*8にも使われるね。
56:【YO☆@仲間育て中】
最後に魅力。これは対人能力に関わる能力とされている、知力のそういう方面をより特化させた感じだね。それに纏わるスキルなんかで求められることが多いかな。
57:【YO☆@仲間育て中】
これで全部だから質問受け付けるよ。
58:【名無しさん@LV上げ中】
お……お……?
59:【名無しさん@LV上げ中】
気が狂いそう
60:【名無しさん@LV上げ中】
新たな能力値というよりも能力の細分化か……?
器用と直観は速。精神は魔力。魅力は知力に対応しているように見える。
61:【名無しさん@LV上げ中】
でもそれらが完全に一緒って訳じゃないだろ?現にそれらの能力はそれぞれ別個に存在している訳だし、同一の物とは言えない気はする
62:【YO☆@仲間育て中】
そうなんだよね。それらの能力値は似てるけど同一の物ではない。また、話していた中で力や魔、運等のメジャーな能力値においても恐らく皆が知らない効果があったと思う。能力値ごとに効果が完全に定められていれば知らないなんて事は基本起こり得ない筈だからね
63:【名無しさん@LV上げ中】
運が魔法防御力に適用されるという眉唾物の話も能力値効果に個人差があり、その影響によって周囲に広まらずに未知であり続けてしまった、という事か。
64:【YO☆@仲間育て中】
うん。効果として実感できてれば食い違いもここまでないだろうし、そもそもマイナーな……知らない能力値が存在するなんて事もない筈なんだ。加えて言うなら能力値の上昇事態も個人差がある。
65:【名無しさん@LV上げ中】
能力値の事わからんくなってきた
66:【名無しさん@LV上げ中】
相性以上に意味わからん事になってるな。昔はもっと単調だと思ったんだが、原因とか分かってるんか?
67:【YO☆@仲間育て中】
漂流者の影響とかその技術によって新たな概念として現れた?とかあるけど一応僕なりの考案というか妄想といってもいいけど、それならある
68:【名無しさん@LV上げ中】
一応聞かせて
69:【YO☆@仲間育て中】
スキルや能力値って単語は凄くゲームっぽいけどこの世界はゲームの世界じゃないよね。能力値って数値もあくまで自分や或いは他者から見て、自分がどんな力をどれほど持っているか。見鬼やアナライズと同じように自身の見たいもの、感じたいものを分かり易く表記しているに過ぎないんだ。そしてそれが全てじゃない。
70:【YO☆@仲間育て中】
恐らく自身が知らない能力値も最初から僕達は持っている。少なくとも0じゃない。
速に特化してるのに異様に不器用、魔力が高いのに精神力がない、知力に満ち溢れているのに魅力が全くない、なんてことは少ないと思う。ただ、完全に知らない事を見る事や感じる事は出来ない。だから能力値として意識的に感知できなかった。
71:【YO☆@仲間育て中】
少し違う話になるんだけど霊格を成長させた時にレベルアップすると思うんだけどそこで僕も皆も能動的に或いは受動的に能力値を成長させるよね。その際に多分だけどそれに類似する能力も上昇してるんだと思う。>>60の言った感じでね。
72:【名無しさん@LV上げ中】
マスクデータみたいなもんか。今それを認知したなら、能動的に成長していけるか?
73:【YO☆@仲間育て中】
能動的にできる人は出来る可能性はあると思う。ただ、大半の人は無意識に心の中にある自身の成長像に従って能力値を成長させていくから多分ほんとに限られるとは思う
74:【名無しさん@LV上げ中】
能力値の効果が個人個人で差異がある、というのも何かしら考察はあるのかしら?興味本位の質問で申し訳ないのだけれど
75:【YO☆@仲間育て中】
うーん……しょうじきハッキリ言えるほどでも……いや、でもさっきのも僕の妄想だし、それについても僕の意見言おっか
76:【名無しさん@LV上げ中】
ありがとう
77:【YO☆@仲間育て中】
いえいえ。で、同じ能力値の個人差なんだけどこれも多分認識だったり認知が関わってくると思うんだ
78:【YO☆@仲間育て中】
例えば運がどのような物を捉えているかとかだね。運が良くて攻撃が当たる、回避できる、クリティカルヒットする、状態異常にならない、アイテムを拾うとか恐らく普遍的でイメージしやすい物であればある程に多くの人がその能力値の効果を持っていると思うんだ。
79:【YO☆@仲間育て中】
逆を言えばイメージしにくい物は効果として現れにくい傾向にある。例えば加護と呼称される運は単純な運の強さだけではなく、地域の神々との霊縁や繋がり、どれほど愛されているかという指標にもなっている。カルト・マジックは要はその地域や一族発祥の人間が作った魔法であるから、そこに存在する神、悪魔とのつながりが重要視される。だからカルト・マジックは加護を必要とするし、その霊縁の加護として魔法防御力が上がる。
80:【YO☆@仲間育て中】
だけれど、最初からカルト・マジックなんかに関わる機会がなければ加護じゃなくて単なる運になると思うんだよね。そして運から>>79というのは一般的にイメージしづらいんじゃないかな。これと同じことが他の能力でも起きている。
81:【名無しさん@LV上げ中】
力を物理的な防御力に繋がるとイメージできていなければ防御力は上がらない。速もそれを足の速さと捉えるか、攻撃の当たる当たらないの俊敏性と捉えるか、先手を打つ為の物と捉えるか、その一部か全部か、それらの認識によって齎される効果も変わって来てしまうと、そういう事ね
82:【YO☆@仲間育て中】
加えて言うなら、このイメージも多分無意識なものだから今ここであれこれ説明された位じゃ変わらない可能性も大きい。それに力で魔法をとか、魔法で物理的な腕力をとか、無理のあるイメージも恐らく無理だから限界はある。
83:【名無しさん@LV上げ中】
結局俺達に出来る事なくね?
84:【YO☆@仲間育て中】
そうでもないよ。確かに無意識は中々変えられないものだけど、今ここで知った時点で可能性は生まれている。情報を知って、自分がどういう風になりたいか、どういう風に戦っていくかとかそれを意識的に定めて進んでいけば無意識も変わる可能性は十全にあると思うんだ
85:【名無しさん@LV上げ中】
デメリットある情報でもないしな。今後はこういうのもあるんだと踏まえて、やっていけばいい
86:【名無しさん@LV上げ中】
新しい耐性が増えたーとかより影響はないし、力とか魔とかイメージしやすい部類は変わりないし問題はないだろ
87:【YO☆@仲間育て中】
そういう事だね。確定した情報は能力値が複数あるのと個人差がある位だから、今後は検証班の検証結果を待つべきだと思うよ。それに僕の妄想が正しくても間違ってても大した支障は現状ないだろうし
88:【名無しさん@LV上げ中】
運の話をしてたらとんでもない話にまで広がったな。
89:【YO☆@仲間育て中】
ごめんね。運の話も含んでたから関連付けて話したけど、長いしこれもスレ別個に立てるべきだったかも
90:【名無しさん@LV上げ中】
ほな、申し訳ない気持ちがあるなら女装写真を
91:【YO☆@仲間育て中】
92:【名無しさん@異界疾走中】
ありますよ、女装写真
93:【YO☆@仲間育て中】
>>92 !?
94:【名無しさん@死国無双中】
うおおおおおおおおおおおおおっ
95:【名無しさん@異界疾走中】
>>94 まぁあげませんけど(笑)
96:【名無しさん@死国無双中】
>>95 オマエ、ショス。トウキョウニツクマデ、ウゴクナ
97:【名無しさん@異界疾走中】
>>96 私も忙しいので、遠慮します
98:【名無しさん@LV上げ中】
一応匿名掲示板だから身内っぽい会話やめな???
99:【YO☆@仲間育て中】
この人たち宥めてくるので後御願いー!
100:【名無しさん@LV上げ中】
お、おう。というか何だったんだよあの女装写真求めてた奴は
101:【名無しさん@LV上げ中】
困った、欲しかったんだが
102:【名無しさん@LV上げ中】
私も欲しかったわ
103:【名無しさん@LV上げ中】
さっきの奴と違うし、二人居るじゃねーか!
・キャラ紹介
<HN:YO☆ → 久遠 フェイ>
ウィッカでとある妖精交じりなので安直にYO☆(ヨーセイ)というHNを持っている。
外に出たら少女扱い、身内でも男であることを偶に忘れられる等が若干コンプレックスになっている。何とか男装しようとするも似合わず、女装するのも恥ずかしいというか写真撮られる事が多いのでもう性別が分かりづらい中性的な恰好をする事で何とか凌いでいる。フェイが話していた持論は作者が色々唸って出したそれっぽい話なので信頼性は本当にない。ちなみに最後に揉めていた二人は電話越しに注意した模様。多分あんまり効いてないよ
<異界疾走する人と死国無双する人>
マウント取った人とマウント取られた人。犬猿の仲。
フェイからは女装はもうどうでもいいから仕事に集中してほしいと塩対応をされて、注意された事よりそっちの方で精神ダメージを受けた
<シロエニキ&検証班>
定期的にフェイに結構な額を投資されている。ついでに信頼できるプログラマーやSEも紹介して、wikiのセキュリティ強化&バックアップ&機能性強化も怠ってない。検証して役目でしょ
<今回出てないエリヤさん>
センター試験前の高校生より必死にマニュアルを読み込んでリハビリの後にそのまま実戦へ。異界疾走する人に補助されながら地獄のブートキャンプを行っている。きついにはきついが前の世界に比べたら天国のようなものだし、料理も死ぬほど美味いし、衣服もちゃんとしたのあるし、お風呂にも入れるので滅茶苦茶満足している様子
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天魔衆
この世界は間違いなく地獄である。それが数週間をこの世界で過ごした俺の率直な感想だった。
文明や生活レベルで言うなら間違いなく元居た世界よりこの世界の方が余程発達しているし、転移前の世界の最上級の生活はこの世界の底辺の生活に及ぶか及ばないか。とはいえ、そこまで充実しているのは日本或いはアメリカ等の一部の先進国のみ。他の国は何らかの形で悪魔やそれに類似する存在によって凡そ地獄のような状況になっている事だろう。それでも生活面は幾分かマシではあるが……問題はこの世界に現れる悪魔、厳密に言えばその種類の多さ。
同名悪魔のレベル、種族、耐性、スキル違い。同名スキル、状態異常の効果違い。かつての世界では存在しなかった属性相性多数。足切りライン50という驚異的なまでのGP。加えて、セプテントリオンと呼ばれる怪物の存在。世界を何らかの形で滅亡に近い状況に追い込もうとしている組織。最近では
当然、その戦いに追随しなければならない俺を含む漂流者の負担も相応の物となる。政府や各組織は支援を用意はしてはいるもののそれだけで環境に追いつける訳ではない。そも、最低限の基準であるlv50でさえ世界によっては到達し得ない超人の領域。俺はガイア再生機構によって改造、それによってそのラインを辛うじて超えてはいた。それに加え、由奈とフェイに拾われた事も大きいだろう。今使っている銃も市販では間違いなく最上位の物で、防具に関しては<双鬼冠>*1、<カラミティスーツ>*2、<ガネーシャリング>*3、に<ミラージュブーツ>*4で固めている。ガイア再生機構のエリート部隊や上層部は知らないが、元の世界を踏まえれば破格ともいえる装備を渡されている。レベリングや知識面でもサポートは受けているし、強くなるならこれ以上の環境は早々ないのは明らかだろう。
まぁここまでサポートが手厚い、という事はそれ程ヤバい何かと相対する羽目になるという裏返しでもある。フェイのレベルは82、由奈のレベルは88。共に大組織のトップか?といってやりたいレベルだが、この世界ではこれでもトップではなく最上位程度。そんな彼らが相対する敵の中には80レベルから90レベル、下手すればそれ以上の化物も存在している。あのベリーニのネルガル*5も最終的にはそのクラスに達しており、特定状況化という前提はあるものの個人でそのクラスの悪魔を使役できるという現実がこの世界のイカれ具合を物語っている。
「とはいえ、流石にあのクラスは早々居ませんよ。フェイも死にかけましたし、80オーバーとの相対はそれこそ大組織の幹部・トップクラス或いは巨大な異界における
「だが、そういった奴らと戦い続けてきたからそのレベルになってるんだろ?」
「……まぁ、そうですね。色々事が起きる前は私も60レベル程度でしたし、フェイは30前後といった所でした。私達が強くなったのもそれらの危機の強大さ、それを乗り越えた時のソウルの研鑽によるものなのは間違いないです」
俺とテーブルを挟んで反対側に座っている由奈がカラカラとアイスコーヒーを混ぜながらそう答えた。今日の異界攻略もとい俺のレベリングを終えて、拠点にて寛ぎながら今回の異界攻略の書類をPCで記入している。
「それにしても、やはりレベルが上がるのが早いですね貴方は。あのスキルの影響もあるのでしょうが、レベル限界もまだ見えませんしこの分なら戦力としての働いてもらうのは問題なさそうですね」
「色々複雑だがな。それにまだ60レベル程度だ、これでは足りないのだろう?」
「ええ、我々の戦闘に追随するには70は欲しい所です」
「冗談ならよかったんだがな、それ」
溜息をつきながら、頼んでいたショートケーキを頬張り思わず笑みを浮かべる。悪魔由来ではない肉類、野菜類、魚類、甘味、それらは文明が崩壊した世界では最早幻想に等しい物だ。現にそういった食事がこの世界のメインであると聞かされた時は目を疑ったし、食事を出された時は一心不乱に食べて、胃もたれもした。それだけではなく衣服や住居、安全な水源、娯楽……文明がなければ凡そ存在できない物達。この世界にやってきた漂流者がこの環境で挫けずに戦っていられるのはそういった文明を享受したいというのもやはり大きいのだろう。仮に環境についていけずに裏方やアルバイト等に従事したとしても元の世界と比べれば楽園のような生活を続けていける。このような余裕のある生活が今あるのも、ひとえにキリギリスが行動し続けた結果であるのは疑いようもない。
「それに一度知ってしまったら、ここから抜け出すのはまぁ難しいだろうからな。結果的に大半の漂流者は生活の為に戦い続ける選択を選ぶ訳だ、どういう形であれ」
「私も今の生活レベルを下げたくありませんからね……さてと、異界攻略の報告書はこんなもんでいいとして、次の仕事の話をしましょう」
「レベリングはもういいのか?」
「ええ、ちょっと緊急で依頼された物でして既にフェイには動いてもらってます。貴方の力も恐らく必要になる」
そうして机に置かれた一冊の焼き焦れた書物。それは由奈が使うというカルトマジック、マントラで用いられる事がある経典*6と呼ばれる物と似ていた。
「依頼主はヤタガラス。依頼内容はレルム内で失踪している悪魔関係者、その犯人の足取りの調査と可能であればこれの討伐」
「その書物は?」
「被害者が失踪したと思われる場所付近にあったとされる経典の一種です。使用済みなのでもう効力は発揮しませんが」
「……マントラ使うって事はバラモン或いは仏教関係者が狙われてるのか」
由奈はその言葉に頷き、詳細を語る。被害者はそれなりのレベルの悪魔関係者、特にヤタガラス或いはガイア系組織に所属する仏教系列の覚醒者が多い。彼らが襲撃されたと思われる場所は異界内部やそれに類する異界に近い不安定な場所、人通りの少ない路地裏や夜の大通りで狙われるケースもあったとの事。襲撃地点に死体はなく、残存するマグネタイト及び戦闘痕、引き千切られたと思われる防具や武器、肉片や血痕が襲撃地点に残されており、それにより身元の特定や襲撃時刻の推定が行われたらしい。
「異界内部やそれに類する場所は監視カメラ等も当然置かれてません。路地裏もそうですね。大通りに関しては……どうも姿が映っていません、一方的に被害者が殺害された映像が残っています。並みの覚醒者では感知できないドロンパ*7に似た透明になる術を持っているのでしょう」
「じゃあ犯人の目星はついてない訳だな」
「いえ、襲撃現場に居合わせたデビルバスターが襲撃者と交戦。姿も写真に収める事に成功はしているようです。ただ、交戦したデビルバスターも重傷を負っているようで手掛かりとなる写真も1枚だけですが」
提示された写真に写っていたのは鬼のような仮面を被った三つの黒い影。刀剣を装備し、認識阻害が掛かっているのかそれ以上の情報は写真からは読み取れない。
「鬼面でこの風貌ならガイア系が近いな。俺にも覚えがある……確か」
「天魔衆。もう古臭い、カビの生えたガイア組織ですが装備と風貌、雰囲気がそれと酷似している」
天魔衆、その名の通り天魔を信仰するガイア組織。天魔とは即ち第六天魔王波旬、仏法における悪魔を本来指すが悪魔業界においては少々違った物を指す。アスラ、シヴァ、インドラジット、ヤマ、ラーヴァナ等、インド神話における破壊神や魔神の派生でありこれらが天魔に該当するとされている。由奈が言うには仏教系ガイア、その過激派の集合体のような組織であり、百年以上前から存在する古いガイア組織であったらしいが分派が多くなりすぎて空中分解、本家である天魔衆もその流れで衰退したとされている。
「ここまでならガイア組織ではよくある事です。ただ、衰退した天魔衆に残った……厳密に言えば乗っ取った連中が厄介な連中でしてね」
「具体的には?」
「……天魔衆に残った者達はラクシャーサの末裔であるとされ、
「ガイアが人食いを重視するのは珍しい事ではないが……それだけじゃないか、その感じだと」
少し強張った表情を浮かべ、こくりと頷いた由奈は俺に話を続ける。奴らは天魔衆を名乗り、日本各地の秘境や仏教組織を乗っ取る形で潜伏。足がつきにくい裏の人間や自殺志願者等の陰のある人間を攫っては喰らい、子孫に関しても近親相姦を繰り返して出来の悪い子は家畜として育て上げた上に喰らうような悪鬼と言っても憚らないような連中だった。その人食いが功を奏したのか、天魔衆は少数ながら強力な悪魔人間の集団として再び名を轟かせたらしい。しかし組織として知れ渡りすぎたのかヤタガラスとガイア組織に目を付けられて袋叩きに、由奈もヤタガラスの殲滅作戦に参加し、天魔衆は壊滅と相成った。
「だが、そうはならなかったんだな」
「模倣しているだけ、という可能性は捨てきれません」
あの作戦で天魔衆を皆殺しにしたのは間違いないのですから、と言って由奈は押し黙る様に俯いた。加えて人を喰らうという点、ラーヴァナを信仰している点、何より能力面で酷似する点が多い事から
「にしても随分詳しいんだな、そいつらについて」
「……昔の話ですが私は彼らと関わった事がありましたからね、それだけと言えばそれだけです。それと、彼らの前では防具もあまり意味を成さないかもしれません。躱せればそれが一番ですが此方が渡した符やアイテムで防御面は対処を御願いします。調査に関してはまた明後日からになるのでその間に欲しい物があればまた言ってください」
「一つ質問がある。透明化を行うというのはこいつらなのか?」
「恐らく違うでしょうね。彼らが行えたならやってたでしょうし、ドロンパとは性質が異なるようでしたから……魔法による付与ではない可能性が高い。とはいえ情報がないのでそれも調査対象です。警戒はしておきましょう」
「了解した……しかし、明後日からか。こういうのは早い方が良いとは思うんだが」
「情報が錯綜していますからね。先程の写真が出る前までは超人失踪事件*8の一つにしかカウントされていませんでしたし、ミイラ取りがミイラになる可能性もある。根本的にこの事件に割ける人員も少ないので、慎重にならざるを得ないんですよ。フェイが先んじて動いているのも何かあった時の根回しと情報共有の為です、それも今日で終わって夕方頃には帰ってくるでしょう。明日を開けているのは明日しか休める日がなかったからです」
最近休めていなかったのは俺の強化を優先してくれていたという事でもある為か、罪悪感は結構ある。由奈とフェイ、どちらかが不在の時は必ず異界攻略かどこかのデビルバスターチームのヘルプに行っているようで巨大な悪魔が現れたとされるレルムの件によってそれは加速した。異界探索のついでに契約悪魔のソウルリンクと信頼度上げを死んだ目で繰り返すフェイの姿は記憶に新しい。なんか新しい悪魔連れてたし
「専用のモニターやPS5も人数分買いましたし、今日と明日で何とか区切りの良い所まで進めたい所ですね。貴方の分も用意してありますよ」
「えっ、何するんだ」
「少々話題に乗り遅れた感じはありますが……ルビコンに行きます。チャンスは明日しかありません、この為に情報も自主的に遮断してきましたからね」
「るび……こん?待て、何のはな「やれば分かりますから」ちょっ、引っ張って行くな!わぁーっ!」
・キャラ紹介
<天魔衆>
大体ガイア組織の皮を被った人食い集団。
元ネタは200Xに記載されていた真1時空における都庁のラーヴァナを信仰する集団だが、詳細が載っているサプリは例によって絶版で作者がお金使い過ぎた為に確認ができておらず、実質的に名前だけ同じのオリジナル設定の集団となっている。本家様におけるデヴァローガとの関係性は不明(本家様の設定見てから判断。現状は無関係予定)
<久遠 フェイ>
異界マラソンか救援に大体追われてる人。
双鬼冠やガネーシャリング等の魔晶変化は装備は悪魔にアイテム貢いで予備も含めて作っている。ルビコンではスタッガーを取るのが苦手なのか中量EN特化でやっている。何とか2周目までクリアした。
<久遠 由奈>
前回異界疾走してた人。天魔衆とは何かと因縁がある様子。
ブレオンで何とか頑張ろうと思ったが普通にきつかったので断念。避けながら接近する軽量機より当たる事前提の重量機使用からのOB急接近の方が戦いやすい事に気付いたのか、最終的に近接武器は1個だけで後は大体爆発武器で固める事になった。キックだけは上手い。ちなみに1周目ラスボスで詰まってる。
<久遠 エリヤ>
環境にビビりながら何とか学習を続けている人。
ゲーム初挑戦ながら持ち前の反射神経と天性のセンスでRTA並みの進行速度でゲームを進めている。使用機体は軽量機で滅茶苦茶避けるし、大体当ててくる。武器は実弾系でリニアかショットガン、肩はスタッガー用の武器を担いで現在3周目のラスボスまでクリアして、対戦に繰り出している。
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その身を羅刹が如く -前編-
1日のルビコン強行軍を経て、リフレッシュもした僕達は襲撃者の調査及び撃破の為に動き出す事になった。作戦メンバーは僕と由奈、それにエリヤの3人に同様に調査を行っているデビバスチームが複数。狙われた覚醒者の多くが足切りライン、つまり50レベル以上であり音もなく殺されている事と3人の襲撃者と戦ったとされるデビルバスターの証言によれば二人は60レベル以上、リーダーと思われる者は70レベル以上に感じられたらしい。アナライズする隙もなかった為に主観的な物だが指標にはなるし、そのレベル帯なら僕達に依頼が回ってきたのも頷ける。
妖精の輪 | 200X出典。情報を1つ得る事が出来る。1シナリオ1回まで |
大地の声 | 200X出典。精霊、地霊、妖精と会話し、情報一つかアイテム1つ入手する。 1シナリオ1回まで |
コンピュータ操作 | コンピュータを使いこなし、簡単なプログラムを使用できる。 情報技能として使用する場合、インターネット・サーフィンだけではなく 軽度の侵入によって情報を得る。判定は運で行われる。 |
情報に関してはネットにおける情報や襲撃地点付近に存在する妖精や地霊、精霊等から入手してある程度だが襲撃者が潜伏してそうなポイントを幾つか割り出した。例によって罠である可能性も高く、各チームはそれぞれ警戒しつつ担当ポイントへ向かう事となり、僕達もまた同様に動いている。
「ただ、ここは外れっぽいかな。警戒は続けるけど、そういう雰囲気じゃない」
「こっちも違和感なんかは感じられない。雰囲気はあるが、気配自体は全くだ」
現在居る地点は天魔衆が拠点に使っていたとされる寺……に存在する隠し洞窟。異界化はされているようだが最低限のものであり、出てくる悪魔もそう強い物ではない。飽く迄、一時的な拠点で存在していたとされる痕跡こそ残っているが概ねそれだけでもぬけの殻だった。
「私としては一番可能性がある場所を選んだつもりだったんですが……すみません、当てが外れました」
「いいよ、僕も反対しなかったんだしさ。それより他が心配だね、この異界も完全に確保できたし合流するか他の地点に行くか相談でも……」
次の行動指標を定めようとしたその瞬間、COMPに通信が入った。文章はなく場所だけが記された救難信号。発信地点は此処から約5km程離れたレルムの郊外であり、信号は依頼に参加しているチーム全体に送信されているようで僕達が場所としては一番近い。
「次の行き先は決まりですね。飛びますか?」
「うん。飛ばないと間に合わないかもだから……御願い、エルフ」
徒歩で向かってもいいがそれでは聊か時間がかかり過ぎる。緑髪の白いワンピースを着た妖精……エルフを召喚*1して同時に魔力を用いて一種の門を構築する。
『……相変わらず妖精遣いが荒い人ですね。対価はしっかり頂きますから』
「時間ある時にまた埋め合わせはするよ。案内宜しくね」
『はいはい、分かってますよ』
妖精の輪 | 誕生篇記載のウィッカ・カルトマジック。 妖精の輪と呼ばれる門を開き、予め用意しておいた避難所にテレポートする。 避難所を用意してない場合でも妖精を呼んでいれば妖精の導きで1キロ以内の空き地にテレポートする |
召喚したエルフにやや悪態をつかれながらも展開した妖精の輪を潜って1km近づき、さらに妖精の輪を潜って距離を詰めていく。1km先でそれなりに広い場所という事以外はランダムである為、目撃されるリスクもあるが背に腹は代えられない。救難信号を発したチームのレベルは60後半から70後半程度。キリギリスの中でも上位層に達する人達であり、そんな彼らが最低限の情報も送る事もなく救難信号を発しているという事はそのレベルでも全く相手にならない強さか何かしら封殺する事が出来る手札を持っているという事に他ならない。
「最低でも80。最悪は90オーバーを想定しておくべきでしょうね。他のチームは?」
「他のチームも救難信号を目指してる。彼らが到着するまでの間に何とか仕立人と交戦或いは救難信号を発したメンバー達と合流したい所かな」
―――そう上手くいくかは分からないけど
心の中でそう呟きながら、僕達は強い敵4回目の妖精の輪を通り抜けて救難信号付近のポイントであるレルム郊外のスラム街に到着した。ここのレルムは非公式のレルムで通常のレルムでは居られないような人間が存在しており、その郊外であるスラム街はそんなレルムでも許されないような商売やならず者の在住区になっているらしい。ヤタガラスも近々対処すると噂はされていたが……
「嫌な空気です。荒廃してる街特有の匂いではない、これは……」
「半分くらい異界化してるね。COMPじゃなきゃ通信も難しい」
崩れかけた建物が連なる灰色の景色に煙っぽい淀んだ空気、其処に混じる薄い赤色の霧。霧には認識阻害の術が施されているのか、救難信号を発した場所も発信ポイントがズレているようで姿が見当たらない。加えて周囲の人の気配も薄く寂れたスラム街とはいえここまで人影一つすら見ていないのは異常で、消えた痕跡すらまともに残っていない。
「由奈、ここの住民は?」
「居ません……いえ、先程まで居たといった方が正しいですね。残留MAGから判断するに喰われてます、戦闘痕や血痕すら残さずに」
「……駄目元だけど急がないと不味いな。」
エルフは退去、フレスベルグ・バロン・ラクシュミを召喚して改めて捜査を行う。残留したMAGの痕跡とフレスベルグとエリヤの眼を頼りに捜索ポイントを絞っていき、居る一番可能性が高いと判断した郊外奥の薄暗い路地裏へと入っていく。異界化の影響で路地裏も拡張されているのか、迷路のような入り組んだ道を疾走しながら度々COMPの探知に引っ掛からないか確認を行う。
「フレスベルグ、エリヤ」
『徐々ニダガ見エテキタ。チカイゾ』
「こっちも同じだ。この辺りなのは間違いない」
「よし、このまま先に……由奈?」
由奈が太刀を抜き、振り向いて立ち止まった。フレスベルグもエリヤも何かしら違和感を感じた様子は見られない。見られないが……
「……居るんだね?」
「ええ、先に進んでください。ここは私が」
「エリヤも残らせる。僕より君の方が相性良いし、片付いてもし合流できそうなら御願い」
「「了解しました(分かった)」」
殿をエリヤと由奈に任せて、先を急ぐ。フレスベルグの探知にも引っ掛かっており正確な場所は割れているが霧の濃度が上がって視界は不明瞭になっている、通路も狭い。そして、その先に
「間に合わなかった……いや、ギリギリかな」
打ち捨てられた幾多の真っ赤な骸。下半身がないものや内臓が零れ落ちているもの、救難信号を発したデビルバスターも紛れているが数が多く、このスラム街の住民も混ざっている。即座にラクシュミに回復を命じ、他の仲魔達と共に周囲を見渡しながらCOMPに現在位置を最大電波で飛ばし続けるよう設定を行う。
「あそこまで綺麗に住民を喰らってるんだ。これは釣り餌なんだろう?」
僕達を見下ろしている何者かに問う。周囲の視界は霧でぼやけ、場所も狭い。彼らを回復蘇生させた上で逃げる事を選択した場合、その隙を付いてくるだろう。そして、もうすぐラクシュミの回復が終わる。辺りを満たすMAGが荒ぶり揺れ、丑三つ時のように静かで
殺神 | DDSAT2出典。敵単体に物理属性の超特大ダメージを与える。超高確率でクリティカルが発生し、命中率が非常に低い。 |
殺神 | DDSAT2出典。敵単体に物理属性の超特大ダメージを与える。超高確率でクリティカルが発生し、命中率が非常に低い。 |
――
「ッ……不意打ちじゃないのか」
バロンは<食いしばり>*2にて耐え、フレスベルグには<電気ショック>*3で耐えさせた。ラクシュミの回復も回したいが、その隙は恐らくない。襲撃者の姿が、まるで見えない。見えない程高速で動いているのか或いはドロンパのような透明化かの2択で、事前情報から察するに恐らく透明化。最大の問題は<タリ報>*4も<百太郎>*5も反応しておらず、フレスベルグが恐らくその姿を眼で追えなかった事。
「なら」
身体にMAGを迸らせ、魔力を回す。周囲の状況、異界化による濃霧に狭い路地裏で遮蔽物多数……まずはこれを何とかしないといけない。他のデビルバスター達の安全は最低限だが確保できた。
ラスタキャンディ | 真5出典。3ターンの間、味方全体の全能力を1段階上昇させる |
ワイルドハント | 覚醒篇:ウィッカ。敵全体に相性:-(万能相性処理)のダメージを与える。 威力は加護(運)×2となり、ステ振りが運魔特化の為にメギドラオン以上の特大ダメージを与える。 |
ラクシュミの加護を乗せ、周囲の建物諸共に万物に通じるの嵐を吹き荒らす。路地裏を囲む建物は吹き飛ばされて遮蔽はなくなり、濃霧もある程度マシになったが
「ドロンパとは仕様が違うか……当たってない」
襲撃者に当たった感触がまるでない。回避したというのも、勘が違うと告げている。
「フレスベルグ」
『オソラク
「分かった。指示を出す」
そして、
殺神 | DDSAT2出典。敵単体に物理属性の超特大ダメージを与える。超高確率でクリティカルが発生し、命中率が非常に低い。 |
殺神 | DDSAT2出典。敵単体に物理属性の超特大ダメージを与える。超高確率でクリティカルが発生し、命中率が非常に低い。 |
尋常ではないプレッシャーと殺気が僕に向けられ、その二振りの凶刃に身体を削がれる風景が脳裏に映るが僕に回避は出来ない。
「ごめん、頼んだ」
見えない刃をまずバロンが<カバー(手番放棄)>で受け止め死亡。それで現在の、奴の位置をある程度割り出して
『ミエタゾ!』
ガルダイン | DSJ出典。敵単体に疾風属性の大ダメージを与える。 |
僕と透明な襲撃者、その合間に身体を滑り込ませたフレスベルグはその身が引き裂かれ絶命する事と引き換えに疾風の魔界魔法をそれに叩き込んで
高速詠唱 | 200X出典。補助スキル。手番中、使用者は追加で1アクション分の魔法攻撃か支援魔法を行う事が出来る。 但し、HPを回復する効果のあるスキルは使用できない。 1シナリオ(一連のダンジョンクリアやボス撃破等を指標にする)に3回まで使用可能。 使用する度にコストとして現在HPの半分を消費する。 このスキルは本来1つの手番に複数回使用できるが、不完全な習得である為にそれは封じられている。 |
サバトマ | 真1出典。マッカを消費せずに仲魔を1体召喚する |
サバトマ | 真1出典。マッカを消費せずに仲魔を1体召喚する |
\カカカッ/
邪龍 | セト | Lv79 | 銃・投具・氷結・電撃に強く、破魔・呪殺・精神・神経・魔力無効*6 |
\カカカッ/
邪神 | マダ | Lv77 | 火炎吸収、破魔・呪殺無効。精神・神経・魔力耐性*7 |
倒れた仲魔をCOMPに戻しながら即座に翼を広げた黒い邪龍と四つの腕を持つ炎を纏った邪神を呼び出し、ラクシュミに<女神の恩寵>*8を唱えさせて高速詠唱で失ったHPを補填する。
「何とか状況は好転させたけど……最近どうにもババを引いてばっかりな気がするな。生きて帰れたらお祓いにでも行かないとね」
フレスベルグの犠牲と共に吹き飛ばした襲撃者。透明化は解けたのか、その姿を垣間見た。
『随分と余裕だな?』
しがれた女の声。痛んだ長い茶髪に黒に近い褐色の肌、ぎらぎらと黄金に輝く瞳、異形の物と化した悪魔の四肢。そして、何より
\カカカッ/
Lv99 | 喰奴 | ラーヴァナ | 耐性:不明 |
「まさか……虚勢に決まってるでしょ。こんな所に居ていいレベルじゃないんだよ、君は」
・キャラ紹介
<久遠 フェイ>
また単独で化物級と戦わされる可哀そうな人。大体サマナーで頭数が稼げているのが悪い。お祓いは真面目に検討している。
<久遠 由奈&久遠 エリヤ>
殿組。由奈は何かしらの気配に気付き、エリヤと共にその足止め及び撃滅を行う事に。肝心のフェイが大変なのに絡まれているのには気づいていない模様。此方の視点に関してはまた次回。
<喰奴ラーヴァナ>
透明化しながら奇襲仕掛けてくるタイプのLv99。絶対性格悪いよ。その真価は恐らく後編で
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その身を羅刹が如く -中編-
その昔、寺に坊主の男が居た。男は僧侶として特筆すべき物は何もなく、霊的な才能も一切存在しなかった。唯一あったのは僧侶としては必要ない筈の剣の才能であり、周囲の人間は男に憐れんでいたが男はただ無心に剣を磨き続けた。そうして身に着けた自身の剣を振り抜き、相手の剣を弾き飛ばして、鋭く速く相手の急所を貫く我流の剣術。暇を見つけては剣士に勝負を挑み、勝っては負け、それを繰り返して男は己の剣を研ぎ澄ませていった。その過程で家族から絶交を言い渡され、寺から破門を言い渡されようと男はそれでよかった。剣があれば己は満足だと、そう言い聞かせて
ある日、あまりに呆気なく己は負けて、剣と心が叩き折られた。
男が磨いた剣は飽く迄、人を想定したもの。悪魔やそれに準じる者達には通用しない。それでもと剣を磨いた。しかし
男に霊的才能はなく、剣が多少上手いだけの
どうあがいても届かない者を知っても尚、男には剣しかなくどれだけ死にかけても覚醒する事はやはりなかった。徐々に精彩を欠く剣と衰える自分の肉体、錆びつき腐る心、男は今までにない絶対な恐怖を感じて一度は剣を棄てようとした。
『否、違う。違う……このような末路は認めない。己は剣を棄ててはならない、それ以外何もないのだから』
恐怖に慄いた心と錆びつき果てた剣、それら全てを炉にくべてやり直す。
方法はあった。遠い昔、寺から追放された魔に染まった者達……天魔衆と呼ばれる者達が居た。曰く彼らは人の身を鬼に変える術があり、それには特別な素養は必要ないと。猿の手を掴む様に魔が差した思考で、己はその者達に接触した。
『お前には素質がある。何かを喰らって満たされても尚満足せずに飢え続ける事が出来てしまう
『だがそれだけでは足りぬ。我らは対価を要求する。力は与えよう、だがそれ以外の全てを棄てろ』
己はそれを受諾した。己に必要なのは剣を高める、ただ純粋なる力。それ以外は必要なし、総じて不要である。
『宜しい。今この時よりお前は我らと同じ羅刹天だ』
取引は成立し、己は彼らと同じ存在になった。湧き上がる力に全能感にそれ以上の飢餓感。男は心のままに古巣である寺に向かった。かつての同僚達を切り伏せて、その身を喰らった。両親の首を刎ねて、丸呑みにした。兄弟を殺した、食べた。後は……後は……誰だっただろうか。己を夫と呼びながら縋って来た女を喰らって、最後に涙を流す子供を喰らった。何故か涙が零れたが、まぁそれも最早どうでもいい。
『清々しい。ようやく己には剣しか残らない……自由だ』
鬼になって以後、己に不足を感じた事はない。剣の腕は人の身では考えられない程に上達し、湧き上がる力に衰えは見られない。天魔衆の言う事さえ聞いてさえいれば、他の面倒な事は彼らがやってくれる。それでも満たされない物もあるが、それを求めたのはそもそも己である。飢えがなければ強くはなれない、強くなければ己が存在する価値はない。
――己は剣に準じる、ただその身を羅刹が如く
「……目的は挟撃でしょうかね。もうバレてますから、出てきてください」
由奈の声が寂れた大通りに響き渡る。エリヤもまた由奈程ではないが、何かが居るという気配だけは感じ取ってレールガン*1を構えた。
『気配は消していたが、同族には通用しないか。仕方あるまい』
崩れ落ちた建物の屋上から現れる3つの朧げな人影。全員が鬼面を被り、ローブのような衣服で全身を隠している。微かにだがローブの切れ目から悪魔の物と思われる異形の四肢が見えて、鬼面の奥から黄金の瞳が由奈とエリヤを見つめている。
\カカカッ/
Lv85 | 半喰奴 | 法華 参郎 | 耐性:不明 |
\カカカッ/
Lv75 | 喰奴 | 羅刹天 | 耐性:不明 |
\カカカッ/
Lv75 | 喰奴 | 羅刹天 | 耐性:不明 |
『であれば名乗らなければならぬ。己は天魔衆残党、法華 参郎。お前達の命、喰らわせて貰う』
「……貴方達が今更天魔衆を名乗って良いものかと思いますが、それはまぁいい。何が目的ですか?」
『我ら羅刹に、人喰いの理由を問うか。久遠 由奈』
法華の言葉に由奈は顔を歪めて睨みつけ、エリヤは何かあれば射撃を行う態勢のままその会話を見届けている。
『お前の事はよく知っているぞ。
「生きていれば色々あるものでしょう。貴方も随分様変わりした……新しい飼い主でも見つかりましたか?」
『ふん、お互い隠し立ては出来んか。だが……』
法華はローブを脱ぎ捨て、他の羅刹天と比べやや人間味がある腕から刀を抜き立つ。他の羅刹天も同様にローブを脱ぎ捨て、異形の両腕を解き放つ。
『どうやら己の飼い主はお前の飼い主に興味津々らしい。ここで時間はあまり掛けない方がいいぞ、あれは化物だ』
「……貴様」
『やる気になったか?好い事だ。さっさと殺し合おう……お前を喰らえば己はさらなる高みに行けるだろうしな』
由奈は確かな苛立ちと焦りを抱きながら、冷静に相手の戦力を確認する。lv83が一人に、lv75が二人。あれの特性はよく知っている。物理特化に
羅刹モード | 羅刹である証であり、呪い。飢えによって攻撃性能が大幅に強化されるが、防御性能が大幅に下がる。以下の効果を強制的に得る。 ・物理貫通(D2式)を取得し、魔法を一切使えなくなる (物理スキル・アイテムは使用可能) ・物理攻撃時に通常の2倍のダメージを与える。 但し、敵から物理攻撃を受けると通常の2.3倍のダメージを受ける。 ・クリティカル率が大幅に上昇する(+90%)が、 敵からの攻撃のクリティカル率も大幅に上昇する(+60%) ・回避率が大きく上昇するが、命中率が大きく下がる。 |
すなわち、その不安定な姿こそが羅刹の正体である。加えてラクシャーサの末裔であるのなら<豪傑の転心>*2も持っている。最低2倍、最高8倍*3の物理貫通の攻撃、それが奴らの最大の武器だ。加えてネックとなる物理の対策もしているだろうし、反撃の類も持っているだろう。故に物理属性は見え透いた地雷。
「エリヤ、あれの対処方法は覚えてますね?」
「ここに来る前に散々言われたから大丈夫だ……後はまぁ色々気になる事もあるが後回しにしておく」
「すみません……では、始めましょう」
由奈と法華、黄金の眼光が互いを射抜いて辺りに沈黙が満ちる。羅刹天達は今にも腰を落とし、獣のような態勢に、エリヤはそれを撃ち落とす狩人のようにレールガンを向けて牽制の構えを見せる。
『いざ尋常に』
「勝負」
その言葉を互いに謳い、静かに戦端は開かれる。
スピードスター | D2出典。悪魔のバトルスピードへの影響が50%増加する。 |
涅哩底王 | D2出典。物理命中率が10%増加し、1ターン目開始時、自身にリベリオンが発動する。 リベリオン※D2:自身を会心状態にし、次の攻撃をクリティカルにする。 |
血祭り | DDSAT1出典。敵全体に物理属性の中ダメージを与える。クリティカル率が高い。 |
先手を取ったのは2体の羅刹天。瞬間的に音速にも及ぶ速度で跳び上がり、当たれば由奈とエリヤの両者を絶命に至らしめる事が出来る程の爪撃を交差に振るい
「オーム・スリ・マハ・ラクシュミイェー・ナマハ」
カバー | 誕生篇出典。割込行動。集団スポーツで他者カバーに入る臨機応変の能力を示す。 他者が失敗した時に何らかのカバーに入る能力である。 チェックに成功すれば、他のPCの行動に割り込んで自分の行動を行える。 代わりにダメージを受けるのはオーケー。この場合は回避は出来ずに防御は可能。 |
吉祥天咒法 | 覚醒篇・マントラ出典。防御行動の際に使用できる。自分に与えられた敵の物理攻撃1回を副次効果も含めて無効化する |
エリヤを庇った由奈はそれを、何ら損傷もなく腕甲と太刀で受け止める。マントラ、カルトマジックとして割り当てられた仏教系密教における秘術。印を刻み、真言を唱え、仏門及びディーヴァ神族より加護を得る。由奈の唱えたマントラは物理攻撃を一律無効化する物。
『マントラ……ラクシュミーの加護か…!』
「御名答。では2回は2回、やり返させて頂く」
引き | 誕生篇出典。補助行動。相手が防御した時或いは自分が相手の攻撃を防御した時に後方に跳び上がって、 間合いを取り、攻撃につなげる技。判定に成功すればペナルティ修正なしで1回、攻撃できる。 この攻撃の対象の回避/防御は威力分(剛剣技能値参照。値は60)のペナルティ修正を受ける。 |
雲耀の剣 | 200X出典。敵前列に万能相性物理ダメージを与える。消費MP・HPは存在しない |
2体の羅刹天を弾き飛ばし、続け様に雲耀の速度に達した太刀が法華諸共に振り抜かれる。羅刹天が持っている<反撃>*4では万能物理に対抗する事は出来ずに反応する暇もなくその身を切り落とされるが<食いしばり>にてそれを耐え切った。
『物理無効化からのカウンター。聞いていた通りだ……しかし!』
法華にも迫る万物を断ち切る刃。それに対して静かに片手で刀を構え
無行の位 | 覚醒篇・速剣出典。相手の格闘攻撃に対する反撃技。この特技を使用すると相手の格闘攻撃が反射される。 |
冴えたやり方<速剣> | 200X出典。亜種特技。自身が次に行う行動の判定に+60%する。この効果は集中・チャージ等のアクションを行うか、戦闘またはシーン終了まで持続する。 本来は味方にも適用可能だが自身&速剣限定にしている為にスキル効果が上昇しており、1シナリオに5回まで使用可能。 |
刹那の瞬く間に片手で太刀の方向を反転させて、その刃を由奈に引き当てる。
「ォオオオッ!」
刃は通ったが、致命傷ではない。反転させた刃を再び音もなく振るうが
『悪いが己はこれしか出来んのだ。故に負けられん!』
見切り | 誕生篇・速剣出典。回避の代わりに使用。成功した場合、相手に1回攻撃をする事が出来る。 相手は回避や防御に威力分のペナルティ修正を受ける。威力は速剣技能値を参照。 |
冴えたやり方<速剣> | 200X出典。亜種特技。自身が次に行う行動の判定に+60%する。 この効果は集中・チャージ等のアクションを行うか、戦闘またはシーン終了まで持続する。 本来は味方にも適用可能だが自身&速剣限定にしている為にスキル効果が上昇しており、1シナリオに5回まで使用可能。 |
涅哩底王 | D2出典。物理命中率が10%増加し、1ターン目開始時、自身にリベリオンが発動する。 |
狂乱の間 | NINE出典。敵・味方とも、物理攻撃で与えるダメージが1.5倍になる |
雷光突き | 覚醒篇・速剣出典。敵単体に剣相性の物理ダメージを与える。ダメージを与える際に物理防御を半分として扱う |
太刀を見切られたように弾き飛ばされ、その隙に縫うように差し込まれた絶死の突き*5。防具を容易に貫いたそれは腹部すら貫通して、血を溢れさせた。その一撃に崩れ落ちる直前に<不屈の闘志>*6を発動し、由奈はギリギリの所で持ち直す。その間に法華は<宝玉輪>*7を使用し、態勢を整えた。
「由奈!」
「問題ありません……ただ、一筋縄でいかないのは分かりました」
由奈と法華の性質の差。由奈が物理無効化からの防御軸のカウンターなら、あちらは回避と剣捌きによる回避軸のカウンター。カウンターはその性質上、普通に攻撃を受けるよりも防御・回避が難しくなる*8。しかし法華はそのマイナスを打ち消せる程の反射神経、それによる刹那の見切りで反撃に対してさらに斬り返す事が出来た。加えて言うなら由奈の剣術、法華の剣術。由奈が用いるのが剛剣、法華が用いるのが速剣という差はあるが法華の方が剣に関しては2枚ほど上手*9。エリヤの<援護射撃>*10を用いてもその差は埋まらず、これをどうにかするには何かしら策を講じる必要がある。
「防御重視で、援護は任せましたよ」
「了解。そっちも頼んだ」
金剛の札 | P5R出典。消費アイテム。3ターンの間、味方全体の防御力上昇。エリヤが使用 |
摩利支天咒法 | 誕生篇・マントラ出典。摩利支天の加護を受けて、神速の動きを得る。 2倍の行動ができるようになる(ラウンド毎に2回分のアクションが可能に)。移動力や回避値は変わらない。 効果ターン数はマントラ技能値-10により、10ターン継続する物とする。由奈が発動 |
スクカジャによる防御力上昇。マリシテンのマントラによる手数増加。これで次のラウンドに備える選択をし、
「先手を!」
先手 | 誕生篇_剛剣。反射神経を鍛え上げ、反応する。イニシアティブで振れるダイスを1ターンだけ2個増やす。由奈が発動 |
『悪いが、己の方が速い』
先の先 | 誕生篇・速剣出典。相手の先手を取って戦いを有利に進める知略である。 イニシアティブの前に宣言して判定に成功すると必ず先手で行動できる。 |
先手を取り合う戦い。羅刹天より速く飛び出した由奈だが、その先を取られ法華が動く。
『一度手札は見せてしまったからな。落としやすい方から墜とさせて貰う』
羅刹の弱点、それは命中の低さである。確率にして約6割、幾ら威力が高かろうと当たらなければ意味はない。羅刹天は<涅哩底王>*11、そして思■融■*12にて命中を補強しているがそれでもやや心許ない。
揺らし | 覚醒篇・速剣出典。相手の心理を攪乱する補助技。相手は精神力チェックを行い、失敗時に攻撃に対する回避/防御の判定に-20%のペナルティを受ける。 |
狂乱の間 | NINE出典。敵・味方とも、物理攻撃で与えるダメージが1.5倍になる |
籠手打ち | 誕生篇・速剣出典。手首から指を切る。相手は激痛で手に持った武器を落とし、手を使った攻撃が出来なくなる 腕の防具以外は無効(腕防具以外は防具相性として適用されない物として裁定)。命中に速剣技能値を加算する。 |
だが法華が用いる剣は飽く迄、理を用いた剣である。極度に鍛え上げられた己の剣を用いれば当てる事は容易*13であり、威力はそれこそ羅刹の力を頼ればよい。だがこの女、久遠 由奈もまた羅刹であり己と同様の剣士。己と比較すれば己の方が相性が多少良いだけで総合的な力量に差は殆どなく、レベル自体はあちらの方がやや格上。落ち着いて油断はせず、まず剣士の命である両腕に向けて疾風が如く刀を振るう。
吉祥天咒法 | 覚醒篇・マントラ出典。防御行動の際に使用できる。自分に与えられた敵の物理攻撃1回を副次効果も含めて無効化する。由奈が発動 |
援護射撃Ⅲ | 200X出典。即時効果。銃器を装備中に使用者以外の味方一人が攻撃を受けた時に使用可能 対象は回避・防御・反撃の判定に+40%の修正を得る。この効果は1シナリオに3回まで使用可能。エリヤが発動 |
先程と同様に展開される物理無効化のマントラにそれを補助するエリヤの射撃。無言の連携により、その攻撃は防がれ
引き | 誕生篇出典。補助行動。相手が防御した時或いは自分が相手の攻撃を防御した時に後方に跳び上がって、 間合いを取り、攻撃につなげる技。判定に成功すればペナルティ修正なしで1回、攻撃できる。 この攻撃の対象の回避/防御は威力分(剛剣技能値参照。値は60)のペナルティ修正を受ける。 |
雲耀の剣 | 200X出典。敵前列に万能相性物理ダメージを与える。消費MP・HPは存在しない |
先程と同じ動き、同じ太刀筋で斬り返す。
『それはもう見たぞ』
見切り | 誕生篇・速剣出典。回避の代わりに使用。成功した場合、相手に1回攻撃をする事が出来る。 相手は回避や防御に威力分のペナルティ修正を受ける。威力は速剣技能値を参照。 |
冴えたやり方<速剣> | 200X出典。亜種特技。自身が次に行う行動の判定に+60%する。 この効果は集中・チャージ等のアクションを行うか、戦闘またはシーン終了まで持続する。 本来は味方にも適用可能だが自身&速剣限定にしている為にスキル効果が上昇しており、1シナリオに5回まで使用可能。 |
狂乱の間 | NINE出典。敵・味方とも、物理攻撃で与えるダメージが1.5倍になる |
籠手打ち | 誕生篇・速剣出典。手首から指を切る。相手は激痛で手に持った武器を落とし、手を使った攻撃が出来なくなる 腕の防具以外は無効(腕防具以外は防具相性として適用されない物として裁定)。命中に速剣技能値を加算する。 |
『はぁッ!』
どれだけ速度があろうと来ることが分かって尚且つ一度見た技に対応できない程、愚かではない。流れるままにそれを見切り、由奈の腕を穿った。
『両腕狙い、殺すつもりで放ったが成程。そういう事も出来る訳だ』
防御 | 女神転生出典。手番を消費する事でターン中の攻撃を半減。クリティカルを無効化。1アクションを使用し、由奈が発動 |
由奈の片腕は斬り飛ばされたものの、もう一つの手で太刀は握り続けており、ダメージにも耐えている。先んじて受ける事前提で振る舞い、防御を固めて尚且つ先程の<金剛の札>によって防御力が上昇した由奈を一撃で倒すには至らなかった。
『だが最低限の目的は果たした。後ろの女を殺せ!』
法華は片腕で太刀を構える由奈に鍔迫り合いを仕掛け、<カバー>をさせないように留めながら羅刹天にエリヤの殺害を指示する。
脳天割り | DDSAT1出典。敵単体に物理属性の大ダメージを与える。術者の残りHPによって威力が増大。 |
脳天割り | DDSAT1出典。敵単体に物理属性の大ダメージを与える。術者の残りHPによって威力が増大。 |
法華の剣とは対照的な獣その物の乱雑な。されど凶悪極まる一撃が2発、エリヤに迫る。
「こっちもそれなりに修業はしてきたつもりなんでな。足手纏いにはなれない…!」
回避強化 | 200X出典。回避率が上昇する。 |
速度向上Ⅲ | 200X出典。イニシアティブ基本値と回避判定値に+15%する。 |
幸運Ⅲ | 200X出典。即時効果。自分に対する攻撃のダメージと追加効果を完全に打ち消す。1シナリオ3回まで使用可能。 |
脳天に振るわれようとした両腕をまず一撃、すり抜けるようにして身を躱し、それでも当たる2発目の一撃は<幸運Ⅲ>にて無効化する。
「2発、何とか避けたかったが俺もまだまだという事か」
『あれを捌き切るか。だがそう何回も…ッ!』
鍔迫り合った剣が由奈の片手で払われる。それと同時にエリヤが<宝玉>*14を使用して由奈を回復。
「片手だと、油断しましたね」
踏み込み | 誕生篇・剛剣出典。一瞬の踏み込みにより威力値×1m踏み込み、移動のペナルティを受けずに攻撃できる。 敵は直後の攻撃に対して回避や防御の判定値が威力分、低下する。 威力は剛剣技能値を参照する。 |
エレメンタル・スラッシュ | 200X出典。このターン、使用者が次に行う格闘攻撃の1回の対象を前列1体から1体に変更し、 判定値に+30%の補正を与える(後列に居る対象にも格闘攻撃が可能に)。 ランクⅢである為に前列2体を2体に対象変更。対象:前列を1列に変更する事が出来る。 |
煌天の会心Ⅲ | 補助効果。格闘攻撃をクリティカルに変更する。200Xにおいてクリティカルはダメージ2倍である為にそのように裁定 1シナリオ3回まで使用可能。 |
雲耀の剣 | 200X出典。敵前列に万能相性物理ダメージを与える。消費MP・HPは存在しない |
マリシテンの加護により防御を行いながらも振るわれた雲耀の剣。踏み込みにより防御や回避の可能性を極限まで落とされたそれの狙いは
『やってくれたな…!』
「これで残るはお前だけです」
そして、
法華は思考する。此処から己が勝つにはどうすれば良いか、と。まず最大の敵は久遠 由奈。これは間違いない。<不屈の闘志>は早々に切らせた。<宝玉>で傷は治されたもののそれは織り込み済みで片腕はより遠くに斬り飛ばした影響で奴は片手で両手用の太刀を振るう不安定な状態であるのは間違いない。その仲間であるあの銃使いも厄介だが、タイマンでやれば時間は掛かるが間違いなく己が勝つ。まだ勝機は十分に残っている、あの羅刹女さえ葬れば。勝てる、勝てるのだ。
『決着を付けよう』
「ええ」
互いに太刀を、刀を向ける。時が止まったかのような静謐な空気に、迸る緊張感と殺気。両者には永遠にも刹那にも近い、時が流れ
『ォォッ…!』
「…ッ!」
先の先 | 誕生篇・速剣出典。相手の先手を取って戦いを有利に進める知略である。 イニシアティブの前に宣言して判定に成功すると必ず先手で行動できる。 |
先手は法華。後手は由奈。唸るような静かな雄叫びを上げて法華は刀を構える。
揺らし | 覚醒篇・速剣出典。相手の心理を攪乱する補助技。相手は精神力チェックを行い、失敗時に攻撃に対する回避/防御の判定に-20%のペナルティを受ける。 |
狂乱の間 | NINE出典。敵・味方とも、物理攻撃で与えるダメージが1.5倍になる |
籠手打ち | 誕生篇・速剣出典。手首から指を切る。相手は激痛で手に持った武器を落とし、手を使った攻撃が出来なくなる 腕の防具以外は無効(腕防具以外は防具相性として適用されない物として裁定)。命中に速剣技能値を加算する。 |
先程と同様の腕狙いの一撃。されど回避する手立ては由奈にはなく、当たれば自身は戦力として使い物にならなくなる。
吉祥天咒法 | 覚醒篇・マントラ出典。防御行動の際に使用できる。自分に与えられた敵の物理攻撃1回を副次効果も含めて無効化する。由奈が発動 |
援護射撃Ⅲ | 200X出典。即時効果。銃器を装備中に使用者以外の味方一人が攻撃を受けた時に使用可能 対象は回避・防御・反撃の判定に+40%の修正を得る。この効果は1シナリオに3回まで使用可能。エリヤが発動 |
であれば先程と同様に防ぐしかない。そうする他に方法はないのだから
引き | 誕生篇出典。補助行動。相手が防御した時或いは自分が相手の攻撃を防御した時に後方に跳び上がって、 間合いを取り、攻撃につなげる技。判定に成功すればペナルティ修正なしで1回、攻撃できる。 この攻撃の対象の回避/防御は威力分(剛剣技能値参照。値は60)のペナルティ修正を受ける。 |
雲耀の剣 | 200X出典。敵前列に万能相性物理ダメージを与える。消費MP・HPは存在しない |
放たれるは最早見慣れた、稲妻が如き速度の絶技。
見切り | 誕生篇・速剣出典。回避の代わりに使用。成功した場合、相手に1回攻撃をする事が出来る。 相手は回避や防御に威力分のペナルティ修正を受ける。威力は速剣技能値を参照。 |
冴えたやり方<速剣> | 200X出典。亜種特技。自身が次に行う行動の判定に+60%する。 この効果は集中・チャージ等のアクションを行うか、戦闘またはシーン終了まで持続する。 本来は味方にも適用可能だが自身&速剣限定にしている為にスキル効果が上昇しており、1シナリオに5回まで使用可能。 |
狂乱の間 | NINE出典。敵・味方とも、物理攻撃で与えるダメージが1.5倍になる |
籠手打ち | 誕生篇・速剣出典。手首から指を切る。相手は激痛で手に持った武器を落とし、手を使った攻撃が出来なくなる 腕の防具以外は無効(腕防具以外は防具相性として適用されない物として裁定)。命中に速剣技能値を加算する。 |
言葉を発する合間もなく、呼吸を合わせてそれを見切って放たれるは腕堕とし。当たれば殺せて、万が一由奈が生き残っても腕は削がれる確実な一手。
吉祥天咒法 | 覚醒篇・マントラ出典。防御行動の際に使用できる。自分に与えられた敵の物理攻撃1回を副次効果も含めて無効化する。由奈が発動 |
対する由奈は再び、マントラを唱えた。法華は馬鹿な、と心の中でも失望した。これには回避や防御は出来ない、あの銃使いの射撃があっても無駄な事だ。それしか出来ぬとしても無駄、無謀、これは詰みなのだと。そう思いながらも
――この女はそんな無駄な事をする女だろうか?
そんな違和を抱いたが、最早己は止まれずに刀を振り抜こうとして
煌天の幻視 | 200X出典。自分を除く、味方一人の判定の失敗またはファンブルを成功に変更する。1シナリオ1回まで |
「ハァッ!」
引き | 誕生篇出典。補助行動。相手が防御した時或いは自分が相手の攻撃を防御した時に後方に跳び上がって、 間合いを取り、攻撃につなげる技。判定に成功すればペナルティ修正なしで1回、攻撃できる。 この攻撃の対象の回避/防御は威力分(剛剣技能値参照。値は60)のペナルティ修正を受ける。 |
雲耀の剣 | 200X出典。敵前列に万能相性物理ダメージを与える。消費MP・HPは存在しない |
弾丸によってマントラが間に合い、防がれた一撃の隙を縫って放たれる太刀。だが、これだけならばまだ…!
『己は、まだ……!』
見切り | 誕生篇・速剣出典。回避の代わりに使用。成功した場合、相手に1回攻撃をする事が出来る。 相手は回避や防御に威力分のペナルティ修正を受ける。威力は速剣技能値を参照。 |
冴えたやり方<速剣> | 200X出典。亜種特技。自身が次に行う行動の判定に+60%する。 この効果は集中・チャージ等のアクションを行うか、戦闘またはシーン終了まで持続する。 本来は味方にも適用可能だが自身&速剣限定にしている為にスキル効果が上昇しており、1シナリオに5回まで使用可能。 |
狂乱の間 | NINE出典。敵・味方とも、物理攻撃で与えるダメージが1.5倍になる |
籠手打ち | 誕生篇・速剣出典。手首から指を切る。相手は激痛で手に持った武器を落とし、手を使った攻撃が出来なくなる 腕の防具以外は無効(腕防具以外は防具相性として適用されない物として裁定)。命中に速剣技能値を加算する。 |
羅刹の体力を以てしても息が切れそうな攻防。それでも勝つ為に、己の剣を証明する為に意志は肉体を凌駕した。
『終わりだッ!』
もう奴に、銀の弾丸はない。これは必ず通る、通ってくれ。その執念を以て最後に剣は振われて
クロスカウンターⅠ | 即時効果。使用者に対する反撃または反撃と行われる格闘攻撃1回を打ち消し、 その相手に対して1アクション分の格闘攻撃(マルチアクション不可)を行う。 ランクⅢの効果により、このスキルの判定は自動成功となり、 このスキルによる格闘攻撃は回避・防御・反撃不可となる。 本来は命運消費で発動する物だが、未完成である為に1シナリオ1回まで使用可能である物とする。 |
『……ぁあ、そうか』
雲耀の剣 | 200X出典。敵前列に万能相性物理ダメージを与える。消費MP・HPは存在しない |
『己は、届かなかったか』
この時を待っていたかのような、此方の剣そのものを封殺するような返し技。それを以て法華の身体は刀ごと切り捨てられた
食いしばり | シリーズ共通。自分のHPが0になると一度だけHP1で復活する |
勝負は決した。それでも己の身体は敗北を認めないかのように耐えてしまう。もう己に勝ち目などないのに
『己の負け、だ。とどめを刺せ』
「……エリヤが居なければ勝てませんでした。御見事です」
刹那に振るわれる、介錯の一太刀。不思議と満たされた、そんな気持ちのままに法華は目を閉じてそれを受け入れた。
「ほら、腕。宝玉使って早くくっ付けろよ」
「ええ、ありがとうございます」
結局、己は何をしたかったのだろうか。あの寺の連中を見返したかったのだろうか、それともただ剣の技術を高めたかったのだろうか。劣等感か上昇意欲か、自尊心か。剣と力以外を捨て去ってしまった己には、最早何も分からない。
「……さて、最後に話でもしましょうか。長くはないのでしょう、貴方は」
『ぁ、あ……』
羅刹は飢えによって強くなる不安定な存在だ。その分の力の強大さは保証されるものの、逆に弱まれば何にも脆い餓鬼でしかない。喰い続けば恐らくずっと強くなれるが、喰わずに弱まれば後は衰えていくのみ。他の羅刹天はMAG欠乏によって最早蘇生も出来ない状態で死んでいる。己も、遠からずそうなる。
『なにを、しりたい』
「貴方の飼い主と組織の内容の全てです。何を話すかは貴方に任せます。どうせ、拷問して吐かせるのも出来ませんからね」
『己は、あまりよくしらんぞ。己はただの剣に過ぎない。それで、いいと思っていた。それで、よかった。ただ』
「ただ?」
『己の……いや、ラーヴァナは突然天魔衆にやって、きた異物だ。力とその羅刹の王の名で天魔衆を乗っ取り、残った信者間で共食いと蟲毒を行った』
「……となると、そのラーヴァナは漂流者ですか」
『さて、な。だが、己以外の天魔衆はその果てに、羅刹天と呼ばれる存在に全員なってい、る。数は少数で強さに幅もある、が能力は同じだ。後は、何も知らん』
「そうですか。情報提供に感謝を……聞いた手前であれですが、よくここまで教えてくれましたね」
『あれに忠誠心など、もっていないからな。己もまだ勝てない故に、従っていた。それに、勝者には報いが必要、だろう…?』
己は負けた。全てを出し切って、その末に負けた。例えそれが尋常なる一騎打ちではないとしても己が勝てると踏み込んで戦った以上、それで言い訳は出来ない。それに己は、この戦いで確かに満たされてしまった。
『己の敗因は、結局、飢えがなくなってしまった、からなの、だろう。飢えが、なく、なった羅刹は、酷くも、ろい』
「それ以上は喋らずとも…」
『い、いから聞け、最後の羅刹女よ。己たちは、飢え続けなければ強くもなれない。生きても、いけない』
「……」
『お前の飢えが、なにかまでは己にはわから、ん。だが、己たちは、それと生涯向き合、っていかねばならない』
「それは忠告ですか?」
『好きに、捉えろ。ぼけ、た老人の独り言だ』
目の前のこの女は安定しているようで酷く不安定に見えた。だからこそなのか、らしくもない事を言ってしまった。が、まぁ今際の際位はいいだろう
『せいぜ、い強く、飢え続け、る事だな。その果てに、確かな答えに辿り着け、たのなら、きっと』
言葉がもう出てこない。視界もぼやけて、身体は一寸も動かなくなった。最後に、羅刹女と銃使いの女が歩き去るのが見えた。それを見届けた己は堕ちるような真っ暗な闇に身を任せて、そうして全てから解放された。
・キャラ紹介
<久遠 由奈 Lv88>
過去の来歴とビルドやらが今回明かされた人。
来歴に関しては詳しくは追々。ビルドに関しては剛剣60・マントラ20(技能値)の魔法剣士。魔法剣士扱いでいいのかこれは?。性質上、物理攻撃特化には滅法強いが防御の値を下げてきたり、無視する相手は凡そ天敵。今回もエリヤが居ないと勝てなかったのと万能物理が一つしかなかったので色々対策を模索中。
<久遠 エリヤ Lv62→Lv67>
大体援護の鬼。潰そうとしても回避が高いのと幸運のせいで中々死んでくれない。今回、レベル差もあって活躍もしたのでかなりの経験点を得た。うまい
<羅刹天>
敵を物理でワンパンマン、自分も物理ワンパン(される)マンを地で行く物理特化の化物。羅刹モードはDDSAT2に登場した特殊な状態で羅刹天はそれを恒常的に得た姿となっている。物理特化としてはこれ以上ない程に強いが、弱みも大分あるのでそういう意味合いだとミサイル運用が適切かもしれない
<法華 参郎 Lv85>
剣しかなかった人。剣の才能も速剣しかなく、霊的才能も0だった為に人を止めるしかなかった。反省はしてないが、後悔は結構ある。戦闘スタイルは速剣スキルは物理に関するものだし大体物理スキルでは?という事で速剣スキル縛りにパッシブにラクシャーサのあれこれを詰め込んだ構成。パッシブで物理強化、スキルで回避・反撃・リアクション低下と構成的にはマッチしており互いの弱点を補い合っている。その為に耐性面に隙はないが使用回数スキルに依存してるのと脆い点は解決してない為にピーキーな構成なのは変わらないかもしれない。
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その身を羅刹が如く -後編-
戦うにあたって一度、状況を整理する。
Lv99 | 喰奴 | ラーヴァナ | 耐性:不明 |
現状相対している敵。Lv99の喰奴:ラーヴァナ。ラーヴァナは羅刹の王であり、羅刹とは即ちラクシャーサの事を指す。ラクシャーサと似た性能の……いや、この場合は上位互換と言った方が良いかもしれない。
羅刹モード | DDSAT2&オリジナル出典。羅刹である証であり、呪い。 飢えによって攻撃性能が大幅に強化されるが、防御性能が大幅に下がる。 以下の効果を強制的に得る。 ・物理貫通(D2式)を取得し、魔法を一切使えなくなる (物理スキル・アイテムは使用可能) ・物理攻撃時に通常の2倍のダメージを与える。 但し、敵から物理攻撃を受けると通常の2.3倍のダメージを受ける。 ・クリティカル率が大幅に上昇する(+90%)が、敵からの攻撃のクリティカル率も大幅に上昇する(+60%) ・回避率が大きく上昇するが、命中率が大きく下がる。 |
羅刹王 | オリジナル効果。数多の羅刹を喰らって、その王を名乗るに相応しい力を手に入れた事の証明。ラーヴァナの■念■合の果て。以下の効果を得る。 ・自身の物理命中に+50%。以下不明 |
現状分かるのはこれと恐らく
導師 | 久遠 フェイ | Lv82 | 全てに強く、破魔吸収。技・火炎・氷結・呪殺反射。BS無効*1 |
女神 | ラクシュミ | Lv78 | 破魔反射・衝撃無効・バッドステータス無効*2 |
邪龍 | セト | Lv79 | 銃・投具・氷結・電撃に強く、破魔・呪殺・精神・神経・魔力無効*3 |
邪神 | マダ | Lv77 | 火炎吸収、破魔・呪殺無効。精神・神経・魔力耐性*4 |
以上の通り。勝ち目……は相手の能力・出方次第だが勝つにしろ負けるにしろ色々手も打っておいた。後は僕と仲魔達が何処までやれるかに掛かっている。瞬く間に思考を整えて、相対する獣に意識を向ける。
「自己紹介は必要かな?」
『必要ない。私は貴様を探していた。此処で見つかるとは思わなかったがな。シチュエーションも良い』
「漂流者って事?」
『さてな。ま、質問には3つ答えてやろう。5秒以内に言え、私も時間がない』
ある程度応対はしてくれるようだが、どうも無駄話はしてくれないらしい。稼げて10秒程度だろう。
「じゃあ一つずつ、君は
『さてな』
「君が天魔衆を率いている或いは乗っ取っている?」
『それはYesだ』
「何が目的?」
『目的と言える目的は存在しない。私ははただの喰奴で羅刹だ。何か喰らう事にしか興味がないし、その為に色々やっているというだけだ』
「僕の事を探していると言ったね。その理由は?」
『4つ目だ』
「そっちが3つ答えると言ったんだ。1つ目は答えた内に入らない」
『……いいだろう。ではそれを答える前に此方からも質問だ。貴様、
「何……聖女だって?」
『無自覚、か。いや…?そう言う事か、くくっ……』
「勝手に一人で納得しないでほしいなー」
聖女までは聞き取れた。その前に何か言ったような気がするが、上手く聞き取れない。
『あぁ、すまんな……ただ、あれはどの世界でも似たような事をするなと思っただけだ。それで何故貴様を狙うかだったな、シンプルな理由だ』
ラーヴァナの眼つきが変わり、僕達も思わず身構える。人とも悪魔とも違う、独特の圧力にMAGの奔流。奴の大きな両腕から分かたれるようにして出現した四本の歪な腕。左右含めて6本の腕を自在に振い、それぞれの手の先に備えられた5本の爪が地面や瓦礫に触れる度にそれらは消失するかのように消え去っている。
『
「その世界だとちゃんと両親居たんだ僕。ちょっとだけ嬉しいかも」
『前の貴様とは違い、今の貴様には付加価値が生まれてしまった。故に殺す事は出来ないが』
ラーヴァナの顔が喜色に歪む。意外と端正な顔立ちをしているが、三日月状に大きく開けられた口からは刃のような鋭い歯が見え隠れして正直怖い。
『四肢程度は問題あるまい。貴様は私の物だ』
そういえば、数か月前になんやかんやあって手相見て貰った時に女難の相が出てるって言われてたっけ。でもこんな強烈な物が来るならもっと念押ししてほしかった。ほんとね。
「はぁー…しょうがない。どうせ逃げられないし……付き合ってあげる」
『残念だ。四肢以外も喰らう事になるな』
透明化の状態とはいえ、先手はラーヴァナに取られてしまった。戦闘の流れは恐らく奴が得意とする
「行くよ、皆」
ここまでの会話で20秒経過。好都合なのは僕とラクシュミに掛けられたラスタキャンディはギリギリだが維持されている点。この戦いで大事なのは補助の掛け方とその維持であり、勝ち負けは明確にそこで決まる。まずセトが<雄叫び>*5、続いてマダが<タルンダ>を発動させてラクシュミが<ラスタキャンディ>*6、最後に僕が<魔法の輪>*7を発動させる。
<味方陣営>
フェイ・ラクシュミ | 全能力+2(3ターン継続)。魔法の輪(カジャとは別個の防御強化) |
セト・マダ | 全能力+1(3ターン継続)。魔法の輪(カジャとは別個の防御強化) |
<敵陣営>
ラーヴァナ | 物理攻撃-3・魔法攻撃-2 |
可能な限り、全能力強化に攻撃力低下・防御力上昇でバフ・デバフを重ねた。
『手堅い動きが、さて』
バイオレンス | DDSAT2出典。点滅状態のプレスターンアイコンを2個追加 |
黄金の瞳が光を増し、明確に凶暴性が増して背中にうすら寒い物が奔る。初速から考えるに恐らくは獣の眼光に似たスキル。これで相手は最低3手動け、クリティカルを受ければ4手動く。
『どれだけ耐え切れるかな!』
大屠殺 | DDSAT2出典。敵全体に物理属性の大ダメージを与える。 残りHPで威力が変化。命中率が低い。 |
大屠殺 | DDSAT2出典。敵全体に物理属性の大ダメージを与える。 残りHPで威力が変化。命中率が低い。 |
大屠殺 | DDSAT2出典。敵全体に物理属性の大ダメージを与える。 残りHPで威力が変化。命中率が低い。 |
反射まで貫通する最低2倍最高8倍*9の物理攻撃、それが3発。六本の異形の腕をそれぞれ巨大化させながら乱雑に此方を薙ぎ払おうと仕掛けてきた。
観音神符 | 使用:フェイ | 200X出典。アイテムを消費する事で 受ける攻撃のダメージがクリティカルだった場合、 それを通常の成功に変更する |
強靭の権化 | 常時:マダ | D2出典。最大HPが20%増加し、自身が受ける攻撃のクリティカル率を50%減少させる。 |
襲い掛かる両腕、それから逃れられずに全員が命中。ラクシュミとセトはクリティカルを貰いつつも万全の補助により何とか耐え切り、僕とマダはクリティカル無効化とクリティカル率減衰の効果によりクリティカルダメージを免れる事が出来た。
『ふんっ!』
立て続けに鞭のようにしなやかに、けれどその威力は保証された巨大な腕部の乱打が打ち付けられようとして
龍の反応 | 常時:セト | 真4F出典。命中率・回避率が大幅に上昇する。 |
その動きを見切ったセトが飛び上がり、
『成程。補助があっても三連撃で押し切れると思ったが……その反応力による回避、後は』
タルンダ | 1R目:マダが使用 | ソルハカ出典。 敵全体の物理攻撃力を下げる。4段階まで重複。 倍率は80%→60%→40%→20%まで変化する。 |
『異様なまでの火力低下。そうか……私が知る物とは大分効力が違うらしい』
僕達に現在掛かっている
『…ッ!』
マダから行動を開始させ、反射まで貫通させる火炎魔法でラーヴァナを焼く。直撃し、弱点を突いたようには見えないが…こちらの想定以上にダメージを喰らっているような様子を見せている
「マダ、耐性」
『何かを貫通した感触はない』
「分かった」
火炎は効く。情報はこれだけだが、攻める事は一応できる。問題は打点が足りない事であり、それを覆す手段はあるもののそれは相手の行動次第にやはりなってしまう。受動重視対応、現状で出来るのは防御しながら活路を見つけるしかない。ラクシュミに<メディアラハン>*17を発動させて失ったHPを回復。セトはカバーの為に待機。僕の手番は再びマダに回して*18此方もカバーの為に待機させる。
バイオレンス | DDSAT2出典。点滅状態のプレスターンアイコンを2個追加 |
デカジャの石 | 真4出典。敵全体の能力上昇効果を消去する |
デクンダの石 | 真4出典。味方全体の能力低下効果を消去する |
奴は魔法を扱う事は出来ないが、補助であるデカジャ・デクンダに関して言えばアイテムで解決できる範疇だ。そして、先程の攻撃を抑えられたのは凡そその補助のお陰であり、ここからの攻撃はまず通常の方法では耐え切れない。だからセトとマダをカバーの為に待機させた。
『全体……いや、此方の方が確実だな』
ラーヴァナが二つの手でそれぞれの石を砕いて効力を発揮させながら、獣のように屈んで僕に視線を合わせる。間違いなく此処で殺しに来る。
『Shaaaaaaa!』
破邪の光刃 | DDSAT2出典。敵複数体に2~4回の物理特大ダメージを与え、命中毎にランダマイザ(全能力低下)効果を与える。マン■ラで習得 |
破魔とも違う、神々しくも禍々しい光り輝く奴の
空中に残光を刻みながら迫る刃は3つ、それぞれ僕に2回、マダに1回。マダに迫る刃が彼の両腕を切り飛ばして
切り裂かれた身体から流れ出る大量の血に朦朧とする意識、これを妖精の加護を利用したMAGの急活性化と気合で耐え切る*20。クリティカルが発生してしまった、
破邪の光刃 | DDSAT2出典。敵複数体に2~4回の物理特大ダメージを与え、命中毎にランダマイザ(全能力低下)効果を与える。マン■ラで習得 |
闇のSOUL | 真4出典。HPが0になる時に1度だけHPを1して耐える。MPも上がる |
噴き出す瞬間にアクセサリーの力で首の一皮を切り裂いて終わった。
「最近、高打点が多いからアクセサリー変えておいて正解だった。ケースバイケースだけど」
『ならばもう一撃!』
「
友愛の加護 | ソルハカ出典。忠誠度:5の性格:友愛における効果。サマナーのHPが0以下になるダメージを受けるとサマナーを庇って、身代わりとなる |
返す形でもう一刀。そこにラクシュミが割り込んで肉盾となり、上半身が斬り飛ばされる。ラクシュミが妙に恨めしい目で僕を見てたけどよくよく考えたら最近でこれ2回目だ、ごめんね。
「とはいえ、何とか凌ぎ切ったか」
『だが、耐えた所で貴様達に何ができる?』
<味方陣営>
フェイ | 全能力-3。魔法の輪(カジャとは別個の防御強化) |
ラクシュミ | DEAD(死亡) |
セト・マダ | 全能力-1。魔法の輪(カジャとは別個の防御強化) |
<敵陣営>
ラーヴァナ | 何もなし |
「んーまぁ……そうだね」
状況は絶望的といっていい。僕とセトはやっとの所で意識を保っているし、マダはマシだがそれでも後一撃喰らえば怪しい。あの刃に刻まれていた神の
『大人しくするならば、今からでも降伏には応じるが?』
「いやいや、どうせ捕まったら酷い目にあうのは確定みたいなもんだし、それにさ」
自身の血で真っ赤になったアセイミーナイフを奴に向ける
「もう勝った気でいるんだ?」
『何?』
「まぁさっきまではこっちも君に勝てる気はしなかったんだけど」
『……貴様』
ラーヴァナが何かを感知して離れようとして、その瞬間に戦闘の流れを一時的に
「
悪魔召喚 | 200X出典。補助スキル。契約している悪魔を召喚する。本来は命運を支払って発動するスキルであり、その代わりに1戦闘中1回まで使用できる物とする |
「
カカッ!
天使 | ケルプ | Lv76 | 魔法に特に強い。物理無効・銃撃耐性*21 |
『てんしぃ、けるぷぅ!さんじょぉおおおおおおっ!』
1度しか使えない、高速詠唱を応用した神速召喚。それに基づき現れるのは66とナンバーが刻まれた機械仕掛けの高位天使。
「賭けだったけど君が生き残ってくれてよかった。一泡吹かせてやろう、セト」
『イクゼイクゼイクゼー!』
外法のいざない | ソルハカ2出典。味方全体の能力上昇効果と能力低下効果を反転させる。本来習得できるレベルより低いレベルでこれを習得している為に戦闘中に2回までしか使用する事は出来ない。 |
セトから発せられた間抜けな叫び。邪龍ある彼から放たれた外法はプラスをマイナスに、マイナスをプラスへと変える外法である。つまり、僕達に降り掛かっていた
フェイ | 全能力-3→全能力+3。魔法の輪(カジャとは別個の防御強化) |
セト・マダ | 全能力-1→全能力+1。魔法の輪(カジャとは別個の防御強化) |
マカカジャ | ソルハカ出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる。 倍率は150%→250%→350%→450%まで変化する。 |
フェイ | 全能力+3→魔法威力+4(450%)。全能力+3。魔法の輪(カジャとは別個の防御強化) |
セト・マダ | 全能力-1→魔法威力+2(250%)。全能力+1。魔法の輪(カジャとは別個の防御強化) |
転じられた祝福をさらに上位の
「マダ!」
『Oooooooo!!!』
射程外へと遠ざかろうとするラーヴァナ、それに追い縋る様に放たれた地を這う爆炎。奴の速度は速く、何より逃げに一切の抵抗が見られない。今の炎だけでは奴の肌を焦がす程度にしかなり得ない。故に
「召喚」
精霊召喚 | ペルソナ2罪出典。敵全体に万能の中ダメージと幻影の追加効果を与える。 |
ウィッカの妖精召喚を応用して放たれた精霊召喚。無色で微かな
『その魔法力であっても万能なら「混ざり、爆ぜろ!」……ッ!?』
「サラマンダー!」
サラマンダー | ペルソナ2出典。合体魔法。火炎系→精霊召喚で発動 敵全体に火炎属性の中ダメージを与え、 そこに精霊召喚術者のLV数値を威力に加算する サラマンダー:65+術者LV(82)=147(特大ダメージ) |
極光と爆炎が混ざり合い、巨大な炎の蜥蜴のような姿が浮かび上がると共にラーヴァナを溢れんばかりの炎が包み込んだ。
『ガァアァッ……!?』
「君のスキルの特性は
羅刹王 | オリジナル効果。数多の羅刹を喰らって、 その王を名乗るに相応しい力を手に入れた事の証明。 ラーヴァナの■念■合の果て。以下の効果を得る。 ・自身の物理命中に+50%し、 自身が受ける攻撃のクリティカルの確率を100%減少させる。 ・自身が行う物理攻撃は防御・防御行動を無視する。 ・自身が受ける物理・ガン属性のダメージは5%で受ける。 ・必ず先制が取れ、逃亡も必ず成功する (一部不可。例外あり。透明化状態の時のみ効果を発揮) ・自身が受ける火炎・氷結・電撃・衝撃・地変のダメージは250%で受ける(デメリット) |
「それ、
奴の特性。羅刹の弱点を補うかのような命中大幅上昇に絶対的な被クリティカル耐性。強みをさらに強化した防御無視。例え何かしらの方法で物理攻撃が反射されたとしても5%まで減衰させる耐性外の強固な物理への対策、透明化状態の際の先制・逃亡の優先的権利。だが、それらの強みを取得する為に支払った物が主要な四属性に少しマイナーだが地変属性への脆弱性。とはいえそれだけではあれを致命傷に至らせるのは難しかったが、セトを召喚していた事で奴のデバフを利用する事が出来た。
マカカジャ+4(450%)×ラーヴァナ:火炎(250%。弱点ではない) | 合計:1125% |
『----!』
あれを受けてまだ耐えていたのか。炎の嵐より抜け出したラーヴァナが大地を蹴りつけながら音を置き去りにして僕の目の前にまで到達する。顔には先程までの余裕は感じられず、冷たい殺意と共に構えられる歪で強大な異形の腕。今度こそ防御の手段はなく、この攻撃を受ければ間違いなく僕は終わる。
高速詠唱Ⅲ | 200X出典。補助スキル。 手番中、使用者は追加で1アクション分の魔法攻撃か支援魔法を行う事が出来る。 但し、HPを回復する効果のあるスキルは使用できない。 1シナリオ(一連のダンジョンクリアやボス撃破等を指標にする)に3回まで使用可能。 使用する度にコストとして現在HPの半分を消費する。 このスキルは本来1つの手番に複数回使用できるが、不完全な習得である為にそれは封じられている。 |
だからこそ、僕が行えるのは防御ではなくそれに対する徹底的な迎撃。合わせる様に最後の詠唱を始めて、正真正銘これで僕が使える手札はない。残存したマグネタイトと魔力を湧き上がる炎へと変換して自身の腕へと纏わせてゆく。
『終わりだ!』
「燃え尽きろ!」
炎で黒く染まった異形の腕。炎と血によって真っ赤に染められた僕の腕が交差し
諸惑星の加護 | 覚醒篇・ウィッカ出典。 敵単体にダメージを与える。このカルトマジックは 相性無し(万能・100%・相性無視と判断)や 相性:禁(緊縛相性)以外の相性を自由に選択する事が出来る。 威力はウィッカの技能値参照により中~大ダメージ程度(60~)。 本来は覚醒篇内の物しか選択できない筈だが、この世界における属性は拡張されており、術者は既知の属性をこの魔法の相性として選択できる。火炎相性を選択 |
寸での所。物理か魔法か、近接か発射か。それが勝敗を分けて、先んじて放たれた渦巻く炎の砲弾がラーヴァナの腹に突き刺さってその身体を遠くへ吹き飛ばす。
「はぁ……はぁ……!」
流石にもう、立っていられる気力もなく片膝をついてセトとマダを傍に控えさせながら吹き飛ばした方向を見る
「
驚くべき事に奴は……ラーヴァナは死んでいなかった。
不屈の闘志 | 真4出典。戦闘中1度だけ、HPが0になる攻撃を受けた時に耐え、HPが全回復する |
『死んださ。これを切らされたのも大分久しい』
「で、どうする?僕達もう何も動けないけど」
『…白々しいな。流石に此処まで接近されれば分かる』
崩壊したスラム街。その中央にて対面するように立つ僕達とラーヴァナ、それを取り囲む様に各々の獲物を構えている
『最初の魔法爆撃により遮蔽物排除……あそこから既にこの結末にする腹積もりだったのだろう?』
「まぁね」
援軍に来たデビルバスターチームから回復や蘇生を貰いつつ、ラーヴァナに言葉を返す。事件における襲撃者を捜索する為に元々同じ依頼を受けていたデビルバスターチーム。その襲撃者である天魔衆及びラーヴァナが此処にいるという事は僕達と同様に他のチームも外れを引いたのと救難信号を受け取っていたという事もあり、全てのチームが救難信号を受け取り集結。一番最初に着いた僕が周囲に明確に場所を知らせるように遮蔽物を一掃し、COMPにて逐一救難信号を連打しながら援軍目当てに耐久する、そういうシナリオだった。ぶっちゃけ事前に火炎耐性が割れた&弱いという事の把握と援軍タイミングとデバフを受けたタイミング等が奇跡的な感じで色々嚙み合った上でカウンターが行えただけで、本来は仲魔に只管カバーさせて耐久させる方針しか取る気はなかった。
『私の負けだな。不屈も切らされたし、法華もやられた。残念だが此処は退散させて貰おう』
「大人しくするなら、今からでも降伏には応じるけど?」
『今の私に深追いする気がない癖にそういう事を言うのは宜しくないな……まぁ安心しろ。お前は何れこの手中に収めてくれる。それまで精々私以外にやられん事だ』
奴は<透明化>を発動させて周囲のデビルバスターが攻撃する物の当たらず、そのまま音も立てないままに退散していった。恐らく羅刹王の能力の一つ*23で逃げ出したのだろう。まぁドロンパとは違う未知の透明化だけでも相応にきついが、まぁ何にせよ
「い、生き残れてよかった」
他のチームからエリヤと由奈も無事で、此方に向かってきているという情報は受け取っている。ラーヴァナを逃がしてしまう事は癪だが、フレスベルグの眼でも早々見切る事が出来ない奴に対して追撃戦をするのはミイラ取りがミイラに成りかねない。奴の持っているレベル・スキル・耐性、戦いながら必要な情報は抜いておいた。依頼主であるヤタガラスにも概ね悪くない報告が出来るだろう。実質的に命の恩人となった他のデビルバスターチームに対しても多少色を付けてくれるように交渉もしなければならない。
「ぁ」
そんなことを考えていると激しい戦闘と数回の食いしばり、MAG欠乏によりついに限界が来てしまったのか身体にもう一切の力が入らなくなった。色々しなければならない事もあるけど事後処理だったりは取り敢えず彼らと由奈達に任せるかと決めて、緩やかに沈みゆく意識に身を任せて僕は目を閉じたのだった。
えー事の顛末。僕は失神した後に病院にて入院というか収監。ざっくり身体中を斬られていたのとあのラーヴァナの特性なのか、回復は出来ても傷自体が中々に治らずに由奈が顔を青くして若干ヒステリックになっていたらしい。それを抑えてくれたエリヤには日々のスイーツ代をもっと渡す事にもなった。そんなこんなで病院に運び込まれてから1日後に起きたら、へぇーミイラ取りにならなくてもミイラになるんだなぁと包帯で身体をグルグルにされていた事に馬鹿みたいな感想を抱きながら大人しく医師の指示には従って1週間程度で無事に退院。休んでいた1週間で熟していくつもりだった依頼や仕事に関しては由奈や依頼を受けていたデビルバスター達が片づけてくれたらしく、素直に助かった。そんな訳で
「暇」
依頼主・他のデビバス・由奈とエリヤにも暫く絶対安静にするように厳命されて、ベッドにゴロゴロ或いは椅子に座りながらルビコンに籠るか、ネットであれこれ調べるか、今後の成長方針を決めるか等していた。独り言に零した程に暇ではなかった。ワーカーホリックになりかけてた節はあったので丁度良かったのかもしれない。3周目を何とかクリアしたので対戦に繰り出したら重ショワーム砲・コーラル特化・ミサイル特化等ででわからせされて、アセン相談にそれっぽい名前のスレを覗いたら結局アセンの話じゃなかったり*24もしていた。
「……これからどうするかな」
本来の構成では僕と由奈、エリヤ、三人が揃えば大抵の悪魔には対応できる、そのつもりではあった。しかしネルガルの時もそうだったが現実はそうもいかない。戦力の分断、多数の挟撃、或いは戦死による人員欠落。PT単位における万全・盤石というのは崩れやすく、よりシンプルであらゆる物に対応ができる程の純粋までの力には敵わない。そして、そういった力を手にするのは凡そラーヴァナのような手段を問わない化物ばかりだ。特に今回はそんな力の権化であるラーヴァナに僕は目を付けられた。透明化が出来るという点で奴は何かしら僕が油断或いは余裕がない時に奇襲を行うというシンプルな方法で難なく僕を狩る事が出来る。ラーヴァナの情報自体はヤタガラスには当然流したし、個別にキョウジさんやアイバさん等の対抗できそうな強者にも流してある。キリギリスにおけるそれらの情報の扱いはヤタガラスと彼らに一任した方がいいだろう。ラーヴァナの透明化対策もまた、知り合いの検証班に協力してもらう予定だ。
後の問題は僕達の強さ。エリヤに関して言えばまだ伸び代があるが、僕と由奈に限って言えばもう易々と強くはなれない。ラーヴァナと相対して
「そういえば、ラーヴァナ……由奈とちょっと、顔似てたかな」
ふと思い至った独り言を零すも、特に気にする事ではないかと思った僕は再び掲示板を開き、強い悪魔とかなんか新たに強い戦い方とか戦法とかないかなーといつも通り、知識の探求と検証に赴くのだった。ちなみにその日は夜更かしし過ぎて由奈に怒られた。悲しい。
自身を<透明状態>にする。
<透明状態>の際は自身のパーティ認識lvを-3(透化※NINE出典と同様の効果)して、
さらに全体攻撃、ランダム攻撃を全て回避する。
<透明状態>であるが故に姿も見えないが、
ラーヴァナに単体攻撃を命中させると<透明状態>は解除される。
また<透明状態>のラーヴァナは一部のスキルの発動が制限される。
今回はちょっと特殊タグの使い方を前回と変えてみました。特別見難いようでなければこのまま行こうと思います(見難かったりしたら感想でおっしゃって頂けると助かります)
・キャラ紹介
<久遠 フェイ lv82→lv80>
今回何とか生き残った人。
逃げれそうなら逃げたかったが、こんな捕食者って面の奴から逃げきれる訳ないのとこいつの情報ないと後々ヤバいと察した為に数ターンの耐久戦に挑んだ。もう戦いたくないと思っているがお前には女難の相がついている。今後も頑張ってほしい
<喰奴ラーヴァナ Lv99>
知恵ある獣。獣というより化物だけど。しかも普通に逃げる。
D2の参考に作った思念融合効果(実質D2特有の星5悪魔のパッシブも参考)により長所を徹底的に伸ばした上に短所を潰した結果、強さと安定性を兼ね備えたはいいものの物理しか使用できないのは変わらずに補助はアイテム頼り。加えて主要な属性にも弱点ではないが弱い為(DDSAT2のラーヴァナの耐性がそんな感じだった。素の耐性はDDSAT1のラーヴァナ参照)に情報が揃った上で状況も良ければ本編同様脆い存在でもある。とはいえそんな事は本人も承知している為に動きはクレバーで暫くは潜伏を続ける予定。総じて知恵ある獣。過去周回のフェイの同位体との関係はまた追々。
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レルムでのとある休日
天魔衆との戦い以後、暫く安静を言い渡された僕は結局暫く検証班の手伝いを行っていた。
セキュリティガッチガチの専用のPCを用いて検証を進めているデータやらを送った上で協議。協議結果に乗っ取ってそれぞれの検証をそのままwikiへ載せるか或いはwikiはまだ載せずに検証続行という形で話を進めながら作業を進めていた。
ただまぁ、実地での検証が行えない為に出来る事にも限りがあり、正直数日でやるべきことが終わったのと単純に飽きが来てしまってその結果
「気晴らしの為にお出掛けする事になったんだよね」
「誰に言ってるんです?」
「いや別に」
安静といっても外出を禁止されている訳でもなく由奈も仕事がないという事で一緒に少し遠くのレルムで散策をしていた。
エリヤはというと聖華学園が開催している第二回目の戦術検討会*1とやらに興味があるという事で此方の信用できるDBと共に泊り掛けで行くことになった。今いるレルムも其処からそう遠い場所ではなく、明日の昼頃に諸々他の用事も終わるという事で帰り際にエリヤを僕達で回収していくという流れだ。
「んーエリヤの方も順調そうだね。精神的にも安定してるし、戦力としても十分以上に頼れるようになってきた」
「前回は彼女が居なければ私はやられていたでしょうからね」
「気にしてる?」
「彼女を其方につける事が出来れば貴方に負担を掛け過ぎる事もなかった筈」
「サマナーとバスターはそもそも頭数が違うから仕方ないよ。それにエリヤは元々僕達が分かれて行動が必要な時に君につける為に雇った面も大きいんだからさ。それに今回はお互い相手が悪かっただけ」
「……ええ、そうですね」
由奈は天魔衆との衝突における一件を結構気にしていた。自力では恐らくあの法華と呼ばれる奴に勝てなかった事や自惚れっぽくなってしまうが僕がラーヴァナとの戦いで無理をし過ぎたのを心配してる節もあるのだろう。
ぶっちゃけ其処はお互い様だと思うし、lv80にもなってこっちを圧倒してくる敵が出てくるのが悪いっちゃ悪い。問題は悪いっていうだけでそういった化物は出てきてしまうもんだし、そういったトラブルや障害は逐次対応していくしかないのが現状だ。
とはいえこのままではいずれ限界が来る、というのも分かり切っている。
由奈は物理属性以外は<雲耀の剣>*2に頼りっきりになってしまっている現状を改善する為に新技の習得を。
僕に関しては新しい魔法の習得……は中々難しい為に検証・知識の収集。仲魔の数は上限に近い為にこれ以上増やさず、仲魔を<ソウルリンクⅢ>*3によって成長させていくという方針を取っている。まだ異界に行けないからプラン立てしかしてないけど
「そういえば最近、随分と検証班の方々とやり取りをしていたようですが何か進展でもあったのですか?」
「ん、あぁ……まぁちょっと面白い仕組み?的なのを発見したらしくてね、その整理をしてたんだ。実地の検証が不足してるからまだ不確定って事で公表は出来ないらしいけどね」
「成程。まぁ役に立つのなら良いのですけれど」
コツコツとレルム内を練り歩く事、数十分。特段用事があるという訳でもない為に買い食いをしたり、気になる装備屋があったらチェックしたり、マッスルドリンコ等の消耗品の買い出しを続けていた。
本当は神符なんかも欲しかったが取引してくれる同業者に中々出会う事が出来ないでいる。根本的に符術師の数が足りていないというのも大きいが、
「符に関してはまた真澄に強請るしかないか。暫く符は節約しないとね。何だかんだ使う事になるだろうけど」
「彼女に頼り続けるのは色々癪なんですが、まぁ利用できる間は利用してやってください」
「戦闘面以外でも仲良くしてもらいたいんだけどね、由奈には」
「仲良くできる要因がありませんよ。お互いに」
「うむむむむ……まぁそれは今はいいや。取り敢えず、買い出しに関してはこれで全部だね」
メモ帳でそれぞれ買うべきものをチェックして、必需品の購入を全て終えている事を確認する。疲れた訳ではないがちょっと小腹が空いてきた。時刻に関してもお昼時である。
「うーん、どこか手頃なお店で御飯でも……お?」
通りすがりに目に入った、中々洒落た雰囲気の喫茶店。こういう喫茶店は大体この時間帯だと混んでいる事が多いが、レルムだからなのか空いているように見える。
「由奈、由奈」
「ん……ああ、丁度良い時間ですしね。あそこでお昼にしましょうか」
「オッケー」
承諾も得て、カランコロンと音を鳴らしながらそのまま入店。女の店員さんに案内されて、向かい合うようにテーブル席に座ってメニューを開く。
「私はあまりお腹空いてないので、お好きにどうぞ」
「うーん、じゃあ二人用のメニュ―頼んじゃってそれを分けっこして食べよっか」
「構いませんよ」
「よし。じゃあすみません店員さん、このDXカップリングパフェ-マスカットスイートを1つ御願いします」
「…………ん?」
畏まりました!と満面の笑みで頷き、厨房へ赴く女の店員さん。ぎこちなく顔を固めた由奈。そのまま次のメニューの品定めする僕。三者三様にそのままに数分の時間が経過して
「お待たせしました!此方、DXカップリングパフェ-マスカットスイートになります!」
「おぉー凄い。メニュ―表より大分でかい。コメダみたいだ」
「……えっと、その」
テーブルにドンと置かれるシャインマスカットが豊富に使われたパフェ。店のカウンターに下がる店員とその隣に並ぶ店員、カウンター奥から視線を向ける店主。パフェと一緒に配膳されたスプーンの一つでパフェを掬いあげて
「はい、由奈。あ~ん」
「フェイ」
「何?」
「これカップルメニューという奴では?」
「そうだよ?」
「……ちょっと、タイム。タイムです」
由奈によって押し戻されるスプーンと僕達に向けられる店員達の鋭い視線。店主のウェイト、ウェイトという言葉が妙に空間に響いている。
「あの、その確かに二人用のメニューを分けっこして食べようとは言いました、言いましたよ。ですがその、貴方から私に食べさせる必要性はないのでは?」
「カップル利用なら半額になるんだって」
「3000円位なら私達余裕で払えるでしょう……!?」
「でもそれじゃ面白……お金が勿体ないじゃん?」
「今面白いって言いかけました?言いかけましたよね。……というかですね、そもそも私達はカップルではないでしょう」
「ふぅーん?……じゃあ審議してもらおっか」
パンパンと手を叩く。瞬獄殺のようなスムーズな動きで現れる女の店員さん。静まり返るお店。というか他のお客さんも興味深々なのか視線を感じる。
「はい!カップルかどうかの審議ですね。まずは御二人のご関係性を御願いします!」
「数年以上、相棒以上恋人未満を続けてその間はずっと同棲してる関係なんだけど。どうかな」
「はい!2000%カップルです!ですが割引に関してはまた別の判定が必要になりますので、まずはどうぞお召し上がりになってください!」
「これ私詰んでません?ハメ技じゃないですか、これ。ねぇ」
再び瞬獄殺の動きで戻っていく女の店員さんに再び静まり返るお店。『イケー!ヘタレルナー!』だったり『ドッチガカレカノカ!ワカラナイケドイケー!』だったり聞こえてくるが、それはいいとして由奈に再びスプーンを向ける。
「はい!あーん!」
「……この後、私の用事に付き合ってくださいね。フェイ」
「あ、あ~ん……」
由奈から埋め合わせをしろと、圧を掛けられながら彼女はぱくっと一口でそれを頬張る。ざわめく周囲に店員さん達は一斉に店主に視線を向けた。
「店長!判定は!?」
『ウェイト…ウェイト……』
「有効ですが決定打に欠けるそうです!」
「判定、結構厳しんだn「ふん!」むぐぅっ!?」
僕の口に差し込まれる大粒のマスカットと生クリーム。その先に色々身体を震えさせながらスプーンを突き出す由奈の姿。律儀に一度座ってからスタンドアップする店員さん達。
―――ご、強引な差し込み!照れ隠しで顔が赤いのはポイントが高いか!?
―――しかしこれだけでは左程変化はない!マスターの判定基準は以前にも増して高くなってい……
『マーベラス』
「な、なにぃ~っ!?な、なぜ……!」
「そうか…!照れはあの長身なお客様だけ感じていたと思っていたけれどそれは間違い!照れはあの小さな男……女……男の娘も感じていたのよ!その証拠に頬が若干赤い!」
「男装女子と女装男子のギャップ萌え!そして先程の供述から長年の相棒関係、しかしそれでもまだ互いに照れを感じさせる初々しさ!それらの相乗効果によってカップル強度を倍増させたのね!」
「それを一瞬で見抜くなんて……流石、店長だわ……!」
「ごめん、僕もちょっと恥ずかしくなってきたからもうちょっと声のボリューム下げてほしいかな……」
「何と戦ってるんでしょうか、この人達」
ちょっと面白そうだと思って注文した物が偉い事になってしまった。とはいえ引き下がる訳にもいかないのでパフェをお互いに差し出しあって完食した後にいそいそと店を出ていった。尚、店員さん達はアルカイックスマイルを浮かべて僕らを見送った事を此処に明記しておく。
「いやー大変な目にあったね。パフェは美味しかったんだけど」
「そうですね」
「あの店、元々他のレルムにあったんらしんだけどそのレルムが例の怪物騒動*4で潰れちゃって二号店としてあのレルムに出来てたっぽいんだよね。いやー事前に調査しとけばよかったなー」
「そうですね」
「……怒ってる?」
「怒ってないですよ」
僕を隣で見下ろす由奈は惚れ惚れする笑みを浮かべているけれど、なんだろう……戦闘の時と同じプレッシャーを向けられている気がする。
「あー、そのー埋め合わせはお手柔らかに御願いします」
「大丈夫、大丈夫ですよ。私は貴方と違って“優しい”ですから、事前に何処にいって何をするか伝えてあげましょう。ですから、そう怯えずについてきてください。」
安易に悪戯なんかしてはいけないという教訓を胸に刻みながら心の中で十字を切って、僕は死を覚悟しながら由奈に引っ張られるがままに重い歩みを続けた。
「………あの」
「なんですか」
「流石にそのーゴスロリはーその「ゴスロリの前に提示したロリータファッション*5を着て、出歩きたいという事で宜しいでしょうか?」何でもないでーす……」
僕は死んだ。主に男として。
あの後、レルムにある防具の上から着る事が出来るタイプの洋服屋にて由奈が色々と物色。通常の洋服からロリータ・ゴスロリ・巫女服・メイド服etc……それらを僕という名の人形に着せ替えを続けた上で幾つかの洋服を購入。
今はその服の一つである、帽子から靴下に至るまで真っ黒に染め上げられたゴシックロリータを着せられてレルム内を歩いている。
「似合ってますよ、ゴスロリ。私としては大いに眼福です」
「ゴシック服も普通にあったし、そっちでよかったんじゃない……?」
「駄目です。そっちだと今の防具を隠すには少々窮屈ですし……何より」
「何より?」
「その服の方が魔女っ子というかウィッチっぽかったので、そっちが私の推しです」
彼女は笑みを浮かべて少し得意気にしていた。君が胸を張ってもしょうがないというか僕の男としての沽券にも関わってくるんだけど……まぁそれはそれとして
「少しは気分良くなったかな、由奈」
「そう、ですね。そこそこは楽になりました。貴方に気を遣わせるつもりはなかったのですが」
「長い付き合いなんだし、相方が沈んでたら僕も気を遣うさ。」
「すみませ……いえ、有難うございます」
「どういたしまして……そういう事だからもうこれ着替えてm「それは駄目です」駄目かぁ」
空を見れば夕影が沈んでいき辺りも暗くなりつつある。散策や情報収集も終えている為にそのままレルムを立ち去り、事前に予約しておいた聖華学園付近に存在するホテルに向かうべく足を進めていた。
「失礼、少々宜しいでしょうか」
薄暗い歓楽街を歩いている中で後ろから声を掛けられる。最近は声を掛けられてからのマンハントも多いが後ろの人物からは害意も感じず、何よりこの辺りは人通りも多い一般人の生活区域。何かあった際の対応を由奈に任せて、後ろを振り向いた。
黒髪に眼鏡、スーツを身に纏った典型的なサラリーマンという風貌の男。覚醒者では恐らくない如何にも一般人ですといった雰囲気。
「ちょっと先急いでるんだけど何か用?」
「わたくし、ウィリアムと申しましてアイドル事務所のプロデューサーをやらせて頂いてます」
ペコリと懇切丁寧に頭を下げながら男は僕に名刺を渡した。名刺が正しいのであれば目の前の男は僕が聞いた事がある位には大手の事務所に所属しており、不審な気配はやはり感じられない。周囲に違和感もなく取り敢えず話をと、男を睨みつけている由奈を手で制した。
「勧誘って事でいいのかな」
「ええ、貴方を見た時……私は心を奪われました。その美貌にその声!間違いなくトップに至る事の出来る!アイドルの素養!是非、うちでアイドルにスカウトをと!!!」
「僕、男だけどいいの?」
「え゛っ……ええっ?」
「2回言わなくてもいいじゃん」
「…………」
「…………」
シーンとした居心地の悪い沈黙が出来てしまった。悪魔業界は悪魔混じりだったりMAGの影響か一般の人より男女問わずに美人が多く、こういった事自体はあまり珍しい事ではないらしい。僕もなんだかんだ経験がある。全部女アイドル勧誘というのが非常に、とても、すごく、不服ではある。納得いかない。
そんな微妙な空気を食い破るかのように由奈が僕の前に庇うように出てくる。
「待ってください、この子をアイドルになど……認められません!」
「ああ失礼、お連れの方……そうですねぇ、男性でこの容姿となると中々ユニットが……とはいってもソロ……うーん、難しいか……?」
「なんだ貴様、うちのフェイに不服があると!?!?!?」
「君はどういう視点に立って物申してるの?……えーこほん。あー取り敢えず僕にそういう意思はないのでお断りさせて頂きます、ウィリアムさん」
悪魔業界に居ながらアイドルなんて華々しい職にはつけない。というか今は世界があれやこれやでクッソ忙しいのでそれ以前の話である、後目立つの嫌いだし。視界の端で由奈が微妙にしょんぼりしている感じなのは見なかった事にしたい。
「そうですか、誠実なご返答有難うございます。私も貴女にその気があれば、というだけの勧誘でしたのでどうかご容赦を。御時間取らせて申し訳ありません」
「いえ、お構いなく。名刺はお返しした方が?」
「お持ちになってください。いつどこで縁があるか、分かりませんから」
それでは、と最後に会釈をしてウィリアムと名乗った男は去っていった。
「いったね」
「いきましたね……随分とあの男の相手をしていましたが何か理由が?」
「んー……ま、ちょっと気になる事があってね。害意的なのはやっぱなかったんだけどさ」
普段なら即興味ありません、で終わる話ではあった。今までは実際そうしてきたし。あの男の振る舞いにやはり違和感はなく、周囲を調べても変化はない。ぶっちゃけ此処までするのは神経質極まりないが最近の情勢を考えると白か黒か断定が可能なレベルで警戒はしておきたかった。
「感覚的な話になるんだけど……こう、凄い懐かしい人にあったみたいなそんな感じかな。生き別れた両親にあった、みたいな」
「……しかし、貴方の母親は」
「
あの男に違和感を感じたのは物理的な物でも或いは魔術的な物でもなく、心にふと生まれたうっすらとした郷愁の念によるもの。もっと言えばそれを感じたのは僕自身ではなく、
「ま、勘違いの可能性もあるというかそっちの方が高いけどね。神経質になり過ぎてる所もあるし」
「あの男の素性は最低限洗っておきましょうか。本当に一般人なら情報屋が洗えば直ぐ出てくるでしょうしね。ただ、貴方の感じた違和感の正体に関しては……」
「その時の実験責任者はもうこの世に居ないし、知っててスプーキーズのアイバさん位だろうけど知ってたら情報くれるだろうからね。それに負担も掛けたくない。あの男の人の素性を情報屋に洗わせて、裏に何かあったらまたその時判断って事で」
「分かりました」
疑問を余所に僕達は夕日と入れ替わるように空を静かに照らす、満月の月光を浴びながら夜道を歩いていった。
「ふぅ~、危ない危ない。凄い警戒されてたな」
月の光も届かない、漆黒に包まれた回廊。ウィリアムと名乗った男はその場所をただ一人歩いていた。
「ウィリアムは一昨日不運にも死んでしまった一般人でしかない。死体を確保した上で記憶を転写した上の変身術……あの傍に居た女は何とか誤魔化せてたが、あの子は俺の何かを感知していた。もうこの身分は使えない」
男の身体は霧に包まれたかのように朧げに。それと同時に周囲の空間が黒から緑へ、光も通さぬ暗闇から木々と光に溢れる大森林へと塗り替えられていく。
「だが」
霧が晴れ、男は美女に。髪は蜂蜜にも似た黄金へ、瞳は蒼く染まりゆき衣服は王族然とした赤い物へと彩られる。最後に蝶の羽を背に宿した存在へと変貌を果たす。
「ようやくだ……ようやく、ようやくようやくようやくようやくようやくようやくようやく、見つけた。
ティターニア或いは、オベロン。そう呼ばれる妖精に酷似した、しかし決定的に何かが違うそれは高笑いをあげながら狂喜に浸る。
「あの子が俺達の子供だったそれか判別する為に近づいたが……人間と妖精のデビルチルドレン、それに近しい存在である事しか分からなかった。あの子も過去は改めて調査する必要があるが、慎重にいかなくてはな。」
なんか男になってるし、と零しながら女は大袈裟に悩むそぶりを見せた。
「ブリガンティア様の明確な指示はまだない。トール様は色々動いてるようだけど……なーんかややこしい事になってるみたいだし、現状は様子見」
「
\カカカッ/
Lv100 | 合一神 | オベロン=ティターニア | 耐性:不明 |
「法の神が定めたルールではなく、終わらぬ新世界でもなく、神なる世界に統べてを導く……それこそが
「ま、俺達とあの子には関係のない事だ。俺は、私は……俺達が望む、無限で永遠の夢をこの手に掴んでみせるぞ」
・キャラ紹介
<久遠 フェイ>
ゴスロリで出歩いた結果、さらに女疑惑が広まった。残念でもなく当然。
その出生にガイア教が関わっている事。それで母親が死んでいる事が明らかになった。
<久遠 由奈>
家でべたべたするのは良いけど、外は恥ずかしいのでやめてほしいタイプ。パフェを食べ終わった後、フェイに向けていた笑顔は般若の如しだったとか。
<ウィリアム>
大手アイドル事務所所属のプロデューサー……の皮を被った何か。
ウィリアム本人は本編の通り、東京だとよくある悪魔事件に巻き込まれて死亡。その死体をオベロンによって回収・利用された形となっている。オベロン本人は色々思惑ありつつも何か動きがあるまで待機の構え。過去に関してはまた追々。
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外伝:屍鬼動乱
暗闇に満ちた大きな空洞、地を這いずりながら現れるは死人の群れ。それを己の業にて叩き伏せ、昇天させていく戦士達。
戦士達が居るその場所はダークサマナーによってマンハントの拠点とされていた異界跡地。過去に異界を総べていたネルガルもそれを使役していたダークサマナーもキリギリスの面々によって打倒され、異界も崩壊。それで事態は収拾される筈だった。
しかし、崩壊したネルガルのMAGが跡地に残留及び拡散された事で状況は一変してしまう。冥府の神である高レベルのネルガルと四国における根の国伝承、つまり冥界と関わりの深い土地であるという理由から異界跡地だけでなく土地の龍脈及び他の異界にまでネルガルのMAGは拡散され、それによって汚染された異界からは多数の屍鬼が出現するようになった。
これに対してヤタガラスは僧拳浄会を筆頭とする土着組織や一部のキリギリスメンバーに協力を要請。ネルガルの祟りとも言えるこの事態に対して協同で鎮圧を当たっていく事となり、現在に至っている。
\カカカッ/
Lv83 | 導師 | 神城 真澄 | 耐性:凡そ全てに強く、火炎・氷結・ 破魔・呪殺・精神・神経・魔力・緊縛反射*1 |
「……ほんと埒が明かないわね」
黒髪を揺らしながら、ヤタガラスの巫女である神城 真澄は鎮圧を続けながらこの現状をぼやいていた。鎮圧自体は現在のGPにデビルバスター達が追い付いている事と事前に<施餓鬼米>等の破魔即死アイテムを貯蓄していた事から上手くはいっていたが如何せん数が多すぎた。
一度鎮圧した異界でさえ、時間経過により再度屍鬼が多数出現するというモグラ叩きのような様相。それでも尚、何とか増える数より殺す数の方が多い為に被害は抑えられているがこのままでは不味いと感じたヤタガラス上層部は鎮圧と共に屍鬼が溢れ続ける根源を特定すべく調査を開始。その結果としてネルガルがかつて居た異界跡地に何かしらの原因があると特定し、真澄を含む高レベルのデビルバスターを動員して調査に当たらせていた。
\カカカッ/
Lv47 | 軍勢 | 死者の群れ | 耐性:呪殺無効。毒・混乱・睡眠・緊縛・風邪無効 |
立ち塞がるように現れた屍鬼の群れ。タイプ的に破魔が明確な弱点ではなく、破魔での昇天は決定打にならない可能性が高い。真澄は目視したそれらに瞬時に近づき
「先を急いでるの。どいて頂戴」
徹し | 覚醒篇・骨法出典。 敵前列1体に相性:-(万能相性裁定)で防御点を一切無効した格闘攻撃を行う。 この攻撃は拡散して、敵前列の他の対象には相性・防御点無視は同様にダメージ事態は半減した物を与える。威力は骨法の技能値×4を参照。真澄は60以上の技能値を持っている為に威力は240程度(特大ダメージ)となる |
骨法術の奥義、徹し。拳ではなく掌底を1体の屍鬼に捻じ込むようにして衝撃を与える。与えた衝撃は空間を伝って他の屍鬼にも拡散し、その一撃によって現れた屍鬼達を粉砕した。
「さて」
手を振り払いながら、真澄は一人で先に進む。
本来であれば真澄に同行していたデビルバスター達は道中における屍鬼達に足止めされていた。奥地に感じられ並々ならぬ気配が遠ざかっていっているという同行者の意見とそれとほぼ同時に、意図的に現れたとしか思えない複数の死者の群れ。時間を掛ければ奥地に居る何かを逃すと考えた面々はメンバーの中で一番単独での戦闘力が高い真澄に先行を依頼し、彼女もまたそれを受諾して淡々とその障害を排除していた。
異界跡地といっても異界そのものではなく、空洞事態も拡張されてない物理的な空間のみであり最奥はそう遠くはない。屍鬼達は散発的に襲い掛かってくるも最奥に近づきにつれてその数を減らしていき、大分歩みを進めた今は静寂とした不気味な空間が真澄の眼前に広がっているのみ。
そうして、最奥に到達した真澄は黒い粘体状の液体を纏う巨体の悪魔を目視した。
「ネルガルなのは間違いないけど、完全消滅はあの子が確認したのよね。こいつは一体……」
\カカカッ/
Lv86 | 屍鬼 | ネルガル | 耐性:不明 |
簡易的なアナライズで判断する限り、奴はネルガルだが種族は屍鬼で耐性も見えない。その姿形さえ高密度のMAGによって複数の悪魔を繋ぎ合わせたかのような歪さが感じられる。
『O……Oooo』
ネルガルもまた真澄の存在を確認し、肉体より複数の黒い鞭のような触手を這い出して戦闘態勢に。
「ま、それは後でいいわ。私が最初に当たって情報を取得。可能であれば討伐、無理なら後続に情報を残す……どうあれ、お前を逃がすつもりはない」
互いに視線を交差させ、身構える。ネルガルに知性は感じられないものの、最初に感じた歪さも含めて普通の状態ではない事は真澄の目から見ても明らかだった。
『OOOOo!!!』
獣の眼光 | 200X出典。補助スキル。 このターン、追加の1アクションを得る。1ターンに1回しか使用できない。ボス専用スキル。 |
ベノンザッパー | D2出典。敵全体にクリティカル率30%の物理属性の大ダメージを与え、 攻撃成功時、ヒットした敵を基礎確率30%で毒状態にする。 |
デスバウンド | デビサマ出典。敵前列に2~7回の剣技属性のダメージを与える。 術者のHP最大値が大きいほどに威力増大。 |
先手を取ったのはネルガル。バネの要領で大きく身体を揺らしながら大地を蹴り飛ばし、毒を纏わせた両腕・鞭のように振われる多段の触手が振るわれ
五分の活泉 | デビサバ2出典。最大HPが50%増加する。 |
頑丈のピアス | 真4出典。毒・緊縛・風邪を無効化するアクセサリー |
掌握 | 覚醒篇・骨法出典。 相手の格闘攻撃に対する防御技。威力分(骨法技能値+5参照)だけ 相手の格闘攻撃によるダメージを軽減する。 この技に成功した場合、骨法の特技を使った攻撃を1回行う事が出来る。 |
「怪力乱神でも冥界破でもないのね。」
真澄はそれらを自身の鍛え上げた生命力で受け切って毒は屍鬼の状態異常対策につけていたアクセサリーで防御。振るわれる触手を両腕でガードしながら1本の触手を掴んでは引っ張り上げ、胴体に<徹し>を二連続で撃ち放つ。
毒が付与された全体物理に高多段の物理、反撃で万能物理の防御を無視した打撃が2回。ダメージ事態は後者の方が大きいがネルガルは元異界の主で耐久力も相応にある。深手を負ったのは間違いなく真澄の方で、後退しながら即座に<宝玉>*2で回復を行った。
「通常じゃあり得ないけど、余程此処との相性が良いみたいね。冥府の神なのに意外な程、生き汚い」
先程ネルガルが使用した技はネルガルを使役していたサマナーが使役していたグルルとチェルノボグのもの。ネルガルの今の身体もネルガルその物という訳ではなく、複数の悪魔を掛け合わせた物だと真澄は判断した。完全消滅しても尚残ってしまったネルガルの意識の残滓が周辺に残った屍鬼を中心とした悪魔の死体を吸収し、再構築。最早意識も残っておらずゾンビそのものといっても憚らない状態になったネルガルは屍鬼の本能のままにMAGを拡散、吸収を繰り返して現在のような状態になっている。
―――ネルガルや他の悪魔が用いるであろう毒や緊縛、風邪は封じている。順当に勝てばこのまま対応はできる
真澄はそう判断を下しながら思考を再び戦闘に切り替えた。
バビロニアの疫病 | D2出典。敵全体のバリア状態を解除した後、敵全体を基礎確率100%で虚弱状態・毒状態にする。 |
ネルガルの口から放たれるガス状の
「毒はさっき無効化した上でこの技。虚弱は通るけど、まさか……!」
知能を最早持たないネルガルがニヤリと嗤った幻覚を見ながら放たれるのは睡眠の状態異常を与えるドルミナー*3。真澄はアクセサリー以外にも<精神耐性>*4にて状態異常の対策をしている。その為、高確率ではない状態異常は早々掛からないが……
虚弱状態 | D2・状態異常出典。虚弱状態の際に他の状態異常を受けると必ず状態異常になる |
「……ッ!」
虚弱により状態異常に極度に弱くなった身体に撃ち込まれた
不屈の闘志 | シリーズ共通。戦闘中1度だけ、HPが0になる攻撃を受けた時に耐え、HP全快の状態で復活する |
絶命に至る直前に何とか意識を取り戻してガードを固めながら後退。命を何とか繋ぐことに成功する。
「ぁー……しくったわね。お前も屍鬼達も
実際にグルルやチェルノボグ、ネルガル、屍鬼も基本的にそういった精神に干渉する魔法は覚えない。しかし、取り込んだ悪魔の中に偶然そういった悪魔が紛れ込んでいた事やネルガルとしての残滓がある種のメタとしてそういった魔法を習得したという可能性はあった。ガネーシャリングで属性による物は大抵防げるし、アクセサリーによる防御も毒が優先となる為に何が最善かまでは現状判断はつかないが予測はしておくべきだったと真澄は血反吐を吐きながら反省し、その次の対処を行うべく切り替える。
「対策はある。後は……奴次第ね」
防具に備え付けられた道具箱から1枚の札を取り出す。
「召喚、シキガミ」
式神召喚 | 200X出典(オリジナル要素含み)。 補助スキル。消費したカードの悪魔を召喚する。 真澄はこれを特殊な式神符によって発動する事ができ、 他の符と同様に自力での製作が可能。 但し、その制約によりこの式神符では シキガミ或いはシキオウジしか召喚できず1体までしか使役できない。 |
\カカカッ/
Lv8 | 妖鬼 | シキガミ | 耐性:火炎耐性・電撃反射・魔力耐性*6 |
「
札……式神符より召喚されるのは低位の妖鬼であるシキガミ。真澄に言われるがままに虚弱を治す為のアイテムを使用*7し、その傍にふよふよと控える。
「ありがと……じゃ、やり返ししてやるわ」
構え | 誕生篇・骨法出典。 補助効果。骨法における防御の構えを取る。 この効果を宣言した場合、<構え>を継続する限り回避・物理防御値を上昇させる。 敵からスタンダメージを受けた時にスタンチェックの補正をかける。 <構え>は1度ダメージを受けたり、攻撃を行う、別の効果で姿勢を崩されると解除される。 |
詠唱と共に地面に対して光り輝く陣を敷くと骨法における防御に構えを真澄は取った。それで
バビロニアの疫病 | D2出典。敵全体のバリア状態を解除した後、敵全体を基礎確率100%で虚弱状態・毒状態にする。 |
カウンターを狙うなら状態異常で固めてしまえば良い。悪魔らしい
「良かった。賭けでもあったから、これを知らなくて安心したわ」
それに反応するように陣が真澄とシキガミを守るように浮かび上がる、呪詛や毒に対して呪詛返しを行う為の破邪の結界。
ステラカーン | 覚醒篇出典。このターンの間にバッドステータスが味方のいずれかに適用される場合に味方が受ける筈だったBSは相手に反射する。 |
即ち状態異常を撥ね返す結界であり、効果はそのままに弾かれたそれはネルガル自身に襲い掛かった。毒に対しては耐性があるようだが、虚弱に対しては真澄と同様に対策もなくそれによりネルガルの動きがやや鈍っている。
状態異常が駄目ならばとネルガルは再び複数の触手を真澄に殺到させる。
「それも想定内!」
事前にそうするだろうと受けの態勢*8を整えていた真澄は紙一重にそれらを避けて、捌き
回転打ち | 覚醒篇・骨法出典。 敵の格闘攻撃を回避した後で行う反撃技。剣相性。 威力は骨法技能値×3となり、特大ダメージ(180程度)。 掌打である為にこの攻撃は物理防御点を半分として扱う。 |
すれ違い様に回転により威力を増した掌底をネルガルの顔面に叩き付けながら距離を取る。
「シキガミ!」
道具の知恵・攻 | 真4出典。戦闘中に攻撃アイテムが使用可能になる。御魂合体で取得。 |
デビルスリープ | 真4出典。敵1体に「睡眠」を付着する消費アイテム。 |
シキガミよってネルガルに投げられる睡眠を付与するアイテム。反撃と共に撃ち込まれたそれをネルガルは回避できないが、ネルガルの状態異常抵抗は相応に高い。素のままならば弾く事が出来る。
『Oooo……!?』
虚弱による確定した状態異常の付与。ネルガル自身が用いていた戦法が此処にきてそっくりそのまま返された。
「やり返すっていったでしょ。後、お前の弱点も分かったから」
Lv86 | 屍鬼 | ネルガル | 耐性:精神・魔力・緊縛・精神・毒・麻痺・石化無効。 破魔弱点・呪殺反射 |
「典型的だけど破魔に弱い。その状態の不安定さで弱点が増えてしまった、という事かしらね」
武器の聖別 | 200X出典。 条件:習得の度に属性攻撃スキルを1つ選ぶ。使用時に選んだ属性攻撃スキルの中から1つを宣言する。 その属性に対応する相性に「弱い」状態では使用できない。支援魔法。 味方一人が所持する武器1つに指定した属性攻撃スキルを付加する。破魔属性を選択 ランク3である為に万能相性の属性攻撃を選択可能。属性攻撃がクリティカル可能に この効果は命運を消費しない代わりに戦闘中に3回まで使用できる。 |
両手に破魔の光を宿し、睡眠を解除しようとするネルガルは
「雷撃を!」
真澄の指示により、先んじて放たれるシキガミの
SHOCK状態 | 真3・状態異常出典。相手のターン終了まで行動不能。反撃スキルは使用不可能で、自身が受けるクリティカルの確率を上昇させる |
『Oo……O……!』
雷撃から誘発される
そして―――
「極める!」
呼吸を整え、真澄は
格闘威力強化(体)Ⅲ | 200X出典。武器を用いない格闘攻撃の威力に「体能力値×3」する。 |
アドバイス | P5R出典。クリティカルを与える確率が2倍に上昇する。 |
フィジカル・エンハンスⅢ | 200X出典。補助効果。 剣またはガン相性の習得済みの攻撃スキルを3つまで指定する。 シーンまたは戦闘終了まで指定した攻撃スキルの相性は装備したアイテムの「属性攻撃」スキルに対応する相性に変更する。 破魔属性を選択 |
震脚Ⅲ | 200X出典。補助効果。 このターン、使用者が次に行う素手に格闘攻撃1回の威力に【力能力値×2】を、 素手以外の場合なら【力能力値】を加える。 ランクⅢの効果によりこのターンにおける全ての格闘攻撃に効果が及び、 格闘攻撃の判定値の1/5でクリティカルが発生する。 この効果においてクリティカルが発生した場合、200Xにおけるルールを参照してクリティカルは2倍として扱う。 |
舞踏 | 誕生篇・骨法出典。補助効果。 骨法の基本動作で、足捌きを中心とした身体の動きを指す。 すり足の迅速な移動とコンパクトな方向回転によって、 直後の格闘攻撃のダメージに+威力(骨法技能値参照)する。 |
手合い | 誕生篇・骨法出典。補助効果。 軽く曲げた両手が互いに触れ合うような骨法独特の間合い。 この効果を発動した場合、術者は<手合い>の距離に踏み込み、 相手の攻撃を封じ、骨法の力を最大限発揮する。 <手合い>の距離内に居る敵は命中・回避値を-威力(骨法技能値参照)。 <手合い>の距離から脱出するには<速さ>による競争チェックに勝つ必要がある。 |
震脚を踏み鳴らし、疾駆の如くその間合いに立ち入って
「二連掌!」
二連掌 | 2回攻撃の掌打を行う(剣相性)。剣相性→破魔相性。 この攻撃はそれぞれ別の対象を取ることが出来る。 また、掌打である為にこの攻撃は物理防御点を半分として扱う。 威力は骨法技能値×2を参照して、特大ダメージ(120程度)。 |
掌底による二連打が破邪の光と共に感電状態によってを喰らいやすくなったネルガルの急所を穿つ。
「もう一度!」
穿ち抜き、風穴が空いたネルガルの身体に続け様に放たれるは同様の二連掌。光はネルガルの纏う黒い粘液を焼いて、人体を繋ぎ合わせたかのような歪な身体を露わにする。
「これで終わり!」
計六発。最後に放たれた二連掌により肉体も魂も、残滓でさえ残らずにネルガルの肉体は崩壊。灰と化して、最後は塵も残さず消えていった。
「……はぁー、やっぱちゃんとしたサマナーでもないのに単独行動なんてするもんじゃないわね」
<宝玉>を使用しながら再復活や屍鬼達による奇襲がないか警戒はするものの露程の気配も感じられない。恐らく屍鬼の発生自体は暫く続くだろうが、その根源は此処で断った。そう時間は掛からずに今回の騒動は収束するだろう。そうでなければ困る、と真澄は苦笑いを零した
「後始末でどれだけ時間掛かるかだけど、もうちょっとであの子には会いに行けそうかな」
「東京もまた色々ありそうだし、急がないとね」
・キャラ紹介
<神城 真澄 Lv83>
ヤタガラスに所属する巫女。
出身は奈良のヤタガラス系列の神社であり、所属としても京都ヤタガラス寄りだったが、あんまりにもあんまりな環境だったので結構前に出奔。活動範囲を四国・中国・九州周辺に定めながら時折東京に赴くというもう大体フリーのデビルサマナーのように任務を熟している。そんな彼女の戦闘方式は骨法を中心とした格闘術に符術・カーン系を用いる結界術を加えた物。物理貫通等はないので基本は万能物理の徹しでそれで駄目なら聖別からのフィジカルエンハンスで、そうでも駄目なら結界術・符術でのサポートに回るというスタイルを取っている。そろそろ東京に行きたい
<屍鬼ネルガル Lv86>
レベルが高すぎたのと場所との相性が良すぎたせいでネルガル(故)の遺志と関わらずになんか復活しちゃった神。チェルノボグだったりグルルだったり他の屍鬼etc等の融合体で屍鬼の本能のままにとにかく屍鬼を増やそうと活動していた。その割に虚弱を用いた割と狡い手を使ってくる。まぁ返されたんだけど。恐らく見た目はバイオブロリーみたいな感じ。
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【正直】カルトマジックざっくり解説【僕もよくわかんない】
Pi>【正直】カルトマジックざっくり解説【僕もよくわかんない】
【やっと】四国バイオハザードが収束してきてる件について【死国が四国に】
【ショットガン弱体】AC6アセン相談・対戦【でも割といける】
【もう】ミナト外伝感想スレ【全部いい】
1:【YO☆@仲マ育て中】
別所で解説するって言ったからスレ立てしたよ。人集まったら始めようか
2:【名無しさん@LV上げ中】
ノ
3:【名無しさん@LV上げ中】
ノ
4:【名無しさん@LV上げ中】
ノ
5:【YO☆@仲マ育て中】
最初に話す前提として一応資料とか実体験とか込みで話すから一定の信憑性はあると思うんだけど、専門家って訳ではないからちょくちょく間違いがあるとは思う。だから知識として運用したりする場合は各々で調べ直したりして使ってほしい。
所詮掲示板に書き込んでる情報だからね。宜しく。
6:【YO☆@仲マ育て中】
じゃ、まずカルトマジックに関して何だけど凄い乱暴に言ってしまえば『人間が用いる各地の信仰に根付いた土着の信仰魔法』みたいな感じにはなる。魔界魔法は所謂魔界に存在する根源的なパワーだから、またそれとは別って感じでね。
7:【YO☆@仲マ育て中】
でもって魔界魔法を用いるカルトマジックも結構あるんだけどそういうのは比較的新しい体系だから専門外だし、そっちの方が数多くて説明するの大変なんだよね。だから、此処で紹介するのは古くて洗練されてないタイプの一部のカルトマジックだけにしておく。
8:【名無しさん@LV上げ中】
具体的には?
9:【YO☆@仲マ育て中】
古い奴で比較的メジャーな類だと魔道・ウィッカ・修験道・タオ・符術・マントラ。後は忍術もそうかな。この辺りになる。一つずつ解説するよ
10:【YO☆@仲マ育て中】
まず魔道。キリスト教文化の裏側に根付いたとされる異端の魔法。ヘヴライ系の神通力って所だね。守護天使と呼ばれる存在を呼び出す事ができる(天使ってついてるけど精霊とか魔王とかも呼べる)
11:【YO☆@仲マ育て中】
魔道における魔法は錬金術に基づいたゴーレムや人工精霊・ホムンクルスの作成なんかもあるけどメジャーなのはやっぱり悪魔召喚・合体関連かな。悪魔召喚プログラムなんかとも似通ってる要素は多い。
12:【YO☆@仲マ育て中】
見鬼によるアナライズ技術や悪魔召喚や封印、送還。後は三身合体・造魔作成・剣合体といった高位の悪魔合体も魔道で行う事が出来る。後は魔界のゲートを開く冥界門や死亡者を完全に蘇生させる復活なんかも魔道の領分だ。
13:【YO☆@仲マ育て中】
そんな感じである意味一番ポピュラーなのが魔道。だから、邪教の館でも大体の人が魔道かそれに近しい技術は習得してる感じだと思うよ。
14:【名無しさん@LV上げ中】
ほへ^~
15:【名無しさん@LV上げ中】
魔界の門開けるの大分ヤバない?大丈夫か色々
16:【YO☆@仲マ育て中】
今あげた奴は魔道の全般の特徴みたいなもんで、実際のカルトマジックの内容は大分異なってる事もある。悪魔合体とかは需要あるから文献なんかにも残ってると思うけど、他の魔法はそんなことはないみたいな事は結構あるんじゃないかな、なにせ古い魔法だからね。
17:【YO☆@仲マ育て中】
という訳で次の解説。ウィッカだね。ケルトを源流にした欧州の自然精霊信仰を基にしたもので妖精の力を用いる事が多い。女の人がウィッチで男はウォーロック。大半は女性だからウィッチで浸透してる。ウィッチドクターにお世話になった人も多いと思うしね。
18:【YO☆@仲マ育て中】
ただ、ウィッチって言っても必ずしもウィッカそのものを習得している訳ではないからそれだけ先に言っておくね。古い体系のものと新しい体系のもの、ごちゃ混ぜになっている物とかあって色々言い出すと切りがない。ここでは古い体系のものだけ説明する
19:【YO☆@仲マ育て中】
ウィッカが用いる魔法は薬草を用いる物なんかもあるけど基本的に妖精等の力を利用して発動する物が大半。ピクシーやブラウニーの召喚魔法や妖精の力を借りて飛んだり変身したり未来へのアドバイスを貰ったり、攻撃や防御やテレポートに応用したりとかなり多岐に渡る。正直僕でも把握し切れていない部分は多い。
20:【名無しさん@LV上げ中】
弱点はやっぱり妖精の加護ありきだから妖精と協力関係が築けないと発動できないとかか?
21:【YO☆@仲マ育て中】
そうだね。妖精とのコミュニケーションと信頼が必要不可欠だから、僕はそれは常に意識してる。対等な関係で協力してもらった見返りを上げたりね。妖精って存在自体が幅広くて好意的な種も多いから、カルトマジックでもやっぱ出来る事は多いかな。個人的な感想だけど
22:【YO☆@仲マ育て中】
次が修験道。名前の通り、日本神話系の神通力。今まで上げた中だと聖なる力って面が大きいから破邪の力を用いた悪魔使役・制御・退散術や回復術が多いかな。霊縛による拘束や結界術なんかもあるね。高位の物だと天鳥舟を呼び出せたりとか天津・国津神の力を用いる事も出来る。
23:【YO☆@仲マ育て中】
次がタオ。道教や陰陽道、仙道なんかをベースにした中国に古くから伝わる法術って感じになってるね。その中でもタオでは主に
24:【YO☆@仲マ育て中】
中国の歴史が古い事とタオという体系が出来る以前に色々なカルトマジックを吸収してきたっていう経緯からとにかく色々出来る。まず
25:【名無しさん@LV上げ中】
京都ヤタガラスが使ってたレベル50以下使えなくなる奴とか女を裸にする奴も確か道術……タオだったか?
26:【YO☆@仲マ育て中】
<奇門遁甲陣>と<玉女喜神術>だね。そういう禁術も多いのがタオの特徴かな。中国三千年の歴史は伊達じゃないって所だね。
27:【YO☆@仲マ育て中】
次に符術。僕も含めてお世話になってる人は多いんじゃないかな。<観音神符>*1とか
28:【名無しさん@LV上げ中】
プレスターン主体だとマジで助かる奴な
29:【名無しさん@LV上げ中】
他の符も属性半減とSHOCKとかFREEZE防いでくれたりでほんまに助かる。最近まーじで高くなって全然買えないけど
30:【YO☆@仲マ育て中】
それと効果は似ている。あれも符術の一種ではあるんだけどカルトマジックとしての符術での製作物って訳じゃなくて、結構新しい部類の符らしいんだ。
31:【YO☆@仲マ育て中】
じゃあ厳密に符術で何が出来るのかっていうとまずは符の作成。準物理貫通級或いは万能相性を武器に付与する霊活符や式神を召喚する式神符なんかを筆頭に符を誰か貼る事によってメリットやデメリットを発揮するって感じだね。貼る事で魔法を禁じたり或いはムドさせたり、傀儡や形代の作成等の呪詛や呪詛返しの技術も含まれてる。後は牛金丹や金丹なんかの仙人薬の作成も出来るね。符術をメインにやってるタオ*2なんかも存在するけど派閥なんかもあるからタオとは別枠で説明させて貰った。
32:【名無しさん@LV上げ中】
日本由来の符術なんかもあるって聞くしな。ややこしいわ。俺達にとっては使えれば何でもいいんだけど
33:【YO☆@仲マ育て中】
でもって次はマントラだね。仏教系密教の秘術、真言というのは有名だけど実態としてはインドのディーヴァ神族、バラモン教なんかの魔法でそれを仏教が取り入れた感じになっているらしい。タオと同様に仏教が勢力を伸ばしていく過程で取り込んだ様々なカルトマジックがこれに該当する、そんな感じだね。
34:【YO☆@仲マ育て中】
出来る事として修験道と同様に破邪の力による破魔による退散術と回復が行える。ただ、マントラはより攻撃的な印象で逆に修験道はより回復に特化している。後は修験道における天津神の権能をマントラでは帝釈天等のインド神話のディーヴァで再現する。基本的に物理攻撃無効化や魔法回避上昇とかの割と前衛向きの物が多いのも特徴だね。逃亡を禁ずる物やアンデッドを問答無用で滅ぼす術もある。
35:【名無しさん@LV上げ中】
インドってやっぱヤバいわ
36:【YO☆@仲マ育て中】
使うたびにアライメントがその神に引っ張られる可能性はあるんだけど、特に強力な物が多い。
37:【YO☆@仲マ育て中】
で、最後に忍術。ぶっちゃけカルトマジックではない気はする。*3
武術や投擲術、隠密術と薬品による科学的戦法が主で魔法といえる魔法を用いた物はかなり少ないんだ。
38:【YO☆@仲マ育て中】
それでもカルトマジックに該当されるという理由は先に説明したカルトマジックを取り込み、自分達に必要な物だけを習得して体術や隠形術、薬品の生成の仕方に応用していたからとされている。
後は国津神信仰の者が忍者だと特に多いって言うのも理由かな?
知り合いに忍者が居たら聞いてみて
39:【YO☆@仲マ育て中】
以上が僕が説明できるカルトマジックになる。後は質問があればそれに答えながら話を続けていく。
40:【名無しさん@LV上げ中】
んじゃ、ワイから質問や。カルトマジック覚えるにはどうすればええんや?
なんとなくそういう宗派だったりに弟子入りするなりして覚えるっていう想像は出来るんやが
41:【YO☆@仲マ育て中】
そうだね。説明していこうか。
カルトマジックの習得の仕方は主に3つ。
まずは>>40が言っていたようにそういうカルトマジックの団体・宗派に弟子入りするか、2つ目が元からそういうカルトマジックの団体で生まれた上で数年以上の修練に励んでいるか。
最後が
42:【名無しさん@LV上げ中】
前世の覚醒って転生者って事か?
43:【YO☆@仲マ育て中】
概ねそうだね。前世の自分が何かしら来世の自分に覚醒させる切っ掛けを残しての意図的な覚醒か或いは偶発的な覚醒か、種類は問わないけど前世で用いていたカルトマジックを思い出すんだ。
でもってね、カルトマジックの習得方法は実はこれが一番主流。後から弟子入りっていうのは中々ないかな*4
44:【名無しさん@LV上げ中】
前世の覚醒>カルトマジック団体で生誕からずっと修行>弟子入りって事か。理由は大まかに察せられるけど何故そうなるのかの理由も知りたい
45:【YO☆@仲マ育て中】
まず前提としてカルトマジックは習得に色々制限がある。まずはアライメントがそのカルトマジックに合っていなければならないし、カルトマジックを使えるだけの能力が必要。その上で習得に時間は必要だし、まず第一に1から学ぶならカルトマジックの団体に入らなければならないっていう大きな壁がある。*5特に入るのは難しい、単純に僕が上げたカルトマジックを取り扱ってる団体そのものが少ないからね。
46:【名無しさん@LV上げ中】
確かに私なんかは業界結構いるのにあんまりカルトマジックの事は聞かないわね。そもそも母数が少ないなら納得いくけど
47:【YO☆@仲マ育て中】
その辺りの母数の少なさは魔界魔法とカルトマジック、その性質の差なんかによる所はあるんだけど……後で説明した方がいいか
48:【YO☆@仲マ育て中】
で、弟子入りによるカルトマジックの習得が難しい事は分かってもらえたと思うし、カルトマジックにずっといて修行を続けているタイプに関しては説明が不要だと思う。その上で前世の覚醒によって取得したカルトマジックの大きな利点はカルトマジックを学習するのではなく『思い出し』ていく点にあるんだ。
49:【名無しさん@LV上げ中】
1から何か覚えるより、それ全部やった後に復習していく方が物事は間違いなく身に着けているもんな。後者は2週目って事で時間がかかるのがデメリットだが、前世の覚醒だから今世における時間を浪費している訳じゃない。
50:【YO☆@仲マ育て中】
そういう事。カルトマジック自体の習得にあまりレベルは必要じゃなくて、それより技能を取得する時間の方が大事なんだ。それを大幅に短縮できるのはこれ以上ないメリットで、前世の自分もそれを分かっていたからこそ来世の自分に何かしらの方法で覚醒のヒントを残している事が多い。例えば守護天使や妖精等を来世に飛ばしたり、来世に記憶を蘇らせる条件付けをしたりなんかだね。ここまでいいかな?
51:【名無しさん@LV上げ中】
問題ない。続きを頼む
52:【名無しさん@LV上げ中】
私も問題ないわ。先が気になるしね
53:【YO☆@仲マ育て中】
オッケー。魔界魔法とカルトマジックの大きな違いは上に上げた習得条件もそうだけど
何より
54:【名無しさん@LV上げ中】
特化してないだけならやり用はあると思うが、そんなにか?
55:【YO☆@仲マ育て中】
例外は勿論あるし、魔界魔法にはないユニークな魔法も多数存在している。ただ、それでもカルトマジックの多くは悪魔の打倒ではなく調伏や制御なんかがメインで、制御できない悪魔やそれに類する化物を倒すのはそれこそ英雄と呼ばれる人々の所業だったんだよ。後は属性も少ないし、根本的に悪魔自体にダメージを与えられる術が少ない。カルトマジックの精度を高めないと火力が足りない事もあるし、何より悪魔召喚プログラムが大きいね。
56:【名無しさん@LV上げ中】
悪魔召喚プログラムによって悪魔契約や召喚がCOMPに任せられるようになって、それらのカルトマジックの召喚技術の必要性が下がったのか
57:【YO☆@仲マ育て中】
悪魔召喚プログラムが世間に広まる前には僕が紹介したカルトマジック以外にも多数のカルトマジックが存在していたらしい。それらが悪魔召喚プログラムによって凡そ取って代わられて、管召喚とかの別に色々メリットがある召喚を除いて廃れてしまったというのはある。
58:【YO☆@仲マ育て中】
悪魔召喚プログラムが流通しだした時期はまだマシだったらしいんだけどプログラムの進化は目覚ましく、他の召喚方法に存在した優位性を圧倒的に上回る程の機能を悪魔召喚プログラムはいつの間にかに得てしまった。その時期になると悪魔人間や転生体等の魔界魔法を使う人達も増えてその影響から多くのカルトマジックは居場所を失ったらしい。それらのカルトマジックはヤタガラスなんかの団体で資料として保管されたり、一部の伝承者が代々受け継ぐみたいになってる。符術とかは逆に需要増えてきたけどあれは例外だから
59:【名無しさん@LV上げ中】
悪魔召喚プログラムって俺達の世代だと当たり前に利用してるけど、昔は当然なかったもんなぁ
60:【名無しさん@LV上げ中】
数年以上修行した上で悪魔使役がやっとってレベルなら最初から悪魔召喚プログラム利用して、その時間で実戦なりでレベル上げた方が間違いなく強い。習得だけなら魔導書だったりで比較的時間のかからない魔界魔法の存在も大きいって事か。
61:【YO☆@仲マ育て中】
霊地や龍脈の管理でそういったカルトマジックが必要な事もあるから完全に廃れる事はないんだけど、そういう団体でも戦力の関係で通常は魔界魔法使う事が多くなってるのが現状なんだよね。
62:【名無しさん@LV上げ中】
なんか戦場において強力だが修練が必要な弓が使い方さえわかればすぐにでも使える銃に取って代わられたみたいな話だな。魔法でもあるんだな、そういうの。質問答えてくれてサンクス
63:【YO☆@仲マ育て中】
ここで語ったのは古い体系のカルトマジックだから、新しい体系のカルトマジックなら魔界魔法主体で今からでも覚える事は出来ると思う。あーでも、そうだ。一応古い体系のカルトマジックのメリットも紹介しておこう
64:【名無しさん@LV上げ中】
色々面白い魔法が揃っている以外に何かあるん?
65:【YO☆@仲マ育て中】
それがメインではあるんだけどね。それ以外にも一応ある。
66:【YO☆@仲マ育て中】
古い体系のカルトマジックや日本剣術や空手等の対人を想定しているタイプの武術。後は一部のPK・ESP・チャネリングとかの超能力も場合によってはそうかな。結構種類も多いから一概には言えないんだけど、これらには『技能値』と呼ばれる存在がある事が分かっている。
67:【名無しさん@LV上げ中】
まーた新しい概念出てきた。というか武術や超能力もかよ
68:【YO☆@仲マ育て中】
武器に似ている熟練度ってあるじゃん?。*6あれはその武器を使用すれば使用する程、その武器の体系による攻撃力の増大が見込まれる訳だけど。技能値の場合はレベルの上昇によってカルトマジック体系や武術体系が洗練されて、魔法や技の効果が増大していくんだ*7
69:【名無しさん@LV上げ中】
使う時間や適性に比例するのではなく、飽く迄レベルに比例して強化される訳か
70:【YO☆@仲マ育て中】
そう。なんでそうなってるかまでは僕だと分からないんだけど、そういう事になっているというのははっきりしている。武術も超能力もそうである物とそうじゃない物が存在するから凄いややこしいけど
71:【名無しさん@LV上げ中】
そうであるものとそうでないものの違いはないの?
72:【YO☆@仲マ育て中】
そうだなぁ。強いて言うなら悪魔戦闘に特化されてないって点かもしれないね。さっきのカルトマジックと同じ話になっちゃうけど。
73:【YO☆@仲マ育て中】
例えば日本剣術なんかは全部対人を想定した物で悪魔を斬る為のものじゃない。素手の武術に至ってはボクシングやプロレスなんかのスポーツも存在している。超能力は本人のレベルによって威力が変わる物もあるらしいからマジで分かんない*8
74:【名無しさん@LV上げ中】
超能力自体がまぁよくわかんないものだし……ペルソナみたいに個人個人に寄るとかなんじゃないか……?いや、わからんけど……
75:【YO☆@仲マ育て中】
よ、よし。取り敢えず話を戻して、技能値に関してだね。これは言ってしまえばジョブレベルみたいな感じで例えばLv30の人が居たとして、その30の値だけ理論上はカルトマジックや武術の技能値を高める事が出来る。Lv30に対して魔道15・空手15とかね。ゲーム的な表現になっちゃったけどこれらの武術や魔法を伸ばしていくには
76:【名無しさん@LV上げ中】
理論上、レベルを上げ続ければ威力や効果が増大するっていうのは大きいわね。ハードルは高いけど形に出来れば大きな武器になる。
77:【YO☆@仲マ育て中】
僕がカルトマジック使ってる理由も概ねそれだからね。効果が強力な物も多いし、最初は弱くとも意識して成長し続ける事に成功すれば最前線でも戦っていける。
掛かる時間とか苦労とか或いは前世との因縁とかも必要だからそういうのは度外視に考えてだけどね。僕は色々条件が整ってて、ウィッカを習得する上では運が良かった。
78:【YO☆@仲マ育て中】
後は一部の悪魔なんかはカルトマジックやそういう武術を覚えている事があるらしい。
例えばアラハバキやスサノオなんかは雲耀の剣*9を、テスカトリポカがルチャ・リブレとかローリング・ソバットを使っていたっていう記録とアナライズが残ってる。
後は仏教系はマントラ・中国系はタオ・日本系は修験道を覚えている事もあるらしんだけど、技能値なんてものは悪魔に存在しないから威力は悪魔個人個人の能力に依存している感じかな。
79:【名無しさん@LV上げ中】
悪魔もようわからんな
80:【YO☆@仲マ育て中】
流石に確認取れた数は少ないから、レア悪魔なのは間違いないと思うよ。
んじゃ、質問なければこの辺で落ちるよ。用事もあるし。
スレ自体は残しておくように申請しておくから適当に議論の場に使ったり、質問があったら置いてくれたら確認する。
81:【名無しさん@LV上げ中】
ういー面白かった
82:【名無しさん@LV上げ中】
サンクス
83:【名無しさん@LV上げ中】
俺もタオを覚えて婦女全裸の術を……!
84:【名無しさん@LV上げ中】
禁術つってんだろハゲ
「ふぅ……」
スレを落として、背もたれに体重をかけながらぐぃーっと背伸びをする。
あれから仕事に復帰した僕は天魔衆の動きを追いつつ、レルムを中心に情報収集を進めていた。後は由奈やエリヤと共にリハビリがてら近場の異界を攻略したり、仲魔の調整を行ったり、検証班の手伝いしたり、スレで情報収集したりはしているが現状大きな動きは見られない。天魔衆はあれからめっきり姿を現さなくなり、行方不明事件こそまだ続いているもののそれが超人失踪事件なのか天魔衆によるものなのか完全に見分けがつかない状態に陥っている。はっきり言って能動的に探すのはもう難しかった。
「あまり根詰めないようにしてくださいね。病み上がりなんですから」
「心配し過ぎだよ由奈。これ位はヘーキヘーキ」
「何にせよ、無理はしないように。そういえば真澄からの連絡が来たと言っていましたが」
「ん、ああ。四国でのあれこれにやっと終わりが見えてきたらしい。後始末だけだから多分そろそろこっちに来れる、とは言っていたね」
「良い事です。私達が敵対する戦力の事を考えれば戦力は多ければ多い程良い。他のチームに協力を要請するのも難しいですから」
「心底嫌ですが、とかは言わないんだね」
「もう好悪で語れる段階は過ぎているという事です」
かつて由奈はファントムソサエティに所属し、デビルバスターとして活動していた過去を持つ。その時期においてはヤタガラスとちょくちょく衝突する事もあり、特にヤタガラスの巫女である真澄と戦う事が多かったらしい。
他にも色々因縁があって今は協力関係を築いているが、由奈と真澄の二人に関しては反目している。さしづめ、555のたっくんと草加のように。どっちが乾巧って奴でどっちが草加雅人なのかっていうのを議論すると喧嘩通り越して戦争が起きそうだから、それは心中に留めておく。何にせよ犬猿の仲というのに違いはない。
「あ、そうだ。エリヤは?」
「エリヤは確か疲れたとか言って昼寝を「二人とも居るか!?」」
ドンッ!と大きな音を立てて、エリヤが部屋に入り込む。表情を見るに大分緊迫しておりタダ事ではなさそうだった。
「説明、御願い」
「……夢でレルムに例の怪物、姿は違ったが現れたのを見た。嫌にリアルで今までにない感触だったから、多分幻視だ。俺もこういうのは初めてだから、いつそれが現実になるかまでは分からないしただの夢の可能性も十分にある。判断はお前達に任せたい」
「戦闘以外でそういう幻視を見る事はないと思っていましたが……どうします?」
「勿論行くよ。最悪何もなくて取り越し苦労でも構わない」
「分かりました。行きましょう」
・後書き
(作者も)よく分かってない!
一応色々調べた上で前世からの覚醒のケースが一番多そうだったのでこんな感じになりました。古い体系のカルトマジックの習得者が少ないのは正直誕生篇・覚醒篇がメジャーではなくコーシューマーにおいても取り扱われてない物ばかりっていうのがメタ的な答えはあるんですが、その理由付けとして根本的に習得に時間が掛かるのと条件が幾つか必要という風にこじ付けました。(もっと深く調べる事が出来たら明確な答えが出そうではあるんですが中々難しい)
超能力は超能力事態がよく分からないし、武術に関してはそもそも対人戦闘術を悪魔戦に持ち込んだ上でそれを進化し続けるタイプの求道者は少ないって印象です(強くなるにしても悪魔の技=通常の物理技の模倣の方が速い)
次回は本編の進行に合わせてレルムにおける戦いを描写していきます(ほびーさんから許可は頂きました)
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嘆きを求める破壊の女神
由奈やエリヤと共に拠点を飛び出し、COMPでスレやレルム内の映像を確認しながら時折<妖精の輪>にてテレポートとして距離を詰めていく。確認出来る限りでは化物が現れたというスレが乱立しており、エリヤの幻視は不幸にも命中してしまったらしい。
「どうも4つのレルムでそれぞれ例の怪物級の悪魔が現れているようです。ただ、前回と比べて対応は迅速のようで対抗できる強者も複数人居る」
「一番近いのは……ラクシュミが湧いてる所かな。戦法がメギドラオンぶっぱみたい」
「なら火力を集中させる形で援護って感じか?」
「いや、街への被害を考えるとそれじゃ厳しいかな。召喚」
\カカカッ/
女神 | ラクシュミ | Lv78 | 破魔反射・衝撃無効・バッドステータス無効*1 |
\カカカッ/
天使 | ケルプ | Lv76 | 魔法に特に強い。物理無効・銃撃耐性*2 |
\カカカッ/
国津神 | アラハバキ | Lv77 | 神経・精神無効。破魔・呪殺・魔力反射*3 |
『最近過労気味なんですけど相手があれなら適任ですか』
『けるぷぅうぅうっ!!さんじy』
『煩い。もう少し静かに出来んのかお前は』
召喚したのはラクシュミにケルプ、そして青銅の土偶のような形をした悪魔であるアラハバキ。レルムへの到達時間は後十数秒程。その間に掛けるべき補助は掛けておきながら疾走を続ける。
「……おい、まさかあれをやるつもりか?」
「うん。検証データはまだ十分じゃないけど可能なのは分かってるし、試す相手としてはこれ以上ない相手だ。成功時のリターンも大きい。ただ、君の目と感覚が必要だから僕と一緒にあれを食い止めてほしい」
「はぁぁぁぁ……お前、これで死んだら祟るからな」
「あははは、まぁ駄目なら駄目で別の方法考えるさ。由奈はCOMPから掲示板に情報を流しつつ、横槍警戒を御願い。前の事を考えると何かが割り込んでくる可能性はある。判断に関しては一任するから御願いね」
「分かりました。ですが其方はくれぐれも」
「大丈夫、生き残る事に関しては僕もエリヤも得意だから。じゃ、いこっか」
東京都の点在する4つのレルム。それらに現れた4体の怪物。
\カカカッ/
女神 | 嘆きに呼び出されしラクシュミ | Lv90 | 耐性:不明 |
そのうちの1体、ラクシュミの名を冠する嘆きを求める女神はその名の通りに求める物を得るべく破壊を開始する。
目の前の脅威に逃げ惑う人、果敢に立ち向かう人。多いのはやはり後者で逃げ惑う人々の雪崩も出来てしまっている。
現代最強格のペルソナ使いである鳴上悠と何処かやつれた目つきをしているスーツ姿のペルソナ使いが既に攻撃を加えており、間違いなくダメージは与えてはいるがあの強大な悪魔を直ぐに打倒するには至らない。
女神より与えられたのは天上より降り注ぐ万物を焼くメギドの炎。その巨体から放たれるそれはレルム一帯を覆う程のその炎をさらに拡散、広範囲における爆撃を敢行。
「ラクシュミ」
『普段はいやいやでは御座いますが、今回は例外。その姿で私を名乗るのは許される事ではない』
それに対抗するかのように地上より撃ち放たれたのは同様の万物の炎であり―――
互いのメギドラオンがぶつかり合ったその瞬間、相手のメギドラオンに此方のラクシュミのメギドラオンは飲み込まれるが、相手のラクシュミの放ったメギドラオンの
『………』
地上に降り掛かる光は精々メギド級にまで収まり、僕達を含む多くのデビルバスターが耐えている様子も観測できた。建物に対しての被害に関しては意識的に逸らす様にしている為に軽微である。それを見た嘆きを求めるラクシュミはのっぺりとした虚ろな表情を浮かべ、それ故に心情を察する事は出来ないが何にせよ
「効果はあった。試し続ける価値はある」
虚ろな表情のままに巨体から放たれる2発のメギドラオン。威力減衰によりレルム内で奴を攻撃している面々には左程ダメージは行っていないが、これが通れば話は別。
1発だけ防いだ所で焼け石に水だ。
「だからもう1回頼むよラクシュミ。<ワンスモア>*4」
『今回は過重労働も許して差し上げます。ええ、頭に来てますからね』
「アラハバキ、お前は俺のタイミングで放て。ラクシュミの次弾発射までの時間を稼ぐ」
『分かっている。貴様こそ抜かるなよ』
そうしてアラハバキとラクシュミにより放たれる二射のメギドラオン。
再度衝突し、減衰される万物を燃やし尽くす光。三射目の後にエリヤが即座に<宝玉輪>を使用し、僕達のHPを回復。これを他のレルム内のデビバスが奴を殺すまで繰り返し続ける事が僕の目的である。
僕がここ最近で進めていた検証はこの互いに同じスキルを同速でぶつけ合った際に発動する現象を確かめる為の物だった。
相殺 | NINE出典ルール(一部改変)。 敵・味方が互いに相手を目標にし、 同系統の魔法や同じ特技を仕掛けた時にと相殺が発生する。 同じ攻撃がぶつかり合う為にその攻撃の攻撃力や 攻撃lvによって効果が変わり、攻撃lvや威力が同程度なら完全相殺。 攻撃力や攻撃lvに差がある場合は貫通相殺となり、 その分のダメージを受けてしまう。 多重攻撃(合体魔法)の場合は相殺によってキャンセルが起きる事がある (その場合、キャンセルされた以外の攻撃はそれぞれ個々の魔法・特技として通る。) ぶつかりあう速度は同速でなければならない為に狙って行う事は難しく、 敵と同じ悪魔がPTに居ると発生しやすい。 |
名を
これを起こすのには様々な要因が必要であり、狙って起こすのはまず難しい。だからこそ今の今まで存在を知られてはいなかったが一部のデビルサマナー・バスター達が度々そのような現象が発生すると申告し、それを受けて検証班が調査開始。
検証を重ねて存在を把握し、発動条件やメリット・デメリットを割り出して今はその裏付けとして実証データを集めている最中だった。そんな矢先にこの化物が現れ、メギドラオン連発するもんだからメリットあるしやってみればできるんじゃね?とぶっつけ本番で試している訳である。成功してよかった、いやほんとマジで。
メリットはやはりこういう大規模な悪魔の広範囲攻撃に対して少なからず減衰或いは相殺をさせられる事にある。しかし、それにはその悪魔とスピードを合わせる事とその悪魔が用いる攻撃力を減衰させられる程の力を持っていなければならない事、そもそも同名で性質も似たスキルをぶつけなければ素通りしてしまう点等で発動条件は大分厳しい。例えば他の条件を整えた上でメギドラオンに対してメギドラで減衰・相殺せずに互いに素通りした、それは確認済みだ。
だからまず速の香と御魂合体を繰り返した此方のラクシュミに奴の速度と同調するようにメギドラオンでの相殺をまず行わせる。性質は違うが同じ悪魔故に合わせやすいというのがポイント。
二射目に関しては同様に出していたアラハバキのメギドラオンをエリヤの優れた感覚による観測によってタイミングを合わせて貰って発射、相殺。
三射目がもし来た場合は僕の<ワンスモア>で再度動けるようになったラクシュミにまた合わせて貰う。エリヤが回復を担当すれば早々倒れる事はない。
事故ってもある程度リカバリーが可能なスキルもある。仮に奴がメギドラを持っていたとすれば同様にメギドラを持っているケルプに対応してもらい、メギドラオン連打やそれ以外で三行動を果たした際は<マカカジャ>による補助で此方のメギドラオンの威力を上げて減衰量の増加を行う。
「博打に近かったが、上手くいったな。俺達は只管これを続ければ、周りは動きやすくなる」
「でも懸念点は結構あるよ。特にパターンがずらされたら厄介だ。各自、気を抜かないで対応し続けて」
『『「了解」』』
これで凌げたのは
起こりうる事態。まずはパターンの変更。メギドラオンを連発している事から恐らく主力があれなのは間違いないが<ストライクバック・バッシュ>や<魅惑ダッジ>による防御技、<セクシーダンス>や<ペトラアイ>による状態異常攻撃は掲示板で確認が取れたとの情報がある。これらを織り交ぜてきて、尚且つ状況を打開する切り札を持っていた場合はそれを使用して目障りな僕達を排除しようとする可能性は高い。その保険として<魔法の輪>*5によって防御力は上昇させている。最高火力がメギドラオンなら個人的に楽ではあるが想定はしておくべきだろう。
その次に横槍による状況の変化。由奈が警戒しながらレルム内を周回しているが見つけられるとは限らない。観察はしている可能性は高いだろうが手出ししてくるかも不明だ。もし横槍が発生した場合は戦法を変えざるを得ないだろう。
パターン変化・横槍等によってこちらのメギドラオン減衰戦法が出来なくなった場合は減衰されていたメギドラオンはそのままレルムに降り注ぐことになる。その際の一番の問題は威力の増大による事故死であり、今まで僕達の戦法によってダメージが抑えられてそれが当たり前の物としてパターン的な行動をレルム内部のデビルバスター達が取っていた場合には僕達の取っている作戦が瓦解した時に連鎖的にその害を被ってしまう事になる。その為に掲示板において由奈がメギドラオンの減衰を僕が行っているという点、そして何らかのパターン変化や横槍等があってこの減衰が発生しなくなる可能性があるという情報伝達及び注意喚起を行っている。勿論、見る余裕がない者もいるだろうがこれも保険だ。念には念を入れていく。
最後の懸念点は此方のリソース。エリヤの<天使の祝福>*6と僕の<妖精の祝福>*7である程度の継戦能力は保証されているがメギドラオン連発はそれでも消費が激しい。MP回復アイテムも相応にあるが限度はある。それまでの間にこの場に居る攻撃メンバーには奴を打倒して貰いたい。他力本願にはなってしまうけれど
そうして再び
その手に振りかざしたのはやはりメギドラオン。空に満たされた青白く輝く極光の炎が降り注いでいく。
「マカカジャによる減衰量の増大にどれだけ差があるかも興味がある。君はそのつもりないんだろうけど、場が整っちゃったからね。どちらかが死ぬまで検証に付き合って貰うよ……!」
他の
「「!?」」
奴のメギドラオンが発射される直前に割り込む様にして飛び込んできた多数の人影。各々の獲物を掲げながら奴の身体を切り刻んで、二人の拳士が両足をその強靭な五体にてへし折った。
「いや、ちょ、おま!!?」
あーなんか見知った顔居るなーって感じで静観する僕。彼らにドン引きしながら声を上げるエリヤ。彼ら以外にもわらわらわらと倒れた巨体に群がる
「こいつらがこの世界の主力なのか…?い、いや……エターナル共よりはまだいいか……」
「一応静止したんだけどねーいっちゃうよねー。由奈があんなじゃなくて良かったよマジで……さてと」
彼らの動きにも
「規定行動としてメギドラオンが来たらメギドラオンで対応。<ストライクバック・バッシュ>によって前衛を引き剥がそうとするかもしれないから、メギドラオンが来ないようであれば前衛にバフと回復。奴にデバフを集中させるようにして」
「既に他の後衛組にはバフデバフの徹底は俺から伝えてある。俺達のMPに関してもアイテムを適時投げて貰えるように話は通した」
「ん、ありがとエリヤ。今あんな感じだけどレベルを考えればここからひっくり返す手札を1つや2つ持ってるかもしれない。可能な限り封殺を続けて、盤面をひっくり返そうとしてもバフデバフ回復で立て直しが効くようにし続ける。各自警戒を緩めずに行動を」
想定外の事象は起こったにせよやることは変わらない。僕はエリヤや由奈といった生きていきたい人達、そして僕自身の為に戦う。
いつかその力が必要なくなるまで、ただ只管に
「あーあ。四神に天命シリーズ、倒されちゃったな。ベアトリーチェさんがインヴォーク使うっていうから現場に急行した訳だが存外呆気ない。」
結論から言えばレルムに現れた破壊の女神、ラクシュミは打倒された。
基本的な攻防スキルに状態異常に特化した個体。足りない火力はメギドラオンにて補うというコンセプトだったが、メギドラオンにリソースを集中させたことによる弊害が出てしまった。メギドラオンに対するメギドラオン、それによる相殺。それによって発生した隙を
其処から新宿区における<天命を奪うセイテンタイセイ>の降臨。再び現れたラクシュミやグルルの対応etc。再び現れたそれらに対して
「ヴァスキは
「カルティケーヤに関しては相対的に善戦になってたから<ブラックフィエンド>による介入が一部成功って所だな。まぁ先走った
「強いのはいいんだけど協調性とか集団行動とかで色々問題がある奴多すぎなのよ、エターナル共は」
「今まではあんまり問題なかったけどこういう時、困るんだよなぁ。まぁ俺達もエターナルなんだけどよ」
そうして完全に悪魔が湧いてこなくなり、レルム内では本格的に怪我人の救助や周囲の警戒、復興に当たっていた。それらをレルム内に存在するビルの屋上から見下ろす二つの影。一人はデモニカスーツを装着し、大剣を背負った男。もう一人は黒いローブで身を包み、アサルトライフルのような形状の銃を持つ女。双方ともレルムにおける戦いに介入したようには見られず、彼らが行った事はただ只管に観察のみ。即ち彼らの立場もそういう事である。
「まぁでも前回の事を踏まえればユダ様の想定通りではあるでしょ多分。下に居る奴らのデータは取れた?」
「ばっちり。しかし、この周回はほんと恐ろしいな。エターナル共と比べてガッツがありそうなのも厄介だし、足切りでもあのクラスだとしたら上は俺達以上もざらじゃないかもしれん。ワイルドも知らん奴が居るみたいだしな。アトナンカマジントカミエタケド」
「その点は同意するけど私達以上がざらは買い被りすぎじゃない?」
「さて、それはどうだか。それはそれとしてよかったな。長年探していたあの人がやっと見つかった」
男がある場所に向けて視線を寄越し、女も追随するようにその場所を見る。
\カカカッ/
ウィッチ(♂) | 久遠 フェイ | Lv80→83 |
\カカカッ/
ガンスリンガー | 久遠 エリヤ | Lv67→74 |
視線の先には急ごしらえの治療所のような所で仲魔と共に怪我人を治療している少女のような少年、久遠 フェイとそれに並び立つように手伝いをしている眼帯をした女、久遠 エリヤが居た。
男はフェイに向けて意外そうな視線を向けて、女は険しい目つきでエリヤを見つめている
「あのちびっこがエリヤさんの保護者かね。相殺現象もあの子が引き起こした物でレベルも高い。俺も本気で対処しなきゃ厳しいかもしれん」
「……生きてたのね、兄さん」
「嬉しくないのかい?」
「色々よ。あの人に対して抱えてる感情なんて散々言ったでしょ」
「それはそうだったな」
何処か不満気な女に対して男はわははと笑いながら
「どうあれ、これでお前の身体をどうにかする目途はつきそうだ。
「……ええ、上もそれを望んでいる。あの人の骸を手に入れて、私は…!」
「ん……おっと、すまん。そこまでだ」
男は女の口を手でやりながら背の剣を振り抜き、女も同様に銃に手を置く。不気味な程に静かなビルの屋上、其処に跳び移る様に現れた新たな人影。
\カカカッ/
剣士 | 久遠 由奈 | Lv88 |
身の丈にも及ぶ大太刀を携えた剣士、久遠 由奈がビルの屋上にて観察を続ける男女に敵意を込めた視線を向けていた。
「盗み聞きはよくねぇんじゃねぇかな?女剣士さん」
「言っておきますが、先に盗み見していたのは貴方達ですからね」
「そう返されちゃこっちも立つ瀬がねぇや。で、何か用かい?」
「貴方達が何者なのか、何が目的なのかお聞かせ願えますか。少なくとも私達の味方には見えません」
「うーん。俺達が何者なのか、後は目的に関しても言う義理はお前さんにはないからな。まぁただ……」
男が剣先を女が銃口を由奈に向けて、彼女もまた大太刀を二人に突き付ける。
「俺達がお前さんの敵ってのは間違いねぇ」
武器知識 | IMAGINE出典。 近接戦闘における武器知識を得ている事の証明。以下の効果を常に適用する。 ・近接攻撃力・必殺発生・必殺抑止が上昇する。 ・ラッシュ・スピンの詠唱時間-10%、ガード・カウンターの詠唱時間-20%する。 |
勇敢王 | IMAGINE出典。 両手剣の扱いを特化させるスイッチスキル。 両手剣装備時に近接攻撃力+50%する。 本来はラッシュにのみ特化したスキルだが研鑽により 効果が強化&デメリットが消失している。 |
ランページ | IMAGINE出典。 暴力的なまでの力を身につけ、主に近接で効果を発揮する戦闘エキスパート。 以下の効果を常に以下の効果を常に適用する。 ・全てのスキルのHPコスト-25% ・武器依存相性スキルの効果+25% ・アタック・スピン・ラッシュ・カウンターの 威力+20%・クールタイム-25%。装填数+1。 |
静かな敵対宣言と共に地面を蹴り砕きながら由奈に飛びかかった男は大剣を大きく振り上げて攻撃を仕掛ける。
アウトブレイク | SH2&IMAGINE出典。 両手剣:アウトブレイク+武器COMPで改造済み。 物理貫通★(反射まで貫通。テトラカーンは不可)。 物理ブースターⅢ(通常攻撃以外で物理弱点を突いた時にダメージ+50%)。 モノノフⅢ(物理攻撃クリティカル率アップ)を搭載。 武器事態に与近接ダメージ+10%効果 |
獣皇矛刃 | IMAGINE・ラッシュ出典。 刃を手にした百獣の王の如く、矢継ぎ早に攻撃を加える特技。 相性は武器依存(物理) 1度の詠唱で6発分の装填を行い、敵1体に対して、 近接攻撃力に依存した物理ダメージを与える。更に対象に30秒間、 被近接ダメージが100%上昇する状態変化(ディスガード)を付与する。 この効果は、対象がノックバックした場合にも消失する。 |
其処から振るわれたのは獣の如く乱雑に、しかし洗練もされている鋭い剣戟乱舞。男の過剰なまでの攻撃過多な
吉祥天咒法 | 覚醒篇・マントラ出典。 防御行動の際に使用できる。 自分に与えられた敵の物理攻撃1回を副次効果も含めて無効化する |
それに対して由奈は籠手にてその刃を受け止めると共にマントラを詠唱。
由奈が最も得意とする
「反撃を…ッ!?」
追撃の悟り・近接 | IMAGINE出典。 術者が武器を用いて攻撃を行った際に 近接攻撃力に依存した追撃ダメージ(物理相性)を与える。 追撃ダメージは元のダメージ数値より計算され、 元のダメージ数値を超えることはない |
瞬間、発生したのは男の
この攻防にて両者が浮かべた感情は共に驚愕。男は通常の物理反射までなら貫通する物理攻撃を防ぐ魔法の存在に驚き、由奈はそれすら実質的に貫通して発動する未知の追撃に警戒の色を強めていた。
引き | 誕生篇・剛剣参照。 補助行動。相手が防御した時或いは 自分が相手の攻撃を防御した時に後方に跳び上がって、 間合いを取り、攻撃につなげる技。 判定に成功すればペナルティ修正なしで1回、攻撃できる。 この攻撃の対象の回避/防御は 威力分(剛剣技能値参照)のペナルティ修正を受ける。 |
煌天の会心Ⅲ | 補助効果。 格闘攻撃をクリティカルに変更する。 200Xにおいてクリティカルはダメージ2倍である為にそのように裁定 1シナリオ3回まで使用可能。 |
雲耀の剣 | 誕生篇・剛剣出典。 一呼吸の十万分の一の時間で切り下ろすと言われる神の剣。 人間の身ではもはや何が起こったか、理解できない。 敵は回避や防御に-80%の修正を受ける。 また、回避や防御に成功しても音速を超える刃先の速度によって 剣風を発生させ、相手と相手の後方全てを切り裂く。 これの対象は射撃回避を行う(衝撃相性/魔法防御点のみ有効) 剣そのもの、剣風によって1点でもダメージを受けた場合は 打撃のショックが全身に伝わって瀕死になる。 難易度が高く、それ故命中率が低い。威力は剛剣技能値×2を参照する。 |
「―――雲耀」
衝撃を受けた影響でワンテンポ遅れた物のそれで由奈の剣が留まる事はなく、返す形で振るわれるのは
目の前の男の装備から考えるに物理に関しては何かしら対策を取っている可能性はあるが、頭数で負けており下の面子が此方に気付いて合流するにせよこの男をフリーにさせるのは不味いと由奈の勘が告げていた。
故に賭けではあるが雲耀による一撃必殺。後方で銃を構える女に対しても剣風を当てるようにして必殺を狙いながら大太刀を横薙ぎにする。
如来像 | 200X出典。 味方一人に対する即死効果を打ち消す |
ダッジ・フェザー | IMAGINE出典。 軽やかな体捌きによって、使用者が素早くダッジ状態になり、 ショット・ラピッドを回避する特技。更に攻撃してきた敵1体に 30秒間、火炎・氷結・電撃・衝撃耐性が50%減少する状態変化を付与する。 |
男は大剣によるガードと自前の防御力によってダメージを耐えながら、全身に伝わる
大技を放った状態の由奈に撃ち込まれたそれは装甲・防御の脆弱化を齎す物であり、主要な属性に対する防御相性を低下させる物。
「あんた、危険ね。お返しにこれで塵に返してあげる」
アクセラレート | SH2出典。行動回数を増加させる |
サイコ・ブラスト | 覚醒篇出典(一部強化)。 敵1体に念動力によって威力分のダメージを与える。本来は習得時に一つの属性を指定して、その属性によるサイコ・ブラストしか行えないが、 複数の■■移植によってこのサイコ・ブラストは使用時に火炎・氷結・電撃・衝撃・銃撃・物理の中から一つの属性を選択し、その属性相性のスキルとして扱われる。 威力はレベル×3を参照し、そのレベルによりメギドラオンの3倍前後の威力を発揮する。電撃相性を選択 |
冷淡な殺意と共に女より発せられたのは
女の纏う雰囲気も単なる超能力者のそれではなく、より不安定で爆発力のある何かであり超能力を持ち得ない由奈であっても放たれるプレッシャーによってやや動きが鈍る程であった。
韋駄天の札 | P5R出典。 3ターンの間、味方全体の命中率・回避率上昇 |
孔雀明王咒 | 誕生篇・マントラ出典。 魔法攻撃やシンクロに対して魔法回避をする際に 仏法の守護者、孔雀明王マユリの名を唱える事で発動。 回避が加護(運)で行え、判定値にマントラ技能値分の補正が掛かる。 |
魔法に対する防御手段は持っておらず、電撃に対して今は脆弱になっている。さらに雲耀が通じなかった以上は攻撃に特化するのは危険。であればと事前に取り出していた札を使用して俊敏性を高め、マントラによる雷撃そのものの回避を由奈は行った。
屋上の地面すら焼き切り、赤熱化した挙句にビルその物を爆縮するかのように拡散した雷撃で粉砕。崩壊するビルの中で瓦礫に乗り移っては襲い掛かる稲妻の奔流を加護を纏った刀剣を振るっては軌道を逸らす。
「これで…!」
「いいや、終わりだ。ジャミングは維持しねぇといけねぇからちょいと時間は掛かったが俺達の勝ち―――」
ベルガーアームバンド | IMAGINE出典。腕章。 必殺発生+10。与ダメージ+3%。 【特性】『トラエスト』の詠唱時間-100% |
トラエスト | IMAGINE出典。 時間と距離を超越し、使用者とパートナーをホームポイントに移動させる魔法。 詠唱時間が極めて長い儀式魔法 |
「いや、とんずらする訳だから勝ちって訳でもないか。引き分けか無効試合って所だな。もし次会ったら本気で相手してやるよ、女剣士さん」
攻撃が終わっても尚、迸る雷の渦によってビルそのものを塵に返してそれを目晦ましに用いながら男と女は転移の魔法により消えていった。
「逃がしましたか。攻撃を優先していれば……いや、それでも難しいですね」
地面へと着地し、倒壊する建物の瓦礫を切り払って周囲への被害を最小限に留めながら由奈は思考する。
まずあの二人を見つけたのは本当に偶然。建物を飛び回りながら掲示板や周囲の人間に情報を伝達をしていたら偶々人が居ない筈なのに違和感があった建物があり、そこの屋上に登ったら彼らが居たというだけ。屋上に登るまで視覚的にも聴覚的にも彼らを捉えたものはなく、戦闘中においても彼らの風貌や顔はのっぺらぼうのように認識できずにあの二人が男女一人ずつである事しか分からなかった。
恐らくジャミングという言葉を発していた事から高度な認識阻害があの屋上及び二人に掛けられていたのだという事は間違いない。
そして、彼らの戦闘力で言えば自分と同等かそれ以上であり先程の戦いで本気を出していないのであれば明確な格上となる。所属や目的に関してはまた信用できる伝手にまた情報を伝えた上で調べてみるつもりではあるが恐らくガイア再生機構所属というのが特徴としては一番合致する。
「ま、問題は其処じゃないですね。私達に取っての一番の問題は……」
アナライズも同様に行っていたが例のジャミングにより抜き出せた情報はわずか。だが、そのわずかな情報に記載されていたもの
\カカカッ/
■■■■ | アンナ | Lv90 | 耐性:不明 |
\カカカッ/
■■ | ウリック・ヤード | Lv85 | 耐性:不明 |
「アンナという名前はそれなりに有り触れている、が……」
男の方は知らないが、女の方の名前。かつてエリヤが元の世界で妹として扱って、ガイア再生機構に囚われていたのを目撃されたというアンナという少女。今回戦ったあの女がそれと同じなのか由奈には見当がつかなかった。
「伝えるだけ伝えましょうか。何にせよ、ここでの戦いは終わりましたしね」
ビルが崩壊したことでわらわらと集まりつつあるラクシュミの討伐者達に対する説明・弁解を考えながら、由奈は剣を収めて歩いていった。
・キャラ紹介
<久遠 フェイ Lv80→83>
本家様の方でAAが確定(魔法少女リリカルなのはのファビア・クロゼルグ)した事でウィッチ具合が加速した人。この服装になった理由は由奈が大量に用意した事と装備の上から着れて違和感も発生しない事等の理由が絡んでおり、今後の基本服装はあれになる。本人は男だと主張を続ける。
今回における戦いでは最近ではずっと検証を続けていた相殺現象を丁度いいからぶっつけ本番でぶつけるという暴挙にでて何とか成功する。この後の戦いでも辻パーミッションを続けて、主に補助寄りに動きながら隙があれば攻撃をぶち込んでいた。祝福シリーズにより継戦能力も高い為に後処理や戦闘後の回復班としても奮闘。前回のラーヴァナとの戦闘も踏まえて無事にレベルアップを果たす。
<久遠 エリヤ Lv67→74>
本家様の方でAAが確定(ドルフロのM16A1)した事で眼帯っこになった人。
今回は只管アイテム係及び観測手として動き続けて、隙があればイレイザーによる6連射で削りに入っていた。此方もフェイと同様に継戦力が高く、レルムレイドバトル
においてフェイに同行しながら終結まで活動を続けて無事に大幅レベルアップ。
<久遠 由奈 Lv88>
今回は裏方として横槍警戒と掲示板にて情報伝達・収集に徹していた人。
時折露払いとして出てきた悪魔を切り払ったり、ラクシュミを通りすがりに切り裂いたりはしていた。そんなこんなで各地点を回っていたら偶然滅茶苦茶怪しい二人組を捕捉して戦闘状態に。結果としては逃げられてしまったものの、エリヤに取って重要な情報を入手する。
<アンナ及びウリック・ヤード>
ロストキリギリスにおけるガイア再生機構のボス陣営。その中にはエリヤにとっての妹であるアンナ、それと同名の少女が存在している。実態がどうなのかはまた追々。
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一難去ってまた一難
東京の上野・品川の格レルムに出現した4体の破壊の神々。その後に出現した高レベルの取り巻きにセンテイタイセイと表記された破壊神。それらとの戦い……戦いというには色々一方的過ぎたが、何にせよレルムでの一件は無事に終息した。
破壊の神々は討伐後も再出現を繰り返し、高レベルの取り巻きもまた度々出現。人的被害はまぁ恐らくあまり無いにせよ、長時間の戦いでレルムはほぼ機能不全に陥った事だろう。それでも僕達が得た物は大きい。
一つはやはりこの神々との相対で得られた経験値。単独では勝てず、規模も大きなLv90。それを多数のデビルバスター・サマナー達で殴り殺した事によって、凡そ参加者の多くが限界を突破して霊格を高めているのは観測済みだ。
メギドラオン相殺と指示出し、回復に奔走していた僕達でもレベルは大きく上昇した事を踏まえれば、他の参加者もまたその上昇値はそれに並ぶかそれ以上の物だった。
次に戦いの後に奴らが落としていったアイテム。
多数の宝石にルーンストーン。宝石に関しては9つ揃えるとステアップとかいうとんでも情報が掲示板にて流された為に宝石争奪戦が勃発し掛け、その騒動の鎮圧にまで当たらなければならない事態となっていた。なんだかんだモラルはある連中なので大事にはならなかったが、こういう情報が急に現れるのが本当に恐ろしい所だ。
まぁ僕はアメジストとアクアマリン、9個揃えた上に由奈とエリヤ用の宝石も確保したんだけどね。
え?ずるい?うるさいなぁ、パーミッションしないよ?(掲示板で情報拡散したので他の人も恐らく出来るようになったし、元々不完全だけどwikiには乗ってる仕様ではある)
とにかく、宝石の方は色々ありつつもこの世界に元々存在した物という事で結論は出た。問題はルーンストーンの方。
大きな知識のルーンストーン | 女神転生IMAGINE出典。言葉と知識を意味するルーン文字『アンサズ』の刻まれた石。 |
ラクシュミが落としたアンサズの文字が刻まれたルーンストーン。素材は不明、用途も不明。通りすがりの北欧・ドルイド・ケルト関係者、後はよく脳破壊されてる人の所のスクルド・スカディetc、それぞれ専門家による協議が行われたもののその場で答えらしき答えは出なかった。
というかその最中に例の触れてはいけない魔人に狂喜乱舞しながら挑んでいく剣士達の姿が見えてしまった為にその対応にあたって途中で協議抜けてきた。
輪切りにされて蘇生・回復したらゾンビアタック敢行するのはやめろ。色々頭冷やした後に複数回の蘇生金額見せて蒼褪めるなら最初からしないでほしいし、例の魔人さんはなんか気づかぬうちに消えていた。なんだったんだよマジで。
閑話休題。ルーンストーンに関しては不明な点が多いが恐らく何かしらの手順を用いて悪魔を強化する類のアイテムだと目星はついたらしい。奪われる可能性も踏まえて、解析・調査をする事が出来るメンバーがそれぞれ分散して所持して調査を続けることに決まった。
僕達が他に得た物として多数の関係者とのコネクションをその場で築くことが出来た事が上げられる。今までは伝手がアイバさんとか一部のヤタガラスメンバー、ファントムソサリティ関係者やフリーの悪魔関係者、検証班の面々とあんまりなかったので、治療代金をチャラにする代わりに色々と協力するように約束させた馬鹿剣士共や北欧関係の研究者達や脳破壊(?)で有名なくぅん氏、メギドラオン相殺やらリアル魔法少女やら明らかにヤバい目をしながら札束捻じ込んできた奴らetcと結構な伝手を獲得する事が出来た。
他に空に突如出現した限りなく虚無に近く感じられた亀裂……僕の知識とあの場に居たスカディの言葉が正しければ、ギンヌンガガプの裂け目という表現が一番正しいであろうそれの出現。それ以外にも由奈が遭遇した僕達の存在を観測・アナライズしていたとされる高レベルの二人。その他、このレイドバトル中に見掛けられた複数の不審な人物達。
この戦いも一種の前哨戦のようなもので黒幕の暗躍を物語る要素は幾つも存在している。その事も頭に入れた上で可能な限り対策とそれらを踏まえた行動をしていかなければならないだろう。取り敢えず今はラクシュミとの戦いで得た相殺の条件やデータを検証班と共に確認しながらwikiの情報更新を行っている最中である。これで他の人も相殺使いやすくなるでしょ、多分。
パソコンやセキュリティ用の機器が備え付けられた一室に無機質なキーボードを叩く音だけが響く中で時折近くのソファーで寝っ転がっているエリヤの姿を確認する。
「……大丈夫?」
「ん……ああ、悪い。大丈夫だ、でも、少しな」
最近彼女はずっと上の空で何か考え事をしている事が多い。その原因も分かっている。由奈が接敵したガイア再生機構のエージェントと思われる二人。何らかの妨害・ジャミングによりその姿を確認する事は出来なかったが、その名前とレベルだけははっきりと視れた。
アンナとウリック。前者はエリヤの妹だった少女の名前。後者はその妹とよく遊んで、過ごしていた少年の名前だったとエリヤは言っていた。ウリックはガイア再生機構で見かけた記憶がなく、行方不明にもなっていた為に死んだ物と思っていたらしい。同姓同名とも考えたがエリヤが恐らく違うと答えた為にそれが本人達な可能性は高い。
エリヤが探していた妹の情報を入手する事は出来た。問題が明らかに敵側についていたという事。由奈の話によれば少なくとも洗脳されているような口振りではなかった。それで色々と考えてしまい、今のような状態に彼女はなっている。
「あの子達に何があったのか。俺には分からない。俺が受けさせられた実験の事を踏まえれば、それと同等か或いはそれ以上の実験を、受けたのかもしれない」
無造作に腕で顔を隠しながら彼女は確かな悔悟の念を込めて、そう呟いていた。
「その可能性はやっぱ高いね。けど情報屋含めて其処らへんの情報を入手するのは相手が相手だから難しい。直接会って確かめるしかない、彼女達については」
「……そうだな。お前の言っている事は、正しい」
そう返すエリヤの言葉に元気はない。何かしら元気を出させる方法を此方で考えた方がいいのだろうか、例えばエリヤの好きそうな物を買って……いやもう大体買ってるな。というか物で釣ろうという考え自体がそもそもナンセンスなのでは?もういっそ、こっちで考えるのではなくエリヤ自身に聞くのが一番なのではないだろうか。
カタカタと手元だけは動かしながら僕もまた悩んでいる。そんな所でPCのモニターに来客の知らせが届いた。丁度、今日とある人物が来客すると連絡が来ており、監視カメラやその他魔術的なセンサーの内容からもその人物で凡そ間違いはないだろう。
「相殺関連のデータも凡そ反映終わったし、後はシロエさんとか他のボ卿が何とかするか。エリヤ、会いにいこっか。多分由奈が対応して、応接間に連れていくと思うからそのままそっちにね」
「確かお前の協力者だったか……わかった、いく」
口では返事する物のぼっーっと考え事をしているエリヤをソファーから引っ張り上げて、応接間へと足を運ぶ。
応接間に関しては……特に言及する必要のない一般的な部屋であり、強いて言うなら魔除けや結界の役割も果たしている魔道具が飾りとして至る所にある位。部屋自体は普通の為に魔術的装飾なそれと比較すると色々とアンバランスだがまぁそれは仕方ない。お金は別の所に使いたいし
そんな部屋の中で既に居たのは二人。一人は酷く不満げで警戒心や敵愾心を隠そうともせずに扉付近の壁に寄り掛かる由奈と、今回の来客にして由奈が敵意を向けるその人物。
黒髪の巫女服を纏った長身の女性。
彼女は明らかな敵意を向ける由奈を歯牙にもかけないままに、扉を開けた僕を目にもとまらぬ速さで持ち上げた。
「やーねーっ!元気!?元気にしてた、フェイ!色々心配だったのよ?四国の件を任せた時も正直凄い心配だったし、ラーヴァナ?とかいう奴相手に死に掛けたって聞いた時は正直直行するか悩んだわよ私!けど私も仕事あったし、一応?無事って聞いたからしょうがなく納得してあれこれしてたらもう結構経っちゃってて……その、寂しかったかしら?」
「いや、くるしい」
満面の笑みを浮かべて関西のおばちゃんみたいなテンションでマシンガントークをぶちかました彼女こそ、僕達の協力者である神城 真澄だ。
マシンガントークと共に僕の身体が彼女の手によって羽毛のように抱き替えられ、ぶんぶんと振り回される事によって三半規管が悲鳴をあげている。横はまだいいけど、縦に振らないでほしい。いてぇ、いてぇ、肩いわすわ。
「おい」
僕を持ち上げていた真澄の手が止まる、というより止めさせられた。明らかに怒気を纏った由奈の手が真澄の腕を捻じ切らんとする勢いで握られている。目線で人を殺せそうな程の殺気を放っててシンプルに怖い。後ろで困惑しながら蒼褪めてるエリヤに対しても配慮してほしいね。まぁ僕が原因なんだけど
「あら、今日1日は私に貸してくれるんじゃなかったかしら?」
「私は1日とは言ったがそれが今日とは言っていない。さっさと離せ、
「貴方は私とそんなに年変わらないでしょ……あーでもそうね、ちょっとはしゃぎ過ぎたみたい。悪かったわ」
ごめんね?と子供のように僕をあやしながらソファーに座り、その膝の上に僕を置く真澄。身長差もあるが根本的に身体も小さいので平均男性以上の体格があればすっぽりと収まってしまう身体が憎い。
テーブルを挟んで対面側の椅子に由奈とエリヤが腰かけて、取り敢えず会話の場は出来た。
「初顔合わせの人も居るから、まずは自己紹介からね。ヤタガラス所属の巫女、神城 真澄よ。東京ヤタガラスの指示で各地方のヤタガラスの救援に動いてるわ、四国での一件もその関係ね。今回地方での一件が片付いたのと東京がまた慌ただしくなっている事から、こっちに来たの。宜しくね」
「ご丁寧にどうも、漂流者でここで世話になっているエリヤだ。戦闘では主に銃を使うがその辺りの戦闘方式の擦り合わせは後でいいだろう。それより気になる事がある」
「何かしら?」
「それと、あれだ。あんたは二人にとっての何なんだ」
そう問い掛けながらエリヤが指差した先にはそれぞれ真澄の膝の上にて猫のように頭を撫でられ続けている僕となんか凄い項垂れながらちらちらと僕と真澄を見て唸り声をあげている由奈が居た。
「関係についてはまぁうーん……ちょっと長くなってしまうからまた時間のある時にでも話すわ。そこの二人の様子の説明なら簡単よ。貴方達の使ってる符、私が作ったものなの*1。此方で作成した符を渡す代金の一つとしてフェイと二人で過ごす時間を要求して、彼はそれを呑んだ訳。ねー、フェイー?」
「由奈は死ぬほど反対したけどね。必要だったから何とか説得したけど」
「あれが納得してないのは俺でも分かるぞ」
顔を伏せたまま、ライオンの唸り声のような物からしがれた亡者の声に変わりつつある由奈。何となく呪詛なんかも込められてそうな程に声に怨念が込められてるけど、その人巫女さんだから意味ないよ?
「というよりいい加減慣れるべきよね。こっちは貴重な符を貴方のような元ファントムソサリティの鬼喰らいにも使わせてあげてる以上はもうちょっと感謝の気持ちを示してもいいんじゃないかしら。ああ、フェイは良いのよ、大丈夫」
「貴様」
「ああ、鬼みたいな酷い顔。こんな女に私の子を預けておくなんて出来ないわ」
「あ゛?」
「子じゃないけどね」
元ファントムソサリティとヤタガラス、鬼喰らいと巫女etc。由奈と真澄、この二人は色々と対立するしかない因縁を抱えておりこうして出会えば売り言葉に買い言葉。僕が居ない場で互いに戦ってはいけない理由がないならおっぱじめる事もある位の犬猿の仲だ。それでもこうして色々な面で援助や手助けをしてくれているのは自分で言うのも何だが僕という存在があるからでもあり、その対価として僕との時間だったり身柄を要求してくる事が大半なので由奈もこうして番犬のように警戒しているらしい。
「……自己紹介もすんだし、話を進めないか?」
色々と耐えかねてそうなエリヤが恐る恐る話を進める様に促した。
「そうだね、進めよっか。まず先日のレルム内で再び発生した高レベル悪魔の突然発生。それによって4つのレルムは破壊され、多くのデビルバスターやサマナーのレベルが上がった。死亡・行方不明者もいるけどね。で、その裏で色々と暗躍していた人達、その中で由奈が接敵した二人のうち一人がエリヤの妹だっていうアンナと同名だった感じかな」
「私のアナライズの結果でジャミングもあった為に確実に合っているとは言えませんが……ええ、確かにアンナという名前は見えました。雰囲気も何処となくエリヤに似ていた」
「……俺も恐らく由奈の会ったそれがアンナで間違いはないと思う。あの子の隣に居た男がウリックがなら、ほぼ確実だろう。」
由奈が相対したアンナとウリック・ヤードと表記された男女二人組。アンナは銃を装備しながら超能力であるPK、但し出力がイカれていたらしい。ウリックの方は各地で目撃されるエデンメンバーが用いる戦い方に酷似した剣術を用いていたが此方もどうも凄まじい練度だったとの事。二人ともレベルが90と85と、間違いなく強さも保証されている。
現状出揃っている情報はこれだけで後はジャミングに弾かれて、何も入手できていない。名前だけで探すのも色々と無謀だった。
「私一人では恐らくあの二人を倒す事は無理でしょう。少なくともフェイとエリヤが共に居て、それで可能性があるといった具合でした」
「其処までの強さで色々まだ切り札があるんだろうし、厄介だね。情報拡散はしたかい?」
「貴方が言うように信用できる筋にだけ伝えました。掲示板はどうもあのレルムでの一件以降、さらに妙になっていますから」
天魔衆もだが、僕達が相手しなきゃいけない敵がもう全然尻尾を出さない。アンナやウリックも推定ガイア再生機構所属だし、ネットからではてんで情報を漁れなかった。最低限情報共有だけして
「天魔衆のラーヴァナはフェイを狙っていたらしいけど、そのアンナとウリックと呼ばれる二人組の目的の推測はしておくべきね。洗脳された様子もなく妹とその幼馴染だったのなら、ある程度思考も分かる筈だけど」
逃げ出そうとする僕を片腕で抱え込んで固定しながら真澄はその二人の唯一の手掛かりであるエリヤに問いかけた。
「……俺がクレリックに、いやメシアの<肉袋>になった以降は会話する機会はなかった。だから、今のあいつらについては分からないが少なくともウリックも、アンナもとても良い子達だった。決して進んで、悪しき行為に加担するような子達じゃない」
「なら何らかの形で強制されてという形かしらね。エデンに従う事=生存なら、もう従うしかないでしょうし」
「……わからない。俺には、もう」
真澄から目を逸らして、エリヤは拳を握り締めていた。妹を、大切な存在は見つかった。自分が受けていたような実験を身体に施されていたならエデンに従っているのも頷ける。だが、それでも割り切れない心が彼女にはあるのだろう。
「彼女達はレルムにおける戦いを観測していた。僕達の姿も間違いなく捉えている。君の姿もね。もしかしたら、彼女達は君を狙ってくる可能性もある。その時、君は戦えるかい?」
「戦えると気丈な返事が返せたら良かったんだが……努力はするとしか、俺は言えない。だが、それでも俺は確かめたいんだ。何故アンナが戦っているのかを、その目的を」
エリヤと契約を交わした際の懇願するような、縋る様な瞳。唯一の妹を助けたいという何処までも、切なる願いが言葉に込められていた。
「わかってるよ。それが僕と君が交わした契約だからね、最大限協力はするさ」
「すまない……いや、ありがとう」
実際エリヤが居なければ危うい所はこれまでに結構あった。もう彼女は現在のチームに欠かせない戦力であり、大事な仲間なのは疑いようもない。最初は半信半疑だった由奈も天魔衆との戦い以降は完全に身内として扱っている。彼女の目的を優先する事は僕達の為にもなるのだ。
「じゃ、方針について纏めようか。まず暫くの間は天魔衆とその二人に関しては保留。情報収集は続けるけど僕達が能動的に起こせるアクションはあまりに少ない。情報が集まってからの捜索或いはあちらからアクションを起こしてくるのを待つ姿勢になる。現状は基本的に後者になりそうな為、彼らに対する対策を各自相談の上で用意しておくように。ラーヴァナに関しては僕が真澄と共同で対策案を練っていくつもりだから、そのつもりで宜しく」
「私をメンバーに加えた上で暫く平常運行という事で了解したわ。奇襲・不意打ちにはより気を付けていかなきゃね」
「異論はありません。それでいきましょう」
「俺も問題ない」
話も纏まり、その後は自由解散。真澄は指定の部屋に荷物なりを置きに、エリヤは装備の整備に部屋に戻っていった。でもって僕と由奈はというと次の来客の対応の為に別の応接室で諸々準備を進めていた
「他の二人に同席はさせなくて良いのですか?」
「真澄は来たばかりなのと色々バタバタあって疲れてるだろうし、エリヤはちょっと考える時間が必要だ。それに、今回の依頼はちょっと僕達にも色々関係してきそうだからさ」
「……天魔衆或いはファントムソサリティですか?」
「部分的には両方、かな。ま、詳しくは……丁度来た依頼人に聞いてみるしかない」
インターホンの音が2回、1回、最後に3回と鳴り響く。依頼人と交わした一種の合図のようなものであり、応接間に備え付けられたテレビドアホンのモニター、其処に女性の姿が映し出される。
見た目は大学生のように見えるが顔が幼く、髪はポニーテールを水色のリボンで纏めている。彼女こそが今回の依頼人。
「依頼人の名前は藤堂 晴香。その依頼内容は彼女がかつて所属していた組織が開発した生物兵器の開発阻止。そして、その発展形である<悪魔化ウィルス>と呼称されるウィルスの実験を阻止する事」
一難去ってまた一難。
悪鬼達の怨嗟の声、外道共の高笑いが響く、あまりに凄惨な陰謀が脈動を始めていた。
・後書き
今回はほびーさんの方に此方からご相談をさせて頂き、今回の依頼投票で採用されなかった②【依頼主 藤堂 晴香】の事件を此方のロストキリギリスで描かせて頂く運びとなりました。改めて相談に乗って頂いてほびーさん、有難うございました!
・キャラ紹介
<久遠 フェイ>
レルムレイドバトルで力(経験値)・富(宝石)・名声(コネクション)を得た男(の娘)。特に海賊王にはならない。今回は前から予定していた真澄PT参入を達成できたので、今後の戦いで多少余裕ができたらいいなと思っている(儚い希望)
<久遠 由奈>
凡そ嫉妬で狂ってる人。
エリヤはまぁいいかと思っているが真澄とは昔殺し合った中でもあって、なんか挑発もしてくるので気に食わない。認識が泥棒猫。
<久遠 エリヤ>
色々お悩み中。
アンナだけなら本物かどうかわからなかったが、幼馴染の男の子であるウリックもいたのでほぼ本人と確定。契約を結ぶ時は覚悟を決めていたものの、いざ見つかってどうするべきかとヘタレ気味。
<神城 真澄>
ネルガルゾンビを吹っ飛ばして、東京にカッとんできた人。
由奈を嫌う理由が大体フェイと一緒に居るからで構成されている。
せめて名字だけでも神城にさせようと計画中。ヤタガラスの巫女の姿か、これが?
諸々の過去については追々。
<藤堂 晴香>
今回の依頼人。元ネタは寄生ジョーカー。
ちなみに作者は寄生ジョーカーやったことないので次の話書きながら動画で寄生ジョーカーのストーリー確認してきます(クォンタム見てたら書くの遅れたの忘れたとは言わせないぞ私!)
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ヨコハマ裏中華街
「さて、と」
あれから依頼人である藤堂晴香を招き入れ、応接間に移動。先程の合図や魔術道具に引っ掛からなかった点を含めて本人である事は間違いない。対面のソファーに由奈に茶菓子とお茶を持って来させた上で彼女を見る。
\カカカッ/
ガンスリンガー | 藤堂 晴香 | Lv56 |
藤堂晴香、彼女に関しては現在彼女を実質保護している警視庁、厳密に言えば特別悪魔対策本部<悪対>より経歴に関する報告書を事前に受け取っている。これは最近どうにも偽の依頼だったり、身元もよく分からない依頼主から依頼が出たりと、依頼を受諾する側も依頼人に疑いの目を持たなければいけない事案が増えている為にその辺の手間を省く処理だ。この情報を渡してきた人も警視庁における知り合いなので信用は概ねできるし、此方の裏取りでも報告書の内容と合致した。
で、報告書によれば彼女は異能者ではなく一般家庭の出身であり、4~5歳の時に両親が他界。妹が一人居たが、別々の養親によって引き取られてそれ以降は所在が不明。そして引き取られた先にて当時ファントムソサリティと提携していたとある<組織>によって教育を受け、その組織の構成員として強制的に任務を熟し続ける日常を数年前まで続けていたらしい。組織内での評価は至って平凡や平均以下であり、銃器やナイフ戦闘は熟せて最低限覚醒はしていたもののそれ以外に持ち得る物は何もなし。サマナー、潜入員、バスター、魔界魔法等の何らかの一芸を身につけようとはしたもののその努力も報われずに結局は組織内でも存在を持て余して、雑多な任務に投入しつつも後は首輪をつけて放置といった具合だった。もっとも、彼女を引き取った養親だけは妙に彼女に目を付けていたようだが。
そんな彼女にある任務が組織から下された。任務の内容は存在が異様に不明瞭な<キリギリス>の調査。掲示板の存在までは組織は特定したものの掲示板に入る為の様々な意味不明な、サブカルチャー的なオタク質問を持て余して、同レベルも低く与えられる任務もない藤堂晴香にその掲示板の調査を命じた。
組織の雑多な任務によって割と雑に死に掛ける事が多い彼女にとっては匿名掲示板の調査という事もあって取り敢えずこの任務受けてる間は死なないと、ある程度のモチベを保ったまま任務に臨めたらしい。1週間程、オタクとは何か、彼らが用いる知識の正体とは、アニメ・漫画・ゲームとはetcとオタクについて真剣に考えて、その甲斐もあって掲示板に正攻法で入る事に成功した。
まぁ単純に彼女もオタクになっただけなんだけどね。特にFPSとかサバゲーが好きらしい。報告書にその情報いるか?
掲示板に入り浸ってオタクになった結果として知見が広がったのか、あれ?これ組織抜けてもここの人達を最悪頼れば何とかなるんじゃね?と思い至ったらしく<組織>にはキリギリスの内情及びメンバーを明らかにすると豪語しながらいざという時の伝手をキリギリス内に作ったり、地道にレベル上げをしたりしていたとの事。
そんなこんなで棚から牡丹餅的な感じで起こったのが例の空港における九頭竜の発生、それに伴うファントムソサリティの滅亡。そこから勢いよく、彼女は<組織>から脱走を果たしたらしい。追手はない事もなかったが伝手の中に警察関係者が居たので転がり込む様に其処に保護され、<組織>を告発。
ファントムソサリティという後ろ盾を失い、告発もされた<組織>はその名前の全貌が明らかになる前に速やかにヤタガラスや悪対、キリギリス等の手によって討滅された。
「それでその後は警視庁に保護されつつ、その協力者に。今も大学生活を送っている、そういう解釈であってるかな」
「概ねは大丈夫だと、思います」
目の前にいる彼女は妙に挙動不審で僕の方をチラチラ見ている。
「何か?」
「あのぉ……男性だとお聞きしていたものですから、その貴女のような小さい子が出てくるとは思わなくて……本当にYO☆さんですか?知り合いからの紹介で来たんですが」
「僕の容姿に関しては結構有名だと思うけど、この服に関しては……その、なに……男物全部処分されちゃったから」
「は?」
「横の人に全部さ、捨てられちゃったの僕。もう服、女物しかないんだよね」
素知らぬ顔で椅子に座りながら、もしゃもしゃと客人用のお茶請けに手を出す
「しょうがないじゃありませんか。もうほぼ装備は着用したままで外に出るのが必須な状況なんですから、それ以外の服は必要ないでしょう」
「それでもスーツとかは残しておくべきじゃない?フォーマルな格好あれしかないよ?」
「ドレスで行けばいいんじゃないですか?あれ防具の上に着れますよ?」
この
「ああその、服装はどうでも良くてその長い金髪で女の子みたいな顔した上に140ちょっと位しか身長がないなこの子、と思って気になっただけなので別にYO☆さん本人なら問題ないですよ」
こ、この
「まぁそれで本人確認できたなら結構。そんな事より依頼についてです。ついでに敬語も必要ないですよ、慣れてなさそうですし」
「あ、っはい……じゃなくて、そういう事なら。うん、普通に話すよ」
「雑に流された……僕はどうでもいい存在なんだ……」
渾身の泣き落としもスルーされて、依頼の話に。お互いの存在についても把握が出来た。これ以上、探り合いのような真似は必要ないだろう。
「じゃ、説明宜しくね。僕も事前にちょっとだけ情報貰ったから知ってる部分はあるけど」
こくりと、藤堂さんは頷いてその詳細を話す。
「私が貴方達に依頼するのは神奈川県に存在する非合法レルム……関係者の間では<ヨコハマ裏中華街>と呼ばれている場所で行われている生物兵器の開発、そして彼らが新しく開発したとされる<悪魔化ウィルス>の実験を阻止する事」
「生物兵器は兎も角……悪魔化ウィルス、ですか。具体的にどのような物かお聞きはしたいですが……」
「順を追って整理しよう。まずはその非合法レルムとそれらの兵器・ウィルスを作っている組織に関してから」
僕は藤堂さんが持ってきた資料、<悪対>による事前調査記録を見る。まずは非合法レルムに関しては<ヨコハマ裏中華街>という一種の通り名はあるが横浜には存在せず、政府も迂闊に手を出せない“存在しない筈の場所”とされている。
その場所が生まれたのは戦後であり、その混乱に乗じて進出してきた中華系マフィアを中心に荒れ果てた廃墟群を占拠。日本政府はこれの排除に乗り出そうとするも戦後間もない政府に力はそこまでなく、GHQの監視の目もあった為に最低限の包囲を固めた上で静観という形しか取ることが出来なかった。
日本政府が手を出せるような状況になるまでに複数の中華系マフィアがさらに進出し、三業会という後ろ盾もいつの間にかに確保。そこに漬け込むような形で中国人の不法滞在者が鼠のようにその場所に群がった結果として不法滞在者の受け皿という面でも或いは複数の中華系マフィアによる盤石な支配体制という面でも一切の手出しが出せない中華系のみで構成された歓楽街が完成してまった。横浜と隣接したその場所を人々は<ヨコハマ裏中華街>と皮肉を込めて呼んでいる。
が、ここ1年におけるGP上昇で中華系マフィアの脅威度が相対的に下がり、彼らが提携していたファントムソサリティが潰れた事によってこの街の支配は薄氷の上の物になった。ヨコハマの支配者達にとっては唯一の脅威で魔人の手によってほぼ壊滅状態になっていたヤタガラスもいつの間にか息を吹き返し、後ろ盾の三業会はうんともすんとも言わない。彼らはそんな現状を打破する為に<ヨコハマ裏中華街>をレルムにして、街にやってきた戦力を取り込もうとこの終末に近い世界で何とか生き残る為に足掻いていたらしい。
ここまでが今回のヨコハマレルム成立までの約数カ月前の情勢。そこから非合法レルムになった事により人の出入りが活発となり、悪対の潜入捜査官も入り込みやすくはなっていた。
そして、最近の調査で発覚した幾つかのヨコハマレルム内における情勢変化。藤堂さんは再び資料を持ち出して僕らに提示した。
「その際の調査を行ったのはまず私を含む3人の警察協力者、<悪対>に所属する杉本さん、劉鳳さんに斎藤さんになるかな。」
調査自体が行われたのは今から数日前であり、最新の調査記録なのは疑いようがない。前に行われた調査は1カ月程前になり、1か月間におけるレルム内の変化が書かれている。
「1つ目はヨコハマレルム内に立ち入った悪魔関係者の一部が失踪している点。この悪魔関係者も所謂ダークサマナーとかが多いんだけど、事情を知らないドリフターなんかもヨコハマレルムに紛れ込んでちゃったみたいで後者の失踪件数が多い」
「ヨコハマレルム等の非合法レルムでも特にヤバい場所では人攫い自体は元から起こってるかと思いますが件数が明らかに増えたりとかですか?」
「うん。こう、レルム全体でそういう噂が蔓延して住民も明らかに怖がってる位、人攫いがされてる」
それと、と藤堂さんが付け足して分厚い資料の頁をめくる。
「二つ目がレルム内に人喰いの悪魔が放たれてるって噂。1つ目の人攫いをしている連中も住民の言葉や状況証拠からそいつらな可能性が高い」
「そいつらの種族・特徴は?」
「あまり深くは踏み込めなかったけど、悪魔達はそれぞれ2系統の行動を取ってる。まず逃げ惑う悪魔。これは基本的に人を見ると逃げる傾向があるらしいんだけど、理性を失ったと思われる個体は狂暴になって人を喰らおうとしている。次に能動的に人攫いをしていると思われる悪魔で、前者の逃げ惑う悪魔を襲って喰らってもいるみたい。種族は夜叉鬼、鬼神族、飛天族……詳しいデータはそっちの資料に乗ってるけど通常の悪魔とは少し違った。様子もまるで人間が悪魔になったみたいで……」
「人間から悪魔に変する、だから悪魔化ウィルスか……名前まで特定してるんなら推測ではない確かな情報も掴んでる訳だね。とはいえ、今は話しを進めるべきか」
僕も由奈も適性はあったにせよ他者による実験・儀式による影響で悪魔の力を手に入れている。僕に関して言えば母の死と引き換えに生み出されたピクシーの力を持つ悪魔の子であるし、由奈に関して言えば彼女が持つ人間性・肉体機能を代償に羅刹の血を順応させてラクシャーサの力を持ち合わせてしまった限りなく喰奴に似た存在だ。そういう経緯がある為、お互いに色々と思う所がある。
「うん。それで……3つ目の噂、これは複数の中華系マフィアから確認が取れてる事なんだけど彼らが<生物兵器>を飼っているという噂が立ってるの」
「あれを生み出しているのはそれこそ君が居た<組織>だけだった筈だけど……生き残りが居た、そういう事だね」
「ええ」
彼女がかつて居て、今は滅び去った<組織>。名前は複数存在したようだが正式名称はない、恐らく秘匿性を高める為だと思われる。裏社会においても居場所がなくなった或いは危険すぎる研究を行う者達を集めて、悪魔の生態の研究および実験を行う為にファントムソサリティの出資によって作られた<組織>、その研究産物の一つに<生物兵器>が存在していた。僕と由奈は<組織>を対象とした討伐の依頼を受諾・遂行した事があり、<生物兵器>がどういうものなのか大まかに知っていた。
<生物兵器>とはその名の通り、人間や動物を対象として構築された兵器。兵器としてもかなり古い歴史を持つそれに最新の技術で開発を進めていくというのがコンセプトだ。小さな寄生体を人体に埋め込んで、胎児のように大きくなり、最終的には人体を食い破って誕生する<エルフ>。陸上に適応した大型ピラニアの<ファニグス>や巨大化した毒ウニである<スウィンボール>。とにかく生物を巨大化させて、狂暴性を付与する事で約数か月前まではファントムソサリティによる生物兵器運用部隊も存在した程度には有用性はあると判断されていた。
しかし、今の情勢で考えると話は変わってきてしまう。<生物兵器>達のレベルは精々一桁~30、大型の物で40行くかいかないか程度で現在の足切りラインを考えるとこれを運用していく厳しく、開発元の<組織>の壊滅によって新規での生産も出来ていない。その結果としてここ数カ月で<生物兵器>は急速に数を減らし、もうほぼ確認例も0となっていた。そんな状況の中で新たに<生物兵器>の存在が確認された訳である。
「<生物兵器>の目撃例もあるの?」
「エルフとかの他にリッパー、オークスターにモルゲンなんかも目撃されてるみたい。写真も確保したし、居るのはほぼ確定と言ってもいいかも」
「はぁ、何というかとんでもない状況になってますねヨコハマ。中華系マフィアが群雄割拠する街に悪魔化したと思われる人間に生物兵器。とんだ魔境ですよ」
「巨大怪獣が度々現れて厄ネタも多い東京よりはマシなんだろうけどね……まぁでも<生物兵器>に新たな変化が現れてないなら、僕達にとっても其処まで脅威じゃない。問題はやはり<悪魔化ウィルス>とやらになりそうだね。今掴んでる限りの情報の詳細を御願い」
「……こっちはあんまり情報掴めなかったから、これが正しいという確証はないって事は言っておくわ。」
彼女が掴んでいる<悪魔化ウィルス>の情報は潜入時における1つの中華系マフィアの支部から発見されたものであり、それによれば<悪魔化ウィルス>の開発自体は数か月前の凡そファントムソサリティが壊滅してから数週間が経った時期から始まっていたらしい。
実験・開発目的は記載がなく、淡々と記録が書かれた実験報告書。実験体の多くは行方不明となっているドリフターが多く、それらの報告書には幾つかの方法で人間を悪魔化させる方法が記載してあった。
まず人体適合性の高い悪魔部品を人間に移植するという方法。移植後は人間の肉体・精神を悪魔の力で侵食し、人間性を喪失させた上で悪魔化を目指す。これは由奈、正確に言えば天魔衆が用いるラクシャーサの血を用いた羅刹化に酷似しており、特に悪魔部品も鬼由来の物が多い為にそれを模した物である可能性が非常に高い。ただ、この方法による悪魔化は合体と同様にリスクが大きい手段の為か成功事例が多くない。
二つ目に人間と交配記録のある悪魔による交配という物。所謂悪魔の子を宿す事で人間の悪魔化を行うものだが、これは僕がピクシーの力を宿すに至った経緯に近い。とはいえこの実験方法による記録はもっと別のシステム開発のデータに使われている可能性が高い。
三つ目に催眠誘導、自害破壊による意図的な悪魔への魂の売買契約。精神的に負荷を掛けて判断能力を鈍らせた状態で<組織>内におけるダークサマナーの契約悪魔を用いて実験体の魂を差し出させ、その悪魔の眷属等にした上で悪魔化させるという方法だ。この方法は上記の2つに比べると時間は掛かるもののある移植や交配という強引な手段ではなく、意味正規の手段の悪魔化である為に実験体の精神力に多少左右される所はあるものの再現性はあったらしい。やはり時間が掛かるのが難点となっている。
そして、最後に記載があった<悪魔化ウィルス>、厳密には太陽光線の波長を弄った事による悪魔化促進パルスによる実験。詳しい情報は書かれておらずを人間に浴びさせる事で人間の肉体変化、それによる悪魔化を発生させるという実験記録がずらずらと並んでいる。記録が一番新しい物である為にこれが最新の方法で尚且つ成功率も抜群に高い。
「……最後だけ何というか異質ですね。上記の3つはまだ理解は出来ますが、太陽の光を弄る事で悪魔化を引き起こす……?聞いたことがない」
「うん、私も<悪対>の人達も凄い不審に思ったけどこれが一番高いのは間違いないみたい。これの詳細を一番知りたかったんだけど、その実験報告書にはそれ以上の記載がなかった」
「波長を弄るのだってどんな風に太陽光を弄るんだよって所だよね。太陽光の紫外線はオゾン層に吸収されて、僕達の生存に問題のない光が今も降り注いでいる訳だけど……うーん、僕も専門じゃないからこれ以上はわかんないや。この情報はもう上の方に投げてるんだよね?」
「<悪対>の研究所や他の協力者の方で改めて解析は行うって話は聞いた。私からは話せるのはこれ位になるかな」
「おっけー。ありがとう」
情報は一通り揃ったが、色々と疑問・懸念点は多い。生物兵器が関連している以上は<組織>の生き残りが中華系マフィアによって飼われているのは間違いない。中華系マフィアに実験を行うノウハウがある訳もなく、実験や開発もその生き残りが行っているのも同様に間違いないだろう、其処まではいい。問題はその奥に潜む黒幕、本命は三業会だがその目的。
中華系マフィアにわざわざ匿うのにリスクのある<組織>の生き残りを回収させて、レルムとなった事で外の住民の往来も増えた状況の中で生物兵器をマフィアに配置して悪魔化した人間を徘徊させている。恐らく<悪対>によって情報が抜き出される所も既定路線で黒幕は目的を達成しているかその直前まで来ているから急いでいるのか或いはやむを得ない理由でリスキーな方法しか取るしかなかったか、色々考えられるが兎にも角にも<悪魔化ウィルス>に<生物兵器>、これらを野放しにしておく訳にはいかない。
「依頼を受けるかどうかの返答はまずYESだ。こんなの放り出しておく訳にはいかないからね。最善は尽くす。僕達以外でヨコハマレルムに行くであろう面子は決まってる?」
「ありがとう……で、ヨコハマレルムに行く面子はまず私を含む三人の協力者と<悪対>、<シャドウワーカー>も来るって話は聞いてる」
「それに僕達が追加される訳だけど……それだけじゃ多分手が足りない。報酬はそっち持ちになりそうだけどこっちで声掛けしてみよっか」
敵の規模を考えると戦力は多い程いい。ヨコハマレルム内に存在する住民も敵になる可能性が高く、多数の生物兵器と悪魔を相手どらないといけない事は容易に想像がつく。<悪対>が参加している以上はヤタガラスも恐らく動いてくれるから、真澄にちょっとヤタガラスに声掛けを行わせて、エリヤと由奈には前のレルムで共同戦線を張った剣士達や他のデビルバスターに声掛けを御願いしよう。僕は戦いに必要になるであろう知り合いに協力を依頼を行うのが良いかな。
「声掛け次第だけどヨコハマレルムに行く日程は決まってる?」
「情報が割れてるのは相手も分かってるだろうから、今から1週間後位までには…?」
「わかった。1週間で面子を集めて、情報も伝えておく。恐らくレルムでの戦い並みの大規模な戦いになると思うから覚悟はしておいてほしい。これ連絡先ね」
「えっ、りょ、了解。それまでの間にこっちも引き続き情報収集を進めておく」
「面子が決まったら全員集合して情報共有をする場所も決めておいた方が良いかと。そのままヨコハマレルムに向かえばいいですしね」
「場所は<悪対>が指定してくれるだろうし、それも藤堂さんに任せていいかな?」
「うぇっ!?い、いちおうそれも話しておくけど……」
「じゃあ今日は質問とかなければ解散って事で。お互い忙しくなるだろうしね。ちょっと外出る方法がうち特殊だから外まで送るよ」
「質問……特にないから、いったん帰るわ、うん」
とんとん拍子に話が進んで困惑する藤堂さんを外まで送って、待っていた<悪対>の人達に預けてから帰らせて僕達もまた真澄やエリヤに協力して貰いながら準備を進める。期限は1週間。それまでの間にどれ程の戦力を確保できるかに鍵は掛かっているだろう。
後、声を掛けたい面子として……<漫画好き>さんが居れば強いし、顔も広いし、知識面でも頼りになりそうだがどうもそれどころではないと風の噂で聞いたのでやめておいた方が賢明だろうか。大体いっつも何かしらの事件に巻き込まれてる人らしいし、事件が無事に解決したら何か適当に使えそうな情報投げとけばいいな、うん。
「よし。んじゃま、頑張っていこっかー」
それから約1週間後、<悪対>の指定した集合場所にて藤堂さんも含めて僕達は集まっていた。此方が想定していたメンバーは概ね誘う事に成功し、他に真澄が要請した<ヤタガラス>に、<悪対>の面々と藤堂さん達。さらに<シャドウワーカー>の三人も居るそうそうたる顔ぶれだ。過剰戦力である、と言われれば否めない部分はあるものの実質的に街一つを相手取り、さらに危険なウィルスや兵器もある以上はこれでも油断は一切できない。
時間通りに全員集まった所で、今回の本来の依頼人とも言えるサングラスを掛けた男が口を開く。
\カカカッ/
コマンダー | 白河 大輔 | Lv68 |
「警視庁・特別悪魔対策本部所属の白河 大輔だ。まず今回集まってくれた事に感謝を告げたい。とにかく戦力が足りなかったからな。ここまで集まれば不測の事態も考慮した上で万全といえるだろう」
白河 大輔。<悪対>の中でもファントムソサリティ及びそれに関わる組織を主に追っている捜査官で、藤堂さんを保護したのも彼であると聞いている。数か月前に<組織>が壊滅してからも、一部の人員が逮捕或いは死亡が確認できずに行方不明になっていた事からその生き残りの調査を続けて、今に至っているという訳だ。
「では本題に移ろう。作戦や情報に関しては各々に伝えた通りだ。概ねその通り動いてほしい。此方からは簡易的な確認として今回の作戦の最終目標とそれぞれの隊の役割だけ伝えさせて貰う」
「まず最終目標だがヨコハマレルムの地下に存在している<組織>の研究所の制圧とその研究を主導しているとされる藤堂 奈津子と呼ばれる女の確保。以上の2つだ。前者に関しては此方で大まかな位置と入口は特定している為、其処からそれぞれ別ルートで第一陣と第二陣による突入を行う予定だ。後者に関しては悪魔化ウィルス及び生物兵器の研究は凡そこの女によって進められている物だから、というのが理由となっている。他の研究者もなるべく確保して貰いたいが優先すべきはやはりこの女だな」
藤堂という名字の通り、彼女は藤堂さんを過去に引き取った人物であり彼女曰く研究の為ならあらゆる物を捧げるマッドサイエンティスト。既存の生物兵器は凡そ彼女一人の手で研究されたと言っても過言ではなく、<組織>があまりに呆気なく壊滅したのも彼女が色々と細工をした上で当時の一部の研究メンバーと共に<組織>から離脱したというのが主因となっていると藤堂さんは話していた。
「そして、作戦遂行における隊分けに関してだな。これについては話し合いの上で此方の方で指定させて貰った。警察の隊分けにしちゃ随分と大雑把だが、複数の組織に個人のデビルバスターが入り混じっている関係で分かり易い方が良いと判断した。俺は全体の指揮を担当する関係でこれ以降の説明は各隊のリーダーに一任する」
今回の依頼における班分けはそれぞれ第一陣、第二陣、第三陣と分かれている。第一陣は先遣部隊で初手で研究所に突入して暴れ散らかすのが目的で、恐らく一番それぞれ単独行動をする可能性が高い。そういう訳で此処に割り当てられたのは僕達と今回誘った<キリギリス>のメンバー達となる。アクが強いからね
\カカカッ/
ウィッチ(♂) | 久遠 フェイ | Lv83 |
「第一陣のリーダーの久遠 フェイだよ。メンバーに関しては僕に由奈、エリヤに真澄。藤堂 晴香、月鰐ギンコ、武田赤音、アナンタ、ベネット、花山薫、ジョン・スリーの11人でやっていく感じかな。まぁ指揮は最低限行うけどぶっちゃけ敵の数が多いから幾らか分散して戦う事になるだろうね。何かあった時だけ他人頼る感じの個人プレーで、後は何かあったら誰かに情報伝達だけ徹底して貰えればいいよ。僕からはいじょー」
次に第二陣。これは第一陣が突入した後に別ルートで研究者に侵入。第一陣を囮に研究所内に囚われているドリフター等を救出や研究者の確保を目的とする部隊で主に<悪対>の面子と一部の<キリギリス>メンバーが割り当てられている。
\カカカッ/
シャドウ使い | 劉鳳 | Lv81 |
「第二陣のリーダーの劉鳳だ。此方は主に研究所内に囚われた人々の救出及び研究者・中華系マフィア主要人物の確保を目的としている。メンバーは<悪対>から俺、杉本佐一、斎藤一。<シャドウワーカー>から桐条美鶴・真田明彦・メティス。<キリギリス>より魔界医師としてルシエル、移動担当として東堂葵。以上、8人で作戦を遂行する。このメンバーなら俺から言う事も特にない。各自最適な行動を期待する」
最後に第三陣。所謂作戦本部及び何かヤバいのが出てきた時に対応する部隊であり、非合法レルムの一角に陣を置く場所は確保されている。
\カカカッ/
サマナー | 新城直衛 | Lv78 |
「<ヤタガラス>所属の新城直衛だ。<悪対>所属の白河 大輔殿、<キリギリス>の城鐘 恵殿と共に全体の指揮を取らせて頂く。作戦本部では<悪対>が中心となって各隊の状況を確認し、非常時には川村ヒデオ殿とウィル子君が各隊に向けて情報伝達と共有を行う手筈となっている。また第参陣に対する襲撃及び第一陣・第二陣の救援に関しては葦名弦一郎を中心とした<ヤタガラス>の部隊が対応を行う。以上だ」
各リーダーからの伝達が終わり、そのまま作戦開始時間まで自由解散となった。ある者は作戦の精度を上げる為にメンバー達に話し掛けては相談を行い、ある者は作戦開始前までリラックスをしていたり、ある者は……なんか斬り合いを始めてたりするが、寸止めで止めてるのでいいか。もう僕は助けないからな、もう助けないぞ。
そんなこんなできょろきょろと周りを見渡せば藤堂さんの姿が目に入った。さっきまでは青い長髪の女性と同様に青い短髪の男性に話し掛けていたようだが、今はどうにも落ち着かない様子で近くにあるベンチに座っている。
「わっ!」
「わぁ!?……ってなんだ、フェイちゃ……くん……フェイさんじゃない」
「そんな言い直す必要ある?」
浮かない顔の彼女に対して真正面から近づいて驚かせた。彼女の此方に対する敬称に一抹の不満を覚えながらも、彼女の横に座る
「で、どうしたの。そんな浮かない顔して。やっぱ今回の作戦が心配?」
「まぁそんな感じ、かな。今回の作戦がここまで大規模になるとも思ってなかったし、何より<組織>のせいでこんな事になってるから……」
「責任感じちゃってるって事ね」
4~5歳という幼少期に彼女は藤堂 奈津子に養子として引き取られた。引き取った目的も<組織>の構成員として育て上げる為で、訓練の過程で藤堂さんの幼少期以前の家族との記憶はほぼ忘れ去られてしまっている。つまり、彼女は<組織>以外の過去を知らない。
「藤堂 奈津子……彼女に対して思う所はやっぱある?」
「親としてあの人を見た事は一度もないわ。けど妙に私の事を気に掛けてて<組織>における立場も便宜を図っててくれてたみたいだから、気にかけては居てくれてたんだなって……でも、それは私を体よく利用する為の好感度稼ぎみたいな物だったと思う」
「成程ね。一応白河さんの話によれば藤堂 奈津子は覚醒者ではない。だからこそ確保も可能だと判断してる訳だけど、何らかの事情でそうじゃなかった場合は恐らく殺す事になる可能性が高い。君がその引き金を引く事だってあるかもしれない。その覚悟はある?」
家族としての情は持っていないというのは本当だろう。<組織>という犯罪組織に強制的に引き取られ、過去を忘れ去られた挙句に自身の手駒・人形として扱われ続ける日々、それを与えたのが藤堂 奈津子だ。ただ、それでも藤堂さんの中には迷いのような物もあると僕は感じている
「撃てる、とは思う。あの人は殺される理由の方が多いし、私もそれに反論はない。ただ、あの人は私の過去を知っている人だし、なんで私を気に掛けていたのかっていう本心は知りたい。例えそれがどんなものでも」
「親との関係性の清算、か。確かに終わらせないとすっきりしないもんね、気持ちはよく分かる。じゃあ、そうだな」
ベンチから勢いをつけてばっと立ち上がり、藤堂さんに手を差し伸べる。
「第一陣のリーダーとしてメンバーの意見はなるべく汲む事はしてるんだ。白河さんの指示もあるし、なるべく生きたままの確保を僕達でも目指そう。第二陣が確保するならそれはそれでいいし……まぁ既に用済みになって殺されてた、みたいな事もあるかもだから気休めみたいなもんにしかならないかもしれないけどね」
「……ありがとう。私も頑張るわ」
藤堂さんが僕の手を取って立ち上がる。それと同時に作戦開始時刻が迫ってきているのか、バタバタと人々が慌ただしく動き回っていた。
ヨコハマレルムに突入すれば後はノンストップだ。レルムには生物兵器や悪魔、マフィア、それ以外にも色々と戦力を用意している可能性は高い。警察とヤタガラスが元々不可侵を貫いていた場所に強襲を掛ける以上はヨコハマレルムはどうあれここで御終いだ。背水の陣でヨコハマの支配者達は抵抗するだろう。
とはいえ、僕達も勝たなきゃ未来がない。この先やらなきゃいけない事もやりたい事も沢山ある。だから
「人事を尽くして天命を待つ、なんて言わない。用意するべきものは用意した。後は死ぬ気で僕達の勝ちを目指しにいこう」
そうして、戦端は開かれた。
・後書き
またほびーさんの方に許可を頂き、ラクシュミ攻略組やら悪対やらシャドウワーカーのキャラやらをお借りする事になりました。人数で察して頂けると思うんですが規模が大きいので暫くこの話が続くと思いますが読者の皆さん宜しくお願い致します(後キャラが多い都合で各キャラが分散してでの視点が多くなるかと思います。何か見づらいとかあったら感想まで宜しくお願いします)
・キャラ紹介
<久遠 フェイ>
男物全部捨てられた人。依頼を聞いてみたら規模もでかいし、厄ネタハッピーセットって感じの情報しか出てこなかったのでレルムレイドのコネを使ったり、真澄のヤタガラスのコネを使ったり、個人的に親交のある東堂やシロエさんを誘ったりしてドリームチームを作っていた。漫画好きさんも出来れば誘おうとしたが面識ないし、何かそれ所じゃなさそうだしで断念。機会があれば会ってみようかなとは思っている
<久遠 由奈>
男物全部捨てた人。一部は由奈の私物となった。最初は捨てるか迷った物の真澄に話したらその件だけ肯定されたとの事。色々駄目な大人
<藤堂 晴香>
今回の依頼人。大体経歴は寄生ジョーカーと同じだが、寄生ジョーカー本編に入る前にキリギリスの掲示板に潜り込んだ結果、知見が広がって脱走を決意してそのまま成功してしまう。その為、寄生ジョーカー本編も起こらずにファントムソサリティ諸共<組織>は滅んで、今は普通の大学生兼警察の協力者として過ごしていた。が、過去は追いついてきたのである
<キリギリス組>
細かい話なんかはまた登場回にて。取り敢えずレルムレイドにおいて色々縁が出来たから誘った組ととある魔人にに何度も斬りかかって死んでは生き返って回復というおきあがりこぼしを繰り返した結果、切れ気味のフェイから多額の蘇生費を要求されてその肩代わりに依頼への参加を頼まれた組が居る。
<悪対>
実質的な今回の依頼人。白河大輔は寄生ジョーカーの登場人物であり、サングラスとイケメンな事が特徴である。今作では悪対所属となって陣頭での指揮を行う。また、他の悪対面子も環境の変化に応じてレベルアップを果たしている。
<シャドウワーカー>
タルンダ先輩が<悪対>所属だったのでその流れで介入。此方も悪対同様にレベルアップを果たしての参戦となる。
<ヤタガラス>
真澄の要請により派遣されたヤタガラス組。ネームドは基本新城さんと弦ちゃんの二人で此方も同様にレベルアップを果たしての参戦となっている。
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ヨコハマ事変 邂逅
「ふむ、想定より数が多い……悪対とそれに準ずる勢力及び協力者程度ならばと思っていたが、彼らの人脈を見誤ってしまったな」
培養槽が立ち並ぶ、薄暗い研究室。部屋の壁面に設置された無数のモニターのみが光源であり、錆びついたパイプ椅子に座ってそれを眺める男がまるで指揮をするかのように宙を指でなぞる。
「研究所外及び研究所内の
\カカカッ/
魔道師 | 石 亜南 | Lv80 |
男……石 亜南の口から思わず溜息が出た。己の役割は悪魔化ウィルスの研究とその情報を自らの主に届ける事でこんな戦争紛いの事柄ではない。少なくとも研究自体は良い所までは行った。藤堂 奈津子をマフィア共に飼わせて、生物兵器という玩具から此方がどうにも手を拱いていた“覚醒者でない人間を悪魔化させる手段”の研究を行わせ、様々な研究方法を模索・失敗しながらもあの女は太陽の光の波長を弄るという方法で此方が概ね望んでいた悪魔化促進パルス、通称<悪魔化ウィルス>を生み出してくれた。
其処からは個体を確保する為に長年育ててきたこの
「三業会の幹部様にしてはどうにも弱気な発言じゃないか」
「おや」
椅子の錆びつきが耳障りな音を鳴らしながら亜南が振り返る。
\カカカッ/
剣士 | ウリック・ヤード | Lv85 |
\カカカッ/
超能力者 | アンナ | Lv90 |
ウリックにアンナ、共にあのレルムにてレイド参加者の様子を観察していた二人である。そして現在はどういう意図か不明だが、石 亜南に雇われた上でこのヨコハマレルムの用心棒をしていた。
「貴方達が此処に来る事はもうないと思っていたのですが」
「それでもよかったんだがね。ちょいと動かなきゃいかん理由が出来ちまったのさ」
「ふむ?」
かつて、石 亜南は足りない戦力を補う為に裏ルートにて戦力増員の取引を行った過去を持っている。その取引相手こそ、彼ら二人の所属する組織の
もっとも悪魔化ウィルスの情報も幾らか抜き取られいるが、そこはもう互いの暗黙の了解という奴だ。此方も三業会にガイア……いやエデンという組織の構成員、その情報を送っている。ウリックにアンナもそれは暗黙の了解という形で了承はしているだろう、さもなくば自身は生きてはいない。
そんな環境下で護衛としてヨコハマレルムに滞在する事になった二人だが、本人達にやる気があるとは言い難かった。敵が出てくれば容赦はしないだろうが任務だから仕方なくといった様子で、此方の与えたVIPルームにて基本過ごして顔を出す事は滅多になかった。精々ガイアからの命令が来て外出する際に此方に一声掛ける時位だっただろうか。
「今回の襲撃者に何かお目当ての人物でも?」
「概ねそういう感じだ。まぁ俺というかこいつなんだが」
後ろに居る一言も言葉を発さないアンナにウリックが親指で指差す。彼女の様子もあまり変わったようには見えないが、彼女は眼帯の女が映るある一つのモニターを見上げてそれを見るアンナの瞳はいつものそれとは異なっているように亜南には感じられた。何も考えていないような無気力な目から愛や憎悪、怒りや喜び、それらの感情が混ざり合った執着の念が目に宿っている。
「……察するに執着している相手はあの眼帯をつけた女ですか。此方で何かすべきことは?」
「エリヤ……あの眼帯を付けた女の位置はアンナが何となく分かるから必要ない。それにそっちの作戦なら襲撃者が落ちる位置はランダムになるんだろう?それを変えられんのだから、そっちに出来る事もない。俺達は襲撃者の迎撃という任務を果たしながら好きにさせてもらうさ」
「そうですか、では少しだけ此方で手を貸しましょう。それでやり易くはなるでしょうから後はご自由にどうぞ」
「あいよ」
そう言い残して、ウリックとアンナは研究室を後にした。正直あまり当てにしていなかった彼らがやる気となっているのは亜南にとっては僥倖だった。特にあの場において厄介な特にLVの高い連中を相手取ってくれそうなのが良い、懸念点が一つ減った。
「後は我らが筆頭研究者様の動向次第だな」
亜南にとっての最大の懸念点、それは敵ではなく味方である筈の藤堂 奈津子だ。あれは恐怖や畏怖、ましてや忠誠や忠義等の感情で存在を縛れる手合いではない。自らの知性を武威のように高めんが為に知識を得て、知恵を絞り、研究そのものが生きる目的の典型的な
研究者として奴を飼う事になった時に幾つか首輪はした。裏切れば死ぬような呪いも掛けたし、裏切りの兆候を見せた時は彼女の行動を予測して先んじてそれを潰して回った。それでもまだ彼女を斬り捨てられないのは奴が
とはいえ、まだ完全な詰みには達していない。己が迎撃に成功するにせよ失敗するにせよ、最早このヨコハマは戦いによって確実に崩壊するだろう。故に重要なのは自身にとって、
「計算通りにはやはりいかんが、此方もまだ切れるカードがある。最期まで足掻いてみるとしよう。我が三業会、そして天尊流星が作るその未来の為に」
「潜入完了っと……」
今僕が居るのはヨコハマ裏中華街の小さなビル、その一室の大窓付近。もうヨコハマレルムと呼称した方が良い気はしてきたが、何にせよその内部に潜入する事には成功した。そして潜入してから<悪対>及び藤堂さんが前潜入した時と比べると幾らか変化が生じている事も分かった。
まず歓楽街から人気が消えている。厳密に言えば人より悪魔の気配が増えていると言っても良い。建物に隠れている一般住民も或いはマフィアでさえ、何かに怯えて隠れるようにして各々の住居に閉じこもっている。気配を追って路地裏を見れば、人の死肉を喰らう低位の悪魔とその死体の中から半漁人のような生物兵器<エルフ>が殺し合っていた。要するにこの街はもう手遅れに近い。
加えて言うならヨコハマレルム全体に結界のような物が張られていた。術式から判断するに恐らく魔道の応用であり、この結界は外から入る者を弾く物ではなく中に入った者を出さない為の物。その結界を補強する様にレルム全体の異界化が進行しており、それに応じて内部の悪魔の力も上がっていくし外部への通信も難しくなるだろう。
此方の襲撃計画は1週間という短い間で整えられた物だ。迅速にして性急、情報が漏れたとしても意味がない程の速さだ。ただ、そんな状況でここまでの……此方の進行を見越したかのような陣を敵は敷いている。敵への警戒レベルをまたさらに上げる必要がある。
「フェイ」
「戻ったみたいだね」
\カカカッ/
剣士 | 久遠 由奈 | Lv88 |
\カカカッ/
巫女 | 神城 真澄 | Lv84*1 |
\カカカッ/
ガンスリンガー | 久遠 エリヤ | Lv74 |
それと同時に偵察に行っていた三人が戻って来た。
「第二陣、第三陣共に配置完了しました。研究所の位置や入口なんかも前と同様のようで潜入ルート事態に変化はありません」
「何も知らない住民や悪魔関係者の保護に関してはヤタガラスが担当するそうよ。一応こういう事を危惧して戦力多めで連れてきた節はあるけど、それでも手が回らないからマフィア共は見捨てる形になるけど」
「他の第一陣のメンバーも準備は完了している。後はお前の合図次第だ」
「りょーかい」
そんな状況下だが、此方の行動や配置に変化がある訳でもなく作戦通り第一陣と第二陣による襲撃は行われる。ただ、この窓の先の中華系マフィア本部周辺の土地には二重の結界が張られておりこれは侵入者を感知するセンサーのようなものと分かっている。解除・破壊しようとしたらそれはそれで発動条件を満たして感知されるという厄介な物だ。時間を掛ける訳にもいかない為に強行突破しか選択肢はない。
第一陣は僕達4人が取り敢えず突貫し、それに続くように他箇所に3~4人単位で散り散りとなっている第一陣のメンバーが続くように突入。その後に第二陣はそれぞれ<悪対>と東堂、<シャドウワーカー>とルシエルが分かれて第一陣の用いたルートとは逆の裏口を用いて侵入を行う。第三陣の一部はヨコハマレルムの一般住民や非マフィア関係者を優先的に確保・救出する。プランとしては現状穴は見られない。後は僕達の行動次第だ。
「じゃ、賽を投げようか。本部へ、第一陣の行動を開始する」
異界化の影響で真っ赤になりつつある空を見上げながら、意を決して大窓を打ち壊して外へと飛び出す。飛び散るガラスの欠片と飛び落ちていく自分の身体。そのまま真っ直ぐに結界を突き抜けて
\カカカッ/
生物兵器 | 幼体エルフの群れ | Lv20 |
\カカカッ/
生物兵器 | 幼体エルフの群れ | Lv20 |
\カカカッ/
生物兵器 | 幼体エルフの群れ | Lv20 |
\カカカッ/ \カカカッ/
龍族 | ナーガ | Lv32 |
魔族 | ジン | Lv27 |
\カカカッ/ \カカカッ/
鬼神族 | ヴァルキリー | Lv20 |
獣族 | モスマン | Lv37 |
\カカカッ/ \カカカッ/
鬼族 | ラフィン・スカル | Lv33 |
飛天族 | ホウオウ | Lv35 |
それと同時に建物の影や中から溢れ出したのは魑魅魍魎。それらの正体は生物兵器である幼体エルフの群れと悪魔化ウィルスによって悪魔となった人間達で恐らく悪魔化ウィルスに適性のない人間は軒並みエルフの養殖の為の宿主として使わている。だからこそ、これ程の群れを形成する事が出来ているのだ。
「<ワイルドハント>」
胸糞悪い話ではあるが僕達にとってもまたそれも想定通りであり、即座に万能による魔力の放出による殲滅を敢行。速やかに進路を確保しつつ向かってくる悪魔を由奈と真澄で薙ぎ払い、不意打ちをエリヤに警戒させながらここから最短で研究所に到達できる中華系マフィア本部を目指す。
各地で轟音が鳴り響く。他の第一陣も同様に問題なく研究所を目指しながら疾走している。それを確認して、中華系マフィアの本部の扉を破壊する。
「殺せぇ!ころせぇえええええっ!!!」
ホール内全域から向けられる多数のマフィア達の銃口。それを指示する恐らくマフィアの重鎮の言葉は仰々しいその発言とは反比例に恐怖に満ちており、それは他のマフィア達も同様で半狂乱になりながら各々引き金を引こうとして
エレメンタル・スラッシュ |
200X出典。このターン、使用者が次に行う格闘攻撃の1回の対象を前列1体から1体に変更し、判定値に+30%の補正を与える(後列に居る対象にも格闘攻撃が可能に)。 ランクⅢである為に前列2体を2体に対象変更。対象:前列を1列に変更する事が出来る。 |
雲耀の剣 | 200X出典。敵前列に万能相性物理ダメージを与える。消費MP・HPは存在しない |
徹し | 覚醒篇・骨法出典。 敵前列1体に相性:-(万能相性裁定)で防御点を一切無効した格闘攻撃を行う。 この攻撃は拡散して、敵前列の他の対象には相性・防御点無視は同様にダメージ事態は半減した物を与える。威力は骨法の技能値×4を参照。真澄は60以上の技能値を持っている為に威力は240程度(特大ダメージ)となる |
その弾丸が発射される事はなく、ある者は飛来する万象を断ち切る刃にて散滅され、ある者は万物を打ち砕く空間を揺るがす拳にて絶命した。それに怯え惑い、這いずり回る者達はエリヤの弾丸にて撃ち抜かれた。
「防衛にやる気が感じられない。本命はやっぱ研究所の方だね」
出現した悪魔や生物兵器こそ数こそ多い物の今更僕達の脅威になる敵ではない。今ここに居たマフィア達も低くてlv10高くてLv30程度であり、捨て駒に過ぎないのだろう。マフィアの重鎮の姿も見えない。レベルの高い者、ヨコハマの支配者達は研究所にて匿われている或いは戦力とされていると考えるのが妥当かもしれない。
第一陣の他のメンバーもそれぞれ中華系マフィア本部を強襲している。第二陣も裏ルートより潜入を開始し、僕達もまた研究所へ続く地下水路を発見した。
ネルガルが居た異界と同様に光を飲み込みそうな程の
<エストマ>を展開しているとはいえ、あまりに悪魔の気配がなくどれだけ歩いても先が見えない。他の第一陣も各々水路を辿って侵入を開始しているらしいが同様の状況らしい。リソースが有限である以上は無限に続く道はそれこそ認知世界等でなければ作るのは難しい。研究所が異界となっている事は確定しているが、これも異界化を利用した足止め用の細工なのだろう。
「とはいえ、不気味だな」
フレスベルグとエリヤがその瞳を以て異界内の綻びを探している。緻密に練られた異界故に暫く時間は掛かるだろうが、幾つか突破できそうなポイントは発見できた。後は候補を絞れば問題ない……といった所でCOMPに反応が入った。ソナーに引っ掛かったのは敵ではなく友軍信号で
\カカカッ/
ガンスリンガー | 藤堂 晴香 | Lv56 |
「あれ、フェイさん達」
\カカカッ/
ファイター | アナンタ | Lv63 |
「ほんとだ。ルート別だった筈だよね?」
\カカカッ/
トリックスター | ベネット | Lv57 |
「アナライズと反応を見る限り本物で間違いはなさそうね。色々妙な点とかあるけど……」
そうして現れたのは藤堂さんを含む第一陣メンバー。アナライズでも照合を行うが本人達で間違いなし。彼女達が此処に転移のように現れたのはやはりそういうループ的な構造になっているからだろうか。
「立ち話はあまりできません。この異界の状態に関しては解析中ですので取り敢えず移動を続けましょう」
由奈が声を掛け、三人もそれに頷いて僕達と合流を果たす。とはいえ、それからもやる事は変わらない。進んで、解析して、この状況を打破する何かを探す。暗闇の中だからなのか、それがいつもより長く感じられながらフレスベルグとエリヤの手によって解析が終わる。
どうやらこの異界はマトリョーシカのようになっているらしい。異界の中に異界を内包している。外の異界が第一、今ここにいる異界が第二と仮定して、恐らく研究所の異界が第三。次の異界に行くにはどうやら専用の入り口を潜らなければならないらしく、各マフィア本部に設置された地下水路が第一と第二を繋ぐ門に該当していた。そして、第二と第三を繋ぐ入口に関しては恐らく存在しているがこれも巧妙に隠されている、探す時間が惜しい。
「ちょっとリスキーだけど時短を優先しよう。バロンを戻して……召喚、アラハバキ」
『入口が隠されているなら此方で作れば確かに手っ取り早いがな。時間はそれなりに掛かるぞ』
客神の門 | NINE出典。任意のエリア間にパスを作成できる。作成速度は構築速度の1/8となる |
アラハバキの持つスキル、客神の門。それを用いての第二の異界と第三の異界を繋ぐ扉を無理矢理作成する。戦闘時や緊急事態においては不可能な芸当だが、MAGを集中させられる非戦闘時ならば構築は可能。第三の異界の場所も解析によって割り出した。後はこれが出来るのを待つだけだ
「いやー悪魔って便利なもんだなぁ。私もサマナーやればよかったのかな、ベネっち」
「外でベネっちはやめろ。アナンタにサマナーは無理でしょ、頭足りてないわ」
「なにをぅ」
「ベネっちって何処かで聞いた事あるなぁ……ベ〇ッセ?」
「ほら、またこんな事言われるだろ……!」
いつの間にかに仲良くなったのかアナンタとベネットに藤堂さんが絡んでいる。何かと雰囲気も似てる*5からとかか?まぁ話してても警戒はエリヤにフレスベルグ、由奈、真澄がやってくれてるから問題はないが、どうにもまだ違和感が拭えない。
何かを見落としているような漠然とした不安感。この違和はどうも他の幾つかのメンバーも感じているようで、何が起こっても良いように目配せをしておく。現状は扉創りの為に此処に留まらなければならないという制限がある以上は今は居なくとも奇襲される可能性が高く、<エストマ>ももうすぐ切れる。新月になった瞬間にアイテムにて再度<エストマ>を発動させれば凌げるかもしれないが……
「……左水路より多数の反応を感知!生物兵器だ!」
『右カラモアクマガクルゾ!』
「やっぱ来るよね」
新月になった瞬間にエリヤとフレスベルグが同時に敵性存在を感知した。話していたアナンタとベネット、藤堂さんも思考を切り替えて臨戦態勢へと移る。
「左は真澄、アナンタ、ベネット、藤堂さんで右は由奈、エリヤ、ラクシュミで迎撃を!フレスベルグと僕とで撃ち漏らしを潰す!」
\カカカッ/
生物兵器 | オークスターの群れ | Lv35 |
\カカカッ/
生物兵器 | モルゲンの群れ | Lv35 |
\カカカッ/ \カカカッ/ \カカカッ/
神族 | キクリヒメ | Lv49 |
龍族 | ニーズホッグ | Lv52 |
鬼族 | プルキシ | Lv42 |
\カカカッ/ \カカカッ/ \カカカッ/
鬼神族 | ハヌマーン | Lv41 |
魔族 | フラウロス | Lv48 |
獣族 | ライジュウ | Lv40 |
返答もなく、即座に全員が指示通りに迎撃行動に移った。此方に襲い掛かってきている悪魔は外に居る悪魔達よりレベルが高く、また数も多い。生物兵器も幼体のエルフではなく、この狭い道に適合したオークスター*6とモルゲン*7で列を成しながら此方を引き潰そうとしている。
とはいえ、迎撃の火力自体は足りていた。Lv60以上が複数居て、範囲火力もそれなりにある。レベル差で速度も上が取れる以上は現状のダメージレースで此方が負ける点はない。その上で警戒すべきことは一つ。
\カカカッ/
生物兵器 | ファニグスの大群 | Lv30 |
此方が抑えていない左右、即ち水路からの奇襲である。底すら見えない真っ黒な水路から出現したのは巨大ピラニアであるファニグス。その数は優に数十体或いは百を超えており、その大群は此方に襲い掛かろうとする生物兵器や悪魔すらも纏めて飲み込もうとしていた。
「フレスベルグ!」
『スイロゴトコオラセル!』
マハブフダイン | 真3出典。敵全体に氷結属性の大ダメージ&FREEZE効果(15%)を与える。 |
僕の指示と共にフレスベルグから迸る氷乱の嵐。その暴威に群れとなってlv30が精々の存在が抗える筈もなく、超低温にて凍らされて周辺の水路もまた氷の膜にて覆われた。
「これで……ッ!?」
僕の言葉を遮る様に氷の膜を突き破って、僕の眼前に何かが飛び出てきた。大きな触手……いや、先端は槍のような形状をしているそれは複数本飛び出て、僕達が居る歩道に向かって振るわれた。
\カカカッ/
生物兵器 | トライデント | Lv45 |
「トライデント、大型の生物兵器か」
藤堂 奈津子が研究していたとされる大型生物兵器、その一つがこのトライデント。複数の三又の毒銛を乱雑に振り回し、左右に居るそれぞれのメンバーを狙うもののやはり当たる事はない。だが、その攻撃によって隊列に乱れが生じてしまっている。エリヤと由奈が悪魔に囲まれて孤立。僕もまたアラハバキを守る為に動けずにトライデントの触手に囲まれている。此処で
『四神、起動』
突如空間に発せられた男の声、それと共に感じられた浮遊感。周囲を見渡せば
「……っと」
床に足がつく感触と共にそれは終わった。周囲の景色も急速に見える様になり、即座に悪魔を展開して周囲を警戒しながら移動を開始する。この場に居るのは僕一人と仲魔達だけだ
まず此処は恐らく研究所内部である。どうにも余った資材で床や天井を増強したかのような鉄色が多い、ジャンクな場所だが少なくとも地下水路ではない。空間に満ちるMAGも水路の時より意図的に濃くされて、それは此方のセンサーにも作用している。お陰で他メンバーの位置が分からない。
「四神……それによる経路の抹消か」
そして、その上であの時何が起こったのかはある程度把握できている。四神と奴は言っていた、それによって空間が実質的に消失したのは凡そ間違いではないだろう。
四神相応 | NINE出典。6カウントの間、エリアに繋がってる全てのパス(経路)を消去する。これの発動にはセイリュウ・ゲンブ・スザク・ビャッコの4体が必要 |
四神相応、平安京等にも存在した四神を利用した結界で東京における四天王と同質の物。経路を一時的に消失させるそれは四神相応を利用した一種の防衛戦術であり、緊急時における通路の封鎖により時間稼ぎを行う為の術だった。それが作動した結果、地下水路という経路上に居た僕達は空間の消失によりその場に存在できなくなり、空間が存在しない為に飛ぶことも出来ないままに直下に存在した第三の異界に落下したという事である。
これを確実に成功させる為にこれを仕込んだ存在は地下水路を利用したMAGのラインで、異界のリソースを経路の複雑&迷路化に注ぎ込んだ上に第三の異界である研究所への扉に関しては隠蔽とジャミングを施していた。そうすれば自ずと侵入者の取れる手はなくなっていき、最終的には僕達のように異界解析の上に扉を創ろうとするか、元々存在している筈の扉を探して解析&解錠を行うという2択になってしまう。
そして其処まで誘導できるが故に事前に入念な対策も用意できる訳で、異界そのものに新しく門が作られると同時に反応する警報を設置。隠蔽した門を解析しようとした場合にも同様に警報がなるように細工を施せば侵入者が脱出しようとしている時に確実に位置が分かる。後は其処を起点に第二の異界を徘徊している悪魔や生物兵器を向わせるように仕向ければいい。
そして、悪魔・生物兵器の襲撃で時間を稼いでる間に<四神相応>を発動させて僕達をどぼんと落下させて、終わり。第二から第三に落ちていく過程でそれぞれの距離が離れていた場合はどうも同じPTとして認識されないのか、個別にランダムに落ちていく仕様のようで恐らくそれで侵入者を分散させて各個撃破という流れが可能性としては一番有り得る。
さっき起こった事はそんな所だろう。送信に時間は掛かるがCOMPにて情報共有の為のメッセージは送信している。奴が第二の異界で定めた経路は地下水路の全てだ。だから恐らく他の第一陣のメンバーの大半或いはその全てがこの第三の異界に落ちている、散り散りという形で。
ただの一つ解せない事があるとすれば、敵の攻撃は僕とエリヤ、由奈のみ分断する様に攻撃を行っていた。エリヤに関しては由奈がカバーして守った為に一緒に居るだろうが、中央に居た僕は完全に孤立してこうして一人で異界を彷徨っている。
「で、それがその答えって訳ね。まさか此処にいるとは思わなかったけど」
一人になった時から限界まで服用をし続けていた<マッスルドリンコ>*8を投げ捨てて、戦闘用の悪魔に仲魔をセットし直す。
目の前の通路を抜けた開けた場所、其処に映り込んだ男。男はバケツのようなヘルメットこそないがデモニカ―スーツを纏い、その背に大剣を背負っている。
「よっ」
由奈がレルムにて遭遇したとされる二人組の片割れであり、エリヤの妹の幼馴染である男、ウリック・ヤード。その似姿や声の雰囲気、そしてアナライズの結果も彼が本物である事を指し示しながら彼は僕に快活な笑みを浮かべると共に大剣を振り抜き、僕の進路を塞いでいた。
・後書き
次回からはそれぞれ落下したメンバー達による戦闘の予定です。ちょっと戦闘数が膨大になりそうなので更新速度は落ちるかもしれません(予防線を張る)
・キャラ紹介
<久遠 フェイ>
色々と対抗策は練っていたが、今回は相手の策に嵌められて落下した人。
その結果として単独行動という死亡フラグを立てながら、エデン所属のウリックに遭遇してしまう。運が高い筈なのに色々と運がない。
<久遠 由奈&エリヤ>
優先的に狙われて落下していった人達。
その行方はまだ分からないが、ウリックがフェイに当てられたという事は……?
<藤堂晴香&アナンタ&ベネット>
アナンタとベネットはらんだむだんじょん出身。喋り方は大体こんな感じで合ってる筈……!。はっかっかとは偶然の割り当てとなったがPTとしてのバランスは割と取れている。強いて言うなら回復役が欲しい。尚、現在は真澄と共に第三の異界に落下している。
<ウリック&アンナ>
エデンがこの周回に来てから任務の時以外はヨコハマレルムに居た人達。
クソみたいな実験してるし、上は最低限情報収集さえしてくれれば自由との事だったのでやる気なしの状態で過ごしていたが、棚ぼたでターゲットがわざわざカモネギ背負って来たので狩りに行くことに
<石 亜南>
今回の黒幕。
三業会所属に幹部でそれ以外は魔道使えたり、魂の半分を天尊流星に捧げてたり以外あんま特徴はないが、何かと自身以外の上位者に振り回されがち。ヨコハマ裏中華街も頑張って一から作ったし、悪魔化ウィルスの研究も他力本願という形になってしまったが順調ではあった。が、今回の襲撃で大体のプランが崩壊したのでヤケクソ気味に悪魔&生物兵器大放出キャンペーン中。三業会にはもう大体の情報は送ったので後はどう綺麗に死ぬかという事でオリチャーを現在模索中。
<ヨコハマ中華系マフィア>
ヨコハマの支配者達。実際はスポンサーである石 亜南の実質的な操り人形で今まで生き残れてきたのも亜南のお陰である。1年前であれば大分イキれる位の勢力だったが特にジャイアントキリング等も熟していないので数カ月で一気に三業会がなければ存続も危うい勢力になってしまった。其処から石 亜南の口車に乗っていたらもう街が手遅れとなり、腕利きの用心棒等は引き抜かれて、残ったのは悪魔と生物兵器に満ちたバイオハザード或いはブラッドボーン状態の歓楽街のみ。大体屑しかいないのでインガオホー。
<藤堂 奈津子>
元ネタは寄生ジョーカー。経歴は大体寄生ジョーカーと一緒だが、悪魔化ウィルスの開発者でもある。本編もそうだが逃げ足が非常に速いし、しぶとい。こいつほんとしなねぇ。アートマ技術に関しても知識があるようだが……?
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ヨコハマ事変 玄武/青龍
「あら、上手く嵌ったようね。貴方の策」
「いや、ここまでは想定内だ。問題はこの次になる」
壁面に設置された無数のモニター、それを見つめる二つの人影。一つは石亜南の物。
\カカカッ/
研究者 | 藤堂 奈津子 | Lv0 |
そして、もう一つはLv1でもない愚者未満の存在にして生物兵器・悪魔化ウィルスを製作した天才研究者、藤堂 奈津子その人である。
彼らがモニターにおいて確認しているのはこの研究所、厳密には其処に到達する前に展開された第二の異界である地下水路。四神を利用した経路潰しにより、その全てが経路で構成された第二の異界は一時的に存在しない事となり、其処に居た全ての存在がこの研究所が存在する第三の異界に落下した。
マフィアの本部から乗り出して正面突破を計ろうとした奴らは当然落としたし、裏口から此方の実験体候補の救出に来たのであろう<悪対>や<シャドウワーカー>についても落とす事に成功した。何故か実験体候補は全員逃がされていたが、撒き餌も兼ねて設置していたので概ね此方の想定通りだ。
地下水路に踏み込まなかった者達もいる*1ようだが、彼らは住民の避難や救出を主目的としているようだった為に悪魔と生物兵器の攻撃優先順位をレルム住民やドリフター共に設定し、彼らを守らなければならない状況に誘導。戦力としてはやや力不足だが数は多いのでこれで暫く時間は稼げるだろう。
此処までで敵味方共に散り散りになった訳だが、此方側は第三の異界に戦力を備えた上で異界のMAGを通じて奴らの存在を感知できる。詰まる所、想定ではこれからの行動におけるイニシアチブは全て此方が握れる。
さらに言えば戦力は悪魔化ウィルスによって変貌した悪魔や生物兵器にも存在している。悪魔化ウィルスのさらなる発展形である試験型悪魔化パッチ、それを埋め込まれたアートマ兵。アートマ兵の量産は覚醒者を悪魔化させる事でしか成功していないが悪魔化ウィルスによって変貌した悪魔したそれよりも高い能力を持ち、何より人を喰らってさえいれば理性を維持する事も出来た。
亜南が配置した四神もアートマ兵であり、彼らは特にヨコハマレルム内で悪魔を大量に踊り喰らい、肥え育った化物達だ。悪魔化パッチや此方が掛けた呪いによって裏切る可能性も、まぁ目の前の女より遥かに低いだろうと亜南は考えていた。
「で、実際四神含むアートマ兵と悪魔・生物兵器であいつらやれる確率は?」
「高く見積もって3:7。3が四神側だ」
「ほぼ負けって感じじゃない。今回の襲撃者ってそんなに強いの?」
「貴様には分からんだろうが今の襲撃者共の戦力とガチンコでやり合ったら概ね負ける。四神側が負ける前提で用意を進めるべきだ」
理由は単純極まりなく普通に四神を狩れる戦力が複数存在しているからである。件の二人の用心棒が実質最大戦力を打倒或いは止めてくれるにせよ、それ以外の襲撃者も正直化物が多い。彼らが散り散りとなった今の瞬間に単独で居る所を狩れればまだ話は違うかもしれないが、第三の異界に着地した時点で彼らは近場に居る誰かと合流を果たそうとするだろう。異界内にジャミングは施しているがそれも万能ではないし、ランダム落下故に着地狩りも不可能だ。そうして合流を果たされて4人以上いればもう四神では倒す事は難しい。
「ま、どうせもう私も逃げられないわ。此処に残している研究機材や資料も惜しいし、最後まで付き合いましょう」
「……貴様がそのようなセリフを吐いて、<組織>から脱走したと他の研究者から聞いている」
「あら、ふふっ……冗談よ、冗談。でも今度こそ逃げきれないのは貴方も分かっている筈だ」
「なら精々気張れ。己はもう死んでも構わんが、貴様はそうではあるまい。随分と自信があるようだが、貴様の“ソレ”は種が割れれば脆い」
「はいはい、それは作った私が一番分かってる事よ。松山にアビス、後は幾つかのアートマ兵は借りてもいいのよね?」
「好きに使え」
「あっそ。じゃ、また生きて会える事を期待しておくわ」
藤堂 奈津子はその場を後にした。研究所廊下の錆びた鉄床を踏み抜きながら、自らの配置である研究室を目指す。
「……そう言えば」
ふと奈津子は足を止める。亜南との会話で集中は出来なかったが、モニターの映像には彼女が知っている存在が映っていた。
藤堂 晴香、元<組織>のエージェントにして<組織>を告発して崩壊させた自身の養子。<組織>の人間はあの子に対して何も期待はしていなかった。力もなく、知恵もなく、何ならアホだし、あらゆる意味で何にもなれない愚者。だが、だからこそ私は彼女を期待したのかもしれない。
そういう人間こそ重要な盤面においてあらゆる存在の想定を覆す“ジョーカー”になり得ると信じるが故に。
「私は待っているわ、晴香。貴方が此処まで辿り着くのをね」
・
・
・
「ぬぉおおおおおおおおっ!?!?!?」
響き渡る顔に大きな傷を負った男の悲鳴。大地が割れ、揺れ動く轟音と亀のような悪魔の叫び声。
\カカカッ/
龍族 | ゲンブ | Lv73 | 物理・銃撃に強い。地変吸収。破魔・呪殺・バッドステータス無効 |
デクンダ | DDSAT1出典。味方全体のンダ系魔法の効果を相殺する |
マッスルボンバー | DDSAT1出典。敵複数体に2~4回の物理属性の小ダメージを与える |
岩責め | DDSAT1出典。敵複数体に2~4回の地変属性の中ダメージを与える |
身体を縛る
\カカカッ/
警察官 | 杉本 佐一 | Lv65 | 物理・銃撃に強く、精神・破魔・呪殺無効 |
「舐めんな!」
三分の活泉 | シリーズ共通。最大HPを+30%する |
鬼丸の太刀 | デビサマ(PSP)出典。攻撃力205・命中51で前列単体に2~3回攻撃を行う剣武器。とある筋から譲ってもらった |
猛反撃 | DSJ出典。物理もしくは銃属性の攻撃を受けた時、50%の確率で、通常攻撃の1.5倍の威力で反撃する。 |
それと相対する男、杉本佐一は迫るゲンブの両腕をすれ違い様に横薙ぎにしてのクロスカウンター。杉本は吹っ飛んだものの重傷は負っておらず、ゲンブに至ってはほぼ傷を負っていない。
「ペルソナ!来い、カエサル!」
電撃ブースタ | P3出典。電撃属性攻撃の威力が増加する |
電撃ハイブースタ | PQ2出典。電撃属性攻撃の威力が増加する。効果:中程度 |
ジオダイン | P3出典。敵単体に電撃属性の大ダメージを与え、確率で感電状態を付着させる |
その瞬間、ゲンブに降り注ぐ稲妻。それを成したのは大理石色の武装歩兵のようなヴィジョンを背後に浮かべるボクサーの様な男。
\カカカッ/
シャドウ使い | 真田 明彦 | Lv74 |
皇帝 | カエサル | 電撃無効・氷結弱点 |
「電撃は通じるが致命打には及ばん、か。美鶴或いは劉鳳が居れば此処まで手間取らずに済みそうなのだがな」
ボクサー特有のファイティングポーズをとりながら真田がゲンブを睨む。
第一陣が突入した後に裏ルートより侵入を開始した第二陣は第一陣と同様に地下水路に到達。第三陣に居る川村ヒデオとウィル子のサポートを受けながら、事前調査で判明していた実験体候補の収容所に突入して制圧・救助を開始した。そこから数分後に起きた突然の異界の崩壊と落下、それによって仲間達は散り散りとなって恐らく自分達と同じようにこの異界に落ちてきている。だが、このような敵と相対していると考えれば彼らもやや危うい状態なのかもしれないと考えた所で
「心配は無用だ。Mr.真田。図体はデカいし、確かにタフだが……」
ゲンブに向かって真田とも杉本とも違う、男の影。迎撃の構えを見せたゲンブは手と手を合わせたかのような拍手の音を聞いて
真空投げ | 200X出典。敵1体に万能相性のダメージを与える |
突如として
\カカカッ/
導師 | 東堂 葵 | Lv77 | 全てに強く、破魔・呪殺無効 |
「今の俺達に倒せん相手ではない」
第二陣においてキリギリスより派遣された男、東堂葵。独特の拍手の構えをしながらその脳内にて状況を整理する。まず落下直前に実験体候補者達の避難に関しては此方で完了させている。<トラフーリ>による安全地帯への離脱、それが何とか間に合って今は第三陣の面子に保護されている事だろう。よってその点における心配は現状は必要ない。
となれば優先すべきは今の自分達の現状の打破。異界が突如として消失した現象、東堂もまたそれが<四神相応>である事や自分達をバラシて各個撃破する事が目的なのは分かっていた。合流を目指したい所だが四神というならばこの強さの悪魔がゲンブ以外でも最低3体いる。それに悪魔や生物兵器が奴らの戦力でその戦力の中でも最強クラスであるゲンブを放置する事は出来ない。
他のメンバーに関しては単独でもそう簡単にやられるような面子ではない。彼らもまた合流を果たして生き延びていると信じ、逆にこちらが敵の戦力を各個撃破していくという流れが理想的だろう。
問題はこのゲンブが通常のそれより強力でボス個体であるという事。そのタフネス以外に優秀な耐性、物理・地変属性を絡めた多段攻撃、タルカジャにマカカジャ等のカジャ系統の使用にデクンダ・デカジャの搭載。特筆するようなスキルや一撃必殺の手段を持っている訳ではないが、手堅く隙のない敵だ。人の言葉は使わないようだが知性も恐らく存在している。
「Mr.杉本」
「分かってるって。頼んだ!アシリパさんにホロケウ!」
『今、回復する!』
\カカカッ/
幻魔 | シトナイ | Lv63 | 火炎・氷結耐性・破魔無効・呪殺耐性 |
メディラマ | シリーズ共通。味方全体のHPを中回復する。 |
『ワオオオオオオン!』
\カカカッ/
神獣 | ホロケウ | Lv63 | 物理耐性・火炎弱点・破魔無効・呪殺耐性 |
雄叫び | DSJ出典。敵全体の攻撃力(魔法攻撃力も含む)を2段階下げる |
杉本佐一が保持する2体の仲魔、アイヌの少女のような出で立ちの幻魔シトナイと狼その物と言える神獣ホロケウ。前者は味方全体の傷を癒して、後者はゲンブを牽制するかのような咆哮を上げる。そうして
バイオレンス | 点滅状態のプレスアイコンを2つ増やす |
ゲンブのMAGが隆起する。この悪魔が用いる戦闘方式はプレスターン式。余白がなく、互いの手番にて一気に行動を仕掛けて、圧殺するそういう戦い方だ。上手く
デクンダ | DDSAT1出典。味方全体のンダ系魔法の効果を相殺する |
魔法リフレクト | DDSAT1出典。味方全体に魔法反射バリアを張る。 |
呪いを振り解き、ゲンブより放たれたのは魔法を反射する結界。
マインドチャージ | DDSAT1出典。次の攻撃魔法の威力を倍以上に増加させる |
マハテラダイン | DDSAT1出典。敵全体に地変属性の大ダメージを与える |
そして、この埒が開かないダメージレースを打破する為の精神集中からの大規模な地形破壊による暴力的なまでの質量攻撃。
「死ぬ気で耐えろ!」
「分かっている!」
「ッ、アシリパさんがヤバい!」
カバー | 200X出典。味方一人に対する攻撃のダメージと追加効果を自分が受ける。 前ターンにカバーの為に待機宣言を行っていた |
東堂・真田が防御の構えを見せ、ホロケウもまた身を屈ませるも無防備なのは幻魔シトナイのみ。一目散に彼女の下に走って庇いに向かった杉本に無防備に大量の岩石が降り注がれるも、その強靭な五体にて何とか耐え切った。
『杉本!』
「へへっ、大丈夫。掠り傷ですよ、アシリパさん。それより」
「ああ。倒せるが、時間が掛かり過ぎてしまう」
敵の行動が防御・補助寄りに動いているというのもあるが、どうにもこうにもゲンブに対して攻めあぐねていた。弱体化はまずデクンダで弾かれ、魔法を多用しての攻撃は魔法リフレクトで弾かれる。では物理で攻めようとしても奴は物理・銃撃に非常に強い耐性を持っている*2。その上カジャを重ねようとしても奴はデカジャも持っていた。それを使用すると魔法リフレクトは使用してこなくなる為にその瞬間を狙って少なくとも等倍で通じる電撃のジオダインを叩き込んでいたが流石にそれだけでは火力が足りない。後は此方が持っている手札としては万能・氷結・衝撃辺りが通じるだろうか。
よって継続的にカジャ・ンダを重ねながら長期戦を行うしかないのだが、これには生物兵器や悪魔の乱入を受ける危険性があり、既に何回か生物兵器と悪魔による乱入を喰らっている。それらのレベルが比較的低位で数も少なかった為に被害も最小限に留められてはいるが次に来るのがそれとも限らない。ゲンブと同様に四神が来る可能性すらあるのだ。そうなれば幾らこの面子であっても耐える事すら出来ないだろう。
「ふむ、そうだな。少し検証程度だが付き合ってくれるか二人とも」
「東堂、何か有効打あんのか?」
「可能性の話だ。通じん可能性もある」
「だが可能性があるのならやるべきだ。踏み込まなければ勝利は得られない。そうだろう、杉本」
「あーはいはい。多数決で2対1ならもう決まりじゃねぇか……いいぜ、俺も乗ってやる」
杉本が笑みを浮かべ、真田が瞳に闘志を宿して各々の獲物を構える。
「安心しろ。何せ、この俺……いや俺達には“勝利の女神”がついているのだからッ!」
瞬間、東堂の脳裏に浮かんだ
今から約2週間前のある日、東堂葵はとあるアイドルの全握*3に向かった。東堂葵はドルオタである。そして自他共に認めるケツとタッパがでかい女好きで、その上で何より明るい女が超絶好みだった。
性癖はソイツの全てが反映される、と彼は言った。その言葉の通りに彼は探し続けた。その条件に最も近い存在を。そうして見つけたのが
『にゃっほーい!きらりだよ☆みんなきてくれて、きらりんうれしー☆』
諸星きらり。身長182cmの高身長して、何処かふんわりとした独特な喋り方から老若男女問わず人気を獲得しているトップアイドル。そして東堂葵にとってそのアイドルとしては非常に高い身長、でかい尻、天真爛漫なその性格、何より握手会の時の彼女の笑顔に心を打ち貫かれ、東堂は彼女の厄介ファン筆頭として今もその末席に名を連ねている。
「今から2週間後!きらりちゃんの個握*4がこの神奈川県において行われる!故に、この地における戦いは俺にとっての背水の陣と言ってもいい!詰まる所……俺は彼女の為に負けられんのだァ!!!」
「よく分からんが凄い気合いだ!ついていこう!」
『……杉本がああじゃなくて今心底ほっとしている私がいる』
「つまり……アシリパさんが勝利の女神って……コト!?」
『スギモト!?』
『ワオン*5』
かくして
『回復を!』【メディラマ】
「防御を下げる!ペルソナ!」【マハラクンダ】*6
『ワオオオオオオン!』【タルカジャ】*7
シトナイによる
「射撃は苦手だが、この距離なら!」
ナックルブラスタ | 攻撃力60・命中50で前列複数に4~6回の攻撃を与えるショットガン |
ウンディーネ弾 | 真4出典。攻撃力47の氷結属性の弾丸 |
コロシの愉悦 | 真4出典。クリティカル率を+25%上昇させる。 |
会心 | 真3出典。クリティカル率を3倍にする。 この効果は通常攻撃にのみ適用され、銃攻撃にも適用されると裁定 |
杉本がゲンブの懐まで接近し、至近距離からのショットガンをお見舞いする。氷結を纏った弾丸が何発も拡散しながらゲンブの装甲を抉って、そのうちの1発が
「いいぞ!Mr.杉本!」
格闘威力強化(体)Ⅲ | 200X出典。武器を用いない格闘攻撃の威力に「体能力値×3」する。 |
旋風脚/旋風拳Ⅲ | 200X出典。前列の敵1体に衝撃属性のダメージを与え、60%(ランクⅢの効果)の確率でSHOCK状態にする。それがSTONE状態ならば60%の確率で即死させる。 |
SHOCK状態 | 200X出典。感電して、行動が出来ない状態。 回避を含め行動する事が出来ない。戦闘終了で回復する。毎ターン、回復判定を試みる事が出来る。一度失敗しても次のターンには必ず回復する。 |
「やはりな。お前のBS無効は
バッドステータス無効の裁定 |
DDSAT1・2におけるバッドステータス無効は破魔・呪殺・魅了・猛毒・魔封・混乱・神経・ハントといった部類の状態異常を無効化する物であり、感電や凍結といった耐性は記載されていない。実際にもBS無効の敵に対して感電や氷結は通じる(っぽい記述のデータがネットで多いのでそう裁定する) |
ボスであるが故に*8に感電・凍結が通じる確率も実質的に半減させられるが、それは回数を重ねていけばいつかは付着させる事は可能。その為にジオダインや旋風脚等のそれらを付与させる事の出来る攻撃を重ね続けていたのだ。
「次で奴を倒す!補助を重ねろ!」
『ホロケウ、動いてくれ!』*9
『ワオオオオオオオオオオン!』【タルカジャ】
再び
『……ッ!?』*10
ゲンブは痺れた身体を動かす事が出来ず、無防備なままに
\カカカッ/
夜叉鬼 | ナラシンハ | Lv60 | 物理・銃撃反射。破魔・呪殺・バッドステータス無効*11 |
\カカカッ/
生物兵器 | 成体エルフの群れ | Lv40 |
\カカカッ/
龍族 | タンキ | Lv42 | 物理に強い。地変・バッドステータスに弱い*12 |
\カカカッ/
魔族 | フォルネウス | Lv43 | 火炎・氷結・呪殺反射。地変に強い。電撃に弱い*13 |
「ゲンブ後方より増援だッ!数が多いし、あのナラシンハはヤバい!多分別格だ!」
「いや好都合だ。Mr.真田!全体雷撃を!」
「了解!ペルソナァァアアアアッ!!!」
電撃ブースタ | P3出典。電撃属性攻撃の威力が増加する |
電撃ハイブースタ | PQ2出典。電撃属性攻撃の威力が増加する。効果:中程度 |
マハジオダイン | P3出典。敵全体に電撃属性の大ダメージを与え、確率で感電状態を付着させる |
懸念していた増援は到着してしまったけれど既に状況は整っている。真田のペルソナ、カエサルより放たれた空間全てを満たす紫電。一種の網のように張り巡らされたそれは敵全体を包み込み、攻撃強化も2回まで積まれた影響もあってナラシンハ以外の増援を焼き尽くした上で敵の意気を削ぎ落す。*14
感電状態 | 200X→P3出典。体が痺れて物理攻撃を受けると 高確率でクリティカル発生。また、発生したターンは行動できない。 |
さらに痺れた身体にさらなる雷撃を降り注がれた結果、ゲンブの身体は再び痺れて動けなくなる。今度は物理攻撃に対する脆弱性すら持ち得てしまってもいた。
『ワオオオオオオオオオオン』【タルカジャ】*15
『精霊よ!』【精霊召喚】*16
「行くぞ!」【真空投げ】
拍手が響き渡り、再び浮かんだゲンブの身体。重力に従って落下していく中で精霊達がナラシンハ諸共ゲンブに群がっては攻撃し、頭上に浮かんだ東堂によってゲンブの脳天に踵が振り下ろされる。積み重ねた
ダウン状態 | P3出典。その場に倒れて行動ができなくなる。敵の攻撃に対して回避が0%になり、クリティカルが発生しやすい |
その上でゲンブの身体はついに動かなくもなり、五体を地面に伏してしまっている。*17
「そういう事か……なら俺は!」【
銃を手に持ち、駆け出す杉本。その銃口をゼロ距離にて構えて、連射を行う。
『て、めぇ……!』【CRITICAL!】→【ダウン状態】
どてっぱらに散弾の連射を計5発喰らい、そのうち1回は
すべての敵がダウン状態となった!
「この瞬間を待っていた!仕掛けるっ!」
「これでケリをつけるぞ!」
「アシリパさん!ホロケウ!」
『袋叩きだ!』
『ワン!』
総攻撃チャンス!!!
「今だッ!」
総攻撃 | P3~5出典。PT全員の攻撃力を加算して、敵全体に防御相性を無視した大ダメージを与える。敵全員がダウン状態になっている時のみに行える。 |
砂塵が舞うと共に真田、東堂、杉本、シトナイ、ホロケウによる一糸乱れぬ総攻撃。ナラシンハはその攻撃乱舞にて消し飛んで、ゲンブもまた致命傷を負った。
「まだ耐えるか。流石の耐久力だが……!」
「俺達はまだ動ける。やっちまえ、真田!」
既に全員行動は行っているが、プレスターンによる
「ペルソナッ!カエサアアアアアアアルッ!」
<召喚器>によって頭を撃ち抜いた真田と背後に浮かび上がるカエサルのヴィジョン。そしてその手から放たれた【ジオダイン】は瀕死となったゲンブに紫電となって降り注ぎ、その肉体の全てを焼き切った。
・
・
・
\カカカッ/
龍族 | セイリュウ | Lv76 | 氷結吸収。破魔・呪殺・バッドステータス無効。物理・地変に強い |
【氷結ガードキル状態】
\カカカッ/
生物兵器 | ティアマトの群れ | Lv50 |
\カカカッ/
夜叉鬼 | ガルーダ | lv63 | 銃撃・衝撃・地変反射。氷結・破魔・呪殺・バッドステータス無効*19 |
【氷結ガードキル状態】
\カカカッ/
夜叉鬼 | サマエル | lv64 | 電撃・破魔・呪殺反射。地変無効。物理に強い。猛毒・魔封に弱い*20 |
また東堂らとは別の場所においても四神との戦いは繰り広げられていた。場所は研究所における巨大な水槽のような場所。氷漬けにされた鉄床と水槽の水、その空中に漂うのは四神に名を連ねるセイリュウ。その隣にはサマエルとガルーダが控えている。
\カカカッ/
シャドウ使い | 桐条 美鶴 | Lv71 |
女帝 | アルテミシア | 氷結無効・火炎弱点 |
「困ったものだな。同じ氷結使いとは」
\カカカッ/
警察官 | 斎藤 一 | Lv63 | 銃撃に強く、斬撃・破魔・呪殺無効 |
「ひぃっ~ただのポリ公にはきつすぎる仕事だなぁ。お留守番しとくべきだったか?」
\カカカッ/
サムライ | 月鍔 ギンコ | Lv65 | 物理に強く、破魔・呪殺無効 |
「む、弱音とはよくありません。如何なる敵においてもやはりその命を獲るべく、上を見なければ!」
\カカカッ/
八極拳士 | ジョンス・リー | Lv72 | 物理に強く、打撃・破魔・呪殺無効 |
「とはいえ、しんどいのは事実だ。何かしら手を考えなければすり潰されるぞ」
\カカカッ/
治癒士 | ルシエル | Lv66 | BSに強く、神経・破魔・呪殺無効 |
「よしじゃあ、僕が前に出てDPSをさらに加速させ…!」
「駄目に決まっている」
「おたくの回復ないと俺達モタないんだけど?」
「
「遠距離から攻撃できるんだからそれで我慢しろ」
「はい僕が間違ってました」
実際問題、状況は膠着状態にあった。偶発的に遭遇したセイリュウとの戦い。セイリュウ単体ならば問題なく対処できる範疇だったが、その戦いに駆けつけてくる悪魔・生物兵器等の増援によって何度か戦線が崩壊しかけている。
前列 | ギンコ・ジョンス・斎藤 |
後列 | 桐条・ルシエル |
「……ただ、現状は増援は止まっているか。状態異常も種類によっては通じる」
レイピアをセイリュウに向けて桐条は思考を回す。巨大水槽の中にはティアマトと呼ばれる巨大なサメの生物兵器……同僚の勧めで見せられたB級サメ映画のような姿をした個体もいたが、それが複数存在していた。しかし、今はセイリュウの全体氷結攻撃によって結果的に水槽は完全に凍らせられて水槽の中から襲い掛かってきていたティアマトも凍って沈黙している。少なくとも暫く戦力にはならないだろう。
また増援自体もセイリュウとの戦いの中でかなりの数を相手どっていたからか、もうあまり来ることはない。唯一残ったのがあのサマエルとガルーダという悪魔達であり、他の悪魔との強さの差と明らかに理性のある動きをしている事から非常に面倒だ。
幸い<アナライズ>においてはバッドステータス無効と表示されたものの、状態異常の一部は通じるようでそれによる阻害は可能。後はそれがしっかり決まるかどうかが問題である。
<氷結ガードキル>*21もそれぞれ耐性持ちに差し込めた。攻める準備自体は出来ている。
「よし、攻めよう。次の増援が来る前に仕留める」
「そうこなくては!……えー、で、そのー具体的にはどう攻めます?」
「ガードキルは入ってるし状態異常は通じるっぽいから、色々かましながら補助掛けて順にぶん殴っていく感じでいくしかない。地道にな」
「よし、じゃあ僕も攻撃を!」
「お前は基本回復だからな」
「はい……」
全員の動きが決まり、
「まず動きを止める!」
マカジャマ | PQ2出典。敵一列を中確率で<魔封じ>状態にする |
真・束縛の心得 | PQ2出典。対象への<封じ>の付着率UP・大 |
桐条によって振り撒かれた<封じ>と呼ばれる類の状態異常。セイリュウはそれをすり抜けたが、サマエルとガルーダにはヒット。
魔封じ | PQ2出典。封じ系状態異常。魔法攻撃で与えるダメージが半減し、魔法系スキルが使えなくなる |
「これはいつか僕が前線に行くための回復!」【メディアラハン】*22
「では某はこれを!」【威嚇】*23
「次に繋げる」【気合い】*24
「テトラカーンってな!道具だけど」【物反鏡】*25
ルシエルは回復を、ギンコは敵に殺気を飛ばして防御姿勢にさせて、ジョンスは力を溜めて、斎藤は庇う為に待機。敵の
バイオレンス | 点滅状態のプレスアイコンを2つ増やす |
先陣を切るのはセイリュウ。MAGの活性化により動きを増やしながら雄たけびを上げる。
デクンダ | DDSAT1出典。味方全体の低下系効果を解除する。 |
ランダマイザ | DDSAT1出典。敵全体の全ての能力を下げる |
ランダマイザ | DDSAT1出典。敵全体の全ての能力を下げる |
マインドチャージ | DDSAT1出典。次の魔法攻撃の威力を2.5倍にする |
<デクンダ>からの<ランダマイザ>2発に<マインドチャージ>。此処まで補助寄りに動かなくてはいけなかった理由は物理は<物反鏡>にて、氷結は無効化を持つ桐条のペルソナが居る為に攻撃手段である物理・氷結が実質封じられているからというのが大きい。故にランダマイザでとにかく出力を下げて、隣に居る悪魔達の補助を行うがガルーダ・サマエルは<魔封じ>状態によってスキルの大半を封じられており、物理はやはり反射がある為に撃てない。
サマエルが消極的に<魔法リフレクト>*26を、ガルーダがセイリュウに半プレスで手番を回す。
マハブフダイン | DDSAT1出典。敵全体に氷結属性の大ダメージ。 更に低確率で氷結効果を与える。 |
プレスターンバトルにおいて攻撃を無効化されるという事は明確な行動権の損失である。攻撃が無効化された事による此方の勢いの損失、それのよって自分達は動けなくなる。ただ、それらの制限を一時的に無視できる状態が存在する。ラストプレス、文字通り最後の行動であるのならばその制限は受けない。無効化されたとしてもその後に失われる物は存在しないのだから
セイリュウの口から放たれた絶対零度の吐息。マインドチャージによって威力が底上げされた空間そのものを真っ白に染め上げる程の急激な温度低下を招き、一撃にて敵対者を屠らんとその氷が桐条達を包む混む。
「各自被害報告!」【耐性:氷結無効】
「凍え死にそうだけどギリギリ耐えたわ、俺」【HP:2桁】
「死に掛け申した!やっぱ魔法は苦手です!」【食いしばり使用】
「生半可に妨害し掛けても、あれの頭を潰さなきゃ完全には止めきれんな」【四分の活泉】*27
「生きてる!」【魔法耐性】*28
「攻撃したいけどやっぱ役目なんだよねぇ!」【メディアラハン】
「某も攻撃したいですよ!やれるものなら!」【挑発】*29
「相手が大体物理耐性持ちだから、素の状態で斬りかかる訳にもいかないんだよねぇ」【デクンダの石】*30
「……次が正念場だな。任せたぞ、ジョンス」【コンセントレイト】*31
「ああ、任せられた」【チャージ状態】
HP回復から防御低下デバフ、デクンダ、次の布石であるコンセントレイトと発動してやってきたジョンスの手番。
「最近はあまり言う機会がなくなったもんだからあれだが、此処までお膳立てもして貰った。故に」
そう宣言した後にジョンスは一瞬の間にその標的であるサマエルの懐に接近する。
「一撃だ」
震脚 | 200X&覚醒篇・八極拳出典。200X出典。補助効果。 このターン、使用者が次に行う素手に格闘攻撃1回の威力に【力能力値×2】を、素手以外の場合なら【力能力値】を加える。ランクⅢである為にこのターンにおける全ての格闘攻撃にこの効果が及び、格闘攻撃の判定値の1/5でクリティカルが発生する。さらに八極拳の技能値分だけ威力をプラスする。ジョンスは全てのレベルを八極拳につぎ込んでいる。 |
逃げようと空に逃げようとするサマエルを戒めるかのように鳴らされたのは敷き詰られた氷床を一撃で粉砕する程の爆発的な震脚。響き渡るその音と氷の破片にて、空間は乱れてサマエルはたじろいだ。
格闘威力強化(体)Ⅲ | 200X出典。武器を用いない格闘攻撃の威力に「体能力値×3」する。 |
発勁 | 誕生篇・太極拳出典(改変)。螺旋の力を攻撃に集中して使う奥義。 まず発勁のチェックを行い、成功すると威力分の勁が溜まり、直後の攻撃に使用できる。またそのダメージは物理攻撃半減・無効・反射の敵にも修正しないダメージを与える事が出来る。攻撃に使用した場合には威力分のダメージを加算した上で防具を無効化する*32。本来は太極拳の奥義だが独自の技法でこれを八極拳の物として取り入れ、ジョンスは利用している。その代償に1シナリオ3回の使用制限と消費MP倍増、効果の制限が掛けられている。 |
煌天の会心Ⅲ | 補助効果。格闘攻撃をクリティカルに変更する。200Xにおいてクリティカルはダメージ2倍である為にそのように裁定。1シナリオに3回まで使用できる |
鉄山靠 | 背中の衝突を利用した体当たり。この攻撃に対しては目標の物理防御点を半分として扱う。副効果が発動した場合は相手は転倒する。 |
サマエルの赤黒い肌に押し当てられたジョンスの背中、其処から伝わる溢れんばかりの勁。一瞬のうちに吹き飛ばされたサマエルは堪える事も出来ずに壁面に叩き付けられ、諸共破壊されながら絶命した。
「よし」
ジョンスの一撃にセイリュウもガルーダも警戒の色を見せて、其処に少しの硬直が生まれた。*33そこにすかさずルシエルが<デカジャの石>*34を使用して
バイオレンス | 点滅状態のプレスアイコンを2つ増やす |
デクンダ | DDSAT1出典。味方全体の低下系効果を解除する。 |
タルカジャ | DDSAT1出典。味方全体の物理攻撃力を上昇させる。 |
パワーチャージ | DDSAT1出典。次の物理攻撃の威力を2.5倍にする |
黙示録 | DDSAT1出典。敵全体に物理属性の大ダメージを与えて、魔封効果を付与する。 |
変わらずに<デクンダ>を重ねてからの<タルカジャ>。
その青い鱗を輝かせながら、縦横無尽に宙を駆けて桐条達を薙ぎ払う。
「悪いが」
纏 | 覚醒篇・八極拳出典。手を螺旋状に回転させる防御技。格闘攻撃によるダメージを威力分だけ軽減する。 |
猛虎硬爬山 | 覚醒篇・八極拳出典。格闘攻撃の防御に続いて行う技。その威力は八極拳技能値×4である。 |
「俺の八極拳は
駆け抜けながら体当たりを仕掛けてくるセイリュウの胴体に突き刺さるジョンスの拳。セイリュウが呻き声を上げると共に何本か骨も持って行ったがまだ重傷には至っていない。そのままの勢いで他の前衛と後衛を薙ぎ払おうとして
「見せてやるさ、自称無敵の剣って奴を!」
無形(消力Ⅲ) |
格闘回避の代わりに使用する。攻撃を完全に回避し、攻撃してきた相手に反撃として1アクション分の格闘攻撃(マルチ・アクション不可)を行う。ランク3である為にこの反撃は自動成功にすることができ、反撃は自動的にクリティカルとなる。この効果は本来1シナリオに1回までだが斎藤は自己の鍛錬により5ターンに1回まで使用する事が出来る。 |
不動剣 | 200X出典。前列の敵1体に剣相性のダメージを与え、60%の確率でBIND状態にする。 |
セイリュウが斎藤に直撃する直前に身を風のように揺らして回避すると同時に放たれた刹那の抜刀。不意の逆袈裟切りがセイリュウの喉元を切裂いて、セイリュウは藻掻き苦しむ
BIND状態 | 200X・状態異常出典。金縛りに似た行動不能状態。回避含めて、一切の攻撃ができない。格闘または射撃攻撃を受けるとクリティカルする。戦闘終了か、アイテム・スキル使用か、回復判定にて解除 |
喉元から噴き出す血。それを止める為に身を屈ませて、大地に蹲るセイリュウ。ガルーダは動揺して、唯一受ける物理を撃ち込もうにも反撃を警戒して撃つことが出来ずに行動放棄。そして、ジョンス達はダメージは負っているものの他の者達も含めて物理を受け切って
「棚ぼただったけど、これは効くタイプで安心したよ。これでいいですかね、桐条のお嬢」
「その呼び方はやめろと言っているだろう……だが良くやった。此処からなら十分決めれる」
残るは手傷を負って、
「んじゃま、行きますかね!」【デスバウンド】*35
「HEY-HEY-HEYと参りましょう!」【挑発】*36
先陣を切ってセイリュウを切り上げる斎藤。そこから生まれた隙に即座に挑発を入れて、敵の防御姿勢をギンコは崩していく。
「これでも一撃とはいかないのが俺の今の限界だな……!」【震脚】【鉄山靠】*37
「僕もしかしてこれ以外で出番ない?マジで?」【メディアラハン】*38
震脚を鳴らしたジョンスの一撃が再び突き刺さってはセイリュウが悲鳴を上げて、ルシエルが全体回復を振りまく。
「ペルソナ!アルテミシア!」
氷結ブースタ | P3出典。氷結属性攻撃の威力が増加する |
ヴァルナバングル | P3出典。アクセサリー。氷結属性攻撃の威力が大幅に増加する |
マハブフダイン | P3出典。 敵全体に氷結属性の大ダメージを与え、確率で氷結状態を付着させる。 |
桐条は<召喚器>によって頭を撃ち抜き、その背に
本来ならばガルーダもセイリュウも氷結に対する耐性を持っており、特にセイリュウは逆にそれによって生命力を最大まで回復させる事も出来た。*39
だがその衣もガードキルによって剥がされた今、彼らは無防備にそれを浴びるしかなくガルーダはそれによって凍死。セイリュウもほぼ瀕死だ。
ここまでで行われたのは
「折角だから一緒にいこうか、ギンコちゃん」
「斎藤殿!斎藤殿!」
「えっ何」
「先程の技は御見事でした!是非お時間がある時に某と果し合いを!」
「あー……えー……一応考えとく、うん」
「有難うございます!では行きましょう!」
その言葉と共に駆け出した剣士達。振り抜かれた刃に曇りはなく、傷だらけの龍の身体をそれぞれ捉えて
「暗夜剣!」*40
「木っ端みじん斬り!」*41
切り裂かれた喉を抉る様にして斎藤は刀を振るってセイリュウの首を飛ばし、残された身体はギンコによって木っ端微塵に跡形もなく切り捨てられ、セイリュウは完全に絶命した。
「是にて」
「御免!」
・後書き
そういう訳で第一陣と第二陣がごちゃまぜに落ちた結果、その場の即席メンバー3~5人で四神と戦っていくシリーズとエデン組とロストキリギリス本編組との戦いと藤堂 奈津子と石 亜南の戦闘が控えています。暫くこんな感じの戦闘が連続で続くと思うのでペースは落ちるかもしれません。いい感じの展開思いついたら速く仕上がるかもしれません。俺達の戦闘展開構築はこれからだぁ!
・今回の戦い
<東堂&杉本(withシトナイアシリパ&狼ホロケウ)vsゲンブ>
白兵&転移系担当の藤堂とサマナーの杉本(仲魔はシトナイとホロケウ)、タルンダ先輩でDDSAT1の隠しボスであるゲンブに挑んだ感じの戦い(増援もあるよ)。全員第二陣のメンバーだったので恐らくこの3人は落ちる前も大分固まって動いていたものと思われる。メンバーはざっくり此方で選定した上でダイス振ったらゲンブが出たのでバトる事に。全員物理攻撃持ちで肝心のゲンブが物理に強くて魔法リフレクトもちょくちょく使ってくるとかいう微妙に相性の悪いマッチアップだったので総攻撃を利用させて貰いました。色々まだビルドの中にあるスキルで使えてない物もあるのでその辺りは追々。ちなみにDDSATにおけるBS無効の裁定はなんかwikiとかにも効くような記載があったというのが考えの発端で動画とかでも確認が取れてないのでもし違ったら私は腹を切りまぁす!!!
<桐条&斎藤一&ジョンス&月鰐ギンコ&ルシエルvsセイリュウ>
氷結ペルソナvs氷結ボスの戦い。耐性的にはセイリュウの方が上だがガードキルによって割られて撃沈した。面子は桐条以外は全員前衛寄りだがルシエルは魔界医師という設定が付与されてたので作者の都合によって三種の神器を背負わされた挙句に後衛に行かされた。治癒士として頑張ってくれ給え。戦いとしてはBS無効をすり抜けた緊縛によって確定クリを誘発してからの物理連打で勝利という流れ(ちなみにDDSAT2にも緊縛は存在する。敵専用技っぽいし、万能っぽいので多分ボスにも記載がなかった)。
・キャラ紹介
此方では今回使用させて貰ったゲストキャラのビルドを幾つか置いておこうと思います。出てないキャラは多分まだ出す機会があるのでその際に。飽く迄此方のロストキリギリスにおける性能で簡易ビルド故のガバもあるので適時変えて頂いて大丈夫です(ロストキリギリス本編主人公より先にビルド公開する謎)。後は【あつまれ人類悪】組に関してはスレにおいて出された設定文も載せさせて頂きます(原案って事で)
<警察官>杉本佐一Lv65(物理・銃撃に強く、精神・破魔・呪殺無効):
剣:鬼丸の太刀(攻撃力205・命中51で前列単体に2~3回攻撃を行う剣武器。とある筋から譲ってもらった)
銃:ナックルブラスタ(攻撃力60・命中50・前複4~6。店売り)
猛反撃(DSJ)・不屈の闘志(真4)・三分の活泉(シリーズ共通)・会心(真3)・コロシの愉悦(真4)
・仲魔
<幻魔>シトナイLv63(火炎耐性・氷結耐性・破魔無効・呪殺耐性):
精霊召喚(P2)・真空斬り(200X)・天罰の弓(200X)・メディラマ(シリーズ共通)・スクカジャ(真3)・ラクカジャ(真3)・デクンダ(真4)・道具の知恵・癒
<神獣>ホロケウLv61(物理耐性・火炎弱点・氷結無効・破魔耐性・呪殺無効)
虚空爪激(真4F)・冥界破(真4F)・アイスブレス(真1)・雄叫び(DSJ)・タルカジャ(DSJ)・会心の眼力(真4F)・デカジャ(真4)・スピードスター(D2)
杉本の方はパッシブのみ搭載しているサマナー。データは不死身の杉本にちなんで反撃系と耐久系、後は通常攻撃強化の会心系で揃えている。本編では多分シトナイしか出していなかったがそれだけだと寂しいので杉本とアシリパシトナイの間に挟まっても大丈夫(リパ杉強火勢)な悪魔を選定した結果、狼が選ばれました。ホロケウはアイヌ語における狼で、種族の神獣はアイヌにおける狼神格化によるものです。2体のスキルはオリジナル悪魔だし、2体しか居ないしなので御魂合体もしてる前提で使い勝手の良い感じでシトナイの方は好きに弄って、ホロケウの方は何故かフェンリルのスキルを参照しながら好きに作りました。
<警察官>斎藤一Lv63(銃撃に強く、斬撃・破魔・呪殺無効)
デスバウンド(200X)・不動剣(200X)・暗夜剣(200X)・真空斬り(200X)
縮地Ⅲ(200X・闇のプロファイル)・防御Ⅲ(200X・闇のプロファイル)・無形(消力Ⅲ)(200X・闇のプロファイル)・カバー(200X)
パッシブ:食いしばり(真4)・韋駄天の覚え(真4。速+20)・特定のスキル強化(防御Ⅲ)(200X)
剣士が多すぎてビルドに困った人。取り敢えず困った時は200Xを軸にしがち、データが多いのは神。取り敢えず使い勝手のいい剣技を一通り覚えた上でカバーと防御、縮地で隙を無くしている。寂しいので消力を原作再現で無形にしてしまった罪を許してほしい。パッシブは凄いざっくり作ったのでこれが適切なのかは分かりません。突貫ビルド故のガバって奴ですね。
【あつまれ人類悪】
名前:月鍔ギンコ(異世界サムライ)
クラス:〈武術使い〉
【C-N】
設定レベル:65
経歴: 原作とは違って死にたがりでは無い為情報収集はちゃんとするケイケンチーに飢えている
サムライやニンジャに憧れて動画で公開されてる武術を良く見ている
趣味はアニメ、漫画、ラノベ等の戦闘術を現実に落とし込む事
<サムライ>月鰐ギンコLv65(物理に強く、破魔・呪殺無効)
一刀両断(デビサマ)・木っ端みじん斬り(デビサマ)・マッハ突き(デビサマ)・血祭り(デビサマ)
稲妻斬り(デビサマ)・虚空残波(デビサマ)・挑発(デビサマ)・威嚇(デビサマ)
パッシブ:食いしばり(真4)・サムライの心得(P5R)・不動心(P5R)
剣士多すぎたけど特色があったのであんまり困らなかった人。一刀両断がデビサマ出典だったのでアクティブ系は全部デビサマ系で揃えました。結果的に剣技・槍・突撃の2~7回攻撃を持って、挑発・威嚇を持っているという凄い尖ったビルドになりましたが彼女らしいのでよしとしました。パッシブは雰囲気で強そうでギンコちゃんが持ってそうなの選びました。ざっくりです。
【あつまれ人類悪】
名前:ルシエル(聖者無双)
クラス:〈ドクター〉〈剣士〉
【N-N】
設定レベル:50~60
経歴:戦う魔界医師。高位悪魔の呪いを受け何故かインポになってしまった男。
呪いを解き再び趣味の風俗通いをする為、そして風俗店を守るため強大な悪魔へ立ち向かう。
医者は後ろに引っ込んでろ? うるせぇなら俺のイチモツを治せよ! と返すのが定番。
<治癒士>ルシエルLv66(BSに強く、神経・破魔・呪殺無効)
乱入剣(200X)・火炎斬(200X)・真空破(PQ1)・テトラジャ(200X)・
メディアラハン(200X)・アムリタ(デビサバ)・サマリカーム(200X)・適切な処置Ⅲ(200X)
パッシブ:ケアマネージャー(200X・闇のプロファイル)・ソードブレイカー(PQ1)・魔法耐性(200X)
(お前の前衛の席)もうねぇから!。元ネタと魔界医師という設定と剣士という設定を併せた結果、取り敢えず三種の神器を積めばいいと雑な思考でこういう構成になった男。メディアラハン使える人間がそもそも使えるので多分一生後衛だと思われる。パッシブも後衛向きにしました。ちなみに神経無効でBSに強いのは彼が高位悪魔によってインポにされた時の弊害です。インポマンになると引き換えに得た強さという事になりますね。
<シャドウ使い>桐条美鶴Lv71(火炎弱点・氷結無効)
使用ペルソナ:<女帝>アルテミシア(lv71までに覚えるスキルから8つ)
・主要なスキル群(基本ここから8つで他に使えそうな物があればそれも追加)
ブフダイン(P3)(敵単体に氷結属性の大ダメージを与え、確率で凍結状態を付着させる)
マハブフダイン(P3)(敵全体に氷結属性の大ダメージを与え、確率で凍結状態を付着させる)
氷結ガードキル(P3)(敵単体の氷結耐性を通常耐性にする。)
サロメの口づけ(PQ2)(敵単体を高確率で《魔・力・速の封じ》状態にする)
スケアクロウ(P3)(1列を中確率で≪速封じ≫状態にする)
ナイアーム(P3)(1列を中確率で≪力封じ≫状態にする)
マカジャマ(P3)(1列を中確率で≪魔封じ≫状態にする)
氷結ブースタ(P3)(氷結属性攻撃の威力が増加する)
コンセントレイト(PQ2)(3ターンの間、自分の魔法攻撃を1度だけ三倍に上昇させる効果を付与)
真・束縛の心得(PQ2):(対象への封じの付着率UP・大)
女王の一刺し(PQ2)(弱点を突いた時のダメージUP・大)
武器:ブリューナク(攻325・命92。魔+3効果)
防具:バトルレオタード(防106。魔+4効果)
アクセ:ヴァルナバングル(氷結属性攻撃の威力が大幅に増加する)
桐条のお嬢。氷結使いだったがPQ2の採用によって結構範囲が広そうな状態異常技を複数覚えている。攻め手が増えたのでもうテンタラフーとはおさらばだ!あ、武器・防具・アクセは適当で雑に魔を上げて氷結の打点を上げています。
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ヨコハマ事変 魔女/剣士
「君がウリック・ヤードか」
「おや、エリヤさんからでも聞かされたかい?」
「そういう口調なのは昔から何だね。よく聞いている」
「結構昔話でもしてくれたみたいだな、あの人。嬉しいねぇ」
ウリック・ヤード。エリヤの妹のアンナの幼馴染の男の子であった存在であり、今は恐らくガイア再生機構の構成員。此方に向ける視線に含まれる感情には敵意や害意は含まれておらず、一種の親近感や感謝すらその瞳にも籠っていた。だが、此方に突きつけられた凶器が彼がどういう立場で僕の目の前に立ち塞がっているのかを雄弁に物語っている。
「質問、幾つかいいかな」
「答えれる事なら」
「君はどういった理由で此処にいる?」
「上の命令って所かな。此処の用心棒を任されてね。とはいっても退屈な日々だったが」
「その上とやらには何故従っている?」
「ちょいとやむを得ない事情って奴さ。俺達はあそこの支援なしでは生きられん。だから従っている」
「その支援とやらを此方で受け持つことは可能?」
「不可能だ。悪いが、交渉の余地はない」
それだけはきっぱりと彼は言い切った。表情には憂いが見れて、此処にいるのも或いは戦っている事さえ本意ではないように見受けられる。
「俺と……アンナの目的はエリヤさんの身柄を生きたまま確保する事だ。そして、その結果としてエリヤさんは死ぬ事になるだろう」
「それは避けられないんだ」
「ああ、そしてお前さんはそれを許容できない筈だ。戦力としても或いは感情としても」
「……」
「エリヤさんがお前さんを見る時、ああいう目をしてるって事はきっとお前さんは良い人なんだろう。あの人のこれまでに何があったのか、俺はそれを知っている。だからこそ、お前さんのような人に拾われて心の底から良かったとそう思っている」
それでも彼が僕に突きつけている大剣に揺らぎはない。僕の気が一瞬でも緩めば、切り捨てられるのは間違いない。
「
「勢い余って殺したら大変って訳だね」
「お前さんは1回殺して死ぬようなタマじゃないだろう。殺した後に蘇生すれば問題はない」
会話が止まり、辺りが静寂に満ちる。お互いのスタンスは理解した。ウリックが親切に色々話してくれたのもそれを示したかった故なのだろう。少し話してみた感じ……その言葉に嘘はないし、エリヤが話したウリックの人物像にも一致している。詰まる所、性格にあまり変化はなく此処まで言っている事は恐らく全て正しい。
最後にエリヤを見た時、彼女の傍には由奈がついていた。彼女の安否は由奈に任せるしかなく、僕も僕に出来る事をやるしかない。
「質問は終わりでいいかい?」
「もっと聞きたい事はあるけど……お互い時間はなさそうだしね」
「そうだな。んじゃま……」
その視線に明確な殺意と敵意が宿る。快活な笑みは獲物を狩る肉食獣のような凄惨な物へと変わり果てた。僕もまたアセイミナイフを構えながらMAGを迸らせる。
「おっぱじめるかァ!」
「来い!」
\カカカッ/
剣士/サマナー | ウリック・ヤード | Lv85 | 耐性不明 |
\カカカッ/
堕天使 | 流出のゴモリー | Lv83 | 耐性不明 |
\カカカッ/
熾天使 | 創造のフラウロス・ハレル | Lv82 | 耐性不明 |
\カカカッ/
龍神 | 創造のケツァルコアトル | Lv81 | 耐性不明 |
\カカカッ/
ウィッチ(♂) | 久遠 フェイ | Lv83 | 全てに強く破魔吸収。技・火炎・氷結・呪殺反射。BS無効*1 |
\カカカッ/
女神 | ラクシュミ | Lv81 | 破魔反射・衝撃無効・バッドステータス無効*2 |
\カカカッ/
神獣 | バロン | Lv79 | 物理耐性・破魔・呪殺無効。全ステータス異常無効(BS無効)*3 |
\カカカッ/
破壊神 | カルティケーヤ | Lv81 | 銃反射。物理・破魔無効。呪殺耐性*4 |
・各配置
前衛 | ウリック | ゴモリー |
後衛 | フラウロス・ハレル | ケツァルコアトル |
前衛 | カルティケーヤ | バロン |
後衛 | フェイ | ラクシュミ |
双方の召喚によって戦いの狼煙は上げられ、戦闘態勢へと移行する。此方はラクシュミ・バロンにレイドバトルの後に新しく作り、御魂合体もある程度完了させた孔雀を騎獣とする軍神カルティケーヤを召喚。
ウリックは堕天使ゴモリーに熾天使フラウロス・ハレル、龍神ケツァルコアトルを召喚する。ゴモリーとケツァルコアトルはそれなりにメジャーであるし、聞いたことがある類の悪魔だがフラウロス・ハレルに関してはデータがない。それに熾天使という種族に関しても同様に聞いた事がない、大天使ではないのか?
そして、召喚された悪魔達から感じられるレベル以上の強大なオーラと悪魔に付随した二つ名のような物。その正体こそが恐らく
レルムにおける戦いにてあのラクシュミ達が落としたとされる用途不明のルーンストーン。所謂、悪魔の転生であり、ルーンストーンを用いて悪魔をレベル1にした上で<祝福>を刻み込む。<祝福>によって悪魔の能力値は上昇し、その段階に応じて二つ名を与えられるというそんな話だ。
その段階は大まかに深淵・活動・形成・創造・流出、そして無から無限に最終的に無限光に至るとされている。そう聞いただけで実際どうかは分からないが奴の悪魔はゴモリーが流出に、他2体が創造に至っている。ゴモリーから発せられるMAGの感覚は凡そ90後半以上、他2体は約90前半。
成程、話を聞く限りではレベルダウンが重すぎてこの切迫した環境においてはほぼ使える者はいないと思っていたがエデンのような周回を続けている組織ならば安定した育成環境が用意できる。
その反面、サマナーであるウリック・ヤードは装備の効果等も含めないのであれば85そのままに感じられていた。エデンの構成員のレベルと比例しない高い能力の仕組みがデビルリユニオンによるものなのであれば、ウリックは純粋な人間であるか別の何かしらが存在するかの2択になる。
この情報を齎したのはラスキン老であり、此処に来る数日前にデビルリユニオンそのものとそれが広まる事についての危険性について説明を受けた。取り敢えず広まった際の対策として宝石を揃える事による能力値上昇の事柄をさらに拡散させた上で、悪魔由来の宝石そのものを集めやすい環境或いは市場に流通させる為の宝石自体を事前確保しておくという案を出して、その場は解散となった。色々他にも話はあったがシロエさんも含めて対応できる状況にない為に断念した。
全知なる導き | D2出典。ゴモリー専用。 ターン開始時、次の連動効果が発動。 「生存中の味方全体の強化段階があるスキルの強化段階を1増加させる。」。 「味方全体のステータス弱体化効果を解除し、敵全体のステータス強化効果を解除する。」 |
ゴモリー思念融合 | D2出典。 以下の効果をゴモリーは思念融合によって得ている。 1,状態異常になる確率が80%減少する。 2,1ターン目開始時、連動効果が発動。 「生存中の味方全体の「スキル使用時に強化段階が増加するスキル」の強化段階を1増加させる。」 3,回復スキルのHP回復量20%増加。最大HPが20%増加。 |
賛美の光輪 | D2出典(劣化)。フラウロス・ハレル専用 破魔貫通(D2)を得る。 自ターン開始時、連動効果「自身をリディア状態にする」が発動し、 強化段階が1増加。※連動効果は、自ターン開始直前の強化段階に依存。 【強化段階:1】呪い無効を得る 【強化段階:2】リディアの対象が味方全体に変化 代償:強化段階:3が消失。このスキルはスキル枠を3つ消費する リディア状態※D2:3回行動するまでの間、手番が来た時にHPを回復する(回復量は約15%)。 |
ゴモリー、フラウロス・ハレルが持つ権能に近い能力。僕も初めて見るがその力はデカジャ・デクンダの自動化、そして破魔貫通とそれに付随しての自動回復効果。発動タイミングが決まっているようだが此方としても非常に困るスキルだ。相手は緊急に迫られなければ通常のデクンダ・デカジャ或いは回復でさえ手番を使う必要がないのだから。
「随分と強力な悪魔だね。何か仕組みがあるのかな」
「さて、どうだかな」
レベルは凡そ同格だがデビルリユニオンの影響で悪魔の強さはウリック側が数段上と捉えた方がいいだろう。ウリックも恐らくステータスの差によって上を取ることができる
スピードスター | D2出典。悪魔のバトルスピードへの影響が50%増加する。 |
ラスタキャンディ | DSJ出典。味方全体の攻撃力・防御力・命中・回避率を上げる。 |
が、最初に仕掛けたのは此方のカルティケーヤ。
「随分と速いな。ならこうしよう、ゴモリー」
『良いでしょうサマナー。貴方の未来は私の加護と共に』
貴婦人の加護 | D2出典。ゴモリー専用。 1ターンの間、味方全体の攻撃力・防御力・回避と命中を20%増加させる。 このスキル使用時、強化段階が1増加。 【強化段階:1】スキル効果に「1ターンの間、敵全体の攻撃力・防御力・回避と命中を20%減少」が追加。 【強化段階:2】追加効果も含め、ターン数が3ターンに変化。 現在の強化段階は2である。 |
ゴモリーが放った此方と同様の強化魔法。しかしそれはターン制限があるとは言え
「さて、そのまま仕留めるか。ケツァルコアトル」
道具の知恵・癒 | 戦闘中に回復・補助アイテムが使用可能になる。 |
精神向上の札 | P5R出典。魔法攻撃力を1度だけ2.5倍にする |
加護を身に纏ったケツァルコアトルが続け様に動いていく。
ウリック陣営 | 全能力+1。*5フラウロス・ハレル【コンセントレイト状態】) |
フェイ陣営 | なし |
「撃て」
全能力が向上し、魔法倍化の強化を受けたフラウロス・ハレルがその真っ白な獣の身体に生えた翼を羽ばたかせながら両手に光を宿す。
破魔ハイブースタ | D2出典。破魔属性で与えるダメージが25%増加 |
洗礼を受けし者 | IMAGINE出典。フラウロス・ハレル固有特徴。 神の力によって天使の姿を取り戻した悪魔。 全魔法無効確率がLv×0.5%上昇する。 破魔相性のスキル使用時、威力が100%上昇する。 ラピッドスキル使用時、威力が30%上昇する。 |
ハプテスマ | D2出典。代償効果付与。 敵単体に破魔属性の魔法型ダメージを威力170(特大ダメージ)で与える。 このスキルによるダメージは死亡時にふみとどまるスキルを無視する。 このスキルで敵を死亡させた場合、その敵は復活が出来なくなる。 攻撃成功時、「賛美の光輪」の強化段階が1増加する。 代償:このスキルは3ターンに1回までしか使用する事が出来ない |
僕に放たれた絶対的な死を齎す破魔の光弾。冗談なしに受ければ一発で死に至り、蘇生も出来ない代物で食いしばりの一種である<電気ショック>によって耐えるのも不可能。少なくとも誰かが犠牲にならねばならず
友愛の加護 | ソルハカ_忠誠度。忠誠度:5の性格:友愛における効果。 サマナーのHPが0以下になるダメージを受けるとサマナーを庇って、身代わりとなる |
『酷くしんどそうな戦いなので1抜けさせて貰いますね?』
初見のそれを庇いに行けたのは同じ後衛のラクシュミのみ。僕の前にてカバーを行った彼女は一撃にてその身体を諸共に光で焼かれて消滅し、その反面ウリック側にはその光の反射にて
「お前さんが焼ければそれでよし、隣のラクシュミが庇って焼けれればそれでよし。後者になった訳だが、お前さんも悪魔に随分慕われてる」
「ビジネスライクさ。嫌われないように気を付けてるけどね」
冷や汗を流しながら会話を進めて、ソウルリンクによるMAGの繋がりにて次に動く事が出来るバロンに指示を飛ばす。
ふういんのうた | 魔神1出典。距離1の敵1体に通常攻撃の25%のダメージとCLOSE(100%)を与える(物理相性として裁定する) |
敵の後衛へと飛び出したバロンが口から放ったのはほぼ確実に敵を
『……』【HIT!】【CLOSE】
魔封状態 | 魔神1出典。状態異常。魔法を使えない状態。かかったターンを除いて3ターン目に自動回復する |
音波は無事に命中。物理耐性・魔封耐性もない。運が良い。
「流石に対処してくるか。出遅れたが仕方ない」
ブレイブハート | DSJ出典。コマンダースキル。使用から3ターン、味方全体を状態異常、弱体効果から守る(デカジャは防げない)。再び使用するのに5ターンの経過が必要。 |
ウリックが使用したのはデモニカスーツに搭載された機能であるコマンダースキル。特に<ブレイブハート>は厄介な代物で状態異常や
「これでお前さんの手は大体潰した。速攻やろうとしてもラクシュミが堕ちたのはきついだろ」
「……みたいだね」
敵味方共に凡そ動いた、状況を整理する。此方はラクシュミが堕ち、バロン・カルティケーヤは健在、バフはなし。敵はフラウロス・ハレルに魔封が、それ以外は万全、全能力強化のバフが1段階。盤面上ではまだ拮抗しているが実情はそうではない。敵の悪魔のLv90以上の高いステータスに
マッスルドリンコ(PT) | IMAGINE出典。消費アイテム。60分間、パーティとその仲魔の最大HP+50%。ウリックが戦闘開始前に使用済み |
大地の祝福 | NINE出典。1カウント毎にパーティ全員のHPが1/5(20%)ずつ自動的に回復する。ケツァルコアトルが所持するスキル |
特殊な薬物、恐らくマッスルドリンコによってさらに増幅された敵の
ターンを跨ぐの強化・弱体は意味がなく、回復は自動的に行われる上に今は状態異常・弱体効果も通用しない。攻撃面はフラウロス・ハレルの破魔貫通による魔法爆撃に由奈が観測した非常に攻撃に特化したウリックの
まだ見せていない伏せ札も幾つかあるだろう。手番を使わないスキルで生まれたアドバンテージをそのまま叩き付けて、万が一に返されても稼いだアドバンテージを利用して反撃すればその隙をついて凡その敵は打倒できる、そういうスタイルだ。
ウリックが僕を生け捕りにするというのもこの戦力ならばそう難しい話ではない。地力も手数も違うのだ、現状のままでは勝てる訳がないのは猿でも分かる。故に僕は
「改めて降伏でも促そうと思ったが……どうも、そういう雰囲気じゃなさそうだな。戦力差は明らかだろうに」
ウリックが此方を見ている。余裕そうな口振りだが、其処に一切の油断はない。
「負けられない理由があるからね」
「うちの上は従順な奴には寛容だ。少々問題がある久遠 由奈だってお前さんが居れば制御は可能だろう」
「でもエリヤは其処には行けない。大方そっちのアンナさんが生きる為にエリヤの命が必要とか、そんなんなんでしょ」
「……勘が良いな」
「当てずっぽうだったけどね……まぁなら猶更さ。君にとってアンナさんの命が何より優先されるなら、僕にとってもエリヤの命は優先される。大切な仲間だからね」
「斬りたくない理由が増えたな。斬らなきゃいけない理由は増えたが」
「お互い様でしょ。じゃ、其処は通してもらうから」
「やれるもんならやってみろよ」
深呼吸をして息を整える。ウィッカとして戦っても彼には勝てない。現状の敵の土俵では戦う事すらままならない。それを覆す為に行う事。
「
\カカカッ/
邪龍 | セト | Lv79 | 銃・投具・氷結・電撃に強く、破魔・呪殺・精神・神経・魔力無効*8 |
ラクシュミの残滓をCOMPに格納して召喚されたのは邪龍セト。これで3体目。
「
\カカカッ/
邪神 | マダ | Lv77 | 火炎吸収、破魔・呪殺無効。精神・神経・魔力耐性*10 |
前衛 | カルティケーヤ | バロン | セト |
後衛 | フェイ | マダ |
死亡 | ラクシュミ(復活不可) |
「馬鹿な、4体目だと」
「色々と、ムリすれば行けるって事さ」
僕の身体に与えられた悪魔戦闘における才能は大きく分けて二つ。ウィッカを含む魔法技能に悪魔を使役するサマナー技能。僕が実の所、特化しているのは前者の魔法技能の方でサマナー技能の方には正直言って限界がある。僕の通常の制御限度数は3体でそれ以上の悪魔を召喚しようとした場合、4体召喚というMAGの負荷に身体が耐え切れずにまともに身体が動けなくなるという縛りがあった。それは人それぞれに存在する物であり或いは使用しているシステムによって規定される場合もある*11。通常、この制御限度数を超えての召喚は出来ない。出来たら多くの人間が使っているだろうし、出来たとしても僕のように負荷に耐え切れない。
だからこそだろうか、限界を超えて一種の切り札としてそれを利用しようと考えたのは。その発想に至ったのは1年ほど前だったがレベル20といったLvの低い悪魔を4体召喚する事で負荷を減らす等して今に至るまでに限度を超えた召喚に身体を慣らしていった。
ある程度形には出来ていたものの、きっかけがなかった故にそれの使用に踏み込むこと自体は出来なかったがその過程でラーヴァナと相対して自身の全てを懸けても打倒が難しい敵が己の運命に関わっている事を知ってしまった。彼らから逃げれば戦わずに済むかもしれない或いは一人と仲魔達だけで戦おうとしなければこれは無用の産物なのかもしれない。
だが、一人で戦い勝たなければならないその瞬間が今まさに来ている。
「そうしなければ勝てないのなら、迷う必要はない」
同時召喚制限:フェイ |
出典なし(オリジナル)。許容範囲外の悪魔を召喚する際の制限。 この制限はフェイ個人のものである為に他者がどのような物かの定義は行わない。 通常、フェイが召喚する事が出来る悪魔の数は3体までだがそれを4体、5体と拡張させる。 召喚数が増加する程に召喚者にはマグネタイトの使用に大幅に制限が掛かり、マグネタイトの消費量も増加する。4体召喚の場合はフェイのスキルによる攻撃のダメージは半分になり、4体召喚中のターン終了時に最大MPの10%のMPを失う。5体召喚の場合はフェイは一切のスキルを使用できなくなり、5体召喚中のターン終了時に最大MPの15%のMPを失う。4体・5体召喚中にフェイのMPが0になった時、フェイは死亡する。 |
1体の拡張を行った4体召喚から、キョウジさんやアイバさんといった純粋なまでに強大なサマナーが用いる5体召喚にまで手を広げた召喚制御数の拡大とそれによる
4体目は召喚できた。心拍数は徐々に増大し、身体は重いが何とか維持は出来ている。僕はまだ戦える。
「セト、マダ!」
ウアス | D2出典(劣化)。 敵単体にクリティカル率50%の 貫通(真4式)を得た物理or衝撃属性の特大ダメージを与える。 そのダメージの50%分、自身を回復する。 属性は状況によって自動で選択される。このスキルによるダメージは属性貫通を得る 劣化効果:貫通効果が劣化 |
トリスアギオン | 真5出典。敵1体に火炎属性の大ダメージを与える。相性を無視して貫通する(反射まで) |
セトの翼より放たれた真空破、マダの手から放たれた炎がウリックに命中する。
生存技術 | IMAGINE出典。生存能力に関わる技術。 必殺(クリティカル)を受けにくくなり、防具の消耗を緩和する。 |
どちらも消して低い威力ではないがウリックの命までは流石に届かない。この攻撃もまた回復される以上は一転攻勢する機会は必要になるだろう。
「……」
ウリックの険しい、此方を警戒した視線が僕に突き刺さる。
メシアライザー | 味方全体のHPを全回復し、死亡以外の状態異常を回復する |
先手を取ったのはウリックのケツァルコアトル。これはフラウロス・ハレルの魔封を解除するための物だろう、ウリックも先程の攻撃で多少HPが削れていたのもあるだろうが。
『実質初陣で此処まできつい戦場に出されるとは思ってなかったよボク』【ラスタキャンディ】
『コレモカンキョウガワルイ。コラエロ』【テトラカーン】*13
対する此方はカルティケーヤの<ラスタキャンディ>、バロンが<テトラカーン>を使用して攻撃に備える。
『お生憎ですが、それは此方も想定済みですので』【道具の知恵・癒】*14【テトラハンマー】*15
その時点で敵のゴモリーが行動し、<テトラハンマー>にて此方の<テトラカーン>は割られた。少なくとも由奈が戦った時と同様にウリックが持っている大剣は飽く迄反射までしか対応していないようだ。
マハンマダイン | D2出典。敵全体に破魔属性の特大ダメージを与える。威力はメギドラオンと同等である |
そうして僕達に降り注がれたのはやはり用意していた
「ッッ……!」
とはいえ此方も80lv前後のサマナーと悪魔だ。その一撃自体はギリギリという所で耐える事は出来る。そう、これに関してはだが。
「さて、何処まで耐えられる!」
武器知識 | IMAGINE出典。 近接戦闘における武器知識を得ている事の証明。以下の効果を常に適用する。 ・近接攻撃力・必殺発生・必殺抑止が上昇する。 ・ラッシュ・スピンの詠唱時間-10%、ガード・カウンターの詠唱時間-20%する。 |
勇敢王 | IMAGINE出典。 両手剣の扱いを特化させるスイッチスキル。 両手剣装備時に近接攻撃力+50%する。 本来はラッシュにのみ特化したスキルだが研鑽により 効果が強化&デメリットが消失している。 |
ランページ | IMAGINE出典。 暴力的なまでの力を身につけ、主に近接で効果を発揮する戦闘エキスパート。 以下の効果を常に以下の効果を常に適用する。 ・全てのスキルのHPコスト-25% ・武器依存相性スキルの効果+25% ・アタック・スピン・ラッシュ・カウンターの 威力+20%・クールタイム-25%。装填数+1。 |
アウトブレイク | SH2&IMAGINE出典。 両手剣:アウトブレイク+武器COMPで改造済み。 物理貫通★(反射まで貫通。テトラカーンは不可)。 物理ブースターⅢ(通常攻撃以外で物理弱点を突いた時にダメージ+50%)。 モノノフⅢ(物理攻撃クリティカル率アップ)を搭載。 武器事態に与近接ダメージ+10%効果 |
トリニティレイダー |
遠心力によって真空の刃を生み出し、より多くの攻撃を加えることができる特技。相性は武器依存(物理)。1度の詠唱で3発分(ランページによって4発分)の装填を行い、使用者の前面にいる敵に対して、近接攻撃力に依存した物理ダメージを与える。 |
追撃の悟り・近接 | IMAGINE出典。 術者が武器を用いて攻撃を行った際に 近接攻撃力に依存した追撃ダメージ(物理相性)を与える。 追撃ダメージは元のダメージ数値より計算され、 元のダメージ数値を超えることはない |
<テトラカーン>が解除された事によって続いてウリックが動く。手に持った大剣を軽々と振いながら一瞬のうちに四発の斬撃破を形成して此方の前衛を薙ぎ払う。後衛である僕とマダにはギリギリの所で届いておらず、前衛と後衛に完全にポジションを分けたのだが正解だった。
カルティケーヤは1発は耐えた物の2発目で撃沈。バロンは2発何とか耐えて<食いしばり>を発動させたものの3発目で撃沈。セトは<ラスタキャンディ>と<龍の反応>*17によって回避に成功する。
「
\カカカッ/
国津神 | アラハバキ | Lv80 | 神経・精神無効。破魔・呪殺・魔力反射*18 |
\カカカッ/
鬼女 | ランダ | Lv75 | 物理・銃・火炎反射。地変・電撃・即死無効。バットステータスに強い*19 |
死亡したバロンを送還して召喚したのはランダとアラハバキ。これで5体召喚。
「っぐ、ぉぇ……っ」
召喚の負荷は召喚数が多ければ多い程に増加していき、4体召喚と5体召喚では負荷のかかり具合も大きく変わってくる。4体召喚では使えていたスキルが5体召喚では一切使えないという事はそれ程負荷がかかっているという証拠であり、戦闘時でアドレナリンによる脳内麻薬及びサバトマと同時に身体に差し込んだ僕が調合した専用のブーストドラッグがなければ苦痛だけではなく臓器が破裂して戦闘続行自体が危ぶまれていたのかもしれない。加えてLv70~80代の5体召喚自体も初めてだった。
心臓が今にも爆発しそうな程に動いて、関節の節々を動かすだけでギリギリと軋むような痛みを感じる。目の血管が破裂したのか血涙が目を満たして視界が不明瞭。血が混じった吐瀉物を吐き出して、脳に釘を撃ち込まれたかのような苦痛も何とか耐え切る。それが例えやせ我慢だったとしても
「戦う分には、支障はない……!」
「ははっ……こっちの想定以上にイカレてるなお前さん!」
呆れたような、心配するかのような乾いたウリックの声が妙に耳に入った。状況は左程悪くない。今の被害も想定内だ。思考を纏めながら残りの悪魔達にも指示を出す。
メディアラハン | 真5出典。味方全体のHPを全回復する |
サマリカーム | 真2出典。味方単体を死亡から復活させ、HPを全回復する。 |
マダの全体回復からのアラハバキによる<サマリカーム>でカルティケーヤを蘇生させる。
ディアジャマ | 敵単体を回復効果が受けられない状態にする。 これは状態異常ではない。魔力相性 |
ランダ_思念融合 | 1,状態異常にする確率が10%増加する。 |
そして、状態異常ではない
前衛 | アラハバキ | カルティケーヤ | セト |
後衛 | フェイ | マダ | ランダ |
死亡 | ラクシュミ(復活不可)・バロン |
ウリック陣営 | 全能力+1(残り1ターン)。 フラウロス・ハレル【ディアジャマ(回復阻害)】 |
フェイ陣営 | なし |
「どうも侮りがあったのは俺だったらしい。それは認める。だから」
速攻戦型 | DSJ出典(オートコマンダースキル)。発動ターンは味方全体が敵より先に行動できる。 |
「一息に楽にしてやるよ」
「そうか、それもあるのか」
ウリックと敵の悪魔の動きが変わった。確実に先手を取られる。
『光在れ!』【マハンマダイン】【破魔ハイブースタ】【洗礼を受けし者】
最初に動くのはフラウロス・ハレル。胸部に存在する白い獣貌の口が開き、其処から発射される純白に染まった死の光線。身体を焼き切らんとする破魔を全員が何とか耐え切って
続け様に放たれたケツァルコアトルの翼より放たれた僕達を一纏めにするかのような竜巻。
「まだいける、かな!」【魔法耐性】*22【Aマックスアーム】*23
自前の魔法に対する耐性と防具の力、そして片腕を盾として扱って風圧にて複雑骨折するのと引き換えに何とか耐え切る。アラハバキは<大活脈>*24、ランダは<食いしばり>*25で耐えきって、セトは<龍の反応>による回避で対応。カルティケーヤはマダを庇って絶命した。
「さて」【武器知識】【勇敢王】【ランページ】
ウリックが大剣を構え、MAGを迸らせる。MAGの粒子が目に映る程に紅く輝き、その全てが大剣に収束した。
デッドリーブレイク |
IMAGINE出典。 両手剣【アウトブレイク】によって付加されたスキル。 特攻と同時に、マグネタイトから生成された弾丸を放ち、爆発させる特殊スキル。相性は武器依存(物理)。直線上の敵全員に対して、LVと、力~運の能力値を最大で合計1000まで加味し、近接攻撃力に依存した物理ダメージを与える。 |
追撃の悟り・近接 | IMAGINE出典。 術者が武器を用いて攻撃を行った際に 近接攻撃力に依存した追撃ダメージ(物理相性)を与える。 追撃ダメージは元のダメージ数値より計算され、 元のダメージ数値を超えることはない |
「これで終わってほしいもんだがな!」
赤い軌跡を辿りながら大剣からと共に此方に一直線に突っ込むウリック。先程の竜巻によって僕達の立ち位置も一塊に、詰まる所全員がこの攻撃の射程内に入ってしまっていた。ランダがマダをカバー、アラハバキがセトをカバー。
「……マジかよ」
「マジさ」
僕とウリックの視線が交差する。大剣の機能によって巨大化した赤黒い光刃が僕らを一薙ぎにして、ランダとアラハバキがその身を挺して他の仲魔を守る。僕は無防備にその剣を浴びようとして
電気ショック |
200X出典。即時効果。味方一人が即死またはDEADになるのを防ぐ。 但しHPが0以下になる場合は1とする。ランクⅢの為に1シナリオ3回まで使用可能。 カルティケーヤが死亡して現在は4体召喚状態なので使用可能 |
無事な腕で自身の胸を鷲掴みにして電流とMAGを流し込む。一種の指向性を纏ったMAGは召喚負荷によって思うように動かない身体を強制的に活性化した上で肉体を瞬発性のみで操作した。その横薙ぎを空中に跳び上がる事によってギリギリ下腹部が飲み込まれない所で両足を犠牲に何とか命を繋いで、追撃の一撃は複雑骨折した片腕を強引に振り回して盾として扱い、腕が塵のように千切れるのと代償にまた命を繋いだ。*26
「ッ!撃て、ゴモリー!」
切なさ乱れ撃ち | IMAGINE出典 溢れ出る切なさをエナジーの基とし、攻撃を喰らわせる特技。精神相性 1度の詠唱で10発分の装填を行い、敵1体に対して、 射撃攻撃力に依存した物理ダメージを与える。 更に低確率で対象に3ターンの間、消沈の状態変化を付与する。 |
吟詠公爵 | IMAGINE出典。ゴモリー固有特徴。 過去、現在、未来の全てを知り、それを召喚者に伝える悪魔。 召喚者の知力が30上昇し、スキルのHPコストが30%減少する。 精神相性・神経相性のスキル使用時、威力が50%上昇する。 |
最後にゴモリーが動き、僕を覆うようにして放たれた10発の魔法弾。
「……いい加減降伏しろ。蘇生すら出来ない領域で死ぬぞお前さん」
「まだ負けてないから、それは出来ない」
正直、失血死しそうなのは事実だ。両足・片腕欠損に今も召喚の負荷は残っている。仲魔達が死んで、5体召喚でない故に今はまだ意識を保てているが此処から再び悪魔を1体でも召喚すればどうなるかは分からない。もし死んだら……由奈とか真澄とか、エリヤもかな。凄い悔いを残してしまうかもしれないけど
「それでも、ここまでは最悪の想定内。此処からが勝負……
\カカカッ/
凶鳥 | フレスベルグ | Lv77 | 火炎無効。氷結吸収。破魔・呪殺・緊縛・一部の物理に強い。*28 |
\カカカッ/
天使 | ケルプ | Lv79 | 魔法に特に強い。物理無効・銃撃耐性*29 |
\カカカッ/
狂神 | テスカトリポカ | Lv82 | 技・打撃反射。破魔・呪殺無効。精神・神経魔力耐性*30 |
死亡したランダ・アラハバキ・ランダを送還して、三体の悪魔を召喚する。ケルプにフレスベルグ、そしてカルティケーヤと同様に新たに作った悪魔であるテスカトリポカ、ケツァルコアトルの対となる狂神。
『ケツァアアアアアルコアトルウウウウウウ!』
『テスカトリポカ!』
宿命のある悪神と善神の咆哮を聞きながら、5体召喚による負荷が再び身体を襲う。最早痛みは麻痺しているのか、左程感じられないが身体が金縛りを受けているかのように動かない。単純に血液が足りていないのか、もう負荷に耐えて身体を動かすほどの余力がないのかは分からない。
「ぉ゛えっ」
口から、鼻・耳からも真っ赤な血が零れる、千切れた片腕と両足の断面が燃える様に熱く其処からも血が止まらない。身体中が自分の血によって真っ赤に染まって意識も薄れかかっている。完全に意識が堕ちるその前に、仲魔達に指示を出す。
サマリカーム | 女神2出典。味方単体を死亡から復活させ、HPを全回復する。 |
精神向上の札 | P5R出典。魔法攻撃力を1度だけ2.5倍にする |
生玉 | 真4出典。味方全体のHPとMPを全回復 |
ケルプに<サマリカーム>を発動させてカルティケーヤを蘇生。<道具の知恵・癒>を持ったフレスベルグに<精神向上の札>をテスカトリポカに対して使用させる。同様のスキルを持つテスカトリポカに<生玉>を使用させて、此方の陣営の回復を行う。いざという時の切り札として持っていたが、ここ以外に使う場面もない。出血も一時的に止まり、意識も覚醒した。痛みも同時に復活したが、もうこの際口と片腕だけ動かせれば問題ない。フレスベルグの背を掴んで、這い乗って何とか最低限の機動性を確保しておく。
「こんなに真っ赤になるなら、髪も赤く染めた方がいいかな。それは、由奈にも真澄にも怒られるか」
「……」
残ったセトには次の
剣士/サマナー | ウリック・ヤード | Lv85 | 全ての攻撃に強く、破魔無効・呪殺無効。BSに強い |
堕天使 | 流出のゴモリー | Lv83 | 火炎吸収。精神反射。 突撃・打撃・電撃・衝撃・呪殺・神経・破魔・氷結無効*31 |
熾天使 | 創造のフラウロス・ハレル | Lv82 | 氷結無効・電撃無効・破魔反射・呪殺無効*32 |
龍神 | 創造のケツァルコアトル | Lv81 | 物理反射。火炎耐性。衝撃・破魔・呪殺無効*33 |
そして、相手の耐性も全て割れた。これで後顧の憂いもない。
前衛 | ケルプ | カルティケーヤ | セト |
後衛 | フェイ | フレスベルグ | テスカトリポカ |
死亡 | ラクシュミ(復活不可)・バロン・マダ・ランダ・アラハバキ |
ウリック陣営 | フラウロス・ハレル【ディアジャマ(回復阻害)】 |
フェイ陣営 | テスカトリポカ【コンセントレイト状態】 |
『サマナー、これは……』【貴婦人の加護】
「嫌な予感ってのは当たるもんだ。次に覚悟しなきゃならんのは俺達の方かもな」
『コレヲヒックリカエス!』【外法のいざない】*34
『駄目押し!』【ラスタキャンディ】
ウリック陣営 | 全強化+1。フラウロス・ハレル【ディアジャマ(回復阻害)】 |
フェイ陣営 | 全強化-1→全強化+1→全強化+2。テスカトリポカ【コンセントレイト状態】 |
此方に掛けられた弱体効果を前ターンにて行動待機していたセトの<外法のいざない>によってひっくり返し、其処にさらにカルティケーヤを<ラスタキャンディ>を差し込む。
『いい加減消えて頂く!』【マハンマダイン】【破魔ハイブースタ】【洗礼を受けし者】
既に何度も降り注いでるフラウロス・ハレルによる破魔の極光。素の状態でも耐えること自体は出来ていた以上、強化が二段階入った今ならある程度余裕を持って耐えることができる。
「デッドリー「させない!」ッ!?」
続け様に剣を振ろうとするウリックを牽制するかのようにフレスベルグに片腕だけでしがみつく僕が動く。
「もうそれは届かせない!」【宝玉輪】*35
『カジャヲケス!』【道具の知恵・癒】【デカジャストーン】*36
破魔の光に焼かれた此方の陣営を回復して、フレスベルグに<道具の知恵・癒><デカジャの石>にて敵のカジャを解除させる。
「……これはまさか」*37
「流石に勘づいちゃったか」
マカカジャ | ソルハカ1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる。 倍率は150%→250%→350%→450%まで変化する。 |
ウリック陣営 | フラウロス・ハレル【ディアジャマ(回復阻害)】 |
フェイ陣営 | 全強化-1→全強化+1→全強化+2(魔法攻撃力のみ+3で350%)。 テスカトリポカ【コンセントレイト状態】 |
ケルプが持つ最高倍率の<マカカジャ>によってさらに魔法攻撃力を強化し、打点は増強完了。
「テスカトリポカ、状況は整った。ぜんぶ呪い殺せ」
『ハッハーッ!!!』
呪殺バッデス | D2出典。 呪殺属性で与えるダメージが15%増加し、状態異常にする確率が15%増加する。 |
二の葦の生贄 | D2出典(劣化)。テスカトリポカ専用。 呪殺貫通(真4式)を取得。呪い状態の敵に対して与えるダメージが50%増加。 以下効果秘匿。 |
闇夜の瘴煙 | D2出典(劣化)。テスカトリポカ専用 敵全体に呪殺属性の特大ダメージを与え、 ヒットした敵を基礎確率50%で呪い状態にする。 ダメージ量はメギドラオンと同等。 代償:連動効果が消失&状態異常確率減少&3ターンに1回しか使用できない。 |
マカカジャ+3(350%)×精神向上の札(2.5倍)×呪殺バッデス(115%) | 合計:約1000% |
莫大なまでに積み上げられた強化と呪殺耐性を貫く呪殺貫通。そこからテスカトリポカより敵陣にぶつけられた光も通さない闇の色をした瘴煙の渦。
『力及ばず……ッ!』【DEAD】
『悍ましい…!』【DEAD】
「-ッ!」【カバー(手番放棄)】【DEAD】
ゴモリーとフラウロス・ハレルをまず呪い殺し、続け様にケツァルコアトルが闇に触れる直前にウリックがそれをカバー。剣でケツァルコアトルに降り掛かる闇を切り払ったものの自身も闇に呑み込まれて、ウリックもまた絶命する……その間際に奴は叫んだ。
「やれ、ケツァル、コアトル……!」
『オオオオオオッ!』
セアカトルの再臨 | 死亡している味方全体を完全回復状態で復活させた後、3ターンの間、味方全体の攻撃力・防御力・回避と命中を20%増加させる。思念融合によってこのスキルは戦闘中3回まで使用可能 |
その瞬間に発動したのはケツァアルコアトルの2つ目の権能。それは
「これで再び形勢は……ッ!」
「
二の葦の生贄 | D2出典(劣化)。テスカトリポカ専用。 呪殺貫通(真4式)を取得。呪い状態の敵に対して与えるダメージが50%増加。 敵がスキルによって復活したとき、連動効果が発動。 「敵全体に現在HPの50%の割合ダメージ(最大2000ダメージ)を与え、 敵全体を基礎確率80%で呪い状態にする。」 (この効果はターン中1回まで、戦闘中3回まで発動する物とする) 代償:スキル枠2つ消費&呪殺貫通が弱体化&効果が一部消失&制限 |
そして、蘇生した彼らに対して発動したのはテスカトリポカの劣化した
「何にせよ、やっとここまで追い詰められた」
「……ここまで全部計算ずくか?」
「まさか、手探りだよ。その力を持ったテスカトリポカだって合体事故で偶然生まれたもんだし、君の伏せ札が蘇生だと確信していた訳じゃなかった。けど君の悪魔達は最適解を突き詰めしすぎていたから、動きの想定自体はある程度出来た。伏せ札を警戒しながら推測された想定を元に幾つかのパターンを作った上で君の攻撃に対応して、隙が出来たから攻めた。それだけ」
「なるほど、な」
全員の
そして、次の
「なぁ」
「何かな」
「提案だ。この場は停戦しよう」
「は?」
ウリックから飛び出した言葉は此方が思いもしなかった言葉だ。彼の仲魔も身構えてはいるが、此方がアクションを起こさない限りは能動的に仕掛けてくる様子には見えない。彼の言葉も嘘を言っているようには僕には見えない。
「理由を聞こうか」
「俺の任務はお前を倒して人質にする事だ。それはさっき言ったが、それよりも優先されるのは俺達の生存。詰まる所、生きていなければ任務達成も意味がない」
「で?」
「このまま戦い続ければどっちかが絶対に死ぬ。その確率も今じゃ五分五分って所だ。そんな賭けに出る場面じゃないんだよ、俺達にとっては」
「そうだね、僕もきついのは事実だ。君に三肢捥がれちゃったし……けど君にはもう一枚位切札があるんじゃないかな」
「……確実性のない物を今は使う事は出来ない。で、どうだ。受けるかこの提案」
正直僕にとってもこの提案はメリットの方が大きい。これ以上戦えば本気で死ぬのは間違いなく、勝率は僕の方が低い。それに僕の本来の目的はこのヨコハマレルムの制圧であってウリックを倒す事じゃない。よしんばここでウリックを打倒しても確実に僕は再起不応になるだろう、それじゃ意味がない。ウリック側も概ねそんな感じなのだろうが幾つか隠している事があると感じられた、嘘は言っていないようだが
「幾つか条件を加えたい」
「何だ?」
「ここから君が此処から離脱した場合にエリヤ・由奈……他のメンバーに対しても一切の危害を加えずにこの事件から手を引く事。それが条件だ」
「じゃ、こっちからも付け足しておくか。お前さんが離脱した場合、其処からアンナに一切の危害を加える事を禁止しよう。任務は最低限果たした以上、もう俺が此処にいる理由もない。アンナ回収できたらさっさと帰りたいのが本望って奴さ。それとアンナが既にエリヤを確保していた場合はそのまま連れ帰らせて貰う。構わないな?」
「其処に関しては僕は二人を信じてるからいいよ。それにそれ拒否したら戦闘続行にになっちゃいそうだし」
「まぁな。じゃ、停戦は締結って事で」
口頭ではあるがこれも契約の一種だ。ウリック側からも此方側からも守らねばならない
「あー後、これも渡しておく」
「今度はいったい何を……ってこれは」
マドラ | IMAGINE出典(アイテム)。 自分のHPを全快まで回復させ、さらに30分間、力と体力を5アップする。 |
投げ渡されたのは見た事がない回復アイテム、COMPに送信されたこの異界の地図と各ブロックに存在する扉のアクセスキー。
「此処までしてもらう義理はないと思うんだけど」
「俺の任務はもう終わっている。詰まる所、もう取り繕う必要もない訳だ。任務で外道働きばかりしてるんだ。偶には気も抜かなきゃやってられん。俺も此処は潰れてくれた方が嬉しいし、上の意向もそれと同様だからデータを渡しておくのさ。
「全然釣り合ってないけどね。まぁ、ありがとう。後は……エリヤに残していく言葉とかある?」
「今更言えるような事はないが……俺達の事は気兼ねなく殺しに来てくれと伝えてくれ。こっちもそのつもりだからな」
「分かった。また会う事になるだろうけど、その時は恨みっこなしで」
「ああ、恨みっこなしだ。エリヤさんの事、宜しく頼む」
手をひらひらと大雑把に振りながらウリックは此方をもう見る事もなく、そのままその場を仲魔と共に離脱していった。
「フレスベルグ、周囲の状況を」
『敵影ハナイ。サッサト召喚ヲ解除シロ。オマエ死ヌゾ』
「ありがとう。テスカトリポカ、カルティケーヤ送還」
2体の悪魔を送還して、3体召喚に戻す。それと共にどっと身体から力が抜けて、地面に倒れ伏す。
「ちょっと、やすもっかな……フレスベルグは周囲警戒、セトは僕の護衛、ケルプはCOMP内の仲魔の蘇生を御願い」
口から溜まっていた血反吐を吐いて、斬り飛ばされた両足と片腕を回収しながら傷跡を見る。両足は太ももの上部分が消失しており、繋ぎ直して治す事は此処では難しい。片腕も骨が何本も欠損して手に関しては最早原型をとどめていない事から同様に繋ぎ直しは不可。此処を出て、専用の施設なりにいかないと無理な段階だった。
残った片腕で止血と傷跡の最低限の処置は完了している。<妖精の祝福>で魔力も直に回復するだろう。後はウリックから貰ったマドラと呼ばれる林檎のような果実。毒はないし、データ的な検証も終わった。本来はこれを持ち帰って検証をしたい所だが、それ所ではないので弱弱しく果実を齧る。
「うぇ……食道も胃もヤバいな。血の味しかしない」
血のせいで味は全く分からないが食べた瞬間にアッパードラッグのような力の増幅が感じられて、筋力も体力も幾らか回復した。勿論一時的な物だろうから本当に暫くの間だけだろうが動けるうちに動いておかなければ本当に死ぬ。
斬られた腕がCOMPが存在しない方であったのは不幸中の幸いだった。ウリックより渡されたデータを確認しながら、頭を回して次の行動方針を定める。距離的に近いと思われるのが由奈とエリヤ。それ以外はセンサーの反応ですら捕まえる事ができず、距離の近い二人に関してもジャミングで居る方向をなんとなく掴む事しか出来ない。そして、彼女達がいるその道中に研究の資料室と思われる区画が存在している。
「資料室を目的地に定めて、エリヤと由奈との合流を目指すしかないな」
恐らくエリヤと由奈はアンナさんと戦っているだろう。その勝敗がどうなるかは分からないし、自分はそれに間に合う事はないだろう。現状自分のベストは尽くせた。後は彼女達の無事を祈りながら向かう事しか出来ない。
「セト・ケルプ送還。ラクシュミ・バロン召喚」
いつもの陣営に仲魔を整えて、バロンの背に片腕を伸ばしてはくっついて丈夫な紐でバロンの身体と自身の身体を括りつける。最低限といった感じだが落ちないように突発的な戦闘による保険は掛けておく。研究所のデータは他のメンバーにまだ遅れていない。何とか誰かとの合流を果たして、情報の共有を行いたい所だった。
「今回も今回でしんどいけど、まだ頑張んないとね」
ウリックが駆けていった通路の後を追うようにして僕達もまた先を急いだ。
・キャラ紹介
<久遠 フェイ> Lv83→80(レベル限界そのものは磨かれている)
両足と片腕吹っ飛ばした人。傷があんまりにも酷い為にこのヨコハマ事変中は片腕のみ使用可能という大きなデバフを背負う事となる。後はよく食いしばってるのでレベルが上がったり下がったり忙しい。他の仲魔の何名かもレベルが下がっている。明確な勝ち星(ネルガル戦は由奈の援軍が決め手。ラーヴァナ戦は不屈まできらせた所で包囲。でもって今回は三肢吹き飛ばして仲魔半壊状態でドロー)がない為に現環境に心底恐怖して、さらに強くなろうと色々考えている節がある。大体相手が悪い。使役している仲魔は今回出た悪魔10体と探索用スレイプニルで11体体制で此処から仲魔が変わる事は恐らくない
<ウリック・ヤード> Lv85
エデンの構成員でエリヤの妹、アンナの幼馴染。Lv85でデビルリユニオンは純粋な人間の為に使用していない。戦闘スキルはIMAGINE系で統一(武器だけ一部SH2)。それでも大分強いもんだからIMAGINEは凄い。仲魔はIMAGINEにも居るD2☆5の面子、代わりに育成リソースを全てこの仲魔達に注ぎ込んでいるので他に仲魔は居ない。デビルリユニオンによる実質的なレベル詐欺と共にD2スキルで解除・回復を行って、サマナーと共に全てを薙ぎ払ってくる。ウリックの弱点のテトラカーンにはテトラハンマー等のテトラコワース系で、フラウロス・ハレルの弱点である<テトラジャ>はその前に全体破魔をぶつける事で対応する。アンナの支えになり続けるという一つの軸がある為かエターナル特有の現地民に対する侮りもなく、それなりに善性や社会性も維持している。強さははっきりしてるがエデン内における立場はあんまりはっきりしていない。作者も知らない。
1シナリオ(一連のダンジョンクリアやボス撃破等を指標にする)に3回まで使用可能。使用する度にコストとして現在HPの半分を消費する。このスキルは本来1つの手番に複数回使用できるが、不完全な習得である為にそれは封じられている。消費HPは2倍まで膨れ上がったマッスルドリンコによる増加HPで支払って、実質フェイはHP満タン。
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ヨコハマ事変 白虎/朱雀
\カカカッ/
警察官/シャドウ使い | 劉鳳 | Lv83 |
法皇 | ナントセイクン | 物理に強く、魔法に弱い*1 |
「花山はそのまま敵の注意を引け!メティスは只管回復とバフ!武田と俺は状況を確認しながら攻撃を続ける!」
\カカカッ/
ヤクザ | 花山 薫 | Lv69 | 物理・銃撃に強く、破魔・呪殺無効 |
「やれやれ、まさか警察の指示にパクられた時以外で従う日が来るとはな」
\カカカッ/
外道/剣士 | 武田 赤音 | Lv67 | 精神・BSに強く、破魔・呪殺無効 |
「俺もあんま慣れねぇ」
\カカカッ/
シャドウ使い? | ヴァイオレット・メティス | Lv76 |
愚者 | オルフェウス | 雷・闇弱点*2 |
「確かにヤクザの人や侍の人と一緒に戦うのは私も初めてな気がします」
「いや、サムライは
他の突入メンバーと落下し、同区画にて合流を果たした4人が居た。<悪対>所属のシャドウ使いである劉鳳に<シャドウワーカー>所属のシャドウ使いであるメティス。指定暴力団<花山組>の二代目組長である花山薫、そして人知れずに悪魔と人を斬り続ける剣鬼、武田赤音。
そして現在彼らもまた襲い掛かる悪魔や生物兵器達と相対をし続けて
\カカカッ/
獣族 | ビャッコ | Lv74 | 衝撃吸収。破魔・呪殺・BS無効。物理・氷結・電撃に強い |
\カカカッ/
生物兵器 | クラーケン | Lv45 | 耐性不明 |
\カカカッ/
生物兵器 | ヒュドラ― | Lv45 | 耐性不明 |
その果てに四神に名を連ねる白虎、巨大生物兵器であるクラーケン及びヒュドラ―と交戦状態に移っていた。
『オオオオオオオッ!』
タルカジャ | DDSAT1出典。味方全体の物理攻撃力を上昇させる。 |
パワーチャージ | DDSAT1出典。味方全体の物理攻撃力を上昇させる。 |
ビャッコが動く。虎を示すその名前の如く獣のように
「ビャッコ、詰まる所デカくて白い虎って訳だ。面白れぇ、来いよ」
覚悟の挑発 | デビサバ2出典。自分へのダメージを軽減し、さらに攻撃を引き受けやすくなる。 ビャッコの行動前に使用済み |
眼前に立つのは花山薫。190cm以上の覚醒者としても明らかに巨大な体格をした彼はビャッコに怯む事なく、逆にビャッコを挑発する様に手招きする。
バイオレンス | 点滅状態のプレスアイコンを2つ増やす |
脳天割り | DDSAT1出典。敵1体に物理属性の大ダメージを与える。残りHPで威力が上昇する。 |
明らかな憤りを見せたビャッコはその挑発に乗るかのように
「……それだけかい?」
仁王立ち | P4~5出典。相手の命中率が100%になるが、受けるダメージが半減する。 |
五分の活泉 | デビサバ2出典。HPの最大値を+50%する |
「ならお返しだ」
超反撃 | 物理属性のダメージを受けた場合、高確率で相手に通常攻撃を返す |
物理激化 | 物理属性の攻撃を行う際、その威力が通常の1.5倍になる。 |
武の赤 | IMAGINE出典。自身の物理防御力を犠牲にして、自身の力を上昇させるスイッチスキル。力が大幅に上昇し、物理防御力が下がる |
回避する気もない
マハザンダイン | DDSAT1出典。敵全体に衝撃属性の大ダメージを与える。 |
その剛腕にて物理耐性の上から確かなダメージを受けて、ビャッコは後退しつつ物理が駄目ならと言わんばかりに咆哮と共に発せられた
花山だけではなく、劉鳳に赤音、ヴァイオレットも衝撃破に巻き込まれるも何とか各々耐え切る事に成功し、
「俺のペルソナは魔法全般に弱いが、衝撃属性がそこに含まれていなかったのは助かったな」*3
「いってーっ!せめて物理じゃないと避けるのもやっぱり難しいか」
「まだ来ます!」
クラーケンの | オリジナル。敵全体にランダムで3~6回の技属性の小ダメージを与える。 攻撃命中時のノックバックが大きい |
ヒュドラ―の | オリジナル。直線状の敵全てに突撃属性の大ダメージを与える。 攻撃命中時のノックバックが大きい |
「ダメージ事態はどうとでもなるが……」【物理に強く、破魔・呪殺無効】【超反撃】
「どうも必要以上に此方を
「劉鳳さん、今の触手……」【通常耐性】
「どうした?」
「間違いなくイカですね!」
「それ本当に今言うべき情報だったか?」
味方全体に降り注ぐ触手の乱舞、それを凌ぎ切った途端に巨大な海蛇のような生物兵器であるヒュドラ―に突撃されて陣形を乱されていた。ダメージ事態はレベルやそもそも相手が純粋な悪魔ではない事から単純な物理衝撃しか存在せず、他のスキルを持ち合わせている様子は見られずぶつけてくる攻撃も
巨大なイカであるクラーケンは地中に生息し、地上に出している物は精々攻撃時における触手のみ。弱点と思われた口を露出させる事もあったがそれによる反撃も発生して左程ダメージは与えられなかった。地中にある本体を潰そうにも露出した触手達がそれを邪魔する。威力は左程ではないがその巨大さと純粋な質量故にノックバックが大きいのだ。
加えてヒュドラーも攻撃が終わった途端に地中に潜り込んで姿を消している。攻撃してくる際に反撃を合わせればダメージ事態は入れられるものの頭部以外はどうにもそれが入りづらい。その上で巨大生物兵器のその大きさ故に
「ま、それでも削っていくしかないさ。こんな風になッ!」
極・物理見切り | P5R出典。物理属性攻撃に対する回避率が大幅に上昇する |
見切り | 誕生篇・速剣出典。回避の代わりに使用。 成功した場合、相手に1回攻撃をする事が出来る。 相手は回避や防御に威力分のペナルティ修正を受ける。威力は速剣技能値を参照。 |
クラーケンのイカのような触手を最小限の見切りながら、赤音はそのまま刀を構える。
剣狂者 | オリジナル。物理貫通(D2式)を習得する。 代償として習得者は日本剣術(剛剣・速剣・居合)のスキルしか使用できず、 貫通自体もそれらのスキル及び日本刀を用いた通常攻撃にしか適用されない。 |
兜割り | 覚醒篇・剛剣出典。敵1体に防御点無効の鋭い一撃を喰らわせる |
すれ違い様に振り上げられた赤音の刀はまるで
「数は減っていってるんだが、どうにもこの状況が宜しくないな。なんか案あるかい、警官殿」
「劉鳳と呼べ……案か、あるにはある」
現在相手取っているビャッコや巨大生物兵器達の問題。それはビャッコの操作によって巨大生物兵器達が動かされている点、ビャッコは間違いなく時間稼ぎに徹している点にある。
各敵の物理攻撃は概ね花山と武田、劉鳳には決定打にはならず、オルフェウスを降ろしているヴァイオレットって関しても回復・補助以外は生存特化のスキル構築*5になっている為に同格相手ならまず粘る事が出来る。
だが先に語ったノックバックのせいでそれぞれの敵から強制的に距離を取らされる。赤音に関しては回避による対応ができる為に掻い潜る事も可能だが、そうした場合にはビャッコから咆哮を用いた
マカラカーンによってその衝撃破を返そうとしてもビャッコの衝撃吸収はとても強力な物*6であり、何度かビャッコを削った所に衝撃破対策に展開したメティスの<マカラカーン>によって一度は反射吸収で
その上でこの状況を変える作戦自体はあった。今までは他の悪魔や生物兵器の乱入が度々起こり、状況が整っていなかった。しかし、それらが居ないのであれば実行に移す事は可能だろう。
「武田、単独で
「そりゃ相性がいいし、出来るけど……って、あーそう言う事ね。ただクラーケンは俺単体だとちょいと殺るのは直ぐには無理かもな。」
「メティス、どう思う?」
「地中内に居るクラーケンの本体を倒すのは現実的ではありません。ですがあの兵器も触手と口だけで敵の位置を把握出来る訳はありません、其処を突く事は可能だと思います。花山さんをお借りしても?」
「構わん。頼んだ」
「よく分からんが、そこのお嬢さんの指示に従えばいいんだな?」
「そう複雑な物でもない。奴がそれを露出されれば直ぐに分かる。」
「手筈通りに行くぞ!メティス!」
「了解しました!ペルソナッ!」
メティスより順に動く。召喚の決まり文句と共に発現したのは竪琴を持った赤いスカーフと青いボディが特徴的なペルソナ。最早名前や姿すら思い出せない誰かから受け継いだそのペルソナを背負って、彼女は叫ぶ。
「オルフェウス!」
カデンツァ | P5R出典。味方全体のHPを50%回復し、3ターンの間、命中・回避率を上昇させる。オルフェウス専用 |
竪琴より鳴らされた旋律と叫び、それによって施された回復と
「現在の俺達にある自前の強化・弱体はこれしかない。後は攻撃あるのみッ!」
己はバフは精々テトラジャ程度。後の二名は
兎にも角にもそれらの強化がばら撒けなかったのも長引いた原因であり、急造PTの噛み合わなさも黒幕の思惑の一つなのだろうと考えながらもその背後に自身の
青と白で構成された
「引き裂け!ナントセイクン!」
旋風陣 | P2罪・罰出典。敵全体に疾風属性の大ダメージを与える。 |
ビャッコが用いる
「駄目押しだ!」
山津波 | 200X出典。敵全体に万能相性のダメージを与える。 |
態勢を整えようと動き出そうとした敵をさらに吹き飛ばしたのは花山薫の剛腕による殴打。ビャッコに振われたその一撃はそのあまりの衝撃から
「じゃ、そっちは宜しくな」
ビャッコをすり抜けて、ヒュドラ―とクラーケンの下へと駆け抜けた。
抜刀の構え | 誕生篇・抜刀術出典。納刀を行い、<居合いの構え>を取る。抜刀術はこの状態であるか納刀状態でしか使用できない |
クラーケンの触手もヒュドラ―と姿も意にも返さずに行ったのは刀を収めて、構えを取る事のみ。巨大生物兵器達は知能がない為にその意味を理解せず、ビャッコはそれが居合抜刀の構えだと理解しても
敵の
バイオレンス | 点滅状態のプレスアイコンを2つ増やす |
マカカジャ | DDSAT1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる |
マカカジャ | DDSAT1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる |
マハザンダイン | DDSAT1出典。敵全体に衝撃属性の大ダメージを与える。 |
ビャッコが動く。二回の
「
ヴァイオレット、花山、赤音には衝撃破は当たるものの劉鳳は衝撃破をペルソナで
だがそれでも確実にダメージは負っている。耐久面でおいて確実にこの中で一番劣っているのは赤音であり、その赤音は衝撃破によってダメージを受けて血反吐を吐きながら
「そう来ると思ったよ」
居合いの構え |
誕生篇・抜刀術出典。この構えをしている間、他の行動を取る事は出来ないが最初に自身の間合いに入った敵に対して相手の攻撃より先に攻撃できるかチェックを行う事が出来る。チェックに成功した場合はすぐさま敵を攻撃でき、抜刀術技能値分だけ威力が上昇する。さらにこの攻撃に対して敵は回避や防御に-20%のペナルティを受ける。 |
赤音は身を屈ませて、 構えと共に鯉口を切る。無防備に自らの眼前に飛び込んできた
もがり笛 |
誕生篇・抜刀術出典。相手の喉や首を切裂き、一瞬にして瀕死に追い込む技。血を吹き出す音が笛の音のようである事からこうした名前がある。<抜刀の構え>で引き抜いた直後にこの攻撃は実行する。剣の先だけで切り、剣先は実際の出血前の鞘に収まり、居合抜きは<構え>に戻っている。1点でもダメージが入れば、敵は瀕死状態になってしまう。刃のある武器でのみ使用可能。 |
ヒュドラ―がその巨大な顎を開けて飛びかかるその瞬間に動作を合わせて、すれ違い様に刀を振り抜く。1秒にも満たないその抜刀はヒュドラ―の喉を剣先がすり抜けて、剣風によってそれは首全体にまで到達。頭部と胴体は切り離されて、ヒュドラ―は知覚しないままに絶命した。
「次」
振り向き様に刀を鞘に納めて、それとほぼ同時に迫り来る触手を赤音は目視する。迫る触手の数は約6本、それを全て斬るには刀だけではなく広範囲に拡散する
「お前、
瞬間、響き渡る抜刀の音。だが赤音の剣は振り抜かれておらず、クラーケンの触手は斬られていない。
剣風 | 誕生篇・抜刀術出典。抜刀術を実行してみせて相手を威嚇する技。判定に成功してその対象が術者が何をしたか理解した場合、心相性(精神相性裁定)で精神力チェックを行わせる。失敗すれば恐怖状態となって、その場から逃走する。 |
クラーケンの動きが止まる。赤音が用いたのは
クラーケンは自分が斬られたかのような錯覚を受けて、本能から自らの触手を居合の範囲内から引き抜いた。それだけではなく、理解不能な何かをしようとした赤音に対して確かな恐怖すら抱いている。逃げる事が出来ていたなら逃走を行っていた程に*11
再び
「……見えました、あそこです。」
メティスがある方向を指差す。その指差した先には巨大な人間の瞳のような物が映っている。その瞳の先には赤音が映り、その動きを酷く警戒しながら見ていた。
「ヘぇ、あれであのイカっぽい化物はこっちを見ていた訳か。成程なぁっ!」
それと同時に花山はその瞳の下へと拳を携えながら駆け出していく。その巨体によって床を軋ませ、揺らがせながら接近。クラーケンはやっとそれに気づき、瞳を引っ込めようとするも
「おせぇよ」
真2出典(菩薩掌)。敵1体に手技属性の特大ダメージ。 HPが高いほど威力が向上する。メギドラオンに匹敵する最強の物理手技。 |
『Gaaaaaaaaッ!!!』【CRITICAL!】【WEEK!】
両手にてその瞳を鷲掴みにして、その神話の怪物のような剛力にて引っ張り上げる。本来の
「そぉらよっ!!」
潰された瞳、それと繋がる地中に埋まったクラーケンの胴体を花山は掴んで再び引っ張り上げる。せめて抵抗が出来ればその巨体故に地中に埋まったままだったクラーケンの身体は壁や床をひっぺ剥がしながらも露わになる。
「よしよし、良い位置だぜ。花山ッ!」【もがり笛】
それと合わせるように赤音が動く。浮かび上がったクラーケンの身体に向けて、再び刃を走らせた。
『Ca…a……』【CRITICAL!】【WEEK!】【DEAD!】
ヒュドラ-と同様に首に奔った剣先は瞬く間にクラーケンの頭部を斬り飛ばして、血糊すら残っていない刀を鞘に納めた。
「これで後は奴のみだ」【宝玉輪】*12
「依然として衝撃魔法は厄介です。油断せず行きましょう」【デカジャの石】*13
戦場の残った敵はビャッコのみ。増援が来る気配もなく、劉鳳達も油断なく
クラーケンを殺した
・
・
・
\カカカッ/
飛天族 | スザク | Lv72 | 火炎吸収。物理・銃撃・地変・破魔・呪殺・バッドステータス無効。 電撃・衝撃に強い |
『オホホホ!ヤキツクサレナサイ!』
デクンダ | DDSAT1出典。味方全体の低下系効果を解除する。 |
マカカジャ | DDSAT1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる。 |
メギドラオン | DDSAT1出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
フェイや由奈、エリヤと分断されて落下していった真澄達。彼女達もまた四神である朱雀との戦闘状態に陥っていた。
繰り出されたのは
\カカカッ/
巫女 | 神城 真澄 | Lv84 | 耐性:凡そ全てに強く、火炎・氷結・ 破魔・呪殺・精神・神経・魔力・緊縛反射*14 |
「メギドラオン1発程度ならまだ問題ないけど……!」
\カカカッ/
ガンスリンガー | 藤堂 晴香 | Lv56 | 耐性:破魔・呪殺無効 |
「この後、また
\カカカッ/
ファイター | アナンタ | Lv63 | 耐性:物理・魔封・破魔・呪殺無効 |
「というかヤキツクスー!とか言ってるのにやってる事、万能連打じゃんね。詐欺じゃないのこれさぁ!」
\カカカッ/
トリックスター | ベネット | Lv57 | 疾風・破魔・呪殺無効 |
「でもこれがシンプルにきっついわ。対抗策こっちにないから」
朱雀との衝突時において奴は火炎と物理を主に使っていた。レベルも高い為にそれ自体は強力であったが物理はアナンタが無効化して真澄が反撃を、火炎に関しては真澄が防具で吸収するといった形でその属性二種に関しては明確に優位にこのPTは立ち回る事が出来た。
問題はその後のスザクが選んでしまった行動。それが即ち万能連打であり、デクンダしてマカカジャしてからのメギドラオン連打という身も蓋もない戦術を行い出した。万能属性故にダメージ事態は物理や火炎と比べて抑えられてはいるものの真澄以外はモロにそれを喰らってしまう*15。そして、その上でスザクは定期的に<ギガバイオレンス>*16を発動して動ける回数を実質2倍にしながら此方に対してさらなる攻撃を仕掛けてくる。
スザクの
結論として奴のMAGが活性化している状態ではマカカジャが2回、場合によっては4回掛かったメギドラオンを計2発受け切らなければならず、実際問題それを喰らえばこのPTは真澄以外死亡するのはレベル差から見ても明らかだった。
スザクは他の悪魔兵と比べても特に思考が回る印象を真澄は受けていた。火炎・物理が効かないとなると即座に一時的に逃げに入って、増援の悪魔や生物兵器を強制的に戦闘乱入。その後は増援を此方が片付けている間に態勢を整えたスザクが繰り出してきたのが
加えて耐性面も優秀でベネットが用いるBSも恐らく睡眠がやっと入るかどうかという所*17。だがそんなスザクにも明確な弱点が存在する。
それは<デカジャ>*18を恐らく持っていない事。
スザク | 魔法強化+1(DDSAT1仕様) |
真澄陣営 | 攻撃強化+2・防御力強化+4(双方DSJ仕様) |
詰まる所、カジャを順当に積んでいけば勝機が自ずと見えてくる訳だがスザクもそれは分かっている。もしかしたら此方の作戦を見越した上で勝機を潰す為にデカジャを使用していないだけかもしれないし、そうじゃないかもしれない。持っていなくとも連続マカカジャからのメギドラオン二連打は非常に強力で対応を誤ればカジャを二段階積んでいる現状であっても壊滅が見える。定期的に行う
手数がもっと欲しい所だがプレスターンであるが故に此方で式神を召喚しても手数が即座に増える訳でもなく、生存にリソースを割かなければいかないのでアドバンテージはそれで稼げない。となれば、やはり現状のメンバーによる対応を続けるしかない。
「さてと、もう少し頑張ろうかしら」
真澄が思考を纏めると同時に
「ここまでカジャ積めばレベル差あっても万能1発ならメディラマだけで大丈夫ね」【メディラマ】*19
「たーるかじゃっ!」【タルカジャ】*20
「ちょくちょく作ってた自作のこれを活かす時……!」【バルーンシード】*21
ベネットが回復、アナンタが攻撃強化、藤堂が<バルーンシード>を使用する。バルーンシードに関しては藤堂さんの生存及びメギドラオンを無効化したことによって
「私はパスするから、動いて頂戴」【次に回す】*23
「了解、奴の出力を落とす!」【全身砕き(雄叫び)】*24
スザク | 魔法強化-1・物理強化-2(DSJ仕様) |
真澄陣営 | 攻撃強化+3・防御力強化+4(双方DSJ仕様) |
真澄は素早くベネットを動かさせて、そのままスザクに対して
再び
ギガバイオレンス | DDSAT1出典。点滅状態のプレスアイコンを4つ増やす。 |
デクンダ | DDSAT1出典。味方全体の低下系効果を解除する。 |
マカカジャ | DDSAT1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる。 |
マカカジャ | DDSAT1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる。 |
『オナジ事ヲ何回モ何回モ……イイカゲンケシトビナサイ!』
スザクの周囲のMAGが歪み、その動きを活性化させる。弱体を弾き飛ばして、積まれていく魔法強化。<バルーンシード>もスザクにとっては最早初見ではなく、それを何故発動させているのか、その結果自分にどういう損失が起こるのかを理解している。
残りの動きに
メギドラオン | DDSAT1出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
メギドラオン | DDSAT1出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
そうして発射された全体万能二連打。1撃目は藤堂以外にダメージが入り、2撃目は全員にそのダメージが行き渡る。4回の<ラクカジャ>でダメージ事態は各段*28に抑えられているがそれでもスザクのメギドラオン連打は強力であり、よしんば<ラクカジャ>がなければ1撃目の段階で真澄以外は瀕死に、2撃目で真澄以外は吹き飛ばされていただろう。レベル差もあるが、この人数差においても総合的な手数はスザクの方が上回っている為に一切の油断は許されない。
「宝玉輪ももうそんなに使えないわ。そろそろケリつけましょう」【宝玉輪】*29
「オッケー!これでタルカジャもラストーッ!」【タルカジャ】
「援護に徹する!」【韋駄天の札】*30
「この上昇段階ならまだデカジャの石じゃなくてこっちで対応可能ね」【全身砕き(雄叫び)】
スザク | 物理強化-2(DSJ仕様) |
真澄陣営 | 攻撃強化+4・防御力強化+4(双方DSJ仕様)・命中回避強化(P5R仕様) |
真澄が宝玉輪によって全回復を、アナンタは最後のタルカジャを重ねて、藤堂は韋駄天の札を使用して足りない命中・回避を補う。最後にベネットがスザクの出力を弱体化にて落として
マカカジャ | DDSAT1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる。 |
メギドラオン | DDSAT1出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
メギドラオン | DDSAT1出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
魔法強化からの全体万能二連打。変わらない行動を繰り返し、同じようなダメージを与え続けている。だが、これ以外の行動をしようとすればその穴を突かれてさらに酷い事になるだろう。増援を待っているのに一向に来ない。壁として多数の悪魔や生物兵器を使い過ぎたのか、最早周囲に気配すら感じない。生物兵器はあの銃を持った女が即座に射殺し、他の悪魔は巫女の様な恰好をした女に何処までも順当に殴り殺されている。妨害も
「
「
「真澄さん、あいつ……」【バルーンシード】
「目が死んでない。スザクもここから勝ちに来るわ。此処からが私達の正念場ね」【宝玉輪】
スザク | 物理強化-4・魔法強化-1(DSJ仕様) |
真澄陣営 | 攻撃強化+4・防御力強化+4(双方DSJ仕様)・命中回避強化(P5R仕様)・アナンタ【ニヤリ状態】。藤堂晴香【バルーンシード使用】 |
スザクは此処から最後の勝機を掴むために怒涛の攻勢に入る。極論、真澄以外はギガバイオレンス連打からのマカカジャからのメギドラオン乱舞である程度削り殺す算段はついている。真澄に対しても単独であるのなら手数差からマカカジャからの<体力泥棒>*32で攻め続ければ手数差で殺すこと自体は可能だろう。
幾らレベルで上を取られようとタイマンならまだ目がある。その為に邪魔な
ギガバイオレンス | DDSAT1出典。点滅状態のプレスアイコンを4つ増やす。 |
デクンダ | DDSAT1出典。味方全体の低下系効果を解除する。 |
マカカジャ | DDSAT1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる。 |
マカカジャ | DDSAT1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる。 |
マカカジャ | DDSAT1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる。 |
マカカジャ | DDSAT1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる。 |
メギドラオン | DDSAT1出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
『オ、オオオオオオッ!!!』
真澄達にとっても予想通りの
スザク | 物理強化-4・魔法強化+4(DSJ仕様) |
真澄陣営 | 攻撃強化+4・防御力強化+4(双方DSJ仕様)・命中回避強化(P5R仕様)。 アナンタ【ニヤリ状態】 |
「アナンタ、行動に変わりはないわ。行って頂戴」
「っしゃおらーっ!いったります!」
アナンタが先陣を切る。その身に満ちるのは
「うおーっ!!!くらえーっ!」
ニヤリ状態 |
真4F出典。敵の弱点を突いたり、あるいは敵の攻撃を無効化したりすると発現する状態。この状態において攻撃を行うとその攻撃力が増大したり、クリティカル率が大幅に上昇したりする。また、この状態でダメージを受けた際に弱点でもプレスアイコンが点滅しなかったり、クリティカルも発生しなかったりする。スマイルチャージによる物なので仕様は真4F仕様 |
アカシャアーツ | 敵単体に物理属性で特大威力の攻撃を1回行う。ニヤリ時に貫通効果 |
「あかしゃっ!ああああああああああつ!!!」
アナンタの渾身の一撃がスザクの頭部に直撃する。明らかな
「その間にこっちで相手の強化を!」【デカジャの石】*35
「回復を!」【メディラマ】
藤堂が<デカジャの石>にてスザクの強化を解除し、ベネットが回復を飛ばして自陣を整える。
「私も行くわ」
格闘威力強化(体)Ⅲ | 200X出典。武器を用いない格闘攻撃の威力に「体能力値×3」する。 |
アドバイス | P5R出典。クリティカルを与える確率が2倍に上昇する。 |
震脚Ⅲ | 200X出典。補助効果。 このターン、使用者が次に行う素手に格闘攻撃1回の威力に【力能力値×2】を、 素手以外の場合なら【力能力値】を加える。 ランクⅢの効果によりこのターンにおける全ての格闘攻撃に効果が及び、 格闘攻撃の判定値の1/5でクリティカルが発生する。 この効果においてクリティカルが発生した場合、200Xにおけるルールを参照してクリティカルは2倍として扱う。 |
舞踏 | 誕生篇・骨法出典。補助効果。 骨法の基本動作で、足捌きを中心とした身体の動きを指す。 すり足の迅速な移動とコンパクトな方向回転によって、 直後の格闘攻撃のダメージに+威力(骨法技能値参照)する。 |
真澄もまた動く。一足にしてスザクの元まで到達した彼女は大地を揺れ動かす程の震脚にて懐に潜り込んで、骨法特有の掌を押し付けるような動きを見せた後に
徹し | 覚醒篇・骨法出典。 敵前列1体に相性:-(万能相性裁定)で防御点を一切無効した格闘攻撃を行う。 この攻撃は拡散して、敵前列の他の対象には相性・防御点無視は同様にダメージ事態は半減した物を与える。威力は骨法の技能値×4を参照。真澄は60以上の技能値を持っている為に威力は240程度(特大ダメージ)となる |
万能にして防御点無視。一切合切を粉砕するその掌がスザクの身体に突き刺さる。これも明らかに
「……この手番じゃ流石に無理か。アナンタ!」
「もっかい!」【スマイルチャージ】*36
「私はベネットに回して!」【次に回す】
「こっちでまた弱体を掛ける!」【全身砕き(雄叫び)】
続け様にアナンタが再びニヤリと笑って、ベネットが弱体を掛ける。これで真澄達の行動は終わり、スザクに
スザク | 攻撃強化-2(DSJ仕様) |
真澄陣営 | 攻撃強化+4・防御力強化+4(双方DSJ仕様)・命中回避強化(P5R仕様)・アナンタ【ニヤリ状態】 |
4回積んだ魔法強化も消え去って、弱体化も掛かっている。ギガバイオレンスをしてもそれには限界がある。ならばどうするべきか
「なっ!そんなのあり!?」
スザクが動いた。瀕死、限られた
ギガバイオレンス | DDSAT1出典。点滅状態のプレスアイコンを4つ増やす。 |
ギガバイオレンス | DDSAT1出典。点滅状態のプレスアイコンを4つ増やす。 |
デクンダ | DDSAT1出典。味方全体の低下系効果を解除する。 |
マカカジャ | DDSAT1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる。 |
マカカジャ | DDSAT1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる。 |
マカカジャ | DDSAT1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる。 |
マカカジャ | DDSAT1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる。 |
2回のギガバイオレンス。それは肉体に非常に重い負荷がかかる。瀕死となった身体はさらに血反吐を吐き散らかして半死半生に。それでも尚スザクは勝利を掴み取る為に太陽に手を伸ばす
メギドラオン | DDSAT1出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
メギドラオン | DDSAT1出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
残り
「総員!死ぬ気で耐えろ!最悪、私が残ればいい!」【五分の活泉】
「う、うおーっ!」【三分の活泉】
「ぐぅ、っ……!」
「私じゃちょっとヤバいわこれ……!」
1撃目。全員にメギドラオンは命中し、レベルが上で耐久性に優れた真澄及びレベルは下でも耐久性に優れたアナンタは耐え切るも、藤堂とベネットは耐久に何かしらのスキルがある訳ではなくレベル差もあってほぼ瀕死に。
そこから降り注ぐ2撃目のメギドラオン。
「私だって!」【真・回避の心得】*40
真澄とアナンタに対してはそのまま命中するも真澄は素で耐え切り、アナンタは瀕死直前であるものの何とか耐え切った。ベネット、藤堂は各々の回避強化によって回避挙動を取った上で2撃目の回避に成功する。その補助として<韋駄天の札>を使用して、カジャを掛けていたのも大きいだろう。こんな馬鹿みたいな連続行動を見越しての事ではなかったが、それが功を奏している*41
メギドラオン | DDSAT1出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
ここでさらなる前提覆しである
「ごめん、後任せた……!」【DEAD】
「こっちも駄目……!」【DEAD】
3発目のメギドラオンを前にベネットと藤堂が焼かれて倒れる。そして、残るは―――
「……首の皮一枚繋がったね」【不屈の闘志】*42
アナンタ、不屈を切るも健在。アナンタが耐え切っているという事は真澄も当然耐え切っている訳であり
スザクは返しの
「……ひやひやしたわね。私は回復しながら警戒しておくから他の二人起こして頂戴」【宝玉】
「りょ、りょうかい。ひやひやしたぁ……」【道反玉】
指示を出して、ベネットや藤堂が起きるのを余所に真澄は思考する。四神であるスザクはこれにて仕留めた。感覚的な話にはなるが、恐らく他の四神もくたばっている。四神の存在によってこの異界は様々な
「合流できそうなポイントも割り出した。他のメンバーとはこのまま問題なく合流できる。だけど……」
真澄の懸念点、それはフェイより定期的に送られてくるこの異界の地図と各ブロックに存在する扉のアクセスキーのデータ群にあった。それは確かにフェイが生存している事を示し、それらのデータ群は今後の異界攻略の効率を大幅に上げるだろうが、フェイからそれ以外の何かしらの応答がないのに違和感が生まれていた。
「可能性が高いのはあの子はまだ此方と通信が不可、恐らく送信だけが可能な場所に居るって事ね。後は応答を取れるような状態ではないのかもしれない」
真澄の脳内に浮かぶこの想定も飽く迄想定である為に何処まで合っているかは分からないが、この異界に落ちる直前にフェイとエリヤ、由奈は狙って分断されて落とされていた。襲撃も受けている事だろうし、この地図を以てしても彼らの居場所を探る事は出来ずにいた
「……生きていてね、必ず」
状況を鑑みれば、フェイの心配をしている訳にはいかない。四神の配置は明らかに捨て駒で、これらを配置した黒幕はまだ奥に控えている。四神が単なる時間稼ぎに過ぎないなら次にどんな存在が居るのか分かったもんじゃない。心配や苦悩を押し殺して、真澄は他のメンバーと共に合流ポイントへと駆けて行った。
・
・
・
「……ここが資料室か」
バロンに乗せられてゆらゆらと、時折後遺症で血反吐を吐いてその度に魔石を嚙み砕きながらも目的地の一つである資料室に到着した。道中で色々悪魔なり生物兵器なりに遭遇したが、大体仲魔でワンパンできたので割愛する。ワンパンできなくてもワイルドハントあるしね。
「さて、さくっと情報漁ろうか」
妖精の輪 | 200X出典。情報を1つ得る事が出来る。1シナリオ1回まで |
大地の声 | 200X出典。精霊、地霊、妖精と会話し、情報一つかアイテム1つ入手する。 1シナリオ1回まで |
コンピュータ操作 | コンピュータを使いこなし、簡単なプログラムを使用できる。 情報技能として使用する場合、インターネット・サーフィンだけではなく 軽度の侵入によって情報を得る。判定は運で行われる。 |
発光 | ライドウ出典。周囲を明るく照らす。雷電属としてバロンが習得。 |
現場検証 | ライドウ出典。隠された重要な場所を雷で照らし出す。雷電属としてバロンが習得。 |
ぶっちゃけ捜査はバロンと僕だけで事足りる。後の仲魔は周囲警戒に回しながらバロンが場所を当てて、こっちが情報を漁っていく。これを暫く繰り返していく。
「成程ね」
ざっくりと主要な情報は抜き取り終えた。此処に来る最中に定期的にMAPやらアクセスキーのデータ群は全メンバーの通信端末に送信連打しており、1回位は多分通った感触がある。だがこの資料室はさらに区画として独立しており、その為かもう完全に他メンバーとの通信端末に送信すら出来ない状況である。なので此処で情報を洗い出しても直ぐには誰かに送る事は出来ない。
そう考えながらもデジタルデータはCOMPに取り込んで、紙の資料の頁をぺらぺらと捲る。
「主犯は三業会、中華系マフィアはその操り人形、目的は悪魔化ウィルスの製造。此処まで相違ないね」
主犯である男は三業会の幹部とされる石亜南。その目的はやはり悪魔化ウィルスの製造であり、そのデータを本国である中国ひいては三業会に送る事。非合法レルムをその実験場として選んだのは情報封鎖・破壊による処分の為。そもそもこのヨコハマ裏中華街は石亜南の箱庭であり、其処らへんの工作は容易なのだろう。だからこそ此処まで好き勝手できた節もある。
三業会が何故悪魔化ウィルスを求めているかは不明。というか三業会についてはよく分からないので情報だけ全部すっぱ抜いて後はよく知ってたり、因縁がある奴にぶん投げた方がいいだろう。封剣士の生き残りが何処かに居るとは聞いているので其処を訪ねてみるのもいいかもしれない。生きて帰れたらの話だが
「……ん」
ふと一つの資料を手に取った所で違和感を覚えた。資料の書き方に何処か、覚えがある。
資料の作成者は藤堂 奈津子。その内容は悪魔化ウィルスをドリフターに対して使用した際の差異が書かれていた。
『現行の人類と漂流者、この二者に対して悪魔化ウィルスを使用しても目立った差は存在しない。』
『しかし、一部の漂流者……恐らく
頁を捲る、過去周回を認知しているという事は気になるし、これもまた必ず報告すべき事案だが気になっているのは其処ではない。実験の記録の羅列を流し見しながら、さらに頁を捲る。
『さらにとある人物に前聞いた話だが、宇宙観測的には太陽光からして地球は既に海が蒸発する程の熱量を喰らっているらしい。真偽は分からないが面白いので記憶に残っている』
『その人物、彼が言うには未知のダークエネルギーにて地球はその光から守られている。科学的にはオゾン層が当たるだろうか。とにかく彼はそのダークエネルギー及び太陽光の研究も行っていたらしい。そのダークエネルギーを取り除いた太陽光を浴び過ぎた者は喰奴という悪魔変身者、その亜種になりやすいという結果も出ている』
『それに発想を得た私はそのダークエネルギーを太陽光から取り除き、波長を弄る事で悪魔化ウィルスを完成させるに至ったのだ』
此処で記載が終わり、最後に藤堂 奈津子の名前ともう一つ。彼女が語った悪魔化ウィルスを作る過程において参考にしたとされる“彼”の名前が書かれていた。
「父さん」
鴻上聖。その名前を見て、僕の口からふとその言葉が漏れ落ちた。
・今回の戦い
<劉鳳&武田赤音&花山薫&メティスvsビャッコ>
メティスが居なかったらヤバかった戦い。
他三名は滅法物理に強いが、衝撃は素通りで魔法対抗策も特にない。マカラカーンも敵の回復技になるという問題を抱えていた。後はカジャ関係もなく回復係も居なかったのでやっぱりメティスが居なければヤバかった。居たら各々耐久・回避は高いのでそれなりに攻撃をすかしながら戦える(赤音君は物理のみ回避で耐久無振りなので恐らく定期的に落ちてる)。ビャッコも只管衝撃魔法撃ち込んでいくしかなく、そうなると劉鳳達は特に対抗手段がなく、偶に避ける位しかないので色々絵面が地味になりそうだった所に巨大生物兵器のクラーケンとヒュドラ―を採用。それをぶったおしたらビャッコは泥仕合の末で倒したという流れ。
<真澄&アナンタ&ベネット&はるかっかvsスザク>
デカジャと万能属性の偉大さが分かる戦い。
対戦カード的に物理と火炎ではどうにもならなかったがスザクが運よくメギドラオンを持ってたのでそれでごり押しする戦法に。一方真澄側は相手がデカジャ持ってなかったので只管カジャを積んでいく方針に。ギガバイオレンス連打がなければ恐らく四神の中で順当に倒されていた。ただ、カジャ持ちが運よくいただけでバイオレンスがなく、ギガバイオレンスしかなく動画でも数ターンに1度はそれが発動している事から四神の中で一番強いと思われる。
・キャラ紹介
今回使用させて貰ったゲスト組のビルドを参考程度に置いておこうと思います。人類悪組に関しては頑張って募集文も探したのでそれも張らせて貰います。もしこのゲストキャラを利用する際は此処を参考にしてもらってもいいですし、参考にしなくても大丈夫です。というか私がゲストキャラのビルド好きに作っちゃってるので
<警察官/シャドウ使い>劉鳳Lv83(物理に強く、魔法に弱い)
使用ペルソナ:<法皇>ナントセイクン(性能はランク8のP2罪・罰のSWORD:アーサー。スキルを8つ適時選んで使用)
ほびーさんから頂いた情報通りのペルソナにビルドといった感じ。疾風系の魔法・物理系のスキルを多数Sロ得ている。後はバルザガイアだったりテトラジャ、ヒエロスグリュペインだったりもあったりする(全部P2仕様)。尚裏話でビャッコ戦においてP2には衝撃属性がないので自身の耐性の魔法に弱いの中に衝撃弱点がない事から弱点を突かれず劉鳳は九死に一生を得ている。
花山薫(バキシリーズ)
推定レベル:50前後
クラス:ヤクザ
【N-C】
経歴:弱冠10代にして暴力団花山組の二代目組長として組を率いているヤクザ。率いる組は古き良き昔の侠客のヤクザであり、本人も威圧的な風貌に反して温厚で面倒見がよく義侠心に厚い、その為、組にはそれなりの覚醒者の組員があり、それなりの規模を持つ、だが阿修羅会には与しておらず、スタンスの違いにより勧誘も蹴っているため、阿修羅会とは緊張状態である。
<ヤクザ>花山薫Lv69(物理・銃撃に強く、破魔・呪殺無効)
握撃(真2の菩薩掌)・胴廻し回転蹴り(真2の雷霆蹴り)・山津波(200X)・覚悟の挑発(デビサバ2)
パッシブ:仁王立ち(Pシリーズ)・超反撃(デビサバ2)・物理激化(デビサバ2)・武の赤(IMAGINE)
地獄のマスク(D2)・五分の活泉(P5R)
懺悔いたします。ビルドはジントさんがやっている退魔生徒会の花山薫より許可を頂き、借りました。理由はこっちでビルド作っても似たようなビルドになっちゃったからです。でもイメージ的には花山さんはこんな感じだと思うマジで
武田赤音(Nitroplus/刃鳴散らす)
推定レベル:60程度
クラス:剣士
アライメント:D-C
経歴:純粋に強くなると事と剣の道を極める事を目的にしていて、キリギリスには効率よく経験値や修羅場を見つけるために参加している。天賦の才の持ち主でD2式物理貫通を乗っけた剣技は驚異の一言であり、また異様な回避能力も持つ。京都ヤタガラス討伐戦に参加していて、そこで偶然見かけたマタドールと死合うために修練を重ねている。
<外道/剣士>武田赤音Lv67(精神・BSに強く、破魔・呪殺無効)
誕生篇・覚醒篇における日本剣術(剛剣・速剣・抜刀術)全般。
パ:剣狂者、極・物理見切り
名誉剣バカ。D2式の貫通は凡そ募集文を参考に、回避力も募集文を参考に作成。
代わりにスキルの使用が日本剣術に限定されている。パッシブは他にいい感じの物が浮かばなかったので物理見切りだけに落ち着いた。範囲攻撃がないのが難点だがそれでも結構強いとは思う。
ちなみに前々回説明し忘れたが一部の剣士達は某マタドールに戦いを挑んで輪切りにされたので、レベル上昇と下降が相殺となっている。
名前:アナンタ(らんだむダンジョン)
クラス:デビルバスター
【N-C】
設定レベル:55
経歴:強敵出現の噂を聞いて「ヒャッハー!大量経験値ゲットじゃー!!」と仲間と共に殴り込み来た脳筋。覚えているスキルが物理攻撃系ばかりなため、どうしても属性攻撃は仲間か攻撃アイテムに頼りがちなのが悩みの種。
<ファイター>アナンタLv63(精神・BSに強く、破魔・呪殺無効)
スキル:大切断(IMAGINE)・大車輪(IMAGINE)・至高の魔弾(真4F)・アカシャアーツ(真4F)。
スマイルチャージ(真4F)・ボディガード(PQ1)・タルカジャ(DSJ)・ラクカジャ(DSJ)
パ:不屈の闘志(D2)・三分の活泉(D2)・デスカウンター(D2)・鋭気の権化(D2)
分かり易い物理アタッカー。某破壊神を破壊した男に弟子入りして、その破壊の力を授けられたとされている(見様見真似)。ついでに元気玉みたいな感じで至高の魔弾も出す、原作も出してるし別にいいかなと考えている。ニヤリ攻撃以外は属性が武器依存のIMAGINEスキル(らんだんのスキルが大体武器依存と書かれてたので)だったりを参考した。攻撃強化や防御強化系のスキルも元ネタの方だとあったのでこれも採用。パッシブは適時それっぽいので埋めました。
名前:ベネット(らんだむダンジョン)
クラス:デビルバスター
【N-C】
設定レベル:50
経歴:アナンタの親友で仲間の一人。今回の殴り込みにアナンタが一人で行こうとした為、心配してついてきた苦労人。疾風属性魔法を主に覚えており、サブに回復とデバフスキルを習得している。
<トリックスター>ベネットLv57(疾風・破魔・呪殺無効)
スキル:マハガルダイン(DSJ)・ガルダイン(DSJ)・メディラマ(DSJ)・
デクンダ(DSJ)・トリッキーダンス(DSJ)・子守歌(DSJ)・
全身砕き(DSJ仕様の雄叫び)・両足封じ(DSJ仕様のフォッグブレス)
パ:速度向上(200X)・韋駄天の覚え(真4。速+20)・精神異常無効(DSJ)
PTに一人は欲しいタイプの速度重視の魔法使い。疾風魔法も状態異常も弱体化も割と優秀なDSJからスキルは取っている。回復もできるし、デクンダも持ってるので其処らへんも手堅い。パッシブは速度重視という事で速度系を、後はBS反射対策に詰まれた無効化を搭載している。
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ヨコハマ事変 羅刹/天使
\カカカッ/
夜叉鬼 | キングー | Lv65 | 呪殺反射。地変・バッドステータス無効*1 |
\カカカッ/
鬼神族 | スルト | Lv57 | 火炎吸収。呪殺・混乱・神経無効。氷結に弱い*2 |
\カカカッ/
魔族 | フラウロス | Lv47 | 呪殺反射。物理・銃撃に強い。猛毒・神経に弱い*3 |
\カカカッ/
生物兵器 | リッパーの群れ | Lv35 |
\カカカッ/
生物兵器 | スウェインボールの群れ | Lv35 |
脳天割り | DDSAT2出典。敵単体に物理属性の大ダメージを与える。 残りHPで威力が変化し、命中率が高い |
デモンレイヴ | DDSAT2出典。敵複数体にランダムで物理属性の中ダメージを与える。 残りHPで威力変化 |
鉄死拳 | DDSAT2出典。敵全体に物理属性の中ダメージと確率で呪い効果を与える。 |
リッパーの | 敵単体に斬撃属性の中ダメージを与え、中確率で即死効果を与える。 |
スウェインボールの | 敵単体に突撃属性の中ダメージを与え、中確率で毒状態にする。ノックバックがある |
「邪魔です」
\カカカッ/
Lv88 | 半羅刹/剣士 | 久遠 由奈 | 耐性:凡そ全てに強く、物理吸収。火炎・氷結・ 破魔・呪殺・精神・神経・魔力・緊縛反射*4 |
\カカカッ/
Lv74 | ガンスリンガー | 久遠 エリヤ | 耐性:凡そ全てに強く、火炎・氷結・ 破魔・呪殺・精神・神経・魔力・緊縛反射*5 |
物理アブソーバ | DDSAT2出典。物理属性の攻撃を吸収する |
雲耀の剣 | 200X出典。敵前列に万能相性物理ダメージを与える。消費MP・HPは存在しない |
レールガン | 200X出典。レールガン付加スキル |
敵全体にガン相性の大ダメージを与える。このダメージは防御点で減少できない。弾数を10点消費する。 |
とある別の区画、巨大生物兵器であるトライデントによって分断された上に四神相応によって落下させられた由奈とエリヤ。二人は区画から湧き出る悪魔と生物兵器を掃討しながらも同様に分断されて、恐らく区画としては近い場所に居るフェイを探していた。
「片付いたな……って、おい由奈」
「先を急ぎますよ。あの子の位置なら大体分かります……早く、合流を」
「分かっているが、少し冷静になれ。急ぎ過ぎだ」
襲い掛かる悪魔や生物兵器を斬り捨てて、その
「明確に分断を狙っていたのは貴方とフェイだ。貴方は運良く私が傍に居たが、あの子は単独で落ちていってしまった」
「そもそもあいつには仲魔が居るだろ。単独でやられるような事は早々ない筈だ」
「それで、ラーヴァナに殺されかけたんだあの子は……!」
八つ当たり気味に襲い掛かる悪魔を乱雑に斬り捨てながら、由奈は明らかに怒気の籠めながら言葉を返す。
やはり私の提示した案の通り、引き篭もるべきだった。例えその果てに待つのが明確な衰退と死だとしても
世界の実情を見るのであれば戦い続けている事は決して無駄ではない。世界もこうして薄氷の上にて存続し、閉鎖的な半年と数カ月前に比べれば今の方が明らかにマシだ。でも、それでもフェイに戦ってほしくは、傷ついてほしくなかったと由奈は今でも思っている。
「くそっ……エリヤ、場所の目星は?」
「つかない。方角はあってるがジャミングが酷すぎて、見通す事が出来ない。徐々に近づいては来ていると思う……このままのペースで進むしかなッ……!?」
「どうしま「みぃつけた!」新手…ッ!」
銃貫通 | 真4F出典。相手の銃属性の反射、吸収、無効、耐性を無視する。 |
蜂の巣ピット | IMAGINE出典。 敵を蜂の巣にするほど、非常に多くの射撃を繰り出すが、射程距離が若干短い特技。1度の詠唱で10発分の装填を行い、敵1体に対して、射撃攻撃力に依存した物理ダメージを与える。 |
突如として頭に奔った痛みに手を当てて俯くエリヤ。その異変に周囲を改めて警戒した由奈が抜刀しようとしたその瞬間に異界の壁を突き破りながら、エリヤに発射された銃弾は10発。
カバー | 誕生篇出典。割込行動 |
集団スポーツで他者カバーに入る臨機応変の能力を示す。他者が失敗した時に何らかのカバーに入る能力である。チェックに成功すれば、他のPCの行動に割り込んで自分の行動を行える。代わりにダメージを受けるのはオーケー。この場合は回避は出来ずに防御は可能。 |
吉祥天咒法 | 覚醒篇・マントラ出典。防御行動の際に使用できる。自分に与えられた敵の物理攻撃1回を副次効果も含めて無効化する |
引き | 誕生篇出典。割込行動 |
相手が防御した時或いは自分が相手の攻撃を防御した時に後方に跳び上がって、間合いを取り、攻撃につなげる技。判定に成功すればペナルティ修正なしで1回、攻撃できる。この攻撃の対象の回避/防御は威力分(剛剣技能値参照。値は60)のペナルティ修正を受ける。 |
脳天割り | DDSAT2出典。敵単体に物理属性の大ダメージを与える。 残りHPで威力が変化し、命中率が高い |
瞬時に
「はっ!効かないわよ!」【物理反射】
「物理は反射ですか」【物理アブソーバ】
斬撃は襲撃者によって反射され、その反射された斬撃もまた由奈に吸収された。由奈とエリヤより少し離れた進路にて襲撃者は立ち塞がる。
「今更名乗りは必要かしら」
「察してはいますが一応」
襲撃者が身に纏う黒いローブを投げ捨てる。長い茶髪にアサルトライフルのような銃火器を装備したPMCのような兵装。何より目を引いたのがその顔立ち。
\カカカッ/
超能力者 | アンナ | Lv90 | 耐性不明 |
「……アンナ」
「久し振りね、兄さん。今は姉さんって言った方がいい?」
涼やかな顔で銃をエリヤに向けるアンナに対して、エリヤの顔は酷く苦し気で向けた銃も震えている。それらを鑑みながら由奈はアンナに目を向けた。
「品川の時以来ですか。貴方とは」
「ええ、そうね。出来ればあの時あんたをやっておきたかったわ……今もこうして支障が出てる」
「そうですか。まぁ貴方の所属・立場やらはこの際どうでもいいとして、何故エリヤを狙ったんですか。貴方のお兄さんだったのでしょう?」
当然の疑問を由奈はアンナにぶつけた。推定ガイア再生機構所属の彼女があのレイドバトルにて此方を観察していたのは戦力を測るという意味合いで理解できる。だが、唯一の家族とも言えるエリヤを殺そうとするには相応の理由が必要だ
「ああ、そうか。それについては話しておかなきゃ駄目よね……端的に言えば私、兄さん殺さないと死ぬのよ」
「どういう事だ!俺に説明してくれ、アンナ……!」
「私からも具体的な説明を求めます」
エリヤにとって長年探し求めていた家族が敵となって立ち塞がっているという現状。それに対して由奈もまたエリヤの激しい動揺に理解を示していた。自身にとって言えばフェイが敵として立ち塞がってきているという状況であり、そうなれば間違いなく自身は戦意を喪失して今のエリヤよりも酷い有様になるだろう。エリヤが動揺して戦いに参加できなくとも最悪足手纏いにならなければ良いが、最終的にこの要求をエリヤが受け入れてしまえば此方に出来る事は何もない。様々な想定を頭で思い描きながら、その状況下でも対応できるように由奈はアンナに対して警戒を続ける。
「兄さん、エリヤにどういう実験がされてたかは流石に知ってるわよね。あんた達はどういう手段かは分からないけど、肉体改造されて定期的に専用の薬を飲まなければ狂って死ぬような症状の安定化に成功している。妬ましい程だわ……でもね、兄さんが受けた施術はプロトタイプなのよ」
「まさか、貴方にも」
「その通り。私には兄さんといった実験体を積み上げて完成された物が施術された。もっと効果が強く、残酷な物をね」
感覚暴走 | オリジナル |
人体改造によって常に『経験の香(経験値獲得率+100%)』を得る。鋭敏化しすぎた五感は複数の実験によって完全に喪失させられ、死亡時のレベルペナルティの効果は通常の5倍になる。人体改造に適合した者は超能力に目覚め、それと機械の力を用いて五感を補う。 |
「だから、この目もあんた達を認識してる訳じゃない。身体に埋め込まれた機械と超能力であんた達を察知しているだけ」
「そ、んな……な、なんでお前までガイアは俺と同じ実験を……ッ!」
「一つは超能力の適性が最初から見出されていたから、これがないと感覚喪失した後も何もできないからね。もう一つは私に施された天使化、それによって私はサンダルフォンの天使人となっている。要は超能力の素質があって丁度良かった。実験試してみたら上位天使の天使人で其処も丁度良かった。ああ、後は手荒れに扱っても特に口出しできる奴が居なかったのも丁度良かったかしらね。ウリックも兄さんも
「アン、ナ……お、俺は」
「別にそこに関して兄さんは恨んでないわよ。そっちもそっちで大変だったのは分かってるし、メシアに居た時の扱いも聞いてる。その時の事はごめんなさい、何もできなくて」
「そんなことはもういい…!お前が死ぬってのは何故だ…!」
「簡潔に言っちゃえば実験の後遺症って奴かしらね。当然そこまでの施術を重ねれば寿命は短くなるし、身体はボロボロになる。私のスペック自体は想定内だったらしいけど」
どこまでもあっけらかんと、何事もないかのようにアンナは語る。自身に刻まれた実験は凡そエリヤと同様の感覚鋭敏化と天使化。但し五感は喪失して、アンナがなった天使は
ガイア再生機構の構成員はそういうレベル以上の能力を持った者が多いとは聞くが、由奈の目から見てもアンナの力は能力だけなら100レベルクラスのそれに感じられた。悪魔の転生技術……デビルリユニオンだったか、彼女もまたそれを受けているのだろうか。
「残る稼働年数はメンテナンスを最大限重ねても約半年程度。何かしらの処置をしなければ其処で私は死ぬ。上も今回の周回で私を使い潰そうと思ってたみたいだけど……そこで兄さんを見つけることが出来た」
「エリヤの命を用いて、貴方の延命を行う。そう言いたいと?」
「ま、そう言う事ね。今の私の寿命、限界が来ているのは生体部品……詰まる所、私の元の身体の部位。それに一番合致するのは家族である兄さんしかいない。女になっているなら猶更ね。だから私はずぅっとずぅっと兄さんを探してた。今まで何年も十年以上も、このグルグル回り続ける世界をね」
「生体部品が欲しいのであればエリヤの肉体部位を一部切り離した上で培養。それを利用するという手立ても考えられますが」
「上がそれを考えないとでも思った?無理だったのよ、全部他のは無駄。それに移植っていうのは表現として正しくない……私と兄さんは合体する必要があるのよ。悪魔みたいにね」
「がっ、たい……?」
押し寄せる情報とそれによって齎された痛みと後悔、それに悶えながらエリヤがアンナを見た。
「サンダルフォンの名前は“兄弟”を意味するそうよ。私は確かにサンダルフォンになった、選ばれた。けど魂はそれに合致しても肉体がついてこれなかった。私が持っていたのはサンダルフォンに合致する魂だっただけで肉体は別にあったの」
アンナが冷めた眼つきでエリヤを見る。
「それが貴方なの、兄さん。預言者エリヤが生きながら死に、そして大天使サンダルフォンになるが如くね。
「そうなった場合、エリヤの意識はどうなります?」
「兄さんに求められているのは身体だけ。だから、そうね……兄さんの記憶の一部が私に刻まれて魂は消え去るんじゃないかしら。やってみなきゃ分からない部分はあるけど」
「それでエリヤがその要求を呑むと?」
「さぁ、それは兄さん次第かしら。此方の言うべき事は全部言った。大人しく私と一緒にいって、私の一部になるか……それとも抵抗した末に私に連れ去られるか。選んでよ、兄さん。出来れば大人しくついてきてくれると助かるわ」
「……そんな、嘘だ。俺とお前、どっちかしか生きられないのかよ」
「最初からそう言ってるじゃない。飲み込み悪いわね。ああいや、それは昔からそうか」
「……では私から最後に質問があります」
膝をついて蹲り始めたエリヤを後ろにやって、由奈がアンナと向き合う。
「アンナ、兄の命を犠牲にしてまで生きたい理由とはなんですか?そこまでして
「生きる理由、ね。確かにそれは大事な事よね。そう、兄さんの命を犠牲にするんだから。答えなくちゃ道理が通らないか……私は普通に生きたいのよ。学校に通って、社会に出て、結婚して、子供を産んでって感じのそういうね。貴方にならわかるんじゃないかしら、由奈」
「……酷く共感はします」
「仮に此処で兄さんの命を使ってもそれには届かないけど、猶予だけは生まれる。最早そんな普通は望めないけど、私にはウリックが居る。彼と一緒に何処までも生きるわ。それだけが私の願い……納得してくれた?」
「理解はしました。ですが、取り敢えずこの場は引いてはくれませんか。エリヤも即答は出来ないでしょう」
「その要求が通るってあんたも思ってないでしょ。でも兄さんが即答できないのは本当みたいね。残念だわ、本当」
会話の空気が止まる。アンナは銃を構えながら片手にMAGを迸らせて、由奈は太刀を抜き放ってアンナに向ける。
「ま、まってくれ!俺が死ぬだけでいいんだろう!?ならっ」
「口だけじゃ何とも言えるわよね。私の事だけ考えて生きてきたなら即答できる筈じゃない?でも、できないでしょう?それが貴方の限界なのよ、兄さん」
「ち、が」
「違わない。まぁ人間として健全でいい事じゃないかしら。私を探していたのは事実でも、それだけを考えて生きてきた訳じゃない。この世界に来てからも兄さんはそう。鋭敏化はあるけどそれは中和されて、五体
満足で平和な日々を過ごせて、隣に大切にしてくれる人がいて、ああほんと……」
アンナの顔がエリヤに向いて、口が三日月に歪む。その視線には愛情や親愛、今までの感謝、そしてそれ以上の憎悪と怒りと妬みが含まれていた。
「妬ましいわ。殺してやりたい位にね」
「アン、ナ」
「エリヤ、下がっていてください。今の貴方は足手纏い、此処で答えを出せないのであれば戦闘に巻き込まれない事だけ注意しておいてください」
「ゆな、俺は、どうしたら」
「それは貴方自身が決める事です。ですが貴方があちら側につくならその時点で貴方は私の敵となります。その点はご理解を」
呆然とするエリヤを余所にアンナと由奈は互いに殺意をぶつけ合っている。周囲は静寂に満たされ、増援である悪魔や生物兵器が来る気配もない。
「あーあ、本当なら此処まで話をしてから茫然喪失な兄さんを攫うだけでよかったのに。やっぱ消しとくべきだった」
「……もう一人の男は何処にいますか」
「もう察してるかもしれないけど彼なら貴方の
「貴様」
「あはっ、どうしたの?寝取られるとか思った?すました顔が今は般若みたいになってるわよ。こわいこわい」
「……安い挑発ですね。しかし、私に向かってそういう事を口出しするのなら」
最早言葉は不要。エリヤが即答できない時点でお互いにやるべきことは決まっていた。それぞれの目的の障害、眼前に立つ女をこの手で排除する。それしか道はない。
「五体満足で帰れると思うなよ」
「そっちこそ今度こそ息の根止めてあげるから!」
互いに対する殺害予告と共に戦端が開かれる。
スピードスター | D2出典。自身のバトルスピードへの影響が50%増加する。 |
先手 | 誕生篇_剛剣。反射神経を鍛え上げ、反応する。イニシアティブで振れるダイスを1ターンだけ2個増やす |
「先手は貰います」
「ッ速いわね…!」
由奈が動く。その身に宿した
摩利支天咒法 | 誕生篇・マントラ出典。割込行動。 |
摩利支天の加護を受けて、神速の動きを得る。2倍の行動ができるようになる(ラウンド毎に2回分のアクションが可能に)。移動力や回避値は変わらない。効果ターン数はマントラ技能値-10により、10ターン継続する物とする。前ターンに使用 |
そうして展開した
「成程、一筋縄ではいきそうにないわね」
アクセラレート | SH2出典。行動回数を増加させる |
サイコ・ブラスト | 覚醒篇・PK出典。一部強化 |
敵1体に念動力によって威力分のダメージを与える。本来は習得時に一つの属性を指定して、その属性によるサイコ・ブラストしか行えないが、複数の■■移植によってこのサイコ・ブラストは使用時に火炎・氷結・電撃・衝撃・銃撃・物理の中から一つの属性を選択し、その属性相性のスキルとして扱われる。威力はレベル×3を参照し、そのレベルによりメギドラオンの3倍前後の威力を発揮する。電撃相性と衝撃相性を選択 |
それに対してアンナが取った行動は複数回行動からの超能力、
赤黒い雷撃が命中して由奈の身体を焼いて、それで硬直した所に音すらも置き去りにした殺人の烈風が衝突する。
「半減してこれですか。それなしに2回喰らえば確実に落ちていた……」【HPメガブースタ】*6【カラミティスーツ】*7
ざっくり自身に残った
「私にもまともな補助が使えれば良かったんですがね」【宝玉】*8【韋駄天の札】*9
摩利支天の加護を用いた
「あの時と同じ回避からの反撃を狙おうって算段ね。でも、そうはいかないから」
アンナが動く。
「それはどうでしょうか?」
孔雀明王咒 | 誕生篇・マントラ出典。 魔法攻撃やシンクロに対して魔法回避をする際に 仏法の守護者、孔雀明王マユリの名を唱える事で発動。 回避が加護(運)で行え、判定値にマントラ技能値分の補正が掛かる。 |
姿勢を低くしながら唱えた
援護射撃Ⅲ | 200X出典。即時効果 |
銃器を装備中に使用者以外の味方一人が攻撃を受けた時に使用可能。対象は回避・防御・反撃の判定に+40%の修正を得る。この効果は1シナリオに3回まで使用可能。 |
だが、それはこの場に居る
「兄さん…ッ!」
「はぁっ……はぁっ……!」
数発の弾丸が衝撃破そのものを射抜いて、其処で発生した若干の狂いが釣り合った天秤を由奈の方へと傾かせた。
「もう少し復帰には時間が掛かると思っていました。大丈夫なのですか?」
「大丈夫とは言い難い。あいつに銃を向けると、震えが止まらない。だから援護がやっとだと思う」
「十分です。貴方はやはり頼れる人だ」
由奈とエリヤが前衛・後衛に並ぶ。由奈単独であるなら恐らくアンナに届く事はない。どれだけ回避してもジリ貧で相手も人間である以上は此方のアイテムの使用にも追いついてくるし、その総量はあちらの方が上だろう。由奈の耐性が万全故に戦いにこそなっているがじわじわと消耗戦を仕掛けられれば能力値の差によって自ずと此方が不利になっていく。だからこそ、なんとかするにはエリヤの力が必要不可欠だった。
「それ、もうこっちにつく気はないって事よね。私が死んでもいいって意思表示よね?」
「俺はお前に死んでほしいとは露ほども思っていない。生きてほしい、生きていてほしい、その為に今まで戦い続けてきたのは事実だ。だが……それでも俺の命をお前に捧げる事は出来ない」
「なんでよ!?」
「
エリヤの顔色はやはりよくない。立って銃を握っているのが精いっぱいで、喋っている事も把握できてはいないだろう。突きつけられた現実に膝を折り、何も考えたくはなかった。それでもこうして食いしばっているのは自らの思いを伝える為。
「お前がガイアに所属している以上は例え身体が回復しても上から渡される任務から逆らう事は出来ない。俺がガイアに居た時と同様にお前にもそういう縛りが掛けられている。そうだな?」
「ええ、そうよ!だってそれしか生きる方法ないじゃない!選択肢なんてなかった!選択肢があったらあんな奴らに従う筈がない!これ以外私にどうしろって言うのよ!」
「半年なら、少しの間だが猶予がある筈だ。その間に俺達と一緒に探そう。お前の身体を何とかする方法を」
「それだけで間に合う訳ないじゃない!上が何年、これを治すのに時間を費やしたと思っている!?それでも兄さんの命を使わなきゃ、私の身体は治せないって結論が出たの!」
「それは上がお前に刷り込ませた命令かもしれない。その方が都合が良かった、そういう事もあるだろう。お前がさっき言った通り、俺の感覚鋭敏化はある程度緩和されている。そのノウハウと俺の肉体の細胞を用いて生体部品を入れ替える事が出来れば、お前の身体を治せる可能性はある」
「全部仮定の話で確実性がない!そんな方法で私を治そうとしてるの!ふざけてる!?」
「ああ、そうだな。全部かもしれないの話だ。お前の身体を治せる保証はない。それでも俺は……お前に誰かを殺し続けながら生きてほしくはない。アンナ、お前の命を伸ばす為に俺の命を使う事が嫌なんじゃないんだよ俺は。俺の命を最終的に使ってもいい、だからガイアに居るのはやめてくれ……!」
「……話にならないわ。この世界にそんな技術があるとは思えない。兄さんならとも思ったけど、全部無駄だったようね」
話は尽くそうともそれはどこまでも平行線で、必死なエリヤの声と冷めきったアンナの声が反響している。
「これ以上あいつらの言いなりにはなりたくない。こんな事を続けたくもない。兄さんの意見も間違ってはいない」
「なら!」
「だけどね」
正の感情が負の感情に覆い潰され、実験の痕なのか黒いタトゥーのような線がアンナの顔や手足に浮き出ている。
「私はもう、疲れたの。何かを選ぶ事、信じる事、託す事。上の命令に従っていれば少なくとも任務の時以外は平穏に過ごせる。傍に居る人もずっとずぅぅぅぅぅうっっと一緒に居てくれたウリックだけでいい。彼以外全部もういらない。あんたもいらないの、兄さん」
「違う、アンナ!まだ戻れる筈だ、あの頃に!ウリックも一緒に…!」
「兄さん、あんたはずっと変わらなかった。メシアの肉便器にされても、ガイアの実験体にされても、ここに来てからも姿形は変わってもその心だけは変わらなかった。でも私は違うの。変わってしまったの全て。もう
過ぎ去ってしまった互いに手を取り合い、笑い合う日々はとっくのとっくに終わっている。互いに身体を弄られ、ボロボロになって、この世界に辿り着いた兄妹はこうして天使を背負って銃を向け合っている。
「あんたが死んだ所で肉体位なら私が修復できる。此処であんたを殺すわ。確実に」
「アンナッ!!!」
「うるさい!五月蠅い!煩い!結局助けてくれなかったのに今更私に縋るなぁっ!」
「……ッ!」
異変に気付いた由奈がエリヤの腕を引っ張り上げる。後方に退避すると同時に変わっていくアンナの姿。纏っていた装備を拡張させるかのように身に纏わせて、さながら機械天使と言わんばかりの装備を身に纏っていく。黒いタトゥーが淡く蒼い光を放って、その瞳が金色に染まる。
\カカカッ/
魔人 | サンダルフォン | Lv99 | 耐性不明 |
デモニカ:サンダルフォン | オリジナル |
アンナ用に調整された特殊なデモニカスーツ。リミッターを解除し、搭乗者が耐え得る限界にまでレベルを上昇。ステータスを大幅にアップさせる。さらに搭載されている機械翼やブースターにより亜音速による空中戦闘が可能。但し、搭乗者の肉体・精神負荷は一切考えられていない。【BOSS特性】【ハイアクセラレート】を取得する。 |
Lv99。一種の限界点に到達した
「今すぐそれを纏うのはやめろ!それはお前の命を間違いなく削っている!」
『ぎゃぁぎゃぁ煩いんだよ、本当。やっぱあんたから黙らせてやる』
「……ッ!」
機械翼によって浮遊しながらエリヤを銃口を向けるアンナ。由奈は一時的にフリーとなったが取れる手段は限られている。奴は物理反射を持っており、物理吸収までしか抜けない己の武器では物理属性を当てる事は出来ない。かといって雲耀では打点が足りないだろう。
物理貫通Ⅲからの物理攻撃、そして雲耀による万能物理。己にはこの二種による攻撃しかなかった。マントラは使えるが、それも補助全般であり攻撃に使う事は出来ない。ならば自身はどうするべきかとずっと考えてきた。他に手立てはないものかと。
その手立てを考えて、幾人もの剣士の技やスタイルを研究した。その中で確認したのが
両手剣を用いる剣技であり、同じ技であるのに斬る度にその斬り方を変えて、威力も増していく。そして何よりも
バイパースマッシュ |
ペルソナ1出典。 両手剣による特殊な斬撃。100%相性。1回使用する度に威力が上がる(最大8回) 最大まで使用されたバイパースマッシュの威力はメギドラオンを超える特大ダメージとなる。 |
『反射を抜いた!?
サイコ・シールド | 誕生篇&覚醒篇・PK出典。割込効果 |
物理・魔法両面で威力分、防御力を上昇させるバリアを創る。有効時間は1ターンでターン終了時にMPを支払う。継続したい場合はMP4を払うだけで継続できる。威力は本来PK技能値を参照するが、このサイコ・シールドはレベル×3を威力として参照する。 |
「
万物に通じる刃といっても自前の防御力によっては通じない事もあり、あまりに強固な念動力による障壁によって威力の殆どは削がれてしまった。この刃を通すには少なくとも数回以上回数を重ねる必要がある。だが確かに技を物には出来ていると由奈は確信して、剣に込める力を強めた。
見様見真似というには幾多の人間に意見を聞き過ぎていた。本来ならばレッドアイホーク本人に聞くのが早いが、悪魔業界の人間としてそれを教えてもらうのは非常に困難。故に只管参考にできるものを参考にして、己のスタイルに昇華させて、その上で
「エリヤ!」【デカジャの石】*11
「っ!悪い!暫く時間を稼いでくれ!」【金剛の札】*12
アンナ・サンダルフォン | なし |
真澄陣営 | 防御力強化(3ターン)・命中回避強化(2ターン)(双方P5R仕様)・バイパースマッシュ1回 |
ハイ・アクセラレート | SH2出典。行動回数を2回増やす |
BOSS特性 | 200X出典 |
サンダルフォン化に伴い発動。 ・1回の手番で2アクションの行動が可能に ・最大HP5倍・最大MP2倍 ・即死・石化・麻痺・毒・魔封(封技)無効 ・HPを直接減少させる効果を無効化。 ・BSを受ける確率半減(1行目2列目) |
膨大なまでのMAGと能力値はアンナの身体を文字通りその身を削りながら加速させて、血反吐を吐きながらもアンナは由奈とエリヤを見据える。
『消えろォッ!』
メギドラオン | DSJ出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
メギドラオン | DSJ出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
メギドラオン | DSJ出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
メギドラオン | DSJ出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
一切の容赦もなく放たれたのは
「可能な限り回避を!」【孔雀明王咒】
4発放たれたメギドラオンを二人は回避を狙う。よしんば命中したとしても札を使用した
『強化ありでも4連打ならと思ったけど万能は通りが悪いか』
「……強化をここまで積んで、この消耗ですか。厳しいですね。」【宝玉輪】【虚弱性・消毒スプレー】*15
「それでも諦めたくはない……!」
アナライズ | 200X出典 |
術者以下のレベルをベースにした威力ロールを行う。結果以下のレベルの敵悪魔1体のデータを見る。戦闘中の判定は自動成功する。情報判定として使用する際は運を用いる |
ハイアナライズ | 200X出典 |
習得者はBOSSに対してもアナライズを行える。また、アナライズの数値に補正がかかる。 |
エリヤはその瞳を用いて、アンナの状態・能力を見通す。その間、
\カカカッ/
魔人 | サンダルフォン | Lv99 |
物理・銃撃反射。火炎・氷結・電撃衝撃・破魔・呪殺・精神・魔力に非常に強い*16 |
メギドラオン、ヘヴィソニックトリガー、至高の魔弾、ダッジ・フェザーetc |
銃貫通・物理反射・銃撃反射・大天使の加護・感覚暴走 |
強固な耐性に汎用性の高いスキル群。それよりエリヤの目を引いてしまったのが
「お前、その身体……!」
『ああ、バレちゃったかぁ。これだけは知られたくなかったんだけどなぁ』
アンナの肉体に存在するMAG供給源は複数存在する。彼女の肉体は実験によって穴を開けられ、削られ、その内臓・骨格さえ人間とは異なる。そうして空いた体内スペースに埋め込まれていたのがMAG供給源、
『そっ、私はもう悪魔でも人間でもない。継ぎ接ぎだらけのテセウスの船。兄さんの知ってるアンナとはもう全てが違う』
「違う!お前は間違いなくアンナだ!」
『顔と声とかそれ位でしょ。あんたの知ってる
「……お前は」
『私は魔人サンダルフォン。アンナだった存在の成りの果て。もうあんたと話す事はない。あんたにその気がなくても……あたしが兄さんを殺すわ』
アンナ・サンダルフォン | 攻撃力低下(3ターン)(P5R仕様) |
真澄陣営 | 防御力強化(2ターン)・命中回避強化(1ターン)(双方P5R仕様)・バイパースマッシュ1回 |
『このままじゃ埒が明かないわね。なら、こうしようかしら』【デクンダの石】*17
会心の眼力 | 真4F。次に行う物理、銃攻撃が必中&クリティカルになる。 |
アンナが自身に付与したのは魔法ではなく物理や銃撃の必中・クリティカルを引き起こす為の会心の眼力。由奈が居る以上は物理攻撃を通すのは難しいと思われたそれは
メギドラオン | DSJ出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
メギドラオン | DSJ出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
そうして再び放たれたメギドラオン二連射。先程と同様に二人は回避を行おうとして
「なっ!」
「避けられない…!まさか…!」
会心の眼力 | 真4F出典。 バグ効果として以下の効果が会心の眼力にはついている。 ・この状態で魔法を使用すると必中となる(表記なし)。 ・さらに会心の効果が1度で消えずに継続する。 |
『どう?驚いた?種が分かってもどうしようもないだろうけどねぇ!』
アナライズで表記される事が必ず正しいとは限らない。
万能に対する耐性と防御力強化は依然としてある為に耐える事は出来るが、回避という選択肢が消えてしまった現状は消耗戦というアンナの狙いにさらに近づいている。そして、それを打開する作戦も浮かばなくこのまま消耗戦に乗るしかない。
「……長い戦いになりそうですね。付き合って貰えますか、エリヤ」
「俺が付き合って貰ってる方だ。文句は言わない」
其処から再開された戦闘は数分以上に渡って繰り広げられた。ルーチンは互いに繰り返されて互いに
「……ふぅっ……」【不屈の闘志消費】【バイパースマッシュN回】
「……きっついなぁ」【幸運全消費】
『頑張った方じゃないかしらね』
勝敗もほぼ決していた。アイテム量も恐らく差ができている。回復手段も左程残されていない。バイパースマッシュをどれだけ叩き込もうとサイコシールドによってその威力は凡そ半減されている。高倍率の強化を積める人間が居れば話は別だったがそれが行える者は今この場に存在せず、仮定の話にしかならない。
「なぁ、アンナ」
『……』
「俺の命を使えば、お前は幸せになれるのか?」
『……分からない。それは、分からない。でもそう思わなきゃ私は何の為にここまで苦しんだの?』
「……」
『もうどれ位か分からない位、私はあいつらに使われてきた。ウリックが居なかったらとっくに人格も保てなかった。ずっとずっと苦しんで生きてきたのに、幸せを望むのは駄目な事なの?ねぇ、兄さん』
「そう願う事は間違いじゃないと、俺は思う。誰しも幸せになりたいと思いながら生きている。それはどんな存在でも変わらない。不幸を望んでいる、というのもそういう幸せを望んでいると同義だしな。だが、その上で他者の幸せを奪う権利は俺達にはないんだよ、アンナ」
『……そっか、そうよね。でも私はそれでも生きるわ。他人の幸福を踏みじっても生きる。それが例え許されない事だとしても』
「アンナ……」
『だから、死んで兄さん。貴方の事は忘れないから』
最早何度放たれたか分からないメギドラオンの光がアンナの手に浮かぶ。これにて戦闘は終わる。自身はエリヤを確保し、その命を捧げる事で生き永らえる。そう確信して放とうとしたそれは
『……っ…ぁ…?』
手から放たれる事はなく、墜落したのは自身の身体。
「……やっとですね。エリヤのアナライズで分かっていた事ですが、その状態も長く続く物ではなく時間制限があった。チキンレースはお互い様だった、そういう事です」
行動不能となったその瞬間に由奈はアイテムを使用して自分達を回復させる。エリヤのアナライズよって見抜いたものはスキルや耐性だけではない。アンナの内部状態も見抜いたのだから、当然
勿論、消耗戦で不利だったのは本当であれ以上サンダルフォンとして戦い続けられていたら負けていたのは此方だっただろう。アンナの一種の慢心を突くことが出来たが故の作戦だ。次は通じない。
「アンナの形態変化の解除及び捕縛に成功。
「ああ、分かって「そいつは困るなぁ」ッ!?」
瞬間、捕縛したアンナの身体を何者かの手によって奪取された。
\カカカッ/
剣士/サマナー | ウリック・ヤード | Lv85 | 耐性不明 |
\カカカッ/
堕天使 | 流出のゴモリー | Lv83 | 耐性不明 |
\カカカッ/
熾天使 | 創造のフラウロス・ハレル | Lv82 | 耐性不明 |
\カカカッ/
龍神 | 創造のケツァルコアトル | Lv81 | 耐性不明 |
「よっ、レルムの時以来だな女剣士さん。後はエリヤさんも元気そうで良かった」
「ウリック・ヤード。何故貴様が此処にいる」
「……こういう立場同士じゃなかったら再会を喜びたかったよ、俺も」
アンナの幼馴染にして同様にガイアに所属すると思われる存在、それがウリック・ヤードという男。アンナが言うには彼はフェイと戦っていて、それがここに居るという事はフェイはどうなってしまったのかとエリヤは嫌な想定が頭に浮かんで力が抜けそうになるも何とか臨戦態勢は維持して、由奈は今にも斬りかかってしまいそうな程の殺気をウリックに対して発していた。
「最初に言っておくが御宅の所のフェイは無事だ。接敵したがまぁ一応引き分けって形で申し出させて貰ってね。一種の不可侵条約を結んだのさ。だからお前達に危害を加える事は俺には出来ん」
「ではフェイは今何処にいる。答えろ」
「そう急かさんなって。今そっちの情報端末に彼の現在地のマーカーを送った。それを辿れば合流出来る筈だ」
それと共に由奈とエリヤの情報端末に送られてきたのフェイのマーカー。彼の周囲にはラクシュミ・フレスベルグ・バロンが存在しており、反応からして本物で間違いはなさそうだ。此方の方角に真っ直ぐと彼は向かってきている。
「確かにフェイで間違いなさそうだな。それと……アンナはどうしてもガイアに連れ戻すのか?」
「俺がフェイと結んだ条約には互いの不可侵。これにはアンナの安否も含まれているから、それに関して俺に制限は掛けられていないって訳だ。まぁその代わり俺もあんたらに手出しする事は出来ないが」
「そうじゃない。お前もガイアにアンナを縛り続けるのかと、そう聞いている」
「……その感じじゃ大体の事はアンナが話したか。ま、こいつが言ってる事が大体真実だ。技術的にもアンナの命を伸ばせるのは俺達の組織しかないし、その手段もあんたの命が必要になる。そしてそれ以外の手段を俺もアンナも選ぶつもりはない。あんたが100%成功する延命手段を考え付いていれば話は別だが、そんなもんないだろ?だから俺達はもうその時点で殺し合うしかないんだよ」
「……」
「勘違いして貰っちゃ困るが、俺もアンナも別にあんたの事が嫌いになった訳じゃない。アンナの態度は今までの好意が歪んでしまったものだし、俺もエリヤさんが生きていてほっとはしている。幸せに過ごせている事もな……だが、俺は飽く迄どんな事があってもアンナの生存を優先するってだけだ。それだけは分かってほしい。」
「……わかった。アンナを宜しく頼む」
「ああ、任された。とはいってもまた次会った時に決着がつくかもしれないが……ま、その時はそん時だ。お互い悔いが残らないようにしようぜ。じゃあな」
ウリックはそれだけ告げて、アンナを連れて何処へなりとも去って行った。後を追う事は出来ない。アンナとの戦いでの消耗は大きく、アイテムで回復はしても極度の疲労が残留してしまっている。
「……フェイとの合流を目指します。一刻も、速く」
「分かっている。行こう」
・
・
・
「あ゛ーし゛ん゛と゛い゛」
あれから資料室で凡そ全てのデータを手早くで漁り尽くした僕は由奈とエリヤを探しにバロンに何とかしがみついて歩みを進めていた。色々と気になる研究資料なんかもあったがそれはそれ、今は急がなくてはならず迷っている暇はない。
資料室から出た所で大分異界全体を覆っていたジャミングも晴れてきた。他の者はまだ探知できていないが、由奈とエリヤの位置も大体把握が可能できるようになって今は真っ直ぐ彼女達の所へ向かっている。
そんな僕に猛スピードで近づく反応……というか由奈とエリヤだった。真っ直ぐこっちに来ている。もう視認できる距離まで来て……
「………」【スピードスター】【先手】【踏み込み】*18
あ、爆速疾走ガチギレ由奈だ。ちびりそう。助けてほしい。
後200m位で接触……するかと思ったらもう眼前に居た。能面みたいな無表情で見下ろされてて怖い。美人だから怖さポインツがさらに追加されてもうほんとに怖い。助けてほしい。
肝心のバロンはBS無効の癖に金縛りにあったみたいに動いてくれないし、ラクシュミはゲラゲラと面白そうに見てるし、フレスベルグは全ての現実から逃避して周囲警戒にきょろきょろ首を振ってるし、仲魔も所詮悪魔だったんだなって事を今痛感してる。お前ら今後はもっと雑に扱ってやるからな。
「フェイ、フェイ。い、生きていますか。生きて……何故両足・片腕がない」
「そ、それはね。その戦闘でね、うん」
「誰にやられましたかあのウリックとかいう男ですかそうですかわかりましたこの異界から出た後にあの男を殺しにいきましょう大丈夫ですもうそうする他ないので大丈夫です後何でまた貴方は無茶するんですか毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回言ってますよね無茶するなって言いましたよね私覚えられませんでしたかそうですかではもう戦わせるわけにはいかないので最後に残った片腕を綺麗にきりとって私がたべてその後は貴方を永遠に監禁します大丈夫ですエリヤも真澄もきっと賛同してくれますお世話も全部してあげますから大丈夫大丈夫大丈夫」
「エリヤアアアッ!助けてええええっ!エリヤァアアアアアアアッ!!!!!」
「……じゃ、じゃあ俺帰るから」【恐怖状態】【ESCAPE】
「逃げるなァアアアアアアアアッ!責任から逃げるなァアアアアアアアッ!!!」
「落ち着いた、由奈?」
「正気は取り戻しました」
「俺から見るとまだ瞳孔が全開で怖いんだが本当に正気か?眼光で人殺せるぞ、今のお前」
取り敢えず静かにはなった。今はもうがっちり逃げられないように由奈に片手で拘束されて、胸に埋められている。冷静に考えてみれば僕の現状は全身自分の血で真っ赤で両足・片腕切断済みの端から見なくても死体にしか見えない訳で、此処まで心配されるのはまぁ確かに想定しておくべきだったのかもしれない。色々ありすぎて頭が回らなかった。
「まぁ……状況を理解した今でも其処まで傷ついているお前を見たら、心臓が止まりそうになる。本当に無理はしないでくれ」
「……そうしなかったら勝てなかったからっていうのはあるんだけどね。気を付けておく」
「次やったら俺も流石に監禁賛同せざるを得なくなる」
「え、待って待って待っ「では今後の方針決めましょうか」はい……」
現状、恐らくだが僕達以外に合流できる見込みはない。この区画だけ隔離……とまではいわないが異界内部にさらに重複して結界が何枚も張られている区域でその上でさらに迷路となっている。出れないとまでは行かないが他のメンバーとの合流を目指そうとした場合に発生する時間を考えると現実的ではない。
加えて僕はこの状態で由奈もエリヤも割とボロボロ、この異界の研究情報も拡散できずに抱えているし正直その事を鑑みれば僕達は脱出優先にすべきだ。
「アラハバキの門を構築、それによって異界から脱出は可能でしたか」
「あれは経路を作るもんだから行けるとは思うけど……異界が多いからね此処は。第三→第二→第一まで移動しないといけないと考えた時に門を2個作る必要がある。時間が結構ロスしちゃうんだよね。そこでだ」
バロンをCOMPに戻して召喚したのはセト。
「セトはさ<空間転移>*19も<疾風>*20も持ってる。僕達三人位なら乗せて移動できると思うからこれで第三陣の本部までカッとんでいこう。異論はあるかい?」
「私からはありません。本部に戻り次第、直ぐに治療を受けてください。直ぐにですよ。いいですね」
「俺からもない。フェイもそうだが、俺達もちょっと消耗しすぎているしな」
「オッケー。んじゃまいこっか」
唯一の心配はこの異界に居る他の面子で攻略できるかどうかだが、まぁそこはあれだけの面子なのだから大丈夫だろう。むしろ大丈夫じゃなかったらガチでヤバいって事だからほんとにやめてほしい。その時になったら全力でヤタガラスに救援要請送る手筈にはなっているけど間に合うかどうかは分からない。
ともあれ、彼らなら多少の事なら何とかしてくれる。それを信じて僕達はセトに乗って異界を離脱していった。
・キャラ紹介
<久遠 フェイ>
定期的に監禁の危機に見舞われる男の娘。無茶したくないけど無茶しなきゃ勝てねぇ敵しか居ないんだよ最近!とは本人談。ちなみに関係ないが東堂葵とは性癖的な意味合いで友人関係。ベストフレンドでもブラザーでもなく普通のフレンド。連れてる女も説得力があるし、東堂も最初は嫉妬で発狂しそうになっていたが実際それらの女と会ってみたら気が変わってスンとなった。ケツとタッパだけじゃなくて性格も大事であると、闇に近づくべからずと魂に刻み込んだ。
<久遠 由奈>
闇のママ活勢(旧ファントム所属)(所属中にフェイを性奴隷&食料用で購入)(尚絆された)
今回の事で自作抹殺ノートにウリックの名前が刻まれた。南無三。
アンナとは微妙にシンパシーを感じている(ヤンデレ的な意味合いで)
<久遠 エリヤ>
他のヒロインが闇のママ活勢なので相対的に光になるTS娘。
どうしようもない現実に襲われて心がぽっきり折れそうになった。
何とか今回は戦えたが次アンナと戦えて撃ち合えるかどうかの自信が全くない。
アンナの存在に未練しか抱えてない。
<アンナ>
名字も決めとけばよかったと今になって後悔している。ずっとアンナで通さなくてはいけなくなった。見た目はエリヤがM16A1なのでこっちはM4A1とかその辺りになると思われる(ドルフロ)。あれこれこうなった経緯は大体本編に書いてある通り、何年位エデンに居るとかは作者も分からない。場合によっては百年以上経っている事になるかもしれない。兄であるエリヤに関しては愛憎混ざり合った対応をしている。実際は愛より。ウリックに対する感情は大体由奈がフェイに向けるそれと同質で重さもそれ(ウリック側は気づいてないものとする)
<ウリック・ヤード>
フェイとの戦いで撤退した理由にはアンナが何となく無茶しそうだし、フェイ確保無理そうだから早めに合流しとくかというのもあった。そういう面でも判断力がある男。生まれてこの方大体アンナの為に色々やってきたが、本人的はアンナが最終的に幸せになれればそれでいいのでその過程で自分が死ぬことになっても全然構わないと思っている(そうなったら最終的にアンナも自殺する模様)
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ヨコハマ事変 黄竜
\カカカッ/
警察官/シャドウ使い | 劉鳳 | Lv83 |
法皇 | ナントセイクン | 物理に強く、魔法に弱い*1 |
「これで概ね集まったか」
四神を打倒した第一陣、第二陣の面々は各々悪魔や生物兵器を掃討しながら合流ポイントに到着。離れ離れになった本来のPTメンバー達の無事を互いに確認して安堵の気持ちを抱きながらも今後の方針を固めていた。
\カカカッ/
導師 | 東堂 葵 | Lv77 | 全てに強く、破魔・呪殺無効 |
「全員集合……と行きたい所だが、フェイ、由奈、エリヤの座標が不明及び通信も取れない状況か。彼奴らの不在はでかいぞ」
\カカカッ/
Lv84 | 巫女 | 神城 真澄 | 耐性:凡そ全てに強く、火炎・氷結・ 破魔・呪殺・精神・神経・魔力・緊縛反射*2 |
「でも生きてはいるのは事実よ。でなければこの異界の地図は分からなかったし、こうして合流する事も出来なかった。明らかに分断されていたとはいえ、あの子達もただでやられるようなタチじゃない」
「ふっ、それもそうか。では先程上げた三人の集合を待たないままに次の行動方針を定めるとしよう」
東堂のその言葉に真澄も頷いた。やはり心配がない訳ではなかったがフェイに持たせていた護符*3によって詳細な場所やフェイの状態こそ分からないものの大雑把に生存と現在地を判別する事は出来ていた。これには四神を倒した影響も大きいだろう。
フェイは現在居る第三異界には既に存在しておらず、その寸前にどうも空間を飛ぶような反応を真澄はキャッチしていた。恐らく仲魔の力によってこの異界を脱出して、その前に由奈やエリヤとも合流は果たせている。推測にしか過ぎないがフェイの思考をトレースすれば大まかにそんな結論に落ち着いた。
よって三人の生存及び脱出は真澄の中ではある程度確信が取れていた。合流出来ない何かしらの理由があるのだろうが、それだけ分かれば進むことに何ら障害はない。少なくとも此処に居る面子の戦力は保証されているのだから。
「彼より送られてきた地図に寄れば此処より先が異界の中枢部、其処からさらに二通りの場所に到達する」
龍鳳の声と共に浮かび上がったCOMPより浮かび上がったホログラムモニターに映ったのは迷路のように入り組んだ異界の
「1つがこの異界における核が存在すると思われる場所だ。この地の龍脈も利用して四神を配置。それによって面倒な細工を施していた訳だが……この陣も並大抵の技術で作れる物ではない。その管理・調整をしている黒幕が居るとすれば龍脈の終着地点である此処だろう。」
「もう一つは?」
「この異界における研究区画だ。この異界全体が研究所ではあるが、その多くは悪魔や生物兵器を閉じ込める培養槽や檻だった。この区画に立ち入るのに専用のアクセスキーが複数必要な事からも研究自体はこの区画で行われていたのは間違いない。」
「そっちの方にも何かしら配置はされていると考えた方がいいわ。問題は二手に分かれるとして面子をどうするかよね……」
今ここに居るメンバーは正直言って物理に偏り過ぎていた。純粋なサマナーと言えるのが杉本のみで後はバスターが主体。全体回復を行える者はルシエル、ベネット、ヴァイオレット、杉本の仲魔のシトナイと人数の多さに反してかなり限られている。ここまで来るのに四神との戦いによってアイテムも相応に各々消耗しており、少なくともこの四人は平等に配置した上で強化・弱体が使える者もバランス良く配置しなければならない。
「まず俺とMs.神城がそれぞれ別れた方がいいだろう。自分で言うのも何だが一番場慣れしているからな。そこからバランス良く配置した場合、敬称は省くが此方のメンバーが藤堂晴香、アナンタ、ベネット、花山薫、ヴァイオレット辺りになるか」
「こっちがジョンス、ギンコ、赤音、ルシエル、真田さんに桐条さんって所ね。人数も総合的なレベルもそっちが低いけど良いの?」
「構わん。異界の主の打倒を鑑みた上での意図的な配置だ。そして、<悪対>の面々に関してだが……」
突如、彼らが通って来た通路奥より発せられた壁を突き破るような音と多くの何かが近づいてくるような音が同時に発せられた。
\カカカッ/
夜叉族 | ジュターユ | Lv62 | 火炎・電撃・破魔・バッドステータス無効。 地変・呪殺反射。銃撃に弱い*4 |
\カカカッ/
鬼神族 | パズス | Lv54 | 呪殺反射。氷結・電撃吸収。衝撃に弱い*5 |
\カカカッ/
魔族 | モト | Lv49 | 破魔・呪殺反射、衝撃吸収。魔封・混乱無効。電撃に弱い*6 |
\カカカッ/
生物兵器 | クィーンメドゥサ | Lv45 |
\カカカッ/
生物兵器 | バブルメドゥサの群れ | Lv35 |
「成程、足止めか。バランス的にも安定している我々が適任なのは間違いない」
「思ったより早く来てしまったがな。俺達が此処に合流すること自体は敵も察知していない訳がない。時間稼ぎが目的なら残存戦力を此処に搔き集めるだけでいいからな」
「悪対の戦力もぶっちゃけ欲しいけど残存戦力絶対あれだけじゃないだろうし、散らばってるから逐次的に来るだろうしで面倒ね。黒幕と戦ってる最中に
「加えて最奥に繋がる経路は此処だけだ。隠し経路がある可能性は捨てきれないが故に警戒は必要だろうが、少なくともこの場所を抑えればその可能性は格段に減る。此処は任されて貰うぞ」
\カカカッ/
警察官 | 斎藤 一 | Lv69(+6) | 銃撃に強く、斬撃・破魔・呪殺無効 |
「ま、そういう訳だし僕ももうひと頑張りしますかぁ!」
\カカカッ/
幻魔 | シトナイ | Lv66(+3) | 火炎・氷結耐性・破魔無効・呪殺耐性*7 |
『あの緑色のクラゲみたいなの*8……何か美味しそうな見た目してないか?』
\カカカッ/
警察官 | 杉本 佐一 | Lv69(+4) | 物理・銃撃に強く、精神・破魔・呪殺無効 |
「いや、駄目だよアシリパさん!お腹壊すって絶対!」
\カカカッ/
神獣 | ホロケウ | Lv66(+3) | 物理耐性・火炎弱点・破魔無効・呪殺耐性*9 |
『ワオーン!*10』
<悪対>、悪魔対策機動隊の面々がそれぞれ臨戦態勢にて悪魔や生物兵器を向い撃ち、それと同時に真澄や東堂達もそれぞれ二通りの通路に分かれて先へと進んでいく。
「では先程言ったメンバーは俺についてこい!研究区画に突入する!」
「こっちもこっちで異界制圧を目指すわ。此処からが正念場よ。みんな気を引き締めて!」
残存する敵は残り僅かで、中枢にいる敵を殲滅する事が出来れば無事にこの事件は解決するだろう。その筈なのに妙な不安、胸騒ぎが真澄の中にはあった。まだこれだけでは終わらないという一種の確信と警戒。だがそれで行動にぶれが生じる訳でもなく、この事件を終わらせる為に只管に黒幕が待つであろうその場所へと走り続けた。
・
・
・
真澄達は何事もなく異界最深部まで到達した。妨害がなかった訳ではないが四神クラスは出現せず、その他悪魔・生物兵器の数も微々たるものだ。それを不気味に思いながらも最深部の扉を開く。
\カカカッ/
魔道師 | 石 亜南 | Lv80 | 耐性不明 |
「此方の想定より随分早い到着だな。やはり侮るべきではなかったか」
夥しい数の巨大な魔道具・実験器具が立ち並び、床には大きな魔方陣が敷かれた異界最深部。其処に無造作に立っていたのは胡散臭そうな雰囲気を纏った中華系の男。
「その割には余裕そうね、三業会の石 亜南」
「知っていたのか、ヤタガラスの神城 真澄。貴様が襲撃に来ていると知っていたならもっと警戒していたのだがな。ま、どっちにしても変わらんか。お仲間を連れて何用かね?」
「無抵抗で殺されるか、抵抗された末に殺されるかの2択って所かしら」
「野蛮だな。殺さない選択肢はないのか?」
「お前は情報を吐くような人間じゃないし、私達の国でこんな事しでかしている以上は抹殺以外に取れる手段があるとは思ってないでしょ」
「はっはっは、そうだな。お前の言葉は全て正しい。ではお望み通り殺し合おうじゃないか。勿論、抵抗はさせて貰うがね」
その場において石 亜南以外の何かが居るようには見えない。それでも即座に戦闘行為に入らなかったのは部屋に満たされた膨大なMAGのせいだ。選択肢としては何かを呼び出そうと或いは呼び出していて実体化を意図的にさせていないかのどちらかであり、それが異界の主なのは間違いない。
前衛 | 真澄・ジョンス・ギンコ・赤音・真田 |
後衛 | ルシエル・桐条 |
とはいえ此方の陣形も整った。前衛・物理攻撃過多になってしまったが其処は致し方ない。いざという時の霊活符*11も一部のメンバーには持たせてある。物理さえ通れば後は火力で大抵の相手は押し切れるだろう。
石亜南にも真澄にも他に語るべき事はない。双方が静かに殺意をぶつけて、沈黙が場を満たしている。それが数秒か数十秒か続いた所で
「ッ!」
「行くわ!」
合図もなく、互いに同時に動き出して戦端は開かれた。
\カカカッ/
外道/剣士 | 武田 赤音 | Lv71(+4) | 精神・BSに強く、破魔・呪殺無効 |
先の先 | 誕生篇・速剣出典。相手の先手を取って戦いを有利に進める知略である。 イニシアティブの前に宣言して判定に成功すると必ず先手で行動できる。 |
踏み込み | 誕生篇・剛剣出典。 |
一瞬の踏み込みにより威力値×1m踏み込み、移動のペナルティを受けずに攻撃できる。敵は直後の攻撃に対して回避や防御の判定値が威力分、低下する。 威力は剛剣技能値を参照する。 |
一番最初に動いたのは武田赤音。全ての者より先んじて動き、即座に石亜南にその刃が通る懐にまで接近する。
「しっ!」
剣狂者 | オリジナル。物理貫通(D2式)を習得する。 代償として習得者は日本剣術(剛剣・速剣・居合)のスキルしか使用できず、 貫通自体もそれらのスキル及び日本刀を用いた通常攻撃にしか適用されない。 |
雲耀の剣 | 誕生篇・剛剣出典。 |
一呼吸の十万分の一の時間で切り下ろすと言われる神の剣。 人間の身ではもはや何が起こったか、理解できない。 敵は回避や防御に-80%の修正を受ける。 また、回避や防御に成功しても音速を超える刃先の速度によって 剣風を発生させ、相手と相手の後方全てを切り裂く。 これの対象は射撃回避を行う(衝撃相性/魔法防御点のみ有効) 剣そのもの、剣風によって1点でもダメージを受けた場合は 打撃のショックが全身に伝わって瀕死になる。 難易度が高く、それ故命中率が低い。威力は剛剣技能値×2を参照する。 |
其処から放たれたのは神速の刃にて一切の防御・回避の余地もなくその斬撃は亜南の首を捉えた。先の先を取ってからの一撃必殺、これが赤音が最も得意とする戦い方でこれを破った者はそう多くはない。この亜南とかいう男も佇まいは緩く、何かしらの武術を得意手としているようには見えない。純粋な魔道の探求者、後衛であると赤音は看破して速やかに刀を振り抜いた。
「……ッ!?」
刀は振り抜いた。首を捉えた上で切断した。手応えも確かにあった。
「己だけならその一撃で死んでいたな。とはいえこれ以上も誤魔化しも効かん。種明かしと行くか」
膨大なMAGが石亜南の周囲にて一つの現身を構築していく。長細い龍の身体に、黄金に輝く鱗、赤く輝く紅瞳。
「こいつは……!」
あまりの強大な力を直に感じて、赤音はその場を退く。他の面々もその威容に警戒を強めた。
\カカカッ/
龍族 | コウリュウ | Lv85 | 破魔・呪殺・バッドステータス無効 |
東西南北を守護する四神の長にして中央を守護する神獣、
「ただの悪魔じゃない……さっきの斬撃が入らなかった事から鑑みれば守護天使?」
守護天使の召喚 | 基本システム・魔道出典 |
守護天使を召喚して自分を守ってもらう。術者に対するすべての攻撃はこの守護天使が受けることになる。守護天使を呼んでいれば、それ以下のレベルの悪魔を召喚していても絶対に反抗しない。HPかMPがMAXの半分以下になると守護天使は普通に召喚された悪魔と普通の行動になる。 |
守護天使ダイモン。魔道と呼ばれる
「勝率は低く見積もっていたが四神で誰も死なないのは驚いたよ。だが、少なくとも彼らが死ぬ事によってそれらの力もコウリュウに引き継ぐ事が出来た。君達に対抗位は出来るだろうよ」
コウリュウに渦巻く力もやはり並大抵の物ではない。御魂合体等は当然として、異界の主としてのその能力。何より四神の力を吸収しているのかその圧力は四神4体分にも相当している。流石に手数を鑑みれば四神丸ごと相手取る方が大変な訳だが、それでも目の前のコウリュウがそれに劣っているという訳では決してないのだ。
「さぁ、動けコウ「させないわ!」」
格闘威力強化(体)Ⅲ | 200X出典。武器を用いない格闘攻撃の威力に「体能力値×3」する。 |
アドバイス | P5R出典。クリティカルを与える確率が2倍に上昇する。 |
震脚Ⅲ | 200X出典。補助効果。 このターン、使用者が次に行う素手に格闘攻撃1回の威力に【力能力値×2】を、 素手以外の場合なら【力能力値】を加える。 ランクⅢの効果によりこのターンにおける全ての格闘攻撃に効果が及び、 格闘攻撃の判定値の1/5でクリティカルが発生する。 この効果においてクリティカルが発生した場合、200Xにおけるルールを参照してクリティカルは2倍として扱う。 |
舞踏 | 誕生篇・骨法出典。補助効果。 骨法の基本動作で、足捌きを中心とした身体の動きを指す。 すり足の迅速な移動とコンパクトな方向回転によって、 直後の格闘攻撃のダメージに+威力(骨法技能値参照)する。 |
徹し | 覚醒篇・骨法出典。 敵前列1体に相性:-(万能相性裁定)で防御点を一切無効した格闘攻撃を行う。 この攻撃は拡散して、敵前列の他の対象には相性・防御点無視は同様にダメージ事態は半減した物を与える。威力は骨法の技能値×4を参照。真澄は60以上の技能値を持っている為に威力は240程度(特大ダメージ)となる |
コウリュウが動き出すその直前で割り込むようにその胴体に渾身の一撃を真澄は叩き込んだ。
「浅い……!今のうちに御願い!」
分厚い
\カカカッ/
シャドウ使い | 真田 明彦 | Lv75(+1) |
皇帝 | カエサル | 電撃無効・氷結弱点 |
「奴の出力を落とす!」【マハタルンダ】*12
\カカカッ/
サムライ | 月鍔 ギンコ | Lv70(+5) | 物理に強く、破魔・呪殺無効 |
「札もそろそろ少なくなってきてるんですが……!」【金剛の札】*13
\カカカッ/
治癒士 | ルシエル | Lv69(+3) | BSに強く、神経・破魔・呪殺無効 |
「回復待機!」【行動待機】
\カカカッ/
シャドウ使い | 桐条 美鶴 | Lv74(+3) |
女帝 | アルテミシア | 氷結無効・火炎弱点 |
「氷結ノックだ!」【マハブフダイン】*14【ヴァルナバングル】*15【氷結ブースタ】*16
「耐性もあるだろうが……まるで削れてる感触がないな」
セイリュウすら呑み込んだ絶対零度の氷嵐。その威力に差はあるもののコウリュウは揺るがず、瞬きすらしない。山に降り積もる雪のようにただ其処にあるものとして攻撃として認識されていない。恐らく途方もない
「邪魔が入ったな。薙ぎ払え、コウリュウ」
龍の眼光 | 200X出典・補助スキル。このターン、追加の3アクションを得る。1ターンに1回しか使用できない。ボス専用スキル。 |
紅い瞳を鋭く輝かせながらコウリュウが動く。
デクンダ | DDSAT1出典。味方全体のンダ系効果を解除する。 |
デカジャ | DDSAT1出典。敵全体のカジャ系効果を解除する。 |
メギドラオン | DDSAT1出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
メギドラオン | DDSAT1出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
順当なまでの
「ルシエル!回復!」
「分かってる、メディア「貴様が一番厄介だな」ッ!」
メギドラオンによって乱れた陣形、其処にするりと侵入してルシエルの懐にまで亜南は接近していた。
魔晶手甲 | 200X出典。全体防具扱いの魔晶変化防具。素手の威力・命中。防具として物理防御・魔法防御を上昇させる。魔晶スキルとして<属性攻撃:万能>を習得 |
フィジカル・エンハンスⅢ | 200X出典。補助効果 |
剣またはガン相性の習得済みの攻撃スキルを3つまで指定する。シーンまたは戦闘終了まで指定した攻撃スキルの相性は装備したアイテムの「属性攻撃」スキルに対応する相性に変更する。<属性攻撃:万能>から万能属性を選択。また本来は技属性のスキルは選択できないが亜南の卓越した技術によってそれを可能としている。 |
猿喉歩法 | 覚醒篇・蟷螂拳出典。猿のようなしぐさで歩く特殊な歩法。続く蟷螂拳の特技の命中値を上昇させる |
秘孔点穴 | 覚醒篇・蟷螂拳出典。蟷螂拳の究極形。身体の内側から敵を破壊する為に一切の防御点が無視される。フィジカルエンハンスにより技属性→万能相性。その威力は蟷螂拳技能値×5であり、亜南はレベルの全てをイ●ージュによって蟷螂拳に注ぎ込んでいる(80×5から威力は400で超絶ダメージ規模) |
亜南より打ち出されたのは蟷螂拳による貫手。胸部を正確に抉るようにルシエルの命を絶つ点穴を正確に撃ち抜こうとする。
\カカカッ/
八極拳士 | ジョンス・リー | Lv75(+3) | 物理に強く、打撃・破魔・呪殺無効 |
「させるかよ」【カバー(手番放棄)】
メギドラオンの発射と同時に行方を晦ました亜南に警戒していたジョンスが間に割り込むようにして立ち塞がった。
大纏 | 覚醒篇・八極拳出典。手を螺旋状に回転させる防御技。格闘攻撃によるダメージを威力分だけ軽減する。この特技に成功したら八極拳の特技を使った攻撃を1回行う事が出来る。 |
四分の活泉 | P5R出典。自身の最大HPを+40%する |
物理耐性 | 200X出典。自身の物理防御点に体能力値を追加する。 |
「確実に回復役を潰すつもりだったのだがな。勘が良い」
「ぐ、が……ッ!」
亜南の貫手がジョンスの胴体を貫き、突かれた箇所が破裂して風穴を開けた。ジョンスも拳を振るって多少の軽減はして、心臓を一突きはされなかったもののそれでもジョンスの肉体に風穴を開けている。ルシエルに直撃していた場合、まず命はなかっただろう。胴体に開けられた穴から血が溢れ出すその直前にルシエルの<メディアラハン>が入り、何とか致命傷寸前で身体を持ち直す。
鉄山靠 | 背中の衝突を利用した体当たり。この攻撃に対しては目標の物理防御点を半分として扱う。副効果が発動した場合は相手は転倒する。 |
続け様に放たれた反撃の体当たり。この場に亜南に場を荒らされ続けるのが危険と判断したジョンスは
「極まった蟷螂拳。
「違和感があるんだろ?俺もそれは感じてる」
ジョンスの呟きに赤音が共感する様に言葉を返した。実の所、ジョンスは亜南の事をあまり警戒はしてはいなかった。コウリュウの存在の大きさによって誤認されていた節もあったが、単純な脅威度という比較においてこの場に居る誰よりも亜南は低かった。魔道は悪魔召喚や合体、つまるところ悪魔召喚プログラムに近しいカルトマジックだ。本来戦闘で用いるべきものではなく、攻撃手段も乏しい。それに特化しているという事によって直接戦闘力という範疇においては凡そコウリュウのサポートの為にアイテムや魔法を行使する、そう言う戦いになると真澄や他のメンバーも予想していた。
だが突如として亜南の纏う雰囲気が誰の目から見ても変わった。明らかに隙だらけの構えと雰囲気から取ったカマキリのような構え。其処から中国拳法である蟷螂拳による明らかに極まった達人の一撃。それらはまるで亜南ではなく、別の人間のような動きだった。
「イマージュによる死人の憑依、
「種が割れてないさっきが最大の勝機だったのだがね」
真澄の言葉の通り、その拳を振るっているのは亜南本人ではない。三業会が用いるイマージュ技術、それによって亜南もまたイマージュを取り込んでいた。取り込んだイマージュは清代にて南派蟷螂拳を創設した周亜南という人物。
主へと差し出した半分の魂、それの補填をするかのように刷り込まされたイマージュは肉体に適合。互いに亜南という名前、魂が欠けているという状態における過剰なイマージュ投与、亜南自身の卓越したイマージュ制御技術によって自身のレベルに合わせて周亜南の蟷螂拳の力量を100%発揮する事が出来るようになった。
それは二重人格であって二重人格ではないもう一人の
「詰まるところお前の中には
「何か含みのある表現だな、八極拳士」
「あー……そう聞こえたか。いや気になってな。お前自身が
「
「飽く迄、
「よく分からん事を言う。元より
「それがお前のスタンスか。成程」
亜南とジョンス、その二人の問答と共に
『キュウゥゥゥ……クルルル……』
コウリュウが唸り声を上げた。纏うMAGの性質が変わる。
マカカジャ | DDSAT1出典。味方全体の魔法攻撃力を上昇させる。 |
マハブフダイン | DDSAT1出典。敵全体に氷結属性の大ダメージ。 更に低確率で氷結効果を与える。 |
マインドチャージ | DDSAT1出典。次の魔法攻撃の威力を2.5倍にする |
マハブフダイン | DDSAT1出典。敵全体に氷結属性の大ダメージ。 更に低確率で氷結効果を与える。 |
其処から吹き荒れたのは
「ッ、今のは…!」【カバー(手番放棄)】【氷結無効】
「悪い美鶴!」【氷結弱点】
マカカジャやマインドチャージもあって威力は先程のメギドラオン2発より上。ペルソナに弱点を抱えている真田では凡そ耐え切れないその氷結を桐条が庇って受け切る。他の者も辛うじて無事だ。そして、防具によって氷結反射を持っている真澄もまたダメージ事態は受けていないが
「……セイリュウの息吹。MAGの性質の変化とセイリュウと同等と思われる氷結吸収。赤音、コウリュウに斬撃御願い。火力が一番出る奴でいいわ」
「俺も受けに回ろうと思ってたがいいのか?」
「必要な事よ」
真澄はこのコウリュウが見せた特殊性について考えた。守護天使ダイモンという特殊な召喚方法、異界の主である事を鑑みても途方もない生命力を保持しているという事、先程見せた四神の力にMAGの性質変化。
「しぃっ!」【剣狂者(物理貫通)】【兜割り】*17
あらゆる装甲を無視する刹那の一閃。コウリュウの胴体を確かに切り裂くもののやはり根本的な生命力の高さによって有効打とは言い難い。だが、この攻撃はそれが目的ではない。
「手応えは?」
「俺が斬ると大体同じ結果になるが……鱗斬った感触はちょっと違うな。感覚的に普通ならさっきが5割まで、今が1割って所か」
「そっ。ならやっぱり時間経過で耐性が変化しているわね、コウリュウの耐性」
試したの物理属性のみであるが故にデータは足りないが耐性自体は変わっているという確証は得れた。初期のアナライズで奴が所持していたのは破魔・呪殺・BSに対する無効化のみ。他には物理に対して50の耐性を持っていたようだが耐性が可変式であるから見抜けなかったと真澄は予想する。
そして今のコウリュウの耐性は物理10、氷結吸収1000までは確定。物理耐性はともかく氷結吸収に関してはあのセイリュウでしか持ち得ない極めて高倍率の物であり、コウリュウが通常持ち得る耐性ではない。コウリュウは四神の力だけではなくその性質すら吸収し、利用しているというのが一番筋が通る話だろうか。これならマハブフダインのみしか撃ってこなかったのも、単純にそれしか撃てなかったという事で理解は出来る。此方を打倒するだけならマハブフダインをメギドラオンに変えれば済む話だからだ。
此処から残る四神はゲンブ、スザク、ビャッコ。耐性・行動の変化はコウリュウが動くと同時に発生していた。そのコウリュウの
<炎の壁>*18等があればよかったが、それも存在せず此方の耐性面を踏まえても安定してコウリュウ相手に耐えるなら奴に先手を取らせない事と奴が動くまでに何かしらの強化・弱体を入れて動きを阻害させるのがベスト。その上で亜南の動きにも警戒する必要がある。此処まではコウリュウの行動を加味した上の想定で其処からの勝ち筋も此方は考えなければならない。
まず先程のコウリュウの攻撃耐えられたのは運が良かった。氷結を無効する桐条による弱点を持つ真田が生き延びて、耐久にあまり振っていない赤音やギン子は今回何とか耐え切る事に成功した。他の属性による攻撃或いはダメージ事態が上振れればその保証はなく、やはり強化や弱体は必須。
其処からコウリュウの膨大な
敵の狙いは明確な持久戦。四神によってリソースを減らした此方にコウリュウをぶつけ、その膨大なHPと全体魔法、斬り返しの余地を与えない耐性によってじわじわと捻り潰そうとしている。それを挫くにはやはり情報が必要だ。奴らの弱点、付け込める隙、例えそれらがないとしてもパターンやルーチンを見切って勝利を目指す。
「真田、反撃用意。ルシエル、全体回復及びBS使って来たら適時専用の特技で対応。赤音、先手を取る事だけを優先して弱体・強化をアイテムで付与して頂戴。アイテムが底つきそうなら言って。ギンコも同様に強化・弱体、赤音が掛けてない方ね。私は敵の動き次第で適時動くわ。でもってジョンスは……」
「俺は
「ええ、私も拳士の端くれだから貴方のやろうとしている事は分かる。でもタイミングはこっちで指定させて。まだ早いわ」
「構わん。どうせ俺もあっちもギアをあげなきゃ難しいからな」
1秒にも満たない思考とそれによる指示をそれぞれに伝える。此方の
「今は只管耐える時!」【金剛の札】
「解除されるかもだけど」【羅刹の札】*19
「やっぱあそこまで行くと俺の剣だけじゃ厳しいな。まだまだ修行が足りねぇ」【究極の消毒スプレー】*20
ルシエルの全体回復からギンコ・真澄のアイテムによる
「行くぞ!新技!」
デスカウンター | PQ1出典 |
3ターンの間、自身と同列の味方が攻撃される度に攻撃してきた相手に反撃する。ダメージ量は武器の攻撃力に依存し、通常攻撃の約1.8倍程。注意点としてこのデスカウンターはあらゆる攻撃(魔法を含む)に対して発動する。多段攻撃に対しては1回の発動。複数人が攻撃されても1回の発動となる。*21 |
真田がペルソナと共に
震脚 | 200X&覚醒篇・八極拳出典。200X出典。補助効果。 このターン、使用者が次に行う素手に格闘攻撃1回の威力に【力能力値×2】を、素手以外の場合なら【力能力値】を加える。ランクⅢである為にこのターンにおける全ての格闘攻撃にこの効果が及び、格闘攻撃の判定値の1/5でクリティカルが発生する。さらに八極拳の技能値分だけ威力をプラスする。ジョンスは全てのレベルを八極拳につぎ込んでいる。 |
格闘威力強化(体)Ⅲ | 200X出典。武器を用いない格闘攻撃の威力に「体能力値×3」する。 |
鉄山靠 | 背中の衝突を利用した体当たり。この攻撃に対しては目標の物理防御点を半分として扱う。副効果が発動した場合は相手は転倒する。 |
震脚が唸りを上げて、ジョンスの鉄山靠が亜南に迫った。対する亜南もまた万全な態勢のままそれを向い撃って
龍の反応 | 真4出典。命中率・回避率が大幅に上昇する。 |
身法 | 格闘回避の代わりに使う回避技。大成功するとそのまま蟷螂拳の特技で1回攻撃できる。 |
七星天分肘 | 格闘回避に続いて行う反撃技。射撃攻撃のように扱われる格闘の特技を回避した時も反撃可能。ダメージは技能値×4で亜南の場合は320(超特大ダメージ規模)となる。 |
コウリュウ同様の龍眼を見開かせて、その衝撃を軽やかに受け流して身を躱した後にジョンスの顎を肘で跳ね飛ばす。顎がぐちゃりと嫌な音を立てて潰れて、半開きになった口から血反吐がごぽりと零れ落ちる
「ち、っぐ……!」
「コウリュウの攻撃の後にこれでも駄目か、防御強化があるとは言え頑丈極まるな」
亜南が動く。ジョンスの攻撃を回避する事は出来たが、奴の狙いは達成されてしまった。攻撃を避けるのに際してコウリュウから距離を取らざるを得なくなり、何かしようとしても目の前のジョンスが妨害をしてくるだろう。幸いにも回避重視の自分は耐久・反撃重視のジョンスと相性が良い。これで赤音なりが当てられでもしたら大分困ったが彼ならばまだ何とかなると判断しながら、亜南が指を尖らせる。
「だがそこまで削られてこれが耐え切れる訳もあるまい!」【猿喉歩法】【秘孔点穴(万能属性)】
「……ッ!」【大纏】【四分の活泉】【物理耐性】
ジョンスに迫った先程の死の点を穿つ絶死の貫手。防御点無効、超高打点、フィジカルエンハンスによる万能属性。真澄が用いる<徹し>と同様の強力な一撃だが、亜南のそれは練度が違う。蟷螂拳の創造者、そのイマージュが亜南には注ぎ込まれている。この世で最も強い蟷螂拳の使い手であり、強靭な五体を持つジョンスと言えど此処までダメージを受ければそれを耐え切る事も不可能で
「隙を作る!」【デスカウンター発動】
「ここぉ!」【メディアラハン】
この事を見越していた真田・ルシエルもまたその数瞬の鬩ぎ合いの中で動く。
猛虎硬爬山 | 覚醒篇・八極拳出典。格闘攻撃の防御に続いて行う技。その威力は八極拳技能値×4であり、75×4から300(超特大ダメージ) |
自身の胸を貫いた亜南の貫手を左手で鷲掴み、その態勢を崩す。その瞬間に撃ち込まれたのは亜南が放った物と同様の肘撃。ジョンスの重い一撃が亜南の喉に突き刺さって、そのまま顎に跳ね上げる。
「やるじゃないか」
「俺単独じゃ死んでたがな」
守護天使の加護によって亜南へのダメージは全てコウリュウへと与えられる。亜南に傷はなく、コウリュウに与えたダメージも致命打ではない。この攻防も長くは続かない、必ずどこかでジョンスの限界が来てしまう。それまでの間に突破口を見つけなければならない。
「先手を取る!」【先の先】【韋駄天の札】*22
コウリュウ | 全能力低下(P5R仕様):残り2ターン |
真澄陣営 | 防御力強化・攻撃力強化(P5R仕様)・デスカウンター状態(真田):残り2ターン。命中回避強化(P5R仕様):3ターン |
赤音が先手を取る。後の先より先の先、相手にイニシアチブを渡さずに一撃にて相手を葬る戦法を好む赤音はこの技術を可能な限り極めていた。逡巡や思考すら置き去りにして自身の考え得る最適解を感覚にて類まれなる直観にて突き進む。
「……デカジャスト「何処を見ている」」
二つの強化に反応して亜南が<デカジャストーン>を手に持ち発動させようとするもジョンスも同様にその反応と共に動き出す。
「……ッ!」【震脚】【格闘威力強化(体)Ⅲ】【鉄山靠】
「やはり貴様が邪魔だな」【龍の反応】【身法】
歯を食いしばり、決死の構えと共に打ち出されたのは相も変わらずの鉄山靠。コウリュウの加護*23によって速度が大幅に上がっている亜南だが同様に今のジョンスも
「返すぞ」【猿喉歩法】【秘孔点穴(万能属性)】
「こっちもな」【大纏】【四分の活泉】【物理耐性】【猛虎硬爬山】
ジョンスによって吹き飛ばされ、その
だが後退しているだけでやはりダメージは与えられていない。ジョンスと真田の感覚としては約1割にまで減衰されている。現状のコウリュウの耐性と凡そ同値といった所で、赤音が最初に斬撃を喰らわせた時は5割だった事を鑑みるならば亜南はコウリュウの現在の耐性をそのまま保持している事になる。
『クワァァァァァァァァァァ!!』
コウリュウの雰囲気が変貌する。身に纏うMAGは今までになく荒ぶり、その眼光は赤い光が迸る程にプレッシャーを放っている。
太極光輪 | DDSAT1出典。コウリュウ専用 |
敵全体に万能属性の特大ダメージ(メギドラオンの約2倍)と100%の状態異常効果(魅了 /猛毒/混乱/魔封/睡眠)を与える。 |
メギドラオン | DDSAT1出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
コウリュウの通常攻撃。万能属性 |
コウリュウの通常攻撃。万能属性 |
コウリュウの口より放たれた絶対的な破滅光の息吹が空間全てを包み込む。間髪入れずに撃ち込まれた
「そこだぁ!」【デスカウンター発動】×4
「ッ!!!」【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】
それを受けてからの<デスカウンター>による反撃が4回、コウリュウに突き去ってその身体が大きく揺れる。真澄達の中で倒れた者はおらず、その理由は単純に強化・弱体がそれぞれ全て入っているからに他ならない。
羅刹の札といったアイテムによる
問題は太極光輪であり、これは耐性がなければ100%という必中で付与されてしまう。与えられるBSはランダムとは言え、軽視できるものではなくメギドラオンの2倍以上という威力も補助を全掛けしてなければ受け切る事は出来なかっただろう。
太極光輪を避け切れたのは真澄・真田・ギンコ・赤音。それ以外のジョンス・桐条・ルシエルは避け切れずにそれぞれ混乱*25・睡眠*26・魔封*27を受けている。コウリュウのATTACKは2回ともルシエルへと差し込まれたが後衛であった事と太極光輪の後のメギドラオン事態は避けていた事から何とか此方も耐え切れた。
適切な処置 | 200X。即時効果。 |
味方一人に対するバッドステータスの発生を打ち消す。但しHP0以下の場合のDEADは防げない。ランクⅢの為に1シナリオ3回まで使用可能で使用回数制限はあるがMP消費はない。 |
アムリタ | デビサバ出典。味方チームの全てのBSを解除 |
「このタイプの魔封ならこれで立ち上がれるもんね僕は!これでも魔界医師だ!」
「でも呪い治せずに
「うるせぇ!君に僕の苦しみは分かるまい!くそぉっ!!!」
ルシエルが自前の<適切な処置>にて魔封を治した後に
「真田さん、さっきの反撃の手応えは?」
「明らかに違う!通常を100%と置くなら200%以上の手応えはあった」
「成程、あの形態は攻撃全振りって訳ね。全回復したら攻撃優先で暫く亜南も動けない」
今のコウリュウは初期のフラットな物とも先程のセイリュウのような形態とも違う荒々しい姿。メギドラオン以上の威力とほぼ確定のBS率を兼ね備えたあの光の息吹も今まで出さなかった事を鑑みると今の形態でしか出せず、その上でメギドラオンを重ねてくる。
だがメギドラオンを発射直後にコウリュウの圧は酷く減衰して其処からは
「では私から行こう。アルテミシア!」【マハブフダイン】【ヴァルナバングル】【氷結ブースタ】
ジョンスが一時的に後退すると共に放たれた桐条の絶対零度の吹雪がコウリュウと亜南に降り注がれる。共に受けたそれは初期に受けた物の比ではなく明らかにダメージを蓄積できている
「電撃ならどうだ?」【マハジオダイン】*29
「消費HPギリギリ足りそうなので抜刀チャーンス!」【木端微塵斬り】*30
「私は回復に回るわ」【宝玉輪】
続け様に放たれた雷撃が凍り付いた身体を穿ち、焼き尽くしながら無数の斬撃がコウリュウの身体を切裂き、コウリュウは悲鳴のような雄叫びを上げた。
真澄は最後に回復アイテムを用いて態勢を立て直しながら、ジョンスが抑えている亜南を見る。完全なる無表情だが息が上がって、少しだが気が揺らいでいる。何処かで攻勢が来ると踏んで補助を積んで、それを乗り切った事によって得たこの盤面。耐性変化とスキル変化を用いて此方を混乱させて、最後にコウリュウの攻撃にて止めを刺すそういう筋書きを奴は恐らく描いていた。それ以外にも蟷螂拳による不意打ちや属性吸収による消耗戦を狙っていたのは間違いない。
コウリュウや亜南も手札は残しているだろうし、まだコウリュウも致命傷とは言い難い。だがもう凡その事は看破した。耐性変化はコウリュウや亜南が指定して行える物ではなく、一種のランダム性を持って変わっていっているという事。コウリュウの生命力は四神の力の吸収とこの地に流れる龍脈を利用したものであるから、その流れに逆らう事はできずに取り込んだ四神の影響をもろに受けてしまってる為というのは推測として考えられる。
スキルの使用は恐らく亜南が指定しているが、使用特技に明確な制限がある。少なくともデクンダ・デカジャは初期のあの安定した本来のコウリュウ以外は持ち合わせていない。そうでなければ今回の行動で初手にデクンダ・デカジャを使えば済む話であるし、妨害を受け続けている亜南が<デカジャストーン>を使おうとする必要もない。
ダメージ量も凡そ見切った。適切に補助を積めば誰かが事故死する事はあっても全滅する事はない。アイテム残量もそう多くはない為に此方もギリギリだが明確な勝ち筋が出来たのは大きな進歩だろう。真澄はそこまで考えて、コウリュウと亜南を構えを取ると共に狩人のように見据えた。
追い詰める者と追い詰められる者はくるりと入れ替わった。亜南はじわじわと削られていくコウリュウの姿を見てそう思った。
スザクの耐性・特技に変化したコウリュウ唯一の火炎反射持ちである真澄にマハラギダインを連打させてもそれ以前に火炎反射の物と思われる装備を外して*31、コウリュウが持つ火炎吸収は機能しなかった。
運よく通常のコウリュウのスキルに戻ってデクンダ・デカジャをしても即座に切り替わると判断されて即座に補助を積まれ直した。
であるのならばと己が状況打開を図ろうとしても目の前の八極拳士の打撃によってアイテムは使えない。精々蟷螂拳による迎撃と攻撃によって奴を倒せば状況を変えられるかもしれないが幾ら攻撃しても倒れる事はない。素の状態であるのなら倒せると踏んでいた。だが補助も回復もあまりに適切なタイミングで入ってくる。
最低限の指示はしているが後の動きに細かな指示を飛ばしている様子はない。奴らはアドリブで動きを合わせている。適切な時に攻撃を回復を補助を此方の動きを看破して繰り出して、看破できなくとも積み上げた補助と回復といったアドバンテージで耐えられる。どれだけコウリュウが強大でもその強大さはこの異界と龍脈があってこそで本来の強さではない。己の制御下にあろうともコウリュウはルーチンに縛られている。
だから本来のコウリュウの力にテコ入れを行い、行動回数を増やして*32戦闘方式も変えた*33。それでもこうして追い詰められている。奴らのレベルがもっと低ければ、連携が出来てなければ、此方の運が良ければこうはならなかったかもしれない。だがそんな仮定はもう無意味だ。
コウリュウの膨大な生命力も削りに削られ、次にコウリュウの息吹が吹き荒れると同時にその逆襲で己達は沈んでしまうだろう。奴らが何かしらミスをすればそうではないかもしれないが、そんな可能性に掛けるべきではない。己はまだ負けていない。最大限やるべきことは突き通す。そうでなければ此処までやった甲斐がない。
コウリュウ | 全能力低下(P5R仕様):残り2ターン |
真澄陣営 | 防御力強化・命中回避強化・攻撃力強化(P5R仕様)。 コンセントレイト状態(桐条)。ソニックラッシュ状態(真田):残り2ターン |
『クワァァァァァァァァァァ!!』
浮かび上がる光輪とコウリュウの口に溜まる光の息吹。逆鱗に触れたかのように荒々しく光を迸らせるコウリュウは確実に疲弊して、それを発動するには幾らか時間が必要となる。発射までに猶予が生じる。
「BSはこっちで何とかするわ!」【ステラカーン】*34
その間に真澄が呪い封じの結界を展開する。これでもうBSは通じない。
「ここだな」
龍の眼光 | 200X出典・補助スキル。このターン、追加の3アクションを得る。 1ターンに1回しか使用できない。ボス専用スキル。 |
其処で亜南が最後の賭けに出た。コウリュウの力を直接自身の身体に注ぎ込んだが故のコウリュウ同様の
「なぁ」
最早聞き飽きた声が耳に届いた。此方が行動しようとすれば幾度となくその全てを妨害して、思い通りに動けなかった原因。八極拳士が再び己の眼前に立ち塞がった。だが今の状態であるのならば問題はない。奴の挙動で妨害できる回数は精々1回程度。それを透かして直ぐに此処から抜け出し、アイテムを使えばコウリュウの攻撃を通せる
「お前は
「貴様、何を」
目の前の八極拳士から紡がれる理解不能な言葉。何を言っているのかさっぱり己には分からない。
「俺は……いや、多くの人間ってのはこれにしがみついている。そうしながら生きて戦っている」
聞くに堪えない
「もう一度聞くぞ、お前にはあるか?
「……ッ!?」
身体が、いや
なら、奴の告げた名は己が取り込んだイマージュである
「俺が戦いたいのはお前じゃあないんだ。お前の内側にあるお前がただの道具だと言い切ったそいつ、俺はそいつと戦いたい」
「貴、様ァ……!」
己の魂は
「まぁなんだ、悪いな。武術やってる奴の性って奴だ。強い奴が居たらどっちが強いか確かめたがるってのはな」
湧き上がる衝動に抗えない。使う者と使われる者、使い手と道具、それらが反転したかのように己の精神が闇の底へと沈んでいく。
意識が/反転/する
\カカカッ/
蟷螂拳士 | 周 亜南 | Lv80→100 |
「……俺もちょっと不安だったんだがな。上手く行って良かった」
亜南……周亜南は何も答えない。答えれないと言った方が適切かもしれない。現在は主導権を握っているが10秒もしないうちにそれは不可能となる。飽く迄これは周 亜南の意地による奇跡的なイマージュの乗っ取りであって、その技術を生前磨いていない周 亜南では長時間抵抗するすべはない。
故に己が目的、目の前の拳士と白黒はっきりつける以外にする事はなく
「さっさと始めるとするか。どちらにせよ……どうせ一撃だ」
その言葉と同時に力のぶつけ合いは始まった。
震脚 | 200X&覚醒篇・八極拳出典。200X出典。補助効果。 このターン、使用者が次に行う素手に格闘攻撃1回の威力に【力能力値×2】を、素手以外の場合なら【力能力値】を加える。ランクⅢである為にこのターンにおける全ての格闘攻撃にこの効果が及び、格闘攻撃の判定値の1/5でクリティカルが発生する。さらに八極拳の技能値分だけ威力をプラスする。ジョンスは全てのレベルを八極拳につぎ込んでいる。 |
格闘威力強化(体)Ⅲ | 200X出典。武器を用いない格闘攻撃の威力に「体能力値×3」する。 |
発勁 | 誕生篇・太極拳出典(改変)。螺旋の力を攻撃に集中して使う奥義。 まず発勁のチェックを行い、成功すると威力分の勁が溜まり、直後の攻撃に使用できる。またそのダメージは物理攻撃半減・無効・反射の敵にも修正しないダメージを与える事が出来る。攻撃に使用した場合には威力分のダメージを加算した上で防具を無効化する*36。本来は太極拳の奥義だが独自の技法でこれを八極拳の物として取り入れ、ジョンスは利用している。その代償に1シナリオ3回の使用制限と消費MP倍増、効果の制限が掛けられている。 |
気合い | 真3出典。一度だけ自分の物理攻撃力を2.5倍に強化する。(1行目2列目) |
これまでで一番重い震脚が大地を砕きながら響き渡った。それは攻撃にあらず、迎撃の為の用意。本来であればそんな態勢を相手が取ったのなら物理攻撃などすべきではない。石亜南であるのならそう判断して踏み込まなかったその領域、それを周亜南を易々と踏み入れる。
格闘威力強化(体)Ⅲ | 200X出典。武器を用いない格闘攻撃の威力に「体能力値×3」する。 |
猿喉歩法 | 覚醒篇・蟷螂拳出典。猿のようなしぐさで歩く特殊な歩法。 続く蟷螂拳の特技の命中値を上昇させる |
秘孔点穴 | 覚醒篇・蟷螂拳出典。蟷螂拳の究極形。身体の内側から敵を破壊する為に一切の防御点が無視される。フィジカルエンハンスにより技属性→万能相性。その威力は蟷螂拳技能値×5であり、周亜南はレベルの全てを蟷螂拳に注ぎ込んでいる(100×5から威力は500で超絶ダメージ規模) |
煌天の会心Ⅲ | 200X出典。補助効果。格闘攻撃をクリティカルに変更する。 200Xにおいてクリティカルはダメージ2倍である為にそのように裁定。1シナリオ3回まで使用可能。 |
大地震動Ⅲ | 200X出典。補助効果。このターン、使用者が次に行う攻撃1回の威力に使用者の<レベル×2>を加え、クリティカル時の効果を「ダメージ2倍」から「ダメージ3倍」に変更する。1シナリオ3回まで使用可能だが、1回の戦闘では1回しか使用できない。 |
今の肉の器は全盛期の自分以上に
真っ向からこれを捻じ伏せる。その為に穿った音を超え、亜光速に一時的に至った神速の一撃。
「オオオオオオオッ!!!」【纏】【四分の活泉】【物理耐性】
回避の余地はなく、防御の余地もまたない。必中必殺の全てを貫くそれは防御の為に伸ばした腕を何事もなかったかのように振り貫いて、されど刹那の攻防にて心臓を穿つ事は出来ずにジョンスの右肺に当たる場所にぽっかりと大きな穴を開けるに至った。
本来であればそれで即死。食いしばったとしても其処から攻撃を返すには力が足りない。目の前の対象は一時的とは言え
不屈の闘志 | D2出典。自身が死亡するとき、一度だけHPが200回復する。 |
それをジョンスは
煌天の会心Ⅲ | 200X出典。補助効果。格闘攻撃をクリティカルに変更する。 200Xにおいてクリティカルはダメージ2倍である為にそのように裁定。1シナリオ3回まで使用可能。 |
七孔噴血 | 覚醒篇・八極拳出典。 格闘攻撃の回避や防御に続いて行う反撃技。 その威力は八極拳技能値×5。ジョンスはレベルの全てを八極拳に注ぎ込んでいる (75×5から威力は375で超絶ダメージ規模) |
加速する自身の肉体と思考。ジョンスもまた己の限界を超える。八極拳士にとって目指すべき境地とは何か?ジョンスはそれをどんな相手も一撃にて相手を葬る事だと答えを出した。ならばこそそれを成した者に続くべきなのだ
模倣・无二打 | 八極拳の開祖、李書文が用いたとされる必殺の一撃。その模倣*37 |
「俺の、勝ちだ」
自身の全てを込めたその
一撃をぶつけあって、倒れ伏した亜南の身体から蟷螂拳士のイマージュが消失していく。意識は石 亜南に戻るが最早それに意味はない。欠けていた魂をイマージュによって補填して動かしていたのだ。直ぐにそれに適応出来る訳もなく、亜南はもう動く事が出来ない。
だがそれは亜南だけの話。コウリュウは違う。自身が動けないと理解した亜南は即座に決断した。自身の残った魂とコウリュウ自身の命、それを用いた限界突破。光輪の
「本当は俺が斬ってやりたかったんだが龍殺しはまた今度だな」【カバー(手番放棄)】
「うおーっ!回復以外でやることがこれかーっ!」【カバー(手番放棄)】
「某もちょっと耐えるのも避けるのも無理そうなので後宜しくお願いします!」【カバー(手番放棄)】
吹き荒れる息吹を前に赤音が真田を、ルシエルが桐条、ギンコが真澄を
其処から叩き付けられた万魔を焼く光が空間を三度満たす。光は砂煙のように残留して、誰が生きているのかも判断がつかない。その光が晴れた時、もし誰かが生きていたなら其処が己の終わりなのだと判断して
ソニックラッシュ | PQ2出典。3ターンの間、敵を対象とした攻撃スキルが2回発動する。 前ターンに発動 |
マハジオダイン | P3出典。敵全体に電撃属性の大ダメージを与え、確率で感電状態を付着させる |
マハジオダイン | P3出典。敵全体に電撃属性の大ダメージを与え、確率で感電状態を付着させる |
コンセントレイト | PQ2出典。 3ターンの間、自分の魔法攻撃を1度だけ三倍に上昇させる効果を付与。 前ターンに発動 |
マハブフダイン | P3出典。敵全体に氷結属性の大ダメージを与え、確率で凍結状態を付着させる |
己とコウリュウに降り注がれる二度の雷撃と氷嵐。その場に立っていたのは
「……何とかなったわね。今回もギリギリだったけど」
真澄は警戒しつつも溜息を零す。倒れてしまった他のメンバーを起こして回復させながら状況を再確認した。コウリュウは消滅し、亜南もまたMAGを完全に消費して死に絶えている。蘇生させて情報を吐かせる事も出来ない。
異界の主であるコウリュウと管理をしていた亜南を倒した事によって異界は崩壊をしており、直ぐにその場から脱出する必要がある。最低限の資料は亜南の死体等を回収し、回復も済んだ以上は此処に留まる理由もなく<トラエストジェム>*38で脱出を行う。
ただ黒幕とも言える亜南を打倒しても真澄の嫌な予感は晴れなかった。間違いなく奴は全力で私達と戦っていたし、出し惜しみもしなかった。可能性があるとするならば自分達とは別の研究区画へと行った東堂達に何かしらヤバい事が起きるとかそんな所だろうが今行っても間に合わないし戦闘自体は終わっている事だろう。最善はやはりこの場からの即時退却に他ならない。
まだこの戦いは終わっていないとそういう予感を抱えながらも真澄は仲間達と共に異界から脱出していった。
・今回の戦い
<真澄&ジョンス&月鰐ギンコ&武田赤音&桐条&タルンダ先輩&ルシエルvs石 亜南&守護天使ダイモン(コウリュウ)>
な、難産!といった感じでした。DDSAT1のコウリュウの特徴を出しつつ、三業会所属という事でイマージュで亜南を戦わせながらやりたかった拳士同士の戦いをやって、各キャラを活躍させるという目的に邁進した結果こうなりました。実際できているかどうかは分かりません。後、魔剣Xに関しては動画でストーリーなんかは確認してますが実際こんな感じなのかだとかの詳細はちょっと確認する時間がなかったのでもしこんな感じじゃないようであれば謝罪をしなければならない……!肉焦がし、骨焼く鉄板の上でも……!
まぁいい感じに出来ていたなら作者も嬉しいですかね。まだ終わりじゃないんですけどね。ぶへへ。
・キャラ紹介
いつも通りのゲストキャラのビルド公開です。なんちゃってビルドで結構穴もあるので参考程度に留めてください。
<シャドウ使い>真田明彦Lv74+4(電撃無効・氷結弱点)
使用ペルソナ:<皇帝>カエサル(lv74までにP3系列・PQ系列の中から覚えるスキル8つ)
・スキル
ジオダイン(P3)(敵単体に電撃属性の大ダメージを与え、確率で感電状態を付着させる)
マハジオダイン(P3)(敵全体に電撃属性の大ダメージを与え、確率で感電状態を付着させる)
ゴッドハンド(PQ2)(物理属性で単体に特大ダメージを与える。)
マハタルンダ(P3)(3ターンの間、敵全体の攻撃力を下げる)
マハスクンダ(P3)(3ターンの間、敵全体の命中・回避率を下げる)
マハラクンダ(P3)(3ターンの間、敵全体の防御力を下げる。)
電撃ハイブースタ(PQ2)(電撃属性攻撃の威力が増加する。効果:中)
覇者の称号(PQ1):クリティカル率が大きく上昇する
トリプルダウン(PQ2)(敵単体に物理属性の中ダメージを3回与える。)
チャージ(PQ2)(3ターンの間、自分の物理攻撃を1度だけ三倍に上昇させる効果を付与)
ソニックラッシュ(PQ1)(3ターンの間、敵を対象とした攻撃スキルが2回発動する)
デスカウンター(PQ1):(3ターンの間、自身と同列の味方が攻撃される度に攻撃してきた相手に反撃する。ダメージ量は武器の攻撃力に依存し、通常攻撃の約1.8倍程)
・サブ
電撃ブースタ(P3)(電撃属性攻撃の威力が増加する)
真・連撃の心得(アタック攻撃時、中確率で再攻撃)。
拳の心得(P3)(拳による通常攻撃の威力が上昇する)
武器:グランドパイル(P3P)(攻304・命97。速+2効果)
防具:ファイナルアーマー(P3P)(防118。全パラメータが1上昇)
アクセ:氷神の瞳(P3P)(氷結属性攻撃に対する回避率が大幅に上昇する)
我らのタルンダ先輩。P3では主に弱体と電撃担当だったがPQの力を手に入れた事によって物理系の技とクリティカル率上昇のパッシブを手に入れた。PQが世界樹を元にしているからかソニックラッシュ・デスカウンターという面白いスキルを習得している。特にデスカウンターは手番使う代わりにあらゆる攻撃に反応して、自身以外の同列の味方でも反撃発動するという事で第二のクイッカか!?と興奮したのは良いんですが冷静になってPQのデスカウンター発動場面を見た所(無茶苦茶動画が少ないので苦労しました)、多段攻撃・全体攻撃に対しても1回しか発動しないという事が発覚したのでクイッカを超える事は出来なかった。でも魔法や自分以外にも発動できる点によって相互互換にはなれると思う。普通に強い(ちなみにPQ2では順平がその上位互換を持ってるっぽいです)
ジョンス・リー(エアマスター)
推定レベル:50前後
クラス:格闘家
【N-C】
経歴:悪魔退治や闘技場等で金を稼ぎながら、各地をフラフラと放浪しているアウトロー。
各地を放浪し闘技場や悪魔対峙を請け負うのは強者と戦うためであり、本人もこの生活に満足していた、
しかし最近、自身と違うスタイルでありながら素手による拳と拳のぶつかり合いをした花山薫と無言で意気投合、花山組の外部協力者になっている
<八極拳士>ジョンス・リーLv72+3-2+7(物理に強く、打撃・破魔・呪殺無効)
八極拳全般(覚醒篇・200X)・震脚(200X&覚醒篇)・発勁(誕生篇の太極拳)・煌天の会心Ⅲ(200X)・気合い(真3)
パッシブ:物理耐性(200X)・四分の活泉(P5R)・格闘威力強化Ⅲ(体)(200X)・不屈の闘志(D2)
実質今回の主役。八極拳と言えばこの人って感じの人。私もキャラとして大好きなので大分贔屓しました。後なんか演出に華があって便利だったので。スキルも耐久と八極拳にガン振りしている。浸透勁なんかも使おうとしたんですが覚醒篇だとあれの消費MPが技能値×2だったので今のジョンスだと75*2で150というとんでもない消費量になって使えませんでした(覚醒篇は割とこういう技能値参照のMP減少がある)。なので浸透勁だけ200X仕様の物を使うのが丸いかもしれません。
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ヨコハマ事変 深淵
「そろそろ研究区画か」
東堂が言葉を零す。二手に分かれてから凡そ数分が経過し、彼らもまた最深部への突入を続けていた。此処まで来るまでに防衛システムとの戦闘や専用の鍵がなければ開ける事の出来ない複数の扉等にぶつかってはいたもののフェイから送信されたMAPデータによって戦闘を可能な限り回避するように迂回、扉に関してもその都度対応するアクセスキーを使用する事で難く突破している。
他のメンバーの状態も良い。四神の戦闘によってアイテムの消耗や疲れはあるもののそれ以上の
\カカカッ/
ガンスリンガー | 藤堂 晴香 | Lv62(+6) | 耐性:破魔・呪殺無効 |
かつて<組織>に所属していた元構成員にして、藤堂 奈津子の養子だった女。此方から何かを察するにはあまりある過去を持っているのだろう。まぁ悪魔業界に居る人間なんてものは大抵はそんなものではあるが。
「Ms.晴香、少し先行し過ぎだ。足並みを揃えろ」
「っ、ご、ごめん……!」
何かに迫られているかのような勢いで一人先行して襲い掛かる生物兵器を彼女は銃で撃ち抜き、ナイフで確実に致命傷を負わせて倒している。明確に抱えている焦りとは反比例に生物兵器への対処は非常に鮮やかだ。悪魔に相手に対しては特筆する事のない彼女だがどうにも生物兵器を倒す際は動きの機敏さや迷いのなさが段違いになる。
組織に居た時にある程度生物兵器と戦った事があるとは本人は言っていたが初見の敵であろう生物兵器に対しても動きに慣れが見える。ともすれば、彼女の養親であり今回の騒動の元凶とも言える藤堂 奈津子が彼女に目を掛けていたのもそれが理由かもしれないと東堂は考えていた。
「見つけた!」
晴香の声が響く。視線の先には件の藤堂 奈津子に柄の悪そうなチンピラの男が一人。その二人を複数のアートマ兵が囲んでいる。
「ふふっ、待っていたわよ晴香」
「……ッ!」
此方に、厳密に言えば晴香に対して親愛の笑みすら浮かべる奈津子と険しい表情で銃を奈津子に向ける晴香。義理とは言え親子関係だった両者の様子は何処までも対照的だった。
「藤堂 奈津子だな。此処で大人しく拘束されるのであれば危害は加えん。ここまで来た以上、貴様は詰みだ。神妙にして貰えると助かるのだがな」
「……東堂 葵。また厄介なのが来たわね。映像では来てたけど他にも上位クラスのバスターが複数来ている。これじゃ正攻法じゃとてもじゃないけど勝ち目はなさそう」
だけど、そう付け足して奈津子は銃を構える。柄の悪そうな男は肉体に刻まれたアートマによって大きな口を開けた緑色の悪魔、アバドンへと変貌した。
「私も研究はまだまだ続けたいから抵抗はさせて貰うわよ」
「そうか。ならば無理矢理にでも拘束する」
此方もまた臨戦態勢を整える。花山は誰よりも前に出てその巨体にて後衛への壁となり、アナンタやベネットもまた晴香をサポートする様にフォーメーションを整える。メティスが回復役としてその中央に立って、東堂・晴香もまたそれを守るかのように前に出た。
晴香もまた聞きたい事は山ほどあった。だがそれ以上に晴香を含むその場に居る者達が感じていたのは此処で時間を掛け過ぎれば取り返しのつかない事になるという一種の予感。
故に語るべき言葉は存在せず、降伏もしない以上はただ眼前の敵を撃滅するしかない。
\カカカッ/
研究者 | 藤堂 奈津子 | Lv0 | なし |
\カカカッ/
夜叉鬼 | アバドン | Lv72 | 物理・銃撃・地変・破魔・呪殺・バッドステータス無効。 衝撃に弱い*1 |
\カカカッ/
龍族 | ニーズホッグ | Lv56 | 呪殺反射、氷結吸収。バッドステータス無効*2 |
\カカカッ/
飛天族 | ホルス | Lv64 | 電撃・破魔反射、地変無効。物理に強い。銃撃・呪殺に弱い*3 |
\カカカッ/
神族 | パールヴァティ | Lv60 | 魔法全般反射。破魔・呪殺・バッドステータス無効*4 |
\カカカッ/
鬼神族 | トール | Lv57 | 電撃吸収、破魔無効。猛毒・魔封・神経に弱い*5 |
\カカカッ/
導師 | 東堂 葵 | Lv77 | 全てに強く、破魔・呪殺無効 |
\カカカッ/
ファイター | アナンタ | Lv67(+4) | 耐性:物理・魔封・破魔・呪殺無効 |
\カカカッ/
トリックスター | ベネット | Lv63(+6) | 疾風・破魔・呪殺無効 |
\カカカッ/
ヤクザ | 花山 薫 | Lv73(+4) | 物理・銃撃に強く、破魔・呪殺無効 |
\カカカッ/
シャドウ使い? | ヴァイオレット・メティス | Lv76 |
愚者 | オルフェウス | 雷・闇弱点*6 |
・各配置
前衛 | ニーズホッグ | アバドン | トール |
後衛 | パールヴァティ | 奈津子 | ホルス |
前衛 | 東堂 | 花山 | アナンタ |
後衛 | メティス | 晴香 | ベネット |
そうして戦端は開かれた。
「ふぅっ……!」
先陣を切るのはこの中で最もレベルが高い東堂。戦いの流れは
この異界に出現する悪魔化ウィルスによって変貌した者或いはアートマによって変貌した者は耐性が優秀な傾向にあった。レベルが高くなる程その傾向は強まり、あのパールヴァティやニーズホッグに関してはほぼボス級の耐性を保持してすらいる。故に此方の攻撃がそれらの耐性によって無効化されるリスクを抱えていたがスピードバトルならそのプレスターン特有の呼吸の乱れも消える。
後は敵の数と配置。悪魔が5体に人間が一人という構成、うちアバドンは雰囲気からして恐らくボス級で一部の悪魔もレベル以上の強さを持っている。最大の懸念点はやはり藤堂 奈津子であり、Lv0という未覚醒状態に
何かしらあの女の存在自体が罠なのは間違いなく、あれに攻撃を当てても左程意味はないのではないかという推測は立てられた。あの女の性格を読むにあまり博打に出るような性質ではない。何かしら切り札を持ってそれが動くのを待っているか或いは此方の動きを待っているのか、何にせよ油断は禁物。それを警戒しながら敵を叩いていくしかない。
「まずは敵の頭数を減らす!」
真空投げ | 真2出典。敵1体を戦線離脱させる。万能相性でボスには効かない。 東堂の用いるこの特技は東堂が持つ性質により <デサマン>*7と同等の処理にする事が出来る。 |
ニーズホッグに東堂が近づき、その身体に触れて投げ飛ばす。それと同時に起きた手を叩く音と共にニーズホッグの姿は消失する。東堂が用いるトラフーリ、厳密に言えば転移系の術の応用でありニーズホッグは悪魔の身体ごと魔界へと強制的に送還させられたのだ。
味方にとっては東堂より事前に説明があったその事象は敵にとって未知なる物。何より自らの仲魔が突如として消えたその現実に無意識に身体が強張った。その隙に他のデビルバスター達も続くように動き出す。
「私の本気はタメが必要だからこれでいこっか!」【タルカジャ】*8
「これ結構入手大変だったけど使うしかない……!」【力向上の札】*9→ 【花山 薫】
「回復待機……いえ、此処はこうするべきですね」【カデンツァ】*10
アナンタが攻撃力を増強し、晴香が花山のその剛力を一時的にブースト、ヴァイオレットが速度を向上させる。
「ノックついでだけど、その魔法反射に
それらの後押しを受けながらベネットが敵陣に向けて疾風を吹き荒らす。疾風属性、これも分類としてはかなりマイナーな属性に入る。何故そうであるかは判明してはいないがペルソナ、シャドウを用いる者の多くは
「これは……ちょっとまずいわね」【カバー(手番放棄)】【ホルス→藤堂 奈津子】
逆説的に言えば疾風属性を用いる者はそれ以外には限られて、耐性を持つ者も多くない。この異界にて相対した悪魔達の多くも疾風に関しては此処まで来るまで全てが通常耐性であり、今この場に居る悪魔も変わらないと判断したベネットはいつもの妨害ではなく敢えて攻撃役に回る事を選択した。結果的にその判断は正しくそれぞれの悪魔に想定内のダメージを与える事に成功する。
「じゃ、行くか」【武の赤】*13
そして本命である花山薫がその拳を握り締めて、その巨体に力を籠める。
「ぶっ飛べ!」
山津波 | 200X出典。敵全体に万能相性のダメージを与える。 |
『おいおい、悪魔共はこれで全滅かぁ?』【カバー(手番放棄)】【トール→アバドン】
「みたいね。全く大したものだわ」【カバー(手番放棄)】【パールヴァティ→藤堂 奈津子】
悪魔達をそれぞれ盾にしながらアバドンと奈津子は生き残る。それ以外の悪魔は一撃にて振り払われて消滅するか破裂した骸をその場に晒すのみとなった。
「でも彼らは役目を果たしたわ。此方も始めましょう」
増援の悪魔の姿は見えない。また生物兵器の姿も確認できず、残ったのはやはりあの
「取り敢えずレベルが低いのから片付けなさい」
瞬間、
「何……ッ!?」
重力に従って落下していく身体、下を見ても見えるのは暗い深淵だけで横を見渡しても地面の瓦礫と思わしき物は存在せず、飽く迄落ちていっているのは自分達と敵である奈津子とアバドンのみ。
「アグ!」
\カカカッ/
生物兵器 | 壁面を埋め尽くすアグ | Lv60 |
落下の最中に確認した真っ黒な壁面、それが突如として肉々しい臓腑のような真っ赤な色へと変貌して其処から浮き出す様に出現したのは生々しい人間のような緑色の瞳。
アグの | 敵単体に対してガン属性の小ダメージを与える。これを十数回行う。 |
壁面を埋め尽くす程に現れたそれらから発射された瞳の色と同様の投射物。それらが無数に降り注がれて落下中の東堂達に降り注がれる。速度向上によって回避力は上がっているものの投射物の多さと空中という機動を取れない状況から幾つか避け切れずに手傷を負ってしまう。
「この……ぉっ!!!」【MISS】【MISS】【MISS】
それらを全て回避できたのは
制圧射撃 | 200X出典。敵全体に銃器による攻撃を行い、ガン相性のダメージを与える。さらに20%の確率でPANIC状態にする。弾数を1消費する |
「………」【WEEK】【CRITICAL】【DEAD】
その生物兵器全てを銃器による制圧射撃で薙ぎ払って、その全てを一撃で絶命させた。
「ああ……やっぱり直で見るまで確信は出来なかったけどやっぱり貴方は生物兵器に対する
奈津子はその異常極まる光景を見ながらも一種の既知感を抱いていた。
何かしら才能がある訳でもなく、特筆頭が良い訳でもない。強いて言うのであれば銃とナイフによる戦闘術に関しては巧かったが、それだけで悪魔や他の覚醒者に対して戦える訳もない。才能を何も持たず埋もれて消えるだけの凡人、その評価は奈津子も同様に晴香抱いていたものだ。だがそれらを覆す物を彼女だけが持っていた。それこそが
寄生ジョーカー | オリジナル |
このスキルの所有者は生物兵器を打ち倒す因果を持つ。一種のル■プ補正。 種族が生物兵器である対象或いは生物兵器が混じった存在に対して以下の効果を発揮する。 ・このキャラクターが生物兵器に対して行う攻撃は全て対象の属性に関わらず弱点攻撃となる ・生物兵器に攻撃する場合、その攻撃をターン中1度だけ即時効果によって行う事が出来る。 ・命中率、回避率、ダメージ、クリティカル率が大幅に上昇する。 |
悪魔を打倒する場合、まずは
晴香はそんな邪道の中でも異質極まる戦い方を生物兵器に対して展開している。<組織>での実験でもそれは確認されて、初見の生物兵器にまるで今まで戦い慣れたかのような動きを見せて十秒以内にその生物兵器は晴香の手によって射殺或いは斬殺されていた。これを見た上層部は悪魔・覚醒者に対しても戦闘実験を行ったがその力は発揮されずに平均以下の結果しか出せなかった。
だからこそ<組織>の上層部もそれがまぐれだと判断して特に注目もせず、既知感を抱いていた奈津子だけが晴香を警戒して身内に引き込もうとした。結果として言えばそれはファントムソサリティの崩壊によって失敗して、晴香は自由の身となった。そして今に至り、彼女は自身の目の前に相対している。全ては過ぎ去った物であり、抱いた既知感も最早意味はない。ならば必要なのはその力も踏まえた上で彼女を打倒するその手段のみ。
「アビス!」
\カカカッ/
生物兵器 | アビス | Lv60+20 |
響き渡る奈津子の叫び。それによって底無しの深淵より伸びた巨大な甲殻類ような形をした二双の爪。
狂乱の剛爪 | DSJ出典。敵全体に物理属性の大ダメージを与える。 |
狂気の粉砕 | DSJ出典。敵全体ランダムに1~4回の物理属性の大ダメージを与える。 |
吸収追加 | デビサバ出典。物理属性での攻撃で与えたダメージの25%、自分のHPを回復する。 |
マヒ追加 | デビサバ出典。通常攻撃・物理系スキル使用時、中確率で対象をPALYZE状態にする。 |
まずは一つの異形の爪が此方の全てを薙ぎ払った。今だ底は見えないまま落下し続けている彼らの多くはその薙ぎ払いに直撃。続け様に放たれた異形の爪による三連撃、それがヴァイオレット・東堂・ベネットに直撃して吹き飛ばされる。
「何とか耐えれてはいますがっ」【PALYZE】*14
「最初からこれが狙いか…!」【精神耐性】*15
「うわ、っ……!」【PALYZE】
東堂は状態異常に耐える事が出来たが他の二名は
『嬲り殺しにしてやるよ!』
パワーウェイブ | DDSAT2出典。敵全体に物理属性の中ダメージを与える。 |
アソビスの穴 | DDSAT2出典。敵単体を呑み込み、行動不能にする。アバドン専用 |
唸り | DDSAT2出典。性質(スキルと相性)が変化する。アバドン専用 |
其処から圧し掛かる様に身体を押し付けたアバドンは落下する東堂達をさらに散らす様に押し潰して、その中でもヴァイオレットをその大きな口で喰らった。
「ヴァイオレットさん!?」
「余所見しないで、ベネット!」
落下は永遠には続かない。変貌した壁面と同様の真っ赤でピンク色の内臓のような大地が迫ってきており、ベネットの真下に存在するそれに気づいた晴香は叫んだ。
\カカカッ/
生物兵器 | トラップシェル | Lv50 |
トラップシェルの | 自身の体内に踏み込んだ敵に対してのみ使用可能。物理属性で対象とトラップシェルを即死させる。この即死は肉体をそれこそミンチ状にする為に蘇生が非常に難しい。物理耐性持ちなら最大HPの50%のダメージ、無効以上なら無効化される。 |
トラバサミのように開いた状態で動かず、体内に踏み込んだ者を容赦なく挟み込むそれは名前の通りの罠として設置される貝状の生物兵器。透明でもなく、見辛い訳でもないそれもまた罠で使うには欠陥があるとしか言えないがこの現状においてはそうとは言えない。
ベネットの真下に設置されたそれはベネットの間近に迫っており、彼女が着地すると同時に起動する一種の着地狩りと言っても良い。猶予があったのなら彼女の用いる疾風にて強引に軌道を逸らす事は出来ただろうがそれもこの畳み掛ける猛攻の中では難しく、無情にも着地してしまい堕とされたギロチンのように貝が閉じられた。
「これで一人。アバドンが取り込んだもう一人も数十秒で片がつく。さ、て……?」
その様子に奈津子が嘲るように呟きかけて、その動きを止める。
「い、いてぇ。死に掛けたわ」【トラップシェルのATTACK】→【アナンタ】*16
起動したトラップシェルの残骸、その中に居たのはベネットではなくアナンタ。混乱した奈津子はベネットの姿を追って、周囲を見渡す。
「あ、ありがとうございます、東堂さん」
「俺に惚れるならもっとケツとタッパを大きくすることだな!」
「いや純粋な感謝なんで、そういうのはいいです。はい」
「(´・ω・`)」
そう話し掛けているベネットは東堂の隣に並ぶように立っていた。着地の間際まで東堂の傍に居たのはアナンタであったと奈津子は記憶している。其処から東堂の用いていた術の傾向と着地直後に紛れてなった手を叩く音、それらから何が起こったかを奈津子はその頭脳を以て導き出す。
「位置替えね。発動条件は手を叩く事って所かしら。他の魔法もそうだけど随分便利な術を持ってるのね貴方。研究のし甲斐がありそう」
「悪いが貴様は
東堂葵が用いる移動・転移の術はある気功によって成り立っている。
搬運功 | 基本システム(外気功)出典。テレポーテーションを発動する。超人になるとMPをさらに消費する事で全体に掛けられる。 |
悪魔業界においてはほぼ廃れた
不義遊戯 | デビサバ&オリジナル出典 | 神獣固有特技<瞬転の舞>の効果改変 |
東堂葵のみが用いる事が出来る搬運功を用いた奥義。射程6(距離6)の中から効果に同意する対象1体或いは1チームを2つ選び、その互いの対象の位置を入れ替える。発動条件が手を叩くという簡易的な動作の為にこの効果は1ターンに1回まで即時効果として扱う。即時効果として利用或いは1チームを対象にこのスキルを使う場合、消費MPが倍増する(両方の効果を適用する場合は4倍となる) |
神獣が用いるとされる<瞬転の舞>、それを模倣して自らの術として東堂は昇華した。対象を自身ともう一人の他者だけではなく他者間も転移できるようにし、抵抗があれば必ず
「人間でも悪魔でもこの技を拒否しない相手同士を入れ替える、それが俺の奥義だ。無論、負担は大きいがな。そう乱発できるもんじゃない」
「どこまで本当なのかしらね。その発言」
詮索するような視線を向ける奈津子と相対しながらも東堂葵は思考を重ねる。まずは奴が行ったとされる床消失、それはこの異界に落ちてきた四神相応と似たような現象ではあるが奴が何者かを察するに大きく違う手段を取っている。
四神相応による通路、厳密に言えば経路の消失は四神を起点としておいた魔術的な防衛術に近い。だが今回の消失は飽く迄この部屋のみで魔術的な発動は確認されていない。壁面の色が変わり其処から生物兵器が湧き出していた事、自分達が今いる落下地点が何者かの胃袋の中のような様相になっている事を鑑みれば落ちる前の場所も含めてあそこは何らかの悪魔、生物兵器の体内であったのだろうと東堂葵は確信に近い結論を導き出した。
その上でLv0であるのに今に至るまで無傷を保つ
落下の際もあの女は凡そその衝撃をまるで存在しないかのように軽やかに着地したし、アビスやアバドンの攻撃の余波によってその身体に穴が開いて吹き飛ぶ姿も見た。だが今の彼女は何のダメージも喰らってもいないかのように立っている。
「Ms.晴香、あの女が生きている理由或いはこの空間について心当たりは?」
「何で生きてるかは分からない。だけどこの空間には心当たりが……ちょっとだけある。<組織>から逃げる前に見た写真にこの空間はそっくり。確か……」
「マザー、でしょう?そこまで割れてるなら何れそこの男が辿り着いちゃうでしょうし、話しておきましょうか」
奈津子が再び口を開く。その身体を緩やかに何の予兆もなく浮遊させて、晴香を見下ろす様にして両手を広げた。
\カカカッ/
生物兵器 | マザー | Lv70 | 備考:藤堂奈津子はマザーが作り出した量産可能な端末に過ぎない |
「私が作り上げた生物兵器、その現状の最高傑作こそがマザー。その名の通り、生物兵器を生み出す母なる存在……そして、今の私自身よ」
「マザーに自分を取り込ませたという解釈でいいのか?」
「そういう事ね。理由は概ね自衛の為。生物兵器も悪魔も覚醒者も操るには限界があったし、私も覚醒者にはなれなかった。亜南の元に行けば首輪を付けられると分かり切っていた以上はこうするしかなかったのよ」
あっけらかんと奈津子は語った。生物兵器マザーに自身の肉体・精神データを転写して融合。自身の核となるデータはマザーに保存されて、今この場にある身体はそのデータによってマザーに作られた
「そこまでしなくても生きる道は幾らでもあった筈でしょ、貴女には!なんでそこまでするの!?」
「私が他に生き残る道は精々警察に出頭する位でしょう?でも私の行っている研究は悪魔を含む生物の改造実験が主で、そんな事を日本政府が許す筈がない。裏や海外にはあるんでしょうけど伝手が此処以外になかった。どの道、自分だけで身を守る術は必要だったしね」
「そんなことを聞きたいんじゃない!今いる貴方は貴方じゃないんでしょう!本物じゃなくて飽く迄クローン!そうまでして……なんで研究を続けるのよ!?」
「マザーによって生み出された私が完全に私自身であるという結論が出たからよ。それなら本物の私が居る必要もないじゃない?それに研究をしない私なんて私じゃないしね。それが答えよ、納得できたかしら晴香」
「……私には分からないッ!」
藤堂 奈津子とは生来よりそういう人間だった。学生時代も研究の為の勉強を重ね、研究員として働き出した時期も同様に研究の為だけに生きてきた。彼女の出す成果は素晴らしいものばかりだったがその過激さ故に表社会にて存在する事が許されず、研究に研究を重ねて今に至っている。
彼女には研究を継続していく為に必要なあらゆる力が備わっており、それ以外の何もかもがなかった。故にこの破滅に近い現状は定まっていたのだろう。
「これ以上の問答は不要だ、Ms.晴香」
「けど……!」
「お前は自らの過去に決着をつける為に悪対に協力していると俺は聞いている。お前の気になっていた藤堂奈津子、彼女についてもまた知れた。そこに話し合いの余地がない事もな」
「……」
「人間は生きている限り、過去を背負う。どんな人間にも払拭できないようなへばりついたヘドロのようにそれは今や未来にも付き纏ってくる」
晴香にとっての過去は凡そ組織の構成員としての物しか存在しない。その中で関わった一番関わった人物は義母である藤堂 奈津子である事も疑いようはないだろう。その上で彼女と過ごした日々は決して良い物ではない。構成員としての訓練にそれこそ死に物狂いで励み、何度か死んだこともある。<組織>の作った生物兵器と戦って命からがらそれを何度も倒していった事もある。
そんな晴香に奈津子は興味深い実験体を見るかのように視線を向けて、白々しい称賛や労いの言葉を送っていた。実際問題奈津子にとって晴香は興味深い対象以上の物はなく、晴香も奈津子の事を一度でも母親だと思った事はない。
それでも晴香が持ち得る過去は彼女との日々だけだった。それ以外の人間は自分の事を劣等、雑魚、役立たずと見做して触れもしなかったのだから。
だからだろうか、良い感情もない筈の彼女にせめて生きてほしかった。忌々しい過去でもそれが自身がそこに居たという証明になるのだとしたらと晴香は過去を払拭しようとしつつもそれと決別できずにいた。
「過去を思い出すのはいいだろう。過去を今を生きる決意に変えて生きる、それもいいだろう。だが過去に縋ってはいけない。過去に取り残されたままでは人間は……お前は前に進む事はできない。」
しかしもう奈津子はマザーによって取り込まれ、そのマザーも生物兵器としてその存在がこの世に許される筈もない。此処で確実にマザーと彼女を葬らなければならない。
「分かった……ありがとう、東堂「さんは要らん」えっ?」
「偶然か何か知らないが
「あ、うん。ありがとう?」
「熱量に差を感じるなァ!まぁいい!行くぞ、
「わかっ……今、変な事言わなかった?」
・各配置
前衛 | アビス | アバドン(メティス吸収) |
後衛 | 奈津子 |
前衛 | 東堂 | 花山 | アナンタ |
後衛 | 晴香 | ベネット |
・補助状況
奈津子陣営 | なし |
東堂陣営 | 攻撃強化+1(DSJ仕様)。命中回避強化(P5R仕様):残り2ターン。 ベネット【PALYZE状態(デビサバ仕様)】 |
・
敵味方全てが生物兵器:マザーの体内に居る。毎ターンの度に敵には妨害や攻撃を、味方には支援や補助をマザーは行う。また藤堂奈津子は最早コミュニケーション接触及び自己改良・研究端末にしか過ぎない為に倒した所でマザーの手より復活する。彼女の完全破壊にはマザーを破壊する必要がある。
現状ははっきり言って此方が不利だ。補助は此方に掛かっているもののメティスはアバドンに取り込まれ、ベネットはマヒ状態。さらに言うならば今いる場全てが生物兵器マザーであり、床解除の事を踏まえれば他にも地形を用いて分断或いは生物兵器を生産して攻撃等を此方の配置関係なくしてくる可能性が高い。その操り手である藤堂奈津子を殺しても意味がなくマザー本体を殺さなければこの戦場のイニシアチブはずっとあちらが握ったままになるだろう。
「(
東堂は気功を用いた透視にて状況の再確認を行う。まず生物兵器マザーに関しては特に何かしらエネルギーがなくとも場を侵食して生物兵器を生み出すというイカれた特性があり、恐らくこの部屋だけではなくこの異界の大半はマザーの支配下にあるものとして想定した方がいいだろう。其処まで想定した場合、まず火力でマザーを吹き飛ばすというのは現実的ではなく、何かしらの弱点を探すのが必須となってくる。
そこでマザー唯一の弱点であるとされるのがマザーの核。その核はマザーの支配領域内で流動的に動き続けており、奈津子がここに居てマザーを意のままに操っているのであればそう遠い場所には居ないと晴香は言っていた。透視にて確認した所、現在はこの部屋の肉壁を高速で周回し続けているようで壁の中に潜み、時折透視でも視認できない状態がある事を鑑みれば当てるのは非常に困難だろう。当てられるのは生物兵器になんかよく分からんけど特攻を持つ晴香のみと仮定して、マザーの撃破は彼女を主軸に行うべきだとそう結論づけた。
次なる問題はアバドンに喰われたヴァイオレットの安否。透視で確認した所、どうやら無事……というか体内から腰の入ったボディブローを喰らわせているようで度々アバドンが痛がっている。恐らく強酸等で溶かすタイプではなく飽く迄体内に取り込んだ上で弱体化、その上でMAG諸々を抜き出してそのエネルギーを戦闘に転用するつもりなのだろう。猶予は恐らく数十秒程で脱出方法はやはり内側と外側からのツインインパクト、それによって吐き出しを誘発させる位だろう。酷く単純な方法だが、時間が限られた今ではそれが一番有効なのは間違いない。*18
後残る敵のアビスだがあれもどうやら通常のこれまで相対した大型生物兵器とは大きく異なっている。通常、生物兵器はスキルを使用できない。生物を利用できる点と悪魔由来ではない為に悪魔用の対策のすり抜けが行えるというマシンにも似たメリットはあるがそれ以上に行えるのが精々単一の
だがあのアビスは特別性なのかスキルを使用でき、レベルも80と生物兵器にしては規格外と言える程に高い。それ以外に特殊な点が見受けられない事から単純にデビルソースなりをたらふく埋め込んだ上に不必要な悪魔達を喰わせた結果、ああいう風になったと考えるのが適切だろうか。だがかなりの無理があるようで身体の動きがぎこちなく、腐った匂いがアビスからしている。吸収追加による生命力奪取で何とか生き延びているようだがそれも果たしてどこまで続くか不明。現状はやはりLv80クラスのボス悪魔として相手し続けるしかない。
そして此方の他の面子だが先の
「さて」
東堂の思考の整理も済んだ。ここまで約0.01秒、時間ロスはなく呼吸も安定している。敵の誰かを落とせれば戦況は大きく覆る。それは此方も同様の為に手数を減らした中で特別攻勢に出れるわけでもないが隙を晒せば其処を突く柔軟性が求められる。
そして、
「先手奪取!」【宝玉輪】
状況を一番把握している東堂が先手を取る。即座に
『……』【狂気の粉砕】【狂気の粉砕】【吸収追加】【マヒ追加】
そしてアビスの射程内に東堂は到達した。アビスの脳裏に刻まれた
よってアビスの狙いは己の射程内にわざわざ踏み込んできた東堂の撃滅であり、この距離であれば他の前衛に分散してしまう殴打をこの男一人に集中させた上で攻撃する事が出来る。
「頼んだぞ!」【東堂葵】→【花山薫】
「オオオオオッ!!!」【山津波】
だがそれは東堂葵が用いる
まず最初に敵陣に襲い掛かったのは花山薫の山を削る程の剛力のみによる空間破壊の一撃。津波のように襲い掛かるその衝撃にアビスの肉体はひしゃげ、アバドンは揺れ、奈津子はその肉体を破裂させるものの即座にマザーの力によって再生を行う。
其処から遅れて発せられたのはアビスの6連打。左が2発、右が4発の合計6発の異形の爪による乱打が花山を襲う。
「全部返すぞ」
【物理に強い】*20【超反撃】*21【物理激化】*22【仁王立ち】*23【五分の活泉】*24【地獄のマスク】*25
襲い掛かる巨大な爪による殴打に合わせるように2発の
『好き勝手しやがって!くたばれ!』
マハラギダイン | DDSAT1出典。敵全体に火炎属性の大ダメージを与える。 |
マハザンダイン | DDSAT1出典。敵全体に衝撃属性の大ダメージを与える。 |
マハテラダイン | DDSAT1出典。敵全体に地変属性の大ダメージを与える。 |
麻痺状態のベネットには全てが命中し、凡そ半死半生の状態に。それ以外の花山以外の面子は1回か2回か回避に成功して重症には至っていない。
「さて、私も行きましょうか」
\カカカッ/
生物兵器 | アグ(射撃)の群れ | Lv60 |
\カカカッ/
生物兵器 | アグ(近接)の群れ | Lv60 |
マザーが蠢く。奈津子の傍に出現したのは夥しい数の緑目の生物兵器と真っ赤な血を纏った口だけが存在している生物兵器。
「ベネット、これで回復!私はあっちに行く!」【ソーマ】*26→【ベネット】
「ありがとう!こっちは相手の動きの妨害!」【両足封じ(フォッグブレス)】*27
「私は次に備える!」【スマイルチャージ】*28
晴香が回復アイテムにてベネットのマヒ状態とHPを回復して奈津子に向けて駆ける。ベネットが得意の妨害で相手の動きを阻害して、アナンタは次なる攻撃の為にニヤリと笑った。
「随分やる気ね……折角だから最後に貴女の力、存分に見せて貰いましょう」
「貴方は……あんたは此処で終わらせる!」
マザーより生産された生物兵器に囲まれながら奈津子が銃とナイフを構えた晴香と相対する。
アグの | 敵単体に対してガン属性の小ダメージを与える。これを複数回行う。 |
アグの | 敵単体に対して斬撃属性の中ダメージを与える。これを複数回行う。 |
「当たるもんか!」【MISS】【MISS】【MISS】
晴香に迫り来る大量の緑色の飛来物と赤い斬撃の嵐。補助・弱体の効果もあるがそれ以上に既にアグの動きの全てを見切っているかのようにその全てを回避して疾走を続ける。
「これで!」【制圧射撃】
全てのアグと奈津子、そして壁面に存在しているマザーの核すら巻き込んだ銃乱射。極度の集中状態による機械染みた精密射撃で全てのアグを仕留めて、奈津子の肉体もまた貫いていく。
「……駄目、マザーに届いてない!」
唯一届かなかったのは瞬間的に透明化した上で掻き消えたマザーの核のみ。気配こそ追う事はできるもののアグを巻き込んででの射撃では撃ち抜くことが出来なかった。
「恐らく全体攻撃は透かしてくるタイプの透化だろう。そういう物があると覚えがある*29。単体攻撃で攻めろ、
「気のせいじゃなかった!この人おかしい!」
「私が言うのもおかしな話だけど変な奴に目を付けられたわね、晴香」
「うるさい!」
・補助状況
奈津子陣営 | 命中回避強化-2(DSJ仕様) |
東堂陣営 | 攻撃強化+1(DSJ仕様)。命中回避強化(P5R仕様):残り1ターン。 アナンタ【ニヤリ状態(真4F仕様)】 |
戦況は膠着状態。それぞれ花山がアビス、アナンタとベネットがアバドンを、晴香がマザーを抑えて東堂はフリーの状態。とはいえマザーは事実上地形その物に干渉できる以上、それに対抗する位置替えを持つ東堂もまたマザーを抑える為に動かねばならない。その上で誰が先に動けるかが鍵を握っている。
「速特化舐めんな!」【メディラマ】*30【速度強化Ⅲ】*31【韋駄天の覚え】*32
ベネットがその素早さを生かして動く。ばら撒かれた全体回復は全回復させるものではないにせよ、自身はソーマによって全快状態で全回復が必要な程の味方は存在していない。故にそれによって凡そ東堂達は万全の状態にまで回復した。
「松山、アビス」
『てめぇに言われなくとも分かってんだよ!』【唸り】【スクンダ】*33【タルカジャ】*34
『……』【フォッグブレス】*35【フォッグブレス】
奈津子の指示の元、アバドンとアビスが強化・弱体を重ねる。攻撃力の強化もしているが飽く迄重視したのは
当然それを黙って見ている東堂達ではない。東堂と晴香がそれらの解除の為にアイテムを使用として
\カカカッ/
生物兵器 | ドレインの群れ | Lv45 |
ドレインの | 敵単体に対して打撃属性の中ダメージを与える。これを複数回行う |
「邪魔!」【MISS】
「此処に来てピンポイントの妨害か!どうやら本気で決めに来るぞ!」【PROTECTION】
地面より突如として出現したイソギンチャク状の生物兵器、ドレインの触手が東堂と晴香に襲い掛かる。東堂は耐性とレベル差もあってほぼダメージは削れず、晴香に至っては此処まで速度を下げられても回避に成功している。だがそこで生まれてしまった防御に要する時間によって稼がれてしまった一瞬の時。
「さぁ、終わらせなさいマザー」
終わる世界 | DDSAT2出典。敵全体に万能物理の大ダメージを与え、防御力を1段階低下させる。幾多の悪魔やアートマ兵を捕食して手に入れた阿■羅の業 |
終わる世界 | DDSAT2出典。敵全体に万能物理の大ダメージを与え、防御力を1段階低下させる。幾多の悪魔やアートマ兵を捕食して手に入れた阿■羅の業 |
空間全てに侵食し切ったマザーの真っ赤な壁面が激しく振動する。其処から発現したのは
二撃にて全てを破壊するコウリュウの
「だから、こうするの晴香。貴方さえいなければ私は勝てるんだもの」
「……ッ!」
\カカカッ/
生物兵器 | アグ(肉壁)の群れ | Lv70 |
\カカカッ/
生物兵器 | アグ(肉壁)の群れ | Lv70 |
\カカカッ/
生物兵器 | アグ(肉壁)の群れ | Lv70 |
\カカカッ/
生物兵器 | アグ(肉壁)の群れ | Lv70 |
\カカカッ/
生物兵器 | アグ(肉壁)の群れ | Lv70 |
濁流が潮のように引いて、後に残ったのは晴香を包囲する夥しい数の真っ赤な肉壁。東堂・アナンタ・花山は生存してはいるものの警戒すべきは東堂の位置替えのみ。その位置替えも物量によって凡そ対応が出来る。晴香はこの群れから逃げる事もましてや倒して突破する事は出来ない。切り払った所で撃ち貫いた所でまた次の肉壁が立ち塞がる。其処から徐々に晴香を包囲し、他のバスター達を妨害し続ければ最終的に晴香の圧殺に成功する。
晴香さえいなければマザーを倒せる者は事実上此処に存在しなくなる。その時点で勝利が決まる。位置替えには驚いたが晴香の性能も他のメンバーの能力も想定通り。この戦いは既に詰みに入った。そう確信した奈津子は少しだけ表情を曇らせて
「見えました。あそこです!」【幸運な助言Ⅱ】*37
瞬間、この場に居る者は全員動けないと判断して無防備にしていたマザーの核を何者かに撃ち抜かれた。
「Mr.花山!」【デクンダの石】*40
「消し飛ばす!」【山津波】
その間隙を突いて東堂が
「馬鹿な」
奈津子は確かな焦りを浮かべながら言葉を零す。今ここに居る者でマザーの核を撃てる者はいなかった。東堂達は論外、晴香も肉壁で包囲して封殺していた。であればこれを成せるのは新手しか居ない。
\カカカッ/
ガンスリンガー | 葉山 弘司 | Lv61 | 耐性:銃・破魔・呪殺無効 |
「晴香、大丈夫か?」
\カカカッ/
ガンスリンガー | 茂木 冴子 | Lv58 | 耐性:破魔・呪殺無効 |
「見ててヒヤヒヤしましたが、何とか介入する事が出来ましたね」
晴香の傍に前兆もなく現れた
「何故お前達が此処に……!一体どこから……!」
「あんたのそんな余裕のない表情を見るのは初めてだな。それを見れただけでも来た甲斐はあった」
「晴香さん、今のうちに立て直しを」【道反玉】*41→【ベネット】
「わ、わかった。冴子」【宝玉輪】
ベネットは冴子が使用したアイテムによって蘇生、其処からの宝玉輪によって晴香達のHPは全快。弱体化も東堂によって解消されて奈津子が作り出そうとした状況は完全にリセットされたと言ってもいいだろう。
奈津子は弘司と冴子と相対しながらもあの時何があったのかと思考を回す。少なくともマザーの範囲内に何かしら入れば大抵は感知できる。それがマザーの核に最も近いこの部屋ともなれば例え
晴香やアナンタ、花山等の様子を見るにどうも冴子や弘司の出現は想定外ではあるようだ。ならばこれを想定した上で何かしらのアクションを起こせるのは一人しかいない。
「東堂葵……!」
「おっと、説明する必要はないよな?此処まで情報が揃えばお前の頭脳だ。ある程度推察はつくだろう」
まずは葉山 弘司と茂木 冴子、この両名に関してはリーダー格等の一部メンバー以外に突入する事が自体が知らされていなかった
そんな彼らの役割は隠密行動による敵の研究資料の奪取。冴子・弘司の両名は【隠し身】*42と【暗殺者の歩行】*43を習得しており、葉山はさらに【エストマ】*44を冴子は【ドロンパ】*45を用いることが出来る。これらは<組織>に所属していた際に構成員として動く為に習得させられた者だが皮肉にもそれが<組織>を潰す為に今は使われていた。
そんな隠密行動こそ得意な二人だが直接戦闘能力はバスター達と比べて劣る為に資料諸々奪取した後は情報を伝達後に異界から離脱する予定だった。しかしフェイが先んじて情報を入手して離脱した事によって行動方針を変更。四神打倒後に東堂や真澄、劉鳳達と通信を取りながらまだ敵に存在を悟られていない隠密奇襲兵として文字通りの
其処から彼らが追随したのは奈津子が居ると思われる研究区画であり、本来の資料奪取も可能であれば行う予定であった。だが其処に待ち構えていたのは奈津子と自身達と同様に<組織>の構成員をしていた松山という男*46。東堂の指示により奇襲を行うそのタイミングまで部屋外で待機。其処からは東堂の情報端末による指示を頼りに状況を伺っていた訳である。
此処までは冴子・弘司に関しては<組織>でもそれなりに優秀なエージェントだったという事もあり、想像の域ではあるが可能な限りどういう形で動いていたかの推測を奈津子は行う事が出来た。
ついでに言えば東堂が用いる
だからこそ問題となるのは彼ら二人が何を入れ替わったのかという事。位置替えも警戒して、この場に居る面子全ての配置は把握している。だからこそ肉壁を晴香の周囲に重点的に配置した。例え晴香と誰かが入れ替わったとしてもその誰かを押し潰すだけの物量は用意していた。唯一花山と入れ替わった際は突破が不可能ではなかった為にその場合は花山を封じる事に重点を押しつつ他のメンバーをアビスとアバドンで押し潰す予定だった。
それらと同様に二人が誰かと入れ替わった際にも対応は出来ていた筈なのだ。なのに東堂達の誰もが転移されずに健在。さらに言えば肉壁を配置した範囲外からマザーの核は撃ち貫かれた。それが奈津子には理解できない。
「どうやら理解できんようだな。特大ヒントをやろう。NARUTOの飛雷神は知ってるか?」
「は?
「知らんのか……ならばお前達は
東堂の用いる不義遊戯による位置替え。これは特技範囲内における一定以上の
東堂の
後は敵の動向に気を配りつつその落下地点からその状況に応じた小物と此方が指定した任意の存在を入れ替えれば良い。今回はマザーの核が存在すると思われる壁に最も近い場所にある小物と二人に位置替えを行い、冴子が射撃の補助をした上で弘司が核への攻撃を当てたという流れである。
当然ではあるがこれは万能の術ではない。不義遊戯はその効果の速度を重視する為に対象に
東堂もまたこの術を編み出してから実戦による運用によって練度を増して、能力の向上も励み続けた。東堂がその中でも重視したのは不義遊戯をより円滑に使う為の複数の悪魔を使役して操作するサマナーにも匹敵する情報処理速度だろう。それがなければこの位置替えも見え透いたものに変わり、円滑な位置替えが出来なければ逆に味方を危機に陥らせてしまう事もある。故に現状においては東堂にしか習得できず、また使い熟す事も出来ないそれがこの不義遊戯という術だった。
「それとだが……あまり戦闘中に物思いに耽るのは良くないとも言っておこう」
ニヤリ状態 |
真4F出典。敵の弱点を突いたり、あるいは敵の攻撃を無効化したりすると発現する状態。この状態において攻撃を行うとその攻撃力が増大したり、クリティカル率が大幅に上昇したりする。また、この状態でダメージを受けた際に弱点でもプレスアイコンが点滅しなかったり、クリティカルも発生しなかったりする。スマイルチャージによる物なので仕様は真4F仕様 |
鋭気の権化 | D2出典。物理命中率が15%増加し、状態異常になる確率が45%減少する。 |
アカシャアーツ | 真4F出典。敵単体に物理属性で特大威力の攻撃を1回行う。 ニヤリ時に貫通効果 |
「うおーっ!あかしゃ!アアアアアアツ!」
『なんだこい、おえ゛え゛え゛っ』【吐き出し】*47→【ヴァイオレット・メティス】
東堂が
「脱出、です!武器や防具が溶けるタイプじゃなくて助かりました。ありがとうございます、アナンタ」
「良いって事よ!」
これにてヴァイオレットも復活し、東堂達は冴子や弘司を加えた8人体制という戦闘開始時よりも万全な状態にて戦闘を続行。対して奈津子側はマザーが核を一度撃ち込まれた事でその能力を大幅に減衰。さらにアバドンやアビスも度重なるダメージによって疲弊している。戦況は凡そひっくり返ったと言っても良い。
・各配置
前衛 | アビス | アバドン |
後衛 | 奈津子 |
前衛 | 東堂 | 花山 | アナンタ | ヴァイオレット |
後衛 | 晴香 | 冴子 | 弘司 | ベネット |
・補助状況
奈津子陣営 | 攻撃強化+1(DDSAT2仕様)・命中回避強化-2(DSJ仕様) |
東堂陣営 | 攻撃強化+1(DSJ仕様) |
「さて、最終ラウンドと行くか」
「……正念場ね。いいわ。最後まで足掻いてやりましょう」
「最早お前達を殺すに手段は選んでいられない。これで捻り潰す……!」
奈津子の言葉と共に再び揺れ動く空間。マザーに侵食された壁面が膨張しながらも徐々に戦場自体を圧縮するかのように迫ってきている。
「えっ、ベネットこれって私達この空間ごと圧殺しようとしてる?」
「みたいね。どうしようかしら、東堂さん」
「……止めるには再びマザーの核を叩くしかないな。Mr.葉山、奴の弱点は?」
「電撃だ。此処の資料に書いてあっただけだが、さっきの射撃も電撃属性の弾丸を用いて効いたから間違いない」
「分かった。ならばMr.葉山とMs.茂木はマザーの核撃破に向かってくれ。それ以外はその障害の排除だ。それと
「ついにブラザー呼びしてきたよ、この人……何?」
「あの女も警戒はしているだろうがマザーの核を叩ける可能性が一番高いのはお前だ。だから共に核撃破に向かう二人を利用して核を壊せ。歩みを止めるな。俺達を信じろ!」
「……分かった。決着は必ずつける」
その場にいる全ての者に闘志が宿る。決着をつける時が来た。アビスやアバドンもまた不退転の構えを見せている。
「気張っていきなよ晴香!」【タルカジャ】
「私達が援護するから!」【マハガルダイン】
「うん!」【力向上の札】→【花山 薫】
続け様にアナンタが
『OOOOOOOOOO』【フォッグブレス】【フォッグブレス】
「くどい!」【デクンダの石】
アビスが妨害に先程と同様の
「マザー!!あの男を殺せ!!!」
\カカカッ/
生物兵器 | アグ(射撃)の群れ | Lv60 |
\カカカッ/
生物兵器 | アグ(近接)の群れ | Lv60 |
アグの | 敵単体に対してガン属性の小ダメージを与える。これを複数回行う。 |
アグの | 敵単体に対して斬撃属性の中ダメージを与える。これを複数回行う。 |
東堂がアイテムを使用したその瞬間に東堂を囲むように出現したマザーの下僕達。それらは各々の獲物を構え、一目散にこの中で一番厄介であろう男の排除に動く。
「……」
「ふっ」
奈津子が狙っていたのは東堂本人に集中砲火を喰らわせて強制的に位置替えを切らせる事。あれが即時に発動できるのは
「みたいな事考えてたんだろうが……俺がそれを考えていないと思ったか?俺の武器は飽く迄この五体だ。
東堂はそれをアナンタや花山に切り替えず、素の生命力で耐え切った。それだけならばまだ東堂に攻撃する前提で此処にアバドンによる攻撃を加えていただろう。だが東堂は手を叩いたのにも関わらず
「手を叩けば発動する。それを用いたブラフという訳だ。単純だけど引っ掛かり易いよなぁっ!」
山津波 | 200X出典。敵全体に万能相性のダメージを与える。 |
「ふき、とべぇっ!!!」【チャージ状態】*49【攻撃力上昇2段階】*50
そして振われたのは花山の山津波。攻撃力を高め、最初と同様に
「冴子!弘司!」
「ええ、行きましょう!」
「俺達の過去、そのケリをつける!」
三人の
『どいつもこいつも俺の邪魔をしやがる!特に裏切者のてめぇらは許さねぇ!俺が喰い殺す!!!』
緑色の肉体を震わせて大きな口を広げながら立ち塞がったのが三人と同様に
特に奈津子に対して信頼や忠誠心があった訳ではない。あったのは中国マフィアという自身の気質に合った組織における出世。少なくともそれは上手く行っていた。アートマを埋め込まれてアバドンになった事も力を得たと歓び、このヨコハマでも一定の権力を握ってゆくゆくは三業会の構成員となり、そこでさらなる高みを目指す。それが彼の野望だった。
だが現実はそう上手くはいかず、今はレルムそのものが崩壊して自身もまた死に掛けている。そして眼前に居るのが<組織>が崩壊した原因の一つであり、自らを追い詰めているかつての
「させません」
その松山、アバドンの眼前にヴァイオレットは滑り込んだ
『ならまずはてめぇからだ!回復か補助しか能がねぇのは割れてんだよ!』
松山もまたこれまでの突入メンバーの戦闘はカメラ越しに目撃している。その中でもヴァイオレットはオルフェウスというシャドウを用いてでの
「ええ、そうです。ですがこれは……
ヴァイオレットが背後に浮かべる
\カカカッ/
法王 | プシュケイ | 弱点なし*51 |
ブレイブザッパー | P3出典。敵単体に斬撃属性の特大ダメージを与える。 |
ヴァイオレットが本来持ち得たシャドウ、プシュケイより放たれた斬撃は断末魔を上げる暇もなくアバドンを両断した。
「私が出来るのは此処までです。どうぞお先へ!」
こくりと傍を通り過ぎる三人は頷いてマザーの核を目指す。壁は風船のように膨らみ続けており、既に戦場は通常の半分程の広さしか保っていない。猶予はなく、チャンスは一度切り。
「最後に来るのはやっぱり貴方よね、晴香!」
「……」
マザーの核をそれぞれが射程内に収め、その最後の番人とも言える奈津子と銃とナイフを構えた晴香の視線が交差する。
\カカカッ/
生物兵器 | アグ(肉壁)の群れ | Lv70 |
\カカカッ/
生物兵器 | アグ(肉壁)の群れ | Lv70 |
マザーが最後の余力を用いて生産した肉壁。壁内に存在するマザーの核に対して明らかな<カバー>の姿勢を見せている。
「まずは俺が行く!」【ハッピートリガー】*52【雷神の弾丸】
「援護します!」【幸運な助言】
冴子の援護と共に弘司より発射された三発の弾丸がマザーに迫るが想定通り肉壁が
「続きます!」【トリプルタップ】*53【千発千中】*54【閃光弾】*55【グリモア】*56
続け様に冴子の拳銃より放たれた4つの弾丸がマザーの核を追って発射される。2つ目の肉壁によってその射撃は再び庇った。
『……!?』【BIND】
だがその弾丸が全命中した所で肉壁の
「いけ!晴香!」
「御願いします、晴香さん!」
「分かってる!」
硬直した肉壁に向かって跳躍してそれを飛び越えながらもマザーの位置を探る。そう遠くに行っていない筈と弾丸を電撃属性のそれに変えて、その位置を特定し
「それは届かない。これで、終わりよ」【カバー(手番放棄)】
「……ッ!」
壁面に露出したマザーの核、それをついに見つけた所で奈津子の肉体がそれを阻む。距離としては目と鼻の先で彼女さえいなければマザーの核を穿つ事は出来た。だがそれも後一歩の所で届かない。
「ならばもう一歩だ!決めろよ、
故にクローン体で
「はあああああああっ!!!」
急所打ち | 誕生篇(軍隊格闘技)出典 |
相手の急所を打つ技。この攻撃で1点でもダメージが入った場合、相手を瀕死にする。相手は回避に+20%のボーナスを得る。本来は使える対象に限りがあるこの特技(アンデッド・マシン・人間の形をしてない物には無効)だが晴香は全ての生物兵器に対してこれを使用する事が出来る。 |
東堂の言葉の通り迷いなく仲間を信じて踏み込んだ晴香はマザーの核にそのナイフを突きつけ、マザーの核は切り落とされる。
瞬間、膨張した壁内が破裂して拡散。マザーの断末魔のように部屋が崩壊していき、マザーの体内だった戦場は元の殺風景な空洞へと戻っていった。其処に居たのは生き残った東堂達にアバドンだった松山、アビス、マザーの残骸。そして項垂れた藤堂 奈津子だけであった。
「ふ、ふっ……ここまでやっても勝てないとはね。完敗だわ」
「これで本当の終わり。大人しく捕まって」
「それは無理よ晴香。見て、私の腕」
奈津子が晴香に向けてその腕を向ける。奈津子の腕はスライムのように骨も肉も溶け落ちかけており、溶けた肉片はマザーの残骸のように赤いケチャップのように変わっていた。
「私とマザーは一心同体。マザーが倒れれば私も同様に死ぬ。だからもう私は死んだも同然なのよ……その上で最後に一つ貴方に御願いがあるの」
「聞くだけ聞いてあげる」
何をしてもいいように銃口だけ奈津子に向けながら晴香は言葉を返す。他の仲間達は各々回復と周囲の警戒に当たっている。
「景気づけに私が死ぬ前に私を殺していきなさいな」
「あんたにしては往生際が良すぎる発言ね。今までが信じられない位」
「合理的に考えてもう私が打てる手はないわ。死が確定したなら目を付けていた貴女の気晴らしをして死んでもいいと思ってね」
「……ほんとにらしくない」
「かもね。で、どうするの?あまり残された時間はないわよ」
既に奈津子の両手両足は消失し、下半身も完全に溶けつつある。それでも彼女が平然としているのはマザーから作られたボディで痛覚を改造してあるからなのか、それともやせ我慢なのかそれは分からない。
「私は……貴方を撃たない」
晴香は銃口を降ろす。
「貴方にとっては人生の全てを滅茶苦茶にした張本人よ?」
「それでも、あんたは今日ここで終わる。捕まえて、警察の人達に突き出すのが理想だったけどそれが出来ないならやる理由もない。それに」
「それに?」
「私の気も、もう晴れた。いい加減、普通の生活を送りたいし、貴女の事も忘れたい。だからもう貴方にあげてやる物は一つもない。」
数秒の沈黙が続いて、奈津子が口を開く。
「そう。なら私が言う事は何もないわね……精々こっちには遅く来なさい、
「当然でしょ」
晴香は奈津子の顔を最後に見下ろしながら、その消え行く身体を見届けた。
「……さようなら、義母さん」
其処から十秒程、晴香は義母だったそれに対して黙祷を捧げた。
「
「ん、わかっ」
しがれた亡者の様な呟き。それと共にこの場に居る全ての者に今までにない戦慄を感じて、その場を飛び退いた。
「なに……あれ……」
誰の言葉だったかは分からないが、その言葉の通り理解不能な物が空洞の中心に存在していた。
冥界門 | 誕生篇&覚醒篇(魔道)出典。一部効果改変 |
異界と地上を繋ぐゲートを開く魔法。特定の日時や場所が整った場所でなければならない。一時的にGPを80(石■南の魔道技能分)、上昇させて直接悪魔のマニフェスト体(実体)を呼び出したり、術者が異界(魔界)を訪れたりする事が出来る。今回、石■南は冥界門を用いて魔界へと接続、龍脈と冥界門を一体化させて魔界のエネルギーを冥界門に注ぎ込んでいる |
冥界門とは魔界・異界への接続を果たす魔道の中でも禁術に当たる
\カカカッ/
ホムンクルス | 石 亜南 | Lv80 |
備考:ホムンクルス体であり、石亜南の魂の欠片が埋め込まれている。その魂を燃やす事で本体の石 亜南の性能を数十秒だけ引き出す事が出来る。その後は死亡する。 |
石亜南は長年の研究により
『ここまで最悪の想定内といった所だな。だがまぁ丁度良かった、藤堂奈津子も死んだ事だし材料は揃っている。僕が死んだ後に運が向いてくるとはね』
「貴様が何をしでかすつもりだ、石亜南!」
『悪足搔きにきたのさ。全てご破算にするなら、派手な方が良い』
この中で唯一冥界門の知識がある東堂は石亜南に問うた。それ以外の殆どの者はその場に満たされた膨大なMAGによって動く事が出来ない。
「プシュ、ケイ!」【ブレイブザッパー】
「このやろぉ……!」【山津波】
唯一東堂以外に動けた二人。ヴァイオレットと花山が各々の最大出力を強引に石亜南にぶつける。
『庇え、ボルカノン』
\カカカッ/
生物兵器 | ボルカノン | Lv60 |
それらの攻撃も巨大な陸ガメのような大型生物兵器に防がれた。
「駄目か。全員俺の周囲に集まれ!死ぬぞ!」
『勘が良いな。では始めるとしよう……一世一代の大博打を!』
魔道が用いる<三身合体>*58によってマザー、アバドンの死骸を冥界門に吸収・合体。それらによって出現する何かは
『高い確率で失敗には終わるだろう。だがしかし成功さえしてしまえば母なる深淵が生れ落ちる。さぁ、いざ!』
冥界門が歪む。石亜南、ボルガノンはそれに巻き込まれて絶命して、異界そのものが冥界門に呑み込まれるかのように喰われていく。
「全員射程距離内に収めた!耐えろ!」【トラエスト】*59
それに呑み込まれる寸前に東堂によって発動した転移の術。その寸前に彼らは石亜南が生み出してしまったその存在を目撃した。
\カカカッ/
悪魔兵器 | マザー=アバドン | Lv92 |
生物兵器と悪魔と冥界門の融合体、
・今回の戦い
寄生ジョーカーにおけるマザー&アビス戦。DDSAT2におけるアバドン戦。後なんか呪術のアニメであんまりにも東堂が暴れていたのでその要素も入り込んだメガテンバトルというより怪文書に近い産物。取り敢えず全員をいい感じに活躍させる事以外考えていませんでした。後は東堂が原作で出禁になる理由も分かりました。
・<石 亜南>
本体の魂が半分未満だったのがヒントと言えばヒント。魂をさらに名前を言ってはいけないあの人みたいに分割して、その魂をホムンクルスに格納。其処から前々からコツコツ作っていた冥界門をマザーと混ぜれば面白い事できるんじゃねぇか?計画(行き当たりばったりオリチャー)を実行。その場に相性が良さそうなアバドンの死体もあったので取り敢えず合体した。取り敢えず三業会に必要な情報は送り終えたので此処に居る三業会に仇なしそうな奴全員ぶっ殺して終わる事が出来れば最良だなと考えての実行。大体無敵の人。
・キャラ紹介
いつも通りのビルド公開です。オリジナルスキルもあるので参考程度に御願いします。
<ガンスリンガー>藤堂 晴香Lv66(+4)(破魔・呪殺無効)
三連射(200X)・クイックロードⅢ(200X)・制圧射撃(200X)
急所打ち(誕生篇・軍隊格闘技)・ブレイクスルー(基本システム・サバイバル)
ナイフ戦闘(誕生篇・軍隊格闘技)・スライディング(誕生篇・軍隊格闘技)・急反撃(基本システム・サバイバル)。他サバイバル・軍隊格闘技系習得
今回の編における主人公。主人公なのだが他のキャラの方が圧倒的にキャラが濃かったりするので影が薄かった。ビルドも地味というか軍隊格闘技・サバイバル・射撃で回避重視と軍人みたいなビルドしてる。唯一ループ補正によって固有スキル:寄生ジョーカーを獲得しており、それによって生物兵器に対しては鬼のように強い。キリギリスの出現が<組織>から離脱した理由なので過去周回ではファントムソサリティが存在してれば寄生ジョーカー本編が始まってそれぞれ12個位EDにいったりいかなかったりしていたのかもしれない。実質的に生物兵器に関わり、それを打倒し続けて唯一の人物でありだからこそそれらに対する天敵であれた、そういう存在。
<ガンスリンガー>葉山弘司Lv63(+2)(銃・破魔・呪殺無効)
腕部狙撃(IMAGINE)・ハッピートリガー(IMAGINE)・クイック&デッド(200X)・クイックロードⅢ(200X)
トラフーリ(シリーズ共通)・エストマ(真1)・暗殺者の歩調(SH2)・隠し身(IMAGINE)
パッシブ:トリックステップ(PQ)・回避強化(200X)・セーフティ(真5)
寄生ジョーカー勢の青髪短髪の男。年齢は晴香と同様。晴香と同様に<組織>の構成員であり、観察者。少なくとも寄生ジョーカー内における立ち回りは晴香より上手かった。晴香より射撃が上手いらしいので射撃メインの回避型、さらにそこにトラフーリ・エストマやら隠密用スキルを搭載している。寄生ジョーカーで生物兵器殆ど出すのにこいつ出さないの勿体ないなと思ったので本来突入メンバーにはいなかったが参戦した。ちなみに作戦会議ではちょろっと晴香と話す描写がある。
<ガンスリンガー>茂木冴子Lv61(+3)(BSに強く、破魔・呪殺無効)
トリプルタップ(覚醒篇・シューティング)・クイックロード(覚醒篇・シューティング)
ゴッドスピード(覚醒篇・シューティング)・幸運な助言(200X)・ケミストリーⅠ(200X)
ドロンパ(ペルソナ1)・暗殺者の歩調(SH2)・隠し身(IMAGINE)
パッシブ:食いしばり(P5R)・生還トリック(P5R)・千発千中(D2)・グリモア(デビサバ2)
寄生ジョーカー勢の青髪ロングの女。じゅうななさい。大体弘司と同様で元<組織>の構成員。ビルドは覚醒篇のシューティング系の射撃と使わなかったが2個のアイテムを使用できるケミストリー、判定補助の幸運の助言等で補助寄りの構成。其処にドロンパと隠密系が入る。食いしばりと生還トリックがあるのはなんか寄生ジョーカー本編で何回も死に掛けてもなんやかんや生きてる枠だから(明らかに死んでる場面あったよね?)。グリモアは状態異常ガンナーとして他と差別化したかったという理由だけで搭載している。
<シャドウ使い?>ヴァイオレット・メティスLv77(+1)
(オルフェウス、プシュケイの二種のペルソナを用いる。)
ビルドは本編通りのワイルド産の魔改造オルフェウス、そして本来のペルソナであるプシュケイである。ぶっちゃけプシュケイも弱点なしで物理メインのオールラウンダーなので困った時には全然投入できる。強い。
<導師>東堂葵Lv78(+1)(全てに強く、破魔・呪殺無効)
格闘技:地獄突き(200X)・アカシャアーツ(200X)・旋風脚/旋風拳Ⅲ(200X/闇のプロファイル)・真空投げ(200X・真2)。
搬運功(基本システム)を応用したトラフーリ・トラポート・トラエスト、そして不義遊戯。
後は基本システムの気功関連や複数の格闘技を習得。
パッシブ:格闘威力強化Ⅲ(体)(200X)・食いしばり・三分の活泉・大気功(P5R)・精神耐性(P5R)
一番の問題児。アニメの呪術が面白過ぎたのも良くなかったと思う(責任転嫁)(気になる人はアニメ呪術をチェックや)。不義遊戯はほびーさんに此方から提案をさせて頂き作成。大体神獣が使う瞬転の舞の上位互換。消費MPも大体同じ感じだが即時効果で使うと2倍。対象を拡大すると2倍。合わせて使えば4倍という構成なので他の転移系と比べて消費が非常に激しい。大気功で誤魔化してはいるが戦闘ではとてもMP消費技では戦えないので200X系の格闘技(消費HP10~50位なので負担が軽い)で対応しながら本人は殴り合う。しかもかなり硬い。東堂をメガテンで再現すると大体こんな感じになるんじゃないかビルド。そのまま戦わせると頼もしすぎるので偶然名字の呼び方が同じの晴香に因縁をつけて虎杖(隠語)になってもらう事でキモさを充填した。ちなみにMAG関連の物体を対象にしての不義遊戯は屁理屈捏ねてやってみたかっただけなので場合によっては普通に駄目かもしれないという事を報告申し上げておきます(駄目だった時の焼き鉄板を用意)
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ヨコハマ事変 決戦
ヨコハマレルム全域に響き渡ったのは耳を塞ぎたくなる亡者の叫び。
\カカカッ/
悪魔兵器 | マザー=アバドン | Lv92 |
第一陣や第二陣が突入した地下研究所付近の建物が突如として陥没。深淵のように真っ黒に染まったその区域から現れたのは全長数十メートルにも及ぶあまりに巨大で真っ赤な肉塊。人間の複数の臓器が合わさったかのような歪さと喜色悪さ、最早悪魔とも生物兵器とも言えぬその姿にヨコハマに居る全ての人間は
かつての九頭竜を思わせるその威容、しかしそういった存在は初見でもなくその
\カカカッ/
悪魔兵器 | アグ=アバドンの群れ | Lv72 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | アグ=アバドンの群れ | Lv72 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | アグ=アバドンの群れ | Lv72 |
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悪魔兵器 | アグ=アバドンの群れ | Lv72 |
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悪魔兵器 | アグ=アバドンの群れ | Lv72 |
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悪魔兵器 | アグ=アバドンの群れ | Lv72 |
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悪魔兵器 | アグ=アバドンの群れ | Lv72 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | アグ=アバドンの群れ | Lv72 |
全方位に向けて放たれたそれは血の津波のようで、それを構成する巨大な血の塊のような
「なんだこいつら!?アバドンな事には違いないだろうが……!」
「何でも良い!範囲攻撃で薙ぎ払え!此処の住民にも協力させろ!飲み込まれるぞ!」
「
アナライズをしている暇はない。一刻も早く範囲にてこいつらを撃滅しなければその全てがあれに呑み込まれる。各々の獲物を掲げながら戦士達はその恐怖を押し殺して、その津波に立ち向かう。
「【デスバウンド】!」 「【天扇弓】!」 「【マハンマオン!】」 「【マハムドオン】!」
「【マハラギオン】!」 「【マハブフダイン】!」 「【マハザンバリオン】!」
一糸乱れぬ複数属性による
アグ=アバドンの | 敵単体に物理属性のダメージを与える。何の変哲もない通常攻撃。 |
放たれた津波、その深淵との交戦が始まった以上、その反撃もまた戦士達に襲い掛かる。アバドンより放たれる攻撃は
問題はそのあまりに膨大な数。此方が1回の攻撃をしてくるうちに相手は10回以上の
「どけっ!物理無効の俺が一番前に出る!テトラカーンを切らすな!」【メギドラオン】
よって有効となるのは必然的に物理無効以上の耐性持ちとテトラカーンとなる。ヤタガラスの男はアバドンの乱打で死亡した仲間達を庇う様に前に出て、指示を出しながらその手にある万魔を燃やし尽くす炎をアバドン達に向けて発射する。
『…………』 【DRAIN】
「やはり、そうか!推定、魔喰いボス!繰り返す推定、魔喰いボス!」
万能属性、それはその名の如く万物に通じる事からそう呼称されている属性である。通常の耐性とは飽く迄別枠、他属性と比較して弱点こそつけないが安定したダメージを通せる事から高レベルにおける明確なダメージソースであり、一種の最適解であると言えた。
だがそれも過去の話。検証の結果或いはインフレの結果か、万能も最早一つの属性として扱われるようになった。万能を軽減、無効化する物も筆頭に一部の悪魔は万能に耐性を持っている事がある。その一つが“魔喰いボス”とカテゴリーされた耐性を持つ悪魔であり、この悪魔は
【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】
アバドンの赤い巨体が複数、その男に覆い被さる。物理無効であるが故にダメージこそないが、単純な質量で押し潰す事が出来るのであれば最早耐性等関係ない。反射であっても、テトラカーンであってもLv72という高レベルで相応のHPを持っているアバドン達は一撃で落ちる事はなく、アバドン達を密集させた上で窒息させれば殺す事は出来る。そうしてその場にいる者達は概ねその全てが包み込まれて
\カカカッ/
魔術師 | 城鐘 恵 | Lv80 |
「“魔喰いボス”に電撃弱点が追加*1、そんな所かな。電撃に弱いとされるマザーとの合体によって生まれてしまった弱点なんだろうけど、突ける所は突いていかなくてはね」
再度迫り来るアバドン達を見据え、まるで昔やった最高難易度のEDFにおける赤蟻の群れのようだと若干現実逃避気味の感想を抱きながらシロエは情報共有を行いながら思考を回す。
まずあのアバドンに関しては脱出した東堂より先程情報共有がされていた。曰く冥界門とアバドンと生物兵器マザーが合体した化物であり、恐らく生物兵器マザーの多数の生物兵器を生み出す能力にアバドンのスペックを上乗せして、そのエネルギーを冥界門を用いて魔界から吸収。結果として生まれたのが通常攻撃しか出来ないアバドンを無尽蔵に無限大に生み出す化物。その増殖は
『俺も微かにしか確認は出来なかったが、奴は三身合体の際に
モー・ショボー、あまりレベルの高い悪魔ではないのは確かだ。かの永世ライドウが用いたそれなら兎も角、このインフレした環境において他の悪魔に比べれば其処まで脅威視すべき存在でない事も確かだろう。だがモー・ショボーが習得するあるスキル、それをデビルソースで継承させたのなら話は変わってくる。
バイナルストライク | IMAGINE出典 |
生命力を高純度の爆発エネルギーに変え、特攻後に広範囲に渡る大爆発を引き起こす特技。使用者は死亡するが、対象と、その周囲の敵に対して、残りHP量の割合に依存した物理ダメージを与える。モー・ショボーが習得するスキル。 |
バイナルストライクと呼ばれる生命力の全てを使用した自爆の術。それがもし奴に継承されていたとしてその爆発において消費される生命力が今も増殖し続けるアバドンすら対象に含んでいるのであればそれが起爆した時の被害はこの街、ひいては横浜を超えて神奈川に最悪東京にまで広がって関東全土にまで広がる可能性があった。
最も其処まではいかないだろうともシロエは考えていた。
それらから逆算してマザー=アバドンの推定活動時間は今から約数時間程度。増殖スピードも鑑みるならば態勢さえ整ってしまえば持久戦に持ち込む事自体は可能だろう。その上での最大の問題点がマザー=アバドンの起爆条件。
これも恐らく其処まで正確な条件付けは出来ていないが自身が石亜南の立場なら少なくとも複数の条件を追加する。例えばマザー=アバドンの増殖数による制限。ある一定まであのアバドン達が増殖した所で起爆、これがメインとなる。続いて時間制限、一定の時間が経った後に起爆。これは短すぎればアバドンの数が足りず、長すぎればアバドンの発生を感知した他の区域からのデビルバスター達の救援によって状況が悪化する可能性がある。だがこの規模の怪物なら増援もそう来るのは遅くない。既に異界化も解除されつつあり、外への救援要請は既にしている。よって今から1時間以内程度だとシロエは予測する。他にも条件はあるだろうが主要な物はこの二つ。要するに被害を抑えるにはアバドン達の数を減らしつつ、最速でマザー=アバドンを打倒する必要がある。
「ただ、此方も準備自体は出来ている」
実は事前に脱出したフェイ達から幾つかの情報共有は先に行われていた。その中には今まで完全に秘匿されてきた最悪の生物兵器マザーに関する情報もあり、場合に寄ってはそれが暴走する危険性がある事もまた悪対の白河 大輔によって示唆された。
元よりこういう拠点攻略時においては最後に
ともあれ対策として此方が行ったのがヨコハマレルムの東西南北における迎撃拠点の配置。時間の関係で簡素な物ではあるが、それでもフェイが戻って来て情報を伝えてからあの化物が現れるまでに暫くの猶予はあった。その間に研究所付近を除くヨコハマレルム全体の龍脈を支配下に置き、一種の陣を敷いた。それらを最終防衛ラインとしての防衛戦を今は続けるしかない、少なくとも反撃の態勢が整うまでは。
他の第一陣や第二陣のメンバーの帰還も現状確認されている。
「其方はどうですか、フェイくん」
\カカカッ/
ウィッチ(♂) | 久遠 フェイ | Lv80(-3) | 全てに強く、破魔吸収。 技・火炎・氷結・呪殺反射。BS無効*2 |
『取り敢えず第一陣と第二陣メンバー、後は第四陣メンバーの離脱は確認できたよ。今は東堂と一緒に脱出した人達回収して、転移しながら迎撃拠点回りながらバフばら撒きしてるけど』
「ええ、引き続き御願いします。それは君にしか出来ませんから」
シロエが通信を通したのは異界より離脱して情報を齎したフェイ本人。彼が第三陣に帰ってきた時は酷い顔色をしていた。片手両足を欠損し、切り離された手足こそあったもののあまりにも削られ過ぎていた為にその場における治療は不可で、最大限此方で治療して何とか手足が三本程足りない事以外は健康に戻った。
本来なら今回の戦いをリタイアすべき状態の彼だが状況が状況であるし、仲魔のサポートに由奈かエリヤに抱き抱えて貰えれば戦えると本人が希望した事もあってこうして無理をして貰っている。シロエ目線、フェイがまだ戦う宣言をした時の由奈の顔がマザー=アバドンより恐ろしくて頭から離れないが何にせよ彼が用いるある魔法が必須だったのは事実だ。
自然の助け | 覚醒篇(ウィッカ)出典。戦闘終了まで格闘武器に火・電・氷・物・風のいずれかの相性を与える。重ね掛けした場合、新たに選択された相性を与える。 |
格闘武器事態に属性を付与するウィッカの魔法。これによって武器事態に電撃属性を
これに転移に特化した東堂を組ませての連続転移によってそれぞれの迎撃拠点にそれぞれのメンバーを送り届けた上で
『でも各拠点回ったけどちょっとアバドン達の増殖速度に殲滅速度が大分追い付いてないかも。最初に比べれば大分マシになったけど、このままだと防衛ライン突破されちゃいますよ』
「北と南のバフ撒きは終わりましたか?」
『あのヤタガラスの二人の所だね。終わってる』
「では問題ないので他の拠点に向かってください。既に
『りょーかい。そっちは宜しくね、シロエさん』
「其方も抜かりなく、フェイくん」
通信を切って、再び眼前の戦場に意識を戻す。通信の最中もマハジオダイン自体は喰らわせ続けて、仲魔も同様に電撃を喰らわせている。
喰い止めるのが自分の限界でこれ以上の殲滅を行う事は出来ない。であるのならば“切札”に頼るしかない。
「頼みましたよ、ヤタガラスの御二人」
北と南に存在する簡易的な防衛拠点。其処にはそれぞれヤタガラスより派遣された二人のサマナーが守護に当たっている。
\カカカッ/
サマナー | 新城直衛 | Lv78 |
\カカカッ/
天津神 | タケミカヅチ | Lv71*5 |
「さて、シロエ殿より要請も入った。僕達も動くとしよう」
\カカカッ/
巫蠱衆 | 葦名弦一郎 | Lv80 |
\カカカッ/
雷電属 | アスタロト | Lv74*6 |
「準備も万全……狙うはあの紅に染まった化物の中心!」
北に新城直衛と必殺の霊的国防兵器であるタケミカヅチ、南に葦名弦一郎とその仲魔であるアスタロトがそれぞれマザー=アバドンを見据えている。この二名のサマナーがこのヨコハマに派遣されてきたのは全くの偶然であり、何らかの必然性があったという訳ではない。
マカカジャ | SH1出典 |
味方全体の魔法攻撃力を1段階上昇させる。4段階まで上昇済みであり、フェイの仲魔のケルプによって付与されている |
電撃高揚 | IMAGINE(特徴)出典 |
雷の扱いに長けた悪魔。電撃相性のスキル使用時、威力が50%上昇する。タケミカヅチが習得 |
武神の威光 | IMAGINE(特徴)出典 |
勝利を約束する神の威光で相手を平らぐ悪魔。 斬撃・火炎・衝撃・電撃相性のスキル使用時、威力が25%上昇する。タケミカヅチが習得 |
「しかし電撃弱点とはね。僕達が此処に来たのもある意味運命だったのかもしれないな」
『どのような敵が来ようと我が雷撃にて打ち砕くのみ。何も変わらぬ』
タルカジャ | SH1出典 |
味方全体の物理攻撃力を1段階上昇させる。4段階まで上昇済みであり、フェイの仲魔のテスカトリポカによって付与されている |
電撃高揚 | IMAGINE(特徴)出典 |
雷の扱いに長けた悪魔。電撃相性のスキル使用時、威力が50%上昇する。アスタロトが習得 |
紫電のネックレス | P5R(アクセサリー)出典 |
電撃ハイブースタ(電撃属性1.5倍)を習得する。弦一郎が装備。 |
「此処からは恐らく連続発射となるだろう。気張れよ、アスタロト」
『御意。我らの力を此処に示しましょう』
新城が刀を抜き放ち、タケミカヅチはその身に纏う雷撃を迸らせる。弦一郎はその背に背負う巨大な複合弓を構え、その手の槍としか思えぬ程に巨大な矢を番える。アスタロトもまたその弦一郎の構えの呼応してその手に稲妻を収束させて、その発射を待っている。
既に彼らの居る北の拠点と南の拠点にも多数のアバドン達が迫って来ていた。その数は千を超え、万に至りかけている。防衛ラインを突破されればこの化物達がこのヨコハマレルムの外にて民草を襲うのは火を見るよりも明らか。故にその全てを悉く此処で葬らなければならない。
「「薙ぎ払え
S烈攻の秘法 | デビサバ1出典 |
バトル開始時、味方全体の物理攻撃力と魔法威力を初期値の25%上げる。新城が習得、発動。 |
らいでん | 魔神転生1出典。距離2の敵全てに電撃属性の中ダメージを与える。 |
極雷電忠義突 | ライドウ対アバドン王(合体)出典 |
敵全体に電撃属性の超特大ダメージを与える。雷電属アスタロトが習得する。本来はライドウの刀区分における槍でしか発動が行えないが弦一郎は己の収めるその弓術の応用でそれを大弓による槍状の矢の発射で行っている |
北方より発射された全てをその紫電にて焼き尽くす建御雷の
双方弱点である電撃にして片や
「だがこれだけでは死なんか。弦一郎殿が
「全域に渡る建御雷の雷電、それでも焼き切れなかった。大きく減衰したが増殖スピードは恐らく変わっていない。マザーの特性を引き継いでいる以上、核は何処かに存在する。そして、それはあの露出した本体部分には存在していないのだろうな」
ヤタガラスの二人のサマナーは互いの攻撃を観察し、自身の攻撃も踏まえて一つの結論を下した。
「この矢は特注故にそれ程数はない。それ程長く持久戦は出来ない。だが、それでも」
「今まで泥臭く生き残ってきたのが
場所は移り変わって東の迎撃拠点。此処は第三陣における作戦本部も後方に存在しており、その設備も人員も整っている。それ故に多くのヨコハマレルムの住民達はこの場所にて避難していた。
だからこそなのか避難民がいるこの場所は他の方向と比べてアバドン達の侵攻が特に激しく、ヤタガラス、悪対、そしてヨコハマレルムに居た漂流者、果ては中華マフィアの残党まで投入した総力戦が繰り広げられている。
\カカカッ/
コマンダー | 白河 大輔 | Lv68 |
「川村にウィル子!周囲への情報伝達と状況確認を怠るなよ!もう少しの辛抱だ!」
\カカカッ/
川村 ヒデオ |
「わぁってますけど!こんな大規模な戦いでこんだけの人数の状況確認なんてやった事ないんで色々無理がありますよ!?」
\カカカッ/
電霊 | ウィル子 |
『こっちで情報伝達は全部やってるけど大分キャパオーバーしてますよ!アバドン達の増殖スピードもどんどん速くなってきてますし!』
そして各区域で総力戦を行う彼らを作戦本部に居る悪対メンバー達が必死に支えていた。ヒデオと他の幾つかの悪対メンバーが各地からの情報受信、そして状況確認を行い白河・ウィル子にそれを伝達。ウィル子が状況と情報を分かり易い形で要約した上で各地で戦っているメンバー達の情報端末に音声データで情報共有。その上で全体の指揮を白河が行っていた。
「これでも細かな指揮に関しては城鐘さんにやって貰っているが……きついな」
白河は思わず弱音を吐いた。マザー=アバドンとの戦闘が始まってから既に数分以上が経過。最初の衝突の時より情報も出揃い、適切な補助も積んでいけている。それでもアバドンの耐性による性質とその増殖スピードによって初手で多くの戦闘不能者が生まれてしまった。幸い
「来たか!」
その全ては今ここに
\カカカッ/
警察官/シャドウ使い | 劉鳳 | Lv83 |
法皇 | ナントセイクン | 物理に強く、魔法に弱い*7 |
「待たせてすまない」
\カカカッ/
シャドウ使い | 真田 明彦 | Lv78(+3) |
皇帝 | カエサル | 電撃無効・氷結弱点 |
「待たせたな!」
\カカカッ/
魔術師 | 城鐘 恵 | Lv80 |
「白河さん、遅れてすみません。此方も準備が整いました(この二人、声がほぼ同じで紛らわしいな……)」*8
\カカカッ/
ガンスリンガー | 藤堂 晴香 | Lv66(+4) | 耐性:破魔・呪殺無効 |
「大輔さん、大丈夫ですか!?」
\カカカッ/
導師 | 東堂 葵 | Lv77 | 全てに強く、破魔・呪殺無効 |
「ギリギリといった所だな、
「だ!か!ら!ブラザー!違う!違います!」
劉鳳と真田、そして晴香の三名に転移を成した東堂葵、各地に駆け巡りながら指示出ししていたシロエ。
\カカカッ/
ウィッチ(♂) | 久遠 フェイ | Lv80(-3) | 耐性:全てに強く、破魔吸収。 技・火炎・氷結・呪殺反射。BS無効*9 |
\カカカッ/
半羅刹/剣士 | 久遠 由奈 | Lv88 | 耐性:凡そ全てに強く、物理吸収。火炎・氷結・ 破魔・呪殺・精神・神経・魔力・緊縛反射*10 |
\カカカッ/
ガンスリンガー | 久遠 エリヤ | Lv74 | 耐性:凡そ全てに強く、火炎・氷結・ 破魔・呪殺・精神・神経・魔力・緊縛反射*11 |
\カカカッ/
凶鳥 | フレスベルグ | Lv77 | 火炎無効。氷結吸収。破魔・呪殺・緊縛・一部の物理に強い。*12 |
\カカカッ/
破壊神 | カルティケーヤ | Lv76(-5) | 銃反射。物理・破魔無効。呪殺耐性*13 |
\カカカッ/
神獣 | バロン | Lv76(-2) | 物理耐性・破魔・呪殺無効。全ステータス異常無効(BS無効)*14 |
「フェイにエリヤ、由奈。以上3名も現着だ……一名不機嫌極まっているが」
「……帰ったら覚悟しておいてくださいね、フェイ」
「でも君が無理するなって言った直後に僕が無理してるのは
「は?」
「ごめんなさい」
エリヤに両手で抱き抱えられたフェイにその隣に不機嫌そうな面で剣を握り締める由奈。そして、飛行できる仲魔達が傍に控えている。
「フェイよ、
「色々ツッコミたい事あるけど……そっちも真澄の事、御願いね。宜しく、東堂」
「応ッ!」
東堂は再び
「全体の指揮は一時的に僕の方で預かります。白河さんは彼らに作戦の説明を」
「悪い、城鐘さん。宜しく頼む……では面子も揃った事だし、作戦について説明する」
白河がその手に持つ情報端末よりホログラム状のモニターが浮き上がる。其処に映っているのはヨコハマレルム全域のアバドン達の侵攻及び防衛状況とそれぞれの配置。
「作戦内容はシンプルに東西南北、全方位からアバドン達を反転しながら前へ前へと進んでいって撃滅。数を減らしていきながらタイミングを見計らって突入メンバーをマザー=アバドン内部に向かわせる。メンバーに関しては劉鳳・真田・晴香にフェイ・由奈・エリヤとなる。マザー内部に突入した後の戦術に関しては既に城鐘さんから聞いている筈だ」
・迎撃拠点及び突入メンバーに掛かっている補助
全能力強化+4(物理攻撃・魔法攻撃強化に関してはSH1仕様の最高倍率の物。それ以外は主にDSJ仕様の物となっている) |
自然の助け:電(戦闘終了まで格闘武器に電撃相性を付与) |
それぞれの迎撃拠点、そして突入メンバーには以上の補助がかかっている。その上で電撃相性を付与した格闘武器は前列或いは全体を攻撃できる武器をそれぞれが装備している*15。
弱点である電撃属性を徹底的ついて、其処に高倍率のバフが加わればアバドン達は一蹴できる。問題は一蹴してもその次に10倍以上の敵が出てくる事だが、それについてもある程度対策は立てられた。
「でも強襲って事は迎撃に穴が開くって事だと思うんだけど防衛ライン突破はされない?」
「其処に関しては問題ない。こっちで対処する……ただ、長くは持たない。チャンスは1回切りだ。お前達が失敗すれば後がない」
「りょーかい。じゃそっちもお任せしちゃって……問題はマザー=アバドンの撃破方法?」
「目星はついている。マザーの事を鑑みれば核があるのは間違いない。というよりそうでなければあの増殖スピードは説明がつかないからな」
アバドンとついているが性質としてはやはりマザーの部分があの怪物の大半を占めている。例えないとしても無尽蔵に増殖し続ける為に必要な冥界門がマザーは取り込まれている。それを破壊さえしてしまえばマザーはあっという間に自壊するだろう。
「問題はその場所だ。推定地点は晴香達がマザー戦った場所、つまり合体を行った場所そのものがマザーの核となっている可能性が高い。ヤタガラスの二人の広範囲攻撃で核を砕けなかった以上、核があるのならそれは地下であるのは疑いようがない」
「文字通り、深淵という事ですか。詳しい場所はフレスベルグとエリヤによって見つけ出せばいいですし、作戦に異存はありません」
「分かった。他に質問はあるか?」
言葉はなく、帰って来たのはそれぞれの決意の目線のみ。死に逝く為ではなくこの先も生きていく為に戦う、その戦意と希望を以て返答とした。
「……では、説明は以上とする。全てをお前達に託す。宜しく頼んだ。それと晴香」
「何?」
そのまま作戦指揮に戻ろうとする直前に白河は晴香に声を掛けた。
「結局、君を此処まで付き合わせてしまったな。その上でこんな危険な突入にも参加させてしまっている。すまない」
「別に良いって。これは<組織>に居た私の責任でもあるんだし……それにすまないじゃ、私気分下がっちゃうんだけど」
「……頑張れよ、晴香」
「うん、任せて大輔さん」
白河は再びシロエより指揮を引き継いで、忙しなく声を飛ばしていく。突入メンバーもそれぞれ配置について、その場に残ったのはシロエのみ。
「作戦開始の合図は僕だったね……やれやれ、大役任されちゃったな」
既に迎撃拠点に居る面子の配置が完了している事も知っている。後は作戦を開始するだけだ。
「此処の龍脈は京都、厳密に言えば平安京に酷似している。石亜南がそのように時間を掛けて、整えたのだろうけど……僕から言えばこれは
東西南北の拠点もこれから起こす事を見越しての事。それに必要な悪魔もまたそれぞれの属性と位置が合うように東堂に設置して貰った。起動権はシロエにある。
「丸パクリというのは芸がないが今回に至っては致し方ない。四神、起動」
東西南北に配置されたセイリュウ、ビャッコ、ゲンブ、スザクを起点とした大規模な結界が構築される。
四神相応 | NINE出典。6カウントの間、エリアに繋がってる全てのパス(経路)を消去する。これの発動にはセイリュウ・ゲンブ・スザク・ビャッコの4体が必要 |
これは即ち、石亜南が異界内で起動した侵入者を落とす為の術でもあった四神相応。それをシロエ独自にアレンジして展開し直した物である。四神に関しては自身の仲魔と複数のメンバーと相談して出し合って配置。それらを起点とした四方の結界は最終防衛ラインに沿って引かれた。それによって其処に存在する地形、経路が一時的に消失し、
「これを維持できるのは約1分。再発動に至る為のタイムラグはないが四神の消耗を考えればそう連発できる物じゃない。」
シロエは此処で結界の維持に徹しなければならない。自分達であれば補助を積めば容易に倒せるアグ=アバドン1体もlv72という化物であり、例え1体であっても覚醒者が居ない或いは低レベルの覚醒者しか居ない街に行ったのならば壊滅的な被害を出す事が出来てしまう。故に四神相応の展開は絶対で、その必要性を理解しつつも戦場に行けない事にシロエは歯噛みして
「頼んだよ、皆」
それでも戦友たちを信じて、ただその背を見守った。
四神相応の展開と共に反撃の狼煙は上げられた。迎撃拠点そのものを守りながらの全方位からの逆侵攻作戦。南の迎撃拠点ではアスタロトと弦一郎が稲妻の矢を発射し続けて、マザー=アバドン付近の肉塊に大打撃を与え続けながらも悪対の戦闘メンバー達が前線を押し上げつつあった。
\カカカッ/
警察官 | 斎藤 一 | Lv71(+2) | 銃撃に強く、斬撃・破魔・呪殺無効 |
「行きますかぁっ!」【プラズマソード】*16
迫り来るアバドン達、それを電撃を纏った
\カカカッ/
幻魔 | シトナイ | Lv68(+2) | 火炎・氷結耐性・破魔無効・呪殺耐性*17 |
「傷を治すぞ!」【メディラマ】*18
\カカカッ/
神獣 | ホロケウ | Lv68(+2) | 物理耐性・火炎弱点・破魔無効・呪殺耐性*19 |
「ワオーン!」【冥界破】*20【タルカジャ(SH1)×4】
シトナイが味方全体のHPを回復し、続け様にホロケウが疾走してアバドン達を雄叫びと共に捻り潰す。
\カカカッ/
警察官 | 杉本 佐一 | Lv71(+2) | 物理・銃撃に強く、精神・破魔・呪殺無効 |
「バケモン共が……もう好き勝手すんのは許さねぇ!」【プラズマソード】【会心】*21【コロシの愉悦】*22
ホロケウと斎藤が切り開いた道を駆け上がって杉本もまた電磁刀を振るう。元より何らかの
「掛かってこい!俺は……俺達は!不死身の悪対だ!!!」
北の拠点においてはタケミカヅチの雷撃が続け様に降り注ぎ、それ故か殺到するアバドンの数も増えつつあった。タケミカヅチもまた電撃こそ広範囲だが射程自体は短い。故に前線に立つ必要があり、それをアバドン達に襲われるリスクがあった。
\カカカッ/
外道/剣士 | 武田 赤音 | Lv75(+4) | 精神・BSに強く、破魔・呪殺無効 |
「で、それを俺達で守るって訳か?」
\カカカッ/
八極拳士 | ジョンス・リー | Lv80(+5) | 物理に強く、打撃・破魔・呪殺無効 |
「タイマン以外は苦手なんだがな俺。しかも剣持って戦えと来た」
\カカカッ/
サマナー | 新城直衛 | Lv78 |
「ま、仕方ないと思ってほしいね。武器も貸してあげただろ?」
それを守る為に前に立つのがこの三人。タケミカヅチの周囲に他のヤタガラスのメンバーを控えさせて、タケミカヅチへの奇襲を警戒しながらも
「だからって【プラズマソード】はないだろ」
「俺も【不動正宗】*23しか持ってねぇから我慢しろよ」
「いや、剣士が刀持っててその言葉吐くのはおかしい」
「俺はもっと鋭い刀剣が好きなんだよ!」
「さて、歓談も其処までだな。準備はいいかい?」
「「応」」
頷くと同時に各々の獲物を構えてアバドン達の群れに突撃する。
「こう振るのさ!」【S烈攻の秘法】【プラズマソード】
「こうか!?」【震脚】*24【プラズマソード】
「はっはっは、全然様になってねー!」【不動正宗】
三者違いはあれど振るわれた刃は確かにアバドン達の集団を三度終わらせる。
【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】
だがやはりというべきか。それでもアバドン達の増殖スピードは加速し続け、殲滅した数よりも大量の波のように群れたアバドンが殺到する。狙いはタケミカヅチのサマナーである新城。彼さえ潰す事が出来れば降り掛かる電撃は止み、侵攻が楽になると本能的に判断したが故の判断した。
「おいおいおい、そいつはいけねぇなぁ」【極・物理見切り】*25【見切り】*26【不動正宗:ATTACK】
「下がってろ、こっちの大将首が取られちゃ御終いだ」【大纏】*27【衝捶】*28
二人の
「すまないね、二人とも。さて、このまま我々も進み続けようか」
「こういう護衛は俺、慣れっこだからな……というかジョンスお前、結局拳で戦ってんな」
「慣れない武器で反撃とか出来る訳ないだろ」
「違いねぇ」
西の拠点はアバドン達の攻撃事態はもっとも手薄と言えた。他の方角のようなアバドンにとって厄介な何かが居たり、本拠点があったり等はない。だが西は海と面していた。それ故にアバドン達が海に落ちる可能性を考慮しなければならず、そうなった場合かなり面倒な事になるのは研究資料から知ることが出来た*29。故に此処の迎撃方法は他とは少し異なる。
\カカカッ/
サムライ | 月鍔 ギンコ | Lv75(+5) | 物理に強く、破魔・呪殺無効 |
「う、うおおおおっ!真澄殿、ほんとに頼みますよ!?これ某が一番前に立たないといけないんですからね!?」【挑発】*30
\カカカッ/
Lv85 | 巫女 | 神城 真澄 | 耐性:凡そ全てに強く、火炎・氷結・ 破魔・呪殺・精神・神経・魔力・緊縛反射*31 |
「分かってるわ!」【テトラカーン】*32
【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】
挑発テトラカーン、一種の全裸テトラカーンにも似たそれは相手の攻撃力を上げてしまうという挑発の弱点を逆手にとって敵の火力を最大効率にして攻撃を反射するという戦術である。敵が通常攻撃、つまり物理攻撃しかしてこないのであればこの戦法はまさしく最適と言えた。その証拠に攻撃を仕掛けてくるアバドン達は反射にて自滅していき、その数を勝手に減らしていっている。
\カカカッ/
シャドウ使い | 桐条 美鶴 | Lv77(+3) |
女帝 | アルテミシア | 氷結無効・火炎弱点 |
「この戦法ほんとにヒヤヒヤするな……!」【クイーンウィップ】*33
\カカカッ/
導師 | 東堂 葵 | Lv77 | 全てに強く、破魔・呪殺無効 |
「だが今は耐える時だ!ふんっ!」【武器の聖別:電撃】*34【フィジカルエンハンスⅡ】*35【アカシャアーツ】*36
\カカカッ/
シャドウ使い? | ヴァイオレット・メティス | Lv77(+1) |
愚者 | オルフェウス | 雷・闇弱点*37 |
「万が一、テトラカーンが割れてしまった場合には私が【物反鏡】*38を張る、でありますね」【行動待機】
他の者達はアバドンを電撃属性を付与した上で補助を纏って攻撃或いはテトラカーンが万が一割れてしまったその場合への対策に待機していた。
「案ずるな。万が一、何らかの事故が起きて場合は俺の不義遊戯にて一時離脱は行える。その為の配置だ」
此処に東堂が配置された理由も概ね此処で行われる戦法が原因だった。その性質上、テトラカーンがあるうちは無敵だが、それが割れると一気に挑発によるバフが乗ったアバドン達が此方に殺到するという事になる。そうなれば幾ら真澄達と言えど乱打でやられてしまうか、戦線崩壊の影響でアバドン達に呑み込まれて窒息するしかない。それを防ぐ為の緊急回避として転移を行う事が出来る東堂が配置された。
「……でも、東堂。貴方はやっぱりフェイ達の方に着くべきだったんじゃないかしら」
「其方を優先して万が一此処が崩壊した場合に割を喰うのは奴らの方だ。お前達も死ぬ確率が高くなる。フェイもそれを理解していたからこそ、俺を此処の配置にするように進言したのだ」
「それは、そうだけど」
「気持ちは理解しよう。俺も正直
「……はぁーっ!分かったわ。ならもっと前線押し上げるわよ。あの子達の負担を少しでも減らす為に」
「いいだろう!」
視点は再度東の拠点へと移される。ヤタガラスの二名が居らず、作戦本部もあるこの区域が一番の激戦区であり、その場で迎撃を続けながら前進を続ける者達は死に物狂いで戦っていた。
\カカカッ/
ファイター | アナンタ | Lv69(+2) | 耐性:物理・魔封・破魔・呪殺無効 |
「このやろーっ!物理だけなら効かないもんね!」【物理無効】【デスカウンター】*39
\カカカッ/
ヤクザ | 花山 薫 | Lv75(+2) | 耐性:物理・銃撃に強く、破魔・呪殺無効 |
「ふんっ!」【物理に強い】*40【仁王立ち】*41【五分の活泉】*42【覚悟の挑発】*43【超反撃】*44
前線を支えるアナンタと花山が攻撃を引きつけながらその度に反撃を繰り返して、その身体が吞み込まれないように只管攻撃を加え続けて
\カカカッ/
トリックスター | ベネット | Lv66(+3) | 疾風・破魔・呪殺無効 |
「吹き飛ばす!」【マハガルダイン】*45
万が一、敵が密集しすぎた際にはベネットの疾風によってアバドン達を吹き飛ばして距離をリセットする。*46
\カカカッ/
治癒士 | ルシエル | Lv74(+5) | BSに強く、神経・破魔・呪殺無効 |
「そろそろ諦めもついてきたルシエルです!」【メディアラハン】*47
最後に後方に居るルシエルが回復を飛ばす。このルーチンを只管繰り返し続けている。何度も何度も何度も、気が遠くなる程に繰り返して目減りするMPとアイテムに焦りを覚えつつも全員がその役割を理解して戦い続ける。
自分達は一人ではない。この場においても他に戦うヤタガラスや悪対の人々が
四方から攻め立てて、凡そ数分が経過しても尚アバドン達の増殖スピードに衰えはない。前線は押し上げられ、その包囲は狭まっているもののそれを継続していくリソースが足りていない。
その現状にアナンタは少しだけ挫けそうになっていた。どれだけ斬っても潰しても溢れ出る
『突入メンバーを投入する!各自攻勢を強めてくれ!』
身に着けている情報端末から声が響く。確か白河といった男だった筈とアナンタはうろ覚えに判断して、意識を少しだけ後ろにやった。
「凄い。あれだけ数が居たのに、ここまで包囲が狭まってる……!」
「だからこそ、このチャンスを不意には出来ない。頼みます、真田さん!」
「了解した!ペルソナ!カエサル!!!」
自分達の後方より駆けてきたのはマザー=アバドンの内部に突入するメンバー達。その先陣を切る真田がペルソナを展開させて、
突入メンバーの中には今まで一緒に戦い続けていた晴香が居た。戦ったと言ってもこのヨコハマレルムだけで、細かい過去とか何かとかそういうのは知らない。それでも何となく分かったのは彼女は普通の女の子であろうとして、戦いや冒険を望む自分とは違う人種だって事。だけどそんな彼女が誰よりも必死な表情で一番危険なマザーの内部に突入しようとしている。
「……へへっ、そっか。友達があんなに必死なら私だけ諦める訳にはいかないね」
戦意を取り戻してアナンタは眼前の敵を見る。マザー=アバドンとの距離はもうそう遠くない。重要なのはあれにへばりついた大量のアバドン。それらが分厚い装甲となって進路を阻んでいる。
「おーりゃああああああああっ!」【ニヤリ状態】
無理矢理
大車輪 | IMAGINE出典 |
遠心力を利用し、より多くの攻撃を加えることができる特技。1度の詠唱で2発分の装填を行い、使用者の周囲にいる敵に対して、近接攻撃力に依存した物理ダメージを与える。属性は武器依存であり、<自然の助け>によって電撃属性となっている |
振るわれたアナンタの遠心力に身を任せた車輪のような回転斬りはマザー=アバドンの壁面を大きく削り取るが、風穴を開けるに至ってはいない。
\カカカッ/
ガンスリンガー | 葉山 弘司 | Lv65(+4) | 耐性:銃・破魔・呪殺無効 |
「なら後は!」【ギガスマッシャー】*48【雷神の弾丸】*49
\カカカッ/
ガンスリンガー | 茂木 冴子 | Lv62(+4) | 耐性:破魔・呪殺無効 |
「あたし達で削り切ります!」【黄金銃】*50【雷神の弾丸】
突入チームの道を切り開くように冴子と弘司より発射された稲妻の砲火。それによってアナンタが削った壁面がはじけ飛ぶようにして崩壊して、一時的に風穴を開ける事に成功する。
「いってー!晴香ー!」
その風穴に突入チームのメンバー達が飛び込んでいき、最後の一人が通り抜けるとその風穴は最初から存在しなかったかのようにアバドン達によって塞がり切る。
「よし!」
これで最早憂いもない。後は彼らがマザー=アバドンの核を破壊してくれることを信じて、只管戦い続けるだけ。希望があるだけさっきより余程楽だ。それ以外の事も考えなくていい。アナンタはサムズアップしながら、ニヤリと笑って再び溢れ出してきたアバドン達に武器を向けた。
マザー=アバドンの突入メンバーはそれぞれ明確な理由を以って選ばれている。まずフェイはそのウィッカとして能力と強力で有用なスキルを持つ仲魔3体を率いる事ができ、それらのメリットは彼が身動きできない状態である事を上回っている。真田で言うのであれば広範囲に渡る電撃魔法とそのカウンター性能が上げられるだろう。他のメンバーもまたアバドンに対する有効打を持つ面子が集められており、それは即ち
\カカカッ/
悪魔兵器 | アグ=アバドンの大群 | Lv82 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | アグ=アバドンの大群 | Lv82 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | アグ=アバドンの大群 | Lv82 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | アグ=アバドンの大群 | Lv82 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | アグ=アバドンの大群 | Lv82 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | アグ=アバドンの大群 | Lv82 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | アグ=アバドンの大群 | Lv82 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | アグ=アバドンの大群 | Lv82 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | アグ=アバドンの大群 | Lv82 |
マザー=アバドンの巣とも呼べる体外に比べても極めて大量にアバドンが算出されるその場において
前衛 | 由奈・真田・晴香・カルティケーヤ・劉鳳 |
後衛 | フェイ・エリヤ・フレスベルグ・バロン |
・突入メンバーに掛かっている補助
全能力強化+4(物理攻撃・魔法攻撃強化に関してはSH1仕様の最高倍率の物。それ以外は主にDSJ仕様の物となっている) |
自然の助け:電(戦闘終了まで格闘武器に電撃相性を付与) |
「最初からアクセル全開で行くぞ!」【デスカウンター】*51
「続いて電撃を!」【ワンスモア】*52
「了解、ぶちかます!」【マハジオダイン】*53【電撃ハイブースタ】*54
反撃の構えを取りながら、フェイの援護によって再び動けるようになった真田は極大雷撃をアバドン達にぶちかます。
【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】【ATTACK】
眼前により襲い掛かるアバドン達の大群は最早迫り来る壁と同義であり、まずは前衛を削り潰そうと一直線に此方側に突進を仕掛けてくる。
「前に出ます」
由奈が前に出る。その手に持つのはいつもの大剣ではなく、センテイタイセイを合成して作られた合体剣である【如意棒】*55。付与した電撃を纏いながらも彼女は一切の気負いもなくそのアバドンで構成された壁へと真正面からぶつかり合う。
「確かにその質量ならば吸収を持つ私であっても押し潰せるかもしれません。だが」【物理吸収】【防御(手番放棄)】*56
引き | 誕生篇(剛剣)出典 |
割込行動。相手が防御した時或いは自分が相手の攻撃を防御した時に後方に跳び上がって、間合いを取り、攻撃につなげる技。判定に成功すればペナルティ修正なしで1回、攻撃できる。この攻撃の対象の回避/防御は威力分(剛剣技能値参照。値は60)のペナルティ修正を受ける。 |
技の鍛錬 | 覚醒篇(ルール)出典。 |
格闘技の技能を持つキャラクターは特定の技能を成長させる代わりに格闘技の特技1つをMPコストの2倍のHPを支払っても使用できる形に変更する事が出来る。<引き>が選択されており、そのMP消費は4である為に<引き>発動時にHP8点を消費している。 |
如意棒を用いた全体攻撃。 本来は物理属性だが自然の助けによって電撃属性となっている。 |
敢えて防御姿勢のまま引いて、攻撃を受け続けながらもその合間に反撃を仕掛けてただ只管に
「オオオオオオオッ!!!」【COUNTER】【COUNTER】【COUNTER】
『疑似的ナ貫通ヲ得タ我ガ氷、受ケテミヨ!』【北端の凍てつく風】*57【準氷結貫通】*58
そして由奈が攻撃を受けるのに便乗して発動した真田のデスカウンターが電撃を纏って壁を抉り、アバドン達が倒れる度にフレスベルグの死の氷乱息吹がアバドン達を襲う。準氷結貫通自体には無効以上の相手に対しては大幅な減衰が存在している。だが今は他の仲魔によって
「壁はこれで壊れる!道を作るぞ!」【旋風陣】*59
『全体物理あればよかったんだけどねぇ!銃撃でごめんな!』【天扇弓】*60
『傷ハナイナ。待機スル』【行動待機】
「俺は周囲警戒とアバドンの核探しに専念させて貰う」【行動待機】
『我モ同様ニ』【行動待機】
「私は周囲警戒に徹するよ」【行動待機】
劉鳳の疾風とカルティケーヤの弓乱射によって反撃によって削りに削られた壁は崩壊。その合間を縫ってフェイ達は進み続ける。アバドンの無限増殖に対する無限反撃。勿論、理論上無限というだけであり双方無限という訳ではないが一時的に対抗出来ているこの現状こそこの面子が選定された理由でもある。
待機している他の面子もバロンはテトラカーンによるアバドンの攻撃への対抗とメディアラハンによる回復。実は手番を使っていないフレスベルグとエリヤは周囲警戒とアバドンの核探し。晴香はアバドンの性質の大半が生物兵器であるが故の特攻を持っており、緊急時におけるアバドン達への対応担当。
前衛組は物理に対抗策があるか或いはアバドンの攻撃を避けられるか、そしていざという時も由奈の<カバー>*61がある。後衛組も補助が積まれた現状ならアバドンの攻撃の数発で倒れるような面子ではない。いざという時に動ける人員を確保しながらも攻守万全なPT、急ごしらえではあるが確かにアバドン達への明確な対抗策を持ったメンバーが引き続きその内部を駆け抜ける。
攻略そのものは順調であり、
「フレスベルグ」
『我モ捉エタ。コノ穴ノ下ダ』
全員の動きが内部の巨大な下の見えない穴の前で止まり、フレスベルグとエリヤは共に其処に視線を向けた。
「間違いない。マザー=アバドンの核はこの下にある」
エリヤの発言に全員の目が険しくなった。予想通りと言えば予想通り、場所も鑑みるに核の位置は藤堂奈津子が居たとされる場所に他ならない。問題は其処に到達するまでにこの奈落に向かって堕ちてゆかねばならないという事。
藤堂奈津子及びマザーにおける落下中における攻防は晴香より他のメンバーにも共有されていた。その時のやりたい放題具合を鑑みるにもっととんでもない事が起こる可能性もある。フェイは自身に<飛翔>*62を掛けて、エリヤと共に素早いフレスベルグの背に乗り移った。カルティケーヤの背にはバロンと晴香を乗せて、残りの面子は何とか自由落下でどうにかして貰う他にない。
「それじゃ行こう」
そのまま深淵、奈落そのものと言える巨穴に向かって落下するフェイ達。暗視ゴーグルさえ見透かせない暗闇が周囲を包み込んで、フレスベルグとエリヤの瞳と感覚を頼りに危険を察知していた。
「これは……」
エリヤやフレスベルグが察知するまでもなく、堕ちていく度に周囲の状態は変わっていった。真っ黒だった壁内はアバドンのそれを思わせる人間の臓器の内部のような体色となって、真っ赤な体液がそこら中から噴き出している。徐々にそれらはより強く、濃くなっていき、其処には明るささえ確認できるようになった。そして、その最奥に存在する物。
\カカカッ/
悪魔兵器 | マザー=アバドンの核 | Lv102 |
現在の位置より約1km先、この奈落の終着地点に存在したのは赤黒い体色に形容しがたい柘榴のような肉塊。全身に開いた穴からは毒々しい緑の光が漏れ出している。
瞳もないその存在にフェイ達は睨みつけられたような錯覚を受けながら落下を続け、同時に壁内より現れた肉塊で構成されたマザー=アバドンの一部を視認する。
\カカカッ/
悪魔兵器 | マザー=アバドンの肉塊 | Lv92 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | マザー=アバドンの肉塊 | Lv92 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | マザー=アバドンの肉塊 | Lv92 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | マザー=アバドンの肉塊 | Lv92 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | マザー=アバドンの肉塊 | Lv92 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | マザー=アバドンの肉塊 | Lv92 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | マザー=アバドンの肉塊 | Lv92 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | マザー=アバドンの肉塊 | Lv92 |
形状は凡そアグ=アバドンと同様。しかし、そのアナライズの結果は奴がマザーより生み出された別種の存在だと判断する。それがどういう意味を齎すのかはまだ分からない。警戒度をより上昇させながらもマザー=アバドンとの戦闘を始める。
「まずは私が一当てしましょう」
先行して落下している由奈と肉塊の距離が近づく。由奈もまたその異質な存在に最大の警戒を向けながら、来るであろう攻撃に備えて防御の構えを取って
「………ッ!?」
背筋に凍るような最大の死の予感と共にそれを空中において回避した。そうして無防備になった由奈に迫ったのはもう1体の肉塊。
『イレカワル!攻撃ヲ観測シロ!』【瞬転の舞踏】*63
カルティケーヤの背に居たバロンが不義遊戯のある意味オリジナルとも言える位置替えの術にて由奈と位置を入れ替えた。由奈はカルティケーヤの背に、バロンは肉塊との衝突する位置にまで移動。肉塊はバロンにダメージを与える事もなく、その肉体を包み込むようにして拡散した後にバロンを取り込んだ。その瞬間にフェイがバロンをCOMPに強制収納してバロンを回収する。
マザー=アバドンの | 敵単体を呑み込み、行動不能にする。*64 |
その正体も分かった。合体前にアバドンが用いていたとされる
そして、丸呑みになった後どうなるかも不明。アバドンの元の性質を鑑みるならばすぐに消化して死ぬことはないだろうがマザーの性質が強い現状だとどうなるかは分からない。あまりに不明な事項が多く、凡そ此方の戦ってきた敵の常識外に
一番の問題はやはりそれらがまだ大量に無数に存在している事だろう。当たりさえすればあれは一撃で自分達一人一人を狩り取れる。攻撃さえ当たれば行動不能になるが故に防御も出来ず、反撃戦法も封じられた。だからもう持久戦は出来ない。落ちれば落ちる程に肉塊の密集度は高くなる。其処まで行けば犠牲が発生するのは最早明白で、その上で奴を倒す方法は一つのみ。
「奴より早く、奴を殺す」
神風特攻と言われても致し方のない高速落下による核の最短到達及びその破壊。それしか手段はない。フェイの言った作戦とも言えない作戦にこの場に居るメンバー全員はそれを否認せずに了承した。
「行こう」
残された時間は分からないがあの数を捌いた上で核まで到達するのに必要な時間、そしてフェイ達が耐えられる時間も
「俺達の機動力では核の位置まで到達する事は出来ない」【旋風陣】
「だから、露払いはさせて貰う!」【ソニックラッシュ】*65【マハジオダイン】【マハジオダイン】
最初に動いたのは劉鳳と真田の二人。
迫り来るアバドン達は密度こそアグ=アバドンに劣るものの確かな障害・壁となり、此方を確実に捕らえる
『こりゃ仕方ないかな……僕しか突破口作れなさそうだし、突貫するか。悪いけどこれ終わったら僕COMPに送還されるから落下の用意しといて』
この中で最も機動力のあるカルティケーヤが晴香と由奈を背に乗せつつもさらに加速する。
韋駄天 | D2出典。カルティケーヤ専用。 このスキルを持っている悪魔が生きている間、味方全体は次の効果を発揮する。 「物理命中率が15%増加し、クリティカル率が20%増加する。」 |
天覇の将 | NINE出典。術者が物理攻撃で与えるダメージが増援を含む味方の生存者1体につき12.5%上昇する |
千列突き | デビサバ2出典。敵チームそれぞれに2~7回、物理属性の小威力攻撃。 速の値が対象より高いほど回数増加。 |
アバドン達のATTACKを受ける前にその神速の突進にて振るわれたのはそれを一息にて貫き通す
『我モ続ゾ』【北端の凍てつく風】【準氷結貫通】
カルティケーヤが崩壊させた壁を通り抜けるようにしてフレスベルグもまた加速する。カルティケーヤがアバドン達を倒す度にフレスベルグの周囲には冷気が満ちて、増殖しようとするアバドン達を凍り付かせながら確かなダメージを与えて、カルティケーヤより落下して核を目指す晴香と由奈を見据えた。
最奥にあるアバドンの核まではもう少し。あれは完全に底に根付いているのかかつてのマザーのように移動・透明化する素振りを見せていない。その代わりに防衛戦力として無数のアバドン達が行く手を阻んでいる。そして、フレスベルグが由奈と晴香の元に合流するより先にアバドン達に彼女達が吞み込まれるスピードの方が速い。
「エリヤ、僕を由奈の所に投げつけてフレスベルグと一緒に離脱して」
「いや、俺達も」
「万が一、アバドン達に誰かが呑み込まれた場合にそれを救出する人員が必要なんだ。それにフレスベルグの速度じゃもう間に合わない」
「……分かった。頼んだぞ」
フェイの肉体はエリヤによって持ち上げられ、力一杯に下方に投げ飛ばされる。その勢いをフレスベルグの【ガルダイン】*69による疾風で加速させて、アバドンの攻撃が由奈達に到達するその直前に何とかその周囲にフェイは到達する事に成功する。
「セト!僕達を最奥まで転移!」【悪魔召喚】*70→【セト】
アバドン達の攻撃が自分らを呑み込む前にフェイが召喚したのはセト。セトはその空間転移、その範囲に由奈と晴香も捉えた上で即座に転移の術を発動させる。
その場に居た者達は一瞬にして消失し、アバドン達の攻撃は不発に終わる。フェイ達はもっともアバドン達が密集していた場所を抜けて、ついにアバドンの核を攻撃の射程内に捉えた。
それでも此方に襲い掛かるアバドン達の触手をセトを無理矢理盾にして凌ぎ、吸収される寸前にCOMPに収納。晴香、由奈、フェイが奈落に底へと着地して三方より眼前にあるアバドンの核を見据えた。
「行ってください!」【煌天の会心Ⅲ】*73【
核が自身を守ろうとその身に肉塊を集中させて障壁を構築する。それを由奈の如意棒が一撃で吹き飛ばし、間髪入れず晴香が肉塊のすり抜けながら核にその刃を突き通す。
「これで…「まだ終わってない!」えっ」
その瞬間、晴香の肉体が肉塊の破裂によって壁に吹き飛ばされてその腕が壁内より這い出たアバドンに取り込まれた。
「……核の周囲に透明化した肉膜を展開していたんだ。さながらバリアのように」
先程の一撃で終わると誰しもが思っていたが、その一瞬でアバドンに上を行かれた。核の周囲に透明化した肉塊を展開してそれによる<カバー>。それによって晴香の突き立てたナイフは核に到達する直前で止まってしまった。
\カカカッ/
悪魔兵器 | マザー=アバドンの肉塊 | Lv92 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | マザー=アバドンの肉塊 | Lv92 |
\カカカッ/
悪魔兵器 | マザー=アバドンの肉塊 | Lv92 |
そして上空からは豪雨のように多数のアバドン達が此方に向かって降り掛かるその姿が見える。一面に敷き詰められようとしているそれは回避する事は晴香であっても不可能だろう。核を叩こうとしても既に肉塊を核は纏っており、後一歩の所で届かない。
派遣指令 | 200X(神威)出典 |
日常GP以下のレベルのキャラクターを派遣して、戦闘に参加或いは情報収集や護衛等の任務を与える事が出来る。 |
瞬間、誰にも予期していない事が起こった。突如として出現した妖精、恐らくピクシーが発動したのはフェイが覚えている物と同様の【ワンスモア】。妖精はそれを発動した後に消失し、その姿を視認する事は出来ない。だが最早そんなことはどうでもいい。
「由奈!」
「分かってます!」【煌天の会心Ⅲ】【
誰がそれを成したのか、それは今は考慮に値しない。重要なのはチャンスを得たという事。由奈が動く事によって再びアバドン達が吹き飛ばされた。核を叩く、最後のチャンスが生まれる。
「晴香さん!」
アバドンに呑み込まれるその寸前に晴香が生物兵器のみに行える
マザー=アバドンもまた自らの死が間近に迫っているのを感じて、フェイに向けて多数の肉塊を降らせる。それは面における制圧であり、天井その物が迫り来るそれであり回避は出来ない。
「これ以上、貴方を傷つかせてなるものか……!」【カバー】*78
「……っ!」
それをフェイは由奈に任せて、振り返らず両足のない身体を魔法で無理矢理飛翔させた。マザー=アバドンはその増殖スピードをさらに増して、既に核に再び肉塊を纏いつつあった。削っても削っても、奴はただ防御にリソースを割いてその身を守る。それだけで勝てるから。
此方に特攻を仕掛ける
マザー=アバドンは勝利を確信したかのような不快な呻き声をあげて
「……」
フェイはただその瞳を見開かせて、肉壁に迫る。肉壁越しではどうあがいても核にダメージは通らない。由奈や晴香がやったように肉壁を排除してから核を叩くという工程が必要不可欠であり、それを行う時間はない。
「やっぱり、彼女はおまえの天敵だったね」
だからこそ、フェイが狙ったのは肉壁に存在したある一点……
「これで、今度こそ終わり」
諸惑星の加護 | 覚醒篇(ウィッカ)出典 |
敵単体にダメージを与える。このカルトマジックは相性無し(万能・100%・相性無視と判断)や相性:禁(緊縛相性)以外の相性を自由に選択する事が出来る。威力はウィッカの技能値参照により中~大ダメージ程度(60~)。本来は覚醒篇内の物しか選択できない筈だが、この世界における属性は拡張されており、術者は制限がある物以外の既知の属性をこの魔法の相性として選択できる。電撃相性を選択 |
フェイの片手より迸る青白い雷光。自らの片腕すら内側から焼き尽くしながら、晴香のナイフを握り、核へと突き立てた
全てのMAGを籠めた電流がナイフ越しに核へと注がれていく。核に存在する穴より溢れる光は緑色の光よりフェイの雷光に塗り替えられ、つんざくようなマザー=アバドンの悲鳴が今は心地良い。
同時に崩壊するマザーの壁内、その中から取り込まれたと思われる仲間達の姿を薄れゆく意識で視認した。その中に傷のない由奈の姿があったのを最後に確認して
「よかった」
フェイは微笑んで、その意識を落とした。
・
・
・
ヨコハマレルムにおける一連の戦い。経過時間は合計で概ね1日。最早その原型を保っていないその街に朝日が昇っていた。結論から言えば、マザー=アバドンは完全に討滅された。
突入チームがマザー=アバドン内部に侵入後から約十数分後、突如としてマザー=アバドン本体がスライム状に崩壊。周囲に攻撃と侵攻を繰り返していたアグ=アバドンもまた消失して、その場に残った物は何もなし。戦いは此処に終結した。
\カカカッ/
Lv100 | 合一神 | オベロン=ティターニア |
「これにて一件落着、とそんな所かな。ま、事後処理の方が大変だろうがね」
そのヨコハマレルム全域を見渡すように遠眼鏡越しにそれを見つめていたのは
\カカカッ/
Lv91 | 妖精 | クーフーリン |
「しかし、あれだけで宜しかったのですか?」
オベロンの傍に控えていた彼の仲魔、クーフーリンが疑問を口にした。
「何がさ」
「介入自体はあの<神威>以外にも出来た筈。その気になれば彼を確保できていたかもしれません」
マザー=アバドンとの決戦の際に<神威>を発動させてピクシーを投入させたのはオベロンであり、その他も戦いの趨勢もオベロンは全て見ていた。もっとも重視していたのはフェイを追う事だったが
「あの戦いに介入するのは色々とリスクがあった。エデンに顔を覚えられたらマジで困るしな。折角ここまで隠密して裏方やってきたのにそれが全部ぱーになっちゃうのは避けたかったんだよ。本気でフェイが殺されそうになったりしたら、その時は迷わず介入したがね」
本音を言うならばオベロンはもっと介入したかった。オベロンの最終目的は飽く迄フェイの確保であり、
「それに私が此処に来た理由はそれじゃあない。フェイが居たのも俺にとっては偶然に過ぎないし、二兎追うものは一兎も得ずというこの国の言葉もある……その辺り介入しなかったからこそ目的の情報を入手できたのさ」
オベロンが確保したのは悪魔化ウィルス関連の情報記録及びその資料の大半、そして鴻上博士の研究資料だった。
「一番乗りで来れたからね。悪魔化ウィルスの情報はコピって、あの名前も呼びたくないあれの研究資料に関しては原本そのものを抜き取って、後の情報は大体消滅させた。色々と残しておくと厄介だったからね」
悪魔化ウィルスに関しては正直興味はないのでさっさと上に投げて、鴻上博士の研究資料をオベロンは確認した。
「少なくともあの子は
心底不快な表情を浮かべながらも頁を捲る。オベロンはフェイにあの場で遭遇してからずっとその動向と過去を追い続けてきた。それは偏にフェイという存在を探る為で、彼が過去に失ってしまった自分達の子供との同一存在であると確信しているが故の行動である。
「……これ以上は駄目だな。あの博士、無駄に情報を抹消している。もう死んでやがる癖に」
「今回も無駄骨ですか」
「いや、何となくフェイの正体は掴んだ。撤収するぞ」
「御意」
自身がフェイと出会って得た感覚と鴻上博士と共に居たという事実。これらからある程度ではあるがフェイの正体に当たりは付けられていた。とはいえそれ以上の情報を探るとなると流石に時間もかかり過ぎるし、今までのようなコソコソした動きが出来なくなる可能性もある。
故に最早情報収集をするメリットはなく、オベロンは時が来るまで闇に身を隠す事を選択した。この世界における戦いはもう間もなく確実に激化する。世界中の者達が今まで以上の戦いを繰り広げる事となり、高位のデビルサマナーであるフェイはその最前線にて戦う事となるだろう。時を待てば、いずれ介入の機会は必然的にやってくるとオベロンは判断した。
「時が来れば会いに行くぞ、フェイ。お前が何者なのか、問いただす為にな」
・後書き
くぅ~疲れました。これにてヨコハマレルム完結です!(エピローグはありますが戦いは本当に終わり)。色々他に書きたかった事もあったと思うんですが大体頭の中から吹っ飛んだので思い出したら適当に補完できる所は補完していこうかと思います。個人的には色々楽しくもあり、2万文字以上の戦闘を連続で書き続けるのは良い経験にもなったし、凡そ登場キャラ全員を活躍させられた感じはありますがアホ程疲れるし時間も掛かるので、次回からはその辺りの負担も踏まえて書いていきたいです。
<新城直衛&タケミカヅチ+葦名弦一郎>
色々考えた結果ちょっとしか出せなかったが、この人達居なかったら殲滅スピードが絶対的に足りてなかった。タケミカヅチはもうなんか魔改造させて頂きました。必殺の国防兵器はここまで滅茶苦茶でもええねん!(許可は取った)。新城さんは元キャラがデビサバなので取り敢えず憶測で先制発動スキルだけ使わせました。これでスキルなしの純サマナーだったり他にビルドが存在したりした場合、私は腹を斬らねばなりません(恒例行事)。弦ちゃんは取り敢えず独自解釈で槍状の矢を弓で発射とかいう荒業をやっている。多分ダークソウルでもやったんでしょう(SEKIROはない世界線)。
<プラズマソード先輩>
今回の戦いのMVP。ソルハカ出典・店売り・強い前列武器と良い事尽くめな武器。多分本来は色々な前列攻撃武器が使われている筈だが作者がそういう武器探すの大変になってやめてしまった。よってプラズマソードを持った集団がアバドンにチェストし続ける羽目に。
<久遠 フェイ>
戦い終わって大体身体もボロボロ、MAGもボロボロだったけど由奈が無事だったのでにっこりして気絶した。仲魔も酷使しすぎたので帰ったら何とか機嫌を取ろうと考えている。
<マザー=アバドン>
大体の説明は本編にある通りなので省略。裏話として石亜南は冥界門事態は結構前からコツコツ作っており、それにマザー=アバドンの防衛機構や基本的な仕組み等は記載していた。それが何処まで適応されたかは分からないが石亜南は地獄で専用の団扇振りながらマザー=アバドンの事、応援してたと思うよ多分。後、セプテントリオンみたいな設計に石亜南がしたので雑魚倒しても経験点は概ねカス。他のメンバーは平均的にレベル+1~2程度(アバドンとのレベル差によっては+3以上にも)上昇して、フェイのみ核を討ち取ったのでレベルに+4されている。
・今回のリザルト
ざっくりとした今回のリザルトです。戦いの流れを変えた影響でほびーさんに渡したリザルトとはちょっと差異があります。なので何か本編と違ったりしたら大体本編の方が正しいという事で御願いします。
・ロストキリギリス組
Lv84 <ウィッチ(♂)>久遠 フェイ
Lv88 <剣士>久遠 由奈
Lv75 <ガンスリンガー>久遠 エリヤ
Lv85 <巫女>神城 真澄
・シャドウワーカー
Lv79 <シャドウ使い>真田 明彦
Lv78 <シャドウ使い>桐条 美鶴
Lv77 <シャドウ使い>メティス
・悪対
Lv84 <警察官/シャドウ使い>劉鳳
Lv72 <警察官>斎藤 一
Lv72 <警察官>杉本 佐一
Lv70 <幻魔>シトナイ(アシリパさん。杉本の仲魔)
Lv70 <神獣>ホロケウ(杉本の仲魔)
ヒデオ&ウィル子は戦闘要員ではないのでレベルは除外(こちらでは表記せず)
・寄生ジョーカー組
Lv69 <ガンスリンガー>藤堂 晴香
Lv64 <ガンスリンガー>茂木 冴子
Lv67 <ガンスリンガー>葉山 弘司
・ヤタガラス組
Lv79 <サマナー>新城直衛
Lv81 <巫蠱衆>葦名弦一郎
・キリギリス組
Lv81 <魔術師>城鐘恵
Lv78 <導師>東堂葵
Lv77 <外道>武田赤音
Lv82 <八極拳士>ジョンス・リー
Lv76 <サムライ>月鍔 ギンコ
Lv75 <治癒士>ルシエル
Lv76 <ヤクザ>花山薫
Lv70 <ファイター>アナンタ
Lv68 <トリックスター>ベネット
成功した場合、相手に1回攻撃をする事が出来る。相手は回避や防御に威力分のペナルティ修正を受ける。威力は速剣技能値を参照
種族が生物兵器である対象或いは生物兵器が混じった存在に対して以下の効果を発揮する。
・このキャラクターが生物兵器に対して行う攻撃は全て対象の属性に関わらず弱点攻撃となる
・生物兵器に攻撃する場合、その攻撃をターン中1度だけ即時効果によって行う事が出来る。
・命中率、回避率、ダメージ、クリティカル率が大幅に上昇する。
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ヨコハマ事変 後日談
例によって事の顛末について話していこうと思う。まず僕がマザー=アバドンの核に雷撃ぶち込んだ後、マザー=アバドン本体が崩壊。アグ=アバドン達も自壊していってあのクソみたいな耐久戦は何とか終わったらしい。らしいというのは核をぶち抜いた後にMAG的にも精神的にも肉体的にも限界だった僕は即座にその場で死亡寸前で気絶。由奈やエリヤ達に回収された後に病院に即搬送。起きた時は事件が全部終わった後だったとそういう訳である。
諸々聞いた話によればマザー=アバドンの出現によって残存していた中華系マフィアもほぼ全滅。建物や龍脈なんかも滅茶苦茶になり、暫くは復興の為にヤタガラス等の組織が手を加え続ける事になっている。一部中華系マフィアの上層部は悪対預かりとなって、他の住民や攫われた漂流者に関しては政府預かりであれこれ進めていく筈だ。ちゃんとした生活に戻れるかどうかは彼ら自身にも掛かっているがその未来に関しては良い物であってほしい。
そしてこの戦いにおいてそれらより重要となっているのは悪魔化ウィルス・生物兵器に関する情報についてとなる。此方側に関しては悪対・ヤタガラスで基本的に預かる事となって、その協力者にシロエさん等の知識や伝手が多い面子が関わっていく予定だ。まぁこれは結構な長丁場にはなると思われる。その理由はマザーに関しては藤堂奈津子が独自で秘匿しながら作っていたという事もあって情報が少なく、作り方に関してはほぼほぼブラックボックスであるからだ。
解析にも時間は掛かるし、同様の物が作れると発覚したなら何らかの対抗策が講じなければならない。そのまま知識ごと封印して秘匿し続けるのも手だが、そもそも他の組織に情報拡散してるし、なら先んじて対抗策を考えた方がその場の対応が楽になるだろう。とはいえ、僕の手からは最早離れているので何かあった時に動けるように備えておくしか僕には出来ないが
そして、それらの方針を決める会議の中で生物兵器・悪魔化ウィルスに関する情報の外部への流出に関する議題も上げられた。石亜南は三業会の所属であるから三業会には当然情報は流出しているだろうし、ガイア再生機構の二人が居たのならばその情報もそれぞれ彼らの上とやらに渡されている事だろう。
情報が確実に渡っているのは上記の二組織。
結論から言えば何者かによって悪魔化ウィルス・生物兵器の情報がコピー。さらに一部の情報が削除及び隠蔽工作されていた。削除された情報はその場にあった資料から消去法で考えれば父……鴻上博士の物で間違いない。鴻上博士についてはまぁ、恨み持ってる人が多すぎるので正直其処から何処の誰が或いは組織が情報を奪取したのかとかは分からない。
強いて言うのであれば僕が感じた違和感の正体……あれは一種の懐かしさ、郷愁の念に近かった。鴻上博士とはそれなりに一緒に居たがそういう気持ちは0だし、じゃあ他の誰かというには僕は由奈と共に生き過ぎている。検討はつかないが酷く懐かしい気配を感じたのは違いなく、シロエさんや劉鳳さんといったメンバーには情報の火事場泥棒があった事と含めて既に報告済みだ。
この後のヨコハマレルムがどうなっていくか、其処に居て今回生き残った住民達と漂流者がどうしていくのか、悪魔化ウィルス・生物兵器の情報をヤタガラスや悪対がどのように扱うのかとか諸々の事後の事は基本丸投げでまた何かこっちに頼みたい事があれば介入する事にはなるだろうが僕が請け負った仕事に関してはこれにて一件落着。
入院してた面子以外のキリギリスのメンバーで打ち上げがあったり、悪対の面子が打ち上げに参加できずに過酷な事後処理に行かされたりもしたが色々ありつつも何とかなってほんとによかったと思う。
「こうして僕も手足が戻った事だしね」
ウリックとの戦闘による両足・片腕の切断と許容範囲外の召喚による肉体負荷。其処からマザー=アバドンと戦う為に再び召喚を維持しながらのバフ撒きと其処からの突入戦で僕の身体は概ねボロボロになっていた。其処から病衣にて<ヒールスポット>*1によって両足・片腕を培養&再接着し、肉体・臓器の消耗に関してもこれによって感知。僕が高レベルという事や悪魔混じりという事で自然治癒能力が高い事もあって肉体的には万全と言える状態にはなった。
MAGに関しても<妖精の祝福>*2で僕のMAGの自然回復量は通常のそれより格段に高く、起きてから数日後の今ではほぼほぼ問題ない範囲にまで回復している。
後数日間、検査やリハビリを熟した後に何事もなければ退院する事は決まっており、今は病院にある庭園のベンチで本を読みながら寛いでる。実質的に退院するまでが僕の休暇といってもいいだろうし、こうしてゆっくり過ごすのも久し振りで心地よかった。
でもって退院してからまずやるべき事は三業会という組織の情報を入手する事。今回のヨコハマレルムにおける主犯である石亜南、あれは生物兵器ではなく悪魔化ウィルスの実験と開発にのみ着目していた。マザーには興味があったが故にあんなことをしでかした訳だがあれも亜南にとってはイレギュラーな事態であり、本意ではなかったのだろう。そういう訳で何を目的として石亜南、三業会が悪魔化ウィルスを求めているのかそれを知りたかったのだ。
とはいえ三業会は根本的に秘密結社である為に其処まで情報が出回っておらず、伝手の情報屋に頼んでも空振り続き。ならそれと敵対しているという<封剣士>を頼ればいいのではないかと思い、知り合いを辿って聞いてみた所、ラスキン老が心当たりがあるとの事で紹介状を書いてくれるようだ。凄い助かる。
「最近需要増えてきたし、謝礼代わりに菓子折りの代わりに宝石折りみたいな感じで用意だけしておくか。どんな人でも絶対必要だしね。後は面子は僕とエリヤと真澄、三業会に色々因縁があるっていう劉鳳さんにも声掛けしておこっかな。後は……」
「わっ!」
「わぁっ!?……ってなんだ、晴香さんか。わざわざ隠密しながら脅かしてきたの……?」
「うん、病院でも結構周囲の警戒してたみたいだからちょっと気づかれないか試してみたくてね。後、前やられた時の仕返しかな。よいしょっと」
僕の隣に座ってきた彼女は今回の事件における依頼人でもあった藤堂晴香。彼女もまたスザク、マザーと藤堂奈津子、マザー=アバドンとの連戦によって消耗して僕よりもマシな状態ではあったが入院していた。
「……」
「じっと僕の顔見てどうしたの晴香さん」
「いや、こうしてまじまじ見るとお人形さんみたいだなって。それに背も小っちゃいし……フェイさ……フェイちゃんって本当に男の子なの?」
「ついに素でちゃん付けで呼び出したよこの人。男に決まってるじゃん」
「ふーん、じゃあ要素上げてみて」
出会い頭に何を無礼な事を言っているんだこの女は。僕の男要素なんて沢山あるに決まってるだろ。
「じゃあ容姿!」
「金髪ロング美少女のお人形さんみたいで可愛いね。ショタって言うかもうロリって感じ。150cmあるっていうのも嘘だよね、靴底で底上げしてるの分かってるから」
何で知ってるんだこの女……!
「こ、声……!ほら、こんなに低いよ!」
「声帯が女の子なんだよ。声低くして喋ってるつもりなんだろうけどそれでやっと中性的な声っていうのがもう駄目だよね」*3
「服装ーっ!」
「それこそ冗談で言ってるのかな?今は患者衣だけど大体いつも丈の短いスカートタイプの魔女っ娘じゃん。女として見ても華奢で可憐だから凄い似合ってるのにそれでよく自分が男だって主張する気になってるよね。段々腹が立ってきた」
「た、頼りがいがある?」
「まぁ……それは確かにあるかも。そこだけなんか見た目とのギャップが凄いから、納得しがたいけど」
「よ、よし……辛うじて僕が男であると証明できた!」
「強い女性も沢山いるから何も証明できてないね。私の勝ちって事でいいかな、フェイちゃん?」
「あーあー、聞こえないーっ!」
「んふふっ……ほんと、そういう所は見た目相応だね、貴方は」
その言葉を耳を塞いでやり過ごす。聞こえないったら聞こえない。そんな僕の様子を見て彼女は聞き分けのない妹のように呆れ気味に、何処かおかしそうに笑っていた。
「でも、良かったよ」
「何が?」
「大分肩の荷が下りたって顔してるからさ、晴香さん。決着もつけられたみたいだしね」
「……うん。理想的とは言えなかったけど、それでもあの人と戦ってケリはつけてきた」
<組織>の残党として中華系マフィアに流れていった藤堂奈津子を含む研究者達はその全員が死亡した。元より藤堂奈津子以外の研究者は彼女の傀儡といっても良い様子だったそうで悪魔化ウィルスの完成によって石亜南と藤堂奈津子の手によって排除させられていたらしい。そして藤堂奈津子自身がマザーと共に討たれた事によってこれで名実ともに<組織>は消滅と相成った。
「辛くはない?」
「正直言えば、ちょっと思う所はある。けど、それでも私には大輔や冴子ちゃん、弘司……他にも沢山の人達と一緒に今も生きてる。だからもう振り返る事はしない」
「そっか」
事件の後、少しだけ不安だったのが彼女の事だった。義理とは言え母親を討って何か抱え込んではないかだとか、<組織>を滅ぼして燃え尽き症候群になっていないかだとかその辺りの心配をしていた訳だがその様子を見る限り杞憂だったみたいでほっとしている。
「これからどうしていくつもりなの?」
「<組織>が滅んでも私が<組織>に所属していたという過去は消えないから引き続き冴子や弘司と一緒に大輔の下で悪対の協力者を続けるかな。勿論、大学も卒業して……全部が全部片付いたら警察官にでもなろうと思ってる」
「それも罪滅ぼし?」
「かもしれない。だけど……好きな人も其処に居るからその人を支えたいなって思ったの。フェイちゃんは将来の夢とかある?」
「将来の夢、かぁ」
正直あんまり考えたことはなかった。生まれてから此処に至るまで恐らくまだ10年経ったか経ってないか位で、その間の大半は由奈と過ごしている。由奈との生活は詰まる所、デビルバスターとしての活動の日々でもあり、基本的な戦闘の振る舞いは由奈から、カルトマジックのウィッカに関しては強くなるうちに自然と使えるようになって出力も増していった。
サマナーとしての才能もあったから悪魔やコンピューターに関する知識も覚えていって今では少なくとも一人前のサマナー或いはウォーロックにはなれているとは思う。だが逆を言えばそれ以外の何かを僕は持ち得ていなかった。
「強いて言うなら、お医者さんかな。ウィッチドクターの方々みたいに僕もウォーロックとして薬草術や電気信号流し込んでの除細動なんかは出来るからね。平時ならその方が色々役に立てるし、生計も安定しそうだしね」
「ウィッチじゃなくて?」
「周りの人達とアナライズが勝手にそう言ってるだけで僕はウォーロックなんだが???」
「ふーん(自分だけしかそう言ってないって事じゃん)」
「なんだが???」
「はいはい……じゃ、私はそろそろ行こうかな。今日退院なのよ」
晴香がベンチから立ち上がる。
「じゃあまた会う日までお別れかな……ああ、そうだ」
「今度は何よ」
「最後に聞きたい事あるんだけどいい?」
「手短になら良いわ」
そういえば、とあの事件以来晴香にもっとも聞きたい質問を投げかける
「東堂葵って君の兄「違う」凄い食い気味で否定するじゃん」
「あれは!あの転移ゴリラが勝手に言ってるだけだから!!!私は全面的に拒否してるから!!!」
「でも同じ“とうどう”だし「漢字が違います!生き別れの妹は居るけど兄は存在しません!」凄い食い気味で反論してくるじゃん」
「と!に!か!く!シスターでもブラザーでもない!」
「マイベストフレンドって事?」
「あ゛!?」
おもしろ。東堂が好みそうな見た目じゃないから単純に性根とか諸々気に入ったんだろうなんだと思うがまさか二人がそんな関係になるとは思っていなかった。晴香さんも多分背の高い男性とか好きそうだから性癖の一致とかもあるのかな?(偏見)。まぁでも多分この場合、ブラザーもフレンドも戦友的な意味合いが大きいんだろうけど。
「ま、それが聞きたかっただけだよ。またね、晴香。どうかお元気で」
「はぁ……うん、そっちも元気でね。今回は本当に有難う。何か困った事があったら助けに行くわ」
晴香はその場から立ち去り、庭園の外に居た彼女の仲間達の元へ向かっていった。彼女もまた過去を乗り越え、未来へと歩きだしている。その行く末がどうなるか僕には分からないが彼女達が進む道の先にどうか多くの幸福がある事を願っている。
そうして僕もまた庭園から立ち去り、ある病室を目指していた。病院を歩き、担当の医師の方に許可を取りながら病室の扉を指で叩く。
「どうぞ」
声に従い、部屋に入る。其処に居たのは僕と同様に患者衣を纏ってベッドに横たわる由奈の姿だった。
「まさか、心労が祟って無理した挙句入院する羽目になるなんてね」
「誰のせいでこうなったと思ってるんですか……もう……」
不満気にむっとしてる由奈に近寄り、椅子を持ってきてベッドの傍で座る。実の所、僕達の中で一番疲労が溜まっていたのは由奈だったのだ。道中におけるアンナとの戦闘もそうだが、一番はマザー=アバドンに到達するまでのアグ=アバドンを反撃で無理矢理抑え付けていたのが由奈の身体に酷く疲労を蓄積させるに至っていた。
幾ら理論上無限に反撃が重ねられるとは言え、それを熟すのは飽く迄有限の体力しか持ち得ない人間で
そんな状態でもなんとかマザー=アバドンとの戦闘は熟していた由奈だが戦闘後に僕が倒れ、全く目を覚まさない様子から寝れない夜が続いたらしい。入院はしていたようだが覚醒状態が持続して、僕の様子をずっと見ていたと聞いている。
エリヤや真澄が寝る様に言ってもまるで意にも返さず僕が覚醒するまでずっと祈る様に傍に居た彼女は僕が覚醒すると共に気絶。僕と立場を入れ替わる様にして数日間寝込んで今日やっと由奈は起きた。
「……貴方が起きた時は私、傍に居たんですけど」
「うん」
「私が起きた時は、貴方は傍に居てくれませんでしたね」
「いやその、丁度検査の時間で……それに起きるって分からなかったし」
「……」
「ご、ごめんね。埋め合わせもこうしてするし、ね……?あ、リンゴ食べる?」
「……食べます」
まだ不満気な由奈の機嫌を取りながら、持ってきた林檎を剥いてウサギカットにする。それを皿に並べて、爪楊枝でリンゴを刺して由奈の口へと運んだ。
「はい、あ~ん」
「……あーん」
「おいしい?」
「おいしい」
なんかすごい取り敢えず言ったみたいなおいしいが聞こえた。スニッカーズ食べさせても機嫌治らなそうなそんな感じの機嫌の悪さだ。まぁ切ったには切ったからそのまま雛鳥に餌を与えるが如く林檎をあげていって、そのままパクっと全部由奈は食べきってしまった。
「ご馳走様です……ねぇ、フェイ」
「何?」
「心配したんですからね、ほんとに」
「うん」
由奈が身を乗り出して、僕を抱き締める。返す様に抱擁しながらも微笑んで僕も言葉を返した。
「無理、しないでください。私、気が気じゃなくて」
「エリヤや由奈にも同じことは言われた。僕も進んでそういう事してる訳じゃないし、情勢が悪すぎるってのもやっぱあるからしないとは約束できない。今回もお互い死に掛けたのは事実だ」
「それはそうですが……なら最前線には行かないという手も、あるでしょう」
「最前線に出なくても僕はラーヴァナに、エリヤはウリックとアンナに狙われている。逃げれば、僕達はその分だけ弱くなるだろう。自衛の為にも僕達は戦い続けなければならない。少なくとも情勢が落ち着くまではね。君が僕達から離脱するという手もあるけど……君はそれを選べないでしょ?」
「出来る訳がない。それで、貴方を置いていくのなら私は死を選ぶ」
由奈の抱擁が獲物を鷲掴むような物へと変わる。明確に力を込めたそれは僕の身体を強く圧迫して、骨は軋んで由奈の爪は患者衣や肌を突き破って、流血さえ発生させた。でもそれは由奈の僕に対する依存、不安の現れであって僕を何か害そうとする為のものじゃない。
根本的に
「ならこれからも一緒に戦い続けよう。隣で常に戦えるとは限らないけど……それでも手は離さないように。リスクを背負うなら……傷つくなら一緒にだ」
少しだけ僕を険しく見上げていた瞳が和らぐ。その中にあったあまりに強い執着と依存、不安も薄くなって、その抱擁も縋りつくようなものへと変わった。
「……置いていかないでくださいね」
「君が僕を置いていかない限り、大丈夫さ」
由奈の額に自分の額を押し付けて、そう呟いた。
「身体、傷つけちゃってすみません。手、放しますね」
「ああいや、そのまま掴んでて……んしょっと」
靴を脱いで、その後に抱擁したまま軽やかに浮き上がった僕の身体はそのまま由奈の身体に収まる様にしてベッドに横たわる。
「え゛っ、な、なにを……!?」
「だから埋め合わせだって。僕は今日から数日間、君と大体常に一緒に居る訳ですよ。まぁ検査とかリハビリの時は無理かもだけど」
「そ、その担当医の方に許可は……?」
「何とか無理言って取って貰った。功労者を無碍にはできないって具合にね、後は僕がいざという時治療も出来るってのも大きいかな。それに僕の身体ちっちゃいから、一人用のベッドでも君の身体にすっぽり収まって寝れるさ」
「で、でも……!」
「それともベッドから出た方が「そうはいってないです!」いてぇいてぇ息もできねぇ」
推定180cm後半に全力でぎゅっと抑え込まれる推定150cm(実際は140cm半ばかそれ未満)。圧迫はされてないが全身ががっちり抱き着かれてるので身動きが取れない。
「ちょ、ちょっと息が」
「あっごめんなさい…!いや、その……ちゃんとそういう事するなら事前に言ってください。嬉しいですけど、びっくりしますから」
「こんどからそうする」
「……」
「由奈?」
「凄く嬉しいですけど……数日間密着して、理性保てる自信、私はないですよ?」
「それは何とか保ってもらわなきゃ困るなぁ。一応個室だけどお医者さんもいるし、追い出されるような事は出来ない」
僕の身体に触れて由奈の身体が時折震える。頬の赤みが何を意味するかはまぁ僕も考えないようにしながら由奈の胸の中から上目遣いで由奈を見る。
「じ、じゃあっ……肌を重ねる位ならオッケーですよね?」
「まぁ今も抱き着いてる訳だし実質重ねてはいるけど……ああ、そう言う事ね」
僕の身体を下に、由奈の身体がその上に覆い被さる。えっちな事は飽く迄しないが、多分唇が偶然?重なり合う?事は同じベッドで寝てれば有り得なくもなくもなくもないので問題はない筈。
そうして偶然にもこのような体勢になってしまった僕達は手でその様子を隠しながら密着しようとし「待て真澄!今は入るな!」
ようとした所で廊下より響き渡ったのは静止を呼びかけるエリヤの叫び声。それと同時にノックもなしに扉は開け放たれた。
「お見舞いにきてやったわよ、久遠 由奈!でもあんたが寝てる間にフェイは回復して退院するでしょう!その間、フェイは私が独り占めしてやるわ!ざまぁ……み……ろ……?」
「「あ゛っ」」
僕と由奈の姿を見て、真澄の口が止まりその身体が震動を始める。
「ふぇい、そのたいせぃ、きふしようとして……ごがががががっ」
【絶望状態】【WEEK】【TECHNICAL】【CRITICAL】
「衛生兵ーッ!」
再び響き渡ったエリヤの叫び声。この後、
・キャラ紹介
<藤堂 晴香>
ヨコハマ事変(ヨコハマレルム)における実質的な主人公。
フェイとの最後の会話を経た後に退院。悪対の協力者兼キリギリスのデビルバスターとして今後も活動する予定。大学卒業したら警察に入って悪対に入ろうと考えてる。でもその職場絶対君が考えてるより地獄だよ。ちなみに作者は晴香×大輔推しです(そもそも寄生ジョーカーに恋愛描写はないだろ)
<久遠 フェイ>
やっと両足・片腕を取り戻せたロスキリ本編の主人公。エグゾディアになったりはしない。
フェイ本人は女装させられてる事は特に嫌に感じていない。由奈やら真澄やらから服選んで貰えるし、着せて貰えるし、女装すると二人が喜んでくれるからフェイ的にも嬉しいと思っている。それはそれとして、男として接してほしいという無理難題な願いを持っている。その容姿は完全に魔女っ娘ロリであった。由奈とは大体昔からあんな感じでアライメントの差によって衝突が起きたりしている。大体は由奈が折れてるがお互いに譲歩しあって支え合って或いは依存しあっている関係。退院後に真澄とエリヤ、そして確定された脳破壊を背負った劉鳳さんと共に漫画好きさんへと会いに行ったとさ。
<久遠 由奈>
実は一番疲労という意味合いでは蓄積してた人。漫画好きさんもクイッカ反撃連打してた時の肉体の疲労度ヤバそう(でも他で無茶しまくってるからあんまり目立たなそう)。フェイに対する感情は仮にフェイが死んだら即座に後を追う程度(生きる意味を消失したので仇討ちする気も起きない)の重さ。その為、人一倍執着や依存も強いが、他にフェイに対する罪悪感なんかも抱えてるので感情が常に複雑骨折している。ちなみに真澄が倒れた時は介抱を手伝わずほくそ笑んでいた。病人だからね仕方ないね。
<神城 真澄>
フェイの事をどうにか引き込もうとしているがフェイの「由奈がいるんで」で全部断られて度々脳破壊もされてる人。他にも色々事情があって今はフェイの傍に居る。昔は殺し合う位には由奈と仲が悪かったが、フェイが身体を張ってライバル関係位にはなっている。余談だがくぅんさん然り東郷さん然りたきな然り、ヤタガラスに所属或いは近いメンバーは何かと脳破壊されてる気がする。
<久遠 エリヤ>
幻視で重なり合う二人が見えたので止めようとしたが間に合わなかった人。アンナの事で依然悩み中。後は最近フェイを見てドギマギする事が多くなってきた。何者かに性癖を侵略されてるぞ。
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邪教の館と二つの選択肢
まだまだ僕の知らない事は一杯あるんだなぁと最近痛感させられた。
あれから無事に退院した僕は由奈の面倒見たり、真澄の機嫌取ったりしていたのだがその最中に行われたのがラスキン老からの紹介によって行われた<漫画好き>さん及び封剣士の生き残りである衛藤可奈美さん一行との会合である。此方の面子は退院こそしたがまだ本調子ではない由奈を除くフルメンバー、そして悪対から劉鳳さんが参加。
劉鳳さんに関しては衛藤さんと知り合いだったようだが、彼女の
それはともかく、衛藤さんより三業会及び封剣士の説明を受けた訳だが厄ネタの極み過ぎて何度か宇宙猫になって放心してしまった。封剣士に関しても世界の秩序を守る為にあれこれしている中国発祥の秘密結社、位しか考えていなかった訳だがそれが世界をショッカーのように牛耳っていただとか、天尊流星とかいう魔剣で人類洗脳してただとか、まぁまぁ聞きたくない情報ばかりが出てくる始末で非常に混乱した。
まぁ秘密結社で世界牛耳るのに最終的にマンパワーが足りなくなったり、天尊流星がもうこいつら無理!!!ってなって現実的なプランで何とか人類統治しようとしたりでぐだぐだしてる所は中国っぽくてちょっとだけ安心した。大嘘、気休めにもなってない。
という感じで情報を受け取り、なんかヤクザの皆さんの襲撃とかありつつも会合は終了した。あんまりにもヤバい情報だったので宝石は気持ち多めに謝礼として送っておいた。封剣士にはまぁー……滅んでるし、いいかともなるが問題は三業会の方である。
三業会の最終目的が現状も一定数を下回った人類の支配と仮定した場合、石亜南が行っていた悪魔化ウィルスの開発はややミスマッチに感じた。衛藤さんが言うには悪魔混じりや悪魔人間はペルソナ使い等ではないが抵抗力は持っている。それなのに人間を悪魔にする何かを求めていたという事は何かしらそれを行うメリットがなければ有り得ない話だ。
天尊流星は実は悪魔も支配できるーだとかそういう進化を遂げている或いは悪魔そのものを兵器として運用できる何かしらの別の手段があるのか。色々憶測は浮かぶもののやはり決定的な物はない。持ち帰った情報は悪対等で精査されているだろうが石亜南も其処らへんの情報を残している筈もなく、やはり今後も三業会を追い続けて情報を調べ続けるしかないだろう。
方針としては三業会系の依頼や情報を見かけたら率先して対処し、場合によっては情報共有を行う位だろう。ともあれ、三業会の事もあって戦う理由も増えてしまった。頑張らないと(使命感)
そんな感じで方針も決まった所で僕達も活動を再開した訳である。世間では聖華学園にて多数のデビルバスター達と何かレクリエーション?をやっているようだが、現在僕とエリヤはある場所を訪れていた。
「ようこそ、邪教の館へ」
邪教の館。悪魔を合体する為に各地に設置された施設であり、僕のようなデビルサマナーにとってはなくてはならない場所である。その主である全身を包む黒衣を纏った如何にも黒魔導士ですといった風貌の男が僕達を出迎えた。
\カカカッ/
悪魔合体士 | ブラックカオス |
「お前が来るのも久し振りだな、フェイ……そっちは最近お前が連れるようになったという新顔か」
「色々ヨコハマであったからね。で、こっちが」
「久遠 エリヤだ、宜しく頼む。邪教の館ってこんな禍々しいのか?」
エリヤが部屋の周囲を見ては、若干顔を青くしていた。合体装置こそはあるものの部屋の証明は非常に暗く、至る所に魔術的な文様が見受けられるその場所は黒いMAGが瘴気のように漂っている。悪魔こそ徘徊してはいないもののグロテスクな使い魔やらホムンクルス、ゴーレムが行き来もするその場所はお化け屋敷通り越してアンデッドが徘徊する異界にも近しい。
「ブラックカオスの所はちょっと特殊だからね。彼は黒魔術……石亜南が使っていた物と同質のカルトマジックを主軸に合体やるから、色々と下準備が必要なんだよ」
「そ、そうか。なら仕方ないな」
「まぁ半分位は趣味らしいんだけどね」
「おい」
声を荒げるエリヤに対して怪しげな笑いをブラックカオスは返す。
「さて、事前に用件は聞いている。調整を行う悪魔は此方で預かろう」
「宜しくね。テスカトリポカにも了解は取ってあるから、やり方は概ねこっちの注文通りで良いと思う。それと造魔に関してだけど」
「……進捗度合いは30%といった所だな。注文が注文だ。時間が掛かる」
「早めにと言いたいとこだけど……付け焼刃じゃ流石に意味ないね。進捗度合い見てまた来るよ」
「他に用件は?」
「仲魔に関してはちょっと現状が限界。テスカトリポカの調整に集中してほしいかな」
「承知した。では掛けて待っていてくれ。何かあれば使い魔が呼ぶ」
COMPより送り出したテスカトリポカを専用の装置に格納したブラックカオスはそのまま会話を終えて、真っ暗に包まれた奥の部屋へと入っていきその扉を閉じる。エリヤはと言えば訳の分からない表情で僕達の会話を見ていた。
「なぁ、さっきの……」
「まぁまだ知る必要はないよ。ただ、今後の為の布石といった所かな」
「俺のあの装備もその為、って事か。随分金を掛けていたようだが」
「明確に来ることが分かってる敵に対して対策講じない訳にはいかないのさ。死んだらどの道終わりなんだからね」
ヨコハマレルムの一件でエリヤの身柄を狙うウリックとアンナの二人と僕達は相対した。あの二人は戦闘は避けられず、その上非常に手強い。彼らを撃退できたのは本当に運が良かっただけで、僕達が全滅或いは欠けていてもおかしくない敵だった。次はさらに強くなっている事を考えると、ラーヴァナも含めて対抗策を用意しておくのは急務と言えた。
対ラーヴァナを想定したある造魔の作成。そして、エリヤ用の装備の購入とそれの改造。前者はブラックカオスに依頼し、後者はエルネスティさんに改造と調整を頼んである。時間はかかる為、現在は使う事は出来ないが完成すれば勝率は五分程度に上がるだろう。まぁ暫く完成しないと思うから、襲撃あったらまた全力で撃退するか隙見て倒すしかない。もっと地力が欲しいもんである。
「テスカトリポカのあれこれもその一環な訳だけど、終わるのに時間も掛かる。ちょっと話をしておこうか。此処の事とか気になるでしょ?」
「他の邪教の館とは勝手が違うというのは何となく察してるが確かに気になると言えば気になるな」
館に存在するソファーに互いに腰掛けて、時間つぶし用にブラックカオスが用意していた端末に手を伸ばす。
「まず僕の仲魔の大半……というか現状はほぼ全部かな。此処で合体して出来た悪魔なんだよね」
ラクシュミ、バロン、フレスベルグetc。最近作ったカルティケーヤやテスカトリポカもこの邪教の館にて合体されて作られた存在であり、此処でしか作れない悪魔達でもあった。
「此処で行える合体は二身合体に三身合体。御魂合体とかもできなくて、単純にできるのはその二種のみだ」
「剣合体やらは出来ないという事か。他の邪教の館は合体法則にバージョン*1があったり、使用者に応じて合体法則が変わる*2なんて事は掲示板で前見たぞ」
「そう、その個性って奴がここの最大の特色だね。それにリソース全振りしてるって言っても良い」
悪魔の多様性は凄まじく、それはこの終末のような1年間の戦いによってさらに拡張されたと言っても良い。それは単純にGPの上昇によって今まで未確認だった高レベルの悪魔達が確認されたというのもあるだろうし、魔界や地上の変化に応じて変わっていった部分もあるのだろう。
悪魔召喚師達は悪魔の進化に応じて、自らも最適化させていき、多くの者は自らの個性と呼べるべき物を見つけてはそれに特化した構成にしている。その上で別方向の特化した悪魔を増やしていく事で敵への対応札を増やしていく。特化と汎用性を織り交ぜて、自分だけのスタイルを確立させるのが悪魔召喚師と言えるだろう。
邪教の館も悪魔召喚師達のそれに準ずるように、その多くが自らの特色を見定めて変わっていった。ある所は合体事故が起きやすく、またある所は剣合体にのみ特化している場所もある。そして、この場所における特色と呼べるのが
「ここの合体はさ、合体におけるスキルの継承が発生しないんだよ。出来ないと言っても良い」
「は?それ、悪魔合体のメリット大分潰してないか」
「うん、潰してる。御魂合体が出来ないっていうのもそういう事。その代わり、此処では本来そのレベルで覚えない筈のスキルを合体先の悪魔が覚えている事が多いんだ」
同じ名を持つ悪魔でも場所や状況によってレベル・スキル・耐性が変動するのは有名な話だ。基本的な悪魔の格と呼べるものから多くの悪魔は一定のレベルから極端に逸脱した存在自体は少ないが、そのスキル内容は大きく変わる。
ラクシュミで言うのであればその美しい女神としての逸話から回復や魅了系を持っている事が多い。だがそれ以外の要素はかなり変動する。衝撃に弱い者も居れば、通常耐性の物もいる。氷結を吸収してブフ系を放つ者も居れば、破魔を反射してハマ系を放つ者もいる。
環境が変われば人が変わる様に、悪魔もまた情報生命体として変質する。それら単独の悪魔が持つ可能性に着目したブラックカオスは合体方式を研究し、敢えて合体前の悪魔の情報を全てリソースとして還元する事で合体先の悪魔の可能性を大きく広げる技法を作り出す事に成功していた。
この方法自体は既に多くの邪教の館において拡散済みであり、場所によっては同様の合体も行えるだろう。ただ、その本家でありそれのみに特化しているこの場所はその合体をするには間違いなく一番最適な場所だった。
「合体した悪魔も御魂合体だったりができなくなる訳じゃないから、後付けしたいスキルがあればまた別の邪教の館でやればいいしね。此処は合体方式をそれに特化させる事で効果も上げる事ができるからそうしてるし、客もブラックカオスが選んでる」
「成程な。その上で会員制だから、実質貸し切りみたいになってる訳か」
ブラックカオスは悪魔合体士ではあるが、同時に黒魔術の研究者としての側面も大きい人物だった。経歴なんかは知らないけど悪魔合体も研究の為にやっているらしく、あまり多人数の相手はしたくないとの事だった。会員になるのも紹介が必要だし、ブラックカオスに会って認められる必要もある。その分、色々と悪魔合体以外にも黒魔術で色々してくれる事はあるから一概にそれが良いだとか悪いだとかは言えないけど。今回のテスカトリポカのあれこれもヨコハマレルムにおける石亜南に関する情報共有が条件だったしね。
「でもって、その上で僕の仲魔を確認していこうか。此処で作った悪魔として例示としてね」
女神 | ラクシュミ | Lv80 | 破魔反射・衝撃無効・バッドステータス無効*3 |
【習得スキル】 ラスタキャンディ*4・招来の舞踏*5・蓮華の舞*6・メギドラオン*7 天上の舞*8・テトラカーン*9・物理耐性*10・衝撃無効*11 【捜査用・思い出スキル】 【思念融合】 1.状態異常にする確率が20%増加。最大HPが20%増加。*15 |
凶鳥 | フレスベルグ | Lv79 | 火炎無効。氷結吸収。破魔・呪殺・緊縛・一部の物理に強い。*16 |
【習得スキル】 色即是空*17・マハブフダイン*18・ガルダイン*19・道具の知恵・癒*20 北端の凍てつく風*21・準氷結貫通*22・火炎無効*23・氷結高揚*24 【捜査用・思い出スキル】 虚空の眼界*25 |
神獣 | バロン | Lv78 | 物理耐性・破魔・呪殺無効。全ステータス異常無効(BS無効)*26 |
【習得スキル】 ジオダイン*27・ふういんのうた*28・虚空爪激*29・テトラカーン*30 メディアラハン*31・勇奮の舞*32・食いしばり*33・道具の知恵・癒*34 【捜査用・思い出スキル】 |
「まず基本の3体ね。バロンもラクシュミもBSは効かないし、奇襲はフレスベルグで大体防げるからね。僕も含めて攻め手が魔法に偏ってるのが弱点だけど由奈とか真澄とか居れば問題ないし」
「この3体の特技の多くはお前の説明した通り、それぞれの悪魔が覚えている筈のスキルなんだな……なんかラクシュミのスキル変わってないか?蓮華の華とか見たことないんだが」
「合体する際にブラックカオスと相談して幾らか固定。後はランダムにして、駄目な部分はまた御魂合体で調整するって形だね。ラクシュミに関しては……なんかあのレイドバトルでラクシュミ殺し続けたらなんか色々増えた。じゃあ、次」
国津神 | アラハバキ | Lv79 | 神経・精神無効。破魔・呪殺・魔力反射*39 |
【習得スキル】 メギドラオン*40・徹し*41・マカラカーン*42・ランダマイザ*43 サマリカーム*44・大活脈*45・物理耐性*46・精神無効*47 【捜査用・思い出スキル】 |
鬼女 | ランダ | Lv74 | 物理・銃・火炎反射。地変・電撃・即死無効。バットステータスに強い*51 |
【習得スキル】 いかく*52・ブフダイン*53・ひっかき*54・ディアジャマ*55 デカジャ*56・ランダマイザ*57・食いしばり*58・電撃無効*59 【捜査用・思い出スキル】 |
邪神 | マダ | Lv76 | 火炎吸収、破魔・呪殺無効。精神・神経・魔力耐性*63 |
【習得スキル】 |
「この3体が所謂耐久寄りの面子かな。ランダは耐性と食いしばりで、マダとアラハバキは素の耐久って所だね」
「堅いのもあるが全員ランダマイザ持ちだな。それだけ補助・妨害が重要という事でもあるが」
「全員覚えてるのは偶然だけどやっぱ全能力上昇・減少はこのレベル帯だとほぼ必須って感じするね。じゃあ次」
邪龍 | セト | Lv81 | 銃・投具・氷結・電撃に強く、破魔・呪殺・精神・神経・魔力無効*72 |
【習得スキル】 ウアス*73・ヤブサメショット*74・石化ブレス*75・雄叫び*76 外法のいざない*77・龍の反応*78・魔力無効*79・道具の知恵・癒*80 【捜査用・思い出スキル】 |
破壊神 | カルティケーヤ | Lv78 | 銃反射。物理・破魔無効。呪殺耐性*83 |
【習得スキル】 千列突き*84・天扇弓*85・ラスタキャンディ*86・ランダマイザ*87 韋駄天*88・天覇の将*89・スピードスター*90・銃反射*91 【捜査用・思い出スキル】 獰猛*92 |
天使 | ケルプ | Lv80 | 魔法に特に強い。物理無効・銃撃耐性*93 |
【習得スキル】 |
「でもってこっちが機動……というか飛行系だね。フレスベルグなんかもそうだけど結構速いよ。ケルプは速度あんまりだけどさ」
「こいつらは素で強いからいいと思うんだが、飛行系に特化させるのってそんな需要あるのか?」
「僕も<飛翔>で飛べるから何かと動き合わせられるんだよね。何だかんだ空に逃げれるっていうのは強いよ。高レベルになるほど通用しなくなってくる所もあるけど何かと便利。でもって後はー」
「残りが確かテスカトリポカとスレイプニルだったな」
「スレイプニルの方はぶっちゃけ探索魔法一通り揃えてるだけで*102戦闘向きじゃないし、テスカトリポカは……あ、丁度来たみたい」
そんなこんなで話している途中にブラックカオスが奥の部屋から帰ってきた。その傍らにテスカトリポカを格納している専用のCOMPが存在していた。
「結構早かったね。もっと時間掛かると思ってたのに」
「此方からすべき事も左程多くはなかったからな……間が悪かったか?」
「いや、いいよ。確認するね」
「ああ」
ブラックカオスよりテスカトリポカ(入りのCOMP)を受け取り、その状態を確認する。概ね此方の要望通りの状態になっており、安定もしている。
「問題なさそうだから、これで受け取り完了って事で」
「承知した。それとくれぐれもだが……」
「分かってる。間違って召喚しないようにロックは掛けておく」
「ならば良い。それは最早
「りょーかい。エリヤ、いこっか」
「ああ」
ブラックカオス曰く次の客がもう待っているとの事だったので用事を済ませた僕達はそのまま邪教の館を後にした。他にこの近辺で行う事もなく、消耗品に関しても此処に来る前に補充は済ませてある。その補充に使った金銭については頭が痛いものの、僕達はそのまま帰路につこうとして
「エリヤ」
「なん、って……おい、急に手を引っ張るな」
誰も居ないこじんまりした公園のベンチに座って、エリヤもまた座らせるように手を引っ張る。急に引っ張ったせいかわたわたとベンチに尻餅をついて、むっとして怪訝そうな表情をするエリヤを後目に夕暮れで赤く染まった空を眺めていた。
「もうそのまま今日は帰るんじゃなかったのか?」
「そのつもりだったんだけど……一つ聞いておきたい事があってね。アンナとウリックの事」
「……」
「厳密に言えば彼女達に対する君の心境って所かな?」
僕のその質問に対してエリヤは口を閉ざした。ヨコハマレルムにおける戦いから今に至るまでエリヤからアンナとウリックの事を自主的に口に出す事はなかった。沈黙を続けたと言ってもいい。
アンナと衝突した後もエリヤはヨコハマにて冷静に戦い続けた。それは彼女の心が強かった事も指し示すが同時に戦いに集中しなければその事を思い出してしまうから、何も言えなかったのだろう。此方があの二人について言及をしだせば応答はするものの、その声に微かな迷いと恐怖が存在していた。
「……俺とお前の契約内容、覚えてるか?」
「アンナを組織から取り戻したい、だったね」
「ああ……俺はさ、あの子の為なら死んでもいいってそう思ってたんだ」
項垂れながらエリヤは答えた。その声には失意と悲嘆と微かな絶望が込められている。
「でも、あの子はもう手遅れだと、俺ではもうどうしようもできないと言った。例え俺の命を使おうと、あの子とウリックの未来は
「現代の医療ではどうしようもないというのは正しいだろうね」
現代の医療の発展はあまりに早い。かつて不治の病と言われた幾多の病も幾多の研究者・医者の手によって治療可能とされ、それは間違いなく多くの人々の命を救っている。だがそれも全てではなく、アンナに施された改造とその状態を鑑みるに……現代の医療技術ではその命を伸ばす事も難しいというのは僕でも理解できたし、知り合いに聞いても不可能だと断言された。
アンナだけならいざ知らず、ウリックでさえエリヤの命を捧げなければ処置は出来ないと言っていた。エデンの技術力でもそれしかないのか、或いはエデンがそういう風にアンナを改造したのかその是非は分からないが手段が一つに限られている可能性は極めて高い。
「フェイ、お願いだ。教えてくれ……俺はどうしたらいい?」
「その答えを僕には出せない事は君自身も分かってると思うけど」
「それでも、頼む」
縋る様に祈る様に、エリヤは僕の身体にしがみついた。自分の命を使う事でしか大切な人を救えない。だけど、その人を自らの命を捧げて救ったとしても組織の構成員として動き続けるのは変わらない。
それが少しでもマシになる可能性はある。エデンもまたウリックとアンナという人材を使い潰していくような組織には見えない。ただ彼らの生きる先に確かな幸福があるかもまた、分からない。
「エリヤはさ、生きたくないの?アンナの為とかそういうの云々の前にさ」
「それは……」
「僕は君に生きていてほしいよ。これまで一緒に過ごして、戦ってきた仲間として」
僕にエリヤの心情を推し量る事は出来ない。彼女の過去もその辛さも聞いただけで、ウリックとアンナとどういう風に過ごして生きてきたか、彼女達に向けるその感情がどれ程の重さなのかは分からない。
分かるのはエリヤが此処に来てから過ごしてきた事だけ。エリヤが元は男で、カッコいい銃器やロボットとか所謂男の浪漫が好きだったり、意外と服や化粧にも興味がある事だったりだとか、強がってるけど寂しがり屋な所だったりとか仲間として戦友として共に過ごしてきた微かな時間、だけど僕にとってはかけがえのない時間だ。
ぎゅっとエリヤの手を両手で包んで、僕は彼女の瞳と向かい合う様に顔を向けた。
「彼女達と一緒に過ごしてきた時間に比べれば、ほんのちょっぴりかもしれないけど君と僕は一緒に戦って、生きてきた。君の気持ちは分からないけど、僕にとっては君は由奈と真澄と同じように大切な人だ。少なくとも、死んでほしくはない。生きていてほしいって願ってる」
「……俺だって、生きたいさ。お前達と過ごした日々は確かに楽しかったし、幸せだったから」
「よかった。てっきり其処に不満があったのかと思ったから」
「此処まであれこれしてもらって、そう思う程に俺は恩知らずじゃない。お前には感謝してるし、大切に思ってるよ」
「……えへへっ」
少し気恥ずかしくなって頬を掻いた。エリヤの顔色も少しだけ明るくなっていた。
「なら僕からの意見はこうだ。先程の僕の言葉は前提として、それ以外でも君を戦力として失うのは惜しいし、彼らに君を捧げるという事は同時に彼らの
「な、ら……俺はあの、二人を……」
「
「……」
ヨコハマにおけるアンナとエリヤとの衝突とその中で得た情報を以って、道は二つしか用意されていない。死ぬか、殺すかというどうしようもない二択。それをエリヤは選ばなければならない。僕がそれを誘導したり、選ばせたりしてはいけないんだ。
「俺は……あの子達にも生きてほしい。だけど、あそこに居てほしくはない。俺も生きたいけど、
エリヤが選んだのは黒でも白でもない灰色。確実に必要な自分の命を人質に取って、エデンからアンナとウリックを離脱させるという選択肢だった。離脱させるまでは説得次第だが上手くいくだろう。問題はその後だ。
現代の医療技術ではアンナの治療は不可能であり、此方の伝手や魔界医師の力を用いたとしても可能性が生じるか生じないかの段階だろう。エリヤの命を犠牲にすればそれから得られたデータと肉体部位によってアンナの延命に成功する可能性は微かにある。
だがそれはエデンに居れば確実に成功するであろう延命を、現代の医療による確率の低い博打にて行うという事でもあり、エリヤもアンナも死んでしまう可能性は非常に高い。故に説得にすらまともに応じない可能性もある。
「それはあの二人にとって自殺にも等しい答えだというのは分かっているね?」
「……ああ。それでもあの子達がこれ以上誰かを傷つけて、自分も傷ついて生きていくのは俺はもう耐えられない。決裂して殺し合う事になったら、戦うさ。」
「うん……分かった。生きているなら何とかしてやりたい、取り戻したいと言ったのは君自身だ。僕と君に交わされた契約に伴い、君の選択を僕は尊重するよ。アンナが此方側につくと言った場合、肉体を延命する手段は全力で探す。例え、その果てに君が死ぬとしても」
「すまない、ほんとうに」
「そこはありがとうで良いよ。それと……」
エリヤの手を取って、その手首に通すようにしてバングルを通す。魔法を通して防具並みに強化された銀で出来たそれの中央に明るい青緑のターコイズが複数付けられている。
「はい。<ターコイズ>*103のバングルだよ。御守り代わりにつけておいてね。一応自作で防具並みに硬いと思うから壊れる事は早々ないと思う」
「……いいのか?本来なら俺なんかじゃなくて、他の二人にやるべきもんだろ。これは」
「他の二人も宝石自体は幾つか9個持ってるし、君には一番必要でしょ。まじないも掛けておいたからいざという時に君の事を助けてくれる筈だよ」
「……そうか。ありがとう」
「うん、どういたしまして」
色々と急に話過ぎて疲れてしまったのか、頬を赤くしたエリヤがぼとりと僕の太腿に倒れ込んだ。
「エリヤ?」
「もし全部終わって、その時俺が生きてたら……俺の全部、お前にやるよ」
「それはまた全部終わった時に言ってよ。君には君の人生があるんだから」
「じゃあ、取り敢えず今はそういう事にしておいて、くれ……俺はちょっと疲れた……」
それだけ言い残して彼女は眠ってしまった。他にも聞きたい事はあったのだが、致し方ないだろう。縋りつくように眠るエリヤの頭や頬を撫でながら、会話の間にCOMPに送信されてきたメールの確認を行う。
「真澄から……いや、そうか。ついに見つかったんだ」
その中の暗号化されたメールの一つを確認すると、ある一文に僕の目が奪われた。
―――天魔衆の本拠地が見つかった。
・キャラ紹介
<ブラックカオス>
ごじゃまぜ世界のインフレに対応する為に悪魔合体自体の多様性を模索して、悪魔の強化の幅を増やすのではなく、悪魔単体の多様性を重視して単体の潜在能力を引き出すという形で悪魔合体士兼魔道師。見た目は邪教の館の主ぽかったら何でも良かったが丁度遊戯王が目に入ったのでマジシャン・オブ・ブラックカオス と大体似たような見た目となって、名前もそれに準じた。
<久遠 エリヤ>
アンナを救いたい。だけど死にたくはないし、エデンにも居てほしくないという諸々がごちゃまぜになって精神的に不安定な状態にあったが今回のフェイとの会話である程度吹っ切れる事が出来た。代わりにフェイへの重力も増幅した。多分大体堕ちてる。
<久遠 フェイ>
親しくなった人間には大体ああいう動きをするタイプのウィッチ(♂)。
根っからの奉仕体質なので気に入った人間にはとことん尽くすし、それが進むと歪な共依存関係となってしまう。というか由奈とはそうなっている。
今回流れでフェイの仲魔データを公開したので下の方にフェイのデータも公開しておきます。機会があれば好きに使ってあげてください。
lv84 半妖精/サマナー<久遠 フェイ> 【Light/Neutral】
シリーズポジション:セクター12における実験体(デスピリア)
・武器
剣:アセイミイ・ナイフ型武器COMP
・防具
ヘルメット:双鬼冠※デビサマ:(62/12。魔性防具。知+1・運+2)
アーマー:スプリガンベスト※デビサマ(60/2。技反射。耐+2・速+2)
グローブ:Aマックスアーム※デビサマ(24/10。全対応。魔+2)
ブーツ:ミラージュブーツ※ソルハカⅠ(26/40。ノーマル耐性。速+2)
・アクセサリー
鋼靭の闘魂※真4F(MP上昇。最大HP+30%<三分の活泉>)
(場合によっては自由選択。)
技能振り:ウィッカ60以上・魔法操作3etc
・耐性
剣攻・投具・万能・電撃・衝撃・念動・精神・神経(50)
槍攻・ガン・火炎・氷結・突撃・技・剣技反射(50)。破魔吸収
呪殺反射(100)。魔力・緊縛(10)
【アセイミイ・ナイフ】 ※誕生篇&改定
ウィッカに属する者達が月光の魔力を集めて作った魔法のナイフ。この武器の攻撃力は魔力を参照する。また、この武器によるダメージは物理耐性・無効・吸収・反射を貫通する(準物理貫通※D2と同様の効果とする。)。本来は女性しか装備できない筈の物だが…?
【アセイミイ・ナイフ型武器COMP】
アセイミイ・ナイフを基本構造に置いた武器COMP。
このCOMPは飽く迄呼び用のCOMPであり、悪魔召喚及び補助はアームターミナル式COMPとして腕に装着されている。まだ武器COMPとして改造を施している段階なのでまだその真価は発揮されていない。
<発動スキル>
戦闘時は以下の中から8つを指定して発動している。
【ワイルドハント】 ※覚醒篇_ウィッカ
敵全体に相性:-(万能相性処理)のダメージを与える。
威力は加護(運)×2となり、ステ振りが運魔特化の為にメギドラオン以上の特大ダメージを与える。
【魔法の輪】 ※覚醒篇_ウィッカ
覚醒段階に等しい数(4つ)の光の輪を生み出し、輪1つにつき一人の味方を守る。
輪の中に居るキャラクターは魔法防御点・物理防御点が威力点(ウィッチ技能値参照)上昇する。
同時にその強度以下のレベルのアンデッドはこの輪の中にいるキャラクターに対しては攻撃を行えない。
1度かけるとかけたターンも含めて威力×1ターンの間、魔法の輪は維持される。この魔法の輪は重複しない。
【魔法の輪】 ※誕生篇_ウィッカ
威力の分だけの強度を持つ結界を描く。
強度以下のレベルの悪魔やキャラクターはこの中にいる人物に対しては攻撃したり、魔法をかける事が出来なくなる。但し、維持するのに1ターンごとに術者がMP4点を消費する。
【妖精の輪】 ※誕生篇_ウィッカ
妖精の輪と呼ばれる門を開き、あらかじめ用意していおいた避難所にテレポートする。
避難所を用意してない場合でも妖精を呼んでいれば妖精の導きで1キロ以内の空き地にテレポートする。
【大地の力の加護】 ※覚醒篇_ウィッカ
レイ・ラインのパワーをアセイミイ・ナイフに集めて、相手に打ち込む。敵単体に剣相性のダメージを与える。威力はウィッカ技能値×3参照で火力自体なら最大規模。
【諸惑星の加護】 ※覚醒篇_ウィッカ
敵単体にダメージを与える。このカルトマジックは相性無し(万能・100%・相性無視と判断)や相性:禁(緊縛相性)以外の相性を自由に選択する事が出来る。威力はウィッカの技能値参照により中~大ダメージ程度。本来は覚醒篇内の物しか選択できない筈だが、この世界における属性は拡張しており、術者は既知の属性をこの魔法の相性として選択できる。
【サバトマ】 ※真1
マッカを使用せずに仲魔を1体召喚できる
【ワンスモア】 ※魔神2
味方一人を未行動状態にする。
本来はピクシーが持つ筈のスキル。
【アクマのウィンク】 ※魔神2
距離1の敵全てにPALYZ(80%)を与える。
本来はピクシーが持つ筈のスキル。
【デトラ】 ※覚醒篇
敵味方の結界魔法を全て解除する。
※エストマ・テトラ・マカラ・テトラカ・マカラカ・テトラカーン・マカラカーン・ステラカーン等が該当。
【デイル】 ※覚醒篇
周囲一帯(範囲:地域)の幻術や幻影を解除する。
【悪魔召喚】 ※200X
補助スキル。契約している悪魔を召喚する。本来は命運を支払って発動するスキルであり、その代わりに1戦闘中1回まで使用できる物とする
【精霊召喚】 ※ペルソナ2罪
┣敵全体に万能の中ダメージと幻影の追加効果を与える。
妖精召喚を応用しての使用。
【電気ショックⅢ】 ※200X
即時効果。味方一人が即死またはDEADになるのを防ぐ。
但しHPが0以下になる場合は1とする。ランクⅢの為に1シナリオ3回まで使用可能。
【高速詠唱Ⅲ】 ※200X&不完全
補助スキル。手番中、使用者は追加で1アクション分の魔法攻撃か支援魔法を行う事が出来る。
但し、HPを回復する効果のあるスキルは使用できない。1シナリオ(一連のダンジョンクリアやボス撃破等を指標にする)に3回まで使用可能。使用する度にコストとして現在HPの半分を消費する。このスキルは本来1つの手番に複数回使用できるが、不完全な習得である為にそれは封じられている。
他、ウィッカ系スキルを習得している。
<自動スキル>
【■■の光】 ※D2&破損
全ての状態異常にかからなくなる。
一部の特殊なピクシーが持つスキルだが、何かが欠けているのか本来の性能を発揮していない。
【妖精の祝福】 ※NINE
1カウント毎にパーティ全員のMPを1/20(5%)回復する。
ピクシーが持つスキル
【ソウルリンクⅢ】 ※200X&強化
戦闘終了時に3体(ランク参照、Ⅲなので3体)までの戦闘参加した契約する悪魔を選び、
契約者と同じだけの経験点を与える。これによって悪魔をレベルアップさせる事が出来る。
本来はレベルアップに置いて追加スキルは獲得できず、レベルアップイベントは発生しないが、
契約者の霊格上昇によって、それも撤廃されている。
【魔法耐性】 ※200X
魔法防御点に魔能力値を加える。
【同時召喚制限:フェイ】 ※オリジナル(厳密にはスキルではない)
許容範囲外の悪魔を召喚する際の制限。この制限はフェイ個人のものである為に他者がどのような物かの定義は行わない。通常、フェイが召喚する事が出来る悪魔の数は3体までだがそれを4体、5体と拡張させる。召喚数が増加する程に召喚者にはマグネタイトの使用に大幅に制限が掛かり、マグネタイトの消費量も増加する。4体召喚の場合はフェイのスキルによる攻撃のダメージは半分になり、4体召喚中のターン終了時に最大MPの10%のMPを失う。5体召喚の場合はフェイは一切のスキルを使用できなくなり、5体召喚中のターン終了時に最大MPの15%のMPを失う。MPが0になった時、4体・5体召喚は出来なくなる。
<捜索用スキル>
【コンピュータ操作】 ※200X
コンピュータを使いこなし、簡単なプログラムを使用できる。
情報技能として使用する場合、インターネット・サーフィンだけではなく軽度の侵入によって情報を得る。
判定は運で行われる。
【妖精の輪】 ※200X
情報を一つ得る。1シナリオ1回まで
【大地の声】 ※200X
精霊、地霊、妖精と会話し、情報一つか出現値Aのアイテム1つ入手する。
etc。
また、同フロアのトラップエリアをすべて認識。
「物理命中率が15%増加し、クリティカル率が20%増加する。」
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天魔衆撃滅戦 その1
天魔衆はかつて存在した仏教系ガイア組織であり、今は特殊な喰奴である羅刹で構成された人食い集団である。約1年前まではその存在の危険性から凡その勢力から袋叩きにされており、生き残りが居るのかどうかも定かではなかった。
その存在が再び世に知られるようになったのは数か月前からであり、僕達が現首領であるラーヴァナと相対した事によってその存在の復活は決定的となった。以後はキリギリス・ヤタガラス・悪対等によってその存在は追われ続けていた物のその痕跡すら掴む事が出来ずに奴らはその身を隠し続けていた。
「だが、再び奴らは現れた訳だな」
車の助手席に居るエリヤは窓の外を見ながら呟いた。運転席には由奈が、僕と真澄は後部座席に座っている。車に乗って、今回の仕事を熟すべく指定の場所まで向かう僕達が纏う装備に変わりはなく、しかし纏う雰囲気は普段のそれより数段険しい物だった。
事のきっかけは数日前に僕が持つPCのフリーアドレスの一つに送られてきた匿名の天魔衆の行方を示唆するようなメールだった。最近近畿地方にて活発化している悪魔関係者が行方不明になる事案、それらは天魔衆の手による物だとそういう内容だった訳だが、その時点では匿名という事もあって信憑性に欠けたし、動くがどうか悩んでいた所で知り合いのDBからも近畿地方において天魔衆の動きが確認されたとの連絡が入った。
其処からは実際にその事案が天魔衆による物なのかを確かめるべく近畿地方に居る知り合いとやり取りを交わしながら情報収集に勤しんでいた。しかし悪魔関係者が行方不明になるという事案自体は超人失踪事件等からも珍しい事ではなく、天魔衆が持つ特性はその犯人の特定をより困難にさせていた。
喰奴 | 羅刹天 | Lv75 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性*1 |
【習得スキル】 脳天割り*2・血祭り*3・反撃*4・食いしばり*5・破魔ストロンガ*6 【捜査用・思い出スキル】 無明の闇*10 【思念融合】 1,物理命中率が5%増加する。 2,クリティカル率が10%増加する 3,物理属性で与えるダメージが10%増加する。*11 【その他効果】 羅刹モード*12 |
天魔衆の羅刹、彼らの強さは純粋なパワーと隠密と速度に依存している。<スピードスター>による速度上昇、<無明の闇>による隠密からの<豪傑の転心><羅刹モード>を用いた約2倍~8倍の物理貫通を以って一撃で敵を葬るやられる前にやる構成で、その身に抱える物理に対する脆弱性も不意打ちのみに運用を置くならばある程度無視する事が出来る。
羅刹のレベルも基本60以上で、同レベル帯で複数の羅刹に不意打ちされた場合に生き残るのは非常に困難だ。奴らは襲撃の証拠も残さないし、失敗の事例も無し。それが天魔衆の存在を追うのが難しい理由の要因になっていた。
そんな状況下で天魔衆の存在を確定させるには状況から消去法で範囲を狭めていくしかない。幸い天魔衆のやり口に詳しい由奈が居た事から行方不明者が発生したと思われる現場を警察関係者や調査・探知に特化した異能者と共に調べ尽くして、其処から徐々に範囲を絞っていった。その果てに天魔衆の本拠地と思われる異界の特定に成功した訳である。
「ただ、天魔衆の本拠地が真澄の実家にあるとは思わなかったけど」
「嘘なら良かったんだけれどね」
僕の呟きに顔を俯かせながら真澄が言葉を返した。
天魔衆の本拠地とされる異界には奈良県に存在する山岳の神社が存在していた。其処は真澄が幼少期を家族と共に過ごした場所であり、思い出したくもない忌まわしい場所でもある。真澄の過去のあれこれ*13は詳しくは知らないが、概ねクソみたいな実家に堪え兼ねて家出したといった感じだ。頭京都な上に力も左程なく、男尊女卑も京都ヤタガラスよりもきつい場所であったという事も付け加えておく。
でもって京都ヤタガラスにとってもほぼ身内というか傘下であった彼らは京都ヤタガラスと東京ヤタガラスの衝突においても強制的に参陣させられた。結果としては一族の半数が戦死、もう半分が行方不明という形となり、一族は実質的に消滅。神社に関してももぬけの殻であり、祀るべき神さえも居なくなったその場所は最早異界でも何でもなく、管理する余裕もなく放置。
行方不明となった一族関係者は今も捜索が続けられているが、神社は廃れて最早時代から取り残された物として扱われていた。それが天魔衆の本拠地として利用されていると判明したのが現状となる。
天魔衆がどういう動機で其処を本拠地に選んだかは真澄からの情報を元にある程度の推測は立てられた。まず一族の生き残りが天魔衆と通じており、その縁から本拠地を其処にしたという線だが、これはほぼ黒だろう。
真澄の証言から天魔衆にも脅されるないし、与するメリットがあれば仲間に入るような奴らなのは間違いないし、あの場に異界を構築するとなると龍脈の関係でその土地に詳しい人間が居なければ作り出す事は不可能。加えて異界そのものが隠蔽されている事からも一人や二人ではなく、それこそ真澄の父のような一族の幹部が関わっている可能性も高い。一族の生き残りの殆どが天魔衆に組しているというのが状況証拠から推察できる最も可能性が高い現実だった。
それらが判明した時点で僕達もまた出動となった訳だが、こうした現状であるが故に真澄の表情は目に見えて暗い。身内が人食い集団の仲間入り、さらに加入している者もまたその人食いになっている可能性が高いのだから気落ちしない理由がない。さらに言えば一族には真澄自身が唯一慕っていたという母を残してしまっていたという。メンタルコンディションは最悪で、それでもケジメの為に真澄は今回の事件に参加するのを拒まなかった。本当は僕も何かしら言葉を掛けたいのだが、うまい言葉が見当たらない。
「まぁ貴方が其処まで責任に感じる理由はないと思いますがね、私は」
と、そんな事を考えているとバックミラー越しに真澄の様子を見た由奈が淡々と告げた。
「天魔衆云々に関しては私の方が遥かに責任は重いですし、心配している母親とやらも未覚醒者であるのならば少なくとも羅刹には成り果てていないでしょう。なら精々他の身内が羅刹となっている程度の筈だ」
「なにそれ、慰めてんの?」
「辛気臭い顔のまま戦われても私達が困る。迷いがあって勝てる相手ではないのですから。特にラーヴァナは私達フルメンバーでなければ太刀打ちするのも難しいでしょう。フェイの切り札もまだ未完成ですしね。そういう訳なので……空元気でもいいですから、もっとしゃんとしなさい」
「発破の掛け方、下手くそ過ぎて笑っちゃうけど……うん、分かったわ。私だけの問題じゃないものね。エリヤやフェイには迷惑掛けられないし、落ち込むのはもう終わり。あんたは別にどうでもいいけど」
「私も別に貴様の事はどうでもいいですが、その台詞が吐けるなら問題はありませんね」
「ふふっ」
「……何かおかしいですか、フェイ」
「いや、珍しいなって思ってさ」
「まぁ、気まぐれですよ気まぐれ。忘れてください」
「そういう事にしとく」
歓談の中、車が止まる。異界のある山岳付近まで到着し、其処からは徒歩で目的地を目指す。既に幾つかのDBチーム或いは地元ヤタガラスや対悪魔警察組織が配置についており、人払いも完了済み。異界にまず一番乗りで侵入するのは僕達4名。其処から段階的に包囲を維持しつつ平均レベル60以上のDBチームが異界に突入する手筈となっている。
僕達が最初に突入する理由は現状集めた面子で僕達が一番対応力があるからであり、その為囮も兼ねている。前回のヨコハマもそうだが、異界に突入する時が一番危ない。羅刹との戦闘経験があり尚且つ突発的にラーヴァナと相対してもある程度拮抗出来るとなると僕達しか居なかった訳だ。一応トチった時の為に幾つか対応策はチーム毎に練っては貰っているが、僕達が初手で沈むのは宜しくない。
「この先が問題だな」
エリヤが先を見つめながら注意を促した。
此方も悪魔を展開して、フレスベルグの瞳で周囲の状況は二重に確認を行っている。特に異常もない山の上り坂に、高く生い茂る木々。それらの葉によって空から降り注ぐ光は隠され、薄暗い獣道が先へと続いていた。
現時点で罠と呼べるものもなく、不気味な程静かな森の中を歩いているだけ。悪魔も居ないその場所の節々には龍脈を弄る仕掛けが施されており、これによって今に至るまで天魔衆の根城は隠されていた。
「見つけた。いや、戻ってきたというべきなのかしらね」
真澄の淡々とした、乾いた呟きが小さく響く。
眼前にはそれなりの長さの石段、その先に風化して薄汚れた紅の鳥居が見えた。鳥居或いはその周囲が異界の入り口だろう。空中からも確認したが本殿と思わしき建物から直線状に鳥居までを半径として、円を描くようにして異界は構築されている。空中からのそれは“そう見せている”だけであり、実際の内部構造は大きく異なる。
最後に装備の最終チェック並びに状況を各チームに伝達。このまま突入する旨も伝えた後に石段に向けて歩みを進めた。
「……これは」
石段を登っている最中、突如として周囲に濃霧が発生した。濃度は一寸先も見えない程で、フレスベルグやエリヤの知覚を以てしても反応できない速度或いは何かによって展開されている。
「由奈」
「もうやってます!」
由奈が<光明真言>*14を、僕が<デイル>*15を発動。他の面子は周囲を警戒し、そのまま後退を急ぐ。
僕と由奈の幻影・幻術を晴らす術でも霧は晴れず、霧は自身の身体すら見えない程に濃くなってきている。後退しても霧が無限に続いている事からもう術中に嵌っているのは間違いない。他のチームに関しては不明だが何とか現状に関してはCOMPにて情報伝達した。
「最近こういう状況多いから備えは結構してたんだけど、それでもまた分断されるのはちょっと勘弁してほしい」
発生した霧は恐らく神の権能によるものだと予測をつけた。それもかなりの高位の神であるのも間違いなく、天魔衆側も本気で迎撃してくるのは疑いようがない。声も届いていないか或いは既に霧によって分断されたのか由奈やエリヤ、真澄の声も聞こえずに気配も感じられない。幸い仲魔は無事だが、このまま各個撃破されるのは時間の問題だろう。故に最優先は自分達の再集合であり、恐らくもう突入しているであろう他のチームと合流しても良い。その辺りは状況によるだろう。
それからやや霧の濃度が薄れ、それでも見通しの悪い周囲をフレスベルグの視界によって確認する。床、壁の材質は木造で、所々の装飾から神社の建物内部のように見受けられた。部屋内部の歪さや空気感から異界というより認知世界、パレスと呼ばれるそれに酷似している。
『前方ヨリ悪魔ヲ感知。此方ニ気付イテイル』
「りょーかい。こりゃ他も似た感じかもね」
薄暗い古ぼけた木の廊下。最奥が見えない程に長く、そして何より鼻を塞ぎたくなる程の血生臭さがこの場所の不気味さを引き立てていた。壁や床を蹴りながら此方に向かう羅刹の集団を僕は知覚して、仲魔と共にその制圧へと向かった。
「来たか」
血に塗れた髑髏の山、それを玉座のように跨りながら天魔衆の現首領であり、簒奪者でもあるラーヴァナは口を歪めた。フェイとの戦いの後、身を潜めた天魔衆は東京より離れて地方においてその活動を広げていた。地方にも勿論強者は居るが、東京に常駐しているような特記戦力は間違いなく少ない。狙いもピンポイントに尚且つ場所も疎らにしながら覚醒者狩りをすれば自ずと正体が割れる可能性は低くなる。其処から徐々に部下である羅刹も揃えて、餌をやり続けて地方を周り、そうして乗っ取ったのがこの神社だった。
「アクシャ、迎撃の用意は出来ているな?」
「はい」
ラーヴァナの声と共に髑髏の下で跪いたのはアクシャと呼ばれた羅刹であり、それはかつてこの地を収めた神城と呼ばれる一族の首領でもあった。京都ヤタガラス壊滅時にその命を守る為に一族の残党と共に決戦から逃げ出した男は只管に逃げて、逃げ続けてその果てに天魔衆へと行きついた。自身の命以外の全てをラーヴァナに差し出した事によって男は羅刹となり、アクシャとなった。
ラーヴァナにとっては弱く、興味もない男ではあったが羅刹となる衝動は持ち得ていたし、この地に関する情報や男が持ち得ていた遺産や他裏組織の情報は有益であり、何より自身に対して従順だった。クムバの名を与えた法華が先の戦いで死亡した事によって繰り上がりで天魔衆の副将となったアクシャはこの地に拠点を置くように進言した上で細工を施した。
通常の異界化、それを成した後に稲羽市と呼ばれる場所にて発見されたある呪物を起点としてその異界を自身の
そして、本拠地の場所が割れた今はパレスと霧の権能を用いて侵入者を分断してから殺害。喰らうか捕獲かは別として、侵入者の迎撃に成功した後に定めていた別拠点へと離脱するそういうプランを立てていた。この拠点を放棄する事はしたくはなかったが、のこのことやってきた
霧に呑まれたのはその二人を含む4人だけ。残りの侵入者は逐次このパレスへと突入してきている。其方にはパレスで沸いた多数のシャドウと羅刹を送り込んでいるが恐らくそう長くは持たない。
「アクシャ、貴様はその望みの通りにヤタガラスの巫女を殺せ。私は勝手にやって、さっさと離脱する。生きていれば離脱先でまた会うとしよう」
「く、キっ!ええ、ええ、この状況は私にとって満願成就ですから。好きに喰い散らかせて頂きますよォ」
ラーヴァナに媚びへつらいながら、その異形の顔に浮かんだ笑みは歪み切った物で、憎悪と怒りを明確に発露させていた。
「貴方様に与えて頂いたこの身体、そして我が身に刻まれたイマージュ、これさえあれば奴に負ける事は万が一にもありません」
「そんな事に私は興味はない。貴様は力を求めて、私はお前の全てを以てそれを叶えた。対価は確かな物で、役に立っている。それだけだ。さっさと行け」
「御意」
アクシャがその場から消え去り、ただ一人ラーヴァナは髑髏の山にて頬杖をつく。
「何故この場所がバレた?」
本拠地の場所が割れるのは時間の問題だった。しかしこれ程早く、この場所がバレるのはラーヴァナにとって想定外でもあった。襲撃の痕跡は確実に消していたし、
いざ離脱しようとした所で今のように包囲されて、挙句にそのメンバーに此方が狙っていた覚醒者が複数。まるで何者かが天魔衆とそれらをぶつけて潰し合わせようとしているかのような、嫌な予感があった。
「一応念には念を込めておくが……まぁ、やる事は変わらん」
例えアクシャや天魔衆が潰えたとしてもやる事に変わりはない。喰奴の亜種とも言える羅刹という存在は他者を屠り、喰らわなければ生きられない。羅刹の王であるラーヴァナとてそれは同様であり、喰らう為の力以外の全てを捨て去ったその身はよりその
その殺戮と捕食に終わりはなく、那由他の世界の果てまでそれは続く。最早自分が何者であったか、何故その力を手に入れたのか、何が欲しかったのかも最早何も分からぬままに
・後書き
他のやる夫スレ見てインプットしてたり、P3Rを1週間でクリアしてたり、仕事が修羅に入ってたり、文字が書けなくて頭抱えてたりしてたらいつの間にか1カ月経ってました。現状もややスランプ状態ですが今後も何とか書いていきたいです。
<久遠 フェイ>
匿名メールとか怪しいに決まってるだろと思いつつも調査続けたらあれよあれよという間に場所が割れてしまった。ラーヴァナはよ何とかしないと不味いよなとは思ってるがフルメンバーじゃないとぶっちゃけ勝てる気しないので戦うなら良い感じで殴り合いに突入したい。自分だけでやるなら取り敢えず専用の切り札は欲しい。
<久遠 由奈>
元天魔衆所属なので色々と責任感は感じているが、同時にクソめんどくせぇなぁとも思っているので左程重くは受け止めていない。フェイやら親しい他人が居ないと一気に思考が羅刹と同レベルまで落ちる。
<神城 真澄>
出奔したとはいえ実家がそういう状況になっていて割とショック。ぶっちゃけ母親以外はどうでもいいが母は死んでいるか死ぬより酷い目に合っているだろうと一種の諦めと怒りを抱いている。
<天魔衆>
羅刹なので常に羅刹状態で物理ぶん回してくる人食い集団。
命中不安を抱えてたり、物理に強い分滅茶苦茶物理に脆かったりする部分はあるものの耐性でそれを補って理、根本的に速いので先手取るのがむずかったり、隠密能力が高いので少数であれこれする分には非常に厄介。加えて喰らう事以外の全てを投げ打って行動できるので其処らへんの守るものがない故の手段の選ばなさも面倒ではある。
<ラーヴァナ>
狙ってた二人が侵入者で来てくれるのはいいけど、あまりに作為的に作られた状況に警戒状態に入っている。状況次第ではあるが天魔衆は此処で使い潰す予定。
<アクシャ>
神城一族の首領だった男。今はラーヴァナより羅刹化されて、媚びて自分の命以外全て差し出しながらあれこれやっている。とある人物に強烈な劣等感と憎悪を抱いており、それを晴らすべく今回迎撃に動く事となる。
リベリオン※D2:自身を会心状態にし、次の攻撃をクリティカルにする。
・物理貫通(D2式)を取得し、魔法を一切使えなくなる(物理スキル・アイテムは使用可能)
・物理攻撃時に通常の2倍のダメージを与える。但し、敵から物理攻撃を受けると通常の2.3倍のダメージを受ける。
・クリティカル率が大幅に上昇する(+90%)が、敵からの攻撃のクリティカル率も大幅に上昇する(+60%)
・回避率が大きく上昇するが、命中率が大きく下がる。
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天魔衆撃滅戦 その2
\カカカッ/
Lv55~75 | 喰奴 | 羅刹天の群れ | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性*1 |
「
\カカカッ/
ウィッチ(♂) | 久遠 フェイ | Lv84 | 全てに強く破魔吸収。技・火炎・氷結・呪殺反射。BS無効*2 |
\カカカッ/
破壊神 | カルティケーヤ | Lv78 | 銃反射。物理・破魔無効。呪殺耐性*3 |
\カカカッ/
神獣 | バロン | Lv78 | 物理耐性・破魔・呪殺無効。全ステータス異常無効(BS無効)*4 |
\カカカッ/
凶鳥 | フレスベルグ | Lv79 | 火炎無効。氷結吸収。破魔・呪殺・緊縛・一部の物理に強い。*5 |
迫る羅刹達の姿を目視した僕は布陣を整えて、迎撃の構えを取る。奴らの数は左程多くなく、精々数体程度。とはいえ1体だけでも油断できる手合いではないのはこれまでの戦闘から見ても明らかだ。
何せ反射・テトラカーンまで抜く最高クラスの物理貫通に通常2倍、
弱点はやはり物理防御面での脆弱性*6だが、羅刹達の耐性は斬撃・打撃反射。多くの物理はそれによって無効化されてしまう。速度で上を取ろうとしても<スピードスター>*7が奴らにはある。
捕食の為に最適化された羅刹達の戦闘方式はある意味で完成されている。付け入る隙は少なく、だからこそ面倒な手合いだと忌避されていた。物理攻撃事態を無効化でき、スピードスターで速度面でも上を取れる由奈が居ればもっと対処が簡単ではあるのだが、こうして分断された以上は今ある手札で対応するしかない。
「そういう訳で宜しくカルティケーヤ」
『あいよ!』
スピードスター | D2出典。悪魔のバトルスピードへの影響が50%増加する |
速特化で<スピードスター>を持つカルティケーヤが羅刹達に先んじて動く。羅刹達が持つ一つの弱点として、奴らの動きは
天扇弓 | DSJ出典。敵全体に銃属性の大ダメージを与える |
韋駄天 | D2出典。このスキルを持っている悪魔が生きている間、 味方全体は次の効果を発揮する。 「物理命中率が15%増加し、クリティカル率が20%増加する。」 |
天覇の将 | NINE出典。術者が物理攻撃で与えるダメージが 増援を含む味方の生存者1体につき12.5%上昇する |
獰猛 | SH1(忠誠度)出典。忠誠度:5の性格:獰猛における効果。物理ダメージが1.1倍になる |
カルティケーヤの番えた矢が扇状に拡散して、羅刹達を射抜いていく。斬撃・打撃に対しては耐性を持つ羅刹達は銃撃・ガンに対しては無防備だ。そして銃撃もまた物理攻撃であるのには違いなく、羅刹状態が持つ物理攻撃に対する脆弱性がそのまま直撃。その場に居る全ての羅刹に約2倍、高確率の
\カカカッ/
Lv77 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv62 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv71 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv59 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
その直後に後方より新たな羅刹達が増援として現れた。戦力の逐次投入は通常であれば愚策だが、全体攻撃によって全滅する事を踏まえればその判断が間違っているとは言えない。元より羅刹の攻撃一振りでも当たれば此方の状況は一気に危うくなる。生き残る為に一撃も喰らう事が出来ない此方と生存度外視で羅刹達の数だけ特攻を仕掛ける事の出来る彼方では勝利条件も異なるのだ。
「だけど、それも織り込み済み」
北端の凍てつく風 | D2出典。敵が死亡したとき、次の連動効果が発動。敵全体に氷結属性の小ダメージ(60)を与える。この効果の使用回数に制限はない。 |
羅刹達の死と共にフレスベルグの
「バロンへ」
『りょーかい』
勇奮の舞 | NINE出典。3ターンの間、味方全員の物理攻撃力と物理防御力を2倍にする。 |
カルティケーヤからバロンへと行動は繋がれ、そのままバロンによるバフが入る。先手を取ったカルティケーヤが選択した戦闘方式は
弱点・
「さて」
フレスベルグによって止められていた羅刹達がそろそろ動く。今回の戦闘方式は全員が一つの流れで動く事は出来ない。飽く迄其処に関しては
「射撃は苦手なんだけど……!」
レールガン | 200X出典。敵全体にガン相性の大ダメージを与える。 このダメージは防御点で減少できない。弾数を10点消費する。 このスキルはレールガン装備時の付加スキルである |
エリヤと同様のレールガンを構えて、乱れ撃つ。体格の関係で反動は殺し切れずに両手で構えても尚、身体が吹っ飛びかけるが踏ん張って羅刹達を射抜いていく。バロンの強化によってさらに火力2倍、其処にカルティケーヤの<韋駄天>によって鋭さを増した弾丸は羅刹達を肉片へと変えて絶命させる。
「次!上から来るよ!」
『つるべ打ちで何処まで対応できるかって所かね』
天井により塞がれていた筈の上空より羅刹の増援が出現。それをフレスベルグの疾風によって
フェイ陣営 | 物理攻撃・防御2倍。命中・回避率上昇(3ターン継続) 魔法の輪(物理・魔法防御固定値上昇)(数十ターン継続で戦闘開始前に発動) |
羅刹陣営 | なし |
状況はあまり宜しくない。必要な補助こそ積めてはいるし、羅刹の排除も銃撃なら一撃で可能。しかしフレスベルグの探知により全方位より羅刹、シャドウが迫って来ており、認知世界だからなのか地形・周辺状況が時折変化している。フレスベルグが落ちれば敵の探知が行えずにアウト、バロンが居なければバフと回復が出来ずにアウト、カルティケーヤが居なければ殲滅が出来ずにアウト。誰かが落ちる事はその時点で敗北に直結するだろう。自分の背丈程の大きさのレールガンを携えて、周囲を警戒する。
『下カラ来ル!羅刹ジャナイ!』
フレスベルグの叫びと共に周囲の目視を仲魔に任せて、床全体を即座に視認した。地形が変化した様子は見受けられない。薄暗く、光に照らされた空間と風化して真っ黒になった血で染まった木製の床、そして不自然に伸びる“影”
「影を媒介にしているのか!」
瞬間、影より現れた黒い腕と剣が眼前に迫る。それを頬を切るようにして回避して牽制射撃。発砲の反動を利用して距離を取り、仲魔を自身の周囲に再配置する。
\カカカッ/
Lv85 | 夜叉鬼 | チェルノボグ | 不明 |
『躱したか。成程、聞いた程度の実力はあるらしい』
「……羅刹じゃなくて喰奴?」
現れたそれは黒い外装に青白い骸骨の頭部、古ぼけた長剣を構えていた。夜叉鬼と呼ばれる存在はヨコハマでも確認できている。確か喰奴の一種であったという記憶があったが、天魔衆が羅刹以外の戦力を抱えているという話は聞いた事がない。
「まさか、デヴァローカが」
『どうあれ、貴様は此処で八つ裂きだ!死ね!』
バイオレンス | DDSAT出典。点滅状態のプレスアイコンを二つ増やす。 それ以外の戦闘方式では行動回数を2回増やす物として扱う。 (バイオレンスで手番を使うので実質1回増加) |
髑髏の口が開かれて、耳障りな叫び声を響かせながらチェルノボグが動く。
『自らの影に!首落とされるがいい!』
舞い降りる災厄 | DDSAT2出典(チェルノボグ専用)。 敵側の戦闘に参加しているメンバーからランダムに1体を選び、 それに対応する悪魔1体を戦闘に加える→ランダム選択:フェイ |
舞い降りる災厄 | DDSAT2出典(チェルノボグ専用)。 敵側の戦闘に参加しているメンバーからランダムに1体を選び、 それに対応する悪魔1体を戦闘に加える→ランダム選択:カルティケーヤ |
チェルノボグの持つ長剣が吸い込まれるようにしてその胸を貫いて、僕らの影が不気味に伸びて其処から浮かび上がる闇がその身を形成していく。
\カカカッ/
Lv84 | - | 影久遠 フェイ | 不明 |
\カカカッ/
Lv78 | - | 影カルティケーヤ | 不明 |
「僕とカルティケーヤの複製……?」
現れたその二つの影はドッペルゲンガーのように僕達と瓜二つでその姿は漆黒に包まれていた。耐性は不明だがレベルは同じで対面する僕……影フェイの装備もまた今の僕のそれと酷似しているように見える。
マカカジャ | DDSAT2出典。味方全体の魔法攻撃力を1段階上昇させる。 |
最後にチェルノボグがバフをばら撒き、
\カカカッ/
Lv58 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv64 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv66 | 魔術師 | 翻弄のアブルーリ | 不明 |
\カカカッ/
Lv68 | 皇帝 | ぐれぇとキング | 不明 |
いつの間にかに地形が変わり、廊下の十字路の中心に僕達は立っていた。左右からはシャドウと羅刹の混成群が迫り、前方にはチェルノボグ達が陣取っている。
「フレスベルグ」
『シャドウト羅刹ガ集結シツツアル。次ガ正念場ダ』
初手の羅刹天のみの襲撃からのチェルノボグの出現。敵にシャドウが混じり始め、総合的な数の増加と複数方向からの断続的な特攻はそろそろ勝負を決めに来ているという合図に他ならない。対策を立てられるのは
「なら僕も腹をくくらないとね。カルティケーヤ、さっきと同じで良い。頼んだよ」
『何となく嫌な予感はするけど、やるしかないか!』【天扇弓】
カルティケーヤの矢が扇状に発射される。呼び出したあの影の耐性が僕達と同様であるならばガンは通じない。通じたとするなら耐性が違う事になり、その他能力にも差異があるかもしれない。羅刹を倒す為にはどうあれ銃で倒すのが一番であるし、その行動を変える理由もなかった。
『言ったであろう。自らの影に首落とされると!』
「何を……まさか!」
影カルティケーヤがカルティケーヤと同速を以て、矢を番えて発射する。
「相殺現象!」
双方の発射した大量の矢は一寸違わずに相殺し合い、
バロンの<勇奮の舞>がある分、此方の方が火力が高いと見積もっていたがカルティケーヤが持つ<天覇の将>は味方の数が多ければ多い程に火力が伸びる。今ここに居る敵の数に
だがこれで此方のプランがやや瓦解しつつある。それを修正しながら流れを取り戻さなければならない。
其処に追撃する様に全てを呑み込む黒い渦のような光がチェルノボグより放たれる。魔法強化2段階からのそれは一撃で倒れる事はないものの確かなダメージを与えた上に命綱とも言える物理防御2倍を防御減少効果によって相殺させられた。
『……』【ワイルドハント】*14
虚ろな表情を浮かべた
「ならば」【高速詠唱Ⅲ】*18【サバトマ】*19【サバトマ】
\カカカッ/
国津神 | アラハバキ | Lv79 | 神経・精神無効。破魔・呪殺・魔力反射*20 |
\カカカッ/
邪龍 | セト | Lv81 | 銃・投具・氷結・電撃に強く、破魔・呪殺・精神・神経・魔力無効*21 |
「バロン、バフを!セトは全部撃ち貫け!」
『オォーッ!』【勇奮の舞】
『シィッ!』【ヤブサメショット】*22
バロンの咆哮と共に放たれたセトの
『マカセタ!』
『次は妨害もないねぇ!』【天扇弓】【韋駄天】【天覇の将】【獰猛】
セトから呼吸を繋いだカルティケーヤが再度矢を乱射する。無防備になった羅刹及びシャドウはその一撃にて絶命。チェルノボグにも着弾し、影フェイ・影カルティケーヤは反射するもカルティケーヤ側も反射で無効化。チェルノボグは先程のヤブサメショットの感じからも物理に対しては無防備で、影の2体は此方と同じ耐性であるという確認は取れた。
そして敵の死亡によるフレスベルグの
「回復優先。バロンへ」
バロンへ渡された行動によって<メディアラハン>*25を発動。
「そのままあっちのカルティケーヤを沈めて」
マハブフダイン | 真3出典。敵全体に氷結属性の大ダメージ&FREEZE効果(15%)を与える。 |
徹し | 覚醒篇出典(骨法)。 敵前列1体に相性:-(万能相性裁定)で防御点を一切無効した格闘攻撃を行う。 この攻撃は拡散して、敵前列の他の対象には 相性・防御点無視は同様にダメージ事態は半減した物を与える。 悪魔の場合、技能値を参照せずに固定値を参照する。 |
ダウンしたカルティケーヤをフレスベルグの<氷結高揚>*26の乗った<マハブフダイン>で追撃し、影カルティケーヤを氷漬けに拘束した上で気絶*27させる。其処に間髪入れずに飛んできたアラハバキの<徹し>が命中し、氷諸共影カルティケーヤの肉体は粉々となった。
フェイ陣営 | 物理攻撃・防御2倍(3ターン継続) 命中・回避率上昇(2ターン継続) 魔法の輪(物理・魔法防御固定値上昇)(数十ターン継続で戦闘開始前に発動) (セトとアラハバキには適用されていない) |
チェルノボグ陣営 | 魔法強化+2 |
此方の仲魔はカルティケーヤ、バロン、フレスベルグ、セト、アラハバキの5体。敵はチェルノボグと影フェイの二人だが敵増援が全方位から集結中であり、次の
チェルノボグの影悪魔複製は厄介だが、それより問題なのは影フェイの方だろう。自分で言うのも何だが僕がやれる事はかなり多い。サマナーではない為にその辺りの召喚系は腐る事になるがウィッカの力も僕の出力だとヤバいし、<電気ショック>*28による食いしばり蘇生も厄介だ。
とはいえ見せたのは<ワイルドハント>のみで<電気ショック>の方は見せていない。発動できるのか出来ないかは分からないが警戒しておくに越したことはない。
影フェイに関して他に少し気になったのは先程のワイルドハントの出力だった。
影だから完璧なコピーではないのかだとか、或いは他に要因があるのかだとか色々と想像自体は出来る。杞憂であればいいんだけどと考えた所で再び、
\カカカッ/
Lv55~75 | 喰奴 | 羅刹天の群れ | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv55~75 | 喰奴 | 羅刹天の群れ | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv55~75 | 喰奴 | 羅刹天の群れ | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv55~75 | 喰奴 | 羅刹天の群れ | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv80 | 軍勢 | シャドウの大群 | 不明 |
\カカカッ/
Lv80 | 軍勢 | シャドウの大群 | 不明 |
\カカカッ/
Lv80 | 軍勢 | シャドウの大群 | 不明 |
\カカカッ/
Lv80 | 軍勢 | シャドウの大群 | 不明 |
「撃ち漏らすな!」
「食い千切れ!」
前方、後方、左右の全方位から雪崩のように現れたシャドウと羅刹。僕の叫びとチェルノボグの咆哮が交差して、激突が始まる。
『数がヤバいが纏めて薙ぎ払えれば!』【天扇弓】【韋駄天】【天覇の将】【獰猛】
カルティケーヤが先陣を切る。仲魔が5体になった事によって増強された火力を用いての全方位射撃は正確に敵の全てを薙ぎ払っていく。シャドウの大群は羅刹の群れをそれぞれ庇うが、これだけの数を撃てば羅刹でなくとも
『オォオオッ!』【舞い降りる災厄】【混沌の海】
\カカカッ/
- | アラハバキ | Lv79 | 不明 |
チェルノボグが剣を再び突き刺し、アラハバキの影から黒いアラハバキの姿が現れる。続け様に防御低下付きの全体万能が飛来した。回避向上の効果もあってセトと僕は回避し、残りは命中。物理防御2倍を剥ぎ取られる形となる。
「フレスベルグ、速度低下を」
『攻勢ニ回ルべキデハ』
「御願い」
『ワカッタ』【速効性・消毒スプレー】*29
先の事を見越した上で
『コレデ、オチロ!』【ヤブサメショット】
セトのヤブサメショットが全方位のシャドウに向けて放たれる。確定
シャドウの群れが死亡した事によるフレスベルグの疾風によって羅刹はダメージを受けた上でやや速度の低下を受け、フルスピードではない以上、僕達に攻撃はまだ届かない。そして影アラハバキも影フェイもダウンし、能動的に動ける敵はもういない。
『終わりだ!』【天扇弓】【韋駄天】【天覇の将】【獰猛】
四方より針地獄のように刃先を向け、此方に殺到する羅刹の群れ。それと交差するようにしてカルティケーヤの矢が全てを射抜いていく。
食いしばり | 真4出典。自分のHPが0になると一度だけHP1で復活する |
その矢嵐を耐え切って、食いしばった羅刹達も末路は変わらない。さらに加速したカルティケーヤに再度その身を穿たれて絶命する。残る敵はチェルノボグと影フェイのみで、両者共に先程の全体攻撃に巻き込まれて傷は浅くない。山場は乗り切った、後は残敵を掃討するのみだと意識の半分がそう確信して
『ケヒッ』
残り意識がチェルノボグの嘲笑いを知覚して、奴の影から殲滅した筈の羅刹が湧いて出てきているのを視認した。
\カカカッ/
Lv80 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
羅刹モード | DDSAT2(ルール効果&改変)出典。羅刹である証であり、呪い。飢えによって攻撃性能が大幅に強化されるが、防御性能が大幅に下がる。 羅刹は常に羅刹状態である物として扱われる。 羅刹状態の時に以下の効果を強制的に得る。 ・物理貫通(D2式)を取得し、魔法を一切使えなくなる (物理スキル・アイテムは使用可能) ・物理攻撃時に通常の2倍のダメージを与える。 但し、敵から物理攻撃を受けると通常の2.3倍のダメージを受ける。 ・クリティカル率が大幅に上昇する(+90%)が、 敵からの攻撃のクリティカル率も大幅に上昇する(+60%) ・回避率が大きく上昇するが、命中率が大きく下がる。 |
涅哩底王 | D2出典。物理命中率が10%増加。 1ターン目開始時、自身にリベリオンが発動する。 リベリオン※D2:自身を会心状態にし、次の攻撃をクリティカルにする。 |
豪傑の転心 | ライドウ出典。約50%の確率で物理攻撃の威力を100%上昇させる |
血祭り | DDSAT1出典。敵全体に物理属性の中ダメージを与える。クリティカル率が高い。 |
現れた羅刹は僕達を目の前に抜刀。迎撃は間に合わないと判断して咄嗟にバロンは僕を、アラハバキはセトを庇う様にして対処する。振るわれた刃は
羅刹が
後は此方が勝利を確信するその瞬間に投入すれば一気に戦線は崩壊するという作戦だったのは想像がつく。実際生き残っているのは僕とセトだけで、追撃も考えてバロンは食いしばりさせずに落ちさせた。
『チェックメイトだ!』
チェルノボグの指示と共に再度羅刹の刃が僕達を狙う。アイテムで対策が出来る僕は兎も角としてセトは
『フンッ!』【龍の反応】*32
「ま、当たればの話だけど」【ミラージュブーツ】*33
その刃を僕達は揃って回避する。当たらなければ後に続かない羅刹の攻撃は此処で止まった。
『馬鹿な』
「最初に
羅刹の強みはその奇襲性と隠密性、速度にある。知覚外からの奴らの一撃は此方の盤面も思考も切り刻んで、其処から畳み掛ける様にして羅刹と相対した者は破れていった。とはいえ羅刹を知っていて尚且つ対策も立てている相手にそういった奇襲を戦闘中に仕掛けるのは難しい。だからこそチェルノボグも大量の羅刹を囮に本命の、1体の羅刹を滑り込ませるようにして投入するという策を取った。
僕も何となくチェルノボグの雰囲気から何かあるとは察していた。
\カカカッ/
女神 | ラクシュミ | Lv80 | 破魔反射・衝撃無効・バッドステータス無効*36 |
電磁砲を構えて
流れを取り戻したはいい物の完全に勝利が決まった訳ではない。影アラハバキや影フェイが動いていない以上、妨害が入る可能性もある。何より此方は僕とセト、ラクシュミだけでこれ以上来るであろう増援の羅刹から攻撃を受ける訳にもいかない。故に全てを此処で終わらせる必要があった。
『さて、生き残って終われると良いのですが』【天上の舞】*37
『き、さま……!』
加速する直前にラクシュミーの舞が僕を補助して、チェルノボグが絞り出すように唸り声を漏らした。影アラハバキはチェルノボグを庇い、影フェイは動かないが狙いは分かっている。
「チェックメイト」【高速詠唱Ⅲ】【ワイルドハント】【ワイルドハント】
万魔を以てウィッカの極光が空間全てを照らしながら僕の身体から放射される。相対する影の僕も同様の光を放つが<天上の舞>によってその差はそのまま2倍となって減衰されながらも押し潰した。間髪入れずに放たれた二射目は突貫してきた増援の羅刹も含めた敵の全てを光の元に還す。
『……』【神■:妖■の■】
光に全てが呑み込まれるその最中に両目に黄金を灯す僕の影は消え失せて
「なにを……ぉッ……!」
それと同時に脳髄に奔る鋭い痛みと猛烈な吐き気が僕を襲った。セトとラクシュミに必死で指示を出しながらも、その痛みに堪え兼ねて或いは引き摺り落とされるかのように僕の意識は闇に染まった。
柔らかな風で木々が揺れる音、川のせせらぎ、淡い太陽の光を瞼に浴びて僕は身を起こした。
辺りを見渡せばピクシーやエルフといった妖精達が軽やかに楽しそうに過ごし、その輪の中にそれは居た。
\カカカッ/
Lv■ | デビルチルドレン | フェイ |
あの相対した影と同じ黄金の瞳に僕と寸分たがわぬ容姿。しかしその胸の膨らみや雰囲気や言葉遣いから此処に居るフェイは少女であると認識できた。フェイと認識し続けると自分とごっちゃになりそうになったが、この場に居る彼女こそがこの場においてはフェイと呼ぶに相応しいとも思える。
そしてこの場に居るフェイも妖精達も僕の事を認識していない。気づかれていないという話ではなく、まるで其処に居ないかのように振舞っている。試しに妖精や木々等に触れようとしてもすり抜けて、地面を強く踏みつけても跡すら残らない。魔法や武器も使う事ができず、唯々彼女達の事を眺める事しか僕には出来なかった。
そうして眺めている内には妖精達に連れられるがままにフェイは森の奥へと入っていった。後をついていき、その最中にある石像にはヨヨギと書いてある。地理にはあまり詳しくはないが雰囲気的に此処は異界化されたヨヨギ公園ではないのだろうかと予測をつけた。
\カカカッ/
Lv■■ | 妖精 | オベロン |
\カカカッ/
Lv■■ | 妖精 | ティターニア |
その先に居たのは金色の瞳と黒髪に王族のような赤い衣服を身に纏う
「これは、記憶か」
過去の、今より前の周回における自分の記憶を僕は見ている。そうであるのならあのフェイが僕にあまりに似すぎているのにも説明がつく。気になる点があるとすれば違う自分である筈なのに胸に湧く感情はフェイと同期していると思われる所だ。この妖精にとって楽園とも言える場所で過ごす彼女の喜びや慈しみ、何より両親を深く愛している事が酷く伝わる。
それは記憶にしては明瞭で、確かな物だった。まるである筈のない僕の記憶のようだった。だからこそなのか、比較してしまう。妖精王と妖精女王のデビルチルドレンである
其処から目に映る全てにノイズが奔り、一瞬で情景が変化した。
あれだけ緑豊かだった妖精の地は血と肉片と死体で真っ赤に染まっている。地面には多くの妖精の死体と妖精を喰らいながら或いは殺しながら絶命している喰奴……羅刹の姿。
その中には四肢を捥がれ胸に大きな穴を開けられたフェイと血と涙に塗れてフェイを抱き締める王と女王が居た。時間が経つ度に肉体から血を溢れ出して、フェイの命の灯火が消えていくと共に僕の視界も朧げに暗くなっていく。
『コンバック』
オベロンかティターニアか、呟いたのが誰かは分からない。或いは両者がその魔法を発動したのだろう。王と女王は自らの肉体と精神をデビルソースにしてフェイと合体、その命を繋ぐという手段を取った。僕の視界もさらにボヤけてもう三人の姿を微かに見る事しかできないが、合体をする直前にフェイは既に絶命していた。
\カカカッ/
Lv■■ | 合一神 | オベロン=ティターニア |
王と女王の縋る様な、自分の命すら賭けた合体は失敗した。視界が真っ黒に染まるその瞬間に最後に垣間見たのは合体の末に生まれた王と女王が混ざり合ったナニカと魂すら消失したフェイの死体。
途絶えた視界の中で最後に絶望に塗れた慟哭が聞こえて、僕の意識は再び闇に堕ちていった。
「ぅ、ぁ……は、ぁっ……!」
脳内に溢れ出した、それらを強制的に鎮静化しながら僕は辺りを見渡した。セトもラクシュミも健在。周囲の状況から意識を落としてから恐らく数秒も経っていない。
『大丈夫ですか、サマナー。酷い顔してますけれど』
「……<招来の舞踏>でフレスベルグ、アラハバキを頼む。セトは送還する。後の蘇生はアラハバキに任せて、フレスベルグは周囲警戒に回す」
ラクシュミに指示を出しながら周囲を警戒する。気になる事はそれこそ山程ある。影フェイが最後に使ったあれは何なのかだとか、何故あの記憶が僕の脳内に溢れ出したのか。特に最後に現れた合一神という存在、似たような気配を何処かで感じた事がある。記憶ではなく、実際に何処かで会っている。
と、混乱はしているが現状はぶっちゃけそれ所ではない。多数の羅刹・シャドウ及びチェルノボグとかいう喰奴を倒したが肝心のラーヴァナは影も姿もないし、このパレスの奥地にも進めていない。ヨコハマでの戦い以後、分断されても場所だけは分かる様にとあれこれ魔道具を作った結果として大まかに各自の場所だけは分かるが認知世界で何処までに当てにできるかは不明瞭だ
「エリヤと真澄は一緒に居る。由奈は……単独か」
位置状況的にエリヤと真澄はパレスの奥地に深く、由奈はどちらかというと僕と反対側の場所に近い。ぶっちゃけどっちともさっさと合流したい。不安で仕方ないが、優先すべきはエリヤと真澄の方だろう。距離も此方が近いし、パレスの奥地付近ならそのままパレスの主と戦えるかもしれない。由奈は単独だが相性的に羅刹相手に負けはしないだろうし、DBチームも異変に気付いて突入をしている事を踏まえれば彼らと合流が一番可能な位置に居るのも由奈だった。
「後は……というか全てはラーヴァナの動向次第か。嫌になるね、ほんと」
その全てがラーヴァナの動向で覆される可能性があるのは本当に困る。あれ一体で他全員を殺し尽くせるだけの力はある。それだけの敵ではあるし、状況を把握していない僕では其処はどうしようもできない。最悪の状況が頭を過る。焦燥と不安で胸がいっぱいになる。それでも、動かなければならない。
「行こう」
セトに跨り、フレスベルグとカルティケーヤで脇を固める。例え最悪があろうともそれを覆す事が出来るのは行動し続ける者だけだ。諦める訳には決していかないと意を固めて、パレス内部を翔け抜けた。
・戦闘リザルト
久遠 フェイ:Lv84→Lv86
カルティケーヤ:Lv76→Lv81(一回死んだがアホ程シャドウと羅刹を殺したので)
フレスベルグ:Lv79→Lv82(敵が死ぬ度に小足みたいに準貫通全体氷結小ダメージをぶつけ続けた結果)
バロン:Lv78→Lv80(勇奮の舞による熱いサポートぢから)
アラハバキ:Lv79→Lv78(徹ししたり盾になって死んだりしたがソウルリンクⅢなので4体以上は経験値伸ばせねぇ)
ラクシュミ・セト:変動なし(死ななかったがソウルリンクⅢなのでry)
・後書き
1話の切りの良い感じにに収めようとするとなんか1話ごとの文字数バランスがおかしなことになる人です。次回は多分此処まで長くならないと思います。
・今回の戦い
試しにワンモアプレスバトル(P3R式)で戦ってみようかなーと思って、敵が羅刹になって、ボスがチェルノボグ(DDSAT2主軸にD2投入)になったり、同キャラ同士で相殺したりしたらなんか挙動がおかしな事になった。多分処理間違っている部分も多大にあると思うので御許しください!(先に謝罪する事で間違いを指摘されてもダメージを軽減するライフハック)。
<久遠 フェイ>
実質モンスターハウスに初手で落とされて死ぬ気で凌いで、何とか勝ったら脳裏に存在しない記憶が溢れ出して混乱状態になりつつも状況が最悪過ぎて直ぐに動かざるを得なかった人。羅刹とはもう二度と殺し合いしたくないと思っている。
<チェルノボグ(DDSAT2)>
面白い能力持ってたのと喰奴なのと影を生み出せるのが良い舞台装置になりそうだったのでという事でボスに採用された人。どう見ても某トライアドの人喰い担当所属っぽいこいつが何でここに居るかだとか、天魔衆に何故協力してるんだとかは作者も知らない。ラーヴァナと色々あったと思われる。ちなみにフェイをシャドウコピーできたのはフェイが悪魔混じりだからで人間がシャドウコピーできるかはよく分かってない。
<フェイ>
久遠 フェイが垣間見たもう一人のフェイと過去の記憶。姿は大体AA元のファビア・クロゼルグの大人形態。彼女の死がきっかけである合一神が生まれる事となった。
同時にその強度以下のレベルのアンデッドはこの輪の中にいるキャラクターに対しては攻撃を行えない。
1度かけるとかけたターンも含めて威力×1ターンの間、魔法の輪は維持される。この魔法の輪は重複しない。
1シナリオ(一連のダンジョンクリアやボス撃破等を指標にする)に3回まで使用可能。使用する度にコストとして現在HPの半分を消費する。このスキルは本来1つの手番に複数回使用できるが、不完全な習得である為にそれは封じられている。
このダメージは防御点で減少できない。弾数を10点消費する。このスキルはレールガン装備時の付加スキルである
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天魔衆撃滅戦 その3
痛みと共に叫び声が聞こえた。私の、苦痛に悶える声だ。
目の前に積み上げられた四肢を切り取られ、皮を剝がされた
『ころして』
お母さんの呻きが聞こえる。その身体は生きたまま喰らう為に延命処置が施され、そんな身でありながら血は流れずに剝き出しになった身体に空気が触れて、想像を絶する痛みを感じて血泡を吹いている。
だから食べた。お母さんを楽にする為に、そして自分が生きる為に。足から頭に掛けて、痛みを長く感じさせないように骨まで素早く喰らい続けた。
『おぉ……これ程の飢餓・飢え、今までにないぞ!』
『通常のそれとは圧が段違いだ。これは彼女が我らの王になるやもしれん』
周囲の
代わりに生まれたのは心にぽっかりと空いた、埋まらない飢えとその飢餓を埋める為の途方もない力への渇望。喰らった母への感情も朧げに、人間性と呼ぶべきものが消えていく。
それが、私が人間から羅刹になった日の夜の記憶。今にも悪夢に見る、私の地獄だった。
\カカカッ/
Lv88 | 半羅刹/剣士 | 久遠 由奈 | 耐性:凡そ全てに強く、物理吸収。火炎・氷結・ 破魔・呪殺・精神・神経・魔力・緊縛反射*1 |
「ちっ……!」
久遠 由奈は凡そ最悪の状況下に居た。あの霧の中、フェイやエリヤといった仲間と分断されてからの単独行動。由奈としても合流優先で羅刹に対しても暗殺に徹し、気配を漏らす事もなかった。であるというのに
\カカカッ/
Lv99 | 喰奴 | ラーヴァナ | 耐性:物理・銃撃に強く、 電撃・氷結・破魔・呪殺・BS無効*2 |
『どうした?鬼ごっこはもう終わりか?』
奴はラヴァーナは此方の隠密も見破り、一直線に由奈の元に駆けて行っている。振り切ろうにも性能面において由奈はラーヴァナの下位互換に近く、逆に袋小路へと追い込まれる始末となってしまった。恐らくだが、万が一にも勝ち目はない。由奈はそう判断し、口を開く。
「何故、私を狙うのですか。お前の狙いはフェイと聞いていた」
『そんな分かり切った質問をしなくとも私の姿を見れば理解はしている筈だが?』
「……同位体」
フェイより話自体は聞いていた。ラーヴァナの姿は、雰囲気は由奈に酷似していたと。厳密に言えば昔の由奈のようだったとフェイは語っていたが、今ならそれよりもはっきりとわかる。
「成程、私が本来辿るべき末路がお前という訳ですか」
目の前に居るラーヴァナはフェイと出会わなかった自分だと由奈は不思議と確信を持って判断できた。あの日に、母を喰らって羅刹となってから殺して喰らって、その輪廻に囚われ続けて何もかも摩耗した自分自身こそがラーヴァナなのだろう。もっとも私もその輪廻から抜け出せている訳ではないけれどと由奈は整然とラーヴァナを見た。
「そうであるなら私を狙う理由なら分かり易い。羅刹は共食いが常。それが自分自身であるのなら、よりその力と血は研ぎ澄まされる」
『そうだ。遍く世界を渡り、私と同様に羅刹に堕ちた
何故力を欲したのかと、問う意味はなかった。羅刹とはそういう存在だからで全て片がつく。通常の喰奴と比較しても燃費も悪く、渇きや飢えも重い羅刹は人を喰らい続けなければどうあがいても生きていく事は出来ない。喰らい続ける為に、狩る側に居続ける為に力を求め続けるのは自然な話だ。
「止まれば飢餓で死に、止まれなければ喰らい続けるしかない。我ながら哀れに過ぎる」
『だが、貴様は違う』
ラーヴァナの声色が変わる。
『これまで喰らってきた全てのユナとお前は違う。羅刹でありながら人間であり続け、それ程力を高めている私など、居なかった』
ラーヴァナが由奈を初めて見た時、最初に湧き出た感情は困惑だった。間違いなく由奈が
であるのにも関わらず、相対したその存在は自身に持ち得ない物を持ち過ぎていた。
人間に擬態する羅刹ではなく、羅刹の力を持つ人間。ラーヴァナにとってそれは有り得ざる存在だった。羅刹とは所詮畜生であると諦観を抱いていたが故に。
『お前をそうさせたのは、やはり』
「フェイですよ。居なければ貴方が喰らってきた過去の私、というべきなのですかね。特筆する事もなく、それの同類となっていたでしょう」
由奈がそう在れるのは何も由奈自身が努力をしただとか、羅刹の飢えを乗り越えただとかそういった事は一切ない。
「お前は何か、私に期待をしているのかもしれませんがそんなものはありません」
『……』
「全部フェイのお陰ですよ。誇張なしに」
フェイの血肉を喰らって、自らの飢えと渇きを鎮める。フェイの心と感情に触れて、心という物を思い出す。今の由奈は肉体も精神もフェイありきで存在している。絆というにはあまりに悍ましい存在依存で、二人は繋がれている。
『成程、な。理解はした』
納得したような口振りでラヴァーナは由奈に殺意を向け、歪んだ異形の六つの腕を振り上げた。
「お話はもう結構ですか」
『元より見え透いた時間稼ぎだ。だが、私にも聞きたい事があった故に乗ったまで』
由奈もまた武器COMPを背に腰に携えた翠色に染まった鞘より剣を振り抜いて、ラーヴァナを見据える。
『お前は強い。その内に秘めた人間性を維持しながらも、その強大なまでの力!今まで喰らってきて中でお前は最上の糧となるだろう。その上で、お前のフェイを手中に収める!』
「勝手な事吐くのは良いですけど、それで別にフェイはお前の物にはなりませんよ」
『奴に協力してもらう必要はない。ただ私の物として、その力を「違いますよね?」……なんだと?』
互いの臨戦態勢はそのままに、由奈はラーヴァナを見透かす。あれは自分自身であるが故に、何を考えているのか、その目的は何なのか容易に想像がついてしまうから
「お前はもしかしたら、あの子が自身の飢えや渇きを癒してくれると思っている」
『……そんなことは』
「あるんですよ。だって、
先程のラーヴァナの問いかけ自体がもうそのまま答えになっている。ラーヴァナの興味はフェイの力ではなく、由奈を人間に引き留めた行為そのものにあった。ラーヴァナひいてはその過去周回、その先の周回においても久遠 由奈に該当する人間はどう生きようと、その生の中で人間から羅刹に堕ちる宿命だった。その多くは羅刹という化物として人を喰らい続けて、その果てに人間に討たれるか或いは悪魔によって喰らわれるかの末路を辿っている。
由奈もまたその
「しかしその上で、お前は私にはなれない。あの子が出会ったのはお前ではなく、私ですから」
『黙れ』
声色に確かな蔑みを籠めて、挑発しながらも由奈は内心では必死であった。ラーヴァナという自分の明確な上位互換、何より奴が持つ防御貫通は自身の護りのマントラすら貫く絶対の矛である。真正面からまともにやり合えば恐らく10秒も持たない。それだけの差が両者には存在している。
既にCOMPにて救難信号は送っている。とはいえ、それも恐らく間に合わないだろうという確信は由奈にはあった。よって単独において由奈はラーヴァナ相手に行える有効打はお互いの思考、能力、性格の一致による精神面の揺さぶりだった。
ラーヴァナは確実に自身の言葉で揺らいでいる。それを確信して由奈はさらに言葉を荒げながら捲し立てる。
「お前が今更あの子に近づこうとしても意味はない。もうそれは私が通った道で、其処に居るのはお前ではなく私だ。それを塗り替える事は出来ません」
『私と貴様、何が違う!!!』
「何も。ですが私はあの子に愛されている。世界を幾ら廻ろうとも独りぼっちの怪物以上になれない、お前と違ってね」
その言葉を吐いた瞬間に、ラーヴァナの姿が由奈の視界から掻き消えた。
『シね!』【殺神】*3
「(掛かった)」【瞬間増強の経】*4
<透明化>*5を利用したラーヴァナの奇襲に対して由奈は
入身 | 誕生篇出典(剛剣)。回避成功時に相手の懐に踏み込み、有利な場所を獲得する技。ペナルティなしで敵を攻撃できるほか、相手は剛剣技能値分(約60)だけ回避ペナルティを受ける。 |
透明であろうと直ぐ傍に居るのならば探知は容易。後はすぐさま武器を振える立ち位置に居れば問題はない。両手に剣を構えて
『衝撃、だと!?』
「対策はしてますよ。可能な限りですが」
雷神剣 | 真2出典。攻撃力148・命中39の合体剣。 付与効果としてSHOCKを与え、攻撃回数が3~6回と非常に多い |
衝撃の鞘 | IMAGINE出典。3分間、自分の武器の相性を衝撃相性に変化させる。鞘から引き抜いた瞬間から効果が発動する仕様(オリジナル) |
天魔衆を攻略するという事はラーヴァナの対策をするという事でもあり、その為の準備や対策は完璧でないとはいえ完成している。
羅刹モード | DDSAT2&オリジナル出典。羅刹である証であり、呪い。 飢えによって攻撃性能が大幅に強化されるが、防御性能が大幅に下がる。 以下の効果を強制的に得る。 ・物理貫通(D2式)を取得し、魔法を一切使えなくなる (物理スキル・アイテムは使用可能) ・物理攻撃時に通常の2倍のダメージを与える。 但し、敵から物理攻撃を受けると通常の2.3倍のダメージを受ける。 ・クリティカル率が大幅に上昇する(+90%)が、 敵からの攻撃のクリティカル率も大幅に上昇する(+60%) ・回避率が大きく上昇するが、命中率が大きく下がる。 |
羅刹王 | オリジナル効果。数多の羅刹を喰らって、 その王を名乗るに相応しい力を手に入れた事の証明。 ラーヴァナの■念■合の果て。以下の効果を得る。 ・自身の物理命中に+50%し、 自身が受ける攻撃のクリティカルの確率を100%減少させる。 ・自身が行う物理攻撃は防御・防御行動を無視する。 ・自身が受ける物理・ガン属性のダメージは5%で受ける。 ・必ず先制が取れ、逃亡も必ず成功する (一部不可。例外あり。透明化状態の時のみ効果を発揮) ・自身が受ける火炎・氷結・電撃・衝撃・地変のダメージは250%で受ける(デメリット) |
羅刹の弱点を概ね補う力を持つラーヴァナだが、その全てをカバーし切れる訳もなく弱点自体も増えてしまっている。物理・銃撃には強いが、物理攻撃自体に弱いという事は変わらず*6、何より多くの属性攻撃に脆弱性を持っていた。
その中でも由奈が選択した攻撃方法は属性連続剣による属性・物理攻撃両面による多段攻撃。フェイの<自然の力>*7をアイテムに付与した上で加工した<衝撃の鞘>と女性にしか装備できない多段攻撃合体剣である<雷神剣>をセット運用。対ラーヴァナ専用装備として扱い、ここぞというべき時に使用する。
羅刹モード(被ダメ230%)×羅刹王(衝撃250%)×攻撃強化(150%) | 約850% |
実際、その攻撃はラーヴァナの耐久力を以ても無視できないダメージを与えて勢いを削いでいる。挑発によって
「では此方の番です」
踏み込み | 誕生篇(剛剣)出典。一瞬の踏み込みにより威力値×1m踏み込み、移動のペナルティを受けずに攻撃できる。敵は直後の攻撃に対して回避や防御の判定値が威力分、低下する。 威力は剛剣技能値を参照する |
由奈とラーヴァナの歴然とした差は依然として存在している。羅刹であろうと人間である由奈の
煌天の会心Ⅲ | 補助効果。格闘攻撃をクリティカルに変更する。 200Xにおいてクリティカルはダメージ2倍である為にそのように裁定。1シナリオ3回まで使用可能。 |
豪傑の転心 | ライドウ出典。約50%の確率で物理攻撃の威力を100%上昇させる |
「獲った!」
『グが、ァッ!』
羅刹モード(被ダメ230%)×羅刹王(衝撃250%)×攻撃強化(150%) ×クリティカル(200X版200%)×豪傑の転心(200%) | 約3450% |
ラーヴァナは
ラーヴァナの
バルーンシード | 真2出典(消費アイテム)。 味方一人対象、あらゆる攻撃を一回だけ無効化する。 |
由奈は
由奈 | 全能力上昇(3ターン継続)。衝撃の鞘(3分継続) バルーンシード(1回無効化) |
ラーヴァナ | 不屈の闘志消費済み。 |
初動は凡そ完璧に終わった。アドバンテージも取って不屈を切らせる程の大打撃を与えた以上、由奈とラーヴァナの戦力差はある程度埋まったとみて良い。それでも尚、由奈には一切の余裕はなかった。ラーヴァナの瞳が黄金色に輝き、
バイオレンス | DDSAT2出典。点滅状態のプレスアイコンを2つ増やす |
『図に乗るなよ、下位互換が……!』
デカジャストーン | DDSAT2出典。敵のカジャ系効果を解除する。 |
破邪の光刃 | DDSAT2出典。敵複数体に2~4回の物理特大ダメージを与え、命中毎にランダマイザ(全能力低下)効果を与える。マ■トラで習得。 |
しかし、事前に敷かれたバルーンシードがその攻撃を防ぐ。攻撃を防がれた事でラーヴァナの
「(上手く行き過ぎている)」
此処までの流れで由奈の心中に浮かんだのは疑念だった。想定通りに事が運ぶ事は結構な事だが、ラーヴァナはそもそも想定外が最も起こり得る敵でもあった。先程の行動もやや消極的と言えて、嫌な予感だけが残っている。それでもやる事に変わりはなく、選択肢もない。
踏み込み | 誕生篇(剛剣)出典。一瞬の踏み込みにより威力値×1m踏み込み、移動のペナルティを受けずに攻撃できる。敵は直後の攻撃に対して回避や防御の判定値が威力分、低下する。 威力は剛剣技能値を参照する |
煌天の会心Ⅲ | 補助効果。格闘攻撃をクリティカルに変更する。 200Xにおいてクリティカルはダメージ2倍である為にそのように裁定。1シナリオ3回まで使用可能。 |
勝ち筋は先程と同様の確定致命を狙った一撃を当てる事。転心まで作用すれば、そのままラーヴァナの打倒すら狙えるだろうが其処まで行かなくとも当たりさえすれば少なくとも
「何……!」
『もう、それは通じないッ!』
無敵の王 | 200X出典(神威)。 使用者とその軍団は戦闘終了まで 使用者が選んだ万能を除く二つの相性に対して無効を得る。 この効果はシーン属性が変更されると解除される。火炎属性と衝撃属性を選択 前の手番における3回行動の最初に(こっそり)使用。 この神威はラクシャーサ族が習得するものである。 |
首に通そうとした刃はラーヴァナに傷の一つも負わさずに
『死ね』
破邪の光刃 | DDSAT2出典。敵複数体に2~4回の物理特大ダメージを与え、命中毎にランダマイザ(全能力低下)効果を与える。マ■トラで習得。 |
破邪の光刃 | DDSAT2出典。敵複数体に2~4回の物理特大ダメージを与え、命中毎にランダマイザ(全能力低下)効果を与える。マ■トラで習得。 |
破邪の光刃 | DDSAT2出典。敵複数体に2~4回の物理特大ダメージを与え、命中毎にランダマイザ(全能力低下)効果を与える。マ■トラで習得。 |
「ぅ、ぐ……ッ!」
由奈に襲い掛かるは夥しい量の光刃乱舞。真澄より渡された<観音神符>*9を全て用いて致命を防ごうとも
『やはりこんなものか。お前がこの私に勝てる訳ないだろう』
「は、はっ……何手か、足りませんでしたかっ」
一手でも損なえばこうなると由奈も分かっていた。どれだけラーヴァナの脆弱性を突いて、追い詰めようとも奴もまたその脆弱性を補える程の攻撃性能を持っている。攻撃を一つでも防がれればその瞬間に攻め手を欠けた由奈側の敗北が決まる、これはそういう戦いだった。
血は溢れ出しているものの、それは死に至る物ではない。ラーヴァナの目的は飽く迄捕食による同化。それによって自らの力を高める事だ。四肢を斬り飛ばされた肉体は動かず、何もできる事はない。
「(ごめんなさい、フェイ)」
気付けば周囲に湧いて出た羅刹とシャドウ、そして近づくラーヴァナを由奈は虚ろな視線で見上げた。ラーヴァナは自身を喰らって、強化された上でフェイを狩りに行くだろう。その場合に勝算がどれ程あるかは分からないが自身が負けた事でフェイに重荷を背負わせてしまう事が辛かった。
『我が糧となれ、久遠 由奈』【渇きの■■】
何より一番辛いのは傍にフェイが居らず、自分が独りで死んでいく事かもしれない。しかしもうそんな思い残しも意味を持たず、ラーヴァナの爪が眼前に迫る。全てが遅く感じられて、意識が遠のいていく。
「そいつは、ちょっと困るなぁ」
気絶する寸前の意識の中で気障な女の声が聞こえた。視界に微かに映る吹き飛ばされる羅刹とシャドウにその場を後退りながら睨むラーヴァナ。
\カカカッ/
Lv100 | 合一神 | オベロン=ティターニア |
「ふぇ、い……?」
自分を庇うようにして現れたフェイによく似た妖精のような何かを見つめて、由奈は意識を闇へと落とした。
・後書き
ちょっと短めですがこのまま書くとバトル2個分で2万とか行きそうだったので分割する事にしました。
<久遠 由奈>
明確な上位互換相手だったので内心超焦りながら戦ってた。
ラーヴァナがほぼ自分と同じような性質・性格ぽかったのでどこぞのテレビのシャドウっぽい煽りを入れて、精神マウント取ってから即座に斬り返す事で何とかダメージを稼いでいた。尚、煽りで発していた言葉の数々は大体自分自身にも刺さっていた模様。
<ラーヴァナ>
由奈と戦わせたらもう少し圧勝かなと思ってたら意外と追い詰められてた人。
対比した事で由奈の闇堕ちした姿みたいになっているが、実際は過去周回含めてこの周回の由奈のみが何かフェイの存在で善堕ちしかけてるとかそういう感じである。ラーヴァナも善堕ちしかけてる上にレベルも高い由奈に興味を持って喰らう前にあれこれ聞こうと思ったが大体が理解のある彼くん構文で煽りも入れられたのでぶちぎれた。ラクシュミーの防御マントラも貫通するのでもっと圧倒するかなと思ったら構造上、属性剣(火炎or衝撃付与の連続攻撃剣)が4倍で刺さるのでそれが刺さりまくった結果として不屈が早々に割れた(約34倍の3~6回攻撃が直撃すれば大体溶ける)。
<オベロン=ティターニア>
色々事情込みで乱入してきた。詳細は次話で
<久遠 フェイ>
実質ヒロインな主人公枠。
今回本編には出ていないが肉バキューム様に描いて頂いたイラストにより、ヒロインぢからを上げている。ちなみに私は絶対領域と肩出しが大好きです(性癖開示)
<透明状態>であるが故に姿も見えないが、ラーヴァナに単体攻撃を命中させると<透明状態>は解除される。
また<透明状態>のラーヴァナは一部のスキルの発動が制限される。
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天魔衆撃滅戦 その4
由奈を仕留める事に成功したラーヴァナはこのままそれを捕食し、この拠点より離脱する事を考えていた。由奈との戦いで体力を消耗しすぎていたし、羅刹の多くを率いていたチェルノボグの気配も消えた。アクシャはこのパレスの主であるし、あれを囮にこの場に居る羅刹と共に離脱するのが最も被害が少ない。そう、考えていた。
『貴様、何者だ。何処から現れた』
「君にはまだそれに喰われて貰っては困る。フェイの為にも、僕の為にもね」
叫ぶラーヴァナに見向きもせずに現れたオベロン=ティターニアは由奈に回復魔法を使い、その血を止めて四肢を繋ぎ止める。ラーヴァナがそれを止めようと襲い掛かろうとしても周囲に居るオベロンの仲魔が居た。
「さて、えーっと、俺が……誰かだっけ」
『その圧、貴様
「……ほんとに覚えてないんだなぁ。ま、加害者なんてそんなもんかもしれないがね」
何処か失望と呆れ、怒りと憎悪を入り混じった視線をオベロンはラーヴァナに向けて、気だるそうに言葉を返した。
「フェイの仇を取りに来た、とでもいえば君には伝わるかな。
『貴様……まさか
「君がぐちゃぐちゃに引き裂いてくれたお陰でこんな姿になっちゃった訳だ。いやはや、ほんと羅刹ってのは粗暴で血生臭くて下劣で嫌になる」
羅刹とシャドウを連れた羅刹王と妖精とダヌーに連なる者達を束ねた妖精王が向かい合う。ラーヴァナはオベロンが何故ここに居るのかを知らず、オベロンもまた細かい状況は分かっていない。
「ま、そういう訳でさ。此処で死んでくれない?」
『死に損ないがほざくな。貴様の屍をフェイの元に送り届けてやろう』
互いに分かるのは不俱戴天の敵が向かい合っているという事だけ。羅刹は唸り、妖精は嘲笑い、敵意と殺意がぶつかり合う。戦いが始まるその直前の不気味な静寂が場を支配して
\カカカッ/
Lv99 | 喰奴 | ラーヴァナ | 耐性:物理・銃撃に強く、 電撃・氷結・破魔・呪殺・BS無効 |
\カカカッ/
Lv85 | 軍勢 | 羅刹天の軍勢 | 打撃。斬撃反射。呪殺無効。破魔耐性*1 |
\カカカッ/
Lv85 | 軍勢 | 羅刹天の軍勢 | 打撃。斬撃反射。呪殺無効。破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv77 | 刑死者 | 魔のヘカトンケイル | 物理弱点。氷結・電撃反射。疾風無効*2 |
\カカカッ/
Lv69 | 法王 | 狂信の塔 | 火炎耐性。氷結・疾風吸収。電撃耐性*3 |
\カカカッ/
Lv69 | 女帝 | ピスティルマザー | 火炎・氷結反射。破魔無効。呪殺弱点*4 |
\カカカッ/
Lv100 | 合一神 | オベロン=ティターニア | 不明 |
\カカカッ/
Lv91 | 妖精 | クーフーリン | 物理吸収。銃撃・火炎・氷結・電撃耐性。 衝撃・破魔・呪殺反射。猛毒・神経弱点*5 |
\カカカッ/
Lv86 | 妖鳥 | モリーアン | 衝撃吸収。突撃・神経・精神無効。 破魔無効(低確率)。斬撃・打撃・氷結・破魔・呪殺・魔力耐性*6 |
\カカカッ/
Lv82 | 魔獣 | ケットシー | 破魔無効。呪殺にちょっと強い*7 |
\カカカッ/
Lv77 | 妖精 | ピクシー | 物理と大半の魔法に強く、破魔・呪殺無効*8 |
\カカカッ/
Lv74 | 妖精 | ホブゴブリン | 破魔が効きにくい*9 |
・配置
羅刹 | 羅刹王 | 羅刹 |
刑死者 | 法王 | 女帝 |
クーフーリン | 妖精王 | ケットシー |
モリーアン | ピクシー | ゴブリン |
『喰い散らせ』
「死に絶えろ」
両者の王の叫びと共に戦端は開かれた。互いの数の多さにより
スクカオート | D2出典。1ターン目開始時、スクカジャが発動する。ケットシーが習得 |
リベリオート | D2出典。1ターン目開始時に自身をリベリオン状態(会心状態)にする。 ケットシーが習得 |
機先 | 真5(神意)出典。 マップ上で敵に気付かれずに攻撃して戦闘を開始した場合、大幅にマガツヒゲージが上昇する。 オベロンが不意打ちでダメージを既に与えている。 |
常在戦場 | 真5(神意)出典。戦闘開始時、マガツヒゲージが少し上昇するようになる |
畏怖 | 真5(神意)出典。 バトル開始時、敵全体に対しランダムに1種類の能力低下効果がかかるようになる。 スクンダが敵全体に付与された。 |
『初手ブーストは基本にゃぁ~!』【スクカジャ】*10
<スピードスター>*13によって速度に特化した羅刹もラヴァーナも
『(最悪のパターンも考慮すべきか)』
ラヴァーナは敵の動きと自分達の置かれた状況を鑑みて、その動きを止める。敵は、あの
羅刹の性質も知っている筈の奴は仲魔に物理貫通にて突破される
血祭り | DDSAT1出典。敵全体に物理属性の中ダメージを与える。クリティカル率が高い |
血祭り | DDSAT1出典。敵全体に物理属性の中ダメージを与える。クリティカル率が高い |
斬撃反射を持つ羅刹達に攻撃指示を出した。*14
無情にも或いは想定通りに
トリニティ | NINE出典。 敵・味方とも戦闘中の自動効果(戦闘アビリティスキル)の効果が発生しない。 通常悪魔ではモリーアンのみがトリニティを習得している |
真夏の夜の夢 | NINE出典。 双方に有効な戦闘スキル効果を自分のパーティに対して無効にする。 オベロンとティターニアが揃った時にのみ発動する事が出来る。 |
『
「そう唸るなよ
ラーヴァナが感じた違和感の正体はモリーアンが持つとされる秘術、
その力の大半を
その現実に
『あの妖鳥を殺せ!奴さえ落とせば!』【バイオレンス】*16【デカジャ】*17【テトラハンマー】*18【終わる世界】*19
アイテムによる
それに
『羽虫や小鬼すら潰せないか!』
ピクシーやホブゴブリンは潰せると考えて放った一撃は確かなダメージこそ与えてはいる物のその命を奪いには至らない。モリーアンに至っては回避すらされた上で
デスカウンター | D2出典。敵の打撃型攻撃を受けたとき、 50%の確率で物理属性の特大ダメージを反撃で与える。 |
クランの猛犬 | D2出典。物理・衝撃貫通を得る。クリティカル率が50%増加。 自身が生存中、味方全体は次の効果を発揮。 「物理・衝撃属性で与えるダメージが10%増加し、 全体およびランダム攻撃で与えるダメージが10%増加。」 以下、秘匿。 |
クーフーリン_思念融合1 | 物理命中率が50%増加。クリティカル率が50%増加。 |
格闘武器 | 200X出典。格闘武器を1つ装備する。魔槍ゲイボルグを装備している。 |
魔槍ゲイボルグ | NINE出典。 攻撃力200・命中100の斬撃武器。力+6・速さ+6・体力+4する。 攻撃時に確率で瀕死を与える。 さらに神族・鬼神族・魔族・悪霊・外道・ボスには種族特攻が入る。 |
『グ、ぎっ!』
『師匠の仇だ。容赦はしない』【一気呵成】*20
反撃に動いたクーフーリンの槍が腕を抉り、無視できない痛手を喰らったラーヴァナは即座に後退った。あまりに鋭く
魔法の輪 | 覚醒篇(ウィッカ)出典。 覚醒段階に等しい数の光の輪を生み出し、輪1つにつき一人の味方を守る。 輪の中に居るキャラクターは 物理・魔法防御点が威力点(ウィッカ技能値参照)上昇する。 同時にその強度以下のレベルのアンデッドは この輪の中にいるキャラクターに対しては攻撃を行えない。 1度かけるとかけたターンも含めて威力×1ターンの間、魔法の輪は維持される。 この魔法の輪は重複しない。オベロンは戦闘開始前に使用。 オベロンはウィッカを習得しており、 レベルの全てをウィッカに注ぎ込んでいる(ウィッカ技能値100) |
衝撃アボイド | D2出典。衝撃属性で与えるダメージが15%増加し、 回避率が15%増加する。モリーアンが習得 |
迅速の権化 | D2出典。悪魔のバトルスピードへの影響が25%増加し、 物理回避率が10%増加する。モリーアンが習得 |
モリーアンは自らの持つ
「流石に一筋縄ではいかないな」【物反鏡】【常世の祈り】*21
オベロンが動く。反射結界を張り直した上での
再び張られた反射結界によって羅刹達は
マハタルカジャ | P4G出典。3ターンの間、味方全体の攻撃力が上昇する。狂信の塔が習得 |
マハガルダイン | P4G出典。敵全体に疾風属性の大ダメージを与える。 ピスティルマザーが習得。 |
メギドラ | P4G出典。敵全体に万能属性の大ダメージを与える。魔のヘカケントイルが習得 |
三体の高位シャドウは
『じゃあ、これ~♪』【メディアラマ】*22【回復ブースタ】*23
『補助ヲ積ミ直ス』【タルカジャ】*24
ピクシーが回復を、ホブゴブリンが
「我が槍、その身で味わえ」
そして、最後に
裂棘の魔槍 | D2出典。 敵全体に3回、防壁貫通を得た衝撃属性の小ダメージを与える。 攻撃成功時、連動効果が発動。 「ランダムな敵に2回、防壁貫通を得た衝撃属性の小ダメージを与える。」 このスキルは反撃効果の発動を無視する。 このスキルを使用するたび強化段階が増加する。 【強化段階:1】連動効果の攻撃回数が3回に変化 【強化段階:2】連動効果の攻撃回数が4回に変化 【強化段階:3】連動効果の攻撃回数が5回に変化 |
衝撃プレロマ | 真5出典。衝撃属性で与えるダメージを上昇させる |
ラーヴァナ達に放たれたのは魔槍による刺突乱打。風を纏う事でそれを矢のように飛ばしながら、同時にラーヴァナですら視認できない正確無比の一撃が針地獄のように並べられて羅刹やシャドウすら貫いていく。
特に集団として統制された羅刹達はその数故にこの攻撃は大いに効いてしまっている*25。積まれた攻撃強化とクーフーリン自体の
オベロン陣営 | 攻撃強化+1(SH1式)・防御強化-1(DDSAT2式。モリーアンを除く) 魔法の輪(防御+100。数十ターン継続)・会心状態(ケットシー) |
ラーヴァナ陣営 | 攻撃強化+1(P4G式)・速度低下-1(真5式) 常時効果無効化中(トリニティ) |
『チぃ、ッ』
徐々に悪化していく状況にラーヴァナは悪態をつきながらも思考を回す。羅刹の力ありきで戦ってきた事のしっぺ返しが今になって来ていた。とはいえ、それは致し方のない話でもあった。羅刹の力は取り外しできるような物でもなく、羅刹と成り果てた者が生まれつき持つ物でそれによる制限の為に戦い方もそれに沿った物に自動的になってしまう。
魔法が使えないというのが特に大きいだろうが、この地でラーヴァナが下僕として量産した羅刹達には属性物理にまで手を広げる余裕がなかった。よって
せめて場所が良ければこの
『(その為に時間を!)』
「悩んでいるようだね。まぁ、それもすぐに終わる」
クランの猛犬 | D2出典。追加効果。 自ターン終了時、つぎの連動効果が発動。「自身をチャージ状態にする。」 |
クーフーリン_思念融合2 | 「クランの猛犬」発動時、連動効果が発動。 「自身を会心状態にする。 さらに2ターンの間、味方全体の攻撃力を20%増加させる」 |
妖精の祝福 | NINE出典。 1カウント毎にパーティ全員のMPを1/20(5%)回復する。ピクシーが習得 |
鼓舞 | 真5(神意)出典。ターン経過時のマガツヒゲージ上昇量が増加する |
「決着はそう、遠くはない」
『……!』
『オオオオオオオオッ!』【バイオレンス】【終わる世界】【終わる世界】【終わる世界】
「初手で潰しに来る事位の想定はしてるさ!」【妖精王の宴】*27【ランダマイザ】*28【ランダマイザ】
オベロン陣営 | 攻撃・速度強化+2(真5式)・防御低下-2(DDSAT1式。モリーアンは1回) 魔法の輪(防御+100。数十ターン継続)・会心状態(ケットシー) |
ラーヴァナ陣営 | 全能力低下-2(攻撃強化だけ-1。DDSAT1式) 常時効果無効化中(トリニティ) |
呪いによってその力を下降させたラーヴァナの三撃は妖精達を討ち取るには至らなかった。
『追撃しろ!』
「君が私より先手取れれば話は別だったと思うけどね。もう終わりだよ」
ラーヴァナの叫びと共に羅刹達は動くが、モリーアンによって再度展開された
大まかな動きや力は変わらずとも細かな動きや挙動に肉体と精神が追い付かず、発生したワンテンポの遅れをオベロン達は容赦なくついていた。
『ニャーッ!』【タルカジャ】*29
『じゃあ、これ~♪』【メディアラマ】【回復ブースタ】
『コレデ最大』【タルカジャ】
完全に形勢が傾いた戦況の中で積まれる補助と回復。妖精達の傷は癒され、その
『これで、蹴散らす!』【裂棘の魔槍】【衝撃プレロマ】【クランの猛犬】【魔槍ゲイボルグ】
SH1式タルカジャ(450%)×チャージ(225%)×会心(150%) ×衝撃プレロマ(120%)×敵防御低下(2段階・25%) ×クランの猛犬(衝撃110%×全体・ランダム110%) | 約2700% |
先程と同様の
『……!?ラーヴァナの姿がない!透明化*30だ!』
朽ち消えていくシャドウと肉片となって打ち捨てられる羅刹の中にラーヴァナの姿はない。それらを犠牲にした透明化と戦線離脱、それこそが勝ち目がないと判断したラーヴァナの選択だった。
「心配は無用だ。
オベロンはそう呟き、その隣を影が駆け抜けて行く。
\カカカッ/
Lv87(-1) | 半羅刹/剣士 | 久遠 由奈 | 耐性:凡そ全てに強く、物理吸収。火炎・氷結・ 破魔・呪殺・精神・神経・魔力・緊縛反射*31 |
「仕留めます」
ラーヴァナは隠形していた自らの位置を凡そ正確に探知していた。ならば自分でも可能であると判断し、その気配を辿る。
空中に漂い始めた霧の中、その壁を飛び回りながら逃げるラーヴァナの気配を捉えた由奈は大地を蹴り壊しながら、一直線にラーヴァナに向けて跳んでいく。
踏み込み | 誕生篇(剛剣)出典。 一瞬の踏み込みにより威力値×1m踏み込み、 移動のペナルティを受けずに攻撃できる。 敵は直後の攻撃に対して回避や防御の判定値が威力分、低下する。 威力は剛剣技能値を参照する。 |
大地震動Ⅲ | 200X出典。補助効果。 このターン、使用者が次に行う攻撃1回の威力に使用者の<レベル×2>を加え、 クリティカル時の効果を「ダメージ2倍」から「ダメージ3倍」に変更する。 1シナリオ3回まで使用可能だが、1回の戦闘では1回しか使用できない。 |
チャージ | 真4出典。次に行う物理・銃撃攻撃力が2.5倍になる。 |
豪傑の転心 | ライドウ出典。約50%の確率で物理攻撃の威力を100%上昇させる |
物理貫通Ⅲ | SH2出典。武器COMP改造。 物理属性で攻撃時、耐性・無効・吸収を無視してダメージを与えられる |
一の太刀 | 誕生篇(剛剣)出典。 連続攻撃には使用できないが、剣の威力が倍になる必殺技。剣相性。 |
「獲ったぞ、ラーヴァナ!」
『き、さまァ……!』
数十m以上の超跳躍から一直線状に振るわれた由奈の太刀は視認できないラーヴァナと思わしき何かを両断する。確かに聞こえたラーヴァナの断末魔と自身の姿すら隠す程に漂う霧の中で由奈は地面へと落下していった。
「奴と同様の質問をするようで癪ですが……貴方は何者なんですか?」
戦闘が終わり、静寂を取り戻したその空間は再び一触即発の雰囲気を漂わせていた。
「一応、
「助けて貰った事に関しては感謝しています。ですが貴方はあまりに危険で、何も分からなすぎる」
オベロンと名乗る目の前の存在がラーヴァナに比類する力を持っている事は先の通り。その上で合一神と呼ばれる存在である事とラーヴァナが
「そうさな。道すがら一個ずつ手短に説明していくか。最奥から随分此処は遠い。構わんか?」
「……良いでしょう」
オベロンにも何か狙いがあるのは間違いない。とはいえ警戒して断り、敵対したとしても自分一人で勝てる通りはなく、何より自分を殺すチャンスは此処に至るまでで何度でもあった事も踏まえて由奈はオベロンの言葉に乗る事にした。
「まずは
「フェイから、貴女のような知人が居たとは聞いた事がない」
「こっちが一方的に知っているだけさ。この世界じゃそれなりにある事だろう?」
「……」
オベロンに対して警戒をはらいながら由奈は先へと急ぐ。道中に居る筈の羅刹やシャドウの姿はなく、先の見えない霧と共に入り組んだ迷路のような廊下が唯々広がっている。
「此方からも質問を。貴女とその妖精達を見た事で確信した事ではありますが、私達がかつて居たヨコハマ裏中華街。アバドンとの戦いで手を貸したのは貴女ですね」
オベロンの肩で鼻歌を鳴らしながら漂うピクシーに由奈は目を向ける。由奈はあの場所において最後の最後に<ワンスモア>の支援を受けた。一部の高位のピクシーしか覚えないと呼ばれるそれはオベロンの仲魔であるピクシーも持ち得る物であり、それを神威で送り込めるとなるとそれこそオベロン位しか候補がいない。
「ついでに言うなら今回の匿名メールを送ったのも
「……何が目的なのですか」
オベロンの動きは何処か歪だった。自分達に対して敵対的な行動は起こしておらず、間接的な形で支援すらしている。その上で直接的な支援は行わずに、その身を隠し続けていた。過去周回におけるフェイの関係者の
「最終目的は言えないが君達と戦う気は此方にはない。現状は、そうだな。あの子に、フェイに聞きたい事がある位か。或いは君なら知っている事かもしれないが
「フェイに会わせろと?」
「無理強いはしない。だが信用に足る程度の支援は行ったと思っている。場所も日時も其方が指定して良い。連絡先だけ渡しておこう」
「これは……」
「妖精文字、という奴だ。あの子なら解読できる」
オベロンから由奈に手渡されたのは特殊な加工がされた羊毛紙。其処には日本語でも英語でも、既存の外国語でもない文字が並べられている。魔術的な
「そして、これが一番伝達しなければいけない事だ。ラーヴァナはあれで死んでいない可能性がある」
「何?」
先に向かおうとした由奈の足が止まる。ラーヴァナは確かに討ち取った。霧に包まれ、姿も見えないが肉体を両断し、命を奪った感触は由奈の手の中に存在していた。
「あれは不完全だがアムリタを飲んでいるらしい。本当かどうかは確証を得られてないがね」
「奴は不死だと?」
「君は羅刹だが、同時に半分人間だ。あれが完全なる不死性を獲得してるならもっと堂々としているだろうし、不死性はあったとしても不完全な物として判断していい」
神話上のラーヴァナはかつてブラフマーよりアムリタを授けられ、それによって神々に対する不死性を得たとされている。それを羅刹であるラーヴァナが飲んだともあれば同様の加護を得ていたとしてもおかしくはない。そうなれば純粋な人間以外では殺すのは難しくなる。
「問題は……この認知世界に漂う霧も真実を見えなくする、或いは誤認かな?そういう性質を持っている。それを利用して死を有耶無耶にして、生き延びようと奴はしていた。口ではかなり煽っていたが、最初から逃げの算段を立てていた訳だ」
「殺せるチャンスはあの瞬間しかなかった。今から追っても或いはあの時、気づいて追おうとしても奴を捉える事は出来ない」
「君の後に続いて攻撃しようとはしたけれど、気配が消えていたからね。死んだか、死を誤認して逃げ伸びたかの2択でその確率が凡そ半々程度に収まるなら生きていると判断して動いた方が良いだろう」
「……厄介ですね、奴は」
「あれは暴力だけの存在じゃない。奴は狩る側の立場に居続ける為に強さと生き残る事以外の全てを投げ売っている。僕も今回ばかりは殺せると思ったが、結果はこの通りだ」
「ですが一度殺せはしました。次に奴が現れたら、もっとうまくやるだけです」
「生きていたとしてもあれだけダメージ与えた以上は暫くの間、奴が出てくる事はないだろう。それまでの間に準備は済ませておきたまえ。
そうして話を続けている内に霧は晴れ、迷路も抜けた。COMPのレーダーもある程度使えるようになり、最奥を目指すフェイと最奥に居る真澄とエリヤの姿を見つけ出す。他のDBチームは羅刹やシャドウと依然として戦闘中であり、最奥に到達するまでに幾ばくかの時間が必要に見えた。
「此処から先は
「フェイに伝言があれば聞いておきますが」
「あの子が思い出しているのなら必要ないさ。では、後は宜しく頼むよ」
その言葉を残した後にオベロンは何らかの転移の術を使い、その場から消え去った。由奈は装備を整え、向かうべき道を確認した後に歩みを再開した。
「……色々と因縁が多すぎるな、私達は」
あのオベロンもフェイを慈しんでいるような様子だったが、その目には確かな狂気があった。どのような結果になろうと一筋縄ではいかないと由奈は考えている。
それでも由奈の行動は変わらない。フェイとの今を、日常を守る。例えそれが血に塗れて、果てに多くの戦いが待っていようとも由奈が人間であり続けるにはそれが必要だった。
ならば心に迷いはなく、振うべき刃に揺らぎはない。由奈はそう決心して、最奥に向けて一直線に駆けて行った。
・戦闘リザルト
久遠 由奈:Lv88→Lv87(不屈)→Lv90(ラーヴァナ一度殺したので)
・後書き
やっとボス連中のデータが出揃ったので良かったです(こなみかん)
今回はオベロンvsラーヴァナというボスバトルで、オベロンが奇襲側という事でこんな感じの結果になりました。ちなみにボス連中のイメージは基本的にこんな感じです
・高能力値&総合力のアンナ&ウリック
(バランスが取れていて穴という穴がないので多分何だかんだ一番強い。ワンパン火力を即座に出せるラーヴァナに対しては不利がつく)
・封殺メタ&瞬発力のオベロン(仲魔込み)
(トリニティ&真夏の夜の夢でショックルーラー(モンスター宣言)みたいな封殺をした上で何故かD2で滅茶苦茶強化された異世界クーフーリンに神意等で補助積んで殴り込んでくる。配下の妖精のレベルは頑張って上げてるが大分パワー不足なので其処が弱点。パッシブ封じても総合力で上を行かれるアンナ&ウリックには不利がつく)
・速度&火力のラーヴァナ(天魔衆込み)
(高速度&高火力&高タフネスでぶん殴ってくる。配下の羅刹も火力倍率は変わらないので奇襲に限れば最強クラス。但し羅刹モードと羅刹王の脆弱性があるので其処を突かれると一番弱い。パッシブに性能全振りしている関係で今回の話同様にオベロン&モリーアンにはほぼ勝てない)
単体のボス性能としてはラーヴァナ≧アンナ>>オベロンみたいな感じになると思います。
<久遠 由奈>
色々衝撃的な情報が多すぎたので情報だけ纏めて思考停止した上で最奥を目指している。
<ラーヴァナ>
由奈に殺されかけてびびって、その後現れたオベロンに対してはほぼ勝てないだろうなと最初から逃走狙いだったボス。霧を拠点内に展開しているのもいざという時に死んでも逃げれるようにする為。アムリタ(不完全)は多分某ブラフマンの同位体辺りから奪ったか貰ったかしてると思われる(逸話的に考えて)
<オベロン>
本人の性能はほぼオベロン&ティターニア+ナホビノパワー(神意)+ウィッカ。
ナホビノとしての性能はやや尖っており、率いられる仲魔も妖精かダヌー神族のみとなっている。
その分、ウィッカをぶん回せたり、仲魔にバフが掛かったりしている。
ちなみにエルフやリャナンシー(ダヌー神族だという記述があった)も採用を考えていたが、性能的に中々採用が難しかった。
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天魔衆撃滅戦 その5
「はぁーっ」
寒々とした冬のある日、私はその寒さに耐えきれず両手を包んで息を吹きかけた。身に纏う巫女装束はその寒気に対してあまりに無防備で、カイロや防寒具を付ける事も許されていない。石畳に積もっていく枯れ葉を竹箒で払っても時折吹きかける冷風が集めた葉を散らしてしまって、私の身体すら凍てつかせていく。
「いたっ」
また飛んで行ってしまった葉を集めようと竹箒を握れば、指に幾つも残ったあかぎれが痛くて涙が出そうになった。そんな私を嘲笑うかのように何度も風は吹いて、石畳に枯れ葉が敷き詰められる。掃除を始めたのはもう数時間前なのにどれだけ頑張ってもこれでは意味がなく、かといって無理だと言ってまた父に暴力を振るわれるのも嫌だった。
でもその鍛錬の成果とやらを見た事は私はない。
其処まで見て、外の世界を見たことない私でもこの環境が歪で、男たちの空虚なプライドを満たすだけの場所だという事も分かった。外の人が帰った夜、父達はその鬱憤を晴らすかのように私達女に暴力を加えた。子供だからと、私は夜に気絶する様に眠ったけれどそれは朝日が昇るまで続いていたらしい。
衣を引き剥がし、獣のように覆い被さって、抵抗するようなら殴りつけて。男たちの下卑た笑いと女たちの苦悶の叫びが丑三つ時に響き渡って、その身を貪り喰われる。
私も将来、ああなるんだろうか。こんな狭い世界で、ただ良いように使われるままに塵のように死んでいく。そんな閉じた未来しかないのなら、いっそ死んだ方がいいのではないかとそう思い込んで
「真澄」
後ろから声を掛けられた。私と同じ巫女装束を着た母さんが其処には居た。おかっぱに切り揃えられた髪を風で揺らしながら、微動だにしない微笑みを浮かべている。
「母さん……」
「社務所に戻りなさい。こんな風の強い日に掃除なんて出来る訳ないわ」
「でも、やらないとお父様が」
そう言おうとして、両手が母さんの両手で包まれた。母さんの手にはハンドクリームが塗られていたのか、あかぎれに染み渡る様に私の手にもそれが纏われていく。
「あの人の事は気にしなくていいの。この掃除も、貴女に対する嫌がらせに過ぎないんだから。戻って、御茶の用意でもしてなさい」
「ぅ、うん、ありがとう母さん」
ぎこちなく笑みを浮かべて、精一杯の感謝の言葉を伝える。いつも変わらない母さんの笑みが少しだけ柔らかくなったような、そんな勘違いかもしれない思いを抱いて私は母さんの手を繋いだ。
私と同じ、ひび割れたあかぎれだらけの手。それでも私を家族として大事にしてくれる人の手だった。この人が居たからこそ、全てを諦められずに生きてこれた。全部その笑みで隠してしまう母さんの思いは分からないけど、それでも母さんだけは守りたい。
だから、男達にも父にも負けない力が欲しかった。父が使う骨法という技は
力さえあればこんな所に居る必要もない。父が私にしたように暴力で黙らせて、母さんを連れて出て行けば良い。外の世界がどんな所かは分からないが、少なくともこんな場所よりは良いと確信はしている。
「母さん」
「ん?」
「私、頑張るね」
「もう十分頑張ってるでしょう。これからもっと寒くなってくるんだから、無理をしない事だけ、今を乗り切る事だけ考えなさい」
「うん!」
母さんの言葉に私は強く頷いた。思えば、母さんは常々言っていた。頑張る必要はないと、今を乗り越える事だけ考えなさいと。なのに私は母さんも私と同じ思いを抱えていたと勘違いをしていた。
未来に夢見て行動する私と未来に目を向けずに何もしなかった母さん。二人の思いが交差することなぞ、有り得る筈もなかったのだ。
私が強くなればなる程に、母さんとの距離はあらゆる意味合いで離れていった。同情と慈愛が籠った視線はいつ日か劣等感と嫉妬と憎悪に塗れた物に変わって、私はそれに気づく事すらできなかった。
母と別離し、故郷を捨てた今ではあまりに遅すぎる後悔だが、その自分の愚かしさを何より私は憎んでいた。
\カカカッ/
Lv85 | 巫女 | 神城 真澄 | 耐性:凡そ全てに強く、火炎・氷結・ 破魔・呪殺・精神・神経・魔力・緊縛反射*1 |
\カカカッ/
Lv75 | ガンスリンガー | 久遠 エリヤ | 耐性:凡そ全てに強く、火炎・氷結・ 破魔・呪殺・精神・神経・魔力・緊縛反射*2 |
「……不味いわね、この状況」
<マッスルドリンコ>を飲みながら真澄は周囲を見て、ぼやいた。異界内部より発生した濃霧により分断された真澄は付近に居たエリヤと合流する事にまず成功した。自分一人では対応しきれるか怪しかった羅刹も感覚に優れ、銃を持ったエリヤが居るのであればその撃破はそう難しい事ではなかった。
とはいえデビルサマナーとして羅刹の集団を完膚出来る戦力を自前で用意できるフェイや羅刹の攻撃自体を無効化できる由奈と比べれば、戦力の強度はやや落ちる。なるべく交戦は避け、その二人や他のDBチームとの合流を目指す、それを指標として二人は異界の潜入を開始したのだが此処で異変が生じた。
複数の羅刹の奇襲とその迎撃、その後に百を優に超えるシャドウの群れが二人の前に現れた。動く壁のように通路全体を覆い尽くすそれらは逃げ道を塞いだ上に執拗に今も二人を追い続けた。
シャドウ達の速度は非常に遅くはあったものの散発的に羅刹と遭遇しては戦闘となり、シャドウ達がその間に追いついて振り切る事は敵わない。徐々に消耗を強いられながらシャドウ達の反対方向に逃げる事しか出来ず、その先は異界最奥だった。
「振り切るのには成功したが、どうにもな。これ絶対俺達を誘い込んでるし」
周囲を警戒し、銃を構えながらエリヤが言葉を返す。最奥付近まで二人が進んだ所でシャドウ達の動きはさらに緩慢となり、羅刹も姿を見せていない。向かうべき道は最奥一つに絞られ、合流も不可能となった。
COMPによる探知は此処が最深部だからなのか全くの当てにならず、此処で立ち止まっていてもいずれシャドウ達に追いつかれるのみだ。最奥に潜んでいるであろうこの
「それでも行くしかないわね」
「そう、だな。行くか」
短くそう交わして、真澄とエリヤは最奥へと進む。灯り一つもない暗い木の廊下が続く中で霧が漂っている。不思議な程に静かで、真澄は先に進むたびに胸を搔きむしるような感触を受けて、嫌な予感だけが脳裏に刻まれていく。程なくして、最深部へと二人は辿り着いた。
「此処は……」
辺り一面に敷き詰められた木の床が血によって真っ赤に染まり、人間の骨や肉片が転がっている。その奥に存在する階段と祭壇。それは丁度、真澄が一度だけ見たことある神社の本殿内部とそっくりで其処が拡張されたかのような様相だった。
『来たか。待ち兼ねたぞ』
その祭壇に無造作に腰掛けた異形の男が言葉を発する。赤黒く染まった袴に異常に膨れ上がり、巨大化した腕が四本。顔に鬼面を付けた、アクシャと呼ばれる男が其処に居た。
「その声……羅刹に堕ちたか、神城 久作!」
『堕ちた、堕ちたか。お前がそれを言うとはな』
神城 久作。それは真澄にとって自分と母親を散々に嬲った怨敵でもあり、同時に自らの父親でもあった。久作より真澄に与えられた物は苦痛のみで、負の感情しか抱いていない。そして久作もまた真澄の事を心底憎く思っている。何せ奴隷としか思っていない女であるのに自分以上の才能を持ち、挙句の果てに自身を殴り飛ばして一族より出奔したのだから。
心も体も砕かれたその絶望と憎悪は察して余りある物があり、だからこそ両者が互いに向ける感情に親が子に、子が親に向けるべきものは何も存在していない。
「何故一族を天魔衆に売ったの。市井に下る事や東京ヤタガラスに従う事だって出来た筈でしょ。なのに、どうして!」
『最早そんな問答に意味はない、生まれるべきでなかった忌々しい我が娘よ。ただお前が此処で殺されるだけだ。私達の手によって』
\カカカッ/
Lv90 | 喰奴 | アクシャ | 不明 |
仮面越しにアクシャの口が三日月に歪んで、立ち上がる。その大きな腕の全てを振り上げて、真澄とエリヤに向ける。
『四肢を捥がれ、臓腑を撒き散らし、自身の存在そのものを否定しながらお前は喰われて死ぬのだ。
「……ッ!」
格闘威力強化(体)Ⅲ | 200X出典。武器を用いない格闘攻撃の威力に「体能力値×3」する。 |
アドバイス | P5R出典。クリティカルを与える確率が2倍に上昇する。 |
震脚Ⅲ | 200X出典。補助効果。 このターン、使用者が次に行う素手に格闘攻撃1回の威力に【力能力値×2】を、 素手以外の場合なら【力能力値】を加える。 ランクⅢの効果によりこのターンにおける全ての格闘攻撃に効果が及び、 格闘攻撃の判定値の1/5でクリティカルが発生する。 この効果においてクリティカルが発生した場合、 200Xにおけるルールを参照してクリティカルは2倍として扱う。 |
舞踏 | 誕生篇・骨法出典。補助効果。 骨法の基本動作で、足捌きを中心とした身体の動きを指す。 すり足の迅速な移動とコンパクトな方向回転によって、 直後の格闘攻撃のダメージに+威力(骨法技能値参照)する。 |
徹し | 覚醒篇・骨法出典。 敵前列1体に相性:-(万能相性裁定)で防御点を一切無効した格闘攻撃を行う。 この攻撃は拡散して、敵前列の他の対象には相性・防御点無視は同様に ダメージ事態は半減した物を与える。威力は骨法の技能値×4を参照。 真澄は60以上の技能値を持っている為に威力は240程度(特大ダメージ)となる |
挑発に乗るかのように真澄は床を震わし、アクシャに向けて跳ぶ。
掌打による浸透撃、それを極限まで引き出す<徹し>は
『くくっ』【バイオレンス】*3
「うそ、っ!」
真澄の<徹し>と合わせるように放たれたのはアクシャの<徹し>。真澄と同等或いはそれ以上にまで練り上げられた技巧を以て放たれたそれは拳同士がぶつかりあって
『死ね』【羅刹モード】*4【獣の反応】*5【涅哩底王】*6【徹し】
弾き飛ばされた真澄の身体は浮き上がり、無防備になった其処に加速したアクシャの拳が迫る。空中という回避挙動が行えない状況に、アクシャが用いた骨法の練度の高さ、それによる動揺が重なって真澄の挙動が遅れる。その拳が完全に真澄を捉え、振り下ろされようとして
煌天の幻視 | 200X出典。自分を除く、味方一人の判定の失敗またはファンブルを成功に変更する。1シナリオ1回まで |
エリヤより放たれた弾丸が振り落とされるアクシャの拳に命中し、その軌道を逸らす。
回転打ち | 覚醒篇(骨法)出典。 敵の格闘攻撃を回避した後で行う反撃技。剣相性。 威力は骨法技能値×3となり、特大ダメージ(180程度)。 掌打である為にこの攻撃は物理防御点を半分として扱う。 |
霊活符 | 誕生篇(符術)出典。 武器または所持者に張り、その武器や拳を霊的な武器に変えて威力を上昇させる。 相性特性により半減・無効・反射する悪魔にもダメージを与えられる事が出来る (本家同様、準物理貫通として処理) |
「そこ!」
『聞いてはいたが面妖な!』
軌道を逸らしたアクシャの拳を頬を擦らせるようにして捌いて、霊活符を張った掌で腕を弾き飛ばす。霊活符による貫通は乗っているが、
『だが消耗はさせた。やれ』
\カカカッ/
Lv74 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv54 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv67 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv59 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
アクシャの叫びと共に影に紛れて現れた4体の羅刹の姿。真澄とエリヤを視界に収めて、その刃を振りかざす。
「させるかよ!」【レールガン】*7
周囲を警戒していたエリヤが羅刹達より一手早く、羅刹とアクシャを連射で薙ぎ払う。2体の羅刹がそれぞれもう2体の羅刹を
血祭り | DDSAT1出典。敵全体に物理属性の中ダメージを与える。クリティカル率が高い |
血祭り | DDSAT1出典。敵全体に物理属性の中ダメージを与える。クリティカル率が高い |
「ええ!」
弾丸の雨を潜り抜けた2体の羅刹が迫る。一撃目をエリヤは見切って回避をした上で<援護射撃>*10にて真澄の回避を援護する。其処から射撃援護を受けた真澄が何とか回避に成功し、<回転打ち>を喰らわせて1体目の羅刹を仕留めた。
続け様に放たれた2体目の羅刹の攻撃をエリヤは幻視を応用した<幸運>*11にて捌いて、再び<援護射撃>。先程と同様に攻撃を避けた真澄が<回転打ち>にて2体目の羅刹を殴り飛ばす。
『これだから、化物共は』
「っ、はぁ……鏡見て言ってくれるか?」
アクシャは一撃も当てれなかった事に嘆息し、エリヤは息を上げながらもアクシャに銃を向けた。アクシャの攻撃及び羅刹の攻撃こそ何とか凌いだもののその攻防だけでエリヤの能力は大分消耗されてしまっている。羅刹の攻撃が通常のそれより狙いが悪くても、エリヤの射撃がなければ回避する事は難しい。エリヤの集中力を鑑みるなら正確な援護は残り1回、自分の攻撃は捌けて2回といった所だろう。長期戦は危うい状況だった。
それに加え、アクシャの先程の<徹し>の事もある。真澄が知っている
だというのに真澄の一撃にアクシャはほぼ同等かそれ以上の一撃を返していた。羅刹の力も物理攻撃に対しては相互に働く*13物であるから相殺させるに至ってはプラスに働く物ではない。詰まる所、真澄の一撃に素でアクシャは拮抗していたという結論に至る。
剛剣を振う由奈や速剣を扱ったとされる法華 参郎*14の存在から羅刹であっても武術を扱える事は疑いようがない。しかしアクシャの振う骨法は何処か歪に感じられて、それと似たような存在と相対した経験が真澄にはあった。
「その
三業会の石 亜南*15が用いた蟷螂拳と相対した感覚としてはそっくりだった。思考と肉体が一致せず、肉体・精神に刻まれたイマージュによって振われる拳をアクシャは振っていた。
『墓暴きは流石に心が痛んだが、一族再興の為だ。彼らもまた本望だろう』
「お前は一族その物も、受け継いだ力も愚弄している!」
『私はそう思っていない。大事なのは力で、其処に至るまでの過程や経緯はどうでもいい。そう教えてくれたのはお前だ、真澄。何せ、お前はその才能だけで我々の全てを凌駕したのだから』
アクシャが取引した三業会によって得た物は二つ。一つは骨法の練達者のイマージュで、2つ目は祭神の力を強化する為の呪物。イマージュ元は神城一族の全盛期とも言える先祖達の骸であり、それを三業会に提供する事でアクシャもまたイマージュを三業会より提供され、その身に注入した。2つ目の呪物により、祭神の性質こそ変わったものの
その2つを得るのに京都ヤタガラスより奪取した四神結界の技術や遺産等を三業会に渡す事になったが、そんなことはアクシャにとってどうでも良かった。
『羅刹の力に骨法のイマージュ。これらを手にした時、震えたよ。まるで神にもなったような気持ちだった。最もそれを遥かに超える存在もこの世には山程居る事も分かったが……それも、どうでもいい』
アクシャの顔につけられた鬼面が取れる。其処には何もないのっぺりとした顔のような物だけがあり、それから発せられる感情は虚ろな真澄に対する悪意のみ。それと同時にアクシャの後方よりどろりとした真っ赤な霧が溢れ出した。真澄とエリヤを取り囲むように顕現したそれ自体から視線を感じる。
「気を付けろ。この霧自体がシャドウだ!」
\カカカッ/
Lv80 | シャドウ | アメノサギリ | 不明 |
霧に紛れる人影のようなシャドウを目視し、エリヤは声を上げる。アクシャ同様にのっぺりとした何もない顔に、境目が分からない透けて通る赤い身体。それらの集合体が霧となって、
『我が一族よ。過去の悔恨あれど、我らは最早一つだ。怨敵を、あの女を討つべき時だ』
「私は何もしていない!」
『いいや、違う。お前は逃げた』
のっぺりとしたアクシャの顔が咎めるように真澄の顔を向く。真澄は無意識に、後退りしてそれと視線を交わして睨みつける。
『お前は唯一人、我ら神城一族の破滅の末路より逃げた。お前の縋っていた母すら置いてな』
「違うッ!」
『その上でお前が我々に与えたのは絶望だった。隔絶した才能、届かぬ力という名の絶望をな』
アクシャが、久作がどれだけ手を伸ばしても自力では得られなかった物を真澄は持っていた。
『だからこそ、お前だけは赦さん』
「真澄!」
「っ、分かって、る……!」
「先手を!」【瞬間増強の経】*16→ 真澄
エリヤが先手を取り、
デカジャ | P4G出典。敵全体の能力上昇効果を解除する。 |
マハスクンダ | P4G出典。3ターンの間、敵全体の命中・低下させる。 |
真っ赤な霧として漂うアメノサギリが動く。
『では、今度こそ死ね』【徹し】【舞踏】【羅刹モード】【獣の反応】【涅哩底王】【豪傑の転心】*17【バイオレンス】
アクシャが踏み込む。速度低下によってエリヤの援護があっても真澄の回避は難しく、これを捌いたとしても二撃目が来る。されどこの一撃の鋭さは
「だったら、受けて立つわ!」【掌握】*18
一か八か、伸るか反るかの場面で真澄もまた踏み込んだ。回避運動は行わず、防御によって攻撃を受け止めるという自殺行為に等しい行動。アクシャの掌打が真澄の掌に突きつけられ、その絶死の衝撃が真澄の肉体に壊していく。
一撃で骨を肉をバラバラに、臓腑を破裂させる衝撃をその強靭な五体と耐性を持つ防具*21にて抑え込み、
『浅い!しかし、物理ならば!』【二連掌】*22
「撃たせる物か!」【二連掌】*23
アクシャの放った二発の打撃は同様に放たれた真澄の技により相殺される。掌打の衝突によって衝撃こそ相殺されるものの、二度巻き起こる風圧と甲高い音が周囲の赤い霧を吹き飛ばす。
\カカカッ/
Lv85 | 軍勢 | 羅刹天の軍勢 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
その中で垣間見た、羅刹の軍勢を真澄は視認する。
「其処ね!」【徹し】【震脚Ⅲ】【舞踏】【手合い】*24
奇襲を仕掛けようとした羅刹に対する逆奇襲。その刃を振われる前に懐にまで潜り込んだ真澄には
直に喰らう打撃に比べれば
「来て!」【式神召喚】*25
\カカカッ/
Lv8 | 妖鬼 | シキガミ | 耐性:火炎耐性・電撃反射・魔力耐性*26 |
道具の知恵・癒 | 真4出典。戦闘中に回復・補助アイテムが使用可能になる。御魂合体で取得 |
宝玉 | シリーズ共通。味方1体のHPを全回復させる |
殴り抜く直前に召喚したシキガミにアイテムを使わせて、回復。例え召喚に成功したとしてもシキガミは低級悪魔であり、
真澄の腕も宝玉によって再生し、エリヤを後方にシキガミを傍らに携えて真澄は態勢を整える。羅刹は見える範囲ではこれで排除した。エリヤもこれ以上の存在を感知している様子は見られない。アクシャにはダメージを与えられていないが、下手に攻撃を加えれば自身と同様に骨法による反撃が待っている。安易な攻撃は出来ず、アメノサギリの排除に動こうとしても
混迷の霧 | P4G出典。自身に対するあらゆる攻撃を無効化する。 P4G本編ではこの状態の時は攻撃を行わず、補助行動のみ行う為に 補助行動のみ行える物とする |
霧に透かされたかのように何もダメージが入らない。此方に対して攻撃行動を取れる状態にも見えないが、アメノサギリはアクシャと同じ
アクシャと真澄の骨法の技巧自体は凡そ互角。威力も同様であり、唯一違うのは手数のみ。1手か2手か、その差がじわじわと真澄とエリヤを追い詰めていた。時間を掛ければ掛ける程にその差は大きくなり、それを覆すには真澄の<徹し>をアクシャに到達させるしかない。
そうして
スクカジャ | P4G出典。3ターンの間、味方1体の命中・回避率が上昇させる。 アクシャに適用。 |
コンセントレイト | P4G出典。次の魔法攻撃のダメージを2倍以上にする。 |
アメノサギリの補助から行動は始まる。アクシャに対する
「
真澄陣営 | 速度低下(P3R仕様。真澄・エリヤ) |
アクシャ陣営 | 攻撃・防御低下(P3R仕様。アクシャ) コンセントレイト(アメノサギリ) |
続け様にエリヤが動く。アイテムによる
「必ず、私の拳を届かせる」
『いいや、お前は此処で何もできずに朽ちる。私がそうさせる』
そして、二人の骨法拳士が同時に駆ける。
徹し | 誕生篇(骨法)出典。 肉体の螺旋運動を拳に集めて撃つ骨法最大の奥義。一切の防御点は無視される。剣相性。 ダメージを受けた対象は耐久力チェックを行い、失敗したらそのまま瀕死状態に。 成功しても大成功でない限りは転倒し、ショック状態で次のターンは一切動けない。 この技はエーテル・アストラル体でも無効となる事はない。 威力は骨法技能値×3で真澄もアクシャも特大ダメージとなっている |
両者の振うその拳に宿るそれは拡散ではなく収束、
拳と拳が衝突し、其処から生じた轟音が鳴り響く。アクシャの<豪傑の転心>は発動せず、その身に降りかかった
『おの、れぇ!』
『いい加減、潰れろ!』【バイオレンス】【徹し】
そして、振われるアクシャの二撃目。アクシャだからこそ耐え切れたが真澄が受ければ死か
「これが最後だ!」【援護射撃】
ならばと、エリヤの銃口がアクシャを捉える。真澄に掛けられた
「そこ、ぉ!」【回転打ち】
其処から身を屈ませた真澄がアクシャに向けて掌によるアッパーカットを振う。霊活符による物理貫通は無効以上の対象に対しては大幅に威力が減衰される。しかし、羅刹相手ならば話は別で当たりさえすれば確実にダメージは与えられ、致命傷に至る可能性も十分にあった。それを狙ってのカウンター戦法は確かに有効で、アクシャの攻撃を防ぎつつ真澄が勝ちを目指すのであればそうする事が必要だった。
『図に乗るなよ。貴様を殺す為に私はあらゆる全てを用意してきた!』【MISS】
しかし、その攻撃をアクシャは肉体を半回転させて躱す。羅刹と呼ばれる存在が持つ力の一つである速度の大幅強化。それはその速度故に命中率が大幅に落ちるが、回避もまた大幅に上昇させる代物だった。
其処に加えてアクシャが得た
繰り返される攻撃と反撃。それによって消耗する両者だが、消耗しているのは明らかに真澄の方だった。エリヤの援護も最早期待できず符も此処まで来るまでのシャドウと羅刹との戦闘で枯渇し掛けて、アクシャにダメージこそ与えてはいるものの後一歩が届かない。目の前に迫るアクシャの一撃を凌いだとしても差は開いていくばかりで、勝負を決めるには前に、さらに前へと進んでいくしかない。
「ならっ!」【掌握】
螺旋を描きながら心の臓を抉る様に放たれたアクシャの拳を再びその手で受け止める。<豪傑の転心>も
『死ね!』
「まだよ!」【不屈の闘志】*29
攻撃は避け切れず、受け切れない。ならばもう命を燃やして、それに逆襲するのみ。胴体に突きつけられたアクシャの拳は胸部よりややズれて肩部に命中。真澄の左腕を一撃で打ち砕き、その振動と威力で左腕だったものが肉片と骨片になってぶち撒けられようとも真澄はまだ生きている。
「シキガミ!」【瞬間増強の経】
白兵戦による一瞬の攻防でもそれが重なり続ければ時間は確実に経過する。シキガミが
「堕ちろッ!」【徹し】*30
『ォォオォ!』【掌握】→ 失敗
ついに到達した真澄の<徹し>は想定外の事で
「これで……!」
『まだだァッ!』
展開スキル | 200X出典。即時効果。 BOSSのBSを解除し、HPとMPを全快する。 以降の戦闘で即死・HPを直接変更する効果を受けず、 STONE・FLY・PALYZE・POISON・CLOSEにならず、全てのBS%を半分にする。 |
即時デクンダ | 200X出典。展開スキルと同時に使用。BOSSに掛けれた低下系効果を解除する。 |
即時デカジャ | 200X出典。展開スキルと同時に使用。 敵全体に掛けられた強化系スキルが解除される。 |
『忌まわしい!悍ましい!何故お前のような屑がそれ程の力を持った!私が、俺がその力を得ていたなら一族の再興は叶っていたというのに!』
執念か妄執か、闘志ではない負の思いをくべてアクシャもまた立ち上がる。
「私が、知った事か!」
『知らぬのなら此処で死ぬがいい!貴様の存在ごとその全てを消し潰す!』
潰し合い、殴り合い、罵り合い、再び
『呪え!アメノサギリ!お前達も奴の事は許せん筈だ!』
混迷の霧 | P4G出典。再使用する事で攻撃無効化状態を解除する |
真っ赤に染まった霧がアクシャの言葉によりその存在を顕現させていく。霧は実体を得て、スライムのような粘液状のように。それらが絡み合い、群体のように密集しながら至る所に見受けられたのが人間の巨大な瞳。不揃いなそれらは焦点が合わないままに揺れ動いている。
「なに、これッ……!」
「来るぞ!」
マハガルダイン | P4G出典。敵全体に疾風属性の大ダメージを与える |
実体化したアメノサギリより放たれたのはペルソナ使い以外では対策が難しい疾風による衝撃破。未だに
「しっかりしろ!真澄!」【幸運】*31
「ぐぅっ!」【五分の活泉】
今この場に存在するアメノサギリは一族の祭神、クニノサギリの成れの果てである。三業会との取引で得られた禍津の呪物を取り込み、其処に一族の女達を捧げてこの姿となっている。その歪な誕生過程において能力はともかくその姿までは神その物の姿を保つことができず、贄となった女達の肉体が実体に反映されてしまっていた。
『最初に言っただろう。お前の母は死んだとな。その結果、アメノサギリと同化しただけの事』
「何で!何で此処までするの!」
『同化はあれの本位に過ぎん!』【徹し】【手合い】【舞踏】
「嘘だッ!」【徹し】【震脚Ⅱ】【舞踏】
アクシャが動く。真澄へと一直線に踏み込んでの
「ぁ、っ」
真澄は見てしまった。アメノサギリの体表に浮かぶ瞳。その中で一つ、眼光が真澄に注がれている。その視線に宿る感情は嫉妬と憎悪と怒り、絶望。真澄が母に最後に向けられた、
一瞬だけ、身体が強張る。動けなくなる。その一瞬こそが命取りとなり、
「ぅ、ぇ゛っ」【DYING】
『ハハッ!く、キキキキキッ!』【徹し】
臓腑をもぎ取り、貫いて一撃を以て真澄は動けなくなる。続け様に頭を潰そうとしたアクシャの一撃は自動的にシキガミによって
「くそっ!」
『貴様も死ね!』
\カカカッ/
Lv58 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv67 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
脳天割り | DDSAT1出典。敵単体に物理属性の大ダメージを与える。 術者の残りHPによって威力が増大。 |
脳天割り | DDSAT1出典。敵単体に物理属性の大ダメージを与える。 術者の残りHPによって威力が増大。 |
真澄の蘇生に動こうとするエリヤを死角から現れた2体の羅刹が奇襲する。回避と速度に特化したエリヤも
『終わったな』
感情の分からないのっぺらぼうの顔を振り上げて、片腕で真澄の頭を鷲掴みにして持ち上げる。貫かれたお腹から血が溢れ出して止まらずに血の気が引いた虚ろな視線を真澄はアクシャに向けていた。
「かあ、さん」
『安心しろ。直ぐには殺さん。宣言通り四肢を捥いで、羅刹共に凌辱させた後に生きながら喰われて貰う。私もお前の母だったあれもそれを望んでいる』
びちゃびちゃと粘液を撒き散らしながら漂うアメノサギリの瞳の一つは依然として真澄に向けられている。途絶えそうな意識が止血代わりに腹部に突きつけられたアクシャの腕で強引に繋ぎとめられる。
何が悪かったのかと、真澄は走馬灯のように加速する思考の中で考えた。母と一緒に居る為に父に虐げられるままに過ごすのが良かったのだろうか。或いは母の事などさっさと忘れるべきだったのだろうか。
最良は自分自身が一族その物を再興する事だったとは思っている。一族の再興を果たせば、父は少なくとも不承不承ながら自分の事を認めただろうし、母もまた同様だろう。一族の男や女もこんな末路を迎えなかったかもしれない。
ただ、真澄には一族に対する愛着は一切なかった。母と自分を苦しめた忌むべき場所と人達。それ以上の思いはなく、その選択こそ一番有り得なかった。だから母を救う事は恐らく自分には出来ない事なんだろうなと口から血を吐き出しつつ、思った。
「ごめんね」
零れ落ちていきそうなあまりに小さな呟き。それは果たして誰に、何に対する謝罪だったのだろうか。連れ出す事が出来なかった母に対してか、此処で死んでしまう事を悲しむであろう人達に対してだろうか。最早指一本動かす事の出来ない真澄にとってそんな思考は意味もなく、苦痛に満ちた意識の中でただその末路を受け入れようとして
「ワイルド、ハント」
聞き馴染んだ少女のような少年の声と共に吹き荒れる万物を薙ぎ払う青緑の極光。それと共に発せられた機関銃のように何百発も射抜かれた矢の嵐が羅刹とアメノサギリを射抜いて吹き飛ばしていく。
『貴様、何故ここに!?』
衝撃と矢弾によってアクシャも後退り、その声の主が真澄の身体を受け止める。
\カカカッ/
ウィッチ(♂) | 久遠 フェイ | Lv86 | 全てに強く破魔吸収。 技・火炎・氷結・呪殺反射。BS無効*32 |
「ぶっ潰す」
仲魔を引き連れ、戦場に現れたフェイはこの惨状を齎した敵を殺意を以て睨みつけていた。
<神城 真澄>
骨法ミラーマッチで相手は2回動くという割と上位互換なアクシャに意外と粘ったが、一族の中で唯一好きだった母がアメノサギリに取り込まれた上に決別されたトラウマを刺激されて一瞬の隙を突かれて撃沈した。
<久遠 エリヤ>
援護射撃やらで真澄の生存線を保ってた人。羅刹と殴り合って真澄がギリギリの所で生き残ってた原因。
問題は自前の火力が銃に依存していて、特大威力クラスではない事。
<久遠 フェイ>
現在進行形でぶちぎれてる。
<アクシャ(神城 久作)>
もっと狡い手なんかで勝とうと作者は考えていたが思った以上に肉弾戦してた人。
自前だとlv16がレベル限界な骨法を使う只の異能者だったが、京都ヤタガラスやら三業会やら天魔衆に擦り寄って骨法のイマージュと羅刹の力を手にした結果、バケモンになった。
強さへのハングリー精神だけは高いのとイマージュ元との相性及び羅刹の力という物理を扱う上で大分相性の良い力を手にしているのでそれなり以上に強い(大体通常羅刹+骨法+獣の反応な構成)
とはいえ力を手にする過程で大分人格が歪んでいる。
<アメノサギリ>
P4G本編と同様のデータだが実態は大分違うシャドウ。
一族の祭神クニノサギリ+三業会がくれた呪物(アメノサギリ)+一族の女(真澄の母親もin)を混ぜ込んだ結果として見た目がブラッドボーンのメンシスの脳みそみたいになっている。
<三業会の人>
アクシャこと久作と取引した人。主に四神関係の結界技術やイマージュ元の死体・遺産なんかを条件にあれこれ取引をしていた。いやぁ誰の事なんですかね。
<徹し>
多分誕生篇と覚醒篇のデータ作ってる人に骨法信者が居るのかなと思う位には強い。
体感雲耀と同等クラスに強い気がしている。
<シキガミ>
場違いな戦闘に出されるレベル一桁。最低スピードでもアイテム使えれば手数として動く事が出来る。問題は命の保証が一切ないって事。今日もシキガミは符にされて召喚されてアイテム使っては死んでいっている
・物理貫通(D2式)を取得し、魔法を一切使えなくなる(物理スキル・アイテムは使用可能)
・物理攻撃時に通常の2倍のダメージを与える。但し、敵から物理攻撃を受けると通常の2.3倍のダメージを受ける。
・クリティカル率が大幅に上昇する(+90%)が、敵からの攻撃のクリティカル率も大幅に上昇する(+60%)
・回避率が大きく上昇するが、命中率が大きく下がる。
リベリオン※D2:自身を会心状態にし、次の攻撃をクリティカルにする。
命中・回避率を上げる
相手の格闘攻撃に対する防御技。威力分(骨法技能値+5参照)だけ相手の格闘攻撃によるダメージを軽減する。この技に成功した場合、骨法の特技を使った攻撃を1回行う事が出来る。
この攻撃はそれぞれ別の対象を取ることが出来る。また、掌打である為にこの攻撃は物理防御点を半分として扱う。威力は骨法技能値×2を参照して、特大ダメージ程度
軽く曲げた両手が互いに触れ合うような骨法独特の間合い。
この効果を発動した場合、術者は<手合い>の距離に踏み込み、
相手の攻撃を封じ、骨法の力を最大限発揮する。
<手合い>の距離内に居る敵は命中・回避値を-威力(骨法技能値参照)。
<手合い>の距離から脱出するには<速さ>による競争チェックに勝つ必要がある。
補助スキル。消費したカードの悪魔を召喚する。真澄はこれを特殊な式神符によって発動する事ができ、他の符と同様に自力での製作が可能。但し、その制約によりこの式神召喚ではシキガミ或いはシキオウジしか召喚できず1体までしか使役できない。
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天魔衆撃滅戦 その6
神城一族と呼ばれる退魔の一族がかつて存在した。五畿の大和国、現在の奈良県を中心に存在した彼らは土佐国より伝来したいざなぎ流による符術と一族伝来の骨法術、祭神である
衰退した理由は時勢に寄る物もあるが、一番は技術の継承が出来なかった事が上げられる。一子相伝であった符術も骨法も凡そ扱うには才能が必要であり、それを悪魔戦闘に用いるレベルにまで引き上げられる者自体が少なかった。
符術はまず符の製作が出来なければ意味がないし、骨法は例え動きは真似できてもそれが悪魔や異能者に通じないのであればそれを用いる必要がない。祭神の力も時代の移り変わりで弱まっていき、現代に至るまでにそれ等ほぼほぼは消え去った。
そんな時代に神城 久作と呼ばれた男は一族の長となってしまった。この一族の長となった時或いはなるまでの間は久作もこの苦難を乗り越えられると信じていた。一族の中で動作をなぞるだけだが骨法の全てを振う事ができ、符術に関しては扱えなくても祭神の結界術を多少なりとも使う事が出来た。後は悪魔を倒していけば
Lv16 | 格闘家/神主 | 神城 久作 | レベル限界 |
だが、あまりに呆気なく自らの限界は訪れた。格上の悪魔を一族の総出で倒しても上がらぬ
さらなる格上を倒せば可能性はと意気込んでも、強大な悪魔との戦いに臆して逃げて、弟や兄を失った。その悪魔も呆気なく、裏京都を守る鬼殺組に討ち取られて久作は深い絶望に包まれたまま目指す事を諦めた。
一族に残ったのは残りカスのような祭神の力に、自らよりも数段劣る男共に雑用位にしか使えない女共。格上を殺せず、物資だけを無駄に消費した以上は再起の見込みもなく、一族の滅亡は凡そ決定したに等しい状況だった。
久作も一族の男達もその破滅を理解してはいたが、その身に抱えた虚栄心がそれを阻んでしまった。其処から始まる無為で意味もない鍛錬に、奴隷として性的にも肉体的にも自らの妻や子供を酷使させる日々。久作も本来なら飲まずにいた酒を呷り、破滅から全て目を逸らしたままに悪戯に時が経つのを微睡んだ思考のままに見ていた。
Lv35 | 巫女 | 神城 真澄 |
其処に現れた、現れてしまったのが自らの娘である神城 真澄だった。幼少期に自分達の鍛錬姿を見ただけの模倣で得た骨法に資料を多少読み込んで取得しただけの符術と結界術。
そんな物で久作の重ねた全ての力は凌駕され、彼女が育ったその時に心も身体もぐちゃぐちゃに殴り潰された。他の男達も同様に潰され、されども命は奪わずに真澄は京都ヤタガラスと取引をした上でこの牢獄より飛び出していった。
京都ヤタガラスとの取引により一族の地位は保たれたが、久作も男達も或いは女達もその全ての心が死んでいた。一族全て以上の力を単身で保持した上に、誇りであった技術もあの女が奪い去っていった。自らの人生はあれの一瞬にも満たないと、そう宣言されたかのような絶望を誰しもが抱えていた。
だからなのか、久作の気が狂っても誰も何も言わなかった。京都ヤタガラスが潰れた後に三業会に縋って、取引しても。或いは力を求めて、天魔衆の軍門に下った事も咎める事はなかった。
全ての者の瞳は霧に覆われたかのようにくすんで、女は呪物を取り込んだ神に捧げられてシャドウとなり、男はその身を羅刹へと堕とした。真実から目を逸らして、その心に抱いたのは真澄という存在に対する身勝手なまでの怒りと怨念。
剥き出しの本音だけを振りかざす彼らは皮肉にも彼らの限界を遥かに超えた力を持った。最早、そんな存在はこの世に存在してはならないというのに
\カカカッ/
Lv86 | ウィッチ(♂) | 久遠 フェイ | 全てに強く破魔吸収。技・火炎・氷結・呪殺反射。BS無効*1 |
「間一髪って所かな。間に合って良かった。本当に」
由奈ではなく最奥に居るであろう真澄とエリヤとの合流に動いたのは正解だった。最奥に向かう最中に届けられた無事を示す由奈からのメッセージ。由奈の生存にほっとしつつもフレスベルグの<虚空の視界>*2にて捉えた状況は非常に切迫した物だった。
パレスの主と思われる幹部級の羅刹とシャドウ及び羅刹との交戦。二人ともそれら相手にただでやられるような玉ではないが、戦力比は2倍以上に開いている。足止めとして置かれていたであろうシャドウの群れをセトの<空間転移>*3にて無視して、時折襲い掛かる羅刹はカルティケーヤの矢嵐で薙ぎ払った。
そんな速度で辿り着いたのにも関わらず二人とも瀕死で、真澄の状態は特に宜しくない。命に別状はないが血を流し過ぎている。顔に生気がなく、蘇生魔法を以てしても意識を取り戻すには幾ばくか時間を要するだろう。直ぐに来れなかった事に罪悪感を抱えながら、真澄の身体を床に置く。
「随分、好きにやってくれたみたいだな」
『チッ……!』
この惨状を齎した
状況を整理する。真澄は倒れ、エリヤは回復はしたものの真澄の護衛及び羅刹の再奇襲の為に能動的には動けない。僕自身もチェルノボグとの戦闘で相応に消耗している。5体召喚はハッキリ言って厳しいだろう。
とはいえ敵も消耗していない訳ではない。真澄から与えられた打撃によって消耗しているアクシャに姿を現す事を強いられたアメノサギリ。羅刹に至ってはこの認知世界内部に居る殆どは狩り尽くされ、潜んでいたとしても精々数体が関の山だろう。
Lv90 | 喰奴 | アクシャ | 打撃・斬撃反射。銃・破魔・呪殺無効。 |
Lv80 | シャドウ | アメノサギリ | 光(破魔)・闇(呪殺)無効 |
その上で僕が最奥に向かってきていると察知したエリヤより送られてきた戦闘データ。これでアクシャ、アメノサギリの耐性や戦い方も把握できた。其処から推察される奴らの弱点や突破口も大まかに分かっている。
『邪魔をするなら貴様から殺すぞ、魔女』
「ラーヴァナでも殺せなかった僕をお前が殺す?よく言うよ」
『見逃されただけの分際で……!』
「そういうお前は羅刹の血と骨法のイマージュがなければ木偶の坊でしょ。借り物で粋がるなって」
『貴様ァ!』
僕の挑発に反応して、アクシャが動く。戦闘の流れは
「
\カカカッ/
Lv79 | 国津神 | アラハバキ | 神経・精神無効。破魔・呪殺・魔力反射*4 |
\カカカッ/
Lv80 | 神獣 | バロン | 物理耐性・破魔・呪殺無効。全ステータス異常無効(BS無効)*5 |
\カカカッ/
Lv76 | 邪神 | マダ | 火炎吸収、破魔・呪殺無効。精神・神経・魔力耐性*6 |
\カカカッ/
Lv80 | 女神 | ラクシュミ | 破魔反射・衝撃無効・バッドステータス無効*7 |
召喚に要する時間によりアクシャとアメノサギリには先手を取られるだろう。よって重視すべきは後の先。手数が確保できている以上は優勢を取り続ける事こそが必要で
「マダ!」
『オチロォ!』【威圧の構え】*8→ アクシャ
その戦術に合わせて展開した四体の仲魔。そのうちの1体であるマダの先手を封じる威圧をアクシャに向けた。
『ぬぅっ!』【バイオレンス(不発)】*9
急加速からの急失速。不意に向けられた圧力によって機先を奪われたアクシャは振う拳を空振らせながら後退る。
マハスクンダ | P4G出典。3ターンの間、敵全体の命中・低下させる |
クエイク | P4G出典。敵全体に万能属性の大ダメージを与え、一定確率でダウン状態にする |
続け様にアメノサギリが
「そんなもんか。色々生贄にしてきた割にはしょっぼい力だね」
『黙れ』
「黙れって言って黙る人居ないでしょ。ちゃんとほら、その無駄にでかい腕で僕の口封じなきゃ」
『言われなくとも……!』
「まぁでもマダの威圧で動けなくなる奴には無理か。ほら、分かる?顔の此処を狙うんだよ?」
『殺す』
「脅しがワンパターンだよ、お前。頭も悪いか」
今後の布石の為に
フェイ陣営 | 物理攻撃・防御2倍(3ターン) |
アクシャ陣営 | 攻撃低下+2(SH1式)・他全て能力低下+1(DDSAT1) |
前列 | アラハバキ | フェイ | バロン | マダ |
後列 | ラクシュミ |
前列 | アクシャ |
後列 | アメノサギリ |
ただ只管に回復と補助を積んでいく。銃を装備した僕とラクシュミ以外の仲魔が前線へ、ラクシュミは後方に。アクシャは前線にて僕に睨みを付けて、アメノサギリはアクシャの後ろでギロりと僕達を見ながら佇んでいる。
「一つ聞きたいんだけど、なんで真澄をそんな憎むのさ」
『そんな分かり切った事を今更問うか!奴が一族を再興できる程の力を持ちながら、我が一族を裏切り!失踪した!それこそが罪だろう!』
「別にクソみたいな実家だったから飛び出しただけだし、やる気のあるお前が弱かったのが一番悪いでしょそれ。お前もそれは分かってる癖に」
真澄が神城一族から出ていった一番の理由はそもそもとして環境自体が極めて最悪だったからに他ならない。外部との連絡が封じられた閉鎖的な空間に男尊女卑による女性に対する差別。その差別や環境は凡そ現代社会においても違法とされるべき物も多くあった。
「真澄だけじゃない。他の女性や或いは男ですら逃げれるならとっくに逃げ出したい環境だっただろうね。意味も力もなく存在する、形だけの退魔一族。それを無理に存続させたのはお前だ、神城 久作」
『我らは滅びるべきだったとでもいうのか!』
「いちいち主語がでかいんだよ。一族を存続させたかったのはお前だけだ」
一族が抱えていた土地や遺産を手放す事で少なくともそれなりの金銭を得る事は出来ただろう。例え現代社会に馴染めなかったとしても東京ヤタガラスなりの援助があれば、有用な者はその構成員として吸収される道もあった。
「それに一族を存続させる道は存在した。お前が自力で強くなる事を諦めず、手を伸ばし続ければ微かながら可能性はあったんだ」
『お前に、才がない者の何が分かると言うんだ!』
「僕には分からない。だが僕は限界に達しようとそれを踏み越え、強くなっていった人々を多く知っている。今ある世界がそれを証明している」
「挫折する事、戦えない事、それ自体を僕は咎めない。僕が戦っているのも才能があるからというそれだけの理由で、多くの人々を救うという大義を掲げている訳でもない。だがお前は真実から目を背けて、プライドを守る為だけに多くの物を捧げてしまった」
久作が力を得る過程で犠牲となったのは何も一族の者だけではない。三業会との取引で三業会の力を増幅させた事。なにより天魔衆として活動した事で人肉を貪り、世の平穏を乱した事は決して許される事ではない。
「今ある現実と折り合いを付けれない我儘な餓鬼がお前だ。その虚栄心が齎した惨状、何より真澄を苦しみ続けた今までの全てを此処で清算して貰う」
『俺は、間違ってないィッ!』
「なら死んだ後もそうしてるんだね」
これ以上の問答に意味はない。
『死ね!黙して、骸を晒せぇっ!』【舞踏】*15【手合い】*16【バイオレンス】*17
半狂乱になりながらアクシャが駆ける。平静を失い、荒々しく僕に肉薄しようとしているがその身に与えられたイマージュによってその動きの正確性は一切損なっていない。
『オオオオオオオオッ!』【徹し】*18【羅刹モード】*19【獣の反応】*20【涅哩底王】*21【豪傑の転心】*22
僕の懐にまで瞬時に潜り込んだ上で振るわれたその一撃を回避する事は難しい。骨法と羅刹の力の組み合わせは実際強力無比であり、直撃さえしてしまえば大抵の者はそれで沈むだけの威力は誇っている。
「けど、ちょっとそれは舐めてるね」
羅刹モード(与ダメ200%)×豪傑の転心(200%)×攻撃低下+2(60%)×万能耐性(50%) | 約120% |
頭を貫こうとするアクシャの掌打を腕で庇って、後退しながらそれを受け切る。高確率で発生する
周囲に浸透されるダメージに関してもその威力は僕に与えられた衝撃が基準となる為に大したダメージは与えられていない。
『ならばァッ!』【徹し】
アクシャの攻撃が続く。再び放たれようとした<徹し>は先程と同様の物であり、狙いは僕から変わっていない。あれだけ煽ったのも主因なのだろうが拡散ダメージで前衛の壊滅を目論んでいるのもあるだろう。
「アラハバキ!」
『潰す!』【徹し】
『何故その悪魔がそれを!?』
「なんか覚えてた」*26
アクシャの拳とアラハバキの拳が衝突する。
「じゃ、返すよ」【レールガン】*27【炎帝の弾丸】*28【焔のSOUL】*29
吹き飛ばされたアクシャとアメノサギリに向けて連射モードのレールガンを構えて、トリガーを引く。共に火炎属性に耐性がない事は確認済みであり、これは何より火炎属性の物理攻撃で、羅刹の脆弱性を貫くことができる。
『アメノサギリィ!』
「ラクシュミ!」
『あの力の昂りは流石に危険ですね』
コンセントレイト | P4G出典。次の魔法攻撃のダメージを2倍以上にする。 |
ネブラオクルス | P4G出典。敵全体に万能属性の特大ダメージを与える。 |
天上の舞 | NINE出典。3ターンの間、味方全員の魔法攻撃力と魔法防御力を2倍にする |
アメノサギリが蠢き、その力を高めるその直前にラクシュミが動く。舞の加護による魔法に対する強力な耐性と増強、やや遅れてアメノサギリがその虚ろな瞳全てに光を灯してレーザーとしてそれを投射する。
「間一髪だな」【魔法耐性】*30
ラクシュミの加護に
『羅刹共ォ!』
「上か」
\カカカッ/
Lv44 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv48 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv51 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
\カカカッ/
Lv39 | 喰奴 | 羅刹天 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性 |
天井のある筈の上側より降り掛かる羅刹の群れ。ぱっと見で確認できるそれらのレベルは低く、本来は戦いに繰り出せるレベルではないのは明らかだ。とはいえ残りの仲魔では羅刹に対して有効的なスキルはなく、全てを薙ぎ払うというのは難しい。
「ごめん。対応お願い」
\カカカッ/
Lv74(-1) | ガンスリンガー | 久遠 エリヤ | 耐性:凡そ全てに強く、火炎・氷結・ 破魔・呪殺・精神・神経・魔力・緊縛反射*31 |
「任された!」【レールガン】*32
緊急的に真澄を守るエリヤを動かす。その場から動かずにレールガンによる対空射撃。レベル差もあり、空中に居る羅刹達は回避する事すらできずに撃ち抜かれていき、奇襲は失敗に終わる。
「ありがとう。助かったよ」
「真澄の状態も随分回復してきたからな。戦線復帰してももう問題ないと思うが」
「いや、いいよ。万が一があると怖いしね」
バロンに<地返しの玉>*33を真澄に対して使用させた後にマダが<メディアラハン>*34にて回復を行う。傷も治り、意識自体は取り戻しているが戦闘復帰にはまだ少し時間が掛かりそうだ。
『何故だ!何故だ、何故!お前達はそうも易々と凌げる!』
それを余所にアクシャはのっぺらぼうの顔のまま、僕の事を睨みつけていた。顔のパーツさえあれば明確な焦燥と困惑が浮かんでいただろう。
『羅刹の力に骨法だぞ!アメノサギリや羅刹達も居る!だというのに何故!?』
「普通はこんな簡単には上手く行かないさ。相殺だって本来は早々起こり得ない。けどさ、お前分かり易いんだよ」
神城 久作と呼ばれた人間は羅刹となるまで最前線は愚か、悪魔との戦闘も大して行ってこなかった。それは限界を超えようとして逃げて、兄弟を殺された過去のトラウマによるものだが、それ故に対人戦闘・悪魔戦闘の双方の経験が欠如している。
「僕の挑発に易々と引っ掛かるのも、かなりの
『っ!羅刹の力があれば突破できると!』
「でも突破出来てない。それが事実で、後もう一つ言うなら……“お前”が一番要らないんだよ」
アクシャは神城久作の肉体と魂、それに羅刹の血、骨法のイマージュを注ぎ込んだ存在だ。羅刹の肉体という白兵と速度に特化した肉体に骨法の練達者であるイマージュが戦闘プログラムが刻み込まれ、神城 久作がそれを統括し、指示を出している。
真澄との殴り合いにおいても久作はその攻防のやり取りをイマージュに一任していた。だからこそ本来なら骨法という分野で決して敵わない存在である真澄に食い下がり、搦め手を使ったとはいえ突破する事が出来た。
この戦い方に穴があるとすれば、イマージュの挙動に久作の思考が関係してしまうという事にある。イマージュが最も適切な対象を自動的に攻撃しようとしても久作が止めれば、其処で終わってしまう。例え久作に止める気がなくとも敵意や憎悪を埋め込まれて、それに反応して対象を誘導されてしまう危険性があった。
加えて、思考ノイズがある或いは久作自身が指示出しする時は攻撃する際もワンテンポの遅れがある。1秒にも満たない遅れだが、超人・悪魔同士の戦いにおいては致命的なまでの隙であり、それを以て相殺のタイミングを合わせる事が出来る。
「羅刹の力は強いし、お前に宿ったイマージュも強力だ。でもお前自身は愚かで弱い。言ったでしょ、借り物の力で粋がるなって」
『き、きききさま』
「自覚はできた?ならそろそろ終わらせよう」
壊れた機械のように途切れ途切れに言葉を発するアクシャを余所に
フェイ陣営 | 物理攻撃・防御2倍(1ターン) 魔法攻撃・防御2倍(2ターン) |
アクシャ陣営 | 攻撃低下+2(SH1式)・他全て能力低下+1(DDSAT1) |
「(アクシャは動かないか、なら)」【行動待機】
機を待つかのように動かないアクシャを見て、此方も行動方針を変更する。ラクシュミが<テトラカーン>を僕に付与し、残りの仲魔もまた待機させた上でアメノサギリが動き始める。
デカジャ | P4G出典。敵全体の能力上昇効果を解除する。 |
デクンダ | P4G出典。味方全体の能力下降効果を解除する。 |
此方が積み重ねていた補助の全解除、それを成したと共にアクシャが急加速しながら距離を詰める。声は発さず、純粋な殺意のみを向けながら奴は拳を握り締めた。
徹し | 誕生篇(骨法)出典。 肉体の螺旋運動を拳に集めて撃つ骨法最大の奥義。一切の防御点は無視される。剣相性。 ダメージを受けた対象は耐久力チェックを行い、失敗したらそのまま瀕死状態に。 成功しても大成功でない限りは転倒し、ショック状態で次のターンは一切動けない。 この技はエーテル・アストラル体でも無効となる事はない。 威力は骨法技能値×3で特大ダメージとなっている |
僕に向けて振るわれるその拳はその破壊力を全て一点に収束させた剣相性の<徹し>。アラハバキはこのタイプの<徹し>は習得しておらず相殺は狙えない。そして、致命を防ぐ<観音神符>もそう数がある物ではなく実はさっきの一撃で消耗しつくしてしまっていた。
『シね!』【羅刹モード】【バイオレンス】【獣の反応】【手合い】【舞踏】
「頼んだ、マダ!」
『カバウゼ~!』【カバー(行動放棄)】【三分の活泉】*35【強靭の権化】*36
拳が当たる直前、バックステップで退いた僕とアクシャの間にマダが割り込む。高い生命力と
『砕キ、殺ス!』【徹し】【舞踏】【豪傑の転心】【羅刹モード】
邪魔者は排除したと言わんばかりにさらに踏み込んで、僕の懐に再度飛び込ぶアクシャ。マダはカバー済みでアラハバキ・バロンも間に合わない。バフも解除されて、此処まで接近されている以上は回避も出来ないだろう。
攻撃は確実に命中する。アクシャの拳が僕の胴体に触れて、ようやく葬れるという確信と共にアクシャは口無しに嗤った。僕もまたそれを受け入れて
「良かった。そっちを選ぶなら、僕の勝ちだ」
胴体に張られた
『な、っにィ゛ッ!』
衝撃は反射され、臓腑を撒き散らして吹き飛ぶアクシャ。万能は万能であるが故にその名がつけられている。あらゆる者に対して通じる、最も安牌な選択。それは悪魔業界における共通の認識であったが、この1年の中でその認識は大いに変わっていった。
テトラカーン | 偽典出典。物理攻撃を撥ね返す結界を一人に作る。 反射する属性は剣・無属性であり、その中には万能属性も含まれている。 属性が付与されているのであれば反射できない |
多様化と高レベル化の果てに万能属性もまた対策が練られるようになってきた。全対応防具から万能耐性、ヨコハマに現れたアバドンの万能吸収。他にも様々な方法で万能属性は防がれており、普遍的に通じはするものの絶対的に通じる属性ではないというのが今の常識であった。
このテトラカーンもその一種であり、その効能は即ち万能反射。対象が単体でそもそもとして使える悪魔が少ないという制限はあるものの万能物理を用いる上に物理攻撃に対して脆弱性を抱えるアクシャに対してはこの反射はとても有効に働いた。
アクシャの攻撃の選択がもう一つの剣相性の<徹し>だった場合は<電気ショック>*37の使用を強いられる所だったが、単体潰しよりも拡散による前線壊滅を奴は優先してしまった。
「でもって、これで終わり」【レールガン】【炎帝の弾丸】【焔のSOUL】
自身の一撃を反射された事によって瀕死となったアクシャに再度レールガンによる炎弾を浴びさせる。その直前にバロンの<勇奮の舞>をばら撒き、射撃と同時にアラハバキの<徹し>が無防備なアクシャの肉体へと突き刺さった。
過剰なまでのダメージを立て続けに受け、アクシャの肉体は崩壊していく。
「筈……なんだけど、しぶとすぎでしょ」
我が名はレギオン | 200X(神威)出典 |
自身に掛けられた全ての強化系・低下系の効果を解除する。使用者はシーンまたは戦闘終了まで最大HP・MP・基本格闘威力・物理防御点・魔法防御点を2倍にすると共に回避判定は行えなくなる。その後、使用者のHPとMPが全快する。使用者はシネマティック・バトルにおけるコスト増加の影響を受けない |
崩壊して、黒いタール状に溶けていく身体にアメノサギリが集い、吸収されていく。
\カカカッ/
Lv95 | シャドウ | マガツアクシャ | 斬撃・打撃反射。銃・破魔・呪殺無効 |
アメノサギリを吸収したことで行動回数が3回となっている。 |
「どうにも最後にこういう敵と相対する運命なのかね、僕は」
アメノサギリと
無理矢理に発動した神威は本来アクシャが使える物ではなく、その結果としてあれには最早アクシャの意識は存在していない。あるのはアクシャとアメノサギリに存在していた悪意のみであり、それのみが原動力。世界すらも取り込んで広がり続けるそれは規模こそ違う物のかつてヨコハマにて対峙したアバドンと同様であり、それ故に認知世界も奴自身も長くは保たない
「だからもう最悪逃げても良いんだけど」
\カカカッ/
Lv84(-1) | 巫女 | 神城 真澄 | 耐性:凡そ全てに強く、火炎・氷結・ 破魔・呪殺・精神・神経・魔力・緊縛反射*38 |
「あれから逃げるのはお勧めできないわね。あれは龍脈からもMAGを吸ってるから自滅まで放置し続ければ、それが滅茶苦茶になる」
回復が完了し、意識を何とか取り戻した真澄が言葉を返す。彼女の護衛をしていたエリヤもまた戦線へと復帰しつつ<宝玉輪>にて僕達の回復を施した。
「なら倒すしかないか。真澄、いける?」
「貴方が隣に居るのにやれないって言う訳にもいかないわ。それに」
「それに?」
「これは、私が決着をつけないといけない
「じゃ、もうひと頑張りだ」
フェイ陣営 | 物理攻撃・防御2倍(2ターン) |
アクシャ陣営 | なし |
前列 | アラハバキ | 真澄 | バロン | マダ |
後列 | ラクシュミ | フェイ | エリヤ |
エリヤと僕は後ろへ、真澄はアラハバキ達と共に前に立つ。そして、
歪な嗤い肥えと共にアクシャより放たれた四つの剛腕。最早人間の手の形状をしていないそれは強引な形で掌を広げ、それを振う。
「私が最初は合わせる!」【徹し】【震脚Ⅱ】*39【舞踏】【格闘威力強化(体)Ⅲ】*40【アドバイス】*41
真澄が飛び出し、アクシャの初撃に合わせるように<徹し>を放つ。質量とMAGが増強された事により剛力そのものは強化されているものの、イマージュによる骨法の
「アラハバキ!その次、また真澄!」【ワンスモア】*42 → 真澄
『言われずとも!』【徹し】
「オッケー!」【徹し】
続け様に放たれた2撃目、3撃目をそれぞれアラハバキ、真澄が迎え撃つ。先程と同様に殴り壊されるアクシャの巨腕は膨張した肉体を無理矢理消耗させる事で複製している。羅刹の物理に対する脆弱性が残っている以上は少なからずダメージは与えているがやはり生命力がずば抜けている。
「これは、私が受け留める!」【掌握】*43
アクシャの最後の一撃を真澄が三度真っ向から迎え撃った。巨腕が真澄を捉え、鬱憤を晴らすか如く真澄の両腕を打ち砕く。
「ぐ、ぬぅッ!」【CRITICAL!】
符を使い切った真澄に
「立て真澄!」【マガオン】*44
「っ、えぇ!」【徹し】*45
その笑みを打ち破るようにエリヤは弾丸にてそれを貫き、真澄が残った片腕でアクシャに掌打による重い一撃を喰らわせる。
『全くヒヤヒヤしますね』【天上の舞】
『回復スルゾ』【メディアラハン】
『ランダァマイザ!』【ランダマイザ】
残った仲魔達が回復と補助を積んでいく。また
200X出典(神威)。屍鬼または幽鬼から成る軍団を編成する |
\カカカッ/
Lv80 | 屍鬼/軍勢 | ラセツの群れ | 打撃・斬撃反射・呪殺無効。破魔に弱い |
\カカカッ/
Lv80 | 屍鬼/軍勢 | ラセツの群れ | 打撃・斬撃反射・呪殺無効。破魔に弱い |
\カカカッ/
Lv80 | 屍鬼/軍勢 | ラセツの群れ | 打撃・斬撃反射・呪殺無効。破魔に弱い |
\カカカッ/
Lv80 | 屍鬼/軍勢 | ラセツの群れ | 打撃・斬撃反射・呪殺無効。破魔に弱い |
アクシャの叫びに呼応して死んだ筈の羅刹が動き出す。肉片と化した者或いは本来この戦場に居ない、別の場で倒した羅刹さえも屍鬼と化して、夥しい数の羅刹だった者達が場を満たしている。
「アメノサギリを取り込んだ影響ね。まさか羅刹にヨモツイクサを宿らせてくるなんて思わなかったけど」
「大丈夫、召喚の為にエネルギーは大分消耗はしてる。焦らず一歩ずつ削ろう」
そうして放たれた3発のアクシャの一撃は先程の繰り返しのようにしてアラハバキと真澄の手によって迎撃される。貫通して相殺されたそれらは<徹し>の震動によってラセツ達の肉体を抉るがそれでは足りない。
「羅刹ならこっちの方が速いか!」【レールガン】
『消し飛びなさい』【メギドラオン】
接近するラセツ達の迎撃にエリヤとラクシュミが動く。レールガンの掃射と万魔の光による二回の全体攻撃は補助の効果もあり、ラセツの大半を消し去るに至るが逆を言えば幾つかのラセツの取りこぼしが発生してしまっていた。
「悪い、撃ち損じた!」
屍鬼と化した事で単体としての性能は大きく劣化しているが、その攻撃性は変わらず鎧袖一触の一撃。対策もなしに触れれば即死に至るそれは手に持つ獲物大きく振りかぶり
「ふんっ!」【雲耀の剣】*46
僕達の後方より乱入してきた黒い影、それと交差するようにしてラセツ達が両断される。
\カカカッ/
Lv90 | 半羅刹/剣士 | 久遠 由奈 | 耐性:凡そ全てに強く、物理吸収。火炎・氷結・ 破魔・呪殺・精神・神経・魔力・緊縛反射*47 |
「由奈!」
「何とか間に合いましたね。色々話したい事は多いですが、決着をつけましょう」
太刀に付着したラセツの黒い血を振り払い、由奈はそのまま前列へと移動。残った仲魔であるバロンが自身に対して<バルーンシード>*48を使用し、マダが<タルンダ>にてアクシャの動きをさらに縛っていく。
フェイ陣営 | 物理攻撃・防御2倍(1ターン) 魔法攻撃・防御2倍(2ターン) バルーンシード(1回攻撃無効。バロン対象) |
アクシャ陣営 | 攻撃低下+2(SH1式)・他全て能力低下+1(DDSAT1) |
前列 | アラハバキ | 真澄 | バロン | マダ | 由奈 |
後列 | ラクシュミ | フェイ | エリヤ |
アクシャの狂笑が響き渡る。無理なまでの
ギガバイオレンス | DDSAT出典。点滅状態のアイコンを4つ増やす (他のバトルにおいては1回の行動で4回の行動権を取得する物として扱う) |
それでもアクシャは此方に対しての攻撃を止めず、その自壊を加速させながらさらに無理を重ねる。屍兵となった羅刹の肉片すらも吸収して、腕ですらない触手を以て骨法による六連撃を加えようとしてくる。アクシャの自我はアメノサギリとも他の羅刹とも混ざり合い、最早神城一族という存在の
「その全てを受け止めて、私は前に進むわ。最後に神城を名乗る者として!」【徹し】
一撃目。真澄の<徹し>と衝突し、補助の差でアクシャの肉体を撃ち抜ける。
『これだけ打てば合わせるのにも慣れる!』【徹し】
二撃目。アラハバキの<徹し>がアクシャの粘ついた腕を殴り抜けて、肉片を撒き散らす。
『準備ハシテアル!』
『タエルゥ!』
同時に放たれた三撃目、四撃目。バロンは
「これで5回目です!」【吉祥天咒法】*49【引き】*50【バイパースマッシュ】*51
五撃目。由奈のマントラによって受け流されたアクシャの腕が胴体ごと切り捨てられる。
「
「ありがとう。行ってくるわ」
六撃目。反撃を喰らい、上半身の一部と腕を残したアクシャの一撃を真澄は打ち砕く。肉片代わりにはじけ飛ぶ黒い粘液を浸透する衝撃で弾き、その一撃はついにアクシャの芯を捉えた。
肉が溶け落ちて、骨だけが残った真っ黒な骸骨はその手に大きな瞳を抱えていた。
あの日或いはあの時、真澄が自身の存在を拒絶された母の瞳。紅に染まったそれは今も憎み、妬み、怒り、何より羨んでいる。翼を折られた母鳥が飛んでいく若鳥を見上げるが如く、その瞳の持ち主は真澄になりたかったのかもしれない。
「もう全部遅いけど、それでも貴女の代わりに生きるから」
瞳に淀みはなく、変わらない。それはもう死人で語らず、母の残滓でしかない。それを理解して、真澄は父の骨と母の瞳を同時に破壊した。
「じゃあね、母さん」
消えていく黒い影に確かな後悔と罪悪を抱えて、真澄はそれを振り払う。主であったアクシャの討伐に伴い、
・戦闘リザルト
久遠 フェイ:Lv86→Lv88(死んでないから順当に伸びる)
久遠 エリヤ:Lv75→Lv74→Lv80(経験値補正があるので伸びやすい)
神城 真澄:Lv85→Lv84→Lv89(母殺し、父殺しの末に過去を振り切った)
久遠 由奈:Lv90(一回切っただけなので変動なし)
アラハバキ:Lv79→83(ソウルリンクⅢによる経験値取得。死ぬほど徹し撃った。もう今後撃たない気がする)
マダ:Lv76→Lv81(タルンダとディフェンスに命を懸けてる)
ラクシュミ:Lv80→Lv83(最初から出て、久し振りに死んでない気がする)
<久遠 フェイ>
怒り半分、実利半分で挑発をしていた。
多分あんまり挑発しながら戦う事に慣れてないので意味あるのかこれ?と思いながらも相手が相手なので通用した様子。
<久遠 エリヤ>
前回の戦闘であまり喋っていなかったが最奥に近づいてきたフェイに情報伝達をしていた。
地味なMVP。
<神城 真澄>
意識半分にフェイの挑発聞いてたら色々気にするの馬鹿らしくなってた。
母に対しては心残りはまだあるが死に別れとはそういう物であると割り切った。
<久遠 由奈>
無明の闇で姿を消しながら踏み込みで爆速で異界を駆け抜けてた人。
性能上、多分単騎でアクシャに勝てる。
<アクシャ>
被害者面してる10割黒幕野郎。
羅刹の技も本来使えたが骨法のイマージュによって骨法スキルしか使用できなくなり、本人もそれで良いと納得していたので気にしてなかった。ぶっちゃけアクシャのHPとポテンシャルで羅刹の全体物理ぶっぱした方が相殺されないので強かった(命中不安はある)。其処らへんも含めていまいち噛み合っていなかった。
<他のDBチーム>
描写してると切りがなかったので今回一切描写なしでした。ヨコハマ事変でやり過ぎたから許してほしい!面子はヨコハマの面子だったり他のDBだったりが紛れ込んでる。大体が野良の猛者。
すり足の迅速な移動とコンパクトな方向回転によって、直後の格闘攻撃のダメージに+威力(骨法技能値参照)する。
軽く曲げた両手が互いに触れ合うような骨法独特の間合い。
この効果を発動した場合、術者は<手合い>の距離に踏み込み、
相手の攻撃を封じ、骨法の力を最大限発揮する。
<手合い>の距離内に居る敵は命中・回避値を-威力(骨法技能値参照)。
<手合い>の距離から脱出するには<速さ>による競争チェックに勝つ必要がある。
この攻撃は拡散して、敵前列の他の対象には相性・防御点無視は同様に
ダメージ事態は半減した物を与える。威力は骨法の技能値×4を参照。
アクシャは60以上の技能値を持っている為に威力は240程度(特大ダメージ)となる
・物理貫通(D2式)を取得し、魔法を一切使えなくなる(物理スキル・アイテムは使用可能)
・物理攻撃時に通常の2倍のダメージを与える。但し、敵から物理攻撃を受けると通常の2.3倍のダメージを受ける。
・クリティカル率が大幅に上昇する(+90%)が、敵からの攻撃のクリティカル率も大幅に上昇する(+60%)
・回避率が大きく上昇するが、命中率が大きく下がる。
リベリオン※D2:自身を会心状態にし、次の攻撃をクリティカルにする。
このターン、使用者が次に行う素手に格闘攻撃1回の威力に【力能力値×2】を、素手以外の場合なら【力能力値】を加える。ランクⅢの効果によりこのターンにおける全ての格闘攻撃に効果が及び、格闘攻撃の判定値の1/5でクリティカルが発生する。この効果においてクリティカルが発生した場合、200Xにおけるルールを参照してクリティカルは2倍として扱う。
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天魔衆撃滅戦 後日談
奈良のとある山岳の廃神社に根付いた天魔衆の殲滅は異界の崩壊と共に終了した。異界崩壊と共に廃神社もまた倒壊してその場に残るべき物は瓦礫のみ。異界を包囲する様に展開されたヤタガラス・悪対・DBチームによって逃げ出そうとする羅刹達も残らず殲滅され、内部に居たであろう羅刹も突入チームによって討ち取られている。その数は数百にも並び、その身元は元々天魔衆所属だった者から誘拐されたであろう適性のある一般人や異能者だったりと様々だ。
突入メンバーには羅刹が相手という事もあり、死傷者は多少出たがロストはなし。結果で言えば天魔衆の本拠地と数百体の羅刹の討伐というこれ以上ない終わりにはなっている、が
「ラーヴァナに、オベロン=ティターニアか」
生きて逃げ伸びた可能性があるラーヴァナに、由奈の前に現れてそれと戦ったオベロン=ティターニアと呼ばれる合一神の存在。これで終わりじゃないかもしれないという予感は抱えていたはものの、せめて事件解決直後位は気を休めさせてほしい。そう思いたくなる頭痛の種が二つも出来てしまった。
ラーヴァナに関しては正直討ち取れなかった事自体はしょうがない。あのクラスの化物が逃げの一手、しかも死んだ時の保険も用意していたとなれば殺すのは至難の業だ。むしろ分断されたあの開始状況から僕ら全員が生き延びれた事が奇跡だろう。あの戦いにおいて一番死に近かったのは紛れもない僕らなのだから。
「殺せている可能性はある、とオベロンは言っていましたがそう考えるのは危険過ぎますからね」
隣で報告書を書きながら由奈が言葉を発して、僕もまたそれに強く頷く。生き延びた場合、傷で動けないだろう事を鑑みて暫く闇に潜み続けるのは間違いないだろうが天魔衆という手駒を失ったラーヴァナがどう動くかは分からない。また羅刹を増やすかもしれないし或いは別の勢力に自身を売り込むかもしれない。
今後もラーヴァナ及び天魔衆残党の足取りを追い続ける必要はあり、その対策も講じていく。可能であればラーヴァナの対処は僕達で行う。方針として前と程変わりはないが、そんな所に落ち着いた。
「妖精文字、このタイプのは本来僕は知らないから読めない筈なんだけど」
オベロンから由奈に渡された羊毛紙。其処に書いてある妖精文字と呼ばれる物は人ならざる妖精が用いる暗号のようなものだ。ルーン文字のように武器や魔道具に刻まれる事があるそれらはその文字の形体自体が妖精ごとに異なる。
ピクシー、エルフ、ゴブリン、種族ごとに決められた妖精文字の幾つかを僕は覚えていたが羊毛紙に刻まれた文字はオベロン・ティターニア間でのみやり取りされる妖精文字の中でも特殊な物だった。
妖精文字として拡散される筈もない二者間でのみ完結する筈のそれは本来僕に読める物ではない筈だったが、不思議とそれを読み解く事が今は出来た。
「伝令の妖精を召喚して、それによるやり取りか。情報交換の場所も複数個から周期的に変更、ね。これほんとに僕しか分からないし、出来ないじゃん」
どうして僕にこれが読み解けたのか、何故オベロンがこれを読み解ける物として紙を託したのか、そもそもオベロン=ティターニアとは何者なのか。その全てはあの時に垣間見た全く覚えのない存在しない記憶にあった。
「僕の記憶の中にオベロンとティターニアが居た。僕はあの二人を両親として扱い、彼らも僕の事を子供として扱っていた。そして僕の死と共にあの二人はオベロン=ティターニアとなった」
オベロンとは違う、この世界のおける僕の
■■の光 | D2出典(欠落)。全ての状態異常にかからなくなる。 |
状態異常に対する絶対的な加護と呼べるべき物が僕に刻まれていた。それは本来あり得ざる力で、刻まれる筈のなかった物。刻まれる筈はなかった力と有り得る筈もない存在の記憶、それら二つに確かな繋がりがあるなら推測は出来る。
「この記憶は多分その妖精の、正確に言うなら記憶に居たフェイの物なんだろうね」
「あのオベロンが貴方を知っていたかのように、まるで知古であるかのように言っていたのは」
「僕の中にフェイが居るのを知っていたか或いは僕自身がフェイであると認識していたかって所かな」
どちらが正しいのかという話なら多分どっちも合っていると僕は認識している。あの記憶は確かに
「僕は
違う自分なのに、遠くから見ているだけなのにあのフェイの喜怒哀楽を感じ取って、顔すら知らないオベロンに対して胡散臭さ・疑念以上の懐旧の念を僕は抱いていた。自分という存在が少しだけ、よく分からなくなる。
「私とラーヴァナも同じ、でしょうね」
「由奈?」
そんな不安を感じ取ったのか、気づけば僕の手を由奈が両手で包んでいた。
「貴方のような、一緒に居れる存在と出会わなければああなっていたという本来の可能性がラーヴァナです。あれに喰われた私の同位体もラーヴァナとさして変わらない存在だったでしょう。私とラーヴァナの違いは本当にそこだけです。奴と話して戦って、其処はよく分かりましたから」
「それは」
「それでも私は貴方と出会ったからラーヴァナではありません。貴方のお陰で今私は此処に居るんです。私にとって必要なのは他の誰でもない此処に居る貴方という事を忘れないで」
「……やっぱ、君には敵わないな」
其処まで言われて何も言えなくなった僕はそのまま抱き着いてきた由奈にされるがままにしがみつくようにぎゅっとされた。
ああいった由奈も何処となく不安そうにして、自分に言い聞かせるようにしている。最近になってお互いに死に掛ける事が多すぎたからだ。僕達個人に限定しても明確に此方の命を狙いに来ているラーヴァナ、ウリックとアンナ。目的が分からないオベロン。世界規模で言うならトライアド、メシア教、ヤクザ、セプテントリオンetcとあまりに危険な存在が多すぎる。
僕達もそれらに対してこの数カ月、戦い続けてきた訳だがどれだけ戦っても終わりは見えないし、いつ死ぬかも分からない。戦いの時は多少ハイになっているから誤魔化せるが、僕も由奈もそもそも戦いに向いたメンタルではない。
戦う事も傷つく事も自分が死ぬ事も怖いし、何より大切な人が死ぬのが怖い。それでも縋って抱き締め合って、お互いが生きる日常を守る為という理由を元に何とか立ち上がって僕達は戦っている。
「ありがとう、もう落ち着いたから大丈夫……そんな名残惜しそうな顔しないでってば」
僕を離さないように抱き締める由奈の手を解いて、身体を離す。本当に名残惜しかったのは僕かもしれないけど、今回の戦いで最も傷ついたのは僕達じゃないから。
「真澄の所に行くんですか?」
「傷は治ってるんだけどね。でも、なるべく一人にはさせたくないんだ」
帰って来てからの真澄は表面上は平静を保っているが、何処となく考え込んでぼぅっとしている事が多い。アクシャとの戦いの傷は魔界医師のファウスト先生にも確認して貰って完治してるのは分かっている。問題は心の傷、その整理の方だろう。
「真澄はさ、色々失い過ぎてるんだよね。好きな人もそうだし、今回は母親だ。それがあんな終わりを遂げて、それを成したのが実の父だった。それらの原因に自分が関わってるかもしれないなら、気落ちしない方が不思議だよ」
「それでも悪いのは彼女ではないですよ」
「理屈では分かってるとは思うよ。でもそう簡単には納得してくれないんだよね、自分の心って奴はさ」
自分は正しい、間違っていない。客観的に見て、それが正しかったとしても自身に少しでも非があるのではないかという考えが過ってしまえばそれは呪いのようについて離れない。これで良かったという思いともう少し何かできたかもしれないという思いは両立する物で、そういった思いはどのような人物であれ大なり小なり抱えてしまう。
「真澄が抱えた心の憂いを全て払う事は出来ない。それでもやっぱり傍には居るべきかなって」
「……分かりました。ですが埋め合わせはしてくださいね。最近はあまり二人で過ごせる時間がありませんから」
「んっ」
由奈の言葉に笑顔で頷いて、その場を離れる。そのまま装備の整備をしているエリヤの様子を見た後に真澄の部屋へと辿り着いた。
「真澄、入るよー」
ノックと声掛けをして、部屋に入る。それなりに大きな一人部屋には符製作の為の道具と作業場、そしてベッドと本棚といった家具がある。真澄はベッドに横たわって、窓から外を眺めていた。その視線は何処か虚ろに感じられた。
「フェイ、また来てくれたのね」
「僕が今の真澄みたいな状態だったら絶対来るでしょ」
「ふふっ、それはそうね……なら、もっと傍に来て頂戴。貴方をもっと近くで感じたいわ」
くすくすと微笑んでる真澄に力は感じられない。先程まで眠っていたのか少しだけ寝惚けた様子の真澄がベッドに座って手招きをして、傍に寄った僕の身体をぷらんと持ち上げる。
「はい、捕まえた。にしても軽すぎて不安になるわね。ちゃんとご飯食べてる?」
「ちゃんと食べてはいるよ。それ以上に動いてるのは君も分かってるでしょ?」
「まぁ、ね。でも細すぎるのは心配になるから、もっと肉を付けなさいな」
「むぅ」
持ち上げられたままにぺたぺたとまるで猫を扱うかのように触れられて、満足したのかそのまま正面を向くようにして膝抱きにされた。こういうのって大体男側が女側にする奴と思うんだけど、いつも抱き締められる側だな、僕。
「貴方は小っちゃいしやわっこいし、その見た目と服装ならこういう役回りになるのは当然でしょ」
「あ、あれ、見透かされてる?」
「気が抜けてる時の貴方は顔に出やすいの」
困惑しながら真澄の顔を見上げれば、こつんと額に指を押し当てられた。真澄はくりくりと指を回転させてはその手を僕の頬へとやってされるがままに頬をむにゅむにゅしている。
「ん、ふふっ。ほんと、邪魔が入らず貴方と一緒に居れるなんて何時振りかしら」
何処となく寂しげに笑って、真澄は僕の顔をただ見つめていた。真澄の濡羽色の長い髪が帳のように僕の顔を包み込んで、手空きになった手が僕の髪を指で解いて梳かしている。
「その割には顔が浮かないね。声も元気がない」
「……」
「だから話してほしいな。一つずつ」
「ええ」
真澄の口が揺れて、言葉を漏らす。いつもとは違う儚げな微笑みには明らかな悲哀と苦痛が込められていて、それは親を探す迷子のようにも感じられた。
「あの場所を捨てたのは私だった。母にあの目を向けられて、逃げだす様に捨てたのも私。それを間違いだとは、思わない。一族だって、あの場所諸共消えた筈なのに」
頬に雫が落ちる。真澄の瞳から流れた涙だった。
「消えないの、ずっと。心が痛くて、苦しくて、壊れてしまいそう」
落ちる雫は増えて、止めどなく溢れた。それは真澄の抱えた罪悪と後悔その物で、同時にそれは消して治せない疵でもある。
「その痛みを無くす事は僕には出来ない。分かち合う事も、出来ない。僕はまだその経験がない」
何かを失ったという経験。僕にはそれがない。厳密に言えば、失くしたという実感が僕には存在していない。由奈は自身が羅刹の力と引き換えに、人間であった自分と当たり前の愛を喪った。エリヤは超感覚と引き換えに、その身の尊厳を奪われて妹すらもその末路を辿っている。そして、真澄は自由と引き換えに過去の全てが消えていった。
僕は生まれてから何も変わっていない。手足を面白半分に千切られて、悪魔にも人間にも犯されいたあの頃と由奈達と過ごす今とで、失った物は何もない。
僕が生まれる為に失われた母さんも、その結果として悪魔人間となった身体も、父さんに連れられて行われた人体実験もその全てが僕にとっては当たり前だったから。肉体的な痛みはあっても、そうであると最初から認識をされてしまえば其処に心の疵は生まれない。
「けど、そうだね。僕に想像する事は出来る。それは消えないから痛いんじゃない。消えてしまって、想い出してしまうから辛いんだって、ね」
そんな僕にあったのは経験のない、失う事への恐怖。其処にあるべき物が無くなって、二度と触れる事が出来ない。それがたまらなく怖い。もし戦いの中で由奈を、真澄を、エリヤを失ってしまえばと想像が過るだけで、震えが止まらなくなる事もあった。
「失ってしまった物は二度と帰っては来ない。それでも触れられない過去だけが記憶に残留して、想い出す度にそれがもうこの世にはない事を実感してしまう。僕が一番怖くて、堪えがたい物を君は感じてしまってるんだね」
両手を伸ばして、流れる涙はそのままに真澄の頬に触れた。その手に擦り寄るようにして身体を捩らせた真澄の顔は酷く痛々しく、溢れる感情
「ごめんなさい……私、強いのに。強いと思ってたのに、こんなにも私が脆くて弱かったなんて知らなかった」
「僕達は強くはないよ。ただ、力を持ってるだけで人間なんだ。その脆さや弱さを捨てて強くなろうとすれば、もうそれは悪魔なんだよ」
覚醒者・異能者もその力、容姿の相違はあれど人間である事には違いない。どれだけ肉体的に精神的に強くなろうと人間であるのなら、その心の痛みは平等に僕らに襲い掛かってくる。当たり前に死ぬのは怖いし、傷つくのは恐ろしい。その恐怖に打ち勝っても、大切な物を失ってしまえば喪失感と絶望感に包まれる。
元より死が近いこの業界においてその類の恐怖と喪失は遍在しているといっても良い。それらを超えられるのであれば前に進むことができ、受け入れられるのなら問題はない。だが耐え切れずに歪んでしまえば、辿る末路はあまりに悲惨だ。
歪んで手を伸ばすのはどのような物であれ、突き詰めれば悪魔の力。大切な存在を取り戻そうと悪魔の禁忌に手を染めれば待っているのはより最悪な終わりだけで、力を求めようともそれに溺れて自滅するのみ。それらから逃れて生き残ったとしても心も体も悪魔となるだけで、其処には本来あるべき人格は残っていない。
「神城一族だってそうだし、天魔衆だってそうだ。悪魔の力を求め続けて、人間性を捨ててしまえば人間の世界には居られなくなる」
「父さんは、きっとこれに堪え切れなかった。母さんも私が歪めてしまって、父さんに従ってしまった。けれどこの痛みを失くしては、捨ててはいけないのよね」
「強要は出来ない。忘れる事で前を向ける事だってあるし、強くなるのにそれは不必要な物だっている人もいる。だから最後は真澄に決めてほしい。どれだけ時間を掛けてもいいから」
「……ありがとう」
短くそう答えた真澄はそのまま口を閉ざす。少しだけ落ち着いた顔つきで僕をぎゅっと抱き締めながら、押し黙っている。それから数分か或いは数十分か、僕の髪を梳かしながら真澄が独り言を零す様に喋り出す。
「私の我儘だけど葬式でもしましょうか。形だけの、小さな奴。それには貴方と私、エリヤと由奈が居てくれればいいわ」
「んっ」
もぞもぞと真澄の胸の中で動きながら、瞳を合わせる。
「いいよ。それで君の中で区切りがつけられるなら」
「それで全て自分を納得させる事は出来ないし、貴方の言った通り時間は掛かると思うわ。それでも母さん達がこの世界に居たって事、忘れたくはないから」
「それが葬式ってものだからね。スケジュールは何とかこっちで調整しとく」
こくりと頷く真澄はその手に分厚い本を持っていた。装飾や質感から鑑みるに自作されたものでごく最近に作られた物だ。
「それは?」
「神城一族が継承していた骨法ならびに符術・結界術に関する自作の秘伝書よ。もっとも昔盗み見て覚えた奴に私の経験と知識を加えて大幅改変された奴だから、殆ど我流ね。これを2冊作ったから、何処かの信用できる組織に渡しちゃおうかなって」
「一応聞くけど、いいの?」
「私はあまり教えるの得意じゃないから弟子は取りたくないし、かといって何も残さないのもどうかと思ってね。だからまぁ継承或いは知識や技術として残してくれそうな然るべき場所に納める事にしたの。その2冊を渡す所はヤタガラスと技研の予定よ」
「ヤタガラスは聞くまでもないけど、技研は知らないなぁ」
名称的にアーマードでコアで六であれこれしていたあの組織がどうしても浮かび上がる。
「正式名称は秀英戦国技術研究所*1。ガイア系の組織で第二次の時のごたごたで焚書されかかった秘伝書なんかを集めてた組織よ。私も行った回数はそれ程ないのだけどトップの琴葉護藤さんとは何度か仕事一緒になった事あるから悪いようにはしないでしょう」
「成程ね。いいんじゃない?」
「後、其処の娘さんと手合わせした時に色々シンパシー感じちゃって」
「ちょっと不安になってきたな」
何処からかママ活という言葉が頭を過った。シンパシーというのも……いやこれ以上考えるのは止そう。真澄が前向きに色々考えてくれてるだけ、良い事の筈なのだから。
「取り敢えずそれに関しては了解したから良いとして、まだ何か言いたい事がありそうな顔だね」
「……私が貴方をヤタガラスに誘い続けてた事、覚えてる?」
「初めて会った時から君がこっちに来るまで言われ続けていれば、頭から抜け落ちる事はないよ。けど君が此処に来てからは誘われた事ないね、そういや」
僕と真澄のファーストコンタクトは概ね最悪だった。僕の容姿を見て、僕を僕の母さんだと誤認して詰め寄ってくる真澄と僕に近づく真澄に切れ散らかして殺意を溢れ出していた由奈、そして何も知らずにぽけーっと立っていただけの僕。
其処からなんやかんや共に受けていた依頼をいざこざありつつ完了させて、お互いに事情を説明。其処から真澄の執拗なヤタガラス勧誘が始まった。
「貴方をヤタガラスに勧誘していたのは能力の希少性だとか、貴方が幼過ぎる事だったり、由奈への嫉妬だとか他にも色々あったわ。でも一番は貴方まで失いたくなかったから」
真澄の声色がまた沈んで、深く僕の身体を抱き締める。痛くはないががっしりと掴まれて身動きが取れない。
「ヤタガラスに行っても、結局僕がやる事は変わらなかったとは思うけどね。新城さんとか、弦一郎さんだとか今もほぼ休みなしで頑張ってくれてるし、僕もきっと今と同様に最前線で戦ってたと思う」
「それでも傍に居てほしかった。私の手が届く範囲に、守れる場所に、貴方を失わない為に。その為なら由奈が一緒に居ても良かった」
真澄が縋るような眼つきで僕を見ている。まるで此処に僕が居る事を確認するかのように、或いは僕を通して違う誰かを見ているようなそんな感触。その正体を僕もまた把握している。
昔、僕の母さんだった人は真澄と親友だったらしい。実際に見てきた訳ではないし、詳細には分からないが真澄にとって一番大切な人だったというのは間違いなかった。そして写真で確認した限り、僕と母さんの容姿は酷似している。
真澄が僕に執着するのもそれが原因なのは明白で、僕の姿に母さんの影を真澄は追っているのだろう。二度と会えない母さんの影を。
「由奈はヤタガラスには行けないよ。ファントムに居た頃にヤタガラスとかなり戦ってるし、相応に殺しもしちゃっただろう。それを身内認定する事は難しい。僕も由奈から離れる気はないから、当然僕もヤタガラスには行けない」
「それは、もう分かってるわ。駄目元だったし、もしかしたらって思って誘い続けたんだもの。けどそれももう終わりね」
不意に唇に感触を感じて、そのまま目を閉じて受け入れる。
「貴方が来てくれないなら、私が貴方の傍に行くわ。由奈やエリヤが居るのは関係ない。私が貴方を守る」
「いいの?僕にはメリットしかないけど、そっちにも立場とかあるだろうし」
「貴方には散々世話になったし、今度は私が支える番って事よ。後、なんか私のつまらないプライドで由奈に貴方取られ続けるのイライラしてきてたから」
「ふふっ、そういう事ならいいのかな?」
そうしていると特に疲れてもいないのに自然と睡魔が襲ってきた。抱かれていて、安心してしまったからだろうか。少しだけ気恥ずかしい
「ん、ぁ……これからもよろしくね、真澄」
「えぇ、これからずっと一緒に居ましょう、フェイ」
母親が子供に言い聞かせるように、うとうととした意識の中に柔らかな声だけが響いている。そのまま真澄に頭を抱き締められるままに、僕の意識は微睡の中に落ちていった。
<久遠 フェイ>
女の胸の中でシエスタを決める男(の娘)。しょうがねぇだろ、実年齢もショタなんだから。
<神城 真澄>
そのうちママ活の口実にヤタガラス勧誘を使ってはいけないで捕まりそうな人。
戦いの中ではハイになってたので振り切れたが日常に戻ってきてふと考えたら色々止まらなくなってきてしまった。感情の依存先が実の母親→フェイの母親→フェイと転々としているが、依存先が悲惨な末路を遂げてるので不安で仕方ない。某ケガレビトの某ロリアラサーグラップラーに親近感を感じているが、手を出してるのでシンパシーを感じる資格は特にない。
<久遠 由奈>
この後、信じて送り出した相棒が恨めしいライバルの胸の中で眠っているのを目撃する。
<久遠 エリヤ>
ずっと真面目に装備の整備しながらこの世界について勉強していた。
何だかんだで由奈と真澄と仲良くやっているし、二人の仲を取り次いだりしているが
時折しおらしい態度をフェイに見せるので警戒され始めている。
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