進撃のサイヤ人 (ただのトーリ)
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プロローグ

進撃見てるとエルディア人やらマーレ人やらで揉めてるけど、そこにサイヤ人ぶち込んだらどうなるのかなって思い描きました。
たぶん、ひでぇことになる(確信)


 転生しました。

 神様に会う訳でも無く、普通に事故で死んで目が覚めたら知らん部屋にいました。

 

 かつての自身の記憶は無いが、それ以外の記憶はある。

 男だった気もするし女だった気もする……オカマだったのかな俺……?

 

 それよりも他にも気になる点がある。

 なんでか尻の少し上あたりから動物のシッポ……というか猿のシッポみたいなのが伸びてるんだ。

 

 ニホンザルとかの小さいヤツじゃない。

 細長くて茶色いロープみたいなやつだ。

 

 

 これを見て俺は、かつての記憶の断片にあるとある漫画キャラクターを思い出していた。

 

 

「まるで悟空みたいだな」

 

 そう呟く声もアニメ版そっくりな声をしている。

 どうやら俺はなんの冗談か、アニメのキャラとして転生したらしい。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 転生してから4年がたった。

 その間、特にやることもなかったので修行と称して身体を鍛えることにした。

 もちろん家のことを手伝いながらの合間なので、それほど捗った訳では無いが既に子供とは思えない筋肉質な体型になりつつある。

 

 

 その間に色々なことを知った。

 

 俺の親は外国人風の顔立ちだった。

 しかも服装は質素というか、前世の文化レベルから考えると古臭い感じだ。

 

 もしやと思い部屋やら家財を調べて回った所、中世位の文化レベルだと判明。

 そんな中両親は山奥にある集落で暮らしてるようだ。

 

 母はメリア・ロメオ、父の名はガリア・ロメオ。

 

 狩人として暮らしており、お隣さんは居るには居るがその距離は馬が必要なくらいには離れてる。

 

 確かブラウスって名前の父娘が2人で暮らしてる。

 親父と向こうの父親が知り合いらしくたまに一緒に狩りをしてるらしく、今度俺も向こうの娘さんと一緒に行くことになってる。

 

 

 

 次に俺はやっぱりサイヤ人だった。

 両親の見た目が自分と異なりすぎていたので、それについて聞いてみたらその際に「貴方は山奥で捨てられていたの。丸い入れ物に乗って」と話したのだ。

 

 残骸は既に回収されてしまったらしいが、地面にどんな形かを描いてもらったら、見た目がまんまサイヤ人のアタックポッドだった。

 

 どうやらその中で血だらけで倒れる俺を両親が見つけたのだという。

 

 しかも着地に失敗したのか、中にいた俺は頭をしこたま打ち付けていたらしく、俺のやわ意識がハッキリしたのはその怪我が完治したタイミングだったようだ。

 死ななくてほんとに良かった。

 

 

 

 

 そんなある日……。

 

「バルト、また訓練してるの?」

 

 筋トレをしていると母さんが声をかけてきた。

「まぁね、狩りをするにも体力と力は必要だし……半分趣味みたいなもんだよ」

 

 

 俺の言葉に呆れながらも母さんは肩を竦めて「しょうがない子だねぇ」と笑う。

 そして話しかけた用事を思い出したように続ける。

「そうだ、お隣さんのブラウスさん達が来てるんだよ。コレから狩りに行くらしいんだがアンタも行ってきたらどうだい?」

 

 

「え、今来てるの? いきなりだなぁ」

「ふふ、サシャちゃんがどうしてもって言い出したらしいわよ」

「サシャ?」

「ブラウスさんちの娘さんよ。あんたより1つ下なんだから優しくしてあげるのよ?」

「ふーん、わかったよ。とりあえず狩りの準備してくる」

「はいはい」

 

 俺の反応を見て『女の子が来ても浮つかないなんて筋金入りねぇ』なんて呟きながら部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 俺は1人部屋に残りながら頭を抱えていた。

 

「待って……サシャって言った? え? たしかブラウスって言ってたよな? つまりサシャ・ブラウス? ……いやいやいや、流石にないって。まさかそんなはずない、きっと同姓同名の別人ーー」

 

 

 

 

『肉ぅーーー!!』

『こらサシャ! 人様の家の肉を食おうとするな! イダッ! 手を噛むなや!』 

 

 

 そんな家族以外の声が聞こえてきた。

 

 ダメだ……あんなぶっ飛んだファーストコンタクトしてくるような女の子、あいつしか居ねぇ……。

 

 

 どうやら俺は進撃の巨人の世界へ転生してしまったらしい。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 結論から言えばお隣さんはサシャ・ブラウスの親子だった。

 

 野生の芋女があらわれた!

 

 脳内でそんなテロップが流れたよ。

 

 

 

 内心混乱する俺だったが、何とか取り繕いその日の狩りで大きなイノシシを3頭仕留めた。

 

 修行し始めて既に数年立っていたこともあって、かめはめ波なんかはまだ撃てないが簡単な気弾くらいは出せるようになっている俺は周りの目を盗んでほぼ暗殺に近い仕留め方をしていた。

 ちなみに武器は猟銃ということにしているので、出す気弾もどどん波みたいな小さな弾丸形状にして放っている。

 毎回貫通させているため、解体時に不審がられることは無い。

 ……まあ、それでも親父はなんとなく違和感を感じているようではあるが。

 

 

「お近付きの印に1頭(これ)やるよ」

「ええんか!?」

 

 

 そのうちの1頭をサシャにプレゼントしたらすごく喜ばれた。

 

 友好的な関係を築くことに成功したとおもいたい。

 ただそれ以降、サシャのやつが俺の家に来ては「狩りに行こうや! おチカヅキ、期待してるで!」と度々訪れるようになった。

 

 こいつ、お近付きの印を贈り物()を貰う合言葉か何かと思ってやがる。

 アホの子すぎて可愛いのが腹立つ。

 

 

 実の所、進撃の巨人は途中までしか読んでいない。あれが完結する前に俺が死んでしまったせいで結果どうなるのか知らない。

 

 ただ、分かるのはエレンを暴走させると世界がヤバいってことは理解している。

 

 だから俺はこの世界でやることを決めた。

 

 

 俺は、この世界で最強になる。

 

 

 



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主人公と対面

基本的に訓練兵時代の流れはカットして行きます。
長いからね!仕方ないね!

あと、主人公は物語が進むまでは猫被ります。
はっちゃけ始めるのはも少しあと。



 サシャとの出会いをしてから2年目。

 ついにあの日が訪れた。

 

 シガンシナ区の崩壊と、ウォールマリア陥落の凶報。

 

 50mを超える超大型巨人と鎧の巨人による襲撃が発生し、100年続いた歴史に終止符がうたれたのだ。

 

 これにより人類の生存領域をウォールローゼにまで後退させられてしまった。

 

 それにより大量の難民がなだれ込み、あっという間に食糧不足へと陥った。

 

 その余波は俺たち狩人にも飛び火することになった。

 狩場である森を切り開かれ、農地として開拓地にされたことで俺たちの仕事場が徐々に失われて行ったのだ。

 

 確かに多くの人間を食わせる為ならば、狩りでは限度がある。

 開拓して農地を作った方が長期的な目を見れば間違いないのだが、それに対し狩人として生活を立てていた者達からの反感は強かった。

 

 

 特にサシャ、彼女は肉をこよなく愛する性質故にどうしても反対の様子だった。

 大して彼女の父は時代の流れや人として、群れとして生きる以上逆らえない物の存在を理解していた。

 

 それ故に反発する親子の間に立たされる事も1度や2度ではなかった。

 

 そんなことを繰り返しているうちに、俺はサシャの兄貴分として認められてしまい……すっかりサシャに懐かれてしまった。

 

 

「バルトも一緒に兵士になりましょうよ! そしたら美味しいもの沢山食べれますから!」

「いやいや、飯も大事だけどそれ以上に死ぬ思いもするかもしれないんだぞ? そんな簡単な理由でいいのかよ」

 

 あれからサシャは言葉遣いを改め、近く開かれる訓練兵募集の参加を俺に持ちかけていた。

 元々俺は訓練兵としてなるつもりだったが、出来ればサシャには争いの道から離れて欲しかった。

 

 原作では中々の兵士っぷりだったが、それはあくまで漫画の話。既に数年ときをすごした事で俺は彼女を漫画のキャラとしてではなく、一人の妹分として大切に思うようになっていたのだ。

 

 そんな彼女が死と隣り合わせの世界だなんて、そう思う気持ちが強かった。

 

 ちなみに彼女の父親は「サシャはもっと人の中で生きるべきだ」とサシャの意見を尊重するスタンスのようだ。

 

 

 対する俺の両親も心配そうだが「バルトのやりたいようにしなさい。だが絶対に生きて帰れ、どんな卑怯な手を使っても」と言われた。

 

 

 結局、あれこれ考え直すようにサシャに伝えたが意見は変わらず、彼女が13歳で俺が14歳の時に訓練兵へとなることが決まった。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

 両親たちに別れを告げ向かったのはウォールローゼ南方にある訓練兵駐屯地のあるトロスト区。

 そこには既に俺たち同様に訓練兵になることを目的として集められた男女が集合していた。

 

 既に訓練兵候補生として参加した俺たちは兵士の革製ブーツとジャケットなどに身を包んでいた。

 背中には2本の剣がクロスした所属兵団を明記する紋章が刻まれている。

 ちなみにサイヤ人の証であるシッポは腰巻のように巻いて誤魔化している。

 男のケツをガン見するような奴でも無ければ気づかない筈だ。

 

「お、多いですね……」

 どこか怯えたような口調のサシャ。

「そうだな、まあここからどれだけ減るのかって感じだが」

「……随分と落ち着いとるけど、緊張とかしないんか?」

 

 ふとした拍子に素の言葉がでるサシャの頭を撫でつつ答える。

 

「あのな、そもそも俺たちは俺たちのできることしか出来ねぇんだよ。だからここで他人と比べても意味は無いんだ」

「そう、なん?」

「そうだ。そんなことより緊張して動けませんでしたってほうが情けないだろ? 狩りだってリラックスしてないと緊張が獲物に伝わることあったじゃねぇか」

「あ! 確かに!」

 

 俺の言葉にぱあっと表情を明るくさせたサシャは、先程までの緊張など無かったように明るくなる。

 

 すると「ちょっと周りを見てきます」なんて言ってフラフラと歩き出した。

 あまり離れるなよ、と告げると軽い返事とともに歩き去っていた。

 ……あいつの自由奔放さはいつまでも治りそうにないな。

 

 

 そんなことを考えているとーー。

 

 

「これより訓練兵入団式を執り行う! 各員整列!!」

 ビリビリとした声で集められた広場に響き渡った。

 慌てて整列するがサシャの姿がない。

 あのバカどこに……とおもったら少し離れたところにいた。

 よかった、入団式に間に合いませんでしたじゃシャレにならんからな……あれ、あいつ何持ってーー! そうだ、あのバカ原作だとふかした芋を食い始めて教官にみられるんだった!!

 

 慌てて手に持ってるものを捨てるように合図を送るが、あいつは首を傾げるばかり。

 

「訓練兵、前を向け!!」

「ハッ!!」

 

 くそ、俺が怒られちまった。

 

 

 

 整列するとハゲ頭の怖い顔した教官が各訓練兵の前を巡回しだした。

 

「おい貴様! 貴様は何者だ!!」

「シガンシナ区出身! アルミン・アルレルトです!!」

「そうか、馬鹿みてぇな名前だな! 親が付けたのか!」

「祖父が付けてくれました!」

「アルレルト! 貴様は何しにここへ来た!」

「人類の勝利の役に立つためです!!」

「それは素晴らしいな! 貴様は巨人の餌になってもらおう!!」

「3列目、後ろへ向け!!」

 

 

 

 こんなやり取りが行われる。

 曰く「兵士として生まれ変わるためにこれまでの人格を完全否定する儀式」ということらしい。

 まあ、この程度の暴言と叱咤で心が折れる様なら兵士はならん方がいい。そのふるい落としなんだろうな。

 

 というか彼がアルミンか。すげー線が細いな、ちょっと殴ったらまじで骨が折れそうなくらいじゃないか。

 あっちはエレンで、あれがミカサ……と。

 

 

 そんなことをしていたら教官が俺の前に立った。

 

 

「おい貴様、貴様は何者だ!」

「ウォールローゼ南区ダウパー村から来ました! バルト・ロメオです!」

「そうか、役に立たなそうな木偶の坊! 貴様は何しに来た!」

 その問いが来た時、ほんの少しだけ気を解放しつつ、教官の目を見る。

 

「巨人共に本物の化け物を見せてやるためです」

 すると教官は僅かに目を見開くと僅かに口端を上げた。

 

「……ほう。よし、4列目後ろへ向け!!」

 

 

 そんな感じでずっと続いた。

 ちなみにコニーは敬礼を間違えたが、サシャは意外にも教官にバレずに芋を食い切った。

 あいつ、狩りで教えた気の抑制を使ってまで芋を食いやがった。

 

 サシャのやつ気弾や舞空術は使えなかったが、気の解放と抑制に関してはセンスがあったらしくすぐに覚えた。

 

 抑制を完全に行うと、視界に入っていても存在感がぼやけるように薄くなる。サシャのはまだ未完成だがそれでもなかなかの練度で1人で多数の訓練兵を見ている教官ではついつい見落としてしまうのも無理は無い。

 とはいえ、くだらんことに技術を使ったサシャには罰が必要だな。

 

『お・し・お・き』

 

 と口パクでサシャにやってみせると青ざめた顔で震えた。

 

 

 

 

 

「第104期訓練兵団、よく聞いておけ! 今の貴様らはせいぜい巨人の餌になるしかないただの家畜!!

 そんな貴様らに巨人と戦う術を叩き込んでやる! 餌のまま死にたくなければ、必死に食らいついてこい!!

 今日は立体機動を使った適性検査を執り行う、出来の悪いやつは今からでも開拓地に移ってもらう! すぐ準備にかかれ!!」

 

 

 通過儀礼を終えるなり即座に訓練が決まった。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 立体機動の適性に関してはマジで不安だった。最悪舞空術を使ってチョロまかそうかと考えていたが、どうやら修行の過程で三半規管やバランス感覚も鍛えられていたらしく、驚くほど体幹がブレずにこなせた。

 

「すげえ、アッカーマンとロメオの2人全然ブレてねぇぞ」

「スプリンガーとブラウスも中々だ。こりゃあ今年は才能があるやつが多そうだ」

 

 そんな声が聞こえる中、物凄い音が訓練所に響いた。

 

 見れば例のエレン・イェーガーが盛大にバランスを崩し転んだところだった。

 

 

 訓練兵達は彼の無様な様を見てクスクス笑っていたが、俺は気を消してその集団をかき分けエレンの隣に立つ。

 

「大丈夫か?」

 声をかけると緑の瞳が呆然とした様子でこちらを見上げた。

 

「あ、ああ……」

 

 恐らくこの適性が無ければ兵士にすらなれないのだから、精神的動揺は物凄いのだろう。

 しかし兵士を志すのならこの程度で茫然自失はいただけない。

 

「君は兵士になるのだろう? たった1度の失敗で諦めるのか?」

 

 そう告げると彼はハッとした様子で俺を改めて見上げる。

「そ、そうだ……こんな所で躓いてる暇なんてないんだ。俺は絶対調査兵団になるんだ」

 

 彼は自問自答のように呟きながら立ち上がる。

 そしてもう一度トライしようとするが、その前に声を張り上げる。

 

「教官、よろしいでしょうか!」

「なんだロメオ訓練兵」

「彼は全くバランスをとることも叶わず倒れたと聞きます、しかしそれほど難しいのならばもっと脱落者がいてもおかしくありません。よって彼の装備に何かしらの不備があると思われます! イェーガー訓練兵の装備の点検を再度行ってもよろしいでしょうか!!」

「……よかろう」

 

 キース教官の言葉によって駐屯兵団の兵士がエレンの装備を確かめると、確かに内部パーツの一部が破損していた。

 

 急遽別の装備でエレンがトライしたところ、サシャやコニーレベルの良いバランス感覚を発揮して見せた。

 

 これには影で笑っていた訓練兵達はバツが悪そうに目をそらすのが見えた。

 

「よろしい、イェーガー訓練兵合格!」

 

 その掛け声と共にアルミンやミカサがやって来て彼の合格を喜ぶ。

「あ、さっきはありがとうな! おかげで脱落しないですんだぜ!」

「気にしないでいいさ。ただ一つだけ言わせてもらっていいか?」

「なんだ?」

「兵士だけじゃなく戦いに身を置く者は常に心を冷静に保つ必要がある。もちろん、激情のように燃える意欲も必要だが、一度の失敗やトラブル程度で茫然自失になるようじゃダメだ。今後はその辺を心がけて訓練すると君はもっといい兵士になれると思う」

 

 俺の言葉に思うところがあるのか悔しそうに頷く。

「……たしかに、たった1度失敗した位で情けねぇ姿を見せちまったな。わかった頑張ってみるよ! お前名前はなんて言うんだ? 俺はエレン・イェーガーだ」

「バルト・ロメオだ。あそこにいるサシャと幼なじみなんだ。よろしくな」

 

 そう言って遠目から俺の顔色を伺っているサシャを指さす。

 

「ひぇ!? なんでバレたんですかぁ!?」

「バカ、お前に気の抑制を教えたのは俺だぞ。お前の未熟な気のコントロール程度すぐ見抜けるわ」

 

 そんな俺とのやり取りを横で見ていたエレンたちは唖然としていた。

 

「全然気が付かなかった」

「俺もだ……」

「というか、彼が最初エレンに駆け寄る時も直前まで気づかなかったよ。まるで突然現れたみたいだった」

 

 

 

 3人はふんわりとだが俺とサシャが何かをやっていると感じ取ったらしい。やっぱりセンスが光る三人組だよな。

 

 ミカサやエレンはもちろんの事、頭のいいアルミンは状況などから答えを導く才能がある。

 

 

「ほら、お前も挨拶しろ」

「えっとサシャ・ブラウスです、よろしくお願いします」

 

 人見知り&なれない外向けの言葉遣いでオドオドした感じになったが、特に何かを言われることも無く受け入れられた。

 

「私はミカサ・アッカーマン、エレンとは家族」

「僕はアルミン・アルレルト。僕ら3人も幼なじみなんだ」

 

 自己紹介を終えると同時にキース教官の声が響く。どうやら他のメンツの適性検査が終わったらしい。

 何人か馬車に乗せられて開拓地へと連れていかれるのを見た。

 

 失意やら悔しさを滲ませて立ち去る彼らを見て、今後起きる戦いを思うと残った方が良かったのか開拓地に送られた方が良かったのか判断に迷うところだ。

 

 

 今後、この光景を何度見ることになるのやら。

 



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暴露からの勧誘

感覚的には現段階で界王様の修行を受けてるくらいの強さ。
戦闘力1000~2500くらい。

チート転生として既に界王拳も使えるしスーパーにも慣れるけど、体が負担に追いつかないためリミッターがかかってる状態。
成長することで少しづつ解禁していくスタイル。



 訓練兵となって2年が経った。

 100人いたはずの訓練兵は既に40人弱にまで減ってしまった。

 訓練の過酷さについて来れず脱落したものや、途中で事故により命を落とした者もいる。

 

 

 そんな中、既に訓練に慣れてきてしまい、物足りなくなりつつある今日この頃。

 

 周りのみんなは苦しいやらきついやらと言っているが、どうしても元々の身体のスペックに差があるのか疲労を感じない。

 

 最初こそ疲れやら筋肉のこわばりを感じたのだが、どうにも鍛えれば鍛えるほどそれに答えるように強化される肉体のせいでもはや負荷となり得なくなっていたのだ。

 

 

 その事をエレンたちと飯を食いながら呟いたら化け物を見るような目で見られた。

 

「バルト……さすがに私でも『物足りない』なんて言えない」

 体力おばけと言われたミカサにすら引かれたことにちょっとショックを受けた。

 

 そしてサシャに至っては「でしょ!? この人昔から化け物じみた体力してるんですよ! 一緒にいるこっちの身にもなって欲しいです!」と我が意を得たりとばかりに騒ぎまくる。

 

「そもそもお前の方から毎日俺のところに来てたじゃねぇか」

「そ、それは貴方が毎回美味しいお肉を取ってくれるから……」

 

 そんなやり取りをしていると、不意にコニーが絡んできた。

 

「お前ら幼なじみなんだよな? 村では何してたんだよ」

「んー……主に狩りと修行かな」

「しゅぎょう?」

 

 首を捻るコニーだがエレンは目を輝かせる。

 

「お前、兵士になる前から訓練してたのかよ!」

「まあ、こんな事態が起きるなんて思ってなかったけどな。趣味のようなもんだ」

 

 そこにライナーとベルトルトが混ざる。

 

「それでもいい心がけだと思うぜ。対人格闘術だとミカサ・アニ・バルトの3人がトップ成績だ。正直、この3人とはやり合いたくないってくらいだぜ」

「うん、アニの蹴りも鋭いし、ミカサの拳も早くて目で追うのがやっとだ。……バルトのはもう見えないくらいだね」

 

 2人からの評価を聞きつつ、内心では彼らに対する扱いを決め兼ねていた。

 

 ライナー・ブラウンとベルトルト・フーバー。

 彼らの正体は鎧の巨人と超大型巨人だ。

 

 理由は……なんだったか、人類の殲滅だかなんだか言っていたがうろ覚えだ。既に転生してから9年経とうとしてるせいであやふやだ。

 もっと早くここが進撃の巨人の世界だとわかっていれば、記憶が鮮明なうちにメモを取ったのだが、残念ながら中途半端なものになってしまった。思い出せたらそのタイミングでメモしていこう。

 

 

 

 

 それでも彼らの人格そのものは好ましいものだった。

 出来れば敵にしたくない。

 

「まあな、俺の目指すところは地上最強だからな」

「地上最強? 人類最強じゃなくて?」

 

 俺の言葉に話を聞きつけたトーマスが口を挟む。

 

「ああ、人類最強じゃそのうち別の人間に脅かされるからな。地上生物最強になれば誰にも俺の大切なものを奪わせないで済む。地上最強の力、それは人間も法律も、更には巨人などの全てを蹴散らす力になるからだ」

 

「壮大な夢だなぁ」

 トーマスの後ろでミーナも感心した様子で呟く。

 

 ……お前たちもその守りたい対象なんだよ。

 原作では彼らは真っ先に死んでしまった。

 呆気なく死んでいく仲間たちの姿に漫画を読みながら唖然とした覚えがある。

 

 だが今は漫画でも物語でもない、実際に生きる世界なのだ。

 彼らの未来が決めつけられていようと、俺は必死に抗うと決めている。

 

 だからもっと強くなりたいのだ。

 

「……キース教官に特別メニュー作ってもらうように打診してくる」

「は!?」

 

 驚くエレンを無視して立ち上がり、宿舎を出て行く。

 後ろから「あいつやっぱどこかオカシイって!」という声がきこえた。

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「教官、少しよろしいでしょうか」

 コーヒーを飲んでいたキース教官に声をかけると彼はゆっくりと振り返った。

 

 

「バルト訓練兵か、どうしたこんな時間に。明日も訓練があるのだからさっさと寝て明日に備えろ」

「実はその訓練についていくつかお願いがありまして来ました」

「言ってみろ」

「どうか俺の訓練メニューを今の倍、もしくは3倍厳しくしたものを組んではいただけませんか」

 

 その言葉に目を見開くが、動揺を直ぐに抑えて「理由は」と続きを促してきた。

 

「実は最近の訓練内容があまりにもぬるいのです」

「……自惚れ、では無さそうだが……それにしても大きく出たな」

「事実ですので、正直ココ最近の訓練ではスタミナの向上すら感じられません。本音を言えばもう巨人相手に実戦経験を積みたいくらいなのです」

「……流石にそれは無理だ。貴様が優秀であることは認めよう、おそらく今期の訓練兵の中ではダントツで一番だ。しかし、それはあくまで訓練兵の中での話だ」

「もちろん、技術面においては先輩方には負けます。ですがそれは皆と同じ土俵で戦った場合に限ります」

「……どういう事だ」

 

 俺の言い回しに何かを感じとったのか目を細める教官。

「少しだけ、訓練場へ行きませんか」

「ーーいいだろう」

 

 僅かな逡巡の後、彼は頷いた。

 

 

 

 訓練所に移動をすると、俺は教官と向き合う。

 

「それで、何をするつもりだ? 見たところ立体機動装置もつけていないようだが?」

「はい、今から教官には俺の秘密を1つ打ち明けたいと思います。それを見てもらい、必要なら然るべき所へ報告してもらいたいと思っています」

「秘密……?」

 

 訝しむ教官から少し離れ、両足を肩幅ほどに開き向き合う。

 

「人間には気と呼ばれるエネルギーが存在します。それらは基本的に川の流れのようにただひたすらに身体から外へと流れ出ているもので、総量は人によって大きく異なります。

 ですがその気の総量は鍛錬などによって多くすることが可能で、肉体の強化により反映されていくのが気の本質です」

 

 

 グッと僅かに力を込める。

 すると身体から白い炎にも似たゆらぎが立ちのぼる。

 

「見えますか? これが肉眼に見えるようになるまで練り上げられた気の姿です」

「これは……」

「気は高めれば高めるほど、その人物の戦闘力を大きく底上げしていくことが可能です。このように」

 

 そう言って訓練所に無数に自生している巨大な大木目掛けて拳を振り抜く。

 次の瞬間、轟音と共に木がへし折れる。

 

「なっ……」

 驚きを露わにするキース教官。

 流石に気を解放して打ち込めばこうなるか。

 

「……他にもできることは多数あるのですが、これ以上は騒ぎが大きくなりすぎますので」

 

 そう言うと、ハッとした様子で周囲を見回す教官。

 すると先程の音を聞きつけ駐屯兵団が駆けつけてきた。

 

「貴様、これが狙いか」

「すみません教官、これが一番手っ取り早い方法だったので」 

 

 騒動を聞き付けた駐屯兵団によって俺と教官は一時拘束されることになった。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 その翌日の昼過ぎ、俺は調査兵団の屯所へと来ていた。

 

 

 原因不明だがトラブルを起こした張本人として地下牢に1泊させられた。

 

 普通ならば数日の謹慎のはずだが、キース教官が俺の言葉と行動を真実だと証言してくれたことで、翌日の朝には噂を聞き付け眼鏡をかけた調査兵団所属ハンジ・ゾエが会いに来た。

 

「君かい? 素手で木を殴り折ったという巨人顔負けの力を持つ子って」

「はい」

「ひとつ聞くけど、君はその力で何をしたいんだい?」

「そうですね……とりあえずウォールマリアから巨人を消し去って狩場を取り戻したいですね。肉の少ないスープはもう飽き飽きです」

 

 そう言ってやると、一瞬キョトンとした顔をしたと思いきや腹を抱えて笑いだした。

 バカにするような笑いではなく、ひたすらに愉快だという笑い。

 

 長年、巨人相手に屈辱と辛酸を味わわされて来た歴史の中、これ程豪胆かつ不遜な言い回しをする人間など数える程しか知らない。

 

「面白いね君、よし! 私と一緒に来てくれるかな? 君ならきっと楽しめる場所だと思うよ?」

 

 俺はその言葉に対し、待ってましたとばかりに口端を大きく歪めて笑う。

 

「喜んで」

 

 

 

 

 



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面談

ちょいと短め。
リヴァイのキャラをイメージしながら書く時、確認を兼ねて音読してるんだけど正直オルオみたいになってる俺がいちばん恥ずかしい。


能力を見せ始めてからが主人公のオフザケ癖がチラ見えしてくる頃合い。


 そして通されたのは調査兵団屯所。

「ここにね、君に合わせたい人がいるんだ」

 

 どうぞ、とばかりに扉を開けるよう促すハンジ。

 

 あからさまな罠の匂いだが乗ることにした。

 

 扉を開けると、その隙間を縫うようにして立体機動装置のブレードが突き込まれた。

 軌道は俺の鼻先を掠める程度だがかなりギリギリ。下手に避けようとしたりすると逆に大怪我を追うコースだ。

 

 避けても良いんだがソレだとビビったと思われそうなんだよな。……よし、逆にビビらせるか。

 

「おっと」

 

 そう言いつつわざと手を伸ばしてブレードを掴む。

「バッーー!?」

 

 鋭く突き込まれた刃物を掴むなんて馬鹿な行動をしたせいでハンジと、扉の向こうにいる人物が驚くのがわかった。

 ブレードを引こうとするのが分かったがそれをさせる前に掴む。

 

 次の瞬間、バキィンと音を立ててブレードが砕け散った。

 

「ええぇぇぇぇ!?」

 驚きの声を上げるハンジにわざとらしく謝る。

「すみません、つい驚いて壊しちゃいました」

 

 

「白々しい奴だ。ハッキリと目で追ってたじゃねぇか」

 扉越しに声が聞こえるとゆっくりと扉が開かれ、俺にドッキリをしかけてくれた人の姿が見えた。

 三白眼の鋭い目付きと小柄な体格……人類最強と言われ1個師団並の戦力と称されたリヴァイ兵士長の姿がそこにはあった。

 

 

「入れ、中にエルヴィンが居る。ハンジ、テメェもだ」

 

 促されるように入ると今度こそドッキリは無く、デスクに腰掛けた金髪の男性が出迎えた。

 七三分けでどこが学者然とした雰囲気を醸し出す彼はエルヴィン・スミス。調査兵団13代目団長だ。

 

 

 中に入るとリヴァイ兵士長はエルヴィン団長の右隣にある本棚にもたれ掛かり、ハンジは逆側に立つ。

 

「私は調査兵団13代目団長を任されているエルヴィン・スミスだ。名を改めて聞こうか」

「ハッ! 第104期訓練兵団所属バルト・ロメオであります!」

 

 敬礼の姿勢を見せつつ真っ直ぐ見つめ返す。

 

「前日の夜君は訓練所にキース教官を呼び出し、轟音と共に大木をへし折った……と報告にあるがこれは事実か?」

 

「事実です」

「しかしその大木は実際に見たが直径2メートルを超える巨木だ。人の腕でなせるとは到底思えないが?」

「ご希望であれば同じことを目の前で行いますが」

 

 ちらりとエルヴィン団長はリヴァイ兵士長を見るが、鼻をフンと鳴らせるだけだった。

 

「どうやら嘘では無さそうだが……では質問を少々変えよう。

 何故このような行動に出た? 聞けば君は直前、エレン訓練兵らと共に雑談していたそうだがその時に『訓練内容が物足りないから申請してくる』と言っていたそうだな?

 その結果が今回の結果に繋がった訳だが、君は座学でも優秀な成績を残している。そんな君があのような真似をして拘束される可能性を考慮しなかったとはお思えない。なにか思惑があったのか?」

 

 その問いに俺は一言返した。

 

「強いて言うならば時間短縮です」

「……」

 

 何も言わないがその目は「続きを」と促しているのがわかる。それに従って俺の真意と目的を口にする。

 

「まず先に申し上げますが、私の力は間違いなく唯一無二かつ人類が巨人に大して特効を持つ能力です。それを最も運用できる人物の下で使って欲しかったのが一番です。第二として、守りたかったからです」

「守りたかった、とは人類をか?」

「いいえ、それはあくまでついでです。私が最も守りたいのは家族と親しい友です」

 

 その言葉にエルヴィン団長の目つきは変わらない。

 

「その思いは誰もが思うものだ。君一人の特別なものでは無いな」

「その通りです、ですがそれを実行できるのは限られた人物だけなのは団長が最も知るところかと」

「……そうだな、守りたいと願ってもそれを実現できるだけの力を持った人間は極わずかだ。さらに必要な時に必要な力を揮える者はさらに少ない。

 では少し戻るが時間短縮というのは、訓練兵としての卒業を早めたいという考えで間違いないか?」

「はい、とはいえそれが如何に無茶であるかは理解しております。このような前例を作れば今後の組織運営に破綻が生まれる危険性も理解しています」

「そうだな、一人を特別扱いしてはどこかで矛盾が生じる」

「――ですが同時に私の力をあと一年も遊ばせている無意味さもご理解頂けたはずです」

 

 俺の言葉を聞いて理解した様子で頷く。

 

「なるほど、つまりあえて騒動を起こし自らの力の異常性を無理やりにでも知らしめ、その結果調査兵団が目をつけスカウトに動く……という形を作る。これが君の言う時間短縮か」

「その通りです」

 

 そのやり取りを聞いていたリヴァイ兵士長が目を細める。

 

「てめぇらのやり取りはまだるっこしいんだよ。こいつが口先だけの馬鹿野郎じゃないってんなら大歓迎だ。こっちは1日も早く巨人共を駆逐してやりたくて仕方ねぇんだ。本人がやる気があって実力もあるってんなら受け入れてやればいいじゃねえか」

 

 

 その言葉にエルヴィン団長は小さく「そうだな」と頷く。

 するとこちらを再び真っ直ぐ見つめ、告げる。

 

「ならばこの後リヴァイと訓練場にて模擬試験を執り行う。森の中に設置されたダミーを攻撃し有効打数を同等もしくはそれ以上可能にしたのならば私の全権をもって特別に君を調査兵団へのスカウトとしよう」

 

「リヴァイと競走? さすがにそれは無茶が過ぎるんじゃないかな?」

 ことの成り行きを見守っていたハンジが慌てた様子で口を挟む。

 しかしそれをリヴァイ兵士長が鼻で笑って流す。

「仮にもこいつは騒動を起こしてまで俺たちに直談判をしたんだ。それくらい出来なきゃ困るってもんだ。それに出来なかった時は問題を起こした罰として即開拓地送りだ。問題を起こす無能は団体には不要だからな」

 

 暗に「有能でも問題を起こすようなら容赦しない」と言われた気がする。まあ、今回はちょっとばかり無茶した気がするし仕方ないか。

 

 

「わかりました。ただ一つだけ」

「なんだ、今更怖気付いたってんなら――」

「立体機動無しでやってもいいですか?」

 



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試験

作者はおだてられると、嬉しくなって後々のペース考えずに更新するタイプなんです。

それはそうと、前もって言っておきますが主人公以外に宇宙人やゼット戦士は出てこない予定です。
ここから仮にベジータとか出したら全部ギャリック砲されて水の泡&ドラゴンボールの世界に早変わりしちゃうので。
小ネタとしては色々出してくのでお楽しみに。


 

 場所は変わって調査兵団訓練所。

 

 駐屯兵団訓練所とは異なり、より実戦的なトラップや配置でのダミーなどが設置されており、その入口に俺とリヴァイ兵士長が並んで立って居る。

 

 

 他にはエルヴィン団長、ハンジ・ゾエ、またハンジの副官であるモブリットが居る。

 

 モブリットに関しては「興味深いケースだから是非副官にも見せたい」と言って無理やり引っ張ってきたらしい。

 

 事情をつかめずに混乱する彼は完全武装のリヴァイ兵士長と、立体機動装置を装着していない俺が並んでたっているのを見て首を傾げていた。

 

 

 するとエルヴィン団長はその場にいるものに聞こえるように声を上げる。

 

「これより、リヴァイとバルト訓練兵による擬似訓練を行う! 制限時間は10分、時間が切れるか全てのダミーを討伐するまでとする!」

 

 その宣言にモブリットだけは驚き固まる。

 

「接触による妨害は禁止、ただそれ以外は何をしてもいい。それで問題ないな?」

「ああ」

「問題ありません!」

 

 その返答を聞くと、彼は合図を送る。

「開始!!」

 

 

 直後、リヴァイ兵士長は電光石火の勢いでアンカーをのばし空を駆ける。

 それを見送りながら俺は目を閉じたまま立ち尽くす。

 

「えっと、バルト? 始まってるんだけど……?」

 

 ハンジが困惑した様子で声をかけてくる。

 それに答えずに深呼吸を数度、そして次の瞬間――閃光が走った。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 リヴァイ目線

 

 ……動かねぇな。なんのつもりだ?

 あれだけ大口を叩いておきながら全くの無策なんてことは有り得ねぇ。開拓地に帰りたいだけなら素直にギブアップを告げるだけでいいからな。

 

 それに奴は部屋に入る際に行った俺の攻撃を余裕を持って防いだ。

 そりゃ新兵相手ってことで怪我をしないよう加減をしちゃいたが、速度はほぼ本気だ。

 生意気をやらかしたクソガキを躾ける目的でやったんだ。舐められちゃ意味がねぇからな。

 

 

 しかしそれをやつは目で追って、さらに()()()()()()()()()()()ブレードを掴んで砕くなんて馬鹿げた真似をして見せた。

 

 あのレベルの身体能力を見たのはいつ以来だ?

 

 確か15歳だと資料にあったはずだが、同じ歳頃の俺に同じことは出来たか? ……いや、まず無理だな。むしろあの時の動きすら奴にとって加減した結果と言う可能性すらある。

 

 

 

 アンカーを伸ばし木々に刺してはガスの噴射で姿勢制御しつつ、巻き取りにより高速で前進する。

 するといくつかのダミーが木の影に配置されている。

 

 これが生きた巨人ならば肉質などを考慮して回転攻撃や、高所からの急降下で一気に削ぎ落とすのだが今回はただの的。

 正確さと速度を優先してシンプルな立体機動に移行する。

 

「シッ!」

 両手のブレードで的を削ぎ落としたのを感触で確かめ次の標的へ向かう。

 

 木々の隙間を、地面スレスレを、時には天地を逆転しながら縦横無尽に駆ける。

 

 その時不可思議なものを見た。

 

 光。

 

 真横を追い抜く形で通り過ぎ、俺が削ぎ落とすはずだった部位に大きく穴を開けたのだ。

 

「なっ」

 アンカーを別の部位に伸ばし姿勢制御と共に減速。

 見れば的には焦げ付くような穴が40センチ程ど真ん中に空けられていた。

 

 

 直後、先程見た光が無数に森を駆け抜けた。

 

「なんだ!?」

 

 信号弾とは違う独特な発光体に対し、咄嗟に臨戦態勢に入り木の上に移動を開始する。

 

 その光達は器用に木を避け物陰に隠れるダミーの急所部分や、足の健部分に穴を開けた。

 

 必ず脚部分に穴を開けた物は首にもトドメの一撃として追撃を忘れていない。

 

「まさか!!」

 光が飛んできた後方へ振り返ると、そこにあったのは立体機動も無しに空を飛び今まさに光を掌から放つバルト・ロメオ訓練兵の姿だった。

 

「これで最後だ!」

 

 その言葉の意味するところを理解する頃には既に勝敗は決していた。

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

ーーバルト視点ーー

 

「まさかこれ程とはな……」

 

 そう呟くエルヴィン団長はさすがに動揺を抑えきれない様子で顎に手を添えていた。

 

 対するハンジは大興奮で大はしゃぎ。

 

「何今の!? なんで立体機動無しで空飛んでんの!? それに身体から出てた炎なに!? 熱くないの!? あの光は何!?」

「分隊長! 流石に興奮しすぎです!!!」

 

 モブリットがハンジを諌めるが、その視線は俺から離れていない。多分彼もおなじ疑問が脳裏に埋め尽くされているのだろう。

 

 

 最後に装備を外したリヴァイ兵士長が俺の前までやってくる。

 

「お前」

「ハッ」

「あの力はお前だけにしか使えないのか? それとも教えることは可能なのか?」

 

 その質問は皆も気になるのかシンとしてその答えを待つ。

 

「正直分かりません。ですが幼なじみはこの前段階までは修得しました。恐らくセンスや素質が関わると思います」

 

「なるほどな……エルヴィン、こいつを憲兵団なんかに取られるのは人類の損失だ。何がなんでもこいつをうちに引き入れろ。そのためなら俺も慣れない中央へのゴマすりだってやってやる」

 

 その言葉にエルヴィン団長は「それほどの逸材か」と呟く。

 

「わかった、こちらで便宜を図るので10日ほど待機してくれ」

「分かりました」

「答えが出るまでは親しいものにも詳細は伏せるように。また、先程の力を指導してもらうことになるかもしれないので、そのための必要なものがあれば用意しておいてくれ」

「了解しました」

 

 そんなやり取りをして、いくつか決め事を話し合う。

 

 それらが終わると俺は訓練兵団宿舎へと戻ることが許された。

 

 その途中、キース教官と鉢合わせたのだが「その様子を見ると思惑通りにことが運んだようだな」と少しムスッとした顔で言われた。

 まあ、利用されたようなものだから不満は理解できる。

 

「ご迷惑をおかけしました」

「全くだ、それと騒動を知って訓練兵共たちの身が入らず困ったものだ」

「しまった……そこまで想定してなかったです。本当にすみません」

「かまわん。仲間がトラブルに見舞われた程度で集中力が途切れる奴らの軟弱さを早い段階で見れたのは僥倖だ」

 

 どうやら中々の訓練をさせられたようだ。すまんみんな。

 

「それでどうなるのだ?」

「すみません、決定までは」

「…なるほど、だいたい予想出来た。ではそれまでは貴様は追ってくる指示まで待機していろ。それまでは訓練への参加は自由とする」

「ハッ!」

 

 敬礼すると教官は踵を返して立ち去って言った。

 

 

 

 その後、宿舎に戻ったらエレンやジャンたちに囲まれ何があったのか聞かれ囲まれることになった。

 指示で口外禁止とされたと告げるとそれ以上の追求はなくなったが、代わりにキース教官に動揺を見抜かれ厳しい訓練を課された事に関して文句を言われてしまうのだった。



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入団決定

 

 〜第三者目線〜

 

 

 エルヴィン団長が訓練の視察に来た。

 

 これには訓練兵全体が驚きを顕にした。

 しかもその場でバルト・ロメオの調査兵団へのスカウトを行うと明言したのだ。

 

 本来ならば本人の意思を尊重した配属をするのが訓練兵の通例だ。

 しかしそれを無視してまで引き入れようとするエルヴィン団長の行動に自然と周囲の視線が集まる。

 それゆえに申請を知った駐屯兵団ドットピクシス司令、憲兵団師団長ナイル・ドークらは共にその人物に興味を示し、一目見ようと同行した。

 

 これにより最高責任者三名が同時に104期生を視察に来る大騒動になった。

 

 

 

「問おう、バルト・ロメオ訓練兵。君はどこへの配属を希望している?」

 

 整列し皆が見ている前でその質問をされ、バルト・ロメオ訓練兵は敬礼と共に高らかに即答する。

 

「調査兵団です!」

 その宣言に驚くもの、納得するもの、言葉を失うもの様々だった。

 

「あえて言うが、調査兵団は最も死と隣り合わせだ。新兵が命を落とす可能性が7割を超えるぞ」

「構いません」

「君は死ねと言われたら死ぬのか?」

「いいえ! 死ねと言われたら死ぬ原因をぶっ殺します!」

 

 まさかの返答に周りが唖然とする。

 

 つまり「部隊を生かすために命を捨てて巨人の餌になれ」→「嫌なんで巨人をぶっ殺してきますね」ということだ。ある意味理想だがそれを実行出来るやつはほとんど居ない。

 

 しかし彼の言葉には何故か否定しきれない根拠のようなものを感じてしまう。

 

「……それが人間だったらどうするんだ」

「俺に敵対する愚行を知らしめます」

 

 その発言は危ういものだった。

 一歩間違えれば反王政と取られてもおかしくないのだ。

 なんせ王政は調査兵団に命をとしての人類領域を広げる命令をしている。拡大解釈で言えば、調査兵団に死ねと言っているのは紛れもなく王政なのだ。

 

 この発言を聞いて興味を持っていた憲兵団と駐屯兵団は一気に引き入れる選択肢を無くした。

 誰が望んで獅子身中の虫を飼いたいと思うバカがいるだろうか。

 

 であるならば、本人の望む調査兵団に入ってもらい早々に自滅してもらうのが一番無駄のない処理だ。

 

 ナイル・ドークがそう考える中、ドット・ピクシス司令は面白そうに見ていたが、それでも実力をしれぬ若造のためにトラブルを抱え込む事は避けた。

 

 

 

 結果として第104期バルト・ロメオ訓練兵は異例の1年短縮の表明式を終え、正式に調査兵団への所属が決まった。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

ーーバルト視点ーー

 

「よく似合っているよバルト調査兵」

 エルヴィン団長からの言葉に照れくさくなりながらも敬礼をする。

 俺の胸と背中には自由の翼が刻まれた。

 

 正式な調査兵団になったと強く自覚する。

 

「さて、これで君は晴れて我が団員となった訳だが、特殊な出自故に何も知らない部隊へ配属するのは不要なトラブルを招く。よって君はリヴァイ班とハンジ班の掛け持ちをしてもらう」

 

「掛け持ち……ですか?」

「ハンジの仕事は主に巨人研究だ。その為には巨人を生け捕りするなどの危険な任務が複数発生する。だが君の力であればそれは可能なのではないかな?」

「……そうですね。巨人は手足がちぎれても生えると聞きますし、適当に手足をもいで何かで縛れば行けるかと」

 

 俺の言葉にハンジは目を輝かせ「今行こう! すぐ行こう!」と喚く。もちろんモブリットの「焦り過ぎです分隊長!」という声もセットだ。

 

 

「また、班として動く以上基本的な行動は立体機動装置を使ってもらう。常に空を飛び回るのは何も知らない部隊のものを動揺させる事になるからな」

「分かりました。ですが緊急だと判断した場合は構いませんね?」

「無論だ。守るべきは規律だが君の命を蔑ろにしてまででは無いからね」

 

 良かった、これで壁外調査中にトロスト区への襲撃が起きた時は飛んで駆けつけることが出来る。

 

 

「さて、その前に改めて聞きたいことがある」

「ハッ!」

 

「君はなぜその力を使えるのか、誰かに学んだのか?」

「いえ、この力は独学です」

「……これほどの力を独学、しかも15になったばかりの少年にそれが出来たと?」

 

 まぁ、そりゃ怪しいよな。

 

 そこで俺はカードを切る事にした。

 

「10年前、南部の山奥に謎の落下物がありました。それはご存知ですか?」

「……ああ、確かそんなことがあった。正体不明の金属と細すぎる部品で組まれた玉だったとか。技術班が何一つ解析出来ずに悔しがっていたのを覚えている」

「それに乗って居たのが俺なんです」

 

「何?」

 

 リヴァイ兵士長が眉をあげる。

 

「俺の来歴ですが、ウォールローゼ南部の村出身とありますが、厳密にはその森奥で謎の玉の中に意識不明の状態で発見されたのが俺なんです」

「なんと……」

 

 驚くと言うより興味深そうにするエルヴィン団長に対し、警戒心を上げたリヴァイ兵士長が睨む。

 

「てめぇ、なんでそれを隠してやがった」

 

「もちろん初対面でそんな事を言ってしまったら怪しまれてこうやって話しすら聞いて貰えずに投獄……最悪、問答無用で処刑すら有り得ますから」

 

 その言葉に思い当たる節があるのかリヴァイ兵士長は「まぁそうだろうな」と呟く。

 

 否定して欲しかったよホント。

 

 

「で、それを今話したってことは打ち明けてくれるってことでいいんだよね?」

 

 ハンジはワクワクした顔で話な先を聞きたそうに促す。

 俺は頷き、続きを話す。

 

「アレの名前はアタックポッド。戦闘民族サイヤ人が使う強襲用の乗り物です」

 

「……は?」

「戦闘民族、さいやじん?」

「待って、あの玉が強襲用?」

 

 エルヴィン団長は沈黙し、モブリット・リヴァイ兵士長・ハンジがそれぞれに疑問を浮かべた。

 

「俺の名前はバルト・ロメオ。ですが両親すら知らないもうひとつの顔があります……俺は宇宙の戦闘民族サイヤ人、この星の外から来た宇宙人です」

 

 

 

 そこから俺は前提として星と宇宙の概念を説明し、その遥か外に生まれ、別の文明を築いた別の人間だと説明した。

 

 リヴァイ兵士長は早々に「そういう難しいことはお前らに任せた」と紅茶を飲んで放棄。

 対する知能担当であるハンジやエルヴィン団長は目を輝かせ、未知の知識欲を満たし始める。

 

「なるほど……では君は記憶を一時期失っていたが、時間の経過と共に少しずつ取り戻して行った。

 本来はこの星を滅ぼす為の尖兵だったがそれまでに築き上げた関係を失いたくないと思い、本来の目的を放棄し平和に暮らしつつも自己研鑽に励みづけていた……と。しかし、ウォールマリア陥落の報を聞いてこのままでは家族や友に危険が及ぶと知り、調査兵団に入るべく訓練兵として志願した」

 

 

 これ迄話した内容を的確にまとめるエルヴィン団長。

 マジで頭がいいと思う。

 普通なら正気を疑われるのだろうが、先日に見せた気弾や舞空術が信憑性を強めてるのだろう。

 

 まぁ厳密には違うのだが、まるで技術体系の違う力など説明不可能だからな。

 

「宇宙やら星やらは知らねぇが殲滅の尖兵というのは理解できるぜ。そいつが本気でやれば平和ボケした内地なんて7日もあれば崩壊する。送り込むにしてもガキの方が油断を誘うに最適だ」

 

 リヴァイ兵士長の言葉にエルヴィン団長も頷く。

 

「全く、彼を紹介してくれたハンジには感謝してもしきれないな。間違って憲兵団に入られて人類に失望などされていたと思うとゾッとする」

 

 まぁ、そんなことは狂ってもないんだけどね?

 あんな不正の温床行きたくない。

 

 

 そして俺はサイヤ人の証拠としてシッポを見せることにした。

 

 腰に巻いてきた尾を解いて見せると皆の視線が集まる。

 

「なんだそりゃ」

「シッポです。あ、ハンジさん、引っ張ったり強く握らないでください痛覚があるので」

「おっと失礼、いやぁそれにしても凄いなぁ……動かせるんだよね?」

「ええ、手足のように使えますし、その気になれば自分の身体をこれ一つで支えてぶら下がる事も出来ますよ。そういう時は痛みがないのが不思議ですよね」

 

 器用に操って本棚から本を適当に引っ張り出して見せる。

 

「普段は腰に巻いてベルトと誤魔化してますが、間違っても切り落とされると暫く痛くて力が入らなくなるんですよ」

「……? まるで経験したような口ぶりだな」

「あっはい。何度か自分で切り落としたんで」

「何で、そんなことを?」

「えー、それはサイヤ人としての特性を封印する為です。まぁ、結論から言えば色んな意味で無意味だったんですが」

「どういう意味かな?それに特性とは何かな?」

 

 

「俺たちサイヤ人は肉眼で満月を見てしまうと大猿に変身してしまうんです」

「大猿? 変身?」

 

 ハンジは興味津々と言った感じなのでスケッチ用の紙とペンを貰い、大雑把に大猿化した自分を書いて見せた。

 

「これが……?」

「全長およそ15m〜20mになり、腕力や身体能力を加味した戦闘力が人間時の10倍に匹敵します」

「大型巨人相当のサイズだね。しかも戦闘力、だっけ? それも10倍とは中々に恐ろしい数値だね」

 

 

 俺の力を理解しているからこそ、ハンジはその驚異に気がついたようだ。

 

 

 

 

「本来だと理性を失って暴走してしまうんですが……どうやら俺は異端らしく、完全に理性で操ることができるようになってたんですよ。

 まぁそれでも、万が一街中とかで変化したらヤバいんでシッポを斬りました。……まぁ何度切っても再生されちゃったんですけどね。流石に痛いですから諦めて今の形に落ち着きました」

 

「ふむ……今度それを見せてもらうことは可能かな?」

「いいですけど変化しちゃったら暫くは戻れないですよ?」

「なるほど、任意の解除は出来ないのか」

「いやできなくは無いんですが……痛いんですよ」

「聞かせてもらえるか?」

 

 正直、言いたくない。

 今後力を使う羽目になった時、急いで戻る必要があるなら間違いなくリヴァイ兵士長が切り落としに来るだろうから。

 

 

「……簡単ですよシッポを切ればいいんです。シッポはサイヤ人としての力の象徴。それを失うと大猿化出来なくなるんです。

 まぁ切ったとしても2ヶ月程で生えますが……」

 

「なんだ、生えるなら良いじゃねぇか」

 リヴァイ兵士長の言葉にやっぱりと思い、一言返す。

 

「リヴァイ兵士長、シッポを切られる痛みは股間を蹴りあげられるよりキツイんですよ」

「……命には変えられねぇだろ」

「そうですけど、切った後弱体化する上にまともに動けなくなるんで、諸々の後始末は全部お願いしますよ」

 

 金タマ蹴り挙げられても尚動き回れるならやって見せてくれ。もしくは仕返しに蹴り上げてやる。

 

 その想いが通じたのか舌打ちしながら「考慮してやる」と呟いた。

 




金タマ蹴られるリヴァイ兵長みてみたい


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戦闘力について(設定)

感想でも触れた巨人の戦闘力の目安です。
あくまで個人の主観なので納得できるか不安ですが、その辺は各々補完して頂けると幸いです。


また一般人が戦闘5だったのを踏まえて訓練した兵士は最低で20くらいにしました。
一番下を決めるのが割と大変でした。



 

 無垢巨人の基礎戦闘力

 

 4m=30~50

 5m=40~60

 7m=50~70

 13m=100~170

 14m=130~200

 15m=170~290

 17m=500オーバー

 

 奇行種化により+100~200程になるが行動が予測不可能となるのがいちばん厄介。

 

 肥満型(-50~100)

 筋肉型(+100~200)

 

 

 無垢15m級筋肉型奇行種(最大数値)の場合

 

 290(基礎)+200(奇行種)+200(筋肉化)=690相当

 

 全てでないしろ、これらが集団での不意打ちのように現れたりランダムで紛れて襲ってくるわけです。

 もちろん他のサイズなども混じって。

そりゃ絶望しますわって感じですね。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 9つの巨人 戦闘力

 

 

 9つの巨人は知性と特性を加味し、基礎として1500を目安に増えたり減ったりしてるのだと思います。

 

 

 ただ状況や戦い方、更には相性もあるのでそれによっては天秤が思わぬ傾きを見せることもありえます。

 

 力が勝っていても、相手が何をするか分からなければ思わぬ反撃を受けることもありえます。

 

 原作風に言うならば『我々が未だに巨人に勝てないのは、本質的に無知である事が大きな要因だと考えられる』と言った所でしょうか。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 調査兵団 戦闘力

 

 一般調査兵

 ・立体機動及びブレード&ガス満タン状態。

 戦闘力200前後

 

 ・装備摩耗もしくは紛失状態

 戦闘力20

 ※原作ミケが4mに抵抗できなかった事を参照

 

 

 あくまで巨人に複数で戦うことがセオリーである為、戦闘力は頑張っても14m級が精一杯という感じに設定。

 

 

 

 ミケ・リヴァイ班などの精鋭調査兵

 

 ・立体機動及びブレード&ガス満タン状態。

 戦闘力400~700

 

 単体で大抵の巨人の討伐が可能性ですが、あくまで常人の範囲です。

 複数や乱闘、不意打ちの遭遇戦などによっては変動します。

 

 原作でリヴァイ班が女型にやられたのは、初手グンタを殺され動揺していた所に追い討ちのように巨人化されてしまった事で立て直す暇無く戦闘に入った事。

 それでも一度は追い詰めたあたり、リヴァイ班は精鋭中の精鋭だったんだなと思います。

 

 

 

 

 

 リヴァイ兵長 戦闘力

 基礎1300

 

 ・立体機動及びブレード&ガス満タン状態。

 戦闘力1500

 

 ・激怒によるリミッター解除

 戦闘力1800オーバー

 

 更にアッカーマン一族特有の肉体の完全掌握により擬似的界王拳1.3倍状態になる。(ただし1秒にも満たない間)

 

 ※1800ちょっとじゃ生き残れねぇだろってシーンが何度もあるので、このような解釈となりました。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 気のコントロールによる変化

 

 戦闘力自体は変化なし。

 ただし戦いのバリエーションが大きく増えた事で、より生存力に繋がっているため継戦能力は間違いなく倍に膨らんでいる。

 

 気弾について

 4m~6m級巨人までなら効く。それ以降は目潰しや目眩し程度にしかならない。

 回復力の高い15m以降や9つの巨人にはほぼ意味が無い

 

 バルトの気弾は別格なので基本的に論外。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 これらを踏まえてエレンを連れ去るライナーとベルトルトを追いかけてる時にエルヴィン団長がやった『巨人を引連れての突撃』がいかに危険であったかわかると思います。

 

 IKZOも「はぁ~、物資もねぇ! 人もねぇ! オマケにアンカー刺すとこねぇ!

 火力もねぇ! 補給もねぇ! 周りにゃ巨人がぐーるぐる! オラこんな兵団いやだー」ってなるもんですよ。(憲兵団並感)

 

 

 




バルトの戦闘力はいくつでしょうかねぇ。
原作のサイヤ人編の悟空を目安にしてますが、既にその強化具合は原作を逸脱してますから……今後に期待です。


あと、こういう設定考えてる時って楽しいよね。


追記
だからあくまで目安なんだってばァ!
そもそもパカパカ大地や惑星を砕くドラゴンボールの世界の話を
頑張って生身で地獄を生み出す進撃に当てはめるの無理なんだよぉ!

違和感って言われたって当たり前じゃん!作者違うし、ワイはファン知識でこねくり出してる程度なんだからぁ!(半泣き)


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ひとまずの別れ

切り良くしたらすごく短くなってしまった!



 

 エレンたちとは入団が決まってからも少しだけ交流する時間を貰えた。

 

「まさか1年早く入団しちまうなんてなぁ」

 エレンの言葉に周りのみなも頷く。

「まぁバルトは俺たちの中でも飛び抜けて優秀だったからな。間違い無く成績上位10名に名を連ねて居たはずだ」

  ライナーの言葉にコニーやジャンも「そうだな」と零す。

 

「エレンは確か将来的には調査兵団に来るんだろ?」

「ああ! 出遅れちまったが必ず追いつくつもりだ、待ってろよバルト!」

「待ってるよ、俺も向こうで研鑽を積んでいるさ」

 

 

 そう言って同期の仲間たちと別れの挨拶を行う。

 ジャンは皮肉を言いながらも最後には死ぬんじゃねえぞ、と身を案じてくれる優しさを見せてくれた。

 マルコも俺の新たな門出を笑顔で見送りる。

 

 ライナー、ベルトルトの2人は異例の出世に驚きながらも負けないと意気込む。ベルトルトだけはちょっとなにか思案した様子だったが。

 アニは少しだけ不満そうだ。なんだかんだいって対人格闘戦では中々楽しくやらせてもらってたから、相手が居なくなるのがつまらないのだろう。

 

 ミカサには暴走しがちなエレンのストッパーとしてお願いをしたついでに、エレンの特徴や癖、やっては行けない言い回しなどを簡単にまとめた手帳を手渡した。

 

「これを見てエレンの扱いを勉強してくれ」

 と言うと、今までで一番の目の輝きで「感謝する」とお礼を言われた。

 

 その上でアルミンには「二人の衝突は多分今後も起きるだろうから、これまで通りよろしく」と頼んだら苦笑いされた。

 

 コニーには一言「たまには家族の元へ顔を出せよ」と告げる。このまま行くと彼にはこの先訪れる苦難が待っている。まだ起きてもいない事件を話す訳には行かない為、それとなく家族への意識を向けるように告げる。

 

 兵団に所属するとその家族限定だが、住処を所属する地域付近に移動する権利が与えられる。これは兵士の家族を保護する目的と同時に死亡した時に遺族への連絡を速やかに行うための措置でもある。

あわよくばそれを利用してもらい、家族だけでも……と思う。

 

 イマイチ理解できていない様子のコニーだが、首を傾げながらも「たしかに兵団決まったら自慢に戻るのもありだな!」と笑った。

 

 

 最後にサシャ。

 

「なんで……まだ一年あるやろ……」

 動揺から最近は慣れた言葉遣いも忘れ、うわ言のように呟く彼女の頭を撫でる。

 

「悪いな、俺は強いからその分の働きが求められるんだ」

「せやけど! なんで調査兵団なん!? 調査兵団って新兵の大半が死ぬ言う場所やろ!? そんなところになんで志願するんや!?」

 

 ずっと一緒にいた兄妹同然の俺が居なくなる事と、その行き先が地獄への片道切符とされる調査兵団という事もありすっかり参っているようだ。

 周りの皆がいつもと違うサシャの様子に面食らっている。

 

「安心しろって、俺はここにいる誰よりも強い。ーーいや、リヴァイ兵長よりも強い。そんな俺がそうそう簡単に死ぬわけねぇだろうが」

 

 リヴァイ兵長より強い、という言葉に周りの皆は真に受けた様子は無い。

 恐らくサシャを安心させるための方弁だと思っただろう。しかしサシャだけはその言葉の意味を知っている。

 なんせ、彼女は俺の本気で大熊相手に肉弾戦したのを見た事があるからだ。

 

「ほんま、やろな」

「おう、むしろ壁外調査に出た時は野生の動物を狩って土産に肉を持ってきてやるよ。その時はみんなで食おうぜ」

 そう言うとしばらく沈黙が続き……。

「約束ですよ!? 私にはいちばん大きな肉を頼みますからねバルト! おチカヅキのシルシってやつを楽しみにしてますからね!!」

 

 

 

 ようやくいつもの様子を取り戻した彼女のことをクリスタとユミルに任せる。

 人の良いクリスタはこの提案を快諾してくれた。

 

 

 ユミルには「お前がどうしようもなくなった時、一度だけ全力で助けてやる」と告げた所信じられないものを見るような目で見てきた。

「アンタ……」

「理由はなんだっていいだろ? 借りを作ったんだ、いざって時に最大限に活用してくれよ」

 

 そう言うと、神妙な顔つきで「分かった」と頷いた。

 

 

 

「じゃあな、お前たちが1年後入団式を無事迎えられるのを楽しみに待ってるぜ!」

 

 

 その場にいる全員の顔を見て告げる。

 願わくば、ここにいる顔ぶれが変わらないことを。

 

 こうして俺はひと足早く調査兵団となるのだった。

 

 



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入団式

前話が短かった反動が出た。



 〜第三者視点〜

 

 104期生との別れを終えたバルトは調査兵団屯所へとやってきた。

 そこには現存する調査兵団達が勢ぞろいしていた。

 

「全体注目!」

 

 エルヴィン団長の発言にしんと静まりかえる広場。

 

「一部の者は噂程度には知っているかもしれないが、昨日私は1人の訓練兵を調査兵団へとスカウトした!」

 

 その言葉に僅かにざわめく。

 あのエルヴィン団長がわざわざ赴いてまでスカウトした人間なんて過去一人しかない。それは今も彼の隣で立つリヴァイ兵士長にほかならない。

 そんな彼が今一度スカウトをした、という言葉に否応なしに期待が膨らむ。

 

 

「改めて紹介しよう」

 その言葉と同時に壇上に一人の青年が上がる。

 特徴的な跳ね癖のある髪型、珍しい黒髪と黒目。

 そして鍛え上げられた肉体は小柄なリヴァイ兵士長とまさに対極的な印象。 

 

 リヴァイ兵士長を小柄で素早さを生かす細身かつ小柄な兵士とするなら、今現れた青年は高身長かつ筋肉質な戦士。

 その身体は兵士と言うより格闘家を思わせる作りに見えた。

 顔つきはどこか人懐こい印象だ。

 

 彼は壇上の上で心臓を捧げる敬礼の構えを取り声を張り上げる。

 

「本日付で調査兵団への所属が決まったバルト・ロメオです!」

 

 声から伝わる気迫に数名のベテランは目付きを変える。

 

「皆が気になるだろう実力だが、先日極秘に行ったリヴァイ兵士長との模擬訓練をした結果十分に実力ありと判断した! よって彼はリヴァイ班、そしてハンジ・ゾエ分隊長の班を掛け持ちで配属となった!」

 

 

 まさかの掛け持ち配属。

 これが意味するところは「バルト・ロメオは2部隊に耐えうる身体能力と技量を持つ」であると裏付けるものだった。

 そもそも一つの部隊に所属するだけでかなりの苦労が起きる。

 

 さらに言えばハンジ・ゾエ分隊は他の部隊に比べて労働量が地獄のようにきついと噂だ。

 副官であるモブリットが4日も寝ずに任務に着くなどザラであることも、調査兵団の中では常識になりつつあるほどなのだ。

 

 

 そこに加え、兵団のトップといわれるリヴァイ班。

 ネームバリューだけで入れるほど生易しい部隊では無い。

 

 なんせリーダーの速度は全兵団トップ。その部下に付くという事はそれに最低でも続いて行けるだけの立体機動技術が必要なのだ。

 

 2つの部隊に配属されるだけのタフネスと応用性、さらに部隊トップクラスの技量と精神力を団長や兵長及び分隊長が太鼓判を押したということだ。

 

「後日、壁外での実践を行う! 同時にバルト調査兵の実力テストを兼ねた巨人捕縛任務を行う! 各員、英気を養い任務に挑むように! 以上、解散!!」

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 その号令と共に兵団は解散し、団長が声をかけた者だけを団長室に呼び出す。

 

 もちろん俺も顔合わせに必要なので一緒に団長室へと移動する。

 

 

 しばらくすると名を呼ばれた者たちが入室する。

 そこには調査兵団の重鎮ばかり。

 

「……スンスン、っ!?」

 

 気配を殺しながら俺の背後に立って匂いを嗅ぎ、なにやら驚く男。

 

「どうしたミケ」

 エルヴィン団長がミケと呼んだ男は動揺を隠さず、その場にいるものだけに聞こえるように行った。

 

「なるほど、確かにこの男は底知れぬ力を感じる。現時点ですらリヴァイと同等……いやそれ以上の可能性すらある。しかもそれすらまだ発展途上と見た」

 

「お前の鼻がそう判断するか」

 

 何やら話し合う2人をよそに、ハンジが説明のように耳打ちをした。

 

「彼はミケ・ザカリアス。君が来るまでは調査兵団のナンバー2と言っても差し支えないベテランさ。嗅覚が非常に優れていて巨人の接近を察知したり、人の素質なんかを大雑把に察することも出来る男だ」

 

 改めて聞くととんでもねぇな。

 しかも実力の把握は間違いなく俺の気を読む力とほぼ同質。野生の勘とも言える嗅覚の鋭さで一種の技の域までに昇華されてる。

 

 

 改めて見ると漫画で見た顔ぶれが集まっている。

 

 簡単に自己紹介を済ませると、そこにいる顔ぶれを把握できた。

 

 リヴァイ班

 オルオ・ボザド

 ペトラ・ラル

 エルド・ジン

 グンタ・シュルツ

 

 

 ミケ・ザカリアス

 

 ハンジ・ゾエ

 モブリット・バーナー

 

 

 ハンジ班は主に研究部という部門を調査兵団の中に設立しており、実働部は主にハンジとモブリットの2人だと言うから驚きだ。

 

 

 とりあえず挨拶を終えたあと、エルヴィン団長は本題に入る。

「まず最初に行っておくが、ここで見聞きしたことは他言無用だ」

 第一声の警告に否応無しにその場の全員は身構える。

 しかしミケだけは動揺はなかった。

 

「それはその新兵の秘められた力に関係することか?」 

「そうだ」

「わかった」

 

 

 それきり何も言わず聞く姿勢に入る。

「まず、前提としていくつか言えない情報があることを念頭に入れてくれ。今ここで開示する情報も厳正な精査の結果選び抜かれたものだ。時が来れば情報のさらなる開示も念頭に入れている」

 

 そう言って資料を全員分配る。

 

 そこには俺の身体能力、特殊能力について書かれていたが宇宙人であることなどの概念的に飛び抜けたことはふせられていた。

 代わりにシッポや大猿化のことまで明かされている。

 

 

 それを一通り見た全員の顔は「困惑」に尽きる。

 冷静だったミケすら流石に眉をひそめている。

 

 

 口火を切ったのはエルド・ジンだった。

 

「失礼ですが……」

「構わん、率直な意見を述べろ」

 彼は険しい顔つきをしつつエルヴィン団長に意見をする。

 

「ここに書かれている事全てがあまりにも荒唐無稽過ぎて信じられないのですが、これは我々を試されているのですか? 何か重要な情報を明かす前段階のふるい落としなのでしょうか? だとしたら私はその意図が何一つ分かりません」

 

 

 その言葉に俺は内心「そりゃそうだ」としか言えなかった。

 重要な発表があると言われ見せられた資料がどこぞの厨2ノートだったら、そりゃ誰だってバカにされてるか試されてると思っても仕方がない。

 

 

 

 しかし悲しいかな、そこに書かれているのは100%が事実なのだ。

「だいたいリヴァイ兵長と模擬訓練を行って有効討伐数84対16でそこの新兵が勝ちだなんて信じられませんよ! 数値が逆でも兵長から10以上取れただけで優秀と褒めていいレベルだ!」

 

 オルオ・ボザドがエルドに追従するように否定の意見を告げる。

 この意見も真っ当なものだ。新兵が最強と称される兵長と競わされてそこまでやれたら奮闘したと周りも一目置くほどだ。

 

 むしろ皮肉屋な彼の性格を鑑みればむしろ素直な褒め言葉と言える。

 

「……見た目で判断するのは失礼かつ兵士としては良くないとわかった上で言うが、彼は兵長より本当に強いのか疑問です。そう言わざるを得ない程にこれまでの兵士とは質が違う」

 グンタ・シュルツも同意するように意見を述べる。

 

 ペトラ・ラルだけは言葉を選んでいる様子だが、やはりその態度には兵長より強いとは思えないというものだった。

 

 その態度にハンジが楽しそうに「人気者だねぇリヴァイ?」と茶化す。

 

 

「お前らがどう思おうが勝手だが、そこに書かれていることは一字一句間違いねぇ。なんせ俺が見聞きしたことを全て書いたんだからな」

 

 

 この荒唐無稽な報告書をリヴァイ兵長が書いたという事実は、彼らの言葉を完全に失わせた。

 

「ではひとつ見せてもらいたい。謎の光弾でダミーを貫いたという技を」

 ミケのその言葉に全員の視線が俺に集まる。

「そりゃいい、あの時は俺もよく見れてなかった。この際だからよく調べさせてもらおうじゃねえか」

 

「えと、それは構わないんですが室内だとちょっと危なくないですか?」

「狭い空間だと出来ないのか?」

「いえ、できなくは無いんですが……よし、じゃあアレにしよう」

 

 俺は皆にできる限り壁際まで離れて貰い、右手に力を込める。

 さらに左手で右手首を抑える。

 

「ぐっ……ぐぐぐ」

 

 鬼気迫る顔で力む俺に全員が警戒する。

 

「ふん!!」

 

 次の瞬間、頭ほどの大きさの光球が手のひらの上で停滞していた。

 

「おお!?」

「ほんとに、出た」

「なんだこりゃ、まるで小さな太陽じゃねえか」

「信じられん」

「スンスン……匂いは僅かにバルトに似ているな」

 

 初見組はそれぞれの反応を見せる中、ミケの反応に俺は確信した。

 彼は気のコントロールをできる逸材だ。

 

 アイコンタクトをエルヴィン団長に送ると僅かに頷いた。

 

「これはどういうものなんだ? クソをするみてぇに力んでたが」

「これは兵長との模擬戦で使った気弾より上に位置する『技』とされる物です。名前は繰気弾、と言います」

「繰気弾……」

 

 俺は皆の前で気弾について説明する。

 

「そもそも気弾とは、その人間が身に宿す精神的肉体的エネルギーを凝縮して放つ奥義に該当します。命のやり取りをしてるとたまに経験ありませんか? 相手の気迫というか、強い意志の塊をぶつけられた様な感覚」

 

 その言葉にその場の全員か瞠目する。

 

 

「それの事を俺は気合砲と呼んでます。コレをより濃密かつ圧縮、さらに指向性を持たせて放つ技を気弾と呼びます」

 俺の説明にエルヴィン団長が更に続ける。

「君が構えてるそれは気弾の上に位置すると言っていたがどう違うんだ? 見た目では光の玉であることに変わりないが」

 

「いい質問ですエルヴィン団長。気弾と技の違いは威力と独創性です。

 威力はもちろん気弾に比べて技の方が破壊力を増すことに繋がります。例えるなら気弾は基本直線しか飛びません。工夫すると軽くカーブ程度は出来ますが、激しく動く物体には当てにくいので数多く撃って弾幕として使うのがほとんどです。銃のようなものです。

 対して技はそれぞれが破壊力を大幅に伸ばし、更に拡散性や貫通性などの追加効果をもたらしてより大きな効果を生み出すように作ることが出来ます」

 

「てことは、てめぇのその手に浮いてるそれも何か効果があるんだな?」

 リヴァイ兵長の言葉に頷く。

 

「繰気弾は精密な操作性と弾性を極端に伸ばしたものです。代わりに貯めが長いのが欠点ですね。とりあえずお見せします……皆さん動かないで下さいね」

 

 

 ふわりと部屋の中央に放つと両手の人差し指と中指をピンと伸ばし、剣指と呼ばれる形を作る。

 それを振るう度に室内を高速移動で動き回る気弾。

 

「うぉぉぉ!?」

「なんだぁ!?」

「ひぃっ」

「落ち着け! 動くなって言われてるだろうが!」

 

 エルド・ペトラ・オルオが取り乱す中グンタが諌めながら冷や汗を流す。

 気弾は何度も何度もその場にいる全員の眼前まで急接近と方向転換を繰り返す。狭い空間で暴れる気弾は誰1人傷付けることなく俺の掌の上に戻る。

 

「とまぁ、こんな感じです」

「なるほど? ちなみに操作する間妙な動きをしてたがそれは必要なのか?」

「あー……これは試作で作った技なのでその辺は隙が大きいんですよ」

「成程……最後にそれを切ってもいいか?」

「構いませんよ、ブレードがダメになるかもしれませんので気をつけてください」

 

 言うや否や一瞬で抜刀し繰気弾を縦に切り裂いた。

 

 本来なら爆破しておしまいなのだが、危険なのでそれはせず消す。

 

「成程……筋肉質な巨人程度の硬度があるな。生半可な兵士だとブレードが折れるか手首を痛めるだけだな」

 

 

 感触を確かめるように切ったブレードを何度か振って呟く。

 

「なるほど、これが操作性と弾性と言うやつだな」

「はい、他にも技はあるんですが戦闘用なので狭い室内だと被害が出そうなので」

「いや十分だ。少なくともこれで君の力を疑う者はこの場にいないだろう」

 

 その言葉にミケ達は頷いて答える。

 まだ困惑はありそうだが、それでも資料の真偽は確かめた。であるならばそれらを頭ごなしに否定するのではなく、目で見たものを信じる調査兵団らしい柔軟性だった。

 

 

「それで? この中に素質あるやつはいたのか?」

 

 リヴァイ兵長は先程俺とエルヴィン団長が行ったアイコンタクトに気づいていたようで、その事について追求してきた。

 特に隠すことでもないのでエルヴィン団長の許可を確認した上で話すことにした。

 

「まだ内容は決め兼ねていますがここにいる皆さんは、前提としての気のコントロールは覚えられると思います。

 ただ、どの程度まで行けるかはやってみないと分かりません。それなりに才能あるサシャですら時間の関係で気の抑制と解放までしか覚えられなかったので……」

 

「構わない、お前たちは今後作戦を共にする機会も増えるだろう。その際には合間を見て彼から技術を習うように」

 

『ハッ!!』

 

 

 こうして俺は調査兵団の仲間として正式に迎え入れられたのだった。

 




キャラが……キャラが増えてきて書くのが大変になってきたァァ!!


日間ランキングに乗ることが出来ました。
皆さん本当にありがとうございます。

活動報告でもかきましたが、今後も進撃のサイヤ人をよろしくお願いします。


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壁外調査〜実践〜

やっと……戦闘シーン賭けた。
短いけどこれが精一杯です。




 調査兵団に所属が決まってから3日、俺は待機期間を利用して自主訓練に励んでいた。

 

 

「ふっ、はぁ!! でりゃあ!!」

 

 訓練所の中央にて、俺は1人で対人格闘術の反復練習を行う。

 

 蹴りを、突きを放つ度に空気を切り裂く音が響き渡る。

 脳裏には仮想敵として自分と同じサイズの鎧の巨人。

 

 やつは間違いなくタフネスさを利用した特攻がメインの戦い方となる。気の解放で恐らく押し切れるとは思うが、わざわざあちらの得意なステージでやり合う意味は無い。

 敵の攻撃パターンを繰り返すごとに複雑化し、それを更に対処する……それの繰り返しだ。

 

 常に機動力を意識し、側面を叩く動きを繰り返す。

 打ち込むべきは関節と人体の急所。

 いくら本体は首筋にいるとはいえ、巨人は人を模した化け物である以上、構造上の弱点は通用するはずだ。

 例えるなら関節技や筋組織破壊技だ。

 

 痛覚がなかろうと手足をもぎ取っても再生するというのならば、物理的に行動不能にしてやればいいだけの話だ。

 

 むしろ痛みというのは生存に関する重要な情報だ。それがないということは知らず知らずのうちに致命傷になるまで無茶が出来てしまう欠点だ。

 引き際を判断する材料をわざわざ向こうが捨ててくれるのだから、それを利用しない手は無い。

 

 

「せりゃぁ! ぜえい! だりゃりゃりゃりゃ!!」

 裂帛の気合いとともに連打を仮想敵に打ち込む。

 崩れ落ちそうになった残像目掛けて、決めての首筋への手刀を放ち……そこで終了した。

 

 

 

 

「ふう……」

 

 呼吸を落ち着かせていると、パチパチと拍手が響いた。

 視線を向けるとそこにはハンジが立っていた。

 その隣にはモブリットも一緒だ。

 

 

「いやぁ〜ホントすごいね! 対人格闘術なんてほとんどやらなくなったけど、君の動きを見てるとその重要性を再認識する程度には感心させられるよ」

 

 ハンジは俺の前までやってくると、手に持っていたタオルと水の入った水袋を寄越してくれた。

 

「ありがとうございます」

 

 汗を拭いて水を飲みつつ、彼女を見つめる。

 その目は何かを期待したようなワクワクした目線だ。

 

「……もしかして何か頼み事ですか?」

「え? い、いや? そんなことはァないよぉ?」

「分隊長! 目が泳ぎすぎです!!」

 

 

 実はハンジ、この3日間事ある毎に俺の元へやってきては実験と称し、あれこれ俺の体からサンプルを持っていくのだ。

 最初はシッポの毛、次は血液や髪の毛、果てには精液と本当に遠慮がなかった。特に最後のはまじで勘弁して欲しかったよ……モブリットが何度も謝りながら「済まないバルト」と謝っていたので怒る気にもならなかったが……。

 

 

 ちなみに研究結果だと、微細な違いはあれど全体的な構造は同じだと判明した。この時点でハンジは嬉しそうに「いやぁー実に良かった! ちゃんと子供が作れるよ!」なんて言い出した。

 

 まあ、宇宙人であることを伝えてあるのでその辺を気にしてくれたのだろうが……食堂のど真ん中でそれを言うのはやめて欲しかった。

 

 一瞬とはいえ、俺とハンジがそういう関係なのかと疑われたほどだ。

 

 

 そのあとリヴァイ兵長が引っぱたいてその場を収めてくれたおかげで妙な事にならずに済んだ。

 

 

 

「で、今回はどんなご要件で?」

「……あーもう、モブリットがバラすから言質を取る作戦失敗しちゃったじゃないか」

「分隊長、せこすぎます!!」

 

 

 やれやれ、とわざとらしい素振りをしたあとハンジは続ける。

 

「実はそろそろ壁外調査を行う時期なんだ。知らないかもしれないが、我々調査兵団は先代の団長よりエルヴィン団長に引き継がれてから、1ヶ月に1度のペースでこれを行ってきているんだ。

 もちろん規模はその時の状況だったり、兵士の疲労を残さないため、あえて小規模に収めている時もある。

 そして今回は小規模壁外調査になる予定だ」

 

「なるほど、その小規模壁外調査に来てくれ、と?」

「そういうこと、一応君は新兵扱いだからベテランの私たちと違って強制参加とは言えないんだ。だからお願いする形で誘いに来たんだよ」

 

 

 なるほど、確かに大規模で行った方がリスクの分散という意味でも安全度が高い。小規模での調査は機動力が得られる代わりに戦闘に陥った時の死亡リスクが高い。故に新兵は基本的参加しないのだろう。

 だがーー。

 

「もちろん参加しますよ。それが目的で無茶な手を使ってまで入団したんですから」

「……いいのかい? かなり危険だよ?」

「危険なんて今更でしょう。百年の歴史をぶち壊した一撃が百年また間を空けてくれる訳無いんですから」 

 

 

 

 その言葉にモブリットは目を見開く。

 きっと気づいていなかった訳では無いんだろうが、無意識に考えないようにしていたんだろう。……もし同じことが起きたらどれほどのダメージが人類に及ぼされるか、考えるだけで恐ろしかったから。

 

「そう、だね。確かにその通りだ。であるならばこそ今回の壁外調査は小規模でも実りあるものにしたい。是非、よろしく頼むバルト」 

 

 彼女の言葉に敬礼で答える。

 

 

 

「ちなみにいつ出発なんですか?」

「明日」

「早ぇわ!!」

 そう言うところだぞアンタ。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 翌朝、俺は馬に乗ってトロスト区の門から外へと出るために集まった。

 

 そこに居たのはエルヴィン団長、ミケ班、リヴァイ班、ハンジ班、その他2班の合計6班となった。

 ちなみに1班は5人1組なので小隊としては最小の30人となっている。

 

 

 とりあえず戦力バランスとして俺はハンジ班に配属。

 モブリットを抜いたほかのメンバーと顔合わせしておく。

 

「バルトです、よろしくお願いします」

 そう告げると若い男性が2人迎えてくれた。

「ロイドだ、君が噂の新人か。よろしく頼むよ」

「フォードだ、なれない壁外調査だから無理をするなよ」

 

 変に威圧的だったりしない良い先輩たちだ。

 彼らと共に今回の作戦を成功させるために気合いを入れよう。

 

 

「これより、小規模壁外調査を行う! 皆油断をするな!」

 

『ハッ!』

 

 兵士たちの応えが合わさる。

「開門せよ!」

 

 壁外、ウォールマリア領へと繋がる道が開かれるとそこへ次々と馬が飛び込んでいく。

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

 馬で駆ける中、俺は周囲の気を探ることに意識を向けていた。

 既に門を抜けて3時間になる。そろそろ巨人と出会ってもおかしくは無い。

 

 

「ーーっ、団長! 進路方向右手から5体の気配を感じます!」

 

 その言葉に皆が視線を向けるがそこには木々が生い茂っており、見える範囲にはいない。何よりミケが何も言わない。

 

 オルオがそれに対し「何を適当な……」と言いかけた次の瞬間。

 

「いや、来る!」

 遅れてミケの声が上がる。

 すると動きのなかった森から鳥が飛び立ち、木を揺らしながら異様な速さでかけ出す巨人が5体現れたのだ。

 

 

「ま、マジで出やがった」

「5m級が2体、8m級が2体……13mオーバーが1体!」

 

 単眼鏡でサイズを測ったモブリットが声を上げる。

 

「総員迎撃体制!」

「!?」

 

 エルヴィン団長がそう声をあげると兵士たちが驚きの声を上げる。

 

 本来壁外調査は如何に巨人と戦わないか(・・・・・・・・・・・)が重要となる。つまり索敵で早い段階で見つけた場合、逃げを打つか数名を囮として残して逃げるのが基本だ。

 ちなみに囮は死亡率が7割を超える。

 

 

 だというのに今回、彼の指示は迎撃体制。つまり全員で相手をするということだ。

 

 1体や2体であればそれも納得できるが5体だ。ほとんど1班につき1体の計算だ。

 不可能ではないだろうがリスクが高すぎる。

 

 

 しかも続けて発したエルヴィン団長の指示に耳を疑う。

「対応はバルト調査兵に任せる。他の者は周囲を警戒し、不意打ちに注意せよ!」

 

 新兵に5体の巨人を任せると言ったのだ。

 しかも周りにはアンカーを刺せる様な建造物は無い。

 これでは立体機動もままならない。明らかに自殺行為だ。

 

 ハンジ班のロイドたちも抗議の声を上げるが「決定事項だ、従え」と言われ悔しげに黙る。

 

 

 そんな中、俺は「任せてください」と言って馬から降りてエルヴィン団長に問う。

 

「ここで俺に任せるってことは、いいんですよね!?」

「私が責任を取る。今は君の力を確認するのが最優先事項だ」

「了解……じゃあ、油断なく行きますかね。ーーはぁっ!!!!」

 

 

 気合いと共に気を解放する。

 すると馬達が驚き嘶く。

 

 続けて両腰からブレードを引き抜いて構えると、アンカーも使わず空を飛び高速で巨人達に迫る。

 

「わるいな、恨みは無いが生きる為だ。死んでくれ」

 

 目の前に現れた俺にほぼ本能で手を伸ばしてくる巨人の手を躱し、立体機動より微細な動きで回り込み、背後に回った瞬間一閃。

 これだけで1体目の巨人の生命は絶たれた。

 

 

 続けて加速を繰り返し横一線縦一線と切り刻む。

 5m級の2体は検体として使えるかと思ったので手足を切り落とし、更に指先で気功による輪……ギャラクティカドーナツを放つと足、腕、更に口を猿轡するように縛り上げた。

 

 

 

 残るは13m級。

 

 眼前にまで浮かび上がると、ブレードをしまう。

 

 すると手を伸ばし捕まえようとしてくるが、その手を逆に掴み背負い投げる。

 

 地面に叩きつけられ、身動きが取れなくなったところに見下ろす形で人差し指と親指の指先を合わせるようにして、手のひらで枠を作る。ちょうど四角の覗き窓ができるようになる

 

「気功砲!」

 

 ドン、と重い音と共に巨人は消失し残されたのは四角い地面の穴だけだった。

 

 

 ふわりと飛んでエルヴィン団長の元へ戻る。

 

「ありがとうございます、あのレベルなら50居ても余裕だと思います」

 

 その言葉に流石のエルヴィン団長も言葉を失っていた。

 唯一喋っていた者は検体用に捕獲した巨人に大はしゃぎだ。

 

 

「すっげぇぇぇぇ!! なにこれどうやって捕まえてんのぉぉぉ!? てか一気に2体もぉほぉおお! ねぇバルトー! この輪っか触ってもいいー?」

「分隊長! 興奮しすぎです!!」

(あっち)ぃぃぃいいい!?」

「アンタなんで触ったんですか!?」

 

 

「お前はどうやらマジで人類最強みてぇだな」

 リヴァイ兵長は俺を見てニヤリと笑みを浮かべる。そこには頼もしい仲間を得た喜びが滲んでいた。

 

「とはいえあの力は消耗が激しいので、立体機動の力も鍛えたいです。今後ご指導お願いします」

「任せろ、俺の全てをてめぇに叩き込んでやる。エルヴィン、平原での戦闘はこいつに任せるそれでいいな」

「ああ、その方が損害が無さそうだ」

「で、あのバカが興奮してる原因の巨人はどうするんだ? 持って帰るのか?」

「それに関してだが……バルト調査兵、あの捕縛している光の輪はいつ消える?」

「掛け直ししなければ3日ですね。あれでよく熊や猪を狩って捕まえてましたし……5m級は多く見積もっても腕力はそれ程じゃないはずでしょうから振り切られることも無いと思いますよ」

 

 

「よし、では少し戻ったところに町があったはずだ。そこに移動し仮拠点とする。

 ミケ班は2班を引連れ、捕縛した巨人を連れ帰る為の人材を集めてこちらへ派遣してくれ。その後、再び我々と合流し調査再開だ。

 その間、我々は更なるバルトの力について調査と検証を行う」

 

「了解した」

 ミケ班は部下と2班を引連れ来た道を戻っていく。

 

 俺はギャラクティカドーナツを操り、巨人2体を持ち上げる。

 

「……そんなことも出来るのか」

 エルドが苦笑いしながら浮かぶ巨人をみる。

「ええ、激しく暴れられると難しくなるんですがコイツら鈍いんで」

 

 

「ダメだわけがわかんねぇ」

「私もよオルオ。彼、当たり前のようにやってるけど如何に凄いことか分かってないのかしら」

 

 リヴァイ班のメンツが疲れた顔で呟いているが構わず移動を開始する。

 流石に馬を操りながらの舞空術とギャラクティカドーナツで巨人を運ぶ操作は集中力を使いすぎるため、俺も空を飛んで移動することにした。

 

 馬はモブリットが牽引してくれると申し出てくれた。

 

 何故かハンジを背中に乗せて空を飛ぶことになったが。

 

「おほぉー!! ワイヤー無しでほんとに飛んでるよ! しかも揺れないブレない! キミ、ブレードさえ補給出来れば無限に戦えるんじゃないの?」

「流石に無限は無理ですよ」

「そっかー」

「先に巨人が品切れになります」

「……アハハ!! 最高だよ君は! エルヴィン、何度も言うが私の勘は正しかっただろう!?」

 

「ああ、来季の研究費用の増額は期待していてくれ」

 

「おぉー、聞いた!? モブリット! 今の言葉メモしておいてよ!」

「分隊長! そろそろ降りてきてください! というか、なんでアンタの分の馬まで牽引する必要があるんですか!?」

 

 

 

 




ストックはまだあるんですが、書き直しなどもしてる為そろそろ1日1話みたいなペースは難しくなるかと思います。

頑張って書いていきますので、気長にお待ちください!


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壁外調査~狩り~

 

 廃墟になった町に入り、俺たちは仮拠点としての設営を開始する。

 

 

 近くの森から資材を回収し、運搬する仕事は俺が行う。

 普通ならば馬や大人数を使っての大作業になるのだが、俺が居れば大木を気円斬で切り倒し、あとは担いで飛ぶだけ。

 しかも1度で数本運べる速度で1往復5分弱。

 これにもエルド達が苦笑い。

 

「今までの行軍がなんだったんだというレベルだな」

 そのつぶやきにリヴァイが応える。

 

「確かにヤツひとりで調査兵団丸ごと分の働きが可能だ。しかしやつの身体は1つしかねぇ。全て頼りきりじゃいつか倒れちまってもおかしくねぇ。そうならないようにできる範囲でお前らはコイツのサポートに回ってやれ」

『ハッ!!』

 

 

 あっという間に町をぐるりと囲う木の塀が出来上がった。

 元々小さな町だったこともあるが、それでも短期間で要塞化まで行ったのは驚異的と言える。

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

「ふぅ」

一仕事を終わらせた俺は汗を拭いつつ、舞空術で空から調査兵団のみんなを眺める。

 

 やりやすいなこの組織は。

 

 普通、突出し過ぎた者は異端扱いされて排除されるのが世の常だ。

 しかしこの調査兵団は驚き困惑しつつも、根本には「巨人を駆逐する頼もしい味方」という思いがそこにある。

 

 そのおかげもあって、俺の事をそれほど拒絶反応示すことなく受け入れている。

 まぁ、団長や兵長が率先して俺を肯定する発言してくれたおかげってのも大きいかな。

 

 ともあれ、少しずつ俺という存在を受け入れて貰えるのは有難い。

 

 

 空を見上げるとまだ太陽は高く昇っており、時間的余裕があるのを感じた。

 降下して団長の近くに降りると、彼も気がついたようでこちらに視線を向ける。

 

「エルヴィン団長、俺少し狩りに行っても良いですか?」

「狩り?どういう事だ」

 俺の質問に、隣で聞いていたリヴァイ兵長が僅かに眉を寄せる。

 

 エルヴィン団長は大して気分を害した様子もなく質問する。

 

「狩り、とは食料確保の狩りということか?」

「ええ、少し離れたところに動物の痕跡を見つけました。

 地形や立地を見た印象だと鹿とイノシシが多く生息する猟場で、茸なんかもよく取れそうです。

 今回の遠征では既に検体確保という成果をあげれてますが、それはあくまで兵団としての成果だけです。民衆に対してもっとわかりやすいメリットがあった方がより支持を受けられると思うんですよね」

 

 

 その言葉にエルヴィン団長やリヴァイ兵長が考える。

 

「……たしかに、これまでだったら肉を持って帰るような余裕はなかったかもしれないが、お前がいる時と小規模遠征の時に限っては可能かもしれねぇな」

 

 その言葉にエルヴィン団長も頷く。

 

「しかしどうやって持って帰るつもりだ? 巨人ほどでは無いにしても、民衆に振る舞うほどの肉となれば相当の量となるぞ?」

「それについては問題ありませんよ。俺とサシャは狩りでつい多く取りすぎることがありましたが、そういう時は突貫で荷台を作って俺がそれを引いて走ってました。

 それと肝心の獲物ですが、どうやら人間という外敵がいなくなったせいか、やたらと繁殖しててむしろ間引かないと宜しくない様子です」

 

 

 普通ならば馬を使う必要があるが、馬力よりもはるかに優れた引手がここにいる。

 更に言えば、荷台はあくまで上に乗った肉を劣化させなければいいわけで、車輪やら見た目がしっかりしている必要は無い。

 極論、木箱に大きな木ゾリをくっつけて作り、俺が引っ張るだけでいいのだ。 

 

 

 そのことを告げるとしばらく考えたあと、許可を出された。

 

 ただし条件として30分だけで済ませる事。

 あくまで今回の遠征は俺の実力を確かめるものであって、それを把握しきるまでは単独の行動は避けるべきだと言われた。

 

 

 それを聞いて俺はニンマリと笑みを浮かべて一言。

 

「それだけ時間があればお釣りが来ますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

 〜ミケ視点〜

 

「これは一体……」

 日が暮れる前にミケが指示されていた仮拠点へと帰ってきた。

 彼は引き連れてきた部下と共に、目の前で起きている出来事に思わず絶句している様子だった。

 

 小さな集落と言っても過言では無い町が立派すぎる木製の外壁に守られているのだ。

 ぐるりと一周されており、四方に出入口の門が簡易ながらに設けられており、調査兵がそこを警備していた。

 

 これではまるで小さなウォールマリアだ。

 

 しかも驚きはそれだけにとどまらない。

 

 街の真ん中で焚き火が焚かれていたのだが、その脇に目を見張るような肉の山が積み上げられていた。

 その脇には山菜とキノコなどが大量。

 

「ミケ分隊長……これはいったい……」

「肉があんなにいっぱい」

「これは夢か……?」

 

 部下たちもあまりの出来事に困惑している。

 

「エルヴィンの元へ向かう。お前たちは馬を休ませた後休息を取れ」

「りょ、了解しました!!」

 

 足早に拠点中央へ向かうとそこにはエルヴィン団長他主要メンバーが集まっていた。

 

 

「エルヴィン!」

「ーー、ミケか。ご苦労、よくもどった」

「ああ、それよりもこれはどういう事だ。たった半日で様変わりしすぎだ。最初来るべき拠点を間違えたのかと焦ったくらいだ」

 

 その言葉に答えたのはハンジ分隊長だった。

 

「バルトのおかげだよ」

「何?」

「あの子、一人で近くの森から木を調達したと思ったら丸太を先端尖らせて地面にブスッ! だもん。見てて思わず笑っちゃったよ」

「……これをあいつ一人でやったというのか? いや、やつの身体能力でならば不可能では無いのか……しかしこの大量の食料はなんだ? 町に残っていたものでは無いのだろう?」

「それもバルトがやったんだ」

 

 

 今度はハンジの補佐官が説明を続ける。

 何でも周辺に巨人が居ない事がわかった時点で大量の食料を確保したいと言い出したらしい。

 今回の遠征はあくまでバルトの試運転が目的だった。それ故に多くの戦果を求めていなかった訳だが、図らずも検体をふたつも手に入れる快挙をして見せた。

 しかしバルトは「わかりやすい一般人向けの手柄も必要だ」と進言し、大量の肉と山の幸を取ってきた。

 

 もちろんこれが一時的なものだという自覚はある。

 しかし食糧不足で喘いでいる現在において、我々調査兵団は援助を受けることはあっても援助する側ではなかった。

 

 だからこそ「調査兵団は外で目に見える利益を持って帰れる団体」であると二重の意味で表明する必要がある。

 

 これまでは徒に被害を増やし、税金泥棒なんて言われていた調査兵団だが、肉と山の幸などを持ち帰った事例を見せれば「もしかしたら次も」と期待させて反論の声を減らせるかもしれない。

 

 もちろん毎回同じ結果は不可能だが、バルトが居れば小規模調査と称して、民衆のご機嫌取りに肉や食料確保に動くことも可能だ。

 

 この効果はエルヴィンとしても見過ごせぬ政治的価値を見出し、許可した結果この有様だ。

 

 モブリットに内訳をまとめた資料を見せてもらったが、その内容に思わず目を見開く。

 

 イノシシ19頭 285キロ相当

 鹿35頭 525キロ相当

 熊13頭 1560キロ相当

 その他小動物系104匹 50キロ相当

 

 

 合計2400キロの肉が取れた計算だ。

 それだけじゃない。ここに更にキノコや山菜などの山の幸も含まれるのだ。

 

 炊き出しで100人分の肉でも2キロあれば事足りる現状、これはあまりにもふざけた量だ。

 ウォールローゼの民に行き渡らせるとなれば足りない……足りないがそれでも市場に流せば少なからず効果は期待できる。

 

 あの新兵、規格外だと思っていたがまだ認識が甘かったようだな。

 

 

 

 俺は美味そうに肉を頬張るバルトに近寄る。

 

 すると声をかけるよりも先にあちらが気付く。

「ふぁ! ふぃふぇふぁん、ふぉふぉっふぇひはんへふへ!!」

「飲み込んでから喋れ」

 すると彼は急いで飲み込むと「いやぁ、すみません」と笑った。

 

「待ってる間に中々頑張ったらしいな」

「まぁ昔からやってる事ですから」

「これだけの量を……?」

「いや、さすがに毎日これだけやったらあっという間に山から動物居なくなりますよ。ただ今回は数年放置されたせいで増え過ぎた野生動物を間引く目的もありました」

「ほう?」

 

 聞けば人の手が入らなくなってわずか数年でその生態系が大きく崩れつつあると言うのだ。

 このままでは仮に土地を取り戻しても、野生動物に荒らされた環境のせいで直ぐに作物が育たなくなる上に、縄張りが人間の生活圏にまで及んだ影響がしばらく残るそうだ。

 

 オオカミやクマの類が街中に当たり前のように入ってこようとするのだ。

 

「なるほど、盲点だった」

 取り戻すことばかりに目が行ってしまい、その後の事にまで頭が回っていなかった。

 

 まぁ駐屯兵団の管轄だが、事前に防げる範囲は手を回すべきだろう。

 

「なのでエルヴィン団長には小規模壁外調査では2回に1回のペースで今回みたいな間引きとゴマすりを兼ねた狩猟を許可してもらいました。

 報告書には調査の結果として土地の保全活動を上げられますし、民には避難の際に残してしまった思い出の場所が守られるし食料を得られてにっこり、俺たちは支持を得てにっこり、上層部には我々の有用性を知らしめることが出来てにっこり。いい事ずくめです。

 ついでに言えば小規模壁外調査の参加者は肉を沢山食えるボーナス付き。もちろん肉を多少持って帰り、家族や友人に贈る許可もエルヴィン団長に取り付けました。壁外調査っていう危険度ある仕事をしてるんですから、これくらいのメリットがないと」

 

 ヘラヘラと笑いながら言う彼を見て思わず俺も笑ってしまった。

 

 こいつは壁外調査をまるで危険だと思っていない。

 散歩か何かのように過ごしている。

 

 もちろんこれまでの苦労を思えば感じる事がない訳では無い。しかしそれでも彼の余裕の態度が実に心強いのだ。

 

「あ、そういえばミケさんこれ好きじゃないですか?」

 そう言ってバルトが差し出したものを見て俺は目を見開く。

 

「これはーー、ハーブか!? しかもこの香り、俺が知る中で最高品質だッ!!」

「あっ、やっぱりこれ好きなんですね。嗅覚が優れてるってことは香りにこだわりあるかもっておもったんですけど、正解だったようでよかったです。

 森の中で自生してるのを見つけたんです。ハーブティーとかにして飲むとリラックスできますよ」

 

 

 

 

 そう言って他にも持っていたハーブの葉をちぎってコップに入れると、焚き火の上で沸騰させた湯を注ぎ始めた。

 

「これは……」

 

「本当はもっとしっかりしたやり方があるんですけどね。飲む前に軽く湯をかき混ぜて、最後に葉を湯から上げて飲んでください。あまり長くやると渋くなるんで気をつけて」

 

 言われた通りにして1口飲むとこれは信じられないほど素晴らしい香りが口の中に広がった。

 

「素晴らしい」

 

「ですよね。苗を幾つか確保したので持ち帰って栽培しましょう。これを普段から飲めるようにしたいです」

 

 これだけでも今回の調査に参加した価値があったな。

 

 

 

 このハーブティはエルヴィンやリヴァイも好んで飲むようになった。

 ハンジやモブリットは新しい資材が増えた事に喚いていたが。

 

 

 

 




お肉の量に関してはググッて出た数字を単純掛け算しただけなので、詳しい人からすると間違いだらけかも知れません。



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帰還

 壁外調査はひとまず終わりを迎えた。

 

 翌日の狩りの途中、イルゼ・ラングナーの手記を見つけるというとんでもないイベントを迎えたが概ね大成功と言える結果に落ち着いた。

 

 イルゼ・ラングナーの手記は各班長達が穴が空くほど読み込む結果となった。

 その中で言語を操った巨人という点にハンジは「我々はまだ巨人について未だ無知である」と評した。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 壁外調査から帰ってきた俺たちを迎えたのは、驚きのあまりに言葉を失う住民の姿だった。

 なんせ山のように積まれた肉の山。半分が1日ほど燻製などされていたがそれでも目を見張るような肉、肉、肉の山だ。

 

 ちなみに燻製は見たことあっても作り方を知らない人が多かったので俺が指導する形で教えた。

 

 エルヴィン団長は声高に宣言する。

 

「今回のウォールマリア内調査の過程で、野生動物が大量発生していた為、土地の保全活動として狩猟を行ってきた! これらは後日調査兵団主体での炊き出しに使われる予定である!

 またそれ以外は商会を通して市場に流す予定なので皆それまで待っていただきたい!!」

 

 その宣言は歓声と共に迎えられた。

 調査兵団始まって以来、初の大歓声だ。

 

 

 壁外調査は必ず大なり小なりの犠牲を伴って終える。

 しかも大抵は成果なし。

 だが今回は被害ゼロの上に土産まであると来た。

 

 今期の調査兵団は何かが違う。

 それを民達は感じ取っていた。

 

 

 調査兵団屯所に戻ると、山のように積まれた肉や毛皮などを買取りに商会の者達が集まる。

 それを対処するエルヴィン団長。

 

 どうやってこれだけの量を? と質問されたらしいが俺の事を伏せて「巨人のために鍛えた腕を獣に使っただけの事、これまで多くの支援を頂いてましたから少しでも恩返しになれば」と濁した。

 

 

 下手に俺のことが知れ渡ると、俺を新兵と知って「肉をとってこい」と言い出すバカが現れるからだ。

 流石の馬鹿者共も団長相手にそんな発言をするつもりは無いらしく、せいぜい「次回も余裕があれば是非」と腰を低くお願いするだけに留まった。

 

 

 調査兵団主体で行われた炊き出しはシガンシナ区からの避難民などを中心的に振る舞われ、より一層の支持を得ることに成功した。

 更に今回の作戦に参加した者たちへの褒美として新鮮な肉数キロを進呈された事で、団員の中で次回への参加意欲が爆増するのだった。

 

 

 ちなみに俺は俺とサシャの家族に肉をイノシシ1頭分送る権利を貰えた。

 更にかつての同期達に肉を振る舞いたいと願ったら更に1頭分貰えた。

 

 

 翌日、大量の肉を抱えて現れた俺に104期訓練兵の皆は飛び上がらん勢いで大騒ぎ。

 皆の皿に分厚いステーキが配膳され、大喜びで肉を楽しんだ。

 

 サシャの分は気持ち厚く切ってやったら涙目で「神様……?」と言い出す始末。

 

「アホ言ってないでさっさと食えって」

 

 

 そういうと、幸せいっぱいの顔で肉を頬張るサシャだった。

 

 

 

 

 

「それにしてもすげーよな。もう調査兵団として活躍してるんだろ?」

 食後の雑談中、コニーがそんなことを言い出した。

 何でも1年早く入団した俺の噂は既に広まってるらしく、今回の壁外調査の件も訓練兵にまで伝わってるそうだ。

 

「俺も調査兵団に入ったらお前みたいに有名になれんのかな」

 

 

 ああ、既にそんな時期なのか。

 エレンの意思に触発されて調査兵団になろうとするんだった。

 トーマたちもこれに感化されるんだ。

 

 しかしその現実を知るのは間もなくだ。

 だからこそ、冷水をかけて冷静にしてやらないと。

 

 

 

「まぁ、有名になれるかどうかはともかくとして言えることは『今のお前ら』だと死ぬだけだな」

 

 

 ストレートな物言いに言葉を失うコニー。

 

「今回俺がなんのトラブルもなく帰ってこれたのは、兵長や団長がサポートに回ってくれた事で俺は前だけを見て動けたからだ。

 むしろ不測の事態ってのが起こり得る状態での作戦は誰であれ命を落とす可能性があるからな。

 少なくとも『有名になれるか』なんて油断してたらその不測の事態に対応できずにやられるだけだぞ」

「そう、なのか?」

 

 俺は黙って聞き入っているエレンたちにも聞こえるようにはっきり言う。

 

「あの日、…ウォールマリアが陥落した日、巨人が街の中に入り込んだこと自体が既に不測の事態その物だ。もし同じことが起きたら――」

「おいおい、まさかまたあんなことが起きるってのか?」

 

  俺の言葉を遮るようにジャンが口を挟む。その顔には焦りや困惑が滲んでいる。

 

「むしろなんでそれを想定してないんだ? 100年間の歴史を砕いた一撃を見舞った張本人はまだ、捕まっても討伐されてもいないんだぞ? つまりそれをやるだけの可能性は残されてるんだ。そしたら同じ状況下になった時に向けての対策は必須だろう?」

 

「張本人……? 捕まえる……?」

 

 アルミンが何やら言葉を呟いている。

 すげぇな、わざと人の存在を匂わせたとは言え、ピンポイントで違和感を感じとってやがる。

 

「で、話を戻すが同じ状況下……つまり超大型巨人による襲撃が起きたとして、お前たちは不測の事態を対処するだけの地力と経験がまるで足りない」

 

「それはッ――」

 

「立体機動中、奇行種が建造物の影から飛び出して食われる……なんてのは壁外でも良くある死亡ケースらしいぜ?

 ウォールマリアの敷地内にある建物は精々二階建てが限度、なら三階建てや塔、他にも傾斜による高低差がある立地で先程の奇行種が飛び出してきた時お前らはとっさに回避出来るか?」

 

 その言葉に皆は俯く。

 

 すると食事を終えたらしいライナーが口を開く。

「ならどうすべきだと思う?」

「ライナー?」

「バルトは頭ごなしに否定するようなやつじゃねぇ。こうやって俺らに厳しい現実を突きつけるのはいざって時に死ぬ可能性を抑えるためだ。そうだろ?」

 

 そういう彼の顔は気のいい兄貴分といった顔付きだ。

 

 ……だからこそ、彼の精神が追い詰められている現実になんとも言えない気持ちになる。

 

「ハンジ分隊長が言っていた。俺たちが巨人に対して負け続けて来たのは無知であることに有るってな。ならば知るべきだ、お前たちはこれまでの兵士がどのように死んで行ったのか。その死に様が俺たちに新たな警戒心を生み、小さくとも生存への可能性を生み出すってことを」

 

 そう言って持ってきた荷物の中にある資料を取り出し皆の前に並べる。

 

「これは……?」

 

 アルミンは資料を見て目を開く。

「調査兵団がこれまで見送ってきた仲間たちの死の記録だ。わかる範囲で、という枕言葉が付くがな」

 

 

 実はここに来る前にエルヴィン団長にお願いしてこの資料を見せてもらい、訓練兵に先程話した内容を告げて情報共有したいと願い出た。

 

 平時であれば入団式前にこんな情報を見せると、新たに入ろうとするものが激減するため難色を示されるのだが、団長はこれを快諾。

 

 

 ――これを見てもなお、調査兵団に入ろうとする者こそ今の調査兵団に求められる人材だ。さらに言えば、後出しで騙すような真似をするつもりは無い。

 

 

「だってさ」

 

 エルヴィン団長の言葉をそのまま伝えると、アルミンやエレンたちはその言葉の重さを理解したように資料に目を通し始めた。

 

 徐々に顔色が悪くなる訓練兵達。

 夢や希望を砕かれ、残酷な一面を突きつけられその勢いが消沈していくのがわかる。

 

 しかしその中でも一部の者は目をギラつかせている者がいた。

 

 エレン。

 彼は多くの死を受け止め、それを無駄にしまいと一つ一つを頭に叩き込んでいる。

 

 その覚悟の重さが、エレンの未来を大きく歪めているのだが……同時にそれが彼の強さの根源でもある。

 いずれ矯正する必要はあるが、今はそれを伸ばす時期だ。

 

 

 

 一通り見終わった資料を受け取り、俺は調査兵団の宿舎へと戻る時間になった。

 

「エレン」

 

 立ち上がり何かを考えている彼に声をかけ、目が合った所で一言告げる。

 

「――心は熱く、頭は冷静に。これを心がけるんだな」

「は? え、おい……バルト?」

 

 今度こそ俺は訓練兵宿舎を後にした。

 



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バルト班

ここから先どんどん原作キャラ増えるのか……。
扱いきれるかなぁ。


 あれから何度か壁外調査などを行った。

 

 小規模での調査では、ほぼ被害ゼロになりつつあるが大規模調査を行うとやはり少なくない被害者が出る。

 

 理由は俺の力の制限だ。

 

 

 小規模調査では基本的にエルヴィン団長の判断の下、俺の力を知るものだけが選ばれるため気を使った戦闘を許されていた。

 そのおかげで仲間の危険時にも余裕を持って対応出来る。

 

 しかし大規模調査の時はそうはいかない。

 エルヴィン団長曰く『お前はリヴァイ同様に人類を勝利に導く鍵の筆頭だ。現状でその力を不用意に見せびらかすのはデメリットしかない』との事。

 

 仲間を見捨ててまで守ることなのかと聞いたが『必要なことだ』と断言された。

 つまり、大きな未来(人類)ために小さな被害(仲間)を切り捨てる覚悟を決めていたのだ。

 

 

 原作でアルミンが言っていた。

 

『何かを変えることのできる人間がいるとすれば、大事なものを捨てることができる人だ』

 

 

 その言葉の重さを改めて見せられた気がした。

 

 だから俺は自らを鍛えまくった。

 俺が他の団員を守れるように、被害を少しでも減らせるようにと。

 

 そのために巨人を遠征の度に一体捕獲し、修行がてら肉弾戦での修行を繰り返した。

 急所さえ破壊しなければ無限に戦える無垢の巨人は、俺にとって最高のサンドバッグと言えた。

 

 

 その結果、調査兵団へ入った時より数段力が上がった気がする。

 

 

 それはいいのだが……俺の成長に食らいつくようにリヴァイ兵長もメキメキ力をつけていくのだ。

 俺はサイヤ人の因子が強さの秘訣なのだが、リヴァイ兵長はアッカーマン一族……つまり巨人の因子を持つだけの人間のはずだ。

 瀕死に陥る度に強くなるなんて素養はなかったはずなのに、壁外調査を繰り返す度に力を上げていくのだ。

 

 俺が15m級を相手にスパーリングしてる横で、リヴァイ兵長は巨人数体相手に攻撃せずにひたすら回避するという、人間離れした動きを繰り返していた。

 

 

 

 しかも行っていた気のコントロール修行をついに習得してしまったようで、自由自在とは行かないが、滞空と直線飛行だけ数百メートルを高速移動が可能で、俺を抜けば速度は現状トップレベルだ。途中で5分ほどのインターバルを置けば再度飛行も可能と来た。

 

 また溜めが必要だが気功波を放つことにも成功。気弾以上かめはめ波未満と言った感じだ。

 ただこちらは一日の弾数は3発まで、それ以上使うと舞空術もままならなくなる。

 

 

 だがそれでもアッカーマン一族の異常性を見せつけられた気分だ。

 

 またミケも気のコントロールを習得、舞空術で細かな動作をする事だけに関してはリヴァイ兵長より上だ。

 ……もしかすると、あの日を生存する可能性が大きく増えたかもしれない。

 

 ペトラはまだゆったりとした物とはいえ舞空術に加え、気の譲渡を習得した。

 

 気の譲渡は自身の余剰エネルギーを他者へ送り込むことで治癒能力を促進させる技術だ。

 もちろんペトラの持つ気の総量はそれほど多くないため、応急手当レベルだがそれでも十分価値がある。

 

 

 このように徐々に気を操ることを可能にした兵士が増えつつある。

 

 

 

 また、俺にも大きな節目が訪れた。

 界王拳の再現に成功した。

 

 リヴァイ兵長との遠征中に一度、危険に陥ったことがある。

 

 独断専行し、負傷した調査兵を庇いながらの撤退戦が発生したのだ。

 

 そんな時15m級の奇行種が負傷者を執拗に狙い始めたのだ。

 

 俺もリヴァイ兵長も必死に抵抗したが、その数が異常で徐々に押されつつある状況になっていた。

 このままでは救助に来た兵士にも被害が出る。

 

 そんな時、小柄な巨人が不意打ちのように負傷者が乗る馬車を横転させた。

 そこに群がる巨人の群れ。

 

 咄嗟に命令を忘れ気を解放した瞬間、体にいつもと違う変化が起きた。

 赤いオーラが身を包み、これまでとは段違いの力が溢れ出したのだ。

 中から外へ溢れ出す気とそれを内側へと押し留めようとする気の流れ。

 

 

「おい、お前それは……」

 

 隣で何かを言うリヴァイ兵長の言葉など耳に入らず、行けると思った次の瞬間には叫んでいた。

「界王拳……3倍だぁ!!!」

 

 まるで時の流れが遅くなったような加速。

 迫る巨人の腕を殴りつけるだけで根元から弾け飛ぶ。すれ違うだけで巨人は枯葉のように空を舞い上がった。

 

 急加速と急停止、そして方向転換を駆使して巨人を殴り飛ばす。

 それを繰り返し、大小様々な巨人を空に打ち上げた所で構えを取る。

 

 

「か……め……は……め……波ぁぁぁぁぁああああ!!」

 

 一気に10体前後の巨人を全身丸ごと消し去っていた。

 

 

 その後、反動で俺が倒れてしまい一時は騒然としたが、俺が放ったかめはめ波の光を遠くから見つけたエルヴィン団長率いる部隊が合流。

 

 

 結論から言えば、独断専行した兵士は新兵でありながら次々と功績を挙げていく俺に対する嫉妬から来る暴走だったと判明。

 

 もちろん、部隊を危険に晒したとしてかなり重い罰を与えられたらしいのだが、それよりも当人は俺に対して尊敬の眼差しを向けるようになっている様子らしい。

 

 なんでも『命の恩人、強さに惚れた、あの人は人類の未来だ』と知り合いに言って回ってるらしい。

 

 

 持ち上げるような発言を止めるように言いに行ったら……土下座する勢いで『バルトさんの班に入れてください』と頼み込まれる始末。

 これを聞いたリヴァイは面白そうに「折角だ、お前が鍛えてやれ」と言い出した。

 

 ハンジは「もう、バルトはそろそろ自分の班を持ってもいいと思うしね」と賛成。

 他にもミケや他班長たちもこれに賛成。

 

 こうして俺は調査兵団所属からわずか半年で兵士から班長へと昇格した。

 

 

 

 ちなみに階級だが以下の通りになる。

 

 ・司令官(ピクシス等)

 ・団長や師団長(エルヴィン、ナイル)

 ・兵士長(リヴァイ)

 ・分隊長(ハンジ、ミケ)

 ・班長(俺……etc.)

 ・兵士

 ・訓練兵

 

 

 

 

 ともあれ、俺の部下に配属された兵士の名前を聞いてみた所何の運命なのか、聞き覚えのある名前だった。

 

 ゲルガーとナナバ。

 

 

 原作だと非武装の104期生を守るために孤軍奮闘し、最後には無惨な死を迎えた者達だった。

 

 こうなればヤケだとエルヴィン団長に彼らの限界までの強化を申請。

「作戦に支障のない範囲で許可する。また強化に成功した暁には特殊作戦班として今後活躍してもらう」

 と許可された。

 

 ちなみに暴走したのはゲルガーの方で、ナナバは彼に「あの人はすごい、リヴァイ兵長を超える兵士だ」と聞かされ興味を持って一緒に配属を希望したというのが顛末だ。

 また班は基本的に5人1組が常識だが、俺たちは3人1組(スリーマンセル)となった。

 理由は集中的な指導をするためである事と、特殊作戦班として運用するならば高速機動を目的とするため人数は最低限に収めるためだ。

 今後は増えるかもしれないが、今はこれでいい。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

「さて、まず自己紹介をしようか。俺は新しく班長になったバルト・ロメオだ。経歴だけで言えばアンタらより下だが、この立場になった以上、遜るつもりは無い。とはいえ、そちらも歴で下のやつにヘコヘコするのも業腹だろうから同期に喋るような口調でいいぞ。もちろん作戦中は弁えてもらうが、それ以外は普通に接してくれて構わない」

 

 とりあえず言いたいことを伝えるとゲルガーのやつは「恐れ多い」みたいな様子だが、ナナバは少し意外そうにしていた。

 

「もっと生意気なやつかと思ったか?」

「あ、いえ……いや、正直実力主義でのし上がったガキンチョだと思ってたよ」

「おいナナバ、テメェーー」

「暴走やらかしゲルガーは黙ってろ」

「……はい」

 

 ナナバの態度にゲルガーが息巻くが止める。

 

「大規模の調査でも部隊が離れてたこともあって、ナナバとはこうやって話すのは初めてだよな」

「ええ、噂しか知らなったからちょっと意外に思ってる。こんな可愛い顔だったなんてね」

「そりゃ嬉しいな、俺彼女募集中だから」

「あら? 訓練兵に可愛い幼なじみがいるって聞いたけど?」

「あー、サシャは妹みたいに思ってたからなぁ。確かに顔は可愛いんだけど、あいつの飯食う時の鬼気迫る感じを見ちまうと、女とは思えねぇんだよ」

「はは、可哀想に。飯を美味そうに食う女は嫌い?」

「いんや、むしろ好きだね。ただアイツはもうちっと懐の広い男とくっつくべきだと思うんだよなぁ。俺結構束縛するから」

「あら、私は結構じゃじゃ馬だよ?」

「そういうのを乗りこなすのって楽しくない?」

 

 軽口に軽口で返していると、ゲルガーのやつがぽかんとした顔で俺を見てる。

 

「ナンパな奴だって軽蔑したか?」

「あ、いえ、むしろ親しみやすいって思いました!」

 敬礼のポーズで答える。

 うーん、こいつの俺に対する硬さはどうにかならん物か。

 

 するとナナバはゲルガーを窘めるように言った。

 

「あんたねぇ、尊敬するのは構わないけどそれを望まない上司に押し付けるのは逆に失礼だってわかってる?」

「え、そう、なのか?」

「私とのやり取りでわかっただろ? 班長さんは気安いやり取りの方が好みなんだよ」

 

 その言葉に頷いてみせると、少し困惑しながらも「じゃあ、俺も……普通に喋っていいか?」と恐る恐る聞いてきた。

 

「おう、それでいいぞ。今度美味そうな肉取ってきたらそれを摘みに1杯やろうぜ」

 

 そこからはゲルガーのヤツは打ち解けた。

 

 

 

 

「バルト! 珍しい酒が手に入ったんで一緒に飲もうぜ!」

「こら、酒よりまずは報告を先にやりな! 班長もだよ!」

「ちぇっ、ナナバは頭が固ぇーな」

「ほんとだぜ」

 

 こんなやり取りが街中でちょくちょく見られるようになるのだった。

 



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