青く透き通る世界に光の種を (樫尾格)
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プロローグ
初対面


あらすじ末尾にある通りに、酔った勢いで唐突に沸いて出たプロジェクトムーン作品であるロボトミーコーポレーションの幻想体の力を使いつつ、戦闘には一切参加しないで先生の護衛だけを行う男子生徒概念と、そんな生徒を引き摺り回しながら色んな問題を解決していく先生(♂)概念です。

主人公の男子生徒にときめくメインヒロインは存在しません。みんな先生ラブ勢です。


 キヴォトスに赴任した初日のゴタゴタから次の日のこと。リンちゃんからモモトーク経由で連絡が来た。

 

リン「先生、お疲れ様です。昨日伝え忘れた内容があった為、急ぎこちらでお伝えいたします。」

 

先生「お疲れ様。もしかして急な要件だったり?」

 

リン「いえ、シャーレで解決していただきたい問題は今の所ありません。」

「先生はキヴォトスの外部から来たお方。シッテムの箱があるとはいえ、ここでは命がいくつあっても足りないかと思います。」

「そこで、こちらで持て余している人材を一人、先生の護衛におつけいたします。」

 

先生「そこまでしなくても…」

 

リン「先生に万が一があっては大変ですから。それに」

 

先生「それに?」

 

リン「その方には、シャーレの部長として先生の補佐をしていただくように説明してあります。」

「先生の身ひとつで解決できない問題もございますので、その方にも協力していただき、問題の解決をしていただければと思います。」

 

先生「その人はいつ頃来るの?」

 

リン「本日の正午にはシャーレに着くと思います。」

「気難しい方ではありますが、対応してみたところ、常識的な方ではありますので。」

 

先生「分かった。ありがとうね。」

 

リン「いえいえ。では」

 

 

 そうしてしばらくリンちゃんから追加の連絡が来ないことを確認して、時計を確認する。正午まではまだ少し時間を持て余してしまう。

 

 アロナに話してみようか。

 

 

⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

「はい。こちらでもシャーレの部長として、一人の生徒が登録されています。ただ…」

 

"ただ?何か問題が?"

 

「はい。その生徒の名前は生命(せいめい)アイン。キヴォトス唯一の男子生徒にして、矯正局の囚人です。」

 

"囚人?何か悪いことをしたの?"

 

「こちらで確認できた罪状は【大量殺人】。光の種学園の生徒全てを殺害したと説明し、自身の身柄を拘束するように要求したとのことです。彼はその光の種学園の元生徒会副会長だったとも供述しています。」

 

"…どうやら訳ありの生徒のようだね"

 

 殺人とはこのキヴォトスでもタブーと言われるくらい触れてはならない領域のものらしく、またキヴォトスの生徒は神秘により並大抵のことでなければ死ぬことがない肉体だと聞いている。

 昨日だってJHP弾をして、肌に傷が残るとユウカが言ってたくらいだから、キヴォトスの生徒に深い傷を負わせるのはほとんど不可能だろう。

 

「ですが先生。その光の種学園は、どのデータベースにも存在しない正体不明の学園なんです。これから来るアインという生徒も謎に包まれています。」

 

"そっか。いろいろ調べてくれてありがとうね"

 

「いえいえ、これくらいしか調べられず、お役に立てなくてごめんなさい。気をつけてください、先生。」

 

 

直接顔を合わせれば、何か分かるだろうか。

 

 

⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 

 その後、正午を回るくらいに、シャーレのインターホンが鳴り響いた。その後、キヴォトスで珍しい若い男性の声が聞こえて来た。

 

「本日付けでシャーレの部長として先生の補佐を担当することになりました、生命アインです。連邦生徒会から連絡が届いているとは思いますが、先生はいらっしゃいますか?」

 

"よろしく。私が先生だよ。今扉開けるね。"

 

 そして、シャーレの玄関まで向かうと、その声の主に出会うことが出来た。

 

全身黒スーツに身を包み、その上から白衣を羽織っている姿が目に入った。漆黒のような髪色と対称になるような色白の肌はおよそ健康的とは言えず、本来であれば病弱な印象を与えるだろう。しかし、顔色は悪そうには見えず、こちらを射抜くような金の瞳からは遠目で見たワカモを彷彿させる只者ではないオーラを醸し出している。

 

そして、キヴォトスの生徒は当たり前に持ち歩いている銃を、彼は所持していなかった。

 

 

「お初にお目にかかります。シャーレの部長、生命アインです。基本的な業務は先生の補佐と護衛になります。先生の指揮は素晴らしいと伺っておりますが、私が先生の指揮に従い戦場に出ることはないと考えてください。」

 

"そっか。"

 

"立ち話もなんだし、部室でゆっくり話そう"

 

「ええ。これからよろしくお願いします。先生」

 

"うん。よろしく"

 

 

⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 

シャーレの部室につくと、彼は手ごろな椅子に腰かけ、こちらに体を向けてきた。

 

「さて、先生は私に対して少なくない質問があるかと存じます。しかし、先生はこちらに来たばかり。あまり多くのことを説明しても理解するまでに時間が必要になるかと思います。」

 

「それに、あまり関係が深まってない段階で説明しても、かえって混乱する内容もいくつかあります。その場合、回答を濁すことはあるかと思いますが、いずれ答えるので今は見逃してください。」

 

「では質問をどうぞ」

 

 

"どこの学園からきたの?"

 

 

「学園ですか。私は現在矯正局の囚人ではございますが、以前は【光の種学園】というところで生徒会副会長をしておりました。先生のデータベースには存在しないと思いますが、それも仕方ないこと。このキヴォトスの郊外、誰も踏み入らない未開の地区の、ネットワークさえ通ってない秘境に我々の自治区と学園がありましたから。」

 

 

"矯正局の囚人って、具体的に何をやったの?"

 

 

「…ええ、誤魔化すつもりも嘘をつくつもりもございません。私は学園で、ある実験をしていた際に事故を起こし、私を除いた全生徒と自治区の住人を巻き込んだ大災害を発生させてしまいました。その際に学園は蒸発して痕跡さえ残すこと無く消え去りました。その責任は私にあります。私が全員を殺したも同然です。そして、自らの責任を負うべく連邦生徒会へ赴き、沙汰を伺ったところ、矯正局送りとなったのです。」

 

 

"実験の内容を聞いても?"

 

 

「今は回答を控えさせていただきます。今説明しても先生には理解が及ばないと思うので。…ですが、先生は私が追い求めていた存在なのかもしれません。実験についてはいずれ必ず説明します。」

 

 

"そっか。"

 どうやら彼にはかなり重い過去があるようだ。今の段階ではあまり踏み込むべきではない。そう思い、ふと一つ気になったことを思い出した。

 

 

"キヴォトスの住民は、ファッション感覚で銃を所持しているけれど、君は持っていないんだね?"

 

「私にとっての武器は別にあります。いつも手元に置いておくものではないので、出していないだけですよ。先生の護衛の際には武装しますのでご安心を」

 

そういう彼の目は、丸腰とは思えない強い意志が宿っているように見えた。

 

やはり彼には何かしらの大きな秘密があるようだ。

 

 

 

こうして、私と彼の奇妙な関係の部活が始まろうとしていた。




壮大に何も始まりません。
すっかすかのモチベによるものなので次回の投稿は未定です。

でも元ネタ的にデカグラマトンには絶対合わせます。
その他ふわっふわのクリームみたいな設定の中でこれはやってみたいというのはあるもののブルアカ3章と4章と最終章が未読だからどこかで矛盾が生じるかも。

因みに言及出来なかったけど主人公の生命アインのヘイローはライブラリーオブルイナ実績の「???コレクター」の樹のマーク


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アビドス対策委員会
少女との出会い


Q.どうして続いたんですか?

A.酔っていたからです。


素面だと設定考えれば考えるほどプロムン世界とブルアカ世界の中和が成り立たなくなってしまう。

基本は先生視点で物語は進んでいきます。


...

 

 

 

...

 

 

 

...

 

 

 

 

 

 もう何日経ったか分からない。

 

 

 

 最大規模の自治区と聞いて、準備が必要とは感じながらも生徒たちが困っているからと最低限の準備のみで出てきてしまった。

 

 

 

 アインからも「旅先の生水はおすすめしません。水と食料の携行を推奨します。」と言われたにも拘わらず、"まあすぐに到着するでしょうと言って先に出てきてしまった。

 

 

 

 その後、迷って1日経ったところでアインと合流し、水と食料を分けてもらってアビドスに向かおうとしたものの、地図やGPSは役に立たず、この数日で残りの水と食料が底をつきかけてしまっていた。

 

 

 

 

 

「まさかここまで閑散としているとは。キヴォトス最大を誇った栄華は過去のようですね。そして最大規模のゴーストタウンと化していると」

 

 

 

アインがそう呟き、すっかり軽くなってしまった背丈ほどのバックパックを担ぎなおす。

 

 

 

そして私は、すっかり歩く気力もなくなって地面に大の字になって倒れ伏していた。

 

 

 

「今から戻ろうにも、その様子では最寄りの動いている駅まで行くことも無理でしょうし、先生の性格上、助けを求めた生徒を放り出して帰るとも思えません。」

 

「本当に八方塞がりですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アインがシャーレに来てから、彼の性格と人となりについてなんとなくわかるようになってきた。

 

 

 

彼はとにかく自身の効率を最優先に求める。

 

その結果、人としてどうかと思う意見をいくつか提案してくるが、行動を起こす前に私に確認を取ってくるあたり、大人として必要とされていると感じる。

 

 

 

 逆に彼のほうも、私が自身のことをないがしろにしがちなところや、だらしがないところを叱責してくれたり、私が疲れている時は無理やりにでも私を休ませて仕事を引き継いでくれたりと、なんだかんだ互いに助け合うような関係になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「...ん?」

 

キキ―ッ

 

 

 

 

 

 軽く意識が飛びかけて、彼との思い出が走馬灯のように駆け巡っているなか、自転車のブレーキ音が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 意識をそちらに向けると、灰色の髪の毛に獣耳が特徴の、水色のマフラーをした学生服を着た女の子がそこにいた。

 

 

 

 

 

「...あの...」

 

「...大丈夫?」

 

 

 

 

 

 抑揚のない、けれども可愛らしい声が耳朶に響いた。

 

 

 

 

 

"...た...たすけ...て"

 

 

 

 

 

「...その人に襲われた,,,とか?もしかして強盗?」

 

 

 

 

 

 その少女は責めるようにアインを見つめる。

 

 

 

 アインは説明がめんどくさいかのように髪をかき上げて言葉を選んでいる

 

 

 

 

 

"も、もう、ずっと...何も飲まず食わず、で"

 

 

 

 説明しようと声を張り上げるが、かすれた喉ではそれくらいしかしゃべることが出来なかった。

 

 

 

「先生。そのまま安静にしてください。私が状況を説明します。」

 

 

 

 すかさずアインが私の代わりに状況を説明してくれる。

 

 

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

「...えっと、用事があって数日前にこの街に来たけど、お店が一軒もなくて、脱水と空腹で力尽きた、と。」

 

 

 

「お恥ずかしながら。街の中で遭難してしまいました。」

 

 

 

「...ううん。ここは元々そういう所だから。食べ物がある店なんか、とっくになくなっているよ。」

 

 

 

「...初めてアビドスに来たもので、土地勘がないのです。」

 

 

 

 そして、シロコと名乗ったアビドスの生徒がこちらを見つめる。み、見ないで。憐れにも準備不足で倒れた大人を見ないで...。

 

 

 

 

 

 因みに、アインがなぜ無事なのかについては、キヴォトス人特有のものらしい。その辺はよく分からない。

 

 

 

 

 

 

 

「...ちょっと待って。」

 

 

 

 そう言ってシロコは鞄の中からボトルを取り出す。

 

 

 

「はい、これ。エナジードリンク。ライディング用なんだけど...今はこれくらいしか持ってなくて。でも、お腹の足しにはなると思う。」

 

 

 

 

 

「ありがとうございます。先生、コップはこちらで用...」

 

 

 

 アインのその言葉を聞き終わる前に、私はそのボトルを両手で受け取り、そのまま口をつけて飲んだ。

 

 

 

 

 

"ゴクッゴクッ"

 

 

 

「なっ!?」

 

「...!」

 

 

 

 アインとシロコの驚く顔が見えた気がしたが、そんなことは気にせず目の前にある栄養の固まりをひたすら嚥下する。

 

 

 

「......はああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ...」

 

 

 

「...あの...それ......ううん、気にしないで///」

 

 

 

 アインの大きなため息と、シロコの照れるような声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 全てのみ終えた私は、シロコにお礼を伝える。

 

 

 

"ありがとう。助かったよ。それに、すっごくおいしか..."

 

 

 

 その言葉を言い終える前に、アインによって背中を回し蹴りされる。

 

 たまらず私は地面とキスをしてしまう。

 

 

 

「あなたには!教職者としての!メンツはないのですか!!」

 

 

 

「大の大人が!異性の生徒の!口をつけた飲み物を!!直接飲む阿呆が!!どこにいるのですか!!!」

 

 

 

 そのまま何度もアインに踏みつけられる。痛い痛い。貴重な一張羅が汚れてしまう!

 

 

 

「...えっと。そんなに気にしていないから。そこまでやらなくても」

 

 

 

 

 

 アインはそういうシロコを見て、シロコが照れたような表情をしているのに気づいてドン引きして一歩引いていた。

 

 

 

 

 

 気にしてないならいいかと思って、そのまま服についた汚れを払ってシロコに向き直る。

 

 

 

 

 

「見た感じ、連邦生徒会から来た大人の人と付き添い?みたいだけど...お疲れ様。学校に用があってきたの?この近くにはうちの学校しかないけど...もしかして...。」

 

 

 

"うん。アビドスに行きたいんだ。"

 

 

 

「...そっか。久しぶりのお客様だ。それじゃあ、私が案内してあげる。すぐそこだから。」

 

 

 

"ありがとう、でもまだお腹が減って動けないんだ"

 

 

 

 そう言ってお腹をさする。エナジードリンクが入っても、そこにはぽっかりと穴が開いたようにへこんでいた。

 

 

 

「うーん......どうしよう」

 

 

 

 

 

"自転車に乗せてほしい。"

 

 

 

「先生、このタイプは一人乗り用です。二人分の体重は考慮されていません。」

 

 

 

 アインがそうツッコミを入れる。

 

 

 

 

 

...じゃあ

 

 

 

 

 

"背負ってくれないかな?"

 

 

 

「...この大人は...」

 

「...。」

 

 

 

 アインが呆れ、シロコが逡巡する。

 

 

 

「まあ、そのほうがいいか。...ロードバイクはここに停めて、と...」

 

 

 

 シロコはそう言って、ロードバイクをわきに止める。

 

 

 

 

 

「...それじゃ」

 

 

 

 シロコが目の前でしゃがんで背中を見せてくる。

 

 おんぶの要領でそこに体重を預けようとするとシロコの体がビクリと跳ね上がる。

 

 

 

「...あ、待って。...えっと、さっきまでロードバイクに乗ってたから...そこまで汗だくってわけじゃないけど、その...」

 

 

 

 そうシロコが躊躇いがちに言ってくる。

 

 

 

「普段は学校のシャワー室を使うの。予備の服もそこにあるし...。」

 

 

 

"気にしないで"

 

 

 

"むしろいい匂いがするよ"

 

 

 

 アインからは呆れのまなざしが、シロコは腑に落ちないながらも納得したような雰囲気がした。

 

 

 

 

 

"アインはどうするの?"

 

 

 

「私についてはお構いなく。問題なく動けるうえに、大人を背負った少女に負けるほど足は遅くないので。」

 

 

 

 そう言ってバックパックを背負いなおすアイン。全く頼もしい限りだ。

 

 

 

「ん...それじゃ、しっかり掴まってて。」

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、軽自動車レベルで疾走する女子高生と、背負われる大人。バックパックをを担いだまま追従する男子生徒という見る人がいれば疑問を感じる組み合わせのまま、アビドスに向かうのであった。

 




ゲームでストーリーを読んでから文章に起こしてみると、ゲームは短く感じて、文だと長く感じてしまう。


それと、このままだと本編にシャーレ部長概念がついただけのものになってしまうから、次回のヘルメット団戦闘回ではロボトミー要素出せたらと思う。出せたらいいなあ。


次の更新はアルコールで酔った日になるので未定。


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力の片鱗

まあ、どこまで盛り込むかを悩んでいたらこんなに時間がかかってしまいました。

このペースで行くと最終編までに寿命を迎えるんじゃないかな?


文字が変になっていたら後で修正入れるかもしれません


 

 

シロコに乗せられてしばらくして、ポツンと佇む校舎にたどり着いた。そのままシロコに乗せられて教室に入る。

 

アインは「少しやることがあるので、一度この近くに荷物を置きます。」と言って校庭の隅でバックパックを広げだした。

 

 

 

 

「ただいま」

 

 

シロコがそう言って入ると、部屋にいた生徒が反応してこちらを向いてくる。

 

 

「おかえり、シロコせんぱ......い?」

 

 

シロコと同じようで違う獣耳をしたツインテールの少女がこちらを見て疑問符を浮かべてくる。

そしてすぐに慌てたようにこちらを見てくる。

 

「うわっ!?何っ!?そのおんぶしてるの誰!?」

 

 

 

「わあ、シロコちゃんが大人を拉致してきました!」

 

 

黄色いカーディガンを羽織った色々とでかい生徒の、おっとりした声から物騒な言葉が飛んでくる。

 

 

「拉致!?もしかして死体!?シロコ先輩がついに犯罪に手を......!!」

 

 

赤い眼鏡のエルフ耳のショートの女の子も驚いたようにシロコと私を見つめてくる。

 

 

「みんな落ち着いて、速やかに死体を隠す場所を探すわよ!体育倉庫にシャベルとツルハシがあるから、それを.....。」

 

 

ツインテールの少女がそうまくし立ててくる。多分一番君が落ち着いていない。

 

シロコが少し逡巡して、私を地面に降ろしてくれる。

 

「いや......普通に生きてる大人だから。うちの学校に用があるんだって。」

 

 

「えっ?死体じゃ、なかったんですか......?」

 

 

「拉致したんじゃなくて、お客さん?」

 

 

「そうみたい......。」

 

 

落ち着いたところでみんなに挨拶する。

 

"こんにちは!"

 

元気よく挨拶したら、みんな驚いたようにこちらを見てくる。

 

 

「わあ、びっくりしました。お客様がいらっしゃるなんて、とっても久しぶりですね。」

 

「そ、それもそうですね......でも来客の予定ってありましたっけ......。」

 

手紙を書いてからシャーレに届くのも随分かかったのか、そしてここに来るまでに数日かかってしまったものあるのか、シャーレの依頼についてすっかり忘れているようだった。

 

 

"「シャーレ」の顧問先生です、よろしくね"

 

 

そして数秒の沈黙、みんな驚いたような顔を向ける。

 

 

「......え、ええっ!?まさか!?」

 

「連邦捜査部「シャーレ」の先生!?」

 

「わあ☆支援要請が受理されたのですね!良かったですね、アヤネちゃん」

 

 

「はい!これで......弾薬や補給品の援助が受けられます。」

 

安心したかのような表情を浮かべているアヤネと呼ばれた生徒は、その後すぐさま周りを見渡す。

 

「あ、早くホシノ先輩に知らせてあげないと......あれ?ホシノ先輩は?」

 

「委員長は隣の部屋で寝てるよ。私、起こしてくる。」

 

そう言って勢いよく隣の部屋駆け出すツインテールの少女。

 

その瞬間

 

(ダダダダダダダダッ!)

 

 

どこからか銃声が聞こえてきた。

 

 

「じゅ、銃声!?」

 

「!!」

 

 

「わわっ!?武装集団が学校に接近しています!カタカタヘルメット団のようです!」

 

「あいつら......!!性懲りもなく!」

 

 

そしてみんなが武装準備し始めて、すぐに隣の部屋に行ったツインテ少女が寝ぼけ眼のピンク髪の少女を連れてくる。

 

 

「ホシノ先輩を連れてきたよ!先輩!寝ぼけてないで、起きて!」

 

「むにゃ......まだ起きる時間じゃないよー。」

 

しかし、まだ起きたばかりのようであくびをしながら返事をする。

 

 

「ホシノ先輩!ヘルメット団が再び襲撃を!こちらの方はシャーレの先生です。」

 

「ありゃ~そりゃ大変だね......あ、先生?よろしくー、むにゃ。」

 

しかし、まだ寝ぼけているのか返事はとてもおざなりだ。

 

 

「先輩、しっかりして!出動だよ!装備持って!学校を守らないと!」

 

「ふぁあー......むにゃ。おちおち昼寝もできないじゃないかー、ヘルメット団めー。」

 

ようやく眠気から覚めたのか、しっかりした返事が返ってきた。

 

 

「すぐに出るよ。先生のおかげで、弾薬と補給品は十分。」

 

 

「はーい、みんなで出撃です☆」

 

そうして一目散に外に向かっていくアビドスの生徒たち。

 

 

「私がオペレータを担当します。」

 

 

そう言ってアヤネがPCを立ち上げる。

 

 

私もシッテムの箱を立ち上げて支援を行う準備をする。

 

 

「先生はこちらでサポートをお願いします。」

 

 

 

 

 

 

 

だけど、何か忘れているような気がしたまま、シッテムの箱を立ち上げたとき、アロナが冷や汗を浮かべたままこちらに言葉を伝えてくる。

 

 

 

「...えっと、ですね。.......先生、戦闘支援は必要ないかもしれません。」

 

 

その言葉にどういうことか聞こうとしたら、続けて告げられた言葉で大事なことを思い出した。

 

 

「えっと、シャーレ部長のアインさんがもう単独で戦闘を開始しまして......もう制圧間近になります。...あ、戦闘が終了しました。」

 

 

そこで、私はアイン持ち込んでいたバックパックを校庭で展開しているのを思い出し、

 

 

"校庭で準備すれば真っ先に当たっちゃうよなあ。"

 

とすっかり彼のことを忘れていた自分を恥じていた。

 

 

そして、アビドス生徒が校庭に出る前に銃声が止まったのを訝しんでいたアヤネに言葉をかける。

 

 

"アヤネ。ちょっと合わせたい人がいるから、一緒に来てくれる?"

 

 

「はい?えっと、分かりました。私も外で何が起きているか確認したかったので、一緒に行きます。」

 

 

 

 

そう言って行動を共にし、ちょうど昇降口を出たあたりでアビドスの生徒全員と、件の彼に出会うことができた。

 

 

 

 

「ああ...先生と、アビドスの生徒のみなさんですか。」

「こちらで持ち込んだ備品のチェックをしていたら、所属不明の武装集団が学校目掛けて襲い掛かってきまして。」

「このままでは先生に危害を加えられてしまうと思い、こちらの独断で制圧を行いました。」

 

 

そういう彼の恰好は、ここに来た時の恰好とはかなり違っていた。

 

 

手に持っているのは十字架のような鈍器に、その十字架の中央には茨の冠をしたドクロがつけられている。

 

全身を覆う服は茶色と紺色で構成されたプロテクターのような見た目になっていた。

 

 

そして、彼は自分に向けられた視線に気づくと、居心地が悪そうに話しだした。

 

 

「ああ、お見苦しいものをお見せしましたね。」

「これは私が保有する唯一の神秘のようなものですが、なにぶんキヴォトスの方たちから受けが悪いそうで。」

「すぐに戻ります。」

 

そういって彼が両手を広げると、まるで十字の鈍器とプロテクターが彼の体内に光となって吸収されるように消え、代わりにいつもの黒スーツと白衣に戻った。

 

 

「先生、この人は?」

 

 

ホシノと呼ばれた少女が恐る恐る聞いてくる。

 

 

「紹介するね。「シャーレ」部長の、生命アインだよ」

 

 

みんなが驚く顔をしている。キヴォトスに来たての頃は、何度か彼の神秘を見たことがある私としては、ついこの前までこれがキヴォトスの一般神秘だと勘違いしていた。

 

 

☆ ☆ ☆

 

時はアインが校庭の隅でバックパックを広げていた時まで遡る。

 

 

「ふむ、完全に閉めていても砂がどうしても入り込むか。誤動作させたくない機械類はここで動作確認しておいたほうが...むしろこの環境下で動作出来れば今後の仕事が捗るのではなか...うん?」

 

 

そう言って彼が機械類の操作をしようとしたところ、遠くから数人の武装集団がこちらへ向かってきているのが見えた。

 

 

「ひゃあああっはっはっはっはっは!!」

「今日こそ学校をうちらが制圧するんだ!」

「今は奴らの補給も底ついてるはずだ!今がチャンスだ!!」

 

 

そう言いながら校内に入れば、当然アインと出会うわけで

 

 

「はあ、武装集団ですか。依頼にあった対象はあなたたちというわけですか。」

 

そういってため息をつきながらバックパックに中身を戻していく。その様子をみた武装集団が苛立ちを隠せない様子でアインに話しかける。

 

「なんだてめえ。うちらをカタカタヘルメット団と知っていないようだなあ!」

「アビドスに用があるようだが、残念だったなあ!アビドスは今日からうちらのもんになるんだからなあ!!」

「未来のここのあるじに対しての態度をこれから後悔しとくんだなあ!!」

 

そう言い放ち、アインに向けて銃撃をしかけてくる。アインは致命傷になる攻撃を避けつつ相手の様子を見る。

 

相手はそれを手も足も出ないと勘違いしたのか更に銃弾を浴びせてくる。

 

...

...

...

 

しかし、いつまでたっても倒れる様子がないアインを訝しんだのか、ヘルメット団は攻撃の手を止める。

 

 

「な、なんだあ...あいつ。全く攻撃しないけど倒れる様子がねえ。」

「後ろに補給がなくなったとはいえアビドス生と戦うと考えると、これ以上は弾丸は浪費できねえな。」

「しかもアビドスに誰かいるって情報も聞いてねえぞ、一回戻って......」

 

 

「まあ、あなた方であれば...これで十分か。」

 

 

そういってアインが片手を前に掲げる。そして、アインの頭によく聞いたような、それでいて聞いたことがない...いつも聞く声が響く。

 

 

アブノーマリティ選択

 

 

 

O-03-03

 

たった一つの罪と何百もの善(One Sin and Hundreds of Good Deeds)

 

それはあなたを裁く救世主であり、奈落へ落とす執行者です。

 

Risk Level: ZAYIN

 

 

E.G.O武器 E.G.O防具

 

懺悔(Penitence)

 

Rank: ZAYIN

 

 

いつもの神秘開放を行い、アインが掲げた右手に十字架の武器が。アインの身を包んでいた白衣はプロテクターのような見た目の装備になった。

 

 

 

ヘルメット団がその様子に呆気に取られているすきに、彼はヘルメット団に肉薄する。

 

すかさず団員は応戦するが、彼は急所以外の弾丸を物ともせず急所に当たる軌道のものはすべて手に持つ十字架ではじき飛ばした。

 

それを目撃した団員は恐慌状態となってしまい、出鱈目に銃を撃つ者、逃げだそうとする者も中にはいたがアインは団員を一人も逃がすことなく十字架で全員をたたき伏せた。

 

 

 

 

 

 

それが先ほどまでの状態となる。

 

 

☆ ☆ ☆

 

「お初にお目にかかりますアビドスのみなさん。そこのシロコは先ほどぶりです。先生の紹介にあずかりました「シャーレ」部長の生命アインです。主な仕事は先生の護衛になります。」

「そして先ほどの武装は私が扱いきれる唯一の手段になります。Extermination of Geometrical Organ(エクスターミネーション オブ ジオメトリカル オルガン)。E.G.Oと私は呼んでいます。」

「あまり見慣れないかもしれませんが、これからここの問題を解決していくうえで何度か目にすると思います。慣れていただけると。」

 

「先生、彼女に私たちの紹介と、彼女たちと今後の予定を話し合いましょう。」

 

 

そう言って私たちは、再度教室に戻ることになるのだった。

 




イメージとしてはライブラリ オブ ルイナで単発高威力ダイスで遠距離攻撃に肉薄していくような、そんなイメージです。

そのうちアビドスは端折れるセリフは端折っていこうかなぁ


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先生を守るだけですから

一向に筆が進まない。毎日や高頻度更新者は本当に凄まじい。

感想等が貰えるのは励みになります。貰った感想はすべて目を通しています。ただ返信で感想に作者がコメント残すのは恥ずかしいので返信目的で感想を書く方はがっかりするかもしれません。


そして感想や評価が欲しいから書いているのではなく、自分の中にあったアイデアを吐き出したいが為に書いているのであって更新が遅かったり文章がへたっぴなのは仕方がないことなのです(言い訳)


 

あれからみんなで不良たちを学校の敷地外に移動させた後、ゆったりした足取りで教室に戻ってきた。

 

 

「いやぁ~シャーレ部長がこんなに強かったなんてねぇ~。ヘルメット団の装備を見る限りかなりの覚悟で仕掛けてきたみたいだったけど」

 

 

ピンク髪の少女がそういってアインの肩を叩いてる。

 

 

「強かった、じゃありませんよ、ホシノ先輩......彼がいなけれな私たちがあの相手をしなきゃいけませんでしたから。」

 

「ん。物資の補給があってもあれは負けるかもしれなかった。でも、すごい。これがシャーレの力......すごい量の物資と資源、それに強力な部長まで。シャーレってすごい。」

 

「今まで寂しかったんだね、シロコちゃん。パパとお兄ちゃんが帰ってきてくれたおかげで、ママはぐっすり眠れまちゅ。」

 

「いやいや、変な冗談はやめて!先生とアインさんが困っちゃうじゃん!それに委員長はその辺でしょっちゅう寝てるでしょ!」

 

「そうそう、可哀そうですよ。」

 

「あはは......少し遅れちゃいましたけど、あらためてご挨拶します、先生、アインさん。」

 

 

 

アヤネと呼ばれていた少女から、アビドス生徒の紹介とアビドス高校の現在の状況を教えてもらった。

 

 

 

 

「こんな消耗戦を、いつまで続けなきゃいけないのでしょうか......。ヘルメット団以外にもたくさん問題を抱えているのに......。」

 

 

そう嘆息するアヤネにかける言葉が見つからない。アインもどうしたものかと首を捻っている。

 

そんな中、ホシノが声を上げた。

 

「そういうわけで、ちょっと計画を練ってみたんだー。」

 

 

要約すると、先ほどの決死の襲撃で消耗したヘルメット団を、今度はこちらが叩くという内容だった。

 

 

"うん。いい考えだと思う。アインもついてきてくれるよね?"

 

「ええ。もちろんです。先生のいるところに私がいますから。」

 

そう言ってアインも肯定の意を示してくれる。それを聞いたホシノは片手をぐっと握りしめてガッツポーズを決めていた。

 

「よっしゃ、先生のお墨付きもらったし、あのヘルメット団を撃破したアインがいるならこの勝負楽勝だね。」

 

 

「......残念ですが、私を戦力に数えるのは不可能でしょう。」

 

そう話したアインにホシノを除いたアビドスのみんなが驚いた顔をしている。ホシノは「やっぱりだめかぁ~」と断られているのが分かっていたかのように間延びした声で落胆していた。

 

 

「な、なんでよ!あの数のヘルメット団を倒せるあんたなら基地にいる残党なんて楽勝でしょう!?」

 

セリカがそうアインに詰め寄ってくる。アインは涼しい顔でその言葉を聞いたのち、セリカを含めたアビドス対策委員会のみんなに聞こえるように話す。

 

「たしかに、私はあの程度の武装集団ならいくら束になろうと負けるどころか傷一つ負うことはないでしょう」

 

「な、なら......」

 

「ですが、私は先生を......キヴォトス人ではない、外の世界から来た先生を確実に守護する存在としてシャーレの部長として登録していただいているのです。」

「私たちにとってみれば銃弾なんてどこに当たろうが痛いで済む程度。しかし、先生にとってみればすべてが命を奪いかねない凶弾なのです。」

「シッテムの箱というオーパーツからも先生を守るシールドは生成されますが、シッテムの箱が電子機器である以上、常に起動しているとは限りません。」

「その電子機器のシールドを先生は信用しているみたいですが、私はまだ完全に信用してはいないのです。それに、シールドを破る方法が編み出されてしまったら、先生を守るものは何もなくなります。」

「その時に私がそばにいなければ先生は簡単に倒されてしまうのです。そうならないために私はシャーレに派遣されています。」

「確かにあの程度が集う前哨基地程度、私は殲滅することが出来るでしょう。ですが.....。」

 

 

そう言ってアインはアビドス対策委員会の面々を見やる。アインの言葉を聞いて、驚いたような顔をして先生とアインを交互に見てくる。そして全員がアインの次の言葉を待つ。

 

 

 

「私が前哨基地を殲滅している間......あなた方、たった5人の生徒程度が、あらゆる脅威から確実に先生を守り切れると誓うことができますか?」

「もしも逸れた弾丸が先生に当たってしまって、先生が倒れてしまったら、誰がその責任を取るのですか?」

 

「キヴォトス人ではない、貧弱な体をもってしまった先生ですか?」

 

「シッテムの箱による防御が意味をなさなかったオーパーツのせいですか?」

 

「馬鹿な提案をして、私に前哨基地を襲撃させて、楽な護衛を引き受けたあなた方アビドス対策委員会ですか?」

 

「相手に反撃を許さないようにしなかった私のせいですか?」

 

 

「いったい誰のせいなのですか?」

 

 

 

そう言ってアインはアビドスのみんなの目を確認する。ホシノは相も変わらずボヤっとした態度で聞いているが、他のみんなは視線を横に向けたり言葉に詰まっている。その態度を見たアインはため息ひとつはく。

 

 

「まぁ...そんなわけで私は常に先生のそばを離れることはできません。私は先生を守るために存在していますので。ご承知おきください。それに......」

 

そうしてアインは言葉を続ける。

 

「先生の戦術指揮を皆さんで一度体験していただくべきかと。私はまだ経験がありませんが、彼の指揮は想像を絶する戦いやすさを発揮します。これから機会は多くなるでしょうから、そういった意味でも今からの前哨基地襲撃は先生の指揮のもと行っていただければと思います。」

 

そう締めくくり、こちらを見てにやけるアイン。確かにアビドスのみんなにはまだ披露していなかったことを思い出す。

 

"アインのいう通り、戦術指揮は任せて。みんなを確実に勝たせてあげるから。"

 

そういうと、みんなから「おぉ~」と声が上がる。

 

「ん......先生の指揮は興味がある。善は急げ、今から向かおう。」

 

「はい~それでは、しゅっぱーつ!」

 

 

 

☆ ☆ ☆ 

 

そしてしばらく移動しているとアヤネから通信が入る。

 

「カタカタヘルメット団のアジトがあるとされるエリアに入りました。半径15km圏内に敵のシグナルを多数検知。おそらく敵もこちらが来たことに気づいているでしょう。ここからは実力行使です!」

 

 

その言葉が聞こえるや否や全員戦闘態勢に入る。私とアインは待機位置まで移動して戦術指揮用にシッテムの箱を起動する。

 

アインが変身する準備を整えた為、一番いい位置を取ってその姿をシッテムのカメラに動画として記録する。

 

すると、先ほどまで戦闘準備をしていたアビドスのみんなが興味深そうにこちらをみつめてくる。

 

アインは呆れた様子で私とアビドスのみんなに体を向けてくる。

 

「みせものではないんですが、そんなに興味ありますか?これ...」

 

その言葉にシロコが反応する。

 

「ん。先生がそわそわしていたから気になった。」

 

その言葉にセリカが続く。

 

「そういえば、あの武装から白衣に戻るのは見てたけど、その逆は見ていないわね。」

 

ホシノも自前のショットガンを構えながらアインに言葉をかける。

 

「うへ~。おじさんたちに啖呵を切ったんだから、どれくらいのものなのか見てみたいよね~。」

 

ノノミもミニガンの準備をしながらアインの姿を見ている。

 

「うんうん。私たちのことはお構いなく~。」

 

全員がどこかに行く気配がないのを感じ取って観念したのか、そのまま右手を前に掲げ、変身する準備に入るアイン。

 

 

 

<アブノーマリティ選択>

 

どこか美しく、ずっと聞いていたくなる声がアインの体の中から発せられる。

 

そして光の塊がアインの体から飛び出した後、徐々に実体化してくる。その光の塊はまるで人の体ほどもある漆黒の鶴瓶の形を模した後、アインの体を包み込む。

 

その鶴瓶を覆うように文字が右から左に流れるように表示されていく。

 

 

T-05-51

 

血の風呂(Bloodbath)

 

多くの手が風呂に浮かぶ。これらは私がかつて愛していた人々の手です。

 

Risk Level: TETH

 

 

E.G.O武器 E.G.O防具

 

リストカッター(Wrist Cutter)

 

Rank: TETH

 

 

 

 

そして、流れた文字が鶴瓶を中心に回転を始めると、その速度がどんどん上がっていき、文字が見えなくなるくらい速くなると鶴瓶が光り出し、辺りに弾け飛んだ。

 

 

そこから傷が目立つデザインをした服を纏ったアインが現れると、弾け飛んだ光がアインの周りで回転しだし、右手に収束していく。収束して固まった光は赤い短剣となってアインの右手に収まった。

 

そこで変身を終えたのか、「ふぅ...」と一息つくアイン。

 

みんなその様子に魅入ったのか、一言も発せずにいる。

 

 

"やっぱり『変身!』って言ってもらいたいね!!"

 

「先生。私はあなたの欲望を満たすために神秘を開放しているわけではないのですが」

 

アインが呆れたような目線をこちらに向けてくる。アビドスのみんなも思い思いに感想を伝えてくる。

 

「いやぁ~。なんていうか。テレビの向こうの世界に入ったような感覚だったよ。」

 

「ん......私たちがよく使う能力とはまた違ったように感じた。」

 

「珍しいものを見せてもらいました~。」

 

「...でも、ちょっと子供のころの変身ヒーローを思い出してむず痒かったわ。」

 

 

アインは手に持ったナイフを弄びながらこちらに視線を向けてくる。

 

「アビドスの皆さんはともかく、先生は戦術指揮の準備はできていますか?そろそろ敵がこちらまでやってくるとは思いますが。」

 

"準備はとっくに出来てるよ。アビドスのみんな、思う存分戦って!!"

 

そういい、シッテムの箱の戦術指揮モードをアクティブにする。アビドスのみんなもやる気に満ちて出撃していく。

 

 

「んじゃ、ま。適当にやりますか~」

 

「ん......今度は私たちが襲う側。」

 

「二度と襲撃が行えないくらいボコボコにしてやるんだから!」

 

「は~い☆みなさん張り切ってまいりましょうか。」

 

 

 

その後の戦闘は言うまでもなくアビドス側の快勝。武装集団が保持していたアジトや弾薬庫を破壊して学校へと帰路についた。

 

私の戦術指揮を受けたみんなは「確かにアインを通して連邦生徒会が先生を守護するのも納得した」とのことだった。

 

 

 




アインの能力があまりにキヴォトスと合わなすぎじゃない?とも思ったけどキヴォトス生徒も恰好を変えただけで能力を変えられるから大概一緒じゃんと思ってしまった。その理論で行くとこのアイン大量に衣装もってやがるぜ。

そしてこの変身に先生がわくわくしてしまうのは仕方ないことだからね。趣味が男子小学生みたいな人だから...まるで仮〇ライダーだと思ってそう。


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彼女たちの問題

かなり時間が開いた理由としてはアイディアが浮かばなかったり他ゲ―に夢中になっていたからです。正直プロムン作品はマイナーもいいところだからゆったりじっくり自分の書きたいように書いていきます。



教室に戻ると、アヤネがこちらに気づくと笑みを浮かべて出迎えてくれた。

 

「お帰りなさい。皆さん、お疲れ様でした。」

 

「ただいま~。」

 

それにいち早くホシノが反応し、返事をした。

 

「アヤネちゃんも、オペレーターお疲れ。」

 

セリカがアヤネを労わる。

 

「火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息つけそうです。」

 

「そうだね。これでやっと、重要な問題に集中できる。」

 

「うん!先生のおかげだね、これで心置きなく全力で()()()()に取り掛かれるわ!ありがとう、先生!この恩は一生忘れないから!」

 

 

みんな満面の笑みでこちらにお礼を言ってくれる。

それはいいんだけど...

 

 

"借金返済って?"

 

 

そう単純な疑問が口に出てしまう。

するとみんな『しまった』といったような表情になっていく。

 

 

そして、こちらに事情を話そうか否かを話し合っていた様子だったが、突然セリカが飛び出していった。それにノノミがセリカを追いかけるように教室を出ていく。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

アヤネ達からアビドス高校が9億を超える借金を抱えていること。その借金のせいで在校生がどんどん減っていったこと。残ったのがアビドス対策委員会の5人であること。借金をした理由は数十年前の大規模砂嵐の復興に資金を投入せざるを得なくなったこと。その巨額の融資に悪徳金融業者に頼らざるを得なくなってしまったこと。最初は返済の算段があったものの、その後も毎年規模を拡大させつつ砂嵐が発生し、アビドスの半分が砂漠と化したころに借金も膨れ上がってしまっていた。

 

アビドス対策委員会の力だけでは毎月の利息の返済が精一杯で、弾薬も補給品も補充が出来ず底をついてしまっていたこと。

 

 

彼女たちは借金については気にしなくてもいい、これ以上迷惑はかけられないとは言うけれど...。

 

 

"私も対策委員会の一員として一緒に頑張るよ!!"

 

 

そう彼女たちに声をかける。

 

 

その言葉にアビドスのみんなは驚いた顔をする。そして希望を得たかのように満面の笑顔になる。

 

 

 

 

そして壁にもたれかかったまま目を瞑っていたアインも片目を開けてこちらを見てくる。

 

「先生ならそう言うと思っていました。すぐにどうこう出来る規模の話しではありませんが、我々シャーレも力を貸しましょう。」

 

 

そうしてみんなでこれからの予定を話し合った。

 

...

 

...

 

...

 

「...まぁ...セリカの言うように、みせかけだけの言葉では信用を得られないと思うので、シャーレとして全力で取り組みはします。」

 

アインはそう言って廊下につながる扉に視線を向けた。

 

 

 

「...ちぇ」

 

そんな声が聞こえた気がした。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

side アイン

 

 

それから次の日。アビドスが自由登校日で人がそんなに来ないと聞いて、街中で遭難をするという失態を二度としないために俺はアビドス高校から泊っているホテル周辺の住宅街を、アビドス地区の地図と景色を見比べながら町の特徴をメモしていた。

 

 

その時にいつも見ている人が、見たくないことをやっている現場に出くわした。

 

「先生...」

 

 

そう俺が声をかけると件の先生(ストーカー)はこちらに振り返り、笑顔で挨拶してきた。

 

 

「おはようアイン!!今日もいい天...」

 

その言葉を聞き終える前に、俺は勢いよく先生にとび膝蹴りをかましていた。

 

 

先生は危なげなく回避すると、おどけたようにこちらに批難の言葉を投げかける。

 

 

「危ないなあ。キヴォトス人の蹴りなんて当たったら大変なことになるんだからね!!」

 

 

その言葉にイラっと来た俺は先生の胸倉を掴み上げた。

 

 

「生徒をストーキングする変態には大変な目にあってもらわないと何も学ばないようなので!!」

 

 

そう。先生が隠れていた物陰の向こうにはドン引きした表情をしていたセリカがいた。

 

 

 

犯罪現場(ストーキング)である。

 

 

「嫌だなあ。未遂っていってよ。」

 

「ヴァルキューレがここにいたら間違いなく現行犯で矯正局行きでしょうがね。」

 

「そんなぁ...。」

 

 

悲しそうな顔をする先生(ストーカー)をその辺に捨てておいて

 

フギャン!!

 

セリカに声をかける。

 

 

「この変態は私が抑えているので、今のうちに逃げてください。」

 

そう言うとセリカはゴミを見る目で先生を見て、それからアインに向き直る。

 

「えっと。ありがとう...?」

 

「いえ、この大人を止めるのも私の役割の一つなので。」

 

「じゃあね!私急ぐから!お礼はまた後で!!」

 

そう言ってセリカは駆け出す。先生はその背に手を伸ばして声を出す。

 

「せ...せめてバイト先を教え...」

 

 

 

E.G.O武器

 

リストカッター(Wrist Cutter)

 

Rank: TETH

 

 

 

その言葉を言い終える前にE.G.O武器を展開し、素早く先生の脳天にリストカッターを突き立てて意識を刈り取る。

 

 

そのまま先生を背負ってアビドス地区の把握を再開した。

 

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

「あの~☆6人なんですけど~!」

 

「あ、あはは......セリカちゃん。お疲れ......。」

 

「お疲れ。」

 

「み、みんな......どうしてここを......!?」

 

「うへ~やっぱりここだと思った。」

 

"どうも"

 

 

アインにしばかれた後、ホシノにセリカのバイト先を聞いてみたら教えてくれてみんなで行こうという話になった。

 

 

アインは頭を押さえながら大きなため息をついていた。

 

...

 

...

 

「はい、先生達はこちらへ!私の隣、空いてます!」

 

ノノミが隣の席をポンポン叩いてくれている。

 

「......ん。私の隣も空いてる。」

 

シロコも隣の席を掌で撫でている。

 

 

 

そしてセリカに案内された席で先生は血涙を流していた。

 

 

"うわああああああん!!アイン!!私は...私はこの選択をどうしたら!!!"

 

 

アインはそうやって悩む私を尻目にすっとノノミの隣に座った。

 

 

座った?

 

 

"アイン!?"

 

 

「こんなことで時間を浪費するくらいなら先生の選択を無くしたほうがいいと思ったので。案の定そんな表情であれば何時間もここで時間を潰すのも厭わないようでしたので。」

 

 

私は思わずアインに詰め寄ってしまった。

 

 

"私は!!選択の責任を取る大人だから!!どれだけ時間がたとうとも、その責任はしっかり..."

 

 

「先生、こちらに決意を表明するのはいいのですが...ここ、飲食店ですので他のお客に迷惑がかかるうえにとても恥ずかしいです。早く席に座ってください。」

 

 

アインにそういわれて周りを見てみると、こちらを生暖かい目で見る視線に囲まれていた。

私は顔から火が出そうな気分のままシロコの隣に座った。

 

 

その後はセリカのバイト姿をからかったりみんなでラーメンを注文したり、私が大人のカードで支払ったりと少しにぎやかなアビドス食事会になった。

 

 

「いやぁー!ゴチでしたー、先生!」

 

ホシノがお腹いっぱいと表現するようにお腹をさすっている。

 

「ご馳走様でした。」

 

「うん、お蔭様でお腹いっぱい。」

 

 

ノノミもシロコも満足したような声をしている。

 

 

「早く出てって!二度と来ないで!仕事の邪魔だから!」

 

 

セリカは怒り心頭といった様子で私たちを外に追いやった。

 

 

「あ、あはは......セリカちゃん、また明日ね......。」

 

「ホント嫌い!!みんな死んじゃえ―!!」

 

アヤネの言葉で堪忍袋の緒が切れたのか激高しながら地団駄を踏んでいた。

 

 

「先生、ほら帰りますよ。」

 

アインにそう促されて帰路につく。女子高生4人に男子高校生を含めた食事代はとても高くつくと身に染みて感じてしまった。

 

 

"うっうっ。手痛い出費が...今月発売のカイテンジャーゴールドスペシャルアルティメットフォームデラックスエディションのフィギュアは諦めた方がいいのかなあ"

 

「なんですかその頭の悪いネーミングセンスは。それにそのようなフィギュアは先月購入したばかりでしょう。」

 

"あれと今月の発売されるものに明確な違いが..."

 

 

そう話そうとするとアインにさえぎられてしまった。

 

「説明する元気があるなら、シャーレとして滞っていた書類の数々を処理する余裕がありますよね。仕事の続きをしますよ。」

 

"...えっ!?"

 

驚いているとアインに首根っこを掴まれて近くで予約していた会議室に連れ込まれていくのだった。

 

 

 

...

 

...

 

...

 

その日の夜。セリカが行方不明ということをアビドスのみんなから知らされた。




この長期間に書き溜めを期待してこのタイミングで放出していると思う人もいるでしょう。

そんなことはありません。これからまた長期間になるか短期間になるか分からない不定期更新になってしまいます。ではまたいつかお会いしましょう。


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