吠狼 -HOLLOW- (めたるくらすた)
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生命

ドーモ、読者=サン。
相も変わらずマガツが完成しないめたるくらすたデス。
ちょっと前にpixivの方にも投稿してたヤツですが、折角なのでこっちにも上げます。


 

病院にて

 

「うぅ…」

「大丈夫?もうすぐだからね…」

 

風邪でもひいたのか、苦しそうな声を上げる子供とそれを宥める母親。

 

「佐藤さーん!」

「あ、呼ばれた。行こ。」

 

「チッ…風邪程度でギャーギャー騒ぎおって…こっちはもう先が無いってのに…。クソッ…!」

 

その時、どこかから声がする。

 

『お前…まだ生きたいか?』

 

「……ついに幻聴まで聞こえだしたか…。ったりめーよ。生きれるならどこまででも生きたいね。」

 

謎の声の主は続ける。

『他者の命を奪い取ってでも、生きたいか?』

 

「そうだな。俺が生きられるならどうだっていい。」

 

『ならばその願い、叶えてやろう。』

 

謎の声の返答を聞き、男は目を輝かせる。

 

「本当か!?」

 

『本当だ、叶えてやろう。……貴様の魂と引き換えにな!』

 

 

 

 

どこかの廃工場

 

「スゥッ………ハッ!だッ!でやぁッ!」

四方から迫る物体を正確に打ち据える剣。

 

次々と物体はやってくるが、剣だけでなく拳や蹴りも交え、その尽くを打ち落とす。

 

「ハァッ!!………こんなもんか。」

剣を鞘にしまい、一息つく青年。

 

青崎士狼。

正しく狼の戦士となるべく生まれた男である。

 

「おおー、やっぱりやるねぇ、士狼。」

 

「うん?なんだ、亜桐か。来たなら言ってくれればいいのに。」

 

鳴神亜桐。

士狼の同業者にして、ほぼ唯一と言っていい友人。

 

「人が真剣に特訓やってんのに『来たよー!』とか邪魔なだけだろ?」

 

『だからって、音もなく気配も消した状態で家に入ってくんなよ…』

 

「よおガルバ。元気か?」

 

亜桐に呼ばれたガルバという名前、人の物ではなく、士狼の腕に着けられた腕輪の名である。

 

『俺たちに元気も不健康もあるかよ。人じゃねえんだから。』

 

「ははっ、それもそうか。お前はホラーだったな。」

 

と。

 

「士狼様。指令でございます。」

 

突如現れた執事のような男性。

その手には、赤い封筒のような何かが握られている。

 

『おい士狼。番犬所から指令が来たぜ?』

 

「お、指令か。いつもありがとね。」

 

「いえいえ、それでは。」

 

去っていった。

 

「さてさて、今回はどんな指令かな?」

 

ライターのようなものを取り出して封筒に火をつけると、炎から文字が浮かび上がる。

 

『東に災いの兆しあり。生への執着が産みし陰我、直ちに断ち切るべし。』

 

「相も変わらず抽象的だな…分かりづれぇ。」

 

「仕方ないよ…ガルバ、行くよ。亜桐も来る?」

 

「お、どうせなら行こうか。一応コンビだしな。」

 

 

 

 

 

 

「多分ここだな。ガルバ、ホラーの気配は?」

 

『今のところは無いな。とりあえず見回りぐらいはしとこうぜ。』

 

「ちぇっ、なんにも無しかァ…面白くねーなー。」

 

「おいおい亜桐、これも魔戒騎士の立派な仕事だよ?」

 

「分かってるけどさぁ…まあいいや。とりあえず陰我宿ってそうなオブジェクトあるか見とこうや。」

 

「そうだね。……ん?」

 

『どうした?士狼。』

 

「いや、あそこに人が…」

 

士狼は見た。

若い男性とリーマン風の男だ。

誰かと口論している。

 

「大丈夫かなあの人…」

 

『確かに心配かもしれんが、あくまで人の都合。俺たちが首突っ込むことじゃないぜ。』

 

「……そうだな。行くか。」

 

 

 

 

 

「お〜いあんたぁ…ここ俺ん家だぞぉ?何勝手にひとんち入ってんだよォ!?」

酔っ払ったリーマンが青年にケチをつけている。

「すいません、お言葉ですがここ公園ですよ?」

「公園だぁ?てめーふざけんじゃねぇよォ!」

リーマンが青年をぶん殴る。

 

「……あー、だめだ。腹が減ってきた…」

 

「んだとぉ!?」

 

「……食うか。」

 

 

 

 

『ッ!?』

 

「ガルバ、どうした?」

 

『士狼、ヤバいぞ!ホラーの反応だ!しかもさっき口論してたヤツらの方だ!』

 

「んだとォ!?ガルバてめぇ見逃したのか!?」

 

『違う!アイツ、完全に気配を消してやがった!俺でも感知できなかった!』

 

「ガルバが感知出来ない…そりゃ相当だな。行くよ、亜桐!」

 

「おうよ!」

 

 

 

「うわぁ!来るなァ!やめろォ!」

必死に手を振り、追い払おうとするリーマン。

 

しかし

「うるせぇ、俺はお前を食うと決めた。お前の命、俺に寄越せェ!」

 

それを意に介さず近づき、青年は深く息を吸う。

 

「う、わぁぁぁぁぁぁ………」

 

リーマンの身体から白い何かが抜け出し、青年の口の中に収まった。

 

「まだだ…足りねぇ…」

 

次の獲物を求めて歩き出す。

 

瞬間。

 

「はァッ!!」

 

「どらァッ!!」

 

剣の鞘が青年にぶつけられる。

 

「ぐぉッ!?このダメージ、てめぇら魔戒騎士か!?」

 

倒れ込んだ青年に士狼が近づき、ライターのようなものをかざす。

 

青年の目に、文字のような物が並ぶ。

「…やっぱりホラーか。ハァッ!」

ホラーを蹴り飛ばして走る。

 

『魔獣シックリード。生命力を直に吸い取る面倒なやつだ!』

 

「生命力を…?おい士狼、オッサンは!?」

 

倒れたリーマンに駆け寄るが

 

「……ダメだ。」

 

「…くそッ…!」

 

「ソイツなら俺が食ったぜ。オッサンなせいか味も微妙だったがな。」

 

 

「……命に微妙もクソもあるかよ。」

 

『おい士狼、落ち着け。』

 

「大丈夫ガルバ、俺は落ち着いてる。」

 

「だがアンタは魔戒騎士、しかも綺麗な兄ちゃんと来た。こりゃ格別のご馳走だろうなぁ…」

 

「……行くか。逃すとまずい。一気に決めるぞ。」

 

「悪いけど亜桐、その人をどこか安全な所に。」

 

「え?でもそのオッサンは…」

 

「まだ身体は無事だ。せめてそれだけでも守りたい。」

 

「…分かった。無理すんなよ?」

 

「うん、分かってる。」

 

怪物に向き直る。

「おい、作戦会議は終わったか?」

 

「ああ、終わったよ。ついでに、アンタも終わる。」

 

「はっ、いくらてめぇらが魔戒騎士と言えど、そこら辺の雑魚じゃ俺は倒せねぇぜ?」

 

「そこは安心してくれていい。アンタを倒す魔戒騎士の名は…!」

 

手に持つ剣を鞘から抜き放ち、天へ掲げる。

 

そのまま切っ先で円形を描くと

 

描かれた円が開き

 

蒼き鎧が姿を現す。

 

 

 

月影騎士

 

吠狼

 

 

 

士狼の身に装着された鎧、そして彼の剣「月影剣」は、月光に照らされて美しく輝く。

 

 

「青い鎧…なるほど。最近ここら一体で都市伝説化してる青い騎士ってのは、アンタのことだったか。」

 

「へえ、ホラーのくせに人間の事情に詳しいんだな。」

 

「んなこたァどうでもいいんだ。てめぇの寿命、いただくぜ!」

 

走り出す怪物…ホラー。

その速度は人のソレでは無い。

蹴った地面は砕け、トップアスリート以上の速度で吠狼に接近する。

 

 

が。

 

「ハァッ!!」

 

拳骨一発。

抜いた剣を使わずとも、拳の一撃でホラーが吹っ飛ばされる。

 

「ぐぉッ…!あぁッ!」

 

拳を受けたホラーの身体には、拳の形に焼け跡がついている。

 

「ぐぅ…!あァッ!」

負けじと大量の触手を伸ばすホラー。

 

『士狼!気をつけろ!奴の四肢と触手に触れたら魂を取られるぞ!』

 

「そうか。ならば!」

 

吠狼が叫ぶと、月影剣の形状が見る見るうちに片刃の剣へと変化する。

 

「速攻で切り落とすまで!」

 

迫り来る触手に向かって大地を蹴る。

 

「ハァッ!」

一息のうちに、伸ばされた触手は全て地に落ちる。

 

「ぐぉぁぁ…!クソッ!」

 

翼を生やして空に逃げるホラー。

 

『おいどうする士狼?飛ばれちゃ対処のしようがないぜ?』

 

「いんや、まだだ!」

 

これまた一息の内に、地面のアスファルトがいくつもの欠片に分断され、宙を舞う。

 

「ハッ!だッ!ハァッ!!」

 

浮かんだ欠片を蹴って高く飛び上がる。

 

「んだとォ!?」

『剣の間合いだ!斬れ!』

ガルバの声を聞き、剣を構える。

 

「うおァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

放たれるは必殺の一閃。

 

「はァッ!!」

 

「うああああああああああああ!!!!!!」

 

 

 

???

 

「……持って、後2年程かと…。」

 

「…嘘だろ…?」

 

自分の人生を省みる。

まだまだやりたいこともあったし、欲しいものも沢山ある。

こんなことならもっとマトモな生活しときゃ良かった。

 

 

 

 

「ッ!?」

目が覚めた。

どうやらホラーを斬った後、少し気を失っていたようだ。

亜桐も帰ってきている。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「あ、あぁ…」

 

「…また、見たのか?」

 

「そう…だね。今回の憑依された人、先は長くなかったらしい。」

 

「なるほど。それで生命力を…。」

 

『しかし、それでも陰我を抱いた末のホラーだ。俺たちが斬らない訳には行かない。』

 

「だよなぁ…にしても、ホント面倒だよなぁ、お前の体質。確か斬った相手の記憶を読んじまう、だったか?」

 

「…いや、これのおかげで僕は初心を思い出せる。守りし者として正しくあれる。」

 

『真面目だな。もう少し気楽にやれば精神的にも楽なのによ。』

 

「ははは…さて、帰ろうか。」

 

「…だな。」




続きがあるかは気分次第です。
いい感じのホラーとか展開が思いつかないので無い可能性がデカかったりしやす。
あと特殊タグの練習も兼ねてるので、変なところあるかもしれませんが許してヒヤシンス


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