伊吹廻戦 (软糖哭泣)
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懐玉・玉折
一話


伊吹萃香のクロスオーバーが呪術でなかったので書きました。
気に入って頂けたら幸いです。


母はよく私に向かって名前を呼んでいた。

子供に向かってなら当然かもしれない。

それでもその呼ぶ時の顔があまりにも切羽詰まった顔をしており私の名前には何か良くないものがあるのだと幼いながらに知った。

 

 

中学生頃にもなると自分の異常さに気づいた。何か不思議な力が全身を包み込んでいるそう言った雰囲気を感じ、それを裏付ける様にこの世のものではない物を見える様になった。

 

【っぁぁぁ】

人間でない呻き声が聞こえる。

ふと目をやるとそこにはドロドロに溶けた紫色のよくわからない物体が私を襲おうと蠢いている。

 

「それで?それからどうする?」

私に必死に攻撃しようとするが知能が足りないのかその攻撃はまるで当たらない。

 

あまりにも必死に手?の様な物をひらひらしてるので楽しくなってきてついデコピンをしてしまった。

 

【ずべらっっちゃ】

バーンと破裂音と同時に爆発四散してしまった。

 

「あーやっちゃった。」

私は自分の体に流れる謎の力を押さえ込もうとする。それでもなかなかそう言った操作は難しい。

私は倒したブヨブヨをそのままにして母に頼まれたコロッケを買って家に向かった。

 

私の村で私の居場所はない。

村人は事あるごとに私に向かって石を投げてくる。

特別痛いわけではない。だが痒いからやめて欲しいとはずっと思っている。

母が私が帰ってくると一目散に家の鍵を閉める様にしている。

それはまるで私と村を隔絶するかの様に。この日も村の外にある学校からの帰り。

村に戻れば私は迫害の対象。

それは母もそうだった。私には父はいない。

母に聞いても私も知らないの一点張り。

どこの誰が父かをわたしは知らない。

それがこの村の迫害につながっているのか?そう母に尋ねた事もあった。

だが母は、知らなくていいと困った様に応える為深くは詮索できなかった。

家に着く。

わたしが扉を開けるとそこには鼻に劈く程の腐敗臭。

そして目をギョロッとさせた魚頭の醜い物体がいた。

 

魚の口元を見ると母の首が咥えられていた。

胴体はちぎられ抵抗したのか爪が魚の鱗にこべりついている。

 

「お母さん?」

私は何が起きているのか分からず兎に角母の元に近づいた。

 

【っじゃぁぁぁ】

魚は母の頭を捨て私に突進してくる。

 

ジャキ

魚は何が起きたのか分からない様で自分の顔に手を当てる。

だがその手がどこにもみあたらない。

やっと自分の手が切られたことを理解して少し間を開ける。

 

「へぇー。私と勝負する気かい?生憎だけど今私は母を殺されて大変気分が悪いんだ。」

そこから先は勝負ではなく殺戮。

千切っては投げ相手が回復するまで待ち自分に一撃が当たるまでひたすらそれを繰り返す。

次第に魚は動きを止めて私から逃げ出そうとする。

 

「ダメ。」

そう言って私は魚の前に立ち塞がる。そしてもう一度攻撃しようとした時。後ろから誰かが来るのが聞こえた。

 

「それ以上君が戦う必要はない。」

少し強面のサングラスをかけたおじさんが人形?を使い一撃で魚を倒してしまった。

(もう少し痛めつけるつもりだったのに。)

私は、母にやった行いの愚かさをこの魚に叩き込もうとしたがその教育を止められ少し苛立った。

 

「君はこの人の娘か?」

男は母の遺体を集めて私に見えない様に前に塞がりながら聞いてくる。

「…」

私が無視をしていると

「私は夜蛾正道という。率直に聞こう。私と共に呪術高専で呪術を学ばないか?」

「呪術?」

知らない言葉に私はつい聞き返す。

「呪術を知らずにここまでのことができたのか…いやそれについても説明しよう。」

そう言うと夜蛾は、呪術について説明しだした。(説明は割愛)

「と呪術高専とはこれを学ぶ場だ。そこで君にもう一度聞こう。どうする?君が来る来ないにしろわたしは君を保護する。高専で学ぶならそれ相応の覚悟も必要だ。」

私は少し考えた。

「高専に行く。」

そう言うと夜蛾は、続けて私に聞く。

「では君は一体高専で何を学び何を成す?」

夜蛾が試す様に私に聞いてくる。

「やりたい事やってムカつく奴をぶん殴る。」

「…そうか。合格だ。」

夜蛾は、そう言いながら他の人間にも連絡を取る。

「そうだまだ君の名前を聞いていなかったな。」

少女は、名と言う部分に少し反応しそのまま口を開く。

「香萃。伊吹香萃。(かすい)」

少女にしては謎の貫禄がある夜蛾は少したじろぎ高専に来る準備をする様に告げる。

少女が立ち去った後

夜蛾は自分の懐から紙を取り出す。

それは

夜蛾の元に届いた一通の手紙。

差出人は伊吹。

彼女の母親からと思ったが少し違う。面識のないわたしの元に届いたのは単なる偶然なんだろう。だがこれではわたしはこの日家に来た。

夜蛾は、手紙を開ける。

所々文字化けしており何が書いてあるか分からない。咥えて何かの呪いがかかっているのか全容を把握することはできない、

 

 

伊吹萃香について。

 

蟷サ諠ウ驛キ縺ョ邂。逅????髮イ邏へ

 

彼女は「驟貞荘遶・蟄」の「蜈育・」りである。

本来の▪️は、伊吹「關?ヲ」。

 

「縺ゅ↑縺滓婿縺後h縺冗衍繧倶シ雁聖關?ヲ吶→縺サ縺シ蜷檎セゥ縺ァ縺ゅj險俶?縺ッ縲∝セョ縺九〒縺ゅk縺梧ョ九▲縺ヲ縺?k讓。讒倥?ゆス募鴻蟷エ縺ョ險俶?繧剃ク?豌励↓蜻シ縺ウ隕壹∪縺吶%縺ィ縺ッ縺ァ縺阪↑縺?ぜ蠕舌??↓諢剰ュ倥@縺ェ縺?ァ倥↓險俶?縺梧ァ狗ッ峨&繧後※縺?▲縺ヲ縺?k縲ゅ◎繧後?遘√?陦灘シ上↓繧医▲縺ヲ蟆代@縺壹▽陦後↑縺」縺ヲ縺?k縲」

 

私、伊吹生花は、逆転術式を持っている。

私は呪術の存在を知っているが何処の組織にも属していない。

 

それは「縺薙?螳カ縺御シ雁聖縺ィ蜻シ縺ー繧後k鬯シ縺ョ荳?譌上〒縺ゅk縺溘a縲ゅ◎縺ョ蜻ェ陦薙↓縺ッ蛻・縺ォ髴雁鴨縺ィ蜻シ縺ー繧後k蟄伜惠繧呈戟縺。縺昴?蟄伜惠繧呈蕗莨壹↓遏・繧峨l繧九o縺代↓縺ッ縺?°縺ェ縺?°繧峨□縲」

 

わたしは生まれたばかりの娘に逆転術式をかけた。

 

この術式は、対象を逆転させる事で強制的に縛りを産むことができる。

 

そして娘には「莠コ髢」と言う縛りを与えた。

 

わたしの娘の持つ術式は、この伊吹家相伝の術式「逍主ッ?桃菴」である。

 

娘の縛りの解除にはいくつか工程が存在する。

 

以下は解除方法である。

「迚ケ邏壼測迚ゥ

莨雁聖逑「繧剃スソ縺??繧帝」イ縺セ縺帙k縲

荳臥ィョ鬘槭?蛻?喝繧定?霄ォ縺ョ謇玖カウ縺ォ莉倥¢繧九?」

最後にこの縛りは娘の体と精神を守るためのものである。

本来の状態で生活は現代では難しい為術式を施した。

 

私の娘へ

以下は呪いがかかって読み進めることができない。

 

伊吹香萃と言う少女について細かく書かれたこの手紙は本来の誰に届けるつもりだったのかそして縛りを与えなければならないほどの負担とは。

考えれば考える程訳がわからない。

ただ一つ言えるのが。

 

「とんでもない戦闘能力だ。」

夜蛾が倒したのは少なくとも三級下手をすれば二級の呪霊。

呪術が何かも知らない少女が倒せる訳も勝負になることもない。

だが彼女は、あまつさえその勝負を圧倒し半分快楽の様な状態で嬲り続けた。

夜蛾自身ももう少し手こずるかと思っていたが来た瞬間に自ら命を差し出す様にした呪霊を見て度肝を抜かれた。

 

(この少女を放っておくことはできない。)

 

この先の、何か恐ろしい事が起きるかもしれない。そう夜蛾は感じた。

ならせめて自分の目の届く範囲でとそう考えた。

 

「さてあの問題児2人に続きもう1人問題児が増えるのか…ガッデッム!だがこの村よりはまともな生活ができるだろう。」

そうボソボソ呟くと少女の荷物を半分持ち共に呪術高専に向かった。




次回は五条とかと絡ませて行きます。(多分)

伊吹香萃(オリキャラ)の容姿
薄い茶色のショートヘアー
真っ赤な瞳
頭には真っ赤なリボン
身長141体重なし
絶壁


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二話

なんで五条そんなに強いんだよ…
少しだけ香萃の人間性が見えてきました、



 

「…」

香萃は、無言で夜蛾見ていた。

「なんだ?」

夜蛾は居心地の悪そうに香萃に聞く。

「いやサングラスかけないんだなーって」

「いつもはかけていない。あの時はたまたまだ。」

夜蛾はそう言いながら教室の扉を開ける。

 

「此処か?」

香萃は、教室の中にいる人数に驚く。

 

「あぁ二年は伊吹を含めて4人だ。」

夜蛾は、不遜な態度のサングラの白髪男を見てため息を吐き香萃を見る。

 

「紹介しよう。新しく二年に編入してきた伊吹香萃だ。」

夜蛾が紹介している最中に白い髪の男が退屈そうに椅子をガタガタさせている。

 

「伊吹香萃だ。よろしく。」

 

「てか、自己紹介とかいらなくねー強いか弱いかなんて一回戦えばわかるっしょ」

白髪の男はヘラヘラと笑いながら香萃を品定めする様に見る。

 

「えー私は女の子の同級生だから親睦深めたいんですけどー」

とやる気のない声で、香萃を見て手をひらひらとしている。

 

「悟ダメだよまだ術式を理解しただけのヒヨッコなんだいじめるのは良くない。」

前髪男の発言にイラッとした香萃。

 

「お前。強いんだろ。なら私の戦え。その綺麗な顔二度と使えないようにしてやる。」

香萃が悟と呼ばれた人間を指を指し勝負を申し込む。

 

夜蛾見て頭を抱え

「香萃もそっち側かー」

と遠い目をしていた。

 

編入少し前

 

「伊吹、君が持つ術式を解析する。どうやら君には術式がしっかりとあるようだ。殴る蹴る以外に何か特殊な事は出来るか?」

夜蛾の言葉に伊吹は、こくりと頷き。

 

「こうか?」

香萃は自分を霧状に分解する。

 

「霧状になるのがお前の力か?」

そう聞くと香萃は、霧から元に戻り首をふるふる横に振る。

 

「私は密度を上げたり下げたりしてるだけ。」

そう言うと香萃は、自分の体を夜蛾と同じぐらいまで伸ばした。

 

「なるほどそれは他人にもできるのか?」

夜蛾は、香萃をまじまじと見る。

 

「多分できる。だけど今の私にはできない。」

もどかしいといった感じで香萃は、石を砕く。

 

「そうだなその術式は、なんと言えばいいのか…」

夜蛾は暴れん坊な香萃にはあまり似つかわない繊細な術式にどんな風に呼ぶべきか悩んでいる。

 

「疎密操作。」

香萃は、ボソっと呟く。

 

「母から聞いたことがある。伊吹の家には独特な技があると。それが疎密操作。密度を自在に操る能力。自分の密度を操って体積を上げて巨大化したり逆にさげて自分を粒子より細かくし霧になる。そんな芸当ができると。」

そう説明する香萃に夜蛾は少し考える。

 

(この疎密操作が他の物体にも使えればより強力な、術式になる。だがこの術式は、あまりにも解釈が複雑だ。)

夜蛾がふむーと考えている。

 

「その術式をもっと深く理解できれば強力な武器になるだろう。」

夜蛾はその後香萃時何度か組み手を行い実力を図ろうとした。

したが、だんだん香萃が自分との戦闘に飽きてしまい。手を抜き始めた。まじめにやれといったら楽しくないと溢した。

夜蛾は、香萃を五条以上に子供だと評価した。

 

場面は戻りグラウンド

 

「お前俺と戦って勝てると思ってるの?」

五条は、ポッケに手を突っ込んだまま香萃を見下す。

 

「先生止めなくていいんですかー」

家入が夜蛾にそう聞く。

 

「止めても無駄だ。それにお互いの実力を知ると言うのは悪い話ではない。」

(それに五条と戦い何処まで戦いになるのかは判断材料としては十分だ。)

 

「へー。夏油は、どっちが勝つと思う?」

家入は、夏油に聞く。

 

「流石に悟だね。実力が違いすぎる。」

夏油は、考えるまでもないと一蹴する。

 

「それでははじめ!」

夜蛾の合図と共に香萃は、五条から距離をとる。

 

「何?ビビってんの?」

五条は、香萃を煽る。

 

「勝負は楽しまなくちゃ損だろ?」

そう言うと香萃は、地面を蹴り飛ばし空中に向かう。

 

「何がきても俺には関係ないけどね。いいよ。攻撃してみなよ。」

そういって五条は突っ立っている。

 

「鬼符・ミッシングパワー」

 

「は?」

五条は、空中から落下してくる物体が全く小さくならない状況に困惑する。

 

「うげーあれあり…」

家入は、香萃を見てそう呟く。

 

「でかいだけじゃない。相当な呪力も籠っている。」

夏油は、空中で巨大化した香萃を見て驚く。

 

ドーン

 

「なるほど。その力は確かに自信が出てくる訳だ。」

落ちた香萃は、そのままサイズを戻して五条のいた場所を見る。

 

「お前めちゃくちゃだな。」

五条は、砂煙をかき分けるように立つ。

五条の周りは地面が抉られ五条が立っている場所だけが無傷だった。

 

「それなら」

香萃は、ニヤリと笑い一気に五条との間を詰め五条のすぐそばで全力で殴る。

 

「だからお前じゃ俺に攻撃あたんないの。学習しろよバーカ」

そう余裕のある態度だったが五条のいた場所はさっきいた場所より少しずれていた。

 

「ふーん攻撃してこないなら多分負けるよ」

香萃はさっきとは比べ物にならないぐらいの力で五条をなぐる。香萃の殴った後は空気をが擦れたのか炎のような火が空中で燃えている。

 

「だか…うぉ!」

五条の体はそのまま吹っ飛ばされる。

 

「無限だろうがなんだろうがそれはお前とその周りに発生するもの空気を殴って振動を与えて無理やり無限の位置を変えてやればお前はその無限に引っ張られる。」

常識の範疇を超えた発言をする香萃に観客も口をあんぐりとさせている。

 

「お前それ、だいぶめちゃくちゃなこと言ってる自覚ある?」

五条は、いままで会ったことのないタイプの人間に笑みが溢れる。

 

「お前に呪力や術式を使う攻撃はあんまり意味がない。だからお前をどうにかするんじゃ無くてお前の周りをおかしくすればいい。ただそれだけのこと!」

香萃はそう言うと五条を頭上から殴る。

 

「しま!」

五条は、自分が地面に突き刺さるのを感じる。

 

「あっ」

五条に追撃を入れようとした時香萃の毛穴から血が溢れる。

 

「やりすぎた」

 

コフっと血反吐を吐いてその場に倒れ込む香萃。

 

「はぁ?」

五条は、いきなり倒れた香萃を見てため息を吐く。

 

「お前、体と力が見合ってねーんだろ」

五条は、地面に突き刺さった下半身を抜くようにして香萃をを見る。

 

「楽しかったよ」

バタン

香萃は五条に親指を立ててそのまま家入に直された。

 

香萃は、まだ寝ている。

 

「で?悟彼女は何をしたのさ。」

夏油は、五条に説明してみなと聞くと。

 

「あいつは俺にダメージを与えることをやめたんだ。俺に攻撃しても意味がないからその周りの空気をおかしくした。例え俺が宇宙空間に放り出されても生きていける自信はある。けど瞬発的な揺らぎにも直ぐに対応できるからそれを逆手にとって周りの変化をありえないほど早くし俺に強制的に適応させた。」

五条の言ってる意味がいまいちピンときていない2人は夜蛾に助けを求める。

 

「伊吹は純粋な怪力のみで周囲の常識を捻じ曲げた。空気の振動を恐ろしく早くすることで無限の対応する場所を五条の意識する前。無下限呪術で認識できないほど早く変化させた。その為無下限で対応していた所まで五条が引っ張られる形になった。言うなれば磁石だ。五条を無下限で引っ張ったと言うことだ。」

はぁーと夜蛾のが気持ちよさそうに寝ている香萃を横目に疲れたようにする。

 

「そんな事出来るんですか?」

夏油は、夜蛾に聞く。

 

「普通に考えて出来るわけがない。はちゃめちゃだ。天与呪縛の完成系でもできない芸当だ。香萃の術式とは違う恐ろしいほど卓越された怪力が香萃を香萃たらしめている。」

(しかもこれで本気に慣れていないのだから困ったものだ。)

夜蛾は怪力を見た後に香萃に全力か?と聞いたが香萃は首を横に振り。

「なんか足りない。こうガソリン的なものが」

と言っていた。彼女の言うガソリンを手に入れた時その怪力だけで特級になれるのではと思うほど香萃の怪力は異常だった。

 

「でもまぁそんな怪力があってもこうなっちゃうならあんまり全力出す意味ないと思うけどねー」

家入は、香萃の寝顔を見ながら言う。

 

(香萃の体は怪力に耐えれない。本人も何か外から強制的にそうさせられてるような感じがすると言っていた。つまり彼女に課せられた縛りはこの怪力を制御させる目的もあったのだろう。それだけにあの手紙が気になって仕方がない。)

そう考える夜蛾はふとグラウンドを見る。

 

「ガッデッム!」

それはさっきまで香萃と五条の暴れ回った跡。破壊され尽くした跡に夜蛾はようやく目を向けて胃が痛むのであった。

 

文字化けの一部の解答

わたしの娘の持つ術式は、この伊吹家相伝の術式「疎密操作」である。




できるだけ強さのバランスは取ります。頑張ります。


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三話

少し短めです。


 

「鬼符・ミッシングパワー」

 

あの時咄嗟にだったが馴染みのある言葉を言った感覚があった。

「なんで私はあの技を知っているのだろうか…」

香萃は、記憶の中で紅白の巫女服を着た少女にこの技を叩き込んだ記憶がある事に困惑する。

自分が生きた中では見たことがない。でも確かに覚えている自分の記憶。

「巫女服の少女を思い出そうとすると霞がかかる…」

まるでまだ思い出してはいけないかのようにはっきりと思い出すことができない。

 

数ヶ月後

 

「あっ悟。帰ってきたのか?」

歌姫と冥々の救出に向かった五条達が任務から帰ってきた。

 

「先生が三人を呼んでるよー何したの?」

 

そう聞くと歌姫は

「このバカが帳を下ろさなかったのよ」

と五条を指差してケッと悪態をつく。

 

「また?怒られるのめんどくさいんだからさーまったく悟は頭はいいのにバカだよねー」

香萃がケラケラ笑ってる。

 

「そうよ香萃!もっと言ってやんなさい!」

歌姫は香萃の頭を撫でながら五条に舌を出す。

 

そんな風に香萃は、悟、硝子、傑そして後輩と先輩との学校生活というのを満喫していた。

 

そんな中悟と傑は、ある少女の護衛を任された。

 

任務後悟は最強になった。

 

「それにしても常時無下限発動はチートだと思うんだけどなー」

香萃は悟に向かってズルいぞーと野次をかける。

 

「香萃だってそのフィジカルは異常だろ。俺が戦ったあのフィジカルギフテッドの男と同等の怪力だぞ。」

悟は、ペン回しをしながら私にそう言い

 

「最近じゃ体が壊れない程度に力抑えてるから尚その怪力を存分に使ってるよねー」

疎密操作なんて強力な術式あんのにと硝子は、香萃に向かって言う。

 

「まぁ疎密を操作するより殴った方が早いんだよ」

 

「うわー脳筋っイタ!」

香萃は、硝子に向かってデコピンをする。

 

「傑?ちょっと痩せた?大丈夫か?」

悟は、少し疲れ気味な傑に対して心配の声をかける。

 

「ただの夏バテさ。大丈夫。」

傑は、疲れた顔でそう言う。

 

「ソーメン食い過ぎた?」

傑は、そう言っている。

 

「ちゃんと休むんだぞ」

香萃がそう言うと傑は、少し顔を逸らし。

 

「あぁ」

と一言こぼすだけだった。

 

 

 

 

「香萃。」

香萃は、先生に呼び止められる。

 

「お前の言っていた場所に特級呪物があることがわかった。悟に傑は、任務が連続になっているからなお前が行ってきてくれ。」

 

「わかった。」

香萃は、先生からメモ書きを貰い自室にて出かける準備をする。

 

「あっ来てる来てる。」

自分の部屋の中に1枚の封筒を見つける。

その封筒をビリっと破り中身を取り出す。

その中には1枚の紙が入っていた。

香萃は、自分で母の事を調べていた。先生が別の呪術師と共に調査をしていると言うがそれがなかなか実っていない。だから香萃本人が調べている。

 

「…やっぱり。」

香萃の手元にあるその情報は、母が死んだあの日のこと。

 

【伊吹生花の死は呪詛師から受け取った呪物を使い伊吹香萃の村の村人に渡し解き放った為起こった事象である。またこの呪詛師は快楽犯でありその後高専にて五条悟の手によって捕縛。その後処刑された。村人も伊吹生花の死亡と共に死亡。伊吹香萃には、この情報は秘匿する事。】

 

「…気に入らないな。」

香萃は不機嫌な感情を抑えてただ一言漏らす。

 

特級呪物・両面宿儺の指

それが香萃が回収を命じられた呪物だった。

 

「それにしても七海と灰原大丈夫かなーなんか嫌な予感がして仕方ないんだけど…それに傑も…」

香萃は、今朝二級呪霊の討伐の為に駅で別れた2人の事を思い出していた。

 

「正直私が二級呪霊の討伐をして2人に指の回収をさせる方がいいと思ったんだけどな。」

香萃は、2人の任務に謂れのない親近感と何故か蛙の姿の少女を思い出した。その少女に何の面識もなかったが2人の任務の話を聞きその少女と二級呪霊が重なって聞こえた。実力が重なったわけじゃない。存在感が重なった。だからこそ嫌な気がする。2人は本当は自分より格上の相手をしないといけないのではないかと…

 

「でも灰原あんな感じだし…七海は、真面目だし。かわろうか?って言っても変わらないだろうしなー「いえ、私たちが受けた任務なんで。」とか言って…楽しようとすればいいのに…」

2人の性格をなまじ知っている為気をつけてと言い別れはしたものも2人に対する不安は拭えなかった。

 

「まぁ早めに指回収して高専に戻ろう。傑も何か悩んでるようだし。なんか飯でも奢ろう。」

香萃は、新幹線に揺られながら特級呪物の回収に向かった。

 

この時戻ればよかったと、無理矢理でも変われば良かったと香萃は、自分の勘を信じきれずに悔いる事になるのであった。




ネタが思いついたらまた投稿します。さしす編の綺麗な落とし所がまだ見つかってないので。
誤字報告などいつもありがとうございます。


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四話

短いですがそろそろさしす組の話も終わります。


 

「あぁ、香萃戻ったのか…」

そこには疲れ切った傑と椅子に座り怒りを露わにしている七海が、1人の遺体を見ていた。

 

「灰原は?」

香萃は、目の前にいる死体を見ながら七海に聞く。

 

「なんて事のない二級呪霊のはずでした。産土神信仰。あれは土地神でした。一級案件だ!」

その発言で七海は、怒りが最高峰に来たのか椅子を投げつける。

 

「クソ!」

椅子が壁にあたりぶつかった音が止み辺りに謂れの無い静けさが漂う。

 

「任務は悟が引き継いだ。」

傑がそう言うと七海は疲れ切ったように

 

「もうあの人だけで良くないですか?」

そんな弱音とも言える事を吐くのだった。

 

「灰原…」

香萃は、上半身だけになった灰原の首辺りに手を置き「すまなかった。」そう一言呟くのだった。

 

香萃が去った後残された七海と傑はそんな香萃の一言で一気に現実に戻された。

 

「香萃先輩のせいではないです。」

七海は、香萃の言葉に灰原が死んだのだと再認識しさらに項垂れる。

 

「香萃は、優しいからね…」

傑は、更に思い込んだように自らの拳を固く握る。

 

灰原の死体を見た香萃は自分が嘘をついた事に酷い罪悪感を覚えた。

 

「約束したのにな…灰原…」

香萃は自分の手に持っていた土産袋を見ながら任務に着く前の灰原との会話を思い出していた。

 

「香萃先輩!お土産に蟹買ってきてくださいよ!」

灰原は、香萃に唐突に言ってきた。

 

「何でだよ。高いだろ蟹。せめてお菓子にしてよ。」

香萃ははぁ?と言った表情で灰原を見る。

 

「最近、夏油先輩元気ないみたいなんで皆んなで蟹パしたら元気でそうじゃないですか!」

灰原はどうやら夏油の心配をしていたようだった。

 

「そうだな…確かに傑は最近頑張りすぎだもんな…よし!任務が終わったら豪快に宴と洒落込もう!灰原達は任務はあるのか?」

香萃が、ガははと笑い次の任務のことを聞く。

 

「まだ特に指示はないっすね!まぁもしかしたら任務入ってくるかもしれないですけど七海とどうせ行くんで大丈夫じゃないですか。」

 

「そうだな…七海優秀だもんな…」

そう言うと灰原は嬉しそうに。

「うっす」

と笑った。

 

 

「宴をするって約束したのにな…」

約束…なんて事のないただの約束。

 

「っち!私は嘘が嫌いなんだよ。そんな私に嘘をつかせるんじゃないよ…まったく。」

怒りか、悲しみか、哀れみかどんな感情かわからないまま香萃は自室に向かう。

 

灰原が死んでから少し時間がたった。

 

「伊吹瓢に三種の分銅?」

それはたまたま任務中に見つけた特級呪物並びに特級呪具が書かれているかつての文献だった。

 

「伊吹…」

香萃は、自分の名前が入っているその伊吹瓢に強く興味を惹かれる。

 

「封印場所は…」

香萃が封印されていると思われる場所を探すと二つの座標を指しそのクロスする場所は。

 

「賀県米原市岐阜県揖斐郡揖斐川町、不破郡関ケ原町【伊吹山】…私の住んでいた所。私は岐阜の方の麓ではあったが確かにここを指している。」

香萃は、任務の日程と照らし合わせて自分の故郷に戻りこの伊吹瓢と三種の分銅について調べようと決めた。

 

「香萃!」

自室で休んでいた香萃の部屋を勢いよく開けたのは五条だった。

 

「傑が…」

焦ったように信じられないよう五条が息を整える。

 

「どうしたの?悟。」

その慌てぶりから傑に何かよくないことが起きた事は理解した。

 

「傑が村人を皆殺しにした。自分の家族も…」

五条の発言に香萃は、意味がわからず。

 

「はぁ?」

ただそれしか言えなかった。




故郷は、大江山にするか伊吹山にするか迷いましたがそこまで関係ないのでとりあえず伊吹山にしています。


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五話

だいぶ予定とズレてるけどまぁ何とかここまで来た。


 

「俺だって信じてない。」

五条は、何かの間違いだとそう言っている。

 

「香萃。もし傑にあったらすぐに教えてくれ。」

五条は、必ず連れ戻す。と言い香萃の元を後にする。

 

「傑…そうかお前はそこまで…」

香萃は、傑の気持ちが少し分かっていた。元々呪術師の在り方に疑問を持っていたのだろう。それをひたすら悩んでいたのがここ最近の傑だったのだろう。

 

「でも…私が声を掛けたぐらいで何かが変わるとは思えないけどな…」

香萃は、手に入れた文献を引き出しにしまい傑の最後に担当した任務を見て次会う時の言葉を考えた。

 

しばら日にちが経ち硝子から連絡が来た。

 

「あぁ。香萃。うん見つけたよ。」

 

「悟には」

 

「もう伝えたよ。少し遠くにいるみたいだから香萃の方が早く来れると思う。」

 

「分かった行くよ。」

香萃は、電話を切り傑の元へ向かう。

 

「目元のクマ少し減ったね傑。」

香萃に気づいたのか夏油は、笑顔で香萃を見る。

 

「久しぶりにあった気がするよ。」

傑は、手を振りベンチに腰をかける。

 

「どうしてとは聞かないのかい?」

傑は、自分がどうしてこんな事をやったのかを聞かないのかと香萃に聞く。

 

「何となくだけど分かる気がするからね…同意はしないけど理解はしている。」

傑は、香萃の発言に少し目を丸くして。笑う。

 

「やっぱり君は変わっているね。理解してくれるなら一緒に来て欲しいけどね。香萃の力は悟にも引けを取らない気がするからね。」

傑は、握手を求めてくる。

 

「悪いけど、私は乗る気にならないな。正直私には傑や悟みたいに誰かを守りたいと思うほど強い正義感はないよ。」

香萃は、延ばされた手を上から押すように引っ込ませる。

 

「正義感か…村人と家族を殺した私にもまだそんな事を言うのかい?」

傑は意地悪そうに香萃に言う。

 

「正義感さ。私からすれば。お前達2人は形は違えど自分ではない不特定多数に目をむけている。親しい自分の周辺ではない。見えない存在まで救おうとしている。これを正義感と言わないなら何と言うんだ?」

香萃は、手に持っていたルートビアを飲みながら傑に言う。

 

「本当に君は…じゃ君は何の為に力を振るうのさ。弱者生存か?それとも別の何かかい?」

傑は、さっきの笑みから一点真剣な眼差しに変わった。

 

「わからない。何も。自分が何なのか。何をするべきなのか。曖昧な記憶の中に何があるのか。やりたいこともやるべきことも私にはわからない。」

香萃は、自分の手を太陽に翳しながら喋る。

 

「私は非呪術師の醜さを知った。だからそんな猿どもは、1人残さず殺すべきだと思ったさ。」

傑は、真剣に香萃を自分側に引き込もうとする。

 

「わたしはまだ直接その悪意を受け取っていない。全て間接的だった。だからまだ傑の意見には賛同できないし、傑のやり方では私らしくない。そう思っただげ。」

香萃の返答に傑ははぁーと息を吐き空を見上げる。

 

「理解も同意もしてくれそうだけど直感で生きる君が僕とは何かが違うと言うのであれば同じ道を歩む事はできないね…残念だ。」

傑は、心の底から残念そうにする。

 

「でもね香萃。君は必ず猿どもの悪意に晒される。そこで絶対に猿どもを見限る。私には分かるさ。初めて会った時からそんな気がしていたからね。」

傑は、そう言いながら立ち上がる。

 

「その時は意外と近いかもね…でも私と傑では歩む道が違うさ。結果が同じになろうとも私は私の納得する道を選ぶよ。じぁね傑。」

そう言い香萃は、傑とは反対に歩き始めた。

 

「さよなら香萃。」

傑は、少し悲しそうにその場を後にする。

 

(後少しもしたら悟が来る。傑は、任せよう。私は私の事を。)

 

そしてその足のまま。香萃は、伊吹山に向かう。

 

全ての始まりの場所へ。

 

自分の事を知る為に。

 

人間の悪意を知る為に。

 

母の愛を知る為に。




次話さしす編最終回


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六話

ちょい長めです。連続投稿は一旦終了。
次回からゼロ編


 

記憶の中にはいろいろなものがあった。まるで日記を読むようにその記憶が私には流れてくる。

紅白の巫女に、悪友だった紫色の金髪女。仲間であり家族であった一本角の女にチャイナ系の服に身を包む口うるさい奴。現実味がないが朧げに覚えていた。

 

だからこそ感じていた。

 

きっと私はこの記憶の保持者であり、生まれ変わりなのだと。

 

伊吹山の麓につき自分の家を訪ねたがそこには何もない。まっさらな土地が続いているだけだった。

 

「まるで何事も無かったかのように…」

香萃は少し不機嫌な様にその場を後にする。

 

目的の祠に来たが呪具も呪物も見つからない。

 

「確かここにあったはずだが…」

(あった?私が置いたのかここに…)

 

記憶が交差する。自分の中にある何かはここを指差す。

 

「お…お前は!」

いきなり声がして後ろを振り向くとかつて自分達を迫害した村人達だった。

 

「長。まずいですよ…伊吹の人間がここに来るなんて…」

村人はヒソヒソ喋り始める。

 

「お前達何か知っているのか?」

わたしは不機嫌な自分を押し殺して聞く。

 

「い…いえ。ようやくここに辿り着いたのですね!そ、そうですここは貴方がいるべき場所…われ、我々は、あなたを導く為にいるのです。」

村人の1人は焦ったように捲し立てる。

 

(長なにを。)

 

(黙っておれ。ここはわしに合わせるのだ。伊吹がここに来た時点で我々はもはや借りてきたねこだ。)

村人ははヒソヒソと喋る。

 

「何を言っている。正直に話せ。伊吹瓢は、何処だ。」

わたしは語気を強めに問い詰める。まるで自分のものを盗まれたかのように。そんな怒りが湧きながら。

 

「我々は、伊吹瓢については知りませぬ。あなたの母君が、持っていたと思いますが?それにあの母君も誰かに殺されてしまったようですしな。我々の預かりしれぬ所です。えぇまったく。」

白々しい態度に次第に苛立ちが込み上げ。

 

「私が聞いてるのは伊吹瓢のありかだ。お前達のことなどどうでも良い。それに母は、お前達が殺したのだろう?二度は言わない。正直に話せ。」

香萃は、正直に話そうとしない村人に苛立ちを覚え最早隠す気のない殺気を放つ。

 

「いえ?我々は母君の死亡については何も知りませぬ。むしろ母君の死体の側には貴方がいらっしゃったのでしょ?最早貴方が殺したのではありませんか?それに伊吹瓢など何にお使いするのです…か!!?」

喋り切る前に男の頭は二つに割れる。

 

「私の前で嘘を貫くか。知らないようだから教えてやる。私は嘘が嫌いなんだよ。」

そう言うと、もう1人の若い村人を掴み。

 

「お前達は私達を迫害した。そしてあまつさへあたしの母までも侮辱し私の前で嘘をついた。であれば覚悟はできているな。」

男は泣きながら懇願してくるが、怒りが込み上げた香萃は、その場にいた村人を殺す。そして1人の腹わたを引っこ抜いた時瓢箪が現れた。

 

「ここにあったのかなるほどみつからないわけだ。」

香萃は、とっくに切れたと思っていた里との関係で踏ん切りがついていたと思っていた。だが込み上げてくる怒りは変わらず。母の死を冒涜する彼らにそして自分を騙して嘘をつき続けた彼らにとてつもない嫌悪感が生まれる。

 

「ん?」

香萃は、自分の足元に一つの紙があることに気づく。

 

「酒呑童子?」

それはかつて平安の時代に京を恐怖に陥れた妖怪の姿が描かれていた。

 

「ふっ…そうか…そうだったな。私は、そうだったな。なるほどこれが母の愛情か…」

自分の頭にあった霞が晴れていく。

 

「霊夢に魔理沙。紫に映姫、茨木に星熊。幻想郷。幻想郷に行く前の京の都。安倍晴明。」

香萃は、すっきりしたように天を仰ぐ。

 

「あぁ。やっと思い出せた。そうだったな。ならばやるべきことはただ一つ。まずはわたしが私になる前に。香萃であった時の屈辱を無念を恨みを香萃のまま晴らすべきだな。」

そう言って香萃は伊吹山の麓の里に降り立つ。その形相は鬼のようであり村人は苦しみもがきながら助けを乞うが香萃は、気に求めずただひたすらに殴り燃やし殺し尽くす。

 

「何だわたしも結局傑と同じ事をしているじゃないか。」

自嘲気味に呟く香萃の前に一枚の紙が現れる。

 

「なんだ…ふっ。そうか。そうなるようにしていたのか。まったく回りくどい。だが母らしい。」

その紙を自分の胸ポケットにしまい辺にいる住民を殺戮して回る。

そしてその情報は、直ぐに高専に伝わり。想像通りの人間が来る。

 

「傑の言ってた事がよくわかったよ…悟」

香萃は、五条対して一度も目を合わさず告げる。

 

「非術師は、未知なる力を持つ私や母を受け入れる事ができなかった。その中でも異形として生まれた私は母以外から受け入れられなかった。」

香萃は、そう淡々と告げる。

 

「おい香萃お前何を見たんだそこで!」

五条は、自分を異形と言う香萃に対して彼女が調べていた自分の出自について問いただす。

 

「なぁ悟。どうして此処の連中はこんなにも嘘つきしかいないんだ。私は母を自分を誇りに思っている。なのに此処にいた嘘つきは、わたしを迫害したくせに試練だのなんだの言って自分のことしか考えない。」

香萃は、どんどん怒りを露わにする。

 

「おい香萃お前までバカな事考えてるんじゃないだろうな!」

五条は、夏油との別れを思い出す。

 

「香萃?いや違うよ私の本当の私はね悟。」

そう香萃が言うと手に持っていた瓢箪を傾け口につける。そして一口ゴクリと飲み込んだ。

飲み込むと同時に短くされていた髪は伸び、手足に分銅が付く。

 

「香萃お前…」

五条が見たのはそんな見た目の変化の中であまりにも人間とかけ離れた物。香萃の頭には身長とは不釣り合いな大きく捻れた二本の角が生えてた。

 

「萃香。」

「はあ?」

「私の本当の名は萃香。母が私を逆転術式で、縛っただから本来の名を名乗れなかった。」

萃香と名乗った人物は五条の目を通してみても香萃だと告げている。それと同時に彼女が人間ではないと言うことも告げている。

 

「お前…呪霊だったのか」

五条は、共に笑い合った存在が自分達がいむべき存在だった事にひどく困惑する。

 

「正しくは違う。あたし鬼の一族。妖と呼ばれる呪力だけではなく霊力をも使う存在。」

「どちらにしろおまえは俺たちを騙してたのか!」

五条は、咄嗟に構える。

 

「私も知ったのは今この瞬間だ。」

「なら戻ってこい!」

五条は、構えを解かないで必死に説得する。

 

「悟それは無理だ。私はこの村の連中を私の母を殺した連中を殺さなくては、それに母の遺言だ。私はこれから好きに生きるんだよ。悟…そこをどいて」

萃香は、五条を睨みつける。

 

「はいそうですかってなるわけねーだろ!」

五条は、術式反転赫を打とうとした

ーーーーーー!ーー、ーー、!!

萃香がそれを察知して大きく息を吸い込んで叫ぶ。その結果五条の後ろの森は一瞬で禿げる。その威力の高さがよくわかる。

そして叫び声と一緒に萃香の体はどんどん霧状になり周りにいた村人を全員殺し尽くした。五条は、さらに奥にいる村人の殺害を止めようとしたがすでに霧状になった彼女を掴めることも認識することもできず五条が助けるよりも前に村人は全滅し萃香は、五条の前から姿を消した。

 

「これは?」

萃香は、酒蔵にあった一本の純米大吟醸を見つけた。

鬼の特性で萃香は、喉を鳴らす。

 

「まぁこれで後腐れないって事で」

そう言いながら萃香は、酒を仰ぐ。

 

「プフぁーうまい!」

酒蔵に合った酒を全部飲み干し完全に千鳥足になった萃香はゆったりとその場を後にした。

 

五条side

「なぁ先生。俺強いよね…」

五条は、夜蛾に聞く。

 

「あぁ。憎たらしいぐらいにな。」

夜蛾は、なんて声をかけていいか分からなかった。

一度に2人の呪術師が呪詛師になった。その事実に夜蛾も戸惑っていた。

 

「俺が強いだけだと意味が無いらしい。向こうに救われる準備がないと救えない。」

五条は、香萃との最後の戦闘を思い出す。

 

「あいつあんなに強くなかっただろ…」

五条は、初めて戦うという状況で強者を感じた。

 

全てが変わってしまった。

だが五条は、何かを決意するように自分のメガネをあげる。

 

 

萃香side

 

「酒だー!酒を持ってこーい!」

酔っ払いの鬼は3級呪霊をパシリ酒を持ってこさて月と母からの手紙を肴に飲み明かすのであった。

 

 

 

伊吹香萃 改め 伊吹萃香

を特級呪霊並びに特級呪詛師と認定。

 

また萃香は、酒呑童子に生まれ変わりであり非常に高い戦闘能力を有する。戦闘の危険度だけで言ったら両面宿儺を凌駕する。

 

今回の事例で伊吹萃香は、目標達成まで殺戮行動をする事は確定である。それは酒呑童子の特性上曲がった事望まない為にある。

目標達成後は基本的に快楽主義的側面が出てくると思われる。自分が楽しいと思った事のみを行う習性上他の呪霊よりかは危険度は低くなる。

 

今後は術師ならびに関係者の殺害が行われると考えられる為危険度を極限まで上げて対処法必要がある。

 

手紙の内容

 

蟷サ諠ウ驛キ縺ョ邂。逅????髮イ邏へ

【幻想郷の管理者八雲紫】

 

彼女は「驟貞荘遶・蟄【酒呑童子】」の「蜈育・【先祖帰】」りである。

本来の▪️【名】は、伊吹「關?ヲ【萃香】」。

 

「縺ゅ↑縺滓婿縺後h縺冗衍繧倶シ雁聖關?ヲ吶→縺サ縺シ蜷檎セゥ縺ァ縺ゅj險俶?縺ッ縲∝セョ縺九〒縺ゅk縺梧ョ九▲縺ヲ縺?k讓。讒倥?ゆス募鴻蟷エ縺ョ險俶?繧剃ク?豌励↓蜻シ縺ウ隕壹∪縺吶%縺ィ縺ッ縺ァ縺阪↑縺?ぜ蠕舌??↓諢剰ュ倥@縺ェ縺?ァ倥↓險俶?縺梧ァ狗ッ峨&繧後※縺?▲縺ヲ縺?k縲ゅ◎繧後?遘√?陦灘シ上↓繧医▲縺ヲ蟆代@縺壹▽陦後↑縺」縺ヲ縺?k縲

【あなた方がよく知る伊吹萃香とほぼ同義であり記憶は、微かであるが残っている模様。何千年の記憶を一気に呼び覚ますことはできない為徐々に意識しない様に記憶が構築されていっている。それは私の術式によって少しずつ行なっている。】」

 

私、伊吹生花は、逆転術式を持っている。

私は呪術の存在を知っているが何処の組織にも属していない。

 

それは「縺薙?螳カ縺御シ雁聖縺ィ蜻シ縺ー繧後k鬯シ縺ョ荳?譌上〒縺ゅk縺溘a縲ゅ◎縺ョ蜻ェ陦薙↓縺ッ蛻・縺ォ髴雁鴨縺ィ蜻シ縺ー繧後k蟄伜惠繧呈戟縺。縺昴?蟄伜惠繧呈蕗莨壹↓遏・繧峨l繧九o縺代↓縺ッ縺?°縺ェ縺?°繧峨□縲【この家が伊吹と呼ばれる鬼の一族であるため。呪術とは別に霊力と呼ばれる存在を持ちその存在を呪術師達に知られるわけにはいかないからだ。】」

 

わたしは生まれたばかりの娘に逆転術式をかけた。

 

この術式は、対象を逆転させる事で強制的に縛りを産むことができる。

 

そして娘には「莠コ髢【人間】」と言う縛りを与えた。

 

わたしの娘の持つ術式は、この伊吹家相伝の術式「逍主ッ?桃菴【疎密操作】」である。

 

娘の縛りの解除にはいくつか工程が存在する。

 

以下は解除方法である。

「迚ケ邏壼測迚ゥ

莨雁聖逑「繧剃スソ縺??繧帝」イ縺セ縺帙k縲

荳臥ィョ鬘槭?蛻?喝繧定?霄ォ縺ョ謇玖カウ縺ォ莉倥¢繧九?

【特級呪物 

伊吹瓢を使い酒を飲ませる。

三種類の分銅を自身の手足に付ける】」

最後にこの縛りは娘の体と精神を守るためのものである。

本来の状態で生活は現代では難しい為術式を施した。

 

私の娘へ

 貴方が伊吹萃香であると知り。そして伊吹萃香となったとしても私は貴方の母で、貴方は私の子供である事は変わらない。本来の子供と違い貴方は最初から伊吹萃香であった。だけども伊吹は嘘を嫌う。貴方を本当に大切に思っている。これは決して嘘では無い。この手紙が貴方の元に現れたなら。私は死に貴方は酒呑童子になったのでしょう。かつて生きた伝説の鬼にまた戻ったのでしょう。貴方をただの呪霊と断ずる事はできない。貴方が行き場を失ったのなら幻想郷と呼ばれる土地に行くといい。今の貴方が何処まで記憶を思い出しているかわからない。ただ幻想郷、八雲紫という名を思い出したのならわかる事でしょう。貴方は記憶を失った伊吹萃香。だけれども感情も考え方も言い伝えの伊吹萃香と伊吹香萃で同じだった。だから例え全てを思い出しても貴方は変わらない。

だからこそ私の個人的な願いよ。人間、呪霊、妖怪。そんなもの関係なく好きに生きなさい。伊吹萃香であれば、伊吹香萃であればそうするでしょう。

貴方がやりたい事を、するべきだと思う事をやりなさい。それが人間に仇をなそうとも、呪霊に仇をなそうとも関係ない。それがきっと貴方なのだから。

PSこの手紙は私が呪いをかけたので私とあなた以外は見れないから安心してね。

 



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七話


かなり今回は長めです。0の話を1話でまとめました。
映画の話を思い出すのに時間がかかった。
そろそろ東方要素が強くなっていきます。
東方知らなくても何とかなります。


 

「呪いの女王ね…全くいつの時代もつまんない物が有名になるねー…皆で酒飲んでバカ騒ぎするのがいちばん楽しいじゃないか…」

萃香は、叩きのめした呪霊達を椅子にしながら酒を呑む。

 

「ヒック。でもまぁ今回も様子見かな…あの少年は一体どうするのかな?」

萃香は、枡を片手に白い高専の服に身を包んだ少年を遠目から眺めていた。

 

「楽しみにしてるよ。乙骨憂太。」

呪霊らしい笑みを浮かべ目を包帯で隠している友人を同時に見た。

 

乙骨憂太が高専に来て学校にも慣れた頃呼んでもいないかつての学生が彼らの前に出てくる。

乙骨憂太には彼の言う理想が何一つ分からず混乱していると。

 

「僕の生徒におかしな思想を押し付けないでくれるかな?傑。」

五条はいつもと違い飄々とした言葉遣いではなく語気の強い口調で言う。

 

「悟、久しいね。あれ?香萃はどうしたんだい?」

夏油と呼ばれた男は五条の隣に1人足りないなーと軽口を叩きながら続ける。

 

「ひょっとして彼女も猿共を見限って出て行ってしまったのかい?」

夏油は嘲笑うように禪院真希を見ながら無理もないねとつぶやく。

 

「アイツの事お前には関係ないだろ。」

五条は、夏油を睨むように生徒を後ろに下げる。

 

「っふ…まぁいいさ。今回は告知さ…」

夏油は、自分の声がここにいる全員にちゃんと届く様に宣言する。

 

「来たる12月24日日没と同時に我々は百鬼夜行を行う。場所は呪いのルツ。東京、新宿、呪術の聖地京都。各地に千の呪いを放つ。下す命令は勿論鏖殺だ。地獄絵図を描きたくなければ死力を尽くして止めに来い。思う存分呪いあおうじゃないか。」

言いたいことを言い夏油は、彼らの元から退散して行った。

 

その様子を遠くの伊吹山から見ていた萃香は、友人たちのすれ違いを見てはぁと息を付き。

「本当に不器用な2人だね…まったく…」

いつもみたいに馬鹿みたいに酒を仰ぐのではなくしんみりと過去を思い出すかのようにゆっくりと酒を呑んでいたのであった。

 

「さて、傑はおそらく…なら行くべきなのは…京都かな。」

萃香は、瓢箪を片手にフラフラと京都に向かうのであった。

 

12月24日 百鬼夜行

 

「なんだよこれ…おかしいだろ…」

京都に現れた一体の呪霊が周りを絶望にたたき落とした。

 

「うぁぁぁ」

1人ががむしゃらに刀を振るうが軽く止められて投げ飛ばされる。

 

京都の町に鬼が出た。その鬼は周りを呑み込む様な強い呪力と謎の力のようなもので恐怖で足がすくみ誰も動けないようだった。

それは呪霊も同じようでわけもわからず萃香を攻撃していく。まるで混乱している様に。だが萃香によって一撃で祓われる。

 

萃香は、片手間に自分以外の相手をし自身の持つ千里眼で傑の様子を見る。

 

「素晴らしい。素晴らしいよ。私は今猛烈に感動している。乙骨を助けに馳せ参じたのだろ。」

傑を千里眼で見ていた萃香は、楽しそうな傑につい笑いが出る。

 

「何をやってんだアイツ。いつの間にギャグ要員になったんだい。」

周りにいる呪霊も呪術師も呪詛師もボコボコに殴りながら傍らで傑の様子を見る。

 

「呪術師が呪術師を自己を犠牲にしてまで慈しみ敬う。私の望む世界が今目の前にある。」

涙を流す傑に萃香は、今までの表情が消え真顔になる。

 

「まったく…」

 

「本当はね君にも生きていて欲しいんだ乙骨。でも全ては呪術界の未来のためだ。」

 

記録 2017年12月24日 

「来い。里香!」

特級過呪怨霊 祈本里香

二度目の完全顕現

そこで一度萃香は、千里眼を止めて周りの呪霊を一掃する。

 

ある程度片付き後はどうとでもなる所まで呪術師と呪霊をボコした。

 

「さてとそろそろ私も…!」

萃香は、京都から引き上げようともう一度乙骨と傑の様子を見ようとした時。

 

乙骨がスピーカーを片手に呪力を発散する所見た。

 

「死ね。」

 

一瞬にして低級ではあったが呪霊を一掃した。

 

「やるね…乙骨憂太。これなら確かに…」

萃香は、ニヤッと笑みを零し。

(悟だけが最強の呪術界は、変わる。)

 

急いで高専に向かおうと周りを見る。

 

周りには呪術師が立っている。

 

ボコボコにした呪術師が諦めて呆然と立っていると。

 

「ここは私が。」

「フッ。」

萃香は笑った。そこに来た人物があまりにも懐かしかったから。

伊吹萃香と七海健人はかつての自分の先輩と自分の後輩と鉢合わせるのであった。

 

「随分と懐かしい顔だね。」

萃香は、伊吹瓢を片手に七海を見る。

 

「えぇ。貴方は随分と変わりましたね。」

七海は、かつて尊敬した先輩。そして今は倒すべき邪悪としてその姿を見ている。

 

「はぁぁ!」

七海は、ナタを萃香に叩き落とす。

 

「スピードは、悪くないね。でも私を倒すには、ちと火力が足りない。」

そう言って足を地面に叩きつけ地割れを起こす。

 

「お前は今鬼と戦っているのだから!」

そう言うと周りの霧がさらに濃くなる。

 

霧に気を取られたそばから

 

「萃符!戸隠山投げ!」

辺りの岩や石を萃めて巨大な岩にして七海に投付ける。

 

「んな!」

七海は、かろうじで避ける。

 

「っはぁ!」

七海は、黒閃を萃香叩き込もうとする。

 

「霧符!雲集霧散!」

辺りの霧を吸い込み七海の前方に吹き出す。

霧の壁は七海の黒閃を押さえ込み更に萃香の攻撃が激しさをます。

 

「酔神。鬼縛りの術」

手足の鎖を七海に縛り付け

 

「萃鬼!天手力男投げ!」

弧を描くように飛んできた萃香は、七海を岩で推し固めてそのまま七海を投げ飛ばす。

 

「っ!はぁはぁはぁ。」

七海は、今までの能力をあまり使わず怪力のみで戦っていた姿とは異なる姿を見て酷く困惑する。

 

「随分戦い方が変わりましたね。粗密操作。やはり恐ろしい。」

怪力に粗密を操る攻撃をしてくる。それ以上の怖さはない。

 

だが萃香は、ニヤッとわらい。

 

「まだまだ行くぞ!七海!」

そう言うと七海の懐に入ってきて

 

「鬼符!大江山悉皆殺し!」

七海の首根っこを掴み何度も地面に叩きつけるそして極めつけとばかりに大爆発を起こし七海を吹き飛ばした。

 

周りの呪術師も七海が手も足も出ず玩具のように扱われるのを見て絶望する。

 

「これでも抑えているが…七海も死んではないだろうし。気絶はしてると思うけど…まぁとりあえずこいつら撒くなら」

 

「鬼符!ミッシングパワー!」

巨大化して周りの呪術師をいっきに吹き飛ばし気絶させる。

 

巨大化を解きその場を後にする。

 

七海を撒き。萃香は、東京の高専までやってくる。

 

萃香は、すぐには2人のそばに近寄らずに遠目から見る。

 

そして着いてすぐに事態は、動き出す。

 

そこには折本里香にキスをする乙骨憂太。

 

「あっああぁぁぁぁぁぁぁぁー!憂太!憂太!」

祈本里香は、呪力をさらにあげすぐるの前に立つ。

 

「大大大大大好きだよ!!」

呪力が並の呪霊の何倍にもなった。

 

「そう来るか女誑しめ!」

傑は、自分の呪力を集中させる。

 

「失礼だな…純愛だよ。」

 

「ならばこちらは大義だ!」

 

お互いの呪力がぶつかり合う。

 

だが折本里香の呪力が傑を上回り。

 

傑の敗北が確定した。

 

 

ボロボロになった傑を見て萃香は、最後になる親友と話そうと近づこうとした。

だがそれと同時にもう1人の親友。悟が彼の近くにやってきていた。

 

傑は、ボロボロになった体を壁に押し当てかろうじで歩く。

 

「素晴らしい。本当に素晴らしいよ。まさに世界を変える力だ。里香を手に入れればせこせこ呪いを集める必要も無い。次さ、次こそ手に入れる。っふ。遅かったじゃないか悟。」

悟が傑と邂逅する。萃香は、少し離れたところからそれを見る。

 

「あの時は私が先だったからな。今回は譲らないとな。それに傑には悟の言葉が必要だ。」

萃香は、ふたりが話終わるのを静かに眺める。

 

「君で詰むとはな。私の家族たちは無事かい?」

傑は、どこか安心したかのように悟を見る。

 

「揃いも揃って逃げ果せたよ。京都の方もお前の指示だろ。あいつ以外。」

悟は、傑を真っ直ぐ見たまま話す。

 

「まぁね。君と違って私は優しいんだ。それにあいつってもしかして香萃かい?」

傑は、私の名前を呼び懐かしそうにする。

 

「あの二人を私にやられる前提で送り込んだだろ。乙骨の起爆剤として。」

 

「そこは信用した。お前のような呪術師は、理由もなく若い呪術師を殺さないから。」

 

「信用か。まだ私にそんなものを残していたのか。これ返しといてくれ」

傑は、悟に乙骨の学生証を渡す。

 

「小学校もお前の仕業だったのか。呆れたやつだ」

悟の口調はだんだんあの時の共に笑った時の日に近づいていた。

 

悟は覚悟を決め傑に言う。

「何か言い残すことはあるか?」

 

「誰がなんと言おうと猿共は嫌いだ。でも高専の連中まで憎いわけではなかった。ただこの世界では心の底から笑えなかった。」

傑の懺悔にも近い言葉。

 

「傑…」

 

萃香は、悟がこの先何を言いたいかわかった。だから聞こえないようにした。聞かないようにした。それは彼らの中で大事なものだから。

 

悟の手によって傑は、殺された。

 

「幽々子…」

萃香は、自分の友人に話しかけた。

 

「一瞬でいい。アイツの魂を肉体にそのまま残してくれ。私も伝えたい事がある。」

萃香は、隙間から顔を出した水色の帽子を被った幽霊の様なピンク髪の女が出てくる。

 

「ならあの白髪の子より先に会えば良かったじゃない。萃香。」

幽々子は、呆れたと言う風に続ける。

 

「今魂を固定してもあの子は貴方とここで喋ったことは覚えてない。それはあの子の死体にも魂にも蓄積されない。貴方が彼を思うなら白髪の子より先に話しかけてあの最後を迎えた方が良かったわ。」

幽々子は無駄よ。と伝えてくる。

 

「それでいい。例え覚えてなくてもいい。私にとって悟が先に会うことに意味があった。だから間違いではない。頼む幽々子。」

真剣に頼む萃香に幽々子はおれ。

 

「日本酒と美味しいお魚で貸しにしといてあげるわ。紫はお煎餅だって。」

幽々子はそう言いながら死を操る能力を、用いて一時的に傑を蘇生する。

 

「もって15分よ」

 

「十分だ。」

萃香は、傑に近づき

 

「よっ。傑。」

あの時と一緒のテンション感で話しかける。

 

「おかしいな私は今悟に殺されたはずだけど?」

傑は目の前にいるかつての親友を見てさらに驚く。

 

「それにその角は…」

傑は、さらに戸惑うように萃香を見る。

 

「傑は、もう死んでいる。この話も何もかも残らない。結果は変わらない。でも最後に約束を果たさなきゃな。」

そう言って萃香は、酒を片手に枡を2つ用意する。

 

「それは酒かい?私はあんまり飲まないのだけどね。」

傑は、変わってしまったかつての親友を見てそれでも懐かしそうに見る。

 

「あの日灰原と約束したんだ。この任務の後お前を励ます宴をしようって。」

萃香は、傑の前に座り酒を注ぐ。

 

「…そうか…香萃。君は一体何者なんだい。」

傑は、いい加減教えてくれ。と聞いてくる。

 

「私は呪霊だよ。生まれた時から。」

その言葉に傑は、妙に納得し更に疑問が出る。

 

「ではなぜ敵対しないんだ。」

呪霊とは呪い。呪いは人を襲う。だが萃香にはそれが無い。

 

「私は人の病や恐怖の象徴であり。人々の願いの呪いだ。」

萃香の言葉に傑は、疑問が浮かび聞き返す。

 

「願い?」

 

「あぁ。泣いた赤鬼も鬼は嘘が嫌いも。今の世界にいる呪いの呪霊とは違い、こうであってほしい。実はこんな奴らなんだ。そんな集合体的な恐怖と願いが集まった存在だから呪霊とは、言われず妖怪。妖と呼ばれる。」

 

「それが何で人を襲わない理由になるのさ?」

傑は、納得できないさと。言う。

 

「鬼は嘘を嫌う。鬼は喧嘩を好む。鬼は大酒飲み。鬼は宴会を好む。人を襲わない訳では無い。でも呪霊と違い。マイナスだけでは無い。それが私たち妖怪と呼ばれる存在だ。反転呪力を持たない代わりに私たちには霊力がある。神話の域に近づいた存在がその領域に立つ。」

 

「そうか…結局よく分からないけど…ただの呪霊じゃないのか…」

傑の体が淡く光り出す。

 

「なぁ傑。私はお前のやってる事も望む未来もなんとなく理解ができた。」

萃香は、優しく話しかける。

 

「それは嬉しい限りだね。」

軽口を叩きながら未だに一口も口を付けず転がすだけの酒を眺める。

 

「だからこそ私は傑を否定する事はない。一般人が嫌いだという傑がおかしいとは思わない。お前が誰よりも誰かの為に何かを犠牲にしても守る不器用な優しさを持っている事を理解している。」

 

「そうかい。」

傑は、肯定してくれるとは思ってもみなく笑う。

 

「だからゆっくり休め。傑。お前はよく頑張ったさ。傑。お前はお前を大切にするべきだよ。たった一度もそんな事してなかっただろ?」

萃香は、枡を傑の前に突き出しニカッと笑う。

それにつられて傑も笑う。

そして今まで口を付けなかった酒に口を付ける。

 

「げほ!ごほ!滅茶苦茶強いなこの酒。」

傑は、淡くひかり体はもう限界を迎えてきていた。

 

「傑…お前がどう思おうと。悟がどう思っていたとしても。私はお前を親友だと確信しているよ。」

萃香のその言葉に傑は、まったくといい酒を一気飲みする。

 

「本当に君たちは…最後ぐらい呪いの言葉を吐け…まった…く…」

傑は、飲んでいた枡をだらんと落とし。今度こそこの世を去った。

 

「乾杯。」

萃香は、傑の飲んでいた枡コツンと自分の枡を当て一気飲み。傑の飲んでいた枡の横に自身の枡を置きその場を去った。

 

「やるべき事はやった。私は呪霊であり、妖であり。やりたい事をやる。それで十分さ。」

 

百鬼夜行報告書

 

東京

呪術師非呪術師死傷者

10名

負傷者多数(軽傷者多数)

呪詛師死亡者

30名

 

京都

呪術師非呪術師死亡者

0名

負傷者多数(大怪我多数)

呪詛師死亡者

20名(全て呪霊によるもの)

 

京都の報告書を見て悟は自分の包帯を解く。

 

「まったく…お前も…何を考えているんだ…香萃…」

目頭の涙を拭くように上を向いた。

 

呪術廻戦0END

 

To Be Continued




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