オリ主ハウス (朝苗)
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第一話 転生過程はオリ主の定番

オリ主はチートを持ってますがギャグ重視を目指す作品なのでオリ主TUEEはあんまりないと思います(出ないとは言ってない)


 「おめでとうございます!あなたには新しい人生を歩む権利が与えられることになりました!」

 

 俺の目の前で若い姉ちゃんがいきなりそんなことを言いだした

 

 「はぁ、新しい人生ですか」

 

 正直何を言ってるのか理解できなかった、俺の記憶が確かならさっきまで俺はコンビニに晩飯を買いに出かけている途中だったのだが、確か今日は七夕じゃなかったかなとか思いながら夜空を見上げていたら次の瞬間には目の前に姉ちゃんが立っていて俺に話しかけてきているとか、ちょっと理解が追いつかなくて様にならない返事をしてしまっても仕方がないと思う

 

 「あれ?まだ状況を理解してないパターンですかねこれは、これまでの人たちは説明要らずだったのにめんどくさいなあ」

 

 俺の返答に対して独り言を何やらぶつぶつと言っている、よく聞いてみると何やら上司の仕事ぶりに対する物だがそれが俺に何の関係があるのかはわからない、それにさっきからこの姉ちゃんのいうことはよくわからん、転生がどうのとか宗教関連だろうと当たりをつけた俺はわけのわからないことに付き合わされるのも面倒になり彼女に向かって

 

 「とりあえず晩飯買いに行かないとならないんでその話はまた縁があったらということでいいですかね」

 

 そうやって話を切り上げもう関わらないようにしようと思ったが

 

「そうですね、時間は常に進んでいき無駄にしていいものではありません、説明する労力も惜しいので、あとは現地で学んでいただくということで」

 

 そういうと姉ちゃんは自分の目の前の空間に向かい何かを操作するしぐさを見せるとこちらに向かい告げた。

 

 「では、先に二人送っていますので詳しいことはその人たちとマニュアルを参考にして下さい。それでは、あなたの新しき人生に幸あれ!」

 

 その事務的な言葉を聞いた後俺は貧血を起こした時のように急に意識が飛んでいく感覚を覚え目の前が真っ白になった。

 

(いや、だからわけわからんし誰か人違いじゃないのか?)

 そんな心の声もすでに意識が落ちかけている俺が実際に声にだせるはずもなく心の中のツイッターにつぶやくだけでどこにも発信されずに終わる。

 

 

 

 

 怪しい姉ちゃんとの話に夢中になっていた俺は目が覚めると体が縮んでいた!

 

 どこぞの名探偵のような状況に俺の頭が理解を拒否して現実逃避に忙しくしていると俺のいる部屋のドアが誰かに開かれる音で現実に戻され、扉の方を見ると金髪に紅い目をした今の自分と同じくらいの年ごろの少年が立っていた

 

 「そろそろ目が覚める頃だと思いましたが、ちょうどいいタイミングだったみたいですね。

 いろいろと話がしたいので一階の居間にいるので来てくださいね」

 

 そう俺に声をかけると少年は部屋から出て行った、不本意ながら現実に戻された俺には少年の言葉に従い居間に向かうしかなかった。

 

後から思い直すとあの時にしっかりと話を聞いておいたならその後の出来事に対して覚悟を決めることができたのに後悔はいつも先に立たず、世界はこんなはずじゃなかったことばかりなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 




できるだけ早く次の話も上げたいと思います
あとこの作品は頭空っぽで書いてるので暇つぶしくらいの感覚でよむのがいいと思います


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第二話 自己紹介と転生特典?

思ったより進まなかったです


俺が居間に行くと俺を呼びに来た少年ともう一人オレンジの髪をした少年が座っていた。

 

 「さて、全員そろいましたし話し合いを始めましょうか、まずは自己紹介から始めましょうかね」

 

 金髪の少年がそう会話の音頭をとり続けて自己紹介を始めた

 

 「この外見で分かったかもしれませんが、僕はFateのギルガメッシュの能力と宝具のチートをもらって転生しました、前世のことも自分の名前とかは思い出せなくなっているみたいなのでとりあえずはギルとでも呼んでください。

 とりあえずはこんな感じですかね、次の方どうぞ」

 

 少年……ギルはそういうとオレンジの少年に話を振った

 

 「次は俺だな、俺はBLEACHの黒崎一護の外見と斬魄刀の能力だな名前は俺も一護と呼んでくれ、トリは任せたぜ」

 

 一護はそういいながら俺を促すがあいにく俺には話が理解できてない、急に子供になった上に転生だとか言われて、俺の能力は~とか言えるほど中二病は発症していないのだ

 

 「その転生とかいうのがよく分からないんだが、俺は気づいたら体も小さくなっているし、知らないところにいるしで、とりあえず何か知っていることがあるなら説明してくれないか」

 

 正直にギルと一護に伝えると二人は顔を見合わせた後ギルが口を開いた

 

 「あなたは説明なしで転生した派ですか、とりあえず一言で説明するとここはリリカルなのはの世界であなたは神様転生によってこの世界に転生させられたオリ主ということになりますね」

 

 「・・・いやうすうすは感じてたけど、気が付いたら子供の体になってるし、なんか変な姉ちゃんもそんなこと言ってたし。

 でも普通は子供を助けようとして代わりにーとかがテンプレだと思うんだけどそこら辺どうよ」

 

 「知りませんよそんなの、僕だっていつも通りにしてたらギルガメッシュで転生ですよ、わけわかんないでしょこれ、一般人がギルガメッシュとかカリスマ(笑)ですよ草生えますよ」

 

 「お?愚痴とか言っちゃっていいのか?俺もぶっちゃけちゃうよ?なんで一護なんだよBLEACHそんなに詳しくないのに一護とか斬魄刀とか言われてもキャラ多くてどこから死神かわかんねえっつの、愛染は最終的に死神なのか破面なのかどっちかにしろっつの」

 

 俺の発言をきっかけに二人がダークサイドに落ちてしまった、何やらいろいろと溜まっているところを刺激してしまったようだ。

 

 「なんか……ごめんな、うん、ごちゃごちゃいって悪かったよ」

 

 「いえ、僕も悪かったです、あなたも僕と同じ仲間ですからね」

  

 「そうだな、この三人は転生被害者の会だからな、これから同じ家に住むことになるんだし仲良くしよう」

 

 ……………一護の発言おかしくなかったか?

 

 「え?俺ら同じ家に住むの?なんで?」

 

 「あー、説明がまだ済んでなかったな、とりあえずこれを読めや、ついでにギルこいつの仕様書持って来てやれ」

 

 「そうですね、話し合いするにしても大まかなルールは理解していた方が早く進みますしね」

 

 そういうとギルは居間をでて二階に行き、一護は居間の机引き出しから一枚の紙を出して俺に渡した

 

 「これが俺らを転生させた神からのアフターケアだ、俺らもこの紙に書かれていることしかまだわかってねえ」

 

 俺が紙に目を通すと

 

 状況が分からないあなたに対する今北産業

 ・あなた死亡

 ・とりあえず転生

 ・がんばれ←今ここ

 

 

 

 「ざっくりしすぎだろ!これだと何にもわかんねえよ!今北産業じゃねえよ!しかも最後がんばれって何をがんばればいいのかわかんねえよ!」

 

 「それは、俺も思った、お前にもこの気持ちを理解してもらいたかった反省はしてる」

 

 「とりあえず仕様書持ってきたんでそれも確認してから会議続けますよー」

 

 説明に対して突っ込みを入れてるとギルが返ってきたのでそちらの方に希望を持ちそれを見てみる

 

 

  神が考えた最強のオリ主Part3

  ・Diesの能力全部

  ・容姿は練炭でww

  ・レベルが上がるとKKKとか戦神館とかも使えるようになりゃ更にGOOD

  ・あとは現場の判断でお願いします

 

 

 「雑か!なんだこの雑さ!仕様書というかただの願望だよ、しかも最後放り投げちゃってるよ!」

 

 「あーDiesですかーチートですね、ではこれからよろしく蓮炭」

 

 「すげーな、俺TUEEじゃねーか、よろしくな蓮炭」

 

 「え、これ流していいやつ?なんでそんな興味ないの?ていうかこれだとほんとにDiesの能力使えるかもわかんないんですけど」

 

 しかも地味に俺の名前が練炭で固定されてる

 

 「能力に関してはおいおい確認しないといけないですけどまぁ大丈夫だと思いますよ」

 

 「そうだな、能力に関しては後でいいだろう」

 

 二人はそこで言葉を区切り次に二人そろって

 

 「どうせ使えないだろうし」

  

 爆弾発言を落としやがった。

 

 

 




投稿してすぐにお気に入り登録がされてて喜んだ作者です、やっぱりなのはは人気ありますね
できるだけ早く原作に絡ませたいのですが回り道が多く後2話くらいかかりそうです


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第三話 転生特典の使い方

感想を書いてくださった方々ありがとうございます。
うまいこと感想返しが思いつかないので感想返しは基本ないとは思いますがちゃんと読んではいますのでこれからもよろしくお願いします。


 「おい、能力使えないってどういうことだよ」

 

 二人の爆弾発言を聞き俺の第一声はそれだった

 

 「言葉が悪かったですかね、正確にいうと使うことができないではなく使いこなせない(・・・・・・・)ということですよ」

 

 「それは、当たり前じゃないのか能力をもらったからと言って俺らは本人じゃないんだから、でも訓練次第で何とかなるんじゃないか?」

 

 俺の疑問に対して今度は一護が答える

 

 「ああ、そうだな普通はそうだ、少年漫画でも定番の修行パートだな、でもお前も含めて俺らのチートは訓練するにしても少し相性が悪いというべきか」

 

 意味深な言葉ばかりでいまいち要領がつかめずにいる俺に対してギルが言った

 

 「練炭の能力はDies系統ですよね?ではDiesと言えば創造などのチート技が代表ですよねそれこそ練炭の容姿のオリジナルが使うような}

 

 「ああ、Diesといえばそうだろ今の例でいうなら美麗刹那・序曲(アインファウスト・オーベルテューレ)とかな」

 

 そう答える俺に対してギルはさらに続ける

 

 「そうですね、自分の体感速度を変化させることによる加速、ではその能力の発動のために必要となることはなんですか?」

 

 「えっと、そりゃ詠唱を唱えりゃ発動するんじゃないのか?」

 

 「いえ、恐らくそれでは発動しないでしょう、作中でも重要な要素が欠けているのでそれでは工程不足です」

 

 「そうだな、Diesの能力をつかうならば転生で発動のハードルが下がっていてもそれだけでは発動しないだろ」

 

 「回りくどいことはよしてはっきり言ってくれよどうすりゃ使えるんだよ」

 

 Diesは俺も好きな作品だったんだその能力が使えると言われたらそりゃ期待もする、確かに個人が使うにはチートすぎて使いどころはないかもしれんがロマンには勝てないだろう

 

 

 「検証してみないことには正確な結果は出ないでしょうが創造を使うにはその創造の持ち主のキャラの渇望に対する理解(・・・・・・・)それは要求されるでしょうね」

 

 ………なんじゃそりゃ

 

 「おい、じゃあ創造使うにはそのキャラと同じ渇望持たなくちゃならんってことか?」

 

 「ええ、そうでしょうね、まあ一護が言っていたようにハードルが多少下がっているでしょうからキャラと同じほど狂ってなくてもある程度は使えるかもしれないですがね」

 

 あの作品の渇望とかっていうと吸血鬼になりたいとか、雷になりたいとかだろ?無理げーだろ……

 

 「まあ、あまり落ち込まなくても大丈夫ですよ」

 

 「そうだな、何とかなるって、たぶん」

 

 ふたりが慰めてくるが二人はどうなんだ?

 

 「そういう二人は能力を使えるのか?」

 

 「僕たちはあなたより早く転生したのですでに能力の訓練を始めてますよ、こんな感じでね」

 

 ギルがそういうと背後の空間が波打ちそこからいくつもの武器が出てきた

 

 「そ、そんなんチートや!」

 

 あまりの動揺に謎の関西弁が出てしまう俺に対しギルは

 

 「雑種とは出来が違うのだよ」

 

 ギルがこちらを見て煽ってくるが

 

 「でも、お前武器とばせねえじゃねえじゃねえか」

 

 一護のツッコミがはいる

 

 「言ってはいけないことを言いましたね!でも武器が出るようになっただけでも上出来でしょう!あなたこそ霊体になれないでしょう!」

 

 「何の道具もなくどうやって霊体になればいいんじゃ!あと偉ぶるなら原典使いこなせるようになってからにしろ!」

 

 「王の財宝は中身ありすぎて本人も把握してないのにどうやって使いこなせっていうんですか!剣だけで何本あると思ってるんですか!あなたこそ何の進展もないじゃないでしょう!」

 

 「進展ないとはなんだ、最近幽霊見えるようになったわ!」

 

 「それただのホラーじゃないですか!」

 

 ……あ、うん、俺含めて五十歩百歩なわけだな

 

 「ゴホン、取り乱しました、つまり能力が使えなくても気にしなくてもいいということです」

 

 「そうだな、訓練次第で段々と使えるようになっていくみたいだしな」

 

 「そう…だな、せっかく能力をもらえただけでも儲けもんなんだ地道に行くとするよ」

 

 二人に向かい笑って返すと一護が

 

 「よし、練炭の能力も分かったことだし本来の会議にもどるか」

 

 「ああ、そういえば元々は何の話をするつもりだったんだ?」

 

 話を始めに戻した一護の言葉に対して俺がそう質問すると

 

 「オリ主が第一に考えなければいけないことは一つですよ」

 

 ギルが答え続けてこう言った

 

 「では第一回 原作対策会議 を始めます」

 

 




この話くらいで私の書きたかった設定は大体出ました。
この話は中途半端で使いにくいチートをもらって四苦八苦しながらゆるく頑張るお話にしたいので
それでも大丈夫という方は続けてよろしくお願いします。


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第四話 オリ主の企みの裏側

ようやく原作に近づいてきました


 「では原作対策会議ですが、どの段階で原作に介入するかですね」

 

 ギルが会議の開始を宣言すると続けて発言をした、しかしその言葉に対して俺が反論をする。

 

 「いや、何も無理に原作に関わらなくてもいいんじゃないか?みんな能力使いこなせないんだし、一護に至ってはただの霊能力者だろ?」

 

 俺としてはリリカルなのははそれなりに好きな作品で二次創作などもいろいろと読んでいたがいざ自分がその立場に立たされると積極的に原作がどーのと言うつもりもないのだ。

よくあるハーレムだとか管理局アンチだとかもしたいとは思わない、そもそもに

 

 「せっかくの二度目の人生なんだから今度こそ彼女でも作って普通に結婚したいんだけど」

 

 そう、あまり実感はないが一度死んだ身としてはラッキーで拾った二度目の人生なのだ今回こそは人並みの人生を送りたいじゃないか、原作に対して惹かれるものがないとは言わないが、平穏無事に過ごせるならそれが一番だ

 

 「ああ、俺もその意見には大賛成なんだがな、俺たちは練炭よりも少し早めに転生したんだがなその時にあらかじめ話し合ってて気づいたことがあって原作に介入することにしたんだ」

 

 「気づいたことってなんだよ、あといい加減、練炭って呼ぶのやめろ」

 

 「実はですねこれも能力の練習している時に気付いたことなんですが、私たちはリンカーコアを持っているみたいなんですよ練炭」

 

 「だから練炭やめろこら、そりゃリリカルなのはなんだからリンカーコアがあってもおかしくないだろ。そのくらいのご都合主義があってもいいじゃねえか」

 

 「そうですね、でもリンカーコアがあるということは原作を避けていても向こうからやってくるときがあるでしょう?」

 

 原作を避けていても原作からやってくる?

その言葉について考えると俺の頭に一つの答えが浮かんできた

 

 「闇の書の回収か!」

 

 「その通りです、A’sのすべてともいえるヴォルケンリッターによる闇の書のページ収集はたとえ静かに暮らしていたとしても向こうからやってくるでしょう、仮に冬の間だけ海鳴から避難したとしても、管理外世界などという広範囲での収集もこなす彼女たちにとって地球などどこにいても射程圏内と考えるべきでしょう」

 

 「それなら、いっそ最初期から原作に介入してしまった方が気分的に楽だろう、それに俺たちはオリ主だ一人だけなら無理なことでも三人そろえば何か不測事態が起きてもそれなりに対処できるだろう」

 

 「でも、ほら死ぬわけじゃないんだから我慢すればいい話なんじゃ……」

 

 「ええ、あくまで原作道理に話が進めばそれも一つの手なんですが」

 

 ここまで言ってギルは少し言いよどみ、話を続ける。

 

 「その場合僕たちの魔力量が問題になるんです」

 

 「魔力量?」

 

 「ええ、さっきも言ったと思いますが僕はギルガメッシュのスキルをもって転生していますし、一護君は斬魄刀すべてを扱えます。そんな僕らの魔力を収集されたらページが一気に埋まってしまいますよ。そうすると後は……」

 

 俺らの魔力収集→ページが早く埋まる→闇の書覚醒→地球オワタ

この図式が容易に想像できる、何この人生ハードモードそんな奇跡要らないんですけど

 

 「じゃあ、腹くくるしかないいてことかよ」

 

 逃げられないことがよく分かった俺もこれからの対策について真剣に考えることにし、俺からも意見を出すことにした

 

 「介入することに決まってるなら、できるだけ早い段階でなのはに接触した方がいいんじゃないか?

あえて、時間を置く必要もないだろう?」

 

 そこで、俺はまだ重要なことが分かってないことに気づき、ギルと一護に質問をした

 

 「そういえば、今は原作でいうとどの段階なんだ?」

 

 今の時点で原作の時間軸のどの場面なのかが分からないと対策も何もないのである。

 

 「それについてははっきりとは分からないんです、一応私たちがなのはと同年代という仮定のもと動いてますけど、そこから推察する肉体年齢的に小学校は入学前ですから、もしかしたら士郎さんが入院する前後ってところですかね?」

 

 

 ギルが質問に答えてくれたがそれは少し曖昧に過ぎるものであった。

確かに俺たちを転生させたあの愉快な神(愉快の前に不が付くこともあるが)の性格から推測するに俺たちはなのは、つまり主人公と同年代の基本的なオリ主像をなぞらえている可能性が高いが、それは、俺たちの希望的観測も含んだものだ、逆にテンプレから外れてすでにもうViVidの時間軸で俺たちが地球にいる限り原作とは関わらないで済む可能性も否定できない、というか、それの方が個人的にはすごくうれしいんだが。

 

 神の思考をトレースしようとするという、どこの宗教家だと言いたくなるような行動をしている俺とギルに対して一護が話しかけてくる

 

 「なあ、さっきテレビのニュースを見ていて思ったんだが、確か高町士郎の入院の原因って護衛中にテロに巻き込まれたんだったよな?」

 

 一護の言葉は自分の中で推測に間違いがないか自分でも確認しながら話しているようで、語りかける口調はいつもの力強さとは遠くおそるおそるといった風であった

 

 「ええ、確かそのはずですよ、その入院がきっかけになのはが家族の中で孤立し、その孤独から救うオリ主というのもテンプレの一つですからね」

 

 一護の質問に対し、ギルが肯定を返し、オリ主指南まで足していた、というかなのはのオリ主の行動パターンが確立されすぎてて怖いな。

 

 原作対策とかせずにテンプレだけで何とかなる気がするぞ

そしたら俺は踏み台役でもさせてもらおうかな、フェードアウトしてもばれなさそうだし。

 

 俺がそんな馬鹿なことを考えている間に一護が考えをまとめたらしく更に言葉をつづけた

 

 「あと、リリカルなのはってもとはとらはをを下敷きにしてるんだよな?」

 

 「ええ、そうらしいですね、僕はそっちはやったことがないので何とも言えないですが」

 

 「そうか、ここでさっきの話に戻るんだがな、一つ気になるニュースが流れてたんだよ、世界の歌姫フィアッセのツアーだとよ、とらはの高町士郎の死因ってそのツアーだよなってことはこのツアーの最中にテロに巻き込まれるんじゃないのか?」

 

 一護のその推測に対してギルが反応し、即座にその過程のもとに思考を巡らす

 

 「そうですね、その可能性は高いと思います、では他に手がかりもないですし、その線から対策をしていきましょう。

蓮君は何か言っておきたいことはありますか?」

 

 ギルが俺に何かないかと確認してくる、それに対して俺は

 

 「そうだな、俺はどうせ介入するならできるだけハッピーエンドを目指したい、エゴだとか、何様だとか言われるかも知れないけど、やる前から諦めることは嫌だ、だから原作が狂ったとしても士郎さんのことを放っておくのは嫌だ」

 

 せっかく転生したんだ、ならば知っている限りでもベターよりもベストを目指すべきだろ、避けようとも向こうからやってくるなら毒食らわば皿までやれるところまでやってやる、そんな思いを二人に告げると二人も

 

 「そうですね、そのくらいの意気込みがないと転生したかいがないですね」

 

 「ああ、限定的にでも未来が分かってるんだ、ならそれをひっくり返してこそのオリ主だろ」

 

 俺の意見に賛成して、これからのことに意欲を募らせてくれる。

 

 「じゃあ、士郎さんの件についてはどうする?何か案はあるか?」

 

 二人の言葉に気恥ずかしくなった俺が照れ隠しに話を戻すと二人も思案顔になり、対策を考え始めた

 

 (一番いいのは、テロに巻き込まれないようにするのがベストだが、護衛の仕事の関係上巻き込まれないようにするってのは無理だろう、俺たちがその場で加勢する?いや、能力を使いこなせてない今の俺たちがその場にいても足手まといだろう、そもそも関係者じゃない俺たちがその場に入れる時点で警備ガバガバだしな、さすがにそれは期待しすぎだろう、ならどうするかな)

 

 考えてもなかなかいい案が思いつかず、そのまま各自が考え始め十分も経過したころだろうか

 

 「うまくいくかはわかりませんし、かなり消極的な案になるので確実性も保証できませんが対策の大枠は思い浮かびました」

 

 声を挙げたのはギルだった、提案したギル自身もその案に対して自信が持てないのか、その顔には常の穏やか笑みからは遠く不安げな様子がうかがえた

 

 

 「いや、このまま考え続けていてもらちがあかねえ、俺はあんまり頭を使うのが得意じゃねえからお前の考えを聞かせてくれ」

 

 そう一護が言葉を返すことでギルも少し自信を強めこういった

 

 「この、作戦は先ほども言った通りかなり消極的で即応性に欠けます、なので二人ももっといい考えがないか考えていてくださいね」

 

 そう前置きをした後こう続けた

 

 「僕のギルガメッシュの特典の神髄は王の財宝だけじゃないんですよ」

 

 そういったギルの顔はいたずらを思いついた悪がきそのものだった




ギルの作戦が分かるのは次です、あと士郎さんのことはあんまり資料がないのでさっくり終わらせたいのですがどうなるかは未定です


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第五話 一番最初のチートがこれって怒られないんだろうか?

遅くなりましたが第五話です
なんか異常に長くなりました、もっとさっくり話が進めるようになりたいですね
あと、所々独自解釈が入っている可能性がありますがそんなもんだと思って下さると幸いです


  第一対策会議から数日間俺たちは作戦を実行に移すために行動に移していた。

 

 まず、一護の役割は現在の高町家の様子を見るために翠屋を探しに行き、すでに開店しているならばシュークリームを買ってくるというミッションを俺は家の家事をするとともに俺たちの仕様書や転生の説明の紙のようなものが残っていないかの捜索をそしてギルだが

 

 「この企業は何か嫌な感じがしますね、おや、こっちの方はなかなか面白そうです、そういえば昨日買った株が値上がりを起こしていた気がしますね、あれを売ってこっちに投資しますか……」

 

 金策に走っていた

 

 あの時ギルが提案した案とはギルガメッシュのスキル黄金律を使いフィアッセのツアーを開催する会社からスポンサーまでツアーに関連する企業のすべてに対してある時は筆頭株主にのし上がることで発言権を持ち、ある時は買収を仕掛け形だけの代表取締役になることで今回のツアーの警備に対して過剰と言えるまでの準備をさせることだった。

 

 現にあの会議から数日ですでにツアースポンサー数社の株の保有率は十%を超えようとしており個人の保有率としては異常でありその企業からは買い戻しの打診が来ている、更にツアー当日の会場警備を担当する会社に至ってはツアー規模に比して中堅どころといったものだったのですでに買収一歩手前まで追いつめているという「もうこいつひとりでいいんじゃないかな?」状態である

 

 あまりにも手際が良すぎるギルに対してどうしてこんなに手馴れてるのかと聞いたところ

 

 「別に手馴れてるわけじゃありませんよ、株やらなんやらも手を出したのは今回が初めてですし」

 

 「いや、素人の俺でもわかるくらいには異常なんだが」

 

 「ま、黄金律のスキルで適当にしてても元手は増えるので後はそれを使ったごり押しですよ、どれだけ値を吊り上げられようとお金は湧いてくるんですから」

 

 ……こいつ今需要と供給とか経済活動のもろもろを否定したような気がする

 

 

 そんな一幕がありながらも順調にギル発案の「イベントは過剰戦力で叩き潰す」作戦は進んでいき、警備の状況を確認できる立場まで上り詰めることにより士郎さんが護衛として雇われるタイミングがわかり、襲撃時期が判明した。

その情報を手に入れた俺たちは計画の大詰めに入ったつまりは

 

 「こんなときじゃなかったら純粋に楽しめたのにな」

 

 今、俺は世界の歌姫フィアッセのツアー会場のそれもVIP席にギルと並んで座っていた、計画の最終段階とは俺たちも現地に行くことで、予想外の事態にも対応できるようにすることである。

 

 まあどうせ能力は対して使えないが一応の訓練で俺とギルの体は少し鍛えた大人よりも基礎スペックは勝っているし、襲撃があることを覚悟もしているので、いざことが起きた時もいち早く冷静に対処できるだろうということが一つと、しかし誤算があるとすれば

 

 「ギル様、開始まで時間がありますが何かお飲み物をお持ちしますか?」

 

 「いえ、僕には気をつかわなくても構わないので、警備に戻ってもらって結構ですよ」

 

 このギルの異常なまでのVIP待遇である

 

 この計画の鍵はギルがこのツアーの最大スポンサーになることで会場の警備を増やすことだったが、思った以上にギルの黄金律のスキルは異常だったらしく、ついこの間までこのツアーはいくつかの企業の合同出資によるものだったのが今ではいつの間にやらギルが作っていたギルガメッシュ株式会社が主催のツアーになっていた。

 

 いや、真面目に何したらこんなことになるんだよ、おかしいだろ、こいつのせいでマジで経済大混乱してるし、まぁ、そんなこんなで俺とギルは表向きはギルガメッシュ株式会社の代表取締役であるギルガメッシュ(ギルが作った架空の人物)の息子であるギルガメッシュジュニアとその友人の藤井蓮という立場でこのVIPルームにいる、更に

 

 「はっはっは、遠慮しなくてもいいんだよギル君、開演までには時間はあるし、それに何もないとなると俺たちが給料泥棒みたいじゃないか」

 

 そう穏やかに言う、見た目は二十代にしか見えないこの人がその実、既婚者で更に三人の子持ちだというのはあらかじめ知っていたとはいえ驚きだ、

 

 「いえいえ、本当に何も頼むことがないんですよ、それにあなたたちをそんな雑用に使ったなんて父さんに知られたらそれこそ僕たちが怒られてしまいますよ、士郎さん」

 

そう、この人こそが今回のミッションの最重要人物高町士郎その人である

 

なぜフィアッセさんの護衛のはずのこの人がここにいるのかというと大体ギルのせいとしか言えない

 

士郎さんは今回のイベントでフィアッセさんに万が一の事態が起きないよう特別に雇われたらしいのだがこの日に限っては最大スポンサーの息子であるギルがいるためこちらにも気を配ってほしいということで、開演前の僅かな時間にVIPルームの護衛状況をチェックしに来てくれたのだ

 

そこにギルと俺が士郎さんの末の子供である高町なのはと同年代ということもありめちゃくちゃよくしてくれるのである、そしてギルお前もうちょい子供らしい言葉づかいしろや

ギルと士郎さんの会話を聞きながら回想に浸っていると、士郎さんが

 

 「おっと、そろそろ会場の方に戻らないといけないかな、じゃあギル君、蓮君またあとで楽しんで行ってくれ」

 

 「はい、ありがとうございます」

 

 「士郎さん、ありがとうございました」

 

 開演が近づいてきた為ここで士郎さんは会場の警備に戻る、もし公演の最中に事件が起きれば俺とギルには手出しができない。

万全の準備ができたとは言い難いが公演の最中は警備が最も警戒しているしこのタイミングでことを起こされると面倒なので警戒レベルはMAXであるギル曰く

 

 「今回の警備に限っては資金に糸目をつけさせなかったので割とアクション映画のお宝並みに警備はきついですよ」

 

 最新の監視カメラだとか、普段の警備と比べて三倍の警備員の投入だとか、忍者の国家資格持ちだとか知りたくもなかった情報をペラペラと言ってくる。

やっぱり、リリカル世界なんかおかしいよ

 

 まあ、そんな風に裏では魔境になりかけていたコンサートは無事に終了した、世界の歌姫の名は伊達じゃなく普通に見入ってしまい、一発でファンになってしまった

 

「では、行きますか」

 

 俺が余韻に浸っているとギルがそう促してきた

 

 「とりあえず、ギルジュニアとして最後の仕事をして、その後異常がなければ今日のミッションは成功としていいでしょう、もし一応今日以外の日程も厳戒態勢は維持するよう指示していますしね」

 

 「最後の仕事ってなんだよ、今日はこれで解散じゃないのか?」

 

 「あれ、伝えてませんでしたっけ?この後スポンサーの息子としてフィアッセさんのところに挨拶をしてから帰宅の予定ですよ」

 

 「え、なにそれ普通にうれしいんだけど、ちょっと待って、色紙買ってくるから、マジで、なんだったら創造使うから」

 

 「時間がないので却下です、それに蓮君創造使えないでしょう」

 

 「いや、大丈夫だって、なんかこうピンチの覚醒みたいに使えるようになるかもしれないだろ」

 

 ……ダメでした、ギルが容赦ねえ俺の説得ぜんぜん聞いてないし、ギルがいないと場所が分からんのにさっさと控室に移動しようとするし

 

 「失礼します、ギルガメッシュですが、挨拶させていただいてもよろしいですか?」 

 

ぶつぶつと文句を言う俺を、無視したままさくっと控室に入室していくギルに遅れないようについていく

 

 「フィアッセさん初めまして、今回のツアースポンサーのギルガメッシュの息子でギルガメッシュジュニアです、今日は父が来るはずだったのですが、急な仕事でこれなくなってしまったので父に代わって挨拶に伺いました、今日のライブお疲れ様です、とても素敵で感動しました」

 

 だから、少しは子供らしくしろよ、こいつ、このまま商談でも始めるつもりかよ、これもう黄金律とかそんなもんじゃないだろ

肝心のフィアッセさんの方はギルの言葉に呆然としていたがすぐに気を取り直し笑顔で話しかけてきた

 

 「ご丁寧にありがとうございます、こちらこそ今回のツアーではいろいろと気を使ってもらってますから、お父様にもお会いして直接お礼を申し上げたかったのですけど、残念です」

 

 「ええ、父も大変残念がっていました、今日も僕にけして失礼のないようにと念を押してから仕事に向かいましたよ」

 

 「ふふふ、なら次の機会があればお会いすることを楽しみにしていると伝えておいてもらえますか?」

 

 「必ず伝えましょう、父にいい土産ができましたよ」

 

 ギルとフィアッセさんの会話はその後も穏やかに続き、十分ほど話したころだろうか、それまで横に控えていた士郎さんが

 

 「盛り上がっているところ申し訳ないんだが、そろそろホテルの方に移動してもらえるかな?」

 

 その言葉で思ったよりも話に熱中していたのに気付いたのだろう、少しあわてた様子でフィアッセさんは

 

 「あら、もうそんな時間?じゃあ名残惜しいけどまた会いましょう」

 

 「そうですね、次にお会いする時はもっと時間に余裕のある時に、まだまだ仲良くなり足りないですし」

 

 「ふふ、あんまりそういうことを女の子に行っちゃだめだよ」

 

 「本心で思った時しか言わないので大丈夫ですよ、名残惜しいので車に乗るところまではお送りしますよ」

 

 いいですかね、と士郎さんの方にギルが目くばせすると士郎さんも軽い調子で問題ないと返してくれたので駐車場まで送っていくことにする

 

 ファンの人が簡単に入り込めないようにするため駐車場は地下の奥まった部分に位置している、そこに俺たちと士郎さんそれにフィアッセさんの四人で雑談をしながら向かっていく、駐車場にも警備の人間が四人待っており、すぐに車を出せるようにエンジンをつけて待機していた。

 

 「では今度こそここでお別れですね、また会いましょうギル君、蓮君」

 

 フィアッセさんがそう言い、車に乗りこもうとするが

 

 「ちょっと待ってもらっていいですか」

 

 ギルがそれを制止する

 

「そこの人、ちょっと所属を教えてもらえますか?」

 

 緊張を感じ取ったのか士郎さんがフィアッセさんを自分の後ろに移動させ不測の事態に備える

 

 「は?所属ですか?私は第三班で駐車場警備を命じられていますが?」

 

 ギルに声をかけられた警備員が怪訝そうに返答をする

 

 「おかしいですね、今日の警備の配置を決めたのは僕ですが、第三班にはあなたはいないはずなんです、さて、ではあなたはいったいどこの誰なんでしょうか?」

 

 ギルが質問というよりは詰問の調子で声を投げかけるとごまかしきれないと思ったのかスーツの懐から拳銃を取り出しこちらに向けようとする

 

 「遅い!」

 

 フィアッセさんを後ろに下げた士郎さんが既に警備員の懐に飛び込んで両手に構えた小太刀で警備員の拳銃を弾き飛ばし、そのまま回し蹴りを叩き込みまず一人片づける

そのまま、少し離れた位置に立っていた警備員に対して何か針のようなものを投げつけ怯ませ、その隙に小太刀を一振りし無力化、これで残りは二人

二人の仲間が無力化されたところでやっと思考が追いついたのか残りの二人も拳銃を取り出し士郎さんに突き付けようとするが、その時にはすでに士郎さんの小太刀は二人を射程範囲に入れていた。

その状態で三下が士郎さんに抵抗できるはずもなく、四人の侵入者はあっさりと全員無力化されたのだった

 

 「やれやれ、危ないところだった、すっかり油断していたよ、ありがとうギル君」

 

 一息安堵の息をついた後、士郎さんがそうギルに礼を言った。

 

 「いえいえ、これで警備に口出しした甲斐がありましたよ、それに士郎さんだけでも問題なかったような気がするんですが、正直疑っていたでしょう彼らのこと?」

 

 「ははは、一応プロだからね、でもギル君が言うまで半信半疑レベルだったから助かったのには変わりないよ」

 

 「まあ、お世辞として受け取っておきますよ、あと他の警備員にも連絡はしたのであと数分でこちらに駆けつけるそうです」

 

 「そうか、なら一応ここから離れておこうか、大丈夫だとは思うがまだ仲間がいても厄介だ」

 

 士郎さんの提案に従い安全な場所に移動しようとしたとき俺の視界の隅で何かが動いた気配がした、そちらに目を向けると士郎さんが最初に吹き飛ばした警備員が再び動き始めていた

 

 「士郎さん!」

 

 俺の警告で士郎さんが動き出した警備員に気付いたが距離が遠すぎ、警備員が懐から何かのスイッチを取り出すのを防ぐことができなかった

 

 「全員伏せろ!」

 

 士郎さんが怒鳴りながら俺とギル、フィアッセさんに覆いかぶさったのと警備員がスイッチを押したのはほぼ同時だった

そして駐車場に爆発音が鳴り響いた。




ここまでがプロローグというか、原作に関わる下準備編ですかね
この次の話からは似非シリアスは抜きにまったりした話を書きたいですね


あと今回も推敲をあまりしてませんので誤字や表現のおかしいところあればご報告いただけると作者が喜びます

追記
感想をもらっておいて何もないというのもやっぱり不義理なので簡単な感想返しをすることにしました、主張がころころ変わってしまって申し訳ないですが、これからも見捨てないで下さると幸いです


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第六話 何事も後始末の方が大変

やっと出来上がりました、とりあえずこの話で士郎さん編?はおわりですかね


 あのツアーの日から数日後、あの時、士郎さんに庇ってもらった俺とギルはすぐ近くで爆発が起こったことが原因の一時的な難聴だけでそのほかには目立った大きな傷はなかった、それはフィアッセさんも同様でほぼ無傷であったが、大事を取り今後のツアーはいったん見直しとなった。

 

 それに伴いギルが社長モードに入り後処理に追われ、その手伝いで俺と一護も強制デスマーチに入り、やっとひと段落したのがつい昨日のことだ、そして今俺とギルは海鳴総合病院に来ている

 

 ナースステーションで見舞いに来た患者の名前を告げ、病室の前でノックをすると中からまだ若い女性の声で入室の許可がでる、病室のネームプレートには『高町 士郎』と書かれていた

 

病室にはベッドが一つとその横に簡素な椅子が置いてありその椅子には女性が座っており今日ここに来た目的であるベッドの上には

 

 「おや、ギル君に蓮君じゃないかお見舞いに来てくれたのかい?」

 

 士郎さんが数日前にも見せてくれた笑顔をこちらに向けていた

 

 あのテロがあった日、士郎さんは俺たちを庇って爆風を一身に受けたが、怪我の程度は爆発の規模に対してあり得ないほどに軽かった、1ヶ月ほど安静にすれば問題なく護衛としても復帰が可能なほどに。

 

 しかし士郎さんに退院後のことを聞いてみると

 

 「いや、元々今回の仕事で護衛の仕事は引退しようと思っていたからね、未練を吹っ切る意味でもこの怪我はちょうど良かったよ。

これからは桃子とゆっくり喫茶店をすることにするよ」

 

 そう言った士郎さんの顔は穏やかで本当に未練はないようだった、桃子さん(士郎さんに紹介してもらった)もうれしそうに笑っている

 

 「喫茶店ですか、いいですね!今度訪ねさせてもらいます!」

 

 原作を見ていた時から翠屋のシュークリームとコーヒーは気になっていたのだ、確か桃子さんは一流のパティシエという設定もあったはずだし楽しみだ

 

 「ありがとう、でも士郎さんの怪我が治りきるまでいったん休業しようかと思っているのよ」

 

 桃子さんのその言葉にギルが

 

 「そうなんですか?じゃあ士郎さんには早く元気になってもらわないといけませんね、あまり先にになると蓮君が拗ねてしまいますから」

 

 「ははは、それはいけないね、僕のせいで二人が喧嘩したら大変だ」

 

 「拗ねないよ!」

 

 そんな風に四人で談笑していると、病室のドアが開かれそこから三人の子供が入ってきた

 

 「ああ、恭也に美由紀、なのはもお見舞いに来てくれたのか、そんなに頻繁に来なくてもいいんだぞ」

 

 「そんなこと言わないでくれよ父さん、俺たちがどれだけ心配したと思ってるんだよ」

 

 「そうだよ、お父さん、私たちすごく心配したんだからね」

 

 士郎さんの軽口にまず男の子が返し、その次に女の子も士郎さんのことを若干責めるように言葉を続ける。

 

士郎さんのセリフを考えるにこの二人がまだ小さい恭也さんと美由希さんなのだろう、原作から逆算すると当たり前なのだが、いざ実際目の前にしてみると二人ともかなり幼い印象を受ける。

ギルの方を横目で盗み見るとその目線は美由希さんの背後に注目していた。

 

 いったい何にを見てるんだとギルの視線をたどっていくと、まだまだ小さな美由紀さんの身長でも体のほとんどが隠れてしまうほど小さな女の子が俺とギルのことを盗み見ていた

 

 (これが後の主人公か…)

 

 そう、そこにいたのはアニメのときよりも更に幼いが見間違いようがなく主人公の高町なのはであった。

しかし、アニメでは明るく優しい誰とでもすぐに友達になれるような社交的なイメージがあったのだが、今目の前にいる高町なのはの印象はというと、父親の病室になぜかいる俺とギルに対して人見知りしているごく普通の少女だというのが俺の感想だった。

 

 「どうしたのなのは、お姉ちゃんの背中に隠れて、ちゃんとギル君と蓮君にごあいさつしなきゃ」

 

 俺とギルに警戒しているなのはに気が付いた桃子さんがなのはに自己紹介するように促すが、人見知りモードになっているなのははますます美由希さんの背後に隠れてしまう。

 

 「こんにちは、俺の名前は蓮って言います、よろしくなのはちゃん」

 

 このままだとどんどん萎縮してしまうと思った俺は自分から自己紹介することにした、すると美由希さんの背中から少しだけ顔を出すと、こちらのことをじっと見つめてくる

 

 俺が失敗したかな?と思い、もうこれは変顔でもして場をごまかすしかないと自前の変顔レパートリーを検索し始めた時、なのはが美由希さんの背中からでてきて

 

 「高町なのはです!よろしくね」

 

 そう元気に挨拶した。

 

 (なんやこの子かわいすぎるやろ…)

 

 実際に対面した高町なのははかなりの美少女だった、アニメで大体の想像はしていたが、本物は想像を超えていた、ツインテールにしている栗色の髪はリボンでまとめられ、くりっと大きな目はこちらの反応を見逃すまいとじっと正面から見つめている。

 

 その時に感じた感情は俺の前世から今世までで感じたことのない、しいて言うなら胸の奥から何か温かいものがあふれるような、自然と目の前の彼女を見守っていたくなるような不思議な感覚だった。

 

 「僕の名前はギルガメッシュです、長いのでギルと呼んでください」

 

 俺が呆然としていると、横でギルガメッシュがなのはに自己紹介していた、パッと見は同年代なのだが、ギルの落ち着いた雰囲気のなせる技なのか、二人が向かい合っていると近所のお兄ちゃんとそれに懐いている妹分のような空気だ、心なしかなのはもギルには俺よりも警戒心が薄い気がする。

 

 自己紹介が終わったのを見計らっていた士郎さんが俺たちに声をかける

 

 「ギル君も蓮君もうちのなのはと同年代だろ?できれば仲良くしてやってくれないかな?」

 

 「こちらからお願いしたいくらいですよ、こんなに可愛らしい女の子と仲良くなれる機会はめったにないですから、ねえ蓮君」

 

 「あ、ああそうだな俺たち友達と言ったら後は一護くらいしかいないからな」

 

 「その名前は初めて聞くね、その子も仲がいいのかい?」

 

 「ええ、一護君と蓮君は友人というよりもう家族と言ってもいいですね」

 

 「ふむ、ギル君がそこまでいうんだ、その子もいい子なんだろう、また今度紹介してくれないかな?」

 

 「では、今度お見舞いに来るときに一緒に連れてきますね、一護君は剣術に興味がるらしいですから相談に乗ってもらえるとうれしいですね」

 

 また、ギルが士郎さんと保護者風会話を繰り広げている……

 

 ギルが士郎さんと話をし始め暇になった俺は今のうちになのは達子ども組と親交を深めることにした

 

具体的にはなのはとかな!

 

 いや、恭也さんと美由希さんは俺たちに対して友好的な空気が感じられるのだが、なのはからはまだ少し心の距離が感じられるんだよな、そう考えるとギルのやつは凄いわ、人との距離感のつめかたが絶妙だ。

ああいうのが人たらしってやつなんだろう

 

 まあそんなコミュ能力のない俺としてはそれからの時間なのはの好感度を稼ぐべくいろいろと話しかけるしかなかったのだけれど、それが功を奏したのかお見舞いから帰る頃には俺に対しても笑顔で話してくれる羽陽になっていた。

 

 気が付いたら、かなり長い時間居座ってしまったようで、病室の外は日が傾き始めていた

 

 「では僕たちはこれで失礼させていただきます」

 

 「ああ、今日は来てくれてありがとう、次に会う時は美味しいコーヒーとケーキをごちそうするよ」

 

 「ええ、楽しみにしています」

 

 そういって、病室を出ようとする俺とギルに高町家の人たちは、別れの挨拶と再会の約束を口にしてくれる、本当にいい人たちばかりである。

 

 士郎さんが退院したら、お祝いをもって翠屋に行こうと心に決めていると俺とギルになのはが近寄ってきて一言

 

 「次あった時はもっといっぱい遊ぼうね、約束なの」

 

 そう言って両手で俺とギルの手を一つずつ取り、指切りをした。

 

士郎さんのお見舞いの帰り道、俺とギルは今日のことで語り合っていた

ギルは士郎さんと桃子さんと色々と有意義な話ができたと、笑いながらはなし。

俺はなのは達子ども組との話から前世と世界が違っていても小学校の内容などには懐かしいものが多かったと感想を語った。

 

 「いやー今日はなかなか楽しかったですね、転生してから初めてリラックスした気分でしたよ」

 

 「そうだなー、ここ最近は士郎さんのことで忙しかったしな、今回の事件はベストではないけど、十分な結果だろう」

 

 「あまり高望みしすぎてもいけませんよ、原作を知っているのは強みですけど誰もかれもがその通りに行動する保証はありませんし、結局僕たち三人しか人手はないんですからね」

 

 「そんなことはわかってるよ、現に今回は一護がMVPだしな(・・・・・)

 

 俺は横で歩いていた一護に向かって声をかける

 

 「おいおい、俺は大したことしてねーよ、今回一番頑張ったのはギルだろう?」

 

 俺の言葉に対して一護がそう返すが

 

 「いえいえ、僕のしたことなんて少しでもリスクを減らそうとしたくらいですよ、一護君があそこで動いてくれたからこその今回の結果ですよ」

 

 ギルが一護にそう言うと死覇装(・・・)を着た一護が答える

 

 「まあ、役割分担ってやつだよ」

 

 そう、あれはツアーの三日前のことだった

 

 

 ギルがツアーに食い込み三人でライブを鑑賞してその後は臨機応変に対応するという、かなりざっくりな上特に俺たちがいてもいなくてももはやあまり意味がない計画だったのだが。

 

 その日は一護が夕食の当番だった、荷物持ちとしてついていった俺は(ギルはマネーゲームしてた)一護と取り留めもない話をしながらスーパーまでの道のりを歩いていた。

 

 「一護の方は能力の訓練はどんな感じなんだ?」

 

 「んあ?俺の能力はBLEACHの死神の能力だからな、詳しく言うと全キャラの斬魄刀が使えるらしい、まあ俺の方の仕様書も適当なもんだったし、何よりまず霊体にならないと斬魄刀も何もない。

一応、いろいろ漫画の知識とかでそれらしいものは試しているが今のところは成功してないな」

 

 「ふーん、まずは幽体離脱できなきゃ無理ってことか?」

 

 「そうなるなあ、一回霊体になれりゃあ後はその感覚でいつでも使えるようになるみたいだけどな」

 

 「確か前もそんなこと言ってたな、確か原作よりもハードルが低いとかなんとか。

あれってどういうことなんだ?」

 

 「ああ、なんていうかな、体に能力がなじんでくるとな能力の限界点っていうのかな?それが分かるんだよ。

こればっかりは感覚の問題だから説明のしようがない」

 

 「そうなのか…、ってことは一護は一度幽体離脱を経験すれば自由に幽体になれるようになるのか?」

 

 「そういうことだな、レベルキャップが解除される感じだな。

でもその第一段階ですでにつまずいてるんだけどな」

 

 そういって、苦笑する一護の言葉には自虐的な響きが含まれていた。

 

 (俺の場合はどうすりゃいいのかな、渇望に対する理解って言ってもな)

 

 そんなこと考えているうちにスーパーについた俺たちは今夜のおかずを探してスーパーをさまようのだった

 

 俺が今日は魚がいいなーとか思いながら鮮魚コーナーをうろついていると一護が真剣な顔でアジを見つめていた

 

 「一護、今夜は鯵にするのか?」

 

 「…いや、でも可能性はあるな…、試してみるだけでも…」

 

 「おいっ!どうしたんだよ、ぼうっとして」

 

 俺の声も聞こえないくらいに集中していたのか、強く声をかけるまで一護は反応しなかった。

 

 「ああ、蓮か、いやなんでもないよ、とりあえず今夜は魚にしようか」

 

 はっとしたように俺に気が付くと一護は少し気がせいているように買い物を終わらせた。

この時の俺は一護がひそかに買い物かごに入れている物に気が付かなかった。

一護が鮮魚コーナーで何を思いついたのか、それが分かるのは夕食後の自主訓練の時間だった。

 

 「さってと、いつも通り始めますか」

 

 俺たちの家の地下には神特製の訓練場が隠されていた、訓練場と言っても、ただ広い空間が広がっているだけなんだが、検証の結果この地下での音はほぼ外にはもれないようだ。

 

 精神と時の部屋のような時間圧縮や、悟空たちの使っていた重力制御などの特別な機能はついてなかったが、あの愉快犯型神様のことだ、何もないと油断しているととんでもないものを隠していそうだが、とりあえずは便利に使わせてもらうだけだ。

 

 「そうですねぇ、僕も早く剣を射出できるようになりたいですよ、このままだと文字通りの宝の持ち腐れですからね」

 

 「俺もなぁ、渇望の理解って言ってもなあ」

 

 「おや、そういえば一護君はどこに行きましたか?」

 

 「あいつなら夕飯食った後になんかキッチンでごそごそしてたぞ」

 

 「ふむ、今日は嫌に小食でしたしなにかおやつでも作ってるんですかね」

 

 「それなら俺は甘いもんが食いたいなあ、結構甘党なんだよ俺。」

 

 「そうなんですか?僕も甘いものは嫌いではないですけど、どちらかと言えば辛い方が好きですかねえ、あ、でもこの体になってからコーヒーとかの苦いものは苦手になりましたね」

 

 「ギルもか?俺も俺も、やっぱり体が幼くなってるからかな?」

 

 「そうでしょうね、今の僕たちは大体3~5歳くらいですからね、あまりコーヒーとか常飲するのも体に良くないですから、ちょうどいいと言えばちょうどいいんじゃないですか?」

 

 「でも俺最近やっとビールのうまさに目覚めたのに、また二十歳になるまでお預けはつらいよ」

 

 「それを言わないで下さいよ、僕だって我慢しているんですから」

 

 「ぐああああああ!」

 

 俺とギルがそんな馬鹿話をしていると上の階から一護の叫び声が聞こえた

 

 「おい!今の声一護だったよな!」

 

 「はい!なにかやたらと聞き覚えのあるやられ声でしたが間違いなく一護君でした!」

 

 

 「どうした!一護!」

 

 「大丈夫ですか!一護君!」

 

 俺たちが悲鳴の元と思われるキッチンにつくとそこには死覇装を身に着け腰に斬魄刀を拵えた一護が立っていた

 

 「なんか、幽体離脱成功しちゃった……」




今回ので本格的にチート入り?した一護君です。
でもこの作品の一応のテーマはチートが使えないなのでこの後も彼らにはそれなりに苦労してもらうつもりです

あと、話数が進むごとにどんどん文字数が増えていいているんですが、普通は何文字くらいを目安にすればいいんでしょうね。
誤字報告・感想などありましたら気軽によろしくお願いします。


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第七話 回想シーンと俺たちの戦いはこれからだ!

これで第一章完的な感じですね


 「第三十二回チート能力対策会議~異世界転生は突然に~を開催します。

今回の議題は主に一護君の抜け駆けについてです」

 

 「はい!議長!」

 

 「検事蓮君なんですか?」

 

 「被告の罪は明確だと思われます、我々に黙ってチートで俺TUEEしようとしたこの罪は許されるものではないと検察からは主張させてもらいます」

 

 「なるほど、では検察からの求刑は?」

 

 「死刑で」

 

 「では、判決を申し上げます、被告オリ主一護、『かーっ、チートなんか持ってないわー、全然持ってないわー』罪で死刑」

 

 この間三秒、無駄にある身体チートを使っての高速寸劇である

 

 「おい!ちょっと待て、理不尽すぎるだろ!あとギルてめえみさわやめろぶん殴りたくなる!」

 

 何か被告人がわめいているが聞き入れる気はない…ギルのみさわがむかつくのには同意するが…

 

 「まあ、おふざけはここまでにしておきますか、それで一護君本当のところどのくらいまでチートを使えるんですか?」

 

 一通り茶番がすんで真面目な雰囲気に戻りギルが一護に問う

 

 「ああ、今のところ一回幽体離脱が成功しただけだからな、感覚的にはあと数回繰り返せば自由に死神になれるところまでは行けると思うぜ」

 

 「そうですか、なら死神状態で現世に与える影響とかを調べないといけませんね、それ次第では今度の計画に変更を加えないといけませんから」

 

 「そうだなあ、一護のチートが使えるもんならテロ対策がだいぶ楽になるしな、斬魄刀の能力で便利なのあったっけ?」

 

 「あー、それなんだが斬魄刀はまだ使えねえぞ」

 

計画に必要なことをまとめ始めてた俺とギルは一護の言葉で話はまだ終わってないことに気づいた

 

「斬魄刀が使えないってどう言うことですか?」

 

「いや、正確には始解ができねぇ」

 

一護自身が持っている一本の斬魄刀にブリーチの斬魄刀の意識がごちゃ混ぜになっているらしい、その為斬魄刀の名前が分かっていてもまず、その斬魄刀の意識を探し出さないと始解の為の対話ができないらしい。

一護曰く「ハガレンのホーエンハイムみたいなもん」らしい

 

説明が進むにつれてこの仕事の雑さ具合に「ああ、またこのパターンか」的な顔で一護を見ていた俺とギルの憐れみに満ちた視線にいたたまれなくなった一護が半泣きになるアクシデントもあったがまぁこれは蛇足だろう。

 

一護の説明が一段落したところでふとギルが一つの疑問をもった

 

「そういえば、一護君のあの悲鳴はなんだったんですか?」

 

そういえば、そうだったそもそもあの悲鳴を聞いて俺たちは一護の異変に気づいたんだ

 

「ああ、あれは俺が幽体離脱する際に使ったもののせいでな」

 

そういうと一護は冷蔵庫からハンバーガーを取り出してきた

ただ普通のハンバーガーと違うところはパンに挟まれているのがハンバーグではなく生魚であると言うところだろう

 

「一護君、それはまさか…」

 

そのやたらと生臭いハンバーガーをギルは知っているようだった、その顔は恐怖にひきつっておりその反応からもそのハンバーガーがただ者ではないことがうかがえる

 

「ギルは知っていたか、そう!これこそが某漫画に登場した幽体離脱用アイテムチーズあんシメサババーガーだ!」

 

 チーズあんシメサババーガーとは某漫画に出てきた架空の幽体離脱用アイテムらしい、一護は今日のスーパーで鮮魚が安売りだった為、この方法を試してみることにしたらしい。

 

 「なんでそんなんで成功するんだよ…、リリカルな世界のはずじゃなっかったのかよ」

 

 「そこらへんはもう気にしてもしょうがないでしょう、僕たちの能力もこれレアスキルとかで言い訳できるか怪しいですよ」

 

 もう、ほんとこの世界やだ。

 

 俺はこの世界に転生してギルや一護たちと出会えたことには本当に感謝しているがこの所々に見え隠れする混沌(カオス)の気配だけは勘弁してほしかった。

このままだと原作に突入するともっととんでもないものが出てきそうですごく恐ろしくなってくる。

 

 そんな俺の心情はよそに一護は淡々と自分の能力の確認を済ましていく。

結果わかったのは、一護の死神モードは純粋な霊体ではなく霊体の外側を魔力で鎧のように覆っており、一定以上のダメージを受け、魔力の鎧が破壊されると、霊体は元の体に戻るようだ、このことから、俺たちの能力は一応レアスキルの範疇に収まるように調節されているのではないかという仮説をギルが立てていた。

 

 

 そこから時間がたつのは早かった、この騒動が起こったのがテロの数日前だったのである程度の一護の能力の検証が終わった時点で一護のポジションをどこに配置するかを決めなければならず、一護の斬魄刀との対話に十分な時間が取れなかった為、一護には霊体の隠密性を活かし、俺たちでは簡単には入れないところの見回りを担当してもらうことになり、本番中は万が一に備え、ステージ上で待機、その後は俺たちと共に士郎さんについていき、そしてあの最後のテロリストの爆弾を一護が俺たちを庇った士郎さんの上から更に庇うことで士郎さんも大きな怪我もなく終わった。

事前の検証で魔力を介さない物理的衝撃ではほとんど傷つかないことは分かっていたが、それでもあのとっさの状況で行動した一護のことを素直に尊敬している。

 

 

 「しかし、すいませんね、今日のお見舞いまで周囲を警戒してもらって」

 

 一護のチート抜け駆け事件からの下りを回想していた俺にギルの言葉が耳に届く。

既に俺たちは士郎さんのお見舞いから帰って今は居間でいつの間にか定位置になっている席に座ってくつろいでいるところだ。

 

 ちなみに、一護と俺は二人で三人掛けのソファーの両端に座っており、ギルは一人掛けのソファーがお決まりの位置になっている、原作対策会議も基本的にここでお菓子と飲み物を用意して行っている。

 

 「まぁ、このタイミングで俺がしゃしゃり出るのも不自然だからな、それに次に行くときは紹介してくれるんだろう?」

 

 「はい、士郎さんも一護君の話をしたら会ってみたいと言っていましたしね、次はやっと三人全員で行けますよ」

 

 「なら問題はねえよ、そういや肝心のなのはの方はどんな感じなんだ?リンカーコアを持っていると俺の姿を見られかねないと思って病室にまでは行けなかったからな、見てないんだよ」

 

 「それなら、蓮君の方が僕より適任だと思いますよ、なのはちゃんとは蓮君の方がよく話していましたからね」

 

 一護の疑問に対してギルが俺の方に話題を振ってくる

 

 「んー、第一印象としては引っ込み思案な女の子で話して感じた印象としては普通の女の子って感じだな、第一位印象に関しては、美由希さんや恭也さんもいたからかもしれないな、無意識に甘えてたんじゃないか?」

 

 それに対して自分の考えを二人に告げる

 

 「じゃあやっぱり原作みたいな性格にはなりそうもないか?」

 

 一護がこのタイミングで介入するにあたって一番の心配であったことを口にする

 

 今回の士郎さんの入院のイベント(こういう言い方をすると不謹慎だが)をつぶすにあたって一番の心配はまさにそれだった、本来の原作だと士郎さんの入院によってなのはの家族が全体が忙しくなり甘えたい盛りのなのはが不可抗力とはいえ一人で留守番することが増え、なのはが『親の手を煩わせない良い子』であろうとするというのが原作でも大きく扱われていた。

しかし、今回介入することで原作開始時においてのなのはの性格がどう変化するかは予想がつかなくなるのだ、最悪の場合、魔法少女になることを拒否し、原作自体が無くなってしまうかもしれない。

それを危惧した一護の言葉だったが

 

 「そうだな、でもたぶんだけどやっぱり根っこの部分では俺たちの知っている『高町なのは』だったと思う」

 

 そう、今日話したなのはの印象は普通の女の子だが、その根っこの部分人間の芯とでもいうべきか、そこにはまだ幼くはっきりとは定まってはいないが確かに原作の『高町なのは』のように相手のことを想い、そして自分の信念を貫く強い意志の片鱗が見えた気がするのだ。

 

 所詮は俺程度の感じた感想なので、ただの原作との共通点を探そうとしているだけなのかもしれないが……

 

「そうか、蓮がそういうならそうなんだろ」

 

 一護の返答は俺の想像に反して軽いものだった

 

 「なんか、軽くないか?一護も結構心配してただろ?」

 

 「でも、お前は大丈夫だと思ってるんだろ?」

 

 「そりゃそうだけど……」

 

 「じゃあ大丈夫だろ、家族の言うことを信じられないようじゃいけないしな!それに何があっても俺たちで協力すりゃなんでもできるさ!」

 

 一護は大きな声でそう断言した

 

 「そうですね、僕たちなら今回みたいにうまくやりますよ」

 

 ギルもそんなことを言って一護の言葉に同意する

 

 「とりあえず、次のミッションは一護君を士郎さんたちに紹介することですかね」

 

 「そうだな、いい加減俺も幽体以外で会いたいしな、バーガーはまずいし」

 

 「まだ、バーガーなしじゃ幽体になれないのかよ」 

 

 そんことを言い合いながら俺たちの対策会議は今日も続いていく。

 

    




前書きにも書いた通りこれで第一章完ですね、区切り的にも、正直この後一気に原作まで行くかそれとも閑話的なものを挟むかで迷っています、なので次回は少し遅くなる可能性がありますが見捨てないで頂けると嬉しいです

あと感想で誤字報告やルビ間違いなど大変助かってます、感想ページでもかきましたがここでも改めましてお礼申し上げます

いつもありがとうございます<m(__)m>


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第八話 俗にいう修行回

今回は設定説明回みたいになっているので興味ない方は今回飛ばしてもらっても問題ないかもしれません
こういうのを面白くかける人は本当にすごいと思います


 士郎さんの件を無事終えた俺たちだが原作まで時間があると言ってもやらなければけないことはまだまだ多い

 

 というよりギルの会社関連とかはオリ主の域を超えている、なんかビジネス誌の表紙を飾っているし。

 

 

 まあ、ギルの副業は置いておいて、最近の俺たちが熱心に励んでいるのはチートの開発と把握だ

俺たちのチート能力にはまだまだ謎が多い

 

 数々の二次創作で扱われた能力である『王の財宝』だがその使い方一つとっても今のギルが使いこなしているとは言えない、それは始解ができない一護もそうであるし、いまだ身体能力の向上くらいしか発揮できていない俺もそうだ。

 

 幸いにも神の用意してくれた訓練場があるおかげで人目を気にせず思う存分に訓練に没頭できる。

そして、俺たちは今思い思いにそれぞれの鍛錬をしているところだ

 

 一護は霊体化し目の前に斬魄刀を置いて、対話を試みているし、ギルは宝具を片っ端から引き出してその真名を調べる作業に没頭している

 

 ギル曰く「僕の王の財宝はありとあらゆる宝具が入っていますけど、中身を把握していないことには宝の持ち腐れですからね、いざという時になって劇場版のドラえもんみたいになっても困りますし」

 

ということを言っていた、今一番見つけたいのはFateに出てきた子供に戻る薬の逆の大人になる薬だそうだ、子供の姿だけだと社長業に支障をきたすんだとか

 

 そして、俺はというと、いまだに自分のチートが把握できていないでいた。

俺のもらった能力はDiesのキャラの能力だが、ギルや一護の意見ではキャラに対する渇望を理解すれば使えるようになるんじゃないか?ということだし、それでなくても、ある程度チートに体が慣れれば感覚的に能力を使えるようになるとのことだった

 

 一護やギルのアドバイスによると、頭の中で自分がチートを使っているイメージができると後は、体が勝手に反応してくれるらしい、ギルの王の財宝もゲームのCGのイメージを浮かべながら自分の背後を意識すると使えるようになっていたと言っていたし。

 

 とりあえず、特に当てがあるわけでもないので龍水がやっていたように座禅を組んで瞑想の真似事をしているのだが何も手ごたえがない

 

 一護が斬魄刀との対話に失敗すること二桁を超え、ギルの怪しい薬が異臭騒ぎを起こすのにも慣れたが俺のチートがいまだに理解できない。

 

 一護とギルが言うような感覚的なものもいまいちピンとこない、原作でも詠唱は頭に自然に浮かんでくるというような描写があったからそんな感じで浮かんでくるのかと思ったがそんなこともない。

 

 行き詰って俺が頭を悩ましていると、自分たちも行き詰ったのか一護とギルが俺の方に近づいてくる

 

 「どうよ蓮、創造とまではいかなくても、形成の取っ掛かりくらいつかめたか?」

 

 「全然だよ、形成(笑)とか言ってた昔の俺をぶん殴りたいよ」

 

 「シュピーネさんのことは言ってやるなよ…あれでも一般人相手なら無双なんだぞ」

 

 「でも困りましたね、創造は期待してませんでしたけど形成くらいはいかないとこれからつらいんじゃないですか?」

 

 「そうなんだよなー、身体能力が上がっただけじゃ役に立たないよな、いやそれだけでもうれしいことはうれしいんだけどさ」

 

 でも、せっかく好きだった作品の能力をもらったのだから使いこなしたいと思うのは当然だろう

 

 「身体能力が上がってるんだから今の位階は活動だろ?活動でも軽い特殊能力みたいなの使えただろ、そっちはどうだった?」

 

 ……活動?

 

 「その手があったか!」

 

 「おい、もしかして忘れてたのか」

 

 「そりゃうまくいかないでしょう最初のステップを忘れていたんですから。」

 

 あきれた顔をしている一護とギルのことは放っておいて、とりあえずは活動の練習だ、確か活動とは聖遺物の能力を限定的に引き出すことができるはずだから…

俺がイメージするのは俺の容姿の元となっている蓮の武器である相手の首を落とすギロチンのイメージ、自分の体が武器であり、自分の右手は刃でどんなものでも切り裂くことができると信じる。

そうして集中していると右手から何かが出ていく感覚がする、その感覚につられるように目を開くと目の前の床に何かで切り裂いたように亀裂が入っていた

 

 「できた……」

 

 内心こんなにうまくいくとは思っておらず、自分の口からは信じられないような、呆然とした声が出た

 

 「お!成功だな、これで次の段階に進めるんじゃないか?」

 

 「そうですね、蓮君、何か自分の能力で分かったことはありますか?」

 

 一護とギルのうれしそうな声で現実に戻される

 

 「え?いやそんなに突然言われても……」

 

 顔をあげて一護とギルに返事をしようとした俺の目の前にいたのは

 

 「やっと活動を使いこなしてくれましたね」

 

 俺が転生した時にいた姉ちゃんだった。

 

「お久しぶりですね、いい人生歩んでますか?」

 

 「ああ、それなりに堪能させてもらってるよ、それでいきなり出てきてどうしたんだ?

もしかして俺はまた死んだのか?」

 

 「ああ、オリ主よ死んでしまうとは情けないってやつですか?

心配しなくてもあなたはまだまだ死にそうにないですよ」

 

 案外この人もノリがいいみたいだ、俺が転生させてもらった時は事務的な感じがしたが素はこっちのようだ

 

 「今回あなたをここに呼んだのはあなたのチートに初期不良があったからですよ」

 

 「初期不良?」

 

 「あなたのチートに指定されたのはそのまま入れるとあまりにチートすぎますからね、まぁそれは後の二人にも言えるんですけど。

とにかくあなたが最初にチートの使い方が分からなかったのはあなただけチュートリアルがうまく機能していなかったからなんです」

 

 「なあ、あんたたちは転生とかそんな奇跡を簡単に起こせるのにどうして所々ポカするんだ?」

 

 一護しかりギルしかり、あとは俺たちの住んでいる家に関しても中途半端な機能がいろいろ追加されている

例えば子供たちだけで住んでいても周囲には違和感を感じさせないが、だからと言って国民保険は自分で払わなければいけなかったり(これはギルが払っている)

 

 「それに関しては申し訳ないとは思っていますが、こちらにも事情というものがありましてですねー」

 

 俺の質問に対して姉ちゃんは言葉を濁す

 

 「事情ってのは言えないもんなのか?」

 

 「いえ、言ってもいいんですけど面白い話でもないですし、長いですしで聞いてもいいことないと思いますよ?

それでも聞きたいならお話しますけど」

 

 「じゃあいいや、直接俺に関係ある話でもないんだろ?」

 

 「そですねー、こちらからすれば二度目の人生を楽しんでいただければそれで全部オッケーです」

 

 「じゃあそうさせてもらうよ、それでなんで俺はここに呼びだされたんだ?」

 

 多少は気になるが気にしてもしょうがないことは気にしない主義なのだ

 

 「とりあえずこちらの不手際でチュートリアルができなかったのでお詫びとして私が直接あなたのチートの説明をさせてもらいます」

 

 そういうと「最初に何か質問はありますか?」と聞いてきたので

 

 「俺のチートって結局どこまで使えるようになるんだ?」

 

 「そうですね、訓練と資質次第では原作と同程度の能力が使えるようになってますよ、あくまでカタログスペックですが」

 

 「ってことは流出まで使えたりするのか?」

 

 さすがにこれはチートすぎるだろうと思ったのだが

 

 「理論的にはそうなります、ただご想像の通り、あくまであなたに付与したのはDiesのキャラの能力であることは忘れないでください」

 

 どういうことだ?

 

 「想像はしているでしょうがあくまで、あなたが発揮できるのはDiesのキャラの渇望ということです。

あなた自身の渇望をもとにしたオリジナルのものは想定していませんのでできないと思ってください」

 

 例外はありますけどね、そういった姉ちゃんに対して「例外?」と聞くと

 

 「あなた自身がエイヴィヒカイトを理解し、そして創造・流出に足る渇望を抱くことですね」

 

 それは例外じゃなくて規格外っていうと思うんだけどなぁ

そんな俺の感想を無視して説明は進んでいく

 

 「取り合えず、現時点で活動に達していますから順当に行くと次は形成ですね、基本的にはあなたのキャラに対する渇望の理解でそれぞれの強度は上がっていきます」

 

 相手の事を深く理解すればするだけ強くなるってことですね

 

 と軽く言ってくれるがそれが難しいんだってことをこいつは理解しているんだろうか?

 

 「一応目安としては。

     

この程度の理解で発動できるようになってますねー、これに関しては現場もかなりお手軽になったと自信を持っていました」

      活動は共感

      形成は実感

      創造は信念

      流出は本人

 「いや、確かにだいぶお手軽にはなってる気はするけど……」

 

 でも原作からして頭のネジぶっ飛んでるやつしかいないからなぁ、これでも結構自身がないぞ

 

 「一応、これに満たなくてもかなり弱体化はしますが発動できる可能性はあるらしいですよ、でもその場合は燃費は悪いわ、威力は低いはでデメリットも多いみたいですけどね」

 

 「具体的に言うと?」

 

 「世界観に合わせてオリ主の皆さんのチートは魔力を使用するレアスキル扱いになるんで、理解が不十分なまま三騎士の創造なんか使ったら、極度の魔力使用でショック死してもおかしくないらしいです。

それでもいいなら使えますよ?」

 

 それでも発動できるのは三秒程度らしいですけど

 

 ……やだ、俺のチート使い勝手悪すぎ!

 

 「概要としてはこんなもんですかね、質問ありますか?」

 

 「いや、あまりにも使えなさすぎてビビってんだけどこれホントに特典なんだよな遠回しな罰ゲームとかじゃないよな」

 

 「そんなことないですよ、ちゃんと訓練すれば使えるようになりますって……たぶん」

 

 「多分ってなんだよおい、こら、また出たよこのなんかふわっとした感じ、そのなんか曖昧な感じが余計に不安を煽るんだよ、使えないなら使えないってはっきり言ってくださいよ!」

 

 「いや、ほんとに工夫次第ですって!いやほんとに、神様ウソツカナイ」

 

 「ほんと?ねえこれ信じていいやつ?俺単純だからコロッと騙されちゃうよ?ねえほんと大丈夫?」

 

 「いや、マジで大丈夫ですから、むしろあんなふざけた仕様書だけでここまで仕上げたことに関してほめてほしいくらいですよ」

 

 「そんなもんかなぁ…、……そういえばエイヴィヒカイトって魂を燃料にーとか聖遺物がーとかあったけどそこらへんってどうなってんの?もしかして原作みたいに殺人衝動で暴走とかあるの?」

 

 前に一度何かの時にギルが心配していたことを質問してみる、その時はギルが王の財宝から取り出そうとしていたが原典しか入ってないギルの中に原作のDiesの聖遺物が入っているはずもなく諦めたのだった。

 

 「聖遺物ですけど基本的にはあなたの魂に刻まれてますねー、殺人衝動に関しても活動に達しているので特に問題はないですよ。

能力自体がベースが魔力で出力が足りない時だけ魂を使う人にやさしいハイブリッド形式を採用しています」

 

 なんかさらっとあなたのことを改造しましたみたいに言われた気がしたんだが。

 

 「いや、そんな簡単なもんじゃないだろう、魂に刻むってなんだよそれめちゃくちゃ怖いんだけど問題ないのか?」

 

 「あーそこだけ抜き取ると確かに怖いですけど、魂の改ざんは転生のときに誰もが通る道ですんで心配しなくても大丈夫ですよ」

 

 「そんなもんなのか?」

 

 「そうですよ、そもそもあなたの主観で見ても三次元の世界から二次元の世界に入ってんですよ?そりゃ多少は根本部分から手を加えないとバランスが取れないですよ」

 

 そういわれると、そんな気がしてこないでもない

 

 「まあそんなに難しく考えないでも大丈夫ですよ、用量・用法を正しくチートを使って頂ければ問題ないようには調節してますから」

 

 「そこまで言うなら、まぁ納得しておく」

 

 「それがいいですよ、それでは今回は私どもの手違いでご迷惑をおかけしました、この説明をもってお詫びとさせていただきます。

それではあなたの人生に幸あれ!」

 

 「…い……おい、蓮!」

 

 「どうしましたか蓮君、急にぼうっとして?」

 

 「あ、ああ、悪い」

 

 どうやら元の訓練場に戻ってきたようだ、一護とギルの反応からするにさっきまでの説明は一瞬の出来事のようだ

 

 「で、どうなんだよ形成はできそうなのか?」

 

 一護が俺に聞いてくるが

 

 「まかしておけ!今ならできる!」

 

 あの説明会?講習?を受けた今の俺なら形成の一つや二つは余裕だ

 

 「ちょっと待ってろよ」

 

 目を閉じて意識を集中する、形成はキャラの渇望に対する実感だ、俺は転生してからの生活を想い一番強い感情を想起する。

これが形成を発現するうえでこれが一番無理のない方法だろう

相手の渇望に合わせるのではなく、自分の感情から渇望を見出す。

そして俺の中で自分でもどんなものなのかはわからない強いものが胸の中で渦巻く。

直観がこれが今持ってる中で一番強い感情だと告げる

 

 (これならいける)

 

 確信と共にその感情に想像の手を伸ばし現実に形にする

 

 「おおー」

 「これはまた」

 

 一護とギルの感嘆の声で俺は形成が成功したことを知り、ゆっくりと目を開けると

俺の指から糸が伸びていた

 

 

 

 あれ?

 

 

 「これは見事な形成(笑)だな」

 

 「ええ、こうも形成(笑)を使いこなすとは、さすがですね蓮君」

 

 「ああ、こんなにすぐに形成(笑)を完成させるとは俺も負けてられないな」

 

 「そうですね一番遅れていた蓮君が形成(笑)までできるようになったんですからもっと頑張らないといけませんね」

 

 形成(笑)、形成(笑)と一護とギルが馬鹿にしてくるのを聞いて俺は

 

 「てめーら形成(笑)、形成(笑)ってなめんじゃねえぞ!次はもっといいやつ出してやるよ!」

 

 「やってみろよ形成(笑)」

 「楽しみにいしてますよ形成(笑)」

 

 「上等だ!このやろー!」

 

 結局この日は形成(笑)しか出ませんでした

 

  




今回疲れたので、あと二・三話閑話を挟んでぼちぼち原作無印に突入できればいいなと思ってます
プロットも何もないのでどうなるかは未定ですが…

誤字報告やここがおかしいとかありましたら感想にお願いします
今回の話でこれは矛盾してるとかっていうものでもありましたら一緒にお願いします

PS
たくさんのお気に入り登録ありがとうございます、読者の皆様に支えられてこの作品はできていますのでこれからもよろしければお付き合いいただければ幸いです


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第九話 オリ主だって甘いものが食べたい

前回の話を投下後、一気にお気に入り登録や感想が増えました!ありがとうございます。
作者は単純なのでモチベーションがかなり上がりました、これからもがんばっていきますのでよろしくお願いします。

それと今回、試験的に視点変更を試しています、分かりにくいやこうした方が良いなどのアドバイスがありましたらまたよろしくお願いします。


 その日、オリ主の住む家は朝から騒がしかった。

三人の子供が住んでいるが、精神年齢はすでに大人な三人である、普段は特に騒ぐことなく思い思いに時間を過ごしているのだが、その日は勝手が違った

 

 「おい、喫茶店に行くのに手土産がお茶菓子っておかしくないか?」

 

 「そうだな、しかも相手は桃子さんだぜ、ぜったい桃子さんの作ったものの方がうまいだろ」

 

 「今更そんなこと言うわないでくださいよ、それに一応それはパリの著名パティシエの新作を取り寄せたんですから邪険にしないでください」

 

 「でもなー、お前らはいいけど俺は初対面なんだぜ、いろいろ気をつかっちまうよ」

 

 「そんなこと気にしなくても大丈夫でしょう、一護君は普段通りにしていた方がいいですよ、それに士郎さんと桃子さんには一護君の人となりは伝えてあるんで猫かぶっても無駄ですし」

 

 「おい!なんだよそれ初耳だぞ!」

 

 「言ってませんでしたっけ?」

 

 「聞いてないぞ、わざと言わなかっただろ!」

 

 「もうなんでもいいから行こうぜー、約束に遅れちまうだろ」

 

 「そうですね、少し急ぎましょうか」

 

 そう、今日は三人そろって翠屋に遊びに行く日なのだ。

士郎さんの怪我も完治し、今日から翠屋が営業再開すると聞いて俺たちは営業再開のお祝いとそのついでに一護のことを士郎さんに紹介することにしたのだ。

 

 三人であーだこーだ言い合いながら商店街にある翠屋につき、中に入るとお昼時のピークは避けるようにしたのだが、いくつかのテーブルは埋まっていた。

 そして、入店した俺たちにむかって

 

 「いらっしゃい、ギル君、蓮君それともう一人は噂の一護君かな?」

 

 士郎さんがカウンターの向こう側から声をかけてくる

 

 「どうも士郎さん、退院と営業再開おめでとうございます」

 

 「こんにちは士郎さん、早速お客さん入ってますね」

 

 俺とギルは士郎さんに軽く挨拶をし、一護は

 

 「初めまして、どんな噂かは知らないですけど俺が一護です。よろしくお願いしますね士郎さん」

 

 「ああ、よろしく一護君、知っているみたいだけど一応自己紹介しておくと俺が高町士郎だ。」

 

 …こいつが敬語使ってるとなんか違和感あるな

 

 隣のギルも同じ感想なのか、微妙な顔をしている

 

 そんな俺とギルをみて士郎さんが

 

 「はっはっは、もっと砕けた話し方でもいいんだよ、一護君、ギル君も蓮君も渋い顔してるしね」

 

 その言葉で俺たちの方を向いた一護が

 

 「おい、なんだよその顔、俺だって敬語くらい使うっての」

 

 「いや、違和感しかなかったですよ一護君」

 

 一護の不満げな言葉にギルが間をおかずにこたえる

 

意外なのは確かだったが、一護だって見たままの年齢ではないのだ、敬語の一つや二つ使えて当然なのだろう。

そう思い直し、一護のことを馬鹿にしすぎていたなと反省していると

 

 「あら、ギル君たちもうきたの?」

 

 カウンターの奥、恐らく厨房に繋がっているだろう通路から、桃子さんが顔を覗かせた

 

 「ええ、こんにちは桃子さん、営業再開おめでとうざいます、こちら、つまらないものですがお祝いの品を用意させていただきました」

 

 「あら、ご丁寧にありがとう。でも、そんなに気を遣わなくてもいいのよギル君」

 

 「いえ、もうこれは性分みたいなものですから」

 

 「それなら、ありがたくもらっておきますね。ありがとうギル君。

そっちの子は初めましてね、私の名前は高町桃子です、あなたは?」

 

 桃子さんがギルとの挨拶を終えると一護の方に目を向け、一護が

 

 「どうも、初めまして黒崎一護です、ギルと蓮とは友人で今回は無理を言って連れてきてもらいました、よろしくお願いします桃子さん」

 

 ……今さっき一護のことを見直したばかりだが、やはり一護が敬語を使っているのを見ると背中がむず痒くなってくるな

 

 

 「おい、蓮、何か言いたいことがあるならはっきり言え」

 

 またもや微妙な表情をしている俺に向けて一護がそう言ってくるので俺が端的に

 

 「お前が敬語を話してるの見てると気持ち悪いな!」

 

 はっきり言ってやると

 

 「よし!ケンカ売ってんだな、いいぜ買ってやるよ!」

 

 はっきり言えというからこれ以上ないくらいはっきり言ってやったのに一護は俺に向かって殴りかかってきた

 

 俺と一護がじゃれあっていると、桃子さんの出てきた厨房の方からなのはがやってきた

 

 「蓮君いらっしゃい!あれ?そっちの人は?」

 

 俺とじゃれていた一護もなのはの事に気づき居住まいを正して

 

 「俺の名前は一護っていうんだ、よろしく!」

 

 さすがになのは相手だと敬語は使わないらしく、それでも普段よりは少しだけ固く挨拶をした。

今日は翠屋というホームであるせいなのか、それとも一護の気さくな雰囲気にあてられたのか、なのはも俺と初めて会ったときよりも人見知りをせず

 

 「よろしく、一護君!なのはのことはなのはって呼んでね、一護君は蓮君のお友達なの?」

 

 「どっちかっていうと兄貴分かなー、いつも蓮のことを面倒見てやってるし」

 

 「ふえー、そうなの?蓮君はなんだかしっかり屋さんって感じだけど」

 

 「いやいや、家じゃ結構抜けてるからな、俺とギルがいろいろ面倒見てやってるんだよ」

 

 「そうなんだー、じゃあ一護君は蓮君のお兄さんみたいなものなんだね!」

 

 「そういうことだな!」

 

 

 「そういうことだな!じゃねえよ、なんで俺がお前に世話になりっぱなしみたいな話になってるんだよ」

 

 「いや、現になってるだろ、つい昨日もさぁ」

 

 「あれは元はと言えばお前が発端だろ!」

 

 「二人とも喧嘩はだめだよ!ほらあっちでお話しよ!」

 

 

 また俺と一護のじゃれあいが始まろうとしたところでなのはからストップがかかり俺と一護はなのはに連れられて空いているテーブルに移動することになった。

 

 

 

 一護君と蓮君がテーブルに移動してなのはちゃんと会話しているのを横目で見ながら僕はカウンターに座って士郎さんと会話を楽しむことにした

 

 「すいませんね、蓮君と一護君が騒がしくして」

 

 「いや、構わないさ子供は元気なのが一番だからね、それよりもギル君は向こうに混ざらなくてもいいのかい?」

 

 「ええ、後で混ぜてもらいますけど今は士郎さんといろいろお話させていただきたいなと思いまして」

 

 「ふふ、こんなおじさんと話していてもつまらないだろうに」

 

 「いえいえ、そんなことはありませんよ、こうして美味しいコーヒーも入れていただけることですし」

 

 そうして、士郎さんが入れてくれたコーヒーを一口啜る。

士郎さんはあまり苦みの強くない銘柄を選んでくれたようだ、子供の姿になってから舌が幼くなっているのでこの配慮はとてもありがたい。

 

 「ギル君にそう言ってもらえるとうれしいね、なんせSPとしてならともかく喫茶店のマスターとしてはまだ若葉マークなものでね」

 

 「若葉マークでこの味でしたらこれから繁盛間違いなしでしょうね」

 

 「まだまだ桃子のデザートと一緒に出すと負けてしまうからな、そのうちデザートだけでなくコーヒー目当てのお客さんを呼べるように努力するさ」

 

 「それなら、僕がまず立候補しましょうかね、一発で士郎さんのコーヒーのファンになってしまいましたよ」

 

 「あら、ギル君は私のデザートのファンにはなってくれないのかしら、おばさん寂しいわ」

 

 僕と士郎さんが会話を楽しんでいると、厨房から桃子さんが手にシュークリームの乗った皿をもってカウンターに現れた

 

 「桃子、厨房の方はいいのか?」

 

 「ええ、お昼時は過ぎたし、いったん休憩ね。よければ私もお話に入れてもらえる?」

 

 これはサービスよ

そういって僕の前にシュークリームの皿を置いてくれる、士郎さんとの会話に夢中で気付かなかったが、桃子さんは蓮君たちのテーブルにケーキを差し入れた後こちらに来たようだ。

子供席からケーキに対する歓声が上がっているのが今更ながら聞こえる

 

 「もちろんです、桃子さんともお話ししたいと思っていましたし」

 

 桃子さんの言葉に返しながら、いただきますと、ひと声かけてシュークリームを口に運ぶ

しっとりとしたシューに歯を立てると中から甘い匂いを漂わせながらたっぷりと入ったカスタードクリームがあふれてくる、甘さはあるものの胸焼けするような、しつこさはなくつい、もう一口、と手が伸びてしまうようなまさに士郎さんが言った通りに絶品という評価が正しいものであった。

 

 そして、シュークリームを食べきった後に、士郎さんのコーヒーを一口飲み、ほぅ、と一息つくと桃子さんに感想を述べる

 

 「さっきの言葉を訂正しますね、士郎さんのコーヒーのファンではなく、士郎さんのコーヒーと桃子さんのシュークリームのファンになってしまいました」

 

 そういうと、二人はうれしそうに笑ってくれた。

 

 

 

 桃子さんからの差し入れのケーキを食べながら俺たちは話を続ける、カウンターでは士郎さんと桃子さんの大人組がギルと何やら話しているが、ギルの年齢詐称疑惑はいつもの事なので、みんなスルーしている

 

 「一護君と蓮君は普段何して遊んでるの?」

 

 まず話を振ってきたのはなのはだった、目の前のタルトを味わいながら俺たちに質問を投げてくる

 

 「俺たちか?そうだなー、最近やったのはトランプくらいか?」

 

 「あー、一護がどっかから見つけてきたやたらと本格的な奴か」

 

 「おう!あれいいだろ、なんか俺の机の中に入ってたんだけど、ラスベガスのカジノでも使ってるやつなんだよ」

 

 「本格的なんだねぇ、なのはのお家はお母さんが買ってきてくれた猫さんのトランプなんだよ」

 

 「俺はトランプなんてそんくらいでいいと思うんだけどなぁ、確かにシャッフルはしやすかったから、流石だとは思ったけど」

 

 「蓮は分かってねえな、そのシャッフルをどれだけスマートにできるかがトランプの楽しみなんだろ」

 

 「いや、それはおかしい」

 

 そんな風に一護となのはと談笑をしているとなのはがぽつりとつぶやいた

 

 「二人は本当に仲が良くていいね」

 

 その言葉になのはを見ると笑っているのだが、、その笑顔はどこか寂しそうで、泣きそうなのを我慢しているようで俺も一護も何も言えず黙っていると、なのはが言葉を続ける。

 

 「なのはのお家も皆仲はいいんだけどね、なのはまだ小さいからお父さんとお母さんのお手伝いもできないし、お兄ちゃんとお姉ちゃんは学校が終わったらお手伝いしてるのに、だからいつも一人でお留守番してるんだけどやっぱり少し寂しいんだ……」

 

 士郎さんの入院が原作よりも短くなったので、なのはの孤独感も解消されたかと思っていたが、翠屋が忙しいのには変わりがなく、当然桃子さんたちも気を付けているのだろうが、手が回らないのだろう、そう思うと俺は

 

「じゃあ、なのはが寂しい時は俺がそばにいてやるよ」

 

 声が自然に出るというのはこういうことを言うのだろう、なのはの話を聞いてにそう言っていた

 

 「え……」

 

 「だから、なのはが寂しい時とか、困った時とかは俺が助けてやるよ、約束な!」

 

 それは俺にとって掛け値なく本気の言葉だった、子供が寂しいって親にも言えずに我慢するなんてあっていいわけない。

それくらいは俺にだってわかる、そして当然そう思っているのは俺だけではない

 

 「おいおい、蓮だけでかっこつけるなよ、今日初めて会ったからって遠慮しなくていいんだぜ、俺だって助けてやるよ」

 

 そう、こんな時に一護が黙っているはずがない、口には決して出さないが一護の事も、ギルの事も信頼しているし、それは向こうも同じだと確信している。

 

 そんな俺と一護の言葉が予想外だったのか初めは目を丸くしていたなのはだが俺たちの言葉を理解するにつれて頬が興奮で赤く染まり、目は涙が浮かんでいたがそれでも、先ほどの泣きそうな顔よりよほど可愛い笑顔で

 

 「じゃあ、寂しくなったら、一緒に遊んでくれる」

 

 そういったなのはに俺と一護が何て返したかはもう言う必要もないだろう。

 

 

 

 その後は特に何事もなく、途中からギルがこっちのテーブルに合流してきたこと以外は取り立てて変わったこともなく、初めての翠屋訪問は終わった。

 

 最後に、桃子さんからお土産にシュークリームを四つもらい俺たちは帰宅することにするのだった

 

 「今日は楽しかったよ、また来てくれるとうれしいね、今度はギル君だけでなく蓮君と一護君にもコーヒーをごちそうするよ」

 

 「そうね、またいつでも来てね、私も美味しいケーキをたくさん作って待ってるわ」

 

 士郎さんと桃子さんが店の前にまで出てきて見送ってくれる、お土産はすでにギルの手の中である。

なのはも士郎さんたちに並んで俺たちのことを見送ってくれ

 

 「また、遊ぼうね!今度はなのはが蓮君たちのお家に遊びに行くね!」

 

 「いつでもいいぞ!約束したからな」

 

 なのはの言葉に俺がはっきりと答える、横ではギルもうなずいているし、一護もサムズアップで答えた。

 

 それを見たなのはも今日一番の笑顔で答えてくれた。

 

 

 「それで、蓮君も一護君もずいぶんなのはちゃんと仲良くなったみたいですね」

 

 家に帰りいつもの定位置で一服ついているとギルがそんなことを言いだした

 

 「おう、そうだな、やっぱりいい子だな、すぐに打ち解けてくれたよ」

 

 「俺のときは仲良くなるまで苦労した覚えがあるんだけどな…」

 

 一護が気楽に返すが、反対に俺は初めてなのはにあった時を考え暗くなる

 

 「まあまあ、今日は一日仲良くしていたんならよかったじゃないですか、ちゃっかりと次はこの家に呼ぶ約束をしていたみたいですし」

 

 「俺がなのはを連れ込もうとしているみたいに言うな、あれはなのはが自発的に言い出したことであって俺は何も関与してないぞ」

 

 そう、あれはなのはが自分から言い出したことで、俺がなのはを連れ込もうとしているなど、風評被害もいいところである。

 

 「でも、お前なのはが一人で寂しいって言った時、真っ先に反応したよな」

 

 一護はいつもいらないことを言うのである。

 

 「ほー、それは興味深いですね、詳しく話してくれますか?一護君」

 

 こいつもここぞとばかりに要らないことを突いてくる

 

 「あー!もう!この話は終わり!ほら、無駄話していると翠屋のシュークリーム俺が一個多く食べるぞ!」

 

 「おい!蓮それはずるいぞ、俺だって狙ってたんだからな!」

 

 「そうですよ、ここは平等にじゃんけんで決めるべきだと思いますよ!」

 

 「ほう、お前らが俺に勝てると思っているとは、その思い上がりを正してやろう」

 

 「おいおい、蓮、あまり強い言葉を使うなよ、弱く見えるぞ…」

 

 「一護君こそ何を大物ぶっているんですか?この世のすべてのものは僕のものであるということで決着はついているんです、ゆえにシュークリームも僕のものです」

 

 「おいおい、何言ってんだよ二人とも、お前ら俺が最初に所有権を主張したんだから俺が食うにきまってんだろ、異論は認めん、断じて認めん、俺が法だ、黙して従え」

 

 全員が言いたいことを言いあった後、今日最後のイベント、シュークリーム争奪じゃんけんが始まる。

 

 オリ主の一日は騒ぎに始まり、騒ぎに終わるのであった。

 

 

 




一応、今回はほのぼの回なんですが、ちゃんとほのぼのできているかわかりませんね(-_-;)
話を書くたびに自分の足りないところが明らかになってきて、これからも頑張らないといけないという気になってきます。

誤字報告・感想ありましたらいつでもお待ちしておりますのでどうかよろしくお願いします。


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第十話 山も谷もない話

これからもぼちぼち書いていきたいと思います


 自分たちはこの世界にどれだけの影響を与えているのだろう

原作の開始まではまだまだ時間があり、最近は修行も打ち止め感が出ていたので動きの精度を高めるためにネットなどで適当に見つけた武術の型を反復している今日この頃、暇になった時はそんなことをよく考えるようになった。

 

 俺たちの介入の結果士郎さんの怪我は軽くなった、それは間違いないしそれが間違いだったとも思わないが、それでもなのはの孤独感は解消されなかった。

確かに入院している士郎さんのお世話がない分だけそれもましなのかもしれないがだからと言ってまだ幼いなのはにだから我慢しなさいとは言えないだろう。

 

 この世にはバタフライエフェクトや歴史の修正力といった相反する言葉も存在する、これから時間が経過するとともに俺たちの介入する場面も増えるだろうし、そうすると原作との差異もどんどん出てくると思うんだがそれに関しては全員その都度臨機応変に対応していくしかないってことで意見は一致している。

 

 まぁとにかくつらつらと何を考えているのかというと、リリカルなのはの世界は俺たちが元々いた世界と同じ歴史を辿るのかが気になる、俺たちがいるせいで本来の歴史から外れることが怖いって思ったんだ。

そして、どうして今さらそんなことが気になるのかというと。

 

 「あー蓮君また先に見始めっちゃってる!なのはも一緒に見たいって言ったのに!」

 

 翠屋に行った日から昼ご飯を食べた後に俺たちの家に遊びに来るのが日課になったなのはの叫びが居間に響く。

 

 「おう、なのは遅かったな」

 

 「遅かったな……じゃないよどうしていっつもなのはのこと待ってくれないの!なのはだってドラちゃん見たいのに!」

 

 やっぱドラえもんは大山のぶ代さんだな!っていうことだ。

 

 この世界の大体は元の世界と変わりはないようでやっているテレビ番組に関してもそうであった。

流石の俺もまさか昔のドラえもんを転生先で生で見れることになるとは思わなかった。

そのことが分かった時にギルも若返りの薬を使ったらずっとこのメンバーで続くんじゃ……とか怪しいことをつぶやいていたがそれに関しては全力で阻止をした。

 

 そんなこんなで最近のマイブームは懐かしアニメ鑑賞(主観)なのである

 

 「でも蓮君本当にドラちゃん好きだよね、なんで?」

 

 なのはが拗ねるのでまた初めから見直していたところそんな質問がなのはからきたので

 

 「後数年たつと声が変わっちゃうからかな」

 

 そう、さらっと答えたんだが

 

 「えー、うそだー」

 

 それが嘘じゃないんだなと思いながらこの貴重な時間を過ごしていく。

ちなみに今日は一護もギルも忙しいらしく朝から顔を見ていない。

ギルはもう言うまでもなく仕事だろうし、一護は一護で最近何かこそこそと練習しているみたいだ、そういうときはネタが割れると面白くないので気づかないふりをするのが暗黙のルールとなっている。

 

 「なんだかお腹すいてきちゃったね」

 

 ドラえもんからのクレヨンしんちゃんというゴールデンタイムを満喫し、その後でポケモンに繋げるという涙腺直撃コンボを食らっている俺に対してなのはがそんなことをつぶやいてきた。

その言葉に時計を見るとちょうど時間は三時を指しており、おやつに何か食べるにはいい時間だった。

 

 「じゃあなんかおやつでも食べるか?」

 

 なのはにそう提案すると二つ返事でうなずいたので台所を物色してみる。

結果発見したのは、既製品のお菓子はなく、小腹を満たせるようなものもなし。

あるのは小麦粉くらいというありさまだった。

 

 「そういえば昨日三人で闇鍋した時にあるもん全部突っ込んだんだっけ……」

 

 昨日何かの漫画でも呼んだのか異様にテンションの高い一護によって企画された闇鍋は家にあるものを片っ端から突っ込みその上でギルが王の財宝から取り出した出展不明の目隠しを三人でつけるという無駄に本格的なものであった。

肝心の闇鍋の味だが、俺の語彙ではとても表現できるものではないということだけ言っておこうと思う。

ただ、恐らく一番被害を受けたのは戸棚の奥に隠してあった秘蔵のロマネコンティを勝手に入れられていたギルであるのは追記しておこう

 

 「じゃあ翠屋に行く?今の時間ならお客さん少ないかもしれないよ?」

 

 なのはがそういって翠屋に行くことを提案してくれるが今は結構がっつり行きたい気分なのだ。

 

 「……というわけでどうしたらいい?」

 

 「というわけも何もスーパー行けばいいじゃないですか」

 

 困った時のギル頼みということでなのはを台所に置いて部屋で書類整理していたギルに知恵を借りに行ったところ返ってきた言葉はそんな身もふたもないものだった。

 

 「それがめんどくさいんだけどなぁ、何とかならないか?」

 

 「多少は材料が残っているならやりようもありますけど、小麦粉と調味量しか残っていないとなるとさすがにどうしようもないですよ。うどんでも打ちますか?」

 

そんなことしてたら夕飯になるんだが……

 

 「あ、そういえば昨日の倉庫整理でいいものがありましたからそれを使いましょうか」

 

 「いいもの?」

 

 最近、王の財宝の中身を確認する作業が倉庫整理扱いに格下げになっている現実を見ながら返事をする。

 

 「ええ、たこ焼き器ですよ」

 

 そういいながらギルは後ろに展開した王の財宝からたこ焼き器を取り出してくる。

 

 「なんでそんなもんが入ってるんだよ……」

 

 「僕も知らないですよ、将来たこ焼きの英雄でもできるんじゃないですか?」

 

 どんな英雄だよそれ。

 

 「まあ他に候補もないから仕方ないか、今日のおやつはたこ焼き祭りにするわ。

ギルも参加するか?」

 

 「ええ、こっちがひと段落したら顔を出します」

 

 ギルはそういいつつ視線を書類に戻し作業を再開しだしたのでたこ焼き器を両手に持ち台所に向かう。

 

 「おーい、なのは!ギルがたこ焼き器くれたからタコ買いに行ってたこ焼き祭りしよーぜ」

 

 「え?たこ焼き?ギル君そんなものもってたの?」

 

 「大阪の人はみんな持ってるっていうくらいなんだからギルが持っててもおかしくないだろ」

 

 「そんなことないと思うんだけどなぁ」

 

 うん、言っていてなんだが俺もそう思う。

しかし、そうは言っても仕方がないわけで俺はなのはとタコを買いに行くためにスーパーへと出発した。

 

 スーパーの鮮魚コーナーでシメサバに対して微妙な気分になりながらタコの細切れを買い、ついでにネギ・天かす・ソースを買い足していく

 

 (んー、ついでに晩飯も買っていくか)

 

 そんなことを考えながらなのはと二人で欲しいものをどんどんカートに積んでいく。

 

 「ねえねえ蓮君、たこ焼きにチーズとか入れたらおいしいかな?」

 

 「お!トッピングか!チーズとかも入れようぜ」

 

 雑談しながら買い物を進めていくとカートの中身では何を作るつもりなのか予想できないラインナップになっていっているが気にすることもないだろう。

食材なんて案外使い切れるものだというのをこの世界に来てから思い知った、なんせ住んでいる住人の半分が既に人間やめているようなものなのだ食中毒にかかるのなんか一護くらいのものだがあいつに関してはチートとか関係なしに体が頑丈だから心配ないだろう。

 

 「さて!材料はそろったことだし調理を開始するぞ!」

 

 「おー!」

 

 作り方はいたってシンプルに

①ボウルに溶いた卵・だし小麦粉を入れだまにならないようにかき混ぜる

②たこ焼き器を使い焼く

③ソースをつけて食べる

 

 「簡単すぎるだろ」

 

 「粉もんなんてそんなもんですよ、おやつ感覚でさくっと作ってさくっと食べるもんです」

 

 あまりにも簡単すぎて驚愕している俺に二階から降りてきたギルのツッコミが刺さる。

 

 「おいしーね、次はなのはもくるくる回してみたい!」

 

 たこ焼きの第一陣は俺とギルとなのはによってあっさりと全滅し、なのはが第二陣を焼きたいと言ってくる。

 

 「それはいいけど晩飯が食べられるように考えて焼けよ」

 

 「わかってまーす、次はいろいろトッピングも試してみるね!」

 

 桃子さんの娘だけあってなのはも料理に興味があったのかもしれない、うれしそうにたこ焼き器に生地を流し込むなのはを見ながらそう思った。

 

 「あ、そういえば蓮君にちょっと手伝ってもらいたいことがあるんでした」

 

 俺と一緒にたこ焼きを焼いているなのはを眺めていたギルがそんなことを言ってくる。

 

 「うん?どうした?」

 

 「いえ、ちょっと僕たちの戸籍関連で蓮君にも何枚かサインをもらわないといけないところがありまして…」

 

 「ああ、そんなことか。じゃあ今のうちに終わらせようぜ」

 

 今なのはが使っているたこ焼き器はギルが出してきただけあって謎の安全性があり鉄板に触れてもやけどをしない不思議なたこ焼き器だ、ここでなのはを残していても問題ないだろう。

 

 そう考えた俺はなのはにひと声かけてギルの部屋に行くことにした。

 

 「で、どれにサインすればいいんだ?」

 

 「ええ、こっちとの太枠とここに印鑑ですね」

 

 「了解っと……でも実際俺たちの戸籍とかどうするつもりだったんだろうな神様連中は」

 

 「さぁ?それは僕にも何とも、ただ……」

 

 「ただ?」

 

 「このことに気付かないままだったら僕たちが小学校に入学する年に聖祥から入学のお手紙が届いていたかもしれませんよ」

 

 ……あり得そうだから困る

 

 そんな何とも言えない雰囲気になりつつも書類の数枚はすぐに片付き俺とギルはもう一度たこ焼きを食べに台所に向かう。

 

 するとなのはの姿は見えず机の上には焼きあがったばかりであろうたこ焼きが皿の上に盛り付けられて置かれているだけだった。

 

 「あれ?なのはがいないな」

 

 「お手洗いでしょうかね?まあ僕らに一言もなかったということはすぐに帰ってくるでしょうから待っていましょう」

 

 「それもそうだな」

 

 そう話しながら席に着くと置かれているたこ焼きにソースと青のりをかけてなのはを待つことにする、すると予想通りにすぐになのはが帰ってきたのだが。

 

 「あれ、蓮君たちがいる。お用事は終わったの?」

 

 「おう、すぐ終わるって言ったろ。それより一人でたこ焼き焼けたんだな、偉いぞ」

 

 「にゃー、そんなことないよ……ってもしかしてソース掛けちゃったの!?」

 

 「そりゃたこ焼きにはソース掛けるだろ、出汁で食いたかったのか?」

 

 「そうじゃなくて……おやつ用にしようと思ったから結構いろんな物入れちゃったんだけど」

 

 「いろんなもんってなに入れたんだよ」

 

 「それは、チョコとかマシュマロとか……」

 

 これはダメなパターンですわ。

百歩譲ってそのままなら食べられるだろうけどソースも青のりもかけてしまってはもはや見える地雷と化したこのたこ焼きもどきを前に俺たちは立ちつくすしかなかった。

しかし見た目は良くできている。パッと見ではどう見ても美味しそうなたこ焼きにしか見えない、これをそのまま捨ててしまうのはあまりにももったいない。

 

 「見た目は美味しそうなんだよな…」

 

 「ええ、見た目はいいんですよ」

 

 「普通のたこ焼きにしか見えないの」

 

 「誰かが食べてるのが見たいよな」

 

 「それは面白そうですね」

 

 「えっと、それはちょっとひどいんじゃないかなー?」

 

 一人ほど反対意見はあるようだが俺とギルの中ではこれを処理する人物は決定している。

 

 「おーい!一護!なのはがたこ焼きつくたっけど食べるよなー!」

 

 おそらく一護もそろそろ修行が終わりだったのだろう俺が声をかけるとすぐに返事を返してきた。

 

 「たこ焼き?ラッキーちょうど腹減ってたんだよ!」

 

 ぱたぱたと音を立てて小走りで台所に入ってくる。

 

 「はい、一護君、爪楊枝ですよ」

 

 「サンキュー、あれギル達は食わねえの?」

 

 「ええ、僕たちは先に頂きましたから。これは一護君が全部食べてください」

 

 「なんか悪いなー。本当に全部もらっちまってもいいのか?」

 

 「ええ、その代りに残さないでくださいね」

 

 「当たり前だろ!」

 

 ギルが流れるように一護から言質取ったんだが。

しかもたこ焼きに意識が言っている一護とまだ付き合いが浅いなのは達は気づいていないが俺にはギルの表情に愉悦が浮かんでいるのが分かる。

あいつ絶対に闇鍋のこと根に持ってるだろ

 

 「じゃあ、いただきます!」

 

 一護はそう言うとたこ焼きを一つとり口に運んだ。

そして口に含んで咀嚼していくうちにどんどん表情がゆがんでいく

 

 「おい、なんか甘いんだけど」

 

 「どれどれ?ああチョコ味ですね」

 

 「なんでチョコ味なんか混ざってるんだよ!」

 

 「いやー、ちょっと些細な行き違いがありまして、まだまだあるのでいっぱい食べてくださいね」

 

 「あのーいやだったら残してもいいよ」

 

 一護がギルに文句を言っていると製作者であるなのはが責任を感じてそんなことを言ってくるがなのはにそう言われてじゃあ無理だから残すとは言えないのである。

 

 「いや!せっかく俺のために作ってくれたんだから残すわけにはいかないだろ!」

 

 「えー別に一護君のために作ったんわけじゃ……」

 

 なのはの発言にも気づかずに一護はどんどん口にたこ焼きを詰め込んでいく。

 

 「じゃあなのはちゃんもそろそろお家に帰った方がいいですよ」

 

 「そうだな、もういい時間だし。送っていくわ」

 

 「え、でも一護君放っておいても大丈夫なの?」

 

 「ああ、大丈夫ですよ」

 

 「そうだな、一護だし。腹は壊さないだろうから気にするな」

 

 「うーん、本当にいいのかなぁ」

 

 釈然としない様子のなのはを強引に説き伏せて家に送っていく。

その後ろではチーズマシュマロ味にあたったらしい一護がうめいていたがチーズあんシメサババーガーよりどう考えてもましなので放置することにした。

 

 余談だが今日の事がきっかけでなのはが本格的に桃子さんから料理を教えてもらうことにしたそうだ。

 

 




学園祭が終わったので週一ペースに戻していきたいですね。

それともう十話なのにまだ原作に入れていないという(-_-;)
ちょっと頑張らないといけないですね

誤字脱字・感想待ってますのでよろしくお願いします


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第十一話 小学生ころとかもう覚えてないよ…

もうサブタイトルのネタバレ具合がひどいです


「本日はお日柄もよく……」

 

 ある四月の良く晴れた日に校長の声が体育館に響く、それを聞いているのは新品の制服に袖を通した多くの児童。

言わずと知れた入学式の光景である、現代の日本に生きている人ならば必ず一度は体験するこの行事である。

かくいう俺も前世で一度既に体験済みであるし、それは一護にしてもギルにしても同じであるが。

 

 (やべぇ、死ぬほどつまらん)

 

 前世で感じた昂揚感が全くない、新生活に対する期待もこれから行われる授業に対する一抹の不安も何もない。

こんなしょうもないことで既知感を感じるとは思わなかった。そりゃ司郎もあんなアッパーになるわ……いや、それがなくてもあの作品の登場人物は頭おかしいわ。

 

 「……入学おめでとうございます」

 

 そんなどうでもいいことを考えていたら校長の長話という入学式最大の難関が終了している。

この後はクラスごとにHRを行い今日の予定は終わりだ。

 

 整列して退出する時にちらっとこれからのクラスメートの方を見るがさすがリリカルな世界というべきなのだろうか、髪の色からして前世とは違っているのが分かる、さすがにアニメほど露骨な蛍光色な髪色の児童はいないが全体的に色素が薄く、なのはのような栗色や光の加減で茶髪に見える程度はざらにいるみたいだった。

しかし、こうして集団に紛れていると殊更目立っているのが、ギルである。

顔立ちからしてアジア系ではなく髪は完全に金髪、瞳は深紅とか見慣れている俺でもどこのラノベのキャラだよと言いたくなる、まぁ実際エロゲのキャラの容姿なのだが――このことを詳しく考えると俺たち全員にブーメランで帰ってくる――

 

 しかし、そんな俺たちに負けず劣らずド派手なのが一人座っているのも見える、なまじ名前が近いからなのかギルのすぐ近くにもう一人きれいな金髪をした少女が座っている。

 

 (あれがアリサかな?)

 

 はっきりと顔までは確認できなかったがおそらくはそうであろう、ギルの近くに座っているということは同じクラスの可能性が高い、もしかしたら全員同じクラスだったりしてとかテンプレなことを考えながら教室に移動していく。

 

 教室につくと担任から入学のお祝いの言葉と明日からの予定の簡単な説明があり、HRはすぐに終わり、家に帰ることになるのだが。

 

 「ギル、終わったし帰ろうぜ」

 

 「そうですね、その前に士郎さんたちに挨拶だけしましょうか」

 

 「ああ、そうだな。おーい!なのは!士郎さんたちに挨拶したいし一緒に帰ろうぜ」

 

 「いいよー。そういえばお父さんが今日入学のお祝いしてくれるけど蓮君たちも一緒にどうですかって言ってたよ」

 

 「おや、でもお邪魔になりませんか?」

 

 「そんなことないよ、ギル君たちが来てくれたらうれしいよ」

 

 「じゃあ、お邪魔させてもらおうかな。ギルもいいだろ?」

 

 「そうですね、じゃあせっかくなので」

 

 三人で楽しく会話を交わしながら教室を出て士郎さんと合流しようと歩き出す。

 

 「おい、なんで俺のことを置いてこうとしてるんだよ」

 

 教室を出たところで一護がそう言って声をかけてきた

 

 「だって、なあ?」

 

 「そんなこと言われてもですねえ」

 

 「言いたいことがあるならはっきりと言えよ」

 

 言葉を濁す俺とギルに一護はそう詰め寄る、あまりはっきりと言い切るのは一護がかわいそうだと思いできるだけ触れないようにしていたのだが、あえてはっきりと言ってやるのが一護のためなのかもしれないと思い直し俺は一護にこう告げた。

 

 「だってお前だけクラス違うじゃねえか」

 

 「ぐはっ!」

 

 そう、俺もギルもなのはもまだ話しかけてもいないがすずかもアリサも同じクラスだというのに一護だけが隣のクラスなのだ。クラス表を確認した時の一護の顔があまりにも絶望していたので触れてやるのが気の毒だったのだが本人から話を振ってきたところ実はいじってほしかったのかもしれない。

 

 「そうですよね、まさか狙ったかのように一人だけ違うクラスとか予想もしてなかったですよ」

 

 「だよなー、いつかは違うクラスになるかも知れないとは思ってたけどさすがに一年目は同じだと思ってたよな」

 

 「なのはちゃんまで同じクラスなのに一護君だけですからね、あ、寂しくなったらいつでも遊びに来てくださいね」

 

 「おう、クラスは違っても俺たちは親友だからな!便所で飯食うくらいなら俺らのクラスに来いよ!」

 

 ここぞとばかりに全力で一護のことを煽る、おもしろいことがあれば全力を出すのが礼儀である。

 

 「もうその話はやめてください……」

 

 一護からギブアップの声が上がりさすがにこれ以上はかわいそうなのでこのくらいで勘弁してやることにする。

 

 「でも実際の話、一護君だけ別のクラスというのは寂しいですね」

 

 「いやーでもそうでもないぞ、こっちのクラスも面白いやつがいそうだしな、せっかく小学校に入ったんだから知り合いを増やすのも悪くない」

 

 ギルが一護を心配するが本当のところ一護はあまり気にしていないようだった。

最初に落ち込んでいたのは本心からだろうがそこからの切り替えは本当に早い、一護のこういうところはかなり尊敬している。

 

 「そうですか、では友達ができたら僕たちにも紹介してくださいね」

 

 「任せろ!なんてったって目標は友達百人でおにぎりだからな!」

 

 四人で話しながら歩いていると校門で士郎さんと桃子さんが出迎えてくれる。

 

 「四人とも入学おめでとう」

 

 「写真を撮ってあげるから校門に並んで並んで」

 

 桃子さんは開口一番にお祝いを言ってくれ、士郎さんは手に持ったカメラをこちらに向けて話しかけてくる。

校門の前に置いてある入学式の看板の前に全員で並ぶ。なのはを中心にして右隣に俺と一護、左隣にギルが立ちカメラに向かいポーズを決める。

 

 翠屋の片づけがあるらしい士郎さんと桃子さんといったん別れ、俺たちも制服から私服に着替えた後でなのはの家で遊びながら高町家の面子の帰りを待つことにする。

 

 「初めての学校の感想はどうだった?」

 

 大きなイベントも終わり一息ついたところでなのはに今日の感想を聞いてみることにした。

 

 「えっとね、緊張したけど楽しかったよ!」

 

 「仲良くなれそうな子はいましたか?」

 

 「まだ全然おしゃべりしてないからわからないけど、いっぱいお友達ができるとうれしいな」

 

 なのはの反応を見ながら自分が小学生だった時のことを思い出して懐かしくなる。

俺たちの昨日の会話はひどかったから余計になのはの純粋な反応がまぶしく感じる、ギルと一護の方を見ると二人とも同じ感想を持ったのかなのはを見る目が完全に保護者のそれになっている。

例えるなら妹分の成長を見守る近所の兄ちゃんのような……ってそのまんまか。

 

「ただいまーってギル君たち来てたんだ」

 

 「お帰りなさい美由希さん、お邪魔しています」

 

 四人で遊んでいると美由希さんが帰ってくる、話を聞いてみると美由希さんも今日は入学式なのでいつもより早く帰ってこれたのだという。

その後恭也さんも帰ってきて六人で遊びながら士郎さんと桃子さんを待つことになる。

 

 「そういえば一護は剣道に興味があるんだったな」

 

 会話の中で恭也さんがふとそう言った。

 

 「そうっすね、一度どこかで正式に習ってみたいとは思ってます」

 

 それに対して一護は少し崩した敬語で答える、前に俺たちがさんざんいじったせいか一護の敬語はどこか体育会系のものになっている。

 

 「それなら父さんの知り合いが剣道道場を開いているから紹介してもらったらどうだ?」

 

 「え、いいんですか?」

 

 「ああ、一護ももう小学生なんだそろそろ本格的なものはまだ早いが真剣にやるなら基本を身に着けるのは早ければ早い方がいいだろう。父さんに言いづらいなら俺からとりなしてやってもいいぞ」

 

 「いや士郎さんには俺から直接頼んでみます。ただのお遊び気分じゃないってところもちゃんと見せて」 

 

 恭也さんの言葉に一護は喜びながらも浮かれることはなくはっきりとそう言い切った。

 

 一護は今でも毎日霊体になって斬魄刀を振ってはいるが中々斬魄刀に認められるレベルに達していないのが現状である。

そこでいったん斬魄刀の始解は置いておいて刀自体の扱いに習熟することを目指すらしい、その一環としてどこかできちんと基本の型を教えてもらえるところを探していたのだが恭也さんはそのことを覚えていてくれたらしい。

 

 正直な話、一護以外の俺とギルも特典に関してはある意味打ち止め感が出ている。

俺の渇望もこのまま普通に暮らしていくぶんにはこれ以上は望めないだろう、ギルも宝具の射出までは集中すればこなせるようにはなったがそれでも原作のように剣群が雨のように降り注ぐ飽和攻撃には程遠い弾幕も薄く弾速も遅い俺ならば見てからよけれる程度のものでしかなかった。

ここから先は単純な特典の力ではなくそれをどう活かすかでしか大幅な向上は望めないだろう。

だからこそ一護は斬魄刀の能力を頼むのではなく基礎を固めるために剣道を習う道を選んだ。幸い士郎さんの知り合いの剣道道場ならばその実力も折り紙つきだろうからこの提案は一護にとっては渡りに船であろう。

 

 「俺が強くなったら恭也さんも試合してくださいね!」

 

 「ああ、その時は手加減してやろう」

 

 「そこは全力で行くぞっていうところでしょう」

 

 恭也さんの冗談に一護が苦笑いをしながら返す。

 

 「恭ちゃんには負けるけど私だって結構強いんだけどなー」

 

 二人だけで盛り上がっているのが寂しかったのか美由希さんも会話の輪に入る。

 

 「もちろん美由希さんの事も忘れてないですよ」

 

 「本当かなー?」

 

 「本当ですってば!」

 

 今あっちに関わるとめんどくさいことになる予感がするので美由希さんと恭也さんの事は一護に任せてこっちはこっちで楽しむことにする。

そろそろ士郎さんと桃子さんが帰ってくる時間らしいのでせっかくだから折り紙で飾り付けでもしようということになりそれの作成に忙しいのだ。

 

 

 「ねえ蓮君こんな感じでいいのかな?」

 

 細長く切った折り紙を丸めて糊をつけるという単純作業に刺身にタンポポを乗せるバイトを思い出しながら作業を進めていた俺になのはが声をかけてくる。

その手には俺の赤一色の折り紙リースとは違う配色を考えたカラフルなものが握られていた。

 

 「いや、お前のそれにどうアドバイスしろっていうんだよ」

 

 「でもでも、ここのところとかちょっとずれちゃったんだけど大丈夫かな?」

 

 「全然わからんから気にするな」

 

 「そうかな……」

 

 「そんなに時間もないから細かいことは気にするな、そもそも今日の主役はなのはなんだから堂々としていればいいんだよ」

 

 「そっか、そうだね!」

 

 俺のフォローが効いたのか元気を取り戻したなのはは機嫌よく飾りつけを再開する。

その様子を見ながら俺はさっきのなのはの態度を思い返す。

最近は頻度が減っているがやはりなのはには今もどこかに良い子でいなくてはならない思っている節があるように感じる。これが俺の原作知識からくる自意識過剰ならいいのだがあまり楽観視できることでもない。

なのはがよく俺たちの家に入り浸っていたことから原作よりも孤独感は解消されただろうし、俺たちも肉体的にはともかく精神的には年下のなのはだ、幼少期特有の性差による排他なんかするはずもなくずっと仲良く遊んできたし、ギルと一護はもちろん自覚はないが俺もなのはのことは妹分のように思ってかなり甘やかしていたように思えるが時折周りに対する気遣いが年不相応な気がする。

 

 (まあ小学校で人間関係の経験を積めば何とかなる範囲か)

 

 いろいろと不安要素は絶えないが俺たちにできることは限られているのだ、ならばとりあえずは今日を楽しむしかないだろう。

 

 飾りつけが終わるころに士郎さんと桃子さんが帰宅し、桃子さんは手製のケーキを作ってきており夕食後に全員で切り分けて食べた。

一護は改めて士郎さんに剣道道場を紹介してもらうように頼んで今度釣れていいてもらうようだ。

 

 これから原作まで自分たちに何ができるかはわからないができる限りのことをやっていこう、そう決心しなおした一日だった。

 




しばらくはさらっと流して原作に入ろうかなと思ってます。

感想・誤字報告ありましたらよろしくお願いします


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第十二話 友達作りは簡単だけど親友となると難しい

少し遅れてしまいました、あと後半が携帯から書いたので少しおかしいところがあるかもしれません。
何かご指摘がありましたら感想の方に一言書いて頂けるとうれしいです


 小学生も楽じゃない。

それが二度目の小学生をやっている俺たちの感想だ。

しかしこれはある意味では正しくないというべきか、ギルが日々こなしている仕事や前世でのことを考えると小学生というのも案外悪くないものである。

 

 毎日の授業はいくら私立と言えども小学生レベルなのでストレスにはならないし、授業時間自体も大学の講義や、いつ終わるかわからない会議などに比べれば天と地ほど差がある。教師も意欲にあふれ俺たちが理解しやすくできるだけ楽しく学べるように工夫を凝らした授業内容で思わず感心するほどだ。

 

 前世でもこれだけ恵まれていたらもっと成績も上がったのにと思ったのも一度や二度ではない。

なら何がそんなに大変なのかというと。

 

 「おい!蓮早くいかないと休み時間終わっちまうぞ!」

 

 「あー、はいはいすぐ行くよ」

 

 クラスメイトのテンションが高すぎてついていけないんだけど誰か助けてください。

 

 小学生の体力とテンションなめてた、もう精神年齢だけで言ったら俺なんかもうすぐ三十路なのにそんなに四六時中遊べないよ、昼休みはゆっくり飯が食いたいんだよ、そんな五分で食べてすぐに校庭で鬼ごっことかできないんだよオッサンだから。

 

 もう小学生の男子の体力の底なしさが怖い、朝早く来て授業が始まるまでサッカーして、授業受けて終わった瞬間ダッシュで校庭行ってドッジボール、また授業受けて昼休みになったら昼飯を早食い競争して鬼ごっことかマジで止まったら死ぬんじゃねえのってくらい遊び続けてるんだけど。

 

 「お疲れみたいですね」

 

 もそもそと昼飯を食っている俺にギルが言った。

 

 「ちょっとだけな、いや遊ぶのは楽しいんだけどもうちょっとだけ加減してくれないかなーと思うんだどな」

 

 「この年頃ならそんなものでしょう、そもそも蓮君は体力だけで見たら人外レベルでしょうに」

 

 「体力は持つけど気力は別だよ」

 

 「僕には童心に帰って満喫しているようにしか見えないんですけどね」

 

 「それは俺より百倍人生楽しんでいる一護に言ってくれ、あいつこの前クラスの男子集めてサッカーチーム作ろうとしてたぞ」

 

 「一護君はなじみすぎですよね、完全に隣のクラスのガキ大将ポジションに収まってますし」

 

 「ギルはギルでクラスの委員長じゃねえか、実質的なリーダー役だろ?」

 

 「僕は普通にしているだけなんですけどね」

 

 「学校始まって三日で何かあったらギルに聞けばいいみたいな風潮が生まれたんだがそれに関しては」

 

 「これまで仕事しなかったカリスマのおかげですかね?」

 

 カリスマスキルは関係ないんじゃないかなと俺はギルの立ち位置が決まった日のことを思い出す。

 

 その日はまだ学校が始まって数日のまだ学校生活に慣れておらずせいぜい仲の良いグループができ始めているという頃だった。

その日のHRはお決まりの委員長やクラス内部での係りを決める学校行事の始まりと言っていいイベントである。

この一年続く係りで何を選択するかによってその一年間が決まると言っても過言ではない。しかしここにいるのは学校生活初心者の一年生この係り決めにおける相方の選択や心理戦の過酷さを理解していない、なんとなく言葉の響きだけで楽しそうな生き物係なんかになってしまうと休み時間が金魚とニワトリの世話で終わるという可能性もあるのだ。

そんな地雷が埋まっているとは想像もしていないクラスメイトは各々好き勝手におしゃべりをしていて全然話が進まない。

いい加減に担任が注意しようとしたその時である。

 

「みなさん少しだけ静かにしませんか?」

 

 それはとても静かな声だった、独り言だと言えばそれでも通用しそうなほどさりげなくそれゆえにクラスの全員にスッと入り込んでくるような。

けどその声の裏にある感情を誰も取り違うことあり得なかった。

 

 (ギルがめちゃくちゃキレてるよ)

 

 ちらりとギルの表情を見てみても一見するといつもと同じ穏やかな笑顔を浮かべているが確実にイラついている、というよりなんでそんなにイラついてるのか分からないんだが。

 

 「先生?話を進めていただいてもよろしいですか?」

 

 「あ、はい」

 

 先生も敬語になっちゃってるよ……

それからは誰も無駄な言葉を発することなく誰も立候補者が現れないときはギルが目線で適任と思われる人に立候補を促すという絶対王政ぶりを披露し前世の経験を踏まえても最短ですべての係りが決まり解散となった。

 

 その日家に帰った後ギルになんであんなに怒っていたのかを聞いてみると 

 

 「別に怒ってませんよ」

 

 「いや、明らかにキレてただろ、背後に仁王像みたいなオーラが出てたぞ」

 

 「失礼なことを言わないで下さい。少し気が立っていただけですよ」

 

 「あれで少しとか言っちゃうお前が怖いんですけど。でもあの態度はひどいと思うぞ、確かに少しうるさかったけど小学生なんだから大目に見てやれよ」

 

 静かにしなければいけない場面だったのは間違いないがまだ小学生なのだ、これからそういうTPOを学ぶべき子供に対してあの反応は少し大人げないと思った俺はギルに注意する。それはギル自身も自覚していたようですぐに謝罪する。

 

 「それに関しては言われなくても反省してます、明日みんなに謝っておきますよ。」

 

 「そうしろ、それでなんであんなにイラついてたんだ?」

 

 「恥ずかしい話なのでできれば蒸し返してほしくないんですけど」

 

 俺の追及にギルが苦い顔をするが俺もギルのあのオーラにはビビらされたのだから詳しい事情を聴きたいのである、そんな俺の好奇心に満ちた顔に観念したのかため息を一つついてギルが話を始めた。

 

 「ちょっと会社の方で重要な連絡が入る予定でしたからHRを長引かせたくなかったんですよ」

 

 「え?そんな理由なのか?」

 

 「そんな理由ですよ、あと強いて理由を挙げるならば僕HRの時間は苦手なんですよ。」

 

 いつ終わるかわからないしそもそも何の話をしているのか論点がずれてくるし。

そのままHRの愚痴をぶつぶつとつぶやき始めるギルを見ながら俺は

 

 (たまにいるよな授業が時間道理に終わらないと焦るやつ……)

 

 ギルにも案外普通の学生らしい一面があることを知ってほっこりした気分になりながら、こいつが委員長の間は学級会がさくさく終わりそうでよかったと思うのであった。

 

 

 そんな風に愉快な出来事を思い出しながらゆっくりと昼飯を食べていると思いのほかのんびりしすぎたらしく昼休みがもう十五分程度しか残っていないことに気付く。

 

 「うわ、もうこんな時間かよ。こりゃあいつらに合流するのは無理だな」

 

 「そうですか?走れば五分くらいは遊べますよ?」

 

 「そこまで必死になってまで遊びたくはないわ」

 

 「一護君なら一目散に走っていきそうですけどね」

 

 「あいつと一緒にされるのは心外なんですが」

 

 あの小学生よりも小学生らしい一護と俺を同列に語るのはやめてほしい、ギルとは違う意味でこの学年での有名人だぞ一護は。

 

 「一護の事はどうでもいいんだよどうせ手遅れだしな」

 

 「手遅れって病気じゃないんですから」

 

 俺の一護に対する言い草にギルが苦笑しながら答えるがここで反論しない時点でギルも似たような感想を持っていることが分かる。

せっかく学校でギルと二人で邪魔が入らない状況なので馬鹿話だけでなく少しは真面目な話をしようと思った俺は気持ち声を潜めてギルに問いかける。

 

 「で、ギルの予想としてはどうなりそうだと思う?」

 

 はたから聞いていると何の話をしているか分からないほど言葉足らずのこの発言だが、ここ最近俺たちの中で重要な話と言えば一つしかないのでギルと一護に限って言えばこれで何の話がしたいのかは通じる。

ギルも俺の真面目な表情と言葉で何を聞きたいのか察して返答してくれる。

 

 「そうですね、具体的な時期は特定できないですけどイベントが起きるのは間違いないと思いますよ」

 

 「だよなー、でも展開が変わる可能性も否定できないと……」

 

 「それは僕たちがいる以上仕方ないですよ。確実な未来予測なんてありえませんよ」

 

 「それを言われるとつらいものがあるけどな」

 

 「結局はいつも通りということですけどね、僕の目算では問題ないとは思っていますけど」

 

 ここで俺たちが気にかけているのはなのはとアリサとすずかの喧嘩イベントについてだ、というよりこの時期にはそれしかないというか。

 

 実際今のクラスにおけるアリサとすずかの立ち位置はアリサはその優秀さと容姿から少しクラスから浮き気味であり、すずかは読書好きな内気な女の子という感じだがそのすずかの自己主張の弱さがアリサには気にかかっているようだ、アリサ自身が自分の意見ははっきりと主張するタイプであるからその容姿と気の強さからクラスの皆が一歩引いた対応をしがちな現状にストレスがたまり些細なことに過敏に反応して更に気まずくなるという悪循環に陥っているようだ。

 

 これがギルがさりげなくクラスに聞き込みをした結果らしい。ギルの見立てによるとアリサも何とか友達を作ろうという努力をしているようなのだがここでクラスの特色が裏目に出たというか俺たちのクラスの女子はどちらかと言えばおとなしいタイプが多く、アリサのようにズバリと意見を言うタイプとはそりが合わない子が多い。なのはも中身は案外頑固だが表面上はこのタイプになるしアリサとは相性が悪い。

 

 (だからこそ危ないんだよな)

 

 アリサの方もそろそろ限界だと思う、アリサも小学一年生だ人間関係についてはまだまだ若葉マークの初心者なので自分の何が悪くて友達ができないのか理解していないだろう、一番理由として上がりそうな容姿にしてもアリサよりも突飛な容姿をしているギルが委員長としてクラスになじんでいるのだからアリサも内心どれだけ悩んでいるのか想像は難しくない。それでも周りに流されて自分が一歩引くということをしないのだからアリサの性格も筋金入りなんだなと思う。まぁそのくらいの方が可愛いとも思うけどな。

 

 そしてそんなアリサが最近気になっているのがすずかで色々とちょっかいをかけ始めているらしい、素直に友達になりたいと言えばそれで問題は解決しそうな話だがこういうことは本人は気づいていないものだ。

そんなアリサとすずかが気になっているのが傍から見ているなのはですずかがアリサにいじめられているように見えるのが気になっているが実際に注意するところまではいっていない。

 

 「すごいなこれ、胃が痛くなりそうだ」

 

 改めて状況を整理してみるとクラスがギスギスしているように見えてくる。

 

 「僕はむしろこんな状況で普通に遊んでいた蓮君にびっくりですよ」

 

 「そうは言っても女子の問題なんか普通男子は気づかないもんだろ?」

 

 「いえ、男子もほとんどは気づいてましたからね。蓮君があまりにもスルーしているから気にしなくなっただけで」

 

 「マジかよ……」

 

 俺の対人関係スキルが小学生以下だというのが証明されてしまった。

 

 「で、委員長のギルさんとしてはどうするつもりなんですか?」

 

 俺がギルはどう動くつもりなのかを聞くと

 

 「どうもこうもこれに関しては後手に回ります」

 

 「なるほど……つまりどういうことだってばよ?」

 

 「蓮君もさっき言った通りこれは女子の問題ですからね、いくら委員長とはいえ男子の僕がこのタイミングでできることはないですよ。実際に喧嘩が起きたなら仲裁しますけどね」

 

 「真面目に役立たずだな俺ら……」

 「人間関係なんて反りが合うか合わないかしかないんですからなるようになりますよ。三人とも根は悪い子じゃないんですから落ち着くところに落ち着くと思いますよ」

 

 「本当にそう思ってる?」

 

 「そう思わないとやってられませんよ」

 

 そんな話をした数日後に案の定喧嘩は起こった。

喧嘩の内容は原作通りすずかのカチューシャを強引に取ったアリサがなのはに殴られて乱闘になりそれをすずかが止めるという言葉だけで説明するとよくある小学生のごたごただが実際に目撃した立場から言わせてもらうと一瞬なのはたちも転生者じゃないかと疑うようなものだった。

 

 だって「痛い?でも大事なものをとられた人の心の痛みはこんなものじゃないんだよ」とか俺でも言えないよ。

しかもその台詞を聞いてアリサの方もはっとした顔するわけですよ、いや、普通の小学生はいきなりそんなこと言われてひっぱたかられたらポカンとするだろ。何でそんなになんてことをしてしまったんだ見たいに気持ちの整理がつくの?

 

 勝手にプリン食べたとか、夕飯の豚カツのでかさが違うとかで喧嘩してる俺と一護が馬鹿みたいじゃん。

 

 まぁすずかが二人を止めたタイミングを見計らって俺とギルが仲裁に入って三人とも保健室に連れていったんだけどそこで仲直りさせるために三人娘に話し合いさせたんだけどまぁ三人とも大人だわ。

 

 まず喧嘩の大元であるすずかとアリサから話を聞いたんだけどアリサは自分がいけないことしたって既に反省してるから第一声が

 

 「ごめんなさい、月村さんのカチューシャを強引にとってしまって。それに高町さんも私のことを止めてくれてありがとうあのままだと私は取り返しようのない卑怯ものになってしまうところだったわ」

 

この発言である。もうここまでくるとわぁお嬢様ってすごいなー、としか思えなくなってくる。

 

それに対してすずかとなのはも

 

 

 「ううん、私が最初からはっきりとバニングスさんに言えばよかったんだ。そしたら高町さんも巻き込まずにすんだのに」

 

 「そんなことないよ、巻き込んだとか言わないで、二人とも大事なクラスメイト何だから。それにバニングスさんもお顔ぶっちゃってごめんなさい!痛かったよね?」

 

 「いいのよ、私にとっていい薬になったから」

 

 「でもやっぱり暴力をふるった人が一番悪いと思うからごめんなさい!」

 

 「なら……自分でも恥知らずだと思うのだけど二人に一つお願いがあるんだけど……」

 

アリサは少しいいよどんでから緊張した声で言葉を続けた

 

 「もし良かったら私と友達になってくれませんか?」

 

 そう言った声は緊張で少し上擦っていたがそれでも、いや、だからこそアリサの真剣な気持ちが現れていた。

それに対する二人がどう答えたかここで語るのも無粋だろう、ただ一つ言えるとしたらこの時からこの三人はお互いに名前で呼びあうことになったとだけ記しておこうと思う。

 

 「いやー、一件落着ですね」

 

 いい気分で余韻に浸っている俺にギルがそう声を掛けてくる

 

 「綺麗に落ち着いてよかったよ、でも小学生の喧嘩って感じが全くなかったな」

 

 「それは僕も思いました。いつもの一護君と蓮君の喧嘩の方がよっぽど子供っぽいですよね」

 

 「い、いつまでも少年の心をわすれてないだけだし」

 

 「まぁ蓮君と一護君はそれが似合ってるので問題ないんじゃないですか?僕は大人なので滅多なことでは怒りませんけど」

 

 何かギルが余裕ぶっていてイラッとしたので俺はこいつの化けの皮を剥がさなければならないと決意した

 

 「そういやさー、ギル昨日翠屋のシュークリーム買ってただろ?」

 

 「ええ、今日のお茶うけにでもしようかと」

 

 「そうそう!それだけどな……一護が食ってたぞ」

 

 「………はい?」

 

 「いや、俺も止めようとしたんだけどな一護のやつラッキーとか言ってぱくっと一口で食べちまったから止めようがなくてさー」

 

 「そうですか、ちょっと行ってきますね」

 

 そう言って出ていったギルを俺は生暖かい目で見守る。

ちなみに放課後になりギルと一護の喧嘩の話を聞いたなのはが二人を正座させて説教をすることになるのだがそれについては語らないでやるのが武士の情けというやつだろう。

 




これで原作前にやっておかないといけないことは概ね終わったので次までにネタが思い付かなければ無印まで時間が飛ぶと思います。

感想、誤字報告ありましたらお気軽によろしくお願いします。


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第十三話 時間は流れて

やっと原作に入りそうです。


例の三人娘喧嘩事件~雨降って地固まる~からはや三年、これ以上ないほどの親友となったなのはとアリサとすずかだがあれからなのはから紹介を受け俺たち三人とも仲良くなり大体六人でワンセットとみられるようになった。

 

そして、時間の流れというものは早いものでそれも二度目の人生だからか余計に早く感じる。

こんなことを考えるとオッサン臭いが本当に時間の流れが速い、ついこの間なのはが小学生になったと思ったらもう三年生である。

そう、三年なのである、原作が始まる時期が来たのだ、あの忘れもしない第一回原作対策会議のときに逃げられないのならば覚悟を決めるしかないと決意したその日が来るのだ。

 

 そんな大事な時期に俺たちが何をしているかというと。

 

 「おい、蓮どこまで書いたか見せてくれよ」

 

 「いやだよ、お前そういってからが長いんだよ」

 

 「いや、今度は大丈夫だって、俺だって日々進化してるんだから」

 

 「速攻でBボタン連打されるような進化しかしてねえだろ、俺のじゃなくてギルの方行け」

 

 「ちょっとこっちに回さないでくださいよ、蓮君が最後まで面倒見てあげてくださいよ」

 

 「どうせギルのやつが一番完成度も高くて手際もいいんだからそっち見てろよ」

 

 「お、それもそうだな。ギル頼む!」

 

 「お断りします、そもそも一護君自分の割り当て終わってないでしょう」

 

 「こういうやつ苦手なんだよ、こうかっこいいレイアウトとかわかんねえし」

 

 「中身はいい年齢なんですから頑張ってください」

 

 「そんなこと言わずにさー」

 

 『私たちの町のお店調べ』という名の自由課題に苦戦していた。

この課題自分たちの近所にどのような店がありどんな仕事をしているのかを調べ地図にまとめて感想を書くという極めてありふれた宿題だったので俺たち三人は気楽に構えていたのだがその実態は本格的なフィールドワークだった。

 

 まず自分たちの家の近所というが海鳴の駅前にはそこそこ大きなアーケード商店街があるし、必然そこに入っている商店の数も多くなる。

それだけで地図に記載する店の数は多くなるし、更に地図に記載するだけでなくできればそのお店の店員に実際に話しかけて毎日どのような仕事をしているのか、どんなお客さんが来るのか、その仕事い就いてよかったこと大変だったことをインタビューしなければならないのだ。

思えばこの宿題が出たときに翠屋の士郎さんと桃子さんに話を聞けば一発で終わるじゃんラッキーとか言って翠屋に突撃したのがそもそもの間違いだった。

俺たちが宿題のために話を聞きに来たと言うと当然士郎さんと桃子さんは快く協力してくれた、いや協力しすぎなくらいだった。

士郎さんと桃子さんに仕事に関するインタビューが終わった時にこれからいくつかのお店に行って話を聞いてくるつもりだと言ったのが全ての始まりだった。

その言葉を聞いた士郎さんと桃子さんはじゃあ俺たちの知り合いのお店の人たちに協力してくれるよ頼んであげるよと言ってくれ俺たちも軽い気持ちでじゃあお願いしますと答えたのが駄目だった。

あの善意が服を着て歩いているような士郎さんと桃子さんである、その二人の知り合いが一人や二人で済むわけでなくあれよあれよという間に取材に協力してくれる店が増え最終的には商店街だけを調査する予定を超え、『私たちの街のすべてのお店調べ』の規模にまで膨れ上がってしまった。

 

 ここまで来ると俺たち一人では手に負えないので担任に相談したところ

 

 「じゃあ、三人の共同発表ということにしましょう。楽しみにしてますね」

 

 そういわれてしまい今明日の発表に備えて三人で半泣きになりながら必死に作業中なのである。

 

 「そもそも、なんで小学生の簡単な地元調べが本格的な国勢調査みたいになってんだよ」

 

 「そんな今更な話はやめましょう、むなしくなります」

 

 「いや、でもこれ怖いくらいに完成度高くなってんだけど」

 

 俺の目の前にある模造紙には海鳴の拡大地図とそこにある様々な商店が業種ごとに色分けされ記載されていた。

 

 「僕は士郎さんと桃子さんがアポを取った店が十を超えた時点で覚悟を決めました」

 

 そう言うギルの目は死んだ魚のようだった。

 

 「なんでその時点で止めなかったんだよ……」

 

 「完全な好意でやってもらっているのにそんなことできるわけないでしょう」

 

 行く先々で同じことが起こったおかげで海鳴全体マップを作成することになったんだけどな。

 

 結局それからも作業は続き完成は日が昇り始めたころであった。

それだけ頑張っただけあって発表も無事に成功したが俺たちは三人とも発表が終わった時点で眠気が限界であり保健室で昼休みまで爆睡する羽目になったのだった。

 

 「あんたらはいちいちことを大きくしないと満足できないの?」

 

 「あはは、でもギル君たちの発表はよくできてたね」

 

 俺たちに対して辛辣な言葉をかけてくるのはアリサで、それに対して苦笑しながらもフォローをしてくれるのはすずかだ。

昼休みになった時に俺たちを起こしに来てくれたのはありがたいのだがこれが起こしてからの第一声とは少し扱いが雑すぎると思うのだがそれをアリサに言っても。

 

 「なんであんた達にいちいち気を使わなきゃならないのよ」

 

 そう言われて終わりそうだから言わない、というか前に一回言われたし……

 

 「ほら、寝ぼけてないでお昼食べに行くわよ!わざわざあんた達の分のお弁当も持って来てあげたんだから感謝してよね!」

 

 ……アリサさんまじツンデレ!

 

 「でも先生も言ってたけど将来の夢か……」

 

 保健室から弁当を食べるために屋上のベンチに移動して食べ始めるとなのはがそうつぶやいた。

 

 「みんなは将来の夢って何か決まってるの?」

 

 その質問にまずアリサが

 

 「私はお父さんもお母さんも会社経営をしてるから、それを継ぐならいっぱい勉強しなきゃくらいかな?」

 

 続いてすずかも

 

 「私は機械系が好きだからその関連のお仕事ができたらいいなぁと思ってるよ。なのはちゃんはやっぱり翠屋の二代目?」

 

 「お料理は好きだからそれも将来のビジョンの一つではあるんだけど……それが本当に私のしたいことなのかなぁって」

 

 なのはがすずかの言葉にそう答える、その顔にいつもの元気さはなく沈んでいる。

 

 「ほら私得意なことあんまりないから、だから何がしたいことで私にしかできないことってあるのかなって……」

 

 「そんなことないよ!なのはちゃんにしかできないこともあるよ」

 

 「そうよ!そもそもなのはの方が私より理数系のテストは点数高いじゃない!それなのに得意なことがないってありえないでしょ!」

 

 なのはのネガティブな発言に対してアリサとすずかが強く否定する。

 

 「にゃはは、ありがとう二人とも。……そういえば蓮君たちの将来の夢って聞いたことがなかったけど何かあるの?」

 

 口をはさめる空気ではなかったのでおとなしく弁当を食べていた俺たち三人になのはがそう質問してくる。

 

 「将来の夢ですか?僕はアリサと同じく父の会社を無事に継いでさらに大きくすることですかね?」

 

 その質問にまず明確に目標が決まっているギルが答える。

しかし、ギルの裏事情を知っている俺からするとその発言は僕はまだまだ会社を大きくしますよっていう宣言にしか聞こえなくて若干ひいてしまうんだが……

 

 「俺はなーとりあえず今は剣道が面白いからな、行けるとこまで行ってその後考える」

 

 ギルに続いて一護が答える。初めは転生特典の為に始めた剣道だったが一護の性に合っていたらしく今も楽しそうに道場に通っているし時々高町家の方にも顔を出して指導してもらっているらしい。

 

 「一護も案外考えているのね、てっきり本能だけで生きてるのかと思ってたわ」

 

 一護の言葉にアリサが心底驚いたという風に言う。

このアリサの言葉からも分かる通り一護は三年になっても変わらず全力で小学生やってる。

 

 「おいおい俺だって日々いろんなことを考えてるんだぜ、傍目には気づかれない様にしているだけで」

 

 「そうね、どうでもいいことを考えることについてだけはいつも一流よねあんたは。この前も放課後に男子を集めて学校全体を使って缶けりしてたみたいだし」

 

 「あれは楽しかったな、缶の位置を決めるのが難しくてさー、校庭だと丸見えだから蹴りに行きにくいしかといって校舎内とかだと缶を蹴った時に飛距離が伸びないし」

 

 その行動力をもう少しまともなことに発揮してくれれば言うことはないんだけどな。

 

 「蓮君の夢は何なのかな?」

 

 アリサと一護が掛け合いをしているのを放置してすずかが俺に聞いてくる。

 

 それにしても将来の夢か……

 

 「そうだなぁ、とりあえず大学まで行ってそれからどこか安定した仕事についてできればきれいな嫁さんもらえれば最高だな」

 

 この世界に転生してから原作の事と目先の事しか考えていなかったから改めて普通に将来の夢を聞かれると困ってしまい無難な答えしか返せない。

 

 「なんか意外だね、蓮君の事だからもっと突拍子もないことを言うかと思ったのに」

 

 なのはが俺の夢を聞いて失礼なことを言ってくる。

 

 「意外とはなんだ、俺はそこの二人とは違ってごく普通の小学生なんだからおかしい所はないはずだぞ」

 

 「蓮君が普通の小学生なら普通の小学生なんかいなくなっちゃうと思うの……」

 

 「失礼な、俺ほど普通の小学生はいないぞ、ギルや一護みたいな例外とワンセットにするな」

 

 「でもそんなこと言って蓮君もいろいろとむちゃくちゃしてるよね?」

 

 「そうだよね、急用があるからって教室の窓から飛び出していったのには驚いたね」

 

 なのはとすずかが立て続けに俺がいかにおかしいかを主張してくる、確かに人から改めて言われるとちょっとおかしいかなーという気がしないでもないが身体能力が人外になってからもう五年は立つのである、ちょっと校舎の二階位なら普通の人でも落ちても平気だよなーとか思ってしまってもおかしくないと思うのである。

そんな必死の反論をしてみるが

 

 「蓮君……それはちょっと無理があると思うよ」

 

 そんなかわいそうな子を見る目をしないでもらえませんかねなのはさん。

 

 そんなこんなでいつも通りわいわい話していると時間はどんどん過ぎ去っていくもので気が付くと昼休みは終わり、その後の授業も何事もなく終了する。

 

 「今日は塾の日だから一護たちとはここでお別れね」

 

 校門を出たところでアリサがそう言う、なのは達は三人とも同じ塾に通っているが俺たちはさすがに小学校の勉強を塾に行ってまでしたいとは思えなかったのでなのは達が通うことが決まった時に一緒にどうかと誘われたが断っている。

 

 「そうですね、じゃあまた明日」

 

 「また明日なー」

 

 「はいよ、また明日学校でな」

 

 アリサの言葉に俺たちは三者三様の言葉を返し家に帰っていく。

しばらく歩いて行き完全になのは達が見えなくなったあたりでギルが話を切り出す。

 

 「二人とも気づいてますよね?」

 

 「ああ、そのためにこれまでやってきたんだから当然だろ」

 

 「むしろ今まで何も言いださなかったから俺しか覚えてないのかと思っちまったよ」

 

 「じゃあこれからの予定は大丈夫ですね?」

 

 「もちろん、任せとけ!」

 

 「これまでの訓練の成果を見せてやろうぜ!」

 

 そう、俺たちの原作知識が正しいなら今日が運命の日だ。

あの日転生した時の思いは今もまだ変わっていない、いや、実際になのはと知り合って更に思いは強く決意は固くなっている。

どうせなら完膚なきまでのハッピーエンドを目指すだけ、俺たちの転生特典は中途半端なものだったけどやりようはいくらでもあることを見せてやる。

 




次回から戦闘シーンに入りそうですね、戦闘とか初めて書くのでどうなるのか分かりませんが……

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第十四話 物語の幕は開ける

やっと本格的にリリカルなのはっぽくなってきました


 「なのはの家で預かれることになったので明日病院に行こうと思いますっと……」

 

 今日はなのはにとって大変な一日だった。

朝目が覚めたときに変な夢を見るし、放課後は蓮君たちと別れて塾へ行く近道を通っている時に自分にしか聞こえない声が聞こえたと思ったら夢で見た場所に辿りついてそこには傷ついたフェレットがいたのだからそれはびっくりした。

その後はアリサが調べた動物病院に運び診察を受けたがけがはそう大きなものではなく明日には退院できるというので家に帰ってからお父さんとお母さんを説得してしばらく家で保護する許可を得たのだ。

 

 (はぁー今日はいろいろありすぎてちょっと疲れちゃったよ。そうだ、明日フェレットさんをお迎えに行くのに蓮君たちもついてきてもらおうかな)

 

 アリサとすずかにフェレットを飼えることを報告し一息ついたなのはが考えたのは幼馴染たちの事だった。

あの個性的すぎる幼馴染たちとなのはは不思議と馬が合った。初対面の時こそ少し人見知りしたが柔らかい物腰のギルはなのはの警戒心を刺激しなかったし、一護はその明るい性格からすぐに打ち解けた、どちらかと言えば打ち解けさせられたというべきかそして一番仲良くなるのに時間がかかったのは蓮だろう、根は優しいのだが若干ぶっきらぼうな彼はギルや一護のように自然に相手との距離を詰めることができず出会った時のなのはに対してもどう接すればいいのか困っているところがあった。しかしそれでも蓮はなのはに対してどうにか仲良くなろうと努力したし初めて出会ったときになのはと一緒に遊んでくれたことをなのはは忘れていない。

その甲斐あってか今のなのはにとっては蓮は三人の中でも一番仲がいいのは誰かと問われれば蓮の名前を挙げるだろう。

 

 明日になったら蓮たちを誘ってみよう

なのはがそう決心し明日に備えて寝ようとしたときだった

 

 (誰か僕の声が聞こえていますか)

 

 昼間なのはをフェレットの元に導いた声が頭の中に響いた

 

 (誰か僕の声が聞こえる人がいるなら僕に力を貸してほしいんです)

 

 その声の主はよほど切羽詰った状況にいるらしく何度も必死に訴え続ける。

なのはにはこの声の持ち主が誰かは分からなかったが真剣に助けを求めていることだけは分かった。

そしてここまで困っている人を見捨てるということがなのはにはできるはずもなく直観に従って昼間フェレットを預けた動物病院に向かって夜の街を走りだすのだった。

あまり運動が得意でないなのはだがそれでも必死に足を動かし動物病院に辿りついたそこで見たのは

 

 

 「もう来たのか、案外早かったな」

 

 「あまり夜遅くに出歩かせたくなかったんですけどね」

 

 「夜遅いからまた明日ってわけにもいかないんだからしょうがないだろ……」

 

 「よかった、僕の声が届いたんだね」

 

 そこには先ほどまで考えていた幼馴染と言葉を話すフェレットがいたのだった。

 

 「なんなのこれ……」

 

 そしてなのはのこの言葉がなのはの心情をもっとも率直に表していた。

 

 

 なのは達と別れた後俺たちは家に帰ってから早速夜の為に準備を始めていた、今回は今までのように臨機応変という名のぶっつけ本番ではなく初めて入念な計画を立てたミッションだ。

まあそれが成功するかどうかは俺らのメイン偵察兵である一護にかかっているんだがな。

 

 「でも一護君にはいつも貧乏くじをひかせてしまっていますね」

 

 一護に持っていく夜食を王の財宝の中に入れていたギルがそうこぼす

 

 「そうだな、でも仕方がないんだよな今の俺たちの年齢で外で歩いてたら補導はされるわ、そこらのサラリーマンのおっちゃんにも声かけられるわで張り込みもできねえ」

 「その点一護君は霊体にさえなってしまえばリンカーコア持ち以外には見えなくなりますからね、隠密スキルなんかない僕たちにとっては少しうらやましいですよね」

 

 一護には前回の士郎さんの時と同様に霊体状態でユーノが入院しているであろう動物病院を見張ってもらっている。

原作知識によって今夜ユーノがジュエルシードの暴走体に襲撃されるのは分かっているので今回は先手を取ることで被害を減らす作戦だ。

まぁ一護だけだと暴走体を抑えられないと思うので俺たちもこれから援軍として向かうのだが、不測の事態が起きないよう一護には学校から帰った時点で見張りを頼んでいる、なんだかんだ言って一番重要な働きをしている一護である。

 

 「よしっと、じゃあ僕らも行きますか」

 「はいよ、じゃあ気合い入れていきますか!」

 

 俺とギルが一護に合流すると一護は死覇装を着た霊体の状態で本当の幽霊みたいに電柱の影から動物病院を見張っていた

 

 「おい、怖いぞお前」

 「地縛霊みたいですね一護君、自分に魂葬した方がいいんじゃないですか?」

 「目立たないようにしろって言ったのはお前らだろ!」

 

 俺とギルの感想に対して一護の突っ込みが冴えわたる、ボケだけでなく突っ込みもこなせるとは流石一護だ。

 

 「なぁ蓮、なんか変なこと考えてないか」

 「いや、そんなことないけど?」

 「はいはい、ふざけるのはいいですけど少しは緊張感持ってくださいね。それで一護君、なのは達は来ましたか?」

 「ああ、それはばっちり確認済みだ。夕方あたりにユーノを連れてきてたぜ」

 

 一護が言うには夕方あたりになのは達が動物を抱えて病院に入っていくのを目撃したそうだ、ユーノには魔力があるので病院内に入っての確認まではしていないらしいがタイミング的に言ってここにユーノが入院しているのは間違いなさそうだ。

なのは達の塾の場所から考えてこの病院に連れてくると予想していたがそれが間違っていなくてよかった。 

 

 「そうですか、じゃあ後は待つだけですね」

 「そうだなー。そういえば最初のジュエルシードってどんなんだっけ?」

 「あーなんだっけ、ほらスライムっぽいやつ」

 「純粋なジュエルシードだけの暴走体ですね、アニメで見たきりなのでどれくらい強いかはよく分からないですけど」

 「でもあれだろ、現地の生物を取り込んでないから弱い方なんだろ?」

 「そういう設定ですね、でも弱いと言っても体当たりでコンクリくらいなら普通に壊してますけどね」

 

 アニメでは結構でかくて怖かったイメージがあるんだが大丈夫なんだろうかと少し不安に思っていると。

 

 「そのくらいなら蓮もギルもできるだろ……はっ!つまり蓮とギルがジュエルシードの暴走体の可能性が……」

 「ねーよ」

 「ないですから」

 「少しはネタに乗ってくれてもいいじゃねえか、せっかくの俺のウィットに富んだジョークが」

 「ハハハッ、ナイスジョーク」

 「おい、蓮。お前思いっきり鼻で笑いやがったな」

 「むしろそれ以外にどんな反応を期待してたんだよ」

 「おい蓮、久しぶりにキレちまったよ。屋上行こうか」

 「二人ともそのくらいにして下さい、本命が来たみたいですよ」

 

 ギルの言葉と同時に俺たちの頭の中に直接言葉が語りかけてくる。

 

 (誰か僕の声が聞こえていますか)

 

 その言葉が聞こえてくるのと同時に病院の方に二メートルほどの毛玉のような姿をした化け物が向かっていた。

暴走体が向かっているのを確認すると同時に一護が飛び出していく、その手には原作の一護が初めて死神になった時に持っていた自分の身長ほどもある斬魄刀が握られていた。

 

 「とりあえず先手必勝!」

 

 その掛け声とともに一護は暴走体に向かって横薙ぎに斬魄刀を一閃する、すると自分に向かってくるとは思わなかったのか暴走体は避けようとするそぶりも見せずに真っ二つになったかと思うとそのまま爆発して体がバラバラにあたりに散らばる。

 

 「なんだ?勝手に爆発したぞ。これで終わりなのかよ」

 

 あまりにもあっけなく暴走体が散り散りになったので一護があっけにとられたようにつぶやくが

 

 「いや、まだみたいですよ油断しないでください」

 

 ギルが言うとおり散らばった暴走体の体の破片が一つの場所に集まり始めていた。

 

 「なんじゃこりゃ気持ち悪いぞ!」

 

 体の破片から触手のようなものが伸びて段々と大きくなっていく様子は確かに見ていて気味が悪く、しかも中々再生するスピードも速かった。元の黒い毛玉に戻るのに数秒ほどで戻り今度は一護に対して触手を振り回して攻撃してきた。

不規則に振り回される触手は一護を狙うが一護は危なげなく触手を避け斬魄刀で打ち払っていく、しかし斬魄刀で切り払ってもすぐに再生していくために一護にも決め手がなく千日手になる。

 

 「やれやれ、一護君だけでも対処できると思ってましたけどこれは相性が悪いかもしれませんね」

 

 一護が突っ込んで行ってから黙っていたギルが俺の横に並ぶとそう言ってきた。その腕の中にはいつの間に病院から連れ出してきたのか一匹のフェレットが抱かれていた。

 

 「おい、いつの間に連れ出してきたんだよ」

 「いえ、一護君が突っ込んでいった時点で保護しておいた方がいいかと思いましてちょこっと窓から侵入させてもらいました」

 

 さらっと不法侵入宣言されてもな、いやどっちにしろ連れてこなきゃいけなかったんだけど……

 

 「あのう、あなたたちは一体……それにあのジュエルシードの暴走体と戦っているあの人は誰なんですか?」

 

 俺がギルの行動力に頭を抱えていると腕の中のフェレット―ユーノ―が俺たちに声をかけてきた。

 

 「僕たちはあなたの声を聴いて駆けつけてきたものですよ、急に助けを求める声が聞こえてそれを頼りに駆けつけてみればあの化け物と遭遇したというわけですね」

 

 ギルがあらかじめ考えておいた設定を話す。

 

 「それであの化け物はどうすれば倒せるんですか?このままだと一護君が危ないのですが」

 「それはこれを使って封印を施せば」

 

 そういってユーノは自分の首にかかっている赤い球をギルに差し出す。

 

 「僕の言葉を繰り返してください」

 

 ギルにそれを渡しユーノは起動パスワードを唱え始める

 

 「我、使命をうけしものなり」

 

 それに続いてギルも言葉を続けていく、それを見ていても暇なので俺は一護の方を見守ることにした。

相変わらず一護は触手の攻撃をよけながら隙あらば本体に切りかかっているが傍目に見ている限りでは一護の攻撃は効いているようには見えない。

 

 「がんばれよー、今ギルが恥ずかしいセリフ唱えて頑張ってるからもう少しの辛抱だぞ!」

 「お前も見てないで少しは手伝え!だんだん触手が増えてきてるんだぞ!」

 

 俺の応援に一護が怒鳴り返す、確かに最初の時よりも触手の数が増えているような気がする。

というより一護が触手を切り飛ばすと再生する時に数を増やしているみたいだな、このままだと一護のキャパを超えそうなので援護することにする。

まずは辺獄舎の絞殺縄(ワルシャワ・ゲットー)を形成する、今回は切り裂くと一護の二の舞になりかねないので手のひらの上に糸を玉のように丸めて出す。

 

 「一護!援護するから射線に被るなよ!」

 

 そのまま球にした辺獄舎の絞殺縄(ワルシャワ・ゲットー)を暴走体に向かって思い切り投げつける。

形成位階にまで達した身体能力は水の上を走れるほどになっている、それほどの身体能力を全力で発揮した俺の投球は文字通り目にもとまらぬ速度で暴走体に向かっていきそのまま暴走体にぶつかっても速度を落とすことなくその体を抉り取りながらそのままどこかに飛んで行った。

 

 「よっしゃ初めて試したけど案外うまくいくもんだな」

 「いきなり何すんだよ!俺の真横すり抜けていったぞ!」

 「ちゃんと当たらないようにしろって注意しただろ」

 「いってから投げるまでが早すぎるわ!」

 「蓮君も結構無茶しますね」

 

 一護の言葉に反論しているとレイジングハートを起動しているはずのギルが話に入ってきた。

 

 「ギル起動できたのか?」

 「それがですね僕には適性がないとかで失敗しちゃいました」

 「おい、じゃあどうすんだよこのままじゃあ決め手に欠けるぞ」

 

 暴走体が先ほどの魔球でのダメージを回復しようと止まっているうちに合流した一護がどうするか聞いてくる。

 

 「こうなったら誰か適性のある人が来ることに賭けるしかないでしょう」

 

 ユーノがいる中でなのはのことを堂々と話すわけにはいかずギルが言葉を濁しながらそう言ってくる。

 

 「じゃあ、とりあえずあれを動けないように捕獲する方向で行くか。どれだけ叩いても封印しなきゃ意味ないんだろ?」

 「それなら蓮君の得意分野ですねフォローは僕がするので頼みますよ」

 「任せろ。俺の辺獄舎の絞殺縄(ワルシャワ・ゲットー)は捕えたが最後化け物でも脱出できぬ逸品であると自負していますから」

 「死亡フラグやめろ」

 

 原作のシュピーネさんのようにしゅぱぱぱと捕縛することは俺にはまだできないのでギルにフォローしてもらうことにする。

まずは再生しきり触手で攻撃しようとしてくる暴走にギルが王の財宝でけん制する、先ほどからの行動パターンから暴走体は一定のダメージを受けるとまず再生を優先することが分かっているので暴走体が攻撃をやめ再生しようと動きを止めた瞬間ギルが暴走体を囲むようにして宝具を突き刺す。

俺はその宝具を起点にして辺獄舎の絞殺縄(ワルシャワ・ゲットー)で上から暴走体を押さえつけるように糸を張り巡らしまずは身動きが取れないように拘束する。

こうすることで暴走体は再生していくにつれて自分で自分を締め付けていく、その上で爆発されないよう追加で糸を巻きつけていく。

こうしてあっさりと暴走体は俺の糸でできた繭にとらわれ文字通り手も足も触手も出ない状態にされた。

 

 (うまくいってよかった)

 

 俺が山場を越えたことに一息ついいていると俺の戦闘の緊張感から鋭敏になっている聴覚が人がこちらに向かって走ってきている音を捉える。

そして俺の過敏になっている感覚が俺にその人物がよく知っている人のものだと教えてくれる。

 

 「おい、来たみたいだ」

 

「もう来たのか、案外早かったな」

 

 「あまり夜遅くに出歩かせたくなかったんですけどね」

 

 「夜遅いからまた明日ってわけにもいかないんだからしょうがないだろ……」

 

 「よかった、僕の声が届いたんだね」

 

 その人物は俺たちを見て目を丸くした後一言

 

 「なんなのこれ……」

 

 こうして真の主人公を加えて物語は幕を開けた。




戦闘描写が難しい……うまく伝わっているとうれしいです。

誤字報告・感想ありましたらお気軽にお願いします


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第十五話 原作初日の終わり

長い間お待たせしてしまって申し訳ありませんでした。
しかも今回いつも以上に支離滅裂な可能性があります、なのでいつも通りなにかアドバイスとかありましたらお気軽に感想の方にお願いします。


 なのはに暴走体を封印してもらった後俺たちはこれからのことを話し合うために近くの公園に場所を移していた。

 

 「それで君は何者なのか自己紹介をお願いしてもいいですか?」

 

 こういう場ではいつものごとくギルが最初に発言をしてこの場の進行を買ってでる。

 

 「はい、僕の名前はユーノ・スクライアです。スクライアは部族名なのでユーノが僕の名前になります。

巻き込んでしまって本当に申し訳ありません」

 

 ユーノはそう言って俺たちに頭を下げ謝罪した

 

 「そんなに謝らなくてもいいよ、まだユーノ君のことよく知らないし状況もよく分かってないけどたぶんユーノ君は悪くないよ」

 「でも僕がもっと気を付けていればあなた達を巻き込むこともなかったんです」

 「高町なのはだよ」

 

 なのはの言葉を聞いても自分のことを責め続けるユーノのことを遮ってなのはが自分の名前をユーノに伝える。

 

 「仲のいい友達はなのはって呼ぶからユーノ君もそう呼んでくれるとうれしいな」

 「いったい何を……」

 「これでユーノ君には名前を教えてもらったし、なのはの名前も教えてあげたからなのはとユーノ君はもう友達だよ。

だから巻き込んだとかそんな他人行儀なこと言わないで事情を教えてくれないかな、なのはにできることがあるなら協力するから」

 

 自分の膝の上に乗せていたユーノを自分の目線まで持ち上げて言葉を紡ぐ

 

 「でも、ジュエルシードは本当に危険なんです。なのはさんには魔法の才能がありますが次も無事で済む保証はどこにもないんですよ」

 「なら尚更放っておけないよ、誰も頼れる人がいないからユーノ君は私を呼んだんでしょ?」

 「それは……そうですが」

 「それに私だけじゃなくて蓮君たちも手伝ってくれるからきっと大丈夫だよ。

一人より二人、二人より皆でやったほうがうまくいくよ」

 

 そう言ってなのはは俺たちに同意を求めるように視線をこちらに向ける。

それに対して俺たちの答えは決まっていた。

 

 「もちろん、なのはが言うまでもなく協力するつもりだったぜ」

 「首を突っ込んだ以上最後までしっかり責任持ちますよ」

 「封印はなのは任せになるけどフォローくらいはしっかりやってやるよ」

 

 俺たち三人の協力するという返事にユーノは

 

 「皆さんありがとうございます……」

 

 その後俺たちもユーノと自己紹介をして名前で呼ぶようになった。 

さて、なのはが主人公としてのオーラを如何なく発揮したのはいいとして現在時刻はもうすぐ深夜になろうかという時間である。

それがどういうことかというと

 

 「それで?いったいこんな時間まで全員そろって何をしていたんだ?」

 

 小学生が深夜まで出歩いていて叱られないはずもなく、そしてなのはが外出しているのを恭也さんや士郎さんが気づかないなんてこともありえない話でありまして。

今は全員そろって居間で正座でお説教されています。

 

 「えっとー、その……」

 

 恭也さんに問い詰められてなのはが何とかうまい言い訳を考えているがこれまで嘘なんろくについたことのないなのはが咄嗟にうまい話を思いつけるわけもなくかといって正直に話すにしても『頭の中に響いた助けを求める声に従ったら言葉を話すフェレットに協力することになった』という言い訳にもならない話をするしかなくなるわけで。

困った顔でこっちを見つめてくるが俺だって士郎さんたちを誤魔化せるような話なんか思いつかない。

こういう時はこいつの出番だとギルの方にアイコンタクトするとそれが通じたのかギルが少し深呼吸をした後士郎さんに向かって話を始める

 

 「実はですね、なのはが魔法使いになっちゃったのでそのことで相談していたらこんな時間になってしまいました。」

 おい、こいつ全部ぶっちゃけちまったよ。

 

 「なのはが魔法少女に?」

 「ええ、喋るフェレットのお供もついてますよ」

 

 あまりにもあっさりと魔法のことを暴露したギルに恭也さんでさえ呆気にとられているがそれでも士郎さんは普通に受け入れて話を続けていく

 

 「それで、うちの可愛い魔法少女は魔法で何をするんだい?」

 「それは今からこのユーノ君に説明してもらおうと思っています。」

 

 そう言ってギルはユーノを机の上に乗せた

 

 「こちらがユーノ君です。ユーノ君詳しい説明をお願いできますか」

 「ちょ、ちょっといきなりばらすなんて何考えてるんですか!」

 「これからもなのはが封印に協力する以上いつかばれるんですから最初から話しておいて士郎さんたちにも協力してもらった方がいいと思ったんですよ。」

 

 ギルのその説明にユーノはいまいち納得できない様子で

 

 「でも、この人たちには魔力もないのに危険すぎますよ!」

 「士郎さんたち以上に頼りになる人なんて僕は知らないですよ。それに今日みたいに荒事になるなら余計に士郎さんたちの協力は必要だと思いますよ」

 

 ユーノの言っていることもギルの言っていることもどちらも間違ってはいない。

ユーノの常識では魔法こそが自衛の手段なのだから魔力のない士郎さんたちを巻き込むのは気が引けるのだろう、しかし、これからジュエルシードを封印する際に戦闘が避けられないのは今日の出来事から明白だ。

チートとなのはの魔法の才能という武器はあるが実戦経験がまったくない、士郎さんにいは魔力はないがボディガードの経験から戦闘に関してはこの場にいる誰よりもプロだ。

そう言ったことと何よりなのはに協力を求めるならば保護者にも一緒に説明をしておくべきだというギルの正論にユーノは折れ士郎さんも含めて事情を説明し始めた。

 

 「ジュエルシードは僕らの世界の古代遺産なんです。

ジュエルシードには人や動物の願い反応する性質があるのですが力の発言が不安定なせいで昨夜のように暴走してしまうのです」

 「ふむ、話で聞いた印象だとすごく危険なもののような気がするのだけどどうしてそんなものが海鳴に?」

 「それは……僕のせいなんです。僕らの部族のスクライアは遺跡の発掘・調査を生業にしています。その調査の一環で発掘されたのがジュエルシードなのですがその輸送中に人為的か事故かはわかりませんが輸送船が故障してジュエルシードがこの世界に散らばってしまって……」

 

 そこまで言った後でユーノは一息入れると俺たち全員を見まわして言った。

 

 「僕の監督不行き届きでこのようなことになってしまったのにこんなことを頼むのは心苦しいですが、僕の魔力が回復するまででいいのでどうかお力を貸していただけませんか?」

 

 ユーノはそういうと俺たちに向かって頭を下げた、そんなユーノに向かって

 

 「さっきも言ったろ、俺たちは協力するって。もう俺たちは友達なんだから遠慮すんなって」

 

 一護が俺たちを代表して答え、士郎さんは

 

 「そのジュエルシードが危険なのはわかったけどそれはなのはじゃないと対応できないものなのかな?」

 「ジュエルシードの封印には僕らの魔法を使わないといけないのですが適性があるのがなのはさんだけなんです、一護たちにも魔力はあるみたいなんですがどうもレアスキルに特化しているようで僕らの世界の魔法は使えなかったんです」

 「そうか……」

 

 ユーノの言葉を聞いて士郎さんは考え込むように黙り込んでしまった。

 

 「それなら俺もジュエルシードの回収に同行させてもらおうかな、それがなのはが協力することの条件だ」

 「でも、魔法が使えないと危険だと思いますけど……」

 「ギル君たちは知っているがこう見えても喫茶店のマスターやる前は結構危ない橋もわたったこともあるからね、足は引っ張らないつもりだよ」

 「でも……」

 士郎さんの言葉を聞いても魔法文明出身のユーノには魔力がない人でも戦えるという意識が希薄なため士郎さんが参加することを渋るが

 

 「ユーノ君、士郎さんは正直僕たちよりもよっぽど強いですよ」

 

 そんなユーノに対してギルがフォローを入れる、そんなギルに続いて一護も

 

 「確かにな、たまに試合してもらうけど俺程度じゃ一本どころか手加減してもらって数合打ち合うので精いっぱいだからな。今日の暴走体くらいなら士郎さん一人で抑えられると思うぞ」

 

 先ほど実際に実力を知っている二人に言われて一応納得したのかユーノもそれ以上士郎さんが同行することに異論をはさまなかった。

 

 「後の詳しいことはまた明日にでも話すことにしようか。もう夜遅いからなのはも早く寝る準備をしなさい」

 「はーい、じゃあおやすみなさい。」

 

 士郎さんに促されてなのはが自分の部屋に戻っていき

 

 「恭也。桃子に言ってユーノ君の寝床を客間に用意してやってくれ」

 「わかったよ、父さん。でもなのはのことについて俺も後で話がしたい」

 

 恭也さんそう言ってユーノを連れて居間から出ていきこの場には俺たちと士郎さんだけが残る形になる。

 

 「さて、じゃあギル君たちにも説明してもらおうかな?特にさっきの話を聞いていると暴走体とやらはかなり危険な代物らしいけどどうやってそんなものとやりあえたのかというあたりが気になるね」

 

 そう言って士郎さんは俺たちに対して核心をついてくる。

 

 「そんなに気を張らなくてもすべてお話しますよ」

 

 士郎さんの目の前に座るとギルはそう言って話を続けた

 

 「まず最初に暴走体に対して僕たちが曲がりなりにも対処できたのは僕たちにも魔力があり、ユーノ君とは違う方法でそれを扱う術があったからです。

 「ふむ、それを使って封印というのはできないのかな?」

 「そうですね、できないこともないのかもしれませんが下手に手を出すとどうなるのか分からなかったので安全策を取らせていただきました」

 「なるほど、じゃあ最後に一つだけ。ギル君たちと初めて会ったあの時、爆弾から俺を守ってくれたのはギル君たちかい?」

 

 その士郎さんの問いにギルは一呼吸の間を開けて答えた。

 

 「……正確には一護君ですね、僕と蓮君は何もしていませんよ」

 「そうか、一護君お礼をするのがずいぶんと遅れてしまったがあの時はありがとう」

 

 士郎さんは一護に対して向き直るとそう言って深々と頭を下げた。

 

 「そんなに感謝されるような事じゃないですよ士郎さん。俺がやったことなんて大したことじゃないですし、士郎さんにはいつもお世話になってるんですからそんなにかしこまらないでください」

 「はっはっは、それでもけじめはつけないといけないからね。改めてありがとう一護君」

 「そうですよ、いつも通りの士郎さんの方が俺も気が楽です」

 「それで、なんで気づいたか聞いてもいいですか?」

 

 士郎さんと一護の話にギルが割り込み士郎さんに対して疑問を投げかけると士郎さんは軽い調子で

 

 「一応は俺もプロだからね、あの状況で爆弾が爆発してあれだけの怪我で済むのは奇跡が起こったにしても出来過ぎだからね。ギル君たちに何か秘密があるんじゃないかとは昔から思っていたんだ」

 「そこに今回のカミングアウトで確信を持ったというわけですか…」

 「まぁ可能性としては五分五分くらいを見ていたんだけどね。ちょっとかまを掛けさせてもらったよ」

 「となると僕たちは一本取られたことになるんですかね」

 「はっはっは、そこは年の功というやつだね」

 

 ギルと士郎さんはまるで魔法の話なんかなかったかのようにいつも通りの雰囲気で話を続けている。

 「それで、ギル君からは何か確認しておきたいことはあるかい?」

 

 士郎さんが話の筋を戻しギルにそう聞くとギルは

 

 「そうですね、士郎さんが捜索に同行してくれることに関してはむしろこちらからお願いしたいほどなので問題はないのですが。士郎さんが翠屋で働いている時はどうしましょうか?」

 「ああ、そうだね……じゃあ昼間の間は恭也かもしくは美由希を同行させてくれないかな?」 

 「恭也さんと美由希さんとは高町家で合流すればいいですか?」

 「そうしてくれると助かるね。他にもあるかい?」

 「それなら、最後に一つだけ。……どうしてなのはのことを止めなかったんですか?」

 

 ギルのその質問に対して士郎さんはそれまであった穏やかな雰囲気が嘘だったかのように真剣な顔つきに変わり鋭い眼差しでギルに話しかけた

 

 「そうだね、理由の一つとしてはなのはがいないと対処が難しそうだってのがあるかな。

僕に魔力というものがあるなら代わってやりたかったんだけどね」

 「なるほど、それだけですか?」

 「どちらかというともう一つの理由の方が大きいかな。俺にお願いしてきたなのはの顔がね、もう絶対に手伝うって決めた顔をしていたからね」

 「それでも士郎さんが言えばあきらめさせることができたんじゃないですか?」

 

 そこで士郎さんは表情をふっとゆるめて言った。

 

 「いや、なのはの表情が桃子が俺の護衛の仕事をやめさせようとした時と同じだったからな。あんな表情を見せられたら降参するしかないよ」

 「なるほど、これ以上ないほど納得できましたよ。それでなのはのことは士郎さんがしっかり守るということですか?」

 

 聞きたいことは聞き終えたのかギルがそう言って士郎さんを茶化すと士郎さんは少しおどけながらも真剣な調子で

 

 「なのはだけじゃなくギル君たちだって守ってあげるよ。御神の剣は人を守るためのものだから」

 

 こうして俺たちの原作介入は初日から大きく変化を見せながらもとりあえずの幕を閉じたのだった。

 




次回の更新はできるだけ早く上げたいとは思っていますがおそらく二月頃になりそうです。


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第十六話 ジュエルシード捜索隊

前話からだいぶ経ってしまいました……。



 士郎さんとの話し合いの後、夜遅いということでそのまま高町家に泊めてもらった俺たちは桃子さんの朝ご飯をご相伴にあずかっていた。

 

 「やっぱり、桃子さん料理はおいしいですね」

 「あら、ありがとう。今日は一護君たちもいるからいっぱい作ったからたくさん食べてね」

 「桃子の料理は絶品だからな、遠慮しないで食べてくれていいんだぞ」

 

 一護が料理の感想を述べると、桃子さんも士郎さんもうれしそうにもっと食べるように勧めてくれる。

 

 「ところで、ユーノは食べたらいけないものとかはないのか?」

 

 フェレットの姿のまま食卓に上がることができず離れた場所でパンをかじっていたユーノに俺が聞いてみたところ。

 

 「姿は変わってるけど中身までは全部変化しているわけじゃないから特に気にするようなことはないよ」

 「そんなものなのか?」

 

 俺の疑問にユーノはさらりと答え、説明を付け加えてくれる。

 

 「この魔法はあくまで魔力の消費を抑えて体力を回復するためのものだから、体の構造を丸ごと変化させるような高度な魔法を使えるほど魔力があるなら素直に治療魔法を使った方が効率がいいからね」

 

 ユーノの解説を聞いて納得していると士郎さんが

 

 「そういえば、早速今日からそのジュエルシード集めを始めるんだろう?」

 俺たちに確認してくる士郎さんに向けてギルが答える

 

 「そうですね、早く回収するに越したことはないので。早速今日の放課後から探してみることにしますよ。

まぁ、特に手がかりはないので歩き回ることになりそうですけど……」

 「ふむ、じゃあ恭也。お前がついて行ってやってくれないか?」

 

 ギルの言葉に士郎さんは恭也さんに俺たちの引率を任せることにしたようだ。

 

 「わかったよ父さん。みんな俺の判断には従うんだぞ」

 

 恭也さんもあらかじめ士郎さんから話を聞いていたのか二つ返事で引き受け、俺たちに念を押してきた。

 

 「わかっていますよ、昨日は無事に済みましたがこれからもそうだとは限らないですからね」

 「だなー、なんだかんだ言ってけがはしなかったけど俺の攻撃は効いてなかったしな」

 「俺もそんなに余裕ないからな」

 

 昨日の暴走体は力はあったが速さでいえば大したことはなかったから俺たちでも十分対応できたが能力を使いこなしているとは言えない俺たちではすぐに対処できない敵が増えてくるだろう。

 

 (それまでに実戦の中でもう少し戦えるようになれればいいんだけどな……)

 

 今の俺たちはほとんど身体能力だけで戦っているようなものだ、一応昨日のように少しは能力を使うこともできるが、元々の能力の原作のことを考えると普通に殴った方が早いレベルでしかない。

 

 「なのはたちの学校はいつごろ終わるんだ?」

 

 俺が少し考え込んでいると恭也さんがなのはにそう質問した。

 

 「ムグッ、えっと、普通に授業だけだから三時くらいには終わると思うよ?」

 

 恭也さんの質問に対して口に含んでいたトーストを飲み込んでからなのはが答える

 

「そうか、じゃあ俺の方が少し早く終わるな。いったん家に帰ってきてから探しに行こう。」

「恭也さん、緊急の時の連絡はどうしますか?」

 「む、それは俺の携帯に電話してくれ、それとできれば普段からまとまって行動してくれれば後から俺が合流するだけで済むから助かる。」

 「でもそれだとユーノには連絡できないことにならないか?」

 「それもそうか……」

 

ギルと恭也さんが今後の対応を考えているところに一護の質問が飛ぶ。

当然ユーノは地球の携帯なんか持っていないし、学校に連れて行って行動を共にすることもできないので悩みどころではあるのだが。

 

 「連絡ならなのは達から経由して伝えてもらえれば大丈夫ですよ」

 

 恭也さんがユーノの事について悩んでいるとユーノからそんな声が上がる。

 

 「なのはに対しては僕から念話で連絡を取りあうことができますから、間接的に僕と恭也さんたちとで連絡しあうことができると思います」

 

 ユーノの説明に対してなのはが

 

 「そんなこと言われても、なのはやり方わかんないよ?」

 

 困ったように言うが、ユーノは

 

 「大丈夫、昨日渡したレイジングハートを身に着けて心の中で僕に話しかけようと思ったらできるはずだよ、(こんな感じにね)」

 

 説明の後半を念話で実演して見せた。

 

 「えっと……(こうかな?)」

 

 ユーノの説明を受けたなのはが実際にレイジングハートを首から下げ試してみると先ほどのユーノのように頭の中でなのはの声が響く

 

 「おーすげえなこれ、なのは本当に魔法使えるようになったんだな」

 「他人事みたいに言っているけど念話が聞こえるということは素質があるということだから一護たちも意識すれば使えると思うよ」

 

 なのはが使った念話に感心していた一護の言葉にユーノがそう答えると

 

 「マジかよ!むむむ(こんなかんじでいいのか?)」

 「おお!一護君も出来てますよ!じゃあ僕も(どうですか?聞こえますか?)」

 

一護の成功に続いてギルも試してみたところ問題なく念話が使えている、ユーノが言った通り魔力があるならだれにでも使えるようだ。

 

 「じゃあ俺も(ファミチキください)」

 「こいつ脳内に直接……!」

 

 少しボケただけ一護のこの反応はさすがである。

 

 「まあこれで僕たちも念話が使えることが分かったのですから、恭也さんには携帯で、僕たちに関しては念話で連絡を取り合えばよほどのことがない限りは大丈夫でしょう」

 

 場が混沌としてきたのでギルがそう言ってその場をまとめる。

 

 「話はまとまったかな?まあ僕も翠屋の方に支障が出ない程度には手伝うから安心していいよ。」

 

 俺たちの話がまとまるのを待っていた士郎さんがそういってこれからのことについての話し合いは決着した。

そして、魔法関連の話が終わるのを待っていた桃子さんが俺たちに対して声をかけてくる。

 

 「難しい話が終わったのはいいことだけれどそろそろ学校に行かないといけない時間よ、準備しなくてもいいの?」

 

 桃子さんのその言葉に学生組が一斉にあわてだす

 

 「うにゃー、もうこんな時間だよぉー。バスに遅れちゃう!」

 

 なのはがそう言いながらあわてて朝食を掻き込み

 

 「そういえば荷物家に置きっぱなしじゃないか?」

 「そういわれてみれば昨日はユーノ君に呼ばれてそのまま泊まらせてもらいましたから学校の用意は持って来てませんね。」

 「のんきにしてる場合かよ!今から家に帰るなら遅刻ギリギリだぞ!なんか付け足しで話したいことあったら念話で頼む!」

 

 なのはとユーノに向かってそうひと声かけると俺たちは自宅に向かって走り出した。

 

 結局俺たちが学校についたのはチャイムが鳴るぎりぎりだった。

 

 「いやーぎりぎりだったぜ、皆勤賞を目指している身としては遅刻は避けたいからな。」

 

 朝礼のあと担任が職員室に帰った後、俺の席近くに集まってきた一護がそう言った。

 

 「あれだけぎりぎりで遅刻じゃないって言い張るのはちょっとみっともないと思うわよ。」

 「なんでだよ、先生が来るより先に教室には居ただろ!」

 「先生が扉明けた瞬間にわきをすり抜けて入った癖に。」

 「それでも先生より先に教室には居たし、チャイムもまだ鳴ってなかっただろ。」

 「そういう定義の問題を話してるんじゃないんだけどね、私は……。」

 

 ……一護の相手はいつも通りアリサに任せるとするか

 

 「でも、今日は一護君だけじゃなくてギル君たちも遅かったね、何かあったの?」

  

 アリサと一護の口論をBGMにしながらすずかがそう聞いてきた。

……最初のころはすずかもなのはもアリサと一護の口論をいちいち止めようとしていたが最近ではこれが二人なりの友情だと理解したのかこんなふうに放置することが多い。

 

 「それがですね、昨日はなのはの家に泊めてもらったんですけどうっかり今日の用意を持っていくのを忘れていて、いったん家まで取りに帰ってから学校に来たんですよ。

おかげで遅刻ぎりぎりになってしまいまして。」

 「そうなんだ、結構なのはちゃんのお家には泊まったりしてるの?」

 「最近はそうでもないですけど、前は結構お邪魔させてもらってましたね。僕たちの親は仕事で帰ってこないことも多いので。」

 「なのはとしてはもっと泊まりに来てくれてもいいんだけどね。」

 「そろそろ僕たちも大きくなってきたので留守番くらいはできますよ。」

  

 ギルとすずかの話になのはも入って盛り上がっている中、俺はいまいち話に加わることができないでいた。

別に俺がこのグループの中で浮いているとか、コミュ障だとかという話ではなくて。

 

 「(というわけでジュエルシードは周りの知的生物の願望に反応して願いを叶えようとする性質があるんだ、それが暴走すると昨日みたいなことになるんだけど……)」

 「(でもそれって結構致命的な欠陥じゃないのか?そんなもんでも価値があんのか?)」

 「(機能が壊れていたとしてもけっこう利用価値があったりしますよ。そもそもユーノ君の話を聞くと実用目的よりも考古学的価値の方が高いのかもしれませんが)」

 「(もしかして結構お高いものだったりするの?)」

 「(危険がないようなものならオークションとかで取引されたりするけど今回のジュエルシードみたいに危険なものは基本的に時空管理局で封印保管されるから、特に値段とかはないよ)」

 

 ここまでの会話がさっきのアリサやすずかと話している間に同時に進んでいる。

 

 「(なんでお前らそんなに頭と口で別のこと話せるんだよ……)」

 

 俺がそう全員に聞いてみると

 

 「(アリサと話すのには別に普段から頭なんか使ってないからその分をこっちに回せば普通にできるだろ)」

 

 一護からは脊髄反射だけで生きてる人間にしか通じない論理を返され

 

 「(蓮君だって宿題しながら終わったら何して遊ぼうとか考えることあるでしょう、それを応用したら簡単ですよ)」

 

 ギルからは参考になるんだかならないんだかよくわからないアドバイスをもらい

 

 「(えっと、なんとなく?)

 

 なのはにいたっては完全に感覚だけでこなしているらしい、流石は原作主人公と戦慄する。

 

 「(ははは、まぁこれも軽いマルチタクスが必要だからね、蓮には時間があるときに少し教えてあげるよ)」

 

 なのは達の返答がひどいと思ったのだろうユーノの優しい言葉にひどく感動した。

 

 そんなことを話しながら授業を受けているとあっという間に放課後になってしまう。

 

 「今日はアリサとすずかは迎えが来るのか?」

 

 帰り支度をしながら一護がそう言うと

 

 「今日はお稽古がない日だから、途中までみんなで帰るって言ってあるわ。」

 

 アリサが言った言葉に続いてすずかも

 

 「私も今日は一緒に帰れるよ。」

 

  そう言いたまにはみんなで帰ろうと提案しようとしたその時、体の内側をなぞるような悪寒が走った。

今まで感じたことのない感覚にとっさに周囲に視線を巡らせるとギルや一護、なのはも今の感覚を感じたようで戸惑っているのが見て取れた。

 

 「(おい、今の感じたか?)」

 

 俺が念話で三人に呼びかけると

 

 「(ああ、なんだ今のは)」

 「(普通じゃないっていうのは今のみたいなことを言うのでしょうね)」

 「(ユーノ君もしかして今のって……)」

 

 一護とギルも今の感覚は異常だと感じたようで、その原因の確信を得るためになのはがすぐにユーノに確認をとる。

 

 「(間違いない、今のはジュエルシードが発動したことで余剰魔力が放出されたんだ!)」

 

 ユーノが言い終わるかどうかと言う間にギルは

 

 「すいません二人とも、今日は僕らとなのはが恭也さんに翠屋で手伝ってほしいことがあるから早く帰ってくるよう言われていまして、急いで帰らないといけないので一緒に帰れないんです。」

 

 アリサとすずかにそう断りを入れ一護もそれに合わせて

 

 「ほんと悪いな、今度何かで埋め合わせするから今日は許してくれ。」

 

 二人のその言葉にアリサは

 

 「それならしょうがないわね、今日はすずかと帰るから気にしないでいいわよ。まぁ一護からは今度なにか奢ってもらおうかしらね。」

 

 すずかも

 

 「そうだね、お手伝いならしょうがないよ、また今度一緒に帰ろう。」

 

 そう言って俺たちを送りだしてくれる二人に感謝しながら俺は恭也さんに電話を掛ける

 

 「もしもし、どうした蓮、学校は終わったのか?」

 「今終わったところです、それとジュエルシードの反応があったので今から回収に向かいます。」

 

 俺の言葉を聞いて恭也さんも真剣さを増した声で応じる

 

 「わかった、俺は今家にいるからユーノを連れてそっちに合流する、詳しい場所はユーノに伝えてくれ。

携帯で片手がふさがっていると移動しにくいだろう。」

 「了解です、じゃあ後はユーノを仲介しますね。」

 

 「(ユーノ!恭也さんがお前を迎えに来るから恭也さんと一緒にこっちに合流してくれ!)」

 「(わかったよ、こっちでもどこで発動したかは捉えてるから反応のあった近くで落ち合おう)」 

 

 恭也さんと連絡を取った後に、ユーノに念話で恭也さんとの話を伝えると打てば響くように返答が帰ってくる。ユーノとの念話はなのは達も聞こえているのですぐに現地に向かおうとすると一護がそれに待ったをかけた

 

 「おい、今大変なことに気づいたんだけどな……」

 「なんだよ!非常事態なんだから早くしろよ。」

 

 一護が深刻な顔で俺に言ってくるが優先順位はジュエルシードが上なので一護をせかすと俺達が想像していなかったほど大変なことを言った。

 

 「俺の体どこに置いとくんだよ……」

 

 ………あっ

空気が凍るってこういうことを言うんだろうなと場違いな感想を抱くほど空気が静まり返った

 

 「……どっかのトイレとかどうですか?」

 

 その気まずい空気を打ち破ったのはギルの発言だったが

 

 「下手したら一時間単位でほっとくことになるんだぞ、小学生が一時間もトイレから出てこなかったらちょっと問題にならないか?しかも幽体が抜けてるから半死体みたいな状態だぞ。」

 

 ギルの提案に一護がそう返す、しかも不幸なことにこの近辺はどちらかというと住宅街に近く都合のいい店や公衆トイレがないのだ

 

 「えーと、じゃあほらファミレスとかでつい寝ちゃったみたいな感じでいけば。」

 

 俺も思いついた案を提案してみるが

 

 「いや、それも小学生が一人でそんなとこで寝てたら声くらいかけるだろ、普通。」

 

 サラリーマンの人なら大丈夫かもしれないが小学生のしかも低学年の子が一人で寝てたらそうなるだろうなぁと自分の意見が却下されているのに冷静にそう思った

 

 「えっと、よくわかんないけど。早く行かないとお兄ちゃんたちの方が先についちゃうよ?」

 

 一護の能力のことをよくわかっていないなのはも何かしら問題が起こっているのは分かるのか俺たちの話を遮るのを少し申し訳なさそうにしながらそう言ってくる

 

 「じゃあ仕方ありませんね。一護君は全速力で帰宅してその後合流して下さい。」

 

 ギルの出した結論はそれだった。

 

 「まぁ、そうするしかないだろうな。ほら、時間ないんだから早く帰れよ。」

 「申し訳ないですけど、これ以上議論している時間もないのでさっさと帰ってくれますか?」

 

 俺とギルの追撃に一護は

 

 「くっそ、お前らだけ便利な能力持ちやがって!ぜってえ封印までに間に合って見せるからな!」

 

 捨て台詞を残して全力で走っていくのだった。

 

 「さ、早い所恭也さんと合流しないと。」

 「そうですね、要らない時間を使いましたしね。」

 「一護君かわいそうじゃなかった?」

 

 一護のことなんかさくっと忘れて切り替えた俺とギルとは違いまだ一護の事が気にかかるなのはだったが

 

 「大丈夫だろ、一護だし。」

 「ええ、一護君ですからね。」

 

 というなんの根拠もない言葉で納得させる。

そんな騒動の後、念話で互いの位置を確認しながら移動し続け、合流したのはジュエルシードが暴走したと思われる神社のふもとだった

 

 「まだこの上から反応があります、恐らくここにジュエルシードの暴走体がいるはずです。」

 

 合流したユーノは俺たちに向かってそう言い、その言葉で俺たちはこれから始まる戦闘の緊張感に体をこわばらせる。

昨日の暴走体には俺たちの力は通用したが、今日もそうであるという保証はどこにもない。

なら俺の性にも合わない慢心は捨てるべきだろう。

 

 「なら俺が先頭を行くからお前たちはその後ろからついてこい。」

 

 恭也さんの言葉に従い俺たちは恭也さんの後を続いて神社の階段を上っていく、恭也さんもすでに臨戦態勢に入っており、その両手には小太刀が握られている。

 

 階段を上りきった先にいたのは、巨大な犬の姿をした化け物だった。

 

 「現住生物を取り込んだのか!」

 

 その化け物の姿を見てユーノがそう叫ぶ

 

 「それは昨日のやつとはどう違うんですか?」

 「実体がある分より強力になっているんだ!なのはレイジングハートを起動して!」

 

 ギルの疑問に対してそう答えるとユーノはなのはに呼びかける

 

 「えーと、起動?」

 「昨日詠唱してもらった、我使命をから始まる呪文だよ!」

 「あんな長いの覚えてないよー。」

 

 ユーノの言葉になのはがそう返す

俺も昨日試したからわかるがあれは確かに一回で覚えろというのはむちゃだろうなあと感じる

 

 しかし、俺たちが漫才をしているからと言って相手が遠慮してくれるわけもなく

唸り声を上げながらこちらに突撃してくる。

全長が二メートルは超えようかという巨体の割にかなりのスピードでこちらに突っ込んでくる化け物に対応しようと、俺とギルがなのはの前に立ち庇おうとするが

 

 「実体があるということは……斬れるということだな。」

 

 そうつぶやいた恭也さんが動き出す方が早かった

 

 暴走体に向かって駆け出すとその両手の小太刀を一閃・二閃するとそのまま暴走体の脇を通って駆け抜ける。

斬りつけられた暴走体はというと、見たところダメージはないようだが俺達ではなく恭也さんを標的に見据えたようで再度恭也さんに向かい飛び掛かっていく

 

 「なのは!今のうちに!」

 「うん!おねがいレイジングハート!」

 

 恭也さんが暴走体を引き付けているうちになのはがレイジングハートを起動させる

なのはの体がなのはの魔力光である桃色の光に包まれると、次の瞬間には昨日と同じく聖祥学園の制服を模したバリアジャケット姿で表れる

 

 「封印には暴走体の動きを止める必要があります!」

 

 ユーノが暴走体との戦闘を続けている恭也さんに向かってそう言うと

 

 「了解だ!」

 

 ユーノ言葉にそう応じると恭也さんは暴走体の動きを止めるべく、戦闘を組み立てていく

まず相手のスピードの落ちる反転の瞬間を見計らい飛針を投げ相手の足を止め、飛針のすぐ後を追っていたとしか思えないタイミングで相手の懐に入ると、体制を崩しやすい膝を狙い何度か小太刀で斬りつける。

最後に小太刀で斬りつけたことによって下がっていた相手の顔に向かって体重の乗ったとび蹴りを当てることにより暴走体はあえなく地面に沈んだのだった

 

 「注文通りだ。なのは、後は頼む。」

 「うん!リリカル・マジカル・ジュエルシード封印!」

 

 兄弟の共同作業により封印されたジュエルシードを見ながら

 

生身で暴走体を完全に手玉に取った恭也さんに緊迫した場面だった為誰も突っ込まなかったが、ユーノが必要だと言っていた起動パスワードを地味に省略していたなのは。

 

 「俺達よりもよっぽどチートじゃないか?」

 

 そうつぶやいた俺の肩を横に立っていたギルがそっと叩くのだった。 

 

 

 




今回は恭也さん無双の回でした。
まぁ戦闘民族高町とかネタにされるくらいなのでこのくらいはできるかなということでこうなりました。
さらに恭也さんだけでなく士郎さんまで協力体制にあるのでもうこれオリ主いらないんじゃ……状態ですね。

 いつも通りご意見・誤字報告などありましたら感想の方にお気軽にお願いします。


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第十七話 ボールは友達怖くない!

やっと書きあがりました。
今回はオリ主たちが頑張ってジュエルシード回収します(ネタバレ)


 「ジュエルシード封印!」

 

 なのはの声と同時にジュエルシードが無事に封印される。

ここ数日で見慣れてきたがなまじジュエルシードの危険性をユーノから何度も注意されているだけに無事に封印できたことに安堵する。

 

 「おつかれ、なのは」

 「うん、ありがとう蓮君……」

 一息ついているなのはにねぎらいの言葉をかけると笑顔で返してくるが慣れない魔法や時間に関係なく発動するジュエルシードに睡眠時間も足りていないのか少し疲れているように見える。

 そして俺でも気づくことができることにこの人たちが気づかないはずもなく。

帰り道を全員で歩きながら士郎さんがなのはに話しかける

 

 「なのは、疲れがたまっているみたいだし明日は探索をしないでゆっくりと休みなさい」

 「そうだな、いつまで探索が続くかもわからないんだ、ここらでしっかりと疲れを取った方がいいぞ」

 

士郎さんの言葉に続いて恭也さんもなのはに休むよう助言をする。

 

二人の心配も最もでジュエルシード集めを始めてからそろそろ一週間がたつが学校から帰ると夕方までジュエルシードを探して海鳴を歩き回り、日が暮れると危ないので探索は士郎さんたち大人組に任せて俺達小学生組は高町家に帰るが今日のように夜にジュエルシードが発動することも珍しくないので夜遅くまで起きて待機をするという生活なのだ。

元は大人で夜更かしに慣れている俺達でも小学生ボディでは疲れが残るというのにこれまで小学生らしい早寝早起きをしていたなのはが俺たち以上に疲れがたまるというのは当然のことと言えた。

 

 「でも、早く集めないと大変なことになっちゃうかもしれないし……」

 

 自分に疲れが残っているのは自覚しているのだろうが自分が休んでいる間に暴走体が出たこと気の事を心配するように士郎さんを見つめると

その心配を吹き飛ばすようにことさら明るく士郎さんが言った。

 

 「そんなに心配そうな目をするなよなのは、何かあっても父さんも恭也が何とかしてやるよ」

 

 朗らかに笑いながらなのはに言った士郎さんの言葉に同意するように恭也さんも

 

 「そうだぞなのは、父さんと俺や美由希が毎日鍛錬してるのは知っているだろ?だから大丈夫だ」

 

「うん……」

 

 士郎さんと恭也さんのふたりがかりでさとされなのはも一応納得したみたいだった。

そんな若干しんみりとした空気が流れる中でまったく空気を読まない明るい声が上がる。

 

 「そんなこと言って士郎さんも恭也さんも疲れてるんじゃないんですか?

明日は翠屋JFCの試合もあるんですからなのはと一緒に完全休養日にしたらいいんじゃないですか?」

 

 一護が士郎さんと恭也さんに向けて話しかけるが二人はその言葉にまったく反応を返さない

そんな二人に一護が困ったように

 

 「あの、二人とも俺の言ったこと聞こえてます……?」

 

 再度二人に話しかけるがそれでも二人は一護の言葉にリアクションをしない、そんな光景にあきれたようにギルが突っ込みを入れる

 

 「一護君、今霊体になってるんですから二人には何を言っても聞こえませんよ」

 

 「あー、そうか。ついうっかり忘れていたわ」

 

 「あれ?一護君が何か話していたのかい?」

 

 ギルが一護に指摘すると一護もそのことを思い出し、士郎さんもギルの言葉で一護が何かを話していたことに気付く。

一護はジュエルシード捜索の際はそのチートの特性から基本的に霊体状態で捜索隊に加わっているのだがそうすると魔力のない士郎さんと恭也さんには一護の姿も声も聞こえなくなってしまう。

捜索範囲などは一護も生身の状態の時に行っているし、基本的に一護に頭脳労働は期待されていないのと、大体のことは俺かギルが間に入っているので士郎さんたちと直接話ができなくても大きな問題にはならない。

唯一の問題と言えばさっきのようにそのことを忘れた一護が恥ずかしい思いをするくらいだが、俺に被害はないしむしろ面白いので改善策を考えるつもりはない。

 

 「早く士郎さんに伝えてくれよ!なんかはずかしいじゃねえか!」

 

 少し顔を赤くした一護に急かされ、ギルが一護のさっきの言葉を伝える。

士郎さんはギルの言葉を聞いて少し考え込んだ後に

 

 「そうだね、一護君の言葉にも一理ある。

ちょうどいいから明日は探索はお休みにしようか」

 

 一護の提案を受け入れ、俺たちジュエルシード捜索隊はいったんの休息を得ることになったのだった。

 

 

 

 そして次の日、せっかくの休みなのでおもいっきり寝過ごしてやろうと思っていた俺はなぜか河川敷に拉致されていた。

 

 「なんで俺はここに連れてこられたんだろうな……」

 

 そう諦観をにじませながらつぶやくと、俺を連れてきた張本人である一護が

 

 「そりゃ今日は我らが聖祥イレブンと翠屋JFCの試合だからな。スーパーサブのお前がいないと話にならんだろ」

 

 そんな勝手なことを言いやがりました。

一護の言っている聖祥イレブンとは一護が聖祥に入学した時に作ったサッカーチームである。

最初は一護のいつもの思いつきで始まったお遊び程度のものだったのだが、一護がサッカーチームを作ったのを知った士郎さんが士郎さんの率いる翠屋JFCと練習試合を企画し、その試合にぼろ負けしたのが

全ての始まりだった。

 

 あの一護が負けっぱなしで終わるような性格ではないのは今更言うまでもないことなのだが、その一護が集めたメンバーも普通の小学生とは言い難い無駄にキャラの濃い連中になったのは当然なのか海鳴りという魔境故なのかは俺には判断できない。

 

 翠屋JFCに敗北した一護たち聖祥イレブンは敗戦の悔しさを忘れることなく、サッカースクールですらない小学生の私設チームとしては異常なほどの練習を続け、あの屈辱の敗戦からひと月後には見事にリベンジを果たしたのだった。

 

 ……ここで終わればいい話だったということできれいにまとまるのだが現実がそううまくいくわけがない、次はリベンジされた翠屋JFCが今度はこちらが勝利するとばかりにリベンジに燃え、それに対抗して聖祥イレブンも練習に熱を上げるという、ここに海鳴りサッカー戦国時代は幕を開けたのだった……。

 

 俺は関係ないはずなのだが、万が一けが人や体調不良などで欠員が出たときに備えて聖祥イレブンのサブメンバーとして強制的にベンチに入れられている。

もしかしなくても一護が昨日士郎さんに今日は完全休養日にするように提案したのはこの試合に備えてだったんじゃないか?

 

 そんなことを考えながらうなだれている俺に応援に来ていたなのはが声をかけてくる

 

 「にゃはは、蓮君も大変だね」

 

 なのはも翠屋JFCと聖祥イレブンの因縁や俺が実はサッカーよりも野球派なことは知っているので同情の声をかけてくれる。

そして、そんな俺となのはを見ながら疑問の声を上げるのがこの因縁について知らないアリサとすずかだ

 

 「今日は一護たちのチームと士郎さんたちのチームの練習試合なのよね?それにしては観客が多くないかしら?」

 「そうだね、サッカーとかは詳しくないけどいっぱい人が見てるね。これが普通なのかな?」

 

 アリサとすずかのの言葉の通り河川敷にはそれなりの人が試合が始まるの待っていた。

そんな二人の疑問に答えるために俺は二人に軽くこの試合が伝統になるまでの経緯を説明する。

 

 「なるほどね、つまり一護(あのバカ)がいつも通りバカやった結果がこの注目ということね」

 

 俺の説明を一行でまとめたアリサが得心したように何度もうなずいているのを横目で見ながら

 

 「まぁ。間違ってはいないんだが。それだけでもないんだけどな」

 

 俺のつぶやきは試合開始のホイッスルにかき消されてアリサには聞こえなかったようだ。

 

 その試合なのだが最初は翠屋JFCのキックオフで始まった、翠屋JFCは固いディフェンスからの丁寧な攻撃が持ち味のチームだ。

今も一護たち聖祥イレブンのプレッシャーをパス回しでうまいことかわしながら落ち着いて相手の層が薄い所を探っている。

 

 「なんかテレビで見たことのあるサッカーと比べて展開が遅いわね」

 

 試合をじっと見ていたアリサがそんな感想をこぼしたので俺が

 

「もしかしてアリサが見たことがあるのはヨーロッパとかの海外のやつじゃないか?」

 

 そう聞いてみると案の上アリサは

 

 「そうよ、よく分かったわね」

 

 俺の予想通りの答えを返したので少し解説役をしてやることにした。

 

 「まず、プロのサッカーと小学生のサッカーを比べる時点で少しナンセンスになるんだが、それは分かっているんだよな」

 

 大前提としてプロと小学生の草サッカーではレベルが違い過ぎるということははっきりと言っておかないといけない、それはアリサも十分承知しているようで

 

 「当たり前よ、さすがにそこまで考えなしに言ったわけじゃないわよ」

 

 そう力強く反論してきたので俺もそれに対してわかっているとうなずきながら言葉を続ける

 

 「まぁ、アリサの感想は正しいんだけどな。ヨーロッパのサッカーは常にゴールに向かい続けることを意識していることが多いから基本的にボールは相手ゴールの方、つまり縦方向に流れやすい、そうすると自然と試合スピードは速くなるからよりスピード感のある攻防が多いということだな」

 

 軽くヨーロッパの特徴を答えるとアリサはなるほどと納得したような顔を見せながら疑問点を聞いてくる

 

 「じゃあ、日本のサッカーや今の翠屋は違うのね?」

 

 アリサは俺が次に話そうとして凧との要点をついた質問をしてくる、こいつやっぱり頭の回転が速すぎるだろうと思いながら

 

 「ああ、そうだ。最近は昔よりも欧州よりになってきたが日本のサッカーは基本的には相手の守備をきれいに崩して確実にゴールを決めるという意識があるな、だから失敗する可能性が高そうなら無理せずいったん後ろに戻してやり直すということが多い。だから展開が遅いというわけだ」

 

 そんな俺の解説にいつの間にやらアリサと一緒になって聞いていたすずかやなのはも含めて三人でなるほどとうなずいていたが、自分の父親がコーチをしてるんだからもうちょい興味をもってやれとなのはには言いたい。

 

 そんな解説を話しているうちに試合は大きく動きを見せる。

聖祥イレブンがボールに引き寄せられてサイドに大きく人数をかけたところで素早い展開で逆サイドにボールを運び、それを受けたサイドハーフがフリーの状態でライン際を駆け抜けていく。

あわてて自陣ゴール前を固めようとする聖祥イレブンだが守備が前がかりになっていたために戻るのに時間がかかっている、これをチャンスと見た翠屋JFCは一気に攻勢に出てサイドからのセンタリングに備える。

そして、肝心のセンタリングはキーパーの頭上を越し、ファーサイドに走りこんでいたキャプテンの頭に狙った通りに飛んでいく、キャプテンもこれをきっちりと決め、前半十三分翠屋JFCに先制点が入る。

 

 「おー!すごいわね今の!」

 

 そのゴールシーンにアリサが大きく感嘆の声を上げるとそれに続いてすずかも

 

 「うん!すごくきれいに決まったね!」

 

 シュート練習のようなきれいな連携に感心し、なのはも

 

 「すごいね!頭でシュートしたよ!」

 

 なにか微妙に運動音痴なにおいをさせる感想を言う。

 

「これ一護たち負けちゃうんじゃない?」

 

 今のゴールシーンによほど感動したのかアリサがそんなことを言い、なのは達も同じ意見なのか言葉にはしないが表情からは一護のチームを心配する色が見て取れる。

そんな三人に対して俺は

 

 「むしろここからがこの試合の本番だぞ」

 

 三人に向かってそう言いながら、一護のキックオフを見守る。

 

 点を入れられたことで聖祥イレブンのキックオフから再開された試合はゴールにつながるプレーのみを選択し続ける聖祥イレブンとその猛攻をしのごうとする翠屋JFCの駆け引きになっていた。

翠屋JFCが守備よりのチームだとするならば一護たちのチームは完全な攻撃特化のチームだ。

キーパーですら機会があれば攻め上がろうとするその姿はもはやサッカーというよりもバスケットボールの動きに近いものがある。

 

 「なんかさっきまでと全然違うわね」

 

 アリサが呆れたような声を漏らし

 

 「うん、すごくごちゃごちゃしてるね」

 

 すずかの感想の通り聖祥イレブンはボールの方に群がっていくのでさっきまでの翠屋JFCのパスサッカーとは全く違い、一見すると体育の時間にありがちな団子サッカーのように見えるがそれでもきちんとサッカーとして成り立っており、その大きな原因は

 

 「やっぱり一護君うまいんだねぇ」

 

 なのはがつぶやいた通り一護の働きは大きいだろう。

何せ聖祥イレブンのプレーは個々人がゴールを狙ってプレーしているがその一つ一つのプレーが回りまわって一護を引き立てるようにおぜん立てされたかのように一護にチャンスが回ってくる。

 

 「あれは一護が周りの動きから予測して動いているように見えるけど実はチームのメンバーが無意識にあいつを活かすように動いているんだ。そして、その正体こそが『イヴァン雷帝(エゴイスティック・エンペラー)』名付けた一護のプレースタイルだ」

 

 一護の『イヴァン雷帝(エゴイスティック・エンペラー)』によってばらばらに動いているように見えるチームは巡り巡って一護の元にゴールチャンスという形で一つになる。

今も一度はボールを取り返した翠屋JFCが大きく蹴り上げたボールを両チームが競り合い、そのこぼれたボールに反応した聖祥イレブンのMFゴールに向かって一直線にドリブルを仕掛ける。

しかしそのドリブルはボールが相手に渡った瞬間に態勢立て直した翠屋JFCのDF陣によって簡単にはゴールまで持ってはいけない。それだけでなく段々と周りを囲まれ逃げ場をふさごうとしている。

それに感づいたのか無理はせずにすぐ後ろにフォローに入っていた荒木君(小学六年生)にボールを託す。

その荒木君の視線が一瞬一護を捉え一護もその視線に反応する、しかし一護にはいまだにマークが張り付いておりどう引きはがすのか?と思っていると

 

 「荒木!俺の欲しい所によこせ!」

 

 一護が荒木君に対して声を張り上げパスを要求する。

しかもかなりふわっとしたその指示を受け荒木君は一護に向かって思いっきりボールを蹴る。

 

 「あれは高すぎないかな?」

 

その軌跡をいち早く把握したすずかが荒木君のパスを見てそうにつぶやいた。

その言葉通り荒木君のボールは一護の頭上を越えてゴールキーパーまで届きそうな勢いを見せている、周囲のギャラリーもそのことを察して攻防が途切れることに弛緩した空気が流れる

 

 「注文通りだぞ王様!」

 

 そんな空気の中を荒木君の声が響く

 

 「まかせろ!一護裂蹴拳!!」

 

 荒木君の声に一護が一言そう答え、思いっきり跳躍し、空中で二回転するとするとボールは一護の足に吸い込まれるように飛んでいき回転の勢いを余すことなく伝えられたそのボールはそのままゴールへと吸い込まれ

 

 「ほいっと」

 

 キーパーにキャッチされていた。

……なんかもう恥ずかしすぎて俺までいたたまれなくなってきた。

精神的にはいい歳したオッサンがサッカーで技名叫んでしかも止められるとかマジもう心が痛い、しかも本人は「よく今のを止めたな」みたいないい顔してるし

 

 「……一護(バカ)はどこでも変わらないわね」

 「……場所が変わったくらいで馬鹿が治ったら苦労してないわ」

 

 そこからの試合は名試合と言ってよかったが今の俺にそれを堪能できるだけの余裕はないのだった。

 

 

 「よーし、みんな今日はお疲れ!これから翠屋に行って恒例の合同打ち上げをするぞ!」

 

 試合後士郎さんが両チームの選手を集めそう言ったようにこの練習試合の後は両チーム揃っての打ち上げではチームの垣根無く全員で交流を深めるのが第一回からの恒例行事だ。

なので本来なら店の中にいないといけないのだが

 

 「いやー、前よりもうまくなってるわキーパーの宮本君」

 

 一護はテラスの俺たちと一緒にいた

 

 「ほんとにね、あそこまでお膳立てされてたんだから決めなさいよ」

 「まぁ次はびしっと決めてやるよ」

 

 アリサが一護に厳しい言葉をかけているがアリサが誰よりも熱心に一護のプレーを見ていたということは言わないでおくのが吉だろう

 

 「そういえば今日はギル君はどうしたの?最後まで来なかったけど?」

 「ああ、今日は用事があるらしくてな。打ち上げには来るって言ってたんだが……」

 

 噂をすれば影というかすずかとそんな話をしているとちょうどギルがこちらに歩いてきているのが目に入り、ギルは一度翠屋の店内に入ると士郎さんに挨拶を交わした後俺たちのいるテラス席にやってくる。

 

 「お疲れ様です、一護君。今日は残念でしたね」

 「勝負は時の運っていうしな、大会ではこうはいかないから大丈夫だ」

 

 ギルが一護に慰めの言葉をかけるが一護がこんなことでへこたれるようなメンタルをしているはずがなく強気な言葉で返す

ギルが席に座ったことでユーノの事を撫でまわしていたアリサとすずかも矛先をユーノからギルに変える

 

 「用事はもう終わったの?」

 「ええ、父の手伝いをさせられていただけですから打ち上げに顔を出せてよかったです」

 

 すずかがギルに話しかけてギルもにこやかに答えているが俺がギルの発言を聞いてこっそり携帯ギルの会社の株価を見るとつい三十分前まで上昇し続けていた。

ギルが翠屋に来るのに大体三十分くらいかかるはずだからとそこまで考えてやはりこいつが一番怖いと思う。

 

 (それで、計画のほうはどうなっていますか?)

 

 そんなことを考えているとギルが俺の方にちらりと視線を向け口の中で転がすように言葉をつぶやいた。

唇さえほぼ動かさずにつぶやかれたそれは独り言にも満たないほどの声量だったが校舎の屋上と校庭で会話を可能にするほどの聴覚を得ることができる俺にはその程度でも十分すぎるほどだった。

これこそが念話を超える秘匿交信その名も『オリ主に難聴は似合わねえ』である。

まぁこれは俺ぐらいしか聞き取ることができないということから今のところ一護やギルから一方的に俺に何か話したいことがある状況でしか使用できないので改良の必要があるが

 

 そしてギルが言う計画とは今回の目玉のキーパーの宮本君が持っているであろうジュエルシードの確保の事だ。

原作ではこの後宮本君がジュエルシードを発動させて町中に大樹が生えてくるという大事件が起こるが、それを防ごうというのが今回の計画だ。

この作戦は簡単なツーステップで完了だ

 

 まず第一段階としてジュエルシードを本当に宮本君が持っているのかの確認…これは俺が糸を宮本君の荷物に忍び込ませ直接確認することで済ましてある。

そして第二段階は

 

 「それじゃあ皆今日はこれでお開きだ!翠屋JFCはこの調子で次の大会も負けないように頑張ろう。聖祥イレブンの方は……」

 

 士郎さんがお開きの挨拶の途中で一護の方を見ると一護はその視線に応じて

 

 「次は俺たちが勝ちますからね、油断しないでくださいよ」

 

 堂々とそう宣言した

 

 「だ、そうだ。それじゃあ今日はこれで解散!」

 

 士郎さんのその言葉と共に三十人近い子供たちが一斉に家路についていく、宮本君もその例にもれず歩き出そうとするが、その前にジュエルシードをカバンからポケットに移すために取り出している。

そのタイミングを見計らいギルが声をかける。

 

 「今日は大活躍だったみたいですね、宮本君」

 

 宮本君も聖祥付属の生徒なのでギルとは顔見知りである。

なので宮本君もいきなり声をかけられても不信には思わず会話を続ける

 

 「僕だけじゃなくてDFのみんなで頑張った結果だよ」

 

 心からそう思っている声で宮本君は答える、なのはやアリサは特別大人びているが前世のクソガキそのままだった自分を覚えている俺からすれば程度の違いはあってもこの世界の子供は精神年齢高過ぎである、その分一護みたいなハイスペックバカにつられておかしなことになるようだが。

 

 そして今回の計画においてはその高い精神年齢が仇となるのだ!

 

 「いえいえ、それを差し引いても十分な活躍だったと聞いてますよ。できるなら直接見たかったのですけど急に父に手伝いを頼まれてしまって……」

 「お父さんのお手伝いだったならしょうがないよ、近く大会もあるから忙しくないならまた応援に来てよ」

 

 他愛もない世間話をしているように見えるが宮本君の受け答えは事前のシミュレーションの予想の範疇内だ、つまりそろそろギルが仕掛けるぞ。

その瞬間を見守るように俺といつの間にか隣に来ていた一護は固唾をのんで見守る。

 

 「ええ、その時は何としても予定を開けておきますよ。まったく父にも困ったものです、いい年して落し物をした挙句息子をその捜索に駆り出すんですから」

 

 ギルが最後にそう愚痴るようにつぶやく、俺たちの予想では宮本君の次の行動は

 

 「ギルのお父さんが落し物をしたの?」

 「ええ、そうです。あちこち探しまわったのですがいまだに見つかっていなくてですね、誰かが拾ってしまったか排水溝にでも落ちてしまったかもしれません」

 「それは大変だね!僕もそれとなく探しておくよ。いったい何を落としたの?」

 

 宮本君のギルの事を気遣う心配した声を聴いてギルがポーカーフェイスの裏で笑ったのが分かる。

そして、そのことを微塵も感じさせないまさに町中を捜し歩いたことを思いだして少し疲れたような声で

 

 「ええ、なんでsも三角だか菱形だかの形をした青い石らしくてですね。価値はそんなにないらしいですけど……」

 「もしかして……。これの事かな?」

 

 ギルの言葉に宮本君はポケットからジュエルシードを取り出して見せる。

じぶんから誘導してくせにギルはそれを見て大げさなほどに喜んでみせ

 

 「おお!これです!宮本君が拾ってくれていたんですね!」

 「うん、この前帰り道で見つけてね。きれいな石だったから拾っておいたんだ」

 

 ギルの芝居に気付いた様子もなく宮本君は快くギルにジュエルシードを渡してくれる。

 

 「でもギルの大事なものだって分かってよかったよ」

 「おや、もしかして誰かにプレゼントにしようと思っていましたか?例えばマネージャーとか……」

 

 ギルが少し突っ込んで聞いてみると宮本くんは面白いように顔を赤くさせながら慌てて

 

 「なんでそこでマネージャーの話になるのさ!」

 「いやぁ、まあなんとなくですかね。……ああ、これは全くマネージャーは関係ないですけど見つけてくれた人にはお礼として父の会社が新しくオープンするアミューズメント施設のペア招待券を渡すように言われているので宮本君に差し上げますね」

 「ああ、ありがとう」

 「ええ、友達でもマネージャーでも誘っていくといいですよ」

 「だからマネージャーとは何にも……」

 

 ギルが宮本君をからかう声を聴きながら今回の計画が成功したことに安堵する。

今回のジュエルシードは今までのものと違って人間が発動することから被害が大きかったし、何より宮本君は友達だから何としても発動前に確保したかった。

事前に宮本君から渡してもらうという案もあったのだがどのタイミングでジュエルシードを見つけるのが分からなかったため確実性を考慮して結局この日を狙ったのだ。

これで計画『小学生を舌先三寸で丸め込んで物品を巻き上げる』は安全のためにギルの王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)に入れておいたジュエルシードをなのはに封印処理してもらって完了だ。

 

 なんとか今回も無事に終わり、ここまでは被害はなく済んでいるが次はとうとうフェイトがやってくるはずだ。

そろそろ俺たちもいろんな覚悟を決めないといけないなとこれからの事を思いつつ、俺も宮本君をいじりに行くのだった。

 




今回はオリ主たちが頑張りましたね。
次はやっとフェイトが出せます、そこからは本格的に魔法少女ですね。

誤字・脱字・感想ありましたらお気軽に感想の方にお願いします


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第十八話 大きな子猫という矛盾

ちょっとしゃれにならないくらい間があいてしまいました。
あと話数が進むごとに文字数が増えていく……、あと話が中々進まないですね。
早くVividとかの話も書いてみたいのですが……


 「あいかわらずデカイ家だなぁ」

 

 一護がそびえたつという形容詞が似合うすずかの家を眺めてしみじみとつぶやく

 

 「お前はすずかの家に遊びに来るたびにそう言ってるよな」

 

 「いや、だって事実そうだろ。家ってのは俺達の住んでる所みたいなのを言うのであってこれは邸宅とかそういうなにか別のものだろ」

 

 すずか達と知り合ってもう3年がたち今回のようにお茶会に誘われることも珍しくはなかったが、それでも毎回一護は今回のようなよく分からない持論ともぼやきともとれない話をしている。

 

 「はいはい、蓮君も一護君の行動にいちいち突っ込みをいれない。話が進まないでしょうに」

 

 一護の奇行に慣れてしまったギルがそう言いながら玄関という名の門の横についているインターホンを押すと

 

 「はい、月村です」

 

 「今日すずかさんにお茶会にお招きいただいたギルです」

 

 「かしこまりました、今門を開きますのでどうぞそのままお進みください」

 

 インターホンから月村の家のメイドさんのノエルさんの声がそう言うと立派な門が特に大きな音も立てずに滑るように開いていく、その門の100メートルくらい先に大きな屋敷があるのが見え、この距離からでもでかいってどれだけ大きいんだよとかさっきの一護のような感想を持ちながらてくてくとまっすぐ歩いて行く。

 

 そのまま、歩いて行きただでさえ大きな屋敷がだんだんと迫ってくるように大きく見えてくるという普通の人生ではなかなか経験しない体験をしながらたどり着くとまた扉の横にあるインターホンを先ほどと同じように押すと今度は扉の方が直接開けられそこから最初の時に対応してくれたノエルさんが姿を現すと俺たちにきれいに一礼した後に

 

 「ギル様、蓮様、それに一護様もいらっしゃいませ、お待ちしておりました」

 

 微笑みながらそう言った

 

 「こんにちは、僕たちが最後ですか?」

 

 ノエルさんの挨拶にギルが答えそのまま質問すると

 

 「いえ、恭也様となのはお嬢様がまだお越しになられていません」

 

 ノエルさんの答えにどうやら他の参加者を待たす自体にはなってないようだと安心する、家を出る直前に今日のお茶会に持っていくお茶請けを俺と一護が前日に食べてしまっていたことに気付いたので急いで俺が駅前の和菓子屋まで走りにいかなければならなかったのだ。

ちなみに同罪の一護は能力の関係上戦力にならないので一週間ギルの代わりに家事をすることで決着がついた。

 

 ノエルさんの案内で名前はよく分からないが四方をガラスで囲まれたこれぞお茶会という雰囲気の場所に案内されるとそこにはすでにアリサとこの家の主であるすずかとその姉の忍さんが月村家のもう一人のメイドであるファリンさんの給仕でお茶を楽しんでいた。

 

 そのファリンさんはいち早く俺たちに気づいたらしく

 

 「あ、ギル君たちだ!いらっしゃい!」

 

 元気よく挨拶をしてくれ、それで気付いたのか他の面子もこちらに顔を向けてくる。

 

 「いらっしゃい、よく来たわね」

 

 すずかをそのまま大きくしたのではないかと思うほどそっくりな忍さんが俺たちを歓迎してくれる、すずかと友達になり一緒に遊ぶようになってからは自然と忍さんとも接点が増え士郎さん達と同じくいろいろと親切にしてくれている。

 

 「いらっしゃい、今日はよく来たわね」

 「今日はお招きいただきありがとうございます。一応手土産を持ってきたのですが……」

 

 ギルがそう言い、持っていた和菓子を忍さんに手渡すと

 

 「これからなのはちゃんも来るのに和菓子をもってきていいのかしら」

 「逆になのはちゃんが翠屋のスイーツをもってきたらかぶってしまいますからね」

 

 まあ翠屋のスイーツならいくらでも食べれる気がしますけど。なんて忍さんの軽口に対してギルも同じく軽口で返す。

二人がそんなやり取りをしている間に俺と一護はすでにお茶会を楽しんでいたすずかとアリサの方に近づいていく。

丸テーブルに向かい合って座っている二人の横には俺たちとなのはの為にちょうど日が当たる特等席に置かれている椅子には子猫がベストポジションを争っていた。

そんな猫たちを持ち上げてどいてもらい席に着く

 

 「やれやれ、すずかの家は相変わらず猫だらけだな」

 「里子に出してるから顔ぶれは変わってるんだけど、出て行った分だけ増えちゃうの」

 「こんだけいると世話が大変じゃないのか?」

 「もう慣れちゃったし皆いい子たちばかりだから大丈夫だよ」

 

 あまりにも猫が多いので漏らした俺の感想にすずかは本当に何でもないことのようにそう返す

 

 「私の家も犬がいっぱい飼っているからわかるけど、一匹から二匹だと世話も大変だけど、これだけ多くなってくると要領がわかってくるから何とかなるものよ」

 「そんなもんなんかね」

 

 俺とすずかの会話を聞いていたアリサが自分の実体験をもとにすずかの意見に賛成する。

 

 「そういえばあんたたちの家は一軒家よね、ペットを飼うつもりはないの?」

 

 いい子を紹介するわよ、と話を続けアリサは自分の犬の里親になるつもりはないかと聞いてくる。

 

 「もしも、猫の方がいいなら私の家の子から紹介するよ?」

 

 とすずかも案外乗り気でアリサの話に乗ってくる。

 

 「あー、ペットは飼うつもりはないんだ」

 

 何故か期待に満ちた目で俺と一護を見つめてくる二人に対して心苦しいがそう答えると

 

 「まぁ無理に勧めるようなことじゃないからいいけど、何か理由はあるの?」

 

 思っていたよりもあっさりと引いたアリサだったがそれでも理由が気になるらしく問いかけてくる。

 

 「いや、最初にすずかとアリサに犬と猫の里親の話を聞いたときに俺たちの家でもペットを飼おうかって話は出たんだけどその時にギルがな……」

 

 俺が理由を話していると、忍さんとの話を済ましいつの間にか隣に座っていたギルが俺の話を引き継いで

 

 「僕たちの家には一護くんというそこらのペットの比じゃないほど手のかかる子がいますからね。家庭内の治安の観点から却下したんです」

 

 そう言うとアリサとすずか、ギルと同じくいつの間にか座っていた忍さんも視線をちらっと一護の方に向け

 

 「じゃあ、しょうがないわね」

 「いくら一護君でもそこまでじゃあないんじゃ……」

 「まぁ、家庭の事情はそれぞれよね」

 

 アリサはいかにも納得のいったという口調でそう言い、すずかは本人の前では言いづらいのかフォローを入れようとしているが最後まで勢いが続かず実際どう思っているのかが丸わかりである。

忍さんに至ってはもはやフォローいなっているようで全くなっていない。

 

 「なんで皆納得してるんだよ!俺だって結構こいつらの面倒みてること多いんだぜ!」

 

 世間での自分の評価に傷ついたのか一護がそう声を荒げるが、確かになんだかんだ言っても一護も中身はそれなりの年齢なので俺やギルのフォローをしてくれることも多いが外で外見年齢相応の振る舞いをしなければいけない時のタガのハズレ具合は一護が一番ひどいのでこの評価も当然というものだ。

しかし、このままでは一護がかわいそうなので俺は一護の肩に手を置き

 

 「大丈夫だって一護」

 「蓮……」

 「ちゃんと最後まで面倒見てやるって」

 「完全にペット扱いかよ!」

 

 一護が渾身の突っ込みを入れさらにアリサが

 

 「うちの子たちと喧嘩しないなら私の家で一護の面倒見てもいいわよ」

 「だから、なんでペット前提の話なんだよ!」

 「普段あんたに手を焼かされている私としてはペット扱いでさえ厚遇なのを理解してほしいわね」

 

 これまでさんざん学校で一護のしでかす事件に巻き込まれているアリサの言葉は説得力が違う、最近では先生たちもアリサしか一護を止めれる人がいないのを理解しているので一護が何かやらかすと真っ先にアリサを探させるくらいだ。

 

 「そんなにひどいことをやった覚えはないぞ」

 「何言ってんのよ、つい昨日も先生と私に怒られたばっかりなのにもう忘れたの?」

 「あれは周りが大げさに騒ぎすぎなんだよ、ちょっとメンコで遊んでただけだろ」

 「なら、普通に遊びなさい!あんたこそ毎回スケールアップさせるのをやめなさいよ!」

 「大好評だったんだけどなダイナミックメンコ……」

  

 一護の言っているダイナミックメンコとはルール自体は普通のメンコと同じだが普通のメンコは手からメンコを投げ相手のメンコをひっくり返すがこのメンコは校舎の二階からメンコに重りをつけて落とすという頭の悪いルールだ。

当然クラスの女子がアリサに報告をし、参加者は全員アリサにめちゃくちゃ説教されている。

 

 「ちゃんと怪我しないように周りを封鎖してたんだからいいだろ」

 「そういう問題じゃないってわかっていってるわよね、だからあんたは性質が悪いのよ」

 「えー、俺には何のことだかわからないなぁ」

 「こいつ……」

 

 しかし、俺は知っている。アリサが一護たちを説教した後に小さく「中々面白そうなことおもいつくじゃない」とつぶやいていたことを。

 

 (今そのことを言うとさらに場が混沌とするから言わないけどな)

 

 「一護君たちは愉快な学校生活を送っているのね」

 

 一護とアリサの掛け合いを見て忍さんがそうつぶやく

 

 「愉快なのは一護君だけで僕たちは平凡な学生生活だと思いますけどね」

 「あら、そういうギル君も結構やんちゃだってすずかから聞いてるのだけど?」

 「お姉ちゃん!それは内緒だって……」

 

 忍さんという保護者の手前ギルが良い子ぶっているがそれはすずか経由で話を聞いていた忍さんには通用しないようだ、実際一護の悪巧みに隠れているがギルも大概好き放題やっているからな。

 

 「そこで、無関係みたいな顔しているけど実は蓮君も主犯格なんじゃないのー?」

 「な、何を根拠にそんなことを……」

 

 内心でギルざまぁとか思っていると忍さんの話の矛先は俺にも向かってくる。

 

 「だって、すずかからよく一護君やギル君の武勇伝を聞くけど協力者がいるような気がするのよね」

 

 一体誰なのかしらね、という忍さんの言葉とは裏腹にその目は誰が協力者なのか確信しているとこちらに告げていた。 

実際に忍さんの予想は当たっている、ダイナミックメンコに関しても

 企画・実行 一護

 安全管理  ギル

 その他   俺

 

 という役割分担によって成り立っている、一護がやりたいと言い出して、ギルが当日に周辺を関係者以外立ち入り禁止にして、俺がルールの明文化やメンコに張り付ける重りの調達などの雑用をこなしている。

 

 こうやって俺とギルが裏方に徹することにより俺やギルが無理なく説教役を引き受けることが可能となり、被害が少なくなるという完璧な作戦だったのだが最近はアリサが説教役として適任とみなされているので崩壊しつつある作戦だ。

 

 「まぁ、俺たちも年頃の男の子だっていうことで一つ……」

 「あまりやりすぎないようにね、アリサちゃんだって本気で心配してるから怒っているんだからね」

 

 完全に見破っているような忍さんに口止めをお願いするとやんちゃな子供に理解がある大人のように優しく諭されてしまった。

士郎さんたちもそうだが普通に怒られるよりもすべて見透かされた上に諭されると中身は成人してるはずなのに一体自分は何をやっているんだとかなり恥ずかしい。

 

 そんな風に俺がいたたまれない気持ちになっているとちょうどなのはと恭也さんも到着したらしく、ノエルさんに案内されてやってきた。

 

 「皆もう来てたんだね」

 

 俺たちを見てなのはがそう言いつつ部屋に入ってくる。

 

 「じゃあ、恭也も来たからここからは年長組と年少組ということで」

 

 なのはが部屋に入るのと同時に忍さんがそんなことを言いながら恭也さんの腕を取って二人で出て行く。

そんな二人を見ながらアリサが何やら感慨深く

 

 「ほんとに忍さんと恭也さんってラブラブよね」

 

 などと言いだし、そんなアリサの言葉に続いてすずかとなのはも

 

 「うん、お姉ちゃん恭也さんと知り合ってから幸せそうだもん」

 「お兄ちゃんもそうだよ、忍さんとお付き合いし始めてから雰囲気が柔らかくなったよ」

 「へー、やっぱり二人がうらやましいわね。私も将来はそんな恋人がほしいなー」

 

 たとえ小学生でも女の子らしく恋バナに花を咲かせている三人娘とは裏腹にいきなり知り合いの惚気をしかも家族経由で聞かされるという遠回しな羞恥プレイにこっちの三人は大ダメージを受けていた。

 

 「恭也さんの雰囲気ってあれで柔らかくなったらしいぞ」

 「マジかよ、ならその前ってどんだけギザギザハートだったんだよあの人」

 「僕たちも大概昔から恭也さんと知り合いですけど士郎さんや桃子さんみたいに外見含めてほぼ変化してないようにしか見えませんよね」

 

 そんな風に機嫌よく恋バナを続けるなのは達にげんなりしていると、なのはのリュックからユーノが這い出てくる

 

 (お、ユーノも来たんだな)

 (うん、なのはがせっかくだからって言って連れてきてくれたんだ)

 (そりゃよかったなって、ユーノ後ろ気を付けろよ)

 (うん、後ろって……)

 

 念話でユーノと話しているとその後ろから子猫が一匹じっとユーノを見ていることに気付いた俺はユーノに警告をするがすでにユーノを射程に入れていた子猫が動き出す方が早くユーノは小さな捕食者と化した奴から逃げ惑うしか道は残されていなかった。

 

 (がんばれユーノ!お前なら逃げ切れるはずだ!)

 (応援はいいからこの子をどうにかしてよ!)

 (大丈夫だ!お前ならなんとかできると信じてるぞ!俺が信じるお前を信じろ!)

 (意味わかんないよ!助けてなのは!)

 

 念話で俺に助けを求めるユーノだったがまったく助ける気がない俺に見切りをつけなのはに助けを求める、

 

 「うわ、ユーノ君がピンチになってる」

 

 ユーノの念話を受けたなのはが見たのは野生の本能に目覚めた子猫がユーノを追い掛け回しているところだが客観的に見ると子猫がフェレットにじゃれついているようにしか見えないのでほのぼのとしているようにしか感じられない。

 

 (助けてなのは!食べられる!)

 (たぶん猫さんもユーノ君は食べないんじゃないかなぁ……)

 

 そんなことを言いながらなのはがユーノを追いかけていた猫を持ち上げ膝の上にのせることでユーノを救出する、ついでにユーノは俺の肩の上まで駆け上がって第二の襲撃猫に備えていた。

その時だった、もはや最近おなじみとなってきたジュエルシードの反応がありしかもよりにもよって俺たちのいる場所のすぐ近くからその反応を感じる。

 

 (おいおい、この反応めちゃくちゃ近いぞ)

 (これはやばいですね、恭也さんに連絡できますか?)

 (いや、このタイミングで恭也さんの所に行ったらすずかとアリサに怪しまれるだろ)

 (とりあえず私とユーノ君で封印に行くから蓮君たちでアリサちゃん達を引き付けてくれないかな)

 (僕となのはだけだと危ないよ!なんとか恭也さんについてきてもらえれば……)

 

 今日すずかの家でジュエルシードの暴走があることわかっていたが想定よりも発動のタイミングが早い、本来なら原作通りに中庭に場所を移した時に適当な理由をつけて恭也さんと忍さんも一緒にお茶するように誘導していつものように恭也さんの引率でジュエルシードを封印、あわよくばフェイトと対峙してもらうつもりだったのだが完全に作戦が崩壊してしまった。

 

 (しかたないですね、ユーノ君となのはちゃんには封印に行ってもらって、蓮君が今日は護衛してください)

 

 念話会議が紛糾しているところに指示をだしたのはいつものようにギルだった、さらに指示は続き

 

 (三人は何か理由をつけて封印に行ってください、くれぐれも安全第一でお願いします、何か異変があれば念話で連絡してください何としても恭也さん連れて行きますから)

  

 封印に行く二人には安全第一での指示を出しながら、俺にだけは俺のアホみたいな聴力を使った連絡方法で秘密の支持を出す

 

 「……もしもフェイトが出てきた場合はジュエルシードの回収は諦めてもいいですから、恭也さんと士郎さんのおかげでなのはちゃんは実戦の経験が原作より少ない今の状況でフェイトと戦うのは最悪の結果になりかねません」

 

 その言葉に俺は一つ頷くことで返す、俺たちの過保護のせいだが今のなのはにはユーノが万が一に備えて教えたシールドと適性があるとしったなのはがお願いして教えてもらった飛行魔法くらいしか覚えておらず代名詞の射撃・砲撃魔法は戦闘に関わる予定がなかったので覚えていないのだ、そんな状態でフェイトと戦闘になるとフェイト自身が傷つける意志がなくても万が一の事故が起こりえないと前々から相談していた対応の確認だった。

 

 (ではお願いします。僕と一護君が間をつないでおきますから)

 (俺とギルがすずかとアリサと話しているからばれないようにこっそり抜けろよ)

 

 二人はそう言っている間もずっとジュエルシードのことなど全く気付いていないいつも通りのテンションで二人と会話を続けている、そんな二人に合わせるように俺は今ふと思いついたように

 

 「ここにいるとまたユーノが追いかけられるかもしれないから少し外を散歩させてくるわ、なのはも行くか?」

 「うん。すずかちゃん、アリサちゃんちょっとだけお庭の方に行ってくるね」

 

 俺の提案になのはも先に二人に断わっておくことで俺と二人で外に出るという空気を出す、そうして何とか部屋を抜け出した俺たちはジュエルシードの反応を頼りに月村家の庭を全力で走っている。

庭というよりも林かちょっとした森と言った方が正しいような規模なので道がしっかりと整備されているわけでもなく不規則に生えている樹をよけながら走るわけでそんなことをすれば当然

 

 「きゃっ!」

 

 運動神経が残念なことになっているなのはが普通に走り抜けることなんか不可能なわけでして、庭に入った時もなのはに俺が負ぶって走ろうかと提案したのだが大丈夫だと言って譲らなかったので強くは言わなかったが五十メートルも走らないうちに三回も躓かれては俺も対策しないわけにもいかず有無を言わさずなのはを担ぎ上げ、さあもう一度走り出そうとしたとき、さっきジュエルシードの反応があった時よりもより大きな空間自体が軋みをあげるような感覚が俺たちに届く。

 

 「これは、発動したか」

 「このままじゃ、人目についちゃう。結界を張らないと……」

 

 ユーノはそう言うと目の前に大きな魔方陣を展開する

 

 「結界って?」

 「魔法を使用している空間と通常の空間の時間の進行をずらして普通の人には認識できないようにするんだ。僕が少しは得意な魔法だよ」

 

 なのはの疑問に答えつつもユーノは魔法の手を休めず目の前の魔方陣はどんどん光を増していきユーノが最後に一息力を入れると魔方陣を中心として世界が灰色に染まっていく。

 

 「これで無関係の人にはばれないと思うよ」

 「すごいよユーノ君!」

 

 これまで見たことのないタイプの魔法にテンションが上がったなのはがユーノのことをきらきらした目で見ながらほめる。

アニメで見てた時も思ったんだがこの魔法って得意だからって理由でデバイスの補助もなしに使えるレベルを超えているような気がするんだよな、時間の進行をずらすってどういうことだよギルの宝具でも時間操るなんてそうそうしないよな。

 

 そんなことを考えている間にジュエルシードは本格的に発動したらしく反応のあった方向に唐突に巨大な子猫という説明に困る生物が顔を覗かせる

 

 「おい、あれはどういうことだよ」

 「た、たぶんあの猫の大きくなりたいっていう願いがかなえられた結果じゃないかと」

 

 俺たちの目の前を野太いながらも甲高いというまたしても矛盾する鳴き声を上げながら歩いて行く猫をみながらユーノが解説する。

 

 「と、とりあえずこのままだとすずかちゃんも困っちゃうから封印するね」

 「うん、おねがいなのは」

 

 俺と同じく呆気にとられていたなのはも正気に戻り封印の為にバリアジャケットを展開し、レイジングハートを猫に向ける。それを眺めながら俺はユーノに

 

 「ユーノ、ごめんな」

 「どうしたの蓮?」

 「いや、確かにあのサイズの猫に追いかけられたらめちゃくちゃ怖いわ」

 

 さっきユーノが猫に追いかけられていたときと同じサイズ比率になってわかるがこれはめちゃくちゃ怖い、なによりつぶらな目をしているのが次の行動が予測できなくてすごいコワイ。

そんな風にびびっている俺を見てユーノは

 

 「次の時にちゃんと助けてくれたら許してあげるよ」

 

 そう言ってフェレットの顔で分かりずらいが笑って許してくれた。

このときの俺とユーノは油断していた、暴走体はいつもと違い暴れていなくなのはの魔力量ならさして苦労もなく封印できるだろうと

 

 「きゃあ!」

 

 だからなのはと猫に対して向けられた攻撃に対して誰も反応できなかった

 

 「なのは!」

 

 なのはの封印を妨害するのが目的だったのだろう、猫に対しては直撃していた攻撃はなのはに対してはなのはのすぐ足元に打ち込まれておりなのはに直接は当たってはいなかったがいつもは士郎さんや恭也さんに守ってもらっていたなのはは地面にへたり込んでしまう。

 

なのはを背後に庇った体制で攻撃がきた方向を見ると、電柱の上にアニメで見た通りの金の髪に深紅の瞳をした少女がこちらを見下ろしていた。 




 フェイト登場で次回に続きます、次は今年中を目指して頑張ります。

 いつものように感想・誤字報告など気楽によろしくお願いします。


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第十九話 これがオリ主の力だ!

一応形にはなったので投稿です。


 ある程度予想していたとは言え状況は最悪に近い。

今の段階でフェイトに対して一対一で勝負になるのは士郎さんか恭也さんくらいで俺やギルは対人戦に対して経験が足りていなく、比較すればまだましレベルだが剣道の試合の経験がある一護は体を置いてこないといけないという制約のせいで援護に来ることも不可能。

 本来この場面でフェイトと相対したなのはに至っては原作の時もあっさりと負けたのに俺達の介入で原作よりも戦闘能力が下がっているという始末。

 

 (こりゃ完全に詰んでるな)

 

 この状況になった時点で最善のパターンであるフェイトを退けてジュエルシードを確保するという案は消えた、ここからはどれだけうまく負けれるかということに考えを変えていく。

 

 (ユーノ、なのはのことを守っといていくれよ)

 (それはいいけど蓮はどうするの、あの子からはなのはと同じくらいの魔力を感じるよ)

 (平和主義の俺は対話による解決というのを諦めないからな、話を聞いて見る)

 

 ユーノに軽く指示を出すと、言葉通り推定フェイトに話しかける。

 

 「なぁ、あんたも魔道師ってやつなんだろ?あんたもジュエルシードを封印しに来たのか?」

 

 まずはいきなり戦闘にならないように無警戒で話しかけていく、実際には着れないというだけだがバリアジャケットを着ていない俺は向こうからすれば丸腰の素人にしか見えないだろう。

そのことが関係あるのかは分からないがフェイトは俺に対して少し近づき質問に答える。

 

 「そう、私はジュエルシードを集めないといけないの。だから邪魔するなら無理やりでも回収する」

 

 フェイトの言葉には俺達と交渉しようとか穏やかにこの場を収めるとかいう気がまったく存在しないのがよく分かる。

というかまだほとんど話してないのにすでに戦闘態勢に入っているんですけどあの人。

 

 (これは説得は無理だ!俺が負けたら後は頼む!)

 (いろんな意味で諦めるのが早いよ!)

 

 ユーノに念話で後を託すと俺はフェイトに向き合うと

 

 「現地人としてジュエルシードのように危険な物をはいそうですかと譲るわけにはいかないな」

 「そう、じゃあもう話すことはない」

 「こうなりゃやけだ!そう簡単に俺を倒せると思うなよ!」

 

 なのはのことなど不安材料は残っているがここから先は少しでもフェイト以外のことに気を取られたら一瞬でやられるだろう。

ギル達との事前の討論では今の俺たちとフェイトの現在の戦力差は三人がかりでなんとか勝機が出るかどうかという所だと予想している、いくらこちらはチートを搭載していると言っても使いこなせなければ意味はないし、フェイトは当たらなければ云々を実践してしまう高速機動の近距離タイプだ、ギルではブリッツムーブで背後に回られて一撃昏倒というパターンが目に見えている。

ゆえに素の動体視力で反応できるだろう俺が対面しているのは最悪のケースではないのだが

 

 (見えていても対応できなきゃ意味がねえんだよ!)

 

 最初は予想通り動きが見えていたことでいけるかと思ったがフェイトのピッチが上がってくるにつれて俺の戦闘技術の未熟さが浮き彫りになっていく。

現に今も俺の右側頭部を狙ったフェイトの攻撃はバルディッシュが日の光を反射して光っているのまでしっかりと見えているのだが漫画や映画のようにきれいに受け流すなんてことはできず結局しっかりと腕で受ける羽目になる。備えとして腕全体に巻いておいたシュピ糸が腕を斬られるのを防いでいるが骨が折れそうな衝撃はそのまま伝わってくる、そんな腕で反撃に出られるはずがなくフェイトは悠々と俺のリーチの外に逃れ再び踏み込んでくる。

 

 (やっぱり基礎的な技術が違い過ぎる!)

フェイトの攻撃は俺の見よう見まねのボクシングの構えの薄い所を的確に狙ってくる為、後手に回らざるを得ない、かといって遠距離でけん制しようにも俺の糸はこれだけ早い相手だとろくに当たらない。

 

 (待ち伏せで糸をはって万が一フェイトが真っ二つなんてことになるなんてのも避けたいしな)

 

 シュピ糸自体は細さから強度まで俺のさじ加減で融通は利くがまだ使いこなせていないせいか大雑把な操作しかできない、よって相手に視認できないくらい細く、その上相手を傷つけないなんて言う繊細なコントロールは出来ないのだ。

 

「魔力は使っていても魔法じゃない、レアスキルかな……」

 

 近接戦では千日手になると踏んだフェイトがいったん距離を取り俺の事を分析する

 

 「さあ、どうだろうなこれが一体なんなのかは俺にもいまいちよく分かってないんでね」

 

 俺たちのチート能力は例のテキトーな仕様書や前世の知識から一応使えてはいるが能力が魔力由来で発動しているので原作の能力そのままと言うわけではない。

 こんな中途半端なものをレアスキルと言って誇っていいのかはかなり疑念が残る。

 

 

「そう、あなたのそれが何だろうと私には関係ない。回収の邪魔をするならこれ以上は手加減なしで行く」

 

 フェイト杖の先に金色の球体ができバチバチと嫌な音を立てる。

 

 「プラズマランサー、ファイア!」

 

 フェイトの声に応じて杖の先から電撃が弾丸となり俺に迫る、一つ二つなら見てから回避することが可能だが弾幕ゲームを三次元ではなく地面に足を付けたまま実行すればどうなるかと言えば

 

 (実戦にはグレイズも安置もないんだよ!)

 

 雷の弾丸を一射避ければその先には二発の弾丸が俺を狙って飛んできている、一発は体をひねり、もう一発はその反動に逆らわずそのまま転がり避ける。

地面に転がりながらも首だけを上に向けると更に五発の弾丸が俺を射抜くために空を走る。

 

(これは避けられんわ)

 

 身体能力がいくら上がっていてもここまで体勢を崩されてはどうしようもない。

結果として自分の意識を落とす為の弾丸が自分に着弾するのを無駄に高い動体視力で眺めながら俺の意識は闇に沈んでいった。

 

 

 「蓮君!」

 

 なのはの前で蓮が魔法の直撃をくらい倒れる。

なのはにとってジュエルシードの回収はユーノが困っていたために手伝っている物でけして危険なことではなかった。

 

 ジュエルシードを放置することの危険性や回収の際のリスクはなのはも理解していたがそれでも父や兄それに幼馴染の三人がいれば問題なく行えると信じていたし、実際にこれまでは危なげなく封印を完了させてきていた。

 

 今のようなジュエルシードを狙う他の魔法使いと戦うことなど考えてもいなかったのだ。

 

 なのはにはもしもの時暴走体と戦う覚悟はあっても人と戦う覚悟なんかは持っていない。

ありさと喧嘩した時もすずかの為に、そして何よりアリサが間違っていると感じたからこそ拳をふるった。

 

 自分のためではなくあくまでも他人や正しさの為にだけ力をふるう。

これが高町なのはの本質である。

 

しかし、幼馴染である蓮を一方的に打ち据えられそれでも何も思わずにいられるような人間でもないのも事実である。

これまでの人生の中で初めて他人に対して敵意を持って蓮を倒した少女を睨む。

 

 蓮を倒したことでこちらを無力化したと思ったのか少女は手馴れた様子で猫に魔力ダメージを与えジュエルシード回収する。

デバイスにジュエルシードを収納したところで初めてなのはに視線を向けて何かを口にしようと口を開き、思い直したように何もいうことはなく背を向けて去っていく。

その背中が見えなくなるまでなのははじっと見つめていた。

 

 

 

 

 




詳しい言い訳は活動報告の方に書きたいと思います。

感想・誤字報告など気楽によろしくお願いします。


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