サキュバス化催眠アプリ 〜巨乳黒髪眼鏡の図書委員の彼女に〜 (Rオウ)
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鬼頭大の章
第01話 ボーイ・ミーツ・ガール


「はい、では次は図書委員を決めたいと思います。誰かやりたい人はいますか?」

 

 担任教師から委員長に指名された高橋くんが黒板に『図書委員』と書きながら教室中を見渡した。

 高校に入学して二日目なのでまだお互いに名前もうろ覚えの状態なのに、座席表を片手にテキパキと司会をこなす高橋くんは委員長役に慣れている感じがする。多分中学の時も委員長をやってきたんだろうな。

 

 真ん中で几帳面に分けられた高橋くんの髪型を見ながら僕は挙手した。

 

「えっと、鬼頭(きとう)くんだったかな。あ、もう一人手を挙げたのは女子の久米(くめ)さんか。他にはいない? うん、じゃあちょうど二人になったから図書委員は決まりで。二人で話し合ってどっちが正副やるか決めておいて」

 

「はい」

 

 と後ろの席から声が上がったので振り向いた。

 僕以外にも図書委員に自推する人なんていたんだな。

 

「──う」

 

 おぉっ? 

 

 と声が出かけたのをなんとか飲み込んだ。

 

「う?」

 

 キョトンとした顔で僕の方を見てる女子はたしかに本を読むのが好きそうな子だった。

 長くて艶のある黒髪に丸い大きな黒縁眼鏡を掛けている。

 だけど長めの前髪が目に被さってるので、顔の上から半分が殆ど見えない。

 

 でも僕の直感が彼女はものすごい美人だと訴えかけている。

 

 美麗なカーブを描く鼻のラインと、小さくて可愛らしく整った口元。流れるような瓜実(うりざね)形の顎のライン。

 あれ? 美人じゃなくて可愛い系かもしれないぞ。もしくはその両方? 

 

 でも僕が驚いたのはそこじゃない。

 机の上に『おっぱい』が乗ってるんだ。

 

 超でかい。

 え? メロン? 

 違った、スイカだ。

 

 ブレザーのボタンが掛かってないけど、そりゃそうだ、掛けられるわけがない。

 ブラウスを突き破りそうな大きさの胸が、ミチミチと音を立ててる幻聴が聞こえてくる。

 

「鬼頭くん? どうかした?」

 

 あ、いかん、あまりの衝撃で固まってた。

 不躾な視線を彼女のおっぱいに注いでしまってた。

 

「あ、ごめん。えっと久米さんだったよね、どっちが図書委員の正やろうか?」

 

「私、副の方がいいかな?」

 

「分かった、じゃあ僕が正で」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「図書室ってどこだっけ?」

 

 ホームルームが終わったので久米さんと二人で図書室へと向かっている。

 新年度が始まるにあたって、この後各種委員会が開かれるんだ。僕たちの場合は図書委員会で、図書室で開かれるから、クラスの代表として出席しなければならない。

 

「図書室はN棟2階の西側だから、そこの階段登って左に行けば着くと思うよ」

 

「そうなんだ。鬼頭くんすごいね、もう校舎把握してるんだね」

 

 目が前髪に隠れてしまってるけど、僕に向かって久米さんが微笑んだのが分かる。

 久米さんの見た目から人見知りするタイプかなと思ったけどどうやら全然違うようだ。

 むしろすごく話しやすいし、人懐っこい性格だと思う。

 

「久米さんってやっぱり本を読むのが好きなの?」

 

「うん、鬼頭くんもそうなんでしょ? 図書委員決める時に真っ先に手を上げてたし。どんなの読むの?」

 

「ラ…………、あー文学作品は読まないかなぁ」

 

 危ない。バカ正直に答えるところだった。

 僕が読んでるのはラノベばっかりなのだ。

 でも知り合ったばかりの女子にそのまま言えるほど僕は図太くない。

 

 ラノベって本屋で平積みされてるようなのは布地面積の少ない女の子たちが所狭しと表紙に描かれてるので、女子にはまず間違いなく誤解される。

 まあ……誤解じゃなくて理解かも知れないけど。ラストでヒロイン全員孕ませちゃうような、R18指定されてないのが不思議なくらいの作品がアニメ化されてたりするし。

 

「ラ──ラノベ?」

 

「……うん」

 

 答え合わせされてしまった。

 全然隠せてなかったみたいだ。

 

「あはは、大体みんなそうだよ? 純文読むガチの子なんて今どき滅多にいないって」

 

 廊下に久米さんの笑い声が軽やかに響いた。

 僕が誤魔化そうとしてたのも見抜かれてるっぽい。

 

「そ、そうだよね」

 

 僕を見ながら今もクスクスと笑う久米さんの長い髪が左右に揺れて、廊下の窓から差し込む春の陽差しが笑っている久米さんの顔を温かく照らした。

 

「あ……」

 

 丸い黒縁眼鏡の奥から覗く久米さんの瞳に思わず吸い込まれそうになった。

 想像していた以上に可愛い。

 タレ目気味の淡いブラウンの瞳が、まるで宝石のように美しかった。

 

「どうかした?」

 

 彼女を見つめる時間が長すぎたのか、彼女が怪訝そうに僕を見上げる。

 久米さんのなんでもないそんな声すら不思議なほど心地よく感じる。

 

 あ、まずい。

 

 彼女と見つめあった一瞬で、僕の心臓が高く跳ねて顔が赤く火照っていくのが分かる。

 そして下半身を包む学生ズボンの内側ではペニスに血液が流れ込んで急速に膨らみ始めた。

 

 彼女は僕の下半身の変化に気付くこともなくコロコロと笑いながら話しかけてくる。

 

「それで鬼頭くんはどんなラノベ読んでるの?」

 

「……あー、いや、今はネット小説を読む方が多いかなぁ」

 

 ズボンの前がゆっくりと持ち上がっていく。

 だけど手で押さえるわけにもいかない。

 その動きが注意を引いて、ペニスが勃起し始めているのが彼女にバレてしまう。

 

「分かる分かる。買うと高いもんね」

 

 幸いにも彼女の視線は僕の顔に向けられたままだ。

 僕も彼女の顔を見つめながら話せば勃起に気づかれずに済むかもしれない。

 

「あー、じゃあ久米さんもネット小説メインなの?」

 

「うん、一緒だね」

 

 そう言って笑う彼女の前髪の隙間から覗く彼女の瞳に視線が吸い寄せられる。

 彼女と視線が交わる度に僕のペニスに力が漲ってくる。

 

 まずい。

 もう言い訳できないくらいズボンの前が膨らんでしまっている。

 今日会ったばかりの女子の隣を歩きながら、ズボンを突き破りそうな勢いで勃起してるこんな状況が彼女にバレたら僕は終わりだ。

 

 というかおかしいぞ? 

 なんでこんなに勃起するんだ? 

 昨日の晩もオナニーしてしっかり射精しているのに。

 

 久米さんは大きなおっぱいをゆっさゆっさと揺らしながら、内心焦りまくってる僕の隣を気づきもせずに歩いている。

 揺れるおっぱいを包むブラウスの生地には彼女の純白の下着(ブラ)が透けて見えてしまってる。

 

 視線が泳がないように意思の力を総動員して久米さんの顔を見ながら話し続ける。

 

 納得だ。

 勃起して当然だった。

 おっぱいが視界の隅で揺れ続けているのだ。

 男子なら絶対勃起する。

 

「あ。ここが図書室?」

 

「そうみたいだね」

 

 助かった。

 彼女を見ているだけでなぜか心臓が高鳴って勃起してしまうんだ。

 

 スライド型の扉の取手に手をかけて右に滑らせる。

 さすが図書室の扉。軽くて音がほとんどしない。

 

 中を見ると、入って右側に並んでいる机にすでに10人以上が座っていた。

 1学年5クラスだから図書委員は全部で30人任命されてるはずなので、まだ全員揃ってないみたいだ。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「では例年通り、月曜日から金曜日まで昼休みと放課後の図書室のカウンターで貸出返却当番は1年の図書委員の正副で行ってもらいます」

 

 3年1組の図書委員長が司会進行しながら一年間の図書委員の役目の割り振りやスケジュールについて説明していく。

 随分手慣れている。

 多分、2年間図書委員をやり続けて今年が3年目というところか。

 まあ僕もそのつもりだけど。

 2年と3年の図書委員は本の修繕とかも含めた蔵書の管理、図書だよりなんかの広報をやるらしい。

 

 

 図書委員会で当番割当やその他もろもろの周知が終わったので、第1回図書委員会は1時間ほどで終わってしまった。

 

「鬼頭くん、私たちは毎週火曜日の昼休みと金曜日の放課後にカウンターに座っていればいいの?」

 

「そうみたいだね。だけど用事がある時は一人でも良いらしいし交代でやればそんなに大変じゃないと思うよ」

 

「え?」

 

 久米さんが僕の言葉になぜかびっくりしてる。

 

「二人でやらないの?」

 

 少し小柄な久米さんが僕を下から覗き込むように見上げてる。

 前髪に隠れて見えないけど、なんだかショックを受けているっぽい? 

 

「……いや、僕は毎回当番には出るつもりだけど?」

 

 途端に久米さんの表情が明るいものに変わった。

 いや、相変わらず前髪で隠れてるけど。

 

「ん、じゃあ一緒だね。これから1年間よろしく」

 

 久米さんって気分がころころと変わるな。

 

「委員会も終わったし教室に帰ろっか?」

 

「そうだね、そういえば聞き忘れてたけど、久米さんのお勧めの小説って何?」

 

「ふふ、それは今度教えてあげるね」

 

「今日は教えてくれないんだ?」

 

「うん」

 

 久米さんがいたずらっぽく笑ってる顔がすごく眩しく見える。

 この姿を写真に残したいくらいだけど、今日初めて話した女子にお願いするのは流石に無理か。

 

 でも、そのうちそれくらい仲良くなれそうな予感がする。

 

「ほら、早く行こう?」

 

 こんな綺麗な女子と一緒のクラスで、一緒の委員会で学生生活を送れるなんて僕は本当にツいてる。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「ねえ、鬼頭くんのことをヒロくんって呼んで良い?」

 

 午前中の授業が終わっての昼休み。

 彼女と机を合わせて一緒にお弁当を食べてると久米さんがそう言った。

 

 高校に入学して最初のゴタゴタしたような、クラスメイトの中での立ち位置が決まり始めるような時期が過ぎて、火曜日の昼休みには図書室で一緒に貸出対応をする図書委員だからという理由で一緒に弁当を食べ始めてから、なぜかなし崩しのように火曜日以外も毎日一緒にお弁当を食べるようになった4月のある日、久米さんがそう言った。

 

 同じように教室で弁当を食べていたクラスメイト雑談する中、彼女の声は意外なほど通りが良くて、教室が一瞬静かになった。

 

 高校で新しく友人となった鈴木と佐藤から剥き出しの敵意が向けられてきたのはショックだが今は無視する。

 

「えっと、久米さん、なんで?」

 

「だってほら? 鬼頭くんって呼んでると割と振り返る人が多いし……」

 

 ……ああ、女の子の口から「きとう(亀頭)」なんて言葉が出てきたらそりゃまあね。

 

「別に放送禁止言語じゃないはず……いや……だったっけ?」

 

「だからヒロくんさえ良かったら、ヒロくんのことヒロくんって呼んで良いかなって?」

 

「もう呼んでるじゃん」

 

 久米さんは一度こうだと決めるとよっぽどじゃない限り自分の考えを変えない。

 こんな顔していてものすごく頑固なのだ。

 

 久米さんのお弁当箱から卵焼きを箸で摘まんで口に運ぶ。

 うん、美味しい。

 

 久米さんも僕の弁当箱からおかずを箸で摘まんで美味しそうに食べている。

 モグモグと口を動かす久米さんの顔を眺めつつ、まあそんな大したことではないかと思い直す。

 

「まあいいんじゃないの、名前で」

 

 僕も小学校の高学年になった辺りで自分の名前を(からか)われたことがある。

 だから気持ちは分かる。

 

「やった。じゃあヒロくんも私のことは青子って呼んでね?」

 

「……なんでそうなるの?」

 

 教室はもう完全に静まり返ってた。

 新たに山田と田中からも敵意の籠もった視線がレーザービームと化して突き刺さってくる。まあね、久米さんの顔をちゃんと見たことがある男子はクラスでは僕くらいだろうけど、久米さんは校内屈指のナイスバディだもんね。それに男子だけじゃなく女子も何人かが僕たちに注目している。

 

 注目の的になってる久米さんが教室にいる3人の女子の──久珂(くが)さんと嶋久(しまひさ)さん、それに佐久間(さくま)さんに視線を向けた後、ゆっくりと僕に視線を戻した。

 

「だって、私がヒロくんって呼んでるのに、ヒロくんが久米さんって呼ぶのってバランスが悪くない?」

 

「……まあ、確かに」

 

 よく考えたら反対する理由が特にない。

 

「じゃあ今日からは僕も青子さんって呼ぶよ」

 

 僕がそう呼ぶと青子さんはすごく嬉しそうに微笑んだ。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 金曜日の夕方、図書室のカウンター係は僕と青子さんの二人だ。

 読書家、もしくは本好きはどこの学校にもいるもので、週末に家で読むための本を借りていく生徒は意外と多い。

 授業が終わって図書室を開けると、最初の20分間くらいはかなり混み合うけど、その後は誰もいなくなるので閉館まで割と暇になる。

 

 もう何度も金曜日の夕方のカウンター係を経験して僕たちも大分慣れてきた。

 

「ヒロくんは何読んでるの?」

 

 この時間になればもう生徒は誰も来ないのが分かりきってるので、青子さんと二人でカウンターの席に座りスマホでネット小説を読んでいるんだ。

 

「昨日から読み始めたこの作品が面白いよ?」

 

 スマホの画面を彼女に見せる。

 

「あ、それ日間ランキング7位の作品だよね? 私も読み始めたよ」

 

「青子さんも読んでたんだね。でもこの前まで悪役令嬢が皇帝の第三皇子に溺愛されるってやつ読んでなかったっけ? ほら、ものすごくクズな皇子のやつ」

 

「そっちは最新話までもう追いついちゃったから」

 

「追いついたって……あれ最新話262話じゃなかったっけ?」

 

「うん」

 

「読み始めたの今週の火曜日じゃなかったっけ?」

 

「うん」

 

「……まあ、いいけど。青子さんに勧められたけど、アレは読んでてイライラするだけだったので悪いけど読むの止めたよ。溺愛なんてタイトル詐欺で、浮気ばっかりしてるじゃないか、あの皇子。しかも悪役令嬢ってただ目付きが悪いだけで誤解されてるわ、浮気相手の令嬢からイビられるわ、踏んだり蹴ったりじゃん」

 

「そりゃドアマットヒロインだし」

 

「ドアマットって……僕には合わなかったよ」

 

「あのイライラモヤモヤする感じが次の話を読む原動力になるんだけど、ヒロくんには分からなかったか」

 

 嬉々として作品を語る青子さんを思わず胡乱な目でみてしまう。

 いや、でも確かにポイントを見ればすごい人気作品なのだ。

 男と女の感性の違いがモロに現れてる気がする。

 

「まあ青子さんが良いなら良いけど、僕はこっちの無双系の作品の方がやっぱり好みに合うかな」

 

 

 図書室が閉館する時間までそうやって互いに感想を言いながら過ごすのが普通になったのはいつからだったか。

 青子さんと過ごす週末のこの時間が最近は楽しみになってきたんだよな。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 火曜日の昼休みの図書室は意外と忙しい。

 昼休みに開けている時間が短いのと、週末に借りた本を返却するのは月曜日ではなく実は火曜日が多いからだ。

 

「ヒロくん、後ろ通るね?」

 

 返却と貸出対応で時々カウンター内を移動する必要があるので、椅子から立ち上がった青子さんが僕の後ろを移動する。

 

 ボインっ! 

 

 いきなり大質量が僕の頭にぶつかってきた。

 

「あ、ごめん! ヒロくん大丈夫?」

 

「大丈夫……痛くは無いから」

 

「そう? 良かった。次は気を付けるね」

 

 おっぱいで頭を殴られた経験ある? 

 僕は今初めて経験したけど、すごい感触だった。

 

 即座に反応した下半身(ペニス)を青子さんから見えないように足と足の間に挟んで隠す。

 

 

 ぎゅー……。

 

 青子さんがまた僕の背後を移動しようとして、今度はお尻で僕の背中を擦っていく。

 気を付けるという彼女の言葉通り、ゆっくりと僕の背中を彼女の豊満なお尻が時間をかけて撫でていく。

 

「ご、ごめんね。カウンター内ってちょっと狭くて」

 

「……うん、狭いから仕方ないよね」

 

 青子さんはおっぱいが前に突き出て、お尻は後ろに突き出てるのだ。

 狭く感じるのはきっと青子さんが図書係の時だけだろう。

 

 なんとなく次の展開が読めてきたぞ。

 

 ぐっと両足に力を籠める。

 期待に膨張を始めたペニスが股間で跳ね上がって、ズボンにテントを張ろうとしてるけどそうはさせない。

 

 青子さんが移動する時に僕が椅子から立ち上がれば狭くてぶつかることはないけど、もう遅すぎてその手は使えない。

 足と足の間に勃起ペニスを挟んで隠してる僕は椅子に座ったままもう動けない。

 

 僕の後頭部におっぱいを押しつけてゆっくりと蟹歩きする青子さんの息遣いを首筋に感じながら、股間のペニスは暴発寸前だ。

 

 

 ……最近は青子さんが近くにいるだけで勃起してしまうような気がするけど、気のせいだと思いたい。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「ほら、ヒロくん起きて」

 

 誰かが僕の身体を揺すっている。

 

「………………あれ? もしかして僕寝てた?」

 

「もうグッスリだったよ?」

 

「うわ、ごめん! すぐに起こしてくれたら良かったのに」

 

「いいよ、どうせ金曜の夕方なんて、この時間になったらもう誰も来ないし」

 

 図書室の壁にかかってる時計を見ると17時半を回っていた。

 寝ていたのは20分くらいか? 

 

「もう一度お茶飲む?」

 

 目をパチパチさせてる僕に、青子さんが水筒に入ったハーブティをまた勧めてきた。

 

「いや止めとこう、かな」

 

 精神が落ち着くハーブティだよって勧められて飲んだけど、寝てしまったのはそれが原因かも知れない。

 すごく美味しかったけど、流石にまた寝てしまう訳にはいかない。

 

「あ、スマホは…………」

 

 手に持っていたはずのスマホが見当たらない。

 

「はい、どうぞ。床に落としそうだったから預かっておいたよ」

 

「あ、ありがとう。なんかダメなとこばかり今日は見られてるね」

 

「いいよ、別に。ヒロくんだもん」

 

 青子さんが優しく微笑んでくれる。

 黒縁メガネの奥で青子さんの目が僕をまっすぐに見つめているのが分かる。

 

 なんか照れてしまうな。

 

「じゃあそろそろ時間だし図書室閉めようか」

 

 話題を変えてしまおう。

 

「そうだね、もう閉めて遠藤先生に鍵を返さないとね」

 

 彼女も頷いたので椅子から立ち上がりかけて、ズボンの裾を踏んだ。

 

「おっと」

 

 うたた寝した時にズレたのかな。

 

「ヒロくん?」

 

「あ、ごめん。すぐ行くよ」 

 

 急いでズボンを引き上げてベルトを締め直す。

 図書室に鍵をかけて、彼女と一緒に職員室へ向かう。

 

 夕焼けに赤く染まる廊下を青子さんと一緒に歩きながら、横目で彼女を見る。

 彼女の綺麗な顔と黒縁眼鏡の奥の澄んだ瞳、それと彼女の意外と愉快な性格を知っているのは僕だけだ。

 

 彼女を独占できるこの時間がいつまでも続けばいいのにと思った。

 

 



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第02話 催眠アプリ

 学校の校門で青子さんと別れて家に帰宅すると18時を回っていた。

 図書委員の関係で金曜日は帰りがいつも遅くなるんだ。

 

 

 家族と晩ごはんを食べてから自分の部屋に戻り、下着を脱いで下半身裸になった。

 日課のオナニーの時間だ。

 

 夜、寝る前にオナニーしないと夢精して下着を汚してしまうという割と切実な理由から、毎晩オナニーするのが日課になったのは中学生の頃だ。

 すでに僕の股間では普通の男性を遥かに上回る大きなペニスが勃起して反り返っている。

 

「大きすぎるんだよな。人並み……よりほんのちょっと大きいくらいが良かったのに」

 

 精液を受け止めるためのいつもの広口のビンを用意して、スマホ片手にベッドに横になる。

 噴き出す精液を受け止めるのにビンが必要なのだ。

 ティッシュ程度ではとても受け止めきれない。

 

 小学校高学年で精通してから、何も知らなかった時はこんなものかと思っていたけど、中学の時に男子で猥談してて射精をティッシュで受け止めると聞いて「そんなの無理に決まってるだろ?」って言った時の友達の表情を今でも思い出す。

 

 ネットの情報や文献によると、どうやら一回の射精で0.2cc〜6.6ccの精液が出るのが普通らしい。平均だと3.5cc。さすがに友達が射精するところを実際に見たりなんかできないから、これが本当なのか確認はできないけどウィキペディアに意味もなく嘘は書かれないだろう。

 まさか射精の精液量で編集合戦が行われるわけないし。

 

 なので正しいのだろうと理性では分かってるんだけど、心の何処かで違っていて欲しいと願ってしまう。だってそうじゃないと自分が普通じゃないってことになってしまう。

 

「はぁ……」

 

 精液の量が多いと女の人に気味悪がられたり……するのかなぁ。

 それは嫌だよなぁ。

 

 どこかに精液が多く出過ぎる男子の方が好みだったり、おまけにペニスも巨根の方が良いって思ったりする女子が……いるわけないか。

 

 そんな都合の良い女の子なんて妄想とかエロ創作物の中くらいにしかいない。

 

「よっ」

 

 気分を切り替えよう。

 

 ベッドに横になって、スマホを操作してオカズにする写真を表示させる。

 スマホの写真フォルダの中には制服姿の青子さんの写真を山程格納している。

 もちろん僕は盗撮なんかしない。

 ちゃんと青子さん了承のもとで撮らせてもらってるし、撮った写真も後で青子さんに確認して貰ってる。

 

 「青子さんが綺麗だから」とか「夕日と一緒に撮ると青子さんがすごく映えるから」と言い訳しながらお願いすると、青子さんは照れながら意外と色んなポーズで撮らせてくれるのだ。

 

 誰もいなくなった図書室で、両手を左右に広げて手ぶらの状態でおっぱいに本を乗せて運ぶ悪ノリ青子さんとか、背伸びして爪先立ちで本棚に本を片付けていく青子さんの写真とか図書係の仕事をこなす青子さんの写真が毎週のように増えて行ってる。

 

 ……まあその写真がナニに使われてるかまでは彼女は知らないだろうけど。

 

 ダース単位の人気グラビアモデルを小指で蹴散らせる青子さんの抜群のスタイル。制服のブラウスを内側から異様なレベルで盛り上げているおっぱいの部分を拡大すると、純白の下着(ブラ)がうっすらと透けて見える。

 柔らかそうなおっぱいの脇にワイヤーが食い込んで、すごく我儘そうな肉が盛り上がってるのだ。

 

 彼女は意外とスカートは短い方だったりする。ウエストは細くお尻は大きくてボディラインが美しいので、お尻を包む短いスカートの裾から飛び出してるむちむちの太ももを拡大すると大変だ。僕のペニスがもう本当に大変なことになるのだ。

 

 こんな不純な動機で彼女の写真を撮り貯めておいてなんだけど、青子さんはちょっと無防備すぎると思う。

 いや無防備と言うより僕に気を許してくれてるのだろうか? 

 僕の勘違いでなければ、彼女の距離感が最近どんどん近くなってる気がするんだ。

 

 金曜日の夕方とか、図書室から生徒が誰もいなくなると、わざわざカウンターの中で椅子を移動させて僕にくっついて来るのだ。腕と腕はもちろん、お尻だって接触した状態で彼女は割と動くから何回も彼女のおっぱいに僕の腕が当たってしまう。

 

 先週なんか特にひどかった。

 

 小説の感想をお互い言い合う内にいつの間にか身体が密着していて、気づいたら僕の肘におっぱいがめり込んでいたのだ。肘とおっぱいが触れるとかのレベルではなく、肘がおっぱいにめり込んで二の腕が彼女の胸の谷間に完全に挟み込まれた。

 

 すっごい柔らかいのに弾力もあって、もう最高だった。

 あの日は家に帰って金曜の夕方から日曜の夜まで彼女のおっぱいの感触を思い出しながら何回も射精しまくった。腕が挟み込まれた感触をペニスに置き換える妄想をすると自分でも信じられないくらい興奮して、勃起が全く収まらなくなってしまったのだ。

 

 このままいくと僕は青子さん以外では勃起しなくなるような気がする。

 

 もちろんネット上にはいくらでもモロの写真とかモロの動画が転がってて、僕も高校に入学するまではお世話になってたんだけど、高校に入ってからはそういうのではなぜかあまり勃起しなくなってしまった。もちろん全然勃起しないわけじゃないけど、あまり興奮しなくなったというか。

 

 世界(ワールド)クラスの美女のヌードやセックス動画よりも青子さんの写真とかおっぱいの感触の方が僕のペニスを簡単に勃起させてくれる。

 

 ネットで調べると、関係性の薄い見知らぬ女性の裸やセックスなんかよりも、身近な女性の方が興奮するのは割と普通らしい。関係性なんたらかんたらとか。

 

 ……というわけで、悪いと思いつつも毎晩青子さんの写真を使わせて貰っていて、そして今晩も使おうとスマホを操作して……?

 

「──っと、なんだこれ?」

 

 スマホの画面に見慣れないアイコンがあった。

 

「こんなアプリインストールしたっけ?」

 

 黒の背景に赤い目が浮かんでいる比較的シンプルなデザインだ。

 とりあえずタップして起動してみるか。

 

 すると画面がぐるぐる回るようなエフェクトの後、起動ロゴが表示された。

 半裸のエッチなお姉さんがおっぱいを持ち上げてる構図の絵だ。

 

「エッチなゲーム……かな?」

 

 ストアにはR18のゲームは登録されてないけど、ギリギリを狙ってるっぽいアプリは偶に見かける。

 そういうゲームをインストールすると、基本的にゲーム性もエロも皆無のハズレばっかりだ。

 

 分かっていても懲りもしないでそういうゲームをインストールしてしまう辺り、僕は普通の男子より性欲が強いのではないかと最近自分を疑い始めた。

 青子さんと一緒にいると、すぐにペニスが勃起してしまうようになったっていうのも理由だ。

 以前はこんなに頻繁には勃起しなかった。

 

 勃起していることが青子さんにバレないようにペニスを太ももに挟んで隠すんだけど、最近青子さんは僕の身体にやたらタッチしてくる。

 横に座って雑談で笑いながら、肩はもちろん太ももをパンパンと叩いたりするのはしょっちゅうだ。太ももの間に挟んで隠してる勃起ペニスに彼女の指先が触れてしまうことだってある。

 

 もちろん彼女は全然気づいてないだろうけど、勃起した僕のペニスを初めて触った女性は青子さんだ。膨らんだ亀頭に触れた青子さんの指先を思い出すだけでペニスが一瞬で勃起する。

 

 こんな状態をいつまで隠し通せるのかと、自虐的な苦笑いを浮かべながら待っているとアプリが立ち上がった。

 

 

 【女の子をサキュバスにしちゃう催眠アプリ】

 

 瞼を開いた状態の目の中にハートマークが浮かんでる背景絵の中央に、身も蓋もないようなアプリ名が表示された。

 

「催眠アプリ?」

 

 記憶も見覚えもないけど、どこかでインストールしたかな? 

 寝る前とか、ウトウトしてる時とかにこのアプリをインストールして、そのまま寝てしまってインストールしたことを忘れてたとか? 

 

「うん、あり得るな」

 

 アプリのロゴ表示の後、初回起動時によくある説明画面が表示された。

 右下にはスキップのボタンがあるけど、中身が分からないからスキップせずに素直に読み進める。

 

『このアプリは貴男が興味がある女の子、気になっている女の子に催眠をかけるためのアプリです』

 

 気になっている女の子という言葉を見て青子さんの顔が脳裏に浮かんだ。

 いやいやいやと首を振って打ち消して、【次へ】をタップする。

 

『このアプリは一流の科学者が新しく考案した催眠導入技術を採用しているため、使い方は極めて簡単です。スマホに表示される催眠画面を女の子に見せるだけで一瞬で催眠がかかります!!』

 

 一瞬って……盛ってるなぁ。

 ジョーク系アプリだったかと、心の中の期待値が減少し始めた。

 もちろん、本気で信じてたわけじゃないんだけど。

 

『このアプリで催眠にかかった女の子は自分のことをエッチが大好きなサキュバスだと思い込みます! そしてペニスを射精させたくてたまらなくなるのです!!』

 

「ほぉ…………」

 

 ペニスを射精させたくなる、と。

 あの、青子さんが。

 

 全裸の青子さんが妖しく微笑みながら僕ににじり寄ってきて、股間で勃起しているペニスを弄び始める光景が脳裏に浮かぶ。

 僕のペニスを握りしめた手を左右に動かすと、彼女のスイカみたいなおっぱいがバルンバルンと揺れて、尖り立った乳首が物欲しそうに上を向いて屹立しちゃうのだ。

 

「……いやいやいや、何考えてるんだ。ダメだろそんなこと」

 

 浮かんでしまった妄想を口に出して否定する。

 彼女のおっぱいはすごく大きいけど、彼女がそんなことをするわけがない。

 

 この催眠アプリはジョークアプリなんだろうけど、万が一、億が一にも彼女が催眠にかかってしまい、自分のことをサキュバスだと思いこんでしまったら……僕以外の男性のペニスも射精させたがるってことだろ? 

 

 校内にも街にも僕なんかより遥かにイケメンの男性が山ほどいる。

 僕のことなんか無視して、校内のイケメン男子や街を歩くイケメン男性のペニスにむしゃぶりつく彼女を想像するだけで、胸が締め付けられるように痛む。

 

 だめだ。

 そんなことになったら僕は耐えられない! 

 

 ぐっと拳を握りしめて最悪の想像を頭から追い出す。

 何度か深呼吸して落ち着こうと呼吸を整える。

 

 いかんいかん。単なるジョークアプリのことを真に受けてどうする。

 

 首を左右に振りながら【次へ】をタップする。

 

『ご安心ください! 催眠にかかった女の子は貴男と二人きりになった時だけサキュバス化するんです!』

 

「え? そうなの? 思ってたのと……違う?」

 

 サキュバスってゲームとか小説でも手当たり次第に男の人の精液を搾り取るものだと描写されることが多いけど。

 

『そうなんです! この催眠アプリは女の子を貴男専用のサキュバスにしちゃうのです!! 大丈夫です、サキュバス化した女の子は貴男以外の他の男の子には見向きもしません!』

 

 他の男には見向きもしない? 

 

「青子さんが…………僕専用のサキュバスに!?」

 

 僕だけのエッチなサキュバスになった青子さんを想像して股間のペニスが滾り始めた。

 

 すぐに【次へ】をタップした。

 

『周りに貴男以外の人がいたり、もしくは貴男以外の誰かに見られる恐れがある時はサキュバス化しない親切設計なのです! しかも! ここ大事ですよ!? サキュバス化した女の子は満足するまで催眠は解除されないのです!』

 

「満足、するまで……」

 

 それってつまり僕が射精して満足するまで青子さんはサキュバス化の催眠にかかったままってこと? 

 

 青子さんが大きなおっぱいを揺らしながら僕のペニスを捧げ持って……熱い吐息をふーっと吹きかけたりして、限界まで膨張した亀頭に舌先を伸ばしてチロチロ舐めながら僕を上目使いで見上げたり? 

 それでもって唇を歪めながらゆっくりと亀頭を咥えこんで……その舌で(ねぶ)って(ねぶ)って()め回して亀頭をしゃぶり続けてくれる…………その行為を僕が射精するまで、ずっと? 

 

「いや! いやいや!!」

 

 そんなの絶対にどこかに落とし穴がある。

 そんな都合のいい話があるわけがない。

 

「……そうだよ。そもそも催眠が解けた後、青子さんとどんな顔して会えるって言うんだ?」 

 

『ご安心ください! 催眠が解除されると催眠にかかった間のことを女の子は覚えてないのです!』

 

「え!?」

 

『記憶に残りません!』

 

「……覚えて、ないの?」

 

『はい!』

 

「全然?」

 

『全然覚えてません! 催眠でサキュバス化した時のことは思い出せなくなるのです! しかもですね!? 覚えてない間のことは女の子の中で自動的にいい具合に補完されるので、後になって疑問とか違和感を覚えることも絶対にないのです!』

 

 スマホの画面の中ではガイド役の可愛いサキュバスの女の子が良い笑顔でサムズアップしている。

 

「おぉ! 凄い! このアプリ凄い!!」

 

『でしょうっ! 凄いんです、このアプリ!』

 

 デフォルメされたサキュバスの女の子の絵がピンクのフキダシでほとんど雑談みたいに説明を繰り返してる。

 

 ……この説明文を予め用意してたのだろうか? 

 

 なんかやたら打てば響くような説明だし、まるで人間を相手に説明を受けてるような感じだった。

 AIでも搭載してるのかな。

 

 

 ピっ♪ 

 

 ようやく冒頭の説明が終わったのか、画面が切り替わって登録画面になった。

 想像していたよりシンプルな画面だ。

 画面には空欄がたった2個しかない。

 

 

 【催眠にかけたい好きな女の子の名前】

 【サキュバス化した女の子の主となる男の子の名前】

 

 

 そして画面の下部に【登録】ボタンがあり、注意書きみたいなものも書かれていた。

 

 【悪用防止の為、このアプリは生涯で一度しか使えません。そして催眠にかける女の子は貴男に好感を持ってる必要があります】

 

 

 なるほど。

 

 まあ、怪しげなスマホの画面を見てくれる女の子なんてある程度仲が良くないと無理だよな。

 当たり前と言えば当たり前か。

 

 つまり僕のことを全く知らないアイドルの美少女とか通りすがりのクール美女とかにスマホの画面を突きつけても催眠にはかからないわけか。

 

「まあ残念…………でもないな」

 

 だってアプリの説明を読みながら僕はずっと青子さんのことばかり考えていたから。

 

 股間を見ると、ペニスが限界ギリギリまで勃起していた。

 説明文を読みながら妄想の中で青子さんが僕のペニスを愛情たっぷりに弄り回していたのだ。勃起しない方がおかしい。

 

 そしてそんな妄想が実現するかもしれないんだ。

 

 青子さんの琥珀色の宝石のような瞳。

 青子さんの芸術作品の彫刻のように整った唇

 青子さんの白磁のように繊細な指。

 

 そして……重力を無視したように盛り上がった大きなおっぱい。

 それに短めのスカートに包まれたお尻とむっちりとした太もも。

 その奥の誰にも見せたことが無いはずの陰り。

 

 ……まだ誰のものでもない青子さんを僕だけのものする妄想に突き動かされて、興奮に震える指先で空欄をタップして名前を書き込んだ。

 

 

 【催眠にかけたい好きな女の子の名前】

  久米 青子

 

 【サキュバス化した女の子の主となる男の子の名前】

  鬼頭 大

 

 

 このアプリが本物の催眠アプリだと僕は本気で信じてるわけじゃない。

 これはジョークアプリの類のものだ。

 彼女にスマホの画面を見せてもきっと何も起こらない。

 

 だけど股間ではズキン、ズキンと痛いほどに勃起したペニスが上下に律動を繰り返してる。

 本物の催眠アプリである可能性はほぼゼロだけど、もしこのアプリが本物だったら催眠でサキュバスになった青子さんが……僕のペニスを……射精させてくれる。

 

 好きな女の子が僕のペニスから精液を搾り取るのに夢中になるのだ。

 他の男子を見向きもせずに、僕のペニスだけを嬉しそうに愛撫する青子さんの姿を想像すると、興奮でペニスがいきり勃ち亀頭が膨らんで鈴口がぱっくりと口を開ける。

 

 ぽたっ。

 

 鈴口からガマン汁がこぼれ落ちて、ベッドのシーツに染みが広がっていく。

 

 そして僕は大きく息を吐いてから…………【登録】のボタンを押した。

 

 すると画面が切り替わり記入欄が現れた。

 

 【サキュバス化したい女性を選んだ理由を書いてください。好きな理由でもいいです。※ちなみに書けば書くほど、サキュバス化の催眠は深く強く掛かるようになります】

 

「理由か……」

 

 熱く堅くなったペニスに後押しされて、僕は青子さんの好ましく思っている所を書き込んでいく。

 

 青子さんの顔が好き。目が好き。髪も好き。笑っている顔が特に好き。拗ねてる時の顔も実は好き。大きなおっぱいが好き。細くくびれた腰が好き。大きなお尻も好き。むっちりした太ももも好き。拗ねてほっぺたを膨らませる子どもみたいなところも好き。彼女のお父さんやお母さん、そして妹のことを喋る時の青子さんも好き。板書された内容を丁寧にノートに書き込む彼女の綺麗な文字が好き。ネット小説の感想を語る時の青子さんが好き。感情を籠めて手を振り回す青子さんが好き。意外と熱血なところも好き。頑固でムキになるところもちょっと好き。嘘が下手な青子さんも好き。実は料理が下手でそれを隠せてると思ってる青子さんが好き…………。

 

 青子さんの容姿から始まって、話し方や性格や癖まで自分が好きな青子さんのことを書き連ねていく。書いても書いても次から次へと彼女の好きなところが浮かび上がってくる。

 

「──ああ、そうか。つまりはそういうことなんだ」

 

 僕は最後に、『青子さんの全部が好き』と書いて登録ボタンを押した。

 

 すると【サキュバスの主に相応しくなる催眠を開始します】と表示された後、記入欄を埋め尽くすほどに書きこんだスマホの画面がぐにゃりと渦を巻いてぐるぐると回転し始めた。

 

 スマホの画面に表示された黄色と赤の渦巻きを見ていると、苦笑いが出てきた。

 やっぱりただのジョークアプリだ、これ。

 だけど、問題はそこじゃない。

 

「こんなに青子さんのことが好きなのに、その青子さんに催眠にかけようとか…………バカか、僕は」

 

 頭が冷えた。

 

 だけどこのジョークアプリのお陰で気持ちを整理することができた。

 このふざけたアプリをアンインストールしかけて…………気が変わった。青子さんへの気持ちを気づかせてくれたこのアプリを残しておいた方がいいように思えた。

 

 自分の気持ちを自分で汚さずに済んだのだ。

 だけど青子さんが好きだということ以外は綺麗さっぱり忘れてしまおう。

 

 僕はスマホの画面を消して、今日は自分への罰として日課のオナニーをしないまま、ベッドに横になった。

 

 



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第03話 爆発

 

 ── 月曜日 ──

 

 

 週が明けて、二日ぶりに会った青子さんの様子がすごく変だ。

 朝からずっと上の空と言うか。ぼーっと物思いに耽ってたり時々思い出したように顔が真っ赤になるし。

 照れながら自分の机を手でパンパンと叩いたりしてる。挙動不審過ぎる。

 

「ねぇ青子さん、どうしたの? なんか今日変だよ?」

 

「え? そ、そうかな?」

 

 昼休み、机をくっつけて青子さんと弁当を食べながら、朝から思ってたことを直接聞いてみた。

 

「うん、なんかそわそわしてるっていうか」

 

 実はそわそわだけじゃなくて、デヘヘって感じで顔が破滅的に時々崩れてしまってることまでは言わないほうが良いだろうな。

 多分自覚してないだろうし。

 

「これが私の普通だけど?」

 

 今はキリっと澄ました顔をして怪訝そうな目で僕を見てる。顔は真っ赤だけど。

 

「そう?」

 

 まあ女子の場合は体調とかの微妙な問題に関係してたらアレだし突っ込まない方が良いか。

 そんなに引っ張るようなネタでもないし。

 

 箸を伸ばして青子さんの弁当箱から唐揚げを一つ摘まみ、口に放り込む。

 

「うん、美味しい。青子さんは料理が上手だよね」

 

 こう言うといつも青子さんは「ありがと」って返してくれるのに今日はなぜか胡乱な目で僕を見ている。

 やっぱりいつもと違うな、青子さん。

 

 

「そうだ、ヒロくん。私ちょっとトイレに行ってくるね」

 

「ん? ああ、どうぞ?」

 

 お弁当を食べ終えたので机を元の位置に戻してると青子さんがそう言った。

 彼女がそんなことを僕に言うのは珍しいな。

 

「N棟の3階のトイレに行くつもりなの。知ってる? 昼休みだとそのトイレは誰も使ってないの」

 

「へー、そうなんだ?」

 

「周りの教室も使われてないから誰もいないんだよ?」

 

「へー」

 

「付いて来てもいいよ?」

 

「え? なんで?」

 

 男女で連れションってあんまり聞いたこと無いな。

 音を聞かれたくないだろうし。

 

 だけど、青子さんは僕の返事を聞いたら少しがっかりしたようだ。

 時々青子さんが何考えてるのか分からないことがあるけど、今日はそれだな。

 

 

 

 ── 火曜日 ──

 

 

 昼休みは図書室のカウンターで本の貸出返却対応をする。

 図書委員の普通のお仕事だ。

 

 図書室を開いてすぐは貸出や返却処理が集中するけど、その時間が過ぎれば割と暇になる。

 もちろん僕の隣には青子さんが座っているので、僕にとってはご褒美タイム以外の何物でもない。

 

 教室と違って図書室は静かなので勉強熱心な生徒や僕たちみたいに本が好きな生徒が机に座って自習したり本を読んでたりする。

 

 まあそういう生徒も昼休みが終わる少し前には教室に引き上げちゃうので、昼休みが終わる頃には青子さんと二人っきりになれる。誰もいないからクラスメイトの目を気にせずに雑談したりできるので僕にとっては楽しみな時間だ。

 

「──あの人って3年かな?」

 

 あの先輩はいつも昼休みが残り10分を切ったら引き上げるんだけど、今日は珍しく残って自習し続けてる。真面目で勉強家なんだな。

 

 だけど青子さんはさっきからすごく機嫌が悪い。昼休みが始まってから時間が経つに連れて加速度的に彼女の機嫌が悪くなっていってる。

 彼女がここまで機嫌が悪くなるのは珍しいな。

 

 あ、もしかして? 

 

「青子さん、用事があるなら先に教室に戻ってていいよ? 僕が最後まで残ってるから」

 

「ううん? よ、用事なんかないから大丈夫よ」

 

「そう? 教室でなにか用事があるからそんなに焦ってるんじゃないの?」

 

 よく見れば彼女は機嫌が悪いというよりそわそわしていた。

 

「あ、焦ってなんか無いよ。普通だし」

 

「ふーん」

 

 机で自習していた先輩がちらりと僕たちの方を見た。

 

 おっと、五月蠅かったか。

 図書室では静かに、だな。

 

 

 

 ……結局その先輩は昼休みの終わる2分前まで自習し続けていたので僕たちも教室に帰るのはギリギリになってしまった。

 

「チッ……さっさと帰ればいいのに……」

 

 なんか、青子さんが悪態をついたような気がしたけどきっと空耳だ。

 青子さんが舌打ちなんかするわけ無いし。

 

 

 

 ── 水曜日 ──

 

 

 青子さんが今日も朝からイライラしている。

 もしかして生理なのだろうか? 

 今週に入ってから青子さんの雰囲気がいつもと違ってたし、そういうことだったのかな。

 重いとすごく苦しいと聞く。青子さんは重い方なのだろうか? 

 

 男子の僕では本質的には理解できないだろうし、かといって気を使うのもどうなんだろ? 

 

 実は最近、ノンデリって言葉を知った。

 デリカシーが無いことをそう呼ぶみたいだ。

 

 生理の話題を出すとか気を使うのもノンデリにあたるのだろうか? 

 生理であることを知られるのが嫌な女子もいるだろうし。

 

 うーん。

 きっと僕は普段通りにしていた方が良いんじゃないだろうか。

 そしてソレとは気付かれない程度に気を使うとか。

 

 というわけで、イライラしてる青子さんを刺激しないように近づかないようにする。

 なあに、休み時間は大抵スマホで『小説を読みましょう』でブクマしてる作品の続きを読んでるんだ。

 青子さんと話す時間をいつもよりほんのちょっと削るだけだ。

 

 椅子に座ってスマホで小説読んでるとなぜか視線がチクチク刺さってくるな。

 椅子に座ってスマホでネット小説を読んでるだけの僕が注目を浴びるわけがないんだけど。

 

 ……顔をスマホに向けたまま、こっそりと視線の主を探す。

 

 なんだ、青子さんだったか。

 

 なんか物凄い目で僕のスマホを見ている。

 型落ちの格安スマホなので、たいしたものじゃないんだけど。

 もしかして今僕の読んでる作品に興味があるのだろうか? 

 

 

 

 ── 木曜日 ──

 

 

「ヒロくん、今日一緒に帰らない?」

 

 今日も朝から機嫌が悪かった青子さんが僕に話しかけてきた。

 ホームルームも終わったし、帰宅部の僕たちはもう家に帰るだけだ。

 

「…………青子さんの帰る方向って僕と正反対だからいつものように校門でお別れだよね?」

 

 教室を出て校門までは毎日青子さんと一緒に帰ってるのだ。

 そこで僕は東へ、青子さんは西へ向かって歩いて家に帰ってる。

 僕たちは二人とも徒歩通学なのだ。

 

「そうなんだけど、たまには二人で寄り道しない?」

 

「寄り道?」

 

「うん。学校の南に松原公園があるでしょ?」

 

「あったっけ? あー…………かなり遠いけどあったな。辺鄙な場所だから誰も使ってないし、遊具も無いから子供も滅多にいないところじゃなかった?」

 

「そう、そこ!」

 

「あんなとこ行って何するの? バブル期に都市計画失敗した時の名残りって言われてるとこだよね。寂れてて周りにお店もなんにもないし、無駄に大きな公衆トイレくらいしか無いでしょ。それよりも寄り道なら本屋巡りしない? 駅前の本屋の傍にマクドあるし」

 

「そ、それも良いけど、でもそれだと周りに人が一杯いるし……」

 

 青子さんが僕の目を見てはなぜか目を逸らすのを繰り返す。

 顔もなぜか赤くなってる。

 

「……周りに人がいたらなんかまずいの?」

 

「ううん、全然まずくないけど。まずいとか一言も言ってないけど?」

 

 青子さんのほっぺたがぷくっと膨れた。

 眼鏡の奥に微かに見える青子さんの琥珀色の綺麗な瞳にほんの僅かに剣呑な光が混じる。

 

 あ、ちょっと怒っちゃったかな? 

 

「ごめんごめん、そうだよね、僕が勝手に言っただけだったね。でも青子さんと一緒に本屋巡りしたいってのは本当だよ」

 

「あぁうん…………そうね。私もヒロくんと本屋さん巡りしたいなって」

 

「じゃあ今日は一緒に寄り道しようか? きっと楽しいよ」

 

 

 

 ── 金曜日 ──

 

 

「しゃあっ!!」

 

 朝、登校してきた青子さんが教室に入ってくるなり、やけに気合の入った声を出した。

 

 なに? プロレスラーなの? 

 

 青子さんの違った一面が見れて僕は楽しい。

 最初は大人しい本好きの女の子と思ってたけど、彼女はそんな単純な言葉では括れない。

 彼女の新しい一面を知る度に僕は彼女をもっと好きになっていってる。

 

「おはよう、青子さん。今朝随分気合が入ってるね? なんか合戦前の武士みたい。昨日の夜、歴史小説でも読んだの?」

 

「え? そんなことないよ? 普通だし」

 

「そうだよね、普通普通」

 

 だめだ、彼女を見てるだけで僕は腹の底から楽しくなってくる。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 放課後になったので、図書室のカウンターの中で青子さんと並んで座っている。

 金曜日の放課後の図書係は僕と青子さんなのだ。

 週末に家で読む本を借りて帰る生徒が若干いるくらいなので、図書室を開いて10分もすれば僕たちを除いて誰もいなくなる。

 

 なので金曜日の夕方の図書係は本棚の整理整頓とかをやったりして閉館まで時間を潰したりする。

 

「もう誰もいなくなっちゃったね」

 

「ん、そうだね」

 

 二人で図書室の棚を一つ一つチェックして回る。

 

「あのねヒロくん。管理の遠藤先生には本棚の整理で今日は時間がかかるって伝えてあるの」

 

「あ、そうなんだ」

 

「そしたら遠藤先生、今日は先に帰るから図書室を締めたら職員室の鍵BOXに返しておいてくれだって」

 

「ふーん、じゃあ今日は最後まで青子さんと二人きりだね」

 

 本棚から三冊ほど本を抜いて正しい場所へ移動させる。

 確かにいつもより本棚の整理に時間がかかりそうだ。

 

「うん……この時間だと生徒ももう来ないだろうし、先生も帰っちゃったから二人きりだね」

 

「静かでいいね」

 

「うん」

 

 

 

 ……なぜだろう。

 

 今日は久しぶりに彼女の機嫌が元に戻り、朝からニコニコしていた青子さんが段々と不機嫌になってきたぞ? 

 赤く染まっていたカーテンがいつの間にか陰り始めていた。

 図書室に一緒に入った時はあんなに上機嫌だった青子さんが、西の空に消えていく太陽光と反比例するように彼女の赤かった顔がなぜか青くなっていく。

 

 おかしいな。てっきり生理が終わったのだと思ってたんだけど。

 

 僕の顔を(しき)りにチラチラ見ているし、胸ポケットに入れているスマホにも視線を向けている。

 そして時間が経つにつれて加速度的に不機嫌になっていく。

 

 僕がなにかしてしまったのだろうか? 

 だけど心当たりがない。

 

 いつもより時間のかかった本棚の整理もやがて終わり、カウンターの中で彼女と一緒に椅子に座る。

 後は閉館まで時間を潰すだけだ。

 

 冬眠から目が覚めたばかりのヒグマのような雰囲気を醸し出し始めた青子さんを刺激しないように、ポケットからスマホをそーっと取り出して操作し始めると、なぜか彼女の身体がビクンと反応した。

 

 不自然なくらい背筋をピンと伸ばして緊張している。

 身構えていると言った方が近いかも知れない。

 まるでこの後、人生で一番大切なことが起こるとでも思ってるような緊張の仕方だ。 

 

 どうしてここまで緊張しているのか分からないけど、さっきまで彼女の機嫌は相当悪かったので、話しかけるのもなんだか怖い。

 毎日青子さんと話をして、彼女のことをかなり理解したつもりでいたけど、今週に入ってからの彼女はよく分からない。まあ分からない彼女も魅力的ではあるんだけど。

 

 彼女の整った横顔をチラリと見て目の保養をしてから『小説を読みましょう』の作品の続きを静かに読み始める。

 

 図書室の壁にかかった時計のカチカチカチと小さく時を刻む音が図書室の静かな空間に染み込んでいく。

 

「………………」

 

「──っ!!」

 

 彼女がいきなり手を振り上げてカウンターのテーブルをドンっと叩いた。

 木製のカウンターテーブルが衝撃を受けてビリビリと振動する。

 

 僕は作品の世界に没入しかけていた所だったので、驚いて青子さんを見た。

 

「ど、どうしたの青子さん?」

 

「ヒロくん! 今二人きりだよね!?」

 

「う、うん、そうだね」

 

「私に何かして欲しいことがあるんじゃないの!?」

 

「青子さんに?」

 

 僕が手に持ったままのスマホを顔を真っ赤にした青子さんがチラチラ見ている。

 二人きりなのに、彼女を放ったらかしにして小説を読んでいたのがまずかったか。

 

 いやバカか、僕は。

 まずいに決まってるじゃないか。

 

「あ、あぁそうだね……えっと」

 

 スマホの画面を見る。

 お互いに今ハマってる作品の感想を言い合うとか、作品を教え合うとかした方が良かったのか。

 

 多分そうだ。

 きっとそうだ。

 

「あー…………そうだ、青子さん、ちょっとこのスマホの画面を見てくれる?」

 

 その瞬間、青子さんの機嫌がぱぁっと劇的に良くなった。

 不機嫌な顔から喜びが溢れた顔へ。ギャップが凄い。

 

「う、うん! 見せてくれる!?」

 

「コレなんだけど……」

 

 僕が差し出したスマホの画面を食い気味に覗き込む青子さん。

 

「っ!!」

 

 喜びが溢れた顔から超絶不機嫌な顔へ。ギャップが凄い。

 

 ガンっ!! 

 

 図書室のカウンターを今度はグーで殴りつけた青子さんが般若の形相で僕からスマホを取り上げた。

 

「あ、何を!?」

 

「もう我慢できない! このニブチン!!」

 

 目を吊り上げた青子さんが僕のスマホを乱暴に弄り始めるとスマホの画面が急に黄色と赤の渦巻き模様に変わった。

 

「あぁ!?」

 

 それを目にした青子さんがなぜかちょっと平坦な感じのする悲鳴を上げた。

 

『ピンポーン! 久米青子のサキュバス化催眠に成功しました!!』

 

 僕のスマホから音声ガイダンスのような声が鳴り響き、同時に青子さんの目から意思の光が消えてスマホを持っていた腕がだらんと垂れ下がった。

 

 

 

「──あっ」

 

 そして僕は……自分のスマホにサキュバス化催眠アプリをインストールしていたことを今ようやく思い出した。

 



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第04話 催眠! 催眠解除! できないっ!?

「あ、青子……さん?」

 

 僕が呼びかけると顔を上げた青子さんは笑顔を浮かべていた。

 

「ふふふ、ヒロくん♥」

 

 青子さんが自分のブレザーに手をかけ、流れるような動作で上着を脱いだ。

 そのまま、震える指先でブラウスのボタンを指先で弾いていく。

 

 ぷち、ぷち、ぷち。

 

 青子さんが指でブラウスのボタンを弾く度に、バツン、バツンと胸の谷間が露わになっていく。

 ブラウスを内側から押し上げていた大きな胸がゆっさゆっさと揺れている。

 

「わ、わわっ!? 待って! 何してるの青子さん!」

 

「……何してると思う?」

 

 余裕ぶった口調の割に彼女の細い指先は小刻みに震えていて、頬は真っ赤に染まっている。

 

 まずいまずいまずい!! 

 

 あの催眠アプリ、本物だったんだ! 

 催眠にかかった青子さんは自分のことをサキュバスだと思いこんでしまっている! 

 

 ふぁさっと空気が踊り、彼女のブラウスが床に落ちた。

 誰もいない図書室で、カーテン越しに差し込む夕日が、彼女の肌を赤く染めている。

 

 赤く染まった純白の下着(ブラ)が彼女の大き過ぎる胸を支え切れず今にも零れ落ちそうだ。

 よく見ると彼女が身に着けている下着(ブラ)は薄いピンクのフリルとレースで縁取られていて、彼女の巨乳をより美しく引き立て、夕日が作る影が彼女の胸の大きさを強調している。

 

 初めて見る青子さんの生下着姿に僕の目が釘付けになる。

 

「なんて……綺麗なんだ」

 

 見ているだけで股間に熱いものが流れ込んでいく。

 彼女がこんな下着(ブラ)を持っているなんて知らなかった。

 普段の彼女はこんな下着とは縁が無さそうなのに、今日に限ってどうしてこんな下着を身につけているのか。

 おかげで僕は下着姿の彼女から目が離せない。

 

 その青子さんはなぜか僕を見てドヤ顔を浮かべてる? 

 あんなに恥ずかしがってるのにドヤ顔ってどういうこと? 

 

 

 ──と、我に返った。

 

 ここは図書室なのだ。

 

「ちょっ! 青子さん待って、服を着て!」

 

 ここは学校の図書室なんだ。

 夕方遅いこの時間でも誰がやって来ても不思議ではない。

 

「……あのねヒロくん? 私、ヒロくんに内緒にしてたことがあって…………実は私ってサキュバスだったの♥」

 

 あぁ、ダメだ。がっつり催眠にかかってしまってる! 

 ど、どうすれば…………って待てよ!? 

 そうだ、解除だ! 

 催眠にかかったのなら解除すれば良いんだ。

 

 僕のスマホは青子さんの背後のカウンターに置かれている。 

 青子さんが服を脱ぐ時に置いたんだ。

 あれをもう一度使えばきっと解除できる。

 

 青子さんが両手を制服のスカートにかけて身を屈めた。

 

「今だ!」

 

 床に落ちる青子さんのスカートと、レースで彩られてほとんど中身が見えそうなくらい透け透けな下着(パンツ)を見ないようにして、彼女を抱きかかえながら右手でスマホを掴む。

 スマホの画面では黄色と赤の渦巻き模様が今もぐるぐると回転している。

 

「青子さん、このスマホの画面を見るんだ!」

 

「やんっ♥ よ、ようやくヒロくんが積極的に♥」

 

 青子さんの腰に手を回して抱きしめると彼女が顔を上げたので、その眼前にスマホの画面を突きつける。

 

「催眠解除!!」

 

「へ?」

 

「あ、あれ。効果がない!?」

 

 青子さんが呆気にとられた顔で僕を見ている。

 でも催眠が解けた感じではない。

 

 くそっ! もう一度だ! 

 

 彼女に向けて再びスマホ突きつける。

 

「さ、催眠よ。解けろ!」

 

「なんで!?」

 

 青子さんの目が真ん丸に開いて、信じられないものを見たって顔をしている。

 だけどやはり催眠が解けた感じではない。

 

「うそだろ、催眠解除できないのか?」

 

「ヒ、ヒロくん!? あの……私サキュバスだよ? ヒロくんだけのサキュバスなんだよ?」

 

 だめだ! 

 やっぱり解けていない! 

 

「え、えっちなこといくらでもしていいんだよ? ほ、ほら、特別におっぱいだって触ってもいいし? あ、でも勘違いしちゃだめだからね? 触って良いのはもちろんヒロくんだけなんだからね?」

 

 解除するにはキーワードが必要とか? 

 いや、青子さんが催眠に掛かった時にキーワードっぽいものは何もなかった。彼女はスマホの画面を見ただけで催眠にかかってた。

 

「ヒロくん聞いてる?」

 

 ということはこのスマホのグルグル画面は女の子をサキュバス化するだけの単機能しかなくて、解除する時は別の手段が必要? 

 そういえば、解除する条件があったような気がするぞ? 

 

「もうっ! ヒロくんのバカ!」

 

 考え込んでいるといきなり床に押し倒された。

 押し倒してきたのは青子さんだ。

 青子さんのたわわに実った生おっぱいが僕の顔に押し付けられる。

 

 すごいっ! 

 すごい柔らかいっ! 

 

 

「──じゃないっ!?」

 

 幸せすぎて意識が飛んでた。

 気がついたらいつの間にか僕のズボンのベルトが外されて、青子さんにズボンと下着が脱がされるところだった。

 

「わ、待って! 青子さん待って!」

 

 だけど遅すぎた。

 ズボンと下着が一気に引き下ろされて、下着に押し下げられたペニスが真下から真上に向かって勢いよく跳ね上がった。

 

「うそっ♥ おちんちんって勃起するとこんなに大きくなるの!?」

 

 まるで強力なバネ仕掛けのように勃起ペニスがバンっと跳ね上がり、その後首振り運動を始めたペニスを見て青子さんが目を丸くしてる。

 

 ……ああ、一番見られたくない人に僕のペニスを見られてしまった。

 

 やっぱり青子さんも僕のペニスが大きすぎてびっくりしてる。

 こんな大きなペニスが引かれないわけがない。

 本当はゆっくりと……彼女との仲を深めながら、ショックを受けないように彼女に大きすぎる僕のペニスを理解して貰うつもりだったのに。

 

 扇情的な下着に包まれた青子さんのおっぱい(美巨乳)を見たせいで、ペニスの亀頭が人生で一番のレベルで膨れ上がって、凶悪に盛り上がった亀頭冠の(エッジ)が尖り反り返っている。

 

 こんなモノ(ペニス)を見せられたら、大抵の女子は逃げ出すだろう。

 た、例え青子さんにサキュバス化催眠が掛かってすごくエッチな女の子になったとしても。

 

 ぎゅっ♥

 

「え?」

 

「わっ♥ わわっ♥ す、すっごいカチカチ♥」

 

「ええ!?」

 

「こ、これが男の人のおちんちんなんだ♥ ふわぁ……すっごい♥ すごいよ、ヒロくんのおちんちん♥♥」

 

 僕の足の上を滑るように股間に近づいた青子さんが右手で僕の亀頭を撫で回してる。

 頬を真っ赤に染めた青子さんが、興奮しすぎてキラキラした目を僕のペニスに注いでいる。

 

「へ、へー、こんな感触なんだ……ふにふにして、弾力があって……うわ……あ、分かった、おちんちんってグミの感触に似てるんだ♥」

 

 彼女の人差し指がコリっコリっと亀頭の段差(エッジ)を擦りあげている。指先に感じる亀頭の感触がそんなに面白いのか、指先で亀頭の角をむにゅっと押し潰す度に青子さんのキラキラした瞳がうっとりとしたものに変化していく。

 

「はぁ…………はぁ…………♥」

 

 彼女の呼吸が速くなるに連れて亀頭を擦り上げる彼女の指の動きも加速していく。

 やがて亀頭冠のせり上がった(エッジ)の部分が一番気になるのか、カリ首の段差を弄り回す自分の指を見る彼女の口元が綻んで、唇の間からピンク色に染まった舌が覗いている。

 

「──っ!」

 

 彼女の指がカリ首を擦り上げる度に、後頭部で甘い電撃が弾けて脳が焼切れそうになる。

 好きな女の子が、引くどころかむしろ積極的に自分のペニスを弄り回してくれるというシチュエーションに、脳が溶けそうなレベルの快媚感が、亀頭で、カリ首で、腰の奥で何度も何度も連続して破裂しまくってる。

 

「──ぉ゛っ」

 

 僕の口から喉が詰まったような声が思わず漏れた。

 その声に驚いた青子さんがすぐに手を引っ込める。

 

「あっ!? ヒロくん大丈夫? 痛くなかった?」

 

 あわあわと焦りまくってる青子さんが、両手で優しく亀頭を包み込んだ。

 

「ご、ごめんね。その……おちんちんに触るのって初めてだから加減が分からなくて…………えっと、これくらいでいいのかな?」

 

 青子さんの指が、それまでの激しく擦りまくる動きからゆっくりと揉み込む動きに変わった。

 謝りながらも、止めるという選択肢は彼女の中に無いみたいだ。

 10本の指がそれぞれ別の生き物のように亀頭に張り付いてグニグニと圧迫しつつ、カリ首をぎゅっぎゅっ♥と締め付け蠢いている。

 

「ぁっ……くっ…………」

 

 なんだ、コレ? 

 なんなんだ、コレ!? 

 

 ペニスの先を女の子に触られただけで、こんな風になるなんておかしくないか? 

 それとも僕が知らなかっただけで、好きな女の子に触られたらこうなってしまうのが普通なのか? 

 

「も、もっと優しく触った方がいいんだよね?」

 

「──や、やめっ!?」

 

 青子さんを視界の隅に捉えたまま僕はグンっと仰け反った。

 ビリビリするような強烈な快感がペニスの先端で次から次へと生み出されている。

 

「く、ぉ゛っ!?」

 

 亀頭を這い回る10本の指のうち2本が亀頭の裏側を優しく刺激した瞬間、僕の腰が跳ねた。

 腰と意識が一瞬宙に浮いて、全身から力が抜けていく。

 まるで青子さんに握りしめられた亀頭から力が吸い出されでもしたかのようだ。

 

 やばい。

 気持ち良すぎて身体に力が入らない。

 大好きな女の子にペニスを握りしめられたら男は抵抗できなくなるのか。

 

 彼女の指で亀頭を触られただけで腰が痺れあがり、ペニスの根本で快感が暴れ回る。

 自分の指でやってもこうはならない。

 同じ指なのに自分の指と好きな女の子にされるのとでは天と地ほどの差があった。

 

「わわ!? ヒロくんごめん。やっぱり刺激が強すぎるの? そ、そうだよね!? 私ってサキュバスなんだし、男子がサキュバスにおちんちん触られたら動けなくなるのが普通……だもんね?」

 

 (しき)りに頷いて納得しつつ、青子さんは僕の亀頭を包み込むように指を動かし続けている。

 僕を心配しつつも止める気は全くなさそうなのは彼女のキラキラした目を見れば分かる。

 

「ね、ねぇ? ヒロくん気持ちいい? おちんちん触られて気持ちいい? 私、上手に出来てるかな?」

 

 亀頭を指でもみくちゃにしながら青子さんが僕の顔を覗きこんだ。

 まるで飼い主のことが大好きな子犬が尻尾をブンブンと振っているイメージだ。

 

 はぁはぁ♥と吐息を漏らしながら、鈴口から湧き出てきたガマン汁を亀頭に塗り伸ばしヌルヌルまみれにしている。そして僕の顔を観察して、どこを擦るのが一番気持ちいいのか反応を調べているんだ。

 

 青子さんの人差し指と中指が亀頭冠の角の一部を下から上に向かってコリっと強く擦り上げた。

 

「あぁああ!?」

 

 思わず漏らしてしまった悲鳴に青子さんが嬉しそうにする。

 

「あ、ここね♥ ヒロくんのおちんちんの弱点みっけ♥ やっぱり男子のおちんちんの弱いところってみんなおんなじなんだね?」

 

 聞き捨てならないセリフに思わず目を剥いて青子さんを凝視する。

 

「あ、違うよ! ヒロくん違うからね!? 生のおちんちんを見るのも触るのもヒロくんのおちんちんが初めてだよ。その、予習でお母さんと妹の翠からおちんちんについて教えてもらっただけだからね?」

 

 青子さんの説明で痛みすら感じた胸の奥のザラつきが一瞬で消えて無くなった。

 そうか、予習か。あぁ、びっくりした。

 

「ん? 予習?」 

 

 なんてことない言葉だけど何か引っかかる。

 床に転がって、手足に力が入らないまま僕は首を捻る。

 

「そ、そうだ! ヒロくんのおちんちんをおっぱいで擦ってあげるね♥ し、して欲しいよね? だって毎日あんなに熱心に見てたんだから興味はあるよね? あるはずだよね? い、今すぐ答えてくれないと止めちゃうよ?」

 

「あるよ! すごくあるよ! だからして欲しい!」

 

 ああっ! 

 つい叫んでしまった! 

 

「い、今のはなし! 青子さんは催眠にかかってるんだ! 自分じゃ分からないのかも知れないけど今は正気じゃないんだ。取りあえず服を着て話し合おう! ねっ!」

 

「そんなにして欲しいんだ♥ しょ、しょうがないなあ♥」

 

 だめだ、聞いてない! 

 

 終始ニヤケ顔の青子さんが僕の膝の上に跨った。

 首の辺りまで真っ赤になってる青子さんが、多分人生で初めてのパイズリを僕相手に始めようとしている。

 

「えっと……こんなの初めてなんだけど、ヒロくんだけ、特別なんだからね♥」

 

 青子さんが下着(ブラ)の胸と胸の谷間を指で浮かせながら僕のペニスを掴んだ。

 

「最初はブラを付けたままが良いって言ってたから……こう、かな?」

 

「お゛うっ!?」

 

 乳房と乳房の真ん中、ブラの裏側を通って青子さんの口元にまで亀頭の先端が突き抜けた。

 鈴口から溢れるガマン汁がローションの代わりになって、両乳房に圧迫されながら見事に双子山脈を貫通した。

 

「わぁ♥ すっごい♥ ヒロくんのおちんちん本当にすごいよね♥ 私の胸の中に収まりきらないんだもん♥」

 

 彼女の口元にまで到達している亀頭の先に彼女の息が吹き付けられる度に鈴口からガマン汁が漏れ出している。

 

 むにゅにゅっ♥

 

 青子さんのおっぱいはブラに包まれたままなので、双乳に挟まれた僕のペニスはずっと圧迫を受け続けてる。

 おそらく校内で一番大きな彼女のおっぱいが、しっとりとして滑らかな感触をしたおっぱいが、僕のペニスを左右から押し潰そうとしてきている。

 

「こ、こんなモノで挟まれたらっ!」

 

「ヒロくんのおちんちんを挟んだまま、おっぱいの横に手を添えて…………こう?」

 

「お゛っ!?」

 

 強烈な乳圧を左右から受けた僕のペニスが簡単に屈服した。

 竿にミチミチと密着した乳肉がペニスの竿を全方向から圧迫して、脆くも押しつぶされた尿道が中に溜まっていたガマン汁を彼女の顔目掛けてぴゅっと噴き出した。

 

「あっ! あぁああ!!」

 

 押しつぶされた尿道内を勢いよく駆け抜けて放出されたガマン汁が射精に匹敵する絶頂感をもたらした。

 ペニスの根本に圧力が溜まったままの射精寸前の快感と、射精に匹敵するガマン汁の放出が重なって脳がバチバチと弾けて視界が白く染まる。

 

「あむっ♥」

 

「くお゛っ!?」

 

 青子さんがおっぱいでペニスを挟んだまま、亀頭を咥えこんだ。

 乳圧で鈴口から絞り出されてくるガマン汁を舌でペロペロと舐め取っていく。

 

 僕のペニスを青子さんが自分から口に咥え込んだという衝撃が後頭部を甘く揺らして、ペニスの先端で発生する痺れるような快感が勢いよく背中を駆け抜けてきて頭の中で合流する。

 

 あの青子さんが僕のペニスを咥えてる!? 

 どんだけ強力な催眠なんだ? 

 

 可愛らしい唇を尖らせて、ちゅーちゅーと亀頭に吸い付く青子さんがあまりに背徳的すぎて、そして気持ちが良すぎて頭が仰け反る。のんびりとした普段の青子さんを知っているだけにそのギャップが興奮を倍加させる。

 

 サキュバス化催眠って、本人が知ってなさそうなことまで刷り込んでしまうのか? 

 

「んちゅっ♥ じゅるるっ♥ やった♥ ヒロくん感じてくれてる♥」

 

 彼女のおっぱいの間から飛び出して、青子さんの口元に突き出された剥き出しの亀頭は、彼女が舐め回すのに最適な位置にある。僕のペニスを口に咥えるのも、ペロペロ舐め回すのも鈴口に吸い付いて吸い上げるのも彼女がなんでもしたいようにできてしまう。

 

「私のおっぱいに挟まれて♥ ぴくんぴくんってヒロくんのおちんちんがすっごく気持ちよさそうにしてる♥♥」

 

 青子さんが左右から両手でおっぱいを圧迫しながら、さっきから舌を鈴口にねじ込もうとしている。

 

「まずい……待って青子さん、それ待って!?」

 

 腰の奥で煮えたぎったマグマの圧力が高まり続けている。

 尿道の出口に加えられるビリビリとした快感が、そのまま腰の奥に溜まっているマグマを刺激してしまう。

 決壊までの時間はもうほとんど残っていない。

 

「ねぇヒロくん気持ちいい? 私におちんちんをペロペロされるのって気持ちいい? もっと速く舐めた方がいいのかな♥ それともゆっくりと舌を密着したまま舐め回す方がいいのかな♥」

 

「待って待って! こんなやり方誰から教えて貰ったの?」

 

「えっと、お母さん?」

 

「お母さん!?」

 

「あのね? お父さんとお母さんが毎晩寝室で……」

 

「ストップ! ストォップ!! 青子さん家のご両親の寝室事情を聞かせられたら、会った時困るからやめて!」

 

「そう? 残念……」

 

 そう言いつつ、青子さんが僕の亀頭を丸ごと口に含んだ。

 唇でカリ首をもむもむしながら、彼女の口腔内に収まった僕の亀頭を舌で舐めしゃぶっている。

 竿はさっきから乳圧を受けっぱなしだ。

 

 つまり僕はもう限界が近い。

 

 さっきから我慢に我慢を重ねてるけど、好きな女の子に自分のペニスを時折甘噛みされながら美味しそうにペロペロしゃぶられるのが幸せすぎてこれ以上は耐えられない。

 

 身体がまともに動きさえすれば彼女を押しのけられるのに、亀頭の上下をくるくると円を描きながら舐めしゃぶられるだけで体中から脱力してしまうのだ。あまりにも幸せ過ぎて、この状況を本気で止めたいのか自分でも自信がない。

 

 だけど、彼女は催眠でサキュバスになったつもりでいるだけの被害者なのだ。

 その催眠のきっかけを作ったのは僕だ。

 

 この行為をいますぐ止めなければならないのに……。

 

「くおっ!」

 

 ずぞぞっ♥ という音とともに亀頭が彼女の喉奥にまで吸い込まれた。

 ぴったりと亀頭に全てに貼り付く彼女の口腔粘膜が熱いほどの快感を送り込んでくる。

 たっぷりの唾液を乗せた舌が亀頭の裏面をオイルマッサージのように左右に塗り込んでいく。

 ペニスの表面に彼女の熱い口腔粘膜がぴったりと密着して、僕のペニス専用の肉ホールのように蠢きながら擦ってしゃぶって(ねぶ)られ、どこまでも吸引してくる。

 

「あぁあああっ! もう無理! ごめん青子さん、射精()るっ! 射精()るうっ!!」

 

 腰が勝手に跳ね上がった。

 ペニスが青子さんの双乳で擦られながら、亀頭を青子さんの喉の奥へ突き入れてしまう。

 亀頭が青子さんの口腔粘膜とゴリゴリ擦れ合い、その快媚感が僕の後頭部で破裂して何もかもが決壊した。

 

 熱く爛れそうな快感と♥ともに彼女の喉の奥へ精液が迸る。

 

「じゅるっ♥ じゅるるるぅっ♥♥」

 

「あぁあああ! 待って、青子さん! そんなに吸わないで! 射精が止まらないっ!!」

 

 



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第05話 淫紋

「あっ…………あっ…………くうっ……っ…………あぁっ…………」

 

 股の奥に埋もれている、ペニスを支える根元の筋肉が収縮と痙攣を延々と繰り返している。

 次から次へと青子さんの喉奥へ噴き出してくる僕の精液を彼女はうっとりとした表情で飲み込んでいく。

 

「んくっ♥ んくっ♥」

 

 筋肉が収縮する度にペニスの根本から精液が汲み出されて、僕の尿道を青子さんにストローのように使われて彼女の口の中に吸い出されていく。

 腰が痙攣する度に灼き付くような快感が脳内で破裂する。

 

「……射精が止まらないっ!?」

 

 いつものオナニーならペニスから精液が噴き出すのは長くても2分くらいで止まるのに……全然止まらないぞ!? 

 

 ペニスを青子さんの口に咥えられて、あむあむと可愛らしく彼女が口を動かすだけでペニスの根元の奥に埋もれている筋肉が強く収縮してしまう。

 亀頭の裏側をチロチロと先を尖らせた舌先が擦る度に精液が尿道を駆け上っていく。

 

「くっ!」

 

「んちゅっ♥ こくっ♥ こくっ♥ ちゅぱっ♥」

 

 青子さんの喉奥の粘膜と僕の亀頭粘膜が密着して擦れあうのが気持ち良すぎて腰が震える。

 

 好きな女の子の口腔粘膜と僕の亀頭粘膜が擦れあっていると考えるだけで後頭部が甘く痺れ、興奮が際限なく高まっていく。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 僕のペニスから噴き出した精液が彼女の口の中に溢れ出て、口腔粘膜を白く染め上げていると想像するだけで堪らないものがある。

 しかも彼女は僕の出した精液を喉を鳴らして嬉しそうに飲み込んでいるので余計にそう思ってしまう。

 

 

 

「あっ……くっ…………っ……………………」

 

 射精が始まってからどれくらい時間が経ったのだろう。

 青子さんのおっぱいに挟まれたペニスから精液が迸り、律動する度に視界が真っ白に染まって意識が霞む。時間感覚なんかとっくに無くなっている。

 

 だけどようやく……ようやく亀頭の先端から噴き出す射精が穏やかになってきた。

 

 とくん……とくん……とペニスの根本の筋肉の収縮が緩慢になってきて、目も(くら)むほどの直接的で強い快感から、青子さんにペニスをしゃぶられ吸われているという幸福感に塗り変わっていく。

 自分の身体の一番奥に溜まっていたものがゆっくりと吸い上げられて、彼女の喉の奥に消えていく事実が僕の脳を甘く揺らす。

 

 彼女にペニスを吸われる度に僕の頭の中で多幸感が溢れかえり、幸せすぎて溺れてしまいそうになる。

 

 

「……くっ…………止まっ……た?」

 

 長い長い時間痙攣していた僕の腰がようやく止まった。

 収縮する度にゾクゾクするような快楽を齎していたペニスの根本の筋肉の収縮が止まってしまった。

 まるで長距離マラソンを全力で走り切ったような充実感が湧き上がってきて心が満たされていく。

 

「くっ…………はぁ…………はぁ…………」

 

 終わった……。

 もう出ない。

 さすがにもう何も残っていない。

 

 ペニスが溶けて無くなってしまうと錯覚するほど気持ちが良かった。

 

「はぁ……なんだかまだ感覚がおかしい」

 

 いつまでたっても終わらない蕩けるような極上の射精感が、今もペニスに熾火のように後を引いて消える気配がない。

 

 ……こんなもの(快楽)を経験したら普通の射精ではもう二度と満足できないかも知れない。

 しかもペニスに吸い付いているのは自分が好きで堪らない女の子なのだ。

 もうこのまま死んでもいいとさえ思う。

 

「ちゅーっ……ぽんっ♥」

 

 長く彼女の口の中に収まっていた僕のペニスがとうとう解放された。解放されてしまった。

 青子さんにペニスを吸われた時に感じた多幸感に今も包まれたまま、彼女が愛おしくてたまらない。

 

「──はぁ♥ ヒロくんのおちんちん……最高ぉ♥♥」

 

 彼女の笑みがぐにゃっと融け崩れている。

 下着(ブラ)の上からでも分かるくらい乳首が尖り立って、彼女の上半身がピクピクと痙攣している。

 僕のペニスを舐めしゃぶり、吸い尽くしたことで彼女も桃源郷(アクメ)を彷徨っているのだ。

 

 そんな彼女のおっぱいに挟まれたままの僕のペニスも未だにビクンビクンと律動を続けていた。

 心地よい疲労感と充実感で僕の心が満たされている。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「あれ? なにそれ?」

 

 青子さんのおっぱいに挟まれた僕のペニスの先端。

 まだ堅く膨らんだままの亀頭の上面に白くて淡い光を放つ模様が浮かんでいた。

 

「ハート……の模様?」

 

「あっ♥ ヒロくんのおちんちんに淫紋が刻まれてる♥ よかったぁ♥♥」

 

「は? 淫……紋?」

 

 あの発光してるハート模様が? 

 淫紋ってR18的なゲームとか小説とか漫画に出てくるアレなやつ? 

 

 ハートマークに美しい装飾を施した模様が僕の亀頭で仄かに揺らめきながら白く光っている。 

 もしかして彼女が口に咥えている時に、蛍光塗料でハート模様を描いたとか? 

 いや、そんなの不可能だ、できるわけがない。

 

「うん、淫紋だよ♥ あのね? 淫紋は処女のサキュバスに射精した男の子のペニスに刻まれるの♥」

 

「は? いや、そんなバカなことがあるわけが……」

 

 淫紋なんてエロ漫画とかエロゲーとかの創作物に出てくるただの小道具(ギミック)のはずだ。

 現実に存在するはずがない。

 

 でも……それならば仄かに発光しているあのハート模様は一体なんだ? 

 

「誰にでも出るわけじゃないんだけど、ヒロくんなら間違いなく出ると思ってたんだ♥ 口に出したのだと淫紋の効果はまだ薄いんだけど……それっ♥」

 

 パシャ♥

 

 青子さんが僕のペニスを乳に挟んだままスマホで自撮りした。

 

「うわっ!? 何してるの青子さん!」

 

「ん、ヒロくんのおちんちんに淫紋が付いた記念写真♥」

 

「消、消して、早く! 誰かに見られでもしたら大変なことになるよ!」

 

 あの青子さんが射精が終わったばかりの勃起ペニスをおっぱいの間に挟んでいるところを自撮りしたのだ。

 万が一誰かに見られでもしたら大騒動が起こる。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ、家族以外には見せないから♥ それにヒロくんのかっこいい淫紋を記念に残さないと絶対後悔するし? て、あれ!?」

 

 スマホを見た青子さんが当惑している。

 

「淫紋が写ってない……」

 

「へ?」

 

「ほら、せっかくヒロくんの淫紋写したはずなのに」

 

 青子さんが写した写真を僕が見えるようにこちらに向けた。

 おっぱいに挟まれて元気よく勃起している僕のペニスが画面の中心に表示されている。

 誰かに見られたら彼女と僕の人生が終わりかねない危険なヤツだ。

 

「──ん、あれ? 本当だ。写ってない?」

 

 亀頭で淡く発光しているハート型の模様が写真には写っていない。

 どうして? 

 

「ね? 残念だよね。すごくかっこいい淫紋なのに」

 

 亀頭には今も発光してるハート模様がたしかにある……でも写真には写ってない。

 なぜだ? 

 

「だけど、私の淫紋も見て♥ ヒロくんとお揃いだよ♥」

 

 彼女が身体を起こして自分のお腹を指差した。

 青子さんのお臍の少し下の下腹部に淡く仄かに光るハート模様が現れていた。

 僕の亀頭で光っているハート模様に確かに似ている。ただ大きさは僕のものよりはるかに大きい。

 

「えっとね? 処女のサキュバスが男の子の精液を初めて体内に取り込んだら下腹部に淫紋が出るの♥」

 

 嬉しそうに言う青子さんの顔を見つめる。

 青子さんの下腹部に視線を移すと彼女が言う淫紋が確かに白く淡く優しげな光を放っている。

 

 なんでこんなものが僕に見えてるんだ? 

 いや僕の亀頭で光っているハート模様もそうだ。

 

 まさか、彼女は本当にサキュバスで、この光ってる淫紋も本物? 

 いやいやそんなわけないし。この年で中二病はない。

 

「さっきヒロくんが私の口の中に射精したでしょ?」

 

「うん、ごめんね……」

 

「すっごく美味しかったよ、ヒロくんの精液♥」

 

「そ、そうなんだ?」

 

「美味しく感じるってっことはヒロくんと私の相性は最高ってことなの♥ これから一生ヒロくんの精液を食べて暮らすんだから相性ってすっごく大事なんだよ?」

 

 嬉しそうに語る青子さんの笑顔が心に痛い。

 

「うん、でもそれは催眠でね。そもそもそんな相性は……」

 

 現実にはそんな相性なんか存在するわけがない。

 サキュバス化催眠アプリの催眠にかかった青子さんがサキュバスになったつもりでいるだけなんだから、相性もへったくれもない。

 

 って、だめだな、僕の言葉が青子さんに届いていない。

 サキュバス化催眠は彼女の認識を僕が思っているより強力に書き換えてしまっている。

 

「えー相性はちゃんとあるよー? 例えばヒロくんのおちんちんの淫紋と、私の淫紋って似てるでしょ?」

 

 確かに似ている。

 僕の亀頭の淫紋も、青子さんの下腹部の淫紋もハート模様に古典的な装飾を加えたデザインだ。

 

「確かに似てるけど、それが?」

 

 そもそもなんで僕は淫紋が見えてるんだ? 

 幻覚でも見てるのか? 

 

「淫紋の型が同じだと相性が良いんだよ♥ ほら、私の淫紋は中心のハートの右翼の型と左翼の型が同じ葉薊(アカンサス)の葉。しかも黄金葉(ゴールドリーフ)なの♥」

 

「う、うん」

 

 西洋の建物とか家具とかでよく見るデザインのような気がする。

 

葉薊(アカンサス)の淫紋の効果は男の子の射精時間をすごく伸ばしちゃうの♥ しかも黄金葉(ゴールドリーフ)とのコンボだから、精液の量も増えちゃうのよ♥」

 

「へ、へー」

 

 このサキュバス化催眠アプリって変な方向に凝りすぎてる。

 こんな設定まで彼女の頭に刷り込んでなんの意味があるのか。

 

「あれ、嬉しくないの? 葉薊(アカンサス)の淫紋の効果は男の人に大人気の淫紋で、滅多にいないレア淫紋なのよ♥」

 

「そ、そうなんだ?」

 

「むー、ヒロくん反応が薄すぎない? 昔と違って今は葉薊(アカンサス)の淫紋持ちのサキュバスをお嫁さんにしたいって思ってる男の人は世界中にたくさんいるんだよ?」

 

 すごい設定が催眠で彼女の頭の中に刷り込まれてしまっている。

 だけど言葉でそれが催眠によるものだと説明しても彼女には届かないのはもう分かってる。

 

「うん。す、すごく嬉しいかな。青子さんがそんなにすごいサキュバスだったなんて」

 

「うんうん♥ 男の子の絶頂(アクメ)って射精の時の数秒間しか気持ち良くなれないから可哀想だよねって翠も言ってたし、それが葉薊(アカンサス)の淫紋持ちのサキュバスにかかれば射精時間が何倍にも伸び……て……? あれ?」

 

 僕に淫紋の説明をしながら青子さんが首を(かし)げた。

 彼女の胸の間で勃起したままの僕のペニスを見て考え込んでいる。

 

「どうしたの、青子さん?」

 

「ううんなんでもない。そう、そうよね。何にでも個人差ってあるもんね」

 

「まあ一般的にはそうだね?」

 

「えっと話が逸れちゃったから戻すけど、ヒロくんのおちんちんに付いてる淫紋もハート模様の両翼に葉薊(アカンサス)の…………」

 

 青子さんがまた首を傾げた。

 

「あれ?」

 

 充血して膨らんだままの僕の亀頭を指でなぞって何やら考え込んで呟いている。

 

「よく見たら……ヒロくんの淫紋の一番外側が私と同じレアの葉薊(アカンサス)紋だよね? じゃあこの内側の二層目ってなんだろ? えっ二層目!? 淫紋に二層目ってあったっけ? でもこれって瑞果(ずいか)紋? どっかで見たはずだけど、参考資料の方だったかな……たしか超級レア紋だけ集めた……」

 

「えっと青子さん?」

 

「じゃあ瑞果紋のこの内側のは、三層目になるの? 二層目どころか三層目? しかも月桂樹(ローリエ)紋っ!? ウソっ!?」

 

「あの……青子さん?」

 

「あっ、ご、ごめんねヒロくん。ちょっとびっくりしちゃって」

 

「いやいいけど。なんとなく淫紋が凄いのは分かったけど、それよりも青子さんに射精するのが気絶しそうなくらい気持ちよかったんだ。なんでだろ?」

 

 淫紋とかそのあたりのことは催眠で彼女に刷り込まれただけの設定だ。

 深く考えたところで意味はない。

 

「そんなの当然じゃない? サキュバスとするセックスはオナニーとか人間の女性なんかとのセックスの何倍も気持ちいいものだし♥」

 

 ……うん、そういう設定なのか。

 でもサキュバスだから気持ちよくなるっていうのは催眠にかかってる青子さんしか関係がないはずなんだけど……。 

 

 待てよ?

 

 なぜか僕の亀頭で発光しているハート模様の淫紋、さらには青子さんの下腹部で光ってる淫紋までが僕には見えている。

 そして……サキュバス化の催眠にかかった青子さんに射精させられたら、まるで本当のサキュバスに搾精されたように気持ちが良くなってしまう僕。

 

 全て青子さんに掛かったサキュバス化催眠の効果なのに、僕の方にまで催眠の効果が現れてるのはどうして……って、あぁっ!? 

 

 思い出した! 

 よく考えたら僕も催眠アプリのぐるぐる模様を見たじゃないか! 

 サキュバスの主にふさわしいとかなんとかって、あの時に僕も催眠を食らってたんだ。

 僕はサキュバスの主として、青子さんは僕専用サキュバスとして。

 

 あぁ、なんてこった!

 

 じゃあ僕も今の青子さんみたいに認識がおかしくなっているんだろうか?

 

 一週間前からの自分の言動を思い返してみる………………いや、おかしな行動は取ってない、な。現象としては青子さんに僕のペニスを触られると気持ち良すぎて身体に力が入らなくなるのと、淫紋が見えるくらい。あと……青子さんに射精させられるとオナニーの何十倍も気持ちがいいこと。

 

 多分だけど……思考は弄られてない、と思う。

 

 でもやばいことには変わりない。

 早く解除しないと大変なことになる。

 

 いや、もう既になっている! 

 あの青子さんのおっぱいに僕のペニスを挟み込ませて、さらにペニスを舐めさせて校内(口内)射精してしまってるんだ。

 

 冷静に考えたら大変な状況だぞ? 

 これ、取り返しがつくかな? 

 

 具体的には正気に戻った青子さんに土下座して許してもらえるレベルなのか!? 

 だめだ、かなり無理な気がする。

 

 彼女の口の中に射精して精液を飲み込ませてしまったんだ。 

 こんなの許して貰えるわけがない。

 

 いや待て違う、そうじゃない。

 今考えなきゃいけないのは彼女に謝るとか許してもらうとかじゃない。 

 

 最優先はコレ以上青子さんの受ける被害を拡大させないために彼女の催眠を解くことだ! 

 できれば今すぐ!

 

 このまま時間を無駄にしてると遠藤先生以外の先生が図書室に見回りに来て、半裸で抱き合っているところを目撃されたら僕も彼女も良くて停学、悪ければ退学だ。

 

 思い出せ。

 催眠の解き方、解除の方法は……えっとえっと何だったか……。

 

 思い出した! 

 

 アプリで催眠を解除する条件の説明があったじゃないか。

 たしか他の誰かが近くに来た場合はサキュバス化しないって。

 

 ということは図書室の外の廊下を足音を立てながら誰かが近づいてきたら青子さんのサキュバス化催眠は解ける! 

 だけど足音が小さく聞こえなかったりして、いきなり入口の扉を開けられて半裸の僕たちを目撃されたらアウトだ。

 

 力づくで彼女に服を着せて、校内に残っている適当な誰かの側へ連れていって催眠を解除するという方法も今は無理だ。

 僕は彼女にペニスを触られるだけで骨抜きにされてしまうのだ。

 僕を射精させることしか考えてない青子さんは僕の言うことを聞いてはくれないだろう。

 

 もう一つの条件は……僕が射精して満足すれば解除されるだったか。

 ……だったよな? 

 

 なら青子さんの口の中に射精したのになんで解除されてないんだ? 

 

 むにゅっ♥

 むにゅにゅっ♥

 

 勃起したままの僕のペニスは青子さんがおっぱいに挟まれたままだ。

 まるでマッサージされているような感じだ。

 

 しっとりとした青子さんのおっぱいが僕のペニスを両側から圧迫し続けているので、よく見れば鈴口から新しいガマン汁が垂れ落ち始めていた。

 亀頭もしっかり充血してカリ首の段差がグっと盛り上がってフル勃起状態を維持している。

 

 

「……なるほど」

 

 自分の性欲の深さに目眩がした。

 あんなに射精したのに僕の深層意識ではまだ満足していなかったのだ。

 

「もう一回……射精するしか無いのか?」

 

 2回目の射精をすればさすがに僕の深層意識も満足するはずだ。

 そうすればエッチなサキュバスになりきってる彼女もきっと催眠から覚めるだろう。

 

 催眠アプリの説明では、催眠から覚めた彼女は何も覚えてないって話だったけど、もちろん僕は自分から全部彼女に話すつもりだ。

 彼女が凄いショックを受けるとしてもだ。

 

 大事なのは催眠を長引かせないことだ。

 

 彼女は自分のことをサキュバスだと思い込んでるので、おっぱいや口を使うこと以上の方法で射精させようとするかもしれない。

 僕は理性を保ってそんな彼女をこれ以上傷つくことが無いように上手く誘導しないといけない。

 

 身体が動かない状態でだ。

 好きな女の子が僕だけのエッチなサキュバスになりきって迫ってきてるのに最後の一線を超えないように抑制しないといけないのだ。

 

「…………そんなことできるのだろうか?」

 

 自分で言ってて無理ゲーすぎるような気もする。

 

 だけど青子さんは本来エッチなこととは無縁の明るくて真面目な15歳の女の子なんだ。

 それがサキュバス化催眠で自分のことを僕専用のエッチなサキュバスだと思い込まされてしまっている。

 

 彼女がこれ以上エッチなことをしないで済むように、あと1回……なんとかあと1回僕が満足するような射精をすれば催眠が解除され、まだギリ取り返しがつく。

 

 多分。

 いや丸坊主にして土下座すれば何とか。

 

 いや青子さんだって僕のことは友達……よりちょっとくらい上に思ってくれてるはずだ、多分! 

 彼女が責任を取れって言ってきたらもちろん僕は喜んで責任を取る! 

 むしろ責任を取りたい! 

 

 だから行くぞ! 

 二回目の射精! 

 



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第06話 番の儀式

「青子さん、お願いがあるんだ!!」

 

 僕は青子さんのおっぱいにペニスを挟まれて床に転がってる。

 力強く言おうが、絵面的にはとても間抜けに見える。でも身体に力が入らないのだ。

 

「ふえ? う、うん、いいけど?」

 

 僕の雰囲気が急に変わったので青子さんが驚いている。

 驚いているところへ畳みかけるんだ。

 

「僕をもう一回射精させてほしいんだ!」

 

 青子さんの目が一瞬見開かれて目が丸くなった。

 今の青子さんは僕専用のエッチなサキュバスになりきってるから、直球でお願いすれば快諾してくれるはず。

 

「やだもう、びっくりしたじゃない♥ ヒロくんがお願いだなんて、どんな凄いことお願いされるのかなって思っちゃった♥」

 

 嬉しそうにしてる彼女の整った唇の隙間から、艶かしくぬめる舌が見えた。

 唇と同じように赤く染まってまるで期待しているみたいだ。

 

 ……だけどまずは狙い通りだ。

 

 今のサキュバス青子さんではなく、正気に戻った青子さんが自分の口や舌で男性のペニスを刺激しただなんて知れば間違いなくショックを受けてしまう。

 起こってしまった一回目はもう仕方ないけど、僕がお願いするこの二回目の射精では彼女に口や舌を使わせないように誘導するんだ。

 

「うん、青子さん。それでちょっと射精の方法でお願いなんだけど、口で……あぁ!?」

 

 青子さんの頭がすぐに動いて彼女のおっぱいに挟まれて震える亀頭に舌が巻き付くように絡ませてきた。

 そしてクルクルと円を描くように舐め始める。

 

「あぅ……ち、違っ! 青子さんちょっと待っ……くっ!」

 

 ペニスの先端を這いまわる彼女のぬめった舌の感触が伝わってくると勝手に頭がのけ反った。

 後頭部で快媚感がバチバチと弾け始めて視界が白く染まる。

 

「うんうん、舌で舐められて射精するのが好きになっちゃったんだよね♥ それでもうしてくれないんじゃないかって心配しちゃった?」

 

「違っ!? あぅ、そうじゃなくて!」

 

「大丈夫だよ♥ 私はヒロくん専用のサキュバスなんだから何回でも射精させてあげるから安心してね♥」

 

 れろぉっと彼女の舌で舐め上げられた亀頭がビクンと痙攣した。

 柔らかいぬるぬるの舌粘膜がカリ首を優しくくすぐって蕩けるような甘い刺激がペニスの先端で破裂する。

 

「おおぉお゛!?」

 

 亀頭がパンっと風船のように膨らんだ。

 射精も始まってないのにペニスの根元で筋肉が痙攣し始め、射精時と同じ律動が始まった。

 

「ああぁっ! ダ、ダメだ、青子さんストップ!」

 

 亀頭を這い回る彼女の舌から脳が蕩けそうな甘い刺激が次から次へと送り込まれてきてペニスがより太く、より長く膨張していく。

 

「はぁ♥ 口での搾精をヒロくんからお願いされるなんて、お母さんの言う通りちゃんと練習しててよかったぁ♥」

 

 舌先を尖らせて、亀頭の上面からカリ首の段差に唾液を塗り込んでいく青子さんの表情が蕩けている。

 

「今度はじっくりと口でしてあげるね♥ さっきはすぐに射精しちゃったからヒロくんも物足りなかったんだよね♥」

 

 あぁああ、ミスったぁ! 

 言葉の選択を間違えたぁ!!

 

 これでは、僕が青子さんに口でしてくれってお願いしたようなもんじゃないか。

 もっと、こう……同じ射精でも彼女が傷つかずに済む射精の仕方はないか!? 

 口とかおっぱいとか手を使わずに済むような……。

 

「──あっ」

 

「あ?」

 

「そうだ、脚で! 青子さんの脚で僕のペニスを踏んで欲しい!!」

 

 まさに天才の発想! 

 僕は天才だった。

 これなら正気に戻っても彼女は傷つかない! 

 

「は?」

 

 青子さんが目をパチパチさせながら僕を凝視している。

 分かりにくかったかな? 

 

「僕の勃起ペニスを青子さんの脚で踏んで刺激して欲しいんだ!」

 

「えっと……なんで?」

 

「脚で踏まれて射精するためだよ!」

 

「射……精って……その、脚で踏まれたら射精するの? えぇ……?」

 

 どうやら彼女に催眠で刷り込まれた知識にはそういうのは無かったらしい。

 サキュバスとか関係なく、なんだが素の青子さんがもの凄く困惑している?

 

「とりあえず踏んでみよう。踏んでみれば分かるさ!」

 

「…………」

 

 急に無言になった青子さんがふらりと静かに立ち上がった。

 僕のペニスが青子さんのおっぱいから解放され、首を前後に振りながら股間でそそり立っている。

 

 そのまま青子さんが脚を上げて……あれ? 

 

 てくてくと僕の頭の方に移動してきて、そのまま青子さんは正座して座り込んだ。

 

「青子……さん?」

 

「ヒロくん、正座して」

 

「え? 正座?」

 

「正座」

 

「あ、はい」

 

 彼女にペニスを触られてないと脱力効果は消えるようだ。

 身体に力が戻ってきている。

 上半身をゆっくりと起こして彼女の方を向いて同じく床の上に正座する。

 

 ……なんか青子さん怒ってる? 

 

 言い訳しないといけない雰囲気がある。

 今すぐにだ。

 

「あの……世の中には脚フェチという性癖がありまして」

 

「ヒロくんはその脚フェチなの?」

 

「いえ、実は全然。だけど青子さんに踏まれたらもしかすると扉が開くかなって……」

 

 下着姿で正座してる青子さんからの圧が強くなった。

 やばい、怖い。

 

「ヒロくん」

 

「……はい」

 

「今、ヒロくんの目の前に世界一のパティシエさんが作った美味しそうなケーキがあるとします」

 

「……はい」

 

「それを脚で踏めって言われたらどう思いますか?」

 

 ちらりと青子さんの様子を確認する。

 普段はたれ目の目尻が持ち上がってる。

 

「…………食べ物を粗末にする酷いやつだと思います」

 

「他には?」

 

 追及が激しい。

 

「…………最高のケーキを台無しにする、モノの価値が分かってないやつだと軽蔑します」

 

「そこまで分かっているのならもう言いません。でも反省してください」

 

 正座からゆっくりと頭を下げて青子さんに向かって深々と土下座する。

 するとようやく青子さんからの圧が消えてなくなった。

 

「……でも、ね。将来ヒロくんと結婚して、無いと思うけどもし倦怠期のような時期が来て、その時まだヒロくんが脚で踏まれたいって思ってたなら……その……踏んで上げてもいいよ♥」

 

 やばい! 

 サキュバス青子さん可愛い! 

 

 僕から少し目を逸らして顔を真っ赤にしてる。

 酷いことを言った僕を受け入れてくれようとしてる青子さんが最高に可愛い! 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「あっ! やだ、もうこんな時間!?」

 

 土下座から顔を上げると、壁に掛かった時計を見た青子さんが慌て始めた。

 

「ヒロくん? もう時間がないから前戯は終わりにして(つがい)の儀式を始めるからね?」

 

 は? 

 青子さんが変なことを言い始めたぞ? 

 

「待って。(つがい)の儀式って何?」

 

「ヒロくんと私でこれからすることだよ?」

 

 青子さんは上機嫌でそう(のたま)った。

 いやいや、答えになってない。

 

「その……(つがい)ってなに?」

 

「え? ああそっか、そうだよね、ヒロくんは知らないんだった。あのね? サキュバスの女の子は16歳になったら成体……要するに成人するんだけど、その16歳の成人前までに生涯のパートナーとなる男性を選ばないといけないの」

 

「生涯の、パートナー?」

 

「そう。その生涯のパートナーを(つがい)って呼ぶの♥」

 

「え、ちょっと待って青子さん!?」

 

「番の儀式はね? 男性にサキュバスの処女を捧げると成立するの♥」

 

「待って待って! それダメ! 取り返しがつかない!」

 

 彼女のおっぱいにペニスを挟まれて、彼女の喉の奥にさっき精液を流し込んだのは僕だ。

 もう既に取り返しがつくラインを大幅に超えているような気がするけど、催眠状態の彼女が処女まで失うことになったら、正気に戻った彼女の受けるショックはどれほどになるか。

 

「え? 取り返しがつかないって何のこと?」

 

「いや、そういうのは大好きな男性としないと後で後悔することになるんだ」

 

「うん? だからヒロくんとするんだけど?」

 

「あぁ、そういう意味じゃなくて。えっと……真剣にお付き合いしてて好きあってる男女がするべきなんだ」

 

「え? …………ヒロくんは私のこと、好きじゃないの?」

 

 正面に座っている青子さんがさっきまでと打って変わってものすごく不安そうにしてる。

 

「もちろん好きだよ! 世界で一番大好きだよ!」

 

 僕の言葉を聞いた瞬間不安そうな表情が消えて、逆に両手で口を覆って青子さんが照れまくってる。

 というか、反射的に告白してしまった。

 

「え、えへへ。うん、し、知ってたけど面と向かって言われるとすごく嬉しいね♥ うわぁ幸せ♥ もう今ならなんでもできそう♥」

 

 正座したまま、青子さんが身体をくねくね捩ってる。下着姿のままなのでおっぱいがバルンバルンと下着ごと揺れまくってる。

 

 ……照れてるサキュバス青子さん、めちゃ可愛いな。

 

「私もね? ヒロくんのことが大好きなの♥」

 

 彼女の告白が胸に刺さる。

 これが催眠ではなく彼女の本心だったらどんなに嬉しかったか。

 

 だけど、好きな女の子から大好きと言われたら、それが催眠の結果であってもやはり僕も嬉しくて身体が反応してしまう。

 正座して太ももの間から突き出てる勃起ペニスも僕の気分を反映してビクンビクンと痙攣する。

 

「告白し合って好き同士なんだから、これでヒロくんも納得だよね♥」

 

「あっ! あぁ!? 確かに!!」

 

 なんてこった。

 僕の言った通りの状態になってしまった。

 

 愕然としていた僕の隙を突くようにするっと伸ばされた青子さんの手が僕の勃起ペニスを握りしめた。

 自然な動き過ぎて気がついたら握りしめられてて……僕の身体から力が抜けていく。

 

「……し、しまった」

 

 身体から力が抜けて再び床に寝そべってしまうと青子さんが片手で器用に下着を脱ぎながら僕に逆向きに覆いかぶさってきた。シックスナインの体位だ。

 

「これってお互いが見えちゃうエッチな姿勢だよね♥ どう? ヒロくんからちゃんと見えてる?」

 

「待って、見えちゃってるからまずい! すごくまずいよ青子さん!」

 

 目を瞑れと理性が命令を出しているのに自分の身体が言うことをきかない。

 青子さんのむちむちの太ももの付け根の部分が肉まんじゅうのように盛り上がって、中央でぱっくりと縦に割れている。

 

 柔らかそうな肉が内側にみっちり詰まっているのがひと目で分かってしまう。

 

「わぁ…………」

 

 今の状況を忘れて彼女の肉の割れ目に目が釘付けになる。

 興奮しすぎた僕のペニスが力強く反り返った。

 

「ヒロくんに見てもらいたいから見せてる場合もまずいの?」

 

 ペニスを握った青子さんの手がぎこちなく上下に動き始めて、心地よい刺激が竿に送り込まれてくる。

 

「も、もちろん私だってヒロくんに見られるのは恥ずかしいんだよ? でもヒロくんもおちんちんをこうやってシコシコされるのは……恥ずかしいからシて欲しくない? それとも恥ずかしいけどシて欲しい?」

 

「え?」

 

「恥ずかしいけど、それでも本当はシて欲しいことってあるよね? ヒロくんも……おちんちんシコシコして欲しいよね?」

 

 全身を赤く染めた彼女の下腹部でハート型の淫紋が淡く発光していた。

 ぷっくりと丸く盛り上がった彼女の股間の割れ目からは雫がいまにも溢れそうになっている。

 

「ヒロ君くんは私のここ、見たくなかった?」

 

「いや、それはその、えっと」

 

 あれ? 

 これ、どう答えるのが正解なんだ? 

 催眠とか関係なしに答えを間違えると彼女を傷つけてしまわないか? 

 

「ふふ、ヒロくんのおちんちんがすっごいカチカチになっちゃってる♥ ヒロくんのおちんちんは正直者だよね♥ 長くて……太くて、こんなに反り返って♥ これがヒロくんの気持ちなのは分かってるけど♥」

 

 青子さんとは思えないような艶っぽい目で僕を見てる。

 熱く火傷しそうな青子さんの息が僕のペニスにかかっている。

 

「でも、おちんちんじゃなくて……ヒロくんの口から正直な答えを聞きたいな♥」

 

 彼女の目がどこか不安を抱えているかのように僕を視ている。

 

 たとえ催眠に掛かっていても青子さんの芯の部分は変わってない。

 それなら……どんな言葉が彼女を傷つけるか分からないなら、僕は自分が後悔しないことを言うべきだ。

 彼女が正気に戻った時にショックを受けるとしても、曲げていいものとそうでないものはある。

 

「うん……本当はすごく見たいし、ペニスも本当は青子さんに触ってほしい」

 

「良かったぁ♥」

 

 青子さんの表情から不安が消えた。

 僕の言葉が最後のスイッチになったのは間違いない。

 

 青子さんの股間が僕の顔に押し付けられた。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 僕の頭の両側に膝をついてた青子さんが太ももで僕の頭を挟んでいる。

 青子さんの股間が完全に丸見えになっている。

 

 鼠径部にわずかに皺が寄っている以外はまるで赤ちゃんのようなつるつるの肌だ。

 股間の中央にはお尻に向かって綺麗な肉の割れ目が少し開き気味になって割れ目の底が見えそうになっている。

 

 ぷっくりと膨らんだ大陰唇が赤く充血し、綻びかけている小陰唇の先端ではクリトリスが尖って勃ち上がっていた。

 女性のここを生で見るのは初めてだ。

 

 動画サイトで観た名前も知らない女性のおまんことは青子さんのそこは比べ物にならないくらい鮮明で、そして綺麗だった。

 

「……毛が生えてないんだね?」

 

 出た声はかすれていた。

 喉の奥が熱い。

 

 いや、何を聞いてるんだ、僕は。

 なんだか熱にうなされたように思考がボケてきてる。

 

「う、うん。つるつるで小さな女の子みたいでしょ? その……サキュバスの女の子は陰毛が生えないの」

 

「そうなんだ」

 

 大好きな女の子の剥き出しの股間が眼の前に差し出されている。

 僕に見せつけるために彼女が自らそうしてる。

 

 ペニスに過剰なくらい血液が流れ込んでいくのが分かる。

 ギリギリと屹立して痛いくらいだ。カリ首の段差なんか2cmくらいありそうだ。

 好きな女の子の手で握り締められ、しかもその女の子の剥き出しの股間が目の前にあるんだ。こうなって当然だ。

 

「それでね? 番の儀式をする時にヒロくんに説明しなきゃいけないことがあって」

 

「説明?」

 

「番候補の男の子には正式にサキュバスである私の番になった場合のデメリットをちゃんと提示しないと番の儀式が成立しないの」

 

「よく分からないけど……なんだか変わってるね?」

 

「昔、ギョウセイなんとかを受けてそうなったんだって」

 

「行政指導?」

 

「あ、それそれ。一種の契約行為だからそこは厳密にやらないといけないんだって」

 

 なんなんだろ、この催眠アプリ。

 どの方面へのウケを狙っているのか、彼女に刷り込まれてる設定が微妙に生々しい。

 

「まず……デメリットその1。サキュバスの番になった男の子はサキュバスの女の子相手でないともう射精できなくなります」

 

「え?」

 

「サキュバスのおまんこを一度でも経験した男の子は……もうオナニーでは射精できないし、他の人間の女の子相手でも射精できなくなるの」

 

「ぜ、絶対に射精できないの?」

 

「うん……。だからその……子供が欲しかったら、もうサキュバスと結婚するしか無いの」

 

「あ、結婚か」

 

「も、もしかしてヒロくんは私と結婚したくない、とか?」

 

「いや、したいしたくないで言ったら青子さんと結婚したいけど……僕もまだ15歳だし、そんなこと真剣に考えたことなくて」

 

 顔が青ざめかけていた青子さんがほっとした表情を浮かべた。

 

「そ、そっか、それが普通だもんね。私なんか昔から成人する16歳までに番相手を決めなさいってお母さんから言われてきたからそういうもんだとばっかり思ってて」

 

 ああ、なるほど。

 彼女に刷り込まれたサキュバスの常識からすると、16歳までに番という名のほぼ結婚相手の男性を見つけなきゃいけないのか。

 

「でも、その(つがい)というのが結婚前提の許嫁(いいなずけ)みたいなものと考えれば……特にデメリットじゃなくなるのか? むしろ唯一無二の相手になるんだからメリットになるのかな?」

 

 あ、離婚の時は困るのか。

 でも青子さんと結婚しておいて離婚する?

 そんなのあり得ないからな。

 

「だ、だよね♥ そうだよね♥ むしろメリットと言うかなんでこれをデメリットって説明しなきゃいけないのかってずっと思ってたの♥ やっぱりヒロくんで良かったぁ♥」

 

 嬉しそうに身体を揺らしてる青子さんのせいで、僕の目の前で彼女のおまんこが左右に揺れながらくぱぁと開きかけている。

 

 それにオナニーで射精できないこともデメリットにはならない。

 青子さんがいるのにオナニーする必要があるとも思えない。

 

「そ、それで続きだけど、デメリットその2。番相手が欲情するともう一人の番も欲情します」

 

「え?」

 

「あ、分かりにくかった? 番がエッチな気分になったら番相手も同じようにエッチな気分になるの」

 

「そ、それって僕が青子さんとエッチしたくなったら……青子さんもエッチな気分になるってこと?」

 

「そうだよ。ヒロくんのおちんちんが勃起してすごく射精したくなったら……番の私もヒロくんを一杯射精させたくなるの♥」

 

 赤く染まった頬に手を当てて腰をくねくねしてる青子さんを凝視する。

 世界一綺麗で可愛いのは間違いない。

 

「……なんか夫婦の夜の生活のすれ違いを防ぐためのものみたいってか、それ、デメリットなの?」

 

 僕が勃起したら青子さんも自動的にその気になっちゃうのは、男から見てもデメリットにはならないような気がする。

 

「いやむしろメリットなのでは?」

 

「だ、だよね♥ そうだよね♥ むしろメリットと言うかなんでこれをデメリットって説明しなきゃいけないのかってずっと思ってたの♥ やっぱりヒロくんで良かったぁ♥」

 

 青子さんの割れ目がゆっくりと広がって肉穴の内部が見え始めた。

 

「あと、逆に番になるメリットの話もあるけど、こっちはもう聞かなくてもいいよね? だってヒロくんにとって私の番になってもメリットしかないんだもん♥♥」

 

「まぁ………………そうだね」

 

 正直、彼女の話より彼女の膣穴(おまんこ)の中が気になって仕方ない。

 メリット・デメリットの話なんかよりこの生殺しのような状態をなんとかして欲しい。

 

 いや違う、何かおかしい。

 彼女の熱気に中てられて僕の判断が狂ってる気がする。

 

「えへへ♥ それで番の儀式の前に、ヒロくんには確認してもらう必要があるのが……すごく恥ずかしいけど……えいっ!」

 

 青子さんが股間の綺麗な小陰唇に指を添えて左右に開いてみせた。

 ほとんど透明に近いぷるぷるとした肉粘膜と肉襞が寄り集まっていた肉穴(おまんこ)の奥が僕の目の前でゆっくりと開いていく。

 

「み、見えるかな? サキュバスの処女おまんこ♥」

 

 股間の割れ目の一番奥まった部分。そこの凹んだ穴の奥にまるで服の襟のような薄い膜が膣穴をぐるりと取り囲んでいた。

 見ているだけで呼吸が荒くなる。

 これが女の子の処女膜なのか。

 

「誰にも見せたことがないんだよ♥ ヒロくんが初めて見る人なんだから……分かってる?」

 

「……分かってる」

 

 彼女がしゃべる度に腹筋が動くのか、穴の奥の鮮やかなピンク色の粘膜が押されるように変形して……まるで海棲生物の口みたいに蠢いている。

 柔らかそうなピンク色の粘膜が寄り集まって、グニグニとお互い擦れあうように刺激しあって…………時々きゅっと窄まって奥に引き込むような動きを繰り返してる。

 

 ほとんど透き通って見えるくらい繊細な肉粘膜が膣穴の中で寄り集まって挿入されるのを待っている。

 こ、この中に僕のペニスが入るのか。

 

 肉襞と粘膜がきゅーっと引き込むように窄まると、肉粘膜同士が擦れあって奥の隙間から透明な粘液が滲み出してきた。

 どこまでも伸び縮みしそうな肉粘膜が柔らかく丁寧に折りたたまれてできた肉皺の隙間に、とろとろの粘液が絡みついて光を反射いている。

 

 とぷっ♥

 

 肉粘膜がぎゅーっと搾り上げるように窄まると、透明な雫が外に押し出されてきた。

 

 肉粘膜同士が絡まり合い隙間を埋めるように擦れあって、皺だらけの肉襞の隙間から粘液が押し出されながらぐじゅぐじゅと小さな音を立てて、肉の穴が奥でうねり動く度に挽き臼のように肉粘膜同士が強く擦れ合っている。

 

 肉穴(おまんこ)の中の肉襞一枚一枚がまるで青子さんの舌みたいに見えてしまう。

 いや舌よりももっと柔らかくて……ねっとりと張り付いてぐにゅぐにゅと動き回って全方位から締め付けてくるんだ……。

 

「……やっぱり膣内(なか)も触ってみたいよね♥」

 

 青子さんの下腹部で淫紋が淡く発光していた。

 

膣内(なか)を?」

 

 僕のペニスの亀頭でも青子さんと同じように淫紋が白く光っている。

 

「そう♥ 処女のサキュバスの膣穴(なか)を触れるのって今日だけだよ?」

 

「今日だけ……」

 

「触りたくなってきた?」

 

 僕の亀頭で仄かに光っている淫紋の光が少し強くなったような気がした。

 

「……うん、すごく触りたい」

 

 そうだ。

 青子さんの肉穴(おまんこ)の奥は肉襞に埋もれて見えない。

 見えないのなら指で触って確かめるしか無い。

 

 青子さんが背中を反らしながら、床についていた膝をゆっくりと左右に広げていく。

 好きな女の子の大切な部分が眼の前に曝け出されている。

 

 青子さんの下腹部で淫紋が光っていた。

 

 ──触って欲しい。

 違う、触りたい。

 

 僕の亀頭でも淫紋が光を放っている。

 

 ──膣穴(なか)を擦って欲しい。

 違う、膣穴(なか)を擦ってあげたい。

 

 肉穴(おまんこ)の奥が焦らされているように蠢いてきゅっきゅっと(しき)りに収縮を繰り返して、青子さんと僕の呼吸が同じように荒くなっていく。

 

「青子さん、膣穴(なか)に指を入れるよ」

 

「うん、早く来て♥」

 

 みっちりと肉襞が寄り集まった肉穴(おまんこ)へ指を沈み込ませ……指先に肉粘膜がねっとりと絡みつき……すぐに行き止まりの肉壁に突き当たった。

 

「くっ」

 

「んっ♥」

 

 人差し指の第一関節が青子さんの肉穴(おまんこ)の中に埋もれると同時にぐちゅりと音が鳴って、まるで僕のペニスが彼女の肉穴(おまんこ)に包まれたように感じた。

 

 ざらざら……はしていないけど、ざらつく感じの柔らかい肉粒が粘膜を覆って指先に触れている。

 女の子の奥はこんな風になっていたのか。

 こんなに熱くてにゅるにゅるしてて、柔らかくて……コリコリしてる。

 

「でも、こんなに浅かったんだ?」

 

 見るとやるとでは全然違った。

 指先しか入らないなんて知らなかった。

 

「んっ♥ 違うよ、ヒロくん。指先をぐっとおヘソの方に曲げてみて♥」

 

「え? こう?」

 

 そういえば膣の奥なら子宮口があるはずなのに、それが無いのも変だ。

 青子さんの言う通り指を曲げると膣穴の奥へぬるりと指先が滑り込んだ。

 

「わ、わわ!?」

 

「──んんっ♥」

 

 膣の入口よりも格段に狭くてコリコリする感じの部分を通り抜けるとまたすぐに行き止まりだった。

 さっきと同じように、だけどさっきより堅めの肉粒がびっしりと肉粘膜を覆って僕の指先を刺激してくる。

 

「……こ、これは? くっ」

 

 ち、膣穴って真っ直ぐじゃなかったのか?

 保健体育で習った女性の身体の横から見た構造図では真っ直ぐだったのに、実際はこんなに折れ曲がっていたのか。

 

「ヒロくんは童貞さんだもんね♥ 女の子の膣穴(なか)を知らないのは恥ずかしくないよ♥」

 

「あ、青子さんだって処女(ヴァージン)じゃないか」

 

 ツブツブ状態の肉粘膜の心地よい感触を指先に感じながら穴の周囲を探ると、右に折れ曲がって奥へ膣穴が続いていた。

 人差し指の根元まで青子さんのうねる膣穴に包まれてぬるぬるの肉襞が擦り付けてきてる。

 

 熱くてトロトロでじっとしているだけで信じられないほど気持ちがいい。

 ただ指一本が彼女に包まれているだけでずっと搾り上げられている。

 

 もっと奥に入り込めば更に気持ちが良いのが分かってしまう。

 だけどこれ以上は指が奥に入らない。

 

「……私の膣穴(なか)、気に入ってくれて嬉しい♥ ヒロくんの顔がこんなに蕩けちゃって♥」

 

 青子さんの下腹部で白く光っていた淫紋がほんのかすかにピンク色になってきた。

 

「……うん」

 

「番になればこの肉穴(おまんこ)がヒロくんだけのものになるよ♥」

 

「……うん」

 

「ヒロくんのおちんちんが勃起したらいつでもここで気持ちよくなれるんだよ♥」

 

「……うん」

 

「ねぇ……挿れよっか♥」

 

 青子さんのここに僕のペニスを挿れたい。

 そうだ、ペニスなら指よりももっと青子さんの奥の更に奥へ入ることができる。

 

「うん、挿れたい」

 

 言葉と同時に自分の口から信じられないくらい熱い息が漏れた。

 

「じゃあ、番になろうね、ヒロくん♥」

 

 僕に逆向きに覆いかぶさっていた青子さんが腰の上に跨り直した。

 彼女の膣穴(なか)から僕の指が青子さんの処女膜を擦りながらにゅるんと抜けた。

 

 僕の腰の上に彼女の体重がずしりと圧し掛かる。

 彼女の体の重みと……焼けた鉄の塊のような熱さが僕に伝わってくる。

 

 青子さんから伝わってくる熱が僕を熱くさせていく。

 

 その青子さんが僕の腰に跨って見下ろしている。

 息が荒い。僕も彼女も発情してるんだ。

 ペニスがギンギンに反り返って鈴口ではガマン汁の雫が盛り上がってる。

 

 亀頭の淫紋が淡いピンク色の光を放って、青子さんの下腹部で光っている淫紋と重なって見えた。

 

 僕も青子さんも準備は整っている。

 

 あとは青子さんが腰を浮かせて、肉穴(おまんこ)にあてがって腰を下ろすだけだ。

 それで僕たちは番になれる。

 

 

 

 ……あれ?

 何か忘れてないか、僕?

 

 



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第07話 覚悟

「はー、はー、はー……」

 

 さっきから息をする音がやけに耳に障る。

 もし誰かが近くで聞き耳を立ててたら、僕らが何をしているかなんてすぐにバレてしまうだろう。

 僕と青子さんは二人とも興奮しすぎて、まるで100mを全力疾走した直後のように息が荒い。

 

 だけど青子さんも僕も身体は()()動かしていない。なんなら青子さんは僕の腰にただ跨っているだけだ。

 彼女の股間の肉が柔らかく僕の腰に密着して、呼吸(いき)に合わせてお互いの敏感な部分が擦れ合う度に僕と青子さんの心臓が激しく鼓動を打っている。

 

 彼女の体重が僕に預けられている。

 単に青子さんが僕に跨っているからそんなの当然だろう……とはならない。異性に無防備に体重を預けることはそんな言葉では表現できない。

 

 信頼されてる。好かれてる。好意を寄せられている。

 彼女の重さを実感するということはその現れだ。

 そのことがすごく嬉しくて、そして酷く興奮を誘う。

 

 彼女の呼吸に合わせて揺れるおっぱいに視線が吸い寄せられながら、だけど僕の頭の片隅に何かトゲのようなものが刺さってる。

 気にしなければいけない大切な何かを忘れてるような気がする。

 だけどその大切なことが思い出せない。

 

「くっ」

 

 多分、意識せずに左右にくねらせたであろう彼女の腰の動きで僕のペニスがより深く彼女の割れ目に潜り込んだ。

 和服を着た清楚な美女が姿勢良く正座していた足を、ふと崩すような自然な所作で自分の秘所を僕のペニスに密着させてくるような匂い立つような色気。

 

 好きな女性から回りくどく婉曲的にしかも無自覚に誘われて、僕のペニスが限界を超えてガチガチに勃起する。

 柔らかい彼女の秘肉で擦られて、多幸感を伴う甘い感覚に包まれている。

 

 ……大切な何か?

 

 僕のペニスに密着している彼女の股間の割れ目より大切なことなんてあるのだろうか?

 割れ目の魅惑的なスジが僕のペニスに密着して、引き攣るように歪む度に眼の前にいる大好きな青子さんの膣穴(なか)にペニスを挿入することの方が遥かに大事だと僕の脳みそに連打が叩き込まれる。

 

 そうだ。

 僕は大好きな青子さんと一つになりたいんだ。

 

「よ、よいしょ♥」

 

 青子さんが僕のペニスに手を添えたまま腰をぐっと持ち上げた。

 わざと軽い感じで喋ってるのは彼女なりの照れ隠しだと思う。

 昨日までの僕なら分からなかったと思う。

 

 きっと身体の距離が近づくと心の距離も近づくんだ。

 今は青子さんのことが以前より分かるような気がする。

 

 むっちりとした太ももと太ももに挟まれた女の子の部分を下から見上げると青子さんが照れて僕から目を逸らした。

 でも青子さんは恥ずかしがりながらも自分の股間を隠すつもりはないみたいだ。

 僕に見せつけるように、骨盤をぐいっと広げて女の子の割れ目を見易くしてくれてる。

 

 汗ばんだ鼠径部の中央に青子さんの肉の割れ目が盛り上がり、綻びかけている肉のスジから透明な粘液が溢れ出していた。それが内腿を伝わって膝まで垂れてきている。

 

 目が離せない。

 こんな時、彼女の顔を見つめればいいのか、彼女の股間を凝視すればいいのか僕には正解がわからない。

 

 ゆっくりと近づいてくる彼女の無毛の割れ目に僕の亀頭の先がぐっと押し当てられた。

 生まれて初めて感じる女の子の柔らかい肉の感触。

 準備が何もかも整った女の子の割れ目の部分が自ら僕のペニスに押し付けてきている。

 

「……青子さんのそこ、すごく熱くなってるよ」

 

「ヒロくんのおちんちんの方がすっごく熱いんだけど♥」

 

 青子さんと僕はなんだか苦笑いのような感じでお互い笑いあった。

 二人揃って照れ隠しだ。

 処女と童貞。僕たちほどお似合いの二人はないって信じていいんだと思う。

 

「じゃ、じゃあいくね?」

 

 青子さんの腰がしゃくるように動いた。

 すごく卑猥だった。普段の彼女からは想像できない腰の動き。

 ペニスを膣穴に、雌の肉穴(おまんこ)に自ら誘う動き。

 自分の目で見ても信じられない。

 

「んっ♥」

 

 蜜で濡れた肉穴(おまんこ)に亀頭の先端がめり込んだ。

 ぬるぬるとした柔らかい肉の窄まりに僕の亀頭粘膜が張り付く感触が快感に変わりながら背中を駆け上がってくる。

 

 すごい、まるで亀頭がくすぐられているみたいだ。

 それにとても熱い。火傷しそうなくらいに。

 

「あれ?」

 

「きゃんっ♥」

 

 僕の両手が勝手に動いて、膝立ちしていた彼女を抱き寄せた。

 彼女の柔らかいおっぱいが僕の胸に重なり、彼女の顔が僕の目の前に来る。

 

 彼女に突き刺さりかけていた僕のペニスが青子さんの股間から外れて僕たちのお腹に挟まれた。

 

 危ない、危機一髪だった。

 って……何が危ないんだっけ?

 

「あ、そうだよね♥ せっかくのハジメテなんだから順番も大事にしないと……ん」

 

 彼女の潤んだ目に吸い寄せられ……青子さんのことで頭が溢れかえる。

 青子さんの唇が僕の唇に重ねられた。

 軽く重ねただけで、すぐに離れる。

 

「えへへ。ファーストキスだよ♥」

 

「う、うん、僕も」

 

 今度は僕の方から彼女にキスがしたい。

 この状況で好きな女の子にキスをしないなんてあり得ない。

 照れている彼女の頬を両手で挟み僕からキスをした。

 

「んっ」

 

 さっきよりも長く触れ合った唇が離れる。

 

「……青子さんの顔がダメになっちゃってる」

 

「ヒロくんだって」

 

 胸の奥が熱くて苦しい。

 幸せすぎて怖い。

 

 青子さんの眼鏡の奥の瞳が潤んでいる。

 青子さんが僕の首に手を回してきたので、僕も彼女の背中に手を回した。

 彼女の心臓の音が聞こえる。

 僕の心臓の音だって彼女に負けてない。

 

 そのまましばらく抱き合ってるうちに、ようやく僕たちは準備ができた気がした。

 

「……ヒロくん。初めては大変って聞くけど私に全部任せてくれる? 私ってサキュバスだからヒロくんは自分じゃ動けなくなるでしょ? だからヒロくんのおちんちんを私に預けて欲しいの♥」

 

「う、うん。僕のペニスを青子さんの好きにしていいよ」

 

 僕の返事を聞いて、青子さんは甘えるように軽いキスを交わすと、再び膝立ちになった青子さんは僕のペニスを股間に押し当てた。

 

「ヒロくん。い、いくよ?」

 

「う、うん」

 

 頭の隅でもう一人の僕が止まれと叫んだ気がしたけど、亀頭の先に青子さんの肉粘膜のにゅるっとした感触が伝わってきた瞬間、僕の脳が理性ごと沸騰した。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「あっ!!」

 

 亀頭が青子さんの膣内(なか)に入り込んで、彼女の肉穴(おまんこ)の窄まった筒肉の部分が僕の亀頭をぐるりと覆い包んだ瞬間、亀頭に電気が流れたような衝撃を味わった。

 

「ああっ!?」

 

 亀頭粘膜の表面をビリビリするような刺激が這いずり回っている。

 

「なっ、なにこれ!?」

 

 まるで感電しているみたいだ。

 青子さんの口の中の感触とも全然違う。

 

 亀頭全体が波のような刺激を受けてぶるぶると震えるのが止まらない。

 深い溝と柔らかい肉でできた媚肉の絨毯が僕の亀頭に張り付いて蠢いている。

 

「あ、ちょ!?」

 

 亀頭が彼女の膣内(なか)に収まっただけなのに、既に僕の快感の許容値を完全に振り切ってしまってる。オナニーの刺激が1なら彼女の膣から受ける快感は千だ。

 

 いや違う、万だ!

 そうか、だから万個(マンコ)っていうのかっ!

 思わぬところで僕は語源を知った。

 

「うおっ!?」

 

 急に僕の亀頭を包み込んでいる青子さんの膣の入り口の部分が激しく収縮を始めた。

 堅く膨らんでいたはずの僕の亀頭が握り潰されそうな力で締め付けられ、次の瞬間弛緩してとろとろに蕩けた肉襞が優しく撫で擦っていく。交互に何度も訪れる締付けと弛緩で僕のペニスが翻弄されてる。

 

 だめだ、こんなの刺激が強すぎる。

 全身が脱力してしまい、唯一力が籠められるのは僕のペニスだけだ。

 

「あ、青子さん、待って。つっ、強すぎる!」

 

 青子さんは僕の言葉を聞いているのかいないのか、図書室の天井に顔を向けて上半身がぶるぶると震えていた。そこまで力む必要はないはずなのに、小刻みに上下に弾み続ける青子さんのおっぱいを快感に耐えながら見上げていると、僕のペニスが反り返って、一瞬緩んで広がった彼女の膣穴をゴリっと抉って押し上げた。

 

 ずりゅりゅっ♥

 

「くぅっ!」

 

 僕の頭の中で光が弾けて意識が飛びかけた。

 そうだった。

 青子さんの膣は入ってすぐのところで右斜め奥方向に湾曲していたんだ。おまけにその先は細く括れて密集した肉粒が無数に敷き詰められているのだ。

 

「あっあっあっ……」

 

 自分の口から蚊の鳴くような悲鳴が漏れ出る。

 ぬるぬるの粘液まみれになった肉粒がゴリゴリと容赦なく亀頭粘膜が摩り下ろしていく。

 狭くて熱い肉筒で締め付けられながら更に奥へと引きずり込まれていく。

 

「し、死ぬっ死ぬっ!」

 

 気持ち良すぎて死ぬ。

 女性の膣穴ってこんなに凄いのか。

 どうして誰も僕に教えてくれなかったのか。

 

 僕が今までしてきたオナニーなんて完全な時間の無駄だった。

 

 図書室の床を思わず爪でひっかいた。

 だけど力が入らないので指先が少ししか動かない。

 僕が今、力を籠められるのは股間のペニスだけだ。

 

 だけど今ペニスに力を籠めたら、膨らんだ亀頭がもっと敏感になってしまう。

 リズミカルに繰り返される肉粘膜による締付けを味わいながら亀頭が膨らめば意識を保てるとは思えない。だけどひたすら加え続けられるペニスへの刺激に僕自身も高まり続けていく。

 

「おっ♥」

 

 その時、なぜか天井を見上げたまま身体を震わせ続けていた青子さんの腰が何の前触れもなくストンと落ちた。

 細かな突起状の肉粒が密集した肉粘膜の真ん中に僕の亀頭が抉るように嵌まり込んだ。

 無駄に広がってガチガチに堅くなっていたカリ首がその摩擦刺激を全部受け止めてしまう。

 

「あぁああっ!?」

 

 しかもゆっくりと収まりかけていた青子さんの膣肉の収縮痙攣が、激しさをもって再開してしまう。

 彼女の膣内の右斜め奥に吸い込まれた僕のペニスがくの字に折れ曲がりながら、肉襞で強力に締め付けられた。

 おまけにたっぷりの粘液がまるで熱湯のように亀頭を茹で上げながら何度も何度も繰り返し肉襞が纏わりつくように搾り上げてくる。

 

 ゴリっ♥

 

「ぐっ!!」

 

 青子さんの膣肉が収縮と弛緩を繰り返すうちに、タイミングが合ってしまったのか、僕のペニスが今度は彼女の膣の左奥に向かって吸い込まれていく。まるで串団子のような形状の狭い膣穴を僕の亀頭がゴリゴリと削りながら奥の奥の窄まりに向かって誘い込まれていく。

 

 僕の脳内で光がフラッシュを繰り返してる。

 意識が飛びかけてる。

 だめだ、気持ち良すぎて気絶してしまいそうだ。

 

 くの字どころかその字のように彼女の膣内で僕のペニスが折れ曲がりそうだ。にゅるにゅるした肉粘膜に包まれて左右から更にぐりぐりと圧力を受け続け、膣粘膜の表面に密集してるコリコリとした肉突起に亀頭の裏側が延々と擦り下ろされてる。

 しかも強烈な左右からの圧力が加わったまま、無数の指の輪っかのような締め付けが上限運動まで始めてしまった。

 僕の腰はもちろん、青子さんの腰も動いていないのにまるでピストン運動のような刺激が僕のペニスに襲い掛かってきてる。

 

「あっ、あっ、あぅ……」

 

 青子さんの腰が脱力して、本来ならすぐにペタンと座り込んでるはずなのに、僕のペニスが彼女の膣奥を搾られながら支えているせいで、むしろゆっくりと腰が降りてきてる。

 ゆっくりゆっくりと下がってくる青子さんの腰と、彼女の中心を僕のペニスが曲がりくねりながら飲み込まれていく。

 突き進んでいるのではない。

 肉突起と段差のような窄まりと肉の輪っか、蕩けそうな肉粘膜に纏わりつかれながら奥へ奥へと誘い込まれていく。

 

「あ、無理……。これは無理……」

 

 僕のペニスが彼女の膣穴に飲み込まれていけばいくほど、刺激を受ける面積がどんどん増えていくのだ。

 それなのに僕の身体は脱力しきって快感を逃がせない。全部受け止めてしまう。

 唯一力が入るペニスに力を籠めたらもっと気持ちよくなってしまう。

 

 あぁ詰んだ。

 

 というか、さっきから意識が何度も飛んでいる。

 ペニス全体を肉粘膜が途切れることなく搾り上げ、おまけにきゅむっ♥ きゅむっ♥ と膣穴が飽きることなく収縮運動を続けているのだ。

 狭い膣穴が複雑に折れ曲がりながら奥まで続いていて、一度挿入したら二度と抜けないような気さえする。

 

 

 

「おふっ!」

 

 はっと意識が戻ると同時に例えようもない多幸感が頭の中に溢れ返った。

 上気した顔の青子さんが僕を蕩けた表情で見下ろしていた。

 肩のあたりが痙攣していて、僕のペニスを締め付けている収縮と同じリズムで青子さんの上半身が揺れている。

 

「全部……入ったよ、ヒロくんのおちんちん♥」

 

 見れば彼女の股間と僕の股間が完全に密着していた。

 僕のペニスが彼女の膣内に全て収まったのだ。

 よく見れば彼女の胸の下あたりで僕の亀頭らしき盛り上がった部分がある。

 

「は、入ってる……」

 

 好きな女の子の膣穴(なか)に自分のペニスが全部入っているというのはこれほどの幸せをもたらすのか。

 自分が生まれ変わった気がする。

 

 幸せそうな青子さんを見ていると僕の本心が口をついて言葉となった。

 

「青子さん、好きだ」

 

「私も、ヒロくんが大好き♥」

 

 ……彼女の愛の言葉を聞いて僕の頭に刺さっていたトゲが何なのか思い出した。

 

「あっ……」

 

 僕のペニスが根本まで彼女の大切な部分に収まってしまっている。

 催眠に掛かった青子さんの処女を僕が奪ってしまったのだ。

 

 取り返しはもうつかない。

 

「ヒロくん、大好き♥」

 

 そう言った青子さんの膣穴内部が強烈にうねって僕のペニスをまた搾り上げた。僕に跨っている彼女の内ももがピクピクと痙攣を繰り返して上気して蕩けた表情の青子さんはとても幸せそうだ。

 

「あぁそうか……」

 

 小さく呟いた僕の言葉は青子さんには聞こえなかったと思う。

 僕は自分の思い違いに今更気が付いた。

 

 彼女の気持ちが一番大事だけど、僕の気持ちだってその次くらいには大事だ。

 そしてそもそも僕は彼女を諦めたりできないんだって今頃気がついた。

 

 僕のペニスを根本まで飲み込み、ペニスの浮かび上がったお腹を嬉しそうに擦っている青子さんを見て、僕が彼女から離れるイメージなんか全く湧かなかった。

 

 取り返しがつかない?

 そんなの関係ない。

 青子さんが僕を好きになってくれるまで僕が頑張ればいいのだ。

 青子さんが僕を好きじゃなかったとしたら振り向かせればいいんだ。

 

 催眠を解いたうえで、青子さんに改めて愛を告白して彼女を必ず射止めるのだ。

 順番を色々間違ってしまったけど、これから僕がしなければならないことは単純明快だ。

 

 

「青子さん大好きだ。絶対に僕を好きにさせてみせるよ」

 

「へ?」

 

 僕の言葉を聞いた青子さんが戸惑っている。

 でも僕の決意は固まった。

 

「え、えっと……そうだ♥ とりあえずヒロくんのおちんちんは好きにしていいって言ってたもんね♥」

 

「え?」

 

「じゃあ……動くね♥」

 

「え?」

 

 青子さんが僕の胸に手をついてゆっくりと腰を動かし始めた。

 挿入していただけで亀頭全体を肉粘膜が搾りこむように蠢きながら、無数の肉の輪っかが上下運動して刺激をペニスに叩き込まれていたのに、更に腰全体がうねるように動き始めたのだ。

 

 僕のペニスに叩き込まれる刺激で後頭部が燃えるように熱くなって思わずのけ反った。

 反動で彼女の中でペニスが反り返り、膨らみ切った亀頭がより敏感になってすべての刺激を受け止める準備を整えてしまう。

 

「あ、待って! 青子さん止まって! だめ、動くの無し!!」

 

「ダメだよ、ヒロくんは私の番になっちゃったんだもん♥」

 

 ぎゅーっと彼女の肉穴(おまんこ)全体が収縮し、青子さんが再び天井を見上げた。

 ぎゅっ♥ ぎゅっ♥ ぎゅっ♥ ぎゅっ♥ と、一定の周期で激しくペニスが搾られ始める。初めて味わう複雑な刺激に意識が遠のき始める。

 

「あ、意識が! け、決意したのに頭が真っ白に……」

 

「さ、膣奥(なか)に出しちゃお♥ 大丈夫♥ ヒロくんが満足するまで何回でも射精()していいんだよ♥」

 

「くっ! くぅううううっ!!」

 

「ほら、射精()しちゃえ♥ 射精()しちゃえ♥」

 

「あっ! あああぁあああああっ!!」

 

 



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第08話 彼氏彼女の情事

「くっ…………」

 

 金曜日の図書室は夕方の17時を回ると誰もいなくなる。

 週末に読む本を借りていく生徒も図書室で勉強する生徒も下校していなくなり、図書係は本棚の整理が済んだ後はカウンター内の椅子に座って閉館まで時間を潰すことになる。

 

 カウンターの中で椅子に座っているのは僕一人だ。

 きゅーっとこみ上げてくる感覚に耐えるために、誰もいない静かな図書室をゆっくりと見まわして、何とか気を紛らわそうと努力する。

 

 っ!! 

 

 喉が一瞬詰まりかけたので、小さく鋭く息を吸う。

 

「くっ……ふぅ…………………………………………」

 

 その後、長いため息のように僕は静かに息を吐き出した。

 どこに収まっていたのかと自分でも不思議に思うくらい長く吐き出し続ける。

 ビクっビクっとまるでシャックリをした時の横隔膜のように痙攣しているけどその感覚を務めて無視する。

 

「ぷっ……はぁーー、はぁはぁはぁ……」

 

 長く長く息を吐きだし続けたので、終わった後は息がどうしても荒くなる。

 これで今日12回目だ。いくらなんでも多すぎると自分でも思う。

 

 だけど図書室の閉館時間まであと1時間もある。このペースではあと何回ため息を吐くことになるのか自分でも正直分からない。

 

 

 

 カラララっ。

 

「え!?」

 

 この時間に珍しく図書室のスライド扉を開けて入ってきたのは同じクラスの高橋だった。

 うちのクラスの委員長でもある。

 いつもと同じきっちりと真ん中で分けた髪型が夕方になっても崩れていない。流石委員長だ。

 

 思わぬ来室者にびっくりしたのか動きが止まっている。

 ありがたい。ラッキータイムだ。これで僕も一息つける。

 

「よう、鬼頭。今日は珍しく一人なのか?」

 

「高橋こそ夕方のこの時間に図書室に来るの珍しくない? 学校で何か用事でもあったの?」

 

 なんでもないように、自然に見えるように振る舞う。

 

「さっきまで全学年共同の委員会があったんだ。まあ委員長集会みたいなものだね。で、まあその時にちょっと頼まれてね」

 

「ふーん?」

 

「鬼頭は生徒会長の久喜(くき)さんって知ってる?」

 

「そりゃ生徒会長くらい知ってるけど……でも話したことはないよ?」

 

 不穏な気配を感じたので予防線を張る。

 生徒会長の久喜さんは3年生の女子で、廊下を歩けばすれ違う男子が全員振り返るくらいの凄い美少女なのだ。

 おまけにおっぱいも青子さん並みに大きいし、聞くところによると明るく社交的で非の打ちどころがないらしい。

 当然うちの生徒で久喜生徒会長を知らない人はいないし、もちろん青子さんだって生徒会長のことは知ってるはずだ。

 

 話しながら移動してきた高橋がカウンターの向かいに立って、顎に手を当てつつ僕を見下ろしてる。

 

「……なに?」

 

 思うところがありそうな高橋の態度に僕は首を傾げる。

 

「あぁ、いや、ね? 鬼頭にちょっと聞きたいんだけどさ。鬼頭って久米さんと付き合ってるんだよな?」

 

「っ!?」

 

 びっくりして歯が当たってる。

 

「……えっと」

 

 これ、答えを間違えると大変なことになるのだろうか? 

 

 カウンターの下を見ないように椅子に座ったまま高橋を見上げると、高橋は真面目な顔のまま僕の返事を待っている。

 

「あー、悪いけど高橋が久米さんにアプローチしても無駄だと思うよ?」

 

 僕の返事を聞いて高橋がくいっと片眉を上げた。

 

 あ、しまった。言葉の選び方を間違えたか。

 ぎゅっと締め付けてくる圧力が強くなった。

 

「ん゛っ、んん゛っ……その、えっと白状すると僕と久米さんは付き合ってるんだ」

 

「うん、やっぱりそうか」

 

 高橋が何度も頷いている。

 

「そうだよな。久米さんって入学初日から鬼頭を狙ってたし、あんな猛アプローチされてたら、そりゃもうとっくに捕まってるよな」

 

「え、捕まる? それってどういう……くうっ!? あ、ごめん、なんでもない」

 

 カウンターを掴んだ僕の腕がぶるぶる震えてるのを高橋が怪訝そうな顔で見ている。

 

「うーん……どう見ても鬼頭って普通……なのに、巨乳の女子にばっかり妙に好かれるよな? 久喜生徒会長もそうだけど、うちのクラスの久珂(くが)さんとか嶋久(しまひさ)さん、それに佐久間(さくま)さんもまだ諦めて無さそうだしさ? ちょっと羨まし……くはないか。全員猛禽類だもんな。いや失言か。ごめん、邪魔したな。鬼頭にはもう彼女がいるって久喜生徒会長には伝えておくよ」

 

 手を振りながら高橋が図書室から出て行った。

 

 

 

 ──途端に青子さんの舌の動きが更に激しくなった。

 

「ぐぅっ!? 待って青子さん、強い! それ強すぎるからっ、あっああああぁあ!?」

 

 カリ首全部を青子さんの唇であむあむ♥と挟まれて、一番敏感な部分を刺激されながら、亀頭を左右から(ねぶ)り回される刺激があまりに強すぎる。堪らず椅子を引いてカウンターから距離を取ろうとしたら、青子さんがすかさず僕の腰に手を回してきた。

 

 あぁだめだ! 

 逃げられないっ!? 

 

 逃げようとしたのが青子さんの癇に障ってしまったのか、亀頭を舐めしゃぶる舌の動きが一層激しさを増しながら喉の奥へ亀頭を飲み込み始めた。

 

「ちょっ!?」

 

 彼女の唇がカリ首を通過して竿の部分を締め付ける。

 亀頭が彼女の喉に嵌まり込み、強く吸引されたせいで亀頭全体が一回り大きく膨らんだ。

 敏感になった亀頭粘膜が彼女の喉の粘膜と密着したままゴリゴリと刺激を受ける。

 

「あっ! あぁっ!? そ、そんなに吸われたらっ!?」

 

 高橋と話してる間ずっと青子さんは僕の亀頭を口に含んで(ねぶ)り回していたのだ。

 僕を再び射精させるためにひたすら口腔愛撫を加えていたのだから限界なんかもうとっくに来てる。

 青子さんの舌であと一(ねぶ)りされるだけで射精が始まってしまう。

 

 なのに青子さんは急に舌で(ねぶ)り回すのを止めて、両手で竿の根元とタマを同時に弄り回し始めた。

 

 あ、やっぱり青子さん怒ってる! 

 普通に射精させる程度で僕を許すつもりがないんだ。

 

「あぁ! 青子さん、寸止めは酷いよ!」

 

「だーめ♥」

 

 射精寸前の亀頭から口を離して、明らかに僕を焦らすために両手で竿とタマを弄り回し始めた青子さん。射精に至らない絶妙な刺激を加え続けられて、決壊直前のダムの天辺(てっぺん)で、射精と射精寸前の間を反復横跳びしている僕。

 

 射精してないのに射精しているような感覚に襲われ脳がバグりそうだ。

 

 青子さんの指が絡みついた竿に太い血管が浮かび上がり、僕の腰が耐えきれずガクガクと痙攣を始めた。限界なんかとっくに通り越してるのに寸止めに寸止めを重ねられて頭がおかしくなりそうだ。

 

「あぁ! もう無理! もう無理だからっ!」

 

 僕の泣きそうな声を聞いてようやく溜飲が下がったのか、青子さんが再び亀頭を咥え込み、舌で(ねぶ)り回しながら亀頭を喉の奥まで飲み込んで亀頭全体を吸引し始めた。

 青子さんの口腔粘膜と喉粘膜に僕の亀頭粘膜が溶け合うように密着して受ける急進刺激が背中を稲妻のように灼きながら快感が駆け昇って来る。

 

 焦らされて焦らされて、とっくに限界を超えて甘絶頂()きし続けていた僕のペニスが爆発する。

 

「あぁあああっ!! ダメだ! 射精()る! 射精()ちゃう! 青子さん!!」

 

 ペニスの根元の更に奥の部分がぎゅーっと収縮し、目の前が真っ白になるくらいの快楽が腰の奥から背中を灼きながら何度も駆け抜けて後頭部で破裂する。

 腰の奥で収縮していた筋肉が限界を超えてビクっビクっと痙攣し始め、押し出された精液が尿道を一目散に駆け抜けていく。

 

「あっ……あっ……あっ……あっ……あっ……」

 

 腰の奥が痙攣する度にゼリーの塊のような精液が尿道粘膜を押し退けながら青子さんの口腔に溢れていく。

 半固形物のようになった精液の塊がペニスの奥で尿道を通過する度に腰が震えるほどの快感が生じて、声が漏れるのを止めることができない。

 

「くっ……………………はぁ……はぁ……はぁ…………」

 

 2分、5分、10分と図書室の壁にかかった時計の分針が刻む中、吐精が止まることなく続いて、鈴口から湧き出る精液を青子さんが全て飲み込んで行く。

 

 青子さんと結ばれたあの日に青子さんが言ったように、僕はオナニーでは射精ができなくなった。ちゃんと勃起はするし自分の手で擦っても気持ちは良いけど、亀頭で淡く光ってる淫紋のせいなのか、どうしても射精できない。青子さんの手にかかればすぐに射精はできるけど、厄介なことにその射精自体が普通ではなくなった。

 

 ペニスが上下に律動して、根本で筋肉の収縮が起こってるのに精液は勢いよく噴き出さず、鈴口からじわっと精液が滲み出るのだ。

 きっと精液が半固形状のゼリーみたいになってしまったのが原因だと思うけど、精液を送り出すためにドクンドクンと腰の奥で脈動を繰り返してるのに、ゼリーみたいになった精液がカタツムリが這うような遅さで尿道を押し広げながら吐精するのだ。

 

 あの日、「もうサキュバスでしか射精できなくなる」と聞いて納得した上で青子さんと結ばれたけど、精液がゼリーみたいになるとは聞いてなかった。

 もちろん事前に聞いてても青子さんと結ばれない選択はしなかっただろうけど、さすがにちょっと酷いと内心思ってる。思ってるだけで青子さんには言わないけど。

 

 鈴口から滲み出てきたゼリー状の精液を舌先で(ねぶ)り取る度に青子さんの顔が最高のスイーツを口にした時のようにだらしなく緩みまくってるけどそれはいい。

 いいというか、どっちかと言うとむしろ嬉しいけど、催眠アプリのせいでサキュバスになったつもりの青子さんが舌の上で溶けていく精液を愉しむために僕の射精が変化したのであれば、やはり僕は甘んじて変化を受け止める必要があるとは思う。

 

 だけど、おかげで僕の射精は毎回信じられないほど長く引き伸ばされている。

 

「くっ! ま、まだ射精()るのか……」

 

 尿道の奥でゼリー状の精液がねっとりと尿道粘膜に張り付き押しのけながら、這うような遅さで僕の尿道を亀頭の先端に向かってゆっくりと移動してるのが分かる。

 尿道の中で渋滞を起こしてるゼリー精液を無理矢理押し出そうとペニスの根本の奥にある筋肉が収縮を繰り返してる。

 

 前立腺と精嚢を取り囲む筋肉が収縮して、本来ならあっという間に精液を出し切って終わるはずの射精が終わらない。

 ドクンドクンと腰の奥で筋肉が脈動する度に蕩けるような甘い射精快楽が脳を灼き続けてる。それだけで溺れそうになるのに、射精の間中ずっと青子さんの口の中で舌が亀頭を舐めしゃぶり射精が終わらないように愛撫され続けてる。

 

「おぉ……おふっ」

 

 きっと青子さんがその気になれば、僕の射精は1時間どころか1日中だって続くだろう。

 こんなの意識を保てるわけがない。

 何十倍にも跳ね上がった射精快楽に溺れながら、いつ終わるのか自分でも分からないくらい射精時間がどこまでもどこまでも引き伸ばされる。

 

 半固形物のようなゼリー状精液が鈴口からにゅるりと青子さんの口腔内に溢れ出る度に、快楽の光が視界で弾けて頭が真っ白になっていく。

 その状態でぬらついた彼女の舌先が亀頭の先に滲み出てきた精液を(ねぶ)り取るのだ、もう堪らない。

 

 腰の奥で脈動を続ける射精快楽と同時に亀頭を甘く(ねぶ)られ、意識が飛びそうになる絶頂感を味わいながら心と身体の両方が溶けてしまいそうになる。

 

「あぁあああっ!!」

 

 脈動を続ける筋肉に締め付けられて、一際大きなゼリー精液の塊が前立腺から搾り出された衝撃で声が漏れる。気持ちよくて堪らないのだ。我慢など出来ない。

 

 そして今度はゼリー精液塊を押し込まれた尿道側が今まで以上に無理やり拡張されてしまう。信じられないほどの快感をペニスの内部に充満させつつ、ゼリー精液塊が尿道を拡張しながらゆっくりとペニスの根本から亀頭の先端へ向かって移動していく。

 

「ああああ、こ、壊れる!」

 

 腰の奥で何度も爆発する射精快楽が背中を灼きながら伝わってくるせいで腰だけじゃなく上半身がぶるぶると震え始めた。

 

んちゅ♥(だいじょうぶ) じゅるっ♥(わたし) ぢゅるるるっ♥(ヒロくんの限界) れろぉおおおお♥(把握してるから)

 

 内部から弾け飛びそうな僕のペニスの外側を青子さんの舌が(ねぶ)って(ねぶ)って(ねぶ)り回す。

 

「もうだめ! 青子さんストップストップ!!」

 

 ドクンっとかどびゅっと、そして一瞬で弾ける普通の射精をしたのが今では遠い過去のようだ。

 延々と終わらない射精快楽で脳を灼き焦がしながら、射精中の亀頭を舐めしゃぶる青子さんの舌が激しさを増していく。

 

「おっふ…………おおおおおっ!?」

 

 青子さんがとうとう舌先を細く尖らせて鈴口に捻じ込んできた。そのまま尿道を穿(ほじく)り返す。

 

「待って……それは……ちょっ……あぅっ!」

 

 亀頭の先端が青子さんの口の中で溶けてしまう。こんなの絶対に溶けてしまう。

 精液が青子さんの口腔内に零れ落ちる度に腰の奥がぐずぐずに溶解するように感じて、僕の脳内に多幸感が溢れ返ってる。

 

 あぁ……だめだ、長い、射精が長すぎる。

 

 きっと青子さんは僕の射精を終わらせるつもりがないんだ。

 さっきから僕の射精がいつまでも終わらないように亀頭を舐めしゃぶって刺激を与え続けてきてる。

 

「あぁ! また!?」

 

 青子さんの舌が亀頭を右から左に向かって()(ねぶ)ったと思ったら、今度は逆方向からカリ首に舌先を引っ掛けながら亀頭の先端に滲み出てきた精液を舌先で(こそ)ぎ取った。

 

「あぁ! 溶ける! 亀頭が溶けてしまう!!」

 

 高橋が青子さんの前で別の女性を……久喜生徒会長が僕に興味をもってるとか言ったせいだ。

 久喜生徒会長と話をしたことなんかないのに、僕に興味がある? そんなバカな、何かの間違いじゃないのか? 

 

 射精が終わる気配が全くない僕のペニスが、彼女の口の中でキャンディーのようにねっとりと舐め回されている。

 青子さんは僕のペニスに甘く蕩けるような浮気の罰を優しく加え続けている。

 

 いや、これを甘いとか優しいとか表現していいのだろうか? 

 気持ち良い刺激も蕩けそうになる射精快楽も強くなりすぎれば苦痛になる。

 もう20分以上続いてるこの射精にしても、以前の僕だったら絶対に気絶してる。

 だけど毎日毎日青子さんの口の中や肉穴(おまんこ)の中で射精を繰り返すうちに僕はこの快感に慣らされてしまった。

 

 後頭部が甘くグズグズに溶けていく感覚に。

 砂糖菓子のように。

 とろとろに。

 蕩けて甘くねっとりと。

 

 青子さんの口の中で僕のペニスが甘しゃぶりされる日常が僕のペニスを作り変えてしまった。

 

「くっ……」

 

 やがて、腰の奥で続いていた痙攣収縮がゆっくりと収まっていき、尿道から滲み出ていた最後のゼリー精液塊が青子さんの口腔の奥に消えて行った。

 

「はーっ………………はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 灼き付く寸前の脳がどっぷりと浸っていた快楽からゆっくりと解放されていく。

 蕩け切ってまるで砂糖の塊のようになっていた脳がゆっくりと形を取り戻して現実感覚と身体の感覚が戻ってきた。

 

 

 

 ずるっ……。

 

 今日通算で13回目の射精を終えたペニスが青子さんの口からようやく解放された。

 もちろんまだ勃起したままだ。

 

 彼女の口から解放されるやペニスは天を向いてそそり勃ち、ビクンビクンと一定周期で首振り運動を始めた。ペニスの亀頭ではハート模様を中心に複雑な装飾が施された淫紋がピンク色の薄い光を放っている。

 青子さんの下腹部でも僕と同じような淫紋がピンク色に光ってるはずだ。

 

「ふぅ…………」

 

 深くため息を吐いた。

 あの日、青子さんと僕が正式に(つがい)になってから……僕が彼女に掛けてしまった催眠は未だに解けてない。

 解けるどころか、むしろ酷くなっていると思う。

 

 もちろん全ての原因は僕にある。

 青子さんは自分のことをサキュバスだと思い込み、そして僕と(つがい)になったとも思ってる。そして僕もその催眠に掛かってしまってる。

 

 この(つがい)と言うシステムは番同士の性欲を共有してしまうものらしい。

 

 簡単に言えば青子さんの(つがい)である僕がエッチなことを考えてしまったら、同じく(つがい)の青子さんもエッチな気分になってしまうのだ。

 

 つまりさっき高橋が目の前にいる時に青子さんがあんなに激しく僕のペニスをしゃぶり倒したのも、僕の性欲が暴走した結果に違いないのだ。

 もちろん女子にも少しくらい性欲があるのは僕だって知ってる。でも高校生男子に比べればきっと女子の性欲なんて(かすみ)のように薄いものだ。例えばうちのクラスには巨乳女子がやたら多いけど、それを眺めるうちの男子の目つきはそれはもう本当に酷い。

 もう性欲の塊と言っていい。授業中に女子のおっぱいを眺めながら不埒にも勃起してズボンの前を押し上げている男子の姿だって見かけるほどだ。

 

 もちろん僕も立派に男子で、他の男子を非難する資格はない。

 

 実際にあの日以降、学校で青子さんの顔を見るだけでペニスは即勃起して、青子さんの手や口や肉穴(おまんこ)で射精したくて堪らない衝動に駆られるようになってしまってる。当然(つがい)である青子さんは僕の強い性衝動を全て共有してしまい、僕のペニスを射精させたくて堪らなくなって行動に移してしまってる。

 

 しかもどうやら、単に僕が発情したら青子さんも発情するような単純なものではないらしく、性衝動のかなり詳細なイメージまで共有してしまうらしい。

 

 ……ということは、だ。

 

 高橋が目の前にいる状態で、青子さんが僕の両足の間に顔を捻じ込み勃起して反り返ったペニスをあーん♥と嬉しそうに口に咥えこんだのも、口の中に収めた亀頭を()め回して(ねぶ)り回して亀頭が本当に溶けてしまうほど青子さんがしゃぶり回したのも、僕がそうして欲しいと具体的なイメージを青子さんに伝えてしまったからだと考えざるを得ない。

 

 ……正直そんな自覚は全然ないのだけど、自覚は無くても僕だって男だし、無意識にそういうエロい願望を持ってしまっててもおかしくない。

 

 実際あの日以降、学校で僕は休み時間の度に青子さんに手を引かれながら一緒に教室を出て、トイレや予備教室なんかの人目に付かない場所に移動しては彼女にペニスをしゃぶらせている。

 

 自分でも驚く程僕の性欲は強かったようだ。

 そりゃ夢精防止のためとはいえ毎晩オナニーして射精してたわけだから性欲が弱いわけはないけど、学校で休み時間の度に青子さんにしゃぶらせるほど強いとはさすがに思ってなかった。

 

 おかげで青子さんも僕のペニスの扱いにすっかり慣れてしまい、今では僕の限界を完全に知り尽くして射精のタイミングも射精する精液の量も射精時間すらも彼女が決めている。

 

 授業と授業の間の休み時間は10分しかないので、射精タイミングや射精時間を、ペニスをしゃぶる青子さんが全て決めた方が都合がいいと僕が無意識に思ってるから青子さんもそうしてるのだろうし、毎日青子さんにペニスをしゃぶられて何十回も口腔内に射精させられてるのも、やっぱり性欲の強すぎる僕が知らないうちにそれを望んでて、青子さんはただそれを忠実に実行してるだけなのだ。

 

 僕の留まるところを知らない性欲は金曜日の図書係の時も盛大に爆発させてしまってる。

 

 カウンターの中で僕と青子さんが何気ないように並んで座りつつも、青子さんは慣れた手つきで僕のズボンからペニスを露出させて、亀頭を撫でまわしながら愛おしそうに根元に向かって何度も何度も擦り続けるのだ。

 

 よっぽど背伸びして覗き込まないと外側からはカウンターの内側が見えないのをいいことに、図書の貸出対応をしながら青子さんに僕のペニスをシコらせているのだ。

 

 内向的な感じの男子生徒が本をカウンターの上に置きながら、校内屈指の巨乳の持ち主である青子さんのおっぱいをチラ見しているのに気づきつつ、青子さんは器用にも片手で僕の亀頭を握りしめたりカリ首を刺激したりしてる。

 

 僕のペニスはバキバキに勃起する。もうすごく勃起しまくる。

 なんだこのシチュエーション! 

 

 僕はこんなエッチなシチュエーションを妄想したこともないのに、なぜか実現しているぞ? 

 

 うっすらと微笑んでいる青子さんの頬が若干赤くなっている以外は、妖しいところなんか一つもない。

 図書室にいる生徒全員、カウンター内の青子さんが絶賛手コキ中だなんて気づくわけがない。僕は無意識にこんなエロいシチュエーションを妄想しまくってたのか? 

 

「くっ……」

 

 思わず声が漏れかけると、青子さんがすかさず口に人差し指を当てて「しー」と内緒の笑顔を浮かべてくれる。

 

 ごめん、青子さん! 

 僕のエロ妄想でこんな行為させて本当にごめん! 

 でも言い訳させてもらえると、本当に自覚がないんだ。

 

 僕の隣りに座って、少し頬を赤らめた美少女が繊細な指でペニスをシコシコしながら射精寸止めの妙技を披露してる。限界まで膨らんだ亀頭を愛おしそうに擦り続ける文学少女の姿に、心のなかで謝りながら、僕のペニスはいつもビクンビクンと激しく暴れまわる。

 

 そして図書室にいる生徒の数が減ってくると、青子さんはそそくさとカウンターの内側に隠れて僕の両足の間に収まってしまう。

 

 数十分に渡り、寸止め手コキを受け続けて真っ赤に膨れ上がった亀頭の先からは熟成されたガマン汁が零れ落ちそうになってる。青子さんは僕の両足の間から自分の調理した成果にうっとりと見惚れた後、長い舌を突き出してゆっくりと舐め取るのだ。

 

 でもこれだって、青子さんにカウンターの中に隠れて貰って僕のペニスをしゃぶり倒して欲しいと、無意識に性欲を爆発させた僕のせいに違いない。

 

 状況証拠的にそれ以外ありえない。

 

 だから青子さんが音を立てないように静かに僕のペニスをしゃぶり続けるのを、僕が邪魔するのはとんでもなくひどい行為にあたる。青子さんは僕の性欲のイメージを共有したせいでペニスをしゃぶってるわけなんだから、僕は彼女にペニスを舐めやすいように差し出す義務すらある。

 

 しゃぶられ、(ねぶ)られ()め上げられて、寸止めに寸止めを重ねられて、椅子に座ったまま腰をガクガクと震わせながら青子さんに僕のペニスを好き放題されようとも、ペニスを逃がそうと腰を引いたりとか、舐めて舐めて舐めまくって来る青子さんの頭を押さえようだとか僕はそんなことはしてはいけないのだ。

 

 それに図書室に完全に誰もいなくなった時より、図書室にまだ生徒がたくさん残っている方がむしろ青子さんが興奮しまくりながら激しく(ねぶ)り回してくるのも僕にそういう願望があるからなんだろう。

 

 自分の(性欲)の深さに本当に眩暈がする。

 

 

 

 ──でもさ? 

 

 よく考えたらおかしいよな、と、いつだったか思ったのだ。

 サキュバス化催眠アプリによる催眠に掛かると周りに誰もいない時だけサキュバス化するって説明だったじゃないか。

 

 さっきみたいに高橋が目の間にいたり、図書の貸し出し対応をする僕の亀頭をカウンターの下に隠れてペロペロと舐めしゃぶるのってサキュバス化の催眠内容と矛盾してる。

 

 なので「おかしいよね?」と、サキュバス化してる時の青子さんに聞いてみたら「バレない」と思った時はもうサキュバスのままでいると、僕に平然と答えるのだ。

 

 何か論理的にとてもおかしいような気がするけど、ペニスを青子さんにしゃぶられている時は難しいことを考えることができない。すぐに射精してしまわないように我慢するので精一杯になるのだ。

 

 とにかく催眠が悪化してるのだけは確かだ。

 

 というわけで僕のサキュバスの主としての催眠と、青子さんのサキュバス化催眠。解除の目処がまったく立ってない。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「ヒロくん!」

 

「……ん、なに青子さん」

 

 長い射精の後で完全に脱力仕切ってしまった僕は小さく口を開くので精一杯だ。

 

「どうして恋人同士ってすぐに言わなかったの? 私とヒロくんは(つがい)の儀式を交わしてるんだから事実上の恋人同士というか、もう夫婦だよね?」

 

「……あー、いや、まあね」

 

 高橋に「僕たちは夫婦だ」なんて流石に言えないよな。

 痛い奴だと思われるだけだ。

 

 僕は自分と彼女の催眠を解いた上で彼女に好きだと伝え、催眠状態ではない青子さんに僕を好きになってもらえるように努力するつもりでいるけど、問題はどうやれば解けるのか、いつ解けるのか今のところ皆目見当が付かないのだ。

 

 僕はまだスタートラインにも立てていないから青子さんのことを恋人だと胸を張ってまだ言えない。

 

「もう! またそうやって誤魔化すんだから」

 

 青子さんが隠れていたカウンターからもぞもぞと這い出てきた。

 いつの間にか服を脱いで全裸になってしまっている。

 

 ツンと上を向いた乳首。

 下乳がたわわに実っていて美乳と巨乳を併せ持つ奇跡のようなフォルム(おっぱい)

 細くくびれた腰に張り出したお尻。

 

 ため息が出るほど美しい完璧なプロポーションの彼女のお臍の下では僕のものと対になる淫紋がピンク色の光を放っている。

 初めて顕れた時と比べてハートの光の強さが増している。

 

 僕と彼女にしか見えない。

 写真に撮っても映らない。

 

 だけど光が増すに連れて彼女の膣穴の内部は、より複雑に捩じれて肉襞と肉粘膜が微細に繊細になっていてるような気がする。いや、僕のペニスに密着し擦り上げ搾り上げる力が増しているのは間違いない。

 

「高橋くんのせいで時間が足りなくなっちゃったね♥」

 

 ぐったりと椅子に座り込んでいる僕の上に青子さんが跨ってきた。

 僕の太腿に彼女の内腿が布一枚を隔てて密着して、ずしりと重みを感じる。

 

 対面座位。

 この体位にも彼女はすっかり慣れてしまった。

 

 彼女の肉の割れ目に僕の亀頭がぬぷっと音を立てて飲み込まれていく。

 亀頭の盛り上がった(エッジ)が彼女の肉粘膜を抉るように削りながら、奥へ奥へと飲み込まれていく。

 やがて30cmを超える僕のペニスは彼女の肉穴(おまんこ)に全て包みこまれた。

 

「くっ!」

 

 青子さんの膣穴は途中で複雑に捩じれていて、肉粘膜の表面には無数の肉突起状の絨毯を備えている。

 催眠のせいなのか、元々そうなのか今では分からないけど彼女の人間離れした膣穴が僕のペニスに人外の快楽を叩きこんでくる。

 

「ヒロくん、まだまだ射精()し足りないよね?」

 

 ぬちゅっ♥

 ちゅくっ♥

 ぢゅくっ♥

 

 熱いたっぷりの蜜を湛えた彼女の肉粘膜が僕のペニスの竿を包んで蠢き始めた。

 

 たんっ♥

 

 対面座位の姿勢で彼女の腰が跳ねた。

 複雑な形状の彼女の膣肉全体がにゅるにゅるになって僕のペニスを搾り上げる。

 

「あんっ♥」

 

 彼女の口から齎される刺激とは種類の違う快楽が僕のペニスに無理やり送り込まれてくる。

 毎日毎日彼女の中に射精して精液を注ぎ込んでるのに、飽きるどころか僕は溺れてしまっている。溺れたいと思ってしまう。

 

「ま、待って青子さん! 射精()る! 射精()ちゃうから!」

 

 亀頭に吸着した子宮口が鈴口にキスの雨を降らせながら、カリ首を包む肉粘膜がぎゅっと絞られ強く隙間なく密着してきてる。彼女の膣穴の中で僕のペニスから精液を吸引するいつもの態勢だ。

 

「あ、ああ! す、吸われる!!」

 

「あんっ♥ あっ♥ あぁあああっ♥」

 

 彼女の肉襞が締め付けながら擦りたててくる。

 腰を動かしてもいないのに膣内の動きだけで激しくピストンされているように錯覚するほどの刺激が亀頭とカリ首に集中的に送り込まれてくる。

 

「あ、ダメ。青子さん、射精()る、射精()るから!」

 

 いとも簡単に今日14回目の射精が始まってしまった。

 彼女の膣奥に向かって僕のゼリー状精液がゆっくりと汲み出されていく。

 

 窄まり収縮を繰り返す彼女の肉穴(おまんこ)が、まるでポンプのように僕のペニスから精液を汲み上げていくのだ。

 

「あっ…………あっ…………」

 

 彼女の火照って満足そうな顔を見ながら、彼女の最奥に精液を流し込んでいく。

 律動する僕のペニスの形に彼女のお腹が盛り上がって、それを青子さんが愛おしそうに上から撫でている。

 

「あ、だめ! 青子さんそれダメ! 射精が止まらなくなる!」

 

 根元から先端に向かって搾られ続ける僕のペニスの律動が止まったのはそれから30分後だった。

 もう図書室を閉めないといけない時間だ。

 

「ねぇヒロくん。今日も私の家に来る?」

 

「……はは、ははは」

 

 彼女の腰が左右にグラインドして、しっとりとした内腿の肌と僕の太腿が密着し擦れあい僕を更に興奮させようとしてる。堅く勃起したままの亀頭が彼女の膣奥の肉襞と肉粘膜によって激しく擦られて僕の意志に関係なく次の射精の準備が整い始めた。

 

「だってまだこんなに堅いし、まだヒロくんも射精()したりないよね♥」

 



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第09話 エピローグ

「ただいま~」

「お邪魔します」

 

 僕の声が青子さんの家の玄関に響くとリビングから青子さんのお母さん(文子さん)が顔を出した。

 

「あら、ヒロくんいらっしゃい」

 

 青子さんのお母さんに軽く会釈する。

 青子さんほど垂れ目じゃないけど、青子さんを更に上品にした雰囲気を纏った女性だ。

 年齢は確か30代後半と聞いたけど相変わらず20代前半にしか見えない。

 おまけにエプロンを内側から盛り上げてるおっぱいは青子さんより一回り大きくてはち切れそうになってる。

 

「あ、ヒロ兄お帰り~」

 

「やあ翠ちゃん……お帰りじゃないんだけどね」

 

 青子さんの妹の翠ちゃんがぴょこっと扉から顔を出した。

 中学2年の翠ちゃんはおさげ髪で青子さんと姉妹だけあって非常に可愛らしい。

 身長が140cmくらいしかないのに胸はすでに成人女性並みに膨らんでいる。

 

 久米家は巨乳の家系なのは間違いない。

 

「今日も泊まっていくの?」

 

 と青子さんのお母さんが聞いてきた。

 

「もちろんだよ」

 

 と青子さんが僕の横で答える。

 

「あらあら、それじゃあヒロくんのご両親に電話しておくわね」

 

 青子さんのお母さんがリビングに引っ込むと、僕の家に電話をかけ始めた。

 

「こんばんは、久米です。あらいやですわ、鬼頭さんたら。…………ええ、ええそうなんです。今日もうちで泊まっていくと…………はい……はい、いえいえいいんですよ、そんなこと」

 

 長い。

 電話がいつまでたっても終わる気配がない。

 

 

 ──青子さんと僕の関係からすでに僕たちは家族ぐるみのお付き合いにまで発展している。

 この夏なんか僕と青子さんの二つの家族でキャンプに出掛けたくらいだ。

 

 よほどウマが合ったのか、僕の両親と青子さんの両親はすでに下手な親戚よりも濃い付き合いにまで至っている。

 おかげで僕と青子さんは週末は互いどっちかの家でお泊りすることが多くなってきた。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「ほらヒロくん♥」

 

 晩御飯を御呼ばれしした後、二人して青子さんの部屋に戻ると青子さんがすぐに全裸になって僕にも服を脱ぐように促してきた。

 

 服を脱ぐと勃起したままのペニスが天を衝くように反り返った。

 先端からはガマン汁が溢れ出ている。

 青子さんの股間からも愛液が太ももを伝って垂れ落ちてきている。

 

 サキュバス化催眠の効果が出ているのだ。

 僕と番になった青子さんは僕の性欲の強さに影響を受けて、僕がエッチなことを考えるだけで同じ思いを共有してしまうので当然こうなってしまう。

 

「やっぱり今日も特訓するの?」

 

 青子さんはベッドにタオルケットを敷くと、そこに全裸のままうつ伏せになった。

 

「う、うん」

 

 サキュバス化催眠を解除するにはサキュバスの状態の彼女を誰か第三者のところへ連れて行くこと、とアプリの説明にあったけど、よくよく考えればこれは催眠が解けるのではなく、サキュバスの状態が一時的に解除されるだけなんだと思う。

 なので催眠自体の解除条件は、『僕が満足するまで射精すること』になる。

 

 週末はこうやってお互いお泊りして、一晩で何十回も射精することも度々あったのに未だに催眠は解けてない。

 つまり一晩で数十回程度の射精では僕は満足しないのだとするとアプローチを変える必要がある。

 

 たとえば、僕が能動的に腰を動かして青子さんを性的に満足させる……とか。射精して僕だけが気持ちよくなるのではなく、僕のペニスで青子んさんの膣穴(おまんこ)を気持ちよくさせて彼女を性的な絶頂に導けば、僕は間接的にすごく満足感を得られるような気がする。そういう精神的な充足感で催眠が解除される可能性があるのではと思ったわけなんだ。

 

 だけど青子さんの口の中とか膣穴(おまんこ)にペニスを挿入すると僕は身体に力が入らなくなってしまうから、今まではとても無理だと思ってたけど……それは甘えだと考え直した。

 

 青子さんの膣穴(おまんこ)に気持ち良くなって貰うために、ペニスを挿入した状態で腰を動かせるように僕は特訓をするべきなのだ。

 

「今日もうつ伏せでいいの? ヒロくんのおちんちんで子宮をグリって押されるのって凄く好きだけど、ヒロくんには耐えられないんじゃないかなぁって思うんだけど♥」

 

 青子さんも僕をどこか(からか)うような笑みを浮かべてるけど本心では嬉しそうだ。

 

 ベッドの上にうつ伏せになった青子さんの形のいいお尻がぷるんと揺れて、お尻の隙間からは魅惑的な肉穴(おまんこ)が覗いて見える。あんなに綺麗なピンク色をしていて、幼女みたいに無毛で清楚な割れ目なのに、膣内(なか)には分厚く柔らかい肉襞とたっぷりの粘液を湛えていて、僕のペニスが入ってくるのを待ち構えている。

 奥の方が特に危険だ。肉襞の溝がより複雑になって、ねっとりとした感触の肉粘膜の中に無数の肉突起が密集しているのだ。普通の男子だったら亀頭を一瞬擦られるだけで射精してしまうと思う。

 

「……前回は、挿れる速さがほんのちょっとだけ速過ぎたんだ。そ、それに青子さんの締め付けが凄かったし」

 

「ヒロくん挿れてすぐに動けなくなっちゃったもんね♥」

 

 青子さんがいたずらっぽく笑ってる。

 前回は彼女に()し掛かって亀頭の半分が膣穴(おまんこ)にハメただけで力が抜けてしまい、体重をかけた勢いのまま子宮口を亀頭で突き上げてしまったのだ。

 そのまま脱力して身動きできなくなってしまい、おかげで夜の8時から朝までずっと青子さんの膣穴(おまんこ)で延々とペニスを搾られ続ける羽目になってしまった。

 

「青子さんが動いて、動けなくなった僕を押しのけてくれたら仕切り直せたのに……」

 

「だってヒロくんに覆い被されるのってすごく新鮮だったから♥」

 

 と言って青子さんが笑う。だけど笑い事じゃない。

 彼女の肉穴(おまんこ)は腰を動かすことなく膣肉(なか)の動きだけで、僕のペニスをピストン運動ができてしまうのだ。

 亀頭の先を子宮口に咥えこまれたまま、カリ首を包み込むように肉襞が取り囲み、1秒に1回のペースで前後に搾られ続けてあっという間に射精してしまった。

 

 寸止めされるよりマシだったけど意識が飛ぶまでに30回以上射精させられ、気絶から目が覚めたのも射精の衝撃だったので、きっと気絶中もずっと僕は射精させられていたに違いない。

 おかげで目が覚めた時、腰が砕けて立ち上がれなかった。

 

「……今日は前回みたいな失敗を繰り返さないために、青子さんには脚を拡げて欲しいんだ」

 

「え? 脚?」

 

「そう、青子さんの脚を左右に拡げて欲しい」

 

「拡げるのはいいけど……こんな感じ?」

 

 ベッドの上にうつ伏せに寝そべった青子さんがその状態で両足を左右に拡げていく。

 青子さんは身体が柔らかいので、ほとんど真横にまで脚が開いてしまった。

 

「す、すごい」

 

 青子さんの背後からだと彼女の股間が丸見えになってる。

 体操やバレエの競技で女性が大きく足を開くシーンが気にならない男子はいないだろう。

 

 白状すると僕もかなり興味がある。

 女性の身体で一番大切な部分をまるで強調するように無防備に突き出して、薄いレオタードの布一枚隔てて肉の割れ目を曝け出すのだ。

 中学生の頃、動画サイトにアップされてた新体操の競技動画をコマ送りして見たことだってある。

 

 しかも今は青子さんが全裸で大開脚してるのだ。

 産毛すら生えてなさそうな幼女のような無毛でつるつるの股間を天井からの光が照らし出して、どこか湿り気を帯びたような光が反射してる。

 

「うぉおお……」

 

 恥丘からなだらかな曲線(カーブ)を描いた膨らみが中央で合わさりよじれて魅惑的なスジになり、スジの内部で小陰唇が足に引っ張られるように左右に開いて膣の入り口の肉粘膜がぬらぬらと照り光ってる。

 青子さんの股間に開いた穴が僕の目の前できゅっきゅっと窄まって肉襞同士が擦れあってる。すごく扇情的だ。というか絶対誘ってる。

 

 見ているだけで僕のペニスがはち切れそうになって上下に律動を始めてしまった。

 青子さんのあの穴の中で、僕のペニスが徹底的に搾られてしまう想像をするだけでガマン汁が亀頭の先端から溢れだしてきてる。

 

「ヒロくんって……すっごくエッチだよね♥ 女の子のお股をこんなに広げさせてじっくりと見てるし♥」

 

「ち、ちがっ!」

 

「違わないよね♥ ヒロくんのおちんちん、血管がすっごい浮かび上がってるよ♥ バキバキじゃない♥♥」

 

「いやこれは」

 

「これからヒロくんのおちんちんが私の膣内(なか)でいっぱい暴れちゃうんだよね♥」

 

「あ、暴れたりしないよ。今日こそは脱力しないようにゆっくりと挿れるつもりだし」

 

「そうなの?」

 

 青子さんの股の間の綺麗な肉穴(おまんこ)の奥の方が小刻みに痙攣しながらくぽっくぽっと奥の方が収縮している。

 それに押し出されてきた蜜がタオルケットに滴り落ち始めた。

 

「でも脚を拡げてって言ったのはヒロくんのおちんちんをガチガチにするためなんじゃないの?」

 

「違うんだ。いや、見たいのは嘘じゃないけど」

 

 好きな女の子が眼の前で大開脚してくれたら大興奮するのは当然だけど、本来の目的はそうじゃないんだ。

 僕の調べによると、女の子が足を拡げると力を入れにくくなって膣穴の締め付けが弱くなるらしいのだ。逆に足を閉じた状態だとすごく締め付けが強くなるとも。

 

 前回青子さんに寝バックでペニスを挿入したのはただの自殺行為だったのだ。

 

 だけど今回は違う。

 脚を拡げてもらって、力の入らなくなった青子さんの肉穴(おまんこ)の中にゆっくりと僕のペニスを押し挿れるのだ。とろとろに熱く蕩けててもキツく搾られなければきっと大丈夫なはずだ。

 

 覚悟を決めて彼女の後ろから覆い被さりながら、ペニスを彼女の膣穴の入口に押し当てる。

 彼女の膣穴の入り口は既に燃えるように熱くなっていた。多分奥の方は僕の想像以上に蕩けてペニスを待ち構えてる。

 

「青子さん、い、いくよ?」

 

「大丈夫、いつでも来ていいよ♥」

 

 亀頭の先で触れている彼女の肉粘膜は分厚く柔らかい肉襞がプルプルと震えていて、このまま触れているだけで射精欲がガンガン高まっていく。いけない、興奮しすぎて頭がぼうっとしてきた。

 股間では気持ちよくなりたくて堪らなくなったペニスがガチガチになって亀頭が膨らんでいる。

 

 そうだ、急がないと。

 

 この膣穴(なか)にペニスを挿れれば、すぐにトロトロになった肉襞が亀頭に絡みついて大好きな青子さんが肉襞をにゅるにゅると動かしていくらでも擦り上げてくれるのだ。

 

 青子さんから早く膣穴(なか)にペニスを挿れてって欲しくて待ちきれないって気持ちが伝わってきてる。にゅるにゅるでどろどろの肉襞を動かす準備をして、差し出されてきた僕のペニスを気持ちよくしてあげたくて堪らないのだ。

 

 ゆっくりと進めるペニスの先端が彼女の肉穴(おまんこ)に飲み込まれていくと僕の腰がカクンと砕けてペニスの中程まで彼女の膣穴(なか)に入り込んだ。

 

「お゛っ!?」

 

 僕の口から変な声が漏れた。

 亀頭の上面から裏面までヌルヌルの肉襞に360度包まれて容赦のない快感が即座に送り込まれてきて、両手、両肩からもたちまち力が抜ける。

 

 抗う暇もなくベッドの上の青子さんにぽすんと上半身が倒れ込んだ。

 

「ぐっ……くぅっ」

 

「あーあ、今日も失敗かなぁ♥♥」

 

 僕のペニスに肉穴(おまんこ)の中の肉粘膜が容赦なく絡みついてくる。

 折れ曲がった串団子のような形状をしてる青子さんの段々状態の膣肉が僕のペニスのあちこちを複雑に締め付け、同時にピストン運動を始めてしまう。

 肉粘膜の表面に浮かび上がった微細な肉粒が僕の亀頭とカリ首と竿の部分を徹底的に扱きあげてくる。

 

「あぁああ、待って! 青子さん待って!!」

 

「だーめ♥」

 

 青子さんがクスクスと笑いながら膣穴(なか)の動きだけで僕のペニスを彼女の一番奥へ誘い込もうとしてる。亀頭の先端に肉粘膜が絡みつき、奥へ奥へと引き込まれていくのにまったく抵抗できない。

 

「あっ! あぁあああ!?」

 

 青子さんの肉穴(おまんこ)の中で、敏感なカリ首を柔らかい肉粘膜が包み込んだ。包み込まれたまま熱くてヌルヌルしてて左右にうねるのだ。

 蕩けそうな感触の肉襞が亀頭を擦り上げながら、鋭角に切り立った亀頭の角の隙間にまでぴったりと密着してにゅるにゅると音が聞こえてくるほど激しく締め上げながら奥の窄まりへ誘い込まれていく。

 このまま奥へ奥へと連れ込んで、子宮口にめり込ませるほど亀頭を密着させてしまえば、抵抗できないまま朝まで気絶寸前の状態で震えるほどの快楽に包まれて何度も何度も射精させてもらえる。

 

 青子さんの肉穴(おまんこ)に根元まで突き入れておくだけで僕のペニスを腰も背中も震えるくらい気持ちよくして貰える。

 好きなだけ射精するもよし、寸止めのまま精液が蕩けてくるまで熟成させるのもよし。

 ゼリーのような精液塊で尿道粘膜を擦り上げて無限に続く強烈な射精快感にどっぷりと浸るのも青子さんの膣穴(なか)にペニスを挿入するだけで簡単に実現してくれる。

 

 ……そういう衝動が僕の心の中にどこかからどんどん流れ込んでくる。

 

 青子さんに僕のペニスの全てを委ねるだけで僕はどこまでも気持ちよくなれる。

 

 

 ……って違う、違う!!

 

 僕が青子さんに気持ちよくしてもらうんじゃなくて、僕が青子さんを気持ちよくしてあげたいのだ。

 

「あのねヒロくん♥」

 

 最初に広げてってお願いしたはずの青子さんの両足がゆっくりと閉じられていく。

 僕のペニスに加えられる刺激がどんとん強くなって後頭部が灼き付き始めて意識が飛びかける。

 

「あ、あああ……」

 

 もう既にペニスの根本まで青子さんの肉粘膜と肉突起の絨毯に包みこまれてしまっている。

 僕の身体の中で一番刺激に弱い部分がこのペニスなのだ。

 それが彼女の身体の一番奥にぴったりと隙間なく収まって、これからぎゅーっとペニス全体が搾られてしまうのだ。

 

 たちまち収縮運動が始まった。

 

 ねっとりとした感触の肉襞がこれでもかと亀頭の一番敏感な部分を擦り上げ、同時に前後左右からリズミカルにペニス全体を締め付けてくる。

 

「今まで言わなかったけど、ヒロくんのおちんちんを挿れられるだけで私も絶頂()ってるんだよ♥ それだけですごく幸せなの♥♥」

 

「あっ……あっ……あっ……」

 

 ペニスを締め付ける肉の輪っかが亀頭の真下で上下運動を始めて、左右にうねり始めた。

 

「だからヒロくんもそんなに急がなくていいの♥ ヒロくんが頑張ってくれるのはすごく嬉しいけど、私だってヒロくんのおちんちんを一生掛けて気持ちよくしてあげたいの♥♥」

 

 青子さんの宣言と同時に、今までとは段違いの強烈な締め付けがペニス全体を襲ってきた。

 

「あぁああ、射精()るっ! ごめん、青子さん射精()てしまうっ!」

 

 脳が灼き付くような刺激を受けて多幸感が脳内に溢れ返る。

 思考が何度も白く染まり、反射的に青子さんのおっぱいを両手で握り締めてしまう。

 

「っあ♥ それイイ♥ 私もっ♥ 私も絶頂()くっ♥」

 

 覆いかぶさっている青子さんの全身がビクビクと痙攣を始めた。

 そういえば騎乗位の時も対面座位の時も青子さんはこうやって痙攣していた。

 

 そうか、青子さんもいつも気持ちよくなってくれてたんだという安心感が僕の心を満たしていく。

 

 同時に痙攣を始めた彼女の膣穴が僕をどこまでも追い詰める。

 ペニスに徹底的に加えられる快楽に脳が蕩けて、そして思考が混濁する前に弱ったな、と考えてしまう。

 

 青子さんが気持ち良くなってくれていたのに催眠は解けてないってことが分かってしまったのだ。

 そうだとしたらこのサキュバス化催眠がどうやれば解けるのかもうさっぱり分からない。

 

 意識が遠のく中、搾られ続けるペニスの付け根の奥の方で精液を送り出すために律動が始まった。

 魅惑的な感触の彼女の子宮口に亀頭を押し付け、もうお馴染みとなった滲み出るようないつまでも終わらない垂れ流し射精だ。

 

 こうなると青子さんの子宮口が緩み始めて僕の亀頭を咥え込むのだ。

 まるで本当に淫魔の膣肉のようだ。たちまち青子さんの膣内(なか)は僕の精液に反応して今までより激しく搾り上げてくる。

 

 ペニスの中心をゆっくりと進むゼリー状の精液が尿道と擦れて快楽が僕の脳を灼く。

 ペニスの外側を搾り上げてくる青子さんの肉襞の刺激も同時に僕の脳を快楽で灼き続けている。

 この幸せで蕩けそうな二人の時間が今日も朝まで続く覚悟を決めつつ……どうしたものかと僕は途方に暮れた。

 

 

 

 <<鬼頭大の章 終>>



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久米青子の章
第10話 ガール・ミーツ・ボーイ


 朝の光がカーテンを明るく染め上げて、少し肌寒い室温がむしろお布団の温かさを至福のものにしている。

 

 微睡みの中、瞼が少しだけ開いて……気付いたらぬくもりに包まれて目を閉じている。

 それを繰り返しながら身体がお布団の中に溶け込んでいく。

 

「はふぅ……」

 

 天国だ。

 ここはきっと天国なのだ。

 

青子(あおこ)! いつまで寝てるの、早く起きなさい!」

 

 ダイニングの方でお母さんが何か言ってるけど、お布団の魔力には抗えないのだ。

 だから5分。あと5分でいいからお布団に包まれていたい。

 

 だけど無情にもお布団がばさっと捲られてしまう。

 

「もう、お姉ちゃん、さっさと起きなよ!」

 

「イヤ」

 

「いや、じゃないでしょ? 今日高校の入学式だって忘れてない? 困るのはお姉ちゃんなんだよ!?」

 

 妹の(みどり)の癖に生意気だ。

 お布団に包まれて惰眠を貪るより大事なことなんて何もない。

 

「ん? 入学……式?」

 

「そうだよ、今日は4月8日。高校の入学式でしょ?」

 

「あっ! あぁっ!?」

 

 ガバっと跳ね起きる。

 そうだった、今日は入学式だった!

 なんで忘れてたの、私っ!

 

「ほら、ここなんかすごい寝癖になってるよ? 昨日の夜、なんにも考えずにそのまま寝たんでしょ? 直すの大変だよ、コレ」

 

「あわわ、そんなことより起きなきゃ!」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ダイニングのテーブルにはお母さんが用意した朝食が並んでいた。

 お父さんはもうとっくに会社に出かけてしまったようで姿が見えない。ダイニングにはお母さんと妹の翠しかいない。

 お母さんも働いててお父さんと共働きなんだけど、今日は私の入学式のために休みを貰っているのだ。

 

「んっんっんっ」

 

 牛乳の入ったコップを傾けて胃に流し込む。

 寝癖が付いて乱れた髪は背後に立った翠がドライヤーで直してくれてる。

 

「ぷはっ」

 

 牛乳を飲み干してからテーブルに並んでいる朝食を手当たり次第口の中に放り込む。

 時間がないので朝食抜き、というのはありえない。最近妙にお腹が空くので朝食はとても大事なのだ。

 栄養たっぷりの食べ物を胃に収めておかないと、なぜか落ち着かない。

 

「いい青子。今日から高校生だけど、16歳の誕生日まであと半年しかないんだから、高校ですぐにでも(つがい)を探し始めないとダメよ?」

 

「またその話? もう分かってるって何度も言ったでしょ」

 

 鶏の胸肉のサラダにドレッシングをぶちまけて口に運ぶ。

 

「分かってるように見えないんだよ。お姉ちゃん、ほんと危機感無いよね? このままだと本当に()()()になっちゃうよ?」

 

「翠なんか12歳でちゃんと(つがい)を見つけてるのに、青子はほんと……」

 

 テーブルで向かい合わせに座ってるお母さんが、頬に手を当ててため息をついた。

 

「あーもう、うるさいうるさい」

 

「お姉ちゃんってさぁ? より好みし過ぎてるんだよ。そこらへん歩いてる男子の中から適当に選べとまでは言わないけどさ。中学の時、何人かお姉ちゃんのこと好いてるっぽい男子いたでしょ? なんで全員フッちゃうかなぁ」

 

「……だってピンっとこなかったし」

 

「だからそれが面食いっていうのよ?」

 

 お母さんが呆れたように言う。

 

「お、お母さんだって(つがい)の儀式したのは高校生になってからじゃん。お父さんから聞いたよ! 自分だってギリギリだったくせに!」

 

「っ!?」

 

 お母さんの顔色が変わった。

 

「ち、違います。お母さんはちゃんと中学の時から裕二さん(お父さん)に目を付けて狙ってたんだから。タ、タイミングを測ってただけだから、高校生にもなって未だに(つがい)候補のアテすらない青子とは全然違うんです!」

 

「タイミング? お父さんに催眠アプリ使うように仕向けて襲わせたくせに!」

 

「な、なんてこと言うの!? いえ、なんで知ってるの!?」

 

「お父さんからこの前聞き出したもん」

 

「あぁ……あ、裕二(お父さん)さん何してくれてるのっ!?」

 

 お母さんが珍しく狼狽えてる。

 いつも私ばっかり責められてるけど、お母さんだって私と同じなのに上から目線が酷過ぎるのだ。

 

「ねぇ、お母さん。私もお父さんからソレ教えて貰ったけど?」

 

 横から翠がトドメを刺した。

 

「ぎゃああああっ! あの人は、ほんとにあの人は!」

 

「それに町会長さんからも昔話で、お母さんが作ったアレでたくさんの子が()()()にならずに済んだって教えて貰ったよ? 当時ものすごく流行って、もう時代を築いたレベルだったって」

 

 更に追い打ちをかける。

 

「あぁ、止めて止めて! それ黒歴史なの。お母さんを虐めないで」

 

「ねー、話がすっごい逸れてってるよ? お母さんの話じゃなくてお姉ちゃんが高校で(つがい)候補を見つけてこれるかどうかが今重要なんでしょ?」

 

 ドライヤーとブラシで寝癖を直してくれてる翠が呆れてる。

 

「ほら、これで大丈夫だよお姉ちゃん」

 

「あ、ありがと」

 

「ほら、お母さんも。もう出かけないと入学式に遅れちゃうよ? 受付とかすごく並ぶでしょ?」

 

「え、ええ……そうね」

 

 ちょっと言い過ぎたかも知れない。

 この雰囲気のままお母さんと高校の入学式に行くのはなかなか気まずい。

 

「あの……お母さんごめんなさい」

 

「いいわよ、別に。ギリギリだったのは……事実だし」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 夕暮れの残光が雲を薄赤く染める頃、お父さんが帰宅してきた。

 私と翠はリビングのソファに座りってTVを見ながら母さんと話してるところだった。

 

「あ、お父さんおかえり〜」

 

「ただいま。青子、今日入学式行けなくてごめんな。それで、どうだった?」

 

 心配そうな視線を私に向けてきた後、お父さんはお母さんに顔を向けて尋ねた。

 

「入学式は無事に終わったんだけどね」

 

 お母さんは肩を竦めながらため息をついた。

 そう、入学式なんかよりもっと大切なことが起こったのだ。

 是非ともお父さんに聞いてもらいたい。

 

「お父さん、聞いて聞いて! あのね、とうとう見つけたの、私の(つがい)の男の子♥」

 

 テーブルを手でパンと叩く。小気味よく鳴った音がリビングに響く。

 だめだ、この嬉しさはこの程度では表現できない。

 

「え? 初日で!? ほんとに? いくらなんでも早すぎない?」

 

「一日どころか、半日でそんな関係になれるわけないでしょ。青子が勝手にその男の子を番認定してるだけなのよ」

 

「……あぁ、なんだそういうことか。びっくりした」

 

 お父さんが鞄を置きながら、明らかにホッとした表情を浮かべてる。

 着替えないでネクタイを緩めながらお母さんの隣に座り、私の方を見て言う。

 

「まあ、お父さんとしては焦って変な男を捕まえるより、青子にはじっくり探して欲しいと思ってるんだ」

 

「じっくり構えてた結果が今なんじゃないの? 朝も言ったけどお姉ちゃんは危機感が無さすぎるのよ」

 

 翠が手に顎を乗せて冷めた目で言い放った。

 

「まあそうかも知れないけど、翠は翠でちょっと早すぎだったんじゃないかなぁって……お父さん割りとショックだったし……」

 

「でも裕二さん。番の儀式は成人になる16歳までに済ませないとダメなのは知ってるでしょ?」

 

「……知ってるけどさ。一般社会通念とは少しズレてるところがちょっと受け入れがたいと言うか」

 

「最近は普通の子たちも高校生くらいになれば割りとしてるでしょ?」

 

「まあ、他所のお子さんはそうだとしても自分の娘のことだとなかなか……」

 

「お父さんだって15歳の時にお母さんとしたでしょ? 番の儀式」

 

 お父さんとお母さんは学校の同級生なのだ。

 お母さんが15歳で番の儀式をしたなら当然お父さんも同じ歳でしてる。

 

「まあ……ね。若かったとはいえ、褒められた行動ではないどころか、完全に犯罪……くっ。お父さんは人として過ちを」

 

 お父さんの眉毛が持ち上がって眉間にぎゅっとシワが寄った。

 そして顔を顰めたまま、お父さんの口から後悔の(うな)り声が漏れてきた。

 

「裕二さん、そういうのはもういいので」

 

「……そういうわけにはいかんだろう」

 

「裕二さん?」

 

「あ、はい」

 

 お母さんが優しく微笑むとお父さんがいつものように黙り込んだ。

 

「……ところで、青子たちに私たちの馴れ初めを話したみたいですね?」

 

「え? あぁ……まぁ、その……」

 

 お母さんがお父さんの手を握って引っ張り上げながら立ち上がった。

 

「ちょっとお話をしたいので寝室に行きましょうか?」

 

「待って、ちょっと待ってくれ文子(ふみこ)。明後日は出張に行かなきゃいけないんだ。ちょっと控え……」

 

「裕二さん?」

 

「あ、はい」

 

 有無を言わさずお母さんがお父さんを寝室へ連行しようとしてる。

 もう見慣れた光景なのでスルーしつつ、忘れないうちに聞いておく。

 

「お母さん、晩ごはん先に食べていい? 冷蔵庫の中にお寿司入ってるでしょ」

 

「裕二さんとのお話は手早く済ませるから、みんなで食べましょう。青子の入学祝いなんですから」

 

「んー、分かった。じゃあ準備だけしておくね」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「それで、その青子が見初めたという(つがい)候補の男の子はどんな子なんだ?」

 

 ダイニングのテーブルに広げたお寿司をみんなで食べながら、話題は当然(つがい)候補の男の子の話になった。

 

「名前は鬼頭(きとう)(ひろし)くんって言って同じクラスなの」

 

「ほー、ヒロシくんというのか」

 

 お父さんがお寿司を皿に取りながら、私の話に相槌をうっている。

 

「もう聞き飽きた」

 

 翠がうんざりしたように横から口を挟み、トロを二貫皿に取った。

 

「まぁまぁ」

 

「写真もちゃんと撮ってあるの。ほら、これが彼の写真!!」

 

 お父さんにスマホの画面が見えるように差し出した。

 教室で、中学からの友人らしき男子と話してる鬼頭くんをこっそり隠し撮りしたやつだ。

 

 翠が横からスマホの画面を覗き込み、呆れながら酷いことを言う。

 

「……お姉ちゃんてさあ? ほんと身の程知らずだよね?」

 

「ほう……この子が鬼頭くんか。うん、真面目そうな子だね?」

 

 うんうん、お父さんは翠と違ってちゃんと見てくれてる。

 

「えっ!? お父さん、感想それだけ? 遠慮しないでお姉ちゃんにガンって言ってやってよ」

 

 呆れ顔の翠がお父さんを焚き付けてる。翠の私への当たりがなぜかやたら強い。

 一体何が気に入らないのか。

 

「ガンって何がだい? 写真を見た限りごく普通の男の子のようだけど、まあ穏やかそうな雰囲気があるし、いい子そうではあるよね。のんびりした青子とはお似合いかもしれないな。見た目の第一印象だけだけどね」

 

「えぇ? お父さん目がおかしいんじゃない?」

 

「ほらぁ、やっぱり翠の方がおかしいんだって」

 

 私の理想は別に高くない。

 ごく普通の男子で、心にピンと来るだけでいいのだ。

 そもそも鬼頭くんは別に目を引くようなイケメンではない。まあブサイクでもないし、ちょっと顎と鼻のラインが整ってるかなとは思うけど。あと瞳もすごく綺麗だとは思う、睫毛が男子にしては長いし。

 

「そんなことないって! そうだ、お母さんはどう思う!?」

 

 もくもくとお寿司を食べていたお母さんがチラリと鬼頭くんの画像に視線を向ける。

 翠もそうだけど、お母さんにももう何度も見せている。

 

「まぁねぇ……その……なんというか」

 

 なぜか歯切れが悪い。

 

「ようやく青子が見つけた番候補に色々と言いたくないけど……お母さんもちょっと青子は図々しいかなって……」

 

「ずっ、図々しい!?」

 

 私から顔を背けながらお母さんが酷いことを言う。

 実の娘に向かって図々しいなんて言葉、普通使う!?

 どういうこと!?

 

「んん? 文子、図々しいってどういうことだい? まあ、青子はちょっと……いや、かなりのんびり屋さんなところがあるけど、見た目だけなら可愛らしい方だと思うんだが。なにより私たちの娘じゃないか」

 

「そうだよ、お母さん酷くない? 朝は番候補見つけてこいって言ったくせに、見つけてきたら図々しいって言われたらすっごい傷つくんだけど」

 

「私だって自分の娘がこんなに面食いだったとは思わなかったし……」

 

「だよね! お姉ちゃんって怠けて番見つけてこなかったんじゃなくて超イケメン好きだったと判明!」

 

「そんなことない! そんなことないよ!?」

 

 翠の言いがかりが酷すぎる。

 イケメン好きじゃないのに!

 

「文子も翠もちょっと変じゃないか? このヒロシくん、普通の容姿にしか見えないんだけど?」

 

「………………」

 

 お父さんがそう言うと、お母さんも翠も黙り込んだ。

 

 なんでこんなことで平行線になるのかほんと分かんない。

 お母さんと翠の男性の好みの部分に鬼頭くんがクリティカルヒットでもカマしてるのかなぁと思いながら好物のイカの握りをパクっと頬張った。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 翌日。

 土曜日のお昼過ぎ。

 

 お父さんお母さんと私の三人で、町会長さんのお家を訪ねてバスを乗り継いで隣町までやってきた。

 妹は(つがい)である大学生の(あつし)さんといつもの週末デートなので付いてきてない。

 

 書類を提出するだけなので私も行く必要はないと思うんだけど、無理やり連れてこられた。

 町会長さんに心配かけたんだからちゃんと面前で報告しなさいだって。

 

「ほら、町会長さんのお宅に着いたんだから、膨れっ面は止めなさい」

 

 お母さんから注意されたので、慌てて両手て頬をパチパチと叩いてリセットする。

 

「でも相変わらず凄い家だよね」

 

 門構えからして違う。こういうのって数寄屋門って言うんだっけ?

 木製の引き戸になぜか屋根瓦が乗ってるやつだ。

 しかも道路から門まで石の階段がしばらく続いてる。

 根っから庶民の私は心が怖気づくんですけど。

 

「私たちの先祖って西洋から流れてきたのに純日本風の建物って変じゃない?」

 

「こら、余計なこと言わない」

 

 純日本家屋もそうだけど、大きな日本庭園まで揃ってて敷地自体の大きさが並ではない。

 用事がなければ近づきたくない。

 私は心の底まで小市民なのだ。

 

 お父さんが門の壁に付いてるインターホンを押して名前を名乗ると、すぐに返事が返ってきた。

 事前にアポイント取ってたので、相手も待ち構えていたのだろう。

 

 電動モーターでも仕込まれてるのか、門が自動で開いて中に招き入れられた。

 

 中庭を通り抜け、玄関で待っていたお手伝いさんにこちらへどうぞと案内されて客間らしき和室に通された。

 和室と言ってもうちの家みたいにただ畳が敷いてあるだけの部屋とはワケが違う。

 

 お父さんとお母さんの三人で座布団に座って小さくなりながらしばらく待っていると、もっのすごく綺麗に歳を取られた和服姿の年配のご婦人がやってきた。佐久場町会長さんだ。

 

 銀髪に見えるけど白髪だよね、アレ。

 なんであの歳であんなに艶があるんだろ。

 昔は相当な美女だったはず、いや今でも美魔女っていうのかな?

 

「佐久場町会長、ご無沙汰しております」

 

「よくいらっしゃいました、久米家の皆さま」

 

 町会長さん、日本舞踊でもやってるのか所作の一つ一つが丁寧で様になってる。

 そして私を見てにっこり微笑む町会長さん。

 

 ……やっぱり心配されてたのだろうか?

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「この度は本当におめでとうございます。青子さんにようやく気になる男性が現れたと伺って、胸のつかえが取れたようです」

 

 お母さんが渡した書類一式をペラペラとめくりながら町会長さんが嬉しそうな表情を浮かべてる。

 番の男性は候補の段階から市役所に提出しておく必要がある。それを取りまとめているのが町会長さんで、番候補の男性が運悪くバッティングしてしまった時の調整なんかも町会長さんがやる。 

 

「青子さんの同世代は全員すでに(つがい)を持たれてるのに、青子さんだけはいつまでたってもお相手を選ぼうとされない」

 

「うっ……す、すみません」

 

 やばい。

 やっぱり付いてくるんじゃなかった、針の筵じゃないか。

 

「まさかこのまま()()()になってしまうのでは……とヤキモキしていたところなんです」

 

「い、いえそんなつもりは毛頭なくてですね……」

 

 居心地が大変悪くなってきたので、私は俯いて畳の目を数え始める。

 

「分かっておりますとも。こうやって番候補の…………ん?」

 

「ん?」

 

 顔を上げて佐久場町会長さんの顔を見る。

 書類に不備でもあったのだろうか?

 

 ……なぜか固まってしまった町会長さんを、お父さんとお母さんも不思議そうに見てる。

 

「……ず」

 

「ず?」

 

「コホン。……失礼。少々びっくりしてしまいまして。あの、青子さん? 貴方……この男子をちゃんと勝ち取れますの?」

 

「勝ち取る?」

 

 町会長さんの言葉にお母さんがフンフンと頭を上下に振って頷いているのは無視する。

 

「争奪戦が激しそうだなと少し心配になりまして」

 

「えっと、普通に……友達から始めようかなって思ってたんですけどダメでしょうか?」

 

 出会った少年少女がゆっくりと恋に落ちていく少女漫画や小説は大好きなので、自室の本棚にかなりの蔵書があるし、Web小説のブクマは数知れない。

 これから自分自身の身に実際に起こると思うとドキドキが止まらない。

 

「青子さん、男性とお付き合いしたことは?」

 

「いたら今頃番候補とかの事態になってませんけど」

 

「……では、学校で男子の友人とかいました?」

 

「いたことないですけど」

 

 現実は厳しい。

 

「………………」

 

「………………」

 

「最悪、青子さんが()()()にならないように見合い相手を探しておきますね」

 

 気の毒なことを聞いてしまったとでもいうように私から目を逸らしつつ、町会長さんが割と酷いことを言う。

 

「なんでっ!?」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「あはははっ!」

 

 (あつし)さんとの逢瀬を終えてご機嫌な感じで帰ってきた翠が、私の話を聞いてリビングのソファにゴロンゴロンと転がりながら笑いこけてる。

 

 ムカつく。

 

「傷つくんだけど?」

 

「ごめんねお姉ちゃん。でもお見合い相手用意してくれるなら良かったじゃない」

 

「お見合いとかしないし。鬼頭くんと番になってみせるから、見てなさいよ」

 

「でも町会長さんの言う通り難しいと思うよ。絶対ライバル多いだろうし。それにお姉ちゃん眼鏡で大分損してるから」

 

「この眼鏡結構気に入ってるんだけどね」

 

 掛けていた黒縁の丸眼鏡を外す。この眼鏡に度は入っていないので外しても不便はない。

 だけど外したまま外出すると大変なことになる。

 

「鬼頭くんの前で眼鏡外せば魅了の魔眼で一発なんだけど、それしちゃうと警察に捕まっちゃうし……それ以前にそんなことしたくないし」

 

 サキュバスは生まれつき全員が魅了の魔眼を持っている。

 日本の社会で暮らしていくのにあたって、魅了の魔眼を使うことは許されていない。

 政治家とか、大きな組織の偉い人とかやりようによっては社会が大混乱に陥る。

 善良な市民であろうするため、サキュバスは自ら魅了の魔眼は封印している。

 

 成人になる前は特殊な眼鏡で魅了の効果を封じ込め、番の男性を得たらその術式の効果で魅了の魔眼は失われる。なので翠は1年前に眼鏡を外して裸眼に戻ってる。

 

「お姉ちゃんってすっごく綺麗な琥珀色の瞳だし、ヒロシくんに素顔をちゃんと見せられたら魅了の魔眼とか関係なしに惚れられる可能性があるとは思うんだけどね。お姉ちゃん、見た目だけは美人だし」

 

 魅了の魔眼は個人個人で微妙に違ってて、魔眼を封じ込めるためにワンオフで作られた眼鏡には、基本構造として逆方向の波長を発生させる術式が組み込まれてる。その副作用で眼鏡をかけた私は人畜無害なごく普通の顔に見えてしまう。

 

 中学の時は顔は普通でスタイルだけ良い女と思われてしまったらしくて、身体目当ての変な男子しか寄ってこなかった。

 

 まあ過去のことはもう良いけど、おかげで男子との交流はほとんどなくて恋愛経験値がゼロのまま。それで鬼頭くん相手に予行演習なしでいきなり本番を始めなきゃいけないのはちょっと厳しい。

 

「あぁ……恋愛スキルクソ雑魚の自分が恨めしい」

 

「ヒロシくんが愛の力でお姉ちゃんの素顔をいきなり透視しちゃうとか」

 

「そんな便利な愛の力なんかあるわけないし、そもそもまだ面識すら……というか翠はどうやって淳さん捕まえたの? 淳さん大学生だし接点なかったよね?」

 

 翠だって条件は私とそう変わらなかったはずなのに、1年前にいきなり淳さんを家族に紹介してきたのだ。

 

「小学校から下校中に普通に声掛けられたよ?」

 

「犯罪者じゃん! というかそれでOKしちゃったの?」

 

「うん、好みだったし」

 

 だめだ、翠は参考にならない。

 事案だし。いや、番になったからもう事案じゃないけど。

 

「あー、ほんとどうしよう!?」

 

 空いているソファに頭からダイブして、バインと跳ねる。

 

「そりゃ速攻しかないでしょ」

 

「速攻?」

 

「ライバル出し抜くなら誰よりも早く動いて、ヒロシくんの隣の位置を既成事実化するしかないんじゃない?」

 

「お……おぉ!?」

 

「週明けすぐにでも動いた方がいいよ。入学式直後ってふわふわしてて、ヒロシくんが既に他の女子に目をつけられてたとしても初動は多分遅いし。早い者勝ちだよ、きっと」

 

「は、早い者勝ち!?」

 

 ソファで上半身を起こし、翠を見る。

 

「恋愛なんて大抵そうでしょ。お姉ちゃん眼鏡の副作用のせいでちょっと不利だけどブスじゃないし、同じクラスなんだから、とにかく同じ部活とか同じ委員とか何でもいいから、ヒロシくんの横を定位置にしちゃえ」

 

 やばい!

 中学生の妹が百戦錬磨の恋愛神に見える!

 

 

「おぉ……神よ!」

 



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第11話 ニセ催眠アプリ

「え? ぶつけるの?」

 

 リビングでソファに寝転がってる翠が気だるげにそう言ったので思わず聞き返した。

 私を見もしない。姉が相談したというのにその態度はなんだ。

 私を姉だと思ってないな? 

 

「そう、ドーンとね」

 

「だ、だめだよ。ヒロくんにそんな酷いことできないよ? しかもワザとだなんて」

 

 (つがい)(あつし)くんとSNSでやり取りしてる最中の翠が器用に肩を竦めて、「はぁ、やれやれ」というジェスチャーをする。

 

 ムカつく。

 

「分かってないなぁ、お姉ちゃんは」

 

「何がよ?」

 

「これはご褒美なんだって」

 

「ご褒美?」

 

「そう」

 

「胸をヒロくんの頭にぶつけるのがご褒美!?」

 

「当り前じゃない。ねえ、お母さんもそう思うよね?」

 

 キッチンで晩御飯の調理をしていたお母さんが振り返って断言した。

 

「ええ、ご褒美ね」

 

「ほらね?」

 

「えぇえええええっ!?」

 

「お姉ちゃん、自分の武器を理解しようよ? 入学してすぐにヒロシくんとお弁当を一緒に食べるように仕向けたのはファインプレーだったけどさ? その後がもう全然じゃん」

 

「ぜ、全然ってことないよ? 今じゃ下の名前で呼び合ってるし。凄いよね? これ凄いよね。私すっごい勇気振り絞ってヒロくんに提案したんだよ?」

 

「そんなの基本でしょ」

 

「き、基本!? これって基本なの!?」

 

 ほんとに!? 

 全国の女子中高生の女子力ってそんなに高いの!? 

 

「その……半信半疑だったけど、クラスにヒロくんを狙ってる女子がほんとにすごく多くて焦っちゃって、一生分の勇気振り絞ったのに」

 

「だから競争率高いって言ったでしょ。誰だって狙うわ」

 

「……ヒロくんは普通だもん」

 

「まだ言うか、この姉。あのさ、ヒロシくんを狙ってる女子の名前ちょっと言ってみてよ」

 

「えっと目立ってるのは久珂(くが)さんと嶋久(しまひさ)さん、それに佐久間(さくま)さんかな」

 

「全員サキュバスの家系じゃん」

 

「え? ええ?」

 

「お姉ちゃんさぁ? 一族の家系くらい把握しておこうよ。一応みんな遠い親戚なんだよ?」

 

「い、いやでもサキュバスなら(つがい)がもういるでしょ? 同世代で番なしは私だけって町会長さんも言ってたし」

 

「お母さんその子たち知ってるわよ。久珂さんと嶋久さん、佐久間さんとこのお子さんでしょ? 血が弱かったらしくて、サキュバスの力が発現しなかったって聞いてるわ。町会長さんと今もよく相談してて、血の濃い有望な男性を探してるとか以前聞いたことがあるわ」

 

「えー」

 

 そうだったの? 

 全然知らなかったんだけど。

 

「ほら、モロにライバルじゃん。だからおっぱいぶつけるくらいやらないと取られちゃうよ。血が発現してなくてもサキュバスはいい男見逃さないし。ライバルは素顔のまま、美人でスタイル抜群なんでしょ?」

 

「む、むむむー」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「なんか、あと一押しが足りない」

 

「一押しって?」

 

 ソファに寝転がった翠がひじ掛けに頭を乗せて、TVを見ながら興味なさそうに返事してきた。

 

「お母さんと翠の言う通り胸とかお尻をことあるごとに押し付けてるんだけど、最近ヒロくんの反応が鈍いの」

 

「ほーん」

 

 TVに集中している翠が生返事を返してきた。

 ヒロくんと番になれなくても、最悪お見合いすればなんとかなるでしょって翠は思ってるらしくて、時々私への対応が雑になる。

 

 私はお姉ちゃんなのに! 

 妹から敬愛されてない! 

 

「今日なんかヒロくんの肘に胸を押し付けたらこう……スンってなって。分かる? スンって感じ。無の境地っていうのかな、急にヒロくんの姿勢が良くなるし」

 

「……姿勢が良くなるって何?」

 

「あの独特な感じを説明するのはちょっと難しいんだけど……そうだ! 武士! 武士みたいな雰囲気になるの」

 

「余計分かんないんだけど……ヒロシくん慣れちゃったんじゃないの。お姉ちゃん加減って知らないしさ~、四六時中やられてると有難味って減るみたいだよ?」

 

「……そうなのかなぁ」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 キッチンで夕食の準備を始めたお母さんの側に行くとすぐに見咎められた。

 

「つまみ食いするにはまだ早いわよ?」

 

「ち、違うよ。つまみ食いなんかしないし!」

 

 お母さんがじっと私を見る。

 娘を信用しない母親が目の前にいる。

 

 とりあえず本来の目的を伝えねば。

 

「あのね? これから自分のお弁当は自分で作ってみようかなって思うの」

 

「青子がお弁当を!?」

 

「ほら、料理の上手な女子って好感度高くなるみたいだし」

 

「今まで料理なんかしたことない青子が!?」

 

「確かにやったことないけど、やればできる子だし、私」

 

「やれば……できる子……」

 

「包丁持ってトントントンって」

 

「包丁持って……トントントン……」

 

「なんで復唱するの?」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「撮影会?」

 

 最近、翠は私の相談事を露骨に聞き流すようになってきた。

 なので今私はソファに寝頃がった翠の足をマッサージしている。

 足裏の良い感じに痛気持ちいいツボをギューッと押す。

 

「おぉ……おふっ………………誰の?」

 

「私の」

 

 しょうがないなぁ、聞いてあげるよ? みたいな雰囲気をようやく出し始めた翠が首をひねって私の方を見た。

 

「雑誌モデル? お姉ちゃんいつの間にオーディションなんか受けたの?」

 

「いや、そういう凄いのじゃなくて」

 

「じゃあ何?」

 

「えっと……ヒロくんがスマホで私を写すんだけど」

 

「ほーん…………順調そうじゃん」

 

 興味を無くしたのか、翠が再びうつ伏せの姿勢になった。

 足先でトントンと私の腕を叩いて「もっとマッサージを続けたまえ」と要求してくる。

 

「……それでね? 放課後の誰もいない図書室で……いろんなポーズを取るんだけど、例えば本棚の整理をしている私がふと振り返った瞬間とか……ヒロくんが写すんだけど」

 

 脛からふくらはぎにかけて丁寧に揉み上げていくと、翠が気持ち良さそうな声を漏らし始めた。

 

「大体はそういうちょっと素敵な感じの写真なんだけど、ときどき制服のスカートと太ももの間とかブラウスに写りこむ下着とか、思わず撮ってしまうみたいで、隠し撮りなんかじゃなくてね? 撮った後の写真もちゃんと見せてもらえるんだけど、やっぱりヒロくんも男の子だなって思って、ちょっと嬉しくて」

 

 横に置いてた紙袋から買ってきたばかりの下着を取り出して翠に見せる。

 

「……それでね? ヒロくんをその気にさせるのにこんなの買ってみたの」

 

「ふーん」

 

 私が生まれて初めて買った真っ赤な下着を翠が無造作にゴミ箱に投げ捨てた。

 レースをふんだんに使ったエッチな下着が宙を飛んでゴミ箱にジャストインする。

 

「あぁっ!? 何てことするの翠!?」

 

「逆」

 

「え? 逆?」

 

「逆効果」

 

「逆……効果?」

 

 ソファに寝転がってた翠がむくりと身体を起こした。

 

「あのね、お姉ちゃん。男子視点で考えてみてよ? ちょっと抜けてて天然入ってる芋っぽい女子が、それも普段からよく話してる仲が良い身体だけはすごい女子が、ある日制服のブラウスの下に真っ赤なレース付きのブラををしてくるんだよ?」

 

「う、うん。……あれ? 私って抜けてて天然とかじゃないよ?」

 

「お姉ちゃんの高校に禿げててデブの用務員さんとかいる? 時々デュフフとか言っちゃう感じの」

 

「なんか話しが飛んでるけど、うん、いるよ。時々廊下で会うと話しかけて来るし」

 

「その人にお姉ちゃんが寝取られて調教されてるって思っちゃうよ、ヒロシくん」

 

「いや、飛躍しすぎじゃない!? いったい何の話しをしてるの!?」

 

「まあそれは冗談だけど、男子として気になってる女子が他の男子の目を引いて欲しいわけ無いでしょ」

 

「あ……、あー」

 

 なるほど。

 なるほどなるほど。

 

「気になってるか……私、ヒロくんの特別な人にちゃんと近づけてるかなぁ?」

 

「さぁ? そんなの妹に聞くより、そのセリフをそのままヒロシくんに直接ぶつけた方が良いと思うけど」

 

「む、むむむー」

 

「……あと、その用務員さんには注意した方がいいよ?」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「青子、大丈夫?」

 

 朝、ベッドの中で唸ってるとお母さんが心配そうに私の顔を覗き込んできた。

 

「……うん、大丈夫。痛いわけじゃない……から」

 

 股間に手が伸びそうになるのを必死で耐える。

 始めてしまったら多分終わらない。

 

「いつから?」

 

「ちょっと前から。なんか違和感あるなぁってくらいだったんだけど、今朝いきなり来た」

 

 深呼吸を繰り返すと呼吸(いき)がゆっくりと落ち着いてきた。

 お母さんが頭に手を置いてぽんぽんとしてくれる。

 

「……身体がサキュバスの成体に近づいていってるのよ。多分だけど16歳の誕生に向けてどんどん性欲が高まってくると思うわ」

 

「お母さんもそうだったの?」

 

「お母さんはそんなに酷くはなかったけど……個人差がかなりあるとは聞いてたけど、青子は今までが普通の人間の女の子並みだったから余計にそう感じるのかも」

 

「うん、今ならハグレになっちゃう人の気持ちがちょっと分かるよ」

 

「落ち着いたら、シャワーでも浴びてきなさい。朝食は軽いのを用意しておくわ」

 

「うん」

 

 

 

 

 シャワーのお湯でまだ腰の奥に残って重く感じていた性欲が洗い流されるように消え去っていく。

 

「ふーー、落ち着いてきた」

 

 あのままだと学校にも行けないところだった。

 しかし聞いていた以上にきつい。

 

 サキュバスは16歳の誕生日に成体になる。

 成体になるともう普通の食事は必要なくなって男性の精液のみで生きていけるようになるし、魅了の魔眼だけじゃなくそれ以外に性愛に関する様々な超自然的な力を(ふる)えるようになる。同時に現在のサキュバス社会からは弾き出されて()()()となる。

 

 公ではないにせよ、日本の社会にサキュバスが市民として受け入れられているのは、あくまでも善良な市民である前提だ。成体になったサキュバスが本気で吸精すれば、普通の男性は死ぬこともあるらしいし、そんなアウトローみたいな生き方をするサキュバスを日本は市民として受け入れない。日本社会と融和しているサキュバス社会も当然受け入れることはない。それが()()()だ。

 

 サキュバスは成体になれば本能のままにヤりたいように生きてしまう。それを回避するにはどうすればいいのかと、昔のサキュバスの偉い人が考えた方法が(つがい)制度だ。要はサキュバスの成体にならなければいいと考えたわけだ。

 

 現在ではサキュバスとして生まれた女の子の胎の中には術式が刻まれる。

 術式は、成体になる16歳の誕生日までに初めて結ばれた男性と繋がり(パス)を作り、その繋がり(パス)を通じて男性にサキュバスの成体になるためのエネルギーを分け与える仕組みだ。そして単純にエネルギーの足りなくなったサキュバスは成体になれなくなる。

 

 一方でエネルギーを流し込まれた番の男性のペニスには淫紋が現れるらしい。多分お父さんにも淫紋があるはずだけど、流石に娘である私は見たことはない。

 まあ、大抵は精力がちょっと強くなる程度の淫紋モドキが現れるようだ。掠れててあるかどうか分からないレベルの淫紋モドキでも、男性が30代や40代にさしかかっても中学生男子並みの絶倫のままとか聞いたことがある。

 そういうありふれた淫紋こそが夫婦円満の最高の淫紋とかなんとか集会なんかの時におばさんサキュバス連中から猥談みたいに聞かされて私たちは育つんだけど。

 

 まあ何百年も昔に西洋で魔女狩りが流行ってた頃、巻き添え食って追われたサキュバスがその数を減らしていた時、サキュバスの女性を1万人以上妻にした伝説のサキュバス大王みたいな凄い淫紋も歴史上では存在したらしい。そのおかげで絶滅を免れたサキュバスが遠く東洋まで逃げ延びれたとかの歴史みたいなことも聞かされる。その他には出会うサキュバスを一人残らず虜にして千人以上のサキュバスの妻を持った麗人王のペニスに顕れたという極めて珍しい淫紋とか。

 

 まあそんな凄い淫紋なんか私の人生には関係ないけど、おばさんたちに聞かされて一時期淫紋の資料を読むのにハマったことがある。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 シャワーを終えてダイニングに行くとお母さんと翠がいた。

 お父さんは会社に出かけているのでもういない。

 

「お姉ちゃん、やっぱりキツイ?」

 

 翠が心配そうな声で話しかけてきた。

 

「うん……まあ、ね」

 

 大体13歳か14歳あたりで番の男性を選んで結ばれるのが推奨されてる理由が実感できた。

 12歳で番を得た翠の方がはるかに正しかった。

 

 こんな風に突発的に発情してしまうのでは危なすぎる。

 学校にいる時にこんな状態になったらヒロくん襲っちゃうかもしれない。

 そしたら私はハグレになってしまう。

 

「思ったよりも時間がないのかも」

 

 16歳の誕生日まであと3ヶ月ちょい。

 ヒロくんとはもうかなりいい感じになってきてるような気がするので、3ヶ月以内に告白されそうな予感はある。

 

 読み漁った少女漫画とか少女小説とか、ナーロッパざまあ恋愛モノとかで学んだ知見によれば告白は近い。近いんじゃないかな? 近いといいな? 

 

「……やっぱりダメかもしれない」

 

 ゴトンと私はテーブルに突っ伏した。

 そうなのだ、朝の発情で私は気づいてしまったのだ。恋愛作品ばかり読み漁って私は盛大に勘違いしていた。告白がゴールラインではないのだ。

 

 告白して! 

 受け入れて! 

 即日合意セックス!! 

 

 ……私は深く考えもせず、こうなると思ってたけどヒロくんはそんな人じゃない。

 すごく真面目なのだ。

 多分高校生の間は手を出してこない。きっとキス止まりだ。

 

 厳しい現実が突きつけられている。

 

「もうダメだ」

 

 涙がちょちょぎれ始めた私を見て翠がつぶやく。

 

「やっぱ見合いかぁ」

 

「見合いはイヤ」

 

「そうは言ってもさぁ、お姉ちゃんどうするの?」

 

 ヒロくんが私を襲ってくれれば何も問題はないけど、私の大好きなヒロくんはそんなことはしない。

 

 ここで大昔に決められた番制度の規則が問題になる。

 サキュバスは「性の分野」で人間と比較して圧倒的な強者だ。その強者のサキュバスから男性に告白するのは規則では実はNGなのだ。サキュバスから愛の告白をしたらそれに抗える男性などいるのかと。成体になったサキュバスが男性を襲うのと実質的に何が違うのか? と。日本社会で善良な市民であるために、サキュバスはあくまで受け身で男性から言い寄られる必要がある。

 

 だけどセックスにガツガツしていた男性が一杯いた時代とはもう違う。

 絶対この規則は時代遅れだ。

 

「うぅ……」

 

 下腹がかすかに疼いている。さっきの発情の残り火が奥の方で熾火のように長く後を引いている。

 

「あぁ……ヒロくんに襲われたい。好き好き囁かれながら襲われたい……」

 

 どうすればヒロくんに襲われるのか。襲うように仕向けられるのか。

 ここまで来たらちょっとくらい汚い手を使っても良い。だけどそんな恋愛達人の手練れの技は恋愛ミジンコクラスの私には無い。

 

「………………あっ?」

 

 急にふと思いついた。

 さっきから会話にも混ざらず妙に静かにしてるお母さんを見る。

 

「ダメよ」

 

 私から目を逸らしつつお母さんが即答する。

 

「まだ何も言ってないけど?」

 

「後で後悔するから絶対に止めた方がいいわ」

 

「やらないで後悔するより、やって後悔する方がいい」

 

 やらないで後悔するというのは結局ヒロくんを諦めるということなのだ。

 今まで生きてきて出会った男子の中で唯一ピンときた男子がヒロくんだ。

 お見合いしてピンと来ない男性と生涯一緒に暮らすなんて冗談ではない。

 

「……催眠アプリ作って、お母さん」

 

 よくよく考えればお父さんだって15歳の学生の身でセックスするような性格じゃない。生真面目が服を着ているような性格なのだ。

 

 そのお父さんを陥落させたお母さんの催眠アプリとその手腕。

 襲われた(≒告白)上に、即日セックスまで持ち込めるとかよく考えれば天才の仕事じゃなかろうか? 

 

「ほんとに後悔するわよ?」

 

 お母さんはソフトウェア会社に勤務している。

 実際には催眠機能なんかないガワだけの偽物なんてその気になればきっとすぐに作れると思う。

 

「それでもお願いします。貴方の娘はミジンコなのです、お母さま」

 

 私にはもう後がない。

 

 



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第12話 黒歴史

「グビリ……」

 

 自分の喉が鳴った音の大きさに驚いて、思わずヒロくんのズボンから手を離した。

 と、同時に正気が返ってきた。

 

「わ、わわっ!?」

 

 危なっ!? 

 私何してたの!! 

 

 私の眼の前では、ヒロくんの勃起したおちんちんが内側からパンツを押し上げて巨大なテントが作られていた。

 そのパンツの生地におちんちんの形がはっきりと浮かび上がってる。

 生まれて初めて見る男子のソレはもうドキドキするくらい素敵に見える。さらに香しい匂いが鼻の奥で暴力的なまでに感じ取れて、思わず陶然としてしまう。

 

 ──じゃない! 

 

 いつの間にか下腹部を包むパンツが濡れてしまっていた。

 なのに冷たく感じないのは今も下腹部が熱く火照っているからだ。

 

 再び誘惑に負ける前にヒロくんのズボンを慌てて引き上げる。

 

「はっ……はっ……はっ……」

 

 危なかった。

 完全に発情して意識が飛んでしまっていた。

 これがサキュバスの本能だとしたらマジで怖い。

 

 好きで好きで堪らない男子が椅子に座って眠りこけて、誰もいない静かな図書室という最高に都合の良い環境。

 しかもコレも朝勃ちと呼ぶのだろうか? それとも夕勃ちと呼ぶべきなのか、ヒロくんはすやすや寝ているのに破廉恥にも勃起して、ズボンの股間が盛り上がっていたのだ。

 

 だけど、そっか。

 私はこの程度で正気を失っちゃうのか。

 これはもう自分を信用してはいけないな。

 

 図書室のカウンターの中でヒロくんのズボンを荒っぽく元に戻す。

 そしてすぐに後ろを向く。

 見ているとダメだ。

 

 ポケットティッシュを取り出して、千切って丸めて鼻に詰める。匂いも危険だ、意識が飛ぶ。

 乙女の顔ではなくなってしまったけど、大丈夫。見ている人はいない。

 

 ヒロくんのスマホにはお母さんが作ってくれたニセ催眠アプリをすでにインストール済だ。彼が目を覚ましたタイミングで返せば今日のミッションはコンプリートとなる。

 

 後はヒロくんが自然に目を覚ますのを待てばいいだけ。

 ヒロくんを襲ってしまったら全ては台無しになってしまう。

 冷静さを保つのよ、ファイト! 私の理性! 

 

 でもお母さんの用意してくれたハーブティーはすごい効き目だった。

 ヒロくんのズボン剥いても全然目を覚まさなかったし。

 

 待って? 

 

 なら少しくらい大丈夫なんじゃないだろうか? 

 冷静さの戻ってきた頭で熱に浮かされながら考える。

 

 ズボンのチャックを下ろし、ヒロくんのおちんちんを取り出してちょっと触るくらいならまずバレないだろうし、許されるような気がしてきた。

 だって、女の子が隣にいるのに足をあんなに開いて勃起させながら寝ているのって、要するに自由に触っていいよって言ってるようなものなのでは? 

 

 ズボッ

 ズボッ

 

 詰めたばかりの鼻栓を取り外す。

 おちんちんの匂いを堪能できる貴重な機会なのだ。

 大きく深呼吸しながら振り返ると、ヒロくんのズボンのテントは小さくなっていた。

 

「あぁ……なんてこと……」

 

 迂闊にも正気を失っていたばかりに、旬を逃してしまった。

 

 ……いいえ違うわ。

 

 イギリスの名門貴族の有名な言葉を思い出す。

 逆に考えるんだ。ヒロくんのおちんちんを小さな状態から大きく育てられると考えればいいんだ。

 

 うん、すごく素敵な考えに思える。

 

 音を立てずににじり寄り、さっき元に戻したばかりのズボンのチャックに指をかける。

 布を隔ててヒロくんのおちんちんの感触が指に伝わってきた。

 甘酸っぱい感覚が胸を満たす。

 

「いいよね! これもう絶対許されるよね! だって男子のおちんちんって女の子のモノに決まってるし!」

 

 ノリにノって最高潮というところでヒロくんが呻いた。

 

「ん……うぅん…………」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「で、どうだったの?」

 

「寝ているヒロくんのズボンのチャックを下ろして、パンツの中から再びおちんちんを取り出そうとしたところでなんとか正気に戻りました」

 

 一家揃ったリビングで、ソファに座ったお母さんと翠が呆れている。

 でしょうね。私だって私に呆れてるくらいだ。

 

 そしてお父さんは顔を両手で覆っていた。

 

「で、でもみんなこんな感じになるんじゃないの? 16歳の誕生日が近づけば」

 

 とりあえず言い訳はしておきたい。

 ハグレなんてここ10年以上は発生していないし、こんなギリギリの年齢まで番がいないのは珍しいだろうから、実際どれだけサキュバスの本能に煽られるのかなんてお母さんだって知らないはずだ。

 

「うん…………まあ、そう…………なのかも」

 

 少し、いや大分首を傾げながらもお母さんは渋々と同意してくれた。

 

「えー違うんじゃない? 成体になったサキュバスならともかく、その前でこんなになっちゃうのってお姉ちゃんに問題があるんじゃない?」

 

「問題ってたとえば何?」

 

 急に湧き出るようになった性欲をきちんと扱えるサキュバスなんているとは思えない。これは不可抗力だ。

 

「青子は15歳まで普通の人間の娘より性欲薄そうだったし、その反動なのかしらね?」

 

「そうかなぁ?」

 

「私がこうなるのってヒロくんだけだし。一途で純情だと思うけど」

 

「純情って……言葉の定義勝手に変えないでよ、お姉ちゃん」

 

 時間が経つに連れて、アプリインストール大作戦結果報告会から、ただの家族の雑談に変わっていく。

 

「そういえばさ? 男の人のパンツの前の部分からおちんちん取り出すのって結構難しくない? なんであんな変な構造なの?」

 

「慣れれば簡単だよ、お姉ちゃん」

 

「その話は止めよう」

 

 と、お父さん。

 

 

 ──夕食後もリビングに家族全員が集まって雑談しているのは理由がある。

 

 ソファに囲まれたテーブルの上にスマホを置いて皆で監視しているのだ。

 ヒロくんのスマホにインストールした催眠アプリは、起動するとこのスマホにデータを飛ばして状況が分かるように作りこまれている。

 

 もちろん見張っていなくてもヒロくんのスマホにインストールされてる『女の子をサキュバスにしちゃう催眠アプリ』はそれ単体でちゃんと動作はする。アプリの機能をユーザーに説明して、使用するのであれば本人と対象の情報を登録するように促すだけのものだけど。

 

 それで催眠対象を登録されたアプリは、起動すると渦巻状の画像がグルグルと回転してそれっぽい演出を表示するけど、対象の女の子を催眠状態にする力など実際には無い。

 ヒロくんが私に催眠アプリを使ったら「あっ♥ 私サキュバスになっちゃう♥ ヒロくんのおちんちん大好き♥」とアカデミー主演女優ばりの名演技で、催眠に掛かったフリをしてヒロくんに襲いかかる段取りだ。

 

 ──完璧かな。

 

 ごろん。

 

 もし。

 まあほぼ無いと思うけど。

 可能性はゼロだとは思うけど? 

 

 催眠の対象者の氏名に私以外の名前が登録されてしまった場合は、遠隔でアプリをアンインストールできるように作ってある。

 

 ヒロくんが催眠アプリを信じて私以外の女子に対して偽物の催眠アプリを使ってしまったら、社会的に破滅する可能性がある。そんなことにならないようにするセーフティの仕組みだ。

 

 ごろんごろん。

 

 まあ、そんなセーフティは必要ないとは思うけど? 

 

 ……大丈夫大丈夫。必要はないし心配もしていない。

 

 ごろんごろんごろん。

 

「お姉ちゃんさぁ?」

 

「何?」

 

 突然話しかけてきた翠を床から見上げる。

 

「邪魔だし鬱陶しいんだけど?」

 

「姉に対してそんな言葉は使っちゃいけないのよ?」

 

 酷い言葉を使う妹を姉として(たしな)める。

 

「でも床を転がるのは止めた方がいいとお母さんも思うわ」

 

 ソファに座ってるお母さんが私から目を逸らしつつ、小さな声で指摘してきた。

 ごろんごろんと転がっていた身体を止める。

 さすがにお母さんから言われたら止めざるを得ない

 

「くっ」

 

 だめだ、転がりたい。

 じっと待っているなんてとてもできない。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

『アプリが起動しました』

 

 3時間後、お母さんと翠と私が見守る中テーブルの上のスマホに起動信号が飛んできた。

 ヒロくんが催眠アプリを立ち上げたのだ。

 

 スマホを手にとって耳を済ます。

 ヒロくんは大事なことを考える時、小さな声でつぶやく癖がある。

 

 その呟きを聞き取りながら、ヒロくんが催眠アプリを使う方向に誘導したい。

 アプリの説明文はあらかじめセットされているけど、私の持つこのスマホに音声入力するとそちらに差し替えることができるのだ。

 

 ヒロくんがアプリを使うか使わないのか運任せにするつもりはない。

 ヒロくんが使いたいと思うようなアプリだと適切に誘導すればそれだけ成功率は高まるのだ。

 

 これからの数分間に私の人生全てがかかっている!! 

 

 リビングのソファに座る私の横にお母さんと翠が集まってきた。

 そしてスマホから聞こえてくる声に集中している。

 

 

『ご安心ください! 催眠にかかった女の子は貴男と二人きりになった時だけサキュバス化するんです!』

 

 ヒロくんをより引き込むために早速アプリの説明を口頭で差し替えた。

 スマホに向かって私が喋った言葉がすぐに文字変換されてヒロくんのスマホに表示されていく。

 

「ねぇお姉ちゃん。そんな勢い任せでアプリの説明してどっかで矛盾したらどうするの?」

 

 隣で聞いてる妹がひそひそと小声で忠告してきた。

 そんなの間違えてたら、間違えましたって言えばいいだけじゃない。

 勢いさえあれば大抵のことは乗り切れると私は信じてる。

 

 万が一ヒロくんが途中で「やっぱ止めとこう」とか思ってしまったらこの作戦は失敗に終わるのだ。ヒロくんの様子を探りながらその場に合わせて引き込む説明をアドリブでしなきゃいけない。

 

「え? そうなの? 思ってたのと……違う?」

 

 手に持ったスマホからヒロくんの呟く声が聞こえてきた。

 やっぱりそうだよね!? 

 ヒロくんだって私が他の男子に襲いかかるシーンとか見たくはないはず。

 

『大丈夫です、サキュバス化した女の子は貴男以外の他の男の子には見向きもしません!』

 

 言い切る! 

 こんなの当然だ。

 ヒロくん以外の男子に用はないのだ。

 

「青子さんが…………僕専用のサキュバスに!?」

 

 私がサキュバス化した妄想でもしているのか、興奮して震えるヒロくんの声が聞こえてくる。

 嬉しい! 

 ヒロくんは催眠アプリを私に使った時のことを妄想しているのだ。

 

「…………お姉ちゃんさぁ? これ、催眠アプリってほんとに必要なの? ヒロシくん、お姉ちゃんのことしか考えてないよ?」

 

「黙ってて!」

 

「ひゃん!」

 

 ヒロくんが安心するようなことを今すぐ言ってあげる必要がある。

 

『周りに貴男以外の人がいたり、もしくは貴男以外の誰かに見られる恐れがある時はサキュバス化しない親切設計なのです! しかも! ここ大事ですよ!? サキュバス化した女の子は満足するまで催眠は解除されないのです!』

 

 あっ、ついつい私の願望が入りすぎた。

 だけど説明を聞いたヒロくんが今までにないほど興奮して、彼の震える声がスマホから響いてくる。

 

「すごい……僕が満足する……までだなんて……」

 

 やった! 

 今のセリフがヒロくんの心を撃ち抜いたのだ。

 

「あ、まずいよ、これヒロシくん絶対誤解してるよ? 今の説明ってヒロシくんが満足するまでじゃなくて、お姉ちゃんが満足するまで、って意味で言ったでしょ?」

 

 きっと翠を睨みつける。

 今の私には余裕がないのだ。翠のツッコミに答えてる暇はない。

 

「……そうだよ。そもそも催眠が解けた後、青子さんとどんな顔して会えるって言うんだ?」 

 

 あ、まずい! 

 ヒロくんの真面目な性格が出てしまってる! 

 興奮しすぎた反動で頭が冷やされてしまったんだ。 

 このままヒロくんが冷静になってしまうと、アプリを使うのを止めてしまうかもしれない。

 

 とにかく畳み掛けなきゃ! 

 

『ご安心ください! 催眠が解除されると催眠にかかった間のことを女の子は覚えてないのです!』

 

「え!?」

 

『記憶に残りません!』

 

「……覚えて、ないの?」

 

『はい!』

 

「全然?」

 

『全然覚えてません! 催眠でサキュバス化した時のことは思い出せなくなるのです! しかもですね!? 覚えてない間のことは女の子の中で自動的にいい具合に補完されるので、後になって疑問とか違和感を覚えることも絶対にないのです!』

 

「お、お姉ちゃん!? それすっごい無理があるよ!?」

 

「うるさい! 黙れ、妹!!」

 

「ひゃん!」

 

 翠が割と傷ついた表情で私から離れた。

 でも今はそれどころじゃないのだ。

 詰めの瞬間が近い! 

 

「おぉ! 凄い! このアプリ凄い!!」

 

『でしょうっ! 凄いんです、このアプリ!』

 

 ノリノリで私は絶叫した。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「……大騒ぎしてるようだけど、どうなったんだい?」

 

 もう深夜に近かったので寝室で寝ていたお父さんがリビングにやってきた。

 

「これ見てお父さん!!」

 

 手に持ったスマホをお父さんに突きつける。

 そこにはヒロくんが催眠の対象に選んだ女の子の名前、つまり私の名前と、選んだ理由が書かれている。

 

「…………青子さんの全部が好き、か。これはまた情熱的な愛の告白だね」

 

 お父さんがゆっくりとヒロくんの書いた文章を読み上げた。

 読んでもらうことで再び嬉しさが胸の内から湧き上がる。

 

「やったわ! 私やったのよ!!」

 

「さっきからこの調子で騒ぎ続けてるのよ、青子」

 

 お母さんが疲れた声でお父さんにそう告げる。

 ソファにもたれかかって半分目を閉じている。

 

「お姉ちゃんがもう30分も浮かれきってるの。お父さんなんとか言ってあげてよ。近所迷惑だよ、これ」

 

「あ、あぁそうだね」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ダイニングで朝食を食べながら、顔がニヤけてしまうのが抑えられない。

 いやよく考えたら抑える必要がないし。

 

「くふっ……くふっ……くふっ……」

 

「一夜明けても狂ったままか……」

 

「黙れ、妹よ」

 

 テーブルに置いたスマホをもう一度見る。

 もう100回は読んだけど、何度読んでも良いものは良い。

 

「青子さんの全てが好き…………ですって……くふっ……くふぅ……」

 

「その内落ち着くでしょ。ほとんどプロポーズみたいなものだし、こんな熱烈な愛の告白読ませられたらおかしくなるのも無理はないわ。青子は恋愛小説読みまくってた割に実践ゼロだったし」

 

「読まされたけど、ヒロシくんの意外と冷静なツッコミも入ってるよね。料理とか。それに今、ふと思ったんだけど、これ結果オーライだっただけで一歩間違えたらお姉ちゃん立ち直れない事態になってたよ?」

 

「え? 立ち直れないってどういうこと?」

 

 なんのこと言ってるのか分からない。

 まあアプリを使うように誘導するのは確かに賭けではあったけど。

 

「いや、催眠の対象にお姉ちゃん以外の……例えばA子さんの名前が書かれてて、そのA子さんを選んだ理由をヒロシくんが好き好き連呼してたら、それを読む羽目になってたんだよ、お姉ちゃんが」

 

「……あっ」

 

 ざぁっと一瞬で血の気が引いて、自分が薄氷の上で浮かれきっていたことに気付かされた。

 一歩間違えたら確かにそうなっていたかもしれない。

 

「地獄かな?」

 

 翠が追い打ちをかけて来る。

 

「ち、違うし! ヒロくんは私のことが大・大・大好きだったし!!」

 

 叫んで翠を睨みつける。

 

「まあそれはいいとして、次の対策はできてるのかい?」

 

 お父さんがコーヒーを飲みながら静かに皆に問いかけた。

 その口調に私も翠も口喧嘩を止めてお父さんを見る。

 

「対策って?」

 

「いや、ヒロシくんがこんなにも青子のことを好いているのなら、週明けに青子に会った時すぐにでも催眠アプリを使うとか考えられるかな? ヒロシくんの性格を一番知ってる青子はどう思う?」

 

「そ、そうね! ヒロくんは私のことが大・大・大好きだから週明け学校で会った時にすぐに催眠アプリを使って来ると思うわ!」

 

 ヒロくんが私のことが大好きって言い切れるのがこんなに気持ちいいなんて。

 当然すぐに催眠アプリを使ってくるに決まってる。そして二人は固く結ばれるのだ。

 

「くふっ……くふっ……」

 

 だめ、嬉しすぎて声が抑えられない。

 

 そんな私を妙に真面目な目で見つめていたお父さんがおもむろにスマホを掲げ、私に画面を見せて囁いた。

 

「催眠」

 

「は?」

 

 いきなり何? お父さんが壊れた? 

 

 お父さんが私の様子を見て首を左右に振る。

 

「……練習が必要だね。お母さん、文子(ふみこ)が催眠された時の演技はそれはもう凄かったよ。お父さんは完全に騙されたし」

 

 言われたお母さんはそっとお父さんから顔を逸らした。

 

「文子、すごく練習したんだろう? 私を騙すために」

 

「………………えぇ」

 

 ぼそりと小さく呟いたお母さんの声はダイニングに意外な大きさで響いて、その後静まり返った。

 

 

 

「……地獄かな」

 

 翠が小さく呟いた。

 



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第13話 決戦は金曜日

 

 ── 月曜日 ──

 

 

「では行ってきます!」

 

 私は家を飛び出した。

 学校でヒロくんが待っているんだ。

 

 ……というのもあるけど、この土日の二日間は家の中の雰囲気が大変キツかったので逃げ出したい。

 

 分かってる。

 原因は私にある。

 

 お父さんとお母さんの間にあった地雷と言うか、例えるなら地面の奥深くに埋めて、「無かったことにしましょう」と夫婦で取り決めていた匂いを放つ劇物(うんこ)を私が掘り起こして、ご丁寧にお父さんとお母さんの鼻の奥に捻じ込んだのだ。

 

 妹の翠は(つがい)(あつし)くんの部屋に転がり込んで週末は帰ってこなかった。

 

 一人だけずるい! 

 私には転がり込む先なんかないのに! 

 

 おかげで一人取り残された私は針の筵だった。

 

 だけどまあ、それはもういい。

 終わったことより、私は未来を見る。

 

 今日ヒロくんが私に催眠を掛ける方が大事。

 

 

 逸る足を抑えつつ、それでも小走りになってしまうのでいつもよりかなり早く学校についてしまった。教室に入ると、何人かのクラスメートの姿はあったけど、残念ながらヒロくんの姿は見えなかった。まだ登校してきてないみたいだ。

 

 ……もしかしたら早く登校してきてるかもと思ってたんだけど。

 

 だって、ねぇ? 

 ヒロくんは私のことが大・大・大好きなんだから、1秒でも早く私に催眠をかけたいはずなのだ。

 私だって1秒でも早く催眠にかけられたかったから、こんなに早く登校してきたのだし。

 

 教室の席に座りヒロくんの登校を待つ。

 夫の帰りを待つ妻の気分とはこういう感じなのか♥

 

 ワクワクするし、ドキドキもしちゃうとか♥

 なにこれ、こんなに幸せになっちゃうのか♥

 

 なんだか今日だけは私を中心に世界が回っているような気がする♥

 

「おはよう、青子さん」

 

 待つこと15分ほどで、ヒロくんが登校してきて教室に姿を現した。

 ヒロくんの顔を見たらヒロくんの熱烈な愛の告白文が頭の中に一杯になって、私の顔が一瞬で真っ赤に火照った。

 

 私はさりげなく手で顔を扇ぎながら、普段通りを意識してヒロくんに挨拶を返す。

 

「ヒロくん、おはおう」

 

 よし、声は震えなかった。頑張った、私。

 

 ヒロくんは私の席の隣を通りすぎ、私の前の席に座った。

 鞄から教科書を取り出して机の中にしまうと、ヒロくんはすぐに私の方を振りかえった。

 

 きたっ♥

 

 ドキドキしながらスマホのぐるぐる画面を見せられるのを待つ。

 

 この後すぐに催眠にかけられちゃうのだ♥

 ヒロくん専用の、ヒロくんだけのサキュバスにされちゃうのだ♥

 元々サキュバスだけど、それはそれ。これはこれ。

 

 ヒロくん専用のサキュバスになっちゃったら、きっと毎日おちんちんをペロペロ舐めさせられちゃう♥

 青子は僕の奥さんなんだからこのおちんちんを射精させるのが日課なんだよって言われちゃう♥

 でも妻としての大事なお仕事だもんね♥

 

 毎日5回かな♥

 それとも10回かな♥

 

 いやいや、そんな少ないわけないよね♥

 だって最愛のサキュバス妻の私に射精させられるんだもん♥

 

 一時限目と二時限目の間の休み時間でしょ♥

 二時限目と三時限目の間の休み時間でしょ♥

 三時限目と四時限目の間の休み時間も当然として、その次は長い長いお昼休み♥♥

 

 休み時間の度にヒロくんを射精させても、授業の間におちんちんは休めてるから次の休み時間には回復してギンギンになっちゃう♥

 ヒロくんは毎回毎回ギンギンになったおちんちんを私に無理やり咥えさせちゃったり♥

 

 それが一日最低でも20回? それとも30回? いやいや50回かな? 

 ううん、きっと毎日100回だ♥♥

 

 いけるいける♥

 きっとヒロくんなら超余裕♥

 

「──っ♥」

 

 いけない、想像しただけで軽く絶頂()っちゃった♥

 

 でも妄想が止まらない♥

 

 絶倫ヒロくんのおちんちんに繰り返しご奉仕させられて「もう許して……♥」と懇願してもヒロくんは許してくれないのだ♥ 「青子は僕だけのサキュバスなんだろ?」と私の耳元で甘く囁きながら私のあそこに指を入れてクチュクチュと弄って「ほら? 下の口はもう準備ができてるみたいだよ?」とSっ気発揮して虐めてきたりしちゃって♥♥

 

 なにコレ!?

 ものすごく興奮する!!

 

 女性向け小説投稿サイトの官能小説みたいに、絶倫のご主人様(ヒーロー)に溺愛される女の子(ヒロイン)のように私がイタされちゃうとかっ!! 

 

「──青子さん、週末何か気になる作品あった?」

 

「え? ええ?」

 

 いきなり現実に引き戻された。

 

 あれっ? 

 あれれっ!? 

 

 面白そうなネット小説を教え合うより、もっと重要なことがあるでしょ? 

 

 この妄想を現実にするためにっ!

 ほら! そのスマホをガッと! 

 私に向かってガッと!! 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 数学の工藤先生が黒板にカっカっと白墨で式を書いて解説しているのを聞いているうちに、茹っていた私の頭が冷えて冷静さが戻ってきた。

 

 うん、そりゃ無理だよね。

 周りにはクラスメートが一杯いたし。

 

 ……いやいや、絶対無理ってこともないか? 

 こっそりスマホの催眠ぐるぐる画面を見せてくれたら、私だってこっそり催眠にかかってあげるくらいの気配りはできる。

 

 例えば、授業中は周りのみんなは先生と黒板を見てるわけだから、ヒロくんはスマホの画面を背中に回して私にそーっと見せれば、ほら、私はすぐに催眠にかかっちゃう♥

 

 それで授業が終わって休み時間になったら、私はヒロくんの手を引っ張って誰もいないトイレへダッシュ……あ、そうか。トイレか。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「それで、どうだったの?」

 

「だめだった」

 

 ソファに突っ伏しながら、ひじ掛けを両手でバンバンと叩く。

 おかしい。

 

 私の全てを大好きなヒロくんが、今日私に催眠にかけなかったのはなぜなのか? 

 

 今日が私とヒロくんの記念日になるはずだったのだ。『僕だけのサキュバスになって』と君が言ったから●月●日は催眠記念日、というフレーズまで考えておいたのに。

 

「そっかー。まあ学校だと周りに一杯生徒いるもんね」

 

 今日はさすがに翠も私を見ながら話を聞いてくれてる。

 

「でもこっそり催眠をかけてくれたら私だってこっそり催眠にかかってあげるんだよ? 周りに生徒がいてもやろうと思えばやれるよね?」

 

「……ああやっぱりまだ狂ったままなのか」

 

 妹の翠がダメだこいつ、みたいな仕草をする。

 

「狂ってないから。ちゃんと正気だし。さすがに教室の中だと誰にも見られないように催眠にかけるのも催眠にかかるのもタイミングがシビアだし、ヒロくんも落ち着かないかなと思ってちゃんとトイレに誘ったのよ?」

 

「トイレ?」

 

「そう、N棟3階の女子トイレって昼休みは誰も来ないの」

 

「催眠に掛けてもらうために女子トイレに誘ったの?」

 

「でも断られたの! おかしくない!?」

 

 

 ── 火曜日 ──

 

 

「あれぇ?」

 

 

 ── 水曜日 ──

 

 

「なんで?」

 

 

 ── 木曜日 ──

 

 

「……それでどうだったの?」

 

 妹の翠がソファに寝そべりながら興味無さそうに聞いてきた。

 月曜日からずっと空振りが続いて翠の興味が薄れてきている。

 

「駅前で本屋をハシゴした後はマクドで本の感想をお互いに語り合ったの」

 

「楽しかった?」

 

「もう、すっごく楽しかったの!」

 

 ほっぺたに両手を当てて頭をブンブンと振る。

 

「ほーん」

 

「でも違うの! そうじゃないの!」

 

 頭を抱えて首をブンブンと振って、ひじ掛けをバンバンと叩く。

 

「学校の中じゃ無理っぽいから、放課後に学校の外に連れ出すって昨日言ってなかった? 駅前なんかに行ったら学校より人が多いじゃん」

 

 翠が不思議そうに聞いてくる。

 

「ほら、私の高校の南に松原公園てあるでしょ? ほんとはそっちにデートで連れて行こうと思ってたの」

 

「……ああ、あの公園? でもデートするには不向きじゃない? あそこ何にもないし」

 

「でもあの公園トイレがあるでしょ、誰も使ってない大きなトイレが」

 

「……お姉ちゃん、トイレになにか拘りでもあるの?」

 

「え? 無いけど?」

 

「じゃあ言うけどさ。さすがにトイレで初体験はないと思うよ?」

 

「え? そうなの?」

 

 妹が呆れたような目で私を見た。

 

「無いでしょ、あり得ないでしょ! 月曜日に学校のトイレに付いてきてくれなかったってお姉ちゃんが愚痴ってた時も、内心お姉ちゃん正気? って思ってたもん」

 

「酷くない!?」

 

 私の抗議を翠が鼻で笑った。

 

「ヒロシくんのさぁ? あんなに熱烈な愛の告白文読んでおいて、トイレで処女捨てるとかあり得なくない? ヒロシくんだって好きな女の子との初めてをトイレで済まそうなんて考えるわけないじゃん。好きな女の子相手に童貞をトイレで捨てましたって一生記憶に残るんだよ?」

 

「む、むむむー」

 

「お姉ちゃんさぁ? 雑過ぎない?」

 

 妹の翠があからさまに見下した顔で私を見てる。

 姉として敬う気持ちがこれっぽっちもない。

 

 おまけに「はぁ……どうしようもないな、こいつ」みたいな感じに姉に向かって溜息を吐いてる。

 

「お姉ちゃんは知らないだろうけどさ、男子って女子よりロマンチストなわけよ。だから可能な限りシチュエーションには凝ってくるもんなのよ」

 

「凝る……とは?」

 

 私には無かった発想だ。

 私はとりあえずヒロくんのおちんちんをすぐにでも舐め回したいだけだったし。

 

「例えば誰もいない図書室とか」

 

「図書……室?」

 

「……夕日が差し込み、カーテンが赤く染まる静かな学校の図書室」

 

「いきなり何言い出してるの、翠?」

 

「……校庭で部活動に勤しむ運動部員の元気な掛け声が遠くから響いてくる」

 

 少し顔を上に向けてなぜか目を閉じたまま翠が話し続ける。

 

「……それがむしろ二人っきりなのを意識させて、訪れる者が誰もいない図書室で意識しあった二人が恥ずかしそうに俯いて……こっそり横を見るとヒロシくんと目が合ってしまう。そのまま見つめ合う二人。時計が時を刻む音が二人の間を流れていく」

 

「──っ!」

 

「……ヒロシくんの頬が夕日ではない赤に染まって、その眼には美の化身を崇めるような崇拝する色が宿り」

 

「──美の化身っ!」

 

「自然と二人の間の距離が縮まって」

 

「それでっ!? それでどうなるの!?」

 

 思わず妹の襟首を両手で掴んでガタガタ揺らす。

 

「そういうグッと来る雰囲気(シチュエーション)をさぁ? ヒロシくんは狙ってると思うんだよね?」

 

 翠が私の手をぺしっと叩いて襟首から払いのける。

 

「そ、そうなのかも。じゃあヒロくんは二人っきりになれる金曜日の図書係の時を最初から狙って?」

 

「……ねぇ? お母さん思うんだけど、その雰囲気でヒロシくんって催眠アプリ使うの?」

 

 キッチンで晩御飯の準備をしていたお母さんが口を挟んできた。

 

「あっ」

 

「何もかも台無しにならない?」

 

「だ、台無しにはならない、かも」

 

「お母さんは茶々(ちゃちゃ)を入れたいわけじゃないんだけど、どういう理屈で台無しにならないと思うの、青子?」

 

「だ、だって途中まではすごく良かったし! 明日の放課後の図書室で、きっとヒロくんは催眠アプリを使ってくると思う!」

 

「まあ、少なくとも学校内だと金曜日の図書係の時が確実に二人きりになれるチャンスではあるし、可能性は高いんじゃない?」

 

 と翠。

 

「じゃあ、明日に備えてまた練習するから、プロの指導をお願いします、お母さま!」

 

「……青子は催眠にかかった演技はこれ以上練習しても上達しないと思うんだけど」

 

「もう十分上手いってこと?」

 

 そう聞いたら、お母さんは目を逸らした。

 

 

 

 ── 金曜日 ──

 

 

 

「っしゃおらあっ!!」

 

 ぱんぱんぱぱぱん!!

 

 差し出されたお母さんの手と翠の手に自分の手のひらを打ち付けると、小気味良い破裂音が玄関に鳴り響いた。

 

「いい、お姉ちゃん? 今日が決戦だよ!」

 

「分かってる!」

 

「お母さんが教えたように演技するのよ?」

 

「大丈夫! 今日の私はハリウッド主演女優!!」

 

「下着は?」

 

「勝負下着はバッチリ!!」

 

「よし! 行ってきなさい!」

 

「我! 出陣す!!」

 

 



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第14話 エピローグ

 

 そして季節は巡り…………

 

 

 

 

「卒業生代表 鬼頭大」

 

 体育館にずらりとパイプ椅子が置かれ、卒業生と在校生が並んで座っている。

 後ろの方は保護者の人がいて、うちのお父さんとお母さんもいる。

 

 司会役の先生の言葉に従い、座席から立ち上がったヒロくんがゆっくりと壇上へ歩いて行く。

 途中で先生方と来賓に向かってお辞儀をした後、体育館の壇上から並んで座っている私たちを一望して……ヒロくんは動きを止めた。

 

 だよね、思い入れあるもんね。

 生徒会長だったし。

 

 ヒロくんがポケットから答辞用の用紙を取り出して、背筋をピンと伸ばし良く通る声で語り始めた。

 立っているだけで絵になるなんてさすがヒロくんだ。

 

『……寒さの中にも春の陽気を感じられるこの良き日。多数の方々のご臨席を賜り、このような盛大な卒業式を開いて下さったことに、卒業生を代表して心から感謝申し上げます』

 

 ヒロくん凄いよね、首席だもん。

 いつのまにこんなスーパーマンみたいになっちゃったんだろ。

 

「……ねえ、青子ちゃん」

 

「ん?」

 

 隣に座ってる結衣ちゃんがひそひそ話しかけてきた。

 

「東京で住む場所ってもう決まったの?」

 

「ううんまだ。来週お父さんとお母さんと一緒にキャンパスの近くの不動産屋見て回る予定なの」

 

「鬼頭くんとの新居だもんね」

 

「え、えへへ」

 

 もうずっと(からか)われ続けてるけど、まだ慣れない。

 

 体育館の壇上ではヒロくんが答辞を読み上げ続けている。

 

『──私たちがこの学び舎の門を叩いたのは、まるで昨日のことのようですが、今となっては多くの思い出が詰まった3年間でした。新しい環境、新しい友人、新しい挑戦。全てが新鮮で、全てが刺激的でした。そして、それらすべてに私たちは一生懸命に取り組んできました』

 

「鬼頭くんT大だもんね。ウチの高校からT大行くのって20年ぶりだって先生言ってたよ」

 

 今度は反対隣りに座ってる杏佳ちゃんが話しかけてきた。

 

「う、うん。ヒロくん勉強もすごく頑張ってたし」

 

 そう。ヒロくんは本当に頑張ってた。

 

「なんでそんなに頑張ってるの?」

 

 と、以前ヒロくんのおちんちんを舐めながら聞いたことがある。

 なかなか答えてくれなかったけど、射精しないように寸止め状態で3時間しゃぶり続けたら恥ずかしそうに告白してくれた。

 

 ──青子さんに必ず幸せになってもらいたいからだ。

 

 だって。

 おちんちんの先っぽをちゅーっと吸いながら「今、幸せだよって」言ったらなぜか微妙な顔されちゃったのを覚えてる。

 

『──最後になりましたが、今日まで私たちを導いてくださった全ての皆様に、改めて心からの感謝を申し上げます。ありがとうございました。以上をもって答辞の言葉とさせていただきます。卒業生代表 鬼頭大』

 

 ヒロくんの答辞が終わると、卒業生や在校生、先生たちから一斉に拍手が巻き起こった。

 

 すごい。

 今日ここに集まった人がみんなヒロくんに向かって拍手してるんだ。

 

 私もヒロくんの妻としてすごく誇らしい。

 妻というのももう自称じゃない。

 籍は明日入れる予定だし、明後日には私とヒロくんの結婚式が開かれるのだ。

 

 結婚式には同級生からかなりの人数が出席してもらえる予定で、先生方──もう恩師と呼ぶべきなのか──も10名ほど出席してもらえる予定だ。

 もちろん隣の結衣ちゃんと杏佳ちゃんも私たちの結婚式に出席予定だ。

 

「でも学生結婚って凄いよね、みんなびっくりしてたもん」

 

「そ、そうかな? 早めにちゃんとした形にしておかないと、なんか危ないかなって思って」

 

「ふーん。急がない方がいいと思うけど。あ、そういえば結婚式にOBの久喜先輩も来るんでしょ?」

 

「うん。生徒会長つながりで一応声を掛けたけど」

 

「久喜先輩、今お腹大きくて大変なのに凄いよね!」

 

 そう言いつつ杏佳ちゃんが自分のお腹を愛おしそうに撫でる動作をすると、釣られるように結衣ちゃんまで自分のお腹を撫で始めた。

 

「……うん、そうだね。でもほら……校長先生の閉式の言葉も終わったし、これから卒業生退場だよ? 結衣ちゃんと杏佳ちゃんも立ち上がって?」

 

 まだ話し足りなそうな久珂結衣ちゃんと嶋久杏佳ちゃんをパイプ椅子から立つように促し、彼女たちが立ち上がりやすいように上から手を差しのべた。

 

 ……とにかく私とヒロくんは今日で高校を卒業するのだ。

 そして東京で二人っきりの甘々で濃厚でトロトロで幸せな新婚生活が始まるのだ。

 

「ねえ青子ちゃん? みんなで新居に遊びに行っていい?」

 

 後ろから葵ちゃんが小さな声で話しかけてきた。

 

「……も、もちろん、いいよ」

 

「そう、良かった。久喜先輩にも話を伝えておくね」

 

 そう言うと、佐久間葵ちゃんまで自分のお腹を愛おしそうに撫でながらにっこりと微笑んだ。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 家のリビングで、コテンと床に寝転がった。

 とうとう高校生活が終わったんだなって思いに浸っていると、お父さんとお母さんや翠から結婚式の準備を手伝えって視線が飛んできて痛い。

 

 正式な結婚式は鬼頭家と久米家の親族だけでやる予定で、高校の同級生や先生が出席するのは結婚式後のお披露目パーティだ。みんな学生だし、ご祝儀なんか出せないだろうから、大きなレストランを借り切って、司会とか裏方役も生徒会役員経験者とかの優秀なのが文化祭のノリでやってくれる予定で、打合せもほぼ済んでいる。

 

 かかる費用はヒロくんと私からそれぞれの家族へ出世払いの予定。

 こんな提案を受けてくれるなんて、ありがたい話だと思う。

 

 もちろんせっかくの結婚式、披露宴のパーティなのに素人が仕切って失敗したらどうするのって声もあったけど、ヒロくんが「文化祭と同じだ。成功とか失敗とかよりみんなが集まってくれる気持ちが大事だと思うよ。 だから仮に失敗したとしてもきっと後でみんなで笑い飛ばせるよ」って言ってくれたらみんな肩の力が抜けたみたい。

 

 そんなわけで、私は結婚式の準備じゃなく婚姻届を書いてる最中だ。

 明日、市役所へヒロくんと一緒に届け出る予定。

 

「……妻になる人の氏名は……久米青子っと。くふっくふっくふふ♥」

 

「きもっ」

 

「黙れ、妹」

 

 ジト目で軽蔑の視線を送ってきた妹を黙らせる。

 

「ところで住所ってどう書くんだっけ?」

 

「ヒロくんちの住所でいいでしょ? どうせすぐに東京に引っ越すんだし」

 

 お母さんが作業しながら反応してきた。

 

「……あ、そっか」

 

 夫婦の氏と本籍はヒロくんの方にしてっと。

 

「あれ? この婚姻届けの右下に書かれてる告知義務要項って何?」

 

 ネット上の記入例を解説してるサイトのところを見てもそんな項目が無い。

 

「ああ、それ? 私たちサキュバスと結婚する男性に対して市役所は告知義務があるのよ。あなたが結婚しようとしてる女性はサキュバスですが問題ないですよね? っていう念のための最終確認みたいなものね」

 

「えぇ!? なんでそんなのがあるの!?」

 

 ね、寝耳に水なんですけど! 

 

「別に差別を意図してのものじゃないわよ? そもそも昔と違って今のサキュバスは既に(つがい)となってる男性と結婚するし。(つがい)の男性も分かった上で結婚するわけだし。形骸化して形だけの確認項目が残ってるだけよ」

 

「……これ、チェックしないで婚姻届提出したらどうなるの?」

 

「私たちはちゃんと日本の市民として権利を持ってるけど、住民票データベースではサキュバスとして登録されてるから、記載漏れ扱いで必ず告知はあるわよ?」

 

「うそおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 思わず絶叫してしまった。

 お父さんもお母さんも翠までもがぎょっとした顔で私を見ている。

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

 リビングに重苦しい沈黙が下りて、私の背中を冷汗が流れ落ちた。

 

「………………青子、あなたまさか」

 

 お母さんが顔を真っ青にしながら私を見ている。

 

「ち、違うの! だって、ヒロくん、私をお姫様みたいに扱ってくれるし! なんでも言うこと聞いてくれるし!」

 

「青子、おまえ……」

 

 お父さんが愕然とした顔で私を見てる。

 

「あっ! だからかっ!! だからヒロ兄あんなに頑張ってたんだ!!」

 

 翠も顔を真っ青にして叫んだ。

 

「え? ヒロくんの頑張りがどうかしたの?」

 

「うわ! お姉ちゃん最悪! 張本人が分かってないとかあり得ない!!」

 

 翠がもの凄い怖い顔をして私に指を突き付けた。

 

「あっ! そうなのか!」

 

 お父さんも何かに気づいたように「はっ」と表情を変えた。

 そして青い顔が更に青くなった。

 

「お父さんどうしよう!? お姉ちゃんがやらかしてる! ものすごくやらかしてる!! これヒロ兄に一家揃って土下座案件だよ!!」

 

 ピンポーン♪ 

 玄関のチャイムが鳴った。

 

「あ」

「あ」

「あ」

「あっヒロくんかな」

 

 お父さんとお母さん、翠と私全員がお互いに顔を見合わせた。

 このタイミングでヒロくんがウチを訪ねてきたのだ。

 もちろん婚姻届とか結婚式の準備とかで話し合ったりすることは山ほどあるけど、今まさにこのタイミングなので家族全員の顔が一気に青くなった。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「……あの、これは一体なんでしょうか?」

 

 ヒロくんのものすごく戸惑った声がウチの玄関で響き渡った。

 

 そのヒロくんに向かってお父さんとお母さんと翠と私が揃って玄関で土下座してる。

 ちなみに私の頭を翠が上から押さえつけてる。

 

「ヒロシくん……ウチの娘がとんでもないことをしていたのが判明しました」

 

 お父さんの額が玄関の床にゴンっと音を立てて打ち付けられた。

 

「誠に……申し訳ございません」

「申し訳ございません」

「申し訳ございません」

 

「……えっと」

 

「ほら! お姉ちゃんも謝るのよ!!」

「あんたが一番謝るのよ!」

 

 ヒロくんの困惑がますます酷くなった。

 

「すいません。状況が全然分からないのですが、青子さんが何か失敗でもしたんですか?」

 

 

 

 

 

 

「…………なるほど。そうだったん……ですか」

 

「私たちは元々サキュバスの一族で、まさか青子がヒロくんのことをあの時からずっと騙したままでいたとは全然……くっ」

「もちろん今からでも結婚は破棄して貰っても構いません。慰謝料だって」

 

 

 どすっ! 

 

 玄関で棒立ちしていたヒロくんの膝からカクンと力が抜けて、崩れるように玄関に膝を付いた。

 

「ひっ!」

 

 その光景を見たお父さんとお母さん、そして翠の顔が引きつった。

 

「あ、あわわ……」

 

 終わった? 

 もしかしてヒロくんと私の関係が終わっちゃった!? 

 

 

「はぁ……良かったぁ……じゃあ青子さんは催眠で意志を捻じ曲げられたわけじゃなくて……僕のことがちゃんと好きだったんだね」

 

 だけど、ヒロくんが漏らしたセリフは想像していたのとは全然違くて……

 

「ヒロ兄聖人か……」

「器の大きさが違う」

 

「うわあああああん、ヒロくん大好きぃいいいいいいい」

 

 私はヒロくんに飛びつくように抱き着いた。

 目から涙が溢れてくる。

 

 私、こんな人を騙したままだったんだ。

 でも怖かったし。

 ヒロくんが自分の側からいなくなるなんて絶対耐えられないし。

 

 抱き着いた私の背中をヒロくんの手がポンポンと叩いた。

 

「うくっ……うぅ……」

 

「大丈夫だよ、僕は青子さんを幸せにしてみせるよ。ずっと僕の側にいてくれるかい?」

 

「うん…………うんっ!」

 

 抱き合ってるヒロくんと私の側にいつの間にかお父さんとお母さん、それに翠がいた。

 

 

「……たわけ者の娘ですが末永くよろしくお願いします、ヒロシくん」

 

「お父さん、普通こういう時って不束者ですがっていうんじゃないの?」

 

「青子はもっと反省しなさい!」

 

「ねぇ、ヒロ兄? ほんとにこんなの(愚姉)でいいの? 考え直した方がいいと思うよ。お姉ちゃんちょっとクズ入ってるし。もっと良い人絶対いるよ?」

 

「黙れ、妹」

 

 

 妹と悪態合戦を始めたそんな私の顎をくいっと持ち上げたヒロくんの唇が私に近づいてくる。

 

「え? ちょ、みんなの前なのに!?」

 

「僕を騙した罰だよ」

 

「で、でも!」

 

「まったく……聞き分けない奥さんだな……んっ」

 

「んんっ♥」

 

 唇が重なり…………こうして私はヒロくんの本当のお嫁さんになった。

 

 

 

 

 

 

<<久米青子の章 終>>

 

<<トゥルーエンド>>



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