魔法少女リリカルなのは ――呪いの魔法少女と祈りの魔女―― (fukayu)
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プロローグ

 4月〇日

 

 今の生活にも慣れてきたので上からの指示で日誌を付けることになった。

 

 

 今日は取り敢えず俺について書くことにしよう。

 名前は蒼月(あおつき)(ハク)。苗字は訓読みで名前は音読みだ。

 一応死神をやっている。死神といっても名前を書いたら人が死ぬ類のノートを持ってくるタイプではなく、斬魄刀で戦うオサレな方だ。

 最もそれは前世での肩書きであり、新しく生まれ変わったこの世界でも肩書きとして名乗っているに過ぎない。

 

 転生者………とでも言えばいいのだろうか?

死んで違う世界で目覚める人間をそういうのなら俺は転生者なんだろう。

 

 通算死亡回数は覚えている限りで3回。

最初の世界は魔法や霊の存在が創作に過ぎなかった世界。もうその時の思い出は薄れかけているが、この世界での知識がなければその後の人生俺は長生きできなかっただろう。

次の世界、というか前世はさっきも言ったように『BLEACH』の世界。死神になる前となったあとに一度ずつ死を経験している。

 

 単純に考えれば他の転生者に比べて一度死んだ回数が多いことになるが、それがいい事なのか悪い事なのかはわからない。

 ただ、確実に言えることは確実に待遇は悪くなっている。

最初に転生したとき、死神になる前の人生はよくある赤ん坊からのスタートだった。しかし、何の力も持たずに(ホロウ)に嬲り殺された後に気がついたのは死者の魂が集まる街『流魂街』。姿は死んだ時のままだった。それはまだいい。基本的に尸魂界(ソウル・ソサエティ)では時は取らないか限りなく取るのが遅いかのどちらかだから。

 

 そして今回。今生は前世の死神の力を持ったまま姿形だけ10歳前後にランクダウン。

 

 …………手抜きとしか思えない。

 

 最初の転生の時は確かにいた親も住む家も戸籍すら無い状況で一体どうしろと………

 しかも最悪な事に死んだ時の能力と持ち物は多少抜けはあるものの殆ど揃っていた。

 つまり、生まれながらにして死神=霊体。

 尸魂界(ソウル・ソサエティ)なんて無い世界で俺は普通の人からは見えも触れも認識もされず、下手に霊力はあるので腹だけが減るという割と無理ゲーを強いられていた。

 

 本気で死ぬかと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4月△日

 

 コーヒーの淹れ方で怒られた………俺、お茶しか沸かした事無いっての。

 

 前回は途中で終わってしまったが、今日はこの世界とこの世界での俺の職業。そして俺の命の恩人であり雇い主の話をしよう。

 

 まず、この世界。

 多くの転生モノがそうであるように俺が今いるこの世界も原作と言える物語がある。

 

 『リリカルマジカル、全力全壊』と言えばわかるだろうか?俺はそれで理解しろと言われた………

 『魔法少女リリカルなのは』――――既に最初の人生の記憶が薄れかかっている俺からすればなんのこっちゃと言う話だが、まあ一応朧げながら記憶がある。確か、主人公の女の子が『話し合い』という肉体言語を使って対話をする話だったと思う。

 

 今回の俺のスタート地点はその舞台である『海鳴市』で、他の転生者から聞いた話だと原作の主要キャラ達は奇しくも俺と同年代らしい。

 転生者としては中々の好条件だが、少なくとも三週以上は精神年齢の離れている少女達と関わる気になれない。なりたくても触れられる生身の身体が無い。

 

 このまま誰にも知られずに消えていくかと思われたが、前述の通りこの世界には俺以外にも転生者がおりその内の一人に俺は捕獲もとい拾われた。

何でも、空腹を凌ぐために仕方なく食べ物を拝借するなどの行為が街の人々から心霊現象だと気味悪がれていたらしい。ですよねー。

 

 探偵と名乗る男には俺の姿が見えており、久々に人と話せた俺は感激のあまり抱きつき――特に抵抗も出来ないまま捕縛された。

 男の話だと転生者は勿論、魔力や霊力などの素養がある人間からは俺の姿はばっちり見えていて触ることも出来るらしい。

 

 話をしてみると男も俺と同じ境遇で他にもそう言う奴を何人か見てきたらしい。

 男は自分の探偵事務所も持っていて俺を雇ってくれるとも言ってくれた。

 願ったり叶ったりの提案に俺は男――以下、所長に再び抱きつき、再び伸された。

 

 所長マジ天使。変人だけど…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4月□日

 

 大分仕事に慣れてきた。もうすぐ給料日。

 

 今日はもう少しこの世界について触れておこうかと思う。

 

 まず最初にこの世界で原作知識というモノは殆ど使わない。

 いや、一応原作キャラはいるし、作品固有の用語や技術が満載なのである事に越したことはないよ?

 問題は俺たち転生者側の態度だ。みんな自分勝手に生きすぎなんだよ。

 

 俺に関しては今は生きるために資金を稼ぐという笑えない状態だし、ウチの所長は変人で原作と全く関係ないところで活躍して『海鳴探偵』とか名乗っている。他の奴も海鳴市に本来存在しない筈の馬鹿デカイビルを建てるわ、「俺より強い奴に会いに行く」とか言って勝手に街を出ていったりで、リリカルマジカル全くしていない。

 いや、わかるんだけどね?いきなり目が覚めたら前の世界から引き継ぎみたいな状況で、戸籍も学歴も無いんでまともな仕事は付けないし、もう既に別の人生を経験してるわけだから原作介入とかメンドくさい事はしたく無いって気持ちもわかる。

 でも、いくらなんでも勝手に会社立ち上げたりはやり過ぎだろ!

 

 後もう一つ命に関わる事情がある。本来はこっちが先に説明すべき事なんだが、俺にも責任の一端があると思うと言いづらい。

 この街では最近人外による被害が増えている。人外といっても山から下りてきたクマとかイノシシによる被害というわけではない。

 (ホロウ)等の各世界の悪役(ヴィラン)による被害だ。どうやら転生者が引き継ぐのは前世と記憶と知識だけじゃなく厄介なものも連れて来てしまっているらしい。

 虚が現れ始めたのは俺がこの世界に転生したのと同時期らしいし、他にも前例があるらしい。

 

 『魔法少女まどかマギカ』の魔女もその一つだ。同じ魔法少女モノでも出てくる作品間違えているだろと言いたいが、かなり以前から被害が出ているらしく何処かに幼気な少女に契約を迫る白い淫獣か魔女の卵であるグリーフシードを大量に引き継いだ奴がいるらしい。

 恐らくは前者だろう。何故なら、魔法少女もこの街での災害の一つだからだ。

 まどかマギカさんの魔法少女は力の源であるソウルジェムが濁り切ると呪いの魔女となる。この事実を知っている俺達転生者はおいそれと契約などしないが、それにしては次々と世界中で魔法少女が増え続けている。この世界に来る転生者が全部魔法少女な訳も無いし、後考えられる原因は今日もどこかで何も知らない少女を巧みな営業トークで拐かしている野郎が居るわけだ。

 

 魔女に一般人が襲われている姿を見て見ぬ振りはできないが、魔女の相手は魔法少女の領分だ。下手に手を出せば獲物を横取りされたと勘違いするか新手の敵だと認識するか、どちらにせよ転生者の事を殆ど知らされてない彼女たちは俺達にすら牙を剥く。 

 話せば何人かはわかってくれるだろうが、彼女たちは魔法少女になった時点で将来魔女になるという未来が決定しているようなものだ。敵になるであろう相手に手を貸していいのだろうか?その一つの疑問が俺達と彼女達の共闘という未来を遠いものにしていた。

 結局所長たち大多数の転生者が下した決断は基本的には不干渉。後は個々の判断に任せるというものだった。

 

 と言うか、それ以外にも魔物や怪人、最近は魔女の結界の他に迷宮(ダンジョン)が現れたという噂もあるこの世界が異常なのだ!

 

 取り敢えず今日は自分の領分である虚退治の後に給料が出た時のために趣味である盆栽の下見に行く事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 5月〇日

 

 今まで探偵見習いとは名ばかりの雑用兼事務仕事をやらされてきたが、今日ついに所長から探偵としての初仕事を任された。嬉しい。

 

 内容は荷物を指定の時間に指定の場所で待っている依頼人に渡す、というもの。

 所長から渡された巾着袋には宝石か何かが入っていそうな箱が入れられており、実際の重量よりズッシリと重く感じられた。

因みに霊体ですけど俺からは触れます。肌身離さず触れていれば身体の一部として認識されて周りからも消えるしね。あれ?これもう死神というよりただの幽霊じゃ―――――

 

 最早この世界とは全く関係ない道を歩き始めている気がするが、この依頼を達成したら正式に探偵見習いとして認めてくれるそうでその際の”昇給”という言葉に俺の疑問はすぐに吹き飛んでしまった。

 原作介入などをやる連中は長生きする気のない短絡的且つ刹那的な人間かしっかりとした衣食住を持っている恵まれた人間だけなのだ。

 

 早めに事務所を出る。

 場所はわかっているし時間まで余裕があるので自販機でジュースを買う。

 

 ベンチでジュースを飲むという周りから見るとちょっとしたポルターガイストを起こしていると、俺の今の身体と同年代の男女が視界に映る。それだけだと別に珍しくはないが、男女の内少年の方に目を惹かれる。

 

 ――――転生者だ。それも恵まれた方の。少女の方は茶髪で別に目立ちはしないが、少年は金髪のオッドアイってお前マジ何処の世界の人間だよと言わんばかりの容姿をしている。

 

 俺がBLEACHの世界に転生したようにこの世界が初めての転生先という人間もいる。俺の場合は死神に日系が多かったからそんなんでもなかったが、彼らは運が悪いことにこの世界に外側―――地球以外の世界が無数に存在するせいで結構姿にバラつきが出てしまうらしい。

 え――?特典?俺そんなのもらった記憶ないし、何が悲しくて周りから完全に浮く姿をしなくちゃいけないんだ。羞恥プレイかよ………

 

 少年は少女を連れて何もない壁に手を触れ、その内側に入り込んでいく。って、あれ魔女の結界か?魔法少女じゃない俺には近づかないと感知できないが、一般人が誘い込まれるようにこちらから入り込む事は出来る。

 だが、あまりに無謀だ。あの少女も転生者かはたまた魔法少女なら別だが、そんな雰囲気は感じなかった。自身と別法則の相手と戦うというのは想像以上に辛い。

 

 どうする?

 腕時計を見るとまだ約束の時間まで時間があった。



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魔法少女との出会い

 結界内に入る。入ってしまった。さっき自分で言っていたではないか、別法則の敵は手強いと―――

 ここにいるのは死神の敵である虚では無く、魔法少女の成れの果てである恐ろしい魔女だ。

 

 ――――ああ、もうどうにでもなれ!

 

 俺はあまり得意ではない瞬歩で結界内を突き進む。少なくとも普通に進むよりも早いはずだ。

 魔女の結界は想像よりも短く、目標の人物たちは早くも見つかった。

 

 発見したと言った方がいいか。

 そこには新品だったと思われるバリアジャケットが無残に引き裂かれ、もはや原型を残していないかつて人だったものが転がっていた。

 あの転生者だ。でも、あまりに呆気なさ過ぎる………俺より少し先に入ったものの瞬歩で追いかけた以上殆どタイムラグは無かった筈だ。

 

 ――――そうだ、もう一人。あの茶髪の少女はどこだ?

 

 ここにある死体は飛び散っているが一人分…………コイツに連れられていた少女の分が無い。

 

 周囲を探し、すぐに少女と何故転生者の少年がこれほど早く死亡したのかその理由を見つけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ、そういうことか!」

 

 少女の他に見つけたのはこの結界の主である魔女と、一人の魔法少女。

 

「あら、まだ他にいたの?」

 

 魔法少女と目が合う。焼き焦げそうなほど紅い瞳に一瞬目を奪われるが、そんな暇はない。

 彼女は俺を味方などとは思っていない。あくまで魔法少女の目的は魔女を倒し、その卵を――グリーフシードを奪うこと。グリーフシードは彼女たちにとって魔法を使って濁ったソウルジェムを浄化する唯一の方法であり、その確保は最優先である。そこに彼女(かは知らないが)にいい所を見せようとした馬鹿が現れたら横取りされると思うのが自然だろう。何も知らない――真実を知らない魔法少女なら共闘という線があるかもしれないが、もし、真実を――ソウルジェムを浄化しないとどうなるかを知っている魔法少女が相手ならそんな甘さは存在しない。

 

「待て!俺は言ってわかるかわからんが死神だ!」

 

「死神?ああ、私を地獄から迎えに来たの?殊勝なことね」

 

「違う!ほら、これ斬魄刀!」

 

「ああ、なるほど……」

 

 通じた!つまり、あの魔法少女は転生者だ。

 黒髪紅眼、黒いボロ布みたいなマントを羽織り白い仮面を祭りの屋台のお面のように斜め掛けしたその魔法少女は黒い短剣を握りながら一応こちらの話を聞く気になったらしい。

 

「俺にはお前さんの邪魔をする気はない。必要なら共闘もする。だから、攻撃はやめてくれ――――」

 

「フフ―――」

 

 魔法少女が笑ったかと思うと俺の視界から消える。

 そして数秒後俺の頬に鋭い痛みが走る。

 

「は――――?」

 

「ダメじゃない油断しちゃ」

 

 魔法少女がすぐ目の前にいた。

 血の気が引く。嘘だろ?気配を感じなかったぞ……この距離で姿だけでなく気配すら見失うなんて―――――

 

「!――――波動の三十三、蒼火墜(そうかつい)!」

 

 混乱する気をを沈め詠唱破棄で発動した鬼道で蒼い炎を発射する。

 それが短剣で容易く切り払われるのを見てから反射的に斬魄刀を抜く。

 

「へぇ―――」

 

「っく!」

 

 間一髪。あと少し、脳の判断を待ってから行動していたら俺の今世は終了していた。魔法少女は蒼炎を切り払うと同時に迷うことなくまっすぐ俺に突撃してきた。一撃一撃が急所を狙うような鋭さを持つ太刀筋は得物の小ささを感じさせないほどにこちらに威圧感を与えてくる。

 

「でも、」

 

 刀と短剣のリーチの差を活かす事など出来ないままその猛攻に斬魄刀ごと後ろに退けづらされる。

 そのままガラ空きの懐に膝蹴りを決められて俺の身体は地面へと叩き落とされる。

 

「接近戦はダメダメみたいね」

 

「雷鳴の馬車 糸車の間隙 光もて此(これ)を六(むつ)に別つ。縛道の六十一、六杖光牢(りくじょうこうろう)

 

「!?」

 

 彼女の軽口に対応する気も起きないまま、完全詠唱によって縛道を発動する。六杖光牢(りくじょうこうろう)は六つの帯状の光が胴を囲うように突き刺さり動きを奪うものだが、手応えこそあったもののいつまで持つかわからない。

 直ぐ様縛道の二十一、赤煙遁で煙幕を張りその場を離れる。

 

(アレはマズイ!魔女があっちの方に行ってくれればいいが、多分それでも時間稼ぎにしかならんぞ……)

 

 体が縮んでいるとはいえ、これでも前世では隊長クラスとは言わないまでもそこそこ修羅場はくぐり抜けた自信がある。それでも一体一、それも接近戦じゃ勝機どころか活路すら見い出せない。元々斬魄刀を使った戦闘は才能がなかったが相手が悪すぎる。 

 

 早くあの少女を連れてこの結界から出ないければ――――

 その思いだけが先行し、その姿を見つけた瞬間声すら掛けずに抱え上げて全速力で瞬歩を使って移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、やってくれるわね」

 

 死神と名乗る少年の拘束を抜け出した魔法少女は一人残された結界で魔女と対面する。

 死神の少年が予測した通りならば魔法少女の本来の目的は魔女が持つグリーフシードであり、邪魔者でしかなかった彼らがいなくなった今魔女との戦闘に集中するはずだった。

 

「折角、この街の争いの種を少し取り除いてあげようと思ったのに――――」

 

 しかし、少女は魔女には目も呉れずに懐から取り出した一枚のタロットカードに似たものをその短剣で切り裂く。

 先程まで黒衣の暗殺者という風貌だった少女はいつの間にかバイザーによって目隠しをした姿に変わり、その力によって天魔を召喚し、無傷の魔女を残したまま一人結界から消え去る。

 

「歯車は意図せずとも動き出す――か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、はあ………」

 

 流石に人一人抱えての瞬歩はキツイ。相手は少女といえども今は俺も同じくらいの姿だ。前世なら兎も角、今はこの身体が齎す一つ一つのハンデが身を染みる。

 少女はよほど目の前であの少年を失ったことが堪えたようで運ばれている間も心ここに在らずといったといったところだ。始め見たときに髪を両サイドに縛っていた髪留めは戦闘の余波で落としてしまったのか今は見当たらず肩までかかる髪が顔を覆っている。

 

「………あなたは、?」

 

「俺が見えるのか?」

 

 ようやく開いた口から出た言葉に驚く。元から素質があったのか身に迫る死の危険によって覚醒したのか、彼女には死神である俺の姿が見えているようだ。

 

(時間がないな………)

 

 いつからか戦闘音が聞こえなくなっていた。魔女か魔法少女のどちらが消えたのかはわからないが相打ちという希望は抱かない方がいいだろう。どちらが勝ったにせよ、このままじゃ俺たちが生き残る術はない。

 このまま逃げ続けるという選択肢は選べない。あの魔法少女想像以上にやるようだ。こちらのガードを崩すためだと思っていたが、その時に受けた小さな傷が塞がらない。死神には霊子を使ってある程度自己治癒ができる。それ以外にも何度か治療用の鬼道を試したが全く効力がない時点であの短剣に何らかの治癒阻害効果がついていたというのがわかった。

 それだけならまだ数箇所しかダメージを受けていないのでよかったのだが、実際動いてみるとその傷の箇所がことごとく響く。まるで獲物をじわじわ弱らせて確実に殺そうとする狩人や暗殺者みたいなやつだな、本当に魔法少女か?

 

「ま、でもこいつは幸いか」

 

 それでもまだまともに霊力の移動ができる事とこの少女に才能があるとわかったことは幸運だ。

 二人で逃げられないでも一人なら逃げられる。

 

(原作で朽木ルキアが黒崎一護にやった方法だが、果たして俺にも出来るかな?)

 

 死神の力も譲渡は重罪だ。バレれば重罰に処されても文句は言えない。だがあいにくこの世界に尸魂界は無い。俺が知らないだけで本当はあるのかもしれないが、関係ない。ヒト一人救えるならその後どうなろうと生きていれば甘んじて受けてやる。きっと朽木ルキアもあの時同じ気持ちだったのだろう。結局前世では転生した時期が逸れてて会えなかったけど気持ちはわかる。

 

(いやー、会いたかったな。神様も人が悪い。いくら死神が長生きでも元柳斎の爺さんの髪が黒く生い茂ってる時期に生まれたら会う気無くなっちゃうよ………ファンだったのに―――)

 

 生前の目標である原作キャラにサインを貰うという夢が結局説教を喰らいながらも貰えた一枚だけという事実に嘆きながらも覚悟を決める。

 

「さっき聞こえたかもしれないけど俺は死神だ」

 

「……死神?」

 

「ああ、だけど安心してくれ。俺の仕事は生きてる人間をあの世に連れて行くことじゃない。死んだ人間はたまに送るけどな。………今、君と俺はさっきの化物か化物より強い女に殺されそうになってる」

 

「ユウくんは私を庇って……」

 

「ユウ………それがあいつの名前か。そうか、庇ったのか」

 

 初めての転生者には自分の事しか考えていない奴が多い。自分が特別だとか他の人間を物語の登場人物だとか言って見下すことがあるのだ。長生きするか何回か死ぬとわかるが他の人間がゲームのNPCみたいだったり自分が特別なんて事実は無い。転生者はその世界で生きていく以外に選択肢は無く、世界に生かされているのだ。自分世界で生きていける人間なんてそうそういないように本当に世界で特別な人間になりたいなら他人を自分と同じだと受け入れ前に進まなければいけない。

 そのユウって奴はその事実に気づいていたってことだ。何故この少女をこんな危険な場所に連れ出したのかはわからないが、庇ってでも生かそうとしたその思いだけは無駄にはしないぞ。

 

「でも、ひとつだけ生き残る方法がある」

 

「え、」

 

 絶望的な状況に差し出された一筋の蜘蛛の糸に彼女は顔を上げる。涙でグチャグチャになっているが、整った顔立ちだ。そして、きっとその涙は恐怖よりも目の前で誰かが死んだという悲しみと悔しさによるものだ。絶望に歪みながらも真っ直ぐとこちらを見つめるその瞳が教えてくれる。

 

「だが、ひとつだけ約束してくれ。決して憎しみで、復讐のために力を使わないと―――仇討ちされても誰も喜ばないからな。これ、死神である俺からのお墨付き。死んだ人間はそんなこと望んでない。弔うなら墓作って念じてやるだけでいい。――約束できるか?」

 

「………わかった」

 

 短く、決意の篭った返事に今度こそ未練がなくなる。多分、今回の俺の人生はここまでだ。死神の力の譲渡をすれば暫くの間戦闘は困難だ。原作では黒崎一護の霊力が予想以上に強くて朽木ルキアは殆ど搾り取られていたが、あれは特別であり例外だ。この少女もかなり才能はありそうだが、例え全て持っていかれなくても残った霊力を使って全力で逃がすつもりだから結果は変わらない。

 

「なら、俺のこの刀を君の中心に貫いてくれ。恐れないで、な」

 

 言ってて思うが斬魄刀ってどっからどう見ても良く切れる日本刀って感じだからこの譲渡の方法見ようによっては俺がこの少女を刺殺してる現場になるかもしれない。多分自分から刺しても渡せるがここは彼女の積極性に任せよう。

 

「………っ」

 

 少女は迷わなかった。捉えようによっては自殺しろと言っているような言葉を信じ斬魄刀を自身へと突き刺す。斬魄刀を通じ、予想以上に急激に吸い取られる霊力に耐える。

 

「そ、そういえばまだ名前言ってなかったな。俺は蒼月白(あおつきハク)。蒼い月に白だ」

 

 一応、最後に自分が助けようとした相手の名前は知っておきたいしな。俺も知っていてもらいたい。

 

「私は……」

 

 あちらも相当キツいのか彼女は強がるように笑ってみせる。最初に見た時から思っていたが俺はこの少女を知っている気がする。優しい心を持ちながら、折れない不屈の心を持ち合わせている。

 

 そう、俺は知っていたのだ。

 自分と同じ転生者に気を取られ、最初に見たとき気付かなかった。

 いつも付けている筈のピンク色の髪留めが外れて髪が降りていたからわからなかった。

 そもそも、一番最初の人生の記憶など殆ど覚えていなかった。

 

「「高町なのは」」

 

 同時に彼女と―――高町とその名を告げる。

 そして次に言葉を発してのは俺でも先に名前を言われて動揺している高町でもなく、俺の持っていた巾着袋からだった。

 

『Stand by Ready, set up. 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔女。

 魔法少女の成れの果てであり、呪いそのものであるその怪物は自身の結界に迷い込んだ獲物を殺す。捕食の為かはたまた魔女となった自分の境遇を呪ってか時に無慈悲に時に使い魔とともに弄びながら殺す。

 今宵迷い込んだ獲物は4体。一体は殺し、一体には逃げられた。残る二体を探し結界内を彷徨っていた魔女は自身の結界内の壁に横たわる獲物の片割れを発見する。

 

「よう、遅かったじゃねえか」

 

 最早まともに動くこともままならないのか、獲物は魔女の姿を認識しながらも荒い息を吐くだけで逃げようとはしない。

 魔女は目の前の獲物に手を伸ばし――

 

「おかげで全章詠唱(とな)え終わちゃったぜ」

 

 獲物が空へ二本指を伸ばす。

 

「破道の九十、黒柩(くろひつぎ)――――」

 

 直後、魔女の巨大な体を覆い尽くさんばかりの黒い長方体が出現し超重力が魔女を襲う。

 一瞬にして体をペチャンコに押しつぶされた魔女が最後に見たのは力尽き意識を失う獲物の少年とその上空で白い衣装を着た結界に迷い込んできた獲物の中で最もか弱かった筈の少女から発せられた桃色の光だった。

 

「後は、任せたぜ高町――」

 

「ディバイィィーン、バスタァァーーーーーー!!!!!」

 

 



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海鳴探偵

 5月△日

 

 昨日はあれから事務所には帰っていない。

 久しぶりに外で明かした夜は寒かった。

 公園に寝袋やテントがあったが、他の転生者のものだろうか?こういう時だけは自分が霊体であることが幸せだったと思う。

 

 魔女をなんとか倒し後日連絡すると言って高町と別れた時点で依頼主との待ち合わせ時間は過ぎていた。そもそも依頼主に渡すはずだった品は高町に渡してしまった。アレは――所長から渡された巾着袋の中身であったインテリジェンスデバイス『レイジングハート』は本来高町なのはのものだ。一体どういう経緯で渡ったかは知らないがどこの誰ともわからない人間に渡すよりは彼女に渡す方がよっぽど良い。

 

 ――――あの時点ではそう思っていました。

 いや、今もそう思っている。この危険な世界、例え原作と違う形でも自己防衛手段は早いうちから持っていたほうがいい。

 

 しかし、しかしだ。あれは依頼だった。俺の所属する探偵事務所――『鳴海探偵事務所』に届いた正式な依頼。俺が所長から任された探偵として初めての仕事。それをすっぽかしてしまった。

 

 ウチの所長は身寄りのない俺を雇ってくれたり、探偵業という払う労力に対して決して報酬が見合うとは言えない仕事をする等良い悪いでいえば良い人間だ。

 しかし、変人なのだ。

 探偵という自分の仕事にプライドを持っていると言えば聞こえはいいが、実態は自らの持つ行持を守るためならばどんな事でも表情一つ変えず行える。しかも同じ転生者であり、死神である俺を呆気なく制圧するくらいには強いと一番始末に負えないタイプだ。

 そんな所長に依頼主に会えなかっただけでなく、大切な品を赤の他人にあげちゃいましたと言えば最後どんな事になるかわからない。

 

 俺が戦々恐々となる中、この件の原因とも言える高町から連絡が入る。

 転生者であり、未だ家賃すら満足に払えない俺は携帯などという高価なものは持っていない。なので、ちょうど周波数があったのをいい事に魔法少女と死神の共通連絡手段である念話でタダで連絡を取り合っている。そう、タダで!

 

 なんでも改めて昨日のお礼がしたいそうだ。始め聞いたときは結局最後は助けてもらったので要らないと断ったが、よくよく考えると原因である彼女と一緒に謝ればあの偏屈所長もわかってくれるのではないか。と、いう根拠のない自信が沸いてきた。

 高町には悪いが人生というのは昨日助けてくれた人間が今日も手を指し伸ばしてくれるとは限らないということを早めに知るいい機会だ。彼女の家は喫茶店だったしなにかお礼の品という形でお供え物を持ってきてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海鳴市にある割と豪華な二階建て住宅。それが我が『鳴海探偵事務所』だ。

 一階は探偵事務所で二回は俺が居候している部屋の他に空き部屋がいくつか。キッチンやトイレは両階についており、地下には巨大なガレージ兼地下室がある。

 

 事務所前で高町と合流する。意外と家が近くらしい。

 

(や、やっぱり、やめれば良かった)

 

 この時点でもうすでに俺の根拠のない自身は完全に消失しておりその心にあるのは抑えようのない恐怖だけだった。

 しかし、ここまで来てしまったのだ。今更引くことは出来ない。

 

「魔女にだって勝てたんだ!所長なんて怖くねえ!ぶっ殺してやる!」

 

「こ、殺しちゃダメだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみませんでした!!!」

 

 キッチリと清掃の行き届いている事務所で呆然とする高町を余所に手土産であるシュークリームの入った紙袋を差し出しながらジャンピング土下座をする。

 額を床に擦りつけながら事務所の最奥に位置する席からその主がゆっくり近づいてくるのを感じる。

 

「顔を上げ給え」

 

「は、はぁー」

 

 ゆっくりとシュークリームを奪い取られたのを確認し面を上げる。二十代前半の茶髪に白いスーツを着た青年――『鳴海探偵事務所』所長鳴海悠(なるみゆう)は真っ直ぐにこちらを見下ろしていた。

 決して目線は合わせない。

 今は死神の正装である黒装束だが残念なことに刀はある。切腹することになったら介錯は高町にお願いするのだろうか、と考えながら次の言葉を待つ。

 

「まずは昨日連絡がなかったことに対する釈明を聞こうか」

 

「実は依頼人と会えなくて――」

 

「ふむ、それで気まずくて帰ってこれなかったと、誰にだって失敗はある。私は君が完璧に仕事をこなせるとは最初から考えていないよ」

 

(あれ?意外と怒ってない?「最初から」の位置が「君が」の前に来ると嬉しいけど間違えたんだよね?別に俺が期待されてないわけじゃないよね?」

 

「あ、あのシロくんは私を助けようとして遅れてしまったんです」

 

 そこで思わぬ人物からアシスト。でもな高町。シロくんはやめてくれ犬みたいだろ。

 

「君は?」

 

「高町なのはです」

 

「…………ほう」

 

 高町の名乗りに転生者である所長も短く感嘆の声を上げる。その名前は彼女自身には全く理解できないだろうが、この世界では大きな意味を持つ。

 

「なる程、大体理解した。彼女がここにいるという事は君は私が渡した品の正体を知り、そして例え依頼人と再び待ち合わせを設定しても依頼は達成不可能というわけだな?」

 

「…………ああ」

 

 レイジングハート(アレ)は高町のものだ。転生者である俺たちがどうこうしていい物ではない。

 今回それだけは曲げられない条件だった。

 

「あの、もしこれを私が持っていることが原因で今シロくんが怒られているんだったら――――」

 

「高町!」

 

「その必要はない。そこにいる彼の判断は正しい。それは君が持っているべきものだ。私が言っているのはただの確認だ。依頼が達成不可能であると依頼主に伝えなければいけないのでね」

 

「――――所長!」

 

 ヒトは理解(わかり)合えたんだ…………

 所長が依頼主ではなく俺の意見を優先してくれるなんて。俺はこの人をどうやら誤解していたようだ。

 

「しかし、それとこれは話は別だ。私は、探偵という職業に誇りを持っていてね。その中の一つに依頼された仕事は何を持っても優先するというものがあるのだよ」

 

「しょ、所長?」

 

「高町なのは君は君の依頼主かね?」

 

「え―――?」

 

 想定外の質問に緩みかかっていた頬が弾けたように萎む。

 その視線は冷たかった。多分今まで俺が見た中で一番冷たい表情だ。

 

「確かに人助けは重要だ。私が君にしたようにね。しかし、だ。冷たいと思うかもしれないが君を雇ったのも私の依頼主の依頼を完遂するために最も有効な手段だと感じたからに過ぎない。実力で排除しても良かったが話し合いが出来、それで収拾がつく相手ならば私としても交渉を優先するからね」

 

「依頼じゃない人助けはするなってことか………?」

 

「そう殺気立つな。だが、私の言いたいことはそういうことだ。君が正義の味方という仕事についているのならば私は兎や角言わない。しかし、君も見習いとはいえ一応探偵だ。我々は慈善事業ではない。依頼主の依頼を受け、報酬を得て生活している。先日君に支払った給金もその一部からだ。本来君が依頼を優先していれば君は品の中身を知ることなく依頼を完遂し報酬を得ていた」

 

「その結果、高町は死んでいた!」

 

 「それがどうした?」とでも言いたげな所長に食ってかかる。

 確かに所長の言う通りあの時高町たちを無視していれば俺は何事もなくこうして所長と睨み合うことなく過ごせていただろう。

 だが、俺は探偵である前に死神だ。死神の役目は死者を尸魂界へと送ること。その際に合うであろう彼女の霊に俺はなんと言えばいいのだ?知らなかったといえばいいのか?君の事など目に入らなかったと――そんなことを言えばいいのか!?

 

「俺は死神だ。救えたかもしれない命を―――見捨てるわけには行かない」

 

「…………だが、今は探偵だ」

 

 斬魄刀に手をかける。それと同時に所長も腰に手を当てる。

 

(この距離で詠唱なんてすれば確実に負ける……)

 

 一触即発。

 こちらが動けば恐らく先手を取れる。所長がその異世界の能力を使うためには1サイクルの時間が必要であり、それが完了するまでは完全に生身だ。

 

「私が――――」

 

(やるなら――――今!)

 

「私が依頼主になります!」

 

 その声は今まで静観していた高町からのものだった。俺と所長の間に割って入った高町の手にはレイジングハートが握られている。

 三つ巴。そう言うにはあまりに危険な状態だ。戦闘行為に移れるスピードは俺、所長、高町の順。しかし、一度戦闘に入ってしまえば昨日今日初めて戦った高町と俺がたとえ共闘してしまっても室内では魔法も鬼道もその力を抑えられてしまう。

 

「君が依頼主に?」

 

「そうです。私がシロくんに助けて欲しいと依頼しました」

 

「高町――それは!」

 

 危険すぎる。所長は本当に変人だ。誰に対しても探偵としての誇りを持って接し、その行持のためなら、自らの探偵としての在り方を汚されることがあれば誰であろうと容赦はしない。

 

「では、彼は先に私が与えた依頼がありながら、後から受けた君の依頼を優先したというわけかね?」

 

「そうです」

 

「そうか、そのせいでもうひとつの依頼が達成できなくなったことについて君はどう思う?」

 

「そ、それは………」

 

 高町は言葉に詰まる。

 そう、これは悪手だ。先にやるべきことがあり、後から出来た用事のせいでそれが出来なくなった。その場合悪いのは誰かなど子供でもわかる話だ。

 

「それでも――それでも、私はシロくんに助けてもらいました。見て見ぬふりをしてもいい状況で私のために戦ってくれました」

 

「それは探偵として当然の行為だ。依頼を受ければ例え自分が死ぬとわかっていても行動しなければならない。フ、どうやら探偵として最低限のことは弁えていたようだな」

 

 所長が笑う。

 高町が持ってきたシュークリームを頬張りながら、自らのデスクへと戻っていく。

 

「どうやら高町くんの決意は固いようだ」

 

「所長!」

 

「所長さん――」

 

 高町も笑みをこぼし、次の瞬間所長の渡してきた書類を見て固まる。

 俺も慌ててその書類を見て同様に表情を失う。

 

「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん―――おい、所長!」

 

「どうしたかね?彼女は依頼主だ。依頼というのは契約書が必要なのだよ。本来は、」

 

「それにしても小学生に払える額じゃねえぞ!?」

 

 そこに並ぶのは無免許の天才外科医もびっくりの数字。

 割と依頼金が高いのは知っていたが、これは桁が違う。

 

「我が所の大切な人材の文字通り命をかけた仕事だ。当然この程度は払ってもらう」

 

「しょ、所長さん………」

 

 先程まで意地でも変えないという程の頑固さを見せていた高町は涙目になっていた。

 無理もない。この年にして借金持ちになれと言われているのだ。3度の人生を送った俺でも同じ立場なら死にたくなる。

 

「私は先ほどの君の強い意志に感銘を受けた。一度に払えとはさすがに言わん。―――尚、本人に払えない場合は親、兄弟、友人に払って貰うことになっている」

 

「そ、それは……」

 

「あんた鬼か!」

 

 もはや蚊の鳴く声になっている高町を庇うように前に出るも、所長の顔は完全に獲物を捕らえた悪徳金利業者と同じで……

 

「心配いらない。君は知らないだろうが、私は君の実家である翠屋の常連でね。取立てはキチンとご主人にするし、利子は一杯のコーヒーとシュークリームでいい」

 

「そ、そんな、困ります…………」

 

「大丈夫だ。その書類にサインすれば問題ない。今回の件は正式な依頼として処理し、そこの彼に一切の責任は求めん。不屈の意志を持つ君のことだ。よもや、拒否はしないだろう?」

 

 ひとつも大丈夫な部分がなかった。

 この男、本気だ。本気でやるつもりだ。

 一度サインすれば最後、高町はこの若さで借金地獄に陥り、その人生をこの悪魔に搾り取られるだろう。

 

「高町、それにサインするつもりはない!」

 

「シ、シロくん―――」

 

「ほう、では私は元の依頼を優先せずに依頼でもない要件にかまけた君に契約の再サインして貰ったこの書類に従って違約金を支払ってもらえばいいのかね?」

 

 そう言って所長はもうひとつの書類を、俺がこの探偵事務所にきた際に書かされた書類を取り出す。

 ちょっと待て、そんなの聞いてないぞ!

 

「君はあの時慌てて見ていないだろうが、しっかりとここに事細かく書かれている」

 

「マジで!?」

 

 慌ててみると無数に羅列された文字の中に所長の言っていた言葉が載っていた。しかもこの書類、よほど長いのか最後のページの下に”続きはウェブで”とか書いてある。ネット使えないよ………

 

「さて、どうするかね」

 

「……し、します!」

 

「…………すまぬ」

 

 前と後ろだけでなく、横から上下まで固められてしまった俺たちはその悪魔の契約書にサインするしかなくってしまっていた。

 

「うう、お父さんお母さんごめんなさい」

 

「……すまぬ、すまぬ」

 

「ふむ、契約は完了したようだな」

 

 所長は高町がサインした契約書を満足げに見つめて更にもう一部、別の書類を取り出す。

 

「ま、まだあるのかよ!」

 

「こ、これ以上は………」

 

「勘違いするな、これは私の契約書だ。君とのな」

 

 絶望する俺たちに言い放った所長の言葉をもう俺たちは信じられない。

 意地でも全て読み解いてやるという気持ちでその紙を仇が如く睨みつける。

 

「この書類には所員――君のことだな。君が依頼を受け、その依頼を満足に達成できなかった場合、そして依頼主側に不備が有り報酬を支払われない場合。私が立ち会った場合に限り違約金または本来の報酬金を”私が”建て替えると書いてある。つまり、」

 

「「つまり、?」」

 

「高町くんは金を支払わなくていいし、君は問題なく依頼を達成したので何の問題もない」

 

「「しょちょう(さん)!!!」」

 

 感激のあまり言葉が全て平仮名になる。思わず抱きつきそうになったのを手で制される。

 

「何も心配することはない。私は探偵だ。探偵として、雇い主として当然の事をしたまでだ――――それでは二人共、詳しい契約内容の説明に進もうか」

 

 海鳴市に本来存在するハズの無い探偵事務所の主は笑顔で俺達を迎える。

 依頼を受ければ転生者だろうと原作キャラだろうと確実に遂行する。探偵として、自らの仕事に誇りを持つこの変人は海鳴市に住むものたちから敬意を込めて『海鳴探偵』と、呼ばれていた。

 

 

 



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世界の支配者

「さて、まず我が『鳴海探偵事務所』についてだが、」

 

 俺と高町の二人を椅子に座らせた所長は保険会社あるいは携帯ショップの店員の如くスラスラと高町がサインした契約に不備がないか説明していく。

 聞いてて思ったことだが、怖い!とにかく一瞬でも聞き逃すと確実に不利になりそうな条件が大量に出てくる。

 まず初めにこの契約の期限が無制限になっていた。期限が設定していないから俺は高町のことをいつでも、どこでも、いつまでも守らなければいけない。その報酬があの莫大な契約金なのだそうだ。まあ、こちらとしても頼まれればまた助けるし高町が所長に報告してその働きに応じて給料という形で支払われるらしいので特に文句といる文句はないが。

 

「でもそれだと俺、他の依頼受けられないぜ」

 

「おや、最初の仕事を見事なまでに失敗しておいてまだ君に仕事が回ってくると思っているのかね?」

 

「そ、それは―――」

 

「当分は君はその仕事に従事していたまえ。人手については―――君は私を舐めているのかね?」

 

 鋭い視線に「滅相もございません」としか返す言葉がない。

 この事務所には不定期の職員が数人いるが、基本は所長一人で回している。事務員替わりだった俺の仕事も先日所長が仕事で数日いなくなった時の留守番くらいのものだ。

 

 他の内容も一部無視できない言葉こそあったが聞いていれば特に問題ないものばかりだと安心しきっていたが、

 

「最後に、我々は転生者だ。問題はないね?」

 

「ちょ、おい!」

 

 最後の最後にとんでもない爆弾を投下しやがったこの変人は。俺たち転生者同士の間ならいいが、高町は原作キャラ――それも主要人物というか、主役だぞ?どうやって誤魔化すのかはたまた一切触れないのか気にはなっていたが、こうもド直球で来るとは―――一体何を考えているんだ?

 

「何か問題でも?探偵業に最も必要なのは依頼主との信頼関係だ。私はそれを書類等形で表すが、それ以外にも依頼に関わる範囲で情報を開示しあるのは当然の行為だ」

 

「で、でもよう………」

 

「第一、君が堂々と死神と名乗っている時点で誤魔化すのは不可能なのだ。どこの魔法少女の世界に刀を持って探偵などをやっている死神なんかが出てくる?存在自体がありえない」

 

 白い契約マンをやっている死神マスコットが出てくる作品は知ってると、言いそうになったが高町が所長の話にウンウンと頷いているのを見てやめる。

 『死神探偵』――結構いいと思ったんだけどな。

 

「よし、では続けるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 5月△日(その2)

 

 結局その日は所長の転生者談義で終わった。

 

 俺たちは既に一回以上死んでいることを説明すると何故か俺は「知ってた」という顔をされ、高町のリアクションは血行も良く健康そのものの所長に向けられた。

 何故だろう?

 

 所長の話の中にはまだ俺の知らないモノもあり、この世界では死んだ転生者の存在はいつの間にか本当にこの世界に最初から存在しなかったことになるらしい。

 じゃあ、なぜ所長が知っているという話だが、過去の書類を整理している中書類の番号が合わなかったり不自然な空白があったから気づけたらしい。流石探偵と言わざるを得ない。

 

 その事実に俺も、そして目の前で知らなかったとはいえ転生者を失った高町も少なからずショックを受ける。前の世界がどうだったのか、死んだ後そのままこの世界に転生した俺には分からないが、俺という生きた証が消えてしまうのが少し悲しく思うと同時に他人にこんな思いをさせなくて済むという安堵があった。

 

 取り敢えず、まだ俺たちの中に死んだ『ユウ』という転生者の記憶があるのは確かだ。もし、彼の例にあったら死神としてこの世界にあるかどうかはわからないが尸魂界に送ってやるのが俺に出来るせめてもの彼に対する敬意だろう。

 

 所長の話は日が暮れる前に終わり、俺は依頼を受けた身として依頼主である高町を家まで送っていくことになった。基本俺の姿は一般人には見えないが、高町みたいな例外や他の転生者には普通に見えるので怪しまれないよう守護霊として見えるように振舞おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、行ったか」

 

 二人の少年少女側が事務所が出て行ったのを見届け、私は少し温くなってしまったシュークリームと淹れたてのコーヒーで胃を満たす。

 

「ご機嫌ね」

 

「ご依頼の場合は正面から――と、入口に書いたつもりだが?」

 

「あら、ノックはしたわよ?」

 

 書類に目を通すほど……それだけの刹那に満たない時間の間に私の目の前にはひとりの少女が現れていた。

 黒髪紅眼のその少女は非常に整った顔付きで先程までいた高町なのはとそう変わらない年でありながら、かの少女が可愛いと評すなら美しいと言えるものだった。特に艷やかな髪と見たものの視線を釘付けにする真紅の瞳は芸術品といっても差し支えない。

 

「……流石に気配遮断を使われれば気づかんさ」

 

「それにしては驚いた様子は無いけど?」

 

「何、そろそろ来る頃だろうと思っていた。それだけだよ」

 

 私と対等に否、それ以上に話す彼女もまたこの世界に紛れ込んだ異物だ。それも知る限りは特上の――

 

「大したマッチポンプだったな。些か強引すぎるくらいに……」

 

「あら、私は良かれと思ってやったつもりよ。転生者の中には原作介入等という下らない目的の為に平気で犯罪に手を染める輩もいる。今回もそう。どうやら彼はこの世界の異常性に気づいて『高町なのは』をイチ早く覚醒させるキッカケを作りたくてあんなムチャをしたみたいだけど」

 

「それを知っていながら君は――」

 

「ええ、殺した。最も止めを刺したのは魔女で私は彼の戦う力を根こそぎ剃り落として『高町なのは』を救って死ぬかただ死ぬかの選択肢を与えてあげたに過ぎないわ。結果彼は前者を取った。いい事じゃない。結局彼の願いは彼以外の手で本来そこにあるハズもない王道のチカラで叶えられることになるけど。これが原作の修正力というやつなのかしら」

 

 そう言いながら彼女は堪えきれない邪悪な笑みを手で口元で隠しながら浮かべる。それでいてその美しさが消えないのは素直に賞賛する。恐らく最早それも含めて彼女だと許容できるレベルまで私は彼女との付き合いが長くなってしまったのだろう。

 

「何はともあれ今日は依頼の報酬を支払いに来たわ」

 

「君の『ミッドチルダ側からレイジングハートを奪取する』という依頼は失敗したそれを受け取るわけにはいかないな」

 

「あら、ちゃんとあなたは成し遂げてくれたじゃない。わざわざ別の次元世界まで行ってくれた御足労に対する見返りは払うつもりよ。それにあなたも言ったじゃない”マッチポンプ”と。私の手に渡らなかったことは残念だけどあれは不慮な事故よ結果的に命の危機に貧していた『高町なのは』も救うこともできたし、ね」

 

 全て織り込み済みというわけか。探偵として危険に見合った代価は頂く。そう私が言おうとすることさえ見越してこの少女は用意していた実際の報酬額の半分を私に渡す。

 それは『S』と書かれた白いメモリで私にとっては大金よりも価値が有るものだった。

 

「もうひとつの方はいま技術部に開発させているわ。最も今のあなたの実力なら当分必要ないでしょうけどね、『一人で一つの仮面ライダー』さん?」

 

「君も人が悪いな。ミス・カレイドライナー」

 

「フフ、いい拾い物をしたようね。彼私の事をソウルジェム製だと勘違いしていたけど、純粋に『高町なのは』を救うために命をかけようとしていたわよ」

 

 万華鏡の異名を持つ彼女はこの街でも最強クラスの転生者だ。強さにおいても影響力においても彼女は海鳴市の顔と呼べる存在だ。まだ来たばかりの蒼月白やこの世界で普通に生活している高町なのはが知るはずもないが、私がこの世界に来た時を考えればこの街が魔女や虚の脅威こそあるが平和そのもので今日という日を迎えられたのは奇跡に等しい。

 昔はもっと自らの欲望に素直な転生者が無数にいた。それこそ世界をその手に掴もうとする輩やまだ赤ん坊だった高町なのは達を人形のように手に入れたがるもので溢れかえっていた。私も探偵としての行持により力無き依頼主の声を聞きそのようなものたちと戦いはしたが、所詮は個人にできる限界だった。

 

 しかし、この少女は違う。幾人かの転生者を纏め上げ一つの企業を創り、元いたこの世界の住人を同じ自分たちと同レベルの存在と認識した上で躊躇なく蹂躙した。転生者ではなく、それ以外の都市や国家を相手にである。

 悪しき考えを持つ転生者の相手を(自称するつもりはないが)私を含めた正義の転生者に任せ、自分達は政治、武力、宗教――あらゆる面からこの海鳴市を通じて世界中に攻勢を仕掛けた。

 娯楽品から生活必需品果ては兵器までを転生者が持つ異世界の技術で自分達が作ったものでコスト・性能の面で圧倒してそれを世界中に売り捌き、既存の水道や電気などのインフラを人知れず制圧し、有力者を暗殺・洗脳・取り込みによって手の内に加え、極めつけには従来の兵器とは比べ物にならない誰も想像だにしなかった超兵器によって人知れず行われた最終戦争に勝ち、この世界を手中に収めた。

 

 誠に恐ろしいことはこの海鳴市を中心に行っていたのに当の海鳴市に住む人間は転生者を含め、対岸の火事を見るかのように人ごとだったことだ。

 いつの間にか食べ物が、食器が、電子機器が同じ会社のものに統一されていく。しかし、それが従来のものより遥かに便利なため殆どの者は気付かないし、文句も言わない。自分たちの生活のために働く職人たちですら、気前のいいスポンサーがつき生活が楽になったことで次々とその企業の参加に入ろうとする。当時私のところに舞い込んでいた依頼もあの企業に自分たちを売り込んでくれだとか、他のところより早く契約がしたいと言ったものばかりだった。

 そして、調べる内にその企業の本社がこの街にあったこととその代表がまだ年端もいかない少女だったことに気づき、私はようやく彼女達のやろうとしていることに気づいた。この海鳴市がそうだったのだ。その他の国では恐らくもっと悲惨なことになっていただろう。どこから来るのかわからない軍隊と戦い、その圧倒的な力の前に敗れ去る。その力の出処が島国の小さな街であるなど誰が想像するだろうか。

 

 そして、多くの転生者が事の重大さに気づく頃には既に詰んでいた。

 如何に強大な力を持つ転生者と言えども水や食べ物といった食事、地位や立場といったものは生きていく上で必要だ。

 ある日食べていたものが自分達にだけ効く、前世では猛毒だったものに変えられる。

 原作キャラと同じ年に生まれ同じ学校に通っていたものはある日突然親の転勤によって転校を余儀なくされる。

 突如警察によって捕まり能力で逃げ出そうと思って連行された先が次元の狭間だった。

 

 極めつけは存在の消失だ。

 『灼眼のシャナ』の技術によって新たにこの世界に取り入れられたこの性質は死亡した転生者の『存在の力』そのものをこの世界から消してしまう。

 死したあとも彼らが一定時間トーチとしてこの世界に留まり続けるのもタチが悪い。

 昨日まで味方だったものがある日急に自分にとってどうでもいい存在に変わり消えていく。それによってコンビならば勝てた相手に知らぬうちに一人で戦いを挑み惨敗する。

 起死回生という名の特攻を仕掛けたつもりが、破壊したはずの街や殺したはずの人間ををすべて元通りに戻される。勿論支払うのは自分の『存在の力』だ。

 

 そうやって、自分たちが馬鹿にしてきた世界によって排除された彼らはこの世界に生きた証を残すという唯一の権利すら剥奪されて敗北した。

 当の彼女たちはどんな転生者の攻撃にも耐える『窓のないビル』を街の中心に建て、その中で悠々と過ごしたのだそうだ。

 

「君のやってきたことは本当に正しかったのか?」

 

「結果的に被害は最小限に抑えられた。世界を救う、あるいは守るために嘗てあなたに宣言したとおり、私たちは世界制服をさせてもらった。それをあなたは、悪だと断罪するの?」

 

「いや、私は探偵だ。正義の味方ではない。残念ながらね。そして、君は私にとって上客だ。人は生きる上で金銭や食料といった対価をを必要とする。だから、君は私の敵ではない」

 

「そして、味方でもないわ。ありがとう、いい仕事だったわ」

 

 彼女は悪といえる存在だ。今回も一歩彼女が求めた答えと違えば蒼月白をそして、高町なのはでさえも躊躇なく手にかけただろう。

 しかし、同時に行き過ぎた正義だとも言える。今回私に課した依頼という試練もレイジングハートという物語の鍵とも言えるアイテムをよからぬ者に使わせないための処置だろう。

あのデバイスを使えば最悪高町なのはを思いのままに利用できる上にそれ自体が一種のロスト・ロギアのようなものな為、自身で利用してもさすがに原作の高町なのはほどでは無いだろうが圧倒的な力を得られる。

 きっとこの少女は何事もなく自分の手に渡った時点で砕くか封印するつもりだったのだろう。どちらにせよ高町なのはの手には渡らないが、悪用されるよりはずっとマシだと。そう考えたはずだ。

 

「ああ、それともう一つの報酬よ」

 

「もう一つ?先ほど受け取ったもののもう半分は後日という話になっていたはずだが………」

 

「ああ、そっちじゃないわ。この海鳴市で発生していた『ポルターガイスト』の方よ」

 

「ああ、あれは君だったのか。解決法はこちらで決めたがあれでよかったのかな?」

 

「ええ、上出来」

 

 ひと月ほど前届いた差出人不明の依頼。まさか招待が彼女だったとは………彼女にとってはどうにでも出来る案件だと思うが、まあいい。受け取れるものはお中元だろうと人手だろうと受け取っておく、それが私のポリシーだ。

 

「近々管理局の方で大きな動きがあるわ。どうやら無理矢理ジュエルシードをばら撒こうとしているみたいよ」

 

「それは、また」

 

 大した情報網だ。まさか次元の壁を越えた向こう側のことまで把握できているとは。いや、そうでなければ私にレイジングハートの奪取などという依頼も出せはしないか。

 

「止められないのか?」

 

「難しいわね。管理局側の協力者に確認したところ、あちらの転生者はこちらを完全に舐めていてこの世界のことも原作と同じ未開の管理外世界にしているそうよ。下手に仕掛けて管理局が介入する口実を作るのも得策ではないし、あちらでこちらと同じことをやるのも面倒」

 

「面倒、か」

 

 出来ないと言わないのが彼女らしい。

 しかし、ジュエルシードを落としたとなるとこの世界に新たな火種が降ることになる。以前よりも落ち着いているとはいえ、今の状況は魔女や魔法少女の存在から嘗てよりも遥かに悪いといってもいい。

 

「依頼、と受け取ってもいいのか?」

 

「ええ……報酬は活躍に応じて変えさせてもらうわ」

 

「なら、一つ頼みがある」

 

「あなたが私に依頼とは珍しいわね」

 

「これは依頼ではない!報酬の前払いと言ってもらおう。断じて依頼では――」

 

 いかん、少々熱くなってしまった。私の行持に関わることだとつい、な。

 

「………あなた相変わらず変人ね。これは?」

 

「おそらく必要になるものだ」

 

 先程より些か距離の開いた魔法少女との距離を詰めて情報媒体を手渡す。中には以前より考えていたあるものの情報が入っている。彼女の組織ならば作成も可能なはずだ。

 彼女はそれを何の電子機器にも通さずその眼で見ることで中身を理解したように笑い、次の瞬間には消える。

 

「『ジャジメント』、天災か。さて、どうなるものか」

 

 思わぬ形で動き出した物語は最早誰の手にも止められない。人々に出来るのはその時どう対応するかであり、私の場合は誰の依頼で動くかだけだった。



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