バカとテストとスポンサー (アスランLS)
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プロローグ

間違えてプロローグよりキャラ紹介を先に投稿してしまった……幸先悪いなぁ……


 

ここ文月学園では、学年末に行われる進級テストの成績によりA~Fのクラスに振り分けられる。

最上位のAクラスになれば豪華な設備の教室を与えられ最高の待遇を受けられるが、反対に最底辺のFクラスになれば劣等生の烙印を押され最低ランクの設備でみじめな学園生活を過ごすことになるという、良くも悪くも完全実力主義な学校なのだ。

当然生徒達は少しでも上のクラスになれるようこの日のため死に物狂いで努力し、また努力を怠ってしまった生徒は不安を抱えながら試験に望む訳だが……

 

明久(これが難しいと噂の振り分け試験か……確かに難しいけど問題ない……この程度なら

 

 

十 問 に 一 問 は 解 け る!)

 

 

流石と言うかなんと言うか、のちに「学年を代表するバカ」と呼ばれる吉井 明久の名に恥じない素晴らしく的はずれな理論である。学力どうこう以前に、いったいどうしてその正答率に希望を抱けるのか不思議で仕方ない。

 

明久(二十点は堅いな)

 

そんなことを考えながら明久が気楽に問題を解いていると、突然背後から大きな音がした。明久が後ろを振り向むいて見ると、女子生徒の一人が椅子から転げ落ちたようだ。

学年でも指折りの成績を誇る優等生、姫路瑞希だ。

 

明久「姫路さんッ!大丈夫!?」

 

と言いつつもどうみても大丈夫そうには見えない。どうやら風邪気味で試験を受けていたらしく、熱にうなされて倒れてしまったらしい。試験続行はとてもじゃないができそうにない。周りがざわつく中、試験監督の教師が

 

「試験途中での退席は“無得点”扱いとなるが、それでいいかね?」

 

と無慈悲な確認し、それに姫路が答えようとしたとき、

 

明久「ちょ、ちょっと先生!具合が悪くなって退席するだけでそれは酷いじゃないですか!」

 

二人の間に割って入り、明久が教師に抗議した。

 

 

 

 

明久と教師がもめている後ろで坂本 雄二は思う。

 

雄二(はあ、相変わらず馬鹿で愚直なやつだな、あいつは。

自分の体調管理はあくまで自己責任、実力主義を掲げるここでそんな抗議受け付けるわけがねぇ。姫路のFクラス行きは確定だな…………………………しょうがねぇな)

 

そして、おもむろに自分の答案用紙の一部を消しゴムで消し始めた。

 

 

 

 

 

 

同時期、明久達とは別のクラスで、同じく振り分け試験を受けている柊 和真と霧島 翔子は科学では決して説明できない直感力で何かを感じとった。

二人(雄二が点数調整してFクラスに行こうとしている!)

 

超能力顔負けである。片や野性的な勘、片やいわゆる「愛の力」とやら、とでも説明すればよいのだろうか?

それはさておき、この二人はまともに試験を受ければAクラス確定圏内の、学年でも最上位の優等生である。雄二がFクラスに都落ちしようがこの二人にはさして関係はない。

 

 

和真(俺の勘がFクラスに行けば俺にとって楽しいことが起きると告げている。……俺はこの直感を信じ、この試験を捨てる!)

 

 

翔子(……あの日私は誓った。どこまでも雄二についていくと)

 

二人は、おもむろに自分の答案用紙の名前を消しゴムで消し始めた。そう、彼等が優等生であると同時に問題児どありさえしなければ、全く関係の無いままであっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして新学期当日の早朝、新入生を迎える桜の木々に挟まれた文月学園校舎へと続く、お年寄りとインドア派に優しくない坂道を全力疾走する二人の青年がいた。

鞄を抱えているのに凄いスピードでペースを落とすことなく走っている。

 

蒼介「今日は勝たせて貰うぞカズマ!」

和真「残念だが今日も俺の勝ちだソウスケェ!」

 

どうやらこの二人は競争しているようである。仲が悪い訳ではない。何かを賭けている訳でもない。

この競争は二人がこの学園に入学したときから絶えずしており、部活の朝練などのため早めに登校している生徒にとっては一種の風物詩でもある。やや和真ペースで進み、そのまま文月学園の門を和真がいち早くタッチした。

 

和真「よっしゃあ!これで競争は262勝13敗だ!」

蒼介「流石だなカズマ。まだまだお前と私の間には壁があるらしい」

和真「いやいや、今回は結構ヤバかったぜ。トップスピードも瞬発力も俺の方が上なのになんでついてこれるかねぇ」

 

そしてお互いを労い、握手をする。

二人が決めた真剣勝負後のルールだ。

 

西村「おはよう、朝から元気がいいなお前ら」

和真「あ、西村センセ。おはよー」

蒼介「おはようございます、西村教諭」

 

彼は生活指導の西村宗一。浅黒い肌に屈強な体格、そして趣味はトライアスロンであり真冬でも半袖でいることから、生徒からは陰で「鉄人」と呼ばれている。和真曰く、「この学園で唯一自分がリアルファイトで勝てそうにない人」らしい。鉄人は二人に振り分け試験の結果の入った封筒を渡す。

掲示板か何かで一斉に張り出せば良いんじゃないかと誰もが思うが、ある理由があってそれぞれの点数及び所属クラスは公開されない。

 

西村「流石は鳳だ。お前は我が校の誇りだよ。それはそうと……柊、お前何故あんなことをした?」

 

鉄人は蒼介を褒めた後、溜め息まじりに和真に問いかけた。

質問しつつも何か諦めたような表情に見えるのは決して気のせいではない。

 

蒼介「? 教諭、あんなこととは、」

“学年主席”と書かれた結果を確認しながら聞くと和真は、

和真「こんなこと」

“Fクラス”と書かれた紙を蒼介に見せる。

蒼介「…………………………!?」

 

驚きのあまり目をこれでもかと見開く。いつも冷静沈着な蒼介がここまで驚くのは結構なレアケースだったりする。

 

蒼介「な!? いや、どうしてお前が……」

和真「なんかすげぇ面白いことがFクラスで起きそうな気がしてな。そういうことに関して外れたことのない俺の勘がそう言っているんだから行くしかねぇだろ、娯楽主義・柊 和真の名にかけて」

西村「気がするって……お前なぁ……」

 

さも当然のように試験をボイコットしたと自白した和真に鉄人は呆れるように嘆息するが、去年から和真を見てきた彼は半ば諦めている。こいつはこういう奴だ、こいつの性分は死ぬまで治らない、と。

 

和真「そしてソウスケ、二年からいよいよ始まるあれも当然積極的に参加するつもりだぜ。御大層な成績に胡座を掻いていると、容赦なく最底辺まで叩き落としてやらぁ!」

蒼介「……なるほど、試験召喚戦争か。上等だ、私達Aクラスは全力でお前達を迎え撃つ!」

 

 

 

 

 




という訳でプロローグでした。この作品は基本この二人と原作主人公の明久を中心に物語を進めていきます。

早速やらかしてしまった通り、私は隙あらばこういうミスをちょくちょくしてしまううっかり者です。
不備な点があればどうかご報告下さい。では。


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キャラ紹介その1

とりあえずキャラ紹介から。
オリキャラは結構出すつもりですが、いっぺんに出すと一人一人が印象に残らず読者を置き去りになってまうので、しっかりとキャラを立ててから小出ししていきたいと思います。

ではまずは主人公とその親友から。

※ネタバレ要素を含みますので注意してください。


・柊 和真(ヒイラギ・カズマ)

2年Fクラス

身長178㎝→182㎝(二学期)

体重78kg→85㎏(二学期)

髪:黒紅色

得意教科:文系全般→全般

苦手教科:数学・物理(克服済み)

趣味:スポーツ、人脈の構築

好きなこと:戦闘、スポーツ全般、娯楽、他人の弱点を抉り出すこと、人の成長、(四巻末以降)木下優子

嫌いなこと:デスクワーク(苦手ではない)、細かい作業(同じく苦手ではない)、玉野美紀の暴走、指図されること、見下されること、歯医者、注射

座右の銘:百聞は一見に如かず、叩くなら砕けるまで、降りかかる火の粉は薙ぎ払う

コンプレックス:童顔

通称:Fクラス最強の槍、紅き修羅、ナチュラルサド、飼い猫、牙の抜けた虎、箱入り娘、ヒロイン

備考:社交性No.1

 

本作の主人公。

坂本 雄二がFクラスで面白いことをやろうとして()()という理由だけでAクラスへ行く権利を躊躇無く投げ捨てた豪傑。しかしこうした彼の勘は外れた試しが無い。

良くも悪くも子どもっぽい性格で、誰とでも友好的に接することができる一方で子ども特有の残虐性も併せ持っており、基本的にサディストである。もちろんかなりの悪戯好きでもある。

勉強、スポーツなどあらゆることを非常に高いレベルでこなすことができるが、本人はだいたいなんとなくでやっている感覚派である(しかし現在は蒼介を倒すためだけに陰で克苦勉励の日々を送っていたりと非常に負けず嫌い)。

前述の通りとても勘が鋭く、彼の直感はほぼ100%あたる(但し、自分の好奇心を満たせることと自分の命の危機にのみ適応される)。

喧嘩はとんでもなく強く、並外れた反射神経と驚異の身体能力を有しており前述の直感と併用すれば文月学園で鉄人に次ぐ戦闘力を有している。

父親は鳳財閥の子会社を経営しており結構裕福だが、物欲は希薄で嗜好も割と庶民派。

蒼介とは小学生からの親友同士である。

学園の6割以上の生徒と連絡先を交換している。童顔だがかなりのイケメンであり女子生徒からよく告白されフリーのときは全てOKしているが、彼のアウトドア趣味に付き合わされあっちこっち引きずり回され誰もがうんざりして去っていく。当の本人は他人に合わせる気皆無なため全く気にしていない。あくまで自分の趣味優先であり、去っていく者は引き留めるどころか惜しむ気配すらないなど、シビアでドライな一面も。それらの性格が災いして、高い社交性とは裏腹に敵も少なくない。

エロに対しての免疫はあまりない。

 

四巻で木下優子に告白して恋人関係になる。惚れた弱味なのか本人の隠れ甘えん坊属性のせいか、彼女には頭が上がらず早くも尻に敷かれている(ぞんざいに扱われているわけではなく、むしろ必要以上に可愛がられている)。実はくすぐりに弱く、敏感な部分が普通の人よりかなり多い(もっともこの弱点をつけるのは木下優子ただ一人のみ)。軽いノリで人を地獄の淵に追い込んだりするなどまさに筋金入りのサディストだが、優子に対してのみM疑惑が浮上している。

 

・パラメーター

ルックス…4

知能…5

格闘…5

器用…4

社交性…5

美術…4

音楽…4

料理…2

根性…5

理性…5

人徳…3

幸運…4

カリスマ…4

性欲…2

 

 

 

・鳳 蒼介(オオトリ・ソウスケ)

2年Aクラス(代表)

身長175㎝→179㎝(二学期)

体重70kg→75㎏(二学期)

髪の色:つやのある明るめの紺

得意教科:強いて言うなら国語→全般

苦手教科:無し

趣味:自己鍛練、料理

好きなこと:学園生活の日々、柊とのバトル

嫌いなこと:料理への冒涜

座右の銘:千里の道も一歩から

悩み:父親に剣で勝てない

通称:蒼の英雄、鳳家始まって以来の天才、最も完全に近い人間、

備考:生徒会長

 

柊の親友にして最大のライバル。

四大企業の一角、鳳財閥の御曹司。鳳家は放任主義らしく企業の跡取りなのに護衛一人としてついていない(後述の通り必要無いのだが)。

母親は料亭“赤羽”の料理長であり蒼介はそこに住んでいる。幼い頃から母親から料理を教わっているため日本料理の腕前は並のプロを遥かに凌駕する。その経緯から食べ物を粗末にする行為を嫌う。そのことで和真には面白半分で恐ろしいキャラ付けをされているのだが本人はまだ知らない。

真面目で責任感が強く冷静で思慮深い性格で、生徒はもちろん教師からの信頼も厚いが、実は柊に負けず劣らず行動力があり持久戦や搦め手を好まない。

学力は同年代で抜きん出ており、ほぼ全ての科目で学年1位を記録しているが、保健体育だけは2位である。そのためムッツリーニに少なからず興味を持っている(正体は特定されていない)。

指揮官としての彼は『後の先を取る』ことを主体としており、相手の作戦や戦術を読み切り対応するタイプで、生半可な奇策はまるで通じない。

剣道、柔道、合気道など様々な格闘技に精通しているが、特に剣術に優れ、普段から折り畳み式の特注木刀を護身刀とて持ち歩いている。

3年の高城雅春に匹敵するイケメンのため柊以上によく告白されるが、許嫁がいるらしく全て丁重に断っている。

堅物。

 

 

・パラメーター

ルックス…5

知能…5

格闘…5

器用…5

社交性…3

美術…4

音楽…4

料理…5

根性…5

理性…5

人徳…5

幸運…3

カリスマ…5

性欲…1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




以上主要キャラ2名でした。
ときに競い合い、ときに協力する、それがこいつらです。
行動派と頭脳派のコンビと見せかけて二人とも行動派。
ドラクエで言うと「ガンガンいこうぜ」固定。
柊はともかく鳳はクラス代表なのにガンガンいっちゃダメだろ……どう見ても経営者に向かない気がする。
ちなみに原作クラス代表の翔子さんは紆余曲折を経て雄二と和解し、Fクラスについて来ました。
では。


パラメーター基準
5…桁違い、化物(一握り)
4…優秀、天才(少数)
3…まあまあ、及第点(大半がココ)
2…低い、苦手
1…絶望的、無きに等しい(極少数)





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一巻開始・登校

怪盗キッドさん感想ありがとうございます!
読んでくれている人が少しでもいると執筆がはかどります。


 

流石に早く来すぎたので、二人は運動でもして時間を潰すことにした。

ちょうど朝練中の剣道部に混じり、ついでに試合をした。

先ほどの負けを取り返すかのように蒼介がストレート勝ちした。一通りこなした後、二年の教室に向かう。

 

和真「流石に剣道じゃお前の方が強ぇな」

蒼介「流石に剣術で遅れを取るわけにはいかないからな。そもそもお前は竹刀の使い方が拙い。素手の方が遥かに驚異なほどな」

和真「余計なお世話だ。まあステゴロの方がしっくりくるけどよ」

蒼介「それに私もまだまだだよ。不甲斐ないことに、未だに父様には手も足もでない」

和真「いや、それはお前が不甲斐ないんじゃなくてあの人が尋常じゃなく強いだけだろ。リアルファイトでも西村センセと渡り合えるんじゃねぇか、あの人」

蒼介「……それでも、いずれ越えなければならない。それがあの人の意思を継ぐ者としての責務だ」

和真「……金持ちは金持ちで苦労してるってな……お、ここでお別れだな。じゃあなソウスケ、首洗って待ってろよ!」

蒼介「あまり待たせてくれるなよ、カズマ」

 

二人は軽口を叩き合いながらそれぞれの教室に向っていった。

 

 

 

 

 

 

蒼介と別れた後、和真は廃墟のような外観のFクラスのドアの前まで来ていた。

 

和真(……ボロいのもここまで極まればある意味芸術だな)

 

予想以上にひどい外観に和真は呆れを通り越して感心しつつドアを開けた。外もひどかったが決して見かけ倒しではなく教室の中も期待を裏切らない。流石最低クラスと言うべきか、学業に支障がでかねないほどの劣悪な設備だ。まあその程度のことで足を引っ張られる和真ではないのだが。

 

和真「よぉ雄二、おはよー」

 

ずかずかと教室に上がりこみ教壇に立っている、恐らくはクラス代表である坂本 雄二に話しかけた。なにか悩んでいるのか、心ここにあらずのようで、声をかけられるまで和真の接近に全く気づいていなかった。

 

雄二「ん?あぁ和真かおはよ……和真ぁ!?」

 

一瞬スルーして適当に挨拶する前に、脳が予想外過ぎる情報をなんとか処理できた雄二は思わず仰天する。

 

和真「おいおい何だよその反応は、人を化け物みてぇに」

雄二「いや何でお前がここにいるんだよ!? お前はAクラス確実の成績だっただろうが!」

和真「それはお前もだろ? なに、この教室でお前が面白いことをするような気がしてな」

 

にやりと笑いながら和真がそう言うと、雄二は何かを諦めたかのように脱力する。心なしかどこか哀愁が漂っている。そのうち白髪とか生えてくるのではないだろうか。

しかし別に彼は和真の奇行だけでここまで辟易した訳ではない。

 

雄二「お前もかよ……どうして俺の周りには、伝えてもないのに俺がなにを考えてるか察知できる奴がゴロゴロいるんだよ……」

和真「お前もってことはもしかして…やっぱりお前もいるのか翔子」

 

いつの間にか和真のすぐ後ろに来ていた霧島 翔子に振り向きもしないで問いかける。実を言うと雄二の疲労の原因はこの少女だったりする。

 

翔子「……おはよう和真。また一年よろしく」

和真「こっちこそよろしくな」

 

この二人は去年から同じクラスであり、けっこう仲が良い。彼女が名前で呼ぶ男子は雄二と和真だけである。

 

和真「ところで、俺もだけどお前は雄二がFクラスに行こうとしていたのをどうやって察知した?」

翔子「……それは勿論、」

「「勘」」

 

和真は後ろを振り向き、翔子と固く握手する。男と女の友情は成り立つと証明した瞬間である。二人とも実にいい笑顔だ。その空気にいたたまれなくなったのか、取り残されていた雄二が不満を爆発させる。

 

雄二「お前ら打ち合わせでもしたのか!?なんでそんなに息ぴったりなんだよ!?」

和真「バカめ雄二、ほんとお前愚か。感覚派の人間同士は言葉を交わさずともわかり合えるもんなんだよ!」

 

どや顔で力説する和真。好き放題虚仮にされた雄二は思わずぶん殴りたい衝動に駆られた。しかし新学期始まって初めての乱闘に移行する前に翔子は雄二に詰め寄る。

 

翔子「……そんなことより雄二、なんで私に何も言わずFクラスに行こうとしたか、説明してもらってない」

雄二「うっ、それはだなぁ…」

 

翔子に問い詰められ狼狽える雄二。なるほど、さっき悩んでいたのはどうやらこれが原因らしい。和真は面白い玩具を見つけたと言わんばかりの邪悪な笑みを浮かべて翔子に耳打ちする。

 

和真「翔子よぉ…雄二はFクラスでしなければならないことがあって、だけどお前をこんな汚い教室に入れたくなかったんだよ。でもこいつ素直じゃねぇから恥ずかしくてそんなこと打ち明けられないんだよ、察してやれ」

 

明らかに雄二にも聞き取れる声量で。

 

雄二「てめえぇぇぇぇぇ!」

 

憤怒の形相で雄二が殴りかかるが、ある程度予想していた和真は軽快なステップでかわす。無駄に洗練された動きである。

 

翔子「……雄二、嬉しい。でも私は雄二と一緒にいたい」

雄二「………………ふん」

 

照れくさいのか、雄二はそっぽを向く。バカップル全快である。このとき異端審問会が結成されていれば間違いなく抹殺対象だ。悪運の強い男だ。

 

和真「いい雰囲気のとこ悪いけどよ、これで全員そろったのか?誰か足りないような気がするが」

雄二「いや、まだ二人来ていない…お、来たようだ」

 

雄二がそう言った直後、狙っていたかのようなタイミングでFクラスのドアが開いた。

 

明久「すいません、ちょっと遅れちゃいました♪」

雄二「早く座れこのウジ虫野郎」

明久「台無しだ!?」

 

観察処分者・吉井明久だ。




という訳で原作キャラ3人と顔合わせです。
雄二関連限定ですが、翔子さんは和真と同等の感覚の持ち主です。原作でもその片鱗を垣間見ることができます。
次回からは2日おきに投稿していく予定です。
では。


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それぞれの自己紹介

文章量が一気に4倍近くになってしまった…
この小説バランス悪っ!



和真「あーそうだそうだ。お前がいなきゃ学力最底辺クラスは完成しねぇもんな。一番重要なバカのこと忘れるなんざ俺としたことが、うっかりしてたぜ」

明久「いきなり失礼すぎない!?…ってなんで和真がFクラスに?」

 

和真のあんまりな物言い(明久からすればだが)に憤慨した後、明久は雄二と同じ疑問を抱く。

 

和真「雄二がなにか面白いことをしようとしてる気がしてな、Aクラスへ行く資格を夕日の向こうに投げ捨てて来てやったぜあっはっはっは!」

明久「あはは、なんかすごく和真らしいねその理由……あ、じゃあ霧島さんは……………………雄二か……

畜生!何故あんなゴリラがモテるんだ!」

 

明久は和真がFクラスである理由に納得した後、翔子がここにいる理由を訪ねようとするが、訪ねる前に理由を察する。バカの彼にしては珍しく察しが良いが、明久でも簡単に察せる程翔子が一途であるということである(雄二の努力と和真の協力の甲斐あってか、翔子が雄二に一途であることは一部の人間しか知らないが)。

明久はこの世の不公平さに血の涙を流しながら悔しがる。彼に好意を寄せている女子も少なからずいるのだが、それを伝えると色々と面倒事が起きそうな気がするので和真はスルーした。

 

「えーと、ちょっと通してもらえますかね?」

 

ドアの外から覇気のない声が聞こえてきた。その声の主は寝癖のついた髪にヨレヨレのシャツを着た冴えないおっさんだった。おそらくFクラスの担任だろう。

 

福原「えー、おはようございます。このクラスの担任の福原 慎です。よろしくお願いします」

 

福原教諭はそう言うと黒板に名前を書こうとしたが、チョークが支給されていなかった。

 

和真(それは教育機関としてどうなんだ?)

福原「皆さん全員に卓袱台と座布団は支給されていますか?不備があれば申し出て下さい」

 

そもそも支給されているものが既におかしい。流石はFクラス、設備がまさかの昭和スタイルだ。

 

和真(まあ別にいいだろ。勉強なんざ教科書と紙とペンがあればどうとでもなる)

 

もともと天才肌の和真は設備がどうであろうと大して興味を持っていないものの、一般的な生徒のモチベーションは大いに下落するだろう。Fクラスの生徒が一般的生徒かどうかは首を捻らざるを得ないが。

 

Fクラス生徒「先生、俺の座布団に綿がほとんど入ってないです!」

福原「あー、はい。我慢してください」

 

不備を申し出ても受理されないらしい。

 

Fクラス生徒「先生、俺の卓袱台の足が折れています」

福原「木工用ボンドが支給されていますので、後で自分で直してください」 

 

新品と取り替えるという発想はないらしい。

 

Fクラス生徒「先生、窓が割れていて風が寒いんですけど」

福原「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」

 

ガラスで補強などする気ないらしい。

 

明久(改めてこの教室を見渡すと……教室の隅には蜘蛛の巣が張られ、壁はひび割れや落書きだらけ。さらに部屋全体がホコリっぽい……ここは本当に学校なのか!?)

 

その問いに首を縦にふるものなどそういないだろう。

 

福原「では、自己紹介でも始めましょうか。そうですね。廊下側の人からお願いします」

 

福原先生がそう言った後に立ち上がったのは、肩にかかる程度の長さの髪の女子生徒……と思ったらその生徒は男子制服を着ていた。

 

「木下 秀吉じゃ。演劇部に所属しておる。今年一年よろしく頼むぞい」

 

軽やかに微笑みを作って自己紹介を終える秀吉。

 

和真(いつ見ても優子にそっくりだな。優子の弟なのにあいつはスポーツが苦手だったっけ……)

 

木下 優子は和真や翔子の元クラスメイトであり、社交性の乏しい翔子の数少ない友人の一人である。

余談だが、和真は仲良くなった人は誰であろうとアウトドアスポーツ巡りに巻き込む。そのハードさは肉体よりメンタルの是非を問われ、最後までついていける人はほんの一握りという過酷さであるが、木下 優子は持ち前の負けず嫌い精神によりそれをやり遂げた一人である。このことから、和真の優子に対する評価はかなり高い。

「………土屋 康太」

 

次の生徒は小柄な男子だ。土屋は名前だけ言うと自己紹介を終わらせた。個性もへったくれもない。

 

和真(あんな愛想ない奴が今後Fクラスの切り札的存在になるなんだよなぁ。雄二がソウスケにぶつけるとしたら、多分あいつかな。本当は俺が闘りてぇところだが、いくらなんでもこんな早い時期からワガママ言うのもなぁ……)

 

一見殊勝な心掛けだが、後々ワガママを押し通そうとしていることに一切疑問を持っていない時点で突っ込みどころ満載だ。和真がそんなことを考えている間も自己紹介は続く。黄色いリボンで髪をポニーテールにまとめた女子生徒が立ち上がる。

 

「島田 美波です。海外育ちで日本語はできるけど読み書きが苦手です。あ、でも英語も苦手です。育ちはドイツだったので。趣味は…吉井 明久を殴ることです☆」

明久(誰だっ!?恐ろしくピンポイントかつ危険な趣味を持つ奴は……島田さんしかいないよなぁ)

島田「はろはろー」

 

笑顔で明久に手を振る島田。明久も引き気味に返事をする。自分を殴ることが趣味の人間に友好的に接することなどできない。それでも普段からつるんでいるのは、明久のお人好しな性格を差し引いても、なんだかんだで仲は良いのだろう。

 

和真(島田も相変わらずだなー。好意を寄せている相手を殴るのが趣味ってもうそれただの危ない人だぞオイ。ったく、雄二といいこいつといい…)

 

本人が良く告白されるからか、和真は以外とそういうことに目ざとい。まあ察したところでなにかしてやる訳でもないが。過去にキューピッド的役割をしたことがないこともないが、基本的に興味が無いのでノータッチである。

その後は淡々と自分の名前を告げるだけの作業が進み、明久の番になる。

 

明久(さて、自己紹介だ。こういったものは出だしが肝心。沢山の仲間を作るためにも、僕が気さくで明るい好青年ということをアピールしないと)

「ーーコホン。えーっと、吉井 明久です。気軽に『ダーリン』って呼んで下さいね♪」

 

『ダァァァァァァァァリィィィィィィィン!!!』

 

野太い声の大合唱。非常に不愉快であり、流石の和真も顔をしかめる。

明久「ーー失礼。忘れて下さい。とにかくよろしくお願い致します」

 

作り笑いで誤魔化しているつもりらしいが、今の明久はどう見ても気分が悪そうだ。

 

和真(予想以上にバカばっかりだなここ……大丈夫かなこれ……さて、次は俺か)

 

勘に従ってFクラスに来たことを若干後悔し始めつつ、和真は立ち上がる。

 

和真「知った顔も知らない顔もこんにちは。アウトドア派娯楽主義者こと柊 和真だ」

 

ちなみに同じ学年で和真と面識が無い生徒などいないので、この自己紹介の意味はあんまり無い。

 

和真「趣味はスポーツ全般と、そうだな……吉井 明久を殴ることです☆」

 

明久「おかしいでしょ!?」

 

後ろの席で和真の自己紹介を聞いていた明久は、突然のデジャブに我慢できずシャウトする。

 

明久「いつから僕の周りは僕を殴ることが趣味の人間だらけになったのさ!?」

和真「明久、天丼って知ってるか」

明久「それを自己紹介でやる意味は!?」

和真「特に無い」

明久「じゃあすんなよ!」

和真「ま、そんな訳でこれから一年よろしくな」

 

明久の抗議を華麗にスルーし、和真は前にいる翔子にバトンタッチした。

 

翔子「…霧島翔子。この一年間よろしく」

 

翔子は艶やかな黒髪の美少女で、凛とした雰囲気も加わって、男女ともに人気がある。

因みに雄二と付き合っているが生徒には知られていない。

 

「はいっ!質問です!」

 

既に自己紹介を終えた男子生徒が高々と手を挙げる。

翔子「……何?」

 

「なんでここにいるんですか?」

 

聞きようによっては失礼な質問だがその疑問は無理もないだろう。去年翔子は首席の蒼介には及ばないまでも、学年二位の成績をキープし続けている。多少調子が悪かったぐらいで最下層に位置するFクラスまで落ちるはずがない。ちなみに和真も学年六位の成績を残しているが誰にも突っ込まれなかったのは、彼の行動をいちいち疑問に感じていたらキリがないからである。この学年の生徒は彼のする謎の行動の大概は「柊だから」で納得するレベルまでに至っている。

 

翔子「…ここが私のいるべきクラスだから」

 

質問の応答としては微妙にずれた答えだが、それで皆は「なるほどー」と納得する。バカは扱いやすい。

 

和真(釘をさしといて良かったぜ。これから戦争を仕掛けるクラスの大将が女にうつつを抜かしてると知られちゃあ勝てるもんも勝てなくなるしな)

雄二(助かったぜ…まさか和真の奴まさかそこまで考えて……るわけねぇよな、どうせいつものムカつく程当たる勘だろう)

 

その後も名前を告げるだけの単調な作業が続き、和真が飽き始めた頃に不意に教室のドアが開き、息を切らせて胸に手をあてている女子生徒が現れた。

 

「あの、遅れて、すいま、せん……」

 

教室全体から驚いたような声が上がる。騒がしくなるクラスの中で福原先生がその姿を見て話しかけた。

 

福原「丁度よかったです。今自己紹介をしているところなので姫路さんもお願いします」

姫路「は、はい!あの、姫路 瑞希といいます。よろしくお願いします……」

 

文月学園の女子生徒はなぜか全体的に強気な生徒がかなり多い中、保護欲をかきたてるような可憐な容姿は非常に人目を引く。

 

「はいっ!質問です!」

 

先ほどの男子生徒がまた手を挙げる。

 

姫路「あ、は、はい。なんですか?」

「なんでここにいるんですか?」

 

一字一句違わない全く同じ質問。彼に学習能力及びデリカシーというものはないらしい。しかし姫路も去年学年3位の成績を残しているため、その疑問もまた仕方ない。

 

姫路「その、振り分け試験の最中、高熱をだしてしまいまして……」

その言葉を聴きクラスの人々は納得した。

試験途中での退席は0点扱いとなる。姫路は振り分け試験を最後まで受けることができずFクラスに振り分けられてしまったというわけだ。

そんな姫路の言い分を聞き、クラス内でもちらほらと言い訳の声が上がる。

 

「そう言えば俺も熱(の問題)が出たせいでFクラスに」

「ああ。科学だろ?アレは難しかったな」

「俺は弟が事故に遭ったと聞いて実力を出し切れなくて」

「黙れ一人っ子」

「前の晩、彼女が寝かせてくれなくて」

「今年一番の大嘘をありがとう」

和真(せめてもっとましな言い訳考えろよ……)

 

言ってることは正論だが、娯楽を求めてFクラスに来た和真に言う資格はない。

 

姫路「で、では、一年間よろしくお願いしますっ!」

 

そんな中、姫路は逃げるように明久の隣の空いている卓袱台に座り、安堵の息を吐いて卓袱台に突っ伏す。よほど緊張したのだろう。

 

明久「あのさ、姫―」

雄二「姫路」

 

明久の台詞にかぶせて声をかける雄二。

ナイスインターセプト、完全にわざとだろう。

 

姫路「は、はいっ。何ですか?えーっと……」

雄二「坂本 雄二だ。体調はもう大丈夫なのか?」

明久「あ、それは僕も気になる」

 

試験で倒れた光景を目の前で目の当たりにしていた明久はその話題になったので思わず口を挟む。

 

姫路「よ、吉井君!?」

 

なぜか明久の顔を見て姫路は必要以上に驚く。和真はもしやと思ったが確定するには情報が少なすぎるため脳内で保留にした。

 

姫路「姫路。明久がブサイクですまん」

 

雄二が全くありがたくない悪意あるフォローをする。というかフォローするつもりなどハナから無いのだろう。

姫路が過剰に驚いたのにはちゃんとした理由があるのだが、間違ってもそんなあんまりな理由ではないだろう、。

 

姫路「そ、そんな!目もパッチリしてるし、顔のラインも細くて綺麗だし、全然ブサイクなんかじゃないですよ!その、むしろ……」

雄二「そう言われると、確かに見てくれは悪くない顔をしているかもしれないな。俺の知人にも明久に興味を持っている奴がいたような気もするし」

和真(お、島田が露骨にビクッてなった。安心しろお前じゃねーよ。絶対になんらかのオチがある)

明久「え?それは誰―」

姫路「そ、それって誰ですかっ!?」

 

ナイスインターセプトpart2。明久は言葉を遮られ続ける星の下にでも生まれてきたのだろうか。ちなみに和真はここまでの流れで先程保留したばかりの推測を確定する。なんてことない、彼女も翔子や島田と同類であっただけである。

 

雄二「確か、久保………………

 

 

利光だったかな」

和真「……マジでっ!?」

 

よほど信じられない情報だったのか、不干渉に徹していた和真が思わず口を挟む。

 

姫路「ひ、柊君!?」

雄二「なんだ和真、盗み聞きしてたのか? 行儀悪いな」

和真「そんなでけぇ声で談笑してたら嫌でも耳に入って来るわ。それよりさっきのマジか!? あの堅物によりによってそんな趣味が!?」

雄二「半分冗談だ」

明久「え?残り半分は?」

雄二「ところで姫路。体は大丈夫なのか?」

姫路「あ、はい。もうすっかり元気です」

明久「ねぇ雄二!残りの半分は!?」

福原「はいはい。そこの人達、静かにしてくださいね」

 

教卓を軽く叩いて福原先生が警告を発すると。

 

バキィッ バラバラバラ・・・・・・

 

突如、教卓はゴミ屑と化した。

 

福原「えー……替えを用意してきます。少し待っていてください。」

 

気まずそうにそう告げると、先生は教室から出て行った。

姫路が苦笑いをしている。

 

明久「……雄二、ちょっといい?ここじゃ話しにくいから、廊下で」

雄二「!……別に構わんが」

 

そう言って明久は真剣な表情でそそくさと廊下に出ていき、何かを察した雄二も教室を出た。

 

姫路「あの、柊君。お二人、どうしたんでしょうか?」

和真「……さぁね」

 

和真(久保の件は聞かなかったことにしよう。それにしても……なるほど、相変わらず雄二は面倒な性格してんなぁ)「ククク……」

姫路「?」

 

和真は何かが府に落ちたように頷く。姫路はそれを不思議そうに見ていた。

 

 

 

 

 

 

その頃Aクラスでは、

「では最後に鳳 蒼介君、前に来て挨拶して下さい」

 

蒼介以外の自己紹介を済ませた後、高橋先生がそう告げる。呼ばれた蒼介は紺色の髪をかき上げ、前に出る。

芸術と言っても過言ではない容姿とカリスマ性のようなオーラを兼ね備えた彼は、無条件に人を惹き付ける。

 

蒼介「Aクラス代表の鳳 蒼介だ。これから一年よろしく頼む。まず早急に、男女一人ずつ代表代理を決めなければならない。とても責任が伴う重要な役職だ。この役目を背負う覚悟がある者は立候補してくれ」

 

代表代理とは学年主席が生徒会長に着任したとき、不在のときの代役として行事の指揮や宣戦布告の対応にあたる役職だ。「生徒の見本となるべき生徒会長は学年で最も優秀な生徒が望ましい」という学園の方針から、毎年二年の主席に声がかかる。しかしクラス代表の責務と生徒会長の責務を同時に背負うため大抵の生徒は拒否し、代わりに学年次席が生徒会長に就くことがほとんどだ。そのためこの役職は設置されることはまずない。

ちなみに代理が活動中そのクラスは試験召喚戦争に参加できない。

 

「女子はアタシがやるよ」

「では男子は僕が引き受けよう」

 

二人の生徒が立候補した。

女子生徒が木下優子、男子生徒が久保利光だ。

二人とも蒼介に次ぐ成績を誇る上リーダーシップも申し分ないので周りから特に異議はない。

 

蒼介「では二人に任せよう。感謝する」

優子「どういたしまして♪ ところでなんで早急に決めなければならないの?」

久保「それは僕も気になるな。新学期早々試召戦争が起きるわけがないし特別な行事も今月は特にないだろう?」

 

二人はそう訪ねると、蒼介は真剣な顔つきになる。

 

蒼介「理由は新学期早々試召戦争を起こすクラスがいるからだ。学年でも指折りの学力を持つ生徒数名を中心にな」




というわけでFクラスの自己紹介+@でした。
この小説の優子さんは休日主人公にあっちこっち振り回されるも持ち前のガッツで食らい付いていき、気がつけば作中でも上位の武闘派になりました。学力と腕力が両方備わり最強に見えます。
ちなみにBL趣味は休日をスポーツで潰しているうちに興味を失って行きました。

では。


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戦争の引き金

タグを一部編集しました。

早く試召戦争を始めたいけどvsDクラスはイレギュラー二人が両方とも途中参加の分、原作と全く同じ展開になってしまうのでほぼダイジェストにするしかないというジレンマ。



雄二と明久、ついでに福原先生が教室に戻って来た。教卓を取り替えた後は特に何も起こらず、淡々とした自己紹介の時間が流れる。

 

福原「坂本君、キミが自己紹介最後の一人ですよ」

雄二「了解」

 

先生に呼ばれて雄二が席を立つ。180㎝以上もある身長に、やや細身だがボクサーのような機能美を備えた体型、さらに意思の強そうな目をした野性味溢れる顔つきをしており、堂々と教壇に歩み寄るその姿は、鳳 蒼介とは違った貫禄を身に纏っている。

 

福原「坂本君はFクラスの代表でしたよね?」

 

そう問われ、鷹揚にうなずく雄二。もっとも、クラス代表といっても最低クラスの成績者の中での一番に過ぎないので、雄二の本来の成績はともかくその点で彼が評価されることはないだろう。

 

雄二「Fクラス代表の坂本 雄二だ。俺の事は代表でも坂本でも、好きなように呼んでくれていい」

和真「マジでか。じゃあお前のこと『露出狂』って呼ぶように後で他のクラスにも通達しておくわ」

雄二「おーいお前ら、さっき言ったことは無しの方向で頼む。それよりも、皆にひとつ聞きたい」

 

雄二はゆっくりと、全員の目を見るように告げる。

間の取り方が上手く、全員の視線はすぐに雄二に向けられるようになった。それを確認した後、雄二の視線は教室内の各所に移りだす。

 

かび臭い教室

 

古く汚れた座布団

 

薄汚れた卓袱台

 

雄二「Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが……不満はないか?」

 

 

 

『大ありじゃぁぁぁぁぁっ!!』

 

 

 

和真を除くFクラス男子生徒の、心の底の底の底の底の底の底からの魂の叫び。

 

雄二「だろう?俺だってこの現状は大いに不満だ。」

『そうだそうだ!』

『いくら学費が安いからってこの設備はあんまりだ!』

 

堰を切ったかのように次々とあがる不満の声。この勢いはちょっとやそっとのことでは収まりそうもない。

 

雄二「皆の意見は最もだ。そこで、俺達FクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う」

 

代表・坂本 雄二は自信に溢れた顔に不敵な笑みを浮かべながら、戦争の引き金を引いた。

だが、

 

『勝てるわけがない』

『これ以上設備を落とされるなんて嫌だ』

『姫路さんがいたら何もいらない』

『霧島さん、愛している』

 

先ほどまでの勢いはどこへやら、盛り上がりがあっという間に収まった。先程までの不満はどうした不満は。まあそれも仕方ないのだが。

文月学園のテストは世にも珍しい制限時間内の問題数無制限というシステムだ。その為学力次第ではどこまでも点数を取ることができ、成績が優秀な生徒と低い生徒との明暗がはっきりと出る。一般的なAクラスの生徒の点数は大雑把に見てFクラスの生徒一人の3倍程もある。その戦力の差は歴然だ。

 

雄二「そんなことはない。必ず勝てる。いや、俺が勝たせて見せる。」

 

その戦力差にもかかわらず、雄二は自信満々にそう宣言した。しかしそれでもクラスメイトの猜疑心は拭えない。

 

『何を馬鹿なことを』

『何の根拠があってそんなことを』

雄二「根拠ならあるさ、このクラスには試召戦争で勝つ事のできる要素が揃っている。それを今から証明してやる」

 

この反応は予想通りと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべた後、とある男子生徒の方を向く。

 

雄二「おい、康太。畳に顔をつけて姫路のスカートを除いてないで前に来い」

土屋「…………!!(ブンブン)」

姫路「は、はわっ」

 

必死になって顔と手を左右に振る否定のポーズを取る土屋。

あそこまで恥も外聞もなくローアングルから覗くとはそれはそれで大したもんだ。

 

雄二「土屋 康太。こいつがあの有名な、寡黙なる性識者(ムッツリーニ)だ」

土屋「…………!!(ぶんぶん)」

 

その名は男子には畏怖と畏敬を、女子には軽蔑を以て挙げられる異名だ。畳の跡を手で自分で押さえる土屋。既にバレバレだが、隠し通せていると本気で思っているあたり、この異名は伊達じゃないようだ。

また、彼の成績はほとんどがこのFクラス内でも最底辺だが、その並外れたスケベ心から保健体育は学年首席の蒼介をも凌駕する。そのことから土屋 康太という名も割と有名だが、Fクラス生徒のほとんどは成績上位者のことなどいちいちチェックしていないので、自己紹介では無反応であった。

 

『バカな……やつがあのムッツリーニだと…』

『いや、あれを見ろ!明らかにバレバレな証拠を未だに隠そうとしているぞ!』

『ああ、ムッツリの名に恥じない振る舞いだ…』

和真(それはどちらかと言うと恥じるべきなんじゃないか?あと毎回思うがあそこまでダイレクトに行動する奴はムッツリと言っていいのか?)

 

本人は隠し通せてるつもりなので定義付けはムッツリでいいのだろう、多分。

 

雄二「姫路 瑞希、霧島 翔子、柊 和真。いずれも学年トップクラスの学力を持っている。三人とも、主戦力として期待しているぞ!」

翔子「……わかった」

姫路「が、頑張りますっ!」

和真「あいよ、頼まれるまでもなく盛大に暴れてやるぜ!」

 

Fクラスの生命線と言っても過言でない彼等はそれぞれやる気十分に返事をする。

 

『ああ、姫路さんがいればそれで満足だ』

『霧島さん、まずはお友達からでも!』

和真(さっきから熱烈にラブコール送ってる奴がいるなぁ。その積極性と正直さを1割でいいから島田に分けてやってくれ)

雄二「木下 秀吉だっている」

 

木下秀吉は学力はFクラスの中では優秀な程度だが、演劇部のホープとして期待されている優秀な若者だ。

 

『おお……!』

『ああ。アイツ確か、木下 優子の』

『戦力として期待できるな』

和真(残念だができねぇ。優子と違ってあいつの学力は正真正銘Fクラスレベルだ。だかあいつの強みは学力じゃねぇ。まぁここで名を挙げたのはこいつらの士気を高めるためだろーな)

 

雄二「島田、お前は数学は優秀だったよな?」

島田「漢字が苦手でもある程度なんとかなるからね」

和真(俺と真逆の成績だな。まぁその数学もAクラス相手では力不足だがな。だがあいつは前線で指揮を取れる。そういうやつは貴重だ。指揮なんざ俺は絶対やりたくねぇけど)

 

和真は団体行動より一人で切り込む方が性に合っているので、周りを動かす司令塔ポジションはノーセンキューなのである。サッカーでもMFは断固としてやりたがらない。

 

雄二「当然、俺も全力を尽くす」

『確かになんだかやってくれそうな奴だ』

『坂本って、小学生の頃は神童とか呼ばれていなかったか?』

『それじゃ、振り分け試験の時は姫路さんと同じく体調不良だったのか』

和真(あいつがFクラスなのは点数調整した結果だけどな)

 

『実力はAクラス上位レベルが四人もいるってことだよな?』

『もしかしたらいけるかもしれないぞこれは!』

 

気がつけば、一度ゼロにまで下落したクラスの士気は再び勢いを増していく。

 

 

 

 

 

 

 

雄二「それに、吉井 明久だっている」

 

……シンーー

 

そんな盛り上がった士気が、再び一瞬でゼロになる。

 

明久「ちょっと雄二!どうしてそこで僕の名前を呼ぶのさ!?全くそんな必要はないよね!」

 

オチ同然に使われた明久は雄二に猛然と抗議するが、当の雄二は知らん顔。

 

『誰だよ吉井明久って』

『聞いた事ないぞ』

明久「ホラ!せっかく上がりかけてた士気に翳りが見えてるし!僕は雄二たちと違って普通のにんげんなんだから、普通の扱いをーってなんで僕を睨むの?士気が下がったのは僕のせいじゃないでしょう!」

 

明久の抗議を余所に、吹き出しそうになるのを和真は卓袱台に突っ伏して必死にこらえる。

 

和真(確実に明久への嫌がらせだ……畜生雄二の奴、俺の腹筋を殺しに来てやがる!なんて奴だ!)

 

それは和真が勝手に自滅しているだけで、おそらく雄二にそんな目論見はない。

 

雄二「そうか。知らないようなら教えてやる。こいつの肩書きは……〈観察処分者〉だ!」

 

バンッ!という効果音を背景に、雄二が高らかに宣言する。

 

『……それって、バカの代名詞じゃなかったっけ?』

しかしクラスの誰かがもっともな事を言う。

明久「ち、違うよっ!ちょっとお茶目な十六歳につけられる愛称で」

雄二「そうだ。バカの代名詞だ」

明久「肯定するな、バカ雄二!」

 

〈観察処分者〉とは学園生活を営む上で問題のある生徒に課せられる処分で、明久がこの学園で唯一その処分を受けている肩書きだ。

 

姫路「あの、それってどういうものなんですか?

雄二「具体的には教師の雑用係だな。力仕事などの類の雑用を、特例として物に触れられるようになった召喚獣でこなすといった具合だ」

 

召喚獣は本来は召喚獣以外の物に触れる事ができない。もっとも学園の床には特殊な処理が施されて、立つことはできるらしい。

しかし明久の召喚獣は雄二の言うとおり、物に触れられる特別仕様だ。

もっとも、物理干渉能力のある召喚獣は召喚獣の負担の何割かは召喚獣の召喚者にフィードバックされるというデメリットつきだが。

 

『おいおい。〈観察処分者〉ってことは、試召戦争で召喚獣がやられると本人も苦しいって事だろ?』

『だよな、それならおいそれと召喚できないヤツが一人いるってことだよな』

 

観察処分者の召喚獣の仕様を知っている生徒も何人かいるようで、それぞれが苦言を呈する。

 

和真(まあ確かにリスキーだが、それ相応の見返りはあるんだがな)

 

無制限腹筋耐久地獄からどうにか復活したらしく、和真は観察処分者としての利点を冷静に考察する。

 

雄二「気にするな。どうせ、いてもいなくても同じような雑魚だ」

明久「雄二、そこは僕をフォローする台詞を言うべきだよね?」

和真「そうだぞ雄二。いざというときにストレス解消のサンドバッグにもなれるし、壁にぶち当てて壁を破壊して予想外の方向から奇襲をかけられる」

雄二「おっ、いいなそれ。採用」

明久「キサマらはホントに人間か!?」

 

しかし頭で考えてることよりも悪ノリを優先する和真。

明久のいじられキャラポジションが新クラス内で早くも固定固定されつつある。南無。

 

和真「まあ悪ふざけはこの辺にしとくか」

雄二「そうだな。とにかく、俺たちの力の証明として、まずはDクラスを征服しようと思う!皆、この境遇は大いに不満だろう?」

『当然だ!』

 

雄二の言葉に触発され、クラス中が大いに盛り上がる。翔子や姫路もその雰囲気に圧されたのか、小さく拳を作り掲げていた。

 

雄二「明久にはDクラスへの宣戦布告の使者になってもらう。無事大役を果たせ!」

 

明久を捨てゴマにすることに関して定評のある雄二は、ここぞとばかりに明久に貧乏くじをさりげなく押し付けようとする。

 

明久「……会勢力の宣戦布告の使者ってたいてい酷い目に遭うよね?」

雄二「大丈夫だ。やつらがお前に危害を加えることはない。騙されたと思って行ってみろ」

明久「本当に?」

雄二「もちろんだ。俺を誰だと思っている。そもそも乱闘が起こるなら真っ先に和真が行こうとするだろ?」

明久「それもそうだね、わかったよ。それなら使者は僕がやるよ」

雄二「ああ、頼んだぞ!」

 

クラスメイトの拍手と歓声に送り出され吉井は毅然とした態度で教室を出て行った。その様子を見送ったあと、和真は呆れ半分面白半分といった表情で雄二に向き直る。

 

和真「お前も悪どいなぁ、同学年で俺に喧嘩ふっかけるやつなんざいねぇの知ってんだろ?」

雄二「知ってるのはあいつもだろ?なのに騙されるバカなあいつが悪い」

和真「まぁそうだが……あいつのためにここに来たのに随分扱い悪いじゃねぇか」

雄二「………何を言ってるんだお前は?俺はただ、学力が全てじゃない事を証明したいだけだ」

和真「…そうかい」

 

 

 

明久「騙されたぁ!」

 

しばらくして、見るも無惨にズタボロの姿になった明久が教室に転がり込んできた。すごい剣幕で雄二に詰め寄るが雄二は毅然とした表情で返答した。

 

雄二「やはりそうきたか」

明久「やはりってなんだよ!?やっぱり使者への暴行は予想通りだったんじゃないか!?」

雄二が「当然だ。そんな事も予想できないで代表が務まるか」

明久「少しは悪びれろよ!」

 

猛然と抗議するが、初めから明久を陥れるつもりであった雄二は当然相手にしない。

 

姫路「吉井君、大丈夫ですか?」

明久「あ、うん、大丈夫。ほとんどかすり傷」

 

唯一駆け寄ってきてくれた姫路を心配させまいと強がる明久。そんなかすり傷があってたまるか。

 

島田「吉井、本当に大丈夫?」

 

明久のあまりの痛々しさに、珍しく島田も心配しだした。

あまりに不自然な光景に和真も思わず目を見開く。

 

和真(ん? いつもと違って素直に心配すんのか)

明久「平気だよ。心配してくれてありがとう」

島田「そう、良かった…。ウチが殴る余地はまだあるんだ……。」

和真(訂正、いつもの島田だった)

明久「ああっ!もうダメ!死にそう!」

 

腕を押さえて転げまわる明久。

毎回こんなかんじで、島田は上がった明久の好感度を次々とどぶに捨てているのである。

 

雄二「そんなことはどうでもいい、それより今からミーティングを行うぞ」

 

雄二は扉を開けて外に出て行った。それに続く和真、明久、翔子、姫路、島田、ムッツリーニ、秀吉の7人。

開戦のときは近い。

 




もともと私は読み専だったのですが、実際に書いてみると予想以上に難しいですね。

では。


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作戦会議

今さらですがこの作品は原作の試召戦争のシステムを少し変更していますので注意して下さい。

“読者層が似ている作品”になぜか姫路・島田アンチの作品ばかりが並んでました。解せぬ…


 

和真はひとまず飲み物を買いに購買に寄った後、明久達がいる屋上に足を運んだ。春風とともに訪れた陽光を肌で感じ、和真は無性にサッカーでもやりたくなり、試召戦争の後サッカー部に殴り込むことにする。参加できそうなメンバーでフォーメーションを考えているうちに屋上に到着した。

 

雄二「明久。宣戦布告はしてきたな?」

明久「一応今日の午後に開戦予定と告げて来たけど」

島田「それじゃ、先にお昼ご飯ってことね?」

雄二「そうなるな。明久、今日の昼ぐらいはまともな物を食べろよ?」

明久「そう思うならパンでもおごってくれると嬉しいんだけど」

姫路「えっ?吉井君ってお昼食べない人なんですか?」

 

明久達のやりとりを聞いた姫路が心配そうに訪ねる。朝ごはんならともかく、“昼食べない人間”なぞカテゴリー化するほどいない。ましてやそんな学生は明久のみだ。

 

明久「いや、一応食べてるよ」

雄二「……あれは食べていると言えるのか?」

明久「……何が言いたいのさ」

雄二「いや、お前の主食って……水と塩だろう?」

明久「なんて失礼な!僕を馬鹿にするにも程がある!きちんと砂糖だって食べているさ!」

姫路「あの、吉井君。水と塩と砂糖って、食べるとは言いませんよ……」

秀吉「舐める、が正解じゃろうな」

翔子「…吉井、苦労してる」

 

心なしか皆の目が妙に優しい。どちらかと言えばいつも彼らにぞんざいに扱われている明久であるが、今回に限ってはそのいたわるようなまなざしは余計に明久のハートを抉った。

 

和真「おーい明久、ほらよ」

 

Fクラス劇場を一通り楽しんだ後、和真は明久に飲み物のついでに買ってきた物を投げ渡す。

いでに買ってきた物を投げ渡す。

 

明久「わっ!もうなにさいきなり……こ、これは!カツサンド!」

和真「戦争中お腹が空き過ぎて倒れた、とかになったらギャグだろ?それやるからしっかりエネルギー補給しとけ」

 

笑いながらついでに飲み物(野菜ジュース)も投げ渡す。

 

明久「か……和真、ありがとう!僕は猛烈に感動しているよ!」

 

高校生にもなってカツサンドと野菜ジュースでここまで感動できるとは、なんともお手軽である…

 

雄二「相変わらずなんだかんだで他人に甘いな、お前は。飯代まで遊びに使い込むこいつが悪いんだからほっといてもいいのによ」

和真「別にいいだろ?こいつが我慢できるとは思えねぇし。自制心をどこか遠くに投げ捨ててきたようなバカだしな、こいつ」

明久「和真、先ほどとはうってかわって殺意が沸いてきたんだけど、一発殴ってもいいよね?」

和真「じゃあそれ返せ」

明久「申し訳ございません閣下」

 

“胃袋を握る”

相手を最も平和的に支配する方法の一つである。流れるように土下座する明久、哀れ。

 

姫路「あの、良かったら私がお弁当作ってきましょうか?」

 

明久「え?」

姫路がおずおずと声をかけ、明久は一瞬フリーズする。

 

明久「本当にいいの?二日連続で昼に塩と砂糖以外のものを

食べられるなんて、そんな贅沢許されていいの?」

和真「スラム街じゃねぇんだからよ……」

姫路「はい。明日のお昼で良ければ」

雄二「良かったじゃないか明久。手作り弁当だぞ?」

翔子「……雄二が望むなら今度私も作る」

雄二「それは構わないが怪しい薬とかは入れるなよ?」

翔子「………………………………………………

…………………………

………………………

…………………

………………

……わかった」

雄二「なんだ今の長い間は!?」

 

脳内で我々には想像もつかないような凄まじい葛藤でもあったのだろう。

 

島田「……ふーん。瑞希って随分優しいんだね。吉井“だけ”に作ってくるなんて」

 

露骨とも言える姫路の積極的なアピールにこれまたわかりやすすぎる焼き餅を焼く島田。「面白くありません」と顔に書いてある。

 

和真(これに気づかない明久も明久だよな。今もカロリー摂取のチャンスが失われる可能性に焦って島田のほう全く見てねぇし、やれやれ)

姫路「あ、いえ!その、皆さんにも……」

雄二「俺達にも?いいのか?」

姫路「はい。嫌じゃなかったら」

秀吉「それは楽しみじゃのう」

ムッツリーニ「…………(コクコク)」

翔子「……じゃあお言葉に甘えて」

和真「まあ期待しておく」

島田「……お手並み拝見ね」

 

本人も含めて八人分ともなると、かなりの重労働になる。それにもかかわらず姫路は嫌そうな顔一つせず笑顔で頷いた。

 

姫路「わかりました。それじゃ、皆に作って来ますね」

和真(なるほど、明久が惚れんのもなんとなくわかるな)

明久「姫路さん、今だから言うけど、僕、初めて会う前からキミのこと好き」

雄二「おい明久。今振られると弁当の話はなくなるぞ」

明久「……にしたいと思ってました」

和真「いやおかしいだろ!?どう誤魔化そうとしたらそうなる!?」

秀吉「それではただの変態じゃぞ…」

雄二「お前たまに俺の想像を越えた人間になるな」

明久「だって……お弁当が……」

和真「普通ならもうこの時点で距離を置かれてるぞ……」

 

告白と痴漢願望宣言、どちらがドン引きされるのかは悩む余地がない。まあ当の姫路はなんのことかわかってないのか、?マークを頭に浮かべているだけなのだが。

 

雄二「さて、話がかなり逸れたな。試召戦争に戻ろう」

秀吉「雄二。気になっていたんじゃが、どうしてDクラスなんじゃ?段階を踏んでいくならEクラスじゃろうし、勝負に出るならAクラスじゃろう?」

姫路「そういえば、確かにそうですね」

雄二「まあな、当然考えあってのことだ」

 

秀吉達の疑問を聞き雄二が作戦を説明し始める。

 

雄二「色々と理由はあるが、Eクラスを攻めない理由は戦うまでもない相手だからだ。明久、お前の周りにいる面子をよく見てみろ」

明久「え?えーっと…………美少女が三人と馬鹿が二人とムッツリが一人、戦闘狂が一人いるね」

雄二「誰が美少女だと!?」

明久「ええっ!?雄二が美少女に反応するの!?」

ムッツリーニ「…………(ポッ)」

明久「ムッツリーニまで!?どうしよう、僕だけじゃツッコミ切れない!」

和真「くだらねーことしてんじゃねーよ……話の腰折れちまったじゃねーか」

 

呆れ気味に言う戦闘狂。本来の和真はその物騒な評価に違わず専ら周りを振り回す台風のような存在なのだが、クラスメイトのあまりのバカさ加減に今のところ常識人枠に当てはまりつつある。

 

雄二「わりぃわりぃ。ま、要するにだ。姫路、和真、翔子がいるんだ。正面からやってもEクラスには勝てる。全く意味のない戦いだ。だがDクラスとなると正面からだと確実に勝てるとは言えない」

明久「だったら最初から目標のAクラスに挑もうよ」

雄二「初陣だからな。派手にやって今後の景気づけにしたいだろ?それに、さっき廊下で話したときに言いかけた打倒Aクラスの作戦に必要なプロセスなんだよ」

和真(流石にいきなりAクラスに突っ込むなんてバカなことはしねぇよな。さて、果たしてこいつはどんな作戦でAクラスに挑もうとしてんのかねぇ)

 

和真は雄二のとっておきの策略がいったい何なのか楽しそうに熟考していると、姫路が珍しく大きな声で話を切り出す。

 

姫路「あ、あの!」

雄二「ん?どうした姫路」

姫路「えっと、その。さっき言いかけた、て……吉井君と坂本君は、廊下で試召戦争について話し合ってたんですか?」

雄二「ああ、それか。それはついさっき、姫路のためにって明久に相談されて-」

明久「それはそうと!」

 

ナイスインターセプトpart3。雄二が言いかけた話の内容を姫路に知られることは、年頃の高校生にとっては苦行に等しい。

 

明久「さっきの話、Dクラスに勝てなかったら意味がないよ」

雄二「負けるわけないさ。お前らが協力してくれるなら必ず勝てる」

 

勝利を確信していると言わんばかりの自信に満ちた笑顔で雄二は言う。

 

雄二「いいか、お前ら。ウチのクラスは……最強だ」

 

根拠のない言葉なのに、何故かその気になってくる。雄二の言葉にはそんな力があった。

 

島田「いいわね。面白そうじゃない!」

秀吉「そうじゃな。Aクラスの連中を引きずり落としてやるかの!」

ムッツリーニ「……(グッ)」

明久「僕達は絶対に勝つ!」

姫路「が、頑張りますっ!」

翔子「…雄二は私が守ってみせる!」

和真「なら俺は勝利の道を切り開いてやるよ。

俺達の命運、お前に預けるぜ!」

 

雄二「……そうか!それじゃ、作戦を説明をするぞ!」

 

 

 

 

〈文月学園におけるクラス設備の奪取・奪還および召喚戦争のルール〉

 

一、原則としてクラス対抗戦とする。各科目担当教師の立ち会いにより試験召喚システムが起動し、召喚が可能となる。

二、召喚獣は各人一体のみ所有。この召喚獣は、該当科目において最も近い時期に受けたテストの点数と去年の二学期の心理テスト力の結果によるタイプによって『攻撃力・機動力・防御力』が決定される。(例・攻撃重視なら攻撃力が伸びやすく防御力と機動力が少し伸びにくい)

三、召喚獣が消耗するとその割合に応じて点数も減算され、戦死に至ると0点となり、その戦争を行っている間は補習室にて補習を受講する義務を負う。

四、召喚獣はとどめを刺されて戦死しない限りは、テストを受け直して点数を補充することで何度でも回復可能である。

五、相手が召喚獣を呼び出したにも関わらず召喚を行わなかった場合は戦闘放棄と見なし、戦死者同様に補習室にて戦争終了まで補習を受ける。

六、召喚可能範囲は、担当教師の周囲半径10メートル程度(個人差あり)。

七、戦闘は召喚獣同士で行うこと。召喚者自身の参加は反則行為として処罰の対象となる。

八、戦争の勝敗は、クラス代表の敗北をもってのみ決定される。この勝敗に対し、教師が認めた勝負である限り、経緯や手段は不問とする。あくまでもテストの点数を用いた「戦争」であるという点を常に意識すること。

 




ようやく次回から試召戦争が始まります。
予定ではここまででBクラス戦前まで進めるつもりだったのに、まだDクラス戦すら始まってません。
スケジュールは計画的にしないといけませんね……
では。


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vsDクラス

あんなに前振り引っ張ったのに一話で終わった……
試召戦争メインなんてタグ付けたのにこれじゃ、下手すれば詐欺で訴えられかねないな……



※人と召喚獣は〈〉で区別します。


FクラスとDクラスの試召戦争が始まった。

試召戦争中に教師は戦争に総動員されるため、関係のないクラスは自習となる。自習と言っても、他クラスの試召戦争が原因で授業範囲が終わりきらず長期休暇に補修が追加、ではあまりにもあんまりなので学校側は授業でする予定だったプリントを配るという措置をとっている。

 

優子「代表の言った通り初日から仕掛けてきたわね」

 

Aクラスで自習中の木下 優子は近くにいるメンバーに小声で話しかける。

 

「まあ和真達の情報が知られていないうちに攻めた方が合理的だからね」

 

前の席の銀髪ストレートの男子生徒、大門 徹(ダイモン トオル)は抑揚なく答える。

身長154㎝と男子にしてはかなり小柄で和真以上に童顔だが、本人はかなり気にしているので触れてはいけない。命が惜しいのならば間違っても「“大”門なのに大きくないね?」などと言ってはいけない。

 

「それに和真の性格からしてすぐにでもしたがるだろうしね。人を乗せるのもうまいからこうなるのは概ね予想通りね」

 

徹の席の隣に座る金髪セミショートの女子生徒、橘 飛鳥(タチバナ アスカ)が徹に続く。

伸長168㎝と徹とは対照的に女子にしてはかなり高く、制服の上からではわかりにくいが、余分な脂肪や贅肉といったものを全て削ぎ落とした、美術作品ような体つきをしている。物心ついたときから柔道の稽古を欠かさずしている内にこのような洗練された肉体になったらしい。

 

愛子「ところで、いったいどっちが勝つと思う?」

 

優子の隣の席の工藤 愛子の質問に、三人は即座に返答する。

 

三人「100%Fクラス」

愛子「だろうね♪」

 

三人は迷うことなく即答し、愛子もそう返してくると思っていたようだ。

 

優子「あのクラスには和真、翔子、姫路さんといったそうそうたるメンバーがいるもの」

徹「明らかに過剰戦力だね」

飛鳥「Dクラスが可哀想になるくらいの、ね…」

 

たった三人いるだけでクラス間のパワーバランスが逆転する、それほどまでにあの三人は規格外なのだ。

 

蒼介「大門、飛鳥、そろそろ時間だ。生徒会室に行くぞ」

 

生徒会顧問の一人である高橋先生に、午後生徒会室に集まるよう言われている蒼介は生徒会役員である二人に言い、教室を出る。もっともその高橋先生は試召戦争のため欠席するのだが。

 

徹「ああわかった」

飛鳥「今行くよ」

 

二人は蒼介に続いて教室を出る。そして優子達はそれを見届けた後それぞれの自習に没頭し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姫路、翔子、和真の三人は戦線に出ないで回復試験を受けていた。振り分け試験の点数が全科目0点扱いで、回復試験を受けてから出ないと戦力にならないからだ。

 

雄二「頼むぞお前ら。この闘いはあいつらが時間を稼いでいる間にお前達の点数補充が済むかどうかにかかっているんだ」

姫路「は、はい!頑張りますっ!」

翔子「……任せて」

和真「はいよ。……まぁ俺の役割はお前の護衛だけだろうがな、やれやれつまらん」

 

他の二人がやる気十分に返事をする中、和真はぼやき気味にそんなことを言う。姫路と翔子は驚いたように和真を見るが、事情を理解している雄二はため息をはいている。

 

姫路「え?」

雄二「それほとんど自業自得じゃねぇか」

和真「はは、否定できねー」

姫路「あの、柊君は前線に参加しないんですか?」

翔子「……真っ先にクラス代表に突撃すると思ったのに、意外」

和真「そうしてぇのは山々だけどよ、残念なことに今回の作戦的にそれは無理なんだわ」

翔子「……なるほど」

雄二「ああ。今回の作戦はシンプルで、お前らがDクラス代表平賀 源二を速攻で討ち取るだけだ」

姫路「え? でも多分平賀君は護衛の人を沢山連れてると思うので、私達二人でも護衛の人たちを全員と戦ってたら時間がかかってしまいますよ?」

 

和真達の意図が理解できていない姫路がおずおずと質問する。確かに普通に考えれば、敵対しているクラスの人間を代表のもとに素通りさせてくれるわけがない。

 

翔子「……瑞希、Dクラスの人達は私達を見てどこのクラスに所属していると思う?」

姫路「え? それは……あっ」

 

ようやく姫路は把握したようだ。

そう、普通に考えれば、だ。

 

雄二「そうだ、新学期初日に他クラスの生徒まで把握してるはずがねぇ。だったら平賀含めDクラスの連中はお前達をAクラスだと判断して、ごく自然に警戒を解いて素通りさせるだろう。注意を引き付けるために代表である俺もついていく。そうして注意が俺に向いているところを一気に叩く。だが、和真はバッチリ警戒されるだろう」

姫路「…あれ? でも柊君もAクラス並の点数じゃ…」

翔子「……成績よりむしろ和真の性格に問題がある」

雄二「ああ、こいつの性格は学年の誰もが知っている。わざとFクラスに行く程度のことはこいつならやりかねない、とほとんどが考えるだろうな」

柊「実際にそうなんだから正しい反応だな」

姫路「な、なるほど…あはは」

 

苦笑しながら姫路はようやく納得する。

その後は淡々とテストをこなす作業が続く。

途中雄二が各部隊長に脅迫文を送ったり、消耗した生徒が点数を補充しに来たり、なぜか怒り狂った島田が須川に引きずられてやって来たり、雄二が須川に『明久の船越先生(婚期を過ぎて単位を盾に生徒に迫るおばさん教師)への意味深な誘い』を放送室で流させたり、姫路はその放送で明久の好みを勘違いして勝手に落ち込んでたり、明久がその報復を雄二にしようとして軽くあしらわれたりしたが、特に問題はない。

 

和真「おーい、終わったぞ」

姫路「私も終わりました!」

翔子「……私も」

 

三人の回復試験がようやく終わったようだ。

 

雄二「よしお前ら、明久達に加勢するぞ!翔子と姫路はFクラスだとバレないように平賀に勝負を申し込んで来てくれ。それから和真、俺はDクラス連中を引き付けるから、お前は死ぬ気で俺を守れ。お前は別に死んでもいいから」

和真「もっとましな頼み方できねーのかよ、ったく……まあやっと暴れられるんだ、文句はねーよ。あと雄二、死にたくなかったら俺の近くで召喚獣は絶対だすなよ?」

 

 

 

 

『あ、あれはFクラス代表の坂本と…ひ、柊だぁ!』

 

布施先生を連れた雄二と和真を見つけたDクラス生徒が叫ぶ。やはり和真はしっかり警戒されたらしく、Dクラス生徒達は呂布に遭遇した雑魚兵士のような反応をする。

 

「本隊の半分は坂本達を獲りに行け! さすがの和真でも複数で囲めば勝ち目はあるはずだ! 他のメンバーは囲まれている奴を助けるんだ! 」

『お…おおー!』

 

Dクラス代表平賀 源二の号令の下、あっという間に雄二達の周りがDクラスメンバーで囲まれる。

 

和真「なるほど、気合い十分だな。布施センセ、Fクラス柊 和真がDクラス8人に化学勝負を申し込むぜ、試獣召喚(サモン)!」

Dクラス生徒『さ、試獣召喚!』

 

叫んだ直後、足元に顕れる魔方陣。

そして現れる、和真の分身。

 

 

『Fクラス 柊 和真 328点

VS

Dクラス 生徒×8 平均115点』

 

 

黒いジャケットを身に纏い.その下に赤いシャツを着た和真の召喚獣。

まともな防具は一切身につけておらず、彼の点数にしては異常なほど軽装備だ。しかし、Dクラス生徒達の注目を集めたのは、手に持っている巨大な槍だ。

長さが背丈より3倍以上あるゴツい槍を軽々とかついでる召喚獣は、一目で強敵だと判断できる。

 

『ひっ、怯むなぁ! 全員で襲いかかれぇ!』

 

一人がそう叫ぶと、Dクラスの召喚獣達は一斉に飛びかかる。

周りを囲んで同時攻撃、多対一の定石に沿ったお手本のような攻め方だろう。

 

 

だが、今回ばかりは完全に悪手だ。

 

 

和真「だりゃぁああああああっ!!」

 

〈和真〉が槍の端を持って軽々と振り回し、Dクラス生徒を一人残らず薙ぎ払う。

 

『Fクラス 柊 和真 328点

VS

Dクラス 生徒×8 戦死』

 

宙を舞う8体の召喚獣。まさに一撃必殺だ。

 

『ば、馬鹿な!? 一瞬で全滅だとぉ!?』

『だから俺は嫌だったんだ! なんかやられ役押し付けられた感じだったしよぉ!』

『そもそも私達死亡フラグ建てすぎでしょ!?』

混乱のあまり、意味不明なことを叫び出す始末。

鉄人「0点になった戦死者は補習ぅぅぅ!」

『ぎゃぁああああああああ!』

 

無惨にも和真のデビュー戦の噛ませに成り下がったやられ役達はどこからともなく現れた鉄人にまとめて連行されていった。

 

雄二「相変わらず滅茶苦茶だな……そんなバカでかい槍をなんであんなに速くぶん回せるんだよ?」

和真「そりゃ防御を極限まで削って腕力と機動力を上げているからな。おかげでAクラス上位レベルとは思えねぇほど紙装甲だぜ!」フンス

雄二「なんでそこでどや顔だよ…」

 

『勝者、Fクラス!』

 

雄二「お、翔子達が平賀を殺ったみたいだな」

和真「それじゃあ行くか、お楽しみの戦後対談に」

 

二人はDクラスにむかって凱旋とばかりに肩で風を切って歩き出す。

 

 

 

 

 




和真君無双! さんざんぼやいておきながら美味しいところは持っていくちゃっかりものです。
バトルシーンすらなく殺られた平賀君、ごめん、悪気はなかったんだ……

ここに書くことも無くなってきたので召喚獣のデータでも載せていきます。まずはこの作品の主人公その1。

柊 和真
・性質……攻撃特化&防御度外視型
・総合科目……3800点前後 (学年6位)
・400点以上……現代文・古典・歴史・現社・英語・地理
・ステータス(F・E・D・C・B・A・S・SSで表す)
(総合科目)
攻撃力……SS
機動力……A+
防御力……F+
・腕輪……まだ不明
『攻撃は最大の防御』を体現したかのようなステータス。「やられる前にやる・当たらなければどうということはない」がモットーである。攻撃力は高橋女史さえも凌駕し文句無しに学園最強だが、防御力はFクラス上位程度でしかなく、Aクラスレベルが相手だとまともに食らえば一撃で半分ほど持っていかれる。これほど偏ったステータスは和真以外にいない。そもそも上位成績者は弱点を突かれることを好まないので偏りが小さくなっていく。槍も全武器中最大。積極的にトップを狙いにいく姿勢はある意味立派である。また、腕輪の能力も攻撃に特化した能力らしい。

モチーフはデオキシスアタックフォルムです。
では。


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キャラ紹介その2

前話でちょっとだけ出た二人の紹介です。

あと、読み方は
桐谷…キリタニ
御門…ミカド
です。

※ネタバレ要素を含みますので注意してください。


・大門 徹(ダイモン・トオル)

2年Aクラス

身長154㎝→155㎝(二学期)

体重44kg→45㎏(二学期)

髪:銀髪

得意教科:物理・数学

苦手教科:特になし

趣味:手品、握力トレーニング

好きなこと:スイーツ巡り

嫌いなこと:身体的特徴を馬鹿にされること

コンプレックス:…………………………察しろ

通称:リトルバーサーカー、文月1器の小さい男、リトルフードファイター

備考:生徒会書記

 

Aクラスの男子生徒。

クールに見えるが沸点は高くなく、挑発にも乗せられ易い。そして非常に執念深く器も小さい。

成績は和真に次ぐ学年7位の成績であり、特に物理と数学に至っては霧島 翔子をも凌駕する。

男子にしては極めて小柄で非常に幼い顔だちをしているので、見ず知らずの人からはよく小学生と間違われる。本人はこのことをかなり気にしており、遊び半分でおちょくる輩には暴力も辞さない。

小学生のころ『小門』というアダ名をつけられ、悪ガキどもにいじめられていたことがある。屈辱を味わった彼はいじめっ子どもをねじ伏せる力を求めるようになり、どういうわけか、最終的に全てを握り潰す握力を手に入れた(その後、まとめて返り討ちにし、いじめはなくなった)。そのおかげで握力がトランプの束を契れるほどある。

非常に小柄だが運動神経はかなり良く身体能力もかなり高い。また、書記役員だけあってなかなか達筆である。

意外と性欲は人並にあるが、常識とモラルとそれなりのプライドはあるので普段は表に出さない、真のムッツリ。

重度の甘党でありとあらゆる物に練乳をかけて食べる。どこからともなく自身と同じくらいのサイズのケーキを取り出す手品が得意。実は二学年一の大食い。

 

 

・パラメーター

ルックス…4

知能…4

格闘…4

器用…4

社交性…2

美術…2(お菓子作り限定なら5)

音楽…5

料理…3(お菓子作り限定なら5)

根性…4

理性…2

人徳…2

幸運…3

カリスマ…2

性欲…3

 

 

 

 

 

 

 

・橘 飛鳥(タチバナ アスカ)

2年Aクラス

身長168㎝→170㎝(二学期)

体重58kg→60㎏

髪の色:金色のセミショート

得意教科:無し

苦手教科:無し

趣味:自己鍛練、紅茶、華道

好きなこと:努力が報われること

嫌いなこと:他人の努力を笑うこと、無駄に贅沢なこと

悩み:女子からラブレターをよく貰うこと

備考:生徒会副会長・柔道部エース→主将

 

 

Aクラスの女子生徒。

可愛らしいというよりカッコいい顔だちでなかなかの美人。幼い頃から稽古を欠かしたことがなく、女子特有の線の細さと格闘家のように引き締まった筋肉を併せ持っている。島田と同じレベルの貧乳だが本人は何一つ気にしてないし、あると邪魔になるので大きくならないで欲しいと思っている。

困っている人がいたらとりあえず助けにいくほど正義感が強い。「自分に厳しく他人に優しく」がポリシー。

四大企業、橘社の一人娘であり蒼介の許嫁。

幼い頃から和真、蒼介と仲良しだが、二人と比べて才能に恵まれず、友情と嫉妬の板挟みで悩んでいたがなんとか吹っ切り、才能が足りないなら努力で補い二人に食らい付いていこうと誓った。長年の努力の成果か、身体能力は女子のレベルを逸脱しており、喧嘩も並大抵の男子では歯が立たず、ぶっちぎりで女子1位である(ちなみに2位は優子)。

勉学にも真剣に取り組み、学年10位の成績を残している。

許嫁は企業同士の決めた政略結婚ではなく、彼女が蒼介に思いを告げた形である。むしろ“鳳”と“橘”の結びつきを警戒した“桐谷”と“御門”が接近し、二対二の構図ができてしまった。4つ上の兄がいて、企業を継ぐために海外の大学に留学している。和真とも仲が良いだが和真が屋外スポーツ派に対し彼女は屋内スポーツ派のため、趣味は合わない。

 

一学期末、夏のインターハイで見事悲願の全国優勝を果たした。

 

 

・パラメーター

ルックス…4

知能…3

格闘…4

器用…2

社交性…4

美術…1

音楽…4

料理…4

根性…5

理性…4

人徳…4

幸運…3

カリスマ…4

性欲…2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




このプロフィール書いていて思ったことは『むしろ飛鳥さんの方が主人公向きなんじゃないか』と。
まあそれは置いといて、この作品では去年の振り分け試験前の学年順位は

一位、鳳 蒼介 ???点
二位、霧島 翔子 4698点
三位、姫路 瑞希 3987点
四位、久保 利光 3970点
五位、木下 優子 3832点
六位、柊 和真 3775点
七位、大門 徹 3643点
八位、佐藤 美穂 3456点
九位、工藤 愛子 3229点
十位、橘 飛鳥 3106点

となっています。

余談ですが、いくつかのオリキャラ達の名前は『スクライド』という作品のキャラに由来しています。しかし転生者というわけでわなく、特に関係はないのでご注意を。

では。


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戦後対談

投稿した後も何度か読み返しているのですが、誤植がもうでるわでるわ。見つけるたびに自己嫌悪に陥ってしまいます…


 

Dクラス代表 平賀源二 討死

 

『うぉぉぉぉぉっ!』

 

その報せを聞いたFクラスの勝鬨とDクラスの悲鳴が混ざり合い、耳をつんざく大音響が校舎内に響き渡る。

 

『凄ぇよ! 本当にDクラスに勝てるなんて!』

『これで、畳や卓袱台ともおさらばだな!』

『ああ。アレはDクラスの連中の物になるんだがらな』

『坂本 雄二サマサマだな!』

『やっぱりアイツは凄い奴だったんだな!』

『坂本万歳!』

『姫路さん愛しています!』

『霧島さんがこの世にいてくれるだけで僕は幸せです!』

代表である雄二を褒め称える声があちこちから聞こえる。

和真(というか最後の奴どんどん妥協してるな)

 

Dクラスの生徒達はというと、殆どがガックリとうなだれた状態である。その表情は現実を受け入れることができないといと言わんばかりに苦悶に満ちている。最底辺クラスに負けたのだ、その心情は推してしるべきであろう。

その奥では、雄二がFクラスのメンバーに囲まれている。

 

雄二「あー、まぁ、なんだ。そう手放しで褒められると、なんつーか…」

 

頬を搔きながら照れ臭そうに明後日の方向を見る雄二。ずいぶんと意外な反応である。

 

『坂本!握手してくれ!』

『俺も!』

 

完全に英雄扱いの雄二。あの教室にどれだけ不満があったかがわかる。そんな中、笑顔の奥に殺意を滲ませた明久が雄二にゆっくりと近づいていく。

 

明久「雄二!」

雄二「ん?明久か」

坂本が振り向く。そこへ、明久が駆け寄って手を突き出す。

 

明久「僕も雄二と握手を!」

雄二「ぬぉぉ!」

 

ガシィッ

 

明久「雄二……! どうして握手なのに手首を押さえてるのかな……!」

 

雄二「押さえるに……決まっているだろうが……!フンッ!」

 

雄二は明久の手首を捻りあげると、明久は握っていた包丁を取り落とす。

 

和真(いや流石に憎みすぎだろ…と思ったがそうでもねー…か?)

 

試召戦争中のやり取りを思い出し、どう判断するか迷う和真。明久は無い知恵を絞ってどうにか誤魔化そうとするが、流石にもう手遅れであると思われる。

 

明久「雄二、皆で何かをやり遂げるって、素晴らしいね」

雄二「……」

明久「僕、仲間との達成感がこんなにもいいものだなんて、今まで知らな間接が折れるように痛いぃっ!」

雄二「今、何をしようとした」

 

おそらく全年齢対象のこの小説では決してしてはいけないことだろう。この小説は全年齢対象でやっていくつもりなので、阻止できた雄二GJである。

 

明久「も、もちろん、喜びを分かち合うための握手を手首がもげるほどに痛いぃっ!」

雄二「おーい。誰かぺンチを持ってきてくれ!」

明久「す、ストップ!僕が悪かった!」

雄二「…チッ」

 

舌打ちをして明久を解放する。R-15指定ルートはなんとか避けられたようだ。

 

平賀「まさか、姫路さんと霧島さんがFクラスだなんて……信じられん」

 

その後ろから力無く歩み寄る平賀。平静を装ってはいるが、無理しているのは誰の目にも明らかである。

 

 

和真「あれ? 源二、俺は?」

平賀「お前の場合わざとFクラスに行くことぐらい、別に不思議でもなんでもないからな」

和真「あっそ……」

 

友人の冷たい反応に和真は少し悲しくなる。

 

姫路「あ、その、さっきはすいません……」

平賀「いや、謝ることはない。全てはFクラスを甘く見ていた俺達が悪いんだ」

 

姫路達のやり方はまさに騙し討ちだったが、これも戦略の内、咎められることでもない。

 

平賀「ルールに則ってクラスを明け渡そう。ただ、今日はこんな時間だから、作業は明日からで良いか?」

明久「もちろん明日で良いよね、雄二?」

 

これから三ヶ月の間戦犯扱いされ、肩身のせまい思いをするであろう平賀を可哀想に思ったのか、明久は雄二にそう聞く。

 

雄二「いや、その必要はない」

和真(…なに? 設備交換しねぇのか?)

 

それは明久は勿論、和真にとっても予想外の返事だったようだ。

 

吉井「え?なんで?」

雄二「Dクラスを奪う気はないからだ」

 

さも当然のことのように告げる雄二。その態度に明久はますます混乱する一方である。

 

明久「雄二、どういうこと?折角普通の設備を手に入れることができるのに」

雄二「忘れたか? 俺達の目的はあくまでもAクラスのはずだろう?ここで設備を替えたらまずいだろ」

和真(なるほどねぇ……モチベーション維持のためか)

明久「???」

和真(やっぱり明久はわかってねぇか、仕方ねぇな)

 

雄二の目論見をようやく察した和真はまるで理解していない明久に説明する。

 

和真「明久、今まで最底辺の設備だったのがまともなものになったら喜ぶだろ?」

明久「え?そ、そりゃそうだよ!だから」

和真「まあ聞け。でもな、それと同時にその設備を失うのが嫌になる奴もいるだろ?つまりそう言うことだ」

明久「え?ど、どういうこと」

和真「……はぁ……つまりAクラスに戦争を仕掛けることに反対する奴が出てくるんだよ、交換しちまうと」

明久「な、なるほど…」

雄二「…和真、お疲れさん」

和真「もっとねぎらえ…可能な限り」

 

疲れたように言う和真。ちなみに話についていけなくなった明久にわかりやすく説明するのは、去年からだいたい和真の役目だったりする。

 

明久「でもそれなら、何で標的をAクラスにしないのさ。設備を替えないならこんな回りくどいことをしなくてもいいじゃないか」

雄二「少しは自分で考えろ。そんなんだから、お前は近所の中学生に『馬鹿なお兄ちゃん』なんて愛称をつけられるんだ」

明久「なっ!そんな半端にリアルな嘘をつかないでよ!?」

和真「そうだぞ雄二。小学生だよ、多分」

明久「…………人違いです」

雄二「まさか……本当に言われた事があるのか……?」

和真「…………マジかよ」

 

悪ノリがまさかの的中で思わず絶句する和真。そのときの明久は穴があったら入りたい気分だったという。

 

雄二「と、とにかくだな。そういうわけでDクラスの設備には一切手を出すつもりはない」

平賀「それは俺達にはありがたいが……それでいいのか?」

雄二「もちろん、条件がある」

 

おそらくその条件が、Dクラスと試召戦争をした最大の目的だろう。

 

平賀「……一応きかせてもらおうか」

雄二「なに。そんなに大したことじゃない。俺が指示を出したら、窓の外にあるあれを動かなくしてもらいたい。それだけだ」

 

雄二が指したのはDクラスの窓の外に設置されているエアコンの室外機。しかしあれはDクラスの物ではなく、

 

平賀「Bクラスの室外機か」

雄二「設備を壊すんだから、当然教師にある程度睨まれる可能性もあるとは思うが、そう悪い取引じゃないだろう?」

 

それだけでFクラスの設備を回避出来るなら確かに悪い取引ではないし、うまく事故に見せかければ厳重注意程度で済むだろう。

和真(あれを壊すってことは次の標的はBクラス……学年で二番目のクラスか、腕が鳴るぜ!)

 

今日散々やりたい放題しておいてもう次の戦争のことを考えている和真。思考回路が完全にバトルジャンキーのそれである。

 

平賀「それはこちらとしては願ってもない提案だが、なぜそんなことを?」

雄二「次のBクラスの作戦に必要なんでな」

平賀「……そうか。ではこちらはありがたくその提案を呑ませて貰おう」

雄二「タイミングについては後日詳しく話す。今日はもう行っていいぞ」

平賀「ああ。ありがとう。お前らがAクラスに勝てるよう願っているよ」

雄二「ははっ。無理するなよ。勝てっこないと思っているだろ?」

平賀「それはそうだ。AクラスにFクラスが勝てるわけがない。霧島さん達がいても、Aクラスには鳳がいるしな」

 

軽口を叩きあった後、平賀は去っていった。

 

雄二「さて、皆!今日はご苦労だった!明日は消費した点数の補給を行うから、今日のところは帰ってゆっくりと休んでくれ!解散!」

 

雄二が号令をかけるとFクラスの連中は雑談を交えながら教室に向かい始める。帰り支度をするのだろう。

 

和真「…さてとっ!一段落したことだし10人集めてサッカー部に試合でも申し込むか!明久、お前も混ざるか?」

明久「いや、流石に疲れたから今日は帰るよ」

和真「そうか。じゃあ誰を誘うかな、とりあえず『アクティブ』のメンバーに、残りはこいつとこいつと…」

 

そう言いながら連絡先を吟味する和真。ちなみに二年生の連絡先は男女問わずほぼコンプリートしている。

 

明久(相変わらずすごい量だね…女の子のメアド教えてくれるよう頼んじゃダメかな)

 

駄目に決まっているだろ。

 

ちなみに『アクティブ』というのは和真が一年生のときに結成した部活荒らしチームであり、各部活に練習試合を申込むときはこのチームのメンバーが中心となる。

 

姫路「あ、あのっ、柊君っ」

和真「あん?」

 

参加メンバーを吟味し終えた和真に姫路が話しかける。

 

和真「姫路か、どうした?」

姫路「実は、柊君に聞きたいことがあるんです」

和真「…どんなことだ?」

 

大事な話みたいなので明久は二人から離れる。

しかしやはり気になるのか二人の方を見る明久。

姫路はまっすぐに和真の目を見ていた。

余程大事な用件なのか、姫路の表情は真剣そのものだ。

しかししばらくすると、二人とも楽しそうに笑っていた。

 

明久(和真が楽しそうに笑うのは珍しくないけど、姫路さんまであんなに楽しそうにしているってことは……まさか愛の告白!?そうか!姫路さんは和真が好きだったのか!和真だって男だもんね、趣味が合わないとはいえ、あんな可愛い子に好意を寄せられたら悪い気はしないだろう)

雄二「おーい明久、そろそろ帰るぞ」

 

雄二と翔子が声をかけてくる。雄二達とは家の方向が同じだからよく一緒に帰っている。

 

明久「(二人とも楽しそうだからそっとしておいてあげよう)……わかった、すぐ行くよ!」

 

そうして明久達は教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和真「あ、そうそう。明久が試召戦争を仕掛けた理由は今言った通りだけど、雄二が翔子とクラスが離れることを覚悟してまでFクラスに来た理由もついでに教えてやろうか?」

姫路「え?はっはい、是非!」

和真「明久のためだよ」

姫路「吉井君のため…ですか?」

和真「普段から努力していたお前が手違いでFクラスなんかに入れられたら、明久が試召戦争を仕掛けようとすることなんて雄二にはお見通しだ。だが明久だけじゃ成功するはずがねぇ。俺や翔子は雄二にとっても予想外だっただろうしな。あいつはお前のために頑張る明久を助けてやりたくてここに来たんだよ。素直じゃねぇから絶対認めねぇだろうがな」

姫路「そんな理由があったんですか……やっぱりあの二人は仲が良いんですね♪」

和真「普段は全力でお互いの足を引っ張り合っているがな、それはもう不毛なほど」

姫路「ふふっ……あ、柊君はなぜFクラスに?」

和真「なんとなく面白いことが起きそうな気がしたんだよ。現在進行形で起きてるしな」

姫路「なんだかすごく柊君らしいですね」

和真「そりゃな。自分らしく生きてこそ人生だろ。姫路はどうなんだ?」

姫路「え?」

和真「自分のために一生懸命な奴がいる…それを知ってどう行動するのが“姫路 瑞希らしい”んだ?」

姫路「……それは勿論---です!」

和真「…そうか、頑張れよ!おっ返信来てる来てる…よしよし全員オーケーだな…そろそろグラウンドに行くか、じゃあな姫路!」

姫路「はいっ、また明日!」

 

 

 

 




和真と姫路の会話。
原作では雄二がしてましたが翔子さんがいる以上、明久が愛の告白だと勘違いするのは、またそれをおとなしく見ているのは流石に無理があったのでチェンジしました。
確認しますが、この作品の雄二は原作よりほんの少し明久に優しい性格です。スプーン一杯分くらいは。

吉井 明久
・性質……速度重視型
・総合科目……800点前後
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……F
機動力……E
防御力……F

雑魚。以上。
操縦者が明久でなければ、Fクラス雑兵レベルである。


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ラブレターとお弁当

本編にサッカー及びキャプつばネタが多々出てきますが、別に無視しても構いません。
伏線でもなんでもない茶番なので。


雄二達と一緒に帰っていたが、教科書を卓袱台の下に忘れたので校舎に取りに戻って来た明久。

 

明久「はあ、やれやれ…ん?和真?」

 

余計なカロリーを浪費した明久は嘆息しながら上履きを履きFクラスに向かおうとすると、グラウンドでサッカーをしている和真を見つけた。

 

和真「どけぇぇぇぇぇ!」

『で、でたぁ! 和真の強引なドリブルだぁ!』

『おいびびってんじゃねぇよ、ボール取りに行け!』

『いや、でもよう…』

 

ただ全速力でドリブルしているだけなのだが、和真のあまりの気迫とスピードに萎縮してプレスをかけに行くのを躊躇してしまうサッカー部員。

 

和真「勝つ気のねぇディフェンスで俺を止めようなんざ……思ってんじゃねぇぇぇぇぇ!」

 

それをあっさりと突破する和真。日頃練習に励んでいるであろうサッカー部レギュラー達をまったく寄せ付けぬそのプレーは圧巻である。

 

『サッカー部レギュラーがびびってんじゃねぇ!いいから複数で取り囲め!』

 

『お、おおー!』

キャプテンらしき人に渇を入れられ持ち直すサッカー部員達。4人がかりで和真を取り囲んだ。

 

和真「上等だぁぁぁぁぁぁ!

 

……なんてな♪」

『な、なにィ!』

強引にドリブルで切り込むと思わせてペナルティエリア内にセンタリングを上げる和真。そのボールの先にいたのは…

優子「とりゃっ!」

 

ノートラップランニングボレーで正確にシュートを決めるAクラス代表代理の木下 優子。キーパーは一歩も反応できずにボールはゴールネットに突き刺さる。

 

『ゴーーール!』

 

和真「ナイスシュート!」

優子「ナイスアシスト!」

 

ハイタッチした後自分達側のピッチに引き返していく二人。

 

明久(…すごいの見てしまった。秀吉のお姉さんなのに運動神経抜群だなぁ木下さん。)

 

微妙に秀吉に失礼なことを考えながら、明久は自分の教室に向かう。

 

明久「たっだいまー」

 

まるで我が家のように声をかけて教室に入る明久。しかし教室内にはすでに先客がいた。

 

明久「あれ? 姫路さん?」

姫路「よ、吉井君!? とどどどうしたんですか?」

 

必要以上に慌てる姫路。座っている卓袱台の上には可愛らしい便箋と封筒が置いてあった。

 

姫路「あ、あのっ、これはっ」

明久(何をしているんだろう。まるで和真へのラブレターに使うような便箋と和真へのラブレターに使うような封筒を用意しているみたいだけど、使い道がわからない)

 

『現実を見ろ。明らかにラブレターだ』

 

明久の中の悪魔が語りかける。

こんな奴が脳内にいる時点で、明久は相当愉快な人間である。

 

明久(黙れ僕の中の悪魔! これがラブレターだという証拠でもあるのか!)

姫路「これはですね、そのっ」

明久「うんうん。わかってる。大丈夫だよ」

姫路「えっとーーふあっ」

 

姫路は卓袱台につまずいて転ける。その拍子に隠そうとしていた手紙が明久の前に飛んでいき、その一文が目に入る。

 

《あなたのことが好きです》

 

明久「…………」

『……これ以上ない物的証拠だと思うが』

明久「…………」

『わかっただろう?これが現実だよ。さ、諦めて認めようぜ?』

 

明久は飛んできた手紙を綺麗にたたみ、姫路に返す。

そして笑顔で一言。

 

明久「変わった不幸の手紙だね」

『コイツ認めない気だ!?』

明久(何を言うんだこの悪魔め!お前の言葉はいつも僕を不幸にする!もう騙されないからな!)

 

脳内のキャラに騙されたことが多々あるのが、明久が明久たる所以である。

 

姫路「あ、あの、吉井君…それは不幸の手紙なんかじゃないですから」

明久「嘘だ!それは不幸の手紙だ!なぜなら…実際に僕はこんなにも不幸な気分になっているじゃないか!」

姫路「吉井君」

 

取り乱す明久を抑えようと姫路がそっと手を握る。

 

姫路「落ち着いて下さい。そんなに暴れると身体をぶつけて怪我をしちゃいますよ?」

 

諭すように姫路が言うと、明久は落ち着く。それと同時に、現実が明久の中に浸透し始める。

 

明久「……仕方ない。現実を認めよう……

その手紙、相手はウチのクラスの…」

姫路「……はい。クラスメイトです」

 

顔を真っ赤にしながらも迷いなく答える姫路。明久は相手が和真だと確信する。

 

明久(それにしても和真か…)

 

ちらっとグラウンドにいる和真を見ると……

 

『やべぇ! ペナルティエリア内に切り込まれた!』

『今度こそくるぞ! 今度こそしっかり止めろよキーパー!』

『わ、わかった!』

和真「くらえサッカー部! これが俺のタイガーショットだぁあああ!」

『ぶべらぁっっっ!』

『なにィ!』

 

和真のシュートの威力は凄まじく、キーパーを吹き飛ばしゴールネットをも突き破った。

 

『ゴォーーーーーール!』

 

『バカヤロー! 止めろっつっただろ!』

『いや無理に決まってんだろ! だってタイガーショットだぜ!?』

『なーにがだってタイガーショットだぜ、だ! ただおもいっきり蹴っただけじゃねーか!』

『そうだよ!ただおもいっきり蹴っただけだよ! かつて全国の小~中学生がどれだけ真似したと思ってんだ!?』

『知るかぁあああ!』

 

チームワークが乱れ始めるサッカー部。

すでに得点は0-4と一方的な試合だ。

 

明久(…………まあ和真は外見は良いし、 姫路さんほどじゃないけど成績も良い。人当たりも良いし、若干サディストで戦闘狂だけど本当に困っているときには絶対に助けてくれる優しさもある…姫路さんが好意を持つのもわかるな。もし相手が雄二とかだったら腕の良い脳外科医を紹介しているところだけど)「姫路さんはそいつのどこが良いの?実は優しいところ、とか?」

姫路「はいっ!優しくて、明るくて、いつも楽しそうで……私の憧れなんです」

明久「……その手紙、良い返事が貰えるといいね」

明久(これは邪魔なんてできるワケがない。クラスメイトとして応援してあげよう)

姫路「はいっ!」

 

元気よく返事し、嬉しそうに笑う姫路。

明久は和真を心の底から羨ましいと思った。

 

『よし! マークを振り切った! サッカー部の威信に賭けて、なんとしても1点は取るぞ!』

 

和真側ディフェンダーがプレスを仕掛けるがサッカー部員はいち早くシュートモーションに入る。

 

『遅いぜ! くらぇぇぇ!』

 

ペナルティエリア外からサッカー部員は強烈なシュートを放つ。だが、

 

蒼介「無駄だ!」

蒼介はあっさりとキャッチする。

『ばかなぁぁぁ!』

『うちのエースのシュートをあんな簡単に…』

『まさにS・G・G・K……』

 

そして試合終了のホイッスルが鳴る。

結果は0-7。サッカー部の惨敗である。

この試合後、レギュラー達は監督に地獄のような猛特訓をさせられるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

翌朝、いつも通り学校に向かう。クラスの大半の生徒は昨日消耗した点数を補充する為のテストを受ける。和真は昨日のうちに回復試験を済ませ、その後も一点も消耗してない為その必要はないが、流石に外に出るわけには行かないので、死ぬほど退屈している。

そんな時、近くで明久と島田が揉めていた。

 

島田「おかげで彼女にしたくないランキングが上がっちゃったじゃない!」

 

どうやら昨日の試召戦争で明久が何かをしでかし、その責任を島田になすりつけたらしい。

島田「……と、本来は掴みかかっているんだけど」

 

そのセリフはまだ危害を加えてない人が言うセリフである。既に明久の顔には殴られたような跡があるし、ついでに鼻血も出ている。

 

島田「アンタにはもう充分罰が与えられているようだし、許してあげる」

明久「うん、さっきから鼻血が止まらないんだ」

島田「いや。そうじゃなくてね」

明久「ん?それじゃ何?」

 

島田は心から楽しそうに告げる。

 

島田「一時間目の数学のテストだけど。監督の先生、船越先生だって♪」

 

全速力で明久は教室から出ていった。

和真の脳裏に昨日の校内放送が思い浮かんだ。

 

 

 

 

 

明久「うあー……づがれだー」

 

力を使い果たし、明久は机に突っ伏す。

とりあえず四教科が終了した(ちなみに船越先生は明久が近所のお兄さん(?)を身代わりにし、事なきを得た)

 

雄二「よし、昼飯食いに行くぞ! 今日は確か姫路が弁当を振る舞ってくれるんだったな」

姫路「は、はいっ。迷惑じゃなかったらどうぞっ」

 

そういって弁当が入っているであろうバッグを嬉しそうに出す姫路。

 

明久(そうだった! 姫路さん、君はなんていい子なんだ!君のおかげで僕はもう少し長生きできるよ!) 

 

もちろんカロリー的な意味である。

 

明久「迷惑なもんか! ね、雄二!」

雄二「ああ、そうだな。ありがたい」

姫路「そうですか?良かったぁ~」

 

それはもう嬉しそうに笑う姫路。

 

明久(やっぱり僕には優しい女の子の気持ちってよくわからないな)

 

島田「むー……っ。瑞希って、意外と積極的なのね……」

 

そして割と理不尽な動機で明久を親の仇のように睨む島田。

 

明久(そして厳しい女の子の気持ちもわからない)

 

秀吉「それでは、せっかくのご馳走じゃし、こんな教室ではなくて屋上でも行くかのう」

明久「そうだね……あれ?そう言えば和真は?」

 

いつも悪戯好きのような笑みを浮かべた友人がいつの間にかいなくなっていることに明久は気付く。

 

翔子「……和真なら、さっき『今日は別の教室で食べる』と言って出ていった。多分忘れてたんだと思う」

明久「なんだって!? 全く和真のやつ!」

雄二「和真の交遊関係は恐ろしく広いからな、探し出すのは無理だろう。今回は諦めるしかないな」

姫路「そうですか…残念です…」

明久(全く…自分に好意を持っている女の子との約束を忘れるなんて和真もデリカシーがないなぁ…姫路さんが落ち込んじゃってるよ…後でガツンと言ってやる!)

 

 

 

 

 

 

その頃、Aクラスでは…

 

優子「ところで、別にいいけどなんでアンタはこっちで食べてんの?」

 

弁当を食べながら優子が聞く。

 

和真「ああ、何だか身の危険を感じてな…」

工藤「え?そんな理由で?」

蒼介「ふむ…お前がそう感じたなら、なにかあるんだろうな」

飛鳥「あなたの勘は昔から当たるものね」

徹「前から思っていたけど、それは予知能力のようなものなのかい?」

和真「そんなオカルトじみた便利なもんじゃねぇよ。俺が感じとれんのは身の危険と面白いことの気配だけだ」

優子「その時点ですでにオカルトじゃない」

蒼介「オカルト…というよりは本来人間持っていた力じゃないだろうか。望むものと自分にとっての危険を察知する、人間が進化の過程で失ってしまった感覚、言うなれば“天性の直感”とも言うべきか」

 

そんな他愛ない話をしているうちに、和真達は食事を終えた。

 

和真「さてと、次の試召戦争前の前哨戦だ!徹、フリスペでバトルしようぜ!」

 

召喚獣訓練フリースペース、通称フリスペ。

四大企業、桐谷グループ発案で職員室に設置された常時展開型召喚フィールドだ。教師の許可を得て召喚獣の操作訓練を自由に行える場所であり、このフィールドで闘っても終了後点数が戻るというオプション付きだ。

と、中々便利なシステムなのだが、利用者はほとんどいない。なぜかというと、成績が悪い生徒は使用許可が降りないのだ。召喚獣の操作以前に成績をなんとかするべきだからだろう。逆に成績優秀な生徒(一部を覗く)は試召戦争の旨みが少ない上、成績不良者は使用できないので操作技能で差がでることはあんまりないのでメリットが少ないのだ。また、成績優秀者ほど真面目な生徒が多いので、やはりテストの点数を重視するからだ。よってフリスペ利用者は毎年ほんの数名だ。だが、このシステムが設置された後、学年の成績は明らかに伸びたらしい。それにはちゃんと理由がある。

 

徹「それはかまわないけど、どうして鳳じゃないんだい?」

 

食後のデザートを食べながら徹は問いかける。ケーキに練乳をふんだんにかけて食べている光景は見ているだけで胸焼けがしてくる。甘党にも限度があるだろう。

 

和真「だから言っただろ、試召戦争前だって。戦争前にもし負けちまったら縁起でもねぇだろ?」

徹「…なるほどなるほど。つまり君は、僕相手なら確実に勝てると、そう言いたいのかい?」

 

怒りを滲ませながら言う徹。表情はクールを装っているが、こめかみがひきつっているあたり冷静さを失いかけている。

 

和真「あぁそうだ、お前になら確実に勝てるぜ! ただし数学と物理以外でな!」

 

挑発しつつもさりげなく自分の苦手科目で相手の得意科目の二つを外す和真。抜け目がない。

 

徹「よーしわかった、そのふざけた自信をバラバラに引き裂いてやるよ!」

和真「へへっそう来なくちゃな!」

 

あっさりと挑発に乗せられ、職員室に向かう二人。

 

(ちょ…ちょろすぎる…)

 

残りの皆は呆れつつも気になるのか、彼等に着いていく。

 




というわけで和真君死亡フラグをキッチリ回避&オリジナルシステム登場でした。
今回は島田。

島田 美波
・性質……バランス型
・総合科目……950点前後
・ステータス(F・E・D・C・B・A・S・SSで表す)
(総合科目)
攻撃力……F+
機動力……F+
防御力……F+
(数学)
攻撃力……C+
機動力……C+
防御力……C+

総合科目はFクラス内では上位だがFクラスはFクラス、全体的に低スペックである。しかし数学科目だけはBクラス上位レベルであり、Fクラスの貴重な戦力である。

では。




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料理人の心構え

注意:大門 徹君とのバトルはカットされました。
徹「バカな!?」


和真「もらったぁっ!」

 

〈和真〉の槍が身に纏っている鎧ごと〈徹〉を貫く。意気揚々と勝負を引き受けた徹であったが、割と一方的な展開で決着が着いた。

 

徹「くっ、僕の負けか…相変わらず無駄に操作がうまい…」

和真「まあキャリアが違うからな」

 

同学年で和真ほどフリスペを利用している生徒はいない。召喚獣を手に入れたときから週に四回ほどのペースで誰かと闘っている。そのお陰で和真の召喚獣の操作技術は学年でもトップクラスだ。まあ間違いなくトップではないのだが。

 

工藤「それにしても…このフリースペース、利用者が和真君ぐらいしかいないのになんで設置し続けているのかな?結構場所もとるのに」

優子「言われてみれば……なんでかしら?」

蒼介「それはこの装置が生徒の学力向上に貢献しているからだろう」

飛鳥「え?そうなの?」

徹「あんまり使われてないのにかい?」

 

不思議そうにしている四人に蒼介は説明する。

そもそもこの装置は利用されなくてもいいのだ。正確にはこれを設置しているだけで効果がある。

成績上位者はあまり利用しない、といってももしかしたら利用しているかもしれない。成績不良者は職員室など行きたがらないので確認するすべもない。

言うまでもなく試召戦争を仕掛けたがるのは下位クラスが多い。上位クラスに勝つためには成績か操作技術、どちらかを向上させる必要がある。しかし成績不良者はフリスペを利用できないので操作技術を上げる機会は中々巡ってこない。

もし成績優秀者がフリスペを利用しているなら、成績だけじゃなく操作技術も劣ってしまうことになる。操作技術で勝てない以上、試召戦争に本気で勝とうとしているなら、自ずと成績を上げようとする。反対に、成績優秀者も自分達の設備を守るために勉強を怠らないようにするだろう。

結果、生徒の学習意識の向上に繋がるのだ。

 

優子「…なるほど。この装置はモチベーションの向上に関わっているわけね」

蒼介「そういうことだ」

和真「まあいい暇潰しになるならなんだっていいぜ。じゃあ俺そろそろ屋上に行くわ。ミーティングもするだろうしな」

 

そう言って和真はAクラスメンバーと別れ、屋上に向かう。

 

 

 

 

和真「おーっす。揃ってんな!」

島田「あっ柊、どこ行ってたのよ!せっかく瑞希が皆にお弁当作って来てくれてたのに!」

和真「あー、すまんすまんす、フリスペで徹とバトってた」

 

大して悪びれていない態度で謝罪しながら、和真は明久達とアイコンタクトで会話する。地味にすごい技術である。

 

明久(和真!君がいない間僕達は死ぬところだったんだよ!ハッまさかキサマ、いつもの勘で事前に察知して一人だけ逃げやがったな!?)

和真(悪かったって。ごめん、わりぃ、すまねえ、許せ。ところで何があった?)

 

明久達は姫路の料理が殺戮兵器であったことを説明した。アイコンタクトで。

 

和真(おいおいシャレになんねぇぞそれ…味見の段階でおかしいって気付くだろ…まさか姫路の味覚がぶっ壊れてやがんのか?)

雄二(それがな、姫路は太るのを気にして味見してないらしいんだ)

和真(……………………) 

 

信じられないとはまかりに思わず絶句する和真。

 

和真(俺、姫路に言いたいことがあるから行ってくる)

明久(なにいってんのさ和真!?そんなことしたら姫路さんが傷ついちゃうじゃないか!)

 

劇物を食べさせられかけた相手を庇うとは、どこまでも女子に甘い男である。しかし和真はそんな明久に深刻な表情で言い返す。

 

和真(そんなこと気にしてる場合じゃねぇんだよ!いいか、このことが蒼介の耳に入れば姫路は死ぬ)

明久(え、えええええ!?なんで!?)

和真(蒼介が住んでいる家はこの辺りでも有名な由緒正しい料亭だ。あいつも幼い頃に母親に料理を教わったらしく、料理というものに敬意を払っている。そんなあいつが姫路が食べ物に劇物を混ぜ、あまつさえ味見もせずに人に食べさせたなんてことを聞いたら…姫路の奴、スープのだしにされるぞ)

 

男子一同(スープのだしに!?)

 

戦慄する明久達。実のところ、流石にそこまではされないのだが明久達を納得させるため話を盛る和真。仮に蒼介がそんなことをしても、財閥の金と権力で事件を揉み消すことができるだけに信憑性がある。嫌な時代になったものだ。

 

和真(心配すんな、姫路を傷つけはしねーよ。俺に任せとけって)

明久(わ、わかったよ……)

 

アイコンタクト終了。

 

和真「おーい姫路、ちょっと話したいことがあるからついてきてくれ」

姫路「え?はっ、はい!」。

明久(まあ和真なら大丈夫だよね、姫路さんも和真と二人っきりになれて嬉しいだろうし)

 

 

 

 

和真「…ここでいいか。あ、そう言えば姫路、約束忘れちまっててすまんな」

姫路「いえ、少し残念でしたけど大丈夫です」

和真「そっか。それはそうと姫路、味見はしないってさっき聞いたけど、なんでしないんだ?」

 

遠回しに言えば余計こじれると思ったのか、直球で本題に入る和真。

 

姫路「あの……太っちゃいそうので……」

和真「なるほどねぇ…なあ姫路、ひとつ問題を出すから答えてくれ」

姫路「え?はっはい、わかりました」

和真「とびきり美味しそうな料理ができたとき、その料理人はまず誰に食べさせると思う?」

 

一見すると正しい答えがないように思える問題を出す和真。姫路は料理ができたらだれに食べさせたいか考えたところ、明久の顔が思い浮かんだので赤面しつつ答える。

 

姫路「えーと…やっぱり、その人にとって大切な人……でしょうか?」

和真「残念ながらハズレだ。正解は………自分だ。なぜだかわかるか?」

姫路「……わかりません」

 

どうしてその答えになるのか姫路にはわからなかった。なぜなら姫路は今まで自分の作った料理を最初にどころか一度も口にしたことがないからである。

 

和真「それはな、その料理はとびきり美味し“そう”な料理だからだ。食べてみるまで美味しいかどうかはわからねぇ。料理を作る奴は自分で美味しいと納得できるものでないなら人に食べさせるべきではない」

姫路「な…なるほど…」

和真「姫路、これはお前にも当てはまるぞ」

姫路「え?…………あっ」

和真「気付いたみてぇだな。いくら美味しそうにできたからといって、味見もしないで他人に食わせてはいけねぇよ。明久達が言うには美味しかったらしいが、もしそうでなかった場合取り返しがつかねぇからな」

 

実際取り返しのつかない事態が起きていたのだが、姫路を傷つけないように平然と嘘をつく和真。嘘も方便とはこのことである。

 

姫路「そうですか……私、なんてことを…」

和真「そんなに落ち込む必要はねぇよ。あいつらは優しいからそんなもん気にしねぇよ。それに人は失敗するから成長できるんだからよ。だがこういうもんはその道のプロに聞くのが一番だ。そこで…」

 

そういうと和真はメモを取りだし、何かを書き始めた。書き終わると、姫路にそのメモを手渡した。

 

姫路「これは?」

和真「料亭『赤羽』の住所と俺からの紹介状。Aクラスとの試召戦争が終わった後そこ行って修行して来い」

姫路「え…えぇ!?『赤羽』ってあの有名な!?な、なんでそんな有名な所にコネがあるんですか!?」

和真「だって蒼介の家だし、そこ」

 

驚きながら聞く姫路に、和真はあっけらかんと答える。

 

姫路「…わかりました!色々とありがとうございます!」

和真「なに、クラスメイトを手助けしてもバチは当たらねぇだろ?さて、屋上に戻るぞ」

姫路「はいっ!」

 

 

 

 

 

 




というわけで、姫路の殺人料理スキルはこの後没収されます。
以外と面倒見が良い和真君。
ちなみにこの話の元ネタは『焼きたて!!ジャぱん』の一流パン職人の格言です。

今回はAクラス代表代理、優子さんです。

木下優子
・性質……攻撃重視型
・総合科目……3850点前後 (学年5位)
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……A
機動力……B
防御力……B

学年5位だけあって全ステータスが高水準である。
欠点を挙げるなら、400点以上を越えている科目が無いことぐらいだ。



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先手必勝・開戦の号砲

前回少し短かった分、今回は長めです。


島田「そういえば坂本、次の目標だけど」

雄二「ん?試召戦争のか?」

島田「うん」

 

屋上に戻った姫路は律儀にも明久達に味見をしていなかったことを謝った。それに対して明久達は二つ返事で許した。

 

島田「どうして次はBクラスなの?目標はAクラスなんでしょう?」

 

雄二が次の目標をBクラスにしたことについて疑問を投げかける。島田。それを聞いた雄二はいきなり神妙な面持ちになる。

 

雄二「正直に言おう。どんな作戦でも、うちの戦力じゃAクラスに勝てやしない」

 

戦う前から降伏宣言。自信満々にクラスを焚き付けた雄二らしくもないが、無理もないことだ。文月学園はAからFの6クラスから成るが、Aクラスは他5クラスとは格が違う。学年順位トップ50の内、11位までは精々Bクラスよりも少々点数が上の普通の生徒だ、が残りのトップ10は次元が違う

。Aクラスはそのトップ10の内、7人が在籍している(残りの3人は和真、姫路、翔子)。特に代表の鳳 蒼介は学生のレベルを完全に逸脱しており、学年3位の姫路を遥かに上回る成績の翔子とすら隔絶している。まともに挑んでも勝ち目は無いだろう。

 

島田「それじゃ、ウチらの最終目標はBクラスに変更ってこと?」

 

AクラスほどじゃないがBクラスの設備も通常の3倍の広さと十分豪華なので、妥協点としては悪くないだろう。しかし雄二はそんな妥協をする男ではない。

 

雄二「いいや、そんなことはない。Aクラスをやる」

明久「雄二、さっきといってることが違うじゃないか」

翔子「……クラス単位では勝てないから、一騎討ちに持ち込むの?」

雄二「そうだ」

和真「なるほど…考えたな」

明久「一騎討ちに?どうやって?」

雄二「Bクラスを使う」

 

不適な笑みを浮かべて雄二は自信の策を打ち明けるが、当然明久は理解できてないようだった。

 

雄二「試召戦争で下位クラスが負けた場合どうなるか知ってるよな?」

明久「え?も、もちろん!」

和真(知らない…だろうなぁ)

姫路(吉井君、下位クラスは負けたら設備のランクを一つ落とされるんですよ)ボソボソ

明久「設備のランクを落とされるんだよ」

 

さもわかってましたと言わんばかりに答える明久だが、姫路が助け舟を出したのがバレバレである。つっこむのもバカらしくなったのか雄二は嘆息する。

 

雄二「……まあいい。つまり、BクラスならCクラスの設備に落とされるわけだ」

明久「そうだね。常識だね」

和真(よく言う……)

雄二「では、上位クラスが負けた場合は?」

明久「悔しい」

 

もしそうなら下位クラスにとって試召戦争は驚くほどメリットがない。

 

雄二「ムッツリーニ、ぺンチ」

明久「ややっ僕を爪切り要らずの身体にする動きがっ」

和真(というかお前から持ちかけた話だろう、試召戦争……なんで知らねぇんだよ……)

姫路「相手クラスと設備が入れ替えられちゃうんですよ」

和真「つまり、うちに負けたら最低の設備に替えられるんだよ。そのシステムを使って交渉する訳だ」

島田「交渉って?」

雄二「Bクラスをやったら、設備を入れ替えない代わりにAクラスへと攻め込むように交渉する。設備を入れ替えたらFクラスだが、Aクラスに負けるだけならCクラスの設で済むからな。まずうまくいくだろう。そしてそれをネタに交渉する。『Bクラスとの戦いの直後に攻め込むぞ』という風にな」

明久「なるほどね!」

 

Aクラスは試召戦争をしても授業が遅れるというデメリットしかない。Fクラスと違って勉学に意欲的な彼等は連戦などできれば避けたいだろう。

 

秀吉「…じゃが、果たして一騎討ちをしたとして勝てるのじゃろうか?」

翔子「…まともに戦えば私でも歯が立たない」

姫路「すみません、私でもちょっと…」

和真「俺も何度かフリスペで闘ったが点数差が有りすぎて勝ったことねーな。そのときは腕輪も無かったし」

雄二「そのへんに関しては考えてある。心配すんな」

和真(十中八九ムッツリーニをぶつけるんだろうな)

 

今のFクラスで蒼介に勝ち目があるのは保健体育学年1位のムッツリーニだけだと和真は見ている。本当は自分が闘いたいのだが、和真は勝敗を度外視して私情に走るような男ではない。

 

雄二「ま、そんなわけで明久、今日のテストが終わったら、Bクラスに宣戦布告してこい」

明久「断る。雄二が行けばいいじゃないか」

 

先日Dクラスにボコられた経験が生きたのか、明久も少しは学習したらしい。

 

雄二「やれやれ、ならジャンケンできめるか?」

明久「ジャンケン?」

和真(確実に罠だなこりゃ…さて明久はどうする?)

明久「OK。乗った」

和真(ですよねー)

 

前言撤回、学習能力のないやつであった。いつになったら雄二の手口を警戒するようになるのだろうか。

 

雄二「ただのジャンケンじゃつまらないし、心理戦ありでいこう」

明久「わかった、僕はグーを出すよ」

雄二「そうか、なら俺は、お前がグーを出さなかったら……ブチ殺す」

 

心理戦でもなんでもなくただの脅迫である、。

 

雄二「行くぞ、ジャンケン」

明久「わぁぁっ!」

 

あまりにも非常識な心理戦に慌てる明久を無視して雄二がじゃんけんを進める。

雄二はパーで明久はグー。

 

雄二「決まりだ、言って来い」

明久「絶対に嫌だ!」

雄二「Dクラスのときみたいに殴られるのを心配してるのか?それなら今度こそ大丈夫だ。保証する」

 

やけに自信満々の雄二。これは勿論また明久を嵌める手口なのだが、当然明久はそのことを微塵も疑わない。将来よくわからないうちに怪しい宗教にでも入信させられたりしないか割と心配になる和真り

 

雄二「なぜなら、Bクラスは美少年好きが多いらしい」

明久「そっか。それなら確かに大丈夫だね」

 

割と自惚れが強い性格をしているようだ。あまりにも自信満々な態度が面白くなかったのか、雄二は即座に明久をディスる。

 

雄二「でも、お前ブサイクだしな……」

明久「失礼な!365度どう見ても美少年じゃないか!」

和真「明久、円の角度は360度だぞ」

雄二「5度多いな」

秀吉「実質5度じゃな」

明久「三人なんて嫌いだっ」

 

そう言いながらもBクラスに駆け出す明久。

 

 

 

 

しばらくして…

 

明久「……言い訳を聞こうか」

 

再びズタボロになって戻ってきた。

ちなみに和真はもうすでにラグビー部の練習に混ざりに行って教室にはもういない。 

 

雄二「予想通りだ」

明久「くきぃー!殺す!殺し切るーっ!」

雄二「落ち着け」

明久「ぐふぁっ!」

 

飛びかかる明久の行動を予想済みだった雄二は容赦なく鳩尾を強打し、明久は無惨にも畳の上に崩れ落ちる。

 

雄二「先に帰ってるぞ。明日も午前中はテストなんだから、あんまり寝てるんじゃないぞ」

 

そう言ってさっさと教室を出て行く雄二。清々しいまでに外道である。

 

明久「うぅ……腹が……」

 

あまりのダメージに起き上がれない明久。

 

明久(誰も心配して保健室に連れて行ってくれないなんて、僕って嫌われるんだろうか?こういうとき助けてくれる和真は放課後だからいないにしても、姫路さんなら駆け寄ってきてくれそうな気がするんだけど)

 

そう思い首だけで教室を巡らすと、鞄を抱え込んで何かを警戒するように周囲を見回している姫路が見えた。

 

明久(……ああ、そういえば昨日手紙を書いていたんだっけ。もしかしてそれをどこに置くべきか考えているのかな)

 

そんなもん持って帰れとか言ってはいけない。

それ以上見ていたら悪い気がして、明久は教室を出た。匍匐前進で。

 

 

その頃、Aクラスでは…

 

蒼介(FクラスがBクラスに試召戦争を申し込んだか。Bクラス、ついでにDクラスを利用して私との一騎討ちを申込もうというわけか)

 

学年首席・鳳 蒼介は雄二の策を早くも見破ったようだ。学力だけじゃなく、頭のキレも申し分ない。

 

蒼介(なるほど、確かにその方法ならAクラスとFクラスの絶望的な差を埋めることができる。恐らく挑んで来るのは土屋 康太だろう。坂本 雄二か、見事な戦術だ。ここまで入念に布石を打っているとは。それに人の心理をよく理解している)

 

蒼介は雄二の策略に感心し、その手腕を称賛した。

 

蒼介(さて、そうとわかれば、私はどう対処する?相手の提案を飲まないことが一番確実ではある。土屋 康太は唯一私よりも点数が高い生徒、一騎討ちを受けるは危険だ)

 

連続で試召戦争、辛いし面倒だが一騎討ちよりも確実な方法である。だがこの方法を選ぶことが、本当に正しいことなのだろうか。いや、

 

蒼介(……否。断じて否。私はクラス代表だ。クラスメイトのことを考え行動することがトップに立つ私の責務であろう。……土屋康太、その一騎討ち受けてたとうじゃないか)

 

試召戦争が重なるとクラスメイトが疲弊する上、授業も遅れてしまう。そのことを避けるため、蒼介はムッツリーニを真っ向から撃破することを決意した。

 

蒼介(…まあしかし、みすみす相手の策略に乗るのも癪だ。それに、不安に思うクラスメイトも出るだろう。……よし、先手を打っておくとしよう)

 

何を思ったのか、メモ用紙に何かを書き出す蒼介。

それが書き終わると、

 

蒼介「木下、久保、大門、工藤。帰るまえにちょっと集まってほしい」

 

Aクラスの生徒数名を呼び寄せる。

 

優子「どうしたの代表?」

久保「何かあったのかい?」

 

呼ばれた四人は蒼介の机の回りに集まる。

 

蒼介「ああ、これからBクラス戦後に攻めてくるであろうFクラスに対するミーティングをしようと思う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雄二「さて、いよいよBクラス戦だな」

 

総合科目テストを終え、昼食を済ませ、いよいよBクラス戦が始まろうとしている。

 

和真「おい雄二、試召戦争前の景気付けにクラスメイトを鼓舞してやるよ」

雄二「ん、そうか?じゃあ頼むぞ」

 

モチベーションは高い方が良いので、雄二は二つ返事で了承した。和真は教卓の前に立つ。しかし個性の強いクラスメイトの多岐にわたるフォローで鬱憤が溜まりに溜まっていた和真は、火種に迷うことなくガソリンをぶちまけた。

 

和真「いいか野郎共!俺達の標的はAクラスだ!つまりBクラスなど取るに足らん雑魚に過ぎん!守りや回復は考えんな!真っ向から敵を一人残さず撃破するぞ!」

 

『うおぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!』

 

雄二「まてまてまてまてまてぇぇぇ!」

和真「なんだよ、何か文句でもあんのかよ?」

雄二「文句しかねぇよ!自力で負けてるんだからそんなことをしたらあっという間に全滅するだろうが!」

和真「俺の辞書に“特攻”以外の文字はねぇ、それ以外のページは全部白紙だ!」

雄二「捨てちまえそんな使いづらい辞書!もはやただのメモ帳じゃねぇか!」

 

猛然と抗議する雄二。文字通り玉砕作戦には問題が山積みである。ある程度溜飲が下がった和真は真面目モードに切り替える。

 

和真「まあジョークはこのくらいにして…雄二、前線部隊に俺と姫路を入れろ」

雄二「……なに?」

和真「相手に奇襲をかける。腕輪持ちの俺ら二人で相手の部隊をぶち破る。先んずれば人を制す、ってやつだ。」

 

今回の戦闘は敵を教室に押し込むことが重要になる。その為、開戦直後の戦闘は絶対に負けられない。作戦としては中々理にかなっている

それにBクラスは文系が多いため相手は文系科目の教師を連れてくるだろうが、それは和真の独壇場だ。

 

雄二「…いいだろう。だが奇襲が終わったら姫路は前線部隊から外すぞ。他の部隊の層が薄くなってしまうからな」

和真「オーケー。聞いたか姫路。派手に暴れるぞ、出し惜しみは無しだ!」

姫路「わっ、わかりました!がんばります!」

和真「というわけで野郎共、ガンガン行こうぜ!」

『うおぉぉぉぉぉぉぉ!』

 

前線部隊の士気は最高潮に達していた。姫路と一緒に戦えることもあるが、和真には大衆のボルテージをヒートアップさせる才能がある。

 

キーンコーンカーンコーン

昼休み終了のベルが鳴る。開戦の合図だ。

 

雄二「よし行ってこい!目指すはシステムデスクだ!」

『サー、イェッサー!』

 

前線部隊は全力でBクラスへと向かう廊下を駆け出した。

体力の差を考慮して、和真は姫路に合わせて少しゆっくり走る。

 

 

《総合》

『Bクラス 野中 長男 1943点

VS

Fクラス 近藤 吉宗 764点』

 

《数学》

『Bクラス 金田一 佑子 159点

VS

Fクラス 武藤 啓太 69点』

 

《英語》

『Bクラス 里井 真由子 188点

VS

Fクラス 君島 博 73点』

 

文字通り桁が違う点数差でどんどん戦死していく第一陣。ここまでは想定内であるが、このまま放っておけば全滅してしまうだろう。

 

和真「よし追い付いた!姫路、お前は数学のフィールドに行け!俺は英語のフィールドに行く!」

姫路「わかりました!」

 

主戦力の二人が到着し、それぞれ得意分野のフィールドに別れる。

 

岩下「来た!姫路さんだわ!Bクラス岩下、菊入、金田一がFクラス姫路 瑞希さんに勝負を挑みます!」

四人『試獣召喚(サモン)!』

 

それぞれの試験召喚獣が顔を出す。

 

 

《数学》

『Fクラス 姫路 瑞希 412点

VS

Bクラス生徒×3 平均160点』

 

 

姫路の召喚獣の装備は西洋鎧に自身の身長の2倍はある巨大な剣。和真ほど極端ではないが、攻撃を重視した武器だ。左腕に腕輪をしている。これはテストで400点以上の成績を納めた生徒には特殊能力を備えた腕輪が装備される、言わば強者の特権のようなものだ。

 

キュポッ!

 

『きゃあぁぁーっ!』

 

召喚と同時に〈姫路〉が先手必勝とばかりに熱線を放ち、三人を飲み込んだ。まさに鎧袖一触の圧倒的な威力である。

 

姫路「ご、ごめんなさい。これも勝負ですのでっ」

 

 

 

 

和真「四人か……全部で十人しかいねぇのに随分景気が良いじゃねぇか」

『皆、油断するなよ!』

『わかっている!こいつは姫路以上に危険だ!』

『不用意に近づくなよ!全滅するぞ!』

 

 

《英語》

『Fクラス 柊 和真 400点

VS

Bクラス生徒×4 平均180点』

 

 

先日のDクラス戦での出来事を知っているのか、警戒して距離をとり隊を組む四人。

だが彼等は見落としていた。先日とは違い、和真の得点が400点だということを。

 

和真「固まってくれるとは親切だなぁ。見せてやるよ、10連…装填」

 

『Fクラス 柊 和真 300点

VS

Bクラス生徒×4 平均180点』

 

〈和真〉の周りに合計10門の大砲の砲身が出現する。そしてそれぞれの砲身がBクラス生徒の召喚獣に照準を合わせる。

 

『な、なんだ…?』

『何だかヤバイ予感…』

『もしかして私達…詰んでる?』

『多分ね…避けられそうにないし…』

 

Bクラス生徒達は己の末路を悟ったようだ。

 

和真「いくぜ…一斉砲撃(ガトリングカノン)!」

 

ドガガガガガガガガガン

 

『『『ぎゃぁぁぁあああああ!!!』』』

 

それぞれの砲身から一発ずつ射撃が繰り出される。

広範囲の弾幕攻撃にBクラス生徒の召喚獣はなすすべもなく、あっという間に全滅してしまった。

 

和真「これぞ超火力特化砲撃だ。まぁ燃費が悪過ぎるのが玉に瑕だがな」

 

姫路に殺られた生徒と一緒に鉄人に補修室に連れて行かれる生徒達を眺めがら、和真は一人呟く。




やっとBクラス戦が始まりました。
和真君無双part2。そこ、マンネリとか言わない。
雄二の策略はもうバレてしまいましたが問題ありませんでした。蒼介君はどうやら思ったより負けず嫌い性格のようです。

『一斉砲撃(ガトリングカノン)』
和真の腕輪能力。支払った点数10点につき1つ砲身を出現させ、一斉に砲弾を射つ。高火力かつ広範囲の攻撃が可能だが、デメリットがいくつもある。
・400点を切ると使えない。
・必ず10発刻み。つまり最低でも100点もの点数を消費しなければならない
・砲身の照準は一つ一つ自分が調節しなければならない。これがかなり難しく、大抵の人は全て前を向けるくらいしかできないため、ある程度機動力があれば射つ前に避けられなくもない(ただし和真は並外れた感覚でそれぞれ自在に調節できるのでこのデメリットはあってないようなもの)。
あと一つありますが、それは本編で明らかになります。

大砲は男のロマン。異論は断じて認めない!、
ちなみに一対一で闘う場合よっぽどの相手じゃない限り使いません。点数が勿体な過ぎるので。

では。


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ワン・フォー・オール

試召戦争が白熱してきました。
そういえば気になったんですが、美波さん、姫路さん、翔子さんの三人は過剰な暴行を加えてるシーンはそんなに差はないのに、なぜ翔子さんアンチの作品はほとんどないんでしょう?


明久「……うわ、こりゃ酷い」

和真「あいつは相変わらずやることがせこいなぁ……」

 

相手の前線部隊を片付けた後、教室に戻った和真達が見た光景は、穴だらけになった卓袱台と折られたシャープペンと消しゴムだった。恐らくクラス代表、根本 恭二の指示だろう。根本という男はとにかく評判が悪い。噂ではカンニングの常連だとか。目的の為には手段を選ばないらしく、曰く『球技大会で相手チームに一服盛った』とか『喧嘩に刃物はデフォルト装備』とか。まあそれらは噂に尾ひれがついたものだろうが。

ちなみに『やるからには当然勝ちにいくが、勝負は楽しんでこそ』が信条の和真にとって根本は当然いまいちソリが合わない相手である。

 

明久「これじゃ補給がままならないよ」

秀吉「地味じゃが、点数に影響の出る嫌がらせじゃな…」

雄二「あまり気にするな。修復に時間はかかるが、作戦に大きな支障はない」

明久「…雄二がそういうならいいけど」

 

何かしら気になりながらも、大したダメージではないと断定した雄二の言葉に明久は納得する。

 

明久「でも、どうして雄二は教室がこんなんになってるのに気づかなかったの?」

 

これは明らかに戦闘開始から今までの間にやられた嫌がらせだろう。雄二が教室にいたのなら気づかないはずがない。つまり雄二は何かしらの事情で教室を空けていたことになる。

 

雄二「協定を結びたいという申し出があってな。調印の為に教室を空にしていた」

秀吉「協定じゃと?」

雄二「ああ。四時までに決着がつかなかったら戦況をそのままにして続きは明日午前九時に持ち越し。その間は試召戦争に関わる一切の行為を禁止する。ってな。それを承諾してきた」

明久「え?でも体力勝負に持ち込んだ方がウチとしては有利なんじゃないの?」

 

Fクラスは学力はからっきしだが男子の比率がとても高い分、他のクラスに比べて体力にはアドバンテージがある。だから一見その協定はFクラスにメリットが無いように思えるが、実はそうではない。

 

翔子「……吉井、うちには瑞希がいる」

明久「あ、そっか」

雄二「本丸はまだ落とせそうにない。あいつ等を教室に押し込んだら今日の戦闘は終了になるだろう。そうすると作戦の本番は明日になる。その時はクラス全体の戦闘力より姫路個人の戦闘力の方が重要になる」

和真(……それは建前でおそらく姫路はフェイク。俺と翔子と姫路はまず間違いなく最大限に警戒されているからそう自由には動けねぇだろう。Bクラスにはあいつもいることだしな。となると、根本を殺るのはあいつか)

雄二「つまりこの協定は俺達にとってもかなり都合がいい」

明久(なるほど、確かにその通りだ……でも何かがおかしい。机に嫌がらせをするためだけにそんな協定を申し出るなんて、根本君はそんな甘い男なのだろうか)

秀吉「明久。とりあえずワシらは前線に戻るぞい。向こうでも何かされているかもしれん」

 

そう言って秀吉は舞台を率いて教室を出て行った。

 

和真「まだ時間あるな。じゃあ俺はノコノコうろついてるBクラスの奴等を手当たり次第狩ってくるぜ」

 

お前は通り魔かと言いたくなるようなセリフを残し、和真も教室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

和真「戦争中だっつうのに何やってんだお前らは……」

 

あれから三人ほど殺った後四時になったので教室に戻る途中、明久をぼこぼこにして引きずり回していた島田と会う。

 

島田「あ、柊!ちょっと聞いてよもう!」

 

明久を投げ捨ててから、若干涙目になりながらながら和真に駆け寄る島田。

話をまとめると、明久が保健室に運ばれたという嘘に騙されてBクラスの生徒に捕まり、明久は何を勘違いしたか島田を偽物と勘違いしてBクラスごと始末しようとし、なんとか誤解が解けた後明久が、自分は最初から本物だと気付いてた、とほざいたらしい。部隊の指揮官が勝手に持ち場を離れるなと途中思ったが、それ以上に明久が救い用のないバカだとわかったので水に流した。

 

和真「それにしても、お前も災難だなぁ~」

島田「そうよ!全く…」

 

 

 

 

和真「こんなバカに惚れちまったんだからな」

島田「そうそ……ふみゅっ!?」

 

適当にふっかけた和真の誘導尋問にあっさり引っ掛かる島田。

 

島田「なななななななに言ってるのよっ!ウ、ウチがこんなバカのこと好きなわけないでしょ!」

 

これ以上無いほど露骨に動揺している。これで気付かない奴は明久(バカ)くらいであろう。これ以上切り込んでも頑として認めようとしないであろうと判断した和真は追及はしないでおく。普段ならサディズム全開で弄り倒しているが先程も言った通り今は戦争中、下手に苛めて士気に関わると面倒だ。

 

和真「……そうかい。まぁそれはそれとして、取り敢えず教室に戻るか」

島田「そ、そうね……」

和真(相変わらず素直じゃねぇな…あんまりのんびりしてると置いてかれるぞ。姫路は思ったより行動力がありそうだしな)

 

そんなことを考えたながら、和真はは明久を引きずる島田と共にFクラスの教室に戻る。

 

和真「おーい、戻ったぞ」

雄二「ああ、おつかれさん」

和真「さてと、今日はもうやることねぇな。……ふわぁ……急に眠気が…………少し寝るか」

 

急に気が抜けたのか畳に横になる和真。この些細な気の緩みが命取りになるとも知らず。

 

 

 

 

 

 

 

 

和真「…………んむ…ふわぁあ…あれ?おい秀吉、あいつらもう帰ったのか?」

 

目が覚めると教室内には秀吉以外居なくなっていることに気付き、そのことを聞く。

 

秀吉「雄二達はCクラスと協定を結びにいったぞい。なんでもワシらの戦いの後攻めこむ準備をしておるらしくてのう」

和真「……んだとぉっ!?くそ、このままじゃ不味い!」

秀吉「ど、どうしたのじゃいきなり!?」

和真「Cクラス代表の小山 優香は根本の彼女、確実にグルだ!これは明らかに俺達を嵌める罠なんだよ絶対!」

秀吉「大丈夫じゃ和真!霧島も姫路もついていった!Bクラスにそう簡単にあやつらを倒せる者がいるとは思えん!」

 

秀吉は和真を落ち着かせようとそう言う。だがBクラスがとんでもないジョーカーを握っていることを和真は知っていた。

 

和真「それがいるんだよ、一人だけ!取り敢えず俺は行ってくる!お前は念のため待っててくれ!」

 

そういって和真は全速力でCクラスに向かう。そのときの和真の表情は、いつもの飄々とした不敵な笑みの面影すらない、鬼気迫るものだったと言う。

 

和真(くそ、俺としたことが!なんでこんなときに寝てんだよ!もし根本が源太を連れてたら不味い……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雄二「Fクラス代表の坂本 雄二だ。このクラスの代表は?」

 

雄二がCクラス教室の扉を開き教室の全員に告げる。教室には大勢残っており、ムッツリーニの情報どおり漁夫の利を狙って試召戦争の準備をしてるようだ。

 

「私だけど、何か用かしら?」

 

名乗り出たのはきつい性格だと一目でわかるような表情を浮かべたショートヘアーの女子。バレー部の小山 友香だ。

 

雄二「Fクラス代表としてクラス間交渉に来た。時間はあるかは?」

小山「クラス間交渉?ふぅん……」

 

いやらしい笑みを浮かべる小山。見た目通り性格はあまり良くなさそうである。

 

雄二「ああ。不可侵条約を結びたい」

小山「不可侵条約ねぇ……。どうしようかしらね、

 

 

 

 

根本君?」

根本「当然却下。だって、必要ないだろ?」

 

教室の奥から取り巻きを連れて、根本と一人の男子生徒が前に立った。灰色のたてがみのような髪に猛禽類のような鋭い目つきをした、いかにも不良といった生徒だ。

 

明久「な、根本君!Bクラスの君がどうしてこんなところに!?」

根本「酷いじゃないかFクラスの皆さん。協定を破るなんて。試召戦争に関する一切の行為を禁止したよな」

明久「何を言って……」

根本「先に協定を破ったのはそっちだからお互い様、だよな。五十嵐(イガラシ)、やれ!」

五十嵐「あいよ」

雄二「五十嵐だと!?やばい!」

 

五十嵐と呼ばれた根本の隣の生徒が前にでる。

 

五十嵐「遠藤先生!Bクラス五十嵐が-」

翔子「……させない!Fクラス霧島が受けて立つ!試獣召喚(サモン!)」

雄二「待て翔子!?」

 

雄二が制止するも召喚獣が出現する。

翔子の召喚獣は武者鎧に日本刀、

五十嵐の召喚獣は民族衣装にトマホークだ。

 

 

《英語》

『Fクラス 霧島 翔子 432点

VS

Bクラス 五十嵐 源太 486点』

 

 

明久「なっ!?」

 

表示された点数に驚きを隠せない明久。それも仕方ない、五十嵐の点数は学年首席に匹敵するほどの高得点であったのだから。

 

五十嵐「ここに来る前二年間、イギリスにいたんでなぁ!悪ぃが俺様にとって高校生レベルの英語なんざゴミ同然だぜ!」

明久「僕らは協定違反なんてしてない!これはCクラスとFクラスの-」

雄二「無駄だ明久!根本は条文の『試召戦争に関する一切の行為』を盾にしらを切るに決まってる!」

根本「ま、そゆこと♪」

明久「屁理屈だ!」

根本「屁理屈も理屈の内ってな」

翔子「…雄二、逃げて!」

雄二「翔子!だがお前は-」

翔子「…早く!」

雄二「…くそっ!お前等、ここは逃げるぞ!」

 

悔しそうに雄二が言うと、明久達はCクラス教室から離脱した。

 

根本「五十嵐、霧島は任せたぞ。わかってると思うが確実に仕留めろよ?」

五十嵐「へいへい」

 

根本はそう言うと、取り巻きと共にFクラスを追って教室を出た。

 

五十嵐「悪ぃな、あんまりすっきりしねぇやり口だがよ……これは戦争なんでな」

 

五十嵐は若干ばつが悪そうに翔子にそう謝罪する。チンピラみたいな見かけの割に意外にも正々堂々を好む性格のようだ。

 

翔子「……別に謝らなくてもいい。ただ…」

五十嵐「あん?」

翔子「……私は負けてあげるつもりなんかない!」

五十嵐「…ハッ、テメェ面白ぇな!じゃあ始めようか……腕輪持ち同士の闘いをよぉっ!」

 

二人はそれぞれ腕輪の能力を発動させる。

〈翔子〉の周りに氷の礫が舞う。

〈源太〉の召喚獣の左腕が鋭い爪を備えた巨大な黒い腕に変わる。

 

翔子「……アイスブロック!」

五十嵐「巨人の爪!」

 

無数の氷の礫と巨大な腕がぶつかり合う。

その衝撃はすさまじく、召喚フィールドが音を立てて軋む。しかし徐々に腕の方が押し始める。

 

五十嵐「どうやら点数差があるせいか、パワーは俺様に分があるらしいなぁ!」

翔子「………………」

五十嵐「覚悟は良いな?じぁあ…トドメだぁぁぁ!」

 

そのままフルパワーで〈五十嵐〉の腕は〈翔子〉を蹴散らした。〈翔子〉が力尽きる。

 

 

 

だが、

 

五十嵐「な、なにぃ!?」 

 

その直後、隙ができた〈五十嵐〉の両側から氷の礫が飛来し、そのまま串刺しにした。

フルパワーが来る前に氷の結晶を〈五十嵐〉の横にさりげなく潜ませていたらしい。礫がまともに突き刺さり、〈五十嵐〉も倒れる。

 

《英語》

『Fクラス 霧島 翔子 戦死

VS

Bクラス 五十嵐 源太 戦死』

 

結果は相討ち。

 

翔子「……ごめん、でもこれは戦争だから」

五十嵐「…アッハッハ!テメェほんと面白ぇな!」

 

勝てる勝負を落とした結果だが、五十嵐は悔いはないと言わんばかりに満足そうに笑った。

 

 

 

 

 

 

和真「どうやら間に合ったようだな!」

 

和真はなんとか逃走中の明久達と合流した。

 

明久「和真!?来てくれたんだね!」

和真「事情は把握してる!ここは俺に任せて先行け!」

 

そう言うと和真は明久達とBクラスの間に立ちふさがる。しかし少し間に合わず、二人ほど逃がしてしまった。

 

和真(ち、二人逃がしたか…それに、翔子がいなかったな…源太にやられたか、チクショウ!)

 

根本「おいおい柊。もう少しでFクラス代表を討ち取れたのに、邪魔しないでくれよ」

和真「俺が邪魔なら力づくで排除しろよ。これは戦争だぜ?田中センセ、Fクラス柊が世界史勝負を申込むぜ!試獣召喚!」

根本「じゃあそうさせて貰うさ。お前等、例の作戦通りにやれ」

 

根本がいやらしい笑みを浮かべながらそう言うと、Bクラス生徒達は和真を取り囲んだ。

 

『試獣召喚!』

 

和真の召喚獣をとり囲むようにBクラス生徒達の召喚獣が出現する。

 

 

《世界史》

『Fクラス 柊 和真 400点

VS

Bクラス生徒×8 平均185点』

 

 

和真「お前等も学習しねぇな…俺相手に大人数で来たらどうなるのかわかってねぇのか?」

根本「残念だが、お前の弱点はもう割れてんだよ」

 

勝ちを確信しているかのように、自信たっぷりに根本は言う。

 

和真「…弱点だぁ?」

根本「お前の腕輪の能力はいくつもの大砲を召喚する能力。確かに大した破壊力らしいが、こうやってバラければ避けられないことはないんだよ」

 

そう。〈和真〉の大砲のスピードはそこまで速くはない。Bクラス召喚獣のスペックなら避けに専念すれば単発ならなんとか避けられるレベルだ。一対一や相手が固まっているなら砲身を並べて弾幕状に放つことでその弱点をカバーできるが、今回のように囲まれてはそれができない。何人かは確実に始末できるが残った召喚獣に隙を突かれて戦死するのがオチだ。

 

和真「…なるほど、思ったより頭がキレるな。確かに腕輪能力を封じられた状態でこんだけのBクラスレベルの人数は流石の俺でも捌ききれねぇな」

根本「どうだ、諦めたか?」

 

勝ち誇る根本。しかし和真はなんら萎縮することなくいつもの笑みを浮かべている。

 

和真「ほざけ。誰が諦めるかよ」

根本「この状況をなんとかできるとでも?無謀だな」

 

そういって根本はせせら笑う。

 

和真「はっ、言ってろ。

 

無茶で無謀と笑われようと、意地が支えのケンカ道!

 

壁があったら殴って壊す!

 

道がなければこの手で創る!

俺を、誰だと思っていやがる!

Fクラスの勝利への道は、俺が切り開く!!!」

 

柊 和真は諦めない。たとえどれほど絶望的な状況であろうと、突破口をこじ開け希望をその手に掴もうとする。

 

 

根本「…チッ、だからお前は気に食わないんだよ!そんな強がりを言ってどうなるというんだ!」

和真「強がりかどうかは今見せてやるよ……フル装填!」

 

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ…

 

根本「っ!お前等注意しろ!」

和真「残念だが無駄だぜ…」

 

〈和真〉の周りに40門の、以前とは形状の異なる砲身が出現する。そして、

 

和真「一斉閃光砲撃(ガトリングレーザー)!」

 

それぞれの砲身から閃光が放たれ、一瞬でBクラス生徒達の召喚獣を消滅させた。

 

『……………………え?』

 

あまりの出来事に、Bクラス生徒達は何の反応もできなかった。

 

『Fクラス 柊 和真 1点

VS

Bクラス生徒×8 戦死』

 

根本「ば、ばかな!?お前、何をしたぁぁぁ!?」

 

根本は狼狽える。まあ無理もないだろう、確実に挽回不可能と思われた状況から、相手が予想だにしないジョーカーを用いて形勢をひっくり返されたのだから。

 

和真「特別大サービスで教えてやるよ。俺の腕輪は点数を限界まで注ぎ込んだとき、砲弾が光速のレーザーになる裏技があんのよ。ただまぁ…」

 

〈和真〉は持っている槍を支えきれず床に落としてしまった。

 

和真「当然使用後は瀕死になるし、おまけにこれ使った日は召喚獣のスペックが最低まで落ちるデメリットがあるがな。400ぴったりなのになぜか1点残る仕様だけどよ」

 

それはつまり、追撃されれば戦死は免れない上、逃げ延びたとしてもその後最低レベルのスペックの上丸腰で闘わなければならないということだ。和真の武器は大きすぎて、そんなスペックでは持ち運ぶことすらままならないのだ。

 

根本「ば、バカな!?そんな状態でどうやって俺を倒そうっていうんだ!?」

和真「おいおい、なに的外れなこと言ってんだよ、」

 

馬鹿にするように笑いながら根本を指差し、

 

和真「試召戦争はチーム戦だぜ?仲間が俺の代わりにお前をぶちのめしてくれるだろうよ!」

 

そう宣言した。

 

根本「お…おのれぇ!試獣召喚!」

 

根本の召喚獣が和真の召喚獣を切り裂いた。

 

 

 

 

柊和真、戦死

 

 

 

 

 

 

根本「…くそ、気に入らねぇ……好き放題言いやがって……だが俺にはまだ切り札がある。これで要注意の三人は全て封じたぜ!」




というわけで、和真君&翔子さんフェードアウトです。
翔子さんは敵の絶対的エースを道ずれにし、和真君に至っては15人もの生徒を戦死させたので、戦績としては十分でしょう。

あと、カズマなのにカミナでした。

和真の腕輪の奥の手は、技そのものが死亡フラグです。今回のようにやむを得ない場合以外は決して使いません。

霧島 翔子
・性質……バランス型
・総合科目……4700点前後 (学年2位)
・400点以上……保健体育以外
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……A
機動力……A
防御力……A
・腕輪……アイスブロック
学年二位の肩書きに恥じないスペック。
弱点らしい弱点は無い。

『アイスブロック』
50点を消費して氷の塊を召喚する能力。温度を下げたり相手を凍らせたりはできない。無数の氷の礫を生み出し相手に撃ったり、氷の壁を生み出し身を守ったり相手を閉じ込めたり、フィールドに氷を敷いたりなど、応用力の高い能力。
ただし50点につき1種類しかできない。

では。


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キャラ紹介その3

一巻で出そうと思ったオリキャラは以上です。
この五人がメインとなるオリキャラで、後は大体サブキャラクターです。


・五十嵐 源太(イガラシ ゲンタ)

2年Bクラス

身長180㎝→184㎝(二学期)

体重70kg→75㎏

髪:灰色

得意教科:英語

苦手教科:それ以外→古文

趣味:スポーツ、アクションゲーム、バイク、料理

好きなこと:スポーツ全般

嫌いなこと:卑怯な策

コンプレックス:チンピラのような外見

通称:ウルトラ非モテ

備考:元不良、外見に似合わず繊細

 

Bクラスの副官。

不良のような見た目と乱暴な言葉遣いからよく誤解されるが、学園生活態度は至って真面目で真っ向勝負を好む熱血漢。そのため和真達と意気投合し、暇さえあれば一緒に遊ぶ仲になる。しかしなぜか損な役回りが多く、基本的に弄られキャラである。徹とは好きあらば喧嘩するが、仲はそれほど悪くない。

したたかで意思の強い人間を好む。その外見と本人の一匹狼気質、加えてBクラスはインドアな生徒が多いことから、クラス内ではかなり浮いていることが最近の悩み。小学校五年のときから二年イギリスに留学していたため、英語は学年トップクラス。また、物心ついていたときに留学したので島田と違って日本語に不自由していない。

日本に帰国した当初はむこうの生活に馴染んでいたため、文化の擦れからクラスで孤立してしまい自暴自棄になり、実は中学生の頃は見かけ通り不良であった。しかし中3のとき、たまたま出くわした和真に喧嘩を売り手も足もでず惨敗しまった挙げ句それ以上は特に何もされず見逃されたことにより、今の自分の矮小さを思い知り、真剣に人生を生きようと更正する。ちなみに二人ともお互いの顔を覚えていなかった。

 

元々料理はどちらかと言えば得意では無かったが、清涼祭でハブられた屈辱をバネに、たった1ヶ月ちょいで明久レベルまでスキルアップした。マイナス感情も使いようである。

 

 

・パラメーター

ルックス…2

知能…3

格闘…4

器用…4

社交性…3

美術…4

音楽…2

料理…5

根性…3

理性…4

人徳…3

幸運…2

カリスマ…2

性欲…2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・チーム『アクティブ』

構成員…柊 和真、鳳 蒼介、木下 優子、大門 徹、五十嵐 源太、(工藤 愛子)、(橘 飛鳥)

リーダー…柊 和真

スローガン…『No sports no life』

活動内容…部活荒らし

入団条件…運動が得意であること、スポーツが大好きであること

 

柊が一年生の終わりに結成した部活荒らしチーム。各部活に練習試合を申込むときはこのメンバーが中心となる(参加メンバーが足りないときは誰かを誘う)

工藤と橘はそれぞれ部活に所属しているのでたまに時間が空いているときのみ参加する仮メンバーである。

学年でも屈指の運動神経を持つメンバーが集まっているので、その実力は折り紙つき。『試合は正々堂々、何よりも楽しく、そして全力で勝利を目指す』がモットーである。

活動するかどうかは全て柊の気分次第の超権力集中集団。このチームとの練習試合に負けた部は次の日から練習が凄まじくきつくなるという恐ろしいジンクスがあるため、各部活は死に物狂いで勝ちに行く。

土日はそれぞれ予定が揃わないのと、鳳が多忙で参加できないため活動しない。

 




このグループ各部活にとっちゃ迷惑すぎる…
では。


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キング・オブ・バカの実力

和真達が犠牲になってしまった(と思われる)ので、明久がいつにも増して熱いです。

バトルシーンは書いていてテンション上がりますね。


『逃がすな!坂本を討ち取れ!』

和真が取り逃がしたBクラス生徒2人に途中1人が合流し、合計3人の生徒から逃げる明久達。

 

明久(このままじゃまずいな…)

 

連れている長谷川先生は数学教師、姫路は先程腕輪の能力の代償で点数を消費してしまっている。それに加えて、

 

姫路「はぁ、ふぅ…」

 

ここまでの全力疾走で息が上がっている。この状態ではとても召喚獣の操作など無理だろう。まさに絶対絶命の状況だ。

 

明久(代表の雄二は倒されると僕達の負けになるから闘わせるわけにはいかない。ここは…)「島田さん!」

島田「何よ!」

明久「Bクラスを迎え撃つ!だから手を貸してほしい!」

島田「ハァ!?アンタ正気!?相手はBクラスよ!数学が得意なウチはともかく、アンタがまともに闘って勝てる相手じゃないわよ!それに相手は3人もいるのよ!?」

 

勝ち目はほとんどないと島田は明久に言い聞かせるように抗議するが、明久は覚悟を決めた表情でその抗議を突っぱねる。

 

 

 

明久「それでも…やるしかないんだ!和真と霧島さんが繋いでくれた希望を…失うわけにはいかない!」

 

ここで雄二が討ち取られたら、二人が犠牲になった意味がない。確かに点数差は絶望的であり、その上人数も向こうのほうが多い。勝てる可能性はあまりにも低いだろう。

 

 

だがそれがどうしたというのだ。

 

 

明久「僕達はAクラスに挑むんだ!こんなところで挫けてなんかいられるもんか!」

 

 

島田「吉井………わかったわよ。しかたないから、一緒に闘ってあげる。」

明久「島田さん、ありがとう。雄二!ここは僕達が引き受ける!雄二は姫路さんを連れて逃げてくれ!」

雄二「…わかった!ここは任せる!」

 

状況を冷静に把握し、雄二は姫路を連れて逃げる。姫路は申し訳なさそうにしながらも、ここで自分が残っても状況は好転しないと理解しているため黙って従う。

 

ムッツリーニ「…………(ピタッ)」

明久「いや、ムッツリーニも逃げてほしい。多分明日ッツリーニが戦争の鍵を握るから」

 

勿論明久は雄二の作戦など理解していない。ただ、ムッツリーニという切り札に雄二が重要な役割を与えないはずがないことは流石にわかる。

明久「………来るよ、島田さん!」

島田「そうね…ねぇ吉井」

明久「ん?どうしたの」

島田「今後ウチはアンタのことを『アキ』って呼ぶから、アンタもウチのこと名前で呼ぶように」

明久「え、どうしてさ?」

島田「以前柊が言ってたの。信頼できる仲間同士は名前で呼び合うものだって。アンタに背中預けるわけだから、そうしないと勝てるものも勝てないでしょ?」

 

島田は悪戯っぽい笑みを浮かべながらそう答える。ちなみにその話は暇をもて余した和真が島田に明久と仲良くなるチャンスを与えるために、適当に考えた作り話である。苗字で呼び合っていてもお互いに信頼し合っている人達もいる。

 

明久「…わかったよ、美波」

美波「よろしい♪さ、そろそろ来るわよ!」

明久「まずは任せて。とっておきの秘策があるんだ」

美波「ふーん。そこまで言うなら信用しましょうか」

 

『いたぞっ!Fクラスの吉井と島田だ!』

『ぶち殺せ!』

 

明久「Bクラス!そこで止まるんだ!」

 

相手の気勢を削ぐように、強い口調で呼び止める。

 

『いい度胸だ。くい止めようってのか』

明久「いや、その前に長谷川先生に話がある」

 

相手に主導権を握られないように強い口調で話す。

 

「なんですか、吉井君」

 

息を切らしながら長谷川先生は前に出る。

 

明久「Bクラスが協定違反をしていることはご存知ですか?」

美波(相手の協定違反を訴える気?でも…)

長谷川「話を聞く限り、休戦協定を破ったのはFクラスのようですね。そこで反撃を受けて協定違反を訴えるのはどうかと思いますよ」

 

教育者らしく、厳しい口調で諭すように言う長谷川先生。

 

美波(あの根本のことだからうまく言ってあるのでしょうね。……さて、どうするつもりなの?)

明久「………………」

美波(アンタの考え、期待しているからね)

 

明久に片目を瞑って見せる美波。

しばらくして明久はこう応えた。

 

 

 

 

明久「……万策、尽きたか……」

 

『『『こいつ馬鹿だぁぁあああっ!?』』』

 

Bクラスの生徒及び美波の心が一つになる。明久の秘策など信じてもろくなことにならない。さきほどまでの勇ましい明久はどこに行ってしまったのか……。

 

 

 

 

 

姫路「坂本君、吉井君は、大丈夫、なんですか……?」

雄二「もちろんだ。明久ならなんとかなる」

姫路「でも……」

雄二「確かにアイツは勉強ができない。でもな……学力が低いからといって、全てが決まるわけじゃないだろう?」

姫路「そ、それはどういう……」

雄二「あのバカも、伊達に《観察処分者》なんて呼ばれてないってことだ」

 

 

 

 

 

明久「仕方ない!こうなったら真っ向勝負だよ美波!」

美波「最初からそうしなさいよ!まったく…」

『さっさと片付けて坂本達を追うわよ』

『お前は確か点数が万全じゃなかったな、一応下がってろ。俺ら二人で十分だ』

『わかった』

 

犬死にを防ぐため消耗しているらしきBクラスの生徒が一人、距離を取った。

 

『『『試獣召喚(サモン)』』』

 

それぞれの召喚獣が出現する。明久の召喚獣は特攻服に木刀、島田の召喚獣は軍服にサーベルだ。

 

 

《数学》

『Fクラス 吉井 明久 51点

Fクラス 島田 美波 171点

VS

Bクラス 工藤 信二 159点

Bクラス 真田 由香 166点』

 

 

『な!?なんだその点数!?』

 

最下位クラスの生徒が自分達と同等の点数叩き出した証を見て驚くBクラス生徒達。

 

美波「数学を選んだのが間違いだったわね。これなら漢字が読めなくてもなんとか解けるのよ。この教科だけは柊にも匹敵するわ!」

明久「ちなみに美波、古典の点数は?」

美波「一桁よ!」

 

ここまで言い切られるといっそ清々しい。ちなみに和真に匹敵という話のカラクリは、和真の数学と物理の点数が他教科に比べてものすごく低いだけだったりする。

 

『島田は後だ!さきに吉井(ザコ)から殺るぞ!』

『了解!』

 

二人がかりで明久に向かっていくBクラスの召喚獣。

 

しかし、

 

明久「なめるなぁ!」

 

先に向かって来た召喚獣を〈明久〉は足払いでよろけさせ、木刀でしばいてこかせて、次にやってきた召喚獣の攻撃を紙一重でかわし、その背中に木刀を投げつけ先に倒れていた召喚獣のもとに飛ばす。

結果、二体の召喚獣は綺麗に激突し美波の召喚獣の近くに倒れ込んだ。

 

明久「美波、今だぁぁぁ!」

美波「え、あ…とりゃあああ!!」

 

明久の指示を受けた〈美波〉のサーベルが、身動きがとれない二体の召喚獣をまとめてバラバラに切り裂いた。

 

『Fクラス 吉井 明久 51点

Fクラス 島田 美波 171点

VS

Bクラス 工藤 信二 戦死

Bクラス 真田 由香 戦死』

 

『なん……だと……!?』

 

呆然とするBクラスの生徒。圧倒的に優位な状況だったのにいつの間にか戦死していたんだから無理もない。

 

鉄人「戦死者は補習!」

 

どこからともなく鉄人が現れて、呆然としたままのBクラス生徒を補習室に連れて行った。

 

美波「すごいじゃないアキ!」

明久「伊達に日頃こき使われてないよ。召喚獣の操作技術なら和真にだって負けないさ」

 

召喚獣の操作は思ったより難しい。

召喚獣は力が人間よりずっと強く、手足は短い。

この感覚は一朝一夕で慣れるものじゃない。大概の生徒は単純な操作しかできないため、点数の差で勝敗が決定してしまう。

しかし明久は《観察処分者》として日頃から召喚獣を使用した雑用を任されている上、フィールドバックで感覚を共有してきたため、もはや召喚獣と一心同体というレベルに達している。

 

明久「さて、と」

美波「形勢逆転したみたいだけど、どうする?」

『く、くそ!』

 

二対一では部が悪いと思ったのか、撤退する残りの一人。召喚フィールドの外にいたため、敵前逃亡にはならない。

 

明久「ふぅ……なんとか勝ったね」

美波「そうね…………1つ聞いてもいい?」

明久「ん?なに?」

美波「あんなことできるならDクラス戦でウチを見捨てる必用あった?」

 

Dクラス戦のとき怒り狂った美波が須川に引きづられていた理由は、それだったりする。

 

明久「………………………………」

 

しばし沈黙。

 

 

 

 

全力でダッシュする明久、それを追う美波。

最終的にいつも通りの二人だった。

 

 

 

 

明久「あー、疲れた!」

 

二人は教室に戻ってきた。何故か明久の頬に紅葉ができているが気にしないで貰いたい。

 

姫路「吉井君!無事だったんですね!」

 

戻ってきた明久に姫路が駆け寄る。

 

明久「うん、これぐらいなんともいだいっ!」

 

突然美波に足を踏まれ、明久は訳がわからない思いで美波の顔を伺う。

 

明久「し、島田さん。僕が何か悪い事でも」

美波「(ジトッ)」

明久「あ、ごめん、美波」

 

美波は不機嫌そうに明久を見る。姫路にでれでれしていたことと名前で呼ばれなかったことが不服らしい。

 

姫路「……随分と二人とも仲良くなってますね?」

明久「え?これで?」

 

明久(バカ)は気づいていないが随分距離が縮まっている。

 

雄二「お。戻ったか。お疲れさん」

秀吉「無事じゃったようじゃな」

 

秀吉と雄二もやってきて、ムッツリーニも明久を見て小さく頷く。明久がやられるとは誰も思ってなかったらしい。

 

雄二(だが、まだなんとかカバー可能な範囲だが、失ったものはデカいな…チクショウ!)

 

柊 和真と霧島 翔子、Fクラス三大戦力のうち二人の戦死。このことは士気にもかなり響くだろう。

実のところ雄二はこのBクラス戦を楽観視していた。もともとあの二人抜きでAクラスを倒すまでの作戦を考えていたため、あの二人のイレギュラーの参加により大幅にゆとりができていた。

結果、まんまと根本の策に嵌まってしまい、警戒していたはずの五十嵐 源太によって翔子を潰され、自分達を逃がすために和真までも犠牲になった。

雄二は自分の詰めの甘さを痛感していた。

 

雄二(だが和真が多くの敵を蹴散らし、そして翔子は一番警戒すべき五十嵐を倒してくれた。これで差し引きはゼロだ……根本、この借りは必ず返すぞ!)

 

その場に残る全員を見渡し雄二がいつになく真剣な表情で今後の作戦を告げる。

 

雄二「こうなった以上、Cクラスも敵だ。同盟戦がない以上は連戦という形になるだろうが、正直Bクラス戦の直後のCクラス戦はきつい」

明久「それならどうしようか?このままじゃ勝ってもCクラスの餌食だよ?」

秀吉「そうじゃな……」

雄二「心配するな。向こうがそう来るなら、こっちにも考えがある」

明久「考え?」

雄二「ああ。明日の朝に実行する。目には目を、だ」

 

この日はこれで解散し、続きは翌日に持ち越しとなった。

 




明久、大活躍!
一方美波は原作より距離を縮めることに成功しました。

今回はAクラス次席の久保君。

久保 利光
・性質……機動力度外視型
・総合科目……4000点前後 (学年4位)
・400点以上……現代文・古典
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……S
機動力……C
防御力……A
・腕輪……風の刃

細かい技術を捨てた重戦車型。相手の攻撃を避けずに受け止め、最大威力の攻撃を叩き込む。まさに『レベルを上げて物理で殴る』理論。使用者の見た目に反して脳筋スタイルである。

『風の刃』
消費50で武器のデスサイズから風の刃を飛ばす。シンプルだがそれゆえ使いやすく、対処もしにくい。

では。


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Bクラス戦決着

まさかの7000字オーバーです。
ちょっと詰め込みすぎました。


和真「やれやれ、もうこんな時間か。今日はラクロス部に殴り込みに行こうと思ってたのに」

翔子「……愚痴を言ってもしょうがない。戦死者は放課後まで補習の義務がある」

源太「………………」

和真「いやまぁそうだけどよ。明日もイキナリ補習室に直行しなきゃならねぇと思うと憂鬱だぜ…あぁ、体動かしてー」

翔子「……和真、なんだか鮫みたい」

源太「………………」

和真「はは、間違ってねぇかもな。それはそうと翔子、雄二は待ってくれてんのか?」

翔子「……うん。校門で待っててくれるって」

源太「………………」

和真「なんだかんだ言って大事にされてんなーお前。もう7時だぜ?普通帰ってるぞ流石に」

翔子「……こうして今雄二と一緒に下校できるのも和真のおかげ。あらためてありがとう」

源太「………………」

和真「俺は大したことしてねぇよ、最終的に行動したのはあいつだ。……ところで源太、なんでさっきから何も喋らねぇんだよ?」

源太「…………いやなんでテメェ等はそんな元気なんだよォォォ!?」

 

五十嵐源太の魂の叫び。

 

源太「おかしいだろ!?あの鉄人の扱きの後でなんでそんな何事もなかったように下校できるんだよ!?俺様なんかあと一歩で趣味は勉強、尊敬する人が二ノ宮金次郎になる寸前だったんだぞ!?俺様が尊敬するのはウルフ○ズだけだってのに!」

翔子「……そんなこと言われても」

和真「お前とは鍛え方が違うんだよ、ウルフ○ズが好きなくせにガッツ0の軟弱者が。せいぜい帰って明日の補習にビビりながら部屋の隅でガクブル震えてろこのチンピラが」

源太「ねぇなにこいつ?何様?殺っちゃっていいよな?原型なくなるほど顔面しばき回しても許されるよな?」

雄二「…………なにやってんだお前ら……」

 

 

 

 

 

 

翌朝、登校した明久達は昨日雄二が言っていた作戦を聞きに集まる。

 

雄二「まず秀吉にコイツを着てもらう」

 

そう言って鞄から取り出したのは女子の制服。

 

明久(雄二、それどうやって手に入れたの?君に何があったんだい?)

 

入手経路は十中八九ムッツリーニだろう。

 

秀吉「それは別に構わんが、ワシが女装してどうするんじゃ?」

 

女装させられることに対してまるで抵抗が無い。これでは女性扱いされても仕方がないのではなかろうか。

 

雄二「秀吉には木下優子として、Aクラスの使者を装いCクラスを挑発してもらう」

 

Aクラスには秀吉の双子の姉の木下優子が所属しており、一卵双生児のようにそっくりな容姿をしている。優子に化けてAクラスとして圧力をかけるという策だ。

 

雄二「と、いうわけで秀吉。用意してくれ」

秀吉「う、うむ……」

 

雄二から制服を受け取り、その場で生着替えを始める秀吉。男子制服とは着方からして別物なのにも関わらずなれた手つきで着替えていく。

 

明久(な、なんだろうこの胸のときめきは。相手は男なのに目が離せない)

 

明久が脳内で葛藤している傍ら、隣でムッツリーニが迷うことなく凄い速さでカメラのシャッターを切っていた。

 

雄二「よし、着替え終わったぞい。ん、皆どうした?」

 

着替え終わった秀吉は雄二をのぞくメンバーのなんとも言えない雰囲気を不思議に思う。

 

雄二「さぁな?俺にもよくわからん」

秀吉「おかしな連中じゃのう」

明久「…………でも冬服で助かったね!」

雄二「ああ、まったくだ」

秀吉「? どういうことじゃ?」

雄二「木下姉がちゃんと対策しているからか日焼け具合はさほど変わらないが、夏服だと秀吉の女々しい貧弱な体つきじゃあ一目で区別がついてしまうからな」

明久「そうそう。木下さん和真の影響で鍛えてるからか、アスリート体型らしいから」

秀吉「泣くぞお主等?ワシかてたまには引くぐらい本気で泣くぞ?」

雄二「とにかく、Cクラスに行くぞ」

秀吉「……うむ…」

 

雄二が半泣きの秀吉を連れて教室を出て行き、明久も後に続く。そのまましばらく歩き、Cクラスを目の前に立ち止まる明久達。

 

雄二「さて、ここからはすまないが一人で頼むぞ、秀吉」

 

Aクラスの使者を装うのならFクラスの明久達が一緒にいるのはまずいため、離れた場所に隠れ様子を見る事にする。

 

秀吉「気が進まんのう……」

 

当の木下はあまり乗り気ではないようだ。姉のふりをして敵を騙す、決して気持ちの良い話ではないだろう。

 

雄二「そこをなんとか頼む」

秀吉「むぅ……。仕方ないのう……」

雄二「悪いな。とにかくあいつらを挑発して、Aクラスに敵意を抱くように仕向けてくれ。秀吉なら出来るはずだ」

 

ただでさえ瓜二つの容姿に加えて秀吉は演劇部のホープと名高い演技の鬼、それくらい造作もないだろう。

 

秀吉「はぁ……。あまり期待せんでくれよ……」

 

溜め息と共に力なくCクラスに向かう秀吉。そんな様子を見届けた明久は不安そうに雄二に訪ねる。

 

明久「秀吉は大丈夫なの?別の作戦を考えた方が……」

雄二「多分大丈夫だろう」

明久「心配だなぁ……」

雄二「シッ。秀吉が教室に入るぞ」

 

秀吉がCクラスの教室に入る。

 

 

『静かにしなさい、この薄汚い豚ども!』

 

 

明久(……うわぁ)

『な、何よアンタ!』

 

この怒声は昨日のCクラス代表の小山だろう。いきなり豚呼ばわりされてご立腹のようだ。

 

『話しかけないで!豚臭いわ!』

 

自分から来ておいて豚呼ばわり、突っ込みどころが多すぎる。

 

『アンタはAクラスの木下!ちょっと点数がいいからっていい気になってるんじゃないわよ!何の用よ!』

 

雄二の思惑通り、小山は秀吉を優子だと思い込んでいる。

おまけにどうやら面識もあるようだ。

 

『アタシはね、こんな臭くて醜い教室が同じ校内にあるなんて我慢ならないの!貴方達なんて豚小屋で充分だわ!』

『なっ!言うに事欠いて私達にはFクラスがお似合いですって!?』

 

小山にとってFクラス=豚小屋のようだ。

 

『聞いた話ではなんでもFクラスとBクラスの戦争終結後、勝ったほうに攻めこむつもりじゃない?ハッ、家畜にも劣る下劣な魂胆ね!

手が穢れてしまうから本当は嫌だけど、もう一度アンタを叩き潰して、負け犬のアンタに相応しい教室に送ってあげようかと思っているの。覚悟しておきなさい、近いうちにアタシ達が薄汚いアンタ達を始末してあげるから!』

 

そう言い残し、木下は戻ってきた。 

 

秀吉「これで良かったかのう?」

 

妙にスッキリとした表情で秀吉は帰還した。姉に対して不満でもたまっていたのであろうかと思わざるを得ないほどノリノリの演技であった。

 

雄二「ああ、素晴らしい仕事だった」

『キィィィー!ムカツクぅ!Fクラスなんて相手にしてられないわ!Aクラス戦の準備を始めるわよ!あのときの屈辱、倍にして返してやるわ!』

 

Cクラスの教室からは小山のヒステリックな声が聞こえる。完全に頭に血が上っているようでこの後すぐにでもAクラスに宣戦布告をするだろう。

 

雄二「作戦もうまくいったことだし、俺達もBクラス戦の準備を始めるぞ」

明久「あ、うん」

 

Cクラスを罠に嵌め終わったFクラス一同はあと十分後に迫った試召戦争に備えるために明久達はFクラスへ向かった。

 

明久「ところで小山さんと木下さんに何があったの?もう一度とか屈辱とか」

秀吉「以前小山の所属するバレー部が『アクティブ』に惨敗したと聞いておってのう」

明久「……ああ……なるほど」

 

友達も多いが恨みを持っている人もそこそこ多いのが和真である。

 

 

 

 

 

 

 

 

秀吉「ドアと壁をうまく使うんじゃ!戦線を拡大させるでないぞ!」

 

あの後午前九時よりBクラス戦が再開され、明久達は昨日中断されたBクラス前に行き進軍を始めている。雄二曰く、『敵を教室内に閉じ込めよ』とのこと。ここで一つ問題があった。

姫路の様子が明らかにおかしい。

本来は総司令官である彼女が今日は一向に指示を出す気配がない。それどころか何にも参加しないようにしているようにも見える。

 

秀吉「勝負は極力単教科で挑むのじゃ!補給も念入りに行え!」

 

現在指揮をとっているのは秀吉。ここまでは指示どおり上手くやれている。

 

『左側出入口、押し戻されています!』

『古典の戦力が足りない!援軍を頼む!』

 

左側の出入口が押し戻される。Bクラスは文系が多いため、このままではまずい。

 

明久「姫路さん、左側に援護を!」

姫路「あ、そ、そのっ……」

 

姫路は戦線に加わらず何故か泣きそうな顔をしてオロオロしていて役に立ちそうもない。

 

明久(まずい!突破される!)「だあぁっ!」

 

人混みを掻き分け、左側の出入口に突っ込む。そして明久は立会人の竹中先生の耳元でささやく。

 

明久「……ヅラ、ずれてますよ」

竹中「っ!!少々席を外します!」

明久(やれやれ、いざという時の為の脅迫ネタ~古典教師編~をこんなところで使う羽目になるなんて)

 

いったいいくつあるんだとか、いざという時っていつだとか、色々つっこみたいが取り敢えずgjである。

 

明久「古典の点数が残っている人は左側の出入口に!消耗した人は補給に回って!」

 

明久の機転によりなんとか持ち直すことに成功するが、姫路の不自然な振る舞いが気になったのか明久は事情を聞きに行く。

 

明久「姫路さん、どうかしたの?」

姫路「そ、その、なんでもないですっ」

明久「そうは見えないよ。何かあったなら話してくれないかな」

姫路「ほ、本当になんでもないんです!」

 

『右側出入口、教科が現国に変更されました!』

『数学教師はどうした!』

『Bクラスに拉致された模様!』

 

両側がBクラスの得意科目……正直言ってかなりピンチである。

 

姫路「私が行きますっ!」

 

そう言って姫路は体の震えを振り払い、戦線に加わろうと駆け出した。

 

だが、

 

姫路「あ………うう………」

 

急にその動きを止めてうつむいてしまった。今にも泣きそうな表情で両拳を握り締めている。

 

明久(なんだろう?何かを見て動けなくなったようだけど……)

 

明久は姫路が見た方を目で追ってみる。その先には窓際で腕を組んでこちらを見下ろす根本の姿があった。何かを手に持っているようだ。

 

明久「っ!!」

 

それは三日前の放課後、姫路が恥ずかしがって明久から隠した封筒だった。明久の脳内で点と点が一つの線になる。

 

明久「……なるほどね。そういうことか」

 

昨日の協定から明久はずっと引っ掛かっていた。なぜ、あの根本があんな対等な条件の提案をしてきたのか。

根本はあの時点で既に姫路を無力化する算段が立っていたのだ。姫路が参加できないのなら、あの協定はBクラスが圧倒的に有利な条件である。

さらにその協定を利用して和真・翔子をも討ち取ることに成功する。結果、Fクラスの三大戦力は全て根本に封じられてしまった。

 

明久「姫路さん」

姫路「は、はい……?」

明久「具合が悪そうだからあまり戦線には加わらないように。試召戦争はこれで終わりじゃないんだから、体調管理には気をつけてもらわないと」

姫路「……はい」

明久「じゃあ、僕は用があるから行くね」

姫路「あ……!」

 

何か言いたげな姫路を置いて明久は駆け出す。姫路は何かを言いかけようとしたが、どうしても言葉が出てこなかった。

 

姫路「……私…………最低だ…………」

 

 

 

Fクラスの教室へと歩みを進める明久の表情は、とても柔和な笑顔を浮かべている。

 

明久「面白いことしてくれるじゃないか、根本君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明久(あの野郎、ブチ殺す)

 

ただし、眼には殺意の炎を灯しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明久「雄二っ!」

雄二「うん?どうした明久。脱走か?チョキでシバくぞ」

明久「話があるんだ」

雄二「……とりあえず、聞こうか」

 

雄二は明久の憤怒の目を見て何かを察したのか真面目な顔で聞く。 

 

明久「根本君の着ている制服が欲しいんだ」

雄二「……お前に何があったんだ?」

 

真剣な眼差しからの、あまりにぶっ飛んだ要求に雄二はどう反応すれば良いかわからなくなる。

 

姫路のラブレターをが根本に奪われた→それを取り返したい→でも姫路の心境を考えると、できればだれにも知られたくない→まず制服を没収してそこから抜き取ればいい→根本の制服が欲しい

 

いくらなんでもはしょりすぎである。それでは変な趣味に目覚めたと思われても仕方がない。

 

明久「ああ、いや、その。えーっと……」

雄二「…ま、まぁいいだろう。勝利の暁にはそれぐらいなんとかしてやろう」

 

完全に引き気味に雄二は答える。案の定である。

 

明久「それと、姫路さんを今回の戦闘から外して欲しい」

雄二「…理由は?」

明久「理由は言えない」

雄二「どうしても外さないとダメなのか?」

明久「うん。どうしても」

 

雄二は顎に手を当てて考える。

和真達がいない以上、姫路抜きでBクラスに挑むなど自殺行為もいいとこだ。普通はこんな頼み聞き入れられるわけがない。

 

雄二「……条件がある」

明久「条件?」

雄二「姫路が担うはずだった役割をお前がやるんだ。どうやってもいい。必ず成功させろ」

 

しかし雄二は明久の無茶な頼みを聞き入れた。

 

明久「もちろんやってみせる!絶対に成功させる!」

雄二「良い返事だ」

明久「それで、僕は何をしたらいい?」

雄二「タイミングを見計らって根本に攻撃をしかけろ。科目は何でもいい」

明久「皆のフォローは?」

雄二「ない。しかも、Bクラス教室の出入り口は今の状態のままだ」

明久「……難しい事を言ってくれるね」

 

今の戦闘はBクラスの前後の扉の二ヶ所で行われており、場所の条件から常に一対一となっている。これは少しでも時間を稼ぐためと、雄二の作戦に必要な行動らしい。この状況で根本に近づくには姫路達のような圧倒的火力が必要になる。当然明久にはそんな火力は明久にはない。

しかし明久はふとあることを思い出した。

 

明久「…わかった。やってみせる」

雄二「よし、じゃあ俺はDクラスに指示を出してくる。絶対に失敗するなよ。俺はお前を信頼している」

 

そう言って雄二は柄にもないセリフを吐いたのち、教室を後にした。

 

 

 

明久「……痛そうだよなぁ」

 

これからすることを想像するだけで身体に痛みが走る。

だが明久はすぐ覚悟を決めた。

 

明久「よっしゃ!あの外道に目に物見せてやる!」

 

頬を叩き自らを奮い立たせる。背負うことになるいくつものリスクを差し引いても、根本を潰さない理由は無い。

 

明久(方法がある。勝算もある。根性さえあればやれるのだから、やらない理由はどこにもない!後のことなんか知るもんか!)

 

明久「美波!武藤君と君島君も、協力してくれ!」

 

この三人は既に点数をかなり消費し、当面は補給テストを受けるのが任務になっている。

 

美波「どうしたの?」

武藤「何か用か?」

君島「補給テストがあるんだが」

明久「補給テストは中断。その代わり、僕に協力して欲しい。この戦争の鍵を握る大切な役割なんだ」

美波「……随分とマジな話みたいね」

明久「うん。ここからは冗談抜きだ」

美波「何をすればいいの?」

 

明久「僕と召喚獣で勝負して欲しい」

 

 

 

 

 

 

「二人とも、本当にやるんですか?」

 

Dクラスに召喚獣勝負の立会人として呼ばれた英語の遠藤先生がかなり困惑した表情で明久達二人に念を押す。

 

明久「はい。もちろんです」

美波「このバカとは一度決着をつけなきゃいけないんです」

向かい合う明久と美波。

遠藤「それならDクラスでやらなくても良いんじゃないですか?」

美波「仕方ないんです。このバカは《観察処分者》ですから。オンボロのFクラスで召喚したら、召喚獣の戦いの勢いで教室が崩れちゃうんで」

遠藤「もう一度考え直しては」

明久「いえ。やります。彼女には日頃の礼をしないと気が済みません」

遠藤「……わかりました。お互いを知る為に喧嘩をするというのも、教育としては重要かもしれませんね」

 

『試獣召喚(サモン)!』

 

明久「行けっ!」

 

〈美波〉目がけて駆け出す〈明久〉。木刀を強く握りしめ、壁を背にした相手に対し、駆ける勢いを乗せて大きく拳を振るった。

 

ドンッ!

 

明久「ぐ……ぅっ!」 

 

そのモーションの大きな攻撃はたやすくかわされる。

 

美波「どこ狙ってるのよこの下手くそ」

明久「こん……のぉっ!」

 

更に力を込めた一撃を〈明久〉が放つ。

しかし〈美波〉は横っ飛びでそれをかわし、〈明久〉の拳はまたも壁を打つ羽目になった。

 

明久「つぅ……っ!」

 

教室を揺るがすほどの力を込めた一撃だ。その反動も半端じゃない。脳天から爪先にかけて激痛が走った。

 

美波「アキ、時間がないわよ」

 

壁にかけてある時計を見上げながら美波は励ますように告げる。現在の時刻は午後二時五十七分。作戦開始まであと三分。

 

『お前らいい加減諦めろよな。機能から教室の出入り口に集まりやがって、暑苦しいことこの上ないっての』

『どうした?軟弱なBクラス代表サマはそろそろギブアップか?』

 

根本と雄二の声。姫路が戦えない分、雄二率いる本隊まで出場せざるを得なくなったのだろう。

 

明久「らぁっ!」

 

学習能力がないかのように壁に〈明久〉の拳が叩きつけられる。先の痛みが抜けないうちに新しい痛みが訪れる。

 

『はァ?ギブアップするのはそっちだろ?』

『無用な心配だな』

『そうか?柊も霧島も戦死して、頼みの綱の姫路も調子が悪そうだぜ?』

『……お前らじゃ役不足だからな。休ませておくさ』

『けっ!口だけは達者だな。負け組代表さんよぉ』

『負け組?それはお前のことになるだろうな』

 

明久「はぁぁっ!」

 

四度目の攻撃。

よく見ると拳から血が吹き出し、教室の床に血溜まりができていた。

 

『……さっきからドンドンと、壁がうるせぇな。何かやっているのか?』

『さぁな。人望のないお前に対しての嫌がらせじゃないのか?』

『けっ。言ってろ。どうせもうすぐ決着だ。お前ら、一気に押し出せ!』

『……態勢を立て直す!一旦下がるぞ!』

『どうした、散々ふかしておきながら逃げるのか!』

 

美波「アキ、そろそろよ」

明久「うん。わかっている」

 

明久(痛い…………苦しい…………だけど諦めるもんか!)

 

初日の和真の言葉が脳裏に浮かぶ。

 

『壁にぶち当てて壁を破壊して予想外の方向から奇襲をかけられる』

 

明久の狙いは最初からこのBクラスにつながる壁だった。

どうしても倒したい相手が壁の向こうにいる。その相手に通じる道はない。

ならばするべき行動は一つのみ。

 

明久(壁があったら殴って壊す!

 

道がなければこの手で創る!

 

僕を………僕達Fクラスを………誰だと思っている!!!

 

……そうだよね、和真)

 

『あとは任せたぞ、明久!』

 

敵の本隊を引き付け、雄二は壁の向こう側の明久によく通る声で告げる。時間はジャスト午後三時。作戦開始だ。

 

明久「だぁぁーーっしゃぁーっ!」

 

召喚獣に持てる力全てを注ぎ込んで、壁を攻撃する。

 

明久「ぐぅぅぅっ!」

 

全身に走る衝撃に神経が軋む。気絶しそうなほどの痛みが明久の体内で暴れ狂う。

 

しかしそれでも明久は諦めない。

 

明久「負ける……もんかぁぁぁ!」

 

ドゴォオオオオオッッッ!

 

豪快な音が響き渡り、BクラスとDクラスを隔てていた壁が跡形もなく崩壊した。

 

根本「ンなっ!?」

明久「くたばれ、根本 恭二ぃぃぃ!」

美波「遠藤先生!Fクラス島田が…」

『Bクラス山本が受けます!試獣召喚!』

明久「くっ近衛兵か!」

 

明久達と根本の距離は20メートル程度。広い教室のせいで随分と距離があるため近衛兵はすぐさまカバーに入る。

 

根本「は、ははっ!驚かせやがって!残念だったな!お前らの奇襲は失敗だ!」

 

取り繕うように笑う根本。

確かに明久達の奇襲は失敗だ。既に周りを近衛部隊全員に取り囲まれている。こうなった以上、点数に劣る明久達にこの場を切り抜ける術はない。

 

だが明久達の役目はすでに終えている。

 

ダン、ダンッ!

 

出入口を人で埋め尽くされ、四月とは思えないほどの熱気がこもった教室。そこに突如現れた生徒と教師、二人分の着地音が響き渡る。

エアコンが停止したので、涼を求める為に開け放たれた窓。そこから屋上よりロープを使って二人の人影が飛び込み、根本恭二の前に降り立った。

体育教師の大島先生だからこそできる荒業だ。

 

「…Fクラス、土屋 康太」

 

根本「き、キサマ……!」

 

「……Bクラス根本 恭二に保健体育勝負を申し込む」

 

根本「ムッツリィニィーーッ!」

 

明久達が近衛兵を引き付け丸裸になったので、根本にもう逃げ場はない。

 

ムッツリーニ「…試獣召喚」

 

 

『Fクラス 土屋康太 保健体育 541点

VS

Bクラス 根本恭二 保健体育 203点』

 

 

〈ムッツリーニ〉は手にした小太刀を一閃し、一撃で敵を切り捨てる。

今ここに、Bクラス戦は終結した。

 




原作とほぼ同じ展開でしたがこのシーンは個人的に変えたくなかったので仕方ありません。
直接聞いたわけでもないのに伝染するカミナウィルス。

今日はBクラス戦に終止符を打ったムッツリーニの召喚獣。

土屋 康太
・性質……防御軽視&速度重視型
・総合科目……950点前後
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……F+
機動力……E
防御力……F
(保健体育)
攻撃力……A+
機動力……S+
防御力……A
・腕輪……加速

総合科目はあくまでFクラス上位レベル。しかし保健体育のスペックは学年首席すらも上回る。さらに本人のモチベーション次第ではさらに上の点数も狙える。

『加速』
文字通り速度が上がる。直接的な攻撃力は無いが消費点数が30点と他と比べて低い。そもそもこのステータスで先制攻撃されるのだからたまったものではない。ちなみに人間が操作するには手に余るほどのスピードのため、発動中召喚獣は近くの敵にオートで斬りかかる補正がさりげなくつく。
和真の腕輪能力の天敵。攻撃は全部避けられ、その隙をついて切り裂かれる。まぁ和真は保健体育では能力が使えないので意味はないが。

では。


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因果応報

散々出し惜しみしていた蒼介の召喚獣と点数が今回ようやく明かされます。


翔子「……雄二……!」

和真「無事勝ったみてぇだな!」

 

終戦後、生き残っていた生徒も戦死していた生徒もBクラス教室に集合した。

 

明久「うぅ……。痛いよう、痛いよう……」

和真「……なあ秀吉、明久が痛がってんのはそこのぶっ壊れた壁と関係があんのか?」

秀吉「まさにその通りじゃ。明久、随分と思い切った行動にでたのう」

 

素手でコンクリートの壁を壊したのだ、痛みが100%跳ね返るわけじゃないとは言え、痛いに決まっている。

 

秀吉「なんともお主らしい作戦じゃったな」

明久「で、でしょ?もっと褒めてもいいと思うよ?」

秀吉「後のことを何も考えず、自分の立場を追い詰める、男気溢れる素晴らしい作戦じゃな」

明久「……遠まわしに馬鹿って言ってない?」

和真「まぁどう考えてもバカの所業だな」

明久「失礼な!?そもそもこの作戦の発案者は和真でしょ!?」

和真「確かに前そんなこと言ったがサンドバック案と並んでいる時点でろくな案じゃねぇだろ…」

 

校舎の壁を破壊。問題にならないわけがない。これで明久の放課後の予定は職員室でのhurtful communicationで埋まってしまった。初犯でなければ留年や退学になっていたかもしれない。

 

雄二「ま、それが明久の強みだからな」

明久「馬鹿が強み!?なんて不名誉な!」

雄二「さて、それじゃ嬉し恥ずかし戦後対談といくか。な、負け組み代表?」

根本「……」

 

床に座り込み黙り込んでいる根本。負けたことが余程信じられないことなのだろう。

 

雄二「本来なら設備を明け渡してもらい、お前らには素敵な卓袱台をプレゼントするところだが、特別に免除してやらんでもない」

 

そんな雄二の発言に、周囲の連中が騒ぎ出す。

 

雄二「落ち着け、お前ら。前にも言ったが俺達の目標はAクラスだ。Bクラスを手に入れる必要はない」

秀吉「うむ。確かに」

雄二「ここはあくまで通過点だ。だから、Bクラスが条件を呑めば解放してやろうかと思う」

 

その言葉でFクラスの皆は納得したような表情になる。Dクラス戦のときにも言った事だし、雄二の性格を理解してきたのだろう。

 

和真(さて、次はいよいよAクラスか。やっとここまで来たぜ……ソウスケ!)

 

ちなみに和真はもう次の戦争のことを考えていてBクラスなどすでに眼中に無いのか毛ほども意識を向けていなかったりする。

 

根本「……条件は何だ」

雄二「条件?それはお前だよ、負け組み代表さん」

根本「俺、だと?」

雄二「ああ。お前には散々好き勝手やってもらったし、正直去年から目障りだったんだよな」

 

すごい言われ様だか否定できないので、周りの人間は誰もフォローしない。本人もわかってるみたいだ。

 

雄二「そこで、お前らBクラスに特別チャンスだ。Aクラスに言って、試召戦争の準備ができていると宣言して来い。そうすれば今回は設備については見逃してやってもいい。ただし、宣戦布告はするな。すると戦争は避けられないからな。あくまでも戦争の意思と準備があるとだけ伝えるんだ」

根本「……それだけでいいのか?」

 

疑うような根本の視線。雄二の当初の計画ではそれだけのはずだったのだが。

 

雄二「ああ。Bクラス代表がコレを着て、言ったとおりにしたら見逃そう」 

 

そう言って雄二が取り出したのは、先程秀吉が来ていた制服。これは明久が制服を手に入れるための手段だが、恐らく雄二の個人的恨みも含まれてるだろう。

 

根本「ば、馬鹿なことを言うな!この俺がそんなふざけたことを……!」

 

予想外の要求に根本が慌てふためく。

 

和真(そりゃ嫌だよな。あれを抵抗なく着れる男なんざいねぇ……と思う)

秀吉(なぜじゃろう……何か心に重いものが…)

 

『Bクラス生徒全員で必ず実行させよう!』

『任せて!必ずやらせるから!』

『それだけで教室を守れるなら、やらない手ないな!』

 

突如、アゲアゲになるBクラス一同。この光景を見ると根本の人望のなさが窺える。

 

雄二「んじゃ、決定だな」

根本「くっ!よ、寄るな!変態ぐふぅっ!」

源太「とりあえず黙らせといたぜ。あースッキリした」

雄二「お、おう。ありがとう」

 

散々気に食わない作戦に付き合わされた恨み+鉄人の補修&和真の罵詈雑言で蓄積したストレスを込めた源太の一撃が根本のボディに直撃する。

 

源太「そういうわけで和真、俺様は今日行けねぇわ」

和真「ああ了解。ソウスケ達もこの後Cクラスとの試召戦争があるから無理らしいし、ラクロス部に殴り込みはまた今度か…」

 

やっぱり忘れていなかったようであるが、優先順位としてそこまで高くはないので先送りにする。

 

秀吉「では、着付けに移るとするか。明久、任せたぞ」

明久「了解っ」

 

明久が倒れている根本に近づき、制服を脱がせる。その表情は当然、不愉快そうな顔である。

 

根本「う、うぅ……」

 

気色悪いうめき声をあげる根本。このままだと目を覚ましてしまいそうだ。

 

明久「ていっ!」

根本「がふっ!」 

 

そこで明久が追加攻撃。その後男子制服を剥ぎ、女子の制服をあてがうが、やり方がわからず手が止まる。

 

「私がやってあげるよ」

 

するとBクラスの女子の一人がそう提案した。

 

明久「そう?悪いね。それじゃ、折角だし可愛くしてあげて」

「それは無理。土台が腐ってるから」

 

笑顔で容赦ない評価を下すBクラス女子。

根本には一片の慈悲もないらしい。

 

明久「じゃ、よろしく」

 

明久はそう言い。根本の制服を持ってその場を離れた。

ごそごそと根本の制服を探る。

 

和真「なにやってんだ明久?いくら金欠で相手が根本だからって財布盗むのはよせ」

明久「違うよ!?…………って、あぁ!」

和真「?」

明久「違うからね!?姫路さんの大切なもの探してるとかじゃないからね!」

 

語るに落ちるとはこのことだ。この男は本当に誤魔化そうという意思はあるのだろうか。

 

和真「……そうかい」

 

しかし事情を察したのか気を聞かせて明久から離れる和真。

 

明久(よし、なんとか誤魔化せた…)

 

本当にこいつはおめでたい頭である。

 

明久「……あったあった」

 

姫路の封筒を取り出し、ポケットに入れる。

 

明久(さて、この制服はどうしよう?……よし、捨てちゃおう。折角だから根本君には女子の制服の着心地を家まで楽しんでもらおう)

 

それを楽しめるのはよほど業の深い人間だろう。当然明久もそれは理解している。理解しているからこそ実行するのだ。

 

明久「落とし物は持ち主に、っと」

 

取り戻したブツを姫路の鞄に入れておく。これでミッションコンプリートだ。

 

「吉井君!」

明久「ふぇっ!?」

 

背後から急に声をかけられて間の抜けた悲鳴をあげる明久。慌てて振り向くと、そこにはなにやら申し訳なさそうな姫路が立っていた。

 

姫路「吉井君……!」

明久「ど、どうかした?」

 

鞄をいじっている姿を見られ、慌てる明久。すると、そんな明久に姫路は涙を浮かべて正面から抱きついてきた。

 

明久「ほわぁぁっっと!?」

 

ほわっと=what + why(訳)なに!?なんで!?

 

姫路「あ、ありがとう、ございます……!わ、私、ずっと、どうしていいか、わかんなくて……!」

 

今どうしていいかわからないのは間違いなく明久の方であると思う。

 

明久「と、とにかく落ち着いて。泣かれると僕も困るよ」

姫路「は、はい……」

 

精神の安定を図るため姫路を引き離す明久。

 

明久(……ってしまった!引き離してどうする!こんなチャンスは二度とないだろうが)

 

後の祭りである。

 

姫路「いきなりすみません……」

明久(ああっ言いたい!もう一度抱きついてってお願いしたい!)

明久「も、もう一度…」

姫路「はい?」

明久(げっ!思わず口に出てた!なんとか誤魔化さないと!)

明久「もう一度壁を壊したい!」(って馬鹿ぁっ!僕の馬鹿ぁっ!お前はどこのテロリストだよ!)

 

壁があったら殴って壊すと言っても流石に限度というものがある。

 

姫路「あの、更に壊したら留年させられちゃうと思いますよ……」

 

姫路はとても気の毒そうな目で明久を見る。先程までの不安定な表情はより不安定な明久を見ていたお陰で安定したようだ。

 

明久「……それじゃ、皆のところに行こうか」

姫路「あ、待ってください!」

 

いたたまれない気持ちで逃げようとする明久の袖を握って引き留める姫路。

 

明久「な、なに?」

姫路「あの……手紙、ありがとうございました」

 

うつむきがちに小さな声で言う姫路。

 

明久「別に、ただ根本君の制服から姫路さんの手紙が出てきたから戻しただけだよ」

姫路「それってウソ、ですよね?」

明久「いや、そんなことは」

姫路「やっぱり吉井君は優しいです。振り分け試験で途中退席した時だって『具合が悪くて退席するだけでFクラス行きはおかしい』って、私の為にあんなに先生と言い合いをしてくれていたし……」

明久(そういえばそんなこともあったなぁ。あのときは先生に冷たくあしらわれたから、逆に熱くなっちゃったっけ)

姫路「それに、この戦争って……私の為にやってくれてるんですよね?」

明久「え!?い、いや!そんなことは!」

姫路「ふふっ。誤魔化してもダメです。柊君に全部聞いちゃいましたから」

明久(和真ァァァ!?なんでばらしちゃったの!?ねえ!?)

 

『わりぃ、全部ばらしちゃった♪』

 

全く悪いと思っていなさそうな満面の笑みを浮かべた和真が明久の脳裏に浮かんだ。思わずぶん殴りたくなるような笑顔だ。

 

姫路「凄く嬉しかったです。吉井君は優しくて、小学校の時から変わっていなくて…」

明久「そ、その手紙、うまくいくといいね!」

 

妙な空気にむずがゆくなり、強引に話題を変える。

 

姫路「あ……。はいっ!頑張りますっ!」

 

満面の笑みで姫路は応える。

 

明久(この子は本当に和真のことが好きなんだな。わかっていたことだし、僕が和真に敵わないことも自覚している。悔しいけどしょうがない)

明久「で、いつ告白するの?」

姫路「え、ええと……全部が終わったら……」

明久「そっか。けど、それなら直接言った方がいいかもね」

姫路「そ、そうですか?吉井君はその方が好きですか?」

明久「うん。少なくとも僕なら顔を合わせて行ってもらう方が嬉しいよ」

姫路「本当ですか?今言ったこと、忘れないで下さいね?」

明久「え?あ、うん」(まあ和真も多分直接言ってもらうほうが好きだよね、あの性格的に)

 

『こ、この服、ヤケにスカートが短いぞ!』

『いいからキリキリ歩け』

『さ、坂本め!よくも俺にこんなことを』

「無駄口を叩くんじゃねぇよ!これから撮影会もあるから時間がねぇんだぞ!』

『き、聞いてないぞ五十嵐!』

『当たり前だ!今思い付いたからな!』

『OK、採用!』

『貴様等ァァァ!』

 

いつの間にか源太が撮影会までスケジュールに入れていた。これからの出来事は根本には一生忘れられないトラウマになるに違いない。

 

明久「…とにかく、頑張ってね」

姫路「はいっ!ありがとうございます!」

 

元気よく返事をして、姫路はとても軽やかな足取りで教室を出て行った。

 

明久「………………さてと」

 

和真の席に歩み寄り、鞄を取り出す。

 

明久「とりあえず、和真の教科書に卑猥な落書きでもしておこう」(僕がそう簡単に人の幸せを祝ってやる人間だと思うなよ!)

 

お前は小学生か。

 

和真「随分愉快なことしようとしてるじゃねぇか」

明久「そうでし………………ょ…………」

 

悪が栄えた試しなしとは良くいったもので、いつの間にか明久の隣に和真がいた。

 

和真「で?誰が誰の何に何をするって?」

 

バキボキと腕を鳴らしながら明久に問う。気のせいか、和真の後ろにライオンらしき動物が浮き出ている。

 

明久「スミマセンごめんなさい僕が悪かったです許してください心からお詫びしますアイムソーリー」

 

自らが補食される側であると痛感させられた明久はそれはもう見事な平謝り。

 

和真「ったく。何くだらねぇこと企んでんだよ……んじゃ俺テニス部に用があるからもう行くぞ」

明久「今日も?……ちょっとはスポーツもほどほどにできないかな?」(姫路さんのために少し自重してもらおう)

 

体が弱い姫路のために、和真の運動部巡りを減らそうとする明久。だが、

 

和真「死んでもやだ」

明久「そこまで!?」

 

そんな提案をこのアウトドア派筆頭が聞き入れるはずがない。

 

和真「当たり前だろ。何もせずおとなしくしているだけなんざ御免だ。つか、そんな奴もう俺じゃねぇよ」

明久「…そっか……そうだよね……和真だもんね……」(姫路さん、君の恋路は思ったより険しいらしい)

 

確かに明久がこの様子だと、姫路の恋が実を結ぶのはまだまだ先のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BクラスとFクラスの試召戦争修了直後、すぐさまCクラス対Aクラスの試召戦争が始まった。

 

小山(見てなさいよ木下!ギッタギタにしてやるわ!)

 

Cクラス代表の小山 優香は怒りに燃えていた。

そんななか、教室前で待機させていたはずの生徒が教室に駆け込んできた

『だ、代表!』

小山「なによ!持ち場を離れるんじゃないわよ!」

『それどころじゃないんです!』

小山「?いったいどういう…」

直後、Cクラスのドアが勢いよく開かれ、一人の生徒が入ってきた。

 

「正直、手応えのあるアイテとは言えないな…」

 

小山「…なっ!?あ…あんたは!?」

 

 

 

 

蒼介「さて、この戦争を終わらせよう」

 

学年主任高橋先生を連れたAクラス学年代表、鳳 蒼介であった。

AクラスとCクラスは教室が隣同士であり、どうやったって短期決戦になる。

雄二達Fクラスは戦力不足が否めないので後半は代表である雄二自らが戦線に出ることもある。

 

だがAクラス代表が開始早々自ら敵地に乗り込んで来るなんて誰が予想できよう。

 

小山「…はっ!何を血迷ったかしらないけど探す手間が省けたわ!あんた達、こいつを仕留めなさい!」

 

小山に命令され、近衛兵達が前に出る。

 

蒼介「高橋先生、Aクラス鳳が総合科目勝負を申し込みます。試獣召喚(サモン)!」

『試獣召喚!』

 

それぞれの召喚獣が出現する。蒼介の召喚獣は蒼を基調とした武者鎧に和服、武器は草薙の剣だ。続けて点数が表示される。

 

 

『Aクラス 鳳 蒼介 5833点

VS

Cクラス生徒×10 平均1700点』

 

 

表示された蒼介の点数は、教師すらも凌駕しかねない反則的なまでの数値であった。

 

『うっ…』

『覚悟はしていたが、なんて点数だ…』

『あんなのいったいどうすれば…』

 

あまりの点数差にCクラス生徒一同の闘争心はどんどん削がれていく。急激にへたれていく近衛兵達に小山は鼻息荒く激を飛ばす。

 

小山「なにびびってるのよアンタ達!全員で囲めば倒せない相手じゃないでしょ!早く殺りなさい!」

 

小山の鶴の一声を受け、覚悟を決め〈蒼介〉を取り囲む近衛兵達。

 

『やあぁぁぁぁぁ!』

 

〈蒼介〉に一斉に攻撃を仕掛ける。〈蒼介〉の武器では和真のように巨大でなく薙ぎ払うことはできないため、そのまま攻撃を受けてしまう。

 

しかし、

 

蒼介「無駄だ」

 

〈蒼介〉はそれらの攻撃に動じることなく近衛兵達を一人残らず切り裂いた。点数差もあり一撃で全員戦死した。

 

 

『Aクラス 鳳 蒼介 5833点

VS

Cクラス生徒×10 戦死』

 

 

小山「どういうこと……なんであんたは傷ひとつついてないのよ!?」

 

小山の言った通り、蒼介の召喚獣は近衛兵達の攻撃を受けたのにもかかわらず一切ダメージを受けていなかった。

 

蒼介「お前が知る必要などない。さぁ決着だ、その首貰い受ける」

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「改めて見ると…えげつないわね、蒼介の腕輪」

優子「そうね…というか、ほとんど代表一人で片付けちゃったわね…」

飛鳥「試召戦争のセオリーをガン無視した作戦だったしね…」

 

念のため教室の外で待機していた二人は驚き半分、呆れ半分

といった様子で代表の一人舞台を見届けた。

 

優子「というか秀吉のやつ…後で覚えてなさいよ…」

飛鳥「優子、禍々しいオーラが出てるわよ…」

 

どうやら秀吉の寿命は長くはもたないらしい。




というわけで蒼介君無双でした。
二位の翔子さんですら千点差以上……
大人数で闘うと敗北する法則。
彼の武者鎧のモチーフは神羅万象シリーズの『聖龍王サイガ』をイメージしています。

鳳 蒼介
・性質……バランス型
・総合科目……5800点前後 (学年1位)
・400点以上……全科目
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……A+
機動力……A+
防御力……A+
・腕輪……まだ不明

全能力が最高レベルの完璧なオールラウンダー。
Cクラスの猛攻が通用しなかったのはどうやら彼の腕輪能力が関係しているらしい。

では。


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交渉

今回はまだ試召戦争は始まりません。


Bクラス戦が終結してから二日後、和真達が点数補給のテストを終えた日の朝。残すAクラス戦についての最後の説明会を受けていた。

 

雄二「まずは皆に礼を言いたい。周りの連中には不可能だと言われていたにも関わらずここまで来れたのは、他でもない皆の協力があってのことだ。感謝している」

 

壇上の雄二が珍しく素直に礼を言う。

 

明久「ゆ、雄二、どうしたのさ。らしくないよ?」

和真「素直なお前なんざきしょいだけだよ。自重しろバカヤロー」

雄二「ああ。自分でもそう思…んだと和真テメェ!……とにかく、これは偽らざる俺の気持ちだ。ここまで来た以上、絶対Aクラスにも勝ちたい。勝って、生き残るには勉強すればいいってもんじゃないという現実を、教師どもに突きつけるんだ!」

『おおーっ!』

『そうだーっ!』

『勉強だけじゃねぇんだーっ!』

和真(確かにデスクワークのみで全てが決まる世界なんざ死んでもごめんだな)

雄二「皆ありがとう。そして残るAクラス戦だが、これは一騎討ちで決着をつけたいと考えている」

 

先日の昼食時にいたメンバーは既に聞いた話だったので明久達は驚かなかったがそれ以外の連中はかなり驚いており、教室中にざわめきが広がった。

 

『どういうことだ?』

『誰と誰が一騎討ちをするんだ?』

『それで本当に勝てるのか?』

 

雄二「落ち着いてくれ。それを今から説明する」

 

バンバン、と机を叩いて皆を静まらせる。蒼介を上回る点数を期待できる生徒などFクラスで、と言うより二年でたった一人しかいない。

 

雄二「やるのはこちらからはムッツリーニ、相手は恐らく鳳をだしてくるだろう。やってくれるな?ムッツリーニ」

ムッツリーニ「…………(グッ)」

 

そう。ムッツリーニの保健体育の成績はあの蒼介をも上回るので、人選としては彼が妥当だろう。

しかしこの作戦には問題がある。

 

明久「でも雄二、そんな提案Aクラスが聞き入れてくれるの?」

雄二「まあ普通に頼んでも無理だな」

 

言うまでもなくこの提案はFクラスに有利すぎる。一騎討ちだと二クラスの戦力差が大幅に縮まってしまう上、ムッツリーニが出る以上、科目選択権もFクラスに無ければ成り立たない。普通こんな提案がまかり通るはずがないだろう。

 

明久「じゃあどうするのさ?」

雄二「そこで今まで勝ち取ってきたものが聞いてくるんだよ。今からそれを説明してやる。」

 

一度言葉を切って雄二は作戦を説明する。

 

雄二「まず交渉に行く時間は今日この後行われる生徒会会議の間だ。この間、生徒会長である鳳を含む数名は会議に出席していて、クラス間の交渉権は設置されている代表代理に移る」

 

クラス代表が生徒会会議に出席中、試召戦争を除く代表の権限は全て代表代理が受け持つ。

 

美波「? なんでわざわざそんなことするのよ?」

雄二「鳳は生徒会長だ。各クラスにどの生徒が在籍しているか、調べようと思えばすぐ調べられる立場だ」

秀吉「なるほど。学年で唯一自分を上回る点数を持つムッツリーニのことを調べていても不思議ではないのう」

雄二「ああ。それでこちらの狙いがバレてしまうかもしれないからな」

和真「………………………………」

 

雄二「次にBクラスが俺達次第でAクラスに戦争を仕掛けることになることを仄めかす。メリットが無い試召戦争の二連続、相手にとってはたまったものではないだろう」

明久「なるほど。代理の人は多分こちらが霧島さんをだしてくると思ってそれを引き受ける、と」

雄二「いや、代理を任されているほどの生徒だ、そんな軽はずみな行動をとるとは思えない。それにこのままじゃ科目選択権は手に入らない」

翔子「…じゃあ、どうするの?」

雄二「相手は恐らく念のため、一騎討ちを複数回やることを提案してくる。この提案を五回勝負で提案する」

明久「へ?どういうこと?」

雄二「まあ聞け。そして、科目選択権を交代制にする。それの先攻は頼めば格下の俺達におそらく譲ってくれるだろう」

翔子「…つまり選択権のある三試合を勝ちに行き、二試合は捨てるの?」

姫路「でもそれって鳳君が何試合目に出るかわからないと…」

雄二「その点は心配ない。なあ和真」

和真「ああ。あいつの性格からしてラストに自分を置くだろうし、Aクラスの連中もそうさせるだろう。絶対的エースを大将に据えるのは常識だ」

雄二「そうだ。向こうに選択権がある二試合はどうしようもねぇ。だがこっちに選択権がある試合は全部頂く。そうすれば俺達の机は…」

『システムデスクだ!』

和真「………………………(果たしてそううまくいくかね?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

優子「一騎討ち?」

雄二「ああ。Fクラスは試召戦争として、Aクラスに一騎討ちを申し込む」

 

恒例の宣戦布告。今回は代表の雄二を筆頭に、和真、明久、姫路、秀吉、ムッツリーニ、翔子、美波と首脳陣を揃えてAクラスに来ていた。

 

明久(…毎回こうしてたら僕の制服は繕いだらけにならなかったのでは?)

 

そんな簡単なことに気づかないバカが悪い。

 

優子「うーん、何が狙いなの?」

 

雄二と交渉のテーブルについているのは秀吉の双子の姉で代表代理の一人である優子。学力、身体能力ともに秀吉よりはるかに高く、『アクティブ』のメンバーでもある。

 

雄二「もちろん俺達Fクラスの勝利が狙いだ」

 

優子が訝しむのも無理はない。下位クラスの雄二達が一騎討ちで学園トップの蒼介に挑む事時代不自然なのだし何か裏あると考えているのだろう。

 

優子「面倒な試召戦争を手軽に終わらせる事が出来るのはありがたいけどね、だからと言ってわざわざリスクを冒す必要もないかな」

雄二「賢明だな」

 

ここまでは予想通り。ここからが交渉の本番となる。

 

雄二「ところで、Cクラスとの試召戦争はどうだった?」

優子「大体5分くらいでうちの代表が一人で片付けたわ」

雄二「………………そ、そうか」

 

あまりの衝撃発言に一瞬フリーズする雄二。

試召戦争はどちらかのクラス代表が戦死すれば終結する。それゆえ代表は極力戦線にでないことが常識だ。

蒼介のやったそれは、将棋で例えると王将を敵陣に斬り込ませるような暴挙、邪道中の邪道な行動なのだ。

 

和真「おいおい、やりたい放題だなあいつ」

優子「とりあえずアンタが言う資格はないと思う」

皆『同感』

和真「お前ら打ち合わせでもしたのかよ…」

 

クラスの垣根を越えた50人以上の生徒の心が一つになる。かなりのレアケースと言っていいだろう。

 

雄二「……まあそれはともかく、Bクラスとやりあう気はないか?」

優子「Bクラスって……昨日来ていたあの……」

 

思い出したくもないものを思い出してしまったのか、優子の顔色が急速に悪くなる。交渉を見守っていたAクラス生徒もトラウマを掘り起こされたようにもがき苦しんでいる。

 

雄二「ああ。アレが代表がやってるクラスだ。幸い宣戦布告はまだされていないようだが、さてさて。どうなることやら」

優子「でも、BクラスはFクラスと戦争したから、三ヶ月の準備期間を取らない限り試召戦争はできないはずよね?」

 

試召戦争の決まりの一つ、準備期間。

戦争に負けたクラスは三ヶ月の間、自分から宣戦布告できない。これは負けたクラスがすぐに再戦を申し込んで、戦争が泥沼化しない為の取り決めだ。

 

雄二「知ってるだろ?実情はどうあれ、対外的にはあの戦争は『和平交渉にて終結』という形になってることを。規約にはなんの問題もない。……そしてDクラスもだ」

優子「……それって脅迫?」

和真(なんかこのやり方、スッキリしねぇなぁ……)

 

優子「うーん……わかったわよ。何を企んでるか知らないけど、代表が負けるなんてありえないし、その提案受けるわ」

明久「え?本当?」

 

一触即発になるかと思えば意外とあっさりとした返事に驚き、会話に参加していない明久が声をあげてしまう。

 

優子「だってあんな格好した代表のいるクラスと戦争なんて嫌だし……」

 

よほど根本の女装姿がお気に召さなかったらしい。周りのAクラス生徒もほっと一息つく。

 

雄二(さて、ここからだ)

優子「でも、こちらからも提案」

雄二(やっぱり来たな)

 

 

 

 

優子「Fクラスがそういう交渉をしてきたらこのルールで受けろって代表から言われてるから、このルールなら受けてもいいわよ」

 

 

 

 

雄二「…………なに?」

 

そう言って優子は雄二に何かが書かれたメモ用紙を渡す。用紙には達筆な楷書体で文字がずらり。

 

雄二「………………っ!?」

 

書かれた内容を読み進めると、雄二の顔が驚愕に染まる。それを見てFクラスのメンバーもメモ用紙に目を通す。そこに書かれた内容は、

 

『…………………………こ、これは!?』

和真(……………………やっぱり読まれてたか)

 

 

『~Aクラス対Fクラス試召戦争特別ルール~

・勝負は一騎討ちを五回行い、勝ち数が多いクラスが勝利となる

・選択科目権は一回戦をFクラスが持ち、その後交代で科目を決めていく

・どの生徒が何回戦に戦うかをお互い決めておき、事前に立会人の教師に報告する』

 

雄二が先程述べた勝負方法とほとんど同じ無いようであった。雄二は苦虫を噛み潰したような表情でAクラスの提案を受け入れた。

 

雄二「…………わかった。その条件を呑もう」

優子「ホント?嬉しいな♪」

雄二「十一時からで構わないか?」

優子「わかったわ、代表もその時間には戻ってくるだろうし」

 

明久「交渉する手間が省けたね、和真」

和真「……そんな簡単な話じゃないんだがな」

明久「?」

 

雄二「よし。交渉成立だ。一旦教室に戻るぞ」

明久「そうだね。皆にも報告しなくちゃいけないからね」

 

交渉を終了し、Aクラスをあとにしようとする。

しかし優子は双子の弟を無事に帰すつもりは微塵もなかった。

 

優子「あ、ちょっと待って。秀吉に用があるんだった」

秀吉「? なんじゃ姉上?」

優子「秀吉、Cクラスの小山さんって知ってる?」

秀吉「はて、誰じゃ?」

明久(ん?なんかマズいことが起きている気がする。Cクラスの小山さんって、確かこの前秀吉が……)

和真(あ、ダメだ、かなり怒ってるなありゃ。ああなったら俺でも手に負えねぇ。なにがあったか知らんが秀吉、ドンマイ)

優子「ならいいわ。その代わり、ちょっとこっちに来てくれる?」

秀吉「うん?ワシを廊下に連れ出してどうするんじゃ姉上?」

明久(秀吉が木下さんのフリをして罵倒しまくった相手だったような……)

 

 

『姉上、どうし…どうしてワシの腕を掴む?』

『アンタ、Cクラスで何してくれたのかしら?どうしてアタシがCクラスの人達を豚呼ばわりしていることになっているのかなぁ?』

『はっはっは。それはじゃな、姉上の本性をワシなりに推測して……あ、姉上っ!ちがっ……!その間接はそっちには曲がらなっ……!』

 

 

ガラガラガラ

 

扉を開けて優子だけ戻ってくる。

 

優子「秀吉は具合が悪いから早退するってさ♪」

雄二「そ、そうか……」

 

にこやかに笑いかけながらハンカチで返り血を拭う優子。さすがの雄二も恐怖でなにも言えないみたいだ。

 

和真(えげつねぇ……相変わらず秀吉だけには容赦ねぇな、あいつ……さらば秀吉、お前のことは忘れない)

 

交渉を終了し、Fクラス一同はAクラスを後にする。

 

 




注:秀吉は生きてます
今回はBクラスのエース、源太くんです。

五十嵐 源太
・性質……攻撃重視&防御軽視視型
・総合科目……1900点前後(学年52位)
・400点以上……英語
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……A
機動力……C+
防御力……D
・腕輪……巨人の爪

和真と似たタイプのステータスである。まああそこまで極端ではないが。

『巨人の爪』
消費50で左手を鋭い爪を持った巨大な腕に変える能力。破壊力もかなり高く、状況に応じて攻撃も防御も可能であるが、あまりの重量から発動中召喚獣は動けないというリスクがある。


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vsAクラス

よく料理で耳にしますけど、コクっていったいなんなんでしょう?


雄二「和真。ちょっといいか」

和真「どうした?」

雄二「お前が一番Aクラスに詳しいだろ?試召戦争のオーダーを決めるの手伝ってくれ」

和真「そういうことか。了解」

翔子「……私も手伝う」

 

試召戦争の際の大まかな流れは大抵自頭の良いこの三人で決める。その後状況に応じて雄二の奇抜な作戦を臨機応変に組み込んでいく。といっても今回は代表戦のため対戦オーダーを決めるだけで終了しそうだ。

 

和真「しかしお前の策ソウスケには全部バレてたみてぇだな」

雄二「ああ、あんなメモを用意してたんだ、こちらの目論見は全部筒抜けだろう…」 

翔子「……学年主席は伊達じゃなかった」

 

こちらの挑み方、なぜBクラスを攻めたのか、最終的にどういうルールになるよう交渉を進めるのか、それら全てバレていたことになる。雄二にとっては屈辱的この上ないだろう。

 

雄二「だから腑に落ちねぇ……なぜあんな提案をしてきたんだ?確かに連続でメリットの無い試召戦争は面倒かもしれないが、リスキー過ぎるだろ…」

翔子「……確かに相手の意図が読めない」

 

そう。相手がしてきた提案はどう考えても得策とは言えないのだ。いかに面倒だからといって、設備を失うかもしれないリスクがあるルールでの勝負は受けるべきではない。蒼介ほどの男がそんなことにも気づかないわけがない。大して付き合いのない雄二と翔子はそこが疑問であった。

 

和真「残念だがそんな考え方だと永遠に答えは出ねぇよ」

翔子「……?」

雄二「どういうことだ?」

和真「恐らくこの提案をしてきた理由は三つ。一つはお前の言うように面倒事をさっさと終わらせるため。二つ目は授業進行の妨げを嫌ったからだな」

 

試召戦争中は当然授業を進めることはできない。Fクラス辺りは特に気にしないろうがAクラスは学年一の真面目集団、授業の進度が気になって当たり前。連続で行うとしたら尚更だ。おそらく蒼介はこのことを良しとしなかったのだろう。

 

雄二「まあそれはわかるが、まだ附に落ちねぇな…………最後の一つはなんだ?」

和真「最後の一つはあいつと仲良い奴じゃねぇとわかるわけねぇんだがよ、」

 

一度言葉を切って和真は続ける。

 

 

和真「あいつ実は生粋の負けず嫌いなんだよ」

 

 

雄二「…………そんな理由かよ…」

翔子「……最初から真っ向勝負するつもりだったと」

 

つまり、結局のところ蒼介は最初からムッツリーニを真っ向から叩き潰すつもりだったようだ。勝負を五対五のルールにしたのはクラスメイトを納得させる為の保険だろう。

なるほど、他人にあまり興味を示さない翔子や基本的に物事を論理で考える雄二では大して面識の無い蒼介にそんな考えがあったなどわかるはずもない。

 

雄二「……ん?つーことはこのルールを俺達より先に提案してきたのも…」

和真「大方お前の思い通りにことが進むのが癪だったんだろ」

雄二「……案外ガキみたいな性格してんだな…」

翔子「……案外和真と似た者通し」

 

少なくとも学園の大半が抱く蒼介のクールでエレガントなイメージとはかけ離れている。

 

雄二「……まあそれはともかく。和真、相手がオーダーをどう組んでくるかわかるか?一応聞いておく」

和真「科目選択権のある二試合には徹と愛子、後は学力的に優子、久保、ソウスケだろうな」

 

ちなみに和真は同学年の生徒がそれぞれどんな成績かを全て把握している。

 

雄二「そうか…………さて、どう組もうか…」

和真「? なに悩んでんだ?とりあえず科目選択権のある三試合は翔子、姫路、ムッツリーニだろ?」

雄二「…なに?お前は出なくて良いのか」

和真「バカ言うな。残り二試合のどっちかは俺が貰うに決まってんだろ」

翔子「……和真、いいの?」

雄二「ああ、いくらお前でも勝ち目は薄いぞ?

徹と愛子の得意教科はあの翔子をも上回る。つまりその二試合は事実上捨てゴマのようなものだ。

 

和真「勿論、負けてやるつもりなんかねぇよ」

 

それでも、和真は勝つつもりのようだ。

 

雄二「…お前らしいな。よし、オーダーが決まった」

和真「あん?あと一人はどうすんだよ?お前が出るのか?」

雄二「勿論明久だ」

翔子「……雄二、いくらなんでもそれは…」

和真「……完全に捨てゴマじゃねぇか」

 

やはり雄二はどこまでいっても雄二であった。わざわざフィードバックのある明久を選ぶあたり、底意地の悪さが透けて見える。、

 

和真「あとムッツリーニは大丈夫なのか?Bクラス戦の点数聞いたけど、そんなに点差はねぇぞ」

雄二「大丈夫だ。事前に俺の秘蔵のパワーアップアイテムを渡してある」

和真「それ要はエロ本じゃねぇか……」

翔子「……雄二、覚悟はいい?」

雄二「しょ、翔子!?違う!これには深いわけがmらぶaゃらjげだp!」

翔子「……和真ごめん、少し用事ができた」

 

十万ボルトのスタンガンをまともに食らい、ぶっ倒れる雄二。翔子はそんな雄二を引きずって教室を出ていった。

 

和真「…試召戦争前に味方がどんどん減っていくぞおい」

 

その後雄二はなんとか回復した。すさまじい生命力である。

 

 

 

 

 

高橋「では、両者共準備は良いですか?」

 

立会人を務めるのはAクラスの担任であり二年学年主任の高橋先生。

 

雄二「ああ」

蒼介「はい」

 

クラス代表の二人が向かい合う。

一騎討ちの会場はAクラス。ボルテージ最高潮に盛り上がったラストバトルの場がFクラスのボロ教室では締まらないだろう。

 

高橋「それでは第一試合、Aクラス・木下 優子さんVSFクラス・霧島 翔子さん」

 

呼ばれた二人が前に出る。去年からの友達同士である二人がお互いのクラスの命運を背負って向かい合う。

 

翔子「……優子、負けない」

優子「アタシもそう簡単に負けるわけにはいかないわ」

高橋「霧島さん、科目は何にしますか?」

翔子「……総合科目」

優子「うっ、やっぱり容赦ないわね…」 

 

総合科目は学年順位がそのまま実力差になる。バランス良く高得点をとっている翔子の強さをフルに発揮するにはやはりこの科目だろう。

 

『試獣召喚(サモン)』

 

二人の召喚獣が出現する。優子の召喚獣は西洋鎧にランス、翔子の召喚獣は武者鎧に日本刀だ。

 

《総合科目》

『Fクラス 霧島 翔子 4766点

VS

Aクラス 木下 優子 3862点』

 

点数差が千点近くある。しかし優子が低いわけではなく、むしろあの和真以上の点数をとっているので学年でも指折りの優等生であると言える。その優子を圧倒する翔子の点数が高すぎるのだ。

 

翔子「……アイス・ブロック」

優子「えぇっ!?いきなり腕輪!?」

 

召喚と同時に〈翔子〉の周りに氷の礫が出現し、〈優子〉に襲いかかる。いくつかをランスで弾き返すも多勢に無勢、〈優子〉瞬く間にズタズタになっていき、結局何の抵抗もできずに戦死してしまった。

 

 

《総合科目》

『Fクラス 霧島 翔子 4266点

VS

Aクラス 木下 優子 戦死』

 

 

翔子「……優子、私の勝ち」

優子「うぅ…なにもできず終わっちゃった…」

 

……まあこれは仕方ない、腕輪持ちの召喚獣とそうでない召喚獣には絶対的な壁があるのだ。

これで1対0、Fクラスが一歩リードである。

 

高橋「では二回戦、Aクラス・工藤 愛子さんVSFクラス・吉井 明久君」 

 

高橋先生の指示で二回戦が始まる。

 

明久「え!?僕!?」

 

雄二が取って置きの捨てゴマを出す。内心では爆笑しながらも明久に対しては真剣な表情で激励する。

 

雄二「大丈夫だ。俺はお前を信じている」

和真(なんて白々しい……)

明久「ふぅ……やれやれ、僕に本気を出せってこと?」

和真(…え、なんだこの流れ?)

雄二「ああ。もう隠さなくていいだろう。この場に全員に、お前の本気を見せてやれ」 

 

『おい、吉井って実は凄いのか?』

『いや、そんな話は聞いたことないが』

『いつものジョークだろ?』

 

明久「しょうがないなぁ…じゃあ行ってくるよ」

 

自信たっぷりに死地に向かう明久。その顔に恐れは一切ない。Aクラスからは工藤愛子だ。

 

高橋「工藤さん、科目は何にしますか?」

愛子「保険体育で!」

明久「なんだって!?」

 

選択した科目は我らがムッツリーニのムッツリーニによるムッツリーニのための科目……保険体育。

 

愛子「驚いてるね。ボクもこの科目かなり得意なんだよ?そっちのクラスの土屋くんと違って、実技で、ね♪」

明久(なんだかとっても問題発言!?でもなんでだろう?今僕は凄くときめいている!)

和真「確かに愛子の運動神経はかなりのもんだが、俺達『アクティブ』の中では残念だが下の方だな」

 

和真にとって実技=スポーツ一択である。学生としては健全だが思春期の男子としてはある意味すごく不健全だが、和真は良くも悪くも感性がお子様なのど仕方ないだろう。

 

愛子「吉井君だっけ?勉強苦手そうだし保健体育で良かったらボクが教えてあげようか?もちろん実技で」

明久「フッ。望むところ-」

美波「アキには永遠にそんな機会なんて来ないから、保健体育なんて要らないわよ!」

姫路「そうです!永遠に必要ありません!」

明久「……」

雄二「島田に姫路。明久が死ぬほど哀しそうな顔をしているんだが」

和真(言い方ってもんがあるだろお前ら……)

 

明久に対して含みを持たせた発言は悪手でしかない。もはやギャグの域なほど鈍感な彼は額縁通りにしか言葉を受け取れない。

 

高橋「そろそろ召喚してください」

和真(……ちょっと遊ぶか♪)「おい明久!散々こけにされたんだ、お前の真の力でねじ伏せてやれ!」

明久「和真…わかったよ。工藤さんって言ったっけ?残念だけど今までの僕はぜんぜん本気なんか出しちゃいない」

愛子「なんだって!?それじゃ、君は…」

明久「そうさ。君の想像通りだよ。今まで隠してたけど、実は僕……」

   

 

 

 

 

明久「左利きなんだ」

 

 

《保険体育》

『Fクラス 吉井 明久 66点

VS

Aクラス 工藤 愛子 446点』

 

 

明久「いだぁぁぁぁぁっ!身体が焼けるように痛ぁぁぁぁぁい!」

 

〈愛子〉が電撃を纏った斧で〈明久〉を一閃、まさに瞬殺だ。結果何のドラマもなく下馬評通り愛子の勝利で二回戦は幕を閉じた。

 

美波「この大バカ!テストの点数に!利き腕は関係にでしょーが!」

明久「み、美波!フィードバックで痛んでるのに、更に殴るのは勘弁して!」

 

ここまで点数差があれば操作技術だけではどうにもならないだろう。Bクラス戦では最高に輝いていた明久だが、今はもう面影すらなくなっている。

 

雄二「よし。本当の勝負はここからだ」

明久「ちょっと雄二!アンタ僕をぜんぜん信頼してなかったでしょう!」

雄二「信頼?何ソレ?食えんの?」

和真「ちなみに俺はちょっとお前で遊んでみた。

まあまあ面白かったぜ」

明久「貴様等を本気を出した左で殴りたい!」

 

これで1対1となった。さて、ここからの試合は片方の一方的な蹂躙という無粋きわまりない消化試合ではなく…

 

高橋「では三回戦、Aクラス・久保 利光君VSFクラス・姫路 瑞希さん」

 

強者同士のガチンコバトルだ。

 




というわけで今日は翔子さん圧勝&明久君惨敗でした。さすがに七倍以上の点数の上腕輪もある相手じゃ勝てないよね…
今日は明久君を瞬殺した工藤さんの召喚獣。

工藤 愛子
・性質……攻撃重視&防御軽視型
・総合科目……3250点前後 (学年9位)
・400点以上……保険体育
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……A
機動力……B
防御力……C
・腕輪……雷撃

攻撃力を重視して防御を削っている。『アクティブ』のメンバーは攻撃力を重視する生徒が多いが、十中八九和真の影響である。

『雷撃』
消費50で召喚獣と武器に電気を纏わせる。攻撃力が増加しスピードもアップする。ただし加速力はムッツリーニの『加速』に大きく劣る。万能型の腕輪は応用力がある反面、能力の質は一点特化型に劣る。

ちなみに総合科目では腕輪は4000点以上で装備され、単科目の十倍コストがかかる。あまりにコストパフォーマンスが悪いため普通は使わない。

では。


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姫路の決意、和真の意地

今回はバトル100%です。
一番書いていて楽しかったです。


雄二「とうとう来たか、Aクラス次席」

 

久保利光。彼は姫路に次ぐ学年四位の実力者で、姫路と翔子がFクラス入りしたため、学年次席の座についている。ちなみに最近明久に危険な意味で興味を抱いてるという噂があるが事実無根であろう……多分恐らく十中八九98パーセント間違いない、と和真は無理矢理言い聞かせるように頷く。

 

高橋「科目はどうしますか?」

姫路「……総合科目でお願いしますっ!」

雄二「な!?待て、姫路!」

 

姫路の発言に雄二は慌てる。久保と姫路の実力はほぼ互角、総合点数ではせいぜい20点程の違いでしかない。絶対に負けられないFクラスとしては、久保の苦手科目を攻めるのがセオリーだろう。

 

姫路「坂本君…お願いします!」

雄二「! ……わかった。

ただし、何があっても負けるなよ」

姫路「はいっ!」

 

以前には無かった強い決意を姫路から感じ取ったのか、危険な賭けであると承知で雄二が了承する。

 

久保「試獣召喚(サモン)」

 

召喚獣が出現する。久保の装備は鎧と袴と二振りのデスサイズだ。

 

『Aクラス 久保 利光 4282点』

 

『な、なにィ!?』

明久「4282点だって!?」

和真「すげぇな、以前より300点弱も上がってんじゃねぇかこの短期間でよくもここまであげたな」

 

予想外の点数に驚くFクラス一同。

 

蒼介(苦手科目をついて来なかったか。だが私達がお前達が攻めて来るまでの間、何もしていなかったわけがないだろう)

 

 

 

 

 

 

FクラスとBクラスの試召戦争が始まる前。

 

蒼介「―というわけだ。そこで木下、相手の代表がそう交渉してきたらこのメモに書かれたルールを提案してくれ」

 

そう言って試召戦争の特別ルールを書いたメモを優子に渡す。

 

優子「わかったわ」

蒼介「頼んだぞ。次に…久保、Fクラスとの試召戦争前までに苦手科目を克服してくれ」

久保「僕の苦手科目というと…物理と数学だね」

 

Aクラス次席の久保と言えど典型的な文系であるため、その二科目はAクラス平均程度でしかない。

 

蒼介「ああ、おそらく相手はお前の弱点を攻めてくる。事前に対策しておくに越したことはない。そこで…大門、久保のサポートを頼めるか?」

徹「了解したよ」

 

徹の物理、数学は蒼介には劣るものの次席の翔子をも上回る。この人選は妥当だろう。

 

蒼介「よし。皆、私達にはクラスの命運がかかっている。必ず勝つぞ!」

木下「勿論よ!」

工藤「任せといて♪」

久保「全力を尽くそう」

徹「情け容赦なく捻り潰すよ」

 

 

 

 

 

 

蒼介(さてどうする?姫路が以前と同じような点数なら、勝ち目は無いぞ、カズマ)

和真(大方ソウスケの入れ知恵だろうな。ほんと何手先まで手を打ってやがんだよ……だがな)

明久「姫路さん!」

美波「瑞希!」

 

姫路「……試獣召喚!」

 

 

 

 

 

 

『Fクラス 姫路 瑞希 4406点』

 

 

和真(姫路だって負けちゃいねぇよ)

 

『な、なにィィィ!?』 

 

今度はAクラスが驚く番だ。姫路の点数は久保以上に上がっていた。

 

久保「くっ……姫路さん、まさかここまでの点数とは……」

 

悔しそうに姫路に尋ねる。自分よりも数歩先を進んでいたことにショックを受けているようだ。

 

姫路「……私、このクラスの皆が好きなんです。人の為に一生懸命な皆のいる、Fクラスが」

久保「Fクラスが好き?」

姫路「はい。だから、頑張れるんです」

 

明久は姫路のために試召戦争を雄二に提案した。そして、Bクラス戦では姫路のために身を削って壁を破壊した。

 

姫路瑞希という女性は、そんなことを知って頑張らないようなつまらない人間ではない。

 

 

『自分のために一生懸命な奴がいる…それを知ってどう行動するのが“姫路 瑞希らしい”んだ?』

『……それは勿論、私も皆の力になれるよう頑張ります!私も、吉井君達の力になりたいです!』

 

 

ここで頑張らないようでは、“姫路 瑞希らしく”ない。

 

和真(まあ、姫路がここまで頑張った理由はもう一つあるだろうがな)

久保「…そうか、君もクラスの皆の想いを背負っているんだね。

だけど、それは僕も同じこと!Aクラス次席として、クラス代表代理として、負けるわけにはいかない!

いくぞ姫路さん!」

姫路「望むところです!」

 

そう言って二人は武器を構える。そして両者の腕輪が光り、能力が発動する。

ぶつかり合う熱線と風の刃が教室を震撼させた。

同系統の腕輪で点数差もそこまでないので、二人の力は拮抗してお互い一歩も譲らない。

そのまま二人とも二撃、三撃と腕輪を発動させる。

風と熱のエネルギーはぶつかり合うごとに中心にどんどん溜まり続け、限界に達したエネルギーが両者の召喚獣に襲いかかる。

 

久保「…くっ!」

姫路「きゃあっ!」

 

 

『Fクラス 姫路 瑞希 1625点

VS

Aクラス 久保 利光 1536点』

 

フィールドの両端までぶっ飛ぶお互いの召喚獣。

両者とも凄いダメージを受けたが召喚獣に別状はない。

二人とも武器を構え直す。

 

姫路「えぇいっ!」

 

〈姫路〉が大剣で斬りかかり、それを〈久保〉は避けもせずまともに喰らい、

 

久保「はぁっ!」

 

返す刀でデスサイズで〈姫路〉を切り裂いた。

久保の戦闘スタイルに避けるという選択肢は無い。相手に攻撃を喰らわせることのみを重視している、見た目に反して随分と攻撃的な戦法だ。

 

 

『Fクラス 姫路 瑞希 633点

VS

Aクラス 久保 利光 577点』

 

 

点数的におそらく次の攻撃で決着が着く。

この状況、普通なら二人とも戦死に注意して相手の様子を伺い始めるだろう。

 

姫路「行きます、久保君!」

久保「望むところだ姫路さん!」

 

しかしこの二人は攻撃することを躊躇わない。絶対に勝ってみせるという強い意志があるからだ。

 

お互いの武器が真っ向からぶつかり合う。

こうなってはスピードやテクニックが入り込む余地など無い、純粋な力比べだ。

 

姫路(私は、なんの役にも立てませんでした…)

 

大剣とデスサイズがぶつかり合う中、姫路の脳裏にBクラスが思い浮かぶ。

 

姫路(私の勝手な都合で、皆の思いを踏みにじってしまいました…)

 

ずっと思い悩んでいたのだろう。

根本の脅しに屈してしまったことを。

そのせいで今までのFクラスの頑張りを無駄にしかけてしまったことを。

あのまま負けていれば姫路は決して立ち直れなかっただろう。自分を責め続け、深い海の底に沈んでしまったかのように心が壊れてしまったに違いない。

 

しかしそうはならなかった。

明久が海の底から自分を引っ張り上げてくれた。

 

(私はもう、あんな過ちは侵したくない……今度は私が、皆の勝利の道を切り開くって決めたんです!)

 

激戦の末、とうとう姫路の決意が久保の責任感を上回ったのか、

 

姫路「やぁぁぁぁぁっ!」

久保「な、なんだと!?」

 

〈姫路〉の剣はデスサイズごと〈久保〉を一刀両断した。

 

 

『Fクラス 姫路 瑞希 89点

VS

Aクラス 久保 利光 戦死』

 

 

久保「……完敗だよ姫路さん。いい勝負だった」

姫路「……はいっ!」

 

そう言って二人は握手し、お互いのクラスメイトのもとに戻る。

 

久保「鳳君、皆、すまない。力及ばず負けてしまったよ」 

 

申し訳なさそうに久保はそう謝罪する。

 

蒼介「気にするな久保、素晴らしい闘いだった。お前を非難するような愚か者など、私達のクラスにはおるまいよ」

久保「……ありがとう」

蒼介「だが、この借りはいつか必ず返せ。お前も負けたままではいたくないだろう?」

久保「…ああ、勿論だよ」

高橋「これで二対一です」 

 

さすがの高橋先生もこの展開には流石に驚いたのか、若干表情が変化していた。

 

高橋「では四回戦、Aクラス・大門 徹君vsFクラス・柊 和真君」

和真「じゃ、行ってくるぜ」

 

いつものように不敵な笑みを浮かべながら、和真は意気揚々と戦場に向かう。 

 

徹「この間の借り、この場で返させてもらうよ」

和真「まだ根に持っていたのかよ。相変わらず執念深いんだなお前は」

 

試合前に軽口を叩き合う二人。表面上は友好的であるものの、お互いの眼は闘争心で満ちている。

 

高橋「科目は何にしますか?」

徹「数学でお願いします」

和真「っ……やっぱそう来るかよ。借りを返すとか言ってた割りに一方的に自分に有利な科目で闘うなんざ、セコいことしやがるぜ」

徹「何とでも言いなよ。クラスに後がない以上、百パーセント君を討ち取ることができる科目で挑むのは当たり前さ」

和真「これだから器も身長も小さい奴は…」

徹「オイ今なんつったテメェ、八つ裂きにすんぞコラ」

和真「何とでも言えって言ったのはお前じゃねぇか…」

 

試合前に相手の地雷源を全力で踏み抜く和真に対し、徹は殺意を剥き出しにして臨戦態勢をとる。

 

『試獣召喚!』

 

掛け声と共に召喚獣が出現する。徹の召喚獣は甲冑に鉄のガントレット。見るからに重戦車タイプだ。

 

 

《数学》

『Fクラス 柊 和真 183点

VS

Aクラス 大門 徹 458点』

 

 

和真にしては驚くほど低い点数である。

もともと文系タイプということもあるが、数学や物理は答えだけではなく計算過程もチェックされる。感覚派の和真はその部分がおざなりで大幅に減点されているのだ。

 

徹「じゃあ行くよ。弱いものいじめするようで悪いけど、これは戦争だか」

和真「どりゃあああああ!」

明久「相手の話無視していきなり槍をぶん投げたぁ!?」

 

〈和真〉の武器は見た目通りとても重い。攻撃に特化した〈和真〉でも、この程度の点数では自由自在に操ることができない。自在に扱えない武器なと邪魔なだけ。和真はそう判断し、使い捨ての飛び道具感覚で槍を投擲した。

 

徹「ふん、くだらない」

 

そう言うと同時に、〈徹〉の腕輪が光りだす。

すると、徹の召喚獣に直撃した槍は弾かれ、衝撃の一部が〈和真〉に跳ね返った。

 

和真「あぶねっ!?」

 

なんとか避ける〈和真〉。圧倒的な攻撃力を代償に装甲は異常に薄いため、もし喰らっていたら最悪戦死、そうでなくても致命的なダメージを負っていただろう。

 

 

《数学》

『Fクラス 柊 和真 183点

VS

Aクラス 大門 徹 408点』

 

 

和真「なるほど……それがお前の能力か」

徹「そうだ。僕の『リフレクトアーマー』は防御力を大幅に上げ、さらに装備が相手の攻撃の一部を反射する鎧になる。君の能力とは正反対の防御特化能力だよ」

 

自らの召喚獣に槍をへし折らせながら、徹は得意気に説明する。

 

雄二「くっ……万策尽きたか」

明久「えっ、どういうことさ!?」

雄二「素手で闘う以上、どうしてもあいつの召喚獣に触れなきゃならない…相手に反射効果がある以上、純粋に点数の勝負になる…」

明久「そんな…」

姫路「柊君…」

 

 

 

 

 

和真「関係ねぇ!それがどうしたぁ!」

 

それごどうしたと言わんばかりに、〈和真〉が〈徹〉を殴り倒す。先程とは違って衝撃が拳に直接跳ね返りダメージを受ける。しかし〈和真〉間髪入れず二撃目、三撃目を喰らわせる。殴るたびに拳がボロボロになっていくが一切気にもとめないその様子は、見方によっては気でも狂ったかのように写るだろう。

 

徹「馬鹿が…そんなことをしても無駄だよ!『リフレクトアーマー』が有る限り先に死ぬのは君だとなぜわからない!」

和真「はっ!だったらその『リフレクトアーマー』をぶっ壊すまでよ!」

 

一切構わず追撃する〈和真〉。両拳は既に血にまみれて赤くなっており点数もどんどん削られているが、やはりまるで気にも留めていない。

 

徹「バカな……その程度の点数でそんなことが可能だとでも思っているのか!?」

和真「んなもん知ったことか!可能かどうかなんざわからねぇよ!やるっつったらやるんだよ!」

 

途切れることなく次々と攻撃を加えていく。しかし両者の差はまるで縮まらない。

 

 

和真「諦めるわけにはいかねぇんだよ…

意地があんだよ!男の子にはなぁ!」

 

 

徹「っ!このままにしておくと危険だね…さっさと決着を着けさせてもらうよ!」

 

なにか嫌な気配を感じ取ったのか、〈徹〉はガントレットで〈和真〉に殴りかかる。

 

和真「んなもん当たるかよ!」

 

しかし〈和真〉は後ろに跳んでかわす。

徹は召喚獣までも徹底して防御特化であり、機動力はこの科目の和真にも劣る。そして操作技術も和真に軍配が上がる。考えなしに繰り出した攻撃など決して当たりはしない。

 

和真「じゃあ…行くぜぇぇぇ!」

 

既に瀕死になりながらも、相手に向かって特攻する。

点数が0にならない限り、和真は決して諦めない。

それが和真の…

 

 

「これが……俺の意地だぁぁぁぁぁ!」

 

 

全速力で放った〈和真〉の拳は身に付けている甲冑を破壊し、徹の召喚獣を吹っ飛ばした。

 

徹「そんな…まさか…」

 

あまりの出来事に呆然とする徹。

なんとか立ち上がる〈徹〉。しかしかなりのダメージを負ったようで若干ふらついている。甲冑が壊れてしまったのだ、防具を媒介とする『リフレクトアーマー』ももう使えない。

 

明久「やった!あと一息だよ!」

雄二「…………………………いや、」

 

 

しかし力を使い果たしてしまったらしくその場で崩れ落ちる〈和真〉。

 

雄二「限界が来たらしい……」

 

 

『Fクラス 柊 和真 戦死

VS

Aクラス 大門 徹 122点』

 

 

和真「………負けちまったか。いい勝負だったぜ、徹」

徹「……すまない。どうやら君を見くびっていたようだ……いい勝負だった」

 

お互いに握手をしてそれぞれのクラスに戻る二人。

 

和真「……わりぃ、負けちまった。後は頼んだ」

ムッツリーニ「……任せろ」

 

和真はやる気十分なムッツリーニにバトンを託した後、Aクラスのソファーに座り込む。

 

翔子「……和真、落ち込んでる?」 

 

心なしか心配そうな表情で翔子が近寄る。

 

和真「……結構な。やっぱ負けんのは悔しいぜ…」

翔子「……大丈夫。和真なら次は勝てる。元気を出して」

和真「……サンキュ、翔子」

 

 

 

明久「前々から思ってたけど霧島さん和真と仲良いよね」

雄二「まあ一年のとき色々あってな。今でもあいつは暇なとき娯楽を求めて翔子に手を貸すときがたまにあるんだよ……そのときは大概俺が被害を被るがなぁ…!」

明久「雄二、よくわからないけど落ち着いて」

 

高橋「それでは最終戦、Aクラス・鳳 蒼介君VSFクラス・土屋 康太君」

 

高橋先生がそう告げる。いよいよラストだ。

 

雄二「まかせたぞムッツリーニ」

翔子「…土屋、頑張って」

明久「頼んだよムッツリーニ!」

美波「絶対に勝ちなさいよ、土屋!」

姫路「土屋君、頑張ってください!」

和真「ソウスケをぶっ倒せ!」

 

Fクラスの面々がムッツリーニを激励する。

 

ムッツリーニ「……………(グッ)」

 

ガッツポーズをした後、ムッツリーニは既にスタンバイしている蒼介のもとに歩きだした。

 




というわけで主人公初敗北でした。
え?根本?さぁ?

さりげなく久保君が強化され、さらに強化フラグまで建ちました。
今回はそんな久保君を見事打ち倒した姫路さんの召喚獣。

姫路 瑞希
・性質……攻撃重視型
・総合科目……4400点前後 (学年3位)
・400点以上……数学、物理、科学、英語
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……S
機動力……B
防御力……B+
・腕輪……熱線
攻撃を重視したステータスだが、和真のような紙装甲ではない。

『熱線』
消費50でビームを放つ。シンプルイズベスト。


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Aクラス戦決着

さあ、いよいよAクラス戦もクライマックスです。


最終戦を闘う二人の成績はまさに正反対である。

片方は全教科で学生レベルを逸脱した成績を誇る、まさに“パーフェクト・プレイヤー”と呼ぶに相応しい生徒、鳳蒼介。

もう片方は総合力は下の下、あの吉井 明久をも下回る劣等生だが、『保健体育』のみは教師にすら匹敵する点数をたたき出す、いわば“オンリーワン・プレイヤー”、土屋康太。

 

高橋「教科は何にしますか?」

ムッツリーニ「…………保健体育」 

 

高橋先生の質問に対し迷わず答えるムッツリーニ。

科目が保健体育である以上、自らの土俵で勝負できる“オンリーワン・プレイヤー”が圧倒的に有利である。

 

『試獣召喚!』

 

掛け声と共に魔法陣が現れ、それぞれの召喚獣が出現する。

 

《保健体育》

『Fクラス 土屋 康太 615点

VS

Aクラス 鳳 蒼介 522点』

 

両者の点数はどちらも、これまで闘っていた生徒の点数が児戯に見えるほど一線を画していた。

 

明久「なっ…ムッツリーニはともかく、相手もとんでもない点数だ!?もしや、鳳君はムッツリーニに次ぐスケベなのか!?」

和真「んなわけねぇだろ…あいつほど堅物な奴はいねぇよ。それにあいつの点数はどの教科もあれくらいあるんだよ」

明久「バカな!?全教科500点オーバー!?そんな反則、僕が許さないよ!僕なんて総合でそれくらいなのに!」

和真「いやお前に許しを乞う必要なんて無いし、Aクラスの連中もいるんだからそんな大声で身内の恥を暴露しないでくんない?」(にしても妙だな、Aクラスの連中が不気味なくらい落ち着いてやがる…相手が自分達の代表を百点近く上回る点数ならある程度ざわつくはずなんだがな)

 

しかしAクラス生徒は一切慌てた様子がない。それほど自分達の代表を信頼しているのだろうか。

 

蒼介「さあ、始めようか」

ムッツリーニ「…………(コクリ)」

 

両者の召喚獣は武器を構える。

先に動いたのは〈蒼介〉。草薙の剣を振りかざし、凄まじいスピードで〈ムッツリーニ〉に斬りかかる。

だが〈ムッツリーニ〉はそれを上回るスピードで後ろに跳んでかわす。

間髪入れずに〈蒼介〉は斬り込むがムッツリーニの召喚獣は横っ飛びで避ける。しかし-

 

蒼介「甘い!」

 

即座に刃の向きを変え、弐の太刀を浴びせる。

〈ムッツリーニ〉は小太刀でなんとかガードするが、勢いを殺し切れず吹っ飛ばされる。

 

ムッツリーニ「………くっ」

 

吹っ飛ばされた先でなんとか体勢を立て直すも容赦なく〈蒼介〉は草薙の剣で斬り込んで来た。

〈ムッツリーニ〉それを小太刀でガードするが〈蒼介〉が即座に剣を引っ込めたため鍔迫り合いにはならず、力を込めすぎていた〈ムッツリーニ〉の体勢が崩れる。

〈蒼介〉がそんな隙を逃すはずもなく剣をギロチンの如く降り下ろすが、スピードで勝る〈ムッツリーニ〉は間一髪でかわす。しかし蒼介は攻めの手を緩めず、その後も次々と攻撃を繰り出していく。

 

 

《保健体育》

『Fクラス 土屋 康太 598点

VS

Aクラス 鳳 蒼介 522点』

 

 

明久「ねぇ、大丈夫なのムッツリーニは!?」

 

防戦一方のムッツリーニを見ながら明久が慌てたように和真達に聞く。

 

雄二「まあ、ここまでは予想通りだ。点数は勝っていても操作技術は明らかに負けている」

和真「あいつもフリスペをたまに利用してるからなぁ。お前や俺には及ばないものの、なかなかのレベルだぜアイツは」

明久「なんでそんな落ち着いてるの!?このままじゃ…」

雄二「落ち着け明久。今ムッツリーニは相手の隙を伺ってるだけだ」

明久「…相手の隙?」

和真「具体的には腕輪を使うチャンスだな。隙をついて『加速』で相手を一刀両断、その後体勢を崩した相手に追撃を加えて、勝負を決めるつもりだ」

 

ムッツリーニの『加速』は直接的な攻撃力は持ち合わせてないが、その凄まじいスピードでどんな状況でも先手が取れるというアドバンテージがある。

それにムッツリーニの暴力的なまでの点数による攻撃力が加われば、まさに必殺の居合い斬りとなる。

 

 

《総合科目》

『Fクラス 土屋 康太 586点

VS

Aクラス 鳳 蒼介 522点』

 

蒼介(点数差は少しずつ縮まってはいるが、このままでは埒が明かないな………………よし、仕掛けるか)

 

小競り合いをしていた〈蒼介〉が突如草薙の剣を構え直し、〈ムッツリーニ〉に大振りで斬りかかる。

しかしその隙のできる攻撃こそ、ずっとムッツリーニが待っていた攻撃だ。

 

ムッツリーニ「……今だ、加速!」

 

大振りの隙を逃がさず腕輪を発動させ、〈ムッツリーニ〉は信じられないスピードで〈蒼介〉を切り裂いた。誰の目から見ても明らかな、100点満点の直撃であった。

 

明久「やった!そのまま追撃すれば-」

 

 

 

しかし、

 

 

 

和真「………なっ!?」

雄二「バカな!?」

 

 

《保健体育》

『Fクラス 土屋 康太 291点

VS

Aクラス 鳳 蒼介 508点』

 

 

〈ムッツリーニ〉は深いダメージにより膝をつく。どうやら〈蒼介〉を斬った瞬間にカウンターを喰らっていたのだが、それはまだ納得できないこともない。

問題は、直撃を喰らったの〈蒼介〉が、なぜかほとんどダメージを受けていないことである。これには流石の和真と雄二も予想外だったらしく、目を見開いて愕然としている。

 

蒼介「終わりだ」

 

すかさず〈蒼介〉は追撃する。

防御も回避も間に合わず、〈ムッツリーニ〉は無惨にも首を飛ばされてしまった。

 

 

《保健体育》

『Fクラス 土屋 康太 戦死

VS

Aクラス 鳳 蒼介 508点』

 

 

Fクラスの卓袱台がみかん箱になった。

 

 

 

 

 

 

高橋「三対二でAクラスの勝利です」

 

わざわざ言うまでも無く和真達の完敗だった。

 

蒼介「カズマ、初戦は私達の勝利だ」

和真「そうだな。言い訳のしようのねぇ惨敗と言っていいくらいのな」

明久を中心にFクラス男子生徒がムッツリーニと、ついでに雄二を吊し上げている異様な光景をスルーして二人は話し合う。

 

 

雄二「おいまてコラ!なんでムッツリーニは洗濯ばさみなのに俺にはスタンガンなんだよ!」

明久「黙れ雄二!そもそもキサマの作戦でこうなったんじゃないか!メインはキサマだ!」

ムッツリーニ「…………辛い」

雄二「いや確実に俺の方が辛くなるだろ!?まてテメェらはやまるnあばばばばばばば!」

 

 

和真「そう言えば、最後の攻防なんか不自然だったな。あれ、お前の腕輪の効果か?」

蒼介「そうだ。私の腕輪『インビンシブル・オーラ』は相手の攻撃を300点分無効化することができる常時展開型の能力だ。一度壊れれば召喚し直さなければ張り直せないがな。わずかにダメージを喰らったのは土屋の攻撃が300点を上回った超過ダメージだろう」

和真「…………おかしくね?なにその反則性能?」

 

ただ単純に体力が300点上がっただけ済む話ではない。300点分ダメージを与えるまで攻撃を一切受けないのだからその間一方的に相手を攻撃できるということだ。

おまけに先程の試合を見るに点数を消費しないらしい。

さらに召喚し直せば張り直せるということは、どれだけ点数を削られても確実に300点以上の余裕が、無敵効果付きであるということだ。

 

和真「どう考えてもオーバースペックじぇねぇか」

蒼介「当たり前だ。元々の能力は点数を50点消費する上、耐久力も200、おまけに300点以上でないと使えなかったからな」

 

その能力なら攻防のバランスのとれた常識的な性能だっただろう。

 

蒼介「全教科500点以上の成績を修めた生徒は腕輪がランクアップし、能力が強化されるんだ」

和真「なんだそりゃ?そんな話聞いたこともねぇぞ」

蒼介「ランクアップした生徒にしか通達されないからな。理由は言わなくてもわかるだろう?」

和真「………なるほど、大学の内容は大学でやれと」

 

文月学園のテストは点数無制限であるが、先に進むにつれて難易度が上がって行く。

そして、400~500点の問題はテスト範囲外、つまり授業で習っていない範囲まで含めた高校レベルの総合問題になる。この辺りは授業を真面目に聞いているだけでは解けず、ずっと先の範囲まで予習している必要がある。

そして、500点以降の問題は高校生レベルを逸脱した問題、つまり大学ないし大学院レベルの問題となっている(受験に必要のない保健体育は先に進むにつれてよりマニアックな問題になっていく)。

進学校としては、そんな先のレベルよりも大学受験を目標としてほしいので、この話は通達されていないのだろう。ちなみに和真の点数が得意教科でも400点ジャストなのは和真が予習の類いを全くしないからである。

 

蒼介「カズマ、お前に1つ聞いておきたいことがある」

和真「あん?なんだよ?」

蒼介「私からみてもこのランクアップした腕輪は反則的なまでに強い。試召戦争というシステムが成り立たなくなるほどに」

和真「何が言いてぇんだ?自慢か?」

蒼介「それを踏まえた上で、お前達Fクラスはまだ私達Aクラスに挑もうというのか?」

 

Fクラスのジョーカーであり600点オーバーの点数を誇るムッツリーニですら惨敗。Aクラスへの勝利は万に一つもあり得ない、そう考えても仕方ないと言える強さを蒼介は備えている。

 

 

 

だが、

 

 

 

和真「挑まねぇと思うか?」

蒼介「……思わないな」

 

だからどうしたというのだ。

 

和真「アホなこと聞くんじゃねぇよソウスケ。俺は勝てそうにないからという理由で引き下がるような物分かりのいい人間じゃねぇんだよ。0%でなきゃ勝負捨てんのはまだ早ぇ。それにな、」

 

1%だろうと0コンマ1%だろうと勝てる可能性があるなら、柊 和真に諦めるという選択は無い。

否、たとえ可能性が無かったとしても和真は諦めない。

 

和真「勝てる手段が無いなら勝てる手段を創るまでだ。勝てる可能性が無いなら勝てる可能性を生み出すだけだ」

 

己の前に頂へ続く道がある。

 

その道は険しいのか?己に向いているのか?果たして登りきることは可能なのか?

 

そんなものは関係ない。ただ“登る”、

 

それが柊 和真という男だ。

 

蒼介「…それを聴いて安心したよ。もし諦めるなどとほざいていたらこの手で張り飛ばしていた」

和真「おーこわ。御曹司で生徒会長のくせに随分野蛮なこと考えてんじゃねぇか」

蒼介「大丈夫さ、それを実行する機会など永遠に来ないからな」

和真「そうかい。さてと、三ヶ月後覚悟しておけよ?トップの座に胡座かいてたら容赦なく首をはねるぜ?」

蒼介「なぁに、また返り討ちにしてやるさ」

 

そして二人は楽しそうに笑い合った。

 

雄二「ぐぉぉ……アイツ等…特に明久、絶対ぶち殺す…」

明久「なにィ!?もう復活しやがった!?ゴキブリみたいにしぶとい奴だ!」

 

クラスメイトから処刑された雄二が起き上がる。

肩を怒らせ、今にも明久達に報復しようとしている。

 

翔子「…雄二」

雄二「あ?なんだよ翔子?今取り込み中-」

 

 

翔子「…試召戦争も終わったし、今からデートに行く」

 

 

『……………………………………え?』

あまりに予想外の発言にフリーズするFクラス一同。

和真(…あ)

明久(…あ)

美波(…あ)

姫路(…あ)

土屋(…あ)

 

そしてやってしまったと思う事情を知る一部の人達。

 

雄二「おい翔子!?そのことは内緒だって-」

翔子「…ずっと隠して通すのは無理があるからもう全部話す。私は雄二と付き合っている」

和真(まあ翔子にしては良く我慢した方だよな。今日まですごくおとなしかったし)

 

あまりにも衝撃すぎるカミングアウトに未だ立ち直れないFクラス生徒一同。

翔子「…じゃあ行く」

雄二「ぐぁっ!放せ!無理矢理過ぎるだろ-」

 

ぐいっ つかつかつか

 

翔子は雄二の首根っこを掴み、教室を出て行った。

あまりの出来事に誰も言葉が出ず、教室にしばしの沈黙が訪れる。

 

「さて、Fクラスの諸君。お遊びの時間は終わりだ」

 

突如教室に野太い声がかかる。

音をした方を見ると、そこには生活指導の西村先生(鉄人)が立っていた。

 

和真「西村センセ?どうしたんすか?」

鉄人「ああ。今から我がFクラスの補習について説明をしようと思ってな」

和真「……我がFクラス?」

鉄人「おめでとう。お前らは戦争に負けたおかげで、福原先生から俺に担任が変わるそうだ。これから一年、死に物狂いで勉強できるぞ」

 

『なにぃっ!?』

 

和真以外の男子全員が悲鳴をあげる。

生活指導の鉄人と言えば『鬼』の二つ名を持つほど厳しい教育をする先生である。

 

鉄人「いいか。確かにお前らはよくやった。Fクラスがここまで来るとは正直思わなかった。でもな、いくら『学力が全てではない』と言っても、人生を渡っていく上では強力な武器の一つなんだ。ないがしろにしていいものじゃない」

和真(まあ間違ってねぇな。将来何を目指すにしても武器は多いに越したことねぇしな)

鉄人「吉井。お前と坂本は特に念入りに監視してやる。なにせ、学園きっての問題児コンビだからな」

明久「そうは行きませんよ!何としても監視の目を掻い潜って、今まで通りの楽しい学園生活を過ごしてみせます!」

西村「……お前には悔い改めるという発想は無いのか」

 

溜め息混じりに言う鉄人。そんな無い物ねだりしても仕方ないであろう。

 

和真「あれ? センセ、俺は?」

鉄人「お前はこっちが注意しようと腰を上げたときにはもう引き上げているだろうが」

和真「まあそうっすけど」

鉄人「少しは否定せんか!…まったく、似なくていい部分まで父親に似おって……」

和真「おいコラふざけんな。いくら先生でも言って良いことと悪いことがあるぞコラ」

 

さらに溜め息が深くなる鉄人と何故か半ギレになる和真。

どうやら和真の父親とは相当問題のある人物のようだ。

 

鉄人「取り敢えず明日から授業とは別に補習の時間を二時間設けてやろう」

和真「げっ!?放課後の部活巡りの時間が減ってしまうのか……やべぇ、動かねぇと呼吸が出来なくて死ぬってのに」

鉄人「お前は鮪か」

 

以前同じようなやりとりがあった気がする。

そんな話をしていると、美波が明久に歩み寄って来た。

 

美波「さぁ~て、アキ。補習は明日からみたいだし、今日はクレープでも食べに行きましょうか?」

明久「えぇっ!?僕にそんな余裕ないよ!」

美波が明久をデートに誘う(明久は気づいていないが)。

姫路「だ、ダメです! 吉井君は私と映画を観に行くんです!」

明久「姫路さんまで!?」

 

それに対抗して姫路もそんなことを言い出した。経済的危機に直面して普段勉強嫌いなはずの明久は鬼教師にすがる。

 

明久「に、西村先生! 明日からと言わず、補習は今日からやりましょう! 思い立ったが仏滅です!」

鉄人「『吉日』だ、バカ」

明久「そんな事どうでもいいですから!」

 

今後の食生活がかかっているからか、試召戦争中並に必死になる明久。

 

鉄人「うーん、お前にやる気が出たのは嬉しいが……」

 

言葉を区切って、明久と美波と姫路を見る。

 

鉄人「無理する事は無い。今日だけは存分に遊ぶといい」

 

ニヤニヤと嫌な笑顔で告げる。これは遠回しな鉄人の気遣いなのであるがバカな明久は当然そのことに気付かない。

 

明久「おのれ鉄人!僕が苦境にいると知った上での狼藉だな!こうなったら卒業式には伝説の木の下で釘バットを持って貴様を待つ!」

鉄人「斬新な告白だな、オイ」

明久「…まてよ、まだ和真がいた!和真ならきっと僕を助けてくれ…………あれ、和真は?」

鉄人「柊ならさっき鳳、木下、大門と教室から出ていったぞ。ラクロス部との試合前の練習をするそうだ」

明久「ほんとアクティブだな畜生!」

 

気がつけばいなくなっている、それが和真である。

 

美波「アキ!こんな時だけやる気を見せて逃げようったって、そうは行かないからね!」

明久「ち、違うよ! 本当にやる気が出ているんだってば!」

姫路「吉井君!その前に私と映画です!」

明久「姫路さん、それは和真じゃなくて僕となの!?」

姫路「?? 柊君? 何の事ですか? 私はずっと前から吉井君の事を……」

美波「アキ! いいから来なさい!」

明久「あがぁっ! 美波、首は致命傷になるから優しく………」

 

 

『いやぁぁっ!生活費が!僕の栄養がぁっ!』

 

どうやら明久の主食は明日から公園の水になりそうだ。まあ幸せ税というやつであろう。本人はその幸せに気付いていないため、一方的に損しているのだが。

 

 

 

 

 

 

和真「よし、そろそろ時間だな」

蒼介「今回の相手は女子ラクロス部レギュラーか」

木下「女子ラクロス部は創部三年目で全国出場を果たした強豪よ」

徹「今までの相手とは比べ物にならないほどの強敵だね」

源太「ハッ、関係無ぇよ!俺達が負けるはずがねぇ!俺達『アクティブ』は……無敵だ!」

 

和真「皆気合い充分だな。それじゃあ……

ガンガン行こうぜ!」

 

『おおー!』

 

 

 

 

 




というわけで試召戦争一回目は蒼介の勝利で終わりました。次回で第一巻終了となります。

『インビンシブル・オーラ』
ランクアップした蒼介の腕輪。13マナの光呪文とは全く関係ない。
召喚獣に耐久力300点分のバリアを張る。300点分は相手の攻撃を完全に無効化するため、攻撃を受けても一切のけぞらないし体勢からも崩れない。
消費コストが無く召喚し直す度に張られるので、例え点数が1点まで減らされても召喚し直せば実質Aクラス上位レベルの点数になる。

簡潔に言うと、要はラスボス補正である。

この作品のオリジナル設定、『ランクアップ』ですが、ほとんど蒼介君専用オプションです。とある理由で教師の召喚獣には腕輪が装備されないからです。

では。


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第一巻終了

ようやく一巻が終了しました。
今回の話は別にいらない気がしますが気にしないでください。


和真「……さて、さっきの敗戦の反省会でもするか」

 

流石全国区、運動神経抜群でもラクロス未経験者ばかりのチームではさすがに無茶だったのか、結成以来初の敗北を喫してしまった『アクティブ』。

どことなく雰囲気がギスギスしている。

 

源太「ったく。あのとき徹が俺のパス捕り損なうから…」

徹「なんだと?あれは源太のパスが荒いのが悪いんじゃないか。責任を僕に押し付けるな」

 

『アクティブ』随一の犬猿コンビがここぞとばかりにお互いを貶し合う。

 

源太「んだとぉ!?あの程度のパスくらい捕れねぇ奴が全国レベルに対抗できるとでも思ってんのかよ!『アクティブ』の面汚しがよぉ!」

徹「それはこっちのセリフだよ。あんな繊細さの欠片もないパスで全国区に挑もうなどお笑い草だよ。なーにが『アクティブ』は無敵だ!だよ、お荷物のチンピラ君?」

源太「誰がチンピラだこのクソガキィィィ!」

徹「誰がガキだゴルァァァァァ!」

 

レベルの低い争いからそのまま殴り合いに発展する二人。というか、途中からラクロス関係無いじゃないか。

 

優子「やめなさい二人とも!喧嘩していたら進まないでしょ!」

二人「弟に男子からの人気負けてる残念女は黙ってろ!」

優子「なんですってぇぇぇぇぇ!」

 

喧嘩を収めようとした優子も密かに気にしているコンプレックスを刺激され参戦、三つ巴のキャットファイトが繰り広げられる。

 

和真「あーもう喧嘩すんなお前等!」

蒼介「まったくだ!見苦しい!」

 

業を煮やした和真と蒼介が止めに入る。

『アクティブ』の中心の二人の渇により三人は取り敢えず矛を収める。

 

優子「代表…和真…」

源太「いや、でもよ…」

和真「でももストもねぇよ。くだらねぇことで争うなよ」

蒼介「そもそも今回の敗北は個人のではなくチームの敗北、その理由を誰かに押し付けようなど言語道断。恥を知れ」

優子「…そうね。ごめんなさい、熱くなってしまったわ」

源太「それもそうだな…スマン」

徹「まあ仕方ないね、謝っておいて上げるよ」

和真「あぁ?」

 

他の二人が素直に謝罪する中、器も小さく空気も読まない徹の物言いにイラッとする和真。

 

和真「…………そんなんだからお前は成長しねぇんだよ、中身も“見た目”も」

徹「なんだと和真テメェェェ!」

和真「ていっ」

徹「がふぅっ!?」

 

和真に殴りかかるが足払いされて顔面を強打する徹。とても痛そうだ。

 

蒼介「やめろ大門!カズマも煽るな馬鹿者!」

和真「わりぃ、徹の返しがすごくイラッとしてつい」

蒼介「それについては私も同感だが、このままでは話が進まないだろう」

和真「まあそれもそうだな。それに、よく考えたら試合の反省会よりすることがあったな」

 

そう言うと和真はおもむろに立ち上がり、皆に向かって話す。

 

和真「俺達は今日初めて敗北した。相手はラクロスの全国レベル、連携も俺達とは比べ物にならなかった。そして向こうには絶対的なスコアラー・沢渡がいる。今の俺達では何度やっても結果は同じだろう。そこで一つ確認の意味も込めて聞きたい」

 

一旦言葉を切り、全員を見回してからこう告げる。

 

 

和真「お前等、このままでいいのか?」

 

このまま負けたままで終わるのか?そういう和真の問いに対して、

 

源太「いいわけねぇだろ!」

蒼介「愚問だな」

優子「もちろんリベンジするわよ!」

徹「この屈辱は、倍にして返すよ!」

 

チーム全員の思いは一つになった。

 

和真「…よし!ではこれから暫くラクロス練習期間に入るぞ!数ヶ月後にリベンジだ!」

和真がそう言うと五人は輪になって中央に手をかざした。

 

『おぉー!』

 

チーム『アクティブ』の闘いは続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

明久「うぅ………大事な食費が……」

 

時刻は四時半。

ようやく姫路と美波から解放された明久は大分軽くなった財布を携え、家の近くの河原で黄昏ていた。16歳とは思えないほど哀愁が漂っている。

 

明久「明日から断食修行が始まっちゃうよ……この若さで悟りなんか開きたくないなぁ……」

 

仏門では修行だけでは悟りを開くことはできないとされているのだが、明久は当然そんなことは知るよしもない。

というか、そんななし崩し的な断食で開けてたまるか。

 

もっとも割り勘にしておけばここまでの被害を受けることはなかったのだが。食費がピンチなのに自分から進んで奢りに行く姿勢はある意味とても男らしい。

 

 

明久「………………試召戦争、負けちゃったな」

 

ふと明久の脳裏に今日の出来事がフラッシュバックする。

負けてしまったので、3ヶ月間は試召戦争を申し込むことはできない。

その上さらに設備を落とされてしまった。

姫路の為により良い設備を手に入れようと試召戦争を始めたのに、逆に悪化させてしまったのだ。

 

明久「……肝心のAクラス戦では、何の役にも立てなかったな」

 

明久はそのことを悔やんでいた。

確かに自分は雄二に捨て駒として扱われた。

だが自分にAクラスを倒せる力があれば話は別だったただろう。自分がバカであることを今日ほど恨めしかったことはない。

 

明久「かといってそんなすぐ成績が伸びるわけないし……このままじゃ、三ヶ月後も役立たずのまま戦死しちゃうだろうな……はぁ」

「随分と憂鬱そうな顔だなぁ、少年」

明久「そりゃ憂鬱にもなるよ…頑張ってる人が報われないのが悔しくて始めたのに……」

 

 

 

 

 

 

 

明久(………………………え?僕、誰に話しかけられたの?)

 

横を向くといつの間にか男性が隣に腰かけていた。

 

所々はねまくったボサボサの黒髪

 

覇気の欠片も感じない濁った目

 

あまり手入れされていない口元の無精髭

 

他にも着ているスーツがぐしゃぐしゃだったりボタンがきちんと留められていなかったりシャツがはみ出ていたりネクタイがゆるゆるだったり……

 

明久(………………………………ふむ)

「? なんだよ人のことじろじろ見て」

明久「なんだ、ホームレスの人か」

「ストレートに失礼だなオイ…」

 

謎の男性は呆れたようにツッコむ。

 

「おっちゃんはこう見えても会社員だよ。こんなナリしてんのはただ性格がズボラなだけだ」

明久「ズボラにも限度があるでしょ…というかおっちゃん、なにしてるんですか?まだ夕方なのに」

 

謎の男性、改めおっちゃんにそんなことを聞く明久。確かに平日のこんな時間に河原でのんびりしているのは不自然だ。

 

おっちゃん「ああ、だるくなったんで早退したんだよ。残業など死んでもやってたまるかアホらしい」

明久「…………あぁ……そうですか」(この人…………ダメ人間の代名詞だ)

おっちゃん「話を戻すが、何をそんなに落ち込んでたんだ?」

明久「え?……ちょっと自分の無力さを痛感していたというか」

 

こんな胡散臭いおっちゃんに悩みを打ち明けるなど正気の沙汰ではないが、誰でもいいから聞いて欲しかった明久は内容を抽象的に告げる。

 

おっちゃん「ふーん…お前さん文月学園の生徒だろ?ということは……試験召喚戦争がらみか?」

明久「…え!?なんでわかったんですか!?」

おっちゃん「あそこほど世間の注目を集めている学校はねーよ。なにしろ四大企業全てがスポンサーを買ってでたとこだからな」

 

総合計で世界資本の5%近くを保有する四大企業は社会への影響力も極めて強い。その四大企業が支援する文月学園は世間からの注目をとても浴びている。もし試験召喚システムがシステムが全世界の学校教育に取り入れられることになれば、数百億単位のお金が動くことになるからだ。

 

おっちゃん「まあ十中八九点数が低いからクラスの役に立てなかった、とかだろ?みるからにバカっぽいしな、お前」

明久「全部ばれた!?というか初対面の相手にバカって失礼過ぎませんか!?、」

おっちゃん「人をホームレス扱いしたお前に言われたくねーよ」

明久「ぐ……なんで僕はこんな小汚いおっちゃんに常識を説かれているんだ…」

おっちゃん「ほんと失礼だなお前……まあいい。年上として、一つお前にアドバイスしてやるよ」

 

突如真剣な顔つきになるおっちゃん。

 

明久「アドバイス……ですか?」

おっちゃん「ああ…………何事もいっぺんにしようとするな。自分にできないことは一つずつできるしていけばいい」

明久「一つずつ…か…」

おっちゃん「例えばすぐに結果を出したけりゃ暗記科目を取り組め。お前みたいなバカでも数をこなしゃ結果はでるさ」

明久「バカは余計だけど……なるほど……」

 

八方塞がりだった明久に光が差したような気がした。

 

明久「……よし、やってみよう。

ありがとうございました!ホームレスのおっちゃん」

 

そう言って明久は帰っていった。

 

おっちゃん「だからホームレスじゃねぇっつの…」

 

愚痴るように呟いたあと、河原に設置された自販機に近寄る。三つ葉に玄武、“御門エンタープライズ”のマークがついている煙草の自販機だ。

おっちゃんは小銭を数枚入れ煙草を購入し、一服しようと箱を開けたとき、ポケットから着信音が鳴り響いた。

 

おっちゃん「はいもしも-」

『どこほっつき歩いてやがるんですかぁぁぁ!まだ勤務時間でしょうがぁぁぁ!』

 

電話に出るや否や怒鳴り散らす女性の声。

相当怒っているようだ。

 

おっちゃん「おう、キュウリか」

 

『桐生(キリュウ)です!そのアダ名いい加減やめてって言ってるでしょ!?』

おっちゃん「黙れ。お前の呼び方は俺が決める」

『横暴過ぎる!』

おっちゃん「なんの用だよ?今日の分の俺の仕事はもう片付けたからもう帰っていいだろ?」

『いいわけないでしょ!?毎回いってますけど勝手に帰らないでください!苦情は私に来るんですからね!とにかく今すぐ会社に戻-』

おっちゃん「却下だボケ」ピッ

 

強引に電話を切った後、電源を切りかけ直せないようにする。よほど行きたくないらしい。

 

おっちゃん「どいつもこいつも仕事仕事……ったく、俺の味方はいつだってニコチンだけだぜ…」

 

一服しながらそう呟いた。




雑談コーナー・その1
蒼介「第一巻が無事終了したな」

和真「それはいいけど、なんだよこのコーナー?」

蒼介「このコーナーでは巻の終わりの間に主に本編ではできない話などをしていくコーナーだ。本編中はメタ発言はなるべく控えているからな」

和真「なるほどな。でも俺達二人だけで進めるのはなんか味気無ぇから誰か呼ぼうぜ」

蒼介「ふむ、それもそうだな。では誰をゲストに呼ぶかはお前が決めてくれ」

和真「あいよ!じゃあ今回は第一巻ではろくに出番の無かった不遇ヒロイン、橘 飛鳥を呼んだぜ!」

飛鳥「……間違ってないけどもうちょっと言い方ってものがあるでしょう」

蒼介「基本的にFクラス目線で進んだため出番が少ないのは大門や五十嵐も同じだが、お前に至っては試召戦争すら参加しなかったからな」

飛鳥「まあ仕方ないわよ。私の成績では代表戦に出るには力不足だし」

和真「それがな飛鳥、実は当初お前も闘う予定だったんだぜ?」

飛鳥「…え?どういうこと?」

蒼介「オリジナルキャラクターが追加された分、当初vsAクラスは七対七の形式で進める予定だったんだが…」

和真「二つ追加されたら雄二は万全を期して科目選択権がある方に俺を入れるだろ?Aクラス側で追加されるのはお前と佐藤。で、選択権がある方には全科目同じような点数のお前じゃなくて理数系の点数が高い佐藤が入るだろう」

飛鳥「ということはつまり……」

蒼介「ああ、カズマVS飛鳥という構図になってしまう。開始直後カズマの一斉砲撃を浴びて終了だ。流石にデビュー戦がそれではあんまりなのと、カズマ無双が4回目になり読者も飽きるだろう、ということでお前の出番はカットされたんだ」

和真「久保と姫路の闘いは決定事項だったし、仮に俺が優子、お前が翔子と当たっても似たような結果になるしな」

飛鳥「そんな裏話があったなんて……」

蒼介「安心しろ、お前は私と違ってこの後に出番がいくつも用意されている。闘う機会はいくらでもある」

飛鳥「それなら構わな……私と違って?蒼介、この後出番ないの?」

蒼介「そういうわけではない。仮にも第二の主人公なのだから出番は結構ある。ただ、召喚獣で闘う機会はかなり少なくなるだろう」

飛鳥「え、どうしてなの?」

和真「率直に言うと強すぎてバランスが崩壊するんだよ。だから今後はさまざまな理由でソウスケが闘う機会はカットされる。まあラスボスなんだし、最終戦まではどっしり構えていた方がいいだろ」

蒼介「まことに遺憾で不満で不本意だが、仕方なく渋々泣く泣く嫌々同意した」

飛鳥(あ……やっぱり闘いたかったんだ……)

和真「それじゃあそろそろ本題に入るか」

蒼介「そうだな。まず最初に、読者の皆はこれについてどう思う?」→和真「」

和真「名前を台詞の前に着けているのは誰が喋っているかわかり易いようにという配慮なんだが、もし『んなもんいるかボケェ!邪魔なんだよとっとと外さんかいワァァァレェェェ!』という人は直接メッセージを送ってくれ。何人か集まったら即、外す」

飛鳥「いつの時代のチンピラよそれ…」

蒼介「続いては巻と巻の間に投稿しようと思っている番外編についてだな」

飛鳥「この後にも二巻が始まる前に番外編を二つ挟むつもりね」

和真「今後も巻と巻の間に番外編をいくつか入れていくつもりだ。そこで……どんな番外編をして欲しいか募集しようと思う」

飛鳥「なんでそんなことを?作者が話を考えるの面倒だから?」

蒼介「いや、以前書かれた感想に『~して欲しい』という内容があったんだが、作者は最終話までの構成はおおまかにできているため、小さいことならともかく大がかりな変更はできないんだ」

和真「その点番外編は本編と関係ないからどんだけはっちゃけてもいいしな」

飛鳥「その認識はどうかと思うけど…なるほど、折角提案してくれたんだし、あまり無下にはしたくないものね」

蒼介「そういう訳で、『○○が○○する話』といった意見があるなら、同じく直接メッセージを送って欲しい。どの案を採用したかは次回からのこのコーナーで随時発表していく。全て採用することはできないかもしれないが、可能な限り実現させよう」

和真「ただし一人につき一つで頼むぜ。本編が進まなくなっちまうからな」

飛鳥「巻と巻の間に最多で3つづつ載せていくわ。多すぎたら本編が進まなくなってしまうからね」

蒼介「続いては0.5巻についてだな」

飛鳥「この作品の主人公はあなた達二人だから、カットせざるを得ない話がいくつかあるわね」

和真「明久達の一年生の頃の話とか、それぞれの小学生時代とかな。一年生の頃の話は俺達の目線で進めればいいが、それぞれの小学生時代はなぁ……」

蒼介「私達が絡まない以上原作通りになってしまうからな。他にも木下姉弟の入れ替わりの話は物理的に不可能になってしまったな」

和真「まあ代わりの話は用意しているけどな。翔子と雄二はどうやって和解したのか、とかな」

飛鳥「読者の皆様、原作キャラ達の過去話を詳しく知りたい人は、原作を読みましょう」

蒼介「さて、ラストだ。いくつかある疑問を解決していく」

和真「まず一つ目は、なぜタイトルが『バカとテストとスポンサー』なのにスポンサーがあんまり出てこないのか?だな」

飛鳥「それは私も気になっていたわ」

蒼介「別に構わないだろう?『炎のゴブレット』もタイトルにまでなっておいて、蓋開けたらただの抽選装置だったのだし」

飛鳥「いやそういう問題!?」

和真「そんなもんドンキで買ってきたビンゴマシーンでいいだろ別に」

飛鳥「いいわけないでしょ!?魔法使い達の祭典の代表者をそんな物で選んでたらシュール過ぎるわよ!」

蒼介「まあ冗談はさておき、一巻はクラス同士の試召戦争がメインのため、スポンサー云々は話に絡まないからだ。四大企業なついてはこれから先徐々に明らかになっていく」

和真「まあ関係者のお前等が学園にいる以上、嫌でも関わってくるだろうしな」

蒼介「続いての疑問は、この内容をなぜバカテスでするのか?だな」

飛鳥「まあ明らかに世界観がずれているものね。ギャグも少ないし、バトルがガチ過ぎるし、知略より根性に重きを置いているように見えるし……」

和真「まあ作者はあんな感じの泥臭い漫画や小説が好きだしな」

蒼介「作者がバカテスの二次創作を書こうと思ったのは、友人からバカテスの小説全巻頂いたからだ」

和真「それで、全部読破したことだし折角だから書いてみようと思って投稿を始めた、と」

飛鳥「短絡的にもほどがあるわね…」



蒼介「以上だ」

和真「次回、バカとテストとスポンサー番外編『伝説の勇者ユージ』!絶対読んでくれよな!」

飛鳥「大丈夫なのその話?すごく長そうなんだけど」

和真「大丈夫だ。一話で終わるから」

飛鳥「……え?」


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伝説の勇者ユージの冒険

番外編part1です。
ギャグ100%です。


ここはモンスリー王国

 

人々は平和に暮らし、大地は豊かな緑に覆われ空には鳥が舞い、穏やかな風が綿雲を運んでいた

 

だがある日、空に闇が滲み、大地に邪悪な影を落とした

 

大魔王カヲルシフェルが永き眠りから目覚めたのだ!

 

次々に魔物を生みだし、人々を襲い殺戮の限りを尽くした

 

この世界は暗黒の時代を重ね、いつしかこう呼ばれるようになった……

 

“モンスター・ワールド”

 

残された人々は脅え、泣き叫び、己が生を呪った

 

だが、そこに一人の勇者が立ち上がった

 

希望の光を剣に宿し、三人の仲間を連れ、カヲルシフェルを倒すべく大地に一歩踏み出そうとしていた

 

 

「勇者・ユージ!」

 

 

「武闘家・アキヒサ!」

 

 

「武闘家・カズマ!」

 

 

「…武闘家・ショーコ!」

 

目指すは悪の根城・カヲール城!

魔王と勇者の対決が、今幕を開け-

ユージ「ちょっと待て」

 

アキヒサ「どうしたのさユージ?まだナレーションの途中だよ?」

 

ユージ「………………違う」

 

カズマ「は?」

 

ユージ「お前らおかしい。

なんでパーティーの4分の3が武闘家なんだよ?

どう考えてもバランス悪いだろうが」

 

ショーコ「…そんなこと言われても困る」

 

カズマ「俺達はそれぞれ代々続く武闘家の家系だからな」

 

ユージ「いや、そういうのいいから。こんなパーティーでカヲルシフェル倒せるわけねぇだろ。都合の良いことにそこに転職できる店があるからジョブチェンジしてこい」

 

カズマ「やれやれしかたねぇな…ソウスケ、ナレーション中盤くらいからもう一回頼むわ」

 

 

仕方ないな…

 

 

残された人々は脅え、泣き叫び、己が生を呪った

 

だがそこに一人の勇者が立ち上がった

 

希望の光を剣に宿し、三人の仲間を連れ、カヲルシフェルを倒すべく大地に一歩踏み出そうとしていた

 

「勇者・ユージ!」

 

 

「盗賊・アキヒサ!」

 

 

「山賊・カズマ!」

 

 

「…海賊・ショーコ!」

 

目指すは悪の根城・カヲール城!

魔王と勇者の対決が、今幕を開け-

ユージ「待てこら」

 

アキヒサ「なんなのさユージさっきから」

 

ユージ「なんだよお前らその職…」

 

カズマ「文句あんのか?ちゃんとバラバラじゃねぇか」

 

ユージ「勇者、盗賊、山賊、海賊ってどんな団体だよ!?俺以外どう見ても無法者集団じゃねぇか!」

 

ショーコ「…ユージも他人の家のタンス勝手に開けてお金とか取っていくから同じ穴の狢」

 

ユージ「そこはツッコむなよ!RPGの仕様なんだから!とにかく、もう一回転職してこい!」

 

カズマ「またかよ…ソウスケ、もう一回!」

 

 

やれやれ…

 

 

残された人々は脅え、泣き叫び、己が生を呪った

 

だがそこに一人の勇者が立ち上がった

 

希望の光を剣に宿し、三人の仲間を連れ、カヲルシフェルを倒すべく大地に一歩踏み出そうとしていた

 

「勇者・ユージ!」

 

 

「スライム・アキヒサ!」

 

 

「ゴーレム・カズマ!」

 

 

「…ドラゴン・ショーコ!」

 

目指すは悪の-

ユージ「はいカットォォォ!」

 

アキヒサ「今度はなんなのさ?」

 

ユージ「お前ら自分の外見見ておかしいと思わないのか!?いつからこの話は『ユージのワンダーランド』になったんだよ!?」

 

ショーコ「…味方が人間だけだと考えてる時点で常識に囚われている証拠」

ユージ「囚われてていいから、その常識には。これじゃ明らかに俺が魔物勢力側だと誤解されるじゃねぇか。物資の調達とか宿とかはどうするつもりなんだよ?」

 

カズマ「そんな物その辺の村から略奪してくれば解決するだろ?」

 

ユージ「完全に悪党じゃねぇか……勇者のする所業じゃねぇよ……とにかくこんなもん認められるか!もう一回行ってこい!」

 

カズマ「ったく、我が儘だな…ソウスケ、ワンモアセット!」

 

 

全然進まないな…

 

 

残された人々は脅え、泣き叫び、己が生を呪った

 

だがそこに一人の勇者が立ち上がった

 

希望の光を剣に宿し、三人の仲間を連れ、カヲルシフェルを倒すべく大地に一歩踏み出そうとしていた

 

「勇者・ユージ!」

 

 

「オルゴデミーラ・アキヒサ!」

 

 

「ラプソーン・カズマ!」

 

 

「…ダークドレアム・ショーコ!」

 

目指すは悪の-

ユージ「お前ら正座ァァァ!」

 

アキヒサ「またぁ!?」

 

カズマ「ほんとめんどくせぇなお前」

 

ユージ「誰がモンスターの格を上げろっつたよ!?なんで魔王退治しに行くメンバーが魔王引き連れてんだよ!?」

 

ショーコ「…毒を持って毒を制す」

 

ユージ「やかましいわ!というかよく転職できたなそれ!?……とにかく、もう一回行ってこい!もっと普通のやつな」

 

カズマ「ほんと注文が多いな…ソウスケェ!泣きの一回!」

 

 

もしやこのまま終わるんではないだろうな…

 

 

残された人々は脅え、泣き叫び、己が生を呪った

 

だがそこに一人の勇者が立ち上がった

 

希望の光を剣に宿し、三人の仲間を連れ、カヲルシフェルを倒すべく大地に一歩踏み出そうとしていた

 

「勇者・ユージ!」

 

 

「派遣社員・アキヒサ!」

 

 

「正社員・カズマ!」

 

 

「…公務員・ショーコ!」

 

目指すは-

ユージ「違ぁぁぁぁぁう!」

 

アキヒサ「いい加減にしてよユージ!」

 

ショーコ「…全然話が進まない」

 

ユージ「こっちのセリフだ!番外編だからって好き放題ボケ倒しやがって!」

 

カズマ「なんだよ、ちゃんと普通の職業だろ?」

 

ユージ「いや確かに普通だけど普通じゃねぇよ!世界観にまるで合ってねぇし!だれがこの集団見て魔王を倒しに行く勇者一行だって気づくんだよ!」

 

アキヒサ「やっぱり安定した職業が一番だよね」

 

ユージ「そんな一般論どうでもいいわ!大体そんな装備でどうやってモンスターを倒すんだよ!?」

 

カズマ「そりゃ勿論この名刺手裏剣を使うんだよ」

 

ユージ「地味過ぎるし弱過ぎるしシュール過ぎるわ!もう一回行ってこいゴルァ!」

 

カズマ「短気だなぁ…ソウスケェ!」

 

 

私もさっさと休みたいんだがな…

 

 

残された人々は脅え、泣き叫び、己が生を呪った

 

だがそこに一人の勇者が立ち上がった

 

希望の光を剣に宿し、三人の仲間を連れ、カヲルシフェルを倒すべく大地に一歩踏み出そうとしていた

 

「勇者・ユージ!」

 

 

「ピザ屋・アキヒサ!」

 

 

「プロゴルファー・カズマ!」

 

 

「…マッチ売りの少女・ショーコ!」

 

目指すは悪の根城・カヲール城!

魔王と勇者の対決が、今幕を開けたのだ!

 

 

ユージ「……………………もうこれでいいか……」

 

 

続く?

 

 




以上です。
要望があれば巻と巻の間に続きを挟んでいきます

では。


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全て答えは自分の中

今回は和真対姫路のガチンコバトルです。
といってもシリアス度0%ですが。


明久「ん? あれは…和真と…誰だろう?」

 

めずらしく早めに登校した明久は、和真が見知らぬ女子生徒といるのを見かけた。

明久(まさか告白!?だとしたら和真といえど生かして帰さな-)

「別れましょう!もう先輩にはついていけませんっ!」

明久(真逆だったーーーー!?)

 

告白現場かと思ったら破局現場だった。

 

和真「ん、オーケー。じゃあさいなら」

 

和真は特に驚きもせず、つまらなそうなガッカリしたような、それでいて予想通りといった表情でそれを受理した。

 

 

 

 

 

 

 

明久「和真、元気出しなよ」

和真「いきなりなんだよ明久?」

 

Fクラス教室にて、明久は今朝のことを励まそうとするが、いかんせん脈絡がなさ過ぎたのか、和真は何のことだかわからないようだ。

 

明久「だって、今朝後輩の女の子に別れてって言われてたでしょ。それで落ち込んでるだろうと思って」

和真「ああ、それか」

 

和真はどうでもやさそうな反応をする。

もし読者の皆さんが友達そういう場面を目撃してしまったら、しばらくそっとしておいてあげましょう。間違っても他の人が大勢いる場所で励ましたりしてはいけません。

 

美波「え、柊フラれちゃったの?」

秀吉「それは気の毒じゃのう…」

雄二「ははは!ザマァ!」

 

高校生とは基本的に下世話な生き物である。友達がこういう話をしていたらそりゃ集まる。気の毒そうに励ます者ややこりゃ愉快言わんばかりのいやらしい笑みを浮かべた者に囲まれても、和真はさして気にすることなく告げる。

 

和真「別に気にすることでもねぇよ。もう53回目だからな」

 

『53回!?』

 

和真「そ。ちなみに別れを切り出すのはいつも向こうからで、理由はおそらく53人とも一緒」

明久「そ……その理由は?」

翔子「……和真のスポーツ趣味についていけなくなった」

和真「正解。というかごく自然に混ざったなお前、さっきまでいなかったのに」

翔子「……雄二の携帯をチェックしていたから」

雄二「!?……アドレス帳の連絡先が翔子以外消えてるじゃねぇか!」

和真&明久「ザマァ」

雄二「お前らぶち殺すぞ!特に明久!」

 

気にしてはなくてもチャンスがあればしっかりとやり返すのが和真流。ここぞとばかりに明久も便乗する。

 

明久「それにしてもやっぱりその理由か…」 

 

和真は基本的に放課後、休日ともにだいたいスポーツに明け暮れている。恋人らしいことなどほとんど期待できそうにない。美波が呆れたように忠告する。

 

美波「あんた付き合ってるんだったらスポーツはほどほどに 「却下」 して彼女の…って、まだ言い終わってないわよ!」

和真「スポーツをほどほどにって時点で悩む余地は無ぇ。そんなことしなけりゃならないならこっちから願い下げだ」

 

和真にとっては恋愛<スポーツである。

 

雄二「だったら断りゃいいじゃねぇか」

和真「そうだけどよ、全員最初はそれでも構わないって言うんだぜ?蓋開けたらこの体たらくだがよー」

美波「そうはいってもやっぱり構ってほしいに決まってるじゃない」

和真「知るか。だいたい女は不合理な部分が多過ぎる。例えばそうだな、女子は皆痩せたいだのカロリーだのダイエットだの常々ほざいてるが、本当に痩せたいと思ってんのかねぇ?」

 

姫路「勿論痩せたいに決まってるじゃないですか!」

 

ちょうど登校してきた姫路の、おそらく人生で1,2を争う心からの切実な叫び。よほど体重に関して神経質になっているのだろう。

 

和真「じゃあ聞くがよ姫路、なんでお前等はダイエット食品やらダイエット法やらを次から次へと変えているんだ?」

姫路「そっ、それは効果が出なかったから…」

和真「それだよ、俺の気になるのは」

 

姫路に指を突きつける。人差し指だけだと失礼なので中指を重ねて。

 

和真「なんでそんな確実性のかけるやつをしたがるんだ?絶対に痩せられる方法は誰もが知っているはずなのによ。自分の中にある答えから目を背けてんじゃねぇよ」

姫路「絶対に痩せられる方法…ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

和真「痩せたいなら動け!運動しろ!」

 

段々と和真の声に力が入ってきた。

 

姫路「で、でも…運動は苦手なので…」

和真「それだよそれ!痩せたいと言ってる割に運動しない奴が決まって言うセリフ!」

 

さらに指を突きつける。今度は薬指も重ねて。

 

和真「要はそういうことだろ!だるいからしないんだろ!できるだけ楽がしたいんだろ!つまり、お前達にとって痩せたいという願望はその程度のもんなんだろ!」

姫路「ち、違-」

和真「違わねぇだろ!心の底からの渇望ならどんなに辛かろうが苦しかろうが気にならねぇはずだろ!

それは無理だ?自分には向いていない?もっと楽な方法がある?この方が効率がいい筈だ?次頑張ればいい?

ハッ、そんな中途半端な心構えで痩せられるわけねぇだろうが!」

 

姫路は衝撃を受けたような表情になり、そのまま膝から崩れ落ちた。

 

和真「以上、柊 和真のダイエットセミナーだ」

『ちょっと待て!』

 

最初の破局の話から随分と脱線したものだ。

 

和真「まあとにかく、スポーツの時間は絶対減らさねぇ。一緒にいる時間を多くしてほしいならそれにに混ざってもらうしかねぇな」

明久「そんなこと言ってもさ、和真についていける女の子なんて…」

 

ガラガラ

 

優子「和真ー。アンタ昨日グラウンドにタオル忘れていったでしょ?はい」

和真「あ、しまった。わざわざサンキューな、ご丁寧に洗濯までしてくれて」

優子「どういたしまして……って、アンタ手怪我してるじゃない!?」

和真「ああこれか、今朝陸上部の朝練に混じったときに何かで切ったんだろ。まあこの程度なら放っておいても-」

優子「いいわけないでしょ!ほら手貸して!消毒液と絆創膏あるから」

和真「いやなんであるんだよ!?百歩譲って絆創膏はともかく消毒液なんざ普通持ち歩かねぇだろ!?」

優子「アンタがしょっちゅう生傷作るからでしょうが!いいから、ほら!」

和真「いたたたっ!かけすぎだバカ!やるならもっと丁寧にやれ!繊細さの欠片もねぇなお前!」

優子「う、うるさいわね!ちょっとは我慢しなさい、男でしょ!」

和真「我慢できるタイプの痛みじゃねぇよこれは!」

優子「そもそも繊細さとかアンタにだけは言われたくないわよ!」

和真「細かい作業は嫌いなだけでできねぇわけじゃないしー、トランプタワーも7段までできるしー」

優子「アタシだってできるわよ!……5段までだけど」

和真「ふははははは!5段ごときでなにいきがってやがんだ雑魚が!」

優子「アンタだってアタシより一段多いだけでしょうが!」

和真「7段と5段じゃ天と地ほど差があるんだよ、このガサツ女が」

優子「誰がガサツ女よ!ガキみたいな性格してるくせに!」

和真「お前と徹にだけは言われたかねぇよ!」

 

 

 

 

『……………………………………』

 

痴話喧嘩まがいの非常にレベルの低い争いをただ黙って見ている明久達。とても学年トップレベルの学力を持つ人達の争いには見えない。

 

明久「………なんか、別れた原因が他にあるような気がするんだけど」

『同感』

 

 

 

 

 

 




以上です。
和真君のヒロインは優子さんですが、和真の性格があんな感じなので今後進展するかどうかは未定です。
では。


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二巻開始・生徒会と暗躍する影

以前ちょろっとだけ出てきた生徒会からのスタートです。


「全員そろったようですね。それでは、生徒会会議を始めたいと思います」

 

三年学年主任の綾倉先生がにこやかにそう告げる。

 

文月学園生徒会

全校生徒の代表として、生徒がより良い学園生活を過ごすために活動する集団…と、ここまでは一般的な生徒会と一緒だ。ただ、この生徒会は少しだけ一般的な生徒会とは違っている。

 

蒼介「今回の議題は一ヶ月後に控えた『清涼祭』について行います」

 

蒼介がそう言った後、副会長の橘 飛鳥はは各役員と顧問に用紙を数枚ずつ配る。

 

蒼介「まず各クラスに割り当てられる予算についてですが…」

「おい鳳!どうなってんだよ!」

「俺達の案と全然違うじゃねぇか!」

 

会計職に着いている夏川 俊平と常村 勇作が蒼介に抗議する。話の腰を折られた蒼介は剣呑な表情を二人に向ける。

 

蒼介「あなた方の予算案はAクラスが全体の六割を占め、それに対してFクラスには支給されてないも同然でしたね」

夏川「そうだよ、なんか文句でもあんのかよ?」

蒼介「あるに決まっているでしょう。確かに予算は上位のクラスほど優遇されますが限度というものがあります」

常村「わかってねぇなぁ。予算をバカどもに分配しても豚に真珠だ。それなら俺達優等生が使ってやった方が有意義だろうが」

蒼介「そんな主張は断じて認められません。私達は学園を代表する生徒会、私利私欲で行動するなど言語道断です」

夏川「んだと?テメェ先輩に逆らおうってのか?

蒼介「あなた方は先輩以前に生徒会会計職、つまり私の部下です。あまり出過ぎた発言は慎んでください」

蒼介は目上の人間にはきちんと敬意を払うが、決して媚びへつらうようなことはせしない。

間違っていると思ったことは真っ向からねじ伏せる。

常村「テメェ…」

夏川「言わせておけば…」

 

怒りに任せ、常村と夏川が立ち上がる。今にも乱闘に持ち込みそうな二人に対して、

 

「ええ加減にせえよこのバカコンビ!」

 

蒼介の隣に座っているタレ目が特徴的な女子生徒が一喝する。

前生徒会長にして現副会長の一人であり柔道部主将でもある三年生学年次席、佐伯 梓(サエキ アズサ)だ。

エメラルドグリーンの髪をツインテールにしており、普段はいつも人懐っこい笑みを浮かべているのだが、今は「不機嫌ここに極まれり」と言わんばかりのしかめっ面である。

 

常村「さ、佐伯……」

夏川「で、でもよ……」

佐伯「でももストもあるかい!さっきから聞いてたら好き放題言いよって!内申の為に生徒会入ったような奴等がブチブチ文句言うなや!鬱陶しいわ!」

 

これでもかとボロクソ言われているが、否定できないのか押し黙る二人。すると佐伯の発言に納得できないい生徒約一名が話に割り込む。

 

「……え?あの佐伯嬢、少しよろしいでしょうか?」

 

生徒会庶務であり三年首席の高城 雅春がおずおずと声をかける。

 

佐伯「あん?なんや高城?」

高城「私と常村君と夏川君は生徒会に入ることを義務付けられていたのでは?」

小暮「高城君、そんなの梓の嘘に決まっていますわ」

高城「……………………………………」

 

書記の一人である小暮 葵がそう告げると高城はすごく悲しそうな表情になる。

 

高城 雅春の特徴を一言で言うなら、騙されやすい。この十七年間あらゆる人に幾度となく騙されてきた実績は伊達ではない。

 

佐伯「……スマン、去年人員足りひんかったからつい……」

高城「構いませんよ佐伯嬢。慣れて…………ますから………………」

 

見ていていたたまれなくなる光景だ。

 

蒼介「…………とにかく、予算はこのように分配されます。お二方もそれでよろしいですね?」

常村「あ、ああ…」

夏川「つ、つっかかって悪かったな…」

 

佐伯の一喝と高城のあまりにもかわいそうな光景が随分効いたようで、蒼介と夏川達の一触即発な雰囲気も完全に雲散霧消。

 

蒼介「では次に『試験召喚大会』についてですが、この中で参加をするという方は―」

 

その場にいたほとんどの生徒が手を挙げる。

 

蒼介「―私と高城先輩以外、ですか」

徹「あれ?君は出ないのかい?こういう行事は積極的に参加していたはずだけど」

 

もう一人の書記職である小柄な男子生徒、大門 徹が質問する。

蒼介は意外と好戦的な性格だ。この手の大会に参加しないのは些か不自然である。

 

蒼介「私はクラス代表だ。途中で抜けるわけにはいかないだろう」

高城「私も同様の理由です」

 

二人ともそれぞれクラス代表としてこのような行事ではクラスメイトを指揮する責務がある。どうやら二人とも責任感の強い性格をしているようだ。

 

高城「このような仕事をしないと騙されやすい馬鹿であることがばれるとお伺いしましたので」

小暮「高城君、台無しですわ。色々と」

 

片方は騙されているだけだった。犯人はおそらく私は無関係ですとでも言いたげに明後日の方向に目を背けて口笛を吹いている前生徒会長だろう。高城が仕事をしないと次席である自分に回ってくることを見越しているあたり意外とちゃっかり者のようだ。

 

蒼介「まあそれはともかく、この大会の副賞について教頭先生、ご説明を」

竹原「ああわかった。まず一つ目は我が校のスポンサー“桐谷グループ”の系列である“如月グループ”が経営する『如月ハイランド プレオープンプレミアムペアチケット』、もう一つは学園長が新たに開発した『白金の腕輪』だ」

 

その後は竹原教頭の腕輪についての説明が続いた。

 

竹原「―以上だ」

蒼介「ご説明ありがとうございました。では次に―」

 

そう、これが前述した文月学園生徒会特有の業務、学園の経営への参加である。

文月学園は試験召喚システムのための試験高であり、世間の注目を浴びやすい。世間に叩かれないようにどのような経営方針で行うかは非常にデリケートな業務である。そこで実際に学園生活を送っている生徒の意見も取り入れるため、このような会議を度々開くことになっている。

 

蒼介「―以上です。綾倉教諭、これで今日の議題は全て終了しました」

綾倉「そうですか。では、本日の生徒会会議はこれで終わりです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「例の腕輪を無事大会の優勝賞品にすることができたようですね」

「学園長は学校の経営を全て丸投げしているからな、出し抜くことなど造作もないさ」

「それにせっかくの新技術、技術者として使わずにはいられないでしょうしねぇ」

「それについて確認しておく。あの腕輪は本当に高得点者が使用すると暴走するのか?そうでなければ話にならんのだがね」

「私を甘く見ないでくださいよ。あの程度の細工は朝飯前ですよ」

「ああ、それはすまなかったな。ところでなぜ片方だけに細工したんだね?」

「そうしておいた方が都合がいいんですよ。こうすれば学園長は自分が回収するという手段を取らずに腕輪の回収を生徒の誰かに依頼するでしょう。そうなると細工をした方の腕輪を回収する役目を請け負うのは誰になるか絞られます」

「…ああ、観察処分者のバカか。ならばおそらく相方もわかりきっているな。それならば私の用意した刺客には到底敵わないだろうな」

「…だといいですけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼介「……なあ木下、工藤。いくつか聞きたいんだが」

優子「? どうしたの代表?」

愛子「何か問題でもあったのカナ?」

蒼介「まず一つ目、どうして私が知らない内にクラスの出し物が決定しているんだ?」

愛子「代表がここんところ働きづめだから、クラスのみんなが負担を少しでも軽くしようとしたんだよ」

蒼介「まあその気遣いには感謝する。二つ目、【執事喫茶 お嬢様とお呼び!】……この店名は無いだろう」

優子「アタシも薄々おかしいと思ってたけど、気がついたらそれになってたわ」

蒼介「…………まあそれは置いといて。最後の質問だが、

 

 

どうして私は知らないうちにウェイターにされているんだ?」

 

愛子「またまた~。そんな女泣かせな顔で何を言ってるんだよ」

蒼介「少なくとも顔立ちで女子を泣かせたことはないのだがな」

愛子「ん?それ以外ではあるってこと?」

蒼介「……昔飛鳥と初めて会った時、柔道の稽古で―」

飛鳥「その話は黙ってて蒼介、お願いだから」

蒼介「……そうか。ならこの話は終わりだ」

愛子「えー。気になるから教えてよー」

蒼介「却下だ。話を戻すが、どうしても私はウェイターなのか?」

愛子「満場一致で決まったからね~。もう決定事項だと思うよ~」

蒼介「……………仕方ない」

 

 




以上です。
本当は厨房に行きたかった蒼介君、ドンマイ。
この作品では腕輪の欠陥は誰かに仕組まれたという設定になっています。

【生徒会】
会長…鳳 蒼介
副会長…佐伯 梓、橘 飛鳥
書記…小暮 葵、大門 徹
会計…常村勇作、夏川俊平
庶務…高城 雅春
顧問…竹原(教頭)、池本(一年学年主任)、高橋(二年学年主任)、綾倉(三年学年主任)

・役員志願資格はAクラス所属であること。
・会長は二年の学年主席もしくは次席が着任する。
・前生徒会長は三年では副会長として現生徒会長をサポートする
・三年生は一学期終了時にその任を解かれる
・一年生は二学期から志願可能
・役職志願者が定員を越えた場合生徒会選挙が行われる。

では。


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学園祭準備

【前書きコーナー】
蒼介「今回から『清涼祭編』に突入する」

和真「……オイ、なんだよコレ?」

蒼介「? 何か不都合な点でも?」

和真「不都合な点しか見当たらねぇよ………この作者とうとう前書きまでサボるようになったのか?ただでさえ後書きを誰が得するのかもわからねぇ召喚獣のステータスとかで潰してんのに」

蒼介「いや、作者は確かに横着者だがこの件には関わっていない。そもそもどう考えてもこちらの方が負担は大きいからな」

和真「まあ確かに……じゃあなんでこんなコーナーが始まったんだよ?」

蒼介「この巻では私の出番はかなり少なくてな、その腹いせにこのスペースを占拠した」

和真「いやお前何してんだよ!?小説内のキャラがそんな理由で前書きのスペース乗っ取るなんて聞いたことねぇよ!」

蒼介「なかなか斬新だろう?」

和真「そんな斬新さ誰も求めてねぇよ!というかこの部分に割く労力と時間が増えたせいで投稿が遅れることになったりしたらどうするつもりだよ!」

蒼介「心配ない。その責任は全て作者に行くからな、私は痛くも痒くもない」

和真「お前本編と比べて傍若無人過ぎじゃね?」

蒼介「まあここで何をしても本編には何の影響も無いからな、多少はっちゃけても問題無いだろう」

和真「限度っつうもんがあんだろ!?」

蒼介「まあそれはともかく、前回のあらすじでもしようか。誰かが何か企んでた、以上」

和真「雑だなオイ!?」


「……雄二」

「なんだ?」

「……『如月ハイランド』って知ってる?」

「ああ。今建設中の巨大テーマパークだろ?もうすぐプレオープンっていう話の」

「……とても怖い幽霊屋敷があるらしい」

「廃病院を改造したっていうアレか?面白そうだよな」

「……日本一の観覧車とか」

「おお、相当デカいみたいだな。聞いた話だけでも凄そうだ」

「……他にも面白いものが沢山ある」

「それは凄いな。きっと楽しいぞ」

「……それで、今度そこがオープンしたら、私と」

「ああ、お前の言いたいことはよくわかった。そこまで行きたいなら―」

「……うん」

「今度友達と行ってこいよ」

「……タイガーショット」ドゴォ

「ぐああぁっ!弁慶さんはよせぇぇぇ!」

「……私と雄二、二人で一緒に行く」

「オープン直後は混みあっているから嫌(ドゴォ)ぐぎゃあっ!和真の奴余計な技伝授しやがってぇぇぇ!」

「……それなら、プレオープンのチケットがあったら行ってくれる」

「プ、プレオープンチケット?あれは相当入手が困難らしいぞ?」

「……行ってくれる?」

「んー、そうだなー、手に入ったらなー」

「……本当?」

「あーあー。本当本当」

「……それなら、約束。もし破ったら―」

「大丈夫だっての。この俺が約束を破るような奴に見えるか?」

「―この婚姻届に判を押してもらう」

「命に代えても約束を守ろう」

 

(……計画通り)

 

 

 

 

 

 

桜色の花びらが坂道から姿を消し、代わりに新緑が芽吹き始めたこの季節。

和真達の通う文月学園では、新学期最初の行事である『清涼祭』の準備が始まりつつある。

学園祭の準備の為のLHR(ロングホームルーム)の時間では、どの教室も活気が溢れている。

そして、毎度お馴染み、我らがFクラスはというと……

 

 

 

和真「来やがれ明久!」

明久「勝負だ、和真!」

和真「もう一度場外までかっ飛ばしてやるぜ!」

 

準備もせずに、校庭で野球をして遊んでいた。

 

明久「次こそは意地でも打たせるもんか!」

 

ザッとマウンドを足で均し、明久はミットを構えている雄二のサインを待つ。

 

明久(神童とまで呼ばれるほどの頭脳を持った雄二のことだ、たとえ相手が和真でもうまく打ち取れるような指示を出してくれるに違いない)

雄二『次の球は……カーブを、』

明久(ふむふむ)

 

雄二『和真の頭に』

 

明久「それ反則じゃないの!?というかキサマ僕に死ねと!?」

 

そんなことをすれば恐らく血祭りに上げられるだろう。

和真は普段は基本的に温厚だがスポーツに悪意を持ち込むとかなり怒るのだ。

 

「貴様ら、学園祭の準備をサボって何をしているか!」

 

明久「ヤバい!鉄人だ!」

 

新しくFクラスの担任となった生徒指導の西村先生(通称・鉄人)が怒髪天をつく勢いで校舎から走ってきた。

 

鉄人「吉井!貴様がサボりの主犯か!」

明久「ち、違います!どうしていつも僕を目の仇にするんですか!?」

和真(んなもん日頃の行いだろ)

明久と並んで走る和真は心の中でそうツッコむ。相手が鉄人でも瞬発力では和真に分があるのですごく余裕そうだ。

 

明久「雄二です!クラス代表の坂本 雄二が野球を提案したんです!」

 

まあ確かに出し物の内容を決める時間に野球をやろうと言い出したのは雄二である。クラスの9割以上がそれに便乗するのは正直どうかと思うが。

 

明久(きっと責任を取って制裁を受けてくれるはず!)

そう考えて雄二の方を見ると、明久に視線でこう訴えてきた。

『フォークを 鉄人の 股関に』

明久「違う!今は球種やコースを求めているんじゃない!しかも、それをやったら単に僕が怒られるだけだよね!?」

鉄人「柊!お前まで何をやっている!」

和真「いやいや、だってさ西村センセ、クラスが一丸となって積極的に取り組んでたんだぜ?俺が参加しない訳にはいかないっすよ」

鉄人「一丸となってするべきことが違うだろうが!とにかく全員教室に戻れ!この時期になってもまだ出し物が決まっていないなんて、うちのクラスだけだぞ!」

 

 

 

 

 

雄二「さて、そろそろ春の学園祭、『清涼祭』の出し物を決めなくちゃいけない時期が来たんだが、とりあえず、議事進行並びに実行委員として誰かを任命する。そいつに全権を委ねるので、後は任せた」

 

野球を中断された後、雄二は床にござを敷いて座るFクラス一同を見下ろしながら本当にどうでも良さそうな態度でそう告げた。他人に面倒な仕事を全部押し付けようという魂胆が見え見えである。

ちなみに和真はなんの躊躇いも無く爆睡していた。

こちらもこちらでやる気の欠片もない。

 

姫路「吉井君。坂本君も柊君も学園祭はあまり好きじゃないんですか?」

 

話し合いの邪魔にならない程度の小声で姫路は明久に話しかけてきた。

 

明久「雄二は直接聞いたわけじゃないからわからないけど、楽しみにしているってことなさそうだね。興味があるならもっと率先して動いているはずだから。和真は放課後の時間が潰れるからどちらかと言えば嫌いなんじゃないかな」

 

只でさえ最近はラクロス部へのリベンジのため練習していたのだ。その時間が潰れるとなればいい気はしないだろう。

 

姫路「そうなんですか……寂しいです……吉井君も興味がないですか?」

 

姫路は少しだけ上目遣いで明久の顔を覗き込む。

 

明久「う~ん、別にそこまで何かをやりたいってわけでもないしなぁ」

 

授業が潰れるのは嬉しいが、さしてやりたいものもない、というのが明久の本心だ。

 

姫路「私は……吉井君と一緒に、学園祭で思い出を作りたいです」

明久「ほぇ?」

 

姫路の意味深な台詞に明久は思わず間抜けな声が出てしまう。

 

姫路「その、吉井君は知ってますか……?うちの学園祭ではとっても幸せなカップルが出来やすいって噂が―ケホケホッ」

 

急に姫路が口に手を当てて咳をし始めた。

 

明久「大丈夫?」

姫路「は、はい。すいません……」

 

そう言う姫路の目は若干潤んでいる。

腐った畳から更に設備のランクを下げられた今、この教室には傷んだこざとみかん箱しかない。机と椅子に比べて格段に疲れるし不衛生でもある。

こんな設備では身体の弱い姫路が体調を崩しても何の不思議も無い。

 

明久「そのうち、なんとかしないとなぁ……」

雄二「んじゃ、学園祭実行委員は島田ということでいいか?」

 

不意に雄二の言葉が耳に飛び込む。

 

明久(そう言えば学園祭についての話し合いをしているんだった)

美波「え?ウチがやるの?うーん……ウチは召喚大会に出るから、ちょっと困るかな」

 

雄二に推薦された美波だが、どうやらあまり乗り気じゃないようだった。

 

明久「雄二。実行委員なら、美波より姫路さんの方が適任じゃないの?」

姫路「え?私ですか?」

 

そこに明久が姫路を推薦する。気の強い美波よりも優しい姫路の方が話し合いで荒れないで済むと思ったのだろう。

 

雄二「姫路には無理だな。多分全員の意見を聞いてるうちにタイムアップになる」

 

雄二の言うとおり、姫路は少数意見を切り捨てるような事はできないからそうなる可能性は高い。野球で時間を潰しに潰してしまったFクラスに今更そんな余裕はない。

 

美波「それにね、アキ。瑞希も召喚大会に出るのよ」

明久「え?そうなの?」

姫路「はい。美波ちゃんと組んで出場するんですよ」

明久「学校の宣伝みたいな行事なのに。二人とも物好きだなぁ」

 

清涼祭のイベントの一つに『試験召喚大会』という企画があり、これの目的は明久の言うとおり『試験召喚システム』を世間に公開するための文月学園の宣伝活動のようなものだ。

 

美波「ウチは瑞希に誘われてなんだけどね。瑞希ってばお父さんを見返したいって言ってきかないんだから」

明久「お父さんを見返す?」

美波「うん。家で色々言われたんだって。『Fクラスの事をバカにされたんです!許せません!』って怒ってるの」

明久「あらら。姫路さんが怒るなんて珍しいね」

姫路「だって、皆の事を何も分かってないくせに、Fクラスって言う理由だけでバカにするんですよ?許せませんっ」

明久「…………」

 

事実、一部を除けばFクラスはバカの集まりなので明久は閉口してしまう。

 

美波「だから、Fクラスのウチと組んで、召喚大会で優勝してお父さんの鼻をあかそうってワケ」

明久「なるほど……あれ?それだったら霧島さんか和真と組んで出た方が良くない?」

翔子「……吉井、私も和真も既に別の相手とエントリーしている」

 

話を聞きつけ、雄二の彼女こと霧島 翔子が明久達の近くに来る。

 

明久「え、そうなの?霧島さんがこういう大会に出るなんて珍しいね」

霧島「……私は私で負けられない理由がある」

明久「え?それっていったい…」

雄二「四人とも。こっちの話を続けていいか?」

明久「あ、ゴメン雄二。美波が実行委員になる話だよね?」

美波「だからウチは召喚大会に出るって言ってるのに」

雄二「なら、サポートとして副実行委員を選出しよう。それなら良いだろ?」

 

チラッと明久の方を見る雄二。どうやら明久を人身御供にするつもりのようだ。いつものことである。

 

美波「ん~そうね、その副実行委員次第でやってもいいけど……」

雄二「そうか。では、まず皆に副実行委員の候補を挙げてもらう。その中から島田が二人を選んで決定投票をしたらいいだろう」

 

皆もいいな、と雄二がクラスメイト達に告げる。すると、教室内からちらほらと推薦の声が聞こえてきた。

 

『吉井が適任だと思う』

『やはり坂本がやるべきじゃないか?』

『柊なら上手くやってくれるはず』

『ここは須川にやってもらった方が』

『姫路さんと結婚したい』

『霧島さんを奪った坂本を殺してやりたい』

 

クラス内から何人かの適任者の名前が挙がる。(最後の二名を除く除く)

 

「ワシは明久が適任じゃと思うがの」

 

そう言い明久に秀吉が一票を投じる。

 

明久「って、秀吉。僕もそう言う面倒な役は、できればパスしたいな~なんて」

秀吉「それは他の皆とて同意見じゃ。ならば適任の者にやってもらった方が良いじゃろう?」

明久「むぅ……それはそうだけど……」

 

秀吉の言うことが正論ゆえか反論できない様子の明久。

 

明久(でも、まぁいっか。まだ候補ってだけで決定したわけじゃないし二人の候補を美波が選んで、決戦投票をやって初めて決まるんだから)

 

その考えはマロングラッセより甘いと言わざるを得ない。なぜなら、

 

雄二「よし島田。今挙がった連中から二人を選んでくれ」

美波「そうね~。それじゃ……」

 

ある程度候補の名前が挙がると、美波はボロボロの黒板に決選投票候補者の名前を書き連ねた。

 

『候補①……吉井』

明久(あ、やっぱり僕だ)

 

『候補②……明久』

明久(あ、これも僕だ)

 

明久は貧乏くじを引く運命にあるからだ。

 

雄二「さて、この二人の中からどちらが良いか、選んでくれ」

明久「ねぇ雄二。明らかに美波の候補の挙げ方はおかしいと思わない?」

『どうする?どっちが良いと思う?』

『そうだなぁ……どちらもクズには変わりないんだが……』

明久「こらぁっ!真面目に悩んでるフリするんじゃない!あと、平然とクラスメイトをクズ呼ばわりなんて、君らは人間のクズだ!このクラスのモラルはどうなってるんだ!」

 

確か人であるなら備わっていて当たり前のものであるが、Fクラスに所属している以上そんな贅沢品を求めてはいけない。

 

美波「ほらほら、アキってば。そんな事より、ウチとアンタでやることに決まったんだから、前に出て議事をやらないと」

明久「なんだか僕はいつもこんな貧乏くじを引かされている気がするよ……」

 

美波に促され、明久は渋々と席を立って前に出た。美波の行為にまるで気付いていない明久にとって、副実行委員の肩書きなど足枷でしかない。

 

雄二「んじゃ、あとは任せたぞ。ふぁ~……」

 

入れ替わり席に戻る雄二。

席に戻った途端和真の後を追って夢の世界に入っていった。

 

美波「ウチは議事をやるから、アキは板書をお願いね」

明久「ん、了解」

 

ボロボロの黒板の前に立ち、かなり短くなったチョークを手に取る。

余談だが補充されるチョークも最初から短くされている。短くなったチョークを再利用しているのかわざわざ短くしているのかわからないが、後者ならば誰も得しないだろう。不合理の極みと言ってもいい。

 

美波「それじゃ、ちゃっちゃと決めるわよ。クラスの出し物でやりたいものがあれば挙手してもらえる?」 

 

美波が告げると何人かが手を挙げる。意外なことに、やる気のある生徒も何人かはいるようだ。

美波「はい、土屋」

ムッツリーニ「……(スクッ)」

 

名前を呼ばれて立ち上がったのはムッツリーニ。

 

ムッツリーニ「………写真館」

美波「……土屋の言う写真館って、かなり危険な予感がするんだけど」

 

美波が思い切り嫌そうな顔をする。

 

明久(確かに女子から見ればムッツリーニの撮る写真は嫌かもしれない。けど、男子からするとその写真館は宝の山と言える……覗き部屋とも言えるかもしれないけど)

美波「アキ、一応候補だから黒板に書いてもらえる?」

明久「あいよー」

 

【候補① 写真館『秘密の覗き部屋』】

どう考えても18禁だろう、そのタイトルは。

 

美波「次。はい、横溝」

横溝「メイド喫茶―と言いたいけど、流石に使い古されていると思うので、ここは斬新にウェディング喫茶を提案します」

美波「ウェディング喫茶?それってどういうの?」

横溝「別に普通の喫茶店だけど、ウェイトレスがウェディングドレスを着てるんだ」

 

つまり中身はただの喫茶店だが、着ている衣装が違うという事だ。

 

『斬新ではあるな』

『憧れる女子も多そうだ』

『でも、ウェディングドレスって動きにくくないか?』

『調達するのも大変そうだぞ?』

『それに、男は嫌がらないか?人生の墓場、とか言うぐらいだしな』

 

そんな意見に、クラスの中が少しざわめく。

 

美波「ほら、アキ。今の意見も黒板に書いて」

明久「あ、うん」

美波に促されて、明久が黒板に横溝の提案を書く。

 

【候補②ウェディング喫茶『人生の墓場』】

縁起でもない。結婚に幻想を抱いた人達の考えを容赦なくブチ殺す冷徹なタイトルだ。

 

美波「さて、他に意見は、はい、須川」

須川「俺は中華喫茶を提案する」

美波「中華喫茶?チャイナドレスでも着せようって言うの?」

須川「いや、違う。俺の提案する中華喫茶は本格的なウーロン茶と簡単な飲茶を出す店だ。そうやってイロモノ的な格好をして稼ごうってワケじゃない。そもそも、食の起源は中国にあるという言葉があることからもわかるように、こと『食べる』という文化に対しては中国ほど奥の深いジャンルはない。近年、ヨーロピアン文化による中華料理の淘汰が世間では見られるが、本来食というのは―」

明久(な、なんだ?よくわからないけど、相当なこだわりでもあるんだろうか?内容は全然理解できないけど)

美波「アキ、それじゃ、須川の意見も黒板に書いてくれる?」

明久「あ、うん」(……さて困った。須川君は一体何を話していたんだろう?全く内容が頭に入ってこなかった。黒板になんて書けば良いんだろう?)

美波「どうしたの?早く書いてよ」

明久「りょ、了解」

 

美波に急かされて慌てて書き始める。

 

【候補③中華喫茶『ヨーロピアン』】

『超巨大小惑星』に通ずるものがある店名だ。どうやら明久の中では中華料理文化は完全に淘汰されてしまったらしい。

 

和真「………………んむ……ふわぁ…」

姫路「あ、柊君起きたんですか」

和真「そろそろ来る気がしてな」

姫路「? それはどういう―」

 

姫路が言い終わらない内に教室の扉が開き、鉄人が入って来た。これを予知したとすれば、相変わらずすごい直感である。

 

鉄人「皆、清涼祭の出し物は決まったか?」

美波「今のところ、候補は黒板に書いてある三つです」

 

鉄人はそれを聞くとゆっくりと黒板に目をやった。

 

【候補① 写真館『秘密の覗き部屋』】

【候補②ウェディング喫茶『人生の墓場』】

【候補③中華喫茶『ヨーロピアン』】

 

鉄人「……補習の時間を倍にしたほうが良いかもしれんな」

 

こめかみをひくつかせながら鉄人が呟く。どうせバカな意見が述べられているだろうとある程度予想していたようだが、それらを遥かに上回るどうしようもなさだったらしい。

 

『せ、先生!それは違うんです!』

『そうです!それは吉井が勝手に書いたんです!』

『僕らがバカなわけじゃありません!』

 

補習の時間を増やされたくないクラスの皆が明久一人をバカ扱いして逃れようと抗弁する。

 

鉄人「馬鹿者!みっともない言い訳をするな!」

 

鉄人の一喝で、背筋が伸びる一同。その毅然とした態度に明久は思わず感心する。

 

明久(流石は腐っても教師。クラスメイトを売ってその場を逃れようとする魂胆が気に入らないなんて、ちょっと見直したよ)

 

鉄人「先生は、バカな吉井を選んだ事自体が頭の悪い行動だと言っているんだ!」

明久(同級生だったらシバいているところだ)

 

結局鉄人はやはり鉄人であると痛感する明久であった。

 

鉄人「全くお前達は……少しは真面目にやったらどうだ。稼ぎを出してクラスの設備を向上させようとか、そう言ういった気持ちすらないのか?」

 

溜息まじりの鉄人の台詞。それを聞いて、クラスの連中の目が急に輝き出した。

 

『そうか、その手があったか!』

『なにも試召戦争だけが設備向上のチャンスじゃないよな!』

『いい加減このミカン箱にも我慢の限界だ!』

 

一気に活気づく教室内。元々設備に不満を感じて試召戦争を始めたんだ。当時より更に低い設備では我慢などしていられるはずもない。

 

姫路「み、皆さんっ!頑張りましょう!」

 

これは姫路の声だった。立ち上がって胸の前でグーを握りやる気を見せている。自身も設備に不満が無かった訳ではないだろうが、ここまで率先して動くのはどちらかというと姫路らしくない。

 

『出し物はどうする?利潤の多い喫茶店が良いんじゃないか?』

『いや、初期投資の少ない写真館の方が』

『けど、それだと運営委員会の見回りで営業停止処分を受ける可能性もあるぞ』

『中華喫茶ならはずれはないだろう』

『それだと目新しさに欠けるな。汚いせいであまり人が来ない旧校舎だと、その特徴のなさは致命傷じゃないか?』

『ウェディング喫茶はどうだ?』

『初期投資が高すぎる。たった二日の清涼祭じゃ儲けは出ないんじゃないか』

『リスクが高いからこそリターンも大きいはずだ』

クラスの皆はやる気になったものの意見がまとまりそうになかった。

美波「はいはい!ちょっと静かにして!」

 

島田がパンパンと手を叩いて注意するが、効果はあまりない。次から次へと湯水のごとく意見が湧き出てくる。

 

『お化け屋敷なんかの方が受けると思う』

『簡単なカジノを作ろう』

『焼きとうもろこしを売ろう』

 

さらに意見がバラバラになっていく。試召戦争のときとは比べ物にならないほどのまとまりの無さだ。こんなクラスをまとめていた雄二のクラス代表としての手腕はやはり相当なものだろう。

 

美波「はぁ……まったくもう……。ねぇ、アキ。坂本か柊を引っ張り出せない?これじゃ、あまりにまとまりが悪すぎるわ」

明久「う~ん……無理だと思うよ。二人とも興味の無いことにはどこまでも無関心だから」

 

Aクラスレベルの実力があるのにも関わらずわざわざFクラスに来たような二人だ、当然設備に不満など特に無いだろう。

 

明久「それに和真は全体の指揮は苦手らしいから」 

 

和真の出す指示内容が「あれやっといて」とか「それはあっちに」みたいな超アバウトな為である。

『アクティブ』のメンバーが上位クラスの面子で固められている理由のひとつであったりする。『アクティブ』はハイレベルな頭脳、メンタル、身体能力を要求される、何気に狭き門だったりするのだ。

 

美波「そっか……もうっ。とにかく静かにして!決まりそうにないから、店はさっきの挙がった候補から選ぶからね!」

 

業を煮やし、無理矢理話をまとめた。これはこれで正しい判断だろう。

 

美波「ほらっ!ブーブー言わないの!この三つの中から一つだけ選んで手を挙げる事いいわね!」

 

反論を眼力で押さえ、決を採りにかかる美波。こういった役は明久や姫路はもちろん、翔子にもできそうにない。

 

美波「それじゃ、写真館に賛成の人!―はい、次はウェディング喫茶!最後、中華喫茶!」

 

クラス中に美波の声が響くが、それでも喧騒は収まらない。騒がしい中、美波が挙げられた手の本数をカウントし始めた。結果、

 

美波「Fクラスの出し物は中華喫茶にします!全員、協力するように!」

 

接戦で中華喫茶が勝利となった。

 

須川「それなら、お茶と飲茶は俺が引き受けるよ」

 

提案者の須川が立ち上がる。

 

ムッツリーニ「………(スクッ)」

 

そして何故かムッツリーニも立ち上がった。

 

明久「ムッツリーニ、料理なんてできるの?」

ムッツリーニ「…………紳士の嗜み」

 

おそらくチャイナドレス見たさで中華料理店に通っているうちに見よう見まねでできるようになった、とかであろう。ムッツリーニのスキル習得の大半は下心が絡んでいる。

 

美波「まずは厨房班とホール班に分かれてねもらうからね。厨房班は須川と土屋のところ、ホール班はアキのところに集まって!」

 

いつの間にか明久がホール班のトップになっていた。

 

姫路「それじゃ、私は厨房班に―」

明久「ダメだ姫路さん!キミはホール班じゃないと!」

 

平然と厨房班に入ろうとした姫路を前回の出来事を考慮して明久が止めにかかる。

 

『明久、グッジョブじゃ』

『………!(コクコク)』

 

その殺傷能力を知っている秀吉、ムッツリーニからのアイコンタクト。前回最大の犠牲者であった雄二は寝ている為か気づかない……はずなのだが、よく見ると微妙に小刻みに震えていた。夢の中で姫路の料理でも食べてるのだろうか。

 

姫路「え?吉井君、どうして私はホール班じゃないとダメなんですか?」

明久「あ、えーと、ほら、姫路さんは可愛いから、ホールでお客さんに接したほうがお店として利益が痛あっ!み、美波!僕の背中はサンドバックじゃないよ!?」

 

明久にしては上手い言い訳だったが、美波の機嫌を損ねてしまったらしい。

姫路「か、可愛いだなんて……吉井君がそう言うなら、ホールでも頑張りますねっ♪」

明久(できればホールだけで頑張って欲しい)

和真(………明久、人は成長するんだぜ?)

 

そのやり取りを眺めながら色々と事情を知っている和真はそんなことを思う。

 

美波「アキ。ウチは厨房にしようかな~?」

明久「うん。適任だと思う」

美波「…………」

 

明久は今、地雷を全力で踏み抜いた。

 

霧島「……じゃあ、私も厨房で」

明久「いや、霧島さんみたいな美人は是非ともホールにするべきだよ!」

霧島「……わかった」

美波「………………」

 

さらに地雷を踏み続ける明久。

 

秀吉「なら、ワシも厨房にしようかの」

明久「秀吉、何を馬鹿なことを言ってるのさ。そんなに可愛いんだから、もちろんホールに決まってみぎゃあぁっ!み、美波様!折れます!腰骨が!命に関わる大事な骨が!」

 

とうとう我慢の限界が来たようだ。地雷源でタップダンスを踊りきった明久は美波の私刑によってその場に崩れ落ちる。

 

和真「島田、気持ちはわかるが落ち着け。明久に悪気は無い」

美波「だからこそ余計腹立つんだけど……まあいいわ、ウチもホールにするから」

明久「そ、そうですね……それが、いいと、思います……」

和真「じゃあ俺もホールな。中華料理なんて細けぇ料理作れねぇし」

明久「まあ和真はホールだよね。見た目も良いし接客も得意そうだし」

 

中性的かつ実年齢マイナス3歳くらいの可愛らしい系の顔立ちはもとより、和真の社交性は他の追随を許さないレベルだ。厨房で遊ばせておく手は無いだろう。

 

そういうわけで、Fクラスの人並みの生活が懸かった学園祭は幕を開けることになった。

 

 




過去最長の9000文字オーバー。
導入部分はしっかりと描写しなければならないとはいえ、疲れました。

坂本 雄二
・性質……防御度外視型
・総合科目……2700点前後 (学年15位)
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……B+
機動力……B+
防御力……D+

ステータスはなかなかのレベルである。しかしクラス代表であることと雄二が指揮官タイプであることからあまり闘わない。装備を決定する時期ではまだはろくに勉強をしていなかったため、点数に比べて貧相な装備である。

では。


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FULLSWING

【前書きコーナー】

蒼介「前回のあらすじ……ピッコロの魔貫光殺砲によってラディッツを打倒することに成功するも、その代償として悟空が死んでしまう。さらにピッコロが漏らしたある情報をラディッツの盗聴器ごしに別のサイヤ人、ベジータとナッパに傍受され―」

源太「いや違ぇだろ!なんでドラゴンボール!?」

蒼介「おっと間違えてしまった。中華喫茶『ヨーロピアン』、以上」

源太「適当過ぎるだろオイ!……まあそれはともかく、なんで俺様がここに連れて来られたんだよ?ついでに和真もいねぇし」

蒼介「流石に毎回私達二人で進めるのは読者も飽きるだろうからな。カズマ、五十嵐、大門、飛鳥でローテーションすることになったのだ」

源太「なるほど……ん?ちょっと待て。なんでテメェは代わってねぇんだよ?」

蒼介「私が代わりたくないからだ」

源太「いやおかしいだろ!?そんなわがままが認められるとでも―」

蒼介「何を言っている。このスペースは私が乗っ取ったのだぞ?つまりここは私の所有物であり、私がルールだ」

源太「テメェ本編に影響しねぇからって傍若無人過ぎだろ……」



帰りのHRも終わって放課後。

 

和真「さーてと、たまには真っ直ぐ家に帰るか」

明久「珍しいね、それじゃあ途中まで一緒に帰ろうよ」

和真「ん、オーケー」

美波「アキ、柊……ちょっといい?」

 

文化祭間近で放課後が暇になった和真は明久を連れて帰ろうとするが、教室を出る前に美波が声をかけてきた。

 

明久「ん?何か用?」

美波「用って言うか、相談なんだけど」

和真「…その様子じゃ割と真面目な話だな」

明久「僕達で良ければ聞かせてもらうけど」

美波「うん。ありがと。多分、アキが言うのが一番だと思うんだけど……その、やっぱり坂本をなんとか学園祭に引っ張り出せないかな?」

 

実行委員を引き受けたものの、Fクラスの喫茶店の成功には雄二の先導が必要だと判断したらしい。

ムキになって自分で何とかしようとしないあたり、そっち方面では意地っ張りではないらしい。

 

和真「無理だと思うぜ?あいつは興味のないことには俺以上にやる気を出さねぇから」

明久「多分クラスの出し物が何に決まったかさえ知らないと思うよ」

美波「でも、アキが頼めばきっと動いてくれるよね?」

 

根拠も何もあったもんじゃないが、何かを期待するような美波の眼差しに二人は不思議に思う。

 

明久「え?別に僕が頼んだからって、アイツの返事は変わらないと思うけど」

和真「あいつ曰く、明久との関係は他人未満宿敵以上らしいからな」

美波「ううん、そんなことない。きっとアキの頼みなら引き受けてくれるはず。だって―」

明久「そりゃ確かに、よくつるんではいるけど、だからと言って別に」

美波「だってアンタたち、愛し合ってるんでしょう?」

和真「ブフォッ!」

明久「もう僕お嫁にいけないっ!それから和真!笑いごとじゃないでしょ!?」

和真「いやいや、笑いごとだろ」ゲラゲラ

 

ツボにはまったのか、腹を抱えて大爆笑する和真。

 

明久「だいたいなんで雄二なんかと!だったら僕は断然秀吉の方がいいよ!」

秀吉「……あ、明久?」

 

偶然近くにいた秀吉の動きが止まる。

 

秀吉「そ、その、お主の気持ちは嬉しいが、そんなことを言われても、ワシらには色々と障害があると思うのじゃ。その、ホラ。年の差とか……」

明久「ひ、秀吉!違うんだ!もの凄い誤解だよ!さっきのはただの言葉のアヤで!それと、僕らの間にある障害は決して年の差じゃないと思う!」

 

一番大きな障害は同性であることだろう。

しかし秀吉は顔を赤らめて俯いてしまっている。

 

明久(ど、どうしよう!秀吉ならいいかも、って思えてきた!)

 

その障害も今にも崩れそうだった。

 

和真「……送信、と」カチカチ

明久「? 和真、何やってるの?」

和真「気にすんな。お前と雄二が愛し合ってるっつうニュースを学園の可能な限りの生徒に送信しただけだから」

明久「なんてことしてくれたんだキサマァァァァァァ!」

 

あまりの衝撃発言にフリーズした後、明久は力の限りシャウトした。

和真基準での可能な限り=ほぼ全ての生徒である。

 

和真「まあそう怒るなよ」

明久「怒るに決まってるじゃないか!!!キサマのせいで僕は…僕は…」

和真「ちょっとしたジョークだから」

明久「………………」

和真「…?」

明久「…………良かった…………本当に良かったよう」

 

安心のあまり泣き出す明久。戦地に赴いた恋人が無事帰還してきたかのような号泣ぶりに、さしもの和真も罪悪感が湧く。

 

和真「……すまん、やり過ぎた。だいたい島田も島田だ、雄二は翔子の所有物なんだからそんなことあるわけねぇだろ」

 

この場に雄二がいたら猛然と抗議してきそうな発言である。

 

美波「だって、同性は別腹ってDクラスの玉野さんが言ってたし」

和真「いやデザートじゃねぇんだからよ……それからあいつの言うことは真に受けるな。色々と終わってるから、あいつの思考回路」

 

いつもよりやけに辛辣な物言いである。

玉野と以前何かあったようだ。

 

美波「それじゃ、坂本は動いてくれないってこと?」

明久「え?あ、うん。そういうことになるかな」

美波「なんとかできないの?このままじゃ喫茶店が失敗に終わるような……」

 

目を伏せ、沈んだ面持ちになる美波。

 

秀吉「ところで、お主らは何の話をしておるのじゃ?随分と深刻な話のようじゃが」

明久「深刻って程じゃないんだけど、喫茶店の経営とクラスの設備の話で-」

美波「アキ、そうじゃないの。本当に深刻なのよ……」

明久「え?どういうこと?」

和真「何かあったのか?お前がそこまで設備の悪さに不満があるとは思えねぇし」

美波「本人には誰にも言わないで欲しいって言われてたんだけど、事情が事情だし……けど、一応秘密の話だからね?」

明久「う、うん。わかった」

和真「あいよ」

 

美波の真剣な顔に明久が少し気圧されてるようだった。

和真はいつも通り気楽に返答しているが。

 

美波「実は、瑞希なんだけど」

明久「姫路さん?姫路さんがどうしたの?」

美波「あの子、転校するかもしれないの」

明久「ほぇ?」

和真「……なるほどな。まあ無理もねぇか」

 

明久(姫路さんが転校?そんな馬鹿な。折角同じクラスになって、いよいよこれからって時に転校しちゃうなんて。まだ楽しい思い出も作ってないし、膝枕も耳掃除もしてもらってない。だいたい、彼女が転校しちゃったらこのクラスはどうなる?清涼剤である彼女がいなくなれば、クラスは荒廃し、暴力と略奪が蔓延る地獄になるだろう。そして全員の髪型が某世紀末救世主伝説の脇役のようにモヒカンになること間違い無しだ。それできっと秀吉と霧島さんを巡って血で血を洗うような抗争が続く日々に―)

 

和真「あ、ダメだ。処理落ちしてらぁ」

美波「このバカ!不測の事態に弱いんだから!」

秀吉「明久、目を覚ますのじゃ!」

 

明久の肩を揺すって起こそうとする秀吉。トリップしていた明久はなんとか覚醒する。

 

明久「秀吉……、モヒカンになった僕でも、好きでいてくれるかい……?」

美波「……どういう処理をしたら、瑞希の転校からこういう反応が得られるのかしら」

秀吉「ある意味、稀有な才能かもしれんのう」

和真「多分、

姫路が転校→女子が減る→クラスが荒れる→クラスの男子が皆北斗の拳のザコキャラみたいになる→北斗のザコキャラと言ったらモヒカン、だろうな」

二人「なんでわかったの(じゃ)!?」

和真「感覚派の人間同士は言葉を交わさずともわかり合えるもんなんだよ。まあこいつはバ感覚派だがな」

明久「そんな派閥になった覚えはないよ……ハッ!美波!姫路さんが転校ってどういうこと?」

 

明久は正気に戻り、詳しい事情を聞こうと美波に詰め寄る。

 

美波「どうもこうも、そのままの意味。このままだと瑞希は転校しちゃうかもしれないの」

明久「このままだと……?」

 

妙な言い回しだ。この言い方だと転校はまだ確定したわけではないようである。

 

秀吉「島田よ。その姫路の転校と、さっきの話が全然繋がらんのじゃが」

美波「そうでもないのよ。瑞季の転校の理由が『Fクラスの環境』なんだから」

和真「身体が弱い姫路なら下手したら病気になりそうなひでぇ設備に、周囲の人間は悪影響しかないバカばっか。娘が大切ならそりゃ転校させるよな」

明久「な、なるほど」

秀吉「言われてみればそうじゃのう…」

 

和真の説明に納得した様子の二人。そういう事情を知っていたとするなら、美波がやけに清涼祭の行事に精力的に取り組んでいるのも頷ける。

 

秀吉「なるほどのう。じゃから喫茶店を成功させ、設備を向上させたいのじゃな」

美波「うん。瑞希も抵抗して『召喚大会で優勝して両親にFクラスを見直してもらおう』とか考えているみたいなんだけど、やっぱり設備をどうにかしないと」

 

Fクラスはバカの集まりだからというのが転校を勧められる一因の一つだから、姫路の行動も無駄ではない。

だが、やはりそれ以上に姫路の健康の方が問題になる。

それをなんとかしない限り両親の考えは変わらないだろう。

 

美波「……アキはその……瑞希が転校したりとか嫌だよね……?」

 

不安そうな目で明久を見るが、その心配は杞憂であると言わざるを得ない。

 

明久「もちろん嫌に決まってる!姫路さんに限らず、それが美波や秀吉や和真であっても!家庭の事情でどうしようもないならともかく、そんな理由で仲間が離れていくなんて絶対に嫌だ!」

 

美波「そっか……うん、アンタはそうだよね!」

 

嬉しそうに頷く美波。

 

 

 

明久(雄二だったらどうでもいいけど)

 

台無しだよ。色々と。

 

明久「そういうことなら、なんとしても雄二を焚き付けてやるさ!」

秀吉「そうじゃな。ワシもクラスメイトの転校と聞いては黙っておれん」

和真「学園祭は正直あまり好きじゃねぇが、そういう理由なら力を貸してやるよ」

明久「それじゃ、まずは雄二に連絡を取らないとね」

 

そう言って雄二に携帯をかける。

呼び出し音が受信器から響く。

 

『―もしもし』

明久「あ、雄二。ちょっと話が―」

『明久か。丁度良かった悪いが俺の鞄を後に届けに―げっ!翔子!』

明久「え?雄二。今何をしてるの?」

『くそっ!見つかっちまった!とにかく、鞄を頼んだぞ!』

明久「雄二!?もしもし!もしもーし!」

 

どうやら翔子の射程範囲に入ったらしく、こちらの話を伝える前に切られてしまった。

 

美波「坂本はなんて言ってた?」

明久「えっと『見つかっちまった』とか『鞄を頼む』とか言ってた」

美波「……また翔子絡み?」

和真「十中八九そうだろうな」

秀吉「雄二はああ見えて異性には滅法弱いからの」

 

Fクラスでは特に珍しいことでは無いので三人とも理解が早く欠片も驚かない。

 

美波「そうすると、坂本と連絡取るのは難しいわね」

明久「いや、これはチャンスだ」

美波「え?どういうこと?」

和真「おっ、何か思いついたか?」

明久「雄二を喫茶店に引っ張り出すには丁度いい状況なんだよ。うん。ちょっと三人とも聞いてくれるかな?」

美波「それはいいけど……坂本の居場所はわかっているの?」

明久「大丈夫。相手の考えが読めるのは、なにも雄二だけじゃない」

秀吉「何か考えがあるようじゃな」

明久「まぁね」

 

三人は明久に連れられて教室をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

和真「よぉ雄二」

明久「奇遇だね」

 

二人は部屋の物陰で大きな身体を小さくしている雄二に話しかける。雄二は死んだ魚のような目ど二人に問いかける。

 

雄二「……どういう偶然があれば女子更衣室で鉢合わせするのか教えてくれ」

 

そう。ここは体育館にある女子更衣室。男子生徒がどこにいるか探すとき、まず訪れないであろう場所である。

 

明久「やだな。ただの偶然だよ」

雄二「嘘をつけ。こんな場所で偶然会うわけが―」

 

ガチャッ

 

音を立ててドアが開くと、体操服姿の木下 優子が入って来た。

 

優子「えーっと……あれ?和真と…Fクラスの問題児コンビ?ここ、女子更衣室だよね?」

和真「なんだ優子か。奇遇だな」

明久「やぁ木下 優子さん。奇遇だね」

雄二「秀吉の姉さんか。奇遇じゃないか」

優子「あ、うん。奇遇ね」

 

 

アッハッハッハッハッハッハッハ

 

 

優子「先生!覗きです!変態です!」

雄二「逃げるぞお前等!」

明久「了解っ!」

和真「あいよっ!」

 

三人は更衣室の窓から表に飛び出していった。

笑って誤魔化せるほど世の中は甘くないのである。

 

鉄人「大丈夫か木下!」

 

鬼の形相でFクラスの怪物教師、西村宗一こと鉄人が飛び込んで来た。

 

優子「Fクラスの吉井君と坂本君です!そこの窓から逃げて行きました!」

鉄人「またアイツらかっ!」

 

そのまま鉄人は窓から飛び出していった。それを確認した優子は疲れたようにように溜め息を吐いてから口を開く。

 

 

優子「…………いるんでしょ?出てきなさい和真」

 

窓に近づいて優子は呆れるような声でそう呟く。

すると……

 

和真「よく気づいたな優子」

 

窓から和真が顔を覗かせた。

どうやら窓の上の壁に気配を消して張り付いていたようだ。忍者顔負けである。

 

優子「アンタ以前も同じような手段でやり過ごしてたじゃない」

和真「そういや、そんなこともあったなぁ」

 

そのまま女子更衣室内に戻り、いつも通りの笑みを浮かべながらなぜか諭すように優子に注意する和真。

 

和真「だけどなんでアイツ等だけチクったんだよ?差別は良くねぇぜ、閣下」

優子「誰が閣下よ……アンタは要領が良いからあまり教師に目をつけられてないからね。あの二人ならともかく、アンタの名前を出したら西村先生は確認をとるでしょ。その間に逃げられちゃうじゃない」

和真「そいつはなかなか良い判断だな。……それにしても、折角雄二を捕獲できたのに逃げられちまったぜ」

優子「ああ、アンタ達は代表の坂本君を探してたの…いやおかしいわよ。なんで坂本君はこんなところにいたのよ?」

和真「そりゃ、翔子から逃げるためだろ」

 

なにを当たり前のことを、と言わんばかりに和真は質問に応答する。その返答にこめかみを手を当て再び嘆息する優子。

 

優子「そうだとしても、やっていいことと悪いことがあるでしょ……」

和真「甘いぜ優子。あいつは翔子から逃げるためなら手段を選ばない。翔子も翔子で男子トイレ程度なら躊躇いなく入って行くだろうしな」

優子「やっぱりおかしいわよ…どっちも……」

和真「まあ、アイツらならうまく逃げ切るだろ。そうなると明久は雄二を教室に連れて来てくれるだろうし、俺もさっさと戻るか。じゃあな、優子」

優子「ちょっと待ちなさい」

 

女子更衣室から出ていこうとする和真の手を優子が掴む。

決して逃がさないように固く、強く。

 

和真「? なんだよ?」

優子「女子更衣室に入っておいて何のお咎めも無しとはいかないわよ。このままアタシが職員室まで連行します」

 

問題児コンビは鉄人に任せ、和真は自分が捕獲する。Aクラス生徒らしい合理的な作戦だ。

これに対して和真は、

 

和真「見逃して」

 

『そこの醤油取って』ぐらいのノリで頼んだ。第三者から見れば、女子更衣室に忍び込んだけど急いでいるから見なかったことにしろ、と無茶苦茶なお願いである。

しかし和真はこの要求が通ると確信していた。

なぜなら、優子が問答無用で職員室まで連行する女子なら、彼女が入って来る前に和真の直感で察知できたはずである。

 

優子「ふ~ん……なら、一つ提案があるんだけど」

和真「ほう?どんな提案だ?」

 

何かを期待するような顔つきになる和真。

 

優子「アタシと召喚獣で勝負しなさい。アンタが勝ったらこの件は見逃してあげる。ただし、アタシが勝ったらおとなしくお縄につく。どう?この提案受け―」

和真「受けるぜ」

優子「…早いわね。まだ言い終わってないわよ」

和真「俺も丁度試したいことがあったし…何より挑戦状叩きつけられたんだ、受けない手は無ぇよ」

そう言って和真は心底楽しそうに笑う。

優子「アンタらしいわね、でも負けないわよ。今回はちゃんと反省してもらいます」

 

 

 

 

 

 

 

二人は職員室に行き、先生の許可を取ってフリスペを利用する。

 

和真「科目はどうする?選ばせてやるよ」

優子「じゃあ、総合科目で。今のアンタの成績がどのくらいか確認しておきたいし」

 

和真はそれを聞くと隣に設置されたパソコンに総合科目と打ち込む。

すると、召喚フィールドが現れた。

 

『試獣召喚(サモン)!』

 

掛け声とともに、西洋鎧とランスを身に付けた優子の召喚獣と、黒ジャケットに赤いシャツに巨大な槍を身に付けた和真の召喚獣がそれぞれ出現する。

 

 

《総合科目》

『Fクラス 柊 和真 3869点

VS

Aクラス 木下 優子 3883点』

 

 

優子「う……点差が大分縮まってる」

和真「いつまでも苦手科目をそのままにはしねぇよ。ましてや、その科目で負けちまったからにはな」

 

Aクラス戦で何か思うところがあったのか、あれ以来和真は真剣に物理と数学をとある先生に教えてもらっている。

 

和真「さて優子、特別にこの槍に隠された特殊能力を見せてやるよ」

優子「……特殊能力?」

和真「実はな、この槍は長さを変えられるんだよ」

優子「なんですって!?」(腕輪能力でもないのにそんな機能がついているなんて……ちょっとズルくない?)

 

 

 

 

 

和真「ていっ!」

 

おもむろに膝で槍の柄の部分を真っ二つに折る〈和真〉。

 

優子「…って、それただの力技じゃない!?」

 

強引にもほどがある。まさに『槍を短くしたければ折れば良いじゃない』理論だ。

 

和真「喰らえ!棒キャノン!」

優子「…って、えぇっ!?」

 

折った棒を〈和真〉はおもいっきりぶん投げた。

放物線を描きながら、軽くスピンがかかった棒は弧を描きながら〈優子〉に向かって飛んで行く。

 

優子「そんなものっ…」

 

降ってきた棒を〈優子〉はランスで弾く。スピードが合わさった棒はかなりの重量であったがダメージは特に受けていない。

 

和真「かかったな!」

優子「!? しまっ―」

 

優子が棒に気を取られている間に、いつの間にか目と鼻の先まで接近していた〈和真〉。相変わらず凄まじい機動力だ。そして〈優子〉は上から降ってきた棒をランスで弾くために両腕を上げており、脇腹ががら空きになっている。

 

和真(見せてやるぜ!さっき野球しているときに思いついた新必殺技…)

 

〈和真〉はおもむろにバッティングフォームを構えた。〈優子〉は慌ててガードしようとするも間に合わない。

 

和真「カズマホームラァァァン!」

 

カッキィィィィィィィィン!

 

まさにジャストミート。

〈優子〉はスーパボールのように飛んで行き、フィールドの壁に激突し、辺りに血飛沫が舞う。

バーチャルみたいなものとはいえ、実にグロテスクな光景である。

 

《総合科目》

『Fクラス 柊 和真 3869点

VS

Aクラス 木下 優子 戦死』

 

 

優子「ふぅ……負けちゃったか」

和真「つーわけで、賭けは俺の勝ちな。リターンマッチは試験召喚大会で受け付けるぜ」

優子「翔子もやる気満々だし、大会では負けないわよ!」

和真「やっぱり折れてねぇな。それでこそ『アクティブ』の一員だぜ。じゃあ俺は教室に戻るわ」

優子「うん。じゃあね」

 

 

 




和真君は新技『カズマホームラン』を習得した!
ちなみにこの作品では召喚フィールドの端は召喚獣のみを弾く壁になっています。
もともとはフィールド外に出ると召喚獣が消滅し、戦死扱いだったんですが、去年H.Kという男子生徒が槍で相手の召喚獣をフィールド外へガンガン撥ね飛ばしまくったおかげでこういう仕様になりました。

優子さんは和真君が悪ノリしたときのストッパー役ですが、止められるかどうかは五分五分です。
では。


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ギブ・アンド・テイク

【前書きコーナー】

蒼介「前回のあらすじ……さくらテレビ、警察の協力によりキラ容疑者・火口を逮捕することに成功した月とL。しかしノートに触れたことによりキラとしての記憶を取り戻した月によって火口が殺害されてしまった」

飛鳥「真面目にやりなさいよ……それはDEATH NOTEのあらすじでしょうが」

蒼介「仕方がない……北斗のザコはやっぱりモヒカン、以上」

飛鳥「よりによってそこを抜粋するの!?」


雄二「そうか。姫路の転校か……」

 

Fクラス教室にて、和真、明久、雄二、美波、秀吉の五人が集まっていた。

 

雄二「そうなると喫茶店の成功だけじゃ不十分だな」

 

オンボロの教室内を見渡しながら雄二は冷静にそう告げる。

 

明久「不十分?どうして?」

雄二「姫路の父親が転校を勧めた要因は恐らく三つ」

 

そう言って、雄二は指を三本立てて見せた。 

 

雄二「まず一つ目。ござとみかん箱という貧相な設備。快適な学習環境ではない、という面だな。これは喫茶店が成功したらなんとかなるだろう」

 

そういいながら指を一本引っ込める。

 

雄二「二つ目は、老朽化した教室。これは健康に害のある学習環境という面だ」

明久「一つ目は設備で、二つ目は教室自体ってこと?」

雄二「そうだ。これに関しては喫茶店の利益程度じゃ改善できそうにない。教室全体の改修となると学校側の協力が必要になる」

 

教室の改修となると業者の出入りや手続きが必要になる。これは生徒個人にできることではない。

 

雄二「そして、三つ目。レベルの低いクラスメイト。つまり姫路の成長を促すことのできない教育環境だ」

 

能力を伸ばすために実力の近いもの同士を競わせる事は普通によくある話だ。逆に言えば、周りの人間が遥かにレベルの低い人ばかりでは、その人は落ちていく一方だということだ。

 

明久「……あれ?それは問題無くない?和真とか霧島さんがいるし、雄二もAクラス並の成績だったよね?」

雄二「それはそうだが、やはりFクラスというレッテルはお前が思っているより重いんだ。なにかしらの結果を出す必要がある」

明久「なるほど……参ったね、随分と問題だらけだ」

秀吉「そうじゃな。一つ目だけならともかく、二つ目と三つ目は難しいのう」

 

惜しむらくは、それら全てを解決できる試召戦争があと二ヶ月できないということだろう。

 

雄二「そうでもないさ。三つ目の方は既に姫路と島田で対策を練っているんだろう?翔子も何故か参加するみたいだし、和真、お前も出るんだろう」

和真「まぁな」

 

確かに、今日のLHRで姫路は『お父さんの鼻をあかす』と姫路は言っていた。もし和真達が勝ち進められたらFクラスにも学年トップクラスの生徒達と渡り合える生徒がいるという証明になるだろう。

 

美波「この前、瑞希に頼まれちゃったからね。『どうしても転校したくないから協力して下さい』って。召喚大会なんて見せ物にされるだけみたいで嫌だけど、あそこまで必死に頼まれたら、ね?」

 

その優しさを少しでいいから明久にも分けてあげれば、もう少し色々と上手くいくであろうのに。

 

雄二「本当なら姫路抜きでFクラスの生徒が優勝するのが望ましいけどな。というか和真、お前が翔子と組んでいたら全て丸く収まったんだが」

和真「だって翔子とも闘ってみてぇし」

雄二「この戦闘狂が…」

 

思考回路が完全にサイヤ人のそれである。ちなみに雄二は今呆れたように嘆息しているが、ある理由から和真が翔子と組んでなくて良かったと心から思うことになるだろう。

 

秀吉「まあお主等の誰かが優勝したら、喫茶店の宣伝にもなるじゃろうし、一石二鳥じゃな」

和真「あ。明久、一石二鳥っていうのはな…」

明久「それくらい知ってるよ!?一つの石で鳥を二羽撃ち落とす熟練の技のことでしょ!?」

明久以外「………………」

明久「…………あれ?」

 

美波「……そ、それはそうと坂本。二つ目の問題はどうするの?」

 

いたたまれない空気に耐えきれなくなった美波のファインプレーによって上手く話題を変えることに成功する。

 

雄二「どうするも何も、学園長に直訴したらいいだけだろ?」

明久「それだけ?僕らが学園長に言ったくらいで何とかしてくれるかな?」

雄二「あのな。ここは曲がりなりにも教育機関だぞ?いくら方針とは言え、生徒の健康に害を及ぼすような状態であるなら、改善要求は当然の権利だ」

和真(…………さて、それはどうかね?)

 

明久「それなら、早速学園長室に行こうよ」

雄二「そうだな。学園長室に乗り込むか」

和真「一応俺もついていくわ。ばーさんとは面識あるし」

雄二「秀吉と島田は学園祭の準備計画でも考えておいてくれ。それと、鉄人が来たら俺達は帰ったと伝えてくれ」

秀吉「うむ。了解じゃ。鉄人と、ついでに霧島にも見かけたらそう伝えておこう」

美波「アキ、しっかりやってきなさいよ」

明久「オッケー。任せといてよ」

 

 

 

 

 

 

『……賞品の……として隠し……』

『……こそ……勝手に……如月ハイランドに……』

 

新校舎の一角にある学園長室の前まで来ると、扉の向こうから誰かが言い争っている声が聞こえてきた。

 

雄二「どうした、明久」

明久「いや、中で何か話をしているみたいなんだよ」

和真「取り込み中みてぇだな。出直すか?」

雄二「そんなもん面倒臭い。さっさと入るぞ」

明久「そうだね。失礼しまーす!」

 

学園長室の立派なドアをノックして、明久と雄二は中にずんずんと入っていった。

 

和真「…………まあいいか♪」

 

和真もそれに続いて入っていった。

 

「本当に失礼なガキどもだねぇ。普通は返事を待つもんだよ」

 

その室内で明久達を迎えたのは、長い白髪が特徴の藤堂カヲル学園長だ。試験召喚システム開発の第一人者でもある。元々は技術畑出身だからか、随分規格外なところが多いらしい。

 

「やれやれ。取り込み中だというのに、とんだ来客ですね。これではまともに話を続ける事もできません。……まさか、貴女の差し金ですか?」

 

眼鏡を弄りながら学園長を睨み付けたのは教頭の竹原先生だ。鋭い目つきとクールな態度で一部の女子生徒には人気が高い。

 

学園長「どうしてこのアタシがそんなセコい手を使わなきゃならんのさ。さっきも言ったように隠し事なんて無いね。アンタの見当違いだよ」

竹原「……そうですか。それではこの場ではそういう事にしておきましょう。では、失礼します」

和真「…………」

 

そう告げると、竹原先生は部屋の隅に一瞬視線を送り、踵を返して学園長室を出て行った。

 

学園長「んで、ガキ共。アンタ等は何の用だい?」

 

竹原先生との会話を中断された事を大して気にした様子も無く、和真達に話を振ってくる学園長。

 

和真「よぉばーさん、久しぶり」

学園長「学園長と呼びなクソジャリ」

 

どうやら和真は学園長と軽口を叩き合う仲のようだ。

 

雄二「今日は学園長にお話があって来ました」

学園長「私は今それどころじゃないんでね。学園の経営に関する事なら、教頭の竹原か生徒会にでも言いな。それと、まずは名前を名乗るのが社会の礼儀ってもんだ。覚えておきな」

 

こんな横柄な人が礼儀を説くとは、世も末である。

 

雄二「失礼しました。俺は二年F組代表の坂本雄二。それでこっちが―

 

二年生を代表するバカです」

明久「なぜキサマは普通に名前を言えないんだ」

学園長「ほぅ……。そうかい。アンタ達がFクラスの坂本と吉井かい」

明久「ちょっと待って学園長!僕はまだ名前を名乗っていませんよね!?」

和真(…………明久、ドンマイ)

 

どうやら学園長は雄二の紹介で連想して明久だと分かったみたいだ。明久が今にも泣きそうな顔をしている。

 

学園長「気が変わったよ。話しを聞いてやろうじゃないか」

 

そう言って映画の悪役のように口の端を吊り上げる学園長。どうみても聖職についている人がしていい顔ではない。

 

雄二「ありがとうございます」

学園長「礼なんか言う暇があったらさっさと話しな、ウスノロ」

雄二「分かりました」

和真(相変わらず口悪いなぁ……にしても、雄二にしては随分冷静に対処してるじゃねぇか)

雄二「Fクラスの設備について改善を要求しに来ました」

学園長「そうかい。それは暇そうで羨ましい事だね」

雄二「今のFクラスの教室は、まるで学園長の脳みそのように穴だらけで、隙間風が吹き込んでくるような酷い状態です」

和真(あ、ダメだ。早くもボロが出始めてやがる)

雄二「学園長のように戦国時代から生きている老いぼれならともかく、今の普通の高校生にこの状態は危険です。健康に害を及ぼす可能性が非常に高いと思われます」

和真(落ち着いてんのは見かけと言動だけだな。完全にキレてやがる)

雄二「要するに、隙間風の吹き込むような教室のせいで体調を崩す生徒が出てくるから、さっさと直せクソババァ、と言うワケです」

和真(まあつまり、いつもの雄二だな)

 

しかし学園長は雄二の慇懃無礼な説明を受けても、思案顔となって黙り込んでいた。

 

「……ふむ。丁度良いタイミングさね……」ボソッ

 

和真(ほう……)

学園長「よしよし、お前達の言いたい事は良く分かった」

明久「え? それじゃ、直してもらえるんですね!」

学園長「却下だね」

明久「雄二、このババァをコンクリに詰めて捨ててこよう」

雄二「……明久。もう少し態度に気を遣え」

和真「暴力団かお前は」

雄二「まったく、このバカが失礼しました。どうか理由をお聞かせ願えますか、ババァ」

明久「そうですね。教えてください、ババァ」

和真「俺からも頼むわ、ばーさん」

学園長「……お前たち、本当に聞かせてもらいたいと思っているのかい?」

 

呆れ顔で相手を敬う気ゼロの明久達を見る学園長。

 

学園長「理由も何も、設備に差をつけるのはこの学園の教育方針だからね。ガタガタ抜かすんじゃないよ、なまっちろいガキ共」

明久(こ、このババァ……!)「それは困ります! そうなると、僕等はともかく体の弱い子が倒れて」

学園長「―と、いつもなら言っているんだけどね、可愛い生徒の頼みだ。こちらの頼みを聞くなら、相談に乗ってやろうじゃないか」

和真「あんたが可愛い生徒とか言っても普段の言動のせいで説得力0だけどな」

学園長「いちいち揚げ足を取るんじゃないよ」

雄二「……………」

 

口元に手を当てて何か考えている雄二。

絶対何か裏がある。

雄二はそう考えてるのだが、おそらく正解だろう。

 

明久「その条件って何ですか?」

雄二が黙りこんでいるので、仕方なく明久が話を進める。

学園長「清涼祭で行われる召喚大会は知ってるかい?」

明久「ええ、まぁ」

学園長「じゃ、その優勝賞品は知ってるかい?」

明久「え?優勝賞品?」

和真(んなもんあったのか)

 

召喚大会は和真にとって強敵達との闘いがメインなので優勝すればどうなるかなど毛ほども気にしていなかった。

 

学園長「学校から送られる正賞には、賞状とトロフィーと『白金の腕輪』、副賞には『如月ハイランド・プレオープンプレミアムチケット』が用意してあるのさ」

 

プレオープンチケット、と聞いて雄二が何かしら不都合な点が見つかったようにピクッと反応した。

 

明久「はぁ……。それと交換条件に何の関係が」

学園長「話は最後まで聞きな。慌てるナントカは貰いが少ないって言葉を知らないのかい?」

和真「あまり明久をバカにすんなよばーさん、ひじきだってこと位わかってるさ。なぁ明久?」

明久「も、勿論だよ!『慌てるひじきは貰いが少ない』!常識だよね」

和真「すまん。実は乞食が正解だ」

明久「キサマァァァ!謀ったなァァァ!これじゃババァに僕がバカだと思われるじゃないか!」

学園長「もう手遅れだよバカジャリ。

話を戻すが、この副賞のペアチケットなんだけど、ちょっと良からぬ噂を聞いてね。出来れば回収したいのさ」

明久「回収?それなら、賞品に出さなければ良いじゃないですか」

学園長「そうできるならしているさ。けどね、この話は教頭が進めたとは言え、文月学園として如月グループと行った正式な契約だ。今更覆す訳には行かないんだよ。如月グループは桐谷グループの傘下、そんなことをすれば桐谷の口煩いクソガキが難癖をつけてくるだろうしね」

 

自分のスポンサーをクソガキと呼ぶ人間は世界広しと言えどそういないだろう。

 

明久「契約する前に気付いて下さいよ。学園長なんだから」

学園長「五月蝿いガキだね。白金の腕輪の開発で手一杯だったんだよ。それに、悪い噂を聞いたのはつい最近だしね」

 

そう言って眉をしかめる学園長。口調とは裏腹に、若干責任を感じているようだ。

 

明久「それで、悪い噂ってのは何ですか?」

 

つまらない内容なんだがね、と前置きを言って学園長は噂の内容を言い始める。

 

学園長「如月グループは如月ハイランドに一つのジンクスを作ろうとしているのさ。『此処を訪れたカップルは幸せになれる』って言うジンクスをね」

明久「? それのどこが悪い噂なんです? 良い話じゃないですか」

学園長「そのジンクスを作る為に、プレミアムチケットを使ってやって来たカップルを結婚までコーディネートするつもりらしい。企業として、多少強引な手段を用いてもね」

雄二「な、なんだと!?」

 

突然雄二が明らかに動揺した表情で大声を上げた。  

 

和真(なーるほど……翔子がこういう大会に出るのは珍しいと思ってたが、そういうことか)

明久「どうしたのさ、雄二。そんなに慌てて」

雄二「慌てるに決まってるだろう! 今ババアが言った事は『プレオープンプレミアムペアチケットでやって来たカップルを如月グループで強引に結婚させる』って事だぞ!?」

明久「うん。言い直さなくても分かってるけど」

 

いまだかつてないほど狼狽える雄二。実に面白い光景である。

 

学園長「そのカップルを出す候補が、我が文月学園って訳さ」

雄二「くそっ!うちの学校は何故か美人揃いだし、試験召喚システムと言う話題性もたっぷりだからな。学生から結婚まで行けばジンクスまで申し分ないし、如月グループが目をつけるのも当然って事か……」

学園長「ふむ。流石は神童と呼ばれていただけはあるね。頭の回転はまずまずじゃないか」

 

学園長が坂本の独白に頷く。

雄二について随分と詳しい。学園の長と言うだけあって、生徒のことは把握しているのかもしれない。

 

明久「雄二、取り敢えず落ち着きなよ。如月グループの計画は別にそこまで悪い事でもないし、第一僕等はその話しを知っているんだから、行かなければ済む話じゃないか」

雄二「……アイツが参加したのはこのためだったのか……。行けば結婚、行かなくても『約束を破ったから』と結婚……。俺の……将来は……!」

和真「大体事情は把握したが、お前もそんな約束しなきゃいいのにな」

 

本人の迂闊さに加え、清涼祭に対して消極的だった弊害がこんな所で出てきたようだ。

 

学園長「ま、そんな訳で、本人の意思を無視して、うちの可愛い生徒の将来を決定しようって計画が気に入らないのさ」

和真(だから説得力無ぇっての)

明久「つまり交換条件ってのは―」

学園長「そうさね。『召喚大会の賞品』と交換。それが出来るなら、教室の改修くらいしてやろうじゃないか」

明久(ふむ、召喚大会の賞品と交換か。それなら、)

学園長「無論、優勝者から強奪なんて真似はするんじゃないよ。譲ってもらうのも不可だ。私はお前達に召喚大会で優勝しろ、と言ってるんだからね」

 

学園長が釘を刺すかのように言ってきた。

 

和真「明久達のペア、もしくは俺のペアが優勝すりゃいいの?」

学園長「アンタの相方は別のクラスじゃないか。それは認められないね」

和真「……やれやれ、つーことは明久達とあたった場合わざと負けるか」

明久「え?和真、いいの?」

 

闘いが大好きな和真とは思えない発言に思わず確認する明久。

 

和真「正直不本意だが、事情が事情だしな」

明久「でも、相方の人怒らない?別のクラスの人なんでしょ?」

和真「大丈夫だ、俺が強引に誘った奴だから」

 

このように和真は意外と(いや、別に意外でもないか……)傍若無人ところがある。

 

明久「それで、僕達が優勝したら、教室の改修と設備の向上を約束してくれるんですね?」

学園長「何を言ってるんだい。やってやるのは教室の改修だけ。設備についてはうちの教育方針だ。変える気はないよ」 

 

まあ確かに、こんな取引で設備を導入なんてしたら他のクラスに示しがつかないだろう。

 

学園長「ただし、清涼祭で得た利益で何とかしようって言うなら話は別だよ。特別に今回だけは勝手に設備を変更する事に目を瞑ってやってもいい」

和真(おいおい西村センセ……勝手に設備変えたら駄目らしいじゃねぇか)

 

和真は心の中でこの場にいない生徒指導教師を詰る。

 

明久「そこを何とかオマケして設備の向上をお願い出来ませんか?僕等にとっては教室の改修と同じくらい設備の向上も重要なんです」

学園長「それで?」

明久「もしも喫茶店が上手く行かずに設備の向上が危うかったら、そっちが気になって集中出来ずに僕等も学園長も困った事に……」

学園長「なんだ、それだけかい。ダメだね。そこは譲れないよ」

明久「でも!設備の向上を約束してくれたら大会だけに―」

雄二「明久、無駄だ。ババァに譲る気が無いのは明白だ。この取引に応じるしか方法はない」

和真「気持ちはわかるが諦めろ。このばーさんは年寄りらしく大分頑固だからな、そう簡単に意見は変えねぇよ」

 

和真と、いつの間にか正気に戻った雄二が明久を宥める。

 

明久(……くそっ。悔しいけど、元々僕たちには取引に応じる以外の選択肢なんてないんだった)

「……分かりました。この話、引き受けます」

学園長「そうかい。それなら交渉成立だね」

 

『……勝った……計画通り』と言わんばかりの表情をして学園長はニヤリと笑った。

 

雄二「ただし、こちらからも提案がある」

学園長「なんだい?言ってみな」

雄二「召喚大会は二対二のタッグマッチ。形式はトーナメント制で、一回戦は数学だと二回戦は化学、と言った具合に進めて行くと聞いている」

 

一回戦の科目が数学だと決まれば、一回戦に参加する全員が数学で戦う。勝ち上がる度に教科が変わるのは、一回戦で消耗した点数でそのままやり合うと、試合の派手さに欠けるからだろう。

 

学園長「それがどうかしたのかい?」

雄二「対戦表が決まったら、その科目の指定を俺にやらせてもらいたい」

 

まるで学園長を試しているような目つきで雄二が告げる。

 

学園長「一応聞いておくが柊、アンタはそれで言いのかい?」

和真「構わねぇっすよ」

学園長「ふむ……。いいだろう。点数の水増しとかだったら一蹴していたけど、それくらいなら協力してやろうじゃないか。」

雄二「……ありがとうございます」

 

目つきが更に鋭くなった。これは 何かしらの疑念が確信に変わった目だ

 

学園長「さて、ここまで協力するんだ。当然召喚大会で、優勝出来るんだろうね?」

雄二「無論だ。俺達を誰だと思っている?」 

 

不敵な笑みを浮かべる雄二。試召戦争の時に見せた、やる気全開の表情だ。

 

明久「絶対に優勝して見せます。そっちこそ、約束を忘れないように!」

 

そしてお返しと言わんばかり学園長に念を押す明久。

 

学園長「それじゃ、ボウズ共。任せたよ」

「「「おうよっ!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「なるほど、やはりFクラスの問題児コンビに学園の未来を託しましたか」

竹原「学園長も耄碌したものだな。あのようなバカどもにすがるとは」

?「……彼らをどうします?」

竹原「放っておけ。どうせ一回戦で敗退するだろう」

?「油断は禁物ですよ?」

竹原「君も用心深いな。なあに、もし上がってきた場合は手を打つさ」




ここ最近詰め込み過ぎていると思う……

竹原の協力者はコナンの犯人スーツをイメージしてください。

では。


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上達

蒼介「新たなる神器、唯我独尊の力でドンを倒した植木。しかし、満身創痍の植木にロベルト十団の次なる刺客・マルコと鈴子が襲いかろうとしていた」

徹「今回は植木の法則かい?そろそろこのくだりもマンネリ化してきたような気がするよ」

蒼介「ストックが切れるまでは続けようと思っている。ちなみに前回のあらすじは慌てるひじき、だ」

徹「そのワンフレーズから前回の話を誰が推測できるんだい……」

蒼介「前回の話を読めば推測できるだろう」

徹「あらすじの意味が無いじゃないか」


美波「いつもはただのバカに見えるけど、坂本の統率力は凄いわね」

明久「ホント、いつもはただのバカなのにね」

翔子「……雄二はやる気を出しているときは頼りになる」

和真「やる気を出してないときは粗大ごみ同然だがな」

 

清涼祭初日の朝。

Fクラス教室は普段の小汚い模様を一新して、中華風の喫茶店に姿を変えていた。

 

明久「このテーブルなんて、パッと見は本物と区別がつかないよ」

 

教室のいたるところに設置されているテーブルは、実は積み重ねて小綺麗なクロスをかけて作ったみかん箱だったりする。

 

姫路「あ、それは木下君が作ってくれたんですよ。どこからか綺麗なクロスを持ってきて、こう手際よくテキパキと」

 

尊敬の目で秀吉を見る姫路。

つまりこのクロスは演劇部で使ってる小道具だ。

 

秀吉「ま、見かけはそれなりのものになったがの。その分、クロスを捲るとこの通りじゃ」

 

秀吉がクロスを捲ると、その下には見慣れた汚いみかん箱が。不衛生極まりないが無い物ねだりしても仕方がない。

 

美波「これを見られたら店の評判はガタ落ちね」

 

美波が明久の隣から覗き込んでいる。彼女の言う通り、これを見られたらイメージダウンは免れない。

 

明久「きっと大丈夫だよ。こんなところまで見ないだろうし、見たとしてもその人の胸の内にしまっておいてもらえるさ」

姫路「そうですね。わざわざクロスを剥がしてアピールするような人は来ませんよ、きっと」

和真「もしいたとしたら営業妨害か、徹より小せぇ奴かだな」

翔子「……和真、いくらなんでも大門に失礼」

和真「大丈夫だ。俺が言ったのは器の方だから」

 

どう考えても侮辱なのだが、身長の方だった場合はより怒り狂うのが大門 徹という男である。

 

明久「室内の装飾も綺麗だし、これならうまくいくよね?」

 

学園祭のレベルにしては充分なぐらいの完成度だろう。

 

ムッツリーニ「………飲茶も完璧」

明久「おわっ」

 

いきなり後ろから響くムッツリーニの声。翔子と並んで相変わらず気配を消すのが巧い。する必要はあまり無いと思うが。

 

明久「ムッツリーニ、厨房の方もオーケー?」

ムッツリーニ「………味見用」

 

そう言ってムッツリーニが差し出したのは、木のお盆。上には陶器のティーセットと胡麻団子が載っていた。

 

姫路「わぁ……美味しそう……」

美波「土屋、これウチらが食べちゃっていいの?」

ムッツリーニ「………(コクリ)」

秀吉「では、遠慮なく頂こうかの」

和真「どれどれ」

翔子「……いただきます」

 

姫路、美波、秀吉、和真、翔子が手を伸ばし、作りたての胡麻団子を頬張る。

 

姫路「お、美味しいです!」

美波「本当!表面はカリカリで中はモチモチで食感も良いし!」

秀吉「甘すぎないところも良いのう」

和真「後味も悪くねぇな」

翔子「……とても美味しい」

姫路「お茶も美味しいです。幸せ……」

美波「本当ね~……」

 

姫路と美波が目がトロンとしてトリップ状態になっていた。麻薬中毒者じゃないんだからいくらなんでもオーバー過ぎるだろう。

 

明久「それじゃ、僕も頂こうかな」

ムッツリーニ「………(コクコク)」

 

残った一つを明久に差し出す。なぜだかその一つはなんとしてでも明久に処理させようという、ムッツリーニの頑なな手捌きで。事情をすべて知っている秀吉も我が身かわいさで閉口する。

 

明久「ふむふむ…表面はカリカリで中はモチモチ、甘過ぎない味わいがとっても美味しいよ」

秀吉「!?」

ムッツリーニ「………………!?」

 

信じられない光景を見たように驚愕するムッツリーニと秀吉。

 

明久「? どうしたのさムッツリーニ」

秀吉「明久よ……なんともないのか?」

明久「へ?特に無いけど」

秀吉「お主が口にした胡麻団子……姫路が作ったものなんじゃが……」

明久「………………え?」(これが姫路さん作ったもの?バカ言っちゃいけない。前回の惨劇は今も僕の脳裏に焼きついているんだ……でも秀吉はそんなひどい嘘をつくような人間じゃない……ならなぜ僕は今生きているんだ?そういえばこの前テレビで特殊な毒物を見たぞ。その毒は時間とともに体内を蝕んでいき、最終的に全身が衰弱して死んじゃうんだっけ。てことは僕ももうすぐ死んでしまうのか……だったらせめて最後くらいは幸せになりたい。今この場で秀吉に言うんだ、結婚してくださいって……いや待てよ?そんな悠長なこと言ってられない、僕の最後はどんどん迫ってきているのだから。ここはちょっと巻きで行こう。そうと決まれば)

明久「秀吉と同じ墓に入りたい!」

秀吉「どうしたのじゃ急に!?」

和真「相変わらず愉快な思考回路してるなぁ。安心しろ、多分遅効性の毒ってわけじゃねぇよ」

秀吉(だからなぜ和真は理解できるのじゃ!?)

明久「え?……じゃあどうして僕は無事なの?」

和真「人がいつまでも成長しないと思ったら大間違いだぜ。……姫路ィ!」

姫路「ふぇ!?…は、はいっ!」

 

トリップ状態の姫路は和真に呼ばれて正気を取り戻した。

明久達のもとへトコトコと小動物のような足取りで歩み寄る。

 

姫路「柊君、どうしたんですか?」

和真「胡麻団子なんて良く作れたなぁ。中華料理なんて教えて貰ってねぇはずだろ?」

姫路「えぇと…作り方は須川君に一から教えて貰いました」

和真「へぇ、レシピ通りに作ったのか。以前はオリジナリティーを重視していたのに」

姫路「オリジナリティーを求めるのはまずその料理の基礎を完璧にしてから、と藍華さんから教わりましたから」

明久「え?どういうこと?」

姫路「ええと、実は試召戦争の後、柊君の紹介で料亭『赤羽』に料理を習いに通ってたんです」

 

『赤羽』は蒼介の母親・鳳 藍華(オオトリ アイカ)が経営する全国でも有名な料亭である。

 

和真(ま、そんなわけで料理が上達したらしい)

明久(すごいよ和真!これで僕の命を脅かすものが一つ減ったよ!)

秀吉(無くなったわけではないのじゃな……それはそうと、流石和真じゃ)

ムッツリーニ(………………グッジョブ)

和真(俺は何もしてねぇよ、姫路が成長したのは姫路が頑張ったからだ)

 

ここまでアイコンタクト。

 

和真「それにしてもよく1ヶ月も頑張ったな。藍華さんのしごきは生半可なものじゃねぇのに」

姫路「……柊君、そのことには触れないでください」

和真「…………すまん」

(((なにそのリアクション!?)))

 

何があったのか非常に気になる三人だった。余談だが、赤羽流の門を叩く料理人は数多くいるが、あまりの厳しさに脱落する者が跡を絶たないそうな。

 

 

 

雄二「うーっす。戻ってきたぞ」

明久「あ、雄二お帰り」

秀吉「何処に行っておったのじゃ?」

雄二「ああ、ちょっと話し合いにな」

 

いつもとは違いやや歯切れの悪い返事をする。

雄二は学園長室に行って、例の試験科目の指定をしてきたのだろう。とてもフェアな事じゃないから正直には話せず、ああ言って適当に誤魔化したのだ。

 

姫路「そうですか~。それはお疲れ様でした」

 

人を全く疑わない姫路が雄二の言葉を信じて笑みを贈る。

それは美点であると同時に思い込みも激しいという難点でもある。

 

雄二「いやいや、気にするな。それより、喫茶店はいつでも行けるな?」

秀吉「バッチリじゃ」

ムッツリーニ「…………お茶と飲茶は完璧」

雄二「よし。少しの間、喫茶店は秀吉とムッツリーニに任せる。俺と明久は召喚大会の一回戦を済ませてくるからな」

 

そう言って雄二は秀吉とムッツリーニの肩を叩く。

 

美波「あれ?アンタ達も召喚大会に出るの?」

明久「え?あ、うん。色々あってね」

 

明久は適当に言葉を濁している。

学園長から『チケットの裏事情については誰にも話すな』と口止めされているので下手なことは言えないのだ。

 

美波「もしかして、賞品が目的とか……?」

 

何かを探るような美波の視線が明久に刺さる。

 

明久「う~ん、一応そう言う事になるかな」

美波「……誰と行くつもり?」

 

明久の発言を聞くと、美波の目がスッと細くなった。どうやら戦闘態勢になったようだ。 

 

明久「ほぇ?」

姫路「吉井君。私も知りたいです。誰と行こうと思っていたんですか?」

 

気が付けばいつのまにか姫路も戦闘態勢に。

 

翔子「……雄二、どういうこと?」

雄二「なっ!?しょ、翔子!?」

 

当然、翔子も戦闘態勢。

 

雄二「ま、まぁ待て、落ち着け」

明久「だ、誰と行くって言われても……」

 

事情を話すわけにはいかないため、明久はどうして良いかわからなくなる。

雄二も翔子が相手なので、いつもの悪知恵が働かずしどろもどろになる。それを見かねた和真がフォローを入れる。

 

和真「あーお前ら、そいつ等の目的はチケットなんかじゃねぇよ」

「「「え?」」」

 

和真「店の宣伝のためだよ。あの大会は一般客にも生徒にも少なからず注目されてるだろ?四回戦まで勝ち進めば一般公開されるし、それだけで店の宣伝になるんだよ。それに、副賞の腕輪も他クラスに渡したくねぇしな」

 

チケット以外の賞品には『白金の腕輪』と言う物がある。召喚獣を二体同時に呼び出せるタイプと、先生の代わりに立会人になれるタイプがある。

これらの腕輪は試召戦争において少なからずアドバンテージとなるだろう。

 

美波「ふ、ふーん。なるほど……」

姫路「そ、そうでしたか……」

翔子「…………」

 

二人は納得したようだが翔子は何かが腑に落ちないらしく探るようなような目で雄二を見据えている。

 

和真「翔子、向こうで話したいことがあるからついてきてくれ」

翔子「……わかった」

 

そのまま二人は教室を出ていった。

 

雄二(頼んだぞ和真……うまく誤魔化してくれ……)

 

なぜか翔子が絡むと冷静さを失ってしまう元「神童」なのであった。

 

 

翔子「……話って何?」

和真「お前さっき説明した雄二が召喚大会に出る理由聞いてどう思った?」

翔子「……正直違和感があった。それだけの理由で雄二が参加するとは思えない」

和真「流石俺と同じ感覚派、正解だ。雄二はお前にプレオープンチケットが渡るのを阻止したいそうだ」

翔子「…………そう」

 

雄二の動機に少なからずショックを受けているようだ。

それを見た和真は諭すような目で言葉を続ける。

 

和真「よく聞け翔子、あいつほど天の邪鬼な奴はいねぇ。

お前がチケットを手に入れさえすればなんだかんだいって一緒に行ってくれるはずだ。そんな約束していたなら尚更な。

もしお前が心の底からあいつと如月ハイランドに行きてぇなら―」

和真は一度言葉を切って翔子の目を見据える。

 

「―真っ向からぶちのめして優勝を掴みとれ!」

 

翔子「……!わかった!」

 

しょんぼりした表情から一転、やる気に満ち溢れた表情になる翔子。

 

和真「じゃあそろそろ一回戦だから行ってくるぜ。さっきトーナメント表確認したけど、もしお前とあたるとしたら決勝だったな」

翔子「……和真、私はあなたにも絶対に負けない」

和真「それはこっちの台詞だ。じゃあな!」

 

 

 

 

 

「ようやく来たね。待ちくたびれたよ」

 

どう見ても小学校高学年くらいにしか見えない見た目の銀髪の男子生徒が、召喚大会の舞台前で壁にもたれかかり腕を組んで立っていた。

 

『アクティブ』のメンバーであり先日和真と壮絶なバトルを繰り広げた二年Aクラスの男子生徒、大門 徹だ。

 

和真「待ちくたびれたってまだ始まる前じゃねぇかよ。そんな前から待機してるとか、お前どんだけ暇なんだよ」

徹「嘘だよ。実はついさっき来たところだ」

和真「ったく、嘘つきは短足の始まりって諺知らねぇのかよ」

徹「いくつかツッコミどころがあるけど誰が短足だコラ……あと結構な頻度で嘘ついてる君には言われたくないよ」

和真「あ、苛立ってる?カルシウム足りてないんじゃね?いろんな意味で」

徹「喧嘩売ってんのかテメェェェ!こちとらテメェが強引に誘うから仕方なくエントリーしてやったっつうのによぉ!」

 

和真に掴みかかる徹。握力が90以上あるので掴まれたら和真でも痛いじゃ済まないだろう。

まあ当然のごとく全てかわされたのだが。

ちなみに徹はキレると口調が源太みたいになる癖がある。

 

和真「冗談だって。試合前なんだから落ち着けって」

徹「誰のせいだと……(ブツブツ)……それにしてもこの対戦カードはなんだい?いきなり骨の折れる相手じゃないか」

和真「何言ってんだよ、敵は強い方がおもしれぇじゃねぇか」

徹「せめて最初は楽な相手が良かったよ……」

 

 

 

 

 

《一回戦・数学》

『Fクラス 柊 和真

Aクラス 大門 徹

VS

Aクラス 工藤 愛子

Aクラス 佐藤 美穂』

 

 




雄二「ちゃんと誤魔化してくれたか?」
和真「ああ、大会でお前らを完膚なきまでにぶちのめすってよ」
雄二「キサマどんな説明したんだ!?」


いきなり第二学年トップ10の四人が激突。
和真君達のブロックは泣く子も黙るハードモード仕様となっています。
さて、姫路さんの殺人料理スキルが完全に消滅してしまいました。
後々の姫路料理イベントどうやって埋め合わせしようか……

では。


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必殺の武器

【前書きコーナー】
蒼介「前回のあらすじ……長年の夢だった画家セリアルの絵を見ることができた小暮 君明はこの世に未練が無くなったことにより、スイッチを押してしまうのであった……」

和真「今度は『スイッチを押すとき』かよ……」

蒼介「そろそろこのくだりも飽きてきたな……よし、前回のあらすじ今回で最終回だ」

和真「いや待てぇ!?ストック切れるまで続けるんじゃなかったのかよ!?」

蒼介「ああ、それなら―」火→ストックの山

蒼介「たった今切れたぞ」

和真「そんな切らせ方でいいの!?」

蒼介「何度でも言わせてもらうが、ここではわたし私がルールだ」

和真「このスペースでのお前傍若無人過ぎて最早別キャラだぞ!?」

蒼介「本編にまるで関係無いから間違ってはいないな。しかしお前にだけは傍若無人とか言われたくないな、今回の
話であんなことをしたお前には」

和真「………………それもそうだけどよ」





「それでは、試験召喚大会一回戦を始めます」

 

校庭に作られた特設ステージ。ここで召喚大会が催される。

 

「四回戦までは一般公開もありませんので、リラックスして全力を出してください」

 

立会人は数学の長谷川先生。つまり勝負科目は数学。そして闘うのは……

 

和真「いきなりお前らとはなぁ、気乗りしねぇなぁ」

佐藤「あの、柊君?……どうみてもノリノリに見えるんだけど……」

 

凶悪そうな笑みを浮かべた和真にボブカットのメガネが特徴的な少女、佐藤美穂がひきつった笑みを浮かべつつそうつっこむ。

 

徹「実際にノリノリなんだよ佐藤さん」

愛子「やっぱりやる気満々だねー。でも、ボク達も負けないヨ?」

 

黄緑ベリーショートのボーイッシュな女子、工藤愛子が挑戦的な笑みを浮かべている。

 

闘うのは、第二学年6~9位の生徒達だ。

一回戦とは思えないそうそうたるメンバーが揃ったものである。

 

長谷川「それでは召喚してください」

「「「「試験召喚(サモン)!」」」」

 

長谷川先生の合図で四人同時にキーワードを唱え!それぞれの召喚獣が幾何学模様から出現する。

黒ジャケットに赤シャツ、規格外に大きい槍を装備した和真の召喚獣が。甲冑に鉄のガントレット装備の徹の召喚獣が。セーラー服に斧装備の愛子の召喚獣が。カンフー着に鎖付き鉄球装備の佐藤の召喚獣が。

 

 

《数学》

『Fクラス 柊 和真 241点

Aクラス 大門 徹 442点

VS

Aクラス 工藤 愛子 283点

Aクラス 佐藤 美穂 387点』

 

 

長谷川「それでは、一回戦を開始します!」

 

佐藤「……点数差はほぼ互角、ね」

徹「というか、僕と闘ったときと比べて大分点数が上がったようだね和真」

和真「この俺が苦手なもんを苦手なままにしておくわけねぇだろ」

愛子「あはは、和真君らし―」

和真「だりゃぁぁぁ!」

愛子「えぇっ!?」

佐藤「いきなり!?」

 

愛子が喋っている途中いきなり〈和真〉が持っている巨大な槍をぶん投げた。槍はそのまま凄いスピードで回転しながら飛んでいき、〈佐藤〉はガードするも力負けして吹っ飛ばされた。

 

 

《数学》

『Fクラス 柊 和真 241点

Aクラス 大門 徹 442点

VS

Aクラス 工藤 愛子 283点

Aクラス 佐藤 美穂 299点』

 

 

ガードしたのにもかかわらずこのダメージである。もし直撃していたら戦死一歩手前まで削られていたかもしれない。しかしそんなことどうでもいいと言わんばかりに、和真の行動に女子二名が抗議する。

 

佐藤「まだ工藤さんが話してたでしょ!」

愛子「不意討ちなんて見損なったよ!」

和真「バカヤロー、勝負はもう始まってんだよ。それとあれは攻撃じゃねぇ、邪魔な荷物を捨てただけだ」

徹「そんなダイナミックな捨て方しなくてもいいじゃないか……」

 

自在に扱えない武器などいらない、しかしただ捨てるだけではつまらない。だったら相手にぶん投げちゃえばいいじゃん、という発想から生まれた必殺技…『カズマジャベリン』。

 

佐藤「……ふふふ……上等よ……」

愛子「そっちがそう来るなら……こっちも容赦しないよ?」

 

何かのスイッチが入ったのか、怒りのオーラを纏い臨戦態勢に入る二人。

 

和真「ハッ、上等じゃねぇか。徹、俺達のコンビ技をこいつらに見せてやろうぜ!」

徹「ちょっと待て!?コンビ技ってなんだよ、聞いて無いぞ!?」

和真「説明している暇は無ぇ、ぶっつけ本番で行くぞ!お前はまず腕輪を発動させてくれ!」

徹「…仕方ないな、君に任せるよ!」

 

そう言って〈徹〉は腕輪能力『リフレクトアーマー』を発動させた。

 

愛子「っ!?佐藤さん、何かするつもりだよ!早めに攻めよう!」

佐藤「了解!」

 

何かを察知したのか、猛スピードで飛びかかる二人の召喚獣。

 

和真「残念ながら準備は終わったぜ」

 

そう言うと何を思ったのか、〈和真〉はおもむろに〈徹〉の足を掴み…

 

徹「は?和真、何を-」

和真「必殺・カズマハンマァァァ!!」

 

……あろうことか、そのまま二人の召喚獣をぶん殴ったではないか。

 

「「「えぇぇぇ!?」」」

 

驚愕する三人を尻目に〈和真〉は〈徹〉を鈍器のように振り回し、次々と相手にぶち当てていく。ヒットするたびに『リフレクトアーマー』の効果でぶつかった衝撃の一部が反射され、さらに傷だらけにしていく。

 

和真「おらおらおらおらおらぁぁぁ!」

徹「いやちょっと待てぇぇぇ!?テメェ人の召喚獣をなんだと思ってやがる!?」

和真「戦場においてその場にある物は全てが武器!敵を叩き潰す鈍器になるんだよ!」

徹「僕の一番の敵は間違いなくテメェだぁぁぁ!」

 

一切躊躇することなく〈和真〉は愛子達の召喚獣をしばき回していく。

 

佐藤「あぁ!?このままじゃまずい!」

愛子「でも立ち上がろうとするたび的確に転ばせてくるから態勢も立て直せない!」

和真「見たかお前ら!俺と徹の一心同体のコンビネーションを!」

徹「こんな独り善がりなコンビネーションがあるかぁぁぁ!あと一心同体ってそういうことじゃねぇよ!」

 

まさに血も涙も無い鬼畜の所業。

味方の召喚獣を武器にいたいけな女の子の召喚獣を容赦無く殴りまくるその姿はどう見ても悪役である。

 

長谷川「……教育者としては、柊・大門ペアにはぜひとも負けてもらいたいものです」

 

公平な立場である審判としては少々問題発言であるがそう思うのも無理は無い。

もし一般公開されていたら中止になりかねないほどグロテスクな光景が出来上がりつつあるのだから。

 

佐藤「くっ、このぉ!」

愛子「えぇいっ!」

 

二人はなんとか体勢を立て直し、〈和真〉に反撃する。しかし〈和真〉にカズマハンマーという名の〈徹〉であっさりとガードされ、

 

「「きゃあああああ!?」」

 

『リフレクトアーマー』による衝撃の反射を喰らって吹き飛ばされる。

 

和真「それじゃあ……とどめぇ!」

 

〈和真〉は素早く接近し、カズマハンマーを倒れている〈愛子〉と〈佐藤〉とに全力で叩きつけ、二人の召喚獣は潰れて見るも無惨な姿に成り果てた。最後まで欠片も容赦が無い。

 

 

《数学》

『Fクラス 柊 和真 241点

Aクラス 大門 徹 331点

VS

Aクラス 工藤 愛子 戦死

Aクラス 佐藤 美穂 戦死』

 

 

長谷川「……勝者、柊・大門ペア」

 

凄く、それほもうスッゴく不服そうに、長谷川先生が勝者の名を告げる。

 

佐藤「うぅ……負けちゃった……」

和真「まぁこれは真剣勝負だしな、悪く思うなよ」

愛子「和真君って試召戦争になると性格変わるよね…」

和真「お前らにフィードバック機能なんざついてねぇからな、安心して殺れるぜ」

佐藤「なんか“やる”のニュアンスがおかしい気がするんだけど、気のせいかしら……」

工藤「まぁ仕方ないか…ボク達に勝ったんだから、この先絶対勝ち進んでよ」

和真「最初から誰にも負けるつもりはねぇよ」

徹「………………」

 

その後四人は特設ステージから退場した。

 

 

 

 

 

和真「……さてと、」

徹「和真ァァァァァァ!」

 

徹は鬼気迫る表情で和真に掴みかかるが和真はケルビステップで華麗に避ける。

 

和真「なんだよ徹、文句でもあんのか?」

徹「文句しかねぇよ!なんだよあの試合!?僕の召喚獣、武器になってただけじゃねぇか!」

和真「わりぃわりぃ、以前あれを思い付いてやりたくなっちゃった♪」

徹「そんな理由であんな冷徹なことやってのけたのかテメェは!なにその満足顔!?すげぇイラつくんだけど!」

 

面白いことを思い付いたらとりあえずやってみるのが和真のスタンスだ。周りからすればはた迷惑この上ないが。

 

徹「とにかく、次あんなことしたらもう僕は棄権させてもらうからな!」

和真「はいはいわかったわかった反省してまーす」

徹「まるで説得力が無ぇよその言い方!……ったく、君はいつもいつも……」

和真「はいはい。じゃあ俺はあれを回収して教室に帰るから」

徹「? あれ?」

 

和真は校庭の別のステージを指差す。

 

雄二「さっきの決着つけるぞクソ野郎!」

明久「それはこっちの台詞だよ馬鹿野郎!」

 

和真「じゃあまた二回戦で!」

 

そう言って和真は明久達がいるステージに駆けて行った。

 

徹「……コンビネーションは僕達と五分五分だね……」

 

勿論、団栗の背比べ的な意味で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「あなたの予想に反して吉井・坂本ペアが勝ち上がりましたね、どういたしましょうか?」

竹原「君は何もしなくていい。私達の協力者にFクラスの出し物を妨害するよう指示を出した。彼らはどうやら召喚大会で勝たなくてはいけないと同時に喫茶店も成功させなければいけないらしいからな」

?「なるほど……喫茶店を妨害することで召喚大会に集中させなくするというわけですか。フフフ、クールな外見に反してかなり悪どい作戦ですね」

竹原「知略に富んでいるといいたまえ」

 

 




はい、今回は和真君やりたい放題回でした。
味方を盾にしたり囮にしたり生け贄にしたりするのがFクラス流ですが、和真君は味方を武器にしました。
まあ徹君に禁止されたためもう出て来ないでしょう………………………………多分。

今回は惜しくも(?)敗れた佐藤さんの召喚獣

佐藤 美穂
・性質……攻撃重視型
・総合科目……3450点前後 (学年8位)
・400点以上……なし
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……B+
機動力……B
防御力……B

やや攻撃型だがほとんどバランス型と言っていい。
理数系の科目ではステータスがより強くなる。


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営業妨害

【前書きコーナー】

蒼介「とりあえず今回は新コーナーを発表する」

源太「そういや前回まで細々と続けていたあらすじコーナーをテメェが強引に打ち切ったんだったな……」

蒼介「次回からはバカテストをこのスペースでやっていく」

源太「そりゃまた無難なチョイスだな」

蒼介「毎回載せるとなると、オリジナルの問題も作らざるを得ない分すごく面倒だから、ギリギリまで悩んだんだがな」

源太「そういうのは黙っとこうぜ……」


和真「なにやってんだよお前ら……さっさと教室に戻るぞ」

 

特設ステージで殴りあっている明久と雄二を呆れるような目で見ながら声をかけた。

 

雄二「後にしろ!今日という今日はこのバカに上下関係っつうもんをキッチリ叩きこんでやらなきゃならねぇんだよ!」

明久「それはこっちの台詞だよ!雄二みたいなバカが僕と対等だなんて片腹痛いよ!」

和真「どっちもバカだろ……チームワークの欠片も無ぇなお前ら」

 

皆さん御覧ください。呆れるように溜め息を吐きつつチームワークのなんたるかを説いているこの人こそが、前回相棒を無許可で武器にして散々やりたい放題だった柊 和真君です。

 

秀吉「お主ら、殴り合いなぞしておらんで、急いで教室に来てくれんかの?」

 

明久達が不毛な争いをしていると、特設ステージに秀吉がやってきた。少し息が弾んでいるところを見ると、急いでいるみたいだ。

 

明久「あれ?喫茶店で何かあったの?」

秀吉「うむ。少々面倒な客がおっての。すまぬが話は歩きながらで頼む」

明久「あ、うん。了解」

 

そう言って急ぎ足で教室に向かう四人。

 

雄二「……営業妨害か?」

 

歩いている雄二が学園長のところに行ったときと同じ鋭い目つきになる。

 

明久「あはは、まさか。学園祭の出店程度で営業妨害なんて出てこないんじゃない?そんな真似をしたところで何のメリットもないと思うよ」

秀吉「いや、雄二の言ったとおりなんじゃ」

雄二「そうか。相手はどこのどいつだ?」

和真「アタシだよっ!」

雄二「話の腰を折るな。おまけにネタのチョイスも古いしよ」

秀吉「うちの学校の三年じゃな」

明久「よりによって三年生?まったく、生徒の中では一番大人なくせに」

和真「まぁそういうことなら雄二の出番だな」

明久「そうだね、チンピラにはチンピラを充てるのが一番だよ」

雄二「それが人にものを頼む態度か?……まぁいい。喫茶店がうまくいかなければ、“明久の大好きな”姫路が転校してしまうからな。協力してやる」

 

意地悪な顔である部分を露骨に強調する雄二。

 

明久「べっ!別にそんなことは一言も……!」

雄二「あー。わかったわかった」

明久「その態度は全然わかってない!」

雄二「つーか和真、お前まで俺任せかよ?」

和真「直接殴る蹴るといった荒事はあんま好きじゃねぇからな、手加減しなきゃならねぇから」

雄二「なんだその理由……」

 

和真は素手でレンガくらいは軽くぶち破れる。そんな人間が全力で人を殴ったら間違いなく警察沙汰になるだろう。

常に手加減を強要される喧嘩は、何事も全力でやりたい和真にとってあまり歓迎すべきものではないのだ。

教室近くまで来ると、廊下にまで響く大声が聞こえてきた。

 

秀吉「む。あの連中じゃな」

雄二「じゃ、ちょっくら始末してやるか」

和真「悪鬼羅刹(笑)の力(笑)を見せてやれ(笑)」

雄二「あいつらの前にお前を始末してやろうかコノヤロー。ったく……」

 

首をコキコキと鳴らしながら教室の扉に手をかける雄二。

 

「マジできたねぇ机だな!これで食い物扱っていいのかよ!」

 

雄二が扉を開けるなり罵声が聞こえてくる。

どうやらクロスで覆い隠したみかん箱がお気に召さなかったらしく、クロスを剥がして文句を言っていた。

 

『うわ……確かに酷いな……』

『クロスで誤魔化していたみたいね……』

『学園祭とは言っても、一応食べ物のお店なのに……』

 

その様子を見たお客さんが口々に呟く。飲食店で衛生面での悪評は致命的である。

 

明久「雄二、早くなんとかしないと経営に響くよ」

雄二「そうだな……。秀吉、ちょっと来てくれ」

秀吉「?なんじゃ?」

 

雄二が秀吉に耳打ちをする。

秀吉に頼むという事は、おそらく演劇用の小道具関係だろう。

 

秀吉「了解じゃ。すぐに戻る」

 

そう言い残して、教室内のクラスメイト数名に声をかけて秀吉は足早に去っていった。

 

雄二「明久、和真。お前はあの小悪党どもの特徴をよく覚えとけ」

和真「あいよ」

明久「? よくわかんないけど、了解」

 

営業妨害をしているのは二人。いずれも男だ。

片方は中肉中背の一般的な体格と、小さなモヒカンという非一般的な髪形をしている。もう一方も175センチくらいの普通の体格で丸坊主。

なんとも覚えやすい髪型の二人である。

というか、生徒会の常村と夏川だ。

 

夏川「まったく、責任者はいないのか!このクラスの代表ゴペッ!」

雄二「私が代表の坂本雄二です。何かご不満な点でも御座いましたか?」

 

表面上は模範的な責任者を思わせるような物腰で恭しく頭を下げる雄二。

 

常村「不満も何も、今連れが殴り飛ばされたんだが……」

 

殴られていないソフトモヒカン(常村)が面食らったような表情をしている。

 

雄二「それは私のモットーの『パンチから始まる交渉術』に対する冒涜ですか?」

 

それ自体が冒涜の塊のような交渉術だ。

 

夏川「ふ、ふざけんなよこの野郎……!なにが交渉術ふぎゃあっ!」

雄二「そして『キックでつなぐ交渉術』です。最後には『プロレス技で締める交渉術』が待っていますので」

常村「わ、わかった!こちらはこの夏川を交渉に出そう!俺は何もしないから交渉は不要だぞ!」

夏川「ちょ、ちょっと待てや常村!お前、俺を売ろうと言うのか!?」

 

仲間に売られそうになって慌てる夏川と呼ばれた坊主頭。なんと薄っぺらい友情であろうか。

 

雄二「それで常夏コンビとらや。まだ交渉を続けるのか?」

 

もう雄二の仮面が外れたようだ。やはり慇懃な態度はあんまり継続しないらしい。

 

明久(それにしても、常夏コンビとは巧い命名だ。座布団一枚)

常村「い、いや、もう充分だ。退散させてもらう」

 

雄二から剣呑な雰囲気を感じ取った常村(モヒカン)が撤退を選ぶ。賢明な判断だ。

 

雄二「そうか。それなら―」

 

大きく頷いた後、夏川(ボウズ)の腰を抱え込む雄二。

 

夏川「おいっ!俺はもう何にもしてないよな!?どうしてそんな大技をげぶるぁっ!」

雄二「これにて交渉は終了だ」

 

バックドロップを決めて平然と立ち上がる。

その交渉術は決して後世に残らないだろう。

 

常村「お、覚えてろよっ!」

 

倒れた相棒を抱えて去っていく常村。

これで問題は片付いた……

 

『流石にこれじゃ、食っていく気はしないな』

『折角美味しそうだったんだけどね』

『食ったら腹壊しそうだからなぁ』

 

わけではなかった。

クロスの中を目の当たりにし、とうとう音を立てて一人目が席を立つ。

その人物は竹原教頭だった。

 

和真(! ………………)

 

『店、変えるか』

『そうしようか』

 

一人目が立つと、次々と客が席を立ってしまう。集団心理だ。このままでは悪評は間違いなく学校中に広まるだろう。

 

雄二「失礼しました。こちらの手違いでテーブルの到着が遅れたので、暫定的にこのような物を使ってしまいました。ですが、たった今本物のテーブルが到着しましたのでご安心下さい」

 

そんな客達に頭を下げる雄二。その後ろには秀吉や男子数名が立派なテーブルを運んでいる姿がある。

 

和真(あれは……演劇部で使ってる大道具のテーブルか。こうすりゃ客の前で衛生面を改善した姿を見せられるってことか。雄二も風評とかについてちゃんと考えてたようだな)

 

「あれ?テーブルを入れ替えてるの?」

 

そんな時、明久達の後ろから美波が声をかけてきた。

 

明久「あ、おかえり。美波に姫路さん。一回戦はどうだった?」

姫路「はいっ。なんとかか勝てました」

 

Vサインを決める姫路。普段はそこまで勝負にこだわる性格ではないのだが、事情が事情なだけにらしくもなく勝負にこだわってるようだ。 

 

美波「そんなことより、テーブルを入れ替えちゃっていいの?演劇部にあるテーブルなんて、そこまで多くはないはずでしょう?」

 

美波の指摘ももっともだ。秀吉は二つ程度しかないと言っていたし、かといって残りのテーブルをそのままにというわけにもいかない。

 

雄二「ふぅ。こんなところか」

 

雄二が小さく息を吐く。慣れない丁寧語で疲れたのだろうか。

 

明久「お疲れ、雄二」

和真「ご苦労さん」

美波「何があったかわからないけど、お疲れ様」

姫路「お疲れ様です」

雄二「おう。姫路に島田か。その様子だと勝ったみたいだな」

美波「一応ね。それより、喫茶店は大丈夫なの?」

 

さっきの騒動で客は減ったし、悪評も流れるだろう。喫茶店も姫路の転校を阻止するための要素なので、失敗は許されない。

 

雄二「このまま何も妨害がなければ問題ないな」

 

この先の妨害を危篤しているように雄二は言う。

 

姫路「あの、持ってくるテーブルは足りるんですか?」

雄二「ああ、それか。そうだな……明久、和真、二回戦まであとどのくらい時間がある?」

 

それを聞かれて和真と明久は腕時計を見て確認する。

 

明久「僕らは小一時間ってとこかな」

和真「俺らはそれよりちょっと早い」

雄二「そうか。あまり時間がないな……。ちゃっちゃと行くか。二人ともついて来い」

 

雄二が和真と明久に向かってクイクイ、と指を動かす。

 

美波「ウチらは手伝わなくていいの?」

雄二「お前らは喫茶店でウェイトレスをやってくれ。落ちた評判を取り戻す為に、笑顔で愛想よく、な」

姫路「はいっ!頑張ります」

明久(いいなぁ……。僕も客として入って笑顔を振りまいてもらいたいよ)

 

金はどうするんだ、金は。

 

和真「ところでどうするんだ?まさか無断で借りるわけじゃねぇだろうな?」

雄二「ああそうだ」

 

こともなげに雄二は肯定する。

 

雄二「一旦喫茶店に使っちまえばこっちのもんだ。一般客が使用中のテーブルを回収なんて真似は、いくら教師でもできないだろうからな」

 

雄二が思いつきそうな悪どい策である。

しかし、

 

和真「んなリスキーな手段じゃ無くてもテーブル調達する手段なんざいくらでもあるだろうが……」

雄二「ほう?なにかあてがあるのか?」

和真「まあ見てろって」

 

そう言って和真は三人を引き連れて教室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

和真「―というわけで、応接室のテーブルを借りてもいいっすか?布施センセ」

布施「そういう事情でしたら構いませんよ。但し、壊さないでくださいね」

和真「了解しやした~」 

 

布施先生に事情を説明した後、和真達は応接室から机を運び出した。

 

明久「すごいね和真。テーブルを貸してくれるように交渉するなんて」

 

テーブルを運びながら和真に話かける和真。

 

和真「こんなの交渉でもなんでもねぇよ。ただ頼んだだけだっつの」

雄二「いや、俺や明久が頼んでも受理されなかったと思うぞ」

和真「んなもん日頃の行いだろ」

雄二「納得できねぇ……」

 

和真は明久や雄二と一緒にバカをやることも少なくないが、天性の勘の良さから一度たりとも捕まっていない。それどころか実行中はほとんどバレてすらいない。

また、授業や宿題などやるべきことはきちんとやっており、時間があるときには教師の手伝い(主に力仕事)などもやったりしているので、基本的に教師達からの評判は良く、こういった頼みごとはだいたい聞き入れてもらえる。

要するに、和真は雄二や明久に比べて世渡りが非常に上手いのである。

鉄人が「ある意味吉井や坂本よりもやっかいな生徒」と日頃ぼやいているのも無理はない。

 

和真「そろそろ時間だな、じゃあ後は任せたぜ」

明久「もう行くの?」

和真「徹は待つの嫌いなくせに予定時間より早く待機してるだろうし。なんのプライドか知らんが待ったとは絶対に言わねぇけどな、」

 

そう言って和真は二人と別れて特設ステージに向かう。

 

 

 

和真「はぁ……気が進まねぇ……」

 

手にしたトーナメント表を見ながら和真はダルそうにぼやく。好戦的な彼にしては意外な態度である。

 

和真「よりによってこいつらが相手かよ……100%勝てるけど闘いたくねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《二回戦・英語》

『Fクラス 柊 和真

Aクラス 大門

VS

Dクラス 清水 美春

Dクラス 玉野 美紀』

 




というわけで次回はVSDクラス問題児コンビです。
結果はわかりきっているけど重要なのはそこじゃない!

大門 徹
・性質……防御特化&機動度外視型
・総合科目……3650点前後 (学年7位)
・400点以上……数学・物理
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……B+
機動力……D
防御力……S
・腕輪……リフレクトアーマー

相手の攻撃を受け止め、攻撃を喰らわせる重戦車型。久保と似たような戦闘スタイルだがこちらは防御を重視している。現実では不可能な闘い方だからせめて召喚獣は……と考えるとなんだかやるせない気持ちになる。

『リフレクトアーマー』
コスト50で召喚獣に防御力が増幅し、攻撃の一部を反射する鎧を装備させる。壊された場合、召喚し直さなければ張り替えることはできない。
全身を覆っているため急所がなく、まさに要塞である。
自分が敵を殴った場合、反作用の力まで反射するため実質攻撃も強化されている。
ほぼ無敵の能力だが弱点はいくつかある。
一つ目は、攻撃は全て反射できるわけではなくしっかりダメージは鎧に蓄積していくのでやられ過ぎると壊れる。
二つ目は、スピードは落ちるためこちらからの攻撃は当てにくい。試召戦争で相手の召喚獣に逃げ回られたら時間がものすごくかかってしまうだろう。


では。


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我が道を行く者達

『バカテスト・英語W』
次の文を英文に直しなさい。

その問題は難し過ぎて解けない。

柊 和真の答え
The question is too difficult to solve.
蒼介「正解だ。『too~to…』で『~過ぎて…できない』という意味になる」

土屋 康太の答え
The
飛鳥「訳せたのは『その』だけなのね……」

吉井 明久の答え
Me too.
蒼介「問題文に同意されてもな……それと否定文なので『Me either.』、もしくは『Neither do I. 』が適切だろう」


和真「はぁ……気が進まねぇ……」

 

校舎にある特設ステージに重い足取りで向かいながら、和真はぼやく。

この戦闘狂がここまでテンションが低いのは対戦相手のDクラス問題児コンビ、というよりその片方の玉野 美紀が原因である。去年同じクラスだった玉野と和真の間にはちょっとした因縁があり、数少ない和真の苦手としている生徒の一人なのである。

 

「おや、和真君じゃないか」

 

そんなローテンションな和真の後ろから一人の男性が声をかける。和真は面倒臭そうに振り向き、

 

自分の目を疑った。

 

その男性は大学生くらいの外見をしているが、実は40手前だということを和真は知っている。

長身で細身だが服の上からでもわかる引き締まった体つき、艶やかな黒髪に中性的で、それでいて芯の強さや品格、カリスマ性のようなものを感じさせる顔立ちをしており、無条件に人を惹き付けるその外見は和真のよく知る人物を思い起こさせる。

 

そして、片方の胸元に剣に朱雀―“鳳財閥”のマーク、もう片方に鳳家の家紋「鳳仙花」の刺繍が施された和服を来ていた。

 

和真「……なんでここにいるんすか、秀介さん」

 

この人こそが鳳家現当主であり“鳳財閥”会長、そして蒼介の父親……鳳 秀介(オオトリ シュウスケ)である。

 

秀介「ふむ、父親が息子の様子を見に来ることがそんなにおかしいかい?」

和真「いや、あんた自分の立場わかってるんすか?四大企業の一角の会長が仕事ボイコットするのはまずいでしょ」

秀介「それなら心配ないよ。“鳳”はこの学園のスポンサーだからね、『出資先の視察』という建前があるからこれも仕事のうちなんだよ。もっとも社長自ら来ているのは私だけらしいけどね」

和真「建前って言っちゃってるじゃないすか……というか、流石に付き人くらいは連れて来ましょうよ……」

秀介「とは言っても、私より強い付き人がなかなかいなくてねぇ……あ、そうそう、蒼介のクラスの教室はどこにあるんだい?さっきから探してるんだが全然見つからなくて」

和真「そうなるから付き人が必要なんすよ!あんた只でさえ方向音痴なんだから!」

秀介「知らないうちにウェイターをやることになったと珍しくぼやいていたけど、やっぱり息子が頑張っているすがたは見に行きたいからね」

和真「人の話を聞いてくださいお願いだから!」

 

常に周りを振り回している和真が逆に振り回されている、なかなかお目にかかれない光景だ。

ご覧のとおり、秀介はかなりの天然な性格である。蒼介のしっかりした部分は全て母親から受け継がれたようだ。

 

秀介「それで、二年Aクラスはどこにあるんだい?」

和真「いや、口で説明しても地図を渡してもあんたは迷うわ、断言できるわ。Aクラスまで連れて行くしかないけど、俺も時間ねぇし、誰かに頼むか……」

 

そう言って和真は辺りを見回す。

すると試召戦争後、最近理数系科目のコツを教えて貰っていた教師を見つける。

 

和真「おーい!綾倉センセ!」

 

名前を呼ばれたその教師は和真に歩み寄る。

栗色の長めの髪に、眼鏡をかけ柔和な笑顔を浮かべている糸目の男性だ。

 

「どうかしましたか?柊君」

 

名前は綾倉 慶(アヤクラ ケイ)。数学教師にして三年学年主任という肩書きを持つ。

 

試召戦争を用いるこの学年では学年主任及び補修担当の生徒指導は全ての教科に秀でた教師のみが着ける役職だ。

その中でも、文月学園は進学校なので、進学にダイレクトに関わる第三学年主任には学園で最も秀でた教師しか着くことができない。

つまりこの綾倉先生は、文月学園教師陣の頂点に君臨しているということである。

 

和真「この人が二年Aクラスに行きたいらしいんすけど俺もうすぐ召喚大会なんで、代わりに頼んでいいすか?」

綾倉「えぇ。お安いご用ですよ」

和真「あざーす。じゃあ俺そろそろ行くんで。秀介さん、綾倉センセ、サイナラー」

秀介「ああ、頑張りなさい」

和真「はいよー!」

 

そう言って特設ステージに走っていった。

 

綾倉「ではいきましょうか」

秀介「すみませんねぇ。昔からよく道に迷うもんで」

綾倉「人間ひとつやふたつそういうところがあるものですよ」

秀介「ははっ、違いないですね」

 

軽く談笑しながら歩き出す二人。実は彼等は生徒会の顧問と出資者として知った仲である。

 

綾倉「そうそう鳳さん、例の件ですが……」

 

 

 

 

 

 

 

徹「相変わらず君は来るのが遅いね。僕もさっき来たところだけど」 

 

相変わらず特設ステージ前で壁にもたれかかり腕を組んで立っていた。

 

和真「わりぃな、今回は早く来ようと思ったんだけどよ、来る途中ものすごく自由な人に振り回されてよ」

徹と特設ステージに向かいながら和真が説明する。

徹「もう少しまともな言い訳は無いのかい?君より自由な人間などいるわけないだろう」

 

先ほどの試合を思い浮かべながら揶揄するように言う。

 

和真「……いや、いっぱいいるだろ。例えば俺等の対戦相手とか」

徹「……それもそうか」 

 

そして二人ともテンションががくっと下がる。どうやらやる気が無いのは和真だけでは無いようだ。

重い足取りで特設ステージに向かうと、対戦相手は既にスタンバイしていた。

 

「ようやく来ましたね!待ちくたびれました!」

「カズナちゃんトーコちゃん久しぶりっ!」

 

不機嫌そうにしている女子生徒が清水 美春。

ドリルのようにロールしたオレンジ色の髪を左右に垂らしている。

和真達を特殊な愛称で呼んだ女子生徒が玉野 美紀。

黒髪を三つ編みにしており、なぜか熱っぽい表情で和真達をおかしな名前で呼ぶ。

 

和真「わりぃな清水、次からは気をつけるわ。美紀はもう死んでくれねぇかな?」

徹「まぁ時間には間に合ったんだし、別にいいじゃないか。死ぬのがいやならせめて転校してくれないかな玉野さん」

玉野「二人とも酷いっ!?」

 

血も涙も無い暴言を浴びせる二人。

しかし彼等は理由も無くこんな冷たい対応をしているわけではない。

 

 

 

玉野「私は二人に可愛い服を着て欲しいだけなのにっ!」

和真「だからそれが嫌だっつってんだろォォォ!いい加減諦めろやクソがァァァ!」

玉野「大丈夫だよ!きっと似合うから!」

徹「似合う似合わない以前にそんなもん来たら社会的に抹殺されるわァァァ!」

 

 

その理由がこれだ。玉野は可愛らしい顔立ちの男子生徒に可愛らしい服を着せたがるという、はた迷惑な趣味を持っている。誰が見ても童顔な和真と徹は去年ことあるごとに被害を被りかけた。同じクラスということもありその回数は尋常じゃない。

〈例〉

・体育の時間に制服をゴスロリにすり替えられそうになった。

 

・部活に参加している最中に部室においていた制服をメイド服に(ry

 

・家庭科の調理実習に使うエプロンを(ry

 

・毎朝の挨拶が「おはよう!それじゃあちょっと着替えよう!」with女子制服

 

etc...

 

そんなわけで和真達の玉野への対応は基本突き放し気味である。突き放しどころかもう突き落とす勢いである。

 

玉野「私が勝ったら今日こそはこのメイド服を着て貰うからね!」

徹「上等だよ……打ち砕いてあげるよ。君の野望も、君の召喚獣も……ついでに君自身も」

和真「……んで清水、お前の目的はやっぱりプレミアムチケットか?」

 

面倒臭くなったのか玉野をスルーして和真がもう一人の女子生徒に確認するように聞く。

 

清水「当然です!これから私と美波お姉さまのシンデレラストーリーが始まるのです!」

 

このセリフからわかる通り、清水は生粋の同性愛者だ。ちなみに細身の貧乳美人が好みである。

 

和真「誘う相手が島田だけってことは、飛鳥のことは諦めがついたみてぇだな」

 

その条件にはAクラスの橘 飛鳥も当てはまるため、以前は二人とも手中に納めようという野望を持っていた。

 

清水「とても悲しいことですが…………飛鳥お姉さまが私に振り向くことは……ありませんので……」

 

今にも泣きそうな表情で告げる清水。どう見ても未練タラタラで振り切れていない。

 

なあなあですませている美波とは違って、以前飛鳥は蒼介という婚約者がいるという理由で清水の告白をはっきりと断っている。

その後清水は自分にとって邪魔者である蒼介を排除しようとするが手も足もでず返り討ちに遭う。

そしてその後、飛鳥のストーキングを実行するがそのことが“橘”にバレてしまい、筆舌に尽くしがたいほどのこの世の真の恐怖を味わった後、あやうく社会的に抹殺されそうになった。

そのときは話を聞き付けた和真と蒼介の口添えで事なきを得た。そのため男子嫌いの清水であるが和真とはある程度友好的な関係を築けている。

 

「それでは、試験召喚大会二回戦を始めて下さい」

 

立会人の遠藤先生かそう告げる。

 

『試獣召喚(サモン)!』

 

掛け声と共に四体の召喚獣が出現する。

 

遠藤「それでは始めてください」

 

清水「さあ、覚悟しなさ(ダダダダダダダダダ!)さい……って、えぇぇぇぇ!?」

玉野「そんなっ!?」

 

《英語W》

『Fクラス 柊 和真 300点

Aクラス 大門 徹 329点

VS

Dクラス 清水 美春 戦死

Dクラス 玉野 美紀 戦死』

 

鎧袖一触とはまさにこのこと。

清水達の召喚獣は〈和真〉の腕輪能力『一斉砲撃』のあっとうてきな?火力を前に、一瞬で肉塊と化した。

 

遠藤「勝者、柊・大門ペア!」

 

清水「お姉さま……非力な私を許してください……」

 

orzの体勢で落ち込む清水。

心なしか清水のバックに木枯らしが見える。

 

玉野「カズナちゃん……トーカちゃん……次こそは、可愛らしいお洋服を着て貰うからねっ!」

徹「もう口閉じててくれ、一生」

和真「諦めろよ、そこで試合終了だ」

 

安西先生もビックリな突き放しっぷりである。

これで和真達の三回戦進出が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、Aクラスでは…

 

蒼介「お帰りなさいま……父様?」

秀介「やぁ蒼介、随分繁盛してるねぇ」

 

【執事喫茶 お嬢様とお呼び!】は通常の六倍の広さにもかかわらずほぼ満席となっていて、和真と別れてから今になってようやく教室の中に入ることができた。

まあここまで繁盛している理由の半分以上は蒼介にあるのだが。

 

秀介「ふむ…親の贔屓目を抜きにしても似合ってるね」

蒼介「それはどうも」

 

今、蒼介は薄いグレーの燕尾服を来ている。コバルトブルーの髪と非常にマッチしており、それに蒼介の上品な佇まいが合わさり、神聖さすら感じさせる。

 

秀介「しかし、どう見ても人に仕えているようには見えないね」

蒼介「クラス全員から同じ感想を聞きました」

 

口元に扇子をあてて笑いをこらえる秀介。

これではよっぽどの相手でなければ引き立て役になってしまうこと請け合いである。

そういう意味では、誰よりも執事に向いていない男と言えるのかもしれない。

 

 

 

 




というわけで本作品リアルファイト最強候補&試召戦争最強キャラが登場しました!(綾倉先生は既に出ていたけど)
キャラ紹介は巻のラストにまとめて掲載しますのでそれまでお待ちください。
闘う機会はまだまだ先ですが、綾倉先生の数学と物理はチートを通り越してもはやバグです。和真君だろうが蒼介君だろうが太刀打ちできません。


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【バカテスト・数学】
(x + 1)(x + 2)(x + 3)(x + 4)を展開せよ。

姫路 瑞希の答え
x^4 + 10x^3 + 35x^2 + 50x+24

蒼介「正解だ。解き方としては内側と外側をそれぞれ掛け合わせると、(x^2 + 5x + 4)(x^2 + 5x + 6)となるから、
x^2 + 5xをAと置いて展開すれば良い」

土屋 康太の答え
4x + 10 ()()()()

徹「邪魔だからって()を分別しないように」

吉井 明久の答え
姫路さんの答えが正しいことをここに証明する。

蒼介「証明ではなく展開しろ」


和真「ただいま……ってあんま客来てねぇな」

 

テーブルを取り替えたものの、何故か喫茶店内には客が殆どいなかった。

 

秀吉「お、戻ってきたようじゃの」

 

あまり仕事が無いようで、ウエイター(?)の秀吉も暇そうである。 

 

和真「もう昼前だってのに……このままじゃまずくね?」

秀吉「うむ、そうじゃのう……しかし一体どうすればよいものか」

 

二人がそう手をこまねいていると、明久が戻ってきた。

 

明久「ただいまー……って、あんまりお客さんがいないなぁ……」

秀吉「明久も戻ってきたようじゃの」

明久「無事勝ってきたよ。……根本君の尊い犠牲によって」

 

どんな試合内容だったのかとても気になる。

 

秀吉「それは何よりじゃ。ところで、雄二の姿が見えんが?」

明久「うん。トイレに寄ってくるってさ。それより秀吉と和真、これはどういうこと?お客さんがいないじゃないか」

秀吉「……むぅ。ワシはずっとここにいるが、妙な客はあれ以降来ておらんぞ?」

和真「俺は今さっき戻って来たとこだから知らねぇ」

明久「ってことは、教室の外で何か起きているのかな?」

秀吉「かもしれんのう」

 

三人が今後の喫茶店の経営について話し込んでいると、大会を済ませた翔子が帰って来た。

 

翔子「……ただいま」

和真「よぉ翔子、なんか久しぶりに会った気がするんだがまぁ気のせいだな。一応聞くが、勝ったか?」

翔子「……うん。ところで、なんでこんな状態なの?」

和真「さぁね」

 

『お兄さん、すいませんです』

『いや。気にするな、チビッ子』

『チビッ子じゃなくて葉月ですっ』

 

四人が話混んでいると、雄二と少女の声が聞こえてきた。

 

秀吉「雄二が戻ってきたようじゃの」

明久「あ、うん。そうみたいだね」

和真「子供を連れてるみてぇだな。随分面倒見が良いじゃねぇかお前の旦那」

翔子「……雄二は意外と子ども好きだから」

 

旦那発言に周りが一切違和感を覚えないのはご愛敬。

 

『んで、探しているのはどんなヤツだ?』

 

教室の扉が開き、雄二の姿をが見えた。雄二の話し相手の子は小柄なのか、雄二の陰になって姿が見えない。

 

『お、坂本。妹か?』

『可愛い子だな~。ねぇ、五年後にお兄さんと付き合わない?』

『俺はむしろ、今だからこそ付き合いたいなぁ』

 

二人はあっという間にクラスの野郎どもに囲まれた。客がいなくて暇なのだろう

明久「ねぇ和真……今一人ロリコンが紛れてなかった……?」

和真「下手したらそれが原因で姫路転校してしまうかもな」

誰だってそんな危ない奴がいる教室に娘を預けたくはないだろう。

 

『あ、あの、葉月はお兄ちゃんを探しているんですっ』

どうやら少女は人を探していて雄二に声をかけたらしい。

『お兄ちゃん?名前はなんて言うんだ?』

『あぅ……わからないです……』

『? 家族の兄じゃないのか?それなら、何か特徴は?』

 

名前がわからない相手でも探してあげようという雄二の温かい気遣いが感じられる。わざわざ屈んで目線を合わせてあげていることからも、子ども好きであることが伺える。

 

『えっと……バカなお兄ちゃんでした!』

 

なんとも凄いというか、不名誉な特徴である。

 

『そうか』

 

雄二が首を巡らせて、該当する人物を探す。

 

『……沢山いるんだが?』

 

Fクラスはバカの掃き溜めと揶揄されているくらいだから否定はできないだろう。

 

『あ、あの、そうじゃなくて、その……』

『うん?他にも何か特徴があるのか?』

『その……すっごくバカなお兄ちゃんだったんです!』

 

『『『吉井だな!』』』

 

明久を除くFクラス生徒全員の心が一つになった。

そして明久はクラスメイトの不名誉な認識に今にも泣きそうな表情をしていた。

 

明久「全く失礼な!僕に小さな女の子の知り合いなんていないよ!絶対に人違い……」

葉月「あっ!バカなお兄ちゃんだっ!」

 

明久の言葉が言い終わらないうちに少女が駆けていき、明久に抱きついた。

 

雄二「絶対に人違い、がどうした?」

和真「諦めろ明久、お前はそういう役回りだ」

明久「……人違いだと、いいなぁ……」

 

いつだって現実は非情である。

 

明久「って、君は誰?見たところ小学生だけど、僕にそんな年の知り合いはいないよ?」

 

ひとまず顔を見る為に明久は少女を引き剥がす。

 

葉月「え?お兄ちゃん……。知らないって、ひどい……」

 

少女の表情が歪む。どうやら泣かせてしまったようだ。

 

葉月「バカなお兄ちゃんのバカぁっ!バカなお兄ちゃんに会いたくて、葉月、一生懸命『バカなお兄ちゃんを知りませんか?』って聞きながら来たのに!」

明久「どうしよう、僕まで泣きたくなってきた…」

雄二「明久―じゃなくて、バカなお兄ちゃんがバカでごめんな?」

秀吉「バカなお兄ちゃんはバカなんじゃ。許してやってくれんかのう?」

和真「悪いのはバカなお兄ちゃんの頭であってバカなお兄ちゃんは悪くねぇんだ、責めないでやってくれ」

 

少女をなだめるためにこれでもかと言うくらい明久を罵倒する三人。ここまでバカを連呼された人間はそういないだろう。

 

葉月「でもでも、バカなお兄ちゃん、葉月と結婚の約束もしたのに―」

美波「瑞希!」

姫路「美波ちゃん!」

「「殺るわよ!」」

明久「ごふぁっ!」

 

ちょうど教室に戻って来た二人が明久にネプチューンマン顔負けのクロスボンバーをお見舞いした。

 

雄二「姫路に島田か。どうやら勝ったようだな」

和真「なんだかんだで全員勝ち残れてんな」

 

目の前でデンジャラスな光景が繰り広げられているにもかかわらずやけに落ち着いている二人。

 

美波「瑞希。そのまま首を真後ろに捻って。ウチは膝を逆方向に曲げるから」

姫路「こ、こうですか?」

 

それはもはやただの殺戮である。

 

明久「ちょっと待って!結婚の約束なんて、僕は全然―」

葉月「ふえぇぇんっ!酷いですっ!ファーストキスもあげたのにーっ!」

美波「坂本は包丁を持ってきて。五本あれば足りると思う」

姫路「吉井君、そんな悪いことをするのはこの口ですか?」

明久「お願いひまふっ!はなひを聞いてくらはいっ!」

 

このままだとクラスから幼女暴行犯がでた挙句、その容疑者が殺害される事件になりかねない。

 

和真(しかたねぇな……)「そろそろやめとけ二人ともー」

 

明久をリンチしている二人を制服の襟を摘まんで引き剥がす。

 

美波「ひ、柊!なにすんのよ!離しなさい!」

和真「そんな乱暴な性格だから女にしかモテねぇんだよ、お前は(ボソッ)」

美波「うぐぅっ!」

 

和真は美波の耳元で囁いた。

美波の精神に999ポイントのダメージ。

 

姫路「柊君、お仕置きの邪魔をしないでください!」

和真「体脂肪率が俺の五倍もある豚肉女は黙ってろよ(ボソッ)」

姫路「はぅあっ!」

 

和真は姫路の耳元で囁いた。

姫路の精神に9999ポイントのダメージ。

 

「「orz」」

 

二人は目の前が真っ暗になった…… 

 

明久「……助かったけど、二人に何を言ったの?」

和真「聞かない方がいいぜ?」

 

そう言ってニヤリと悪戯っぽく笑った。

持ち前の社交性でこれまであらゆる人間と接してきた和真は、相手が気にしていることやコンプレックスを見抜き、的確に抉ることができるのだ。

 

葉月「あ、お姉ちゃん。遊びに来たよ……って、お姉ちゃん大丈夫です!?」

 

少女が島田を見て泣き止むが、そして真っ白になっている美波を見て驚く。

 

和真「そっとしておいてやれ葉月、そのうち回復するだろうから」

葉月「そうですか……あ、強いお兄ちゃんも久しぶりですっ!」

和真「おー、久しぶり」

明久「……ああっ!あのときのぬいぐるみの子か!」

和真「いきなりデケェ声出すなよ…って、やっぱり知り合いなんじゃねぇか」

 

明久は以前、姉にプレゼント(大きなぬいぐるみ)をしたいけどお金が足りない、という状況だった葉月を助けたことがある。

 

明久(その後監察処分者に認定されたりして色々とバタバタしてたから、すっかり忘れていたよ)

葉月「ぬいぐるみの子じゃないです。葉月です」

明久「そっか、葉月ちゃんか。久しぶりだね。元気だった?」

葉月「はいですっ!」

明久「うんうん。それは良かった。それにしても、よく僕の学校がわかったね?」

葉月「お兄ちゃん、この学校の制服着てましたから」

和真「偉いぞ葉月、明久には到底できねぇ頭脳プレーだ」

明久「和真、君とは一度拳で語り……やっぱりいいや」

和真「諦め早えぇなオイ……」

 

三人で仲良く談笑していると、瀕死状態からなんとか復活した美波が近寄ってきた。

 

美波「あれ?葉月とアキ達って知り合いなの?」

 

三人の様子を見て美波が首を傾げた。

 

明久「うん。去年ちょっとね」

和真「俺は以前公園で俺とこいつと源太、あと仕事サボって河原でのんびりしてたおっちゃんと缶蹴りした仲だ」

美波「アンタなにやってんの!?なんでその辺のおじさんを交えての缶蹴り!?」

明久(なんだろう……その人に凄く心当たりがある……)

 

河原、仕事サボってた、おっちゃん、と聞いて明久はある人物を思い浮かべた。

 

和真「あの時は大変だったなぁ、俺の蹴った缶がその辺を歩いていたチンピラにぶつかってよぉ、そいつが仲間を20人くらい連れて襲ってきてなぁ」

美波「アンタさらっととんでもない事件引き起こしてるのよ!?葉月大丈夫だったの!?」

葉月「はいっ!その時は強いお兄ちゃんと怖そうなお兄ちゃんとだるそうなおじさんが守ってくれたので大丈夫です!」

和真「あぁ、あのおっちゃんやけに強かったな」

美波「…………もうつっこむ気も失せたわ」

 

和真は基本的に周りを振り回すタイプの人間である。一部の例外(例:玉野、蒼介父)を除いては。

 

明久「そう言えば美波こそ葉月ちゃんのこと知ってるの?」

美波「知ってるも何も、ウチの妹だもの」

明久「へ?」

 

まじまじと葉月の顔を見る明久。なるほど言われてみれば確かに雰囲気や顔立ちが似通っている。

 

姫路「吉井君はずるいです……。どうして美波ちゃんとは家族ぐるみの付き合いなんですか?私はまだ両親にも会ってもらってないのに……。もしかして、実はもう『お義兄ちゃん』になっちゃてたり……」

 

姫路の思考回路は日に日に悪化の一途を辿っている。

もしかしたら姫路の父親の判断は正しいのかもしれない。

 

葉月「あ、あの時の綺麗なお姉ちゃん!ぬいぐるみありがとうでしたっ!」

 

そう言ってぺこりとお辞儀をする。闇の帝王も絶賛するほど礼儀正しい子である。

 

姫路「こんにちは、葉月ちゃん。あの子、可愛がってくれてる?」

葉月「はいですっ!毎日一緒に寝てます!」

姫路「良かった~気にってくれたんだ」

和真「つーか、お前ら二人とも知り合いかよ……明久襲う前に確認とれや……」

 

人の話を聞かない、それがFクラス・クオリティ。

 

雄二「ところで、この客の少なさはどういうことだ?」

 

教室内を見渡しながら雄二が皆に聞く。

元々それを考えていたのだが葉月の登場で全員がすっかり忘れていた。

 

葉月「そういえば葉月、ここに来る途中で色々な話を聞いたよ?」

雄二「ん?どんな話だ?」

 

再び屈んで葉月の目線に合わせる雄二。

 

葉月「えっとね、中華喫茶は汚いから行かない方がいい、って」

雄二「ふむ……。例の連中の妨害がまだ続いてるんだろうな。探し出してシバき倒すか」

 

口元に手を当て、まるで確信しているかのように断言する。

 

明久「例の連中って、あの常夏コンビ?まさか、そこまで暇じゃないでしょ」

 

どうやら明久は常夏コンビをただの嫌がらせ目的のチンピラぐらいにしか認識してないようだ。

 

和真「明久、学園祭の出店の悪評流すような暇な連中はあの先輩達しかいねぇだろ」

明久「あ、それもそうか」

 

和真の説明を聞いて明久は納得する。

 

和真「んじゃ、Bクラスに行くぞお前らー」

雄二「待て、どうしてBクラスなんだ?」

和真「悪評広めたいなら人が集まっているところでするのが効果的だろうが」

翔子「……それだったらAクラスの方が」

和真「ソウスケのテリトリーでそんなふざけたことやってみろ、悪評が広まる前にスープのだしにされてるわ」

 

女子一同「スープのだしに!?」

男子一同「やっぱりそれ!?」

 

初めて聞いた女子と以前聞いていた男子で反応が違っているが、その場にいる人間全員が戦慄する。

果たして和真は蒼介をどんなキャラに仕立て上げたいのだろうか?

 

秀吉「和真よ、Bクラスにも五十嵐がおったじゃろう?あやつも大層腕っぷしが強いと聞いているが」

和真「源太はいねぇよ」

明久「え、どうして?何か病気とか?」

和真「Bクラスも喫茶店なんだがよ、アイツ料理できねぇからホールに回ろうとしたんだが…」

『ふむふむ』

和真「あいつ顔が怖いだろ?店のイメージが悪くなるから清涼祭中教室に来ないでってクラスの奴に言われてな、それで拗ねて休むらしい」

『…………………………』

 

非常にいたたまれない気持ちになる一同。

いかつい顔をしている人ほど繊細な性格だったりするのである。なお、この件をきっかけに源太はメキメキと料理の腕を伸ばすことになるのはまた別の話。

 

雄二「じ、じゃあとりあえずBクラスの様子を見に行くか」

明久「そ、そうだね」

 

強引に気まずくなる話を切り替えたた二人。

見事なファインプレーである。

 

葉月「お兄ちゃん、葉月と遊びにいこっ」

明久「ごめんね、葉月ちゃん。お兄ちゃんはどうしても喫茶店を成功させなきゃいけないから、あんまり一緒に遊べないんだ」

葉月「む~。折角会に来たのに~」

 

明久は葉月の頭を撫でながら諭すように言うが、葉月は不満げに頬膨らませる。

喫茶店の成功は姫路の転校にダイレクトに関わる問題だから明久としても全力を尽くしたいのだろう。

 

雄二「それなら、そのチビッ子も連れて行けばいい。飲食店をやっている他の店を偵察する必要もあるからな」

 

そこで雄二のフォローが入る。

敵情視察は経営戦略の基本である。

 

明久「ん~、そっか。それじゃ、一緒にお昼ご飯でも食べに行く?」

葉月「うんっ」

 

膨れっ面から一転して満面の笑みになる葉月。

 

美波「じゃあ葉月、お姉ちゃんも一緒に行くね」

秀吉「ふむ。ならば姫路も雄二と一緒に行くと良いじゃろ。召喚大会もあるじゃろうし、早めに昼を済ませてくるとよい。霧島は―」

翔子「……私も行く」

秀吉「―聞くまでもなかったのう」

 

これでBクラスに偵察に行くメンバーは7人となった。

混雑する学園祭の中を歩き回るには結構な人数である。

 

雄二「それじゃあ行くか、獲物を狩りに!」

『了解!』

 

こうしてFクラス殲滅班がBクラスへ向かった。




はい、というわけで葉月ちゃん登場回。
和真君の交遊関係は相変わらず広すぎです。

それにしても……幼女、おっさん、童顔高校生、強面高校生が公園で仲良く缶蹴り、か

……シュール過ぎる
ちなみに鬼は半ほとんど源太君でした。
缶蹴りは戦場である。

では。


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TRANSVESTISM

【バカテスト・生物】
人間の血液・組織液と浸透圧の等しい、濃度が約0.9パーセントの食塩水を何と言うか。

姫路 瑞希、霧島 翔子の答え
「生理食塩水」

蒼介「正解だ。これに塩化ナトリウム ・ 塩化カリウム・ 塩化カルシウム水和物を加えたものはリンガー液と呼ばれる。こちらは体液の代用液にも使えるので覚えておこう」

吉井 明久の答え
「僕の主食」

和真「悲しいこと言うなよ……」

坂本 雄二、木下 秀吉、土屋 康太、島田 美波の答え
「吉井 明久の主食」

和真・蒼介「……………………」




和真「これがBクラスの店か……」

 

七人はBクラスの店の前まで来ていた。

Bクラスはメイド喫茶。正直言ってベタではあるが無難なチョイスである。

ただ、その店名が……

 

和真「【メイド喫茶『大暴落』】って……Aクラスといい、うちといい、ここといい……まともな店名が一つたりともねぇぞ……」

 

とはいえ流石は上位設備、なかなか繁盛している。

 

ムッツリーニ「…………!!(パシャパシャパシャパシャ!)」 

 

隣を見てみると、指が擦り切れんばかりにシャッターを切るカメラ小僧が一人。

 

明久「……ムッツリーニ?」

ムッツリーニ「………人違い」

 

厨房責任者のクラスメイトはカメラを片手に否定のポーズを取っていた。

 

美波「どこからどう見ても土屋でしょうが。アンタ何してるの?」

ムッツリーニ「………敵情視察」

 

最近の敵情視察とはローアングルから女の子を撮影する事を指すようだ。

 

明久「ムッツリーニ、ダメじゃないか。盗撮とか、そんなことをしたら撮られている女の子が可愛そうだと―」

ムッツリーニ「…………一枚百円」

明久「2ダース貰おう―可愛そうだと思わないのかい?」

美波「アキ、普通に注文してるわよ」

 

美波に指摘されて気づいたような表情の明久。

どうやら無意識だったらしい。

 

ムッツリーニ「………そろそろ当番だから戻る」

 

明久に写真を渡し、ムッツリーニは教室の方に去っていった。

 

明久「まったく、ムッツリーニにも困ったもんだね」

 

そういう台詞はさりげなく写真をポケットに仕舞いながら言うものではない。

 

姫路「吉井君、その写真をどうするつもりなんですか?」

明久(あ、バレた)「やだな~。もちろん処分するに決まってるじゃないか。それよりそろそろお店に入ろうよ。もうすごくお腹減っちゃたよ」

 

秀吉が見れば鼻で笑いそうな白々しい演技である。

流石にこれに騙される人は三年の高城ぐらい……

 

姫路「あ、そうですね。入りましょうか」

 

どうやら姫路は高城に匹敵するほどの騙されやすさのようだ。

 

明久「うんうん。早く敵情視察も済ませないと―写ってるのは男の足ばっかりじゃないか畜生!」

姫路「やっぱり見てるじゃないですかっ!」

明久「ご、ごめんなひゃい!くひをひっぱらないで!」

 

姫路に頬をつねられる明久。そして足元では葉月が明久の腿をつねっていた。

 

雄二「それじゃ、入るぞ」

 

一番手でドアをくぐる雄二。

 

 

「おかえりなさ―あ、アンタは!?」

「Fクラスの……!」

 

ドアを開けるとメイド服を来た女子生徒二名が笑顔で出迎えるが、雄二と明久の顔を見た途端しかめっ面になった。

 

「「……お帰りくださいませ、ご主人様」」

雄二「んだとコラ!」

明久「ちょっひどくない!?」 

 

そして「帰れ」宣言。

客に対してあまりにも失礼な物言いだが、別に明久達が問題児であるからこういう態度をとっている訳ではない。

この二人は岩下 律子と菊入 真由美。

Bクラス戦で姫路の『熱線』の餌食となった生徒達であり、今回の召喚大会では明久と雄二の一回戦の相手だったりする。

二度に渡って辛酸を舐めさせられているためFクラス、特に一回戦で屈辱的な敗北を喫した明久と雄二を良く思っていないのである。

 

岩下「……Fクラスのバカどもが何しに来たのよ?」

菊入「言っておくけど、うちで騒ぎを起こしたらただじゃおかな―」

和真「はいストップー」

 

険悪になりつつあった雰囲気に和真が割り込む。

するとしかめっ面を浮かべていた二人の態度が急変した。

 

岩下「ひ、柊!?」

菊入「柊君!?」

和真「岩下、菊入、こいつらと何があったか知らねぇが、接客中に私情持ち込んだらダメだぜ?」

 

小さい子をたしなめるように言う和真。

 

岩下「わ、わかったわよ……」

菊入「……ごめんなさい」

和真「わかれば良し」ナデナデ

 

そう言って二人の頭を撫でる和真。

完全に二人を子ども扱いしている。

 

岩下「っ! お席にご案内いたします///」

菊入「…………///」

 

顔を紅潮させた二人が歩き出したので、和真達はその後ろ姿についていった。

 

明久「ねぇ和真」

和真「あん?」

明久「一発だけでいいから殴らせて」

和真「やだね」

 

このように、和真は誰にでも壁を作らず気軽に接する為、意図せず異性を虜にする性質を持っている。

もっとも本人はスポーツ優先のため、付き合う→別れる→付き合う→別れるのサイクルを50回以上繰り返しているのだが。

店内に入ると、流石は上位クラス、Aクラスほどではないがやはり繁盛しているようだ。客はほとんど男なのはメイド喫茶だからだという理由だけでなく、女性客はだいたいAクラスに流れているからである。

 

岩下「では、メニューをどうぞ」

美波「ええと……。ウチは『ふわふわシフォンケーキ』で」

姫路「あ、私もそれがいいです」

葉月「葉月もー!」

 

美波、姫路、葉月は揃ってシフォンケーキ。

 

明久「僕は『水』で。付け合せに塩があると嬉しい」

和真「奢ってやるからもっとマシなもん頼め……悲しくなってくるわ……」

明久「マジで!?ありがとう和真!じゃあ僕はカルボナーラで!」

和真「さっきまで俺を殴りたいとか言ってたのに現金だなオイ……俺はこの特盛カツカレー『壮大かつ華麗』ってやつで」

雄二「じゃあ俺もそれで。翔子、お前は」

翔子「……婚姻届」

雄二「んなもん飲食店にあるか!」

和真「そうだぞ翔子。第一お前婚姻届なら持ってるじゃねぇか、実印込みで」

翔子「……そうだった。じゃあ私もシフォンケーキ」

雄二「待て待て待て待て待てぇっ!今聞き捨てならねぇこと言ったよな!?」

 

和真は翔子をたしなめるが、予想外の発言に動揺した雄二が叫び声をあげる。

 

雄二「おい翔子!今の本当なのか!?嘘だよな!?嘘だと言ってくれ!」

 

見事にいいように翻弄されている雄二。

和真、雄二、翔子の三人が集まるとだいたい雄二が弄られ役になるのは言うまでもない。

 

菊入「食器をご用意します」

 

注文の確認をとり、それぞれに食器を配ったあと、二人は優雅にお辞儀してキッチンへ歩いていった。

 

雄二「……明久。俺はどうしても召喚大会に優勝しないといけないんだ……!」

明久「あ、うん。それはもちろん僕もそうだけど」

雄二(和真にも負けられねぇ……あいつは絶対面白半分で翔子にチケットを譲る。あいつはそういう奴だ……!

上等だ……俺の自由は絶対に守りきってやる!)

 

雄二はいまだかつてないほど闘志を燃やしていた。

今手を組んでいる相棒も、和真と似たり寄ったりな行動をするだろうことが頭から抜け落ちているあたり、元神童の頭脳はやはり空回りしているようだ。

 

明久「んで、葉月ちゃん。キミの言ってた場所ってここで良かった?」

 

昼食を取りながら明久が葉月に聞いた。

 

葉月「うんっ。ここで嫌な感じのお兄さん二人がおっきな声でお話してたの!」

 

明久の質問に葉月が元気良く答える。

嫌な感じのお兄さん二人といえば……

 

『おかえりなさいませ、ご主人様』

『おう。二人だ。中央付近の席は空いてるか?』

 

「あ、あの人達だよ。さっき大きな声で『中華喫茶は汚い』って言ってたの」

 

大方の予想通り常夏コンビであった。

さっきもこの辺で聞いたという事はどうやら通いつめているようだ。

 

『それにしてもこの喫茶店は綺麗でいいな!」

『そうだな。さっきいった2-Fの中華喫茶は酷かったからな!』

『テーブルが腐った箱だし虫も沸いてたもんな!』

 

人の多い喫茶店の中央で、わざわざ大声で叫びあう。

そんなことをされたら悪評が広がる一方である。

 

雄二「待て、明久」

 

殴りかかりに行こうと立ち上がった明久を雄二が止める。

 

明久「雄二、どうして止めるのさ!あの連中を早く止めないと!」

雄二「落ち着け。こんなところで殴り倒せば、悪評は更に広まるぞ」

 

こんなに人の多い場所で殴り飛ばしたら、Fクラスは悪童の溜まり場なんて言われかねない。

そうなれば喫茶店の経営も厳しくなり、もし姫路の父親の耳に入れば姫路の転校が確定してしまう。

 

明久「けど、だからってこのまま指をくわえて見えいるなんて……!」

雄二「いや、やるなら頭を使えということだ。和真」

和真「あん?(モキュモキュ)」

雄二は『壮大かつ華麗(二杯目)』をやけに美味しそうに掻っ食らっている和真に声をかける。

 

雄二「Bクラスから予備のメイド服を借りてきてくれないか」

和真「………なるほどな、了解。おーい、菊入ー!」

 

常夏コンビをがいることを確認して事情を察した和真は近くにいた菊入に声をかける。

 

菊入「ど、どうしたの柊君?」

和真「あそこにいる坊主とモヒカン、ここに来んのは初めてか?」

菊入「いや、さっき出て行ってまた入ってきたよ。ずっと同じようなことを言ってるの」

 

顔をしかめながら答える菊入。Bクラスにとっても迷惑な客のようだ。

 

和真「そっか、それじゃあとりあえず、予備のメイド服貸してくれ」

菊入「え?どうして?」

和真「あいつらが邪魔だけど手が出しずらいのはお互い様だろ?俺達が合法的に始末してやるよ」

菊入「う~ん、よくわからないけど柊君がそう言うなら…わかった、持ってくるよ」

 

そう言って菊入は去っていった。

 

『あの店、出している食い物もヤバいんじゃないか?』

『言えてるな。食中毒でも起こさなければいいけどな!』

『に二-Fには気をつけろってことだよな!』

 

明久「雄二、和真!なんでもいいから早く連中を!」

雄二「いいからもう少し待っていろ。姫路に島田、櫛を持ってはいないか?」

姫路「? 持っていますけど……」

雄二「ちょっと貸してくれ。他にも身だしなみ用の物があれば全部」

姫路「はぁ……」

 

ごそごそと上着のポケットをあさって小さなポーチを取り出し、雄二に渡す。

 

雄二「悪いな。あとで必ず返す」 

 

それからちょっとして、菊入もメイド服を抱えて戻って来た。

 

菊入「柊君、はい」

和真「お、サンキュー」

菊入「あ…あの、できればさっきみたいに撫でて欲しいな……」

和真「あいよ。あ、ほれ、雄二」ナデナデ

菊入「はうぅ……///」

 

片手で菊入の頭を撫でながら和真は雄二にメイド服を渡す。

 

雄二「……お前が30分足らずでフラグを建築したことはとりあえずスルーして……一通り集まったな」

明久「普段なら殴りかかっているところだけど時間が惜しいから今はスルーして……で、これをどうするんの?」

雄二「着るんだ」

 

雄二はあっけらかんと言う。

明久を見ながら。

 

明久「だってさ、姫路さん」

姫路「え?わ、私が着るんですか?」

雄二「バカを言うな。姫路が着ても攻撃なんてできないだろうが。翔子も同じ理由で除外だ」

 

勘違いされやすいが、翔子が攻撃するのは雄二onlyである。

 

明久「それじゃ、美波?でも、胸が余っちゃうとぶべらぁっ!」

美波「ツギハ、ホンキデ、ウツ」

和真(脇が甘ぇ、50点)

 

美波の殺気に明久がおののいている一方で、和真は和真でずれたことを考えていた。

おまけに無駄に採点が厳しい。

 

明久「じゃ、じゃあ和真?」

和真「え?なにその案?死ねよ屑が」

明久「あれ!?和真ってそこまで辛辣な人だった!?」

 

しつこく女装を強要してくるバカにフラストレーションが溜まっているため、この手の話題では辛辣度300%の和真であった。

 

明久「……まさか」

雄二「着るのはお前だ」

明久「いやあぁぁぁっ!」

 

その瞬間、明久は心の底の底から叫んだ。

 

明久「雄二が着ればいいじゃないか!無理をしたら着られるはずだよ!」

雄二「やれやれ。わがままを言うヤツだな。それなら、あっち向いてホイで決めないか?」

 

雄二の提案。それは明久を陥れる前触れである。

しかし以前あれだけ騙されたのだ。流石これを受けるほどバカではないだろう。

 

明久「よし、その提案を受けるよ」

 

吉井 明久は本当に、予想を悪い意味で越えてくる。

 

雄二「それなら行くぞ、ジャンケン」

明久「ポン」

 

明久がパーで雄二がチョキ、ここは明久の負け。

 

雄二の「あっち-」

 

雄二が勢いよく人差し指を出す。

 

明久(これは-あれか!指を避けようとして顔を背けたら、その方向を指して勝負を決定付ける裏技か!)「その手に乗るかっ!」

 

明久が目を逸らさず、キッと雄二の指先を見つめる。

 

雄二「向いて-」

 

ブスッ(←雄二の指が明久の目に刺さる音)

 

明久「ぎいやぁぁっ!目が、目がぁっ!」

 

目を押さえてのけぞる明久。

その隙に雄二が明久がのけぞった方向を指す。

 

雄二「ホイ!……ふっ!俺の勝ちだな」

 

坂本 雄二がそのような生ぬるい策など立てる筈がない。ましてや明久に配慮した策など論外だ。

 

姫路「あの、吉井君。大丈夫ですか?」 

 

心配しながら明久にハンカチを差し出す姫路。

 

明久「ありがとう。まったく、雄二の卑劣さには驚かされるよ」

 

明久は渡されたハンカチを受け取って目に当てる。

 

姫路「あ、あはは……でも、きっと大丈夫ですよ」

明久「そうだよね。あんな卑怯な勝負は無効-」

姫路「吉井君ならきっと可愛いと思いますっ」

 

果たしてそこは問題なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

明久「こ、この上ない屈辱だ……!」

秀吉「明久、存外似合っておるぞ」

和真「…………まあドンマイ」

 

雄二から連絡を受けてわざわざやってきた秀吉が、男子トイレで明久の着付けをたった数分で片付けた。

いつもなら爆笑しているであろう和真だが自分も玉野に何度も迫られているため、同情的なまなざしを送っていた。

 

秀吉「では、ワシは喫茶店に戻るぞい。存分に悪党をのしてくるが良い」

明久「ん、りょーかい」

 

そのまま二-Aの教室に入り、明久は周囲の目を気にしながら常夏コンビに近寄る。

 

常村「とにかく汚い教室だったよな」

夏川「ま、教室のある旧校舎自体も汚いし、当然だよな」

明久(こいつらにとってははただの嫌がらせでも、僕達にしてみれば大事なクラスメイトの命運をかけた喫茶店なのに……許せない)「お客様」

 

明久がこのクラスのウェイトレスを装い声をかける。

 

明久(こいつら…………絶対に潰す)

 

夏川「なんだ?-へぇ。こんなコもいたんだな」

常村「結構可愛いな」

 

舐めるような視線を明久に向ける。

 

明久(き、気持ち悪っ!) 

 

先程までの闘志が一瞬で萎えかけたがなんとか持ち直す。

 

明久「お客様、足元を掃除しますので、少々よろしいでしょうか?」

夏川「掃除?さっさと済ませてくれよ?」

明久「ありがとうございます。それでは-」

夏川「ん?なんで俺の腰に抱きつくんだ?まさか俺に惚れて」

 

明久「-くたばれぇぇっ!」

夏川「ごばぁぁっ!」

 

明久のバックドロップが決まった。これで夏川は本日二度目の脳天痛打となる。

 

夏川「き、キサマは、Fクラスの吉井……!まさか女装趣味が……」

明久「こ、この人、今私の胸を触りました!」

夏川「ちょっと待て!バックドロップする為に当ててきたのはそっちだし、だいだいお前は男だと-ぐぶぁっ!」

雄二「こんな公衆の面前で痴漢行為とは、このゲス野郎が!」

 

痴漢退治という大義名分を得て意気揚々と雄二が登場。表面上は怒りを露にしているが腹の中ではほくそ笑んでいることだろう。

 

常村「何を見てたんだ!?明らかに被害者はこっちだぞ!」

倒れている夏川に代わり常村が雄二に食ってかかる。

雄二「黙れ!たった今、コイツはこのウェイトレスの胸をもみしだいていただろうが!俺の目は節穴ではないぞ!」

 

和真「どう考えても節穴だろ(モッサモッサ)」

美波「アンタ本当にマイペースね……」

 

デザートのフルーツタルトを頬張りながらつっこむ和真に美波は呆れたように呟く。

 

雄二「ウェイトレス。そっちの坊主は任せたぞ」

明久「え?あ、はい。わかりました」

倒れている夏川に近づく明久。

明久(う~ん。この坊主、どうしよう?とりあえず……

 

秀吉に押し付けられたブラジャーでも頭に付けてみるかな。瞬間接着剤で)

 

ど う し て そ う な っ た

 

雄二「さて。痴漢行為の取調べの為、ちょっと来てもらおうか」

 

一方でバキボキと指を鳴らしながら常村に近づく雄二。

 

常村「くっ!行くぞ夏川」

夏川「こ、これ、外れねぇじゃねぇか!畜生!覚えてろ変態めっ!」

 

夏川は頭にブラをつけたまま走り去って行った。

今日のお前が言うなスレはここである。

 

雄二「逃がすか!追うぞアキちゃん!」

明久「了解!でもその呼び方勘弁して!」

 

二人の後を追って明久と雄二も廊下に飛び出す。

 

和真「さて、そろそろ校庭に行くか。ほい、俺と明久の飯代。雄二の分は翔子が出すと思うから」

 

そう言って和真は会計の岩下にお金を渡す。

 

岩下「どうもありがとうございます。あと、例の二人組追っ払ってくれてありがとね」

和真「迷惑してたのはこっちも同じだからな。あと礼は実行した二人に言ってやれ、もういねぇけど。じゃあそろそろ行くか」

岩下「いってらっしゃいませご主人様!召喚大会頑張ってね、応援してるから!」

和真「そいつはどーも」

 

そう言って和真は颯爽と教室を出ていった。岩下と菊入だけでなく、Bクラス女子の何人かも熱い視線を送っている。

 

 

 

美波「…アイツ、いつか後ろから刺されるんじゃない?」

翔子「……和真に闇討ちは通用しないから大丈夫」

美波「翔子、問題はそこじゃなくてね……」

 

 

 

 

 

 

徹「おや、今回は早いんだね(モッサモッサ)」

 

特設ステージ前で和真が待機していると、御手洗団子に練乳をかけて食べながら徹がやって来た。

 

和真(……毎回思うが甘い物に甘い物かけて食べるのはどうなんだ?見るだけで胸焼けがしてくるんだけど)

 

糖尿病に向かってノンストップで全力疾走している。将来確実に医者のお世話になるだろう。

 

徹「で、今回の対戦相手が……この人達か……」

和真「前回とはうってかわって強敵だなぁ♪」

 

おもちゃを買ってもらった子どものようにとても楽しそうに笑う和真。

 

徹「前回もある意味強敵だったけどね」

和真「や め ろ」

徹「……そうだね、すまない」

 

 

 

 

 

 

《三回戦・現代社会》

『Fクラス 柊 和真

Aクラス 大門 徹

VS

Aクラス 小暮 葵

Aクラス 金田一 真之介』

 

 

 

 




というわけで、常夏コンビ撃退part2でした。
フラグを建築→ぶっ壊すを繰り返す和真君はさながら積み木崩しのようです。

金田一真之介…七巻の野球大会でAクラス四番というかなりの重要ポジションにいながら見せ場も無く姫路の凶球で散ったバカテスでも一、二を争う不遇キャラです。
本作品では学年三位の実力者という位置付けにしました。

名前出は初ですが、金田一君は既に出しています。
さて、どこでしょうか?

Bクラス人気メニュー、
特盛カツカレー『壮大かつ華麗(壮大カツカレー)』
1500キロカロリーでお値段600円

姫路「…………ちなみに、柊君の体脂肪率は?」
和真「5%」
姫路「orz」

では。


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二人の差

【バカテスト・古典】
()の中に適語を入れなさい
及ばざるは( )

柊 和真・霧島翔子の答え
(過ぎたるに勝れり)

蒼介「正解だ。これは徳川家康の遺訓で、物事はやりすぎたものを元に戻して修復するのは困難であり、まだ不十分であった方がこれから努力するなど手を施すことができるので始末が良い、という意味だ」

木下 秀吉の答え
(過ぎたるが如し)

源太「問題作成者の期待通りの引っ掛かりだな。それは『過ぎたるは及ばざるが如し』の間違いだろ(まあ俺様も同じ間違いだったんだが……)」

吉井 明久の答え
(カロリー)

蒼介「一応言っておくがテストは食生活の愚痴を書くことでは無いぞ」

島田 美波の答え
(……ウチの胸)

源太「だからってコンプレックスをカミングアウトすることでもねぇよ」

大門 徹の答え
(……僕の身長)

蒼介「大門、お前もか」


金田一「よぉ柊、この間の練習試合以来だな」

和真「あれからサッカー部の調子はどうすか?金田一先輩」

金田一「そりゃ毎日くたばるまで猛練習だよ。近々リターンマッチ申し込むから首洗って待ってろよ」

和真「望むところっす」

 

金田一 真之介。

サッカー部主将かつ第三学年三位の優等生。

黒髪のスポーツ刈りといった、いかにもさわやか系スポーツマン風の青年である。

以前『アクティブ』に歴史的大敗を喫するという屈辱を味あわされているが、どうやら本人は『アクティブ』を疎んでいるわけではないようだ。

常夏コンビに彼の爪の垢を煎じて飲ましてやりたい。

 

金田一「ま、サッカーの前に召喚獣で勝たせてもらうがな」

和真「……そいつはできねぇ相談ですなぁ」

 

金田一が挑発的に笑い、和真も笑みを浮かべている。闘いは勝負の前に既に始まっているようだ。

 

小暮「大門君が相手ですか、これは気を引き締めなければなりませんわ」

大門「できれば舐めきってくれているほうがいいんですけどね、足を掬い易いんで」

 

小暮 葵。茶道部及び新体操部に所属しており、三年学年五位のこれまた優等生。

黒髪を結い上げた切れ長の目の美女であり、第三学年のマドンナ的存在だ。

この女子生徒が金田一と組んで召喚大会に出場していることをFクラス生徒が知れば、確実に暴動が起きるだろう。

ちなみにこの二人の仲は悪くないが、付き合っているわけではない。お互い受験前の記念に召喚大会にでも出ようと考えていたところ、利害が一致しただけである。

 

「では、召喚して下さい」

 

立会人を務める福原先生が召喚を促す。

 

『試獣召喚(サモン)!』

 

お馴染みの魔方陣からそれぞれの召喚獣が出現する。

金田一の召喚獣は騎士鎧にツヴァイハンダー(両手剣)、小暮の召喚獣は着物に鉄扇だ。

 

《現代社会》

『Fクラス 柊 和真 400点

Aクラス 大門 徹 308点

VS

Aクラス 小暮 葵 336点

Aクラス 金田一 真之介 389点』

 

お互いの点数はほぼ互角である。

 

和真「三年生は俺達よりテストムズいのに、流石ですね、二人とも」

金田一「これでも学年三位と五位だぜ?」

和真「三年生にもピンキリあるんすね」

 

常夏コンビを脳裏に浮かべながら和真は呟く。

 

和真「それじゃあ……始めましょうか!」

 

そう言った直後、和真と徹はそれぞれの召喚獣と共に左右に移動した。

 

金田一「むっ!……小暮、大門を頼んだ!」

小暮「承知しましたわ」

 

それを追うように二人も左右に離れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【大門 徹VS小暮 葵】

 

小暮「まだまだですわね」

徹「くっ……!やはり操作にも慣れているか」

 

〈徹〉はガントレットで果敢に攻めるも、〈小暮〉は素早い動きでそれをかわし、隙を突いては反撃をしてダメージを重ねていく。

〈小暮〉の装備は装甲が薄い分機動力に優れているので、ガッチガチの重戦車型である〈徹〉では相性はあまり良くないのだ。

 

小暮「隙あり!」

 

大振りの隙を突いて〈小暮〉は鉄扇を浴びせる。甲冑ごしなのでダメージは大きくないが、両者の点数差はどんどん開いていく。

 

 

《現代社会》

『Aクラス 大門 徹 173点

VS

Aクラス 小暮 葵 336点』

 

徹(このままじゃジリ貧になるな…………それなら!)

 

先ほどまでがむしゃらに攻撃していた〈徹〉が、突然動きの一切を放棄した。

 

小暮(ふむ、なるほど……私の攻撃を誘い、カウンターで反撃しようとしているのですね。大門君の召喚獣は防御に秀でているので、確かにそれは良い手段ですわ………………しかし残念ながら、)

 

おもむろに〈小暮〉は鉄扇を折り畳み、

 

 

 

高速で〈徹〉の、唯一鉄鎧に覆われていない顔を正確に突き刺した。

 

徹「……なっ!?」

小暮(そう闘ってくる相手の対処法は心得てますわ)

 

三年生が二年生より上回っていることはなにも召喚獣の操作技術だけではない。

一年長くこの学園にいる彼等は、二年生に比べてより多くの試召戦争を経験している。

その中で様々な装備、あらゆる武器、多種多様の戦術を駆使する敵と闘って来たのだ。その戦闘経験は二年生に対して大きなアドバンテージとなる。

つまり、キャリアが違うのだ。徹の策は小暮にとっては飽きるほど見てきたものであり、それの対策は既に体に染み付いている。

生身の部分に直撃を喰らい、のたうち回る〈徹〉。そんな隙を小暮が見逃す筈もなく、追撃を加えて止めを差した。

 

 

《現代社会》

『Aクラス 大門 徹 戦死

VS

Aクラス 小暮 葵 336点 』

 

 

小暮「それでは、失礼いたしますわ」

 

呆然と立ち尽くす徹に優雅に一礼した後、小暮は金田一を援護しに行った。

 

徹(1点も削れなかった……惨敗だ、チクショウ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【柊 和真VS金田一 真之介 】

 

小暮が徹を手玉にとっている頃、こちらの二人はお互い様子見と言わんばかりに鍔迫り合いをしていた。

 

金田一「オメーら開始早々二手に分かれやがって。これじゃタッグマッチの意味ないだろうが」

和真「そっちは三年ですからねぇ、コンビネーションじゃ勝ち目ないで……しょっ!」

 

〈和真〉は槍を構え直し、すぐさま横に薙ぐ。〈金田一〉はバックステップでそれをあっさりとかわし、すぐさま唐竹割りで反撃する。しかし〈和真〉は一瞬で体勢を直しそれを交わす。

 

和真「それにな、基本的に俺ぁ一人で闘う方が得意でねぇ!」

金田一「まぁそんなごっつい武器でそんな闘い方ならそうだろうな」

 

召喚獣の操作技術はほぼ互角、一進一退の攻防である。

 

 

《現代社会》

『Fクラス 柊 和真 326点

VS

Aクラス 金田一 真之介 303点』

 

 

金田一「ところで、なんでお前は腕輪能力使わないんだ?」

 

その科目で400点以上(総合科目で4000点以上)の点数の召喚獣には特殊能力を持った『金の腕輪』が装備される。

その力はどれも極めて強力であり、400点と399点の間には絶対的な壁が存在する。

和真の腕輪能力は点数消費の激しさと引き換えに数ある腕輪の中でも最上級の殲滅力を備えている。もし開戦と同時にそれを使っていればその時点で勝負が決まっていたかもしれない。

それに対する和真の返答はこうだ。

 

和真「せっかくの召喚大会だ、こんなつまらねぇもん使ったらもったいないじゃないっすか」

金田一「それはそれは…いかにも、オメーらしい理由だな」

 

クラスの命運がかかった試召戦争とは違って、この召喚大会は趣味で参加したものである。

当然優勝商品などに興味は無く、クラスの宣伝も投書は姫路の事情を知らなかったので後付けである。

 

和真の目的は、ただ闘うことだけ。

大会に参加した強者達と闘い、ねじ伏せる。

そうすることによって和真の心は満たされる。

腕輪など使ってしまったら、和真がこの大会に参加した意味が無いのである。

 

和真「じゃあそろそろ……攻めるかぁ!」

 

和真の召喚獣は槍を構え、高速でダッシュしながら槍を右から左に薙ぐ。

 

金田一(またそれか……無駄だ!)

 

先程と同じように〈金田一〉はバックステップでそれをかわす……が、

 

 

 

和真「オラァァァァァァ!」

 

〈和真〉はさらにもう一歩踏み込み、今度は左から右に槍を薙ぎはらった。

 

金田一「なにィっ!?」

 

回避中だったためろくにガードもできず、槍の柄の部分がクリーンヒットし、〈金田一〉は吹っ飛ばされる。

 

和真は翔子や姫路を差し置いてFクラス最強との呼び声が高い。その理由は大きく分けて三つある。

一つ目は召喚獣のスペックと武器のコンボだ。

和真の槍は召喚獣よりも遥かに大きい。この武器はリーチと破壊力がある代わりにとても重く、普通は突き技専門の武器である。だが和真はその常識にあてはまらない。和真の召喚獣は防御を犠牲にして、学年でも並ぶものがいないほどの膂力を備えている。その圧倒的な膂力と三年生にも引けを取らない操作技術により、普通なら大きく振りかぶらなければならない大振りの攻撃をノーモーションでくり出す、薙ぎ払いを中断し逆の方向に薙ぐ、といった変幻自在の攻撃を可能とする。そして、攻撃と攻撃の間の間隔が短いために相手は攻撃をしずらくなり、それによって致命的な防御力の低さを補っているのだ。

 

 

《現代社会》

『Fクラス 柊 和真 326点

VS

Aクラス 金田一 真之介 178点』

 

鎧ごしの攻撃にもかかわらず〈金田一〉はかなりのダメージを負ったが、和真の攻めはこの程度では終わらない。

 

和真「まだまだぁっ!」

 

吹っ飛ばされた相手の召喚獣に超スピードで突っ込む〈和真〉。

 

金田一「チィッ!あんま見くびってんじゃねぇぞ!」

 

すぐさま体勢を立て直し、〈金田一〉はツヴァイハンダーで槍を受け止める。この操作技術と判断力は流石三年生といったところだ。

しかし〈和真〉は即座に槍から手を離し、素手で殴りかかった。

 

金田一「なっ!?」

 

予想外の攻撃に〈金田一〉がのけぞっている隙に、〈和真〉は槍を拾い追撃を加える。 〈金田一〉はなんとかかわしていくも、時間がたつにつれどんどん追い詰められていく。

 

《現代社会》

『Fクラス 柊 和真 326点

VS

Aクラス 金田一 真之介 96点』

 

金田一(くっ、この読めない攻め方、まるで佐伯と闘ってるみたいだぜ……)

 

そして二つはそのトリッキーな戦術。

先程も述べたように、三年生は召喚獣の戦闘経験が豊富であるため、相手がどう攻めてこようが大抵の攻め方に対する対処法は熟知している。

しかし和真と闘う場合そんな戦闘マニュアルなどまるで役に立たない。闘い中に獲物から手を離すような相手との戦闘経験などなかなかないだろう。

言うまでもなく和真は天才と言える人間である。

彼の柔軟な思考が相手が予測できない型にはまらないトリッキーな戦法を可能にしているのだ。

 

金田一(まずい……このままじゃ……)

小暮「金田一君、援護しますわ!」

 

駆けつけた〈小暮〉が後ろから〈和真〉を攻撃しようとするも、そんなことを和真が許すハズもない。

 

和真「オラァァァッ!」

 

即座に後ろを向き、〈和真〉は突きを食らわせようとする。

 

小暮(っ!?回避は間に合わない!ここはガード……)

 

その奇襲に冷静に対処し、〈小暮〉は鉄扇でガードしようとする。

 

 

 

だが、

 

 

 

《現代社会》

『Fクラス 柊 和真 326点

VS

Aクラス 小暮 葵 戦死』

 

 

小暮「……っ!?」

 

〈和真〉の破壊力を見誤ったのが運の尽き、巨大な槍は鉄扇ごと〈小暮〉を貫いた。

 

三つの理由は説明するまでもない。

そのパワーからくり出される圧倒的な攻撃力、腕輪能力にも匹敵しかねない突きである。

 

金田一(小暮、お前の犠牲は無駄にはしねぇ!)

 

背を向けている〈和真〉に〈金田一〉は斬りかかる。

 

和真「甘ぇよ!」

 

だが〈和真〉は背を向けたまま〈小暮〉が刺さったままの槍を引き戻し、

 

 

 

〈小暮〉が消滅する前に体を引きちぎり、〈金田一〉に向けて投げつけた。

 

金田一「うぉ!?」

 

〈金田一〉は〈小暮〉の上半身が肩に当たったことで、そのままバランスを崩して崩して倒れ込んだ。

その隙に〈和真〉は再び必殺の突きを繰りだし、〈金田一〉はガードも回避もできずに槍の餌食になった。

 

 

《現代社会》

『Fクラス 柊 和真 326点

Aクラス 大門 徹 戦死

VS

Aクラス 小暮 葵 戦死

Aクラス 金田一 真之介 戦死』

  

 

福原「勝者、柊・大門ペア」

 

 

 

小暮「私達の完敗ですわ」

金田一「まさか、戦死した小暮の召喚獣を武器にするとわねぇ……」

和真「戦場にあるものは全て武器っつうスタンスなんで」

 

一回戦で相棒を武器にした人が言うと説得力がある。

 

金田一「ま、俺等に勝ったんだ。……次の試合、引き締めて行けよ」

小暮「……梓は私達よりもずっと手強いですわよ」

和真「……言われなくてもわかってますよ」

 

軽く言葉を交わした後、四人は特設ステージから解散した。

 

 

 

 

 

徹「……和真、すまない」

和真「んあ?何が?」

 

教室へ戻る途中、藪から棒に徹が謝罪する。

 

徹「全く手も足もでなかったよ……こんなんじゃあパートナー失格だな……」

 

1ヶ月前、試召戦争で刃を交えた二人。

片方は一切ダメージを与えられず、惨敗。

もう片方は二人を相手取って勝利した。

徹は自分と和真の差が大きく広がってしまったを痛感していているようだ。

 

和真「なんだそんなことか、あんま気にすんなよ」

徹「気にしないわけがないだろう!僕は―」

和真「あのな、」

 

徹の言葉を遮って和真は言葉を続ける。

 

和真「負けて悔しいなら次勝てよ。一回の失敗に悔いが残ってんなら、さっさとそれを精算するよう努力しろ。お前は、『アクティブ』の一員だろ?」

 

そう言い残し、和真はFクラス教室に向けて去っていった。

 

 

徹「…………ふっ、君は相変わらずだね……」

 

徹のその呟きを聞いた人は誰もいなかった。




というわけで、過去最長のバトルシーンでした。
徹君が惨敗した一番の理由は、致命的に相性が悪かったからです。そこまで実力に差はありません。

今回は半オリジナルキャラの金田一君で。

金田一 真之介
・性質……攻撃特化&防御軽視型
・総合科目……3900点前後 (学年3位)
・400点以上……古典・英語
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……S
機動力……B
防御力……C+
・腕輪……まだ不明

和真とほぼ同等の点数を誇る第三学年の主力。
しかし、首席及び次席とは結構差があるらしい。


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営業戦略

【バカテスト・日本史】
大和絵の一派である住吉派の住吉如慶の子で、江戸幕府御用絵師として活躍した人物は誰か。

柊 和真の答え
『住吉 具慶』

蒼介「正解だ。ちなみに『洛中洛外図巻』、『東照宮縁起絵巻』などが代表作だ」
飛鳥「幕府の御用絵師は当時『狩野派』の独占状態だったから、彼が召し抱えられたことがどれだけ凄いかがわかるわね」

島田 美波の答え
『住吉 愚兄』

蒼介「まだ漢字には慣れていないようだな」
飛鳥「これだとただのバカ兄貴になるわね」

木下 秀吉の答え
『吉井 明久』

蒼介「微妙に島田の答えとリンクしているな」
飛鳥「愚兄=バカなお兄ちゃん=吉井君ってことね……」


秀吉「で、三回戦は不戦勝じゃったと?」

明久「うん。食中毒で棄権したんだ」

 

Fクラス教室内で、秀吉、和真、翔子、明久、雄二が話し合う。

あれから色々あって常夏コンビを取り逃がした後、慌てて会場に向かった三回戦だが、対戦相手がまさかの食中毒で棄権という拍子抜けの結果だった。

 

和真「ったく、こっちは激戦だったってのになにもせず勝ち抜くとはいい身分だなオイ」

 

こんな言い方をしているが戦闘狂の和真のことだ、同じことが自分に降りかかれば間違いなくがっかりしていただろう。

 

秀吉「ならば、済まぬがこっちの立て直しに協力してくれんか?」

雄二「そうだな。一度失った客を取り戻す為にも、何かインパクトのあることをやる必要がありそうだな」

 

教室の中は相変わらず空席だらけ。悪評の元は潰したが、流れた噂はどうしようもない。ここらで一つ大きなことをやらないとお客さんは来てくれないだろう。

 

翔子「……雄二、どうするの?」

 

教室内を見渡しても、できそうなことは特に無い。

 

雄二「任せておけ。中華とコレでは安直過ぎる発想だが、効果は絶大なはずだ」

 

そう言って雄二は見事な刺繍の入ったチャイナドレスを数着取り出す。

 

秀吉「ほう。若干裾が短いような気もするが、こるならば確かにインパクトはあるじゃろうな。コレを宣伝用に―」

雄二「ああ。コレを明久と和真が―」

 

ドゴォォォォォ!

 

雄二が言い終わる前に、和真は雄二の後頭部を片手で掴み、顔面から床に叩きつけた。

 

雄二「いだぁぁぁ!?」

和真「さて、今からお前の土手っ腹に『ネオタイガーショット』を喰らわせるが、遺言があるなら聞いてやる」

 

床でのたうち回る雄二を恐ろしく冷たい目で見下ろし、シュート体勢に入りながら和真は死の宣告をする。

 

雄二「待て待て待て待て待てぇぇぇ!冗談!冗談だからよせぇぇぇ!」

 

ぶつかった衝撃で鼻から血を流しながら猛然と命乞いをする雄二。和真の脚力で無防備の腹にネオタイガーショット(タイガーショットよりも力強く蹴ること)なんか喰らったら最低でも病院送り間違いなしだ。

 

和真「お前は知ってたよな?俺がそれ(女装)を勧めてくるバカに、どれだけストレスとイライラとフラストレーションが溜まってるかを。それを知った上であんなふざけた提案をするってことは、命がいらねぇと考えていいよな?」

雄二「待てぇ!一旦落ち着こう!穏便に済ませよう!」

和真「まあ遺言云々は冗談だ。安心しろ、10分の9殺し程度で勘弁してやるから」

雄二「安心できねぇよ!?もうそれほとんど死んでるからな!風前の灯火だからな!」

翔子「……和真、そろそろ許してあげて?」

和真「ったく、しょうがねぇな……まあ十分追いつめたし、これくらいにしといてやるよ」

 

ひと通り雄二を苛めて満足したのか、和真は矛を収める。

 

秀吉「それで、結局誰が着るのじゃ?」

雄二「翔子と秀吉と姫路と島田に着てもらうつもりだ。翔子、頼めるか?」

翔子「……わかった」

秀吉「ワシが着るのは冗談ではないのかのぅ……?」

雄二「それから、和真」

和真「今度こそ死ぬか?」

雄二「違ぇよ!これだよ!」

 

そう言って和真に男性用のチャイナ服を渡す。

 

和真「それあるなら最初から出せよ……お前完全にやられ損じゃねぇか」

 

やった本人が言うのはいかがなものかと。

 

美波「たっだいま~!って、なんだ。アキってばメイド服脱いじゃったんだ」

姫路「あ……残念です。可愛かったのに……」

葉月「お兄ちゃん。葉月もう一回見たいな~」

 

三回戦を終えた二人が教室に帰って来た。

 

明久「あはは。残念ながら、ただで人のコスプレを見られるほど世の中甘くないよ?」

 

邪悪な笑みを浮かべ、明久は姫路達に近づいていく。

 

雄二「そういうことだ。姫路に島田、クラスの売り上げの為に協力してもらうぞ」

 

雄二と明久はエモノを逃がさないように、チャイナを片手に退路を断つ。

 

姫路「な、なんだか二人とも、目が怖いですよ……?」

美波「凄く邪悪な気配を感じるんだけど……」

和真(どう見ても変質者だな、この絵面)

雄二「やれ、明久!」

明久「オーケー!へっへっへっおとなしくこのチャイナ服に着替え「タイガーショット!(ドゴォ)」痛ぁっ!マジすんませんした!自分チョーシくれてましたっ!」

雄二「弱いな、お前……というかタイガーショット流行ってんのか?」

和真「ただ思いっきり蹴ってるだけだけどな」

美波「どうしてまた、急にそんなことを言い出すのよ?前に須川はチャイナドレスを着たりすることはない、って言ってたじゃない」

雄二「店の宣伝の為と、明久の趣味だ。明久はチャイナドレスが好きだよな?」

明久(え!?そんなこと急に言われても……本当は大好きだけど、なんだかそういった趣味を知られるのも恥ずかしい気がする。ここは上手くお茶を濁す程度で誤魔化そう)

 

「大好―愛してる!」

 

雄二「……お前は本当に嘘をつけないヤツだな」

 

明久は決して政治家にはなれないだろう、色んな意味で。

 

美波「し、仕方ないわね!店の売り上げの為に、仕方なく着てあげるわ!」

姫路「そ、そうですね!お店の為ですしね!」

 

そう言って二人はそれぞれ服を手に取る。

実に現金な奴らである。

 

葉月「お兄ちゃん、葉月の分は?」

明久「え?葉月ちゃんも手伝ってくれるの?」

葉月「お手伝い……?あ、うん!手伝うから、あの服葉月にもちょうだい!」

明久(なんて良い子なんだ。美波の妹とは思えない)

 

口に出さない辺り明久も少しは成長したようだ。

 

明久「けど、ごめんね。気持ちは嬉しいんだけど、葉月ちゃんの分は数が―」

ムッツリーニ「…………!!(チクチクチクチク)」

明久「ム、ムッツリーニ!どうしてそんな凄い勢いで裁縫を!?って言うかさっきまでいなかったよね!?」

ムッツリーニ「…………俺の嗅覚を舐めるな」

 

彼のセリフは字面だけ見ればとてもカッコいいセリフが多い。ほぼ内容が台無しにしているが。

 

姫路「それじゃ、着替えて来ますね」

 

そう言って姫路と美波はチャイナドレスを抱えて教室を出て行った。

 

和真「…よっと、着替え完了」

明久「早っ!?」

 

さっきまで制服だったのにいつのまにか和真がチャイナ服に着替え終わっていた。

 

明久「しかし……なんというか、拳法とか使えそうだね」

和真「そういう型にはまったの俺はあんま得意じゃねぇな」

ムッツリーニ「…………できた」

葉月「わ、このお兄さん凄いです!」

 

神の如きスピードでムッツリーニで葉月用のチャイナドレスを完成させていた。

下心が絡んだムッツリーニに不可能は無い。

 

秀吉「ふむ。それでは着替えるとするかの」

明久「ちょ、ちょっと秀吉!ここで着替えるの!?きちんと女子更衣室で着替えないとダメだよ!」

秀吉「……最近、明久がワシの事を女として見ておるような気がするんじゃが」

雄二「気のせいだ。秀吉は秀吉だろう」

明久「うん。雄二の言うとおりだよ。秀吉は性別が『秀吉』で良いと思う。男とか女とかじゃないさ」

雄二「……俺が言ったのはそう言う意味じゃない」

明久「……あれ?違った?」

葉月「んしょ、んしょ……」

ムッツリーニ「……………!!(ボタボタボタ)」

明久「は、葉月ちゃん!キミもこんなところで着替えちゃダメだよ!ムッツリーニが出血多量で死んじゃうから」

和真「前々から思ってたけど、こいつ普段あんな感じなのにウブ過ぎるだろオイ……」

 

大量に出血しているはずなのに、鼻を押さえているムッツリーニは心から幸せそうだった。




というわけで、雄二ドンマイ……
和真君はリアルファイト最強クラスの設定なのに、攻撃描写は初めてです。
普段は暴力とか振るわない(言葉の暴力は別)和真君ですが、女装関連とスポーツ関連では本物の鬼になります。

今回は徹君をフルボッコにした小暮さんです。

小暮 葵
・性質……速度重視&防御度外視型
・総合科目……3700点前後 (学年5位)
・400点以上……古典
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……B+
機動力……A+
防御力……D+
・腕輪……まだ不明

素早い動きで翻弄し、相手の隙を突く戦術。
徹や久保のようなタイプに強く、余程のことが無い限り負けはしない。
逆に和真のような多彩かつ広範囲攻撃が可能なタイプとの相性は最悪。






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赤き世界

【バカテスト・科学】
以下の文章の( )にはいる正しい物質を答えなさい

ハーバー法と呼ばれる方法にてアンモニアを生成する場合、用いられる材料は塩化アンモニウムと( )である

姫路 瑞希の答え
「水酸化カルシウム」

蒼介「正解だ。アンモニアを生成するハーバー法は工業的にも重要な内容なので、確実に覚えておくように」

土屋 康太の答え
「塩化吸収材」

徹「勝手に便利な物質を作らないように」

吉井明久の答え
「アンモニア」

蒼介「それは反則だ」




明久「うん。いい具合に繁盛してきたね」

和真「それは結構だが、俺の負担大き過ぎね?なんで女性客ほとんど俺担当?」

明久「仕方ないじゃないか、お客さんの要望なんだし」

ムッツリーニ「…………殺したいほど妬ましい……が、それどころではないので今回は不問にする」

和真「お前厨房責任者だろ、サボってんじゃねぇよ」

雄二「お前もだバカ」

 

着替えた後、宣伝の為に和真達は校舎内を歩き回った(途中和真がチャイナドレスを着ていないことにショックを受けている玉野がいたが和真は無視した)。

そうすると徐々にお客さんは増えていき、今のところ順調と言えるだろう。

 

「君。注文をしてもいいかな?」

 

近くにいた明久に声をかけたのは、先程もこの店に着ていた竹原教頭であった。

 

明久「あ。はい、どうぞ」

竹原「本格ウーロン茶と、胡麻団子を」

明久「かしこまりました。本格ウーロン茶と胡麻団子ですね?ありがとうございます。後ほどお待ちしますので、少々お待ちください」

竹原「それと聞きたいことがあるんだが、いいかね?」

 

厨房に向かおうとした明久を教頭が呼び止める。

 

明久「はい。なんでしょうか」

竹原「このクラスに吉井 明久という生徒がいると聞いたのだが、どの子かな?」

明久「え?吉井 明久は僕ですけど……」

竹原「ああ、そうかい。君が

 

吉井君(笑)か」

明久「教頭先生。人の名前に(笑)はおかしいかと思います」

竹原「ああ、それはすまない。だが、私はどうしても教え子である君のことを吉井君(馬)とは呼べなくてね」

明久「あの、僕は職員室でなんて呼ばれてるんですか……?」

 

確実に『馬鹿の吉井』とかであろう。まあ日頃の行いが行いなのでフォローは不可能なのだが。

 

美波「アキ、厨房の土屋からの伝言。茶葉がなくなったから持ってきて欲しい、だって」

明久「ん、わかったよ。先生、ちょっと行ってきてもいいですか?」

竹原「構わんよ。特に用があったわけではないのでね」

明久「? そうだったんですか?」(それなら何で僕のことを尋ねたんだろう?教頭先生とは特になにもつながりがないはずだけどなぁ)

美波「アキ、土屋が急いで欲しいって言ってたわよ?」

明久「はーい」

 

とりあえず用事を済ませるのが先だと思い、明久は教室を出ていった。

 

和真(……さてと)「おーい雄二!」

雄二「どうした和真?」

和真「野暮用ができたんで接客は任せた」

雄二「は!?いやちょ待っ―」

 

近くにいた雄二に仕事を押し付けて和真は一目散に教室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

明久は茶葉のストックの置いてある旧校舎の空き教室に来ていた。

 

明久(えっと、いくつぐらい持っていけばいいかな?きちんと数を聞いておけばよかったなぁ)

「おい」

明久「うん?」

 

空き教室の中で明久が熟考していると突然後ろから声をかけられた。

声の主は明久と同年代くらいのいかにもチンピラといった三人組。

 

明久「ああ、ここは部外者立ち入り禁止だから出て行ってもらえます?」

チンピラA「そうはいかねぇ。吉井 明久に用があるんでな」

明久「へ?僕に何か?」

チンピラA「お前に恨みはねぇけど、ちょっとおとなしくしててくれや!」

明久「えぇ!?」

 

そう言うやいなや、チンピラの一人が明久に殴りかかろうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和真「はい、ざ~んね~ん♪」

チンピラA「ゴファァッ!」

 

いつの間にかいた和真が殴りかかろうとしたチンピラの足首を掴んだ。

チンピラは全速力で前に行こうとしたエネルギーを処理することができず、顔面から床にダイブした。

 

チンピラB「な、なんだテメェ!」

チンピラC「やんのかコルァ!」

 

残りの二人が和真に殴りかかるも和真は後ろに下がってそれを避ける。

そして二人の頭をそれぞれ片手で掴み―

 

ゴッチィィィン!

 

「「いだぁぁぁ!?」」

 

―シンバルのように叩きつけた。

 

和真「明久ァ!そこで倒れてる奴にこいつを押し込めぇ!」

 

そう言って明久にオレンジ色のスナック菓子を渡す。

明久は言われた通りチンピラAの口にそれを押し込み、ついでに咀嚼させる。和真も残りのチンピラ共に同じスナックを食わせる。すると…

 

 

「「「$=@%辛&€&$ァァァァァ!!!&^&%=水’&$&=&%ゥゥゥゥゥ!」」」

 

文字にできないような悲鳴を上げて逃げて行った。

 

和真「ヒャハハハハハ!最高のショーじゃねぇか!」

 

そんな哀れな不良達を和真は爆笑しながら見送った。

チンピラとは言え、少し同情を誘う光景である。

 

明久「……ねぇ和真、何食べさせたの?」

和真「激辛スナック『辛世界(シンセカイ)』だけど?」

 

激辛スナック『辛世界』とは、寒いネーミングと桁外れの辛さが一部の辛党に人気のスナック菓子である。

常人が口にすると、あのチンピラ達のように地獄の苦しみを味わうことになる、恐るべき一品だ。

 

明久「なんでそんなもの持ってるの?」

和真「マイブームなんだよ、罰ゲームとかであれを誰かに食わせるの」

 

あまりにもえげつない内容をさらりと言うあたり、どうやら和真は基本的にサディストのようだ。

 

明久「ところで、どうしてここに」

和真「…ん~、お前が危ない気がしてな。まぁいつもの勘だ」

明久(…………あれ?なんだか違和感が…)

和真「とりあえず急いで戻るぞ。雄二に仕事押し付けてるから」

明久「う、うんわかった」

 

そうして和真と明久は教室に戻っていった。

 

明久(和真にしては……歯切れの悪い返事だったなぁ)

 

~そんなこんなで二時間が過ぎ~

 

雄二「明久。そろそろ四回戦だ」

明久「え?もうそんな時間?」

 

時計を確認すると、現在午後二時過ぎである。

 

美波「あれ?アキ達もそろそろなの?」

姫路「そうなんですか?実は私たちもそろそろ出番なんですよ~」

美波「じゃあ瑞希、そろそろ着替えよっか」

雄二「いや、着替えなくていい」

「「え?」」

雄二「一応宣伝の為だ。そのまま召喚大会に出てくれ」

 

四回戦からは一般公開が始まる。折角人が集まるのだから宣伝しておくに越したことはないだろう。

 

美波「こ、これを着たまま出場しろって言うの……?」

姫路「流石に恥ずかしいです……」

 

おそらく一般客だけでなくメディアもいるから、チャイナドレスを着て動き回るのは流石に恥ずかしいだろう。

 

明久「二人とも、お願いだ」

 

姫路の転校がかかっているため、いつになく真剣な表情で頭を下げる明久。

 

雄二「明久……。お前は本当に―チャイナが好きなんだな……」

明久(それも否定しない)

 

そこは形だけでもいいから否定しておけ。

 

姫路「もしかして吉井君、私の事情を知って―」

美波「仕方ないわね。クラスの設備の為だし、協力してあげるわ。ね、瑞希?」

 

美波が姫路の言葉を遮って色よい返事をする。

 

姫路「あ。は、はいっ! これくらいお安い御用です!」

明久(それにしても良いことを聞いた。お安い御用なら、今後もちょくちょくお願いしてみよう)

 

どうやら先ほどまでの真剣な明久は殉職してしまったらしい。

 

葉月「お兄ちゃん、葉月を置いてどこか行っちゃうの?」

 

寂しそうにズボンの裾を握る葉月。

 

雄二「チビッ子。バカなお兄ちゃんは今から大切な用事があるんだ。だからおとなしく待ってないとダメだ」

 

そう言って葉月の頭をグシグシと撫でる雄二。

 

明久(コイツ、子どもの扱いに慣れてるな。ここはうまく説得してくれそうだ)

葉月「う~。でも……」

雄二「その代わり、良い子にしていたら―」

 

不満げに頬を膨らます葉月を元気付けるように、雄二は小さく微笑んで、

 

雄二「バカなお兄ちゃんが大人のデートを教えてくれるからな」

 

核弾頭クラスの爆弾を投下した。

 

葉月「葉月お手伝いしてくるですっ!」

明久「ち、違うんだよ葉月ちゃん!僕には君が期待するような財力はないんだ!ねぇ、聞いてる!?」

 

しかし既に葉月の姿は厨房に消えてしまった。

そして明久が危機感を抱くべき物は経済などというチャチなものではなく―

 

美波「アキ、ちょっと校舎裏まで来て?」

 

―自分の命そのものである。

 

姫路「美波ちゃん、ちょっと待ってください」 

 

しかしそこに姫路が仲裁に入る。

 

姫路「次の対戦相手は吉井君たちのようですから。召喚獣でお仕置きした方が遠慮なくできますよ?」 

 

そしてより合理的な殺戮方法を提案した。

もしかしたら姫路の父親が彼女を転校させても、もう手遅れかもしれない。

 

明久「ちょっと待って!僕の召喚獣はダメージのフィードバックつきなんだよ!?姫路さんの召喚獣に攻撃されたら僕自身も酷い目に―」

雄二「フン、望むところだ」

明久「僕は全然望んでいない!」

美波「上等よ。早く会場に向かいましょうか。アキがどんな声で啼くのか楽しみだわ」

雄二「いいだろう。そこまで言うなら、明久にどこまで大きな悲鳴をあげさせられるのか、じっくりと見せてもらおうか」

 

勝手に明久の命を生け贄にして、バチバチと火花を散らす雄二、美波、姫路。痛めつけられる予定の本人だけが茅の外である。

 

明久「和真ぁぁぁ!助けてぇぇぇ!」

和真「痛いのが嫌なら、殺られる前に殺っちまえばいいじゃねぇか」

明久「それができれば苦労はしないよ!」

 

『降りかかる火の粉は薙ぎ払う』のが和真のスタンスであるのだが、明久の点数にそれを求めるのは酷だろう。

 

和真「さて、じゃあ俺も行くか」

雄二「? お前はまだ次の試合までまだ時間があるだろう?」

和真「次の対戦相手は別格なんでね、試合前に作戦を立てておきてぇんだよ」

そう聞くと雄二はトーナメント表を取り出して和真の対戦相手を探す。

雄二「……なるほどな、」

 

 

『二年Fクラス 柊 和真

二年Aクラス 大門 徹

VS

三年Aクラス 佐伯 梓

二年Aクラス 橘 飛鳥』

 

 

雄二「よりによって前回王者かよ……災難だな」

和真「災難?バカ言え。むしろこの大会で一番闘いたかった相手だぜ、この最強の女子コンビとはよぉ」

 

そう言って和真は心底楽しそうに笑う。

 

雄二「なら絶対に勝ってくれよ。こいつらに決勝まで勝ち進まれたら、はっきり言って俺達の点数じゃどうあがいても勝ち目は無いからな」

和真「言われるまでもねぇ。俺は、俺達『アクティブ』は負け戦はしねぇからな」

 

 

 

 

 

竹原「チッ……失敗したか。やはりクズはクズだな、三人程度じゃあてにならん」

?「……では、待機させている彼らを動かすのですか?」

竹原「いや、それはあのバカどもが決勝まで勝ち残り、常村と夏川が途中で敗退したときの最終手段だ。あれだけの人数を動かせば足がつく可能性があるのでな、私もできれば使いたくない手段だ」

?「……そうですね」

 




『赤き世界』なんて大層なサブタイトルつけておいて、蓋明けたら激辛スナック菓子でした。
恐れ入ったかコラ。

次回はようやく闘う機会が回ってきた飛鳥さんと。昨年の召喚大会のチャンピオンの佐伯さんが相手です(昨年も行われていたというのは勿論オリ設定です。ちなみにタッグ戦ではありません)
四回戦を加えると闘った敵が70%以上Aクラストップクラスの成績と、和真君以外からすると絶望的なまでにくじ運が悪い……

既に投稿してある話の大規模な修正を行います。
時間が有り余っている時間セレブの方はチェックしてみてください。

では。


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戦慄のトンファー流

【バカテスト・現代文】
()に適語を入れなさい
立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は()

姫路 瑞希、霧島 翔子の答え
(百合の花)

蒼介「正解だ。この内容は美しい女性の容姿や立ち居振る舞いを花にたとえて形容する言葉だ」

吉井 明久の答え
(彼岸花)

和真「不吉すぎるだろうが」

清水 美春の答え
(私と美波お姉様の愛の結晶)

蒼介「ブレないなお前は」

島田 美波の答え
(だから私は普通に男が好きって言ってるでしょ!)

和真「お前も直感力高いなオイ」



文月学園の教育方針は「生徒を社会で実力を発揮できる人間に育てること」である。

それは勉学だけにおいてではなく部活の方面にも力を入れており、部活に使われる設備なども他校を圧倒しているため、運動部では歴史は浅いものの大会などで結果を残している部も少なくない。

その中でも、世間に最も注目されている部活が……

創部三年目でインターハイ団体戦を制覇し、個人戦ベスト8の秀才・橘 飛鳥と、インターハイ個人戦を含むあらゆる大会で無敗の天才・佐伯 梓を擁する柔道部である。

 

 

徹「やあ、そっちもそっちで大変だね(モッサモッサ)」

 

和真(チャイナ服装備)が特設ステージ前に着くと、燕尾服を着た徹が練乳を大量にかけたワッフルを頬張っていた。

 

和真(子ども執事…)「まぁた舌が疲れそうなモンを……つーかお前さっきも食って無かった?」

徹(なぜかイラッとしたけど気のせいか……)「さっきのは食後のデザート、これはおやつだよ」

和真「あっそ……」

 

徹の甘党は今に始まったことではないので、和真はこの話題をさっさと終わらせた。

 

和真「徹、言うまでもねぇと思うが、今回の敵はやべぇぞ」

徹「わかってるよ。橘も厄介な相手だけど、何より脅威なのはチャンピオンだね……」

和真「正直俺が一対一で闘っても、多分勝てねぇな」

 

いつも自身に満ちた和真らしくない後ろ向きな発言。

そう考えざるを得ないほど、今回の相手は圧倒的に強いのだ。

 

徹「君の腕輪を使うのはどうだい?今回の科目は古典なのだし」

和真「それができりゃ苦労はしねぇよ」

 

いくら闘いを楽しみたいからといって、それで負けるのは論外である。もし腕輪が使用可能だったら和真は躊躇いなく使用するだろう。

そう、もしも使用可能だったら、の話だ。

 

和真「佐伯先輩は去年の大会で青銅の腕輪を勝ち取っている。腕輪は使えねぇよ」

 

青銅の腕輪……これを腕につけている生徒が召喚フィールド内にいるとき、自分を含めた召喚獣は腕輪能力を使うことができない。

腕輪能力による蹂躙を封殺することができるが、使いどころを間違えると自らを弱体化させてしまうという、玄人向けの腕輪てある。

 

徹「ならばどうするんだい?」

 

和真「作戦は考えてある。今から説明するからよーく聞けよ。まず―」

 

 

 

 

 

 

 

 

和真「-それでフィニッシュだ。わかったか?」

徹「……これは作戦と呼んでいいのかい?」

 

作戦の全容を聞いた徹は呆れるような目で和真を見る。その様子を見る限り、よほど杜撰な内容なのだろう。

 

和真「いいんだよ、闘う前の作戦なんざこんなんで。俺はアドリブの方が好きなんだよ」

 

和真は頭もかなりキレるが、雄二のような策謀を巡らすタイプでも、蒼介のように相手の作戦を先読みし先手を打つタイプでもない。作戦はシンプルに立て、闘いの中で即興で策を練っていくタイプの人間である。勿論例外はあるのだが。

 

徹「まあ君に複雑な作戦は似合わないから、それでいいけどね」

和真「ずいぶんな物言いだなオイ。ろくに作戦も立てられねぇ子ども執事風情が」

徹「言ってはならないことを言ったなキサマァァァァァァァ!

この格好で僕がどれだけ屈辱を味わったか、 テメェにはわからねぇよぉぉぉぉぉぉ!」

 

全力で悔し泣きしながら和真にキレる徹。

しかも「しくしく」でもなく「メソメソ」でもない、「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」といった感じの本気泣きだ。

徹の脳裏に浮かぶのは、さきほど接客中「可愛い」だの「ちっちゃい」だのほざく客の女どもにいじくり回された苦い記憶。お客様相手なのでキレることもできないことがなんとも歯痒い。

 

和真「お、そろそろ時間だな。泣いてねぇでいくぞ徹」

徹「ぐすっ、えぐっ…チクショウ…絶対テメェよりデカくなってやる……」

和真「わかったわかった悪かったよ、お前はいつか大きくなるよ」

 

徹をヨシヨシと宥めながら特設ステージへ向かう和真。

果たしてこの光景を見て、二人が同年代だと思う人はいるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

『それでは四回戦を始めたいと思います。出場者は前へどうぞ』

 

マイクを持った審判の教師に呼ばれ、四人はステージへと上がる。外部からの来場客の為に作られた見学者用の席はほぼ満席の状態だ。よく見るとその席に鳳秀介が茶を啜りながら観戦している。

 

佐伯「おう柊、この前の合同稽古以来やな」

飛鳥「あなた達が相手でも、手加減はしないわよ」

 

和真達の対戦相手の二人が話しかけて来た。

片方は金髪のセミショートの凛とした顔立ちの女子生徒、“橘社”の令嬢、橘 飛鳥。

もう片方はエメラルドグリーンの髪をツインテールにし人懐っこそうな笑みを浮かべた、和真や徹に負けず劣らずの童顔な女子生徒……チャンピオン・佐伯 梓。

 

和真「凡骨にタレ目先輩……」

佐伯「誰がタレ目先輩や。先輩を身体的特長で呼ぶのやめぇ」

飛鳥「凡人は自覚してるけどその呼び方はやめて……さすがに傷つくから……」

 

聞き捨てならない和真の愛称に律儀につっこみをいれる二人。

 

和真「ところで1つ聞きてぇんだが……飛鳥、なんでお前も燕尾服来てるんだ?」

飛鳥「……愛子に需要があるとか言われて、強引に着せられたのよ」

佐伯「飛鳥あんた女の子にもてるからなぁ。先日も稽古の終わりに女の子からラブレター貰ってたし」

飛鳥「梓先輩、それは言わないでください……」

 

どうやら飛鳥はそんじょそこらの男よりも男らしいという評価を、少なからず気にしているらしい。

 

佐伯「じゃあウチも1つ聞きたいんやけど……大門に何があったん?」

飛鳥「あ、私もそれ気になってた」

 

さきほどの悔し泣きによって徹の目は真っ赤に充血し、涙の跡がくっきりと残っていた。

 

徹「ほうっておいてください……」

佐伯「さ、さよか……」

飛鳥「わ、わかったわ……」

 

追及すれば八つ裂きにしてやると言わんばかりにの鋭い眼光に、流石の二人も引き下がる。

 

『四人とも、そろそろ良いですか?』

佐伯「えらいすんませんな、ほんなら……」

『試獣召喚(サモン)!』

 

お馴染みの魔方陣から召喚獣が飛び出した。

飛鳥の召喚獣は忍装束に二刀流のクナイ、

佐伯は防刃スーツにトンファーだ。

 

 

《古典》

『二年Fクラス 柊 和真 400点

二年Aクラス 大門 徹 268点

VS

三年Aクラス 佐伯 梓 392点

二年Aクラス 橘 飛鳥 289点』

 

 

観客に配慮して大型ディスプレイにそれぞれの点数が表示される。佐伯は三学年次席というだけあってかなりの高得点であるが、文系科目のため和真はそれを上回る。飛鳥は全教科似たような点数だが、生粋の理系である徹はAクラス平均より少し上くらいの点数だ。

 

『では、四回戦を開始します!』

 

審判の向井先生の開始の合図とともに、先ほどの試合と同じく両端に移動する和真と徹。

 

佐伯「チーム戦の意味無いやんその戦法……飛鳥、大門は頼むわ」

飛鳥「了解!」

 

佐伯と飛鳥も二人を追ってそれぞれ両端に移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【柊 和真VS佐伯 梓】

 

和真「しかしアンタら柔道部なのに、二人とも両手ふさがる武器なんすね」

佐伯「アホ、試召戦争と柔道は全く別モンや。こんなチンチクリンのボディーで技かけられるかいな」

 

先ほどからお互い様子見と言わんばかりに、距離をとって攻防を繰り返してる。

相手の戦闘スタイルの観察という目的もあるが、この戦いから一般公開されるので、観客に対するファンサービスも兼ねている。

二人の目論見通り、召喚獣の戦いを見届けている観客のボルテージは右肩上がりしている。

 

佐伯「さてと、観客へのサービスはこのぐらいにしておいて……そろそろ攻めるで?」

 

〈佐伯〉がトンファーを構え直し、力を溜めるようなポーズをとる。

 

和真(あん? 何をする気だ?)

 

〈和真も〉も槍を構え直し、敵の攻撃を警戒する。

 

佐伯「トンファー流奥義……」

 

突然〈佐伯〉が〈和真〉の方に向かって走りだした。

 

和真(突っ込んで来たか……上等だ!カウンターに『こいつ』を食らわせてやる!)

 

和真の召喚獣はバッティングフォームを構え、相手がギリギリまで接近してくるのを待つ。

 

 

 

 

 

 

佐伯「トンファーキィィィィィック!」

和真「なにィィィィィ!?」

 

トンファーで殴りかかると見せかけて、〈佐伯〉は〈和真〉を思いっきり蹴り飛ばした。

予想外の出来事に不意をつかれ、ガードしきれずふっ飛ぶ〈和真〉だが、なんとか上手く着地し武器を構え直す。しかし装甲の薄さが災いし、ただの蹴りとは言え結構ダメージを負ってしまった。

 

《古典》

『二年Fクラス 柊 和真 307点

VS

三年Aクラス 佐伯 梓 392点』

 

和真「ふざけんじゃねぇぞなにがトンファー流だ!?トンファー両手に持って蹴っただけじゃねぇか!」

佐伯「やかましいわ!トンファー持っとるからこその『トンファーキック』なんや!串カツかて串に刺さっとらんかったらただのカツやろうが!」

和真「なんだそのムチャクチャな理屈!?」

 

トンファーを持って行った攻撃はいかなるものであろうと、全て奥義として認められる……それが『トンファー流』である。

 

佐伯「ほんなら次いくでぇ、トンファー流お-」

和真「くたばれぇぇぇぇぇ!」

佐伯「はぁぁあああ!?」

 

再びトンファーを構えるも、佐伯が奥義の口上を言っている途中に〈和真〉が槍で思いっきりしばく。〈佐伯〉はガードするも、腕力に差があり過ぎるため吹っ飛ばされる。

 

 

《古典》

『二年Fクラス 柊 和真 307点

VS

三年Aクラス 佐伯 梓 285点』

 

 

佐伯「あんたそんなんありか!?口上述べてるときはおとなしくせぇよアホ!」

和真「知るかぁぁぁ! 俺は戦隊物の脇役じゃねぇんだよ! むざむざやられてたまるかボケ!」

 

和真は目上の人間には多少くだけてはいるがきちんと敬語で話すのだが、今はそれも忘れて佐伯とレベルの低い口喧嘩をしている。二人とも精神はどちらかというとお子ちゃまなのである。

 

佐伯「……ま、ええわ。おふざけはこのくらいにしておくか」

和真「あぁん?」 

 

不毛な口喧嘩を急に終わらせて、一旦目を閉じる佐伯。そして目を開き和真を見据えてこう告げた。

 

佐伯「ちょっとでも気ぃ抜いたら……終わるで?」

和真(っ!?雰囲気がガラリと変わりやがった!?)

佐伯「じゃあ、行くでぇ!」 

 

そう言うと〈佐伯〉は右手のトンファーを構え、高速で〈和真〉に殴りかかった。

 

和真「真っ向勝負か、上等だ!」

 

相手の攻撃に対して〈和真〉は防御でも回避ではなく攻撃を選択し、槍で薙ぎ払おうとする。

しかし〈佐伯〉は横からきた槍を上からぶっ叩き地面に激突させ〈和真〉の懐、トンファーの射程範囲内に入り込む。

 

和真「甘ぇよ!」

 

持ち前の豪腕を活かして〈和真〉は相手がトンファーで攻撃する前に槍を構え直す。これでどんな攻撃をしてこようが迎撃することが可能となった。

 

 

 

 

 

 

佐伯「甘いのはそっちや」

 

ただしその攻撃が、ダメージの通りやすい部分への攻撃だったらの話だが。

 

《古典》

『二年Fクラス 柊 和真 289点

VS

三年Aクラス 佐伯 梓 285点』

 

和真「肩に攻撃……だと?」

 

〈佐伯〉は攻撃する瞬間左手のトンファーを反対に回し、〈和真〉の召喚獣の肩を貫いた。

召喚獣の急所などは人間とだいたい同じである。点数差がどれだけあっても首を飛ばされたりすれば即死する。

だからこそ急所への防御は必須スキルであり、一年生の頃から練習させられている。

反対に肩のような部分は点数が一桁でもない限り致命傷にはならない。ゆえに、そのような部分を狙う人間はまずいない。

しかし、どれだけ小さくてもダメージを食らうことには変わりは無いのである。そして誰も狙わないということは、普段狙われないということであり、学校側も訓練で教えたりは特にしていない。つまり、誰もがその部分の防御が慣れていないということだ。

 

 

佐伯「あんたの闘い方はだいたい読めたわ。あんたはその高い攻撃力と機動力のために防御を犠牲にしとる。一発でもまともに攻撃を食らえば勝負が終わってまうほどまでな。せやからそういう攻撃には人一倍対処が上手い。それを攻略するのは流石のウチでも骨が折れるわ」

 

〈和真〉を怒濤の攻撃で追い詰めながら佐伯は言う。

先ほどの戦闘だけでそこまで見抜かれていたことに、和真は表面上は冷静そのものだが内心少なからず動揺する。

その心の隙を見抜いているのか、佐伯は攻撃の手を緩めない。せやけどな、と佐伯は言葉を続ける。

 

佐伯「それやったら小っさいダメージを蓄積させていけば済む話や」

 

言葉通り、〈佐伯〉のジャブを繰り返すかのような攻撃を喰らわせ続け、和真の点数は見る見る削られていく。

 

 

《古典》

『二年Fクラス 柊 和真 241点

VS

三年Aクラス 佐伯 梓 285点』

 

 

和真「ハッ、簡単に言ってくれるぜ。そんな芸当、アンタか明久ぐらいしかできねぇよ……」

 

鍔迫り合いの最中にローキックを足に喰らい転倒した召喚獣をすぐさま起き上がらせながら、和真は揶揄するように言う。

 

言うが易し行うが難し。

佐伯の考えた作戦を実行するには、極めて高度な操作技術が必用不可欠である。

和真の操作技術とて並ではないのだ。その戦法で和真に攻撃を当てるためには、攻撃を防がれてから二撃目、三撃目とありとあらゆる方向から攻撃を繰り出していけるようなレベルでなければ話にならない。

しかし、そのレベルは普通に学校生活を送っているようでは決して到達できない境地である。

召喚獣を自分の手足のように操ることができる明久ならそれも可能であろう。

もっとも、明久では点数差がありすぎて勝負にならないだろうが。

ではなぜ佐伯は観察処分者でもないのに操作技術が高いのか。

その理由は佐伯の他の追随を許さない戦闘経験にある。Aクラス次席として試召戦争では、クラス代表が自由に戦えないので、佐伯はクラスの最大戦力として常に最前線で闘って来た。

学園の宣伝の為の召喚獣の大会などにも積極的に参加し、その全てで王者で居続けた。

ついでに柔剣道場の第四土曜日の使用権を剣道部主将と毎回フリスペで取り合っていた。

それらの経験が、佐伯の操作技術を明久と同等にまで引き上げたのだ。

 

佐伯「いや多分高城もできるで?観察処分者が出るまで生徒会が手伝ってた召喚獣絡みの雑用を、ウチが散々騙して押し付けてきたから」

和真「……高城先輩不憫過ぎる。そんな悲しい理由で操作技術が上がったなんて」

 

 

《古典》

『二年Fクラス 柊 和真 213点

VS

三年Aクラス 佐伯 梓 276点』

 

 

そうこうしているうちに和真の点数がAクラス平均レベルにまで削られていた。

 

佐伯「さぁて、このままやと終わってまうで?」

和真(チィ…………覚悟してたとはいえ……ここまで手も足も出ねぇとはな……徹、しくじんなよ)

 

 

 




というわけで、佐伯先輩無双回でした。
点数もほぼ互角、両者ともトリッキーな戦闘スタイルなので、操作技術が勝敗の分かれ目となります。
果たして和真君達の作戦とは……?

橘 飛鳥
・性質……速度重視型
・総合科目……3100点前後 (学年10位)
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……C+
機動力……A
防御力……C+

小暮と同じく素早い動きと手数の多さで敵を翻弄するタイプ。前回に続いて今回も徹にとって相性の悪い相手だが果たして……


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矛盾

【バカテスト・日本史】
天文・測量術などを学び、田沼意次の蝦夷地調査で派遣された人物は誰か?

柊 和真の答え
『最上 徳内』

蒼介「正解だ。寛政期に幕府の千島列島探査に参加したということも覚えておこう」

吉井 明久の答え
『最上川』

源太「“最上”まで出てきたけど“徳内”がでなかったパターンだな……だけどよ、人物って聞かれたら人物で答えような」

木下 秀吉の答え
『ナイル川』

蒼介「原型が無くなってしまったぞ」

土屋 康太の答え
『エジプト文明』

源太「オイ、マジカルバナナみてぇになってるじゃねぇか?お前らゼッテェ真面目にテスト受けてるふりして遊んでるだろ?」

須川 亮太の答え
『ちょっとなに言ってるかわかんないです』

蒼介「木下~須川の答案は西村教諭に渡しておく。
補習室でその腐った性根を叩き直されてこい馬鹿者どもが」


橘 飛鳥という人間を一言で簡潔に説明するならば、『才能に恵まれない人』である。

 

彼女は日本屈指の名家・橘家の長女として生まれ、父親が世界的大企業“橘社”のCEOということもあり、生まれながらの勝者、成功を約束された人間と言っても過言ではない。

 

だが、当の本人は悲しいほど才能に乏しいのだ。

物覚えも頭の回転も運動神経も凡人レベル、どれだけ一生懸命に取り組もうと決してトップに立つことはない。

物心ついたときから血のにじむほど努力を重ねてきた柔道も、鳳 蒼介に手も足も出ず完敗した。

 

そんな彼女が父親の部下達に“劣等”の烙印を押されるのは火を見るより明らかであった。

 

“無能”、“出涸らし”、“橘家の恥さらし”

 

と、噂されていた。

そんな心無い仕打ちに年端もいかぬ少女が耐えられるはずもなく、下手をすれば自殺をしかねないほどまで心を閉ざしてしまった。

 

そんな彼女が、二人の友人のお陰で立ち直ることができたのは、今はまだ語るときではない。

 

 

 

 

 

【大門 徹VS橘 飛鳥】

 

《古典》

『二年Aクラス 大門 徹 246点

VS

二年Aクラス 橘 飛鳥 273点』

 

現段階では意外にも飛鳥が押していた。

飛鳥の戦闘スタイルは攻撃後離脱しダメージを蓄積させていくヒットアンドアウェイ戦法。前回闘った小暮 葵と同じく、スピードを犠牲にした徹にとって相性の良くない相手だ。

 

徹(ったく、連続で相性の良くない相手とはね。ついてない……というか、ここまで僕にとってろくな思い出がないな……)

 

相手に翻弄されるなか、これまでの闘いを思いおこし、少々鬱な気分になる徹。

 

徹(……でもまあ、)

飛鳥「……?」

 

〈徹〉は脱力したような体勢になる。

飛鳥は訝しむも、その隙を突こうと接近する。

が、

 

徹「だからこそ、負けるわけにはいかないんだよねぇ!」

飛鳥「っ!?しまっ―」

 

〈徹〉は敵の攻撃を真っ向から受け止め、その隙に鉄拳を喰らわせた。

 

 

《古典》

『二年Aクラス 大門 徹 229点

VS

二年Aクラス 橘 飛鳥 225点』

 

 

徹「それに、君には小暮先輩には通用しなかった戦法が通用するみたいだからね」

 

飛鳥と小暮の戦闘スタイルは、どちらも徹にとって相性が悪い。だが、飛鳥は小暮ほど操作技術に秀でているわけではなく、甲冑の隙間を縫って攻撃を当てるような芸当は不可能である。よって、相手の攻撃を受け止め、攻撃を正確に当てていけば先に倒れるのはパワー負けしている〈飛鳥〉である。

 

徹「さて、君のスタイルでは勝てないようだけど、どうするんだい?」

飛鳥「…………」

 

徹の挑発に押し黙る飛鳥。

確かにこのままでは負けは確実である。

普通ならば何か別の方法で闘おうとするだろう。

飛鳥もその例に漏れず戦法を変えた。そう……

 

 

 

 

飛鳥「上等!ならこっちはありったけの攻撃を、あなたに喰らわせるのみ!」

 

小細工抜きの真っ向勝負に。

 

飛鳥「はぁあああっ!」

 

先ほどまでの浅い攻撃とは比べ物にならない渾身の一刀で〈徹〉に斬りかかる。

クナイと鉄鎧がぶつかり合い召喚フィールド内に耳障りな金属音が響き渡る。

 

徹「オラァ!」

 

〈飛鳥〉の繰り出した斬撃に一切怯まず、〈徹〉ガントレットで〈飛鳥〉を殴り倒す。防御を重視した〈徹〉とは違い、薄めの装甲である〈飛鳥〉には小さくないダメージが入る。しかし、〈徹〉の渾身の一撃を喰らったのにもかかわらず、〈飛鳥〉は倒れも飛ばされもせずその場に踏みとどまり……

 

飛鳥「負けるかぁっ!」

 

再び〈徹〉を切り裂く。徹も一切気圧されることなく〈飛鳥〉の顔面をぶん殴る。

 

徹「……大企業のお嬢様にしては、随分と荒っぽい戦法じゃないか」

飛鳥「今この召喚に必要なのは、上品に振る舞うことじゃない…………

目の前の敵を倒すことよ!」

徹「違いないね…………では…」

飛鳥「ええ…」

 

 

徹・飛鳥「「うぉおおおおお!!!」」

 

斬る、殴る、斬る、殴る、斬る、殴る

防御も回避お互いの選択肢から既に消え失せている。

1回でも多く相手に攻撃する。

一回斬られたら二回殴る、三回殴られたら四回殴る。

戦術も駆け引きも一切入り込む余地の無い、単純かつ豪快な闘いが繰り広げられる。

 

そして、立っていたのは……

 

 

 

 

 

 

 

《古典》

『二年Aクラス 大門 徹 125点

VS

二年Aクラス 橘 飛鳥 戦死』

 

 

徹「一つ聞くけど、どうして真っ向勝負なんか仕掛けたんだい?こういう展開攻撃と防御両方とも僕より劣っている君が、手数を対等にしてしまったら圧倒的に不利になることぐらいわかっていただろう?」

飛鳥「悲しいことにそれ以外の作戦が思いつくほど、私のオツムは良くないのよ」

 

それにね、と飛鳥は言葉を続ける。

 

飛鳥「不利な条件で闘うことには慣れているのよ」

徹「……君らしいね。じゃあ僕はそろそろ行くよ」

 

そう言って徹は和真の援護に向かっていった。

 

飛鳥「負けちゃったかぁ……まあ悔いはないな。やっぱり私はチマチマ闘うより、真っ直ぐぶつかっていく方が性にあってるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

【柊 和真VS佐伯 梓】

 

《古典》

『二年Fクラス 柊 和真 88点

VS

三年Aクラス 佐伯 梓 276点』

 

こちらの闘いは一方的な展開となっていた。

点差は互角、戦術も互角、ならば二人の差は召喚獣の操作技術によって決まってしまうのだ。

和真の操作技術も三年に匹敵するレベルなのだが言ってしまえばその程度、召喚獣を手足のように自在に扱える佐伯には到底及ばないのである。

だが、ここまで一方的な試合となったのにはもうひとつ理由がある。

 

佐伯「随分守りに入るなぁ……あんた、守るのは嫌いやなかったか?」

和真「……確かに嫌いだよ。嫌いも嫌い、大っっっ嫌いさ。

だがな、勝敗に関わるならそれぐらい我慢してやるよ。勝つことを諦めてまで貫き通してぇものじゃねぇんだよ」

 

そう、ここまで和真は守りと回避一辺倒で、一切攻めていないのだ。和真を知る人間ならば目を疑う光景だが、あの和真がそうしなければならないほど、佐伯の実力は圧倒的なのである。

 

佐伯「ふーん、まあええわ……

 

 

 

どうやらあんたが待ってた味方も来たみたいやしな」

 

 

《古典》

『二年Fクラス 柊 和真 88点

二年Aクラス 大門 徹 125点

VS

三年Aクラス 佐伯 梓 276点』

 

 

和真「来ないんじゃねぇかとヒヤヒヤしたぜ、徹」

徹「そいつは取り越し苦労だね。君こそ随分やられているじゃないか」

和真「死んでなきゃ安いだろ?」

徹「それもそうか」

佐伯「で? 二人がかりでウチに挑むのがあんたらの作戦か?」

和真「おお、よく気づいたな」

佐伯「そもそも隠す気無かったやろあんた。

あんな闘い方、時間稼ぎやってまるわかりやわ。まあそれはええけど、」

 

そう言って佐伯は二人を見据える。

 

佐伯「二人がかりやったらウチに勝てると思っとんのか?

随分と甘く見られたもんやなぁ?」

 

そう言って二人に殺気をぶつける佐伯。

高校柔道の頂点に君臨している佐伯の重圧に、しかし二人は一切臆した様子はなかった。

 

和真「勿論思ってるよ!いくぞ徹!」

徹「しくじんなよ和真!」

「「うぉおおおおお!」」

 

咆哮と共に二人の召喚獣は〈佐伯〉に向かって駆け出す。

 

佐伯(甘いなぁ……大勢を同時に相手取ることなんか去年散々やったわ)

 

冷静にカウンターの構えをとる〈佐伯〉。

しかし…

 

和真「おらぁあああああ!」

 

相手に間合いに入る直前、〈和真〉は〈徹〉を片手で掴み、〈佐伯〉に向かってぶん投げた。

 

佐伯「なっ!? ……せやけど甘いわ!」

 

一瞬虚を突かれるも、飛んできた〈徹〉にトンファーでカウンターを入れる。

だが……

 

ガキィィィンッ

 

佐伯「硬っ!?……しもたぁ!!」

 

〈徹〉あらかじめ防御体勢に入っており、〈佐伯〉のトンファーは弾かれてしまう。そしてバランスを崩した〈佐伯〉の目の前には、

 

 

 

槍を構え、攻撃体勢の〈和真〉が鎮座していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~試合前~

 

和真「今の俺じゃあ、佐伯先輩に勝つのはおそらく無理だ。だから勝つためには二人がかりで挑むしかねぇ」

徹「なら、橘はどうするんだい?」

和真「何言ってるんだ? お前は飛鳥を撃破してから俺と合流するんだよ」

徹「あぁ……やっぱりそうか……まあいい。それで、具体的な作戦は」

和真「作戦はいたってシンプルだ。二人で同時に特攻して、相手の間合いに入る前にお前の召喚獣を投げ飛ばすから、お前は全力でガードしてろ」

徹「なるほど……僕の召喚獣の防御体勢なら、佐伯先輩の攻撃だろうと弾き返せるだろうからね」

和真「そうだ。そうして攻撃を弾かれバランスを崩している先輩の召喚獣に、全身全霊フルパワーの突きを喰らわせる。それでフィニッシュだ」

 

 

 

 

 

 

 

和真「これで……終わりだぁぁぁぁぁ!!!」

 

〈和真〉の全力の突きが〈佐伯〉に襲いかかる。いかに佐伯が操作技術に秀でていても、バランスを崩している状態では回避することはできない。 かといってトンファーで防御したところで焼け石に水、和真の槍はそのチャチかガードもろとも敵を貫くだろう。

 

佐伯(…盾(徹)でウチの攻撃を防御し、その隙に矛(和真)がウチを貫く。見事なコンビネーションや……完敗やな、くやしいけど………

 

 

……せやけどなぁ…………ウチはただでは負けへん! 三年の先輩として、悪あがきぐらいはさせてもらうで!) 「おりゃぁあああ!!」

和真「……マジかよ」

 

最後の足掻きとして、〈佐伯〉ら弾かれていないトンファーを〈和真〉に投げつける。〈和真〉は現在進行形で攻撃中なので、その攻撃をかわせるはずもなく……

 

 

《古典》

『二年Fクラス 柊 和真 戦死

二年Aクラス 大門 徹 75点

VS

三年Aクラス 佐伯 梓 戦死』

 

 

両者の召喚獣はお互いの攻撃をまともに喰らい、共に力尽きるように倒れた。

 

『見事なコンビネーションで強敵を打ち倒した柊・大門ペアの勝利!』

 

ワァアアアアアアアアアアアアアアアア!

 

審判の先生が勝利チームの勝鬨を上げると、特設ステージを観客席からの拍手喝采が包み込んだ。

 

 

 

佐伯「ふぅ……まさかウチが負けるとはなぁ、大したもんやであんたら」

和真「試合に勝って勝負に負けた感じだけどな。あそこからイーブンに持っていくか? 普通」

佐伯「ま、ただでは負けんのは癪やからな。というかあんた、ウチに対する話し方、以前までと大分変わったな」

和真「前みてぇに敬語に戻そうか?」

佐伯「いや、そのままでええわ。ついでに名前呼びでええよ、ウチもこれから和真って呼ぶし」

和真「そっか。それじゃ改めてよろしくな、梓先輩」

佐伯「こっちこそよろしゅうな、和真。あ、そっちの二人もタメ口でええで?」

徹「僕は遠慮します」

飛鳥「部の皆に示しがつきませんので辞退させてもらいます」

佐伯「さよか………まあええわ。あんたらこの先もがんばりや」

 

そう言って佐伯は一足先に特設ステージを後にした。

 

飛鳥「それじゃあ私達もいきましょうか」

和真「クラスの宣伝には十分なったな」

徹「ということは……この先もあんな目にあうのか……」

 

そして三人も校舎の方に歩いていった。




VS佐伯・橘戦、決着!
まさかここまで長くなるとは……
佐伯先輩改め梓先輩はこの先も和真の前に立ちふさがる予定です。現状ではタイマンじゃどうあがいても勝てなさそうですが……

-佐伯 梓
・性質……機動重視型
・総合科目……4300点前後 (学年2位)
・400点以上……現代文・数学・英語
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……B+
機動力……A+
防御力……B+
・腕輪……まだ不明、青銅の腕輪『妨害』

召喚獣のスペック、戦術、操作技術全てが一級品である。
和真を真っ向から打ち倒せるごく少数の生徒の一人。
また、能力を封じる効果のある特殊な腕輪を所持している為、下手したら蒼介すら倒しかねない。
まさに生徒最強候補。








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正体

【バカテスト・世界史】
イスラーム教の聖典をなんというか。

姫路 瑞希の答え
『クルアーン』

蒼介「正解だ。ちなみにコーランでもOKだ」

木下 秀吉の答え
『クルーン』

飛鳥「惜しい。けどそれだと100マイルの外人投手になってしまうわ」

島田 美波の答え
『クウラ』

蒼介「それだと戦闘力53万の兄になってしまうぞ」

土屋 康太及びFクラス男子一同の答え
『成人向けの写真集』

飛鳥「……あなた達の頭にはそれしかないの?」


和真「おーっす、今戻―っと、随分客増えたなオイ」

 

四回戦終了後、教室に戻った和真を待ち受けていたのは、行く前とは比べ物にならない大勢の客だった。一般公開の宣伝効果はなかなか馬鹿にならないようだ。

 

秀吉「和真、戻って来て早々悪いが接客を頼む。お主へのリクエストがかなり多いのじゃ」

翔子「……主に女性客の」

和真「ったく、息つく間も無く労働かよ……骨が折れるな」

 

軽くぼやきつつも和真は接客に回る。

基本自由気ままに振る舞う和真だが、するべきことはする男なのだ。

 

『あ、柊!さっきの試合凄かったな!』

『とても格好良かったよ柊君!』

『おめでとう!まさかアズに勝っちゃうなんてね』

 

和真「そいつはどーも、黒崎、古河、寿先輩。相討ちみたいなもんだけどな」

 

先ほどの試合を称賛する客に和真は。律儀に礼を言っていく。

 

秀吉「和真の交遊関係はどこまで広いんじゃ……」

翔子「……和真は友達が多いから」

 

この学園で和真と面識の無い人間などもういない。

 

 

 

 

 

雄二「―っと。ほぅ。なかなかに盛況じゃないか。ここまでとは予想外だ」

明久「そうだね。かなりいい感じだね」

姫路「良かった。宣伝の効果があったみたいですね」

美波「そうでなきゃ、こんな恥ずかしい格好で大会に出た意味がないものね」

 

それからちょっとして、明久達四人が戻って来た。和真達より早く試合が始まったのにもかかわらず遅れたのは、色々と誤解を解く必要があったからだ(葉月関連)。

 

葉月「あ! バカなお兄ちゃん! お客さんがいっぱい来てくれたんだよ!」

 

葉月が明久達を見つけて、店の中からトトトッと駆け寄ってきた。

 

明久「そうだね。葉月ちゃん、お手伝いどうもありがとうね」

葉月「んにゃ~……」

 

明久が頭を撫でると気持ち良さそうに目を細めている。反応が猫みたいでとても愛くるしい。

 

『お、あの子たちだ!』

『近くで見ると一層可愛いな!』

『手伝いの小さな子も教室内にいる子も可愛いし、レベルが高いな!』

 

お客さんたちの中からそんな声があがる。

 

明久(やっぱりチャイナドレスは男を惑わす効果があるね)

 

誰よりも惑わされている男が言うと説得力が違う。

 

秀吉「明久。戻ってきたようじゃな。どちらが勝ったのじゃ?」

和真「まあ大体予想つくけどな」

 

秀吉と和真がトレイ片手に明久達に寄ってくる。

訂正、和真は両手にトレイを持った上にさらにもう一つ頭に乗せている。そのトレイの上にはお客さんにだす飲茶やドリンクなども乗っているが、全く意に介さず普通に歩いてきた。目を疑うほどのバランス感覚である。

 

明久「雄二、かな?」

美波「そうね。坂本の一人勝ちね」

姫路「ですね」

秀吉「? 明久は同じチームなのに負けじゃったのか?」

和真「大方、雄二が明久もろとも敵を始末したとかだろ?」

明久「流石和真、理解が速いね」

 

ある意味明久の一人負けのような内容だったらしい。

 

明久「ちなみに和真は?」

和真「なんとか勝ちを拾った。俺の召喚獣は戦死したがな」

雄二「そんなことよりも、数少ないウェイトレスが固まっていたら客が落胆するぞ。今は喫茶店に専念してくれ」

 

気がつくとお客さんの視線がこちらに随分と集中していた。

 

姫路「そうですね。喫茶店のお手伝いをしないといけませんよね」

美波「そうね。ちょっと視線が気になるけど、売り上げの為に頑張りますか!」

葉月「はいっ。葉月も頑張りますっ」

和真「明らかに俺の負担が大きい気がするが……まあいいか」

秀吉「……ワシは一応男なのじゃが……」

明久「秀吉。絶対に性別をバラしちゃダメだからね?」

和真「もしバレたら、明日からお前は女装趣味のオカマ野郎という烙印を押されたまま生きていくことになるぞ」

 

背筋も凍るほど恐ろしい脅し文句である。間違ってはいないのだが、もう少し言い方というものがあるだろう。

 

秀吉「そ、それは嫌じゃな……。やれやれ、仕方ないのぅ……。あ、いらっしゃいませ!中華喫茶ヨーロピアンへようこそ!」

新規入店のお客さんが来た途端に秀吉の口調が変わった。

演劇部ホープの悲しい習性である。

 

雄二「さて、俺達も突っ立ってないで手伝うか」

和真「そうだな~(ガッチャガッチャ)」

雄二「和真、それ心臓に悪いからやめろ」

和真「仕方ねぇだろ、仕事多いんだから」

明久「せめてスキップで移動しないで、お願い」

 

 

 

 

 

 

 

 

和真「……さて、そろそろだな。行くぞー、お前ら」

明久「ほーい。それじゃ、準決勝に行ってくるね」

姫路「はい。四人とも頑張ってくださいね」

翔子「……わかった。絶対に勝ってくる」

雄二「そうはいくか。勝つのは俺達だ」

 

喫茶店の中で動き回ること一時間。いよいよ準決勝の時間となった。

決勝戦は明日の午後に予定されているので、今日の試合はこれで最後になる。

そして対戦カードは…

 

『二年Fクラス 柊 和真

二年Aクラス 大門 徹

VS

三年Aクラス 夏川 俊平

三年Aクラス 常村 勇作 』

 

『二年Fクラス 吉井 明久

二年Fクラス 坂本 雄二

VS

二年Fクラス 霧島 翔子

二年Aクラス 木下 優子』

 

和真「常夏コンビが相手か……きっちり引導を渡してやるぜ。つーことでじゃあな、お前らも頑張れよ!」

 

三人を激励を送った後、和真は明久達とは別の特設ステージに移動しにいった

翔子「……雄二、負けないから」

 

雄二達に宣戦布告をした後、翔子は特設ステージの反対側に移動しにいった。

 

雄二(この試合だけは負けねぇ……負けられねぇ!)

 

いまだかつてないほど雄二の闘志は燃え上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竹原「―では、私が合図すると同時に実行しろ、わかったな?」

 

電話ごしの相手の了承を確認すると、竹原は通話を切った。

 

?「……教頭、吉井君達が勝てば、やはり例の作戦を実行するのですか?」

竹原「ああ。あのバカどもが勝つことは無いとは思うが、念のためだ。Fクラスの従業員どもをエサにあいつらをおびき寄せ、少々痛めつけてもらう。明日の決勝戦を棄権せざるを得ない程度にな。坂本は中学時代有名な不良だそうだがこちらの用意した人数は50人、万に一つも勝ち目など無いだろう」

?「………………」

 

竹原の作戦を改めて聞き、男は苦渋に満ちた顔になる。

 

竹原「どうしたんだね?」

?「……やはりこの作戦はどうかと思うのですが。流石に生徒を傷つけるやり方は……」

竹原「まだそんなことを言っているのか君は」

 

男の否定的な意見を聞き、竹原は呆れた表情になる。

 

竹原「あのバカどもが怪我をしようが誰が悲しむ? あいつらはもともといない方が世の中のためであるくらいの、正真正銘のクズどもなのだよ」

?「………では。では人質にされる生徒はどうなのですか?あのような連中が彼女達に手をださない保証は―」

竹原「それがどうした?」

 

男の反論を竹原が遮る。まるでどうでもいいと言わんばかりの表情で。

 

竹原「まったく、君は優秀だが少々甘すぎるな、

 

 

 

 

 

 

 

 

綾倉先生」

 

綾倉「…………」

 

教頭の呆れたような物言いに綾倉は押し黙る。

 

竹原「いいか、我々の計画が成就すれば文月学園は解体される。そうなれば彼女達と私達は生徒と教師の関係ではなくなるのだよ。無関係な小娘がどうなろうと知ったことではないだろう?」

綾倉「………………そう、ですね」

竹原「わかったかね。なら話は終わりだ。職員室に戻りたまえ。君が教頭室にいるところを学園長に見られると、いろいろとまずいことになるのでね」

綾倉「…………失礼します」

 

それを聞き、綾倉は踵を返し教頭室を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、というわけでコナンスーツの男の正体は、三年学年主任の綾倉 慶先生でした。しかしどうやらなにか訳ありのご様子です。
果たして……?

あと、この作品では竹原の救済とかはありません。
全世界1億7000万の竹原ファンの皆様、申し訳ない。

では。


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激昂の槍

【バカテスト・現代文】
『胸三寸』という語句を使って例文を作りなさい。

霧島 翔子の答え
「上司の胸三寸で許可を出すかどうかを決められる」

蒼介「正解だ。『胸三寸』とは、心の中にある考えという意味になる」


吉井 明久の答え
「美波の胸は三寸だ」

和真「さっき明久がズタボロになってた理由はこれか……」


五十嵐 源太
「徹の身長は三寸だ」

蒼介「そして源太が半殺しにされていた理由はこれか……というか語句が変わってしまっている時点で確信犯だなこれは」


『お待たせしました!これより準決勝を開始したいと思います!』

 

和真達が特設ステージに到着すると、審判役の教師のアナウンスが流れた。

 

徹「まったく、時間ギリギリじゃないか」

和真「わりぃ、喫茶店が忙しくてな」

徹(うちも忙しかったけど早めに抜けてきたんだよね……もうオモチャにされるのは御免だよ)

 

心なしか、徹の背中に哀愁が漂っている。

 

『出場選手の入場です!』

 

アナウンスに従い、和真と徹はステージに入場する。

和真達の向かいからは対戦相手の、今日散々Fクラスの邪魔をしてきた常夏コンビがやってきた。

 

徹「どうも先輩方。生徒会役員ともあろう者が、随分とセコい小細工をしていたようですね」

 

ついさっき和真から事情を聞いていた徹は、揶揄するように夏川達に話しかける。

 

夏川「あれはあのバカ共が公衆の面前で恥をかかないように、という優しい配慮なんだよ。ま、Fクラスの奴なんかとつるんでるような奴のオツムじゃあ理解できなかったか?」

 

それに対して夏川は顎を手で擦り、挑発してきた。

 

徹「そうでしたか、だとしたら無駄な努力ですねぇ。あなた方は今ここで、僕達に無様に負ける運命なんですから」

 

その挑発を欠片も意に介することなく、ものすごく見下した表情で挑発し返す徹。

 

夏川「んだとテメェ……試召戦争は点数だけで結果は決まらねぇんだよ。お前らみたいなケツ青いクソガキに負けるわけ―」

徹「誰がガキだゴルァ! 顔の皮剥がされてぇのか、あぁん!?」

常夏「「いやなんでだよ!?」」

 

さっきまで憎たらしいくらいに冷静だった徹が突然ぶちギレる。

徹のあまりのキレっぷりに思わずたじろぐ二人。

ガキ、チビ、ミニ、リトル、スモール、チャイルド、その他小さいことを意味するワードは禁句である。

 

和真「……なぁ先輩、一つ聞きてぇんだけどよ」

 

しばらく静観していた和真が、突然おもむろに口を開いた。

 

夏川「? なんだよ?」

和真「なんであんたら教頭なんかに協力してんだよ?」

夏川「! ……そうかい。事情は理解してるってコトかい」

和真「最初にあんたらが妨害してた時に、率先して席を立ったのは教頭だ。二回目に教頭が来たとき明久のことを確認して、そしてその直後に明久が襲われた。それだけのことがあれば教頭とあんたら、ついでにあのチンピラどもがグルだってわかるわ。ついでにあんたらが何を狙ってるかも調べはついてる」

常村「……こいつは驚いた。お前、Fクラスのクセに随分頭が回るじゃねぇか」

和真「そいつはどーも。で、あんたらは何が目的なんだ?文月学園を潰そうとしてる奴に肩入れしてるんだ、何かしらあんだろ?」

夏川「進学だよ。上手くやれば推薦状を書いてくれるらしい。そうすりゃ受験勉強とはオサラバだ」

和真「……なるほど。常村先輩も同じか?」

常村「まぁな」

和真「…………ハァ」

 

二人の目的を聞いた和真は、呆れるようにため息を吐いた後、氷のように冷たい目で二人を見据える。

 

 

和真「…………気に入らねぇな……

 

俺は、あんたらが心底気にいらねぇ!!!」

 

 

夏川「なんだとコラ……先輩に向かって……!」

常村「まぐれで佐伯に勝ったことで調子に乗ってんのか? だったら俺達が現実っつうもんを教えてやるよ!」

 

『そ、それでは試合に入りましょう! 選手の皆さん、どうぞ!』

 

一色触発の雰囲気を察したのか、審判役の先生がたじろぎながら四人に召喚を促す。

 

和真「………………徹、すまん」

徹「? 何がだい?」

和真「この試合…………お前の出番は無さそうだ」

徹「! …………」(これは……相当イラついてるね、まあ無理もないか……)

 

『試獣召喚(サモン)!』

 

掛け声をあげ、それぞれが分身を呼び出した。

常夏コンビの召喚獣の装備は二人ともオーソドックスな剣と鎧。姫路の装備をワンランクダウンしたような感じである。

 

 

《保健体育》

『二年Fクラス 柊 和真 322点

二年Aクラス 大門 徹 315点

VS

三年Aクラス 夏川 俊平 195点

三年Aクラス 常村 勇作 203点 』

 

 

『それでは、準決勝開始!』

 

 

夏川「さぁて、三年の強さを思い知らせ…………」

 

夏川の言葉は最後まで続かなかった。

なぜなら……

 

 

 

 

 

自分の召喚獣が、〈和真〉が神速で投擲した槍に貫かれ、壁に突き刺さって息絶えてしまったからだ。

 

夏川「ば……馬鹿なッ!?」

 

 

《保健体育》

『二年Fクラス 柊 和真 322点

二年Aクラス 大門 徹 315点

VS

三年Aクラス 夏川 俊平 戦死

三年Aクラス 常村 勇作 203点 』

 

 

〈和真〉がやったことは至極単純。

全速力でダッシュしながら槍を投擲しただけだ。

ただし学園でもトップクラスのスピードで、だが。

その圧倒的な加速力が、〈和真〉の規格外の豪腕から放たれる槍のスピードをさらに加速させ、見てからではガードも回避も間に合わないほどの攻撃へと昇華されたのである。そしてこの技にはもう一つメリットがある。それは全速力で槍を放った相手の方向ににダッシュしているので、

 

 

 

和真「次ィ!」

 

すぐさま投擲した槍を回収できるということだ。

 

常村「っ!? こ、この野郎っ!」

 

槍を回収し、そのまま自分に襲いかかって来た〈和真〉を迎え撃とうと武器を構える〈常村〉。

 

和真「おらぁあああ!」

 

〈常村〉めがけて〈和真〉が槍を横に薙ぐ。

 

常村「喰らうかそんな攻撃!」

 

即座にしゃがんで槍の攻撃を回避しようとする〈常村〉に対して〈和真〉は、

 

和真「もらったぁあああ!」

 

横に振り切った槍の威力を損なわずに構え直し、〈常村〉の上から渾身の力で叩きつけた。

 

常村「………………嘘だろ?」

 

 

《保健体育》

『二年Fクラス 柊 和真 322点

二年Aクラス 大門 徹 315点

VS

三年Aクラス 夏川 俊平 戦死

三年Aクラス 常村 勇作 戦死』

 

 

『勝者、柊・大門ペア!』

 

審判の先生に勝ち名乗りを受け、観客の拍手喝采に包まれるも、和真は不満足げな表情をしていた。失望、落胆、脱力、そんな感情がむき出しになっている。

 

和真「……つまんねぇ…………今までで一番つまんなかったよ、この試合は」

 

和真は心底失望したような冷めきった目で常村と夏川を見下ろす。

 

常村「な、なんだと!」

夏川「この野郎!先輩に向かって……!」

和真「あんたらのしょうもなさを、他にどう表現すりゃあいいっつうんだよ? あぁん?」

夏川「テメェ……!」

常村「言わせておけば……!」

 

情け容赦無い罵詈雑言を浴びせられた二人は、今にも和真に殴りかかろうとしていた。

 

和真「……あのな、俺は別にあんたらが教頭に加担してこの学園潰そうとしていることを、ゴチャゴチャ言うつもりはねぇんだよ」

常村「…………なに?」

 

思ってもみなかった意外な発言に常村は予想外といった表情をする。

 

和真「俺は善人でも正義の味方でもねぇ。そういうのはソウスケとか飛鳥の役目だしな」

常村「……だったらお前は何が気に入らないんだよ?」

 

いよいよ和真の考えがわからなくなってきたのか、二人は困惑した表情になる。

 

和真「俺が気に入らねぇのはあんたらが他人にすがって、楽に生きようとしていることだよ」

夏川「他人に……すがってる……だと?どういう意味―うぐっ!」

 

夏川が言い終わらないうちに、和真は夏川の胸ぐらを掴む。

 

 

和真「お前らそんなに楽がしてぇのか。

 

誰かに命令されるまま他人の邪魔をして、その見返りを誰かから恵んでもらって、お前らはそれで満足なのか。

 

この先も嫌なことから逃げ続けるけるのか、誰かが助けてくれるのを待つのか、人の足平気で引っ張って甘い汁すすって生きていくのか。

 

 

 

 

甘ったれてんじゃねよ!!!

 

他人に支えてもらわなきゃ、テメェは立ち上がることもできねぇのか!

つらい? しんどい? 投げ出したい? 誰か助けに来て欲しい?

あぁそうだよ! 生きてりゃそんなこと腐るほどあるわ!

だがなぁ! たとえ困難障害艱難苦痛不幸不条理に悩まされようと、自分だけで乗り越えていかなきゃならねぇことがあるんだよ!

それに立ち向かうのが人生だろうが!…………少なくとも俺のダチは立ち向っているぜ、どんな不条理なことが起きようともな」

 

言うだけ言うと和真は夏川から手を放し、夏川はそのまま床に崩れ落ちた。

 

和真「俺の言いたいことは以上だ。それでどうするかはあんたらの自由だ。行くぞ、徹」

徹「了解」

 

放心したように押し黙っている二人を捨て置き、二人は特設ステージから立ち去った。

 

夏川「…………なあ、常村」

常村「…………なんだ?」

夏川「……俺達……いつから後輩に説教されるほど落ちぶれちまったんだ?」

常村「……さあな。もしかしたら俺達……受験勉強から逃れたいばかりに、すごく情けない人間になってたのかもな……」

 

二人がこの後どうなったかは、

今は語るときではない。

 

 

 

 

 

 

 

徹「やれやれ。結局僕はなにもしてないよ」

 

階段を上りながら、試合中完全に空気だった徹は和真を詰るように愚痴る。

 

和真「そいつは悪ぃな。飛鳥の過去を考えると、どうもムカついて」

徹「まぁ、そんなことだろうと思ったよ。

確かに人生には不条理なことが多いよ……身長とか背が伸びないこととか常日頃カルシウム過剰摂取してるのにまるで効果がないこととか」

和真「お前そればっかじゃねぇか……それにカルシウムっつったって、お前が摂取してるのは練乳だろうが」

徹「練乳=砂糖+牛乳じゃないか。まさに趣味と実益を兼ね備えた至高の一品だろう?」

和真「実益は備えてねぇだろ、伸びてねぇんだから」

徹「…………グスン」

 

気にしている部分にダイレクトアタックされ、徹は今にも泣きそうな表情になる。

 

徹「……伸びるもん……絶対にいつか伸びるもん」

和真「わかったわかった悪かったって」

 

セカイーヲーテラーシテーク- ヨゾラーノーツキーノヨウニー♪

 

和真「お、俺の携帯だ。……はいもしもーし!」

徹(意外な着信音のチョイス……)

和真「…………了解。それじゃあ」

 

そう言って和真は通話を切る。

 

和真「それじゃあ徹、また明日」

徹「……ああ、また明日」

 

そのまま和真はなぜか上ってきた階段を、また下りていっていってしまった。

 

徹「……何か面倒ごとを引き受けたようだね、和真」




帰ってきた和真君無双。
まあ本作品最強候補の梓さんと闘った後で、今更得意科目でもない常夏コンビに出て来られてもねぇ……

新技『カズマジャベリン改』を習得した。
ただしこの技、相手に向かってなりふり構わず全力疾走するため、避けられると相手にカウンターされて即死という危険があります。
もし梓さんなんかに使ったりした日には……

和真君は本人の性格とある事情から、他人をあてにして生きているような人が大嫌いです。
あと、何気に常夏コンビに更正フラグが建ちました。

では。


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誘拐…………?

【バカテスト・化学】
問題(科学)
『ベンゼンの化学式を答えなさい』

姫路 瑞希の答え
『C6H6』

蒼介「正解だ。特に言うことは無い」

土屋 康太の答え
『ベン+ゼン=ベンゼン』

源太「テメェ化学舐めてんだろ」

吉井 明久の答え
『B-E-N-Z-E-N』

蒼介「お前達二人に布施教諭からの伝言、『あとで職員室に来るように』。わかったか馬鹿共」


雄二「明久。今日という今日はお前をコロス」

明久「あはは。やだなぁ雄二。目が怖いよ?」

翔子「…………(ウットリ)」

 

雄二は今にも明久に掴みかかりそうな表情をしており、それに対して翔子はとても幸せそうな表情をしている。

見た感じ明久達が無様に敗北した後の光景に見えるが、勝者は明久と雄二のペアだったりする。

 

準決勝、明久・雄二ペアの相手は翔子・優子ペア。

雄二の考えていた作戦は優子を秀吉と入れ換えて三体一で翔子を倒す、というものだった。

 

だがその考えは甘い。天津甘栗よりも甘い。

 

入れ替わりを行う以上本人を拘束しておく必要があり、秀吉がその役を買ってでたのだが、心技体全てにおいて上回る優子に敵うはずもなく、手も足もでず返り討ちに遭い逆に拘束されてしまう。

普段の雄二ならばこの程度のことを見落とすわけがないのだが、なぜか翔子が絡むと雄二の頭のキレが凄く悪くなるのだ。

作戦は失敗、まさに絶体絶命の状況をどのように切り抜けたかと言うと……

 

 

 

 

 

 

 

明久(雄二。僕に考えがあるから、指示通りの台詞を言って欲しい)

雄二(考え?一体何を―)

明久(今は迷ってる余裕なんてないよ。とにかくよろしく!)

雄二(お、おう)

 

自分の指示だとバレないように明久は雄二の陰にそれとなく身を隠す。そして念のためジェスチャーでムッツリーニに、救出された秀吉にこっちに来るように指示をだす。

 

明久(それじゃ行くよ。僕の言ったことをそのまま言うんだ。棒読みにならないようにね?)

雄二(わかった。今回はお前に任せよう)

 

明久<翔子、俺の話を聞いてくれ>

雄二「翔子、俺の話を聞いてくれ」

明久<お前の気持ちは嬉しいが、俺には俺の考えがあるんだ>

雄二「お前の気持ちは嬉しいが、俺には俺の考えがあるんだ」

翔子「……雄二の考え?」

明久<俺は自分の力でペアチケットを手に入れたい。そして、胸を張ってお前と幸せになりたいんだ!>

雄二「俺は自分の力でペアチケットを手に入れたい。そして、胸を張ってお前と幸せになりたい―って、ちょっと待て!」

 

慌てて明久の方をを向こうとするが、明久は後ろから強引に雄二の頭を押さえつける。

 

翔子「……雄二」 

 

翔子はうっとりした表情で雄二を見ている。

 

明久(やはり僕の作戦に間違いはなかった)<だからここは譲ってくれ。そして、優勝したら結婚しよう>

雄二「だっ誰がそんなこと言うかボケェッ!」

明久(ふん、バカめ!キサマの反応などお見通しだ!)「くたばれ」

雄二「くぺっ!?」

 

明久が後ろから雄二の頸動脈を押さえつける。

 

翔子「……雄二?」

明久(秀吉、よろしく)

秀吉(うむ。了解じゃ)

 

ここにきてようやく待機させておいた秀吉の出番のようだ。秀吉は雄二の本人と区別のつかない声まねで最後の台詞を紡ぐ。

 

秀吉(雄二)「だからここは譲ってくれ。そして、優勝したら結婚しよう。愛してる、翔子」

明久(指示していない台詞まで追加されていたけと……実は秀吉もこういった真似が好きなのかな?)

翔子「……雄二。私も愛してる……」

雄二「ま、待て……。勝手に話を進め……こぺっ!?」

 

明久は雄二が反論できないよう首を捻りあげた。

 

明久「ふはははは! これで最強の敵は封じ込めた! 残るはキミだけだ、木下 優子さん!」

優子「ひ、卑怯な……!」

 

ちなみに翔子は雄二の亡骸に抱きついて、胸元に顔を埋めている。

雄二の手足は力なく垂れ下がっているが大した問題ではない、多分。

 

優子「こうなったらアタシ一人で片付ける! 『アクティブ』を舐めないでよね!

行くわよ―試獣召喚(サモン)!」

明久「ふふっ。それはどうかな? この勝負の科目が保健体育だったことを恨むんだね!」

 

そう言ってムッツリーニに目配せする。これは元々雄二(故)が考えていた秘策である。

 

明久「行くよっ!新巻鮭(サーモン)!」

ムッツリーニ「…………試獣召喚(ボソッ)」

 

喚び声に応え、出現する召喚獣。それはたとえ優子であろうと太刀打ちできない強さを持った―

 

《保健体育》

『二年Fクラス 土屋 康太 583点

VS

二年Aクラス 木下 優子 353点』

 

優子「……え!?それ、土屋くんの……」

 

―ムッツリーニの召喚獣だ。

 

明久(これが秘策、『代理召喚(バレない反則は高等技術)』だ!)

ムッツリーニ「…………加速(ボソッ)」

優子「ほ、本当に卑怯―きゃぁっ!」

 

 

 

 

 

 

まあ要するに、雄二の自由を生け贄に勝利をもぎ取ったというわけだ。雄二が翔子が関系したことに弱いのと同様、翔子も雄二が関係したことに弱いのだ。

やり口が外道そのものだが、雄二も普段明久を陥れているので文句を言える身分ではない。

『アクティブ』のメンバー達のような「助け合う友情」でもなければ、和真と蒼介の「競い合う友情」でもない。

この二人は言わば「蹴落とし合う友情」である。それを友達関係と呼んで良いのか甚だ疑問であるが。

 

明久「だいたい、雄二の作戦が読まれていたのがいけないんじゃないか。木下さんと秀吉の力関係を考慮していなかったなんてらしくないよ?」

雄二「ぐっ。それを言われると反論できん……」

このように、雄二は翔子が相手だと冷静さを失ってしまうのである。

雄二「ところで翔子、姫路や島田は教室にいるのか?」

翔子「……確認はしてないけどまだ喫茶店でウェイトレスをやっている時間」

雄二(多分、そろそろ仕掛けてくるはずだと思うんだが……)

 

 

 

 

ムッツリーニ「…………雄二」

 

教室の前まで戻ってくると、ドアの前に立っていたムッツリーニが駆け寄ってきた。

 

雄二「ムッツリーニか。何かあったのか?」

ムッツリーニ「………ウェイトレスが連れて行かれた」

明久「えぇっ!? 姫路さんたちが!?」

雄二「やはり俺達と直接やり合っても勝ち目がないと考えたか。当然といえば当然の判断だな」

 

確かに中学時代喧嘩に明け暮れていた雄二は並の人間ならだろう。さらに、Fクラスにはその雄二を遥かに凌駕する化け物もいるのだ。相手がそう考えたと判断するのが妥当だろう。

 

明久「ってそんなことより、姫路さん達は大丈夫なの!? どこに連れて行かれたの!? 相手はどんな連中!?」

雄二「落ち着け明久。これは予想の範疇だ」

翔子「……そうなの?」

雄二「ああ。もう一度俺達に直接何かを仕掛けてくるか、あるいはまた喫茶店にちょっかいを出してくるか。そのどちらかで妨害工作を仕掛けてくることは予想できたからな」

 

雄二はどうやら今回はウェイトレスを連れ出すという喫茶店の妨害と予想しているらしい。確かにそんなことをされては売り上げに影響が出るだろう。

 

明久「なんだか随分と物騒な予想をしてたんだね。今回の場合下手をすると警察沙汰になるというのに」

雄二「引っかかることが随所にあったからな」

 

ここ最近の雄二の考えるような素振りはなにかしら違和感を感じていたからであろう。

 

ムッツリーニ「…………行き先はわかる」

 

と、おもむろに取り出したのは何かの機械。

 

明久「なにこれ? ラジオみたいに見えるけど」

ムッツリーニ「………盗聴器の受信機」

明久「オーケー。敢えて何で持ってるのかは聞かないよ」

 

これも下手したら警察沙汰になるだろう。

 

雄二「さて、場所がわかるなら簡単だ。かる~くお姫様たちを助け出すとしましょうか、王子様?」

明久「そのニヤついた目つきは気に入らないけど、今回は感謝しておくよ。姫路さん達に何かあったら、召喚大会どころの騒ぎじゃないからね」

雄二「……それが向こうの目的だろうな」

明久「え?」

雄二「とにかく、まずはあいつらを助け出そう。翔子は教室で待っていてくれ」

翔子「……わかった」

 

まず最初に翔子を危険から遠ざけようとする辺り、なんだかんだで大切にしているようだ。

 

雄二「ムッツリーニ、タイミングを見て裏から姫路たちを助けてやってくれ」

ムッツリーニ「…………わかった」

明久「雄二、僕らはどうするの?」

雄二「王子様の役目は昔から決まっているだろう?」

茶目っ気を含んだ目を明久に向ける雄二。

明久「王子様の役目って?」

雄二「お姫様をさらった悪党を退治する事さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……と、まあそんな感じで意気込んで文月学園から歩いて五分程度のカラオケボックスのパーティールームに乗り込んだのだが、

 

葉月「あ、バカなお兄ちゃんです! (モッサモッサ)」

美波「来るのが遅いわよ(モッサモッサ)」

姫路「駄目ですよ美波ちゃん、そんの言い方しちゃ(モッサモッサ)」

秀吉「心配させたかのう? (モッサモッサ)」

「「「ど う し て そ う な っ た !」」」

 

なぜか誘拐された四人は、パーティールームでドーナツを頬張りながらくつろいでいた。

周りには気絶したチンピラ七人が、縄で縛られて無造作に転がっていた。

 

雄二「……あれ、お前らがやったのか?」

美波「そんなわけないでしょ。いくらウチでも七人は無理よ」

明久「……じゃあ誰がやったの?」

秀吉「ふむ、一から説明した方が良さそうじゃな」

 

そう言って秀吉は一部始終を語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

葉月「お、お姉ちゃん……」

美波「ちょっとアンタたち! 葉月を放しなさいよ! ウチらをどうするつもり!」 

 

美波達四人はチンピラ達に葉月を人質に取られ、ろくに抵抗もできずこの部屋まで連れてこられていた。

 

チンピラA「まあそう焦んなよ。お嬢ちゃん達は吉井と坂本を呼び出すエサになってくれればいいんだから」

姫路「よ、吉井君達に何をするつもりですか!?」

チンピラB「そりゃ勿論適度に痛めつけるんだよ。かつて『悪鬼羅刹』と呼ばれた坂本だろうが、人質がいるんならろくに手出しできねぇだろうからな~」

秀吉「なんと卑怯な奴等じゃ! 根本の奴がマシに見えてくるぞい!」

 

人として最低のことをしようとしているチンピラ共を嫌悪に満ちた表情で睨む秀吉と美波。

 

チンピラC「おいおい口の聞き方に気をつけた方がいいぜ? 依頼人からはお前らをどうしようが構わないって言われてんだからよ」

『ギャハハハハハハハ!』

 

吐き気すら覚えるような笑い方をし、下卑た目で秀吉達をみるチンピラ共。秀吉と美波は悔しそうに唇を噛む。

 

チンピラA「まあしばらくおとなしくしてな無事に帰りたけりゃあよ」

「そいつの言う通りちょっとの間おとなしくしとけよガキども。巻き込まれたくなけりゃな」

『ギャハハハハハハハ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……………………は?』 

 

いつの間にか一人の男がチンピラ共の隣に立っていた。

「くたばれ」

チンピラA「がはぁあっ!」

チンピラB「げぼぉっ!」

 

そのことをその場にいる全員が認識した瞬間、チンピラの一人が顔面をぶん殴られて吹っ飛ばされ、一人を巻き込んで壁に激突して気を失った。

 

チンピラC・D「「な、なんだテメ―ぐぎゃあっ!?」」 

 

二人のチンピラの言葉が言い終わらないうちに、男は両手で二人の頭を掴み、シンバルの要領でおもいっきりぶち当てた。

 

そして男はすかさず残り三人の中で一番手近にいた一人の足を掴み、逆さ吊りにし、

 

チンピラF「な、なにするんだテメ―ほごあぁぁぁっ!」

チンピラE「く、来るな!?あがぁぁぁっ!」

 

鈍器のように別のチンピラに殴りかかった。

 

「はい、おしまい」

 

男は鈍器にしたチンピラを無造作に投げ捨てた後、即座に上半身を低く沈め、そのまま空中で一回転、後ろ足を蠍のように跳ね上げ、最後のチンピラの土手っ腹に全体重を載せた蹴りを炸裂させた。

最後の一人は肺の酸素を全て吐き出させられ、声を上げることもできずに意識を失った。

 

「さてと、仕上げだ」

 

男は倒れているチンピラ共を持参した縄で手際良く縛り上げた。

 

チンピラA「テ……テメェはなんなんだよ?…… (ゴキュッ)ゴファッ」

 

意識を取り戻したチンピラの一人がそう言うも、男に首を捻られ再び失神する。

 

「あ? 俺? 俺は―」

 

 

その男は、

 

所々はねまくったボサボサの黒髪

 

あまり手入れされていない口元の無精髭

 

すごくだらしない着方をしたスーツ

 

そして……覇気の欠片も感じない濁った目をしていた。

 

男は煙草に火をつけながら気だるげに答えた。

 

「通りすがりのちょっと無気力なおっちゃんだ」

 




原作通り姫路達は誘拐されましたが、再登場したおっちゃんがスピード解決しました。無駄に強い……
しかし、竹原の配下はまだ40人ほど残っています。

では。


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撃退

【バカテスト・地理】
ベルギー・オランダ・ルクセンブルクからなる経済協力同盟をなんというか。

柊 和真の答え
『ベネルクス三国関税同盟』

蒼介「正解だ。この三国がEUの起源なので、決して忘れないように」

土屋 康太の答え
『EC』

源太「惜しいな、だがEC(ヨーロッパ共同体)はその三国以外にも加盟国がいるので不正解だ。
…………というかまともな間違い方初めてじゃねぇか、テメェ」

吉井 明久
『ETC』

蒼介「土屋の解答にTが加わっただけでここまで正解から遠ざかるとはな……」


おっちゃん「おーガキども、大丈夫だったか?……って、なんでお前さんだけ縛られてんの?」

秀吉「色々と事情があってのう……」

 

おっちゃんは優子に拘束されたときのロープをまだ持っていたせいで、一人だけ縛られた状態であった秀吉を解放する。 

姫路「あ、あのっ、助けて頂いてありがとうございました!」

おっちゃん「あー、まぁ気にすんな。おっちゃんも頼まれただけだし」

美波「頼まれたって……誰にですか?」

おっちゃん「すまんがそいつは言えねぇ」

秀吉「ふむ、そうか……まあ助けて貰った身じゃ、文句は言えん」

おっちゃん「いやいやいや、そいつと会う機会があったら言っとけ言っとけ。ミステリアスぶってんじゃねぇよ死ね、とでも」

美波「そ、それは流石に……」

 

なぜか個人的な恨みがあるかのような物言いである。

 

葉月「あっ!だるそうなおじさん久し振りです!」

 

一段落した後、恐怖から立ち直った葉月が、おっちゃんが見知った顔だとわかり挨拶する。

 

おっちゃん「あぁ? ……あー、お前さんあのときのチビガキか」

葉月「チビガキじゃないです葉月ですっ」

おっちゃん「へー、ほー」

葉月「む~」

 

まるで興味ありませんといった態度で、二本目の煙草に火をつけながら聞き流すおっちゃんに、葉月は不満気に頬を膨らませる。

 

美波「あ、あの……葉月と知り合いなんですか?」

 

助けてもらったとは言え、こんな胡散臭さを具現化ようなオッサンと妹が知り合いなのは複雑な心境なのか、美波は恐る恐る尋ねる。

 

おっちゃん「あぁ、以前こいつらの缶蹴りに強引に巻き込まれたことがあってな。よりによってせっかく仕事を部下に押し付けることに成功した日にな……」

美波(缶蹴り?そういえば今日そんな話を聞いたわね。

……それにしても、)

缶蹴り、と聞いて美波はクラスメイトの娯楽主義者がした話を思い出す。そして、

 

美波(ダメ人間ね、この人……)

秀吉(ダメ人間じゃな……)

姫路(ダメ人間、ですね……)

 

絶体絶命のピンチを救ったおっちゃんの株価が、急激に下落し始めたようだ。

 

チンピラA「ククク……いい気になるなよ…………

俺達の連絡が途絶えたことで、直に仲間がここに突入し―んごぱっ!?」

おっちゃん「誰が喋っていいっつったよ、だるいんだからそこで死んでろよ」

 

気絶から復活し不吉なことをいい始めたチンピラを、おっちゃんが再び首をねじ切って黙らせる。

 

秀吉「お、おい!? 今こやつ大事ことを話そうとしておったぞ!?」

おっちゃん「いいんだよ。そんなもんとっくに知ってる」

 

そう言うとおっちゃんはそのチンピラの懐をまさぐり、無線機を取り出した。

 

おっちゃん「あーあー、聞こえてるかー、こっちはガキどもの救出に成功したぞー」

チンピラ×10「」

鉄人「こちら西村、北側に待機していたバカどもの鎮圧を終えました」

 

チンピラに教育指導(物理)を施し、縛り上げた状態にしたまま生徒指導の鬼は任務完遂の報告をした。

 

鉄人「さて、他のブロックのバカどもも回収し補習室に連行しなくてはな。やれやれ……まさか校内生以外に生徒指導をすることになるとは」

チンピラ×10「」

秀介「こちら鳳 秀介とその息子蒼介、西側を制圧完了」

 

木刀でチンピラ共を昏倒させた秀介と蒼介は任務完遂の報告をした。

 

秀介「ふふふ、それにしても蒼介、随分と腕を上げたようだね」

蒼介「それでもまだあなたと同じ境地には辿り着けていませんよ、父様」

秀介「焦る必要はない。お前なら辿り着けるさ、明鏡止水の境地に。今後とも日々精進したまえ」

蒼介「……わかりました」

秀介「さて、一先ず学園に戻るとしようか」

蒼介「父様、そっちは学園と逆方向です」

 

チンピラ共を一子相伝の剣術で鎮圧した後、アグレッシブ社長&御曹司は文月学園へ凱旋する。

チンピラ×10「」

和真「こちら和真、南側のチンピラ共の殲滅が終わったぜ」

 

死屍累々に積み上げられたチンピラ共の山に腰かけ、和真はつまらなそうに任務完遂の報告をした。

 

和真「はぁ………やっぱ10人程度じゃ面白くもなんともねぇな」

 

チンピラ共を瞬殺した娯楽主義者は期待はずれといった表情で文月学園へ舞い戻る。

チンピラ×10「ぐぅっ……!」

高橋「こちら高橋、東側を制圧完了」

 

チンピラ達を召喚獣のムチで縛り上げた状態で、高橋先生は淡々と任務完遂の報告をし、鉄人が来るのを待つ。

おっちゃん「全滅させたようだな、結構結構」

 

満足そうにそう呟くと、おっちゃん手に持った無線機を無造作に投げ捨てる。

 

おっちゃん「じゃあなガキども。ミスドここに置いとくから、食べながら仲間が助けに来るまでここで待ってな」

 

そう言い残し三本目の煙草に火を点けながら、おっちゃんは部屋から出ていこうとする。

 

美波「ち、ちょっと待って下さい!助けに来るって、誰がですか?」

 

事態が飲み込めていない美波は慌てておっちゃんを引き留めようとするが、おっちゃんは面倒臭そうに返事する。

 

おっちゃん「そりゃあ、お前さん達のお友達だろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秀吉「……ということがあってのう」

明久(へえ……あのおっちゃんがそんなことを)

 

秀吉達からことの顛末を聞いた明久は、かなり下の方だったおっちゃんに対する評価を上方修正する。

 

美波「でも色々とわからないことが多いわねあの人。どうして面識のある柊はともかく、西村先生達や鳳親子ともパイプがあったのかしら?」

明久「言われて見れば確かに……まあ和真なら何か知ってるんじゃない?」

秀吉「少なくとも鳳についてならおそらく知っておるじゃろうしな」

美波「それもそうね」

雄二「…………………………」

 

三人が納得するなか、雄二は難しい顔をしたままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誘拐騒ぎも解決して、喫茶店の一日目も終了したFクラスの教室。そこに明久と雄二と翔子が残っていた。(翔子には事情を説明済み。ちなみにチケットの説明の辺りで雄二が死にかけるハプニングがあったが、そこはまあ置いておこう)。

 

雄二「お前ら。そろそろ来る時間だぞ」

明久「? 来るって、誰が」

雄二「ババァだ」

明久「学園長がわざわざここに来るの?」

 

どうやらババァ=学園長ということは、いちいち説明しなくても伝わるようだ。

 

雄二「俺が呼び出した。さっき廊下で会った時に、『話を聞かせろ』ってな」

翔子「……雄二、相手は目上の人なんだから、用事があるならこちらから行かなきゃ」

雄二「用事もクソも……この一連の妨害はあのババァに原因があるはずだからな。事情を説明させないと気が済まん」

明久「ババァに原因が―えぇぇっ!? あ、あのババァ! 僕らに何か隠してたのか! そのせいで姫路さんたちが危険な目に遭いそうになるし、喫茶店の経営は苦労するし、ここは文句言ってやらないと!」

 

「……やれやれ。わざわざ来てやったのに、随分な挨拶だねぇ、ガキどもが」

 

声と同時に教室の扉が開き、学園長が姿を現す。

 

雄二「来たかババァ」

明久「でたな諸悪の根源め!」

学園長「おやおや、いつの間にかアタシが黒幕扱いされてないかい? だいたいなんで部外者までいるんだい?」

 

学園長まるで被害者であるかのように肩をすくめた後、雄二の隣にいる翔子を見据えるが、

 

翔子「……さっき雄二から無理矢理自白させた」

学園長「そ、そうかい……」

 

翔子の恫喝報告にさすがの学園長も気圧される。

そもそも雄二も話すつもりは無かった。まぁ仕方ないだろう、力関係は圧倒的に翔子が上なのだから。

 

雄二「黒幕ではないだろうが、俺達に話すべきことを話してないのは充分な裏切りだと思うがな」

学園長「ふむ……。やれやれ。賢しいヤツだと思っていけど、まさかアタシの考えに気づくとは思ってなかったよ」

雄二「最初に取引を持ち掛けられた時からおかしいとは思っていたんだ。あの話だったら、何も俺達に頼む必要はない。もっと高得点を叩き出せる優勝候補を使えばいいからな。一緒にいた和真とか、前回チャンピオンの佐伯先輩にでもな」

明久「あ、そういえばそうだね。優勝者に後から事情を話して譲ってもらうとかの手段を取れたはずだし」

雄二「そうだ。わざわざ俺達を擁立するなんて、効率が悪すぎる」

翔子「……つまり、雄二達を召喚大会に出場させる為にわざと渋った?」

雄二「そういうことになるな」

 

せれが事実なら、中々に狡猾な方法を使うクソババァである。

 

雄二「明久。俺がババァに一つの提案をしたのを覚えているか?」

明久「提案? えーっと」

学園長「科目を決めさせろってヤツかい。なるほどね。アレでアタシを試したワケかい」

雄二「ああ。めぼしい参加者に同じような提案をしている可能性を考えてな。もしそうだとしたら、俺達だけが有利になるような話しには乗ってこない。だが、ババァは提案を呑んだ」

 

雄二の提案を呑んだということは、他の人ではなく明久達が優勝しなければ学園長が困るということだ。

 

雄二「他にも学園祭の喫茶店ごときで営業妨害が出たりしていたしな。何より、俺たちの邪魔をしてくる連中が姫路たちを連れ出したりしたのが決定的だった。ただの嫌がらせならここまではしない」

学園長「そうかい。向こうはそこまで手段を選ばなかったか……すまなかったね」

 

と、突然学園長が頭を下げた。とんでもなくレアケースなことである。

 

学園長「あんたらの点数だったら集中力を乱す程度で勝手に潰れるだろうと最初は考えてたんだろうけど……決勝まで進まれて焦ったんだろうね」

雄二「こちらのタネ明かしはこれで終わりだ。今度はそっちの番だ」

学園長「はぁ……アタシの無能を晒すような話だから、できれば伏せておきたかったんだけどね……」

 

誰にも公言しないで欲しい、そんな前置きをして、学園長は明久達に真相を明かし始めた。

 

学園長「アタシの目的は如月ハイランドのペアチケットなんかじゃないのさ」

明久「ペアチケットじゃない!? どういうことですか!?」

学園長「アタシにとっちゃあ企業の企みなんかどうでもいいんだよ。アタシの目的はもう一つの賞品なのさ」

翔子「……もう一つというと、『白金の腕輪』?」

明久「ああ。あの特殊能力がつくとかなんとかってやつ?」

 

白金の腕輪は二種類ある。

一つ目は点数を二分して二対の召喚獣を同時に召喚する腕輪。

もう一つは教師の代わりに立会人になって召喚フィールドを作る腕輪。こっちは使用者の点数に応じてフィールドの広さが変化し、科目は自由に選択できる。

 

学園長「そうさ。その腕輪をアンタらに勝ち取って貰いたかったのさ」

明久「僕らが勝ち取る? 回収して欲しいじゃないわけじゃなくて?」

雄二「あのな……回収が目的なら俺たちに依頼する必要はないだろう?そもそも、回収なんて真似は極力避けたいだろうし、な」

 

雄二が学園長を揶揄するように話を振る。

 

学園長「本当にアンタはよく頭が回るねぇ……そうさ。できれば回収なんて真似はしたくない。新技術は使って見せてナンボのものだからね。デモンストレーションもなしに回収したら、新技術の存在自体を疑われることになる」

 

できればということは、最悪の場合はそれも考慮していたんだろう。

 

明久「それで、何でその『白金の腕輪』を手に入れるのが僕らじゃないとダメなんですか?」

学園長「……原因不明の欠陥が生じたからさ」

 

苦々しく顔をしかめる学園長。技術屋にとって新技術に欠陥が発生し、しかもその原因がわからないことは耐え難い恥のはずだ。それを生徒である明久達に話すのだから無理もない。

 

雄二「その欠陥は俺達であれば問題ないのか?」

学園長「お前達というか吉井だね。欠陥が生じたのは片方だけだからね。吉井が使うんなら暴走は起こらずに済むのは、不具合は入出力が一定水準を超えた時だからね。だから他の生徒には頼めなかったのさ」

明久「えーっと、つまり……?」

学園長「アンタみたいな片方が『優勝の可能性のある低得点者』のコンビが一番都合が良かったってわけさ」

明久「よくわからないけど、とりあえず褒められてるってことでいいのかな?」

雄二「いや、お前はバカだと言われているんだ」

明久「なんだとババァ!」

雄二「説明されないとわからない時点で否定できないと思うんだが……」

学園長「二つある腕輪のうちの同時召喚用は、現状だと平均点程度で暴走する可能性がある。だからそっちは吉井専用にと」

明久「雄二、これは褒められていると取っていいだよね?」

雄二「いや、バカにされてる。お前は平均点すらとれっこないバカだと」

明久「なんだとババァ!」

雄二「いい加減自分で気づけ!」

翔子「……どう解釈したら誉められてると?」

 

それは明久のみぞ知ることだ。

 

雄二「そうか。そうなると、俺達の邪魔をしてくるのは学園長の失脚を狙っている立場の人間―他校の経営者とその内通者といったところだな」

明久「雄二、そうやって僕を会話から置き去りにするのはやめて欲しいな?」

翔子「……吉井、雄二達の邪魔をするのは腕輪の暴走を阻止されたら困るってこと。そんな学園の醜聞をよしとするのはうちに生徒を取られた他校の経営者くらい」

 

のみこみが絶望的に悪い明久に、翔子がわかりやすく説明する。

 

学園長「ご名答。身内の恥を晒すみたいだけど、隠しておくわけにもいかないからね。恐らく一連の手引きは教頭の竹原によるものだね。近隣の私立校に出入りしていたなんて話も聞くし、まず間違いないさね」

明久「それじゃ、僕らの邪魔をしてきた常夏コンビとか、例のチンピラとかは」

雄二「教頭の差し金だろうな。協力している理由はわからんが」

学園長「ついでに綾倉も教頭に味方しているようさね。うまく誤魔化してるつもりかしらんが、腕輪の欠陥はおそらく人為的である以上、そんな芸当ができそうな人間は奴しかいないからね」

雄二「綾倉? 三年の学年主任がか? 実の娘がこの学校に通っているのに何を考えているんだ?」

学園長「さぁね」

 

自分に聞くなと言わんばかりに学園長は肩をすくめた。

 

 

 

 

 

「おや、気になるのですか? ならば全て説明いたしましょうか?」

 

そう言って、綾倉先生がFクラスに入って来た。

教頭の味方と、ちょうど今学園長から聞かされたところなので、四人の顔が強張る。

 

学園長「綾倉先生……教頭サイドであるアンタがアタシらになんのようだい?」

 

綾倉先生を睨みつけながら学園長が問う。しかし綾倉先生はそんな学園長の様子を気にも止めずに悩む素振りをする。

 

綾倉「うーん……口で説明するよりこちらを御覧になられた方が早く済みそうですね」

 

そう言っておもむろに携帯電話をいじくり、学園長に渡した。

 

学園長「? ………………なっ!?」

 

訝しむように携帯を覗きこんだ学園長の顔が、一瞬にして驚愕に染まった。




はい、いいところでカットします。
さて、綾倉先生の見せた物は……?


では。


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真相

【バカテスト】
AB=4、AC=3、角BAC=150度の三角形ABCの面積を求めよ

島田 美波の答え
『3』

蒼介「正解だ。
三角形の面積は1/2×sinBAC×AB×ACで求められる」

吉井 明久の答え
「わかりません!!!!!」

飛鳥「そんな力強く書かなくても……」


綾倉先生の携帯電話に表示されていたのは、なんと竹原教頭が警察に連行されている画像であった。

明久・雄二・翔子の三人もその画像を見て驚愕する。

無理もない、この一連のゴタゴタの首謀者だとついさっき聞かされていた相手が、既にドロップアウトしていたのだから。

 

雄二「……綾倉先生、どういうことか説明してもらおうか」

綾倉「答えられることであるなら」

 

雄二は値踏みするように綾倉先生を睨めつけるが、睨めつけられた本人はどこ吹く風、いつものニコニコ顔で微笑んでいる。

 

雄二「まず、なんで竹原は逮捕されたんだ?」

綾倉「盗聴した情報の漏洩と暴力教唆が主な理由ですね」

学園長「盗聴!? まさか学園長室にかい!?」

綾倉「ええ、ほんの少し前からですね。

……ああご心配無く、先程外して処分しておきましたので」

雄二「なるほど……あいつらは俺達の妨害してきたが、よく考えれば俺達とババァのつながってるとバレてたのは不可解だな」

 

ちなみに日本の法では、「販売・購入・設置」「盗聴波の傍受」だけでは盗聴器を罪に問うことはできない。

しかし傍受した情報を第三者に漏らすと電波法に触れてしまう。

 

雄二「暴行教唆ってことは、姫路達を拐ったあのチンピラどもの目的は……」

綾倉「ええ、決勝に進出したあなた達を、大会に出場できないよう痛めつけることです」

学園長「…………それだけのことがわかっていながら、アンタは教頭の側にいたのにもかかわらず止めなかったのかい? アンタ、それでも教育者かい?」

綾倉「そうは言っても未遂なら証拠不十分とされる可能性がありました。あの男はその方面にもコネがあったので。確実に検挙するために、言い逃れできない証拠が欲しかったのですよ」

 

学園長は責めるように言うが、それでも綾倉先生は表情を崩さない。

 

明久「ふざけるな! それって僕達を利用したってことじゃないか! 姫路さん達にもしものことがあったらどうするつもりだったんだよ!」

 

人質にされた生徒の安全を度外視していたかのような綾倉先生の態度に明久は憤慨し、彼の胸ぐらを乱暴に掴む。

 

綾倉「ゲホッ……まるで私が彼女達を見捨てたかのような言い方ですね」

明久「違うとでも言うのかよ! たまたまおっちゃんや和真達が助けてくれたから良かったものの-」

 

 

 

 

 

 

「そんな都合良すぎる偶然があってたまるかよ…」

 

呆れるような声とともに、和真、蒼介、秀介、鉄人、高橋先生の5人が教室に入ってきた。

 

明久「和真!? 鉄人!? ど、どういうこと!?」

鉄人「吉井、まずは綾倉先生から手を離せ。それと鉄人ではなく西村先生と呼べ」

 

鉄人に咎められて、明久は一先ず綾倉先生の胸ぐらから手を離した。

 

雄二「なるほど……ずっと都合が良すぎると思ってたんだ、竹原があちこちに待機させていたチンピラ共が全滅したことも、俺達と大したつながりがないオッサンが姫路達を助けに来たこともな。綾倉先生、アンタが全部裏から手を回してたな」

綾倉「ええ、生徒を危険に晒すわけにはいかないので、彼らには随分と手伝ってもらいました。特に、柊君には一番身近で吉井君の護衛を」 

 

その言葉を聞き、明久は四回戦前の出来事を思い出す。

 

どうして和真は明久がチンピラ達に襲われることを、前以て知っていたかのように行動したのか。

和真は直感だと説明したが、和真の勘は自分に関したことでなければ必中というわけではないのだ。

種明かしをすれば、竹原の策略を聞いていた綾倉先生が、和真に情報をリークしていたのである。

 

綾倉「あの男は、私が腕輪の欠陥の糾弾を提案しなかろうと、遅かれ早かれ行動していたでしょう。

三年学年主任として、生徒に危害を及ぼそうが気にも留めない教師を私は許せません。

また父として、娘が通うこの学園を潰そうとする輩を放っておくつもりもありません」

 

つまり、それが綾倉先生の目的。

腕輪に欠陥が生じるよう細工したのも、独りよがりな野心で学園を脅かそうとする竹原を追放するための罠ということである。

彼は生徒を見捨てたのではない。自分の出来る限りのの手を尽くして、生徒を守ろうと行動したのだ。

 

明久「あ、あの……さっきはすみません……」

 

先程早とちりで怒りに任せて暴行を加えてしまったので、明久はばつが悪そうに謝罪する。

 

綾倉「気にする必要はありません。

友達のために怒ることができることは、とても素晴らしいことだと私は思っていますよ」

明久「先生……」

鉄人「まあお前は後で指導するがな」

明久「台無しだよ鉄人!」

鉄人「だから西村先生と呼べ!」

 

そんな感じで教室内で騒がしくなってきたのだが、学園長は苦々しい表情で綾倉先生他五名にに疑問を投げかける。

 

学園長「……そんな大事なことを、どうしてアタシに黙ってたんだい?」

 

学年主任、生徒指導、スポンサーのトップを含めた学園の関係者が、自分の知らないところで『竹原(社会的)抹殺計画』を進めていたことが、学園長にとっては面白くないようだ。

その疑問にそれぞれが答えた。

 

綾倉「たまには学園長を手のひらで転がしたくなったので」

高橋「教えるメリットが無かったので」

鉄人「開発にかまけてばかりいる学園長にはいい薬になるかと」

秀介「私は忙しいので」

蒼介「同じく」

和真「ばーさんがやきもきしているのが笑えるから」

学園長「あんた達とは個別にじっくり話し合う必要があるようだね………………まあいい。綾倉先生、腕輪の欠陥についてはどうするつもりだい? あしたは決勝戦だよ?」

綾倉「腕輪の欠陥ならすでに修復していますよ」

学園長「…………何から何まであんたの計算通りってわけかい……なんか腹立たしいね」

 

学園長は疲れたように嘆息する。この男、ありとあらゆる点で学園長より一枚上手だったようだ。

 

雄二「ということは、学園の脅威は全て片付いたわけだな」

明久「そうだね。あとは和真達にわざと負けて貰って、教室の改修をしてもらって、めでたしめでたしだね」

学園長「? なに言ってるんだい?学園の問題が片付いたんだから-」

和真「はいばーさんストーップ!」

 

学園長が何かを言いかけるが、和真はそれを制止する。それを見た雄二は、なにやら嫌そうな表情になる。

 

学園長「……ったく、お前はどこまでも自由だね」

明久「? 学園長、どうしたんですか?」

学園長「いや、なんでもないさね」

明久「???」




というわけで、竹原に執行された処刑方法は「これといった描写も無くリタイアさせられている」でした。
ある意味何よりも悲惨な末路ですね。

綾倉先生はどうやら腹黒属性&親バカのようです。
腕輪の欠陥は既に修理してある以上、もし明久達が脱落しても学園長室から盗聴器を回収し、他校とつながっている証拠を学園長にリークするだけで竹原は詰んでました。
つまり事態がどう転ぼうが竹原は学園から追放される運命でした。
学園の危機など無かった。


では。


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牙をむく槍使い

【バカテスト・英語】
次の文を英訳しなさい。

法廷は彼に有罪判決を下した

五十嵐 源太の答え
『The court judged him guilty.』

蒼介「正解だ。英訳は英語の問題の中でも頭ひとつ抜けて難しいのだが、流石は帰国子女だな」


坂本 雄二の答え
『The court judged Muttulini guilty.』

和真「将来的にそうなるかもしれんがテストで遊ぶんじゃねぇよ」



文月学園のグラウンドの隣に設置されたテニスコートで、二人の男子生徒がテニスをしていた。

柊和真と鳳蒼介。

どちらも二年生で最も有名であろう生徒の二人だ。

 

蒼介「それで、例のごろつき共に動きは無かったのか? ()()閏年高校の不良達がやられっぱなしで引き下がるとは思えないんだが」

 

蒼介はネットにつめてきた和真の裏をかき、トップスピンロブを放つ。それに対して和真は信じられないようなスピードでボールに追い着き、強烈なフラットショットで返球する。

 

和真「だよな。遅かれ早かれ仲間増やして報復に来るだろうぜ。俺としてはさっさと沈めたいから、早いうちに来やがれって思うんだがよ」

 

蒼介はラケットの角度を調節し、和真のパワーショットの威力を受け流し、ネット際に落とすようにドロップボレーを放った。

 

蒼介「まあ今はそのことを気にしても仕方がない。……それはそうとカズマ、召喚大会は楽しめたか?」

 

それを読んでいたかのように、和真は速攻で再びネットまでつめてきて、フルパワーでボレーを放った。

 

和真「かなり楽しめたぜ。綾倉先生にバレないようにトーナメント表いじってもらった甲斐があったってもんよ」

 

蒼介は球威に押されながらもなんとか返球に成功。しかし和真はお構い無しに第二波をお見舞いする。

 

蒼介「……生徒会長として一言言いたいところだが、まあいい。その召喚大会も決勝戦、しかも相手は同じクラスの二人。……聞くまでもないが、お前はどうするつもりだ?」

 

蒼介はボールの威力を殺しながら、再びトップスピンロブを放つ。このトップスピンロブは先程の相手の裏をかくためのものではなく、苦し紛れの一手に過ぎない。

 

和真「んなもん決まってる……ぜっ!」

蒼介「ッ……!」

 

和真は凄まじい跳躍力でロブ気味のボールにラケットを届かせ、そのまま蒼介の後ろのコートにスマッシュを叩き込む。

それに対して蒼介は和真に匹敵するスピードでボールに追い付いたが、威力を受け流しきれずに弾かれてしまった。

 

和真「俺は俺のやりたいようにやるだけさ、いつだってな。 6-3(シックスゲームス トゥスリー)で俺の勝ち♪」

蒼介「……お前らしいな。……これで3連敗か」

 

 

 

中林「なんでアンタ達そんな超人的なバトルしながら悠長に会話できるのよ……」

 

女子テニス部次期キャプテンの疑問に答える者は誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明久「さてと。行こうか雄二、和真」

雄二「そうだな。島田、俺達は抜けるが大丈夫か?」

美波「大丈夫じゃなくても行かないとダメでしょうが。決勝戦なんだからね?」

 

店の手伝いその他諸々をしているうちに、決勝戦の時間になった。その他諸々の内容については後日語ることにする。

 

姫路「後で私たちも応援に行きますね」

葉月「お兄ちゃん達。ファイトです!」

秀吉「どちらも頑張るのじゃぞ!」

ムッツリーニ「………厨房は任せた」

翔子「……雄二、頑張って」

 

クラスメイトからの熱い激励。一人全くぶれない人がいるのだがいつものことなので和真は特に気にしていない。

 

明久「あはは、真剣に闘うわけじゃないんだからそんなオーバーな……」

和真「…………」

雄二「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

雄二「ほほぅ。ずいぶんと観客が多いな」

明久「流石は決勝戦だね」

 

会場を前に明久は、闘う気もないのに緊張しているような様子であった。

 

「吉井君と坂本くん。入場が始まりますので急いでください」 

 

明久達の姿を見つけた係員の先生が手招きをしている。こうして係員をわざわざ配置しているあたり、決勝戦は今までの試合とは扱いが違うらしい。

 

『さて皆様。長らくお待たせ致しました! これより試験召喚システムによる召喚大会の決勝戦を行います!

では、出場選手の入場です!』

 

「さ、入場してください」

 

先生に促され、明久と雄二は軽く頷き合ってから、観衆の前に歩み出ていった。

 

『二年Fクラス所属・坂本 雄二君と、同じくFクラス所属・吉井 明久君です! 皆様拍手でお出迎え下さい』

 

盛大な拍手と共に入場する明久と雄二。

 

『そして対する選手は、二年Fクラス所属・柊和真君と、二年Aクラス所属・大門徹君です! 皆様、こちらも拍手でお出迎え下さい!』

 

先程よりもずっと大きな拍手を受けながら、和真と徹の二人は明久達の前にやってきた。この辺はまあ、今までの試合からの期待度の差であろう。

 

『なんと、決勝に進出した四名のうち三人が、二年生の最下級であるFクラスの生徒です。 これはFクラスが最下級という認識を改める必要があるかもしれません』

 

雄二(あの司会、嬉しいことを言ってくれるな)

明久(だね。姫路さんのお父さんに好印象になるね)

和真(まあ総合的にはバカなのは間違いねぇがな)

明久(シッ!)

 

その後司会が観客に試験召喚システムの説明を一通りする。あくまでこの大会はPRが目的なのでこういうところを欠かしてはいけないのである。

 

『それでは試合に入りましょう! 選手の皆さん、どうぞ!』

 

説明も終わり、審判役の先生が明久達の前に立つ。

 

「「「「試獣召喚(サモン)!」」」」

 

掛け声を上げ、それぞれの召喚獣が出現した。

明久達の召喚は木刀orメリケンサック+特効服と、和真達の召喚獣に比べて装備が貧相なのはご愛嬌。

 

 

《日本史》

『Fクラス 坂本 雄二 337点

Fクラス 吉井 明久 241点

VS

Fクラス 柊 和真 322点

Aクラス 大門 徹 281点』

 

 

『それでは、召喚大会決勝戦、開始!』

 

それぞれの点数がディスプレイに表示されるのを確認すると、司会の人は戦いの引き金を引いた。

 

和真「以前と比べて随分と上がったな。Aクラス並の成績じゃねぇか」

明久「この1ヶ月和真と雄二に散々教えてもらったからね。まあこの教科以外は変わってないけどね」

徹「なるほど、それで坂本の点数も伸びてるわけだね」

雄二「明久の家に入り浸ってたお陰で、翔子にあらぬ疑いをかけられたりしたがな……」

 

明久はAクラスとの試召戦争後、謎のおっちゃんのアドバイスを受け、ひたすら日本史をとりくんでいたのである。ちなみに和真はともかく雄二は普通なら明久を助けたりなどしないのだが、雄二はAクラスへのリベンジを狙っているので協力した。

 

明久「和真こそどうしたのさ、その点数。前は400点じゃ無かった?」

和真「まぁハンデとしちゃこのくらいだろ?」

明久「え?それってどういう-」

 

 

 

 

和真「こういう意味だよ!」

明久「えっ-」

 

明久の台詞が言い終わらないうちに、〈和真〉は槍を構えて襲いかかった。 

 

明久「うわぁ!?」

 

突然の反応に面食らうも〈明久〉は体を大きく捻ることで必殺の威力を持った〈和真〉の槍を間一髪でかわす。

 

雄二「やっぱりそうかよ!」

明久「やっぱりって、どういうこと雄二!?」

雄二「こいつらは、ハナからわざと負けるつもりなんざねぇってことだよ!」

明久「えぇ!?」

 

全く予想してなかった事実に明久は困惑する。

無理もない、この試合は姫路の転校がかかった大事な試合なのだから。

 

徹「そこまでわかってるなら話は早い! 君の相手は僕だよ!」

雄二「ぐっ……!」

 

〈徹〉はガントレットで〈雄二〉をぶん殴る。なんとかメリケンサックで防御したためダメージは無いが、ガードが甘かったのか勢いは殺しきれず〈雄二〉吹っ飛ばされる。

 

徹「逃がすか!」

 

ぶっ飛んだ〈雄二〉を徹は召喚獣とともに追っていく。放っておけばろくに指示も出せずに戦死すると判断した雄二は苦肉の決断をする。

 

雄二「明久! 和真はお前がどうにかしろ!」

 

この場の戦局を明久に託し、雄二は徹を追っていった。しかしこちらの戦場を任された明久は、未だ目の前の現実を許容できないでいた。

 

明久「なに考えてるのさ和真!? 僕達がこの試合に勝たないとどうなるのかわかってるの!?」

和真「知ったこっちゃねぇな。お前の言いたぇことはそれだけか?

 

 

 

 

ならさっさと死ね」

 

和真は一片の慈悲すらない冷たい目で明久を一瞥してから、〈和真〉は必殺の槍で〈明久〉に襲いかかった。

 




和真君暴走!
一体どうしてしまったのか!? そして、果たして明久に勝ち目はあるのか?
徹「これ完全に僕達が悪役の構図だよね」
和真「ラスボスと言えラスボスと」

では。


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闘う理由

【バカテスト・現代文】
次の四字熟語の意味を答えなさい。

漱石沈流

柊 和真の答え
『負け惜しみが強く、自分の意見をあくまでも押し通したり、こじつけなどが上手いこと』

蒼介「正解だ。明治の文豪・塩原金之助のペンネーム『夏目漱石』はこの四字熟語に由来する」
 

吉井 明久の答え
『gibu me 千円札!』

源太「あのよぉ……本編は現在シリアスモードなんだからもうちょっとまともな回答にしろよ……
gibu じゃなくてgiveだしな……」



【和真VS明久】

 

明久「ほんとにどうしちゃったのさ!? 約束が違うじゃないか!」

和真「……」

 

明久は抗議するが和真は何も言わず、容赦なく巨槍が振るわれる。

以前までの〈明久〉ならば操作性云々以前にそのスピードに着いていくことができず、なすすべもなくやられていただろう。だが、Aクラス相当の点数をとり召喚獣のスペックが大幅に強化されたことにより、〈和真〉の猛攻をなんとか紙一重で交わすことができている。

 

明久「君が勝ってしまったら、学園長は教室を改修してくれないんだよ!? そうなったら……姫路さんは転校してしまうんだよ!?」

和真「…………」

 

明久は呼び掛けるが和真はそれを無視し、〈和真〉は槍をやや短く持って明久の召喚獣に接近した。規格外の腕力から繰り出される薙ぎ払いを、しかし〈明久〉は木刀でガードする。召喚獣のスペックが大幅に上がったとはいえ、〈和真〉と〈明久〉のパワーには覆し難いほどの圧倒的な差がある。普通にガードすれば確実に木刀ごと粉砕されてしまうだろう。

しかし〈明久〉はガード直後、力が加わった方向に自発的に飛ぶことにより、木刀にかかるパワーを軽減した。

 

明久「こんなのおかしいよ! 僕達は何のためこの清涼祭を頑張って来たんだよ!? 何のために、この召喚大会に出たんだよ!? 姫路さんのためじゃないのかよ! 答えろよ和真!」

和真「………………」

 

明久が問い詰めるが、やはり和真は冷たい表情のまま何も答えない。

〈和真〉は短く持った槍をアッパーのようなフォームで殴りかかる。〈明久〉はそれをかわすが、〈和真〉は即座に槍で上からぶっ叩く。 さすがに避けきることができず、槍の先が〈明久〉の肩をかすめる。たったそれだけの接触で明久の体に絶叫してしまいそうになるほどの激痛が走るが、明久はなんとか踏みとどまる。

 

明久「和真は姫路さんがいなくなってもいいの!? あの時協力してくれると言ったのは嘘だったの!? ねぇ……答えてよ…………!」

和真「……………………」

 

明久の悲痛な問いかけに、しかし和真は冷たい表情を崩すことはない。

怯んだ〈明久〉になおも〈和真〉情け容赦ない追撃を加える。〈明久〉もなんとかその攻撃を捌いていくが、防戦一方なのば誰の目にも明らかである。

 

明久「最後はいつも皆を助けてくれたじゃないか! たまにえげつないことをしても、僕達を過酷な状況に追い込んだりしても、本当に困っているときは手を差し伸べてくれたじゃないか! どうして姫路さんをこの学校から追い出そうとするのさ!?

…………なぁ…………答えろよ…!」

和真「…………………………」

 

怒りさえ滲ませた明久の糾弾すら、和真は気にも留めることはない。

〈和真〉は〈明久〉の手に巨槍を叩きつけた。

明久の手に激痛が走り、攻撃を喰らった〈明久〉も木刀を取り落とす。いっさいの躊躇もなく、〈和真〉はとどめとばかりに巨槍を降り下ろした。

 

 

 

明久「おい…………答えろよ………この馬鹿野郎ォォォォォォォォォォ!」

 

降り下ろされた槍の側面を、〈明久〉は全力で殴りつけた。骨がへし折れたのではないかと思うほどの痛みが明久の手にフィードバックされたが、槍の軌道をずらすことに成功し、そのまま槍は地面に激突した。

 

 

《日本史》

『Fクラス 吉井 明久 195点

VS

Fクラス 柊 和真 322点』

 

真「…………お前はそれで良いのか?」

明久「え……?」

 

戦闘体制を一旦とき、槍の構えを崩させながら和真はようやく口を開き、明久に問いかけた。

 

和真「お前のその点数……この1ヶ月、お前がひたすら努力したのは試召戦争のため、ひいては姫路のため……そうだろ?」

明久「そ、それがどうしたの-」

和真「甘ったれてんじゃねぇよ!」

明久「ぐぅ!? がはぁっ……!」

 

〈和真〉は〈明久〉を殴り倒す。フィードバックの影響で思わず胃液が飛び出そうになり、召喚獣は腹を抱えてその場にうずくまる。

 

和真「相手に勝ちを譲ってもらう? そんなみっともない勝ち方でいいとでも思ってんのかよ? 」

明久「いいじゃないかそれでも! 姫路さんがそれで救われるなら! 僕は、誰かから誉められたくてこの大会に出場したんじゃない!」

 

今度は〈明久〉が〈和真〉をぶん殴った。

〈和真〉の頬が腫れ上がるが、当然本体の和真には何の影響もない。

 

和真「んなこと見りゃわかんだよ! 俺が言いてぇのはな、確かに今俺がお前に勝ちを譲りゃ今回は助かる!だがよぉ、それから先はどうするんだよ!」

明久「それから……先……?」

和真「これから先も姫路には、Fクラスには困難が待ち受けている!これは確定だ、俺の直感がそう言っている!今そんな体たらくでこの先お前は姫路を守れんのかよ!」

明久「うぐぅぅぅ…………!」

 

〈和真〉は〈明久〉に痛烈なローキックを浴びせる。

 

和真「それだけじゃねぇ! 俺達はこの先試召戦争でAクラスに勝たなきゃならねぇ! だがよぉ、俺達だって無敵じゃねぇ! 現にこの大会で俺は梓先輩にボコられた! 」

 

反撃を許さず〈和真〉の拳が〈明久〉の顔面に突き刺さる。

 

和真「俺や翔子や姫路だってやられるときはやられるんだよ! それでお前は、俺達が全滅したとしてどうするんだ? 今みてぇに相手に勝ちを譲ってて貰うよう懇願すんのか!? あぁ!?」

明久「ぐ……ぅ…………!」

 

〈和真に〉が〈明久〉を蹴り飛す。

度重なる暴行を受け、明久はあまりの激痛に意識が飛びそうになるが、気絶寸前で唇を噛み千切ることでなんとか意識を繋いだ。

 

 

《日本史》

『Fクラス 吉井 明久 102点

VS

Fクラス 柊 和真 299点』

 

 

和真「お前が大切に思っている人なら、お前の手で守れよ! 行く手に立ち塞がる障害(オレ)は、力づくで排除してみろよ!」

明久「……和真…………でも…………」

和真「お前はまだ踏ん切りがつかねぇのか…………

だったら、その甘えを絶ち切ってやるよ」

 

そう吐き捨てた後、〈和真〉は槍を投擲するモーションになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【徹VS雄二】

 

雄二「オラァッ!」

徹「ッ………!」

 

〈雄二〉のメリケンサックが〈徹〉に突き刺さる。

それに対して〈徹〉はガントレットで反撃するが、〈雄二〉はバックステップでなんなくかわす。

雄二も小暮や飛鳥と同様、フットワーク重視のヒット&アウェイ戦法、またもや徹にとって相性が悪い相手だ。それに加えて〈雄二〉の武器はメリケンサックなので、それほど操作が上手いわけではない雄二でも……

 

雄二「喰らえ!」

徹(チィッ! 顔面殴られたら流石にのけぞるか……!)

 

相手の急所を正確に突くことができる。

これでは、飛鳥と戦ったときのような戦法は通用しない。

 

 

《日本史》

『Fクラス 坂本 雄二 319点

VS

Aクラス 大門 徹 201点』

 

 

一方、雄二の方も余裕たっぷりというわけではなかった。表面上は至極余裕たっぷりの笑みを浮かべてはいるものの、内心ではもう一方の戦場が気になって仕方がなかった。

 

雄二(操作技術に一日の長があるとはいえ、それだけで明久が和真を倒せるとは思えねぇ……早いとここいつを倒してあっちに合流しねぇと……)

 

そんなことを思いながら、再び〈雄二〉は〈徹〉の顔面をぶん殴った。

 

 

 

 

しかし、

 

ガキィィィイイン!

 

雄二「なぁっ!?」

 

〈雄二〉の拳が〈徹〉の顔面をとらえたると同時に、〈徹〉の拳も〈雄二〉の顔面に突き刺さっていた。

 

 

《日本史》

『Fクラス 坂本 雄二 228点

VS

Aクラス 大門 徹 163点』

 

 

徹「本当にこの召喚大会は災難続きだよ……

自分の召喚獣を武器にされたり、女装教唆の馬鹿に出くわしたり、まともに闘った相手が皆相性の悪い相手だったり……やれやれ……

 

 

良かったことと言えば、その手の輩の対処法が手に入ったぐらいだよ」

 

勝負は、まだ始まったばかりである。




以上です。
徹君は新技『クロスカウンター』を習得した。
まあ和真君みたいなリーチの長い武器が相手だと使えないんですが。詳しい説明は次回で。

中盤の明久の召喚獣を一方的にボコるシーンでは、実は全力でていません。もしそうならもう戦死してます。
逆に、序盤の攻撃はガチで潰しにかかってます。
喰らう=致命傷です。

激化する召喚大会決勝、果たして勝つのはどちらだ?

では


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決意

【バカテスト・日本史】
ホトトギスという語句を使って、豊臣秀吉を指す俳句を答えなさい。

霧島 翔子の答え
『鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス』

蒼介「正解だ。ちなみにこれらの俳句は本人達が読んだものではない。安土桃山文化を調べればわかるが、派手さを追求するだけの戦国武将が風流を理解する心を持っていたとは思えん」

吉井 明久の答え
『鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス』

飛鳥「職員室で日本史の先生が吉井君の答案の採点後号泣したそうよ」

柊 和真の答え
『ホトトギス たとえ鳴こうが 殺すまで』

蒼介「残酷過ぎるわ! 点数調整が目的とはいえはっちゃけすぎだろう!」

玉野 美紀の答え
『啼かぬなら 啼かせてみせよう 男の娘』

飛鳥「ホトトギスはどこ行ったのよホトトギスは」


雄二「オラァ!」

 

即座に拳を引き戻し、〈雄二〉は再びメリケンサックで殴りかかる。しかし、

 

徹「甘いね!」

 

攻撃があたる直前、〈徹〉もガントレットで反撃した。またしてもお互いの拳が再び相手の顔面に突き刺さる。

 

 

《日本史》

『Fクラス 坂本 雄二 133点

VS

Aクラス 大門 徹 114点』

 

 

これが対近接専用技『クロスカウンター』。

狩りは相手を狩る瞬間が最も危険である。

梓・飛鳥ペア戦のときと同様に、基本的に攻撃中は相手の攻撃を回避もガードも難しいのだ。徹はその瞬間を突いて、スピード負けしている雄二に反撃している。

当然相手の攻撃をまともに喰らうことになるのだが、それこそ徹の独壇場、耐久性では遥かに雄二を上回っている。

 

これが大門徹の真骨頂。相手の攻撃を真正面から受け止め反撃する、カウンター特化の重戦車。

 

雄二(クソッ……このままじゃ確実にこっちがくたばる!

 

 

 

 

 

…………ん? 待てよ………………試してみるか)

 

何か勘づいたのか、〈雄二〉は再び拳を構えた。

 

徹(バカの一つ覚えか……期待外れだよ、坂本 雄二)

 

雄二に軽い失望を覚えつつ、徹もクロスカウンターの準備をする。そして〈〉雄二はまたメリケンサックでぶん殴った、

 

 

 

 

 

徹の召喚獣のガントレットに。

 

徹「なっ!? …このぉ!」

 

一瞬面食らうものの、すぐに切り替えて拳を押し返そうとする〈徹〉。

二体の拳は拮抗するかに思えたが、〈雄二〉が〈徹〉を吹き飛ばした。

 

徹「しまっ……!」

 

雄二と徹の初期の点数には結構な差がある。にもかかわらず、クロスカウンターで雄二のダメージの方がが大きかったのは、徹が防御力を重視したスペックであることと、雄二の防御力を軽視したスペックのせいであろう。しかし、どうやら腕力のみならば雄二に分があったようだ。

 

雄二「とどめだ!」

 

弾かれて空中で身動きがとれなくなっている〈徹〉の顔面に、〈雄二〉の両拳がクリーンヒットした。ダンプカーの衝突に匹敵するほどの直撃×2、防御に秀でた徹の召喚獣といえども、100点そこそこ程度では流石に耐えきれない。

 

雄二「よし、勝っ-」

 

 

 

 

ズガァァァァァァアアァァァン!!!

 

雄二が勝利を確信した瞬間、突如襲来した巨槍に〈雄二〉が貫かれ、そのまま召喚フィールドの端に叩きつけられる。耳をつんざくような轟音が、この不意打ちがどれだけの威力であったかを物語っている。

 

 

《日本史》

『Fクラス 坂本 雄二 戦死

VS

Aクラス 大門 徹 戦死

Fクラス 柊 和真 299点』

 

 

和真「これでイーブンだな」

 

いつのまにかこちらに来ていた和真は、突き刺さった槍を召喚獣に回収させた。

 

明久「ちょっ、和真! ?君の相手は僕じゃなかったのかよ!?」

和真「これはタッグマッチだぜ? もう片方が隙だらけならそっちを狙うだろうが」

明久「だからってそんな不意打ち、和真のすることじゃないよ!」

和真「なんで俺がお前のイメージに沿って行動しなきゃなんねぇんだよ。俺のルールは俺が決める 、俺は誰にも囚われたりはしねぇ。まあそんな訳で徹と雄二、邪魔だから下がってろ」

徹「はいはい」

 

和真に促され、徹はさっさと移動していった。

表面上は冷静に振る舞いながら、血が出そうなほど拳を握りしめながら。

 

雄二「くそっ、油断した…………明久、和真の撃破はお前に任せた。負けたら承知しねぇぞ」

 

そう言って雄二もすごすごと引き下がる。

 

和真「さぁて、これでお前の味方はいなくなった。

……で、どうするんだ?」

明久「…………」 

 

前髪をいじりながら和真は問いかけるが、明久は押し黙ったまま目を伏せている。

 

和真「姫路の転校を阻止したけりゃ、俺をぶっ倒す必要がある。だが、俺とお前じゃあ力の差がありすぎる。お前が俺を上回っているのは操作技術だけだ」

 

それは決して自信過剰な訳でも、明久を見くびっているわけでもない、純然たる事実。残り点数、召喚獣のスペック、武器の強さ、戦術性など、敗北する要素が揃いすぎている。まさに『オンリーワン』と『パーフェクト』の構図なのだ。

 

和真「……それでお前は諦めるのか?まぁ姫路は優しいからな、ここでお前がギブアップしようが責めやしね-」

明久「……める……だろ……」

和真「あん? 何だって?」

 

 

 

明久「諦めるわけないだろ!!

上等だよ! 僕は君をぶっ倒して優勝してやる!

君という壁が立ち塞がるなら殴り壊す!

勝利への道がなければ創りだしてやる!

 

僕を……誰だと思っている!!!」

 

明久の瞳から迷いが消え、〈明久〉も木刀を固く固く握りしめる。相手が学年6位の優等生だろうと、Fクラス最強の矛だろうと、大切な友人だろうと関係ない!

明久の頭に姫路を見捨てる選択肢など、どこにも存在しないのである!

 

和真「ほぉ、俺に勝てる気でいんのかよ?

そこまでの啖呵を切ったんだ、何か勝てる根拠があるんだろうな?」

 

興味半分、挑発半分で和真は問いかける。

 

明久「……前に姫路さんが言っていた

 

 

 

『好きな人の為なら頑張れる』って!」

 

啖呵とともに〈明久〉が木刀を握りしめて突撃する。〈和真〉はタイミングを合わせて槍を薙ぎ払ったが、槍が命中する直前に〈明久〉はスライディングでそれを潜り抜ける。

槍を振り切った後〈和真〉は即座に二撃目を上から叩きつけるが、〈明久〉は降り下ろされた槍を木刀で受け流した。受け流しただけなので力の勢いは殺されることなく、槍はそのまま地面に叩きつけられた。

〈和真〉が槍を引き戻すまでの間、その僅かな隙を逃さず〈明久〉は高速で踏み込み、木刀で思い切り殴りつけた。

しかし〈和真〉は殴られた瞬間に自分から後ろに飛ぶことで、ある程度威力を弱めることに成功する。〈和真〉は防御力を完全に度外視したスペックなので、このアクションを行っていなければ即死していただろう。

 

 

《日本史》

『Fクラス 吉井 明久 102点

VS

Fクラス 柊 和真 146点』

 

 

明久「僕も今この瞬間、心からそう思ったよ」

和真(へぇ……こいつの強さがここまでとはな)

 

これが吉井明久の全力。

急上昇した召喚獣のスペックを余すところ無く十全に発揮する操作技術は和真のそれを遥かに上回っている。これに対抗できるのは生徒の中では今のところ佐伯梓ぐらいであろう。

今の明久の強さはFクラスレベルの点数のときとは比べ物にならない。どれだけ優れた操作技術を持っていようが、操作する召喚獣が劣悪なスペックでは大した戦力にはなり得ない。『弘法は筆を選ばず』などということわざがあるが、空海だってちゃんとした筆を選んだ方が、より力を発揮できるはずなのである。

 

明久「僕と雄二はあらゆる策を使ってこの決勝戦まで勝ち進んだ。でも君にはそんなもの通用しないよね?

だから……和真! 君は小細工なしの真っ向勝負でぶっ倒してやる!」

和真「……いいね、ククク……やっと面白くなってきたじゃねぇか!」

 

満足そうにそう言った後、〈和真〉は突如槍を真っ二つにへし折った。

 

和真「やっぱ喧嘩はそうでなくちゃなあ! 来いよ明久! 俺の全力をもって狩りとってやるよ!」

 

〈和真〉が刃先のついていない方の棒をゴミのように放り投げる傍ら、和真は実に凶悪そうな笑みを浮かべる。

獣が牙をむく行為が原点とされる、この上なく攻撃的な笑みを。

 




徹君「はいはい」(ぐぬぬぬぬぬ)
『アクティブ』のメンバーだけあって、徹君も相当の負けず嫌いなようです。
徹君はまだまだ発展途上です。
明久のように攻撃を受け流せてこそ一流。

前回と今回の和真君は説得モードでした。
あくまでも和真君にとっては趣味なので、明久が弱いままぶちのめしても意味ナインです。
しかし明久が本気になったので、次回の和真君は一切容赦しません。南無。

吉井 明久
・性質……速度重視型
・ステータス
(日本史)
攻撃力……C+
機動力……B+
防御力……C+

大幅に強化された明久の召喚獣。
このスペックに操作技術が加わるためかなり協力。
しかし戦闘の経験はあまり無いため、戦いのテクニックは佐伯 梓に劣る。


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決勝戦決着

【バカテスト・現代文】
次の()に適語を入れ、ことわざを完成させなさい

塵も積もれば()

柊 和真の答え
(山となる)

蒼介「正解だ。特に言うことは無い」

島田 美波の答え
(大和成る)

徹「随分大層な物が出来上がったね」

木下 秀吉の答え
(邪魔になる)

蒼介「…………確かにそうだが……」

吉井 明久の答え
(DUSKINに依頼)

徹「業者呼んでんじゃねぇよ馬鹿」



 

《日本史》

『Fクラス 吉井 明久 102点

VS

Fクラス 柊 和真 146点』

 

点数をAクラスレベルにまで昇華させた明久の召喚獣は以前までのような貧弱なスペックではない。

明久に比べれば操作技術が未熟な和真では、あのような巨大な槍で闘えば隙を突かれて敗北する可能性は決して低くない。

和真は先日の佐伯梓との闘いで、自分がまだ槍を十全に扱えていないことを自覚していた。

故に、躊躇無くへし折った。和真は一見大雑把に見えて、相手の勝てる要素を念入りに潰していく慎重さを備えているのである。

 

和真「オラァァァ!」

 

先手必勝とばかりに、〈和真〉は高速で接近しながら短くなった槍を片手で横に薙ぐ。

 

明久「そんな単純な攻撃なんか……!」

 

直線的としか言いようがない雑な攻めだが速度は申し分ない。おそらくは大半の二年生相手には通じるだろう。しかし操作技術、特に敵の攻撃を回避することに長けた明久からすれば児戯に等しく、〈明久〉は余裕綽々としゃがんでそれをかわし、

 

 

 

 

 

和真「甘ぇよ!」

明久「ぐっ……!?」

 

もう片方の拳を喰らって吹き飛ばされた。

 

 

《日本史》

『Fクラス 吉井 明久 79点

VS

Fクラス 柊 和真 146点』

 

 

まともに喰らったのにもかかわらず、〈明久〉にはほとんどダメージが無い。〈明久〉は〈徹〉のような防御を重視したスペックというわけではではなく、これにはちゃんとしたからくりがある。

拳を喰らう直前に〈明久〉は即座に木刀でガードし、さらに先程和真がしたように自分から後ろに飛ぶことで勢いを軽減したのである。この僅かな時間の間にそれだけの芸当ができるのは、生徒では明久、梓、高城ぐらいであろう。

逆にそれだけのことをしてなおダメージを喰らってしまうほど、〈和真〉の攻撃力は凄まじいということなのだが。

 

和真「休んでる暇は無ぇぞオラァ!」

 

本気になった和真に守りや様子見、搦め手などの回りくどい選択肢は無い。〈和真〉は一瞬で距離を詰め、容赦なく槍を振り下ろす。

 

明久(それなら受け流せば…)

 

さっきと同じように、〈明久〉は木刀を使って槍の力を受け流した。そして同じように槍は地面に激突した。

 

 

 

そして〈明久〉は、〈和真〉の手刀を頭に喰らい転倒した。

 

明久(痛ぅっ…!? や、やばい!)

和真「とどめだ!」

 

そのまま〈和真〉は倒れた〈明久〉に蹴りをお見舞いしようとして、

 

明久「負けるかぁあああああああ!」

和真「なっ!? このっ……!」

 

転倒した状態の〈明久〉に足払いされて同じくすっ転んだ。そして先に体勢を立て直した〈明久〉は即座に〈和真〉から離れる。〈和真〉は倒れたまま追い討ちに槍を横に薙いだが、間一髪のところで回避できた。もし明久が距離をとることではなく攻撃を選択していれば、まず間違いなくここで終わっていただろう。

 

 

《日本史》

『Fクラス 吉井 明久 18点

VS

Fクラス 柊 和真 135点』

 

 

しかし明久の点数はもう風前の灯火であった。この点数ではかすっただけで絶命するだろう。

 

和真「ちょこまか逃げてくれたが、次でシメーみてぇだな……じゃあいくぜ、往生しやがれ!」

 

〈和真〉は槍を構え止め、〈明久〉にとどめを差すために接近する。

 

明久(く……このままじゃ………

 

 

こうなったら最後の賭けにでるしかない!)「うぉおおおおおおおお!」

 

和真「ハッ、血迷ったか明久! パワーでこの俺に勝てるとでも?」

 

〈明久〉は、接近してきた〈和真〉を木刀で薙ぎ払おうとした。それに対して〈和真〉も槍で迎え撃つように薙ぎ払う。

木刀と槍がぶつかり合う。極限まで破壊に特化した〈和真〉に真っ向勝負など愚策中の愚策、それらは当然拮抗するはずもなく〈和真〉の槍が木刀をへし折った。

それだけでは終わらず、そのまま延長線上にいる〈明久〉を粉砕する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ことなく槍は空を切った。

 

和真「…んなっ!? どこいきやがっ-」

明久「今だぁぁぁぁぁ!」

 

〈明久〉は後ろから和真の召喚獣の槍を握りしめている腕をありったけの力でぶん殴った。

一部始終を解説するならば、〈明久〉は木刀を薙ぎ払うと同時に獲物から手を離し、そしてすぐさま後ろに回ったのだ。和真が相手の武器ごと破壊するつもりでなかったら、例えばもし避けてから反撃しようとしていたらTHE ENDの危ない賭けだった。もしそうなっていたら〈明久〉は丸腰のまま潰されていただろう。

そして全力のパンチを喰らった〈和真〉は、ダメージで思わず武器を取り落としてしまう。そしてその隙を逃すほど明久は間抜けではない。

 

明久「喰らぇええええええ!」

 

〈明久〉はもう一度丸腰の〈和真〉をぶん殴った。今度は顔面にクリーンヒットし、〈和真〉は後方へ勢いよくぶっ飛ばされる。

 

和真「チィ……!」

 

 

《日本史》

『Fクラス 吉井 明久 18点

VS

Fクラス 柊 和真 48点』

 

 

やはり直撃の瞬間後ろに飛ぶことでダメージを軽減するが

、和真の召喚獣もデッドラインに入った。

どちらの召喚獣もあと一撃喰らえば戦死してしまうだろう。

 

和真「……まさかお前がここまでやるたぁな。だが……」

明久「和真こそ、やっぱり強いね。でも……」

 

 

和真・明久「「勝つのは俺(僕)だ!」」

 

そして二人の召喚獣は拳を握りしめ、お互いに向かって走り出した。

 

 

和真・明久「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」

 

 

ズガァァァァァァァアアアン!

 

 

轟音と共に、二体の全力の拳はお互いの顔面に突き刺さり、そのまま二体とも崩れ落ちた。ついでに凄まじいフィードバックを受けた明久本体も。

 

 

《日本史》

『Fクラス 吉井 明久 戦死

VS

Fクラス 柊 和真 戦死』

 

 

徹「……相討ち?」

雄二「おい審判、こういう場合どうなるんだ?」

『えーっと……両者ともに先頭不能となった場合、どちらが先に戦死したかコンピューターを使って確認します』

 

審議の先生がそう言ったあと、大型ディスプレイに結果が表示された。それを見た司会の人が勝鬨を挙げる。

 

『勝者……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

坂本・吉井ペア!』

 

ワァアアアアアアアアアアアアアアアア

 

特設ステージ全体に大音量の爆音が響き渡った。

下馬評の覆しほど大衆をエキサイトさせるものもそうそうないだろう。

 

和真「……負けちまったか。悪いな徹、散々付き合わせちまったってのに」

徹「君の強引さは今に始まったことではないだろう? ま、僕もそれなりに楽しめたし特に文句は無いよ」

和真「……男のツンデレなんざきしょいだけだぞ」

徹「張り倒すぞテメェ!」

 

ぎゃーぎゃー騒いでいる徹をスルーして、和真は自分を打ち負かした相手に近づく。 

 

和真「あらら……こいつ気を失ってら」

 

ダンプカーの衝突に匹敵する雄二の召喚獣よりもさらに重い一撃をまともに喰らったのだ、無理も無いだろう。

 

和真「馬鹿正直に突っこんできやがって。ちょっと考えればもっとスマートな方法があっただろーが。大体俺がフェイントとか混ぜたりしたらどうするつもりだったんだよ」

 

そう呆れるように呟いた後、和真はしゃがみこむ。

 

和真「完敗だ。お前の覚悟、見せてもらったぜ」

 

どこか満足したようにそう言った後、和真は特設ステージから出ていった。

この様子だと、腕輪のデモンストレーションは明久が目を覚ますまでおあずけのようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

玉野「カズナちゃんと吉井君が急接近…………………………………………………………イケる!」

飛鳥「玉野さんちょっと黙ってて、色々とぶち壊しだから」

 

何でこの子の隣に座ったのだろう、と飛鳥は観客席で半ば後悔の念に駆られた後、隣にいる蒼介に向き直る。

 

飛鳥「この試合、どう思う?」

蒼介「……最後のクロスカウンターの直前、カズマの召喚獣の拳がほんの一瞬止まったな」

飛鳥「もしかしてと思ったけど、やっぱり? この試合、和真が勝ってもメリットが少ないしね」

 

優勝商品である『白銀の腕輪』は、どちらの腕輪にしても試召戦争においてアドバンテージになる。

AクラスにリベンジしようとしてるFクラスにとっては、そのアドバンテージの半分をAクラスである徹に持っていかれることはあまり喜ばしくない。

 

蒼介「とはいえ、ラストのあれ以外は確実に本気で潰しにそうとしていた。あいつはあくまで自分が楽しむことを第一に優先したようだ」

飛鳥「まあ、それが和真らしいんじゃない」

蒼介「そうだな、実にあいつらしい」

 

そう言って二人は目覚めのキスだのなんだの痛々しい妄想に浸かっている玉野を捨て置いて、Aクラスに戻っていった。




勝者・明久ァァァァァァァァァァ!
流石原作主人公、勝つところはきっちり勝ちます(最後和真がガチで殴っていたら召喚獣のスピード差で撃沈していたでしょうけど)
今回和真君が用いた片手殺法には弱点が二つあります。一つは元々の槍だとリーチが長すぎて二撃目の拳が届かないこと。二つ目は武器を落としやすいこと。
特に二つ目は痛いです。
佐伯 梓と再戦したときこの戦法を使えば、即座にトンファーで武器をはたき落とされた挙げ句、丸腰のままボコられまくります。


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ネタバラシ

【バカテスト・現代社会】
一年に一回開かれ、主に新年度の予算関連法案などを議論する国会をなんというか。

霧島 翔子の答え
『通常国会』

蒼介「正解だ。日本国民として国会の種類は区別できるようにしておこう」

吉井 明久
『井戸端会議』

和真「そんなんに任せていいのかお前は」


明久「えぇぇぇぇ!?僕達が負けても校舎の改修やってくれたの!?」

 

あの後目を冷まし、学園長から賞品を受け取り、腕輪のデモンストレーションも済ませた後、教室に戻る途中雄二から信じられないことを聞いた明久は思わず絶叫する。

 

雄二「当たり前だろうが。もともとあの交換条件をだされた理由は欠陥のある腕輪があったからだろ? その欠陥が無くなった以上、渋る理由はどこにも無いだろう。そもそも教育方針なんてものの前に、まず生徒の健康状態が重要なはずだ」

明久「じゃあなんでもっと早く教えてくれなかったんだよ!? フィードバックのせいで頬がまだ痛いんだけど!」

 

恐竜を撲殺できるのではないかと思うほどの和真の召喚獣の渾身のパンチを喰らった明久としては、今になるまで説明してくれなかったことにものすごく不満があるようだ。

 

雄二「和真に口止めされてたんだよ。バラせば腕輪使って問答無用でまとめて爆殺するっていう脅し付きでな」

 

そうなっていたら明久達に勝ち目は無い。どれだけ操作技術が優れてようが、逃げ場の無い弾幕攻撃は避けようが無いのだ。

また、そんな爆撃を喰らえばただのパンチとは比較にならないほどのフィードバックが明久を襲っていただろう。その光景を想像すると、明久は頭から氷水をぶっかけられたような感覚にうち震える。

 

明久「……じゃあ、なんで和真はそんなことを」

雄二「さぁな。大方、点数が上がったお前とガチでやり合いたいってとこじゃねぇの?」

明久「…………あの戦闘狂がぁあああ……」

 

そんな理由でボコられまくったことにまるで納得がいかない明久は今ここにいない友人に対して怒りを募らせる。

 

葉月「お兄ちゃん! すっっごい格好よかったよ!」

明久「ぐふっ! は、葉月ちゃん……。今日も来てくれたんだ。どうもありがとう」

 

突然凄い勢いで葉月が明久に飛びついた。どうやら明久を迎えに来たらしい。身長差のせいで頭が明久の鳩尾にクリーンヒットしたが、明久のプライドにかけてなんとか持ちこたえる。

美波「二人とも、お疲れ様。まさか柊に勝っちゃうなんてね」

明久「……やっぱり皆闘うことになるって知ってたの?」

美波「……ごめん。でも柊に口止めされてて。バラしたらスポーツ刈りの刑って脅し付きで」

明久「どんな脅迫!?」

 

女子にとって自分の髪の毛がスポーツ刈りにされるなんて発狂ものである。流石和真、発想が恐ろし過ぎる。

ちなみに和真はバリカンなど持っていない。

 

葉月「お兄ちゃん、凄いです~っ!」

美波「葉月ってば、アキが困ってるわよ?」

 

明久にグリグリと頭を押し付けている葉月ちゃんを見て美波が苦笑している。

これ以上鳩尾を圧迫されると致命傷になりかねないので、やんわりと葉月の身体を遠ざける。

 

姫路「あの、吉井君」

明久「あ、姫路さん。僕の活躍見てくれた?」

 

もちろん姫路も和真からしっかり口止めされていた。

脅し文句は「明久に体重をばらす」だ。

ちなみに和真は姫路の体重など知らない。

 

姫路「はいっ!とっても素敵でした! 今度土屋君にビデオをコピーしてもらおうと思うくらい!」

明久「……ビデオ、ねぇ……。ムッツリーニ、撮影なんかしていたの?」

姫路「はい。ずっと熱心に撮っていましたよ。ね?」

ムッツリーニ「…………(プイッ)」

 

この男、十中八九試合そっちのけでミニスカートの観客とかを撮影していたのだろう。

案の定ムッツリーニも口止めされていた。

脅し文句は「玉野に女装が似合いそうな男子として紹介する」

ちなみに和真は真っ先に標的にされること間違いなしなので、そういう内容では決して玉野に近づこうとしない。

 

美波「坂本。よくアキがあんな点数取れたわね」

雄二「Aクラスとの試召戦争の後、俺や和真は何度か日本史の勉強に付き合わされたりしたからな。あいつの点数が上がると俺にもメリットがあるから引き受けたが」

美波「ふぅん、あの勉強嫌いなアキがなんでまた?」

雄二「なんでも、河原にいたおっちゃんにアドバイスもらったからだそうだ」

美波「…………その人ってもしかして……」

雄二「さぁな。……そういえば結局お前らを助けたおっちゃんはわからずじまいだな。綾倉先生に聞きそびれちまったが……」

 

雄二と美波が姫路さんに向けてそんな会話をしている。

姫路に明久を達が転校の話を知っていることがバレないように配慮したのだろう。

 

姫路「そ、それで、ですね……」

明久「ん? ああ、なにかな?」

姫路「後夜祭の時、お話があるので駐輪場まで来てください!」

 

トマトのように顔を真っ赤にしてそう告げると、姫路はダッシュでウェイトレス業務に戻っていった。

 

明久(おおっ告白前の前フリみたいだ。これは良いものを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ? 何か違和感があるな。えーっと、さっきの台詞って姫路さんは誰に言ったんだっけ)

悪魔『お前だ。吉井明久』

明久(やぁ久しぶり僕の中の悪魔。相変わらずそうやって僕に甘言を吹き込もうとするんだね。

キミは本当に悪魔だよ)

悪魔『いや、そうじゃなくて真実だ。一連の会話を思い出してみたらわかるだろう?』

明久(一連の会話? そういえば……)

天使『嘘だっ! バカでブサイクで解消なしの明久にそんなことあるわけないじゃないか! 悪魔の言葉に惑わされちゃダメだよ!』

明久「テメェ初登場の第一声がそれかクソ天使!」

 

またもや明久の脳内にファンタジーな存在が生まれたようだ。天使なのに神々しさの欠片も感じられないような発言をしているところが実に明久の脳内生物らしい特徴だ。

 

悪魔『それなら確認してみたらいいだろう。もし俺が間違ってたら和真に殴りかかってやるよ』

天使『上等だよ! それならもし俺が間違っていたら鉄人に殴りかかってやるよ!』

明久(ごめん。本体を無視して勝手に話を進めないで。そもそも、どっちに転んでも実行するのは僕なんだけど)

 

文月の二大怪物に喧嘩を売るのだ、どう転んでもただでは済まないだろう。

 

秀吉「雄二に明久。話し込んでいるところ悪いのじゃが、喫茶店を手伝ってくれんかの?」

翔子「……雄二達が勝った後、お客さんが大幅に増えて混雑している」

 

明久が脳内の生物と喧嘩していると、教室の方から秀吉と翔子がチャイナドレスの裾を際どく翻しながら駆けてきた。ちなみにこの二人は特に脅されることなく和真の頼みを二つ返事で引き受けた。

 

美波「あ、そういえばそうだったわね。ほらアキ! もう大会もないんだから、きっちり手伝ってもらうからね!」

明久「うん。今まであまり手伝えなかった分頑張るよ!」

雄二「やれやれかったるいな。というか和真はどうしたんだ?」

翔子「……和真なら、女性客の2/3を一人で捌いている」

雄二「……ということは、またあの見てるこっちが心臓に悪いトレイの運び方してんのか」

秀吉「いや、今はトレイの量が三枚から七枚に増えておる」

明久「どうやってるのそれ!? 気になるけど見たくない気もする!」

 

 

 

 

 

 

『ただいまの時刻をもって、清涼祭の一般公開を終了しました。各生徒は速やかに撤収の作業を行ってください』

 

明久「お、終わった……」「秀吉「さすがに疲れたのう……」

ムッツリーニ「…………(コクコク)」

 

放送を聞いた途端、ほとんどのFクラス生徒はグロッキー状態となった。召喚大会の宣伝効果は少々強すぎたらしい。

明久達の五倍くらい働いていた和真は何故か全く疲れた様子が無く、余ったゴマ団子を胃の中に処分しているのだが。

 

明久「そう言えば、姫路さんのお父さんはどうしたんだろう?」

雄二「ん? お義父さんが気になるのか?」

明久「なっ!? べ、べつにそういうわけじゃなくて!」

秀吉「後夜祭の後で話しに行くと言っておったのう。結論はその時じゃな」

 

秀吉がそう返事をする。多分大丈夫だが、明久はまだ不安そうであった。

 

美波「じゃ、ウチらは着替えてくるわ」

明久「えぇ!? どうして!?」

美波「どうして、って言われても……恥ずかしいからに決まってるでしょ?」

姫路「すいません。すぐ戻りますので」

明久「待って! 二人とも考え直すんだ!カムバァーック!」

 

明久の説得も虚しく、二人は無情にも着替えの為に去っていった。ちなみに葉月はそのままの格好で帰った。思春期真っ盛りの女子高生には到底出来ない芸当である。

 

明久「……あれ? 霧島さんは?」

雄二「そう言えば見当たらないな…………なんだか物凄く嫌な予感がするんだが……」

和真(多分気のせいじゃねぇなソレ。営業中に雄二がプレミアムチケット明久に預けたっつうことムッツリーニから聞いてたし。たった今婚姻届け持って教室から出ていったしな)

 

そこまで知っておいて黙秘を貫くのが和真である。

 

秀吉「ふむ。ならばワシも―」

明久「させるかっ! せめて秀吉だけは着替えさせない!」

 

満身創痍の明久が秀吉の足にタックルした。

 

秀吉「なっ!?何をするのじゃ明久!」

ムッツリーニ「………(フルフル)」

和真「お前等、さっきまでくたばってたのに元気だな……」

おそらく別腹というやつだろう。いや違うか。

 

雄二「おい明久、和真。遊んでないで学園長室に行くぞ」

和真「ん、あいよ」

秀吉「学園長室じゃと?二人とも学園長室に何か用でもあるのか?」

雄二「ちょっとした確認作業だ。喫茶店が忙しくて行けなかったからな。遅くなったが今から行こうと思う」

秀吉「そうか。ならばその間にワシは着替えを」

明久「そうはいかない! 秀吉も一緒に連れていく!」

ムッツリーニ「…………(クイクイ)」

明久「あ、ムッツリーニも来る?」

ムッツリーニ「…………(コクコク)」

秀吉「困ったのう。雄二、なんとかやってくれんか?」

雄二「ん~……。ま、いいだろ。秀吉とムッツリーニも行こうぜ。明久を説得するのも面倒だし」

秀吉「やれやれ。雄二まで……。仕方ないのう。着替えは後回しじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾倉「……! ほほう…… 鳳君、橘さん、ようやく動き出したようですよ」

 

パソコンのモニター画面の“何か”を確認し、綾倉先生は二人に合図を送る。

 

蒼介「そうですか。では和真に連絡を入れます」

飛鳥「暴力は好きじゃないけど、そうも言ってられないものね……」

蒼介「……来るなら来い。迎え撃ってやるまでだ、閏年高校」

 

 

 

 

 

 

 

 




ここに来て明久にネタバラシ。
まあ、作中人物だけではなく読者の皆様もわかりきっていたことですが。
どうやらクライマックスにはまだ早いようですよ?

ちなみに姫路さん達は教頭の思惑や綾倉先生の罠のことは全く知りませんが、和真君がこの手の勝負事でわざと負けるはずがないと今までの経験から察知しました。


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『最凶』と『最強』

【バカテスト・現代社会】
日本国民の三大義務を答えよ

姫路 瑞希の答え
『勤労の義務、納税の義務、教育を受けさせる義務 』

蒼介「正解だ。特に言うことはない」

土屋 康太の答え
『盗聴の義務、盗撮の義務、成人向けの本を読む義務』

源太「すぐ滅ぶだろうな、そんな国」

吉井 明久
『負けない義務♪ 投げ出さない義務♪ 逃げ出さない義務♪』

蒼介「信じ抜く義務♪ …………ハッ!?」

源太「ダメになりそうなのか? ん?」ニヤニヤ

蒼介「や、やかましい!///」


明久「失礼しまーす」

雄二「邪魔するぞ」

 

ノックだけして明久が返事も待たずにすぐさま学園長室の扉を開け、そのまま二人はずかずかと中に入っていく。彼等の辞書に遠慮の文字は無い。

 

秀吉「お主ら、全く敬意を払っておらん気がするのじゃが……」

和真「気のせいなんじゃなくて事実そうなんだろ」

 

と言いつつ他の三人も特に躊躇することなく明久達に続いて入っていくのだが。

 

明久「そう? きちんとノックをして挨拶したけど?」

学園長「アタシは前に返事を待つようにいったはずだがねぇ」

 

明久達の振る舞いを見て呆れたような表情になるバ…学園長。

 

明久「あ、学園長。優勝の報告に来ました」

学園長「言われなくてもわかっているよ。アンタたちに賞状を渡したのは誰だと思ってるんだい」

明久(相変わらず遠慮のないババァだ。少しは相手に気を遣うことを覚えた方が良いと思う)

 

Look who’s talking.

 

学園長「それにしても……また仲間を増やして来たもんだねぇ」

 

ムッツリーニと秀吉を見て咎めるように言い捨てるババァ。

 

雄二「こいつらもババァのせいで迷惑を被ったからな。元凶の顔ぐらい拝んでもばちはあたらないはずだ」

学園長「……ふん、そうかい。そいつは悪かったね」

 

つまらなそうに鼻を鳴らす学え…ババァ。

 

アイヲコメーテーハーナタバヲー オオゲサダーケード-ウケトーッテー♪

 

和真「お、蒼介からだ。……はいもしもーし」

学園長「アタシの部屋に入るんなら携帯ぐらい切っときな。 というかアンタの着信音意外過ぎるね……」

((((同感))))

 

男がSup○rfly好きで何が悪い。

 

和真「―んじゃ今から行くわ。じゃあな」

 

いくつか通話してから和真は通話を切る。

 

和真「…さて、お前等に簡潔に説明すると、竹原が雇ったチンピラどもが仲間引き連れて仕返しに来やがった」

明久「な、なんだって!?」

学園長「どういうことさね!? 既に竹原が捕まったんだからもう-」

雄二「……いや、そうとは限らないぞ」

 

取り乱す明久達と違い、思い当たる節があるのか、雄二は冷静であった。

 

雄二「和真、あのチンピラ共は閏年高校の生徒だろ?」

和真「だろうな。そこしか考えられねぇ」

明久「閏年高校!? 確か『最凶』と言われている、この辺りで一番不良が集まっている学校だよね!?」

和真「ああ。メンツとプライドで生きているような連中だからな、進学校の俺達にボコられて黙ったままのはずがねぇ」

明久「ど、どうするの和真!」

和真「んなもん決まってる。返り討ちにしてお引き取り願うだけだ。」

雄二「おい和真、俺も混ぜろよ。ストレス解消に-」

和真「ふざけんな。あんだけ重労働押しつけられたんだ、分けてやるわけねぇだろ。それに、お前等にはやって欲しいことがあるしな」

明久「そ、それって何!?」

和真「何か目立つことをして残っている生徒を学園から出させないでくれ。流石に第三者を守りながら対処できるほど甘い奴等じゃねぇ」

明久「わかったよ和真!」

ムッツリーニ「…………引き受けた!」

秀吉「任せるのじゃ!」

 

三人は迷うことなく了承した。

 

雄二「待て! やっぱり俺も-」

和真「断ればお前の夢と笑顔を奪う♪」

雄二「どんな脅しだ!? ……あーっもう仕方ねぇな!」

 

反発していた雄二も力技で納得させた。

 

学園長「柊!」

和真「あん? どうしたばーさん」

学園長「…………無茶はするんじゃないよ」

和真「! …………あいよっ!」

 

軽く返事して和真は学園長室から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文月学園の坂道で、三人の生徒か集まっていた。

 

和真「待たせたな。まだ来てねぇのか」

飛鳥「ええ。でも、そろそろ来ると思うわ」

蒼介「学園の方は大丈夫なのか?」

和真「問題無ぇだろ、西村センセもいるしな。

……にしても、向こうは学校規模で報復に来てるっつうのにこっちは三人か」

蒼介「……撃退する自信が無いのか?」

和真「ハッ、んなわけねぇだろ。

 

 

……あいつらが『最凶』だろうと、俺達は『最強』だ」

蒼介「……そうだな。あのようなごろつき共に遅れをとるほど、私達は弱くない」

飛鳥「……来たわ」

 

飛鳥の言った通り、三人の目の前に鉄パイプやらチェーンやらバットやらを携えた、100人近くもの団体が姿を表す。

地域『最凶』の不良学校、私立閏年高校のチンピラ共だ。

その団体の一番前にいる男が、和真達を見つけると顔を歪ませた。

 

チンピラ1「ほぅ……テメェらか、俺達『最凶』に喧嘩売った命知らず共は」

和真「だったらどうなんだよ」

チンピラ1「そりゃあ勿論、きっちり礼をさせてもらうだけだぜ」

蒼介「おかしなことを言う。そもそも、うちの生徒に手を出してきたのはお前達だろう?」

チンピラ1「んなもん関係無ぇんだよ。俺達“閏年”が進学校のボンボンに遅れを取るなんてことあってはならねぇんだわ。……そんなわけで潰すわ、悪く思うなよ。

お前等! まずはこいつらから痛めつけてやるぞ!」

 

その男の合図とともに、後ろにいるチンピラ共が武器を構えて殺気立つ。

 

蒼介「やはり話し合いで解決はできそうに無いな……仕方がない」

 

呆れるように嘆息した後、懐から折り畳み式の木刀を取り出し、臨戦態勢に入る蒼介。

 

飛鳥「正直荒事は好きじゃないけど、そうも言ってられないわね……さっさと終わらして帰るわよ二人とも」

 

続いて飛鳥も柔道の構えをしながら臨戦態勢に入る。

 

チンピラ1「何言ってやがる。お前等がこれから行くのは学校でも自宅でもねぇ……病院のベッドの上だ! かかれぇお前r-」

 

 

 

 

和真「全然遅ぇわお前」

 

男の言葉が言い終わらない内に、和真は信じられないスピードで男の目と鼻の先まで接近し胸ぐらを掴む。

 

チンピラ1「んなっ!? 何しや-」

 

和真「飛んでけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

チンピラ1「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

そしてそのままその男を他のチンピラ共に向かって全力でぶん投げた。そのまま男はチンピラ共に激突し、ボウリングのピンの如く数十人が将棋倒しになる。

その様子を愉快そうに見ながら、和真は凶悪そうな笑みを浮かべた。

 

和真「さぁ、楽しい蹂躙(パーティー)の始まりだ」

 

そこからは、とても100対3の闘いとは思えない、完全に一方的な展開となった。

飛鳥は向かってくる敵を長年鍛練を積んできた柔道技で次々と捌き、

蒼介は父親から教わった一子相伝の剣術で自分に群がるチンピラを最小限の攻撃で昏倒させていき、

和真は変幻自在かつ超高速、そして破壊的な強さを以て、雑草を刈るかの如く敵を狩っていった。

 

これが『アクティブ』の戦闘担当の力。数を揃えただけの烏合の衆では決して彼等を倒せはしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾倉「……大したものですね、これは」

 

約10分後、辺り一面に死屍累々と転がる閏年高校の生徒を見回ながら、綾倉先生は感嘆する。

これで倒れている生徒が怪我らしい怪我を一つも負っていないことが、彼ら『最強』の凄まじさを際立てている。

そしてこの光景を作りだした三人は、少しも疲れた様子を見せず呑気に談笑している。

 

綾倉「何はともあれ、これで一件落着ですね」

 

栗色の髪を掻き上げながら、綾倉先生は満足そうにそう呟いた。

 

 




『アクティブ』無双! 和真君の人間ボウリングが炸裂しました!
ちなみに怪我をさせずに倒せたのは、蒼介君&飛鳥さん=技術で和真君=感覚です。
あと、戦闘担当には源太君も含まれています。

泣いても笑っても残り2話で第二巻終了となります。

では。


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賑やかな打ち上げ

【バカテスト・英語】
「①」と「②」に当てはまる語を答えてください。
マザー(母)から「①」を取ったら「②」(他人)です

姫路瑞希の答え
『マザー(母)から「M」を取ったら「Other」(他人)です』

蒼介「正解だ。Motherから「M」が無くなると他人という単語になる。このような関連付けによる覚え方も知っておくと便利だ」

土屋 康太の答え
『マザー(母)から「M」を取ったら「S」(他人)です』

飛鳥「土屋君のお母さんが『MS』でも『SM』でもリアクションに困わるわね……」

吉井明久の答え
『マザー(母)から「お金」を取ったら「親子の縁を切られるの」(他人)です』

蒼介「英語はどこにいった」



和真「クッ……フフ…………ヒャハハハハハハハハハハハハハハ!!!なんだよその面ァ!? もはや別人じゃねぇかお前ら!」

雄二「和真テメェ笑い過ぎなんだよ!」

明久「うんわかってた。和真がどういう反応するか手に取るようにわかってたよ僕」

 

チンピラ共を一蹴してからFクラスの皆と合流(蒼介と飛鳥はAクラスの皆との打ち上げがあるので別れた)し、公園で打ち上げの準備をしていると、顔の面積が倍になるほど腫れ上がった明久と雄二がやって来た。

明久達が学園中の注意を惹き付けるためにやった行動は、屋上に保管されていた打ち上げ花火用の火薬を召喚獣でぶん投げてあちこち爆破するという物だった。

ただ最後の一発で投球ミスをして、(元)教頭室を瓦礫の山にしてしまったので、鉄人から厳重注意(物理)をされてしまったらしい。

 

和真「ク……ぐふ、ククククク……」

明久「いくらなんでもツボに入り過ぎでしょ!?」

雄二「痛ぇ……くそ、鉄人め。あの野郎は加減を知らないのか」

 

まあ校舎を爆破しておいてその程度の処分で済んだのは、事情を理解している学園長が裏から手を回したからであろう。校舎の爆破など、普通は下手したら退学ものである。

 

秀吉「む。やっと来たようじゃな。遅かったのう」

ムッツリーニ「…………先に始めておいた」

明久「ああ、ゴメンゴメン。ちょっと鉄人がしつこくてさ」

翔子「……雄二、その怪我大丈夫?」

雄二「あん? ああ、別に大したことはねぇ。というかお前今までどこにいたんだ?」

翔子「市役所に婚姻届けを出しに行ってた」

雄二「待て。俺はそんな物に判を押した覚えはないぞ」

翔子「……受理されなかった」

雄二「当たり前だ!」

 

二人の夫婦漫才はいつものことなのでこの際捨て置こう。

集合場所の公園は既にFクラスのメンバーで一杯になっている。特に店も取らずに、菓子とジュースを用意しての公園での打ち上げである。

 

秀吉「お主ら、もはや学園中で知らぬ者はおらんほどの有名人になってしまったのう」

翔子「……知名度だけなら和真や鳳に匹敵する」

 

決して良い意味では100パーセントないがな。

 

雄二「……コイツと同じ扱いだとは不本意だ」

明久「それは僕の台詞だよ」

美波「あれだけのことをやっておいて、退学になるどころか停学にすらならないんだもの。妙な噂が流れて当然でしょ?ウチだって気になるし。はい」

明久「ん、ありがとう」

 

美波が雄二と明久にオレンジジュース(?)の入ったコップを渡し、明久が礼を言って受けとる。

明久(む……ちょっと苦いな…さては安物を買ってきたな?)

 

余談だがオレンジジュース一杯の原価は20~30円程度である。

 

明久「そういや、店の売り上げはどうだったの?」

 

ふと気になって明久は飲み物を持ってきたままその場に溜まっている美波に聞いてみる。

一応実行委員だから一番わかっているだろう。

 

美波「そうね。たった二日間の稼ぎにしてはかなり額になったんじゃないかしら」

 

美波が収支の書かれたノートを見せてくれる。二日間の額としてはなかなかのものだ。

 

雄二「ふむ、どれどれ」

 

それを後ろから雄二が覗き込んできた。

 

雄二「この額だと、机と椅子は苦しいな。畳と卓袱台+αってとこだ」

明久「う~ん……。やっぱり出だしの妨害が痛かったよね」

 

喫茶店ともなると、どんなに人気が出ようとも客の回転に限界がある。短時間ではこれが限界だろう。

 

和真「じゃあ遮光カーテンでも買おうぜ。俺達夏休みの最初らへんに補習あるし」

雄二「……そうだな。それでいいだろ」

 

日差しがきつすぎて姫路が倒れでもしたらまた振り出しに戻ってしまう。そうならないように和真は先手を打っておく。

 

和真「さぁて、適当に何人か捕まえて缶蹴りでもしてくるかぁ!」

 

とても100近くもの不良を退けた後とは思えないほど活力に満ち溢れた様子で、和真は空き缶を片手に人員を確保しに行った。

 

姫路「すいません。遅くなりました~」

 

そこに後ろから姫路の声が聞こえてきた。

 

美波「あ、瑞希。どうだった?」

姫路「はいっ!お父さんもわかってくれました!美波ちゃんの協力のおかげです!」

 

どうやら転校は阻止できたらしい。

明久はやった、と声に出しそうになるが姫路に悟られないようにグッと堪える。

 

明久「姫路さん、お疲れ様」

姫路「あ、吉井君……」

 

明久の顔をみて、なぜか一瞬姫路は微妙な表情になる。

 

姫路「……すいません。私も飲み物を貰っていいですか? 沢山お話したのでのどが渇いちゃって」

明久「あ、うん。どうぞ」

姫路「ありがとうございます」

 

明久から手渡されたオレンジジュースを姫路は一息に飲み干した。

 

美波「あ……っ!」

 

その様子を見た美波が急に声をあげる。

 

明久「ん? 美波、どうかした?」

姫路「あれ? もしかして、美波ちゃんのだったんですか」

美波「そ、そういうわけじゃないけど、その……」

明久「美波も飲みたかったとか?」

美波「飲みたかった……? そ、そうね! 瑞希、悪いけどウチも一口貰っていい?」

姫路「あ、ごめんなさい。全部呑んじゃったんです。新しいの貰ってきますから、ちょっと待っててくださいね」

 

そう言って姫路はジュースのまとめられているあたりに駆け寄っていった。

 

美波(……新しいのじゃ意味がないじゃない……)

明久(? 随分と不満そうだね?)

 

美波にどうして不満そうなのか明久が聞こうとしたそのとき、

 

 

ゴッチィイイイイイン!

 

美波「いだぁあああっ!?」

 

かなりのスピードで飛んできた空き缶が、美波の側頭部におもっくそぶち当たった。怪我は無いようだがあまりの痛みに美波は思わずその場にうずくまる。

 

須川「くっそぉまた俺が鬼……か……」

 

缶を回収に来た須川が目の前の光景を察してフリーズする。

 

美波「………………覚悟は良いかしら?」

 

どす黒いオーラをバックから放出しながら美波は須川ににじり寄る。目だけが全く笑ってない笑顔に須川は萎縮し思わずその場から後ずさる。

 

美波「よくもやったわねぇえええええ!」

須川「島田違うから!? 缶蹴ったの柊だから!」

美波「安心しなさい! 全員仲良く葬ってあげるから!」

須川「どこに安心できる要素がぐぼぇぇぇ!? 」

 

その地獄絵図を明久が顔をひきつらせながら見ていると、遠くから姫路の小さな悲鳴が聞こえてきた。

そちらに目をやると、姫路さんが缶ジュースを持って転んでいる姿が見えた。

 

明久「姫路さん、大丈夫?

すぐさま明久は駆け寄って手を差し出す。

 

姫路「あ、はい。大丈夫れす……」

明久「そっか。それじゃ掴まって……

 

 

 

 

(大丈夫-れす?)」

姫路「はい。それじゃ、ぎゅ~……」

明久「ひひひ、姫路さんっ!?」

 

差し出した手をスルーして姫路は明久の腰に巻きついた。

 

姫路「明久君は、いい匂いです~」

 

そのまま明久の胸に顔を埋めてゴロゴロする。

 

明久「(このままじゃマズい! 何がマズいって僕の心拍数とか理性とかが!)姫路さん、どうしちゃったの!?」

 

今の姫路は明らかに正気ではない。

顔が紅潮し目はトロンとしていて、まるで酔っ払いのようである。

 

明久(ん? 酔っ払い? ……さっきのジュースの苦味……もしや―酒か! クラスの誰かが配ってるジュースに酒を混ぜたな!)

姫路「明久君、私は怒っているんですよ?」

 

突然頬を膨らませる姫路。といっても明久には心当たりが無いようだ。

 

姫路「むぅ~っ! 私が怒っている理由すらわからないんですねっ!」

明久「いひゃいれふ! くひがのびそうれふ!」

 

業を煮やした姫路に頬を思い切り左右に引っ張られる明久。

 

姫路「……約束」

明久「約束?」

姫路「召喚大会から戻って来た時にした約束ですっ」

明久「(はて、約束。そういえば何かあったような……

 

 

 

 

 

……っあ)

 

ああっ! 校舎裏!」

姫路「私ずっと待っていたのに、忘れるなんて酷いです!

 

閏年高校とのトラブルがあってすっかり頭から抜けていたようである。最初の微妙な表情はこれが原因だろう。

 

明久「心の底からごめんなさい。その、話せないけど、色々と事情があって……」

 

くっつかれていなかったら土下座しかねないほど低姿勢で謝る明久。

 

姫路「む~……っ! 許しませんっ!」

明久「そこをなんとか!」

姫路「絶対ダメですっ!

 

 

―なんて冗談です」

明久「はぇ?」

 

思いもよらない台詞に明久は思わず間抜けな声を上げていまう。

 

姫路「実は、明久君がどうして約束を守れなかったのか、教えてもらっちゃいました」

明久「へ? 誰に?」

 

果たして一体どこの誰が事情を話したのだろうか。

 

姫路「だから、私が怒っているのは―私自信です」

 

そう言って姫路は目を伏せる。

 

姫路「私、明久君が私の為に頑張ってくれているのに、約束の場所に来てくれなかったことに怒っていました」

明久「あ、いや。それはその、姫路さんは事情を……」

姫路「事情を知らなかったなんて関係ないんです。私は私の為に頑張ってくれている人に対して怒っていた自分が許せないんです。だって―」

 

一息入れて、姫路は顔を上げて明久に目線を合わせてくる。

 

姫路「だって、明久君は優しい人だって、前から知っていたんですから」

明久「そ、そんなことを気にしなくても」

 

まっすぐに目を見られて、明久は思わず目を逸らしてしまう。

 

姫路「前の試召戦争の時も、今回も、私は助けられてばかりで、それなのに私は自分の想いを伝えることばかり考えていて……」

 

姫路は落としてしまった缶を拾い上げている。

その缶の表記には『大人のオレンジジュース』。早い話それも酒だった。

 

明久「姫路さん、その飲み物はやめておいた方が―」

制止するも姫路は耳を傾けず、そのまま勢いよくプルタブを引き上げる。

姫路「だから、明久君に何かお礼をしたいんですっ」

 

そして缶に口をつけて勢いよく一気飲みした。

 

※お酒の一気飲みは急性アルコール中毒を引き起こす恐れがあるので、家族や友人が大切であるならば絶対に真似しないでください。

 

姫路「……そういうわけですから、明久君」

明久「は、はい」

 

心なしか、姫路の目が据わっているような気がする。

 

姫路「服をぬいでください」

明久「なにゆえっ!?」

 

言動にまるで脈絡が無い。物凄い勢いで酔っているらしい。

 

姫路「今からお礼をする為ですっ! 抵抗しないで下さい!」

明久「ちょ、ちょっと待ってよ! それ明らかにおかしいから!」

姫路「おかしくありません! 皆していることです!」

 

何処の世界の人々だ、その「皆」は。

 

零距離で掴まられていたせいで明久の制服のボタンが次々と外されていく。この距離ではうまく引き剥がせないため、まさに絶体絶命である。

 

雄二「お~、明久。楽しそうじゃないか」

 

そこにタイミン良く瓶を片手にしま雄二が通りかかる。

 

明久「ゆ、雄二っ! 丁度良かった! 姫路さんをなんとかして!」

雄二「ん? そうだな……。だが、邪魔するのも悪いし……」

 

ニヤニヤと明らかに悪ノリしている雄二。散々翔子にやきもきさせられた八つ当たりであろうか。

 

明久「それなら、せめて白金の腕輪を起動してよ! 自分でなんとかするから!」

雄二「ん? そうか? それなら……科目は数学でいいか……

―起動(アウェイクン)」

 

雄二が白金の腕輪で召喚フィールドを作り出した。

ただ、科目のチョイスに雄二の悪意が見え隠れしているような……

 

明久「ふぅ。僕の召喚獣が人に触れることができるやつで良かった。行くぞ―試獣召喚(サモン)っ!」

 

呼び出された小さな明久が姫路に触れようと近づいてくる。明久の点数程度でも力が人の何倍ある召喚獣なら、用意に姫路を引き剥がせるだろう。

 

姫路「むぅ~……! 邪魔ですっ! 試獣召喚っ!」

 

―キュポッ

 

一瞬で消し炭にされた明久の召喚獣。

召喚大会で和真をも退けた明久でも、腕輪の前では無力であった。南無。

 

明久「熱ぅああああああっ!? 身体が焼けるように熱いぃぃぃぃぃぃぃ!?」

姫路「それは服を着ているからですっ!」

 

明らかにお前の召喚獣が原因です、本当にありがとうございました。

あまりのフィールドバックの強烈さに明久は気絶することすら許されない。

ちなみに雄二はこの光景を見て腹を抱えて爆笑している。どうやらこうなることを予測できていたらしい。

 

姫路「とにかく、私は美波ちゃんには負けられないんですっ! だから名前だって『明久君』って呼んじゃいます! そして――いつかきっと――明久君と――」

 

と、突然姫路の声が尻すぼみになっていった。

 

明久「もしもし、姫路さん?」

姫路「……ずっと……一緒に……」

 

明久の耳にすぅすぅと規則正しい呼吸音が聞こえてくる。どうやら眠ったみたいだ。

 

明久(ここまでお酒に弱いとなると、今後は飲ませないように気をつけておかないといけないな。男の前で眠っちゃうなんて危ないし)

 

案の定姫路の想いは何一つ伝わっていないようだ。仕方がないか、バカだし。

 

美波「……ウチが少し目を離したら、その隙に一体何をしてたのかしらねぇ……!」

明久「え!? み、美波! 違うんだ! これは…………ゴファァッ!…………み、美波……ッ…どうしたのその顔……」

 

怒気を滲ませた美波の声が耳に入り、慌てて弁解しようと明久は美波の方を向くが、変わり果てた美波の顔に思わず盛大に吹き出してしまう。

額に“肉”の一文字、両頬に渦巻き、顎に髭、某警察官よろしくつなげられた眉毛、そして鼻の下に「50%OFF」……とどのつまり顔全体がマジックで落書きされていた。

 

美波「…………へぇえええええ…………そんなにウチの顔が滑稽しらぁあああ……」

明久「ち……違うんだ美波……これには深い訳が……」

 

笑いを堪えながらした明久の弁明虚しく、公園には悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

和真「……わりぃ明久、ちとやり過ぎちまった」

 

片手で油性マジックを弄びながら和真はあまり心のこもってない謝罪をする。

和真の周囲には美波にボコられた缶蹴りに参加したFクラス生徒が数名横たわっていたが、この事態を引き起こした和真は無傷であった。

 

和真「……ククククク……我ながら良い仕上がりだったぜ……」

 

どうやら彼の辞書に“反省”の文字は無いようだ。

 

 

 

Fクラスはこれから先も賑やかな日々が続いていくのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

清涼祭の翌日、生徒会室には学園長・藤堂 カヲル、三年学年代表・綾倉 慶、そして四大企業の代表者達、計6名が円卓のようなテーブルに腰かけていた。

円卓の真ん中にはとても一般流通しているとは思えないスーパーコンピュータが設置されている。

 

綾倉「……18時になりました。では、文月学園経営会議を始めます」

 

 

 

 

 

 




美波さん缶をぶち当てられてバイオレンスモードに入るも、和真君には返り討ち(落書き)に遭いました。
和真君にギャグ補正による強化は通用しない!

とうとう次回で二巻終了です。
もう五十話も過ぎて、ようやく四大企業重役の顔見せになります。
な……長かった……ここまで本当に長かった……


では。


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第二巻終了

【バカテスト・生物】
単細胞生物の例を答えなさい。

姫路 瑞希の答え
『アメーバ』

蒼介「正解だ。特に言うことは無い」

吉井 明久の答え
『坂本 雄二』

坂本 雄二の答え
『吉井 明久』

徹「相変わらずだね君達は(まあ僕もこの問題は源太って答えたんだけど)」

蒼介「ちなみに源太はこの問題は徹だと答えたようだぞ」
(源太の答案を見ながら)

徹「あんのチンピラがぁあああ!ふざけやがってぇえええ!」

蒼介「お前も人のこと言えないだろうが馬鹿者」(徹の答案を見ながら)



学園長「始めますじゃないよバカタレ。なんだいこの状況は?」

 

周囲のスーツを着た人間を見回してから、綾倉先生の隣に座っている藤堂カヲル学園長は不機嫌そうに告げる。

それに同意するように、学園長の隣に座っている栗色のオールバックの、聖杯に青龍の刺繍が胸元に施されたスーツを着た、少々いかつい顔つきの中年男性はうんうんと頷く。

 

綾倉「はて? 学園長と桐谷社長は何かご不満でも?」

 

いかにもわざとらしく首を傾げる腹黒糸目栗毛眼鏡と属性のバーゲンセール状態の学年主任。

桐谷と呼ばれた男は溜め息を吐いた後、ジロリと他の三人を見回してから再び綾倉先生の方を向き、重々しく口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桐谷「なぜ、私以外の企業のトップは今回の重要な会議にもかかわらず揃って欠席しておるのだ?」

 

そう、この会議に出席した企業のトップは桐谷 蓮(キリタニ レン)一名のみであり、その他は三企業とも代理の人間だったのだ。

 

綾倉「ふむ、言われてみればそうですね。一応理由も聞いておきましょうか。では、鳳婦人は何か知っていますか?」

 

綾倉は隣にいる藍色のセミロングの、剣に朱雀の刺繍が施されたスーツを着ている女性に事情を聞く。

 

この女性は蒼介の母であり秀介の夫である鳳 藍華(オオトリ アイカ)。蒼介は父親似なので顔立ちに面影はあまりないが、こちらもかなり整った顔立ちをしている。

ちなみに料亭『赤羽』の経営者兼料理長であり、蒼介や姫路の料理の師匠でもある。

 

藍華「会長はどうやらここに来るまでの道のりを間違えたようで、現在なぜか青森にいるそうです…」

 

やや疲れたように藍華が事情を説明すると、綾倉先生を覗いた全員が呆れたように溜め息を吐く。

 

桐谷「…………また、かね?」

藍華「また、です…………」

学園長「あんの天然ボケは…………いい加減秘書でもつけとくよう、後で言っといてくれるかい?」

藍華「承りました。後できつく言っておきます」

 

それぞれの様子を見るに、どうやら常習犯らしい。天性の方向音痴、ここに極まる。

 

綾倉「あっはっはっはっは、あの人は相変わらずですねぇ……では、橘社長はどうしてですか?」

 

綾倉は秀介がいつも通りであることを確認した後、藍華の隣に座っている金髪の青年に話を振る。この青年が着ているスーツには、金剛石に白虎の刺繍が施されている。

 

彼は“橘”の次期跡取りであり飛鳥の兄、橘 光輝(タチバナ コウキ)。現在イギリスのケンブリッジ大学に留学しているのだが、父親の代理としてわざわざ来日してきたらしい。

 

光輝「…………『激辛! お汁粉スパゲティ』の開発に忙しいから代わりに出ておいて欲しい、と父に言われこの会議に出席致しました」

桐谷「なんだその理由は!?」

 

光輝が心底申し訳なさそうに説明すると、あまりに納得できそうにない理由に思わず声を荒げてしまう桐谷社長。

 

桐谷「……奴が常日頃“新しいもの”とやらの開発に余念が無いことは知っている……だが! 重要な会議をさぼっていい理由にはならんだろう!

大体なんだその商品!? 甘いのか辛いのか和風か洋風かハッキリしたまえよ!」

光輝「……仰る通りですね。父に代わって謝罪いたします、誠に申し訳ございませんでした」

 

そう言って深々と頭を下げる光輝。こちらも妹同様礼節を重んじる性格のようだ。

 

桐谷「……いや、君を責めるつもりはない。こちらこそ取り乱してすまなかった」

 

光輝の真摯な態度に溜飲が下がったらしく、桐谷社長も謝罪する。

 

学園長「この件はあのバカタレに問い詰めるからあんたが気に病む必要は無いさね」

桐谷「その通り、悪いのは全部あの馬鹿だ」

 

しかし橘社長の愚行を許したわけでは無いようだ。学園長もかなりキレているらしく、額に青筋が浮き出ている。

 

桐谷「……………それはそうと、御門社長はなぜ出席してないんだ? 桐生君」

 

今日一番不機嫌な声で隣の桐生と呼ばれた、眼鏡がトレードマークの茶髪ロングストレートの女性に話しかける。

ちなみにこの女性が着ているスーツには三つ葉に玄武の刺繍が施されている。

桐生と呼ばれたこの女性は肩身が狭そうにしながらおずおずと口を開いた。

 

 

 

桐生「…あの~……その~……えぇっとですね……先程、『めんどくさいからサボる』と私の携帯にメールが……」

 

 

ブチィイイイ!×2

 

 

 

 

消え入りそうな桐生の声を聞き、しばらくの間沈黙が続いたが、突如何かが切れる音が二回ほど聞こえたような気がした。

その音とともに、どす黒いオーラを身に纏った桐谷社長と学園長の二人が席から立ち上がり、息を力強く吸い込んだ後、可能な限りシャウトした。

 

 

 

 

「「あん、の、クソガキがぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鼓膜をぶち破りかねない大音響が生徒会室を縦横無尽に暴れ回った後、なんとか二人は冷静さを取り戻した。

ちなみに生徒会室は完全防音のため外にこの雑音は漏れていない。その分、内部に物凄く反響したのだが。

 

学園長「……まぁ、あのクソジャリをブチ殺すのはまたの機会にするとしようかね」

桐谷「……そうだな…………もうやだあいつ等……なんで世界的企業のトップが揃いも揃ってあんなんなの……」

 

やはり冷静になっただけで学園長の怒りは消えていないらしい。一方で、自分と同格の三人が色々とアレな人ばかりな状況に、桐谷社長の心が折れかけている。

 

綾倉「気を取り直して、では今回のテーマは昨日行われた清涼祭、そして10月に行われる例の祭典についてです」

桐生「……わかった。話を進めてくれ」

 

しかし、いざ議題に入るとそれぞれが真剣な顔つきに戻る。さすご企業のトップ及びその代理、プロ意識が伺える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾倉「―以上で今回の会議は終了です。お疲れさまでした」

 

綾倉先生がそう告げると、桐谷社長、光輝、藍華、学園長は予定が詰まっていると言わんばかりに慌ただしく生徒会室から出ていった。綾倉先生も生徒会室の鍵をテーブルに置いてさっさと出ていってじった。

一人生徒会室に残った御門エンタープライズの代役・桐生 舞(キリュウ マイ)はハイライトの消えた眼でおもむろに携帯を取り出した。

 

桐生「…………あんのボケェエエエ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は17時前、吉井 明久はへとへとになりながら帰宅していた。

 

明久「あぁ疲れた~……高校生にもなってあそこまで鬼ごっこで楽しめるの、和真達ぐらいだよね……」

 

本日特に予定も無かったので、明久は『アクティブ』のメンツと鬼ごっこをしていた。その際和真に執拗に追いかけ回され、明久は体力を0にまですり減らしてしまいましたとさ。

全力で走ればなんとか逃げ切れるレベルのスピードで追いかけじわじわといたぶってくる和真は、ごっこではなく“鬼”そのものであった。

 

明久「 ……それにしても何で姫路さんは昨日のこと忘れているはずなのに僕の呼び方は変わってたんだろう? ……まぁいいか、っと……河原かぁ………………あっ!?」

 

そうこうしている内に家の近くにある河原まで来ていた明久は、見覚えのある人がベンチに腰かけ缶のコーンポタージュを飲みながら一服していたので、その人に近づいていった。

 

明久「おっちゃん、久しぶり!」

おっちゃん「んあ? ……よう少年、相変わらずアホ面だなぁお前さん」

明久「出会い頭に罵倒された!? しかもこんな小汚いおっちゃんに!」

おっちゃん「相変わらず遠慮が無いな、お前さんも」

 

やれやれと首を振ったあと後、缶の残りを一気に飲み干した。ちなみにおっちゃんの周りには空になったコンポタの缶が数個散らばっていた。

 

明久「……というかなんでこの時期にコンポタ?」

おっちゃん「『つめた~い』に決まっているだろうが馬鹿め」

明久「そういう問題!?」

 

いやはや、相も変わらずフリーダムなおっちゃんである。周りの人間を無差別に振り回す性格は、どことなく和真に通ずるものがある。

 

明久「……一昨日はありがとうございました」

おっちゃん「あん? ……あー、あれか。俺は頼まれてやっただけだからお礼はk…綾倉にでも…………いや、あのボケに言うくらいならやっぱ俺に言え、ひれ伏せ崇め奉れ」

明久「いやどっち!?そもそも 流石にそこまではしないから! 」

おっちゃん「冗談だ……1割くらいは」

明久「残りの九割は!?」

 

その後もいくつか話をした後、明久は自分の家に帰っていった。

 

御門「……以前見たときよりマシな面構えになったな、吉井の弟」

 

感慨深く呟いた後、煙草が切れたのでいつものように自販機に向かう。しかし小銭を入れる前にポケットから着信音が鳴り響いた。おっちゃんは軽く舌打ちしてから、もう片方のポケットから耳栓を取り出して両耳につけた後、携帯の通話ボタンを押した。

 

おっちゃん「はいもしm―」

『どこほっつき歩いてやがんだゴルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』

 

河原全体を凄まじい爆音が暴れ回る。、その辺にいた鳩は皆空に羽ばたいていき、河の魚はばしゃばしゃと音をたてて散り散りになっていった。

 

おっちゃん「ぎゃあぎゃあうるせぇな、近所迷惑考えろキュウリ」

『桐生だボケェェェ! つぅかテメェは少しは私の迷惑を考えろ、しばき回すぞおんどれぇぇぇぇ!』

おっちゃん「そうカッカすんなよ、綺麗で瑞々しくて緑色の肌が荒れちまうぞ?」

『だからキュウリじゃないって言ってるでしょうが!

……いいですか! あなたはもう少し御自身の立場と言うものを―』

おっちゃん「あーうぜぇ(ピッ)」

 

前と同じように強引に通話を切り、これまた同じように電源を落とす。

 

おっちゃん「ったく……俺にあんな会議出る気があるとでも思ってんのかねぇ、舞の奴は」

 

あまりにも身勝手なことを呟いた後、おっちゃんは煙草を購入してそのまま一服した。すると、

 

 

ピリリリリリリリリリリリリリリリ

 

 

持っているもう一つの携帯から着信音が鳴り響いた。

おっちゃんは急に苦虫を噛み潰したような表情になり、鬱陶しそうに通話ボタンを押した。

 

おっちゃん「…………なんか用かコラ」

『いきなり随分喧嘩腰ですね、御門 空雅(ミカド クウガ)社長。いやはや、私も嫌われたものだ』

おっちゃん「御託はいらねーよ。今度はどんな厄介ごと押しつけるつもりだ」

『ふむ、それもそうですね。実は―』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―では頼みましたよ、御門社長』

おっちゃん「二度とかけてくんじゃねー」ピッ

 

内容を聞き終えると、おっちゃんは乱暴に通話を切った。

二本目の煙草に火を着けながら呟く。

 

御門「はたしてテメーの思い通りに進むかねぇ……腹黒糸目野郎」

 

 

 

 

 




雑談コーナー・その2

蒼介「第二巻も無事終了したな」

和真「今回は召喚大会にリアルファイトと、バトル三昧だったな」

蒼介「ほとんどお前がやりたい放題やっていただけだがな。特に召喚大会は撃墜数がなんと11体と、徹の存在意義が疑問視されるほどだしな」

和真「といっても明久には負けちまったし、梓先輩は徹のサポート込みでなんとか相討ちにできただけだけどな」

蒼介「あの先輩が参加するなら私も出て良かったのでは? ……まぁいいか。カズマ、そろそろゲストを呼んでくれ」

和真「あいよ! じゃあ今回はチンピラ帰国子女の五十嵐 源太を呼んだぜ!」

源太「……その紹介にも文句を挟みてぇがとりあえずそれは置いておく。俺様はテメェ等(と作者)に言いてぇことがある」

蒼介「? 何か不満な点でもあるのか?」





源太「なんでこの巻俺様の出番オールカットなんだよ!? おかしいだろオイ!」

和真「あぁ、やっぱそれか。まぁドンマイー」

源太「なにその投げやりすぎる慰め!? さてはテメェ心の中でどうでもいいとか思ってるな!? 」

和真「まぁそうだけど」

源太「少しは躊躇えよ! ……というかわざわざ原作ではAクラスに行くシーンをわざわざBクラスにチェンジしたのになんで俺様が出ねぇんだよ!?」

和真「いやお前その顔で接客なんてしてみろ、子ども泣くぞ?」

源太「人の顔をなまはげみてぇに言うんじゃねぇよ!
……まぁ百歩譲ってクラスの出し物に参加できねぇのは良いとしてもよ、召喚大会で出してくれてもいいじゃねぇか……金田一とか原作ではモブ同然の奴出すくらいならよぉ……」

和真「いやいや、だってお前ぼっちだから相方いねぇじゃん」

源太「ぼっち言うな!」

蒼介「余計な補足かもしれんが、『アクティブ』のメンバー以外の絡みが根本くらいしか無いな」

源太「本当に余計な補足だよチクショオオオ!
……ん? だったら『アクティブ』の誰かと組めば-」

和真「だから無理なんだって。優子や愛子と組ますわけにはいかねぇし、ソウスケが参加すれば俺達詰むし、徹は俺とペアだし……」

源太「それェェェェェ! 俺がツッコミたいのはそこ! なんであのクソチビがテメェの相棒ポジなんだよ!? あいつ前巻でも割と出番あったんだからそこは俺様でも良かっただろ! 断固納得できねぇ! なんだこの格差は!? 」

和真「いや、だってお前の点数……英語以外基本的にカスじゃねぇか」

源太「カス!?」

蒼介「設定では英語以外はCクラス上位程度だな。そこまで酷いこともないがカズマの相棒としては少しばかり見劣りする点数ではある」

和真「今お前と組んで出場したとしてシュミレートしたが、一回戦の愛子・佐藤ペア(数学)に負けてはいおしまい、だな」

源太「orz」

和真「まあそう落ち込みなさんな、お前の本格的な出番は三巻だからな」

源太「そうかそうか! だよなー俺様がこのまま出番も無く消えていくはずねぇもんな!」

和真・蒼介(単純過ぎる……)


和真「まぁ正直源太の今後なんざどうだっていいんでこの話は捨て置いて、読者発案番外編を発表するぜ」

源太「おいテメェどういうことだ!? 今なんつった!?」

和真「うるさい黙れ話の腰折るなこの悪党面両腕千切られてぇのかドブネズミみてぇなカラーリングしやがって……さて、今回採用されたのは~」

源太「なにこの投げやりかつ毒のある対応……俺様何かした?」

蒼介「諦めろ。カズマは興味の無いことは物凄く雑に処理する悪癖がある」

和真「怪盗キッドさんの『女装コンテスト』だ!」

源太「随分無難なチョイスだな。……あ? 確かもう一つ案があったような…」

和真「あー、“蒼龍”さんの案についてだが……」

蒼介「とりあえずストーリーは組み上げたのだが、話の展開に必要不可欠なキャラがまだ登場してないので、この案は先送りとなった」

和真「……つーことで“蒼龍”さんすまねぇ! ボツになったわけじゃねぇから気長に待っててくれ!」



源太「……とまあ今回はこんなところか?」

蒼介「そうだな。次回からは番外編三つ挟んだ後、3.5巻に突入する」

和真「番外編一発目は大人気につき続編決定した『伝説の勇者ユージの冒険』だ!」

蒼介「この話は作者もお気に入りだからか、本編と並列で連載しようと魔が差したこともあるらしい」

源太「確実に投稿ペース落ちんじゃねぇか……」


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キャラ紹介その4

新キャラが出まくりましたが、今回は特に重要な四人を紹介します。



※ネタバレ要素を含みますので注意してください。



・佐伯 梓(サエキ アズサ)

3年Aクラス

身長153㎝

体重47kg

髪:エメラルドグリーンのツインテール

得意教科:現代文・数学・英語

苦手教科:特に無し

趣味:サッカー観戦

好きなこと:柔道で勝つこと

嫌いなこと:セレッソ大阪の負け試合

座右の銘:外柔内剛、有言不実行&不言実行

チャームポイント:タレ目

通称:チャンピオン、稀代のペテン師、合法ロリツインテール

備考:元生徒会長、現副会長、柔道インターハイチャンピオン

 

三年Aクラスの学年次席(一学期終了時には学年トップに)。和真と飛鳥の越えるべき壁。中学まで大阪に住んでいたので関西弁で話す。

徹に負けず劣らずの童顔だが、非常に端正な顔立ちをしており社交性もかなりあるので、男女ともにかなり人気がある。

基本的に真面目で責任感が強く、常夏コンビを一喝して黙らせるなど度胸もかなりあるが、その一方で高城をかなりの頻度で騙したり仕事を押しつけたりするなどちゃっかりした一面もある。

女子の中でもやや小柄な体格で身体能力も飛鳥にはかなり劣るが、それを補って余りある圧倒的な柔道センスがあり、こと柔道という競技に限ればその技術は和真や蒼介すらも凌駕する。元生徒会長かつ現副会長にして学年次席。

さらに柔道部を全国優勝の立役者であり自信は公式戦練習試合問わず負けなしの、名実ともにNo.1。

それゆえ生徒からも教師からも信頼は厚い。

三年生の中でも群を抜いた戦闘経験をがあるため、明久に匹敵する操作技術を持つ。さらに自分を含めた召喚フィールド内の全ての腕輪を無効化する『青銅の腕輪』を所持している。試召戦争において現時点の和真より確実に強い五人のうちの一人。

一学期終了後に三年間無敗のまま柔道部を引退、また生徒会の任期も終了した。

詐欺師として天性の資質があり、一切嘘をつかなくても人を造作もなく騙せる。

 

・パラメーター

ルックス…5

知能…5

格闘…5

器用…5

社交性…5

美術…3

音楽…3

料理…2

根性…4

理性…4

人徳…3

幸運…4

カリスマ…4

性欲…3

 

 

 

 

 

・鳳 秀介(オオトリ シュウスケ)

年齢39歳

身長183㎝

体重73kg

髪:艶のある黒髪

得意教科:古文、英語

苦手教科:特に無し

趣味:剣道、弓道、華道

好きなもの:和食全般

嫌いなもの:節足動物

座右の銘:一騎当千

チャームポイント:迷子

備考:世界的企業の社長、日本有数の名家の当主

 

 

蒼介の父親にして四大企業の一角『鳳財閥』のトップ。

やや細身の長身で中性的のイケメンであり、どう見ても20代にしか見えない。

性格は蒼介とは似ても似つかず非常に天然で、登場するたびに迷子になっている。しかし鳳家の人間らしく能力は極めて優秀であり、また詳細は不明だが剣の達人であり、木刀を握らせれば和真や蒼介すら軽く凌駕するらしい。

 

 

ルックス…5

知能…5

格闘…5

器用…5

社交性…4

美術…4

音楽…4

料理…4

根性…5

理性…5

人徳…3

幸運…4

カリスマ…5

性欲…2

 

 

 

 

・綾倉 慶(アヤクラ ケイ)

年齢28歳

身長168㎝

体重57kg

髪:栗色の長め

得意教科:数学、物理

苦手教科:特に無し

趣味:ハッキング、特性ドリンク製作

好きなこと:暗躍、謀略、探り合い

嫌いなこと:暴力

座右の銘:知は力なり

チャームポイント:糸目

備考:元数学オリンピック世界王者

 

 

三年学年主任を勤める教師。

人畜無害そうな見た目と丁寧な言葉遣いに反して本性は非常に狡猾で腹黒い。第二巻の黒幕である竹原を何の描写も無しにリタイアさせるという、数ある二次創作の中でもでもトップクラスのえげつない手段で葬った。

学力は教師の中でも群を抜いて優秀であり、特に物理と数学は点数が高過ぎて危険という理由で物理干渉能力が解除されているほど。

それなりの性能を持ったパソコン数台あれば個人でサイバーテロを仕掛けられるほどのハッキングコンピューター技術も持っており、その能力を駆使して白銀の腕輪のデータに欠陥を生じさせた。技術力では完全に学園長の上をいっており何かと対抗意識を持たれているが、彼は彼で学園長の自由奔放ぶりに辟易している。

 

 

若干14歳でハーバード大学を首席卒業した天才であり、また同大学で教鞭を取っていた過去を持つ。御門空雅に嫌われている理由は教え子である彼を散々玩具にして遊んでいたかららしい。

 

 

一年主席の綾倉詩織は彼の娘である。

 

 

ルックス…4

知能…6

格闘…3

器用…5

社交性…3

美術…3

音楽…3

料理…3

根性…3

理性…3

人徳…3

幸運…3

カリスマ…3

性欲…1

 

 

 

 

 

 

・御門 空雅(ミカド クウガ)

年齢25歳

身長174㎝

体重65kg

髪:ボサボサの黒髪

得意教科:?

苦手教科:?

趣味:昼寝、桐生いじめ

好きなもの:煙草、コンポタ

嫌いなもの:残業、綾倉、残業、人混み、残業、騒音、残業、甘い物、残業、アルコール、残業、“残業”、アドラメレク

座右の銘:晴耕雨読

チャームポイント:濁った目

備考:無気力ダルダルおじさん兼敏腕社長→無気力教師

 

河原に出没する無気力なおっちゃん。

実は四大企業『御門エンタープライズ』の社長である。ちなみに公園の自販機は彼が快適なサボり空間を作るために設置された。煙草とコンポタをこよなく愛し、不足した栄養は全てサプリメント類で補っている。

無気力、野放図、無精の集合体のような外見と性格をしている。

能力は確かであり、社長であるはずの彼の帰宅が異常に早いのは仕事をこなすスピードが異常に速いからである。その反面、残業はまるでする気が無く提携関係にある会社との談合なども全て秘書である桐生に押しつけているなどやはり人格にかなり問題がある。

チンピラ数人を一瞬で全滅させるなど、見た目に反してかなり喧嘩慣れしている。

名前の由来は勿論最速のアルター使い。

こう見えてハーバード大学を首席で卒業した天才であり、綾倉とは当時恩師と教え子の関係であった(本人にとっては無かったことにしたい過去)。

このたび“御門”と完全に縁を切り、第一学年主任へと就任した。目的は自立型召喚獣アドラメレクの打倒ただ一つ。

 

自堕落極まりない性格ではあるが根は優しく何だかんだ面倒見も良い。困っている人や苦しんでいる人にはあれこれ心の中もしくは外で理由をつけつつ必ず手を差し伸べる。素直じゃないとかツンデレというわけではなく、「打算的な理由で手を差し伸べているだけ」という自己暗示を自分にかけ、自分から他人と距離を縮めないようにしているからである。

彼は親しい人や大切な人が次々と不幸な目(それも再起不能レベルの)に遭うという重いジンクスを背負っていて、その影響で「自分は疫病神である」という罪業妄想が心の内にある。そのため自分に歩み寄ってくる人にはそっけない態度で壁を作って遠ざける。

 

 

 

ルックス…3

知能…5

格闘…5

器用…5

社交性…2

美術…2

音楽…2

料理…1

根性…1(5)

理性…3

人徳…4

幸運…2

カリスマ…1

性欲…2

 

 

 

 

 

 

 

 

 




以上です。

桐谷社長、鳳 藍華、橘 光輝、桐生 舞の紹介はまた別の機会に。

では。


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伝説の勇者ユージの冒険 ~モンスターが金なんざ持ってるわきゃねぇだろ! 地道に働いて稼げ地道に!~

【注意!】
・和真君が本編よりずっとやりたい放題です
・今回蒼介君はナレーションに徹します
・雄二はずっとツッコミです。オールウェイズツッコミです。エンドレスツッコミです。エターナルツッコミです。


ここはモンスリー王国

 

人々は平和に暮らし、大地は豊かな緑に覆われ空には鳥が舞い、穏やかな風が綿雲を運んでいた

 

だがある日、空に闇が滲み、大地に邪悪な影を落とした

 

大魔王カヲルシフェルが永き眠りから目覚めたのだ!

 

次々に魔物を生みだし、人々を襲い殺戮の限りを尽くした

 

この世界は暗黒の時代を重ね、いつしかこう呼ばれるようになった……

 

“モンスター・ワールド”

 

残された人々は脅え、泣き叫び、己が生を呪った

 

だが、そこに一人の勇者が立ち上がった

 

希望の光を剣に宿し、三人の仲間を連れた勇者一行は、カヲルシフェルを倒すべく今日もカオール城に向けて旅立った!

 

 

 

 

ユージ(勇者)「……なあお前ら……ちょっといいか?」

 

カズマ(プロゴルファー)「あん? どうした?」

 

ショーコ(マッチ売りの少女)「……まだ町を出て10分も経ってない」

 

アキヒサ(ピザ屋)「何か忘れ物? 今ならまだ間に合うけど」

 

ユージ「明らかに常識っつう概念を忘れてるよなこのパーティー。本当に今ならまだ間に合うのか?」

 

カズマ「要領得ねぇな、もったいぶらずにさっさと言えや」

 

ユージ「じゃあ遠慮無く言わせて貰うが……

 

 

 

 

 

お前等のジョブおかし過ぎるだろ!」

 

アキヒサ「えぇ!? またその話!?」

 

ショーコ「……ユージ、いい加減しつこい」

 

ユージ「いやいやいやいやいやいやいやいや!

前回はツッコミ疲れて思わず流してしまったが明らかにおかしいだろうが! プロゴルファーにマッチ売りの少女にピザ屋? それでどうやって闘えって言うんだよ!?」

 

アキヒサ「そんなこと言ったって前回職業変えまくったせいでもうお金が無いよ?」

 

カズマ「つーわけだ、とにもかくにもまず金を工面しねぇとな」

 

ユージ(チィ……まさか冒険開始する前に所持金が無くなるとはな……仕方ねぇ、ここはモンスターを倒してコツコツ稼ぐか。まあまだ序盤だし、俺一人でもどうにかなるだろ)

 

チャララ~ン♪

 

カズマ「おっ、モンスター出現の合図だな」

 

ユージ「その効果音、実際にあんのな……最初だし、どうせスライムとかだろ-」

 

 

 

 

 

 

 

【ジェノサイドサイクロプスの群れがあらわれた! ▼】

 

 

颯爽と出現したのは五体のまさに『モンスター』と呼ぶべき、ライトノベルの世界観とはまるで合わないアメコミに出てきそうな化け物ども。

三メートルほどの筋骨隆々の肉体に、返り血が付着して所々錆びた棍棒を片手に持ち、血走った一つ目でユージ達を睨んでいる。

 

「「「「「アゥウウウーッ! コ……コロス……コロシテヤルゾォォォォォォォォ!」」」」」

 

ユージ「なんでだァァァァァァァァァ!!!」

 

勇者ユージの全力のシャウトが戦場にこだました。

 

カズマ「出やがったなモンスター! (五番アイアンを構える)」

 

ユージ「待てェェェェェ! お願いだからちょっと待てェェェ! おかしいだろ!? なんであんな中ボスみたいな奴が団体で襲ってくるんだよ!?」

 

カズマ「戦闘中にそんなチンタラ説明してる暇あるわけねぇだろ! 四の五の言わず行けコラ!(ドゴォオオオ!)」

 

ユージ「ごふぁっ!?」

 

カズマの理不尽で不条理な蹴りを喰らって、ユージは敵のすぐ近くまでぶっ飛ぶ。

 

【カズマのキック! かいしんのいちげき!ユージに46のダメージ ! ▼】

 

カズマ「あ、いけね」

 

ユージ(2/48)「「いけね」じゃねぇよ「いけね」じゃああああああ! どうすんだよオイ!? 敵と戦う前にもう瀕死じゃねぇか!?」

 

カズマ「負けるな雄二ー。ほらお前あの、『勇者の力』的なもんでなんとかしろー」

 

ユージ「なにそのアバウト過ぎる助言!? あと俺のこと瀕死にしておいてなんでそんなふてぶてしいのお前!? 」

 

カズマ「あーそういうのもういいからさっさとやれよ」

 

ユージ「チクショウこのサディスト最悪だ! お前後で覚えてろろよぉおおおおお!」

 

半ば自棄になりながらも、勇者ユージは剣を構えサイクロプスの一体に斬りかかった。

 

A「シネェエエエエエ!」

 

ユージ「もうヤケクソだゴルァアアアアア!」

 

 

ズバァアアアアアアアアアアン

 

 

【ユージのまものぎり! ジェノサイドサイクロプスAに18のダメージ! ジェノサイドサイクロプスAをたおした! ▼】

 

ジェノサイドサイクロプスはユージの剣によってまるで豆腐のように真っ二つにされた。

 

ユージ「…………………………………………あれ?

 

 

 

 

 

 

 

(予想以上に弱かったァァァァァァァァァァ!

なんだあの見かけ倒し!? 内心びびってた俺がバカみたいじゃねえか! )」

 

 

『【まもの図鑑】ジェノサイドサイクロプス(HP15)……とても屈強に見える肉体を誇る見かけ倒しの究極形。その強そうな見た目と裏腹に、村娘でも頑張ればなんとかなるレベル。ちなみに手に持っている棍棒の血は単なる絵の具である。ベンチプレスはまさかの50㎏』

 

 

カズマ「…っつうわけだ。序盤にそんな強い奴出るわけねぇだろ」

 

ユージ「お前絶対わざと黙ってただろ! ……まあいい、あれなら俺一人でもなんとかなるな。 よし、お前らは危ないから下がって-」

 

カズマ「オイオイ、なに寝惚けたこといってんだよ。俺達はチームだぜ? なぁショーコ、お前の力を見せてやれ」

 

ショーコ「……わかった」

 

【ショーコはジェノサイドサイクロプスBに近づいていった ▼】

 

ユージ「おい危ねーぞ!? いくら雑魚敵とはいえ職業『マッチ売りの少女』でどうにかなるわけ-」

 

ショーコ「……無限の火器製(アンリミテッド・ブレイズワークス)」

 

ブォオオオオオオオオオオ

 

【ショーコのかえんほうしゃ! ジェノサイドサイクロプスBに56のダメージ! ジェノサイドサイクロプスは倒れた! ▼】

 

ショーコはどこからともなく取り出したガスバーナーでサイクロプスを火炙りにした。

 

ユージ「いや待てェェェェェ!? おかしい! 俺に知っているマッチ売りの少女はそんな物騒な物常備していない!」

 

ショーコ「……私はガスバーナーに限らず、古今東西ありとあらゆる火器を創造することができる」

 

ユージ「うんお前もう職業名改名しろ、放火魔とかに」

 

ショーコ「……いくらユージでも言って良いことと悪いことがある(ジャコッ)」←ガスバーナーを向ける

 

ユージ(瀕死)「待て! 落ち着け! 今はそんな場合じゃない! 俺が悪かった! 命だけは!」

 

カズマ「ショーコ、ストップ。次の町まで棺桶引きずっていくのは流石にめんどい」

 

ショーコ「……わかった」

 

ユージ「おいカズマ、助けてくれたことには礼を言うがお前俺のこと1ミリも心配してねぇだろ」

 

カズマ「? 当たり前だろ?」

 

カズマがショーコを止めた理由は紛れもなく純度100%自分の都合のみを考慮してである。

 

CDE「ウガァアアアアア!」

 

カズマ「-っと、まだ戦闘中だったな!

アキヒサァ!次はお前の力を見せてやれ!」

 

アキヒサ「オーケィ!」←ピザを手のひらに乗せる

 

ユージ(それでどうやって戦うんだよ!? ……いや、もしかするとこいつもショーコみたく隠し玉が……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

アキヒサ「さぁいく(ドゴォォォ!)ずぅぶらぁぁ!?」

 

【ジェノサイドサイクロプスCのこうげき!アキヒサに6のダメージ ! ▼】

 

C「イマシネェ!」ドカバキドゴォ

D「スグシネェ!」ドカバキバァン

E「ホネマデクダケロォ!」ドカバキグチャ

 

アキヒサ「ちょ…!? やめっ!? 待って!? ストッ……ひでぶっ!?」

 

【ジェノサイドサイクロプスCのこうげき!アキヒサに6のダメージ! ジェノサイドサイクロプスDのこうげき! アキヒサに6のダメージ! ジェノ(ry ▼】

 

アキヒサ「」チーン

 

【アキヒサはしんだ! ▼】

 

ユージ「ああ、やっぱりか。うっすら予想はしてたけどやっぱりこうなるか。どこの世界だろうとアキヒサはアキヒサか、糞の役にも立たねぇ」

 

カズマ「多分読者の大半もこの展開予想できただろうな」

 

仲間が死んだのにもかかわらずこの冷めきった対応

世界が変わっても人間関係は変わらないらしい

 

カズマ「……んじゃ、そろそろ終わらせてくるわ」スタスタ

 

そう言って五番アイアンを構えてモンスター達に近づいて行くカズマ

 

 

 

 

 

 

カズマ「くたばれぇえええええ!(ドゴァァァァァァアアアァァァン!!!)」

 

CDE「!!?」

 

【カズマのなぎはらい! かいしんのいちげき! サイクロプスCに82のダメージ! サイクロプスDに96のダメージ! サイクロプスEに101のダメージ! まものはぜんめつした! いちどうはけいけんちをもらった! ▼】

 

カズマのゴルフクラブがクリティカルヒットし、ジェノサイドサイクロプス達はみんな仲良く星になった。

 

カズマ「よーし、いっちょあがりィ! (アイコンタクトでショーコに合図する)」

 

ショーコ「……パパラパーパーラーパッパパー ♪(FFのファンファーレ風)」

 

ユージ「色々とツッコみたいところはあるがとりあえず…………そんなんあるなら最初からやれよ!」

 

カズマ「まーいいじゃんいいじゃん! ともかく初戦闘も切り抜けたことだし冒険を再開すんぞ! ユージ、あれ運べ」↓

 

アキヒサ(棺桶)「返事がない。ただのバカのようだ」

 

ユージ「いやなんで俺なんだよ!? お前がもたもたしてるからこうなったんだからお前が運べよ!」

 

カズマ「俺箸より重いもん持てないしー」

 

ユージ「じゃあそのこれ見よがしに担いでる五番アイアンはなんなんだよ!? ったく…………あれ?」

 

ショーコ「……ユージ、どうしたの?」

 

ユージ「モンスター倒したのになんでお金落とさないんだ?」

 

カズマ「はぁ? あんな害獣どもがそんな文明のシステム取り入れているわけねーだろ」

 

ユージ「いやなんでだよ!? だったらお金どうすんだよ!? このバカの蘇生とか武器の調達とか宿の確保とかは!」

 

カズマ「金は地道に稼ぐもんだろ。アキヒサはピザのバイト、ショーコはマッチ売り、俺はカツアゲ」

 

ユージ「お前はゴルフだろ!?」

 

カズマ「冗談だ。それよりお前もなんか働けよ、一人だけ楽しようったってそうはいかねぇ」

 

ユージ「どう考えても俺が一番しんどいポジションなんだが……それに仕事っつったって俺勇者だぜ? 魔物退治が本業なのになにやればいいんだよ?」

 

カズマ「あーやだやだ、『魔物を退治することが俺の使命だから仕事なんぞ探している暇はねぇ』ってかぁ? やれやれ、これだから穀潰しは…」

ユージ(いつかこの勇者の剣でぶった斬ってやる)

 

カズマ「まあ安心しろ、お前のバイト先はもう俺が決めておいた。すぐ近くだから今から行くぞー」

 

ユージ「なぜだろうな? 嫌な予感しかしないんだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲンタ「働け働け(ピシピシッ!)」

 

ユージ「痛っ……痛ぁっ!?」

 

ユージはカズマにとある施設に強引に連れて行かれた後、現在進行形でコワモテの監視員に無知で背中を打たれ、自分と同じくらいの大きさの立方体の石を延々と運ばされていた

 

カズマ「頑張れー、ゴールはすぐそこだぞー(モグモグ)」

 

ショーコ「……ユージ、頑張って(モキュモキュ)」

 

カズマとショーコはドーナツを頬張りつつユージについていく

 

 

 

ユージ「いやこれなんのバイトォォォォォ!?」

 

 

 

 

 

勇者一行の旅はまだまだ続く




以上です。
この回が一番書いてて楽しいな。

(プチ)キャラ紹介
・ユージ(レベル5・HP48)
ジョブ…勇者
スキル…ツッコミ(あらゆるボケにツッコむ)、勇者の力(詳細不明)

主人公にして苦労人。この世界観ではツッコミは彼一人のみなので、全てのボケを処理する運命を背負わされた悲しき戦士。今日も胃薬片手に抜け毛を気にしながらユージはモンスターやボケを次々と捌いていく。


・カズマ(レベル5・HP300)
ジョブ…プロゴルファー
スキル…スーパークリティカル(攻撃が全て会心の一撃になる)

ユージのストレスの原因その1。
世界観が割と世紀末なため、本編とは比較にならないほどやりたい放題している。誰がどう見てもぶっ壊れのスキルとステータスをしており、その戦闘能力は勇者一行の中でも突出している。ただ非常に気まぐれなため、真面目に戦闘することはあんまりない。

・ショーコ(レベル5・HP40)
ジョブ…マッチ売りの少女
スキル…無限の火器製(火に関係した器具ならどんな物でも創造できる)

ユージのストレスの原因その2。
職業はマッチ売りの少女だが原型はまるで残っていない。
ユージへ好意を寄せているのは本編と同様だがマンネリ化を避けるため割と淡白な間柄に修正された。カズマに匹敵するチートスキルを持っているが武器の性能上一つ一つしか使えないためいっぱい創造してもあんまり意味無い。
余談だが彼女の職業がマッチ売りの少女なのは、作者が『マッチ売りの翔子』なんてクソ寒いダジャレを思いついたことが原因。

アキヒサ(レベル1・HP20)
ジョブ…ピザ屋
スキル…バカ(バカである)

言わずと知れたバカテスの主人公。
ただ、上記のステータス然り真っ先に殉職したこと然り、
この世界での彼の扱いは決して良くない。
カッコいい明久などいなかった。
ちなみに強さ比較は現在、

カズマ>>>>>>>>>>ショーコ>>>>>ユージ>>>《越えられない壁》>>>アキヒサ

だったりする。
アキヒサに恨みはこれといって無い。
だから生きろ。


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伝説の勇者ユージの冒険 ~RPGの酒場の諜報力は世界一ィィィ!~

少々スランプ気味なので、調子を取り戻すまでこっちでいこうと思います……


ここはモンスリー王国

 

人々は平和に暮らし、大地は豊かな緑に覆われ空には鳥が舞い、穏やかな風が綿雲を運んでいた

 

だがある日、空に闇が滲み、大地に邪悪な影を落とした

 

大魔王カヲルシフェルが永き眠りから目覚めたのだ!

 

次々に魔物を生みだし、人々を襲い殺戮の限りを尽くした

 

この世界は暗黒の時代を重ね、いつしかこう呼ばれるようになった……

 

“モンスター・ワールド”

 

残された人々は脅え、泣き叫び、己が生を呪った

 

だが、そこに一人の勇者が立ち上がった

 

希望の光を剣に宿し、三人の仲間を連れた勇者一行は、カヲルシフェルを倒すべく今日もカオール城に向けて旅を続ける!

 

 

 

 

【ケネディ町】

 

 

テーンテーンテテテーン♪

 

 

アイコ「はい、お預かりしたポケモンは皆元気になったよ。 またのご利用お待ちしてまーす♪」

 

アキヒサ「モンスリーよ、 僕は帰ってきた!」

 

ユージ「誰もお前の帰還なんざ期待していねぇよ。……つか今度はポケモンかよ……この世界節操なさ過ぎだろ……」

 

カズマ「細かいこといちいち気にしていると溶けるぞ?」

 

ユージ「溶けてたまるか」

 

前回の戦闘でアキヒサが戦死してしまったため、教会で復活させるために資金を集めていたユージ達だったが、教会へ向かう途中たまたま『ポケモンセンター』があったらしい。

 

ユージ「しかもタダかよ……俺の前回の苦労はなんだったんだ……」

 

ショーコ「……ユージ、元気出して」

 

カズマ「ったく、さっきからグチグチグチグチ……何事もポジティブシーンキーング! に考えやがれよ。その金で装備強化するとか、色々あるだろ」

 

ユージ「お前らがもう少し自重してくれたらずっと楽になるんだがな。……まぁ装備の強化は必須かもな、特にアキヒサ」

 

アキヒサ「え? 僕? 僕にはこの聖剣ピッツゥアがあるけど」

 

ユージ「これほど聖剣を語ることがおこがましい武器が今まであっただろうか? つーかそれただのピザだろうが」

 

 

 

 

 

そういうわけで勇者一行は、汗水たらして稼いだ金で装備を整えることにした。

 

 

 

 

 

 

 

ユージ……勇者の剣(?)、銅の鎧(ぼうぎょ+10)、風の靴(すばやさ+15)

 

ユージ「ふむ、なかなか強化されたな」

 

 

 

 

カズマ……五番アイアン(こうげき+10)、ゴルフウェア(ぼうぎょ+3・すばやさ+5)、怪しい腕輪(MP+10)

 

ユージ「カズマにしては普通の装備だな。若干俺の感覚が麻痺してる可能性も否めないが」

 

 

 

 

ショーコ……怪しい服(MP+10)、怪しい靴(MP+10)、怪しい腕輪(MP+10)

 

ユージ「もうこれただの怪しい人じゃねぇか……まぁまだ許容範囲だ。問題は……」

 

 

 

 

 

 

アキヒサ……全身タイツ(こうげき+3・ぼうぎょ+3・MP+3)、2002年眼鏡(MP+20)、J・I・T・B(こうげき+30)

 

ユージ「テメェだァァァァァ!」

 

アキヒサ「? 何か問題が?」

 

ユージ「問題しかねぇよ! なんだよその怪しい装備一式より遥かに怪しいラインナップ!? どう贔屓目に見てもただの不審者じゃねぇか! だいたいなんだその武器!?」

 

そう言ってユージはアキヒサが手に持っている武器に指を突きつける。その武器は鎖に繋がれた鉄球である。見るからに殺傷能力の高そうなトゲも複数ついており、なかなか強そうではあるのだが、どう見ても光の陣営が使いそうな武器ではない。

 

アキヒサ「何って…ジャスティス・アイアン・トルネード・ボールだけど?」

 

ユージ「いや、だからなんだよそれ!?」

 

アキヒサ「ジャスティス・アイアン・トルネード・ボールはジャスティス・アイアン・トルネード・ボールであってそれ以上でも以下でもないよ?」

 

ユージ「なに一つわからねぇよその説明じゃあよぉ! 結局なんなんだよその禍々しい器物はよぉ!?」

 

アキヒサ「勝てる! カヲルシフェルがどんなヤツであろうと負けるはずがない!僕はいま究極のパワーを手に入れたのだーっ!!」

 

ユージ「ダメだこいつ……ネイルと合体して調子こいたピッコロみたいなこと言ってやがる……」

 

カズマ「さて、装備も整えたし……次は情報収集か?」

 

ユージ「(流された……)ああ。今のまじゃ目的が大魔王討伐ということ以外何もわからないからな」

 

ショーコ「……それもこれもちゃんと設定を用意していなかった作者が原因」

 

ユージ「仕方ないだろ、本来一発ネタだったんだから」

 

アキヒサ「ところで、情報を集めると言ってもどこでするのさ?」

 

ユージ「そりゃお前、RPGで情報集めっつったら酒場だろうが」

 

カズマ「ちょうどそこにあるしな」

 

 

酒場【ラディカルグッドスピード】

 

 

ユージ「なんてご都合主義……まあ良いか……」

 

装備を整えた勇者一行は、情報収集のため酒場に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クウガ「よー、俺がこの酒場の店長だ。つっても従業員なんざいねーけどな。まぁ気軽におっちゃんと読んでくれや…っと、タバコタバコ…」グデー

 

ユージ(なんだこのやる気の無いだらけた接客!?どこが【ラディカルグッドスピード】だよ、 店名改名しろ!

……あんま大した情報持ってなさそうだな。まあダメ元で聞いておくけどな)

 

カズマ「おっちゃん、俺達大魔王倒しに行きてぇんだけど、どうすりゃいい?」

 

クウガ「あ? 大魔王を倒しに行きてーならとりあえず東西南北の最奥部にある4つの珠が必要だ。カヲール城の扉の鍵はその4つの珠だからな。だが4つの珠はカヲルシフェル直属の部下、『四天王』と呼ばれる強力な魔人達が守っている。半端な実力じゃあ手も足もでないほど強いらしい。南の『ウィ