佐々木とピーちゃん×異世界おじさん (シルバーマン13)
しおりを挟む

二人の異世界おじさん

おじさんには同年代又は少し上の世の中を知っている友達が必要だと思い、その思いを投稿しました。


『うん?何だ...この動画は?』

ある日、飼い主の佐々木が留守中にピーちゃんは動画サイトを閲覧している最中に気になる動画を見つけた。それは...佐々木よりも少し年下といった中年男性が魔法の様な手品を披露している動画である。他の視聴者は高度なCGだと思っている様だが、ピーちゃんは異世界で『星の賢者』と呼ばれていた魔法使いだった前世を持つ文鳥である。彼の魔法使いとしての勘が、それが本物である事に気付かせた。

『これは異能力という奴か?』

ピーちゃんは気になって他の動画も見てみたが、どれも本物であった。異能力という奴は一人一つという話なので過去に戦った事のあるAランクの異能力者同様に様々な事象を起こせる能力者か?と思ったが、取り敢えずは佐々木に話してみようと思った。佐々木とピーちゃんは日本と異世界の二拠点生活で忙しいので、飼い主である佐々木の予定を聞いてから行動するのが前提なのである。

 

「この動画の人に興味があるの?」

『この動画の男...異能力者か我に近い類の者だろう』

帰って来た佐々木にピーちゃんは早速、件の動画を見せて己の推測を話してみた。佐々木は動画を見ながら言葉を発した。

「この人......二人静さんが以前にいたグループのリーダーに似ているけど、違う人だよね?」

『あぁ...あちらの方が顔立ちが若いからな』

「ピーちゃんがこの人に興味があるのは解ったけどさ...どうしたいの?」

佐々木は唸りながらピーちゃんに聞く。佐々木は職務として上司である阿久津課長に報告して件のチャンネルのYoutuber『異世界おじさん』を調べて貰うのも手だと思うが、あまり信用していない課長に見ず知らずの人を売る様な真似はするのは少し抵抗がある。

 

『これは......我の魔法使いとしての勘なのだが、この男は多分、我らと同じ魔法使いだ』

「えっ!?そうなのかい?」

『我の勘ではな』

「まぁ...ピーちゃんがそう言うなら」

 

ピーちゃんは今は文鳥の姿だが、その前は何百年も生きている魔法使いであり、この場合の勘は長年の経験で鍛え上げた物だろう。少なくとも自分の勘よりは当てになるだろう。

 

「つまり、ピーちゃんはこの人に会ってみたいんだね?」

『そうだ......魔法使いとしての知的好奇心という奴だ』

「明日は局の仕事で異能力者をスカウトする仕事が入っているんだ...それが終わってから手伝うよ」

『そうか...我も特定班とやらがいる掲示板を当たってみる事とする』

 

佐々木とピーちゃんは話を終えた。

 

翌日の午後、佐々木は先輩の星崎さんと後輩の二人静と共に新しい異能力者のスカウトを終えた後、トイレに行きたくなり、二人に断りを入れて近くの公園へと向かった。佐々木は公園のベンチで用を済ませた後、公園のベンチに件のチャンネルのYoutuber『異世界おじさん』が座っているのを発見した。

 

(うん?あの人は......)

 

「......うん...うん...」

 

何故か...独り言を呟いている様である。佐々木は少し気味が悪くなったが、丁度いいので自宅のパソコンに現在地の場所を記したメールを送り、ピーちゃんを呼んでみた。ピーちゃんは転移魔法で即座にやって来て佐々木の肩に停まって男を観察し始めた。

 

『待たせたな。あの男はあそこか...』

「うん...何か独り言を呟いているみたいだけど」

『あれは......精霊と話しているみたいだな』

「精霊?っていうと......」

『あの男から強い魔力を感じる...我と勝るとも劣らない程のな』

「ピーちゃんとかい!?」

 

佐々木は驚いた。ピーちゃんの魔法使いとしての実力は知っているが、そんなピーちゃんと同じレベルの魔法使いが他にもいたとは考えてもみなかった。ピーちゃんはそんな佐々木を尻目に言い放った。

 

『あの男と話がしたい......佐々木、先に話しかけて欲しい』

 

「分かった...あっ!?その前に......」

 

佐々木は近くの駐車場でスカウトした野良の異能力者と一緒に星崎さんと二人静を待たせている事に気付いた。二人静はある程度は自分達の事情を知っているが、星崎さんは自分の事を氷を出す事が出来るだけの異能力者としか認識していないので魔法関係の事は知られたくない。仮に男を異能力者として阿久津課長に報告する際も先方との口裏合わせが必要だろう。佐々木はスマホを取り出すと...星崎さんへ連絡をし始めた。

 

「もしもし、星崎さんですか?」

『佐々木?トイレに行ったっきりどうしたのよ?』

「実は急用が出来まして局へは二人静さんと一緒に戻ってくれますか?」

『急用?何があったのよ?』

「以前、見かけた異能力者かも知れない方が公園にいたので少し確認してきます」

『そういう事なら私達も行きましょうか?』

「いえ...少し確認して違ったら直ぐに戻ってきますので星崎さん達は確保した方を局へと連れて行ってください」

『分かったわ...無理はするんじゃないわよ』

「はい...承知しています」

佐々木は通話を終えると、ピーちゃんと一緒に男へと近付いて行った。

 

 

 

 

 

「すみません...少しよろしいでしょうか?」

 

男...おじさんが公園のベンチで精霊達と談笑していたら見知らぬ男性が話しかけてきた。以前からこの公園のベンチで精霊と話しているが、中年男性が昼間から公園のベンチに座って独り言を呟いている姿に近付く様な人はいないので知り合いが通らない限りは何も無い。

 

「はい...何でしょうか?」

 

嶋崎は男性に返事を返すと、男性を見返す。40手前のビジネススーツを着用した中年男性だ...おじさんと同じか少し上くらいだろう。右肩に可愛らしい文鳥を乗っけている。ごく普通の男性だったが、嶋崎は彼らに違和感を覚えた......それは彼が17年も過ごした異世界の空気に似た物を男性と右肩の文鳥が纏っていたからである。警戒しているおじさんに男性が言葉を発した。

 

「失礼ですが......人気Youtuber『異世界おじさん』でしょうか?」

「あっ!?はい!そうです......」

「貴方がアップしている動画の事で話がしたいのですが...構いませんでしょうか?」

「えぇ...いいですよ」

男性の言葉におじさんが了承すると...男性が自己紹介をして来た。

 

「お時間を取らせて戴きありがとうございます。私は佐々木と申します。此方はペットのピーちゃん」

 

「はぁ...私は嶋崎です」

 

佐々木とおじさんが自己紹介を終えると...佐々木が話を切り出してきた。

「早速ですが...嶋崎さんの動画の雷を剣状にして振り回す物とかCGじゃないでしょう?」

「えっ!?」

「魔法ですよね.?あれは......」

佐々木の言葉におじさんは驚いた...彼はYoutuberとして魔法を使った動画をアップしているが、視聴者はCGとしか思っていない。それを魔法という言葉を使って自分に問いかける人間は佐々木が初めてだったからだ。

 

(まさか......)

 

おじさんは内心で自身の魔法が本物だと知られたら創作物みたいに国家の研究機関みたいな組織がやって来て襲撃されるのを怖れていた。目前の佐々木はそういう組織の刺客なのでは?と警戒したおじさんは記憶を消す魔法の準備をし始めた。

 

(警戒しているな...これは)

 

佐々木は嶋崎が警戒するのも理解出来た。一応、国家の組織に所属しているが、自分の能力もピーちゃんの存在も周囲には内緒にしている。嶋崎の様子から彼が過去に何らかの迫害を受けたのでは?と察していた。そう思った佐々木は彼を安心させる様に話し始めた。

 

「あの...いきなりですみません。私...私達も魔法使いなんで確認したかっただけなんです」

 

「えっ!?あなたもですか?」

 

佐々木の言葉におじさんは驚いた...異世界から帰還して初めての経験だったからである。そして、警戒を解かないおじさんに沈黙していたピーちゃんが言葉を発した。

『そうだ。我らも魔法使いだ』

「えっ!?文鳥が喋った!?」

「はい...そうです」

驚いたおじさんを落ち着かせると...佐々木は自分の事を彼に話し始めた。ピーちゃんが文鳥に転生した異世界の魔法使いである事から異能力者に誤解されて政府組織『超常現象対策局』へと転職した事を話した。

 

「そうなんですか......」

佐々木の話を聞いたおじさんは茫然と言葉を発した。少し違うが、自分と同じ様に異世界と関係している人間がいる事に驚いていた。そして...自分が危惧していた通り?の政府組織が存在する事にも不安を感じていた。佐々木の言っている事が本当なら仮にこの場で彼の記憶を消しても超常現象対策局なる組織の人間がまた来る可能性があるという事を......

 

「次は嶋崎さんのお話を聞かせて貰えませんでしょうか?」

 

「あっ!?はい」

佐々木に促されたおじさんは自分の話をし始めた。17歳の時にお年玉でゲームを買いに行く途中でトラックに撥ねられて入院して昏睡状態となるが、魂は異世界『グランバハマル』に転移しており、其処で新たな肉体が形成される形でサバイバルを開始する。そして、17年の歳月を剣術や魔法を習得しながら戦い抜いて漸く日本に戻って来れたという物である。

 

「“グランバハマル”?ピーちゃんの世界って...」

『いや、初めて聞く名前だ』

「じゃあ...ピーちゃんとは別の異世界か」

佐々木は内心でおじさんの様子に納得していた。嶋崎さんの元々の性格もあるだろうが、彼は社会的な経験の乏しさから色々と未発達なのである。自分はピーちゃんという頼りになる年長者がいたが、嶋崎さんは17歳という子供と言ってもいい年齢で独りで左も右も判らない異世界で生き延びたのだ。その17年間では辛い事も悲しい事もあっただろう...そう考えると、佐々木は自分なりに彼に何かをしたいと思い始めていた。

 

「あの...」

 

「えっと...何ですか?」

 

考え込んでいる佐々木におじさんは話しかけてきた。彼は不安そうな顔をしている。

 

「私はどうすればいいのでしょうか?」

 

「それはどういう意味でしょうか?」

 

「超常現象対策局って組織に行かないといけないんでしょうか?」

 

「正直...嶋崎さんはYoutuberとして活動しているので局の人間が来るのは時間の問題だと思います」

動画を本気で解析したらCGかどうかなんてすぐにでも判るだろう。

 

「そうしたらどうなります?人体実験とかされるんでしょうか?」

 

「いえ...それは無いですが...」

 

「?」

 

「高ランクの異能力者として登録すると...局から危険な仕事を任せられる可能性が高いです」

 

「危険な仕事?」

 

「世の中には局に従わずに好き勝手にしている非正規の異能力者が存在しています......彼らとの戦いに駆り出されるでしょうね」

 

「非正規の異能力者...ヤクザや半グレみたいな感じですか?」

 

「世間に知られていない能力を持った人達ですからもっと恐ろしい人もいます」

 

そう言った佐々木の脳裏には......二人静や彼女が以前に所属していた組織のリーダーが思い浮かんだ。一方でおじさんは自分には甥であるたかふみがいるし、非合法な連中の仲間になるくらいなら政府組織の方がマシか?と思っていた。それに将来の為にも定職に就いた方がいいだろうとも思っていた。おじさんは17年間も異世界にいたので学歴も職歴も無いし、家族ともたかふみ以外とは絶縁状態に近い。

 

「でも...一番、強い人でピーちゃんと同じ位ですよ。多分、嶋崎さんだったら大抵の人に勝てると思います」

『そうだ。貴様程の魔力と実戦経験があれば大丈夫だろう』

「その文鳥...ピーちゃんと同じ位ですか?」

 

17年間も異世界で戦って来たなら実戦経験も豊富だろうと佐々木は思いながら言った。おじさんは少し訝し気にピーちゃんを見ている。

 

「個人的な希望もありますが......異世界絡みの事を伏せた方がいいと思います」

 

「そうでしょうね...皆が全て信じられるとは限らないですし」

この数分間の話し合いで佐々木とおじさんはお互いに信じられる物を感じていた。佐々木はおじさんの事を“不器用だが、悪い人間ではない”とおじさんは佐々木の事を“自分の様な人間にも配慮してくれる優しい人”とお互いを認識していた。それから、二人は連絡先を交換し合い、局の人間にどう対処するのかを打ち合わせをしてから佐々木は局へと連絡を入れた。

 

「もしもし、星崎さんですか?」

 

『佐々木?用事は終わったの?』

 

「はい、本人から確認が取れて異能力者だと判明しました」

 

『そう、阿久津課長も局にいるからその異能力者を連れて来なさい』

 

星崎さんは今日は課長が軽い面談をすると付け加える。佐々木と阿久津課長の関係はお互いに利用し合っているというピリピリした物であり、彼も佐々木が発見した異能力者が気になるのだろう。星崎さんは履歴書程度でいいから新しい異能力者(おじさん)の簡単な資料を用意する事も付け加える。

 

「あの...私の時と同じ様に泊りになるでしょうか?」

 

『えぇ、あなたの時と同じ様に事前情報が無い異能力者だから色々と調べないといけないし、その人、その公園付近に住んでいるんでしょ?なら、一々往復するよりも局の近くのホテルに泊まって貰った方がいいわ』

確かに嶋崎が住んでいる地域は局からかなり離れており、自動車で片道3時間近くは掛かる。既に時間は午後4時近くである。

 

「なら、先方のお宅に行ってご家族に説明してから局に戻っても構いませんか?ご家族も異能力の事は知っているとの事です」

 

『そう...でも、ご家族に守秘義務の説明には念を押しなさいよ。うん?』

 

「どうしました?」

 

『佐々木、二人静が車で迎えに行くって言っているけど、どうする?』

 

「あぁ...それは有難いです。頼むと伝えてください」

 

『だって...分かったわ...あの公園辺りに到着したら連絡するから合流場所を教えてくれって』

 

「分かりました...では」

星崎さんとの通話を終えると、佐々木はスマホをしまう。それから、おじさんに向き直って言った。

 

「嶋崎さん、局の人間が迎えに来るのでその間にご家族に説明をしたいのですが......」

「ああ...では、私の家に行きましょうか?」

「いいのですか?」

「はい、普段は甥の友達しか家に来ませんから喜びますよ」

「そっ...そうですか...」

佐々木も友人は少ない方なので少し複雑な気分になってしまった。こうして、二人はおじさんの家へと向かって行った。

 

その頃...おじさんとたかふみの家でたかふみと彼の幼馴染である女子大生『藤宮澄夏』が居間のテーブルにコーヒーを飲んでいた。藤宮さんはたかふみに片想いをしているのとおじさんが異世界帰還者という事を知っているので頻繁に彼らの家に来る事が多い。たかふみ達が特に取り留めの無い話をしていた時、ドアが開いた音がして

『どうぞ、入ってください』

『どうもお邪魔します』

『邪魔をするぞ』

とおじさんの声と二人程の見知らぬ声が聞こえてきた。それにたかふみと藤宮さんが少し驚いた。

 

「えっ?お客さん?」

「特に役所の人とかが来るって予定は無かったと思うんだけど...」

「おじさんって友達...いたの?」

「俺の知っている限りは...思い当たらないな」

 

二人が小声で話していると、居間におじさんとビジネススーツ姿で肩に文鳥を乗っけた中年男性が現れた。二人が固まっていると、おじさんが男性に向けて話し出した。

 

「佐々木さん......此方は甥の高丘敬文と甥の友達の藤宮さんです」

 

おじさんが中年男性...佐々木にたかふみ達を紹介すると、佐々木は丁寧な態度でお辞儀をすると自己紹介は始めた。

 

「初めまして、高丘さん。私は佐々木と申します...此方はペットのピーちゃん」

 

「はっ...はぁ...」

 

「この度は嶋崎さんのお仕事の関係で伺わせて戴きました」

 

「仕事?どういう事ですか?」

 

「たかふみ、藤宮さん...この佐々木さんは俺と同じ異世界と関係を持った人なんだ」

おじさんの発言に二人はギョッとした。

 

「えっ!?この人も異世界帰りなの!?」

 

「そうなんですか!?」

 

驚いている二人を前に佐々木はおじさんに話しかけた。

 

「あの...甥御さんが異世界の事を知っているのは聞いていましたが、もしかして其処の女の子も?」

 

「はい、知っています」

 

「そうですか...」

おじさんはたかふみ達に向き直ると、彼らに向かって話し始めた。

 

「それでさ...その事を含めてお前と色々と話したいんだ」

「うん...分かったよ。じゃあ...お茶を入れるね」

「ああ...五つ用意してくれ」

「五つ?」

「佐々木さんの肩に止まっている彼の分だよ」

『よろしく頼むぞ』

「えっ!?文鳥が喋った!!」

たかふみはピーちゃんが喋ったのに驚いたが、おじさんは冷静に彼を嗜め始めた。

「落ち着け!たかふみ」

「う...うん!えっと...」

「彼はこの世界に転生した魔法使いで佐々木さんの先生だよ」

「ああ...逆異世界転生って事か...すみません、騒がしくして」

『気にするな...我の世界でも当たり前の反応だ』

 

「あの...コーヒーとか大丈夫ですか?」

『ああ、大丈夫だ』

 

「解りました。では」

そう言うと...たかふみはお茶の準備をする為に台所へと向かった。

「あの...私は帰った方がいいでしょうか?」

 

たかふみがお茶の用意に台所に行った後、藤宮さんが空気を読んでおじさんに問いかける。それにおじさんは佐々木と顔を合わせる。

 

「あの...彼女もいいでしょうか?」

 

「話の内容を口外しないと約束出来るなら構いません」

正直、異世界の事も超常現象対策局の話も証拠が無ければ誰も信じないだろうと佐々木は判断しておじさんの頼みに了承する事とした。

 

「それは大丈夫だと思います...藤宮さん?」

 

「はいっ!大丈夫です!!」

 

「すみません。彼女は身内も同然というか...将来、身内になるかも知れないので」

 

「あぁ...そういう事ですか」

 

「ちょっ!?おじさん!!」

おじさんの言葉に佐々木は納得した様に頷く。それに藤宮さんが真っ赤になって動揺する。その初々しい反応に佐々木は新鮮さを感じていた。佐々木の周囲にいる女性は彼から見たら子供と表現される様な年代の人間が大半だし、唯一の例外はロリババアで掴み処の無い二人静である。

そんな事を考えている佐々木におじさんは声をかけた。

「では...其処の椅子に座ってください」

 

「はい...では、失礼します」

佐々木は入口側の椅子に座ると、おじさんは佐々木の向かい側の椅子へと座る。藤宮さんは少し迷った後、おじさんの左に座る。それから、お茶の用意を終えたたかふみが佐々木とピーちゃんの前にコーヒーを置いてからおじさんの右に座った。

全員が席に着いた事を確認すると佐々木が話を切り出した。

「では...私達の自己紹介を兼ねて色々と説明させていただきます」

そう言ってから佐々木はたかふみと藤宮さんに説明を始めた......先ずは自分とピーちゃんの出会い、ピーちゃんの勧めで彼のいた異世界(グランバハマルではない異世界)と日本を行き来して交易をしてお金を稼いでいる事、日本で異能力者と間違われて、彼らを管理する政府組織『超常現象対策局』の一員になった事、ピーちゃんがおじさんの動画を見て彼の正体に気付いた事、おじさんの許に局の人間が来るのは時間の問題である事、おじさんを異能力者として局に連れて行って登録する事を話した。

 

「「......」」

 

二人は当然の様に固まっていた。異世界云々はおじさんとの付き合いで慣れていたし、ピーちゃんが喋るのを目の当たりにした事で佐々木がおじさんの同類である事を既に疑ってはいない。だが、地球にも超能力者が存在しており、国が内密で彼らを管理しているのは流石に驚いた。ラノベや漫画ではありふれた話だが、だからこそ実際にあるとは思わなかった。

 

「じゃあ...おじさんはこれから国家公務員になるんですか?」

 

「はい、表向きは警察官という事になるでしょうね」

佐々木は自身の警察手帳を取り出してたかふみに渡すと、彼らをそれを二人で確認している。たかふみが気になった事を佐々木に質問する。

「あの...佐々木さんは自分の事を異能力者と誤魔化しているみたいですけど、その...検査とかではバレない物なんですか?」

「はい、私も身体を調べられましたが、バレてはいません。多分、今の時点では技術的に判別出来ないんじゃないですかね」

「では、異能力者というのは......」

「魔法とは違う構造の特殊な能力を一つだけ使える人の事です」

「そういう感じですか...」

たかふみの質問に佐々木は自身の経験を用いて答える。その時、

「あの...すみません」

藤宮さんが手を上げて質問をしてきた。

 

「おじさんは公務員になるんですよね?Youtuberは辞めるんですか?」

「それは大丈夫だと思います。異能力者は試験を受けて入局する方達と違って仕事があれば、招集が掛かりますから他に仕事をしている人達もいます」

「そうですか...あの、もしも登録を拒否したらどうなるんです?やっぱり、犯罪になるんですか?」

「はい...そうなります」

それから、佐々木はたかふみ達の質問に答えながら様々な事を話し合った...その際におじさんが佐々木の記憶を映像で再現したり、ピーちゃんの転移魔法で異世界に行ったりとしながら時間は過ぎて行った。それから、遅くなって来たのでピーちゃんと藤宮さんが家へと帰り、迎えに来た二人静の車に乗って佐々木とおじさんは超常現象対策局へと向かった。

 

 

 

 

 

「なるほど、17歳の時に交通事故に遭った事で昏睡状態になり、目覚めたら異能力が使える様になっていたと...」

「はい...その通りです」

会議室で佐々木とおじさん、阿久津課長と星崎さん、おまけに二人静がいる。廊下側に佐々木、おじさん、二人静が、その反対側に阿久津課長と星崎さんが座っている。阿久津課長の手元には、佐々木が作成したおじさんの資料がある。アルバイトすらした事が無いおじさんは流石に緊張している。異世界で数多の敵と渡り合ったおじさんだが、阿久津課長の様なタイプは彼らとは違った怖さがあるのだろう。

 

「佐々木くん...嶋崎さんの能力は『どんな存在とでも会話することができる』と記載されているが、これはどういった事が出来るのだね?」

 

阿久津課長もおじさんの事情を配慮したのか、彼の横の佐々木へと尋ねている。佐々木は此処に来る前におじさん達と相談して決めた事柄を話し始めた。

 

「はい、異なる言語を使う相手と会話する事は勿論、動物や周囲の存在する元素等と会話する事が出来ます」

「元素?元素に意思が存在するのかね?」

「嶋崎さんにはそういう物が聞こえるとの事です。これを見て貰えますか?」

 

佐々木は手元のノートパソコンを操作すると、おじさんの動画を阿久津課長達に見せる。おじさんが雷で出来た剣を振り回している動画である。ちなみに佐々木は精霊を元素と詐称して説明している。

 

「これはCGでは無くて嶋崎さんが能力を使って起こした現象を動画にした物です」

「そうなのかね...では、可能な範囲で実際にやって貰えないでしょうか?」

 

「はい...分かりました」

阿久津課長の言葉におじさんは頷くと...立ち上がって掌を天に向けてからテニスボール程の火球を発生させる。それを消してから雷の剣や氷の剣を作り出した。

 

「ふむ...どうやら、複数の現象を起こせるのは本当の様ですね」

 

「はぁ...どうも」

おじさんは返事をしてから剣を消すと、阿久津課長が佐々木へと話しかけてきた。

 

「佐々木くん、嶋崎さんの登録と研修が終えた後は君が二人静と同様に面倒を見てくれ」

「解りました」

佐々木は内心でホッとし思いでおじさんの方へと向き直る。おじさんもホッとした表情で佐々木と目を合わしていたが、阿久津課長に話を続けるように促されてこれからの予定について話し始めた。そして、佐々木は阿久津課長に話を切り出した。

「課長、少しいいでしょうか?」

「何だね?」

「嶋崎さんは資料の通りに身元や経歴もはっきりした方です...なので」

「......わかった」

佐々木の言いたい事を察した阿久津課長は頷いた。これでおじさんの家に盗聴器や隠しカメラが設置される事は無いだろう。

 

こうして、おじさんは超常現象対策局へと入局したと同時に佐々木とピーちゃんという頼もしい友達を手に入れたのだった。

 

 

 




続きを書くなら小ネタ集として書きます。異世界おじさんの描写からおじさん無双となってしまうと思うので...


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

小ネタ集

小ネタ集です。前回の話で描写されていない場面が中心になっています。
TVアニメ版でカットされてしまった原作のネタが含まれています。


【記憶再生魔法】

 

 

「記憶を再生する魔法ですか?」

 

「はい、私は記憶を読み取る事や消去する魔法を使う事が出来ます」

 

おじさん達の家で二人静が迎えに来る間、佐々木達がお互いの話をしている際にピーちゃんやおじさんが使用する魔法についての話題となった際におじさんが記憶魔法の事を話し始めた。

 

「ピーちゃんは出来る?」

 

『いや...我にはは出来ないな』

佐々木に尋ねられたピーちゃんは首を横に振っている。それを見た佐々木は「使えるなら使っているよな...」と異世界の貴族令嬢『エルザ』が自分達の荷物に潜んで、この世界にやって来てしまった時の事を思い出した......特にその場にいた二人静の顔を

 

『興味がある......出来れば、見せてくれないか?』

 

「構いませんよ...《イキュラス・エルラン》」

ピーちゃんに頼まれたおじさんは自身の頭に手を置いて記憶再生魔法を発動させた。空間にテレビ大のモニターが現れ、其処におじさんの過去の記憶が映像として流れ始めた。

 

「凄いな...SFアニメみたいだ」

 

『ああ...初めて見る魔法だ』

と佐々木達が感激している中...おじさんの記憶映像に美しいエルフの女性が現れて此方に向かって言葉を発した。

 

『オーク顔!!また、会ったわね!!』

 

「あっ!エルフさんだ」

「エルフさんね」

「翠か...」

おじさん達が見覚えのある顔に反応する中、映像内ではエルフの美少女がおじさんをオーク顔呼ばわりしていた。彼女を見てピーちゃんが言葉を発した。

『これは、あの動画の女だな...貴様やこの女も我らと同じ様に異世界を行き来する事が出来るのか?』

 

「いえ...あの動画のエルフさんはおじさんが変身魔法で変身した姿ですよ」

 

『なるほどな...しかし、人に向かってオーク顔とは...口の悪い女だな』

「そうですね...私も異世界でオークを見ましたが...これは酷いな」

 

「解りますか!?そうでしょう!!」

佐々木やピーちゃんのツンデレエルフに対する厳しい評価におじさんは喜んでいる。対するたかふみと藤宮さんは複雑そうな顔をしていた。確かに佐々木達の言葉は正論である...だが、ツンデレエルフにだって事情はある。意を決したたかふみは佐々木とピーちゃんに対して言葉を発した。

「あの...佐々木さんとピーちゃん、これには事情があるんです」

「えっ...そうなんですか?」

『何だ?それは...』

 

「はい...先ず、“グランバハマル”って地球に比べて容姿の整った人間しかいないんですよ」

 

「そうなんですか?」

 

「はい......おじさんがオークの亜種に見えるレベルで」

 

「......」

たかふみの言葉に絶句する佐々木だった。佐々木的に自分もおじさんと同じレベルの顔だと思っている。だから、自分も“グランバハマル”に行ったらおじさんと似た様な扱いを受けると思うと...ピーちゃんの異世界で良かったと心から思った。そんな佐々木にたかふみはツンデレエルフの名誉の為に付け加える。

「それと......このエルフさんはおじさんの事を嫌っている訳じゃないんです」

 

「そうなんですか?」

 

「ほら、このエルフさん...顔を赤らめているでしょう?ツンデレなんですよ...このエルフさん」

 

たかふみはおじさんが異世界に行った頃はツンデレという概念が無かった事とツンデレエルフ自体は凄くいい人である事を付け加える。それらの説明に佐々木は納得した......つまり、おじさんとこの美少女エルフはお互いにすれ違った末に恋愛が成就しなかったパターンだというのを理解した。

 

『ツンデレというのは確か...本当は好きなのに素直になれないという思考状態だったか?』

 

「はい......そうですね」

 

佐々木は自分と同類だと思っていたおじさんに......その手の過去があった事への嫉妬と幸せを逃してしまった彼への哀れみで複雑な気分であった。

 

 

 

 

 

【佐々木の記憶】

 

 

「では...ピーちゃんの異世界の説明するのも兼ねて私の記憶を見てみましょう」

 

おじさんの記憶再生魔法でおじさんの過去を見た佐々木はピーちゃんの異世界を説明するのを兼ねて自分の記憶を再生するのを提案した。

 

「いいのですか?」

 

「えぇ...流石に恥ずかしい記憶は勘弁して欲しいですが」

 

「はい、解っています...《イキュラス・エルラン》」

 

佐々木の了承を得たおじさんは彼の頭に手を置いて記憶再生魔法を発動させた。それから、おじさん達は佐々木がピーちゃんの異世界で遭遇した出来事を見る事となった。

冤罪で店を追い出された料理人『フレンチ』との出会い、

「この人......同僚の嫉妬で店を追い出されたのか」

 

「どんな世界にも似た様な奴はいるのね」

 

「まあ、結果的に良かったんじゃない?ブラックな職場と縁を切れてさ」

ミュラー子爵との出会いと彼との商売、

「俺もこういう人と出会いたかったよ...」

 

「うん...こういう上司の下で仕事がしたいよね」

 

「うわぁ...映画俳優みたいな人...」

エルザ子爵令嬢との出会い、

「凄い髪型だな...龍が●くに出て来るキャバ嬢みたいだ」

 

「うん、日本じゃこの年頃と髪型で街中を歩いてる子って少ないよね」

 

「それを抜きにしたら可愛い子ですね」

異世界での戦場の記憶にて、

「うん?この王子様......たかふみに声が似ていないか?」

 

「えっ?そうかな...」

 

「うん...声だけね」

と佐々木が異世界で遭遇した様々な出来事や人々を三人は見て行った。佐々木はピーちゃんという保護者がいる事と異世界の人々がグランバハマルよりは地球と近い事からおじさんに比べて平穏な生活を送っている事を三人は理解した。

「この異世界なら俺もオーク顔とか言われないだろうな......」

 

「今度に行ってみますか?」

 

「えっ!?いいのですか?」

 

「はい、一緒にフレンチさんの料理でも食べましょう」

 

 

 

【異能力関係】

 

 

 

「異能力関係の話ですか?」

 

「はい、実際の異能力バトルとかってどういう感じですか?」

 

佐々木はたかふみの質問に少し考えると......自身の経験を思い出しながら話し始めた。これから、おじさんも入る世界の話だし、もしかしたら、彼らも巻き込まれる可能性もある。佐々木は注意喚起も含めて話す事としたのである。

 

「では、異能力者には大きく別けて三種類が存在します」

 

「三種類ですか?」

 

「先ずは政府所属している異能力者、二つ目は政府に所属していない非正規の異能力者、三つ目は政府組織の存在を知らない野良の異能力者です」

 

「なるほど、じゃあ...おじさんはこれから野良の異能力者から政府所属の異能力者になると」

 

「そうです」

佐々木の返答にたかふみは納得した様に頷く。それを確認した佐々木は自分の経験を話す事とした。

 

「非正規の異能力者は何人かでグループを作って活動しています......私の知っている限りで危険なのは“アキバ系の人”ですね」

「“アキバ系の人”?」

「えぇ...本名は知りませんが、一昔前のオタクといった風貌をしている事から私はそう呼んでいます」

「どんな能力を持っているんですか?」

「妄想を具現化させる能力を持っています......自然現象を具現化出来ない様ですが、異能を持った人間の複製を作ってその異能を使わせたり、ゲームなどに登場する架空の物品を具現化すれば原作通りの効果を発揮するなど、応用性が異常に高い能力を持っています」

 

「それは......凄いですね」

たかふみは内心で「なろう系の主人公みたいだ」と呟いた。佐々木はたかふみが理解した事に頷くと続きを話す。

 

「それともう一人......気を付けて欲しい人がいます」

 

「気を付けるですか?」

「えぇ...嶋崎さんが異能力者の間で有名になる事で嶋崎さん本人は勿論、高丘さん達も目を付けられる事も知れないので」

「そうですか......では、その人は?」

「それは...二人静さんという方で元々は非正規の異能力者でしたが、今は私と一緒に局で働いている方です」

「えっ?同じ局員なんですよね?どうして......」

 

「はい...実は」

佐々木は以前、二人静に弱味を握る目的で知人を襲われた事とそれをピーちゃんが阻み、彼女が自分達に歯向かえない様に呪いをかけた事を三人に話した。嶋崎は佐々木と違い、たかふみや藤宮さんがいるので狙われる可能性があるのを説明した。

「そんな事があったんですか......ちなみにどんな異能を持っているんですか?」

「エナジードレインです。触った相手の生命力を吸い取って自分の身体能力や寿命等へと変換させる事が出来るんです」

『最悪...あの小娘の呪いを上書きするから安心しろ』

 

「はは...頼みます」

たかふみは少し引き攣りながら答えた。藤宮さんが佐々木へ質問をしてきた。

「あの...何でそんな危ない人と付き合っているんですか?上司とかに報告すれば......」

「それは......商売の為です」

「商売ですか?確か...異世界交易をしているんですよね?その為ですか?」

「そうです。ほら、マネーロンダリングとか...私も元々は普通のサラリーマンだったし、異世界の事を他人に言う訳にはいかないので、二人静さんの伝手を頼りざるを得ないんです」

 

「あぁ、おじさんもグランバハマルで手に入れたお宝を換金出来なかったから解ります」

たかふみと藤宮さんが納得したのを確認すると、佐々木はおじさんに自分の記憶を抽出して映像化する事を頼んだ。彼らの顔をおじさんを含めた三人に覚えさせる為である。

 

「頼みます」

「解りました...《イキュラス・エルラン》」

おじさんの記憶再生魔法で発生したモニターには、着物姿で小学中学年程の外見をした美少女...二人静が触っただけで局の異能力者やアイドルやTVクルーが無力化される場面やアキバ系の人とピーちゃんの激しいバトルシーンが再生された。たかふみと藤宮さんは半分、特撮番組を観ている様な気分でそれらを見ている。特にたかふみはアキバ系の人とピーちゃんの異能VS魔法バトルをドキドキしながら見ていた。

「この可愛い女の子が二人静さんですか?」

「えぇ、見た目はこの通りなんですが......これで三桁越えの年齢らしいです」

「えっ!?ああ......異能のおかげですか」

「はい」

 

「この人...おじさんに似ているね」

「うん...こっちの方が若そうだけど」

「そうか?髪型とかだけだろ」

「なんていうかさ...おじさんに比べて自信に溢れた顔をしているね」

「ああ、それは俺も思った」

三人が佐々木の記憶を見終わり様とした時だった......

「うん?まだ...続きがあるな?」

「そうだね...まだ、何かあるのかな?」

「えっと...これは?」

 

『もしも儂でよければ、いくらでもいい目を見させてやれる。幼い身体は嫌いかのぅ? 小さいだけあって締りは抜群じゃ。どれだけ貧相な肉棒であっても、キツキツに締め上げてやろう。キツキツ、キツキツじゃ』

 

何処かの部屋で二人静がその小学生の様な外見に似合わない妖艶な表情で佐々木を誘惑している場面が写されていた。正直、その手の趣向の無い人間でも応じかねない色気があった。

 

「こういった意味でも気を付けてください......」

 

『あの小娘......!』

 

「「「......」」」

 

その後、二人静が愛車に乗って迎えに来たが、おじさんは挙動不審になり、車内で佐々木と「何じゃ?こやつは...」と思いながら運転をしている二人静を交互に見ていたという。

 

 

 

【おまけ】

 

 

 

『もしも儂でよければ、いくらでもいい目を見させてやれる。幼い身体は嫌いかのぅ? 小さいだけあって締りは抜群じゃ。どれだけ貧相な肉棒であっても、キツキツに締め上げてやろう。キツキツ、キツキツじゃ』

 

「「......」」

 

「あわわ...!」

 

「ああ~!確かにこういう事を言ったのぅ」

 

数ヶ月後、軽井沢の二人静の別荘でおじさんの記憶映像再生魔法で佐々木の記憶を見たお隣さんと星崎さんは固まっており、エルザは赤くなっている。対照的に二人静は涼し気な表情をしていた。

 

「キツキツ?」

 

「あなたはまだ知らなくていいのよ...」

マジカルピンクは風呂上りなのだろう...パジャマ姿で藤宮さんにタオルで頭を拭かれながら不思議そうに呟いている。彼女は子供なので意味が理解出来ない様である。

そんな彼女らを他所に十二式がテクテクと佐々木へと近付いて彼に尋ねた。横にいるおじさんが心配そうな顔で佐々木を見ている。

 

「父よ...末娘が尋ねル」

 

「何ですか......」

 

「父は祖母とキツキツしているノですカ?」

 

「......していません!!」

 

「悪い事をしたかな?」

 

そんな彼らを見ながらテーブルに座っている面子は料理と酒を楽しんでいた。

 

「タカフミ、其処のお酒...二ホン酒を取ってくれる?」

「はい、エル...翠さん」

 

 

 




最後の方にいる女性が何故、いるのかは次で描く予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

小ネタ集2

異世界おじさんがもう一人増えます。


【おじさん無双~VSオーク軍団~】

 

 

 

「此処がピーちゃんの異世界ですか......」

 

「ええ、此処が私達が拠点にしているエイトリアムの街です」

 

とある日、おじさんは佐々木とピーちゃんの商売に付き添う形でピーちゃんの転移魔法で異世界へと来ていた。彼らが異世界で最も信頼していると過言ではないミュラー伯爵が治めるエイトリアムの街へと降り立っている。ちなみにたかふみと藤宮さんは、予定が合わなかったのでいない。

 

「では、ミュラー伯爵の許へと行きましょうか」

『うむ...嶋崎の事を紹介した方がいいと思うからな』

「よろしくお願いします」

 

佐々木やピーちゃんと話し合った結果、おじさんは不定期的に異世界で傭兵として活動する事を決定した。なので、佐々木男爵に雇われている護衛の魔法使いとしてミュラー伯爵を始めとした異世界の知人達に紹介する事とした。おじさんは佐々木と同じ様にビジネススーツを着用している。

 

「うん?何か...騒がしいですね」

『そうだな...帝国の軍勢でも攻めて来たか?』

 

三人が城の門へと到着すると、城全体が慌ただしい事に気付いた。気になった佐々木は顔馴染みの門番の男性へと尋ねた。

 

「何かあったんですか?」

 

「はい、実は……」

門番の男性が教えてくれた内容とは……オークの集団がエイトリアムの街へ攻めて来たとの事だった。しかも、その数は100体以上であり、街を守る為に騎士団は出撃したのだが、数に押されて劣勢らしい。ミュラー伯爵も息子二人と一緒に出撃している。

 

「それは……不味いですね」

 

佐々木は苦い顔をしていると...おじさんが言葉を発した。

 

「じゃあ、俺が行って来ますよ」

「えっ!?嶋崎さん!!」

 

「聞いた話じゃ...ピーちゃんみたいなのは此方の世界でも珍しいんですよね?なら、俺がやります」

 

『そうか...では、我らはオーク共の後方へと廻ってから背後から攻撃するとしよう』

 

「解りました。嶋崎さん...此方の言葉は解りますよね?」

 

「はい、その門番さんとの会話もしっかりと理解しています」

 

「では...先ずは、ミュラー伯爵を見つけて彼に私達の仲間である事を伝えてくれませんか?」

 

「解りました。彼の顔は知っていますので」

 

おじさんと佐々木が会話を終えると...それぞれ、飛行魔法を発動させ、二手に別れて街の外へと向かって行った。

 

その頃、ミュラー伯爵はエイトリアムの街へと向かっているオーク達を相手に苦戦を強いられていた。ミュラー伯爵は優れた剣士だったが、オークの数が非常に多かった。彼の息子達も父親の近くでオーク達を相手に剣を振るっている。その時、オーク達の中から一際大きな身体をした個体が現れた。

 

「あれは......!」

 

多分、ピエルカルロ(ピーちゃん)と再会した際に戦ったオークと同じ“上位個体”である。あの時はまるで歯が立たなかった上に今回の“上位個体”はあの時のオークよりも明らかに強そうである。

 

「......ここまでか!」

 

その時だった!天空から凄まじい速さで何かが“上位個体”のオークへと向かって来たのである!!

 

「なっ!何だ!?」

『ガゥ!?』

 

そして、その何かが地面に降り立ったと同時にオークの首が両断され、地面へと落ちていた。オークの身体が倒れると...その背後に見知らぬ男がミュラー伯爵達に背中を向けて立っていた。手に光の剣を持っている。

 

「!?何者だ......」

 

「ミュラー伯爵ですか...?」

 

男が振り向くと、ミュラー伯爵へと話しかけてきた。見覚えの無い顔だったが、皮膚の色や彫りの薄い顔立ちが自分の領地内で商いをしている佐々木と似ており、彼と同郷の者だというのがミュラー伯爵には理解出来た。

 

「そうだが......貴殿は?」

 

「私は佐々木さんの仲間で彼の護衛としてこの地にやって来たシバザキと言います」

 

「!?ササキ殿の!!失礼、ご助力を感謝します」

 

「いえ...佐々木さんはオーク達の背後から攻撃しています」

 

「そうですか...ササキ殿(と星の賢者様)が」

 

おじさんとミュラー伯爵は話している時だった......おじさんを背後からオークが襲い掛かろうとしていた。それを見たミュラー伯爵が声を上げ様とした。

「危なっ...!」

 

「......!」

おじさんは瞬時に反応すると同時に光の剣を一閃してオークの胴体を両断した!!

「い...」

ミュラー伯爵はおじさんの剣技と魔法の才能の無い自分でも理解出来る程の絶大な魔力に唖然としていた。そして、彼と同様にそれを見ていたミュラー伯爵の息子達も

「凄い...」

「スゲぇ...」

おじさんは久々の戦闘に少し興奮しながらも、もう一つの手に光の剣を発生させて二刀流となる。それから、ミュラー伯爵へと話しかける。

「では...私が先に行きますので背後に居てください」

 

「ああ、頼みます」

おじさんはミュラー伯爵達を護る様に立つと...オーク達へと凄まじい勢いで襲いかかった!!

 

おじさんの光の剣による超高速な斬撃と雷槍の投擲がオーク達の命を奪って行く。その姿は正に圧倒的だった。そして、暫くすると……最後の一体を仕留めて剣を下ろした。ミュラー伯爵やその息子達は呆気に取られると同時におじさんの実力に恐怖と共に羨望も感じていた...特にミュラー伯爵は少年の頃、星の賢者が敵の軍勢を一瞬で蹴散らしたのを見た時の感情を思い出していた。

 

「この辺りは片付いたみたいですね」

『どうやらそうらしいな』

それから数分後にはオークの半数近くをピーちゃんの魔法で吹き飛ばした佐々木達も到着し、街へ救援としてやって来た騎士達と共にオーク達の死体を片付ける作業へと入った。

 

「皆さん……この度のご助力、誠にありがとうございました」

 

オーク達の襲撃から数時間が経ち、ミュラー伯爵はおじさん、佐々木とピーちゃんの二人と一匹を自分の館へと招待していた。

 

「特にシバザキ殿......貴方の剣技と魔法には感服致しました」

 

「いえいえ……俺はただ、佐々木さんやピーちゃんと一緒に来ただけですし……」

異世界の人間に一切の表裏の無い感謝の気持ちを向けられた事でおじさんは照れている。

 

「しかし、貴殿達が居なければ我々は全滅していました」

 

「そうかもしれませんね……でも、街が無事だったのは俺達だけの功績ではないですよ」

『そうだな……我々だけではあの数は対処出来なかった』

 

「ふふ……そう言って貰えると助かります」

ミュラー伯爵は爽やかな笑顔を浮かべると、ワインが入ったグラスに口を付ける。そんな彼は久々に現れた客人である佐々木達と話をしたい様だ。会話している内におじさんやミュラー伯爵もお互いに心を開いていき……ミュラー伯爵邸自慢の料理を食べながら楽しい一時を過ごしていったのである。

 

 

 

 

 

【おじさん無双~VSクラーケン~】

 

 

 

「助けて欲しい?僕にかい?」

 

太平洋に現れた異物四号=異世界の怪物『クラーケン』の調査の為に海上自衛隊と共に佐々木と星崎さん、二人静とおじさんは自衛隊の飛行艇から破壊された船舶へと移動し、其処から魔法少女連合がクラーケンと戦っている場面を観察していた。クラーケンがピーちゃんが使っている魔法と同じ物を使っているのを感じた佐々木と二人静(とおじさん)......魔法少女連合が劣勢となる中で佐々木と顔見知りの魔法少女『マジカルピンク』が佐々木へと助けを求めて来た。

 

「うん...友達を助けたい」

 

二人静と違って正真正銘の子供である彼女に頼まれて戸惑っている佐々木の横からおじさんが前へと出た。

 

「佐々木さん...俺が行きます」

 

「嶋崎さん...いいのですか?」

 

「はい、放って置けません...後始末はちゃんと、自分でしますから」

とおじさんは手をワキワキさせながら佐々木以外の面子を少し見た後、佐々木へと向き直った。佐々木はそれが記憶消去魔法の仕草である事を理解している。

 

「そうですか...では、お願いします」

 

「魔法中年?」

おじさんと佐々木の会話にマジカルピンクが戸惑った様に佐々木へと声を掛ける。

「ゴメン、このおじさんが助けてくれるから安心してください」

 

「このおじさん?異能力者が?」

 

「あぁ...このおじさんはね、僕と同じ魔法中年なんだ」

 

「そうなの?」

首を傾げるマジカルピンクにおじさんが話しかける。佐々木は事前にマジカルピンクに関する自分の知る限りの情報をおじさんに話していた。無理矢理に魔法少女にされた事や異能力者に家族や友達を殺された事で異能力者を殺し回っている事を......おじさんは異世界での凄惨な経験からこの手の事には耐性が有ったし、それにおじさんは相手の事情を無視して正義を押し付ける様な人間でもなかった。

「そうなんだ...おじさんは妖精さん?に17年間も眠らされて起きたら魔法中年になっていたんだ」

 

「眠らされてたの?」

 

「あぁ...寝ている間に家族がいなくなって散々だったよ」

 

「そうなんだ......」

どうやら、マジカルピンクはおじさんを仲間として受け入れてくれた様である。周囲で見ている面子は興味深そうに見ている二人静や何を言っているのか理解出来ない星崎さんと自衛隊の皆さんと別れている。佐々木は海上自衛隊の指揮官である吉川へと向き直った。

 

「吉川さん......この嶋崎を魔法少女達への援護に向かわせてもよろしいでしょうか?」

 

「彼をですか?」

 

「はい...彼は私達(超常現象対策局)の中で最強の異能力者なので邪魔にはならない筈です」

 

「そうですか...でも、彼が失敗しても」

 

「必要ありません......彼なら此処から東京まで自力で帰って来れますので」

 

「そっ...!そうですか...では、構いません」

 

「はい、ありがとうございます」

 

吉川は少し半信半疑という顔でおじさんを見ながら了承する事としている。それを見ていた二人静は「大きく出たのぅ」と佐々木をニヤニヤしながら見ている。星崎さんも佐々木とおじさんを懐疑的な目で見ている。吉川が了承したのを見た佐々木はもう一つ付け加える。

 

「あの...これは阿久津課長の指示なのですが」

 

「何でしょう?」

 

「嶋崎が戦闘を行う場面を記録したりするのは止めて貰えますでしょうか?」

 

「はい......解りました」

 

「それと......陸地に戻ったら機密保持の為に記憶を処理させて貰います」

 

「記憶を処理ですか?」

 

「はい...部下の皆さんの記憶を中心にお願いします...出来れば、友軍の方にも」

 

「了解しました...いい聞かせておきます」

 

吉川は記憶を処理するという言葉に躊躇いながらも了承している。ちなみに佐々木は任務を受ける際に阿久津課長に事前に確認をしている。関係者の中で不自然に記憶が飛ぶ者がいるかも知れないが...詮索無用である事を

 

「じゃあ、行って来ます」

 

「一応、様子見という事で何時でも戻れる様にしてください」

 

「解りました...《キライドルギドリオルラン》」

そう言うと...おじさんは両手に光の剣を発生させて飛行魔法を発動させると凄まじい速さで飛行艇から飛び上がり、クラーケンへと向かって行った!!

 

「へっ!?何!?」

 

「うわぁ...魔法少女達よりも速いのぅ」

 

「戦闘機並みではないか...」

周囲の面子はおじさんの飛行魔法の速度に唖然としていた。そんな中でおじさんは自身に向かって来るクラーケンの足を剣でバッサリと両断する!!

 

そして、落下するクラーケンの身体を……おじさんは空を飛びながら切り刻んで行く!!その様子はまるで太平洋に降り注ぐ雨の如きで凄い速度で空中を乱舞しているかの様な光景であった。だが、クラーケンも負けておらず、幾つかの足を斬り落とされた処でおじさんの剣での攻撃を障壁で防いだ。おじさんは攻撃を防がれたが、死角から繰り出されたクラーケンの攻撃を見ないで素早く回避しながら雷槍を創り出してクラーケンへと投擲する。

 

「《ルガザストリオルラン》」

 

雷槍はクラーケンの顔面へと直撃し、怪物は流石に怯んでいる。それを見ていた星崎さんが佐々木へと言葉を発した。

 

「ねぇ...佐々木......」

 

「何でしょうか?星崎さん」

 

「嶋崎って『どんな存在とでも会話することができる』って異能力者よね?」

 

「そうですが...」

 

「元素とかの声?が聞けて炎や水を発生出来るのは理解出来るけど......あんな事まで出来る物なの?」

 

「さぁ...私には何とも?」

 

「ていうか...あやつ一人でいいんじゃないかのぅ?」

 

「《エバストルギド》!!」

 

そう言った二人静の目にはクラーケンの頭上に巨大化した光の剣を振り下ろそうとしているおじさんの姿があった。

 

 

 

 

 

【異世界食堂】

 

 

 

「森の中に変な扉ですか?」

 

此処はエイトリアムの街で佐々木達が宿泊している宿屋。異世界での取引を終えて寛いでいた佐々木とピーちゃんの許に仕事を終えたおじさんがやって来て森の中に扉だけがポツンと存在しており、その扉から魔力を感じる事を彼らへと伝えて来た。

「そうなんです。ピーちゃんなら何か知っていると思ったんですが」

 

『成程な...どれ、見に行ってみるか』

 

「えぇ...暇ですし、いいでしょう」

2人と1羽は不思議な扉を確認する為、森の中へ向かって行った。飛行魔法が使える彼らにとって森の中にある扉に辿り着くのは簡単であり、宿を出てから数分足らずに目的地へと到着している。

 

「これがその扉ですか......確かに扉だけがありますね」

『確かに...この扉から魔力を感じるな』

「異世界にも都市伝説的な物があるんですか?」

『いや...我も聞いた事が無いな』

 

2人と一羽は扉の前で話し合っていた。扉はよく手入れされた黒い樫の扉で猫の絵が描かれている。ピーちゃんが調べていると、ある事に気付いた。

『このドアベルはマジックアイテムだな......見た事の無い物だが』

 

「そうなんですか?では...これは」

 

「“どこでもドア”みたいな物じゃないですかね?取り敢えず...開けてみます?」

おじさんがそう言うと......佐々木とピーちゃんも頷いた。そして、佐々木が肩にピーちゃんを乗せた状態で開ける事とした。開けた瞬間に何処かに飛ばされても転移魔法を使えるピーちゃんなら戻って来れるかも知れないので彼らが開ける事とした。念の為におじさんは少し扉から離れている。

 

「では...とっ!」

『これは......?』

佐々木が扉を開けると...其処は飲食店の様な外装の部屋だった。テーブルには誰も座っていないが、部屋の中から佐々木にとって馴染みのある空気が流れて来たので理解出来た。

 

「此処は地球ですね...其処にコンセントや電球とかあるし」

 

『そうだな...うん?』

その時、部屋の奥からコック帽を被った料理人という感じの中年男性が現れた。佐々木よりも精悍な顔立ちと大柄な体躯をした中年男性だが、肌の色や顔立ちは間違いなく日本人である。男性は佐々木達を見ると

 

「いらっしゃいませ...えっと...お客さんの肩に乗っているの文鳥ですか?すみませんが、ケージか何かに入れて貰えませんかね」

 

男性の言葉から完全に此処が日本だと確信した佐々木は男性に対して言葉を発した。

 

「あの...すみません」

 

「はい?」

 

「此処は日本ですか?」

 

「あの...日本ですが?何か......」

 

「信じられないかも知れませんが......」

佐々木は森の中に見つけた奇妙な扉を開けたらこの店に出た事を男性に話した。男性は佐々木の背後を見ると、ドアの外が何処かの森の中になっている事に気付いた。

 

「その前に...お客さんは何処の森にいたんですか?」

「えっと...それは?」

「その...あの扉は異世界から人が来る事はあっても日本の違う場所から人が来た事は無かった物で」

 

「異世界?あの...あなたも異世界に関係しているんですか?」

 

「えっ?どういう意味ですか?」

 

『我らはさっきまで異世界にいたという意味だ』

 

「えっ!?文鳥が喋った!?」

佐々木は男性から“異世界”という言葉が出た事で佐々木は事情は話す事とした。ピーちゃんが異世界の魔法使いが文鳥に転生した姿である事、ピーちゃんの魔法で日本と異世界を行き来している事を

「成程ねぇ...では、佐々木さんは異世界からこの店にやって来たと」

 

「そうです...信じられませんかね?」

 

「信じます。私は彼方の世界に行った事はありませんが、爺さんの代から30年以上も異世界から来たお客さん相手に商売していますので」

佐々木の話を信じた男性...店主は佐々木にこの店...洋食のねこやについて話し始めた。彼の祖母は異世界の人間であり、戦後の混乱期に日本へと転移して其処で出会った祖父と出会って結婚した事、50年程前に彼らはこの店を開店させた事、毎週土曜日に店の扉が異世界中の様々な場所に現れて其処から人々が来訪する事を話した。それから、佐々木と店主は年代の事や起きた事件の事を確認し合った......もしかしたら平行世界かも知れないからだ。それから念の為に知り合いにも連絡を入れたが、平行世界等ではなく同じ世界だという事が確認出来た。その時、

「佐々木さん~!!大丈夫ですか?」

 

「うん?嶋崎さん!!すみません...入って来ていいですよ」

おじさんが開いたままの扉からねこやの中へと入って来た。おじさんは店の中を見回した後、佐々木と店主に向けて言葉を発した。

「此処は日本のレストランですか?」

 

「えぇ、都内のオフィス街にあるビルの地下一階にある洋食店です」

 

「はい、洋食のねこやにようこそ」

佐々木はおじさんに店主との会話で得た情報を簡潔に話した。

「そうなんですか!そういうのは...私達だけだと思っていましたよ」

 

「まぁ...そうでしょうね」

「私もそう思っていました」

三人と一羽で少しの間、お互いの事を話した後、佐々木はこんな事を言い出した。

「嶋崎さん、私達は夕食がまだなんですが...此処で一緒に食べましょうか?」

 

「あぁ、いいですね...では、注文しますのでお願いします」

 

『我もいいか?』

 

「構いませんよ。では、何を注文します?」

佐々木とピーちゃん、おじさんはそれぞれ注文すると...テーブル席へと着いた。少し経った後、2人と一羽が注文した料理を食べていると...扉が開く音がして若い女性の声が聞こえて来た。

 

『此処は何処?何かのお店かしら?』

 

「うん?」

 

「どうしました?」

 

「いぇ...何か聞き覚えのある声が......」

おじさんは箸を止めると...扉の方を振り向いた......其処には

「えっ......ヨースケ!?」

 

「へっ......翠か?」

 

 

 

 

【おまけ】

 

『フフフ...どうじゃ?キツキツじゃろう』

『キツキツですっ...!二人静さんっ!!』

『どぉれっ......もっとキツキツしてやろうかのぅ』

『ああっ...!』

 

「おい...お主......」

飛行艇の中で佐々木と二人静を交互に見ながらソワソワしているおじさんをジト目で見ながら横の佐々木へと話しかける二人静。同じ場にいる星崎さんは少し気持ち悪そうにおじさんを見ている。佐々木は内心で“素人童貞ですら無いおじさんには刺激が強過ぎたか?”と後悔していた。

 

「......何でしょう?」

 

「...あ奴に何を吹き込んだ?」

 

「私は二人静さんの事で自分の知る限りの事を教えただけです」

 

「そうか...」

 

佐々木は飛行艇の中で居心地の悪い思いをしながらクラーケンが待つ現場へと向かって行った。

 

 

 

 




他作者さんの異世界食堂クロス物で扉を使用して別作品のキャラクターがねこやに現れる場面を見て思い付きました。何番煎じなのは承知の上です。

ツンデレエルフが登場させようと思った理由は...エルフなので外見が劣化し難い事,メイベルやアリシアと違って現時点でおじさんとの顛末がある程度は判っている事と多分、おじさんを諦めていない可能性がある事です。

メイベルやアリシアは彼女らのファンからしたら不愉快な予想かも知れませんが、何処かの誰かと結婚していたりする可能性もありますからね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

小ネタ集3

取り敢えず、書きたいネタを書きました。他作品の登場人物がゲスト出演しています。
少し、おじさんのキャラクターが崩壊しているかも知れませんが、おじさんは敵だと思った相手に勇み足になってしまう事も多い人物だと個人的に捉えています。
書籍版のネタやオリジナルエピソードが中心ですのでアニメ勢の方に理解出来ないネタがあるので注意してください。


【おじさん、自動車教習所へと行く】

 

 

 

 

 

「自動車教習所?おじさん、免許を取りに行くの?」

 

「ああ、行こうと思う」

超常現象対策局へと入局したおじさんは、局から活動費として100万円を貰いました。翌日、たかふみと藤宮さんの前でおじさんは話を切り出して来た。おじさんは、局での仕事をした後の報酬をどの様な用途で使うかをたかふみに話す事とした。

「以前に藤宮さんにも言われたが、YouTuberは不安定な仕事だからな......いざという時の為に俺達も資格を取ったりした方がいいと思うんだ」

 

「そうだね...」

 

「......(意外とちゃんと聞いていてくれてたのね...)」

傍目から聞いていた藤宮さんはちょっと感動しながら二人の会話を聞いている。

「だから、たかふみも一緒に行かないか?」

 

「えっ?俺も?」

 

「ああ、お前もまだ、免許を持っていないんだろ?一緒に取ろう」

 

「でも、お金が...」

 

「ああ、金なら俺が払うよ」

おじさんは局から活動費を貰った事をたかふみに話しました。YouTuberとしての仕事で生活費は今の処は問題無いのでこういう事に使おうとおじさんはたかふみに言った。

「そういう事なら俺も教習所に行かせて貰うよ」

 

「だから、これから俺達は家を留守にする事が多くなるから......」

とおじさんが藤宮さんに言おうとするが、それを察した藤宮さんは

「!?...じゃあ、私も免許を取りに行こうかな」

「えっ?藤宮?」

と言い出した。藤宮さんも自動車免許は持っていなかった。彼女もアルバイトをしていたので費用を払うのに問題は無い。

 

「えっと...私も前から取ろうと思ってたの!!」

 

「そうか...じゃあ、三人で同じ教習所にするか」

 

「そうしましょう!!これから、通う教習所を選びましょう!!」

三人は近くの教習所に申し込みをする事とした。幸い...学生等が少ない時期だったので直ぐに教習所へと入校する事が出来た。

 

「こんちわ...俺が今日の教習を担当する坂田です」

「は...はぁ...(何だ?このやる気の無さそうな男は?)」

 

初めての運転教習でおじさんの担当教官は寝癖だらけの銀髪で死んだ魚の様な目をした男だった。20代後半~30代前半だと思うが、自分よりも覇気の無い男におじさんは不安に襲われていた。何となく佐々木に声が似ている坂田教官は不遜な態度でおじさんに教習車に乗る様に促す。

 

「では...運転の準備を順番通りにしてください」

「はいっ!」

 

意外と要領の良いおじさんは座学で習った通りに準備を終えると...坂田教官は運転教習を開始した。今日の運転教習は教習所内のコースを走行するという物である。集中力の高いおじさんは真剣に運転を学ぼうとしているが......坂田教官は窓の外を見ながら鼻糞を穿っていた。

 

「......(失敗したかな?この教習所にしたの)」

 

その頃...たかふみも初めての運転教習に望もうとしていた。教習車の助手席には、短い黒髪と中肉中背で眼鏡をかけた特徴の無い青年が座っている。名札には志村と書かれていた。志村教官はたかふみに対して

 

「高丘さん、初めての運転で緊張すると思いますが...リラックスして運転してくださいね」

 

「はい、解りました(良かった...今日の担当教官は当たりみたいだ)」

 

そして、藤宮さんは......

 

「うぅ...!」

「ホラっ!おっぱいメガネ!!もっと、アグレッシブに運転するアル!!」

藤宮さんが運転する教習車の助手席には漫画の中国人の様な喋り方をした女性教官が座っている。外見は中学生位の美少女といった感じだが、非常に横柄な態度で藤宮さんに接している(どうやら、藤宮さんのお胸に嫉妬している様である)。名札には神楽と書かれている。

 

「くぅぅぅううう!!(絶対にクレームを入れてやる!!)」

 

こんな感じで三人の教習所での日々は過ぎて行った。ちなみにおじさん達は上記の三人の教官達が入れ替わりで担当している。坂田教官はいい加減だわ...志村教官は真面目だが、マイナーなアイドルの話ばかりするわ...神楽教官は横柄で無礼だわ...とおじさん達は散々な目に遭っていた。

 

「それは...凄い教習所ですね」

 

一ヶ月程経った後、無事に免許を取った三人から話を聞いた佐々木はそう返している。

 

「何とか...卒業出来ましたよ......」

「ペーパードライバー講習はどうする?」

「私...少し遠くてもいいから別の教習所にするわ......」

 

「はは...」

三人の言葉を聞いた佐々木は苦笑いをしている。そんな佐々木にたかふみが尋ねる。

「そういえば...佐々木さんは免許を取っているんですか?」

「私は免許を取っていますが...ペーパードライバー状態で今、練習している処です」

「へぇ...何処かで講習でも受けているんですか?」

 

「いえ...二人静さんに助手席に乗って指導して貰っています」

 

「「「!?」」」

三人は“二人静”という単語にビクッとなると......三人の脳裏に“存在しない記憶”が浮かび上がった。

 

『ふぅ...今日はまずまずじゃのう......上達したのぅ!佐々木』

『いえ...二人静さんの指導が良いからですよ』

二人の乗った車が人気の無い場所へと到着し、其処で佐々木の運転を労う二人静と謙遜する佐々木......ふと、二人静の目付きが変わったのを佐々木は気付かなかった。

『どれ、そんなお主に褒美を与えようかのぅ』

 

『?褒美ですか...?』

 

『そうじゃ』

二人静はシートベルトを外すと...佐々木に抱き着いた。彼女の突然の行動に佐々木は目を白黒させている。

『!?』

二人静は佐々木の首に両手を回した状態で妖艶に微笑むと...彼に優しく問いかけた。二人静の身体は非常に柔らかく暖かいので佐々木はドキドキしている。

『じゃあ、キツキツするかのぅ?』

 

『ふっ...二人静さん!?』

 

『あの文鳥(ピーちゃん)もパイセン(星崎さん)もおらん......存分にキツキツ出来るぞ?』

 

『うぅ...!』

 

『嫌かのぅ?』

佐々木の首に両手を回して小鳥の様に首を傾げて可愛らしく尋ねる二人静に佐々木の理性は限界を超えた......その後、2人の乗っている車からギシギシという音が周囲に響いていたという。

 

「「「......」」」

 

「あのぅ?もしも~しぃ?」

 

妄想の世界へと突入した三人に佐々木の声は届かなかった。ちなみにおじさん達は結局、ペーパードライバー講習は例の自動車教習所で受けている。

その理由は

「何か...あの坂田教官って一緒にいると安心するんだよな」

 

「志村教官の勧められたアイドル...歌詞は全く理解出来ないけど、変な魅力があるんだよな」

 

「何か嫌いになれないんだよね...あの教官」

だそうである。

 

 

 

 

 

【ツンデレエルフの日本生活初日】

 

 

 

 

 

「なるほど...彼女も二人静くんの知り合いだと」

 

「はい、そういう事です」

 

「よろしくお願いします......(この人は普通の顔をしているわね)」

 

超常現象対策局の会議室。室内に佐々木、おじさん、ツンデレエルフ、二人静、阿久津課長がいる。佐々木、おじさん、ツンデレエルフ、2人静と並んでおり、彼らの反対側の席に阿久津課長が座っている。今日はツンデレエルフをエルザと同じ様に“二人静の知り合いである異国の異能力者”として紹介している。ツンデレエルフは長袖のTシャツとチノパンというラフな格好をしており、擬態魔法で耳を人間の様に短くしている。

 

「彼女の商売や嶋崎さんの仕事を手伝う為、これから不定期的に日本に来訪するので変な疑いを掛けられる前に課長に紹介しました」

「そうか...準備の良い事だな」

 

佐々木の軽い皮肉を籠めた言葉に対して同じく皮肉を籠めた言葉で返す阿久津課長......二人の姿に居心地の悪い思いをしているおじさんと何となくだが...二人の関係を察しているツンデレエルフと面白気にみている二人静であった。

 

「...で?彼女はどんな能力が使えるんだね?」

「“狙撃銃”を具現化し、銃口からエネルギー波を放射する事が可能です」

「それはSF映画等で登場するビームライフルを具現化出来るという事かね?やってみてくれませんか?」

「はい、解りました」

 

ツンデレエルフは左手を胸に当てると...其処から愛用の武器である剣と鞘を組み合わせて変形させたレールガンの様な形状の狙撃銃を取り出した。非常に男心を擽る武器だが、阿久津課長は平然とした態度で感想を述べた。

「解りました...ありがとうございます」

「はい...これからよろしくお願いします」

 

ツンデレエルフはホッとした表情で銃を収納魔法で仕舞った。彼女は異世界食堂に掛かっている翻訳魔法で彼らとの意思の疎通が出来ている。異世界食堂で店主から紹介された魔法使い達から扉を召喚する魔法や翻訳魔法も習っているが、局の人間がいる場所以外でしか使えないだろうという事を佐々木(彼女曰く「ゴブリン?」)から説明されている。だが、ねこやの扉から離れる事で翻訳魔法が消える可能性も無い訳ではないので魔法無しでおじさん達と話せる様になる為、日本語の勉強もしている。二人静にツンデレエルフのパスポートを始めとした戸籍を偽造して貰い、表向きは日本にやって来たフィンランド人のフリーターという事になっている。

 

阿久津課長との面談を終えて局を出た4人は二人静の愛車へと乗り込むと、ピーちゃんとたかふみや藤宮さんとの待ち合わせ場所である異世界食堂へと向かって行った。ちなみにツンデレエルフは持っていた貴金属類を二人静に換金して貰っている。彼女はおじさんから買って貰ったパーカーを上着として着用している。

 

二人静の運転する高級車を異世界食堂の近くにあるコインパーキングに停車させると、4人は車を降りて異世界食堂へと向かう。今日は土曜日なので異世界の住人達が異世界食堂に来訪する日である。異世界食堂の店内は特殊な魔法が掛かっているので危険は無いが、たかふみと藤宮さんは異世界食堂に行くのは初めてなので早く行ってあげたいとツンデレエルフは思っていた。

 

(でも...本当に異世界なのね......)

 

ツンデレエルフは歩きながら周囲を行き交う人々を見ていた。たかふみや藤宮さんといった人達は彼女の目線で普通の顔立ちをしているが、行き交う人々の中にはおじさんと同レベル又はそれ以下の顔面をした人間もいた。ツンデレエルフはおじさんに惚れているが、それは飽くまで彼の内面に惹かれたので美的感覚は彼女の出身世界『グランバハマル』の人々と変わっていない。

 

(いけない!いけない!!態度には出さない様にしないと......)

 

正直、気分の悪いツンデレエルフだったが、気を引き締めた。異世界食堂でおじさんと再会した日、佐々木におじさんの誤解を解いて貰った後、ピーちゃん(とゴブリ...佐々木)にお説教をされたのである。

 

『貴様の事情は知っている......だが、それでも失礼な事を言っていい事ではない』

『メイベルやアリシアとやらが...どうして、貴様よりもシバザキと良好な関係を築く事が出来たか考えろ』

『どんな者でも自分の容姿に対する誹謗を行う者に好意を抱けるものか......貴様の様な見目麗しい者でもな』

『むしろ...貴女の様な美しい方に言われるとダメージ倍増です......ゴブリンか(小声)......』(佐々木)

と以上の事を言われたツンデレエルフは流石に反省しておじさんに謝罪した。

 

(この世界じゃ......ヨースケは普通なのよね...慣れないと)

行き交う人々の顔を見ながらツンデレエルフは過去の自分の言動を反省したと同時にマイナスから0となったおじさんとの関係を進める決意をしていた。

 

 

 

 

 

【アキバ系の人】

 

 

 

 

 

「特にあの...親しみ易いファッションしたおじさんは凄かったね!何処で見つけたの?」

 

クラーケンをお隣さん達の協力で倒した後......マジカルピンクやたかふみ達を含めた面々で温泉旅館で祝勝会をしていた時、旅館のロビーで佐々木は二人静が在籍していた組織のリーダーであるアキバ系の人と遭遇していた。佐々木と彼は今回の事件について話をしていた際、アキバ系の人はおじさんの話題を振ってきた。

 

「えっと...知らないんですか?」

 

「何を?」

 

「彼はYouTuberなんですが......結構、有名な」

 

「えっ!?そうなの!!」

 

「えぇ...YouTubeで異能を使って手品の様な動画を作成して配信していたのをスカウトしたのですが」

佐々木は不思議そうにアキバ系の人へと尋ねた。よく考えたら...彼の様な外見や趣味をした人物がおじさんの存在に気付かなかったのが佐々木には意外だった。

(意外と...そういう趣味が無いのかな?)

佐々木の脳裏にキャバクラ等で豪遊しているアキバ系の人が思い浮かんでいた。

 

「マジかぁ!俺、ニ●ニ●動画はよく見るんだけどなぁ」

 

アキバ系の人は嘆いた後、佐々木へと向き直って質問をしてきた。

「ところで、こっちに鞍替えする気とかない?待遇は絶対に良くなるよ。出来れば、あのおじさんも一緒にさ」

 

「せっかくのお誘いを申し訳ありませんが、当面は局でお世話になる予定でして」

 

「俺も何をしているのか知らない連中の仲間になる気は無いな」

 

「へっ?」

何時の間にか...アキバ系の人の背後に光の剣を彼の首筋に突き立てたおじさんが立っていた。おじさんはグランバハマルで17年間も戦い抜いた戦士の顔をしており、完全に戦闘モードへと入っている。もう片方の手にも闇の剣を持っており、アキバ系の人の背中に突き立てている。

「嶋崎さん...」

 

「佐々木さん、無事ですか?」

 

「ええ...私は大丈夫ですが」

 

「佐々木さん...左の方に何歩か移動してくれませんか?翠がコイツを狙撃出来る様に」

 

「えっ!?狙撃って...!」

佐々木が左の方へと移動してから振り返ると、彼がいた場所の後方から浴衣姿の金髪の美少女...ツンデレエルフがレールガンの様な外見の銃をアキバ系の人に向けているのが見えた。アキバ系の人も裏社会で生きる人間であり、幾つかの修羅場を経験していた......だから、おじさんが自分と同等以上の危険を乗り越えて来た強者であるを理解する事が出来てしまった。

「ちょっと...待ってよ!ただ、話をしていただけだって!!」

 

「お前の事は佐々木さんに聞いている......何か悪い事をしている奴なんだろ?半グレやヤクザみたいに」

 

「確かにいい人じゃないけどさ......でも、問答無用で斬りかかるのは酷くない?」

 

「今日...お前と直接、会って解った。お前は危険だ......今までに戦った奴の中でも特に禄でもなかった連中と同じ臭いがする」

おじさんは「あの怪物みたいにな」と付け加えた。アキバ系の人は冷汗を掻いていた。能力を発動しようとしても、それよりも速くにおじさんの剣が突き刺さるのが明確だった。そんな二人を前に佐々木がおじさんに声を掛けた。

「嶋崎さん!武器を降ろしてください」

 

「佐々木さん?」

 

「彼は二人静さんが怪物退治の為に呼んだ助っ人です。少なくとも今は敵ではありません」

 

「ですが......」

 

「私だって...彼の危険性は理解してします」

 

「......」

 

「確かに彼は私達の知らない処で何らかの罪を犯しているかも知れませんが......明確な理由も無しに私達が独断で排除する事は違います」

 

「そうですね...此処は日本ですから」

 

「お願いです...今は武器を降ろしてください」

 

「......分かりました」

おじさんは両手の剣を消すと...アキバ系の人から離れた。だが、彼への警戒心は消えていないので戦闘モードを解いていない。アキバ系の人はホッと安堵の息を吐くと

「あぁ!おっかなかった...久し振りに能力が使えなかったガキの頃を思い出したぜ」

 

「すみません......彼はまだ、この業界に入ったばかりの新人なので大目に見てください」

 

「まぁ...それは解るよ」

アキバ系の人は佐々木とおじさんに背を向けると

「じゃあさ...この業界をもっと知った事でアイツら(超常現象対策局)に嫌気が差したらシズカちゃん経由でいいから連絡をしてくれよ」

そう言うと、彼はロビーから出て行った。アキバ系の人が出て行くのを確認すると...おじさんはツンデレエルフに片手を挙げて合図をした。それを見たツンデレエルフは武器を仕舞い、おじさん達へと向かって来た。佐々木はおじさんに向き直ると

「嶋崎さん...彼に関しては流れに任せましょう」

「流れですか?」

「えぇ、彼と戦わなければいけない時は...その時に必ず理由がある筈です」

「此方からは出来るだけ戦わないという事ですか?」

「はい...あちらがたかふみさん達に手を出したり、何処かの誰かを理不尽な理由で害したりと理由がある場合以外は戦うべきでは無いと思います」

「そうですね...それが俺達の仕事ですよね」

「はい...この国で平穏な生活を送りたいならこれがベターだと思います」

反省したおじさんを前に佐々木は話を切り上げると同時に到着したツンデレエルフがおじさんへと話しかける。それを背に佐々木はピーちゃんの所へと向かって歩いて行った。

 

 

 

 

 

【おまけ】

 

 

 

 

 

『キツキツせんか?』

『はいっ!!キツキツしましょう!!』

 

「って仲なんだ......あの二人は...多分(小声)」

 

「そっ...そうなの...?」

日本での身分証を偽造して貰う為、二人静の軽井沢の別荘に佐々木とピーちゃん及びおじさんに連れられて来たツンデレエルフはおじさんから佐々木と二人静の関係を説明されて少し引いている。彼女もそれなりの年月を生きて来て様々な人間を見て来た中でそういう性癖の人間がいなかった訳じゃないが......グランバハマル出身の彼女が見ても可愛い二人静とはっきり言ってゴブ●ンみたいな顔(注:彼女個人の感想)をした佐々木がそういう事をしていると想像したら気分が悪くなってきたツンデレエルフであった。

 

「何じゃ?その娘は気分が悪いのかぇ?」

 

「さぁ...見知らぬ地で戸惑っているのだと思います」

 

『では...話を進めるぞ。小娘』

 

「ああ、解っている...其処の娘が日本で活動する為に必要な書類を用意するんじゃろ?」

 

2人と1羽が話し合いを始めると、おじさんがツンデレエルフに話しかける。

 

「ホラ、お前の為の話し合いなんだから俺達も参加するぞ」

 

「う...うん!そうね」

ツンデレエルフは内心で

(私もグランバハマルの人間達から見たら似た様なモノなんだから他人の事は言えないわ......慣れないと!)

と自分に言い聞かせていた。

 

 

 

おじさん達の佐々木と二人静への誤解が解けるのは......まだ先の話である。

 

 

 

 

  




独り言ですが、おじさんの闇剣顕現(クローシェルギドリオルラン)なら二人静や●●●王子の腐肉の呪いを断ち切る事が出来るんですよね。ネタバレだけど…●●●王子って祖国の為に一生懸命なのは理解出来るけど、佐々木に奴隷の首輪を填めさせて自分に強制的に従わせ様としたりして個人的に好きになれないんですよね。

それと、ツンデレエルフの話を書きましたが、個人的に女性にデレデレしているおじさんって見たくないんですよね。だから、おじさんの彼女への感情は嫌い→昔馴染みの知人という感じに変化しています。

おじさんの佐々木と二人静への誤解(キツキツネタ)は見返してみると、おじさんらしいと感じてきたので思い付いたらもう少しやってみようと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

小ネタ集4

クロスする作品が二つ増えます。
二つともマイナーな上に5~6年程前の作品ですが、一つはヤクザ×超能力少女のギャグ漫画『ヒナまつり』です。個人的に好きだったんですよね。今も第二期が見たいです。
もう一つの作品は『ひもてはうす』です。時々、見返していて好きなんですよね。


【阿久津課長の憂鬱】

 

 

 

「なぁ...知っているか?」

 

「何をだよ?」

此処は超常現象対策局の中に存在する喫煙所である。其処で一般職員である男性二人が雑談をしており、職員Aが職員Bに話題を振ってきた。

「ほら、佐々木さんっていう新入りの異能力者がいるだろ?あの二人静や嶋崎さんと一緒に行動している......」

 

「あぁ......あの冴えないおっさんって感じで能力も大した事が無いけど、色々とデカい仕事を成功させているって噂の」

 

「ああ、入局早々にあの事件の最前線に投入されても相棒の星崎さんを助けて切り抜けた上にあの二人静や今や日本最強って呼ばれている嶋崎さんをYouTubeからスカウトして来たんだよな」

職員Bの脳裏から先日に起きた事件でバトル漫画やアニメのヒーローの様に活躍するおじさんの姿を思い出していた。

「凄いよな......最近まで俺らと同じ一般人だったのに......その佐々木さんがどうした?」

 

「また、優秀な異能力者をスカウトするのに成功したらしいぞ」

 

「へぇ...今度はどういう人達?」

 

「それがAランク相当の念動力者が3人だってよ......!」

 

「Aランクが3人!?それは凄いな!!どんな人達?」

 

「あぁ...何でも池袋に住んでいる10代の女の子達らしい」  

 

「10代の女の子?女子高生か?」

 

「1人はそうだけど、残りの二人は違うな......何でも料理人を目指して働いている子と芸能人として活動している子らしい」

 

「芸能人?アイドルって奴か......名前は分かるか?」

 

「それは分かっている。超人フィットネスの気功少女として有名なマオって娘だよ」

 

「あぁ!?あの娘か!俺もドラマや食レポ番組で見かけた事があるよ」

 

「俺もだ...どうやら、サイコキネシスを気功と偽っていたらしい」

職員達が頷き合っていると、職員Bが思い出した様に口を開いた。

「そういえば...佐々木さんってこの間も事前情報無しで異能力者を何人か纏めてスカウトして来なかったか?」

 

「うん?あぁ!確か......中野区でルームシェアをして暮らしていた野良の異能力者達をスカウトして来たんだよな」

 

「その時はどんな人達だっけ?」

 

「......確か...20代前半の女性が5人と猫が一匹だったな」

 

「猫?」

 

「あぁ...人間並みの知能が有って人間を始めとした様々な動物と会話が出来るって異能力を持った猫だったかな?うろ覚えだが」

 

「へぇ...局に貢献しているな...佐々木さん」

感心した様に話す職員Bに職員Aは含みをある表情で言葉を発した。

「でも、課長は複雑な気分だと思うがな」

 

「えっ!?何で?」

 

「此処だけの話だけど......阿久津課長と佐々木さんって結構、複雑な関係らしいぜ」

 

「複雑な関係?仲が悪いって事か?」

 

「まぁ、こういう省庁じゃ珍しくも無い話だけどさ...何でも課長の弱味を握っているらしいな」

 

「弱味?」

 

「ほら、あの事件の事で」

 

「ああ!あの事件か......確かに何かがあってもおかしくないよな」

 

「佐々木さんって...二人静と組んで何か取引をしているらしくてさ...それを使って課長に色々と黙認させているらしいぜ」

 

「そうなんだ......意外と抜け目の無い人なんだな」

職員達は佐々木と阿久津課長の話題で盛り上がっていると、職員Aは続けて言った。

「嶋崎さんは佐々木さんの言う事を優先的に聞く傾向があるし、二人静と仲良くやっているみたいだから何時嗾けられても可笑しくない......おまけに今回、スカウトに成功した異能力者に厄介そうな子がいてな......」

 

「厄介?Aランク相当の念動力者3人の中でか」

 

「あぁ...マオちゃんと料理人志望の子は問題無さげなんだが、残り1人が問題なんだ......」

 

「1人だけ女子高生って子か......何が問題なんだ?」

 

「父親が暴力団関係者...ヤクザなんだよ」

 

「ヤクザか...でも、ヤクザってかなり衰退しているんじゃない?」

 

「芦川組の新田義史って知っているか?」

 

「!?知っているよ...TVにも出た事がある有名な経済ヤクザじゃないか」

 

「ああ、その新田義史の娘なんだよ...その子」

 

「そうか...それは厄介そうだな」

彼らは幼い頃から地道に勉強をして国家公務員になったが、異能力者として入局する者達はチンピラの様な者も少なくはない。彼らの脳裏にはAランク相当の念動力という武器を持って暴れている不良少女の姿が浮かんでいた。

「多分、課長は彼女達の世話も佐々木さんに任せるつもりだろうな...」

 

「でも、対立している相手に力を持たせる様な真似をして大丈夫なのか?」

 

「それだけ......佐々木さんの問題解決能力を認めているんだろ?俺達は学歴では佐々木さんより上だと思うけど......」

二人の脳裏に先日の事件が思い浮かんだ。あの事件で低ランクの異能力者は何人も死んだし、裏方である自分達や阿久津課長も危なかった。正直、おじさんを始めとした佐々木チーム(仮称)と彼らが他所から協力を要請した助っ人達がいなかったら如何なっていたか......

「あんな風に危険に立ち向かって問題を解決する事は出来ないよな......」

職員達がそう話し合っている喫煙所の傍を阿久津課長が通りがかり、彼らの話に聞き耳を立てているのに職員達は気が付いていなかった。

「......」

確かに彼らの言う通りに佐々木は様々な出来事を経て力を着けている。おじさんは精神年齢の低さと境遇の近さから佐々木を人生の先輩として物事の判断を委ねている部分が多いし、二人静とは何やら金銭的な取引をしているみたいで親密な間柄である。彼らのみならず佐々木がスカウトして来た連中も境遇の近さから自分よりも佐々木に親しみを感じる様であり、何かが起こったら彼の側に付くのが明白だろう。それを危惧している上役もいない訳ではない。

 

だが、阿久津課長にとって佐々木は使い勝手の良い存在である事は確かである。彼らの言う通りに佐々木には仲間を始めとした環境を利用する事で上手く立ち回って物事を解決出来る力がある。それに、二人静に佐々木無しで接するのはリスクが高いし、おじさんは二人静以上の戦闘能力を持っている上に記憶を操作する事が出来ると聞いているので怒らせてしまったら佐々木抜きでは如何なるか解らない。おまけに佐々木には彼ら以外にも強力な異能?を持った存在がいるのを先日の事件で確信した。

 

今度、入局するAランクの念動力者『新田ヒナ』も並外れた力を持っている上に自分の様な人間とは相性が悪い性格をしている。彼女らの前に佐々木が纏めてスカウトして来た5人と一匹も結局は佐々木に任せている。阿久津課長は溜息を吐きながら呟いた。

 

「成る様に為るしか無いか......」

 

阿久津課長が職員達に気付かれない内に立ち去った後、職員Bが思い出した様に言った。

 

「なぁ...何かを忘れてないか?」

 

「うん?何を?」

 

「佐々木さんに関してまだ、何かがあった様な気がするんだけど......」

 

「......気のせいだろ?」

 

「そうかな?」

 

「......」

 

実は喫煙所近くの自動販売機に隠れてもう一人いたのを彼らは気付いていなかった

 

 

 

 

 

【記憶処理】

 

 

 

 

 

「では...自衛隊の方々の記憶を処理させて頂きます」

 

「はい...」

厚木基地へと戻った佐々木は海上自衛隊の責任者である吉川一等海佐に対して向き直っていた。基地内の人気の無い部屋で監視カメラも切っており、その部屋に人を集めている。佐々木の横からおじさんが現れた。おじさんの姿に吉川達がビクっとしたのが分かった。当然である。スーパーマンの様な力を持った相手に恐怖を抱かない方が不思議である。

おじさんは手を動かしながら佐々木へと確認している。ちなみに救助した友軍の皆さんの記憶は既に消している。

「始めますが...どのくらいまで消して良いでしょうか?」

 

「嶋崎さんがクラーケンと戦っている場面のみで構いません」

 

「そうですか...自衛隊の皆さん全員ですか?」

 

「吉川さんも立場があるでしょうから彼の記憶は構いません」

その佐々木の言葉にホッとした様子で息を吐く吉川である。映像無しでは幾らおじさんを危険だと主張しても伝わらないだろう。

「ですが...他の自衛隊の皆さんは嶋崎さんが記憶を消せるという事まで消して結構です」

 

「えぇ...肩書だけで喋った事も無い人間を信用するのは危険ですからね」

ニュースを観れば、警察や自衛隊の人間が起こした不祥事なんて幾らでも見かける。SNSに情報を漏洩したり、パワハラをしたりといった物なんて腐る程ある。佐々木の言葉におじさんを頷いた後、佐々木は吉川に対して

「では、部下の方々に嶋崎さんの前で横一列に並ぶ様に命令して頂けませんか?」

 

「はい」

吉川の命令に海上自衛隊の人々は並ぶのを確認すると...おじさんは一番近い人の頭に手で触れて記憶忘却の魔法を発動させた。

「イキュラスキュオラ」

おじさんに記憶を消された自衛隊員達は気絶し始めている。

「ねぇ...あれで記憶が消えているの?」

 

「えぇ、あれで相手の記憶を探ってから特定の記憶のみを消しているんです」

 

「便利じゃのぅ...あれでは悪い事をしたい放題ではないかぇ?」

二人静が意地の悪い笑みで佐々木を見るが、彼は二人静の手...呪いの刻印がある辺りを見ながら

「えぇ...もう少し早く出会えていたら記憶を消すだけで済ます事が出来たんですが」

 

「...そうかぇ」

 

「?」

 

「うぅ......!」

「痛くないですよ...すぐに終わりますから」

3人が話している横で彼らの引率役をしていた女性自衛官『犬飼三等海尉』がおじさんに記憶を消されようとされていた。流石に彼女も怯えており、3人に助けを求める様に視線を向けているも彼らは気付いていない。

 

 

 

「終わりましたよ!佐々木さん」

3人が話していると...おじさんが自衛隊の皆さんの記憶を消し終えた様である。おじさんの周囲には気絶した自衛隊員達が倒れており、それを見ていた吉川が佐々木に対して

「あの...本当に大丈夫なんでしょうか?」

 

「えぇ...大丈夫だと思います」

佐々木は心配そうに聞く吉川に対し、念の為に検査する様に勧めている。そんな佐々木におじさんが尋ねてきた。

「あの...佐々木さん」

 

「何でしょうか?嶋崎さん」

 

「えっと...あの二人の記憶は処理しなくていいんですか?」

おじさんはそう言うと...星崎さんと二人静の方に顔を向けている。

「えっ!?私達!?」

「そう来るか...」

クラーケンとの戦闘シーンからおじさんが自分よりも強いと理解している二人静は構えている。彼女の脳裏には...以前、エルザを襲おうとしてピーちゃんによって手足を斬り落とされた時と同じ姿にされた自分が浮かんでいた。星崎さんは完全に硬直している。おじさんは二人の方を見ながら佐々木へと問いかける。

 

「二人静さんが佐々木さんにとって...」

 

おじさんの想像中でラブホテルっぽい和室の中で浴衣姿の佐々木と二人静が布団の上で寝転んでいる。二人静は佐々木の胸に猫の様に頬擦りをしていたが、彼の腹の上に乗ると妖艶な顔で佐々木に尋ねる。

『キツキツするかのぅ?』

 

『はい...♡』

 

「...色々と必要な人だと理解しているんですが」

 

「はぁ...そうですね(また...変な想像をしているな)」

 

おじさんは赤くなりながら佐々木へと言っている。それに佐々木は溜息を吐きながら答えた。彼らの姿に二人静は自分が佐々木のどういう存在だとおじさんが捉えているのが理解していた。星崎さんは少しムッとしている。

 

「でも...此方の情報は少ない方がいいと思いますよ」

おじさんは星崎さんを見ながら「それに...」と付け加えている。

「無関係な人なら尚更、此方の手を覚えさせるのは不都合だと思います」

おじさんはグランバハマルでの経験から非常に警戒心が強かったのである。二人静にはピーちゃんが掛けた腐肉の呪いがあり、彼らの異世界生活に必要な能力も持っているので多少の危険は仕方が無いが...星崎さんは禄に話した事が無い上に何と無くツンデレエルフと同じ臭いがして苦手意識を持っていたのである。

「......」

星崎さんはおじさんの言葉に疎外感を覚えていた。おじさんと佐々木が年齢の近さから短期間で仲良くなっているのは納得出来るが、その輪の中に二人静も入っており、自分だけが違うというのをはっきりと言われるのはキツいモノがあった。彼女も16歳の女子高生なのである。

 

「いえ...二人の記憶は処理しなくて構いません」

 

「いいんですか?」

 

「はい...星崎さんに不都合な事は知られていません」

佐々木はおじさんに自衛隊の人々の記憶を処理する事を決めたのは次に会うのが未定だから消しても問題が無い事と頻繁に記憶を消したら信用を無くす事と話した。そして、

「嶋崎さんに記憶を操作出来るという事実は課長への牽制になりますからね」

 

「そうなんですか?」

仮に星崎さんから課長に記憶操作の事が伝わっても特に問題は無い事を話した。おじさんが自分の仲間である事は課長も理解しているし、そんなおじさんに記憶操作云々が使えるのを知ったら警戒もするだろう...と

「それに...星崎さんは私達が本当に悪い事をしない限りは大丈夫ですよ」

 

「佐々木...」

星崎は少し感動した様に佐々木を見ている。

 

 

 

 

 

【おじさんと新たな出会い】

 

 

 

 

 

「じゃあ、次は何処に行くか?」

 

「そうね...」

とある日の午後、おじさんとツンデレエルフは豊島区の住宅街から商店街へと向かっていた。今日はツンデレエルフに東京を案内する目的で皆で遠出する予定だったが、たかふみと藤宮さんに予定が入ってしまい、彼らとは異世界食堂で一緒に夕飯を摂る事にして、それまでの時間はおじさんがツンデレエルフと一緒に東京観光する事となった。ちなみに電車賃を浮かす為に飛行魔法を時々使っており、人気の無い場所に着陸したら此処になった様である。

 

「じゃあ、お腹が空いたからラーメンを食べてみたいわ」

 

どうやら、たかふみに作った貰った事があるインスタントラーメンが気に入っており、プロが作った物を食べてみたい様だ。空から商店街を見かけたのでラーメン屋を探しに其処へと向かう事とした。道中、おじさんはお店のラーメンもピンキリだとツンデレエルフに話していると...通りかかった三階建ての廃ビルから妙な気配を感じた。

 

「ねぇ...ヨースケ」

 

「あぁ...」

グランバハマルで盗賊団のアジトや犯罪組織の根城から感じる様な嫌な気配である。ツンデレエルフがビルに向けて耳を澄ますと......野太い男の声に混じって怯えた女の子の声が聞こえて来る。それをおじさんに伝えると

「そうか...少し確認しに行くか?」

 

「そうね...何かあったら嫌だし」

おじさんは廃ビルを確認すると...隣のビルの間に狭い路地があるのを見つけた。其処へと入ると、二階の窓が開いているのを見つけた。

「あそこから入るか?」

 

「ええ、そうしましょう」

おじさんはツンデレエルフを抱えた状態で飛行魔法を発動させて飛翔すると、二階の窓から廃ビルの中へと入って行った。二人は廃ビルの中へと入ると、風魔法で足音を消してから気配のある方へと歩いて行った。

ある程度、歩いて行くと声が聞こえて来た。

 

「何だ!?あいったー!」

 

「何が起きた!?あいったー!」

 

「ちくしょう!!あいったー!」

と野太い男の声がした後に何かが吹っ飛ぶ音と何が壁に激突する音がしていた。その音を聞いたおじさん達は

「何だ?誰かが悪者?をやっつけているのか...?」

 

「魔力は...感じないわよね?」

 

「桐生一馬でも暴れてるのか?でも...あの人は歌舞伎町だよな......」

 

「その人は確か...物語の人じゃなかったっけ?」

ツンデレエルフはおじさんに呆れた様子でツッコミを入れている。二人が話している間に男達の声がしなくなった。すると、

『マミ...大丈夫?』

『うわぁぁぁあああん!!ヒナちゃん!!怖かったよぉ!!』

と若い女性達の声が聞こえてきた。声が幼い事から中高生くらいだろうか...どうやら、1人が捕まっていた子で名前は『マミ』、もう一人の『ヒナちゃん』が男達を倒した様である。おじさんが考えていると、ツンデレエルフが話しかけてきた。

「ねぇ...どうするの?」

 

「うん?どうって?」

 

「ヨースケの表向きの職業って憲兵みたいな感じなんでしょう?なら、何もしないのは不味いんじゃない?」

 

「そうだな...あの子が異能力者なら確認もしないとな」

二人が話し合っていると...女の子達の話が聞こえて来た。

『でも、凄いね!ヒナちゃんの念動力は!!』

 

『それはいいから......マミは此処から出た方がいいよ』

 

『えっ!?何で?』

 

『この人達を見たら分かるでしょ?多分、何処かのヤクザだよ』

 

『そうだね...パンチパーマの人とかいるし』

 

『だから、これから新田に連絡するから』

 

『うん...ヒナちゃんからしたら警察よりも』

 

『安心して...二度とマミに近付けさせないから』

 

『私もSNSで知り合った人と簡単には会わない様にするよ!!』

と声がしたら部屋の前で気配を消しているおじさん達の前を制服姿の少女が出て来た。少女はおじさん達に気付かず、階段を降りて行った。少女が去って行ったのをおじさん達が確認した後......もう一人の少女の声が聞こえて来た。

『縄とか無いかな?新田達が来るまで縛って置かないと......』

おじさん達が部屋の中を確認すると....青髪セミロングの女子高生が背中を向けており、彼女の周囲にはガラの悪そうな男達が倒れている。女子高生は縄を見つけると

「えい!」

と掛け声を発した。すると...縄が独りで動いて男達を拘束し出していた。その光景を見たおじさんは女子高生が異能力者である事を確信する。そして、ツンデレエルフに顔を向けて彼女と頷き合うと

「あの...ちょっと、いいかな?」

と女子高生に声を掛けた。

 

「うん?おじさん達は誰?」

女子高生はおじさん達へと振り返った。女子高生は整った顔立ちだが、無表情で覇気の無い顔をしていた。此方を訝し気に見ている彼女に対しておじさんは休日でも携帯している警察手帳を取り出すと

「えっと...俺は通りすがりの警察官なんだけど、話を聞かせて貰えないかな?」

 

「何の事?私は通りすがりの女子高生だけど...」

 

「いやさぁ...君、異能力でこの人達を叩きのめして友達を助けていただろ?」

 

「異能力?超能力の事?」

 

「うん...君って登録はしているかい?」

 

「登録?何の事...?」

おじさんは訝し気な表情で自分を見ている女子高生に対し、彼女の前で光剣顕現を発動させてみた。

「うわぁ!?」

 

「おじさんや君みたいな不思議な力を持った人は超常現象対策局っていう国家機関に登録しないといけない決まりになっているんだ」

 

「そうなの?」

 

「そうなんだ......」

 

「しないと如何なるの?」

 

「ヤクザや半グレ、テロリストみたいな扱いを受けるだろうね......この国で普通に暮らしたいなら登録するのをお勧めするよ」

 

「ヤクザ?新田と同じ?」

 

「うん?新田って誰だい?」

 

「新田は新田だよ」

女子高生のマイペース過ぎる言動におじさんは頭が痛くなってきた。「これがジェネレーションギャップって奴か?」と思っており、たかふみや藤宮さんがどんなに確りしているのか有難く思っていた。さっさと彼女との会話を切り上げて佐々木に彼女の事を丸投げしようと決意したおじさんは言葉を発した。

 

「あのさ...おじさんに君の記憶を見せて貰えるかな?」

 

「?記憶を見せる?」

 

「あぁ...おじさんは君の頭に触れる事で記憶を読む事が出来るんだ」

おじさんは変な記憶は読まない事を付け加えると、女子高生は少し考えてから頷いた。

 

「いいよ」

 

「そうか...では」

おじさんは女子高生の頭に手を触れると同時に記憶を読み始める。その結果、彼女の名前が新田ヒナである事、彼女が40年以上後の未来からやって来た超能力者である事、念動力を暴走させて群馬県のとなる街を壊滅させた事で組織から追放されて現代にやって来た事、芦川組の経済ヤクザ『新田義史』の娘として対外的に過ごしている事、他にも仲間が2人いる事、ゲームとイクラ丼が好きな事...と様々な事が判明した。

 

「......(未来からやって来た人工超能力者か...)」

 

女子高生...ヒナの記憶を読んだおじさんは内心で驚いていた。おじさんも異世界で17年間も過ごしていたが......今度は未来人とは想定していなかった。おじさんの脳裏に以前、何処かの旅館で出会った“アキバ系の人”が思い浮かんだ。もしも、彼女がアイツの仲間になったらどんな事になるか解らないと警戒心が湧いて来ていた。

 

「えっと...新田さんでいいですか?」

 

「ヒナでいいよ」

 

「そうですか...ヒナさん」

ヒナが頷くのを確認すると...おじさんは言葉を重ねた。

「今からこの国の超能力者に関して詳しい人を呼ぶから時間をくれるかい?」

 

「う~ん...」

 

「食事を奢るから」

 

「いいよ」

 

「それと...ヒナさんの仲間も呼んでくれるかな?同じ超能力者の...」

 

「アンズとマオ?」

 

「じゃあ、アンズの屋台でラーメンを奢って」

 

「解ったよ」

そう言うと......おじさんは佐々木へと連絡する為にスマホを取り出した。佐々木の予定は知らなかったが、おじさんにとっては、こういう時に連絡する相手は佐々木一択であった。佐々木に連絡が取れないなら後日にする以外に無い。

「......(連絡が付くかな...佐々木さん...せめて)」

 

おじさんの脳裏には何処かのホテルで浴衣姿で胡坐を掻いて座っている佐々木が二人静を膝に乗せ、2人で仲良くマリオカートをして遊んでいる姿が浮かんでいた。時折、佐々木が二人静の腹を撫で回しており、それを二人静が妖艶な表情で窘めている。

『コラっ......儂の腹を撫でるでない』

『すみません...二人静さんが可愛くて』

 

「...(二人静さんと一緒にいてください)」

おじさんにとって佐々木は日本にいる時は二人静と一緒にいるのしか思い付かなかった。

 

『はい...佐々木です』

 

「もしもし、嶋崎です。佐々木さん、今...大丈夫ですか?」

 

『ええ、大丈夫です。如何しましたか?』

 

「実は...野良って言うんですか?未登録の異能力者と出会いまして...色々と複雑な子なので...出来れば、来て頂きたいのですが......」

 

『複雑な子?どんな子ですか?』

 

「あの...その前に」

 

『えっ?』

 

「近くに二人静さんとかいませんよね?」

 

『......いませんが』

 

「そうですか...二人静さんがいたらアイツにも彼女達の存在が伝わるかも知れないので」

 

『ああ...気持ちは分かります...うん?彼女達......?』

 

「はい、今、翠と一緒に豊島区にいるんですが...其処で念動力者の女の子と出会い、彼女には同じ能力を持った仲間が2人いるんです」

 

『成程...では、3人の異能力者が豊島区にいると』

 

「はい...これから食事をしながら彼女の仲間と合流するので来て頂けないでしょうか?」

 

『複雑な事情があるらしいですが...星崎さんや阿久津課長には言えないという事ですか?』

 

「えぇ、私達と同じ様な感じでして...ピーちゃんと一緒にお願いします」

 

『分かりました...今は何処にいますか?』

おじさんに近くにいるヒナに聞きながら現在地を佐々木に伝えると通話を切った。多分、転移魔法で廃ビル近くの人目の無い場所に転移しているだろう。おじさんはヒナに向き直ると、

「佐々木さんって人が多分、このビルの入口付近で待っていると思うから一緒に行きましょう」

 

「そうなの?」

 

「ああ...佐々木さんはそういう能力を持っているからね」

 

「分かった...でも、その前に新田に連絡していい?この人達の処分を頼みたいから」

ヒナはスマホを取り出すと、おじさんに尋ねる。それを聞いたおじさんはある事を思い付いた。

「じゃあ、俺がこの人達を記憶を覗いて調べてあげるよ」

 

「いいの?」

 

「ああ、こういう人達を如何にかするのも仕事だと思うし」

おじさんはヒナが叩きのめした男達の記憶を探ると...彼らの記憶から新田を始めとした芦川組と敵対するヤクザ達という事が判った。おじさんはリーダー格の男の名前と素性をヒナに伝えると、彼女はスマホを使って新田に連絡してマミが襲われた事とおじさんから教えられた情報を伝えた。

 

「えっ?何でそんな事を知ってるって...嶋崎っておじさんが...えっ?誰だって?」

 

どうやら、ヒナが余計な事を言ったので新田が訝しんでいる様である。それを見たおじさんがヒナにスマホを貸す様に促す。

「俺が説明するからスマホを貸して」

 

「うん、解った...嶋崎に代わる」

おじさんがヒナからスマホを渡されると...スマホから声が聞こえてきた。

 

『もしもし...あんたが嶋崎さん?』

 

「はい...そうです」

 

『ヒナから友達を襲われたから相手を叩きのめして...そいつらの素性はあんたに聞いたって話だけど...何者だ?』

 

「警察官です」

 

『警察?じゃあ...』

 

「安心して下さい...表沙汰にはならないと思います」

 

『へっ!?何でだ...』

 

「男達は誰も死んでいないですし...ヒナさんは念動力で彼らを制圧しましたからね」

 

『なっ!?見たのか?』

 

「ええ...彼女の記憶も覗かせて貰いましたから全て知っています」

おじさんはヒナの記憶から新田に対して信頼感を抱いていた。どんな経緯でヤクザになったかは知らないが、彼女の記憶の中の新田は佐々木に勝るとも劣らない誠実な男性であり、其処ら辺の堅気よりも愛情深い父親であった。

『記憶を覗いた?』

 

「俺も彼女と同じ様な者ですから」

 

『超能力者って奴か......』

 

「はい、一応は国に所属している者です」

 

『国に...?』

 

「えぇ...その事については責任者が後で説明するので」

おじさんは責任者と相談してから新田の許に説明を訪れる事を彼に告げた。

『分かった...ヒナが叩きのめした連中は此方で片付けておく』

 

「はい...お願いします」

おじさんは新田との通話を切ると...ヒナへとスマホを返した。

「では...このビルを出ましょうか」

 

「解った」

 

「解ったわ」

おじさんに促された2人は廃ビルの玄関へと向かう。玄関から外へと出た3人は、ピーちゃんの転移魔法で豊島区に到着していた佐々木とピーちゃんと合流したヒナの仲間であるアンズが経営する屋台へと向かったという。

 

 

 

 

 

【おじさんと新たな出会い2】

 

 

 

 

 

「超常現象対策局?そんなのがあったんだ...」

 

「そうなんです」

サイドテールにした金髪の少女『アンズ』がラーメンを作る手を止め、佐々木の話を聞きながら感想を述べている。屋台ではツンデレエルフとおじさん、ヒナがラーメンを食べている。彼女の作るラーメンはヒナの同級生の男子達曰く学生食堂レベルだが、食べ慣れていないツンデレエルフは非常に美味しそうに食べている。それをアンズは嬉しそうに見ている。ちなみにピーちゃんはアンズが用意した小皿の上ののチャーシューを齧っている。

「登録しないと、新田みたいに扱われるんだって...アンズは登録する?」

 

「う~ん!?ラーメン屋は続けたいんだけど」

 

「あっ!?それは大丈夫だと思います」

難色を示すアンズに佐々木は異能力者として局に所属している者には、普段は他に仕事をしている人もいる事を説明する。局から招集されたら応じないといけない事も付け加える。

「まぁ...それなら...私も念動力を人助けに使ってお金が貰えるならそれに越した事は無いし」

 

「そうですか...それはいい心掛けだと思います」

ヒナと違って確りしたアンズの姿に佐々木はホッと胸を撫で下ろしている。そんな佐々木を他所にアンズがヒナに話しかける。

「ねぇ、マオには連絡はしたの?」

 

「うん?これから連絡する処だよ」

 

「マオ?もう一人のお仲間さんですか?」

佐々木が疑問を口にすると...おじさんがラーメンを食べている手を止めて佐々木へと言葉を発した。

「超人フィットネスの気功少女で有名なマオちゃんですよ。ほら、ドラマや食レポ番組とかに出演しているでしょう?」

 

「あぁ!確か...電車の広告とか見かけた事があります!!彼女ですか!」

佐々木が納得しているのを他所にアンズがヒナへと続ける。

「マオは特にそういうのはちゃんとした方がいいし...それに新田にはどう説明するのよ?」

 

「新田にはそのままを説明するよ...この人が」

そう言ってヒナは首を向けて佐々木を指し示す。指し示された佐々木は不安そうに言葉を発する。

 

「新田って...あの新田義史さんですか?有名な経済ヤクザの......」

 

不安そうな佐々木にラーメンを食べ終わったおじさんが言葉を発する。ツンデレエルフやヒナも食べ終わっている。

「佐々木さん...ヒナさんの記憶を覗かせて貰いましたが、その新田って人は多分、問題無いと思います」

 

「そうなんですか?」

 

「えぇ、其処ら辺のブラック企業の上司よりは遥かに真っ当な人間だと思いました」

 

「そうですか...」

佐々木はホッとした様子で胸を撫で下ろしているのを見ていたアンズがヒナへと質問した。

「ねぇ......記憶を覗いたって何?」

 

「うん?あの嶋崎っておじさんの能力だよ」

 

「あぁ!そういう能力を持っているって事ね」

納得しているアンズにおじさんが話しかける。

「ヒナさんの仰る通り...彼女の記憶を覗いたので君達の事情は知っています」

 

「あっ!はい...」

 

「私達も局には秘密にしている事情があるので君達の事情を全て上に話すつもりはありません」

 

「そうなんですか?」

 

「はい、この佐々木を連れて来たのはそういう口裏合わせをする為です」

おじさんの言葉にアンズは一先ずは首を縦に振る。それらを聞いていた佐々木はおじさんへと話しかけた。

「あの...嶋崎さん」

 

「うん?何でしょうか?」

 

「彼女らの事情とは何でしょうか?彼女らが高ランクの念動力を持っているのは聞きましたが......」

 

「えっと...それは少し此処では言えません」

おじさんは少し言い淀んだ。此処は屋外であり、記憶再生魔法を使う訳にはいかない。

「あの...何処か人のいない場所に全員で移動する事は出来ませんかね?其処で記憶を再生しながら話したいので」

 

「人のいない場所ですか?カラオケボックスの個室とか?」

おじさん二人が話しているのを見てヒナが言葉を発した。

「じゃあ、私の家で話す?」

 

「えっ!?いいのかい?」

 

「うん、いいよ」

 

「じゃあ、今日は屋台を畳むから新田とマオを呼んで其処で話し合いましょう」

アンズは片付けの支度を始めており、それに対してヒナは

「分かった...じゃあ、屋台はうちの庭に置くといいよ」

 

彼女の片付けが終わると、ヒナは屋台を引くアンズと佐々木達を連れて自宅へと向かって行った。ちなみに佐々木達は好意でアンズを屋台を引くのを手伝っている。

 

 

 

それから一時間後...ヒナの家である一軒家の居間にこの家の主であり、ヒナの父親である新田とヒナの仲間であるマオを含めた関係者が集合していた。ちなみに新田はおじさんが直々に芦川組の事務所まで迎えに行ったので少し彼に対してビビッている。

「えっと...つまり、私達は日本の超能力者達を裏で管理している超常現象対策局に登録しないといけないって事ですか?」

 

「そうです...この国で平穏無事に生活したいならお勧めします」

 

「まぁ...仕事に関しては便宜を図ってくれるんですよね?」

 

「はい、マオさんは既に世間に対して知名度がありますので上も考慮してくれるでしょう」

佐々木とマオの話し合いが纏まった処で佐々木は自分達の上司である阿久津課長に関する説明を行う。入局当初に自宅に盗聴器等を仕込まれた事や初仕事で相手側の組織ときな臭いやり取りをしていた事、そんな阿久津課長と自分達が対立関係にある事も話した。

「何か...その課長って人、私達がいた組織の大人と同じ臭いがする」

 

「その事件で沢山、人が死んだんですよね?」

 

「ちょっと無理だわ...そういう人」

 

「お役所様も後ろ暗いもんだな...」

ヒナ達の様子を見て佐々木は

「では...実際に見てみますか?」

 

「えっ...動画でもあるんですか?」

 

「はい、嶋崎さんお願いします」

おじさんに記憶再生魔法を頼んでいる。おじさんは頷くと佐々木の頭に手を当て

「分かりました...《イキュラス・エルラン》」

記憶再生魔法を発動させた。空間にテレビ大のモニターが現れ、其処に佐々木の過去の記憶が映像として流れ始めた。

「うわ...」

 

「えっ?」

 

「これっ?」

 

「こいつは...」

ヒナ達は驚きの声を上げている。ヒナは廃ビルでおじさんが光の剣を発生させるのを見たが、残りの三人は念動力以外の超能力を見るのが初めてなのである。空間に現れたモニターには佐々木の超常現象対策局に関する記憶映像が流れている。

星崎さんとの出会いから

「あっ!ヤクザっぽい人が腕を剣に変化させている」

 

「これは氷を操っているの?」

 

「この人にスカウトされて入ったんですか?」

 

「はい、そうです」

阿久津課長との出会い

「何か...目付きが嫌だね...この人」

 

「うん...こっちを見る目が冷たくて......超人会の上層部にこういう人がいたよね」

 

「自分の事しか考えていない奴の目だね」

 

「いけ好かねぇな...」

初仕事での記憶

「この女の子はどういう能力なの?」

 

「エナジードレインです。触った相手の生命力を吸い取って自分の寿命や身体能力へと変換する事が出来るんです」

 

「強いの?ゲームではそういう能力ってダメージが少ないけど」

 

「人間を触れただけで殺害する事が可能です」

 

「そうりゃあ...ヤベぇな」

 

「この動き......私達が自分の身体を操作した時よりも上かも知れない」

 

「うん、そうね」

一先ず...超常現象対策局に関する佐々木の記憶を見終わったヒナ達に佐々木は尋ねる。

 

「私の記憶を見終わった処ですみませんが...」

 

「うん?何?」

 

「皆さんの事情というのを聞かせて貰えませんでしょうか?」

 

「私は別にいいけど...」

 

「えっと...上の人に報告するんですか?」

 

「いぇ...嶋崎さんの言う通りに皆さんの意思は尊重するつもりです」

 

「じゃあ、私も構いません」

 

「私も......正直、証拠でも無い限りは誰も信じないんじゃない?」

ヒナ達三人が佐々木の頼みに頷くのを確認すると、佐々木は新田へと言葉を発した。

「貴方は構いませんでしょうか?」

 

「俺も構いません」

新田が頷いている横でヒナ達が話し合っている。

「じゃあさ...誰が話す?」

 

「私が話すよ...ヒナじゃ言葉が足りないしね」

 

「え...アンズが話すの?」

 

「仕方無いでしょ?あんたじゃ上手く話が伝わるか分からないんだから」

 

「じゃあ、アンズが代表で話す事に決まりね」

話し合いを終え、アンズが佐々木へと向き直る。

「待たせてすみません。私が代表して話します」

 

「そうですか...では、お願いします」

 

「はい、私達3人は今から40年後からやって来た未来人なんです」

 

「未来人ですか?40年後の...」

 

「そうです。40年後に超人会...今の超人フィットネスが元となった組織が創り出した人工超能力者なんです」

佐々木はおじさんの方を向くと...

「そうなんですか?」

「はい...ヒナさんの記憶を覗きましたが、彼女達の言っている事は本当です」

おじさんは彼女らが今から3年程前に、この時代にタイムスリップして来た事とヒナが自宅で寛いでいた新田の頭上に落ちて来た事や彼女に続いてアンズやマオもこの時代にやって来た事を付け加える。

「そうですか......」

佐々木は内心で「今度はSFか...」と呟いている。彼は少し考えると...新田に対して言葉を発した。

「あの...ヒナさん達の戸籍はあるんですよね?」

 

「ありますよ...ヒナは俺の娘として伝手を使って作りましたし、アンズも林さんって最近までラーメン屋を経営していた夫婦の養女になっています」

 

「私も中国にいた時に超人拳法の師範が役人に頼んで作って貰いました」

 

「そうですか...では、3年以上前の経歴の事で突っ込まれた時は記憶喪失で切り抜けましょう」

と佐々木は結論を出した。彼らの会話を聞いていたツンデレエルフとピーちゃんが小声で話している。

『あの...タイムスリップって何でしょうか?』

 

『過去や未来といった別の時代に転移する事を言うらしいな』

 

『ちなみに...ピエルカルロ様の世界にはあるの?時間に関する魔法って』

 

『少なくとも我は知らないな...グランバハマルには?』

 

『私も知りません』

 

『40年後にそういう科学技術というのがあるのか......出来れば見てみたい物だな』

ピーちゃんとツンデレエルフがそういう会話を繰り広げている横で佐々木達の話し合いは進んで行っている。数十分後に話し合いが終わった後、佐々木によって局へと連絡され、阿久津課長との通話の結果、ヒナ達三人は芸能人であるマオの予定に合わせる形で後日、三人で登録する為に局へと赴く事が決まった。

 

新田は芦川組にやり残した仕事をする為に戻り、おじさんとツンデレエルフはピーちゃんを加えて洋食店『ねこや』へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 




一番目の話...最後に出て来た人が誰か分かりました?


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。