仮面ライダーレクシード (ちくわぶみん)
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第1話[戦士の復活]
赤いオーラと恐竜の鎧を身に纏った騎士と黒いオーラと飛蝗の姿をした魔物がぶつかり合う。
その周りは荒地、周りにビルなどがないことから、恐らく太古の時代だろう。
騎士は跳び上がり、右足にエネルギーを込めた蹴りを、それに対する魔物の剣には黒いエネルギーが宿る。
両者の攻撃がぶつかり合う。同時に辺りは大きな爆発に包まれた。
「うわぁぁぁぁぁっ!?」
青年は目を覚ます。
ああ、またこの夢か……。
周りを見渡すと、そこは飛行機の客席。
乗客のほとんどは彼に釘付け。
まぁ、いきなり大声を上げたらそうなるといえばそうなるか…。
彼はいたたまれなくなり、彼は窓に視線を移した。
眼下には雲の下にうっすらと見慣れた日本のビルの屋上やらが見える。
「うおぉ、もうすぐ日本かぁ。教授も愛瑠も元気してたかなぁ」
この青年の名は
25歳の古生物学者だ。
小さいころから未知なる世界への探求心だらけで、将来は「誰も知らない発見を探す」というデカい夢でここまで来た。
5年ほど前に斡旋をしてもらい、ニュージーランドの発掘チームに参加、1か月ほど前に斡旋してもらった教授から日本に戻ってきてほしいという依頼があった。
その内容は「恐竜時代に存在した竜の戦士」について。
依頼を受けた理由は、さっきの夢の事だ。
小さいころからからこの恐竜の騎士と飛蝗の魔物が戦っている夢をだ。
多くの人は「ただの夢だろう」や「そんなの空想の産物だ」と鼻で笑うが、彼は違う。
信じているのだ。この恐竜の騎士は、本当にいると。
■■■
時を同じくして、山麓にある洞窟。
ここでは5年ほど前から遺跡発掘チームによる発掘作業が続いている。
「本当にここにあるのか?古代の戦闘民族の遺跡って?」
「さぁな。そもそも古代の戦闘民族なんて、漫画の話じゃねぇんだからさ」
洞窟内で2人の発掘作業員が愚痴りながら工具を手に岩を掘り進める。
黒曜石のような石で造られた祭壇と思わしきもの見つけた。
「なんだコレ?」
「まさか、本当に戦闘民族の遺跡、なのか?」
発掘作業員はライトで辺りを見渡した。
周囲には、祠と同じ材質で造られたであろう、蟲のような人型の像が置かれている。
その光景はまさに異様と言っても過言じゃない。
一人の発掘調査員は、祭壇の奥にある祠にライトを当てる。
その時だった。
「時ガ、来タ……!」
祠からどす黒い光が迸り、周囲の作業員は有無を言わさずに消滅した。
その光は人型の像を溶かし、3体の魔物が姿を現す。
「お久しぶりです。首領ローグスト様」
「億年ぶりの再会~」
「全く、窮屈すぎたぜ」
1体はアブラムシ、1体はメスの蚊、もう1体はザリガニの姿をしていた。
「我ラ、『ヴァグレード』ノ悲願、今コソ成ス時」
「あの憎き『竜の騎士』も今は土通り越して岩の下じゃない?」
「ならば悲願の序章は、私めが勤めましょう。この『レイドエッグ』で」
アブラムシの怪人は、自信ありそうな声で黒い卵を取り出す。
一方、違う洞窟でも何者かが動こうとしていた。
洞窟内に置かれていた琥珀色のやや大きな石から、小さな機械のような赤いティラノサウルスのような生命体が目を覚ます。
「奴らが、ヴァグレードが蘇りやがったか……!急いで探さねぇと。『竜の血』を引く者を!!」
小さなティラノサウルスは、祠から石でできた何かと卵を前腕で器用に背中へと運び、洞窟を駆け抜けていく。
■■■
「およそ1億年ほど前に、蟲の力を得た戦闘民族と恐竜の騎士の戦いがあった?」
「うん、帰国前に話していた恐竜騎士の話。つい2日ほど前に別の遺跡調査でそれらしき壁画が見つかってね」
竜希は空港に到着後、師である考古学者の福井斗真のSUVの中で、まとめられた資料を読んでいた。
資料の写真には、竜希の夢に出てくる恐竜の鎧に身を包んだ騎士と、蟲の姿をした魔物が対峙している壁画があった。
「さすがに我が目を疑ったよ。まさか、恐竜時代にパワードスーツのようなものが作られていたとはね」
「もはやオーパーツのレベルですね……。ってこの騎士が乗っているのって!?」
「驚いたでしょ?まさかのバイク。それに別の壁画にはそれが変形して獣脚類みたいなのに変形しているのもあったみたい」
竜希はさらに資料を読み進める。
そこには、先ほどの姿とは異なる鎧に身を包んだ騎士や、卵や腰巻らしき図が記された壁画まで乗っている。
腰巻にバイク、竜望はある言葉を口にした。
「まるで『仮面ライダー』みたいですね。この騎士」
「壁画を見るに、本当にそれに近いんだよね。ベルトにバイク。仮面ライダーって恐竜時代からいたんかなぁ」
「かもしれませんねぇ」
仮面ライダー。
それは、まことしやかに人々の間でささやかれ続けている正義の戦士。
どこかの秘密結社が戦闘兵器として開発した人造人間が、離反を起こしたのが切欠で正義に目覚め、怪物が現れるところにバイクに乗り現れ、去っていくことからこの名がつけられた。
しかしこれは都市伝説。
畑が違えど、これも俺の目指す「誰も知らない発見」なのかなぁと。竜希はしみじみと思う。
「あ、そういや愛瑠は元気にしてました?あっちだと遺跡発掘に勤しみ過ぎて全く連絡取れてなくて……」
「愛瑠ちゃん?相変わらず元気にやってるよ……。うん」
斗真は竜希の妹である愛瑠の近況を苦笑い気味に答えた。
あ、これ絶対なんかあるな。
そう思った竜希は思い切って聞いてみることにした。
「もしかして、またアイツなんかドジを……」
「まぁね。1週間ほど前に、展示品のアンモナイトの化石を割りかけたけどね……」
アイツ……。
と、竜希は妹の帰国前とは変わらないドジっぷりに頭を抱えた。
「へっくし!」
ほぼ同時刻、竜ヶ丘自然史博物館の研究室にて学芸員見習いの
「まさか、教授が帰国早々アニに私の変なウワサ言ってるわけじゃ、ないよなぁ~♪」
愛瑠はのんきに再びシュークリームを食べだした。
どうやら、それが当たっていることは知らないようだ。
■■■
そこから30分ほどが経ち、竜希も竜ヶ丘自然史博物館へと到着した。
この博物館は、斗真の曽祖父が作り上げた歴史ある博物館だ。
もちろん、斗真はここの館長も兼任している。
「いやぁ、5年前と比べても全然変わってないや……。愛瑠もここで?」
「うん。つい半年ほど前からだけど、学芸員の見習いとしてね」
いや化石割りかけたヤツが学芸員なんて務まるのか?
なんて竜希が思っていたその時である。
「タツ兄ぃぃぃ!お帰りぃぃぃぃ!!!」
と、博物館の2階の窓からの乗り出した愛瑠の叫び声が博物館の敷地内に木霊した。
しかも手には「お帰り!タツ兄!」「待ってたよ!」という団扇まで持っている。
「帰国早々やかましすぎるだろ!ってか、そこにいたら落っこちるぞ!?」
「へーきへっちゃら!何せ私の誇る兄の帰国なん……」
と、自信ありげのどや顔で言い張る愛瑠だったが、おっちょこちょいの性格が災いしたのか、窓から落ちてしまう。
「だ~から言わんこっちゃない!」
竜希は一目散に駆け出した。
そのスピードは斗真の眼では追えないほどの速さだ。
竜希は地面に激突する寸前にヘッドスライディングで愛瑠を受け止めた。
「いてて……。ったく、5年たってもドジは変わらねぇんだな」
「ゴメンゴメン。ついタツ兄の帰国を祝いたくて……」
「あと、ちょっとばかり太った?」
「ちょっ、再開早々そんなこと言うの!?」
再会早々女子に対していってはいけない言葉上位を放った竜希の頬を愛瑠は抓る。
矢継ぎ早に出る愛瑠の愚痴に竜希はうぅーとうなり声をあげるしかなかった。
「これは、いつもの倍以上に騒がしい日々になりそうだね……」
その光景を見た斗真はこの光景がこれからの日常になりそうだと悟った。
■■■
とあるビルの屋上。
人気すらないそんなところに、1人の影が現れる。
洞窟にいたアブラムシの怪人だ。
「さぁ、おいでなさい」
アブラムシの怪人は地面に向けて、卵を落とす。
卵が割れて、どす黒い波動は人型を成していく。
その人型は、クワガタムシのような見た目をしていた。
「往きなさい。クワガーゾーア。あなたが、我が主の悲願を成す開拓者となるのです」
「承知……!」
クワガーゾーアは、ビルの屋上から飛び降りた。
■■■
「なーんで俺が…」
竜希と愛瑠は、ショッピングセンターに来ていた。
竜希の手には、いくつかのブランド物の紙袋がぶら下がっている。
「さっきの失言の罰!」
「あの失言は悪かった!ってかいいのかよ?博物館ほったらかしにしておいて」
「教授が『せっかく兄妹が再開したんだし、今日は休みでいいよ!』って粋な計らいをしてくれたからオッケー!」
「教授……」
善意なのかお節介なのかがよくわからない教授の粋な計らいに、竜希は若干複雑そうな顔を浮かべるが、愛瑠のさっきより表情に余裕があるように見える表情をして安堵した。
5年もの間、兄としてずっと愛瑠の事を心配していた。
俺がいなくても大丈夫だろうか?
ちゃんと頑張っていけるのだろうか?
でも、こうして明るく元気にやっていてよかったと、竜希はほっと胸をなでおろす。
「タツ兄、どったの?」
「あ、いや。なんでもねぇよ」
「げっ!?そうだ限定パンケーキ!早くしないと売り切れちゃう!」
「あ、おい走るなって!」
愛瑠はそういうと、一目散に駆け出す。
頭の中は既にパンケーキでいっぱいのため、周りなんて見えてない。
それだからか、角から現れた影に気づかなかった。
「うげぇっ!?」
「おわぁぁぁ!?」
気づいたときには時すでに遅し、影と衝突して愛瑠は盛大に転倒した。
「うわぁぁぁぁ!?ごめんなさい!ごめんなさい!本当にマジでごめんなさい!!!」
「だーから言ったんだよ。こんなところで走るなって。すいませんね、うちの妹が……!?」
「へ、ほえぇぇぇぇぇぇ!?」
竜希は愛瑠がぶつかった相手に驚愕の顔をした。
それもそのはず、その相手は人ではなかった。
「ニンゲン……なのか?もしや、お前は……!」
それは、小さな機械の赤いティラノサウルスだったからだ。
「何これ!?新手のペットロボット!?かわいい!!」
「おいやめろ!オレ様はオメーに用なんて微塵もねぇんだよ!」
愛瑠はスマホを手に取り、早々にティラノサウルスを撮りまくる。
ティラノサウルスは愛瑠の頭を飛び越えて、竜希の近くにあったゴミ箱に着地した。
「おいそこのニンゲン!」
「お、俺、ですか……?」
「オメーしかいねぇよ!オレ様の鼻が鈍ってなけりゃ、オメーからは竜の血のニオイがする!」
「りゅ、竜の血?」
「あぁ、太古の時代にこの地球を救った竜の戦士、『レクシード』様の血がな!」
「そんな『どーだ!』みたいな感じで言われてもパっとしないんだけど……」
ティラノサウルスは右の前足で竜希をビシッと指さす。
な~に言ってんだこのミニ恐竜は……?
竜希の頭はあまりの情報量の多さにパンクしそうになった。
そもそも、目の前に機械のティラノサウルスがいるってだけでもよく分からん光景なのにだ。
でも、竜希は一つだけ引っかかる何かが頭を過る。
竜の戦士・レクシード。
それって、まさか……?
■■■
その時だった。
ショッピングセンター内に、大きな爆発音が鳴り響いた。
音がした方角を振り向くと、クワガーゾーアが腕のハサミで目に映る物全てを破壊し回っている。
周囲からは炎と煙が上り、人々は悲鳴を上げて逃げ惑っていた。
「タツ兄、私たちも逃げよう」
「あぁ、お前も逃げるぞ!」
「あ!?俺もなのかよ!?」
愛瑠の提案で、竜希はミニ恐竜を持って逃げだした。
なんだかさっきからよく分からないことだらけだけど、今は逃げるしか方法はない。
「なんなのあの怪物!?どっから湧いて出たの!?」
「アイツはゾーア。ヴァグレードが造り出した戦闘兵だ!」
「知ってるのか!?」
「知ってるも何も、レクシード様はそいつらと戦っていたからな!」
「そもそも一体何なのそのレクシードとかそういうのって…!?」
逃げ惑う最中、愛瑠は段差に足を引っかけ転倒する。
「愛瑠!?」
「いてて……」
竜希は愛瑠に駆け寄ろうとする。
しかし、クワガーゾーアは歩みを止めずに、愛瑠に狙いを定めていた。
「やめろぉぉぉぉ!」
竜希は愛瑠を助けたあの時と同じ常人離れしたスピードでクワガーゾーアに近づき、愛瑠に近づかせんとばかりに組み付いた。
「逃げろ!愛瑠!!」
「でも……」
「いいから!」
愛瑠は竜希にすまなそうに、この場を離れる。
しかし、クワガーゾーアはそれを簡単に振りほどき、竜希を吹き飛ばし、
「他愛もない。所詮は人間という下等生物か……」
クワガーゾーアはそういって鼻で笑った。
人間という下等生物。
その言葉が、竜希を焚き付けた。
「人間は、下等生物なんかじゃない……!」
「ん?」
「お前は何も分かってない!人間ってのは、幾億年も前からずっと、どんな時も、諦めずに前に進んできた!俺たち人間は、お前が鼻で笑うほどの簡単なもんじゃない!」
竜希はクワガーゾーアに言葉をたたきつける。
人間はどんな時も諦めない。
そう小さな時から教わってきた。
その言葉は、身に恐竜の心にも伝わる。
「おい、そこのミニ恐竜!」
「ミニ恐竜とは失礼だな。オレ様にもレックスって名前があんだよ!」
「じゃぁレックス!俺にその『竜の血』があるなら、あのバケモノを何とかできるんだよな」
「あぁ。あいつ等をバビるくらいにぶちのめす力がな!これを使ってみろ!ニンゲン!!」
ミニ恐竜改めレックスは、背中にあった石でできた何かと、卵を投げた。
竜希はそれを受け取る。
すると、石でできた何かは恐竜の横顔を模したバックルに、卵は内部にステゴサウルスの骨格が象られたアイテムに変わった。
レックスはニヤリとした。
やっぱり、コイツはレクシード様の血が引いていると。
バックルと卵を手にした瞬間、竜希の脳内にあるビジョンが浮かんだ。
バックルを腰に当て、卵をセットして嚙みつかせる。
なるほどな、これを使って戦えって事か!
竜希は、再びクワガーゾーアを見据え、バックルを腰に装着する。
〈レクシードライバー!〉
「そのドライバー、まさか……!」
起動音声とそのドライバーを見たクワガーゾーアはたじろぐ。
それを気にすることなく、竜希は卵をバックルにセットする。
〈ステゴエッグ!セットアップ!〉
セットした卵の音声を読み上げると、大地を踏み鳴らすような雄々しい待機音が流れた。
その音は竜希にとってニュージーランドで見かけたマオリ族の舞踊『ハカ』を彷彿させる。
待機音と共に、竜希の闘士が沸々と沸き上がっていく。
「変身!」
〈ヴァイティン・アップ!〉
闘士が極限まで高まった竜希は、その言葉を叫ぶと同時に卵を恐竜の口にスライドさせ、噛みつかせた。
恐竜の眼が青く光り輝き、竜希の体を青い琥珀が包み込む。
「させん、させんぞ!」
クワガーゾーアは腕のハサミから黒い斬撃エネルギーを飛ばした。
「タツ兄!」
「なぁに、心配ねぇよ!」
愛瑠は心配そうに見守るが、レックスは余裕そうに竜希を見つめる。
〈紺碧のソードマスター!ステゴアームド!〉
斬撃エネルギーが直撃する直前、琥珀が弾け飛び、1人の戦士が現れる。
白と銀が入り混じったボディスーツに、青と水色のステゴサウルスの突起が特徴的なアーマーを身に纏った戦士だ。
頭部のヘルメットには、金色のホーンとオレンジの複眼が輝く。
■■■
「すげぇ、なんだコレ……!」
「タ、タツ兄が、変身した!?」
「どうだ!それが竜の鎧を纏いし戦士『レクシード』だ!」
竜希は左右の腕を見たり顔に手を当て、自身が変身した姿に驚く。
その一方、レックスも主であるレクシードの復活に喜びの声を上げた。
「まさかと思っていたが、レクシードまで復活しようとはな。だが所詮成り代は人間。切り刻んでくれるわ!」
クワガーゾーアは跳び上がり、ハサミでレクシードを切り刻もうとする。
しかし、レクシードはそれを右腕で弾き飛ばし、拳の猛打を浴びせた。
猛打を浴びせた彼は、そこからソバットでクワガゾーアを蹴飛ばす。
「おのれぇ、ならば……!」
クワガーゾーアはハサミを分離させ、二刀流で応戦。
刃物という飛び道具での戦いに移るが、レクシードはそれを避けるしか方法はなかった。
何か、何かあるはずだ!
その思いで避けながら頭を巡らせる。
その瞬間、再びビジョンが彼の頭をよぎった。
背面のアーマーが剣になるビジョンだ。
「よし、これなら!」
レクシードは、背面の装甲から専用竜武装・ステゴカリバーを引き抜いた。
あっちは二刀流だが、アドバンテージは埋めることができる!
クワガーゾーアの双剣がレクシードを襲う。
剣の片割れを腕の装甲で弾き、空いた腹部にステゴカリバーで斬撃のラッシュで畳みかける。
さらに、逆袈裟斬りでクワガーゾーアを遠くまで吹き飛ばす。
すると、再びレクシードの脳内にビジョンが浮かんだ。
ドライバーの恐竜の口を2度噛みつかせて、必殺の一撃を発動するビジョンである。
「よし、これで一気に畳みかける!!」
〈フィニッシュヴァイティンアップ!〉
ドライバーの恐竜の口を操作し、必殺発動の音声がベルトから鳴り響く。
レクシードは右足にとてつもないエネルギーが溜まっていくのを感じた。
しかし、クワガーゾーアも諦めが悪く、再び斬撃エネルギーを飛ばす。
〈ステゴ!ザウリングフィニッシュ!〉
その音声の後にレクシードは高く跳び、エネルギーを回避する。
右足を前に突き出すと、恐竜の足を模したエフェクトが展開され、目にもとまらぬ速さの蹴りの一撃を浴びせた。
その一撃を浴びたクワガーゾーアは後方に大きく吹き飛ぶ。
「馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
その断末魔の叫びと共に、クワガーゾーアの肉体は爆散した。
「や、やった……。のか?」
レクシードはドライバーから卵を外し、竜希の姿に戻った。
初めての戦いだからか、疲労感が少し襲い掛かってくる。
「初戦であそこまで戦えるとは大したもんだ!さすがは竜の血を引く戦士……」
「とりゃぁぁぁ!」
「あ、愛瑠!?いったい何を!?」
レックスの労いの言葉を遮るかのように、愛瑠はリュックサックにレックスを封じ込めた。
中でレックスはじたばたしているんか、リュックがもごもごしている。
愛瑠の行動に、さすがの竜希も嘘だろという表情を浮かべた。
「何って、さっきタツ兄が変身したレクシードとかいうよくわからんヤツと、さっきのゾーアとかいう怪物の関連性をこのミニ恐竜から事情聴取するためだけど?」
「おい!何も見えねぇ!こっから出せ!」
「いーや!!ただでさえよく分からない恐竜を野放しにできないっつーの!」
「言ったはずだ!俺はレックスっていう由緒ある名前がだな!」
愛瑠はリュックの中のレックスとそう言い合いしながらこの場所を出ようとする。
遅れて竜希も、落ちてた紙袋を回収して愛瑠を追いかける。
■■■
「ふぅむ。やはり目覚めていましたか。レクシードも」
その光景を、アブラムシの怪人はビルの上で眺めていた。
「ならば、幾億年の決着もつけねばならないようですね……。ヌッフフフフフフ!」
怪人はそう笑うと、どこかへ消えていった。
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