てんぷれ〜と☆フェティシズム! (浅学寺のえる)
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── 登場人物
2年C組の生徒
クラスメイトD
主人公。物語の語り部。
16歳。私立笛壱高等学校へ通う二年生。身長158㎝。
平成の時代に、令和の知識と価値観を得てしまった少年。
中性的な外見をしており、自身の姉や妹と間違えられる事も多い。
髪色は茶色く、髪型は片メカクレ。常に前髪で左目が隠れている。
格闘道場へ通っていた過去を持ち、一般人にしてはそこそこ強い。
しかし、根が臆病なので窮地に追い込まれると弱い性格。
属性:巻き込まれ体質 メカクレ 無自覚ドSショタ
身長158㎝。日本を代表する大財閥のお嬢様。
物語における悪役令嬢であり、悪の組織の女幹部でもある。
普段は品行方正で清廉な令嬢だが、時折ポンコツな面も見せる。
女幹部ミーア・クシロンとして活動する際は、羽目を外す。
際どいコスチュームを身に纏い、彼女は今日も高笑いを上げる。
属性:黒髪ロングストレート 絶対領域 ポンコツ巨乳令嬢
身長163㎝。羽吹流格闘道場の娘。
主人公の幼馴染でもあり、しいなの幼馴染でもある。
ただし現在、しいなとは犬猿の仲となっている模様。
一般人だが道場の師範代も務めているので、相当に強い。
髪型はショートボブ。しなやかな肢体で、胸板は薄い少女。
属性:幼馴染 貧乳ボクっ子 格闘少女
身長175㎝。発明家の祖父を持つ少年。
主人公とは小学校からの付き合い。能天気で少しスケベな性格。
悪の組織と戦うヒーロー、リングリットの正体。
格闘戦は滅法苦手だが、必殺技はチートな正義の味方。
敵の怪人が放つ特殊攻撃も効かないので、フェチ展開には滅法強い。
属性:黒髪ツンツン主人公 状態異常無効
A子 /
身長133㎝。しいなの取り巻き①
萬宮寿家に仕えるメイドでもあり、怪人の正体①
しいなをこよなく愛する少女で、格闘道場へ通っていた過去を持つ。
小さな身体だが、速さを活かしたバトルスタイルが得意なロリっ子。
属性:銀髪ジト目ロリ 口下手 くすぐり魔
B子 /
身長182㎝。しいなの取り巻き②
萬宮寿家に仕えるメイドでもあり、怪人の正体②
わけあって留年している為、主人公より一つ年上のお姉さん。
しいなを妹の様に慈しみ、主人公を弟の様に可愛いがる。
属性:金髪糸目お姉さん のんびり口調 うぉでっか
クラスメイトE / 井伊
身長180㎝。主人公たちの友人。能天気でかなりスケベな男。
性癖を隠そうとしないので、女子からは顰蹙を買っている。
髪を染め、くすんだ色の金髪となっているが本来は黒髪である。
属性:金髪ツンツン ギザ歯 兄貴肌
その他の人々
レイワさん
主人公の脳内に宿った女性の愛称。
令和時代に死亡し、光速真芯リングリット
しかし予期せぬ事態が生じた為、主人公と共生関係を築く事となる。
令和の知識や原作知識を持っているが、不完全な断片データと化している。
なお、エッチな知識に関してのみ完全な形で保存されている模様。
属性:脳内お姉さん ショタコン 叡智の化身
ワッカの祖父。発明家としても有名な博士。
自宅地下の研究施設で、ヒーロースーツを開発した人物。
リングリットの必殺技を遠隔操作するサポーターでもある。
途轍もなくスケベな老人。あらゆる叡智なジャンルを網羅している。
現在のお気に入りは『ギャル』の模様。
属性:ハカセ スケベじじい
身長158㎝。主人公の一つ年上の姉。
髪の分け目が主人公と左右逆。それ以外は、全く同じ見た目をしている。
特撮モノが大好きな高校3年生。B子の友人でもある。
属性:姉 特撮好き
身長153㎝。主人公の六歳下の妹。
両目が隠れている真のメカクレ。他の外見はほぼ主人公と同じ。
絶賛成長中の小学5年生。格闘道場へ通っており、A子を師と仰ぐ。
属性:妹 格闘少女 TS好き
悪の組織の怪人 *1
ケンケンα
#01に登場。柴犬をベースにした怪人で、A子の魂を宿している。
彼女が放つ遠吠えは、聞いた者の精神を『犬』へと変えてしまう。
特殊フェチ:精神動物化 洗脳
パオファンβ
#03に登場。インド象をベースにした怪人で、B子の魂を宿している。
彼女が鼻から放つ液体は、浴びた者の身体を『石』へと変えてしまう。
特殊フェチ:石化 巨女
??????
#05に登場。ホッキョクグマをベースにした怪人。
怪人の爪を受けた者は、身体を『冷果』へと変えられてしまう。
特殊フェチ:物品化 食品化
ライノーα
#07に登場。シロサイをベースにした怪人で、A子の魂を宿している。
彼女の角に刺されると、身体が『キューブ』状に変化してしまう。
特殊フェチ:形状変化 ギチギチ
パンパンβ
#08に登場。
彼女の持つ竹槍に刺された者は、身体が『膨張』してしまう。
特殊フェチ:膨体化 巨乳化
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高笑い 萌ゆる季節に 身は疼き
#01 獣欲、業を制せず
「おーほっほっほ! ごめんあそばせ?」
放課後の教室に高笑いが鳴り響く。
孔雀の羽で作られた豪奢な扇子を片手に、少女は長い黒髪を靡かせる。
その足元には、許しを乞う人間が一人。
凄惨な光景だが、この場にいる誰もがそれに異を唱える事は許されない。
【悪役令嬢】
なるほど、彼女を言い表す上で実にしっくりと来るワードと言えるだろう。
しかしその一方で、果たして
目元には正体を隠すかのように、近未来的なバイザーを付け
服装は、とても布面積が少ない水着のような──【マイクロビキニ】
そんな名称なのか……んんっ。
そして、その黒いマイクロビキニでは隠しきれない豊満な──【たわわ】
そんな言い回しまであるのか……凄いな令和。
脱線してしまった。
今挙げた容姿に関しては、ややアレだが……まあ一般的な物だろう。
爪先が刺々しいエナメルの輝きを放つ漆黒のブーツも、
肩パッドと一体化している裏地が紫色をした長いマントも
大分アレだが、一般人のファッションと言えなくも無い。広義で言えばという意味で。
彼女を表現する上で最も重要な要素。
一般という括りからは、余りにも逸脱している要素。
それは、彼女の隣にいる存在が物語っている。
未だ高笑いを続ける彼女の傍らには
柴犬を人型にしたような、どこかファンシーな見た目をした、所謂『怪人』が侍っているのだ。
彼女の命令を静かに待っているその様は完全に主人と従者。つまりは───
【悪の女幹部】
おっと!
ご教授して頂いた所恐縮ではあるが、そのカテゴリーは平成にも存在しているんだ。
もっと言えば、昭和の時点で既に確立している。
さすがは偉大なる先人。『令和の叡智』の先を行くとは、流れ石でありリューセキだねぇ。
フェティシズム!
「よくも皆を酷い目に……! ゆるさん!!」
「性懲りも無く現れましたわね!! やっておしまいなさい、ケンケンα!」
「わかった……わん」
令和の叡智へ初勝利した余韻に浸っていれば、状況は大きく進展していた。
いつの間にか現れた正義の味方『リングリット』が、柴犬の怪人と格闘している。
繰り広げられる一進一退の攻防……というには、若干ヒーロー側が不利に見える状況だ。
この怪人、見た目にそぐわず格闘技術が相当高い。まるで柳の葉の様に迫る打撃を受け流し、その隙をついてヒーローの腕を掴み投げ技へと転じている。
ヒーローは身体能力の高さでどうにかダメージを負わないよう凌いでいるが、徐々に動きが鈍くなってきている。このまま格闘戦を続けても体力が続くとは思えない。
彼もその事実に焦りを覚えたのか、投げられた際の勢いを利用して怪人との距離を大きく開けると、そのまま腕を×字に交差した。
これは必殺技を放つ構えだ。
「クロスリット・ハイロゥ!」
リングリットの腕から光の輪が出現する。
見た目こそまるで敵を八つ裂きにしそうなそれだが、この輪に殺傷力はない。
放たれた光輪の数は四つ。それぞれの大きさは一般家庭の
しかし、放つ光量は【LED】にも引けを取らない。
それらが強い光を放ちながら、怪人を翻弄するかのように飛び回っている。
柴犬の怪人は機敏に輪を避けているが、その対処が精一杯で攻撃に転じる事が出来ないようだ。
「きゃうん!?」
「今だ!!」
可愛らしい悲鳴をあげる怪人。どうやら尻尾に光輪がはまってしまったようだ。
驚いた隙を突かれ、手脚にも光輪をはめられる。輪は締まり、それぞれが怪人の手脚を外側へと引っ張るように移動する。次に輪が浮き上がる。それに合わせて、必然的に怪人の身体も宙に浮く事となる。こうなってしまえば最早、脚へ力をこめても地を蹴ることすら叶わない。
みるみる内に怪人は四肢を大の字に広げられ、完全に無力化されてしまった。
「やられちゃった」
「あぁー、ケンケンαが!? ずるいですわよリングリット!」
「さあ! 次はお前だ、ミーア・クシロン!」
女幹部が文句を言うも、意に返さずヒーローは再び複数の光輪を出現させる。
そう、この光輪。出せる数に制限がないのだ。
先程の戦闘で最初に放った数は4つ。柴犬の怪人がその4つに気を取られている隙に、尻尾へ向けて追加でもう1つ出現させていた。
そして現在、女幹部ミーアに向けて10個以上の光輪を差し向けている。もはや並の動体視力では正確な数は測りきれない。
先ほどよりも高速で飛び回り、数も増えている。その上リングリット自身も格闘戦を仕掛けている。
ミーアは扇子を使い上手く攻撃をいなすも、さすがに縦横無尽と飛び回る光輪を全て対処するのは無理なようだ。
左手首が拘束され、動きが制限された段階でこの戦いの趨勢は決した。
「きぃ〜! 離しなさいよ! このっ……!」
次の瞬間、あっけなく彼女も大の字に拘束されてしまった。その姿はさながら、蜘蛛の巣に捕えられた蝶を思わせる。
必死に手脚の拘束を解こうともがいているが、光の輪は微動だにしない。いくら彼女が足掻こうとも、たわわが揺れるだけで手脚の拘束が外れる事はない。
この光景はこれで3度目だ。もはやリングリットの必勝パターンと言えるだろう。
遅れて来たヒーロー。されど仕事は早い。うん、いい事だ。クラスメイトのあられも無い姿をこれ以上見ないで済む。
いまこの教室──私立
1人は金髪で背の高い女子。茫然と虚空を見つめていて、細く開いたその目には【ハイライトがない】
1人はショートボブが似合う女子。普段快活な彼女だが、今はまるで躾けられた犬の様にお座りをしながら熱い視線で女幹部を見つめている。
1人は【ギザ歯】が特徴的な男子。先ほど怪人の臀部の臭いを嗅ごうとした際に殴り飛ばされた為、気絶している。彼の名誉の為に、下心があった訳ではないとだけ補足しておこう……あれは仕方がない状況だった。
そしてもう1人、気絶した男子がいる。正確には、気絶したフリを続けている男子だ。
片側だけ前髪を長く伸ばした【メカクレ】と呼ばれる髪型を活かし、髪で隠れている左目だけで一部始終を見守っている男子生徒。
クラスメイト達が次々と異変に見舞われる中、自分だけは敵の特殊能力を
つまりは、僕のことだ。
僕には『叡智』がほんの少しだけ宿っている。
その原因は、この学校の地下に安置されていたクリスタル。
その名も情報結晶体『叡智の書』。結晶体なのに、なぜか『書』と名付けられていたオーパーツだ。
先日の騒動で図らずもそれに触れてしまった僕は、膨大な知識を脳へと流し込まれ鼻血を出して死にかけた。
あの時、彼女が割り込んでくれなかったら脳を焼かれて死んでいただろう。
運良く助かった僕だけれど、半端な叡智のせいで悩まされる日々を送っている。
叡智から得た情報で例えるならば【インストール】の失敗により【断片化したデータ】が脳内に残っているような状態。
そのせいか時折僕の思考に合わせて、まるで【検索エンジン】のように知らない単語と大凡の意味が頭に浮かんでくるようになった。
ここ数日、この検索機能を駆使して自分に起きた異常事態を解決できない物かと試行していた。
なにしろ誰にも相談できない。正直に話した所でデンパ──【サイコパス】扱いか、良くて【厨二病患者】だ。
友人からは、白い目も生温かい目も向けられたくない。
その一心で検索を続け、どうにか知識の出所に当たりを付けられたのが今朝の話だ。
【令和】と呼ばれる年号。価値観に対しての検索には、大抵の場合このワードが紐づいていた。
現在の年号は平成。断片データ故に、何年先の年号かまでは分からないけれど未来であることは確かだろう。
よって、僕の中にあるのは『令和時代の常識』。平成の常識しか持ち合わせていない僕にとっては、正しく叡智と言える。
半端とはいえ、未来知識。
降って湧いた幸運を実感して、放課後になるまで『叡智』を活かして何をしようかなどと呑気に模索していた。
そんな矢先、またもや悪の組織に襲撃されるとは───
「おーっほっほっほ! この教室は
「わん」
柴犬の怪人。
可愛らしい見た目だが、決して着ぐるみでは無いと分かる現実感。
これは、えーと──【擬人化】
そう擬人化だ。けれど、鳥獣戯画や北斎漫画の其れとは違いファンシーな外見をしている。
まるで、少女と柴犬が融合したかの様な見た目。
まるで、アニメの世界から飛び出して来たかのような───ん?
「おい! お前、また鼻血が出てるぞ!?」
「もうっ! 君は純情なんだから、あの変態女を見ちゃダメって言ったでしょ!」
【
脳内で情報が錯綜している。
友人達が心配してくれているが、今は情報の処理に集中しなければ身が持たない!
『叡智』に触れた時から、僕は
嗚呼。わざわざそんな事実を再確認しないといけない位、混乱しているようだ。
まずは認めなくては。
段階を踏んで確認していかなければ思考整理も上手くはいかない。
2週間前に初めてヒーローを目にした時は、ようやく現実がアニメに追いついたなんて冗談を言っていたけれど──
どうやら、この世界は既にアニメの中だったらしい。しかも、ギャグアニメと来たもんだ。
僕は主人公と同じクラスに所属する【クラスメイトD】
完全なる脇役──【モブ】ああ、令和だとそう言うの?
特徴を一言で纏めれば、メカクレ気弱男子。
怪人が出たら悲鳴を上げ、何か特殊攻撃をくらいその被害に遭う……そういう役割らしい。
「さあ、出番ですわよ! ケンケンα!」
「……わん」
おっと。現状では取り乱してもいられない!
叡智がもたらした【原作知識】は、いざ整理してしまえば僅かな量しかなかったものの、幸いこの状況は打破できそうだ。
まずは鞄にしまってある最新式のMDウォークマンを取り出し急いでイヤホンを装着する。
流れてくるのは、先月デビューしたバンドの曲。ちなみに、ポケベルのCMにも起用されているこのバンドは令和でも健在らしい。
期待か郷愁か良くわからない気持ちを抱きながら、僕は音量を最大にする。
これだけで、怪人の特殊攻撃は回避できる。
回想終わり。
僕の鼻血を心配して、逃げ遅れた友人たちには本当に申し訳なく思う。
その二人を見捨てて、一人だけ助かった罪悪感から先程までの経緯を思い返していたけれども、まあアレだ。
どうせここはギャグアニメの世界だ。そう酷いことにはならない……筈だ。
柴犬怪人ケンケンαが持っていた特殊能力は【精神動物化】
怪人の遠吠えを聴くと、自分の事を犬だと思い込んでしまう恐ろしい能力だ。
金髪の少女が虚空を見つめるのは、犬や猫がたまにする習性。一説では幽霊を見ているなんてオカルト話もある其れだが、現状では実害はないと言えるだろう。
次に、僕の友人である【クラスメイトE】
彼が怪人の臀部を嗅ごうとしたのも犬の習性だ。犬にとっては挨拶の様なものだけど、どうやら怪人は犬の本能よりも女子としての羞恥心が勝ったようだ。哀れ、Eは痴漢のレッテルを貼られてしまった。だがまあ、彼は普段から自他共に認める変態だと豪語しているので実害はないと言えるだろう。
そして、こちらも友人であるショートボブの女子【
どうやらこの世界のヒロインであるらしい彼女は、女幹部の飼い犬になってしまっている。
当初、負けん気の強い彼女は精神が犬になった状態でも女幹部に戦いを挑んでいた。
しかし普段ならまだしも、頭の中が犬のままでは得意の拳法も扱えない。
ミーアが放つ扇子の一振りでやられてしまった彼女は、次の瞬間仰向けになり腹を見せ降伏の意を示した。
どうしようもなく、野生の世界は弱肉強食だった。
彼女のケースにいたっては実害しかない。本当に済まない。
とまあこの様に、人間の尊厳を脅かすとても恐ろしい能力なのだ。
その概要だけでも事前に知っていれば全力で回避するとも。
能力のトリガーとなるのは怪人の遠吠え。つまりは『音』
それさえ対処できれば簡単に逃れられるのだから。
友人らを見捨た僕は、非難されても仕方ないと反省しているが……しかしまあ、狡いという点に関してだけなら上には上がいる。
正義の味方リングリット。彼は、あらゆる状態異常を無効化する。
もう一度言おう。彼は、あらゆる状態異常を無効化するのだ。
前回、この事実を知らされた猫の怪人は涙目になっていた。
そして驚くことに、彼の狡さはコレだけでは済まない。
「洗脳は一時的な物……そっか。解析ありがとう、じっちゃん!」
《ふむ。今日こそ逃げられんように気を付けるんじゃぞ》
ヘルメットに付いている通信機能で彼が会話している相手は、
ヒーロースーツを彼に誂え、必殺技のクロスリット・ハイロゥを遠隔操作している御老体。
彼は、
「ハーハッハッハッ! よーし、観念しろミーア・クシロン!」
「くっ……なんですの!? そのイヤらしい手つきは!?」
完全に立場が逆転している。
高笑いを上げ、敗者を手籠めにしようと迫る男はとてもヒーローには見えない。
敵の無力化はお爺ちゃんの手柄だというのに、この男はよくもまあ勝ち誇れるものだ……。
嗚呼なるほど。こうして俯瞰して見ると、確かにこの世界はギャグアニメだ。それも少し煽情的で変質的な。
そうだな、あえて客観的に上から目線で所感を述べるとすれば──【ふーん、叡智じゃん】
!?
え、叡智って……まさか、そういう意味なのか!?
道理でそっち方面の知識ばかりがやたらと充実してる訳だよ!!
「ヴゥ〜、ヴァン! ヴァン!!」
「ごはっ!?」
異様な声に驚き思わず両目を開いてしまえば、状況は混沌としていた。
羽吹まことが低い唸り声を上げ、次の瞬間には体当たりでリングリットを打ちのめしてしまった。
僕も、あのヒーローが彼女に恋心を抱いている事は知っているけれども……油断しすぎだよ
「くぅ〜ん。ぺろ、ぺろ」
「ひゃっ!? 何を致しますの
未だに拘束が解けない女幹部は、褒めて褒めてと懐いてくる普段は犬猿の仲の
思わず名前を呼んでいるあたり相当焦っているのだろう。
既に僕はヒーローの正体も女幹部の正体も、あまつさえ怪人の正体までも【原作知識】で知っているので微笑ましい光景にしか見えないが。
女子2人のあられもない姿を目にし、あわあわと動揺しているヒーローは
艶かしい声を上げている悪役令嬢。悪の女幹部でもある彼女の名は
「んっ、やめ! ちょっと!?」
うーん……
さっきは微笑ましい光景と表現したけれど、犬猿の仲の幼馴染みに懐かれて赤面した彼女を見ると……なんだか、こう?
【仲が悪いのは百合】
いや、矛盾してるだろうそれは……。
だけどまあ、そういうフェティシズムもあるということで合点がいった。
事前情報に偽り無しと言った所だ。
光速真芯リングリットXという名のこの世界は、
90年代アニメであり
勧善懲悪のヒーローものであり
コメディギャグの要素を踏襲しつつも───
一部界隈では【特殊フェチの養殖場】と呼ばれているのだから。
「ひぃ〜ん! もうワンちゃんは懲り懲りですわ〜!」
光速真芯リングリットX
第3話「わんわんパニックで大ピンチ!?」
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── 令和の掲示板①
【特殊フェチ】リングリットXを語るスレ30【配信開始】
1:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 18:15:50 ID:+e6+ZMsrH
ここは、光速真芯リングリットXについて語り合うスレッドです。
当時の思い出から雑談までお好きにどうぞ。特殊すぎるフェチは節度を持ってどうぞ。
次スレは>> 990を踏んだ人が宣言して立ててください。
>> 990が建てないor建てられない場合は>> 995にお願いします。必ず前スレを使い切ってからお使いください。
前スレ【センシティブ】リングリットXを語るスレ29【天元突破】
https://bbs.tokusyu/yousyoku/41730/?res=0510
2:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 18:19:22 ID:TlzgKpjDd
>>1乙 配信サービス開始したら前スレ爆速で埋まっててワロタw
3:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 18:20:31 ID:aarylyFQh
>>1乙
>>2今日の18時に配信開始だぞ? おまいらまだ1話目の途中だろうに、書き込んでないでちゃんと視聴しなさい!
4:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 18:28:35 ID:rTjFHbXZ2
おまいうw
5:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 18:32:41 ID:ldYWFw7iD
思いのほかお仲間が大勢いておまいら大歓喜w
6:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 18:35:31 ID:3etaMx416
1話目観終わった。これからゆっくり見直す予定
7:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 18:40:44 ID:aarylyFQh
ゆっくりてw 1話目にそんなコマ送りする程のフェチシーンないぞw
8:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 18:42:46 ID:3etaMx416
>>7当時も観てた再視聴勢だから、配信で毎日1話づつ見ていくって意味だ。言葉足らずでスマソ
けどまあ、1話目のミーア様赤面シーンはコマ送りしてもいい
9:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 18:47:54 ID:OLj6a0scW
フェチシーンあるじゃねぇかw
10:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 18:52:48 ID:qFygEUE1s
ネコミミ付きのバイザーに関して「モチーフはミーアキャットですわ」って宣言したら
クラスメイトDに「ミーアキャットの耳はそんな形じゃない」って返されるシーンだな
あの徐々に赤面していく感じは、確かにイイ
11:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 18:55:53 ID:qL9BGEQ/x
2話目からネコミミ無くなってるしなw
12:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 18:58:32 ID:3etaMx416
しいなって動物好きだから知識としては知ってたハズなのになw そんなポンコツな所もまたイイ
13:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 19:04:38 ID:U+nKRIVFC
俺は断然とまこちゃん派
14:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 19:07:48 ID:Jwz5Qq1/e
改めて考えると「とまこ」って、現代だとあだ名禁止とかで規制されるんじゃね?
15:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 19:13:02 ID:uQ07045Fx
そこはまあ、しいなは「とまこ」呼び。まことは「C子」呼びで相殺されるんじゃね?
16:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 19:15:33 ID:GhZdxRJJ6
あだ名禁止って風潮もあるけど、配信できてる時点でおkなんだろ。
そもそも、そんなこと言ったらA子とB子はどうすんだよw
17:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 19:20:11 ID:Jwz5Qq1/e
あ。
18:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 19:25:31 ID:1o7zuNko0
A子とB子ってしいなの取り巻き?
19:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 19:28:09 ID:ppfRbSV8c
一応名前はあるらしい。当時の公式ブックによると
20:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 19:33:43 ID:3etaMx416
>>18まさかのご新規さんか? 釣られたと思って一応解説
A子は銀髪で背の小さいジト目の女の子。口数が少なく、しいな様大好きな子。
B子は金髪で背の大きい糸目の女の子。おっとりしていて、しいなを妹の様に可愛がる子。
ちなみに二人ともお屋敷ではメイド姿。
21:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 19:37:24 ID:1o7zuNko0
>>20サンクス 昔のアニメだと侮ってたけど無性に惹かれるから、これから全部視聴する
22:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 19:40:47 ID:e5H3boaSu
マジでご新規さんか。よいものだな、人が沼に沈む瞬間を目の当たりにするのは
23:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 19:43:58 ID:/O9lJXMjN
言い方w
24:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 19:46:17 ID:Yei0UpU8l
>>21全50話だぞ? イッキ見だけはやめておけ
25:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 19:51:15 ID:LtYcP/4JF
あれ? そういや配信って48話分しか
26:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 19:55:51 ID:kuSDIEVRA
欠番回が2つあるからな。大人の事情で
27:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 19:57:54 ID:3etaMx416
もっと言うなら、本放送時も最終回とその前の1話は制作中止になってる。大人の都合で
28:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 20:03:55 ID:SqYjMkKv7
当時、最後が日常回で終わってなんか変だと子供ながらに思ってた
29:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 20:08:34 ID:r8G+W7ukr
その辺のはなしは、後年になって発売した公式ブックに経緯が載ってるよ
30:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 20:13:18 ID:jNI5PnPHk
けどさあ、今回の配信で人気が出ればワンチャン続きが制作されるんじゃ?
31:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 20:19:16 ID:s6NUFxdZz
新規も増えたしな
32:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 20:22:07 ID:3etaMx416
↑実質1人しか確認しとらんがなw 今ここにいるの他はオサーンだろw
33:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 20:27:40 ID:w4YQpnG+9
↑もうそのノリで実年齢が想像つく
34:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 20:31:39 ID:Uvb05UPiC
>>30すでに制作陣は解散してるし、会社もない。だから──この話はここでお終いなんだ。
35:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 20:35:44 ID:TTijQ1gBH
ロック……
36:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 20:39:45 ID:4b3CwQHWo
うーん。版権さえどうにかなればリメイクって手ならあるかもしれんが
37:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 20:45:37 ID:r8G+W7ukr
クラファンで結構集まるだろ。ここにいる奴らに萬宮寿レベルの大富豪おらん?
38:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 20:49:28 ID:a1plIrgPZ
日本の国家予算よりも財産もってるやつがいる訳ねーだろw
39:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 20:52:19 ID:3etaMx416
そもそもリメイクはコンプラ的にどこの会社でも無理だろ
40:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/4 20:54:58 ID:rBi8ETBwY
確かに、無理やり現代の価値観に合わせて作っても別モノにしかならないだろうしな
─ 中略 ─
417:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 21:01:22 ID:SFiKgnd7m
ハブとマングース論争おもしろかった
418:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 21:05:51 ID:wtLazanDp
このスレで長年やってるからな。しいな派、まこと派が争ってると必ずA子、B子派閥も参加してくる
419:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 21:12:16 ID:uQSUmSko7
なら俺はD子ちゃんをもらっていくぜ!
420:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 21:15:34 ID:3etaMx416
D子w
421:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 21:20:40 ID:Bl5MKuGlF
D子って誰だよ
422:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 21:25:12 ID:50jaSFZGZ
新規も増えてんのに、D子ネタは自重しろw あの回、配信じゃ見事に欠番だろ
423:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 21:27:53 ID:1o7zuNko0
え!? ひょっとしてD君が女体化する回って当時放送されてたんですか!?
424:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 21:30:52 ID:0nv/fWyGL
お、おう。落ち着け
425:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 21:33:36 ID:r8G+W7ukr
このIDって昨日の新規さん1号じゃね?
426:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 21:37:19 ID:1o7zuNko0
さっき、全話見終わってこのスレを眺めてたら欠番回の話題を知って…
まさか中盤以降にワッカの妄想で出てくる女体化D君が実在したなんて! そのへん色々くわしく!
427:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 21:39:44 ID:9VCcpbLIT
もちつけw それ、妄想じゃなくて回想だからw 取り合えず、何個か質問あるようならコテハンつけてくれ
428:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 21:44:10 ID:zeQk3cDeX
まああの回を飛ばして視聴すりゃ、ワッカの妄想と勘違いしても仕方ない
429:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 21:46:39 ID:3etaMx416
ていうか視聴速すぎ問題。この配信サービスって倍速視聴とか出来ん仕様じゃなかったっけ?
430:新参もの1号 2024/2/5 21:53:09 ID:1o7zuNko0
コテハンつけました。>>429もちろん等速視聴です
431:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 21:56:32 ID:nOSGqqwAg
猛者あらわるw
432:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 22:00:25 ID:yoN0PgTYu
昨日の配信開始からまだ28時間だぞ。48話しかないっていっても1話あたり24分あるんだから
433:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 22:02:44 ID:LMWGzI9l/
視聴時間19時間ちょいか。9時間余るし、いけるんじゃね?
434:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 22:07:45 ID:G9Z0zqtM2
つ平日
435:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 22:13:19 ID:3etaMx416
昨日は日曜だけど今日はな。俺は電車止まるって知らせが来て早退できたけど。
436:新参もの1号 2024/2/5 22:15:22 ID:1o7zuNko0
先月末で退職済み。その余った9時間で次の雇用先探してるから許して。
そんな事よりも! 女体化回を!
437:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 22:18:55 ID:I1PXGcfzP
寝とらんわこの子w
438:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 22:23:20 ID:Ax9VKHpxb
ほんと沼アニメだよな。取り合えずD子登場回の説明を誰かしてやれ
439:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 22:27:15 ID:3etaMx416
あの回は性転換ビームでクラスの大半が性別逆転。
メカクレキャラのDくんは、ここぞとばかりに目が登場。見た目はワッカの回想で出るそれな。
それでまことの悪ノリで女子の制服を着せられて「は、はずかしぃ〜よぅ」とあざとく赤面。
440:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 22:33:25 ID:molsairOd
あざとくw 風評被害w
441:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 22:35:48 ID:b5HH3bjRw
まあアレでワッカの性癖がぶっ壊れてるからなw
442:新参もの1号 2024/2/5 22:41:53 ID:1o7zuNko0
>>439情報サンクス! ついでに厚かましいのは承知の上で、その回って今見るにはどうすればいいのかも教えてほしい
443:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 22:45:10 ID:QUIV5CAJF
あー
444:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 22:48:00 ID:A0CeZ/Z0X
残念ながら、諸事情があってBD・DVD化はおろかVHSすら販売されてないんよ
パッケージ版が存在しない以上、当時本放送を録画したものでしか見直しはできないんだわ
445:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 22:50:00 ID:xE90MlXco
だから配信開始した今こんだけ盛り上がってるんだけど、まさか欠番回があるとはなー
446:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 22:55:21 ID:4RWI1P5Ep
俺、当時ビデオ録画してた話を何個か発掘したけど欠番回は無かったわ
447:新参もの1号 2024/2/5 22:58:00 ID:1o7zuNko0
VHSって言うのがビデオだっけ? 個人で所有してる人を見つければOKってコト?
448:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:00:34 ID:+7sWx1RKX
もはやVHSも過去の遺産か……そういや何スレか前にベータニキっていなかったか?
449:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:01:40 ID:itpZyhBtI
>>447一応言っておくけど、所有者を見つけてもネットに動画を上げろとか言うのは犯罪だからな
450:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:02:48 ID:wrI3NszsX
ベータニキ懐かしいな。あのニキならリングリット全話保存してんだろ、ベータでw
451:新参もの1号 2024/2/5 23:04:08 ID:1o7zuNko0
>>449忠告サンクス その辺りは心得てるから大丈夫
けどベータって聞いたことあるから、ちょっと知り合いに聞いてみる!
452:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:05:45 ID:7oa7o9Z+q
なんでVHSあやふやなのに、ベータは知ってんだよw
あとネットが駄目ならダイレクトで視聴すりゃいいって考え、バイタリティあふれ過ぎw
453:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:07:43 ID:Lw2VtYbCk
仮に知り合いがベータ持ってても、リングリットみたいなフェチアニメを録画してる可能性は……
454:ベータニキと呼ばれたもの 2024/2/5 23:09:07 ID:3etaMx416
呼ばれた気がして。ちなみに俺はB子派だ。
455:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:11:55 ID:EEloPxTW+
ベータニキw
456:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:14:26 ID:dp3tIrIho
てかコテハン付けてなかっただけでずっといただろw
B子が好きなのは、合精霊時の名前がβだからまでが定期
457:ベータニキと呼ばれたもの 2024/2/5 23:16:22 ID:3etaMx416
え、マジで!? どうしよ
458:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:19:04 ID:x9nBKM4Wo
どうした? ベータニキの性癖はスレ民に周知されてるぞ
それとも保存してたベータのテープを紛失でもしたか?
459:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:21:22 ID:V+X7pUP1r
そんな!? 欠番回を観れるとしたらベータニキのベータしか望みがないのに!?
もし大切なテープを紛失しちゃってたら私たちはどうすればいいの!?
次回、ベータニキ死す
460:ベータニキと呼ばれたもの 2024/2/5 23:24:01 ID:3etaMx416
死なん! きちんと保管しとるわw
さっきのは新参もの1号から連絡が来て驚いただけだ
461:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:25:18 ID:XWOSKCq0r
は?
462:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:27:59 ID:kjmUHGU4g
え、それってリアルで知り合いだったってコト!? どんな運命力だよw 結婚しろw
463:ベータニキと呼ばれたもの 2024/2/5 23:29:00 ID:3etaMx416
お互い独身だが同性だw
それに、俺がリアルで布教してたのがそもそもの原因だったw
職場で暇な時に良く話題にしてたからな
464:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:31:41 ID:7r9RnhdY8
マッチポンプ乙
465:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:32:45 ID:Imcla6x2k
そこまで布教してたなら配信開始前に見せてやれよ……ベータでw
466:ベータニキと呼ばれたもの 2024/2/5 23:34:35 ID:3etaMx416
前に家に来た時は見向きもしなかったクセに現金なやつで困る
まあ、今から来るらしいから見せてやるけどな! オマエラの持っていないベータでな!
467:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:37:26 ID:e1Oqd3ETA
普通に羨ましい。VHSのファンやめます
468:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:38:39 ID:URT+ayD4e
ベータマウントがここまでウザく感じたのは初だw けど羨ましい
469:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:40:46 ID:tf9lkgoXK
いや、時間考えろよ。お前らには関係ないかもしれんが、明日も平日だぞ?
470:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:42:29 ID:lzej4yfe7
おれは明日休みって連絡きたわ
471:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:43:31 ID:r8G+W7ukr
ベータニキのIDで発言見返したら電車止まるとか言ってたし、休みなんじゃね?
472:ベータニキと呼ばれたもの 2024/2/5 23:45:17 ID:3etaMx416
休みなのは合ってるけど、ID特定やめて。照れるw
473:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/5 23:48:07 ID:ODGwPOZAi
都心は雪と雷っていう暗ハッピーセットな天候なんだが
新参もの1号は外出て大丈夫なのか?
474:ベータニキと呼ばれたもの 2024/2/5 23:49:07 ID:3etaMx416
割と近所に住んでて徒歩圏内だから平気だろ。あと10分もしたら来るハズ
─ 中略 ─
516:ベータニキと呼ばれたもの 2024/2/6 0:32:19 ID:3etaMx416
どうしよう…あの子から最後に連絡来て、1時間以上ずっと音信不通なんだけど
携帯も固定電話も出ないし
外はパトカーか救急車のサイレンでうるさいし、自宅停電してるし、
─ 中略 ─
996:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/8 23:32:00 ID:i0+23X40x
次スレ【公式も】リングリットXを語るスレ31【病気】
https://bbs.tokusyu/yousyoku/41730/?res=0541
997:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/8 23:34:37 ID:OzcjTVFwR
うめ
998:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/8 23:38:00 ID:P1qca21Vb
埋め
999:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/8 23:40:43 ID:Gnea6serQ
それにしても、波乱のスレだったな
1000:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/8 23:41:03 ID:Gnea6serQ
1000げと
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#02 萬宮寿しいな
「あら、おはようございます。昨日は大変でしたのでしょう? もうお加減はよろしいのかしら?」
登校途中、
落ち着いた物腰に温和な印象を与える声。
やや吊り目がちだが、その瞳は他者を慮る慈愛で満ちている。
濡烏を思わせる艶やかな黒髪のみ昨日の女幹部と特徴が一致するものの、両手を組みながら祈るような所作で見つめてくる目の前のこの少女が、あの高慢なミーア・クシロンの正体だとは誰も思うまい。
そう、彼女は猫を被るのが頗る上手いのだ。
ちなみに僕は自転車通学なのだが、彼女はリムジンでの登校途中。
どうやっても交差点を曲がることが不可能なくらいに長い車体。その最後列にあたる座席の窓から彼女が顔を覗かせている。
その座席の対面から会釈する頭が二つ。お付きの二人【A子】と【B子】も居るようだ。
僕が会釈を返せばB子は【糸目】のまま微笑み、A子は【ジト目】で睨んでくる。ああ、いつもの光景で安心する。
しいなが語った「昨日は大変だった」という文言は、むしろ車内にいる彼女らにこそ向けられるべき言葉だろう。
僕に起こった事と言えば、せいぜいが鼻血を出した後に気絶したくらいだ。
「……出血も気絶も、原因は解らないのでしょう?」
少し間を置いてしいなが尋ねてくる。どうやら僕の体調を本気で心配してくれているようだ。
気絶に関しては全くの嘘なのだが、正直に話すわけにもいかず何とももどかしい気分だ。
一先ず、鼻血の件に関してだけでも弁明しておくべきか。
実は昨日の夜、
元々、
半ば日常に起こり得る事だったので、姉が応対してくれた電話を引き継ぎ受話器を耳にした時には驚愕したものだ。今回の電話相手は、輪ではなく彼の祖父である火鬼崎善だったのだから。近所では有名な発明家。幾つもの特許を持っており、日常で何気なく使っていた生活用品が実は彼の発明だったなんて事が何度かある。
そんな火鬼崎博士が、立て続けに鼻血を出した僕を検査してくれるという話だった。
この世界に関する決して他言できない事実を知ってしまった身ではあるが、万が一脳に異常があってもそれはそれで困ってしまう。そんな葛藤が僅かにあったのだが、僕から受話器を奪い取った姉が勝手に快諾してしまったのだ。今日の授業が終わったら火鬼崎家へと向かう事になっている。
「…………それでしたら安心できますわね。あら? そろそろ、通行の妨げになってしまいますわ。それでは、ご機嫌よう。」
普段は立板に水を流すように朗々と話す彼女であるが、今日はどこか歯切れが悪い。
そんな些細な疑問を感じていると、登校する生徒が増えてきた事を理由に彼女が別れを告げてくる。
緩りとした速度で上昇していくリムジンのパワーウィンドウ。
羨ましい。我が家の自家用車は未だに手回しハンドルで開閉しているというのに。
【スマートキー】【電気自動車】【自動運転】
令和の車はそこまで進化しているのか!?
僕はてっきり、太陽光発電で走るドラえもん型の車『ソラえもん号』こそが未来の覇権を握る自動車だと思っていたのに!
おや? 離れていく萬宮寿家のリムジンのルーフにも、よく見ればソーラーパネルが付いているじゃないか。環境保全を謳っているだけあって、エネルギー問題に率先して取り組む姿勢は尊敬の念に堪えない。もっと改善できる点は大いにあると思うが……。
まあ、日本を代表する大財閥である萬宮寿家の意向を、僕の価値観で推し量る事自体が不可能な話だった。
先程通学路に生徒が増えてきた為、彼女は通行の妨げになってしまうと言っていたが、そもそもこの通学路は萬宮寿家の私道なのだ。通らせてもらっている身としては文句も言えまい。
僕たちが通う私立笛壱高等学校。しいなの住まう萬宮寿邸。この二点を直線で結んでいるのが、この道路なのだ。つまり、あの機能性を度外視したような全長50メートルはあるリムジンは曲がる必要無く移動できるのだ。そして最も恐ろしいのは、あの車で登校する事を目的として直線道路を通してしまったという事だ……つくづく頭が痛くなる。
「まあ! またお会いしましたわね。」
校門をくぐり、僕が自転車を駐めていると再びしいな達と遭遇した。
校門から校舎までは50メートル。校舎入り口には、リムジンの頭が見えている。
後部座席に乗っていた彼女らは校門付近で下車を余儀なくされる、ここからは僕と同じく徒歩だ。
これがギャグアニメ世界。ツッコんだら負けである。
ふと校舎を見上げてみれば、2年C組の教室が目に入る。その一部は損壊していた筈だが、まるで何事も無かったかのように外壁は綺麗に修繕されていた──
昨日の顛末を思い返そう。
拘束された怪人と悪の女幹部。その幹部ミーアに頬ずりをする女子。
ヒーローは観戦の姿勢へと移行し、僕へと雑談を持ちかけてくる。
僕も両目を開いていた為、気絶から目を覚ましたと思っての事だろうが、せめて話題は考えろと言いたい。
「なんかさ! 女の子同士って、イイよなっ!」
開口一番がこれである。
確かに僕と輪は友人同士なのだが、ヒーロー『リングリット』とは会話した事すらないんだぞ。
形の上では初めて会話する相手だというのに、同意を求められても返事に困る。さて、どう答えるか……
【百合の間に挟まる男】【炎上案件】
視界が一瞬だけ赤く染まる。これは緊急事態だ!
急いでリングリットを止めなければ、きっと何かしらの火種になる!
「うんうん。蝶と花……いや、花同士かな?」
……ああ、問題なさそうだ。
僕が止めずとも、リングリットは【後方腕組み師匠】の如くミーアとまことを眺めている。
彼女らをどう表現するか悩んでいるようだけれど、花と蝶に例えるならウツボカズラに捕まったカラスアゲハといった所か。我ながら酷い表現だ。やはり百合というワードは偉大だった。
「この気持ちは一体? 胸が温かくなるというか、見守りたい……あるいは崇高なもののような……尊い?」
待て待て、令和の叡智も無しに未来の価値観を先取りされたら僕の立つ瀬がなくなってしまう。本当に輪は相変わらずだなぁ。
彼のヘルメットには、認識阻害効果があるようだけれど僕には効果が薄いようだ。
正体を知っているからなのか、単に付き合いが長いからなのか。或いはその両方か。
同様に、ミーアが装着している【VRゴーグル】の様な見た目をしたバイザーにも正体を誤魔化す機能があるらしい。
ゴーグルの前面は、おそらく液晶になっているのだろう。
ミーアの表情に合わせて、緑色のドットで描かれた瞳がパターンを変える仕様だ。
中央に一つある
《こりゃ! 折角捕らえたんじゃ、今のうちに敵の正体を確かめんか!》
「あ、そうだった! あのバイザーを外せば、ミーア・クシロンの正体が分かるかもしれない!」
ヒーローと女幹部は、互いに正体を知らない。
と言うよりも、それぞれの勢力に属する人間以外で正体を把握しているのは僕だけだろう。
ここでミーアの正体が露見してしまえば、それはそれで問題なさそうではあるが、おそらく『彼女』がそれを許さない。
ああ、ここで言う彼女とはミーアの胸に顔を埋めている羽吹まことの事ではなく
その光景をジト目で眺めている、柴犬怪人ケンケンαこと──【A子】の事である。
「ごめん、ミーアさま。どうか、無事でいて……」
「くぅ〜ん、わふ」
「んっ! やっ、ダメですわ! いい加減、離れなさいな! ひゃっ!?」
「むー。ずるい」
何処かで聞いたようなセリフを放つA子だったが、肝心のミーア様の耳へは届いていなかった。
不貞腐れたA子は少し頬を膨らませながら、拘束されている四肢へと力を込める。
すると彼女の身体から閃光が迸り、瞬く間に僕の視界は白く染まった。
これは自爆。前回の猫怪人同様、彼女たちは窮地に陥るとこの方法を取るようだ。
光が収まったのち、教室に残っていた人間は5人。
まず、僕とヒーロー。そして──
口では「あらあら」と言いつつも、大して戸惑ってはいなさそうな【B子】
強い光で目を覚まし、未だ寝ぼけた様子をみせる【クラスメイトE】
最後に、顔を押さえ俯きながら悶えている羽吹まこと。手で隠れて見えないが、おそらく彼女の顔はトマトの様に赤くなっていることだろう。
「……ねえ、見た?」
そう問いかける彼女に対して、僕は首を横へ振りすかさず否定した。
「うそ! だって君、顔赤いもん! ァ〜〜ッ!!」
どうやら僕の顔も相当に赤かったらしい。まことは声にならない悲鳴を上げ、蹲ってしまった。
居た堪れなくなり、僕は教室の被害状況へと目を移す。
窓側の壁には直径3メートル程の穴が空いている。
窓は勿論。中央にある柱。そのコンクリートと中にある鉄筋までもが綺麗にくり抜かれたように消失している。
何か円形、あるいは球体の物体が障害物を消しとばして直進したような形跡。
この場から消えた2人が、この現象を引き起こしたと見て間違いない。
最後にA子がいた位置、ミーアがいた位置、そして教室に空いた穴。
それらを線で結び延長させていけば、その先に存在している建物は萬宮寿邸なのだから。
「わん!」
自己主張をするかのように、小さな柴犬が吠える。
怪人が消えた後、その現場にはモチーフとなった動物が現れる。これで3匹目だ。
例によって萬宮寿家で引き取るそうだ。B子が子犬を胸に抱えて教室から出ていく。
いつの間にか変身を解いていた輪に声をかけられ、僕らも揃って下校する。
帰り道、まことが鬱憤晴らしをしたいと言い出し男3人は彼女のカラオケに付き合う事となった。
回想終わり。
さて、今日は土曜日。授業も午前中で終わりだ。
先週の第2土曜は休日だったものの、他の週は半日授業というカリキュラムだ。私立高校とはいえ、この辺りは公立高校と同じで助かる。
まあ、一昨年まで
ここ
僕らが受験した頃は、ここは公立高校だったのだ。
そんな常識では考えられない事を行なったのは勿論、萬宮寿家。
その為、しいなの祖母である萬宮寿イグナが現在この高校の理事長を務めている。
欧州の血を半分引いている若作りの老婆は、来年還暦を迎えるとはとても思えない──【美魔女】である。
その魔女は、孫が可愛い余りに学校を一つ市から買い取ってしまったのだ。
耐震に不安があると言い、春休み中に校舎を丸ごと建て替え、ついでに各教室へ冷暖房を完備してくれた事には感謝している。
だが、何も自ら教鞭を執らずともよいだろうと言いたい。
教員免許を持っている彼女は、理事長職と兼任して2年C組の世界史を担当している。
そして、教育に関しては異様に厳しいのだ。
時計を見上げれば時刻は正午を回って長針が真下を向いている。まさか、1時間も説教を受ける羽目になるとは……。
「あら? お祖母様のお話は終わりましたの? まったく、
解放されて廊下へ出てみれば、またもやしいなと遭遇する。
呆れ気味に話す彼女だが、僕自身あんな巫山戯た間違いを起こすとは思いもしなかった。
世界史の授業で最古の人類を問われ、サヘラントロプス・チャデンシスと答え、約700万年前に人類が出現したと口述してしまったのだ。
令和知識の弊害だろう。無意識下で当然と思ってしまっていたのが恐ろしい。
この時代の歴史教育では、アウストラロピテクスという答えが正解なのだ。人類の出現も440万年前という事になっている。
教科書は時代と共に改訂されていく。どうやら現在と令和では随所に差異があるようだ。
今の僕は油断していると、鎌倉幕府の成立を1185年と答えてしまいそうだ。
「……やっぱり、調子が悪いのかしら? それとも、あの時の結晶が──」
調子が悪いというのなら、彼女の方だろう。
もはや恒例となっている舌戦。Eがハブとマングースの戦いと揶揄するそれが、今朝はまことの圧勝で終わったのだ。
高笑いを上げ勝ち誇るまことの姿は、昨日のミーア・クシロンを彷彿とさせた。
言葉に詰まるしいなの姿は痛々しく、あの場面だけを切り取れば『ヒロイン』と『悪役令嬢』は完全に入れ替わっていた。
そして、まことが絶好調だった点に関しては僕にも原因がある。
今のまことは【自己肯定感爆上がり】状態なのだ。
昨日のカラオケで、僕らが褒めちぎった影響が如実に現れてしまった。正直、やりすぎた……
「──聞いていますの? よろしければ、ご自宅までお送り致しますわよ?」
思考に耽っていれば、目の前に萬宮寿しいなの顔がある。とても心臓に悪い!
彼女は【とにかく顔がイイ!】じゃなくて、いやそれも合っているけれども。彼女はとても
八方美人と言うには、ごく一部の人間に対して明け透けに物を言うのだが、基本的には淑女然としている。
悪の女幹部ミーアのように高笑いも上げなければ、水着のようなコスチュームも着ていない。
清楚な印象を残しつつ【絶対領域】を形成する制服の着こなし方は、見事の一言。
優雅な所作も相まって、まさに深窓の令嬢を絵に描いたような存在だ。
つまり、彼女の本性を知っていた所で急に接近されると素直に戸惑ってしまう。
むしろ【ギャップ萌え】とも呼べる感情を抱いてしまいそうだ。
真っ直ぐと見つめられる事に耐えられず思わず視線を動かせば、彼女の長い黒髪の中に同色で判りづらいがイヤホンのケーブルを見つけてしまった。
なにか音楽でも聞いているのだろうか? 僕には今や不要とはいえ、昨日までウォークマンを使っていた身としては共感を覚えてしまう。
無意識に耳を澄ましてしまい、イヤホンから漏れる独特のノイズが混じった小さな音を捉えてしまった。
《わたくしはニンゲン。わたくしはニンゲン。わたくしはニンゲン──》
「こわっ!?」
「な、怖いとはなんですの! 人が心配しているというのに!」
思わず大きな声が出てしまったが、なんだこの音声? 彼女自身の声で、まるで自己暗示をかけるかのように繰り返している。
人間である事を繰り返し意識しなければ自我が保たない? そんな非常識な──
嗚呼そうか。
昨日の柴犬怪人がもつ特殊能力『精神動物化』
おそらく彼女は、その影響下にあるのだ。この世界は勧善懲悪のヒーローものでもある。その『懲』にあたる現象。
人を呪わば穴二つ。彼女の身に、呪詛が返ってきたのだ。
そう考えると、今週の中頃まで彼女が常時キャスケット帽を被っていたのにも合点がいく。
理事長への忖度で彼女を注意できる教師はいなかったが、校則違反ではある。体面を繕うのが上手な彼女にしては違和感のある行動だった。
だが、あの帽子を外す事ができなかったと考えれば腑に落ちる。
先週襲撃してきた怪人の能力から推察するに、帽子の下にはきっと『ネコミミ』が生えていたのだろう。
「もう! 体調に問題がないのでしたら下校なさいな。火鬼崎博士に呼ばれているのでしょう?」
そうだった。僕は軽く挨拶を交わし、この場を後に──ん?
後ろを振り向けば、眼前に銀色の頭が現れる。僕よりも頭一つ分小さいA子が真後ろに立っていたのだ。
その手に掲げている画用紙には「それじゃあ、またね萬宮寿さん」と書かれている。これは僕が直前にした発言だ。
なるほど、今朝から続く違和感の正体はこれか。
イヤホンを付けている状態では大きな音以外は聞き取りづらい。そこでA子が紙に台詞を書き出し、会話を成立させていたのだ。文字を待ってから喋り出すのだから【ラグ】が起こるのも当然といえる。
「あの、これは! そう! A子に字の練習をさせてましたの!! そうですわよ、ねっ!?」
「……そう。」
いやいや、いくら幼く見えるからと言っても無理があるだろう! A子が涙目になっているぞ!?
達筆かつ高速で『萬宮寿』と書いてみせた彼女が、今更字の練習をする必要もないだろう。
僕はイヤホンの事を指摘して、そのせいで筆談をしていたのだろうとフォローする。
続けて捲し立て、もう放課後なのだから音楽をこっそりと聞いていたことを別に責めたりはしないと言い放つ。
そしておまけとばかりに、昨日のカラオケ帰りに購入した新発売のCDを贈呈しておいた。訳あって未開封なので失礼には当たらないだろう。
長尺になってしまった僕の台詞を一生懸命書き出しているA子を待たずに、今度こそ僕はその場を後にした。
余りにも居た堪れない状況を脱兎の如く抜け出し、僕は自転車を走らせ火鬼崎家へと駆け込む。
約束の時間5分前。危うく遅刻するところだった。
輪への挨拶もそこそこに、僕は博士の待つ地下室へと案内された。
〜♬(テーマソングをアレンジした予告用BGM)
ワッくん! ワッくん!
チョー大変だし! 街のみんなが石像になってるんですケド!?
「あ、まことちゃんの石像だ! 持って帰ってもいいかな?」
このおバカ! 早くリングリットに変身してみんなを助けなきゃMK5だかんね!?
次回、光速真芯リングリットX
第4話「カチカチ象さん パオファンの罠」
見てくれないと、ヤなカンジ! みたいな〜?
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#03 稀人と時の扉/石化回
「おーほっほっほ、さあパオファンβ! みんな石像にしてしまいなさい!!」
「は〜い。まかせてね〜」
ブラウン管から現実離れした映像が流れている。
ここがアニメの世界だということを再認識させる光景だ。
ゾウを模した怪人パオファンβ──こと、B子さん。
彼女がその長い鼻から放つ液体は、浴びると身体が石化してしまうらしい。恐ろしい能力だなぁ。
僕は自宅の居間で、特撮番組を見るのと変わらないスタンスでニュースの生中継を観ている。
モブキャラに相当する僕は、毎回事件に巻き込まれる訳ではないようだ。
秘密結社オメイラガの一団が襲撃しているのは近所の商店街。徒歩5分の距離とはいえ、テレビで観られるのだから態々向かうこともないだろう。
「いやっ! 身体が!? や……やだ。どんどん固まって……!」
画面の向こうで、友達のまことが石化しかけている。
セリフだけを聞くと悲哀を感じさせる物言いだけれど、固まりつつあるポーズと表情はコミカルな印象を与えてくる。
それもその筈。脚が固まり動けなくなった彼女は、いつかの仕返しとばかりに女幹部ミーアによって弄ばれているからだ。
くすぐり地獄とでも言うような仕打ちを受け、まことは涙を流しながら笑っている。
「ひゃん!? やめっ、てよ! ひゃ、この変態女!! あんた、こんな趣味、がっ!」
「どの口が言うんですの!?」
「ひゃははは! もうイヤ〜っ!!」
「観念なさい!
只今の時刻は夕方6時を回った所。
この映像がお茶の間に流れていると思うと、彼女には同情しかない。
口元まで石化してしまい、もう抗議もできない彼女の表情がアップで映し出される。カメラマンも相当な変態である。
そういえばミーア・クシロンのコスチュームは前回と違う様だ。
マイクロビキニだった部分は、胸元から臍にかけて大きくV字に開いているスリングショットと呼ばれる上下一体式の水着へと変わり、下半身にはエナメル素材のマイクロミニスカートまで履いている。
どちらも黒を基調としたカラーリングこそ変化していないが、露出度は低減した印象だ。
彼女なりに、TPOを意識したのだろうか?
先程、石化する前のまことと格闘した際、ミーアはスカートの中身をバッチリとカメラに捉えられていたけれども。
ああそういえば、下着ではなく水着だから別に見られても問題ないのか……前に令和の叡智がそう言っていたな。
思えば、女性用の衣服に関してスラスラと名称が出てくるのも叡智による影響か。
今はだいぶ静かになった『叡智』について、少しだけ思いを馳せようか。
これ以上画面に映る光景を見続けるのは、とても危険を伴うからだ。
未だに変態カメラマンが捉えている画は
満面の笑みを浮かべ、コマネチのポーズで固まってしまった『まこと石像』なのだから。
意識を逸らさなければきっと──僕のナニカが歪んでしまう。
先週の土曜日。
萬宮寿しいなへ別れを告げ、僕は駐輪場まで駆けてきた。
理事長の説教という思わぬイベントが発生したおかげで、火鬼崎家を訪問する予定の時刻まであと15分といった所。
幸い、自転車ならばまだ間に合う時間だ。脳内で音楽を流しながら、僕は校門をあとにする。
頭の中で流れている曲は、先程しいなへ贈呈した新発売のCDアルバム。
最近では知識の引き出しが底を尽き、半ば卑猥なワードを垂れ流すだけの『叡智』だけれど、この機能だけは有難い。
端的に言えば、僕の脳内には音楽データがダウンロードされているのだ。
切っ掛けはCDショップで、
補足するとこれは別段珍しい事ではなく、レコード時代の名残りとして発売日前日に販売開始するのが通例となっている。
ちなみに令和でも、CDのみ特例で【フラゲ】という枠組みには含まれないらしい。なんだか言い訳みたいになってしまったな……。
これも『叡智』がやたらと【コンプライアンス】やら【インテグリティ】といった概念を流し込んでくるせいだろう。
話を戻すと、僕はCDジャケットを手にするとその中身の音楽を脳内にダウンロードする機能を手に入れたのだ。
これだけ聞けば【サブスク】【聴き放題】のように思えるかもしれないが、欠点が3つ程ある。
まず、購入せずに曲を聞くのは気が引ける点。
これは令和の価値観に由来したものではなく、単純に僕がファンとしてアーティストに利益を還元したいからだ【お布施ですね分かります】──言い得て妙な表現だな。
ちなみに、購入したアルバムは当初まことへプレゼントする予定で鞄にしまっていた。しかし、今のまことを増長させては【承認欲求モンスター】へと進化してしまう。ライバルが不在のままでは危険なのだ。あのアルバムが、少しでもしいなを復活させる手助けになってくれれば幸いだ。
次へ行こう。
いま挙げたのは、精神的なものなので厳密には欠点と言い難いのだが2つ目は別だ。
『ダウンロードする度に鼻血が出る』というこの欠点は、かなり問題だ。
CDショップでは友人を心配させてしまい、家に帰って再度実験した際には間が悪く姉に目撃されてしまった。
鼻血の件は
そして、最後の欠点。
特定のCD以外は触っても無反応。
これは実験が中断されてしまった為、仮説に過ぎないけれども。今脳内で曲が再生されているバンド以外は、ダウンロードできない可能性すらある。
僕はこの件から『叡智』にも指向性、あるいは嗜好性があると仮定している。
思い返してみれば、性的な方面に深い造詣を持っているのだから然もありなんと言った所だ。
まあ『叡智』に関しては、これからの検査で答えが出るかもしれない。
アルバムの3曲目が始まると同時に火鬼崎家が見えてきた。予定の5分前には着けそうだ。
庭に自転車を止めさせてもらい、脳内の音楽も停止する。
欠点を幾つか挙げたものの、時代に先駆けて【ワイヤレスイヤホン】を手にしたも同然なのだ。名盤がいつでも聴けるという利点ひとつで、些細な欠点など全て飲み込めてしまう。
「おー、んぐ。やっと説教が終わったか。もぐもぐ、じっちゃんが地下で待ってるぞー」
呼び鈴を鳴らすと、萬宮寿しいなの其れとは似ても似つかないツンツンとした黒髪が出迎えてくれた。
僕の友人の輪である。
一人で先に帰ったのは許そう。説教を受ける羽目になったのは僕の落ち度だ。
しかし、昼食のおにぎりを食べながらの応対には文句を言う。
僕は検査のため、昼食どころか朝食すら抜いているんだぞ! 立派な【飯テロ】だ!
そんな抗議をしていると輪の祖母である
笑っている輪から意識を逸らし、僕は恐縮したまま彼女の案内を受ける。
空腹感を誤魔化しながら螺旋階段を下って行く。行き着く先は、地下の研究施設。
短時間で様々な検査を受けた。
MRI、エコー検査、脳波測定、血液検査。
なぜ町の発明家が大学病院顔負けの設備を有しているのかとは、この際言うまい。
謎の液体で満たされたカプセルに沈められた後では、些細な疑問だからだ。
近未来的な機器が乱雑するこの研究所は、おそらく令和よりも科学水準が高いのだろう。
しかし、ここでリングリットのヒーロースーツが開発されているのだから当然と言えば当然なのだ。
さらに言うのなら、この世界はギャグアニメ。深く考えてはいけない。
「ふーむ。大脳新皮質のシナプス伝達が──いや、海馬の興奮性シナプスかの?」
元々の皺も相まって、一層深くなる眉間の皺。
輪をそのまま80歳ほど加齢させた様な見た目の火鬼崎博士が、その白髪を掻きながら検査結果と睨み合っている。
「改めての確認なのじゃが、鼻血を出す時は『エロいこと』を考えてる訳ではないんじゃな?」
何やら真面目な考察をしていたかと思えば、急に下世話な質問をしてくる博士。僕は、すかさず否定した。
『叡智』の嗜好はおそらく『それ』だと思う。
しかし、僕自身が性的な興奮で鼻血を出した訳じゃない。
これまでに原因不明の鼻血を出したのは4回──
叡智の書に触れた直後。
柴犬怪人を目視した直後。
CDショップで新発売のアルバムに触れた時。
自宅のCDアルバムに触れた時。ちなみに同バンドの1stアルバムだ。
「うーむ……やはり『叡智の書』が起因かのう。しかしのう、アレは本来……ああ、安心せい。そう慌てんでも説明するとも。よし、心して聞くんじゃぞ? 非常に言い辛いのじゃが、アレは本来…………ただの『エロ本』なんじゃよ」
は、い?
思いも寄らないワードが出てきて、放心してしまった。あの深刻な溜めは一体なんだったんだろう。
「いや、ただのとは言ったが侮ってはならんぞ? かの葛飾北斎が描いた『蛸と海女』に始まり、ワシが集めた珠玉の数々が──」
妻には内緒じゃぞと釘を刺し、饒舌にエロ本談義を始めてしまった博士。
眼前の助平な老人を思考の隅へと追いやり、僕は考える。
どうやら、学校の地下──正確には校庭にある防空壕から続く地下空間。
そこには博士が長年かけて収集した『エロ本』のコレクションが眠っていたらしい。急に話のIQが下がったな……。
博士が言うには、孫がとある活動を行う際の報酬として隠し場所を教えたのだとか。
僕がその孫に聞いた話では、御先祖様が残した宝の地図に『太古の叡智が記された書物』の在処が示されている。という触れ込みだったのだが。微妙に間違ってはいない所が頭にくる。
まんまと担がれた僕らは、少しばかりの探検を楽しんだ末に見事『宝』を発見した。
その直後、悪の組織の乱入で場は混乱。争奪戦の様相を呈した中、一番最初に『宝』に触れたのが僕だった。
話の顛末としては、これだけなのだが──ひとつ疑問が残る。
僕が触った『叡智の書』は本ではなくて、クリスタルの様な物なのだ。
「そうなんじゃよ。なぜクリスタルがあの場に? 一体、ワシのコレクションは何処へ……?」
どうやらこの老人、エロ本に御執心らしい。
おそらくは輪がヒーロー活動をする見返りに譲渡する予定だったのだから、いい加減忘れて欲しいものだ。
いや、ヒーロー活動の見返りがエロ本ってなんだよ。
孫も孫なら、祖父も祖父だな……。
「うむ。時に、君は『予知能力』あるいは『未来の観測』などできたりせんかのう?」
「っ!?」
「ある筋からの情報で、君がウォークマンを使い怪人の特殊能力を初見で回避した件は知っておる。そして、今日の世界史の授業で『架空の歴史』をすらすらと語っておったそうではないか。学問は時と共に進歩する。歴史に関しては新発見ひとつで大きく変化しおるしの。もし未来でサヘラントロプスなる人類の祖が見つかるのならば、君の語った内容は逆説的に未来を知り得るからこその答えだと証明される筈じゃ」
不意を突かれ、またもや固まってしまった。
ただの助平ジジイだと侮った瞬間に、これである。まんまと担がれた気分だ。
出来れば秘匿しておきたかった事柄だけど、こうなっては包み隠さず話すしかなさそうだ。
令和のこと。
この世界が、
そして、悪の女幹部ミーア・クシロンの正体が萬宮寿しいなだということ。
まずは何から話すべきか───
「待つんじゃ! その前に、最後の確認がある。君の脳内にある知識、あるいは人格かの? そいつは、なんと言うか……助平ではないかの?」
確かに。そちら方面の知識がやたらと豊富なのは身に沁みている。しかし、なぜ博士がその事を?
「ふーむ。ワシかのう? いや、もしや倅が……やはり、順当に行けばワッカかのう? まだ仮説の域は出んが、この件は伝えない訳にもいくまい。よし、落ち着いて聞くんじゃぞ? 君の頭に入っているその知識。その人格の元となっている存在は、未来の火鬼崎ワッカなのかもしれん!」
いや、それは無い。
「順番に説明せんとな。君がクリスタルに触れる前日から、大量のフェチニッチ粒子が観測されておった。それが、クリスタルの消滅と共にピタリと反応も無くなってのう。この粒子なんじゃが、ワシが構想中のタイムマシンには──
〜中略〜
よってワシ、いや恐らくはワッカの記憶をカー・ブラックホールに──
〜中略〜
しかしなんの因果か、バタフライエフェクトが起こり君が結晶体に触れてしまい──
〜中略〜
つまり、未来の情報を君が口外してしまえば時空連続体がアレして、世界が崩壊してしまうんじゃよ! 決してワシに、未来の事を語ってはならんぞマーティ!」
長期に渡る怒涛の講義で脳が熱をもっている。
ただの高校生である僕に、相対性理論の把握を前提に語られても困る。そもそもフェチニッチ粒子って何?
これは令和に【要約】という文化が浸透するのも頷ける。
専門用語が多すぎて、概要しか分からなかったものの僕なりに要約するとこうだ。
1)将来、博士はタイムマシンを作る。
2)それは脳内の記憶だけを過去へ送るもの。
3)叡智の書の正体は、未来から送られた記憶を結晶化したもの。
4)粒子の観測結果から、時空の歪みが発生していた。
5)未来の輪が、過去の自分に記憶結晶体を送ってきたと仮定。
6)それを僕が触れてしまったために、脳内で情報が混線してしまった。
7)その結果、脳へ過度な負担がかかり鼻血が出る。
他にもワームホールやら記憶結晶化のメカニズムなども説明されたが、僕には理解不能だった。
あと、僕の名前はマーティじゃない。
「まあ崩壊と言っても、実際はこの銀河だけで済むかもしれんがのう。サヘラントロプスの件もセーフなようじゃしな」
「それを聞いて安心したよドク。けれど、僕の鼻血は一体どうしたらいいんだい?」
博士の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ごっこに僕も付き合う。
さっきの仮説は、正直なところ間違っていると思うけれども。折角なので乗らせてもらおう。
未来の事を博士に話したら、銀河が崩壊するなんて言ってるんだ。これで堂々と黙秘できる。
萬宮寿しいなの正体を明かさずに済むのなら、それに越した事はない。
決して、普段の彼女が見せるあの笑顔に絆された訳ではないけれど──
【男のツンデレは、海原雄山とグミ撃ち王子で間に合ってます】
たった今、やけに長尺で叡智をもたらした存在は、輪でも博士でもないだろう。ついでに僕もツンデレとやらではないし、そもそもグミ撃ちって何?
この知識元。或いは人格とも呼べるものの元となる人物は、十中八九『女性』なのだ。
しかも、この世界を物語として観測しているのだから
僕の予想では、令和で流行りの『異世界転生』なる現象の亜種。
クリスタルに人格を封じられた転生者が、現地住民である僕に乗り移ろうとしたんだろう。
しかし邪魔が入ってしまい、女性の人格は不完全な形で僕の脳内に染み込んでしまった。
言うなれば転生失敗。僕としては自我が保たれたのだから幸運な結果だ。
ちなみに、相手が女性だと思う最大の理由は昨日の入浴中に【ショタの身体】【え?高校生?】【大丈夫、私の許容範囲】などと脳内に流れて来たからである。
これで相手が男性、しかも友人であったとすれば僕は人間不信になってしまう。
女性でも十分【ヤベー女】だという事実には、今は目を瞑ろう。
回想中断。
あれから博士にもらった『バングル』のお陰で、令和女性の毒電波はだいぶ大人しくなった。
僕の左腕にはめているそれは、一見するとただのチタン製の腕輪。だけどその表面を指で一周なぞると、光を帯びた梵字の様な模様が九つ浮かび上がる仕様だ。
博士曰く、この模様には煩悩を抑制する効果があるとのこと。
ただ博士の認識では、僕の脳内にいるワッカの煩悩を抑えることで僕の人格を保護する為の措置となっている。
仮説は間違っているのに、結果は出すのだから博士には脱帽するしかない。
さらにこのバングルの素晴らしい点はもう一つある。
なんと完全防水&抗菌仕様。
つけ始めて既に一週間。
手首を洗う際にだけ取り外せば済むので、僕も安心して入浴できる。
ちなみに腕から外すと板状に変形する。この仕様は、前に縁日で妹に買ってあげたリストバンドの様で面白い。
基本的には常時身につけているのだが、稀に例外もある。
それは『叡智』が強い意志で情報を送ってくる時だ。その状況に応じて、僕の気まぐれでバングルを外す時もある。
既に有用な知識は十分引き出したあとなので本当に気まぐれだ。
もう残っている情報と言えば、ニッチなフェティシズムと──
「おーほっほっほ! 罠に掛かりましたわねリングリット! パオファンβを拘束する事は不可能でしてよ!!」
「くそー! 怪人の手脚がぶっといせいで、リングが入らないなんて!」
「さあ、パオファンβ! その太ましい手脚で、直接リングリットを倒しておしまいなさい!」
「ミーアちゃん。太ましいは余計よ〜、ぱおん」
ミーアの一際大きな高笑いが聞こえてテレビへ意識を戻してみれば、どうやらリングリットがピンチのようだ。
いつヒーローが現れたのか見逃したけれど、画面には大量の石像も映し出されている。
カメラアングルも固定されているので、恐らく変態カメラマンも石化してしまったのだろう。
遠巻きに映る動く人影はヒーローと女幹部。そして、3メートル近い身長の象怪人だけ。僕の遠近感覚がバグりそうだ。
象怪人は巨体を活かしてヒーローへ重い一撃を喰らわせている。体格差で大きく負けるリングリットは、簡単に地面へと倒されてしまった。
そのまま怪人がヒーローへと伸し掛かる。丁度、象怪人──B子さんの胸部がヒーローの頭部を押し潰す形になっている。
余談だけど、B子さんは普段からグラマラスな体型をしている。それが象怪人と化した今は、平時の2倍はサイズアップしている。全体的に。
きっと、これで窒息したとしてもワッカは本望だろう。その証拠に、振り解こうとする素振りを全く見せていない。
勝負が決まったかに見えるこの状況で、僕のバングルが激しく振動する。
これは、どうしても送りたい情報が来る合図だ。
普段ならば叡智な事しか考えていない『レイワさん』も、こと原作知識に関してはまともな情報をくれる。
今こそ、真の叡智を見せてくれ!
【うぉ…でっか】【乳圧がすごい】【頭より太い太ももって叡智】
ダメだコイツ。
【令和ではピ◯チ姫も太ましい象に変身する】
嘘をつくな。国民的ゲームのヒロインが、そんなニッチな変身する訳ないだろ。
たまにバングルを外すとこれだから困る。
【象怪人は鼻が弱点】【古事記にもそう書かれている】
ああ、なるほど。古事記は置いておいて、確かに長い鼻の先端はリングの内径より細そうだ。
先程放たれてから空中を彷徨っていた光輪が、パオファンの鼻へと向かっていく様子が丁度映されている。
光輪が鼻へと嵌り、きつく締め付ける。固定された後は、前回同様に怪人ごと宙へと浮かび上がる。
象怪人の重量は、画面越しでも200キロは超えそうな巨体だというのに、鼻を起点に身体を持ち上げられている。
博士がタイムマシンを語る時に反重力が云々と言っていたけれど、その技術なのだろうか? ダメだ。理解不能で鼻血が出そうだ。
考えても答えが出ないので、巨体から解放されたリングリットに視線を移してみよう。
特にダメージは無さそうだ。それどころか、むしろ残念がっている。
彼のヘルメットは、口元が開いているので表情を読み取りやすい。
あの重量に乗られてこの余裕とは、ヒーロースーツは耐圧性にも優れているらしい。
「ハーハッハッハ! さあ観念しろミーア・クシロン!!」
「パオファンβ!? 大丈夫ですの!? そのお鼻、もげませんわよね!?」
「っタタ! ひぐぅ〜、ごめんミーアちゃ〜ん! もうムリかもぉ」
「離脱っ! 離脱しますわよー!!」
リングリットを無視する形で、B子さんを心配するミーア様。
彼女が離脱を宣言すると、画面は閃光で白一色となる。
そして、光が収まるとカメラが一人の少女をズームした。
顔を真っ赤に染めて蹲る羽吹まことが、そこには居た。うん、石化が解けてなによりだ。
けれどカメラマンに言いたい。普通、ここはヒーローを映すシーンだろう。
音だけは拾われているヒーローの勝ち誇った高笑いが、妙に虚しく感じてしまう。
毎度毎度、博士の手柄なのは最早言うまい。僕もその恩恵を受けているのだから、もうワッカを責められない。
【攻め? 受けでは?】【男の子は、男の子同士で仲良くすればいいと思うの】
ああ、バングルを外したままだった。早く腐海の毒を遮断しないと。
板状になっている金属を手首に向かって軽く振れば、ジャストサイズで巻きついてバングルへと変化する。
そのまま指の腹で一周なぞり、煩悩封じの模様を浮かび上がらせれば──
【ギャー! 痛い痛いっ!】
【無自覚ドSショタからの折檻!】【むしろ、ごほうびで、す──
この一週間。こんな感じでレイワさんへの躾を行うことで、僕の平穏が維持されるようになったのだ。
光速真芯リングリットX
第4話「カチカチ象さん パオファンの罠」
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── Friday Night Fever!
「ただいまー! あれ、珍しい。ニュース見てるの? えっ、街中に象が逃げ出してる!? しかも、めっちゃ近所じゃないコレ!!」
石化報道の終わり際に、姉さんが帰宅する。
悪の組織の撤退後、例によって現場には動物が現れた。今回は『象』だ。
暴れる様子もない大人しい象は、萬宮寿家の運営する動物保護施設へと移送されるらしい。その報道を最後に、画面は次のニュースへと切り替る。
人間が石になる常軌を逸した事件が起きたというのに、今はもう街角の定食屋特集が放送されている。まあ、ギャグアニメ世界だから仕方ない。
僕は、退屈そうにテレビを眺めている姉さんへチャンネル権を移譲する。
いつもならば、金曜日の夕方6時はアニメの時間。
去年まではギャグコメディのヒーローものといった、まるでこの世界の様なアニメが放送されていたけれど。現在は少女漫画原作のアニメが放送されている。
「ちぇ、もうエンディングかー。ってあれ? もしかしてコレ録画されてる?」
チャンネルを回せば、売り出し中の男性アイドルグループが歌うエンディング曲が流れている。女子高生を中心に人気沸騰中だと聞くが、その枠組みである筈の姉さんはさして興味が無さそうだ。この曲、僕は結構好きだけど。
ちなみに録画に関しては、習い事で視聴できない小学生の妹を思っての事だ。決して、僕が見たかった訳じゃないとも。
「またまたー、じゃあ後から皆で見ようね。あっ! そうだ、録画で思い出した! 私、今朝アッチの録画予約してたっけ!?」
騒がしい姉さんの言うアッチとは夕方5時半に放送された『戦隊ヒーロー』が活躍する特撮番組の事だ。最近ではフィクションの垣根を超えてヒーローと悪の組織が戦っているというのに、この番組は相変わらず子供に大人気らしい。もちろん一部の大きなお友達にも大人気である。僕の姉もその内の一人。
令和と比べれば『オタク』という人種が冷遇されるこの御時世で、姉さんは紛うことなき『特撮オタク』と呼べるだろう。友人らがアイドルグループの握手会へ出向く一方で、姉さんは遊園地で戦隊ヒーローと握手するような人だ。
収集物にも余念がなく、床の間には『DXな超合金のロボット玩具』が所狭しと飾られている。その中でも一際目を引くのが、変形合体するヒーロー基地。
この巨大な基地には、姉さんを語る上で欠かす事のできない哀しい逸話が存在する──
番組本編ではたったの2回しか変形しない超巨大ロボット。
これを模した玩具は巨大さ故に、かなり値の張る代物
姉さんは発売直後に定価で購入したのだが、世間的には価格が高過ぎたが為に全く売れず程なくして大幅な値崩れを起こしたのだ。
戦隊ヒーローは一年で番組が切り替わる。次の戦隊が新しいロボットに乗るのだから、必然的に古いロボットは玩具店にとって邪魔者とされる。
結果、近所のおもちゃ屋では980円で売られていた。
これを広告で知った姉は、まるで人格が排出されたかの如く、その表情からは知性の全てが抜け落ちていた。
「あ、ちゃんと録れてるじゃん。さすが私!」
違う。案の定忘れていたから、僕が予約しておいたんだ。
今朝の姉さんは慌ただしかったので、念のため確認しておいて良かった。例の一件以来、特撮関連での失敗は姉さんのトラウマへと繋がってしまう。
実の姉が目の焦点も合わず、口から涎を垂れ流して放心する姿はもう見たくないからな。
「その件は忘れて……。でも録画してくれてありがとね! なになに? 急に優しくなっちゃってー! ついこの前まで反抗期だったのにー」
頭を撫で回してくる姉さんを払い除け、少し考えてみる。
どうやら僕の性格は、叡智に触れた時から少しだけ変化していたらしい。
周囲からはやれ反抗期だの、お年頃だのと言われたけれど。バングルの装着後はそういった声も減ってきている。
恐ろしい話だ。博士が言ったように、あのままでは人格を上書きされていたのかもしれない。
レイワさんに身体を乗っ取られるなんて御免被る。このバングルは僕の生命線だ。
思考の言語化は習慣づいた為こうして継続しているものの、今は肩肘張らずとも良いので大分楽になった。改めて、博士さまさまである。
「あーあ、どうせなら映画の方も観たかったなぁ〜」
特撮番組の録画を観ている姉さんが呟く。
今日は友人と映画を観に行くと言っていたけれど、まさか特撮ヒーローの映画だったとは。
女子高生の放課後が、それでいいのだろうか?
もっと、バンド活動をするとかティータイムを楽しむとかあるだろうに。
「あ、映画はこの戦隊の劇場版だけじゃないよ? なんと特撮モノ3タイトルが抱き合わせ! お得でしょ?」
なるほど、ドラえもんの映画とドラミちゃんの映画がセットになってるようなものか。妹にねだられて先月一緒に見に行ったので僕は詳しいんだ。
今年も傑作だった。
利便性を追求した結果、ナポギストラーというロボットに反乱を起され人類は淘汰される。実に社会的なテーマだ。AI技術の発展する令和は果たして大丈夫なのだろうか?
「ねぇ聞いてる? 3つの内1つはライダーだからさ一緒に観にいこうよ、好きだったでしょ?」
行かない。この歳で姉と一緒に映画なんてごめんだ。
ライダーへの憧れも、小学生の頃の話だ。あの頃は、ワッカもEも揃って話題にしていた。
そして僕らのライダーは、二年間に渡って世界を守り平成が訪れたその年に旅立ったんだ。
リングリットも、かのライダーを少しは見習って欲しい。
唯一ワッカが見習っている所は「ゆるさん!」という怒号くらいだ。あれは格好いい。
「あのね〜、妹と映画観るのはオッケーで、どうしてお姉ちゃんはダメなの?」
それは姉さんの容姿が僕と似ているからだ。
まるでコンパチブルキャラクター。略してコンパチ姉。いや、冷静に考えれば僕の方が後から生まれたのだし、僕こそがコンパチ弟だった……
それはそれとして! 僕が何度、姉さんに間違われて困惑した事か!
学校で突然、見知らぬ上級生の女子が親しげにボディタッチしてくるんだぞ。そして、こう言われるんだ「なんで男子の制服着てるのー?」と。
男子だからだ!
少しでも見分けが付くように、わざと左側の前髪を伸ばしたっていうのに。
姉さんまで右側の前髪を伸ばしてしまったので、余計に紛らわしくなったのだ。
なんでも『ターミネーター2』のジョン・コナーを意識した髪型らしい。ロボットさえ登場すれば洋画まで網羅している姉さんは瞠目に値する。
ターミネーターは僕も好きだけど……あ。一つ疑問が解消された。
ナポギストラーにどこか既視感を覚えたのは、ターミネーター世界のスカイネットが原因だったのか。あの人口知能も人類を淘汰しているんだ。うん、この先の未来で発達するAI技術には細心の注意が必要そうだ。
「ま、いいや。映画は、明日もう一回あの子を誘ってみるから!」
姉さんの口振りで分かっていたけど、映画自体は観られなかったようだ。
どうやら友達に急用が入ってしまったので延期にしたらしい。道理で帰宅時間が微妙に早かった筈だ。
しかし、そうなると一つ腑に落ちない点がある。
この姉が予定もないのに、特撮番組のリアタイチャンスを見す見す逃すとは思えないのだ。
これは何かしらの事件のにおいが──
「もう! 遅くなったのは遠回りしてたからなの! なんかね? 今日は商店街を通ったらダメだってあの子が言うからさ。占いに出てたんだって。ほらほら、きっとさっきの象の事だったんだよ! あとで、ポケベルにお礼送っとかなきゃ」
占いが好きな所だけは女子高生らしくて安心したよ。
けれどそれは、占いではなく友人への遠回しな避難勧告だったのだろう。諸事情で姉の交友関係に詳しい僕ならば分かる。
いま姉さんが口にしている『あの子』とは、先程までテレビの中で猛威を振るっていた『B子』さんの事なのだ。
姉さんと彼女は同い年。B子さんは僕と同じクラスに在籍しているが、一つ年上になる。
成績に問題もなく、素行も良い彼女だけれど出席日数が僅かに足らず留年している。ただこれは、おそらく表向きの理由だ。何かしらの萬宮寿家に関わる裏の事情もきっとあるのだろう。
姉の友人として何度か家にも来ている彼女が、今はクラスメイトなのだから僕としては複雑な気分だ。取り敢えず、クラスで僕の事を『弟くん』と呼ぶのをやめて頂きたいのだが、この切実な願いは却下され続けている。
「ふむふむ。やっぱり今作は拳法を取り入れたアクションシーンが見ものだね。カンフー映画好きからしたら、どう?」
考え事をしている間に、特撮番組が佳境に入ったようだ。評論家気取りの姉さんが僕へと質問を持ち掛ける。折角なので乗ってあげるか。
この拳法は、
スーツアクターも武術経験者のようで、実に見映えのするアクションシーンだ。
ん? レイワさんが普段反応しない話題で震え出した。まさか拳法にも一家言あるのだろうか?
【
おお! 音楽の趣味は合うと思っていたけど、こっちの趣味まで合うなんて──
【そして、トリケラトプス拳】
なんて?
「固まっちゃってどうしたの? あ、そろそろ7時だよ。ウチのかわいい拳法家を迎えに行くんじゃないの?」
おっと、そうだった。令和の妄言はバングルで封印して、と。
もう妹を迎えに行く時間だ。
僕も小学生の頃まで通っていた町道場──『羽吹道場』へ向かわなければ。
羽吹流格闘術
嘘か真か、その起源を辿れば飛鳥時代にまで遡るらしい。
『武器を打ち破る』即ち『
羽吹流は、どのような武器を前にしても身一つで打ち破る事を理念とする格闘術。
当代師範である羽吹
そして、この羽吹流には千年以上の因縁を持つ宿敵流派が存在する。
萬宮寿流武器術
起源は同様。飛鳥時代から両流派は戦の度に活躍したらしい。古事記に書かれているかは不明である。
萬宮寿流は『武芸百般』を理念とし、門下生はあらゆる武器の心得を叩き込まれる。
刀、槍、弓といった日本古来の武器は勿論の事。近代ではミーアの扱う孔雀鉄扇のような変わり種まで、国内外を問わずありとあらゆる
長い長い歴史の中。相反する思想を持つ二つの流派は、ことあるごとに激突を繰り返してきた。
転機が訪れたのは戦国時代。鉄砲の伝来を皮切りに、武器の進化が甚だしくなる。
次第に萬宮寿流が多くの戦功を上げる事となり、時代が進むほどに富を築き、
結果──平成の世である現在、羽吹流の憤懣は最高潮へと達した。早い話が嫉妬である。
その煽りを受けてか、幼少期は仲が良かったらしい萬宮寿しいなと羽吹まことは犬猿の仲となってしまった。
そんな女子達がいる一方で、現在僕の視界に映る2人は仲睦まじく語り合っている。
「うんうん。やっぱりブロリーのがセルより強いよね?」
「そう。闘う程にパワーアップするあの絶望感。特に足音がいい」
「あははは! 足音はどっちも一緒でしょ」
「ふふ」
羽吹道場の門前でドラゴンボール談議に華を咲かせる女児2人。いや、片方は見た目だけで実際は高校生なのだけども。
まさか、A子と僕の妹が友達だったとは驚いた。
というか普段口数の少ない彼女が、こんなにもDBを語れるとは! ちなみに僕は、再生能力の点からセルの方に分があると──ん?
【ラゴンボなら私も語れます】
嘘をつくな。ファンならそんな略し方しないだろ。
もうレイワさんが反応しても、日常でバングルを外すの止めようかな……。
【令和のパラガスでございます】【あれは、いい枯れ具合──
封印っと。
「あ、お兄ぃ。ほら、やっぱり迎えに来たでしょ?」
「過保護」
「あははは! お兄ぃ、かほごー」
いや、悪の組織が蔓延る世の中だから。妹が襲われやしないかと多少は心配になる。
まあ目の前に組織の怪人を担当してるクラスメイトがいるのだけど。
柴犬怪人の時に見せた身のこなしから分かるように、彼女も武術を嗜んでいる。
萬宮寿家に仕える彼女だが、扱う武術は羽吹流。僕と同じく、この道場に通っていた過去をもつ。
だからこの場にいたとしても不思議はないものの、一体いつ妹と仲良くなったのだろう?
「ついさっきだよ? 最初は、お兄ぃと勘違いされちゃって困ったよ〜」
「困ったのはワタシ。似すぎ」
なるほど『コミュ
僕は妹より身長が5センチも高いので、似てると言われるのは心外だ。見た目だって、妹は両メカクレと呼ばれる髪型なのだし。
けれどこのまま妹の身長が伸びてしまえば、姉さんのコンパチキャラ第2号の誕生だ。
最近までは僕より頭一つ分小さいA子と同じくらいの背丈だったというのに。小学校高学年女子の急成長が恐ろしい。
一刻も早く、僕自身が成長しなくては! せめて、あと5センチは欲しい……まことより背が低いのは割と気にしてるんだ。
「聞いてよお兄ぃ。さっき、パンパンで性別を確認されちゃったんだよ?」
「ワタシは、Dが本当は女の子なのかと思った。違和感ゼロ」
「あはは! それでねー。こんな確認のしかた、子供の頃の悟空しかしないよーって話から盛り上がっちゃって」
「有意義な時間だった」
くれぐれも、僕にパンパンはしないでくれよ。
妹の暇つぶしに付き合ってくれた事には感謝するけども。そろそろお開きとしようか。
先程から、道場の壁を越え響いてくる掛け声──その中でも特に、まことの発する声が段々と大きくなっているんだ。これは組み手に相当の気合いが入っているな。誰かが石化の件を話題にでもしたんだろうか?
この場に長居すると、僕にまで飛び火しかねない。
僕だってワッカよりは武術の心得があれど、師範代のまことが相手では為す術がない。ボロ雑巾にされるのがオチだ。
「待って。しいな様から伝言。次の祝日は予定を空けておいて」
「お兄ぃ、デートするの!?」
話が突飛すぎる。
来週の祝日といえば木曜日になるのか? 人によっては、ゴールデンウィークの入り口になる日だ。
僕らの学校は金曜と土曜は通常通りなので、連休に含まれない微妙な休日だ。予定は入れていないけれど、いきなりデートだなんて言われても……
「ちがう!! 調子に乗らないで。オープン前の屋内スキー場を、一緒に視察するだけ」
「あはは、ふられちゃったね! でも、お兄ぃがスキー? やった事ないでしょ?」
「Dは一般人の見本。なかなかいない逸材」
物凄く貶された気分だが、ようはレジャー施設に関して一般人目線の批評が欲しいという事か。合点はいったけれど、最初の否定が強すぎて怖かった……
とは言え、屋内スキー場というのは面白そうだ。なんだかドラえもんの秘密道具『おざしきゲレンデ』を思い出す。
ついに現実が空想に追いつくんだ。令和のVRには及ばないまでも、平成の新技術は是非観てみたい。
「ずーるーいー! りなだって一般人だもん! 行きたい! 行きたい!」
「なら妹も来ていい。しいな様は寛大だから、たぶん大丈夫」
「やったー!」
わがままな妹で申し訳ない。改めて、しいなさんへは学校でお礼を言うとして。あれ? けれど例の呪詛返しは大丈夫なんだろうか? 『精神動物化』の影響なのか、今週の頭は学校を休んでいたんだ。
そうなると今度は『石化』して……いや、考えても答えは出ないな。事情を知らない筈の僕がA子に尋ねる訳にもいかないのだし。
一先ずこの場は解散しよう。そろそろ、本当に不味そうな予感が──
「ねぇ。裏切りモノが、ウチの門下生になにを吹き込んでいるのかな?」
「あ、まこ姉ぇ」
「君も! ちゃんと妹を守らなきゃダメでしょ!」
違う。そっちが妹だ。キョトンとしてるだろ?
面倒な展開になってしまった。さっきの石化事件で鮮烈なテレビデビューを果たしたまことは、頗る不機嫌なようだ。裏切りモノ扱いを受けているA子がいる事も、機嫌の悪さに拍車をかけている。
荒ぶる彼女を前にして、妹が僕と勘違いされている状況は危険だ。すぐに訂正しなければ!
「え? この子が
「甘いよまこ姉ぇ。ここにいるお兄ぃが、本当はお兄ぃのフリしたウチのお姉ぇだったりするかもよ?」
「た、確かに!? そうなんですか、
「ぷぷ」
紛らわしい事を言うなと叱りたいものの。妹のお陰で、まことの怒りが多少緩和されたようだ。
A子が吹き出しそうになっているけれど、このまま姉さんの振りをして退散してしまおう。
ありゃりゃ〜、理奈にバラされちゃったね! それじゃあ、まことちゃん。バイビー!
「はい! また今度!」
「プーッ! もう限界。まこと単純すぎ。どう見てもあれはD」
「な!? そんな訳ないでしょ! ねえ、そうでしょ理珠さん?」
「パンパンすればわかる。ワタシも確認したいと思ってたトコ」
おいコラ、やめろ! 妹が見てるだろ。変な影響を受けたらどうするんだ!
ただでさえ妹は性別云々の話が大好物なんだ。去年まで放送していた水を被ると女の子になっちゃうラブコメが大好きで、その番組が思いっきり戦隊モノの裏番組だった為に金曜の夕方は姉妹喧嘩が絶えなかったんだぞ。おかげで、仲裁に入った僕は半ば強制的に妹と組み手をさせられていたんだ。
だけどまさか、現役の羽吹流と手合わせしていた経験がここで活きてくるとは!
道場を去って久しい僕だけど、A子が連続で放ってくる魔手をどうにかいなせているっ!
「むー、しぶとい」
「その身のこなし、やっぱり君じゃないの! 理珠さんは武道やってないんだから、そんな動きムリだもん! そう……みんなでボクを、騙してたんだね……!」
「あ、お兄ぃ。アレ本気で怒ってるよ?」
「仕方ない。ここはワタシが引き受ける。二人は逃げていい」
主に君のせいで話が拗れているのだが……。
余計な事で体力を削られた僕では、もうまことの相手は無理だ。お言葉に甘えて、この場はA子に任せるとしよう。僕は気配を消し、静かに後退を試みる。
だがそんな兄の思いとは裏腹に、どうやら妹は観戦に夢中らしい「すごいよあの子! りなより小ちゃいのに、まこ姉ぇを押してる!」もしかして、自分より歳下だと勘違いしてないか? その子、僕と同い年だから。
「はぁ、はぁ、道場をやめて結構経つのにやるじゃない!」
「羽吹流は通過点。もはや、ワタシの武術は
「なに勝手に流派開いてるのっ!」
「諦めて。まことの弱点は割れてる」
そう言って挑発するA子に対し、考えなしに『突き』を放つまこと。気が立っている今日のまことは、動きに精細さがない。
A子は難なく攻撃を躱し、伸び切ったまことの腕──その内側の皮膚を人差し指でそっとなぞった。あんな技、羽吹流にはないぞ?
まさか、さっき言っていた弱点って……
「ひゃん!? なにしてんの!?」
「奥義・胡蝶の舞。くすぐり攻撃こそ、まことの弱点。さっきテレビで覚えた」
「ッ〜〜〜!!」
あ、悪魔だ……。そんなできたてのトラウマを突かなくてもいいだろうに。
これ以上は見ていられない。僕は妹の視線をそっと手で塞ぎ、帰宅を強制する。
そうそう、アニメを録画してあるんだ。帰って一緒に見よう。
基本的にアニメ好きの妹は、赤面する師範代の事も忘れて「なんのアニメだろ。楽しみ!」などと喜んでいる。完全に興味が移ったようで何より。
ちなみに6時半からも剣勇活劇アニメが放送していた。しかし、武器を使うという点から妹にはウケが悪いようだ。僕は割と好きな部類の作品だけど、今日は姉さんが流れるように特撮の録画を再生した為リアタイ出来なかったのだ。おそらくワッカが録画していると思うので、今度見せてもらおう。
「ねぇ、ねぇ。何のアニメ? お兄ぃも大好きな『ドラえもん』かな〜?」
んん?
そういえば、僕。ドラえもんの予約していたっけ?
バングルが震えている。そうか、レイワさんなら覚えてるかもしれない。
【でぇじょうぶだ。見逃し配信がある】
そんなサービスは存在しない! 早く帰らないと。急げば少しだけでも見られるかもしれない!
妹を抱えて全力疾走したものの、家へ着いた時には7時半を回っていた。
時計を前に、まるでブロリーと対峙した時の悟飯のように絶望する僕を見て、妹は複雑な表情を浮かべている。もはや兄の威厳も風前の灯火だ。
「あ、おかえりー。丁度ご飯できたとこなんだ。あとドラえもんも録画しといたよー」
姉さん!! あなたが神か!
そうか、これこそが神対応という概念なのか。まるで絶体絶命のピンチを救うドラミちゃんのようだ。
ある映画では石化したドラえもんとのび太を救い。
またある映画では牛魔王の脅威によって全滅しかけた場面を引っくり返す。
そんなデウス・エクス・マキナのような存在。
ドラゴンボールで言えば、本来『芭蕉扇』を使って消す予定だったフライパン山の火事を『かめはめ波』で牛魔王の城ごと消し飛ばす亀仙人のような──なんだか西遊記が混在してややこしくなってしまったな。
まとまらない思考は破棄して、今はただ感謝しよう。
ありがとう姉さん。ありがとう、ベータマックス。
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── 令和の掲示版②
【公式も】リングリットXを語るスレ31【病気】より一部抜粋
415:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 21:50:34 ID:YZ0WDB8bm
一回しか登場しない褐色後輩キャラには名前ついてんのに
なんでA子とB子は本名不明のままなんだ? 不遇すぎだろ
416:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 21:56:50 ID:Ht7GFTYdD
それ言ったら、クラスメイトDっていう役名がまるでモブみたいな奴もいるからなw
417:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 22:01:00 ID:XykhdbFAZ
Dって確かコンパチキャラみたいな姉と妹までいるよな。こっちは出番少ないけど
418:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 22:07:56 ID:co9sDigGw
コンパチw むしろ姉がオリジナルなんじゃねw
419:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 22:15:00 ID:8YvsdSvYR
姉の初出を考えれば、コンパチなのは姉の方なんだなコレが
420:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 22:19:30 ID:eIKUg2Foz
あれだろ? クラスメイトDがぬいぐるみに変えられて、みんなが驚くシーン
んで、逃げ惑う人混みの中に一瞬だけ人間状態のDも見切れてるやつw
421:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 22:26:19 ID:Ht7GFTYdD
完全に作画ミスなのに、監督に指摘されたアニメーターが「Dの姉です!」って言い張ったエピソードなw
422:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 22:33:03 ID:YZ0WDB8bm
なぜ姉にしたしw そこは兄でもいいだろw
423:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 22:40:51 ID:kWP9ElQJ4
当時何本か問い合わせの電話があったらしいけど、その時の受け答えでも姉だと誤魔化したらしい
424:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 22:45:24 ID:MZc8HIUOy
監督も悪ノリして、ワッカがDの家を訪ねるシーンで正式に姉が登場
なぜかついでに、妹まで生えてきたw
425:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 22:52:45 ID:xiz0Ityqp
三姉妹そろってメカクレって、フェチ度高杉だろw
426:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 22:57:49 ID:Dc+MWkEgj
三姉妹w
427:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 23:02:15 ID:jQEVGqG2E
てか、クラスメイトDは作画関連で色々問題起こし過ぎだろ
初めて家が登場した時と、次に出た時で全然違ってるのなんなん?
428:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 23:06:35 ID:wfKxWI1zO
最初は小さめの戸建てだったのに、いつの間にかそこそこの豪邸だもんな
429:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 23:11:16 ID:ubAVZ1LWR
親が頑張ったんじゃね?
430:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 23:18:01 ID:OXlPSGrVO
ガイドブックによると「怪人の被害で壁に穴が開いてしまったので、萬宮寿家が建て直した」らしい
431:拘束マシーン名無しさんX 2024/2/12 23:25:28 ID:yTJCTM3Ve
どうせまた作画ミスの言い訳だろw
【ドラマ開始まで】リングリットXを語るスレ54【あと1ヶ月】より一部抜粋
6:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 18:50:00 ID:YLp5p84+M
実写化の是非は、前スレまでで散々やったから無しな
7:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 18:52:16 ID:ny9SZLq86
ある意味原点回帰なんだし、実際に公開されるまで待つって事で
8:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 18:55:14 ID:zEmLvLLxN
原点回帰って、白黒時代の特撮「高速の戦士リングリット」だろ?
もう当時見てた子供はジジババなんだが
9:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 18:57:39 ID:HV81HOM1q
リングリットXも、その特撮の続編なのかイマイチ分からんしな
10:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 19:00:31 ID:u7hRKldLG
てかアニメは小学生設定だったのに、役者の都合なのか全員高校生になってんの意味わからん!
11:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 19:03:29 ID:uMHWNQ4VS
蒸し返すなw
そこが一番揉めるんだからw
12:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 19:06:05 ID:KxDcfnrbZ
まあコンプライアンスを意識してだろうな。
逆に考えれば、子役にはやらせられないフェチシーンがあるって可能性が微レ存
13:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 19:09:01 ID:DK6f9P9vp
一応、アニメの時の監督とプロデューサーがドラマの制作にも関わってるし期待しようぜ
ネット配信限定ドラマなんだし、昨今の成功例を考えればワンチャンあんだろ
14:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 19:11:16 ID:mpcAMiF+D
流石にそれらのお歴々と比べるのはおこがましいだろw
期待できんのは精々、アニメで放送できなかった最終回の内容が判明するかもって位か?
15:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 19:13:43 ID:bDMHMmVf+
それも期待し過ぎだろ。尺的に人気エピソード抜粋ってカンジじゃね?
16:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 19:15:45 ID:VSbigDtXe
ここの連中を基準に真の人気エピソードを抜粋したら、フェチの嵐でトンデモないことになんぞw
17:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 19:18:40 ID:lvz+SJr/R
少なくともティザームービーで猫化と精神犬化は確認済み
CG技術も令和だけあって流石に高いし、ちょっと期待
18:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 19:20:49 ID:0sh154lxi
精神犬化エピは楽しみだなw D役が誰になるか知らんが、絶対におもらしシーンはやってくれ
19:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 19:23:04 ID:pJHZd1pul
あの回で一番の被害者だからなw 教室の柱に向かって足を上げてするワンちゃんスタイルw
唯一の救いはズボン穿いたままだったことか
20:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 19:25:28 ID:ZMoXUxfNX
ズボン濡れてたせいで、正気に戻ってから泣いてたじゃねーかw
てかドラマ版だと高校生なんだろ? いくらこのスレでも需要ねーだろw
21:拘束マシーン名無しさんX 2025/3/3 19:26:52 ID:0sh154lxi
あるに決まってんだろ! むしろ、そこだけは高校生にしてくれて感謝まであるw
【祝】リングリットXを語るスレ56【ドラマ配信開始】より一部抜粋
309:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/18 19:46:59 ID:A2nMj/5uu
さて、こうして3話目も無事配信された訳だが
息してるか? おもらしニキw
310:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/18 19:48:00 ID:HV81HOM1q
さっき実況板の方で発狂してたのおもらしニキだろw
311:おもらしニキ 2025/4/18 19:49:07 ID:0sh154lxi
なんで特殊攻撃回避してんだテメェー!?
オマエの見せ場だろうが!? 自分の価値をもっと大事にしろよぉぉぉ!
312:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/18 19:51:03 ID:LnYHQldS8
www
まあその分、まことが見せ場を作ってくれたw
原作だと洗脳時の記憶はない設定なのに、バッチリ覚えててワロタ
313:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/18 19:53:53 ID:a20igJvPb
エンディングのまことが歌うカラオケも、選曲に時代が出てたなw
314:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/18 19:55:21 ID:bDMHMmVf+
まことちゃんがご満悦になって終了かと思いきや、そのあと不穏なパートがあったせいで続きが気になる
315:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/18 19:57:28 ID:ZMoXUxfNX
最後のCDショップでDが鼻血出す場面は、原作に全くないシーンだしな
なんで週一で最新話が配信される方式なんだよ。こういうのって一挙配信が通例だろ?
316:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/18 20:00:02 ID:98XhjfdX8
撮影が終わってないとか、CGが全話分間に合ってないとか言われてるけど
これはこれで、アニメを毎週楽しみにしてた頃を思い出せていいと思うわ
─ 中略 ─
771:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 19:45:16 ID:CCXLYtfJQ
4話。まさかのD主役回w
772:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 19:46:21 ID:8YvsdSvYR
元々レギュラーキャラとはいえ、出世しすぎだろw
773:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 19:47:56 ID:bDMHMmVf+
キャスティングからしておかしいと思っていたが
どうやらDにドラマオリジナル要素を注ぎ込んで原作再構成するシナリオっぽいな
774:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 19:49:02 ID:40CToNpJr
高校生だからなのか、性格もアニメより達観してないか?
775:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 19:51:30 ID:baV/t8t9u
アニメだと、まことの危機をテレビで観てガクブルしながら現場に来るもんな
結果、石像が一つ増えるだけだがw
776:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 19:52:27 ID:NeuzaYWyW
まあメタ的にギャグアニメ世界だと思ってるなら、わざわざ現場には来んわw
777:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 19:55:44 ID:dAazM8Asg
1話目 ほぼ原作アニメの流れ
2話目 エロ本がクリスタルに変更
3話目 Dがおもらし回避→代わりに濃厚な百合シーン
4話目 バック・トゥ・ザ・フューチャー ←New!
778:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 19:58:52 ID:x2lDMgNNz
もっとパオファンβを出してくれよ! 尺の4分の1が、ジジイとショタってなんなん!?
779:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:02:07 ID:40CToNpJr
ショタw 確かに童顔だが、あの役者18歳だからなw
780:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:05:17 ID:8M62i8gct
大丈夫、私の許容範囲
781:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:07:28 ID:oFkGeWfrv
令和の叡智は引っ込んでろw
782:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:09:40 ID:a20igJvPb
てか、Dだけじゃなくて姉と妹まで演じてるってヤバくね?
どっちも女の子にしか見えんし、声まで女声で2パターン演じ分けるって凄すぎんだろ
783:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:11:04 ID:CCXLYtfJQ
アニメで両メカクレだったDが、ドラマで片メカクレになってる理由がようやく分かったわ
上手い具合に三姉妹で差分を付けたかったんだな
784:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:13:20 ID:1EefIRuo7
三姉妹w まあアニメ版だと三人とも両メカクレだもんな
ドラマ版の妹が、まんまアニメ版Dのイメージで鳥肌たったわw
785:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:15:17 ID:7lldivT0C
性格は全然違うけどな
ドラマの妹は何というか、メスガキって訳でもないんだが絶妙にわからせたくなる生意気さと無垢さが混在してる
実にいい…なんていうか、その…下品なんですが…フフ…b
786:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:17:21 ID:98XhjfdX8
小学生女児を演じる18歳男子w 日本ヤベーわw
普通に女の子にしか見えんの演技が凄いからだよな? 俺が目覚めた訳じゃないよな??
787:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:19:38 ID:Bd0umdGt0
姉と妹両方に言えることだが、いくら女に見えようと男が演じてる以上は生えてるんだぜ?
原作になかった男の娘概念をこういう形で実現させた監督に脱帽だわ
実にいい…なんていうか、その…下品なんですが…フフ…b
788:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:22:36 ID:gRNeh3TBQ
>>785 >>787通報しますた
789:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:24:55 ID:8Mmvt6ij/
それより、なんか前半パートでしいなとフラグ立ててね?
相手が違くね? D×ワッカ。しいな×まことが公式だろ?
790:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:27:01 ID:buM7OmugS
このスレはホント、すーぐ掛け算する奴が湧くよなw
どうせドラマ開始前までワッカ×Dって言ってたネキだろ
さらっと方針変更してて草
791:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:28:37 ID:2/XH0bnSA
公式(レイワさん)は、無自覚ドSショタと揶揄した上で「受け」らしいがなw
まあこの手の議論は>> 1にリンク先貼ってる腐海避難所でやってくれ
792:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:31:49 ID:+BIXGeAvC
フラグといえば、A子が伏線回収したよな
おうこちょう流だっけ?
793:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:33:44 ID:yTG2pUUhI
黄胡蝶な。3話の時にチラッと映った出席簿。あれを解析したニキの推理が当たってたようだ
794:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:36:15 ID:b1GgCsWoZ
A子の本名「黄胡蝶 詠」で確定? クレジットだとA子のままだけど
795:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:39:28 ID:LHHwu8x2y
「詠」の音読みが「エイ」だからな
解析ニキの希望だと「おうこちょう うた」って読ませたいらしい
796:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:41:49 ID:Vm/dzM9Gw
希望かよw 公式じゃないんかいw
797:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:43:46 ID:PH1Q8yirG
一応公式HPには
A子というあだ名は、ラジオネーム「どうでもA子」から来ています
自分から名乗っているので、決してしいなが虐めている訳ではないんです
と記載されとる
798:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:46:06 ID:zKWaEsPcA
現代への配慮w
B子は雑誌のハガキ職人でペンネーム「おろしたて わさB子」なんだろw
799:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:49:19 ID:YElBPJb/n
配慮のせいでメイド2人に変な属性が追加されとるw
800:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:51:48 ID:TNUwVgCEP
そろそろ後半パートのブロリーについて触れようぜ
801:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:54:10 ID:HTJEH4Fxu
まことが登場した時\デデーン/って音したよなw
802:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:56:01 ID:reUhRxBk9
あれ微妙に違う音だけどほぼアウトだろw
803:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 20:58:36 ID:8vFECkKAn
てか平成初期のネタ盛り込みすぎじゃね?
ブロリーとか知らん子供はポカーンとするだろ
804:拘束マシーン名無しさんX 2025/4/25 21:00:25 ID:d9i6v+356
ブロリーは日本の義務教育だが?
─ 以下、スレの終わりまでほぼブロリー関連 ─
〜♬(テーマソングをアレンジした予告用BGM)
ちょっとワッくん! 雪山で遭難で熊まで出ちゃって大ピンチなんですけど!?
「大変だ! 早く肌と肌で温め合わないと!」
違うでしょ! こんな時こそリングリットに変身だし!
アタシを着れば、こんな寒さヘッチャラなんだから!
次回、光速真芯リングリットX
第5話「氷河期到来 ゲレンデに迫る恐怖!」
見てくれないと、ヤなカンジ! みたいな〜?
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#04 乱れ雪月花/遭難回
「はぁ、はぁ、アナタも脱いで下さいまし〜。
どうしてこうなった……
ここは山小屋。外は猛吹雪。そんな隔絶された状況に男女が2人きり──僕としいなさんだ。
遭難の末、九死に一生を得た筈の山小屋で、僕は再び危機に陥っている。正直、ギャグアニメ世界だと侮っていた。僕にとってここは、紛れもない現実なんだ。そして現実的に、このままでは貞操の危機もとい理性の危機だ!
落ち着くんだ僕。博士からの忠告を思い出せ。獣欲に飲まれてしまえば、僕の人格が塗りつぶされてしまう可能性を示唆されたじゃないか!
「相変わらず、恥ずかしがり屋さんですのね。でも大丈夫ですわ〜。ほら、私に身を委ねて?」
耳元に温かい吐息が吹きかけられる。
頬を赤らめた彼女が、僕へと迫る。この状況に流されてしまえば、僕は僕でなくなってしまう恐れがあるというのに。もう理性が保ちそうにない。厚手のスキーウェアを脱ぎ、清楚なブラウスを少しだけ肌けた彼女の魅力を前にして、もはや理性は蒸発寸前だ。
その僅かに残った理性で頭を回転させてみても、結局は彼女が言うように一刻も早く暖を取らなければ命の危機だという答えに辿り着く。
この山小屋には、非常食も水も備蓄されている。おまけに、ストーブと薪まである。ここまでは完璧だと言うのに!
どうして火を点ける道具が無いんだ!
「そうですわね〜。太陽光があればレンズで火も
毎回、耳元で囁かなくても分かってる。あと頬ずりもやめて!?
しかし彼女の意見も尤もだ。原始的な火熾し機を作る材料も無ければ、体力だって残り僅かだ。少しでも温存して、救助を待つのが正解である。
それは正解なのだけど、さっきの判断だけは失敗だった……『身体が温まる』とだけ箱に記載されていた飲料水。あれを飲んでから、彼女はずっとこの調子なのだから。
実際、身体が火照っているのでスキーウェアを脱いでも多少は平気なのだろう。しかし、いつまでもこの状況では身体が冷えてしまう。この極限下では、一刻も早く僕もウェアを脱いで、彼女と肌を合わせて一つの毛布に包まるのが最善なんだ。
僕もドリンクが効いてきたのか、もう頭が回りそうもない。博士の忠告だって、仮説に過ぎないんだし、もうこのまま彼女と──
「まあ! このバングル、外すと板状になりますのね。面白いですわ〜」
あっ。
【NTR反対!】
うるさいのが現れた。NTRって言うのは確か、『寝取られ』って意味だろ? 生憎、僕も彼女も特定の異性とお付き合いしている訳じゃないんだ。
【つまり、同性とお付き合いしてるんですね】
違う……少なくとも、僕は違う!
今は命の危機なんだ。腐海文書に付き合ってる暇はないから、黙ってて欲しい。えーと、バングルはどこだ?
【待ちたまえD君】【私にいい考えがある】
そのネタは僕でも知っているぞ。失敗フラグだろ、それ。
ああ本当、どうしてこんな事になっているのだろう……
祝日。
僕らはしいなさんの誘いを受けて、屋内スキー場という最新レジャー施設へとやって来た。
外観はまるで、ドラえもんの秘密道具『ガリバートンネル』のような形──半円形の筒が、山なりに
全長1km。幅200m。高さ150mというトンデモない規模の巨大施設。内部は−4℃程度に保たれており、上層へ移動する為のリフトまで完備しているので、人工とはいえゲレンデにいる気分を味わえる。
本格的なオープンは今夏を予定しているこの施設。既に最低限の稼働ができるようになった為、一般人目線での感想が欲しい。というのが運営元である萬宮寿家からの要望だ。
その為、一般家庭で育った僕ら──姉の
「それじゃあ〜、お互いでぶつからないように2人ずつに別れて遊びましょう? わたしは理珠と一緒にお姉ちゃんペアね〜」
「りょーかーい」
B子さんと姉さんは友人同士。のんびりとした口調の2人は馬が合うようだ。
当初、誘われたのは僕と妹だけだった。けれど、B子さんの口利きで姉さんも参加する事になったのだ。
初めて僕ら3人が揃った場面を見たしいなさんは、とても混乱していた。僕が分裂したと思ったらしい……失礼な話である。改めて思うのだが、普段着がスカートという共通点のある姉さんと妹が間違われるのは解らなくもない。けれど、僕が2人と間違われるのは意味不明すぎる! ズボンはいてる奴が僕だよ!
まあ現在は、それぞれ色違いのスキーウェアをレンタルしたおかげで見分けが付くらしい。派手な原色を纏う事でようやく区別されるなんて、まるで戦隊ヒーローじゃないか。ちなみに姉さんが赤。妹がピンク。僕が緑だ。戦隊好きの姉さんは『赤』を断固として譲らなかった。
「ワタシは妹とペア。ついて来て」
「はーい、ししょー」
いつの間にか、A子を師匠と仰ぐ妹に一抹の不安を感じる。
僕と同様にスキーは初体験である妹だが、A子の先導でスムーズに滑走していく。案外面倒見が良さそうで一安心。と、言いたいのだが! 木を
この巨大施設。屋内だと言うのに、コース脇に針葉樹が乱立しているのだ。
ただし、この木々は実物ではなく
A子と妹は、ホログラムを通過する事に快感を覚えてしまったようで、わざわざコースを外れて滑走しているのだ。
「まったく、子供ですわね。山小屋だけはホログラムじゃないという事を、忘れていませんでしょうね……?」
僕らがいる現在地は、リフトで登って来た斜面の頂上。この場所と施設の入口がある最下層との中間には、平面地帯が広がっている。初心者と上級者を分ける境目らしい。その平地部分に、工事関係者が休憩場所として利用していた山小屋が存在している。
オープン前には取り壊す予定らしいが、一般モニターの意見次第で再度工事が必要となる可能性もある為、まだ撤去する訳にはいかないらしい。僕らの意見一つでそこまで反映されると言うのだから責任重大である。
「では、私達も参りましょうか。けれど、どうしてスノーボードなんですの? スキー自体が初めてだと伺ってましてよ?」
そりゃあ僕だって、当初はスキーがしたかったけれど。
【ショタならスノボを乗り回してなんぼ】【大丈夫、ショタならできる】【劇場版なら、人力で雪崩だって起こせる】
レイワさんの圧が半端ない。いい加減、僕を『ショタ』と分類しないで欲しいものだ。高校生はショタじゃないし、屋内スキー場では雪崩も起きないし、起こさない。
けれどスノーボード自体には興味がある。僕もスケボーなら乗れるのだから、こちらの方が向いているかもしれない。
ああ。これだけは言っておくが、決してレイワさんに屈した訳じゃないとも。勘違いしないで欲しい。
【あ、私へのツンデレは解釈違いなので。ごめんなさい】
なんなんだコイツは! もう今日は絶対バングルを外さないぞ!
「さあさあ、行きますわよ!」
さて、しいなさんが当然のように僕とペアを組もうとしているものの。ひとつ問題がある。
現在頂上に残っている人数は
そう。今回の一般モニターには、僕らとは別口で参加してきた3人がいる。どんな手を使ったのか、上手いこと萬宮寿イグナを懐柔しこの場へとやってきた3人。
火鬼崎ワッカ、羽吹まこと、そしてE。お馴染み僕の友人らである。
「ちょっと! 勝手にペアを作らないでよ」
「貴女は、お呼びでないんですのよ。まったく、何処で嗅ぎつけたのかしら? 嗅覚までイノシシなんですのね」
「むきー! どうせ、スキーじゃボクに勝てないから負け惜しみで言ってるんでしょ?」
「なんですって!? いいですわ、そのケンカ買い取って差し上げますわ!」
あーあ、2人で滑って行ってしまった。仲が良いんだか、悪いんだか……
必然的に男3人が残される。バングルが異様に震えているけれど、絶対に外さないからな。
「はぁ〜、俺はまことちゃんと滑りたかったのに……」
「ワッカはいつも通りだからどうでもいいけどよぉ。オレは、お嬢様に優しくしてもらえるお前の事が羨ましいぜ! なんてったって、あの巨乳だもんなー! 真っ平なまことが横に並ぶと特に目立つよなっ!」
センシティブな発言には気を付けろよ? 令和だと完全アウトだし、平成でもセクハラが問題視され始めてるんだぞ?
今は女子が誰も聞いていないから流しておくけれど、Eの発言には毎回ヒヤヒヤさせられる。
「うーん。けどやっぱりオレ的には、スキーウェアは無いな。折角の巨乳が隠れちまう! もっとさ、ナースとか婦警さんとか。そういう衣装のがいいよな!」
「相変わらず変態だなー、お前は」
ん? ワッカはEの事を変態だと言うけれど、今の発言はそこまで言う程だろうか?
むしろ、健全なのでは? 前にも、女子の制服姿がいいとか。OLの制服姿がいいとか言っていたな。もしかしてこの男、一般性癖の範疇を飛び出ない健全男子なのでは?
ダメだ……レイワさんに毒されたせいで、僕の基準がおかしくなっている。
「オレが健全だと? じゃあ、お前は一体どんな趣味してんだよ!?」
おっと、口が滑ってたか。ここは一般論で茶を濁そう。
別に僕の趣味じゃないけれど、一般的に変態というなら『ケモノ』にしか欲情しないとか。『スライム』にしか興奮しないとかあるだろ?
他にも『感覚遮断落とし穴』だとか、そのまんまな名称の『エ◯トラップダンジョン』なんて概念も知っているけれど、平成男児には刺激が強すぎるので黙っておこう。僕は友人思いなのだ。
「はははっ、スライムってゲームの話か! 相変わらず子供っぽいなー。いや、別に馬鹿にしてる訳じゃねーよ? お前が好きなゲームやアニメだって、作ってるのは大人なんだしよ。自分が子供の頃に憧れた物を、大人になって作る側に回るなんて立派じゃねーか! 去年お前が作ったゲームも面白かったぜ?」
まったく、僕の友達は健全な上に『いい奴』だから困る。小学生の頃から、まるで僕とワッカを諭すかのように時折こういった事を言うのだ。
女子にはあの態度が災いして遠巻きにされがちだが、兄貴肌な面から男子には割と人気があるE。付き合いの長い僕ですら、こう面と向かって褒められるとどうにも気恥ずかしくなってしまう。
よし! 談話してても仕方ない。そろそろモニターとしての役目を果たさなければ!
激しさを増すバングルの震えを無視し、慣れないスノーボードに悪戦苦闘しながら僕らも3人で下層を目指した。
あれから1時間。再び頂上へと全員集合した。
顔色を窺うに、みんな思い思いに楽しんでいたようだ。心配だったハブとマングースも、仲良くレースに興じていたようで何より。
「お前……あれだけスノボー向いてなかったのに、よく満足気な顔できるな」
「木がホンモノだったら大怪我してたぞ? ホログラムでよかったなー」
Eとワッカからは、散々な言われようだ。
まあいい。これで逆説的に、僕がショタでないことが証明されたのだから……言い訳をさせてもらえば、バングルが震えすぎてバランスが取りにくかったんだ! 全部レイワさんのせいだ!
「ねぇ、しいな。今更なんだけどあの風速計って意味あるの?」
「あら、まことにしてはいい質問ですわね。ここは屋内なので当然風は吹きませんが、国の規定で設置が義務付けられてますのよ?」
「ふーん。萬宮寿家でも相手が国なら、ちゃんと言うこと聞くんだ」
「規定は規定ですもの。けれど、一見意味のない風速計が逆にシンボルとなるかも知れませんわよ? 計器に付いているプロペラが回らないという事実こそ、平成の叡智によって生み出されたこの施設の素晴らしさを物語っているのですわ!」
しいなさんが軽い演説をする。既にホログラムが平成の叡智を軽く凌駕しているというツッコミは野暮だからやめておこう。
そんなツッコミよりも、もっと野暮な現象が目の前で起きているのだから。
皆の注目がプロペラへと集まった瞬間、音を立てクルクルと回りだしたのだ。まさか空気を読んだのだろうか? ああ、元々そういう目的の機械なんだけれども。僕が言いたいのは、まるでギャグの伏線を回収するかのように『世界』が空気を読んだという意味だ。
「な、な、なぜですのー!?」
「壁に穴でも空いてたんじゃない?」
「貴女の所の道場じゃありませんのよ!?」
「そこまでオンボロ道場じゃない! 門下生だって沢山いるんだからね! そこにいる理奈だってウチに通ってるんだから!」
また始まってしまった。この2人が一緒にいると舌戦が絶えない。今回は僕の妹まで巻き込んで激しい論争が繰り広げられている。
蚊帳の外にいる僕らは、下層にある温泉施設へ行かないかとB子さんから提案される。彼女曰く、微風とはいえ空調設備に不具合が生じている可能性があるのでスキーは中止した方がよいとのこと。
ちなみに、この施設を維持するための冷房機器が出す排熱。それを利用して温泉の温度を管理しているようだ。
「奥義・胡蝶の舞!」
「ひゃん!? やめてよ、理奈!? なにするんだよ!」
「ごめんねまこ姉ぇ。りな、もう
「雪に脚を取られて動きが鈍い。まだまだ甘い。けれど、上体の捌きは花丸。妹は中々筋がいい」
いつの間にか、妹VSまことになってないか? まことも手袋を付けておけば、くすぐり攻撃を防げただろうに。先程、しいなさんとの舌戦を開始する際に決闘の合図よろしく、手袋を投げ捨てていたのだ。
おかげで素手になった手の甲を、妹に指でそっとなぞられてしまった。うーん、手の甲はそこまで敏感な部分でもない筈だが……まことにとっては違うようだ。悶えるまことを見て、ワッカが興奮を隠せずにいる。
それにしても、黄胡蝶流奥義・胡蝶の舞か。相手の隙を突き、露出した肌の表面を指でそっとなぞるという無駄に技量を必要とする技。
まったく、妹に変な技を教え込まないで欲しい。さらに言うなら、弟子入りして一週間も経たない人間に易々と奥義を伝授するんじゃない。
「ワタシは教えてない。技を盗まれただけ」
僕の妹は達人か何かなのだろうか? まさか、見ただけで奥義を盗むとは恐れ入る。
A子は後方腕組み師匠を気取っているものの、これでは片無しだろう。
「む。下がって妹。ワタシがお手本を見せてあげる」
「はーい! お願いします、ししょー!」
「ちょっと!? もういい! もういいからぁ〜!?」
「
「ひゃ、ちょっ!? ひゃめて……! やっ!」
「す、すごい!! お兄ぃが全く乗れなかったスノボーで滑りながら、まこ姉ぇの手の甲だけじゃなくて、ほっぺたと首筋までくすぐってるよ!」
コラ、さりげなく僕を馬鹿にするんじゃない。
というかA子の動きは何なんだ……滑走速度が早すぎて分身してるように見えるぞ。あ、良く見れば実際2人いるじゃないか。
2人ともピンクのウェアで判りにくいけれど、いつの間にか僕の妹も白銀・胡蝶乱舞に参戦している。いや、そもそも白銀・胡蝶乱舞ってなんだよ! 乱れているのは主に、まことの方じゃないか。
しかし、一瞬でこの技まで盗む妹は相当の天才なんじゃないか? スノーボードだって、今初めて乗ったハズなのに。なんだか無性に悔しいな。
「ほら、遊んでないで下層へ行きますわよ?」
しいなさんが、どこ吹く風で場を仕切る。僕の記憶が確かならば、争いの原因は彼女にも半分ある筈なのだが……まあ、歴史上そんな戦いも沢山あるんだ。一先ず騒動が収まったのだし、良しとしよう。
と、納得できるのは僕が実際の被害に遭っていないからであって、どうやら最大の被害者である少女は、やられたままでは気が済まないらしい。
息も絶え絶えで涙目になりながらも、精一杯の強がりでA子と妹を睨みつけている。当然と言えば当然の反応だが、なぜか妙に煽情的に見えてしまう。ゲレンデマジックというものだろうか?
「うぅ〜! よくもやってくれたなぁー!」
「離脱する。着いてきて、妹!」
「はい! ししょー!」
颯爽とスノーボードを乗りこなし、斜面を滑走していく女児たち。それを追いかける赤面した少女。第2ラウンドは『追いかけっこ』のようだ。
あれ? よく見れば、妹が乗ってるボードって僕がレンタルしてるやつじゃないか?
やられた! 白銀・胡蝶乱舞のどさくさでボードを盗られてしまってたんだ……代わりに妹が使っていたスキー板とストックが残されている。
「じゃ、オレらも行こうぜ。お前も、妹のスキー板で滑ればいいんじゃね? 体格も大体一緒だろ?」
「ストックの長さも問題なさそうだな! よーし、急ぐぞ! まことちゃんと温泉だー!」
友人らが、僕の尊厳を粉々に砕き、斜面を滑走していく。ワッカはそんなに温泉へ入りたいのか? そもそも混浴じゃないだろ、絶対。
とはいえここに居ても仕方ない。結局は僕も彼らを追いかける事になるのだが……これ、どうしようか? 正真正銘のスキー初体験だから滑り方が全く判らない!
「あらあら。弟くん置いてかれちゃったのね〜。お姉ちゃん達と一緒に行く?」
「その前に滑り方が判らないんじゃない? ウチはスキー旅行した事ないからねー。もう、どうしてスノボーばっかやってたのよ?」
「そういう事ならぁ、そーだ! しいなちゃ〜ん、弟くんに滑り方を教えてあげてね〜。ふふっ、それじゃあ皆には上手く言っておくから。ゆ〜っくり教えてもらってね?」
え……?
僕の理解が追い付かない内に、姉さんとB子さんまで先に行ってしまった。残ったのは2人だけ──僕としいなさんだ。
「まったく、強引ですわね。いえ、別に教えるのが嫌な訳ではありませんわ。元々は貴方と滑る予定でしたもの。まことに乗せられてしまい、先程は失礼いたしましたわ」
確かに当初はそんな話だったっけ。
まことへの愚痴をこぼす彼女だけれど、スットクの使い方や、スキーの滑り方と止まり方。他にも安全な転がり方などを、懇切丁寧に教えてくれる。
ライバルとの諍いさえなければ、彼女は基本的に人当たりが良い。
おかげで僕も、問題なくスキーを楽しめている。まあスノーボードが散々だったのは、バングルが震えていたせいだけど。
ワッカとEが近くに居ない今、バングルは全く反応しない。ようやくレイワさんの目が攻撃色から元へと戻り、腐海の森に帰ってくれたようだ。
僕も一通り滑れるようになったので、下層へ向かう事をしいなさんへ提案する。
最初は僕の上達が早すぎると文句を言われたものの、彼女の教え方が上手だからと返せば上機嫌になってくれた。
ゆっくりとしたペースでまずは中層にある平地を目指す。速度を出さない理由は、先程から風が強まっているからだ。どうやら空調が本格的に不具合を起こしているようだ。おかげで体感温度も大分低く感じている。早く温泉に浸かりたい。
「あら? この手袋は、まことの物ですわね。ここでレンタルした物を捨てて行くなんて、失礼な娘ですわ!」
斜面の途中で、片方だけの手袋を発見した。しいなさんは捨てられた物と表現したけど、これって決闘の合図で地面に叩きつけた物だよな?
きっと頂上付近にあった手袋が、強風で飛ばされたんだ。どちらにせよ、借りた物を粗末にしている点は擁護できないけれども。
「いえ、あの子も普段でしたら周囲をきちんと観察できますのよ? 先程は気が立っていましたでしょう? 昔から、一つの物事に囚われてしまうと視野が狭くなってしまいますの。私が何度も注意していますのに、仕方のない娘ですわ!」
んん? なんだか保護者のような目線で語ってないか?
以前聞いた『仲が悪いのは百合』という概念。その一端を目の当たりにした気分だ。
バングルは──反応なしか。レイワさんは百合よりも薔薇が好きらしい。
「きゃあ!? さらに風が強くなりましたわね。雪が舞い上がって、吹雪みたいですわ」
突風で舞い上がるパウダースノー。雪が降ってる訳でもないのに、一面真っ白になってしまった。ホワイトアウトという現象に近い。
これは油断していると危険だ。方向感覚が無くなる前に下層を目指した方がいいだろう。
幸い地面が平らになったので中層までは来れたようだし、あと半分だ。
だけど、平地の区間は滑っての移動が難しいので歩くしかない。広大な施設の為距離も長い。視界も悪いのだし、しいなさんと逸れないよう気を付けないと。
「しっかり手を繋いで下さいまし! こっちですわ!」
しいなさんが手を引いてくれる。情けないけれど、僕が下層だと思っていた方向は間違っていたようだ。このまま彼女の先導に着いて行こう。
既に視界は白一色。心なしか、雪まで降っているように感じる。まさか天井に設置されている『人工降雪機』まで故障しているのだろうか?
どんどん風も強くなる。おそらく風速10メートルは越えているだろう。元々この施設は−4℃を保たれているので、風を踏まえての体感温度は−14℃以下になる。雪国で生活した経験のない僕には未知の数字だ!
「こんな事態になってしまい、申し訳ありませんわ。全て私の責任ですの。あなたにお返しをと思っていましたのに──」
いや、そもそもの話。萬宮寿家の管理する施設が、試作段階とはいえこんな不具合に見舞われるのだろうか?
この強風にしても、もはや空調の不具合では説明できない規模で吹き荒れているのだ。
何か超常的なチカラ。まさか怪人の能力? いや、A子とB子さんが居る時から風は吹き始めていたんだ。第一にあの2人が原因だとすれば、しいなさんが巻き込まれる訳がない。どうやって怪人になっているのかは不明だけれど、彼女らの絆の深さは原作知識などなくとも普段の行いから察せられる。
「……着きましたわ! さ、早く入りますわよ」
辿り着いた場所は、工事関係者の休憩所として建てられた小さな山小屋。
なるほど、目指していたのは下層ではなく此処だったのか。けれど助かった。現状では斜面を下るのは不可能なほどの猛吹雪だ。あのまま下層を目指していれば今頃立ち往生していただろう。
山小屋は施錠されておらず、簡単に中へと入る事ができた。
電気は通っていないのか中は薄暗い。一つだけある窓から、僅かな光が差し込んでいる。広大な施設内を照らしている天井の照明だ。
「見て下さいまし! ストーブがありますわ!」
薪ストーブだ。どうやら燃料となる薪も複数あるようだ。それに、探してみれば非常食やお菓子。水やジュースの様な物まで発見できた。水の方は、若干だが凍り始めているので室内も既に氷点下なのだろう。
他には、コンパクトサイズのラジオ。鍋、ヤカン、紙コップ、新聞、老眼鏡など。これらはやけに生活感のある品々だ。1枚だけだが、密閉袋に入っている新品の毛布まであった。
しかし、『火を付ける道具』『外部との通信手段』
肝心なこの2つだけは、何処を探しても存在しなかったのだ。
身体の震えが止まらないこの状況で、助かる望みがあるとすれば──もう、あのジュースだけだろう。仕舞われていた箱には『身体が温まる』と書かれていたんだ。きっと、ドラえもんの映画でのび太が遭難した際に飲んだ『物凄い栄養ドリンク』と似た類のものなんだろう。
得体の知れない飲み物に一縷の希望を託し、僕らは共にそれを口にする──
後編へ続く
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#05 夢遊の綻び/物品化回
「あったかいですわ〜。それにしても、まさか
どうにか火は熾せたけれど、全く窮地から脱せていない!
今の僕には、頬を擦り寄せてくる彼女を拒む事もできない。
お互いにスキーウェアこそ着ているものの、結局1枚の毛布で一緒に包まっているのだから。
【エッチなのはダメ!】【死刑!】
叡智の化身が何を言ってるのやら。あと、死刑とか洒落にならないから勘弁してくれ。この状況をもしA子にでも見られたらお仕舞いなんだ……
だけどまあ、無事に暖を取れたのはレイワさんのお陰だ。ありがとう、今回ばかりは本物の叡智だったよ。それにしても、まさかレイワさんが『爆弾作れる系のリケジョ』だったとは驚いたな。
【違いますケド!?】【キャンプ動画の知識!】
そうは言うけど、化学方面に疎い僕だけじゃ思い着かない方法だった。実の所、どうしてあれで火が点くのか理屈もよく分からない。そもそも僕の手柄でもないのに、しいなさんから褒められるのはやっぱり居心地が悪いんだ。
と言う事で、教えてレイワえもん!
【仕方ないなぁ、D君は〜】
【氷点下で火おこし:薪ストーブ編】 〜 用意する物 〜 水、紙コップ、新聞紙、薪、 ※後半の3つは、缶パンの乾燥剤、ガムの包み紙、ラジオに入っていた単三電池
1.ストーブ内部を温める為、紙コップへ生石灰とアルミニウムを入れ水を注ぐ。 すると化学反応で高熱を発する。*1
2.ガムの包み紙の表面を擦って絶縁部分を剥がし、中央がくびれる様な形に細工する。 出来上がった物の両端を、それぞれ電池の+極と−極へ付ける。 すると、くびれ部分に電熱が溜まっていき紙が発火する。*2
3.これを新聞紙へと当て、燃え広げる。 ※今回は確率を上げる為に羽吹まことが残した起毛素材の手袋も追加で使用。 手袋へ発火した包み紙を当て、表面フラッシュ現象を起こす。*3 一気に燃え広がった手袋へ新聞紙を当て、火種をさらに確保。
4.火種を太い薪2本で挟み、上へ細い薪を数本並べる。 空気の通り道が上手くできていれば、無事に薪へと着火完了。
※最後に※ ※作者は実践した訳ではなく、あくまで創作上の空論です ※ ※諸々の危険を伴うので間違っても真似をしないで下さい!※ |
---|
【とまあ、こんなカンジ】【水が完全に凍ってなくて良かった】
ふーん。頭が働かない今の状態じゃ、聞いてもよく判らないな〜。解説してくれたレイワえもんには悪いけど、もうどうでもいいや。
結局、薪ストーブは部屋全体が暖まるまで時間がかかるから、僕らはこうしてストーブの前に寄り添っているんだし。うん、よく考えれば一緒の毛布に包まるのも仕方の無い事だ! もう考えるのはや〜めた!
【酔ってる?】
【ショタが飲んでいいお酒は
それもダメだろ! 僕も飲酒してないし。僕らが飲んだのは、身体が温まる不思議なドリンクだ。あ、念のため言っておくけど叡智な物でもないからな。
僕は酔ってるんじゃくて、何故かハイテンションとなった彼女に合わせているだけだ。もうほっぺたスリスリでも、頭ナデナデでも甘んじて受けようじゃないか! えーと、ほらアレだ『私は一向に構わんッッ』って言うんだろ?
【いや構う】
【萬宮寿しいなのアレは、ペットを可愛がってる仕草と同じ】
ペ、ペット!? 彼女にとって、僕ってペットなのか? 言われてみれば確かに……いやいや! レイワさんの言うことだ。真に受けちゃダメだろう僕。アレは一方的に叡智な事を呟くだけのマシーンだぞ。
あれ? でも、思い返せばさっきからずっとレイワさんと会話が成立してるような……?
【君のような活きのいい牡蠣はフライだよ】
うん、成立してないなコレは。
いま会話する必要があるのは、しいなさんだ。ペット疑惑を解消しなければ!
えーと、話題は……しいなさんがガムを持ってた事でいいかな? 彼女は別れ際に、B子さんからガムを2枚渡されていた。1枚は何故か僕の分。B子さんがエチケット云々と言っていたけれど、しいなさんも僕もその意味が今一つ分かっていない。まあ、お陰で火熾こしのキーアイテムが手に入ったのだから感謝している。
そうそう。アレも、しいなさんが拾ってくれてたお陰で助かったよ。もう消し炭になってるけど、まことの手袋が無ければ危なかったかもしれない。
他には……ん? しいなさんがやけに静かだな。相槌も無くなったし、スリスリも止めたようだ。
「……あ、あの! さっきまでの
急に正気へ戻った彼女。それに合わせ、僕の昂った気持ちも少しだけ落ち着きを取り戻した。
頬を赤らめた彼女の顔を直視しないよう、目線を外したまま会話を続ける。さっきまでは僕が一人で喋っていたけれど、今度はしいなさんの主導で会話が進む。割とおしゃべりな彼女の話は、どれも面白い。
「私、学校でたまに女子の制服を着た貴方を目にしてましたの。けれど、あれはお姉様でしたのね。てっきり女装が趣味なのかと思ってましたわ!」
訂正。面白くない話もある。
しかし逆に考えれば、この人は女装癖持ちのクラスメイトを相手に、あれだけ親し気に話しかけていたという事になる。偏見の無さに驚くべきか。大らかな性格だと称賛するべきか。
そもそも、どうしてB子さんが教えてないんだ。姉さんを目撃した時に説明していれば、僕にあらぬ疑いも掛からなかっただろうに。彼女らは、殆ど一緒に行動しているのだから。
そう考えると、僕が彼女と二人きりという現在の状況が異常すぎる。今回B子さんは自ら別行動をしたけれど、しいなさんの不在に気付いたA子ならば吹雪を無視してでもここまでやって来そうなものだ。あくまでイメージだけど。この極寒の中で本当にやって来たら、もはや人間を超越した何かだ。
「あら? 今、扉をノックするような音がしませんでした?」
噂をすれば影がさすとは言うけれど、まさかな。【おや、誰か来たようだ】
やめてくれ。それもフラグだったろ確か。
けれど本当にA子がいるのなら、猛吹雪が吹き荒れる外に放置したままでは危険だ。
意を決して扉を開ければ、そこにいたのは──
雪山で遭遇したくない動物ナンバーワン……いや、
目の前にいる動物は、身の丈3メートルを越えるホッキョクグマ。
さらに言うのなら、後ろ足だけで綺麗に直立しているこのクマは、野生動物でも、動物園から逃げ出した個体でもなく、もはや恒例となった存在──怪人だ。
「な、なぜここに……!? どういう事ですの!?」
どうやら、しいなさんにとっても不測の事態な様だ。
僕もどこかで、今日は怪人が現れる日じゃないと思い込んでいた。悪の組織による過去4回の襲撃。それは全て金曜日だったのだから。今日は木曜日。その上しいなさん達と一緒に行動するのだから、逆に言えば最も安全な状況だと思い込んでいた。
推測になるけど、おそらくイレギュラーが起きたんだ。一応、根拠はある。今までの怪人はA子かB子さんがベースになっているから、すべて【メスケモ】だった。しかし、今回のクマ怪人は見るからに【オスケモ】なのだ。
そうだ! たった今、メスケモとかオスケモなどと僕の思考を邪魔したレイワさん。こんな時こそ原作知識という叡智を授けてくれ!
【ムリ、この展開知らない】【たぶん欠番回】
なんで肝心な時に限ってポンコツなんだよ! 劇場版のドラえもんか!
【つまり、最高の友達ってコト!?】
ポジティブだなぁ。僕も悪かったよ。ポンコツなんて言ってごめん、ドラえもん。
しかし、このピンチをどう乗り切ればいいのだろう。リングリットはいつも遅れてやってくるヒーローなので、今ひとつ当てにならない。
しいなさんは動揺してるのか、僕の後ろで震えているし。
山小屋の扉は、壁ごと破壊され屋内にクマ怪人が侵入しているし……これはもう詰んでいるのでは?
【待って、欠番回って事は】
【ものすごく叡智な特殊能力を持ってるってコト!?】
黙っててくれ! ああもう。金属製のバングルが冷えすぎて、装着できないのがもどかしいな!
けれど特殊能力か。相手は怪人だから、当然なにかしらの超常現象を引き起こすんだ。叡智かどうかはともかく、警戒しないと。もし猛吹雪を起こしたのがクマ怪人なのだとすれば、能力は雪や氷のようなイメージだ【氷雪系最強はショタ】ああ、そうですか。
『オイ! クマのツメにやられると、オレらみたいにアイスになっちまうぞ!』
ん? どこかから、Eの声が聞こえる。
あれか! クマが左腕に下げてる買い物カゴ。異様な光景すぎて、敢えて意識から外していたけれど。このクマ怪人、なぜかスーパーやコンビニで使うような買い物カゴを持っているんだ。
カゴの中には、幾つかの冷菓が入っている。その内の一つが、坊主頭のキャラクターでお馴染みのソーダ味アイス。ただし、描かれているキャラクターが変更されている。坊主ではなく、脱色した金髪のツンツン頭。デフォルメされているものの、その顔も見覚えがあるギザ歯男子だ。
つまり、Eがガ◯ガ◯君ソーダ味になったってコト!? なんであの状態で喋れるんだ。
「ガルルル!」
「きゃっ!?」
わっ!? 急にクマが攻撃してきた。右腕による薙ぎ払いは大振りだった為、どうにかしいなさんを抱えて避けられたものの、山小屋のさらに奥まで追い込まれてしまった。
とにかく、あのツメに当たったらアウトだ。さっきEは、
カゴに入ったアイスは、Eの他に3つ。メロンを模した容器のアイス、赤い箱に台形型チョコが幾つか入ったアイス、真ん中でポキッと折れるチューブ容器に入ったアイス。
各人の服装や髪の色から判断すると、上からB子さん、姉さん。そして、チューブアイスはA子と妹のセットなのだろう。複数本入ったアイスの下部分は同色のピンクウェアを着ていた二人のカラー。そして、上部分だけが二人の髪色である銀色と茶色のもので半数に別れている。
アイスの中にワッカが居ないのは当然として、どうやらまことも難を逃れたようだ。二人が無事なのは喜ばしいけど、他のメンバーは散々な状況だ。
パッケージに人間のキャラクターが載ってるE以外は喋れないらしい。時折、揺れたり膨らんだりはしているので意識はある筈だけど、それが逆に恐ろしい。アイスという『食品』に変えられている事も恐怖だろう。誰かに食べられでもしたら、存在自体が無くなってしまうのだから。早く元の姿に戻してあげないと、妹のトラウマになるかもしれない!
その為にも、このクマを──そういえば最初の一回きりで、あれから攻撃してこないな?
「ガウッ?」
床に落ちていた僕のバングルに興味を持ったのか? このクマ、怪人の筈だけど人間の言葉を話さないし、なんだか行動まで動物みたいだな。
板状になったバングルの匂いを嗅いだり、爪でつついたりしている。あ、突いた時の衝撃で爪の一つにバングルが巻き付いてしまった。急に動いた金属に慌てふためくクマの姿は、とても人間の思考力があるとは思えない。
うーん、しいなさんに理由を聞く訳にもいかないな……さっきからずっと怯えていて、僕の背中にしがみついている。この状況でクマの攻撃を避けるのは、もう不可能だ。クマの興味が僕らから逸れてる内に、どうにか打開策を見つけないと。
考えてみれば、悪の女幹部である彼女がこうも怯えるというのは、一体どういう状況なのだろう。怪人の暴走? いや、彼女は最初「なぜ、ここに」と言っていたな。だとすれば、怪人の脱走? 制御できない等の理由で、元々は閉じ込められていた存在。そう考えれば、クマに人間としての理性がない事にも合点が──そうか、理性!!
【D君、私にいい考えがある】
ああ、僕も同意見だよレイワさん。理性を失ってる状態だとすれば、
あとは、どうにかしてバングルの表面を一周なぞる事ができれば……
【Aパートで張られた伏線回収】【大丈夫、ショタならできる】
Aパートって、いつだよ! と言いたい所だけど、解ってる。A子のアレの事だろう? ショタならできるという話も、妹並みに体躯が小さい僕ならばクマの大振りな攻撃をすり抜け易いって意味だろうなっ! いいさ、やってやる! だから少し離れててくれ、しいなさん。
「どうしますの!? あの怪人は暴走してますのよ!? このままでは、貴方まで──」
壁に穴が開いたとは言え、熊の巨体が吹雪を遮っているおかげで床板に雪は積もってない。足捌き、上体の捌き、問題なくイメージできる。あとは大振りの攻撃に合わせて、カウンターを打ち込めばいい────今だっ!
「グッ、ぐわぁぁっ!!? あ、頭がっ!」
せ、成功した。A子や妹が使っていた『くすぐり奥義』を模倣し、無事に指の腹でバングルを一周する事ができた。
煩悩封じの文字が浮き出て苦しみ出したクマ怪人。言葉も話しているのだし、人間としての意識が戻ったのだろう。
博士が作ったあのバングルは、脳が持つ『本能』の一つである性欲、言い換えれば獣欲を封じる為のアイテム。獣の意識をバングルで封じたのだから、表に出てくるのは怪人の元となったヒトの意識。あとは、クマ怪人が話の通じる相手だといいのだけど……
「し、しい……な?」
「えっ? まさか、意識が戻りましたの!?」
どうやら大丈夫そうだな。でも動揺してるからといって、怪人に名前を呼ばれてその反応はマズいのでは? 僕はともかく、アイスになった他の人たちは……いや、改めて考えるとあの状態で聴覚があるのかは微妙な所だな。今までもなんだかんだでバレていないのだから、しいなさんは悪運が強いと言えるだろう。
彼女のうっかりは今に始まった事じゃないんだ。普段は生真面目な性格なのに、時折ポンコツな所がある。そういった面も、魅力の一つと感じてしまう。僕はどうやら、今回の一件でだいぶ絆されてしまったようだ。
【つまり、すこすこのすこってコト!?】
あ、そうだった。バングルはどうしよう? あれが無いと大変困る。だけどクマ怪人から回収してしまえば、元の木阿弥だからなあ──
「そこまでだ、オメイラガ‼︎ よくも、皆をアイスにしてくれたなっ。ゆ゛る゛さ゛ん゛‼︎」
ワッカ。いや、リングリットが漸く現れた。今回の「許さん」は気合い入ってるな。これでこそヒーローだ!
有無を言わさず、クマ怪人と闘い出すヒーロー。相変わらず格闘戦は弱いものの、特殊攻撃を完全無効化するのがリングリット。スーツの防御力も高いのだから、彼が倒される事はないだろう。
たった今、お馴染みの必殺技『クロスリット・ハイロゥ』を放ったのだから、あとは博士の出番だ。クマ怪人の四肢も、以前のゾウ怪人と同様に太いのだが、今回は鋭い爪が仇となった。爪に複数のリングが嵌められ、クマ怪人は宙へと浮かびあがる。お馴染みの必勝パターンだ。
もう怪人は何もできない。あとは、例の自爆で撤退するのだろうか?
「そこまでですわ、リングリット‼︎ よくも、クマゴローΣを痛め付けてくれましたわね‼︎」
「出たな、ミーア・クシロン!!」
んん!? なんだこの超展開は。さっきのヒーロー登場場面の焼き直しで悪の女幹部まで現れたけど、アレは……その。なんと言うか、偽物? そもそも、しいなさんは僕の後ろに居るのだし。
「な、なぜですの!? 私はここにおりますのに……!」
このように、うっかり正体がバレかねない発言をしている。けれどこんな反応をすると言う事は、ワッカや彼女にはあれがミーア・クシロンに見えているのだろう。認識阻害効果ってやつだ。どういう訳か僕にはその効果が薄いのだけど。
確かに格好は同じだ。以前ミーアが着ていた『マイクロビキニ』バージョンのコスチュームに、
実年齢59歳の彼女は、一見すると30代後半程度にも見える相当な若作り。スタイル自体も、しいなさんとの血筋を思わせるプロポーションなのだが……だとしてもだ。あの? レイワさん。こういうのって、令和だとなんて表現すれば
【きっつー】
ああ、うん。じゃあソレで。
僕もこれ以上は詳細に語りたくないから、以降はニセ・ミーアとだけ呼称しよう。
ニセ・ミーアは驚いた事に、クロスリット・ハイロゥを完全に見切っている。僕の目では追いきれないので正確な数は不明だが、既にリングは20個以上高速で宙を飛び交っている。にも関わらず薙刀を巧みに使い、リングを撃ち落としたり斬り刻んだりと大立ち回りを繰り広げている。
相変わらず、とんでもないバ……御婦人だ。僕も昔、少しだけ手解きを受けた事があるけど、萬宮寿流の師範は年老いて尚健在のようだ。
「ひえー。いつもより怖ェー!?」
「その程度ですのリングリット? ヒーローが聞いて呆れますわね」
「こうなったら新必殺技だ! いけ! グリットライム・ドーナッツ!!」
再び、リングを飛ばすヒーロー。しかし、今度のリングは動きが遅い上に色まで違っている。通常時は天使の輪を思わせる黄色く光るリングなのに対し、新必殺技のリングは乳白色だ。
動きの遅いそれは、案の定ニセ・ミーアによって斬られてしまう。しかし、これこそが狙いだったのだろう。斬られたリングはトリモチのような粘着性をもった白い物体へと変化し、薙刀の刃を包み込んでしまった。
さらに驚くことに、その物体は高速でズルズルと動き回り、薙刀の柄を伝ってニセ・ミーアの腕へと這い上がる。そのまま全身へと伸びていき、どんどんと身体を包み込むように膨張していく。色も相まって、その姿は餅を焼いているようだ。
ニセ・ミーアの頭以外が全て餅に覆われ、餅はさらに膨らみ完全な球体となる。今度はまるで、雪だるまの胴体に人間が刺さったかのようだ。あっという間に拘束されたニセ・ミーアは、とても悔しがっている。
改めて思うのだが、ヒーローの必殺技じゃないだろうコレ。
「きぃー! まったく動けませんわ! え、ちょっと待って下さいまし!? 転がって……! ひぃっ!? 誰か止めて下さいましぃぃぃぃ」
ニセ・ミーアが、ゴロゴロと音を立てながら斜面を下っていく……。
山小屋の壁が壊され、吹雪が入り込んでいるこの状況だ。球体状の物が転がらない訳がない。唯一の救いは、頭の部分が横向きになっている事か。
斜面を転がる内に、巨大な雪玉となっているのか次第に音が重くなっていく。外を視認できないので、あくまで想像だけれども。
そして、轟音が鳴り響く。おそらく最下層の壁にぶつかったんだろう。
あまりの出来事に、リングリットまで唖然としている。君が作った雪だるまが原因だろうに。
自分の偽物が斜め上の方法で倒されてしまったせいなのか、しいなさんはさらに混乱している。
クマゴローΣと呼ばれた怪人に至っては、表情が読み辛いので良く判らない。それよりも、僕は怪人の名前が引っかかる。αでもβでもなく、Σ。シグマと言えば──
「物凄い風ですわ!? こちらへ! 今度は、私が貴方をお守りいたしますわ!」
山小屋の壁へ押し込まれる僕。しいなさんに【壁ドン&股ドン】されている状況だ。なにコレ?
吹雪とは比較にならないレベルで風が吹き荒れている原因は判る。ニセ・ミーアの衝突で施設の壁に穴が開き、屋内外の寒暖差によって急速に空気の入れ替わりが起こっているんだ。
激しい風のせいで、山小屋まで軋み始める。アイスにされた皆はリングリットが守ってくれているけど、しいなさんと僕は吹き飛ばされる寸前だ!
彼女によってガッチリと抑え込まれている僕だけど、そろそろ小屋自体が保たない。このまま倒壊したら、大変な事になる!
「儂を正気に戻してくれて感謝するゾイ少年。孫娘が気に入るだけあるゾイ」
クマ怪人はそう言うと、身体が光りだし自爆してしまった。
そして閃光が収まると同時に、風も緩やかなものへと変わる。
視界も開けたため、下層方面を確認してみれば壁に巨大な穴が開いていた。これは、ニセ・ミーア雪だるまの衝突による物だ。その反対方向。上層に開いた巨大な穴こそが、クマゴローΣが撤退時にあけた物だ。2箇所の穴によって、空気の通り道が作られ風が弱まったのだろう。
アイスにされていた面々も人間へと戻り、僕のバングルも床に落ちていたので回収できた。
これにて事件は一件落着。
その後、しいなさんに抱き留められていた僕は、A子から激しく抗議されたり。A子から奥義泥棒だと罵られたり。A子から決闘を挑まれたりと散々だったが、まあいつもの事だ。
翌日
テレビから流れるニュースでは、萬宮寿グループが手掛けていた建設中のレジャー施設が大損壊したという話題でもちきりだった。
しかし、その最中に緊急速報が入る。
グループ総裁、萬宮寿
現役を退いたと噂されていた総裁が、レジャー施設関連で開かれた記者会見の場へと現われたのだった。
光速真芯リングリットX
第5話「氷河期到来 ゲレンデに迫る恐怖!」
この物語はフィクションですが、
登場する物質、化学反応などは実在するものに極力基づけています。
個人の判断による実験は大変危険であり、
また法律に触れる恐れがありますので、決して安易にマネをしないでください。
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── 別視点からのみ摂取できる栄養素 V.C
4月16日
そして、世界征服を目指す『オメイラガ』の最高幹部。
前回、猫になってしまった反省を踏まえ、こうして活動記録を残すことに致しました。
憎きリングリットの邪魔立てで失敗が続いておりますが、今度こそやり遂げてみせますわ!
過去の敗北から、私は学びましたの。
まずは局所的に作戦を遂行していき、ヒーローへ察知されずに組織の目的を果たす事が肝要。
組織の活動が目立つからこそ狙われるのならば、コッソリと行えば良いのですわ。我ながらカンペキな作戦ですわね! 賢く、手堅く、地道な努力が実を結ぶのでしてよ。
それらを踏まえ、今回標的に決めたのが2年C組。勝手知ったる私のテリトリーですわ。手始めにクラスメイトを全員、ワンちゃんにして可愛がって差し上げますわ!
あら? そろそろお昼休みが終わってしまいますわね。続きはまた放課後に撮影しますわ──
さて、現在は6時間目の授業が終了した直後。
ここからは時間との勝負。帰りの
続いて紹介するのは、私のメイドであり盟友でもある
「ミーアさま。ワタシは匿名にして。万が一だけど、第三者が見るかもだから」
えぇ!? 私、お昼に自己紹介してしまったわ! どうしましょう、詠!?
「大丈夫。肝心な情報は伏せてた。例えば、体重45kg、バスト87cm、ウエスt──
おやめなさい!? どうしてそんなに詳しいんですのよ!
コホン。記録はあとで編集するとして、一先ず話を戻しますわ。
柴犬の『ケンケン』
詠……ではなく『A子』
そして、お祖父様の残した設計図を元に組み立てた『催眠音声ー欲棒くんー』
作戦に重要なのは、この三要素でしてよ。今は説明している時間が惜しいですわね。
さあ、三位一体となり生まれ変わる時ですわ! ポチッっとな 万
現在、このドーム状の巨大装置『
そろそろ完了しますわ! ドームの中から、可愛らしい柴犬の戦士が現れましたわね。
ケンケンの肉体、欲棒くんの能力、A子の魂。無事に融合できたようで安心しましたわ。少し不安でしたが、押すボタンはあれで合ってましたのね!
あとは抜け殻になってしまったA子の身体を、屋敷のベットへ移送するよう手配して──最後に、最も重要な儀式『命名』を行うことで、私と
決めましたわ、あなたの名前はケンケンα!
存分にチカラを振いなさい! 責任は全て私が引き受けますわ!
「まかせて。『オメイラガ』の宿願を果たす、わん」
さっそく上層に戻りますわよ、ケンケンα!
ここにあるエレベーターは、お祖母様の理事長室へ繋がってますの。やっぱり学校の地下に基地があるのは、とても便利ですわね。
さあ、ここからの記録は私の装着した『オメガバイザー』へ自動で録画されますわ。
次にこのカメラで撮る映像は、作戦成功で喜ぶ私達の姿になりますわねっ!
ここからは反省記録ですわ……
現在映しているこの場所は、お屋敷にある私の部屋。そうですわ、今回も敗けてしまいましたの。A子の機転で私の正体はバレずに済みましたが、散々な結果ですわ。
「ミーアさま。まずはイヤホンを着けて。きっと、もうすぐ始まる」
そうでした。事前に欲棒くんで作っておいた自己催眠音声を用意していたのでした。
えーと、呪詛返しの説明も残しておきませんとね。
まず、合精霊を創り出す儀式には『生贄』と『呪物』と『精霊』が必要になりますわ。あ、ケンケンは無事でしてよ? きちんと
合体を解除すれば、肉体の素となる動物は無傷のまま解放。
呪物は壊れてしまいますが、機械ですので材料さえ揃えばまた作り直せますわ。
そして、精霊は在るべき場所へと戻る。今回の場合は、A子の魂が肉体へ帰るという事ですわね。お祖母様が考案して下さった、精霊の帰還プロセスを利用した移動方式。これのお陰で、私も一緒に戦線から離脱していますの。
「ミーアさまに魂をギュっとされる感覚。クセになる」
変な言い方は、おやめなさいな。
人間でありながら、精霊の血を引くA子。そして、特殊な血筋を持つ彼女らの魂を掴む事が可能な私。どうやら私には、巫女の能力があるようですの。その恩恵で、通常でしたr──うっ!
「しいな様!? 早く催眠音声を流さなきゃダメ。かして、ワタシが再生する」
《わたくしはニンゲン。わたくしはニンゲン。わたくしはニンゲン──》
ふぅ、助かりましたわ。思った通り、これで呪詛返しを相殺できましたわね。
説明の途中でしたが、合精霊が合体解除を行うとそれまでの『業』が我が身へと帰ってくる。これは自然の摂理ですわね。
巫女である私は合精霊へ命名することで、その『業』の全てを引き受ける契約をしていますの。通常でしたら108日続くとされる呪詛返しも、巫女の適性が高い私でしたらその24分の1。たったの108時間、つまり4日と半日で呪詛に打ち勝つ事ができますの。呪いの効果も徐々に薄れていくので、たとえ金曜日に猫そのものになってしまっても、月曜日にはネコミミと尻尾と肉球だけを残して人間に戻れましたわ。
「むー。自己犠牲はダメって言ったのに。ミーア様がんこもの」
A子が何か言っていますが、イヤホン越しでは聞こえませんわ。
あら? 美衣もとい、B子が帰ってきましたわ。やっぱりリニアモーターカーは速いですわね! お屋敷から学校までの直線区間の土地を買い取って、地下に線路を引いた甲斐がありますわ。学校の地下にあるΣリアクターともパイプラインを通せましたし。この件はお祖母様も褒めて下さいましたわね。
「ただいま〜」
「わん!」
まあ! ケンケン! やっぱりワンちゃんは本物に限りますわ! もう羽吹まことに舐め回されるのは懲り懲りですの。失敗を繰り返さないよう、きちんと反省会を致しませんと!
まずは、先程の活動記録をモニターで見直しませんと……えっと、私が装着していたオメガバイザーに、この赤白黄の3色端子を挿すんでしたっけ?
「違うわよ、ミーアちゃん。バイザーは昔の規格だから、まずはコンバーターに繋ぐのよ?」
「ミーアさまは機械音痴。かして? ワタシがやってあげる」
うう。どうしてこんなに、ややこしいんですの!? それに2人とも、そんなに顔を近づけなくても大きな声なら聞こえますのよ!
《この教室は私たち『秘密結社オメイラガ』が占拠いたしますわ!》
《わん》
モニターから流れるのは、教室を占拠した直後の映像。
ここまでは順調でしたわね。
《おい! お前、また鼻血が出てるぞ!?》
《もうっ! 君は純情なんだから、あの変態女を見ちゃダメって言ったでしょ!》
《お待ちなさい! 私のどこが、変態だと言いますの!?》
《その格好!!》
反省点はここからですわね……私のコスチューム。
お祖母様は「女幹部たるもの、この位は着こなしてご覧なさい」と仰りましたけれど、やっぱり殿方には刺激が強すぎるのかも知れませんわね。
ええ! 次からは露出を減らす事に決めましたわ!
「ミーアさまがDに気を取られたスキに、皆逃げ出した」
「あらあら〜」
仕方ないでしょう! 私のせいで鼻血を出したのかもしれませんし、心配でしたの!
それに、この後の気絶も気になりますわね。一度、彼の事を精密検査する必要がありましてよ。
「気絶はワタシのせいじゃない。たぶん」
「弟くんは気絶しちゃったし、わたしは耳栓をしてたから。結局、催眠を受けたのは2人だけね〜」
そうですわ。残った二人──羽吹まこと、井伊エツジだけは標的にできましたの。
B子も催眠を受けた演技が上手でしたわね。普段より目を開いていて、なんだか新鮮でしたわ。
まあ! ご覧なさいな、画面の中で羽吹まことが無様に闘いを挑んできていますわ。
普段から猪の様な動きですのに、今回はより単純な突進。私の扇子で一撃与えて終了ですわ!
うふふ。お腹を見せて服従を示してますわ。なんだかちょっと可愛いですわね……
「このヘン、早送りしよ」
あ、コラ!? もっと、まことの恥ずかしい姿を見せなさいな!
あら、これは井伊が殴り飛ばされるシーンですわね? なるほど、A子はあの男に何かされてましたのね。まったく、犬になってまでイヤらしいなんて困りものですわ!
やっぱり本物が一番。私の膝に乗っているケンケンはこんなに可愛いのですもの。
《よくも皆を酷い目に……! ゆるさん!!》
《性懲りも無く現れましたわね!! やっておしまいなさい、ケンケンα!》
《わかった……わん》
出ましたわねリングリット。特殊攻撃が一切効かないというズルい男。
体術自体は素人同然。力任せの攻撃もA子の技量ならば難なく躱せますし、隙を突いて反撃まで決める余裕がありますわ。
けれど問題は、やっぱりあのリングですわね。
あの男が放つ『クロスリット・ハイロゥ』という名の空飛ぶ光輪。
ただの飛び回る光輪ならば、武道を嗜む私達にとって一つ二つの対処は容易ですのに……現在確認できている最大数は32本。
ズルですわ! 人間の処理能力を超えてますもの! あの男は、どうやって動きを制御していますの!?
「あらあら。2人とも捕まっちゃったわ〜」
「ごめん、ミーアさま。しっぽが付いてること忘れてた」
仕方ありませんわ。そもそも、今回の作戦はリングリットとの闘い自体が想定外ですもの。
それにしても、ヒーローの登場が早すぎますわね。学校がパニックになって15分程度ですのよ? 都合よく近所で暮らしているなんて偶然はありえませんし……もしかすると、あの男には合精霊のチカラを察知する能力があるのかもしれませんわ。侮れませんわねリングリット!
《くぅ〜ん。ぺろ、ぺろ》
《ひゃん!? やっ。んんっ! ま、って》
ここは早送りですわよ! どれを押せばいいんですの!?
あれ? えっ? うぅ〜。どうして反応しませんの……?
《なんかさ! 女の子同士って、イイよなっ!》
え? リングリットは、誰に話しかけてますの? あの場で会話できる人間──まさか!?
気絶していた筈の彼が!? こ、この光景を見ていましたの!?
「弟くん、お顔が真っ赤だったのよ? 今のミーアちゃんみたいね〜」
「ふしぎ。この光景のが鼻血でそうなのに。Dはへいきだった」
ッーー! 萬宮寿流心術『明鏡止水』!
ふぅ〜、危ない所でしたわ。催眠の影響下にあるいま、取り乱すのは危険ですもの。心を鎮める術を身に付けておいて良かったですわ。
もう早送りは諦めますわ……。リングリットへの対策も次回考えるとして。
直近の問題は、彼の鼻血の件ですわね。
思い返せば『叡智の書』なる結晶体へ触れた時も鼻血を出していましたわ。
あの結晶体が置かれていた場所は、Σリアクターが設置されている地下施設よりもずっと上の層。天然の地下空洞でしたわね。
以前の調査では、あの場所には浮世絵などが仕舞われた古くさい箱しかなかったと報告されていましたのに……得体の知れない物へ触れてしまった彼が心配ですわ。
「ミーアさま、Dに甘すぎ。どうして?」
「弟くんは可愛いからよ〜。ミーアちゃん、可愛い動物が好きでしょ?」
違いますわ! 私はただ、ただ……あら? どうして、こんなに気にかけてしまうのかしら?
確かに幼少期、萬宮寿流の道場でお会いした事はありますけれど。それ以来、特に親しい関係でもない彼を何故?
高校で再会して──そう言えば、彼が先生から校則違反だと勘違いされた事がありましたわね。彼の髪が生まれつき茶髪に近い事は知っておりましたので、私が執り成して誤解は解けましたけれど……
その時、彼が感謝のついでに述べた「海の近くに住んでいるのに、萬宮寿さんの黒髪は綺麗だね」という言葉が妙に嬉しく感じましたわ。あんな美辞麗句は、他人からいくらでも言われておりますのに。
この気持ちは、一体なんですの? これは安心感? それとも友愛? どこか、詠と美衣へ寄せている信頼とも似ているような……あ。そう言う事ですのね!
彼も精霊の末裔なのかも知れませんわ!
翌日。
車での登校中、さっそく彼を発見しましたわ。
イヤホンのことを失念したまま話しかけてしまいましたが、慌てた私を見て詠が彼の言葉をスケッチブックに書き出してくれましたの。相変わらず、頼れる盟友ですわね。
そして会話の結果、彼が火鬼崎博士の検査を受ける予定だと判明いたしました。おかげで計画が台無しですわ!
彼には精霊疑惑があるので、首尾よく我が家へ連れ込もうと思ってましたのに!
コホン!
けれど火鬼崎博士は、お祖父様と肩を並べる程の天才科学者。検査に関しても信頼できますわ。
その後、世界史の授業で彼がお祖母様を怒らせてしまい。現在は、理事長室でお説教を受けている最中。
かれこれ1時間は経つので、そろそろ終わる頃合いだと思いますけど。中々、出てきませんわね。
「ワタシおなか空いた。そろそろ帰ろう、しいな様?」
もう少しだけ付き合って下さいな。お祖母様だってお腹が空くのだし。流石にそろそろ──
「やっと終わった……もう猿人は懲り懲りだよ」
ふふっ。肩を落として歩く姿は、まるでお猿さんのようですわよ?
けれど、真面目に授業を受けている彼があんなお巫山戯をするなんておかしいですわ。
まことの影響? だとすれば、今日受けた屈辱も上乗せして一度懲らしめなくてはいけませんわね。私がイヤホンのせいで言い返せないのを良い事に……! あの勝ち誇った顔を思い出しただけでも悔しいですわ!
んんっ。何はともあれ、まずは彼を労いましょう。どこか調子が悪いのかもしれませんし。
「萬宮寿さんこそ、今日は調子が悪いんじゃないかな? あはは、まことが絶好調だったせいもあるけどね。ごめん」
何かを述べたのち、何処か遠くを見つめる彼。
彼が長めに喋ると詠の字幕が追いつきませんわね。会話の流れが分からないので少し強引ですけど、体調が悪そうな事を口実に車へお誘いしてみましょう。
彼を自宅へ送り届けたあと、落ちた髪の毛などが車に残っていれば、精霊かどうか調べる事も可能ですわ!
とっさに思い付いた作戦にしては完璧ではなくて? さあ! 私と一緒に下校いたしましょう!
あら? こうして近づいてみると、私と彼は目線の高さが全く同じなのですね。普段は前髪に隠れて見えない左目も、間近ならば髪の隙間から観察できますわ。やけに目が泳いでますけれど、どうされたのかしら?
「こわっ!?」
な、怖いとはなんですの! 人が心配しているというのに!
そんなに怯えなくても宜しいでしょう!? 私って、そんなに怖がられてますの……?
あ、詠が先程のセリフを書き終えたと合図していますわ。
どうやら私の体調を気にしてらしたようですが、何故まことの件で彼が謝っているのかしら? 貴方は別に、まことの保護者ではないでしょうに。なぜだか無性に腹立たしいですわね!
もう今日は、誘うのを諦めますわ。さっさと火鬼崎博士の所へ行ってしまいなさいな。
「うん。それじゃあ、またね萬宮寿さん」
あっ!
振り返った彼が、背後にいた詠を見つけてしまいましたわ。
どうしましょう!? 彼が驚いていますわ!
当然ですわね。自分のセリフが書かれたスケッチブックを持つ、銀髪幼女がいるんですもの。幼女……? そうですわ! 詠は見た目がとても幼いんですもの。字の練習をしていた事にしてしまいましょう! ねっ!
「……そう」
「いやいや、流石に無理があるって!? ほら、萬宮寿さんが付けてるイヤホンが原因なんじゃないかな? 音楽を聴いてて、会話が聞き取り辛いから筆談を試してたって所かな? あ、別にもう放課後なんだし咎めるつもりは全くないんだ。むしろ音楽好きな一面が知れて良かったくらいだよ。そうだ! これ、もし良かったら貰ってくれないかな? 昨日買ったCDアルバムなんだけど、最近このバンドにハマっててさ。気分が沈んだ時とかオススメだよ? あ! でもチルい曲って訳じゃなくて、ジャンルはしっかりとしたロックだから趣味に合うかは分からないけど──とにかく聴いてくれたら嬉しいな。それじゃあ! また来週!」
怒涛のような言葉の嵐を残したのち、彼は走って行きましたわ。
詠が書き起こそうと頑張っていますけれど、きっと全部は無理ですわよ? 間違えて『ちるい』なんて、日本語ではない単語を書いてますもの。
けれどこのCDは私へのプレゼントで合っているようですわね。なぜ急に、という疑問は残りますが。
「むー。Dおしゃべり! 全部書けなかった。しいな様ごめん、細胞も採取できなかった」
細胞? 何を言ってますの?
どうして、綿棒をもってますの詠?
「スキをみて、Dの口に入れる予定だった。案外スキがなくて、ビックリ。さすが元・羽吹流」
どうして貴女は、そう非常識なんですの!?
いきなりそんな事をしたら、嫌われてしまいますのよ? もし彼が精霊の末裔だったら、これから協力して頂きたいのに!
私の為だということは判りますけれど、もう少し節度をもって──
「あ〜! しいなちゃんが、詠ちゃんをイジメてる。いけないんだ〜」
違いましてよ! 私はただ、詠のためを思って……いえ、言い過ぎてしまいましたわね。ごめんなさい、詠。
それはそうと、美衣は理事長室に居りましたのね。もしかして、貴女までお祖母様からお説教を受けてましたの?
「わたしは弟くんの付き添い。イグナさまに怒られて泣いちゃうといけないから、よしよしってしてあげる係よ〜」
「ププっ。D子供すぎ。ホントに高校生?」
「あとね。はい、コレ! しいなちゃんへの誕生日プレゼント〜。なんてね」
美衣が手渡してきた物は、密封された小さいビニール袋に入った──髪の毛?
光に当てると茶色に輝くこれって、まさか?
「うん。弟くんの髪の毛。きちんと毛根も付いてるから検査できるかもしれないわ。ね? 頭よしよし係は必要だったでしょ?」
「さすが美衣。ワタシにできない事を平然とやり遂げる」
「詠ちゃんの背だと、ちょっと撫でるのは難しいもんね〜。うふふ」
「むー。ワタシの頭まで撫でなくていい!」
仲がよろしいですわね。
けれど美衣のおかげで彼の検査ができるのは僥倖ですわ。
それと忘れていましたが、今日は私の誕生日でしたのね。つまり、彼からの贈り物もそういう意味──色々と思い出せましたわ。
どさくさ紛れにプレゼントだなんて、相変わらず恥ずかしがり屋さんですのね。
4月20日
本日は火曜日。
2日ほど記録を残しておりませんが、催眠の影響を少し受けただけですのでお気になさらず。すでに呪詛返しから85時間経過しているので、呪いの影響も大分薄くなってますわ。
「しいな様。CD聴こうとしてイヤホン外した。ドジっこ」
「ペロペロしてて、可愛かったわ〜」
おだまりなさい! どうして2人とも、私のベットにおりますのよ! 学校を一緒に休んでまで、私に付き合わなくても構いませんのよ?
そ・れ・に!! この首輪はなんですの!?
「猫の時は逃げちゃった。首輪は必要」
「そうよ〜。あの状態で街へ出ちゃったら、大変でしょ?」
「だからワタシ達がお世話した。ほめて」
うぅ。記憶はありますのよ……逆に、あるからこそ困るのですけど! あぁ〜もうっ! ともかく、助かりましたわ! 急いで身支度を整えて、今日は学校へ参りますわよ!
取り急ぎ、全員シャワーを浴びる必要がありますわね……
カメラが濡れるといけないので、記録は一旦停止しますわ。
〜♬(テーマソングをアレンジした予告用BGM)
ワッくん大変だし! アタシらの秘密が、あの子に見られちゃった!
「どうしよう!? ヒーローの正体がバレちゃったら……!?」
そう! 一昔前だと、脳を破壊されたり、動物にされたり、もう大変なんだかんね!
「ひぃ!? 昭和怖ェ〜! 今が平成で良かったぜ!」
次回、光速真芯リングリットX
第6話「まこと目撃! ワッカとJKのショータイム」
見てくれないと、ヤなカンジ! みたいな〜?
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時は行き 瞬く間も無く 皐月かな
#06 羽吹まこと
放課後の空き教室。そこでは、一組の男女が艶かしい声を上げている。
山小屋での一件を想起させるような語り口となってしまったが、今回は僕ではなくワッカの話である。ワッカと謎の女子高生。その2人が、とても人に見せられないような行為に及んでいるのだ。
「んっ……ばか。そこ違うし、もうチョイ上……イタッ!? はぁ〜、あのねワッくん。がっつき過ぎなんですケド。もっと優しくしなきゃMK5だかんね」
「ご、ごめん! えーと、コッチかなー?」
こんな状況を、声が漏れないように互いに口を塞ぎ合いながら見守っているのが僕ら二人。僕と彼女──羽吹まことである。
ちなみに、僕らがいる場所は掃除用具入れ。つまりはロッカーの中だ。まさか僕が『女子と二人でロッカーの中に閉じ込められる』なんて、ベタなシチュエーションに遭遇するとは思いもしなかった。その上、友人の密会現場まで覗いてしまうなんて。
ワッカ達の行為を目にして、まことはずっと赤面している。息苦しい箱の中に押し込まれていることで、いつにも増して顔が赤い。その為か、彼女の口を押さえている僕の右手にまで火照りが伝わってくる。
とっさに口を塞いでしまったけれど、僕も彼女も当初よりは落ち着きを取り戻しているんだ。そろそろ、手を離しても大丈夫だろう。
目配せで合図し、お互いの口元を解放する。こういった時、付き合いの長い彼女ならば言葉は不要。ロッカーの隙間から覗き見える、中々息の合わない彼らとは違うのだ。
その二人はお互い行為に夢中なので、僕とまことが小声で話す位ならば気付かれなさそうだ。
「ひゃ。ね、ねぇ! 君の腕輪、ずっと震えてるんだけど! せ、せめてボクの太ももから離して、よ!」
あ。金属製のロッカーに当てたらバングルの震えが伝導すると思って、僕の太ももへ押し当てていたんだ。けれどこの狭い箱の中では、まことの身体へも触れてしまっていたのか。くすぐりが弱点の彼女。もしかしたら、顔が赤いのは僕のせいだったのかもしれない。ごめん。
とはいえ、バングルを身体から離せばロッカーの内壁にぶつかってしまう。仕方ない、レイワさんが五月蝿いだろうけど現状では外すしかないな──
「ま、待って! それ、善じいちゃんの発明品でしょ。外したら、君がエッチな変態になっちゃうって聞いてるよ!?」
どんな誤解の仕方だ!! 大まかには事実と合致してるのがまた腹立たしいな!
けれど大声を出す訳にもいかないので、上手く弁明できない。今はもどかしい気持ちを堪えて、簡潔な言葉で彼女を安心させるしかないな。
「うう。そんなこと言って、ホントはボクと
変に意識しないでくれ。僕にそんな気は一切ないし、そもそもあんな特殊な行為は僕らに不可能だろう。さっきから何度も大丈夫だと伝えているのに、どうして信用してくれないんだ?
彼女の不安を解消するために、まずは少しだけ外してみると提案しても、今一つ信用してくれない。元はと言えば、彼女からバングルを離してくれと頼まれたのに、いつの間にか僕の方がお願いする形になってしまった。なんなんだこの状況は!
ああ、本当に。成り行きとは言え、どうしてこんな事になってしまったんだろう──
地獄の様なゴールデンウィークが明けて、二日目。早くも週末がやって来た金曜日。今日僕は、一つ試してみたい事柄がある。
悪の組織が襲撃を行うのは基本的に金曜日。前回は、例外中の例外だろう。
そして今日は、帰りのホームルームにA子としいなさんが顔を出していないのだ。これは、柴犬怪人に襲われたあの日と同じ状況。つまり、再び学校内で怪人騒動の起こる可能性が極めて高いと言う事だ。
そんな訳で、ホームルーム終了直後に僕は教室を飛び出した。このまま帰宅してしまえば、被害を免れる事は容易だろうが、目指す場所は一つ上の階にある空き教室。そこで怪人が現れるまで、身を潜める予定だ。
その理由は、僕が直接『秘密結社オメイラガ』の行いをこの目で視なければならないからだ。レイワさんはポンコツ断片データなので、原作のシチュエーションを視認しなければ知識を引き出せないんだ。決して、僕が私的に『悪の女幹部』を見たいから等という低俗な理由ではないのだ。
空き教室へと入り、階下へと耳を澄ませば生徒の悲鳴が聞こえてくる。どうやら読みが当たったようだ。一人だけ安全地帯に避難してしまい申し訳ないが、怪人の特殊能力が判らない以上は仕方ないんだ。もしまた洗脳系の能力だったりすると、状況を認識できず原作知識を得られないかもしれない。
連休中の出来事を踏まえ、僕には一つの目標ができた。
萬宮寿家の『真の目的』を探る。
レイワさんの原作知識を補完する事で、きっとその答えは見えてくる。動物愛護や環境保全を謳う裏で、しいなさんが本当に目指している場所は一体何処なのか。
その理由次第で、僕は彼女を──「あ、居たいた!」
「君が急に走って行くから、つい追いかけて来ちゃったけど。こんな所で何してるの? 今日は、ボクと一緒に遊ぶ約束でしょ」
羽吹まこと。この世界のヒロイン。ダークブラウンの髪色をしたショートボブが似合う少女。
格闘道場を営む家に生まれ、自身も生粋の格闘家である彼女。そんな彼女の趣味は、意外な事にカラオケだったりする。今日の放課後は、その趣味に付き合う予定だという事をすっかり忘れていた……申し訳ない。怪人の事で頭がいっぱいだったようだ。
「最近、ちょっと変だよ? もしかして、スキー場でボクが居ない間に何かあった? ほら、怪人が現れたっていうあの時──」
スキー場。まことはあの時、温泉へ入る段階になって漸く手袋を無くした事に気付いたらしい。それで皆と別れ、一人で探し回っている内に怪人騒動が解決していたようだ。温泉施設をいくら探しても手袋が無かったと嘆く彼女だが、当然である。紛失したのはスキー場での事だし、手袋自体すでに僕が燃やしていた頃合いだろう。
確かに彼女の事情と比べれば、僕は充分に『何かあった』と言える位に濃い経験をしていたな。
ちなみに、怪人が去ったあと現れた白熊はしいなさんが簡単に手懐けてしまった。暴走状態で無ければ、どんな動物とでも彼女は意思疎通できるそうだ。スキー場では、彼女の事を色々と知れて僕にとって有意義な時間だったと言える。
「やっぱり、萬宮寿しいなに何かされたんでしょ!? あれから君、付き合い悪いもん。ゴールデンウィークだって、一人で『キャンプ』に行っちゃうし!」
その言い回しだと、さも僕が『ソロキャン』を楽しんだ様に聞こえるが、実態はまるで違う。
家族には便宜上、キャンプと伝えられていたソレの正体は──萬宮寿流ブートキャンプ。
経緯も不明なまま、僕は萬宮寿家へと拉致された。そして、連休の殆どを敷地内にある謎の訓練施設で過ごす事となったのだ。
多少救いだった事は、同年代の訓練生が沢山いた事だ。その中には、学校で見知った顔もチラホラ居た。話を聞けば、彼らはA組やB組に所属する生徒達だった。
当初は高校生の運動部が行う程度のトレーニングだった為、彼らと談笑する余裕もあったのだ。折を見て脱走する予定だった僕も、わずかとは言え親交を結んだ彼らに責任が及ぶ可能性を考え、抜け出すのを躊躇してしまった。この程度のトレーニングを4日間熟すだけで丸く収まるならば、その方が気負いせずに済むと思い直したのだ。
しかし、時間を追う毎に訓練のレベルがインフレする。そこからが地獄の始まりである──
動けなくなるまで訓練された2日目。肉体を酷使した後は、精神へまで負担を掛けてくる鬼のプログラムが待っていた。
それを行う教官達は、屈強な肉体を無理矢理に黒い全身タイツへと包み込んだ姿である。そんな筋肉モリモリ、マッチョマンの変態達が代わる代わるに罵詈雑言を浴びせて来るのだ。
レイワさんというノイズに慣れている僕は平気だったが、他の参加者は次第に表情が消えていった。恐らくはあれは、人格を一度破壊して有能な軍隊を生み出す事が目的だったのだろう。
そんな地獄の訓練から、僕は3日目の途中で抜け出す事ができた。
B子さんが突然現れ、周囲の目も顧みずに僕へ抱き付きこう言ったのだ「ごめんね〜、わたしの勘違いだったみたい。お姉ちゃんを許して弟く〜ん」と。
なんでも、スキー場でガムが役に立ったという話から勘違いが発展したとか。そして萬宮寿イグナの一存で、僕のブートキャンプ強制参加が決まったらしい。意味が分からない。
連日の疲れと、緊張状態からの解放。何よりB子さんの抱擁に安心しきった僕は、丸一日泥の様に眠ってしまった。
そして連休の最終日、僕は萬宮寿家の本宅で目を覚ました。人格に異常は無いかと、しいなさんに心配されたり。豪華すぎる持て成しを受けたり。やたらと元気なA子に絡まれたりと、色々あった筈なのだが──終始、B子さんに頭を撫でられ続けていたので鮮明には思い出せない。
僕よりも背の高い、メイド服を着た女性から無制限に甘やかされるという状況。あれこそ『バブみを感じて、オギャりたくなる』という現象だろう。連日の疲れで羞恥心が麻痺していた僕に、アレを拒否する精神力はもはや無かった……
「──くん! ねぇ、聞いてる? なんだか、下の階が騒がしいみたい。ちょっと様子を……っ! 誰か来る。コッチ、隠れて!」
連休中のあれこれを思い返していたら、いつの間にかロッカーの中へと押し込まれていた。
まことも続いて入って来て、扉が閉る。途端に圧迫感の増した現状に混乱していると、今度は教室のドアを開けて誰かがやって来たようだ。急展開に追いつけない僕の代わりに、まことがロッカーの隙間から外の状況を伺ってくれている。
「なぁんだ、ワッカくんか。隠れて損しちゃったね……? あれ、けど誰かと話してない?」
ワッカが誰かと会話している? 相手は声しか聞こえないが、どうやら女性のようだ。ギャルの様な口調で話すその声色はやけにワッカと親しげだが、僕もまことも聞いた事のない声。
まさか、恋人だろうかと怪しんでいるとその女性が急に姿を現す──何も無い空間に電気が走り、ぼやけた女性の輪郭が徐々に浮き出て来たのだ。
これはきっと、光学迷彩だ。衝撃的な光景であったが、僕らは先日
しかし、次の光景を目にした瞬間。僕らは互いの口を掌で塞ぎ合う事となった。アレは流石に未知の科学すぎて、耐性は簡単にブチ抜かれてしまった──
「じゃ、ワッくん。そろそろ、しよっか! コードよろ〜」
「
その時、不思議な事が起こった。
端的に言えば、セーラー服を着た女子高生が
まず正中線をなぞって身体が縦に割れ、次はまるで輪切りにされたかの如く横に複数の切れ込みが入る。そして背中へと向け、頭以外の輪切りにされたパーツが蒸気を上げながら裏返って行く──そう、あの女子高生はロボットだった。
桃色をした長い髪、肌は美白と呼べるものの、化粧は少し濃い。タレ目気味の目元とは裏腹に、気の強そうな表情をしている。そんな精巧な作りの女性型アンドロイドだ。
忠実に人体を模した表面とは逆に、躯体の内部は機械である事を全く隠さない色使いだ。メタリックシルバーを基調として、所々に黄色のアクセントが入っている。このカラーを目にし、僕とまことは当たり前のように既視感を覚える。
これは、リングリットのヒーロースーツと全く同じ色合いなのだ──
回想終わり。
かれこれ10分経ち、僕とまことのバングル問題は解決した。結局まことが折れなかったので、煩悩封じを行ったのだ。この方法でレイワさんを黙らせると、あとで『ドSショタ』などと揶揄されるので苦肉の策ではあるが仕方ない。
レイワさんの犠牲で問題を解消した僕らとは別に、彼らの方は遅々として進まないでいる。恐らくは『変身シーン』だと思われる目の前の行為は、何度も失敗してはやり直しを繰り返す。まさかリングリットが毎回遅れてやって来る理由が、コレだったとは。なぜ博士は、こんなシステムにしたのだろう……?
おや、漸く頭以外のパーツを装着できそうだな。
「ほら見て? ちゃんと入ったでしょ? アタシの言う通り、ゆっくりやればワッくんでも上手くできるんだから。さ、あと少し!」
「でも急がないとみんなが!」
「んっ、急に入れんなし!? ダメ、抜いて……一旦抜け! ヘタクソ!」
「ご、ごめんJK!」
なんだよコレ。もう10回以上やり直してるぞ。JKと呼ばれた女子高生ロボットは、どうやら気難しい性格のようだ。特に胸部パーツを装着する際に要望が多い。ワッカが少しでも装着部位をズラしてしまえば、今の様に文句を言われている。
ヒーロースーツに頭が上がらないヒーロー。こんな情けない姿を晒している彼だが、何度も窮地を救われた人間の目にはどう映っているのだろう?
「がんばれワッカくん。あとチョットだ!」
まことは小声で応援している。図らずもヒーローの正体を知ってしまった彼女だが、意外な程すんなりと受け入れてしまった。だからと言って、僕らがロッカーから出て行く事は無いけれど。流石にそれは、お互い気まずいだろう。
「よし、入った!」
「んじゃ、アタシは解析モードに入るから。あと家に帰ったら、説明書の復習だかんね」
「光速真芯・リングリット!! 転・輪・完・了‼︎ 今日も光の速さで解決するぜっ!」
JKの頭部が裏返り、ヘルメットへと変形する。それを装着し、誰も居ないというのにワッカがポーズを決めて口上を述べる。こういう所だけ様式美に拘るのが、いかにもワッカらしい。できれば着替えを光の速さで済まして欲しいけれど。
教室を飛び出し、階下へと駆け出すリングリット。これで、僕らも狭い箱の中から出る事ができる。長かった。
「ぷはぁ〜、えへへ。やっと出られたね! でも、君が小柄だからそんなに狭く感じなかったよ」
奇遇だな! まことの胸部装甲が実装されてないお陰で、僕も圧迫感は少なかったよ。
山小屋でしいなさんに壁ドンされた時は、もっと窮屈だったな。そして、それを凌駕するのがB子さんなのだが……あの包容力と抱擁力に慣れてしまえば、僕はきっとダメになる。その証拠として、象怪人に伸し掛かられたリングリットは、多分もうダメになっている。まことに好意を寄せる一方で、ワッカは時折B子さんやしいなさんの胸部を凝視しているのだから。
「むっ。何だか失礼なコト考えてるよね!? そういう視線、女子は判るんだよ。もうっ! 純情だった君は何処かへ行っちゃったの?」
おっと、目は口ほどに物を言うんだった。気を付けないと、僕までEやワッカと同列にされてしまいそうだ。
それはそうと、急がないとリングリットが光の速さで悪の組織を片付けてしまう。そろそろ、2–Cの教室へ戻らないと!
「そっか、ヒーローが現れたんだもん。下の騒ぎは、ボクらの教室に怪人が現れたって事だったんだ。でも、慌てなくても今頃ワッカくんが──あ! 君、最近しいな達と仲が良いから心配なんでしょ? 特に『お姉ちゃん』の事とか!」
何言ってるんだ? 姉さんは3年生だから、教室は校舎の向こう側だ。渡り廊下を挟んでいるのだし、別段心配することもないだろう。
「ちーがーう! 理珠さんじゃなくて、美衣さん。君、あの人の事たまに『お姉ちゃん』って呼んでるでしょ? え、もしかして無意識だった!?」
……と、とにかく! しいなさんや、お姉ちゃ──B子さんが心配だし教室へ急ごう!!
階段を降りると、廊下には全身黒ずくめの群れが転がっていた。
頭は目出し帽の覆面、体はピッチリとした全身スーツ。以前、商店街が襲われた時にも数人いたオメイラガの戦闘員。いわゆる『ザコ戦闘員』だ。ついに学校へまで現れる様になったのか。
まあリングリットが全員倒しているので、害はないのだけれど──
「あ、あそこ見て! 戦闘員を救助してる生き残りが一人いるよ!」
まことが物騒な事を言っているけど、恐らく全員生きてると思う。今動いてるザコ戦闘員は、仲間の回収係かな?
ブートキャンプでも、要救助者を安全地帯まで運ぶ訓練をさせられたな。緊急時はあんな風に、後ろ側から両脇に腕を回して対象者の脚を引き摺る形で搬送するんだ。あんな姿を見ると、悪の組織とはいえ人道的な面もあるのだと思わされてしまう。
「覚悟しろ、オメイラガ! やーっ!!」
「ッ!?」
なっ……! いくら羽吹流とは言え、普通この場面で襲い掛かるか!? 回収班の人、ビックリしてるじゃないか。
しかし、流石は戦闘員だ。まことの飛び蹴りをしっかりと避け、体勢を立て直して武器を構えている。
あれは特殊警棒だ。携帯性に優れ、咄嗟の場面で使い勝手のいい武器なのだが……羽吹流の師範代を前に『武器』を使うのは悪手と言わざるを得ない。羽吹という名は『破武器』から来ている。武器を持った相手への対応で、羽吹流の右に出る流派は存在しないのだ。
僕の予想通り、振り払われた警棒をまことは回し受けで難なくいなす。そのまま体勢を崩した相手の懐へ潜り、背中で体当たりを喰らわせる。
「さってと。ふん……っ!!」
まことは躊躇なく警棒を踏み潰す。どう見ても金属製だと言うのにその棒は、ひしゃげ、砕かれ、バチバチと電気を放っている。どうやらアレは『スタンロッド』と呼ばれる、金属部に電気を流せるタイプのようだ。運良くまことは金属部分を触らずに済んでいたけれど、直撃してしまえば危うかっただろう。
「やっぱりね。持ち手部分が絶縁体っぽいし、スイッチも付いてたから怪しいと思ってたんだ。ふふっ、こーんな卑怯な武器を使ってるヒトが、丸腰になっちゃったら、どうなるんだろーねぇ……?」
怖い怖い! 全部判った上で、金属部を避けて攻撃を受け流していたんだ。
そして、これこそが羽吹流の本質だった──武器を持った相手から、それを取り上げ、目の前で破壊。相手を恐慌状態にした上で、得意のステゴロへと移行しタコ殴りにする。
僕も門下生だった手前強くは否定できない身だが、敢えて言おう。羽吹流って、蛮族みたいだな!
「ディ!? ディーッ!!」
「なんだろ、命乞い? それとも、君を呼んでるのかな?」
いや鳴き声だろう。ショッカーの戦闘員が「イーッ」って言うのと同じだと思う。
それに僕の事を「D」と呼ぶのは現状だとA子くらいだ。幼い頃、僕の名前をきちんと発音出来なかった姉さんが「でぃくん」と言っていたせいで、まことやA子が真似をしたのが切っ掛けだった。だから基本的に、幼少期から付き合いのある人にしか……
ああ、そう言えばブートキャンプに参加した面々は本名を伏せるルールだったから、あの時は自分から「D」と名乗ったんだっけ?
「D! D!」
ん……? 何だか聞いた事のある声だな。それも割と最近に。
もしかして! 僕の腰にしがみついてくるザコ戦闘員って……あの時の彼なのか!?
そうだよ、救助訓練を一緒にやったし。棒術の訓練も一緒にやったじゃないか!
本名は知らないけど、A組の人だ。キャンプで名乗ってた名前は確か──
「ア……ッ」
「当身。気絶したみたいだね、それじゃ行こっか!」
いや、それ花京院のヤツ。本当の当身は首チョップじゃないだろ!
まあ何故か相手が気絶してるから、もう良いけどさ。
萬宮寿流ブートキャンプの正体が『オメイラガ養成所』だった事の方が問題だ。薄々そうではないかと思っていたけれど、僕はとんでもない場所に放り込まれていたようだ。気絶した彼は、まさか洗脳でもされているのだろうか?
気掛かりではあるけど、まことに手を引かれた僕に最早確かめる術はない。あと数秒で僕らの教室に辿り着くのだから。
開け放たれた扉の向こうから、大勢の悲鳴が聞こえてくる。
果たして今回の怪人は、一体どんなフェティシズムを披露しているのだろうか。
さあ、出番だレイワさん!
【この尻軽ショタ! 都合のいい時だけ、あーしを当てにして! あとね、おねショタするなら相手が違うし。とりま、あーしとしろっての!】
何だか思ってた反応と違うな。JKに触発されたんだろうか? 他所は他所だぞ。ワッカと違って、僕はギャルが相手でも下手には出ないからな。
とは言え、今回は強引な手段を取った僕に非があるから素直に謝るよ。ごめん、もうバングルで刺激を与えるような事はしないよ。
【あ、それは寧ろご褒美だから止めないで】
なんだ平常運転か。なら原作知識を思い出してくれれば、もう一度ご褒美をあげるから機嫌を直してくれ。
【安定のドSショタぶりで、お姉さん感涙に咽び泣きそう】
レイワさんの情緒は不安定だが、取り引き成立だ。
よし……! たった今、すこぶる不機嫌な女幹部に見つかってしまったので──
取り急ぎ、A子が変身している『サイ怪人』の特殊能力について頼む‼︎
後編へ続く
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#07 犀は角を惜しむ/形状変化回
2年C組の教室。
ほんの15分前までは、クラスメイト達が談笑していた平和な空間だった。
しかし、現在ここは阿鼻叫喚の地獄絵図と化している。
生徒達が廊下側の壁際に
「クソー! 元に戻しやがれ!」
一際大きな声で悪の組織へ抗議しているのは、僕の友人Eだ。
彼の身体も、他のクラスメイト同様に『
まるで透明な箱に、人間を無理矢理押し込んだかのような惨状。手足は折り畳まれ、あれでは文字通り手も足も出ない。
しかし、正面を向く一面が『顔面』となっているので声だけは上げられる。一つの面を贅沢に使い、目一杯に引き伸ばされた平坦な顔面。その巨大化した顔面が、10列3段に整頓され壁際に並べられているのだ。
「クソー! せめて、オレを女子のキューブに乗っけてくれー!」
一人だけ教卓の前に転がされているEが泣き叫ぶ。
こんな状況でも性欲を優先するとは流石だ。彼の不埒な願望を聞いて、キューブになった女子達から先程までとは違った悲鳴が上がる。
しかし、Eが女子から非難されるのはもはや日常のやり取りなので、声だけを聴いていれば普段の教室と変わらない光景が頭へと浮かぶ。こんな異常事態だと言うのに、皆どこか肝が据わっているようだ。
奇しくもこの場には、クラスメイトが全員揃っている。
C組に在籍する生徒は37名。
ここから、僕とまこと。しいなさんとA子。そしてワッカの5人を引いた、32名。
その全員がキューブとなっている。壁際に整頓された30人と、その一団からは溢れた2人。言うまでもなく、1人はEだ。
しかしまさか、B子さんまでキューブ化しているとは思わなかった。
立方体になってしまった彼女は、現在ミーア・クシロンの椅子と化している。
「おーほっほっほ! ふかふかで座り心地がいいですわ。これで、じっくりと観戦できますわね!」
「ん〜っ……! せめて
「ダメですわ。それでは、お仕置きになりませんもの」
逆さまに置かれたB子さんが懇願するも、女幹部はその要求を受け入れない。
彼女が座っている面は、クッション性に優れ、体重に合わせてゆっくりと沈む低反発仕様。それでいて弾力もあるようだ。いたずらに跳ねるミーア・クシロンのお尻を勢いよく弾ませている。
あの面は、胴体にあたる部分。B子さんのキューブに至っては、その比率故にほぼ胸部が一面を占めているのだ。
耐久テストをするかの如く、キューブの上で何度も跳ねる女幹部は大変ご満悦な様子だ。
それもそうだろう、だってあの椅子は『バランスボール』の弾力性を持ち、『ビーズクッション』の触り心地で、人肌と同じ温かさで思わず『オギャり』たくなる至高の──
「ちょっと!? そんなに覗き込んだら見つかっちゃうよ!」
「あら? どうやら逃げていた生徒が……ッ!? あなた達、一体どこで何をしてましたの!?」
あ。廊下からこっそりと覗いていたのに、まことが大声を上げたせいで見つかってしまった。
「君のせいだよ!? あんな食い入る様に見てるからでしょ!」
女幹部が、僕らへ険しい表情を向けてくる。
目元は見えないが、バイザーに表示されているモノアイが真っ赤に染まり、怒りの強さを表しているのだ。何故か不機嫌な彼女が、僕らへと迫って来ている!
よし、ちょうど脳内でレイワさんの懐柔が済んだ。
これで大丈夫。慌てなくても、大丈夫……だ。
既にリングリットが、サイの怪人を前にして敗戦濃厚ではあるが──
う、ホントに大丈夫なのかこの状況!?
教室の床には、斬り刻まれた『光輪』の残骸が散らばっている。前回、萬宮寿イグナ扮する
おそらく、表面がやたらと鋭いサイ怪人の角や、ミーア・クシロンが手にしている『
頼みの必殺技が打ち止めとなり進退窮まったヒーロー。そして、そんな彼と同様に僕らも未曾有の窮地に追い込まれている──
「なぜ、二人とも衣服が乱れていますの? どうして手を繋いでいますの? 詳しく、説明して下さいな」
【今わたくしは、冷静さを欠こうとしております】
やめろレイワさん!? そんな冗談かましてる暇があるなら、打開策になりそうな原作知識を思い出してくれ!
「ボ、ボクらが何してようと、あんたには関係ないでしょ!」
「お黙りなさいっ‼︎」
「ひぃ!?」
まことが抗議するも、女幹部が放つ鬼気迫る雰囲気に呑まれ竦み上がってしまった。その気持ちは良く分かるよ、僕だって滅茶苦茶コワイ……!
されど、ヒーローにも令和の叡智にも期待できない。この窮地は自力で乗り切るしかないんだ!
目の前の女幹部は、少しポンコツな所もあるが根は真面目で聡明な人だ。だからこそ、神聖な学び舎で僕らが如何わしい事をしていたと勘違いし、激怒しているのだろう。誠意を尽くして弁明すれば、きっと誤解も解ける筈だっ!
そもそも、何もやましい事はない。僕とまことの服が乱れているのは、狭いロッカーに閉じ込められていた影響だ。
まことが手を繋いできたのも、迂闊に教室を覗き込んだ僕を引き戻す為だったのだろう。今もお互いに強く握り合っている理由は恐怖からだ。何に怯えているのかは、敢えて語らないが……
「ロッカー? 何故その様な所に……いえ、鍵が壊れるなどの理由で扉が開きませんでしたのね。そういう事なら──え、壊れていない? では、なぜ! そんなに服が乱れるまで! 狭いロッカーの中に! 二人っきりで! くっついていましたのっ!?」
怖い怖い! ワッカが居たせいで、ロッカーから出られなかったのだと叫びたい!
けれど、まことが喋らない以上、僕からヒーローの正体をバラすのは筋違いだ。だからと言って、適当な言い訳で誤魔化すのも気が引けるし……!
もう万事休すだ! 助けて、レイワさんっ!!
【Sの人って、攻められると弱いよね】
【サイ怪人は人間をサイコロみたいにする特殊能力】
それは知ってる! 僕が知りたいのは能力の発動条件で──
「うわぁぁ!? う、動けねー!」
「あら、リングリットを倒しましたのね『ライノーα』」
「うん。動きの遅い『モチモチ・リング』を利用してみた」
リングリットが、自身の必殺技『グリットライム・ドーナッツ』にやられている……。
A子が言うように粘着性のあるトリモチの様なリングは、動きが遅い。その用途は、わざと敵に攻撃させる事を目的としたトラップなのだから仕方ない。
既に手の内がバレているというのに、なんの工夫もなく技を放てば
でも、ミーア・クシロンの気を引いてくれた事にだけは感謝するよ。ありがとう!
「おーほっほっほ! 先程の続きは、連れ帰ったあとでじっくりと聞かせてもらいますわ! では、ライノーα。そこの二人も、サイコロにしておしまいなさいっ! それで完全勝利ですわ‼︎」
「わかった。いくよ……『
【角で突かれるとサイコロになっちゃう】
まずい!? このまま突進されたら二人揃って串刺しだ! せめて、まことだけでも……!
「わっ!?」
サイ怪人の角。表面は日本刀の様に鋭い。その角が、僕の身体へと深く食い込んだ。
しかし、出血も怪我の痛みも全くない。直前でレイワさんが教えてくれた様に、これは猫怪人や熊怪人の爪と同じく──肉体を変質させる前段階の攻撃なのだ。
角を抜かれると同時に、僕の身体からも力が抜け、床へと崩れ落ちる。膝をつき正座の形となり、上半身も支えられず自動的に蹲る体勢となる。
しかし、何故か顔だけが正面を向いた状態で固定された。手脚は動かせないが、口だけは動かせるという奇妙な感覚。この事実によって、僕の肉体もクラスメイト同様に『キューブ』と化してしまったのだと思い知らされる。
「よくも……っ! 許さないぞ、サイ怪人‼︎」
僕が体当たりをした事で、まことだけはキューブ化を免れた。
現在、果敢にも彼女がサイ怪人と闘ってくれている。こと格闘技術に関して、彼女はリングリットの数倍は強い。並ならぬ膂力を持つ怪人相手に格闘戦を成立させているのだから、それだけでも彼女の技量の高さが窺い知れる。
まことはサイ怪人の武器である鋭い角を、躱したり、時には両手で挟み込む事で特殊攻撃に対処しているのだ。
あれは『無刀取り』と呼ばれる技術。本来は刀を持った相手に、素手で挑む際に用いる技だ。
サイ怪人は鼻先の刀で攻撃する為、必然的に『振りかぶり』や『突進』といった動きの読みやすい予備動作が生じる。僕ですら咄嗟に反応できたのだから、平静を取り戻した今のまことならば容易に見切れる攻撃だ。
そして、何よりの幸運はA子が『くすぐり』攻撃を使えない事だ。
普段のA子ならばとっくに痺れを切らし、まこと相手の特効攻撃へ移っている頃合いだろう。しかし、サイ怪人の指は太くゴツゴツとしており繊細な動きには向いていないのだ。
だからこそ、一般人の格闘少女が悪の組織の怪人を追い込めている!
雪だるまヒーローの百倍頼もしい存在だ!
「厳しそうですわね、ライノーα」
「もんだい、ないっ! ミーアさまは、そこの四角い小学生で遊んでて、いい!」
誰が小学生だ! サイ怪人になって身長が2メートル位あるからって、僕を馬鹿にするな!
普段と視点が違うせいで、苦戦してるじゃないか。サイ怪人のボディが鎧みたいに硬いおかげで何とか凌げてるけど、A子本来の『速さ』を活かした戦闘が全くできてないぞ。
【ロリにはロリ】【ショタにはショタ】
そんな格言は無い。
けれどレイワさんは多分、適材適所と言いたいのだろう。言葉の意味は判らないが、ニュアンスだけは伝わった。A子にはA子に向いた戦い方があるように、僕にも僕にしかできない役割があるんだ。
キューブにされた僕にできる事。
それは、まことが怪人と一対一で闘える様にミーア・クシロンの気を引く事だ。
彼女は再びB子さんへと座り直し、僕の頭の上に脚を乗せているのだから!
そう。僕はB子さんキューブの対面へと置かれてしまったのだ。逆さまに置かれているB子さんが、時折クッション部分を撫でられて艶かしい声を上げている。
「うふふ。脚置きの気分はいかが? 念のため言っておきますが……あなたが、どうしてもと頼むから、
その言い回しだと、僕が懇願して頭の上に脚を置かせている変態みたいじゃないか。
これは折衷案なんだ!
キューブにされた直後、怒りの収まらないミーア様が僕を持ち上げてこう言ったんだ「さて、お仕置きとして……向こうで転がっているお友達の男子とくっつけてあげますわ。うふふ、もちろん顔面同士ですわよ?」と。
そんなレイワさん大歓喜イベントを回避する為、椅子でも脚置きでも何でもするから
だから、まこと! 僕が全力でミーア様の気を引いておくから、その隙にサイ怪人を撃退するんだっ……イタっ!?
「あ、大丈夫でして!? ブーツの先端が尖っている事を忘れていましたわ! やっぱり、脚置きは危険でしてよ」
頭に少しだけ痛みを感じたものの大した事はない。
ミーア様が咄嗟に脚を上げた事で、スカートの中身が見えてしまった事の方が大問題だ。
【中は水着だからセーフ】
良かったセーフだ。一瞬だけ僕の視線が釘付けとなってしまった場面を、B子さんに見られてしまった気がしないでもないが……セーフだ。
B子さんは【糸目キャラ】な上に、今は上下逆さまなので判別がとても難しいのだ。けれど、だからこそ観測されていないという希望が生まれる。
今の僕は、スカートの中を覗いた変態であると同時に、何も目にしていない純情な【ショタ】でもあるのだ。相反する二つの事実は、B子さんが口を噤む限り決して世に出る事は──
「ミーアちゃん、スカートのなか覗かれちゃったみたいよ〜」
「えッ!?」
わー! 誤解なんだ。不可抗力なんだ。ほらこの通り、僕は身動きできないのだし!
「大丈夫よ〜、弟くん。男の子はそういうモノだって、お姉ちゃん知ってるから〜」
お姉ちゃん……そこまで理解があるのなら、黙っていて欲しかった。
壁際のクラスメイト30名からの視線が痛い。そんな針の筵に座らされた僕を、B子さんが「よしよし」と言葉で慰めてくれている。つらい。
「ッ! また貴女は、そうやって甘やかすんですのね! いいですわ、どこまで余裕でいられるか試して差し上げますわ」
僕の身体が再びミーア様に持ち上げられ、B子さんの上へと乗せられてしまった。
どうしてこうなった? 状況が全く理解できない!
僕の胴体面と、B子さんの胴体面が密着する──ああ、一つだけ理解できた。
これこそが、令和に存在するアイテム『人間をダメにするクッション』なのだ。【ちがうよ】
「うふふ。まだ余裕そうですわね? でしたら──」
そう言い放ち、僕の上へと座るミーア様。彼女と僕の体重が合わさり、B子さんのクッションがより深く沈み込む。
なんなんだコレは……!
僕の下では、B子さんが重さに堪えるためなのか、どこか艶っぽい声を上げている。
僕の上では、ミーア様が自分で発案したにも関わらず、恥ずかしそうにモジモジと動いている。居た堪れなくなるのなら、最初からやらないでくれ!
そもそも、どうして悪の組織サイドにいるB子さんがキューブにされているんだ?
一周回って冷静になった頭で少し思い返してみる。
最初に教室を覗いた時、ミーア様は『お仕置き』と言っていた。つまり、B子さんが何か粗相をしたという事だ。しかし、それが萬宮寿しいなへの粗相か、ミーア・クシロンへの粗相なのかが判然としない。しいなさんは正体がバレかねない発言を平気でするからなぁ……一体、B子さんは何の罰を受けているんだ?
【ショタを甘やかした罰】
それって、つまり。僕を甘やかした事で、しいなさんの逆鱗に触れてB子さんがこんな目に遭っているってコトなのか!?
確かにブートキャンプから解放された連休最終日は、しいなさんが見ている前でこれでもかって位に甘やかされた。それに、さっきのスカート覗きの件でも彼女の目の前で甘やかされたんだ。
確かに辻褄が合う……!
そうか。しいなさんは、嫉妬したんだ。
普段からB子さんは、しいなさんを妹の様に可愛がっている。そのポジションを、弟扱いされている僕に奪われたと勘違いしているんだ。それでB子さんに構って欲しい感情が裏返って、こんな仕打ちを……!
考えてみれば当然の反応だ。僕だって、妹の理奈が降って湧いた見知らぬ男を『お兄ぃ』などと呼んでいようものなら腑が煮え繰り返る事だろう。
これは反省しないといけない。ついB子さんの包容力に身を任せてしまったけれど、しいなさんの心情を全く考えていなかった。【それは本当にそう】
「あ……ダメ! 弟くんと、くっついちゃう! 合体しちゃう!
「こんな事で合精霊にはなりませんわよ。まったく、貴女相手だと何をやってもお仕置きになりませんわね」
僕の上でミーア様が小刻みに跳ねて、重みを加えてくる。それに耐えかねてB子さんが色々と口走っているのだけど……コンフュージン? なんの事だろう、初めて聞く単語だ。
【怪人のこと】【動物と発明品と精霊が──】
ようやく原作知識を思い出したレイワさん。
どうやら僕らが怪人と呼んでいたモノは、正式には『合精霊』という存在のようだ。
動物を素体とし、特殊能力の元となる発明品を組み込み、それを制御する為に精霊の魂を宿す。
そうする事で、動物の膂力を維持したまま人型へと変身し、強力なものへと昇華した発明品の特殊効果を自在に操れる存在となる。
そして驚いた事にA子とB子さんは、精霊の末裔らしい。彼女らの魂を抜き出し、動物の肉体へ宿したものが怪人の正体だ。
他にも、しいなさんが魂を掴める巫女だとか。その能力を利用して屋敷へ帰還しているなどの情報も得られたが──今の問題は別にある。
ポンコツ気味なお嬢様と違って、B子さんは仕事に徹すればメイドとして完璧に振る舞えるヒトだ。そんな彼女が機密である合精霊というワードを漏らすなんて、本来ならばあり得ないのだ。
おっとりとした口調のせいで緊張感が伝わらないが、この『お仕置き』は想像以上にB子さんを混乱させているのだろう。
冷静に考えれば、二人の人間に乗られて胸部を圧迫されている状態なんだ。早く解放してあげないと、呼吸するのもツラいかもしれない!
そんな訳でミーア様、一刻も早く僕の上から──と思った矢先に、彼女の方から降りてくれた。
「ライノーα、敗けてしまいましたの!?」
どうやら僕は無事に役割を果たせたようだ。
「ごめんミーアさま。モチモチを逆に利用されちゃった……」
「そんなっ……! 私が観ていない間に一体何がありましたの!?」
「ボクの友達にカウンターが得意な子がいるの。あの子の『奥義』を真似して、突進してくるチカラの流れをモチモチの方へ逸らしたんだ!」
右手の人差し指を立て、まことが自慢をする。
彼女は指一本で、サイ怪人の突進方向を変え、リングリット雪だるまへと突っ込ませたらしい。未だに粘着力が残るトリモチは、サイ怪人を捕らえて逃さない。
そのサイ怪人──A子はと言えば、思わぬ形で『友達』だと言われた為に珍しく赤面している。
先程のカウンターが得意な子とはA子の事。そして、彼女の奥義は僕もお世話になった『胡蝶の舞』だ。もしかしたら、顔が赤いのは自分の奥義で敗れたせいかもしれないな。
まあ、まことが使った技は正確には『くすぐり奥義』などではなく、合気道に通ずる術理を基とした高等技術。
羽吹流奥義『
「さあ、覚悟しろオメイラガの変態女!」
「キーッ! いいですわ、私が直々に叩きのめして差し上げましてよ!」
もうこの展開は、まことが主人公と言えるだろう。
リングリットはポカーンと口を開けて、少女同士の激しい闘いを見守っている。
そのヒーローの必殺技を破ったと思われる『七支刀』──剣の左右に3本づつ枝が伸びるように小さな刀が付いている特殊な構造をした直剣。ミーア・クシロンが扱うその武器は、だいぶ古風な物だ。もはや現代に於いては、武器としてではなく儀式の場で用いるのみの祭具だろう。
しかし、そんな武器でミーア・クシロンは羽吹流を前にして互角に渡り合っている。
彼女が変則的な武器を使うのにも理由がある。
オーソドックスな武器。例えば刀や槍などは、幼少期のまことに攻略されてしまったそうだ。
古来より萬宮寿流は、羽吹流に武器を攻略されては手を変え品を変え研鑽を積んでいった流派。しいなさんは、幼い頃の苦い思い出を糧にして様々な武器の心得を身に付けてきたのだ。
果たして、七支刀でどのような闘いを見せてくれるのだろうか。おおっ! 柄を捻って小さな支刀を回転させる事で、まことの接近を許さず上手く立ち回っている。この闘いは目を離せないぞ!
「ひゃん! 弟くん、興奮しないで〜。んっ、わたしの胸にまで心臓の音が伝わって、あっ。変な気分に、なっちゃう〜」
キューブにされて動けない僕らだけど、心臓の鼓動だけは変わらないんだ。
けれどこんな激しい闘いを目にして、興奮するなと言われても困る!
僕の方にも、B子さんの心臓が激しく脈を打ってる音が伝わって来るのだから、お互い様という事で勘弁して欲しい。
「ダメ……お姉ちゃんと弟なんだから! こんな関係、ダメよぉ。理珠に怒られちゃうわ〜」
ああ、もう! ただでさえ、顔の角度が固定されてるから観戦し辛いのに!
B子さんのせいで集中できない……。
さっきから彼女が言っている事も支離滅裂だ。姉さんに怒られる心配よりも、しいなさんに嫉妬されないかを気にするべきだと思う。【それは本当にそう】
どうやらレイワさんも嫉妬してるみたいだ。教室へ入る前、『おねショタ』をするなら自分としろと言っていたからな。こんな立方体同士で『おねショタ』も何も無いと思うけれど。【形状変化おねショタとか叡智すぎる】
そんな変なカテゴリーが本当にあるのか? 相変わらず凄いな令和。
「そんな変な武器を使うなんて、まるでボクのライバルみたい、だ!」
「……ふふっ、いい趣味のライバルがいるんですの、ね‼︎」
「そうだよ。それに、昔っから陰で努力してる
「ッ〜〜!?」
赤面して固まってしまったミーア様が、呆気なく懐に潜りこまれ強烈な一撃を食らう。リングリットのスーツと違い、ミーア・クシロンのコスチュームは水着。防御力など皆無なのだろう。
女幹部は武器を取りこぼし、ここに勝敗は決した。
ああ……B子さんとレイワさんに気を取られて、殆ど観戦できなかった。
とは言え、決め手となったポイントだけは判る。意図せずまことは、相手の羞恥心を刺激して大きな隙を生み出したのだ。
まことが溢した真っ直ぐな思いは、事情を知っている僕まで恥ずかしくなってしまう程だった。
【さっきのは、もはや告白】【仲が悪いのは百合だから!】
正に正論だ。
きっとしいなさんは、家に帰ったあとベットに顔を埋めて脚をバタバタさせるのだろう。
まことに至っては、クラスメイトが聞いている中で恥ずかしい事を言ってしまったと気付き、現在すでに居た堪れない状態になっているのだから。今日だけで何度、彼女が赤面した姿を目にしたか分からない。
「て、撤退ですわ。ライノーα!」
「むー。しかたない」
武器を無くしたミーア様が、覚束ない足取りで立ち上がりライノーαへと帰還を促す。
A子も形勢不利を悟ったのか、むくれながらも自爆を選択した。例によって、教室に閃光が迸る。この現象こそが、合精霊の合体解除だ。
魂となったA子は、いわば高純度のエネルギー体。その状態のA子を掴み、しいなさんが撤退する。以前と同様に窓側の壁を貫いて、萬宮寿邸へと帰ったのだろう。学校と萬宮寿邸は直線道路で結ばれている。3階に位置するこの教室から飛び出れば、もう遮るものは何もない。
今回、エネルギー体が消し去った障害物は教室の壁と──リングリットの『グリットライム・ドーナッツ』だけだ。
ようやく雪だるま状態から解放されたヒーローであるが、流石にいつもの高笑いは上げられず、恥ずかしそうにそそくさと教室から去って行くだけだった。
そして怪人の特殊能力が解除され、ようやく僕らも元の姿に戻ったのだが──
「怖かったね〜、でも泣かないで偉かったわぁ! うふふ、がんばった弟くんをお姉ちゃんが褒めてあげる〜。いい子、いい子。よしよ〜し」
キューブ化が解除された30名のクラスメイト。
その辺の床に転がっていたE。
いつの間にか羞恥心が収まって、冷静になっているまこと。
つぶらな瞳で、こちらを見ている大人しいサイ。
B子さんの胸元へ強く抱き寄せられ、抜け出せなくなった僕に複数の視線が突き刺ささる。
やめてくれ! そんな生暖かい目で見守らないでくれ‼︎ 不可抗力なんだ!
光速真芯リングリットX
第6話「まこと目撃! ワッカとJKのショータイム」
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── 令和の掲示版③
【シグマ総帥】リングリットXを語るスレ58【復活ッッ】より一部抜粋
29:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 19:44:20 ID:dbvw9yNrB
6話目 最初から最後までギッチギチ展開だったw
30:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 19:45:46 ID:JAnsPh/+S
あの二人がロッカーに入るって展開は原作通りなんだが
高校生になってるぶんギチギチ具合が増してたな
31:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 19:46:38 ID:Qw/A8vvuD
制作陣にギチギチマニアいるだろ絶対w
32:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 19:47:27 ID:Q5esOfjx4
なんかDが役得すぎじゃね?
雪山だって、原作ならワッカとしいなが温め合う展開だったのに
33:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 19:48:51 ID:/mDvTcthi
まあワッカは、今回JKとギッチギチしたから許してやれw
34:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 19:50:00 ID:csR+DDcfM
てかリングリットの変身シーン、CG使い過ぎだろ
1話目からずっとJKの変形シーンをカットしてたのに急にどうした?
35:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 19:51:45 ID:e4I+AdBJ+
やっぱりCG製作が間に合ってなかったんだな
6話目でようやく変身バンクが完成したって所か
36:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 19:52:41 ID:x1K7GLyME
変身バンクw
毎回あの尺使ってたら、本編がペラッペラになるだろw
37:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 19:53:37 ID:Oy5/YR3tm
なあ、ドラマだとJKって裏返る設定だよな?
じゃあさ、ヒーロースーツの内側って生身の女子高生なんじゃね?
38:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 19:55:45 ID:dbvw9yNrB
いやロボットだから、生身ではないだろ
39:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 19:56:59 ID:TTRhfJi+v
普段の姿は、アンテナみたいなカチューシャ以外、全くロボ要素ないけどなw
40:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 19:58:08 ID:Oy5/YR3tm
>>38 >>39いま公式サイト見直したら、JKの項目に追記があったぞ!
「機体の表面は、ハカセの趣味で限りなく人間に近い質感を再現している」らしい‼︎
41:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:00:33 ID:GFvK8TIxe
さすが火鬼崎ハカセ! わかってらっしゃるw
42:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:02:35 ID:JPbCcOwfL
結論。ワッカは毎回、女子高生の素肌と密着してる変態ヒーローだった
こいつこそ、ギッチギチ チャンピオンだろw
43:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:04:44 ID:A7qXnM4Qt
原作だと、この2人も「おねショタ」なのにな
小学生男子と女子高生型ロボットっていう、フェチな組み合わせの
44:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:05:35 ID:gBYJf8Qjk
おねショタと言えば、いきなりDとB子がフラグ立てすぎだろw
Dの回想でサラっと流されたけど、ブートキャンプで何があったんだよ
45:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:07:45 ID:5gixfxIqp
そういや萬宮寿ブートキャンプって、
原作中盤で出てくる「しいなの婚約者決定戦」と似た展開だったな
46:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:09:23 ID:8840e3qCo
婚約者決定戦(嘘)
萬宮寿家に婿入りできるって餌で若い男を集めて、身体能力をテスト
最後まで残った屈強な連中を洗脳→ザコ戦闘員化
47:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:10:44 ID:J0zyJ/vY+
シグマ総帥「儂の孫を、お前らの様な連中と婚約させる訳ないゾイ!」
48:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:11:43 ID:BjfZG0VHX
ヒデェw さすが悪の総帥。人の心がないw
49:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:13:51 ID:G5AifmlrV
ドラマだと、シグマとイグナの登場順とか立ち位置が色々と違ってるからな
流れ的に5話の最後で総帥が復活したんだし、戦闘員の補充をしたってトコだろ
50:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:15:27 ID:0J/Hg7oN0
イグナと言えば、今回のミーアはちゃんと若くて良かったw
51:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:17:22 ID:Kq6HPUSox
ヤメロ! 熟女ありなし問題で、前スレの殆どが消費されたのを忘れたのか!?
52:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:19:21 ID:foD/BGHf1
イグナ関連の話題は>> 1にリンク貼ってある
【婆婆ーン】萬宮寿イグナを語るスレッド【と登場!】でやってくれ
53:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:21:38 ID:nPW0HH8bM
このスレもまた随分と派生したものだw
54:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:22:49 ID:Lup/9VYUF
十数年前にスレが細分化されすぎて、じわじわと人口減少
それで三年前位に新規総合スレッドとして立ったのが、このスレだというのに
55:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:24:51 ID:2jDgWPmZS
まあ昔と違って、公式から純度の高い燃料が投下されてるからスレも廃れないだろw
56:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:26:56 ID:obdUiJYVx
イグナの件は置いといて、ブートキャンプに参加してたあの戦闘員の正体って伏線?
57:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:29:17 ID:H4W12YkH0
まことが瞬殺したアイツか
Dのモノローグで名前が出そうな場面まで行ったのに、当身されて終わったなw
58:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:30:45 ID:3F+anZlbP
その件は、さっそく考察スレで議論されてるぞ
気絶する瞬間のセリフを音声解析したニキによると「アル……」って言ってたらしい
んで「アルタイル」って名乗ろうとした説が生まれて
日本語に直すと「彦星」だから、アイツの正体は「芦高 ヒコボシ」って説がある
59:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:31:41 ID:irAmu1I3t
考察スレ早すぎだろw
仮にヒコボシがザコ戦闘員になってたらヒーローサイドの戦力が減るんじゃね?
60:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:33:51 ID:u8jw4A/E/
原作だと、まことを狙ってるワッカのライバルキャラ兼、3人目のヒーローだからな
61:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:35:34 ID:UDxqbsSjq
ヒコボシの登場はアニメ中盤のテコ入れタイミングだし、流石に違うだろ
62:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:37:06 ID:VbaK8YfKm
ブートキャンプの回想シーンも黒いモヤが掛かってて良く解らんしな
63:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:38:17 ID:rrGBYmAtB
あの演出は、Dがぼんやりとしか覚えてないって表現だな
B子だけクリアに映ってるのワロタ
64:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:39:12 ID:hHBdE0urh
洗脳されかけ状態から、B子のハグ→頭なでなで→ハグ……の無限ループだぞ?
そりゃ無意識に「お姉ちゃん」呼びするわw
65:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:41:17 ID:rY3g2ydlS
しいな様も怒るわなw
66:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:42:51 ID:/xWsY6CqU
ぐぬぬー、よくもわたくしのお姉ちゃんを奪いましたわね! このショタ!
67:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:44:53 ID:VTIbI+jZG
違うw それはDの妄想した しいな様だろw
なんでその勘違いをレイワさんは泳がせてんだよ
68:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:47:11 ID:gBEH9XLSt
↑ 君のような活きのいい牡蠣はフライだよ
69:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:48:55 ID:E1pW5SG0t
そういやB子の本名も、まことのセリフでさらっと登場したよな
解析ニキの読み通り「美衣」だった
だから出席簿に照らし合わせると苗字は「山丹」っぽい
70:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:50:49 ID:mARqut+tZ
さんたん みい?
71:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:52:23 ID:l2dsD0Vph
解析ニキの希望は「ひめゆり みい」らしいw
前にA子の読み方を的中させてるから、今回も合ってるかもなw
72:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:53:31 ID:6WSPBKXF1
山丹って、ヒメユリって読むの?
73:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:54:39 ID:AcOdKYvNj
普通は「姫百合」って書くけど、漢名が「山丹」だから
難読漢字問題なんかで、ヒメユリって読ませてるのをたまに見る
74:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:57:08 ID:6WSPBKXF1
へー
75:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 20:59:07 ID:CPaE5YhMV
まあA子の時みたいに、いつの間にか公式サイトに追記されんじゃね?
百合って割には、B子はショタもいけるっぽいけど
76:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:00:09 ID:/7UTf5GhS
その百合じゃねーw
77:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:02:28 ID:QJx5lhxkt
今回の百合は、まこしい一択だろ
78:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:04:11 ID:+mLRV2MAy
あの告白シーンは熱かったが、A子も「友達」って言われて照れてた事を忘れるな?
79:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:06:24 ID:NNjUr/1eL
何気にDより、まことの方が沢山フラグ立ててるよなw
80:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:08:00 ID:/xWsY6CqU
そりゃ主人公より主人公してるからなw
ワッカとDのダブル主人公と見せかけて、最終的にまことが百合ハーレム作るんじゃね?
81:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:09:52 ID:H4W12YkH0
まことちゃんって、週一でD君とカラオケデートしてるしノンケだと思う
82:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:10:50 ID:MQbB1YYOF
Dは原作同様、まことの誘いは断れない性格なんだろ
デートかどうかも怪しいぞ? ワッカとEも一緒かもしれん
83:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:11:56 ID:ehdjMWQhp
放課後に男子3人引き連れて遊んでたら、他の女子から妬まれそうだなw
84:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:13:48 ID:KwsUIG2T0
なるほど、だから女子に見えるDを選んでカラオケに行ってるって線もあるな
85:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:15:08 ID:oOl01JpxD
あるあr…ねーよw
単純に音楽の趣味が合うとかだろ。少なくとも、Dはまことを恋愛対象として全く見てないな
86:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:17:30 ID:yeJNfX9fx
原作のDは、割とまことに惚れてるっぽい描写あるのにな
ドラマだと、しいなとB子にしか反応してないぞアイツ。やはり胸部装甲が…
87:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:19:53 ID:YtRGiCdYx
Dにとって、まことは「推し」みたいなカンジなんじゃね?
まことが恋愛対象として見られる為には、まず胸部装甲の厚みが…
88:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:22:18 ID:aQUwOIY52
厚みもなにも、そもそも実装されとらんだろw
89:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:24:01 ID:lvQlyBq6u
JKも胸部装甲の厚みは中々だけどな。二つの意味で
90:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:26:25 ID:AnAppx3EA
まあリングリット唯一の取り柄「頑丈さ」は、JKのお陰だからな
91:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:27:31 ID:PvDCzONn1
そういやJKってなんで白ギャルなん?
あの時代って黒ギャルばっかりな印象だけど
92:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:29:53 ID:wr/kZ40L6
↑地味に黒ギャルブームが来る前の時代なんよ
作中で明言されてないけど、90年代前半が舞台っぽい描写がチラホラあるしな
93:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:31:23 ID:xsm0R4yNe
初代ブロリーの映画が公開された93年って説が濃厚だよな
94:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:33:35 ID:iEIzwbj46
まあ、きっちり時代が設定されてる訳じゃなさそうだが
JKが白ギャルなのは、完全にハカセの趣味だろうな
95:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:35:05 ID:ibO4ysJnH
「桃髪天使 女子高生アンドロイド型 変身スーツ」だからなw
ギャルからサンプリングして言語学習させたから、あの性格になったって設定だし
96:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:37:07 ID:Ou3TKzzml
天使要素が必殺技のリングしかないの草
97:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:38:09 ID:1OfF61BvK
その必殺技も、今回で完全に攻略されてっけどなw
98:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:40:30 ID:sH3f4EZ3p
クロスリット・ハイロゥって最大数36個も出せるのに
なんで今回負けたんだ?
99:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:41:57 ID:FgoAujbPp
ワッカの戦闘シーンがほぼカットされてるから想像だけど、
ミーアとライノーαの二人で斬りまくったんじゃね?
100:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:44:07 ID:7GG3v/ziP
一度に襲ってくるリングの数は、前後左右と頭上を合わせて5個だろ?
互いに背中をカバーすれば4個にまで減らせる。あとは同時に四方のリングを壊せばいいだけだ
101:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:45:13 ID:7INIJ2Gfe
刃牙理論ヤメロw
102:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:46:14 ID:a74vzbV3b
まあ実際、そんなカンジで攻略してんだろうけどな
萬宮寿流スゴすぎる
103:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:47:49 ID:FvLnbTC8e
羽吹流もバケモンだぞ
104:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:49:51 ID:oMH+QbTGS
登場人物のほとんどが、主人公よりバトルセンス高いのなんなん?
105:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:52:18 ID:liTOV8puj
Dですら、生身のワッカより普通に強いからなw
リングリットは頑丈さと、おじいちゃんのサポートが売りだからw
106:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:54:36 ID:oAkYKemwg
ちゃんと「特殊攻撃無効」って特性もあるから(小声)
107:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:56:47 ID:0sh154lxi
フェチ好きからしたら、その特性はむしろマイナス点なんだわ
それで言えば、今回Dはきちんとキューブ化して偉かったな
どうせなら3話で「おもらし」すればもっと偉かったんだが…
108:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:58:20 ID:n+5eIRmPp
↑おもらしニキだろw
109:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 21:59:58 ID:nqUELCpmo
キューブ化も中々にフェチみが高い特殊シチュだよな
顔の面だけ引き伸ばされるって点が、無様さマシマシで愉悦ポイント高いわ
110:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:02:16 ID:koHrnCMfZ
B子はクッション部分を触られて悶えてたけど、感覚はどーなってんだろ?
111:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:03:33 ID:Q4vSmNiK/
心臓の鼓動が聞こえるくらいだし、普通に感覚あるんじゃね?
キューブ化して積まれてた生徒も下段の奴は「重い〜」って言ってたし
112:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:05:52 ID:mkZMPJ7Ot
Eのキューブだけ乱雑に転がってたのA子の仕業だろw
113:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:08:14 ID:f1TPmu3kx
DキューブとEキューブが接触寸前までいった謎のサービスシーンw
114:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:10:39 ID:lejOxyP8z
あの時から、Dが「ミーア様」って呼んでるの地味にウケるw
115:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:12:32 ID:tysxDuGK6
「椅子でも脚置きでも何でもするから、それだけは勘弁して下さいミーアさま‼︎」
このセリフ聞いたミーア様が、ゾクゾクってしてるのもポイント
きっと、しいな様の新しい扉が開いてしまった
116:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:14:59 ID:2MJYzFNHM
ドラマ版だと、しいな様のSっ気が控えめだったからな
ここから加速してくれると嬉しい
117:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:16:14 ID:pvT/ra9Ai
原作の小学生 しいなは、割とワガママ娘だったけど
ドラマだと高校生に成長した分、取り繕うのが上手くなったんだろう
118:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:18:27 ID:G6a0GmSsS
原作後半の、精神的に成長した しいなが一番かわいい
119:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:20:43 ID:avH+qJSmo
>>118ハァ? しいなは、呪詛返しくらってる状態が一番だろ?
120:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:22:52 ID:rOdjIwmqC
モメるなw
呪詛返しと言えば、今回はどうなるんだろ?
121:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:25:07 ID:Q0CyZqIYX
とりあえず初日はキューブ化で
日にちが進む事に緩和してくカンジ?
122:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:26:26 ID:WUvU/uC07
キューブの緩和ってなんだよw
マ◯クラみたいな角張った人間?
123:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:28:26 ID:Ht+kPi+YY
流石にそんな状態じゃ登校できんだろw
124:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:29:39 ID:IG+1vBnaS
でも猫化と石化の時は無理して登校してたからな
精神犬化の時は、月曜日だけ休んだみたいだけど
125:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:31:16 ID:cr3H+g96n
犬化で休んだ理由。
DがプレゼントしたCDを聴こうとして、自己催眠音声を停止したって説があるよな
126:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:32:32 ID:d3gU+opkQ
だとしたらアホの子すぎるw
127:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:33:46 ID:tzViLEv+C
しいな推しとしては、むしろ納得の理由w
普段は色々と卒なくこなすくせに、たまにポンコツな所が推せるw
128:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:34:58 ID:M4ZkRkz0M
まあ、どんな呪詛返しになってもメイドの二人がフォローするだろ
129:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:37:11 ID:3iU70woCp
今回のオチで、B子がまたDとイチャイチャしてたけど
しいな様的には許せるんだろうか?
130:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:39:31 ID:KtZfsTIZR
あの場面を直で見てないから、大丈夫なんじゃね?
それより、最後のシーンは まことの表情の方がヤベーだろw
131:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:40:55 ID:JSGFmCJpQ
自分が激戦を繰り広げてた中、幼馴染があんなギチギチプレイしてたら無の表情にもなるわw
132:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:41:34 ID:LXWc6+h0x
<●> <●> 浮気現場発見!
133:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:43:20 ID:Cp3qxhjdH
浮気じゃないだろw
134:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:44:28 ID:Ze71xIM4c
作中で「異性」とお付き合いしてる人物が一人もおらんからな
135:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:45:35 ID:yIr4zRP9n
↑誤解が生まれる余地を残すなw
136:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:46:42 ID:YtRGiCdYx
おいおい。まことがDから恋愛対象として見られるには、胸部装甲が足りないと何度も…
137:無乳論者 2025/5/9 22:48:02 ID:Pa1pA717l
まことに胸部装甲付けたら、それはもう まことじゃないだろうが
138:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:49:13 ID:k48VmZIIK
あーあ、また変なの湧いちゃった
おまいらが胸部装甲の話ばっかするから!
139:偽乳特戦隊 2025/5/9 22:50:33 ID:Fake0p1ll
そうだ。装甲が無いことを気にするなら、パットを詰めればいいのだ
140:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:51:54 ID:LaJy9BjL+
この流れはマズいな
141:無乳論者 2025/5/9 22:53:01 ID: Pa1pA717l
>>139蛇足という言葉を知っているか?
完成された美に、余計なモノを足す行為ほど愚かしい事はないんだよ
142:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:54:14 ID:AKg7Dy8Bf
お、落ち着くペコ! ここは平等に、全キャラ盛れば解決ペコ!
143:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:55:36 ID:SfO1wB87i
盛るペコは黙っとれw
144:偽乳特戦隊 2025/5/9 22:56:44 ID:Fake0p1ll
虚乳こそが最高の美。巨乳なんて実在しないのだよ
B子のアレだって、ビーズクッションが詰まっていると思った方が幸せだろう?
145:ベータニキと呼ばれたもの 2025/5/9 22:58:04 ID:3etaMx416
>>144は? B子の胸が偽モノな訳ないだろーが。夢いっぱい詰め込まれた実乳だ!
偽乳特戦隊は、尖った肩パットを自分の胸にでも詰めて満足しとけw
146:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 22:59:22 ID:ifDrGsZGP
ベ、ベータニキ……だと!?
B子ガチ勢が参加したら収拾付かなくなるぞ!?
147:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/9 23:00:32 ID:FBpowMEIS
始まってしまうのか…第五次聖π戦争が…!
─ 中略 ─
365:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/10 13:08:12 ID:M4ZkRkz0M
知ってるか? あのA子ですら、まことよりもあるんだ
だから「微乳」こそが聖πだったんだよ‼︎
366:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/10 13:28:43 ID:AKg7Dy8Bf
(゚∀゚)o彡゜聖π!聖π!
367:無乳論者 2025/5/10 13:55:36 ID:Pa1pA717l
まだ判らないのか。聖πを求めるからこそ、争いが生まれるのだと…
一度全てを手放し、思考をフラットにするべきだ。
さすれば皆が平坦という名の「美」を理解できると信じている!
368:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/10 14:48:53 ID:k48VmZIIK
(´・д・)??
(゚∀゚)o彡゜聖π!聖π!
─ 中略 ─
671:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/11 19:01:36 ID:ScOz6P5w2
いいか、よく聞けよオマエラ。Dには姉がいるだろ? ああ、実姉の方な
あの子は未だに、厚着姿でしか登場してないんだ。つまりだな…
Dの姉には「隠れ巨乳」「虚乳」「無乳」etc..全ての可能性が残されてるんだ!
672:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/11 19:02:40 ID:qlswrieq5
天才あらわる…!
673:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/11 19:03:57 ID:V0r2j1pwp
なるほど俺達が観測するまで、それら全ての可能性が混在する訳か
まさしく、全ての願望が詰まった聖πと呼べる至高の存在じゃないか!
ふっ…どうやらDの姉が居てくれたおかげで、この戦争を終結する事ができそうだな
674:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/11 19:05:06 ID:bnAU+OIeX
かくして長きに渡る「第五次聖π戦争」が幕を閉じた
しかし、彼らは知らない。この平和が仮初であると言う事を
Dの姉が夏服となった瞬間、再び戦いの火蓋は切って落とされるのだと──
675:拘束マシーン名無しさんX 2025/5/11 19:06:41 ID: SfO1wB87i
いらんナレーションで不安を煽るなw
〜♬(テーマソングをアレンジした予告用BGM)
どうしよ、ワッくん! アタシのお腹が、お腹が……!
「えっ、JKのお腹が膨らんでる!? まさか食べ過ぎか!?」
おバカ! こういう時は、もっと違う反応があるでしょーが!
ちゃんと責任、取ってくんなきゃ……ダメだし。
「わかった! バッテリーが劣化して膨らんだのか。じっちゃんに交換してもらおうぜ!」
次回、光速真芯リングリットX
第7話「パンパン膨れて プークプク」
見てくれないと、ヤなカンジ! みたいな〜?
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#08 絵に描いた焼き餅/膨張回
「ワッカくん! 今日、
「行きまーっす‼︎」
サイ怪人の脅威が去り、落ち着きを取り戻した校舎での一幕。
リングリットの余りにも情けない姿を目にした為か、まことがワッカへの猛特訓を提案したのだ。そうとは気付かず、即座に承諾するワッカ。きっと僕も、強制参加させられるのだろう。
仕方ない……ついさっきB子さんとの【おねショタ】を、まことに目撃されてしまったのだから。
あれ以来、頗る機嫌が悪いようだ。
僕だって遊んでいた訳じゃないのだが、あの光景を見られた以上は弁明の余地がない。
話題を変える為、試しに本来予定していたカラオケの話をしたら鬼の形相で睨まれる始末。もう怖くて迂闊に口を開けない。早くも万策尽きてしまったのだ。
抵抗を諦めた僕は、黙ってまこと達の帰路に徒歩で同行している。ちなみに僕は自転車通学なのだが……自転車は学校へ置いてきた。
【ハッキリ言って、この戦いにはついてこれないからな】
ああ、いつかレイワさんがDBを語れると言っていたのは本当だったのか!
だけど自転車を置いてきた理由は、まことが怖くて何も言えなかったからだ。情けないけど、僕自身がこの戦いに着いて行けない状況なんだよ。まことの機嫌が直るまで、気配を潜めるだけで精一杯だ。
「楽しみだなー、まことちゃんの家‼︎ そっか〜、誰も居ないのかぁ〜。ふへへ」
ワッカは【おうちデート】に誘われたと勘違いしているようだ。呑気そうにしていられて、羨ましい限りだよ全く。
まことの言い回しも悪かったけれど、あれは道場が休みだから門下生が居ないという意味なんだ。そもそも、僕が同行してる時点でデートではないのだが……どうやら彼の目には、手首を握り締められ強制連行されている僕の姿が見えていないらしい。
まあ逆に考えれば、僕の隠形術がそれだけ上手いという事だな。
【背が小さいから見えないだけでは?】
身長158cmは、そこまで小さくない!
しいなさんだって同じ位の身長だ。なぜか周囲の印象では、僕の方が小さく見えるらしいけれど……!
【キャラデザの関係で、実際の身長より低く描かれてない?】
そんな訳あるか!? ジョジョ4部の康一くんじゃあるまいし!
まったく……手首が封じられてなければ、すぐにでもバングルを装備してレイワさんに
レイワさんは放っておけば、僕の思考に合わせて『SNSのbot』みたいに何か適当に呟いてくれる仕様なのだ。擬似的な会話相手くらいにはなってくれるだろう。
【康一くんと由花子も、おねショタ】
違う。確かに見た目だけで言えば、そう分類されそうだけど。あの二人は同級生だ。
そもそも、拉致監禁から始まる『おねショタ』なんて嫌すぎるだろ。そう言えば、令和では由花子のようなキャラを『ヤンデレ』と表現するんだっけ? もしかしたら、彼女は日本史上で最古のヤンデレキャラなのかもしれない……!
【清姫の方が千年くらい古い】
ああ、安珍清姫伝説か。裏切られた女性が、蛇に変身して男を延々と追いかけ回すホラー話。そしてその男は、お寺の鐘の中に逃げ込むも、最後には焼き殺されてしまうんだ。
この話の教訓は、逃げる時は必ず退路を確保しようという──【ちがう】
【成人男性が、不用意にロリへ手を出した末路】
清姫って、そんなに若い設定だったのか。うん……事案だ。
おっと、そうこうしている間に羽吹道場へ着いてしまった。
ありがとう、恐らく
【待って! おねショタは問題ないから!】
問題あるだろ。『ジェンダーレス』という考えが令和の風潮なんだろう?
男女差別は良く無い。
【せ、正論パンチは何らかのハラスメント!】
うーん。ようやく手首も解放された事だし、レイワさんには約束の
よし、辞めよう。
【なん…だと…】
【いつの間に、そんな高度な焦らしプレイを覚えt──
バングルを装備するだけでもレイワさんは黙ってくれる。パブロフの犬。条件反射というやつだ。
「さ、入って。あ、そうだ! ちょっと中で待っててね、君たちの道着を持ってくるから!」
「君たち……? ってお前!? いつから居たんだよ!?」
ずっと居たよ。ワッカは注意力が低すぎるな。
それにしても久々の道場だ。妹の迎えに来ても、中にまでは入ってないからなぁ。壁に掛けられた名前札も何だか懐かしく感じる。
「へぇ、まことちゃんは師範代なのかー。ん? どうした、何もない所を見て……あれ? ここの二箇所だけ色が違ってるな」
僕とA子の札が下がってた場所だ。周囲の壁と日焼け具合が違うので、くっきりと跡が残っている。
僕らが幼い頃は、同世代の門下生も大勢居た。しかし現在残っているのは、まこと一人だけ。彼女の才能に劣等感を抱き、次第にみな道場を去って行ったのだ。
中学生になるまで通っていた僕と、僕よりも少しだけ長く在籍したA子の札だけが、道場の壁へ日焼け跡を残している。
壁に浮かんだ空白は、まるで僕らの関係性を物語っているかのようだ。きっと、まことは今でも僕の事を──
「お待たせー。はい! じゃあコレに着替えて。ほら早く早く!」
「え、なに? どういう状況なんだ!? まことちゃん、待って、脱がさな……キャー!」
可愛い悲鳴をあげるんじゃない。無理やり服を剥かれたワッカを見たせいか、バングルが震えている。レイワさんの守備範囲は広すぎて理解不能だ。
おっと。このままでは僕まで剥かれそうな勢いなので、素早く着替えるとするか。
「うん、着替え終わったね! それじゃ、ワッカくん改め、
「ふぇ……えぇ!? どうして、俺がリングリットだって知って……!?」
「弱いヒーローを、これから猛特訓で鍛えてあげる! 手始めに、君たち同士で闘ってみて」
こうして、地獄の猛特訓が始まった──
金曜日の放課後から、月曜日の早朝まで。
学校が休みの第2土曜日と日曜日。家へ帰る事を許されなかった僕とワッカは、羽吹家で寝食を共にしたのだ。早い話が、羽吹流ブートキャンプである。
ちなみに、まこと以外の羽吹家の人々は留守だった。GWを利用しての海外旅行……もとい海外遠征。世界中の武器格闘術に対して、片っ端から喧嘩を売る旅だそうだ。こんなに羨ましくない海外旅行も他にないだろう。
蛮族の遠征を、まことは学校を理由に辞退。賢明である。他の人々は、昨日と今日の『平日』を自主的に『休日』へと変換し、都合10日に渡る海外生活。道場の経営は上手く行っているようで安心したよ。
月曜日の朝。久しぶりに対面した羽吹
だってソレ、もはや北斗神拳だし。
月曜日。しいなさん型の四角いロボットが登校して来た。
ロボットと言い張っていたけれど、本人だったと思う。
呪詛返しの影響で、レ◯ブロックの人形みたいな外見になってしまったのだろう。
ロボット越しに授業を受けたという形となり、彼女は出席扱いとなったのだ。
令和で言うところの『リモート授業』という概念だろう。
火曜日。ロボットが、少し丸みを帯びた。
レイワさん曰く、3D格闘ゲームの一作目みたいなポリゴンキャラ。
生憎、僕の時代にはまだ存在しないゲームなので、その例えは良く判らなかった。
水曜日。しいなさんが復活した。
レイワさんの原作知識通り、呪詛返しは時間と共に弱まる仕様のようだ。
そして、108時間──4日と12時間経過する事で完全に消滅する。
いくら回復すると言っても、彼女は相応のリスクを背負っているのだ。
なぜ、そこまでして悪の組織として活動を続けるのか?
僕にはまだ、その理由が判らない。
そして再び、金曜日の放課後がやってきた。
今回もまた、六時間目の授業以降しいなさん達が席を外している。そしてA子が教室に残っているのだから、怪人役はB子さんの当番なのだろう。
B子さんは、A子と違って萬宮寿流を学んでいる人だ。彼女は、鞭や弓と言った中距離〜遠距離で戦う武器を得意としている。まあ、成長してからは上手く弓を引けなくなったと零していたので、現在は中距離をメインとした戦闘スタイルなのだろう。
【たわわが邪魔で、アーチャー適性が無くなったんですね】
そう言う事だ。まあどちらにせよ、過去に現れた『猫怪人』と『象怪人』のケースでは武器を扱っていない。怪人の手は武器を扱うには不向きな構造をしている場合が多いのだ。
その為、彼女は得意の戦闘スタイルを活かせずに『特殊能力』頼りで襲撃してくる。だからこそ、その能力を無効化できるリングリットが相手の場合、苦手な近接戦闘を余儀なくされる事となる。
つまり、地獄の猛特訓を潜り抜けた火鬼崎ワッカ──もといリングリットが敗ける要素など微塵も無いと言えるだろう‼︎
「ほら急いで! 今日は3年生が襲われてるみたい。君の
僕は今、まことに手を引かれ渡り廊下を駆けている。帰りのホームルーム中に、向かいの校舎で悲鳴が上がったからだ。
ヒーローでもないのに現地へと急行している僕ら二人。リングリットが登場するまで僕らが時間を稼いで、被害を最小限に抑える──と言うのが、まことが立てた方針だ。そのプランに僕は強制参加させられている。
しかし、当のヒーロー本人へ正確に意図が伝わっているかは謎である。まことは教室を出る際に、ワッカへウインクを送っていたが……それを受けた彼の表情は、鼻の下を伸ばした情けない顔だったのだから。
あれだけの特訓を受けて尚、まことへ恋心を抱くとは恐れ入る。
「おーほっほっほ!」
「あ、例の高笑いが聞こえてくるよ。あの教室から……って、
姉さんは3年D組に所属している。
うん。確かに、姉さんのクラスから高笑いが聞こえてくるなぁ……やだなぁ。
身内が『特殊フェチ』な状況になってる現場に、これから突入するのかー。帰りたい。
「そこまでだ! オメイラガ‼︎ ボクが来たからには、勝手なマネは許さないぞ!」
「キーッ! 現れましたわね、羽吹まこと!」
躊躇なく教室へ踏み込む主人公──ではなく、ヒロインのまこと。
女幹部とのやり取りを含めて、もはや彼女の方が正義の味方として頼もしい存在に見える。今回は怪人を無視して、初めからミーア様と闘いだしてしまった。ミーア様も、前回の敗北は納得がいかなかったのだろう。
双剣の柄部分を合体させた様な武器。ダブルブレードと呼ばれる珍しい武器を振り回すミーア様。まことが得意とする無刀取りを封じる戦法だろう。高速で回転するブレードに、まことは攻めあぐねている。しかし、好戦的な表情は一切変わらないのだから、何かしらの隙を狙っているのだろう。
彼女達のハイレベルな闘いを観戦したいのは山々なのだが、
「
「違うよ、あの子は理珠っちの弟くん」
「弟も小っちゃくて可愛い〜」
風船のように体が丸々と膨らんでいる先輩方が、僕を見て好き勝手な事を口にしている。異常事態だというのに、どこか落ち着いているのは僕らのクラスと一緒のようだ。
違う点があるとすれば──頭を巨大に膨らませた担任教師が教室にいるという事実か。僕らの担任は襲撃が起こると、生徒を置き去りにして一目散に姿をくらます人だからな。
「そこよ〜! がんばれ、ミーアちゃーん‼︎」
ミーア様を応援しているのは、この異常事態を作り出したパンダ怪人のB子さん。そんな彼女の手には竹槍が握られている。てっきり怪人は武器を持てないと思っていたけれど、実際のパンダと同様に竹を持つ事は可能なようだ。
【竹槍ストローで刺されると動けなくなる】
【その状態で息を吹き込まれると、身体が膨らむ】
あれってストローも兼ねてたのか。なるほど、二段階仕様の特殊能力だから被害にあった生徒の数も少ないんだな。おそらく担任の先生が尽力した事も手伝って、大多数の生徒は避難できたのだろう。あの先生は、巨大化した頭を利用して生徒を守るように倒れ込んでいるのだから。
不運にも逃げ遅れた生徒は4人。
先程、姉さんが二人いると勘違いした男の先輩。
僕も面識があるギャル風の先輩。
面識のないギャル風の先輩。
そして、何故か背中を向けている姉さん──
「ちょっと! コッチ見ないでよ、でぃ君! めっ!」
幼子を叱るみたいに言うんじゃない。それに見るなと言われても、背中越しでも判る程の不自然な膨らみが嫌でも目に付くんだ。どうして姉さんだけ、上手い具合に胸だけ膨らんでるんだよ!?
「知らないよー!? パンダちゃんに胸を刺されたら
【巨乳化】【ロリ巨乳】【合法ロリ?】
合法って表現をやめるんだレイワさん。姉さんは誕生日がまだ来てないから17歳なんだ。その基準に則れば、違法または脱法になってしまうだろ。だから『トランジスタグラマー』という表現に留めておこう。
僕と変わらない身長で、胸囲だけがB子さんクラス。まるで軽自動車にフェラーリのエンジンを搭載するかのような所業だ。
体型が急激に変化したせいか、姉さんは床に正座したままの体勢でいる。膝の上に【たわわ】を乗せる事で、どうにかバランスを保っているのだろう。そんな姿を見せられている僕の心のバランスは崩壊寸前なのだが……
「なら見なければいいでしょ〜‼︎ わ、私だって、好きで巨乳になったワケじゃないんだからね!」
ちょっとだけ嬉しそうにするんじゃない。そういったセリフに憧れがあるのは判るけれど、弟に対して言っても虚しいだけだろう。
ほら、この教室に唯一残っている男の先輩が、気まずそうに顔を逸らしているじゃないか。胴体がパンパンに膨らんでいるせいで、首を回すのも大変そうだ。身体と一緒に服まで伸びているのが、唯一の救いといった所か。
姉さんが着ているブレザーも、スイカを二つ詰め込んだ様な形に伸びている──【乳袋】
そんなカテゴリーまで存在するとは、つくづく令和の凄さには頭が下がるよ。
「ミーアちゃーん! 気をつけてー‼︎」
おっと。姉さんに気を取られて、危うく肝心な場面を見逃す所だった。
今は敵だけど、B子さんには感謝しないと。
「そんなっ……ブレードが!?」
「はぁ、はぁ、厄介な武器だったけど、もう見切ったぞ!」
常人にはとても不可能な芸当だが、まことが取った行動自体は至ってシンプルな物だ。
彼女はまず、回転するブレード──その剣の腹部分を横から殴った。
その影響で余計な方向へと力が働き、ミーア様のブレード制御に一瞬の隙が生まれる。
まことは隙を逃さずに、側面からブレードの柄部分へと打撃を加え、武器を弾き飛ばしたのだ。
「破ぁッ‼︎ これで! ボクの勝ちだ!」
そして今、床へ落ちた武器が踏み壊された。
「え、理珠さん? なに、
「ごめんね、まことちゃん。私だけ巨乳になっちゃって」
姉さんが、おかしな【マウント】を取り出した。その状態は一時的なもので、B子さんが自爆したら終了する儚い夢だと言うのに。差し詰め、巨乳ならぬ虚乳と言った所だろう。【虚乳の意味は少し違うよ】
既に存在している概念なのか……。もういいや、上手い事を言おうとした僕の負けだ。
「キーッ、羽吹まこと!
「あらあら、困ったわね〜。ヒーローが来る前に、ミーアちゃんが負けちゃうなんて〜」
「まだ負けてませんわ!」
そうは言っても。武器が壊された以上、ミーア様は事実上の敗北。
このままB子さんが撤退を選んでくれれば、ヒーローの出番なく事件が解決するのだが──
「ふーん。そうなんだ、あの怪人の能力で……ゴクリ」
ゴクリじゃない。まことは姉さんの胸を羨ましそうに眺めているが、特殊能力は怪人を倒せば解除されると知ってるだろう?
仮に戻らなかったとしても、この大きさは日常生活に支障をきたすレベルだぞ。B子さん並の高身長がなければ、釣り合いが取れない。身長163cmのまことでは、持て余す事請け合いだ。
「うー。また君はそうやって……!」
「よく分かりませんが、チャンスですわパンパンβ! 今の内に不意打ちで倒してしまいなさい!」
「は〜い」
律儀に、不意打ちを宣言するミーア様。相変わらず【ポンコツかわいい】人だ。
怪人がパンパンβという名前だったのには驚かされたけれど、羽吹流を相手に竹槍を使うなんて折ってくれと言っているような物だ。
それ位なら僕にだって……ああ、まことが対処してくれるのか。今日は本当に、リングリットが登場する前に事件が解決──
「わー、やられちゃったー」
棒読みセリフで、自ら竹槍へと刺さりに行くまこと。
僕の忠告も虚しく、憧れを捨てきれなかった彼女の身体が息を吹き込まれる事で徐々に膨らんでいく。
「よーし、もっと息を吹き込んじゃうわね〜! スゥーッ──」
「え? ちょっと待って!? 違う!
まことが刺された部分は、胸部より若干下だったようだ。胸ではなく『腹』が、見る間に膨らんでいく。あれでは、まるで……
「そ、そんな……ボクのお腹が。ど、どうしよう〜! 君が責任とってくれるよね!?」
おかしな言い回しをするな!
気は乗らないけど、パンダ怪人は責任持って僕が相手するから。少し黙っててくれないか。
もしこんな場面をワッカにでも見られたら──
「そ、そんな……嘘だろ!? お、お前がヤッたのか!? ゆ゛る゛さ゛ん゛‼︎」
最悪なタイミングで、着替えを終えたヒーローが駆けつけてきた。
どうしよう。完全に僕の事を敵だと認識しているぞ。【NTRなんてするから……】してない‼︎
うわっ、弁明も聞かずに襲いかかって来た!?
【10代インシデント発生!?】
緊急事態だっていうのに、ワケの分からない冗談を……! ダメだ。レイワさんは当てにならない!
た、助けて! パンパンβさん!
ひと騒動を終え、パンパンβさんが自爆する事で全てが元に戻った。
一時、僕とパンパンβさんの共闘でリングリットを追い込んだものの、クロスリット・ハイロゥを展開されてしまえば為す術が無かった。ミーア様のブレードが壊された時点で、僕らの敗北は確定していたのだ。
しかし、まことが元の平坦な姿に戻った事で誤解は解けた。僕の拘束を早く外して欲しい。
「わりぃ。てっきり、
どの時だよ。道場に泊まり込んだ時は、僕もワッカも疲労で夜は動けなかっただろう。
まことが常在戦場の精神で「いつでも襲ってきていいよ」なんて言うから変な誤解が生まれるんだ。あれは冗談半分で、たとえ寝込みを襲われようとも羽吹流に隙は無いという意味の発言だ。
「では、さらばだ! ハーハッハッハ‼︎」
悪びれる事なく高笑いを上げ去っていくヒーロー。彼に続いて、先生や先輩方も帰っていく。リングリットの高笑いには一般人を日常へと誘導する暗示効果でもあるのだろうか? この件も含めて、色々と問い質す必要がありそうだ。
あれだけ特訓したというのに、結局は必殺技で解決したのも頂けないな。リングリットの取り柄は頑丈さなのだ。その特性を踏まえ、まことが提案したのは敵に怯まず突進して『羽交い締め』にする戦法だった。
まあ今回、パンパンβさん相手に突進してきたリングリットを、足払いで阻止したのは他ならぬ僕なのだが……。
ヒーローのヘルメットは口元が開いている構造だ。あの締まりのない【スライムみたいな口】は、邪な目的で突進して来た事の証だろう。パンダへ魂を移しただけとはいえ、パンパンβの肉体はB子さんの体型と酷似していたのだ。欲望を丸出しにしたヒーローの足元がお留守過ぎて、反射的に攻撃してしまった。
「わぁ! パンダちゃんがゴロゴロしてるよー。かわい〜」
姉さんが呑気にパンダを鑑賞している。大丈夫だろうか? B子さんの魂が抜けた今、このパンダは本物の動物なのだ。つまりは、大熊猫。もっと言えば熊だ。
可愛い見た目とは裏腹に、気性の荒い一面もあるって話を耳にしたけれど……
「なでていいかな? いいよね?」
「ストップ。Dのあね。このパンダは萬宮寿家で預かる」
「待ってよ、
何処からともなく現れたA子が、パンダを連れて教室を出ていく。
ゆっくりとA子に追従して歩くパンダ。なんだかシュールな光景だ。いっそ背中に乗った方が絵になると思うけど、パンダがストレスを感じるといけないから自重したのだろう。
「も〜、離してよっ!」
おっと。パンダに近づくと危ないと思って、姉さんを羽交い締めにしたままだった。
僕だって手荒な真似はしたく無かったけど、姉さんがパンダを可愛いがるなんていう女子高生ムーブを無理してかますから。本当は、変形合体する動物型ロボットにしか興味ないだろ?
「失礼な! 私だって、可愛い動物は普通に好きなの。それに──」
「君こそパンダが好きだったの? さっき何故か一緒に闘ってたよね? まさかボクを裏切って『オメイラガ』の一員になった訳じゃないよね? もしそうなら、君をボコボコにしないといけないのかなぁ?」
姉さんの言葉を遮って、まことが責めてくる……!
元はと言えば、まことが誤解を招くような行動をするから僕とパンパンβさんが共闘する流れになったんだ。そもそも、ミーア様を倒したあとにパンパンβさんも倒してしまえば──
「ミーア
「お、落ち着いてー。まことちゃん! ほら、でぃ君。ちゃんと、ごめんなさいしなさい!」
ごめんなさい、まこと様。ひぃ……! ごめん、まこと。
えーっと、そうだ! 僕はむしろ、親しい仲だからこそ呼び捨てにしてるんだ!
様付けなんて、他人行儀な敬称の極みだった。十年来の付き合いがある僕らは、名前で呼び合うのが相応しいと思うなっ!
ほら、僕の事も昔みたいに名前で呼んでいいからさ。
「ふぇ!? デ……Dくん。こ、これでいい?」
「うん。ちゃんと仲直りできたね! それじゃ、でぃ君。そろそろ私の体を離して欲しいかな? 念のため教えとくけど、羽交い締めは他の女の子にやったらセクハラだからね?」
なんだか名前の件を有耶無耶にされてしまった気がする。姉さんが『でぃ君』なんて呼ぶからだ。最近になって、B子さんが僕の事を『弟くん』と呼んでる事実を知った姉さんは、謎の対抗心を燃やしてしまったのだ。昔のように僕を『でぃ君』と呼ぶ事で、自分こそが真の姉だとアピールしてくる。
まあ今回は、その姉ムーブに助けられた。どういう訳か、まことは昔から姉さんに強く出られない傾向があるからな。怒れるまことは、姉さんを盾にして凌ぐのが僕の流儀だ。
【うわっ…、私のショタ、小物すぎ…?】
仮に小物だとしてもだ。決して、レイワさんのショタでは無い。
そうそう小物といえば、姉さんに起きていた変化も無事に元通りに……ん?
「こら!? ホントにセクハラだからね!? お姉ちゃん相手でも、限度があるんだよ!?」
言い訳をさせてもらえば、これは事故だ。羽交い締めを解く際に、本来なら何もない部分に僅かな膨らみがあったのだから。僕はてっきり、元通りの平原が広がっているとばかり──イタっ!? つねらなくてもいいだろ姉さん!
「そんな……! 理珠さんの胸が少しだけ残ったままなの? ズルい!」
「あのね、まことちゃん。私だって成長してるの。これは元々の自前だからっ!」
どんぐりの背比べを続ける二人を置き去りにして、向かう場所は『因縁の地』
校庭の隅にひっそりと存在している防空壕跡。
かつて『叡智の書』が安置されていたあの場所。
僕の運命を大きく変える事となったあの場所で──
2年A組の彼、オメイラガの一員でもある
光速真芯リングリットX
第7話「パンパン膨れて プークプク」
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